第3号 令和6年10月7日(月曜日)
令和六年十月七日(月曜日)―――――――――――――
議事日程 第三号
令和六年十月七日
午後一時開議
一 国務大臣の演説に対する質疑
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○本日の会議に付した案件
旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案(田村憲久君外七名提出)
旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案(地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長提出)
国務大臣の演説に対する質疑
午後一時二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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○井野俊郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
田村憲久君外七名提出、旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案は、提出者の要求のとおり、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(額賀福志郎君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程に先立ち追加されました。
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旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案(田村憲久君外七名提出)
○議長(額賀福志郎君) 旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案を議題といたします。
提出者の趣旨弁明を許します。田村憲久君。
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旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案
〔本号末尾に掲載〕
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〔田村憲久君登壇〕
○田村憲久君 ただいま議題となりました旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、提案の趣旨を御説明申し上げます。(拍手)
以下、案文の朗読をもちまして趣旨の説明に代えさせていただきます。
旧優生保護法に基づく優生手術等の被害者に対する謝罪とその被害の回復に関する決議案
昭和二十三年制定の旧優生保護法に基づき、あるいはその存在を背景として、多くの方々が、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するという誤った目的の下、特定の疾病や障害を有すること等を理由に生殖を不能にする手術や放射線の照射あるいは人工妊娠中絶を受けることを強いられて、子を生み育てるか否かについて自ら意思決定をする機会を奪われ、これにより耐え難い苦痛と苦難を受けてきた。
特定疾病等を理由に生殖を不能にする手術や放射線の照射を受けることを強いられたことに関しては、平成三十一年に「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」が制定されたが、同法はこれを強いられた方々に対してその被った苦痛を慰謝するものであり、国に損害賠償責任があることを前提とするものではなかった。また、特定疾病等を理由に人工妊娠中絶を受けることを強いられたことに関しては、これまで謝罪も慰謝も行われてこなかった。
しかしながら、去る七月三日の最高裁判所の大法廷判決において、特定疾病等に係る方々を対象者とする生殖を不能にする手術について定めた旧優生保護法の規定は日本国憲法第十三条及び第十四条第一項に違反するものであり、当該規定に係る国会議員の立法行為は違法であると判断され、国の損害賠償責任が認められた。
本院は、この最高裁判所の大法廷判決を真摯に受け止め、特定疾病等に係る方々を差別し、特定疾病等を理由に生殖を不能にする手術を強制してきたことに関し、日本国憲法に違反する規定の立法行為を行い及びこれを執行させるとともに、都道府県優生保護審査会の審査を要件とする生殖を不能にする手術を行う際には身体の拘束や欺罔等の手段を用いることも許される場合がある旨の通知を発出するなどして優生思想に基づく誤った施策を推進させたことについて、悔悟と反省の念を込めて深刻にその責任を認めるとともに、心から深く謝罪する。また、これらの方々が特定疾病等を理由に人工妊娠中絶を受けることを強いられたことについても、心から深く謝罪する。
本院は、被害を受けた方々の名誉と尊厳が重んぜられるようにするとともに、このような事態を二度と繰り返すことのないよう、これらの方々の被害の回復を図るための立法措置を速やかに講じていく。そして、優生思想に基づく偏見と差別を含めておよそ疾病や障害を有する方々に対するあらゆる偏見と差別を根絶し、全ての個人が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく尊厳が尊重される社会を実現すべく、全力を尽くすことをここに決意する。
政府においても、この問題に誠実に対応していく立場にあることを深く自覚し、早期かつ全面的な解決を図るよう万全を期するべきである。
右決議する。
以上であります。
何とぞ議員各位の御賛同をお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。(拍手)
この際、三原国務大臣から発言を求められております。これを許します。国務大臣三原じゅん子君。
〔国務大臣三原じゅん子君登壇〕
○国務大臣(三原じゅん子君) ただいまの御決議につきましては、その趣旨を十分に尊重いたしまして、努力してまいる所存でございます。(拍手)
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○井野俊郎君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。
地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長提出、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案は、委員会の審査を省略してこれを上程し、その審議を進められることを望みます。
○議長(額賀福志郎君) 井野俊郎君の動議に御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、日程に先立ち追加されました。
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旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案(地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長提出)
○議長(額賀福志郎君) 旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案を議題といたします。
委員長の趣旨弁明を許します。地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員長谷公一君。
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旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給等に関する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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〔谷公一君登壇〕
○谷公一君 ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。
本案は、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者等に対する補償金等の支給に関し必要な事項等を定めようとするもので、その主な内容は、次のとおりであります。
第一に、本法律案に特に前文を設け、国会及び政府は、最高裁判所大法廷判決において、旧優生保護法の規定は日本国憲法に違反するものであり、当該規定に係る国会議員の立法行為は違法であると判断されたことを真摯に受け止め、特定疾病等に係る方々を差別し、優生手術等を強制してきたことに関し、深刻にその責任を認め、深く謝罪するとともに、これらの人々が人工妊娠中絶を強いられたことについても深く謝罪し、疾病や障害を有する方々に対する偏見と差別を根絶する決意を新たにしつつ、この法律を制定する旨を規定すること。
第二に、国は、優生手術等を受けた者等及び特定配偶者等に対して補償金を支給すること。
第三に、国は、優生手術等を受けた者及び人工妊娠中絶等を受けた者に対し、一時金を支給すること。
その他、請求の期限及び手続並びに調査、検証等について定めるものであります。
本案は、本日、地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会におきまして、内閣の意見を聴取した後、全会一致をもって委員会提出の法律案とすることに決したものであります。
何とぞ速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案を可決するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、本案は可決いたしました。
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国務大臣の演説に対する質疑
○議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。野田佳彦君。
〔野田佳彦君登壇〕
○野田佳彦君 立憲民主党の野田佳彦です。
会派を代表して、石破内閣総理大臣の所信表明演説に対する質問を行います。(拍手)
まずは、石破総理、第百二代内閣総理大臣御就任おめでとうございます。重たい重たい職責です。体調管理に万全を期して邁進されることをお祈り申し上げます。
その上で申し上げます。
今日は、通告に従い、自分の言葉で質問をいたします。総理も、記者会見で、自分の言葉で語りたいとお話をされていました。御自身の言葉で御答弁をいただきたいと思います。各大臣にも、政治姿勢などをお伺いいたします。所管外だからと逃げることのないようにお願いをいたします。納得と共感の内閣らしく、誠意ある答弁を求めます。
まずは、総理、評価する点から取り上げたいと思います。
二〇一六年以来続いてきた対ロシア経済協力担当大臣を廃止するという決断をされたこと、私は評価をいたします。予算委員会で前総理にこの問題を質問しましたが、なかなか御決断をいただけなかったんですが、遅きに失したとはいいながらも、この決断は私は妥当な判断だと思います。
二〇一四年にロシアがクリミアを併合いたしました。その後、国際社会は制裁を加えました。日本もその一員となりましたが、二〇一六年から日本は独自の動きをし始めます。ロシアに対して八項目の経済協力を申し出、そのための担当大臣を経済産業大臣が兼ねることとなりました。北方四島の共同開発まで協議するようになりました。経済協力を通じて、領土問題での進展を期待していたんだろうと思います。
ところが、協力をしてもなかなか進展せず、二〇一八年には、シンガポール合意、すなわち、四島返還論から二島返還論へとかじを切って交渉することになります。二十七回も会談を重ね、個人的な信頼関係を築いてきたはずだったにもかかわらず、ロシアは、二〇二〇年に憲法を改正し、領土の割譲を禁止することになりました。経済協力をし、発射台まで低くして交渉しても、結局、石ころ一つ返ってこなかったんです。
安倍政権下の対ロシア外交をどのように総括しておられますか。お答えください。
二点目は、自衛官の処遇改善のための関係閣僚会議を設置したこと、これも評価をしたいと思います。
警察予備隊創設以来、実員が定員に達したことはありません。特に最近では、任期制自衛官は募集計画の半分しか人員を確保することができませんでした。どんなに防衛費を増強し、装備を充実させても、それを取り扱う人が集まらなかったらば、絵に描いた餅であります。
自衛官の待遇改善は急務であります。給料は安い、隊舎、官舎は貧弱、そして定年は早い。私の父も、再就職、再々就職で本当に苦労いたしました。
お伺いをいたします。総理は関係閣僚会議において自衛官の処遇改善策をいつまでに取りまとめるのか、お答えをいただきたいと思います。
次に、能登の復旧復興についてお尋ねをいたします。
私は、九月十二日、そして、おととい十月五日と、被災地の視察を行いました。近藤和也議員の御案内の下に、被災者の皆さんともたくさん交流をさせていただきました。そして、声を聞かせていただきました。
くしくも、総理も十月五日は被災地を視察されていました。激甚災害の指定をしたことは、これは私は評価をしたいと思いますが、加えて、特定非常災害、この指定も是非、一歩加えて検討していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
私は、あの被災地に行って確信をしたことがあるんですね。ずっと予備費で対応してまいりましたけれども、改めて補正予算を作らなければいけない、これは確信に変わりました。
災害は予見し難いことですから、最初は予備費で支出をするということも、これはよくあることです。しかし、能登の場合は、一月一日の大きな地震の後、最初は予備費の対応をしましたが、それが、二回、三回、四回、五回、六回、小刻みに六千六百億円を支出する形でずっと続いてきています。
でも、阪神・淡路大震災のときも、東日本大震災のときも、熊本地震のときも、最初は予備費でも、ほどなく、一か月ほどで補正予算を閣議決定し、補正予算を成立させています。なぜ、その形を取らないんでしょうか。
今回も、大きな雨によって大きな被害が出ています。二重被災によってがっかりしている人がたくさんいらっしゃいます。そういう皆さんのほのかな希望は何なのかというと、事業や生活の見通しを立てられるかどうか、この一点だと私は思いました。
例えば、雇用調整助成金、年内で期限が切れますね。来年まで延長されるかどうかというのは決定的に大事なことであります。事業主にとっては、事業再生に向けて、働いている皆さんにもうちょっと待ってくれと言うことができるんです。働いている人も、能登で働き続けることができるかもしれないと思うことができるんです。その見通しをつけられるかどうかは、予備費ではありません。補正予算であります。
能登半島被災地の一日も早い復旧復興のために、一日も早く補正予算を編成し、成立させるべきと考えますが、いかがでしょうか。
九月二十日の大雨で、輪島市だけで六十二か所の土砂災害がありました。約四十か所の道路が通行止めになっています。
この環境の中でポスターを貼るための公営掲示板を設置する、大変なことです。投票箱をまさに開票所に持っていく作業も、これも大変です。投票所が避難所になっているところもあるんです。職員の皆さんも被災者です。復旧復興のための仕事も非常にハードでありますけれども、それに加えて選挙実務が加わります。住民の皆さんの声は、こんなときに選挙じゃないでしょうという声でありました。たくさんの声を聞きました。
総理、二重被災で苦しむ被災地で果たして選挙準備ができるとお考えなのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
その解散・総選挙についてお尋ねをいたします。
総理はずっと、今解散すれば勝てるとばかりに解散することは憲法の趣旨に反するというお考えを何度もこれまで披露してこられました。記憶に新しいところでは、自民党の総裁選挙のさなかも、すぐに解散しようという候補者に対して、予算委員会を開いて与野党で議論をし、そして判断材料を整えてから信を問うべきだと諭すように言っていたじゃありませんか。
ところが、総理に就任したら、戦後最短で解散・総選挙を行おうとしている。この心変わりは、なぜなんでしょうか。
先月二十九日、民放のテレビ番組で私との討論において、早期に解散しても七条解散ではないなどと主張しておられましたが、今度の解散は明らかに七条解散ではないですか。私には理解できません。改めて詳しい説明を求めます。
日本国憲法第七条では、天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために国事に関する行為を行うと定めています。ところが、総理は、就任前の九月三十日、記者会見で解散・総選挙の日程を確定的に明らかにいたしました。内閣総理大臣就任前の一国会議員であった者が、事もあろうに、憲法第七条に定められた衆議院の解散や総選挙の公示といった天皇の国事行為に踏み込んだ発言をしたことは、私は断じて許せないと思っています。総理にはあの軽はずみな発言を反省していただきたいと思いますが、総理は反省しておられますか。
次に、裏金問題に移りたいと思います。
組織ぐるみの裏金づくりは、政治資金規正法上の虚偽の記載である。不記載というレベルではありません。脱税の疑いすらあります。国民は、一円たりとも、昨年十月一日からのインボイスによって税逃れはできない体制です。なぜ、自民党の衆参国会議員は脱税まがいのことをやって、何で許されるのか、これが多くの国民の皆さんの感情じゃありませんか。
深い反省と危機感が必要だと思いますが、総理は、新しい事実が出てこない限りは再調査は行わないとずっとおっしゃっております。新しい事実は次々と出てきているんじゃありませんか。麻生派も二〇一七年以前はキックバックを行っていたという報道もありました。また、前総理は裏金を原資として違法なことは行われていないと強弁しておりましたけれども、北海道の堀井学前議員のように、裏金を原資として選挙区に香典を秘書が配っていたということも出てまいりました。全て新しい事実ではありませんか。裏金問題の再調査をするおつもりはありませんか。お尋ねをしたいというふうに思います。
さらには、総理が代表を務めていた石破グループ、水月会、これについてもパーティー収入不記載の問題が報道されています。石破派のパーティー収入不記載問題について、事実関係を含めて御説明をお願いしたいと思います。臭い物に蓋をすることのないように、明快な答弁を求めます。
次に、裏金議員の公認問題についてお尋ねをしたいというふうに思います。
最初は、自民候補として公認するにふさわしいかどうか、よく議論をして、徹底して議論を行って考えていくという趣旨のお話をされていました。公認をしないことを念頭に置いているんだなと思っていましたが、日々トーンダウンをし、そして、その対応も日々変わっていくような、ちぐはぐさを感じています。
裏金議員の公認問題について、総理は昨日、相当程度の非公認が生じると述べられました。公認されないのは、既に重い処分を受けた人、現時点で処分が継続していて、政治倫理審査会で説明責任を果たしていない人、説明責任を十分に果たさず、地元での理解が十分に進んでいないと判断される人。この三条件で、明らかに追加非公認となるのは、高木元国対委員長、萩生田元政調会長、平沢元復興大臣、三ッ林衆議院議員の四人です。
相当程度に非公認が生じるのではなく、大半が公認されるのではないでしょうか。重複立候補するしないは関係なく、公認料を払うわけですよね。公認をして、党としてお墨つきを与えるわけですよね。この公認が本当に国民の理解を得ることができるのかどうか、よくお考えをいただきたいというふうに思います。
そして、連立与党を組んでいらっしゃる公明党の皆さんも、まさか推薦を出すんでしょうか。同じ穴のムジナと見られかねないと思います。その動きというものを私は注視していきたいというふうに思います。
そもそも、このような甘い対応をせざるを得ないのは、自民党の四月の処分がそもそも大甘だったからであります。約八十人もの衆参の国会議員が裏金に関わった。そのうち、裏金五百万円以上が処分の対象でした、三十九人です。重たい処分は五人。選挙の非公認は全くなし。そして、それ以下の役員停止。一番多かったのは、三十九人の処分のうち、戒告であります、十七人。戒告、戒める、告げるという字です。字面は厳しいですが、平たく言えば、こら、駄目よじゃないですか。それでいいんでしょうか。しかも、裏金五百万円未満は処分なしですよ、四十三人。大甘ではありませんか。この大甘を基準にしているから、問題がおかしくなっているんだと思います。
自民党が四月、甘い処分で幕引きを図ろうとしていたときに、総理は声を上げ、異議を唱えることはありませんでした。なぜですか。お答えをいただきたいと思います。
六月には政治資金規正法改正、最後は自民党、公明党だけで成立いたしました。私は、このやり方はおかしいと思っています。普通の法案と違います。政治資金規正法や公職選挙法は、戦う相手とのルールの確認がなければいけないんじゃないですか。私は邪道だと思っています。中身もすかすかです。ざるだらけです。ざる法です。天下のざる法です。天ざると呼んでいます。
私は、もっと抜本的に、政策活動費であるとか企業・団体献金の禁止、不正の温床となるようなものにメスを入れなければ、改革の名に値しないと思います。連座制の導入など政治家本人の責任強化、企業・団体献金の禁止、政策活動費の廃止などを実現するよう、政治資金規正法の再改正をすべきではありませんか。
政策活動費は、自民党幹事長は年間に約十億円も活用をされています。領収書不要の渡し切り費でありますので、使途不明金と言っても過言ではありません。我が党も、かつてはこの政策活動費を使っていたことがあります。でも、前執行部からは全く使っていません。政策活動費の廃止を今私どもはお訴えをしています以上、野田新執行部においても、この政策活動費は使わない意思決定をさせていただきました。
そこで、お尋ねをしたいと思います。
政策活動費の廃止については、自民党総裁選において複数の候補が主張していたのですから、すぐにでも与野党で法改正できるはずであります。ところが、公明党との連立合意には盛り込まれていません。なぜですか。お尋ねをいたします。
政治改革の歴史を振り返ってみると、一つには、大きな流れは投票権拡充の歴史だったと思います。婦人参政権の実現、そして、かつては投票日は日曜日一日だけでありましたが、不在者投票を経て、そして期日前投票制度が今実現をされています。在外投票も実現をされました。ハンディを負っている皆さんのために、点字、点訳、公報の点訳であるとか、あるいは立会演説会で手話ボランティアの方にお手伝いをいただいたり、様々なチャレンジが続いています。
これからもその投票権の拡充は進めていかなければなりませんが、私は、これからは、それ以上に力を入れなければいけないのは被選挙権改革だと思っています。
投票権は十八歳まで引き下げられました。被選挙権についても、衆議院は今二十五歳以上、参議院は三十歳、もっと引き下げてもいいんじゃないでしょうか。大学生でも立候補できる、選挙運動ができる、そういう改革をしなければいけないと思います。そして、女性がもっと政治に参画をするためにも、クオータ制の導入なども図っていかなければいけないと考えています。
そして、もう一つ大事なポイントは、政界への人材供給ルートが固定化されていますので、そこに風穴を空けていく必要があります。それは、私は世襲制限だと思います。
もちろん、優秀な世襲の議員もたくさんいらっしゃることはよく存じ上げております。でも、でもです、現象として見ていただきたいんですが、平成、令和と入って、世襲でない自民党出身の内閣総理大臣は、石破総理も含めて、菅元総理以外は全部世襲なんです。ここまで来ると、さすがに偏っていると私は指摘せざるを得ません。
例示して恐縮でございますけれども、例えば、岸田前総理は広島一区選出の衆議院議員でいらっしゃいます。でも、小学校から大学まで、ずっと都内で学ばれていました。安倍元総理におかれましても、小学校から大学まで成蹊で学ばれました。
今、宿舎に住んでいますけれども、宿舎でも多くの子供たちが暮らしています。いずれは広島や山口で衆議院議員になるのかもしれません。覚悟を持った立派な政治家もいっぱいいますが、それ以上に、広島一区や山口に、もっと有為な人材がいるのかもしれません。その人たちが参加することを、私は阻んでおるのではないかと思います。東京で生まれ育った人たちが地方の選挙区で出てくる、でも、それでは、本当に地方の様々な切実な声を国政に反映することができるんでしょうか。できないのではないかと私は思います。
我々は、昨年の臨時国会で、政治団体や政治資金を配偶者や三親等以内の親族が相続できないような法律を提出させていただきました。継続審議となっておりますけれども。
そこで、お尋ねをいたします。総理は、世襲制限についていかがお考えでしょうか。お尋ねをいたします。また、居並ぶ閣僚の中にも複数の世襲の方がいらっしゃいますが、とりわけ百年超の政治家一家の四世である武藤大臣に、世襲制限についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。
次に、アベノミクスについてお尋ねをいたします。
総理は従来、アベノミクスに対して批判的な立場をずっと取られてまいりました。金融政策も、利上げの必要性を主張し、そして、正常化を志向していたと思いますが、最近、総理の言動には相当ぶれが出てきています。だからマーケットが荒れています。落ち着かせるためにも、明確にアベノミクスを清算して、そして、日銀と政府によるアコードをもう一回締結をすることが必要ではないでしょうか。方向感をしっかり確認して、マーケットが安定するようにすることが第一歩だと私は思います。
アベノミクスをどのように清算していくお考えなのか、新たな共同声明を取りまとめるお考えはあるのか、総理の御見解をお伺いいたします。
同じことを村上総務大臣にもお尋ねをしたいと思います。
かねてより、金融政策の出口戦略が必要と正論を吐き続けてまいりました。最近でも、株価暴落や円安をアベノミクスの負の遺産と喝破されておりました。アベノミクスをどのように評価しているか、論理的に御説明をいただきたいと思います。
次に、アジア版NATOについてお尋ねをいたします。
日米同盟が日本の外交、安全保障政策の基軸であるという認識は総理も私も同じだというふうに思いますが、総理は、最近の言動が、逆にアメリカも含めて国際社会に不安を与えているのではないでしょうか。
ハドソン研究所への寄稿、この論文を読むと、日米安保条約の非対称性を改め、米英同盟のように対等なものにする、そして、アジア版NATOや核共有についても触れています。総裁選では、アジア版NATOについて熱っぽく語っておりました。これは日米同盟の抑止力に疑念があると思われかねません。ASEANで参加を希望する国があるんでしょうか。NATOのように集団的自衛権をフルスペックで行使をするということは、これは憲法改正を伴うものであります。
改めて、アジア版NATOや日米安保条約の改定など、いずれも日米同盟を混乱させかねない唐突な発言です。総理にお聞きします。それぞれの実現可能性をどうお考えですか。非現実的ではありませんか。お答えをいただきたいと思います。
アジア版NATOは、これは御自身の持論だとは思いますけれども、具体的な検討を外務大臣や防衛大臣に指示したのでしょうか。自民党の選挙公約に盛り込むのですか。併せてお答えをいただきたいと思います。
アジア版NATOにおいては、米国の核兵器を共同運用する核共有やアジア地域への核兵器の持込みの検討にも言及しています。これでは非核三原則が崩れるのではありませんか。核不拡散の観点からも、核廃絶を目指している広島県御出身の斉藤国交大臣は、このアジア版NATO構想をどのように評価しているのか、また、核共有についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
日米が外交、安保の基軸ではありますけれども、日本独自の外交の必要性も今まさに出てきていると思います。
昨年の十月、パレスチナ・ガザ地区の紛争が始まり、一年となります。戦火はどんどん飛び火し、そしてエスカレーションになり、中東全体が今大きな危機を迎えています。
私は、あるエピソードを思い出します。二〇一二年の九月、国連総会で一般討論演説をやりました。一般討論演説は、一人持ち時間十五分と決まっています。トップバッターはブラジルなんです。国連が発足したとき、誰もトップバッターをやらないときに、ブラジルは手を挙げた。それに敬意を表して、ブラジルからスタートするようになりました。二番目は、ニューヨークですから、ホスト国のアメリカが二番を務めます。三番目以降は国連事務局が希望などを聞きながら総合調整をするんですが、味な調整をよくやるんですよね。
私は、残念ながらランチタイムの時間帯に当たってしまいました。ギャラリーが少ないのでがっかりしていましたが、予想とは違って、たくさんの人が集まってくるんです。中東情勢がきな臭くなっていて、私の前の演説者はイスラエルのネタニヤフだったんですね。ネタニヤフは、熱っぽく演説を行い、降壇してまいりました。握手を求めてまいりました。頑張れよという意味だと思います。私も、お疲れさまでしたと手を握りました。
私は、紛争の平和的解決を十五分間、東シナ海や南シナ海を念頭に演説をいたしました。演説が終わり、壇を降りると、次は、パレスチナ暫定政府のアッバス議長でありました。アッバス議長は、お疲れさまと手を握ってまいりました。私は、頑張ってくださいと手を握りました。
なぜ、イスラエルとパレスチナを続けてやらなかったのか。余りにもエキサイトする瞬間だったんだろうと思います。だから、日本がその役割を担ったんです。私は、極めて政治的意味のある順番だったと思いました。
中東情勢が緊迫する中、独自外交で、より中立的な、主体的な緊張緩和に努めるべきではないでしょうか。総理は、我が国がどのような役割を果たすべきだとお考えでしょうか。
最後に、拉致問題についてお尋ねをいたします。
拉致被害者及び御家族が高齢化をしてまいりました。一刻も早く救出しなければなりません。私もこの問題に懸命に取り組んだことがあります。
最近の一番最後の到達点は、安倍政権下におけるストックホルム合意だと思います。拉致被害者や行方不明者の再調査を含む七項目の合意ができました。実は、その前の二〇一二年の段階で、ハイレベルの交渉をしながら、全く同じ内容の八項目の内容を、合意文書案を野田内閣では作っておりました。懸命な努力の末でありました。でも、ミサイルを飛ばされて御破算になりました。ストックホルム合意も、北に残念ながら破棄されてしまいました。
拉致問題について、総理も熱心に取り組もうとしていると思いますが、東京と平壌に連絡事務所を開設する意義は何なんでしょうか。御説明をいただきたいと思います。
北朝鮮が画策している時間稼ぎや幕引きに加担するとして、家族会は強く反対をしていますが、総理による家族会への電話での伝達で御理解は得られたのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。
石破総理なら自民党が変わるかもしれないと思いましたが、やはり確信をしました。疑似政権交代では政治は変わりません。政権交代こそ最大の政治改革であると申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 野田代表から、冒頭、大変ありがたいお言葉をいただきました。厚く御礼を申し上げます。
野田佳彦議員の御質問にお答えをいたします。
安倍政権下の対ロシア外交についてお尋ねがございました。
安倍政権におきましては、幅広い分野で日ロ関係全体を国益に資するよう発展させるべく、平和条約交渉を粘り強く進めたものと承知をいたしております。
その後、ロシアによるウクライナ侵略を受け、我が国は、従来の対ロ外交を大きく転換をいたしました。引き続き、何が我が国の国益に資するかという観点から、適切に対応をいたします。
自衛官の処遇改善についてお尋ねをいただきました。
防衛力の最大の基盤は自衛官であります。防衛力を発揮するためには、装備だけではなく、人的基盤を強化することが不可欠であります。自衛官が定員割れとなっている状態を放置することは大きな問題であります。
この待ったなしの課題に対し、私を長とする関係閣僚会議を早期に立ち上げ、早急に検討し、成果を得てまいります。
能登半島の災害への予算面での対応についてお尋ねをいただきました。
今般策定することといたしております経済対策の裏づけとなる補正予算においては、能登地域の災害からの復旧復興にも対応することといたしております。その一方で、予備費であれば更に迅速な対応ができること、一般予備費に十分な残額があることを踏まえ、予備費を活用して切れ目なく被災地の支援を行うことにより、能登地域の早期の復旧復興に向けた対応に万全を期してまいります。
二重災害で苦しむ能登半島、その被災地における選挙準備についてのお尋ねをいただきました。
被災地におきましては、総務省から必要な助言を行いながら、既に、投票所の確保など選挙の執行に向けた準備を進めていただいております。
先般も、選挙事務に精通したアドバイザーを被災地に派遣をし、被災地の状況把握及び選挙の執行に向けた助言等を実施したところであり、引き続き、県選挙管理委員会とも緊密に連携し、被災地における選挙の実施に万全を期してまいります。
衆議院の解散についてお尋ねをいただきました。
内閣は、憲法第六十九条の場合に典型的に表れておりますように、国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるような場合には、衆議院の解散権を行使することができると考えております。その法的根拠といたしましては、憲法第七条の規定であり、今般表明した衆議院の解散についても、同様に考えております。
衆議院解散権の行使について、その濫用を慎むべきことは言うまでもありませんが、今回、新しい内閣が発足したことに伴い、国民の意思を確かめる必要があるとの観点から、衆議院の解散を行うとの判断をいたしました。
今般の解散についてのお尋ねがありました。
九月三十日の私の発言は、あくまで、内閣総理大臣に選出されれば、諸条件が整えばという二つの前提を置いた上で総選挙の日程について申し上げたものであり、天皇の国事行為に踏み込んだとの御指摘は当たりません。
自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載の問題に関する再調査についてお尋ねをいただきました。
自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載に関する一連の問題につきましては、第三者である検察による厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものは立件されてきたものと承知をいたしております。また、自民党における外部の弁護士を交えた聞き取り調査や当事者自身による会見等での説明など、様々な関係者による事実関係の把握、解明の努力が進められてきたところであります。国民の信頼を回復するために今後更に行うべきことにつきましては、これまでの取組の経緯等を踏まえつつ、適切に判断をいたします。
私が代表を務めておりました水月会の政治資金収支報告書についてのお尋ねをいただきました。
お尋ねにつきましては、政治資金パーティーのパーティー券を複数の議員から購入いただき、支払い額の合計が二十万円を超えていた政治団体について、水月会の事務局側での確認漏れがあり、当該団体のパーティー券の支払い総額の記載に誤りが生じたものであります。
なお、収支報告書には、政治資金パーティーの収入総額に加えて、その内訳としてパーティー券の支払い額が二十万円を超えたものの支払い額も記載することとされているところ、この度の記載の誤りがあったのは内訳の金額であり、収入総額の誤りは確認されておりません。
水月会自体は既に解散をしておりますが、訂正可能な過去の収支報告書につきましては、既に訂正手続を行ったところであります。
政治資金収支報告書に不記載があった議員の公認の方針等についてお尋ねがありました。
お尋ねにつきましては、昨日自民党総裁として公表した方針に基づき公認に向けた手続を進めているところであり、現時点において公認となる方が誰かは具体的に確定はいたしておりません。
自民党による処分についてお尋ねをいただきました。
今般の一連の収支報告書の不記載の問題に係る自民党の処分については、外部の有識者を含めた党紀委員会において議論を行い、公平に判断されたものと認識しており、また、処分の後も、党として政治資金規正法の改正を含む再発防止策に取り組んできたところであり、御指摘のように甘い処分で幕引きを図ろうとしたものとは認識をいたしておりません。
政治資金規正法の改正についてのお尋ねであります。
さきの通常国会におきまして、政治資金収支報告書の記載に係る政治家の責任の強化、政治資金パーティーのパーティー券の購入者に係る公開基準の引下げ等を内容とする政治資金規正法の一部改正が行われ、収支報告書の不記載の再発防止や政治資金の透明性向上が図られたところであります。
まずは、改正政治資金規正法を徹底的に遵守しますとともに、政治資金に関する独立性の担保された機関の在り方など残された課題の検討を着実に進め、その課題についての結論を得ていくことが重要と考えております。
自民党と公明党との連立合意文書における政策活動費の取扱いについてお尋ねをいただきました。
さきの通常国会において成立した改正政治資金規正法の一部を改正する法律の附則では、政策活動費の使途を十年後に明らかにする、政策活動費を監査する独立性の担保された機関を設置するといった方向性とともに、その具体的な在り方について今後検討を行うことが規定されました。
今回の我が党と公明党との間における連立政権合意書におきましては、このような法律の規定が既にあることを踏まえ、まずは、政策活動費の透明性の確保や、政治資金に関する独立性が確保された機関の設置等に取り組んでいくことを記載することとしたものであります。
国会議員の世襲制限についてのお尋ねがありました。
お尋ねにつきましては、議員の政治活動の在り方と密接に関わる問題であることから、まずは国会において御議論いただくべきものと考えております。
国会議員の世襲に関する問題は、基本的には、政治家として有能かつふさわしい人を国民が広く選べるような仕組みをどのようにつくるかという問題であり、自民党におきましても、公募、予備選挙等の積極的な活用を通じて、有為な人材を広く募集、発掘するよう努めているところであります。
アベノミクスの清算と共同声明の見直しについてお尋ねをいただきました。
アベノミクスは、デフレではない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向にもつながりました。こうした成果の上で、岸田内閣の新しい資本主義の取組が、最低賃金の過去最大の引上げ、名目百兆円超の設備投資などにつながったものと認識をいたしております。私は、デフレからの脱却を確実なものとするべく、こうした岸田内閣の経済政策を引き継ぎ、更に加速をさせ、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現を図ってまいります。
平成二十五年一月の共同声明につきましては、先日、植田日銀総裁と意見交換を行い、政府と日銀は共同声明に沿って引き続き連携を続けていくことを確認いたしており、現時点において共同声明を見直すことは考えておりません。
アジア版NATO及び日米安保条約の改正の実現可能性についてであります。
アジア版NATOを含む日本の安全保障の在り方につきましては、これまで私自身の一国会議員としての考えを累次述べてまいりましたが、一朝一夕で実現するとは当然思っておりません。一国の総理大臣として、まずは喫緊の外交、安全保障上の課題に取り組んでいく必要があると考えております。
日米同盟の抑止力、対処力を強化するとともに、その強靱性、持続性を高めていくとの観点から、また、同盟国、同志国間のネットワークを有機的、重層的に構築し、抑止力を強化する観点から、検討し対応いたしてまいります。
具体的な検討についてお尋ねがありました。
繰り返しになりますが、アジア版NATOについては、一朝一夕で実現するとは考えておりません。一国の総理大臣として、まずは喫緊の外交、安全保障上の課題に取り組んでいく必要があると考えております。
外務大臣や防衛大臣に対し現時点で具体的な指示を出しているわけではありませんが、同盟国、同志国間のネットワークを有機的、重層的に構築し、抑止力を強化する観点から、検討、対応をいたしてまいります。
自由民主党の選挙公約に盛り込むか否かにつきましては、現時点では決まっておりません。
中東情勢が緊迫する中についての対応について、中東外交につきましてのお尋ねを頂戴いたしました。
現下の中東情勢の緊張の高まりは、私自身、深刻に懸念しておるところであります。
我が国は、独自の取組を通じて、これまで中東各国と良好な関係を築いてまいりました。こうした外交資産の土台の上で、関係国とも緊密に連携しつつ、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向け、積極的な外交努力を行ってまいります。
東京と平壌における連絡事務所につきましてであります。
我が国の北朝鮮に対する基本方針は、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現するというものです。
とりわけ、拉致被害者やその御家族も御高齢となられる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であるとともに、その本質は国家主権の侵害であり、政権の最重要課題であります。
御質問の点も含め、今後の対応について具体的にお答えをすることは差し控えますが、政府の責任において、最も有効な手だてを講じてまいります。
家族会の方々に電話で就任の御挨拶をした際の具体的な個別の発言につきましては、対外的には言及しないことになっておりますが、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、私自身の強い決意の下、総力を挙げて取り組んでまいります。
残余の御質問につきましては、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
〔国務大臣武藤容治君登壇〕
○国務大臣(武藤容治君) 野田佳彦議員の御質問に答えさせていただきます。
世襲制限についてお尋ねがございました。
世襲であることをもって立候補の自由を制約することは慎重であるべきだと考えておりますが、政治家にふさわしい有能な人材を国民が幅広い人材から選べる環境をつくることは重要と考えております。
このため、公募等を含め、広く有為な人材を募集、発掘できる仕組みを導入、活用していくことが重要と考えております。(拍手)
〔国務大臣村上誠一郎君登壇〕
○国務大臣(村上誠一郎君) 野田佳彦議員から、アベノミクスの評価について御質問いただきました。
経済財政政策の評価については内閣府の担当になりますが、アベノミクスについては、これまでの、デフレでない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大したと評価がなされているものと承知しております。
なお、総務大臣就任に当たり、石破総理から、経済あっての財政との考え方に立ち、デフレ脱却最優先の経済財政運営を行う、成長分野に官民挙げて思い切った投資を行い、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現しつつ、財政状況の改善を進めるとの御指示をいただきました。
この御指示の下、内閣の一員として、与えられた職務に全力で取り組んでまいります。(拍手)
〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 野田佳彦議員から、アジア版NATO構想への評価と、核共有への考えについてお尋ねがございました。
石破総理が一国会議員としての考えを累次述べてきたことは承知しておりますが、その内容については、国土交通大臣としてお答えする立場にないため、その評価や核共有についての考えをお答えすることは差し控えます。
その上で、広島県出身の一議員として一言申し上げます。
私は、これまで非核三原則の堅持を訴えて活動してまいりました。そして、それはこれからも変わることはありません。また、核兵器廃絶に向けての決意はこれからも全く揺るがないということを申し上げさせていただきたいと思います。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 小野寺五典君。
〔小野寺五典君登壇〕
○小野寺五典君 自由民主党の小野寺五典です。
私は、自由民主党・無所属の会を代表して、石破内閣総理大臣の所信表明演説に対し質問をいたします。(拍手)
政権が発足して一週間。国民の皆様は、石破総理がどのような国づくりを進めていかれるのか、大きな関心を持って見ておられます。自民党に厳しい目が注がれる中、代表質問を通じ、総理の目指す我が国の方向性について、分かりやすく説明いただきたいと思います。
まず、政治の信頼回復についてお伺いいたします。
今回の政治資金に関する問題は、そもそも、法律に定められた記載義務が守られていなかったことが原因です。自らが定めた法律を守れないようでは、国民の皆様から信頼は得られません。私たちは、深い反省と危機意識に立ち、二度とこのようなことを起こさないため、さきの通常国会において、政治家の責任を高めることや、パーティー券購入者の公開基準を引き下げるなど、政治資金規正法の改正を行いました。また、党として厳正な党紀処分を行い、一定のけじめをつけたところです。
今後は、政策活動費の在り方や透明性の確保、その監査に関する第三者機関の設置、政党交付金の交付停止等の制度創設、また、いわゆる旧文通費の使途明確化や公開、未使用分の国庫返納等、着実に進めていかなければなりません。特に、政策活動費については、国民の皆様から不信を抱かれないよう、その在り方については真摯な検討を行う必要があります。
厳しい反省と強い倫理観の下、不断の政治改革、党改革に取り組み、襟を正し、ルールを徹底して守らなければ、政治不信は解消しません。まさに信なくば立たずであります。
政治の信頼回復に向けた石破総理・総裁の決意を伺います。
次に、能登半島地震について伺います。
先月二十二日から降り続いた大雨によって、能登地方では、広範囲にわたり洪水や土砂災害が発生し、十五名の方が犠牲となられ、一名の方がいまだ安否不明となっております。
まずは、犠牲になられた方々に心からお悔やみを申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞いを申し上げたいと思います。
また、人命救助、捜索活動に当たられている消防、警察、自衛隊、そして復旧復興に尽力されている皆さんに心から感謝を申し上げます。
元日の大地震から復興途上にある中で、再び大きな災害に見舞われたことは、まさに複合災害と言われる事態です。できることは何でもやる、これは、地震発生以来の政府・与党の一貫した方針です。
総理は、先週、予備費第七弾の指示、能登訪問、そして激甚災害指定の表明など、対応を加速化されています。生活再建に向けた継続的な支援は不可欠であり、地震対策と一体となったきめ細やかな対応が必要です。
総理は、事前防災の徹底に向けて、内閣府防災部局の人員拡充と予算増額を行い、防災庁設置を表明されました。都道府県、市町村とも連携し、国民の命と暮らしを守る体制を着実に進める必要があります。
自然災害が頻発化、激甚化する中、日頃の備えとしての国土強靱化は重要です。現行の五か年加速化計画は四年目に入り、今後必要な事業量が確保できるのかが見えないという声が各地から聞こえております。五か年加速化対策の五年目も必要十分な予算を確保するとともに、次期中期計画の策定に当たっては、災害の頻発化や激甚化、資材価格等の高騰、防災庁設置も踏まえ、これまでを上回る規模が必要ではないかと考えます。
能登の復旧復興に向けた決意と併せ、防災庁設置など我が国の防災体制の強化、避難所の在り方、そして国土強靱化実施中期計画策定に向けた考え方について、総理に伺います。
次に、経済について伺います。
日本経済は今、歴史的な転換期を迎えています。コストカット型のデフレ経済から、三十年ぶりの高水準の賃上げ、名目GDP六百兆円の達成など、変化の胎動を見せ始めています。
岸田政権の三年間の集中的な取組によって、成長型の経済ステージへと動き始めています。ここで歩みを止めてはなりません。国内投資を増やし、供給量を拡大させ、構造的な賃上げなどの政策を強化することで、成長と分配の好循環を実現させていかなければなりません。経済あっての財政の考えの下、成長を高める対策が求められています。
一方、足下の急激な物価高から国民生活を守ることが必要です。特に影響を受ける低所得者の世帯の方々を始め、医療、介護、保育、教育等の現場、中小企業や農林水産業など、地域の実情も踏まえ、きめ細かく対応すべきです。
そして、何よりも大事なのが賃上げです。物価水準を超える賃上げを継続的に実現することが成長につながります。生産性向上支援や価格転嫁対策など、あらゆる政策を総動員しなければなりません。
総理は、先週、総合経済対策の策定を指示されました。当面の物価高対策、物価高に負けない賃上げ、そして成長と分配の好循環の実現に向けた取組について、総理の認識を伺います。
成長と分配の好循環の成功例が、半導体への投資です。九州の半導体企業への投資は、設備投資のみならず、大学や高専も含めた人材育成にも取り組んだことがポイントでした。物の投資に加え、人の投資を地域で行ったことにより、賃金上昇や設備投資の増加が地域全体に広がりました。
こうした投資は、半導体に限りません。経済安全保障やGXの観点からも、蓄電池や洋上風力発電、バイオなどの産業は、日本にしっかり残し、競争力を高めていく必要があります。石破政権の新たな成長戦略として、地域経済への活性化も含めた成長投資を進めていくべきだと考えます。総理の御見解を求めます。
経済成長と国民の資産所得増加を図るため、資産運用立国の実現に向けた取組を着実に進めていくことが大切です。本年一月にNISAは大幅拡充され、iDeCoの拠出限度額及び受給開始年齢の上限引上げについても、本年中に結論を得ることになっています。継続的な賃上げと貯蓄から投資への流れによって、所得と成長の好循環につなげていくことが大事です。
石破総理は、内外からの投資を引き出す投資大国の実現も表明されました。資産運用立国と投資大国の実現に向けた総理の決意を伺います。
次に、外交、安全保障について伺います。
ロシアのウクライナ侵略、中国の力による現状変更の試みが顕在化する中で、国際秩序は重大な挑戦にさらされています。中東情勢は緊迫の度合いを増し、グローバルサウスと呼ばれる国々の存在感もますます高まっています。
我が国周辺では、北朝鮮の度重なるミサイル発射、中国による領海侵入や領空侵犯、空母遼寧の接続水域航行、ロシアによる領空侵犯等、挑発的行動が活発化しており、決して見過ごすわけにはいきません。国民の命と暮らし、領土、領海、領空を断固として守り抜くため、政権として毅然と対応すべきです。
こうした中、シンセンの日本人学校に通う男子児童が登校中、中国人の男に刺殺されました。本当に悲しく、断じて許せない事件です。いまだ明確な動機や背景の説明すらなく、偶発的な事件と説明する中国政府の対応は、常軌を逸していると言わざるを得ません。
蘇州で日本人学校のスクールバスが襲われた事件や、靖国神社への中国人による侮辱行為など、中国による反日教育が根底にあるとすれば深刻です。
石破総理、在留邦人の安全対策の徹底と、中国政府への厳しい対応を求めます。
日米同盟を基軸に、普遍的価値を共有するパートナーとの連携を強化しながら、自らの防衛力も高めていく。その基盤となる自衛隊員の生活、勤務環境や処遇改善にはしっかり対応すべきです。こうした自らの努力を積み重ねるとともに、首脳外交も活発に展開し、我が国の平和と繁栄を追求しなければなりません。
政権の外交や安全保障の基本方針と、自衛隊員の処遇改善等の取組について、総理のお考えを伺います。
北朝鮮による拉致問題は、被害者の御家族が高齢になる中、一刻も早く解決しなければいけない重要課題です。拉致、核、ミサイルを含め、諸懸案の解決のために北朝鮮とどのように向き合うのか、総理の考えをお聞かせください。
総理は初代地方創生大臣を務められました。まち・ひと・しごと創生法の制定や地方創生推進交付金の創設に尽力され、雇用創出や移住支援、政府機関の地方移転、国家戦略特区による岩盤規制改革など、様々な政策により、地方移住の関心も拡大し、人口が増えた地域も出るなど、成果が上がっています。
この取組を更に後押しするため、総理は、地方創生の交付金を、当初予算ベースで倍増することを目指すとともに、新しい地方経済・生活環境創生本部をつくり、次の十年の基本構想の策定を指示されました。
総理の考える、地方創生のあるべき姿について伺います。あわせて、地方の主産業である農林水産業への支援策を伺います。
教育は国の礎です。人づくりこそ国づくりです。他方、教師を取り巻く厳しい勤務状況や教師不足の解消は喫緊の課題であり、こうした環境を抜本的に改善し、質の高い公教育を実現することが必要です。
我が党では、来年の通常国会に教育職員給与等特措法の改正案を提出し、教職調整額の率を少なくとも一〇%以上に引き上げること等を提言し、骨太二〇二四でもこの方向性は決定されています。
今後、詳細をしっかり詰める必要はありますが、教師の処遇改善と教職員定数の改善等にどのように取り組まれるのか、総理の決意を伺います。
最後に、憲法改正について伺います。
憲法改正は自民党の党是であり、党内において多くの議論が積み重ねられてきました。
八月末には、我が党の憲法改正実現本部において、選挙困難事態における任期特例に加え、早急に取り組むべき改正の重要テーマとして、自衛隊明記及び緊急政令について論点整理が行われました。今後は、これを踏まえ、幅広い会派との協議を進めるとともに、条文化作業を加速し、速やかな改正原案の起草、国会提出につなげていく方針であります。
石破総理の総裁としての憲法改正に向けた見解を伺います。
結びに当たり、冒頭述べたように、さきの国会で政治資金規正法の改正や厳正な党紀処分を行いましたが、我が党を取り巻く情勢はかつてないほどの厳しさがあり、国民の皆様は、これから先に、本当に自民党が変われるのか、改革が止まることはないのか、厳しく見られております。
だからこそ、石破総理の原点である、政治の使命は勇気と真心を持って真実を語るという姿勢が大事だと思います。
政治に停滞は許されません。自民党は、石破総理・総裁を先頭に、政治の信頼回復に向けた取組を手を緩めることなく進めていくとともに、山積する内外の諸課題解決に向け全力を尽くしていくことをお誓い申し上げ、私の質問とさせていただきます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 小野寺五典議員の御質問にお答えを申し上げます。
政治の信頼回復に向けた決意についてのお尋ねを頂戴いたしました。
議員御指摘のとおり、また岸田前総理も常々おっしゃっておられたように、信なくば立たず、国民の信頼なくして政治の安定はなく、政治の安定なくして政策の推進もありません。国民の皆様方からの信頼を取り戻すため、ルールを守る政治を確立し、政治家のための政治ではない、国民のための政治を実現していく決意であります。
まずは、政治資金収支報告書の不記載が指摘された議員一人一人と改めて向き合い、反省を求めて、ルールを守る倫理観の確立に全力を挙げてまいります。
また、政治のために金が必要であるならば、国民の皆様方にそれを丁寧に説明し、節度を持って集めたお金を、限りない透明性を持って国民に向けて公開することを確立いたします。改正政治資金規正法を徹底的に遵守することは当然のこと、政策活動費の将来的な廃止も念頭に、その在り方の検討や透明性の確保に取り組むなど、政治資金の透明性を更に高めるための努力を最大限にいたしてまいります。
能登半島の復旧復興に向けた決意と我が国の防災体制の強化などについてのお尋ねをいただきました。
大地震と豪雨により度重なる被害を受けた能登半島につきましては、不安を抱えられる被災者の方々の生活を支援しつつ、一日も早く被災前の活気ある町並みを取り戻すため、激甚災害の指定のほか、災害廃棄物処理における地震と豪雨の一体的取扱いなどの取組を推進し、復旧と創造的復興を一層加速してまいります。
また、人命最優先の防災立国を構築するため、平時から不断に万全の備えを行う防災庁の設置に向けた準備、被災者に温かい食事や安心ができる居住環境を速やかに提供するための官民連携体制の構築等を進めてまいります。
避難所の在り方につきましては、これは、東日本大震災大津波のときに、小野寺議員はまさしく被災者のお一人として体験をされ、いろいろなことを私もお教えをいただきました。今後とも、いろいろなお教えを賜りながら、避難所の境遇改善に努めてまいる所存であります。
防災・減災、国土強靱化につきましては、予算を確保して五か年加速化対策を着実に推進するとともに、実施中期計画の策定にも早期に取りかかっており、万全を期してまいります。
当面の物価高対策、物価高に負けない賃上げ、成長と分配の好循環の実現に向けた取組についてであります。
物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資が積極的に行われる、成長と分配の好循環が回り出すまでの間、足下で物価高に苦しむ方々への支援が必要であります。当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を始め、総合的な対応を図ります。
適切な価格転嫁と生産性向上支援により、中小企業等が賃上げを行う環境整備に取り組みます。また、個人のリスキリングなど人への投資を強化し、事業者のデジタル環境整備も含め、官民挙げての思い切った投資を実現いたします。
農林水産業につきまして、輸入肥料、飼料の高騰を踏まえ、国産肥料、飼料の積極活用を支援するとともに、施設園芸や水産分野への燃油高騰対策を着実に実施いたしてまいります。
こうした取組により、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現し、日本経済の未来をつくり、日本経済を守り抜いてまいります。
成長戦略としての成長投資についてであります。
日本経済が三十年続いたデフレ経済から脱却し、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現するために、国内における成長投資の拡大は極めて重要であります。
私の政権では、イノベーションを促進すること等による高付加価値創出や生産性の向上、意欲ある高齢者が活躍できる社会を実現し、我が国GDPの五割超を占めます個人消費を回復させ、消費と投資を最大化する成長型経済を実現します。
このため、コストカット型経済から高付加価値創出型経済へ移行しながら、半導体に加え、地域経済の活性化にも資する蓄電池、洋上風力、バイオ等の成長投資を加速いたしてまいります。
資産運用立国、投資大国の実現についてのお尋ねを頂戴いたしました。
貯蓄から投資への流れを着実なものとし、国民の資産形成を後押しする資産運用立国を引き継ぐとともに、産業に思い切った投資が行われる投資大国に向けた施策を講じます。
具体的には、幅広い層の家計が長期安定的な資産形成を実現するとともに、企業の統治、経営の改革を強化して、持続的、構造的な賃上げと投資を促進し、社会課題解決やスタートアップといった、まだ十分に発達の余地がある分野への資金供給を促進してまいります。
政権の外交、安全保障の基本方針について、また、自衛隊員の処遇改善等につきましてのお尋ねを頂戴いたしました。
我が国は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面いたしております。そうした現状を踏まえ、私は、現実的な国益を踏まえた外交により、日米同盟を基軸に、友好国、同志国の輪を広げ、外交力、防衛力の両輪で、我が国の平和、地域の安定を実現してまいります。その際、自由で開かれたインド太平洋というビジョンの下、法の支配に基づく国際秩序を堅持し、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導いたしてまいります。
同時に、防衛力の抜本的強化を実現し、抑止力、対処力を高めてまいります。こうした外交力、防衛力を含む総合的な国力を結集して、我が国を断固として守り抜いてまいります。
防衛力の最大の基盤は自衛官であり、自衛官の生活、勤務環境や処遇の改善、新たな生涯設計の確立につきましては喫緊の課題であると認識をいたしております。私を長とする関係閣僚会議を早期に立ち上げ、具体的な取組内容について早急に検討し、成果を得るものといたします。
北朝鮮への対応についてのお尋ねを頂戴いたしました。
我が国の目指す方針は、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現するというものであります。
とりわけ、拉致被害者やその御家族も御高齢となられる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であるとともに、その本質は国家主権の侵害であり、政権の最重要課題であります。
また、北朝鮮による核・ミサイル開発は断じて容認できず、毅然として対応いたします。
全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、私自身の強い決意の下、総力を挙げて取り組んでまいります。
地方創生についてのお尋ねを頂戴いたしました。
私が十年前に初代地方創生担当大臣として地方創生推進交付金の創設などに取り組んで以来、交付金などを活用し、住民の方々が気持ちを一つにして地方創生の取組に頑張っておられる姿を、全国各地でたくさん見てまいりました。
産官学金労言の、地域の多様な関係者が知恵を出し合い、その可能性を最大限に引き出し、希望と幸せを実感する社会こそが地方創生のあるべき姿と考えております。その実現に向け、新しい地方経済・生活環境創生本部を創設し、今後十年間集中的に取り組む基本構想を策定いたします。
地方の成長の根幹であります農林水産業につきましては、その持てる力を最大限に引き出します。担い手の育成、確保に努めつつ、直交集成板、いわゆるCLTなど新たな農林水産品の積極活用、スマート技術の導入、世界市場に向けた輸出の取組を支援します。中山間地域を始めとする農山漁村の振興、海業の全国展開など、漁業、水産業の活性化を図ります。農林水産業も含めて、全国各地の取組を一層強力に支援するため、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指します。
地方こそ成長の主役です。地方創生をめぐる、これまでの成果と反省を生かし、地方創生二・〇として再起動させてまいります。
教師の処遇改善と教職員定数の改善等についてお尋ねを頂戴いたしました。
教師に優れた人材を確保するためにも、教師を取り巻く環境の整備は喫緊の課題であり、教師の担う業務の更なる厳選、見直しなどの働き方改革や、給与面を含む教師の処遇改善、学校の指導、運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に進め、公教育の再生に全力を挙げてまいります。
憲法改正についてのお尋ねでありますが、内閣総理大臣の立場からは憲法改正についての具体的な議論の進め方等について直接申し上げることは控えますが、自由民主党総裁としてあえて申し上げれば、小野寺議員御指摘のとおり、我が党では、緊急事態条項の在り方、憲法における自衛隊の明記等について活発な議論が行われ、論点整理等が進められてきたところであります。私も、自民党総裁として、これら議論の積み重ねを引き継ぎ、後戻りさせることなく前に進めていく決意であります。(拍手)
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 吉田はるみ君。
〔吉田はるみ君登壇〕
○吉田はるみ君 立憲民主党・無所属の吉田はるみです。
会派を代表して質問いたします。(拍手)
まず初めに、本年一月に発生した能登半島地震、そして九月の大雨災害で被災された方々にお見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになられた、犠牲になられた方々に心から御冥福をお祈り申し上げます。
まず、賃上げ、物価高対策についてお伺いします。
一日八時間労働で真っ当な生活ができる賃金を保障しなければなりません。立憲民主党は以前から、最低賃金を千五百円とすることを訴えてきましたが、この度、石破総理は、所信表明演説で、二〇二〇年代、全国平均千五百円と明言されました。私たちが以前から訴えている主張を採用していただいたことは評価いたします。最低賃金を引き上げると、パート、アルバイトの方はもちろん、非正規雇用、また正社員の賃金も押し上げられます。
ただし、これを実現するとき、二つのことをセットでやらなければなりません。中小企業支援と年収の壁の解消です。
総理は、最低賃金について、全国平均千五百円への引上げを目指すとおっしゃいましたが、その際、セットで、最低賃金の引上げが負担増となる中小企業への支援が必要ではないでしょうか。具体策があればお聞かせください。
立憲民主党は、新たに正社員を雇用した中小事業者には社会保険料の事業主負担の一部分を助成することで、中小企業の負担を軽減し、正規雇用を増やすための社会保険料事業者負担軽減法案を提出しています。
そして二つ目は、せっかく最低賃金が上がっても、年収百三十万円を超えれば社会保険料を払わなければならず、その範囲内で働く時間を減らしてしまうため、人手不足は解消されません。この年収百三十万円の壁ができたのは一九九三年、そのときの最低賃金は五百八十三円です。この時給で計算すると、週休二日で、一日八・五時間働けます。一方、現在の全国平均最低賃金千五十五円で計算すると、同じ条件で、一日僅か四・七時間です。
年収の壁を越えると働き損にならないよう、社会保険料を負担する仕組みはありますし、収入が一時的に百三十万円を超えても、引き続き扶養者認定が可能です。ただし、これは期間限定の措置です。年収の壁をどうするかという根本的な方針は示されていません。永続的な制度としては、どうされるおつもりですか。具体的にお答えください。
加えて、個人事業主を苦しめているのが、消費税のインボイス制度です。立憲民主党は、この間、インボイス一一〇番を設置して、インボイス制度に関するたくさんの御意見を伺ってきました。このままでは廃業するしかないと現場から悲痛な声が寄せられています。インボイス制度は廃止すべきだと考えますが、総理の認識を伺います。
また、介護など福祉分野では常に人手不足です。全国で毎年十万人の介護離職者が出ています。保育も常に人手不足です。
人手不足の原因は給料です。全産業と比べても、月額約八万円も低いのです。政府は、今年の介護報酬改定に先駆けて、介護職員一人当たり月額六千円の賃上げ支援を行いましたが、到底足りません。支えるどころか、逆に訪問介護の基本報酬の引下げをしてしまいました。介護の現場からは悲鳴が上がっています。
石破総理、私たちは議員立法を提出していますが、介護職員、障害福祉職員、保育士、幼稚園教諭の処遇改善をすべきではないですか。お答えください。
電気・ガス価格激変緩和事業、通称電気・ガス補助金は今年六月支払い分で終わり、最も暑い七月、八月支払い分の補助は打ち切られ、物価高に苦しむ家計を直撃しました。その後、九月、十月、十一月支払い分については補助が復活。しかし、これは自民党総裁選や解散・総選挙の時期と重なります。選挙目当てではないですか。出したり引っ込めたり、国民生活は振り回されています。
私たち立憲民主党は、今年の夏は猛暑になることをあらかじめ予想し、五月の時点で、月三千円のエネルギー手当を中低所得者層の方々に給付するエネルギー負担軽減策を提案しました。高所得者も対象になる、財政を圧迫する自民党と、立憲民主党が提案する中小企業や所得が少ない方々など必要な方にきちんと届くエネルギー負担軽減策。国民の皆様、私たち立憲民主党案の方が、持続可能で、財政に責任を持つ、有効な物価高対策ではないでしょうか。
石破総理、これから冬が来て、電気・ガス代は更にかさみます。立憲民主党が提案する、日本の財政、日本の未来に責任を持つエネルギー負担軽減策を政府の物価高対策に取り入れ、速やかに実行していただけないでしょうか。
次に、税制に関して伺います。
まず、金融所得課税の強化についてです。
所得税は、本来、累進課税が基本ですが、税率が一律二〇%であるために、所得が一億円を超えるあたりからは逆に実質税率が減る、いわゆる一億円の壁という問題があります。この解消のためには、超富裕層に更なる御負担をお願いしなければなりません。
石破総理、そもそも、総裁選が始まる前の九月二日に出演したテレビ番組で、金融所得課税の強化を実行したいと述べられました。御発言のとおり、実行されるのでしょうか。
思い起こせば三年前、自民党総裁選に立候補された岸田前総理も金融所得課税に言及し、日経平均株価は総裁就任の日から六営業日の間に二千円超も下落しました。これに動揺された岸田前総理は、当面は触ることは考えないと発言を修正されています。
過分ではなく応分の負担をお願いすること、これは当然だと思います。NISAなどの投資には全く影響がありません。石破総理、金融所得課税の強化に踏み込まないようであれば、アベノミクスの時代と何ら変わらないのではありませんか。市場の動きを見て、金融所得課税の強化を引っ込めた岸田総理と同じ道をたどられるのでしょうか。
強いものをより強くし、格差を拡大する自民党に対して、私たち立憲民主党は再配分を重視し、分厚い中間層の復活を目指します。
また、石破総理は、法人税についても、法人税は引き上げる余地がある、税負担する能力がある法人はまだまだある、もう少し負担をお願いしたいと九月二十一日の討論会で発言されました。法人税を引き上げる方針に変わりはございませんか。また、法人税、引き上げる時期はいつを考えていらっしゃいますか。
次に、子供、子育て財源と防衛費増の関係について伺います。
岸田政権では、五年で防衛費を四十三兆円まで増やすことに決めました。復興財源まで防衛費につけ替えて、それでも足りずに防衛増税です。岸田政権で約束した防衛増税は来年度の税制改正に盛り込まれるのでしょうか。大切なことですので、国民の皆様に誠実に御説明ください。
私たちは、適切な防衛費は必要だと考えます。しかし、こんなに速いペースで増やすことはやり過ぎです。それによって子供、子育ての財源がなくなり、支援金という名の新たな増税が導入されてはなりません。
岸田前総理が当初、実質負担ゼロといいながら、実際は、負担額が一人当たり三百五十円から六百円、試算によっては千円を超える負担もあり得ることが、私たち立憲民主党の国会審議を通じて明らかになりました。
石破政権でも、予定どおり、子ども・子育て支援金制度を導入する方針に変わりはないですか。現役世代を応援するはずが、現役世代の更なる負担になる支援金制度は本末転倒です。今からでも、方針を転換していただけませんか。
また、全国の小中学校の給食の無償化も必要です。給食の無償化ができている自治体と有償の自治体があります。しかし、学校給食無償化は本来、国の財源でするべきです。給食がない地域の方には、相当額を補助すればよいのです。石破総理、学校給食の無償化を進めるべきではないでしょうか。
次に、教育に関して伺います。
教育の無償化は時代の要請です。天然資源の乏しい日本で一番大切な宝、それは人です。その人を育て、可能性を最大限に引き出す、それは、幼児期から社会人、シニアと、全世代の教育です。
立憲民主党は、チルドレンファースト。生まれた地域や経済格差で学びを諦めない。国公立大学の無償化を実現し、公の教育で、小中高大と、最高の教育を子供たちに保障します。私立大生や専門学校生に対しても、国公立大学と同額程度の負担軽減を行うべきと考えます。
高校の無償化は民主党政権時に実現しました。当時の自民党はばらまきだと批判しましたが、その後の自民党政権下でも継続され、高校の無償化は必要であると認識されました。しかし、大学の無償化では立場が異なります。自民党は国公立大学の値上げ、オーケーですね。実際、東京大学の授業料値上げが先月決定されました。この値上げの波は、全国の国立大学、そして私立大学にも波及します。
大学経営が苦しいのは理解しますが、そのしわ寄せが学生や保護者に来るのはおかしいです。経済的に厳しい人は学校に行くなということでしょうか。石破総理も、国公立大学の授業料値上げに賛成というお考えでしょうか。お答えください。
教育費負担は少子化の大きな要因であります。私たち立憲民主党は、教育の無償化の旗をしっかり掲げ、子供たちに、そして保護者の皆様に、教育はしっかり支える、安心してくださいというメッセージを発信します。
教員不足はまた危機的状況です。
文科省は、教員の処遇改善として教職調整額を現在の月額の四%から一三%に引き上げる方針を出しました。定額働かせ放題の給特法は、本来廃止すべきですが、一定の評価はします。しかしながら、実際の残業に見合った額とは到底言えません。このまま残業が続くと、学校はブラックな職場だと思われ、教員になりたい学生は集まりません。教職を離れる人も増えており、結果、教育の質が落ちます。
教職を魅力ある職業に戻すために、残業をしなくていいよう、具体的にどのように仕事量を減らしていくのでしょうか。石破総理、お答えください。
スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、ICT支援員、学校司書、外国語指導助手、特別支援教育支援員など、子供たちの学校生活を包括的に支えるチームをがっつりつくりましょう。こうした方の多くが、会計年度任用職員という期限付の不安定雇用です。総理は、この賃金格差、そして子供の学びを支える大切な仕事をされている方々の不安定雇用をどう是正していくおつもりでしょうか。お答えください。
また、いじめ、不登校は過去最多になり、子供の自殺は過去二番目。発達障害児の支援も足りません。こうしたいじめ、不登校、子供の自殺、石破総理はどうやって減らしますか。所信表明演説でも、ごく抽象的にしか触れられていません。役所の答弁ではなく、石破総理御自身の血の通った言葉で具体策を聞かせてください。
次に、ジェンダー平等に関して伺います。
石破政権の閣僚の皆様、御就任、誠におめでとうございます。
ただ、一つ気になることがあります。それは女性閣僚の人数です。女性大臣は、二十人中、僅かお二人。副大臣、政務官も、五十四人中、女性は僅かお二人です。余りにも男女不均衡ではないでしょうか。
政府は、東証プライム市場上場企業における女性役員の比率を二〇三〇年まで三〇%にする目標を掲げています。しかし、その旗振り役である政権がこれでは、自分たちからまずやってみたらという、民間企業のさめた目で見ていると思います。
石破総理、自民党にも公明党にも優秀な女性議員は大勢いらっしゃいます。なぜ、このように女性閣僚が少ないのでしょう。教えてください。
選択的夫婦別姓は、夫婦同姓にする自由も別姓にする自由もあり、選択できます。誰の権利も侵していません。経団連の十倉会長も、連合の芳野会長も、選択的夫婦別姓の導入を求めています。今年七月の日経の世論調査によると、十八歳から三十九歳の世代は、八割が選択的夫婦別姓に賛成です。社会全体から声が上がっています。自民党の一部の反対で止まっているとしたら、やはり総選挙の大きな争点になります。
総裁選では、石破総理は、選択的に姓を選べるのはあるべきだと思う、女性であれ男性であれ、姓を選べないことによってつらい思いをして不利益を受けることは解消されなければならないと述べています。総理、選択的夫婦別姓を必ず実現するという強い御決意をお聞かせください。あわせて、実現するのであれば、次の国会でやるということを明言してください。
また、九月三十日に交わされた自公連立政権の合意文書で、選択的夫婦別姓の記載が見送られました。公明党は一貫して積極的だったと伺っておりますが、合意文書に選択的夫婦別姓の実現は盛り込まれませんでした。公明党の皆様の御納得は得られたのでしょうか。教えてください。
石破総理は、こうも発言されています。夫婦が別姓になると家族が崩壊するとか、よく分からない理屈があるが、やらない理由がよく分からないと。齋藤健また小泉龍司両法務大臣も、戸籍の機能や重要性が変わるものではなく、大きな問題は生じないと答弁しています。石破総理も同じ見解でよろしいでしょうか。お伺いします。
また、お伺いしたいと思います。選択的夫婦別姓を導入すると家族は壊れますか。
次に、マイナ保険証に関して伺います。
石破総理は、総裁選のとき、現行保険証の廃止時期についても、見直す可能性はあると発言されています。ところが、福岡厚生労働大臣、平デジタル大臣は、十二月二日の廃止時期を堅持すると発言されています。総理、廃止時期は見直すということでよろしいですか。
また、石破総理は、総裁選に際して、九月八日、記者団に対し、二〇二四年十二月の廃止時に不利益を被る国民が一定数いた場合には、現行の紙の保険証と当面併用することも選択肢として当然だとおっしゃいました。この併用とは、元々移行の猶予期間として併用が認められている十二月二日からの一年間を指すのではなく、それ以降もずっと併用できるという理解でよろしいでしょうか。十二月に押し迫っている大切な問題です。御確認をお願いいたします。
農業に関して伺います。
さきの国会で食料供給困難事態対策法が成立しました。この法律は、緊急事態時に食料不足が生じた場合、どの程度の食料確保が可能かを把握するため、農家に対し、政府に計画の提出を義務づけるものです。万一、計画の提出を怠った場合、二十万円の罰金が科されます。罰金なんてあんまりだと、全国の生産者の方、国民の皆様から怒りの声が上がっています。
食料安全保障が重要だと政府は言いながら、物価高で深刻な経営危機にある酪農家や畜産農家を救えず、廃業する農業従事者が増えています。ただでさえ厳しい経営の中、農家に更なる負担、そして罰金を科すような法律を撤回すべきです。総理の見解を伺います。
農家の皆様は、私たち国民の命の基である食べ物を作るため、毎日汗を流し、寒い日も暑い日も一生懸命に働いていらっしゃいます。その農業に携わる方の平均年齢は六十八歳です。先日、私も、農作業をしていらっしゃる方と話しました。今年の夏は暑過ぎだ、体がきつい、来年には畑に出られる自信がない、昔と違う、温暖化の影響かなとおっしゃっていました。総理、この就農者の高齢化、どう解決していくおつもりでしょうか。具体的に教えてください。
若い世代が農業をやってみようと思ってもらうため、立憲民主党は、就農準備資金、経営開始資金、雇用就農資金、技術面でのサポート体制の整備など、具体策を提案しています。石破政権の具体策をお示しください。
原子力政策に関してお伺いします。
自民党の総裁選で、石破総理は、原発への依存度を下げると明言されました。原発はもはや安い電源ではないというのが世界の認識です。武力攻撃の標的になる危険性や、地震の多い日本において、絶対の安全はありません。立憲民主党は、再生可能エネルギーにシフトし、原発に依存しない日本のロードマップを作成していますが、自民党はいかがでしょうか。
総理、まさか、現行のエネルギー基本計画に記載されている、可能な限り原発依存度を低減するという文言を削除することはないですよね。総理の見解を求めます。
憲法改正についてお尋ねします。
本年八月に出版された総理の御著書「保守政治家」では、憲法改正に関し、戦力不保持をうたった九条二項を削除し、現在の自衛隊を国防軍に改め、憲法に明記するべきと強調しています。一方、自民党の改憲四項目では、現行の九条一項、二項は残し、自衛隊を明記するとなっています。
石破総理、戦力の不保持と交戦権を認めない憲法九条の二項は削除するのですか、残すのですか。総選挙を控えて、総理御自身のお考えが有権者の重要な判断材料となります。憲法審査会の議論になどと逃げずに、明確にお答えください。
政治の信頼回復に関して伺います。
調査研究広報滞在費、通称旧文通費の使途公開についてお尋ねします。
私たち立憲民主党は、二〇二二年十一月に、使い道は全て公開すること、そして、余ったお金の返還を義務づける法案を提出しています。石破総理、調査研究広報滞在費の使途公開と国庫返納は自民党として賛成ですか。お答えください。賛成であるならば、次の国会で実現しようではありませんか。この場でお約束ください。
旧統一教会に関してお伺いします。
岸田前総理は、二〇二二年八月十一日、内閣改造後の記者会見で、自民党と統一教会には組織的な関係はないとの認識を従来示していると発言されており、国会でも、組織的な関係はないと何度も答弁されています。しかし、九月十七日の朝日新聞で、二〇一三年の参議院選挙の直前、当時の安倍総理が自民党本部の総裁応接室で教団関係者と面会していたことが、その写真とともに報道されました。石破総理に伺います。この写真を見てもまだ、自民党と旧統一教会との間には組織的な関係がなかったとお考えですか。確認した上でお答えください。
また、石破総理御自身も、二〇一五年六月二十五日、旧統一教会関連団体の世界戦略総合研究所の定例会で講演をしたり、旧統一教会関連企業の世界日報の元社長から十万円の献金を受け取っていたりしたことが明らかになっています。これらは事実ですか。また、これら以外に、イベントへの参加や選挙支援などを受けたことは本当にありませんか。
石破内閣では、総理以外にも、岩屋外務大臣、加藤財務大臣、小里農水大臣、武藤経産大臣、林官房長官、坂井国家公安委員長、赤澤経済再生担当大臣、城内経済安全保障担当大臣、伊東沖縄北方対策担当大臣が、旧統一教会や関連団体のイベントに出席をしたり、祝電を送ったり、選挙支援を受けたりと、内閣の半数が接点を持っています。この閣僚の皆様は、接点があったことを認め、弁明しておられますが、牧原秀樹法務大臣も、二〇二一年六月六日、さいたま市で開かれた、祝福結婚と希望前進大会二〇二一イン埼玉に出席していたと報道されています。牧原法務大臣、この集会に出席されたことは事実ですか。
自民党の自主点検はずさんなのではありませんか。より踏み込んだ形で、第三者委員会等の外部による調査を受け入れ、全ての野党が求める、これまでの関係やその影響について徹底した調査をし、公表する意思はありますか。石破総理、明確にお答えください。
自民党は、次期衆議院総選挙での公認に当たり、裏金議員には再発防止策を講じる旨の誓約書を提出させるそうですが、石破総理、旧統一教会との関係を一切遮断することについても、同じように誓約書を出させるべきではありませんか。二〇二三年の統一地方選挙では、旧統一教会との関係断絶を書面で誓約させることを公認の条件とした都道府県連もありましたが、国会議員にも同様の対応が必要ではないでしょうか。お答えください。
最後に、総裁選で総理は、国民は政治を信じていない、そうでしょう、じゃ、我々政治家は国民を信じているのか、そのうち忘れる、そんなこと思ってはいけません、どうせ分かりはしない、そんなこと思ってはいけませんとおっしゃいました。そのお言葉に私は心から拍手を送りました。しかし、総理になった途端、言うことが変わってしまいました。
総理就任前に衆議院解散を宣言し、予算委員会は開催せず、旧統一教会問題は再調査しない。選択的夫婦別姓への意欲は消えてしまい、現行保険証の廃止時期の見直しもしない。やるとおっしゃった金融所得課税の強化、法人税の増税への言及はなし。これだけ多くの言行不一致があります。
安倍総理、菅総理とアベノミクスが続きましたが、滴り落ちる滴はなく、国民生活は苦しくなり、格差が広がりました。強いものをより強くする自民党。自民一強のおごりが表れた強引な国会運営。岸田総理なら変えてくれるかもと期待しましたが、裏金問題と統一教会で混乱。今度こそ石破総理ならと期待しましたが、もはや何を信じていいのか分かりません。
今、国民の皆様が見ているのは、結局、誰がトップになっても変われない自民党です。石破総理でも自民党を変えられないなら、我々がやるしかありません。生活が懸かっています。
私たち立憲民主党は、徹底的に賃金アップ、男女の賃金格差をなくし、非正規雇用から正社員に、そして選択的夫婦別姓を実現します。教育の無償化で、誰にでもチャンスのある日本を。そして、医療、介護、保育と手厚い社会保障で、全力で国民を支える。国民の皆様の期待に応え、政権交代を実現することをお誓い申し上げ、私の質問とさせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 吉田はるみ議員の御質問にお答えをいたします。
最低賃金の引上げに伴う中小企業支援についてお尋ねを頂戴いたしました。
最低賃金につきましては、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かって、たゆまぬ努力を続けてまいります。
これまで、価格転嫁の状況の公表、下請Gメンの体制充実などの価格転嫁対策に取り組んできたところでありますが、引き続き、適切な価格転嫁と生産性向上を支援してまいります。また、事業者のデジタル環境整備や省力化投資を促進し、中小企業が賃上げができる環境を整備いたしてまいります。
いわゆる年収の壁についてのお尋ねがございました。
年収によって社会保険の適用が変更され、社会保険料の発生により手取り収入が減少する、いわゆる年収の壁に対しましては、当面の対応策として取りまとめました年収の壁・支援強化パッケージの活用の拡大にまずは取り組んでまいります。
その上で、就業調整を行っている労働者が希望に応じて働くことができるよう、制度的な対応として、被用者保険の更なる適用拡大などに取り組むことといたしております。
現在、次期年金制度改正に向けて議論を行っておるところでございますが、働き方に中立的な制度の構築に向け、今後とも関係者の御意見を伺いながら、引き続き丁寧に議論をいたしてまいります。
インボイス制度についてでありますが、インボイス制度は複数税率の下で課税の適正性を確保するために必要な制度であり、これを廃止することは考えておりません。
インボイス制度に対する御不安、御懸念、これを抱かれておられる方はおられます。そのような不安等に対しましては、税負担や事務負担を軽減する二割特例等を周知するとともに、事業者の方からの御相談には引き続き丁寧に対応いたしてまいります。
介護職員等の処遇改善についてであります。
介護、障害、保育等の現場におきましては、人材の確保が極めて重要であり、そのため、処遇改善を図ることは重要な課題であると認識をいたしております。
介護及び障害福祉につきましては、令和六年度の報酬改定において、また、保育等については、こども未来戦略に基づき、処遇改善を進めております。
ベースアップを含め、施策の効果について確認、点検を行いながら、福祉等の現場で働く方々の処遇改善に誠実かつ着実に取り組み、国民の皆様方に安心していただける社会保障制度を整備してまいります。
エネルギー負担軽減策についてのお尋ねをいただきました。
電気・ガス料金支援につきましては、物価高に直撃され苦しい状況にある国民を守り、酷暑の夏を乗り切るため、即効性が高い対策として、酷暑乗り切り緊急支援として、八月から十月の使用分について支援を実施いたしてまいりました。
エネルギーコストを含めた物価高対策につきましては、状況を丁寧に見極めながら、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を含め、今後、経済対策について議論していく中で、総合的に検討いたします。
金融所得課税と法人税についてのお尋ねをいただきました。
金融所得課税につきましては、貯蓄から投資への流れを引き続き推進していくことが重要であり、現時点でその強化について具体的に検討することは考えておりません。
法人税の在り方につきましては、与党税制調査会でかねてから議論されており、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現していくために何が効果的なのかという観点を踏まえて議論されるものと考えております。
防衛力に係る財源確保のための税制措置についてのお尋ねを頂戴いたしました。
激変する安全保障環境において日本を守り抜くために、国家安全保障戦略等に基づき、我が国自身の防衛力を抜本的に強化すべきことは論をまちません。
そのための財源確保に当たりましては、行財政改革の努力を最大限に行った上で、それでもなお足りない四分の一について、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いすることといたしております。
今後、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと承知をいたしておりますが、政府・与党で緊密に連携し、対応いたしてまいりたいと存じます。
子育て支援金制度についてのお尋ねであります。
少子化とその結果生ずる人口減少は、国の根幹に関わる課題、いわば静かな有事であります。このため、こども未来戦略を着実に実施し、子育て支援に全力を挙げます。
支援金制度は、子育て世代を全世代、全経済主体が支える仕組みであり、子育て支援のための加速化プランの実施に必要なものです。これを導入しても、歳出改革等により社会保険料の上昇を確実に抑制します。今月から拡充されている児童手当などは、物価上昇を上回る賃金上昇の定着に向けた取組と相まって、若い世代の所得を増やしていくこととなります。
政府といたしましては、支援金制度の令和八年度の施行に向け、こうした制度の趣旨について国民の皆様方に説明を尽くしてまいります。
学校給食費の無償化についてもお尋ねを頂戴いたしました。
学校給食費の無償化につきましては、学校給食の実態を踏まえつつ、関係省庁が連携をし、児童生徒間の公平性や国と地方との役割分担、政策効果、法制面等の課題を整理した上で検討いたしてまいります。
国公立大学の授業料についてのお尋ねであります。
国立大学の授業料につきましては、国が標準額を示しつつ、その一・二倍を上限として各法人が個別に設定する仕組みとなっております。
経済的な理由により進学を諦めることがないよう、給付型奨学金や授業料等減免制度を拡充してきております。引き続き、高等教育費の負担軽減に取り組んでまいります。
学校の仕事量軽減と指導、運営体制、いじめ、不登校等の対策についてのお尋ねがございました。
学校の仕事量削減につきましては、働き方改革やデジタル技術の活用により、学校、教師が担う業務を適正化し、教師の時間外在校等時間を削減します。
指導、運営体制につきましては、様々な教育課題に対応するための、各自治体の権限と責任の下で任用される支援スタッフと教職員との連携、協働を進めます。
いじめ、不登校等につきましては、教師のみに負担させるのではなく、専門スタッフによる教育相談や、学校内における多様な学びの場の活用等による対策を進めてまいります。
女性閣僚の数についてであります。
大臣、副大臣、大臣政務官の人事につきましては、所管分野の状況や本人の手腕、経験などを踏まえて行ったところであります。
女性活躍と女性参画は重要な課題であり、社会のあらゆる組織の意思決定に女性が参画することを官民の目標とし、達成への指針を定め、計画的に取り組んでまいります。
選択的夫婦別氏制度についてのお尋ねがございました。
選択的夫婦別氏制度の導入を求める声があることは承知をいたしております。夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方につきましては、国民の間に様々な意見があり、政府としては、国民各層の意見や国会における議論の動向等を踏まえ、更なる検討をする必要があると考えているところです。
そのため、当該制度の導入の是非や導入時の家族への影響等について、私の立場から個人的な見解を申し上げることは差し控えます。
マイナ保険証についてのお尋ねをいただきました。
マイナ保険証は、本人の健康医療情報を活用した適切な医療の提供に大きく寄与するものです。一方で、マイナ保険証が使えないといった様々な不安の声に丁寧に対応する必要がございます。
現行の健康保険証の新規発行終了につきましては、法に定められたスケジュールにより進めていきますが、マイナ保険証が利用できない方も確実に保険診療が受けられますように、資格確認書の活用も図ってまいります。さらに、資格確認書でも保険診療が受けられることなど、高齢者の方にも伝わるよう周知を徹底し、不安の払拭に向け、丁寧に進めてまいります。
食料供給困難事態対策法についてお尋ねをいただきました。
この法律が事業者に生産等の計画の届出を求めておりますのは、食料供給が大幅に不足し、買占めや価格の高騰など国民生活等に支障が生ずるような場合に、政府として、確保可能な食料供給量を把握し、必要な対策を講ずるためであります。
計画の届出をしない事業者に対する罰金は、その実効性を担保するためのものであり、引き続き、丁寧な説明に努めてまいります。
就農者の確保についてのお尋ねを頂戴いたしました。
我が国の農業が持続的に発展していくためには、御指摘のように、就農者を確保することが極めて重要であります。
このため、就農に向けた研修資金、経営を開始するための資金及び就農者の雇用を促進するための資金の交付、経営発展のための機械、施設の導入支援、就農後の技術面のサポートなど、総合的な支援を進めてまいります。
エネルギー基本計画における原発の位置づけについてであります。
AI時代の電力需要の激増が見込まれる中、脱炭素化を進めながらエネルギー自給率を抜本的に高めることが重要であります。
そのため、省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを拡大するとともに、安全性の確保を大前提とした原子力発電を利活用することも必要です。
再生可能エネルギーか原子力かという議論ではなく、利用可能な脱炭素電源は適切に活用していくという考え方であります。
こうした足下の情勢も踏まえ、次期エネルギー基本計画について国の審議会で検討いたしてまいります。
憲法改正についてであります。
内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての具体的な内容等について直接申し上げることは差し控えますが、自由民主党総裁としてあえて申し上げれば、我が党では、緊急事態条項の在り方、憲法における自衛隊の明記等について活発な議論が行われ、論点整理等が進められてきたところであります。私も、自民党総裁として、これらの議論の積み重ねを引き継ぎ、後戻りさせることなく前に進めてまいります。
調査研究広報滞在費についてお尋ねを頂戴いたしました。
調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費につきましては、我が党の岸田前総裁と維新の会馬場代表との間において、衆参議長の下に置かれる協議の場において前向きに議論を行い、使途公開と残金返還を義務づける立法措置を講ずることについて文書で合意が交わされたものと認識をいたしております。私も、自民党総裁として、その合意を引き継いでまいります。
現在、衆参両院の議院運営委員会による有識者へのヒアリングが進められているところと承知をいたしておりますが、今後、制度の詳細等について各党各会派間での合意を早期に得て、必要な立法措置が講じられるよう、自民党としても誠心誠意対応いたしてまいります。
自民党と旧統一教会との関係等についてお尋ねをいただきました。
御指摘の写真に係る報道については承知をいたしておりますが、当該報道のみでは、自民党と旧統一教会との間に組織的関係はなかったというこれまでの党の説明を覆さなければならないような事情があるとは考えておりません。
また、私と旧統一教会及びその関連団体との関係について、御指摘の講演や献金の受取は事実でありますが、それ以外の事実は把握をいたしておらず、既に旧統一教会とは一切関係を持たないことといたしておるところでございます。
自民党と旧統一教会との関係についての調査についてお尋ねがありました。
自民党におきましては、一昨年に各議員が旧統一教会との過去の関係を詳細に点検、報告するとともに、それ以降に新たな接点が明らかとなった場合には、その都度、追加的に報告、説明を行うよう求めてきたところであります。
当該団体は長年にわたり多様な組織形態や名称の下で様々な活動を展開しており、個々の議員が全ての接点を網羅的に把握し切れない場合があることも事実であります。新たな接点が判明いたしました場合には、速やかに報告、説明するとともに、未来に向かって当該団体と関係を持たないことを徹底することが大切であると考えており、引き続きこの方針を堅持いたしてまいります。
自民党と旧統一教会との関係遮断についてお尋ねをいただきましたが、先ほども申し上げましたとおり、自民党におきましては、一昨年、各議員が旧統一教会との過去の関係を詳細に点検、報告したところであり、それ以降は当該団体と一切関係を持たないこと、新たな接点が明らかとなった場合には、その都度、追加的に報告、説明を行うことを方針としておるところであり、現時点において、お尋ねのような対応が必要な状況であるとは考えておりません。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
〔国務大臣牧原秀樹君登壇〕
○国務大臣(牧原秀樹君) 吉田はるみ議員にお答え申し上げます。
二〇二一年六月六日、さいたま市で開かれた、祝福結婚と希望前進大会二〇二一イン埼玉に出席していたことが事実かどうかについてお尋ねがありました。
いわゆる旧統一教会との関係について調査する中で、御指摘の集会に出席していたことが判明しましたけれども、私は、当時、その集会が旧統一教会と関連があると認識していませんでした。
自民党としては、旧統一教会及びその関連団体との関係を未来に向けて絶っていくことを徹底していると認識しており、私も一切の関係を絶っております。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) この際、十分間休憩いたします。
午後三時二十五分休憩
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午後三時三十八分開議
○副議長(海江田万里君) 休憩前に引き続き会議を開きます。
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○副議長(海江田万里君) 国務大臣の演説に対する質疑を継続いたします。馬場伸幸君。
〔馬場伸幸君登壇〕
○馬場伸幸君 日本維新の会の馬場伸幸です。
教育無償化を実現する会との統一会派を代表し、質問をいたします。(拍手)
元日の震災から復興へ懸命に立ち上がろうとしていた石川県能登地方が、先月下旬、線状降水帯による記録的豪雨に見舞われました。お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表し、御遺族と被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。また、被災地で救助、復旧等に力を尽くされている全ての皆様に深く敬意を表します。
私たちは、震災直後から続けている被災地へのサポート体制を強化し、更にきめ細かく支援をお届けしてまいります。
さて、総理は、総裁選直前の八月に上梓した「保守政治家 わが政策、わが天命」の中で、大臣就任時に答弁について、検討するという文言は認めず、検討して、いつまでに成案を得ると改めていたとしています。ならば、私が政策課題の実現目標を伺った際には真摯にお答えいただくよう、まずもって強く求め、質問に入ります。
総理になる前の自民党総裁の立場で、次期衆議院選挙を十月二十七日投開票の日程で行うというおきて破りの表明をし、明後日、解散される運びとなっています。国会で正式に選出される前に総理の伝家の宝刀を抜くとは、国会軽視、思い上がりも甚だしいと指弾せざるを得ません。
僅か半月余り前の総裁選の討論会で、総理は、解散の時期について、国民が判断する材料を提供するのは政府の責任であり、新しい総理の責任、本当のやり取りは予算委員会だ、世界情勢がどうなるか分からないのに、すぐ解散するという言い方はしないと明言していました。事実上、総理を選ぶ総裁選での言葉は国民に対する公約にほかなりませんが、舌の根も乾かぬうちに手のひら返しの解散を宣言する変節ぶりには、開いた口が塞がりません。
無論、常在戦場です。私たちは受けて立ちますが、解散前にやると約束した予算委員会さえも開かず、敵前逃亡のそしりは逃れ得ません。
総理に伺います。
元々、憲法七条に基づく解散については、時の政権に有利になるため憲法の趣旨に反すると否定的な見解を示していたのに、なぜ豹変したのですか。党執行部に押し切られて解散を決断したならば、党内野党として筋を通してきた総理も、最高権力を手にした途端に、党利党略で持論を曲げてしまうという本性が露呈したと受け止めなければいけません。これでは先が思いやられます。これに反論できますか。
このような有様で、自民党の裏金問題で地に落ちた国民の政治への信頼を取り戻せるとお考えでしょうか。就任記者会見で自ら、納得と共感内閣だと命名されましたが、国民に納得と共感が得られるとお思いでしょうか。
会期延長してでも予算委員会を開くことが不可欠です。能登半島の豪雨災害に対応するための令和六年度補正予算編成も無視するのでしょうか。
総裁選中、世界情勢が不透明なことも解散しない理由に挙げていましたが、先週、イランがイスラエルにミサイル攻撃し、第五次中東戦争の萌芽が現れました。国際情勢は一層混沌とし、日本がエネルギー危機に見舞われる可能性があります。現在の国際情勢下で、衆議院議員不在の政治空白をつくっていいのでしょうか。
総理の臆面もない公約破りを目の当たりにすれば、さきの総裁選は、自民党挙げての壮大な茶番だったと断じざるを得ません。総理の変節は、本質は変わらない、変えられない自民党政権の実態そのものではないでしょうか。
以上、敵前逃亡することなく、真摯にお答えください。
前国会で私は自民党総裁との間で文書を交わし、いわゆる政策活動費の十年後の公開で合意をしました。しかしながら、それは、結党当初から身を切る改革を掲げ、政治と金についてどの党よりも厳しいルールを自らに課してきた我が党として、改革姿勢が後退したのではないかという疑念を抱かせる結果を招いてしまいました。
前国会において自民党に、政治と金の問題を一掃する完全なる改革、政策活動費の即時廃止を迫らなかったことは、結果的に私たちの誤りでした。提案した政策は法案が成立しなくても実践するという政治姿勢を貫き続けている維新の党是から、今すぐの実践にちゅうちょがあったことも含め、真摯に反省をしています。
そこで、前国会閉会後、いま一度、改革政党の原点に立ち返り、政策活動費の支出は今後一切行わないことをルールとして定め、実践に移しています。さらには、これを法律による共通ルールとするため、今国会に、政策活動費や企業・団体献金の禁止、議員定数の削減等をうたった政治資金規正法及び公職選挙法の改正案を提出しました。
一方で、自民党は、裏金問題について、再発防止と政治不信を払拭するための法改正だけでなく、実態解明と当事者の処分も実施すると明言してきました。しかしながら、これらは今も、うやむやのままです。残された課題を今国会でやり切ることは立法府の使命です。しかし、総理がその議論する機会さえ奪わんとして、解散・総選挙に突き進んでいます。このことには断固たる抗議をいたします。
その上で、政治と金の問題に関して、総理にお伺いをいたします。
まず、派閥のパーティー収入不記載に端を発した裏金問題についてです。
政治倫理審査会については、衆参両院議員計七十二人がいまだに出席を拒んでいます。当然、出席を促すお考えでしょうか。
来る総選挙で、石破総理は昨日、相当程度の非公認が生じると宣言をされました。しかしながら、国民感情からすれば、裏金、脱税に関与した全員を非公認とするべきではないでしょうか。総裁選の公約どおり、総裁自らお一人お一人に聞き取りを行って判断するのですか。
前国会で明らかになったのは、長年の金権体質がしみついた自民党が構造的な機能不全に陥っているという事実です。この組織的問題に対して、幾ら首をすげ替えても対症療法にしかなり得ません。
私たちは既に、率先垂範して、旧文書通信交通滞在費の領収書公開を自主的に行ってきました。政治資金収支報告書の会計責任者は国会議員本人とし、責任の所在も明確にいたしました。さらに、先ほど述べたように、今後は政策活動費も完全に廃止をいたします。
総理は、過去に、政策活動費の廃止も一つの方向性だと述べておられますが、私たちの取組と比べると、いささか踏み込みが甘くないですか。自民党も、政治不信を一掃するために、私たちに倣って、廃止する方針を明確にすべきではないでしょうか。
さらに、私たちは、この問題を追及するに当たり、自ら身を正すことが必要と考え、過去の政策活動費の検証を行うチームを設置することに決めました。私たちの調査では、総理は、自民党幹事長職にあった平成二十四年九月から平成二十六年八月にかけ、計七十二回、総額十七億五千五十万円を政策活動費として受け取っています。私たちと同様に、これらの内訳も全て自主的に調査、説明してはいかがでしょうか。
金権体質を根本的に浄化するには、企業・団体献金の禁止は不可欠です。日本の財政を圧迫している社会保障の抜本改革は、献金を橋渡しにした自民党と企業、団体の癒着によって立ち往生しています。例えば、岸田前総理は日本医師会政治連盟から年間一千四百万円もの献金を受け取っており、これが癒着となれ合いを生み出し、医療制度改革を停滞させる要因になっているとの指摘は絶えません。
我々は、企業、団体へのパーティー券販売も含め、企業や業界団体からは一切お金を受け取りません。既得権の温床となる企業・団体献金は直ちに禁止すべきと考えますが、総理の決意を伺います。
一切のしがらみを排した構造改革を成し遂げるには、政治家自らが身分や特権を手放すことで覚悟を示さねばなりません。
私たちには、大阪府市で議員定数の削減を行い、議員歳費も削減した実績があります。国会では身を切る改革で、月々の歳費の二割、ボーナス三割を自主的にカットし、国内外の被災地や戦災地に寄附をしているほか、形骸化した特別委員会や委員長ポストの廃止に取り組んでいます。
民主党政権下の平成二十四年から果たされていない国民との約束が、国会議員定数の大幅な削減です。自民党は、この問題をいつまで引き延ばすのでしょうか。私たちが四日に提出した、比例代表選出議員の定数を二割削減する公選法改正案を可及的速やかに可決するべきではないでしょうか。議席削減に向けた総理の覚悟をお示しください。
旧文通費については、根本的に政府・与党の姿勢を問いたださなければなりません。
自民党との合意文書では、旧文通費の使途公開と残金返納を義務づける立法措置を行うこととなっています。これは公党同士の約束です。無論、総理はこの合意を生きているとお考えでしょう。
しかし、総理は、総裁選勝利後の先月二十九日のテレビ番組で、何が使途として認められるのか与野党で合意すれば公開すると発言されましたが、まず公開することを実践してから使途を決めるのが筋ではないでしょうか。私たちは、旧文通費の領収書を一枚残らず自主的に公開をしています。与野党の合意がなくても、総理自身、私たち同様に、自主的に領収書を公開するお考えはありますか。
岸田前総理が導入を決めた子ども・子育て支援金は、少子化対策を掲げながらも現役世代の手取りを減らし、また、防衛財源とするための法人税、所得税、たばこ税の増税は、身を切る改革なくして負担を国民に押しつける暴政そのものです。
自民党の茂木前幹事長が総裁選でゼロ増税を打ち出し、いずれも実施せずに財源は確保できると喝破されました。政策決定時に党幹事長であった方の発言には重いものがあります。この意見を受け入れ、社会保険料増額や増税を一旦凍結し、予算の精査や事業の見直しをやり直すべきではないでしょうか。お答えください。
社会保障制度は、国民の安心と幸せに直結する国民の関心事です。しかし、総理は就任会見で見直しに着手するとしただけで、ほとんど関心がないと断じざるを得ません。私たちは既に、高齢者医療制度の窓口負担の適正化、診療報酬の見直しなど、医療維新として具体的な医療制度改革案を提示しているところです。
総理は、年々増大する社会保障費を具体的にどのように抑制していくお考えでしょうか。社会保険料を下げることで現役世代の負担を軽減し、世代間格差を解消することこそ政府が解決すべき課題だと考えますが、総理の見解を求めます。
医療分野のDXは、医療費の適正化や診療報酬と薬価の見直し、電子カルテの標準化など、聖域とされてきた社会保険制度の中核にメスを入れることになります。しかし、その入口であるマイナ保険証に対する国民の忌避感が強く、十二月の健康保険証とマイナンバーカード一体化への円滑な移行が危惧されます。ここでつまずいているようでは、医療DXの実現など絵に描いた餅にすぎません。
不人気の大きな理由は、制度設計上、マイナ保険証を使用するメリットが余りにも少ないからです。問答無用でマイナ保険証を持たせることが目的化し、搭載される医療情報が極めて限定されている現行の制度設計は、医療DXのプラットフォームとして嘆かわしい状況です。
総理に質問をいたします。
マイナ保険証への移行は予定どおり実施されますか。マイナ保険証への移行と並行し、電子カルテ情報を共有できるよう、現行二百床以下の医療機関、診療所の半数が紙のカルテを用いている状況を打開するなど、国民の受診、治療や健康維持に資する制度を構築することが不可欠ではないでしょうか。お答えください。
本年は五年に一度の年金財政検証の年でありましたが、年金制度の経年劣化は火を見るよりも明らかです。人口減少が加速する今、年金は、現役世代の安心感よりも、むしろ負担感を増しているとも思われますが、どうお考えでしょうか。
そもそも、財政検証の考え方自体が昭和のモデルを前提としており、時勢を反映していないと言わざるを得ません。例えば、年金の所得代替率のベースは専業主婦世帯を想定しています。年金の保険料を納めている現役世代の多くが共稼ぎや未婚世帯であり、将来の見通しは個人単位の比較で示すべきであります。
現代社会に通用しない昭和のモデルにメスを入れ、時代に合う年金、医療の仕組みを再構築すべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
財政検証では、合計特殊出生率の長期的な値も一・三六に設定されており、昨年の合計特殊出生率が一・二〇だったことを踏まえれば、異常に高い水準になっています。また、全人口に占める外国人の比率が一一%になるとされていることにも疑義があります。外国人比率一一%を実現するなら、日本社会の在り方そのものが大きく姿を変えることは容易に想像できます。このような変化に対し、そもそも、国民的なコンセンサスが取れているとお考えでしょうか。そうでなければ、なぜこのような空想的な比率を採用したのでしょうか。
年金の財政検証は粉飾と言わざるを得ず、将来世代への負担の先送りにつながると考えます。これらの前提を見直すべきではないでしょうか。総理に答弁を求めます。
総理は、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増させる方針を示されました。
総理に伺います。
初代の地方創生担当大臣を二年間務め、地方の問題に力を注がれてきましたが、これまでにどのような成果があったとお考えでしょうか。
首都圏一都三県への転入者と転出者の差は、地方創生がスタートした平成二十六年よりも拡大しています。男性より女性の流入の方が多い傾向も、この十年、変わっていません。東京一極集中の流れを反転させるような効果はなかったと思いますが、これまでの取組のどこに問題があったと認識されていますか。
地方創生推進交付金事業をめぐっては、過去に行政評価レビューで、重要業績評価指標、いわゆるKPIの設定や効果検証の方法などについて、外部有識者から事業全体の抜本的な改善を勧告された経緯があります。やり方によっては、ばらまきの道具になり、総理が師と仰ぐ田中角栄流の利益誘導政治に戻りかねません。今まで地方創生推進交付金がどのように使われ、いかなる効果をもたらしてきたか、まず徹底的に検証するべきではないですか。
地域を活性化するには、大学、雇用、金融機関などが集中する極が必要です。これを日本全国に分散させ、極を中心に経済成長を目指す多極分散の発想が不可欠と考えますが、所見を求めます。
消費税を始めとした国税を地方に抜本的に税源移譲することで、国の関与を減らし、主体的な自治体経営を可能とすることも肝要と考えますが、見解を求めます。
長引く物価高は、国民の日常生活を苦しめ、その影響は深刻度を増しています。今月値上げされた食品は、ペットボトル入りの飲料やハム、ソーセージなど二千九百品目余りにも上り、今年に入って最も多くなったと伝えられています。
政府は、物価高対策として電気やガス料金への補助やガソリン価格を抑えるための補助を実施していますが、ばらまき志向のびほう策にすぎません。総理が改めて意思表示をした低所得者向けの給付金も、高齢者に偏重し、本当に必要な人に届く施策ではありません。私たちは、国民が何よりも求めていることは、消費税や社会保険料の負担軽減と、それに伴う可処分所得の増加だと考えています。
総理に伺います。
事業者支援を中心とするばらまき路線から脱却し、全ての国民に直接還元されるような形での支援に転換すべきではないでしょうか。消費税を八%に引き下げ、軽減税率を廃止するとともに、社会保険料を軽減することが、より実効性のある物価対策になり得ると考えますが、いかがでしょうか。お答えください。
自民党政権は、長らく、業界団体や霞が関との堅牢な鉄のトライアングルを築き、旧態依然とした規制と昭和の古い価値観を温存することで、我が国の成長を阻んできました。電波オークションの導入や農地の企業所有解禁といった岩盤規制の改革を断行しなければ、イノベーションも新しい産業も生まれず、日本経済は停滞から抜け出せません。
失われた三十年の元凶の象徴と言える事例が、ライドシェア解禁に対する政府の対応です。
今年四月、日本版ライドシェアなるものが導入されましたが、実態は、運行管理はタクシー事業者にしか認められず、時間や地域も限定され、名ばかりライドシェアと言わざるを得ません。権益を固守する政官業が、へ理屈と恣意的なデータを駆使し、できない理由を取り繕い、業界外からの新規参入をブロックしているからです。全面解禁による市場規模は一兆円を優に超えるとされているにもかかわらずです。また、来るべき大阪・関西万博の成功に向けても、ライドシェアの更なる解禁が切望をされています。
総理は自著「保守政治家」の中で、あらゆる改革について、既得権益を壊すために不人気な政策であっても断固としてやり抜かなくては日本の将来に禍根を残すことになると訴えていますが、所信表明では規制改革のキの字にも触れずじまいでした。
総理に伺います。
業界団体と役所の既得権益を守ることで、国民の利便性がないがしろにされていいのでしょうか。規制改革に本腰を入れて取り組む覚悟はないのでしょうか。移動の足の不足という社会課題を解決するためにも、大胆な規制改革によって新たな市場の創出や新しい働き方への転換を促すためにも、新規参入が可能なライドシェアの全面解禁を実現してしかるべきではないでしょうか。お答えください。
インフラ整備についても伺います。
石破総理は、リニア新幹線について、開業すれば東海道新幹線に輸送余力が生じると積極的なコメントをされ、高速交通インフラに強い関心があると拝察いたします。
翻って、東京と大阪をつなぐ北陸新幹線の整備事業では、空白となっている敦賀以西のルートについて、国土交通省は、当初想定した建設費が二倍以上の五兆円超まで膨らむと試算し、難工事のリスクから工期も最長約二十八年と当初の十五年から大幅に延びると見込んでいます。
総理に伺います。
現行の計画ルートの工事条件が不測の事態で大きく悪化した場合、より合理的、現実的なルートへの変更も検討する可能性はありますか。対象ルートが収支採算性や投資効果など着工五条件がクリアできないなら、五条件自体を見直すという声も与党から漏れ聞こえてきています。まさかゴールポストを強引に移動させるようなことはないと思いますが、所見を求めます。
国際情勢が流動化する中、核を持つ中国、北朝鮮、ロシアを隣に抱える日本の安全環境は日を追うごとに厳しさを増しています。力による台湾統一の野心を持つ中国の人民解放軍は、八月以降、日本周辺での威圧活動を先鋭化させています。情報収集機が領空侵犯したほか、測量艦が領海侵入し、空母が初めて接続水域を航行しました。日本が米国と安全保障面で連携を強化していることへの反発であることは間違いがありません。
総理に質問します。
日本有事に直結する台湾有事は、総理の総裁任期中の二〇二七年までに起きるとの観測が強まっています。御自身が戦時の宰相になり得る蓋然性が高いわけですが、その覚悟はありますか。その日を視野に、国家国民を守り抜くための万全な防衛体制をどのように、そしていかなるタイムスケジュールで敷いていくお考えでしょうか。
総理は、自著「保守政治家」で、台湾有事、即日本有事になる可能性は相当低いと指摘しています。理由は、中国が台湾を攻撃しても、日本を攻撃すれば同盟国の米国を敵に回すことになるからだそうです。
そのような政府最高指導者の甘い認識は、中国、そして日本国民への誤ったメッセージになりかねないのではないでしょうか。対中抑止力や国民の国防意識をそぐことになるとも懸念しますが、所見を求めます。
海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」が先月二十五日、海自艦艇として台湾海峡を初めて通過しました。欧米の軍艦は、台湾海峡はどの国にも属さない国際水域として自由に航行していましたが、日本はこれまで、中国との間で緊張が高まることを避けるため、海自艦艇による航行を控えていました。指示をした岸田前総理の決断は、日本周辺で傍若無人に振る舞う中国を牽制する上で意義があり、対中抑止力に資するものとして評価をいたします。
今後も海自艦艇の台湾海峡航行を継続して行っていくべきだと考えますが、見解を伺います。また、これに限らず、中国、北朝鮮、ロシアの脅威に対して、日本は毅然とした行動や対抗措置を取っていくお考えはあるでしょうか。
総理は、自民党総裁選での政策集で、党是の憲法改正について、国会での議論を促進し、総理在任中の国会発議を実現すると掲げました。岸田前総理は、総裁任期中の憲法改正実現を重ねて公言されていましたが、結局果たせずに終わりました。与野党五会派で合意形成されつつある緊急事態条項創設や、防衛力の抜本的強化と表裏一体にある九条への自衛隊の明記などを軸に、改正案の取りまとめ作業に直ちに入るべきです。
総理にお尋ねいたします。
前総理が憲法改正を実現できなかった最大の要因は、自民党が常々、予算や重要法案の審議優先などをできない理由の口実として野党第一党と談合し、都合よく先送りし続けているからだと考えます。つまり、やる気がないだけで、成否は総理・総裁の決断次第です。このような現状を打開する覚悟はあるでしょうか。
総理が発議をするとした総理在任中とは、現総裁任期の三年以内にということでしょうか。総理在任中というなら、場合によっては発議の目標期限が総裁任期最長三期連続、すなわち九年先までずるずると先延ばしができます。三年以内に発議をするとはっきり言ってください。自民党総裁として答弁を求めます。
日本維新の会は改革政党です。結局は従来型の自民党手法そのものから抜け出ることのできない石破内閣に対して、もう一つの選択肢を示していきます。
先月、私は日本維新の会の外交ミッションとしてインドを訪れましたが、昭和四十年代の日本のように、国中にあふれる活気に驚きました。現地の人々が皆、暮らしがよくなっていく期待でわくわくする笑顔で輝いていたからです。
近く迎える総選挙で、私たちも、国民がわくわくできる社会を実現すべく、日本大改革の道筋を果敢に提案し、全力で戦い抜くことをお誓い申し上げ、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 馬場伸幸議員の御質問にお答えをいたします。
今般の解散等についてお尋ねがありました。
内閣は、国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるような場合には、衆議院の解散権を行使することができると考えております。
今回、新内閣の発足に当たり、国民の皆様の意思を確かめる必要があると判断し、解散を行うとの判断をいたしました。この判断は憲法の趣旨にも沿うものだと考えており、変節したとの御指摘は当たりません。
国民の皆様に対して勇気と真心を持って真実を語る姿勢を大切にしつつ、政治の信頼を回復し、能登半島地震、大雨からの復旧復興、緊迫する国際情勢における外交のかじ取りなど、政府として諸課題の解決に全力を尽くしてまいることで、国民の皆様方の納得と共感を得てまいります。
政治資金収支報告書に不記載があった議員の政治倫理審査会への出席、公認の方針等についてお尋ねをいただきました。
政治倫理審査会への出席につきましては、両院の政治倫理審査会規程に基づき判断されるべきものではありますが、国民の皆様の納得を得るための努力がなされているかという観点から、公認の是非を判断するための一要素としたものであります。
公認につきましては、選挙対策本部において、各選挙区の事情、当選の可能性などを踏まえ適切に判断していくこととなりますが、最終的な公認権者は総裁であり、不記載があった議員については、引き続き適切な方法で、地元の理解が得られているかなどを判断してまいります。
政策活動費の廃止についてお尋ねをいただきました。
政策活動費につきましては、将来的な廃止も念頭に、その在り方の検討や透明性の確保に取り組みます。政策活動費の在り方は、我が党のみならず、各党の政治活動の在り方にも関係し得る事柄であることから、共通のルールにのっとって透明性を高めていくことが必要と考えており、今後、各党各会派との真摯な議論も経て、最終的な結論を得てまいる所存であります。
企業・団体献金の禁止についてお尋ねをいただきました。
企業・団体献金につきましては、さきの通常国会において、各党各会派による様々な議論がなされた結果、見直しは行われなかったものと承知をしております。
また、政治団体の収入につきましては、多様な考え方の多くの出し手による様々な収入を確保することが政策立案における中立性やバランスの確保において重要と認識をいたしており、企業・団体献金のみを禁止することによる影響につきましても十分に議論する必要があると考えております。
議員定数についてのお尋ねをいただきました。
議員定数の削減につきましては、議員立法により、平成二十五年に衆議院の定数五議席、平成二十八年に衆議院の定数十議席の削減が実現をいたしたところであります。
その上で、議員定数の在り方につきましては、民主主義の根幹に関わる重要な問題であり、各党各会派で御議論いただくべき事柄であると考えております。
調査研究広報滞在費についてお尋ねをいただきました。
調査研究広報滞在費、いわゆる旧文通費については、我が党の岸田前総裁と議員との間において、衆参議長の下に置かれる協議の場において前向きに議論を行い、使途公開と残金返納を義務づける立法措置を講ずることについて文書で合意が交わされたものと認識をいたしております。私も自民党総裁として、その合意を引き継いでまいります。
なお、旧文通費の使途公開や残金返納につきましては、現在、衆参両院の議院運営委員会による有識者へのヒアリングが進められておるところと承知をしておることから、領収書の自主的な公開の要否については、当該議論の状況も踏まえて判断をいたしてまいります。
子育て支援財源及び防衛増税についてお尋ねをいただきました。
少子化とその結果生ずる人口減少は、国の根幹に関わる課題、いわば静かな有事であります。このため、こども未来戦略を着実に実施し、子育て支援に全力を挙げます。
支援金制度は今月から拡充されております児童手当などの加速化プランの実施に必要なものであり、これを導入しても、歳出改革等により、社会保険料の上昇を確実に抑制いたします。あわせて、物価上昇を上回る賃金上昇の定着に向けた取組を進め、現役世代の所得を増やしてまいります。
他方、激変する安全保障環境において日本を守り抜くためには、国家安全保障戦略等に基づき、我が国自身の防衛力を抜本的に強化すべきことは論をまちません。
そのための財源確保に当たっては、行財政改革の努力を最大限に行った上で、それでも足りない約四分の一につきまして、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いすることといたしております。
今後、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと承知をいたしておりますが、政府・与党で緊密に連携し、適切に対応いたしてまいります。
社会保障制度についてのお尋ねをいただきました。
社会保障制度は、様々な境遇にある国民の方々に安心を提供するセーフティーネットです。
政府としては、高齢者を含め全ての世代の方がその状況に応じて支え合い、必要な給付が受けられる全世代型社会保障の構築に取り組んでまいります。
その際、高齢化などにより社会保障の給付が増加する中、多様な関係者を含めた国民的な議論の場を設けることを念頭に、昨年末に策定した改革工程に基づき、医療DXによる効率化、質の向上や医療の提供体制の改革などを進め、歳出改革を含む歳出の最適化により、社会保険料の上昇を抑制してまいります。
マイナ保険証及び電子カルテについてのお尋ねをいただきました。
現行の健康保険証の新規発行終了につきましては、法に定められたスケジュールにより進めていきますが、マイナ保険証が利用できない方も確実に保険診療が受けられるよう、資格確認書の活用も図ってまいります。さらに、資格確認書でも保険診療が受けられることなど、高齢者の方にも伝わるよう周知を徹底し、不安の払拭に向け、丁寧に進めてまいります。
また、国が小規模な医療機関でも導入しやすい電子カルテを開発し普及させるなど、医療の質の向上と医療機関の負担軽減につながる医療DXを推進してまいります。
年金制度の在り方についてお尋ねをいただきました。
本年七月に公表した令和六年財政検証では、近年の女性や高齢者の労働参加の進展等により、前回の検証に比べ、将来の給付水準の改善が確認をされました。加えて、今回は新たに個人単位でも推計を行い、若年世代において年金額が増加する傾向にあることが確認されました。
今後は、こうした結果も踏まえ、さらに、被用者保険の適用拡大などを通じた働き方に中立な制度の構築や、所得保障、再分配機能の強化を図る観点からの基礎年金水準の確保といった観点から、年末に向けて制度見直しの議論を進めてまいります。
年金の財政検証についてお尋ねがありました。
公的年金の財政検証におきましては、出生率等の前提について、これまでの実績に基づきながら専門家による検討を経た上で幅広い複数のケースを設定しており、適切なものと考えております。
今後、今回の財政検証の結果も踏まえ、次期年金制度改正に向け、丁寧に議論を進めてまいります。
地方創生についてお尋ねがありました。
私が十年前に初代地方創生担当大臣として地方創生推進交付金の創設などに取り組んで以降、交付金などを活用し、住民の方々が気持ちを一つにして地方創生の取組に頑張っておられる姿が全国各地で見られるようになったことは、大きな成果であると考えております。
一方、東京一極集中の流れは止まっておらず、地方において産官学金労言の地域の多様な関係者の知恵が十分に引き出されてきたか、国においてこれを十分に後押ししてこられたかにつきましては、改善の余地が多分にあると考えております。
これまでの成果と反省を生かし、地方創生二・〇を再起動させるべく、新しい地方経済・生活環境創生本部を創設し、今後十年間集中的に取り組む基本構想を策定します。
御指摘の多極分散も含め、地方六団体と更に連携を密にし、例えば、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指し、好事例の普遍化、地方の成長の根幹である農林水産業の活性化、観光産業や文化芸術分野の更なる振興策、半導体等のサプライチェーンの国内立地策などについて検討を行い、成案を得ます。
国から地方への税源移譲についてのお尋ねを頂戴いたしました。
地方創生を推進するためには、その基盤となる地方税の充実確保は不可欠であり、これまでも、個人住民税における三兆円の税源移譲、消費税率引上げに際しての地方消費税の拡充等に着実に取り組んできたところであります。
今後も、税源の偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系の構築に取り組むとともに、地方税の充実確保に努めてまいります。
物価高対策と消費税減税、社会保険料の軽減についてのお尋ねをいただきました。
物価上昇を上回って賃金が上昇するといった成長と分配の好循環が確実に回り出すまでの間、足下で物価高に苦しむ方々への支援が必要です。当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を始め、総合的な対応を図ります。
消費税につきましては、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。
社会保険制度につきましては、相互扶助の考え方を基盤としつつ、所得に応じた保険料負担としています。可処分所得向上のために幅広く保険料の減免を行うことは、給付と負担の関係が不明確となり、財源をどうするのかという観点からも、慎重な検討が必要なものと考えております。
規制改革に対するお尋ねをいただきました。
人口減少、少子高齢化等の課題を克服して地方の活性化につなげるため、また、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現するため、利用者目線を徹底し、必要となる規制・制度改革に取り組んでまいります。
地域交通は地方創生の基盤です。全国での交通空白の解消に向け、骨太方針に従い、日本版ライドシェア等の施策の実施効果を検証しつつ、地域交通の担い手や移動の足の確保の取組を強力に進めてまいります。
北陸新幹線の延伸についてのお尋ねを頂戴いたしました。
北陸新幹線敦賀―新大阪間につきましては、平成二十八年度に与党のプロジェクトチームにおいて小浜・京都ルートとすることが決定されており、まずは、詳細な駅位置、ルートを絞り込んだ上で、着工五条件の検討を深め、一日も早い全線開業を目指してまいります。
いわゆる台湾有事に関する私の認識についてお尋ねをいただきました。
台湾有事という仮定の御質問に関し、私の認識を含め、政府としてお答えをすることは差し控えますが、その上で申し上げれば、台湾海峡の平和と安定は、我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決することを期待するというのが、我が方の従来からの一貫した立場であります。この点、これまでも日米やG7で台湾海峡の平和と安定の重要性について一致をしております。
また、あくまで一般論として申し上げれば、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国及び我が国国民の安全と繁栄を確保するため、政府として、いかなる事態に対しても対応できるよう、平素からの体制の整備を進め、万全を期していくことは当然のことであります。
今後の自衛隊の運用及び我が国周辺の安全保障環境を踏まえた措置についてお尋ねを頂戴いたしました。
最近、我が国周辺海空域におきまして、ロシアや中国により短期間に領空侵犯等が立て続けに起きておることについて、政府として強い危機感を有しておるところであります。
自衛隊の運用に関するお尋ねにつきましてはお答えを差し控えますが、我が国が戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、我が国の領土、領海、領空を守り抜くため、冷静かつ毅然と対応いたしてまいります。
憲法改正についてお尋ねをいただきました。
内閣総理大臣の立場からは、憲法改正についての国会における具体的な議論の進め方等について直接申し上げることは差し控えますが、自民党総裁としてあえて申し上げれば、憲法改正は立党以来の自民党の党是であります。
発議は自民党総裁の一存で決することができるものではございませんが、総裁在任中に国会への発議を実現していただくべく、今後、憲法審査会において、与野党の枠を超え、建設的な議論を行い、国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待いたしております。
以上であります。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 石井啓一君。
〔石井啓一君登壇〕
○石井啓一君 公明党の石井啓一です。
私は、公明党を代表して、石破総理の所信表明演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。(拍手)
冒頭、能登地域の豪雨災害でお亡くなりになった方々の御冥福を心からお祈り申し上げますとともに、被災された方々に衷心よりお見舞いを申し上げます。
苦境が重なる中、生活再建に奮闘されている被災地の皆様にお応えするためにも、新内閣は被災者支援、復旧復興に総力を挙げなければなりません。公明党も、政府の取組を全力で支えてまいります。
去る九月三十日、自民党と公明党は新たな政権合意を結び、不断の政治改革を始め、物価高対策や経済成長、子育て、教育、若者支援、女性活躍、防災、減災、国際社会の平和と安定など、重点的に取り組む政策を確認いたしました。これらの政策を着実に実行し、失われた政治の信頼を取り戻すとともに、持続可能で活力ある日本へ、未来を開く改革を前に進めることが、新内閣に課された責務であります。
公明党は、どこまでも一人の声を大切に、自民党と力を合わせて、国民生活を守り、豊かにする政策の実現に邁進をしてまいります。
以下、具体的に質問をいたします。
政治の信頼回復は、現下の最重要課題であります。
公明党は、さきの通常国会で成立をいたしました改正政治資金規正法の実効性を担保するため、政治資金を監督する第三者委員会について国会閉会後も議論を積み重ね、去る四日、中間取りまとめを発表いたしました。現行の政治資金適正化委員会を改組し、政治的中立性を保つ三条委員会として仮称政治資金監督委員会を設置し、収支報告書に不記載や虚偽記入の疑いがある場合の調査権限を持たせることなどが主な内容であります。今後、与野党協議を重ね、改正政治資金規正法が施行される令和八年一月一日を目指して同委員会を立ち上げたい。
さらに、政党から政治家個人へ渡される政策活動費については、自民党総裁選において複数の候補者が廃止を訴えておりました。この際、政策活動費について、廃止を含め、もう一段の改革を実行すべきであります。
あわせて、調査研究広報滞在費の使途の明確化、使途の公開、未使用分の国庫返納について、来年の通常国会までに法改正を行うべきと考えます。
自民党総裁でもある総理に、政治改革の取組を伺います。
食品価格の高騰が家計を圧迫しており、物価高対策として具体的な取組を求めます。
第一に、物価高の影響が大きい低所得世帯や低所得の子育て世帯、賃上げの恩恵が及ばない年金生活者に迅速な給付を行うこと。第二に、電気・ガス料金、燃料油価格の負担軽減策を続けること。第三に、重点支援地方交付金を追加で措置し、地域の実情に応じたきめ細かな支援を行うこと。特に、国や地方自治体との取引が多い福祉事業者など、価格転嫁が難しい事業者への支援を検討すべきであります。
物価高対策について、総理の答弁を求めます。
今年度、中小企業の賃上げ率は三・六二%という高水準を記録しました。物価高の克服へ、来年以降も賃上げを持続させなければなりません。
一方で、多くの中小企業からは、人手不足や原材料のコスト増などが重く、賃上げの原資確保は難しいとの悲痛な声が寄せられております。
政府は労務費を含めた適切な価格転嫁に取り組んでおりますが、六月の調査では、価格交渉が行われたのは五九・四%、コスト全体の価格転嫁率は四六・一%という状況であります。また、四社に一社が買いたたき行為を受けた経験があると答えております。
対等な価格交渉を進めるには、そもそも下請という呼称自体を変えるべきとの指摘もあります。買いたたきや、交渉もないままでの一方的な価格据置行為の禁止などと併せた下請法の改正を行うべきであります。
中小企業の持続的な賃上げに向けた取組について、総理に伺います。
公明党は、大学等の教育費の負担軽減を目指して、令和六年度は多子世帯や理工農系の中間層へ、令和七年度は多子世帯へ所得制限なく支援を拡充いたします。これにとどまることなく、給付型奨学金と授業料等の減免による修学支援新制度の更なる拡充を行うべきであります。
高等学校等については、授業料支援の所得制限を撤廃し、国公私立を問わず実質無償化するとともに、経済状況が厳しい家庭への授業料以外の教育費を支援する高校生等奨学給付金も拡充が必要です。
さらには、学校給食の無償化についても、六月に出た実態調査の結果を踏まえ、少子化対策の観点から、こども家庭庁の下、関係省庁が連携して検討に入るべきであります。
教育負担の軽減について、総理に伺います。
若者がより活躍できる社会へ、単身世帯の増加を含めた取組を強化すべきです。
若者の政治参画を促進するため、被選挙権年齢の十八歳までの引下げ、立候補時の年齢に応じた供託金の見直し、若者議会の設置などを推進すべきです。
また、公明党の青年委員会には、人生の選択肢を増やすためにも可処分所得の向上を進めてほしいとの声が数多く寄せられました。リスキリング支援や、非正規雇用から正社員への転換支援、企業が賃上げしやすい環境整備などを進めるべきです。
若者の政治参画、可処分所得の向上について、総理に伺います。
我が国のジェンダーギャップ指数は百四十六か国中百十八位、中でも政治、経済の分野の格差が大きい状況です。女性の活躍、キャリア継続のためには、性別役割分担意識の根絶や労働時間の短縮など社会構造の変革が必要であり、あらゆる意思決定の場に女性を増やすことは、全ての人が尊厳と誇りを持って活躍できる社会の構築につながります。公明党は、将来的には全議員の五〇%を女性とし、今後十年以内に女性国会議員三〇%を目指す目標を掲げました。
女性の健康支援に向けては、公明党が長年求めてきた女性の健康総合センターが今月開設いたしました。女性の健康問題による労働損失を防ぎ、生涯にわたる健康支援の中核拠点として大いに機能を発揮してもらいたい。
男女間賃金格差の解消や選択的夫婦別姓制度の早期導入も、喫緊の課題です。
女性活躍の課題と今後の取組について、総理に伺います。
大地震に記録的豪雨が重なった能登地方では、復旧復興に向けた一体的な支援が必要です。
私も、三月に続き、十月五日に豪雨の被災地を視察いたしました。
これまでは予備費を活用して機動的に対応してまいりましたが、本格的な復興に向け、中長期的な支援を行う補正予算の編成も今後検討すべきであります。
また、これまでの大規模災害の経験を踏まえ、被災自治体との連携強化を一層進めるため、各府省庁を横断的に統括する司令塔機能の強化が必要です。防災庁を創設し、最先端技術を活用した大規模災害のデータ解析、集積による予測精度の向上や、専門的な防災人材の確保、育成などを進めるべきです。
さらに、自然災害に加え、切迫する南海トラフ地震等の対応に万全を期すため、国土強靱化の更なる取組が急務です。
残り一年となる五か年加速化対策については、近年の資材価格の高騰の影響等を考慮しつつ、必要十分な予算を確保し、着実に推進をいただきたい。五か年対策後も、取組を最大限加速するため、国土強靱化改正法に基づく実施中期計画を今年度内に策定するとともに、次の五か年で二十兆円規模となる予算の確保を強く求めます。
能登半島地震の復興加速に向けた決意と、防災庁の創設を含めた防災・減災、国土強靱化の今後の取組について、総理の答弁を求めます。
これまでの大規模災害時に被災者は、厳しい避難所環境によって不自由な生活を余儀なくされてきました。特にトイレは、断水で使用できなくなるなど、大きな課題となりました。
そのような教訓を踏まえ、公明党はこれまで、TKB、トイレ、キッチン、ベッドの迅速配備や、被災者が尊厳ある生活を営める最低基準を示すスフィア基準の導入など、避難所環境の大幅改善を政府に提言してまいりました。また、トイレにつきましても、備蓄計画を強化し、トイレトレーラーやトイレカーの配備を強く訴えてまいりました。
直ちに全国の避難所の総点検を実施し、必要な資機材の確保や円滑な避難所運営のための支援などを国が前面に立って進めていただきたい。
避難所の環境改善について、総理に伺います。
地域公共交通は、地域住民の移動の足であり、住民、利用者目線に立って再構築を図るとともに、利便性を向上させ、地域活性化につなげていくべきです。
そのためにも、まずは公共交通機関における担い手不足への対応が急務です。事業者の賃上げや働き方改革などを推進し、若者や女性、外国人材を含め、担い手の確保を進めていただきたい。また、キャッシュレス化等のDX化とともに、自動運転やMaaSなど交通分野におけるデジタル技術の導入を強力に推進すべきです。さらに、地域の多様な関係者による連携、協働を促進し、地域公共交通計画のアップデートを進めるため、関係府省庁による支援を促進すべきと考えます。
国土交通大臣の答弁を求めます。
安定した収入の確保と働きがいが実感できる魅力ある農林水産業へ再構築を進め、食料安全保障を強化することが急務です。
私は、地元の埼玉県草加市、八潮市、三郷市で、担い手不足や猛暑による農産物の生育不良に危機感を募らせる生産者の声を伺ってまいりました。食を支える農業や漁業の担い手の減少に加え、気候変動による品質低下などが続けば、食品の安定供給が確保できなくなるおそれがあります。
こうした状況を克服するため、生産性や付加価値を飛躍的に高めるスマート農林水産業と新品種の開発導入を強力に後押しすべきです。また、適正な取引環境の構築に向けて、付加価値や生産コストの上昇分を価格に反映できる環境整備も重要であり、法制化を含め、対策を一層強化すべきです。
所得向上など魅力ある農林水産業への支援について、総理に伺います。
世界は今、戦争による人道危機や核兵器使用リスクの増大など、人間の生命や尊厳を脅かす複合的な危機に直面をしており、国際社会の平和と安定へ、日本の果たす役割はこれまで以上に重要です。
公明党は、人間の安全保障の理念に立脚した地雷除去支援やアジア諸国の海上保安職員の能力向上などを長年推進してまいりましたが、地雷除去支援については、今後のウクライナの支援につながるよう、カンボジアや国連と協力して主導的な取組を推進すべきであります。
また、対話外交が極めて重要な時代だからこそ、欧州諸国を中心に米国やロシアも加盟する欧州安保協力機構、OSCEをモデルにした対話の常設機関をアジアにもつくるべきと考えます。
公明党といたしましても、戦後八十年、被爆八十年の節目を迎える来春をめどに、こうした平和創出の取組を積極的に進めるビジョンを提示したいと考えております。
我が国、そして国際社会の平和に向けた外交政策について、総理の決意を伺います。
結びに一言申し上げます。
来月、結党六十年を迎える公明党は、大衆とともにという不変の立党精神を胸に、政治のはざまに置かれた大衆に光を当て、福祉社会の建設や清潔な政治の実現などを大きく進めてまいりました。また、国会議員と地方議員のネットワークを生かし、現場の課題を的確に把握し、迅速な対応で庶民の生活を守ってまいりました。六十年たった今も、こうした政治姿勢はいささかも変わることはありません。
これからも、庶民の声を代弁し、ひたすら国民の幸福のために働く政党であり続けることをお誓いし、私の代表質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 石井啓一議員の御質問にお答えをいたします。
政治改革の取組についてお尋ねがありました。
政策活動費の透明性確保や、政治資金に関する独立性が確保された機関の設置、調査研究広報滞在費の使途の明確化、公開、残金返納につきましては、いずれも政治活動の透明性を高めるものとして大変重要であると認識をしており、我が党と御党との連立政権合意書におきましても、これらの課題に取り組むことが明記をされております。特に、政策活動費につきましては、将来的な廃止も念頭に、その在り方の検討や透明性の確保に取り組んでまいります。
これらの議論を加速するため、自民党におきましても、総裁直轄の政治改革本部を設置することといたしました。国民の皆様方にもう一度政治を信頼していただくためには、早期に結論を得られるよう、党内での検討、各党各会派との真摯な協議を進めてまいります。
物価高対策についてお尋ねがございました。
物価上昇を上回って賃金が上昇するといった成長と分配の好循環が確実に回り出すまでの間、足下で物価高に苦しむ方々への支援が必要であります。
そのため、経済対策を早急に策定し、当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を始め、総合的な対応を図ります。
エネルギーコストを含めた物価高対策につきましては、状況を丁寧に見極めながら、これらの給付金や地方交付金を含め、今後、経済対策について議論していく中で、総合的に検討いたしてまいります。
下請法の改正及び中小企業の持続的な賃上げに向けた取組についてお尋ねをいただきました。
中小企業の持続的な賃上げに向けましては、事業者が賃上げの原資を確保できるよう、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させていくための取引環境を整備していくことが必要であります。
政府といたしましては、現在、下請法の改正も含めた検討に取り組んでおり、石井代表の御指摘も踏まえ、引き続き、このような価格転嫁の取組や生産性向上支援など、中小企業の持続的な賃上げを実現するための施策を推進いたしてまいります。
教育費負担の軽減についてお尋ねを頂戴いたしました。
教育費につきましては、特に高等教育費について、本年度から、授業料の減額等の対象を多子世帯の中間層等に拡充、令和七年度から、無償化の対象となる多子世帯の所得制限をなくすことといたしており、まずはこうした拡充を着実に実施に移してまいります。その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点から、その効果を見極めつつ取り組んでまいります。
また、学校給食費の無償化につきましては、学校給食の実態調査を受け、石井代表の御指摘も踏まえ、関係省庁が連携し、児童生徒間の公平性、国と地方との役割分担、政策効果、法制面等の課題を整理した上で検討いたしてまいります。
若者の政治参画及び可処分所得の向上についてのお尋ねをいただきました。
若者が政策形成過程に参画することにより、若者の状況やニーズをより的確に踏まえることができ、様々な施策がより実効性のあるものとなることが期待できます。若者議会を始め、若者の政治参画を促進する各地の先進的な取組について、事例、動画集の活用等により、周知、普及に取り組んでまいります。
その上で、御指摘の被選挙権年齢や供託金の在り方につきましては、選挙制度の根幹に関わる事柄でありますことから、各党各会派で十分御議論いただくべき問題であると考えております。
若者の所得向上に向けては、公的職業訓練の実施や教育訓練給付の拡充などのリスキリング支援、正社員への転換に取り組む事業主への支援やハローワークにおけるきめ細かな就職支援に取り組んでまいります。
女性活躍についてお尋ねを頂戴いたしました。
女性活躍、男女共同参画は、全ての人が生きがいを感じられる、多様性が尊重される社会を実現するとともに、我が国の経済社会の持続的な発展に不可欠な要素であると考えております。
意思決定の在り方を劇的に変えていくため、社会のあらゆる組織の意思決定に女性が参画することを官民の目標とし、達成への指針を定め、計画的に取り組みます。
また、情報公表、分析の拡大による男女間賃金格差の是正や、柔軟な働き方の推進による仕事と育児、介護の両立など、多くの女性に社会活動を長く続けていただけるにはどうすればよいか、国民的議論を主導し、制度改革を実現いたしてまいります。
能登半島地震の復興加速に向けた決意と、防災・減災、国土強靱化の取組などについてのお尋ねを頂戴いたしました。
大地震と豪雨により度重なる被害を受けた能登半島について、不安を抱える被災者の方々の生活を支援しつつ、一日も早く被災前の活気ある町並みを取り戻すため、激甚災害の指定のほか、災害廃棄物処理における地震と豪雨の一体的取扱いなどの取組を推進し、復旧と創造的復興を一層加速いたしてまいります。
また、人命最優先の防災立国を構築するため、現在の内閣府防災担当の機能を予算、人員の両面において抜本的に強化いたしますとともに、代表の御指摘を踏まえ、平時から不断に万全の備えを行う防災庁の設置に向けた準備を進めてまいります。
防災・減災、国土強靱化につきましては、予算を確保して五か年加速化対策を着実に実施するとともに、実施中期計画の策定にも早期に取りかかっており、万全を期してまいります。
避難所の環境改善についてお尋ねをいただきました。
発災後、速やかに、避難所にトイレ、キッチンカー、ベッド、風呂等を配備し、被災者に安心していただける居住環境を提供することは極めて重要であると考えております。
御指摘いただきましたスフィア基準を十分に踏まえながら避難所の在り方を見直しますとともに、避難所で使用するベッド、トイレ等の資機材の備蓄に関し、有効な取組を支援する仕組みを構築するなど、避難所の環境改善のための取組を着実に進めてまいります。
農林水産業の支援についてお尋ねをいただきました。
新たな食料・農業・農村基本法の下、最初の五年間に計画的かつ集中した施策を講じる中で、担い手不足に対応したスマート技術の導入、気候変動に対応した高温耐性のある新品種の開発導入などを進めてまいります。循環型林業など強い林業づくりや、海洋環境の変化を踏まえた操業形態や養殖業への転換、海業の全国的展開など、漁業、水産業の活性化にも取り組んでまいります。
人件費、資材費などの恒常的なコストを考慮した合理的な価格形成の仕組みについて、法制化に向けた検討を進めてまいります。
これらによる所得の向上等を通じ、魅力ある農林水産業の実現を図ってまいります。
我が国と国際社会の平和に向けた外交政策についてお尋ねがありました。
国際社会の分断と対立が進む中、私は、現実的な国益を踏まえつつ、対話と協力を通じて、国際社会の平和と繁栄のため取り組んでまいります。
御指摘のカンボジアとの協力によるウクライナの地雷除去支援を含め、対ウクライナ支援を今後とも強力に推し進めてまいります。
アジアにおける対話外交につきましては、ASEANが地域協力の中心として重要な役割を担っており、米中ロも参加する多層的な枠組みがございます。
我が国としては、引き続き、こうした枠組みへの積極的な参画及びその強化に取り組んでいく考えであります。
残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をいたさせます。(拍手)
〔国務大臣斉藤鉄夫君登壇〕
○国務大臣(斉藤鉄夫君) 石井啓一議員から、地域公共交通の再構築についてお尋ねがありました。
国土交通省においては、賃上げ促進や省力化支援、若者や女性、外国人材の受入れ環境整備などの担い手不足への対応、それから、完全キャッシュレスバスの実証運行、自動運転、MaaSなどの交通分野のDX、また、関係省庁と連携した、地域の多様な輸送資源の活用を図る指針の策定などによる地域公共交通計画のアップデートに取り組んでおります。
さらに、国土交通省「交通空白」解消本部の下、公共ライドシェアや日本版ライドシェアなどの移動の足の確保に取り組んでおります。
地域交通は地方創生の基盤であり、引き続き、交通空白の解消などに向けた地域交通のリデザインを全面展開し、地域活性化につなげてまいります。(拍手)
―――――――――――――
○副議長(海江田万里君) 志位和夫君。
〔志位和夫君登壇〕
○志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、石破総理に質問します。(拍手)
冒頭、石川県能登の豪雨災害で亡くなられた方々に深い哀悼を申し上げ、被災された方々に心からのお見舞いを申し上げます。
二度目の避難に多くの被災者が苦しんでいます。にもかかわらず、避難所での温かく栄養のある食事の提供やプライバシーの確保などで、一月の震災の教訓が生かされておらず、見捨てられたとの声も上がっています。直ちに改善することを強く求めます。浸水した仮設住宅の早期改修や安心できる場所への仮設住宅の建設など、住まいの確保への支援の強化を強く求めます。直ちに補正予算の編成が必要だと考えますが、いかがですか。
旧優生保護法の違憲判決を受け、本日の本会議で謝罪決議と被害補償法を可決しました。引き続き、当事者である障害者の皆さんの声を聞き、真摯な反省の下に検証を行い、優生思想を根絶することは、政府と国会に課せられた重要な責務であります。答弁を求めます。
私は、総理の政治姿勢の基本について、三つの点を質問いたします。
第一は、腐敗政治をなくし、政治に信頼を取り戻すという問題です。
まず問いたいのは、総理自身の言行不一致の問題です。
あなたは、自民党総裁選で、国民に判断してもらえる材料を提供するのは新しい総理の責任だ、本当のやり取りは予算委員会だと繰り返しました。ところが、総理に就任すると、前言を覆し、あさってにも解散を強行するとしています。
解散・総選挙は民主主義の根幹に関わる大問題です。そうした大問題で、数日前の自らの発言を平気で覆す。これでは、総理が今後どんな発言をしようと、国民はそれを信用することができなくなるではありませんか。一国の政治指導者がこういう姿勢を取っていて、どうして政治への信頼が回復するでしょうか。しかとお答えいただきたい。
裏金問題について、九月九日、日本ジャーナリスト会議は、今年度のJCJ大賞にしんぶん赤旗日曜版の裏金スクープを選ぶとともに、その授賞理由の中で、裏金問題を大政治犯罪だと断罪しました。
端的に聞きます。総理はそもそも裏金問題を大政治犯罪だと認識しているのか否か、お答えいただきたい。
しんぶん赤旗日曜版の十月六日号は、総理が代表を務めた石破派が、政治資金パーティーの収入を六年間で計百四十万円分不記載にしていた事実を新たにスクープしました。
総理は、昨年十二月十二日のテレビ番組で、石破派にもキックバックがあったことを認めた上で、出も入りもきちんと載せているとし、政治資金収支報告書の記載に問題はないと強調していましたが、あなたの発言は真っ赤なうそということになるではありませんか。
総理、石破派にも主要五派閥と同じ深刻な裏金疑惑が問われているのであります。総理は、新しい事実が判明したら調査する、勇気と真心を持って真実を語ると言われました。ならば、徹底的な再調査を行い、国民に真実を明らかにすべきではありませんか。
自民党の底知れない腐敗政治の大本には、企業・団体献金があります。パーティー券も含めて企業・団体献金は全面的に禁止し、政党助成金は撤廃すべきです。明確な答弁を求めます。
七月、厚生労働省が発表した国民生活基礎調査で、生活が苦しいと答えた方は五九・六%に上りました。働く人の実質賃金は、この十一年間で年三十三万円も減りました。他方、大企業の内部留保は、同時期に二百兆円以上も膨らみ、五百三十九兆円に達しています。大富豪四十人の資産は七・七兆円から二十九・五兆円へと膨れ上がりました。
これは決して自然現象ではありません。異次元の金融緩和で物価高騰を招き、国民を苦しめているのは誰か。働く人を派遣、パート、アルバイトなど非正規ワーカーに置き換え、使い捨て労働を蔓延させているのは誰か。大企業減税を行い、その穴埋めに消費税大増税を強行したのは誰か。
今日の国民の深刻な生活苦は、全てが自民党の経済失政の結果ではありませんか。総理にはその認識がありますか。あなたは岸田内閣の経済政策を引き継ぐと言いますが、こうした経済失政を引き継ぐおつもりですか。答弁を求めます。
大企業、大金持ち優遇から国民の暮らし最優先に、経済政策の大転換が必要です。三つの点に絞って具体的に提案いたします。
第一は、最低賃金を速やかに全国一律千五百円に引き上げることです。
最賃の大幅引上げのために不可欠なのが中小企業への社会保険料減免など直接支援ですが、総理は所信で一言も触れませんでした。直接支援は必要ないというお考えですか。日本共産党は、大企業の内部留保の増加分に時限的課税を行い、十兆円の税収を中小企業の賃上げ支援に充てる提案を行っていますが、この提案を受け入れる意思はありませんか。答弁を求めます。
第二は、賃上げと一体に、労働時間を短縮し、自由な時間を増やすことです。
日本の労働時間は、ヨーロッパの主要国に比べて年間で三百時間も長く、過労死がいまだに一大社会問題になっています。
こうした中、博報堂の行った若者調査では、今一番欲しいものとの問いに、一位はお金、二位は時間、三位は自由という結果が出ました。あるベビーシッター会社が、子育て中のお母さんを対象に、母の日のプレゼントに何が欲しいかのアンケートを行ったところ、断トツ一位は自分だけの時間でした。多くのお母さんが仕事と家事と育児に追われ、睡眠時間を削らざるを得ない現状にあるのであります。
総理は、自由に使える時間が欲しいという願いが国民の切実な願いであるという認識をお持ちですか。男性は仕事、女性は家事、こういう不平等を正し、ジェンダー平等の日本をつくるためにも、労働時間の短縮が必要だと考えますが、いかがですか。
こうした事態の抜本的打開のために、日本共産党は自由時間拡大推進法を提案しております。一日七時間、週三十五時間労働制に速やかに移行すること、この目標達成のために、政府に中小企業への支援、介護、教育、建設、運輸などの人手不足の分野で特別の対策を義務づけること、残業規制を強め、サービス残業を根絶することなどをパッケージで提案しております。
人間は、ただ働いて、食べて、寝るだけの存在ではありません。働く人が、人間らしい生活を営む収入とともに、余暇や趣味を楽しみ、豊かな教養に親しみ、家族と一緒の時間を大切にし、社会活動に取り組むための自由な時間を持つことができる社会こそ、本当に豊かな社会と言えるのではないでしょうか。総理に我が党の提案への見解を問うものです。
第三は、暮らしを支え、格差を正す、税金と財政の民主的改革です。
空前のもうけを上げている富裕層と大企業に応分の負担を求め、消費税を緊急に五%に減税する、インボイスは廃止する、これこそ物価高騰への最良の特効薬ではありませんか。
高齢者の負担を増やし、給付を減らすのは当たり前という冷酷な政治がまかり通り、高齢者の人権と尊厳が踏みにじられている現実は、本当に異常です。老人福祉法は、「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として、かつ、豊富な知識と経験を有する者として敬愛されるとともに、生きがいを持てる健全で安らかな生活を保障されるものとする。」と定めています。総理、この基本理念に立って、年金、介護、医療の充実を図ることこそ、政治の使命ではありませんか。
大学の学費値上げが一大社会問題になっています。今でも異常に高い学費を更に値上げなど、とんでもありません。高等教育への公的負担を大幅に増やし、学費値下げに踏み出し、学費ゼロの社会をつくるために、本気で政治の責任を果たすべきではありませんか。答弁を求めます。
日米軍事同盟絶対の政治を続けていいのかが問われています。
この間、集団的自衛権の行使容認、長射程ミサイルの配備、GDP比二%への大軍拡、武器輸出の解禁など、憲法九条の下でできないとされてきたことが次々と強行されています。それらの全てで、日米同盟の強化が最大の理由とされています。
日米同盟の四文字を聞くと思考停止に陥ってしまう政治が、今、日本の政界を覆っています。日米同盟のためにといって、日本国憲法を平気でじゅうりんする。日米同盟のためにといって、核兵器禁止条約に背を向け、果ては核共有、米国と核のボタンを押すことを共有するなどという被爆国の首相にあるまじき恥ずべき主張を行う。日米同盟のためにといって、沖縄県民の民意を踏みつけにして辺野古新基地建設を押しつけ、少女への性暴力を隠蔽する。独立国にあるまじきこんな政治を続けていいのかを、私は総理に問いたいのであります。
日本が軍事同盟強化で構えれば、相手も一層の軍事力強化で構え、軍事対軍事の悪循環をひどくします。その先に決して平和は訪れません。日本共産党は、世界を対立するブロックに引き裂く軍事同盟強化に断固反対を貫きます。
世界を見れば、軍事同盟に頼らずに平和をつくる動きがあるではありませんか。ASEANは、域内で年間千五百回もの会合を持つなど、徹底した対話の積み重ねで東南アジアを平和の共同体に変えました。さらに、平和の流れを域外に広げ、ASEAN十か国プラス日本、中国、米国を含む八か国で構成される東アジア・サミットを強化して、東アジアの全体をASEANのような戦争の心配のない地域にする大構想を提唱しています。あれこれの国を敵視するブロック政治を排し、地域の全ての国を包摂した平和の枠組みを発展させようというのがその根本精神であります。
今、日本政府がなすべきは、ASEANと協力して東アジアに平和を構築する、憲法九条を生かした平和外交ではないでしょうか。
総理の答弁を求めて、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 志位和夫議員の御質問にお答えいたします。
石川県能登の豪雨災害についてお尋ねがありました。
避難所におきましては、温かく栄養のある食事や、プライバシーを守るためのパーティション等を速やかに提供することが重要であると考えており、政府としても発災直後からこれに取り組んでおるところですが、改善が必要な点があれば早急に対応し、避難所の良好な生活環境を確保してまいります。
浸水被害を受けた仮設住宅につきましては、復旧費用の国庫負担などの支援を行うとともに、床上浸水被害を受けるなどした方々から御希望があれば、みなし仮設住宅など、代替となる住宅を提供してまいります。
昨週、策定を指示した総合経済対策と、その裏づけとなる補正予算において、能登の地震や豪雨からの復旧復興にも対応することとなりますが、予備費の活用により、更に迅速な対応が可能となります。一般予備費の残額が六千百十八億円あることから、十月中旬を目途に、追加の予備費措置を講ずることといたします。切れ間なく、迅速に被災地の支援を行ってまいります。
旧優生保護法の対応についてお尋ねがありました。
旧優生保護法に係る新たな補償の仕組みにつきましては、まさに先ほど議員立法として可決をされました。
この法律案において、国は、旧優生保護法に基づく優生手術等が行われた原因及び再発防止措置の検証等を行うこととされており、国会とも御相談しながら、適切に対応いたしてまいります。
また、政府において、原告団等との定期的な協議を行うとともに、当事者の方々から御意見を伺いながら、障害者に対する偏見、差別、優生思想の根絶に向け、政府一丸となって取り組んでまいります。
今般の解散についてのお尋ねがありました。
この度新内閣が発足したため、できる限り早期に国民の皆様方の御判断をいただくことが重要だと考えております。
一方で、総選挙に向けては、国民の皆様方に御判断をいただける材料を真摯に提供することも重要です。引き続き、私が自分自身の言葉で語り、誠心誠意、国民の皆様方に御判断をいただくための材料をお示ししてまいります。
自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載の問題に関する認識についてお尋ねを頂戴いたしました。
政治資金が政治資金規正法にのっとって取り扱われるべきことは当然であります。政治資金は民主主義の重要な構成要素であり、その運用に疑義が生じ、国民の信頼が失われれば、民主主義の基盤が揺らぐことにもなりかねません。今回の一連の事態が生じましたことについては、自民党として真摯に反省しなければならない重大な問題と認識しており、改めて国民の皆様方に深くおわびを申し上げます。
私が代表を務めていた水月会の政治資金収支報告書についてお尋ねがありました。
お尋ねにつきましては、政治資金パーティーのパーティー券を複数の議員から購入いただき、支払い額の合計が二十万円を超えていた政治団体について、水月会の事務局側での確認漏れがあり、当該団体のパーティー券の支払い総額の記載に誤りが生じたものであります。
なお、収支報告書には、政治資金パーティーの収入総額に加えて、その内訳として、パーティー券の支払い額が二十万円を超えたものの支払い額も記載することとされているところ、この度記載の誤りがあったのは内訳の金額であり、収入総額の誤りは確認をされておりません。
水月会自体は既に解散をしておりますが、訂正可能な過去の収支報告書につきましては、既に訂正手続を行ったところであります。
企業・団体献金の禁止及び政党助成制度の撤廃についてお尋ねを頂戴いたしました。
企業・団体献金につきましては、さきの通常国会において各党各会派による様々な議論がなされた結果、見直しは行われなかったものと承知をしております。
また、政党助成制度につきましては、政治改革について議論を積み重ねた結果、政党の政治活動の経費を国民全体で御負担していただくこととなったものであり、民主主義の発展に重要な意義を持つものであると認識をしております。
経済政策についてのお尋ねがございました。
大胆な金融緩和を含むアベノミクスは、デフレでない状況をつくり、GDPを高め、雇用の拡大などにもつながりました。こうした成果の上で、岸田内閣の新しい資本主義の取組が、五・一%の賃上げ、名目百兆円超の設備投資などの成果につながったものと認識をいたしております。
非正規雇用労働者の増加につきましては、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方として増加してきた面もある一方で、不本意ながら非正規雇用で働いておられる方々に対して正社員への転換の支援等に取り組んできたところであり、いわゆる不本意非正規雇用労働者の割合は減少してきております。
消費税につきましては、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられておりますため、これが法人税減税を穴埋めしたという御指摘は当たらず、税率を引き下げることは考えておりません。
今後は、岸田内閣が進めてきた取組を着実に引き継ぎ、更に発展、加速をさせてまいります。デフレ脱却を最優先に実現するため、経済あっての財政との考え方に立った経済財政運営を行い、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済、財政をつくってまいります。
最低賃金の引上げに向けた方策についてお尋ねを頂戴いたしました。
最低賃金につきましては、適切な価格転嫁と生産性向上支援により最低賃金を着実に引き上げ、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けてまいります。
他方、社会保険料減免などの直接支援につきましては、社会保険料が医療や年金の給付を通じて労働者を支えるための事業主の責任であり、働く人の健康保持や労働生産性の増進を通じ事業主の利益にも資するものであること、また、内部留保の課税につきましては二重課税に当たるとの指摘もあることから、いずれも慎重な検討が必要であると考えております。
ジェンダー平等のための労働時間短縮についてのお尋ねをいただきました。
我が国では依然として家事、育児の多くを女性が担っているという現状があり、その改善に向けましては、社会の意識改革とともに、男性も含めて労働時間の短縮に取り組むことも必要と考えております。
このため、短時間勤務の活用や、生活時間、睡眠時間を確保する勤務間インターバル制度の導入促進を含め、働き方改革を強力に推し進めてまいります。
御党御提案の自由時間拡大推進法についてのお尋ねをいただきました。
付加価値を最大化し、より少ない労働時間でより多くの賃金を得ることができるようにしていくことは、私も重要であると考えております。
他方、御党の御提案につきましては、残業の上限の規制に例外を認めていないなど、具体的な実現の手法や可能性の面で課題が多いと認識をいたしております。
短時間勤務の活用や、生活、睡眠時間を確保する勤務間インターバル制度の導入促進などの働き方改革を強力に推し進めてまいります。
物価高騰対策としての消費税引下げとインボイス制度の廃止についてであります。
物価上昇を上回って賃金が上昇し、設備投資が積極的に行われる、成長と分配の好循環が回り出すまでの間、足下で物価高に苦しむ方々への支援が必要です。当面の対応として、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向けの給付金や、地域の実情に応じたきめ細かい対応のための重点支援地方交付金を始め、総合的な対応を図ります。
消費税につきましては、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。
インボイス制度につきましては、複数税率の下での課税の適正性を確保するために必要な制度であり、廃止することは考えておりません。
インボイス制度に対する御不安、御懸念を抱いておられる方もいらっしゃいます。そのような不安等に対しまして、税負担や事務負担を軽減する二割特例等を周知いたしますとともに、事業者からの御相談に引き続き丁寧に対応いたしてまいります。
年金、介護、医療の充実についてお尋ねをいただきました。
社会保障制度は、様々な境遇にある国民の皆様のためのセーフティーネットであり、年金、介護、医療などの社会保障全般を見直し、国民の皆様に安心していただける制度を確立していく必要があります。
政府としては、全ての世代の方がその状況に応じて支え合い、必要な支援が必要な方に適切に提供される全世代型社会保障の構築に取り組んでまいります。
高等教育費負担の軽減についてお尋ねがありました。
高等教育費につきましては、本年度から、授業料の減額等の対象を多子世帯の中間層等に拡充、令和七年度から、無償化の対象となる多子世帯の所得制限をなくすことといたしており、まずはこうした拡充を着実に実施に移してまいります。その上で、教育の機会均等や少子化対策の観点から、その効果を見定めつつ取り組んでまいります。
日米同盟に関するお尋ねを頂戴いたしました。
日米同盟は、日本外交、安全保障の基軸であり、インド太平洋地域と国際社会の平和と繁栄の基盤です。その上で、日米安全保障、防衛協力について、我が国としての取組は憲法や国際法の範囲内で行われるものであり、平和国家として専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にはならないとの基本方針は、今後もいささかも変わるものではございません。
核共有についても御指摘がありましたが、非核三原則を政策上の方針として堅持をいたしており、これを見直すような考えはございません。
我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器のない世界の実現に向けて、引き続き、現実的かつ実践的な取組を継続、強化していく考えであります。
世界で最も危険と言われる普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると存じます。辺野古移設が唯一の解決策であるという方針に基づき、着実に工事を進めていくことが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながると考えております。沖縄の基地負担軽減を図るため、全力で取り組んでまいります。
米軍人等による事件、事故は、地元の皆様方に大きな不安を与えるものであり、あってはならないものと認識をいたしております。今後も、事件、事故防止の徹底を米側に求めてまいります。
地域の平和に向けたASEANとの協力についてお尋ねがありました。
アジアでは、ASEANが地域協力の中心として重要な役割を担っており、米中ロも参加する多層的な地域協力枠組みがございます。
我が国としては、引き続き、こうした枠組みへの積極的な参画及びその強化に取り組み、地域の安全と安定を一層確保するための取組を主導してまいります。
以上であります。(拍手)
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○副議長(海江田万里君) 玉木雄一郎君。
〔玉木雄一郎君登壇〕
○玉木雄一郎君 国民民主党代表の玉木雄一郎です。(拍手)
まず、石破新総理に対して、就任のお祝いを申し上げたいと思います。
ただ、一方で、先週の所信表明演説、そして今日の答弁をずっと聞いておりまして、極めて残念です。あさって解散する。しかも、内外に重要な課題を抱えている中で、この議場自体に緊張感がないと思います。総理にも、是非真剣に、熱意を持って答弁をいただくことを冒頭お願い申し上げたいと思います。
石破カラーがなくなっているんじゃないでしょうか。完全に脱色されていると思います。納得も共感も感じることはできませんし、多くの国民がそう感じているはずです。石破内閣に対する期待は、今、急速に失望に変わりつつあるのではないでしょうか。
先週、総理が行かれる前日に、私も能登の被災地に行ってまいりました。地震と豪雨の二重被災で苦しんでいる方がたくさんいらっしゃいました。まだまだ復旧復興はこれからです。
選挙事務に携わる自治体職員だって被災者です。輪島市長さんも口を濁しておられましたけれども、選挙準備も大変そうでした。投票所になる施設が避難所になっているところがたくさんあります。
そんな状況の中で、補正予算も編成しないどころか、被災地に更に負荷をかける急な選挙です。どれほど耳触りのいい言葉を使っても、やっていることは党利党略、選挙のため。とても能登の被災地に寄り添っているとは言えません。今、最大の支援策は、選挙を延期することではないですか。石破総理、目を覚ましてください。そう申し上げて、質問に入ります。
能登は優しや土までもという言葉があります。しかし、政治がその優しさに甘えてどうするんでしょうか。政治の役割は、苦しんでいる国民の命と生活を守ることではありませんか。今、石破総理がやっていることは、早期の解散で、自民党議員の皆さんの政治生命と生活を守ることにすぎません。今こそ、政治にしか果たせない役割を果たすべきです。最大限の優しさをもって能登に寄り添うべきではありませんか。
改めて、石破総理にお願いです。補正予算を組んで、能登の被災地対策に万全を期すことを求めます。被災用に組んだ基金も、資材価格の高騰で必ずしも十分ではないという声を聞きました。豪雨災害には使えない、そういった制約もあると聞きました。予算委員会を開いて、補正予算を成立させようではありませんか。
そもそも、ルールを守る自民党を訴えて総裁になったのに、国会で総理に指名される前に解散宣言するなど、憲法が定める統治の基本ルールを総理は無視しました。
石破総理は、令和二年七月の講演で、憲法論から七条解散はすべきではないとおっしゃっていましたが、総理、あさってにも断行されようとする解散は何条に基づくものですか。政府統一見解をお示しください。七条解散であれば、七条解散はすべきではないという前言を撤回するのか、明確にお答えください。
石破総理、言ったこととやっていることが違っています。自民党を変える前に御自身が変わってしまったのではないですか。その自覚はございますか。予算委員会を開くと言ったのに、その前言を翻して解散・総選挙を行うことについて、石破総理は、申し訳ない気持ちや恥ずかしいという気持ちはありますか。率直な思いをお聞かせください。
総理は納得と共感の政治を強調しますが、選挙を有利に進めたい自民党議員の皆さんの納得と共感は得られても、国民の納得も共感も得られないでしょう。今の石破総理は、言行不一致、信頼されない政治家そのものになっています。自民党の裏金問題で傷ついた政治への信頼を取り戻すことを期待されて誕生した石破政権が、新たな政治不信をつくり出してどうするんですか。石破総理、目を覚ましてください。
自民党の裏金問題について伺います。
自民党が二月に報告書をまとめました。その十ページ目には、裏金について、政治活動費以外に用いた、又は、違法な使途に使用したと述べた者は一人もいなかったと記載されています。しかし、公職選挙法違反で東京地検特捜部に強制捜査を受けた安倍派の元議員、堀井学さんですが、派閥から還流された裏金数百万円をスーツ代やサウナ利用料などに私的に流用したと特捜部に証言しています。これは新たな事実です。
さらに、調査報告書では裏金がなかったとされた麻生派についても、閣僚経験者の麻生派元議員が二〇一七年以前の裏金づくりを証言しています。これも新たな事実です。
石破総理は、総裁選中に、あるいは総理就任会見で再三、新しい事実が出てくれば再調査をするとおっしゃっていましたが、今指摘した私的流用と報告書にない裏金という新しい事実について、総理の認識をお聞かせください。二月のいいかげんな自民党の調査をやり直すべきではありませんか。
裏金議員の公認問題についても伺います。
石破総裁は、昨日になって、裏金議員のほとんどを公認すると発表しました。一部議員の比例との重複立候補を認めないとはいえ、政治資金規正法というルールを守らなかった裏金議員を小選挙区で公認するということは、自民党として、ふさわしい候補者であると公式に認めるということでよろしいでしょうか。ルールを守る自民党は早速撤回されたんでしょうか。総裁として伺います。
次に、政策について伺います。
所信には、石破総理一番の肝煎りであるアジア版NATOの言及が全くありません。これはなぜですか。その程度の政策なんでしょうか。
NATOは、まさに集団的自衛権を行使する枠組みです。仮にNATOと同じような枠組みをアジアでつくるなら、フルスペックの集団的自衛権の行使をするための憲法改正が不可欠です。しかし、今の自民党の改憲案は、九条の解釈を変えずに、自衛隊を明記するだけであって、不十分です。
石破総理の訴えるアジア版NATOの実現には、憲法九条二項の削除など本格的な憲法改正が必要だと考えますが、自民党総裁としての見解を求めます。ごまかさずにお答えください。
所信には、日米地位協定の見直しについての言及も全くありませんでした。早くも諦めたんでしょうか。いつ頃までに実現するつもりなんでしょうか。
また、石破総理は、自衛隊の訓練基地を米国グアムに置くとの構想も打ち出しておられますが、自衛隊員が海外で起こした過失致死や業務上過失致死など、過失犯を裁く規定が日本の国内法にはありません。国内法の不備を埋めずに自衛隊の海外基地を構想しても、まさに絵に描いた餅です。
石破総理、国内法に国外過失犯の処罰規定を早急に整備するお気持ちはありますか。お答えください。
拉致問題について伺います。
東京と平壌に連絡事務所を設けることで、具体的にどのように拉致問題解決につながるんですか。その道筋を教えてください。北朝鮮に利用されるだけになるのではないでしょうか。家族会も、時間稼ぎに使われるおそれがあると反対をしています。明確にお答えください。
経済政策について伺います。
国民民主党は、手取りを増やす経済政策を公約に掲げました。その柱の一つは、所得税の恒久減税です。インフレで生活コストが上がっています。アメリカも物価上昇に合わせて所得税の標準控除を引き上げていますが、我が国も、所得税の基礎控除や給与所得控除を引き上げ、最低賃金の上昇率などを勘案して、百三万円から百七十八万円に引き上げることを我々は提案しています。いわゆる年収の壁の解消にもつながります。
岸田内閣の行った一回きりの定額減税は、事務負担ばかり増えて、効果が極めて限定的でした。石破内閣で、我々国民民主党が主張している所得税の基礎控除等の引上げを行い、家計をインフレから守るべきではありませんか。
また、子育て支援を強化するため、年少扶養控除を復活すべきです。かつて野党時代の自民党の公約にも掲げられていましたが、復活させるつもりはありませんか。
子育て、教育、科学技術は、まさに人への投資です。
所信で総理がおっしゃった、人づくりこそ国づくりは、まさに、国民民主党の前回の衆議院選挙、前回の参議院選挙の公約です。我々は、その財源として、使い道を限定した教育国債を発行し、教育、科学技術予算の来年度からの倍増を提案しています。総理、いかがでしょうか。逆に、教育国債の発行以外に、子育て、教育、科学技術の予算を速やかに倍増させる方策があれば教えていただきたい。まねをするなら、見出しだけでなく、中身もまねしていただきたいと思います。
国民民主党は、教員や自衛官など、人材不足が生じている公務の分野に就職した場合には、奨学金の返済を免除することを提案しています。石破内閣で取り入れてはいかがでしょうか。
会計検査院から無駄遣いを指摘されているガソリンの補助金については、いつまで続けるんでしょうか。来年一月以降はどうするつもりでしょうか。同じ政策効果なら、無駄の出ないガソリン減税でやるべきではないでしょうか。
国民民主党は、トリガー条項の発動と自動車関連税制の抜本改革で、ガソリンをリッター二十五円十銭減税し、消費税とガソリン税の二重課税も廃止します。
電気代、ガス代の補助は、酷暑乗り切り緊急支援と名前が変わりましたが、十一月以降も続けますか。上がっているのは電気代ではなく、電気代に上乗せされている再エネ賦課金です。国民民主党が主張するように、再エネ賦課金の徴収をやめて、電気代を引き下げるべきではありませんか。
原子力発電所を稼働することが、安価で安定的な電力供給には欠かせません。最大限活用することを我々国民民主党も賛成し、推進していますが、石破総理は総裁選中に、原発利用はゼロに近づける、すなわち原発ゼロの方針を主張していました。武藤経産大臣は二日の就任会見で、今は訂正されていると承知しているとのことですが、総理はいつ変節したんでしょうか。理由を併せてお聞かせください。
国民が物価高で苦しむ一方、国は過去最高の税収を毎年更新しています。国民民主党は、実質賃金が安定的にプラスになるまで、時限的に消費税を一律五%に減税することを提案しています。インボイスも要らなくなりますし、即効性のある物価高騰対策になるのですが、採用していただけないでしょうか。
国民民主党は、現役世代の社会保険料を軽減し、地域医療を持続可能なものにするため、十策にわたる具体的な医療制度改革を提案しています。しかし、総理所信には、具体的な社会保障制度改革について何も述べられませんでした。私たち国民民主党は、公的保険の給付範囲の見直しとともに、終末期医療の見直しについても提案しています。家族会議の制度化など、尊厳死の法制化も検討すべきと考えますが、石破総理の考えを伺います。
農政について伺います。
現場に不安の広がっている水田活用直接支払交付金の五年の水張り要件は撤廃すべきではありませんか。
また、石破総理は米の生産調整をやめると主張されていますが、転作奨励もやめるべきだとお考えですか。ここは明確にお答えください。
生産調整をやめて価格のコントロールをやめるなら、営農継続可能な所得を国が補償する直接支払い制度が不可欠です。国民民主党は食料安保基礎支払いの創設を提案していますが、米にも何らかのゲタ政策、直接支払い政策が必要ではありませんか。総理の見解を伺います。
最後に、国民の皆さんに訴えます。
国民民主党は、旧文書交通費の公開と政策活動費の廃止を昨年から実施している唯一の政党です。対決より解決、政策にこだわる政党だからこそ、政治と金の問題には厳しく向き合い、自らも身を律してきたのが国民民主党です。
私たちが目指す社会は極めてシンプルです。それは、頑張って就職して真面目に働いたらちゃんと給料が上がる、望めば結婚も子供を持つこともできる、そんな当たり前の幸せをつかむことができる社会を取り戻したいんです。そのために、国民民主党は、手取りを増やす経済政策を進めてまいります。現役世代の給料や手取りが増えれば、年金も確実に増えます。
国の税収は四年連続で過去最高、先月の税収も昨年同月に比べて二六%も増えています。また、外為特会を始めとした税外収入も円安、株高の影響で増え、今、国が賃上げ、インフレ、円安の勝ち組になっています。しかし、政治の役割は国の懐を豊かにすることではありません。政治の役割は国民の懐を豊かにすることです。予定より増えた税収を減税などで適切に還元するなど、国民の手取りを増やす経済政策を国民民主党は進めていきます。
私たち国民民主党が議席を増やせば、皆さんの手取りと年金が確実に増えます。政治家の保身や利権のための古い政治ではなく、広く生活者、納税者、働く者の立場に立った新しい政治を始めていこうではありませんか。さあ、皆さん、新しい政治を国民民主党と一緒に始めていきましょう。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 玉木雄一郎議員の御質問にお答えを申し上げます。
能登地域の災害への予算面での対応についてお尋ねをいただきました。
今般策定することといたしております経済対策の裏づけとなる補正予算においては、能登地域の災害からの復旧復興にも対応することといたしております。一方で、予備費であれば更に迅速な対応ができること、一般予備費に十分な残額があることを踏まえ、予備費も活用して切れ目なく被災地の支援を行うことにより、能登地域の早期の復旧復興に向けた対応に万全を期してまいる所存であります。
解散についてのお尋ねをいただきました。
内閣は、憲法第六十九条の場合に典型的に表れておりますように、国政上の重大な局面等において主権者たる国民の意思を確かめる必要があるような場合には、衆議院の解散権を行使することができると考えております。その法的根拠としては憲法第七条の規定であり、今般表明した衆議院の解散につきましても、同様に考えております。
衆議院解散権の行使につきましては、その濫用を慎むべきことは言うまでもありませんが、今回、新しい内閣が発足したことに伴い、国民の御意思を確かめる必要があるとの観点から、衆議院の解散を行うとの判断をいたしました。
今般の解散についてのお尋ねであります。
この度、新内閣が発足したため、できる限り早期に国民の皆様方の御判断をいただくことが重要だと考えております。
一方で、総選挙に向けては、国民の皆様方に御判断をいただける材料を真摯に提供することも重要です。引き続き、自分自身の言葉で語り、誠心誠意、国民の皆様方に御判断いただくための材料を提供いたしてまいります。
自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載の問題等に関する認識と再調査についてのお尋ねをいただきました。
自民党における旧派閥の政治資金収支報告書の不記載に関する一連の問題につきましては、御指摘があった公職選挙法違反の件も含め、第三者である検察による厳正な捜査が行われ、法と証拠に基づき、刑事事件として取り上げるべきものは立件されてきたものと承知をいたしております。
また、様々な報道等があることを承知しておりますが、自民党における外部の弁護士を交えた聞き取り調査などでは、捜査権がなかったり、書類の保存期間を経過していたりという制約の中でも、可能な限りの事実関係の把握、解明の努力が進められてきたものと認識をしております。
国民の信頼を回復するために今後更に行うべきことにつきましては、これまでの取組の経緯等を踏まえつつ、適切に判断をいたしてまいります。
政治資金収支報告書に不記載があった議員の公認の方針等についてのお尋ねをいただきました。
公認につきましては、昨日、自民党総裁として公表したところでありますが、自民党党則における選挙における非公認よりも重い処分を受けた者などは非公認とし、その他の不記載があった議員についても、比例名簿には登載しないこととするとの方針を示したところであります。
具体的に誰を公認するかにつきましては、選挙対策本部において、各選挙区の事情、当選の可能性などを踏まえ、適切に判断をいたしていくことになります。
このような厳しい姿勢で臨むことにより、ルールを守る自民党を確立いたしてまいります。
アジア版NATOについてのお尋ねをいただきました。
アジア版NATOにつきましては、これまで、私自身、一国会議員としての考え方を累次申し述べてまいりました。これは、一朝一夕で実現するとは思っておりません。一国の総理大臣として、まずは喫緊の外交、安全保障の課題等に取り組んでいく必要があると考えております。
同盟国、同志国間のネットワークを有機的、重層的に構築し、抑止力を強化する観点から検討し、対応いたしてまいりますが、具体的な態様につきまして予断を持ってお答えすることは差し控えてまいります。
日米地位協定改正及び国外犯処罰規定の整備についてのお尋ねをいただきました。
日米地位協定に関しましても、これまで、私自身の一国会議員としての考えを累次述べてまいりましたが、これも一朝一夕で実現するとは思っておりません。一国の総理大臣として、まずは喫緊の安全保障上の課題に取り組んでいく必要があると考えております。
日米同盟の抑止力、対処力を強化するとともに、その強靱性、持続性を高めていくとの観点から、検討し対応いたしてまいります。
自衛隊の国外犯処罰規定につきましては、海外における自衛隊の活動が一層増加、多様化していることを踏まえ、その過失行為に係る処罰規定の在り方について検討を進め、成果を得たいと考えております。
東京と平壌における連絡事務所についてお尋ねがございました。
我が国の北朝鮮に対する基本方針は、日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を実現するというものであります。
とりわけ、拉致被害者やその御家族も御高齢となる中で、時間的制約のある拉致問題は、ひとときもゆるがせにできない人道問題であるとともに、その本質は国家主権の侵害であり、政権の最重要課題であります。
御質問の点も含め、今後の対応について具体的にお答えをすることは差し控えますが、全ての拉致被害者の一日も早い御帰国を実現するとともに、北朝鮮との諸問題を解決するため、私自身の強い決意の下、総力を挙げて取り組んでまいります。
基礎控除等の引上げ及び年少扶養控除の復活についてお尋ねをいただきました。
基礎控除等の引上げは、何年も物価上昇や構造的賃上げが継続的に持続する局面においては検討課題となり得るものでありますが、我が国経済は、現時点では、デフレを脱却できるかどうかの瀬戸際にいるものと認識をいたしております。物価高の影響を特に受ける低所得者世帯向け給付金などにより、足下で物価高に苦しむ方々への支援をきめ細かく行うとともに、物価上昇を上回って賃金が上昇するといった成長と分配の好循環を実現していくことが重要であると考えております。
年少扶養控除の復活につきましては、児童手当の抜本的拡充など、主として歳出面で前例のない規模で子供、子育て政策の強化を図っておるところであり、検討課題とはいたしておりません。
教育、科学技術予算と奨学金の返済免除についてお尋ねを頂戴いたしました。
人的資源への最大限の投資を行い、あらゆる人が最適な教育を受けられる社会を実現するとともに、科学技術、イノベーションを推進し、日本経済の活性化と成長を加速させるため、必要な教育、科学技術予算を措置してまいります。
一方で、教育国債につきましては、安定財源の確保や財政の信認確保の観点から、慎重に検討する必要があると考えております。
奨学金の返還免除につきましては、教職の高度化を図る観点から、教師について、令和七年度より教職大学院修了者等に限り免除することといたしておりますが、他の分野については、返還を完了した方との公平性や職業間の公平性等の観点から、慎重な検討が必要であると考えております。
燃料油及び電気・ガス料金に係る補助等についてお尋ねをいただきました。
燃料油の激変緩和対策につきましては、年内に限って支援を継続することとされ、岸田前総理は、経済対策の策定と併せて、骨太二〇二四を踏まえ、早期の段階的終了に着手すべく取り組むと表明しております。
電気・ガス料金につきましては、酷暑乗り切り緊急支援として、八月から十月の使用分に限って支援を実施しており、十月末で終了することといたしております。
エネルギーコストを含めた物価高対策につきましては、状況を丁寧に見極めながら、低所得世帯向けの給付金や重点支援地方交付金を含め、今後、経済対策について議論していく中で、総合的に検討いたしてまいります。
御指摘の揮発油税の減税につきましては、ガソリン等の流通現場や国民生活に混乱を与えないようにするといった実務面の課題、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情等を踏まえる必要があり、税率を引き下げることは考えておりません。
また、再エネ賦課金につきましては、カーボンニュートラルを実現する観点から、国民負担を抑制しつつ、再エネの最大限の導入を図ることが政府の基本方針として重要であります。引き続き、この方針に沿って、制度を着実に運用してまいります。
原子力発電所の利用に対する私の考え方についてお尋ねをいただきました。
AI時代の電力需要増加が見込まれる中、脱炭素化を進めながらエネルギー自給率を抜本的に高めるため、省エネルギーの徹底、再生可能エネルギーの拡大とともに、安全性の確保を大前提とした原子力発電の利活用も必要であります。
省エネや再エネの最大限の追求により、将来、結果として起こり得るとしても、原発のウェートを減らすことが目的ではなく、使える技術は全てを使い、可能性を最大限に引き出しながら、日本経済をエネルギー制約から守り抜くという私の考えは、一貫しておるものでございます。
消費税率の引下げについてのお尋ねをいただきました。
消費税につきましては、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられており、その税率を引き下げることは考えておりません。
一方で、今後、経済対策を早急に策定し、足下で物価高に苦しむ方々に対しての支援を行うとともに、成長分野に官民挙げての思い切った投資を行い、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現を図ってまいります。
尊厳死の法制化についてお尋ねを頂戴いたしました。
いわゆる尊厳死につきましては、国民の生命観や倫理観に関わる問題であり、法律に定めるかどうかも含めて、幅広く国民の間で議論がなされるべきものであると考えております。
政府としては、これまで尊厳死を定める法律案の検討は行ってはおりませんが、人生の最終段階の医療、ケアについて、本人が家族等や医療、ケア関係者と繰り返し話し合うプロセスが重要であると考えており、その普及啓発に取り組んでまいります。
水田活用の直接支払交付金と米に対する直接支払い制度等についてお尋ねを頂戴いたしました。
議員御指摘の交付金要件の見直しは、本交付金が水張りの機能を有する水田を活用した生産を支援するものであることを明確にするものであり、適切なものであると考えております。
輸入に依存する麦、大豆等の生産支援につきましては、主食用米の需要が減少を続ける中、必要なものと考えております。
また、所得を補償する政策は、農業者の創意工夫や日々の努力にブレーキをかけ、また、農地の集積、集約化が進まなくなるおそれがある等の指摘もございます。
新たな食料・農業・農村基本計画を今年度中に策定することといたしており、米政策につきましても、関係者の御意見をよく伺いながら、方向性を示してまいります。
以上であります。(拍手)
○副議長(海江田万里君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。
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○副議長(海江田万里君) 本日は、これにて散会いたします。
午後五時五十三分散会
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出席国務大臣
内閣総理大臣 石破 茂君
総務大臣 村上誠一郎君
法務大臣 牧原 秀樹君
外務大臣 岩屋 毅君
財務大臣 加藤 勝信君
文部科学大臣 あべ 俊子君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
農林水産大臣 小里 泰弘君
経済産業大臣 武藤 容治君
国土交通大臣 斉藤 鉄夫君
環境大臣 浅尾慶一郎君
防衛大臣 中谷 元君
国務大臣 赤澤 亮正君
国務大臣 伊東 良孝君
国務大臣 伊藤 忠彦君
国務大臣 城内 実君
国務大臣 坂井 学君
国務大臣 平 将明君
国務大臣 林 芳正君
国務大臣 三原じゅん子君
出席内閣官房副長官
内閣官房副長官 橘 慶一郎君
出席政府特別補佐人
内閣法制局長官 岩尾 信行君