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第2号 令和6年10月4日(金曜日)

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令和六年十月四日(金曜日)

    ―――――――――――――

 議事日程 第二号

  令和六年十月四日

    正午開議

 第一 常任委員長の選挙

 第二 情報監視審査会委員辞任の件

    …………………………………

  一 国務大臣の演説

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日程第一 常任委員長の選挙

 日程第二 情報監視審査会委員辞任の件

 情報監視審査会委員の選任

 災害対策を樹立するため委員三十五人よりなる災害対策特別委員会、政治改革に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治改革に関する特別委員会及び東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十人よりなる東日本大震災復興特別委員会を設置するの件(議長発議)

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会、北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会、消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会、原子力に関する諸問題を調査するため委員三十五人よりなる原子力問題調査特別委員会及び地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会を設置するの件(議長発議)

 石破内閣総理大臣の所信についての演説


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    午後零時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 日程第一 常任委員長の選挙

議長(額賀福志郎君) 日程第一、常任委員長の選挙に入ります。

 法務委員長、経済産業委員長、安全保障委員長及び予算委員長が欠員となっておりますので、この際、法務委員長外三常任委員長の選挙を行います。

井野俊郎君 各常任委員長の選挙は、その手続を省略して、議長において指名されることを望みます。

議長(額賀福志郎君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 議長は、各常任委員長を指名いたします。

          法務委員長 熊田 裕通君

           〔拍手〕

        経済産業委員長 浜地 雅一君

           〔拍手〕

        安全保障委員長 若宮 健嗣君

           〔拍手〕

          予算委員長 伊藤 達也君

           〔拍手〕

     ――――◇―――――

 日程第二 情報監視審査会委員辞任の件

議長(額賀福志郎君) 日程第二、情報監視審査会委員辞任の件につきお諮りいたします。

 情報監視審査会委員岩屋毅君から、委員を辞任いたしたいとの申出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。

     ――――◇―――――

 情報監視審査会委員の選任

議長(額賀福志郎君) つきましては、情報監視審査会委員の選任を行います。

 衆議院情報監視審査会規程第六条の規定に基づき、情報監視審査会委員に鷲尾英一郎君を選任するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、選任することに決まりました。

     ――――◇―――――

 特別委員会設置の件

議長(額賀福志郎君) 特別委員会の設置につきお諮りいたします。

 災害対策を樹立するため委員三十五人よりなる災害対策特別委員会

 政治改革に関する調査を行うため委員四十人よりなる政治改革に関する特別委員会

及び

 東日本大震災からの復興に当たり、その総合的対策を樹立するため委員四十人よりなる東日本大震災復興特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 次に、

 沖縄及び北方問題に関する対策樹立のため委員二十五人よりなる沖縄及び北方問題に関する特別委員会

 北朝鮮による拉致等に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため委員二十五人よりなる北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会

 消費者の利益の擁護及び増進等に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる消費者問題に関する特別委員会

 原子力に関する諸問題を調査するため委員三十五人よりなる原子力問題調査特別委員会

及び

 地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する総合的な対策を樹立するため委員三十五人よりなる地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会

を設置いたしたいと存じます。これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

議長(額賀福志郎君) 起立多数。よって、そのとおり決まりました。

 ただいま議決されました八特別委員会の委員は追って指名いたします。

     ――――◇―――――

議長(額賀福志郎君) この際、暫時休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

議長(額賀福志郎君) 休憩前に引き続き会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(額賀福志郎君) 内閣総理大臣から所信について発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣石破茂君。

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) この度、第百二代内閣総理大臣に就任いたしました。

 すべての人に安心と安全を。

 私は、日本国内閣総理大臣として、全身全霊を捧げ、日本と日本の未来を守り抜いてまいります。

 この決意を申し述べるに当たり、まずは、政治資金問題などをめぐり、国民の政治不信を招いた事態について、深い反省とともに触れねばなりません。

 政治資金問題に際し、岸田総理は、自由民主党内の派閥解消や政治資金規正法改正などに取り組まれた後に、所属議員が起こした事態について、組織の長として責任を取るために退任されました。これらは全て、政治改革を前に進めるとの思いを持って決断されたものでした。

 また、岸田内閣の三年間は、経済、エネルギー政策、こども政策、安全保障政策、そして外交政策など、幅広い分野において具体的な成果が形になった三年でありました。岸田総理の御尽力に心より敬意を表します。

 その思いや実績を基に、私は、政治資金問題などにより失った国民の皆様からの信頼を取り戻し、そして、すべての人に安心と安全をもたらす社会を実現してまいります。

 千年単位で見ても類を見ない人口減少、生成AI等の登場による急激なデジタルの進化、約三十年ぶりの物価上昇。我が国は大きな時代の変化に直面しております。この変化に対し、政治は十分に責任を果たしてきたでしょうか。政治資金問題で失われた政治への信頼を取り戻すとともに、これまで以上に、我が国が置かれている状況を国民の皆様に説明し、納得と共感を頂きながら、安全、安心で豊かな日本を再構築する。それが政治の責任です。

 そのために、私は、ルールを守る、日本を守る、国民を守る、地方を守る、若者、女性の機会を守る、これらの五本の柱で、日本の未来を創り、そして、未来を守ります。

 国民の皆様からの信頼を取り戻す。そのために、政治家のための政治ではない、国民のための政治を実現してまいります。

 政治資金収支報告書への不記載の問題については、まずは、問題を指摘された議員一人一人と改めて向き合い、反省を求め、ルールを守る倫理観の確立に全力を挙げます。

 それぞれの政治家が国民一人一人と誠実に向き合い、改正された政治資金規正法を徹底的に遵守し、限りない透明性を持って国民に向けて公開することを確立しなければなりません。国民の皆様方にもう一度政治を信頼していただくため、私自身も説明責任を果たし、更に透明性を高める努力を最大限してまいることを固くお約束を申し上げます。

 激変する安全保障環境から日本を守り抜きます。

 国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアによるウクライナ侵略は未だに続いており、戦火は絶えません。今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない。そのような不安を多くの方々が抱いております。何故ウクライナにおいて抑止力が効かなかったのか、私は強い思いを持っております。中東情勢なども相まって、国際社会は分断と対立が進んでいます。

 そうした現状を踏まえ、私は、現実的な国益を踏まえた外交により、日米同盟を基軸に、友好国、同志国を増やし、外交力と防衛力の両輪をバランスよく強化し、我が国の平和、地域の安定を実現します。その際、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、法の支配に基づく国際秩序を堅持し、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導してまいります。

 日米同盟は、日本外交、安全保障の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤です。まずは、この同盟の抑止力、対処力を一層強化します。加えて、同志国との連携強化に取り組んでまいります。先日は、早速、バイデン米国大統領に加え、韓国、豪州、G7各国の首脳と電話会談を行いました。

 現下の戦略環境の下、日韓が緊密に連携していくことは、双方の利益にとって極めて重要です。日韓間には難しい問題もありますが、来年に国交正常化六十周年を迎えることも見据え、岸田総理が尹大統領との間で築かれた信頼関係を礎に、日韓両国の協力を更に堅固で幅広いものとしていきます。また、日米韓で一層緊密に連携していきます。

 中国に対しては、戦略的互恵関係を包括的に推進し、あらゆるレベルでの意思疎通を重ねてまいります。一方、中国は、東シナ海や南シナ海における力による一方的な現状変更の試みを日々強化しております。先月には、幼い日本人の子供が暴漢に襲われ、尊い命を失うという痛ましい事件が起きました。これは断じて看過しがたいことであります。我が国として主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含め対話を行い、共通の諸課題については協力する、建設的かつ安定的な関係を日中双方の努力で構築していきます。日中韓の枠組みも前進させます。

 拉致被害者やその御家族が高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題、国家主権の侵害であり、政権の最重要課題です。日朝平壌宣言から二十年余り、残された拉致被害者たちの御帰国が実現していないことは痛恨の極みです。日朝平壌宣言の原点に立ち返り、すべての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、私自身の強い決意の下で、総力を挙げて取り組んでまいります。

 対露制裁、対ウクライナ支援は、今後とも強力に推し進めます。日露関係は厳しい状況にありますが、我が国としては、領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持します。

 ASEANとの連携強化に引き続き取り組みます。グローバルサウスとの関係強化や、軍縮・不拡散、気候変動など地球規模課題への取組を進めてまいります。また、在外邦人の安全確保に全力を尽くしてまいります。

 我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。中国及びロシアによる一連の領空侵犯も発生しました。これは、我が国主権の重大な侵害です。北朝鮮は、核・ミサイル開発を継続し、近年、かつてない頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返しているほか、米国を射程に収める長射程ミサイルの開発も追求しています。これは、国連安保理決議違反であり、我が国のみならず、地域、国際社会の平和と安全を脅かすものです。このような中、国家安全保障戦略等に基づき、我が国自身の防衛力を抜本的に強化すべきことは論を俟ちません。

 防衛力の最大の基盤は自衛官です。いかに装備品を整備しようとも、防衛力を発揮するためには、人的基盤を強化することが不可欠です。日本の独立と平和を守る自衛官の生活、勤務環境や処遇の改善に向け、総理大臣を長とする関係閣僚会議を設置し、その在り方を早急に検討し成案を得るものといたします。

 先の大戦中、沖縄では、国内最大の地上戦が行われ、多くの県民が犠牲になられたこと、戦後二十七年間、米国の施政下に置かれたことなどを、私は決して忘れません。基地負担の軽減にも引き続き取り組みます。在日米軍の円滑な駐留のためには、地元を含む国民の御理解と御協力を得ることが不可欠です。普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古への移設工事を進めます。また、未だ全国最下位である一人当たりの県民所得や、子どもの貧困の問題などの課題も存在します。沖縄振興の経済効果は十分に域内に波及しているのだろうか、そして、それが本当に実感していただけるのだろうか。沖縄の皆様の思いに向き合い、沖縄経済を強化すべく支援を継続いたします。

 少子化とその結果生ずる人口減少は、国の根幹にかかわる課題、いわば静かな有事です。

 今の子育て世代が幸せでなければ、少子化の克服はありません。子育て世帯の意見に十分に耳を傾け、今の子育て世帯に続く若者が増えるような子育て支援に全力を挙げます。こども未来戦略を着実に実施するとともに、社会の意識改革を含め、短時間勤務の活用や生活時間、睡眠時間を確保する勤務間インターバル制度の導入促進など、働き方改革を強力に推し進めます。さらに、少子化の原因を分析し、子育て世帯に寄り添った適切な対策を実施します。

 少子化をめぐる状況は地域によって異なります。婚姻率が低い県は人口減少率も高いことは厳然たる事実です。若年世代の人口移動を見ると、この十年間で、全国三十三の道県で男性よりも女性の方が多く転出する状況となっております。若者、女性に選ばれる地方、多様性のある地域分散型社会を作っていかなければなりません。それぞれの地域において、地方創生と表裏一体のものとして若者に選ばれる地域社会の構築に向け、全力で取り組んでまいります。

 日本経済のデフレ脱却を確かなものとし、日本経済の未来を創り、日本経済を守り抜きます。

 その中で、デフレ脱却を最優先に実現するため、経済あっての財政との考え方に立った経済財政運営を行い、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済、財政を作っていきます。

 イノベーションを促進すること等による高付加価値創出や生産性の向上、意欲ある高齢者が活躍できる社会を実現し、我が国のGDPの五割超を占める個人消費を回復させ、消費と投資を最大化する成長型経済を実現します。

 このため、コストカット型経済から高付加価値創出型経済へ移行しながら、持続可能なエネルギー政策を確立し、イノベーションとスタートアップ支援を強化していきます。また、経済安全保障の観点から、半導体等のサプライチェーンの国内回帰を含む強靱化や技術流出対策等を進めます。あわせて、能動的サイバー防御の導入に向けた検討を更に加速させるなど、サイバーセキュリティーの強化に取り組みます。柔軟な社会保障制度の再構築を実現するとともに、データに基づき財政支出を見直し、ワイズスペンディングを徹底してまいります。

 私は、国全体の経済成長のみならず、国民一人当たりのGDPの増加と、満足度、幸福度の向上を優先する経済の実現を目標といたします。そのために、官民で総合的な幸福度、満足度の指標を策定、共有し、一人一人が豊かで幸せな社会の構築を目指します。

 日本の経済を守り、国民生活を守り抜きます。

 生鮮食品、エネルギーなどの物価高に国民の皆様は直面しておられます。物価上昇を上回る賃金上昇を定着させ、国民の皆様に生活が確かに豊かになったとの思いを持っていただかなければなりません。

 日本経済がコストカット型の対応を続けてきた失われた三十年とコロナ禍での苦難の三年間を乗り越え、経済状況は改善し、賃金もようやく上がるようになってきました。しかしながら、国民の皆様に安心して消費をしていただける経済になるまでは道半ばです。

 こうした中、賃上げと人手不足緩和の好循環に向けて、一人一人の生産性を上げ、付加価値を上げ、所得を上げ、物価上昇を上回る賃金の増加を実現してまいります。適切な価格転嫁と生産性向上支援により最低賃金を着実に引き上げ、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けます。そのために、政府として、自由に働き方を選択しても不公平にならない職場づくりを目指した個人のリスキリングなど人への投資を強化し、事業者のデジタル環境整備も含め、将来の経済のパイを拡大する施策を集中的に強化いたします。

 高付加価値のモノとサービスを、グローバル市場において、適正な価格で売ることのできる経済を実現します。輸出企業の競争力を強化し、中小企業を中心とする高付加価値化、労働分配率の向上、官民挙げての思い切った投資を実現します。

 物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資が積極的に行われるといった成長と分配の好循環が確実に回り出すまでの間、足下で物価高に苦しむ方々への支援が必要です。こうした物価高への対応に加えて、成長分野に官民を挙げての思い切った投資を行い、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現を図るため、経済対策を早急に策定し、その実現に取り組みます。

 当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯への支援や、地域の実情に応じたきめ細かい対応を行うこと、構造的な対応としてのエネルギーコスト上昇に強い社会の実現など、物価高の克服。新たな地方創生施策の展開、中堅・中小企業の賃上げ環境整備、成長力に資する国内投資促進など、日本経済、地方経済の成長。能登地域をはじめとする自然災害からの復旧復興、防災・減災、国土強靱化の推進、外交、安全保障環境の変化への対応、誰も取り残さない社会の実現など、国民の安心、安全の確保を柱といたします。

 エネルギーの安定的な供給と安全の確保は喫緊の課題です。

 AI時代の電力需要の激増も踏まえつつ、脱炭素化を進めながらエネルギー自給率を抜本的に高めるため、省エネルギーを徹底し、安全を大前提とした原子力発電の利活用、国内資源の探査と実用化と併せ、我が国が高い潜在力を持つ地熱など再生可能エネルギーの最適なエネルギーミックスを実現し、日本経済をエネルギー制約から守り抜きます。

 このため、GXの取組を加速させ、アジア諸国の多様な取組を日本の技術力や金融力で支援し、同時に、アジアの成長力を我が国に取り込んでいきます。

 日本経済の活性化と成長を加速させるため、科学技術・イノベーション、宇宙などフロンティアの開拓を推進するとともに、スタートアップ支援策を引き続き強化していきます。政府のスタートアップ育成五か年計画を着実に進め、アジア最大のスタートアップハブを実現します。AIの研究開発、実装がしやすい環境を更に充実し、政府のAI政策の司令塔機能を強化します。

 経済活動の基盤である金融資本市場の変革にも取り組みます。貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押しする資産運用立国の政策を引き継ぐとともに、産業に思い切った投資が行われる投資大国に向けた施策を講じます。

 社会保障制度は、様々な境遇にある国民の方々に安心を提供するセーフティーネットです。将来不安を取り除き、皆が安心して充実して暮らせる、こうした日本を実現することによって未来を守り、次の時代に負担を先送りしない。それが今を生きる我々の責任であります。

 医療、年金、子育て、介護など、社会保障全般を見直し、国民の皆様に安心していただける社会保障制度を確立します。その際、今の時代にあった社会保障へと転換し、多様な人生の在り方、多様な人生の選択肢を実現できる柔軟な制度設計を行います。人口減少時代を踏まえ、意欲のある高齢者、女性、障害者などの就労を促進し、誰もが年齢に関わらず能力や個性を最大限生かせる社会を目指します。

 子供、女性、高齢者をはじめ、全ての方々が安心して暮らせるよう、犯罪対策を推進し、世界一安全な日本を実現します。

 度重なる災害から、国民の生命、身体と財産を守り抜きます。

 コロナ禍の最中は、ふるさとに戻ることすらできませんでした。やっと里帰りができるようになり、皆が待ちわびていた家族の団らんが、能登半島では、今年の元日、地震により一瞬にして奪われました。亡くなられた方々に哀悼の誠を捧げるとともに、被災されている方々に心よりお見舞いを申し上げます。その後、さらに、能登半島地震の被災地を豪雨が襲い、河川の氾濫や土砂災害が相次ぎ、多くの尊い人命が失われました。度重なる被災の前の活気ある能登を取り戻すため、復旧と創造的復興に向けた取組を一層加速してまいります。

 世界有数の災害発生国であるこの日本において、近年の更なる風水害の頻発化、激甚化に早急に対処できる人命最優先の防災立国を構築しなければなりません。防災・減災、国土強靱化の取組を推進します。事前防災の徹底に向けて、まず、現在の内閣府防災担当の機能を、予算、人員の両面において抜本的に強化するとともに、平時から不断に万全の備えを行うため、専任の大臣を置く防災庁の設置に向けた準備を進めてまいります。

 日本では、ひとたび災害が起こると、被災者の方々は避難所で厳しい生活を強いられます。平成二十八年に起きた熊本地震では、直接亡くなられた方々の四倍もの方々が、避難生活の中で健康を崩されるなどして、災害関連死として亡くなられています。

 被災して大きな悲しみや不安を抱えている方々に手を差し伸べ、温かい食事、安心できる居住環境を提供することが必要です。災害関連死ゼロを実現すべく、避難所の満たすべき基準を定めたスフィア基準も踏まえつつ避難所の在り方を見直し、発災後速やかにトイレ、キッチンカー、ベッド、風呂を配備しうる、平時からの官民連携体制を構築します。

 福島の復興なくして東北の復興なし。東北の復興なくして日本の再生はありません。被災者の生活や、産業、生業の再建に全力で取り組んでまいります。一部の国、地域による日本産水産物の輸入停止に対し、岸田政権での取組を活かし、あらゆる機会をとらえて即時撤廃を強く求めるとともに、影響を受ける水産物の国内需要の拡大や新たな輸出先の開拓など、我が国水産業の更なる発展のために、政府として責任を持って支援を行ってまいります。

 地方創生の原点に立ち返り、地方を守り抜きます。

 十年前に、私は、初代地方創生担当大臣を拝命し、文化庁の京都移転、それまでの補助金とは一線を画する地方創生推進交付金の創設をはじめ、一生懸命に取り組みました。以来、交付金などを活用し、住民の方々が気持ちを一つにして地方創生の取組に頑張っていらっしゃる姿を、全国各地でたくさん見てまいりました。そして、その姿に勇気づけられてまいりました。

 竹下総理はかつて、地域が自主性と責任を持って、おのおのの知恵と情熱を生かし、小さな村も大きな町もこぞって、地域づくりをみずから考え、みずから実践していくと述べられました。

 産官学金労言、すなわち、産業界、行政機関、大学だけではなく中学校、高等学校も含めた教育機関、金融機関、労働者の皆様、報道機関の皆様。こうした地域の多様なステークホルダーが知恵を出し合い、地域の可能性を最大限に引き出し、都市に住む人も地方に住む人も、すべての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感する社会。それが地方創生の精神であります。今一度、地方に雇用と所得、そして、都市に安心と安全を生み出します。

 地方こそ成長の主役です。地方創生をめぐる、これまでの成果と反省を活かし、地方創生二・〇として再起動させます。

 全国各地の取組を一層強力に支援するため、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指します。少子高齢化や人口減少に対応するため、デジタル田園都市国家構想実現会議を発展させ、新しい地方経済・生活環境創生本部を創設し、今後十年間集中的に取り組む基本構想を策定します。ブロックチェーンなどの新技術やインバウンドの大きな流れなどの効果的な活用も視野に入れ、国民の生活を守りながら、地方創生を実現してまいります。

 地方の成長の根幹である農林水産業は、農山漁村の雇用と所得を生み出すとともに、国家の安全保障の一環でもあることから、その持てる力を最大限引き出してまいります。

 新たな基本法の下、最初の五年間に計画的かつ集中した施策を講ずることにより、食料安全保障の確保、環境と調和のとれた食料システムの確立、農林水産業の持続的な発展、中山間地域を始めとする農山漁村の振興を図ります。国内の生産基盤の維持の観点も踏まえ、農林水産物の輸出をより一層促進します。持続可能な食品産業への転換を促進し、循環型林業など強い林業づくりや、海洋環境の変化を踏まえた操業形態や養殖業への転換、海業の全国展開など漁業、水産業の活性化に取り組みます。

 観光産業の高付加価値化を推進するとともに、文化芸術立国に向けた地域の文化、芸術への支援強化にも取り組みます。地域交通は地方創生の基盤です。全国で、交通空白の解消に向け、移動の足の確保を強力に進めます。

 地方創生に終わりはありません。地域づくりは人づくり。人材育成こそ全てです。私が先頭に立って、国、地方、国民が一丸となって地方創生に永続的に取り組む機運を高めてまいります。

 二〇二五年大阪・関西万博は、世界と交流を深め、日本の魅力を世界に向けて発信する絶好の機会です。多くの方に御来場いただき、楽しみ、そしてそれぞれの将来に夢と希望を持ってもらう、またとない機会です。成功に向け、関係者と心を合わせて取り組んでまいります。

 若者、女性、それぞれの方々の幸せ、そして人権が守られる社会にしていかなければなりません。

 人づくりこそ国づくり。この考え方のもと、デジタル技術の活用を前提に、自ら考え、自由に人生を設計することができる能力の育成を目指します。あらゆる人が、最適な教育を受けられる社会を実現します。教職員の処遇見直しを通じた公教育の再生に全力を挙げます。

 強靱で持続性のある稼げる日本の再構築のためには、教育やリスキリングなどの人的資源への最大限の投資が不可欠です。人生のあらゆる局面で、何度でも必要な学びが得られる体制を整備します。

 意思決定の在り方を劇的に変えていくため、社会のあらゆる組織の意思決定に女性が参画することを官民の目標とし、達成への指針を定め、計画的に取り組みます。男女間の賃金格差の是正は、引き続き喫緊の課題です。多くの女性に社会活動を長く続けてもらえるにはどうすればよいか、国民的議論を主導して制度改革を実現します。

 コロナ禍で増加した女性の自殺者数が高止まりし、こども、若者の自殺者数が増加傾向にあることも踏まえ、自殺総合対策を強力に進めます。

 憲法改正について、私が総理に在任している間に発議を実現していただくべく、今後、憲法審査会において、与野党の枠を超え、建設的な議論を行い、国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待します。

 日本にとって、皇位の安定的な継承等は極めて重要なことです。とりわけ、皇族数の確保は喫緊の課題です。国会において、早期に立法府の総意が取りまとめられるよう、積極的な議論が行われることを期待します。

 私は、議員になる一年前の昭和六十年、渡辺美智雄代議士の、政治家の仕事は勇気と真心をもって真実を語ることだとの言葉に大きな感銘を受けました。爾来四十年、こうありたいと思い続け、今、この壇上に立っております。

 政治を信じていただいている国民の皆様方が決して多くはないことを、私は承知いたしております。しかし、政治は国民を信じているのでしょうか。どうせ分かってはもらえない、そのうち忘れてしまうだろうなどと思ってはいないでしょうか。国民を信じない政治が、国民の皆様に信じてもらえるわけがありません。勇気と真心をもって真実を語り、国民の皆様の納得と共感を得られる政治を実践することにより、政治に対する信頼を取り戻し、日本の未来を創り、日本の未来を守り抜く決意であります。

 以上、私の思いを申し述べました。

 かつての日本は、今ほど豊かではなかったかもしれません。しかし、もっとお互いを思いやる社会でした。皆に笑顔がありました。いつの間にか、日本は、お互いが足を引っ張ったり、悪口を言い合ったりするような、そういう社会になってしまったのではないでしょうか。私は、もう一度、全ての国民の皆様に笑顔を取り戻したい。

 すべての人に安心と安全を。

 国民の皆様、並びに、この場に集う全国民を代表される国会議員の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

井野俊郎君 国務大臣の演説に対する質疑は延期し、来る七日午後一時から本会議を開きこれを行うこととし、本日はこれにて散会されることを望みます。

議長(額賀福志郎君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、動議のとおり決まりました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  石破  茂君

       総務大臣    村上誠一郎君

       法務大臣    牧原 秀樹君

       外務大臣    岩屋  毅君

       財務大臣    加藤 勝信君

       文部科学大臣  あべ 俊子君

       厚生労働大臣  福岡 資麿君

       農林水産大臣  小里 泰弘君

       経済産業大臣  武藤 容治君

       国土交通大臣  斉藤 鉄夫君

       環境大臣    浅尾慶一郎君

       防衛大臣    中谷  元君

       国務大臣    赤澤 亮正君

       国務大臣    伊東 良孝君

       国務大臣    伊藤 忠彦君

       国務大臣    城内  実君

       国務大臣    坂井  学君

       国務大臣    平  将明君

       国務大臣    林  芳正君

       国務大臣   三原じゅん子君

 出席内閣官房副長官

       内閣官房副長官 橘 慶一郎君


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