衆議院

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第14号 令和6年3月26日(火曜日)

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令和六年三月二十六日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第八号

  令和六年三月二十六日

    午後一時開議

 第一 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 第二 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

 第三 二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法案(内閣提出)

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 人事官任命につき同意を求めるの件

 国家公務員倫理審査会委員任命につき同意を求めるの件

 食品安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 衆議院議員選挙区画定審議会委員任命につき同意を求めるの件

 国地方係争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害等調整委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会公益委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 原子力規制委員会委員任命につき同意を求めるの件

 日程第一 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

 日程第二 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

 日程第三 二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法案(内閣提出)

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 人事官任命につき同意を求めるの件

 国家公務員倫理審査会委員任命につき同意を求めるの件

 食品安全委員会委員任命につき同意を求めるの件

 衆議院議員選挙区画定審議会委員任命につき同意を求めるの件

 国地方係争処理委員会委員任命につき同意を求めるの件

 公害等調整委員会委員任命につき同意を求めるの件

 労働保険審査会委員任命につき同意を求めるの件

 中央社会保険医療協議会公益委員任命につき同意を求めるの件

 中央労働委員会公益委員任命につき同意を求めるの件

 運輸審議会委員任命につき同意を求めるの件

 原子力規制委員会委員任命につき同意を求めるの件

議長(額賀福志郎君) お諮りいたします。

 内閣から、

 人事官

 国家公務員倫理審査会委員

 食品安全委員会委員

 衆議院議員選挙区画定審議会委員

 国地方係争処理委員会委員

 公害等調整委員会委員

 労働保険審査会委員

 中央社会保険医療協議会公益委員

 中央労働委員会公益委員

 運輸審議会委員

及び

 原子力規制委員会委員に

次の諸君を任命することについて、それぞれ本院の同意を得たいとの申出があります。

 内閣からの申出中、

 まず、

 人事官に土生栄二君を、

 食品安全委員会委員に浅野哲君及び祖父江友孝君を、

 衆議院議員選挙区画定審議会委員に加藤淳子君、宍戸常寿君及び高橋滋君を、

 国地方係争処理委員会委員に菊池洋一君、辻琢也君、小高咲君、勢一智子君及び山田俊雄君を、

 原子力規制委員会委員に山岡耕春君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 国家公務員倫理審査会委員に岩井康子君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 食品安全委員会委員に頭金正博君、小島登貴子君及び杉山久仁子君を、

 衆議院議員選挙区画定審議会委員に品田裕君及び飯島淳子君を、

 中央労働委員会公益委員に安西明子君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 食品安全委員会委員に高原和紀君を、

 原子力規制委員会委員に長崎晋也君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 衆議院議員選挙区画定審議会委員に林崎理君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

 次に、

 衆議院議員選挙区画定審議会委員に谷口尚子君を、

 公害等調整委員会委員に北窓隆子君を、

 労働保険審査会委員に植木敬介君を、

 中央社会保険医療協議会公益委員に永瀬伸子君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、いずれも同意を与えることに決まりました。

 次に、

 運輸審議会委員に白石敏男君を

任命することについて、申出のとおり同意を与えるに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、同意を与えることに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第一 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。農林水産委員長野中厚君。

    ―――――――――――――

 特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔野中厚君登壇〕

野中厚君 ただいま議題となりました法律案につきまして、農林水産委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、経済連携協定の締結等により農産加工品等の輸入に係る事情の著しい変化による影響が継続している状況を踏まえ、特定農産加工業者の経営の改善を引き続き促進するため、現行法の有効期限を五年延長するとともに、輸入原材料の価格水準の上昇等により、その調達が困難となっている状況を踏まえ、原材料の調達の安定化を図るための措置に関する計画の承認制度を設け、当該承認を受けた特定農産加工業者に対する株式会社日本政策金融公庫による貸付けの特例の措置等を講ずるものであります。

 本案は、去る三月十二日本委員会に付託され、翌十三日坂本農林水産大臣から趣旨の説明を聴取し、二十一日質疑を行いました。質疑終局後、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案は委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 日程第二 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件

議長(額賀福志郎君) 日程第二、放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。総務委員長古屋範子君。

    ―――――――――――――

 放送法第七十条第二項の規定に基づき、承認を求めるの件及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔古屋範子君登壇〕

古屋範子君 ただいま議題となりました承認案件につきまして、総務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本件は、日本放送協会の令和六年度収支予算、事業計画及び資金計画について、国会の承認を求めるものであります。

 まず、収支予算は、一般勘定において、事業収入六千二十一億円、事業支出六千五百九十一億円となっており、事業収支における不足五百七十億円については、還元目的積立金の一部をもって補填することとしております。

 次に、事業計画は、多様で質の高いコンテンツの提供、受信料の公平負担の徹底、ガバナンスの強化等に取り組むこととしております。

 なお、この収支予算等について、総務大臣から、放送番組の質の維持と事業経費の合理化、効率化、受信料の公平負担の徹底、令和六年能登半島地震において再認識された災害時における放送の役割の重要性を踏まえ将来の災害に備えること、放送に加え、インターネットを通じた国民・視聴者への放送番組の提供、放送コンテンツのプラットフォームとして放送番組の流通を支え、放送の二元体制を基本とする放送全体の発展に貢献していくこと等を求める旨の意見が付されております。

 本件は、去る三月十三日本委員会に付託され、翌十四日、松本総務大臣から趣旨の説明を、また、日本放送協会会長から補足説明をそれぞれ聴取した後、質疑に入り、去る二十一日質疑を終局いたしました。次いで、採決いたしましたところ、本件は全会一致をもって承認すべきものと決しました。

 なお、本件に対し附帯決議を付することに決しました。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本件を委員長報告のとおり承認するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本件は委員長報告のとおり承認することに決まりました。

     ――――◇―――――

 日程第三 二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第三、二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。外務委員長勝俣孝明君。

    ―――――――――――――

 二千二十七年国際園芸博覧会政府委員の設置に関する臨時措置法案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔勝俣孝明君登壇〕

勝俣孝明君 ただいま議題となりました法律案につきまして、外務委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、令和九年に開催される二千二十七年国際園芸博覧会に関し、国際博覧会条約の規定に基づく政府委員の設置及びその任務、給与等について定めるものであります。

 本案は、去る三月十四日外務委員会に付託され、翌十五日上川外務大臣から趣旨の説明を聴取いたしました。二十二日に質疑を行い、質疑終局後、引き続き採決を行いました結果、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと議決した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。農林水産大臣坂本哲志君。

    〔国務大臣坂本哲志君登壇〕

国務大臣(坂本哲志君) 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 我が国の食料、農業、農村施策の基本的な方針を定める食料・農業・農村基本法については、制定から四半世紀が経過する中で、世界的な食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国の人口の減少などの食料、農業、農村をめぐる情勢の変化が生じ、その制定時の前提が大きく変化しております。

 このため、こうした変化を踏まえて食料、農業、農村施策を講ずることができるよう、基本理念を見直すとともに、関連する基本的施策等を定める必要があることから、この法律案を提出した次第であります。

 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、食料安全保障の抜本的強化についてであります。

 食料安全保障について、食料の安定供給に加えて、国民一人一人の食料の入手の観点を含むものとして定義し、その確保を基本理念に位置付けます。この考え方に基づき、国内農業生産の増大を基本とし、農業生産の基盤等の食料供給能力の確保の重要性、生産から加工、流通、消費に至る食料システムの関係者の連携などを位置付けます。その上で、国内農産物、農業資材の安定的な輸入の確保、食料の円滑な入手の確保、輸出の促進、価格形成における合理的な費用の考慮などの基本的施策を講ずることとしております。

 第二に、環境と調和のとれた産業への転換についてであります。

 食料供給が環境に負荷を与えている側面があることに着目し、環境と調和のとれた食料システムの確立が図られなければならない旨を基本理念に位置付け、この考え方に基づき、農業生産活動、食品産業の事業活動等における環境への負荷の低減の促進などの基本的施策を講ずることとしております。

 第三に、生産水準の維持発展と地域コミュニティーの維持についてであります。

 我が国全体の人口減少に伴い、農業者、農村人口が減少することが見込まれる中においても、農業の持続的な発展と農村の振興を図っていくことができるよう、農業法人の経営基盤の強化、先端的な技術を活用した生産性の向上、農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進、農村関係人口の増加に資する産業振興、農地の保全に資する共同活動の促進などの基本的施策を充実しております。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。江藤拓君。

    〔江藤拓君登壇〕

江藤拓君 自由民主党・無所属の会の江藤拓でございます。

 ただいま議題となりました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案につきまして、会派を代表して質問させていただきます。(拍手)

 まず冒頭に、本年一月に発災いたしました能登半島地震におきまして犠牲になられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様方に心よりお見舞いを申し上げます。

 さて、この度、制定されてから二十五年が経過した食料・農業・農村基本法を改正することとなりました。

 坂本大臣から、なぜ、今、食料・農業・農村基本法の改正が必要かということについては御説明をいただきました。

 これに加えて、私からも、近年激変する日本を取り巻く食料安全保障の環境の変化について申し上げれば、ロシアのウクライナ侵略の際には、小麦や肥料、飼料などの価格が高騰し、国民は多大な影響を受け、生産現場も窮地に追い込まれました。また、中国では、習近平国家主席の下で、中国十四億人のための茶わんは常に私たちの手でしっかりと握られているようにする、そう高らかに宣言されました。これは、今や世界一の農林水産物の純輸入国となった中国が食料自給率一〇〇%を目指すということを意味しているのであります。

 先月行われましたWTO閣僚会議でも、農業分野では、各国の意見が激しく対立をし、しかも、多くの国で保護主義的な姿勢が目立ち、全く合意に至りませんでした。まさに、今や食料が戦略物資になったということが明確になったわけであります。

 こうした現状を踏まえ、私が会長を務める自民党総合農林政策調査会の下に、食料安全保障に関する検討委員会を設置し、党総務会長であられる森山裕先生に委員長をお願いし、さらに、三つの分科会を設け、主要テーマについて徹底的に議論を行い、現場の皆様の御意見もしっかりと聞かせていただいた上で、約一年半かけて作り上げたのが今回の改正基本法案であります。

 ただいま坂本大臣からは、基本法改正のポイントは大きく三つあると御説明をいただきました。

 まず第一に、食料安全保障の抜本的な強化を図る。これは、今回の改正の中でも最も重要な点であります。

 これまで不測時の対応でしか規定されていなかった食料安全保障という言葉を、基本法の基本理念としてしっかりと位置づけ、国内で生産できるものはできる限り国内で生産する、そういう方針を明確にしています。

 さらに、国民の皆様に持続的な食料供給を可能とするためには、再生産を可能とする合理的な価格の形成がどうしても必要となってまいります。

 この点において、消費者の役割として、食料の持続的な供給に資するものの選択を通じて食料の持続的な供給に寄与する旨もしっかりと条文に書き込まれていることは、高く評価することができます。しかしながら、合理的な価格形成を基本法の条文に書いたからといって、直ちにそれが実現できるわけではもちろんありません。

 そこで、総理と農林水産大臣にお伺いをいたします。

 まずは、食料安全保障の確立の必要性への御認識、そのためには欠かせない合理的な価格の形成についての御見解を伺わせていただきます。

 第二に、環境と調和の取れた産業への転換を挙げられました。

 世界に目を向ければ、カーボンニュートラル、生物多様性など、農業分野においても例外ではなく、環境への対応が求められています。

 環境と調和を図っていく必要性について、基本法における基本理念にしっかりと位置づけられました。環境との両立を図る上で、新たな技術の開発や、施策の更なる充実強化が課題となってまいりますが、坂本農林水産大臣の御見解をお伺いいたします。

 第三に、生産水準の維持発展と地域コミュニティーの維持を挙げられました。

 二〇〇八年をピークに我が国の人口は減少の局面に転じ、各産業において人材の獲得競争が激化いたしております。

 こうした中で、より多くの若者に農業の魅力を感じてもらえるよう、省力化に資するスマート技術の導入や地域の特産品のブランド化、拡大する海外市場も視野に入れた輸出の促進なども更に進める必要があります。そして、生産者の方々がやりがいと希望、夢を持って働ける農業、農村を実現していく必要があると考えております。

 基本法、これはあくまでも理念法であります。この理念を実現するためには、次に食料・農業・農村基本計画をしっかりと策定し、それに基づく制度設計、そしてそれに必要な予算、これを確保することが不可欠と考えておりますが、総理の御見解を伺います。

 今まさに、日本の農政は大転換が求められているのであります。

 岸田内閣においては、国を守るための安全保障、経済安全保障などに力を注いでおられますが、食料の安全保障も極めて大きな柱であります。

 一方で、基幹的農業従事者は、現在百十六万人でありますが、平均年齢は六十八歳を超え、二十年後には約三十万人にまで減少してしまうのではないか、そういうおそれが指摘されております。極めて厳しい現状です。

 この現状を踏まえて、重ねて申し上げますが、食料自給率の向上や食料安全保障の実現のためには、しっかりとした予算、これを確保して、強い生産基盤を確立し、そして人材を確保することが欠かせないのであります。

 私ごとではありますが、私の次男は、六月には農業生産法人での修業を終え、地域の担い手となるべく、今、就農に向けて準備を進めております。

 更に申し上げれば、ようやくデフレからの完全脱却も視野に入ってまいりました。先週、日銀も金融政策を転換いたしましたし、春闘第一次回答でも、五・二八%の賃上げという回答を得るに至りました。

 しかし、これは従業員千人以上の大企業に限ったものであり、七割の方々は中小企業に勤めておられるわけでありますから、まさにこれからが景気回復に向けた正念場であります。

 国民の皆様が物価高を超える賃上げを実感することができなければ、先ほど来申し上げている食料の持続的な供給のために必要な合理的な価格の形成、これはなかなか難しいと言わざるを得ません。国民の皆様が、国産の農産物を買って農家を応援しよう、そう思っていただいても、家計にゆとりがなければ、輸入品など、より安いものを選択せざるを得ないというのが現実であります。

 総理は、先週、日本商工会議所の通常総会で、中小企業の持続的な賃上げについて、政策を総動員して後押しをする、そう述べられました。ここで改めて、物価上昇を上回る賃上げの実現に向けての総理の御決意を伺います。

 食料・農業・農村基本法は、我が国の食料、農業、農村施策の基本的な方針を定めるものであります。いわば、農政の憲法であります。激動する国際情勢、国内の変化を踏まえた、時代にふさわしい基本法とせねばなりません。

 我々自由民主党は、時代の変化を踏まえた責任ある農政の実現にこれからも全力で取り組んでまいることをお約束し、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 江藤拓議員の御質問にお答えいたします。

 食料安全保障の確立の必要性への認識と、合理的な価格の形成についてお尋ねがありました。

 我が国の食料安全保障上のリスクが高まる中、平時から食料安全保障を確立することが必要であると認識しており、食料・農業・農村基本法の改正案において、新たに基本理念として位置づけているところです。

 また、食料安全保障を確立するためには、議員御指摘のとおり、食料の持続的な供給が行われるよう、生産から消費までの各段階の関係者の合意の下、国内外の資材費、人件費の恒常的なコストが考慮された価格形成が行われること、これが重要です。こうした価格形成の仕組みについて、法制化も視野に検討してまいります。

 食料・農業・農村基本計画の策定と、それに基づく制度設計、予算の確保についてお尋ねがありました。

 基本法の改正案が成立を見れば、政府として、これに基づく食料・農業・農村基本計画を策定し、その中で、基本法に定める各般の施策の具体化を行います。

 その上で、基本計画に定める施策を的確かつ着実に進めていくために必要な制度や予算を措置することにより、食料安全保障の確保を始め、農政の再構築を図ってまいります。

 賃上げについてお尋ねがありました。

 今年の春季労使交渉では、五%を超える賃上げ率など、昨年を上回る力強い賃上げの流れができてきています。

 日本全国にこうした流れを広げていくためには、中小企業の賃上げ実現が重要であり、先日開催した政労使の意見交換でも、労使の皆さんに協力をお願いしたところです。

 政府としても、食料供給に関わる産業を含めて、あらゆる産業において賃上げと成長の好循環が実現できるよう、物価高に負けない賃上げの実現に向け、労務費転嫁の指針の活用など価格転嫁の促進や、賃上げ促進税制の拡充、省力化投資支援などの生産性向上支援を通じ、強力に後押しをしてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣坂本哲志君登壇〕

国務大臣(坂本哲志君) 江藤拓議員の御質問にお答えいたします。

 食料安全保障の確立の必要性の認識と合理的な価格の形成についてのお尋ねがありました。

 世界の食料需給が不安定化し、我が国の食料安全保障のリスクが高まる中、平時から食料安全保障を確立することが重要です。

 また、食料については、生産者から加工、流通、小売を経て消費者に販売されるものであることから、将来にわたって持続的に食料を供給するためには、食料システムの各段階の事業者が取引を通じて収益を確保することによって、食料システム全体を持続可能なものとしていく必要があると考えています。

 特に、資材費や人件費が長期的に上昇傾向にある中でも、持続的な食料供給を確保し、平時からの食料安全保障を確立するために、食料システムの関係者の合意の下、こうした恒常的なコスト増などが考慮された価格形成が行われることが重要となってきているところです。

 このため、合理的な価格の形成に向け、令和五年八月から、生産から消費までの各段階の関係者が一堂に集まる、適正な価格形成に関する協議会を開催し、コスト指標の検討やコスト指標を活用した価格形成方法の具体化や、国民の理解の醸成に努めていくこととしています。

 こうした協議会等での議論も踏まえつつ、食料システムの関係者の合意の下で価格形成が行われる仕組みについて、法制化も視野に検討してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 神谷裕君。

    〔神谷裕君登壇〕

神谷裕君 立憲民主党の神谷裕でございます。

 私は、ただいま議題となりました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対し、立憲民主党・無所属を代表し、質問をいたします。(拍手)

 この法案は、一九九九年に制定された農業の憲法ともいうべき大切な法律の四半世紀ぶりの大改正です。この四半世紀の間、我が国農業、農村を取り巻く様々な状況の変化があり、それが今回の法改正のゆえんとなったところでありますが、何より情けないのは、この農業の憲法というべき大切な法律を、政治の信頼が大いに揺らいでいる中で審議しなければいけないことです。

 総理、言うまでもなく、政治の信頼を取り戻すには実態の解明が何よりです。

 先般は裏金議員の処分についてもお話しになりましたが、実態が分からずに処分などできるはずもありません。よもや、処分を行うことでこの問題は終わったと幕引きをされるとは思いませんが、重要なのは、裏金問題によって地に落ちた政治への信頼の回復です。政倫審によっても、多くの国民の皆さんは実態の解明はできていないとお感じのようです。処分をお急ぎのようでございますから、なるべく早く、予算委員会での証人喚問や政倫審等、あらゆる場での説明をお願いいたします。党内での更なる調査とも聞きますが、お手盛りでは国民の納得を得るのは困難です。

 与党の一角である公明党の山口代表は、昨年十二月十七日にティックトックで、同じ穴のムジナとは見られたくないと発言をされました。しかしながら、公明党は、政倫審への裏金議員の出席申立てについて、昨日行われた立憲民主党との協議において、政倫審に説明に来てほしい議員はもういないと反対したため、政倫審での申立てができなくなりました。

 山口代表は、同じムジナではないと言いましたけれども、これでは結果的に同じムジナではないですか。これでは、公明党は言行不一致と言わざるを得ません。

 さて、食料・農業・農村基本法の改正です。

 今回は二十五年ぶりの初めての改正となります。今回の基本法改正に当たり、立憲民主党においては、充実した議論に向けて、有識者、団体、農業者など、現場にも出向き広く意見を伺い、議論を重ねてまいりました。基本法となれば、当然にして、国民の理解、わけても農業者の理解と合意が不可欠です。そのためにも、法案審議において、広く地域に出向き、また与野党の総意による合意形成に向けて精いっぱい御尽力いただくように、政府・与党には求めていきたいと思います。

 そのような中で、現行基本法を制定した一九九九年において、旧基本法を廃止し、現行基本法を新たに立てることになりました。我が国内外をめぐる様々な状況の変化が今回の改正のゆえんと言われますが、一部改正でお茶を濁し、既存の施策をこれまで同様続けていくだけでは、今の農業、農村の情勢は改善するとは思えません。前回は新法を立て、今回は法改正で対応することとした理由について、まずは総理にお伺いをしたいと思います。

 さて、今般の改正に当たり、現行基本法が求める様々な目標が達成できなかった失敗は、やはり総括するべきであると考えます。特に、基本法が求める食料安定供給の確保に対する食料自給率の低下という失敗、農業の有する多面的機能の発揮に対する耕作放棄地の拡大という失敗、農村の振興に対する農家経営の減少と農村人口の減少という失敗などについては、真剣な分析と評価、そして、言い訳のような答弁ではなく政策の大胆な変更が必要だと考えます。

 既存の政策の延長では、今の下向きのトレンドを変えることができないのは明白です。今回の基本法の見直しを契機として、これらの課題を実現するために抜本的に政策を見直す考えがあるのか、総理の見解を伺います。

 食料安全保障について伺います。

 食料の安定供給の確保と不測時の食料安全保障について、今般新たに法律を立てると提案されています。非常時の際の行動を平時に準備しておくことは理解するものの、一足飛びに、計画を出さなければ罰金ということには、農村現場からも怒りと反発の声が上がっております。非常時に、流通などの売惜しみ、在庫状況の確認をしたいとの思いもあるようでございますが、全ての生産者に罰金を科すのか、あえて生産者にまで罰金を科すことについて総理はどのようにお考えなのか、これを伺いたいと思います。

 不測時ばかりでなく、平時において国民が安心して食生活を送れるよう、国内農業生産の増大を図ることは極めて重要です。これに輸出輸入及び備蓄を適切に組み合わせて食料安全保障を実効ならしめると政府もお考えのようですが、国際環境の変化や為替リスク、いざというときの自国優先の考え方など、食料の確保を輸入など海外に過度に依存していくことは厳に慎むべきであることと考えます。総理のお考えを伺います。

 食料安全保障を実効ならしめるには、まずは国内農業生産の増大が必要であり、そのためには、基盤となるべき農地の確保、農業者の経営を維持発展させる必要があります。

 いかにしてこれを実効ならしめるかが極めて重要となってまいりますが、既存の施策に加え、適正価格の実現が、この度、打ち出されています。資材等の高騰で価格の上昇が必要な生産者の適正価格と、家計の厳しい中で安価な食料品を求めている消費者の適正価格を、市場原理だけで解決することは極めて困難です。だからこそ、価格は市場で、所得は政策でという切り分ける考え方が生まれ、戸別所得補償政策が必要だと私たちは提案をしています。

 よしんば、今回の施策を通じ、市場における適正な価格形成が実現したとしても、再生産を可能とする所得水準に見合う価格が実現する保証はありません。先行例であるフランスにおけるエガリム法などは、農業支援策としては不十分との評価もあり、直接所得補償が加わって農業、農村の維持が実現されているとの評価があることを率直に受け止めるべきであると考えます。

 再生産可能な価格の実現は当然に追い求めるにしても、農業者戸別所得補償などの直接支払いも併せて実施するべきであると考えますが、総理のお考えを伺います。

 また、農業の基盤が農地、農業者であることに鑑み、新たに農地を維持し、農地として活用することを念頭に、面積に着目した直接支払いなどを食料安全保障支払いとして実施すべきであると提案をいたします。総理のお考えを伺います。

 非常時の食料確保に加え、貧困などの経済的な事情や過疎地での買物難民など、平時でも健康的で十分な食料へのアクセスが困難な事象に対応していくことは重要なことです。国民の健康な食生活を保障するため、フードバンクや子供食堂などの活動を積極的に位置づけ、支援を強化していくべきであると考えます。また、重要な食育の場である学校給食の無償化を実現、給食での地域の農産物の活用、有機食品の活用を積極的に進めるべきであると考えますが、総理のお考えを伺います。

 これまでの基本法では、効率的かつ安定的な農業経営が農地の大部分を保有する望ましい農業構造を実現することを目標に、大規模専業経営、労働生産性の向上、農業の成長産業化を目指すことに政策の重点を置いてきました。しかし、大規模化が進んだ北海道を見ても、規模に応じた機械投資や資材への投資、さらには人的投資などが応分に必要になり、一方では作物価格が伸びない中で、これらのモデルでは持続可能な経営が実現できているとは直ちに言えないようなことが明確になってきていると考えます。

 農地の集積を進めた結果、農村集落での営みが維持できなくなりつつあり、また、大規模農家の離農に際して、農地の大きさゆえに近隣農家が残った農地を引き受けることも難しくなっております。中小・家族経営など、農村集落において多様な経営体が存在することが重要であって、成長産業化という文脈から離れた農業経営の安定化策の構築、強化を図るべきであると考えますが、総理のお考えをお聞きします。

 国内農産物に対する消費者ニーズが堅調であり、輸入品から国産への転換が求められる小麦、大豆、飼料作物について、国内生産の増大を積極的に図っていくことは重要です。しかし、だからといって、優れた生産装置である水田の畑地化をいたずらに進めるのは問題があると考えています。アジア・モンスーン地帯に位置する我が国にとって、水田という生産装置を維持することの食料安全保障上の意味は極めて重要であります。

 一方で、米の消費が年々減少する中で、ほかのニーズのある作物に切り替えていくことも必要なことでありますが、このために重要な役割を果たしてきた水田活用直接支払い交付金は、その見直し以降、いまだに農村現場には農地の売買や土地改良など、多くの混乱が見られ、特に中山間地などの条件不利地においては、畑地化支援を手切れ金代わりに離農するような兆しも見えております。

 水田活用直接支払い交付金は、主食用米以外の作物を作り、主食用米並みの所得を確保し、農業経営を維持していくという上で重要な役割を果たしており、農家からも支持されている政策です。まずは、見直しによる混乱の収拾、併せて、この制度を安定させるためにも法制化すべきであると考えますが、総理のお考えを伺います。

 現行基本法にも、自給率の向上、農地の維持、確保、農業者の維持と経営の安定がうたわれております。ただ法律に目標を書けばそれでよいというわけではありません。当然、法に書かれた目的を本気で実現していただかなければなりません。

 同じ安全保障でも、防衛予算は大きく伸びているのに対し、食料安全保障に対する予算が伸び悩むようでは、政府の本気が問われることになると思います。残念ながら、農林水産省予算は伸びているとは申せません。農林水産業は地方の基幹産業であり、農林水産予算は、地方経済にとっても極めて重要な意味があると思っています。

 二十五年ぶりの初めての改正となる今回の改正を経て、今から二十五年後、我が国農業、農村が今よりも疲弊することとなれば、今回の改正が失敗であったことを意味します。二十五年後、総理は、この基本法の改正を経て、自給率は向上し、農地は維持をされ、農業者も維持、増大するとお約束いただけるのかお伺いして、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 神谷裕議員にお答えいたします。

 食料・農業・農村基本法の見直しを法改正で対応する理由についてお尋ねがありました。

 かつての農業基本法は、農業施策のみに重点を置いた体系であったところ、現行基本法においては、国民全体の視点から施策を行うことを重視し、農業施策に加え、食料施策と農村施策までをその対象とするため、農業基本法を廃止し、食料・農業・農村基本法として新法で制定されました。

 今回の見直しは、世界の食料需給の不安定化など、国内外の情勢変化に的確に対応していくためのものですが、農業施策に加え、食料施策、農村施策までを対象として食料供給の確保等を行うという意味では、現行基本法の考え方自体を変更するものではないことから、改正法案として提出したものです。

 基本法の見直しを契機とした抜本的な政策の見直しについてお尋ねがありました。

 農業者の急激な減少など生産基盤の弱体化や、世界の食料需給が不安定化する中で、輸入リスクの増大、食品アクセスの問題等、食料安全保障上の諸課題が顕在化しており、こうした内外の情勢変化に対応するため、基本法を改正するものです。

 基本法の改正に当たっては、政府の食料・農業・農村政策審議会において、現行基本法の下での政策の検証、評価等を真摯に行い、これも踏まえて、今国会に、基本法改正案とともに、スマート農業の振興や農地の総量確保と適正、有効利用、不測時の食料安全保障の強化に対応するための関連法案を提出しているところであります。基本法改正案の示す方向性を実現するための政策の抜本的見直しを進め、農政を再構築してまいります。

 不測時の食料安全保障に関する、法案における罰則についてお尋ねがありました。

 この法案では、食料供給に向けた生産拡大等について、事業者の自主的な取組を基本とした上で、国民生活等に実体上の支障が生じている事態にまで至った場合において、政府として、確保可能な供給量を把握し、実効性ある対策を講ずるため、事業者に計画の届出を求めているところ、この計画の届出をしない事業者に関し、二十万円以下の罰金を規定しております。

 この措置は、計画どおりに生産を行わないことに対するペナルティーではなく、国民生活等に実体上の支障が生じている事態において、法目的達成のために、必要最小限の措置として、計画の届出自体を担保するためのものであり、事業者の方々に御理解をいただきたいと考えております。

 食料の海外への過度の依存についてお尋ねがありました。

 改正案においては、食料安全保障の確保を基本理念に位置づけることとし、過度に輸入に依存している麦、大豆等の国内生産の拡大を一層後押しするとともに、担い手の育成、確保を図りながら、スマート技術の導入や農地の集積、集約による生産性の向上を図っていくこととしております。

 同時に、自国で賄い切れない食料や肥料、飼料等の生産資材について輸入リスクが増大していることも食料安定供給の課題となっていることから、国内の農業生産の拡大を図ることを基本としつつ、輸入相手国の多様化等による安定的な輸入と備蓄の確保も適切に行ってまいります。

 農業者戸別所得補償と食料安全保障支払いについてお尋ねがありました。

 将来にわたる食料の安定供給の確保には、農業が持続的に発展し、収益を確保していくことが重要です。

 多くの産地で、生産性や付加価値の向上等の取組により、所得確保に向けた創意工夫をされています。これに対し、農業者の戸別の所得補償については、過去の戸別所得補償制度を見ても、農地の集積、集約化等が進まず生産性の向上が阻害されるおそれがあるほか、一般的に、消費が減少している品目の生産が維持され需給バランスが崩れる、補償を織り込んで生産者の取引価格が低く抑えられる等の懸念があります。

 このため、改正基本法に基づき、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、所得の向上を図ってまいります。

 他方、食料安全保障支払いの御提案については、現在、既に、農地等の保全管理のための多面的機能支払い、中山間地域の農業生産条件の不利を補正するための中山間地域等直接支払いなど、我が国農業の実態と課題に応じた直接支払い政策を講じているところです。

 食品へのアクセスと学校給食についてお尋ねがありました。

 改正案において、食料の円滑な入手の確保を位置づけ、その環境整備に向けて、フードバンクや子供食堂等に対し、未利用食品の提供の体制づくり等に加え、政府備蓄米の全国的な提供体制の整備を進めるなど、積極的に支援を進めてまいります。

 また、学校給食において、地場産物や有機農産物の活用は、食育の観点からも有意義であり、体制づくり等について支援を進めてまいります。

 なお、学校給食の無償化については、全国ベースの実態調査の結果の公表を六月までに行った上で、小中学校の給食実施状況の違いや法制面等を含めた課題を整理し、結論を出してまいります。

 多様な経営体による農業経営の重要性についてお尋ねがありました。

 農業経営体の減少が今後も見込まれる中、将来にわたり食料を安定供給できる農業の確立が必要です。

 このため、引き続き、規模の大小や経営形態にかかわらず、農業で生計を立て、効率的かつ安定的な農業経営を目指す方々を担い手として、その経営の安定、発展を後押ししてまいります。

 あわせて、担い手以外の多様な経営体についても、農地の保全等の役割に鑑み、地域の共同活動への支援等を行い、農業生産の基盤である農地の確保を図ってまいります。

 水田活用直接支払い交付金についてお尋ねがありました。

 食料安全保障の強化のため、主食用米の需要が減少を続ける中、輸入に依存する麦、大豆の生産拡大が必要であり、これらの生産が定着した水田は、本格的な畑地転換により麦、大豆の収量増大を図ることが農業所得の向上の観点からも重要です。

 他方、気候風土等から本格的な畑地化に適さない水田等については、稲と麦、大豆の輪作体系を確立し、農業所得を確保していくことが有効です。

 政府としては、こうした農地利用に関する各産地の主体的な判断に応じて、産地が本格的な畑地転換を行う場合は、排水対策等の基盤整備や畑作物生産の安定化を支援し、水田機能を維持する場合には、水田活用の直接支払い交付金により支援することとしており、交付金による支援継続に当たり、御指摘の見直しによる水田機能の維持を確認しているものです。

 こうした支援を機動的に行うためには、御提案の法制化はなじまないものと考えておりますが、現場の皆さんに安心して生産活動に取り組んでいただけるよう、丁寧な説明に努めながら支援を進めてまいります。

 二十五年後の農業の姿についてお尋ねがありました。

 今回の基本法の改正を通じ、需要に応じた農業構造への転換を進め、過度に輸入に依存している農産物の国内生産を拡大するなど、自給率向上に資する取組を進めてまいります。

 また、国内の人口減少が避けられない中で、農業者数の増大を図ることは現実的ではないですが、担い手の育成、確保を図りつつ、スマート農業の導入等による生産性の向上を促すことにより、必要な農地を確保、有効利用し、所得の向上と我が国の農業の持続的発展を図ってまいります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 池畑浩太朗君。

    〔池畑浩太朗君登壇〕

池畑浩太朗君 日本維新の会の池畑浩太朗でございます。

 私は、教育無償化を実現する会との共同会派を代表し、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対して質問をさせていただきます。(拍手)

 農業が滅びれば国は滅びる。まさに、農業は国家の基であり、国民の皆様に食料を供給する重要な産業であることは言うまでもありません。国家の基本産業たる農業を発展させ、将来にわたって残していくことは重要であります。ここにおられる皆様との共通認識だと思います。

 その上で、維新の会は、農業の生産性を向上させ成長産業とする、そして、若い世代の方が農業に夢を持って参入していただく、そういった強い農業を実現し、将来にわたって国民の皆様への食料の安定供給を確保したいと考えております。そのために何が必要か、建設的に議論していきたいとまず述べさせていただき、質問に入らせていただきます。

 農業基本法は、農政における憲法に位置づけられる法律で、我が国の農業の大きな方向性を示す指針であります。その基本法が二十五年ぶりに改正されるわけでありますが、その二十五年間に、人口減少、高齢化、気候変動やロシアによるウクライナ侵略による国際情勢の変化など、我が国の農業も大きな潮流にのみ込まれ、変化を迫られてまいりました。

 まず、現行基本法がそうした変化に対応できていなかったのか、まず総括が必要だと考えております。現行基本法が目指してきた目標はどこまで実現できたのか。直近でいえば、ウクライナ危機が発生してから三年目に入っておりますが、この間に現行基本法では対処できなかった課題は何があったのか。現行基本法の総括について、総理の認識をお答えください。

 食料・農業・農村基本法の前身は農業基本法であり、二十五年前の現行基本法制定時に、新たに食料、農村という概念が追加をされました。生産者サイドの視点だけではなくて、消費者サイドの視点も重要視されたわけであります。

 今回の改正案では、食料安全保障の定義を、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態としております。国全体で十分な供給ができていても、一人一人に届かなかったら意味がない、誰一人取り残さないという考えであり、世界の流れに追いつこうとしております。

 私は、初当選以来、一貫して農林水産委員会に所属をしてきました。地元生産者のお声を聞いてきたのはもちろんですが、消費者の声も多く聞いてまいりました。例えば、子供の食、健康について考え、暮らしやすい社会の実現に向けて活動をしておられるお父さん、お母さんの団体であります。

 今を生きる人たちへの食の供給だけでなく、将来にわたって安全な食を守っていくために、こういった消費者の意識向上は欠かせません。このため、今回の改正案において消費者の役割についても明記されることとなりましたが、消費者政策はどのように変わるのか、狙いはどこにあるのか、総理の御所見をお伺いさせていただきます。

 次に、現行基本法では、農業者と農協などの農業団体について、努力義務として、基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めることが規定されておりますが、今回の改正案では、農業者の役割と農業団体の役割が分かれており、それぞれの役割が明記されております。

 生産資材の購入や農作物の販売については個々の農業者が行うよりも共同で行った方が有利にできるため、農協が存在をします。農業者の方の声を聞くと、自分たちの作った農作物をもっと高く売ってほしい、新しい需要を開拓してほしいといった、農協にもっと頑張ってほしいといった声を多く聞きます。消費者ニーズも多岐にわたり、また国際情勢も大きく変化をしております。農業者だけでは対処できないことも多く出てまいりました。今こそ、農協は農業者のためにあるという原点を大事にしていくべきだと考えます。

 農作物輸出の取組や生産資材の有利調達など、農協改革を経て、農業者のために汗をかくという農協本来の役割が発揮され、農業者の努力と農協の努力が好循環を生み出すような取組を広げていかなければなりません。

 農林水産大臣は、農業者と農協等の農業団体が果たすべき役割をどう認識し、今回の改正案でどのように規定されているのでしょうか。農協改革の歩みを止めず、農協の前向きな取組が促進されるような施策を打っていくべきではないでしょうか。農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。

 次は、農村政策についてであります。

 中山間地域は、少子化、高齢化、人口減少が都市に先駆けて進行しております。課題先進地域ではありますが、一方、田園回帰による人の流れが全国的な広がりを持ちながら継続しているなど、農村の持つ価値や魅力が国内外で再評価をされております。農村のにぎわいが戻れば、農業を維持し、発展できる、この点で農村政策は重要であります。

 一方、多くの人にとって魅力的な農村を実現するためには、農業関連産業だけでは完結できません。観光業、地場産業、その他の産業など、総合的に発展させていくことが豊かな農村の実現につながります。

 農村政策について、今回の改正案でどのように変わるのか、農村の活性化につながっていくのか、農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。

 また、人口減少下にある我が国の農業にとって、農業者の確保は極めて重要な問題であります。

 改正案では、現行第二十一条の望ましい農業構造の確立について、新第二十六条第一項としてそのまま残しております。新たに第二項を追加しております。

 第一項では、効率的かつ安定的な農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立をすることを掲げておりますが、第二項では、それ以外の多様な農業者により農業生産の基盤である農地の確保を図る旨が規定をされております。急激な人口減少下にあっては、効率的かつ安定的な農業経営を営む者のみならず、多様な農業者によって農村を支えていかないといけないということは、現実にそうせざるを得ないという考えであります。

 しかし、国民の食料の安定供給のためには、やはり、プロの農家、効率的かつ安定的な農業経営を営む者によって農業が担われるということは言うまでもありません。新しく、多様な農業者という概念が追加されることによって、プロの農家の育成がぼやけてしまい、農業の健全な発展が妨げられてしまうことがあってはなりません。

 この新第二十六条第一項及び第二項について、狙いは何か、説明を明確にお願い申し上げます。望ましい農業構造の確立のための担い手の確保に向けてどのように取り組んでいかれるのか、農林水産大臣の御所見をお伺いいたします。

 次に、食料安保とは、有事など不測の事態に直面しても国民が飢えることがないように備えていくことであるというふうに考えております。改正案では、新第二十四条に不測時における措置を設け、関連法の食料供給困難事態対策法案とともに、現行法の規定よりももっと早い段階から対策が講じられるように拡充をされております。早くから予測を立て、対策を取ること自体は一歩前進とは思いますが、それが有効に機能するかは別問題であります。

 深刻な食料供給困難事態として想定されるのは、国内の米生産が大きく減少する場合と小麦の輸入が大きく減少する場合の二つの場合があります。食料供給困難事態対策法案を見ても、小麦の輸入が減少した場合どのようにしたらよいのか、米の生産が減少したらどのようにすればよいのかなど、具体的な対策が見えません。このままでは、有事のときに対策を講じようとしても、うまく機能しないのではないでしょうか。農林水産大臣の具体的な説明を求めます。

 食料有事に当たっても国民の皆様に供給する食料のクオリティーを落とさないためにも、平時から国産小麦の増産が重要です。ブロックローテーションを各地で導入し、輸入に依存する小麦の生産拡大を図っていかなければいけません。

 小麦の輸入先国を多角化する対策だけでは限界があるというふうに考えております。生産主要国のうち一国でも大きな不作が生じれば、世界的な需要が高まり、小麦の争奪戦となり、日本が有利に小麦を確保できる保証はないからです。いわゆる買い負けです。

 また、小麦は、日本の高温多湿の気候風土では生産が難しいと言われてきました。国産小麦の増産は一朝一夕にできるものではありません。実際、直近ではほとんど作付が伸びていないのが現実であります。

 国産小麦については、農林水産省として、五十年間もの間、旗を振り続けてこられたというふうに思います。これまで、どのようにして生産拡大に向けて努力をされてきたのか、また、今後の生産拡大の可能性についてどのように考えるのか、農林水産大臣の御所見をお伺いさせていただきます。

 平時から、備えとしては、米の輸出拡大に本腰を入れることも必要であります。

 広く世界を見渡せば、日本産米の需要には大きな伸び代があると見るべきであります。現在の米の世界的需要は、タイ米に代表される長粒種が圧倒的なシェアであり、日本産のような粘り気のある短粒種はごく一部に限られております。これは確かに輸出に不利な面もありますが、一方で、すしやおにぎりのような日本食文化が世界的に注目される潮流も起こっています。これまで短粒種が不人気だったのは、口にする機会が少なかったからなのではないかというふうに考えております。

 より一層輸出を拡大するためには、これまでやってきたような施策の継続では難しく、思い切った、これまでにないようなことが必要だというふうに考えております。例えば、私が予算委員会で質問をさせていただきまして、坂本大臣にも御賛同いただきました、エンターテインメントとのコラボレーションについてであります。

 単に口にする機会がなかったのであれば、需要拡大に向けたPRを強力に進めていかなければなりません。また、日本の優れた加工技術を用いたパック御飯や日本酒、菓子なども、新たな需要を開拓できる大きな可能性があると考えます。

 こういった取組の総力を結集し、米輸出に強力に取り組んでいくべきだと考えますが、農林水産大臣の御見解を求めます。

 最後になりましたが、能登半島地震で被災をしました石川県能登地域の農林水産業についてお伺いをさせていただきます。

 断水によって牛に水が与えられない酪農家の方。今年の米の作付をどうしようかと途方に暮れられる米農家の方。海底が隆起をし変わり果てた漁港を見詰める漁業者の方。海底隆起に関しては、新しい技術やアイデアが必要だというふうに考えております。また、輪島の白米千枚田に象徴されます、世界農業遺産に認定された同地域の農業も壊滅的な被害を受けております。

 この地域の農林水産業の復興に成功すれば、地元の被災農家のみならず、多くの困難を抱える日本の全ての農林水産業従事者の方、消費者である全ての国民の希望の光となるのは間違いなく、新しい基本法の最初の試金石になるでしょう。能登の農林水産業復興に向けて、総理の決意を改めてお聞かせいただきたいと思います。

 農業が主産業である地方では、特に人口が減少し、担い手確保が難しくなってきています。国内の人口が減少する中、国内需要のみに目を向けていては、このまま衰退をしていってしまいます。これは、我が国において長く営まれてきた農林水産業にとって大きな過渡期であることは間違いがなく、このまま放っておけば、日本農業の危機と言っても過言ではありません。今こそ、日本農業は変わらないといけません。常に前を向いて、改革すべきところは改革を進めなければなりません。

 今後の農政の方向性を決める食料・農業・農村基本法改正案によって、生産者を守り、国民の食料を確保し、消費者を守るということができるのかが試されます。

 生産者が安心して農業に従事することができる、よりよい基盤をつくっていくこと。生産の拡大ができる夢のある政策を。私たち日本維新の会と教育無償化を実現する会は、農林水産業に従事される皆さんとともに、成長産業へと転換すべく不断の改革に取り組んでいくことをお誓い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 池畑浩太朗議員の御質問にお答えいたします。

 食料・農業・農村基本法の総括についてお尋ねがありました。

 基本法の改正に当たっては、政府の食料・農業・農村政策審議会において、現行基本法の下での政策の検証、評価等を真摯に行ってまいりました。その中で、現行基本法では、食料の安定供給の確保を基本理念として掲げ、この達成に不可欠な足腰の強い農業の実現に向け、担い手の育成や農地の集積、集約等を進め、例えば、農業総産出額は九兆円前後を保つことができたところです。

 他方で、近年のウクライナ情勢によるサプライチェーンの混乱など、世界の食料需給が不安定化し、我が国の食料安全保障リスクが高まる中、こうした情勢変化に対応するため、改正案において、食料安全保障の確保を基本理念に新たに位置づけ、農政の再構築を行うこととしたものであります。

 消費者政策についてお尋ねがありました。

 改正案において、消費者の役割として、農業等への理解を深めるとともに、食料の消費に際し、環境への負荷低減など、食料の持続的な供給に資する選択に努めていただくことを規定することといたしました。

 政府としては、適切な情報提供や食育の推進を行い、これらを通じて、消費者の皆さんに対し、生産現場の実態や、肥料、農薬の低減など環境負荷低減の取組等に関する理解醸成を図りつつ、日頃の消費行動を通じて、持続可能な食料供給に一層積極的に関与いただけるよう促してまいりたいと思います。

 能登半島地震で被災した農林水産業の復興に向けた決意についてお尋ねがありました。

 私自身、先月、白米千枚田の被害状況や被害が甚大な輪島港を視察するとともに、被災された農業者や漁業者の方々からスピード感を持った復旧の必要性を伺い、早急な復旧となりわい再開支援に取り組む思い、これを改めて強くした次第であります。

 農林水産業は能登地方の基幹産業であるとともに、世界農業遺産に登録された里山里海は地域の誇りであり、また、日本の宝でもあります。この能登の農林水産業が、新たな基本法の基本理念に沿って、環境と調和を確保して、持続可能な農業として再生し、地域社会の復興につながるよう、政府として全力で後押しをしてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣坂本哲志君登壇〕

国務大臣(坂本哲志君) 池畑浩太朗議員への答弁の前に、先ほどの江藤拓議員への農業における環境との両立の答弁について、答弁漏れがございましたので、追加で答弁させていただきます。

 国内外において地球温暖化が進行する中、農林漁業、食品産業においても環境への負荷の低減を図ることは、待ったなしの重要な政策課題となっています。

 このため、食料、農林水産業の生産力向上と持続性の両立に向けて、令和三年五月に、みどりの食料システム戦略を策定いたしました。また、今般の食料・農業・農村基本法の改正においても、食料供給が環境に負荷を与えている側面にも着目し、環境と調和の取れた食料システムの確立を柱として位置づけているところです。

 これを実現するため、我が省では、みどりの食料システム戦略推進交付金を措置し、戦略の実現に必要な技術の開発、普及を推進するとともに、産地の環境負荷低減の取組を支援しているほか、生産段階の温室効果ガス削減の努力を分かりやすく表示する見える化の取組、販売収入も期待できるJクレジット制度の活用を進めているところです。

 さらに、農林水産省の全ての補助事業等に対して、最低限行うべき環境負荷低減の取組の実践を義務化するクロスコンプライアンスを導入し、農林水産、食料事業者等の取組を促してまいります。

 引き続き、環境と調和の取れた持続的な食料システムの実現に向け、関係者の理解と共同を得ながら、農林水産省一丸となって取り組んでまいります。

 池畑浩太朗議員の御質問にお答えをいたします。

 農業者、団体の役割についてのお尋ねがありました。

 食料・農業・農村基本法改正案では、農業者や食品産業の事業者が基本理念の実現に主体的に取り組むよう努めると規定しており、これらの者が構成する団体についても基本理念の実現に主体的に取り組むこととなることから、その行う農業者、食品産業の事業者のための活動が、基本理念の実現に重要な役割を果たすものであることに鑑み、これらの活動に積極的に取り組むよう努めると規定しているところです。

 農協については、農業者の団体であることから、前述の改正案の団体の規定が適用されるとともに、農協法において「農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない。」と規定されていることから、農産物の実需者への直接販売などの有利販売や輸出に向けた取組、生産資材の一括購入による有利調達や農業機械の機能の絞り込みによる価格の値下げなど、連合会とも連携しつつ、農業者の所得向上を図る自己改革の取組を実践していると承知しています。

 政府としては、引き続き、農協の自己改革を後押ししていきたいと考えております。

 基本法における新第二十六条の狙いについてのお尋ねがありました。

 今後、我が国全体の人口減少に伴い、農業者の急速な減少が見込まれています。

 こうした状況の中で、食料の安定供給を図るためには、担い手が農業生産の相当部分を担う望ましい農業構造の確立に向け、担い手である効率的かつ安定的な農業経営の育成、確保が必要であるとの考えに変わりはなく、現行基本法第二十一条は、改正案の第二十六条第一項としてそのまま維持しております。

 今後とも、担い手が主体性と創意工夫を発揮した経営を展開できるよう、担い手への農地集積、集約化を進めつつ、経営所得安定対策、収入保険、出資や融資、税制などを通じた重点的な支援を通じ、担い手の育成、確保に取り組んでまいります。

 一方で、担い手だけでは管理ができない農地が出てきている中で、担い手以外の多様な農業者に農地の保全管理を適切に行っていただく重要性が増しているところです。

 このため、担い手以外の多様な農業者が地域における協議に基づき農地の保全を行っていく役割を、新第二十六条第二項に新たに位置づけたところです。

 こうした取組を総合的に講ずることにより、農地の確保を図ってまいります。

 不測の事態における措置についてのお尋ねがありました。

 我が国の食料安全保障上のリスクが高まる中、食料供給が大幅に減少し、国民生活、国民経済への影響が生じる事態に備えるため、食料供給困難事態対策法案を今国会に提出したところです。

 食料供給が大幅に不足する要因として、気候変動に伴う不作等による供給減少が挙げられますが、このような事態は数か月前から予測可能であり、供給不足の兆候を察知した早期の段階から供給確保のための対策を行うことが必要です。

 このため、本法案において、兆候を察知した段階から政府対策本部を立ち上げ、予想される供給不足を解消するため、まずは事業者の自主的な取組を推進するよう、出荷、販売業者に対しては、買占めや売惜しみなどを行わないよう、在庫を計画的に市場に供給すること、輸入業者に対しては、既存の取引先との交渉や輸入先の多角化により必要な輸入量を確保すること、供給不足の解消時期が予見できない場合には、生産者に対して早期に国内生産を増やすことなどを要請するとともに、政府といたしましても、これらが円滑に推進するよう、必要な財政措置を講じていきたいと考えております。

 次に、国産小麦の生産拡大についてのお尋ねがありました。

 現在の食料・農業・農村基本計画において、小麦の生産努力目標として、令和十二年に生産量百八万トンを掲げています。

 この目標に向けて、生産面では、基盤整備による汎用化、畑地化の推進と併せ、作付の団地化やブロックローテーション、スマート技術等の営農技術、新たな品種の開発導入、流通面では、安心して生産拡大していただけるよう、ストックセンターの整備など民間による調整保管機能の充実、消費面では、国産小麦を使った新商品の開発やマッチング、原材料切替え等に伴う機械、設備の導入等、生産から流通、消費に至るまで、一貫した支援に取り組んできました。

 この結果、既に、令和三年産、五年産では、令和十二年度の目標を上回る百十万トンの生産を実現しており、作付面積についても、近年、堅調に増加しております。

 我が国の食料安全保障の強化のためには、輸入依存度の高い小麦の更なる生産拡大など、国内の農業生産の増大を図っていくことが不可欠です。今国会で改正案が成立した暁には、これを踏まえて策定される次期基本計画で、これまでの生産状況を踏まえて、小麦の作付面積拡大に係る意欲的な目標を設定し、小麦の増産を図っていく考えです。

 次に、日本産米、米加工品の輸出促進についてのお尋ねがありました。

 日本産米の輸出に加え、付加価値のあるパック御飯や日本酒、米菓といった米加工品についても、米の輸出促進団体を中心としたオール・ジャパンでのプロモーション等を進めてきた結果、米やパック御飯、日本酒、米菓等の輸出額は、最近四年間で倍増しています。

 さらに、日本産米の魅力をより効果的に訴求する観点から、エンタメの活用も有効であると考えており、例えば、現地メディアやインフルエンサーを呼んだ輸出事業者による日本産米PRイベントの支援を行うとともに、輸出促進団体による現地レストラン検索アプリ等を活用した日本産米使用店のPRも行われました。

 引き続き、日本産米、米加工品の輸出拡大に向け、しっかりと取り組んでまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 山崎正恭君。

    〔山崎正恭君登壇〕

山崎正恭君 公明党の山崎正恭です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に関し、質問をいたします。(拍手)

 近年、世界の食料安全保障の現状は、干ばつなどの世界的な気候変動やウクライナ情勢により、世界の食料生産、流通が打撃を受けるなど、深刻な事態です。我が国においても、食料自給率の低下や相次ぐ災害など、食料安全保障上の課題が山積しております。

 このような状況の中で、農政の憲法とも言われる食料・農業・農村基本法が、制定後、初の改正を迎えました。新しい基本法の下で、しっかりと食料の安全保障を確保していかなければならないと考えます。

 一方で、資材高を上回る所得拡大の実現など、持続可能な農業の再構築も喫緊の課題です。

 そこで、今回の食料・農業・農村基本法の改正により、農業の持続可能性と食料安全保障の確保をどのように実現させていくのか、今後の政府の取組について、総理にお伺いします。

 次に、公明党が昨年十二月に政府に対して行った提言において要望したのが、平時からの食料安全保障の確立であります。その状況を平時から評価する指標として、今までは食料自給率だけだったのが、今回の改正では、その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標が加わりました。確かに、農地や生産資材、また、農業技術、農業労働力などにも着目した総合的な指標で日本が食料を自給できる力を捉えて、自給力を蓄えていくことは重要であります。

 そこで、今回の改正では、食料自給率及びその他の食料安全保障の確保に関する事項の目標について、少なくとも毎年一回、目標の達成状況を調査し、その結果を公表しなければならないとなっていますが、それだけではなく、調査結果を受けて、施策を不断に検証し、例えば、需要に応じた生産を推進すべき品目を選定するなど、状況に応じた施策の見直しを機動的に進めていく必要があると思いますが、総理の見解をお伺いします。

 次に、日本の基幹的農業従事者百二十三万人のうち、五十歳代以下は二十五・二万人、全体の二一%であるという現状を考えた場合、これからの我が国の農業従事者をどう確保していくかということが大変重要であります。

 この点についても、公明党は、昨年十二月の提言の中で、農業の生産基盤である農地の確保を図るため、担い手とともに、担い手以外の多様な農業人材を本法案の中に位置づけることを訴えてきました。

 そこで、今回の改正で、第二十六条の望ましい農業構造の確立において、効率的かつ安定的な農業経営を営む者とともに、それ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われることで、農業生産の基盤である農地の確保が図られるよう配慮するものとするとありますが、家族農家やサービス事業体なども含め、多様な農業者が本法案に位置づけられるべきと考えますが、農林水産大臣の見解をお伺いします。

 次に、農水省が発表した農業物価指数によると、二〇二三年の農業資材価格は、ウクライナ危機などを背景に上昇していた二〇二二年を更に上回り、統計が残る一九五一年以降で過去最高となりました。肥料や飼料などの高騰も相まって、農業従事者の経営を大きく圧迫しています。

 そこで、今回の改正において、第四十二条の中で、「国は、農業資材の価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるものとする。」と定め、農業資材高騰への対策について明記していますが、育成すべき農業経営者については、その対象を限定することなく、幅広く施策の対象とすべきであると考えますが、農林水産大臣の見解をお伺いします。

 次に、持続可能な農業経営のためには、農業者の経営的安定が重要でありますが、気候変動に伴う災害の激甚化、頻発化により、農業者の経営は不安定さが増しているとも言われています。そんな中、二〇一九年からスタートした収入保険制度が、全ての農作物が対象になることもあり、農業者の経営の救済に一定の役割を果たしてきましたが、災害対応など、制度の充実を図っていくべきだと考えます。

 そこで、実施後五年がたった農業従事者の収入保険について、引き続き、取組状況や現場ニーズを踏まえて見直しを行っていくことが重要ではないかと思いますが、農林水産大臣の認識をお伺いします。

 次に、国民の皆さんへの食料の安定供給を行うには、食料システム全体を持続可能な安定したものにしていくことが重要です。そのために、まずもって重要なことが食料を生産する農業従事者の確保であり、先ほども述べました、肥料や資材高騰等の厳しい経営環境に負けないための農業従事者の所得の拡大が非常に重要であります。

 具体的には、適正な価格形成をどう行っていくかであります。現在、飲用牛乳と豆腐、納豆についての取組が行われていますが、それに続いて、今後は国費による調査を実施していくとの認識ですが、裾野が広い食料品のサプライチェーン全体で適正な取引や価格形成ができるよう、政府を挙げて調査体制や手法を強化し、実態を正確に把握する必要があると思います。

 現在、総理が推し進めてきた賃上げの流れが加速化してきていますが、適正な価格形成は農業者にとっての賃上げであります。昨年六月の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部の第四回会合で、適正な価格転嫁を進めるための仕組みの創設、法制化が政府方針として打ち出されています。

 そこで、今後行う調査結果を踏まえて、法制化を目指すとの政府方針を力強く進め、農業者の賃上げや所得拡大についても政府を挙げて進めるべきであると考えますが、総理の決意をお伺いします。

 次に、農産物等の適正な価格形成に向けては、消費者を含めた食料システム全体の関係者の理解が不可欠であります。今回の改正においては、消費者の役割について、食料の消費に際して、食料の持続的な供給に資するものの選択に努めること等が示されています。

 そこで、農業者からは、消費者の行動変容につながるような実効性のある施策が求められています。公明党は、消費者の行動変容につながる環境や健康に優しい農産物等の表示の見える化などを提案してきましたが、こうした取組も含めて、具体的に国としてどのように進めていくのか、農林水産大臣にお伺いします。

 また、持続可能性、将来の日本の農業の発展を考えた場合に、子供たちへの教育、食育が大変重要であると考えます。

 そこで、食育を関係省庁が一体となって取り組むべきと考えますが、総理の答弁を求めます。

 結びに、公明党は、これまでも、農は国の基として、日本の農業振興に全力で取り組んでまいりましたが、今回の食料・農業・農村基本法の改正により、国民の皆さんの食料の安全保障が確保されるとともに、農業従事者の所得拡大がなされ、日本の農業が更に発展し持続可能なものとなるよう、今後の政府の実効性のある取組を強く求め、私の質問といたします。

 最後までの御清聴、ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 山崎正恭議員の御質問にお答えいたします。

 農業の持続可能性と食料安全保障の確保についてお尋ねがありました。

 現行の食料・農業・農村基本法において基本理念として掲げている農業の持続的な発展に向けて、改正案において、農業の生産性の向上、農産物の付加価値の向上、農業生産活動における環境への負荷低減によって実現していくことを明確にしています。

 また、改正案では、新たに食料安全保障の確保を基本理念に位置づけた上で、国内の農業生産の拡大を基本としつつ、安定的な輸入及び備蓄の確保を図るとともに、我が国人口が減少する中で、海外への輸出を図ることで食料の供給能力の維持を図ることを明確にしております。

 食料安全保障に関する施策の検証、見直しについてお尋ねがありました。

 改正案では、基本法に基づき策定する食料・農業・農村基本計画において食料自給率その他の食料安全保障の確保に関する事項の目標を定め、達成状況を少なくとも毎年一回調査し、結果を公表することとしております。

 食料安全保障の確保に向け、基本法に基づく達成状況の調査、公表を行う中で、各般の施策を不断に検証し、必要に応じ、機動的に見直してまいります。

 適正な価格形成の法制化と農業者の所得拡大についてお尋ねがありました。

 農産物の価格については、需給事情や品質評価が適切に反映されつつ、生産から消費までの各段階の関係者の合意の下、国内外の資材費、人件費等の恒常的なコストが考慮されて形成されることが重要であると考えています。

 こうした適正な価格形成の仕組みづくりについて、農林水産省において、各段階の関係者による協議を進めており、実態把握のための調査の結果も踏まえ、法制化も視野に検討を進め、政府を挙げて、適正な価格形成を通じた農業所得の拡大に取り組んでまいります。

 食育についてお尋ねがありました。

 農業の持続可能性を確保し、その発展を図る上で、農産物が生産から加工、流通を経て消費者に届く過程、また、国産農産物や環境に配慮した食品を選択することの意義等について、食育を通じ、子供たちの理解を深めていくことが重要です。

 このため、農業体験機会の提供、学校給食における地場産物の活用、栄養教諭を中核とした学校における食育の推進など、関係省庁一体となって食育を進めてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣坂本哲志君登壇〕

国務大臣(坂本哲志君) 度々申し訳ありません。先ほどの池畑議員への答弁の中で、農村政策について答弁漏れがございましたので、追加で答弁させていただきます。

 基本法制定後、人口減少、高齢化が急速に進み、今後、特に中山間地域を中心に、地域コミュニティーの維持等が困難になる集落が増加することが懸念されます。

 このような情勢を踏まえ、改正案では、基本理念に、地域社会が維持されるよう農村の振興が図られなければならない旨を追記し、基本的施策として、農地の保全に資する共同活動の促進、地域の資源を活用した事業活動の促進、農村への滞在機会を提供する事業活動の促進等を位置づけました。

 基本法に基づき、農村の活性化を図る上で重要な課題である仕事、暮らし、活力、土地利用の観点から、地域コミュニティーの維持に向け、多様な人材を呼び込むとともに、複数の集落が協力して活動する取組などを促進するための施策を推進してまいります。

 答弁漏れ、申し訳ありませんでした。

 山崎正恭議員の御質問にお答えをいたします。

 食料・農業・農村基本法改正案における多様な農業者の位置づけについてのお尋ねがありました。

 今後、我が国全体の人口減少に伴い、担い手の減少のみならず、それ以外の多様な農業者についても減少することが見込まれます。

 こうした情勢の中で、食料の安定供給を図るためには、担い手への農地集積を進めつつ、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、担い手以外の多様な農業者についても、自らの農地は生産を通じ保全管理を行うとともに、世代交代等による適切な管理が難しくなる場合には、管理できる方々に円滑に承継していくことが重要と考えております。このため、多様な農業者が地域における協議に基づき農地の保全を行っていく役割を改正案において新たに位置づけています。

 なお、家族農業経営とサービス事業体に関する基本法への位置づけについては、家族農業経営は、現行法から引き継ぎ、家族農業経営の活性化を図る旨を改正案の第二十七条で位置づけています。また、サービス事業体については、農業者が減少する中で、農業経営をサポートし、生産性の向上に重要な役割を果たすことから、その事業活動を促進する旨を改正案の第三十七条で新たに位置づけています。

 次に、農業資材高騰対策の対象についてのお尋ねがありました。

 今回の基本法改正案に、農業資材の安定供給に向け、国内で生産できる代替物への転換等を推進するとともに、農業資材の価格が著しく変動した場合、育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずる旨を位置づけたところです。

 お尋ねの育成すべき農業経営とは、経営の改善を図ろうとする意思を有する者が経営し、基本法が目指す、農業生産の大宗を占めるべき効率的かつ安定的な農業経営に発展する可能性が高い農業経営を指すものですが、具体的な経営規模や経営内容等について画一的に定めるものではありません。

 このため、個別の対策の対象については、農業資材の利用状況や対策の内容等に応じて決定していきますが、例えば肥料では、堆肥や下水汚泥資源等の国内資源の活用や施肥の効率化など、自主的な努力を行っている農業者に対し必要な支援を講じていく考えです。

 次に、収入保険の見直しについてのお尋ねがありました。

 収入保険において、制度開始以降、随時見直しを実施しており、最近も、令和六年加入者から、気象災害による影響を緩和する特例の導入、保険のみで九割まで補償する新たなタイプの創設、青色申告実績一年分のみで加入できる措置を実施したところです。

 引き続き、必要に応じ、取組状況や現場ニーズを踏まえた見直しを進めてまいります。

 次に、消費者の行動変容についてのお尋ねがありました。

 改正法案では、消費者は、食料、農業及び農村に関する理解を深めるとともに、食料の消費に際し、食料の持続的な供給に資するものの選択に努めることにより、食料の持続的な供給に寄与することとしているところです。

 このため、農林水産省では、生産者の環境負荷低減の努力を分かりやすくラベル表示し、消費者に伝える見える化を推進するとともに、食や農林水産業への理解の増進や意識の変化を図るための農林漁業体験等の食育の推進等を進めることとしています。(拍手)

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副議長(海江田万里君) 田村貴昭君。

    〔田村貴昭君登壇〕

田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、食料・農業・農村基本法改正案について質問します。(拍手)

 前回の基本法改正から二十五年、農村は疲弊の一途をたどってきました。農業で生計が成り立たず、農業従事者は半減し、福岡県や愛知県に匹敵する面積の農地が失われました。地域から学校がなくなり、商店がなくなり、ATMもガソリンスタンドもなくなって、今や農村生活の基盤が失われています。このまま推移すれば、早晩、農村から農家がいなくなり、米も野菜も生産できなくなります。

 なぜこのような事態となっているのか。何が問題で、どこに責任があるのか。岸田総理の答弁を求めます。

 私は、その責任は歴代の自民党農政にあると考えます。

 一九六一年の旧農業基本法以来、自民党政権は、麦、飼料、大豆の国産生産を放棄し、アメリカの余剰農産物を進んで受け入れてきました。その後も、牛肉、オレンジの自由化、WTO農業協定、TPP、日欧EPA、日米FTAなど、次々に輸入自由化を行い、そのたびに安い農産物が大量に流入してきました。その結果、一九六五年に七三%だった日本の食料自給率は、今や三八%に落ち込んでいます。自民党農政の責任は極めて重大です。

 にもかかわらず、総理は、施政方針演説で食料自給率に一言も触れなかったのはなぜですか。それどころか、本法案では、現行法の「食料自給率の目標」を「食料安全保障の動向に関する事項」に変えてしまい、安定的な輸入の確保などという条文を新設しています。自民党政権は、基本法に基づく食料自給率目標を一度も達成したことがありません。食料自給率の向上を最大の目標から外したのは、完全に投げ出したということではありませんか。

 重大なことは、唯一残った米ですら、国内需要の一割を超える七十七万トンものミニマムアクセス米を押しつけられ、巨額の税金を投入し輸入をし続けているということです。国内の米農家が低い米価で苦しんでいるさなかの二〇二二年度も、六百七十四億円もの税金を投入してアメリカの農家を助けました。総理、助ける方向、お金を出す方向が間違っているのではないですか。

 安全でおいしい食料を日本の大地から。子供たちに日本の食文化を伝えたい、おいしい国産のものを食べてほしい。これは、農家だけでなく、多くの国民の願いです。そのためには、農家が農業で暮らしていける収入がなくてはなりません。

 しかし、二〇二二年の畑作経営の平均年収は、補助金を入れても僅か二百二十三万円です。稲作経営の年間収入は、何と一万円でした。酪農に至っては年間四十九万円の赤字となり、急速に離農が進んでいます。基本法改定に向けた検証部会で、農業現場の委員からは、若い人がなぜ定着しないかといえば農業で食えないからだという的確な指摘がありました。この事態の抜本的な改善なくして農業と農村の再生はあり得ません。

 本法案では、生産コストを販売価格に転嫁し、合理的な価格にするとしていますが、それは米だったら幾らですか。収入一万円の農家の作ったお米は、幾らが合理的なのですか。実質賃金が下がり続けている下で、消費者が買えない金額になったらどうするのですか。それを複雑多岐にわたる販売先にどうやって受け入れさせるのですか。

 実効性のある価格転嫁は大事ですが、それだけでは不十分です。欧米では当たり前になっている価格保障や所得補償を抜本的に充実し、政府の責務として基本法に明記すべきです。

 日本共産党は、食料自給率を本気で向上させることが必要と考えます。そのためには、競争力強化の名の下に農業の大規模化を図り、耕す人がいなくなった農地を集積させる政策を続けていては実現できません。規模の大小や、家族、法人などの経営形態を問わず、自給的農家も含め、多様な人々を全て担い手として位置づけ、農村で暮らしていける所得を国が補償することが絶対に必要です。答弁を求めます。

 求められるのは、農業予算の拡充です。

 農業予算は、この十年間、二兆円余りと横ばいを続けています。一方、軍事費は、五兆円から六兆円、八兆円と年々増え続け、五年間で四十三兆円もつぎ込もうとしています。国民の食料のためにお金をかけることこそ、必要ではないですか。大軍拡をやめ、農業予算を抜本的に拡充することを求めます。

 本法案と同時に提出された食料供給困難事態対策法案は、有事の際に農家に芋などを作れと罰則つきで命令するという異常なものであり、一九四一年、泥沼の侵略戦争に突き進む中で作られた国家総動員法に基づく農地作付統制令、臨時農地等管理令にうり二つです。

 農産物を大量輸入し、離農と耕作放棄地の増大を放置しておきながら、今、戦争のための準備が必要というのですか。こんな離農促進法、戦時食糧法は撤回すべきです。

 以上で質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田村貴昭議員の御質問にお答えいたします。

 食料・農業・農村基本法制定後の農村人口の減少要因等についてお尋ねがありました。

 農村の人口減少は、以前は都市への人口流出が主要因だったものの、近年は、出生減、そして死亡増に伴う自然減が主要因となっています。

 国内の人口が減少を続ける中で、農村人口の減少も避け難い状況にありますが、こうした中にあっても、農業を下支えする農村コミュニティーの基盤を維持することが重要です。このため、改正案では、基本理念である農村の振興において地域社会の維持を位置づけた上で、農地保全に資する共同活動、観光、食品加工など、地域資源を活用した事業の創出による関係人口の増加等を促し、農村地域の活性化を図ってまいります。

 食料自給率の目標と改正案における食料自給率の取扱いについてお尋ねがありました。

 施政方針演説では、農政の抜本的な見直しや基本法の改正について包括的に述べたところであり、食料自給率にあえて触れていないというものではなく、同演説でも言及した食料安全保障の強化の観点から、食料自給率向上に資する取組は重要です。

 さらに、我が国の食料安全保障リスクが高まる中、生産資材の安定供給等、食料自給率という単独の目標では評価できない課題もあります。このため、改正案では、食料自給率に加え、その他の食料安全保障の確保に資する事項の目標を位置づけたところであり、食料自給率の重要性が変わるものではないと考えております。

 ミニマムアクセス米についてお尋ねがありました。

 ミニマムアクセス米については、我が国の国産米の保護措置を含む全体のパッケージであるガット・ウルグアイ・ラウンド合意を受けて、ミニマムアクセス米が国産米の需給に影響を与えないよう、国家貿易で管理をしているところです。

 これに伴う財政負担は売買差損や管理経費の増により増加していますが、財政負担をできる限り削減するため、新たな仕向け先の開拓や管理経費等の削減に努めつつ、この枠組みを維持してまいります。

 農家の収入と農業、農村の再生についてお尋ねがありました。

 将来にわたって食料の安定供給を確保するためには、農業が持続的に発展し、収益性を確保していくことが重要です。

 このため、改正基本法に基づき、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、農業所得の向上と農村地域の関連所得の向上を図り、農業、農村の活性化につなげてまいります。

 なお、御指摘の農家の収入については、例えば稲作経営の年間収入は、自家消費を目的としたり農外収入を主としたりしている小規模農家を含めた全ての水田作経営体の平均値であり、農業で生計を立てていく水田作経営体の所得に着目をしていく必要があると考えております。

 米の合理的な価格、価格保障及び所得補償についてお尋ねがありました。

 米の価格は、民間取引において、その時々の需給のバランスによって決定されているものであり、政府として、適正な価格水準について申し上げることは適当ではないと考えております。その上で、適正な価格形成の仕組みづくりに向けて、米も含めて実態把握のための調査を行い、その結果も踏まえて検討を進めてまいります。

 御指摘の価格保障や所得補償については、過去の戸別所得補償制度を見ても、農地の集積、集約化等が進まず、生産性の向上が阻害されるおそれがあるほか、一般的に、消費が減少している品目の生産が維持され需給バランスが崩れる、また、補償を織り込んで生産者の取引価格が低く抑えられる等の懸念が指摘をされています。

 このため、こうした手法を用いるのではなく、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら所得の向上を図ることとしており、こうした方向性を改正基本法に位置づけております。

 農業に関わる多様な人々の位置づけと支援策についてお尋ねがありました。

 農業経営体の減少が今後も見込まれる中、将来にわたり食料を安定供給できる農業の確立が必要です。

 このため、引き続き、規模の大小や経営形態にかかわらず、農業で生計を立て、効率的かつ安定的な農業経営を目指す方々を担い手として、生産性向上と付加価値向上を後押しし、その経営の安定、発展を後押ししてまいります。

 あわせて、担い手以外の多様な経営体についても、農地の保全等の役割に鑑み、地域の共同活動への支援等を行い、農業生産の基盤である農地の確保を図ってまいります。

 農業予算の拡充についてお尋ねがありました。

 我が国の安全保障環境が厳しい状況にある中、国民の命と平和な暮らしを守るために、防衛力の抜本的な強化が必要となっています。同時に、我々が生きていく上で必要な食料の安定供給を担う農林水産業の活性化も極めて重要です。

 こうした観点から、御審議いただいている令和六年度予算において、防衛力の抜本的強化に取り組むとともに、農林水産予算において、食料安全保障の強化など現下の政策課題に重点的に対応するため、昨年度を上回る予算を計上しております。また、緊急に取り組む課題に対しては、令和五年度補正予算により前倒しで対応しているところであり、こうした予算を活用し、実践的な農林水産政策を展開してまいります。

 食料供給困難事態対策法案についてお尋ねがありました。

 本法案は、我が国の食料安全保障リスクが高まる中、食料供給が減少し、国民生活等への影響が生じる事態に備え、影響の程度に応じて早期から必要な措置を実施できるようにするためのものであり、有事の際に農家に罰則つきで作付を命令するものではありません。

 なお、本法案で規定されている罰則は、国民生活等に実体上の支障が生じている事態において、法目的達成のために、必要最小限の措置として、計画の届出自体を担保するためのものであり、事業者の方々に御理解をいただきたいと考えております。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 長友慎治君。

    〔長友慎治君登壇〕

長友慎治君 国民民主党の長友慎治です。

 会派を代表し、ただいま議題となりました法律案について質問します。(拍手)

 現行の基本法での食料安全保障は、不測の場合に対処するものとされ、専ら危機管理対応という位置づけでした。改正案は、不測時だけではなく、平時も含めて考慮すべきものと捉えており、食料の安定的な供給だけでなく、国民一人一人が入手できるという食料アクセスの確保にまで踏み込んでいます。

 平時から食料安全保障を確立するというなら、食料自給率を向上させることが不可欠です。今の日本の食料自給率はカロリーベースで三八%ですが、これを五〇%に引き上げ、更に上を目指していく必要があると考えますが、見解を伺います。

 農水省が二〇二一年十一月に実施した食生活・ライフスタイル調査によれば、食料自給率について、詳しい内容を知っていると答えたのは六・二%、おおよその内容を知っていると答えたのは三六・六%でした。翌二〇二二年十一月にも同様の調査を行っていますが、詳しい内容を知っていると答えたのは六%、おおよその内容を知っていると答えたのは三四・四%。二〇二二年二月にウクライナ戦争が始まり、食料価格が高騰しているにもかかわらず、食料自給率の認知度が下がっています。インフレにより食料価格が高騰していますが、スーパーなどに食品は以前と変わらず並んでいるため、食料安全保障といっても実感が湧かない人が多いのかもしれません。

 しかし、農水省も同じスタンスでは困ります。食生活・ライフスタイル調査の説明文では、現在は食料の安定供給に懸念はないと二一年、二二年も書かれていましたが、今も同じ認識なのか、伺います。さらに、国民一人一人に対し食料安全保障の考えをどう浸透させるのか、教えてください。

 農業従事者の高齢化と急速な減少が続いています。日本の農業の補助金制度は、基盤整備事業や業者に流れるものが多く、欧州のように生産者に直接支払いされる制度は少ないです。気象災害による生産減少や被害、家畜疾病による一斉処分、飼料や肥料の高騰、海流の変化に伴う漁獲量の減少など、一次産業をめぐる厳しい情勢に対して、食料及び食品の原材料を供給する農畜水産業を継続する上で、生産者の生活を保障できる柔軟な所得支援制度を確立すべきと考えますが、見解を伺います。

 現在の生産者は、農産物が幾らで売られるか分からずに生産しています。そのような状況で、再生産価格を下回る価格での取引が多発しています。農産物を出荷すれば出荷するほど赤字です。各主力作物の再生産可能な価格を設定し、最低限、生産者の所得を維持できる仕組みの構築が急務です。食料安全保障の観点から、全ての農産物に最低価格保障制度を導入することはできないのか、伺います。

 農業、農村所得の倍増目標というものがあります。農業、農村所得を十年間で倍増させる目標のことで、自民党農林部会が二〇一三年にまとめた農業・農村所得倍増目標十か年戦略で提起されました。それを受けて、政府は、二〇一三年十二月に決定した農林水産業・地域の活力創造プランで、農業、農村所得を今後十年間で倍増させると明記しました。十年の節目を迎えますが、結果としてどうなったのか、教えてください。また、現場を回っていると、農村、農家が疲弊し、所得が上がった実感はないという声ばかり聞こえてきますが、その声は政府にも届いているのでしょうか。回答を求めます。

 農家の皆様の所得を上げるためには、価格転嫁が必要です。食べることで農業を支えるという消費者側の理解を促すことも欠かせません。改正案では、食料の安定供給には、農業者だけでなく、食品メーカーや消費者も責務を負う食料システムという考え方を打ち出しました。ヨーロッパで先行する考え方ですが、消費者の理解と納得を得る働きかけが鍵となります。どのように実現するのか、見解を伺います。

 さらに、日本の農業を応援するためには、まずは買うことです。地元で頑張っている農家さんから農作物を買って食べることが一番です。販売所や産地直送で農家から直接買って、消費者と生産者が直接つながり、国民が一体となって地産地消を進めることが重要ですが、政府としての施策を伺います。

 有機農産物や特別栽培農産物の生産拡大には、契約取引を前提として生産されたものが確実に販売できる仕組みづくりが重要です。全国で有機農業、環境保全型農業に取り組む生産者は少しずつ増えてはいるものの、有機農産物や特別栽培農産物が流通上で評価されず、適正価格とは言えない値段で売られている現状が多くあります。そこから脱却するため、契約販売の推進を行い、制度として支援する仕組みが必要と考えますが、見解を伺います。

 安心、安全で環境にも優しい農産物の持続的な生産、消費の手段として、公共調達が最も有効です。有機農業生産と消費の推進に当たっては、学校給食における有機農産物の取扱いの先進事例を踏まえて、国が積極的に推進するべきです。全国で有機農産物による学校給食が実現できるよう、行政と生産者、関係団体が連携した仕組みづくりを求めます。また、子供たちが食と農についての豊かな体験と知識に触れられるよう、学校給食における食育について基本法で補強すべきと考えますが、見解を伺います。

 国連は、二〇二八年までを家族農業の十年と定め、家族農業をSDGs達成の鍵と位置づけています。EU、中国を始め世界の潮流は、有機農業、減化学肥料栽培に向かっています。有機農業を始めとする環境に配慮した持続可能な農業生産の推進は、人と自然に優しく、生物多様性の保全に貢献し、長期的、社会的、総合的にも経営効率が高いと考えます。環境保全、生物多様性保全など、持続可能な食料、農業システムをあらゆる農政の前提として、家族農業の役割、政府の役割を明らかにすべきと考えますが、見解を伺います。

 最後に、東京一極集中から農村に人を呼び込むため、農村プロデューサーを農水省は育成していますが、その育成と今後の取組をどのように加速させていくのか、教えてください。

 私たち国民民主党は、農業、農村を大切にする政党として、これからも現場目線の地域の実情に応じた農政を進め、農家の皆さんが将来の展望を持てる、安心して営農継続ができる農政を進めていくことに全力で取り組むことを誓い、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 長友慎治議員の御質問にお答えいたします。

 食料自給率についてお尋ねがありました。

 食料・農業・農村基本法の改正案が成立を見れば、これに基づいて食料・農業・農村基本計画を策定することとしており、その中で、食料自給率を含め、食料安全保障の確保に関する事項について、国内外の食料需給の動向やこれまでの取組の検証結果などを踏まえつつ、適切な目標を策定すべく検討を進めてまいります。

 生産者の生活を保障する所得支援制度についてお尋ねがありました。

 将来にわたって食料の安定供給を確保するためには、一次産業が持続的に発展し、収益性を確保していくことが重要です。

 多くの産地では、生産性の向上や付加価値の向上などの取組を通じ、所得を確保できるよう、日々、創意工夫をされています。これに対して、所得の補償については、過去の戸別所得補償制度を見ても、農地の集積、集約化等が進まず、生産性の向上が阻害されるおそれがあるほか、一般的に、消費が減少している品目の生産が維持され、需給バランスが崩れる、補償を織り込んで生産者の取引価格が低く抑えられる等の懸念が指摘をされています。

 このため、一次産業の持続的な発展に向けて、改正基本法に基づき、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、所得の向上を図ってまいります。

 農産物への最低価格保障制度の導入についてお尋ねがありました。

 農産物の価格は、需給事情や品質評価によって形成されることが基本であると考えます。

 その際に、生産から消費までの各段階の関係者の合意の下、国内外の資材費、人件費の恒常的なコストが考慮された価格形成が行われることが食料安全保障の確保の観点からも重要であり、その旨、改正案にも盛り込みました。こうした合理的な価格形成の仕組みについては、法制化も視野に検討してまいります。

 また、価格転嫁が間に合わない急激なコスト増が生じた場合には、今後とも機動的に必要な対策を講じてまいります。

 農業、農村の所得倍増目標、農業現場の声についてお尋ねがありました。

 農業所得は、令和七年の三・五兆円目標に対し、平成二十五年の二・九兆円から、令和三年は三・三兆円まで増加した後、令和四年は、肥料価格の上昇等の影響を受け、三・一兆円となっています。また、農村地域の関連所得は、令和七年の四・五兆円との高い目標に対し、平成二十五年度の一・二兆円から、直近の令和三年度で二・三兆円まで、徐々に増加をしています。

 農業所得は、中長期的には、農地の集積、集約化、また、ブランド化の推進等により上昇傾向にありますが、足下、物価高の影響を受け、厳しい状況にあると認識をしております。今後も、現場の声を十分にお聞きし、機動的に施策を講じ、所得の向上を図ってまいります。

 食料システムと消費者の理解、納得についてお尋ねがありました。

 食料の生産から消費に至る一連の活動全体である食料システムにおいて、合理的な価格形成が行われ、食料の持続的な供給を実現していくためには、価格形成等に関し、消費者の理解と納得が必要となります。

 このため、生産や流通などの各段階におけるコストの明確化に取り組むとともに、環境への負荷低減を含め、国産農産物を選択することが食料の持続的な供給につながることについて、政府として、消費者の皆さんに分かりやすく発信をしてまいります。

 地産地消についてお尋ねがありました。

 地域で生産された農林水産物をその生産された地域で消費する地産地消は、食料の持続的な供給と消費の実現に資するほか、加工や直売所の取組等を通じて、地域の関連所得の向上にもつながるものです。

 こうした認識の下、政府として、地産地消の意義を発信しながら、地場産物を購買できる直売所の整備や学校給食における生産現場との連携等への支援を通じて、消費者と生産者がつながる地産地消の取組を推進してまいります。

 有機農産物等の販売についてお尋ねがありました。

 有機農産物や特別栽培農産物については、環境に配慮して栽培され、除草の手間など生産コストがかかる点も含めて、その特色を実需者や消費者に理解いただき、安定的な販路を確保することが重要です。

 このため、学校給食での活用を始め、地域ぐるみで有機農産物の生産から消費までの取組を進めるオーガニックビレッジの創出を進めるなど、有機農産物や特別栽培農産物の特色の発信、契約栽培を含む実需とのマッチング等を支援し、その販路の確保を後押ししてまいります。

 有機農産物の学校給食における活用と食育についてお尋ねがありました。

 学校給食における有機農産物の導入は、安定的な販路の確保や食育の観点からも有意義であり、政府として、自治体と生産団体、給食事業者などの連携体制の構築のほか、試行的な導入への支援を行っています。

 また、現行の基本法において、農業に関する教育の振興等の施策を講ずることを定めており、学校での食育を進めてきましたが、さらに、改正案において、消費者の役割として、環境への負荷低減に資する食料の選択に努めることを位置づけたところであり、今後、食育の一層の推進を図ってまいります。

 環境保全など持続可能な食料システムと、家族農業や政府の役割についてお尋ねがありました。

 農業生産活動における環境負荷の低減は重要な課題であり、改正案においては、基本理念として、新たに、環境と調和の取れた食料システムの確立を位置づけています。

 我が国においては、SDGsの観点からも、環境と調和した農業生産活動は、家族農業を含め、経営規模の大小や経営形態にかかわらず、生産者の皆さんに広く進めていただくべきものであると考えており、政府として、こうした点を丁寧に発信して御理解をいただきながら、生産現場の取組を後押ししてまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣坂本哲志君登壇〕

国務大臣(坂本哲志君) 長友慎治議員の御質問にお答えをいたします。

 食料安全保障の現状に対する認識と、国民に対して食料安全保障の考え方をどう浸透させていくかについてのお尋ねがありました。

 お尋ねの調査は、二〇二一年十一月にアンケート調査を実施し、同じ質問を翌年にも活用したものです。こうした中、二〇二〇年より流行した新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的な物流費の上昇、ウクライナ侵略を契機とする小麦、大豆、トウモロコシや肥料等の価格高騰、鳥インフルエンザの蔓延による鶏卵の供給減少と価格上昇など、食料安全保障上のリスクを考えさせられる事象が立て続けに起こりました。

 このため、現在は食料の安定供給に懸念はないと断言できる状況にはないと考えております。

 このような状況を踏まえれば、食料の消費者たる国民一人一人に、食料の持続的な供給に係る消費行動の重要性について理解をいただいた上で、具体的な行動を取っていただくことが重要です。このため、今回の基本法改正案において、消費者の役割として、食料の持続的な供給に資するものの選択に努めることを位置づけています。これにより、消費者には、食品ロスを削減する、環境負荷低減に係るコストを考慮して食料を選択する、持続的な食料供給のために必要となる合理的な価格について理解を深めるなど、消費面から食料安全保障を支える行動を期待しています。

 食料の持続的な供給の実現に向けて、消費者の理解の増進が図られるよう、農林水産省としても、食料供給における課題に関する情報発信や、農産物の環境負荷低減の取組の見える化などの取組を行ってまいりたいと考えております。

 次に、農村プロデューサーについてのお尋ねがありました。

 農林水産省では、地域住民の思いを酌みながら、地域将来像やそこで暮らす人々の希望の実現に向けてサポートできる人材を農村プロデューサーとして、令和三年度から、模擬演習や地元での実践などの研修を通じて育成を図っています。

 今年度までに市町村職員や地域おこし協力隊など約二百六十名が受講し、農村RMOの立ち上げに向けた地域ビジョン、将来の農地利用の姿を示す地域計画、中山間地域等の直接支払いの集落戦略等の作成に必要な地域の話合いのコーディネーター役などを担っていただいているところです。

 来年度は、更に修了生のネットワークの活動を活性化させることにより、全国各地の人材同士の連携を深め、農村の地域づくりを後押ししてまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時二十八分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       総務大臣    松本 剛明君

       外務大臣    上川 陽子君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       農林水産大臣  坂本 哲志君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       国務大臣    自見はなこ君

       国務大臣    林  芳正君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 村井 英樹君

       農林水産副大臣 武村 展英君


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