衆議院

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第17号 令和5年5月17日(水曜日)

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令和五年五月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 忠彦君

   理事 谷川 とむ君 理事 藤原  崇君

   理事 牧原 秀樹君 理事 宮崎 政久君

   理事 鎌田さゆり君 理事 寺田  学君

   理事 沢田  良君 理事 大口 善徳君

      青山 周平君    東  国幹君

      五十嵐 清君    石川 昭政君

      石橋林太郎君    岩田 和親君

      上田 英俊君  英利アルフィヤ君

      奥野 信亮君    加藤 竜祥君

      神田 潤一君    熊田 裕通君

      杉田 水脈君    鈴木 馨祐君

      田所 嘉徳君    高見 康裕君

      中川 郁子君    鳩山 二郎君

      平口  洋君    深澤 陽一君

      山下 貴司君    鈴木 庸介君

      中川 正春君    馬場 雄基君

      山田 勝彦君    吉田はるみ君

      米山 隆一君    阿部 弘樹君

      漆間 譲司君    日下 正喜君

      平林  晃君    鈴木 義弘君

      本村 伸子君

    …………………………………

   法務大臣         齋藤  健君

   内閣府副大臣       和田 義明君

   法務副大臣        門山 宏哲君

   厚生労働副大臣      羽生田 俊君

   法務大臣政務官      高見 康裕君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 畠山 貴晃君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 親家 和仁君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (こども家庭庁長官官房審議官)          野村 知司君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 山碕 良志君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       上原  龍君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    花村 博文君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    宮田 祐良君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           里見 朋香君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (スポーツ庁審議官)   星野 芳隆君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           宮本 悦子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    辺見  聡君

   法務委員会専門員     白川 弘基君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  五十嵐 清君     神田 潤一君

  岩田 和親君     杉田 水脈君

  田所 嘉徳君     青山 周平君

  吉田はるみ君     馬場 雄基君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     石川 昭政君

  神田 潤一君     上田 英俊君

  杉田 水脈君     岩田 和親君

  馬場 雄基君     吉田はるみ君

同日

 辞任         補欠選任

  石川 昭政君     中川 郁子君

  上田 英俊君     五十嵐 清君

同日

 辞任         補欠選任

  中川 郁子君     田所 嘉徳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)

 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官畠山貴晃君、警察庁長官官房審議官親家和仁君、こども家庭庁長官官房審議官黒瀬敏文君、こども家庭庁長官官房審議官野村知司君、総務省大臣官房審議官山碕良志君、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍君、法務省刑事局長松下裕子君、法務省矯正局長花村博文君、法務省保護局長宮田祐良君、文部科学省大臣官房審議官里見朋香君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君、スポーツ庁審議官星野芳隆君、厚生労働省大臣官房審議官宮本悦子君及び厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長辺見聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。大口善徳君。

大口委員 公明党の大口善徳でございます。

 今日は、この二法につきまして質疑をさせていただきます。

 二〇一七年六月に、平成二十九年改正がございました。そのときには、性別を問わない被害者ということで、強姦罪について、また構成要件も変える、非親告罪化する、下限を五年に引き上げる、そしてまた、監護者性交等罪を設ける、この大きな改正がございました。それから、附則によって見直し規定がなされ、今回、被害者団体等からの強い要請もあって、法務省におきまして検討会が持たれ、そして、法制審議会で一年四か月、精力的な審議がなされ、井田部会長、また山本潤さん等、あるいは心理の専門家等、当事者やそういう方々も入っての充実した審議で、この法律案が、閣議決定を経て、提出されたわけでございます。

 私どもは、性犯罪被害者に寄り添った、また後押しできるような、そして、性犯罪を撲滅する法案となるよう、全力を挙げてまいりたいと思っておるところでございます。

 本年三月に、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省庁会議で決定された性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針は、その冒頭で、性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為であり、決して許されないものである、相手の同意のない性的な行為は性暴力であるとしています。

 また、法制審議会におきましても、今回の議論で、本人の同意のない性的行為が性犯罪の処罰対象であることが繰り返し共有されていたということでございます。

 まずは法整備をして社会の意識を変えていくということで、参考人、昨日も御意見でございました。この法案に対する法務大臣の思いをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 御審議いただいております性犯罪に関する二つの法案は、提案理由説明の際にも申し上げましたとおり、平成二十九年改正法の附則で検討が求められた被害の実情や事案の実態に即した対処ができる施策を実現するため、所要の法整備を行うものであります。

 性犯罪は、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けるものであって、決して許されるものではありません。こうした性犯罪への適切な対処が喫緊の課題であり、そのための法整備を行うこれらの法案は、大変重要な意義を有するものと考えています。

 今後の審議におきましても、引き続き、これらの法案の趣旨や内容をしっかりと説明してまいります。その上で、十分に御審議いただき、速やかな成立を切に願っています。

大口委員 現行法の強制性交等罪においての暴行、脅迫の要件は、その暴行、脅迫が被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものと解されていることから、この著しく困難ならしめる程度というところに引きずられて、暴行、脅迫についても限定的な解釈がなされたりしておりまして、実際に被害者が抵抗したのかどうか、抵抗できたのかどうかを問われることになってしまっていると指摘されています。

 改正法案では、現行の強制わいせつ罪や強制性交等罪における暴行又は脅迫を用いてとする規定や、また、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせてとの現行の規定を、八つの行為、事由を掲げ、それにより、同意しない意思を形成し、表明し、著しく全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じてと改めて、構成要件も変更するわけであります。

 その趣旨と、それから、この構成要件が変更されることによってどういう違いが出てくるのか、お伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行の強制わいせつ罪、強制性交等罪の暴行又は脅迫を用いてとの要件や、準強制わいせつ罪、準強制性交等罪の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じといった要件につきましては、ただいま御紹介いただきましたとおり、判例上の解釈として、抗拒を著しく困難にさせる程度であることを要するとされていることなどから、個別の事案におきまして、これらの罪の成立範囲が限定的に解されてしまう余地がある、また、安定的な運用を確保する観点からは、処罰すべき行為を的確に捕捉しつつ、構成要件該当性の判断にばらつきが生じない規定とすることが重要であるといった指摘がなされております。

 そこで、本法律案は、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪などについて、暴行又は脅迫、心神喪失、抗拒不能という要件の下で、その解釈によって成否が決せられるという状況であるのを改め、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするために、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定し、その状態の原因となり得る行為、あるいは原因となり得る事由を具体的に列挙することとするものでございます。

 これにより、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えておりまして、その意味で、性犯罪の処罰が強化されることになるものと考えております。

大口委員 また、この改正法案では、「婚姻関係の有無にかかわらず、」こういうふうに明記をされているわけです。やはり今、DV被害の方、また、デートDVに苦しんであられる方もいらっしゃいます。婚姻関係にあるだけでなく、恋人、同棲しているパートナー、性的マイノリティー同士のパートナーなどについても、性犯罪の成立範囲が限定されることがないようにするべきである、こう考えております。

 この規定の趣旨について、大臣にお伺いします。

齋藤(健)国務大臣 現行の刑法の下におきましても、行為者と相手方との間に婚姻関係があるか否かは強制わいせつ罪及び強制性交等罪の成立に影響しないとする見解が一般的でありまして、実務におきましてもそのように理解をされているところでありますが、もっとも、この点は条文上明示されておりませんで、学説の一部には、婚姻が破綻している場合にのみ強制性交等罪が成立し得るなどとして、配偶者間における性犯罪の成立を限定的に解する見解もございます。

 そこで、本法律案におきましては、配偶者間における性犯罪の成立範囲を限定的に解する余地をなくして、改正後の不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪が配偶者間においても成立することを条文上明確にするため、改正後の刑法第百七十六条第一項及び第百七十七条第一項において、婚姻関係の有無にかかわらずこれらの罪が成立し得ることを確認的に規定することとしたわけであります。

 その上で、婚姻関係の有無にかかわらずという文言は、法律上の婚姻関係が存在する場合であると存在しない場合であるとを問わずということを意味しておりまして、婚姻関係がある場合に限って性犯罪の成立を肯定する趣旨のものではないし、法律上の婚姻関係がある場合ですら性犯罪の成立に影響しないことを確認的に明示するものでありますので、この文言が、法律上の関係ではないその他の関係、例えば交際関係等にある場合に、性犯罪の成立を限定的に解する根拠ともならないことは当然であるというふうに考えています。

大口委員 それで、この改正法案の不同意性交等罪、そして不同意わいせつ罪において、暴行若しくは脅迫を用いること又はこれらを受けたことの規定における暴行、脅迫というのは、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度のものと解されている現行法の暴行、脅迫と異なり、暴行についていえば、有形力の行使で足りる、その程度は問わないということを確認したいのとともに、この要件を改めることにした趣旨についてもお伺いします。また、暴行、脅迫以外に掲げられた他の行為又は事由についても、その程度を問わないものであることの確認をしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、暴行、脅迫の程度の点でございますけれども、改正後の刑法第百七十六条第一項第一号の暴行とは、御指摘のとおり、身体に向けられた不法な有形力の行使を、脅迫につきましては、他人を畏怖させるような害悪の告知をいうものでございまして、いずれもその程度は問いません。この点で、現行の規定とは異なるものとなっております。

 また、お尋ねの二点目でございますけれども、そうすることとした趣旨でございますけれども、現行の暴行又は脅迫を用いてとの要件などにつきましては、先ほども申し上げましたけれども、判例上の解釈といたしまして、抗拒を著しく困難ならしめる程度の、させる程度のというふうに言われているようなことから、個別の事案におきまして、犯罪の成立範囲が限定的に解されてしまう余地がある。また、安定的な運用を確保する観点からは、処罰すべき行為を的確に捕捉しつつ、構成要件の該当性の判断にばらつきが生じない規定とすることが重要であるといった指摘がなされていますので、本法律案においては、より明確で判断にばらつきが生じない規定とするために、性犯罪の本質的な要素である性的行為が自由な意思決定が困難な状態でなされたという点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件とした上で、その状態となり得る行為や事由を具体的に列挙することとしているところでございます。

 また、お尋ねの三点目ですけれども、暴行、脅迫以外の要件につきましてでございますが、これらの行為又は事由でございますが、これは、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあるかどうかの判断を容易かつ安定的に行い得るようにするため、その状態に陥る原因となり得る行為、事由を列挙しているものでございまして、いずれにつきましても、程度を限定する文言を加えてはおらず、程度は問わないものとしております。

大口委員 改正法案は、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態としております。これは法制審で、試案の段階で、拒絶困難、拒絶の意思を形成し、表明し又は実現することが困難な状態ということから変更しているわけであります。

 これは、審議会の御議論において、非常に真摯な議論の結果、そうなったというふうに思いますが、その経緯等についてお伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、法制審議会の部会におきましては、当初の試案においては、性的行為が、拒絶困難にさせるなどの要件を規定していたわけでございますけれども、この要件の文言に対しましては、複数の委員から、同意のない行為が処罰対象であるはずなのに、拒絶困難でなければ認められなくなってしまう、また、拒絶という言葉からは、相手からの働きかけに対して、被害者が何らかの行為をしなければならないように感じられてしまうといった御意見が述べられたところでございます。

 これらを踏まえまして、試案を改訂するということとなりまして、その際、拒絶という行為が求められると受け止められるような文言を用いないようにしつつ、被害者が性的行為をしない、したくないという発想をすること自体や、性的行為をしない、したくないということを言うことが難しい、あるいは、性的行為をしない、したくないと思い、そのように言ったものの、そのとおりにならない状態で行われる性的行為を処罰するという趣旨を表すために、拒絶の意思との文言に換えまして、同意しない意思とすることが適当であると考えられたことから、同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態に改められたものでございます。

大口委員 この同意しない意思が入ったことについて、昨日も、山本参考人が、非常に画期的なこと、こういうふうに評価をしていただいているところでございます。同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態のその意義を伺います。

 そしてまた、現行法では、抗拒を困難にする程度については、著しくとするのが解釈、判例であります。改正法案における、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態の要件について、著しく困難と限定しなかった理由をお伺いします。

 さらに、例えば、同意しない意思を言葉とか態度で示したにもかかわらず、押し切られて性的行為をした場合、改正法の刑法百七十六条一項、百七十七条の一項で処罰されることになるのかも確認したいと思います。

 昨日の橋爪参考人は、こういうふうにお話をしていただいています。

 本罪の中心的内容は、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態ですが、この状態の存在の判断を安定的に行うために、自由な性的意思決定が困難になる原因となり得るものを広く拾い上げて、具体的に列挙しています。さらに、現実の事件においては、列挙した原因行為には厳密には該当しないが、同様の影響を与える行為も想定し得ることから、改正法では、さらに、その他これらに類する行為も原因行為に含めています。

 このような改正法案の規定ぶりは、行為態様によって処罰を限定することはなく、処罰の隙間が生じないように、意思に反する性行為を網羅的に罰しようとする態度の表れと評価できようかと思います。

 また、恐怖によるフリーズ、虐待による心理的反応、地位、影響に基づく不利益の憂慮などを明示した点も、これらが性犯罪の深刻な手段たり得ることを明確に規定したという意味において、重要な意味があります。

 こういうお話もされました。

 以上の点についてお伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態の意義でございますが、同意しない意思を形成することが困難な状態とは、性的行為をするかどうかの判断、選択をする契機、きっかけですね、契機や能力が不足し、性的行為に同意しないという発想をすること自体が困難な状態を指します。

 次に、同意しない意思を表明することが困難な状態とは、性的行為をしない、したくないという意思を形成すること自体はできたものの、それを外部に表すことが困難な状態を、そして、同意しない意思を全うすることが困難な状態とは、性的行為をしない、したくないという意思を形成したものの、あるいはその意思を表明したものの、その意思のとおりになるのが困難な状態をそれぞれ意味するものとして規定しております。

 改正後の刑法百七十六条第一項、百七十七条第一項におきましては、暴行又は脅迫という行為によって成否を画する要件ではなく、このように、被害者の意思決定過程とそれから客観的な状態に着目をして犯罪の成否を画することとしておりまして、被害者がただいま申し上げた状態にあること自体によって、その困難さの程度が著しくなくても、性的行為に同意しない意思を有していることが当然に確信できることから、著しく困難であることまでは必要としていないということでございます。

 また、お尋ねのように、同意しない意思が表明されたものの、これを押し切って性的行為をした場合については、先ほど申し上げました、同意しない意思を全うすることが困難な状態ではないかどうかが問題となりますが、例えば、性的行為をしたくないという意思を表明したものの、体を押さえつけるなどの暴行を受けたこと。あるいは、性的行為をしたくないと言えばやめてくれると予想して、その意思を表明したものの、予想と違ってやめてくれなかったため、このような状態に直面して恐怖、驚愕したこと。あるいは、性的行為をしたくないという意思を表明したものの、雇用主の立場にある者から、性的行為に応じなければ仕事を辞めてもらうなどと言われ、経済的、社会的関係の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮したことなどによってこの状態に陥り、性的行為をされた場合には、処罰対象となり得ると考えられます。

大口委員 また、例えば、しあわせなみださんからも御要望をいただきました。

 障害児者、他者の援助を必要とする立場の方は、反対の意思を、相手の意思に反対、反する表明ができないという状況に置かれている方もいらっしゃるわけであります。そういう点で、施設の職員や援助者、利用しておられる方々が被害者のこともあるわけでございます。こういう障害に着目した規定についても、この法律案において、それに応えられるような内容になっているのか、お伺いをします。

 それから、改正法の百七十六条の一項二号に規定する心身に障害があることには、障害の種類や程度に限定がないと考えますが、いかがか。

 また、法制審におきまして、急性解離反応について、これは入れるべきだ、こういう御意見がございました。これにつきましてもお伺いしたいと思います。

 大臣、お願いします。

齋藤(健)国務大臣 改正後の刑法第百七十六条第一項、第百七十七条第一項におきまして、例えば、心身の障害があること、あるいは経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること、こういったことによりまして、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態で性的行為が行われればこれらの罪が成立し得るということを明確にしている規定であります。

 したがって、これらの規定の下では、例えば被害者が心身の障害を有している場合や、障害を有する方を監護する立場にある行為者が地位、関係性を利用する場合などについて、より的確に処罰することができると考えております。

 また、改正後の刑法第百七十六条第一項第二号の心身の障害とは、身体障害、知的障害、発達障害及び精神障害でありまして、一時的なものを含むものであり、程度に限定はございません。

 そして、お尋ねの急性解離反応も、これに含まれ得ると考えているところであります。

大口委員 今回の改正法案には、現行の強制わいせつ罪に該当していた、「膣若しくは肛門に身体の一部(陰茎を除く。)若しくは物を挿入する行為であってわいせつなもの」が性交等とされ、不同意性交等罪で処罰されることとなりましたが、その意義について。

 そしてまた、この改正によって、いわゆる痴漢行為の中でも悪質なものがございます、これについて不同意性交等罪の適用の余地があると考えますが、その点についてもお伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行法上、性交等は性交、肛門性交又は口腔性交とされておりまして、強制性交等罪として重い処罰の対象とされておりますが、それ以外のわいせつな行為は、強制わいせつ罪による処罰の対象とされております。

 しかしながら、心理学や精神医学の見地から、膣又は肛門に体の一部又は物を挿入されることを強制されることは、それらがどのようなものであっても、性交等を強制される場合と比較して、被害者の精神的反応に差がなく、臨床上も、重篤なPTSDを示すことに差異はないという知見が示されていること、また、犯罪被害者の立場からも、被害者にとっては、挿入される体の部位や物の種類を問わず、同意なく身体に異物を挿入されること自体がレイプである旨の御意見が示されていることなどに鑑みますと、膣又は肛門に体の一部又は物を挿入する行為は、それが陰茎でなかったとしても、同等の法益侵害を生じさせ、同等の当罰性を有するものと考えられます。

 そこで、改正後の刑法第百七十七条第一項におきましては、膣又は肛門に陰茎以外の体の一部又は物を挿入する行為であってわいせつなものを新たに性交等に含めることとしております。

 したがいまして、例えば、御指摘のように、膣に指を挿入する行為などの膣又は肛門に陰茎以外の身体の一部又は物を挿入する行為であってわいせつなものについては、それが痴漢行為と称されるものである場合でありましても、改正後の刑法第百七十七条第一項の罪が成立し得ると考えております。

大口委員 次に、公訴時効の延長等についてお伺いします。

 性犯罪の被害を受けたからといって、被害者がすぐに被害を警察等に申告するものではありません。被害者が被害を受けたことを認識するのにも時間がかかりますし、それを開示すること、そしてまた、それを捜査機関に申告することに大変な時間を要するということは、昨日の参考人である齋藤さん、あるいは山本さん、そしてSHELLYさん等々からもお話があったわけでございます。

 法制審議会でも、子供の性虐待に関する調査では、誰かに話せるようになるまで、オーストラリアでは平均二十三・九年、アメリカでは二十一・四五年かかったことが報告されております。当事者等からは、四十になるまで、三十代をカバーできるような公訴時効としてほしいという意見も強くございます。

 また、この改正法案で、性犯罪に係る公訴時効をそれぞれ五年延長することとしており、またさらに、被害者が十八歳未満であるときは、十八歳に達するまでの期間に相当する期間を延長することになっていますが、例えば、不同意性交等罪においては三十三歳までということになっているわけでございます。

 昨日の参考人の御意見でも、五年ということについて、これはもっと長くすべきだ、こういう御意見もあったわけでありますが、公訴時効の延長幅を五年とすることの根拠についてお伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、一般に、性犯罪については、その性質上、恥の感情や自責感などによりまして被害申告が困難であるということなどから、ほかの犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいことを踏まえて、公訴時効期間を延長することとしております。

 そして、延長する期間につきましては、一般的、類型的に、被害に遭ってからどれだけの期間がたてば被害を表に出すことができるようになるのか、被害申告の困難性といった性犯罪特有の事情が解消されると言えるかということを可能な限り実証的な根拠に基づいて定めるという観点から、内閣府の調査におきまして、無理やりに性交等をされたことがあって、被害を誰かに相談した方のうち、被害に遭ってから相談するまでにかかった期間が五年以内であった方が大半であったことを踏まえて、五年としているものでございます。

 また、若年者につきましては、心身共に未熟なため、大人の場合と比較して類型的に性犯罪の被害申告が困難であると考えられますので、その上で、十八歳未満の者については、実態として、一般的に見て、性的な行為や事後の対応を含めた社会生活上の知識経験が十分に備わっているとは言い難く、性犯罪の被害に遭ったとしても、それが性犯罪の被害であることを認識したり、適切に事後の対応をすることが困難である。また、法律上の取扱いとして民法上の親権の対象となっていることなどから、社会的に重要な行為について親権者等の保護者の指導監督を受けることになるところ、性犯罪の被害については保護者等に相談しにくいことなどに鑑みますと、一般的、類型的に、十八歳以上の者が被害に遭った場合と比較して被害申告がより困難であると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、被害者が十八歳未満である場合については、その者が十八歳に達するまでの期間に相当する期間、性犯罪の公訴時効期間を更に延長することとしているものでございます。

大口委員 ただ、その根拠となった内閣府の調査では、被害を相談したり被害を打ち明けたりできない人が、女性が六割、そして男性は七割ということが明らかになっています。大多数の人が五年以内に被害の相談すらできないことが指摘されているわけです。

 政府として、本改正案成立後速やかに、このような被害申告ができていない人々を考慮した被害申告の実態を的確に把握するため、調査を実施していただきたいと思いますが、大臣、お願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のような観点も含め、性犯罪の被害の実態を把握することはもちろん重要であると認識をしています。

 本法律案が成立した場合には、その施行状況も踏まえつつ、実態調査の対象や方法なども含め、関係府省庁とも連携して必要な検討を行ってまいりたいと考えています。

大口委員 次に、いわゆる性交同意年齢についてお伺いします。

 現行は十三歳ということでございますが、これが低過ぎるということで、今回、十六歳に引き上げるということでございます。そしてまた、十三歳以上十六歳未満の方については、年齢差要件ということで、五歳差要件にしているわけでございます。

 このような引上げの根拠、理由と、そして、五年差ということについての理由をお伺いしたいとともに、年齢差を五年とする根拠についてもお伺いしたいと思います。

 昨日も、参考人からは、このことについて、二、三歳でもこれは対等とは言えない、こういう御意見もあったところでございます。御説明をお願いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 強制わいせつ罪、強制性交等罪は、性的自由、性的自己決定権を保護法益としております。性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力がそもそもない場合には、暴行等の意思決定に影響を及ぼすような状況がなかったとしても保護法益が侵害されると考えられるところ、その能力がないと言える年齢として、現在は十三歳未満、すなわちおおむね小学生の年齢層の者は行為の性的意味を認識する能力が一律に欠けるということから、現行法では十三歳未満がいわゆる性交同意年齢とされていると考えられます。

 もっとも、性的行為に関して有効に自由な意思決定をするための能力の中身といたしましては、行為の性的意味を認識する能力だけではなく、行為の相手方との関係において、行為が自分に及ぼす影響について自律的に考えて理解したり、その結果に基づいて相手方に対処する能力が必要であると考えられます。

 そして、十三歳以上十六歳未満の者はおおむね中学生の年齢層でありまして、性的な意味を理解する能力が一律に欠けているというわけではないことから、一律に相手方や状況を問わず性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力に欠けるとまでは言えない一方で、先ほど申し上げた後者の能力は十分に備わっておらず、対等な関係の下でなければ性的行為について有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠けると考えられるところでございます。

 そして、相手方が年長である場合には、一般に、その年齢差が大きくなるほど、両者の間の社会経験や知識の差異などによりまして、その年齢差自体から対等な関係にあるとは言えなくなると考えられるところ、この性交同意年齢の問題は、性的行為をしたこと自体で直ちに性犯罪が成立するとするものとする規定でありますことから、刑罰の謙抑性の観点から、双方の年齢が要件を満たすだけで例外なくおよそ対等な関係はあり得ず、有効に自由な意思決定をする前提となる能力に欠けると言えるものであるものとすることが必要であると考えられます。

 本法律案におきましては、そのような観点から、心理学的、精神医学的見地も踏まえまして、いわゆる性交同意年齢を十六歳未満とした上で、十三歳以上十六歳未満の者に対する性的行為について処罰対象となり得る者を、その者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者としているところでございます。

大口委員 これについてはいろいろと議論がございます。橋爪参考人も、今局長が答弁された御趣旨のことをお話をされております。

 また、実質要件というのを今回外したということもございますけれども、これについては、参考人の御意見ということもしっかり考えていかなきゃいけない、このように思っております。

 それから、インターネットを介して若年者が性的被害に遭うということで、いわゆる性的なグルーミング、懐柔行為が問題となっています。改正法案では、わいせつの目的で十六歳未満の者に対しての面会要求等々の規定が、百八十二条の一項で規定されています。

 この面会要求等罪について、どういう問題意識があり、そして、どういう行為を処罰しようとしているのか、その保護法益は何なのか、説明をお願いしたいと思いますとともに、十六歳未満から十三歳以上については五歳差要件を必要としたことについても、簡単にお答えいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、改正後の刑法第百八十二条の罪の新設の趣旨と保護法益、処罰対象行為について申し上げますと、十六歳未満の者が性被害に遭うのを未然に防止し、その性的自由、性的自己決定権の保護を徹底させるためには、性犯罪に至る前の段階でも、性被害に遭う危険性のない保護状態を侵害する危険を生じさせたり、これを現に侵害する行為を処罰することが必要であると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、十六歳未満の者が性被害に遭う危険性のない状態、すなわち性的保護状態を保護法益とした上で、まず、対面状態で行われる性犯罪を防止するため、改正後の刑法第百八十二条第一項におきまして、わいせつの目的で十六歳未満の者に対し不当な手段を用いて面会を要求する行為を、また、その二項におきまして、このような面会の要求をし、よって面会する行為をそれぞれ処罰対象としております。また、離れた状態、隔離状態で行われる性犯罪の防止のため、同条第三項におきまして、十六歳未満の者に対し性的な姿態をとってその映像を送信することを要求する行為を処罰対象としております。

 御指摘のとおり、同条におきましては、行為の客体が十三歳以上十六歳未満である場合につきましては、行為の主体を五歳以上年長の者としておりますが、その理由は次のとおりでございます。

 まず、これらの規定が性犯罪の未然防止などの、先ほど申し上げた観点からの規定を設けようとしているものであることを踏まえまして、仮に同条一項、二項におきまして十三歳以上十六歳未満の者に対して年齢差が五歳に満たない年長者がわいせつの目的で面会要求や面会をすることを処罰することとした場合には、わいせつの目的というのがそれ自体として必ずしも犯罪を構成するものには限られないことから、行為者がその目的のとおりにわいせつな行為や性交等に至ったとしても、それだけでは処罰されないにもかかわらず、その準備的な行為をすれば処罰されることとなり、また、仮に同条第三項におきまして十三歳以上十六歳未満の者に対して年齢差が五歳に満たない年長者が性的な姿態をとってその映像を送信する行為を要求することを処罰することとした場合、同様に、要求した行為が実現したとしても、それだけでは処罰されないにもかかわらず、その要求行為をすれば処罰されることとなるということになってしまいまして、そのような帰結は整合性を欠くと考えられることから、不同意わいせつ罪等と同様の年齢要件としているところでございます。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

大口委員 次に、改正後の刑訴法三百二十一条の三についてお伺いをしたいと思います。

 この三百二十一条の三を設けて伝聞法則の例外とするわけでございますけれども、この件につきまして、三百二十一条の三の一項では、「その供述が第二号に掲げる措置が特に採られた情況の下にされたものであると認める場合であつて、聴取に至るまでの情況その他の事情を考慮し相当と認めるとき」というのは証拠とする、第二号に掲げた措置が取られるということが書かれているわけです。現在行われている、要するに司法面接的手法を用いた代表者聴取を念頭に置いた規定だと思います。

 これによって供述者の負担を軽減し、また、信用性の情況的保障ということからこれは置かれているわけでございますが、拡大解釈される懸念を示されることが、法制審議会においても出されております。この趣旨、どのような措置を講ずることを想定しているのか。

 そしてまた、やはり、これは国際的な実証研究に基づき開発されたプロトコルにのっとって適切に司法面接を行うべきであるというふうに考えますが、この点についての、法務省の実施に向けての取組についてお伺いをいたしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三は、被害状況等を繰り返し供述することによる心理的、精神的負担の軽減を図るため、いわゆる司法面接的手法がそれにより得られる供述について信用性の情況的保障を担保し得ることから、このような手法による聴取の結果を記録した録音、録画記録媒体を公判に顕出するための新たな伝聞例外を設けるものでございます。

 司法面接的手法は、できる限り正確に多くの事実を聴取するために開発された手法でございまして、様々な具体的なプロトコルがありますが、いずれにおきましても、その中核的な要素は、供述者の不安又は緊張を緩和することその他の供述者が十分な供述をするために必要な措置、また、誘導をできる限り避けることその他の供述者の供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置が取られることがその中核でございます。そこで、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三第一項におきましては、これらの措置が取られたことを要件としているところでございます。

 お尋ねの、国際的な実証的研究に基づき開発された司法面接の手順ということにつきましても、その中核的な要素はこれと同様のものとなると考えられます。

 その上で、現在運用されている代表者聴取の取組における聴取では、先ほど申し上げた措置が、一般的な通常の配慮を超えて、供述者の特性に応じた特段の配慮の下に取られているものと承知しておりまして、このような供述者の特性に応じた特段の配慮の下に所定の措置が取られたものであれば、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三第一項の措置要件は満たすと考えられます。

 本法律案による改正後も、引き続き、適切に代表者聴取の取組が実施されるよう、改正の趣旨、内容について周知するとともに、必要な研修の実施に努めてまいりたいと考えております。

大口委員 司法面接をするとした場合に、誘導、暗示を避けるために、子供の認知発達能力や心理の専門知識を有する、また技術も持っている中立的な司法面接の専門家がこれを行うべきである、そしてまた、この三百二十一条の三には聴取の主体について規定がされていないことの確認もしたいということと、中立の専門家を聴取主体とすべきであるとの意見がございます。これについてどうなのか。そして、司法面接の専門家の養成について、法務省としてのお考えをお伺いしたいと思います。

 さらに、司法面接的手法を用いた代表者聴取というのは、今のところ、子供、そしてまた、精神に障害を有する方を対象としておるわけでありますが、この三百二十一条の三におきましては、その対象の属性が規定されておりません。だから、拡大されるんじゃないかという指摘もあるわけであります。

 この三百二十一条の三でも、対象の方の中で、特に一号のハについては、これは範囲を広げ過ぎることになるのではないかという批判もあります。その対象の範囲について、また、具体的にどういうことなのかについてもお伺いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三におきましては、司法面接的手法による聴取の結果を記録した録音、録画記録媒体の証拠能力の要件としては、聴取主体が誰であれ、その手法において求められている措置が取られたことこそが重要であり、かつ、それで足りると考えられることから、法律上の要件としては、御指摘のとおり、聴取主体の限定はしておりません。

 聴取主体を中立的立場の専門家に限定すべきとの御意見があることは承知しておりますけれども、捜査機関は中立でないため誘導的になりがちであるという理由でございましたら、改正後の刑事訴訟法三百二十一条の三、一項第二号に掲げる措置が取られたかどうかは、録音、録画記録媒体を確認することによって判別していただくことが可能ですし、専門家でないために同号に掲げる措置を取って聴取する能力、技術が十分でないという理由であれば、専門家に録音、録画記録媒体を確認していただいてその聴取方法の妥当性等について意見を求めるなど、事後的な検証をすることも可能であると考えられます。

 そのため、聴取者を中立的立場の専門家に限定する要件を設けることは必要でなく、かつ、相当でもないということから、そのような要件とはしていないところでございます。

 また、現在の運用におきましては、警察、検察、児童相談所が連携をし、子供の場合ですけれども、被害児童の事情聴取に先立って協議を行い、代表者が聴取を行うなどの取組を実施しているものと承知しておりますが、これらの者とは別に司法面接の専門家を養成して主体とすることにつきましては、司法面接的手法による聴取を効果的に行うためには福祉と捜査の双方に習熟している立場の者が聴取することが適切であるという御指摘がある中で、これにふさわしい者が具体的に想定できるかといった点が課題になると考えられます。

 いずれにいたしましても、司法面接的手法による聴取を適切に行うためのスキルを身につけ、その人材を確保することは重要であると考えております。

 また、この対象となる者につきましては、第三百二十一条の三第一項の第一号イからハまでに掲げる者としておりまして、各号について詳細の御説明はちょっと時間の関係で省略させていただきますけれども、このような形で伝聞例外を設ける趣旨でございますけれども、聴取を受けた供述者について、公判期日において供述する場合に生じる心理的、精神的負担の軽減を図るという規定の趣旨からしまして、負担軽減の必要性があり、かつ、司法面接的手法を用いることにより信用性が担保されるのは、性犯罪の被害者に限られることではないと考えられます。

 そのため、対象者の範囲につきましては、これに限らず、更に公判準備又は公判期日において供述するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者も対象とすることが必要かつ相当ということで、各規定を定めているものでございます。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

大口委員 あと、押収物に記載された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等についてお伺いします。

 現在の実務では、性的な姿態の画像が記録された押収物の還付請求に対して、権利濫用として拒む場合があると承知しています。今回、押収物に記載された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の仕組みを設けることの趣旨、概要、あわせて、対象となる画像がどのようなものか、お伺いします。

 また、押収物に記録された性的な姿態の影像の電磁的記録の消去の仕組みを導入されたとしても、例えば、性犯罪の被害者の顔写真や個人情報が記録された押収物など、還付することが相当でないものについては、今後も還付請求権が権利の濫用に当たるとして拒むことができるのか、お伺いします。

松下政府参考人 本法律案におきましては、性的な姿態の撮影等により生成された画像が拡散すると、撮影された被害者の権利利益の侵害が増大する危険性がありますことから、これを除去することによって被害者の保護を図るために、検察官が、行政手続として、性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等の措置を講ずることができることとしております。

 御指摘のとおり、現在の実務では、権利の濫用として、性的な姿態の画像が記録された押収物の還付請求に対してこれを拒む場合があると承知しておりますけれども、拒んだ結果として、当該押収物に記録された電磁的記録を消去するなどの措置が可能となるものではありませんので、それとは別に、本法律案の仕組みを設けることが必要と考えております。

 しかしながら、本法律案が成立いたしましても、この措置の内容につきましては、あくまでも被害者保護という観点で押収物に記録されたものを消去するというものでございまして、押収物の還付を拒むということとは全く異なるものでございますので、今後も、今回の法律案の対象とならないものにつきまして、その還付を請求することが権利の濫用に当たると認められる場合には、引き続き返還を拒むことが可能であると考えられます。

大口委員 時間が来ましたので、終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、英利アルフィヤ君。

英利委員 おはようございます。千葉県第五区選出の英利アルフィヤでございます。

 今回の刑法の改正ですけれども、私は、本当にこれは、我が国において、人としての尊厳、主体性、このようなものをより確保し、前に進める議論の根幹にあるものだと思っております。

 私は、当選したばかりですけれども、選挙中、自分の地元である、選挙区である市川市、浦安市において、一つのことをずっと主張してまいりました。それは、アジアのリーダーである日本というこの国で、世界の民主主義の中でも、アジアでは最も経済力の高いリーダーであるべきこの国で、生きづらい、暮らしづらいと思う人が一人もいてはいけないということです。

 そして、その延長線として、誇るべき法治国家であるこの国で、自分の主張をしづらい、自分の被害が報われない、このようなこともあってはならないと思っております。

 その面で、今回の刑法の改正において、同意のない意思の形成、表明、全うが困難な状態での性行為を性犯罪であると、これを明確にしていること、高く評価いたします。

 その上で、順番に今回の法案についてお伺いさせていただければと思います。

 まず、本法律案においては、現行法の強制性交等罪、準強制性交等罪における暴行、脅迫、心神喪失、抗拒不能といった要件を改めることとされています。改めまして、その趣旨及び概要を問います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行の強制わいせつ罪、強制性交等罪の、暴行又は脅迫を用いてとの要件や、準強制わいせつ罪、準強制性交等罪等の、心神喪失若しくは抗拒不能に乗じといった要件につきましては、判例上の解釈として、抗拒を著しく困難にさせる程度であるということを要するとされております。

 そうしたことから、個別の事案において、これらの罪の成立範囲が場合によって限定的に解されてしまう余地がある。あるいは、安定的な運用を確保するという観点からは、処罰すべき行為を適切に捕捉しつつ、構成要件該当性の判断にばらつきが生じない規定とすることが重要であるといった指摘がなされているところでございます。

 そこで、本法律案におきましては、より明確で判断にばらつきが生じない規定とするために、これらの罪の要件につきまして、性犯罪の本質的な要素である性的行為が自由な意思決定が困難な状態でなされたという点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件とした上で、その状態の原因となり得る行為や原因となり得る事由を具体的に列挙することとしたものでございます。

英利委員 ありがとうございます。

 特に、意思に反した性行為、そして同意しない意思が困難な状況で行われる性行為を性犯罪とするということ、高く評価させていただきたいと思います。

 また、若者を守るという観点から、いわゆる性交同意年齢の引上げの趣旨及び概要を問います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行の刑法では、いわゆる性交同意年齢は十三歳未満とされております。現行の強制わいせつ罪、強制性交等罪は、性的自由、性的自己決定権を保護法益としておりまして、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力がない場合には、暴行等の意思決定に影響を及ぼすような状況がなかったとしても保護法益が侵害されると考えられるところ、その能力がないと言える年齢として、十三歳未満、すなわちおおむね小学生の年齢層の者は行為の性的意味を認識する能力が一律に欠けるというふうに評価していることから、十三歳未満とされていると考えられております。

 もっとも、性的行為に関して有効に自由な意思決定をするための能力がどのようなものかというその内実について考えてみますと、行為の性的意味を認識する能力だけではなく、行為の相手方との関係において、行為が自己に及ぼす影響について自律的に考えて理解したり、その結果に基づいて相手方に対処する能力が必要であると考えられるところでございます。

 そして、十三歳以上十六歳未満、つまり、おおむね中学生の年齢層の者につきましては、性的意味を認識する能力が一律に欠けるわけではございませんけれども、先ほど申し上げた後者の能力が十分ではなく、相手方との関係が対等でなければ有効に自由な意思決定ができる前提となる能力に欠けると考えられるところでございます。

 そこで、本法律案におきましては、いわゆる性交同意年齢を十六歳未満に引き上げた上で、十三歳以上十六歳未満の者に対する性的行為については、相手方との間に対等な関係があり得ず、有効に自由な意思決定をすることができる能力に欠ける場合に限って処罰をするという観点から、相手方が五歳以上年長の場合を処罰対象とすることとしたものでございます。

英利委員 ありがとうございます。

 十三歳未満、小学生のみにこれが今まで適用されていたこと、非常に、私も、一人の女性として、そして性被害を受けた友人がたくさんいる女性として、本当に危機感を持っております。今回、十六歳未満に引き上げられるということ、非常に大きな一歩だと感じており、また、十六歳でいいのか、この問題意識も持っておりますので、引き続き検討していただきたいと思っております。

 本法律案によって新設される、刑法第百八十二条、十六歳未満の者に対する面会要求等の罪の趣旨及び概要も問わせていただきます。

松下政府参考人 お答えいたします。

 刑法第百八十二条でございますけれども、これは、十六歳未満の若年者が性被害に遭うのを未然に防止し、その性的自由、性的自己決定権の保護を徹底するためには、性犯罪に至る前の段階でも、性被害に遭う危険性のない保護状態を侵害する危険を生じさせたり、これを現に侵害する行為を処罰することが必要であると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、まず、対面した状態で行われる性犯罪を未然に防止するという観点から、刑法第百八十二条の第一項におきまして、わいせつの目的で十六歳未満の者に対し不当な手段を用いて面会を要求した者を一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処し、二項におきまして、このような面会の要求をし、よって面会した者を二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処することとしているところでございます。また、対面ではなく離隔した状態で行われる性犯罪を未然に防止するという観点から、三項におきまして、十六歳未満の者に対し性的な姿態をとってその映像を送信することを要求した者を一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処するということとしております。

英利委員 ありがとうございます。

 本当に、若者の性的安全性、我が国でしっかりと守っていくべきだと思いますので、高くこれも評価させていただきます。

 続いて、刑事訴訟法の改正について御質問させていただきます。

 性犯罪についての公訴時効期間が延長されました。この趣旨及び概要を問います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行刑事訴訟法上、公訴時効の対象となる罪の時効期間は、それぞれの罪の法定刑に応じて定められているところでございます。

 もっとも、性犯罪につきましては、一般に、その性質上、恥の感情や自責感によって被害申告が困難であること、また被害者の周囲の者が被害に気づきにくいことなどから、ほかの犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすく、その結果、現行法の下では、訴追が事実上可能になる前に公訴時効が完成してしまい、犯人の処罰が不可能となるという不当な事態が生じる場合があると考えられます。

 そこで、本法律案におきましては、このような特性を踏まえて、訴追可能性を適切に確保するため、性犯罪について公訴時効期間を五年延長することとしております。

 その上で、さらに、心身共に未成熟である若年者につきましては、知識経験が不十分であることや、社会生活上の自律的な判断能力、対処能力が十分でないということから、性犯罪の被害に遭った場合、いわゆる大人の場合と比較して類型的に被害申告がより困難であると考えられますので、本法律案におきましては、この場合には特別の取扱いをすることとし、具体的には、性犯罪の被害者が十八歳未満である場合には、犯罪が終わったときから被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を加えて、更に公訴時効期間を延長することとしているものでございます。

英利委員 ありがとうございます。

 続いて、性的姿態撮影行為等処罰法案についてお伺いさせていただきます。

 本法律案においては、性的な姿態を撮影する行為等に関して新たな罪が設けられておりますが、どのような行為が処罰対象となるのか、御説明願います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 性的姿態撮影等処罰法案で創設する罪でございますけれども、これは、意思に反して性的な姿態を撮影したり、これにより生成された性的な姿態の記録を提供するといった行為がなされれば、当該記録の存在や拡散などにより、ほかの機会に他人に見られる危険が生じ、ひいては不特定又は多数の者に見られるという重大な事態を生じる危険があることから、それらの行為を処罰するものでございまして、意思に反して自己の性的な姿態を他の機会に他人に見られないという性的自由、性的自己決定権を保護法益とするものでございます。

 具体的には、このような保護法益を侵害する罪として、性的な姿態等を撮影する行為を処罰する性的姿態等撮影罪、性的姿態等撮影罪などによって生成された性的影像記録を提供したり公然と陳列したりする行為を処罰する性的影像記録提供、公然陳列罪、それから、そうした記録を提供又は公然陳列の目的で保管する行為を処罰する性的影像記録保管罪、性的な姿態の影像を不特定又は多数の者に対して電気通信回線を通じて送信する行為を処罰する性的姿態等影像送信罪、その影像送信された影像をそのことを知りながら記録する行為を処罰する性的姿態等影像記録罪を設けることとしております。

英利委員 ありがとうございます。

 また、本法律案においては、検察官が保管する押収物に記録されている画像などについて消去などの措置を取るということができることとされておりますけれども、具体的にどのようなものを対象として、どのような措置が可能となるのか、例えば、いわゆるリベンジポルノはその対象に含まれるのか、御説明願います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、性的な姿態の撮影により生成された画像が拡散することによって、撮影された被害者の権利利益の侵害が増大するという危険性に着目し、これを除去することによって被害者の保護を図るため、検察官が行政手続として消去等の措置を講ずることができることとしております。

 具体的には、押収物が性的姿態等撮影罪に当たる行為により生じたものなどでありまして、そこに記録されているのが電磁的記録であるというときには、これを消去し、又は当該押収物を廃棄するなどの措置を取ることができるものとし、電磁的記録以外のときは、当該押収物を廃棄する措置を取ることができる。

 また、押収物に記録されている電磁的記録が、捜査段階においていわゆるリモートアクセスによる複写がされたものであり、リモートアクセス先の記録媒体に複写元の電磁的記録が残っているという場合には、当該電磁的記録を当該電子計算機で消去する権限を有する者に対して、その消去を命ずることができるとしているものでございます。

 これらの措置の対象とする性的な姿態の画像につきましては、性的姿態等撮影罪若しくは性的姿態等影像記録罪に当たる行為により生じたもの又はこれを複写したもの、これらに記録されている電磁的記録。あるいは、いわゆる児童ポルノ法に規定する児童ポルノ、その電磁的記録。また、御指摘のいわゆるリベンジポルノ法第三条一項から三項までに規定する行為を組成し、若しくは当該行為の用に供した私事性的画像記録が記録されているものなど又はこれらを複写したもの、これらに記録されている電磁的記録としておりまして、いわゆるリベンジポルノ法の私事性的画像記録も措置の対象としております。

英利委員 ありがとうございます。

 最後に、一つだけ申し上げたいことがあります。

 十五年前、私はアメリカの大学で寮長を務めておりました。その際、いろいろな後輩の女性、男性の、男子学生、女子学生のカウンセリングを担ったり、被害に遭った際のお話を聞く、学校での最前線として、役割を担っておりました。

 当時は、性的同意というコンセプトも全くなくて、今、国際的にこの議論が進んでいると言われておりますけれども、アメリカでも全くそのようなコンセプトはありませんでした。そして、昨日、参考人の方々がおっしゃっていた、自分の心理的境界線、物理的境界線、性的境界線、これを守る権利が一人一人にあるという教育も私たちは受けておりませんでした。

 その中で、いろいろな、特に女子学生から、同意がない上で酔っている状態で性的行為をされてしまった、暴力はなかったけれども、自分は性的行為に同意していなかったけれども、それが表現できなかった、そして、それを訴えようとしても、恐らく、自分のキャリアや自分の名前に傷がつくかもしれないから寮長だけでとどめてほしい、でも誰かに伝えたい、そのような声をたくさん伺いました。一人ではありません。今日ここに立っていて、三人、四人、五人、お一人お一人の顔が浮かびます。

 そして、アメリカで大学を卒業し、私は日本で就職しましたけれども、就職した後も、日本でも、行きたくない飲み会に誘われたり、飲み会の席で、飲むだけではなくて、自分が同意していない上で体を触られたり。

 そして、飲み会の後に、ある同僚が、上司に、一人で、この後飲みに行かないかとホテルの前で誘われるところを、ほかのもう一人の女性の同僚と見かけ、そういうことにならないように、朝四時まで一緒に付き添った記憶が私にはあります。次の朝六時にみんなで出勤した記憶もあります。

 このような経験を、女性は多く経験していると思います。このようなことがより公で語られることを、そして、性的同意というコンセプトがより広まることを、そして、我々一人一人には境界線の権利があるんだ、ノーと言う権利があるんだ、そして、昨日の参考人の方々がおっしゃっていた、ノーだけではなくて、イエス・ミーンズ・イエス、はいと言わなければそれは同意ではない、このようなコンセプトも広がることを切に切に願います。

 最後に副大臣に問います。今回の法改正の意義と法案成立に向けた意気込みを問わせていただきたいと思います。

門山副大臣 現在御審議いただいている性犯罪に関する二つの法案は、いずれも性犯罪に適切に対処するため、所要の法整備を行うものでございます。

 性犯罪は、被害者の尊厳を著しく傷つけ、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続けるものであって、決して許されるものではございません。こうした性犯罪への適切な対処は喫緊の課題であり、そのための法整備を行うこれらの法案は、大変重要な意義を有するものと考えております。

 今後の御審議におきましても、引き続き、これらの法案の趣旨や内容をしっかりと説明してまいります。その上で、十分に御審議いただき、速やかに成立させていただきたいと考えております。

英利委員 誠にありがとうございます。

 最後に、大きな一歩として、改めて、この改正案、評価させていただくとともに、これからも引き続き調査や検証などを進め、被害者の方々がより報われる、そして一人一人の尊厳がきちんと守られる日本にしていただきますようお願い申し上げまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、石橋林太郎君。

石橋委員 おはようございます。自由民主党の石橋林太郎でございます。

 今日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 刑法の改正法案ということで、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 今、英利さんの最後の御質問に対して門山副大臣からの決意を頂戴したところではありますけれども、私からも、改めまして、今回の改正法案の趣旨につきまして、門山副大臣から御答弁いただければと思います。よろしくお願いします。

門山副大臣 性犯罪につきましては平成二十九年六月に成立した刑法の一部を改正する法律により罰則等の改正が行われましたが、その際、改正法附則第九条におきまして、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えるということとされておりました。

 法務省におきましては、これに基づき、様々な調査を行いつつ幅広い観点から検討を行ってきたところではございますが、その検討の結果、例えば、性犯罪の処罰規定をより明確で分かりやすい規定に改め、安定的な運用と適正な処罰を実現する必要があるとか、いわゆる盗撮事案の検挙件数が大きく増加しているという実態があるといった近年における性犯罪をめぐる状況に鑑みると、この種の犯罪に適切に対応できるようにするため法整備を行う必要があると考えられるところから、今般、二つの法案を提出させていただいたところでございます。

石橋委員 御答弁ありがとうございます。

 性犯罪、本当に許されるものではありませんし、私も、性犯罪被害に遭われた方には心からお見舞いを申し上げますし、今後、この法案が無事に通って我が国において性犯罪というものがしっかりと処罰をされていくんだということにつなげていきたいというふうに思いますし、今も、犯罪に適切に対処することができるようにするための改正案だという思いを聞かせていただきました。

 その中で、今日は、今から何点かお伺いをさせていただきたいのは、性犯罪被害者の方の中でも、特に障害をお持ちの方について少し質問をさせていただきたいというふうに思っております。

 今回、法改正をされるに当たりまして、部会でありますとかワーキンググループでありますとか、様々ヒアリングをしてこられたというふうに伺っております。

 しかしながら、障害者の関係の方ということで考えますと、支援をしていらっしゃる方とか、またそうした研究をしていらっしゃる方、また弁護士の方、それから、被害者、当事者の方の御家族の方からはヒアリングをしていらっしゃるというふうに聞いているんですけれども、肝腎の被害当事者である障害者の方からのヒアリングはされなかったというふうに聞いておりますけれども、そのことの確認をさせてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の立案過程におきまして、法務省では、平成三十年四月から令和二年三月までの間、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを、また、令和二年六月から令和三年五月までの間、性犯罪に関する刑事法検討会をそれぞれ開催し、各種の調査研究や、被害当事者、支援団体からのヒアリングなどによりまして実態の把握を進めるとともに、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について様々な観点から検討を加えてまいりました。

 その中で、御指摘の障害児者御本人からのヒアリングは実施しておりませんが、その性被害の実態を把握するために、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループにおきまして、御指摘のとおり、性犯罪被害に遭った障害者の御家族の方や、障害者への性暴力に関する啓発活動を行う団体の方などからのヒアリングを実施したところでございます。

石橋委員 ありがとうございました。

 被害者の方、当事者からはヒアリングがないということを今確認をさせていただきました。

 それがないということが理由かどうか分からないんですけれども、今回提案をいただいています改正法案の百七十六条一項に八類型ありまして、そのうちの二号、二つ目なんですけれども、そこには、「心身の障害を生じさせること又はそれがあること。」というふうに記されております。

 この前段の、心身の障害を生じさせることというのは、加害行為に及んだ者が被害者の方に対して何かしらアクションをして、その結果として心身の障害が生じるということだというふうに理解をしています。後段の、又はそれがあることというのは、加害者による行為の有無にかかわらず、そもそも被害者の方が何かしらの心身の障害をお持ちであるということだというふうに思っています。

 この前段と後段では全然状況が違うのだというふうに思うんですけれども、それが一つの文章にまとめられてしまっていることによって、今から申し上げるような懸念があるということを支援者団体の方から伺いました。

 その懸念といいますのは、今のこの書き方でありますと、百七十六条の本文のところからつなげていったときに、まるで心身の障害があることによって、同意しない意思の形成、表明若しくは全うが困難であるというふうに読めてしまうのではないかという懸念であります。

 精神障害であろうと知的障害であろうと、障害をお持ちの方も、当然御自身で意思を表明もされますし、形成もされますし、ただ、それが全うできないことに関しては、多くのケースは、恐らく加害に及んだ者がその方の意思表示の仕方を理解できないとか、そういうケースではないかというふうに思うわけであります。にもかかわらず、今のこの条文の書き方でありますと、まるで心身の障害があることによって、意思の形成、表明、全うができないかのように読めてしまう、そういった御懸念であります。

 そういった意図がこの条文の中にないというふうに私は思っているわけでありますけれども、念のために、そのことについて見解をお伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 結論として御指摘のとおりなんですけれども、改正後の第百七十六条第一項、第百七十七条第一項におきまして各号に掲げる行為、事由といいますのは、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態かどうかの判断を容易かつ安定的に行い得るようにするため、そのような状態の原因となり得る行為、事由を列挙したものでございまして、これに該当すれば常に、先ほど申し上げた同意しない意思の形成等が困難な状態だということではございません。

 第二号の心身の障害があることという要件につきましても、これに該当するだけではなく、それが原因となって、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という要件に該当することが犯罪の成立に必要でございまして、障害があることをもって常にこの状態にあるという要件とはしていないところでございます。

 このような構成要件の趣旨、内容につきましては、今後も十分に御説明をしてまいりたいと考えております。

石橋委員 明確にお答えをいただきまして、ありがとうございました。

 これは何か、先ほども大口委員からも御指摘がありましたけれども、試案の中では文言が違っていたというふうに、話を私も聞きました。拒絶困難、拒絶する意思の形成、表明、実現という表現が、様々な御意見をいただく中で現状のものに変わっていったと。非常にまとめる作業というのは難しいんだろうなと思うんですけれども。今お答えいただきましたように、しっかりと誤解のないように、また説明にも力を入れていただきたいなというふうにお願いをさせていただきたいと思います。

 それともう一点、百七十六条の二項でありますけれども、今回、こちらには、行為がわいせつなものでないとの誤信等と書いてあります。

 これも、今ほど申し上げた質問と同じ趣旨でありますが、加害者がそのように仕向けたわけではなく、障害をお持ちの方が知的障害等によって、行為がわいせつでないと誤信する状態にそもそもあるでありますとか、行為がわいせつであることが誤信ではなく分からない状態でいらっしゃるとか、また、わいせつという概念自体の認識がちょっと難しい状態であるとか、そういったことも想定されるわけでありますけれども、被害者である障害児者の方がそういった状況にあるときに加害者は罪にきちんと問うことができるのかどうか、見解を教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 障害を有する方に対する性犯罪につきましては、まず、改正後の刑法第百七十六条第一項、第百七十七条第一項は、心身の障害があることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて性的行為をした者を処罰対象としておりまして、御指摘のような場合についても、これに該当するのであれば行為者を処罰し得ることとなります。

 また、改正後の刑法第百七十六条第二項、第百七十七条第二項は、心身の障害が原因かどうかにかかわらず、被害者において行為がわいせつなものではないと誤信している場合に、これに乗じて性的行為をした者を処罰することとしておりまして、御指摘のような場合についても、これに該当する限り行為者を処罰し得ることとなると考えております。

石橋委員 ありがとうございます。

 なぜこうした質問を今重ねているかと申し上げますと、障害のある方に対する犯罪というのは、特に今回、不同意という条件がありますので、障害のある方からの意思の表明等はなかなか分かりにくいケースがあるのではないかなという懸念から、こうした質問をさせていただいております。

 質問の準備をする中で教えていただいた中でいいますと、諸外国の例で恐縮ではありますが、法制審の資料にも出ているというふうに聞いているんですけれども、障害のある方への性犯罪については、例えば、障害者の方は健常者と異なる方法で御自身の意思を示すという特性があるケースもある、そういったことを踏まえて、健常者とは別に、障害に乗じた性犯罪という、法律なんですかね、犯罪類型をわざわざ分けて設定をしている国もあるというふうに聞いていますし、また、地位、関係性のことで申し上げますと、施設の職員さんからの加害であったりとか、特別支援学校の教員からの加害であったりとか、また、医療従事者、お医者さんであったりとかですかね、精神科医さんからの例えばそういった加害であるとか、そういったことがある場合には、非常に、障害を知り得る立場の者からの加害というのは、そうでない方からの加害よりも責任が重いというような御指摘もあると思いますし、私自身も個人的にはそのように考えます。

 そう考えたときに、障害に乗じた犯罪、性犯罪という類型を検討することも、私は検討に値するというふうに思うわけでありますけれども、法務省の見解を教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、例えば、心身の障害があることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて性的行為をすることや、あるいは、経済的又は社会関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることにより、そのような状態にさせて性的行為をすることを処罰対象としておりまして、御指摘のような場合につきましても、これらに該当すれば不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪として処罰され得ることとなります。

 他方、障害のある方にとっての一定の地位、関係性について、その地位、関係性があるだけで例外なく自由な意思決定ができないと言えるような地位や関係性というものを明確かつ限定的に規定して処罰対象とすることはなかなか困難であると考えられるところでございます。障害の程度ですとか種類も様々でございまして、なかなか一律にそれを規定するというのは難しいというふうに考えております。

 そのため、本法律案においては、ただいま答弁した処罰規定と別に、御指摘のような規定を設けることとはしていないところでございます。

石橋委員 御答弁ありがとうございました。

 おっしゃることも分かるわけでありますが、しかしながら、やはり、いわゆる通常の会社員の上司、部下というケース、そこだけと比較をした場合に、例えば、施設で入っていらっしゃる方と、それを支援するお仕事をしていらっしゃる方というのは、地位、関係性という意味では同じかもしれませんけれども、その内容が大分違うんじゃないかなというふうに思います。

 例えば、会社であれば極端なことを言えば辞めるという方法もあるわけでありますが、なかなか施設等でありますとそういったことも一概には難しいし、また、生活の大部分を加害者に頼っているようなケースであれば、支援する立場にありながら加害をした者に対してはより厳しく処罰をしていくべきではないかな、それが一般的な感情にも合うのではないかなというふうにも思うところであります。

 今回は、そうはいいながら、今回のこの改正案におきまして不同意というものをしっかりと明示していただいていることというのは非常に大きな前進であるというふうに思っておりますので、それはもう本当に高く評価します。

 ただ、今後の課題の一つとして、障害者の方の今申し上げたようなこととか、それから、冒頭確認をさせてもらったとおり、今回は被害当事者の障害児者の方からのヒアリングはなかったということでありますので、できれば、そういったこともまたやっていただきたいと思いますし、それと、今回、心身の障害という文言が類型の中に入ってきたということでありますので、今までは心神喪失等でくくられてしまっていた被害者の方ですけれども、心身の障害というところで、できればしっかりと統計を取って、データを取っていただいて、それをまた分析をしていただいて、今後の更なる法改正につなげていただきたいなということもお願いをさせていただきたいと思います。

 そして、次の質問に入らせていただきますけれども、性交同意年齢が十三歳から十六歳に引き上げられました。その中で、るる昨日も御質問等ありましたけれども、五歳年齢差という例外規定もあるわけであります。うがった見方をすると、年長者からすると、この年までならオーケーだというようなやからもいるのかなというふうにもちょっと危惧はするわけであります。十八歳、十四歳とか、昨日もお話がありました。

 それを思うときに、やはり、学校において、しっかりと、子供たちが加害も被害も含めて性犯罪に遭うことのないように、保護者としっかり連携もしながら学校で適切な性教育をしていくこと、これもとても大切だというふうに思うわけでありますけれども、まず、学校におきまして現在どのような性教育を実施されているのか、教えてください。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 学校における性に関する指導につきましては、学習指導要領に基づきまして、児童生徒の発達段階に応じまして、体育科、保健体育科を始め、学校教育活動全体を通じて指導することとしております。

 具体的には、例えば、初経、精通、異性への関心の高まりや性衝動など思春期の心と身体の発育、発達、また、受精、妊娠、出産とそれに伴う健康課題、エイズ及び性感染症とその予防、異性の尊重、性情報への適切な対処など、身体的側面のみならず、様々な観点から学習が行われております。

 文部科学省としましては、今後とも、子供たち自身が性に関して正しく理解し、適切な行動が取れるよう、学習指導要領に基づく着実な指導に取り組んでまいります。

石橋委員 ありがとうございました。

 性教育の、どんな状況かというのもお話をいただきましたけれども、もう一点、お伺いしたいことがあります。子供たちが性暴力の加害者、被害者、また傍観者にならないようにということで、文部科学省さんにおいては、今、全国の学校で、生命の安全教育を推進をしていただいているというふうに聞いております。この生命の安全教育についての御説明をお願いします。

里見政府参考人 お答えいたします。

 文部科学省では、子供たちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないための生命の安全教育の教材及び指導の手引を作成し、全国の学校での取組を推進しております。

 具体的には、教材におきまして、幼児期や小学校低学年等では、水着で隠れる部分を他人に見せない、触らせない、触られたら大人に言う等、小学校高学年では自分と相手を守る距離感の概念やSNSの危険性等、中学校ではいわゆるデートDV等、高校では、セクハラ、二次被害の予防等について取り上げるなど、児童生徒の発達段階に応じて、自分や相手、一人一人を尊重する態度を身につける取組等を進めております。

石橋委員 ありがとうございます。

 今、いわゆる一般的な性的な教育ということで、心身の発達段階に応じた教育をしてくださっているということ、また、今の生命の安全教育においては、もう一歩踏み込むというか、また、性だけに限らず、水着で隠れるところ、プライベートゾーンの話であるとか、SNS、デートDV等についても学校でも取組をしてくださっているということを聞きました。

 なぜこれをお伺いするかといいますと、昨日もそうでありましたけれども、私が今申し上げたように、子供たちが性被害に遭わないようにするための性教育というのは必要だ、これは私たちの恐らく共通認識だと思うんですけれども、その中で、包括的性教育という単語をよく最近耳に、個人的な感想ですけれども、包括的性教育という言葉を聞くようになってまいりました。

 この包括的性教育というのは、私、実際中身が何なのかとはっきり分かっているわけじゃないんですけれども、まずお伺いしてみたいのが、文部科学省さんとしてもこの包括的性教育という言葉を使いながらそういった教育をしていらっしゃるのかどうか、ちょっと教えてください。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の包括的性教育という言葉につきましては非常に多義的に使用されているということから、文部科学省としては包括的性教育という言葉は使っていないところでございます。

石橋委員 今、包括的性教育というのは多義的だから使っていないというお答えをいただきました。

 私もこの質問をするに当たって、ちょこっと調べてみました。

 包括的性教育が何を意味するかというのは、結局、私、調べてもはっきりはしていないわけでありますが、例えば、ユネスコが提唱しているというか、ユネスコによる国際セクシュアリティー教育のことを指して、それの適用をしていただくということを指して包括的性教育と呼んでいるケースがあったりとか、それとか、人権、ジェンダー平等、性の多様性なども含めて、広い意味での包括的性教育という言葉を使っていらっしゃったり、また、中には、文科省さんでいう、いわゆる歯止め規定というやつですかね、その歯止め規定というものを撤廃をするようなことを意味して包括的性教育の文脈でお話があったり、はたまた、今申し上げたような具体な内容ではなくて、先ほど説明いただいたような、現状の学校における性教育では少し不十分であるので、もう少し踏み込んだ幅広な性教育をするべきだという意味で、具体な内容ではなくイメージとして包括的性教育という言葉が使われているような様子も確認をしました。

 この包括的性教育というのはなかなか意味がはっきりしないわけでありますけれども、そこで、今ちょっと申し上げた具体の部分の中で何点かお伺いをしていきたいと思うんですけれども。

 まず、ユネスコが国際セクシュアリティー教育というものを発表していらっしゃるというんですか、示していらっしゃるというふうに理解をしています。文部科学省において、このユネスコの国際セクシュアリティー教育を導入する等々検討されているのかどうか、現状を教えてください。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 ユネスコが学校内外における性教育のプログラムや教材を開発、実践する際の参考として、国際セクシュアリティ教育ガイダンスを作成していることは承知しております。

 性に関する指導に対する価値観というのは国によって異なっておりまして、我が国においては、中央教育審議会の議論を経て策定された学習指導要領に基づきまして、児童生徒の発達段階に応じて性に関する指導を行うこととしております。このため、文部科学省においては、ユネスコの国際セクシュアリティ教育ガイダンスに基づく指導を行うことは考えておりません。

石橋委員 続きまして、今、ユネスコの国際セクシュアリティー教育に基づいては検討は特にされていないというお答えでありますけれども、今のおっしゃったそのガイダンスですね、これは日本語版も出ていると承知をしております。

 その著者の方、浅井春夫さんという方がその著者の中に含まれていらっしゃるんですけれども、この浅井春夫さんという方は、そのものずばりの「包括的性教育」という著書も出版をしていらっしゃいます。

 先ほど、包括的性教育が何を意味するのかはっきりしないという例示の中で、例えば人権やジェンダー平等、性の多様性などを意味していらっしゃる方もあると申し上げましたけれども、まさにこの「包括的性教育」という著書の中では、そうしたことが書いてありました。

 一点、ちょっと私、懸念といいますか違和感を持った部分がありまして、この浅井さんの「包括的性教育」という本の、初めにの中で、こんなことが書いてあります。

 我が国における性教育政策の問題点として、政府や文科省が進めている道徳教育の目的と内容に真っ向から対抗するのが性教育であるということが書かれていたり、それとか、道徳教育と性教育とは相入れない目的と内容があるということが書かれていました。

 私自身は浅井さんと面識もありませんので、そういった文章の言葉の真意は分からないわけでありますけれども、ちょっとお伺いをしたいのが、いわゆる道徳教育と性教育、性的なものを含めての様々な指導のことだと思いますけれども、この道徳教育と性教育というのは、その目的と内容が真っ向から対抗し、相入れないものであるのかどうか、文科省の見解を伺いたいと思います。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の著書の中で、そうした記述があるということは承知しております。

 道徳教育につきましては、平成三十年度から小学校で、また、令和元年度から中学校で始まった道徳の特別教科化を機にしまして、答えが一つではない道徳的な課題を児童生徒が自分自身の問題として捉え、多面的、多角的に考え、議論する道徳へと質的な転換を図ってきております。

 また、性教育と道徳教育との関連についてでございますが、性に関する指導につきましては、学習指導要領に基づき、保健体育科や特別活動を始めとしまして、児童生徒の発達の段階を踏まえまして、学校教育活動全体を通じて指導することとしております。

 その上で、道徳教育は、特別の教科道徳を要としまして学校教育活動全体を通じて行うものでありますので、例えば、保健体育科とも適切に関連を図り、また、異性に対する理解を含む人間関係の重要性などについて効果的に指導していくことが重要だと考えております。

石橋委員 お答えをありがとうございました。

 なぜこの質問をさせていただいたかと申し上げますと、包括的性教育という言葉が、今議論させてもらったとおり、なかなか概念が曖昧だというふうに思っています。

 ただ、今申し上げたような、人権、ジェンダー平等、性の多様性など、非常に幅広い概念を含んでくる可能性もあるというふうに同時に感じています。

 そのときに私が思ったのが、私の頭の中に去来したのが、かつての男女共同参画社会基本法ができた折に、一時期ではありますけれども、いわゆるジェンダーフリー教育というものが全国に広がったというふうに認識をしています。

 文科省さんとしてはジェンダーフリーという言葉自体は公文書等々で使っていないというふうに聞いていますけれども、現実問題、私、県議会をその当時やっていましたけれども、県議会の場であったり、学校現場であったり、また、一般の講習会等の啓発活動の中で、ジェンダーフリーという言葉が結構独り歩きをしたというふうに思っています。

 それは、男女共同参画社会という私たちが目指すべき形の中で、一部ちょっと考え方が変わってしまったものが独り歩きをして、それが結構社会に混乱を生じさせた。例えば、男らしさや女らしさの否定ということが安易に言われてしまったりとか、桃太郎が男の子だったらおかしいから桃子ちゃんでいこうとか、それが全部悪いとは言いませんけれども、そういったことが前面に出過ぎたことがありました。

 それを私は懸念をして、この包括的性教育という言葉の中でもしそういったことが起こり得るのであれば、それはちょっと気をつけなければいけないなという問題意識を持って、この質問をさせていただきました。御答弁ありがとうございました。

 最後に、質問ではないんですけれども、今回の法改正でありますけれども、本当に個人としても性犯罪というのは絶対に許せないと思います。本来であればもっと厳罰化をしてほしいと思うところもありますけれども、それは量刑のバランスから難しいということも一定理解をしますが。今回の改正が、先ほど申し上げたとおり、今後もまたより現状に即したものにつながっていくようにしていただきたいと思いますし、特に今日取り上げさせていただいた障害のある方というのは、その中でも特にしっかりと守っていく対象ではないかというふうに思います。そうした優しい日本社会をこれからも皆さんと一緒に築いていきたいということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 午前十一時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時三十四分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時五十分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鎌田さゆり君。

鎌田委員 立憲民主党の鎌田でございます。今日もよろしくお願いいたします。

 通告に基づきながら、また、柔軟な対応を是非お願いをしたいということをあらかじめ申し上げた上で、質疑をさせていただきます。

 まず、大臣に伺いますけれども、今回の法改正の目的なんですね。やはりこれは、性被害に遭われた人の生涯を、トラウマですとか、PTSDですとか、それからフラッシュバック、こういったものを抱きかかえ続けながら、生きづらさを持ったまま生涯を送らなければならない、人生を送らなければならない、そういった人を可能な限りゼロに近づけていく、正しく救済していくことが大きな目的であると思います。そこは、大臣にも共有認識として、大きくうなずいていただきましたので大丈夫だと思うんですが。

 そこでなんですけれども、相手が同意していると思い込んだ、そういう主張をする、その主張がゆえに、故意阻却と判断されて処罰なしという判決が、今のこの法改正でもまた続いていくのではないかという懸念があちらこちらで見受けられます。

 昨日の参考人のSHELLY氏、分かりやすく、イエス・ミーンズ・イエスの考え方、これは欠かせないんだ、ノー・ミーンズ・ノーは実はもう一昔前の話で、国際的にはイエス・ミーンズ・イエスなんだということを分かりやすくこの場でおっしゃっていらっしゃいました。

 この故意阻却でもって処罰なしという判決が続くんじゃないかという懸念もある一方、やはり、これはイエス・ミーンズ・イエスの考え方が欠かせないというこの考え方は、裁判の出来事とあるいはその考え方ということで違うようなものであって実は私は一つ、同じだと考えております。

 それで、大臣に提言の意味を込めて、今後に向けて、このイエス・ミーンズ・イエスの考え方を広く知っていただくための調査研究は欠かせないと私は考えておりますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、イエス・ミーンズ・イエス型の処罰規定というのは、一般に、被害者による明確で自発的な同意がない限り性犯罪が成立するというものと私は理解をしています。

 御指摘のような規定を設けることにつきましては、性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会の部会でも議論されてまいりましたが、現在の日本社会においては、性的行為を行うに当たってお互いの同意を明示的に確認することが一般的になっているとまでは言えないと思われ、そうであるにもかかわらず、同意が明示的でない場合を処罰する規定を設けることとすると、被害者が内心においては同意していた場合をも処罰対象に含んでしまうおそれがあるといった御指摘があったものと承知をしています。

 このような御議論を踏まえ、本法律案においては、いわゆるイエス・ミーンズ・イエス型の規定を設けることとはしていないわけでありますが、いずれにいたしましても、性犯罪の被害の実態を把握することは重要であるというふうに認識していますので、本法律案が成立した場合には、その施行状況や性的行為への同意についての社会の意識の動向等も踏まえつつ、関係府省庁とも連携し、必要な検討を行ってまいりたいと考えています。

鎌田委員 最後のところの、関係府省庁とも連携をし、必要な検討を行っていくということは、私は非常に大きな御答弁だったと思いますので、この委員会を何らかの形で視聴している様々な方々に、大臣のその決意が伝わればいいなというふうに感じました。ありがとうございました。

 では、法務省に伺いますけれども、先ほど大臣に伺いましたことともちょっと関連するんですが、同意のない性行為が行われたと認定されているにもかかわらず、故意阻却によって加害者が無罪とされた性犯罪事案について何件把握していらっしゃるでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのような事例につきまして、件数を網羅的に把握しているものではございませんけれども、法務省で開催した性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループに報告された裁判例調査によりますと、例えば、強制性交等致傷罪、致傷事案につきまして、被告人が自己の行為が被害者の反抗を著しく困難にする程度の暴行であることを認識していたとは認められないとされて無罪になったもの。また、平成二十九年の改正前の事件ではありますが、準強姦事案につきまして、被告人が被害者が抗拒不能状態にあったことを認識していたとは認められないとされて無罪となったもの、これは控訴審では異なる判断が出ておりますけれども、そういったものがあったと承知をしております。

鎌田委員 一四年の福岡高裁宮崎支部、それから一九年の静岡高裁浜松支部というのはもう多くの方が知るところであります。

 やはりこれは、被害者の方にとってすれば、こんな理不尽極まりないことはないわけで、大臣の先ほどの御決意もございましたので、その御決意に基づいて、やはり、この故意阻却によって加害者が無罪とされた性犯罪事案、これは更に調べていただいて、そして日本もヨーロッパなどに見られるようなイエス・ミーンズ・イエスの型に変えていくということ、これは是非、大臣の、後、御指示がきっとあるんだろうと思いますので、そのときには調査研究を行っていただきたいと思います。イエス・ミーンズ・イエスの型について、私は期待を寄せたいと思いますので、今の大臣の答弁を基にですね。

 次の質問に移ります。

 罪の要件についてなんですが、通告をしておりました、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態の解釈、それから暴行、脅迫の解釈、これは程度は問わないということ、先ほど大口委員の質問に対しての御答弁で程度は問わないということがありましたので、重ねてになりますが、これは程度は問わないということでよろしいですね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 いずれも程度は問いません。

鎌田委員 分かりました。

 続きまして、今回の性交同意年齢を十三歳から十六歳に引き上げて、そこに五歳差要件を設けているという点について伺っていきたいと思うんですけれども、局長、先ほどちょっと通告というか、お知らせはいたしましたので。

 そもそもなんですけれども、性交同意年齢を十三歳から十六歳に引き上げて、そこに五歳差要件を設けているんですけれども、そもそも、児童福祉法では、満十八歳未満を児童と規定して、第三十四条では、何人も児童に淫行させる行為はしてはならないと規定されています。それから、東京都の条例ですと、十八歳未満を青少年として、何人も青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行ってはならないというふうに定められています。

 この児童福祉法と、それから東京都の条例なんですけれども、こことの差異について御説明いただきたいんですが、よろしいでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、児童福祉法の方でございますけれども、突然のお尋ねでございまして、確たるものをちょっと今持っておりませんけれども、児童に淫行させる行為といいますのは、直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為を包含するものということで、児童と性行為をすることが直ちに淫行させる行為に当たるわけではなくて、今申し上げたようなものに当たる場合に淫行させる行為であるというふうになると評価されておりまして、そのような行為に当たるかは、行為者と児童の関係、助長、促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機、経緯、児童の年齢などを総合考慮して判断するのが相当という判例があるところでございます。

 条例に関しては、これは、今、東京都の例を挙げていただいたと思うんですけれども、済みません、今ちょっと手元に東京都の条例がございませんし、恐らくいろいろな都道府県で青少年保護育成条例という形で規定されている条例に関してお尋ねと思いますが、これらの条例は、それぞれの都道府県において青少年の健全育成といった観点から、十八歳以下の子供に対して、以下か未満かちょっと分かりませんけれども、年齢はいろいろあると思いますが、未満の子供に対してどんな行為をするかということがいろいろな構成要件で規定されているところでございまして、そういったそれぞれの条例の要件に従って処罰されることとなっているものでございます。

鎌田委員 私は、今回の法改正に決して反対しているわけじゃないんですね。反対ではないんだけれども、児童福祉法で満十八歳未満を児童と定義をして、それで、何人も児童に淫行する行為、これは認められていない、それから東京都ですと、健全育成条例でこのように青少年にはこうしてはいけないという定めがある。だけれども、今回の刑法改正では、性交同意年齢を十三歳から十六歳に引き上げるとなると、そことの整合性、差異というものを、我々法務委員も、それから、これが法律が成立して施行された後、全国民が、そして関係機関においてはここをちゃんと整理して捉えておかないといけない話でありますのでお聞きしたんです。そこの、反対はしないんですよ、でも、やはりクエスチョンマークが、疑問が、なかなか整理し尽くされない疑問は残るんですよ。ですので、そこはあえて指摘をさせていただきました。ここは指摘にとどめたいと思います。

 じゃ、なぜ十六歳まで上がったんでしょう。十六歳というのは、高校の一年生ですと、十五歳の者と、人間と、十六歳の者が高校一年生に混在するんですね。十六歳という線引きになったのはそもそも何でなんでしょうかね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行の刑法では、いわゆる性交同意年齢は十三歳未満とされているところでございますけれども、これは先ほどもちょっと御答弁申し上げた、ほかの先生に御答弁申し上げましたけれども、現行の強制わいせつ罪等が性的な自由、性的自己決定権を保護法益としておりまして、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力がない場合には、暴行等の意思決定に影響を及ぼす状況がなかったとしても保護法益が侵害されると考えられ、その前提となる能力については、行為の性的意味を認識する能力というふうに捉えて、それが一律にないのが十三歳未満だと今は考えていた、今までは、現在はでございます。

 もっとも、性的行為に関して有効に自由な意思決定をするための能力の中身といたしましては、今申し上げた行為の性的意味を認識する能力だけではなく、行為の相手方との関係において、行為が自己に及ぼす影響について自律的に考えて理解したり、その結果に基づいて相手方に対処する能力が必要であると考えられます。

 そして、十三歳以上十六歳未満という年代の者をどうするかというのが問題になったわけですが、おおむね中学生ぐらいの年齢層の者につきましては、行為の性的な意味を理解する能力、認識する能力はあるでしょう、一律にないわけではないでしょうと。しかしながら、後者の能力が十分ではなくて、相手方との関係が対等でなければ有効に自由な意思決定ができる前提となる能力に欠けるというふうに考えられたところから、性交同意年齢を十六歳未満に引き上げた上で、十三歳以上十六歳未満の者に対する性的行為については、相手方との間に対等な関係があり得ない、有効に自由な意思決定をすることができる能力に欠けるという場合に限って処罰するという観点から、相手方が五歳以上年長の場合を処罰対象とするということでございまして、これは性的な行為をしただけでそのほかに何もしていなくても、当事者同士が自由な意思で行為を行ったとしても処罰できる範囲というのを画するという意味では、五歳差ということが適当であるというふうに判断したことによるものでございます。

鎌田委員 今、刑事局長の御答弁を、今日は文科省の方も政府参考人で来ていただいていますので、お聞きをいただいたと思いますので、後で参りますから、少々お待ちくださいね。全然問取りにいらっしゃらなかったので大丈夫かなと思いながら、後、文科省に聞きますので。

 なんですけれども、私はこの件についても絶対反対というわけではございません。ただ、やはり自分の頭の中で、この法律に、修正になるのか附帯になるのか附則になるのか、若しくは原文のまま、原案のまま賛成になるか、分かりません、これから先ですから、分からないけれども、でも、きちんと頭の中で整理をしておきたいので、あえて伺ったんです。

 今、私は、これに絶対反対、積極的反対ではないんだけれども、ちょっと心にひっかかるものは、これは国民社会、国民世論の中で、ふっとまた疑問が更に浮かぶものがありますから、確認ということで伺っていきたいんですけれども。

 例えばなんですけれども、十五歳で高校に入学しました、それで、シングルの成人の教員と相思相愛、愛し合うんですね、気持ちで愛し合いました、そして、結果、性行為を交わしたとします。それで、高校卒業と同時に婚姻関係となるケースも考えられます。私が高校時代なんかは、同級生が高校卒業したら結婚しちゃったというのは割とあったんですね。

 このケースなんですけれども、円満に、穏やかに結婚生活、夫婦生活を行っていたとしても、今現在行っている、営んでいるそういう御家庭があったとしても、当時、お連れ合いのどちらかが、男女限りません、どちらかが十五歳当時でした、そのとき性行為を交わしていましたということが判明すると、その片方のパートナーは、六月以上十年以下の、有罪、拘禁刑の罰則対象となりますね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 先生が二十三歳以上ぐらいの感じの設定でよろしいですか。(鎌田委員「はい」と呼ぶ)

 十五歳の高校生と二十三歳以上の大卒の先生という前提で申しますと、その年齢差は五年以上年長という要件に該当いたしますので、結婚したとしても、それからその結婚生活が円満だったとしても、その行った当時の年齢差ということで判断すべきことでございますので、改正後の刑法第百七十六条第三項又は百七十七条第三項の罪が成立し得るということになります。

鎌田委員 成立し得るんですよね。

 私が心配なのは、訴追材料にならないかなと。もちろん、またきっと御答弁は個別案件に応じてというふうになると思うんですけれども、例えばですよ、第三者が、あそこの御家庭は今回の法改正であの要件に該当するから罰則対象になりますよということになると、平穏な家庭生活を行っていたんだけれども、パートナーのどちらかが、済みません、ちょっと事情を聞かせてくださいといって連れていかれて、当時、性交渉されていましたねという、そして、もしかしたらもしかして、この有罪、拘禁刑の対象になっちゃうかもしれないんですよね。ですので、そこは私、ちょっとひっかかるんですよ。

 だから、訴追材料になるかならないかは、私は検察官じゃないから分かりませんけれども、そこのところ、答弁で何か担保を、私は本音を言えば取りたいんですね。円満な結婚生活を送っている御家庭で、どちらかの情報でこれの対象になる、それで突然引っ張られていきましたということがあっても、そこで急に犯罪容疑者ですというふうになっちゃうことはちょっと怖いんですけれども、それに対してどう御答弁いただけますかね。

松下政府参考人 大変難しい御質問をいただきましたけれども、要件としては当たるというところは変わらないのでございますが、性犯罪については、やはり被害者の意思というのが、処罰感情といいますか、そこが非常に重要なところでございまして、形式的には当たるわけですけれども、実際に被害者が何も言っていなくて、もう大分たっていてというようなことを想定されておられるので、卒業してから結婚ということですから、もう十九以上、八以上になっていた段階で、被害者が全く処罰感情もなく、警察に訴える意思もないのにいきなり引っ張られるというのは多分事実としてはないのではないかと思いますけれども、あくまでもそれぞれの事案ごとなので。

鎌田委員 事実としてはないんじゃないかという、私のすごく心配し過ぎというところかなというふうな答弁で返してもらったんだとは思いますけれども。

 じゃ、大臣に伺います。

 今回の法改正は非常に大きな改正で、法務省だけでは、世の中に、社会に、こう改正しますからねの周知では、これは絶対伝え切れないと思うんですね。性交同意年齢が十三歳のときも、多くの若者たちは知らなかった。昨日のSHELLY参考人のお話で、「十三歳の君たちへ」の動画で非常に反響があって、そして今度は十三歳から十六歳に、そして五歳差要件もある。やはりこれは、法務省だけでは周知はなかなか厳しいのではないかと思うんです。本当に、法務省がイニシアチブを取って、あらゆるところを巻き込んで、世の中に、社会に、十三歳から十六歳未満に引き上げて、加えて五歳差要件があるということを、特に文科省なんですけれども、これをちゃんと周知をしていかないといけないと思います。改めて決意を伺います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘はごもっともだと思います。法務省だけではなくて、どういう周知、広報が本当に適切かということについては、関係省庁あるいは関係機関、団体などとも考えながら、しっかり実行していきたいと思います。

鎌田委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 では、文科省に参ります。資料一を御覧ください。

 性暴力現場が学校が最多という、これは昨年の六月の毎日新聞の記事なんですけれども、特に一番下の段にあります、教職員や先輩、同級生などの学校関係者からの性暴力、それから最も深刻な被害に遭った場所というのが学校が最多になっています。ところが、一方で、被害を誰にも相談できなかった人、これは約半数。その理由は、恥ずかしい、恥ずかしくて言えなかった、相談しても無駄だと思ったと。これが全国の若者調査、行ったのは内閣府のオンラインによる調査なんですけれども、これを見ても、学校が性暴力現場になっているというのが非常に多いというのが分かります。

 それで、文科省に伺いますけれども、先ほどの委員の質問に対して、性教育という言葉は使っていなくて、生命の安全教育という言葉になっているということを改めてお示しをいただきました。

 昨日の参考人でSHELLYさんというタレントさんが来ておっしゃっていたんですけれども、私たちの小中学校義務教育、当時、振り返ると、私もそうですけれども、性教育、果たして有効な実効性のある合理的なものは行われてきたかとなると、非常に疑問を抱きます。

 私は、二〇〇三年の七生養護学校事件、このときを契機に、学校現場での性教育に対する、特に教職員に対する萎縮というものが起きているんじゃないかなと。ただ、十年たって、最高裁での判定が、確定が出て、七生養護学校事件の際に、教職員が性教育を行っていたことに対して、当時の自民党さんとそれから当時の民主党の議員が、これは不当な教育現場への介入だったということは認められています。

 でも、これは反省は反省として、生命の安全教育で、デート被害のチラシも配布をされて、皆さん、子供たちに教えられているようなんですけれども、そこに性という言葉は入っていないんですよ。性教育というものをきちんと正しく教えていかないと、子供たち、今、情報過多です、できれば見てほしくないなというようなものを見ながら、そっちが教材になっちゃったりしているんですよ。だから性暴力も生まれたりするという説もありますので、文部科学省さん、きっちり性教育という言葉を使って、命は性とイコールだという観点で性教育をちゃんとやっていただきたいんですが、いかがでしょうか。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 学校におけます性に関する指導につきまして、学習指導要領に基づきまして、児童生徒の発達段階に応じまして、体育科、保健体育科を始めとした学校教育活動全体を通じて指導をしているところでございます。

 また、こうした発達段階を踏まえまして、保護者の理解を得ること、また、集団で一律に指導する内容と個々の児童生徒の課題等に応じて個別に指導する内容とを区別すること、こういったことに留意すべきとされております。

 このため、学校におきましては、外部講師などを活用するなど、様々に創意工夫を重ねて、家庭や地域社会等の協力も得ながら性に関する指導に取り組んできた例もあるところでございます。

 また、先ほどの、個々の生徒の状況に応じまして個別指導も行うことは可能でありまして、例えば、性交や避妊についても児童生徒からの相談に基づき指導したり、また、生徒指導上の問題を抱えている児童生徒に対して指導したりということのほか、また、生徒の状況を踏まえまして、宿泊学習の事前指導など、希望しない生徒を除いて、男子、女子を分けて集めて性交と妊娠について指導する、こういったことも行われてきているところでございます。

 文科省としても、こうした各学校の学習指導要領に基づく着実な指導が図れるよう、努めてまいりたいと考えております。

鎌田委員 文科省さん、もう一問いきます。

 性暴力の例のデートDVのチラシも文科省に関するサイトで見つけることはできます。そこで気になる文言があるんですけれども、歯止め規定というものが存在していますよね。その歯止め規定というのをちょっと御説明いただけますか。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 学校における性に関する指導に当たりましては、個々の生徒間の発達の段階の差異が大きいということで、児童生徒や保護者、教職員が、まず、性に対する考え方は多様であるということから、集団で一律に指導する内容として妊娠の経過は取り扱わないということで、これは全ての生徒に共通して指導する内容としては扱わないということとしております。これは一般的に歯止め規定というふうに言われているところでございます。

鎌田委員 今、妊娠の過程は取り扱わないという言葉はあったんですけれども、性行為も取り扱わないことになっているんじゃないですか。

安彦政府参考人 性行為も含めて、妊娠の経過については取り扱わないということで、これは一斉の相手ということでございます。

鎌田委員 文科省さん、ここは法務委員会なので、私、これで最後にしますけれども、今回、刑法という大きな法律を改正して、性行為年齢は十三歳から十六歳未満まで引き上げて、そこに五歳差要件をつけて、更に八項目の構成要件も規定して、そして、これから先、性暴力の被害に遭う人、それから性暴力の加害者になる人、これも少なくしていこうという大改正を今ここで審議しているんですよ。

 だけれども、このことについては、我々、ここにいる大人たちで、東京で、国会で法律を作って、はい、あとは現場でという話じゃいかないんですよ。まさに、これは十三歳から十六歳未満の児童生徒、子供たちに関係する話なんです。

 ですから、ここは法務委員会なので意見にとどめますけれども、私は、その歯止め規定なるものを外していただいて、七生養護学校事件を教訓にして、きちんと、腕一本教育とかやらないで、障害のある子供に対しては腕一本以上近づいちゃいけないという教育がありますでしょう、特別支援学校で。これ以上近づいたら何が起きるか分からないからという腕一本教育ってありますでしょう、御存じのとおり。そういうことをやらないで、きちんと正しい性教育を行っていただきたい。

 御責任ある御回答はいただけないと思いますので、歯止め規定を外して、今後はこの法務委員会で審議されている刑法改正に基づいて、是非、性教育というものをもっと充実したものにしていただきたいと思います。

 性教育を行ったからといって、伝統ある日本の文化ですとか、家族のきずなですとか、そういったものは一切壊れません。逆に、家族の、身内の者を守る、若者たちを性被害から守るという観点が非常に大事ですので、これは意見として呈させていただきます。

 次に、公訴時効について伺いたいと思います。

 大臣、この公訴時効のことにつきましては、法制審の部会でも、被害実態に見合っていない、そのような意見が出されています。

 私としては、結論から申し上げれば、公訴時効は撤廃すべきじゃないかと考えている一人なんですが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 性犯罪についての公訴時効を撤廃すべきであるとの御意見があることは承知しておりますし、鎌田委員がそうだということを、今日承知をいたしました。

 もっとも、現行法上、公訴時効の対象となっていない罪、これは、侵害されると回復の余地のない、人の生命という究極の法益が侵害され、かつ、罪の重さを示す法定刑として最も重い死刑が定められている罪に限られているというところと、それから、性犯罪は、被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質な罪であるものの、侵害されると回復の余地がない生命を侵害する罪とは異なり、罪の重さを示す法定刑に照らしても、死刑が定められている罪と同等とまでは言い難い、そういった課題があると思っております。

 したがって、本法律案においては、性犯罪について、公訴時効の対象としつつも、公訴時効期間を延長するという対応をしたものであります。

鎌田委員 今、死刑の話が出ました。そこは承知をしているつもりであります。ただ、性暴力被害、この性被害というのは、大臣も御存じだと思いますが、魂の殺人と言われてもいます。

 例えば、私を例に挙げてもいいです、私を例えの存在に使ってもいいんですけれども、私が、例えば幼少期に性暴力被害を受けたとします。死ぬまでそれは、私の魂は被害を受けたままです。それでも生きていかざるを得ない。どこにも訴えられない、相談できない。小学生時代に、死にたいと思ったことも何度もありましたけれども。

 でも、今、例えて申し上げましたが、これを事実として捉えるかどうかは委員の皆様の御判断に任せますけれども、私はそういう時期を今生きる子供たちに送ってほしくないし、毎日、学校に行きたくない、死にたい、消えたい、そんなことばかりを思っていた小学生時代を、例えばの私ですが、思い出します。

 ですので、公訴時効の撤廃が無理なのであれば、私は、公訴時効の進行開始は三十歳までは停止する、ここまでは、今回妥協ができなくても、今後見直していく検討材料として私は必要ではないかと考えますが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 少し、大事なところなので、お話ししたいんですけれども、性犯罪の公訴時効に関し、若年者について大人とは異なる特別の取扱いをしている趣旨は、心身共に未成熟である若年者は、性犯罪の被害を受けたとしても、知識経験が不十分であるため、それが性犯罪の被害であることを認識したり、適切に事後に対応することが困難である、それから、社会生活上の自律的な判断能力、対処能力が十分でないため、親権者等の保護者の指導監督によってこれが補完される立場にあるけれども、性犯罪の被害に遭った場合には自責感等により被害について保護者に相談しにくい、そういった若年者特有の事情があり、大人の場合と比較して類型的に被害申告がより困難であるというふうに考えられる点にあります。そして、十八歳未満の者は、その社会的な実態や法律上の取扱いなどに照らし、一般的、類型的にこのような趣旨が妥当すると考えられることから、被害者が十八歳未満の場合には公訴時効期間を更に延長する、この法律案ではそうしているわけです。

 本法律案におきましては、性犯罪について、公訴時効期間を五年延長することとしたところであります。これに加えて、被害者が十八歳未満の場合には、犯罪が終わったときから被害者が十八歳に達する日までの期間に相当する期間を、更に公訴時効期間を延長することとしている結果、例えば八歳のときに不同意性交等の被害に遭った場合、結果として公訴時効は三十三歳のときに完成する、そういう計算になります。

 性犯罪の公訴時効については、更に御指摘のような制度とすることにつきましては、三十歳ですね、そうした特別な扱いをする根拠についてどのように考えるか、そのような趣旨が妥当するものの範囲についてどのように考えるかなどの点について、性犯罪の被害の実態を踏まえまして、更に検討を要する問題だなというふうに考えています。

鎌田委員 被害をどう捉える、実態をどう捉えるか、それから、更に検討だということが今の御答弁の要約だったと思うんですね。

 実態をどう捉えるかは、様々なケースがあります。例えばなんですけれども、二〇二二年、昨年ですね、十月二十六日、広島地裁の判決で、保育園の頃から実父による性的虐待、小四で姦淫されて中二まで続いている、PTSDが発症している、最後の性的行為から二十年以上の後、四十代で提訴。しかし、裁判所も加害者も性虐待を認めるものの、公訴時効を過ぎておりましたので、損害賠償請求権も消滅という結果は、これは余りにも理不尽だと私は思います。こういったケースを更に調査をして調べていただいて、この公訴時効については更なる検討が私は必要だというふうに考えておりますので、大臣の今の最後の御答弁のところに基づいて検討していただきたいと思います。

 最後の時間を使いまして、いわゆる司法面接について伺います。

 カラーのパネルを用意をいたしました。お手元の皆様の資料にはモノクロで配付をさせていただいております。このカラーの方が見やすいので。

 多くの方が御存じの写真、風景だと思うんですけれども、これは、社会福祉法人のカリヨン子どもセンターさんの中で司法面接が行われている室内の写真なんですね。

 司法面接というと、いわゆる検事さん、それから警察官、児相の方、この方々の代表者聴取で行われていて、子供たちにとっては、やはり冷たい無機質なところで、捜査のためにいろいろなことを追い詰められて聞かれていってしまうと、どうしても記憶が、汚染されるという言葉を使っていいか分かりませんけれども、記憶が曖昧になったり、さらには、思い出したくないことまで更に突っ込んで聞かれたりとか、そういうことがありますので、私は、今、このように弁護士さんの方々が、司法面接として行っている、こういったところとの、せめて法曹三者でもって連携を組んで、この司法面接の在り方というものを考えていくべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、改正法の刑事訴訟法第三百二十一条の三におきましては、司法面接的手法による聴取の結果を記録した録音、録画記録媒体の証拠能力の要件といたしまして、聴取主体が誰であれ、司法面接的手法において求められている措置が取られたことが重要であり、それで足りるということから、法律上の要件としては聴取主体の限定はしていないところでございます。

 他方で、現在の運用におきまして、検察、警察、児童相談所が連携をし、被害児童の事情聴取に先立って協議をまず行い、その上で、代表者が聴取を行うなどの、いわゆる代表者聴取という取組を実施しているものと承知しておりますけれども、これらとは別の者が聴取主体となるということについては、司法面接的手法による聴取を効果的に行うためには福祉と捜査の双方に習熟している立場の者が聴取することが適切であるという御指摘もある中で、これにふさわしい者が具体的に想定できるのかといった点などが課題になると考えられます。そのため、御指摘の点につきましては、今後の運用状況も踏まえつつ、慎重に検討すべきものではないかなと考えております。

鎌田委員 間もなく時間が来るので、局長、これで最後にします。

 今の私への答弁と、先ほど自民党さんの議員さんへの答弁で、違い、大きく違うワードが一つあったんですよ。先ほどの自民党の委員の方への答弁には、まさに福祉と捜査に両方に精通する、知見を有する人材の養成が必要と考えていると御答弁があったの。だから、私、人材を養成する考えがあるんだと思って、さっき喜んで聞いたんだけれども、今の答弁には人材が入っていないんですよ。

 そこで、司法面接官という新しい制度を創設して新たな人材を養成することを私は要望したいと思いますが、局長、一言でいいです、もう時間が終わったので。考える、全く考えない、どっちでしょう。

松下政府参考人 お答えいたします。

 今お尋ねのありました、ふさわしい人材が具体的に想定できるかといった点が課題になると申し上げたことにつきまして、いずれにしても、そういう司法面接的手法による聴取を適切に行うためのスキルを身につけ、その人材を確保するということは重要だと考えているというところでございます。

鎌田委員 終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田はるみ君。

吉田(は)委員 本日もどうぞよろしくお願いします。立憲民主党の吉田はるみです。

 早速ですが、昨日、性被害、児童虐待の国対ヒアリングで、ジャニーズ事務所の創業者であるジャニー喜多川氏による性被害を訴えているカウアン・オカモトさんと橋田康さんにお話を伺いました。

 こんなふうにおっしゃっていました。被害に遭わないようにするための法律を作ってほしい、自分事として動いてほしい、国会で対応してほしい、こういうカウアンさん、そして橋田さんの思いを伺いました。私は、その中でも、これからの未来のために愛を持ってという言葉がとても印象に残りました。

 本件に関しては、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー社長が、五月十四日の夜、被害について謝罪する動画を公式サイトにアップされまして、その動画の中で、被害を訴えられている方々に対して深く深くおわび申し上げますと謝罪をされています。

 今件、この一連の報道、そしてこれまでの動きを見られて、法務大臣としてどのように受け止めていらっしゃるでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、お尋ねの報道、様々なされていますけれども、法務大臣としてここで所見を述べるということは差し控えたいと思っていますが、その上で、あくまで一般論として申し上げれば、性犯罪は、被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪でありまして、厳正に対処すべきものであると考えています。

吉田(は)委員 齋藤大臣、ありがとうございました。悪質で重大な犯罪だということを明言していただきました。私もそう思います。

 ここから、やはり国会は、社会が動いたとき、その社会の要請に対して動いていくのが、これも国会の私は役割なんだろうというふうに思っています。

 そこでなんですけれども、ジャニー喜多川氏の性加害疑惑、これをめぐっては、一九九九年の週刊文春が報道しまして、この報道内容が名誉毀損に当たるということでジャニーさんは裁判を起こしたわけです。ただ、これは、二〇〇四年、最高裁で、セクハラに関する重要部分は真実ということで確定したわけです。

 あれから、大臣、二十年たつんですね。この二十年の間に更なる性被害が起きてしまった、その可能性が私はあると思っているんですけれども、この四月にはカウアンさんが日本外国特派員協会で記者会見をされた。これをきっかけにファンの方々がつくられました任意団体「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」の方々が、ジャニーズ事務所に対して事実解明を求めまして、署名一万六千百二十五筆を集めて提出されました。

 私は、もうこれは、国会もマスメディアも、この問題に対してしっかり向き合うときに来ているのではないかというふうに感じました。

 そこで、松野官房長官もこのように述べていらっしゃいます。五月十五日の記者会見です。

 今回のジャニーズ事務所における性被害の報道に関してですが、これに、個別案件だということでそこは答えられなかったんですが、一般論として、性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為で、決して許されない、同意のない性的行為は性暴力だというふうにおっしゃっています。性暴力根絶の取組や被害者支援を強化していく必要がある、誰もが安心できる社会を実現したいというふうに官房長官もおっしゃっています。

 性暴力根絶、これはまさにカウアンさんが昨日のヒアリングでもおっしゃっていたんですけれども、再発防止、これは本当に大事ですよねというところだと思うんです。

 法務省、またこども家庭庁、子供の性被害に関することですので、法務大臣、そしてこども家庭庁にお伺いしたいのですが、この松野官房長官の会見の後、具体的に、こういうことをしよう、あるいはこれを調べてみよう、この根絶のためにどういうアクションを政府としてやっていくのか、何か指示はございましたでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、政府全体として、本年三月に開催された性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議において、性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針、これを取りまとめたところで、この方針においては、法務省に関する施策として、まさに、刑事法の改正に係る対応や、それから、性犯罪者に対する再犯防止施策の更なる充実などの施策が盛り込まれているところであります。

 私どもとしては、長官から指示があろうがなかろうが、これに沿って、関係府省とも連携しながら、引き続きしっかりと性犯罪、性暴力対策を進めてまいりたい、これに尽きるところであります。

黒瀬政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、御指摘の会見において官房長官が言及をされました性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針に基づきまして、関係省庁が連携して、性犯罪、性暴力の根絶のための取組や被害者支援を進めているところでございます。

 こども家庭庁におきましても、同方針に基づきまして、性犯罪、性暴力の根絶のための社会全体への啓発等々の取組を進めているところでございます。

 また、性犯罪、性暴力対策は幅広い分野にわたっておりますことから、同方針による取組については、各分野において策定されている計画等の施策と相互に連携を図りながら実行していくこととされておりまして、こども家庭庁としては、当庁に引き継がれた子供の性被害防止プラン二〇二二の施策が着実に推進されるよう努めているところでございます。

吉田(は)委員 ごめんなさい、ちょっと一言苦言です。

 大臣、三月なので、今回のこの記者会見は四月に行われて、今五月なので、更なるというふうに官房長官おっしゃっていただいたので、私の期待としては、政府が、ちょっと今回の件もあるし、今社会がこういうニーズが高まっているんだ、政府としてこういうことをやろうと何かぼんと出てきたらうれしいなというところだったので、それを伺いたかったです。

 こども家庭庁の方も、いろいろ聞いていたんですけれども、更なる、更なると言うんですけれども、えっ、何やるのという。済みません、ちょっと分かりにくくて。

 これが、ごめんなさい、私は当選まだ一期目で永田町の文化に慣れていないのかもしれないんですけれども、やはり、民間企業でも、いろいろな会議の場では分かりやすく、伝わりやすくというコミュニケーション能力が問われる時代でございますので、是非、国民の皆さんに、ばしっと、ああ、そうかという分かりやすい御答弁をいただけると私も大変うれしいところでございます。ありがとうございます。

 それでは、カウアンさんが、昨日の国対ヒアリングを終えまして、次のようにツイートしていらっしゃいます。ちょっと、委員の皆様にも是非聞いていただきたいので読み上げさせていただきます。

 今日、国会でのヒアリングに出席し、僕が未成年のときに受けた性被害と、今後子供たちの被害を防ぐことができる仕組みをつくってほしいとお伝えしました。僕は、立憲民主党を支持しているわけではありません。でも、今後子供たちが僕のような性被害に遭わないようにするための法律を是非国会で作っていただきたいと思います。そのために僕が役立つのであれば、国会でも、自民党でも、どこにでも伺ってお話しさせていただく覚悟でいますというふうにおっしゃっています。

 齋藤大臣、私は、この問題は、与党、野党なく、党を超えて、子供たちの性被害の問題であり、本当に心を深く傷つけてしまう、とても重要な問題であると思うのですが、みんなで協力してやっていけないものでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 最初にちょっと御答弁させていただいたように、個々のこの話について、今、私が所見を述べることは差し控えたいと思っていますが、私にも男の子も女の子もいましたので、性犯罪というものが被害者の尊厳を、繰り返しになりますけれども、著しく侵害し、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪であって、本当に厳正に対処すべきものであるということは身にしみて感じています。

吉田(は)委員 実際、カウアンさんの方でも、法律を是非国会の方でも作ってほしいということをおっしゃったわけなんですけれども、改めて私も法律を整理をしてみまして、まあ、何と分かりにくいことでしょう。ちょっと一つずつ確認をさせていただきたいと思います。

 まず、今回のような性被害に関して、未成年の子供が性被害に遭うときに適用になる、対象になる法律は何かというところなんですけれども、今回の刑法改正、これももちろん入ります。そして、児童虐待防止法、それに児童福祉法という法律。プラスして、先ほど鎌田委員の方からは条例の話がありました。今度、条例も入ってくる。あれっ、この法律ではああで、こっちの条例ではこうでということで、大変分かりにくいなというのが、私は、改めてこの法律に向き合って感じたところでございます。

 この辺りはやはり整理をして、子供たちにも、カウアンさんはおっしゃっていました、法律に守られていると思いたいんだと。私もそう思います。きちんと法律で子供たちは守られている、その安心感をつくるのは、やはり立法府である国会、そして私たち国会議員の責務ではないかと思います。

 一つハイライトさせていただきたいんですが、カウアンさんが訴えられている性被害の、当時はまだ、女性には強姦罪、これがあったんですけれども、男性に対してのものはなかった。それが二〇一七年には男女関係なく対象になったわけなんですが、意外とここは知られていないので、委員の先生方を含めてちょっと確認させていただきたいんですが。

 今回の不同意性交等罪、性交等という、等が入っているわけなんですが、私も、ああ、なるほどとちょっと思ったんですけれども、この性交等の中には、膣内性交のほか、肛門性交、口腔性交に加えて、膣、肛門に体の一部、これは陰茎を除く、又は物を挿入する行為も入るということで、いわゆる膣内性交だけではない、幅広いというか、対象が広がる形でこの性交等を定義しています。

 ということは、今回の法改正でいくと、ここからがちょっと質問になるんですけれども、今回のような、元ジャニーズジュニアのカウアンさんは十五歳のときに、また、昨日お話を伺いました橋田康さんは十三歳のときに、ジャニー喜多川前社長に口腔性交を伴う性被害を受けたと訴えていらっしゃいます。このようなケースの場合、加害者は、被害者がもちろん十六歳未満だという認識があります。口腔性交を伴う性加害をした場合、今回の法改正では不同意性交等罪に該当し、加害者は執行猶予なしの五年の拘禁刑に問えるという理解でよろしいでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、ちょっと前提として、現在の、現行法では……(吉田(は)委員「改正法の方です」と呼ぶ)改正法でいいんですね。はい、分かりました。

 改正後の刑法の下でというお尋ねでございますが、まず、大前提といたしまして、個別の事案につきましてどうであるかということについては、あくまでもそれぞれの事案ごとの問題でございますので、ここでお答えすることは困難でございます。

 ですので、一般論としてということで、改正後の刑法第百七十七条三項の下で、十三歳以上十六歳未満の者に対して、その者が十六歳未満であると認識した上でその者より五歳以上年長の者が口腔性交した場合には、同項の不同意性交等罪が成立し得ることになります。

 その上で、具体的に科される刑がどうなるかにつきましては、法定刑が五年以上の有期拘禁刑という法定刑でございますが、実際に科される刑は個別の事案ごとに様々な事実関係を踏まえて判断されることになるため、一概にお答えすることは困難でございます。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 私がこの質問をして何を言いたかったかというと、これは不同意わいせつ罪ではなくて、性交等罪になるという、より重い刑罰に処せられるということなんです。今回の刑法改正、こういう形で本当に一歩踏み込んでいただいた内容として、私は、その点は非常に高く評価させていただきます。

 ただ、今回、先ほど申し上げました刑法、それから児童虐待法、また児童福祉法と、条例はちょっとおいておきますけれども、こういういろいろな法律が対象になる中、複雑なんですけれども、社会的、経済的地位の利用に関して少し考えてみたいと思います。

 昨日の参考人質疑でSHELLY参考人が指摘されていましたけれども、中学生にとって一歳の年齢差は非常に大きい。私も、思ってみると、先輩って、目を合わすなとか挨拶がないとか言われて、大臣も笑っていらっしゃいますが、そういう文化があったと思うんですね。ちょっと無視したとか言われて、本当にびくびくしている状況だったと思うんですけれども。また、鈴木委員は、一年先輩はエベレストのごとく高く、一年後輩はマリアナ海溝ぐらい深いというふうにおっしゃいまして、本当にそのぐらい、一年の年齢差って大きいよねということが、本当に委員の先生方もそうだなと思ったと思うんです。

 じゃ、今回のようなジャニーズジュニアのように、十六歳以下で、かつ、その夢の鍵を握っている事務所の社長からもし仮に性被害を受けたということがあったら、その中学生は声を上げられますか。なかなか上げられないですよ。一個上の先輩ですら声を上げられないわけですから、私は相当なハードルであると感じます。

 カウアンさんはこのようにおっしゃっていました。芸能界に限らず、立場の上の人から要求されたとき、拒むのは難しいです。僕以外の被害を受けた方も声を上げてください。また、橋田さんは、子供を守れるのは大人の行動ですというふうにおっしゃっています。

 この刑法で、かなり踏み込んだ内容、すごく私はそこは評価しているんですけれども、ただ、やはり、声を上げてお知らせする、通報ですね、これがすごくハードルが高いんですよ。これは警察にしなければなりません。十三歳のお子さんはできるでしょうか。できないと思うなというのが皆さんの感想ではないかと思うんですが。

 ここで、改めて確認します。

 児童虐待防止法では、今回のような、カウアンさん、橋田さんが訴えているような芸能事務所の社長、あるいはスポーツクラブ、部活動の指導者、こういった方々も対象になりますか。それを教えてください。

野村政府参考人 お答え申し上げます。

 児童虐待の防止等に関する法律でございますけれども、児童の人権を侵害し、その心身の成長や人格形成に影響を与える児童虐待を防止するという観点から、以下のような措置を定めております。児童虐待を行った保護者に対する指導でございますとか、児童虐待を行った、児童が児童養護施設等の施設入所の措置を解除される際に行われる支援でありますとか、児童虐待を発見した者による通告義務などについて規定をしているところでございます。

 こうした規定の対象となる児童虐待の定義でございますけれども、この児童虐待防止法の第二条において、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものといった保護者が行う行為をいうものと定められているところでございます。

 ですので、委員御指摘ございました芸能事務所の社長、あるいはスポーツクラブ、部活動の指導者などといった者について、これは一般論にはなりますけれども、この法二条に規定する保護者には基本的には該当しないというふうに思われますので、そういう意味では、保護者が行う行為であるこの児童虐待には該当しないという整理になるのかなと考えております。

吉田(は)委員 ありがとうございます。

 改めて明らかになりましたけれども、こうして、児童虐待防止法では保護者の方が対象であり、その児童虐待を止めるための通報義務があるというわけなんですけれども、今回のような第三者、保護者ではない方は対象にならないということで、やはりここはちょっと補強する必要があるのかなというような思いもいたします。

 これは、通報先は自治体ですよね。そして、やはり、今回のような刑法がしっかりあっても、それに声を上げられなければ、実際、運用の面で変化があったんだろうかということにもなりかねないと思うので、通報先が自治体である、この刑法は警察ですけれども、大臣、これはちょっと通告していないので感想だけで結構なんですけれども、一般的に考えて、お子さんが通報するとき、警察よりも私は自治体などに声を上げるというか、児童相談所とかも入るんですかね、ちょっとごめんなさい、自治体のところを全部調べ切っていないんですけれども、警察よりは何かほかの方が声を上げられやすいような気がするんですけれども、通告がないので、済みません、大臣の所感で構いません。

齋藤(健)国務大臣 確かに、小さい子が警察というのはなかなかハードルが高いような気もいたしますが、まずは身の回りにいる人に訴えるということも多いのではないかなと小さい子の場合は思いますけれども、ちょっと、突然の御質問なので、十分なお答えができなくて申し訳なく思います。

吉田(は)委員 まさに、身の回りの方というのが本当はそういう声を受け止めてくれたらいいんですけれども。

 この性被害というのは、私は、大臣、ちょっといじめとも似ていると思うんですよ。お子さんは、そのいじめられていることということを自分の中で、誰にも言えなくなっちゃう。性被害も同じなんじゃないかなというような気がいたしまして、こういう苦しい思いをするお子様方を救うためには、もう絶対こういう未成年に対する性加害は許さない社会だということと、きちんと法律で子供たちは守られているよ、この二つをしっかり社会に伝えていくことが私はやはり重要なのかなというふうに感じています。

 それで、こども家庭庁の方に、私もちょっと不勉強だったんですけれども、こんな動きがあるのかというのが、児童福祉法。これは何か、五月十二日の時事通信のニュースでは、不適切保育という事案があって、これを契機に保育士さんまで適用を広げる方針だというふうに報じられているんですが、これも、申し訳ございません、突然の話なので、このニュースを御覧になっていらっしゃいますか。この件で何かもし分かることがあれば、ちょっと教えていただきたいんですが。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 今の報道の関係について、私の認識でございますけれども、不適切な保育等について、今後、法律上見直していくべきことがあれば見直していく必要があるということを申し上げたものだと思いますが、今回の事案と直接関係するものではないというふうに理解をしております。

吉田(は)委員 今、保育士さんの方はこれは福祉法の方で見直しが検討されるかもしれないということで、先ほど鎌田委員もおっしゃったと思うんですけれども、何人も次に掲げる行為をしてはならないと児童福祉法三十四条一項にありまして、児童に淫行をさせる行為、これを規定されているのが児童福祉法というふうに私は理解しています。

 やはり、国民の皆様に分かりやすく伝えるためには、こういういろいろな法律がある中、一度きちんと整理をして、繰り返しになりますけれども、子供たちには法律で守られているという安心を本当にシンプルに届けていくということと、社会に対して、本当に、子供に対する性被害というのは、絶対未成年に対する性被害は許さない社会だぞというメッセージを発していくということが私は何よりも大事なのかなというふうに思いますので、是非これは、党を超えて、そしてこの法務委員の皆様始め、国会として本当に真摯に取り組んでいくべきところだと思いますので、どうかお願いを申し上げます。

 では、次の質問に移ります。

 性交同意年齢の例外規定についてです。

 ちょっと時間が限られているので、委員の先生方の手元に紙をお出ししたんですけれども、大体こういう図を見ると思わず頭が痛くなって、ああ、見たくないわという感じの表かと思うんですね。それぐらいこの五歳差要件というのが複雑だよということをちょっと申し上げたいんですけれども。

 まず、ケース一のケースです、一を見てください。先生方、表を見ないで言葉だけで聞いてください。四月五日生まれの十三歳と五月五日生まれの十八歳が同意の上性交した場合、十八歳は罪になるか。ぱっと、なる、ならないとすぐ言えた先生がいたらびっくりという感じなんですけれども。

 まず、年齢ですね。四月五日生まれの十三歳と五月五日だから、私なんかは、一番最初やっていたんですけれども、乗せちゃうんですよ、プラス五。だから、ぱっと考えて、五年以上になっているからこれは罪になるんでしょうと思うじゃないですか。これは違うんですね。

 そこで、この図の方を見ていただきたいんですけれども、矢印が時系列です、今日から遡って、十三歳で、生まれた子、今回の場合は、十八歳、五月五日なので五年未満ということになり、これは罪に問われないケースです。当たっていましたか、先生。私は、すぐこれを聞いてぱっと出てこないんです。

 では、次に行きます。四月五日生まれの十三歳と三月三日生まれの十八歳が同意の上性交した場合、十八歳は罪になるかという、これが第二のケースです。

 これは、プラス五歳で乗せちゃう計算でいくと、また、これは一か月前だから罪にならないんじゃないかと思うんですけれども、二番目の時系列で見ていただくとお分かりのように、ここには五年一か月の差があるということで、これは罪に問われるケースということになります。

 最後、誕生日が仮に同じというケースを作りましたけれども、これはちょっと法務省の方にお答えいただきたいと思います。

 四月五日生まれの十三歳と四月五日生まれの十八歳、誕生日が同じ場合、この十八歳は罪になりますか。誕生日の日にちをカウントするのか、その説明をお願いします。

松下政府参考人 お答えします。

 お尋ねの場合、当該十八歳の者は、当該十三歳の者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者であるという要件に当たりませんので、改正後の刑法第百七十七条第三項の罪は成立しないと承知しております。

吉田(は)委員 そうなんですよ、これは罪に問われないケースなんですね。やはり本当に、五歳差とか年齢で区切っていくと、誕生日起算というのがとても分かりにくいなというのが私の懸念事項です。

 前の質問の委員の先生方も、性教育とともに、今回この処罰対象になるものも子供たちに伝えるべきじゃないかというふうにおっしゃったように、これは家庭で伝えられますか、今回刑法が変わって、こうなるよと。難しいと思います。私もずっとこの法律を調べてきて、ようやく分かったかなと思ったら、昨日の党の部会でまた同じ話が出てきたとき思わず混乱してしまいましたので、大変難しいなというのが実感なんですね。

 刑法は、裁判規範であると同時に行為規範でもありまして、違反すると刑罰が科される、そういうものですから、国民にとってどのような行為が罪となり、どのような行為が罪とならないか、これは私は明確であるべきと考えます。

 大臣、いかがですか。これはまさに一般論なんですけれども、刑法は当然ながら行動規範なので、国民にとっては分かりやすくあるべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まさに、まず抑止ということもあるわけですから、刑の内容がしっかりと知れ渡っていなければ抑止もできないということになるわけでありますので、本法律案が成立した場合には、改正の趣旨、そして内容について、先ほど鎌田先生の御質問にお答えしましたけれども、関係府省庁、機関、団体、そういったものと連携しながら、いかにいい周知、広報ができるかというのを検討し、実行していきたいと考えています。

吉田(は)委員 私も本会議登壇のときに申し上げたんですけれども、やはり政府として、どういう予算をつけて、どういうチャネルで、どんなふうに国民の皆さんに伝えていくのか、私はそういう姿勢も問われているのかなというふうに思います。やはり、法律を通して終わりですとなってしまうと、せっかくこれだけいろいろなものを積み重ねてこの刑法改正に踏み込むという場面でございますので、そこも併せて是非大臣には考えていただけたら幸いです。

 じゃ、最後に、時間も迫ってまいりましたので、公訴時効に関してお伺いします。

 昨日の元ジャニーズジュニアの橋田さん、現在三十七歳でいらっしゃって、十三歳のときに口腔性交を伴う性被害を訴えていらっしゃいます。今回の刑法改正では、十六歳以下の不同意性交等罪の時効は三十三歳までと理解していますが、この橋田さんのようなケースですね、十三歳のときの口腔性交被害で、三十七歳でようやくそのことに声を上げられるような方の場合、これは時効は大丈夫でしょうか、それとも時効を迎えていますでしょうか。

 十三歳のときの被害で、その方が三十七歳になっているケースです。今回の改正で、この場合は時効内でございますか、もう時効が過ぎていますか。

松下政府参考人 個別事案ですが、純粋にその年齢と期間の関係だけで申しますと、時効は成立しているものと考えております。

吉田(は)委員 やはり、今回、もう時効は成立しているということで公訴できないということなんですけれども、特に、私は、大臣、男性から男性への被害というのも恐らくすごく水面下ではたくさんあるのかなというふうに思います。

 この点にも私たちは向き合っていくべきかなと思うんですけれども、午前中の大口委員の質問に対して、調査などを行っていただけませんかということに対して、大臣、ちょっとごめんなさい、議事録がないんですけれども、もう一度お伺いしたいんですが、公訴時効、やはり動かす余地があるのか、あるいは、動かすことも視野に調査してみようかというお気持ちがおありなのか、最後にお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、ちょっと、大事なところなので説明したいんですけれども、本法律案においては、一般に、性犯罪については、その性質上、恥の感情や自責感により被害申告が困難であることなどから、他の犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいこと、こういったことを踏まえて、公訴時効期間を延長することとしています。

 そして、延長する期間につきましては、一般的、類型的に、被害に遭ってからどれだけの期間がたてば被害を外部に表出できるようになり、被害申告の困難性といった性犯罪特有の事情が解消されると言えるかという大変難しい観点があります。これを可能な限り実証的な根拠に基づいて定めるということが必要であろうということで、そういう観点から、内閣府の調査において、無理やりに性交等されたことがあり、被害を誰かに相談した方のうち、被害に遭ってから相談するまでにかかった期間が五年以内であった方が大半であったことを踏まえて、今回は五年としているわけであります。

 このように、性犯罪に係る公訴時効期間をどの程度延長するかについては、先ほど申し上げたとおり、実証的な根拠に基づいて五年としているものであって、現時点において、これを超える期間延長をすることを相当とする実証的な根拠、これが示されているとはなかなか言い難いという実情がございますので、五年を超えて更に公訴時効期間を延長することは困難であると考えているわけでありますが、いずれにしても、性犯罪の被害の実態を把握することは重要であると認識をしていますので、これで終わりではなくて、本法律案が成立した場合には、その施行状況も踏まえつつ、更なる実態調査を行うことなども含め、関係府省庁とも連携し、必要な検討を行ってまいりたい、先ほど答弁したとおりでございます。

吉田(は)委員 これが終わりではないという、本当に心強い、強いメッセージを発していただいて、ありがとうございます。

 大臣、一つだけ私は御指摘させていただきたいのは、確かに、公訴時効を撤廃するのはちょっとみたいな感じがあったと思うんですが、要は、時効がなかなか来ない、時効がなくなるぐらいだぞというのが、これは加害者に対してもすごい抑止力になるんですよ。プラス、こういうことに公訴時効を長くするということは、やはり、社会に対して、性暴力、性被害に対して断固たる態度で日本は臨むんだ、そういう強い姿勢を示すという意味もあるということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、山田勝彦です。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 まずは、障害者への性暴力について伺ってまいります。

 私自身、地元長崎県の各地域で、発達障害の子供たちの自立支援、障害者の就労支援、グループホームを運営しており、会社の仲間とともに現場で障害者支援を行ってきました。

 その上で、今回、性暴力をゼロにするため、すばらしい活動をされているNPO法人しあわせなみだから話を伺い、今回の改正内容が余りにも障害者の人権の観点から大変な問題があるというふうに言わざるを得ません。

 改正案百七十七条の不同意性交等罪では、心身の障害が理由により、同意しない意思を示すことが困難である場合、罪に問えるとされています。

 しかし、政府は大きな考え違いをしています。この罪は、障害者は意思を示せないことが前提となっています。障害者は重度であれ軽度であれ、一人一人自らの意思を、例えば目線であったり、手を握る強さであったり、言葉の発達が不十分な方であっても絵カードなどでしっかりと自分の意思を示すことは可能です。

 このような、障害特性を理解できていない政府案は、障害者に対する侮蔑に当たります。現に国連からも勧告が出されているところです。この侮蔑的な内容を改めていくべきではないでしょうか。大臣、お答えください。

齋藤(健)国務大臣 この法律を理解していただくのはなかなか難しいなということを感じる例だと思うんですけれども。

 改正後の刑法第百七十六条第一項それから百七十七条第一項において各号に掲げる行為、事由というのは、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態かどうかの判断を容易かつ安定的に行い得るようにするため、そのような状態の原因となり得る行為、事由を列挙したものでありまして、それらに該当することをもって常に同意しない意思の形成等が困難な状態であります、そういう趣旨ではないわけであります。

 したがって、第二号の心身の障害があることという要件につきましても、ほかの要件と同様に、これに該当するだけでなく、それが原因となって、同意しない意思を形成、表明し若しくは全うすることが困難な状態という要件に該当することが犯罪の成立に必要であるということであります。

山田(勝)委員 それでは、先ほどお伝えした、国連から、障害者の権利に関する条約に締約している我が国に対し、明確に日本政府に勧告が求められています。心神喪失といった用語のような侮蔑的な用語を除く措置を含め、日本の法律を更に本条約に調和させていくこと、このような質問事項が数々出されているんですが、政府としてどのように回答しているのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 障害者の権利に関する条約に係る第一回日本政府報告に関する障害者権利委員会からの事前質問におきまして、障害者権利委員会から、心神喪失といった用語のような侮蔑的な用語を除く措置を含め、日本の法律を更に本条約に調和させるために取られた措置について情報提供を求められたということについては承知をしております。

 我が国は、この事前質問に対しまして、心神喪失という用語は、あくまでも精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力がなく、又はこの弁識に従って行動する能力のない状態を意味するものとして、ある者の刑法上の責任能力を問い得るかを判断する際に用いられる法律上の概念として使用されているものでありまして、侮蔑的な用語ではないという旨を回答したものと承知をしております。

 このように、心神喪失という用語を使用することが障害者にとって侮蔑的であるとは考えておりませんけれども、今般の法改正によって、この点についても性犯罪に関しては改められることとなるものと理解をしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 障害者にとって侮蔑的ではないと政府は思っているのかもしれませんが、それを決めるのはあくまで当事者であり、障害者であります。

 今回のこの改正案も、後から触れるつもりでしたが、障害者当事者に対するヒアリングを一切行っていないということです。大臣も先ほどおっしゃいました、誤解を招いているようだという趣旨の表現でしたが、これは、私たち障害者の支援を行う者や当事者にとっては誤解で済むレベルではありません。明らかに障害者イコール意思表示が困難だと日本の法律で決められてしまっているかのようです。これでは障害者にとって侮蔑的だという批判は確実に収まりません。国連からも指摘されているとおり、即刻改めていくべきだ、そのように強くお願いしたいと思っております。

 また一方、障害により拒絶困難という内容であれば、障害特性を踏まえた内容として、侮蔑的ではありません。今改正で、性被害者や支援者の声を受け、不同意性交等罪に改正されたことは大変よいことです。しかし、この不同意は、障害者にはどうしてもなじみません。コミュニケーションに対して潜在的にどうしても障害者の方々にはハンデがあります。

 だからこそ、他の国では不同意と障害者を法律上一緒にせず、被害者が障害児者である場合、性犯罪の更なる重罰化を各国行っています。日本でも障害に乗じた性犯罪を新たに創設すべきではないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、何とか誤解を解きたいと思うんですけれども、本法律案におきましては、例えば、心身の障害があることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態ということで、心身の障害そのものが要件だと言っているわけじゃなくて、一つの原因として、幾つかある原因を並べた中で、それによって、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にあることに乗じて性的行為をすること、これはいかぬとしているわけでありますし、同じように、例えば、経済的又は社会関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることにより、そのような状態にさせて性的行為をすることみたいに、こう並べて、むしろ立件しやすくなっているのではないかなというふうに思うわけでありますが。

 いずれにしても、障害がある方について、その障害があるだけで例外なく自由な意思決定ができないと言えるようなものを明確かつ限定的に規定して、そのような方に対する性的行為を一律に処罰対象とすることは困難であると考えられているわけでありますので、本法律案におきましては、ただいま申し上げたような処罰規定とは別に、御指摘のような規定を設けることとはしていないということであります。

山田(勝)委員 大変残念です。

 大臣が、誤解だと、大臣としてはこの法律はそういう趣旨のことでは、侮蔑的な内容ではないんだという思いは、その大臣の思いは理解するんですけれども、法律上はやはりどうしてもそうならないわけで、であれば、やはり特出しで、各国のように日本でも、障害者の方の性被害に対しては他の条文でしっかりと明記して、こういった誤解を解消していくことが私は大切だと思いますし、是非検討していくべきだと思っております。

 その上で、今回の性被害の構成要件でもある、百七十六条、経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力による不利益の憂慮による性犯罪について伺っていきます。

 職場における上司と部下や社長と社員のような関係性が想定されているようなんですけれども、例えば障害者と福祉施設の職員、こういった関係性でもこの規定は該当するのでしょうか。お答えください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑法第百七十六条第一項第八号の経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮というのは、被害者が行為者との性的行為に応じなければ、行為者の経済的、社会的関係上の地位に基づく影響力によって、自らやその親族等に不利益が及ぶことを不安に思うことを意味しておりまして、社会的関係とは社会生活における人的関係を広く含むものとして想定しております。

 福祉職の方と障害のある方との関係性につきましては様々なものがあり得ると考えられますので、いかなる場合にこの要件に該当するかというのは、個別の事案ごとに証拠関係に照らして判断されるべき事柄ではございますけれども、福祉職の方が障害のある方にした性的行為がただいま申し上げた要件に該当する場合はあり得ると考えております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。あり得るということで、安心はしました。

 しかし、障害者と福祉職員は、ここで規定されているような、例えば賃金を支払うなどの経済的関係はありません。また、福祉事業の理念として、利用者である障害者の方と福祉職員は、同じ目線で、対等な関係であることが求められており、社会的上下関係があるわけでも決してありません。この点も、やはり障害者へより配慮した内容に修正が必要だと思っております。是非御検討をお願いいたします。

 次に、監護者性交等罪についてです。

 監護者性交等罪とは、十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした場合に処罰される犯罪で、刑法百七十九条に規定されています。

 障害者を支援する福祉職員は、監護者と、時に同様に、食事や薬を提供するなど、その利用者さんの生命や生活の維持に責任を持つ立場の者も複数おります。また、福祉施設のほかにも、病院や特別支援学校などの障害児者の支援を行う方々も同様です。

 残念ながら、このような対人援助職による障害者への性暴力が後を絶ちません。メディア報道でも、加害者の多くが一般論として福祉職員です。同業で、障害福祉に関わり、心を込めて真っ当に働く九九%の福祉職員にとって大変迷惑な話であり、決して許すわけにはいきません。

 しかしながら、現実問題として、このような事件が発生しても、警察は逮捕はできるが不起訴で終わるケースがほとんどです。立場の弱い障害者を性暴力から守るため、新たな法律を作る必要があります。

 そこで、大臣にお伺いします。

 このように、障害者の日常に深く関わる対人援助職に従事している方々も、監護者性交等罪の対象とすべきではないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 現行の監護者性交等罪は、十八歳未満の者に対し、その者を現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて性交等をした者を処罰するということとしておりまして、御指摘のような場合についても、これに該当するのであれば監護者性交等罪としてまず処罰し得ることになります。

 一方で、現行の監護者性交等罪の対象を拡張していくということにつきましては、実は法制審議会の部会におきましても議論をされておりまして、監護、被監護の関係とは異なり、それ以外の地位、関係性について、その地位、関係性があるだけで例外なく自由な意思決定ができないと言えるようなものを明確かつ限定的に規定することは困難である、そう考えられるために、本法律案におきましても御指摘のような改正をすることとはしていないということであります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 現行法でも処罰とし得ることになり得るということ、そしてまた、法制審でもこの議論に関しては前向きな考え方もあったという重要な答弁だったと思います。

 やはり、関係性について証明できるのが困難であるということだったんですが、先ほど言ったように、明らかに障害者の方々にとってその対人援助職なくしては生命や生活が維持できない環境というのは十分に証明し得ります。なので、対人援助職を、例えば、この監護者というところを監護者等などにして、より広く対象を加えていくべきだと思っておりますので、引き続き議論をしていただきたいと思っております。

 そして、今回の法改正に当たって、先ほどもお伝えしたんですが、障害児者など当事者に対するヒアリングが行われていなかったというのは非常に残念なことです。なぜ当事者の声を聞かなかったのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案の立案過程におきまして、法務省では事前に様々な調査を行いました。平成三十年四月から令和二年三月までの間、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループを開催しましたし、令和二年六月から令和三年五月までの間、性犯罪に関する刑事法検討会をそれぞれ開催いたしまして、各種の調査研究や被害当事者、支援団体等からのヒアリングなどにより実態の把握を進めるとともに、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について様々な観点から検討を加えました。

 その中で、御指摘の障害者御本人からのヒアリングは実施していませんけれども、そうした障害者の方の性被害の実態を把握するために、性犯罪に関する施策検討に向けた実態調査ワーキンググループにおきまして、性犯罪被害に遭った障害者に身近で接しておられる家族の方や、障害者への性暴力に関する啓発活動を行う団体等からのヒアリングを実施させていただいたところでございます。

 私どもとしては、これらのヒアリングを通じまして、障害者の性被害の実態について有意義な御意見、知見を得させていただいたものだと考えておりまして、これに加えて障害者御本人から直接のヒアリングを実施することはしなかったものでございます。

山田(勝)委員 なので、だからなぜ当事者の障害者の方々にヒアリングしなかったのかという質問なんですが、まあ、いいです。

 大臣にお願いしたいと思います。確かに、こういった御家族のお話を聞くこと、当然大切なことです。しかし、それ以上に、障害者の方々から直接話を伺う、先ほど言ったように、何かしらの手段で、自分の意思を確実に、お一人お一人表現することはできます。そして、先ほど議論にあった、監護者に加えるべきかどうかも含めて、実は表に出ていないだけで、今なおそういった環境の中で苦しんでいる当事者の方々がいらっしゃる可能性は十分あると思います。

 大臣にお願いです。こういった本改正がこの後成立したとしても、この後、性暴力から障害者を守るために、当事者の声、聞いていただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、本法律案が成立した場合には、その施行状況を踏まえつつ、性犯罪被害の実態把握等について、実態調査の対象や方法なども含めて、関係府省庁とも連携して必要な検討を行ってまいりたいと考えておりますので、おっしゃるように、障害者の方から直接お話を聞くことの是非も含めて、この中で検討が行われるということになります。

山田(勝)委員 是非お願いいたします。

 次に、代表人聴取について伺います。

 法務省は、二〇二一年三月、児童虐待などの被害を受けた子供が事情聴取を受ける際の精神的な負担を減らそうと、検察や児童相談所などが一括して聞き取りを行う代表者聴取について、障害のある人が性犯罪の被害を受けた事件にも対象を拡大するとしました。すばらしい取組です。

 ただし、やはり私も現場で支援をしている者として気になるのが、児童と障害者では対象が当然異なりますし、コミュニケーションの手法もそれによって変わってきます。この専門の面接官、児童だけではなく、障害福祉についても研修を行っているのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 法務・検察におきましては、検察官の経験年数等に応じた各種研修を行っておりますけれども、その一環といたしまして、専門家による講義として、障害者の供述特性や聴取上の留意点などをテーマとするものを実施するなど、児童だけではなく、精神に障害を有する被害者の方についても適切に事情聴取するのに必要な知識、能力の向上を図るための研修を実施しているものと承知をしております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 そして、この代表者聴取、二〇二一年四月から九月までの半年間、全国の十三庁で試行実施された。そして、昨年七月からも更に対象が広がり、試行運用をなされているということです。

 情報公開はいつ行われるのでしょうか。そして、聴取後の起訴数、不起訴数、そのうち有罪となった件数など、具体的な統計データ、これも公表いただけるのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの障害がある性犯罪被害者を対象とする代表者聴取の試行の実施状況につきましては、法制審議会刑事法部会における資料として配付しておりまして、これを法務省のホームページに掲載するなどして公表しているところでございます。

 一方、お尋ねの障害者に対する代表者聴取の試行が実施された事件についての起訴件数、不起訴件数、それから有罪判決の件数につきましては、そのような観点からの統計は取っておりませんので、お答えすることは困難でございます。

山田(勝)委員 このような取組、実際に聴取をして、それが事件化にどのようにつながったかというのは、大変重要な指標となるものだと思っておりますので、こういったデータの開示というのも求めていきたいと思っております。

 そして、大変すばらしい取組であると関係者の皆さんも期待をしているところです。是非、本改正案が成立した場合、性被害に遭った障害者への代表者聴取、本格運用してもらえるのでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 検察当局におきましては、政府の性犯罪・性暴力対策の強化の方針を受けまして、御指摘のとおり、令和三年四月一日から全国十三の試行庁におきまして、知的障害、精神障害、発達障害等の精神に障害を有する被害者に係る性犯罪事件で、代表者聴取を行うことが相当と認められる事件につきまして、警察と連携して、検察及び警察のうちの代表者が被害者から聴取を行う、いわゆる代表者聴取を行う取組の試行を開始いたしまして、令和四年七月からは、その障害がある性犯罪被害者を対象とする代表者聴取の試行を全国の検察庁に拡大しているものと承知をしております。

 本改正案における刑事訴訟法改正が成りました後、障害がある性犯罪被害者を対象とする代表者聴取について本格運用に移行するかどうかにつきましては、現時点でその方針は定まっていないと承知しておりますけれども、検察当局におきまして、現在の試行の実施状況等を十分踏まえ、警察とも協議の上で適切に検討していくものと承知をしております。

山田(勝)委員 是非とも本格運用、なるべく早く実施していただきたい、これが現場当事者の思いです。よろしくお願い申し上げます。

 次に、五歳差要件について伺っていきます。

 改正案では、五歳差要件により、十四歳の中学生と十八歳の成人の性交が例えば認められることになります。これに対して、昨日の山本参考人から、成人が中学生にしてはいけないとはっきりすべきだと意見を述べられました。私も強く共感いたします。

 対等性がおよそない成人と中学生の性交を法的になぜ認める必要があるのか理解に苦しみますが、刑法の謙抑性、刑罰権は国家権力の最も強力であることから、刑罰は必要最小限であるべきだという考えには理解をいたします。法務省の担当者からも、一%でも処罰すべきでない人がいれば除外する立場に立つことは大切で、広めに取らざるを得ない、このような趣旨の説明をもらいました。

 私は、例えば十四歳の子供と十八歳の大人において性交を法的に認める対等な関係は一%もないと考えます。児童福祉法の対象であり、児童手当の対象でもある中学二年生の子供と、自ら職業を選択でき、選挙権を持つ十八歳の大人について、どこがどう対等なのでしょうか。存在し得る一%の対等性とはどのようなケースなのでしょうか。お答えください。

齋藤(健)国務大臣 まず、対等な関係というお話がありましたが、いわゆる性交同意年齢の考え方、この考え方における対等な関係といいますのは、生活全般における関係での対等性、こういうことを問題とするのではなくて、性的行為をするかどうかの意思決定をする能力における対等性というふうに判断をしているところであります。

 その上で、いわゆる性交同意年齢の規定は、暴行、脅迫などといった、意思決定に影響を与える事由がなくても、性的行為をしたこと自体で性犯罪が成立するものとする規定でありますことから、今、山田委員もおっしゃいましたが、刑罰の謙抑性の観点から、双方の年齢が要件を満たすだけで例外なくおよそ対等な関係があり得ず、自由な意思決定をする前提となる能力に欠ける、こういうふうに言えるものである必要があるんだろうと思っています。

 本法律案におきましては、そのような観点から、一部に対等とは言えない関係を有する場合があるから、だから一律に処罰対象とする、こういう考え方ではなくて、むしろその要件を満たすだけで例外なく対等な関係はあり得ないと言える場合だけに限って処罰対象とする。うちのスタッフが一%というふうに言ったのかもしれませんが、そういう考え方に立って五歳差を要件としているというものであります。ですので、このように一般的に中学生と十八歳の成人は対等な関係であるとの考えに立っているわけではありません。

 その上で、ケースというお話がありましたが、いわゆる性交同意年齢の規定は、性的行為をしたこと自体で性犯罪が成立するものとする規定でありますことから、刑罰の謙抑性の観点から、双方の年齢が要件を満たすだけでなく、例外なくおよそ対等な関係があり得ずということで、今申し上げたような考え方でやっているわけでありますが、両者の年齢差が四歳である場合、おっしゃいましたが、対等でない関係が相応に含まれているようにも思われますけれども、行われる性的行為が性交等であるか、わいせつ行為であるかを問わず、また両者の性別や関係性、状況等を問わず、およそ対等な関係があり得ないとまで断定できるかについては、なお疑問の余地があるところであると考えていますので、私どもとしては五歳差ということにしているわけであります。

山田(勝)委員 御説明、丁寧にいただいたんですが、やはり対等性ということにおいて、明確に、大臣の御説明では、私は到底理解できませんでした。

 問題なのが、さらに、先ほど吉田委員も指摘していましたが、性教育、教育の現場でどうやって当事者である、性教育が始まるのは小学生の高学年から始まるし、当事者は中学生です。これはどうやって伝えるのか。そして、私も今小学生の息子がいますが、家庭で親として自分の息子に、娘にどうやってこの内容を伝えるのか。到底無理だと正直私は感じているんですが、やはり、これはしっかり政府の責任で、もしこの法案を進めるとするならば、是非、教育の現場でどのように伝えていくのか、お答えいただきたいと思います。

里見政府参考人 お答えいたします。

 本法案が成立した後の具体的な周知方法につきましては、一義的には法務省において検討がなされるものと理解しておりますけれども、文部科学省といたしましても必要に応じて協力をしてまいります。

 いずれにしましても、子供たちが性被害や性加害の当事者となることのないよう、法務省等を始めといたしまして関係省庁と連携をし、対応してまいります。

山田(勝)委員 具体的な伝え方というところは全く今のところないという状況なんですね。僕は本当にこのままいくと大混乱を招くのではないかと思っているところです。

 そこで、大臣に提案をさせてください。

 十八歳以上の成人は十六歳未満の子供との性交は法律で禁止される。五歳差要件ではなく、同世代の恋愛として一部例外を認める場合は、十三歳から十五歳と、十三歳から十七歳同士のみである。社会規範としてより国民の理解が得られ、周知されやすいと考えます。この内容に私は改めていくべきではないかと思いますが、大臣の御見解をお願いいたします。

齋藤(健)国務大臣 これも大事なところですので、お話ししたいと思いますし、こうやって徐々に理解が深まっていくのは大変ありがたいなというふうに思っているところであります。

 本法律案におきまして年齢差要件を五歳差としているのは、性的行為をするかどうかの意思決定に関する若年者の能力が、年齢とともに社会的経験を重ね知識を得ていくにつれて向上していくものであるという、それを前提として、その要件を満たせば、被害者となる年少者等にとって、性的行為をするかどうかについて意思決定をする能力において、およそ対等とは言えない関係であると言えると考えられるからであります。年齢差というのは、そういう意味を持つのではないか。

 このような観点から要件を構成する以上は、年長の行為者自身の能力や責任の要素としての年齢自体が基準になるものではなく、年少の被害者にとって自分よりもどれだけ年長であるかにこそ意味があるというふうに考えられるわけであります。

 そして、仮に、行為者が十八歳以上という委員の御指摘の年齢を要件とした場合には、例えば、十四歳の者と十七歳の者との間で従前から性的行為が行われていた場合におきまして、十七歳の者が十八歳の誕生日を迎えた後に更に性的行為を行うと、その者が処罰対象とされるということになるなど、年長の行為者が誕生日を迎えるのを境に処罰対象か否かが突然変わるということにもなる、そういう不都合が実は生じてしまうわけであります。

 以上のことから、本法律案においては、十八歳以上の者が十三歳以上十六歳未満の者に対して性的行為をした場合に、一律に処罰対象とすることとはしていないということであります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 具体的な例も挙げていただきました。おっしゃるとおり、こういった懸念はあるとは思います。

 しかし、当然こういったケースもあるんですが、そこは、そういった特殊事情は考慮する何かしらの別建ての法律があってもいいと思いますし、これに対するデメリットよりも、成人した人が中学生を相手に性行為が可能であるという、法律上の、許容してしまっていることのデメリットの方が、リスクの方が私ははるかに大きいというふうに思っております。

 時間となりましたので、これで終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、会派を代表して御質問いたします。

 不同意性交等罪についてお尋ねいたします。

 言うまでもないんですが、不同意性交等罪は、第百七十六条第一項の一号から八号までに掲げる、例示ですけれども、行為又はその事由その他これに類する行為又はその事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じてわいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処するものとすると定められております。

 そして、一号から八号として、例えば三号では、アルコール若しくは薬物を摂取させること又はその影響があること、四号では、睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあることなどが定められております。

 この条文の「同意しない意思」、みんな使っているから、何となくこれでいいやと思って使っていると思うんですけれども、これは実は日本語として、正直よく分からない。

 というのは、同意する意思というのは分かるわけですよね。不同意だという意思、アイム・ノット、ディスアグリーということですね、不同意だ、これも分かると思うんです。しかし、同意しない意思って何だというのは、ちょっと実は分かりづらくて。

 一応、ちょっと確認的にお伺いしたいんですが、これは、一号から八号の原因で、ちょっと通告とは質問の仕方が変わっているんですけれども、同意する意思を形成することを余儀なくされている、同意する意思を誘導されている、つまり、わざわざ同意しない意思というものは実は意識されていない、心の中には萌芽していなくて、単に同意する意思を誘導されている状態というのも入っているということでいいんですよね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 同意する意思を誘導されているという御指摘の状況が、ちょっと済みません、私は理解が今できていないんですけれども、改正後の刑法百七十六条一項、百七十七条一項においては、同意しない意思というのは、性的行為をしない、したくないという意思を意味するものでございまして、このような意思を形成、表明、全うすることのいずれかが困難な状態であるということを要件として捉えるものでございます。

米山委員 通じなかったのはしようがないかなと思うんですけれども、でも、自分の心の中の動きというものを考えたときに、ラーメンを食べたいという意思、食べたくない意思というのはあるわけなんですけれども、人からラーメンを食べようよと言われたときに、ともかく誘導されて食べたくなることはあっても、そのときにわざわざ食べたくない意思というものを観念しないという状態というのはあると思うんですよね。

 しない意思というのは、しない意思を全うできないという二重否定になっているので、これは本当のところ、分かりづらい日本語なんだと思いますし、もう余りきちんとした答弁は来ないでしょうからいいんですけれども、私の通告もちょっと不十分だったので。これは、恐らくは誘導的に、同意する意思を誘導している状態というのが入っているんだと思いますよ。

 それはそれでいいとして、その上で、今度は、同意しない意思というのも、これは不同意の意思だけじゃなくて、積極的に同意しないという意思というものまで含むのかどうかという問題もあると思うんです。

 これも分かりづらいと思うんですけれども、例えば、静かなバーで一人で飲んでいたら、そんなに悪い人じゃないんだけれどもちょっと苦手だなという先輩議員がやってきて、相席いいと言って、ええというふうに言ったら、そこに座ってどんどん話しかけてきた。このときに、別に同意しないわけではないんですけれども、積極的にうれしいわけではありませんという状態はあるわけですよね。しかも、このときに、積極的に同意していませんとは言いづらい。だから、私は、本当のところ、あなたにいてほしいわけではないんですとは言いづらいという状態はあり得るわけなんです。

 その状態が、それが言いづらい、同意していないんじゃないんだけれども、積極的同意ではないんだということは言いづらいというようなところまで表明困難な状態だと言われてしまうと、一体、同意って何、どこまでの同意をもらえばいいんですかということになってしまうんだと思うんです。

 ですので、この同意しない意思というのは、不同意の意思なのか、それとも、不同意ではないですけれども積極的に同意してはいませんよという意思までを要するのか、御答弁をお願いします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 済みません、私の理解力が足りないかもしれませんけれども、御指摘のその違いが、ちょっと私、余りよく分かっていないところがあるんですけれども、改正後の刑法における同意しない意思というのは、先ほど申し上げたとおり、性的行為をしない、したくないという意思でございまして、拒絶する意思ということももちろん含まれるものですし、不同意の意思というものも含まれるものであると思います。

米山委員 これは通じないわけですよ。

 でも、本当のところ、一体どこまで同意する意思というものを全うできればいいのか、どこまでが要求されていて、どこまでだったら足りないのか、実は分からないんです。結構、人によって判断が分かれちゃうわけなんですよ。

 しかも、これは何せ親告罪じゃなくて、一律刑罰でやられちゃうわけなので、ちょっと、こんなに漠然とした言葉でいいんですかと思うわけです。私としては、ここで、そもそも名前として不同意性交罪なんだから、不同意の意思とすればいいんじゃないですかと思います。

 また、これは被害者団体の方から御意見もあったところですけれども、皆さんにお配りした資料である、だって、令和四年の十月二十四日まではこの案だったわけなんですけれども、こちらでは、拒絶の意思を形成することが困難な、拒絶困難な状態という言葉を使ったわけですね。これは結構みんなイメージがしやすいんですよ。拒絶困難、ああ、そういうことかと。若しくは、不同意の意思を形成できない、それはイメージしやすいんですが、同意しない意思というのは物すごく幅があるので。

 やはり、私は、そこは不同意の意思とか、いろいろな御意見はあるなりに、でも、一度はこの試案に上った拒絶困難な意思という形で、ある種、一定程度否定するということができない状態だとした方が、刑法ということを考えたらいいんだと思うんですが、御所見を伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 拒絶する意思というような、拒絶という文言ということにつきましては、法制審議会の部会における当初の試案において御指摘のとおり用いられていたものでございますけれども、この文言に対しては、複数の委員から、同意のない性的行為が処罰対象であるはずなのに、拒絶困難でなければ認められなくなってしまうという御意見、また、拒絶という言葉からは、相手からの働きかけに対して被害者が何らかの行為をしなければならないように感じられてしまうといった御意見があり、そういった御意見を踏まえて、法制審議会の部会において様々な御議論をしていただき、また、試案を改訂して、同意しない意思という文言とすることになったものと承知をしておりまして、拒絶という文言を用いることは適当ではないと考えております。

米山委員 そういう御答弁が来るとは思うんですよ。思うんですが、もちろん、犯罪被害者の方々の御意見は非常に重要だし、それはすくわなければならないことは分かります。

 しかし、性交渉というのは多様なわけですよ。性交渉の場というのは非常に多様で、性犯罪の場における性交渉というものもあれば、恋人間、夫婦間、そういう性交渉もあるわけですよね。数の上からいったら、犯罪ではない性交渉の方がはるかに多いわけなんです。しかし、刑法で一度決めたら、全部に規律されてしまうわけなんですよね。

 ちなみにですけれども、私は、十六歳のロミオと十四歳のジュリエットが初めて一夜を共にしたときには、きっとロミオは、ロミオ様、あなたはなぜロミオ様なのと言うジュリエットに対して、指一本触れるにも、触っていいと聞いて、ジュリエットもそれに静かにうなずいて合意したと思うんですよ。それを求めるのは、それは正しいと思うんです。

 しかし、仮にロミオとジュリエットが一命を取り留めて死亡せず、無事結婚して三十年がたち、四十六歳になって、ちょっとおなかが出て毛が薄くなった中年のロミオが、ワインを飲んでいい気分になって、ちょっとロミオ、あんたは何でロミオなのよ、そう言っているジュリエットに対して、何となくな感じでベッドに誘って、ジュリエットの方も、正直酔いが回って眠くて、積極的にそんなにアグリーなわけでもないんだけれども、ロミオ、いつものことだし、考えることも面倒だと思っておつき合いしましたということは実際問題あるし、正直、数の上からいったら、むしろそういう方が多くないですかということだと思うんです。

 こういう状況で、つまり、自宅で普通にお酒を飲んでいて、ちょっといい気分で、日常のことでもあり、別に積極的な同意なわけでもないけれども不同意でもないですよというような状況でも、条文上は、アルコールの影響で同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難であるということになって、不同意性交罪に該当してしまうと思うんですけれども、該当しますでしょうか。

松下政府参考人 まず、改正後の刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為、事由は、アルコールも含みますけれども、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態かどうかの判断を容易かつ安定的に行い得るようにするため、そのような状態の原因となり得る行為、事由を列挙したものでございまして、それに該当するだけでは同意しない意思の形成等が困難な状態であるとは認められないという大前提がございます。

 そして、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態のうち、同意しない意思を形成することが困難な状態というのは、性的行為をするかどうかの判断、選択をするきっかけや能力が不足していて、同意しないという発想をすること自体が困難な状態を、また、同意しない意思を表明することが困難な状態とは、性的行為をしない、したくないという意思を形成することはできたものの、それを表に表すことが困難な状態を、また、同意しない意思を全うすることが困難な状態とは、性的行為をしない、したくないという意思を形成したものの、あるいはその意思を表明したものの、その意思のとおりになるのが困難な状態をそれぞれ意味するものでございます。

 お尋ねのような場合に、改正後の刑法第百七十六条第一項あるいは百七十七条第一項の罪が成立するかどうかは、個別の事案ごとに証拠関係に照らして判断されるべき事柄ではございますけれども、例えばアルコールの影響があったといたしましても、お酒に酔ったことで例えば気分が開放的になったといたしましても、なって、性的行為をするという選択をしやすかったというだけであるのであれば、性的行為をするかどうかの判断、選択のきっかけや能力があり、同意しないという発想もできたのでありますから、同意しない意思を形成することが困難な状態には該当しないのかなと思いますし、自らの判断でそのような意思を外部に表すことをやめたにとどまっているとすれば、同意しない意思を表明することが困難な状態にも該当いたしませんし、結局のところ、自らの判断でそのような意思をやめて応じるという選択をしたのでありますれば、同意しない意思を全うすることが困難な状態にも該当しないので、今申し上げたような場合であれば、これらの罪は成立しないというふうに考えられるのかなと思います。

米山委員 これは、私は御答弁としてはいい答弁なのかなと思うんです。要は、そういうふうにきちんと言っていただかないと、幾ら何でも困るだろうということだと思うんですよね。

 ちなみに、これは恐らく、困難という言葉の解釈において、だって、困難というのは、実は一%困難から九九%困難まであるわけですよ。例えば私だって、今日はちょっと、昨日飲み会があってちょっと眠いから質問が困難だ、一%ぐらいパフォーマンスが落ちているというところから、九九%落ちていてとても何も言えません、べろべろですみたいなところまであるわけなので。

 今の御答弁は、やはり結構困難でなければ困難でないということを、首を振られると困るんですけれども、そう言ったんだと思いますよ。要するに、だって、酔っ払ったら、それは多少なりとも困難ですよ。

 だって、多少なりとも、うちにもちょっと金髪のジュリエット、長岡のジュリエットがいるんですけれども、酔っ払うとなかなか長岡のジュリエットに逆らうのが面倒くさくなってくるといいますか、そういうことは起こるわけですよね。ちょっと自分の頭もよく回らないし、あっちの口はよく回るしということで、そういう状態というのはあるわけですよ。

 そういう困難さというのは、いろいろな段階があるんです。あるんだけれども、今の御答弁は、やはり一定程度以上困難でなければ、それは困難とは言わない。少しぐらい、ちょっといい気分になって開放的になっているから、しないなんて考えづらい、だって、気分がいいんだものというのは、それは困難とは言わないんだということで御答弁いただいたのかなというふうに思いますし、そうでないと困るといいますか、そうでないと、日本中、一体全体どうなるんだということになってしまいますので。

 そうしますと、これは更問いをしてもしようがないからしなくてもいいんだと思いますけれども、今の御答弁からは、困難というのは、ある程度以上の困難さをもって困難という。通常、なかなか、それが本当にしづらい、形成することもしづらいし、表明することも非常にしづらい、それを困難というんだというふうに理解しましたが、大臣、それでいいですか。

齋藤(健)国務大臣 突き詰めれば、困難という言葉をどういうふうに理解するかということに、最後、突き詰めればそうなるんだろうと思いますが。

 改正後の刑法第百七十六条第一項、百七十七条第一項においては、同意しない意思の形成、表明、全うという意思決定過程と、困難な状態という客観的な状態に着目して犯罪の成否を画する、そういう趣旨でありますので、被害者がその状態にあること自体によって、その困難さの程度が著しくなくても、性的行為に同意していないことが当然に確信できるということでありますので、著しく困難とか、そういう表現をあえてつける必要はないのではないかというふうに考えています。

米山委員 表現としては使わないけれども、著しくという意味だということなら、それでいいんですけれども。

 今ほど大臣は、困難であることは客観的に判断できると言いましたけれども、それは客観的には判断できないと思いますよ。

 ちなみに、これは刑法ですから、検察官が構成要件該当性を合理的な疑問を残さない程度に立証しなければならないわけなんですよ。合理的な疑いがあっては困るわけなんです。

 アルコールといったって、これは人によって全然違いますから。一体全体どうなんですか、三百五十ミリリットルのビール一缶を飲んだ場合に、それは困難なんですか。一升瓶を一本飲んだらそれは困難でしょうね、それは誰だって分かります。では、三百五十ミリリットルはどうなんですか、ワイン一杯ならどうなんですか、ワイン一瓶ならどうなんですか、どこが境界ですかというのは、これは分からないと思うんですよ。

 アルコールはまだしも、最悪、呼気検査をしろ、各自宅に呼気検査の器械を置いて、はあっとやって一定レベル以上だったら性交渉はしてはいけませんとしなさいという手法があり得るとして、睡眠その他の意識が明瞭でない状態というのは、一体全体どうやって外から判断するんですか。夜十一時ぐらいでちょっと眠いぐらいの人もいれば、いやいや、そんな、よっぴかりだから私は朝の二時まで平気ですという人もいるし、かといったら、もう私は九時には眠くなりますという人だっているわけですよ。

 だから、一体全体、先ほど大臣は客観的に判断できるとおっしゃいましたけれども、どうやって客観的に判断して、検察官はどうやって合理的な疑問を残さない程度にアルコール若しくは睡眠によって意識が明瞭でないことを立証するのか。立証方法を御教示ください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑法第百七十六条第一項、第百七十七条第一項の同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じてという要件をどのように立証するかは、具体的な事案の証拠関係に応じて、検察当局において個別に判断されるべき事柄でありまして、一概にお答えすることは困難でございます。

 その上で、あくまでも一般論として申し上げますと、検察当局におきましては、御指摘のような性犯罪の事案において、これまでも、警察と連携しつつ、個々の事案に応じまして、被害者の状態や、それに至る経緯、原因などを立証するために、被疑者や被害者を含む関係者の取調べや客観証拠の収集等に努め、厳正に対処をしてきたものでございまして、これまでも、暴行又は脅迫、あるいは心神喪失又は抗拒不能といったような要件に該当するかどうかということについての証拠収集を行い、事実認定を行ってきたものでございまして、同様に引き続き厳正に対処していくものと承知をしております。

米山委員 この答弁は僕は本当にがっかりなんですよ、ちゃんと通告したわけですから。

 だって、それは、心神喪失は分かりますよ。心神喪失ですから、もうはっきりしているわけですから。そのときに白目をむいていたとか、全然ろれつが回っていないとか、全く訳の分からないことを言っていましたとか、そういうのを心神喪失というわけですから、それは外形的に見て分かるわけです。

 今回はそうじゃないんですよ。同意の意思を形成することが困難というのは、完全に心の中のことなんです。しかも、それに対して、いや、個別にやるから、私たちはちゃんとやるから大丈夫ですなんて言われたら、周りの人はどう判断していいか分からないわけですよ。

 そんな状態で、これは何せ性犯罪の状況だけに適用される法律じゃないんです。非親告罪で、ありとあらゆる家庭の、ありとあらゆる恋人同士の性行為全部を規律する法律なわけですよ。それに対して、いや、もう検察官が個別に決めるしかありませんと言われたら、一体全体どうするんですか。

 しかも、これは刑事告発できるわけですよね。ありとあらゆる人が、ありとあらゆる行為に対して刑事告発できちゃうじゃないですかということになるわけです。

 ですから、それは別に、私は個別の案件をどうだなんて聞いていないですよ。長岡のロミオとジュリエットに関して、それが犯罪に当たるのか当たらないかなんて聞いていないです。そうじゃなくて、少なくとも、どういうふうに立証するんだと類型的に示してくれなかったら、みんなどうしていいか分からないでしょう、それを示すのは刑事当局の義務でしょうと言っているんです。

 しかも、全く、どう立証するかのプランといいますか、心積もりもないんだったら、どうするんですか、これは本当に。成立した次の日から、一体全体、検察はどういうふうに捜査するんですか。

 さすがに、幾ら何でも立証方法はあるんでしょう。立証方法を教えてください。

松下政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案において、刑法第百七十六条それから百七十七条を改正して構成要件を変えているわけですけれども、その趣旨としまして、前にも御説明したとおり、判例上の解釈として、暴行又は脅迫を用いて、あるいは心神喪失若しくは抗拒不能に乗じといった要件については、程度が判例上の解釈として要求されていることから、個別の事案において、これらの罪の成立範囲が限定的に解されてしまう余地がある、より安定的な運用を確保する観点から、処罰すべき行為を適切に捕捉しつつ、構成要件該当性の判断にばらつきが生じない規定とすることが重要であるといった御指摘がなされていたことを踏まえて、今回、一項の一号から八号その他の事由を書いているものでございます。

 これは、これまでの判例上あるいは解釈上、暴行又は脅迫、あるいは心神喪失、抗拒不能といった要件を踏まえて、適用があると解釈されてきたものをより具体化して、ばらつきが生じないように、できる限り列挙したものでございまして、捜査においてどういった立証をするかということについては、個別の事件というふうに先ほど申し上げましたけれども、今回の法律案の改正によってそれが大きく変わるということではないと考えております。

米山委員 これは全然駄目な、むちゃくちゃなわけですよ。

 まず、何度も言いますけれども、抗拒不能とか心神喪失は外形的に分かるんです。そうですよね。次にある一号から八号の、これも実は原因ですから、外形的に分かりますよ。でも、先ほど私が質問して、事実上私はそう答弁されたと思いますけれども、困難さというのは程度であり、しかも、それは心の中のことなので、どのぐらいの困難さかということは、今までの法律になかった、立証しなければならない要件になるんです。

 しかも、それに対して一定程度何か基準を示してくれなかったら、もう怖くて怖くて、そんなもの、夜十時以降ワインを飲んだら性交渉なんかできませんよ、性交渉は全て真っ昼間にしらふでやるしかありません、そういうことになっちゃうでしょう、何でみんなそれを言わないんですかねと私は結構思うんです。だって、これは家庭の中にずかずかと公権力が、しかも、何の基準も示さずに入ってきているのと同じですよ。何か、本当に、風紀委員といいますか、みんな、ともかくしらふで、酒を飲まずにしろ、そう言っているのに等しいと思うんです。

 せめて、私は別に否定しているんじゃないんです、ちゃんと、どう立証するのか。だって、立証する役所なんだから、どう立証するのか、その方法、その基準をちゃんと国民に示してくださいと言っているんです。

 これは当たり前のことなので、もう一度言ってもどうせまた同じことを言うのでもう聞きませんけれども、それはさすがにしないといけないと思いますよ。そうしないと、本当に、日本は一体どうなるんですかと思います。

 ちなみに、先ほど来言っていますけれども、不同意性交罪、これは親告罪ではありません、ないです。ですので、もしかしたら、先ほど来お話があるんですけれども、検察官の方は大変スマートだから、何か心の中のことをうまく見透かして、うまく立証して、適切な、これは処罰すべき、処罰すべきでないと分けられるかもしれませんけれども、一般の人は別にそんなことを考えなくていいわけですよ。疑いがある、あいつは不同意性交罪をしている疑いがある、これを刑事告発できちゃうわけですね。刑事告発して警察に告発状が来たら、それは警察は受理して、送検しなければならないわけです。捜査して、送検しなければならない。

 それでいいんですか。このままの状態ですと、単なる疑いで次々と告発が出て、それを全部捜査して、書類送検しなきゃならなくなるんですけれども、それでいいんですか。御所見を伺います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、具体的な立証方法等というところについて、先ほど更にお尋ねがありましたけれども、御趣旨に沿っているか分かりませんけれども、あくまでも一般論として申し上げれば、性犯罪の事案においては、例えば被害者や参考人の供述、あるいは各種裏づけ捜査、防犯カメラ映像、メールなどの客観証拠、各種鑑定結果、被疑者の供述といった証拠に基づいて、犯行に至る経緯、薬物等であれば摂取した薬物やアルコールの種類及び量、それらの効能、犯行前後の被害者や被疑者の行動等の諸般の事情を適切に主張、立証しているものと承知をしております。

 その上で、今回の法律が、家庭に入ってくるということですけれども、それは、婚姻関係の有無にかかわらずという文言が入ったことについて御指摘かと思いますけれども、婚姻関係の有無というところにつきましては、これは従前からそのように解されていたところでございまして、この改正によって入ってくるというような御指摘であれば、それはそうではないのかなと思っております。

 告発に関して、警察が受理して、送検しなければならないのかというふうなことでございますけれども、一般論として申し上げれば、刑事訴訟法第二百四十一条は、告訴、告発は、書面又は口頭で検察官又は司法警察員にこれをしなければならないと規定しておりまして、司法警察員は、告発状が提出された場合、告発としての要件の有無を検討した上で、その要件を満たしていない場合には受理しない、要件を備えている場合には受理をするということとされていると承知しております。

米山委員 全然御理解いただけないわけなんですよ。

 だって、うちのジュリエットとかは、晩御飯のときには必ずお酒を飲みますし、何なら、聞くなって言いますから。そういう意味では、幾らでも抗拒不能だということで刑事告発されちゃうわけです。そのたびに書類送検されて、書類送検されたといってニュースになったりし得るわけですよね。

 でも、それは、みんな笑い事じゃなくて、本当に起こり得ることなので。だって、疑いでできちゃうわけですから。それは、やはりそういう問題意識はちゃんと持って対応してくれないと、非常に困るんだと思うんです。

 さらに、本当に、アルコールならまだしも、先ほど来言っているとおり、何ミリリットル飲んだと言えますけれども、眠気なんて全然分からないですからね。それはちゃんと御理解をいただいて対応いただきたいなと思います。

 ちなみに、今、刑事と言いましたけれども、名誉毀損がそうであるように、刑事の規範というのは民事の不法行為の規範をも規律して、この不同意性交罪が成立しますと、刑事事件としての犯罪の成否とはまた別に、民事の損害賠償請求もできるようになる。確実になると思います、だって、不法行為でしょう、それは犯罪なんだから。

 その場合には、立証のハードルは刑事よりかなり緩やかですから、条文上は、先ほど言ったとおり、夜十時にワインを飲んだ後、性交渉したということで、後から民事裁判になって、しかも、先ほど来、証拠、証拠と言っていますけれども、民事裁判では証拠なんかないですから、物的証拠が双方に全くなく、尋問で強く言った方が勝ち、尋問で強く言っちゃったら損害賠償が通りますという事態が大いに想定されるんですけれども、大臣、これでいいんでしょうか。御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 まず、本法律案において、暴行、脅迫、心神喪失、抗拒不能要件の改正をしたんですが、これは、性犯罪の本質的な要素である、性的行為に関する自由な意思決定が困難な状態でなされた性的行為かどうかという点を、今回、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定をした上で、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙する、そういうたてつけにしているものであります。したがって、性犯罪の本質の捉え方について変更を加えるというものではなくて、ですから、今回、処罰範囲が不当にこれによって拡大をするということもないと考えています。

 したがって、御指摘のような処罰範囲の不当な拡大に伴っての損害賠償請求の増加といった事態が生じるものではないと考えていますけれども、いずれにしても、こうした改正の趣旨について、なかなか難しい周知になるかもしれませんが、しっかりと周知をしていきたいと考えています。

米山委員 相変わらずかみ合わないんですが。

 別に、処罰範囲に関しては、それは、検察側の方が物すごくスマートで、きれいにやってくれるかもしれませんよ。でも、民事はそれと別なので。民事というのは、それは別な方向で広がっちゃうんです、条文上当たり得るならば。

 さらに、何度も何度も、性行為において自由な意思決定が重要だと。それは分かりますよ。でも、何度も言っていますけれども、性行為というのは多様なんですよ。自由な意思決定、まさに、初めて会って間もないロミオとジュリエットみたいなときの自由な意思決定もありますよ。でも、例えば四十六歳、四十四歳のロミオとジュリエットでも、長岡のロミオとジュリエットでもいいんですけれども、そこではある種、概括的な同意が、自由意思による同意がなされたわけですよ。もういいです、大体もうあなたとの間ではいいです、酔っ払っていようが何していようがオーケーですという物すごい概括的な合意があって、別にそれだっていいじゃないですか。だって、当人同士がいいんだから。

 そういうものもあるのに、これは一律に物すごい基準を決めちゃうわけです。だから、性行為というものの多様性を無視してしまうんですよ、この基準というのは。それに対してやはり一定の基準を示さなきゃいけないというのに、それをなかなか御理解いただけずに、しかも、何か的外れなことをおっしゃっているなと思います。

 さらに、今、民事を言いましたけれども、今度は家事事件、特に離婚事件になりますと、もっと事情は混沌とします。かつて、女性はうそをつくという非常に問題のある発言をされた議員がおられましたが、私、弁護士として離婚訴訟を行うんですけれども、離婚訴訟を行いますと、男とか女とかではなくて、論理的に考えて、どちらか一方か、若しくは双方がうそをついている以外にはあり得ません、双方が真実を言っていることはないということに遭遇するわけです。

 Jポップの歌詞で、永遠を誓った二人が永遠にさようならという私の好きなフレーズがあったんですが、かつて愛し合った二人の美しい思い出が、憎しみに満ちた恐怖の思い出に変わることは決してまれではないわけです。先ほどの中年となったロミオとジュリエットの話も、十六歳のときの勘違いでうっかり死にそうになったことについて、お互い罵り合って離婚する、ロミオとジュリエットが、ジュリエット、おまえ、あんな間抜けなことをしやがってとロミオが言うことだってあり得るわけですよ。

 結婚記念日にレストランでおいしいシャンパンを飲んで、すてきなホテルに泊まったことを、そのときには美しい思い出だったけれども、配偶者の一方が、後になって、あのときはアルコールや眠気や経済的、社会的理由で合意しない意思を形成、表明、全うすることは困難だった、だから離婚です、だから財産分与です、だから損害賠償です、さらに、だから刑事告訴ですと言い出すことだってあり得るわけですよ。というか、むしろ、正直、離婚訴訟の現場を経験している者からしたら、少なくない確率で起こりますよということだと思うんですね。

 そういう非常に混沌とした事態を避けるためには、私は、冒頭申し上げたとおり、不同意の意思を形成、表明、全うすることが著しく困難と、条文上ちゃんと、一定レベル以上困難になったこと、やはり通常のものは当たらないんですよということを示すべきだと思いますし、仮に条文上示せないにしたって、やはりそれは答弁よりは、本当に、法務省としてガイドラインを示すなり、それも駄目なら答弁になるんでしょうけれども、きちんとしたガイドラインを示すべきだと思うんですが、大臣の御所見を伺います。

齋藤(健)国務大臣 今、米山委員のおっしゃることを聞きながら、なるほどなと思うところも確かにありますが、今、今日ここでそういう議論に初めて直面を私は正直したものですから、何ができるか分からないんですけれども、少し考えさせていただきたいなというふうに思います。

米山委員 今、御答弁としては、大変ありがたい御答弁をいただいたと思います。

 最後、ちょうどよく時間をやったら、ちょっと一分半ぐらい余ったので、少しだけ今の繰り返しでお話しさせていただきますけれども、私も、全くこの法律、コンセプトそのものを否定したいわけでも、反対したいわけでもないんです。もちろん、性犯罪の被害者の方というのは救わなければならないし、そんなことは起こしてはいけない、それは分かるんです。

 でも、性交渉というのは本当に多様なんです。決して性犯罪の場だけではなくて、本当に多様な場で、多様な関係性の中で行われていることなわけです。ある人にとってはもう世界が変わるようなことだけれども、ある人にとっては日常なんです。本当に日常の行為であるというのは、別に、事実だと思うんですよ、それは日常じゃないかと。

 その中で、実は重要なのは、その多様な関係性の中で、本当にそれが相手を侵害するかしないかだと思うんです。そこに刑法というものは一律的な規定を入れ込んでしまうわけですよね。それは刑法の性質上しようがないんですけれども、それによって、やはり多様な性行為というもの、それは場合によっては恋愛そのものですから、人生の豊かさのかなりの部分を占めていたりするわけですから、その人生の豊かさというものを阻害しないような規定ぶりにする、阻害しないような広報の仕方をするということを切に求めさせていただきまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。昨日に引き続き、刑法の改正について質問をさせていただきたいと思います。

 私自身、望んで法務委員会の方に入り始めて、途中空きましたけれども、ほぼ二年近くなりますが、私自身が法務委員会に入ろうとしたのは、二年前、友人から相談された性犯罪について、しっかりとここでただしたいということから始まりました。

 ですので、今回大きな法改正を迎えたこと自体は本当に大きな前進だと思っておりますし、今米山さんが議論された刑法の重要性に鑑みた様々な質問も十分受けながら、ただ、一方で、今まで、裁判上、同意をしていないことが認定されながらも、いわゆる強制性交罪に該当もせず、本当に苦しい思いをされてきた方の思いというものをしっかり背負わなきゃいけないと思っていますし、今回の法改正、様々説明を受けておりますけれども、処罰範囲は変えない範囲において、今まで本来罰せられるべきものが罰せられていなかったということに鑑みて、しっかりとそれを捕捉していこうというような法改正だと私自身認識しています。

 一問だけ局長と大臣にまず聞きたいと思いますが、これは昨日も参考人として来ていただいた齋藤梓さんが二年前に提出された資料の中に入っていた言葉なんですが、同意のない性交等を犯罪として処罰するというもの自体をしっかりと明らかにしてほしいということを二年前にお話をされていました。

 私自身も、二年前からこの場で、上川大臣、古川さんにはできませんでしたけれども、その後の葉梨大臣、齋藤大臣に対して同じような質問をしているんですが、同意のない性交は犯罪なのかというような問いを立てて、いろいろ御答弁をいただいていました。

 今回、罪名自体も不同意性交罪となりましたし、その捕捉内容自体も同意をしていないということになっておりますけれども、もちろん、八要件でその内心部分をどのように捉えていくのかというような要素というか条件等はあると思いますが、改めて、しっかりと、まず局長にお伺いしたいですが、本改正案は同意のない性交等を犯罪として処罰する法案であるかどうか、御答弁いただけたらと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、本法律案は、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪について、暴行又は脅迫、心神喪失、抗拒不能という要件の下で、その解釈によって成否が決せられるということを改め、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするために、性犯罪の本質的な要素である自由な意思決定が困難な状態でなされた性的行為という点を、同意しない意思を形成、表明若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定し、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙することとするものでございます。

 このように、同意していないことそのものを要件として規定するものではございませんけれども、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えております。

寺田(学)委員 同じ質問を大臣にしますけれども、具体的な法の構成を丁寧にお話しいただきたいと思いますが、以前、改正案が出される前の答弁とは違う形になると私自身思っていますが、本改正案は同意のない性交等を犯罪として処罰するものなのか、大臣にお伺いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 局長の答弁とかぶりますが、同意していないことそのものを要件として規定はしていないわけでありますが、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰される、そういう法律になっていると理解しています。

寺田(学)委員 あとは警察の方にお伺いしたいと思いますのであれですけれども、様々な論点があると思います。

 裁判上になった際に、もちろん起訴される際もそうでしょうけれども、どのようにこの法律自体を解釈していくのかということは大事なことであって、今議論しているんですが、そもそも被害に遭った人の一番最初の駆け込み先は警察です。

 お手元の方に資料としてお配りをしているんですが、二枚ほど配っていて、不同意を表明したにもかかわらず性行為が行われた相談事例ということの下の方ですね、捜査機関における被害届を受理しない際の対応例というふうになっています。被害に遭った人が警察に被害届を出しに、お願いした際に、警察官から投げかけられた言葉というものを被害者を支援されている方々からいただきました。

 今回のこの法律が実効性を持つ意味において最も大事なものの一つは、そういう警察に相談された際に、警察側がしっかりとこの法案の持つ意味、そして、まさしく性的同意というものの意味を理解しているかどうかだと思うんです。

 それで、お伺いしますが、ここに書いているように、あなた、ホテルに行ったんでしょう、括弧、それは同意しているんでしょうということだと思いますが。部屋に入れたんでしょう。自分から車に乗ったんでしょう。玄関前で騒がれたらやむなくと言うと、警察呼べばよかったでしょう。相手がシャワーとか浴びているときに逃げている隙はあったでしょう。酩酊、記憶なしに対して、自分の足で歩いている姿が防犯カメラに映っているから酩酊とは言えないんじゃないの。次の日に、ありがとうございましたとLINE送っているよねと。

 ここに含まれている言葉は、だからあなたは合意したんじゃないですか、同意したんじゃないですか、だからそれは犯罪として捉えられるんでしょうかねということを言われて、改めて傷ついて、結局、事件化もされなかったということが今まで続いていると思います。

 そういう意味において、一般国民として性的同意をどう捉えるかということを、これから一生懸命それは浸透させていかなきゃいけない大事な話だと思いますが、この犯罪自体、起きてしまったことに関してはしっかりと立件する意味で、警察側のこの性的同意に対する意識を改めなきゃいけないと思っています。

 私が聞きたいのは、ホテルについていったんでしょう等、様々な実際にあった言葉がありますが、ホテルに行ったという事実をもって、あなたは同意していたんでしょう、だからそれは事件的には関係ないよねというような対応はしないということは、警察として、これら列挙していますけれども、お約束はできますか。

親家政府参考人 お答えいたします。

 警察におきましては、性犯罪の被害ということで届出がなされた場合は、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、その届出を即時受理することとしております。

 そして、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合に当たるか否かにつきましては、改めて捜査又は調査を行い検討するのではなく、基本的には、届出人から聴取した届出内容から判断することとしているところでございます。

 こうした基本的な対応方針は今回の刑法改正によって何ら変わるものではありませんので、仮に委員御指摘のような状況が認められる場合でありましても、性犯罪の被害として届出がなされた場合は、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、届出を受理することとなるところでございます。

寺田(学)委員 今までと変わらないなら、こういうことが起きるということですよ。今まで起きていることに対して強い反省と、そして、性的同意というものに関する国民以上に強い理解というものが私は警察には必要だと思います。じゃない限り、警察がまた被害者を傷つけることになるということは、今までも山ほどあります。

 そういう意味でいうと、今までと変わりませんというのは非常に不安になるので、機会があるたびに呼ばなきゃいけないかなと思いますが、今、お渡ししているものの裏を見ていただきたいんです。

 お茶のついたユーチューブのものとQRコード、これは何かというと、性的同意とは何かということを表した動画です。それの和訳を下の方につけておりますが、これはどこが作ったかというと、一番下に出典がありますが、イギリスのテムズバレー・ポリスという警察です。警察側が自ら性的同意とはどういうことなのかということを、分かりやすい動画をつけて、かつ、右の上の方にありますが、セックス・ウィズアウト・コンセント・イズ・レイプ、いかに同意というものが大事であるか、そしてまた、同意がない場合はレイプになるのだということを警察自らしっかりと訴えているんです。

 私は、これぐらいの姿勢が必要だと思います。警察側の方で同じようなことができないのであれば、このテムズバレー・ポリスにお願いをして借りたっていいですよ。是非読んでほしいです。同意とはどういうことなのか。紅茶を出すということを例え話にやっているんですが、紅茶を出すということについての同意というものは、理解は一般の人はできるけれども、なぜ、性行為に対してだけは同じような同意というものの理解ができないのかというのを問うたものです。

 これは通告していないですが、それは意識の問題ですが、この法改正が成立した際には、警察官に対する性的同意の研修をすることとともに、警察が自ら国民に対して同意に対する重要さをしっかりとアナウンスしていく、そういうようなお考えはないですか。

親家政府参考人 お答えいたします。

 まず、入口の段階で、被害の届出がなされたときにその受理をどうするかということでございますが、そちらにつきましては、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態で性交等は行われたんだということを申告していただければ、まずそこは、先ほど申し上げたとおり、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除きまして、受理するということであります。

 その後、同意があったのかどうか等々といったことにつきましては、捜査を尽くさなければ明らかにならないものでありますので、今後の捜査で明らかにしていくということであります。

 その上で、これまで、性犯罪の被害届の受理に関する警察の対応につきまして御批判をいただくこともありましたし、被害者の方や支援団体の方がこれについて様々な御意見や御要望をお持ちであるということも承知しております。

 こうしたことを踏まえまして、警察庁におきましては、迅速、確実な被害の届出の受理について、通達や執務資料を発出するなどして都道府県警察への周知を図ってきたほか、警察官に対する各種研修や会議の場等において、累次にわたり、被害の届出受理に関する基本原則について指示等を行ってきたところでもあります。

 また、警察庁の担当者が各都道府県に設置された性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター等を訪問して、支援員の方々から、被害届の受理に関するものを含め、警察の対応について被害者から寄せられた意見等を伺っているところでありまして、警察におきましては、こうした意見等も踏まえ、都道府県警察の指導を行ったり、得られた教訓事項を研さんの素材として活用しているところであります。

 引き続き、こうした取組を推進することによって、被害者の心情に配意した適切な対応が徹底されますよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 そんなレベルだったら、僕、内閣府、内閣委員会へ行って聞かなきゃいけなくなりますけれども。

 私が言ったのは、大臣、ちょっと離席されたのであれですけれども、このお茶の話は、性的同意に対して警察自ら、イギリスのテムズバレー・ポリス、警察署自体がキャンペーンを張って、いかに性的同意というものが大事であるのか、それをどう解釈するべきなのかということを自らキャンペーンとしてやって、全世界の方に広まっているものです。

 今警察庁の参考人のお話がありましたが、ちゃんと警察自ら意識改革しなきゃいけないし、警察としてもここまでやってほしいと願っていますけれども、しっかりと、能動的に、皆さんから性的同意というものに関してしっかりとした国民に対するアナウンスをしなきゃいけないと私は思っています。

 御記憶があるのかどうか、私がこの場で二年前にやったケースなんて本当に警察の問題でした。友人の子供が、友人宅、女の子の親友の家に泊まりに行ったときに、その家のお父さんから、寝ている間に性的なことが起きて、本当に不幸中の幸いですけれども、本人自身は、脱がされたり、されていること自体、動画に撮られていたんですけれども、それを知らなかったんですけれども、それを警察署に親が届け出たときに言った言葉は、その十歳の子供に聴取をさせてもらえないんだったら被害届は受け取れないという話だったんですよ。

 そのレベルの意識の中で性的な同意をしっかりと中心に据えたこの法改正が行われたときに、せっかくできた法律自体が全部警察で止まって、かつ、その場で二次的な被害になるんじゃないかということを物すごく心配しています。しっかりとそこはやってください。もし本当に動きがないんだったら、ほかの委員会へ行って、ちゃんと公安委員長にでもお願いしますけれども、そこは是非心に留めていただきたいというふうに思います。

 警察の方はもうこれで結構ですので、委員長、御退席をお願いしても大丈夫です。

伊藤委員長 どうぞ、もうお出になって結構です。

寺田(学)委員 昨日の参考人の質疑でやりましたけれども、性交同意年齢の話です、保護年齢と言うべきなのかもしれませんが。国として何を守るのかというものが問われております。その意味において、様々な構成をした上でどう線引きをしていくのかというのがありました。刑法ですから謙抑性の話もありますが、私自身としては、政府が今回改正案で置いた前提に関する認識を問いたいと思います。

 今回、政府自身は、政府が置いた前提は、年齢でまず一律に保護対象者を線引きしました。その線引きは、相手側と対等か非対等かというような考え方で線引きをした。かつ、それをどう表現するかといえば、年長者と年少者の年齢差を五歳差とした。その結果として、昨日の参考人質疑でもやりましたけれども、十八歳の成人と十四歳の中学校二年生が非対等とは言えない。言ってみれば、それの逆側ですから、対等であるという部分の考え方にのっとった制度設計をしたということです。

 結局のところ、対等であれば保護はなくなりますし、非対等であれば保護をすることになるんですが、その保護をする、保護を外すということ自体はどういうことを示すかといえば、まさしく国として、刑罰に当たる人に対して、性行為したのであれば重い刑が待っているという抑止効果もあるでしょうし、私自身すごく思うのは、もし性暴力に遭った際に、性交同意年齢で守られていない人、一般的にそれは女性が多いと思いますし、この場合でいうと子供、幼い、年齢が低い女性だと思いますけれども、その子自身が、私はいかに同意をしていないのかということを様々な場で話さなければいけない責任を負うということです。

 それ自体を今回五歳差としたことで、十八歳の成人相手に、十四歳の中学校二年生に対して負わせることになるということが果たして適切なのかということが、この国民を代表した国会という場が国民感覚とともに歩みながら結論として出せるかということだと思います。

 先ほど大臣と山田委員が議論しているのは聞いておりました。私自身は、今回このケースに当てはめて言うと十八歳、十九歳になると思いますが、成人と中学生、中二と中三に当てはまりますけれども、成人と中学生に対等な関係はあり得るのかという問いに対して、全くあり得ないと私は思います。年齢差要件で何歳離れていたらどうかというような議論はあると思いますが、私は、成人と中学生が対等であるということが認められるケースはないと思っています。

 その考えるゆえんとしては何かといえば、昨日も申し上げましたが、成人に関しては、今日お手元にお渡ししているものの裏一枚に、十八歳になったらできることという政府の広報のものを置きましたけれども、一人で契約をでき、移動もでき、様々な資格も取ることができ、まさしく飲酒とたばこ以外の自由と責任を与えられているという成人です。

 一方において、中学生は、働く自由もないですし、もちろん、一部あるのかもしれませんが、当然ながら自分で働くことを決めることはできませんし、自分で移動することもできませんし、自分で何かを契約する当事者になることもできません。

 このような、成熟度合いで、ある一定程度対等と考えるような対人関係があり得るかもしれませんけれども、成人と中学生という、法律の中で全く違う形で設置されているその双方を対等であることが考えられるかと言われて、私は、あると言っている方がどうかしていると思います。

 今見ていただいたものの表の方に、昨日、法制審議会の齋藤先生が出された資料で、性的行為をするかどうかの能力というものはどういうものかという話の中で、先ほど局長も何度か答弁されていますが、これと似たような話で、いわゆる性的行為をどうするかという能力というものを測っていく。一は、行為の性的な意味を認識する能力、二、三とありますが、私は、三番目、局長の答弁にも同じ要素がありますが、性的行為に向けた相手側からの働きかけに的確に対処する能力ということです。

 まず局長にお伺いしますが、この的確に対処する能力というのはどういうことを指すんですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 委員がお配りのこの資料に関しましては、法制審の部会におきまして、メンバーのお一方が御自分の考えとして配られたものでございます。

 ですので、私どもとして申し上げているのは、相手方との関係において、性的行為が自己に及ぼす影響を理解し対処する能力というふうに申し上げているところでございます。

寺田(学)委員 その対処する能力というのはどういうことですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 例えばですが、相手方が年長者である場合に、相手の言うことを聞いて、それについて正しいと考えて相手方の言うことをうのみにしたり、あるいは自分が持ちかけたことに相手方が同意したことをもって考えが正当化されたと思い込むなどして、その結果、性的行為が自己の心身に与える影響を見誤ったりするかどうか、あるいは、年長の相手方の影響のために萎縮して、自らの意思を言い出せなかったり、言い出せたとしても、相手方の言動に惑わされて結局別の選択をしてしまうということがあるかどうかといったようなことだと考えております。

寺田(学)委員 性的行為に向けた相手側からの働きかけ、齋藤さんの話と基本的に局長が言われていることは同じだと思いますので、性的行為に向けた相手側からの働きかけに適切に対処する能力というものの中に、自らの意思で避妊をする能力というのは含まれているんですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 含まれ得ると考えております。

寺田(学)委員 女性の中学生に関わりますが、女性の中学生が、自ら自分の意思でしっかりと避妊をすることを完遂することというのはできるんでしょうか。どのように資するんですか、その能力というのは。

松下政府参考人 お答えいたします。

 中学生が避妊をするかどうかということも含めて、避妊をしなければならないから性的行為をする、しないといったことを自分で判断し、相手に、避妊できなければそういうことはしないと言ったりする能力というふうに考えているところでございます。

寺田(学)委員 コンドームというのは、私は性感染症を防ぐものだと思いますが、それは完全なる男性本位ですよ。男性側が主導権を持っていますよ。女性自らが自らの意思によって避妊する方法というのは、一般的にはピルでしょうね。中学生が自らピルを用意して服用するような環境が、自ら整えることができるんでしょうかね。どういうふうに考えていますか。そういう意味が能力だと思うので、そういう能力をどう捉えていますか。

松下政府参考人 申し訳ございませんが、今の御質問に対して直ちにお答えすることはちょっと困難でございます。

寺田(学)委員 お昼に入る前に局長にお話ししたレベルですので、ちゃんと通告していないかもしれませんけれども。

 ただ、能力があるかどうかということを考えるときに、避妊するということ自体も能力に含まれるのだという認識に立ってみれば、じゃ、その能力をどのようにして、昨日の橋爪先生の言葉をかりて言うと、状況に応じて適切に対処し、自らの意思決定を貫徹する能力が十分かどうか。十分ではないという部分の捉え方もあると思いますけれども。

 私が何を申し上げたいかというと、女子中学生に限って言いますけれども、物すごく脆弱な環境ですよ。それは、娘さんを持たれている方であれば男性であろうとも理解できますし、女性であれば当時のことを思い出していただければ分かりますけれども、自ら避妊することなんて無理ですよ、ほとほと難しいですよ。

 ピルって幾らかかるか、局長、分かりますか。私も妻から教えてもらいましたけれども、一か月どれぐらいかかるか分かりますか。三千円だそうです。三千円って、大人にしてみればそれは簡単かもしれないねと思うかもしれませんが、働くことが許されていない中学生にとってみれば、診察に行き、診察料を払い、それでピルを手に入れ、それを服用し続け、常識的に考えられないですよ。だからこそ、私は、中学生は守るべきだと思っているんです。

 ただ、もちろん、中学生同士、様々な中で、未熟な者同士で性行為に及ぶことはあるかもしれませんよ。それまで罰するべきかどうかということは議論があるのは十分理解していますが、今回、冒頭に申し上げた前提で言うと、成人と中学生を対等だと捉えて、その中学生に避妊をする能力もあるのだという立場に立って法律を進めることは、私は国民的な感覚から大きくずれていると思います。

 もちろん、法務省としても、大きく対立する議論の中で法制審をまとめ、ガラス細工のようにでき上がった法律をしっかりと守りたいという立場は分かりますが、やはり苦しいですよ、この部分。

 答えられるかどうか分かりませんが、中学生自身が、これは女子中学生に限っていいですよ、十八歳、十九歳の男性の成人と自らは対等であると考えている人、どれぐらいいると思いますか。いたら、やはりちょっとその人に対してはケアが必要ですよ。幾ら成熟したって、働く自由も移動する自由もないんですから。

 これは大臣にも局長にもお伺いしたいですけれども、このことを許している範囲において、今、この改正法案のこの部分を存置することの中で、例えば、十四歳の中学校二年生が十八歳の男性成人と同意の下で性交して妊娠した場合、それはあなたは同意能力があるから自己責任ですよという話になるわけですよ。

 本来守ってあげるべき人ですよ、中学生なんて。だけれども、この様々な理由の中で出てきたこの法律のたてつけ自身が、守るべき中学生を守り切れていないということですよ。

 改めて局長に聞きますが、十四歳の中学校二年生が十八歳の成人男性と同意の下で性交して妊娠した場合、それは自己責任だと思いますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 自己責任かどうかという点とはちょっと違うんですけれども、改正後の刑法第百七十六条第一項と今問題になっている第三項は別個独立の処罰規定でございまして、同条三項の年齢差要件というのは、同条一項の要件に該当した上で更に該当するということが必要となるものではないわけでございます。

 ですので、五歳差未満の年齢差である場合でありましても、両者の関係性によっては一項八号の社会関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮している場合などもあり得るわけでございまして、そうした場合には、それによって同意しない意思を形成、表明し若しくは全うすることが困難な状態に陥っていたと認められれば、改正後の刑法第百七十六条一項、百七十七条一項の規定により処罰対象となり得るところでございます。

 その上で、性交同意年齢の規定につきましては、繰り返しになりますが、暴行、脅迫等の意思決定に影響を及ぼすような状況がなくても、両者の性別や関係性等を問わず、性的行為をしたこと自体で性犯罪が成立するというものでございまして、お互いに好き合っていても、年齢が違うということだけで犯罪になるということになりますので、これはわいせつ行為も性交行為も含まれますので、例えばキスであるとか、そういった性交以外の行為についても全て同じ関係性で規律されるところでございまして、そういった意味で、刑罰の謙抑性の観点から、年齢条件が満たされれば直ちに処罰の対象になるという厳しいものであるという意味で、例外なくおよそ対等な関係がない場合ということで五歳差という年齢差を法案として提出しているところでございまして、その裏返したところ、つまり、五歳差でなければ対等な関係だというふうに申し上げているわけではないというところを御理解いただければと存じます。

寺田(学)委員 基本的なことですけれども、中学生はやはり中学生で、すべからく働く自由は基本的にないですし、移動の自由もないですし、契約当事者にもなれないですよ。十八歳になった成人は、基本的にそれは、先ほどお示ししたとおり、経済的な自由も、働く自由も、移動する自由も持ちますよ。例外ないですよ、どっち側にも。

 私は、様々前進してくれた法案だと思っていますが、昨日も参考人の方々が言われていましたけれども、やはり法案自体が社会に与える影響は物すごく大きいんだという話ですよ。

 この中において、様々な中で出てきた五歳差かもしれませんけれども、成人と中学生の間に対等の関係があり得るということを包含しているわけですよ。私は、それは絶対におかしいと思うんです。だって、どう考えたって、中学生は中学生で制限されているし、自由はないですよ。御自身だってそうだったでしょう。成人になったら成人になったで、様々な権利を与えられますよ。そこに対等性なんてないですよ。

 容易に想像がつきますけれども、男性側が成人だとすれば、車を持ちますよ、一人でアパートも借りられますよ。中学生同士とかそういうようなレベルじゃないような様々なことを、恐らく年少者に対してアプローチしてくるでしょうね。それに対して、経済的な自由も避妊する能力も実質的にないような子供を保護対象にしないということ自体が、国の政策として誤ったメッセージだと僕は思っているんです。

 どういう形でそれを解消していくのか様々知恵を絞らなきゃいけないですが、私の規範意識は、成人になったら、中学生に対して性行為の対象にした瞬間に罰するべきだということです。それは例外なくです。なぜなら、対等じゃないからです。それが対等であるんだというんだったら、僕は示してほしいですよ、そんな成人と中学生の間に対等性があるんだなんていうんだったら。

 大臣にお伺いしたいんです。

 様々な考え方はあると思います、様々な経緯が今まであったと思いますが、私は、今回、法改正する上で、誤ったメッセージは国として絶対に与えたくないと思っています。もちろん、法務省として厳しいものはあると思うので、娘さんもいる牧原さんを含めて、様々、みんなで国民感覚に寄り添って、いかにちゃんと脆弱な中学生を守るのか。その相手が成人だった場合には、私は罰するべきだと思っています。こういう価値判断に対してどういうようにお考えですか。

齋藤(健)国務大臣 一つの考え方だと私は思います。

 その上で、この処罰というのは、とにかくその差があったら一律に全部アウトだという切り口なものですから、そこは、じゃ、一歳差でいいのかとか二歳差でいいのかとかいう議論になってくるわけでありまして、そこはやはりある程度の差が必要なんだろうというふうには思います。

 一方で、十八歳になったら一律という話は、先ほどの山田さんのときに議論をしましたけれども、ある日突然、関係が変わってしまうという不安定性をもたらす、そういう可能性もあるので、要するに、寺田さんの考えで法律を立案をするとしても、かなり難しい問題が一方であるんだろうなというふうには思っています。

寺田(学)委員 法技術的、法設計的な様々なゆがみが出てくるかもしれないというような大臣の責任者としての御懸念は十分理解しながらも、それをもって守るべき中学生を成人からしっかりと守ってあげないということが、その法のゆがみがあるからやはりそれはできませんよねという方が優位になるかどうかというのも問われていると思います。

 正直言うと、もうあとは、ここは立法府ですから、政府がのむかのまないかじゃなくて、自民党の皆さんも含め、立憲の皆さんも含め、様々ここにいる、集っている方々自身が、果たして、成人と中学生というものが対等であるのだ、そういうケースがあって守る必要がないのだというふうに立つかどうかだと思います。私自身、それこそ厳しい刑罰であるということは十分踏まえた上で申し上げるからこそ、成人と中学生の間には一切対等な関係なんてあり得ないと思いますので、一律罰することに何ら問題は私はないと思っています。

 もちろん、それを施行する上で様々な法的な何か問題点があるとすれば、それを何かしら技術的に、運用的に賄っていくという考え方が、物事の大事さを順番で考えたらそういうことだと思うんです。そこは、大臣から御答弁を求めるというよりは、これから修正協議させてもらいますから。広く国民に問うべきですよ、皆さんにとって、成人と中学生が性行為をするということに対して、国家としてそれを認めるのかと。

 私は、フランスも性交同意年齢を上げたということに対して結構驚いたんです。自由な国と言われていますから、そこに対して様々なことは議論があったと思うんですが、性交同意年齢をあそこは十五未満という形で上げたんですけれども、そのときのフランス法務大臣が言った言葉はすごく印象に残っていて、いかなる成人の加害者も十五歳未満の未成年者の同意に頼ることはできないという言い方をしました。まさしくこれが性犯罪から脆弱な子供たちを守るという大人の態度だと私は思っています。

 そういう意味で、しっかりと与野党で協議したいと思っていますので、是非そこは柔軟に、我々が出す結論に対しても法務大臣としてお力をかしてほしいということを申し上げて、終わりたいと思います。

伊藤委員長 次に、漆間譲司君。

漆間委員 日本維新の会の漆間と申します。

 私、二年前に、地方議員のときに、ちょうどこの法案に関連する意見書を偶然にも取りまとめさせていただいておりました。そのときに、警察の現場の担当者から、特に未成年者を性犯罪被害から守るための加害者再犯防止の取組、これをしっかりと国が主体となって進めてほしいという要望を強く強く受けておりました。これを当時、意見書にも取り入れさせていただいたところであります。

 これまでも本会議の議論では再犯防止の取組が議論をされておりまして、更生プログラムの導入であったり、子供の職業から性犯罪者は排除することや、日本版DBSの導入などが議論されております。本委員会では、我が党の阿部委員からは、ペドフィリアの対応なども議論されており、今日も多分議論されると聞いております。海外ではほかにも、GPSの装着などもされているところがあるとお聞きしております。

 そこで、国が主体となった取組として、性犯罪者、性犯罪加害者の再犯防止の取組としてどのような施策があるのか、課題や今後の方針について御説明をお願いいたします。

上原政府参考人 お答えいたします。

 性犯罪、性暴力は、被害者の尊厳を著しく踏みにじる行為であって、決して許されないものであり、性犯罪者の再犯防止も含めた性犯罪、性暴力対策の更なる強化が必要となっております。

 そのため、政府は、令和五年三月、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議において、性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針を取りまとめたところでございます。同方針では、令和五年度から七年度までの三年間を更なる集中強化期間として位置づけ、関係府省が連携して各施策を推進していくこととしております。

 同方針に盛り込まれた、法務省が主体となって行う性犯罪者に対する再犯防止の取組としては、刑事施設及び保護観察所において実施している性犯罪者に対するプログラムについて、引き続き、指導者育成を進めるなどしてプログラムの充実を図ること、仮釈放中の性犯罪者等に対するGPS機器の装着を義務づけること等について、令和四年度までに諸外国の法制度、運用等に関する調査を行ったところ、その結果を踏まえ、所要の検討を行うことなどがございます。

 法務省としては、更なる強化の方針に沿って、関係府省とも連携しながらこれらの施策に取り組み、引き続き、性犯罪者に対する再犯防止対策を進めてまいりたいと考えております。

漆間委員 未成年者の性被害は、ほとんど加害者が同じで、ほぼ、警察も認識している、そういった中で、再犯防止の取組をしっかりとお願いいたします。

 続きまして、この法案に関連して、ワンストップ支援センターに関する支援についてお伺いいたします。性被害者をいかに助けていくかについてお伺いさせていただきます。

 私の地元大阪にあるNPO法人性暴力救援センター・大阪SACHICOは、全国で初めて大阪の民間病院に開設されたワンストップ支援センターであり、被害直後から、相談支援、医療的支援、関係機関との支援のコーディネート等といった性犯罪の被害者への総合的支援を行うとともに、性犯罪、性暴力被害者支援の専門的な知識を持った支援員、医師、看護師などがサポートを行っており、二十四時間体制でホットラインを受け付けております。医療的な支援を含めた被害者支援を受けることができるSACHICOを始めとしたワンストップ支援センターは、性暴力の被害者にとってまさに駆け込み寺のような存在であると承知しております。

 日本維新の会は、これまで、他の野党と共同して性暴力被害者の支援に関する法律案を提出しており、その中では、国及び都道府県によるワンストップ支援センターに対する財政上の措置などの施策を講じるものとしております。

 まず、現在ワンストップ支援センターに対して国及び都道府県からどのような支援が行われているのか、お聞きいたします。また、あわせて、令和五年度の性犯罪、性暴力、支援のためのワンストップ支援センターに関わる予算及びその内容についても御説明をお願いいたします。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 ワンストップ支援センターは、被害直後からの医療的支援、法的支援、相談を通じた心理的支援を総合的に行うことができる機関であり、全ての都道府県で設置されています。

 内閣府においては、センターを設置する都道府県等に対し、性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金によりまして、センターの運営費、医療費等を支援しているところであり、この交付金の令和五年度予算額は約四億八千万円となっております。また、ワンストップ支援センターの全国共通番号、シャープ八八九一、「はやくワンストップ」の導入や、夜間、休日の対応が困難なセンターを支援する性暴力被害者のための夜間休日コールセンター事業の実施など、相談者が相談しやすい環境の整備などにも取り組んでおります。

 これらの取組を通じまして、引き続きワンストップ支援センターに対する支援に取り組んでまいります。

漆間委員 刑事法検討会や法制審議会部会において、性犯罪については、その性質上、恥の感情や自責感によって被害者申告が困難であることや、周囲が被害に気づきにくいということから、他の犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすく、その結果、捜査機関が犯罪の発生を認知できないために、その捜査、ひいては訴追が困難になるという特色があると指摘がなされております。このようなことを防ぐためにも、性犯罪による被害を申告しやすくする環境整備が重要であると考えます。

 政府は、令和五年三月に策定した性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針において、本法案の成立後は、その円滑な施行のため、その内容を広く一般に周知するための広報啓発に取り組むとともに、警察やワンストップ支援センターなど、被害者と接する現場職員等が適切に対応できるよう、関係府省が協力して研修の実施に取り組むことを掲げておりますが、これは是非とも進めていただきたいと思います。

 さらに、先ほど紹介した私の地元大阪にあるワンストップ支援センター、大阪SACHICOによると、二十四時間でホットラインを設けることや医師や看護師等のサポート体制を維持することは、財政的にもかなり厳しいとの意見が寄せられております。これは他のワンストップ支援センターも同じような現状ではないかと思われます。

 今回の刑法改正を機に、性犯罪の被害者に対する支援を更に手厚くしていくことが重要と考えますが、ワンストップ支援センターに対する更なる支援についてどのように考えているのか、お聞きします。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府では、ワンストップ支援センターの相談員の支援能力、専門性向上のため、相談員等への研修を実施しております。本法案が成立した際には、被害者と接する現場の職員の方々等が適切に対応できるよう、関係省庁と協力して研修の実施に取り組んでまいります。

 また、先ほどお答えしました性犯罪・性暴力被害者支援のための交付金などについて、引き続き、必要な予算を確保して、ワンストップ支援センターの運営の安定化等に努めてまいります。

漆間委員 まずは、法定化と更なる財政の充実を今後も求めていきたいと思います。

 さらに、昨日の参考人質疑では、参考人の方から、研修の実施だったり相談員の質、量を含めた充実の支援も重要だということが言及されておりましたので、是非そこもよろしくお願いいたします。

 続きまして、法案についてちょっと詳細をお伺いいたします。

 近年、AIの進歩は非常に目覚ましいものがあり、最近では、画像生成AIや、対話型AIのチャットGPTが世界中で話題となり、テレビや新聞においても目にしない日はないほど注目されております。AIは、私たちの生活を便利にする一方、その利用に当たっては、様々な方面から警鐘を鳴らす人もいます。

 そこで、今回は、このAIと、現在審議が行われている、特に電磁記録の消去の法案との関係についてお聞きしたいと思います。

 まず、今回の法律案で電磁的記録の消去の対象とされているのは、正当な理由がないのにひそかに撮影された性的姿態等とされておりますが、この性的姿態等にはどのようなものが含まれるのか、説明をお願いいたします。

松下政府参考人 お答えいたします。

 性的姿態撮影等処罰法案において撮影罪等の対象としている性的姿態等とは、性的な部位などと、わいせつな行為又は性交等がされている間における人の姿態に分けられます。このうち、前者の性的な部位等につきましては、性的な部位、すなわち性器若しくは肛門若しくはこれらの周辺部、臀部又は胸部と、それから、人が身につけている下着のうち現に性的な部位を直接若しくは間接に覆っている部分をいうものでございます。

漆間委員 今御説明いただいた性的姿態等を撮影した電磁的記録については消去の対象となるといったことでありました。

 では、その画像について、先ほどもお話しいたしましたAI、画像生成AIが電磁的記録を編集して新たな生成物を作成した場合はどうなるのか、お伺いしたいと思います。

 例えば、ひそかに撮影された性的姿態等の電磁記録があったとします。これをAIが、その性的姿態等の電磁記録風な画像を制作して、それに似ているけれどもちょっとそれ風の画像を生成したとして、元々の性的姿態等が保存された電磁記録はAIが編集する前の原本に当たるということになるので、これは消去の対象になると思うんですけれども、では、画像生成AIにより新たに作成されたその原本風の画像というのは、性的姿態を撮影した電磁記録として消去の対象とされるのでしょうか。AIが作成した画像に関する検討がどのようになされているのかも含めて説明をお願いしたいと思います。

 また、もう一点、AIの開発における、性的姿態等を撮影した電磁記録の読み込みによる情報解析そのものも違法の対象となり得るのかについても併せてお伺いいたします。

松下政府参考人 本法律案におきまして、第十条の消去等措置の対象となる性的な姿態の画像でございますけれども、これは性的姿態等撮影罪若しくは性的姿態等影像記録罪に当たる行為によって生じたもの又はこれを複写したもの、これらに記録された電磁的記録などとしておりますところ、お尋ねのように、性的姿態等を撮影した画像中の一部を別の画像のものにつけ替えるような編集をして画像を生成するといった加工が行われた場合、加工によって画像の同一性が失われたか否かによって消去等措置の対象となるか否かが判断されると考えております。

 その判断に当たりましては、消去等措置などの措置を設ける趣旨に鑑みますと、画像の本質的な部分である性的姿態等の部分に変更があるかどうかが重視されるものと考えられますので、例えば、お尋ねのように、画像中の被害者の顔だけを別人の顔につけ替える編集がされたものの性的な部位については変更が加えられていない場合には、一般に、性的姿態等の画像として同一性が失われているとは言えないことから、加工されたものは性的姿態等撮影罪に当たる行為により生じたものを複写したものに該当し、消去等措置の対象となると考えられます。

 また、AIの開発において性的姿態等を撮影した電磁的記録を読み込んで情報解析する行為はどうかということでございますが、これが具体的にどのような状況なのかが、ちょっと具体的に今イメージできないところではございますけれども、例えば、インターネット上にアップされている盗撮画像などを基にして人の性的影像記録を生成し、これを提供又は公然陳列の目的で保管した場合には、詳細な事実関係によるものの、性的影像記録保管罪が成立し得ると考えております。

漆間委員 最後の後半の方は、別の罪が該当するという答弁でよろしいんですかね、保管した場合は。

    〔委員長退席、藤原委員長代理着席〕

松下政府参考人 御指摘のとおり、保管罪が成立するということでございます。

漆間委員 今、著作権法との関連でも、生成AIに関しては、文化庁だとか文科省が答弁しておるんですけれども、大体同じような答弁の内容と理解いたしました。同一性が結構重視されるというところで、元の画像とどれぐらい同一性が認められるかというところで判断されると。

 情報解析そのもの、AIは、例えば、盗撮風の画像を生成する際の、盗撮風と言うとちょっと変ですけれども、スポーツをしている様子を、生成する際の、画像生成として情報を取り込むこと自体は違法ではないという認識でいいんですよね。だと思っておりますけれども。

松下政府参考人 御指摘のとおりです。

漆間委員 確認させていただいたということで、これでいいかと思います。ありがとうございます。

 次に、別の質問に移らせていただきます。

 参考人質疑を昨日させていただいたんですけれども、そこで、法整備と併せての社会への啓発の重要性については、参考人全ての方からこれがすごく重要なんだといただいたところであります。特に、参考人の方からは、そうなの、初めて知った、そういう会話がこれからすごい重要なんだということもおっしゃっておられました。まさに、社会の意識の変革といったものがこれから必要だと考えられます。

 具体的には、一般の方々への啓発であったり、子供への教育だったり、あと、捜査機関だったり専門機関への研修だったりが今後必要になってくるのかと思われますけれども、まずは、今後、法務省の方針について、大きくお伺いさせていただきます。

松下政府参考人 お答えいたします。

 周知や広報の必要性については十分に認識をしております。その具体的な方法等について、現段階で確たることをお答えすることは困難でございますけれども、法務省としては、御審議いただいている性犯罪に関する二つの法案が成立した場合には、改正の趣旨や内容について、関係府省庁、機関や団体などとも連携をしつつ、適切に周知、広報してまいりたいと考えております。

漆間委員 その周知、広報に関しては、これまでの議論にもありましたように、その正確性も含めて、基準だったり、そういったことも含めて、本当に変革を起こすぐらいやっていかなければならないと思っておるんですけれども、改めて、一言、大臣から意気込みもお伺いさせていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のように、これは、やはりかなりの周知、広報をしていかなくちゃいけない話だと思っていますので、今刑事局長から答弁申し上げたように、二つの法案が成立した場合には、改正の趣旨や内容について、関係府省庁、機関、団体と連携しながら、適切に周知、広報してまいりたいと考えています。

漆間委員 齋藤大臣、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、今回の法案に関して、幼い子供たちを守るために、幼い子供たちとそういう行為をする当事者を罰しようということは今回の法案ですごく言われておるんですけれども、例えば、そういうふうなことを教唆したり唆したりするという行為についても、被害者からしたら同じようなものかと思っておりまして、そういったことについてちょっとお伺いさせていただきます。

 四月二十七日の新聞報道では、金に困っているなら立ちんぼしてみなよと女性客を唆したとして、警視庁保安課が二十七日、東京・歌舞伎町のホストクラブ従業員を売春防止法違反の教唆容疑で逮捕したとの報道がありました。この売春唆し行為の摘発は約六十年ぶりであったとのことです。

 このような、ホストクラブに通い詰めた女性がお金に困ったという事案のほか、家出をしている未成年者に対してSNSを通して売春行為をさせる事案なども報道などで耳にするところでありますし、このような売春唆し行為は全国でこれだけということではなく、氷山の一角にすぎないのではないかと思っております。

 この売春唆し行為は売春防止法違反で摘発されていますが、本法務委員会で審議されております刑法改正法案では、性交同意年齢が十三歳から十六歳に引き上げられ、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な場合には不同意性交等罪が成立するとされています。

 このように、本人の意思としては性交したくない、しかし代金支払いなどのためにやむを得ず性交を行っている、このような性行為の唆し行為、売春の唆し行為だったり教唆によって性交させられた事案についても刑法の対象となれば、被害は減らせるのではないかと思いますが、法務省の見解についてお聞かせください。

    〔藤原委員長代理退席、委員長着席〕

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、改正後の刑法第百七十六条第一項各号に掲げる行為、事由その他これに類する行為、事由によって、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態で性交等をした場合、それからもう一つ、十三歳未満の者に対して性交等をした場合、又は十三歳以上十六歳未満の者に対してその者が生まれた日より五年以上前の日に生まれた者が性交等をした場合に、不同意性交等罪で処罰することとしております。

 お尋ねのような場合に、売春行為を唆した者が不同意性交等罪で処罰され得るかということにつきましては、個別の事案ごとに判断されるべき事柄ではありますが、単に売春行為を唆したというだけでは不同意性交等罪により処罰されないと考えられる一方、例えば、性的行為の相手方が不同意性交等罪の要件に該当する場合に、その者との間に不同意性交等罪の共謀が成立したと認められるような場合には、同罪により処罰をされることとなり得ると考えられます。

漆間委員 共謀が成立した場合は適用されるということで、これまでなかった部分も適用されていくということでお聞きしましたが、できるだけ多くこういうものを摘発できるようにお願いしたいと思います。

 続きまして、質問を一つ飛ばしまして、司法面接を飛ばしまして、障害をお持ちの方々の性被害について質問させていただきたいと思います。

 昨年十一月の法務委員会におきまして、私は、障害に乗じた性犯罪及び障害を知り得る立場に乗じた性犯罪の処罰規定について、早急に創設すべきであることをお願いしていたところであります。

 今回の改正法において、障害に乗じた性犯罪及び障害を知り得る立場に乗じた性犯罪については処罰される規制とされているのかについて、まず説明をお願いいたします。

 また、今法整備における司法面談は障害者の性被害においても運用されるのでしょうか。運用されるならば、運用に当たって認識している課題や留意点についても教えていただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑法第百七十六条第一項、第百七十七条第一項におきましては、例えば、心身の障害があること、また、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していることによって、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態で性的行為が行われれば、これらの罪が成立し得ることを明確にしております。

 これらの規定によりまして、例えば被害者が心身の障害を有していること、障害を有する方を監護する立場にある行為者が地位、関係性を利用することによって同意しない意思の形成等が困難な状態で行われた性的行為を的確に処罰することができると考えております。

 また、お尋ねの二つ目ですけれども、改正後の刑事訴訟法第三百二十一条の三は、被害状況等を繰り返し供述することによる心理的、精神的負担の軽減を図る必要がある対象者として、性犯罪の被害者を始めとする、更に公判準備又は公判期日において供述するときは精神の平穏を著しく害されるおそれがあると認められる者と定めておりまして、障害を有する性犯罪被害者も、これに当たる場合には対象となり得ると考えております。

 そして、現在の運用におきましては、供述者の負担軽減及び供述の信用性確保の観点から、児童が被害者又は参考人となる事件のほか、知的障害、精神障害、発達障害等、精神に障害を有する被害者に係る性犯罪事件で代表者聴取を行うことが相当と認められる事件を対象といたしまして、代表者聴取の取組が行われ、この手段として、いわゆる司法面接的手法を用いた聴取が活用されているものと承知をしております。

 以上でございます。

漆間委員 適切な司法面談での運用をお願いいたします。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、阿部弘樹君。

阿部(弘)委員 日本維新の会の阿部弘樹でございます。

 私は、どちらかというと、不同意わいせつのことについてお聞きしたいと思っております。

 前回の質問で、ペドフィリアのことを質問させていただきました。性嗜好障害の中で、小児性愛というところでございます。これは、アメリカの精神医学会でも、もちろんヨーロッパの精神医学の教科書にも、精神科の分類として挙げられております。

 DSM―5、これは診断と統計の精神医学の教科書でございます。この中でペドフィリアというのはどういうふうに定義してあるかということは、小児性愛、六か月以上の性的興奮、そして何よりも、十六歳未満の子供たちに対して、五歳以上の年齢差がある者はペドフィリアに相当するということを規定しているわけでございまして、まさにこの法案の五歳差というのは、アメリカの精神医学の教科書にも合致するものだ、まさに犯罪である前に病気であるということでございます。

 そして、小児性犯罪者、これは子供たちに対する不同意わいせつ、強制わいせつなどの行為を行うことでございますが、現在、小児性犯罪に対してどのような取組をなさってあるか、お聞きしたいと思っています。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは、いわゆるペドフィリア、小児性愛者や、チャイルドマレスター、小児性犯罪者について、それぞれ、小児を対象とした性的嗜好を有する者、あるいは小児を対象とした性犯罪を行う者を意味するということを前提としたものであると理解をしております。

 その上で、現行法の子供に対する性犯罪といたしましては、例えば、刑法において、いわゆる性交同意年齢が十三歳未満とされておりまして、十三歳未満の者に対するわいせつな行為又は性交等につきましては、強制わいせつ罪又は強制性交等罪によって処罰することとされておりますほか、児童買春等処罰法におきまして、十八歳未満の者を対象としたいわゆる児童ポルノについて、その提供行為等を処罰することとされているところでございます。

阿部(弘)委員 私は前回の質問において、埼玉、東京における幼女、女児四名を殺害した事件についてお話しさせていただきました。

 これは正確にはペドフィリアではないわけでありまして、成人との代替性、成人との代わりに女児にそういう行為を行ったということではないかということでございます。精神鑑定でははっきりはしないわけでございますが、身体に障害があられて、何らかの児愛意識、代替意識もあったのかもしれません。

 さて、我々人間の性について少しお尋ねしたいと思っております。

 現在、欧米や、アメリカでは、小児の発達理論、これはピアジェの思考発達段階説とフロイトの発達心理学、この二本が発達心理の非常にお手本となる理論であります。日本では余り、フロイト博士のお話というのはそれほど取り上げられたりはしませんが。フロイト先生が、私が留学していた先の講師の先生でもあったわけですが、様々、ヒステリー、神経学の研究もなさって、そして、このような夢判断や性に関する著書も多数あられたわけです。

 子供は、生まれてきて、母親にお乳を飲ませてもらう。この時期を口唇期というわけであります、最初の、児童発達の期間を。次は、排便、おしっこ。うんちの、排便の訓練を行います。この頃を肛門期といいます。ドイツ語ではピピとルルというんですけれども、それは幼稚園でも保育園でも、あるいは家庭でも、非常によく教えていただける。そして、エディプス期、日本語では男根期ともいいますが、この頃がちょうど「クレヨンしんちゃん」の頃でございます。ですから、「クレヨンしんちゃん」には性器の話、あるいはお尻を丸出しにする話。あるいは、子供たちの間では今、うんこノートというのが非常にはやっているということでございます。エディプス期、これが男根期ですね。そして、潜在期を経て、性徴期の性器の期間に入っていくということです。

 実は、フロイト先生が百年前にこの発達論を発表し、そして、お乳をしっかり与える子供と与えられなかった子供、与えられなかった子供が、やがてアルコール、多飲酒になったり、あるいは食べ物の嗜好の障害を起こしてきたり、そういうことを書物で発表した後に市民に講演会をしたら、大反響を及ぼしまして、ショックをウィーンの市民に及ぼしてしまった。

 そしてまた、肛門期というのは非常に幼児期では大切で、排せつの訓練をする。訓練をしなければ、トイレで排せつもしない、社会のルールもなかなか守れないとなってしまう。お母さんは、ここでしなさい、そして、うんちがすぐに出なければ少し我慢しなさいということを教えるわけでございます。このしつけの時期を失敗することで、忍耐力や、あるいは、うんちがお金と、あるいは幼児という象徴的な変換を受けて、お金をルーズに使う、そういう性格になったり、子供に対する誤った、ゆがんだ性愛を及ぼす。

 これは、その当時はショックであったわけですが、やがて、そのお弟子さんの心理学者たちによって、これが全くの間違いではなくて、ある程度それが正しいことが分かってきた。

 特に、肛門期のことが非常に大切でございます。二歳から四歳になると、自己中心的な、情動的な傾向、強い欲求に即座に動こうとする。母親の要望に応えられるように排便というものを行うことによって、自信、そして諦める能力、我慢する能力が備わってくる。ですから、この時期というのが非常に大切な時期でございます。

 そして、その後、自分と女性との性について、私には、男の子にはおちんちんはあるけれども、女の子にはおちんちんがないということに気がつき、そして、父親に取って代わり、母親の愛情を一気に、一つに取り込もうとする。この時期が先ほどのエディプス期。これは、ギリシャ神話の悲劇で、オイディープス王が息子によって殺され、そして母親と結ばれるというギリシャ神話に由来します。これは、ある意味では近親相姦を予期させる時期でもあるというふうに言われておるわけでございます。子供は、父親に代わって母親を奪いたくなる。娘は、母親に代わって父を奪いたくなる。思春期とは全く違う行動でもあるわけでございます。

 かように、発達論においては、常に性的な力というものを発揮しながら、特に、妊娠して、精子をつくれるようになる、卵子をつくれるようになった第一性徴期から第二性徴期に至るまで、リビドーという性的な力が命を育んでいく、力強く生きていく力になっていくというのが、現在のフロイト先生の発達理論でございます。

 これが広くヨーロッパなどでは理解されて、そしてまた、アメリカの精神医学会などでは、同意性交年齢はイギリス、カナダは十六歳、フランスも十五歳になっておりますが、五歳差というのは、これはペドフィリアですよということを広く皆さんが御存じ。ペドフィリア以外にもパラフィリアというのがありますが、これはまた時間が許せばお話ししたいと思っております。

 このペドフィリアの治療について、国はどういうふうに接していかなきゃいけないか。もう既に百二十年前に、ヨーロッパでは、ペドフィリアについての治療あるいは取組というのは、司法の世界でも当たり前のことになっている。ただ、この委員会の議論でも、ペドフィリアと、そうでない、フロイト博士の言葉をかりれば意思の世界、自我の世界と、全く区別がなく議論されているように思われてくるわけでございます。

 ちょっと話を飛ばしますが、この同意年齢については、今回は引上げというふうに考えてよろしいんでしょうか。

松下政府参考人 御指摘のとおりでございまして、これまで十三歳未満としていたものを一応十六歳未満とした上で、先ほど申し上げましたけれども、十六歳未満というふうに引き上げることとしているものでございます。

阿部(弘)委員 もう当たり前のことだから、予告なしで。

 淫行罪は残っているんですよね。

松下政府参考人 児童福祉法の方でございますか。

 それはそのまま残っております。

阿部(弘)委員 多少、日本の司法と欧米の司法感覚と少しずれがあるのかなと思ったりもするんですが、そういうことで、性交同意年齢もイギリスやカナダなどと同じく十六歳になったということで、非常に私はいいと思っております。

 強制わいせつ罪を英語で訳すと、フォーストインディセンシー。これを、今日、米山先生が、戻ってこられましたけれども、不同意と訳すとどんなふうになるわけですか、英語で訳すと。

松下政府参考人 お答えいたします。

 直ちにお答えすることが難しくて、実際に改正が成りましたら、これをどのように英訳するかを正式に決めるということになると思います。

阿部(弘)委員 ディスアグリーなのか何なのかちょっと分かりませんけれども、なかなか、法制局で不同意性交、不同意わいせつという言葉に変えたわけですけれども、わいせつ罪というのは全部不同意じゃないんですかね。そこいらは、この言葉に決めた経過というのがありますか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、現行の強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪の要件を改めて、性犯罪の本質的な要素が、同意していないのに、自由な意思決定が困難な状態でなされる性的行為であるという点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いた要件として規定することとしておりまして、こういった文言を使った要件とすることに鑑みまして、いわゆる罪名、条の見出しといたしましては、強制わいせつ、強制性交等罪から、不同意わいせつ、不同意性交等とすることとしたものでございます。

阿部(弘)委員 少し話は戻りますが、性欲論、これは思春期に始まるものではなくて、もちろん、先ほどお話ししましたように、おなかの中で妊娠して、子供が精子や卵子をつくれるようになってから始まるものだ、それで、活動を満足に求められないと、それを生命の原動力にするというのがリビドーの理論でございます。要するに、性欲が人間の生命活動にとっては非常に重要だということでございます。

 今回は、現代社会においては、性について国家が取締りを行うということでございます。

 私がウィーンにいた頃に最初に見たオペラが、モーツァルトのフィガロの結婚、あるいはドン・ジョバンニ、これは連作でございますが、何をテーマにしていたか。これは、荘園領主がそこにお住まいになる女性の処女権を持っている、処女を奪う権利を荘園領主が持っているから、ドン・ジョバンニが、幕を越えて、馬に乗って、フィガロの結婚を、荘園領主との結婚を邪魔するという、ある意味では、法の支配を持っている荘園領主が性をコントロールするという、とんでもない社会の風刺オペラでございました。

 時代は遡って、百年した後にフロイト先生の時代になって、そして、刑法で様々な罪状、条文をウィーン大学で学ばれて、日本の刑法が作られたというふうに聞いておるわけでございます。

 お尋ねします。

 児童性愛、これは先ほども言いましたように、精神障害でございます。精神病であるならば、それぞれの矯正施設やあるいは社会復帰のための保護観察部門でも様々な治療をなさってあると思われますが、いかがでございましょうか。

花村政府参考人 お答えします。

 刑事施設におきましては、強制性交等、強制わいせつなどの性犯罪を行った者の中で、性犯罪の要因となる考え方に偏りがある者、いわゆる認知のゆがみのある受刑者等に対して、個別的に再犯につながる問題性の大きさを判定し、その度合いに応じて、刑事施設の職員や処遇カウンセラーが認知行動療法に基づく性犯罪再犯防止指導を行っております。

 具体的な内容としては、受刑者に、グループワークや個別課題の中で、認知のゆがみなどの性犯罪につながる要因を検討させるとともに、その要因に対処するための知識やスキルを身につけさせ、それらを出所後の生活で実践するための再発防止計画をそれぞれ作成させるなどしているところでございます。

宮田政府参考人 社会内での取組ということでお答え申し上げます。

 保護観察所におきまして、性犯罪を行った保護観察対象者に対して、認知行動療法を理論的基盤とした性犯罪再犯防止プログラムというのを実施してございます。

 具体的な内容といたしましては、例えば、性加害を肯定するような認知のゆがみに気づかせ、これを別の認知に変えるための課題に取り組ませるなどしまして、性犯罪に結びつくおそれのある認知のゆがみ、自己統制力の不足などの問題性に気づかせ、これらを改善し、再び性犯罪をしないようにするための対処方法を習得させるというものでございます。

 プログラムにおきましては、共通のカリキュラムを用いて実施しておりまして、小児に対する性加害に特化したプログラムではないわけでございますけれども、多少工夫をしておりまして、幼い子供に対する性加害を行った対象者につきましては、その特性等を踏まえた指導内容を個別に追加して実施するなどして、処遇の実効性を高めるよう努めているところでございます。

 引き続き、保護観察所におきまして、プログラムの着実な実施に努めてまいりたいと考えております。

阿部(弘)委員 実際に、このようにDSM―4で病気として位置づけられておりますが、厚労省はいかがでございましょうか。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国における小児性愛者に対しての治療に関しましては、例えば、性衝動の制御等を目的として、認知行動療法等の考え方を用いた面接技法を活用することが考えられるところでございます。

 また、うつ病や統合失調症といった併存する精神疾患がある場合に、抗うつ薬や抗精神病薬などの症状に応じた薬物が投与されることがあるものと承知をしております。

 いずれにいたしましても、小児性愛について、小児への性的愛好やわいせつ行為を完全になくすことのできる効果的な治療方法というのは、現時点では確立をしていないものと承知をしております。

阿部(弘)委員 実は、抗精神病薬のアリピプラゾールが、長期服用者の中で性倒錯症やあるいは性欲の亢進症を来すということが分かってきております。性機能を保つ薬は、高血圧の薬を治験中に起きております。そういうことからも、しっかりと性亢進症のメカニズムが分かる端緒になるのではないかというふうに思っております。

 アメリカのニュージャージー州のメーガン法では、GPSをつける、その罪の重さによって様々な方策を行っておられますが、是非とも考えていただきたい。

 青年性愛はエフェボフィリア、これもパラフィリアでございますから、精神障害の一つであることを申し添えます。

 それでは、大臣に、児童性愛者を含めた、法改正の意義についてお尋ねします。

齋藤(健)国務大臣 子供に対する性犯罪ということにくくられるんだろうと思っておりますが、今回の法改正におきましては、例えば、いわゆる性交同意年齢を十六歳未満に引き上げることにより、十三歳以上十六歳未満の者に対するわいせつな行為又は性交等についても、相手方が五歳以上年長の場合には処罰し得ることとなるほか、改正後の刑法第百八十二条の罪を新設することにより、わいせつの目的で十六歳未満の者に対し不当な手段を用いて面会を要求する行為や、性的な姿態をとってその映像を送信することを要求する行為等についても処罰し得ることになる、そういうことでございます。

阿部(弘)委員 是非ともよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日も、齋藤大臣、そして伊藤委員長、関係省庁の皆様、委員部の皆様、是非よろしくお願いいたします。

 私は六年生の娘を持つ親でありまして、来年には中学一年生になると考えると、今法案における当事者意識というものは強く感じております。今法案を考える上で、自らの知識が正しいのか、偏見となっていないかということから考えましたが、正直なところ自信がありません。

 というのも、自分の性の知識というところで始まると、友人又は知人から聞いた話、テレビやメディアからの情報、周りの反応などの経験などでほとんど形成されており、その中に、偏った情報にあふれる、ちょっと言葉は悪いですけれども、エロ本であったりエロビデオというもの、これは性産業からの知見も当然あります。

 ただ、私の若い頃、昭和五十四年生まれ、今四十三歳なんですけれども、この年代だと、まだビデオとか本というものが余り身近に買えたり見れたりする時代じゃなかったんですね。家にずっとあると、これは多分、同じ世代より上の人は皆さん同じだと思うんですけれども、ビデオを見なきゃいけない、居間に行かなきゃいけない、又は自分の部屋がなきゃいけないと考えると、自分の思春期、いわゆる自分の頭の中が構成される間で、そんな自由は利かなかったわけですね。親が寝ている間に見ようというのも、やはり親も遅い時間に帰ってくるということもあったりして見づらい。たまたま親がいない友達の家で見たりとか、たまたまごみ箱に捨ててある本を持ってきたりと。だけれども、それも隠す場所すらないというような状況で、余りその状況に、氾濫していくということは私はなかったと思うんですね。

 ちょっと話は変わるんですけれども、今はスマートフォン、子供たちも持っています。私は、娘が小学校六年生なんですけれども、携帯電話を貸していたら、広告でやはり変なものが出てくるわけですよ。ああ、すごく身近だなと思って、ぴっと押すとそこにやはり飛んでいくということが簡単になっていくことを考えると、実は、性教育というのをちゃんとしない上で、偏った情報にあふれた性産業からの情報発信に、まさに自分の頭の中が完全に固まっていない子たちが、あふれた情報に氾濫して負けてしまった場合に、私たちのように、性教育、まともな教育を受けなくても何とか大人になっていくということと違うことも起こってしまうのではないかということを、結構危険性を感じている部分もございます。

 今の若者にとってそういうものがあるなと感じる中、だから、私は、たまたま今誰かを傷つけずに生きてこられたんだなというところは感じていると同時に、正しくない知見を基に多くの方々が暮らしているということですね。今回法案を考える上で、性という、本当に我々が生きていくためにも、そしてやはり子孫繁栄するためにもすごく身近なものについて知らないことが多過ぎるということを感じた次第でございます。それは大変危険なことでもあるということは、今回の改正に当たっても感じました。

 法改正により、時代に合った提案に、被害をなくすためにも、加害をなくすためにも、仕組みを整備することはもちろん必要なんですけれども、その基準において、性について正しい知見があるかということが私はやはり大変重要であるというふうに感じました。

 本日は法務委員会ではあるんですけれども、教育であったりメディアといった、我々の情報を構成する大きな要素を担うものが関わる重要性を考えれば、これは文科省、総務省にも質問をせざるを得ないなということですので、ちょっと時間も多く取らせていただきますが、よろしくお願いいたします。

 まず、大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども、大臣が義務教育の中で受けた性教育について、個人的な感覚や記憶にあるもので、どうでしょう、実社会に生きたものがあったりしたら御紹介いただければ。

齋藤(健)国務大臣 まず、冒頭、沢田委員がいろいろ昔のお話をされたので、私もいろいろ思い出していて、確かに今とは環境が、今、当時に比べれば激変をしているな、子供の周りにそういうものがあふれているという、本当に激変だなというふうに改めて今お話を伺いながら思いました。

 私自身が義務教育の課程においてということでありますが、ちょっと、義務教育になりますと、もう半世紀ぐらい前のことになりまして、正直、性教育を受けたのかどうかも含めて、国会ですから正直に言わなくちゃいけないんですが、全く記憶にありません。

沢田委員 そうですね、私もなんですね。

 すごく覚えているのは、正直、女性の生理用品の説明をしたのだけは結構衝撃的で、男子はあっち行ってくれというのを、昨日も参考人のSHELLYさんが言っていたのと、多分、私は同じぐらいの世代なので、同じような教育を受けているんですけれども、そこに対してすごく記憶にあるというぐらいで、あとはやはり僕も全然ないんですね。私は今四十三なので三十年前ちょっとですけれども、やはりちょっと問題があるかなというふうに感じます。

 先日の本会議でも、議論におきまして、立憲民主党の吉田はるみ委員の永岡文科大臣の御答弁にあったもので、全ての生徒に共通に指導する内容としては、妊娠の経過は取り扱わないこととしていますという御発言がございました。

 詳しく確認してみますと、妊娠の仕組み自体は教えているものの、性交そのものについて、具体性についてとかです、こういう部分については一律には教えていないということになります。

 そこで、まずは、義務教育における性教育がどうなっているのか、また、妊娠の経過は取り扱わないという運用はいつから始まったものなのか、文科省にお伺いしたいと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 学校における性に関する指導については、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階に応じ、学校教育活動全体を通じて指導することとしております。

 その際、個々の生徒間で発達段階の差異が大きいこと、児童生徒や保護者、教職員が持つ性に対する考え方が多様であることなどから、集団で一律に指導する内容と、個々の生徒の抱えている問題に応じ個別に指導する内容を区別して指導することとしているところでございます。

 具体的には、例えば、体育科、保健体育科において、小学校では、思春期になると、体つきが変わったり、初経、精通などが起こったりすること、中学校では、思春期には、内分泌の働きによって生殖に関わる機能が成熟することや、こうした身体機能の成熟とともに、異性の尊重、情報への適切な対処や行動の選択が必要となることなどについての学習が行われております。

 なお、平成十年の中学校の学習指導要領の改訂の際に、全ての生徒に共通に指導する内容としては、妊娠の経過は取り扱わないことが設けられましたが、一方で、個々の生徒の状況等に応じた個別指導として、児童生徒の相談に基づく指導や生徒指導上の問題を抱えている児童生徒に対する指導等において、必要に応じ、性交や避妊についても扱われているものと承知しております。

沢田委員 済みません、御丁寧にありがとうございます。

 一応、答弁としていただきたかったのは、多分、戦後、一度もこういうことはしていないということだと思うんですね。

 いわゆる歯止め規定と先ほどもほかの委員からの質問もありましたけれども、この歯止め規定については、平成十年の学習指導要領改訂から明確に規定されているものだというふうに理解しております。また、一律には教えていないものの、必要があれば個別に指導することになっているということは、平成十年といいますと一九九八年ですから、もう二十五年にわたってこうした運用が続けられているというふうに感じております。

 今度、性被害という観点で考えますと、性交について最低限の知識も教えてもらえない児童生徒が万が一にも被害に遭ってしまったときに、それを被害であると認識できるのかどうか。これは文科省の方でどのように考えているのか、教えてください。

里見政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省では、子供たちを性暴力の加害者、被害者、傍観者にさせないための生命の安全教育というものを実施をしてございます。この中では教材及び手引を作成をしておりまして、この中で、どういったものが性被害に当たるのかというようなことは説明をさせていただいているところでございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 今、鎌田委員が言っているとおりで、私も、大事なことが入っていないというふうに感じております。

 ただ、今日は、委員の皆様にお配りさせていただいたのがこの生命の安全教育というもので、まさに今御説明いただいた内容になります。子供たちに対して、後ろ側が教材の例というふうに載っていて、中学生に向けても含めて、すごく曖昧な感じではあるんですけれども、まあ言いたいことは分かるかなと。何もしないよりは、当然、こういう働きかけをしてくださっているということ自体は御評価させていただきたいと思います。

 過去の議事録などを読んでいますと、妊娠の経過について取り扱わないという方針は今後も何か変わらないようにも思えてしまいます。このままでは、特別な事情や必要性による個別指導の対象とならなければ、これは学校で性交についての正しい知識をしっかりと、このもの自体も、あくまで学校側に使ってくださいということであって、義務的に見せろとか必ず見なさいという運用ではないので、そういった意味では、学校が主体となって知識を学ぶという場所ができないというふうに考えております。

 それでは、結局のところ、子供たちに正しい性の知識を授ける責任というものは、これはどこにあるのか。これは文科省、どう考えておりますでしょうか。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 児童生徒が性に関して正しく理解し、適切な行動が取れるようにすることは非常に重要であると考えております。

 このため、学校における性に関する指導については、学習指導要領に基づき、児童生徒の発達段階に応じて、受精、妊娠、性感染症の予防や異性の尊重、性情報への適切な対処や行動の選択など、様々な観点から行うこととしております。

 なお、全ての中学生に共通に指導する内容としては、妊娠の経過は取り扱わないということとしておりますけれども、個々の生徒の状況などを踏まえまして、必要に応じて個別指導が行われているところでございます。

 文部科学省としては、各学校において学習指導要領に基づく着実な指導が図られるよう、引き続き取組の充実を促してまいりたいと考えております。

沢田委員 ちょっと、質問の答えになっていないんですけれども、申し訳ないですけれども、子供たちに正しい性の知識を授ける責任はどこにあると文科省は考えているのか。レクの際、お答えいただいていると思うので、お願いします。

安彦政府参考人 学校教育の中で、性に関する指導についてしっかりと取り組んでいく責任を持っていると思っております。

沢田委員 では、文科省が責任を持っているという認識でよろしいですか。

安彦政府参考人 文部科学省において学習指導要領を規定する際に、そういった規定をしっかりと設けて取り組んでまいっておりますので、そういった意味での責任ということになっております。

沢田委員 今の発言であるならば、文科省が責任を持って今後子供たちを、何でこんなことを言うかというと、これは、吉田はるみ委員の本会議における文科大臣の別の答弁で、学校における性教育で集団指導と個別指導を区別する理由についておっしゃっています。生徒間で発達の差異が大きく、保護者等の性に対する考え方が多様であることなどということを挙げられているんですね。先ほどの答弁でもございました。

 これは、私は、後段の保護者等の性に対する考え方が多様であるという発言は、非常に違和感を感じているんです。というのも、昨日の参考人質疑においても、SHELLYさんが、日本の性教育はほぼゼロだということであったり、大人への教育や啓発が重要であるとお話がありましたし、私も全く同じ感覚なんですね。

 冒頭でも私の認識をお伝えしましたけれども、こういった現状を正確に把握すれば、多様ではなくて、性の無知、偏った知識や、男女という違った性別における主観のみの偏った経験による混乱こそが多様に見えていると私は感じております。

 その上で、文部科学省が、文科大臣の答弁である、保護者等の性に対する考え方が多様であるという言葉を使ったら、これは、保護者が正しい性の知識を持った中で、多様な考え方を持ち、子供たちを教育しているということを認めた上で文科省は動いているという答弁になるんですよ。この趣旨は成り立つと思いますか、どうでしょう。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどの性に関する指導を実施する上で、保護者の理解も得ながら、地域の協力も得ながら、また専門家の方々の協力も得ながらという形で取り組んでいるという中で、やはり、保護者の方の理解といったときに、その保護者の考え方が多様だということを申し上げたものと考えております。

沢田委員 ちょっと、済みません、答弁が何か二転三転しているので。レクのときにお伺いしたのは、地域と家庭とそして教育と、しっかり連携していくというお話だったので。

 ただ、それも同じなんですよね。やはり家庭を大事にするのであれば、家庭に正しい知識を持っていただくということを前提にしていかなきゃいけない。それをするのは誰かといったらば、短期的に言えば、やはり子供たちにおいては教育において担わなきゃいけないですし、そうすると、親の性に対する多様な意見があるという認識は間違っていると私は考えます。

 現に私も、そして大臣も、先ほどお答えになりましたけれども、記憶にないんですよ、ほとんど。その中で、自信を持って、親が正しい性の認識を持って子供たちに教育できるかということについては疑ってかかっていかないと、今後、それによって、間違った家庭教育、間違った親の判断で、間違った子供たちがどんどんどんどん被害になっていく、加害されても理解できないということは十分行われていきます。私は、ここは正しい認識を文科省に持っていただきたくて、やはりそういった性教育が曖昧になっていることであったり、まだまだ至らない部分があることで、確実に我々親世代が混乱している現状がある。

 私は今回、この法改正において、とにかく自分が正しいのであろうか、自分に偏見がないんだろうか、これをやはり考えていかないとこの法案の改正において正しい答えに導けないと思って、何度も何度も自問自答しながら、周りの声も聞きながら、今日も、立憲民主党の各委員さんの意見、自民党の委員さん、公明党さんの委員さんのを聞きながら、やはり、自分の中で若干違う認識であったり、怖いなと思ったり、何でだろうと思うところ、いっぱい出てくるんですね。

 ただ、情報として整理していくと、やはりいろいろな意見があって当然だという状況は、正しい性の教育を行っていないという大前提でしかあり得ないんですよ。なので、それを多様という言葉で片づけてしまったら、これは全部親任せ。じゃ、親ガチャだとかという言葉がありますけれども、親が駄目だったら全部子供たちにそれが行くのはいいのか。そういうことを残さないために、元々、こども庁というのも、つくろうとした意図というのはそういうところにあるはずなんですよ、こども家庭庁になりましたけれども。

 だから、やはり文科省においては、ちょっとここは私、こだわっているのであれなんですけれども、まずはそこの認識、今日は大臣とやり取りしているわけじゃないので、持ち帰っていただければと思います。

 続きまして、文科省について、話はちょっと飛ばせていただきますけれども、私は、教育と同時に大事なこととして、メディアの役割というものがあります。

 よく言うのが、しっかりとした教育を私たちは義務教育下で受けて、その情報をアップデートし続けるのがまさにメディアの役割だというふうに考えると、正しい教育とやはり公平公正なメディアの在り方というのは両輪で、私たちが生きていく上に非常に大事だなというふうに感じております。

 このメディアの役割の中で、罪を報道するということで、事実を伝えることと同時に、その罪を見ている人間が繰り返したくないということを思わせることも大事だというふうに考えております。

 それにおいて、罪名というものは私は重要だと考えておりまして、今回、強制性交等罪、準強制性交等罪が不同意性交等罪に変わり、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪が不同意わいせつ罪に変わりました。更に言いますと、強制性交等罪は、二〇一七年七月十三日から施行された、強姦罪の名称と内容が改正されてできた新しい性犯罪の罪名です。

 私は、強姦という言葉に小さい頃から怖いなとシンプルに感じたことがあります。親から聞いたのもあります。とても悪いことだということであったり、女性に対して大きなことをするということ、この言葉自体のインパクト、言葉の強さ、これは当然あるというふうに感じております。子供の頃、強姦という言葉を親から聞いたときも含めて、今もやはりそれに対して強い嫌悪感を持っている言葉でもあります。その恐怖が抑止力になって、絶対にやってはいけないことだ、そういうことは許されるべきでない、子供ながらに思ったこと、そして今でも思っていることを皆さんにお伝えしておきます。

 テレビのニュースや新聞の報道記事などで、犯罪事件について真っ先に目にするのは、先ほども言いました、罪名なんですね。

 これは法務省にお伺いしたいんですけれども、罪名を決めるということは大変重要な議論だと私は思っているんですけれども、今回の改正案の中でどのような議論があったのか、ちょっと教えていただきたいです。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきましては、御指摘のとおり、不同意わいせつ、不同意性交等という表現に変えるわけですけれども、これを強制のままとするのか、不同意とするのか、あるいは何にするのかというところで、罪名についてはいろいろと議論もあったところでございます。

 ですが、今回の改正法案におきましては、やはり性犯罪の本質的な要素が、強制かどうかということよりも、同意していないのに自由な意思決定が困難な状態でなされる性的行為であるという点を端的に、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いた要件として規定するとともに、このような文言を用いた要件とすることに鑑みて、罪名についても是非不同意という言葉を入れるべきだという強い御意見もあり、法制審においてもその御賛同等もあったことから、不同意わいせつ、不同意性交等とすることでございまして、これらの罪の本質的な要素が端的に表現されるような罪名としたという点につきましては、理解のしやすさも考慮しているところでございます。

沢田委員 御説明ありがとうございます。

 この名前をかち取りたいと動いていただいた多くの方もいらっしゃいます。そして、その本当の内容の正当性も私はすごく分かるんです。なので、今回変わったこと自体は、これはいいことだというふうに思っているんですけれども、ただ、性犯罪は、加害者が出来心でついといったことですら、恐怖を一生背負うような可能性がある犯罪であり、私は、時にこれは殺人と同じほどの罪と考えています。

 そういった中で、強姦という言葉の強さ、私に残っているものと、そして強制性交、これもいかにも犯罪者っぽい。これはという言葉が不同意に変わったところで、私はどうしても、犯罪としてぱっと入ってこない、言葉のつながりを感じてしまっております。なので、罪名に大きな抑止力があると私は個人的に感じている人間として、是非大臣にお願いしたいのが、罪名や法律の名前を決める際に、是非、犯罪抑止や犯罪を予防するという観点から議論していくことも今後考えていただけないでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 本法律案につきまして、罪名を不同意性交等罪などとした理由については今局長が答弁申し上げましたが、確かに抑止という意味もあるんですけれども、罪の新設や改正に当たって罪名をどのようなものにするかについては、条見出しとしての法制技術的な観点もありまして、いろいろ制約があるんですけれども、私は、できるだけ罪の内容を端的に表現して、理解しやすいものとする、そういった観点、これが大事だと思っていますので、適切に判断していきたいと考えています。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 是非、これはいろいろな考え方があると思うので、一個人の意見ではございますが、罪によってはそういう部分も考えていただければと思います。

 次に、本日、総務省にもお越しいただいているんですけれども、罪を報道するという役割を担っているのがまさにテレビなどのメディアとなります。特にネットやSNS等、多くの情報にあふれる社会だからこそ、放送法の中で動けるNHKや民放の立場の役割はやはり過重に、大きくなると思っております。

 ただ、それがしっかり機能していただければ私は問題ないと思いますが、それが機能しないとなるならば、これは監督省庁である総務省の出番と考えます。放送法第四条では、「報道は事実をまげないですること。」こういうふうに書かれております。このことを踏まえてお伺いいたします。

 個別の事案となりますが、いわゆるジャニーズ事務所における性加害の問題についてです。

 元ジャニーズジュニアのカウアン・オカモトさんが、四月十二日に日本外国特派員協会にて性被害を訴え、記者会見されました。五月十四日には、現ジャニーズ事務所代表の藤島ジュリー景子社長が性加害について初めて公式見解を述べ、謝罪をされました。

 性加害は許されるものではなく、特に社会的影響力の高い国民的アイドルを多く所属させてきたジャニーズ事務所の責任というのは大変大きいものと考えております。

 そして、今回の件で私が注目していますのが、これはちゃんと報道されるのかという部分です。というのも、同事務所の性加害については、以前から元所属タレントから被害の報告がありましたが、取り上げるのは一部の雑誌だけであったと記憶しており、また、以前、同事務所所属タレントが逮捕された際の報道でも、被告ではなくメンバーと報道されていたことへの違和感を覚えている方、これは大変多くいらっしゃると思います。

 今回は、カウアンさんの記者会見を共同通信が行ったということが過剰にネットかいわいでも言われており、徐々にではありますが報道が入っていること、これが、安堵して、周りからも、ああ、まともに機能しているなという声が集まっていること自体が、本当にこれは問題があることだと思っておりまして、私は、公共の電波、国民の財産である電波を利用している民放メディアが大企業であるジャニーズ事務所にどんな形にしろ忖度をしたという過去は、これはあってはいけないというふうに思っています。

 これは総務省にお伺いします。放送事業というのは国民に必要な情報を提供するという使命だと考えますが、御見解をお願いいたします。

山碕政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として、電波は有限希少な資源でございまして、国民共有の財産でありますから、電波の利用者は、電波法の規定に基づき、公共性が求められます。加えて、放送につきましては、放送法の規定に基づきまして、言論報道機関としての社会的影響力を踏まえた放送ならではの公共的役割を果たすことも求められます。

 具体的には、放送は、公共性の高い放送をあまねく伝えるとともに、御指摘のありました番組準則という規範にのっとって、いわば質の担保された情報を提供することにより、公共的な役割を担ってきたところでございます。

 総務省としては、放送がこのような公共的な役割を担っていることを踏まえ、慎重かつ適切に、法にのっとって放送行政を担ってまいりたいというふうに考えております。

沢田委員 済みません、時間となったんですけれども、後半、また次回以降に持ち越しさせていただきたいと思いますが、最後、総務省に来ていただきましたので、ちょっとお願いしたいのが、とにかく、報道しない自由という言葉がいろいろな地域で言われています。報道しないということ自体をやってしまったら、どんな言い訳もできてしまう今の現状の中で、やはり、しっかりとそういった関係性をできれば総務省の方でも把握、検証していくということは是非最後にお願いしたいと思って、終わりにさせていただきたいと思います。次回以降、またよろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木義弘君。

鈴木(義)委員 お疲れさまです。国民民主党の鈴木義弘です。

 順次質問に入りたいと思います。

 今回の法改正が提示される前に、ある弁護士は、性行為に真摯な同意を得るのは必要だが、道義的な問題として論ずるべきケースもある、民事上の責任を負うことはあっても、刑罰を加えることは明確に区別した方がいいんじゃないかと述べているんですね。

 今回の法改正で不同意性交等罪を導入した理由を、まず初めにお尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案は、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪などにつきまして、暴行又は脅迫、心神喪失、抗拒不能というような要件の下で、その解釈によって成否が決せられるというのを改め、より明確で判断のばらつきが生じない規定とするため、性犯罪の本質的な要素である自由な意思決定が困難な状態でなされた性的行為という点を、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という文言を用いて統一的な要件として規定し、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙することとするものでございます。

 これによって、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えているところでございます。

鈴木(義)委員 次にも、今回の法律の改正において、不同意性交等罪の構成要件において、「婚姻関係の有無にかかわらず、」明記をするんですね。

 ということは、世の中で、婚姻関係にありながら、この不同意性交等罪をきちっと確立することによって、対象者がたくさんいらっしゃるということを前提にして、婚姻関係でも駄目なんですよというのを明文化するという考え方でよろしいんでしょうか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 現行の刑法の下におきましても、行為者と相手方との間に婚姻関係があるか否かは強制性交等罪の成立に影響しないという見解が一般的でございまして、実務においてもそのように理解をされております。

 もっとも、この点は条文上明示されておりませんで、学説の一部には、婚姻が破綻している場合にのみ強制性交等罪が成立し得るなどとして、配偶者間における性犯罪の成立を限定的に解する見解もございます。

 そこで、本法律案におきましては、配偶者間における性犯罪の成立範囲を限定的に解する余地をなくし、改正後の不同意性交等罪が配偶者間においても成立するということを条文上明確にするために、婚姻関係の有無にかかわらずこの罪が成立し得るということを確認的に規定することとしたものでございます。

鈴木(義)委員 これはなかなか実数をつかむというのは難しいと思うんですけれども、今お尋ねしたのは、どのぐらいの犯罪、変わっていないんだという答弁だったんですけれども、世の中で、婚姻関係にありながら、恋愛関係にありながら、この不同意性交等罪に該当してしまうようなものが、推計値なんでしょうけれども、どのぐらい今、日本の中であるかというのは、数字が分かればお答えいただきたいんですけれども。

松下政府参考人 恐縮でございます。突然のお尋ねで、今直ちに数字を持ち合わせておりませんけれども、強制性交等罪について、面識のある関係の者によって犯されたものかどうかというような観点からの統計はたしかございまして、警察庁の統計でございますけれども、それもかなり多くの、ちょっと数字が言えないので、いいかげんなことは言えませんが、面識のある者の間の強制性交等罪の被害を訴える声というのはありますし、デートDVというのは、そもそも交際中の男女間におけるDV、そして、場合によってはレイプということも含まれていると理解しております。

鈴木(義)委員 先日の参考人質疑のときも、実態調査をどうするかというのが、これはなかなか難しいと私は承知しています。警察がやるのか検察がやるのか文科省がやるのかどこがやるのか、内閣府が窓口でやっておられる資料は見ましたけれども、そのうちの六割の方が結局相談に行かないんですよね。だから、実数というより、その調査結果が、母数が少ないといえばそれはそれで終わってしまうんですけれども、それでも六割の方がどこにも相談されていない、できないという状況の中で、どれだけのものをこの日本社会の中で、アンケートという形なんでしょうけれども、調査することができるのかということにつながっていくと思うんですね。

 だから、新しい法律で罪名を作ったりなんなりしたときに、その裏側にいる被害者がどのぐらいいるのかというのが、ある程度やはり実数をつかんでいかないと次の法律の改正なりなんなりにつながっていかないと思うんですね。そこが私は大事じゃないかと思っています。

 それと、次にお尋ねするんですけれども、私も、昨日もレクを受けたときに、ああ、勘違いしていたのかというふうに思ったんですけれども、私は今回の法律の改正で難しいなと思ったのは、不同意というのと同意という言葉の違いなんですね。相手方の意思をどのように確認すれば不同意というふうに表現するのか、それとも同意というふうに判断するのか。

 これもすごい個人差が出てきてしまうし、そのときのシチュエーションによっても変わってくるだろうし、恋愛関係だとか婚姻関係であっても、最初のうちはないんでしょうけれども、なかなか、話を聞けば、例えば、つき合いをしていたけれども、赤ちゃんがおなかにできたといって相手方に電話をかけると、もう一切電話に出てくれないというような話も聞きます。あとは、子供がまだ小さいにもかかわらず、中学生ぐらいの子に小学生の弟なり妹を見せておいて、お母さんなる人は男の方に行ってしまって、ほとんどネグレクトになっちゃうという話も地元で聞いたことがあります。

 だから、関係性についてはなかなか難しいと思うんですけれども、そこのところをやはりある程度提示をしていかないと、なかなか、救える人が救えなくなってしまうとか、冤罪にならないような形をどう取るかということも必要になってくると思うんですけれども、その辺の見解をお聞かせいただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 本法律案におきまして、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態との要件でございますが、これは、被害者の内心そのものではなく、性的行為がなされるときの状態を要件とするものでございまして、同意しない意思の有無自体ではなく、その意思の形成、表明、全うが困難な状態であったか否かで処罰を画するものでございます。そして、被害者がそのような状態にあるのかどうかということは、列挙事由、列挙行為と相まって、客観的、外形的に判断することが可能であると考えております。

鈴木(義)委員 同じ繰り返しの質問なんですけれども、そうすると、供述だけで優劣をつけていくのかということになったときに、裁判になるとか検挙をするといったときに、物的証拠というんですか、そういうものも重要になってくると思うんですけれども、そうなると、自分の身を自分で守る側の、被害者になってしまう方からすれば、何をもって証拠というふうに言うのか。

 そのときのシチュエーションだとか、今の説明でいくと、困難な状態というのはどの程度のものなのか。困難か困難じゃないかというのは、十、ゼロではっきりしているのか、何をもって困難な状態なのかといったときに、そこのところが少しあやふやなのかなと、それは私がそう解釈しているだけなのかは分かりませんけれども。

 それともう一点、不同意わいせつ罪と不同意性交等罪の成立に必要となる、今御説明いただいた困難な状態の程度は異なるのかどうかということですね。よろしくお願いします。

松下政府参考人 お尋ねを二ついただいたと理解しております。

 一つ目は、こういった同意しない意思を形成、表明若しくは全うすることが困難な状態にあることをどういうふうに立証するのかということであると理解しましたけれども、それは、具体的な事案の証拠関係に応じてということになるわけですが、そういった性的行為に至る状況について、お互いの供述ということ、主にそれになるのかもしれませんけれども、それを支える、おっしゃるような物的証拠があるのかどうかとか、そういったところで総合的に判断していくことになるんだと思います。それは現行の刑法の規定においても同じことであると理解をしております。

 また、不同意わいせつ罪と不同意性交等罪とで犯罪成立のための困難な状態の程度が違うのかどうかというところにつきましては、困難な状態の意義については、これを限定する文言というのは加えておりませんので、文字どおり、それをすることが難しいという意味のとおりでございまして、程度を問わない、著しく困難とかそういった、程度を問うものではございませんし、不同意わいせつ罪と不同意性交等罪とで困難な状態の程度が異なるということもないという前提で理解しております。

鈴木(義)委員 繰り返しになるんですけれども、結局、自分が加害者にならないようにどうすればいいのかというところに行くわけですね。今、当たり前にそういう行為をしていたときに、この法律が制定されたときに、あなたのやっていることは犯罪ですよとなってしまうんだったら、ここで踏みとどまらなくちゃいけないとか、そういうことはやっちゃいけないという、自分自身に今度、言い聞かせなくちゃ、この犯罪はやはりなくならないと思うんです。

 そのために、やはり、より具体的なことを国民に示していかないと、難しい言葉を羅列しただけで、どこまでがどうなのかというのを分かりやすく説明していかないと、あなたのやっている行為は犯罪なんですよというのか、自分で、じゃ、それを直さなくちゃというふうに思ってもらうようにもしなくちゃいけないと思うんですね。

 くどく質問しているんですけれども、次に、強制性交等罪と準強制性交等罪、強制わいせつ、準強制わいせつで、被害者の説明が二転三転することがあることや、友人同士の飲み会の延長で性的行為に至ったケースでは同意の判断が難しいとされて被害届が受理されにくいとも言われているんですね、これは前段の弁護士の方がおっしゃっていたんですけれども。

 被害届を受理する、しないことは別に、いただいた資料箋の中に認知件数という数字は出てきたんですね。強制わいせつと強制性交の数字が出ていて、二〇二二年のデータだったと思います。その数字は、あくまでも認知件数、被害届を受理したということなんだと思うんですけれども、実際に相談されている件数がどのぐらいあるものなのか、お尋ねしたいと思います。

親家政府参考人 お答えいたします。

 令和四年中の性犯罪に関する相談の受理件数は、七千九百八十二件でございます。

鈴木(義)委員 そうしますと、今いただいた七千件何がし、私どもがいただいた資料で強制わいせつと強制性交の認知件数を足すと五千四、五百ぐらいになるんですけれども、この二千ぐらいのギャップというのはどこから来るのかということですね。相談は受けたんだけれども認知件数として被害届を受理しましたというところと、二千近くのギャップが出てくるわけですね。だから、なぜこの二千という数字のギャップが出てきてしまうのか。まあ、相談だから、犯罪までいかないんだという話なんでしょう。

 今回の法律の改正をすることによって、不同意性交等罪を新設したり、強制性交と準強制も一緒にします、強制わいせつと準強制も一緒にしますといって、法律の改正になっていくんですけれども。そうなりますと、この相談件数というのは私は上がっていくんじゃないかと思うんです。その辺の、予測と言ったら失礼な話かもしれませんけれども、今は何の対応もしていないわけですから、通常どおりの警察業務の運用の中でおやりになっていると思うんですけれども。この法律が制定したときに被害届を受理する件数が私は上がっていくんじゃないかなと思うんですけれども、それに対する対応を今考えておられるのかどうか。

親家政府参考人 お答えいたします。

 改正法の施行後、性犯罪に係る相談あるいは被害の届出件数が増加するか否かにつきましては一概に申し上げることは困難と考えているところでございますが、改正法が成立した後におきましても、近年の性犯罪をめぐる状況を踏まえ、この種犯罪により適切に対処できるようにするという本改正の趣旨を十分踏まえ、引き続き、被害者の心情に配意し、性犯罪の被害の届出に対して適切に対応するよう、都道府県警察を指導してまいりたいというふうに考えております。

 また、警察におきましては、相談や犯罪の認知状況等を踏まえまして、必要があると認められる場合は対応に必要な人員を柔軟に配置することとしておりまして、性犯罪についてもこのような対応を必要に応じて適切に行ってまいりたいというふうに考えております。

鈴木(義)委員 この法律が制定されたときに、現場の警察官が一番、犯罪か犯罪じゃないかというところの相談なり、一一〇番がかかってきたら現場に行くということを業務としてされると思うんですね。

 そのときに、やはり、法律の改正の趣旨等、これはもう現行犯逮捕にしちゃった方がいいのか、任意で警察に来てもらって、取調べというより、事情を聴取した方がいいのかという判断が現場で出てくると思うんですよね。出てこないですかね。だから、都道府県公安委員会を通して周知徹底するというふうにいったときに、この案件を扱うのは生安だと思うんですよ。刑事なのか、ちょっと分かりませんけれども、生活安全課。違うんですかね。どこでも、御答弁いただければ。

親家政府参考人 お答えいたします。

 性犯罪、強制性交等あるいは強制わいせつということであれば、基本的には、都道府県警察では刑事部門で担当することが通常でございます。

鈴木(義)委員 是非、先ほども申し上げましたように、実態調査というのをどこがやるのかということに尽きると思うんですね。それでもっと刑期を上げていった方がいいとか、罰金を科すとか、次の法律の改正につながっていくと思うんですけれども。警察でいただいている認知件数だとか相談件数だとか、そういうのをやはりリアルタイムで情報として入れてもらって、次の対策を練っていくということが大事なんじゃないかと思っています。

 次に、そもそも犯罪として立件できない場合、今の五千四百と七千幾つの数字も一つのベースになるんですけれども、刑法に問題があるのではなく、証拠が足りないのではないかというふうに指摘する方もいらっしゃるんですね。

 先ほど、被害者の説明が二転三転することがあるとか、客観的な事実で、じゃ、アルコールを飲ませたから、例えば、ほろ酔いしている状況なのか、泥酔しちゃっている状況なのか。それが、一日二日たてば、正常に戻ってしまうと、泥酔していたかどうかというのは、なかなか、本人の供述だけしか分からないですよね。そこで数値を何か検査したりなんなりしているわけじゃないし。

 犯罪を受けたときに、すぐ、自分が加害者なんだと思って、警察に相談に行くというふうになったときに、内閣府が調査したデータを見る限りは、ほとんど友達か家族に相談をかけている。警察も一部あるんですけれども、あとは行政のいろいろな支援センターみたいなところにもあるんですけれども、そこは本当に件数的には少ないんですね。それで、六割近い人がどこにも相談しない、できなかったというアンケート結果が出てくるんですけれども。だから、あくまでも警察に来ているのは氷山の一角の、本当のここの部分だろうというふうに思うんですね。その辺を、先ほどもお尋ねしたんですけれども、どこまでの証拠が必要なのかというところにどうしても返ってしまうかなと思うんです。

 それと、暴行、脅迫や抗拒不能の要件の緩和が、緩和はされないんだと思うんですけれども、処罰範囲が格段に広がって、先ほどもお尋ねした、冤罪の温床になるんじゃないかという懸念もあるという話を聞くんですね。

 だから、先ほど申し上げましたように、私が加害者になってしまっているのかどうかというのを、やはり、どの状況のときにそうなんだ、だから駄目なんだということを自分自身で理解できていないと犯罪者になってしまったり、もしかすると、逆に、暴行とか脅迫というのはもう明確なことなんでしょうけれども。

 やはり、冤罪をどう生まないようにするのか。私は駅に行ったり電車に乗ったときに痴漢に間違えられたことはないんですけれども、昔、県会議員のときに同期でやっていた人が痴漢に間違えられたんですね。その人は別に、冤罪だったから、それで検挙には至らなかったんですけれども。

 私は、よく電車に乗って移動するんですけれども、黒いかばんを持って、すぐ本を出して、つり革に手をつけて、本を読んで、私の手はここにありますよというのをやります。いいか悪いかは別にして、私はバッジは外します。そのぐらいの自己防御をしないと、わなにはめようというふうにされたら、きゃあと言われたら、もう抗弁できない。そういうのを自分たちでやはりやらないと駄目なのかなというふうに思うんですよね。

 だから、その辺について所見をお伺いしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 まず、前提といたしまして、犯罪事実については合理的な疑いを入れない程度に証明がされなければならないというふうにされておりますので、このことは、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪の立証についても同様でございます。

 その上で、本法律案は、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪などについて、暴行又は脅迫、心神喪失、抗拒不能という要件の下で、その解釈によって成否が決せられるのを改めて、より明確で判断のばらつきがない規定とするために、先ほど来御説明しているような規定としたものでございます。

 これによりまして、現行法の下でも本来なら処罰されるべき同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えておりますけれども、現行法の下で処罰できない行為を新たに処罰対象として追加する趣旨ではございませんので、そういった点では、処罰範囲が広がるといったことについては、現行法が予定しているものよりも広がっているというものではないというふうに理解をしているところでございます。

 基準というところをおっしゃっていただいているんですけれども、それは何か程度というようなことかとも思いますが、そこは程度を問わないというところで、どの程度ということをお示しすることは困難なんですけれども。

 要するに、今の現行法で、暴行又は脅迫、あるいは心神喪失、抗拒不能、この要件では曖昧で、解釈の余地があって分かりづらい、どういうことによって同意しない意思を形成、表明、全うが困難なんだということの原因として考えられる行為や事由をできるだけ明記しようということで、今回の構成要件の改正に至ったものでございまして、その意味で、これまでの刑法の規定よりも改正法案がより具体的な事由をお示ししたことになっているのかなというふうに思っております。

鈴木(義)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、質問に移りたいんですが、無理やり性交等をされた被害者の、先ほども繰り返し申し上げている相談先アンケートの結果に、どこにも誰にも相談できなかったというのは六割ぐらいの方がいらっしゃるんですね。

 先ほども警察の方にお尋ねした相談件数とか認知件数と、また、内閣府の方で業者に委託してアンケートを取った数字を見ても、やはり、もう少し、実態調査をどこまで誰にお願いしたら的確な数字が出てくるのかというのが、これからの法律の改正後やっていかなくちゃいけないことになっていくんじゃないかと思うんですね。そういうお尋ねを法務省の方にすると、内閣府でやっているから窓口は全部内閣府ですと言われちゃうと、それで終わっちゃうんですけれども。

 やはり、心を開いてもらうというのは、これはなかなか難しいと思うんですね、全然人間関係がない人のところに。だから一番多いのは友人だったり家族だったりするわけなので。そこを、SNSを使うのがいいのか、ホームページでやった方がいいのか、支援団体の方々にサポートしてもらったりした方がいいのか、そういった相談の窓口を、チャンネルを増やすしか、やはり実態の調査につながっていかないんじゃないかなと思うんですね。

 だから、今回の法律の改正に合わせてどのような対応を取っていこうとお考えなのか、お尋ねしたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正法案を作るに当たりましても、これまで、先ほどほかの委員の方にも御説明しましたとおり、様々なヒアリングを行ったりですとか、いろいろな調査の結果を基に法制審で議論していただいたというところでございますが、やはりまだ足りないという御指摘もあるところでございまして、今委員から御指摘を受けたような観点も含めて、性犯罪の被害の実態を把握する取組はとても重要であるということは重々認識しておりますので、この法律案が成立した場合には、その施行状況も踏まえながら、関係府省庁とも連携して必要な検討を行ってまいりたいと考えております。

鈴木(義)委員 法制審のメンバーの方というのは、司法関係のOBの方だとか、大学の先生とか、その専門でやられている方、労働界の代表だとか、経営者の代表もいらっしゃるんですけれども。やはり、十代、二十代の意見をどうやって聞くかということに尽きるかなと思うんですね。どっちかというと、年齢の上の方で、こういう問題とはちょっと距離がある方に幾ら議論を重ねてもらっても、若い世代の気持ちが分からないと対応できないんじゃないかと思うんです。

 だから、そういう方がメンバーに入っているというんだったら、それはそれで結構なんですけれども、やはり、そういうチャンネルを持ちながらこの問題に対応していかないと、いつになっても、若い世代の人たちの気持ちを酌んだ制度につくっていくのには、やはり心もとないんじゃないかと思うんですけれども、御答弁いただければ。

松下政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおりかと思います。いろいろな方々のお話を伺う必要があるということは御指摘のとおりでございまして、今回の法制審におきましても、若い方、大学生の方々とか、そういった方々からもお話を伺っておりますし、とある職域の方々からのお話も伺ったりして、なるべく幅広い方々からいろいろな状況をお伺いしようという努力は、努めておったわけではございますけれども、今後も更にどういったことが必要であるか考えてまいりたいと思います。

鈴木(義)委員 是非、六割の方を救えるような制度を積み上げていってもらいたいと思います。

 もう一点、性交同意年齢、これも何人もの委員のメンバーからお尋ねがあったと思うんですけれども、性行為を行うとき相手方の年齢や年齢差を常に認識、確認をしなくてはならないのかという問題なんです。これはなかなか、運転免許証を出してくださいといって性行為をする人はまずいないと思うんですよね。

 また、相手方が年齢を詐称していた場合における犯罪の成否について伺いたいと思います。自分の年齢を偽ったりですね。先ほどから、五歳の差がおかしいじゃないか、いいじゃないかというお話もあるんですけれども、逆に、私が実際は、五十なら五十でいいと思うんですけれども、二十五とか二十歳なんですと、信用してくれるかどうかは別ですよ、それで五歳差をなくすような形でもしやった場合に、虚偽には虚偽なんだよね、詐称するわけだから。それは、そのときは分からないと思うんですね。

 女性もやはり中学生の後半になってくると、私も孫が今小学校四年生ですから、あと二、三年たてば中学生になるんですけれども、早熟な子は中学一年でも二年でもすごく大人びた顔だちになってきますね。だから、それが中学二年生、三年生になったときに、私は十八なのよと言われて、男性側なら男性側、女性なら女性側でもいいんですけれども、それをもって行為に及んだときに、実際、処罰されてしまうのかどうかですね。自分の年齢を相手方が偽るときもあるし、自分が偽るときもあるだろうし。

松下政府参考人 お答えいたします。

 改正後の刑法第百七十六条三項、百七十七条三項におきましては、いわゆる性交同意年齢を現行法の十三歳未満から十六歳未満に引き上げた上で、十三歳以上十六歳未満の者に対する性的行為については、相手方が五歳以上年長の場合を処罰対象とすることとしております。

 改正はそうでございますが、現行法でも、相手方が十三歳未満であることを知って性的行為をした場合には、そのことだけで性犯罪が成立し得るところでございまして、性行為をするときの相手方の年齢ということは常に意識していただくという前提なんだろうと思っております。

 そして、改正後の刑法第百七十六条三項、百七十七条三項の罪も故意犯でございますので、性的行為をするに当たって、相手方が十六歳未満であると明示的に確認した場合に限らず、やり取りの内容や状況等から相手方が十六歳未満かもしれないがそれでも構わないというふうに考えて行為に及んだ場合は、未必の故意があるとして、これらの犯罪が成立し得ると考えられます。

 また一方、お尋ねのように、十六歳未満の者が十六歳以上であるとうそをついていたという場合であっても、それだけで行為者に故意がなかったということになるわけではなく、相手方との関係ですとか、やり取りの内容その他の状況等を踏まえて、合理的な根拠に基づいて相手方が十六歳以上であると認識していたのかどうかということによって故意の有無が判断されると考えられます。

鈴木(義)委員 地元で実際あった話なんですけれども、中学生の女の子が駅で売春に関わってしまったんですね。最初からそれを目的でやったわけじゃなくて、そこのうちは親御さんが夜遅く帰ってこられるお宅で、夕飯なんか自分一人で食べていたのを、先輩と称する女性の先輩がいて、一緒に御飯を食べようといってファミレスに連れていかれて、何回か御飯をごちそうになったんだそうです。それで、その後、ねえ、あなた、いつもごちそうさまと言うけれども、みんなお金を稼いでいるのよと言われて、駅に立つようになったのが、地元の中学校で大騒ぎの話になったんですけれども、その相手方の、先輩になる女性の連れ合いというんですかね、男側の方は反社の人たちだったんです。

 その後どうなったかは私は承知していませんけれども、結局、分からない、親も分からないんです、学校も分からないんですね。結局、時間が遅い時間になるわけですから、なかなか把握するのには難しい。

 だから、警察も含めて、いろいろなところから情報を集めて、実態を調査して、きちっとそれに対応していくということが必要じゃないかなというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 ちょっと早いんですけれども、終わります。

伊藤委員長 次に、本村伸子君。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、順番を変えさせていただきまして、公訴時効の問題から質問をさせていただきたいというふうに思います。

 五月九日本会議で、昨日も紹介させていただきましたけれども、私は、この公訴時効五年延長の根拠となった内閣府の調査では、相談に五年以上かかったという方が五十二人のうちで一割、そして、そもそも相談できなかったのは、女性で六割、そして男性では七割もある、にもかかわらず、なぜ五年としたのか、なぜ相談できなかったケースを切り捨てたのかという問いをさせていただきました。

 加えて、Springの皆様が二〇二〇年被害実態調査で、挿入を伴う性被害を認識するまで二十六年以上かかったのは三十五件、そして、三十一年以上かかったのは十九件あった、こうして、長期にわたって被害の記憶を喪失した被害当事者もいらっしゃった、なぜ、幼少期からの性虐待を受けてきた、そうした被害当事者の方々の実態調査をしてこなかったのですかと、公訴時効の撤廃、そして時効停止の大幅延長をするべきだというふうな質問をさせていただいたときに、齋藤法務大臣は、内閣府が実施した調査の結果を踏まえて公訴時効期間を延長することとしていますが、この調査の回答者には被害に遭った当時に若年であった方も含むものと承知しています、また、法律案の作成に先立って行われた性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会の部会においては、幼少期における性的虐待の実情について知見を有する有識者が委員として参画したほか、若年時に被害に遭った性犯罪の被害当事者の方や性犯罪被害者に関する知見を有する専門家等からヒアリングを実施したものと承知しています、本法案は、それらを通じて得られた知見を十分踏まえつつ立案したものでありますというふうにお答えになりました。

 そこで、昨日行われました参考人質疑で、検討会や審議会で、幼少期から性虐待を受けてきた方々の実態を議論した、十分酌み尽くされているのかということを参考人の三人にお伺いしたんですけれども、お答えいただきました。

 その中で、参考人の齋藤梓さんは、性暴力被害者は本当に多様でして、声は本当にたくさんあります、被害に遭われた方がたくさんいらっしゃいます、そうした声が十分に反映されたかといいますと、反映し切れていないのではないかというふうには考えております、法制審議会部会に参加しておりました、私も同席しておりました、性暴力被害の支援に携わってきた精神科医の先生も、やはり三十代はカバーすべきではないか、やはり三十年、四十年たって初めて被害を言える人がいるんだということはお話ししました、そして、被害の実情が十分に反映されているとは、この点ではなかなかちょっと言い難いのではないかというふうに考えておりますとお答えになりました。

 また、山本潤参考人は、諸外国の調査実態なども齋藤委員がすごく示していただいたんですけれども、なかなかそれは採用されず、日本の、エビデンス的にどうかなというような調査でしたので、そこを余り反映されていなかったのかなとは思っていますというふうにお答えいただきました。

 やはり、この御答弁を伺いますと、先日、大臣がおっしゃられました、知見を十分に踏まえつつ立案したものとはとても言えないというふうに思います。そのことは、謙虚に参考人の方々が言われた声を受け止めるべきではないかというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 まず、昨日の委員会におきまして参考人の方から御指摘のような御意見があったことについては、私、その場にいませんでしたけれども、承知をしておりますし、重く受け止めているところであります。

 本法律案におきましては、一般に、性犯罪については、その性質上、恥の感情や自責感により被害申告が困難であることなどから、他の犯罪と比較して類型的に被害が潜在化しやすいことを踏まえて、公訴時効期間を延長することとしていますが、問題はその期間をどうするかということでありまして、一般的、類型的に、被害に遭ってからどれだけの期間がたてば被害を外部に表出できるようになり、被害申告の困難性といった性犯罪特有の事情が解消されると言えるか。

 これは、可能な限り、やはり実証的な根拠に基づいて定めるという観点から、御指摘もありましたけれども、内閣府の調査において、無理やりに性交等をされたことがあり、被害を誰かに相談した方のうち、被害に遭ってから相談するまでにかかった期間が五年以内だった方が大半であったこと、これを踏まえて五年としているということなんですね。じゃ、ほかにいいデータが、何年と決めつけられるデータがあるかという問題もまたあるわけです。

 また、若年者につきましては、心身共に未熟なため、大人の場合と比較して類型的に性犯罪の被害申告が困難であると考えられるためで、その上で、十八歳未満の者についても、被害申告がより困難であると考えられるので、その者が十八歳に達するまでの期間に相当する期間、性犯罪の公訴時効期間を更に延長する、そういう工夫をさせていただいているということであります。

本村委員 五年以内が大半と言うけれども、そうじゃないんだという話なんです。

 昨日も、SHELLY参考人も、この公訴時効についてお話しいただきました。

 この公訴時効の延長のエビデンスとされている資料を見させていただきました、無理やり性交などをされた被害を誰かに打ち明けたり相談した人、括弧五十二人に聞きました、少ないと。本気で性暴力と向き合い、なくそうとしている数字だったら、もっともっとちゃんとしっかりとしたアンケートを取れると思います、受け入れるのにも、向き合うのにも時間がかかりますし、それをさらに自分の家族に打ち明けるのも、もう本当に容易なことじゃないということも想像がつくと思います、それを全て乗り越えて、やっとの思いで頑張って訴えるぞと出てきた人たちに、タイムアップ、時間切れです、残念と門前払いするのだけはやめましょうというふうにおっしゃっておりました。

 先ほど、五十二人、少ないという率直な声を出していただいたんですけれども、例えば、Springの皆様の実態アンケートは、挿入を伴う性被害を認識するまで、二十六年以上かかった方は三十五件、三十一年以上かかったのは十九件ということで、五十四人で上回っております。

 政府の調査の根拠も、本当に、エビデンスとしてどうなのかという疑問を持たれるような調査を立法事実としているという問題がございます。

 相談するのに五年以上かかった方や相談ができなかった方を切り捨てた、切り捨てられたというふうに被害当事者の方が受け止められて、私は涙を流している姿を見させていただきました。心の傷になっているというふうに感じました。

 子供の性被害の被害当事者の思いをしっかりと酌み取る実態調査を行うべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 御指摘のような観点を含め、性犯罪の被害の実態を把握することは重要であると認識をしております。

 本法律案が成立した場合には、その施行状況も踏まえつつ、実態調査の対象や方法なども含め、関係府省庁とも連携し、必要な検討を行ってまいりたいと考えています。

本村委員 是非、その際にも、どういうアンケートを取ったらいいかということを、被害当事者の方々の意見を踏まえたものにしていただきたいというふうに思います。大臣、うなずいていただいておりますので、そういうことだというふうに思います。

 そして、もう一つ、大臣が本会議で答弁をされました部分ですね、内閣府のこの調査の回答者には、被害に遭った当時に若年であった方も含むというふうに答弁をされました。被害に遭った当時に若年であった方は何人いたのか、何人相談したのか、相談していなかったのか、そして、相談していた場合、どのくらいの期間がかかったのか、どういう特徴があったのかという点、内閣府に御答弁いただきたいと思います。

畠山政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府では、令和二年度に実施した男女間における暴力に関する調査におきまして、無理やりに性交等をされた被害経験について調査をしております。

 その調査結果によりますと、無理やりに性交等をされた被害経験があったと回答のあった百四十二人について、複数回答可として被害に遭った時期を尋ねたところ、総数百七十七件のうち、小学校入学前が十二件、小学生のときが十六件、中学生のときが七件、中学卒業から十七歳までが十四件、十八歳、十九歳が二十一件、二十歳代が六十五件となっており、これらを合計しますと、百三十五件となります。

 さらに、この調査におきましては、複数回答可として、被害に遭ってから相談までの期間について尋ねておりまして、先ほどの百三十五件のうち、いずれかの相談先に相談したと答えた回答が六十件でございます。その六十件について見てみますと、その日のうちが七件、翌日から三日が十一件、四日から一か月未満が十一件、一か月から一年未満が二十件、一年から五年未満が五件、五年から十年未満が〇件、十年以上が五件、無回答が一件となってございます。

本村委員 若年者の部分だけ取り出したところでも、やはり相談できなかった方が半数以上いらっしゃるということが明らかになったというふうに思います。

 これもそうなんですけれども、是非、被害実態、被害者の方々の声を聞いて、更に公訴時効の延長、延長というか、時効停止を大幅に延長していただくということ、その時効自体をなくしていただくということを前に進めていただきたいというふうに思います。

 若年者の性被害、児童の時代の、子供時代の性被害という観点からして、ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川氏による性暴力事件について、次に伺いたいというふうに思います。

 先ほど来御議論がございましたように、岡本カウアンさんが記者会見をし、そして、藤島ジュリー景子社長が動画で謝罪をした。被害者が多くいる可能性がある問題でございます。裁判の中でも、以前、性暴力があったということは認定をされております。

 二〇一七年の刑法の法改正以降は、男性が被害を受けた口腔性交、これは刑法の適用が問われますけれども、そのほかにも、先ほどもお話がありましたように、児童福祉法の三十四条、何人も児童に淫行をさせる行為をしてはならないという児童福祉法の規定もございます。そして、東京都の青少年健全育成条例では、十八条の六、何人も青少年と淫らな性交又は性交類似行為を行ってはならないというふうにございます。そして、男女雇用機会均等法では、性暴力、セクシュアルハラスメント防止措置義務が事業主にございます。

 これらの法令に反しているというふうに思うわけですけれども、これまで一体政府は何をしてきたのかという点、何が足りなかったと考えているのかという点、こども庁担当の副大臣と、そして厚生労働省の副大臣、来ていただきましたので、お答えをいただきたいと思います。

和田副大臣 こども家庭庁でございます。

 まず、性犯罪、性暴力は、子供の心身に有害な影響を及ぼし、かつ、その人権を著しく侵害する極めて悪質な行為であり、断じて許されるものではありません。

 政府としては、これまでも子供の性被害防止施策として、関係省庁、関係団体等による被害防止の広報啓発活動、児童買春、児童ポルノ禁止法の制定と厳正な取締り、被害者が声を上げやすいような相談体制の整備などに取り組んでまいりました。

 さらに、平成二十九年には、政府全体としての施策を取りまとめた、子供の性被害防止プラン、児童の性的搾取等に係る対策の基本計画を策定し、関係省庁と民間団体が一体となって子供の性被害の撲滅に向けた総合的な活動を推進してきたところでございます。

 こうした中で、本年四月に発足しましたこども家庭庁におきましては、これまで、各府省庁において担われてきた子供政策の総合調整機能を一元化することとしており、子供の性的搾取を防止するための政府の取組を中心的に担うこととされております。

 今後は、こども家庭庁が子供政策に関する司令塔として、子供の性被害防止プランに掲げられた各省庁の施策が着実に実行されるように努めてまいります。

羽生田副大臣 厚生労働省といたしましては、労働者が安心して働くことができる、そういった職場環境を整備するために、事業主によるハラスメント防止措置を適切に講じていただくことが重要であると考えております。

 ハラスメント防止措置義務違反が疑われる場合には、都道府県労働局において報告徴収を実施し、是正指導を行うなどの必要な対応を行い、法の履行確保を図っているところでございます。

本村委員 両副大臣は一般論しか言われていないんですけれども、何か政府として是正措置を図ったという実績があるんでしょうか。

黒瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど副大臣から申し上げたとおり、児童の性的搾取等の撲滅に向けて、国民の意識の向上を図ることが非常に重要であるというふうに考えております。

 性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針においては、相手の同意のない性的な行為は性暴力である、悪いのは加害者である、被害者は悪くないという認識を社会全体で共有する取組が大事であるということで取組を進めているところでございます。

 そのため、被害児童の迅速な保護、適切な支援を推進するために、例えば少年相談窓口ですとか子どもの人権SOS―eメールですとか、こういった形で、性被害を含む相談窓口体制の整備拡充等を図っておりますし、また、ワンストップ支援センター等の拡充によりまして支援体制の充実を図っているところでございます。

本村委員 一般的な話しかできないのかもしれないんですけれども、こうした被害者が多くいる可能性がある性暴力事件を防ぐことができなかった、このことは国会としても重い責任があるというふうに思いますし、政府としても重い責任があり、深く反省をしなければならないというふうに思いますので、しっかりと検証していかなければいけないと思います。

 このジャニーズ事務所の性暴力事件についてなんですけれども、相談したことによる不利益取扱いをするようなことがあってはならないというふうに思います。それは、労働者として契約をしている場合でも、あるいは、もしかしたら個人事業主という形になっているかもしれませんけれども、いずれにしても、相談したことによる不利益取扱いをするようなことがあってはならないというふうに考えますけれども、厚生労働副大臣、お願いしたいと思います。

羽生田副大臣 個別の事案についての回答は差し控えさせていただきますけれども、一般論といたしまして、議員御指摘のとおり、セクシュアルハラスメントについて相談したことを理由として、事業主がその相談者に対して不利益取扱いをすることはあってはならないと考えております。

 議員御指摘のセクシュアルハラスメントを含め、労働者がハラスメントについて相談を行ったことを理由とする不利益取扱いについては、令和元年の法改正によりまして、男女雇用均等法等におきまして禁止をしているところでございます。

 厚生労働省といたしましては、こうした内容について、都道府県労働局等による事業者向けの説明会の開催や、あるいは、ハラスメント防止対策に関するパンフレット等の制作、配布をして、周知啓発を行っておるところでございますし、また、労働者から相談があったときには、事業主に対する報告徴収や指導等を行っているところでございます。

本村委員 個人事業主という形で契約している場合についてもお答えをいただきたいと思います。フリーランスの関係で、お答えできますか。できるなら、お答えをいただきたい。

宮本政府参考人 お答え申し上げます。

 フリーランスにつきましては、男女雇用機会均等法の適用がないところでございますけれども、いわゆるフリーランスと言われる方につきましても、労働者性があると認められた場合には、その実態から判断しまして、均等法の適用がされるということでございます。

 また、フリーランスとして働かれる方につきましては、フリーランス一一〇番というものがございまして、そちらの方に御相談いただくということで、必要な救済等につきまして相談対応しているところでございます。

本村委員 今、被害者の方々が相談しやすい環境を整えるということは、非常に重要だというふうに思っております。ジャニーズ事務所さんの方が独自にやられるという相談体制もあるかというふうに思いますけれども、プライバシーが守られた形で第三者の相談機関、やはりそれが相談しやすい環境だというふうに思います。

 そうした第三者の相談機関をつくると同時に、第三者の実態調査が必要だというふうに考えますけれども、厚生労働副大臣、御見解を伺いたいと思います。

羽生田副大臣 一般論でまた申し訳ございませんけれども、都道府県労働局や、都道府県労働局等に設置した総合労働相談コーナーというのがございますけれども、こちらにおきまして、労働者の職場のハラスメント等に関する相談を受け付けております。必要な場合には、事業主に対して、都道府県労働局による報告徴収を実施しているところでございます。

 そして、これらの相談窓口につきましては、労働者向けに作成、配布しているパンフレット、あるいは厚生労働省が運営しているポータルサイト、あかるい職場応援団というのがございますけれども、それやSNSの活用等によりまして周知をしておりまして、厚生労働省といたしましては、引き続き、これらの相談窓口について周知徹底していくとともに、労働者からの相談があった場合には、丁寧な相談に対応してまいりたいというふうに考えております。

本村委員 是非実効ある対策を厚生労働省としても取っていただきたい、こども家庭庁としても取っていただきたいというふうに思います。

 文化芸術の分野の性暴力というのは、様々告発をされておりますけれども、やはり今、根絶をさせなければいけないというふうに思っております。

 こうした文化芸術分野における性暴力を根絶するために、検討会などを開いて対策を強化するべきだというふうに考えますけれども、これは法務大臣、そして内閣副大臣にお願いしたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 三月三十日に、性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議がありまして、そこで、性犯罪・性暴力対策の更なる強化の方針が策定されましたように、経済的、社会的関係上の地位を利用した性犯罪を含め、性犯罪、性暴力の根絶は、今、政府全体の課題として取り組んでいるところであります。

 我々法務省といたしましては、今回の法改正によりまして、文化芸術分野におけるものも含めまして、性犯罪を的確に処罰できるようになるものと考えていますが、御審議いただいている性犯罪に関する二つの法案が成立した場合には、改正の趣旨や内容について、関係府省庁、機関や団体とも連携しつつ、しっかりと周知、広報していって、根絶に向けて前進をしていきたいというふうに考えています。

和田副大臣 お答え申し上げます。

 ただいま法務大臣からお話のありましたとおり、本年三月、内閣府のほか、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省から成る関係府省会議におきまして、性犯罪・性暴力対策の更なる強化方針が取りまとめられました。

 その上ででありますけれども、そもそも論として、性犯罪、性暴力の根絶のためには、それが個人の尊厳を著しく踏みにじる許されない行為であることについて、分野を問わず、まさに社会全体で認識を共有する必要があると考えております。必要に応じて、関係者間で強化を図ってまいります。

 事、文化芸術分野に関しましては、文化芸術分野を担当する文化庁におきまして、制作や実演の現場において、性的な言動等を含むハラスメントに関する問題も生じていることを踏まえ、昨年公表した文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けたガイドラインにおいて、安全衛生に関する事項を示すなどしていると承知をしております。

 そうした取組も踏まえ、よく連携して取り組んでまいりたいと思います。

本村委員 実態把握をしていただきまして、是非、対策を強化していただくためにも、検討会を開いていただきたいというふうに思っております。

 性暴力、性犯罪を防止するためにも、セクシュアルハラスメントを始めとしたハラスメント禁止規定をつくるべきだというふうに思います。そこは、世界の中でも日本は大変遅れております。厚生労働省の雇用環境・均等局の方も、人数が足りなくて、とても検討できないという声も聞いております。是非、人数を増やして体制もつくって、就活生やフリーランスやインターンの方々も含めて保護の対象としていく、そういうハラスメント禁止規定をつくるべきだというふうに考えますけれども、副大臣、お願いしたいと思います。

羽生田副大臣 議員御指摘の、ハラスメントそのものを禁止する規定を創設するということにつきましては、民法その他の法令との関係の整理、あるいは違法とする行為の要件の明確化ということが必要になると思いますので、これは十分な検討が必要であるというふうに考えております。

 平成元年の、ハラスメントの、強化に関する法改正につきましては、令和四年四月に、中小企業のパワハラ防止措置の義務化が施行されたところでありまして、現在、法改正や指針の内容の周知啓発等に努めているところでございまして、この履行確保に取り組んでいるところであるというふうに御理解いただきたいと思います。

 厚生労働省といたしましては、今後、法改正の施行状況などを踏まえつつ、必要な対応を検討してまいりたいというふうに考えております。また、対応を検討する際の人員等の、今御指摘いただいたように、体制もしっかりつくらなければいけないということで、こちらの方も、しっかりと人員を確保できるように努めてまいりたいというふうに考えております。

 済みません、令和でございました、平成ではございません。

本村委員 是非そうしたところも踏み出していただき、様々な分野でハラスメント、ハラスメントというとかなり軽く扱われる傾向があるんですけれども、甚大な人権侵害なんだと、それは性犯罪も含むものでございますので、是非その点も踏まえて、早急に前倒しで進めていただきたいというふうに思っております。

 次に、真に同意があるかどうかという問題なんですけれども、しっかりと処罰できるかという点について伺いたいというふうに思います。

 百七十六条、百七十七条の関係で、一号から八号の行為、事由について、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて性交等をした者を処罰するというふうになっておりますけれども、そこの一号の、先ほど来ありますけれども、私も改めて確認させていただきます。暴行、脅迫の例示についてなんですけれども、この強弱というのは、程度は問わないということを確認をさせていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 改正後の刑法第百七十六条第一項第一号の、暴行とは身体に向けられた不法な有形力の行使を、脅迫とは他人を畏怖させるような害悪の告知をいうものであり、いずれもその程度を問わないということになっています。

本村委員 続いて、二号について伺いたいと思います。心身の障害なんですけれども、これは本会議でも指摘をさせていただきましたように、障害がある方々の特性を考慮した規定に直すべきだというふうには考えております。そういう思いはあるわけですけれども、ここでは、障害の程度は問わないですねということも確認をさせていただきたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 改正後の刑法第百七十六条第一項第二号の心身の障害とは、身体障害、知的障害、発達障害及び精神障害をいうものであり、一時的なものを含み、いずれもその程度は問いません。

本村委員 次に、八号の関係ですけれども、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していることについてなんですけれども、本人が憂慮していないといけないのか、確認をしたいと思います、これは法務省に。

松下政府参考人 お答えします。

 御指摘のとおり、改正後の刑法第百七十六条一項八号のその憂慮の主体となるのは被害者本人でございます。

本村委員 それで、伺いたいんですけれども、憂慮させること又はそれを憂慮していることについてなんですけれども、憂慮させるまでの地位とは思わなかった、憂慮しているとは知らなかったなど、処罰されないことになるのではないかという懸念がありますけれども、その点、いかがでしょうか。

齋藤(健)国務大臣 改正後の刑法第百七十六条第一項第八号に該当して同項の罪が成立するためには、客観的事実として、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること、それによって被害者が同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態になり又は当該状態にあること、当該状態の下で又は当該状態を利用して性的行為が行われたことが必要であります。

 そして、主観的には行為者がこれらの事実をいずれも認識していることが必要でありますが、その際、同意しない意思を形成し、表明し又は全うすることが困難な状態であることについても、原因、事由についても規範的な認識は不要であり、それを基礎づける事実の認識があれば足りると考えられます。

 そのため、お尋ねの場合に行為者が憂慮という評価にわたる認識がなくても、それを基礎づける事実の認識があれば故意は認められ得ると考えています。

本村委員 つまりは、加害者の方が、憂慮させるまでの地位とは思わなかった、憂慮しているとは知らなかったと言っても、しっかりと処罰されるという意味ということですね。

齋藤(健)国務大臣 今申し上げましたように、憂慮という評価にわたる認識がなくても、それを基礎づける事実の認識があれば故意は認められ得るということであります。

本村委員 もう一つ、十八歳以上の障害がある方がグルーミング等をされまして外形的には同意したかのように見えるケースで、実際には尊厳を深く傷つけられているケースはあるかというふうに思いますけれども、そうしたケースでしっかりと加害者を処罰することができるのかという点、確認をさせていただきたいと思います。

松下政府参考人 お答えいたします。

 具体的にどのような場面を想定しているかというのは必ずしも明らかではございませんけれども、そしてまた、改正後の不同意わいせつ罪、不同意性交等罪の成否は、個別の事案ごとに証拠関係に照らして判断されるべき事柄ではございますけれども、一般論として申し上げれば、障害を有する方に対する行為が、心身の障害を生じさせること、またそれがあることや、経済的又は社会関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること、又はこれら以外の各号に掲げる行為、事由、あるいはこれらに類する行為又は事由のいずれかに該当すると認められ、それにより同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせて、あるいはその状態にあることに乗じて性的行為をしたと認められるのであれば、不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪が成立し得ると考えております。

本村委員 改めて確認しますけれども、外形的には同意したかのように見えるケースでもしっかりと処罰の対象になる可能性があるということですね。

松下政府参考人 お答えいたします。

 先ほど述べたような要件に該当するものであれば処罰され得るということでございます。

本村委員 ここで問われるのが、やはり同意とは何かという問題だというふうに思うんです。

 本会議でも指摘をさせていただきましたけれども、やはり、同意と言われるのは、年齢、成熟度、発達度、役割、経験に基づいて何がなされているか理解していること、提案されていることに関する社会的規範を知っていること、そして、性行為をした場合に起こり得る結果と性行為を行わないという別の選択肢もあるというそれぞれを承知していること、性行為に賛成する意思と反対する意思の両方の選択肢が平等に尊重されているという前提があること、意思決定が自発的になされていることなど、こうしたことをしっかりと同意ということで条件を満たすべきだというふうに考えます。

 終了してしまいましたので、引き続き、次回、質問をさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十一分散会


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