衆議院

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第17号 令和7年5月28日(水曜日)

会議録本文へ
令和七年五月二十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮崎 政久君

   理事 鬼木  誠君 理事 新谷 正義君

   理事 山下 貴司君 理事 荒井  優君

   理事 山岡 達丸君 理事 山崎  誠君

   理事 斉木 武志君 理事 岡野 純子君

      岩田 和親君    江藤  拓君

      大西 洋平君    国定 勇人君

      小池 正昭君    坂本竜太郎君

      島田 智明君    鈴木 英敬君

      関  芳弘君    世耕 弘成君

      西村 康稔君    細野 豪志君

      松本 洋平君    宮内 秀樹君

      向山  淳君    東  克哉君

      大島  敦君    岡田 克也君

      落合 貴之君    小山 展弘君

      鈴木 岳幸君    田嶋  要君

      福森和歌子君    吉田はるみ君

      東   徹君    西田  薫君

      村上 智信君    臼木 秀剛君

      福重 隆浩君    山口 良治君

      佐原 若子君    辰巳孝太郎君

      吉良 州司君    平岩 征樹君

    …………………………………

   経済産業大臣       武藤 容治君

   内閣府大臣政務官     西野 太亮君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           青山 桂子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           河野 太志君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省経済産業政策局長)          藤木 俊光君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   経済産業委員会専門員   花島 克臣君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十八日

 辞任         補欠選任

  坂本竜太郎君     大西 洋平君

  鈴木 英敬君     国定 勇人君

  村上 智信君     西田  薫君

  丹野みどり君     臼木 秀剛君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 洋平君     坂本竜太郎君

  国定 勇人君     鈴木 英敬君

  西田  薫君     村上 智信君

  臼木 秀剛君     丹野みどり君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案(内閣提出第三三号)


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     ――――◇―――――

宮崎委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として経済産業省大臣官房審議官河野太志君、経済産業省大臣官房審議官田中一成君、経済産業省経済産業政策局長藤木俊光君、中小企業庁事業環境部長山本和徳君及び厚生労働省大臣官房審議官青山桂子君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山岡達丸君。

山岡委員 山岡達丸です。

 今日も質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 冒頭、大臣に伺います。

 昨日から報道が様々出ておりますけれども、運送事業者向け軽油販売で価格カルテル、公正取引委員会が六社に立入りをしたということが報じられているところであります。この六社は、遅くとも二〇一九年以降、神奈川県内の運送事業者向けの軽油販売価格について、各社の営業責任者らが月に一回程度集まって、あるいは電話等で情報を持ち寄って、次の月の一リットル当たりの価格を引き上げるのか維持するのか、そうした調整をしていた疑いがかかっているということであります。

 神奈川県だけでも運送事業者は数千社、年間一千億円の市場規模だということでありますけれども、正直、これが神奈川県だけの問題なのかということも、非常にこれは疑義が生じるところであります。

 折しも、この四月には長野県でもガソリンでカルテルがございました。ガソリンは、まさに今、物価の高騰で大変暮らしが厳しいという中で、様々、各党立場は違っても、この価格を下げていく、あるいは負担を軽減するための施策を打っている中でありますけれども、今、現行では補助金も入っているわけであります。軽油もその対象になっている中で、国民の皆様のために引き下げるための補助金が価格引下げに全て転嫁されているのかということも疑義がかかるという、大変大きな問題だと思っております。

 大臣、この件、まずどうお考えか、伺いたいと思います。

武藤国務大臣 おはようございます。

 山岡委員がおっしゃるのはごもっともで、これは一般論としてお答えをさせていただきますと、独禁法違反に問われるような事案につきましては、公正取引委員会において厳正に対処するものと考えているところです。

 また、補助事業により、今おっしゃったように、ガソリンや軽油等の小売価格の抑制を図っている中で、仮に今回のような報道が事実であれば大変問題は大きいものだというふうに認識をしているところです。

 このため、経済産業省といたしましては、全国の石油販売事業者及び石油組合などの関係者に対して、改めて独禁法違反に問われるような行為を行うことがないよう要請したところであります。

 今後、これは公正取引委員会とも連携をしながら、業界関係者による法令遵守体制の強化に向けてしっかりと働きかけてまいりたいと思っております。

山岡委員 極めて関心の高い価格の件で、特に国が補助も入れているという件であります。

 私たちの会派は税制そのものを下げるべきだという立場で今やっておりますが、果たして補助という形がいいのかどうかということも問われる話であります。

 これは極めて重要な話でありますので、委員長にお取り計らいいただきたいんですけれども、経産省に、全国の実態の調査を求めた上で、やはり理事会にその内容を提出していただきたいと思いますので、お取り計らいをお願いいたします。

宮崎委員長 ただいまの件につきましては、後刻、理事会にて協議をさせていただきます。

山岡委員 この委員会でも、極めて重大な問題なので、必要に応じてまた質疑もさせていただきたいと思いますが、まずはそうした調査の内容を確認していくということもさせていただきたいと思います。

 今日は、早期事業再生法案ということで、いわゆる金融債権のみを対象に、債権者の七五%の同意があれば金融債権の権利の変更、すなわち、返済のスケジュールを緩和したり、あるいは場合によっては減免ということもあるのかもしれませんが、その同意が取れた事業者は非常に身軽になって事業再生に大きく資するということを、手続を定めていこうという内容の法案であります。いわゆる倒産状態に至る前に、しかも世間に大きく知られない中で、事業者と金融債権者の間で債権の調整ができるということで、これまでも、いわゆる法的整理と言われるような手続、民事再生手続ですね、あるいは私的整理とも言われる事業再生ADRということもありましたが、それとは別の第三の選択肢になるものだという中身であります。

 皆様のお手元にお配りしているのが、マレリという会社、日本の大手自動車メーカーの、日経新聞がずっと報じてきた記事についてお配りしております。

 注目いただきたいのは、二〇二二年の六月二十五日に、このマレリが原則非公開による私的整理を進めようとした、相当程度の債権者の同意が得られたわけでありますが、一〇〇%には至らなかったということで、私的整理が成立しなかったという記事が二〇二二年六月二十五日であります。

 その下にあるのが、二〇二五年四月と二〇二五年五月ですが、およそ三年たっているのにもかかわらず、返済猶予四回目マレリ、再建策まとまらないと。いわゆる、海外からの大手の買収案まで登場している中で、それでも、特に外資を他の外資が中心に反対の意向だということで、意見集約難航という記事。

 もうひたすら、三年間、私的整理が成立しなかったばかりに、世間にも開示され、非常に大きな、今も、何というんでしょうか、事業に大きな影を落としながら継続しているという状況が続いているわけであります。

 現在大きな負債を抱えているわけでありますけれども、これはまず経産省に伺いたいんですけれども、今回の法案が仮に既に立法されていたとしたら、こうしたマレリのような今の事態は避けられたんじゃないかと思いますが、見解を伺いたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のマレリホールディングスにつきましては、御指摘のとおり、過去に事業再生ADRの利用を検討したところ、債権者全員の同意が得られずに、法的整理の一種である簡易再生の手続に移行したとの報道などがあったことは承知してございます。

 本制度が措置されていた場合に、現在のマレリに本制度が適用され得るかどうかというところはお答えしかねるところではございますけれども、一般論として申し上げれば、本法案、早期事業再生法案は、全員同意ではなく、金融債権者の多数決、それから裁判所の認可で権利変更を行うことが可能となるため、全員同意の見込みが立たないような場合に本制度が利用されることで、早期での事業再生が円滑化されるということが期待されると考えてございます。

山岡委員 今、一般論でお答えはいただきましたが、伝えられているところによれば、マレリも九〇%程度の同意も得られているという状況でありますから、まさに、今回の法制度があれば、法案が成立していたとしたら、そうした制度の適用もあったのかなと思いますし、今の状況が続いていますけれども、今後また、早期の解決と、やはり国内の本当に大手の自動車の部品を作る重要な事業者でありますから、そのことを強く期待するところでもあります。

 その上で、私たちもこの法案の意義は非常に強く感じるところではありますが、しかし他方で、修正が必要な事項もあると思っております。

 事業再生の名の下に不採算部門の整理が進められるわけですが、その過程で、事業者が培ってきた技術とかそうしたことが他者に売り渡されたり、あるいは重要な技術を持つ人材が流出するということもこれまでも散見されてきているわけでありますが、今回、様々な、倒産法制のいろいろな事業再生に向けた選択肢の中で、いわゆる第三の道をつくる、七五%の同意でできるというスペシャルな制度である中で、やはり、こうした事態が、散見されるような事態と同列のものとなっていいのかどうか。とりわけ、グローバル社会において競争が激しくなる中で、早期事業再生の手続をどんどんやっていく中で、事業再生ということが進む一方で、日本の重要な技術とかが他国に流れていく引き金になるような、そうした事態は避けるべきだということを思うわけであります。

 大臣に伺いますけれども、今の、本制度の実施、これが仮に成立して進むんだとしても、やはり、結果として、技術、人材の散逸、流出につながるような事態、これは避けるべきだと考えますが、お考えを伺いたいと思います。

武藤国務大臣 事業再生の遅れによって破産等の倒産状態に陥ってしまい、結果として事業者が有している技術や人材が散逸してしまうということは避ける必要があると考えているところであります。

 このため、本制度というものは、経済的に窮境に陥る前という倒産前の段階で、早期での事業再生を図ることを目的としたものであります。

 本制度の活用を通じて事業者に早期での事業再生を促し、委員御指摘のような技術や人材の散逸の回避を図ることのできるように、適切な制度運用を検討してまいりたいというふうに思っています。

山岡委員 大臣にも御答弁をいただきました。向いている方向は一緒だと思うんですけれども、やはり、超短期的な目先の利益にとらわれて、これから作られる計画が長期的な視点を欠くものになってはいけない、明確に法律の目的にそうしたことを書き込むべきだということをまず申し上げさせていただきたいと思います。

 労働者保護についても、これまでの議論でも様々課題があるということが分かっているところであります。

 これは、労働者側、人材側も様々な影響を受けるわけでありますけれども、この法案に基づく早期事業再生計画、その遂行で従業員の協力が得られないということがあれば、最終的には、労働法制の、労使のいろいろな法律に基づいて権利は保障されるということがありますけれども、そのときにすさまじいエネルギーが生じるわけであります。場合によっては、政治サイドにも、もう何とかこの人員整理を止めてくれみたいな話もあって、国会で取り上げられれば行政コストにも関わってくるような、すさまじいエネルギーがかかっていく。

 早期の事業再生でありながら、早期で済まなくなってしまうような事態、そういうことは避けるべきだと思うんですが、従業員の協力という部分についての必要性について、これは大臣にお伺いしたいと思います。

武藤国務大臣 本法案は、金融機関等の有する金融債権に限定して減免等を行う手続を定めているものであります。労働債権は減免等の対象としておらず、従業員が関与する手続は法律上は特段設けておりませんが、当該企業で働く従業員の理解と協力、これはもう委員おっしゃるとおりでございますが、これを得ることは事業再生の成否を決する上で重要な観点であります。

 このため、雇用また賃金といった労働条件の不利な変更が見込まれる場合、事業者が労働組合等の関係者の意見を丁寧に伺い、従業員の協力も得ていくことを促す取組が必要と考えております。

山岡委員 この制度を適用しようと考えている段階では、既に法的整理とか私的整理の手前の段階でありますから、従業員にしても、非常に、事業の継続がこのままいくと難しくなるという状況なのは、理解をされることが自然ということだと思うんですよね。

 そうすると、やはり、労使の真摯な協議で従業員の協力が得られる見込みを持つということが大事だと思うわけでありますが、今の答弁からも、政府としてそこは気にかけていくということでありますけれども、しかしながら、労働者側が事業者の計画策定の段階で事実上明確に関われるようにする、そのポイントが非常に大事であるということを踏まえると、政治の意思として、そこの部分が担保されるように、法律に明記すべきものとして、これも修正提案をしていきたいと考えています。

 こうした、早期事業再生を進めるに当たって、私たちが提案をさせていただく中で、この与野党の枠を超えて、やはり、これからの日本社会全体、経済全体をよくするために、立場を超えて、志を同じゅうする会派の皆様と共同で提出もさせていただきたいと思いますし、また、是非多くの委員の皆様の御同意も賜りたいということも、この後趣旨の説明をしますが、申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、労働者との間で計画策定のコミュニケーションを取るというところで懸念となるのは、秘密保持の問題だと思います。

 今回、制度の大きなポイントは、事業再生を世間に知らしめないうちに金融債権の再整理ができるということが大きなポイントなわけでありますが、そのことが、何らかの理由で状況が漏れるとしたら、やはり、それは事業価値の毀損につながっていってしまう、制度の元も子もなくなってしまうわけであります。その情報漏えいを恐れることで、事業者が労働者側に必要な情報を出し渋るような事態も避けなきゃならない。

 事業者側が誠実に労働者側に情報を出すためには、労働者側の秘密保持の規定が必要であると思います。本制度の運用で、その点、どうお考えになっているか、御答弁願えますでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、事業価値の毀損を防止するという本制度の趣旨を踏まえますれば、関係者の秘密保持を図ることは重要だと考えてございます。

 具体的な運用方法につきましては今後検討してまいりますけれども、例えば、事業再生ADRでは、第三者機関である事業再生実務家協会が、その手続規則におきまして、対象債権者に対して秘密保持を求めることができるといった規定を設けているところでございまして、こうした規定も参考に、本制度につきましても第三者機関の業務規程において、秘密保持が適切に図られるための措置を定めるよう求めることを通じて、事業者と従業員との間の円滑なコミュニケーションにもしっかり配慮しながら、秘密保持が適切に図られる運用としてまいりたいと思っております。

山岡委員 政府からそうした方向性を確認させていただいてよかったと思います。

 次に、制度の利用、これは非常に使いやすい制度になるということでありますが、その適用される事業者の範囲についても政府に確認したいと思います。

 早期に非公開で、債権者の七五%の同意で、この手続を進められることになるというわけでありますが、それゆえ、いわゆる健全な経営の枠組みに入るような、本来制度を必要としない事業者も、経済的に窮境に陥るおそれがあるんだということを盾に制度の濫用がされるような事態も防がなければならないんだと思っております。

 これは対象となる事業者が不当に広がるということは、金融債権者あるいは先ほどの議論にも出てきました従業員等、影響を受ける可能性のある関係者が不当に不利益を被るということもあり得るわけであります。

 これは適正な制度設計に基づいてきちんとした事業者の範囲を定める必要があると思いますが、見解を伺います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、早期での事業再生に向けまして、倒産前の手続として、倒産状態の前段階の事業者を対象とするものでございます。

 そのため、対象となる事業者は、民事再生法の対象でございます経済的に窮境にある状態よりも手前の、経済的に窮境に陥るおそれのある状態としてございます。具体的に申し上げますと、本制度による権利変更が行われなければ将来の一定時期までにキャッシュフローの悪化が進み事業継続が困難となる状態等を想定しているところでございます。

 その上で、制度を利用する事業者が実際に経済的に窮境に陥るおそれの状態であるか否かにつきましては、第三者機関においてしっかりと確認をするということとしておりまして、その後も、いわゆる対象債権者集会におきまして債権額の四分の三以上の同意を得ることが必要であることですとか、決議をした後も裁判所が手続の公平性等々を審査することなど、複層的な多数決の濫用防止措置を設けておりまして、制度を利用できる事業者が不当に拡大することは避けるという運用をしっかりやっていくことができると考えてございます。

山岡委員 政府からもそのことはしっかり取り組んでいくというお話がありました。

 その上で、議会の意思としても、附帯決議として、今申し上げた点は、これも与野党のまた調整の中で是非決議していきたい案件だと思っておりますので、どうぞその趣旨を踏まえていただきたいと思います。

 マレリの件もそうですし、あるいは、厳しいコロナの中で債務が大変積み上がってきたという中で、いわゆる金融債権の負担が本来の健全な事業の足かせになっているということをよい形で解決するということは本当に重要でありますので、必要な修正も含めて、この事業が適正に運用されることを望んで、私の質疑を終わらさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

宮崎委員長 次に、福森和歌子君。

福森委員 立憲民主党の福森和歌子です。本日もよろしくお願いいたします。

 他の委員の御質問と重なる部分もあるかと思いますが、重要なところだと思いますので、よろしくお願いいたします。

 まず、今回の制度を導入する意義について大臣にお聞きしたいと思います。

 今回の法律案では、日本企業の債務残高の増加や債務の過剰感、倒産件数の増加等を背景に、経済的に窮境に陥るおそれのある事業者の早期での事業再生の円滑化を図ることが目的とされていますが、私的整理というと、既に事業再生ADRを始めとする準則型の私的整理手続が整備されているかと思います。今回の法律案と他のこれまでの手続との違い、また、その違いによって事業再生が可能になると思われる企業をどの程度と見込んでおられるのか、お答えください。

武藤国務大臣 ありがとうございます。

 準則型の私的整理手続は、ADRも含めてですけれども、債権者全員の同意が必要である一方で、この制度におきましては、金融債権者の多数決と裁判所の認可によって事業者の債務の権利関係の調整を行うことができるという違いがございます。このため、手続開始段階から債権者全員の同意の見込みが立たない場合等に本制度の利用が検討されることを想定しています。

 また、本制度を活用する事業者数について、その見込みを一概に申し上げることはちょっと困難なところもありますけれども、参考としては、直近の十年間の民事再生手続、会社更生手続、また事業再生ADRを申請した事業者の総数はおおむね年間二百から三百者で推移しており、こうした事業者の一部が本制度を利用すると見込んでいるところです。

 また、本制度を活用する事業者の規模感につきましては、これは、現行の私的整理で必要となる全員同意が得にくい事業者、特に、金融債権者の数が相対的に多い大企業あるいはまた中堅企業の活用が想定されるところであると思います。

福森委員 四分の三の同意が得られればということで、数に関しても年に二百から三百ある中で、いろいろなことを考えると、適用できるところもできてくるんじゃないかということはよく分かりました。本当に、事業者の円滑で早期の事業再生を図るということが目的だと思いますので、円滑に進むようにお願いできればと思っております。

 そして次に、今お話のあった、これによって助かるであろうといいますか、早期に事業再生を試みることができるであろう、そういった事業者が、善意であればいいんですけれども、私、この法案の案を聞いたときに、経済的に窮境に陥るおそれを、ある意味過剰にといいますか、おそれはまだないんだけれどもちょっと怖がってしまって過剰に装ってしまう場合とか、事業再生ADRでは通らない事業再生計画が持ち込まれるなど、制度の目的とは異なる利用の心配はないものかとちょっと思いました。

 そういった誠意のない事業者を確実に排除できる仕組みですとか罰則についてお知らせください。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、委員御質問ございましたように、本制度におきましては、手続の最初の段階、申請の段階で、第三者機関が、この案件が債権者集会で決議が得られそうかどうか、その見込みはちゃんと立っているかどうかということを確認するということになってございまして、そもそも、そういった見込みが立たないものについては、手続の最初の段階で確認が得られず、前へ進めなくなるということでございます。

 それから、仮に手続において偽りその他不正の手段によって調査を受けようとしたときは確認の取消しができる、また、最終的に裁判所の方で手続がございますけれども、この中で、不正の方法によって決議が成立した場合には、それをちゃんと審査して、したがって、裁判所の方でそういった案件については排除されるといったような手続になっているところでございます。

 また、事業者が対象債権者を害する目的で偽りを述べるなどした場合は本法に基づく罰則の対象になるということでございまして、こうした形で、本制度を濫用的に利用するということをしっかり排除していくということを心がけてまいりたいと思っております。

福森委員 誠意のない事業者排除、罰則に関して、よく分かりました。

 ただ、さっきおっしゃった、集会で見込みが立つか立たないかということがあって、見込みが立てば進めることができるということでございましたけれども、そこに至るまでの支援、そして、そこからやっていけるかどうかという支援もすごく大事だと思いますので、そちらも徹底していっていただければと思います。

 そして、事業再生ADRではなくて今回の法律案がどうして必要なんですかということで、どのような会社が想定されるのか、事前に教えていただいたわけです。先ほど山岡委員がおっしゃったマレリの例もそのときに挙がりました。

 実は私、この後、いろいろなニュース等をこの件に関して調べたところ、実際、この会社は、事業再生ADRの利用を申請したものの、一部金融機関の同意が得られなかったということで、ADR不成立、簡易再生の枠組みを使った経営再建を行っていると。ただ、やはり自動車部品メーカーですから、経営状態が今更に厳しい状態で、再建策をめぐっては金融債権者間でも対立があって、現在、海外の会社から買収提案がなされているものの、債権者集会で決議できるかどうか分からないというふうに報道されています。

 仮に今回の法律案があったとして、さっき、どうだっただろうという御答弁をいただいていますけれども、事業再生できたでしょうかというところでいうと、私は割と難しかったのではないかとも思うわけです。この会社の場合、優れた技術があるものの、商取引の部分で計画どおりに進まなかったというところがやはり大きな経営悪化の要因かと思います。

 金融債権が重要であるということも、そして公告がなされなければ商取引への影響を抑制しやすいということも分かるんですが、事業を再生するということでは、私は、商取引、商取引債権をどうするかということもすごく大事だと思っておりまして、その辺りについての見解をお聞かせください。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のように、マレリホールディングスにつきましては、過去、事業再生ADRの利用を検討したのですが、債権者全員の同意が得られない、そういう形の中で法的整理に移行したというような報道がなされているところでございます。

 一般論として申し上げますと、なるべく早い段階で、債権債務、特に金融債権の整理を行うということがその後の再生の可能性を高めるということでございまして、今回の法案がそうした早期での事業再生の円滑化につながるものということを期待しているところでございます。

 一方で、まさに委員おっしゃるようにケース・バイ・ケースでありまして、金融債権債務だけを調整すればそれで再生がなされるというケースもございますし、一方で、例えば金融債務に比して取引債権の割合が非常に大きいようなケース、こういうケースにおいては、やはり主要な取引先とある程度議論しないと前へ進まないというケースもあろうかと思います。

 この法律におきましては、その意味では、金融債権に対象を限っておりますが、それと並行する形で、法律の外の手続として、個別に商取引債権の扱いについて協議をされるということについては、これは別に禁じているわけではございませんので、まさに個々のケースごとの必要に応じてそうした対応を図っていただくということが大切ではないかと思います。

福森委員 ありがとうございます。

 私は、会社員のときに、私的整理が頓挫した例を幾つか目の当たりにしました。いずれも、金融債権の整理よりも商取引債権の整理が肝だったんじゃないかなと思いました。金融債権整理が先に進んで商取引債権者が協力するにももうできないとか、あるいは、商取引関係者が協力ができたら救われたかもしれないと思うところがあったわけです。

 商取引の場合、連鎖倒産のリスクもございますし、商取引債権への目くばせというのは非常に重要だと思っています。なので、先ほど御答弁いただいたとおり、法律の外、今回の法案の外ではあるけれども、商取引債権者との調整等を妨げないということでしたので、そういったところへの御支援もよろしくお願いしたいと思います。

 次に、金融以外の債権についてお聞きします。

 ここは何度もほかの委員からも出ていますけれども、本法律案の対象債権は金融債権だということで、労働債権は含まれない。他方、私的整理における事業計画においては、人員削減や不採算事業の整理といったコスト削減に向けた計画が盛り込まれるということが想定されますし、これまでの事業再生を見ても、人員整理や労働条件の引下げなどが行われているケースもございました。

 小委員会報告書では、事業再生に当たっては従業員の協力も必要であることに留意が必要とされています。また、パブリックコメントにおいても労働者への配慮や保護を求める意見が寄せられていて、政府は、本制度における労働者保護の方策について具体的に検討していくとされていました。

 もう再三お答えになってくださってはいますけれども、やはりここは大事だと思いますので、私からも質問させてください。お願いします。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案は、金融債権に限定して減免等を行う手続を定めているところでございまして、労働債権は減免等の対象外でございます。このため、本制度の申請時等に従業員が関与する手続は、法律上は特段設けられていないところでございます。

 他方で、当然、事業再生を進めていく中で従業員の理解と協力を得るということは大変重要なことでございまして、早期事業再生計画の中において、例えば会社分割とか事業譲渡とか、雇用や賃金の減少が見込まれる事案については、当然、関連する労働法制にのっとった手続は別途取られるという前提ではありますけれども、本制度でも運用面で適切に対応したいと考えております。

 具体的には、こうした会社分割、事業譲渡等によって雇用や賃金の減少が見込まれる事案については、第三者機関への計画提出に先立って労働組合等へその旨の通知を行うというようなことを省令で規定し、労働組合等がその後の協議等に向けて準備できるような、そういう環境を整えていくということを検討しているところでございます。

福森委員 まさに今おっしゃっていただいたとおりで、適切な御対応ということで、それができるような法律案であってほしいと思います。

 そして、本法律案、権利変更の対象となる債権を金融機関等が有する金融債権に限定されると再三言っていただいています。ただ、何度も繰り返しになりますが、事業再生には商取引債権者との良好なリレーションもとても大事だと思います。商取引債権者の協力によって早期に事業再生が可能となるということも考えられると思います。また、非金融債権者の占める割合が大きい場合には、債務の大部分について本制度が活用できず、救済できる事業者の範囲を狭めてしまうのではないかという心配もあります。

 対象事業者にとって、金融債権に限定することで、いいんだよ、こういうところが期待されるよというところと、商取引債権者を入れないことによる不利益がないかということをいま一度お示しください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度では、権利変更の対象を金融機関等の有する金融債権に限定するということで既存の商取引等への影響やその事業価値の毀損を可能な限り抑える、そういうことを目的としているところでございます。これによりまして、経済的窮境に陥るおそれのある事業者が早期での事業再生に取り組みやすくなることで技術や人材が散逸することなく円滑な事業再生が図られる、そういう効果を期待しているところでございます。

 その上で、仮に本制度におきまして一律に商取引債権を権利変更の対象とした場合には、商取引の継続に支障が生じる可能性が高まるとともに、広く取引先に本制度の利用開始が伝わることになりまして、事業価値の毀損を防止するという本制度の導入趣旨が達成されなくなるおそれも一方であるというふうに考えてございます。

 先ほども答弁申し上げましたけれども、本制度を利用した場合も、商取引債権につきましては、本制度に基づく手続の外で個別に債務者と債権者間で協議を行うことは可能であるわけでございまして、個別事案の必要性に応じまして、今後、こうした実務の定着がしっかり図られながら、本制度を活用した事業再生が推進されるということを期待しているところでございます。

福森委員 分かりました。

 おっしゃるとおり、ポジティブに考えると、本法律案によって債務者も商取引債権者も商取引に専念できるといいますか、金融債権が軽くなるというか、減免されたりすることで商取引に専念できるということは非常にいいと思うんですが、今度は逆に、ネガティブに考えると、商取引債権者が私的整理のことを知らないがゆえに取引の見直しを行うことができず、例えばですけれども、損金が増える可能性もある、あるいは、何度も繰り返しになりますが、知っていたら支援できる事業等があるかもしれないのに、知らないがゆえに機会を逃すこともあり得ると思います。もちろん、個別に話をすればという御答弁もいただいておりますけれども、私は、それでも機会を逃したり、あるいは逆に連鎖倒産のリスクというものを抱えたまま走ることにならないかという心配をしています。

 商取引債権者にとって本法律案による不利益がないのか、また商取引債権者保護をどう考えるか、お示しください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、一般に、事業再生は早期の段階で迅速に手を打つということが重要でございますので、これによって、結果として事業価値の毀損を防ぎ、事業の再建可能性が高まるというふうに言われているところでございます。

 まさに本制度におきましては、倒産の前の早期の段階で事業再生を図ることで、事業の継続、すなわち商取引継続の可能性が高まるということだと考えております。また、商取引債権を今回多数決による権利変更の対象としないということによって、債務者の利益のみならず、むしろ商取引債権者の権利の保護もしっかり図られるという法のたてつけになっているところでございます。

福森委員 分かりました。

 ここからは、対象債権や事業再生計画についてお聞きしたいと思います。

 対象債権者の多数決により、対象債権のうち担保で保全されていない部分の権利変更を可決できるとされておりますけれども、非保全部分の特定や適切性などはどのように守られるかお示しください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度の利用に当たりましては、事業者は、早期事業再生計画を提出する際に、担保権の目的である財産の価額について、経産省が定める基準に従いまして評定をする必要がございます。その上で、第三者機関は、その評定が基準に従ってなされているかどうかを調査をするということとしてございます。それで、保全部分を適切な基準に従って評定することで、非保全部分の特定ですとかその適切性が担保されるということとしてございます。

 経済産業省令では、当該基準における評定の時点ですとか、売り掛け債権や不動産等の個別の資産、負債の評価の仕方等について定めることを想定しているところでございますけれども、事業再生ADRなどの既存の制度も参考にしながら、今後、引き続き、有識者や金融機関等の皆様の意見聴取を行いながら検討を深めてまいりたいと考えてございます。

福森委員 分かりました。適切性ということは大事だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 経済的窮境に陥るおそれのある事業者また債権者にとっても事業再生計画というものは非常に重要で、その実現可能性は限りなく高くあるべきだと思っています。この計画案に関する要件が曖昧で策定プロセスも不透明だということが起こりますと、債権者等関係者にとって公平でいい計画案が出ない可能性はないでしょうか。計画案の要件についてどのようであるか、またその合理性はどのように判断されるのかも教えてください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度におきましては、まず、権利変更議案におきましては対象債権の権利変更の内容について記載をする、また、早期事業再生計画では、事業者の資産及び負債に関する内容、それから今後の収支の見込み等を記載しなければならないというふうにしてございます。

 まず、決議の対象となる権利変更議案でございますけれども、権利変更の内容は原則として対象債権者間で平等でなければならないというふうにしてございまして、公平性を担保しておるところでございます。これに加えまして、債務履行の可能性は第三者機関が調査をします。かつ、裁判所が認可時に審査をするということで、債務の履行可能性も担保をするということとしてございます。

 また、早期事業再生計画の方でございますけれども、これは権利変更議案への賛否の判断に参考となるべき書類であるところ、本制度は第三者機関が公平中立な立場から調査を行います。その上で、その調査の結果を対象債権者に交付する仕組みを措置するという形になってございます。

 これによりまして、対象債権者は、当該第三者機関の調査結果も参考にしながら債権者集会での賛否を判断するということができるようになります。そういった観点から、債務の履行可能性や合理性を適切に判断することができると考えてございます。

 こういった仕組みに加えまして、実効的な運用につきましては、有識者や金融機関等の意見聴取も行いながら、引き続き検討を進めていきたいと考えてございます。

福森委員 内容について、よく分かりました。お聞きしていると、やはり第三者機関の審査といいますか、お諮りというのもすごく大事だなと思いますので、そちらもよろしくお願いしたいと思います。

 次に、事業再生ADRということでは、本法律案の権利変更議案及び早期事業再生計画に相当する事業再生計画案が策定されるということですが、資産及び負債等の見込みに関する事項については数値案件が課されるほか、株主責任や経営者責任というところについても言及されています。また、事業再生計画の進捗状況については事業再生実務家協会が報告を受けるなど、計画の内容の適正性、また履行の実効性を確保する仕組みがきちんと取られているかと思います。

 本制度の権利変更議案及び早期事業再生計画について、具体的に求められる記載内容ですとか、その内容の妥当性、履行を実効確保するための方策を改めてお示しください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案では、まず、権利変更議案におきましては非保全部分の権利変更の内容を、早期事業再生計画では、権利変更議案への賛否の判断に資する内容として、権利変更を必要とするに至った事情ですとか手続終了後の財務状況、収益の見込みといったものを記載しなければならないということとしてございます。

 その上で、先ほども少し申し上げましたが、第三者機関が権利変更議案や早期事業再生計画の内容を法令上の要件に従って調査をする、それから、対象債権者集会におきまして、専門的知識に基づき与信を行う対象債権者のうち、債権額の四分の三以上の同意を得ることも必要とされるということ、最後に、裁判所におきましても、認可の要件として、手続の公平性や債務の履行可能性を判断すること、こういった重層的な措置を設けることで、その適正性や履行の実効性を確保しているところでございます。

 早期事業再生計画の記載事項とか第三者機関の当該計画に関する調査事項の詳細は省令で定めることにしてございますけれども、様々、数値の話ですとか、いろいろな要素がございますけれども、今事業再生ADRにおいて先行して規定されている内容ですとか、その実務運用なども参考にしながら、有識者や金融機関等の意見聴取も行いながら、省令での規定の要否、それからその内容についての検討を進めてまいります。

福森委員 よく分かりました。

 この法案、スピードと確実性と、両方大事だと思うんですね。今お答えいただいていた内容を確実にやっていこうとすると、結構時間もかかるのかなと思いましたけれども、スピーディーにできるということも改めて大事にしていっていただければと思います。

 時間になりましたので、私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、荒井優君。

荒井委員 立憲民主党の荒井でございます。おはようございます。

 今日は早期事業再生法案ということなんですけれども、この法案の趣旨を見ていて、非常に思い出すことが一つありまして。

 この仕事をする前に学校の校長を札幌でしていたときに、とある大学の学校法人から、九州にある学校の再建をしてくれないかというふうに頼まれました。その学校にも行って、非常にいい学校だなと。ただ、やはり経営がうまくいっていなかった。でも、一番大きな課題は、数億円の金融債務があったわけですね。学校法人の場合は、金融債務は理事長が一手に引き受けるという形になりますので。

 もちろんこの法案は学校法人は射程には入ってはいないんですが、そのとき、この学校の運営を引き受けるのかどうかというのは、つまり理事長になるというのは債務を個人で引き受けるということで、失敗したら自分自身が自己破産せざるを得ないだろうな、そういう非常に重いものを感じながら、結果的にその学校の再建に取りかかったことを思い出しました。

 ですので、やはり入口のところではこの金融債務というのは大変重要だというふうに思いますし、ここがあるからこそなかなか事業再生が手がつかないということは多々あるだろうというふうに感じています。

 内閣官房に聞きましたところ、直近、対GDP比における企業債務の状況というのは、日本は今一一五・四%だということです。ヨーロッパでは九二・七%、アメリカでは七四・八%で、一〇〇%を切っているわけですが。

 ただ、二〇二〇年からこの約五年間の流れで見ると、日本はほとんど横ばいで高止まりしている状況ですが、ヨーロッパでは約六ポイント下がっている、アメリカでは約一〇ポイント下がってきているということで、まさに企業債務を減らしてきている。これは、つまるところ、企業の再生がどんどん進んでいる状況でもあるというふうに思います。

 世界中がコロナ禍を経て企業債務が膨れ上がったものの、世界ではどんどん企業の債務を減らしていきながら再建が進んでいる証左だと思うし、日本ではそれが進んでこなかったということが、この法案の大きな意義なんだというふうにも感じているところではあります。

 ただ、今日はまず最初に大臣にお伺いしたいんですが、まさに、特に金融の債務カットというのは事業再生の入口ではあるとは思いますけれども、キー・サクセス・ファクターなのかと言われれば、僕自身はそうではないんじゃないかというふうには思っています。

 この法案の前提になるところではあると思いますが、経産省又は政府として、事業の再生について、何が重要なところというふうに感じているのか、お考えをお示しください。

武藤国務大臣 御苦労されたのはよく同感をするところで、私も、今でも債務超過というのが一番嫌いな言葉なんです。

 事業再生におきましては、債務の過剰感を抱える中でも、事業そのものの収益力強化につながる事業戦略の見直しを図って、戦略を着実に実行していくことが重要だというふうに承知をしているところです。

 その際、債務整理等により財務を健全化し、早期再生に向けた道筋をつけることで、競争力の源泉となる技術や人材の散逸を防ぐことにもつながる。こうしたことを通じて、従業員の力を含めて、経営資源というものを最大限に活用しながら収益性を高める取組を行うことが、事業再生の鍵となると思います。

 経産省としても、こうした考え方の下で、今回御審議をいただいている本法案や、また、事業再生ADRといった事業再生を支援する制度の整備にも取り組んできたところであります。

 今後とも、円滑な事業再生を後押ししてまいりたいというふうに思います。

荒井委員 まさに債務というのが本当に、経営者にとっては非常に大きく、重くのしかかっているというふうに思います。

 今大臣からもお話ありましたが、企業若しくは組織の価値というのは、もちろん金融資産だけではなくて、人的資本を含めて、持っている知財や、そして信頼なんだというふうに思っています。

 僕自身は、事業の再生というのは、特に信頼が、これまで積み上げてきた会社の信頼というものが、もちろん金融的な債務は膨らんできたかもしれないけれども、そこさえカットすれば、必ずこの会社、組織は再生ができるということを多くのステークホルダーが信頼しているからこそ、その入口である金融資産をたとえカットしてでもみんなで頑張らせたい、頑張っていきたい、その思いが一つにまとまっていくことがすごく重要だというふうに思っています。

 今回のこの法案を通じて、日本全国にそういった、やはり金融の債務を抱えながら苦しんでいる皆さんは多いと思うんですね。先日も、同僚議員の東さんがここで質問したときにも御自身の経験のお話もされていましたが、質問が終わった後に隣の席で少し聞いたときに、やはり本当に、経営者としての苦しさ、この債務をどうやったら返済できるのかというのは誰にも相談できなかったということをおっしゃるわけです。そのとき、たまたまお話しした商工会議所のOBの方がいろいろアドバイスをしてくれた、でも、そこまでは、例えば公的な機関、銀行にも税理士にもなかなか相談ができなくて本当に苦しいと。この思いは僕もすごくよく共感をいたしまして、だからこそ、企業の金融債務をどうやってカットするかというやり方があることが少しでも多くの苦しんでいる経営者の皆さんに知れ渡っていただきたいし、そういう風土をつくっていただけるように経産省としても頑張っていただきたいというふうに思っております。

 学校のことを少しお話しさせていただきましたが、今回、事業再生というものを少し学校に照らし合わせて考えてみると、こんなふうにも言えるのかなというふうに思います。

 高校の場合には、卒業するのに必要な単位というのがありますので、国語の授業、一教科をちゃんとクリアをした、そういった単位を積み上げていくと卒業に至るわけですけれども、時々、生徒によっては、例えば出席数が足りなかったり若しくはテストの点数が足りなくて、結果的にその学年を、例えば一年生から二年生に上げるときに進級会議というのを行うわけですが、そのときに、授業の担当を受け持っている先生がつまり一をつけるみたいな形で、その子がその教科の単位を取得できないということが往々にしてあるわけです。

 そうなった場合に、どのようにして学校が対応するかというと、大きく三つあるわけです。

 例えば、留年という措置があるわけですね。もう一度一年生をやり直してもらうということ。これは今回のケースでいうと民事再生みたいなものに近いのかなというふうに感じていまして、つまり、留年すれば当然もう一度一年生に、本来二年生だったはずの人がいるわけですから、ある種公開になるわけですね。でも、別に学校としては、もう一回一年生をやってもらうことで、この子は必ず次に向けて頑張ってくれるだろうと。大変厳しい措置であるとは思うものの、まさに留年という形でもう一回一年生をやり直してもらうということが民事再生に非常に近いというふうに感じました。

 もう一つ、それよりも軽いオプションとして、補講を受けるということがあるわけです。学年末に、国語の単位や音楽の単位が足りなければ、先生と特別に、何か宿題をもらって、一生懸命それを受けて、それによってその先生が認めて、その教科をクリアし単位を取ったということで、晴れて二年生に上がれるわけですね。この補講という仕組みに関しては、ほかの多くの生徒は、その子が赤点を取ったかどうか、補講を受けたかどうかというのは知りませんので、普通に二年生に上がれる可能性が出てくるわけです。

 ところが、この補講の措置を取るかどうかというのは、実は、多くの学校でそうだと思いますが、職員会議という全体の先生が集まる中で、まさに債権者としての先生たちが、例えば国語の先生や音楽の先生たちが補講を受けさせることをよしとするかどうかということを話し合うわけですね。

 やはり当然ながら先生たちも自分のプライドを持って授業を行っているわけですが、その授業の取得に至らないというふうに思ったからこそ一をつけて、授業の態度や本来ならやるべきことをやってこなかったことに対して、そこは教育者として、指導者としてそういった措置をするというのは当然し得ていいわけですが、そういった人たちが集まって補講を受けさせるかどうかを決める。これがもしも補講を受けられないということになれば留年をすることになり得るわけですが、その場合に、おおよそ、全体の先生たちがそれをよしとするという形になれば受けられるというのがあるわけです。

 これがいわゆる事業再生ADR的な感じで、全員の債務者がこれを認めるということは事業再生ADRに近いのかなというふうに思うわけですが、時々、どうしてもやはり、自分の授業をあれだけ受けなかった生徒を補講によって、たった数日の補講で一年間分の授業を受けたことにするのは許せない、そういうケースだってあり得るわけですね。そういうときに、例えば学年主任だったり若しくは校長の特別的な配慮によって、つまり一部の債務者が、まあまあそれは、でも、そうは言うかもしれないけれどもという形で、もう少し大きな目線で見て補講を受けさせようじゃないか、そういうようなことがある。

 もちろん、ちょっと比喩としては適当ではないかもしれませんけれども、僕もやってきた学校の感覚からすると、今回の早期事業再生というのは、改めてそういった枠組みをできるだけ早めに提供し、全員合意は取れないかもしれないけれども、多くの人たちの同意を得れば進めていこうじゃないかというのがこの法案の趣旨で、そこは割と、つまり、それぞれの学校やこういった多くの社会で行われていることなのかもなというふうに思っているわけでもあります。

 あと、もう一つ、そもそも再生が難しいだろう、つまり留年しても補講を受けてもこの生徒はなかなか我々の教育というものを経てよりよくはならないだろうというときには、どうしても退学という勧告があるわけです。これは会社でいうと破産みたいなことになり得るのかもしれません。ちなみに、学校では転学を推奨しますので、やり直しが利くような、そういった制度にはなっていますが。

 でも、一貫して言えることは、つまり、こういう再生には、鍵は本人が頑張ろうとする気持ちというのが非常に重要で、学校なり、若しくは金融債務を持っている人たちとかがどんなに思っていても、生徒本人、若しくは会社でいうと経営者から働いている人たちまで、やはりこれをもう一回やり直そう、今までのことは多々いろいろな経験はあったかもしれないけれども、次のチャンスをもらってやり直していこうというまさに信頼があってこそなんだというふうに思いますので、今回の事業再生法案の魂みたいなところが、そうやって頑張ろうとする人たちを応援する、そういうものであってほしいなというふうに思っています。

 その意味でも、働いている人たちの頑張りを応援することが大前提になるということは、先日来、再三ここの質疑においても、また大臣や経産省の答弁でも、働いている人たちの頑張りを認めてもらうこと、そういった言葉がありましたので、私からはこれ以上は労働者のことについての質問は問いませんけれども、どうぞ、その気持ちを持った法律であることを願っております。

 そして、今日僕が大きく質問してみたいのは、今回は、金融機関などの一部の債務の権利変更によって、多数決で決めていくことなわけですが、これは、いろいろと審議会の資料とか委員会の資料とかを拝見していくと、憲法との整合性というのが少しテーマに上がったというふうに伺っております。

 具体的には、憲法十四条の法の下の平等、二十九条の財産権、こういったことに対して、早期の、また多数決による債務の変更というものが大丈夫なのかということもあった上で今回法案として準備されたというふうなことですが、憲法との整合性をどのようにつけられているのか経産省に伺いたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度につきましては、この制度を検討する際に開催された審議会におきまして、憲法学者の先生からも、次に述べるような理由から、憲法に違反する点は見られないとの意見が出されているところでございます。

 まず、御指摘ありました憲法十四条の法の下の平等でございますけれども、金融機関等はいわゆるプロ債権者であり、その有する貸付債権は商取引債権と差異があるということ、それから、金融機関等が、事業者が経済的に窮境に陥るおそれのある状態に対して何らの措置を行わないということは適切ではないということ、それから、事業再生の慣行といたしまして、二〇〇〇年代より二十数年を経て、私的整理により金融機関等の金融債権のみを減免して事業再生を図る一定の規範意識が形成されつつあることなどを踏まえると、金融機関等の金融債権とその他の債権を異なる取扱いとすることには合理的根拠があるとの意見が出されております。

 また、財産権の方でございますけれども、本制度の規律は、民事再生法等の現行の事業再生法制の延長線上であり、一般の事業再生の場面とバランスを失しない中での規律であるということから、法目的の達成に必要な限度の範囲内であり、十分に正当化根拠をもって憲法第二十九条一項に違反しないと考えられるというふうにされてございます。

 以上を踏まえまして、本制度は憲法十四条それから二十九条には反しないという整理をしているところでございます。

荒井委員 ありがとうございます。

 憲法には当然反しないからこそ法案としてあって、今審議をしているというふうには思っております。

 ただ、今回、多数決によって進めていくということで、逆に少数の意見が滅せられるという形にもなるわけだと思いますが、先ほども、マレリの例でいうと、外資系の金融機関がというような話もありましたが、僕の地元の北海道で考えますと、例えば、最初は小さな地元の信金とか信組とかそういう銀行がお金を貸してくれて、だんだん大きくなってきて、そのうち、ひょっとしたら、もしも中堅企業等になっていけば、大手銀行がお金を貸してくれていくみたいなこともあるかもしれません。

 その場合に、例えば、もしも仮にそういった会社が事業再生をするという形になった場合に、最初に育ててくれた信組、信金とかが、地元の小さな金融機関が少数意見として、逆に、東京や外資もそうかもしれませんが、大手行の意思によって、多数決によって不利益を地銀が被る、信組が被るみたいなことがあり得るんじゃないかというふうにも感じはするんですが、今回のケース、少数側というものがこの法律の施行を受け入れるためのインセンティブみたいなものは用意されているのかどうか、お教えいただけますでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、多数決による権利変更を可能とする制度を導入するということでございますので、当然、少額債権者にしわ寄せがされないような配慮をするということは重要と考えてございます。

 したがって、この法制度のたてつけとして、具体的には、まず、本法案第十三条におきまして、権利変更議案による対象債権者の権利変更の内容は、対象債権者の間では平等でなければならないと規定をしておりまして、全ての対象債権者が平等に扱われるということを原則としてございます。

 また、裁判所は、最後のいわゆる認可に当たりましては、権利変更の内容の法令違反や決議の公平性といったものを損ねる点がないかなどを審査し、手続の公正性を担保してございます。

 それから、単独で四分の三以上の議決権を有する債権者がいる場合に限りましては、債権者数の過半数の同意を必要とする、いわゆる頭数要件を加重することで、少数債権者を保護するための措置も講じることとしてございます。

荒井委員 ありがとうございます。

 まさに少数の債務を持っている特に小さい銀行とかもそれが平等に扱われるんだということだというふうに理解しておりますが、今回は経産委員会でこういった法案のたてつけを進めているわけですが、銀行や金融機関を所管する金融庁として、この法案に対して、特にこういう少数の債務者に対して守るべき立場にもあるというふうに思っているんですが、この法案についてどのように思っているのか、考えをお教えいただけますでしょうか。

西野大臣政務官 委員おっしゃるとおり、少額債権者の保護というのは非常に重要だと思います。特に地方銀行を始め、少額債権者になりやすい状況ですので、金融庁としてもしっかり見ていかなくてはいけないというふうに思います。

 その上で、中身につきましては今経産省からお答え申し上げたとおりですが、私の方からプロセス面についても少しお答え申し上げたいと思います。

 この法案の審議は、経産省が事務局を務めます事業再構築小委員会において議論されたわけでございますけれども、この小委員会には、全国信金協会、全国地銀協会、第二地銀協会もオブザーバーとして参加をさせていただき、意見を言わせていただいております。だからこそ、例えば、今経産省からもお答え申し上げました頭数要件、これは小委員会の委員の大多数が反対したわけでございますけれども、地方銀行の意見も聞いていただいて、最終的には入れていただいたというふうに考えております。

 ですので、プロセスの面でも中身の面でも、私は少額債権者の保護になった法案になっているというふうに思います。

荒井委員 分かりやすく教えていただいて、ありがとうございました。

 最後に大臣にお伺いしたいんですけれども、やはり、この法案を通じて企業の債務を少しでも減らしていく、そして、それによって本来立ち直れるべき会社が立ち直っていくというのがこれから日本の経済にとって大変重要だというふうに思っているんですが、経産大臣としてこれをどのように後押ししていくのか、その思いをお教えいただければと思います。

武藤国務大臣 荒井委員には、今日は、学校の御経験も踏まえて、大変いい御教示をいただいたと思います。

 いずれにしても、大変厳しい日本の経済の中で、一生懸命頑張っている中小企業が、小規模ももちろんですけれども、日本のベースです。そういう形の中で、中堅企業を始めとして、今、こういう状況の中で、中小を支えるためにも、救うためにも、やはり中堅以上の会社がしっかり頑張ってもらわなきゃいけない。

 そういう意味では、今回、まあ再チャレンジという言葉がいいかどうか分かりませんけれども、しっかりもう一回立ち直す機会を与える、これはまさに日本的な心意気もあって、大変そういう意味ではすばらしい法案で、皆さんの、委員の御指摘もいただきながら仕上げていただければというふうに思います。

荒井委員 ありがとうございます。

 今回のこの法案の射程は大企業と中堅企業が重立っているんだというふうに伺っています。そして、一方では、日本の経済を支えているのは九九%以上ある中小企業だと思いますし、債務もそういった会社が非常に大きく持っていて、やはりこれをどうしていくのかというのも日本の経済にとっては非常に重要だと思いますので、是非、経済産業省を挙げて、次は中小企業の債務をどうしていくのかということに全力を挙げていただきたいなというふうに思います。

 特に、その中ではやはり労使が一体化して進んでいくことが必ず再生では重要なキー・サクセス・ファクターになると思いますので、そういった法案にできますよう僕からもお願いしたいと思います。

 以上になります。どうもありがとうございました。

宮崎委員長 次に、村上智信君。

村上(智)委員 日本維新の会の村上智信でございます。

 本日も質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 大阪・関西万博が非常に盛り上がっているものですから、その質問をしたいところなんですけれども、通告どおりに質問を始めたいと思います。

 早速、法案について質問をさせていただきます。

 早期事業再生法ということですけれども、正式名称は円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律ということで、この正式名称の中に早期という言葉がないんですけれども、しかし、通称として早期事業再生法というふうにされております。

 早期に事業を再生したい、そういう経済産業省の思いがこの通称に込められているのかなというふうに推察をいたしました。よって、私も今回の質問の中では早期事業再生法ということで呼ばせていただきます。

 さて、新法を立案する際にはきっかけがあるものですけれども、このきっかけとして、自動車部品大手のマレリホールディングスの話を聞いております。本日も、この委員会でマレリホールディングスの話をされた委員の先生の質問を聞きました。ですけれども、私は別の話をまた聞きたいと思います。

 この法律案の提案理由において、昨年の倒産件数は十一年ぶりに一万件を超えたというふうに書かれております。日本の企業は大部分が中小企業ですけれども、そうすると、一万件を超えていても、大部分は中小企業なのかなというふうに思ってしまうんです。

 そこで、質問をいたします。

 昨年の倒産件数は十一年ぶりに一万件を超えましたけれども、この分析をしているのでしょうか。ほとんどは小規模の会社なのでしょうか。教えてください。

山本政府参考人 お答えいたします。

 倒産件数につきましては、民間の調査機関による調査結果を参照しながら、経済産業省としてもその動向を分析、把握しているところでございます。

 二〇二四年の倒産件数は、今委員御指摘ありましたとおり、一万六件でございまして、その内訳につきましては、こちらも委員御指摘のとおりでございますけれども、従業員数十人未満の小規模な企業が約九割を占めているものと承知してございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 倒産した企業の規模で見たときに、十人未満が九割を超えているということで、中小企業、小規模企業が多いんだなというふうに思いますけれども。

 今回の早期事業再生法、この対象となってくるのが、金融機関等から貸付けを受けている、そういうふうな企業が対象ということですけれども、そうなってくると、十人未満の会社というのは、なかなか複数の企業、金融機関からお金は借りていないのかなという気はいたします。借りていても一つの銀行から借りているのかなというぐらいに思います。そうなってくると、今回の法律の対象となってくるのは、一万件の一割の千件程度、その千件のもちろん一部でしょうけれども、そういうふうな件数がこの早期事業再生法の対象になってくるのかなというふうな印象を受けました。

 さて、次の質問に移ります。

 倒産と聞くと心配になってくるのは、日本の製造業、優れた技術が失われてしまうんじゃないのか、こういうことを心配するわけです。日本の産業競争力、それを育てていくことが非常に大切です。このことは私もこの委員会の場所で何度も経済産業省に訴えてきました。もちろん、よく分かっていることだというふうに思います。

 どうして日本の製造業がそれだけ大切かといいますと、しっかりした優れた技術で製品を作って、それを輸出をする、そして輸出することによって外貨を稼ぐ。これがやはり日本にとっては非常に大切ですよね。外貨を稼いで、その外貨によって日本に必要なエネルギーとか食料、資源を輸入する。このためには外貨を稼ぐ必要があります。日本で、国内で生産をすれば輸出という形になりますし、最近では、最終製品を作る工場というのは海外に造るものですから、その海外の工場が出荷をして、そして、その海外の工場、ここからの技術指導料という形で、日本の中に所得収支という形で受け入れて外貨を稼ぐ。これがやはり大切になってきます。

 そのためにも、日本の技術力を失うわけにはいかないんですね。しかし、倒産と聞くと、技術が失われるんじゃないかということを心配をしてしまいます。日本は海外からの旅行客が増えておりまして、インバウンドという収入もあるんですけれども、やはり規模からすれば製造業を主に考える必要があります。製造業の競争力を維持するために、技術力を維持すること、海外に技術を漏らさないこと、これが大切だと思います。

 そこで、質問をいたします。

 製造業の昨年の倒産件数は何件でしょうか。優れた技術が失われることになる倒産も多いのでしょうか。教えてください。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 東京商工リサーチが倒産状況に関する各種調査結果を公表しておりまして、それによりますと、二〇二四年における製造業の倒産件数は千百四十一件となっております。

 優れた技術を持つ企業が倒産しているかという点につきましては、一般論になりますが、その倒産により、やはり技術の消失、海外への流出などのリスクにつながる可能性は考えられると思います。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 製造業の倒産件数が千百四十一件ということで、全体の一割ぐらいですね。そして、優れた技術が失われるということも細かく分かればいいんですけれども、確かになかなか難しい面はあるのかもしれません。

 製造業に係る技術は、製造機械と技術者があって初めて優れた製材加工ができるという話も聞くものですから、やはり倒産せずに事業再生ができるということが大切なのかなというふうには思います。

 しかし、倒産した場合には、技術者が失職し、その技術が失われることもあり得ますので、そのような技術者がその技術を生かせる再就職をすることが望まれます。再就職といえば労働行政にも思えますけれども、産業競争力に関する話なので、経産省においてはこのことについても考えていただきたいなというふうに思います。

 先週、私は、この委員会において、経済産業省の報告書について質問をさせていただきました。経済産業政策新機軸部会の第四次中間整理、この報告書の中で取り上げていることの一つは、労働者の供給と需要のミスマッチという話でした。これから二〇四〇年に向けて日本の産業構造がどのようになるのか、そういうふうなことを見通して、二〇四〇年時点では産業構造が転換していって技術者が特に足らなくなる、そういうふうなことをまとめている報告書でした。

 この話は非常に多くの示唆を与えてくれますけれども、技術者が不足するために、どうするのかという話を経済産業省にお聞きしたら、一つは、文部科学省と連携したいんだ、高専とか大学の工学部を増やしたい、こういう話をされましたし、一方で、労働省とも連携をしたいという話をされていました。厚生労働省に協力をもらって、お年寄りが働ける場所を増やす、そうすることによって現役世代が技術分野に行けるように余地を増やしたい、そういう話を私からはしましたけれども、そのような方向で是非考えていただきたいなというふうに思いますし、今回のこの話もやはり大切な論点になってきますので、倒産した会社の技術者がまた同じような技術を使える、そういうふうな就職ができるように、是非厚生労働省とともに対策を考えていただきたいなというふうに思います。

 さて、次の質問に移ります。

 早期事業再生法は、経営が傾いている企業を早期に再生することを目的としておりますけれども、これまでにも同じように事業再生を目的とする制度はありました。これらの制度と早期事業再生法の役割分担といいますか、対象案件の違いについて質問をしようと思います。

 事業再生といいますと、会社更生法とか、あるいは民事再生法があります。これらの制度は公告を行うことになっております。公告を行えば、債権者の方、一般の方にも、その会社が経済的窮境にある、経済的に困っているということが知れるものですから、よっぽど行き詰まったときしか使えないということになります。他方で、早期事業再生法では、より手前に再生できるように、公告の義務は課されていない。こういうことをお聞きしますと、対象範囲が違うのかなというのが大体見えてきます。会社更生法、民事再生法と早期事業再生法はそういう使い方の違いがあるのかなというのが分かります。

 他方で、事業再生ADR、ADRというのは裁判外紛争解決手続ですけれども、この事業再生ADRと早期事業再生法との対象案件は重なっているように見受けられます。早期事業再生ADRも早期事業再生法も、公告は不要ですし、経済的窮境に陥る前でも使えます。そして、事業再生ADRでは、債権者の全員の同意が必要になる分、裁判所の手続が不要となっておりますけれども、早期事業再生法でも、債権者の全員の同意があれば裁判所の手続を省略できることになっております。

 そこで、質問いたします。

 早期事業再生法が成立すれば、これが使いやすいために事業再生ADRは使われなくなるのでしょうか。教えてください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、事業再生ADR等の私的整理で必要となる全員同意が得にくい事業者、特に金融債権者の数が相対的に多い大企業とか中堅企業の活用が想定されるところでございます。

 この点、事業再生ADRも、現状は、大企業や中堅企業を中心に、負債規模の多い企業が主として利用しているところでございますけれども、本制度が成立すれば、実務的には両制度の活用の可能性を検討いただくことになると理解しております。

 他方で、本制度で減免等を行うことができる対象は金融機関等の有する金融債権に限定している一方で、事業再生ADRの対象は、主として金融債権ではあるものの、債権者と債務者の間で同意があれば、金融債権以外の債権も柔軟に対象に含めることが可能でございます。

 このため、手続開始段階から全員合意の見込みが立っている場合に加えまして、金融債権以外の債権も権利変更の対象とすべき事業者におきましては、引き続き事業再生ADRの活用も有効であるというふうに考えてございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 早期事業再生法では、金融機関等の貸付債権のみしか使えない、これは確かに法律に明示的に書いておりました。しかし、事業再生ADRではそのような金融機関等の貸付債権以外も扱われるということが分かりました。その両者の違い、かなり説明が専門的で分かりにくいんですけれども、是非これを多くの事業者に分かっていただきたいなというふうに思います。そして、両制度とも有効に使っていただきたいというふうに思います。

 関連する質問を行います。

 早期事業法について、今一つ質問しただけでも関連する情報が多くて、法律的な情報をよく分かっている方じゃなければなかなかその執行が難しいのかなというふうな印象を受けました。

 この早期事業再生法の執行におきましては、指定確認調査機関、第三者機関というふうに言っておりますけれども、この第三者機関が重要な役割を果たしますけれども、この指定では、十分な能力を備えた組織を選ばなければならないというふうに思います。事業再生に関するほかの法令まで含めて詳しい専門家がいれば、その専門家がその企業に合った制度をアドバイスできるんじゃないかというふうに思います。

 また、多くの事業者が申請を出してくると思います。そして相談もあると思います。先ほど倒産件数をお聞きした際には、日本の中で十人以上の会社の倒産が千件ほどあるという話を教えていただきました。千件の中の一部は多分複数の金融機関からお金を借りているんじゃないか、それぐらいでは思っていますけれども、しかし、数百件なのかもしれません。これまで企業の事業再生ADRを使った件数も数百件というふうに聞いていますけれども、そう考えると、かなりの数の申請があるんじゃないかというふうに思います。

 そこで、質問いたします。

 申請件数として何件ほど想定しているのでしょうか。その件数に対応できる第三者機関を想定しているのでしょうか。そのほか、第三者機関の要件として何を考えているのでしょうか。教えてください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度を活用する事業者数でございますけれども、事業者を取り巻く今後の事業環境にもよるため、その見込みを一概に申し上げることは困難でございます。

 その上で、参考として申し上げれば、直近十年間の民事再生手続、会社更生手続、それから事業再生ADRを申請した事業者の数は、おおむね年間二百から三百者で推移してございます。こうした手続を利用するような事業者の一部が本制度を利用すると見込んでございます。

 また、第三者機関についてでございますけれども、これは、手続の監督等の業務を適確に実施するに足りる経理的及び技術的基礎を有すること、それから、個別の手続の監督を行う者として、事業再生に関する専門的知識及び実務経験を有する等の一定の要件を満たす者を選任することができることといったものを要件としてございます。

 この点につきましては、例えば、一般社団法人事業再生実務家協会につきましては、事業再生ADRの創設以降、公正中立な第三者機関として、制度利用開始から令和六年三月までに三百三十一者の手続利用申請がございまして、特にリーマン・ショック直後では最大百者程度の利用申請があった中で、債権者と債務者との間の調整を実施してきたものと認識してございます。

 本制度の対応で必要な体制につきましては、仮にリーマン・ショック直後のそういった申請者数があった場合でも適切に対応できるということが必要であると考えてございます。

 そのため、第三者機関の指定の際には、指定を受けようとする団体等から指定申請書とともに提出される各種書類も踏まえまして、法令に定める指定要件に該当するのか厳正に審査の上、本制度の利用を希望する事業者が、御指摘もございましたけれども、滞りなく利用できるよう、適切な者を指定してまいりたいと考えてございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 申請件数は分からないという話ですけれども、お聞きしている限り、今まで事業再生ADRで申請された数百件のうち、何割かはこの制度を利用するようになるんじゃないのかなというふうな気はいたします。そのような件数に対応できる第三者機関が望まれますし、そして、やはり法律の専門家が所属しているような組織でなければ、この事業は第三者機関は行えないと思いますので、是非そのような第三者機関を指定されることを望みます。

 さて、次の質問に移ります。

 債務に困っている事業者の話を聞くと、つい、助けてあげたい、救ってあげたいというふうに思うのが人情ですけれども、しかし、法律は公正公平に作られるべきだというふうに考えます。

 そこで、債権者の立場に立って、早期事業再生法の気になる箇所を質問したいと思います。

 債権者にとっては、自らの債権の一部を放棄などする代わりに、事業が再生されて、倒産される場合よりはより多くの回収をしたいというふうに思うはずです。しかし、確認事業者が、倒産しようとしている事業者が、この早期事業再生法を悪用して、必要以上に債権を減らした計画を作成する可能性もあるわけです。このように確認事業者が計画を作って、そして債権者の四分の三以上の決議を経れば、その次には裁判所が認可するようになるわけです。

 そこで、質問をいたします。

 裁判所は権利変更決議の認可をしますけれども、確認事業者の債務が過剰に削減されている場合は除外されないのでしょうか。教えてください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、第三者機関による利用要件の確認を受けた事業者は、当該確認後六月以内に、対象となる債務の減免等を定めた権利変更議案ですとか早期事業再生計画などを作成し、第三者機関に提出しなければならないということとしてございます。

 その際、第三者機関は、債務の減免等に関する内容が、早期事業再生計画に記載された資産及び負債の現状や見込み、それから収入や支出の見込み等を踏まえて定められているかどうかも調査することとしてございまして、その中で、権利の減免等の内容が妥当であるかについても精査することを想定してございます。

 したがって、仮に過剰に債務が減免されている権利変更議案の提出を受けたというときは、まず、裁判所による確認の前に、第三者機関による調査の結果、権利変更議案に関する要件に該当していないものとして、確認の取消し事由にも該当し得ると考えてございます。

 また、加えまして、そのような議案につきましては、専門的知識に基づき与信を行ういわゆるプロ債権者による対象債権者集会におきましても、債権額の四分の三以上の同意を得ることというのは困難であるとも考えてございます。

 その上で、仮に対象債権者集会でそのような過剰に債務が削減されている議案が決議された場合であっても、裁判所による認可時におきましては、手続や権利変更の内容の法令違反等について審査を行うこととなってございますので、こういった議案につきましては手続の法令違反として不認可となり得るものと認識しているところでございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 確かにそうですね。この法律の対象が金融機関等の貸付債権になっていますので、確かに、決議を取るときには金融機関が貸付けのプロという目で再建計画を確認するんだというふうに思います。それにも増して、更に第三者機関でも裁判所でもちゃんとした確認をする、過剰に債権が削減されていないか、そういう確認をするという話を今お聞きしました。大変、何重にもわたって、そういうことが起こらないという話が分かりました。

 この法律を読んでみますと、法の第二十七条二項四号に書いてあるのが、この条文というのは、裁判所が権利変更決議について認可をするかどうか、こういう場合は認可をしたらいけないというふうに書いてある一文があるんですけれども、そこで、「権利変更決議の内容が対象債権者の一般の利益に反するとき。」というふうに書いております。

 このような対象債権者の一般の利益に反するときなんですけれども、この言葉を聞いたときに、私は先ほどのことを心配したんですけれども、先ほどのことが関係するんじゃないかと思ったんですが、そのことも含めて、非常に広い概念にも思えるこの債権者の一般の利益に反するとき、このことについて質問をしたいと思います。

 裁判所が権利変更決議の認可をしますけれども、その除外条件とされる、対象債権者の一般の利益に反するときとは何のことでしょうか。教えてください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度におきまして、権利変更決議の認可の申立てを受けた場合に、裁判所が不認可要件の一つとして審査する、対象債権者一般の利益に反するときというのは、一般的には、対象債権者全体の利益が実質的に害されること、具体的には、本制度を利用した場合の債権の回収額が、事業者が財産を個別に売却した場合の債権者に配分される利益を下回ることなどを意味してございます。

 なお、当該不認可要件に該当しているかどうかにつきましては、個別の具体的な事案におきまして、裁判所が認可時に判断をするものと考えてございます。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 次の質問に移ります。

 この早期事業再生法が成立しても、より多くの事業者がこれを認識して、使ってみようと思わなければ効果が上がらないわけです。

 そこで、質問いたします。

 早期事業再生法が成立した場合、どのように周知を図るのでしょうか。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 事業者が本制度を活用する機会を逸して倒産に至る事態ということにならないように、広く制度の適切な周知、広報を行ってまいりたいと思っております。

 その際、一つは、商工会議所を始めとした各種経済団体あるいは様々な業界団体なども通じましてこういった制度ができたということを経営者の皆さんにお伝えするということも重要でございますし、そうした事業者の皆さんに対して様々な立場でアドバイスを行われる例えば弁護士などの実務家の皆さんに対する広報も行ってまいりたいと思っております。

 加えまして、事業者の方はこれの活用に当たっては恐らく銀行等に相談されるというケースが多いと思いますので、金融機関等に対しても丁寧に周知を行ってまいりたいと思います。

 金融庁を始め関係省庁とも連携しながら、効果的な周知、広報に努めてまいりたいと思っております。

村上(智)委員 ありがとうございました。

 商工会議所を使って周知を図るという話も教えていただきましたけれども、私も実は商工会議所には入っているんですけれども、確かに、いろいろな制度のパンフレットが置いてありまして、事業をしっかりやっていこうという人はやはりそれを取って見るものですから、それも一ついい手段だと思います。意識の高い人はそうなんですけれども、忙しくてできない人はなかなか自ら手に取ってということはないんです。

 しかし、経済産業省には面白い制度がありまして、下請Gメンという制度があるんですけれども、三百三十人もの方が、下請に関係することですけれども、ヒアリングをして回るというふうなことをやっております。一万件も下請のヒアリングをしているんですね。大変大きな件数だと思います。例えば、こういうときに、じかに会って、この法律の概要でも渡して簡単な説明でもすれば耳に残るんじゃないかというふうに思うので、是非そういうことも検討していただきたいなというふうに思います。

 さて、最後の質問に移ります。

 これまで早期事業再生法について質問してきましたけれども、私の印象としては、この法案というのは、政府、経済産業省が目標として掲げている大きな政策の方向性の一部なのかなというふうに思いました。その大きな方向性というのは、事業を再生させる、そのことによって日本経済を活性化させる、あるいは、倒産した会社の社長の再挑戦を促す、このことによっても経済を活性化させる、こういうふうな方向性だと思います。

 そこで、質問します。

 企業の再生や倒産会社の社長の再挑戦を支援することについて、大臣の意気込みを教えてください。

武藤国務大臣 ありがとうございます。

 企業の再生や倒産会社の社長の再挑戦というものを支援する制度としては、先ほど来ずっとございますけれども、事業再生ADR、又は中小企業活性化協議会といった制度もございますが、これを既に整備してきたところです。

 特に、倒産リスクの高い中小企業に対しては、中小企業活性化協議会のスキームにおいて、再生支援のみならず、円滑な廃業や経営者等の再スタートのための支援も実施しており、倒産リスクのある会社の経営陣の再挑戦を後押しすることとしてきたところです。

 引き続き、こうした制度の丁寧な周知、広報、まさに委員おっしゃるとおり、分かりやすくこれを進めるとともに、本法案による事業再生に向けた新たな選択肢を創設することで、企業の再生、また再挑戦をしっかり支えていきたいというふうに思います。

村上(智)委員 以上をもちまして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、臼木秀剛君。

臼木委員 ありがとうございます。国民民主党の臼木秀剛と申します。

 先週の一般質疑に引き続き、質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 本日は、法案について質問をさせていただきます。

 ちょっと、今、村上委員のお話を聞いていて、通告をしていないので参考人でも大臣でも結構なんですが、少し御答弁をいただければと思うんですけれども、倒産という言葉ですね。昨年の倒産件数は一万件を超えているということはこの委員会でもずっとお話しされていますけれども、とはいえ、中身を見てみれば、先ほど少し調べましたけれども、いわゆる清算型の倒産が大体九千七百件、九七%程度である一方で、会社更生法であったり民事再生法に基づく、かぎ括弧つきなんでしょうけれども、いわゆる再生型の倒産がおよそ三百件ぐらい含まれているという理解でよろしいですかね。まず、じゃ、ちょっとその事実確認だけお願いします。

藤木政府参考人 ありがとうございます。

 実は、民間の調査会社のデータで倒産をどう定義しているかは若干ずれがあるわけでございますが、いわゆる法的手続に入ったもの、それから銀行で不渡りを出した件数、二回出すと事実上倒産ということで定義してカウントをしているというケースがございますので、一概に何件とは申し上げられませんが、先ほど御紹介したケースでは、そういったものも含めて一万件であるということ。

 それから、これも繰り返し答弁しておりますけれども、いわゆる再生型の手続、会社更生法でございますとか民事再生法、それから事業再生ADRといったようなものについて、これは年によって差がございますけれども、三百件前後で推移しているというふうに承知してございます。

臼木委員 ありがとうございます。

 というのも、倒産という言葉は、やはり実際、我々もインパクトがありますし、地域経済に与えるインパクトも多い中で、いわゆる再生型の、先ほど御説明をいただいたような会社更生法や民事再生法、また事業再生ADRに基づくような、ここも倒産に含まれるというと、かつてほどではないにしろ、報道で事実上の倒産というふうに報じられたりするというようなことであったり、先ほどおっしゃっていただいたように、民間の数字の中にはこういういわゆる再生型のものも倒産ということで、ああ、あの会社はもう駄目なのかということで、本来なら、今回の法案が目的とするような、事業価値の毀損につながるような、結果的になってしまうということも報道を見ていてやはりあるなということは常々感じておりましたので、こういったところも含めて、いわゆる再生型というのはきちんとこれからもう一度事業を立て直して次につなげていくんだというところで、きちんとした切り分けを、やはり制度としても、又は我々が用語として使う場合も、またマスコミの皆さんや報道に対してもそういうことを求めていくということも必要ではないかなと個人的には思っておりますので、是非そういったこともやっていく必要があるのかなと思います。

 もし何か、大臣、所感がありましたら、一言いただけますでしょうか。

武藤国務大臣 倒産というと、委員は御商売をやっていらしたかはちょっと分かりませんけれども、会社経営という中には、やはりそういう倒産というものがいつも意識にあるんですね。順風満帆だったらいいんですけれども、世の中、日本の会社、社会自身も、私も案外古い人間になってきましたけれども、昭和の復興の後は上り調子のときもあったり、最近、バブルが崩壊したり、そしてリーマンがあったりと、いろいろ波がすごい多い中で、昔はちょっと悪いイメージが多かったんです、正直なところ。

 でも、最近は、こういういろいろな形で制度ができまして、若干、チャレンジをもう一回しようという雰囲気というものがやはり非常に大事でありまして、そういう制度が幾つかこうやってできて、今回、こういう事業再生の新しいまた仕組みができます、これは国会の御判断ですけれども。

 ある意味で、日本の中小企業を中心とした社会、そして、昨今は、これは一応基本的には中堅以上になると思いますけれども、そういう関係もありますから、サプライチェーンという意味でも、ある意味で大きな仕組みがまた一つこれで広がっていくのかな、そういう意味では歓迎したいというふうに思っているところです。

臼木委員 済みません。通告がない質問で大変恐縮でしたけれども、ありがとうございました。

 まさに、今おっしゃっていただいたように、やはり経済の仕組みも変わってくる中で、また、各国、先週我が党の岡野議員も質問させていただきましたけれども、海外の状況も変わってくるということで、倒産の意義も変わってきましたし、二〇〇〇年代ぐらいから私的整理を充実させていくという中で、今回、本法案としても、やはり事業価値の毀損防止であったり技術、人材の回避ということで、いわゆる従来の法的整理と私的整理をいいとこ取りというんですか、それぞれメリット、デメリットがあったものを、いいとこ取りをして、一定の裁判所の関与も入れていく、一方で、私的整理であれば債権者全員同意がなければいけなかったものを、一定数の要件で入れるようにしたという、いいとこ取り、ハイブリッドなものということで仕組んだものだということの理解をしております。

 ただ、法案でありますから、やはり立法事実は何なのかというところは少し確認をさせていただきたいと思います。

 本法案を提出いただくに当たって、従来の私的整理ではやはり不十分であったとか、社会情勢の変化だったり、様々あるとは思いますけれども、今回のこの法案についての立法事実とは何なのか、ここにつきまして明確に御答弁をいただきたいと思います。参考人で結構ですので、よろしくお願いいたします。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、本法案のポイントは、いわゆる私的整理の枠組みの中で、全員同意ではなくて、裁判所の関与を得ながら、四分の三の多数決をもって金融債権の調整ができるというところでございます。

 まさに全員同意を前提といたします事業再生ADR、制度創設以来、これまで件数で申し上げますと九十九件申請をいただいておりますが、そのうち二十三件が事業再生計画が不成立又は申請取下げということになっております。

 この二十三件、それぞれ事情はあると聞いておりますけれども、債権者全員の同意が得られなかったということが、その結果、法的整理に移行せざるを得なかったといったような事案があるというふうに承知しているところでございます。

臼木委員 ありがとうございます。

 事業再生ADRの話も今触れていただきましたけれども、先ほど村上委員も話をされていましたが、では、本制度と事業ADRとの差というのはどこにあるのだということで、先ほど、債権者が有するいわゆる金融債権に限る、さらに多数決の要件が入ってくるというところで差があるということだったんですけれども。

 一方でいうと、逆の見方でいえば、事業再生ADRでも、債権を今回本法案が持つようなところに限定をした上で全員同意で進めていくということも、これは可能は可能だと思うので、そうすると、先ほどは事業再生ADRが使われなくなるのではないかという質問ではあったんですけれども、私はむしろ、本法案が、ある程度、全員同意がある場合であればおおよそ事業再生ADRの方に包含されてしまうということで、四分の三以外のところで何か大きい違いがないんじゃないか、本法案の意義というのが薄れてしまうのではないかというような思いもあるんですが、その点、いかがでしょうか。

藤木政府参考人 御質問にお答えいたします。

 今御指摘いただきましたように、事業再生ADRと本法案との違いということで、まさに、全員同意か多数決なのかというところ、それから一定の裁判所の手続的関与があるかどうかというところ、中身が金融債権に限られるかどうかといったようなところが大きな違いだというふうに考えております。

 したがいまして、まさに、事業再生ADRに進むものもある一方で、全員同意まではなかなか難しいかもしれないといったような案件、あるいは、ADRで手続を進めていたんだけれども、ちょっと一部債権者からは同意が得られづらいといったようなものについて、この新しい早期事業再生法の方に手続が移管されるといったようなケースも想定されるというふうに思っているところでございます。

 一方、ADRの方はADRの方で、これは同意が前提でございますが金融債権以外のものも含めることができるといった柔軟性があるところでございまして、最初から全員同意の見込みが立っていればそちらで進むということがスピード感から考えても適切な場合がございますので、ケース・バイ・ケース、それぞれ使い分けが発生する、どちらかが極端に使われなくなるというようなことはないのではないかと思っております。

臼木委員 ありがとうございます。

 先ほどおっしゃっていただいたように、具体的に本制度というのはどういう場合に使われ得るのかということは、答弁の中である程度幾つか出てきてはいますけれども、ここも、先週、東委員に対する大臣の御答弁のところで、本制度の利用が想定されるのは、主として金融債権者の多い大企業あるいは中堅企業となると考えておりますということですけれども、もう少し具体的に、どのような金融債権者がいる場合に利用される可能性があるのかという、例えば、先ほど山岡委員が御指摘をされましたマレリの例であれば、外資金融が入っていて、なかなかやはり文化の違いであって合意を得ることが難しいとか、あとは、中小企業であったらやはり手続も含めて使いづらいんじゃないかとか、裁判所の関与も入ってくるのでとか、地銀であったり信金がメインバンクでいるような場合にはなかなか余りこれの手続を使わないので、地方企業にとってはそんなにメリットがないんじゃないかとか、もう少し具体的な場面というのが想定されるのかなとは思うんですけれども、もう少し具体的に、やはり、この本制度の利用を是非、是非と言うとおかしいですね、本制度はこういう場合にこそ使い得るんだという、もう少し具体的なものがあれば教えていただきたいんですが、是非ちょっと、大臣、御答弁あれば伺えますでしょうか。

武藤国務大臣 答弁が足りなければ、またちょっと事務方の方から補足をさせていただきます。

 この本制度ですが、現行の事業再生ADR等の私的整理で必要となる全員同意が得にくい事業者、特に、金融債権者の数が相対的に多い大企業とか中堅企業の活用が想定されているところです。この中には地方の企業も当然存在すると思われます。

 一方で、中小・小規模事業者の事業再生局面においては、中小企業活性化協議会がございます。また、中小企業の事業再生等に関するガイドラインも利用されております。これも有効的に活用されておりますけれども、本制度を使用する必要性は相対的には低いんだろうというふうに思っているところです。

藤木政府参考人 もう少し具体的なイメージをという御質問でございますので、お答えします。

 まさに、御指摘いただきましたマレリのようなケースにおいて、海外の金融機関が債権者として少額であるけれども含まれているというのは、一つ典型的なケースとして、なかなか同意が得られづらいケースということだと思っております。相対的にはそういった企業は大企業や中堅企業に多いとは思いますが、最近では、地方の地域の企業であっても、例えば輸出していたりあるいは海外に工場を持たれていたりという関係で、そういった関係の金融機関と関わりを持っていらっしゃるというケースも少なくないというふうに伺っておりまして、その意味では、いろいろな形での利用があるというふうに思っております。

 それから、もう一つ、同意がなかなか得られづらいというケースが一つ想定されるわけでありますが、当然、その中で、債権者にいろいろな方がいらっしゃるというケースで、複数の方から、複数の属性を持った方から金融債権を借りられているというケース、これは、これも大臣から御答弁申し上げましたように、相対的には大企業が多いというふうに思いますが、一方で、取引先が多いとか、その関係でどうしても銀行の口座を多数持たなきゃいけないとかいったような方も想定されるところでございまして、まさに、そういった意味では、中小企業、地方の企業という利用もある程度はある、あるいは、場合によってはそういった選択肢の一つとしてお考えいただけるということになるのではないかと思ってございます。

臼木委員 一定程度明確になったので、本当にありがとうございます。御丁寧に答弁をいただきました。

 本法案、制度の中身を少し見るに当たって、実は、二〇二二年に内閣府で行われた新しい事業再構築のための私的整理法制検討分科会の案が基になり、それを幾つか各種団体の意見等も踏まえて、今回法案提出に至ったものと理解をしております。

 お配りしている資料でいうと、二ページ目にその当時に想定をされたフロー図がつけてありますが、何か大枠を見ると余り今回のものと変わっていないようには見えますが、幾つかやはり相違点があるので、その点を、なぜこのときから本法案の制度のように変わったかというところを確認をさせていただきたいと思います。

 まず、二つ目のところ、指定法人による再構築の計画概要案等の確認ということで、当初、この分科会案では、事業の再構築というものの要件に該当するかということを判断する必要があるんだということで、ここについての要件が課されておりました。

 一方、本法案では、特に何か具体的な要項というよりは、窮境に陥るおそれということでの、おそれの要件となっています。

 まず、この事業再構築の該当性というものを不要とした理由について教えていただけますでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度を検討する際に開催いたしました経済産業省の審議会におきましては、経済的窮境に陥るおそれのある事業者が、早期に過剰な金融債務の整理に着手し事業再生に取り組むために、本制度の利用をちゅうちょしないように、事業再構築を要件として設けないことが適切であるという御議論がございました。そういった御議論を踏まえまして、本制度では事業再構築の要件は不要という整理をしたところでございます。

 以上です。

    〔委員長退席、新谷委員長代理着席〕

臼木委員 ありがとうございます。

 また、今少しお話しさせていただきましたけれども、一方で、本制度では、窮境に陥るおそれということで、ここについては、先週、山下委員が御質問されていますけれども、山下委員も御指摘のとおり、この要件というのは非常に抽象的な要件であって、先ほど、濫用のおそれ、乱発のおそれという懸念もありましたけれども、やはりここをもう少し明確に、山下委員も御指摘ですけれども、利用しやすいガイドラインとか予測可能性があるようなものをしっかり作っていただきたいと思いますということをおっしゃっておられます。

 ここに対しての答弁がなかったので、もう一度この点につきまして、是非私からも、このようなガイドライン、予測可能性があるものを作っていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 経済的に窮境に陥るおそれという状態でございますけれども、具体的には、本制度による権利変更が行われなければ将来の一定時期までにキャッシュフローの悪化が進み事業継続が困難となる状態、そういった状態等を想定しているところでございます。

 より詳細な考え方につきましては、御指摘も踏まえながら、今後引き続き、有識者の皆様方や金融機関の皆様方などの意見聴取を行いながら、しっかりと検討していきたいと考えてございます。

臼木委員 ありがとうございます。

 それでは、ちょっと時間も限られてきたので、先週、ここも東委員から御指摘があったんですけれども、本制度につきましては、申請から成立までに要する大体の期間の見込みというのがどれぐらいなのかということについて、先ほどの答弁もありましたけれども、一定の幅を持ってお答えするのはなかなか難しいということでありましたが、資料の一枚目につけているとおり、ちょっとこれは全ての私的整理の制度ではないんですけれども、おおむね大体三から六か月であったり、六か月であったりということで、半年程度で見込んではいるものの、本制度でいえば、若干やはり幅が出てくるんだろうなということが予想されます。

 といいますのも、全債権者同意でない場合には裁判所に対する抗告の手続も入ってきますので、やはり最短それから最長の幅が少し出てくるとは思いますが、予断を持ってお答えすることは難しいと思いますけれども、最短、最長、大体どれぐらいになり得るのか、参考人で結構ですので、御答弁いただけますでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘いただいたとおり、本法案の手続申請から決議の成立までに要する期間は、案件によって相当差がございますので、一概に申し上げることは困難ではございます。

 ただ、事業再生ADRの方では、個別の事案の事情によってやはりこれは相当差があるとはいえ、手続の利用申請から決議案の成立までおおむね六か月前後の期間を要するものと想定されているところでございますので、これはやはり一つの参考にはなるというふうに考えてございます。

 今後、詳細な制度設計を進めていくこととなりますけれども、やはり、御指摘もございましたけれども、ある種の迅速な手続を可能とする、それから予見可能性をしっかりと確保していくというような課題意識、問題意識も踏まえまして、具体案について検討してまいりたいと考えてございます。

臼木委員 ありがとうございます。

 目的としては事業再生をきちんとできるということですので、ただ、一方で手続は簡易迅速であり、そして結果として事業再生は十分に果たされるという、それがやはり理想ではないかなと思っておりますので、そのようなところをこれから使っていただく皆様方にお示しをしていく必要があるのではないかなと思っています。

 一方、金融機関側の視点から見ますと、今回の早期事業再生の手続について、いろいろやはり、多数決の制度が導入される、さらには裁判所の関与も入ってくるということで、従来の事業再生ADRと比べて、債権者であったり金融機関側の事務負担というもの等、事務コストが増えるのではないかという御懸念も少しあるとお聞きをしているのですけれども、この辺りについて、金融機関であったり債権者の皆さんに対して、特に事業再生ADRと比べて、何か負担が生じ得る可能性はあるのでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度は、やはり私的整理とは異なりまして、裁判所の認可というのが必要となるということでございまして、この裁判所に対する申立ては確認事業者が行うということでございます。こうした点も含めまして、やはり従前の私的整理手続と比べますと金融機関の事務コストが増える可能性があるということではありますので、ここが大幅に増えることがないような制度の詳細は、今後しっかり問題意識を持って検討していきたいと思ってございます。

 他方で、金融機関等にとりましては、債権者に配分される利益が事業を清算した場合の配分利益を上回るかどうかというところをしっかり第三者機関、裁判所が確認、審査をするため、本制度を活用することで清算する場合よりも配分利益が大きくなるというある種のメリットは見込まれるというふうに考えてございますし、やはり、本制度の根幹でございますが、経済的に窮境に陥るおそれが生じた早期の段階で事業再生に着手するということで、結果として事業価値の更なる毀損を回避することが可能となるということでございます。

 以上を踏まえると、本制度全体として見れば、金融機関にとってもやはり大きなメリットはあるだろうという制度でございますので、今後、その趣旨について全体をしっかり御説明できるように、説明を尽くしてまいりたいと考えてございます。

    〔新谷委員長代理退席、委員長着席〕

臼木委員 ありがとうございます。

 金融機関に対しての事務コストとかの手当て、目くばせをきちんとやっていくということも必要であるとは思います。

 特に、今、私的整理の中心というものは、支払い、返済額、返済方法等のリスケジュールによっての、いわゆる機関調整というものが中心で行われていると伺っていますけれども、金融機関にとって、早期の事業再生をやることがメリットである、しかも手続的にやはり迅速簡便であるというようなところも含めて、それぞれ今まであった法的整理であったり私的整理の課題をなかなかなくすというのは難しいと思いますけれども、様々なバリエーションをつくって、使いやすい制度をつくり出していくということもやはりこれからの時代は必要だということだと思います。これだけ疲弊した日本経済を立て直すという意味で、今ある経済価値、事業価値をきちんと次の時代につなげていくという制度を、これにとどまらず、そして皆さんに使っていただける制度、これをつくっていくということが必要だと思います。

 是非、本制度が多くの方に使っていただけるように、そして、また更にバリエーションを増やして、我が国の経済的な価値を高めていくような制度をつくっていくべきだと思いますけれども、是非、最後、大臣、決意をいただけますでしょうか。よろしくお願いします。

武藤国務大臣 冒頭からございましたように、倒産件数が一万件を超えたのは十一年ぶりということであります。

 こういう経済社会情勢の動向を受けながら、倒産状態に至るおそれがある段階の事業者の方々が早期での事業再生に取り組むことができる制度、これを整備していくものでありますので、既存の法的整理手続と私的整理手続の双方のメリット、これが発揮できるようになるわけで、今、金融機関にとっても配分利益が大きくなるということで、これもちょっと従来とはまた違うと思います。事業再生に向けた新たな選択肢を創設することで、日本経済の新しい時代に向けた活性化に向けてつなげていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

臼木委員 ありがとうございました。以上で質問を終了いたします。

 ありがとうございます。

宮崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

宮崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐原若子君。

佐原委員 れいわ新選組、佐原若子です。

 今日も質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 何か何度も何度も同じようなことばっかり聞いて申し訳ないんですけれども、では、納得がいくまでまた質問させていただきます。ありがとうございます。

 では早速、早期事業再生法案に関してのお尋ねをします。

 雇用条件、人員整理といった労働者への影響はどのようなものが生じるとお考えでしょうか。

藤木政府参考人 お答えを申し上げます。

 本法案におきましては、なるべく早い段階で債務整理をすることによってスムーズに事業再生を実現するということを目的としておりますので、必ずしも雇用条件の変更や人員整理といった影響が生ずるわけではないというふうに思っています。

 ただ、個別の案件によっては、そういった、事業を再生していく上で、例えば、一部事業の縮小、あるいは事業所の閉鎖、就業場所の変更や配置転換、更に進んだ場合には、希望退職者、雇用の削減といったようなケースもあると考えられておりまして、ケース・バイ・ケースでございますが、そういったケースも場合によっては生じ得るというふうに考えてございます。

佐原委員 ありがとうございます。

 確かに早期に解決するということはとても大事なことですけれども、そこにはやはり人間が絡んでいるので、労働者のこと、周りのこと、よくお考えの上でしていただきたいなと思います。

 次に、労働者に事業再生に伴い生じ得るマイナスの影響について、政府が関与して支援、救済すべきと考えていらっしゃいますか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、本法律は、円滑な事業再生の実施を図ることを目的としておりまして、それで、金融機関等の有する金融債権に限定をして減免等を行う手続を定めているものでございます。

 したがいまして、いわゆる労働債権は、何度か答弁もさせていただいておりますけれども、減免等の対象とはしていないという法律でございますので、本法律の中で、制度の導入に伴って、補助金ですとか、そういった類いの財政支援を予定しているものではございません。

 ただ、しかしながら、本制度は、先ほどもお話がございましたが、早期での事業再生を図るということでございますので、その結果、事業価値の更なる毀損を防ぐということが可能となる制度でございますので、雇用の維持にも寄与しますし、従業員の方々の利益にも資するものであると考えてございます。

 それから、事業再生局面にある企業の雇用の維持ですとか賃金の水準の確保のために一般的に一律の財政支援措置というのは講じているものではございませんけれども、一般的に申し上げますと、経済情勢が例えば急激に悪化したことによって企業が事業整理を余儀なくされる場合みたいなときには、従業員へのマイナスの影響を回避するための支援は必要であるというふうに考えてございます。

 その観点から申し上げますと、例えば、厚生労働省におきましては、景気の変動等の経済上の理由により急激に事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対して、従業員の雇用の維持を図るために休業手当などの一部を助成する制度でございます雇用調整助成金を設けているというふうに承知してございます。

 いずれにいたしましても、事業再生に伴う様々な課題がございますので、引き続き関係省庁とも議論しながら検討を続けていきたいと考えてございます。

佐原委員 ありがとうございます。

 その中で犠牲になる方がいらっしゃらないように、監督をしていただきたいと思います。

 次に、本法案では、労働者の意見陳述の機会は特段設けておらず、雇用や賃金減少に関しては運用面で適切に対応したいとしていらっしゃいますが、具体的に運用面でどのように対応なさいますか。教えてください。

武藤国務大臣 これまでも議論されてきているところでございますけれども、本法案において、未払い賃金ですとか退職金等の労働債権、これは減免等の対象にはなっていないところでありますが、従業員が関与する手続というものは、法律上、特段設けられておりません。他方で、今委員がおっしゃられるように、従業員の理解と協力というものを得ることは、事業再生の成否を決する上で重要な観点であります。

 このため、早期事業再生計画において会社分割あるいは事業譲渡等によって雇用や賃金の減少が見込まれる事案につきましては、関連する労働法制にのっとった手続に加えて、本制度上でも運営面で適切に対応していくこととしているということと今までも答弁させていただきました。

 具体的に申しますと、第三者機関への計画提出に先立って労働組合等へ通知を行うことを省令で規定をし、そして労働組合等がその後の協議等に向けた準備が行えるように環境を整えていきたいということであります。

佐原委員 ありがとうございます。

 従業員の対応というものを必ず忘れずにしていただきたいと思います。

 次に、事業再生に伴う労働者の労働条件変更等については労働法によるとしていますが、法案作成に当たり、厚生労働省とも協議は行われてきたのでしょうか。教えてください。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 度々申し上げてございますけれども、本法案は、金融機関等の有する金融債権に限定をして、その減免等を行う手続を定めておりますので、未払い賃金それから退職金等の労働債権は減免の対象とはしていない、そういう整理でございます。

 また、早期事業再生計画は、対象の債権者が債権の減免等に関する賛否を判断するために交付される参考資料でございます。本制度によって計画に記載された内容に法的拘束力が生ずるというものではございません。

 このため、仮に早期事業再生計画に労働条件の変更等に関する記載がなされたとしても、別途関連する労働法制ですとか指針等を遵守する必要があるという法のたてつけになってございます。

 御指摘いただきましたこうした考え方、労働法制の適用に関する考え方につきましては、厚生労働省とも認識は共有をしているところでございます。

佐原委員 今後ともしっかり厚労ともお話合いをして、不利益にならないようにケアしていただきたいと思います。

 早期事業再生計画に対して、労働者の方から直接お声が寄せられました。

 まず、雇用や労働条件に影響のないようにしてもらいたい、労働条件の引下げは困ります、最低賃金の引上げなど賃金引上げが現政権の政策なのではないか。次に、労働債権は事業再生に当たっては完全に保護されるべきではないか。次に、債権者集会では雇用される事業者の意見陳述の機会を付与すべきではないか。

 率直なところ、こういう御不安を働く方たちが持っていらっしゃいます。それに関して、どのようにお考えになりますでしょうか。お伺いしたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、法律そのもののたてつけといたしましては、この法律によって、別途整備されております関連する労働法制それから指針等をしっかり遵守をするということが必要となってございますので、こういったことを、今御指摘いただいたような不安の声その他広がらないように、生まれないように、しっかりと施策の周知徹底を図っていかなければならないというふうに考えているところでございます。

佐原委員 ありがとうございました。

 こうした声が寄せられているということは、政府への改善の期待を込めてのことでもあります。本法案では、雇用や労働条件の変更に関しては別途労働法によると重ねて御答弁いただいておりますが、そこに行く前に、しっかりと働く方を守り、その力を生かしていくことが経産省のお力によるところと思います。そのためには経産省でできることは何だとお思いでしょうか。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 まずは、先ほども申し上げたとおり、そういう制度に対する誤解ですとか御不安が生まれないように、運用の局面において施策の内容を広くしっかりと周知をしていくという努力をすることだと思っております。

 その上で、この法案、繰り返しになりますけれども、早期の事業再生を可能にすることによって、事業活動を再生することで事業の価値の毀損を防ぐその他、結果としまして従業員の皆様にも資する法律となっているところでございます。

 この法律の施行に加えまして、やはり企業がしっかりと競争力を高めていただいて、しっかり投資をしていただいて、しっかり仕事をつくっていただいて、経済の活力をしっかり生み出していただいて、そういった中で、結果として、仕事が増え、労働者の皆様方のある意味利益につながるということが大事だと思っておりますので、そういう本質的な企業活力、企業の競争力の強化に向けて経済産業政策をしっかり展開していくということが大事だというふうに考えてございます。

佐原委員 ありがとうございます。

 そのとおりだと思いますが、企業に対しての支援がもっと早期に必要だったのではないかなという反省点をよく考えていただきたいと思うんですね。失われた三十年。政府のけちけち政策がこのような状態になったのではないかと思うんですね。

 私は今日、マレリの、私的整理成立せずというニュースを見まして、これってこれからどんどん起こり得ることだなと思ったんですよ。

 その中で、やはり海外のファンドが会社を買っていく。韓国の状況を見たときに、前にもお話ししたんですけれども、私はいつも危惧するんですよ。韓国の企業、大躍進しました。しかし、韓国の方々の生活は本当に豊かになっただろうかと思うんですね。

 ですから、日本もそのような状態になり得るんじゃないかなと思うんですよ。再生するのはいいけれども、その再生の果実は、結局、海外に持っていかれてしまう、あるいは、ノウハウ、技術、それから人材というものが海外に流出してしまうのではないかというおそれがあるんですね。いつも思うんですよ、日米合同会議で決まったことが法律の中に忍び込まされていて、消費税もそうだったし、いろいろなものがあります。

 ですから、これがそういう形になって、日本という国の技術や人材、心が失われていかないように、私は大臣にもお願いしたいんですね。この守るということは、やはり積極的な財政出動をして、企業を守っていっていただきたい、投資もできるように。投資ができなかったんですよね、よく回っていかなかった、コストも上がって、なかなか投資をしていくというところに回らなかったということはやはり反省点だと思うんです。

 これからも海外で買われていってしまって、あれっ、いつの間にか日本のフラッグがないなというようなことにならないように、そういう危惧はありませんか、大臣。通告にないんですけれども、済みません。

武藤国務大臣 議員の懸念が払拭されるように、日本経済そのものを元気にさせませんといけませんので、我々もしっかりそれに対応をさせていただきたいというふうに思います。

佐原委員 ありがとうございます。

 経産省の皆様のレクでも十分私、分かったんですよ、会社を潰そうとするんじゃなくて、整理するということは伸ばしていこうというお気持ちだということはよく分かったんですが、しかし、そこまでの力が失われてしまっているというところもあります。ですから、十分な支援を、もう質疑時間が過ぎてしまいました。

 本当に、いろいろ申し上げましたけれども、皆様の努力が実を結ぶように、日本がもっと元気になるようにと祈念申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 どうも本日はありがとうございました。

宮崎委員長 次に、辰巳孝太郎君。

辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎でございます。

 まず、大臣、通告してないんですけれども、今日の報道で、関税交渉に関わって、いわゆる半導体ですね、エヌビディアを念頭に、アメリカから半導体を購入するんだと。しかも、DC向け、データセンター向けの半導体を、日本が補助金を出して購入支援をして、アメリカから、エヌビディアを念頭に、そういう半導体を購入していく、それをカードにする、そういう報道が一部されているんですね。

 大臣、ちょっと、えっ、えっ、えっみたいな顔をされているんですけれども、聞かれていないですか。

武藤国務大臣 詳細については、まだ報告を受けていません。

辰巳委員 大臣、聞いていない、これはえらいことですわね。(武藤国務大臣「詳細は」と呼ぶ)詳細はね。

 ラピダスの法案審議というのをこの間ずっとやってきたわけですけれども、そもそもラピダスというのは、国内の半導体産業を興していこうということを念頭に、とりわけDC、データセンターですよね、参考人の中にも、データセンターは北海道でという話の方も来られていましたけれども、アメリカから、エヌビディアからそういう半導体を買うということになると、これはラピダスのデータセンター向けの半導体の売り先がなくなってしまうということになってしまうんじゃないかと私は思うんですよね。

 これは、私たちは、ラピダスそのもの、あれだけの公的資金を投入してということには反対しましたけれども、あれだけの公的資金を投入しておいてですよ、今、関税交渉でやすやすと、そういう半導体をアメリカから買うてしまうということになれば、これは、ラピダスの計画、プロジェクトそのものがもう今から危うくなるんじゃないかと言わざるを得なくなると思うんですけれども、大臣、いかがですか。

武藤国務大臣 詳細については存じ上げていないのであれなんですけれども、ラピダス法案のときからも、そういう意味で、需要想定という形においては、まだまだこれは正直言って、今エヌビディアをアメリカから関税交渉の一つとして買うという話のようでありますけれども、需要的にはそんなものではないというふうに想定しているところですし、これからの時代の推移からいって、この次世代半導体、特に需要がこれからもまだ想定としては増えていくだろうという中での想定をしていたところもあると思っています。

辰巳委員 そうおっしゃるんでしょうけれども、そもそも、エヌビディアにラピダスの半導体を買うてもらいましょうということでもあったんですよ。それを、今度は日本がエヌビディアから買うって、もう全く逆になってしまいますから、想定とは全く外れてしまうということも言わざるを得ないというふうに思います。

 さて、日産についてお聞きしたいと思うんですね。五月十三日、二〇二八年三月期までに日本を含め世界で七工場を統廃合して、全従業員数の一五%に相当する二万人の削減計画を日産は発表いたしました。

 日産は、一九九九年にも、当時の最高執行責任者のカルロス・ゴーン氏が、五つの工場の閉鎖、約二万人の労働者を退職させる大リストラ計画、いわゆるリバイバル計画というものを発表いたしました。特に、国内では、東京の村山工場の閉鎖をめぐり、地域の雇用と取引企業、下請企業ですね、への影響というものが大問題にもなってまいりました。

 このとき、我が党は、日産の社会的責任は極めて大きいと指摘をした上で、身勝手なやり方は許されない、政府としても日産に言うべきことは言えということで追及をしてまいりました。

 例えば、二〇〇〇年の二月二十一日の予算委員会においては、当時の深谷隆司通産大臣はこう言っているんですね。本来、個々の企業の問題に通産省が介入できないが、しかし、それによってもたらされる雇用関係、下請関連企業への影響は極めて重要な課題でございますので、日産自動車に対して、十分な配慮をするように指示をいたしました、こういうことなんです。

 大臣、やはり、雇用、下請企業への社会的責任を果たさせるように、直接大臣の方から日産に対して働きかけ、これをするべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょう。

武藤国務大臣 先般も、参議院の決算委員会で大門先生から御質問を言っていただきました日産の件であります。

 現実、まだ、経営再建策としていろいろな報道があるのは承知をしているところですけれども、現時点では、正確なところはまだ何にも聞いていないとの説明を聞いていると、自治体からですね、伺っているところです。

 今、深谷通産大臣の話も御質問いただきましたけれども、現状の今の経営再建計画は、二〇二七年度までに、中国を除くグローバルで、車両工場数を十七から十に減らすとか、約二万人の人員削減をする旨の公表をしているというものというふうに聞いておりますが、どの工場を閉じるかについてはまだ説明を聞いておりませんし、関係自治体に対しても、今の答弁のように、決まっていないという説明のことを承知しているところです。

 まずは、今回の経営再建計画が雇用やサプライチェーンに与える影響について、しっかりこれは注視してまいらないといけないというふうに思っています。その上で、影響を踏まえつつ、必要に応じて対応を検討してまいりたいというふうに思っております。

辰巳委員 これは是非、やはり、されてからでは遅いので、働きかけていただきたいというふうに思うんですね。

 日産のような世界に展開する多国籍企業の活動には、やはり社会的責任にとどまらない、国際的な制約もあるんです。一九七七年にILOが採択をした多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言というものがあります。これは経産省のビジネスと人権のホームページにも掲載をされているものであります。

 ちょっと紹介していただきたいんですが、この中の、雇用の安定の項目の三十四番で、多国籍企業は、雇用に重大な影響が及ぶ事業活動の変更についてどのようにすべきだと言っているのか、紹介していただけますか。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの、ILOの多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言の項目三十四番におきましては、多国籍企業は、雇用に重大な影響を及ぼすような事業活動の変更を検討するに当たっては、悪影響を最大限緩和するために、共同して検討を行い得るよう、適切な政府機関、当該企業が雇用する労働者及びその団体の代表に対して、かかる変更についての合理的な予告を行うべきであるとされております。

辰巳委員 合理的な予告を行うべきであるということが記されているわけなんですね。

 それでは、続けて確認したいと思いますけれども、今、日産から示されているのは重大な変更なわけですよね。日産から、そういう変更について、合理的な予告というのは政府に対してあったのか、あるいは労働者や労働組合に対してあったのかを確認したいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 恐縮ですが、個別事案についてはお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論ではございますが、厚生労働省の法律で、労働施策推進法という法律がございまして、そこにおきまして、事業主は、事業規模の縮小等により相当数の労働者が離職を余儀なくされる場合には、今の法律に基づきまして、事前に労働組合などの意見を聴取した上で、最初の離職者が生ずる日の一か月前までに、事業の現状、再就職援助計画作成に係る経緯、計画対象労働者の氏名、再就職援助のための措置、労働組合等の意見などを内容とする再就職援助計画を作成し、ハローワークの所長に提出し、認定を受けなければならないこととされております。

 ハローワークにおきましては、必要に応じて、事業主に対しまして、今申しました制度の適切な実施に向けた助言や指導等を行うとともに、離職を余儀なくされた労働者がいらっしゃれば、その円滑な再就職の実現に努めることとしております。

辰巳委員 今の答弁はあくまで一般論という話にとどまるわけですけれども。

 やはり、人員削減だけではないと思うんです。日産と取引がある企業だけでも約一・三万社とされているわけですよね。

 今回の日産の計画でちょっと重大だなと思っているのは、部品等を供給するサプライヤーについて、より少数にする、そして非効率さを排除し、従来の基準を見直すということも盛り込まれているんですよね。つまり、日産を支えてきた取引企業の、まあ下請企業ですね、大幅削減や契約条件の変更が想定をされるわけなんです。

 日産は、去年の三月に、部品メーカーへの支払い代金を不当に下げていた下請法違反をめぐって、経産省が推進しているパートナーシップ構築宣言を取り消されて、つい最近、三月ですけれども、再度宣言をしたばかりであります。

 これは、大臣、やはり、下請法違反を反省して再度宣言をしたというばかりなのに、今、下請企業の大幅の削減あるいは契約条件の変更を一方的に宣言するというのは、パートナーシップ構築宣言の趣旨にも違反しているんじゃないか、適合していないんちゃうかと思うんですけれども、いかがですか。

武藤国務大臣 日産が、五月十三日でしたか、公表した経営再建計画ですけれども、コスト削減においてサプライチェーンの見直しを行っていくという説明をしていることは承知をしているところであります。

 現段階で、先ほど申したとおり、見直しの具体的な内容が明らかではありませんので、取引先との共存共栄という我々のパートナーシップ構築宣言の趣旨が遵守されるかも含めて、サプライヤーへの影響については引き続いてしっかり動向を注視していきたいというふうに考えています。

辰巳委員 本当に下請を切り捨てるようなことは絶対にやってはいけないというふうに思います。

 日産の姿勢ももちろん問われなければならないんですが、やはり、政府も、一九九九年に成立した産活法、これに基づいて、二〇〇一年三月十九日に、日産の大リストラ計画、先ほど少し紹介しましたけれども、これを事業再構築計画として認定もしてきたわけですよね。経産省自身が、大企業のリストラや人減らしを応援するために様々な特例も講じてまいりました。これは、やはり経産省、政府の責任、姿勢は重大やということも指摘をしておきたいというふうに思います。

 さて、今回の法案についてただしていきたいんですが、近年、短期的な利益を求めて、支配下に置いた企業の資産を売却したり資産を吸い上げる悪質な投資ファンドの存在が世界的に問題となってまいりました。

 内閣官房の私的整理法制検討分科会では、金融機関の出席者から、これまでの経験として、首都圏では、スポンサー企業の実質的な目的が対象企業の事業ではなく不動産の取得であるケースも見られて、事業再編が当初の計画どおりに進まない事例もあるという指摘もされています。

 本法案では、悪質な投資ファンドが経営権を掌握して申請をしてきた場合、経産省、これを排除できる規定はあるんでしょうか、確認したいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度におきましては、金融機関等の有する金融債権につきまして、まず、公正中立な第三者機関が債務調整の必要性、決議成立の見込み等を確認するということ、それから、対象債権者集会において債権額の四分の三以上の同意を得ることが必要であること、また、決議の後に、裁判所が手続の公平性や法令違反がないか等を審査するといった、複層的な、いわゆる多数の債権者による多数決濫用の防止措置を設けているというたてつけでございますので、そういった観点で、本制度を悪用する事案は相当程度抑えられるのではないかというふうに考えてございます。

 また、主たる対象債権者として想定される銀行等につきましては、金融庁の監督指針において、再建可能な債務者については極力事業が再生する方向で取り組むということも求められているところでございますので、そういったことも踏まえながら、経済実態の進展、それから裁判実務の積み重ね等も踏まえながら、この制度の濫用防止についてしっかりと不断の検証を続けてまいりたいと考えてございます。

辰巳委員 今おっしゃったとおり、相当程度抑えられるということしかできないわけですね。完全にそんなことは想定されないんだ、抑えられるとは言えないわけですよね。もうかるためには切り売りしていくというようなファンドももちろんあるし、もうかるんだったら金融機関だってそれでいいじゃないか、そう言いかねないと私は思います。

 収奪的な投資ファンドは、労働組合の解体や労働者の解雇、労働条件の切下げ等を露骨に行うことをやはり特徴としているわけですね。二〇〇八年にアジア・パートナーシップ・ファンド、APFに経営権を掌握された昭和ゴム、この件では、会社の資産約三十億を経営悪化したAPFグループ企業に還流させられ、抗議する労働組合に対しても不当労働行為が繰り返されました。

 こうした状況にかかわらず、日本では、悪質な投資ファンドから労働者保護を図る措置というのは放置されたままだと言わなければならないというふうに思います。この法案では、そういう保護規定というのは一切ないということも指摘をして、私の質問を終わりたいと思います。

 以上です。

宮崎委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 この際、本案に対し、山下貴司君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ、公明党及び有志の会の六派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山岡達丸君。

    ―――――――――――――

 円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山岡委員 ただいま議題となりました円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表して、その趣旨及び概要について御説明をいたします。

 経済的に窮境に陥るおそれのある事業者が、早期での事業再生に取り組み、経済の新陳代謝機能強化を図ることは重要です。本法律案はその観点に立ち、事業者の円滑な事業再生の実施を図るため所要の措置を講ずるものであり、目下の経済情勢を鑑みたとき、その措置の必要性については高く評価をするところです。

 他方で、本法律案提出の理由及び趣旨では、「事業者が早期での事業再生に取り組み、事業価値の毀損や技術及び人材の散逸を回避できる制度基盤を整備し、経済の新陳代謝機能を強化しておくことが重要」とし、技術や人材の重要性を述べ、また本法律案作成に当たって協議されてきた経済産業省の産業構造審議会経済産業政策新機軸部会事業再構築小委員会の報告書では、「清算価値保障による対象債権者一般の利益に適合しつつ、取引先や雇用等の利益にも資するといった社会的・経済的観点からの公共的利益の実現を達成するために必要かつ合理的な手段となること。」を新たに制度を構築する際の正当性の一つとし、「事業再生に当たっては、従業員の協力も必要であることにも留意が必要である。」との指摘がされていたのにもかかわらず、本法律案では、事業価値の毀損の回避や技術及び人材の散逸の回避、早期事業再生計画の遂行過程での従業員の協力見込みについて、条文として明確に規定されていません。

 本法律案が原案のまま成立した場合、その運用において、早期の事業再生が進む傍らで、人材や技術が安易に国内外へ散逸や流出する可能性が排除できず、また従業員の協力が得られないことで早期事業再生計画の円滑な遂行に支障を来し、再生が長期化をする懸念も拭えません。結果として事業者の早期再生が遠のき、事業価値の毀損につながり、ひいては日本経済全体の国力低下につながるおそれがあるものと考えます。

 こうした観点から、企業価値の毀損や技術及び人材の散逸の回避を本法律案の目的として明確にするとともに、事業者が早期事業再生計画を策定する際、従業員の協力の見込みを確認することで、より正当で円滑な早期事業再生に寄与すべく、本修正案を提出した次第であります。

 次に、本修正案の内容について御説明申し上げます。

 本修正案は、目的規定に、事業者が「その事業の価値の毀損並びに技術及び人材の散逸の回避を図った上で」との文言を追加するとともに、早期事業再生計画の記載事項のうち、確認事業者が早期での事業再生を図るため実施しようとする今後の事業活動に関する事項について、「当該確認事業者に係る従業員の当該事業活動への協力並びに当該確認事業者に係る技術及び人材の散逸の回避の見込みに関する事項として経済産業省令で定めるもの」を含むものとしております。

 以上が、本修正案の趣旨及びその内容の概要でございます。

 何とぞ委員各位の御賛同をいただけますようお願い申し上げます。

宮崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 これより原案及びこれに対する修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。佐原若子君。

佐原委員 ありがとうございます。

 早期事業再生法案につきまして、れいわ新選組として、反対の立場から討論いたします。

 討論の前に、私、経産の質問を繰り返した中で、自分の中の保守性というものにすごく気がつきました。日本を守りたい、売られてなるものかみたいなのが芽生えてまいりまして、自分でも驚いております。

 では、討論。

 早期事業再生法案につきまして、企業が倒産を回避し、事業を再生させることは、地域経済と雇用を守るためにも重要です。雇用の維持、労働条件の改善、そして賃金の引上げを通じて、安心できる暮らしを実現することこそが、政府に求められる政策であると私たちは考えます。

 しかし、本法案には重大な懸念があります。

 第一に、雇用や労働条件の維持について、法的義務や罰則が規定されておらず、実効性に乏しい点です。労働者を守るという観点が制度設計に皆無であると言わざるを得ません。

 第二に、労働者と事業者の協議や合意について、法文上に規定がなく、再生の過程において労働者が主体的に関与できない仕組みとなっている点です。働く人々の声が無視される懸念を拭えません。

 事業再生の名の下に、実際にはコストカットとして雇用削減や労働条件の引下げが進むようなことがあってはならないはずです。企業の再生が誰かの犠牲の上に成り立つ社会であってはならない、このことを私たちは強く訴えたいと思います。政府が本気で企業の再生を図るのであれば、財政的な支援を伴いながら、雇用、労働条件の維持を明確に制度に位置づけるべきです。事業再生は、帳簿の調整ではなく、地域社会に根差した、人と産業の再構築であるべきです。

 経済産業省の現場の職員の皆様が企業の倒産回避という課題に向き合い、検討を重ねられたその上に、いま一度、働く人を守り、事業再生を進めるための制度へと練り直していただくように、強く要望いたします。

 中小企業の経営を支えてきた地方銀行が強い外資系の金融機関に統合されていく懸念が私にはあります。中堅企業も、多額の債権放棄等で国内金融機関の経営を圧迫し、国内にありながら外資系の金融機関、外資系の企業となってしまうというような懸念を私は拭えないんです。だから、いま一度、働く人、地域の地銀も、小さな会社、企業も守りながら事業再生を進めるための制度へと練り直していただくよう、また更に強く要望し、反対討論といたします。

 ありがとうございました。

宮崎委員長 次に、辰巳孝太郎君。

辰巳委員 日本共産党の辰巳孝太郎です。

 私は、日本共産党を代表して、いわゆる早期事業再生法案に反対の討論を行います。

 その前に、この経済産業委員会をやってまいりまして、日々、私の中の革新性を実感をするところでございます。

 反対理由の第一は、労働者保護のための措置が全くないからであります。事業再生計画には人員削減や労働条件切下げが含まれることが想定されますが、本法案においては、労働者に情報提供もされず、協議の対象でもありません。

 労働者に大きな影響が出る法案と分かっていながら、政府の会議に労働者や労働団体の代表を一人も入れず、諸外国の同様の制度には存在する労働者保護規定を意図的に隠した資料を作成し、さらには、パブリックコメント等で懸念の声が多く寄せられても対応しなかった経産省の姿勢は、労働者を無視していると言わざるを得ません。労働者を置き去りにし、権利をないがしろにした本法案を断じて容認できません。

 反対理由の第二は、最近だけでも日産自動車で二万人、パナソニックで一万人など、大リストラを伴う事業再生、組織再編が計画される中、これまでより簡易な手続で迅速にリストラを実行できる法案だからです。

 経産省は、一九九九年の日産のカルロス・ゴーン氏による大リストラを産業活力再生法で認定して支援をいたしました。その後も、産業競争力強化法で大企業の人減らしを支援することで株主資本主義を推し進め、多国籍企業の競争力強化を図る一方、国民の暮らしや雇用を破壊してきたことに何の反省もないばかりか、更にリストラを促進するものであり、看過できません。

 反対理由の第三は、短期的利益を求め、支配下に置いた企業の資産を売却したり、資産を吸い上げる悪質な投資ファンドによる利用を排除する仕組みもないからです。

 労働組合の解体や労働者の解雇、労働条件の切下げ等を露骨に行う事案が頻発しているにもかかわらず、日本は欧州に比べ極めて脆弱なファンド規制しかなく、労働者保護の措置は手つかずのままです。こうした下で、労働者、地域を踏みにじる企業買収、企業壊しの新たな道具とさせてはなりません。

 提出された修正案は、これらの問題を根本的に修正するものではないため、賛成できません。

 最後に、本法案の前段となった政府会議では、産業の新陳代謝は、すごいスピードで中小企業、地方の企業が退出、廃業するか、買収、集約されていかないと進まない、低生産性企業の買収は私的整理をかませないと起こらない、多数決による私的整理はとにかく早く成立させてほしいなどという、驚くべき中小企業淘汰論が堂々と展開をされました。

 こうした中小企業淘汰論を断固として許さず、中小企業憲章で「経済を牽引する力であり、社会の主役」と位置づけられた中小企業を守り発展させるために全力を尽くす決意を述べて、反対討論といたします。

 以上です。

宮崎委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、山下貴司君外五名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮崎委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮崎委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、新谷正義君外四名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、国民民主党・無所属クラブ及び公明党の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山崎誠君。

山崎(誠)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提案者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。

 まず、案文を朗読いたします。

    円滑な事業再生を図るための事業者の金融機関等に対する債務の調整の手続等に関する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。

 一 本制度において、特に技術や人材の散逸を回避することや、従業員の協力の下で円滑に早期事業再生計画が実施されることが重要であることに鑑み、対象債権者や確認事業者の労使等となり得る関係者に対し、本制度の位置付け等について適切な情報提供を行うこと。

 二 早期事業再生に向け、確認事業者が会社分割や事業譲渡等によってその従業員の雇用や労働条件の変更等を実施する可能性がある場合は、過半数労働組合等との協議を通じてその理解と協力を得るよう促すとともに、早期事業再生計画にそれら協議の状況を明記することとし、指定確認調査機関による調査の対象とするとともに、上記の趣旨を踏まえ、確認事業者が労働組合との協議のために情報提供を行う場合には、手続開始の公告をせず権利変更の対象を金融債務に限定することで事業価値の毀損の回避を図るという本制度の趣旨に鑑み、情報の秘密保持が適切になされるための必要な措置を、指定確認調査機関がその業務規程において定める事項とすること。

 三 権利変更決議については、早期事業再生計画に基づく雇用や労働条件の変更等のほか確認事業者とその労働組合による労働協約等の変更等に法的な効力を及ぼすものでないことを明確にし、濫用的な取扱いがなされないよう必要な措置を講ずるとともに、認可後においても早期事業再生計画に基づく確認事業者の取組が従業員の協力の下で円滑に行われているかどうか等に留意し、必要に応じて適切に対応すること。

 四 指定確認調査機関の指定をする際には、対象債権者の権利変更手続全体の円滑な実施、早期事業再生計画の適確な調査、確認調査員の適正な選任等を実施するために十分な能力を有しているかどうか、特に確認をすること。

 五 確認調査員の選任については、そのプロセスの透明性を高めるとともに、多数決により金融債務の権利変更を行うことが可能になることを踏まえ、その選任要件は事業再生ADRにおける手続実施者に比較して、より厳格に定めること。また、確認調査員の見識を高め経験値を共有できるようにするため、研修の機会等の充実を図ること。

 六 中小企業の事業再生支援については、物価高や人手不足等の厳しい経営環境の中でその必要性が高まっていることを踏まえ、中小企業活性化協議会や中小企業の事業再生等に関するガイドライン等を活用した既存の支援に当たり、関係機関の緊密な連携の下で事業者に寄り添った支援を一層充実させること。

 七 本法の手続開始の要件が民事再生法等から緩和されていることを踏まえ、債務調整の必要性がない事業者が本制度を濫用することで債権者の利益が不当に害されることがないよう、指定確認調査機関が本制度の利用要件を確認する際に濫用を図る事業者を適切に排除するための運用における留意すべき点を整理し、広く周知・広報を行うこと。

以上であります。

 附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び文案によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

宮崎委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮崎委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、武藤経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。武藤経済産業大臣。

武藤国務大臣 ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。

    ―――――――――――――

宮崎委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

宮崎委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時五十分散会


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