第13号 令和7年3月31日(月曜日)
令和七年三月三十一日(月曜日)―――――――――――――
令和七年三月三十一日
午後四時三十分 本会議
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○本日の会議に付した案件
令和七年度一般会計予算(参議院回付)
午後四時三十二分開議
○議長(額賀福志郎君) これより会議を開きます。
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○議長(額賀福志郎君) お諮りいたします。
参議院から、令和七年度一般会計予算が回付されました。この際、右回付案を議題とするに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。
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令和七年度一般会計予算(参議院回付)
○議長(額賀福志郎君) 令和七年度一般会計予算の参議院回付案を議題といたします。
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令和七年度一般会計予算の参議院回付案
〔本号末尾に掲載〕
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○議長(額賀福志郎君) 質疑の通告があります。順次これを許します。大西健介君。
〔大西健介君登壇〕
○大西健介君 立憲民主党の大西健介です。
参議院での予算案の再修正は、高額療養費引上げ凍結に伴い百五億円を増額し、その分、予備費を減額する内容となっており、高額療養費の見直し及び予備費を活用した我々の修正案に関連して、会派を代表し、質問いたします。(拍手)
参議院で修正された予算案が衆議院に回付をされるのは憲政史上初のことであり、この本会議を開かなければならなくなったのは、首相が、がんや難病の患者の声や我々の度重なる提案に耳をかさず、高額療養費の引上げ凍結の決断が遅れたためであります。
我々の提案どおりになったことは多といたしますが、凍結決断の理由は、患者の方々の命が大切というよりは、参議院選挙に不利になるという低次元の理由であり、衆院通過から僅か三日後の方針転換には、衆議院での審議は何だったのかと憤りを禁じ得ません。
冒頭、当事者の皆さんに不安を与えたこと及び国会審議を混乱させたことについて、改めて首相の反省の弁を求めます。
秋までに改めて方針を検討することになっていますが、このままでは再び不適切なプロセスによって、同じように自己負担大幅引上げの結論が出されることが懸念されます。
首相は、患者の方々の御納得がいただけない限り、これはやってはならないと答弁していますが、そのためには、審議会に正式な委員として患者団体に加わっていただくことが必須と考えますが、いかがですか。
また、高額療養費制度の再検討のプロセスでは、長期にわたり高額療養費の支給を受けた者の生活実態に関する調査を行うべきと考えますが、いかがですか。
さらに、当初の案と同様に、医療費の給付費を年五千三百億円抑制することを前提に再検討が行われれば、今回と同様な結論が出るおそれがありますが、その前提を変えないのか、首相の明確な答弁を求めます。
高額療養費の方針転換は参議院での審議中のことでありましたが、首相が予算成立後に強力な物価高対策を打ち出す考えを示したのには腰を抜かしました。今審議している予算は物価高対策には無力であると自白しているのに等しく、物価高対策を待ちわびている国民をばかにしていると同時に、立法府を軽視するものと言わざるを得ません。
我々は、安住予算委員長の下で、初の試みとなる省庁別審査を通じて厳しい行政監視を行い、無駄遣いや積み過ぎ基金の削減など、財源捻出に全力で取り組み、責任政党として、三・八兆円の予算を確保し、修正案を提出しました。しかし、政府・与党には、無駄削減に取り組む行政監視の姿勢は全く見られませんでした。
高額療養費の引上げ凍結も、予備費を使わず、我々の示した無駄な予算を活用すればできたはずなのに、なぜそれを行わなかったのか、首相の明確な答弁を求めます。
我々の修正案では、無駄な予算や予備費を物価高対策に回すことで、四月からガソリン減税を行うことにしています。現在のガソリン価格は、本来トリガー条項が発動される水準であり、私たちが示した財源を使えば、四月からリッター当たり二十五・一円の暫定税率を廃止し、ガソリン減税を実施することは可能です。ないのは財源ではなくて、やる気と本気です。
国民は、今ガソリン高に苦しんでいるのであって、一年後では遅いのです。強力な物価高対策が必要と言うのであれば、四月に間に合わなくても、新たな物価高対策の中で、令和七年度のできるだけ早い時期に暫定税率を廃止し、ガソリン減税を行うべきです。
我々は、四月からガソリン減税を実施する法案を国民民主党と共同で提出しましたが、否決をされました。ところが、自民、公明、維新は、先日、ガソリン税の暫定税率廃止をめぐる協議を行い、維新は、今年の夏をめどに暫定税率を廃止すべきと主張しました。
野党は一致をしています。ガソリン減税にブレーキをかけているのは、自民、公明の与党ではありませんか。我々は、各党に呼びかけ、改めて、夏までにガソリン減税、暫定税率廃止を実現する議員立法を提出する予定です。野党が賛成すれば、衆議院ではガソリン減税法案は可決をされます。総理、ガソリン減税法案に賛成していただけませんか。我々は、ガソリン減税法案が成立しない場合には、参議院選挙の争点とし、何としても実現をする決意ですが、いかがですか。
国民は、ガソリン価格高騰に加え、食品が高いのにも困っています。米の値段は去年のほぼ倍になっており、野菜も卵も高くて、消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は四十三年ぶりの高水準となっています。
政府が放出した備蓄米がようやく店頭に並び始めましたが、米相場全体の過熱を抑え込むには難しいとの見方があります。また、高値の原因は、農水省の言う流通の目詰まりではなく、統計上の収穫量などが実態と乖離しているためで、米は足りていないとの専門家の見方がありますが、いかがですか。
予備費も活用し、もっと強力な食品値上げへの対策を行うべきではないですか。いかがですか。
予算案が衆議院を通過する前夜、公邸での会食に参加した自民党の新人議員十五人に十万円の商品券が配られたことが明らかになりました。命が懸かっている高額療養費の引上げでは百五億円を出し惜しむ一方で、新人議員には気前よく商品券を配る感覚が信じられません。
自民党政治は、GNP、義理と人情とプレゼントと言われるように、商品券を渡すことは当たり前の文化となっていた可能性が高いと思います。歴代政権でも慣行になっていたのか、調査を行うべきと考えますが、いかがですか。
政策活動費とか裏金とか、領収書の要らない金を子分や地方議員にばらまいているから、政治にはお金がかかるのではないのでしょうか。
その政治と金の問題に関し、企業・団体献金規制について、三月末までに結論を出すことになっていましたが、立憲や維新など野党五党派が提出した企業・団体献金禁止法案が一部の野党の賛同を得られていないのは残念です。裏金問題に端を発した政治不信は頂点に達しており、先送りは許されません。
年金改革も先送りは許されません。年金制度改革関連法案の国会提出が遅れています。就職氷河期世代の低年金を底上げする法案であり、就職氷河期世代への支援は、予備費を使ってでも行うべき喫緊の課題です。
重要広範議案に指定された法案が提出されなかったことは過去に例がありません。夏の参院選への影響を懸念し、批判をかわす意図があるとすれば、無責任極まりなく、低年金の就職氷河期世代を放置することは許されません。就職氷河期世代の低年金を底上げするという年金改革の方向性には我々も賛成であり、選挙を控えているからこそ、国会で十分な審議時間を確保して議論することが必要と考えますが、いかがですか。
冒頭申し上げましたとおり、参議院で修正された予算案が衆議院に回付をされたのは、憲政史上初めてのことであります。それは首相が途中でぶれたからです。首相がもっと早く我々の提案を受け入れる決断をしていれば、こんなことにはならなかったはずです。
石破政権は、少数与党という状況をいまだ理解していないのではないでしょうか。野党の意見を聞き入れて協力を求める謙虚さと決断力を失った石破政権の政権担当能力に疑問符をつけざるを得ないということを申し上げて、私の質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 大西健介議員の御質問にお答えを申し上げます。
高額療養費制度の見直しについてお尋ねがありました。
今回の見直しは、高額療養費が医療費全体の倍のスピードで増大する中、保険料負担を抑制するとともに、制度の持続可能性を高めるためのものでありましたが、国会における議論や、患者団体の皆様から、検討プロセスに丁寧さを欠いたとの御指摘をいただいたことを政府として重く受け止め、全体として実施を見合わせることといたしたものであります。
この過程において、患者の皆様方に御不安を与えたこと、また、予算が衆議院を通過した後に再度修正することになったという経緯につきましては、改めて大変申し訳ないという思いであります。
今後、改めて秋までに検討し、決定することとしておりますが、その際には、患者の方々のお話を十分伺うとともに、保険料を負担する被保険者の皆様方からの御意見も拝聴し、御理解をいただくべく最善を尽くしてまいります。
高額療養費制度の見直しの再検討プロセスについてのお尋ねでございます。
高額療養費制度の見直しにつきましては、今後、改めて秋までに検討し、決定することといたしておりますが、患者団体を始めとした関係者の皆様方からどのような形で御意見を伺うかや、患者の就労、生活実態を踏まえたデータ分析については、改めて厚生労働省において検討を行い、丁寧な議論を進めていくことといたしております。
なお、高額療養費制度の見直しについては、五千三百億円の給付費削減を前提として検討を行っているものではございません。
予算修正の財源についてのお尋ねであります。
国会において御党の予算修正案も真摯に議論が行われ、そうした議論も踏まえ、基金の返納金や予備費の減額などが盛り込まれたものであります。
今御審議いただいております再修正案では、高額療養費の見直し全体の実施を見合わせるという決断を踏まえ、社会保障関係費の増額と同額の予備費の減額が計上されておりますが、一時的な財源とはいえ、予備費の減額による財源の確保につきましては、取り得る方策と承知をいたしております。
いわゆるガソリンの暫定税率の廃止についてのお尋ねであります。
その廃止に当たりましては、受益者負担、原因者負担の考え方を踏まえたインフラ整備や維持管理費等の負担の在り方、国、地方を合わせ約一・五兆円の恒久的な税収減に対応するための安定的な財源の確保、現在の税収を前提に新年度予算の執行を予定している各自治体への影響などの課題を解決していく必要がございます。
現時点で国会に提出されていない法案について、仮定の質問へのコメントは差し控えますが、昨年十二月の自民、公明、国民民主の三党の幹事長間合意を踏まえ、こうした課題の解決策や具体的な実施方法等について、引き続き、政党間で真摯な協議が続けられるものと承知をいたしております。
米を含む食料品値上げへの対策についてであります。
備蓄米の売渡しについては、消費者の皆様方への安定的な供給を通じて、上昇した米価が落ち着くことを期待しております。先週、第二回の入札を終えましたが、必要ならば、ちゅうちょなく更なる対応を行います。米の収穫量については、調査圃場を選定して統計的な標本調査を行っておりますが、引き続き、精度の向上に努めてまいります。
食料品の値上げへの対策としては、物価上昇に負けない賃上げの実現に向け、日本全体で賃金が上がる環境をつくっていくことが基本であると考えております。その上で、令和六年度補正予算で措置した物価対策に対応する重点支援交付金等の施策を迅速かつ効果的に実施するとともに、令和七年度予算案や税制改正法案を成立させていただき、これらに盛り込まれた所得税の減税や高校無償化の先行措置など、物価対策に資する措置を実施してまいります。
歴代政権における商品券配付の慣行の有無についてであります。
少なくとも、私が自民党総裁、内閣総理大臣になった際、商品券の配付に関する申し渡しは受けておらず、私自身、御指摘のような慣行が存在していたとは認識しておりません。
過去の内閣総理大臣が商品券を配付していたか否かは承知しておりませんが、具体的な根拠に基づいて何らかの違法行為の指摘がなされているわけでもなく、個々の政治家の一つ一つの行為について調査を行うことは考えておりません。
年金改正法案についてであります。
次期年金制度改正につきましては、昨年七月に公表した財政検証の結果を踏まえ、厚生労働省におきまして、働き方に中立的な制度の構築や高齢期の所得保障、再分配機能の強化といった観点から検討及び調整を進めておりますが、その調整に時間を要しておるもの、このように承知をいたしております。
今国会への法案提出に向け、党内の調整を急いで進めるよう、党に対しまして改めて指示をしており、国会での審議に資するよう、できる限り早期に法案を提出すべく、引き続き努力を重ねてまいります。
以上でございます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 阿部司君。
〔阿部司君登壇〕
○阿部司君 日本維新の会、阿部司です。(拍手)
本日は、議題に沿って、令和七年度一般会計予算案回付案について質問いたしますが、その前に、国民の関心が高い政治と金の問題について触れざるを得ません。
衆議院で予算が通過した直後に発覚した商品券問題は、国民の政治不信を更に高めるものでした。
総理は、商品券を渡したことについて、政治活動ではないと説明されておりますが、この説明には疑問を持たざるを得ません。政治活動か否かは、主観的判断ではなく、客観的な基準で判断されるべきではないでしょうか。自民党総裁という政治的地位にある方が、党所属の国会議員へ金銭的価値のあるものを提供する行為が政治活動でないとすれば、政治資金規正法の意義そのものが問われることになります。
そもそも、政治活動の判断基準は、誰がどのように決めるべきものとお考えでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。
総理は、商品券問題について、違法性はないと説明されていますが、昨年の自民党政治資金問題を受けた国会での議論は、疑惑を持たれた政治家は政治倫理審査会で進んで説明責任を果たすとの認識が共有されました。総理自らが進んで政倫審に出席し、説明すべきと考えますが、いかがでしょうか。
さらに、今回の商品券の原資について、総理はポケットマネーであることを強調されておりますが、官房機密費が使われたという疑念は拭えません。これは、官房機密費の使途が不透明であることにも一因があります。現在、官房機密費の使途は全く公開されておらず、国民の監視の目が届かないからであります。
我が国の民主主義を健全に機能させるためには、政治と金の透明性を高めることが不可欠です。せめて三十年後には官房機密費の使途を公開するような制度改革を行うべきと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
次に、回付のありました高額療養費制度見直しについて質問いたします。
本来、医療制度改革においては、命に関わる医療の核を守りつつ、社会保険料を下げて現役世代の生活も守ること、そして、年齢に関係なく、全ての国民に公平な医療制度とすることを目指すべきであり、我が党は、こうした哲学を持ち、国民医療費の総額を四兆円削減し、現役世代一人当たりの社会保険料負担を年間六万円引き下げる改革をするべきと考えております。
総理は、前提として、この二つの哲学に同意されますか。また、政府の高額療養費制度見直しがこうした哲学に基づいていなかったことが、今回の混乱を招いたのではないでしょうか。総理の御見解をお伺いいたします。
高額療養費制度の見直しについては、我が党も、予算委員会において、池下卓議員、金村龍那議員、三木圭恵議員らが、制度の持続可能性や負担の在り方の観点から、今回の政府の当初案について、撤回を含めて厳しく問いただしていたところであります。
報道によれば、衆議院での予算審議の段階で既に負担上限額の見直しの再考が検討されていたにもかかわらず、参議院審議まで方針転換の決断が持ち越されました。重要政策の判断がこのように二転三転する状況は、総理のリーダーシップや政策決定の透明性に疑問を投げかけるものであります。
重要政策の判断がこのように二転三転する状況は、総理の政権運営における意思決定体制に重大な欠陥があることを示していると思いませんか。今後このような混乱を繰り返さないための改善策と併せて見解を伺います。
我が党の猪瀬議員が参議院で指摘したように、高額療養費制度には六十九歳の壁という年齢による格差が存在します。同じ年収の方でも、六十九歳までは窓口負担が三万五千四百円又は五万七千六百円なのに対し、七十歳以上は外来特例で八千円か一万八千円となります。猪瀬議員は、年齢で線を引く理由は何かと質問し、同じ年収の人がなぜ違うのかという不公平を指摘しました。
四十七兆円の医療費総額の中で、こうした世代間格差を解消する改革こそが必要だったのではないでしょうか。総理のお考えをお伺いいたします。
高額療養費制度については、経営・管理ビザを取得した外国人が日本の高額療養費制度を利用するという、いわゆる医療ツーリズムの問題も報道されております。近年、外国人の医療費負担額は増加の一途をたどり、特に透析やがん治療、特殊薬の使用など、特定の病気において外国人患者の割合が急増しているとの指摘もあります。
まずは、こうした実態を政府として調査、公表し、医療制度の公平性を確保するための対策を講じるべきと考えますが、総理のお考えをお伺いいたします。
関連して、社会保障制度改革について伺います。
我が党は、社会保険料の負担軽減を最優先課題と位置づけ、年間四兆円の医療費削減と、一人当たり六万円の保険料軽減を目指す具体的な提案を掲げております。既に二回開催された自民、公明、維新の三党による政策協議体でも、我が党のこの目標は共有され、議論が進んでいるところであります。
であれば、我々が掲げる四兆円削減、六万円軽減という数値目標について、政府としても共有されていると考えてよろしいでしょうか。総理に改めて確認いたします。
こうした改革を進めるには、既得権益との対峙も不可避です。特に医療分野においては、日本医師会との関係がこれまで幾度となく制度改革の足かせとなってきました。実際、令和四年には、日本医師連盟などから自民党所属議員への政治献金、パーティー券購入額が約六・一億円に上ったと言われております。国民の目には、こうした金銭の授受が、既得権益の維持と引換えに改革が遅れていると映ってしまうのではないでしょうか。
今こそ、政権与党が率先して姿勢を正すべきときです。医師会等からの献金を今後は辞退する、こうした改革への強いメッセージを、総理・総裁として打ち出すお考えはありませんか。率直な見解を伺います。
また、医療費の適正化に向けて、我が党は、市販薬と同等の効能やリスクでありながら処方が必要とされる医薬品、いわゆるOTC類似薬について、公的保険の適用を見直すことを提案しています。国民が日常的に使う薬の中には、本来、市販薬として対応できるものも少なくありません。セルフメディケーションの推進を掲げる政府の方針とも整合的であり、医療費抑制の有効な手段です。
しかし、現在、薬機法改正の議論の中で、OTC類似薬への規制強化が検討されているとも伺っております。これは、医療費の抑制や社会保険料負担の軽減を目指す方向性と明らかに矛盾しているのではないでしょうか。OTC類似薬の在り方と併せて、総理の見解を伺います。
最後に、物価高対策について伺います。
新年度予算成立後に強力な物価高対策を講じると報道され、後に総理は陳謝されましたが、選挙前のばらまきではないかという疑念はいまだに拭えません。
これまでも、政府の物価高対策は、補助金頼みで場当たり的な対応に終始し、特に高齢者世帯に偏った支援が続いてきました。その一方で、現役世代や子育て世帯には十分な効果が届いておりません。今必要なのは、補助金頼みではなく、歳出改革とセットでの減税、そして社会保障制度改革を通じた可処分所得の底上げであります。
そこで、総理に伺います。
今夏の参議院選挙前に、物価高対策と称して、補助金を中心とするばらまき的な施策を決定することはないと、この場で明言していただけますか。
そして、そうした問題意識を総理がお持ちであるのであれば、今こそ、ガソリン価格の問題に踏み込むべきではないでしょうか。長引くガソリン価格の高騰が、家庭、物流、公共交通など、国民生活全体に深刻な影響を及ぼしております。補助金ではなく、構造的に負担を軽減する減税こそが、持続的かつ公正な物価高対策であります。
速やかに物価高対策を行うべきという問題意識を総理がお持ちなのであれば、今年の夏までにガソリンの暫定税率を廃止するべきではありませんか。御決断を求め、私からの質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 阿部司議員の御質問にお答えをいたします。
政治活動についてのお尋ねであります。
政治資金規正法には政治活動の定義はありませんが、一般的には、政治上の主義若しくは施策を推進し、支持し、若しくはこれに反対し、又は公職の候補者を推薦し、支持し、若しくはこれに反対することを目的として行う直接間接の一切の行為をいうと解されております。
具体的には、例えば、一定の政治社会体制を採用することについて支持し、又は反対するような体制選択的活動や、国及び地方公共団体の具体的な施策を支持し、又は反対するような政策選択的活動などが政治活動に当たるものと考えられます。
個別の行為が政治活動に当たるか否かにつきましては、具体的な事実関係に即して、まずは当事者である政治家個人個人において判断すべきものと考えております。
商品券の配付と政治倫理審査会への出席についてであります。
この度の商品券の配付につきましては、会見を通じて国民の皆様に繰り返し説明を行うとともに、参議院予算委員会の場でも、全国民を代表する国会議員の皆様からの御質問に真摯にお答えするなど、できる限りの説明を行っておるところでございます。
本件は法律に何ら抵触するものではなく、収支報告書の不記載事案とは性質が異なるものでありますが、国民の皆様方の感覚からかけ離れているなど、様々な御批判、御指摘を真摯に受け止め、猛省をいたしておるところでございます。
引き続き、様々な機会を通じ、誠心誠意説明を尽くし、国民の皆様の御理解が得られますよう更なる努力をいたしてまいります。
内閣官房報償費の使途の公開についてであります。
御指摘の商品券につきましては、会食のお土産代わりに、御本人、その御家族へのねぎらいなどの観点から、私費で用意したものでございまして、官房報償費から支出したものではございません。
内閣官房報償費は、内政、外交を円滑かつ効果的に遂行するため、取扱責任者である内閣官房長官のその都度の判断で、機動的に使用する経費であります。その情報公開に当たりましては、このような報償費の機能の維持に最大限留意する必要がございます。
仮に、内閣官房報償費の支払いの相手方や具体的な使途などに関する情報が開示されました場合には、内政上、外交上の協力を依頼している関係者等からの信頼が失われ、重要政策等に関する事務の遂行に支障が生ずるおそれがあるとともに、内閣官房への協力や情報提供などが控えられることとなる結果、今後の内閣官房の活動全般に支障が生ずることもあり得ます。
このため、内閣官房報償費につきましては、その個別具体的な使途に関するお尋ねについてはお答えを差し控えておるところであり、平成三十年一月の最高裁判決におきましても、協力者の特定につながる情報や具体的使途については不開示とすることが認められております。このような現状の取扱いは今後も維持していくべきである、このように考えております。今後とも、国民の不信を招くことがないよう、適切な執行を徹底をいたしてまいります。
医療制度改革の哲学についてのお尋ねです。
医療保険制度を持続可能なものにしていくためには、負担能力に応じた全世代による支え合いの上で、給付の重点化や効率化に取り組むことで、現役世代を中心に負担軽減を図りながら、必要な保障を確保していくことが重要であると認識をいたしております。
高額療養費制度の見直しもこうした考え方に沿ったものと考えておりますが、今後、本年秋までに、患者の方々のお話を十分伺うとともに、保険料を負担する被保険者の皆様からの御意見も拝聴し、御理解をいただくべく最善を尽くしてまいります。
高額療養費制度の政策判断についてのお尋ねであります。
高額療養費制度の見直しにつきましては、国会審議における各委員からの御指摘を受け、また、患者団体の皆様からの、検討プロセスに丁寧さを欠いたとの指摘を政府として重く受け止め、全体について実施を見合わせることといたしました。
今後の検討に当たりましては、患者の方々のお話を十分伺うとともに、保険料を負担する被保険者からの御意見も拝聴し、御理解をいただくべく、丁寧なプロセスを積み重ねてまいります。
七十歳以上の外来特例についてのお尋ねであります。
年齢にかかわらず、負担能力に応じて皆が支え合うという視点は重要であると考えております。
高額療養費制度につきましては、当初、御指摘の外来特例の上限額の見直しを含んで提案をいたしましたところですが、本年秋までに、見直し全体について改めて方針を検討し、決定することとしたところでございます。改めて、高額療養費制度の持続可能性を確保しつつ、患者の経済的な御負担が過度なものとならないようにする観点から、外来特例につきましても丁寧に検討いたしてまいります。
外国人の医療保険利用についてのお尋ねです。
我が国の医療保険制度は、適正な在留資格を有し、日本国内に住所を有している外国人については、原則として加入をいただき、保険料を納めながら保険給付をいただく制度となっております。
現状把握しております国民健康保険に関するデータによれば、外国人の被保険者数は全体の四%であるところ、医療費は一・四%、高額療養費の支給額は一・二%であり、外国人が制度を多く利用しているとの状況にはないものと認識をしておりますが、引き続き、外国人の医療保険利用の実態を把握をしながら、適正な利用に向けて取り組んでまいります。
社会保険料の負担軽減についてであります。
少子高齢化が進む中で、社会保険料負担の抑制に取り組むべき、このような問題意識は共有をいたしております。
今後、政府・与党の方針、提言に加え、御党が公表した改革案も念頭に置いて、保険料負担を含む国民負担を軽減するための具体策について、三党の協議体で議論を深めていくこととなる、このように承知をいたしております。
日本医師会等からの献金についてのお尋ねであります。
医療分野に関わる改革を検討する際には、提供側である医師等も含む関係者との丁寧な調整も当然必要であり、他方、その際は、国民のために何が必要かという観点から検討していくべきものと考えております。
政府・与党の政策は、各種調査や外部の有識者、専門家の意見、関係省庁や各党での議論、国会での審議の積み重ね等のプロセスを経て決定されているものであり、企業・団体献金を受けていることにより政策立案の在り方などがゆがめられるなどということはなく、御指摘は当たるものではございません。
いわゆるOTC類似薬についてのお尋ねです。
今般の薬機法改正案は、医療用医薬品の販売について、安全性の確保の観点から保健衛生上必要な対応を規定するものであり、医療費の抑制等に関する議論とは別のものであります。
その上で、三党合意では、OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しも含め、現役世代の増加する保険料負担を含む国民負担を軽減するための具体策を検討することとされており、三党の協議体において議論が深められていくことになると考えております。
物価高対策といわゆるガソリンの暫定税率の廃止についてのお尋ねです。
物価動向やその上昇が家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いつつ、令和六年度補正予算で措置した物価対策に対応する重点支援交付金等の施策を迅速かつ効果的に実施するとともに、令和七年度予算案や税制改正法案を成立させていただき、これらに盛り込まれた所得税の減税や高校無償化の先行措置など、物価対策に資する措置を着実に実施することが必要なことでありまして、物価高対応に向けて新たな予算措置を打ち出すことを考えているわけではございません。
いわゆるガソリンの暫定税率の廃止に当たりましては、受益者負担、原因者負担の考え方を踏まえたインフラ整備や維持管理等の負担の在り方、国、地方合わせ約一・五兆円の恒久的な税収減に対応するための安定的な財源の確保、現在の税収を前提に新年度予算の執行を予定している各自治体への影響などの課題を解決していく必要がございます。先日、自民、公明、維新の会の三党におきましても協議が開始され、こうした課題の解決策や具体的な実施方法等について、引き続き政党間で真摯に協議がなされるものと承知をいたしております。
以上でございます。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 浅野哲君。
〔浅野哲君登壇〕
○浅野哲君 国民民主党の浅野哲です。
ただいま議題となりました令和七年度予算案の回付案に関連して質問いたします。(拍手)
衆議院は、三月四日の本会議において、令和七年度予算案の修正案を可決いたしました。この議決に至るまでに、衆議院では予算委員会における審議を様々な視点から重ねてまいりました。特に高額療養費制度については、当事者の意見を聞くことなく決定した経緯もあって、野党各党から再三にわたり制度見直しの再考を求められ、多数回該当の自己負担額を据え置く結論を得た上での採決でありました。しかし、衆議院での採決後、たった三日のうちに、石破総理は、この予算案の中身を変更し、高額療養費制度の見直し全体を見合わせるという意向を表明したのであります。
我が国の国会は、二院制を取っています。その本旨から、参議院での予算案の再修正は当然あり得るものです。しかし、なぜたった三日で判断が変わったのか、その際の判断指標は何だったのか、石破総理が今回の決断をした最終的な根拠、これら三点を併せて総理に伺います。
そして、当事者と面会したことで総理の判断が変わったのであれば、これは政府の政策決定プロセス自体にそもそも問題があるということになります。今回の経過を踏まえ、今後の本制度見直しの際には、当事者の参画や意見聴取の機会を設け、十分な判断材料を得ておく必要があると考えます。少なくとも、この秋までの検討では、高額療養費制度利用者の代表を検討メンバーに加えるべきと考えますが、総理の見解を伺います。
また、政府は、当初、少子化対策の財源の一部に高額療養費制度の見直し分、二〇二五年度発現分として六百億円程度を見込んでいたと思いますが、今回の制度見直しの全面凍結によって修正を要した予算額は百六十億円にとどまりました。この理由について御説明ください。また、少子化対策の財源を欠損させないための方策についても御説明をお願いいたします。
続いて、今般の予算案について見直された所得税課税最低限、いわゆる百三万円の壁の見直し内容には、その後多数の指摘がなされていることを踏まえ、以下二点についてお伺いいたします。
まず一点目は、度々指摘されているように、課税最低限に所得制限を複数段階で設けたことにより、従来よりも制度がかなり複雑になってしまった点です。これは、年収にかかわらず減税額をなるべく均一にしようとした結果だと思いますが、所得税には累進性があるので、所得控除額の調整で減税額をそろえようとすること自体が間違いです。
政府・与党は、自公国の三党協議においても、物価上昇等を踏まえて基礎控除等の額を適時に引き上げることとしました。物価高対策が目的であれば、年収にかかわらず公平に負担を軽減できる定額減税や税額控除で対処する方が適していますし、働き控えへの対策を目指すのであれば、今回のような制度の複雑化は絶対に避けなければならなかったはずです。
改めて、今般、政府が行った百三万円の壁の見直しの目的を御説明ください。また、なぜ所得税の減税額をそろえようとしたのか、そして、そのための方法として、基礎控除や給与所得控除での調整を選択する合理的な理由があるのか、お答えください。
二点目は、今回の見直しによって、所得税と住民税の課税最低限の大幅な乖離が理屈づけできるのかという点です。今回の見直しで、年収二百万円未満の労働者は、所得税の課税最低限は百三万円から百六十万円に引き上がりますが、住民税の課税最低限は現行の、これまでの百万円から百十万円までしか引き上げられません。これでは働き控えの解消を目指す上で大きな障壁となってしまうと思いますが、今回の見直しによって働き控えがどの程度改善すると見込んでいますか。
また、基礎控除や給与所得控除にはそれぞれ制度の目的があり、これらは、当然、最低生計費への非課税を趣旨に含みます。よって、所得税と住民税で額が大きく乖離している状況は税体系として極めて不自然なものと思いますが、財務大臣の見解を伺います。
また、住民税の課税最低限は、今後、所得税の課税最低限に近づけていくのでしょうか。総理に伺います。
続いて、経済対策についても質問します。
石破総理は、先日、参議院の予算委員会での審議が行われている最中にもかかわらず、予算成立後に強力な物価高対策を新たに打ち出す意向を示し、参議院での予算審議を混乱させたとして陳謝されました。
まず、総理が本予算の審議を行う中においてもより強力な物価高対策を行う必要性を感じた理由についてお聞かせください。
現下の国民が直面する厳しい実情を踏まえれば、より強力な物価高対策の必要性については同意するところです。
そこで、国民民主党は、三月二十六日に新しい経済対策を発表させていただきました。主な柱は、減税、社会保険料引下げ、電気代・ガス代の値下げ、米の価格安定の四つです。
中でも、百三万円の壁については、現在の政府案では、手取りを増やす効果や働き控えへの対応、共に十分な効果が得られるとは思えません。基礎控除に関する所得制限は全て撤廃し、課税最低限は百七十八万円を目指して更なる引上げが引き続き必要だと思います。
また、大人には様々な控除制度や現金支給制度があるのに対し、子供に対しては児童手当しかないことなどを踏まえれば、子供に対する国家の生存権保障機能の強化は必須です。年少扶養控除の復活、障害児福祉施策に関する全ての所得制限を撤廃し、子供や子育て世代を徹底的に支えるべきです。
また、今夏は猛暑となることが予想されています。各家庭における光熱費負担の軽減が非常に重要になります。そのためにも、再エネ賦課金の徴収停止や原子力発電所の早期の再稼働などを始めとする電気代、ガス代等の負担軽減策の早期実現を求めます。そして、ガソリン暫定税率は六月までに廃止し、夏までに、地方の暮らしや地域経済を徹底的に支えるための環境整備が必要です。
今、国民は、子供を育てるために奔走し、食べる米も手に入りづらく、電気代やガス代、ガソリン代の支払いに困っています。総理、今こそ、仁徳天皇の言葉、民のかまどの教えを肝に銘じていただきたいと思います。
先日、アメリカのトランプ大統領は、日本を含む世界各国に対して、自動車の追加関税策を公言しました。二五%の追加関税による我が国産業への影響は計り知れません。この問題については、武藤大臣を筆頭に、日本政府としてもアメリカ政府への是正の申入れを再三にわたり行ってきたところですが、現下の状況を踏まえた本件に関する総理の見解を伺います。
最後に、石破総理にお伺いします。
我が国が現在置かれている状況は、国民生活を直撃する物価高、高騰するエネルギーコストや諸外国との取引環境の不確実性の中で、日本経済を取り巻く環境は一層厳しさを増しています。
そのような中、令和七年度に我が国が見込む税収は、昨年の六十九・六兆円を大幅に上回る七十七・八兆円です。これを、国民の皆様、国内産業界にもっと返していきませんか。
税収が増えたのは、国民の一人一人の皆様が頑張っているからです。その税収を、国民の手取りを増やし、成長分野へ積極的に投資するために使いませんか。総理が目指している楽しい日本に近づきたいのであれば、勇敢なる決断をすべきです。そのことを期待し、質問を終わります。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 浅野哲議員の御質問にお答えを申し上げます。
高額療養費制度の見直しについてであります。
高額療養費制度の見直しにつきましては、本院において修正を可決いただきました後、参議院の審議においてなお様々な御指摘を受けたことや、患者団体の皆様との面会におきまして、検討プロセスに丁寧さを欠いたとの御指摘をいただいたことなどを政府として重く受け止め、全体について実施を見合わせることといたしたものでございます。
今後、秋までに改めて検討し、決定することといたしておりますが、患者団体を始めとした関係者の皆様方からどのような形で御意見を伺うことが適当なのか、審議会における検討プロセスの在り方を含めまして、改めて厚生労働省において検討を行い、丁寧な議論を進めていくことといたしております。
高額療養費制度の見直しは、少子化対策の財源確保のために提案をいたしたものではありませんが、御指摘の六百億円は、高額療養費の見直しにより生じる令和七年度の社会保険料の負担軽減効果として見込まれていた金額と考えられ、医療費の国庫負担への影響額である百六十億円とは異なるものでございます。引き続き、改革工程に基づく取組を着実に進め、子供、子育て財源の確保にもつなげてまいります。
所得税の基礎控除等の引上げの趣旨についてのお尋ねです。
政府原案では、物価上昇局面における税負担の調整の観点から、基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額を見直すことといたしました。
与党修正は、低中所得者層の税負担を軽減する観点から、基礎控除の上乗せを行うものでございます。その際、高所得者優遇とせず、公平性の確保や所得再分配機能の発揮に資するよう、所得に応じた控除額を設定し、政府案と与党修正を合わせた減税額を平準化させたもの、このように承知をいたしております。
これらの見直しは、いわゆる百三万円の壁を引き上げるという御要望に応じ、百三万円の課税最低限を構成する基礎控除と給与所得控除を中心に議論が行われたもの、このように承知をしておるところでございます。
働き控えの改善及び住民税の課税最低限についてのお尋ねです。
大学生等の親が利用する特定親族特別控除を創設することにより、就業調整の緩和を通じて労働供給が増加をし、雇用者報酬が〇・一兆円程度増加すると見込んでおります。
給与所得がある御本人につきましては、住民税を含め個人所得課税による手取りの逆転は生じていないことから、税制を理由とした就業調整の必要は必ずしもないことを引き続き丁寧に周知をいたしてまいります。
個人住民税の非課税となる水準につきましては、地域社会の会費的な性格を踏まえ、物価などの国民生活水準の推移、地方財政の状況等を総合的に勘案をして、今般の見直しが行われたところであります。いわゆる百三万円の壁に関して、引き続き政党間で真摯に協議が続けられるもの、このように承知をいたしております。
物価高対策についてでございます。
食料品、エネルギーなど、身近な物の価格が高い状況が続く中、国民や事業者の方々は厳しい状況に置かれている、このように強く認識をいたしております。
こうした状況を踏まえ、物価動向やその上昇が家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いつつ、令和六年度補正予算で措置した物価対策に対応する重点支援交付金等の施策を迅速かつ効果的に実施するとともに、令和七年度予算案や税制改正法案を成立させていただき、これらに盛り込まれた所得税の減税や高校無償化の先行措置など、物価対策に資する措置を実施することが必要な状況であると考えております。
米国による自動車関税措置に関する見解についてのお尋ねです。
日本は、二〇一九年以来、世界最大の対米投資国であり、日本企業は米国経済に多大な貢献をしております。特に日系自動車メーカーは、約六百十六億ドルの対米直接投資を行い、約二百三十万人の関連雇用を創出しております。
こうした中、米国政府にはこれまで、我が国が関税措置の対象となるべきではない旨、様々なレベルで申し入れてまいりました。それにもかかわらず、日本が除外されない形で関税措置が発表されましたことは極めて遺憾であります。
本発表を受け、改めて米国政府に対し強く申入れをしたところであります。
今般の措置を始め、米国政府による広範な貿易制限措置は、日米両国の経済関係、ひいては世界経済や多角的貿易体制全体等に大きな影響を及ぼしかねません。
我が国といたしましては、米国による関税措置の内容や我が国への影響を十分に精査しつつ、引き続き、米国に対して、措置の対象からの我が国の除外を強く求めてまいります。
同時に、国内産業、雇用への影響を引き続き精査をし、資金繰り対策など必要な対策に万全を期してまいります。
税収の還元についてであります。
令和七年度予算の税収が前年度当初予算を大幅に上回ることは事実でありますが、国民の皆様方にお返しできるような状況にあるかどうかにつきましては、現下の厳しい財政事情等を踏まえた議論が必要である、このように考えております。
具体的には、令和七年度の国の歳出は、給与改善や物価動向の反映などを行いつつ政策的予算を確保したため、過去最大の百十五・二兆円となっており、その結果、税収が過去最大と見込まれましても、なお二十八・六兆円の新規国債を発行せざるを得ないことや、令和七年度末の国の債務残高が約千百二十九兆円、GDP比で一七九%に上る見込みであることなどを踏まえる必要がある、このように考えておるところでございます。
残余の御質問につきましては、関係大臣から答弁を申し上げます。
以上でございます。(拍手)
〔国務大臣加藤勝信君登壇〕
○国務大臣(加藤勝信君) 浅野議員から、所得税と個人住民税で基礎控除等の額が異なることについてお尋ねがありました。
個人所得課税である所得税、個人住民税に関し、基礎控除などから成る課税最低限について、生計費の観点や、公的サービスを賄うための費用を国民が広く分かち合う必要性などを踏まえて、総合的に検討されてきたという点は共通しております。
その上で、個人住民税については、総務省の所管ではありますが、地域社会の会費的な性格を踏まえ、従来から所得税とは異なる基礎控除等の額が定められているところであり、また、令和七年度与党税制改正大綱においては、地方税財源への影響や税務手続の簡素化の観点などを総合的に勘案し、個人住民税については、基礎控除は見直さず、給与所得控除の見直し等についてのみ対応することとするとされたものと承知しております。(拍手)
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○議長(額賀福志郎君) 櫛渕万里君。
〔櫛渕万里君登壇〕
○櫛渕万里君 れいわ新選組の櫛渕万里です。
私は、会派を代表して、令和七年度予算再修正案について質問をいたします。(拍手)
三月四日の本会議討論で、私は、今はまだ採決すべきではないと申し上げました。総理も聞いていらっしゃいましたよね。総理、聞いていますか。参議院で再修正されるに当たって、この主張が正しかったことが証明されました。さらに、総理自ら、予算成立後に強力な物価高対策を打ち出すと言い出す有様。
れいわ新選組は、当初から、消費税廃止、少なくとも消費税減税、そして、給付金こそ全ての人の手取りを増やす政策であるとして、予算組替え動議を提出しました。私たちが求める国民への十万円給付は行わないのに、自民党の新人議員へ商品券を気前よくばらまく。自分の利益だけを優先する人、自分の利益だけを考える人を我利我利亡者と言いますが、まさに石破総理のことです。衆議院での審議内容も時間も全く不十分であったという、石破政権の迷走ぶりを厳しく非難いたします。
さて、この再修正案は、高額療養費の自己負担引上げを見合わせる内容です。治療が受けられなくなる、死ねと言うのか、患者の方々の悲痛な声が政府を動かしたことは、私たちれいわ新選組としても評価し、再修正案に賛成するものです。ただ、これだけ患者や御家族の方々へ心身共にストレスを与え、挙げ句、右往左往して凍結という混乱を与えたことに強く抗議いたします。当事者の皆様への真摯なる謝罪を改めて求めます。
また、この凍結も根本的解決ではありません。患者の方々は、先の見えない病気に加えて、ただでさえ苦しい生活が更に追い込まれようとしていました。これを考えれば、今必要なのは見合せではありません。撤回一択です。
総理に伺います。今回の再修正で、高額療養費の自己負担引上げについて、秋までに検討し、決定するというのは、一時凍結ですか、それとも撤回ですか。謝罪のお気持ちがあるのなら、なぜ白紙撤回し、一から議論をやり直さないのか、明確にお答えください。
れいわ新選組は、本来であれば、更なる負担軽減の議論がなされるべきであると考えます。そもそも、この高額療養費の問題が議論された社会保障審議会の部会には、医療提供者側の代表や保険者側の代表はおりますが、患者団体の代表はおりません。つまり、政策決定プロセスに問題がある。予算をいかに修正しようとも、本質的な欠陥があることが明白です。
総理、患者の方々の意見を聞くだけではなくて、政策を決める意思決定プロセスに当事者である患者団体の方々に参加してもらうよう、審議会の在り方を見直していただけませんか。
総理は、衆議院で、これまで高額療養費の自己負担引上げを撤回せず、国民への消費税減税や給付金を拒んできました。これには、財政が厳しいからという理由です。
政府だけではありません。立憲民主党の野田代表は、減税は未来世代からの搾取と述べ、維新の会と与党は、医療費四兆円削減で合意する冷酷三兄弟ぶりを発揮し、国民民主党は、元々高額療養費の自己負担額見直しを主張、もっと手取りが増える消費税の減税の公約は一体どこへ消えてしまったんですか。
国は六年連続過去最高の税収なのに、どの政党も、国民の苦しい生活を救うよりも国の財政規律を優先しています。今回の高額療養費の問題にしても、政府は能力に応じた負担を求めると説明しますが、そうであるなら、所得税や法人税の累進化を財源にした方がよほど合理的です。社会保険の枠内だと、どうしても逆進性が残るからです。
総理、高額療養費制度は医療保険の一部ですから、単独で考えるべきではありません。保険料のみでは厳しい後期高齢者医療や国民健康保険、さらに協会けんぽに対し、税や国債を財源に国費の投入、これを大胆に行い、社会保険料の引下げと制度の存続の両立を図るべきです。これこそ、この修正案の趣旨にふさわしいと思いますが、いかがでしょうか。
必要なのは、小手先の改革ではなく、ましてや、与野党が国債発行なしの財源捻出ゲームに明け暮れることではなく、国民を救うための、積極財政による本当の改革です。それのみが、制度の安定性と信頼性を確保できる唯一の方法である、そのことを申し上げ、私の質問といたします。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 櫛渕万里議員の御質問にお答え申し上げます。
高額療養費制度の見直しについてのお尋ねです。
今回の見直しは、高額療養費が医療費全体の倍のスピードで増大する中、保険料負担を抑制するとともに、制度の持続可能性を高めるためのものでありましたが、国会における議論や、患者団体の皆様方から、検討プロセスに丁寧さを欠いたとの御指摘をいただいたことを政府として重く受け止め、全体として実施を見合わせることといたしたものでございます。
この過程におきまして、患者の皆様方に御不安を与えてしまいましたこと、改めて大変申し訳ないという思いでございます。大変申し訳ございません。
今後、改めて秋までに検討し、決定することといたしておりますが、その際には、患者の方々のお話を十分に伺うとともに、保険料を負担する被保険者の皆様方からの御意見も拝聴し、御理解をいただくべく、丁寧なプロセスを積み重ね、最善を尽くしてまいります。
高額療養費制度の見直しの再検討プロセスについてであります。
高額療養費制度の見直しにつきましては、今後、改めて秋までに検討し、決定することといたしておりますが、患者団体を始めとした関係者の皆様方からどのような形で御意見を伺うことが適当なのか、審議会における検討プロセスの在り方を含め、改めて厚生労働省におきまして検討を行い、丁寧な議論を進めてまいります。
医療保険への国費の投入についてでございますが、高額療養費制度につきましては、医療費全体の倍のスピードで費用が増加する中、重要なセーフティーネットとして持続可能なものとするために見直しを提案したものでございます。
医療保険に国費を投入し、保険料の引下げと制度の持続可能性を図るべきとの御指摘につきましては、医療保険制度が相互扶助という考え方に立っていることとの関係、必要な安定財源をどのように確保するかといった課題があるものと考えております。政府といたしましては、全世代型社会保障の改革工程に基づき、負担能力に応じた負担の観点から、不断に制度の見直しに取り組んでまいります。
以上でございます。(拍手)
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 田村貴昭君。
〔田村貴昭君登壇〕
○田村貴昭君 私は、日本共産党を代表して、参議院から回付された二〇二五年度予算の再修正案について、石破総理に質問します。(拍手)
高額療養費の上限額引上げを見送る修正予算は、がんや難病等に苦しむ方々の声が政治を動かした結果であり、当然です。引上げは、凍結でなく撤回し、むしろ、物価高騰の下で苦境にある患者の自己負担額の引下げを行うべきです。
総理は、今国会の冒頭、高額療養費制度の上限額引上げについて、様々な立場の有識者で構成される専門の審議会において複数回の御議論をいただくなど丁寧なプロセスを経てと、議論の過程の正当性を主張しました。しかし、がん患者団体などを始めとする当事者の上限引上げ見直しを求める世論と運動、国会での議論を受けて、三月には、患者団体との話合いが十分でなかったという点は反省を持って受け止めたい、私の責任だと言わざるを得なくなりました。
改めて伺います。
毎月更に多くの医療費を支払うことはできない、死を受け入れ、お金を子供に残す方がいいのか、追い詰められている、このがん患者さんの訴えをどう受け止めていますか。
政府は、本年秋までに改めて方針を検討し、決定するとしています。一体どのような検討をするのですか。
これまでの検討過程には、医療の関係者である保険者、医療者、労働組合、使用者は参加していますが、がんや難病、高齢者の患者は参加していません。患者が参加した場で検討を行うべきではありませんか。
総理は、所得、家族構成ごとの負担を細かく見ていくと述べています。しかし、患者の生活実態すら明らかでない下では、その負担が妥当なのか、困窮に陥り、結果として診療を諦めることがないのか、全く検証できません。
総理、実態調査抜きに検討は行わないと、はっきり約束をしていただきたい。期限を区切り、一回や二回のヒアリングだけで終わらせることは、あってはなりません。秋までという期限は撤回すべきです。
現在の制度ですら、経済的に診療継続をためらわせる水準にあります。大阪医科大学の伊藤ゆり准教授は、現行の高額療養費制度では、年間を通して上限まで医療費を支払うと、低所得世帯では、更に貧困に陥るとされる破滅的医療費の水準を超えていると指摘しています。
総理、この現実をお認めになりますか。上限額引上げによって負担が増え、困窮に陥りかねない患者が更に増えるのではありませんか。やるべきは負担の引下げではありませんか。
総理は、増大する高額療養費の負担をいかにして分かち合うかという観点から、検討すると繰り返し述べています。結局、負担上限の引上げありきではありませんか。
がん患者団体は、再び十分な検討抜きに同様の案が出てくることを懸念していると述べています。現在でも医療費負担は高過ぎて治療を諦めざるを得ないのが実態です。総理は、治療を諦めざるを得ない、そういう人が出てこないようにしなければならないと述べますが、であるなら、上限額引上げは、一旦凍結でなく、白紙撤回すべきです。
総理、なぜ白紙撤回を明言しないのですか。閣議決定した全世代型社会保障の改革工程に高額療養費の負担上限見直しが明記され、このことが自民、公明、維新の三党合意にも盛り込まれているからではありませんか。この改革工程の閣議決定と三党合意がある限り、二〇二八年までの高額療養費の負担上限の引上げは既定路線なのではありませんか。患者の声を真摯に聞いて検討するというのであれば、この改革工程を撤回すべきです。
ドイツでは年間の患者負担額は年間所得の二%まで、フランスでは抗がん剤など代替性のない高額医薬品は自己負担なしとするなど、患者負担が高額にならない仕組みを設けています。
日本でも、透析、血友病、HIVには月額負担の更なる特例があります。この特例を更に拡大し、高額かつ継続した医療については、年間所得の一定部分以下に医療費を抑える仕組みを検討すべきではありませんか。
以上、答弁を求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣石破茂君登壇〕
○内閣総理大臣(石破茂君) 田村貴昭議員の御質問にお答えを申し上げます。
高額療養費制度に関する当事者意見の受け止めについてであります。
高額療養費制度の見直しにつきましては、国会審議における各委員からの御指摘を受け、また、患者団体の皆様方からの、検討プロセスに丁寧さを欠いたとの御指摘を政府として重く受け止め、実施を見合わせることといたしました。
今後の検討に当たりましては、高額療養費制度の持続可能性を確保しつつ、患者の経済的な負担が過度なものとならないようにすることが重要であると認識をしており、患者の方々のお話を十分伺うとともに、保険料を負担する被保険者からの御意見も拝聴し、御理解をいただくべく、丁寧なプロセスを積み重ねてまいります。
見直しの再検討プロセスについてでありますが、高額療養費制度の見直しにつきましては、今後、改めて秋までに検討し、決定することといたしております。その際、患者団体を始めとした関係者の皆様方からどのような形で御意見を伺うかや、患者の就労、生活実態を踏まえたデータ分析につきましては、審議会における検討プロセスの在り方を含め、改めて厚労省において検討を行い、丁寧な議論を進めていくことといたしております。
この制度を将来にわたりまして持続可能なものとするため、いつまでも検討を先送りにするのではなく、しかるべき段階で結論を出していく必要があるものと考えております。患者の方々の御意見を十分伺うとともに、保険料を負担する被保険者からの御意見も拝聴し、秋までにできる限りの御理解をいただくべく、最善を尽くすことといたします。
見直しによる患者の負担についてでございますが、高額療養費制度におきましては、所得に応じて自己負担上限額を設定し、低所得者に対する配慮を行っておりますほか、長期で療養を行う方の自己負担額については更に抑えることといたしており、重要なセーフティーネットとして機能していると考えております。
制度の見直しにつきましては、改めて秋までに検討し、決定することといたしておりますが、今後の検討に当たりましては、その持続可能性を確保しつつ、患者の経済的な負担が過度なものとならないようにすることが重要であると考えております。
患者負担が生計に与える影響も含め、様々なデータを活用しつつ、関係者と丁寧な議論を重ね、増大する高額療養費を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から検討を進めてまいります。
高額療養費制度の見直しについてでございますが、高額療養費制度は、全世代型社会保障の改革工程において、見直しについて検討を行うこととされておりますが、今般、検討プロセスに丁寧さを欠いたと御指摘をいただいたことを重く受け止め、本年秋までに改めて方針を検討し、決定することといたしました。今まで申し述べたとおりでございます。
他方、この見直しは、高額な薬剤の登場などにより、その総額が医療費全体の倍のスピードで伸びていく中で、現役世代を中心とした保険料負担の抑制や制度の持続可能性の確保の観点から提案させていただいたものであり、これらの必要性が変わるものではございません。
今後の検討に当たりましては、高額療養費制度の持続可能性を確保しつつ、患者の経済的な御負担が過重なものとならないようにすることが重要であり、関係者と丁寧な議論を重ねつつ、増大する高額療養費を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から、検討を進めてまいります。
高額療養費制度の特例制度についてでございます。
高額療養費制度には、御指摘のとおり、人工透析、血友病、血液製剤に起因するHIV感染症について、患者の自己負担限度額を更に軽減する特例制度を設けております。
今後、この秋までに高額療養費制度全体について改めて検討してまいりますが、その際は、制度の持続可能性を確保しつつ、患者の経済的な負担が過重なものとならないようにすることが重要であると考えており、関係者と丁寧な議論を重ねつつ、増大する高額療養費を能力に応じてどのように分かち合うかという観点から、検討を進めてまいります。
以上でございます。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○議長(額賀福志郎君) 採決いたします。
本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(額賀福志郎君) 御異議なしと認めます。よって、参議院の修正に同意することに決まりました。
――――◇―――――
○議長(額賀福志郎君) 本日は、これにて散会いたします。
午後五時五十一分散会
――――◇―――――
出席国務大臣
内閣総理大臣 石破 茂君
総務大臣 村上誠一郎君
法務大臣 鈴木 馨祐君
外務大臣 岩屋 毅君
財務大臣 加藤 勝信君
文部科学大臣 あべ 俊子君
厚生労働大臣 福岡 資麿君
農林水産大臣 江藤 拓君
経済産業大臣 武藤 容治君
国土交通大臣 中野 洋昌君
環境大臣 浅尾慶一郎君
防衛大臣 中谷 元君
国務大臣 赤澤 亮正君
国務大臣 伊藤 忠彦君
国務大臣 伊東 良孝君
国務大臣 城内 実君
国務大臣 坂井 学君
国務大臣 平 将明君
国務大臣 林 芳正君
国務大臣 三原じゅん子君
出席内閣官房副長官
内閣官房副長官 橘 慶一郎君
出席政府特別補佐人
内閣法制局長官 岩尾 信行君