衆議院

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第10号 令和6年3月12日(火曜日)

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令和六年三月十二日(火曜日)

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  令和六年三月十二日

    午後一時 本会議

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本日の会議に付した案件

 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(内閣提出)及び二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

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 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(内閣提出)及び二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案及び二酸化炭素の貯留事業に関する法律案について、趣旨の説明を求めます。経済産業大臣齋藤健君。

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) ただいま議題となりました脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、鉄鋼や化学等の脱炭素化が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠であり、こうした分野では、その安全性を確保しながら、低炭素水素等の活用を促進することが重要です。本法律案は、昨年七月に閣議決定された脱炭素成長型経済構造移行推進戦略に基づいて、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、低炭素水素等の定義については、水素等であって、その製造に伴って排出される二酸化炭素の量が一定の値以下であること等の要件に該当するものと定義します。

 第二に、主務大臣は、低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する基本的な方針を定めることとします。また、国、関係地方公共団体、事業者の責務規定を創設します。

 第三に、低炭素水素等供給事業者又は低炭素水素等利用事業者は、単独で又は共同して計画を作成し、その内容が我が国関連産業の国際競争力の強化に相当程度寄与する等の要件を満たす場合には、主務大臣が認定できることとします。これに加えて、いわゆる価格差に着目した支援等を希望する場合には、供給事業者と利用事業者が共同で作成したものであること等を追加的な要件とします。

 第四に、認定を受けた事業者に対する支援措置を講じます。具体的には、いわゆる価格差に着目した支援や拠点整備支援として、供給事業者が低炭素水素等を継続的に供給するために必要となる資金や、認定を受けた事業者が共同で使用する施設の整備に充てるため、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構が助成金を交付することとします。また、認定を受けた計画に基づく設備に関する高圧ガス保安法の特例を創設するほか、港湾法や道路占用の特例を創設します。

 第五に、経済産業大臣は、事業者の判断の基準となるべき事項を定め、低炭素水素等の供給拡大に向けた事業者の自主的な取組を促します。その上で、必要があると認めるときは、経済産業大臣が事業者に対して必要な指導等を行うことができることとします。

 引き続きまして、二酸化炭素の貯留事業に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、鉄鋼や化学等の脱炭素化が難しい分野においてもGXを推進していくことが不可欠であり、こうした分野において脱炭素化を実現するためには、排出された二酸化炭素を回収し、これを地下の地層に貯留すること、すなわちCCSに関する事業環境を整備することが必要です。本法律案は、昨年七月に閣議決定された脱炭素成長型経済構造移行推進戦略に基づいて、所要の措置を講ずるものであります。

 次に、本法律案の要旨を御説明申し上げます。

 第一に、経済産業大臣が、貯留層が存在する可能性がある区域を特定区域として指定した上で、貯留事業や試掘を最も適切に行うことができると認められる者に対して許可を与えます。そして、経済産業大臣は、これらの許可を受けた者に対して貯留権や試掘権を設定した上で、二酸化炭素の安定的な貯留を確保するため、これらの権利をみなし物権とします。

 第二に、貯留事業及び試掘に関する事業規制と保安規制を整備します。具体的には、貯留事業の実施計画については主務大臣、試掘の実施計画については経済産業大臣の認可制とした上で、貯留事業者及び試掘者に対しては、技術基準への適合義務等の保安規制を課します。また、貯留事業者に対しては、二酸化炭素の漏えいの有無等を確認するため、モニタリング義務を課すほか、正当な理由なく、二酸化炭素排出者からの貯留依頼を拒むことを禁止する等の措置を講じます。さらに、二酸化炭素の貯蔵の状況が安定している等の一定の要件を満たす場合には、経済産業大臣の許可を受けて、貯留事業場の管理業務を独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構に移管することを可能とします。

 第三に、貯留事業等に起因する損害賠償責任は、事業者の故意、過失によらない無過失責任とします。

 第四に、貯留層に貯留することを目的として、二酸化炭素を導管で輸送する導管輸送事業に関する事業規制と保安規制を整備します。具体的には、導管輸送事業を行おうとする者は、経済産業大臣に届け出なければならないこととした上で、正当な理由なく、二酸化炭素排出者からの二酸化炭素の輸送依頼を拒むことを禁止する等の措置を講じます。また、導管輸送事業者に対しても、技術基準への適合義務等の保安規制を課すこととします。

 以上が、これらの法律案の趣旨であります。(拍手)

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 脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律案(内閣提出)及び二酸化炭素の貯留事業に関する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。重徳和彦君。

    〔重徳和彦君登壇〕

重徳和彦君 立憲民主党の重徳和彦です。

 立憲民主党・無所属を代表して、政府提案の水素社会推進法案とCCS事業法案について質問いたします。(拍手)

 先日、与党は、衆議院での当初予算審議を短時間で強引に終結させ、本日、予算関連の法案審議がスタートするわけですが、本来、国会議員は、国民の信あってこそ、国会の場で政策論争に臨めるのであります。裏金、脱税問題で、自民党は国民の信を失っています。

 当事者が説明責任を果たすべく、我々は、衆議院の自民党議員五十一人に政治倫理審査会への出席を申し出るよう求めていますが、いまだ五人しか出席しておらず、岸田総理が言われるとおり、残る四十六人の志ある自民党議員にも出席いただくよう、強く求めます。

 特に、下村博文議員は、自民党安倍派事務総長経験者であり、裏金のキックバックの継続の是非が議論されたとされる令和四年八月の安倍派幹部の会議にも参加した当事者として、同会議でのやり取りについて説明すべき立場の方であります。同会議に参加した議員のうち、世耕弘成参議院議員が参議院政倫審に出席することになれば、残るは下村議員のみになります。御本人は、寺田学筆頭幹事に対し、政倫審に出席する意向を正式に示しておられますが、それでも出席しないとすれば、自民党が御本人の出席を止めているとしか考えられないのではありませんか。

 これまでの安倍派幹部の責任逃れの証言が食い違っていることなどについて真実を明らかにしていただき、自民党の裏金、脱税問題の全容について説明責任を果たしていただくよう、強く求めます。

 さて、法案の質疑に入ります。

 まず初めに、カーボンニュートラルを機に、我が国が国益を懸けて主体的に取り組むべきエネルギーのゲームチェンジの進め方についてであります。

 二〇五〇年カーボンニュートラルは、持続可能な地球環境と人類共通の利益を目指すものでありますが、各国においては、それぞれの産業構造、資源保有状況、国民生活への影響といった個別事情に応じ、それぞれの国益を守るために、したたかに取り組んでいます。

 日本は資源の乏しい国なので、化石燃料を外国から大量に輸入してエネルギーを賄っている、これが、小中学校でも習う、我が国の従来からの姿です。我が国は、これまで、限られた化石燃料資源を有効に使うため、世界トップクラスの省エネ技術や環境技術を磨いてきたと自負していますが、水素エネルギーや再生可能エネルギーへの取組は、むしろ後れを取っている面があると認識しています。

 世界の中で日本の置かれた現状、日本固有の個別事情をどう認識しているか、齋藤健経済産業大臣の認識をお尋ねいたします。

 世界がカーボンニュートラルという目標に向かって走り始めた今、日本は、これまでの常識を覆し、エネルギーの世界のゲームチェンジ、すなわち、既存のルールや市場の根本的な変革に挑むべきです。経済、環境、そして安全保障の観点から、国益を懸けて、国際社会において優位な立ち位置を取らねばなりません。そのための鍵を握るのが、水素エネルギーと再生可能エネルギーです。

 一方、エネルギーのゲームチェンジの過程では、各国の壮絶な国益のぶつかり合いを想定せねばなりません。我が国の産業が、エネルギーシフトが引き起こす苛烈な国際競争の中で淘汰されないよう、国力を維持発展させなければならぬことは当然です。

 我が国にとって守るべき具体的な国益は何か、国益を守るための戦略をどう考えているのか、お尋ねいたします。

 我が国の国益に資するゲームチェンジのためには、我が国に有利な国際ルールが必要です。欧州では、既に域内で、排出権取引制度、キャップ・アンド・トレードや国境炭素調整メカニズムが進められており、今後は世界のルール作りに乗り出すと見られますが、我が国がその動きに後れを取るわけにはいきません。

 現時点の欧州内での取組状況、米国、途上国を含め、国際社会における政府間のルール作りに向けた進捗状況を御答弁願います。

 経済安全保障の観点からは、サプライチェーン上の重要産業が日本国内に立地し、集積することこそが我が国の国益です。エネルギーの脱炭素化が我が国の産業立地の優位性確保にどう影響すると考えているか、大臣の見通しをお尋ねいたします。

 次に、水素エネルギー社会に向けたビジョンについてです。

 化石燃料から水素エネルギーに移行する中で、我が国が何より目指すべきはエネルギーの自給です。我が国は、エネルギーを外国に依存しているため、地政学的な安全保障リスクを抱えるとともに、毎年、巨額の国富が国外に流出しています。令和四年の化石燃料の輸入額は、三十三兆円を超えているんですよ。国内で賄えるクリーンで持続可能なエネルギーへのシフトに注力し、エネルギーの自給力を高めることこそ、自立した国家としての我が国の存立基盤の強化につながります。ここが、エネルギーのゲームチェンジのポイントであります。

 水素社会への移行はエネルギー自給力の強化にどのような筋道で貢献するのか、具体的なビジョンはあるのでしょうか。外国で製造された水素に依存するのでは、コスト、環境、安全保障のいずれの面でも不十分と考えますが、いかがでしょうか。

 水素社会が持続的に環境に貢献するには、再生可能エネルギーで生成する、いわゆるグリーン水素の比重を高めることが急務であり、政府がそのビジョンを明確に示すべきです。

 政府の再生可能エネルギー推進に向けた本気度を示されたい。特に、地勢的な強みを生かせるはずの浮体式風力発電、地熱発電の推進について明確なビジョンを示すべきと考えますが、いかがでしょうか。

 先日視察したJERAの碧南火力発電所では、世界最高水準の技術と言われるアンモニア発電が導入されており、現在二〇%のアンモニア混焼の比率を高め、二〇三〇年には五〇%、将来的には一〇〇%専焼への移行を目指すスマートトランジション、すなわち、できることから着実にやっていく方針を打ち出しておられます。

 石炭火力発電をアンモニア発電に切り替えるゲームチェンジは海外にも波及するのか、アジアなど途上国を含むカーボンニュートラルへの貢献と日本の経済的メリットを両立できるのか、具体的な戦略を問います。そのために必要なコスト低減の見通しはいかがでしょうか。

 カーボンニュートラルに向かう世界で戦う上で、水素エネルギーやCCSの推進は不可欠と多くの産業界が捉える中で、最も裾野が広い基幹産業である自動車産業を取り上げて質問します。

 自動車の脱炭素化は、車の電動化のみならず、電力、製鉄、部品製造などの関連産業、さらにはユーザーの走行時のライフサイクルアセスメントの視点が必要です。自動車のライフサイクルアセスメントの各段階の脱炭素化の現状はどうか、答弁をお願いいたします。

 次に、EV、電気自動車についてです。

 ここ数年、世界で新車の製造、販売を全面的にEVに切り替えようとする動きが目立ちましたが、ここへ来て、各国の状況も変化しつつあるようです。

 私は、かねてより、EVは全面的な普及には課題が多いため、自動車産業のカーボンニュートラルには、EVのほか、ハイブリッド技術や燃料電池、合成燃料等を活用した多様な選択肢を持って現実的に対応すべきと主張してまいりました。

 我が国として、EU、米国、中国など、国際的な自動車産業政策の動向をどう評価しているか、御答弁願います。

 また、国際社会全体が多様な選択肢を視野に入れた現実的な路線を進むよう、日本国政府が国際交渉において国益を懸けてイニシアチブを取るべきと考えますが、現状と具体的な課題をどう認識しているのか、御答弁願います。

 欧州では既に、昨年三月、CO2を排出しない合成燃料、e―フュエルの利用を前提に、内燃機関の存続が合意されました。e―フュエルの開発状況やその特性、実用に向けた見通しをお示しください。

 FCV、燃料自動車も水素社会における有力な選択肢の一つですが、現時点では十分普及しておらず、今後はバス、トラックのFCV化を推進すべきです。今後のFCV普及について、国内と、海外市場への展開も併せ、御答弁願います。

 水素ステーションの設置にも課題があります。政府は、現場を確認し、水素ステーションが普及しない原因と、どうすれば実効性ある事業となるかを検証するとともに、水素利用が社会全体で拡大していくよう、企業や自治体へ支援を強化すべきではないでしょうか。海外市場への展開戦略と併せ、御答弁願います。

 ここまで申し上げた観点から、今回の二法案の内容に沿って質問いたします。

 まず、水素社会推進法案において、低炭素水素等のCO2基準をどう想定しているのか、明らかにしていただきたい。輸送時の排出CO2も加味するなど、ライフサイクル全体のCO2基準とすべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

 水素サプライチェーンの構築における低炭素水素等への価格差に着目した支援の仕組みや支援対象期間は、事業者の参画に当たっての重要事項であり、政府の考え方を明確にお示しください。また、愛知水素関連プロジェクトのような地域の取組も進められていますが、価格差支援や拠点整備支援によってどのぐらいの需要の掘り起こしを目指していて、利用者となる産業、企業や自治体に対しどのような支援をしていこうとしているのか、具体的にお示しください。

 次に、CCS事業法案に関し、我が国ではCCSのメカニズムが十分周知されておらず、事故リスクや事業所等からのCO2の回収率などについて国民の理解を得る必要があると考えますが、いかがでしょうか。

 これまで、新潟県長岡市や北海道苫小牧市でCCSの事業化に向けた実証試験が行われてきましたが、我が国におけるCCSの適地はどのぐらいあると想定していますか。また、実際の候補地の指定に当たっては、事業者選定、事業内容等について、苫小牧市の事例などを参考に、住民参加による地元への説明や協議の場を確保し、事業や工事による環境負荷を検証する環境評価の仕組みを、鉱業法の制度に倣って制度的に担保すべきと考えます。大臣のお考えをお尋ねいたします。

 CCSも大きなゲームチェンジです。CCSの技術や事業が海外で評価され、受け入れられるだけの経済性や、その際の我が国にとっての経済的メリットがあるのでしょうか。アジアCCUSネットワークの展望も含め、御答弁願います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 重徳議員の御質問にお答えします。

 日本のエネルギーの現状や固有事情、国益を守るための戦略についてお尋ねがありました。

 我が国は、すぐに使える資源に乏しく、山と深い海に囲まれ、再エネ適地が限られるという地理的要因もあり、エネルギー自給率が約一三%と世界的にも低い水準にあります。

 したがって、エネルギーの安定供給は、我が国の全ての社会経済活動を支える不可欠なものであります。国際競争力の維持強化と国民生活の向上の観点から、SプラススリーEの原則の下、安定的で安価なエネルギー供給を確保することが、まさに国益そのものであると理解しております。

 とりわけ、将来が期待される水素や再エネは、産業競争力強化にも資する分野であり、我が国が劣後することは許されません。水素製造や輸送技術、ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力などについて、技術開発から社会実装、サプライチェーン構築まで、切れ目なく支援を行います。

 このような取組を通じて、安定供給、経済成長、脱炭素の同時実現に全力で取り組んでまいります。

 脱炭素に向けたルール作りについて、EUの取組状況や国際的な政府間のルール作りについてお尋ねがありました。

 EUは、EU域外からの鉄やアルミなど六つの分野の対象製品を輸入する際に、製造過程における炭素排出量に応じて課金するEU・CBAMという仕組みを導入することとしており、昨年十月より移行期間が始まっています。

 ネットゼロの実現に向けては、各国がそれぞれの戦略に基づき、独自の取組を模索している状況であると承知しています。今後、国、地域を超えた国際的なルール作りを進めていかなければならない状況であると認識しています。

 このような中で、我が国としても、GXの推進を日本企業の競争力強化につなげていく観点から、国際的なルール形成及び環境づくりに積極的に取り組んでいかねばなりません。

 こうした観点から、アジア・ゼロエミッション共同体における二国間クレジット制度の利活用を含む協力の促進や、IEAやOECD等の国際機関と連携し、グリーンスチールなどの国際評価手法の確立に向けた議論を進めてまいります。

 エネルギーの脱炭素化による我が国の産業立地の優位性確保への影響についてお尋ねがありました。

 世界各国でGX実現に向けた投資競争が熾烈化し、国内外でサプライチェーン全体で排出削減を目指す企業が増加する中、エネルギーの脱炭素化の推進は、我が国に立地する企業の競争力に大きく影響すると考えており、産業立地の優位性を確保するためにも重要な課題であります。

 一方で、我が国は、周囲を海で囲まれ、安価に、かつ安定的に使えるエネルギー資源が乏しい現状を踏まえますと、エネルギー需給構造両面での改革が必要です。まずは、これまで取り組んできた徹底した省エネに加え、再エネ、原子力など脱炭素効果の高い電源の最大限活用など、エネルギーの脱炭素化に向け、あらゆる手段を講じていきます。

 こうした取組に加え、GX経済移行債を活用した投資促進策やカーボンプライシング、本法律案などの規制、制度的措置を組み合わせ、我が国のGX投資を加速させ、サプライチェーン全体をGX型に構造転換することで、産業立地の優位性を高めてまいります。

 水素社会への移行によるエネルギー自給率の向上についてお尋ねがありました。

 国内の再エネ等から製造された水素を活用する場合、大宗を輸入に依存する化石燃料の使用を減少させることができます。このため、エネルギー自給率向上の観点からは、国内における再エネの利用促進と水素等の製造、供給体制の構築に取り組むことが重要であります。

 こうした観点から、水素社会推進法案における支援措置においては、十分な価格低減が見込まれ、将来的に競争力を有する見込みのある国内事業をまずは最大限支援していきます。

 しかしながら、少なくとも当面の間は、国内製造だけでは産業で必要とする水素需要を賄えない見込みが高い状況です。また、世界では既に、安価で低炭素水素等の製造が可能な適地の確保など、権益獲得競争が始まっている状況にあります。

 このため、国内よりも相対的に安価かつ大量に製造が可能な輸入についても、SプラススリーEを前提に、GXの実現に資するものに限定して支援していくことが必要と考えています。

 再エネ推進についてお尋ねがありました。

 再エネについては、地域との共生を前提に、目標である二〇三〇年度電源構成比の三六から三八%の実現に向けて、最大限導入していくことが政府の基本方針であります。

 特に、洋上風力発電は、二〇三〇年に十ギガワット、二〇四〇年に三十から四十五ギガワットの案件形成目標に向け、再エネ海域利用法に基づく着実な案件形成に向け、取り組んでまいります。加えて、排他的経済水域においても、必要な手続等の整備に取り組んでまいります。

 排他的経済水域において主流となる浮体式洋上風力発電については、コスト低減と大量生産に係る技術確立が課題です。グリーンイノベーション基金を活用し、社会実装に向けた要素技術開発に取り組むとともに、今年度からは、具体的な海域を利用した大規模実証事業を進めています。

 また、地熱発電については、現在の地熱発電の電源構成比率を二〇三〇年度には約三倍に引き上げるとの目標を掲げており、開発リスクやコストの低減、地元理解の獲得といった課題に対応するため、国立公園等の有望地点の資源量調査、事業者が実施する初期調査等への支援や地元に対する理解促進活動への支援を実施しています。

 引き続き、関係省庁とも連携し、国民負担の適正化と地域との共生を図りつつ、再エネの最大限の導入に全力で取り組んでいきます。

 アンモニア発電のカーボンニュートラルへの貢献と経済的メリットの両立及びコスト低減の見通しについてお尋ねがありました。

 海外市場のうち、特にアジアでは、石炭火力への依存度が高い国が存在し、今後も石炭火力の新設も続く中、伸び行く需要を賄いつつも、脱炭素と両立する現実的な手段が求められていると認識しています。現に、様々な政府間対話の場において、カーボンニュートラルに向けたエネルギー移行に関する日本の協力についての期待が示されているところです。

 こうした中、我が国はアンモニア発電について高い技術を有しており、海外でも日本の技術を活用したアンモニア発電が商用で導入されるなど、ビジネスにつながる形での展開も始まりつつあります。我が国の強みとなる技術を通じて、アジア大での脱炭素化を積極的に進めてまいります。

 お尋ねのアンモニアのコスト低減に向けては、水素基本戦略におきまして、二〇三〇年に水素換算で一立米当たり十円台後半、一キログラム当たり二百円程度の目標を掲げております。

 この実現に向け、グリーンイノベーション基金を通じた技術開発や、水素社会推進法案での価格差に着目した支援を通じて、コスト低減を目指してまいります。

 自動車のライフサイクル各段階における脱炭素化の現状についてお尋ねがありました。

 まず、政府としては、二〇五〇年に自動車のライフサイクル全体でのCO2ゼロを目指すこととしています。

 その実現に向け、製造段階については、国内のエネルギー供給の脱炭素化を促進していくと同時に、御指摘の製鉄や部品製造を含め、関連するサプライチェーン全体で、徹底した省エネルギーや、電化や非化石エネルギーの活用が進んでおります。具体的には、自動車製造業の脱炭素化は、昨年度は二〇一三年度比で三一%削減まで進んだものと承知しています。

 使用段階については、燃費の向上、電動車の普及、合成燃料の研究開発などを同時に進めており、二〇二三年は、ハイブリッドを含めた電動車の新車販売が全体の約五〇%となっています。

 廃棄段階については、リユース、リサイクルの高度化が鍵であり、蓄電池のリサイクル技術開発などの取組を進めています。

 今後の国際的な脱炭素化の潮流の中で、自動車においても、車の電動化など、使用段階のみならず、ライフサイクル全体での脱炭素化が評価されていくものと考えています。各段階でのCO2の削減は今後の国際競争力に直結するとの認識の下、引き続き取組を進めてまいります。

 カーボンニュートラルに向けた各国・地域の自動車産業政策に対する評価と国際交渉における我が国のイニシアチブについてお尋ねがありました。

 EU、米国、中国等の諸外国では、カーボンニュートラルの実現に向けてEVの導入を促進していくことが大きな政策の方向性であると認識しています。他方で、例えば、英国ではガソリン車の販売禁止時期が延期をされたり、EUでは、EVとFCVに加え、合成燃料のみで走行する車両の登録を二〇三五年以降も認めるなど、現実に直面する中で様々な動きがあると承知しています。

 その中で、我が国としては、二〇三五年までに乗用車新車販売でハイブリッド車も含めた電動車一〇〇%という目標を掲げ、水素や合成燃料も含む多様な選択肢の追求を基本的立場としてきました。これまでも、昨年のG7広島サミットやAZECなど様々な場でその重要性を主張し、関連する共同声明に盛り込まれたところです。引き続き、自動車分野のカーボンニュートラル実現に向けて、多様な選択肢を日本が主導して国際社会に発信してまいります。

 e―フュエルの開発状況やその特性、実用化の見通しについてお尋ねがありました。

 合成燃料、e―フュエルは、水素と、発電所や工場等から回収した二酸化炭素を活用して製造される、カーボンニュートラルに資する燃料であります。既存の内燃機関や燃料インフラが活用できること、化石燃料と同等の高いエネルギー密度を有することがメリットであり、二〇三〇年代前半までの商用化を目標に掲げています。

 この目標を達成するため、グリーンイノベーション基金により、e―フュエルの大規模かつ高効率な製造プロセスの開発に約五百五十億円を支援するとともに、NEDOを通じて、大学や石油元売等が参加する、コストの低減を目指した次世代型のe―フュエル製造技術の開発を行っています。また、自国生産のみならず、日本企業の海外プロジェクトへの参画を後押しすることを通じて、早期のノウハウの獲得を促していきます。

 引き続き、合成燃料の早期商用化に向けて、しっかりと取り組んでまいります。

 FCVと水素ステーションの国内普及と海外市場への展開についてお尋ねがありました。

 FCVの普及に向けては、車両や水素の燃料価格が高いことや、水素ステーションの自立化に向けては、水素需要の拡大や水素ステーションの運営費の低減といった課題があります。

 FCVは、EVと比べ航続距離が長く、充填時間が短いという特性を踏まえ、商用車に重点を置いて導入を進めていくこととしています。具体的には、トラックやバス等のFCVを導入する企業等への補助、商用車など大規模かつ安定的に水素需要が見込むことができる地域への水素ステーションの戦略的な整備など、意欲ある地方自治体と連携しながら、総合的に取り組んでまいります。また、水素ステーションの事業性についても、継続して検証を行っていきます。

 海外展開に向けては、欧州や中国等も商用車へのFCV導入に取り組んでいる中で、その基幹部素材である燃料電池について、国内外の市場を一体で捉えて、開発、普及を進める必要があります。国内における燃料電池や部素材の製造能力の強化を支援するとともに、水電解装置等の様々な用途での活用を進めていくことで、国内外の需要獲得を目指してまいります。

 水素社会推進法案における低炭素水素等のCO2排出量の基準についてお尋ねがありました。

 低炭素水素等のCO2排出量の基準については、現在、海外の制度も参考に、例えば、水素一キログラムの製造に係るCO2排出量が三・四キログラム以下のものを対象とすることを審議会において議論しており、具体的な内容については、今後、省令において定めることとしています。

 また、水素については、輸送時のCO2排出量について、現段階では、その測定方法についての国際的な議論が収れんしていません。このため、我が国では、現時点で、輸送時のCO2排出量を含めることを想定はしておりません。

 今後も、各燃料における国際的な議論の動向も注視しながら、引き続き検討を進めていきたいと考えています。

 価格差に着目した支援や拠点整備支援の内容についてお尋ねがありました。

 価格差に着目した支援では、低炭素水素等の供給事業者に対し、低炭素水素等によって代替される原料、燃料との価格差を十五年間支援してまいります。

 これにより、低炭素水素等の利用者となる企業、自治体等が、経済合理的な価格で低炭素水素等を調達することができるよう支援してまいります。

 また、拠点整備支援では、水素等の大規模利用に資する共用設備を支援することで、コンビナートなどでの大規模な水素利用を推進していきます。

 実際にどのようなプロジェクトが本制度の支援対象として選定されるか、現時点で見込むことは困難でありますが、本制度のみならず、GI基金等の研究開発や、規制、制度的措置も通じた取組を組み合わせることにより、需給両面に働きかけ、二〇三〇年に最大年間三百万トン、二〇五〇年には年間二千万トン程度の水素の導入を目指しています。

 愛知県におかれても、地域と企業が一体になって精力的に検討が進められていると伺っており、我が国のGX実現に資するプロジェクトとなることを期待しております。

 CCSに関する国民の理解やCCSの適地、事業者選定などについてお尋ねがありました。

 まず、CCS事業は、国民の皆様の御理解を得つつ進めることが重要です。国が主導して地域ごとに説明会を行い、御指摘の事故リスクやCO2の回収率を含め、CCSの政策的意義や負担、安全性などを丁寧に説明してまいります。

 苫小牧においてCCS実証を担う日本CCS調査株式会社によれば、我が国には約百六十億トンのCO2の貯留可能量があると推定されています。国も、データの蓄積を継続し、適地調査を計画的に推進します。

 また、事業者選定に当たり、CCS事業法案では、鉱業法も参考に、都道府県知事と協議を行った上で、利害関係者からの意見を踏まえて許可を行うこととしており、苫小牧市における事例も踏まえて、地元への説明に対応してまいります。

 CCS事業における環境影響については、鉱業法も参考に、貯留事業実施計画を認可制とした上で、貯留事業者にCO2の漏えい防止措置を講じさせるとともに、モニタリング義務を課しており、周辺環境に影響を及ぼさないよう取り組んでまいります。

 我が国のCCS技術への海外からの評価や、その導入に伴う我が国の経済的メリットなどについてお尋ねがありました。

 我が国は、CCS技術の開発を二十年以上行っており、CO2の分離回収、輸送、貯留のプロセス全体についての技術を保有しています。

 こうした我が国の技術については、その経済性も含め、海外で評価されており、マレーシア、タイ等のアジア大洋州の国々が、日本の政府機関や企業と協力覚書を締結しています。

 また、二〇二一年に、経済産業省とERIAが主導し、東南アジア諸国と日米豪印の十四か国をメンバーとして、アジア全域でのCCUS活用に向けた知見の共有や事業環境整備を目的とするアジアCCUSネットワークを立ち上げました。

 こうした取組を通じ、各国のCCSプロジェクトへ我が国企業の参入が進展することで、CCS技術を必要とする国々だけではなく、これらの国々への技術の海外展開等を通じて、我が国経済にとってもメリットがあると考えております。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 守島正君。

    〔守島正君登壇〕

守島正君 日本維新の会の守島正です。

 教育無償化を実現する会との統一会派を代表して、ただいま議案となりました二法案について質問いたします。(拍手)

 まず、今世界が真正面から取り組んでいる二〇五〇年のカーボンニュートラルの達成に向けては、中長期の視点に立って、GX戦略を効果的かつスピード感を持って進めていくことが我が国の成長戦略において極めて重要なことであると考えます。

 そうした観点から、徹底した省エネや再エネ等の脱炭素電源の利用を推し進めると同時に、脱炭素化が難しいセクターにおいてもGXを推進していくとの問題意識の下、低炭素水素や二酸化炭素の貯留の取組を広げていくために必要な法制度を整備するという本二法案の目的自体に異論はありません。

 むしろ、GXを強力に進めていくための鍵となる低炭素水素の利用やCCSの事業化に向けて、政府は積極的にその環境整備を進めていくべきと考えておりますが、この二法案が脱炭素の実現に向けて着実に貢献し得る内容となっているか、また、エネルギーの安定供給や経済成長も同時に実現していくものに足るものとなっているのかといった観点も踏まえ、質問を通して確認してまいりたいと思います。

 まずは、水素社会推進法案についてお尋ねします。

 本法案は、その目的として、我が国における低炭素水素等の供給及び利用を早期に促進するためとしています。しかしながら、具体的に、いつまでに、どれくらいの低炭素水素の供給量を目指していくのかが全く明らかではありません。また、本法案における各種支援措置によって、どれだけの効果をもたらすのかも判然としません。

 そもそも、政府は、水素、アンモニア社会の実現を加速化するために、アンモニアを含む水素の供給量について、二〇五〇年には現状の十倍に当たる年二千万トンとする導入目標を掲げていますが、鉄鋼業の需要だけでも二千万トンを超えると言われている中で、発電用なども加味すると、政府目標では足りないのではないかといった指摘もなされております。

 さきに指摘した低炭素水素の供給量の目標値や本法案による効果の面と併せて、政府としてどのように考えているのか、経済産業大臣の見解を伺います。

 低炭素水素の普及は世界的な課題であり、米国や欧州などを中心に、世界各国で具体的で思い切った政策誘導が講じられており、二〇三〇年における低炭素水素の供給力の多くは欧米が突出するとの予測がなされております。そうした中で、我が国の低炭素水素の普及に向けた青写真は、さきに指摘したとおり、目標値の点からも明らかであるとは言えません。

 再生可能エネルギーの適地に乏しい我が国において再生可能エネルギーを由来とする低炭素水素を普及させるためには、現実問題として、海外からの輸入に頼らざるを得ない状況にあります。そのため、資源外交を通じて、民間企業が海外の水素権益を確保しやすい環境をつくっていくことこそが我が国のエネルギーの安定供給や経済安全保障の観点からも重要と考えますが、政府間交渉の状況や今後の方針について、経産大臣の見解を伺います。

 続いて、水素社会推進法案に規定される低炭素水素等の定義について質問いたします。

 本法案の第二条第一項では、低炭素水素等について、その製造に伴って排出される二酸化炭素の量が一定の値以下であることなどと定義されております。

 しかしながら、脱炭素の趣旨に鑑みれば、低炭素水素の製造時のみを基準とするのではなく、貯蔵時や輸送時などの後工程を含む一連のサイクルを基準として二酸化炭素の排出量を見ることが、二酸化炭素削減の観点からも適当ではないかと考えますが、経産大臣に見解を伺います。

 本法案の第七条五項では、主務大臣に提出される低炭素水素等供給等事業計画の認定基準を定めており、その認定基準の一つとして、我が国における低炭素水素等の供給又は利用に関する産業の国際競争力の強化に相当程度寄与するものとの規定があります。

 もとより、水素供給に関する国際競争の激化が予想される中で、我が国の低炭素水素の供給、利用事業者を国がしっかりと後押ししていくことは重要であると考えますが、本法案七条五項四の当該条文は、具体的にどのような基準により適合の可否が評価されるのか、経産大臣に具体的な説明を求めます。

 加えて、低炭素水素等供給等事業計画の認定を受けた事業者は、本法案第十条により、価格差に着目した支援や拠点整備支援が助成金として受けられることとされており、そのうち価格差に着目した支援については、化石燃料との価格差を原則十五年間にわたり補填され、その支援に三兆円が投じられるとされております。

 しかしながら、低炭素水素の普及は世界的に見てもまだまだ進んだ状況にあるとは言えず、我が国においても、水素を含むエネルギー資源の多くを海外からの輸入に頼らざるを得ない状況であることを踏まえると、低炭素水素の高コスト化は避けられないものであり、低炭素水素への本格的な移行に向けて、とりわけ価格に着目した支援における補助金の額は、かなりの規模が長期間にわたって必要になるものと思料しますが、補助金が市場へ与える影響及び投資対効果の点について、経産大臣の見解を伺います。

 また、水素等のサプライチェーンの構築に際しては、グリーンイノベーション基金等の各種制度が既に設けられておりますが、これらの支援措置を受けられる場合に、本法案における助成金との重複が生じて過度な助成となることも想定されます。その場合、どのような調整や事業評価がなされるのか、制度の在り方について、経済産業大臣の説明を求めます。

 さらに、これらの助成金の交付業務や審査業務については、本法案の第十条において、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、いわゆるJOGMECが行うこととされておりますが、各種業務を適切かつ円滑に遂行する上での体制が十分であるかなどを含めて、なぜこのようなたてつけとしたのか、その理由について経済産業大臣の説明を求めます。

 続いて、保安規制の在り方について質問いたします。

 本法案では、さきに述べた支援措置とともに、認定を受けた事業者に対する規制の特例措置が設けられており、規制緩和それ自体の方向性は賛同するものの、その中身については不十分であると言わざるを得ません。

 例えば、日本の水素に関する保安基準は、海外と比べてかなり厳しいとの指摘がなされております。安全性の確保は大前提としつつも、低炭素水素の利用、供給拡大とのバランスの取れた保安規制の在り方が求められていると考えますが、経産大臣の御認識を伺います。

 また、低炭素水素の本格的な普及を目指す上で、大規模化と併せて、技術開発によるコストダウンの実現も不可欠であるものと考えますが、そのような技術開発に対する支援パッケージはあるのでしょうか。そもそも、GXに関する支援メニューは多岐にわたる中、事業者サイドに対して分かりやすい情報発信が求められているものと考えますが、経済産業大臣の見解をお伺いします。

 続いて、低炭素水素の需要喚起について質問いたします。

 本法案は、昨年七月に閣議決定されたGX推進戦略において、「大規模かつ強靱なサプライチェーンを国内外で構築するため、国家戦略の下で、クリーンな水素・アンモニアへの移行を求めるとともに、既存燃料との価格差に着目しつつ、事業の予見性を高める支援や、需要拡大や産業集積を促す拠点整備への支援を含む、規制・支援一体型での包括的な制度の準備を早期に進める。」というものを具現化したものであると認識しておりますが、需要拡大の観点で政府が講ずるべき施策の内容が、本法案の中では明らかではありません。

 新たな市場創出による利用ニーズや用途の拡大に向けた大規模な需要喚起策が講じられることも低炭素水素の普及に必要不可欠と考えますが、経済産業大臣の御所見を伺います。

 次に、CCS事業法案についてお尋ねいたします。

 二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けて、徹底した省エネや脱炭素電源の利用促進が推進されていますが、政府のGX戦略の中でCCSはどのような位置づけとされているのかについて、経産大臣の説明を求めます。

 また、二〇三〇年までのCCS事業開始に向けて、とりわけ事業のコスト削減と大規模化が重要であると考えますが、それを後押しするための国の幅広い公的支援の必要性を鑑みると、GX関連予算全体におけるCCS関連予算の規模は適切であると考えますか。経産大臣の見解を伺います。

 加えて、新たな脱炭素技術やCCSなどの取組を経て、各事業における実運用コストに差異が出た場合等には、カーボンニュートラルに向けたシナリオを柔軟に見直す考えがあるのか、経産大臣にお伺いいたします。

 続いて、CCSに関する諸課題についてお尋ねいたします。

 CCS事業における課題の一つに、二酸化炭素の回収から貯留までの一連のコストの高さが指摘されており、二酸化炭素の回収効率の向上や安価な二酸化炭素の輸送技術の開発などを国が公的に支援していくことでCCSの実用性を高めていくことが必要と考えますが、これらの課題に対する経産大臣の所見を伺います。

 CCSの回収時には高濃度の二酸化炭素を取り扱うため、長期的な視点に立った保安や管理の在り方が求められていると考えますが、本法案ではその点での規定が不十分であると言わざるを得ません。

 とりわけ地震や火山の多い我が国においては、CCSの安全性や信頼性を高めていく上で、二酸化炭素の貯留が地域社会や環境に与える影響を適切に評価していくスキームの導入が必要と考えますが、その点について経済産業大臣の見解を伺います。

 加えて、CCSの貯留に対する不安を払拭するために、立地地域の住民を含む国民に対して広く丁寧な説明が求められていると考えますが、どのように国民に説明していくのかについて、経済産業大臣の所見をお答えください。

 CCS事業を安全かつ効率的に進めていくために、CCS事業に携わる専門的な人材の育成や技術的なノウハウの蓄積も重要になると考えますが、そうした観点で国においてどのような措置を講じられるのか、経済産業大臣の見解をお伺いします。

 最後に、産業振興と成長戦略の観点から質問いたします。

 我が国の経済が長きにわたり停滞した理由の一つには、新しいビジネスの創出や、民間からの投資を促進するような規制緩和やルール作りが適切になされていなかったことにあると考えます。今、GXという新しい潮流の中で、いかに企業の先駆的な取組を後押しし、新しいテクノロジーや新しいビジネスの創出につなげていくかといった視点が真に求められているのではないでしょうか。CCSは、事業性の観点で様々な課題があるものの、脱炭素化に欠かせない技術として、産業振興の観点からも注目を集めております。

 今後、国内外でCCS関連の需要の増大が見込まれる中で、二酸化炭素の回収技術や二酸化炭素の輸送技術などに強みを持つ日本企業に対して、これらのCCS技術の海外展開をしっかりと支援していくことは、我が国の国際競争力の強化や成長戦略の観点からも重要と考えますが、経済産業大臣はどのようにお考えでしょうか。

 以上、我が国が、低炭素水素の普及やCCSの社会実装を通して、カーボンニュートラルの実現に向けて世界をリードしていく存在となることを強く願うとともに、そのために政府の取るべき政策について今後も積極的に提言を続けてまいることを表明いたしまして、私の質問といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔国務大臣齋藤健君登壇〕

国務大臣(齋藤健君) 守島議員の御質問にお答えします。

 水素の政府目標についてお尋ねがありました。

 我が国は、第六次エネルギー基本計画に基づき、水素の供給量を二〇三〇年に年間最大三百万トン、二〇五〇年には年間二千万トン程度に拡大することを目指しています。これらの目標は、事業者へのヒアリングや審議会等における御議論を経て定めたものであり、足りないとは考えておりません。

 また、低炭素水素等の供給量の目標値につきましては、まずは、低炭素水素等の基準となるキログラム当たりのCO2排出量の値を議論して定めた上で、設定の必要性含め検討してまいります。

 水素社会推進法案の効果につきましては、今後、政策的重要性と事業完遂の観点から総合的な評価を行い、支援対象を決定していく中で、明らかになっていくものと考えております。

 エネルギー基本計画の目標達成に向けては、水素社会推進法案の支援措置により供給量を拡大していくことに加えまして、規制、制度的措置も通じた需要拡大を目指すことが必要です。そのため、既に、電力、ガス、燃料、産業、運輸等の関連審議会等において、新たな市場創出、利用拡大に向けた議論を開始しています。

 こうした様々な施策を前に進め、低炭素水素等の導入を進めていきたいと考えています。

 海外での水素権益の確保についてお尋ねがありました。

 国内で必要な低炭素水素等の需要量を賄うためには、国内での製造に加え、海外からの輸入が必要であります。そのため、日本企業による海外の権益の確保を始め、海外からの低炭素水素等の安定供給のための環境整備が重要と認識しています。

 そうした観点から、例えば中東では、昨年七月の岸田総理の中東訪問の際、サウジアラビア及びUAEとの間で二国間協力枠組みを立ち上げ、将来の水素等の安定供給に向け、具体的なプロジェクト組成を目指した議論を進めています。

 また、米国、豪州とも、将来の水素等の安定供給のため、民間企業間だけではなく、両国政府間、メジャー企業等とも直接議論を行っています。

 アジアでも、マレーシアと水素、アンモニアのサプライチェーン形成に向けた議論を進めています。

 日本企業の海外の水素等の権益取得に対するJOGMECの出資や債務保証支援も活用しながら、資源外交を進め、我が国の企業の水素等の権益確保と安定供給のための環境整備に努めてまいりたいと考えています。

 水素社会推進法案における低炭素水素等のCO2排出量の基準についてお尋ねがありました。

 低炭素水素等のCO2排出量の基準については、現在、海外の制度を参考にしつつ、審議会において議論を進めており、具体的な内容については、今後、省令において定めることとしています。

 低炭素水素については、現段階において、国際的には貯蔵時や輸送時のCO2排出量の測定方法の議論が収れんしておらず、このため、我が国では、現時点で、これらのCO2排出量を含めることを想定はしておりません。

 今後も、各燃料における国際的な議論の動向も注視しながら、引き続き検討を進めていきたいと考えています。

 低炭素水素等供給等事業に関する計画認定の基準についてお尋ねがありました。

 今後激化すると想定される水素供給に関する国際競争に向けて、我が国の供給、利用事業者への後押しが重要であると考えております。

 水素社会推進法案第七条第五項第四号に規定する、我が国における低炭素水素等の供給又は利用に関係する産業の国際競争力の強化に相当程度寄与とは、例えば、申請された計画の内容が、我が国産業に裨益するような大規模な低炭素水素等の供給及び利用の促進に資するものであるか、我が国企業の技術や製品が低炭素水素等のサプライチェーンの形成に活用されているかといった点を評価することを想定しております。

 水素社会推進法案による助成金の効果や制度の在り方等についてお尋ねがございました。

 水素社会推進法案において措置する価格差に着目した支援につきましては、供給開始から十五年で三兆円規模を見込んでおり、支援を通じてサプライチェーンに対する投資の予見可能性を高め、需給両面での投資を引き出してまいります。

 こうした取組などのほか、GI基金等の研究開発や規制、制度的措置も通じた取組を組み合わせることにより、投資対効果の面については、水素等については十年間で約七兆円以上の官民投資を目指します。

 また、支援の対象経費については、関連するそれぞれの制度の趣旨を踏まえ、プロジェクトごとに支援対象を、専門的知見を有する第三者の意見も聞きながら、国で適切かつ厳格に審査し、関連制度との重複が見られる場合には、重複分は支援の対象経費から除外することを検討しています。

 JOGMECについては、これまで、資源の上流開発などの大規模なエネルギープロジェクトの支援を行った実績があり、また、水素等の技術的な知見も持ち合わせています。このため、助成金の交付業務、各プロジェクトの進捗管理について、必要な知見や体制を備えているものと考えております。

 引き続き、効果的な支援となるよう、準備を進めてまいります。

 バランスの取れた低炭素水素等の保安規制の在り方についてお尋ねがありました。

 低炭素水素等の供給及び利用の拡大は極めて重要な課題ですが、一方で、保安規制については、安全性に係る科学的データに基づき、安全を確保していくことも重要だと認識しています。

 本法案は、前例のない大規模な低炭素水素等の供給及び利用事業を早期に開始するため、高圧ガス保安法の特例として、認定計画に基づく設備については、一定期間、都道府県知事に代わり、経済産業大臣が一元的に保安確保のための許可や検査等を行うことを可能とするものです。

 この中で、最新の科学的データや諸外国の取組も参考としつつ、より合理的かつ適正な保安規制によって安全の確保に努めながら、低炭素水素等の供給及び利用の拡大に取り組んでまいります。

 水素コスト低減に向けた技術開発に対する支援やGXに関する支援メニューの情報発信についてお尋ねがありました。

 水素基本戦略に基づき、グリーンイノベーション基金などを活用し、水素等のコスト低減に向けた技術開発に取り組んでいます。

 具体的には、水素製造に必要な水電解装置のコスト低減や、大型液化水素運搬船の実現に向けた技術開発や実証などに取り組んでおり、供給と利用両面でのコスト低減につなげていきます。

 また、事業サイドに対する情報発信については、総理を議長とするGX実行会議や、多排出企業が多く参画するGXリーグ等において、企業への情報発信に努めているところです。さらに、中小企業向けには、脱炭素に向けた取組事例集の公表や、中小企業団体・事業者の皆様に対する説明会等による周知、広報も開始をしております。

 引き続き、事業者の皆様に対して、分かりやすい情報発信の取組を推進してまいります。

 低炭素水素等の大規模な需要喚起策についてお尋ねがありました。

 足下では、低炭素水素等の市場は黎明期にあり、供給側と利用側の両事業者の投資に対する予見可能性を高めることが必要であります。

 このため、水素社会推進法案では、両事業者が一体で計画を作成し、認定計画について財政的支援を講じることで、供給のみならず、需要の拡大を同時に実現していきます。

 加えて、高炉での水素還元製鉄の研究開発や実装、ナフサ分解炉における熱源の燃料転換や石油由来のナフサ原料からの転換、乗用車に加え、燃料電池トラック等の商用の購入費用支援や水素ステーション整備支援といった、利用者側の新たな設備投資や事業革新を伴う形での原燃料転換を促すための支援措置等の検討も進めています。

 こうした様々な施策を組み合わせて、低炭素水素等の利用拡大に向けた投資を促してまいります。

 GX戦略の中でのCCSの位置づけ、予算規模、カーボンニュートラルに向けたシナリオについてお尋ねがありました。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて、産業や発電の脱炭素化を実現するためには、CCSが必要との認識の下、二〇二三年七月に閣議決定されたGX推進戦略では、二〇三〇年までのCCS事業開始に向け、法整備など必要な事業環境整備を行う方針を示しています。

 CCS関連予算につきましては、足下では、先進的なプロジェクトに対するFS調査など、支援を行っております。

 今後、CCS事業法案の成立後には、ビジネスモデル構築に向けた検討が本格化することから、その進捗を踏まえ、諸外国の例も参考にしつつ、必要となる支援について検討してまいります。

 また、カーボンニュートラル実現に向けたシナリオについては、今後の技術動向や情勢変化などを踏まえ、適切に検討してまいります。

 CCSの技術開発支援についてお尋ねがありました。

 CCSが事業として成立するためには、CO2の回収、輸送、貯留のプロセス全体で更なるコスト低減を行うことが必要です。

 このため、回収に必要なエネルギーを低減し、鉄やセメントなど異なる排出源ごとに最適な回収方法を実現するための研究開発を進めているほか、CO2の大規模輸送を可能とする液化CO2輸送船の研究開発等に取り組んでいるところです。

 引き続き、コスト低減を可能にする研究開発を行い、国際競争力ある形でCCS事業を推進できるよう取り組んでまいります。

 CO2の貯留が地域社会や環境に与える影響の評価などについてお尋ねがありました。

 今般のCCS事業法案では、CO2の安定的な貯留が確保されなかったり、その貯留事業が他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反する場合には、貯留事業の許可を与えないこととしております。また、事業の実施計画に記載されたCO2の漏えいを防止するための措置等が適切であると認められない限り、貯留事業を行うことができないこととしております。さらに、貯留事業の許可に当たっては、都道府県知事との協議を通じて、地域の理解を得ながら貯留事業を進めることとしております。

 これらのスキームを通じて、貯留事業が地域社会や周辺環境に悪影響を及ぼすことがないよう、しっかりと取り組んでまいります。

 また、CCSの立地地域や国民の皆様の理解を得つつCCS事業を進めることが極めて重要と考えています。

 このため、国主導により地域ごとに説明会等を開催し、CCSの政策的意義や負担、安全性、立地地域への投資効果など、CCSに関する情報発信に取り組んでまいります。また、CCSの立地地域では、地元の自治体や関係事業者、住民等に対して丁寧な説明を行うなど、貯留事業者に対して、理解を得るための取組を求めてまいります。

 専門人材の育成や技術ノウハウの蓄積、そして海外展開支援についてお尋ねがありました。

 まず、御指摘の専門人材の育成やノウハウの蓄積については、本法案の検討に当たり、審議会の議論におきましても、研究者、実務者育成のための環境整備、事故予防等に関する知見の蓄積と事業者等が円滑に参照できるような環境整備を進めるべきとの提言をいただいており、今後、具体化に向けて取り組んでまいります。

 また、我が国企業による海外市場への参入を支援することは、我が国のCCS技術を必要とする国だけでなく、我が国の国際競争力強化や成長戦略の観点からも重要です。

 そのため、マレーシア、タイなどとCO2の越境輸送、貯留、CCUSの技術協力等に関する協力覚書を締結し、CCS事業の環境整備を進めています。アジア全域でのCCUS活用に向けた知見の共有や、事業環境整備を目的とするアジアCCUSネットワークも活用しながら、引き続き、日本企業の海外展開を後押ししていきます。(拍手)

議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       経済産業大臣  齋藤  健君

 出席副大臣

       経済産業副大臣 岩田 和親君


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