衆議院

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第5号 令和6年12月9日(月曜日)

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令和六年十二月九日(月曜日)

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 議事日程 第五号

  令和六年十二月九日

    午後一時開議

 一 国務大臣の演説

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本日の会議に付した案件

 加藤財務大臣の財政についての演説及びこれに対する質疑


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    午後一時二分開議

議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説

議長(額賀福志郎君) 財務大臣から財政について発言を求められております。これを許します。財務大臣加藤勝信君。

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 先に閣議決定いたしました国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策を受けて、今般、令和六年度補正予算を提出することといたしました。その御審議をお願いするに当たり、補正予算の大要について御説明申し上げます。

 日本経済は、三十三年ぶりの高水準の賃上げ、名目百兆円超の設備投資、名目六百兆円超のGDPを実現するなど、前向きな動きが見られます。この好循環を後戻りさせることなく、デフレ脱却を確かなものとし、新たな経済ステージへの移行を実現していく必要があります。

 こうした認識の下、十一月二十二日に、国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策を閣議決定いたしました。

 総合経済対策は、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済の実現、そして、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を確実なものとすることを目指すためのものです。

 具体的には、第一に、全ての世代の現在、将来の賃金、所得を増やす日本経済、地方経済の成長、第二に、誰一人取り残されない形で、成長型経済への移行に道筋をつける物価高の克服、第三に、成長型経済への移行の礎を築くための国民の安心、安全の確保に取り組んでまいります。

 その上で、今後の経済財政運営に当たっては、経済あっての財政との考え方の下、力強く経済再生を進める中で、財政健全化も実現し、経済再生と財政健全化の両立を図ってまいります。

 次に、総合経済対策の実行等のために今国会に提出いたしました令和六年度補正予算の大要について申し述べます。

 一般会計におきましては、歳出において、総額で約十三兆九千四百億円を計上しております。

 その内容としては、総合経済対策に基づき、日本経済、地方経済の成長のための経費として約五兆七千五百億円、物価高の克服のための経費として約三兆三千九百億円、国民の安心、安全の確保のための経費として約四兆七千九百億円を計上しております。このほか、国債整理基金特別会計への繰入として約四千三百億円、地方交付税交付金として約一兆四百億円、その他の経費として約一千八百億円を計上するとともに、既定経費を約一兆六千三百億円減額しております。

 歳入においては、税収について、最近までの収入実績等を勘案して約三兆八千三百億円の増収を見込んでおります。また、税外収入について、約一兆八千七百億円の増収を見込むほか、前年度剰余金約一兆五千六百億円を計上しております。

 以上によってなお不足する歳入について、公債を約六兆六千九百億円発行することとしております。

 この結果、令和六年度一般会計補正後予算の総額は、一般会計当初予算に対して歳入歳出ともに約十三兆九千四百億円増加し、約百二十六兆五千二百億円となります。

 また、特別会計予算につきましても、所要の補正を行っております。

 財政投融資計画につきましては、総合経済対策を踏まえ、日本経済、地方経済の成長、国民の安心、安全の確保等の取組を推進するため、約一兆一千二百億円を追加しております。

 以上、令和六年度補正予算の大要について御説明申し上げました。

 我が国の経済は、回復に向けての兆しが見られており、これを確かなものとし成長型経済を実現する好機を迎えております。日本を守り、国民を守り、地方を守り、若者、女性の機会を守り、全ての国民が安心と安全を感じられる未来を創っていくため、本補正予算の一刻も早い成立が必要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)

     ――――◇―――――

 国務大臣の演説に対する質疑

議長(額賀福志郎君) これより国務大臣の演説に対する質疑に入ります。酒井なつみ君。

    〔酒井なつみ君登壇〕

酒井なつみ君 立憲民主党・無所属の酒井なつみです。

 ただいま議題となりました財政演説に対して、会派を代表して質問いたします。(拍手)

 私は、がんの闘病をきっかけに政治の道へ進み、江東区議会議員を経て、今年四月に衆議院議員となりました。前職は助産師、看護師で、十二年間、医療現場で勤めてまいりました。七歳の娘を育てる一児の母であり、衆議院議員のうち三十代は五%しかいないことからも、若者、現役世代、女性や母親を代表して論戦に臨みます。先週の予算委員会同様、石破総理御自身のお言葉で答弁をしていただけたらと思います。

 まず、政治改革について伺います。

 十二月五日の予算委員会において、野田代表の、企業・団体献金禁止をいつまでに結論を出すのかとの質問に対し、議論の熟度を上げると発言しましたが、熟議と公開の国会とは、議論引き延ばしという意味ではありません。引き延ばしではない、密度高い徹底審議と、議論の経緯が国民に見える公開が必要です。政倫審も公開で行うべきではないでしょうか。

 政治改革の内容についても、非公開の要配慮経費などない一切の政策活動費を禁止する法案を六会派共同で提出しましたので、石破総理・総裁のリーダーシップで成立させていただきたいと存じます。

 加藤財務大臣に伺います。

 加藤財務大臣の政治団体が令和四年と五年に開いた七回分のパーティー券収入のうち、三千八百五十万円分が減額修正されました。大臣は六日の会見で事務的なミスと説明しましたが、事務的なミスというには余りに大きな額です。なぜ減額をしたのか、お答えください。

 次に、補正予算編成について伺います。

 今回の補正予算案は総額十三・九兆円となり、昨年の十三・二兆円を上回りました。金額について、十月十五日、衆院選公示日に、石破総理は、昨年を上回る大きな補正予算を国民に問い、成立させたいと述べましたが、十二月二日の本会議では、必要な施策の積み上げの結果と答弁されています。既に十月十五日の時点で必要な施策の積み上げができていたのですか。お答えください。

 内閣府は、七月から九月期の日本経済の需要と供給の差は年間三兆円程度の需要不足と発表しています。これに比べて、今回の補正予算規模十三・九兆円は過大な財政出動ではありませんか。また、経済対策の三本柱のうちの一つは物価高対策にもかかわらず、需要増加によって物価が上昇するおそれがありませんか。伺います。

 続いて、能登の被災地支援について伺います。

 立憲民主党は、能登復興・物価高克服のための緊急総合対策を取りまとめ、十一月七日に発表しました。十一月十九日には、予算委員長、与野党の理事らで被災地を訪れ、石川県馳知事からも御要望をお聞きしています。

 十二月二日、石破総理は、豪雨による被災者にも地震と同様の各種支援を行うなど、御党が提案した施策についても講ずることとしたと答弁されました。立憲民主党の提案が一部実現に向かうことは評価しますが、不十分なところがあります。

 地震によって被災された方々の一部は、介護や医療を自己負担なく受けられたり、国民健康保険などの保険料、障害福祉サービスの利用料を減らしたり、免除されます。一方で、豪雨により被災された方は対象外となっており、利用者負担が生じています。豪雨により被災した方も各種支援を受けられるよう、国として支援すべきではありませんか。伺います。

 そのほか、被災地の近藤和也議員を中心にまとめた復旧復興策に盛り込まれた、特に以下の二点は実現をするべきです。

 住まいの再建を支援する被災者生活再建支援金の最高額を三百万円から六百万円へ引き上げること、及び、被災した高齢者による家財、自動車の再購入などを支援する地域福祉推進支援臨時特例給付金の六市町以外への対象拡大と年齢等の条件撤廃について、速やかに実現するべきではありませんか。お答えください。

 私も、十一月二十二日に被災地を訪れ、看護師、助産師として、市立輪島病院及び認知症グループホームで現場の声をお聞きしてまいりました。地元に戻りたい人のためにも懸命に働いていらっしゃいましたが、不安を抱え、疲弊する様子が見られました。特に、介護、福祉現場は職員不足が深刻で、長期的に人員派遣のできる仕組みの構築を求めています。また、被災地において他者へケアを提供する人に対する心のケアなどの支援も必要な状況です。石破総理、共に今すぐ対応をすべきではありませんか。お答えください。

 次に、物価高対策について伺います。

 政府は、物価高の克服として、住民税非課税世帯の約一千三百万世帯に新たに三万円を給付するとしていますが、対象が狭過ぎます。もっと拡大するべきではありませんか。子育て世帯に子供一人当たり二万円を加算するとしたこと自体は評価しますが、こちらも対象を広げるべきです。児童扶養手当を受給する一人親は、そのほとんどが働いていることから多くが給付対象外であり、その支援のために、立憲民主党は緊急総合対策で児童扶養手当の増額も提案しています。

 総理は十二月二日の本会議で、住民税非課税世帯以外の方々には、重点支援地方交付金を活用して自治体が行う物価高対策などを支援すると答弁されましたが、これでは自治体ごとにばらばらになってしまいます。子育て世帯への支援は、給付対象を児童扶養手当受給世帯にも広げるべきではありませんか。お答えください。

 政府は、電気・都市ガス代の支援を受け、今年五月で終了。その後、総裁選、衆院選の時期であった八月から十月に再開。そして、今回の補正予算でまた一月から再開としています。電気利用が増える夏の六、七月、冬の十一、十二月は支援されず、電気・ガス代は上がっています。まさに選挙目当ての対症療法ではないでしょうか。

 政府の対策は、細切れなだけでなく、電気等の使用量の多い高所得者ほど恩恵を受けます。それより、中低所得者の方々に一貫して継続的に別途支援をする方が適切ではありませんか。お答えください。

 次に、補正予算の具体的な項目について、まず防衛費です。

 昨年十一月二十七日、当時の岸田総理は、五年間で四十三兆円の方針について、円安の環境でも変わらないと答弁されています。この補正予算には、円安によって不足する外貨関連経費として三百八十億円が計上されています。

 一方で、四十三兆円の前提とも言える二〇二七年度までに防衛費をGDP比二%に引き上げることについて、十二月四日、毎日新聞のインタビューに長島首相補佐官は、安全保障の状況によってはもっと増額していく議論が必要になると発言されました。

 総理、五年間四十三兆円の防衛費総額は増やさない前提の予算ということでよろしいですか。明確にお答えください。

 次に、若者や現役世代の声を反映させる施策についてです。

 二〇二二年、立憲民主党は、国民民主党とともに保育士・幼稚園教諭等処遇改善法案を提出し、また、今般の緊急総合対策でも、保育士、幼稚園教諭とともに、放課後児童クラブに従事する放課後児童支援員の処遇改善を求めてきました。

 先般、政府が保育士等の人件費を人事院勧告に準拠して一〇・七%引き上げると発表したことは評価しますが、放課後児童支援員は対象外です。子供、子育て支援に関するエッセンシャルワーカーの処遇は全産業と比較し依然として低く、こちらも処遇改善の対象とするべきではありませんか。お答えください。

 学校給食費無償化についてです。

 今年六月、文部科学省の調査によれば、全国で約七割の自治体が実施されていません。石破総理は、十二月二日、野田代表の質問に対し、実態調査の結果も踏まえつつ、課題を整理してまいりますと答弁されていますが、課題整理はいつ終えるのですか。全国市長会、全国町村会等からも実現や具体的な方策を求められています。

 立憲民主党は、昨年、日本維新の会とともに学校給食無償化法案を提出し、今般の緊急総合対策で先行実施を提案しています。石破総理は、総裁選の公約で、手当より無償化の方向で支援の在り方を見直すとし、給食無償化を挙げていました。早急に課題を整理し、手当より無償化を来年度から実現すべきではありませんか。お答えください。

 官製婚活についてです。

 自治体が行う結婚支援、例えば、お見合いやマッチングアプリ、結婚支援コンシェルジュの配置など、いわゆる官製婚活は、国が税金を使って行うことなのでしょうか。本来、国が取り組まなければならないことは、結婚の障壁となり得る社会課題を取り除くことに集中することで、特に雇用や経済的な安定を実現していくことではありませんか。お答えください。

 最後に、選択的夫婦別姓の導入について伺います。

 民間における世論調査によれば、全世代で約七割が賛成しており、現役の大学、短大、専門学校生の女性では約九割が賛成です。

 十二月五日に、総理は、責任政党として答えを出さねばならないということは党内で共有をしたいと答弁されています。答えを出すために、反対をされていらっしゃる方は、これから結婚を希望する若者の声を聞くべきではありませんか。特に、女性の声や旧姓とのダブルネームで困っている方の声を聞かれた上で、速やかに検討、決断をするべきではありませんか。お答えください。

 若者や女性、母親を代表して質問させていただきました。

 財政演説では、若者、女性の機会を守ると述べられました。私たちは、若者や女性の政策、方針決定過程への参画を更に進め、もっと人に優しい社会、ジェンダー平等社会の実現に貢献していくことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 酒井なつみ議員の御質問にお答えをいたします。

 補正予算の規模についてのお尋ねをいただきました。

 私が、経済対策、補正予算について、昨年を上回る規模と申し上げましたのは、三年間の岸田内閣の取組により、デフレ脱却に向けた歩みが着実に進み、高付加価値創出型経済への移行のチャンスを迎える中で、これを確実なものとするためには、岸田内閣が講じてきた昨年を上回る規模が必要ではないかということを申し上げたものでございます。

 あわせまして、必要な施策を積み上げると申し上げてまいりましたように、今回の経済対策の規模は、デフレに後戻りせず、賃上げと投資が牽引する成長型経済への移行を確実なものとするため、速やかに実行すべき施策を積み上げた結果であります。

 補正予算の規模と物価上昇への影響についてお尋ねを頂戴しました。

 我が国経済は、コストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にあるということは先ほど来申し述べておるとおりでございます。今回の経済対策、補正予算は、この移行を確実なものとすることを目指して必要な予算を積み上げた結果、昨年を上回る規模となったものであります。

 この補正予算の中では、現下の賃上げができるよう、省力化、デジタル化投資を促進するとともに、将来の賃金、所得の増加に向けて成長力を強化する供給面の施策を盛り込むことといたしており、これらを着実に行うことで、インフレが加速することのないよう、適切に対応いたしてまいります。

 奥能登豪雨で被災された方の介護保険等の利用者負担の減免についてであります。

 介護保険、医療保険、障害福祉におきましては、令和六年能登半島地震や奥能登豪雨を始め、災害救助法が適用される災害につきましては、保険者等の判断で利用者負担、窓口負担の減免等ができることといたしております。

 すなわち、令和六年能登半島地震や奥能登豪雨で被災された方々につきましては、いずれの災害におきましても、発災直後から利用者負担、窓口負担の減免等を行えるように対応いたしており、被災地の方々におかれましては、市町村の窓口にお問い合わせいただければと存じます。引き続き、災害の状況に応じて、被災者や保険者への支援を行ってまいります。

 被災者生活再建支援金及び地域福祉推進支援臨時特例交付金についてであります。

 能登半島地震の被災者の生活再建支援としては、御指摘の最大三百万円が受け取れる被災者生活再建支援金に加え、石川県とも調整の上、能登地域六市町を対象とした、最大で被災者生活再建支援金と同額が受け取れる地域福祉推進支援臨時特例交付金を創設いたしました。この特例交付金は、六市町が極めて甚大な被害を受け、高齢化が著しく進み、半島という地理的制約から地域コミュニティーの再生が大きな課題であったことを踏まえたものでございます。このようにして、能登地域の実情、特徴を踏まえた支援を行ってまいりました。

 御指摘がございました被災者生活再建支援金の六百万円への引上げ等は困難でありますが、このほか、特例交付金の支給対象外の世帯につきましても、被災者の状況に応じて復興基金を活用した事業の活用が可能であり、引き続き、生活再建が図られるよう、これら総合的な枠組みにより支援をいたしてまいります。

 被災地への介護職員の応援派遣と心のケアの支援についてのお尋ねをいただきました。

 今般の能登半島地震におきましては、福祉関係団体の皆様方の御尽力、御協力の下、被災により職員が不足する施設や一・五次避難所へ、十月上旬時点で延べ二千六百名を超える介護職員等を応援派遣したほか、避難所で福祉支援を行う災害派遣福祉チーム、DWATを六月までに延べ千五百人以上派遣するなどの福祉的支援を行ってまいりました。

 現在でも、奥能登豪雨を含む被災地の社会福祉施設に対し、全国の施設の御協力の下、介護職員等の応援派遣を実施いたしております。

 被災者支援に携わる方々への心のケアにつきましては、発災当初から、石川こころのケアセンターにおいて、専用の相談ダイヤルのほか、精神保健福祉士等の専門職による相談支援を実施しており、今後とも、支援の充実を図ることといたしております。

 引き続き、被災地の御意見も伺いながら、適切な支援を行ってまいります。

 低所得世帯向け給付についてであります。

 今般の経済対策におきましては、特に物価高の影響を受ける低所得者の方々に迅速に支援を届けるため、住民税非課税世帯を対象に給付を行うことといたしました。

 住民税非課税の世帯以外の方々に対しましては、重点支援地方交付金を活用して地方公共団体が行う物価高対策や賃上げを支援する施策など、様々な物価高対策を講じることにより、必要な支援を行うことといたしております。その中で、低所得の一人親世帯への給付金につきましても対象となる旨を、今般、明記しておるところでございます。

 加えて、こども未来戦略の加速化プランに基づき児童扶養手当の拡充策を講じるなど、子育て世帯への支援に取り組んでおるところでございます。

 電気・ガス代支援についてお尋ねを頂戴しました。

 今般の経済対策は、副題にありますように、全ての世代の現在や将来の賃金、所得を増やすことを最重要課題として策定をいたしたものであります。そうした取組に当たっては、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現するまでの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々への支援が必要であります。こうした考えから、エネルギーコストを含めた物価高への対応として総合的な支援を行うことといたしております。

 具体的には、まず、物価高の影響を特に受ける低所得世帯の方々を直接支援する給付金や、地域の実情に応じたきめ細やかな対応が可能な重点支援地方交付金による支援を実施してまいります。

 その上で、低所得世帯の方々に加え、物価高により厳しい状況にある方々を念頭に、家庭の電力使用量の最も大きい時期であります一月から三月までの間、電気・ガス料金を一律に値引きする形で、効率的かつ速やかな支援をお届けすることといたしたものであります。

 防衛費についてのお尋ねを頂戴しました。

 防衛力の抜本的強化を確実に実現するため、今般の補正予算において、円安に伴い不足する外貨関連経費を確保しておりますが、これは防衛力整備計画の四十三兆円の枠内でございます。

 その上で、防衛力整備計画の四十三兆円という規模は、防衛力の抜本的強化に必要な水準として積み上げたものであり、円安を伴う為替レートの変動や国内外の全般的な物価上昇が生じている状況にありましても、一層の効率化、合理化を徹底し、現行の防衛力整備計画に基づいて防衛力の抜本的強化を達成すべく努めてまいります。

 放課後児童支援員の処遇改善についてであります。

 子供たちの健全な育成を図るため、職員の処遇改善を図り、授業終了後に小学生に対して適切な生活の場などを提供する放課後児童クラブ、いわゆる学童の受皿を拡大することは非常に重要であります。

 このため、放課後児童クラブの支援員の処遇改善につきましては、これまでも、職員の収入を月額九千円程度引き上げるための措置を行うなど、様々な支援を継続的に行うとともに、人事院勧告を踏まえた対応につきましても累次講じてきておるところでございます。

 更なる処遇改善につきましては、引き続き、毎年度の予算編成過程の中で検討し、着実に実施をいたしてまいります。

 学校給食費についてであります。

 今回の補正予算案におきまして、現在の物価高などの状況を踏まえ、地域の実情に応じた保護者負担の軽減の観点から、学校給食費の支援も行えるよう、重点支援地方交付金を追加いたしております。

 学校給食費の無償化につきましては、今年六月に公表した学校給食の実態調査の結果を踏まえ、給食未実施校や、実施校でも喫食しない児童生徒には恩恵が及ばないといった児童生徒間の公平性、低所得世帯の児童生徒は既に無償化されていることに伴う支援対象の妥当性、給食費に係る就学援助について、いわゆる三位一体改革により税源移譲、一般財源化を図った経緯を踏まえ、国と地方の役割分担、少子化対策としての政策効果、給食に係る経費の負担を定めた学校給食法の在り方などの法制面など、考えられる課題を整理してまいります。

 その際、子供、子育て加速化プランにおいて児童手当の抜本的拡充や高等教育費の負担軽減を進めているところであるなど、家計を支援する様々な施策を総合的に考慮する必要があるものと考えております。

 現在、既に独自の給食無償化を実施している自治体の傾向や、成果の検証状況につきまして更なる分析を実施しているところでありますが、このような分析も踏まえつつ、年末をめどに課題を整理いたしてまいります。

 国が行うべき結婚支援についてであります。

 少子化の流れを反転させることは時間との闘いとも言える重要な課題であり、少子化の克服に向け、若い世代が希望どおり結婚し、子供を持ち、安心して子育てできる社会を実現することが求められております。

 このため、昨年末に取りまとめられた、こども未来戦略に基づき、雇用の安定を含む若い世代の所得を増やす取組や、子育て世帯への切れ目のない支援、働き方改革などを強力に推進してまいります。

 その上で、出会いがないために結婚しない若者が多いことも事実であり、地域の実情に応じ、創意工夫を生かした自治体の結婚支援策を国が支えることは、引き続き重要であると考えております。雇用の安定や子育て支援と結婚への支援、双方適切に取り組んでまいります。

 選択的夫婦別氏制度につきましてですが、御指摘の、責任政党として答えを出さなければならないという発言は、自民党総裁として発言をいたしたものでございます。このような私の認識を党内にも共有し、自民党の氏制度のあり方に関する検討ワーキングチームにおいて議論の頻度を上げ、その熟度を高めていくように促してまいります。

 政府におきましては、令和三年の内閣府の世論調査で、選択的夫婦別氏制度に関する国民の御意見が分かれていたことなどから、引き続き、国民各層の御意見や国会における議論の動向などを注視していく必要があると考えております。

 政府としては、国会において建設的な議論が行われ、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方について、より幅広い国民の御理解が形成されるよう、積極的な情報提供に努めてまいります。

 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 酒井議員より、政治資金収支報告書のパーティー券収入の減額修正についてお尋ねがありました。

 私が代表を務める政治団体の政治資金収支報告書において、政治資金パーティーの収入金額について二回の訂正報告を行いました。

 一回目の訂正報告は、令和四年分について、昨年十二月に二千万円の減額を行ったものであり、本来、二と記すべきところを四としていた誤記載を訂正いたしました。

 二回目の訂正報告は、令和五年分について、届出直後の本年六月に、収入の重複計上や返金済みの金額を収入に計上していたといった誤りに気づき、千八百五十万円の減額訂正を行いました。

 いずれも事務的なミスではありますが、政治資金に対する様々な関心が高い中、こうした訂正が生じたことについて、心からおわびを申し上げます。

 引き続き、政治資金について、法令にのっとり適正に処理するとともに、正確な収支報告に更に努めてまいります。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 永岡桂子君。

    〔永岡桂子君登壇〕

永岡桂子君 自由民主党の永岡桂子です。

 自由民主党・無所属の会を代表し、令和六年度補正予算案について質問いたします。(拍手)

 今、何より重要なのは、経済の好循環を実現し、それを国民の皆さんに実感していただくことです。そのためには、物価を上回る賃上げを何としても実現するとともに、賃上げの裾野を全国に広げていくことが不可欠です。

 まず、政治が、保育や看護、介護、教職員など、現場で働く方々の賃金引上げに思い切って取り組み、賃金上昇の流れを加速させていくべきです。賃上げの普及や定着に向け、あらゆる施策を総動員して臨むべきと考えますが、総理のお考えを伺います。

 一方で、足下の急激な物価高騰が国民生活に大きな不安を与えています。私も、地元の方から、賃金が上がったと言われても実感がない、物の値段が高くて生活や事業が厳しいといった声を数多く聞きます。

 日本経済の再生にとって物価と賃金の好循環は重要ですが、物価の上昇が国民生活を脅かすことはあってはなりません。まず、今、国民の不安に寄り添った物価高対策が求められていると思いますが、総理の御所見を伺います。

 我が国における男女の賃金格差は二一%と、OECD平均より二倍も高い水準となっています。また、女性の正規雇用率が中高齢で低くなる、いわゆるL字カーブの是正も課題です。

 こうした背景には、仕事と家庭の両立が困難であるという課題があります。ライフイベントもキャリア形成も人生を構成する大切な要素であり、どちらかではなく、どちらとも満たされる社会を目指すべきです。そのために必要なのは、勤務時間や休暇取得の柔軟性を高めるなど、多様で柔軟な働き方の推進です。一人一人が生きがいや役割を持ち、助け合いながら暮らせる社会づくりの実現に向け、障壁となる規制や慣習は積極的に打破していくべきだと考えますが、総理の御所見を伺います。

 石破総理は、都市と地方が結びつくことで、社会の在り方を大きく変える新たな地方創生、日本創生の実現を目指していらっしゃいます。都市部でも地方でも、それぞれの地域が持つ可能性を最大限に生かし、人々が希望と幸せを実感できる社会をつくっていくことが重要です。特に、東京圏への転入の大部分を占める女性や若者にとって魅力的な地域づくりが必要だと思いますが、地方創生の推進に向けた総理の御所見を伺います。

 農業についてお伺いいたします。

 世界的な人口増加による需要の増大や、気候変動による生産減少によって、食料の安定供給に対する国民の不安が一層高まっています。さらに、国内では、今後二十年で農業者が四分の一にまで減少するなど、農業の担い手不足も深刻です。

 持続可能な農業と食料の安定供給のためには、適切な価格転嫁が不可欠です。特に、肥料や燃料の価格が高騰する中、コスト上昇分が適切かつ円滑に価格へ反映されるよう、仕組みを整備していくべきです。食料安全保障を確保するために、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されることが求められると思いますが、総理の御所見を伺います。

 今年も、能登半島での地震や豪雨を始め、全国各地で自然災害が相次ぎました。今や災害は、忘れた頃にではなく、忘れる間もなくやってくる時代です。国民の命や暮らしを守り抜く事前防災体制を、一刻も早く整えなければなりません。

 総理は、災害対応の司令塔となる防災庁の設置を表明されました。事前防災によって被害を最小限に抑えるため、大規模災害に耐え得るインフラ整備に加え、災害における情報発信、分析の強化など、ソフト、ハード両面での対応が必要と考えますが、総理の御所見を伺います。

 科学技術の発展は、社会課題を解決し、生活をより便利に、豊かにしてきました。我々は今、大規模災害や感染症、気候変動など、地球規模の課題に直面しています。様々なリスクから国民の命や暮らしを守り抜くため、科学技術、イノベーションの重要性が一層高まっています。

 科学技術は国力の源泉です。基礎研究はもとより、未来の電力供給に資するフュージョンエネルギーを始め、AI、量子、バイオ、さらには宇宙や海洋など、様々な重要技術分野について研究開発や人材育成を戦略的に進めていくことが重要だと考えますが、科学技術・イノベーション政策について、総理のお考えを伺います。

 漫画やアニメ、ゲーム、映画などのコンテンツ産業は、世界に誇る我が国の魅力であり、今や鉄鋼や半導体に匹敵する基幹産業です。魅力は認知されてこそ価値が高まるものであり、文化芸術立国を目指す我が国として、日本発のコンテンツを世界へどんどん発信していくべきです。そのためにも、経産省や外務省と一体となって、国内外で活躍が期待されるクリエーターやアーティストを積極的に支援し、海外での活躍の機会を後押ししていくことが重要だと考えますが、総理のお考えを伺います。

 国際社会では、ロシアによるウクライナ侵略や中東情勢の悪化など、対立と分断が深まる一方で、グローバルサウスの台頭によって多様化が大きく進んでいます。さらに、アメリカ第一主義を掲げるトランプ次期大統領を始め、グローバル化の中で、各国の自国第一の姿勢も顕著になってきています。

 世界はエネルギーや気候変動といった複合的な危機に直面しており、体制や価値観の違いを超えた協力が一層重要になっています。協調がかつてなく求められる時代だからこそ、我が国が先頭に立って国際社会の結束を高めていくべきです。強固な日米同盟はもとより、韓国や豪州、インド、ASEAN諸国などとも緊密に連携し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を何としても守り抜かなければならないと考えますが、総理の御所見を伺います。

 国づくりの基礎は人づくりです。社会を動かすのは人であり、人の知恵が繁栄をつくり、思いやりが平和をつくるのです。変化の激しい時代に直面する今こそ、政治がしっかりと未来を見据え、人々の希望を育んでいかなければなりません。石破総理におかれては、困難なかじ取りが求められる中でも、国民を守り、未来を守るために全身全霊で取り組んでいかれることをお願い申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございます。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 永岡桂子議員の御質問にお答えを申し上げます。

 保育や看護、介護、教育分野における賃上げについてのお尋ねを頂戴いたしました。

 保育分野につきましては、今般の経済対策に大幅な処遇改善を盛り込んでおり、今後、この措置が確実に事業主から保育士に行き渡るよう、実績報告を求めるなどの取組を進めてまいります。

 医療、介護、福祉分野につきましては、今年度の報酬改定の賃上げの措置が最大限活用されるよう取り組みますとともに、今般の経済対策において、生産性の向上や職場環境の改善など、更なる賃上げを目的とする支援策を盛り込んだところであります。

 教師につきましては、働き方改革や給与面も含む処遇改善に取り組んでまいります。

 物価高対策についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 経済財政運営に当たりましては、コストカット型経済から脱却し、豊かさを実感できる成長型経済への移行を確実にするため、全ての世代の現在や将来の賃金、所得を増やすことを最重要課題といたしております。そうした取組に当たりましては、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現するまでの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々への支援が必要であります。

 具体的には、今般の経済対策におきまして、地方公共団体が、地域の実情に応じて、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ方々への支援、価格転嫁が困難な中小企業への支援、学校給食費への支援のほか、新たに、厳冬期の灯油支援も行えるようにいたしております。また、御家庭の電力使用量の最も大きい一月から三月までの冬期の電気・ガス代を支援し、二人以上世帯の平均で電気、ガス合計で月千三百円程度の負担軽減を行います。さらに、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯の方々に対する給付金の支援などの施策を盛り込んでおります。

 多様で柔軟な働き方の推進についてであります。

 男女共に、仕事と家庭を両立しつつ、希望に応じてキャリアを形成できる、魅力ある働き方、職場づくりを進めていく必要があり、これは人口減少下において若者、女性にも選ばれる地方づくりを実現していくためにも重要な課題であると考えております。

 このため、政府におきましては、女性活躍推進法に基づく取組の推進、短時間正社員等の柔軟な働き方の促進、男性の育児休業の取得促進などを通じまして、誰もが安心して暮らせる働き方を実現していくとともに、社会の構造、意識の変化に向けて取り組んでまいります。

 地方創生の推進についてでありますが、御指摘のとおり、人口減少問題や地方からの若者、女性の流出は、地方創生二・〇において重点的に取り組むべき課題であります。

 このため、各地域において、産官学金労言のそれぞれのステークホルダーが、いま一度、若者や女性にも選ばれる地域とするにはどうすべきかなどを真剣にお考えいただき、地域自らが行動を起こしていただくこと、これが極めて重要であります。

 その取組の一環として、例えて申し上げますれば、地域間、男女間の賃金格差の是正、非正規雇用の正規化の推進、女性雇用のL字カーブの解消、男性の育児休業取得の推進、そのような取組も効果的ではないかと考えております。

 地方におきましてこうした取組を具体化していく中で、国としても、倍増する交付金のみならず、規制・制度改革も含め、効果的な環境整備を重点的に進めてまいります。

 現場の方々のお声をよく聞き、これまでの成果と反省の検証を進め、年末に向けて基本的な考え方を取りまとめ、その後、今後十年間集中的に取り組む基本構想を策定いたしてまいります。

 食料の価格形成と食料安全保障の確保についてであります。

 現在、持続的な食料供給を確保するため、生産から消費までの各段階の関係者の合意の下、資材費、人件費などのコストが考慮される価格形成の仕組みを設けるべく検討を行っておるところでございます。

 食料安全保障の確保に向け、このような仕組みを通じ、議員御指摘のように、国民の皆様に食料の安定的な供給が図られますよう取り組んでまいります。

 事前防災への所見についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 我が国は世界有数の災害発生国ですが、いかなる地域で災害が発生したとしても、被災者の方々を苦難の中に置き続けるということがあってはなりません。地理的に不利であるとか、財政的に困難であるとか、そういう地域において災害が起こったときもきちんとした対応がなされる、当然のことでございます。

 国民を災害から守るためには、政府の災害対応体制を抜本的に強化し、事前防災を徹底する必要がございます。このため、平時における防災業務の企画立案及び全国的な調整と、大規模災害発生時における政府の統一的な災害対応の司令塔として、防災庁を設置いたします。ここには専任の大臣を置き、十分な人数の、委員御指摘のように、災害対応のエキスパートをそろえる方針でございます。令和八年度中の設置に向け、着実に準備を進めてまいります。

 また、国土強靱化により発災時の被害を最小限に抑制するため、五か年加速化対策に盛り込まれた各種取組を着実に推進しております。河川堤防や砂防施設を始めとする防災インフラの整備、老朽化対策などのハード対策に加え、線状降水帯の予測精度の高度化などのソフト対策を一体的に進めておるところでございます。

 現在、国土強靱化法に基づく実施中期計画の策定に向け、必要な施策を整理、検討いたしております。ハード、ソフトの両面にわたり、必要な事業を着実に進められますよう、万全を期してまいります。

 科学技術・イノベーション政策についてであります。

 科学技術、イノベーションは、国力の源泉であり、経済成長を加速させ、社会課題を解決する原動力であります。

 DXを切り口として、議員御指摘のように、日本の潜在的な強みでありますAI、量子、バイオ、宇宙、フュージョン、GXなどの戦略分野のイノベーションとスタートアップの支援、スキル向上など、人への投資を進めてまいります。

 今後五年間の科学技術・イノベーション基本計画の策定に向けた検討は、年内にも開始をいたします。

 クリエーター支援についてであります。

 我が国の二〇二二年の輸出規模は、自動車が十七・三兆円、半導体産業が五・七兆円、鉄鋼産業が五・一兆円であります。コンテンツ産業は四・七兆円であり、鉄鋼産業や半導体産業に匹敵するものであります。魅力あるコンテンツは国際文化交流の促進にも資することから、その源泉であるクリエーターの方々が海外でも活躍できるように支援をすることは極めて重要であると考えております。

 補正予算案におきましては、クリエーターとして国際的な活躍を目指す学生や社会人のための先端技術を活用した制作、企画開発、ライセンス管理などを習得する育成プログラムの構築、実装化の支援、海外売上げの拡大を図る事業者などのための映像作品の企画開発、制作支援などを盛り込み、関係省庁が一体となって、クリエーターの育成と海外での活躍を後押しいたしてまいります。

 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くための外交についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 現在、国際秩序に大きな挑戦がもたらされ、ウクライナ、中東、また地球規模課題への対応をめぐり、国際社会の分断と対立が進んでおります。我が国周辺でも、核・ミサイル能力の強化、急速な軍備増強、力による一方的な現状変更の試みなどの動きが一層顕著になっております。

 こうした厳しく複雑な国際社会におきましても、国益に基づく現実的な外交により、日米同盟を基軸に、友好国、同志国と緊密に連携するとともに、中国を含む各国との対話を重ねてまいります。これにより、分断と対立を乗り越え、法の支配に基づく国際秩序を断固として堅持をいたしてまいります。

 以上でございます。(拍手)

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議長(額賀福志郎君) 三木圭恵君。

    〔三木圭恵君登壇〕

三木圭恵君 日本維新の会の三木圭恵です。

 会派を代表して、補正予算案について全て総理に質問します。(拍手)

 政府は、今般、一般会計の規模で十三・九兆円にも上る巨額の予算を経済対策に投じようとしています。

 その中で私たちが肝に銘じなければならないのは、税を徴収するということは、国民一人一人が汗をかき、必死の思いで仕事に励み稼ぎ出したお金を、一旦政府が税金としてお預かりしているということです。当然、その税の使途が公益に資するものであるかどうかを厳しく審査しなければなりません。決して野方図にばらまいたり、一部の企業や団体のために還元されたりすることがあってはなりません。その観点から質問をいたします。

 日本の財政の歴史をたどると、戦後からコロナ禍以前まで、補正予算の規模が十兆円を超えたのは僅か四度しかありません。コロナ禍の収束後も財政支出の規模縮小が進まず、補正予算の規模が四年連続で十兆円を超えるのは、財政上の異常事態ではないですか。

 日銀によると、本年の第二・四半期のGDPギャップはマイナス〇・六%、金額にすると年四兆円程度です。また、総務省が算出した本年十月のコアCPIは前年比二・三%であり、外形的には三十九兆円規模にもなる経済対策が必要な状況には思えません。

 石破総理は、さきの衆院選で、昨年を上回る大きな補正予算を成立させると表明しましたが、本経済対策は規模ありきではないでしょうか。また、なぜ今、三十九兆円にも上る規模なのですか。

 今般の経済対策中に、財政健全化策はとにかく、行政の効率化の観点からの踏み込んだ記載は一切ありません。我が国の普通国債残高は令和六年度末で一千百五兆円、債務残高の対GDP比は二五七%と、G7諸国のみならず、ほかの諸外国と比較しても突出した水準にあります。インフレ抑制の観点からも、今必要なのは、歳出規模をむやみに膨張させることよりも、歳出削減ではないですか。

 そもそも、大量の国債発行と財政出動を前提に補正予算を考えるのであれば、同等の合理化と効率化を進めるのが筋ではないでしょうか。大阪では、平成二十年に橋下元府知事の下、一千百億円削減の収支改善目標を定め、財政再建プロジェクトチームを組織することでこれを達成しました。国でも同様に、例外なしの徹底した歳出削減目標を設け、強いリーダーシップの下で行財政改革を断行するべきではありませんか。

 しかし、このような歳出削減を、支持母体から企業・団体献金を受け、その利害から自由になれない自民党に進めることはできません。民間の経営感覚とリーダーシップを持った外部人材を活用し、歳出削減組織を立ち上げ、答申をトップダウンで実現する形で支出削減を進めてはいかがですか。

 今般の補正予算に組み込まれた宇宙戦略基金などの基金事業は、長期にわたって執行するものであり、緊要性の要件について疑念があります。補正予算に計上する事業は、少なくとも今年度中に執行が完了し、事業目標の達成が見込まれるものに限るべきではありませんか。

 先般、会計検査院が報告した一般会計の補正予算の執行状況等によると、補正予算で金額を追加した予算科目のうち、追加額と同額が翌年度に繰り越されているもの、また、それ以上の額が翌年度に繰り越されているものが、合わせて約四割に上ったことが明らかになっています。補正予算の半分近くが結果的に不用であったとも考えられます。つまり、令和四年度補正予算は適正な規模ではなかったのではないですか。

 今の我が国は、自立する国民個々人の努力によって成り立っています。日本を前に進めるには、働く意思を持ち積極的にチャレンジをする個人を徹底的に後押ししなければなりません。その点、今の税や社会保障のシステムは、働きたい人に重過ぎる縛りや負担を設けながら、本当に苦しんでいる人々に正確に支援が届いていないのではないかとの思いがあります。

 今般の経済対策では、二〇二〇年代に最低賃金千五百円が目標として掲げられていますが、これを実現する具体的な手法に乏しいと言わざるを得ません。経済成長なく最低賃金を引き上げれば、最低賃金近くで働く方々を失業に追い込み、零細企業を破綻に追い込みます。

 政府は、中小企業に相談体制を拡充するとしていますが、先立つものがなければ、幾ら相談しても賃上げは不可能です。生産性の向上による、市場を通じた実質賃金の増加でしか、働く方、企業、国の三方よしの賃上げはあり得ないと考えますが、具体的にどのようにして中小企業の破綻を防ぎながら最低賃金千五百円を実現するのですか。

 百六万円の壁を撤廃し、厚生年金、健康保険の適用拡大を進める厚生労働省の案は、民間の事業者に過剰な負担を強いることになり、就労抑制をより強めるという、働き方改革に逆行する結果を生むのではないですか。

 また、厚生労働省は、労使の合意の下、労働者側の負担を会社が肩代わりする仕組みを整備する方針ですが、今でも社会保険料の事業者負担に苦しむ中小事業者が、前向きにこの仕組みを取り入れるでしょうか。社会保険料の事業者負担分は、給与を目に見えない形で天引きする制度にほかなりません。事業者負担分も個人負担分と同様に、被雇用者の収入に応じて少しずつ増加する制度を構築するなど、事業者の負担に激変が生じない制度を導入するべきではないですか。

 就労を阻む壁を別の角度から見ると、年齢にも壁があることに気づきます。

 在職老齢年金制度は、働く高齢者の年金を減額することで就労意欲を奪い、六十五歳以上の就業率を押し下げる、一つの壁と言えます。厚生労働省では現在、制度そのものを廃止する案や、基準を現行の月五十万円から月六十二万円若しくは七十一万円に引き上げる案が検討されていると承知しています。これからの時代、スキルのある高齢者にも労働市場に参入して力を十分に発揮していただくべく、在職老齢年金制度の廃止若しくは可能な限り基準を引き上げることが必要と思われますが、総理の見解を伺います。

 今や物価高は、一部の国民、一部の業界だけの問題ではありません。仕事に子育てに、毎日を懸命に生きる現役世代も、同じように物価高に苦しめられています。

 自民党の政策の特徴は、多く集めて集中的に配ると表現できましょう。確かに、日々のやりくりに苦しんでいる層に対して手厚く支援する必要があることは明らかです。一方で、実際の困窮度合いを正確に把握できていない物差しを用いると、一部の業界団体や特定の層に支援の厚塗りを繰り返すことになります。

 今般の経済対策にも住民税非課税世帯に三万円を給付する案が盛り込まれていますが、資産で生活する方々を考慮しておらず、また、住民税を支払う現役世代も捉え損ねています。現役世代も含めた生活困窮者に給付を届けるためには、対象者を見直すべきではありませんか。

 我が党は、かねてより、減税や社会保険料減免など、集めて配るのではなく、そもそも集めない経済対策を提唱してきました。物価高であれば、多くの野党が提案している消費税減税を行えば、その効果はあまねく社会に行き渡ります。また、逆進性の極めて高い社会保険料を引き下げれば、現役世代の手取りを大きく引き上げることができます。国民から集めて配り、国の財政規模をいたずらに膨張させるよりも、そもそも集めないという考え方を政府の物価高対策にも取り入れるべきではないですか。

 一方で、私の地元の御高齢の方からは、この物価高の中でどれだけ苦しい生活に置かれているか想像できるかとの切実な声もいただきます。

 例えば、長く夫婦二人暮らしを続けてきて伴侶に先立たれた方の場合、先立たれた方が第二号被保険者であれば、残された方は遺族厚生年金を受け取ることができ、何とか生活を続けることができます。しかし、夫婦どちらも第一号被保険者であれば、残された方は遺族基礎年金の対象とはならず、満額で月六万八千円の老齢基礎年金を受け取れるにすぎません。果たして、この収入のみで生活を続けることができるとお考えですか。

 また、住民税非課税世帯に直接給付を行う場合、同じ年金暮らしといっても、毎月六万八千円の給付と若干の収入で生活する世帯は、老齢基礎年金であれば住民税が課税され対象外、片や、遺族基礎年金であれば住民税非課税のため支給対象となる場合があり、不公平ではないかとの声も伺います。どちらも生活の苦しみは同じである以上、同等に支えられるべきとは考えませんか。

 このように、現行の社会保障制度は多種多様な制度の積み重ねですが、その隙間に落ちて十分な支援を受けられない方々の声を数多くいただいています。適切なタイミングに、真に支援を必要とする人に支援を届けるために、マイナンバーを活用した所得、資産把握を早急に制度化した上で、これを活用して現行の税と社会保障を統合して改革し、給付つき税額控除を実現するべきではないですか。

 安価で安定したエネルギーを供給することも、広く国民に豊かな生活を提供することにつながります。このエネルギー政策に関しても、我々は、そもそも集めない観点から行うべきと考えます。

 例えばガソリン代です。燃料油価格激変緩和補助金に代表される事業者への補助金の逐次投入は、消費者がガソリン代が下がったと実感するにはほど遠く、また、市場の価格形成メカニズムをゆがめ、脱炭素に向けた世界的な潮流にも逆行するものです。物価高対策は、企業や団体等への事業者支援を中心とするばらまき路線から脱却し、あまねく国民個人に直接還元されるような形での支援に転換するべきです。

 揮発油税及び地方揮発油税並びに軽油引取税の当分の間税率を廃止し、国民のエネルギー負担を抜本的に引き下げませんか。また、当分の間税率にも消費税一〇%がかかるのは、税金の二重取りではありませんか。

 熊本県にTSMCの半導体工場が進出した理由の一つに安価な電力の安定供給が挙げられるなど、ビジネス環境を整備する観点からも、電気料金の引下げは喫緊の課題です。その中で、原子力発電所の再稼働が進められていますが、その運転期間には限界があります。二〇四〇年には国内原発の十五基が運転開始から五十年を経過することとなり、安全性の観点から懸念を持たれる方も多くいます。

 新増設や建て替えのロードマップを示し、また、既存原発の運転期間延長や次世代革新炉への建て替えを行う際の国、地方自治体、事業者の責任を法的に明確化することで、安全かつ円滑なリプレースが実現できるよう計画を立てて推進すべきではないですか。

 私たち現役世代は、豊かな社会を、未来を生きる子供たちにつなぐ責任があります。そのためには、経済成長を原資にして、将来世代へ徹底的に投資をしなければなりません。そのセンターピンこそ、高校の完全無償化です。

 大阪モデルを活用した高校の無償化は、約六千億円あれば可能です。毎年十兆円を超える規模の経済対策を繰り返しながら、財源がないとの理屈は成り立ちません。そもそも本年度当初予算では、一般の予備費と、原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費、計二兆円が計上されており、コロナ禍以前の計上額にのっとると過剰です。このように、コロナ禍で水膨れした予算を徹底的に歳出改革し、高校における所得制限のない無償化を行う方針を、期限を切って明確にすべきではないですか。

 以上、総理に真摯な回答をお願いして、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 三木圭恵議員の御質問にお答え申し上げます。

 まず、経済対策についてでございます。

 我が国経済は、コストカット型経済から脱却し、デフレに後戻りせず、賃上げと投資が牽引する成長型経済に移行できるかどうかの分岐点にあるということは申し上げておるとおりでございますが、今回の経済対策、補正予算は、この移行を確実なものとすることを目指して、必要な施策を積み上げた結果、昨年を上回る規模となったものでございます。

 私が昨年を上回る規模と申し上げましたのは、三年間の岸田内閣の取組により、デフレ脱却に向けた歩みは着実に進み、高付加価値創出型経済への移行のチャンスを迎える中で、これを確実なものとするためには、岸田内閣が講じてきた昨年を上回る規模が必要だ、このようなめどとして申し上げたものでございます。

 あわせまして、必要な施策を積み上げると申し上げてまいりましたように、今回の経済対策はまさに必要な施策を積み上げた結果でございまして、規模ありきとの批判は当たらないということでございます。

 他方、御指摘のとおり、我が国の財政は極めて厳しい状況にあり、経済成長に必要な政策は行いつつも、予算の重点化、財政支出の効率化といった改革努力を同時に進めていくことは当然重要なものでございます。

 引き続きまして、経済あっての財政との考え方の下で、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強い、強靱な経済、財政をつくらねばならないと考えておるところでございます。

 歳出削減と行財政改革についてであります。

 経済財政運営の推進に当たりましては、デフレを脱却し、経済あっての財政との考え方に立ち、賃上げと投資が牽引する成長型経済を実現しつつ、財政状況の改善を進め、力強く発展する、危機に強靱な経済、財政をつくることが重要であります。

 その上で、行政運営が経済社会の変化に応じてその時々の重要課題に的確に対応していくため、行政サービスの水準を維持しつつ、いかにして行政を効率化できるかに留意しながら、引き続き歳出改革を含めた行財政改革を徹底してまいります。

 令和六年度補正予算における基金の緊要性でございますが、今回の補正予算における基金規模につきましては、いずれも、各年度の所要額を見込み難いといった基金の要件を満たした上で、経済対策に掲げられた柱に基づく施策を迅速かつ効率的に実施するために、今年度中の基金設置法人への予算措置が真に必要なものに限って計上いたしております。緊要性を満たすものであると考えておるところでございます。

 なお、議員御指摘の宇宙戦略基金について申し上げますれば、宇宙分野は、諸外国の積極的な投資の下、技術も急速に発展し、低コストかつ高頻度な打ち上げや、社会経済に変革をもたらす衛星の開発など、熾烈な競争が繰り広げられている分野であり、国際市場の獲得、国際競争力の強化等の観点から、迅速な支援が必要であると考えております。そうした中で、既に採択済み、あるいは採択予定の各プロジェクトの資金需要のめどが、昨年度に同基金に措置した予算額に見合う規模に達しているので、今後、新たなプロジェクトを速やかに採択できるよう、補正予算で措置をすることといたしたものでございます。

 令和四年度補正予算についてお尋ねを頂戴しました。

 会計検査院の決算検査報告につきましては、厳粛かつ真摯に受け止めねばならないものでございます。全府省庁におきまして、事務事業の在り方の見直しや適正な会計処理の徹底など、検査報告事項の確実な改善に努めることで、行政に対する国民の信頼を取り戻していくことが重要である、このように考えております。

 検査報告で取り上げられた令和四年度補正予算につきましては、繰越しや不用が多かったとの指摘がありました。これは、新型コロナの感染拡大や物価高騰の見通しが困難な事情などがある中で、予期せぬ事態に対して万全を期すために必要な予算を措置した上に、地方公共団体や事業者からの申請を受けて支出する事業が多かったことが要因と考えられます。令和四年度補正予算につきましては、当時、国民の命と暮らしを守り抜く観点から判断されたものであった、かように考えておるところでございます。

 最低賃金の引上げについてであります。

 最低賃金につきましては、政権として、二〇二〇年代に全国平均千五百円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けることといたしております。

 その第一歩として、先日、政労使の意見交換を開催し、最低賃金を引き上げていくための対応策を来春までに取りまとめるよう、関係閣僚に指示をいたしました。

 御指摘のように、最低賃金の引上げによって失業が増加するなど、労働者の生活が苦しくなってしまっては、これは元も子もございません。この考え方は、今までもこれからも変わりません。当然のことであります。

 賃上げの原資となります企業の稼ぐ力を継続的に高めますため、持続的、構造的賃上げに向けた価格転嫁などの取引適正化の推進、省力化、デジタル化投資の促進、人への投資の促進及び中堅・中小企業の経営基盤の強化、成長の支援といった生産性を向上させるための支援策、下請法の改正などについて、更に具体化をいたしてまいります。

 いわゆる百六万円の壁への対応についてお尋ねを頂戴いたしました。

 現在、次期年金制度改正に向け、働き方に中立的な制度を構築する観点から、被用者保険の適用拡大などについて議論を進めています。御指摘の百六万円の賃金要件につきましては、近年の最低賃金の引上げに伴い、週二十時間という労働時間要件を満たせば、既にこの賃金要件を満たす地域や事業所が増えていることも踏まえまして、検討が行われているものと承知をいたしております。

 また、関係審議会におきましては、適用拡大の対象となる事業所の事務負担の増加や経営への影響などを考慮し、円滑な適用を進められる環境整備を行う観点から、事業主の負担増への配慮措置として、様々な支援や周知、広報などを行うことについても議論されております。

 事業主の負担が激変しないような仕組みにつきましては、事務負担上難しい面もあろうかと考えておりますが、引き続き関係者間で丁寧に議論を進め、被用者保険の適用拡大などにつきまして成案を得るべく努力をいたしてまいります。

 在職老齢年金制度についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 公的年金制度の見直しにつきましては、在職老齢年金制度の在り方を含め、現在、社会保障審議会年金部会で議論を行っておるところであり、働き方に中立的な制度を構築する観点から、関係者間で丁寧に議論を進め、成案を得るべく努力をいたしてまいります。

 物価高対策の給付金についてでありますが、今般の経済対策におきましては、特に物価高の影響を受ける低所得者の方々を支援する趣旨で、住民税非課税世帯を対象に給付を行うことといたしております。この中には、金融資産の多い方々も一部含まれるものと承知はいたしておりますが、迅速に支援を届けるとともに、給付事務を担う地方公共団体の負担を軽減するとの観点から、住民税非課税世帯を対象としたものでございます。

 現役世代を含む住民税非課税世帯以外の方々に対しましては、重点支援地方交付金を活用して地方公共団体が行う物価高対策や賃上げを支援する施策など、様々な物価高対策を講じることにより、必要な支援を行うことといたしております。

 物価高対策につきましてであります。

 引き続きでお答えをいたしますが、国民の皆様の暮らしが豊かになったと感じていただきますためには、現在や将来の賃金、所得が増えていくということが必要であります。そのために、賃金上昇が物価上昇を安定的に上回る経済を実現するまでの間、賃上げの恩恵を受けにくい方々への支援が必要となります。

 具体的には、今般の経済対策におきまして、地方公共団体が、地域の実情に応じまして、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ方々への支援、価格転嫁が困難な中小企業への支援、学校給食費への支援のほか、新たに、厳冬期の灯油支援も行えるようにいたしております。また、御家庭の電力使用量が最も大きい一月から三月の冬期の電気・ガス代を支援し、二人以上世帯の平均で電気・ガス代の合計で月千三百円程度の負担軽減を行うことといたしております。さらに、物価高の影響を特に受ける低所得者世帯の方々に対する給付金の支援などの施策を盛り込んでおるところでございます。

 三木議員から御指摘をいただきました消費税につきましては、急速な高齢化などに伴い社会保障給付費が大きく増加します中において、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられておりますことから、政府として、その引下げを行うことは適当ではないと考えております。

 また、社会保障料の減免についてでありますが、社会保険制度が、制度に加入する被用者を保障するための費用を事業主と被用者全体が納める保険料によって支え合う制度であり、年金や医療などの給付に必要な財源を社会保険料という形で徴収しております以上、これを単に減免するということは、社会保障制度の持続可能性の観点から課題があり、結果的には将来世代に負担を先送りすることにほかならない、そのようなことから、慎重な検討が必要であると考えております。

 公的年金の給付水準と公的年金への課税についてでございます。

 公的年金の基礎年金は、老後生活の全てを賄うものではなく、現役世代に構築した生活基盤や貯蓄などとの組合せで老後を過ごすという考え方で設計されておるものでございます。その上で、所得や年金額の低い高齢者の方々には、年金だけではなく社会保障全体での支援が重要であり、年金生活者支援給付金などにより、できる限り暮らしが安定しますよう、引き続き支援をいたしてまいります。

 また、遺族年金は発生が予期できないリスクへの給付として非課税とされる一方で、老齢年金は、いずれ訪れる老齢への備えとして一種の貯蓄的な性格を有していることなどを総合的に勘案して課税とされているものだと認識をいたしております。

 その上で、老齢年金に関しましては、税法上、公的年金等控除が設けられており、老齢年金受給者に対しても一定の配慮がなされている、かように考えておる次第でございます。

 給付つき税額控除についてのお尋ねを頂戴しました。

 給付つき税額控除につきましては、財源確保という課題に加えまして、企業や地方自治体の事務負担、現行制度では把握していない非納税者などの所得や世帯所得の正確な把握、所得は低いが資産を多く持っておられる場合の取扱い、生活保護など、ほかの低所得者支援制度との関係を十分に整理する必要がある等々の課題が考えられておりますため、その導入は慎重な検討が必要であると考えております。

 ガソリン税についてでございます。

 今般の経済対策では、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる暫定税率の廃止を含むガソリン減税につきましては、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し結論を得る、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところでございます。

 こうした方針に沿って、自動車関係諸税全体の見直しに向けて、各党の税制調査会長間で議論を深めていくものと考えております。

 ガソリン税などの個別間接税を含めた価格に消費税を課す取扱いは、EU域内や主要国におきましても同様の取扱いがなされているものでございます。

 原子力発電所の運転期間延長と次世代革新炉への建て替えにおける責任の明確化についてでございます。

 原子力発電所の運転期間延長につきましては、昨年成立したGX脱炭素電源法により、事業者から見て他律的な要素によって停止していた期間に限って、六十年の運転期間のカウントから除外することを認めることといたしております。一方で、高い独立性を有する原子力規制委員会が厳格な審査を行い、基準適合性が確認できなければ運転は認められないとの大前提は、何ら変わるものではございません。

 次世代革新炉への建て替えにつきましては、昨年七月に閣議決定いたしましたGX推進戦略におきまして、原子炉の安全性向上を目指し、新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発、建設に取り組むことといたしております。

 原子力発電所の活用に当たり、国、自治体、事業者、それぞれの責任につきましては、地元の御理解が重要である中で、各地域の事情は様々であり、国が一方的、一律に進め方を決めるのではなく、地域ごとに丁寧に御相談をいたした上で対応することが必要、このように考えております。

 高校の授業料無償化についてであります。

 高校段階の修学支援につきましては、所得制限を設けることで捻出した財源により低所得世帯への支援を拡充してきたところであり、このような基盤となる国の制度と、地域の実情を踏まえて地方自治体が上乗せして実施する支援が一体となって行えることが適切と考えております。

 教育の機会均等という要請の中で、高校進学率が九九%に達する現状におきまして、どこまで家計の負担軽減を図るべきかということにつきましては、引き続き考えるべき課題であると考えております。その際、子供、子育て加速化プランにおきまして児童手当の抜本的拡充や高等教育費の負担軽減を進めているところであるなど、家計を支援する様々な施策を総合的に考慮する必要がある、このように考えておるところでございます。

 以上であります。(拍手)

    〔議長退席、副議長着席〕

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 田中健君。

    〔田中健君登壇〕

田中健君 国民民主党の田中健です。

 補正予算についての加藤大臣の財政演説に対して、国民民主党を代表して質問をいたします。(拍手)

 まず初めに、能登半島地震から一年がたとうとしています。被災された皆様の一日も早い復旧復興を後押ししていくことを申し上げます。また、我が党が提案した、災害時の避難所となる学校体育館のエアコン設置を全国の防災対策に広げてもらうことを要望いたします。

 私たち国民民主党は百三万の壁対策を政府に求め、総理は所信表明演説で引上げを明言されました。

 六日の三党協議の中では、年収百三万円の壁の見直しに関連し、十九歳から二十三歳の子供を扶養する親に適用されていた特定扶養控除の年収要件を百三万円から引き上げることで合意がありました。まずは大きな一歩です。

 一方、政府・与党が、控除額の引上げについては、実施時期について再来年の二〇二六年一月からの適用開始を軸に検討しているとの報道が流れました。これは事実でしょうか。所得に対する課税は一月一日からの一年間分に対して行われるので、百三万の壁の引上げによる所得税の減税は、準備期間も念頭に、早ければ二六年一月からの適用となると言っておりますが、そもそも、制度的にも技術的にも、来年から実施することは不可能ということでしょうか。来年分からの所得税減税は無理なので再来年分からというのは、やる気がないだけではないですか。しっかりとした説明を求めたいと思います。

 改めて、国民民主党は、百三万円の壁の引上げについて来年二〇二五年分からの適用実施を求めます。岸田政権の定額減税と異なり、基礎控除を引き上げるだけなので、処理は極めてシンプルです。総理、来年から行うと是非約束をしていただけませんでしょうか。

 ガソリン減税についても伺います。

 ガソリン減税を含めた自動車関連税制の改正についても、一年先送りをする方針を決めたという報道がありました。自動車関係諸税は一つではなく複雑でありますので、すぐには決められないものかもしれませんが、ガソリンの暫定税率は、そもそも特定財源だったものが一般財源化されています。上乗せをしてきた分を恒久財源と思わせて徴収する国のやり方に、国民からも疑問の声が上がっています。

 今回も、ガソリン価格の高騰を抑えるための補助金に補正予算で約一兆円が計上されました。九月までを見越した予算とのことですが、いつまで補助金を続けるつもりですか。もういいかげんに、税で徴収して補助金で補填するのはやめにしませんか。

 自動車関係諸税の見直しを進め、ガソリン税の暫定税率の来年度の廃止を求めます。総理の見解を伺います。

 政府は、今年度、二〇二四年度の税収が七十三・四兆円に達し、五年連続過去最高になるとの見通しを公表しました。当初予算の税収見積りの六十九・六兆円より三・八兆円も上振れる見通しです。

 税収の上振れは、今年度だけの話ではありません。二〇二一年度プラス九・六兆円、二〇二二年度プラス五・九兆円、二〇二三年度プラス二・六兆円、そして二〇二四年度三・八兆円と、平均、毎年四兆から五兆円程度の税収の上振れを出しています。

 これは、インフレと賃上げによるブラケットクリープ現象が起きていることを表していると言えます。デフレからインフレに経済のステージが変わったことによって、GDPの伸びに対する税収の伸びの感応度が大きくなっており、結果的に、税金を予定より取り過ぎている状況が生じていると私たちは思っておりますが、総理の見解を伺います。また、このブラケットクリープ対策を講じる方針があるかどうかも併せて伺います。

 国民民主党の提案する所得税の基礎控除の引上げは、こうした税の取り過ぎを是正し、手取りを増やし、経済、とりわけ消費を活性化することで、持続的賃上げを確実なものにしようとする経済政策です。今のままでは、幾ら民間が努力して賃上げしても、税と保険料が増えて、結局、手取りは増えない状況が続きます。好循環の鎖が切れている状況です。百三万円を引き上げると減収になるとの情報ばかりメディアにあふれていますが、そもそも予定より税金を取り過ぎており、国に過度に集まり過ぎた税金をお返しすべきとの発想が欠けています。

 また、予算の使い残しも毎年多額に上っています。二〇二二年度の不用額は十一・三兆円、二〇二三年度の不用額は六・九兆円、そして、今年度も補正で既に一・六兆円の既定経費の減額をすることになっています。こうした多額の不用額は、予算積算をより厳格にすべきことを示唆しているのではないでしょうか。

 会計検査院からも、国の決算に対する報告書が公表されました。二〇二二年度補正予算総額約三十二兆円のうち、支出が確認できた百三十八事業の約十九兆円の予算の四六%が年度内に消化されずに、うち三十四事業は約一兆五千億円の予算全額が翌年に繰り越され、最終的に約六千億円は使われなかったとの指摘です。

 減収になると大騒ぎをするよりも、歳出歳入両面にわたった緻密な見直しが今必要ではないでしょうか。加藤大臣の見解を伺いたいと思います。

 また、基礎控除を百七十八万円に上げた場合、国、地方合わせて七兆円から八兆円が税収減になることが政府から示され、新聞やテレビ、マスコミ、国民、多くの皆さんから様々な声が上がりました。六日、この減収額の詳細が示されましたが、基礎控除一万円当たりの減収見込額に引上げ分の七十五万円を掛け合わせただけのもので、極めて粗い試算であることが分かりました。

 私たちは、正確な数字でしっかりと議論をしていかなくてはならないと思っています。財源を出せ出せと言うならば、減収額についても根拠を示し、緻密に試算をした上で、そして、その上での議論をしてもらわないと話になりません。加藤大臣の見解を伺います。

 百三万円の壁対策も、ガソリン税減税も、再来年以降。また、減収額の数字も明確に示さない。減収額のただし書には、この試算は粗い試算であり相当の幅を持って見る必要があることに留意が必要と書く始末であります。このような不誠実な対応が続くなら、補正予算についても賛成できるかどうか分かりません。

 税金を集めて使う側に立った政治を行うのか、税金を払う側に立った政治を行うのか、それぞれの政治家や政党の立場が問われています。国民民主党は、納税者の立場に立った政策をこれからも進めてまいります。

 防衛力強化のため、政府は、令和五年度税制改正で、法人、所得、たばこの三税の税率引上げなどで財源を確保する方針を決定しています。令和九年度には三税の増税で一兆円強を賄う計画を、来年以降、段階的に実施していくとのことです。

 所得税については、百三万の壁を引き上げる一方で増税をするのでは、結局負担が増える可能性も否定できません。手取りを増やすとして減税を訴える私たちの考えと逆行するものであり、消費に水を差すものと考えます。所得税増税をどう考えているのか、総理の見解を伺います。

 六日に国民民主党は、再エネ賦課金に関する法案を提出いたしました。政府は、電気料の高騰が続いていることから、補正予算で負担軽減策として補助金を計上しましたが、私たちは再エネ賦課金の一時停止を求めています。

 賦課金は、太陽光や風力発電など再エネ普及のため、全家庭が毎月の電気代の一部として支払っています。制度導入以来、一キロワット時当たり〇・二二円だったものが、今年は三・四九円と大きく上昇傾向にあり、このまま上がり続ければ、家計への負担も大きくなるばかりです。月に四百キロワット時使用する標準的な家庭の場合、賦課金は月額千三百九十六円。前年に比べ八百三十六円もの負担増となっています。

 国民の負担感を和らげるために電気代補助金の終了と復活を繰り返している今の現状をどう考えているのか。上がり続ける再エネ賦課金の在り方、再エネ電気の供給促進に要する費用の在り方を総合的に検討するときに来ているのではないかと思いますが、総理の見解を伺います。

 先日、我が党の浅野議員が代表質問で取り上げた暗号資産の税制改正に関する石破総理の答弁には、落胆の声が広がっています。二〇%の申告分離課税や損失繰越控除の適用もゼロ回答、暗号資産のETFにまで消極的でした。ビットコイン大国を目指す米国とどんどん差がついていくのは明らかです。検討ばかりで、ウェブ3先進国にするとの国家戦略はどこに行ってしまったのでしょうか。

 暗号資産については、金融庁が公表した二〇二四事務年度金融行政方針の中に、国内暗号資産口座数が一千万口座を超える中、暗号資産取引市場が健全に発展するためには、生活の利便性や我が国の経済成長に資するものであるとの理解や信頼が国民から広く得られることが不可欠であると指摘をされており、制度の在り方について改めて点検すると記載があります。

 この分野を自民党で牽引してきた平大臣に、ウェブ3先進国に向けての見解、暗号資産の取引市場やその税制の在り方についての所見を伺いたいと思います。

 インターネットや暗号化技術を悪用して、闇バイトや違法オンラインカジノ、中華圏の違法プラットフォーム事業者による白タク、民泊業者などが増えており、ネットの闇問題が大きく広がりを見せています。政府の所管が縦割りで迅速に動けなかったり、海外事業者への対応がおざなりであるなど、現状は大きな問題があると言わざるを得ません。

 こうしたネットの闇問題に対し、より一元的かつ迅速な対応をすべきと考えますが、総理の考えを伺います。

 また、警察庁が仮装身分捜査の導入を検討しているとのことです。治安が悪くなっているとの国民の不安に応えるためには、新たな捜査手法を活用して、事件の抑止や解決につなげてもらいたいと考えますが、どのような課題があり、また効果を狙っているのか、導入に向けての考えを伺います。

 六日、国民民主党は、中間年薬価改定に関する緊急申入れを総理に行いました。診療報酬改定がない年の薬価改定、いわゆる中間年薬価改定は、二〇一六年十二月に当時の四大臣によって決定された薬価の抜本改革に向けた基本方針、四大臣合意に基づき実施をされておりますが、この制度は法的な位置づけがありません。毎年薬価改定と引下げが続く今の現状が続けば、薬の安定供給体制や新薬創出環境が崩壊をしてしまいます。当時の前提や環境の変化を踏まえ、中間年改定を廃止することを求めます。

 また、公定価格が決まっていることから価格転嫁が実質不可能になっている中、物価高騰により上昇したコストを適切に転嫁し、安定供給基盤、創薬基盤の再構築をすべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 ドラッグラグ、ドラッグロスにより、海外では流通している薬にアクセスできない、これも生存権の問題ではないでしょうか。命と健康を守る政治を、総理、進めようではありませんか。

 最後に、十月末の総選挙では、国民民主党は国民から幅広い御支持をいただきました。とはいえ、僅か、この大きな国会の中で二十八人であります。初心を忘れることなく、おごることなく、国民の声に真摯に耳を傾け、つくろう、新しい答え。今ここにない答えを皆さんとともにつくっていく決意です。

 総理始め各大臣の真摯な答弁を求め、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 田中健議員の御質問にお答えを申し上げます。

 いわゆる年収百三万円の壁につきましてであります。

 いわゆる百三万円の壁につきましては、経済対策におきまして、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところでございます。

 御指摘の施行時期などの実務的な観点も含めまして、考えねばならない様々な論点があるものと認識をしておりまして、そうしたことも含めまして、今後、各党の税制調査会長間で更に議論を深めていただきたいと考えております。

 ガソリン税等についてでございますが、燃料油の激変緩和対策につきましては、脱炭素の流れに逆行することや財政負担の状況を踏まえ、いつまでも続けるべきではない、そういうことから、今般の経済対策において、今月以降、段階的に縮減することといたしております。

 また、今般の経済対策では、自由民主党、公明党、国民民主党の三党間での合意を踏まえ、いわゆる暫定税率の廃止を含むガソリン減税については、自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し結論を得る、これらに伴う諸課題については、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んでおるところでございます。

 こうした方針に沿いまして、自動車関係諸税全体の見直しに向けて、各党の税制調査会長の間で議論を深めていくものというふうに承知をいたしております。

 税収の上振れ等についてでございます。

 近年の税収について、見積りからの上振れが生じたことは事実でありますが、税収は、見積り時点からの景気動向や外部経済要因の変化に応じて、上振れたり下振れたりするものでございます。見積りからの上振れのみをもって税金を取り過ぎと評価することは必ずしも適切ではなく、歳出とのバランスなど様々な観点から検討する必要があるものと考えております。

 インフレや賃上げによって累進課税が適用されていくブラケットクリープ対策としていわゆる百三万円の壁を引き上げるべきとの御指摘でありますが、経済対策におきまして、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところであり、御指摘のような税負担の問題も含めて様々考えなければならない論点があるものと承知をいたしております。そうしたことも含めまして、今後、各党の税制調査会長間で更に御議論を深めてもらいたいと考えております。

 防衛力強化に係る財源確保のための所得税に係る税制措置についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 激変する安全保障環境におきまして日本を守り抜くため、国家安全保障戦略などに基づき、我が国自身の防衛力を抜本的に強化すべきことは論をまちません。

 そのための財源確保に当たりましては、行財政改革の努力を最大限に行った上で、それでも足りない約四分の一につきまして、今を生きる我々の将来世代への責任として、税制措置での御協力をお願いすることにいたしております。

 そうした枠組みの中、これまでも五年度、六年度税制改正におきまして与党の税制調査会などの場で議論が行われてまいりましたが、現在まさに税制調査会などの場で議論が行われているものと認識をいたしております。

 その上で、防衛財源確保のための税制措置は、所得税の付加税につきましては、復興特別所得税の税率を引き下げ、合計の税率が現在と変わらない水準、すなわち二・一%といたしますことで、現下の家計の負担増にならないように配意をいたしておるところでございます。

 電気料金補助と再エネ賦課金などについてでありますが、これまで実施してまいりました電気料金の支援は、エネルギー価格が急騰する中で緊急対応として実施をいたしました激変緩和対策、物価高に加え、酷暑を乗り切るため、即効性が高い対策としての酷暑乗り切り緊急支援、そして今回の家庭の電力使用量の最も大きい一月から三月の冬期の支援というように、その時々の状況を踏まえ、国民の皆様方を守るために必要な支援を講じてきているものでございます。

 また、再エネ賦課金は、再生可能エネルギー特別措置法に基づいて再エネ電気の買取りなどを行うため、電気の利用者の皆様に御負担をいただいているものでございます。

 カーボンニュートラルを実現する観点から、国民負担を抑制しつつ再エネの最大限の導入を図るとの政府の基本方針の下で、引き続き、制度を着実に運用いたしてまいります。

 いわゆるネットの闇問題への対応でございます。

 インターネットは、国民生活や社会経済活動の利便性を飛躍的に向上させた一方で、残念ながら、その悪用も後を絶ちません。

 いわゆるネットの闇問題につきましては、関係省庁が連携して取り組んできたところでありますが、引き続き、インターネットを悪用した犯罪から国民を守り、全ての方が安心して暮らせる世界一安全な日本を実現するため、政府一丸となって、機動的かつ柔軟に対応いたしてまいります。

 中でも、いわゆる闇バイトによる強盗などは、他者への慈しみや堅実な努力といった日本社会の中で大切にされてきた価値観、道徳観を揺るがしかねないものであり、断じて許すことができないと考えております。

 闇バイトの投稿が速やかかつ確実に削除されるよう、犯罪対策閣僚会議などで確認した方針に基づき、AI技術を活用したサイバーパトロール、SNS事業者などに対する投稿削除の働きかけなどにより、関係省庁が緊密に連携して取り組んでまいります。

 また、犯罪グループが匿名性の高い通信手段などを証拠が残りにくい連絡手段として悪用する中、捜査環境の変化に対応した有効な捜査手法を不断に検討することは、極めて重要であります。自民党でも既に議論を開始していただいておりますが、国民を新たな被害に遭わせないため、議員御指摘の仮装身分捜査を含みます新たな捜査手法などにつきまして、効果的な活用の在り方などの検討を進めてまいります。

 中間年改定の廃止と物価高騰への対応についてのお尋ねをいただきました。

 薬価改定につきましては、国民負担を軽減し、家計の手取りを増やす観点からは、適時適切に実施することが望ましいものです。これは、高齢化によって医療費が増加する中で、医療保険制度の持続可能性を高めるためにも重要であります。

 一方で、足下の経済、物価の動向に配慮しつつ、革新的な新薬の開発力を強化していく要請や、暮らしに欠かせない薬の安定供給確保の要請などにも応えていく必要がございます。

 このような物価高騰への配慮や革新的医薬品の創出の要請に応えながら国民負担を軽減するためにも、めり張りの利いた対応が求められており、毎年の薬価改定の在り方につきましては、関係者の御意見を伺いながら、関係省庁において議論を深めてもらいたい、このように考えておるところでございます。

 残余の答弁につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。(拍手)

    〔国務大臣加藤勝信君登壇〕

国務大臣(加藤勝信君) 田中議員より、歳出歳入両面の見直しの必要性についてお尋ねがありました。

 会計検査院の決算検査報告では、令和四年度補正予算について、繰越しや不用が大きかったとの指摘がありました。これは、新型コロナの感染拡大や物価高騰の見通しが困難な事情などがある中で、国民の命と暮らしを守り抜く観点から、予期せぬ事態に対して万全を期すために十分な予算を措置した上に、地方公共団体や事業者からの申請を受けて支出する事業が多かったことが要因と考えられます。

 その上で、歳出歳入の両面から適切な予算編成に努める必要性は御指摘のとおりであり、今回の補正予算の編成に当たっては、歳出面では、個別事業の事業内容をよく精査した上で、直近の決算の状況も踏まえながら、適切な経費の見積りに努めるとともに、歳入面でも、最近までの収入実績等を勘案して税収を適切に見積もるとともに、税外収入の確保などに努めております。

 次に、基礎控除についてお尋ねがありました。

 お尋ねの試算については、詳細な制度設計が明らかではない中で行った粗い試算であるため、相当な幅を持って見る必要がありますが、議論の参考として一定の意義はあるものと考え、お示ししたものであります。

 その上で、いわゆる百三万円の壁については、経済対策において、令和七年度税制改正の中で議論し引き上げる、これらに伴う諸課題に関しては、今後、検討を進め、その解決策について結論を得るとの記述を盛り込んだところであります。

 現在、政党間で協議が行われているところであり、政府としては、政党間の協議の状況を見守りつつ、今後、詳細な制度設計が明らかとなる中で、どのような試算をお示しできるか検討してまいりたいと考えております。(拍手)

    〔国務大臣平将明君登壇〕

国務大臣(平将明君) 田中健議員にお答えいたします。

 ウェブ3、暗号資産についてのお尋ねがありました。

 検討ばかりで、ウェブ3先進国にするとの国家戦略はどこに行ってしまったのでしょうかという御指摘でございますが、自由民主党ウェブ3PTの提言を踏まえ、ウェブ3スタートアップの自社発行自社保有トークン、いわゆるガバナンストークンの時価評価課税を変更する税制改正、そのようなスタートアップ企業に投資をする企業側の、いわゆる他社発行トークンに対する時価評価課税に関する税制改正、合同会社型DAO設立を可能にする内閣府令改正、新規トークンの上場審査期間の大幅な短縮などを実現してきたところであります。さらには、石破内閣においても、地方創生二・〇において、NFTやDAO、マイナンバーカードと連携をしたウォレットの活用などを想定しているところでございます。

 暗号資産に関する制度及び税制の在り方については、デジタル庁の所管外であるためお答えすることは困難でありますが、自民党のウェブ3PTの提言も受けて、今、金融庁において、外部有識者による勉強会を開催し、議論を重ねていると承知をしております。暗号資産に係る税制との関係では、例えば、上場株式などと同等と扱うことになると、高所得者にとっては税率が下がりますが、一方で、投資家保護等のためにトークン全般に金融の規制を適用することとなり、金融の厳しい規制がかえってウェブ3スタートアップのイノベーションを阻害するのではないかという論点もあり、丁寧な検討が必要であると指摘をされています。

 いずれにしても、このような論点も含め、国民民主党さんのウェブ3政策提言全般については、デジタル大臣として、丁寧に検討させていただきたいと考えております。(拍手)

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副議長(玄葉光一郎君) 中川宏昌君。

    〔中川宏昌君登壇〕

中川宏昌君 公明党の中川宏昌です。

 公明党を代表いたしまして、財政演説に対して質問をさせていただきます。(拍手)

 元日に発生をいたしました能登半島地震から間もなく一年がたとうとしております。

 改めて、お亡くなりになられた方々に哀悼の意を表するとともに、御遺族と被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

 九月の豪雨災害による二重の災害で、現地では今なお過酷な状況が続いております。極寒の冬もすぐそばまで来ており、何としても復旧復興を着実に推し進めていかなければなりません。

 これまで、公明党といたしましても、発災直後から、被災各市町に担当の国会議員が地方議員とともに張りついて、きめ細かく御要望に対応してまいりましたが、なお一層力を込めて、復旧復興に力を尽くしてまいります。

 初めに、復旧復興の加速化について伺います。

 能登半島地震の復旧復興に、現在、政府といたしましても全力で取り組んできていると認識をしておりますが、被災地を訪れると、いまだ公費解体や上下水道の復旧が遅い地域などもあり、どこかで目詰まりが起きている、このように感じております。

 私は、一月の予算委員会の集中審議において、避難所に司令塔をつくれ、目詰まりを解消せよ、地方自治体のマンパワーを増やせと強く訴えさせていただきましたが、各種手続の受付延長や迅速化なども含め、いま一度、復旧復興を加速させるため、細部にわたり目配りをし、目詰まりを解消していく対策が必要です。総理の答弁を求めます。

 次に、防災体制の抜本強化について具体的に質問をいたします。

 先日、中央防災会議等から災害対応の在り方についての報告書が出されました。

 私は、一月の二日から延べ三十八回にわたり能登半島の被災地を訪れ、発災直後から復旧復興への取組の段階、そして現在の状況まで、つぶさに見てまいりました。私が一番感じたことは、作業員の宿泊場所、重機や資材、瓦れき置場の拠点となるべき災害対応拠点が、半島特有の急峻な地形により確保できなかったことが復旧復興作業の妨げになっているという点です。

 ハード、ソフト両面でしっかりと検証をし、次への備えに万全を期すことが肝要です。防災拠点の確保に向け、これまで一か所だった国の備蓄拠点を全国八か所に拡大をしますが、さらに、全国にある道の駅への防災道の駅の指定の推進と、拡大可能な道の駅を災害対応拠点として拡充し、トイレ、キッチン、ベッド、いわゆるTKBの確保や、避難訓練などが実施可能な防災、災害対応拠点の整備を進めることが重要と考えます。

 今後、防災体制の抜本強化にどのように取り組まれていくのか、総理の答弁を求めます。

 また、政府としては、被災自治体へプッシュ型支援を行っておりますが、被災後の迅速な対応を可能とする政府のタイムラインの強化が求められます。自治体と緊密な連携が取れ、各種の手続などが進むような更なる体制の強化が必要と考えます。総理の答弁を求めます。

 次に、新たな地方創生施策について伺います。

 石破総理は、地方こそ成長の主役と述べ、地方創生二・〇として再起動させると宣言をされました。これらを実現する政策として、地方創生交付金を当初予算ベースで倍増させた上で、新しい地方経済・生活環境創生本部を創設し、今後十年間集中的に取り組むとされております。地方創生にかける強い思いのある総理自ら先頭に立って実現していくという姿勢が明確に示されたことに、非常に大きな期待を抱いております。

 補正予算案では、新しい地方経済・生活環境創生交付金の新たな交付金が盛り込まれておりますが、地方が将来にわたって成長力を確保し、それぞれの特徴を生かした自律的で持続的な社会を形成していくための新たな地方創生の取組について、総理の答弁を求めます。

 観光振興は、地方創生にとって強力な起爆剤になると考えます。

 コロナ禍により、我が国の観光産業は大打撃を受けました。政府は、コロナ禍からの観光のV字回復を図るため、地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業を行い、これにより、多くの観光地が再生し、活気を取り戻しつつあります。今年のインバウンドは、十月に訪日外国人旅行者数が三千万人を突破し、観光消費額も過去最高となっており、大都市や人気観光地は好調です。

 にぎわいのあるところに人は集まる。この流れを地方に加速させていくことが、裾野の広い観光産業を活性化させ、地方を元気にします。特に、能登半島地域が震災前よりよくなったと言われるようにするためにも重要な、今後の地方の観光振興について、総理の答弁を求めます。

 賃上げ環境の整備についてお伺いします。

 物価高に対応し、大企業中心に賃上げ率は上昇しておりますが、特に、来年四月、中小企業の賃上げがどれだけできるかが一番の課題であります。経済の成長と好循環の施策による成長の波及効果が中小企業にも行き渡ることが何よりも重要ですが、中小企業は、物価高に加え、人手不足、多重下請、資金繰り等、厳しい事態に直面をしております。

 こうした事態を転換していくため、中小企業が取り組めるIT導入、省力化、省人化、生産性向上に向けた、総合的でより強い支援策が重要です。中小企業の賃上げ支援につきまして、総理の答弁を求めます。

 一方で、物価高に対して、今回の総合経済対策では、重点支援地方交付金が盛り込まれております。確かなデフレ脱却に向け、今まさに正念場であります。

 この重点支援地方交付金は、地方自治体として、低所得者世帯への給付や事業者支援など、地域の状況に応じ、きめ細かく物価高対策に活用していただける重要な予算であり、国民生活を守るための施策で、地方自治体に有効に活用していただくことが大事です。

 重点支援地方交付金の有用性について、総理の答弁を求めます。

 国民の皆様の暮らしを豊かにし、我が国がもっと活気あふれる場所にしたい。そのためには、安心、安全で勢いのある国づくりが大事であります。多くの皆様と丁寧に議論を重ね、具体的な結果、成果が出せるよう全力で取り組んでいくことを申し上げ、質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 中川宏昌議員の御質問にお答えをいたします。

 能登半島の復旧復興についてのお尋ねでございます。

 発災直後から、ほかの地方自治体から延べ十二万人の職員が被災自治体に派遣をされました。被災者支援や復旧に当たってこられたものでございます。その間、運転免許証や飲食店営業許可の有効期限の延長、被害認定調査の簡素化、なりわい再建支援補助金の申請書類の一部省略化など、被災者の方々の負担軽減を図ってきたところでございます。

 公費解体、インフラ復旧、生活再建、なりわい再建など、現場が抱えておられる諸課題を速やかに把握し、直面する制度の隘路を解決するため、七月に能登創造的復興タスクフォースを発足させ、課題解決を図ってきたところであります。

 公費解体につきましては、石川県の策定した公費解体加速化プランに沿って進められており、九月の豪雨により一部の遅れも生じましたが、解体班数の増加などを図ることで、現在は計画を上回る進捗となっております。上下水道につきましては、全国の自治体職員や技術者の派遣を通じて、五月までに復旧をいたしました。九月の豪雨で再度被災した箇所につきましても、下水道は復旧済み、水道は年内に全て復旧する予定でございます。

 また、これまで、合計七千百五十億円の予備費での対応に続き、令和六年度補正予算案には、被災地の御要望を踏まえ、二千六百八十四億円の支援策を盛り込んだところでございます。

 活気ある能登を取り戻すため、引き続き、被災自治体のお声も伺いながら、議員がおっしゃいましたように、災害前よりもよくなったねと言っていただけることは大切なことだと思っております、被災自治体のお声も伺いながら、復旧と創造的復興に向けた取組を、目詰まりがもし仮にあるとするならば、それを必ず解決する、その決意で一層加速をしてまいります。御指摘いただき、ありがとうございました。

 今後の災害対策の強化についてでございます。

 今回の能登半島地震は、半島という地理的制約などが一連の災害対応に大きな影響を与えましたが、いかなる地域で災害が発生したとしても、被災者の方々を苦難の中に置き続けるというようなことがあっては決してならぬことでございます。

 今回の能登半島地震の一連の対応を振り返り、そこで得られました教訓を今後の災害対策に生かすことが重要であります。今、中川議員が御指摘になりました報告書は、政府が中央防災会議の下に設けられました有識者のワーキングチームに依頼して、今後講じるべき対策について取りまとめていただいたものでございます。

 議員御指摘の防災道の駅は、大規模災害の発生時の広域的な防災拠点として、国が選定し、ハード、ソフトの両面から重点的な支援を行っているものでございます。今回の災害でも、支援物資の集配や道路啓開活動の拠点として、有効にその機能を発揮いたしました。引き続き、防災道の駅以外の道の駅も含めまして、備蓄などの充実強化を図り、全国各地における防災拠点の整備を進めてまいります。

 また、困難な環境でも、国、自治体、民間が緊密に連携し、被災者の方々に迅速に支援の手を差し伸べることが重要であります。そのために、国の応援組織の充実強化や、災害ボランティアとして活動する支援団体の事前登録制度の創設、全国の自治体における受援計画の作成、訓練などを総合的に進めてまいります。

 政府として、人命最優先の防災立国を早期に構築すべく、今後、全閣僚から成る災害対策のための会議を設置し、今回の報告書も大いなる参考としながら、早急に各種取組の具体化を図ってまいります。

 新たな地方創生の取組についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 人口減少によって、地域の活力、そして経済の活力が低下している中、地方創生二・〇は、単なる地方の活性化策ではなく、日本全体の活力を取り戻すための経済政策であり、国民の多様な幸せを実現するための社会政策であります。

 地方創生二・〇を進める上では、各地域において産官学金労言のステークホルダーが、いま一度、若者や女性にも選ばれる地域とするにはどうすべきかなどを真剣に考え、課題解決に向けた行動を起こすことが極めて重要でございます。

 社会政策といたしましては、若者や女性が安心して働き、暮らせる環境づくりを進めていくことが重要であり、例えば、女性雇用のL字カーブの解消や非正規雇用の正規化の推進といった取組が極めて効果的であります。

 経済政策といたしましては、地域に密着した農林水産業、観光産業、文化芸術といった地域資源の活用を進めるのみならず、新たな技術革新の中で今後成長していく半導体やGXといった戦略分野での大規模投資を加速し、国全体に波及効果を及ぼしていくような取組の双方を進めていくことが重要であると考えております。

 元気な地方から元気な日本をつくる試みは、多くの点となって息づいておりますが、いまだ点から面になっていない、点は密になっているがまだ面になっていない、いまだ全国的な広がりには欠けているというのが私の印象でございます。いち早く地方の皆様方が動き出せるように、地方創生の交付金を倍増しつつ、前倒しで措置をいたします。デジタル技術の活用や、地方の課題を起点とする規制・制度改革は大胆に進めてまいります。

 この国の在り方、文化、教育、社会を変革する流れを必ずつくり出してまいります。

 今後の地方の観光振興についてでありますが、観光は成長戦略の大きな柱であり、地方創生の切り札でございます。インバウンドは非常に好調であり、過去最高ペースで推移をいたし、本年は、史上最高の訪日客数三千五百万人、消費額八兆円を達成する勢いであります。一方、三大都市圏にその七割超が集中しており、今後は、地方誘客促進と高付加価値化によって、全国津々浦々にその恩恵を行き渡らせることが極めて重要であると考えております。

 そのため、地方の十四のモデル観光地への重点的支援や、地域の歴史文化、自然、食、伝統産業などを生かした体験コンテンツの造成支援、宿泊、交通、体験などのシームレスな予約、決済サイトの構築や、データに基づく経営などの観光DXに重点的に取り組んでまいります。

 能登半島の観光振興に向けましては、観光地の復旧計画の策定、実行を支援いたしますとともに、今後の復旧状況などを踏まえ、手厚い旅行需要喚起策を行うことを検討しておるところでございます。今後、更にこれに加速をいたしてまいります。

 中小企業の賃上げ支援についてでございます。

 様々な厳しい状況に直面している中でも、中小企業の皆様方が確かにもうかり、物価上昇に負けない賃上げをしていただけますよう、生産性の向上をより一層推し進めていくことが重要であります。

 このため、円滑かつ迅速な価格転嫁に加え、省力化、デジタル化投資の促進、人への投資の促進及び中小企業の経営基盤の強化、成長の支援といった生産性を向上させるための支援策などを充実いたしてまいります。

 重点支援地方交付金についてでございますが、重点支援地方交付金は、地方公共団体が、地域の実情に応じて、低所得世帯を含め幅広い生活者や事業者への物価高騰対策として、きめ細かな支援に活用いただけるものでございます。

 今般の経済対策におきましては、引き続き、地域の実情に応じて、困難な状況にある方をしっかりと支えるとの観点から、重点支援地方交付金を追加いたします。

 引き続き、重点支援地方交付金が全ての地方公共団体において迅速かつ有効に活用されますよう、優良な活用事例を積極的に提供するなど、丁寧にサポートをいたしてまいります。

 以上でございます。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 大石あきこ君。

    〔大石あきこ君登壇〕

大石あきこ君 れいわ新選組、大石あきこです。(拍手)

 石破内閣の総合経済対策、補正予算案の修正を求める。

 被災地を置き去りにして、衆議院を解散した石破総理。解散・総選挙後、物価高対策として打ち出した総合経済対策は、予算規模、スピード共に内容を伴わない売国棄民予算。

 十二月五日の予算委員会で、れいわ新選組の櫛渕万里委員が石破総理に対して言いました。石橋湛山を引用するなら、湛山がやった一千億円減税、現在の十兆円に相当する減税をするべきだと求めたところ、石破総理はこう言いました。そのときと比べて財政はむちゃくちゃ悪いので、危機に強靱な財政を心がけていかなければならない。

 湛山をポエムとして引用するな。

 実質賃金のマイナスが続き、主食の米も高くて食べられない。国民の六割が生活が苦しいと答えています。この国民の危機に、さっさと減税しない者にこの国は任せられない。

 いわゆる百三万円の壁についても、二〇二六年一月からの適用開始を軸に検討していることが判明。やるならば、収入の三百万円くらいまでは税金を取らないくらいにするべきところ、しょぼくて複雑な話で時間が費やされました。消費税ゼロと給付金の方が、シンプルに手取りは増えます。国民の痛税感を弄んだだけ。

 国民の危機を救うためには次の政策が至急必要と考えますが、各項目について、石破総理の見解を問います。一括の感想ではなくて、各項目の見解を問います。

 一つ、消費税ゼロ、十・一兆円。十二月と三月に国民一律十万円給付、二十五兆円。社会保険料引下げ、四兆円。過労死レベルの学校現場、教員一・五倍増員、それで〇・七兆円。介護、保育労働者の月給十万円の賃上げ、一・二兆円。農家と酪農家を潰すな、直接支援と経営安定支援、一・三兆円。そして、能登半島地震、奥能登豪雨被災地の復旧復興に向けた緊急支援策、二・三兆円。

 要らないもの、あるんですか。れいわはほかにも項目を用意していますが、取りあえず、これにお答えください。

 次に、オワコンの大阪万博に補正予算を出すなです。

 石破政権は、実体経済の対策はしませんが、オワコンの大阪万博に補正予算を五百三十八億円も措置するという。しかも、項目が、新たな地方創生策、地方創生二・〇の展開。どこが新しいんですか、万博の。このようなごみを混ぜることによって、石破内閣の新たな地方創生策の信憑性全体が疑われます。

 万博の機運醸成費増額で二十九億円。総理に聞きたい。一体、何に使うんですか。キャラクターとか吉村知事の顔だとか、あっちでもこっちでも植え付けられて、機運醸成しているんですか。費用が増えるたびに国民は失望して、機運はへこんでいます。チケットは、ノルマ一千四百万枚の半分しか売れていませんよ。しかも、売れた大半は、パー券みたいな、企業に買わせたものです。一般客から全然売れていない。電子で売れない、だったら紙チケットでどやといって、でも、一万枚しか売れていない。全然買っていない。

 そして、そんな中で、万博の警備費、いきなり五十五億円増額。増額の理由は、VIP、政府要人がたくさん来るから、特別なゲートと警備を増やすから。国民が生活苦しいのに何がVIPや。そんなん呼ぶな。

 総理に問います。VIP、政府要人の中に、イスラエルのネタニヤフ首相又はガラント前国防相は入っているんですか。

 国際人権団体アムネスティが、十二月四日、イスラエルがやっていることはパレスチナ人へのジェノサイドだと公表。イスラエルは捏造だとしていますが、もう通用しません。これがジェノサイドじゃなくて、一体何なんですか。アメリカの二枚舌の正義が、あなた方の正義なんですか。それならば、二度と正義を語るな。日本政府は共犯なんです。共犯ですよ。(発言する者あり)総理に言っています。

 国際刑事裁判所、ICCは、十一月二十一日、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に逮捕状を出した。パレスチナ・ガザでの民間人虐殺を指揮した戦争犯罪の責任を問うためである。日本などICC加盟国にも逮捕義務があるとされますが、もし逮捕状が発行された人物が万博参加で入国した場合、政府は逮捕するんですか。

 このような状況下で、イスラエルの万博招聘は石破総理が中止判断するべきではないですか。

 そして、イスラエルのUNRWA活動禁止法の可決もジェノサイドの一環です。日本も国連加盟国として撤回要請しますか。

 そして、最後に、隙あらば小さくまとまろうとする野党も共犯です。

 自公政権のままでは、三十年の経済災害、戦争と増税に向かうこの政治は止められない。日本とアジアの平和は守られない。それは、国民が今まで以上にたくさん犠牲になり、死ぬということです。そのような状況の中で、隙あらば小さくまとまろうとする野党も共犯。選挙のとき言っていたのに、国会の中で消費税減税は封印。どうなりましたか。石破内閣の補正予算に歩み寄ったり、せいぜい石破さんらしくないわねと苦言を呈するとか、果てには数千億レベルの修正案で妥結しようとか、もうしゃれになりませんよ。そんな野党を国民は求めていません。

 世界を見てください。韓国でもフランスでも、どこでもそうですよ。内閣の緊縮予算や専横に野党が腹をくくって闘って、内閣を追い詰めて、国会に風穴を空けています。今の野党にそれができるか。壇上でプラカードを掲げたぐらいで懲罰発動している野党の議員にそれができるか。

 やっています感や小さな一致でまとまるのではなくて、国民的大義、やるべきことでまとまりましょう。日本において、それは消費税廃止であり、一律給付金です。そして、能登の復興復旧、それに国債を発行して、政府がいっぱい、がっつりお金を出すことです。

副議長(玄葉光一郎君) 大石あきこ君、申合せの時間が過ぎましたので、おまとめください。

大石あきこ君(続) 終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 大石議員の御質問にお答えを申し上げます。

 消費税率引下げについてでございます。

 消費税につきましては、急速な高齢化などに伴い社会保障給付費が大きく増加する中におきまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源と位置づけられていることから、政府として、その引下げを行うことは適当ではないと考えております。

 給付金についてでございます。

 今般の経済対策におきましては、物価高の影響を特に受ける低所得世帯の方々に対する給付金の支援を行うことといたしております。

 また、地方公共団体が、地域の実情に応じて、エネルギーや食料品価格の高騰に苦しむ方々への支援、学校給食費への支援のほか、新たに、厳冬期の灯油支援も行うようにいたしております。

 あわせて、家庭の電力使用量の最も大きい一月から三月までの冬期の電気代、ガス代を支援し、二人以上世帯の平均で電気、ガス合計で月千三百円程度の負担軽減を行います。

 こうした取組により、物価高から国民生活を守り抜きたいと考えておるところでございます。

 各施策を国民の皆様方に適切にお届けをし、家計を温め、生活が豊かになった、これを実感いただけますよう、今後とも適時適切に取り組んでまいりたいと考えております。

 社会保険料の引下げについてでございますが、社会保険制度の仕組みは、低所得者の負担に配慮しつつ、相互扶助の考え方を基盤として、必要な保険料を御負担いただくことを基本といたしております。

 このため、幅広い方を対象に国費で保険料の減免を行うことにつきましては、それがどのように正当化されるか、また、多大な財源はどのように賄うのか、結果的に将来世代に御負担を先送りすることにほかならないのではないかといった点で、慎重な検討が必要と考えております。

 教師につきましてのお尋ねをいただきました。

 これまでも、政府としては、小学校における三十五人学級の計画的な整備や教科担任制の推進など、必要な教員定数の改善を図ってきたところでございます。

 教師の時間外在校等時間が多いとの御指摘があります。業務の仕分を行った、学校、教師が担う業務に係る三分類に基づく業務の更なる厳選、見直しや、標準を大きく上回る授業時数の見直し、校務DXの加速化を進めますとともに、学校の指導、運営体制の充実により、教師の時間外在校等時間を削減いたします。

 こうした教師の働き方改革や給与面を含む処遇改善などを通じて、公教育の再生を進めてまいります。

 介護、保育の賃上げについてでございますが、介護分野における人手不足は厳しい状況であり、処遇改善は引き続き喫緊の課題でございます。このため、今年度の報酬改定による対応に加え、今般の補正予算案による支援策を通じ、更なる賃上げを進めてまいります。

 保育分野につきましては、令和六年の人事院勧告を踏まえ、今般の補正予算案に大幅な処遇改善を盛り込んでおります。

 御提案の十万円の措置につきましては、各分野の状況に応じた水準の妥当性についての検討と安定的な財源の確保が必要であると考えております。

 農家、酪農家への支援についてでございますが、酪農家を含め農家には、収入保険や加工原料乳生産者補給金などの経営安定対策、また、環境保全型農業直接支払交付金などの直接支払いを行っております。このほか、輸入飼料価格の高止まりなど、現下の課題に応じた支援を講じております。今般の補正予算におきましても、輸入飼料への過度な依存から脱却するための国産飼料生産・利用拡大緊急対策など、必要な事業に要する経費を計上しておるところでございます。

 その上で、直接支払いを含む農家への支援の在り方につきまして、今後、新たな食料・農業・農村基本計画の策定や令和九年度に向けた水田政策の在り方の検討の中で、議論を深めてまいります。

 農業経営の安定を通じ、食料自給率、そして食料自給力の向上を図ってまいります。

 また、御指摘の経済的困窮者への食料支援につきましては、今般の補正予算で物価高騰対策として追加しております重点支援地方交付金を活用して、地方公共団体において、地域の実情に応じて必要な措置が講じられますよう、積極的に働きかけてまいります。

 能登の復旧復興に向けた緊急支援策についてでございますが、これまで、計七千百五十億円の予備費を活用して、県と被災市町と緊密に連携し、被災者の避難支援、インフラ復旧、生活、なりわい再建支援、住まいの確保、公費解体の加速化などに切れ目なく取り組んでまいりました。

 今回の補正予算案では、豪雨により再び被災された方々も含め、状況に応じて切れ目ない対応を迅速に行うため、被災地の要望も伺いながら、例えば、災害公営住宅の整備への支援拡充、農地の復旧や、宅地、農地などにまたがって堆積した土砂、瓦れきの一括撤去、豪雨の被災者にも地震と同等の雇用調整助成金の特例の創設や、住宅、生活再建支援、なりわい再建支援、公費解体など、被災者ニーズが高い二千六百八十四億円の施策をきめ細やかに講じることといたしております。

 活気ある能登を取り戻すため、引き続き、被災自治体のお声も伺いながら、一刻も早い復旧と創造的復興に向けた取組を進めてまいります。

 大阪・関西万博の機運醸成費用についてお尋ねがございました。

 今回の補正予算におきましては、万博の成功に向けて、その必要性や意義、面白さなどの理解を深めるため、国内外のメディアを活用した情報発信や、万博参加国と全国の自治体との交流拡大、そのようなことのための費用などを盛り込んでおるところでございます。

 例えば、ある町では、留学生の拡大を目指し、万博期間中に海外の学生さんを町にお招きするとともに、その国のナショナルデーに町の高校生と一緒に万博会場を訪問し、交流を深め、次につなげる事業を検討しておるところでございます。

 こうした取組を通じ、万博を契機に、開催地である夢洲だけではなく、日本各地に多くの方々が訪れる流れを生み出し、日本全体に万博の効果を波及させ、その意義を一層高めてまいります。

 大阪・関西万博へのイスラエルの招聘等についてのお尋ねをいただきました。

 現時点で、大阪・関西万博に際してのイスラエルからの要人来日については、承知をいたしておりません。

 ICCがイスラエルのネタニヤフ首相らに対する逮捕状を発付した件につきまして、現時点でネタニヤフ首相らの訪日は想定されておらず、仮定の質問にお答えすることは差し控えさせていただきます。

 万博への参加は、各国が自ら判断することですが、イスラエルは以前より参加表明を行っており、現在も参加の意向を維持しております。いずれにせよ、政府といたしましては、万博の成功に向け、参加国と二人三脚で関係者一丸となって準備を進めていく考えでございます。

 UNRWAについてのお尋ねを頂戴いたしました。

 日本政府として、イスラエル議会で可決された、UNRWAの活動を大幅に制限する法案を深刻に懸念いたしております。私自身も、中東地域における人道状況の悪化に配慮をいたし、心を痛め、超党派人道外交議連のメンバーとして活動いたしてまいりました。

 UNRWAは、中東地域全域におけるパレスチナ難民支援において必要不可欠な役割を果たしております。UNRWAやその他の国際機関が持続的に人道支援活動を行い得るような環境を確保すべく、イスラエル政府への働きかけを含む外交努力を引き続き粘り強く行ってまいる所存でございます。

 以上であります。(拍手)

    ―――――――――――――

副議長(玄葉光一郎君) 辰巳孝太郎君。

    〔辰巳孝太郎君登壇〕

辰巳孝太郎君 私は、日本共産党を代表して、二〇二四年度補正予算案について石破総理に質問します。(拍手)

 まず、能登地域の被災者支援について聞きます。

 一月の地震から十一か月が経過、国などの支援が行き届かない中、能登に住み続けたいとの思いで悩み苦しんでいる被災者を、九月には記録的豪雨が襲いました。劣悪な環境で避難所生活を再び繰り返さざるを得ない状況です。被災者は今、先の見えない不安に直面しており、生活となりわいを再建できる希望の見える支援が必要です。

 医療費や保険料の免除期限が十二月末に迫っています。政府は速やかに延長を決定し、周知徹底すべきです。そして、命、暮らし、なりわいを支える支援を、豪雨災害も含めた全ての被災者を対象に迅速に行うべきです。

 次に、ケア労働者の処遇改善について聞きます。

 介護、医療、保育などのケア労働者の現場は、低いままの賃金、長時間労働などを苦にした離職が進み、物価高騰の下でも上がらない賃金が離職者を更に増大させています。

 今年度上半期の訪問介護事業所の倒産は、過去最高となりました。訪問介護報酬の基本報酬が削減されたからではありませんか。この介護崩壊ともいうべき事態の打開には、基本報酬を戻した上で減額分の補填措置を行うべきではありませんか。介護保険への国庫負担増、賃上げ助成を今すぐやるべきではありませんか。

 医療従事者、保育士の賃金切下げや低迷も、同様に深刻です。日本共産党は、本日午前、政府に対し、ケア労働者の賃上げに向けた財政措置を求める緊急要請を行いました。全てのケア労働者の賃金、処遇の抜本的改善を求めます。

 次に、生活保護行政です。

 二〇一三年、生活保護バッシングが吹き荒れる中、最大で一〇%、総額で六百七十億円もの生活保護費の大幅減額が強行されました。このことで、命が脅かされ、暮らしが押し潰され、社会とのつながりも断絶させられています。

 全国二十九地裁で提起された命のとりで裁判では、基準引下げ処分の取消しを認めた判決が全体で十九件です。原告勝訴の流れは明確です。誰一人取り残されないというなら、政府は控訴せず、生活保護費の減額をやめ、引上げを決断すべきではありませんか。

 生活保護の違法運用も深刻です。

 群馬県桐生市では、極めて深刻な人権侵害も常態化しています。ここでは、申請時に警察OBが同席するなどして威圧的な態度を取り、生活保護利用者を排除と取締りの対象としてきました。総理、こんな運用を政府はいつまで許すのですか。

 かつてのバッシングには自民党議員も加わりました。生活保護への偏見をなくし、低過ぎる捕捉率を上げ、生活保護制度を文字どおり最後のセーフティーネットとして機能させるべきではありませんか。

 一方、政府は、大企業には空前の大盤振る舞いです。

 補正予算案では、一兆円もの巨費を半導体メーカー、ラピダスに投入しようとしています。ラピダスには名立たる日本の大企業が出資していますが、総額はたったの七十三億円。本当に魅力のある事業であれば、なぜ少額の民間投資にとどまっているのでしょうか。半導体の安定確保は、本来、半導体メーカーとともにユーザー企業が自らの責任で行うべきものです。税金で肩代わりすることはやめるべきです。

 大阪・関西万博について聞きます。

 万博会場は、今も埋立てが続く現役の廃棄物処理場であり、一日二十五メータープールで九つ分のメタンガスを始め有害ガスが出続け、三月二十八日には爆発事故が起きました。補正予算案では会場内の安全確保費が計上されていますが、災害が起きれば二十万人以上が孤立してしまう万博をやめることこそ、一番の安全確保となるんじゃないですか。

 開幕まで四か月。チケットは前売り一千四百万枚の販売目標で到達は七百万枚と、半分です。もう、赤字にならないよう頑張りますでは話になりません。赤字は一体誰が最終的に負担するのか、明確な答弁を求めます。

 日本共産党は、賭博であるカジノと一体の大阪・関西万博の中止を求めます。

 最後に、森友事件です。

 私は、国有地が不当に値下げされた挙げ句に、公文書が改ざんされ、近畿財務局職員の赤木俊夫さんが自死に追い込まれた森友事件を参議院で追及してきました。政府はいまだに全容解明に背を向け、財務省は検察に任意提出した文書の存否も明らかにせず、不開示としています。

 石破総理はかつて、人一人が死んでいる、人生もあれば、家族もあったと、再調査の必要性も述べていました。先日のこの本会議でも、文書の公開については、関係法令に基づき適切に対応すると答弁しています。

 今年三月、情報公開・個人情報保護審査会は、この財務省の不開示決定は取り消すべきだと答申しました。ならば、これらの文書は全面開示すべきではありませんか。

 補正予算案には軍事費八千二百六十八億円を計上していることは、補正予算を特に緊要な経費に限っている財政法二十九条に反するものであり、ましてや、補正として過去最大規模を計上し、当初予算と合わせて九兆円にも及ぶ軍事費で戦争国家づくりを進めることは断じて許されないことを述べて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕

内閣総理大臣(石破茂君) 辰巳孝太郎議員の御質問にお答えを申し上げます。

 能登地域の被災者支援についてのお尋ねでございます。

 令和六年能登半島地震の被災者などに対する医療の取扱いは、一部負担金は本年十二月まで、保険料は来年三月分まで、免除分を財政支援の対象としております。その後の支援につきましては、現在、被災状況や市町村などの御意向を踏まえて検討を行っており、速やかにお示しをいたしてまいります。

 これまでの数次にわたります予備費での対応に続き、今回の補正予算案には、状況に応じて切れ目ない対応を迅速に行うため、被災地の要望を踏まえた支援策を盛り込んだところでございます。

 これにより、豪雨により再び被災された方々に対しましては、雇用調整助成金の特例の創設や、住宅・生活再建支援、なりわい再建支援、公費解体など、地震と同等の支援を行うことといたしております。

 活気のある能登を取り戻すため、引き続き、被災自治体のお声も伺いながら、一刻も早い復旧と創造的復興、被災前よりもよい能登になった、そう言っていただけますよう取組を進めてまいります。

 訪問介護への対応や介護、医療、保育分野の賃上げなどについてのお尋ねを頂戴いたしました。

 訪問介護につきましては、今年度の介護報酬改定で基本報酬を見直す一方で高率の処遇改善加算を措置いたしており、その影響につきましては、引き続き丁寧な把握に努めてまいります。その上で、訪問介護につきましては、人材確保に特に課題があるものと認識をいたしておりまして、今般の経済対策の支援措置も併せて活用いたしてまいります。

 介護保険制度への国庫負担増についてでございますが、この制度は、社会保険方式の下、保険料、公費でそれぞれ五割を負担する仕組みといたしております。公費負担割合を引き上げることには、したがいまして、慎重であるべきと考えております。

 介護、医療、保育などの分野におきます人材不足に対し、今年度の報酬改定による対応や、今般の補正予算案に盛り込みました支援策などを通じ、更なる賃上げに取り組んでまいります。

 生活保護制度についてのお尋ねを頂戴いたしました。

 生活扶助基準の改定に対する訴訟について、控訴せず引上げを決断すべきとの御指摘につきましては、いずれも判決が確定をしておらず、係争中の事案でございますため、お答えは差し控えさせていただきます。

 桐生市における生活保護の運用について、生活保護の申請権の侵害はあってはなりません。厚生労働省及び群馬県におきまして、適切な運用が確保されますよう対応している、このように認識をいたしておるところでございます。

 生活保護制度は最後のセーフティーネットであり、保護を必要とする方に確実かつ速やかに保護が実施できますよう、生活保護の申請が国民の権利であることを周知いたしますとともに、相談支援機関などとの連携を確保するなどの取組を進めてまいります。

 次世代半導体の開発に取り組むラピダスプロジェクトについてのお尋ねを頂戴いたしました。

 半導体は、経済安全保障の観点から重要な戦略物資であり、供給が途絶いたしました場合には幅広い産業に影響が及びます。また、その投資は、地域経済への大きな波及効果ももたらすものでございます。

 こうした背景から、政府といたしましては、半導体の国内生産基盤を構築し、サプライチェーンの強靱化と地方創生を図っていく考えでございます。

 ラピダスが取り組みます次世代半導体は、将来の経済成長を左右する最重要技術ですが、海外のトップメーカーも含めて量産にはまだ至っていない、極めて野心的な取組でございます。そのため、民間資金のみでは量産の実現は困難であり、国が一歩前に出て支援をしていくべきもの、このように考えております。

 今後の量産化に向けましては、民間からの更なる資金調達を拡大させますとともに、今般策定したAI・半導体産業基盤強化フレームに基づきまして、次世代半導体の研究開発や量産投資に向けた支援を行ってまいります。

 大阪・関西万博についてであります。

 会場の安全確保に万全を期することは当然のことでございます。御指摘がありましたメタンガス対策につきましては、博覧会協会において、有識者の意見を踏まえ、本年六月に作成した会期中の安全対策に基づいて、換気設備設置などの対策を講じてまいります。

 災害時の対応につきましても、本年九月に博覧会協会が策定した防災実施計画に基づき、関係機関と連携をして、来場者の皆様方の安全確保に向けた対策を進めてまいります。

 こうした対策を着実に進め、安全に大阪万博が開催できますよう準備を進めてまいります。

 また、博覧会の収支につきましては、博覧会協会において赤字にならないように取り組んでいくものと承知をいたしております。その上で、政府といたしましても、博覧会協会と緊密に連携し、機運を醸成いたしますとともに、博覧会協会の予算執行をモニタリングしながら、適正な事業運営を確保いたしてまいります。

 森友学園事案についてお尋ねを頂戴いたしました。

 赤木さんがお亡くなりになられましたことにつきましては、改めて、謹んでみたまの安らかならんことを心よりお祈りし、御遺族の皆様方にお悔やみを衷心より申し上げるところでございます。

 お尋ねの文書は、現在係属中の訴訟に関わるものであり、訴訟外で申し上げることは差し控えたいと存じます。

 森友学園事案につきましては、国民の皆様方からの様々なお尋ねに対しまして、今後とも丁寧に説明していく必要があるものでございます。関係法令に基づき適切に対処するというのは、極めて当然のことでございます。

 以上でございます。(拍手)

副議長(玄葉光一郎君) これにて国務大臣の演説に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

副議長(玄葉光一郎君) 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十七分散会

     ――――◇―――――

 出席国務大臣

       内閣総理大臣  石破  茂君

       総務大臣    村上誠一郎君

       法務大臣    鈴木 馨祐君

       外務大臣    岩屋  毅君

       財務大臣    加藤 勝信君

       文部科学大臣  あべ 俊子君

       厚生労働大臣  福岡 資麿君

       農林水産大臣  江藤  拓君

       経済産業大臣  武藤 容治君

       国土交通大臣  中野 洋昌君

       環境大臣    浅尾慶一郎君

       防衛大臣    中谷  元君

       国務大臣    赤澤 亮正君

       国務大臣    伊藤 忠彦君

       国務大臣    伊東 良孝君

       国務大臣    城内  実君

       国務大臣    坂井  学君

       国務大臣    平  将明君

       国務大臣    林  芳正君

       国務大臣   三原じゅん子君

 出席内閣官房副長官及び副大臣

       内閣官房副長官 橘 慶一郎君

       財務副大臣   斎藤 洋明君

 出席政府特別補佐人

       内閣法制局長官 岩尾 信行君


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