第5号 令和7年4月17日(木曜日)
令和七年四月十七日(木曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 浦野 靖人君
理事 勝俣 孝明君 理事 中野 英幸君
理事 松島みどり君 理事 青山 大人君
理事 大西 健介君 理事 尾辻かな子君
理事 伊東 信久君 理事 丹野みどり君
今枝宗一郎君 上野賢一郎君
加藤 鮎子君 小池 正昭君
島田 智明君 高木 啓君
武村 展英君 土屋 品子君
永岡 桂子君 中西 健治君
根本 幸典君 野田 聖子君
平沼正二郎君 福原 淳嗣君
三反園 訓君 向山 淳君
森下 千里君 若山 慎司君
井坂 信彦君 石川 香織君
大河原まさこ君 大島 敦君
おおつき紅葉君 川内 博史君
松田 功君 山田 勝彦君
梅村 聡君 西岡 義高君
角田 秀穂君 沼崎 満子君
たがや 亮君 本村 伸子君
…………………………………
国務大臣
(消費者及び食品安全担当) 伊東 良孝君
内閣府副大臣 鳩山 二郎君
厚生労働副大臣 鰐淵 洋子君
政府参考人
(警察庁長官官房審議官) 松田 哲也君
政府参考人
(消費者庁政策立案総括審議官) 藤本 武士君
政府参考人
(消費者庁審議官) 尾原 知明君
政府参考人
(消費者庁審議官) 黒木 理恵君
政府参考人
(総務省自治行政局公務員部長) 小池 信之君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 内野 宗揮君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 尾田 進君
衆議院調査局第一特別調査室長 松本 邦義君
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委員の異動
四月十七日
辞任 補欠選任
今枝宗一郎君 根本 幸典君
高木 啓君 島田 智明君
永岡 桂子君 土屋 品子君
中西 健治君 向山 淳君
山井 和則君 川内 博史君
同日
辞任 補欠選任
島田 智明君 平沼正二郎君
土屋 品子君 永岡 桂子君
根本 幸典君 今枝宗一郎君
向山 淳君 森下 千里君
川内 博史君 山井 和則君
同日
辞任 補欠選任
平沼正二郎君 高木 啓君
森下 千里君 中西 健治君
―――――――――――――
四月十六日
公益通報者保護法改正に関する請願(小川淳也君紹介)(第九四四号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
公益通報者保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)
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○浦野委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、公益通報者保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、警察庁長官官房審議官松田哲也君外六名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○浦野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○浦野委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。加藤鮎子君。
○加藤(鮎)委員 おはようございます。自由民主党、山形三区選出の衆議院の加藤鮎子でございます。
本日、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
公益通報者保護制度について、まず基本的なところから御質問に早速入らせていただきたいと思います。
まず、そもそもの、この公益通報者保護法の意義についてお伺いをいたします。また、併せて、今回提出された法案による法改正の意義や効果について、政府参考人にお伺いしたいと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
公益通報者保護法は、食品偽装やリコール隠しなど、国民生活の安全、安心を損なう企業不祥事を端緒としまして、公益通報をした労働者等の保護を図るとともに、事業者による国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法令の遵守を図ることを目的として制定されたものであります。
今回の法改正によりまして、公益通報に適切に対応するための事業者の体制整備が徹底され、公益通報者の保護が強化されることとなります。その結果、労働者等の公益通報が促進され、事業者の自浄機能発揮につながることや、行政機関の指導監督の実効性が向上することが期待されます。これによりまして、不正行為が早期に発見、是正され、国民の生命、身体、財産等の保護が更に図られるようになると考えております。
○加藤(鮎)委員 ありがとうございます。
事業者側の体制整備を行うことによって、効果、実効性の方が向上していくということがあります。また、これは事業者にとっても大変プラスになる部分も大きいというふうに私は考えてございます。
時代の流れとともに、公益通報そのものの価値ですとか通報者保護の重要性、それは我が国でも広く認知されるようになりました。
それでは、広く国際社会を見ていきますとどうなのでしょうか。諸外国における公益通報者保護制度の動向についてお聞かせください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
多くの主要先進国では、人権意識の高まり等を背景に、例えば、通報を理由とする不利益な取扱いをした事業者や個人に対する制裁や、不利益な取扱いをした理由の立証責任の転換について法律上の措置がなされるなど、公益通報者の保護の強化が進んでおります。
今回の改正では、このような国際的潮流も踏まえまして、公益通報者の保護を強化しております。
○加藤(鮎)委員 公益通報者の保護の強化の流れ、この国際社会の流れもしっかり捉まえた、時宜を得た改正だというふうに受け止めさせていただきました。
また、先ほど確認をさせていただきました公益通報制度そのものの意義は大きいですし、制度の効果がしっかりと発揮されるためにも、公益通報者保護、これが大変重要なわけでありますが、一方で、この制度は、万が一悪用されれば、不当に大きなダメージが事業者サイド及びその組織で働く他の個人個人にまで及んでしまうというようなケースも起こり得ます。
悪用されるケースが実際どのように、どの程度あるのか、これまでの把握状況の方はいかがでしょうか。また、そのようなケースも想定し、公益通報者保護とセットで、濫用的通報者への対応、これも重要であると考えます。その対応の必要性について、消費者庁の見解をお聞かせください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
昨年、消費者庁に設置しました有識者検討会におきまして、民間事業者から、自己の利益を図る目的ではないかと考えられるような通報が少なからずあるといった指摘がございました。
そのような通報の例としましては、通報内容が虚偽であると知りながら行う通報ですとか、既に是正され解決した事案であることを知りながら、専ら自己の利益を実現するために行う通報等があると承知しております。まずは、事例を幅広く集め実態を調査する必要があると考えております。
その上で、実態調査結果を踏まえまして、公益通報者保護制度の健全な運営を確保する観点から、必要な対応を検討してまいりたいと考えております。
○加藤(鮎)委員 ありがとうございます。
ちなみに、ドイツやフランスでは、悪意のある通報者に対する罰則規定もあるというふうに聞き及んでおります。この改正案の方には濫用的通報に関する罰則規定というのは盛り込まれておりません。抑止策については、今後議論を深めていただきたいというふうに思います。
制度そのものがしっかりと普及して定着していくためにも、公益通報者保護が重要なわけですが、公益通報者保護をしっかりやっていきながら、セットで今の濫用的通報者への対応、これも是非深めていっていただきたいというふうに思います。
次の質問に移らせていただきます。
内部通報制度は、その制度が存在することによって、組織自体の健全性や公正性についての内部チェックも働きやすくなりますし、そのことによって、事業者組織の信用度が上がったり、また、内部で働く人たちのロイヤルティーにつながったりと、事業者にとっても有意義なものであるというふうに考えております。
しかし、事業者によっては、日々目の前の事業運営上の課題に直面したりしていると、なかなかそのように捉える方向に意識が回りづらいという現実もあるかと思います。
制度の実効性向上のためには、経営者の方々の意識づけ、これが必要だと考えております。消費者庁の経営者の意識づけに関する取組などはいかがでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
内部通報制度の実効性向上のためには、委員御指摘のとおり、経営者のマインド、経営者の意識づけが極めて重要になってくるというふうに考えております。
消費者庁では、令和五年度の実態調査におきまして、不祥事に関する第三者委員会等の調査報告書における内部通報制度の課題に関する指摘を分析をし、制度の実効性向上のための経営トップに対する提言をまとめて公表させていただいております。また、中小規模事業者を含めまして、事業者の経営者向けにショート動画を作成をしまして、新聞、雑誌、ラジオ、インターネット上のターゲティング広告といった様々な媒体を通じて、経営者、経営トップに対して理解の促進を図っているところです。
今後につきましては、内部通報制度の実効性向上に取り組んでいる事業者の好事例も収集をしまして、これを公表するなど、様々な工夫もして、その上で、経営者の意識づけのための取組をしっかり強化してまいりたいと考えております。
○加藤(鮎)委員 是非、その取組の強化を進めていただきたいというふうに思います。
次に、従事者指定義務についてお伺いいたします。
今回の改正には、従事者指定義務違反に対する命令権、そして、その命令違反があった場合の刑事罰、これが新設をされております。この命令権等を強化する意義はどのようなものがありますでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
従事者につきましては、事業者の内部で公益通報を取り扱う者として極めて重要な役割を果たしております。この従事者指定義務は、事業者の体制整備の中核的役割を果たす特に重要なものとしまして、内閣府告示である指針のみならず、法律に規定をされているものであります。
しかしながら、消費者庁の実態調査等からは、事業者において従事者指定義務の履行が徹底されていないことが明らかになったこと、また、従事者の守秘義務違反には刑事罰が規定されている一方で、従事者指定義務違反には最終的に刑事罰による実効性が担保されていないことを踏まえまして、今回の法改正におきまして、この義務に違反する事業者に対する行政措置権限を強化することとしております。
○加藤(鮎)委員 ありがとうございます。
是非とも、実効性を上げていくために、そのチェックをしていく消費者庁の運営の方も大変大事になってくると思いますので、負担は大きくなるかもしれませんが、消費者庁の体制の方もしっかりと整備をしていただくことをお願いを申し上げたいと思います。
また、体制整備の徹底と実効性の向上にしっかりとつなげていくためにも、公益通報対応体制の周知も義務として明示をしっかりされていますが、このことも義務なのであるということをしっかり周知を世の中にしていくということも、併せてお願いをしていきたいと思います。
次に、公益通報を理由とする不利益な取扱いの抑止や通報者救済の強化について伺います。
今般の改正において、通報後一年以内の解雇又は懲戒を公益通報を理由としてされたものと推定するという民事訴訟上の立証責任の転換規定が設けられました。これはなかなか踏み込んだ改正と考えておりますが、その意義も改めて伺わせてください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
労働者が公益通報を理由として解雇や懲戒といった不利益取扱いを受けた場合、その地位を回復するためには、労働者は、裁判において、不利益な取扱いが公益通報を理由に行われたこと等について立証する必要がございます。しかしながら、労働者が事業者の動機を立証する負担は重く、公益通報をちゅうちょする要因の一つとなっていると認識をしております。
また、我が国におきましては、労働訴訟実務上、労働者が解雇無効や懲戒無効を主張する場合には、解雇、懲戒事由につきまして、事実上、事業者に重い負担がございます。
こうしたことですとか、通報の公益性を踏まえまして、解雇、懲戒につきまして、公益通報を理由とすることの立証責任を事業者に転換することとしております。
○加藤(鮎)委員 これは、公益通報をしようと思った方にとって、踏みとどまっていたところを背中を押す大きな改正にはなっているというふうに思います。
同様に、公益通報を理由とする解雇又は懲戒をした者に対する直罰の導入、これは大変大きな改正であると考えます。こちらの意義の方も改めて確認をさせてください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
通報を理由とする労働者等に対する不利益な取扱いは、法の趣旨を損なう加害行為であり、かつ、事業者内や、さらには社会全体において、不正を覚知した者が通報することに萎縮が生じてしまう点においても違法性が高いと考えております。
公益通報者保護法の原始法制定以降も通報を理由として不利益な取扱いが行われていることや、国際的な潮流を踏まえますと、法の禁止規定のみでは不利益な取扱いの抑止として不十分であると認識をしております。
また、従事者の守秘義務違反には刑事罰が規定されておりますが、その一方で、報復や不正を隠蔽する等の目的で公益通報者に不利益な取扱いを行った事業者及び個人に対する厳しい制裁はないというのが現状であります。
このため、今回の法改正では、公益通報を理由として労働者の職業人生や生活に悪影響を与えた事業者及び個人に対する厳しい制裁として、解雇又は懲戒を行った者に対する刑事罰を規定し、制度の実効性向上を図ることとしております。
○加藤(鮎)委員 ありがとうございます。
今回の改正で、これまで公益通報、公益に資すると思っていて自分の身を顧みずにしっかりと声を上げていくという思いを決意した方がその背中を押してもらえる大きな改正になっていると、私としては評価をさせていただきたいと思います。
しかし、それを実効的なものにするためには、経営者の意識、こちらの方も変えていただく必要もありますし、そのためには、制度がどのタイミングでどういうふうに変わっているのかということを世の中に知らしめていただいてこそ実効性が上がるものというふうに考えております。
是非、その辺りの周知を消費者庁の方でもしっかり進めていただくとともに、実効性を上げていくために、マンパワーがそれなりに行政サイドにも必要になってくると思います。ですので、是非とも、その体制の方を消費者庁の方でもしっかりと備えていただくということを希望をいたします。
また、公益通報する方の保護ということと、あと、濫用されてしまうことによって事業者側に大きな負担がかかるんじゃないかというおそれ、そういったところとのバランス、このバランスが非常に難しい制度なんだろうと思います。
国際的な流れを経て今の改正になっていると思いますが、先ほど申し上げたように、併せて、濫用的通報があった場合の対応についても今後議論を深めていただくことをお願いをしまして、ちょっと早いですけれども、私からの質問を終わらせていただきます。
質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございました。
○浦野委員長 次に、石川香織君。
○石川委員 立憲民主党の石川香織です。
伊東大臣、連日、本当にお疲れさまでございます。よろしくお願い申し上げます。
今回の法改正は、二〇〇六年に施行されていましたから、十九年が経過したということで、今回で二回目の法改正ということになります。昨今、公益通報が非常に注目をされている中でのタイミングということになりました。
公益通報というのは、情報量とか人数とか資金力とか、圧倒的に力の差のある雇用主と闘うことになるということで、告発者の立場が弱いということと、それから、非常にやはり不利益を被っている理不尽さというものをきちんと理解した上での実効性の高い法改正にしなければならないと思いますので、順次質問してまいります。よろしくお願いいたします。
まず、大きなポイントであります、公益通報を理由とする不利益な取扱いについてお伺いをいたします。
不利益な取扱いは、公益通報をしたことによる解雇や懲戒、それから配置転換や嫌がらせも含まれておりまして、現行法においても禁止の対象になっています。今回の改正案では、現行法でも禁止されている報復人事としての解雇や懲戒処分をした事業者に対して刑事罰を科すということでありまして、これは一歩前進だと言えると思います。
ただ、日弁連の公益通報に関する相談があった事案を集計した資料を見ますと、通報後に受けた不利益取扱いの内容として最も多いのが嫌がらせ、次いで配置転換ということになっております。報復人事は、解雇や懲戒よりも配置転換の方が圧倒的に多い実態があるということが分かります。
今回の法改正で、公益通報後の解雇、懲戒に罰則がつくとなりますと、これは企業にとっても解雇、懲戒というのは非常にリスクがあるということが言えると思います。その一方で、より陰湿な方法で報復してくる可能性というものもあるということで、この法律の中で配置転換というものをどうやって位置づけるかということが今回の公益通報保護法の実効性に関わると考えております。
この解雇と懲戒について、今回の改正案で、通報を理由とする場合を無効としまして、解雇、懲戒が公益通報された日から一年以内になされている場合は、それが公益通報したことを理由としてなされたものと推定するということを規定されました。しかし、実際に不利益の処分として嫌がらせとか配置転換を挙げている人が最も多いにもかかわらず、配置転換には推定規定がないということであります。
大臣にお伺いをさせていただきます。配置転換を罰則の対象にする、そして立証責任の転換の範囲にこの配置転換なども入れるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。
○伊東国務大臣 石川議員の御質問にお答えしてまいります。
まず、配置転換等々について罰則の対象にするかというお話でありますが、罰則の対象につきましては、これは一般論として、犯罪の構成要件は明確で、そしてまた、対象となる行為は罰則に値するものでなければならないというのが、まずは罰則の対象についての考え方であります。
雇用慣行として、採用時に勤務地や職務内容が定まっていないいわゆるメンバーシップ型と、それが具体的に定まっておりますジョブ型という形式があるわけでありますけれども、我が国におきましてはメンバーシップ型雇用が一般的で、配置転換につきましては、適材適所の配置や人材育成等の観点から、事業者の広い裁量の下、頻繁に行われており、必ずしも不利益な取扱いとは言えないところがあります。また、その態様につきましては様々であり、不利益性は個人の主観や事情に依存する部分が大きく、罰則の対象とすることはなかなか困難であります。
次に、立証責任の転換についてでありますが、民事訴訟におきましては、自己に有利な法律効果の発生要件となる事実について立証責任を負うことが原則とされており、立証責任の転換は、その例外を設けるものであります。
我が国の労働法制におきまして、配置転換が権利濫用であることの立証責任は労働者が負っており、このような労働法制との平仄を踏まえると、配置転換につきまして公益通報を理由とすることの立証責任を転換することは、現状困難と考えているところであります。
○石川委員 これは、たとえ報復として配置転換が行われていても、会社は、キャリアの形成のためですとか、適切な異動だと言い切ってしまえばそれで終わってしまうということであります。それを通報者自ら立証しなきゃいけない、裁判をしなきゃいけないということも相当な負担でありますし、実際に、そこまで行き着くまでに疲れてしまって、自主退職に追い込まれることもある。
そもそも配置転換に関しては、御答弁あったように、会社側に広範な裁量権が与えられておりまして、実際何が起きたかという事例を見ましても、業務が極端に少ない、たった一人の部署に配属されたとか、こういう精神的な苦痛が感じられても、給料は変わっていないとか、業務の指示が一応あるという客観的な事実があれば、裁判所は、これまでの事例などを見ても、会社側の裁量権の範囲内だというふうに認定することもやはり多くあるということなんですね。だからこそ、この法律は、通報者を守るために寄り添った視点でなきゃならないと思います。これも非常に、配置転換が日常的に行われていることだからこそ、より注意しなければいけない点なのではないかなと感じます。
この配置転換について、刑事罰をもって通報者を守らないとほとんどの通報者は守られないと断言する有識者の方もいらっしゃいますし、多くの方が配置転換に関して裁判で敗訴してしまったり泣き寝入りをされているというのが現状であるということであります。ましてや、その配置転換が報復人事によるものだということを立証するためにもいろいろな証拠を調べなきゃいけないわけですけれども、人事に関する資料とかというのは基本的には事業者しか持っていませんし、トップの一声で人事が変わったりすることもあるということで証明しようのないことだってあるということで、それを通報者が証明するというのは大変ハードルが高いと思います。
ただでさえ通報者側の立証が難しい、不当と言える配置転換を法律上で放置してしまいますと今回の法改正の実効性が格段に下がると思うんですけれども、改めて、今の話を受けて、大臣、どうでしょうか。
○伊東国務大臣 繰り返しになりますけれども、我が国におきましてはメンバーシップ型雇用が一般的であり、配置転換につきましては、事業者のかなり幅広い裁量の下、頻繁に行われております。不利益性につきましては個人の主観や事情に依存する部分が大きいことから、配置転換をもって対象とすることはなかなか難しいと考えているところであります。
○石川委員 日常的に行われているからこそ、しっかり法律でカバーしなければいけないということを改めて申し上げます。
会社はあくまで適正な配置転換だと主張するかもしれませんけれども、明らかにおかしいという雰囲気は社内の人も感じ取るはずだと思います。こうした明らかな報復人事であるということを、その同僚を助けたいとか、そういう思いで会社の同僚ですとか通報者の家族、取引先の事業者などが証言をしたり、その証拠資料の収集などに協力するという場面もあると思います。
今回、保護する通報者としてフリーランスも含めることにしたということで、このことは一歩前進と言えますけれども、これだけでは不十分と考えます。最も会社の事情であったり通報者の働きぶりなどをよく知る同僚、家族、取引事業者なども保護の対象にする必要があるのではないかと思いますが、この点についていかがでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
公益通報者の同僚や家族を保護対象とすることにつきましては、これらの者に対する不利益な取扱いの実態が現状明らかではないことから、その状況を注視してまいりたいと考えております。
また、下請事業者等の取引先事業者についてお尋ねがございました。
公益通報者保護法は、労働者等、事業者に対して弱い立場にある個人を、公益通報者として、公益通報を理由とする不利益な取扱いから保護する法律であります。このため、取引先の労働者等は、公益通報を理由とする取引先事業者による不利益な取扱いから保護されておりますけれども、取引先事業者自体は、個人ではないことから、公益通報者として保護の対象とはなっていないということでございます。
○石川委員 私は、保護される人の範囲はなるべく広げた方がと思っています。それは、公益通報に至るまでのハードルというのが高いままになってしまうからです。
今、取引事業者は個人ではないからということがありましたけれども、これは、ただでさえ立場が弱いわけですから、事業所との取引を突然打ち切られるということになってしまったら、事業所全体が廃業に追い込まれてしまいますので、事業者全体で保護するということは大変重要な論点だと考えます。協力者に関しても保護の対象としていかないと、やはり公益通報というものはいつまでも手段として選ばれず、そして、通報者はより追い詰められていくのではないかというふうに考えます。
次も大臣にお伺いさせていただきますが、私も、公益通報者が最も恐れることの一つは、やはり自分が公益通報したことを知られることではないかなというふうに考えています。
兵庫県庁の事例では、通報された側に通報した本人を探索をされて特定されてしまったということでありました。このことに関しては、先日、文書問題に関する第三者調査委員会で、内部通報にまず該当しますよということと、それから、兵庫県知事が通報者の探索を行った行為について公益通報者保護違反ということで、そのような結果ということで報告をされました。
だからこそ、勇気を持って内部通報した人を法律は全力で保護しなければいけないと考えますし、よりによって、人事権などを持つ通報された側が本人を探索する行為というのはとても悪質だと考えます。
兵庫県の場合は、内部通報の内容の真偽が明らかになる前に告発者が探索をされて、一方的に処分をされてしまったということでありました。
通報した本人を捜す行為そのものに罰則をかけるということに踏み込む必要性について、どのようにお考えでしょうか。
○伊東国務大臣 内部通報した人の探索行為についてのお尋ねでありますけれども、今回の法改正では通報者探索の禁止規定を設けることとしており、そのことによりまして、労働者等が法律の規定を根拠に通報者探索による被害を回復することができるようになるという民事上の効果を期待しているところであります。
また、今回の法改正によりまして、公益通報者を探索して、公益通報したことを理由とする解雇又は懲戒を行った法人及び個人は罰則の対象となります。
一方、不利益な取扱いには至らない探索行為自体に罰則を科した場合には、事業者による正当な調査を阻害する要因になり得るなどの懸念もあり、慎重に検討する必要がある、このように考えております。
○石川委員 それでは、もう一点お伺いします。
今回、消費者庁の検討会で委員を務める山口弁護士という方も、兵庫県庁の件について、県は初期の時点で、内容の真偽にかかわらず、きちんとした調査をするべきだったという指摘をしております。
特に組織のトップの問題を扱うときには、体制の中での独立性の確保というものは指針に書かれております。しかし、例えば調査を行う際に通報されたトップ自ら口を出すとか、明らかに違反する行為があった際には罰則をかけるといった議論もやはり深めるべきではないかということを考えますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
従事者指定義務以外の体制整備義務につきましては、内閣府告示である指針におきまして、委員御指摘の、組織の長その他幹部からの独立性の確保に関する措置のほか、公益通報者に対する是正措置等の通知や内部規程の策定など、様々な措置を求めているところであります。
これらの措置につきましては、消費者庁の命令権や命令違反時の刑事罰の対象とすることは、企業活動に対する公権力の過剰な介入となるおそれがある、ほかの法令との並びを勘案しましても困難であると考えております。
○石川委員 公益通報者保護法に基づく指針は、通報者を保護するために、組織内で通報内容を共有する範囲を最小限にするように求めていますし、先ほどの、トップに関わる通報のときは独立性まで指針で触れていますが、先ほど例に出した兵庫県のようなことも実際に起きている。
内部通報、外部通報というものがしっかり機能されるためには、もう本当に言うまでもなく大前提なのが、通報者が保護されるということなんですね。
前回の改正は令和二年、十六年ぶりの改正ということになりましたけれども、そのときに改正をされた点で、常時使用する労働者の数三百人超の事業者に対する内部通報対応体制の整備義務の導入がありまして、今回の改正では、この三百超という整備義務の要件は変わっておりません。常に三百人以上いる事業者というのは全事業者の一%にすぎませんので、ほとんどの職場はこの整備義務の対象にはなっていないということになります。
昨今、公益通報について非常に関心が高まっております。例えば百人超まで引き下げることで、公益通報という仕組みが当たり前である社会にしていくということの重要性について、どのようにお考えでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
消費者庁の実態調査の結果、従業員数三百人超の義務対象事業者であっても、残念ながら、体制整備の不徹底と実効性の課題が明らかとなっております。こうした中、まずは義務対象事業者が、公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性向上を図ることが重要だと考えております。
従業員数三百人以下の努力義務対象の事業者には、内部通報制度の重要性につきまして、一層の周知啓発を行いまして、その認識を高めてまいりたいと考えております。
○石川委員 まず三百人超での体制整備をしっかりやりたいということでありましたけれども、先ほど言ったように、全体で見るとほんの少しだということで、実効性は乏しいと思います。これを例えば百人超ですとかに引き下げることによって、規模が小さい会社になりますと通報者が特定されやすくなったりする危険性もありますけれども、そういうことにも配慮しつつしっかり仕組みをつくっていくことが、やはり公益通報が正しく利用されることにつながるのかなというふうに考えます。
では、次の質問でありますけれども、最近は、会社の不正ですとか社員の犯罪行為をSNSで告発することも度々あります。SNSでの告発というのは、そもそも外部通報に当たるんでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
SNSに対する投稿が公益通報に該当するかについては、法律上の要件に照らし、法に定めます、その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に該当するか等について、個々の事案に応じて判断されるものと承知をしております。
○石川委員 いろいろな性質のものが確かにあると思うんですけれども、では、SNSでの告発と公益通報の性質の違いというのはどのような点でしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
一般の報道機関に対する公益通報は、法に定めます、その者に対し当該通報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者に該当する一方で、SNSで行う告発につきましては、個々の事情の状況によってはこうした者に該当しない場合もあり得るという点で異なると考えております。
その上で、公益通報者が保護されるためには、公益通報者保護法第三条第三号の、通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合であることや、内部通報をすると証拠隠滅される可能性が高い場合など、法第三条第三号イからヘに定める要件のいずれかを満たす必要があるという要件を満たす必要がある点では、報道機関に対する外部通報もSNSで行う告発も同じであると認識をしております。
○石川委員 この公益通報、今御答弁いただいたように、信頼できる外部の報道機関ですとか記者とかに、信頼して、ある意味託すという感じでありますけれども、SNSは、まずそれがきちんと信頼できる者なのかということもありますし、関係のない人に関しても、いきなり含めて拡散をされてしまうということなんですね。その人に託すというよりは、いきなり拡散してしまうというところが違いがあるということと、それから、これによって、告発というか投稿した側も、企業から罪に問われるリスクも発生するということなんですね。
企業も、その告発の真偽も不明なままに、風評被害として一方的に被害を受ける可能性があるということで、外部通報に当たるものもあるということではありますけれども、気をつけなきゃいけないところは、被害に遭われた方などがいる場合は、SNSで一気に拡散をされてしまうことでプライバシーも守られない、守られるかどうかちょっと分からないというところもありますので、SNSを通じた通報と今回議論されている外部通報は性質が違うものであり、そして、SNSを通じた通報というのは様々なリスクもあって、危険なところもあるということも念頭に置かなきゃいけないと思います。
ですので、やはり外部通報、内部通報の仕組みがしっかり確立されるということは非常に重要なことだなというふうに感じております。
では、次の質問に移ります。
次は、証拠資料の収集、持ち出し行為の免責の必要性についてお伺いをいたします。
公益通報の不正を証明するために、資料の収集、持ち出しが必要になる場合があります。しかし、資料を持ち出した場合に、公益通報したという行為よりも、守秘義務違反、それから情報漏えいをしたということが罪だという判断で、解雇や処分をされてしまう可能性があります。
鹿児島県警の文書漏えい事件では、外部通報が守秘義務違反に当たるということで罪に問われてしまったということがありました。これでは公益通報をちゅうちょする要因になりかねませんし、また、勇気を出して通報した人を守ることができないというふうに考えます。
こうした内部通報の証拠のための資料収集、持ち出し行為については、やはり免責規定を作るべきだと考えますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○鳩山副大臣 御質問にお答えをさせていただきます。
公益通報の証拠となる資料は、事実関係を調査するために重要な位置づけを占める一方、通報者による内部資料の収集や持ち出しは、事業者の情報管理や組織秩序に悪影響を及ぼす場合があると考えております。
裁判例においては、通報に伴う資料持ち出し行為を事由とする懲戒処分を無効としたものが複数見受けられますが、通報との関連性や、通報者の動機、行為の態様、影響等を総合的に勘案したものと私ども承知をいたしております。
このため、公益通報を理由とする資料収集、持ち出し行為を一定の要件の下免責する規定を設けることは現状困難と考えており、事案ごとに事情を総合勘案の上、判断することが妥当であると考えております。
○石川委員 告発した人を守らなきゃいけないということが大前提なんですが、最初に質問した配置転換に関しても、やはりそれが内部告発による報復であるということを立証するために裁判をしなきゃいけないとか、本当に告発者の負担が多い中で、更にその大きな負担になっているのが、資料の収集とか持ち出し行為が罪に問われる可能性があるという点だというふうに考えます。
これは、様々な、守秘義務とか情報漏えいとか、いろいろなものとどういうふうに考えていくかという難しさはあるんですけれども、やはりここをしっかり免責規定の一定のルールを作ってやっていかないと、現状ではやはり告発した側の立場は非常に弱いと考えますので、是非ここは重要な論点として、次もきっと仲間の議員が質問するかもしれませんけれども、考えるべきだということを主張しておきたいと思います。
次の質問ですけれども、現行法では、退職者の公益通報について、退職後一年以内に通報した場合に限り保護対象になるということになっています。
一年以内では、通報者が誰なのかということが推察されてしまうおそれもありますし、期間制限をもう少しやはり長くする必要があるのではないかというふうに考えますが、この点についてお伺いをさせていただきます。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
退職後一年以内の元労働者につきましては、令和二年の法改正、前回の法改正で、公益通報者として追加されたものであります。
このような退職後の期間制限は、実際に退職後の通報を理由として不利益取扱いを受けた事例のほとんどが退職後一年以内に通報されたものであったことなどを踏まえたものであります。このほか、退職から長期間経過後の通報につきましては、証拠の散逸などにより、通報を受けた事業者が適切に対応することが困難となるということも挙げられておりました。
公益通報者の範囲に退職後一年超の元労働者を追加する必要性につきましては、現時点においては、立法事実の蓄積が十分にはなく、今後の状況を注視してまいりたいと考えております。
○石川委員 一年というのはあっという間にたっちゃうと思います。心身の不調とかいろいろな事情があったりして、例えば証拠収集したりとか、いろいろなことに時間を要してあっという間にたってしまうということもあると思いますので、是非ここはしっかり重要な論点として考えていただきたいと思っております。
次は、海外では通報した者に対して報奨金を出す国もあるということで、報奨金というものについてお伺いをさせていただきます。
日本人には報奨金という制度がなじむのかということもありますけれども、やはり内部通報というのはちょっとネガティブなイメージがあると思うんですけれども、そのネガティブなイメージを変えることにもつながるのではないかなという思いもあります。
本来は、内部通報というのは、会社の組織の自浄作用を促す、社会で評価されるような大変立派な行為であるわけでありますので、報奨金の制度の設置について、メリットとかデメリットを含めてお考えを伺えればと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、一部の国では、事業者の法令違反に対する制裁金等の適用につながるような事実を行政機関に通報した個人に対して一定の報酬を支払う報奨金制度が存在すると承知をしております。
報奨金制度につきましては、委員御指摘のとおり、通報を促進する効果が期待できるというメリットがございます。一方で、財源の確保の問題のほか、事業者内部の不正を通報した労働者等に報奨金を支払うことについて国民の理解が得られるかなど、課題があるというふうに考えております。
○石川委員 確かに、財源はどうするのかとか、いろいろな負担がかかるという話もありましたが、こういうイメージを変えるためにも、こういう取組も必要なのかなというふうに考えておりますので、海外の事例なども含めて引き続き議論をさせていただきたいと思います。
次の質問でありますけれども、消費者庁の実態調査によりますと、就労者一万人アンケート調査において、従業員数三百人超の事業者において従業員の過半数は、そもそも公益通報の制度を理解していない、勤務先の窓口について認知していないなどの結果が出ております。
一方、民間事業者の内部通報対応の実態調査においても、内部通報制度を導入しているところは、割合は増えている一方で、三分の二の事業所において年間の通報件数が五件以下若しくは把握していないという状況になっているということで、窓口が十分活用されているのかなというような結果になっております。
この体制の整備の重要性、それから、体制が十分に認知されることは公益通報を促すということにおいて大変重要ですけれども、その具体方法について伺います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、内部通報制度の実効性向上には、内部通報制度が利用者に認知されることが重要であると考えております。
このため、今回の法改正では、事業者が整備した体制の労働者等への周知義務を法律で明示することとしております。
また、消費者庁では、内部通報制度の重要性や必要性につきまして、事業者の経営者の理解促進を図るため、経営者向けの啓発動画ですとかパンフレットを作成しております。これにつきましては、従業員向けの研修動画や内部規程、通報受付票のサンプルなどと併せまして、内部通報制度導入支援キットと称して消費者庁のホームページ上で提供しております。また、新聞、雑誌、ラジオ等による広告を通じまして、広く事業者及び労働者にこれを周知しているところであります。
引き続き、このような取組を行いますとともに、地方自治体に対して地方消費者行政強化交付金の活用を促し、地域の事業者や住民に対する制度の周知を図ることなどによって、公益通報者保護制度の普及と浸透に努めてまいりたいと考えております。
○石川委員 まだまだ公益通報するということが遠いことだというふうに、身近なものだと感じていないのであれば、やはり実効性を高めるということが重要だと思いますので、引き続き取組をよろしくお願いいたします。
消費者庁の体制について伺いますけれども、公益通報担当部署は今二十七名ということでありました。この体制の強化や予算措置というのは大変重要だと思います。特に、今回の改正案で、従事者指定義務違反の事業者への立入検査、勧告に従わない場合の命令権などが導入されるのであれば、より人数や予算を充実させなきゃいけないということだと思います。
このような観点で、どうやって体制を構築していくか、実効性を高めるために政府はどういう対応をするのかということをお伺いさせてください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
今回の法改正によりまして、事業者の従事者指定義務違反は公益通報者保護法上の通報対象事実となります。このため、消費者庁への公益通報が見込まれます。それ以外の体制整備義務につきましても、情報提供が増えることが見込まれます。このため、消費者庁におきましては、今年度に新たに法執行のための新たな定員や予算を確保しております。
今回の法改正後も引き続き法執行体制の強化に取り組むこととしておりまして、事業者の義務の履行確保に向けて万全を期してまいりたいと考えております。
○石川委員 企業が形だけを整えればいいというような公益通報制度にならないように、我々の修正案も含めて、実効性の高い法改正をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○浦野委員長 次に、井坂信彦君。
○井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。
冒頭、スルガ銀行によるアパート、マンション不正融資問題について伺います。
この問題は、単なる金融スキャンダルではありません。物件の購入者が、金融機関との間で、重大な情報格差の下、著しく不公正な契約に巻き込まれた、深刻な消費者被害の問題であります。内部告発をしたスルガ銀行の行員が身元を特定されて解雇されてしまったという、公益通報者保護法が十分に機能しなかった事件でもあります。
スルガ銀行は、物件の販売業者と最初から結託をして、物件価格の水増しや、購入者の年収、預金通帳の改ざんなどを行った上で、不動産売買の経験がない購入者に対して、確実にもうかるとか、自己資金ゼロでオーケーといった甘い言葉で契約を結ばせた事例が数多く報告をされています。これらの手口は、既に不法行為が認定されたシェアハウス、かぼちゃの馬車事件と同様で、消費者契約法第四条が禁じる不実告知に明らかに該当するのではないかと考えます。
そこで、参考人に伺いますが、金融機関による融資契約であっても、うそを言われたり、必ずもうかると言われたり、不利になることを言われなかったり、こういう場合は、情報格差の有無にかかわらず、消費者契約法が適用されて、取消権が行使できるということでよいでしょうか。
○黒木政府参考人 お答え申し上げます。
消費者契約法は、消費者の利益を守るため、事業者と消費者の間に締結された消費者契約について、不当な勧誘による契約の取消権を規定をしております。
融資契約など、様々契約があるかと思いますが、金融機関と消費者との間で契約された場合には、消費者契約に該当し、消費者契約法の対象になると考えてございます。委員が御指摘になりましたような不実告知などが金融機関が消費者と契約を締結する際になされた場合に、このような消費者契約法の要件を満たす場合には、消費者がその契約を取り消すことができる可能性があるものと考えております。
なお、この消費者契約で定める消費者といいますのは、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く個人ということでございますので、その場合に個々の情報格差がどれだけあるかないかとか、そういうことを問うているものではございません。
○井坂委員 参考人に重ねて伺いますが、私も、ジャパンライフの問題、この委員会で長く取り組んでまいりまして、消費者庁の皆さんにもいろいろと動いていただきながら、まさに個別事案としてこの委員会で議論をし、そして業務停止にまで追い込んでまいりました。
参考人に伺いますが、このスルガ銀行の事件、一般論でおっしゃいましたけれども、これは私はやはり巨額の消費者被害事件だというふうに思いますが、もう既に不法認定されている部分もございますので、そうしたスルガ銀行の事件は消費者被害事件だという認識でよろしいでしょうか。
○黒木政府参考人 お答え申し上げます。
消費者契約法といいますのは民事ルールでございますので、行政の方で何か判断をするという関係にはないということでございます。消費者である当事者が契約の取消しを主張して事業者と交渉するあるいは訴訟するという中で、最終的には裁判所において判断がなされるものと承知をしております。
○井坂委員 スルガ銀行は、被害者救済について自社のホームページでこう書いてあります、当社は真摯に取組を進めていると。しかし、実際には、弁護団が求める、懲戒処分がされた行員の氏名とか処分理由といった、被害救済に不可欠な資料の開示をスルガ銀行は拒んでいるわけであります。さらに、行員が関与した証拠資料についても、黒塗りで隠蔽をし、行員の関与自体が確認できないという立場をスルガ銀行が取っているという実態があります。
一方で、被害者側が偶然入手をした不動産業者のパソコンの画面には、スルガ銀行のある行員が業者とやり取りをしていた、行員の関与を裏づける明白な証拠が残されていたそうであります。にもかかわらず、スルガ銀行は、どの程度行員が関与していたかという判断を被害者側に立証をさせようとしていて、事実上、責任の転嫁を図っているようにも見受けられます。
これは大臣に伺いますが、外向きには真摯な対応をしますと標榜しつつ、実際には証拠を隠し、また被害者に過剰な立証責任を負わせようとしているこのスルガ銀行の姿勢について、大臣、これは消費者保護という観点からどう評価をされますでしょうか。
○伊東国務大臣 井坂先生の御質問にお答えしてまいります。
個別の事案でありますのでお答えは控えさせていただきますが、消費者基本法におきまして、事業者の責務として、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供すること、また、消費者との取引に際し、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮することなどが規定をされているところであります。
事業者におきましては、消費者視点で事業活動に取り組んでいただくべきもの、このように考えているところであります。
○井坂委員 大臣、お聞きをしたこととお答えが少しずれていると思うのですが。事業活動に対しては今大臣がおっしゃったとおりだと思いますが、実際に消費者被害を起こしてしまった企業が証拠を隠したりとかして立証責任を被害者側に過度に負わせようとする、こういう被害を起こした後での事業者の振る舞いについてお伺いをしております。
もう一度、これはもし大臣が答弁をお持ちでなければ参考人でも結構ですが、こうした被害を起こした後の事業者の振る舞いについて、消費者保護の観点からどう評価をされますでしょうか。
○尾原政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど大臣から御答弁いただいたとおり、個別事案でありますこと、また、本件につきましては係争中の事案でございますので、お答えを差し控えさせていただきます。
○井坂委員 個別事案でなくて結構です、一般論で結構ですので、消費者被害を起こした企業が証拠を隠蔽し被害者に過度な立証責任を負わせることについて、消費者庁としてどう考えるかお答えください。
○尾原政府参考人 お答え申し上げます。
先ほどお答えさせていただきましたように、消費者基本法におきまして、事業者の責務といたしまして、消費者に対し必要な情報を明確かつ平易に提供することですとか、あるいは、消費者との取引に際して、消費者の知識、経験及び財産の状況等に配慮することに加えまして、消費者基本法におきましては、消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理することが記載されておるところでございます。これに基づいて企業の方で適切に対応するというふうに承知をしております。
○井坂委員 ちょっとここでこんなに長引くと思っていなかったんですが、事業活動のときに適切な情報提供、これは当たり前だと思うんです。被害を起こした後で、被害回復の段階で情報を隠したり全部被害者に立証責任を持たせようとすることが、これはさすがに消費者保護の観点からまずいんじゃないですかと言っておりますので、被害回復のプロセスのことについてお聞きをします。
○尾原政府参考人 お答え申し上げます。
消費者基本法におきまして、消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に処理するために必要な体制の整備等に努め、当該苦情を適切に処理することというふうになっております。この観点から、事業者におかれて適切に対応されるものと承知しております。
○井坂委員 本当に、答えていないじゃないかと今やじが飛んでおりますけれども。
委員長、いかがでしょうか。お聞きしていることと答えていただいていることが結構食い違っていると思うんですが。
○浦野委員長 審議官、もう一度答弁できますか。
○尾原政府参考人 お答え申します。
繰り返しになりますが、消費者基本法に掲げられている、消費者との間に生じた苦情を適切かつ迅速に、必要な体制の整備に努め、当該苦情を適切に処理することというのがございますし、また、本件、委員より御質問がありましたスルガ銀行の姿勢についてというところでございますけれども、一般論でございますけれども、金融機関に対しましては、銀行法等の関係法令に基づき行政処分がなされるものと承知しております。所管省庁において適切に対応されるというふうに承知をしております。
○井坂委員 こんな答弁になるとは余り思っておりませんでしたが、消費者庁ですから、消費者被害の回復、これはやはり皆さんがしっかりと企業側にさせなければいけないというふうに思います。
被害者が救済を受けるために必要な情報、重要な情報が意図的に伏せられているという可能性がある。こういう場合は、大臣、ちょっと伺いますが、ずっと隠しているわけですよ、被害回復しようにも、被害者側はそんな内部の情報なんか分からないわけです。大臣、これは消費者庁として、再度の第三者調査とか、あるいは行政による実態解明、こういうことも考えなければいけないんじゃないですか。
○伊東国務大臣 金融機関に対しましては、関係法令に基づき行政処分がなされるものと承知しておりまして、これは金融庁でありますとか当該所管官庁にまずはお尋ねをいただきたいということであります。
また、裁判中の、係争中の事案ということもございますので、消費者庁といたしましては、これ以上の介入というのはなかなか難しいかなと思っております。
○井坂委員 残念な答弁であります。
大臣、質問はちょっとここまでにしますが、是非お聞きをいただきたいのは、今、裁判外の調停が進行している最中にもかかわらず、その裏でスルガ銀行は、契約に基づく返済が滞っている、そういう、要は、不正な契約をして、それに対して融資の返済が今、確かに契約上は必要なんですけれども、その被害者に対して、支払い督促、貸したお金を返してください、こういう法的手続を裏で個別に進めているわけであります。本来であれば集団的にちゃんと救済をされるべき消費者問題が、個別化、矮小化をされて、結果的に一人一人がそうやって追い込まれて泣き寝入りをするような構図をつくり出すものであり、私は、消費者保護の観点から重大な問題があると考えております。
是非、これは申し上げるにとどめますが、被害者を分断したり萎縮させるようなこのような手法についても、消費者庁には、ガイドライン整備など何らかの対応を求めたいというふうに思います。
次に、国や自治体における公益通報者保護について伺います。
今回の法改正では、公益通報を理由として従業員を解雇や懲戒をした者に対して、六か月以下又は三十万円以下の直罰が新設をされます。これは国や自治体でも同じで、公益通報を理由とする公務員への不利益な取扱いは禁止をされて、これに違反をして分限免職や懲戒処分をした者への直罰が新設をされます。
参考人に伺いますが、これは当然、大臣とか首長が公益通報者の処分に実質的に関与した場合は罰則の対象になるということでよろしいでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
今回の改正によりまして、公益通報を理由として労働者に対して解雇又は懲戒をした者が罰則の対象となります。
ここで言う解雇又は懲戒をした者とは、労働者に対して実質的な意思決定をした者やそれに関与した者が対象になり得ると考えております。したがいまして、処分に実質的に関与すれば、大臣や首長等が罰則の対象となると考えております。
○井坂委員 大臣や首長であっても、公益通報者を首や懲戒処分にしたら罰則の対象となる、民間と一緒だということだと思います。
一方で、国や自治体は、公益通報者保護の体制整備義務に違反をしていても、消費者庁が、立入検査、是正命令、そして従わない場合の刑事罰という一連の行政措置が、国や自治体に対してはできません。地方自治体や国の機関が公益通報者保護法の二十条で行政措置の適用除外となっているためであります。
大臣にこれは通告どおり伺いますが、やはり自治体や国の機関にも行政措置を適用できるように、二十条にちゃんと含める、二十条で除外をしないようにすべきではないでしょうか。
○伊東国務大臣 公益通報者保護法におきましては、国や地方公共団体といった行政機関は、お話しのように、自ら法令遵守を図り、義務を履行することが期待されておりまして、消費者庁の行政措置は適用しないこととされております。
また一方で、消費者庁では、国の行政機関や地方公共団体に対しまして、通報対応に関するガイドラインの策定、実態調査の実施、必要な助言や研修の実施等を通じて体制の整備を促してきたところであります。今後も、法の施行に向けまして、実態調査を実施し、その結果を踏まえて、きめ細やかな助言を行うことといたしております。このような取組を通じて、国や地方公共団体における制度の普及、浸透に努めてまいりたいと考えております。
○井坂委員 大臣、国や自治体は法令遵守が期待をされると。私も期待をしますが、やはりそういう性善説だけでは駄目だと思います。国や自治体でも、公益通報者の保護を怠るということは、これは大いにあり得るわけであります。
これは参考人でも結構ですが、更問いをいたします。
今、大臣より、助言ができますということがありました。例えば、自治体に体制の不備とかあるいは公益通報者保護法上の判断の誤りなどがあった場合は、国はきちんと自治体を実態調査をして、そして助言をするということでよろしいですか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
消費者庁におきましては、地方自治法に定めます技術的助言については、引き続き、公益通報者保護法に関連する部分についても対応していきたいというふうに考えております。
具体的にやっておりますことは、現在におきましては、ガイドラインの策定、改定、それから、行政機関に対して実態調査を行い、その結果を公表をするということをしております。これに加えまして、実態調査の結果も踏まえて、必要な助言の実施や研修の実施等を行っているところです。こうしたような対応につきましては、今後とも進めていきたいというふうに考えています。
○井坂委員 大臣にお伺いをしますが、今、私、神戸市なんですけれども、兵庫県でもまさにこの問題が、現在進行形で問題があるのではないかという疑義が呈されております。自治体が公益通報者の処分の撤回などの適切な救済や回復の措置を取る義務、これが本当に果たされているのか、そして、公益通報者の探索を行った職員や幹部に対して懲戒処分その他適切な措置を取る義務が果たされているのかということであります。
自治体がこうした義務を果たさない場合は、消費者庁は自治体に、やはり、まず実態調査ということでありますが、実態調査をした上で、ちゃんと義務を果たしなさいと助言をすべきだと考えますが、していただけますでしょうか。
○伊東国務大臣 公益通報者保護法におきましては、国や地方公共団体は、自ら法令遵守を図り、義務を履行することが期待される、これは当然のことだ、こうみなされているわけであります。事業者の体制整備に関する消費者庁の行政措置権限は、これについては適用しないこととされているわけであります。
兵庫県の例が出ましたけれども、これに今回の法律がリンクするわけではありません。兵庫県におきましては、これは我々も思うわけでありますけれども、県議会の百条委員会やあるいは県の第三者委員会の報告書の内容を踏まえて、やはり県として、あるいは議会として適切に対応されるべきもの、このように考えております。
○井坂委員 何か議会の方に責任を回されたと思いますが、消費者庁として、自治体が公益通報者保護の義務を果たしていない。これは当然、自治体なんですから、法令遵守すべきだと思いますよ、性善説で私もいきたいところでありますが、ただ、やはり法律というのは、万が一悪いことをする自治体があったときにどうするかというのが法律でありますので、自治体がこうした公益通報者保護の義務を果たしていないというとき、助言をちゃんとするんですか。自治体の求めがなければ助言ができないのですか。どういう仕組みになっていますか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
地方自治法に定める技術的助言につきましては、自治体の方から要請があった場合にのみ行うということではないと認識をしております。我々といたしましては、地方自治法の技術的助言の範囲でしっかり対応をしていきたいというふうに考えております。
一方で、公益通報者保護法につきましては、消費者庁の行政措置は適用しないということになっておりますので、地方自治法に基づく範囲でということだと認識をしております。
○井坂委員 今の御答弁は、行政措置はもちろん今法律でしない、できないとなっていますが、公益通報者保護法の義務を果たしていない自治体に対する消費者庁からの助言というのは、これは自治体側の求めがなくても、消費者庁の方からアクションを起こして自治体に助言ができるということをお答えになったということでいいですか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
地方自治法の技術的助言の範囲では、必ずしも要請があった場合にのみ対応するということではないと認識をしております。
○井坂委員 分かりました。
大臣、それでは、もちろん地方自治ではありますが、ただ、国が、消費者庁が公益通報者保護法というものを作って、それを民間だろうが公共団体だろうが守ってもらう運用をしているわけであります。別に特定の自治体の名前は挙げませんが、ある自治体が公益通報者保護法の体制整備などの義務を果たしていないということがあれば、必要であれば実態調査を行った上で、やはり助言をしていただきたい。これは本当は指導とか措置をしていただきたいんですが、それができない法律になっておりますので、是非、助言があるとさっき大臣が最初に答弁されましたから、ではその助言をちゃんと、義務違反があれば、すると。これは一般論で結構ですので、当たり前の答弁としてお答えいただきたいと思います。
○伊東国務大臣 通報対応に関するガイドライン、これを策定して、実態調査を通じて地方自治体の体制整備の状況を確認をいたしまして、必要な助言を行ってまいりたいと考えております。
○井坂委員 ありがとうございます。
次に、自治体に対して介護施設や障害者施設や保育所など児童福祉施設から通報が来たときの自治体の対応について伺いたいと思います。
これは大臣に伺いますが、施設の職員さんが、施設で行われている虐待とか不正経理とか、あるいは補助金等の不正請求、これをうちの施設でこんなことが行われていますよと職員さんが自治体に通報することはよくあることであります。しかし、例えば、施設職員が虐待を自治体の福祉部局に通報しても、虐待防止法は公益通報者保護法の対象に含まれておりませんから、自治体が公益通報としての十分な対応を行わないという問題があります。その結果、虐待を通報した職員が解雇とか不利益な取扱いを受けてしまえば、これはもう誰も虐待を通報しなくなってしまうわけであります。
高齢者や障害者や児童の虐待防止法も、大臣、これは公益通報者保護法の対象に含めるべきではないでしょうか。
○伊東国務大臣 お答えしてまいります。
公益通報者保護法は、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護を直接の目的とする法律でありまして、違反により国民の生命、身体、財産その他の利益への被害が想定され、最終的に刑罰又は過料により実効性が担保されている法律を対象法律としているところであります。
お話にありましたような高齢者等の虐待についてでありますが、虐待防止法におきまして刑事罰や過料が規定されている行為によりまして直接の被害が発生することは想定されないため、これらの法律を対象法律とはしていないところであります。
ただし、虐待が暴行罪、傷害罪等刑法の犯罪の構成要件を満たす場合には、公益通報に該当し得る、このように承知をいたしております。
○井坂委員 国民の生命身体に、まさに虐待というのは、どんぴしゃで害を及ぼすわけであります。
ただ、最後におっしゃったのは、結局、虐待防止法では、それをやったとしても、刑事罰が規定をされていないために、消費者庁が定めたルールによれば、生命、身体、財産に被害、プラス刑事罰、こういう条件で、公益通報となるかならないかを決めている。それはそちらの決めたルールでありますけれども。ただ、最後におっしゃったのは、傷害罪であればこれはやはり公益通報だということで、大変ややこしい取扱いになっております。
これはどういうことかというと、虐待で、高齢者の入所者さんとか障害者の方をつねったりたたいたりとかしたら、これは傷害罪でありますから、公益通報に本来なるわけであります。虐待を警察に傷害罪ですと通報すれば、傷害罪の通報として公益通報になるんですけれども、ここで問題がありまして、虐待防止法は、まず虐待を見つけたら自治体に通報しなさい、こういうふうに義務づけられているわけであります。そうすると、施設の人が、うちで虐待をやっていますよと自治体に義務に従って通報したら、これは虐待防止法の通報になってしまうために公益通報にはならない、こういう扱いになっております。
参考人に伺いますが、もし本当にこういうやり方でいいとしたら、虐待を自治体に法律どおり義務に従って通報した施設職員は、これは自治体は公益通報ではないという扱いになるから、どのようにその通報者を保護することになるんですか。保護できないんじゃないでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
虐待が暴行罪、傷害罪など刑法の犯罪の構成要件を満たす場合には、公益通報に該当し得るという形で承知をしております。こちらにつきましては、例えば警察等に通報がなされれば、こちらは公益通報として保護されるということになると認識をしております。
○井坂委員 その話は今私がしたので。警察にしたら公益通報になりますが、しかし法律は、虐待防止法は、まず自治体に通報しなさいとなっているんですよ。だからみんな自治体に通報するんです。そうすると、傷害罪ではなくて虐待防止法違反の通報ということになって、公益通報の対象にならないんです。
私、この議論、実は令和五年十一月十六日にこの消費者特別委員会で一回しております。そのときの参考人の答弁はこんな答弁です。今年度は、これは令和五年のことですけれども、令和五年の今年度は、地方公共団体を含めた行政機関向けに、通報対応に関する体制や運用状況の実態調査を実施する予定です、この結果も踏まえまして、より一層効果的な周知を検討してまいりたいと考えますと答弁をしています。
参考人に伺いますが、この答弁に従って、まさにこの議論、二年前もしていますので、自治体が虐待防止法の通報を受けた場合について、自治体の対応や運用状況、実態調査をしていただいたんでしょうか。
○藤本政府参考人 消費者庁では、令和五年度に、地方公共団体を含む行政機関に対しまして、通報窓口の設置や従業者の指定状況などについて、施行状況の調査を行いました。委員御指摘の、高齢者等の虐待防止法に関する通報対応や運用状況に特化した調査は行ってはおりません。
○井坂委員 委員会で答弁したのに実態調査をしていないということで、大変許し難いことだというふうに思います。
今から調査しろとは言いませんが、要は、私が言いたいのは、自治体が施設職員から虐待の通報を受けたときに、ちゃんと公益通報、今法律上は公益通報の扱いにならないですけれども、でも実際やっていることは傷害罪ですから、自治体が虐待通報を受けたときもこの公益通報に準ずる対応をするようにと、これは自治体の介護や福祉や保育部局の職員に皆さんの方から、消費者庁の方から取扱いを周知徹底をしていただきたいということであります。
大臣、最後に伺います。
二年前もぼんやりした答弁だったんです。ガイドラインを作りましたとか、解説動画を作りましたとか、あるいは自治体向けの説明会を行っていますと。そんな広く浅い対応ではなくて、今申し上げた、ちょっと法律の隙間でおかしなことになっていますから、自治体が施設職員から虐待の通報を受けたときにちゃんと公益通報として対応するようにと、ピンポイントで、福祉、保育、そして障害部局、自治体のこの部局に周知徹底をする、具体的なアクションを起こしていただきたいと思いますが、最後にそのことをお伺いいたします。
○伊東国務大臣 今の井坂先生のお話、さらにはまた、これまで答弁させていただいておりましたけれども、福祉施設の実態調査の結果などを踏まえまして、課題がある部局が把握されたときには対応してまいりたいと思う次第でございます。
○井坂委員 ありがとうございます。
是非、課題がある部局は今申し上げたとおりですので、虐待を受けた、福祉、保育、そして介護の部局がちゃんと公益通報として対応するようにということを明確に指導、周知徹底をしていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
ありがとうございました。
○浦野委員長 次に、川内博史君。
○川内委員 おはようございます。川内博史でございます。
委員長、理事の先生方にお許しをいただいて、本委員会で発言をさせていただけますことにまず感謝を申し上げたいというふうに思います。本当にありがとうございます。
公益通報者保護法という非常に重要な法案についての改正案の審議ということで、まず、私は、井坂議員の質疑に関連して若干聞かせていただこうというふうに思いますが、現行法で事業者に課されている体制整備義務について、法定指針の対象について、三号通報も当然に含まれるということでよろしいかと、めちゃめちゃ基本的なことを聞かせていただきたいというふうに思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
法定指針におきましては、三号通報に関する部分も含まれていると認識をしております。
○川内委員 認識をしているというふうにお答えになられたけれども、それは、要するに、法的拘束力があるということでよろしいですよね。要するに、三号通報も体制整備義務の中に含まれるのだということでよろしいんですよね。
○藤本政府参考人 法定指針におきましては、三号通報に関する体制整備義務について規定している部分がございます。
○川内委員 兵庫県において、兵庫県知事は、体制整備義務につきましても、法定指針の対象について、三号通報も含まれるという考え方がある一方で、これは内部通報に限定されるという考え方もあります、我々としては対応については適切にやってきたというふうに先ほど申し上げたとおりですというふうに、三号通報は含まれないのだ、だから怪文書なのだというふうに記者会見で述べているんですね。
これは、消費者庁、認識していますか。
○藤本政府参考人 消費者庁といたしまして、個別の事案に関してのコメントは差し控えさせていただきます。
○川内委員 委員長、聞いた、今の答弁。公益通報者保護法の運用に責任を持つ、所管する消費者庁が、間違った解釈をしている知事の記者会見についてコメントしない。何じゃそれみたいな。これは、委員長、指導してください。
これは法律上のことですからね。三号通報は含まれますよと言っておいて、含まれないという知事の発言に対して、それは知りませんわと。そんなことは役所として許されないでしょう。
記者会見で兵庫県知事が、体制整備義務、法定指針の対象に三号通報は含まれないと自分は考えていると言ったということに関して、消費者庁はまず認識しているかということを私は聞いたんです。知っているかどうかをまず答えてください。
○藤本政府参考人 兵庫県知事の発言については、認識をしております。
御指摘の指針につきましては、内部通報について定めている部分と、外部通報についても含めて定めている部分があるという状況でございます。
○川内委員 内部通報について、法定指針の対象である。三号通報についても、法定指針の対象。だから、兵庫県の第三者委員会は、元県民局長さんの文書については公益通報に当たるよ、当たりますねということを判断しているわけですよね。それにもかかわらず、兵庫県知事は、いいや、公益通報じゃないもんと言い張っているわけですよ。
それに対して、法解釈上の問題として間違ったことを言っているわけです。それについては、地方自治法に基づく技術的助言、まさしく、法解釈について、あんた、間違ったことを言っているからそれは正した方がいいよという技術的助言は、法を所管する役所として、しなければならないんですよ。
大臣、どうですか。僕の言っていること、間違っていますかね。
○浦野委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○浦野委員長 速記を起こしてください。
伊東大臣。
○伊東国務大臣 詳しくは私も分かりませんけれども、先ほどの答弁でもちょっとお話ししましたけれども、これは、県議会及び第三者委員会等でかなり長時間にわたり審議されてきているものとして、その解釈及び結論には一定の納得をしなければならぬという思いをしているところであります。
○川内委員 まさしく、今、伊東大臣が、百条委員会や第三者委員会の報告については政府としても一定の納得をしなければならないねという御発言をされたわけですよね。政府見解が示された。
そうすると、兵庫県知事が、いや、これは公益通報じゃないんだもん、百条委員会やあるいは第三者委員会の報告書が出た後に公益通報じゃないもんと言い張っているということに関しては、これは、消費者庁として、公益通報者保護法を所管する役所として、兵庫県に対して、その法解釈は違っていますよという技術的助言、これはまさしく技術的助言じゃないですか。ディス・イズ・技術的助言だと思うんですよ。それをしないというのはあり得ないと思うんです。認識しているわけだから、発言を。
審議官、どうですか。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
消費者庁におきましては、日常的に様々な行政機関からの相談や照会に応じて技術的助言を行っております。特定の行政機関とのやり取りの有無につきましては、コメントすることは差し控えたいと思います。
ただ、今後も、地方自治法の技術的な助言の範囲内で対応すべき事項があれば、適切に対応してまいりたいと考えております。
○川内委員 委員長、何を言ったか、私はよく分からなかったんですけれども。
委員長、ここまでの私の議論を聞いていただいて、委員長としても、これは法解釈のことについてだから技術的助言をすべきだねと思っていただいたと思うんですよ。与党の先生方も思ったと思うんですよ。これは委員長として、役所に対して、これは技術的助言をすべきであると委員長としても思うが、もう一度答弁せよということを御指示いただけますか。
○浦野委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○浦野委員長 速記を起こしてください。
藤本総括審議官。
○藤本政府参考人 消費者庁におきましては、日常的に様々な行政機関に対して技術的助言を行っております。御指摘の兵庫県につきましても、技術的な助言を行っているところであります。
今後につきましても、地方自治法の技術的な助言の範囲内で対応することがあれば、兵庫県に対しても適切に対応してまいりたいと考えております。
○川内委員 本件三号通報は法定指針の対象ですよ、公益通報者保護法の保護すべき通報に含まれるんですよということもきちんと言うという理解でよろしいでしょうか。
○藤本政府参考人 技術的助言の中には法解釈についても含まれているというふうに我々は理解をしております。実際に法解釈についても技術的助言を行っているところであります。
○川内委員 大臣、まあ政府参考人ですから、所管の大臣として。ここまで参考人の方がおっしゃっていただいた。法解釈ですから技術的助言の対象である、兵庫県とはやり取りしますよということもおっしゃった。
ここは大臣として、この三号通報は公益通報者保護法に含まれるのだ、法定指針の対象なのだということを兵庫県にしっかりと技術的助言をするということを、大臣として御答弁をいただきたいというふうに思います。
○伊東国務大臣 川内議員のおっしゃられていること、私も至極もっともだ、このように思っているところであります。
消費者庁が地方自治体にいかなる指導ができるか、これはまた内部で検討をさせていただき、そしてまた、それに従うか従わないかについては、その当事者の判断ということになろうかと思うところであります。
引き続き、しっかりと助言をしてまいりたいと思っております。
○川内委員 じゃ、兵庫県に法解釈について技術的助言をしていただくというふうに理解をした上で、今大臣がおっしゃられたように、技術的助言をした、それに従うかどうかという御発言もあったわけですけれども、先ほどから繰り返し出ているように、本改正案でも、自治体に対しては技術的助言しかできないということになっておる、公益通報者保護法上の勧告とか様々な立入調査とかそういうものは、自治体に対しては改正法上もできないことになっておる、だから、今後、兵庫県に対して、百条委員会や第三者委員会の報告書をしっかり受け止めて、法解釈に沿ってちゃんとした措置を取ってねというふうに技術的助言をしたとしても、それでも従うかどうか分かりませんと。
だから、改正案が本当に実効性のある改正案になるかどうかというのは、そこもやはりしっかり見ておかなければならないところで、だからこそ、先ほど井坂議員もおっしゃったように、あるいは手前どもの石川ネクスト消費者担当大臣もおっしゃっていただいたように、やはり自治体に対しても勧告権とかをしっかりと法律上付与していくべきではないのかという議論になっていくのではないかというふうに思うんですよね。
だって、勇気を持って公益通報をされた元県民局長さんは、死をもって抗議するという言葉を残されて自死をされた、百条委員会に関わられた県会議員さんも自死をされたという、大変な問題が今兵庫県で起きている、そして、是正される兆しがいまだに見えていないという、私は深刻な状況だと思うんです。
もちろん、選挙で選ばれた、我々も選挙で選んでいただいている、大臣も選んでいただいている、その選挙で選ばれたということは非常に重い重い、貴いことだけれども、だからこそ、やはりルールに基づいた様々な運用というものが必要なのではないかというふうに私は思うのでございます。
違法を指摘されながら是正しようとしない行政の長にどう対応するのか、これはめっちゃ難しい問題だと思うんですよね、大臣。公益通報者保護法に違反していますよ、あんたの懲戒処分は違法、無効ですよと第三者委員会に言われ、百条委員会に言われているにもかかわらず、いいや、知らないもんと言い張る行政の長にどう対応するのか。
私は、ガイドラインを、法定指針を、そういう場合にこうするのだということをしっかりと作っていくべきだというふうに思うんですね、改正案を契機として。参考人、そう思いませんか。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
先ほどもお話をさせていただきましたが、法定の指針につきましても、これは、内部通報に関すること、外部通報を含めたことに関することがございます。それから、行政機関向けのガイドラインも、現行法の下でも我々は定めているところであります。
このガイドラインにつきましては、地方自治体、あるいは国の、我々以外の行政機関に対して周知に努めているところであります。
○川内委員 いや、私が聞いたのは、違法を指摘されながら是正しようとしない行政の長がいる場合にどう対応するのかということであって、例えば、法解釈について技術的助言はできる、しかし、それ以外に踏み込もうとすると、やはり国としてちゅうちょする部分もあるだろうというふうに思うんです。
だからこそ、例えば、自治体の公益通報の御担当が公益通報者保護法に沿わない事態が進行しているというふうに判断した場合に、国に対して、政府に対して、今こういうふうになっているんですけれどもどうすればいいですかねというような相談をすることとか、報告をすることとか、そういうふうなことをあらかじめ決めておけば、こういう事態というものが速やかに解決できるようになるのではないか、そういう趣旨なんですけれども、どう思われますか。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘につきましては、理解できるところもございますけれども、やはり、地方自治の本旨、地方自治体の自主性、自立性というところも我が国にとっては極めて重要なところだと思っています。我々国の行政機関であれば、やはり国会に行政の監視をしていただくということだと思いますし、地方の行政機関であれば、地方議会が行政監視の役割を負っているというふうに理解をしております。
繰り返しになりますけれども、公益通報者保護法では、国や地方公共団体といった行政機関は、自ら法令遵守を図り、義務を履行することが期待されている、また、その責任は常に国民や住民に対して直接負っているということを踏まえまして、消費者庁の行政措置は適用しないということとされております。
この点につきましては、男女雇用機会均等法ですとか労働施策総合推進法におきましても、事業者に対して、セクハラやパワハラに関する労働者からの相談に応じて、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じることを求めておりますが、同様の観点から、国及び地方公共団体は行政措置の適用対象から除外されているというふうに認識をしています。
ただ、御説明させていただいているとおり、地方自治法の技術的助言というのは、これまでも我々としてはやってきておりますし、今後もやっていくということだと思っています。この範囲内で我々としてはしっかりと対応していきたいというふうに思っています。
○川内委員 これは、押し問答になるので、またいろいろ部会などでも議論させていただこうと思っているんですけれども。
そもそも、今回、公益通報者保護法に反する状態が兵庫県でずっと続いているということに関して、消費者庁の側から兵庫県の公益通報の御担当に、今どうなっているの、どういう状況ですかというようなことはお聞きになっていらっしゃらない、ヒアリングはしていないということでしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げましたとおり、技術的助言の範囲内で、日々、兵庫県に限らず、様々な行政機関とやり取りをしております。その中で、兵庫県とも、公益通報者保護法につきましてやり取りをしているところであります。具体的な内容につきましては、コメントすることは差し控えたいと思います。
○川内委員 だから、状況についてはよく分かっていらっしゃるということでしょうから、適切な技術的助言を法解釈を含めてしっかりやっていただきたいというふうに、日本全国のみんなが心配していますから、兵庫県の状態については。
私は、自死された元県民局長さんの名誉を一刻も早く回復をしなければならないというふうにも思っているんですね。懲戒処分を受けたわけで、しかも、その懲戒処分は、百条委員会でも、第三者委員会の報告書でも、違法である、不当である、無効であるというふうに言われているわけで、その報告書については、先ほど大臣も、ある一定の納得をしなければならないというふうにおっしゃっていらっしゃるわけでございまして、地方公務員の懲戒処分については総務省が所管をする部分でございまして、この兵庫県の元県民局長に対する懲戒処分、違法、不当、無効と第三者委員会報告書に書いてあるということは度々申し上げてございます。
この部分において、この懲戒処分は違法、不当、無効なんだから、早くその懲戒処分を撤回して、名誉を回復する措置を取るべきなんじゃないの、懲戒処分を取消しをし、是正した方がいいんじゃないのという技術的助言を総務大臣は兵庫県に対してすべきであるというふうに私は思いますけれども、これは、村上大臣にこの質問を川内がするよということを伝えてもらって答弁を作ってくださいというふうに申し上げてありますので、御答弁をいただきたいというふうに思います。
○小池政府参考人 兵庫県の文書問題に関する第三者委員会の調査結果が公表されたことにつきましては承知をしておりますけれども、個別の懲戒処分事案につきまして、総務省としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思っております。
その上で、一般論として、地方公務員法第二十九条において、地方公務員法やこれに基づく条例等に違反した場合、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行があった場合に該当する場合には、懲戒処分の対象とすることができると規定されております。
職員の行為が懲戒処分の事由に該当するか否かにつきましては、各任命権者がそれぞれの事案に即して適切に判断すべきものと考えております。
○川内委員 それは、村上大臣にちゃんと聞いて答弁を作りましたか。
○小池政府参考人 昨日のことでございますので、大臣に川内委員がこういう質問をするということをお伝えはしておりますけれども、答弁の中身につきましては相談をしておりません。
○川内委員 いや、村上大臣だったら全然違う答弁をされたというふうに私は信じますね。全く官僚的な答弁で。
先ほど伊東大臣は、報告書について、ある一定の納得を政府としてするんだとおっしゃいましたよね。ということは、懲戒処分は違法、不当、無効であるということも、政府としては一定の納得をするということなんですよ。そうすると、地方公務員の懲戒処分を担当する、制度を担当している総務省としては、総務大臣としては、ちゃんと、是正措置をした方がいいよという技術的助言を兵庫県に対してすべきなんですよ、しなきゃいけないんですよと私は思います。
是非、川内がこういう主張を委員会でしていたということを大臣にお伝えいただいて、善処をいただければというふうに思います。
あと、私は鹿児島県出身なんですけれども、鹿児島県警でも、県警幹部が、県警本部長の、県警所属警察官の犯罪を隠蔽しようとしているのではないかという、公益通報ではないかと思われる行為をしたけれども全く別件で逮捕されたという、究極の不利益取扱いがあったのではないかというふうに思うわけでございまして、今日は警察の方にも来ていただいているのでお尋ねをしたいんですけれども。
鹿児島県警が作られた報告書で、この元県警幹部の方の事案について、「前生活安全部長(警視正・六十歳。行為時の年齢)が、県警察の前刑事部長の氏名や連絡先を記載した上で、公表を望んでいないストーカー規制法違反事件の被害女性の個人名等の職務上知り得た秘密が記載された資料を、退職後の令和六年三月、第三者に郵送したとして、同年五月、前生活安全部長を通常逮捕したものである。」というふうに報告書に書いてございます。
ここで、第三者に郵送したというふうに報告書に書いてあるんですけれども、第三者というのは、報道機関、あるいはマスコミ、あるいはジャーナリストという理解でよろしいでしょうか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
お尋ねは、個別の事件の捜査に関することであり、また公判係属中の案件でもあることから、お答えを差し控えさせていただきます。
○川内委員 だから、公益通報者保護法に絡む様々なことというのは難しいことがいっぱいあるんだなということを、今の答弁を聞いていても感じるわけですけれども。
警察庁も、この鹿児島県警問題については、鹿児島県警に特別監察に入っていらっしゃいます。警察庁としては、この幹部警察官の手紙、文書について、これはもしかしたら公益通報なんじゃないかという観点での監察をされたのか、検討をしたのかということを教えていただきたいというふうに思います。
○松田政府参考人 お答えいたします。
私は刑事部門でございまして、特別監察の内容ということはちょっとにわかにお答えすることは困難なんですけれども、鹿児島県警察におきましての対応でございますけれども、鹿児島県警察におきましては、御指摘の事件に関しまして、元生活安全部長の行為が公益通報に当たるか否かについて必要な検討を行った上で対応しております。
○川内委員 必要な検討を行った上でと。
じゃ、公益通報に当たる部分もあったということなんでしょうかね。そこはもう言えないと。検討はしたけれども、それがどういう結果であったかは、ちょっと今は係争中だし言えませんということなんでしょうか。
○松田政府参考人 お答えいたします。
委員からも先ほど御指摘がございましたけれども、鹿児島県議会における県警幹部の答弁を引用させていただきますと、鹿児島県警察においては、元生活安全部長が、県警の前刑事部長の氏名、住所、電話番号を問合せ先として記載した上で、公表を望んでいないストーカー規制法違反事件の被害女性の個人情報を第三者に漏らしていることを踏まえ、元生活安全部長が行ったこのような悪質な行為は公益通報に当たるものではないと判断し、対応したものと承知しております。
○川内委員 いや、だから、公益通報に当たるか否かは、外形的に誰の名前を使ったかということももしかしたらあるかもしれませんが、大事なのは中身だと思うんですよね。県警本部長が捜査を隠蔽しようとしたのか否かということについて、真実相当性があれば、それは公益通報として取り扱われるべき事案だったのではないかというふうに私は思います。鹿児島県警はそうは思わなかったということなのかもしれないですが。
ただし、時系列的には、偶然、鹿児島県警さんが別件の捜査で押収したパソコンの中から当該元幹部警察官の手紙というものが発見をされて、そして、その後、逮捕、起訴されたと。いや、たまたま時系列的にはそうなっていますけれども、それは偶然ですということなんですけれども、時系列的に見ると、手紙が発見されてから、元幹部警察官の、県警本部長が警察官の犯罪を隠蔽しようとしているのではないかということを書きつづった手紙が発見されてから、これまた別件で元幹部警察官を逮捕、起訴したという、時系列的にはそういう流れでよろしいんですよね。
○松田政府参考人 お答えいたします。
個別事案についてですので詳細なお答えは差し控えさせていただきますが、捜索によって資料が発見され、それにより事件が、端緒になったというふうに承知しております。
○川内委員 だから、そういう時系列からしても、もちろん、第三者の名前を使って公益通報をしたということに関しては責められる部分があるだろうというふうには私も思います。
他方で、公益通報というのは、権力を持つ側が違法、不当なことをしている、あるいはしようとしているということに関して、それを通報し、改めるということが公益通報の意義、あるいは、そういうことをしている人を保護しようとするのが公益通報者保護法の趣旨であるとするならば、あくまでも中身に着目して取り組むべき課題だったのではないかというふうに思わざるを得ないわけです。
余りこのようなことを申し上げたくはないわけですけれども、過去、警察、検察の中の不正を公益通報しようとした人がこれまた全く別件で逮捕されるとか、そういう不利益取扱い、私どもからすれば、それはちょっとかわいそうだねというようなこともあったりしたわけでございまして、この鹿児島県警の問題というのもしっかりと検証をなされなければならない課題ではないか。これも、公益通報者保護法的に言えば、鹿児島県議会で百条委員会などをつくり、あるいはしっかりと取り組むべきということに政府的にはなるのかもしれないですけれども。
最後に、伊東大臣にお尋ねをさせていただきたいんです。
何が公益通報で何が公益通報でないのかというようなこと、そして公益通報を受けた側がどのように立ち居振る舞うかということ、物すごく難しい問題がいっぱいある。そういう中でこの改正案が出ているわけですけれども、私はやはり、鹿児島県警の問題やあるいは兵庫県の問題などにこの改正案がしっかりと対応できるよというふうにしていかなければならないと思うし、野党として、みんなで修正案なども提案をさせていただくという予定になっておるというふうに聞いておりますけれども、要するに、自治体に勧告できるとか、指導できるとか、検査できるとか、調査できるとか、そういうことでございます。
伊東大臣として、兵庫県の問題というものに大臣として物すごく注視をし、そして是正をしてもらいたい、公益通報者保護法にのっとった措置を取ってもらいたいというふうに、最後、御答弁をいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
○伊東国務大臣 一連の質疑をお伺いしておりまして、また兵庫県庁の話も含めて、先生のおっしゃられること、また皆さんのお考えになること、私も一緒だなという思いはいたしました。
ただ、残念なのは、恐らく、兵庫県庁の話にいたしましても、一定の結論が出たら裁判沙汰に持ち込まれるような案件なのかなと思っているところでありまして、そうすると、また何年も何年もかかるような、そんなお話になるのかもしれないなという、将来に対する危惧がちょっとあったところであります。
公益通報者保護法につきましては、これはあくまでもやはり民事ルールとして、保護することを目的としているものでありますから、消費者庁といたしましても、どこまでの権限があり、また指導ができるか、我々も内部でしっかり検討してまいりたいと思う次第であります。(川内委員「兵庫県についてもと、ちょっと一言つけ加えて」と呼ぶ)それにつきましては、後日またお願いします。
○川内委員 終わります。ありがとうございました。
○浦野委員長 次に、伊東信久君。
○伊東(信)委員 日本維新の会の伊東信久でございます。
本日は公益通報者保護法の改正に関する質疑を伊東大臣にさせていただくんですけれども、令和二年の改正で対象範囲を拡大されまして、事業者の体制整備義務等も規定されましたけれども、現行法に基づく制度が十分に機能されていないという指摘もあって今回の改正に至ったわけなので、現行法においての問題点を指摘しながら、今回の法案についての議論を深めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
幾つかテーマがあるんですけれども、まず最初に、そもそもの、通報者の保護についてお聞きしたいんですけれども、現行法においては通報者の保護が十分に機能していないという課題が指摘されて今回の改正にも至ったわけなんですけれども、やはり、救済措置が限定的であったり、実際に保護が認められるケースも極めて少ないのが現状です。
通報者の、法律上の保護対象と認定させるための要件が今非常に厳格じゃないかということを資料一にもお示しさせていただいています、赤枠で囲っている。これは消費者庁の資料なんですけれども。
それで、今後なんですけれども、この法案ができて、実効性を高める改正を行うべく検討を更にしていくお考えがあるのか、また、通報者が安心して通報できる環境を整備するために具体的な施策をどのように講じていくか、まず大臣にお尋ねいたします。
○伊東国務大臣 伊東委員の御質問にお答えしてまいります。
今回の法改正によりまして、公益通報に適切に対応するための事業者の体制整備が徹底される、また、公益通報者の保護が強化されることになるわけであります。その結果、労働者等の公益通報が促進され、事業者の自浄機能発揮につながることや、あるいは行政機関の指導監督の実効性が向上することが期待をされます。
本法改正の国会での成立後には、改正を含む制度の内容につきまして事業者及び労働者に対する周知を徹底し、制度の普及と浸透に今後努めてまいります。
○伊東(信)委員 法案に基づいて、大臣が今お答えできる範囲でお答えいただいたと思うんですけれども、やはり、ここからの具体的な施策というのが大事になってくるんですけれども、更に深めていくために、今は通報者そのものの保護の話をお聞きしたんですけれども、通報する者があれば通報される者がいる。通報される者のいわゆる内容というのがあるわけなんですね。つまり、通報対象事実というのがあります。
これは、法律を作って、通報対象は同法及び政令で定められた法律に違反するか否かというところになるんですけれども、実際問題、現場では、再三議論になっていますけれども、企業内の内部統制やガバナンスの深刻な不備、例えば、その中にはハラスメントもあったり、倫理的に著しく問題になる行為とか、公益通報の該当の法令違反に認定されていないけれども重大なケースもあると思うんですけれども、こういったものが保護されないおそれも現行法ではあるということです。
ついては、通報対象事実の範囲を、該当法令違反に限るのではなく、社会的に看過できない不正行為や倫理的問題を含めて拡大する必要があるのか否か、どのような見解を大臣はお持ちでしょうか。
○伊東国務大臣 お答えします。
今回の法改正によりまして、公益通報者の範囲が拡大し、公益通報を理由とする解雇又は懲戒について刑事罰や立証責任の転換が導入される等、公益通報者の保護が大幅に拡大強化されるところであります。このような制度の見直しに相応するものとして、通報対象事実の範囲は、刑事罰や過料の対象行為等に限定する必要があると考えております。
なお、内部通報制度を導入している多くの事業者におきましては、公益通報者保護法が定める通報対象事実以外の法令違反やハラスメント行為に関することなど、広い範囲で通報を受け付けており、通報者の保護が図られているものと承知をいたしているところであります。
○伊東(信)委員 ここで、ハラスメント、パワハラ認定とか、そういったところの議論を持ち込むと話も長くもなるとは思うんですけれども。
いわゆる公益通報者の実効性を高める具体的な施策を講じる予定があるのかというよりも、レクを受けているときも、省庁とお話をさせていただいているときにも、やはり、問題の蓄積をしていって、その事例をつくっていくことも実際大事だというところをお聞きしたんですけれども、具体的な施策を、もう少し踏み込んで、問題の蓄積をどのように行っていくのかということを、大臣、これは通告にもさせていただいているんですけれども、もしお答えにくかったら参考人でも構わないので、お答えください。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
公益通報者保護法につきましては、約二十年前に制定がされまして、五年前に改正がなされています。その過程で認知度も少しずつ上がってきているということだと思っています。ただ、残念ながら、まずは通報への対応の体制、こちらが事業者の中で十分には取られていなかったというところがございます。
また、委員御指摘のとおり、蓄積とおっしゃられましたけれども、通報を理由として不利益取扱いを受けたということが認定された裁判例も出てきているというところであります。
こうした状況を受けまして、今回、主に四つの項目について、改正を考えております。
一つ目が、事業者の内部通報対応の体制整備の徹底と実効性の向上であります。二つ目が、保護される通報者の範囲の拡大、フリーランスの方も対象に加えるというところであります。三つ目が、通報者探索など、公益通報を阻害する要因への対処であります。さらに四点目は、通報を理由とする不利益取扱いの抑止、救済の強化であります。こうした四つの観点で必要な法整備を行ってまいります。
こうした取組によりましてどのように状況が改善していくのかというところは、我々としてもしっかり注視をしていきたいと思っています。
○伊東(信)委員 政府の答弁、今回の法案の更なる御説明という形になってしまったんですけれども、それは分かります。
やはり、更なる問題としては、じゃ、通報したはいいが、その扱いがどうなっているのかというところも現行法では指摘されるんですよね。例えば、通報先になる内部の情報窓口、若しくは行政機関の対応にやはり重大な課題があったんじゃないかということですね。だから、つまり、通報者たる者の信頼を十分に得られていないのではないかということです。
そうなると、やはり、通報を受けた組織がその内容を真摯に受け止めないという問題が散見されたと思います。調査が形式的に終わっちゃったりとか、やったよという、やった感だけ出したり、不十分に終始したり、通報先自体が当該の不正に関与しているということで、残念ながら、もみ消しや隠蔽が行われたという事例も報告されているわけですね。
本当に、外部の行政機関に通報した場合でも、受理された後の対応や進捗についても十分な説明がなされていない、実質的に機能していないと感じられる例が多いんですけれども、こういった通報先となる内部、外部、この窓口の中立性、公正性、調査能力をどのように確保して信頼性を向上していくか、これも大臣、できるだけ具体的にお答えいただければ幸いです。
○伊東国務大臣 内部通報対応の体制の調査能力の確保等々であります。
御指摘のとおり、事業者が内部の労働者等からの公益通報に適切に対応するためには、担当者の調査能力の確保や、あるいは、事案に関係する者が調査に関与しないなど、調査の独立性が重要となります。
公益通報者保護法に基づき事業者が取るべき措置の内容を定めた法定指針におきましても、内部通報の体制の定期的な評価、点検を実施し、必要に応じて体制の改善を行うこと、また、事案に関係する者を公益通報対応業務に関与させない措置を取ることを求めております。
消費者庁といたしましては、各事業者において、法定指針が求める措置が適切に講じられるよう、引き続き法制度の周知啓発や体制整備の支援に努めてまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 消費者庁としても、政府としても徹底周知をしていただけるというところなんですけれども。
後ほどまたお聞きするんですけれども、例えば中小企業で、大企業だったらいいんですけれども、中小企業で、三百名ぐらいの企業がある、そこにそういった窓口なり専門機関をつくっていくというところは、やはり企業側の負担になるわけですよね。
じゃ、それを網羅していこうと思えば、その対象人数を減らしていくという発想はあると思うんです。例えば百名とか、二百名でもいいですが、減らしていくという発想はあるんですけれども、そうなっていくと、やはりそれ自体も企業側の負担になるんじゃないかという議論というのは、政府ではあったのでしょうか。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
体制整備につきましては、今は三百人超の事業者に対して求めているところであります。こちらにつきましては、特に従事者、公益通報を取り扱う従事者を指定する義務を、これは法律の中でも定めているところであります。従事者に指定をされますと、守秘義務がかかりまして、こちらについては罰則も、現行法でもあるところであります。
加えまして、今回の改正案では、従事者指定義務に違反をした場合には、最終的には命令、罰則も設けることを考えております。そこからしますと、企業にとっての負担というのは必ずしも軽いものではないという認識をしているところであります。
○伊東(信)委員 今僕がお聞きしたように、やはり、一つの基準として人数のこととかを設けたりするのも、今後の課題とか事例を見ながら、若しくは経済的な状況とか社会的な状況を見ながら今後検討する余地はあるのかどうか、それもちょっと政府にお聞きしたいんですけれども。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
現状におきましては、三百人超の、従事者指定義務がかかっている事業者においても十分な体制が取れていないと我々としては認識をしておりまして、まずはそこで体制整備を徹底していくということが大事だと思っています。
今後につきましては、実際の被害の状況ですとか、あるいは制度の浸透、普及の状況等を見まして今後検討する余地というのは、必ずしも否定するものではございません。ただ、現状におきましては、まずは、現行法で義務がかかっている事業者がきちんと義務を果たしていただくという形に持っていくことが極めて重要だと認識をしているところであります。
○伊東(信)委員 否定するべきものではございませんという答弁はいただいたわけで、中小企業に関しては、また後に質問させていただくわけなんですけれども。
その前に、これもちょっと兵庫県の例にも関係してくるんですけれども、兵庫県の例でも、まずは匿名であったという話ですね。後に名前が分かったということですけれども。
一つ、現行法の問題点として指摘したいのが、やはり、匿名通報に関する取扱いも関係してくるんじゃないかと思います。
法律自体は、職場で発生する法令違反や不正行為の早期発見、是正ということで、これは、その職場自体というか、通報される側に関しても、実際に内部の方で浄化していくべきだという考え方にも基づいているわけなんですけれども、ただ、やはり、この現行制度に対する匿名通報に関する取扱いが曖昧であったり、そうなった場合、匿名であれば、通報者の保護やその実効性に大きな課題を残しているのではないかという指摘があります。
現行の公益通報者保護法では、匿名で行われた通報に対して法的保護の範囲が明確ではない、通報先も、組織によっては、匿名であるということを理由に調査を行わなかったり、内容自体を軽視している例がやはりありました。
やはり、法律というのは、罰則というよりも、人を裁くというのではなくて、何のために裁くかというと、それを予防するためですよね。ですので、匿名通報に対する取扱いの明確化や法的保護の拡充、そして、匿名であっても調査義務を負わせる、そういった制度の必要性というのをちょっと指摘したいんですけれども、それについて大臣はどのようにお考えでしょうか。
○伊東国務大臣 公益通報者保護法では、対象となる通報を、通報者が自身の名前を名のった通報に限定しておらず、匿名であっても、本法に定める要件を満たしていれば、公益通報として保護の対象となるところであります。
消費者庁では、内閣府告示である指針の解説やQアンドAにおきまして、匿名通報であっても公益通報者保護法上の公益通報に該当することを明記しており、今後も事業者及び労働者に対する周知に努めてまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 今までの法律では、やはり匿名通報に対しての環境を整えるということが曖昧であったから、今回、通報者が安心して通報できる環境を整えるよ、そして今後もそれを検討していくというような理解でよろしいんでしょうか。大臣からでもいいし、参考人からでも。
○藤本政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど大臣からお答えさせていただいたとおり、現行法におきましても、匿名通報であっても公益通報者保護法上の公益通報に該当するということとしております。こちらについては、内閣府の告示であります指針の解説ですとかQアンドAにおいても明示をしているところであります。
ただ、委員御指摘のとおり、そうした匿名通報も保護の対象であるということが十分世の中に周知されているかという点につきましては、我々としても課題として認識をしているところであります。ここはしっかりと、匿名通報も保護の対象であるという理解が世の中に浸透するように、今後とも周知に努めてまいりたいと考えています。
○伊東(信)委員 そもそも、匿名者であっても保護の対象であるということですね、現行法でも。
では、ちょっとここの質問に関係しているんですけれども、匿名通報者の対応の強化というのは今回の法律ではされているんですか。それもちょっとお答えください。周知徹底以外に。
○藤本政府参考人 匿名の通報につきましては、現行法でも保護の対象になっております。そこのところにつきましては、今回の法改正でその中身を変えるものではございませんが、引き続き、匿名通報についても保護の対象ではありますので、そこはしっかり守られるように執行面で努めていきたいと思っています。
○伊東(信)委員 是非とも匿名通報者に対しても、やはりなかなか実名を出しては言いにくいと思うんです。かといって、先ほどSNSに関しての質問もありましたけれども、それをSNSに出すというのは、どちらにとっても余り利益がないようにやはり感じますので、まずは周知徹底、おっしゃっていただいた周知徹底をお願いいたします。やはり現場の人でもそれを知らない人が多いので、周知徹底で、次にやはり対応の強化をしていただければと思います。
先ほど少し質問もさせていただいたんですけれども、中小企業に関してなんですよね。だから、改正によって一定規模以上の事業者に対して義務づけられたのは、それはそれで評価すべきなんですけれども、やはり中小企業に至っては努力義務にとどまっているために、制度の運用や対応体制が十分に進んでいなかったというのはやはり指摘されます。
ただ、さっき事業者規模の話をお聞きしましたけれども、人員、賃金、そしてノウハウの制約から、通報窓口の設置や通報対応の体制づくりというのは、やはり中小企業には難しい。そうなると、やはり制度自体の形骸化や機能不全に陥っているケースも残念ながら多く見受けられています。
現行制度では、仮に通報されたとしても、今度は窓口担当者が専門知識が残念ながら不足していたり、なかなか研修を受けたり勉強する機会というのは、日々の仕事の中ではやはり大変だと思うんですよね。それで、窓口自体の独立性も、中小企業の中で、小規模になればなかなか難しいので独立性も欠如していくし、通報後の対応方法の不備などによって通報が適切に扱われない、通報者保護が実質的に機能していないというのが現状なんですよね。
中小企業における内部通報制度の実効性を高めるために、政府としてはどのような支援策や制度と機能の補完を講じていくお考えでしょうか。これは、大臣、お願いいたします。
○伊東国務大臣 中小規模事業者の体制整備についてでありますが、これを促すには、まずは事業者の経営者が内部通報制度の重要性や必要性、また導入方法等について理解することが重要であります。
このため、消費者庁におきましては、中小規模事業者等の経営者向けに啓発動画やパンフレット、また従業員向けの研修動画や内部規程、通報受付票のサンプル等を作りまして、これと併せて、内部通報制度導入支援キットと称しまして消費者庁のホームページ上で提供し、広く周知をしているところであります。
また、法が定める、公益通報を理由とする不利益な取扱いの禁止や、今回の法改正で措置される公益通報者の保護の強化は、事業者の規模によりまして変わるものではありません。法改正後は、事業者及び労働者に制度の見直しについて周知啓発を行うこととしており、一層の制度の普及と浸透に努め、実効性を確保してまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 対策を立てていただけるということなんですけれども、規模にかかわらないといっても、やはりそれができない中小企業もあるわけですよね、少人数の。そういったところに、例えば、共通の外部窓口とか第三者機関による通報受付支援、若しくは体制整備に対する財政的とか人的支援とか、そういった具体的な取組というのは考えられているんでしょうか。大臣、答えにくかったら参考人でも構わないです。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
今、三百人以下の事業者に対しては、体制整備の努力義務がかかっているところであります。ただ、今の段階では、制度の趣旨、あるいは、こうすれば対応できるんだというところを御理解いただくところも、まだまだ取組が必要な状況だと思っています。
そうした考えの下に、先ほど大臣からもお答えいたしました導入キット等を含めまして、こういう形で体制を整備してくださいというところを中心に、今は対策を取っているところであります。
今後につきましては、中小企業の事業者の体制整備の状況とかを見ながら、必要な措置をしっかり考えていきたいと思っています。
○伊東(信)委員 もう本当にしっかりとお願いしたいと思うんです。
我々維新の会は、そもそも、人のことを言うんだったら自分のことをちゃんとせえよというところでございまして、この公益通報者保護法と少し離れるかもしれないですけれども、選挙に関して、我々は、選挙におきまして国民の負託を得て、この場で御質問させていただいているんですけれども、この選挙という民主主義に係る局面においても、この法律の適用や通報者保護の在り方において、現行制度は十分に対応できていないのではないかと思います。
つまり、選挙の過程で、あってはいけないことなんですけれども、選挙運動や、お耳の痛い話だと思いますけれども、政治資金の扱いにおける法令違反、公職選挙法違反、不適切な運動員の雇用、選挙買収、行政機関や自治体による不当な関与、重大な不正が行われる可能性というのは、やはり選挙においては残念ながら散見されました。これは、公益通報者保護法の通報対象事実や通報先の制度設計が選挙に関する通報を想定していないことも一因に考えられます。
もちろん、公職選挙法等、選挙関連の不正に関してはございますけれども、この選挙関連の不正に関して公益通報者保護法制度が十分機能するように、制度の運用改善や、通報対象の明確化、公務員の通報保護の強化、そして、政治的圧力からの独立性を担保した第三者機関による対応の仕組みなど、具体的な制度整備を検討すべきではないかなと思うんですけれども、政府の見解と今後の対応方針について、大臣に明確に御答弁いただければと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
公益通報者保護法は、そもそも、食品偽装ですとかリコール隠しといったような国民生活の安全、安心を損なう企業不祥事を端緒として制定されたものであります。このため、現在の法目的では消費者保護という観点に重点を置いておりまして、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護を直接の目的とする法律を対象法律としております。この中には御指摘の政治関連の法律については入っていないというのが現状であります。
現在の法目的の範囲におきましても、事業者の体制整備ですとか、不利益取扱いの抑止、救済などにつきまして、制度の実効性上の課題があると承知をしております。まずは、それらの課題に適切に対処をして、制度の充実強化を図ることが重要であると我々としては考えているところであります。
○伊東(信)委員 なかなか、我々にも関わってくることなので、大臣もお答えにくいかなとも思いますし、政府としての答弁というのもなかなか難しいのかもしれないですけれども、やはり、こういった法律違反に対してそれを通報した、それで通報した者の権利を守るということで今回の法改正もあったと承知しております。
ですので、国民の皆さんは、企業は企業にとって、昨今の経済状況とか、いろいろ苦労されているところもありましょう、今の時代に合った経営の仕方なり状況というのもあろうかなと思うんですけれども、それが著しき法律違反になったり、若しくは通報した者を不当に解雇したり金銭的なところで罰を与えると、それはやはり社会的な問題になるというところなんですけれども、そういったところをしっかりと食品も含めてやるのであれば、なかなか法律の対象としては難しいけれども、我々の選挙制度もやはり見直すべきだと指摘させていただきまして、私の質問を終わります。
○浦野委員長 次に、西岡義高君。
○西岡(義)委員 国民民主党の西岡義高です。よろしくお願いいたします。
では、早速質問に入ってまいります。
今回の改正で、公益通報を理由としました解雇又は懲戒を行った者に対して刑事罰が新設されました。これは大きな一歩だと思っております。
しかしながら、実際の現場で起こっている不利益取扱いというのは、嫌がらせが一番多くて、その次が不当な配置転換ということですね。これらをやることによって自主退職に追い込んでいくような、こういった不当な取扱いがあります。今回の刑事罰の対象にはこの配置転換が含まれておりません。
これまでの御答弁の中で、伊東大臣も、日本の雇用はメンバーシップ型雇用が一般的であるがゆえに、公益通報者に対する配置転換を制限することは困難である、そういう旨の御答弁をされております。
しかしながら、必ずしもメンバーシップ型の会社ばかりではなく、今、ジョブ型の雇用というのも増えてきております。大臣が一般的とおっしゃいましたけれども、日本に存在している法人のうち、現在メンバーシップ型雇用というのはどれぐらい割合があって、一般的とおっしゃった根拠は何なのかを教えていただければと思います。
○伊東国務大臣 西岡議員の御質問にお答えしてまいります。
メンバーシップ型雇用につきましては、法令で定義された用語ではなく、また、消費者庁において実態調査を実施しているものではないため、そうした雇用を採用する企業の割合をお示しすることは難しいところでもあります。
他方で、民間事業者が公表している実態調査結果を見ますと、メンバーシップ型雇用を採用する事業者の割合は、おおむね六割から八割程度存在するものだと推測をされているところであります。
ちなみに、このメンバーシップ型というのは、雇用慣行として、採用時に勤務先や職務内容が定まっていないメンバーシップ型、そしてそれが具体的に定まっているジョブ型という二種類を大別しているところであります。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
私も調べたんですけれども、はっきりした数字というのが出ていない。メンバーシップ型とジョブ型併用というか、一緒に取り入れているような会社もあるので明確な数字は出てこないんですが、おおむね六割から八割ぐらいというのは同じところだと思います。
ただ、では逆に、メンバーシップ型を理由にされるということであれば、ジョブ型の雇用の法人だけに注目した場合に、配置転換について刑事罰を適用することは可能という認識でよろしいのでしょうか。
○伊東国務大臣 労働法は、国内の労働慣行や労働実務を踏まえて制定、運用されているものとまずは承知をいたしております。
全ての事業者及び労働者に適用される公益通報者保護法におきまして、ジョブ型雇用を採用している一部の事業者のみ対象として罰則の対象を拡大することは、公平性の観点から妥当ではなく、また事業者の人事政策に大きな影響を与えることにもなり、適当ではないと考えているところであります。
○西岡(義)委員 ジョブ型だけを取り上げて罰則を規定することは妥当ではない、全体を見てそこは決めていかなきゃいけないということは理解しました。
ということは、ジョブ型だけを見れば、ジョブ型に対して罰則をつけることは、やるのは可能という認識でいいんですかね。そこは全体を見てできないという結論に至ったというのは分かりますけれども、一応、そこはこれ以上はお聞きしませんが、そういう認識でさせていただきたいと思います。
先ほども申し上げました配置転換、これはメンバーシップ型雇用でも、自主退職に追い込むような形で、必ずしも合理的ではない配置転換が行われている、存在しているのは認識しております。
今回、罰則以外にも、公益通報後一年以内の解雇又は懲戒は公益通報を理由としたものとして推定するということにされていますけれども、こちらにも配置転換が入っていないんですが、これも配置転換を含めるべきだと考えますけれども、こちらはどのような見解でしょうか。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
民事訴訟におきましては、自己に有利な法律効果の発生要件となる事実について立証責任を負うことが原則とされておりまして、立証責任の転換は、この例外を設けるものであると認識をしております。
このため、我が国の労働法で立証責任を転換している事例は、男女雇用機会均等法の妊娠中又は出産後一年以内の解雇のみであるというのが現状と認識しています。
我が国では、配置転換が労働契約法上の権利濫用と認められるためには、労働者に相応の立証負担があるというのが現状であります。
このような労働訴訟実務との平仄ですとか、あるいは事業者の人事異動への影響を踏まえますと、配置転換について公益通報を理由とすることの立証責任を事業者に転換することは、現状困難であると考えております。
○西岡(義)委員 配置転換は、私も会社員が長かったので、周りから見ても明らかにおかしいなというような配置転換があると、あいつ何かやらかしたのかとか、あれを公益通報したから異動になったんだなというような目で見られる。そういう目で見る人がいると、公益通報に対するブレーキというか、ああいう目に遭うんだったらやめておこう、そういったことにもつながりかねないので、配置転換も、今後の議論の中でしっかりと、責任の転換であったりとか罰則の方を検討を続けていただければと思います。
では、次の質問に入ります。
令和二年の改正におきまして、公益通報者保護制度、実効性の向上を図るために内部通報体制が強化され、その際に、従業員数三百人超の事業者に対して内部通報への対応体制整備が義務づけられました。従業員数三百人以下の事業者に対しては、努力義務という形になっております。
従業員数三百人以下の事業者における内部通報制度の導入は進んでいるようですけれども、令和六年四月の実態調査の結果で導入率は四六・九%と、まだ全体の半分ぐらいというところです。導入しない理由で最も多いのが、努力義務にとどまっているからということが一番多い回答だったとなっております。
従業員数三百人超といういわゆる大企業は全体の〇・五%、その企業で働く従業員数で見ても四二・九%と、全労働者の半分以下となっております。その中で、企業が自浄作用をしっかりと働かせて、コンプライアンスを遵守していく環境を整えていくためには、今後は中小企業へしっかりと展開していくことが肝となってくると思いますけれども、今後この中小企業への展開をどのように進めていくのか、展望をお示しください。
○伊東国務大臣 消費者庁の実態調査等の結果、今先生からも御例示がありましたけれども、従業員数三百人超の義務対象事業者でありましても、体制整備の不徹底と実効性の課題、これが明らかとなってきているところであります。こうした中、まずは義務対象事業者が、公益通報に適切に対応するための体制整備の徹底と実効性向上を図ることが重要であると考えております。
従業員数三百人以下の努力義務対象の事業者につきましては、内部通報制度の重要性やあるいは導入方法等につきまして、一層の周知啓発を行い、その認識を更に高めてまいりたいと考えております。
○西岡(義)委員 中小企業は、規模が小さくなれば、やはり、オーナー社長で、ワンマン体質で、そもそも社長が怖くて何も言えないというような雰囲気であったりとか、内部通報すれば誰がやったかすぐ分かるというような状況かと思います。
ですので、中小企業においては、内部通報よりも、やはり外部への通報であったりとか相談窓口のような存在が重要になってくると思うんですけれども、この点では、企業だけでは進められませんので、国や自治体がしっかりとサポートしていかなければならないと思うんですけれども、具体的に、中小企業に対する国のサポート、自治体のサポート、どのように進めていくのかお示しください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
中小規模事業者の体制整備を促すには、まずは事業者の経営者が、内部通報制度の重要性や必要性、また導入方法について理解することが重要だと考えています。
このため、消費者庁におきましては、中小規模事業者等の経営者向けに啓発動画やパンフレットを作成しまして、従業員や従事者向けの研修動画や、内部規程、通報受付票のサンプル等と併せて内部通報制度導入支援キットと称しまして消費者庁のホームページ上で提供しているところであります。これにつきましては、新聞、雑誌、ラジオによる広告、インターネット上のターゲティング広告、業所管省庁と連携した業界団体を通じた周知、全国の約二百万の事業者に対するリーフレットの発送等を通じまして、事業者の経営者に届くように広く周知をしています。
加えまして、消費者庁に設置をしました公益通報者保護制度相談ダイヤルにおきまして事業者からの相談に応じる等しまして、中小規模事業者の内部通報制度の導入を支援をしているところであります。
加えまして、二号通報、行政機関への通報につきましては、これは当然のことながら、中小規模事業者の労働者、就労者からも受け付けておりますので、こちらについても、引き続き活用を促していくものと思っています。
引き続きこのような取組を行うとともに、地方自治体に対しましては、地方消費者行政強化交付金の活用も促しながら、地域の事業者に対する制度の周知を図ることなどによって、公益通報者保護制度の普及と浸透に努めてまいりたいと考えております。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
しっかりと中小企業の末端の従業員まで行き届くように、引き続き周知をお願いいたします。
では、次の質問に移ります。
昨今、働き方の多様化が進んで、従業員を持たない個人事業主、一人社長といった、いわゆるフリーランスという働き方が普及してきました。公益通報との関係においても、フリーランスは、労働者と同様に取引先の不正を知り得る立場にある、なおかつ、労働者に準じる弱い立場にあることが多くて、公益通報を理由とする業務委託契約の解除や取引の削減など不利益な取扱いを受ける懸念があります。
これを受けて、今回の改正では、相手方事業者と業務委託関係にあるフリーランスを公益通報の保護対象として追加し、契約の解除、取引数量の削減、取引の停止、報酬の減額その他不利益な取扱いの禁止規定が導入されております。
その一方、元請、下請の関係にあるいわゆる下請事業者もフリーランスと同じように弱い立場に置かれていると考えますけれども、今回の保護対象とはなっておりません。下請事業者も、相手方事業者の不正を知り得る立場にあり、弱い立場にもあるんですけれども、取引事業者としては、今回、フリーランスのみを保護対象としています。
下請事業者が対象とならなかった理由を御説明ください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
公益通報者保護法は、労働者等、事業者に対して弱い立場にある個人を、公益通報者として、公益通報を理由とする不利益な取扱いから保護する法律であります。
フリーランスにつきましては、委員御指摘のとおり、その多くが労働者に準ずる弱い立場にあることを踏まえまして、今回の改正で保護の対象としております。
下請事業者の労働者等は、公益通報を理由とする下請事業者による不利益な取扱いから保護はされておりますが、下請事業者自体は、個人ではないことから、公益通報者として保護の対象にはなっていないというのが現状であります。
なお、一定の通報をしたことのみを理由に報復として取引先事業者に不利益な取扱いをする場合など、下請法を始めとして、公序良俗の観点からも問題となるケースもあると考えております。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
下請事業者にも多くの従業員がいて、多くの個人が働いているというところがありますので、この人たちの生活を守るためにも、下請法との絡みもおっしゃっていましたけれども、各省庁連携してしっかり守っていっていただきたいと思います。
不正や不祥事を早期発見して健全な環境をつくることが目的でもあると思いますので、今後この議論は続けていただければと思います。
次の質問です。
先ほど、中小企業のところで、外部通報できる体制をしっかりサポートしてほしいというお話をさせていただきました。
この外部通報を行うためには、不正があると信ずるに足る相当の理由があること、要は証拠の提出等が必要になってきます。一方で、証拠となるような資料の収集や持ち出し行為については、裁判例で、通報を理由とする場合の民事免責が認められたものは幾つかあるようですけれども、法律上、免責は規定されていません。
そのため、公益通報を目的としているにもかかわらず、その証拠を資料として持ち出せば、情報漏えい、守秘義務違反等で逆に処分されてしまうようなリスクも考えられます。例えば、刑法の窃盗罪、横領罪、背任罪、不正競争防止法、不正アクセス行為の禁止に関する法律、個人情報保護法等々、いろいろなことでリスクがあるわけです。こういった状況に、正義感で通報してもハイリスク・ノーリターンだというような声も聞かれます。
今回の法改正において、公益通報による資料収集、持ち出し行為についての免責規定を導入しなかったことについて、これまでの民事免責が認められた裁判例をどのように分析されたのか、また、その分析を踏まえた上で導入しないと決定に至った理由を教えてください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
公益通報の証拠となる資料は、事実関係を調査するために重要な位置づけを占める一方で、通報者による内部資料の収集や外部への持ち出しは、事業者の情報管理や組織秩序に悪影響を及ぼす場合があると認識をしております。
御指摘の裁判例についてですけれども、裁判例におきましては、通報に伴う資料持ち出し行為を事由とする懲戒処分を無効としたものが複数見受けられますが、通報との関連性や、通報者の動機、行為の態様、影響などを総合的に勘案したものと承知をしております。
このため、公益通報を理由とする資料収集、持ち出し行為を一定の要件の下で免責とする規定を設けることは現状困難と考えておりまして、事案ごとに事情を総合勘案の上、判断することが妥当であると考えております。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
検討会では引き続き検討すべきこととされたようですので、今後、具体的にこの件も検討を進めていただければと思います。
ちょっと時間も迫っていますので、次の質問に移ります。
内部通報窓口に、自己の利益を図る目的ではないかと考えるような通報が少なからずあるという御指摘があるようです。現在、このような濫用的通報については、第十条で、他人の正当な利益等を尊重する努力義務規定がございます。
一方で、国際的には、EU公益通報者保護指令では、通報者が故意に虚偽の通報を行った場合の罰則規定でしたり、ドイツやフランスでは、悪意のある通報者に対する罰則規定がございます。
今後もこの点は引き続き検討されていくかと思いますけれども、平成十八年四月、本法律の施行後以降の濫用的通報について、消費者庁として把握している状況と、その把握した事実に対する評価をお聞かせください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
昨年、消費者庁に設置をしました有識者検討会におきまして、民間事業者から、自己の利益を図る目的ではないかと考えられるような通報が少なからずあるという指摘をいただきました。
濫用的通報の例としましては、通報内容が虚偽であると知りながら行う通報ですとか、既に是正され解決した事案であることを知りながら、専ら自己の利益を実現するために行う通報等があると承知をしていますが、まずは、事例を幅広く集めて実態を調査する必要があると考えております。
○西岡(義)委員 ありがとうございます。
実態調査をされるということなのですが、その実態調査、具体的なスケジュール感とかが決まっていれば教えてください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
消費者庁では、民間事業者における内部通報制度の整備や運用状況を把握するために実態調査を実施しているところであります。今年度もこのような実態調査を実施することとしておりまして、御指摘の濫用的通報に関する実態調査につきましても、これに併せて実施することを検討しております。
○西岡(義)委員 次の質問に行きます。
今回の改正で、第二条第一項各号に定める事業者は、正当な理由がなく、公益通報者である旨を明らかにすることを要求することその他の公益通報者を特定することを目的とする行為をしてはならないものとすることとされました。匿名で公益通報した者を正当な理由がなく捜してはいけないという規定ですが、この正当な理由というのは具体的にどういうことなのでしょうか。
これと、この探索行為について罰則規定がないことで、ちょっと抑止力が弱いものではないかと感じていますけれども、今回、探索行為に対する罰則規定を入れなかった理由、抑止力に影響がないのかどうか、最後に見解をお聞かせください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
事業者が公益通報者を探索する行為は、原則許容されるものではなく、この正当な理由は、例外的かつ限定的な場合にとどめるべきであると考えております。例えば、匿名の通報につきまして、通報者が具体的にどのような局面で不正を認識したのかなどを特定した上でなければ必要な調査や是正ができない場合に、公益通報に対応する従事者が通報者の特定につながる事項を問うことは、正当な理由に該当し得ると考えております。
探索の禁止にも罰則を設けるべきという御指摘につきましてですが、令和二年の改正によりまして、公益通報に対応する従事者の守秘義務と、守秘義務違反時の刑事罰が規定をされました。これによりまして、従事者として指定されていない者が公益通報者を探索する目的で従事者から公益通報者を特定させる情報を聞くことは、従事者の守秘義務違反の教唆犯として罰則対象となり得ると認識をしています。
また、生命、身体、自由、名誉又は財産に対して害を加える旨を告知して脅迫し、公益通報者であることを認めさせようとした者は、刑法規定により、強要未遂罪や強要罪で罰則対象となると認識をしております。
これらに加えまして、今回の法改正では、通報者探索の禁止規定を設けるほか、通報者を探索し、公益通報を理由とする解雇又は懲戒をした者には刑事罰を規定することにしております。
これによって、公益通報者の探索行為に対する強い抑止力が働くことが期待をされていると認識しています。
○西岡(義)委員 終わります。ありがとうございました。
○浦野委員長 この際、暫時休憩いたします。
午後零時十二分休憩
――――◇―――――
午後一時五十九分開議
○浦野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。たがや亮君。
○たがや委員 れいわ新選組のお守り役、たがや亮です。本日もよろしくお願いをいたします。
日本文化とは、和をもって貴し、一人はみんなのために、みんなは一人のためになど、社会性が求められ、どうしても個人よりも社会性が大前提にあるように思います。
例えば、まさに我が党ですが、令和の牛歩、勇気を持って大石議員が一人でやっていることを社会性がないと思われる方々も少なくない中で、社会性という大きな壁があるように感じます。
公益通報者保護法も、よくない言葉ですが、密告、チクりなど、大勢の側から見ればネガティブな印象になるんじゃないかなとも感じます。このような逆境を乗り越え、不正を目の当たりにして見て見ぬふりをせず、勇気を振り絞って行動してくれる通報者を公益通報者保護法がしっかりと守ることができなければ、この法案の意味がないと思います。
そこを踏まえて質問をさせていただきたいと思います。
そもそも論として、平成十六年に公益通報者保護法が制定され、令和二年に改定されているにもかかわらず、企業の不祥事が後を絶ちません。
もちろん、この法律だけが企業の不祥事の歯止めではありませんが、完璧はないかもしれませんが、フジテレビや齋藤兵庫県知事のような大きな問題になってしまったことは、重大な欠陥があるのではないかと言え、それは何だったのかということを、伊東大臣に率直な見解をお伺いしたいと思います。
○伊東国務大臣 たがや議員の御質問にお答えしてまいります。
企業の不祥事につきましては、企業ガバナンスの欠如や経営環境の変化等、様々な要因によって起こると考えられております。外部通報によりまして不祥事が明らかになることも多く、不祥事が多く発生していることが公益通報者保護制度が機能していないという評価に直接つながるものではないと考えているところであります。
○たがや委員 大臣、ありがとうございます。
それを踏まえて、今回の法改正でその欠陥が改善されるのか、その点についても大臣の見解をお聞かせください。
○伊東国務大臣 お答えいたします。
今回の法改正は、公益通報に適切に対応するため、事業者の体制整備を徹底し、公益通報者の保護を強化するものであります。これによりまして、労働者等の公益通報が促進され、事業者の自浄機能発揮につながることや、行政機関の指導監督の実効性が向上することが期待されるところであります。その結果といたしまして、不正行為が早期に発見、是正され、国民の生命、身体、財産等の保護が更に図られるようになる、このように考えているところであります。
○たがや委員 大臣、ありがとうございます。
公益通報者保護法の根本について、ちょっとお伺いをいたします。
この法案は、組織は必ず腐敗するということを前提としているのでしょうか。あるいは、よくない言葉ですが、組織内の密告、つまり内部通告を奨励し、密告者、つまり通報者を保護することが目的なのか。端的にお伺いします。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
公益通報者保護法では、事業者の過度な利益追求により不正が発生する可能性を前提としております。
法律は、公益通報者の保護を図るとともに、国民の生命、身体、財産等の保護に関わる法令の遵守を守り、もって国民生活の安定及び社会経済の発展に資することを目的としております。
○たがや委員 ありがとうございます。
あえて密告、密告者という言葉を使ったのは、この公益通報者保護法は、行き過ぎると、全体主義国家的な監視社会につながるのではという危うさを感じたからですが、伊東大臣はどう感じますか。
○伊東国務大臣 公益通報者保護制度の健全性を確保するためには、公益通報者保護の強化によりまして事業者の経済活動が過度に萎縮することがないよう、制度としてのバランスを確保する必要がある、このように考えております。
今回の法改正の方向性につきまして提言をいたしました有識者検討会の報告書は、労使双方の立場の委員の意見を踏まえた内容になっている、このように承知をいたしているところであります。
○たがや委員 非常に線引きというのは難しいんですけれども、公益通報というのは行き過ぎちゃうと社会が萎縮してしまうと思いますし、かつての日本の五人組の相互監視や、ソ連や中国といった旧共産圏諸国のような、密告の奨励にしてはならないと思っております。不正の防止との線引きは本当に難しいんですが、しっかりと様々なことに配慮しながら、制度の完成度を上げていただけるようお願いをいたします。
次の質問に参ります。
四月三日の本委員会での質疑の際に、政治、行政が襟を正す意味でも、対象となる法律に公職選挙法や政治資金規正法などを加えるべきだと提案しました。
一昨日の四月十五日の本会議の大臣答弁で、国や地方公共団体といった行政機関は、自ら法令遵守を図り、義務を遂行することが期待されており、消費者庁の行政措置は適用しないとありました。
その答弁を踏まえれば、公益通報者保護法は、自ら法令遵守を図れず、義務を遂行することができていない場合に発生する不正行為を防止するための制度だと考えます。また、さきの委員会でも申し上げましたが、公務員に甘くて民間に厳しいでは理屈は通らないと思います。
国や地方自治体は信じるに値する組織で、民間は信じるに値しない組織であり、民間の事業者は、自ら法令遵守を図らず、義務を遂行することが期待されない存在なのでしょうか。伊東大臣の見解をお伺いします。
○伊東国務大臣 恐らく、そうは言っていないことであろうというふうに思います。
民間事業者が、御指摘の、自ら法令遵守を図らず、義務を遂行することが期待されない存在であるとは考えておりません。しかし、過度な利益追求によりまして不正を行い、国民の生命、身体、財産等に被害が生じることも、これはあり得ることであろうと思います。
なお、公益通報者保護法の成り立ちにおきましては、大企業であっても過度の利益追求のために犯罪行為やその他の法令違反行為が行われていたことから、事業者自身による取組だけに委ねることへの限界があるということも勘案して作られているものであります。
○たがや委員 ありがとうございます。
民間というのは、私ももう会社を三十六年やっていますけれども、利益の最大化というのが最大のミッションですので、民間が過度な利益の追求でというのは大臣がおっしゃるとおりなんですけれども、昨今の政治、行政の不祥事を踏まえれば、行政に当てはまらないという考えは国民にどう理解していただけるのかという疑問は残ります。
次の質問に移ります。
民間事業者における内部通報者の制度導入状況を見ると、三百人を超える大規模な事業者では、九割以上で内部通報制度が導入されています。より小規模な事業者への制度導入の必要性があると思いますが、百人程度の中規模事業者が努力義務で内部通報の窓口を設置している例は全国でどれぐらいあるか、また、効果は上がっているのか、参考人で結構ですので教えてください。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の、百人程度の中規模事業者のうち、通報の窓口を設置している割合は、直接、百人程度ということでは承知しておりませんけれども、消費者庁が令和五年度に実施をしました民間事業者に対する実態調査で、回答がありました五十一人超三百人以下の事業者の窓口の設置の割合は約六割でありました。この割合は、平成二十八年度の調査では約四割でありました。
体制整備の努力義務の導入により、効果が上がっていると評価をしております。
○たがや委員 ありがとうございます。
では、中規模事業者では、公益通報が行われた際に事実調査を行えば、すぐに周囲の社員に気づかれるおそれ、懸念があります。秘密を保持しつつ、慎重に事実調査を行う方法をどのようにレクチャーしているのか、お伺いします。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
消費者庁におきましては、法定指針のほか、指針の解説を作成、公表しまして、調査の際に推奨される考え方や具体例を示しております。
委員御指摘の、通報者の秘密を保持しつつ慎重に事実調査を行う方法として、例えば、通報内容の該当部署以外の部署にもダミーの調査を行うことですとか、あるいは、タイミングが合う場合には定期監査と併せて調査を行うことなどを示しております。
○たがや委員 ありがとうございました。ダミーを行って特定できないようにするということ、よく分かりました。
最後の質問に参ります。
公益通報を行う際の一号通報、すなわち社内通報のプラスアルファとして、既存の一号通報とは別建てで、公益通報を行いたい人が事業所外へ気軽に相談できる窓口として、現状の一号通報を担保する形で、事業所へ資料の提出などについてある程度強制力のある第三者機関的な相談窓口を設けてはどうかと提案しますが、大臣の御見解をお伺いします。
○伊東国務大臣 お答えいたします。
今、たがや委員御指摘の、第三者的な専門窓口の詳細は明らかではありませんが、現行法では、内部通報先として事業者の外部に窓口を置くこともできることとしております。
行政機関以外で事業者に対して調査権限がある民間の第三者機関を設置する必要性については、各事業者の判断により検討されるべきものと考えているところであります。
○たがや委員 大臣、ありがとうございます。
私も経営者ですけれども、外部の弁護士や顧問弁護士に窓口を設けても、経営者側にデメリットになるようなことは余りしないということもありますし、すなわち、そういうところに依頼しても利益相反になりやすいと思いますので、今伝えた提案、なかなか難しい提案かもしれませんが、いろいろな角度からいろいろと御検討いただければと思いますので、よろしくお願いします。
質問を終わります。
○浦野委員長 次に、本村伸子君。
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
公益通報者保護法案について質問をさせていただきたいと思います。
二〇〇四年に公益通報者保護法が制定されるきっかけになったのは、運輸業界の闇カルテルを内部告発した、トナミ運輸の岐阜の営業所で働いていた方が告発をして、その後配転を受け、そして、業務上必要がないのに会社の二階の個室においてほかの職員との接触を妨げられ、そして、仕事らしい仕事を与えられず、上司から命じられたのは研修所内の草むしりやあるいは雪かき、ペンキ塗りの仕事のみだったと。後には暴力団から退職の強要も行われたということで、三十年にわたって会社から報復を受け、そして、子供さんが大学を卒業したということを見届けて、二〇〇二年に損害賠償と謝罪を求めて提訴をした、そういう流れの中で公益通報者保護法が作られました。このケースは、まさに配置転換や嫌がらせのケースです。結局、二〇〇五年に裁判では勝ちましたけれども、そうした配置転換や嫌がらせの下で闘ってこられたということです。
公益通報者保護法に詳しい中村弁護士は、このようにおっしゃっております。公益通報者保護法の裁判実務で実際に一番多い不利益措置は、解雇や懲戒ではなく、配置転換や嫌がらせだ、不利益取扱いへの刑事罰、立証責任の事業者側への転換、共に解雇と懲戒に限定したのでは、更にその傾向に拍車がかかることが危惧される、通報者に対する配置転換や嫌がらせによって退職に追い込み、事実上解雇と等しい結果をもたらすというふうにおっしゃっております。
配置転換や嫌がらせという不利益取扱いへ今回の改定で拍車がかかっては本末転倒だというふうに思います。やはり配置転換等も対象に含めるべきだというふうに考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○伊東国務大臣 本村委員の御質問にお答えいたします。
一般論といたしまして、犯罪の構成要件は明確で、また、対象となる行為は罰則に値するものでなければなりません。
我が国におきましてはメンバーシップ型雇用が一般的であり、配置転換については、適材適所の配置や人材育成等の観点から、事業者の広い裁量の下、頻繁にこれが行われており、必ずしも不利益な取扱いとは言えないところもあります。また、配置転換等の態様は様々であり、不利益性の有無や程度は個人の主観や事情に依存する部分が大きく、罰則の対象とすることは困難であります。
○本村委員 公益通報者が配置転換を不当だと思って裁判に訴えて、客観的に司法の判断を仰いで、罰則があるからといって全てが有罪となるわけではありません。それは解雇、懲戒についても同じだというふうに思います。
公益通報者保護制度検討会の志水芙美代弁護士が次のようにおっしゃっております。現在、定期的に配置転換を実施している事業者においても、適材適所に関して一定の定型的手法に基づいて一応の検討や記録化はしているのではないかと思われます、その中でも特に労働者にとって不利益性を相当程度に感じるであろう異動や人事評価の場合や、やや異例と思われるような異動のケースの場合は労働者から質問があることも考えられます、そのような際に説明できるように、一定の納得が得られるように通常より丁寧な検討、記録化をするなどのある程度の準備は既にしているのではないかと思います、したがって、法改正によって事業者の対応が大きく変わる、あるいは無理を強いるといったことにはならず、むしろ通報者保護を優先させるべきではないかというふうにおっしゃっております。
そういうことからしても、やはり配置転換なども刑事罰、立証責任の事業者への転換の対象にするべきだというふうに思いますけれども、この志水先生の言葉も含めて、大臣、もう一度御所見を伺いたいと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
御指摘のとおり、公益通報をしたことによって不利益な配置転換をされるということは、もちろん実態として生じておりますし、裁判例でもその旨認定された事例はございます。現行法におきましても、通報を理由とする不利益な取扱いについては、これは配置転換も含めまして全て禁止となっているところであります。
消費者庁といたしましては、制度の実効性を確保する観点から、このことをしっかり事業者に周知徹底することが重要だというふうに考えております。禁止される不利益な取扱いに含まれ得る措置の例、配置転換も含めまして、含まれ得る措置の例を法定指針に明示し周知することを検討しております。
○本村委員 中村弁護士がおっしゃっているように、不利益取扱い、これが配置転換とか嫌がらせにシフトをする、それに拍車がかかってしまうということがあってはならないというふうに思います。是非、法案の修正をしていただいて、この点を含めていただきたいと強く求めたいというふうに思います。
質問を少し飛ばさせていただきまして、兵庫県の問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。
兵庫県の元西播磨県民局長が自ら命を絶たれました。心から哀悼の意を申し上げたいと思います。このような事件を二度と起こさせないために、この法改正はどのような実効性を担保する内容が入っているのか、まず確認をさせていただきたいと思います。
○伊東国務大臣 まず、今回の法改正につきましては、御指摘の兵庫県の事案を踏まえて対応するものではないということを御理解いただきたいと思います。
その上で、今回の法改正は、事業者の内部通報対応の体制整備の徹底と実効性の向上、さらに、保護される通報者の範囲の拡大、また、通報者探索など、公益通報を阻害する要因への対処、さらに、公益通報を理由とする不利益取扱いの抑止、救済の強化という大きく四つの観点で必要な法整備を行うものであります。
これによりまして、労働者等の公益通報が促進され、事業者の自浄機能が発揮されることにつながることや、行政機関の指導監督の実効性が向上することが期待されているところであります。
○本村委員 対応するものではないという御答弁があり、大変残念に思っております。是非、その点も修正をしていただいて、対応できるようにしていただきたいというふうに思っております。
兵庫県の百条委員会、そして第三者の調査委員会の報告書を拝読をさせていただきました。二度と起こさせないために、次のような視点も大切だというふうに思います。
一つは、公益通報者保護法の周知徹底ができていなかったのではないか。知事が、先ほども議論がありましたけれども、この法律に関する正しい知識の認識がないように思われます。正しい知識を周知徹底していただいて、通報者の保護のためにもこれは本当に重要なことだというふうに思います、徹底して周知をしていただくこと。
そして二つ目に、各事業者、行政などで体制づくりを一〇〇%着実に進めていくこと。
そして三つ目、組織の幹部が通報される側だった場合も、通報者がちゃんと保護をされ、機能する、そういう体制をつくっていくということ。
そして四つ目、告発の調査に当事者は関与をしないということを徹底していただくこと。
そして五つ目、通報者探索は行わないことの徹底をしていただくこと。
そして六つ目、通報内容の範囲外共有等は行わないこと。
そして七つ目、告発者の不利益処分が行われていないか、第三者による常設の検証機関の設置なども必要だというふうに考えます。
たくさん申し上げて申し訳ないんですけれども、この点、全て大臣にお答えをいただきたいというふうに思っております。
○伊東国務大臣 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、今七項目挙げていただきましたけれども、その六項目、順に言いますと、法の周知徹底、二番目に事業者、行政機関の体制整備の促進、三番目に組織幹部の不正が通報された場合の通報者の保護の徹底、四番目に通報内容の当事者が調査に関与しないこと、五番目に通報者探索の禁止、六番目といたしまして通報者に関する秘密の保持、これらにつきましては、いずれも非常に重要と考えているところであります。
一方で、七番目の第三者による常設の検証機関の設置につきましては、今般の法改正におきまして、公益通報を理由とする解雇又は懲戒に対する刑事罰の導入、公益通報を理由とする解雇又は懲戒に対する立証責任の転換の導入などを行うこととしており、これにより、公益通報者に対する不利益取扱いの抑止、救済は相当程度強化されると考えております。このため、まずは、今回の法改正の施行後の状況を注視していくことが必要だと考えております。
消費者庁といたしましては、制度の実効性向上に向けて、引き続き積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
○本村委員 大臣が重要だと言っていただいた六つの点については、本当に徹底的に、着実に進めていただきたいというふうに思っておりますし、是非、第三者による常設の検証機関についても御検討いただきたいというふうに思っております。
齋藤兵庫県知事に、百条委員会、そして第三者の調査委員会の報告書を真摯に受け止め、元西播磨県民局長に対する処分を速やかに撤回し、名誉を回復、これを図るべきだというふうに考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。
○伊東国務大臣 御指摘の事案につきましては、兵庫県におきまして、県議会の百条委員会や県の第三者委員会の報告書の内容を踏まえ、適切に対応されるものと考えております。私も地方議会等々も経験がありますけれども、これは非常に重いものだというふうに受け止めております。
消費者庁として、事業者における個別事案への対応についてコメントはいたしませんけれども、お気持ちも、内容につきましても、よく理解しているつもりであります。
○本村委員 是非、早期の名誉回復が行われるようにということで御尽力をいただきたいというふうに思います。
そして、今日は厚生労働省の副大臣に来ていただきましたので、二〇二二年度に行政機関が受けた外部通報の受理件数は二万四千四百六十件、そのうち九八%は厚生労働省の機関が受理しているということで、受理した場合、どういうことを行うのかという点、そして、今回の通報を受ける場合に実効あるものにするためにも、消費者庁とそして労働行政の職員の純増が必要だというふうに考えますけれども、まず厚生労働副大臣、そして大臣にもお願いをしたいと思います。
○尾田政府参考人 お答えいたします。
まず、監督署の対応について、私の方から御説明させていただきます。
労働基準監督署におきまして労働基準関係法令違反について公益通報を受けた場合には、通報された情報を精査の上、労働基準関係法令違反の疑いがあるという事案につきましては、事業場を調査し、事実を確認した上で、法違反が認められた場合はその是正を指導しております。また、法違反が度重なる等の重大、悪質な事案につきましては、刑事訴訟法に基づき、捜査を行い、送検しているところでございます。
○鰐淵副大臣 お答え申し上げます。
公益通報制度を実効あるものにするためにも、労働基準監督官の体制確保は重要であると認識をしております。
公益通報制度に着実に対応しながら、働く方の健康と安全を守るために、引き続き、必要となる労働基準監督官の人員、そして体制の確保にしっかりと取り組んでまいります。
○伊東国務大臣 今、厚生労働副大臣からお話がありましたが、制度の実効性を確保するためには、消費者庁におきましても着実に法執行を行うことが重要なことであると認識しております。
このため、消費者庁では、今年度に新たに法執行のための定員を確保しており、今回の法改正後も引き続き法執行体制の強化に取り組むことといたしております。
○本村委員 ありがとうございました。
質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
○浦野委員長 次に、角田秀穂君。
○角田委員 公明党の角田秀穂でございます。
質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。本日最後の質疑者となりますが、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
平成十六年に公益通報者保護法が制定をされてから、この間、途中、保護される通報者の対象範囲の拡大など法改正を経て、二十年余りが経過をいたしますが、いまだに制度が十分に機能しているとは言い難いというのが現状だと思います。その大きな要因として、一つに、制度への理解が深まっていないこと、なかんずく、法令を遵守すべき肝腎の企業に理解が広がっていない点にあると感じております。
公益通報者保護法の目的は、事業者が法令を遵守することによって、消費者を含めた国民の利益を守ることにあり、その達成には、労働者等がその目的を十分に理解することが何よりも求められます。
消費者庁が昨年二月に公表した内部通報制度に関する意識調査では、「名前は聞いたことがある」又は「知らない」との回答は合計で六割強、「ある程度知っている」を含めて、制度について知っていると回答した人を上回っております。通報したことによる解雇、降格、嫌がらせ等の不利益な取扱いを勤務先で禁止しているかについて、全体の五割強、半分以上が「知らない・分からない」と回答をしております。
そして、こうした労働者等の理解不足の背景には、そもそも事業者自身の理解不足があります。中古車販売大手の保険金不正請求や雇用調整助成金の不正受給など、外部からの指摘をきっかけに発覚する事例が目立つことから、帝国データバンクが二〇二三年に企業に対して行った公益通報者保護制度に関する企業意識調査では、内容を理解し対応している企業は八・八%にとどまり、言葉も知らないという回答が二割近くに上るなど、制度の理解、浸透はまだ道半ばというのがこの調査結果からもうかがえます。
まずは、コンプライアンスのためのその法令が遵守されていないという現状を改善するための取組、これが最優先で求められております。組織内の法令違反を早期に発見あるいは未然に防ぐことは企業のみならず労働者や消費者を守ることだという法制度の趣旨、目的の理解を広める取組に更に力を入れるべきと考えますが、この点について今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のとおり、公益通報者保護制度の実効性を確保するには、制度の趣旨、目的につきまして事業者及び労働者双方の理解を促すことが重要と考えております。
このため、消費者庁では、事業者の経営者や従業員向けにショート動画やパンフレットなどを作成し、新聞、雑誌、ラジオ、インターネット上のターゲティング広告などを通じて、内部通報制度の重要性や必要性について理解を促しております。
また、消費者庁では、令和五年度の実態調査で、不祥事に関する企業の第三者委員会等の調査報告書に記載された内部通報制度に関する指摘を分析し、制度の実効性向上のための、経営者に対する提言をまとめております。
今後も引き続きこのような取組を続けるとともに、内部通報制度の実効性向上に取り組んでいる事業者の好事例を収集し公表するなど、制度の普及、浸透に努めてまいりたいと考えております。
○角田委員 次に、改正の内容について順次質問をしていきたいと思います。
改正法では、従事者指定義務に違反する事業者に対する立入検査権、勧告に従わない場合の命令権、刑事罰の導入を規定をしておりますが、現行法においても、義務の履行確保のために、報告徴収、指導、助言、勧告といった是正指導、勧告に従わない場合の公表が規定をされております。
これまでの実績を見ますと、令和四年度の是正指導件数がゼロ件、五年度が二十四件、六年度は六件、また、公表は過去にビッグモーターとダイハツ工業の二件となっておりますけれども、これまでの取組を踏まえて、今回刑事罰を導入した理由について確認をさせていただきたい。
それとともに、実効性確保のためにはやはり大幅な体制強化が必要と思われますけれども、人員確保など体制整備はどのように進めていくのか、お伺いをいたします。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
従事者指定義務は、事業者の体制整備の中核的役割を果たす特に重要なものとして、内閣府告示である指針のみならず、法律に規定をされております。
しかしながら、一つには、消費者庁のこれまでの是正指導や実態調査の結果から、事業者におきまして従事者指定義務の履行が徹底されていないことが明らかになりました。また二つには、従事者の守秘義務違反には刑事罰が規定されている一方、従事者指定義務違反は最終的に刑事罰による実効性が担保されていないこと。この二つを踏まえまして、今回の法改正におきまして、この義務に違反する事業者に対する行政措置権限を強化することとしております。
また、今回の法改正によりまして、事業者の従事者指定義務違反は公益通報者保護法上の通報対象事実となります。消費者庁への公益通報が見込まれます。それ以外の体制整備義務についても、情報提供が増えることが見込まれます。このため、消費者庁では、今年度に新たに法執行のための定員を確保しておりまして、今回の法改正後も引き続き法執行体制の強化に取り組んでまいりたいと考えております。
○角田委員 まず体制整備、これを徹底していく上で、やはり規模の小さい企業にとっては負担が重いということが体制整備が進まない一因とも言われており、整備促進のための支援施策、これも今後やはり充実していかなければいけないと考えますけれども、この点について見解をお伺いしたいと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
常時使用する労働者数が三百人以下の事業者には、法律上、体制整備の努力義務がございますが、委員御指摘のとおり、中小規模事業者に体制整備を促すには、事業者の負担軽減を図ることも重要と考えております。
このため、消費者庁では、内部通報制度を未導入の事業者向けに制度の導入方法を分かりやすく解説した動画、パンフレット、従事者向けの研修動画、内部規程、通報受付票のサンプル等を作成しまして、内部通報制度導入支援キットとして消費者庁のホームページ上で提供しております。また、この導入支援キットにつきましては、新聞、雑誌、ラジオ等で広く周知を行っております。さらには、業所管省庁とも連携をして、各業界団体を通じた事業者への周知等も行っております。
引き続き、中小規模事業者の体制整備を支援するための取組を工夫してまいりたいと考えております。
○角田委員 消費者庁の意識調査によれば、勤務先で重大な法令違反を知った場合、「相談・通報する」又は「たぶん相談・通報する」と回答した人が最初に通報するとして選んだ先は、勤務先が全体の六五%と最多ですけれども、行政機関も、三〇%の人が最初の通報先として挙げております。また、勤務先で重大な法令違反を知って勤務先に相談や通報しても状況が改善しそうにない場合、勤務先に「相談・通報する」又は「たぶん相談・通報する」と回答した人の八割が、行政機関等の外部に「相談・通報する」又は「たぶん相談・通報する」と回答をしております。
しかし一方で、二号通報先となる行政機関の窓口設置の状況は、これも消費者庁の令和五年度行政機関における施行状況調査では、約四割の市町村が外部通報に対応する窓口を設置しておらず、半数以上の市区町村では外部通報に対応するための内部規程を整備をしていないなど、特に、多くの市区町村で外部通報に対応する体制整備義務を果たしていないという実態が明らかになっております。
外部の労働者等からの通報の受理件数、是正措置を講じた件数は、市区町村においても平成二十九年度から令和四年度にかけて年々増加をしており、市区町村の体制整備の義務が履行されていない状況を改善していく、その取組も進めなければならないと考えます。
地方公共団体向けに、地方自治法の技術的な助言との位置づけで、公益通報者保護法を踏まえた地方公共団体の通報対応に関するガイドラインが示されておりますが、ガイドラインの周知を含めた情報提供など、一層の働きかけが必要と考えます。
ただ、その一方で、一般の市町村、特に、小規模になるほど、ただでさえ人手不足で人材確保に苦慮している現状に加えて、捜査権限等も持っていないことなど、体制整備に難しい課題を抱えております。人材確保、また育成、体制整備の支援も講じていくべきと考えますが、この点も含めて、併せて見解を伺いたいと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
外部の労働者等からの公益通報に応じまして適切に対応するための体制の整備につきましては、地方自治法の規定に基づく技術的助言として、消費者庁におきまして、地方公共団体向けに、外部の労働者等からの通報対応に関するガイドラインを策定し、地方公共団体が取り組むことが求められる基本的事項等を定めております。各地方公共団体におきましては、このガイドラインも踏まえ、人員、予算の制約等、それぞれの実情等も勘案して、法が求める措置を講ずることとされております。
このため、消費者庁といたしましては、行政機関に対する定期的な実態調査の実施や、研修、説明会の実施等を通じまして、各地方公共団体の実情等も踏まえ、必要な協力や助言を行っております。
各地方公共団体におきまして一層充実した通報対応の仕組みが整備、運用されるよう、引き続き支援してまいりたいと考えております。
○角田委員 公益通報者保護法施行後も、事業者による公益通報者に対する不利益取扱いの事例が多数報じられております。公益通報を容易に行えるようにして法令遵守の徹底を図るためには、何よりも、公益通報を行った者が確実に保護されること、そのことが労働者等に十分に理解されていることが不可欠で、それがなければ、通報したことによって解雇等不利益を被ることを恐れて通報をちゅうちょしてしまう、結果として法の目的も達成できないということになってしまいます。
このために、改正法では、公益通報を理由として解雇又は懲戒をした者に対する刑事罰を導入するとともに、民事訴訟における公益通報者の立証負担緩和のため、解雇又は懲戒が公益通報を理由とするものではないことの立証責任を事業者に転換することとしていることは、通報者の保護をより確実にしようとするもので評価をいたしますが、これに関して幾つか確認をさせていただきたいと思います。
公益通報者保護法の適用が争われた民事裁判はまだ多くはありませんが、労働契約法に係る主張を綿密に判断する一方で、公益通報者保護法に係る主張については、判断をしない、あるいは十分に検討せずに退けているという例も見受けられます。例えば、労働者が公益通報者保護法の適用を求めていたにもかかわらず、雇い止めについて、通報者の勤務成績、勤務態度が不良であることを認定した上で、通報を理由とする不利益取扱いではないとして、雇い止めは有効と判断された事例などが見られます。
このことに関連して、解雇、懲戒が公益通報を理由とするものではないことの事業者の立証範囲は、具体的にどこまで示せば立証したことになるのか。例えば、解雇が、就業規則に定める、素行不良で社内秩序、風紀を乱したという懲戒解雇事由に該当する、あるいは、故意又は過失により会社に損害を与え又は会社の信用を失墜したという懲戒解雇事由に該当していることなど、解雇の事由となった事実を一つでも主張すれば、公益通報者保護法三条の公益通報を理由とした解雇ではないことを立証したことになるのかどうか。この点、消費者庁の見解をお伺いしたいと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
民事訴訟におきまして、立証責任を負う者は、裁判所にその事実の存在又は不存在について確信を得させるよう、高度の蓋然性を持って証明する必要があると認識をしております。このため、解雇又は懲戒が公益通報を理由とすることの立証責任を事業者に転換した場合には、事業者は、それらの措置が公益通報を理由とするものではないことを高度の蓋然性を持って証明する必要があります。
したがいまして、事業者が、懲戒解雇事由に該当していることなど解雇事由となった事実を一つ主張したことで、直ちに公益通報を理由とする解雇ではないことを立証したことになるものではないと考えております。
○角田委員 不利益取扱いを受けた公益通報者の救済手段として、やはり解決までに民事訴訟では長期間を要して、通報者自身にとっても非常に負担が重い。民事訴訟以外にも迅速に救済が図られる仕組み、これについてもしっかりと周知を図っていってほしいと思っておりますが、この点について見解をお伺いしたいと思います。
○藤本政府参考人 お答えいたします。
訴訟以外で第三者が介在して個別労働紛争の解決を図る制度としまして、労働審判のほか、厚生労働省や各都道府県等の関係機関による個別労働紛争解決制度、いわゆるADRがございます。ここでは、公益通報を理由とする事案も含めまして取扱いがなされているものと承知をしております。
消費者庁におきましては、公益通報者保護制度相談ダイヤルを設置をしまして、労働者からの公益通報に関する相談に応じております。その際に、必要に応じて各紛争解決機関の連絡先を紹介しております。
今回の法改正によりまして、労働者等による公益通報が促進され、消費者庁に対する公益通報に関する相談が増えることが見込まれます。このため、消費者庁としては、各紛争解決機関との連携を一層強化してまいりたいと考えております。
○角田委員 使用者と労働者間の紛争を裁判よりも迅速に、費用もかけずに解決するための制度として労働審判があるわけですけれども、ただ、この労働審判の申立ては労働者に限られております。
改正法では、保護される公益通報者の対象にフリーランスが追加をされておりますが、契約の形式が雇用契約ではなく業務委託契約や請負契約であっても、実態として労働者と同じように働いている場合は労働者と認められるケースもあります。
公益通報者の保護を徹底するためにも、早期解決の一手段である労働審判の門戸もできるだけ広くすることが必要と考えますが、ここで、フリーランスであっても労働審判の対象となり得るのは具体的にどのような場合が考えられるのか、確認をさせてください。
○内野政府参考人 お答え申し上げます。
具体的に、いわゆるフリーランスとして活動している方のうちどのような業務形態の方が労働審判を利用することができるかにつきましては、個別な事案における具体的な事情の下で裁判所が判断するということになりますため、一概にお答えすることは困難ではございます。
その上で、一般的には、仕事の依頼に対する許諾の自由の有無、一般の従業員と比較して勤務の場所及び時間が具体的に規律されているか否か、また、業務内容や遂行の仕方につき指揮命令を受けているか否かなどの事情が考慮されまして、業務の実態に照らし、労働契約又は事実上の使用従属関係、これが認められるときにはこの労働審判を利用することができる、このように考えております。
○角田委員 時間が参りましたので、以上で終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○浦野委員長 次回は、来る二十二日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後二時五十一分散会