衆議院

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第16号 令和6年4月2日(火曜日)

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令和六年四月二日(火曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第十号

  令和六年四月二日

    午後一時開議

 第一 地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案(内閣提出)

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本日の会議に付した案件

 日程第一 地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案(内閣提出)

 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明及び質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案(内閣提出)

議長(額賀福志郎君) 日程第一、地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案を議題といたします。

 委員長の報告を求めます。環境委員長務台俊介君。

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 地域における生物の多様性の増進のための活動の促進等に関する法律案及び同報告書

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

    〔務台俊介君登壇〕

務台俊介君 ただいま議題となりました法律案につきまして、環境委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。

 本案は、昆明・モントリオール生物多様性枠組の採択を踏まえ、生物の多様性の損失が続いている状況を改善するため、主務大臣による基本方針の策定、事業者等による地域生物多様性増進活動の実施に関する計画の認定、当該認定を受けた者に対する自然公園法による許可の特例等の措置を講じようとするものであります。

 本案は、去る三月十四日本委員会に付託され、翌十五日伊藤環境大臣から趣旨の説明を聴取した後、二十二日から質疑に入り、二十九日に質疑を終局いたしました。質疑終局後、直ちに採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決すべきものと決した次第であります。

 なお、本案に対し附帯決議が付されましたことを申し添えます。

 以上、御報告申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 採決いたします。

 本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。

     ――――◇―――――

 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明

議長(額賀福志郎君) この際、内閣提出、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について、趣旨の説明を求めます。国務大臣加藤鮎子君。

    〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕

国務大臣(加藤鮎子君) ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。

 少子化は、我が国が直面する最大の危機であり、二〇三〇年代に入るまでが、この少子化傾向を反転させるラストチャンスです。

 こうした問題認識の下、昨年末に閣議決定したこども未来戦略では、全てのこども・子育て世帯を切れ目なく支援し、共働き、共育ての推進とあわせて、社会全体の構造、意識を変え、子どもを持つことを希望する方が安心して子どもを生み、育てることができる社会の実現を目指しています。

 このこども未来戦略の加速化プランに盛り込まれた施策を着実に実施するため、給付面と財政面の改革を一体的に行うものとして、この法律案を提出いたしました。

 以下、この法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、加速化プランに盛り込まれた子育て支援の施策や給付の拡充を行うため、児童手当における支給期間の延長や所得制限の撤廃、第三子以降の児童に係る支給額の増額を行うとともに、妊娠期の負担軽減のための妊婦のための支援給付を創設します。

 また、子育て世帯を対象とする支援を拡充するため、妊娠期から伴走型で支援を行う妊婦等包括相談支援事業や、保育所等に通っていない満三歳未満の子どもの通園のための給付の創設、産後ケア事業の計画的な提供体制の整備、児童扶養手当の第三子以降の児童に係る加算額の引上げ等を行います。

 さらに、共働き、共育てを推進するため、両親ともに育児休業を取得した場合に支給する出生後休業支援給付、育児期に時短勤務を行った場合に支給する育児時短休業給付や、自営業、フリーランス等の国民年金第一号被保険者の育児期間に係る保険料の免除措置を創設します。

 第二に、こうした子ども・子育て政策の全体像と費用負担の見える化を進めるため、年金特別会計の子ども・子育て支援勘定と労働保険特別会計の雇用勘定の育児休業給付関係部分を統合し、子ども・子育て支援特別会計、いわゆるこども金庫を創設します。

 第三に、加速化プランを支える安定財源の確保策として、既定予算の最大限の活用等や徹底した歳出改革を行った上で、児童手当等の費用に充てるため、企業を含め社会経済の参加者全員が連帯し、公平な立場で広く拠出いただく仕組みとして、子ども・子育て支援金制度を創設します。

 具体的には、この支援金を充当する対象事業を定めるとともに、各医療保険者は、子ども・子育て支援納付金を国に納付することとし、その納付に要する費用について、被保険者等から子ども・子育て支援金を、医療給付に充てる保険料とあわせて徴収することとします。

 また、子ども・子育て支援金制度を段階的に構築していく間、支援金を充てるべき給付に必要な費用に充てるため、子ども・子育て支援特例公債の発行を可能とします。

 このほか、施行期日並びにこの法律の施行に関し必要な経過措置及び留意事項等について規定するとともに、関係法律について必要な規定の整備を行います。

 以上が、この法律案の趣旨でございます。(拍手)

     ――――◇―――――

 子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑

議長(額賀福志郎君) ただいまの趣旨の説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。田中英之君。

    〔田中英之君登壇〕

田中英之君 自由民主党の田中英之です。(拍手)

 質問に先立ちまして、本年一月の能登半島地震でお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 それでは、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案につきまして、自由民主党・無所属の会を代表し、質問させていただきます。

 我が国の最大かつ喫緊の課題は、少子化、人口減少であります。二〇二三年に生まれた子供の数は、統計開始以来、過去最低の七十五万八千六百三十一人となる中、急激な少子化、人口減少に歯止めをかけなければ、働き手、地域社会の支え手が減少し、我が国の経済や社会システムを維持することが難しくなります。既に若い世代は減少してきてしまっており、今、手を打たなければ手遅れになると、岸田総理はこのことを指して、二〇三〇年までがラストチャンスとおっしゃってこられました。

 昨年十二月に閣議決定されたこども未来戦略では、総額三・六兆円という、これまでにない規模で抜本的な政策強化を図ることとしております。子供、子育て支援は、子供の年齢や親の働き方によって必要とする支援が異なるからこそ、例えば、子供が進級しても、また、親がどのような働き方を選んでも、切れ目なく何らかの支援が続くことが、若い世代へのメッセージとして極めて重要であると考えます。

 そこで、まず、我が国が取り組むべき少子化対策の方向性と、その中で、本法案の意義について、総理にお伺いします。

 本法案においては、加速化プランに掲げる、ライフステージを通じた経済的支援の強化、全ての子供、子育て世帯への支援の拡充、共働き、共育ての推進という三つの柱に沿って、これまでの財源規模では対応できなかった大きな給付拡充がなされ、特に、働き方や子育てを、共働き、共育てに変えていく後押しのための給付も盛り込まれております。

 そこで、本法案による給付拡充の内容と、それらによって子育て世帯の生活が具体的にどのようによくなるのか、加藤大臣にお伺いします。

 また、若い世代が結婚や子供を持つことを決める際には、ライフコースを支える支援や制度が恒久的、安定的なものであるかが重要であるため、給付を裏打ちする財源をしっかりと用意しておくことが必要と考えます。岸田総理は、歳出改革等により社会保険負担軽減を図り、その範囲内で支援金制度を構築すると表明されており、支援金制度の構築に向けては、着実な歳出改革の積み上げと、民間で行われる中小企業をも含めた賃上げの支援によって社会保険負担の軽減を図ることが大前提となっております。

 野党の中には、税を元に子育て支援を拡充されようというお考えもあるようでありますが、デフレ脱却を目指す現下の経済状況等を踏まえ、岸田総理は、支援金制度の創設を含め、歳出改革を中心とした財源確保を決断されました。将来の子供たちに責任ある政府・与党としての適切な判断だと考えます。

 そこで、改めて総理に、今般の子供、子育て予算の財源を確実に確保していく決意をお伺いします。

 また、今後の歳出改革の進め方と、地方、中小企業が課題となる民間における賃上げをどのように支援していくのか、具体的な方針を新藤大臣にお伺いします。

 そのようにして実質的な負担が生じないようにしつつも、国民の皆様には、令和八年度から、加入する医療保険制度を通じて支援金の拠出をお願いする内容となっています。この点が、なぜ保険料なのか、なぜ医療保険制度なのかといったことについて、国民の理解が進んでいるとはまだまだ言えません。

 そこで、支援金を医療保険と併せて賦課徴収することの狙いについて、加藤大臣にお伺いします。

 全ての子供を支えていく理念で本法案に盛り込まれたヤングケアラーへの支援について、現状は自治体間格差が大きく、現場からは、今回の法制化を機に、全国的な底上げを期待する歓迎の声があります。一方で、ヤングケアラーの定義の中の「過度に」という文言に引っ張られて、運用で支援対象範囲が狭くなるようなことがないか、心配する声も聞かれます。

 そこで、今回の趣旨は、その範囲を狭くするものではなく、一人一人の年齢、発達や家庭状況等を丁寧に見て、個々に応じた支援がなされるよう運用されるべきと考えますが、加藤大臣の見解をお伺いします。

 急速な少子化という未曽有の課題に対し、今回の法案を第一歩とし、少子化対策を前に前に進めていくことが重要であります。現場では、こども未来戦略において、長年改善が期待されてきた四、五歳児の保育士の配置基準の改善が図られることを始め、今回の少子化対策の拡充を歓迎する声を聞いております。今後も政府の力強い取組をお願い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田中英之議員にお答えいたします。

 少子化対策の方向性と本法案の意義についてお尋ねがありました。

 昨年末にまとめたこども未来戦略においては、若い世代の所得を増やす、社会全体の構造や意識を変える、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援するという、この三つの理念の実現を掲げ、約三・六兆円規模に及ぶ前例のない規模で、子供、子育て支援を抜本的に強化することとしております。

 その実行に向けて、本法案には、児童手当の抜本的拡充、こども誰でも通園制度の創設、育児休業給付の充実など、長年指摘されながら実現することができなかった施策を盛り込んでおります。

 こうした制度や施策の実現と併せ、社会全体で子供や子育て世帯を応援する機運を高める取組も重要であり、車の両輪として進めてまいります。

 今般の子供、子育て政策の財源の確保についてお尋ねがありました。

 子供、子育て政策の抜本的な強化のための加速化プランの財源確保については、本法案において、歳出改革による公費節減、既定予算の最大限の活用、そして支援金で賄う、こうしたことを明記しております。

 支援金制度の構築も、歳出改革による保険料負担の軽減効果の範囲内で行うこととするなど、歳出改革を中心として財源を確保することとしており、徹底した歳出改革に取り組んでいくことにより、必要な財源を確実に確保してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕

国務大臣(加藤鮎子君) 田中英之議員の御質問にお答えします。

 本法案によって子育て世帯の生活がどのようによくなるかについてお尋ねがありました。

 本法案によって、児童手当の抜本的拡充や、妊娠、出産時の十万円給付の制度化などにより、子育て世帯の経済的負担を軽減するほか、伴走型相談支援やこども誰でも通園制度の創設等により、切れ目のない支援を実現するとともに、さらに、両親が育休取得する場合の手取り十割を実現する給付等の経済支援により、共働き、共育てを推進します。

 こうした拡充策により、政府が総力を挙げて取り組む賃上げ等と相まって、若い世代の所得を増やし、結婚、子育てを確実に応援することで、希望する方が安心して子供を産み育てることができる社会の実現につなげてまいります。

 支援金を医療保険料と併せて賦課徴収することの狙いについてお尋ねがありました。

 社会保険制度は、社会連帯の理念を基盤として共に支え合う仕組みです。支援金制度も、こうした連帯の理念を基盤に、保険料と整理されます。

 支援金を医療保険者に医療保険料と併せて徴収していただくこととしたのは、医療保険制度が他の社会保険制度に比べ賦課対象者が広いこと、幅広い給付体系となっており、世代を超えた支え合いの仕組みが組み込まれていること、さらに、急速な少子化、人口減少に歯止めをかけることが医療保険制度の持続可能性を高めること等の理由からです。こうした点について、引き続き丁寧に説明を尽くしてまいります。

 ヤングケアラー支援の法制化についてお尋ねがありました。

 ヤングケアラーの定義における「過度に」とは、一律にその範囲が定まるものではなく、一人一人の子供、若者の状況や受け止め等も踏まえながら、勉強や遊び等の時間が奪われ、負担になっている重い状態にあるかどうか、子供の最善の利益の観点から、個別に判断していくべきものと考えています。

 こうした考え方などについて丁寧に周知を図り、運用に万全を期してまいります。(拍手)

    〔国務大臣新藤義孝君登壇〕

国務大臣(新藤義孝君) 田中英之議員の質問にお答えします。

 子供、子育て政策加速化プランの財源確保のための歳出改革の進め方についてのお尋ねをいただきました。

 この歳出改革については、昨年末に閣議決定された改革工程に沿って進めることとしております。

 改革工程は、医療、介護保険制度等を中心に、サービス提供の質の向上や効率化、生産性の向上など、幅広い取組を視野に入れた内容になっています。

 歳出改革の具体的な内容については、年齢にかかわらず、全世代が負担能力に応じて公平に支え合い、ひとしく恩恵を受けられる全世代型社会保障を構築する中で、毎年度の予算編成過程において検討し、公費の節減と保険料負担の軽減効果を二〇二八年度までに着実に積み上げることにしております。

 二〇二三年度と二四年度では、歳出改革により、三千七百億円の公費節減と三千三百億円の社会保険負担軽減効果を生じさせています。この取組を継続し、安定財源を確保してまいります。

 続きまして、地方、中小企業を含めた賃上げの支援についてのお尋ねをいただきました。

 経済、財政、社会保障の持続可能性の確保には、民需主導の自律的な経済成長の実現により、日本経済を新たなステージに移行させる必要があり、そのために取り組んでいるのが構造的賃上げの実現であります。

 賃上げに向けては、今年の春季労使交渉において、連合の第二回集計では、平均賃上げ率五・二五%、中小企業に限っても四・五〇%と、昨年を大きく上回る力強い賃上げの動きが出ています。こうした動きが雇用の七割を占める中小企業や地方の隅々にまで波及し、裾野の広い、重層的な賃上げが実現していく、これが重要であります。

 このため、まずは、労務費の価格転嫁を始め、適切な価格転嫁と製品価格の設定が行われることを新たな商習慣として定着していきます。

 さらに、中小企業の稼ぐ力を高め、より大きな価値を生み出せる構造に転換できるよう、省力化投資の支援等、そしてまた経営者のリスキリングなど、生産性の向上に取り組んでまいります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 岡本あき子君。

    〔岡本あき子君登壇〕

岡本あき子君 立憲民主党の岡本あき子です。

 ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案に対し、立憲民主党・無所属会派を代表し、質問をいたします。(拍手)

 三月十五日が所得税等、昨日四月一日が消費税等の確定申告の期限でした。国民は増税、自民は脱税、多くの納税者の怒りが沸騰しています。

 キックバックを受け、使途を明らかにせず、政治活動以外にも使えば課税対象のお金なのに、納税もしない裏金議員や派閥幹部。これだけ国民の信頼を裏切っている裏金議員の処分について、世論調査でも八割超えの方が厳しい処分をという声です。コロナ禍に銀座に出かけて処分を受けた自民党議員よりも軽くて済むなどということはあり得ません。

 元安倍派閥会長の森喜朗元総理が、還流復活に何らかの影響力を持っていた可能性が浮上という報道があります。当然、岸田総理が直接、森元総理に聴取、確認して全体像を明らかにしなければ、適正な処分にはなり得ません。

 また、二〇二二年三月にも安倍派幹部が協議していたことが明らかになりました。世耕参議院議員の政倫審での発言はうそだった可能性が高く、岸田総理の、何のことだかよく分からないとの国会答弁も、真実を解明しようとする姿勢とはとても思えません。

 国会軽視も甚だしく、さらに、お手盛り調査で幕引きとは、国民が許すわけがありません。もはや自民党に自浄能力は期待できません。改めて、森元総理や安倍派幹部には、国民の目に映る場として、国会の証人喚問に応じるよう強く求めます。自民党総裁である岸田総理の火の玉ぶりを国民は注視しています。

 さて、今回の子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について、子供、子育て施策が前に進む内容については評価しますが、財源については、裏金のごまかしと同様、様々なごまかしがあり、到底納得できるものではありません。

 ごまかしの第一は、国民に負担増となるのに、税ではない、健康保険料だ、実質負担なしと繰り返し、負担が少ないかのように見せる総理のごまかしの姿勢です。

 保険料を支払う方一人当たりで、事業主負担も合わせると一体どのくらい負担することになるのかと問うても、総理は、加入者一人当たりの支援金額と、こちらの質問にまともに答えず、少なく見せる印象操作を繰り返すばかりです。健康保険種類ごとの詳細試算を出す、出すと言いながら、予算成立の先週末まで二か月間も出し渋り、予算審議にも支障を来す不誠実ぶりです。健康保険ごとの事業主と合わせた一人当たり負担額と求めているのに、加入者一人当たりの支援金額で出してきた資料も記載し、被保険者一人当たりの負担額は括弧書きの小さい文字で、しかも、事業主負担額は記載すらしていません。

 加入者と被保険者の違いにこだわるには理由があるのです。加入者一人当たりとは、保険料を払っていない子供まで分母に入れて計算をしています。多くの国民の関心事は、保険料を支払う本人である被保険者一人当たりどのくらいの負担になるのかなのです。事業主負担も合わせた額にこだわるのは、事業主負担分は潜在的な賃上げの原資となるからです。すなわち、保険という制度を通さなければ、賃上げに回せるお金になるのです。

 今回ようやく出てきた試算の資料を基に、健保組合の場合、被保険者と事業主負担を合わせた一人当たり平均で計算をすると、被保険者負担八百五十円、事業主が同額負担で、平均月額千七百円になるということでよろしいですね。総理には、試算資料を基に、金額を提示してお答えいただきたいと思います。

 もう一度言います。健保組合における事業主負担も合わせた被保険者一人当たりの平均負担額をお示しください。

 健保組合の方で、被保険者一人当たりの保険負担額は、年間では平均二万円を超える額です。同じ健保組合の共働きだと四万円です。しかも、現役負担がより重い制度であり、被保険者、事業主共に増税そのものではありませんか。

 総理、全ての保険料負担者が自分のおよその負担額が分かるように、それぞれの保険の種類ごとにおおよその所得階層別の負担金額を示してください。

 財源となる社会保険料のうち、医療保険料についても伺います。

 社会保険の負担軽減とおっしゃいますが、既に医療や介護従事者の賃上げ分、約三千四百億円の増加が決定しています。これを除外して負担増とみなさないという説明を武見厚労大臣がしていることも、ごまかしそのものです。実際には、今後、国民の負担増は明らかです。

 総理に確認します。今後、医療、介護等の影響を踏まえても、保険料が上がることは本当にないのでしょうか。お答えください。

 そして、少なくとも、自分が従来の健康保険料と子育て支援金のそれぞれを幾ら負担しているのかが分かるよう、給与明細や健康保険料決定通知書等において別々に明記されるのでしょうか。伺います。

 第二のごまかしは、昨年六月や今年の施政方針演説などの場で、総理が自信ありげに、加速化プランの三・六兆円で、我が国の子供一人当たりの家族関係支出は対GDP比で一六%とOECDトップのスウェーデンに達する水準となり、画期的に前進しますと豪語したことです。

 総理の発言には一定の前提を置いてという条件があり、予算を拡充しなくても、子供の数が少なくなり、少子化が進めば進むほど数字が高くなる指標を使っていました。国際比較に使われたことはなく、こども家庭庁が独自に作った指標です。さも国際トップクラスになるかのような印象操作です。

 総理、この指標でスウェーデン並みとかいっても、国際的には全く通用しません。独自指標の使用はやめるべきではないでしょうか。

 第三のごまかしは、財源に租税という言葉を避けて、保険料に紛れさせ、支援金という名の負担金を徴収する点です。

 健康保険法には、疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行いとあり、法律の給付の対象に子育てが入っておりません。にもかかわらず、健康保険法に位置づけるのは、そもそも無理があります。目的外使用に当たるのではないですか。

 国民健康保険料に関しては、二〇〇六年三月一日の最高裁判決があります。特別の給付目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてでなく、一定の要件に該当する全ての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんにかかわらず、憲法第八十四条に規定する租税に当たるべきであるというものです。

 総理、子ども・子育て支援金の負担金は、まさにこの判決に当てはまり、保険料ではなく租税に当たるのではないでしょうか。健康保険など社会保険を拡大解釈して、お金を徴収しやすいところから取るという発想はやめてください。

 子供、若者支援の財源については、既に一昨年前、私たち立憲民主党は子供総合基本法案を提出し、審議の際に、所得税、金融所得課税の累進強化、法人税の見直しなど、税制全体の見直しを明らかにしました。

 総理、やはりこれは税です。子供、次世代のために国民の皆様の協力が必要だと素直に頭を下げ、お願いをするべきです。

 次に、子供、子育て支援制度の中身について伺います。

 元々、私たち立憲民主党が早期から求めていることが盛り込まれており、速やかに実施を求めます。加えて、改善点等も指摘をします。

 妊娠期から育児期まで切れ目のない伴走型支援の拡充については、特に相談支援の強化が大変重要です。これは、相談相手と信頼を構築できるかにかかっています。

 総理に伺います。伴走型支援における子育てケアマネジャーの必要性はありませんか。

 誰でも通園制度は、全国どの地域でも、利用できる範囲に受皿、保育園があることが大前提です。また、対象に医療的ケア児や障害がある子供は入っていますでしょうか。この子たちが断られることがあるとしたら、大問題です。一方で、現場からは、保育士不足の現状の中、受け入れられるか不安の声も上げられています。

 総理、誰でも通園制度は、全てのゼロから二歳の子供が通えることを保証していただけますか。また、月十時間では足りないという声が既にあります。この声にはどうお答えになりますか。加えて、受皿となる保育士配置基準の見直しも、四、五歳児にとどまらず、抜本的に進めるべきではありませんか。

 子供、若者政策は、ゼロ―二歳中心の加速化プランで終わるものではありません。特に、学校給食の無償化について、総理は、六月までに全国の実態調査の結果を公表した上で、小中学校の実施状況の違いや法制面を含めた課題を整理して結論を出すと答弁しています。

 総理、やる気はないということですか。それとも、無償化する可能性はあるのですか。明確に御答弁願います。

 今回、同時に改正する子ども・若者育成支援推進法改正案では、ヤングケアラー支援を法律上に位置づけることになります。立憲民主党もずっと求めていました。

 総理、速やかに実態把握をし、子供、若者にとって、信頼できる大人がそばにいることを知って、頼ることができる体制強化を求めます。お答えください。

 全ての子供、若者には、安全で安心できる居場所が絶対に必要です。家庭や学校等だけでない、第三の居場所づくりの早急な拡充と支援が必要です。

 総理に、第三の居場所の必要性の認識を伺います。

 るる申し上げましたが、若者にとっては、物価高に負けない可処分所得のアップが何よりも重要です。今回の法案では、社会保険料負担がじわじわしわ寄せになり、結局、可処分所得が減るのではという不安を払拭することはできません。

 チルドレンファーストは、私たち立憲民主党が一貫して主張しています。子供、若者が経済的に安定をし、結婚や、子供を持つ、持たない、それぞれの希望がかなえられるよう支援してまいります。

 立憲民主党は、人へ、未来へ、真っ当な政治をつくり上げることをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 岡本あき子議員にお答えいたします。

 子ども・子育て支援金制度の拠出額についてお尋ねがありました。

 御指摘のとおり、健保組合の被保険者一人当たりの支援金額は八百五十円程度であり、労使折半で拠出いたします。しかし、重要なのは本人拠出額であり、事業主が拠出する分と足し合わせて金額をあげつらうことは適当ではないと考えております。

 また、支援金は、歳出改革による保険料負担の軽減効果の範囲内で構築することを基本とすることで、実質的な負担が生じないものであります。事業主や高齢者を含む全世代から広く拠出していただき、公費と併せて、子育て世帯への大きな給付拡充に充てるものであることも踏まえれば、現役世代の負担がより重いとの指摘は当たりません。

 こども家庭庁の試算では、現行の医療保険料額の四から五%程度となることをお示ししております。これによって、国民お一人お一人の拠出のイメージを持っていただけるものであると考えております。

 今後の保険料負担や支援金の額の給与明細への記載についてお尋ねがありました。

 支援金制度については、社会保障負担率という具体的なメルクマールを設け、支援金の導入によっても社会保障負担率は上がらないということを、国民に新たな負担を求めないことのあかしとしてお約束したいと考えています。

 社会保険料全般について申し上げれば、高齢化等による社会保障給付の増加に伴って増加する可能性はありますが、国民所得の増加により、足下でも社会保障負担率は低下する見込みです。その低下を確かなものとするために、所得の増加を先行させつつも、徹底した歳出改革により社会保険料負担を全体として抑制していくことがまず重要であると考えています。

 また、給与明細への記載については、健康保険法上、事業主は保険料の控除額を被保険者に通知しなければならないとされる一方、その内訳をどこまで示すかまでは義務づけられておらず、事業主の判断に委ねられるものですが、他方で、危機的な状況にある少子化の中、子供、子育て世帯を支援するために支援金を拠出いただくという趣旨を被保険者に知っていただくことは重要であると考えます。

 こうした観点から、給与明細書等において支援金額を表示する取組が広がっていくよう、法律の施行に向けて、関係者の御意見も伺いながら、支援金制度の理解促進に向けて必要な取組を進めてまいります。

 子供一人当たりの家族関係支出のGDP比についてお尋ねがありました。

 子供、子育て関係予算の国際比較を行う場合には、家族関係支出のGDP比で比較することも重要ですが、今回の加速化プランでは、子供一人一人に対してしっかりと予算を充てていくことが重要であるとの考えの下、児童手当の抜本的拡充や十万円相当の出産・子育て応援交付金などを盛り込んでおり、その評価に当たっても、子供の視点に立って、子供一人当たりで見た指標でお示しすることが有意義なことであると考えております。

 子ども・子育て支援金と保険料の関係についてお尋ねがありました。

 支援金制度については、少子化、人口減少に歯止めをかけることにより、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益ともなるものであり、保険料の目的外使用との御指摘は当たりません。

 現行の医療保険制度においても、保険料が充てられているものとして、出産育児一時金や保険給付に該当しない保健事業があるほか、介護納付金など、医療保険と併せて拠出いただきつつも、社会連帯等の観点から、医療保険とは異なる制度の拠出に充てている例もあります。

 このように、現行の医療保険制度においても給付と負担の関係は様々である中、反対給付性については、保険料の一部を取り出して判断されるのではなく、保険料全体として判断されるものであると考えております。このため、支援金制度の導入により、医療保険の保険料全体としての反対給付性が失われるものではなく、支援金は租税には当たらないと考えております。また、こうした考え方は、御指摘の最高裁判例と矛盾するものではありません。

 伴走型相談支援についてお尋ねがありました。

 妊娠期から出産、子育てまで一貫して身近な場所で相談に応じ、様々なニーズに即して必要な支援につなぐ伴走型相談支援の取組を推進してきたところであり、本法案において、児童福祉法に基づく新たな事業として制度化することとしています。

 その担い手の在り方については、法律の施行に向けて、自治体の取組状況、体制等も踏まえつつ、当事者の立場に立って具体的方策を検討してまいります。

 こども誰でも通園制度についてお尋ねがありました。

 こども誰でも通園制度は、全ての子供への支援を強化するものであり、医療的ケア児や障害のある子供も利用できるよう検討を進めるとともに、制度化を見据え、実施主体となる市町村への働きかけ、提供体制の整備の支援を行ってまいります。

 制度化後の上限時間は、今年度から月十時間を上限としている試行的事業の状況や、全国的な提供体制の確保状況等も踏まえながら、今後検討をいたします。

 また、配置基準については、加速化プランに基づき、令和六年度より、四、五歳児における保育士の配置基準を七十六年ぶりに改善するとともに、令和七年度以降、一歳児も改善を進めることとしており、まずはこれらの取組を着実に実施してまいります。

 学校給食の無償化についてお尋ねがありました。

 実態の把握や課題の整理は、一部の自治体や学校において学校給食が実施されていない状況もあるため、児童生徒間の公平性等の観点から、必要なプロセスと考えております。

 全国ベースの実態調査の調査結果の公表を六月までに行った上で、法制面等も含め課題を整理し、結論を出してまいりますが、今、調査中の現段階で、その結論について事前にお答えすることは困難であると考えます。

 ヤングケアラー支援についてお尋ねがありました。

 ヤングケアラーについては、必要な支援を着実に進めていくためには、まず、地方自治体がその実態を把握することが重要であると認識をいたします。

 市区町村におけるこども家庭センターの全国展開を進め、同センターが子供に身近な学校等と連携してヤングケアラーを把握するとともに、一人一人の子供、若者の状況を踏まえながら、必要な支援につなげることができる体制を整えてまいります。

 子供の居場所についてお尋ねがありました。

 全ての子供、若者が安全で安心して過ごせる多くの居場所を持ちながら、様々な学びや多様な体験活動等に接することは、子供、若者のウェルビーイング向上の観点から重要であると考えています。

 昨年末にこどもの居場所づくりに関する指針を閣議決定したところであり、これに基づき、自治体、学校、地域住民など関係者と連携して、子供の居場所づくりを推進してまいります。(拍手)

    ―――――――――――――

議長(額賀福志郎君) 一谷勇一郎君。

    〔一谷勇一郎君登壇〕

一谷勇一郎君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の一谷勇一郎です。

 会派を代表し、子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について質問します。(拍手)

 今、日本は、前代未聞の危機に直面しています。私たちが、そして子供たちが生きる令和の日本社会は、世界のどの国もいまだ経験したことのない超少子高齢、人口減少社会です。団塊の世代が七十五歳を迎えるとともに、毎年百万人規模の都市が消滅していく、歴史的にも類例を見ない、大きな転換期を迎えています。国民の価値観も多様化し、家族の在り方をめぐって、国会でも大きな論争が巻き起こっています。

 そうした中、十一年前に私たちが日本維新の会という新しい政党を結党した理由は、まさに、少子高齢化という厳しい峠を乗り越えていく、そのための日本大改革を実行するためでした。日本維新の会が誕生した大阪で、子育て世代が最も大切にしている教育に光を当て、教育の完全無償化、すなわち、幼児教育から大阪公立大学という高等教育まで、所得制限なしの教育無償化を実現してきたゆえんでもあります。

 こうした立場からいえば、一億総活躍とか子育て安心とか、言葉遊びに終始してきたこれまでの自民党政権と異なり、岸田内閣が、いわゆる次元の異なる少子化対策を取りまとめ、財源まで含め、こうして抜本的な法案を国会に上程してきたこと自体については、高く評価しているところです。

 そこで、まず冒頭、本法案がこれまでの少子化対策とどう次元が異なるのか、総理の言葉で改めて御説明ください。

 他方、その中身をつぶさに拝見すると、少子化対策の内容、メニュー、さらには財源に関する考え方まで、私たち日本維新の会の考え方、政策思想とは相入れない点が少なくありません。今回の加速化プランが日本の繁栄を持続可能なものにする最後のチャンスであるとの認識を共有し、私たちも真摯に政権に向き合い、意見を表明しますので、総理におかれても、誠実に論戦に応じていただきたいと希望します。

 まず、現状に対する危機感でありますが、国立社会保障・人口問題研究所は、二〇二〇年の国勢調査の結果を基に、日本の人口が二〇五六年に一億人を下回り、二一〇〇年にはおよそ六千三百万人に半減するという推計をまとめています。そして、本年一月には、民間の有識者グループが、複数の人口シナリオを設定した上で、二一〇〇年に人口を八千万人の規模で安定化させることを目標とすべきという人口問題に関する提言を発表しました。

 私たちは、こうして少子化対策に膨大な公費を投じるのであれば、政府も、この民間有識者グループのような複数シナリオに基づく人口目標を設定すべきであると考えます。もちろん、一人一人の国民がどのように生きるかは自由でありますが、国家として、人口問題にどう向き合うのか、少子化対策にどう取り組むのか、外国人労働者の扱いも含め、日本の繁栄の姿について具体的なイメージを持つことは必須であると思うのです。

 そこで、伺います。

 日本政府は、なぜ人口目標を設定してこなかったのでしょうか。繰り返しになりますが、一人一人の国民がどのように生きるかは自由であります。しかし、人口目標を含む日本社会の具体的なイメージなくして、少子化対策の規模も決められないし、外国人労働者の受入れ方針も場当たり的にならざるを得ないと考えます。総理が描く二一〇〇年の人口目標、そして日本全体の具体的イメージを御紹介ください。

 総理は、少子化対策の三つの柱の一つに切れ目ない支援を挙げ、教育負担を軽減することが、子供たちが未来を見通す重要な政策であるとおっしゃっています。しかし、実際に加速化プランに盛り込まれた教育無償化策は、多子世帯に限定した大学授業料無償化にとどまっています。政府の教育無償化策がこうした極めて限定的な内容に終始する理由を御説明ください。

 学生の三人に一人が、卒業時に多額の負債を背負うと言われています。そうした教育に係る莫大な費用のために、若者が借金の返済にきゅうきゅうとし、結婚や出産に踏み出せなくなっている現実を見るにつけ、私たちは、教育無償化こそ国の未来をつくる真の礎であると考え、二〇一六年三月に、幼児教育から高等教育までの教育無償化を内容とする憲法改正原案を公表してきました。

 他方、私たちが教育無償化に取り組んできた理由は、いわゆる少子化対策のためというよりも、もっと高次の教育を受ける権利、教育機会の均等を実現するためでした。もちろん、教育無償化が若者の経済負担を軽減し、結婚等への環境を整えることになるでしょう。しかし、それはあくまでも副次的なものであり、最も大事なことは、子供たちの権利、教育を受ける権利を守りたい、そうした思いからでした。

 どのような政策が少子化対策に有効なのか、日本のみならず、世界の先進国が悩みながら対策を講じているのが実態です。こども家庭庁を創設した当時の小倉將信担当大臣が、エビデンス、根拠に基づく政策立案を推進するためにEBPM研究会をつくられたのは見識であると注目をしてまいりました。様々な政策分野がある中で、少子化対策ほど、何が有効な対策なのかエビデンスのない分野はないと私たちは考えますが、総理の見解を求めます。

 特に、我が国にあっては、世界のどの国も経験したことがない超少子高齢社会を迎えます。そうした中で、トライ・アンド・エラー、試行錯誤を繰り返しながら政策体系を固めていく必要があります。やみくもに思いついた政策を積み上げ、はい、これが次元の異なる政策です、三・六兆円ですと胸を張られても、国民は興ざめするばかりです。

 そうした観点から、急いで、一兆円の子ども・子育て支援金という恒久財源のための制度、それも、後に述べるように、極めて筋の悪い制度を創設する必要があるのか、大いに疑問です。

 予算委員会では、子ども・子育て支援金の負担は五百円だ、千円だと、バナナのたたき売りみたいな加藤鮎子担当大臣の答弁が話題になりましたが、いずれにせよ、国民に実質的な負担は生じないとする政府の説明がまやかしであることははっきりしました。岸田総理が繰り返す、負担がないという答弁は、高齢者の自然増でもっと増えそうであった費用を抑えたから負担がないという自然増のまやかしと、負担の絶対量は増えるが負担率は増えないという負担率のまやかしで算出される、誰も理解できない霞が関数学にすぎません。大事なのは、少子化対策の財源をどう支えるべきかという骨太な議論であります。

 総理に伺います。

 なぜ恒久財源の確保を急ぐのですか。骨太な政策を実行していくために財源が必要なことは当然ですが、少子化対策の規模として三・六兆円が適正なのか、そうした歳出よりも社会保険料を低減させる方が有効ではないのか。はたまた、歳出の規模をもっと拡大すべきとの議論もあるでしょう。国民に負担を求める新制度として、子ども・子育て支援金制度の考え方は拙速に過ぎると考えますが、総理の見解を求めます。

 私たち日本維新の会が結党された二〇一二年、自民党、公明党、そして民主党が、いわゆる三党合意、社会保障と税の一体改革に関する合意をし、子ども・子育て関連三法が制定されました。当時の決定の最大のポイントは、子供、子育て支援策の拡充を図るための財源は消費税に求めるということでした。自民党と公明党は政策転換をしたのですか。総理に見解を求めます。

 他方、今回創設される子ども・子育て支援金は社会保険料です。言うまでもなく、社会保険料は所得をベースとしているため、現役世代に重くのしかかります。さらに、年収約一千二百万を境に負担は頭打ちとなり、中間層の負担が最も重くなる負担構造を有しています。受益と負担と対応関係が不明瞭な少子化対策にまで保険料を適用することは、保険料の目的外使用であり、かつ少子化対策にも反すると考えますが、いかがでしょうか。総理の答弁を求めます。

 政府は、全世代型社会保障を目指す改革の道筋、改革工程において、能力に応じた負担構造、いわゆる応能負担について言及し、預貯金口座へのマイナンバー付番の状況を検討すると明記しています。受益と負担と対応関係が不明確な少子化対策にまで社会保険料を活用するということであれば、少なくとも応能負担の仕組みを構築してからにすべきではないか、総理の見解を求めます。

 さらに、社会保険料は労使折半ですから、受益と負担と対応関係が不明瞭な少子化対策にまで社会保険料を活用することは、その負担が現役世代に偏るだけでなく、企業にも過大な負担を求めることになり、非正規雇用へのシフトといった形で企業行動に悪影響を与えかねません。賃金と物価の好循環を実現できるかどうかの正念場にあって、やはり子ども・子育て支援金の創設は間違いであると断じざるを得ません。総理の見解を求めます。

 以上のように、社会保険料を少子化対策のために拠出する新制度、子ども・子育て支援金制度には深刻な問題が内包されています。一、三党合意から大きな変節であること、二、基本的な保険原理に反すること、三、応能負担を支えるためのマイナンバーに係る制度のインフラが完成していないこと、四、企業行動に与える悪影響が想定される等、枚挙にいとまがありません。なぜ、こんな制度案が閣議決定され、国会に上程されてしまったのか。

 私たちは、自公政権が税制に関する議論を封印してしまったからであると考えます。岸田総理は、昨年十一月二十四日の衆院予算委員会で、我が党の質問に対し、社会保障と税の一体改革は終わったものではなく、持続可能な社会保障制度を確立するための継続的な取組であると答弁されましたが、翌月に閣議決定された改革工程に、税制への言及はありませんでした。結局、自公民の三党合意とは、社会保障と一体改革とは名ばかりの、単なる消費税の苦みを包んで国民をだますためのオブラートであったと断じざるを得ないのです。

 いわゆる加速化プランの財源の基本骨格を見ると、今後、政府として取り組む社会保障改革の果実を、現在の現役世代に厳しい負担構造を維持したまま、公費の節減等の効果一・一兆円、そして社会保険負担軽減の効果一兆円と明記されています。

 しかし、今後、ますます厳しさを増す少子高齢化社会を乗り越えていくためには、社会保障改革の果実の全てを、果実の全てを、果実の全てを現役世代の可処分所得の増大、すなわち、社会保険料負担の軽減に振り向けるべきであると考えますが、いかがでしょうか。総理の明確な答弁を求めます。

 私たち日本維新の会は、全ては次世代のために、教育無償化こそ国の未来をつくる真の礎となると考え、八年前の二〇一六年三月に、幼児教育から高等教育までの教育無償化を内容とする憲法改正原案を発表しました。統治機構から緊急事態、憲法九条、そして教育無償化まで、憲法改正のための憲法改正ではなく、国の繁栄のための憲法改正に取り組んでまいりたいと存じます。

 岸田総理は、今年九月までの総裁任期中に憲法改正の実現を目指すと公言されてきましたが、さきの自民党大会では、党派を超えた議論を加速すると表現を変えてしまいました。総理に国の未来をつくる思いがおありなのであれば、私たち日本維新の会とがっぷり四つに組んで、憲法改正原案を完成させ、そして、憲法を国民の手に取り戻す、憲法改正国民投票を実施しようではありませんか。

 最後に、憲法改正に向けた総理の改めての決意表明を求め、会派を代表しての質問とさせていただきます。

 どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 一谷勇一郎議員の御質問にお答えいたします。

 これまでの少子化対策との違いについてお尋ねがありました。

 昨年末にまとめた、こども未来戦略においては、若い世代の所得を増やす、社会全体の構造や意識を変える、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援する、この三つの理念の実現を掲げ、約三・六兆円規模に及ぶ前例のない規模で、子供、子育て支援を抜本的に強化することとしております。

 この実行に向けては、本法案には、児童手当の抜本的拡充、こども誰でも通園制度の創設、育児休業給付の充実など、長年指摘されながら実現することができなかった施策を盛り込んでおります。

 こうした制度や施策の充実と併せて、社会全体で子供や子育て世帯を応援する機運を高める取組、これも重要であると考えており、これらを車の両輪として進めてまいることが重要であると考えております。

 人口目標と日本社会の具体的イメージについてお尋ねがありました。

 結婚、妊娠、出産、子育て等は、個人の自由な意思決定に基づくものであり、お尋ねのような人口目標というものは定めておりません。

 一方で、少子化の進行は危機的な状況にあります。若年人口が急激に減少する二〇三〇年代に入るまでが少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスであり、少子化対策は待ったなしの瀬戸際であると認識をしております。

 こうした危機感から、三・六兆円規模に及ぶ前例のない規模で、子供、子育て支援を抜本的に強化することとしたものであり、スピード感を持って実行し、若い世代が希望どおり結婚し、子供を持ち、安心して子育てできる、こうした社会の実現を果たしていきたいと考えております。

 加速化プランに盛り込まれた教育の無償化策についてお尋ねがありました。

 加速化プランにおいて、高等教育費について、令和七年度から、多子世帯における大学等の授業料等の無償化をすることとしている理由は、三人の子供を持つ家庭にとって最も経済的に厳しい状況にあるのが三人同時に扶養している期間であるからであり、財源も限られている中で、このような内容を設定したものであります。

 少子化対策のエビデンスについてお尋ねがありました。

 少子化対策を進めるに当たっては、エビデンスに基づき、多面的に施策を立案し、評価し、改善していくことが重要であると認識をしています。こうした観点から、既に、こども大綱において、政策全体に係るKPIとして、数値目標を含めた指標を設定しているほか、加速化プランに盛り込まれた個別の施策を含め、具体的に取り組む施策の進捗状況を把握するための指標を、本年六月をめどにまとめる、こどもまんなか実行計画において設定することとしております。

 こうした枠組みを重層的に活用し、PDCAの観点を踏まえながら、子供、子育て政策を推進してまいります。

 子ども・子育て支援金制度の考え方についてお尋ねがありました。

 危機的な状況にある少子化に対し、加速化プランを速やかに実行することこそが必要であり、その際、制度が安定的に維持されることが、これから結婚、出産を考える若い世代が将来のライフプランを考える上で重要であると考えております。

 その上で、新たな政策を掲げ、そのための歳出を増やすには、増税か国債発行ではなく、既存の歳出の改革で恒久財源を確保することが重要であると考えています。既存の歳出を削る一方で、その削減した歳出の範囲内で新たな政策の支出に回せば、その意味において、国民に新たな負担を求めないものとなると考えます。

 ただし、抽象論に陥らないように、支援金制度については、社会保障負担率という具体的なメルクマールを設け、支援金の導入によって社会保障負担率が上がらないということを、国民に新たな負担を求めないあかしとしてお約束をしています。

 したがって、支援金が国民に負担を求めるものであり、拙速であるという指摘は当たらないと考えています。

 子供、子育て予算の財源についてお尋ねがありました。

 今申し上げたとおり、新たな政策を掲げ、そのために歳出を増やすには、増税か国債発行ではなく、既存の歳出の改革が重要であると考えたところです。

 かつての三党合意から転換したとの御指摘ですが、その時々の社会経済状況を踏まえ、必要な施策と財源が適切に選択されるべきものであると考えています。

 子ども・子育て支援金を社会保険料と位置づけることについてお尋ねがありました。

 少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となるものであり、支援金が保険料の目的外使用との指摘は当たりません。

 支援金の拠出に当たっては、医療保険料の賦課方法に準じたものとしており、一定の上限を設定することには合理性があると考えておりますが、基本的には拠出能力に応じた制度設計となっています。その上で、支援金は、抜本的に拡充する児童手当等の給付に充てられ、子供、子育て世帯にとって大きな給付の充実につながるものであることから、少子化対策に反するとの指摘は当たらないと考えています。

 子ども・子育て支援金制度と社会保障の改革工程との関係についてお尋ねがありました。

 先ほどお答えしたとおり、少子化、人口減少に歯止めをかけることは、医療保険制度の持続可能性を高め、その存立基盤に重要な受益となるものであり、支援金について、受益と拠出との対応関係が不明確という御指摘は当たりません。

 また、御指摘の社会保険における応能負担の仕組みについては、昨年末に閣議決定した改革工程においては、社会保険料における金融資産等の取扱いを含め、幅広いメニューが列挙されておりますが、これらは、一義的には、社会保障の持続可能性を高め、全世代型社会保障を構築する観点から盛り込まれたものであり、議論を続けていかなければなりません。これらのメニューの中から、実際の取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることがないよう、見直しに当たって生じる影響を考慮しながら、丁寧に検討してまいります。

 子ども・子育て支援金制度の企業への影響についてお尋ねがありました。

 支援金制度は、歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で構築することを基本としており、このために実質的な負担が生じない点は、社会保険料を事業主が拠出する分についても同様であります。

 支援金の拠出による企業への影響によって、賃上げを抑制したり、非正規雇用を増加させるとは考えておりません。

 社会保障改革の果実の使途についてお尋ねがありました。

 御提案のとおり、今般、子供、子育て政策強化の財源としている二・一兆円程度を全て社会保険料負担の軽減に費消してしまう場合、その分、子供、子育て政策の抜本的な強化を図ることができなくなります。

 現役世代の可処分所得の向上は重要な課題ですが、少子化が危機的な状況である中、政府の取組のとおり、賃上げなどで可処分所得の向上に総力を挙げて取り組みつつ、子供、子育て政策の強化に当たっても、経済的支援の強化を重視することにより、子供、子育て政策の抜本的強化と両立を図っていくこと、これがより適切な対応であると考えております。

 そして、憲法改正についてお尋ねがありました。

 内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての具体的な議論の進め方等について直接申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、自由民主党総裁としてあえて申し上げれば、憲法改正は先送りできない重要な課題であり、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いはいささかも変わりはありません。

 自民党としても、令和六年の党の運動方針において、条文起草のための機関を各会派の理解を得て設置し、憲法改正原案を作成し、国会の発議を経て、国民投票における過半数の賛成に向け全力を傾注する、このように党の運動方針に明記をしているところであります。

 時間的制約がある中でも、一歩でも議論を前に進めるべく、御党を含む、党派を超えた議論を加速させるべく、自民党としてもしっかり貢献をしてまいります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 中野洋昌君。

    〔中野洋昌君登壇〕

中野洋昌君 公明党の中野洋昌です。

 私は、公明党を代表し、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案につきまして質問いたします。(拍手)

 昨年の出生数は約七十六万人で過去最少となりました。人口減少に歯止めがかけられなければ、次の世代に社会を継承することは困難です。少子化は待ったなしであり、静かなる有事であるとの危機感を持って対策を進める必要があります。

 近年、若い世代の間では、子供を持つことはリスク、負担であるという考え方が急速に増えています。こうした不安を払拭し、若い世代が未来に希望を持ち、安心して子供を産み育てることができる社会を実現しなければなりません。

 公明党は、一昨年に子育て応援トータルプランを発表し、ライフステージを通じた支援の拡充、働き方と社会保障の転換が必要と訴えてきました。我が党の提言を数多く反映した形で政府が加速化プランを取りまとめたことは、高く評価したいと思います。本法案は、これを実現するための極めて重要な法案であります。

 今回の加速化プランによる子育て政策の抜本的拡充に必要な財源は約三・六兆円であり、これが実現すれば、OECDトップレベルの予算規模となります。政府は、この七割以上の二・六兆円を徹底した歳出改革などで賄い、残りの一兆円を支援金制度で充てるとしています。本法案では、この支援金制度の導入が法定化され、その使途も子育て政策に限定されるとともに、こども金庫創設により予算の見える化が図られます。支援金制度も含め、全ての子供の育ちを社会全体で支える財源が確保されることは、大きな意義があると考えます。

 その際、総理がこれまでおっしゃってきたように、全体としては支援金制度導入によって実質的な負担が生じないということですが、今回、こども家庭庁が公表した拠出額の試算からも分かるように、個人ベースで見ると、加入している医療保険制度や収入により、異なる金額を拠出していただくということだと思います。

 大切なことは、こうした拠出をしていただく支援金の意義を、総理のメッセージとしてしっかり伝えていくことではありませんか。一つは、子育て中の方々、つまり、今回の給付拡充で具体的な受益を受ける方々がどのようによくなるのかということです。もう一つは、子育てを終えた高齢者の方やお子さんがいない方などへのメッセージです。こうした方々に、ただ拠出をお願いするというわけではなく、少子化傾向が食い止められることによって、社会経済の安定を通じた受益を受けるということをしっかりとお伝えいただきたい。

 こうした二つの支援金制度の意義について、国民へのメッセージとして、総理の御答弁をお願いします。

 若い世代が結婚や出産を諦める理由は経済的な要因が大きく、政府は、賃上げ等の取組により若い世代の所得を増やすとともに、子育て世帯に対する経済的支援の強化を行うことが不可欠であります。

 その大きな柱の一つが児童手当であります。公明党は、一九六三年から児童手当の創設とその拡充を一貫して訴え、これを着実に実現してきました。本法案では、我が党の強い要望を受け、児童手当の所得制限を撤廃、支給対象を高校生年代まで延長、第三子以降は三万円とし、多子加算のカウント方法を見直すなどの抜本的拡充がなされたことは、高く評価したいと思います。

 子育て政策における児童手当の位置づけと、その拡充の意義、狙いについてお伺いいたします。

 これまで、ゼロ―二歳児に対する支援はほかの年齢に比べ手薄であり、公明党は支援の充実を訴えてきました。本法案では、妊婦のための十万円相当の支援給付や妊婦等包括相談支援事業の創設、産後ケア事業の強化に加え、全ての子供が利用可能となるこども誰でも通園制度が実現します。

 他方で、子育て、保育の受皿の状況は地域によって大きく異なり、子供の減少が著しい地域から、まだ待機児童がいる地域など様々であり、保護者のニーズも多様です。十時間の利用上限についても、足りないとの声もあります。現に行われている試行的事業を通じ、できるだけ多くの方のニーズに合致する制度設計が望まれますが、そのためにも人材の確保が不可欠です。

 こども誰でも通園の本格実施に向け、必要な人材の確保と着実な提供体制の整備について答弁を求めます。

 幼児教育、保育の支え手を確保し、質を向上させていくことも極めて重要です。この度、七十五年ぶりに職員の配置基準が改善されますが、保育の質の向上と処遇改善を更に進めていく必要があります。今まで、累次の処遇改善加算を行い、令和五年度補正予算でも、公定価格上の人件費を五・二%改善しましたが、現場の保育士に賃上げ実感が届いていないという声もお伺いし、更なる実効性の確保が必要です。

 保育士等の処遇改善の現状と、それを現場に行き渡らせるための取組についてお伺いいたします。

 今回の加速化プランでは、公明党が長年強く要望してきた一人親世帯への支援に欠かせない児童扶養手当が拡充するほか、児童虐待防止や、障害児、医療的ケア児への対応等を行う支援拠点の充実などが図られます。また、ヤングケアラーへの支援を法制化し、地域による支援格差を解消します。

 子供の貧困を始め、こうした多様な支援ニーズへの対応を強化し、誰一人取り残さない社会を実現するための取組についてお伺いいたします。

 女性の社会進出が進む一方で、結婚や出産による負担が女性に偏っており、共働き、共育ての実現は極めて重要なテーマです。本法案では、出生後休業支援給付や育児時短就業給付の創設が盛り込まれており、男性育休が当たり前となり、男女共に子育てと仕事が両立する社会をつくらなければなりません。そのためには、制度そのものの充実に加え、休業中の業務を支える体制づくり、育休や時短勤務を取りやすい職場づくりへの支援を強化する必要があります。

 共働き、共育てを社会全体で応援するための取組についてお伺いいたします。

 今後、子育て政策を遂行していく中で、若者や子育て当事者の不安を払拭し、より納得感があるものとしていかなければなりません。そのためには、こども家庭庁が司令塔となり、若者や子育て当事者の声を聞き、ニーズを迅速に把握し、そして、加速化プランに基づいて行われる政策の効果を検証し、見直しを含め、PDCAサイクルを回していくマネジメント体制を確立する必要があると考えますが、いかがでしょうか。

 子供、子育て政策の充実は、加速化プランで終わるものではありません。こども未来戦略では、二〇三〇年代初頭までに我が国の子供、子育て予算の倍増を目指すとされています。特に、子育て世帯の要望の強い高等教育費については、公明党は、二〇三〇年代までの無償化を訴えています。このほか、若者の経済的基盤の強化など、更なる施策の充実を今後も図っていくべきです。

 少子化を克服し、子供の幸せを最優先する社会を実現するため、加速化プランの先へ向けた施策の更なる充実について、総理の決意をお伺いし、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 中野洋昌議員の御質問にお答えいたします。

 支援金制度の二つの意義についてお尋ねがありました。

 子ども・子育て支援金制度は、加速化プランの実行を安定的に支えるものであり、その収入は、児童手当の抜本的拡充など、子育て世帯への給付に充てられます。そして、支援金制度を通じたこうした給付の充実は、政府が総力を挙げて取り組む賃上げ等とも相まって、若い世代の所得を増やし、結婚、子育てを確実に応援していくものとなっています。このことを、子育て世帯や、これから結婚、子育てを考えられる世代に、しっかりとお伝えしていきたいと考えております。

 また、こうした給付を受けない方にとっても、支援金制度は重要な意味を持ちます。危機的状況にある我が国の少子化傾向を反転させることは、我が国の経済社会システムや地域社会を維持することにつながるほか、世界に冠たる国民皆保険制度の持続可能性を高めることにより、誰もが社会の一員として受益するものです。このため、高齢者や子供のいない方も含め、拠出をお願いしたいと考えております。

 こうした支援金制度の二つの意義について、国民の皆様に御理解いただけるよう、引き続き説明を尽くしてまいります。

 加速化プランのマネジメント体制についてお尋ねがありました。

 少子化対策を進めるに当たっては、KPIを適切に設定し、政策の効果等を検証しながら進めていくことが不可欠であり、既に、こども大綱において、政策全体に係るKPIとして、数値目標を含めた指標を設定しております。

 その上で、加速化プランに盛り込まれた個別の施策を含め、具体的に取り組む施策の進捗状況を把握するための指標を、本年六月をめどにまとめる、こどもまんなか実行計画において設定することとしております。

 子供、若者、子育て当事者の意見に耳を傾け、その意見を政策に反映させることに加え、こうした枠組みを重層的に活用することで、PDCAの観点を踏まえながら、子供、子育て政策を推進してまいります。

 加速化プランの先へ向けた施策の更なる充実についてお尋ねがありました。

 子供、子育て政策の充実は、決して加速化プランで終わるものではありません。御指摘の高等教育の負担軽減や、若者の経済的基盤の強化を含め、加速化プランの効果の検証を行いながら、政策の内容、予算を更に検討してまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕

国務大臣(加藤鮎子君) 答弁の前に、趣旨説明に関する発言につきまして、訂正させていただきたいと思います。

 趣旨説明中、育児時短休業給付と発言をいたしましたが、正しくは、育児時短就業給付であります。訂正をさせていただきます。

 中野洋昌議員の御質問にお答えいたします。

 児童手当の拡充の意義や狙いについてお尋ねがありました。

 理想の子供数を持たない理由として、子育てや教育にお金がかかり過ぎるからが最も高くなっており、経済的支援の充実は重要です。

 こうした状況を踏まえ、児童手当については、ライフステージを通じた子育てに係る経済的支援の強化策の一環として、全ての子供の育ちを支える基礎的な経済支援としての位置づけを明確化します。

 その際、所得制限を撤廃し、教育費の負担が大きい高校生年代への支給を延長し、より経済的支援の必要性の高い子供三人以上の世帯で、第三子以降の支給額を三万円へ増額することで、抜本的な拡充を図ってまいります。

 こども誰でも通園制度の人材確保と提供体制の整備についてお尋ねがありました。

 こども誰でも通園制度を進めるに当たっては、保育人材の確保が大変重要です。引き続き、保育士の処遇改善を進めるとともに、保育士を希望する方への資格取得支援、保育所等におけるICT化の推進等による就業継続のための職場環境づくりなど、総合的に取り組んでまいります。

 また、制度の本格実施を見据え、実施主体となる市町村においては、計画的に提供体制の整備を行っていただく必要があります。国としても、試行的事業を通じて地域の実情に応じた制度設計を行うとともに、市町村向けの説明会を適時に行うことなどにより整備を支援してまいります。

 保育士等の処遇改善の現状と取組についてお尋ねがありました。

 保育士等の処遇改善については、平成二十五年度以降、累次の処遇改善に取り組んできており、直近では五%を上回る公定価格の人件費の改定を行い、累計プラス二三%の給与改善を進めています。また、これとは別に、技能、経験に応じた月額最大四万円の給与改善を平成二十九年度から行っています。

 こうした取組が現場に行き渡ることが重要です。このため、処遇改善等加算においては、加算額が確実に賃金改善に充てられる仕組みとしております。さらに、今般の法案においては、費用の使途の見える化に関する内容を盛り込んでおり、保育所等からの報告内容を分析することにより、職種別の賃金改善の状況等を明らかにする等、透明性の向上を図ることとしております。

 多様な支援ニーズへの対応の強化についてお尋ねがありました。

 こども家庭庁では、こども家庭センター設置など、本年四月からの改正児童福祉法の円滑な施行に取り組むとともに、こども未来戦略に沿って、児童扶養手当の所得制限の見直しや多子加算の増額、大学等への進学を応援するための学習支援の強化、障害のある子供の補装具費の所得制限撤廃など、対応を大幅に強化してまいります。

 また、本年四月施行の障害福祉サービス等に係る報酬改定による家族支援やインクルージョン推進、本法案によるヤングケアラー支援に係る自治体間の取組格差の是正等も図ってまいります。

 これらにより、誰一人取り残さない社会の実現に向けて取り組んでまいります。(拍手)

    〔国務大臣武見敬三君登壇〕

国務大臣(武見敬三君) 中野洋昌議員の御質問にお答えいたします。

 仕事と育児を両立できる職場づくりに取り組む事業主への支援についてお尋ねがありました。

 子育て世帯の共働き、共育てを推進するため、中小企業事業主に対して、両立支援等助成金を支給し、育児休業や短時間勤務を利用している間、その業務を代替する周囲の労働者に手当を支給した場合などに助成を行うとともに、労務管理の専門家から個別の相談支援等を無料で受けられる事業も実施しているところです。

 これらを通じて、男女共に希望に応じて仕事と育児が両立できる職場環境の整備にしっかりと取り組んでまいります。

 以上です。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 高橋千鶴子君。

    〔高橋千鶴子君登壇〕

高橋千鶴子君 私は、日本共産党を代表して、子ども・子育て支援法等改正案について質問します。(拍手)

 少子化に歯止めがかかりません。異次元の少子化対策といいますが、問われるのは政治の責任です。こども未来戦略には、少子化の要因として、雇用形態別に見て非正規より正規の方が、年収が低いより高い方が、配偶者がいる割合が高いとあります。また、これから先、子供の生活を保障できるほどお金を稼げる自信がない、コロナ禍で突然仕事がなくなったり解雇されたりすることへの不安が強くなったなど、若い世代の声を紹介しています。

 そうした要因をつくってきたのは政府自身ではありませんか。相次ぐ労働法制の緩和で正規雇用を派遣や契約社員に置き換え、不安定雇用と低賃金、あるいは過労死するほどの長時間労働の中に若者を置いてきたからにほかなりません。

 こども大綱には、子供、若者の多様性が尊重され、尊厳が重んぜられ、固定的な性別役割分担意識や特定の価値観、プレッシャーを押しつけられることなく、主体的に、自分らしく、幸福に暮らすことができるよう支えていくとあります。同感です。

 しかし、政府は、人口減少に歯止めをかけなければ、社会保障のみならず、我が国の経済社会システムを維持することは難しいと強調しています。結局、経済優先ですか。若い世代に価値観と責任を押しつけてはなりません。

 法案について伺います。

 児童手当の拡充は、私たちが求めてきたことでもあります。特に、所得制限の撤廃は、子供は社会が育てるという理念によるものでしょうか。自民党は、野党時代に、この理念を否定し、子ども手当を頓挫させ、児童手当法に、父母その他の保護者が子育ての第一義的責任を有すると修正させました。自民党はこうした考えを反省し、改めますか。お答えください。

 急がれるべきは、子供の貧困の解消です。特に母子世帯は、八六・三%が就労していながら平均年収は二百七十二万円にすぎず、二人に一人が貧困ライン以下です。今回、児童扶養手当の所得制限を満額百九十万円、一部支給三百八十五万円に引き上げますが、低過ぎます。三百八十五万円を満額支給の上限にするなど、更に拡充すべきではありませんか。

 また、全国の自治体で広がっている学校給食の無償化や三歳未満児の保育料無料化などは、国の責任で行うべきです。高校授業料の完全無償化、学費や奨学金返済も半額、入学金ゼロなど、思い切って教育費の負担軽減を進めるべきです。

 次に、こども誰でも通園制度について伺います。

 三歳未満児は、就労要件を問わずに保育所の利用ができるようになります。ワンオペ育児など、子育ての悩みに応え、全ての子供の育ちを応援するという理念は重要だと考えます。

 誰でも通園制度が一時預かりと違うのは、保護者の都合ではなく子供の利益のためだといいます。それなら、全国どこでも、アプリで空き状況を把握して臨時に保育を頼めるという仕組みは、本当に子供のためになりますか。新しい給付制度の対象には、現在の教育・保育給付の対象となっていない施設も入るのですか。

 保育とは、養護と教育を一体的に提供するものであり、保育士の役割は決定的だと思いますが、認識を伺います。誰でも通園制度の配置基準はどのようになるのですか。限定的な利用とはいえ、保育の質を割り引くようなことはあってはなりません。全ての子供の育ちを応援という理念が通常の保育においても生かされること、保育士の処遇改善と配置基準改善を更に進めるべきと考えますが、見解を伺います。

 焦点となっているのは、加速化プラン三兆六千億円の財源についてです。

 まず、支援金について。今回示された金額は平均額にすぎず、所得や世帯の構成によって大きく変わります。特に市町村国保は、無収入の被保険者が半数を占め、今でも負担が重過ぎるのに、現在の保険料に対する支援金の比率は五・三%と最も高くなります。いずれにしても、負担増であること、元々ある社会保険の逆進性を更に強めることになるのではありませんか。

 次に、社会保障の改革工程表の中には、介護保険のケアプランの有料化、医療、介護の自己負担率の引上げなど、負担増が含まれています。社会保障負担率というマクロの数字を使って、実質負担増がないと言うのは、国民に対して極めて不誠実ではありませんか。まして賃上げは、民間企業の努力を期待しているだけであって、政府自らの成果のように言うべきではありません。

 さらに、既存予算の徹底活用として、インボイス導入による消費税増収分を充てるのはなぜですか。また、その見込額を伺います。

 少子化はまさに国の存続そのものに関わる問題というのに、なぜその財源は社会保障関係予算の中でのやりくりなのかという私の質問に、社会保障関係費以外のやりくり分は防衛力強化のための財源だと答えました。とんでもありません。総理、防衛予算の前年比増の分だけでも一兆一千億円、子ども・子育て支援金制度分が賄えるではありませんか。本気で国の存続を考えるなら、まずは、こどもまんなかを財源においても貫くべきです。

 終わりに、自民党派閥の裏金問題を通し、政治は誰のためにあるのかとの問いが突きつけられています。中途半端な処分で幕引きにせず、全容解明と、パーティー券含め企業・団体献金の禁止に踏み出すときです。この問題を自ら解決する力のない自民党、岸田政権に子供の未来を語る資格はないと申し述べ、質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 高橋千鶴子議員にお答えいたします。

 少子化と若い世代の雇用との関係についてお尋ねがありました。

 若い世代の雇用や所得などの経済的基盤の問題は、少子化の要因の一つであると認識をしています。

 労働法制については、例えば、派遣労働者のキャリアアップや、雇用安定のための措置の導入や、時間外労働の上限規制の導入など、労働者保護に資する累次の改正を行ってきております。

 また、若い世代の経済的基盤の強化のため、最重要課題である賃上げに加え、それを持続的、構造的なものとするための三位一体の労働市場改革、さらには、同一労働同一賃金の徹底や、希望する非正規雇用労働者の正社員への転換に向けた支援などに取り組んでまいります。

 少子化対策に関する若い世代への価値観等の押しつけについてお尋ねがありました。

 結婚、妊娠、出産、子育ては、個人の自由な意思決定に基づくものであり、特定の価値観を押しつけたりプレッシャーを与えたりすることは決してあってはならないと考えます。

 その上で、急速な少子化、人口減少に歯止めをかけなければ我が国の経済社会システムを維持することは難しく、それは、若い世代や将来世代も含め、あらゆる方々に影響することです。このため、若い世代が希望どおり結婚し、子供を持ち、安心して子育てができるよう、社会全体で若い世代を支えていくことが重要であると考えており、価値観等の押しつけとの指摘は当たらないと考えます。

 児童手当の拡充についてお尋ねがありました。

 こども未来戦略においては、全ての子供、子育て世帯をライフステージに応じて切れ目なく支援するという基本理念の下、全ての子供の育ちを支える基礎的な経済支援としての位置づけを明確化するため、児童手当の所得制限を撤廃することといたしました。

 法の目的規定については、引き続き、平成二十四年の三党合意に基づき、父母その他の保護者が子育ての第一義的な責任を有するという基本的認識の下、児童手当を支給する、このことを維持することとしており、自民党の基本的な考え方と所得制限を撤廃する趣旨は矛盾するものではないと考えております。

 教育費の負担軽減についてお尋ねがありました。

 政府としては、加速化プランにおいて、高等教育費について、令和六年度から給付型奨学金等の多子世帯及び理工農系の中間層への拡大等を行うとともに、令和七年度から多子世帯における大学等の授業料等の無償化をすることなど、負担軽減を行うこととしています。

 様々な御提案をいただきましたが、政府としては、加速化プランで掲げた教育費負担の軽減を着実に進め、その実施状況や効果を検証し、引き続き教育費の負担軽減に取り組んでまいります。

 こども誰でも通園制度及び保育士の処遇改善と配置基準改善についてお尋ねがありました。

 こども誰でも通園制度は、全ての子供の育ちを応援し、子供の良質な生育環境を整備するものであるため、保育士の役割が重要であり、保育の質の確保に十分に配慮しつつ、制度を実施してまいります。

 また、このことは、通常の保育についても同様であり、全ての子供が良質な保育を受けられる体制を早期に確保するため、今後とも、保育士等の処遇改善や職員配置基準の改善に取り組んでまいります。

 子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。

 国民健康保険については、低所得者への保険料軽減措置等、公費を他の制度より手厚く投入するなどの措置が講じられています。医療保険料と併せて拠出いただく支援金についても、これに準じた措置を講ずること等を通じて、所得に応じて拠出いただく仕組みとすることとしており、逆進性が強まるとの御批判は当たらないと考えています。

 なお、御指摘の現行の医療保険料に対する比率は、どの医療保険制度においても一定の範囲内に収まっているものと考えております。

 社会保障の改革工程と社会保障負担率を用いた説明との関係についてお尋ねがありました。

 昨年末に閣議決定した改革工程では幅広いメニューが列挙されていますが、これらは、一義的には、社会保障の持続可能性を高め全世代型社会保障を構築する観点から盛り込まれたものであり、議論を続けていかなければなりません。これらのメニューの中から、実際に取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることがないよう、見直しによって生じる影響を考慮しながら、丁寧に検討してまいります。

 社会保障負担率については、支援金制度の構築に当たって実質的に負担が生じないと申し上げている際に、抽象論に陥らないよう、具体的なメルクマールを設けることとしております。歳出改革によって生じる保険料負担の軽減効果を積み上げ、その範囲内で支援金制度を構築することを基本とすることにより、支援金制度の構築によって社会保障負担率が上昇しないことといたします。

 インボイス制度導入に伴う増収分の活用についてお尋ねがありました。

 加速化プランの実施を支える財源の確保として既定予算の最大限の活用に取り組む際には、消費税収は社会保障四経費に充てるという消費税法の規定も踏まえ、今般のインボイス制度の導入に伴う御指摘の増収分を足下の喫緊の課題である子供、子育て政策強化の財源に充てることとしたところです。

 なお、当該増収分の金額の見込みは、平年度において国、地方合わせて約〇・二兆円程度であります。

 子供、子育て政策と防衛力強化の関係についてお尋ねがありました。

 防衛力強化のための財源確保に当たっては、防衛関係費が非社会保障関係費であることを踏まえ、社会保障関係費以外の経費を対象として歳出改革を行うこととしております。

 他方、少子化対策のための歳出改革については、社会保障関係費を対象にすることとしていますが、このような歳出改革を財源として少子化対策を進めることは、全世代型社会保障の構築に資することとなり、適切なものであると考えております。

 防衛力の抜本的強化と、子供、子育て政策の抜本強化、どちらか一方ということではなく、共に必要な予算をしっかりと措置するための財源確保に取り組んでまいります。

 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)

    〔国務大臣加藤鮎子君登壇〕

国務大臣(加藤鮎子君) 高橋千鶴子議員の御質問にお答えいたします。

 児童扶養手当の拡充についてお尋ねがありました。

 児童扶養手当については、給付の重点化を図る観点から、所得限度額を設け、所得が一定額を超えると減額する仕組みとしています。

 今般、所得限度額の引上げを行いますが、近年の一人親の就労収入の上昇等を踏まえた見直し内容としています。

 一人親家庭への支援については、児童扶養手当等による経済的支援のみならず、就業支援、生活支援や養育費確保支援など、多面的に支援を行うこととしております。こうした支援を確実にお届けしていくことで、一人親家庭の生活をしっかりと支援してまいります。

 こども誰でも通園制度についてお尋ねがありました。

 こども誰でも通園制度については、全ての子供が円滑に利用できるよう、保護者が空き状況を確認し、簡単に予約することが可能となる一元的なシステムが必要と考えています。

 また、現在の教育・保育給付の対象となっていない施設においても、実施主体である市町村による認可の下、受入れ体制が整っている場所において実施することも可能とすることを考えております。

 さらに、配置基準につきましては、試行的事業において、一時預かり事業と同様の人員配置基準で行うこととしております。その上で、制度の本格実施に向けて、試行的事業の実施状況などを踏まえながら、保育士以外の人材の活用も含め、保育の質の確保にも十分に配慮しつつ、更に検討を行ってまいります。

 保険料に対する支援金の比率についてお尋ねがありました。

 先日公表した医療保険制度ごとの支援金額の試算においては、御参考として、令和三年度の医療保険料額に対する令和十年度の支援金額の比率をお示ししております。

 国民健康保険につきましては、御指摘のとおり、この比率が五・三%となっていますが、医療保険各制度の保険料額については、それぞれの医療費水準や制度間の財政調整等の影響を受けるものであり、一定のルールに従って機械的に拠出額が按分される支援金の額との比率は、各制度で厳密に一致するものではありません。

 このため、この比率は、結果として医療保険制度間で違いが出ていますが、一定の範囲内に収まっているものと考えています。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(海江田万里君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党の田中健です。

 私は、会派を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)

 まず、今回の改正法案の中で、国民民主党が訴え続けてきましたヤングケアラーの支援が法制化されます。大きな一歩です。国が実態把握に努め、地域による支援格差の解消につなげていただきたいと思います。

 一方、支援金については問題点を指摘しなくてはなりません。政府は、少子化対策の財源として、子ども・子育て支援金の新設を提案しています。総理は、支援金は歳出改革と賃上げによって実質的な負担はないと説明をしてまいりました。今回、こども家庭庁から示された給付と拠出の試算は、負担額を全ての国民の数で割り平均値を示しただけのものであり、月四百五十円という金額が独り歩きするのは、負担をごまかすと言われても仕方がありません。

 そこで、伺います。年収によっては毎月の負担額が千円や千五百円を超えることはあり得るのでしょうか。具体的に、年収が六百万円、八百万円、一千万円の場合、それぞれの組合健保加入の被保険者一人当たりの平均の負担額は幾らになるのかをお示しください。

 試算表の中で組合健保における医療保険額は加入者一人当たり一万一千三百円とありますが、この額から保険料の負担額は一円も増えないという理解でよいのかも伺います。

 支援金の実質国民負担ゼロは、二つの前提が置かれています。

 一つは歳出改革です。工程表には、医療、介護の三割負担の見直し、つまり高齢者の窓口負担の問題や、また、支援金の賦課に金融所得勘案、つまり金融所得の情報をどう把握するのかの問題を始め、多くの検討課題が掲げられています。それぞれの課題で財源をどれだけ捻出できるのかは示されておらず、また、それぞれ熟議が必要なテーマばかりであり、実現性が見えません。これを財源と言えるのでしょうか。歳出削減一・一兆円の中身をお示しください。また、歳出改革の内容次第では、窓口負担の増加や受診控えなど、医療や介護制度のサービス低下につながることはないのか、総理の考えを伺います。

 改革工程表の改革ができなかった場合は実質的に負担が増えることになるのかも伺います。それとも、子ども・子育て支援特例公債の発行を継続して、負担を増やさないようにするのでしょうか。既に、後期高齢者医療制度の窓口負担原則二割の導入などの検討は、選挙を意識した与党の反対等で遅れているのではないですか。総理の見解を伺います。

 もう一つの前提は、賃上げです。賃上げは労使の協議によって決まるものであり、確実に全ての労働者の賃金が上がるとは言えません。実際に、春闘においても、賃上げに至っていない中小企業は数多く存在します。どうして負担がないと言い切れるのでしょうか。賃上げが上がらない被保険者であっても負担は増えないと言えるのか、総理の見解を伺います。

 また、社会保険料が上がることは賃上げにマイナスになるのではないかとの懸念の声が上がっています。賃上げに関する課題で、正社員が雇えないのも、可処分所得が増えないのも、社会保険料の負担が大きいことが、国民民主党が行ったアンケート調査でも明らかになっています。国を挙げて賃上げを進めている中、社会保険料が増えることは、賃上げのマインドを下げることにつながることはないのでしょうか。そもそも、支援金が労使折半であり、事業主負担も発生する中、会社側の負担金は、本来、従業員の給料に回すことができるのではないでしょうか。総理の考えを伺います。

 このままでは、子ども・子育て支援金は、現役世代に重く負担ののしかかるステルス増税となります。保険料の目的外使用が問題であることのみならず、企業にとっても社会保険料の更なる負担増となり、賃上げ抑制の要因にもなりかねず、子供を産み育てる世代の支援という少子化対策と逆行します。制度設計を見直すべきです。

 年少扶養控除の廃止等により、児童手当受給時に比べ、実質手取りが減少する世帯が生まれています。国民民主党は、異次元の少子化対策は、若者世代、子育て世代、両世代の異次元の可処分所得対策であり、一日も早く教育無償化を実現し、子供たちを奨学金返済から解放し、結婚や出産がリスクだと思わない社会をつくることが必要であると訴え続けてきました。その意味では、扶養控除の維持拡充と年少扶養控除の復活については、検討するかしないかではなくて、もはやこれは少子化対策の前提であります。実質手取りが減少する世帯が生じない額を最低限支給すべきです。年少扶養控除の復活についての総理の見解を伺います。

 こども誰でも通園制度は、利用者からは助かるという声がある一方、現場からは不安の声が上がっています。モデル事業を行った自治体からは、月十時間の時間制約について、短時間しか利用できないのは託児所になってしまう、質の高い保育を受ける権利を守る観点からすると時間制限をなくしてほしいという声。また、都市部では、そもそも待機児童が存在しており、働きたくても働けないという問題があり、後回しにされるのではないかとの声。保育士からは、ただ預かればいいというわけでなく、保育の質を担保すべきとの声。どれも大切な声です。

 十時間の時間制約は今後拡大していく考えはあるのか、伺います。また、どの地域においても、希望の施設が利用できる環境を整備すべきであります。保育士などの保育施設で働く全ての人の賃金や労働条件を改善し、質の高い保育を提供するための必要な人材を確保すべきであると考えますが、総理の見解を伺います。

 保育士の配置基準がようやく改善されますが、全ての子供が良質な保育を利用できる権利を持つ保育保障の実現を目指していくためには、更なる改善が必要です。配置基準に関して今後どのような改善を図っていくのか、猶予期間を続けるのではなくて、期限を区切って早期に改善をすべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 政府は、異次元の少子化対策はこれでスウェーデン並みになったと言っていますが、国際比較可能なGDP比では二%が二・四%になっただけ。スウェーデンの三・四%にはいまだ至っていません。自分の国を子供を産みやすい、育てやすい国だと思うかの国際意識調査、日本四・四%に対し、スウェーデン八〇・四%。是非、この現状を見るべきです。大きな開きがあります。

 私たち国民民主党は、人づくりこそ国づくり、誰もが子供を産みやすい、育てやすいと思えるために愚直に訴えていきますことをお約束し、質問を終わります。

 ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕

内閣総理大臣(岸田文雄君) 田中健議員にお答えいたします。

 まず、子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。

 先日、こども家庭庁からお示ししたとおり、月約四百五十円という、加入者一人当たりの平均値で拠出額をお示しすること、これは理にかなったものであると考えております。

 毎月の具体的な拠出額は、加入する医療保険制度や所得等に応じて異なるものであり、年収別の拠出額については、数年後の賃金水準等によることから、現時点で一概に申し上げることはできませんが、所得が高く拠出額が大きい場合は、歳出改革に伴う保険料軽減効果も併せて大きくなる、この点について留意することが必要です。

 こども家庭庁の試算では、現行の医療保険料額の四から五%程度となることをお示ししており、これにより、国民お一人お一人の拠出のイメージを持っていただけるものと考えております。

 また、健保組合の医療保険料額については、令和三年度の実績を参考としてお示ししたものであり、歳出改革や支援金制度の影響以前に、高齢化等の影響を受けるものであることに留意が必要であります。

 歳出改革による財源確保の実現性と医療、介護制度のサービス低下の可能性についてお尋ねがありました。

 昨年末に閣議決定した改革工程においては幅広い歳出改革のメニューが列挙されていますが、これらは、一義的には、社会保障の持続可能性を高め全世代型社会保障を構築する観点から盛り込まれたものであり、議論を続けていかなければなりません。

 これらのメニューの中から、一・一兆円の財源確保に向けて実際の取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることがないよう、見直しによって生じる影響を考慮しながら、丁寧に検討してまいります。

 政府としては、歳出改革が十分にできず、加速化プランの財源が賄えない事態は想定しておらず、徹底した歳出改革に取り組んでまいります。

 支援金制度の導入と賃上げの関係についてお尋ねがありました。

 支援金については、実効性のある少子化対策の推進が、労働力の確保や国内市場の維持の観点から、企業に極めて重要な受益をもたらすものであることから、これまで社会保険制度において事業主が果たしてきた役割や取扱いも踏まえ、事業主にその一部を拠出いただくことといたしました。

 歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することを基本としており、このために実質的な負担が生じない点は事業主が拠出する分についても同様であり、支援金に事業主拠出を求めることが賃上げを阻害するとは考えておりません。

 年少扶養控除についてお尋ねがありました。

 こども未来戦略において、所得制限の撤廃、高校生年代への支給期間の延長、第三子以降の支給額を三万円とする児童手当の抜本的拡充を始めとした、子供、子育て世帯に対する経済的な支援の強化に取り組んでいます。

 このように、今回、主として歳出面の取組において、前例のない規模で、子供、子育て政策の抜本的な強化を図ることとしている中、子ども手当創設に合わせて、所得控除から手当へとの考え方の下で廃止された年少扶養控除の復活については、検討課題としてはおりません。御指摘のような、復活の代案としての、廃止の影響を緩和する給付を行うことも考えておりません。

 こども誰でも通園制度についてお尋ねがありました。

 こども誰でも通園制度の来年度からの制度化後において設ける、月一定時間までの上限時間については、今年度から月十時間を上限として実施している試行的事業の状況や、全国的な提供体制の確保状況等も踏まえながら、都市部を含め全国の自治体において提供体制を確保できるかといった観点から、今後検討してまいります。

 また、こども誰でも通園制度の本格導入に当たっては、保育人材の確保は重要であり、保育士資格の取得支援や保育所等におけるICT化の推進等による負担軽減、潜在保育士のマッチング支援等の取組を進めるとともに、引き続き、民間給与動向等を踏まえた処遇改善を行ってまいります。

 保育士の配置基準についてお尋ねがありました。

 加速化プランに基づき、四、五歳児における保育士の配置基準について、令和六年度より、三十対一から二十五対一へ、七十六年ぶりの改善を行うとともに、一歳児についても、令和七年度以降、六対一から五対一へ改善を進めることとしております。

 四、五歳児の配置基準については、人材確保等の施策を進めながら、今回の配置改善を早期に実現することができるよう努めることは当然だと考えておりますが、その前提の下、人材確保に困難を抱える保育現場に配慮し、従前の基準で運営することも妨げないとする経過措置を、当分の間、設けることとしております。経過措置の早期の終了を図ってまいります。(拍手)

副議長(海江田万里君) これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十二分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  岸田 文雄君

       厚生労働大臣  武見 敬三君

       環境大臣    伊藤信太郎君

       国務大臣    加藤 鮎子君

       国務大臣    新藤 義孝君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 村井 英樹君

       内閣府副大臣  工藤 彰三君


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