衆議院

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第4号 令和6年12月18日(水曜日)

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令和六年十二月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小寺 裕雄君 理事 津島  淳君

   理事 松本 剛明君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      上川 陽子君    神田 潤一君

      河野 太郎君    棚橋 泰文君

      寺田  稔君    平沢 勝栄君

      森  英介君    若山 慎司君

      有田 芳生君    齋藤 裕喜君

      篠田奈保子君    柴田 勝之君

      平岡 秀夫君    藤原 規眞君

      松下 玲子君    萩原  佳君

      小竹  凱君    大森江里子君

      西園 勝秀君    平林  晃君

      本村 伸子君    吉川 里奈君

      島田 洋一君

    …………………………………

   法務大臣         鈴木 馨祐君

   内閣府副大臣       辻  清人君

   法務副大臣        高村 正大君

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   最高裁判所事務総局総務局長            小野寺真也君

   最高裁判所事務総局人事局長            徳岡  治君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 大濱 健志君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 松田 哲也君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 千代延晃平君

   政府参考人

   (法務省大臣官房政策立案総括審議官)       上原  龍君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 堤  良行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    森本  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小山 定明君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    押切 久遠君

   政府参考人

   (法務省人権擁護局長)  杉浦 直紀君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 杉山 徳明君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    霜田  仁君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 熊谷 直樹君

   政府参考人

   (文化庁審議官)     小林万里子君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田中 一成君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済安全保障局貿易管理部長)   猪狩 克朗君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十八日

 辞任         補欠選任

  寺田  学君     齋藤 裕喜君

  大森江里子君     西園 勝秀君

同日

 辞任         補欠選任

  齋藤 裕喜君     寺田  学君

  西園 勝秀君     大森江里子君

    ―――――――――――――

十二月十六日

 性虐待・性搾取等子供への性加害を根絶するためサバイバーの声を生かした施策強化と関係法規の更なる改正に関する請願(大河原まさこ君紹介)(第一二一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官平井康夫さん、警察庁長官官房審議官大濱健志さん、警察庁長官官房審議官松田哲也さん、警察庁長官官房審議官千代延晃平さん、法務省大臣官房政策立案総括審議官上原龍さん、法務省大臣官房審議官堤良行さん、法務省大臣官房司法法制部長松井信憲さん、法務省民事局長竹内努さん、法務省刑事局長森本宏さん、法務省矯正局長小山定明さん、法務省保護局長押切久遠さん、法務省人権擁護局長杉浦直紀さん、出入国在留管理庁次長杉山徳明さん、公安調査庁次長霜田仁さん、外務省大臣官房審議官熊谷直樹さん、文化庁審議官小林万里子さん、経済産業省大臣官房審議官田中一成さん及び経済産業省貿易経済安全保障局貿易管理部長猪狩克朗さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、最高裁判所事務総局総務局長小野寺真也さん及び人事局長徳岡治さんから出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。若山慎司さん。

若山委員 自由民主党の若山慎司でございます。

 さきの総選挙で議席をいただきまして、実は、人生初の質問をこの法務委員会でさせていただくことになりました。私は大学で刑法を教わっておりましたが、恩師の先生で野坂滋男先生という方がいらっしゃいまして、教えを請いましたが、きっと天国で喜んでくれているものと思います。

 また、私が長年お仕えをしておりました江崎鉄磨元法務委員長でいらっしゃいましたけれども、民法の改正にもしっかりとお努めになられたところではございますが、地元愛知県一宮市でかつて起こりました、ポケモンGOというゲームをやっていて、車の運転中にゲームをやっていて子供が亡くなるというような事故もございまして、こういう痛ましい事故の折には厳罰化に向けた動きということもしっかりとされてこられた先生の下でお仕えをしてまいりました経歴もございます。

 私の卒論のテーマでございましたけれども、罪刑法定主義の一考察などというものをやらせていただきました。今日の刑法犯を含む犯罪の凶悪化を見ると、教育刑論の観点からも、犯罪被害者の方、御家族の方、そして国民感情的にも、まだまだ厳罰化を求めるような犯罪というものもございまして、今後も厳罰化についての議論というものも進めていただきながら、しっかりとこういう刑罰の見直しについても取り組んでいただきたいと思う一人でございます。

 さて、他方で、今日御質問申し上げたいところは、罪を犯した人の再犯防止ということについてでございます。

 安心、安全な社会を実現していくために、令和五年三月に第二次再犯防止推進計画が策定されました。一方で、同年の刑法犯の再犯率が四七%というようなこともございまして、刑法犯検挙者の約半数が再犯者という現実もございます。

 このような状況に鑑みますと、再犯防止の取組の必要性というのは一層増しているというふうに思われるんですが、大臣は所信の中でも再犯防止について述べられておられますけれども、その意気込みについてお伺いできればと思います。

鈴木国務大臣 若山先生今おっしゃいましたように、やはり再犯、これは極めて深刻な状況で、刑法犯検挙者に占める再犯者率ということでいうと、直近が四七%ということでありますけれども、それ以前も、五割弱、大体四八、九%でずっと推移をしているところであります。どのようにしてこうした再犯を起こさせないのか、そういったことは極めて安心、安全のためにも大事であろうと思っております。

 そういった中で、政府においては、令和五年の三月に第二次再犯防止推進計画を閣議決定をしております。この計画の中では、就労、住居の確保ですとか、あるいは民間協力者、これは、地域で活躍いただいている保護司の皆様方でありますとか、あるいはいわゆるNPOだったり、弁護士の方だったり、あるいは自助グループの方、あるいは受入れの事業主ということもあろうかと思いますけれども、まさにこうした民間協力者の皆様方の活動の促進、さらには地域による包摂の推進等の重点課題の下で、具体的な施策を掲げております。

 現在、国、地方公共団体、そして民間協力者と連携をしてこうした施策を進めていこうということで、私ども法務省といたしましても、この計画の着実な推進に向けて努力をしてまいりたいと思っております。

若山委員 刑務所の出所者の中には、出てから頼るべき家族がいないとか、地域で孤立、孤独に陥って、結果として再犯に及ぶというような方もありました。

 こうした再犯を防止するためには、やはり地域における支援というものに対してつながり続けてもらうということが重要かと思います。地域で支える支援ネットワークをしっかりと構築していって、地域全体で支えていくというようなことも不可欠だと思いますが、国として具体的にどのような取組を行っておられるでしょうか。

押切政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、刑務所出所者等が地域社会の中で孤立することなく立ち直りを果たすためには、刑事司法手続終了後も含めた支援を実施することが必要です。

 この点に関して、法務省においては、令和四年十月から、全国三か所の保護観察所において更生保護地域連携拠点事業を実施しております。

 本事業では、委託を受けた民間団体が、地域の関係機関、民間協力者等による地域支援体制を整備するとともに、関係機関等が行う支援活動に対する支援を行うなど、犯罪をした者等を地域全体で支える体制の構築に努めております。

 引き続き、地域の関係機関等と連携を図りながら、各地域において刑務所出所者等に対して必要な支援が行き届くよう、本事業の実施状況なども踏まえ、刑務所出所者等に対する支援を通じた再犯防止に一層取り組んでまいりたいと存じます。

若山委員 再犯を防止する重要な取組として、今もお話が出ましたけれども、保護司制度というものが挙げられると思います。

 保護司の皆さんのお仕事といいますと、仮釈放された人や少年事件で保護観察処分になっている人に対する保護観察中の支援、生活環境の調整という役割を担っておられるわけでございますが、保護司の皆さんは、再び罪を犯さないように観察をして、社会復帰を果たしたときスムーズに社会生活を営むことができるように、釈放後の住居や就業先を探してあげたりとか帰住環境の調整なんかもやっていただいていて、非常に重要な役割を果たしておられるところです。

 ところが、先般、滋賀県大津市で六十歳の保護司の方が殺害されるという悲しい事件がございました。原因がどこにあるのかということをしっかりと究明をしていかなければならないところでありますが、こういったことが、保護司のお仕事というのが大変危険な仕事だという印象が残ったことだと思います。

 こうした保護司の方の安全確保対策についてはどのように取り組んでおられるのか、教えていただけますでしょうか。

押切政府参考人 お答えいたします。

 保護司の活動場所の確保等のため、法務省ではこれまでも、地域における更生保護活動の拠点として、各保護区に更生保護サポートセンターを設置するなどの取組を進めてきたところですが、保護司の適任者の確保がなかなか難しい状況が続いております。

 こうした中、令和五年三月に閣議決定された第二次再犯防止推進計画において、持続可能な保護司制度の確立に向けた検討、試行が盛り込まれたことに基づき、同年五月から十四回にわたり持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会が開催され、保護司の方々からの多様な御意見も踏まえながら検討が重ねられ、令和六年十月には報告書が取りまとめられました。

 報告書には、同年五月に滋賀県大津市の保護司の方が亡くなられた事案の発生を受けた保護司の安全確保に関する取組を含め、今後講じていく施策等として七十八の取組が盛り込まれております。

 保護司の活動場所の確保や安全確保に関する具体的な施策としては、自宅以外の面接場所の確保の推進、保護司複数指名制の積極的な活用、保護観察官の直接的関与の強化などの取組が掲げられております。

 保護司の適任者を確保していく観点からも、安全確保の観点からも、引き続き、全国の保護司の方々の御意見等に耳を傾けながら、報告書の内容を踏まえたこれらの施策を着実に進めてまいりたいと存じます。

若山委員 ありがとうございました。

 では、再犯のところから一旦離れまして、一方で、犯罪は未然に防ぐということも大変重要になってまいります。そうした中で、オウム事件であったり、最近では外国人による企業犯罪等も数が増えてきているところでありますが、そうしたときに、警察による情報収集、これがしっかりと役に立った事案というものが多く見受けられます。

 昨日の犯罪対策閣僚会議においても仮装身分捜査が決定されたということで、闇バイト問題を始めとしてサイバー犯罪にも対応をしていかなければならない、そういう時代に入ってまいりました。

 現場での情報収集のモラルであったり、人権や個人情報保護との整合性ということもしっかり守っていかなければなりませんが、個人の権利と社会の安全という対抗する法益をしっかりと守るという観点から、なかなか立法でこれを措置するというのは難しいのではないかなということを思われるのですけれども、実務を担う警察官の監督を行っている警察庁が、こういった人権であったり個人情報保護の観点からどういう対策を取って取り組んでいるのかをお伺いできればと思います。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 都道府県警察の情報収集活動が適切に行われ、また、個人情報の適正な取扱いがなされるべきことは当然でありまして、警察庁としても、その旨の指導教養を徹底していかなければならないものと認識をしております。

 こうした観点から、警察庁としましては、情報収集活動の目的の正当性、行為の必要性及び相当性という過去の判例で示されてきた情報収集活動の基本原則の遵守、また、個人情報保護法等の関係法令に基づく個人情報の適正な取扱いについて、通達により都道府県警察に指示をした上で、様々な機会を通じて指導教養を行っているところであります。

 引き続き、様々な機会を捉えて、都道府県警察への指導教養を徹底してまいりたいと考えております。

若山委員 では、また、今ちょっと出しましたが、外国人の犯罪という観点もありますけれども、外国人との共生社会実現のための取組についてお伺いしたいと思います。

 私は、御縁があって、三年間ほど埼玉県川口市を地元とする先生の秘書も務めさせていただいたことがございましたので、住民の方の不安の声も多く接してまいりましたが、在留外国人の犯罪取締りをという声が日に日に強くなっている。これはもう、特定の地域に限らないところも出てきております。被害も、身体的なものだけではなくて、経済分野にも及んでというようなところが多く報道されておるところでございます。

 他方で、言葉の壁があって、日本語がうまくしゃべれないからということで、地域のコミュニティーと隔絶して、問題の解決が難しいというような側面もあるようでございますが、今後、日本に住む外国人が増加することが見込まれる中で、外国人との共生社会の実現に向けてどのように取り組んでおられるのか、お伺いできますでしょうか。

杉山政府参考人 我が国の在留外国人数は、令和六年六月末に約三百五十九万人と過去最高を更新しており、外国人の受入れ環境整備を始めとして、共生社会の実現に向けた取組の重要性はますます高まっているところでございます。

 これまで政府におきましては、令和四年六月に決定した外国人との共生社会の実現に向けたロードマップにおきまして、目指すべき外国人との共生社会のビジョンとして、安全、安心な社会、多様性に富んだ活力ある社会、個人の尊厳と人権を尊重した社会の三つを掲げ、各種取組を着実に進めてきたところでございます。

 出入国在留管理庁におきましては、引き続き、日本語教育や相談体制の強化を始めとした外国人の受入れ環境整備に関する総合調整機能を発揮しながら、関係省庁及び地方公共団体等との連携を一層強化し、外国人との共生社会の実現に向けた取組を着実に進めてまいりたいと考えております。

若山委員 今年の外国人の入国者数が過去最高になるのではないかと言われる中、二〇三〇年に向けて、政府は六千万人の外国人旅行者の誘客を見込んでいます。来年には万博もございまして、三百五十万人が来場されるというようなことも言われておりますが、日本版のESTAを含む外国人の来日に関する審査の迅速化について、システム導入だけではなくて、マンパワーの強化についても取り組んでいくべきだと思いますが、この点はいかがでしょうか。

杉山政府参考人 出入国在留管理庁におきましては、指紋及び顔写真等の個人識別情報、事前旅客情報や乗客予約記録等の活用により、審査の厳格さを確保しつつ円滑な審査を実現するため、バイオカート、顔認証ゲート等を運用するとともに、本年度中に成田空港、羽田空港及び関西空港において、入管、税関手続に必要な情報を同時に提供することができる共同キオスクの本格運用の開始を見込んでおります。さらに、職員の応援派遣や必要な人的体制の整備にも努めており、これらにより、円滑、厳格な出入国管理の実現に取り組んでいるところでございます。

 訪日外国人旅行者数について、二〇三〇年に六千万人を目指すとの政府目標を踏まえ、我が国にとって好ましくない外国人の入国を未然に防止するのみならず、審査の円滑化を可能にする電子渡航認証制度の検討も進めてまいりたいと考えております。

若山委員 もう時間となりましたので答弁は結構ですが、最後に、私がおつき合いをさせていただいている杉良太郎さんという俳優さんが特別矯正監をしておられますけれども、特別矯正監を生涯命懸けでやっていくといって杉さんも決意を述べておられますが、民間でもそういうお声もありますので、役所の方も、法務行政に関して、今後とも、施設の老朽化にも、そして人員の確保にも一生懸命努めていただかなければならないと思いますので、今後も応援してまいりたいと思います。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、藤原規眞さん。

藤原委員 立憲民主党の藤原規眞です。

 資料一を御覧いただきたいんですけれども、岐阜県の大垣市で計画された風力発電の施設の建設をめぐって、岐阜県警の大垣署が住民の個人情報を同意なく収集して、同意なく業者に提供した、それが名古屋高等裁判所で違法と断じられて確定した事件についてなんですけれども、それについての受け止めをまず伺いたいと思います。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの裁判につきましては、九月十三日、名古屋高裁において判決が言い渡されたものと承知をしております。

 本件の原審及び控訴審においては、警察の情報収集活動という事柄の性質上、岐阜県警察からその目的、態様等を明らかにすることができなかったところ、控訴審においては、原告の主張する事実の多くが認定されたと認識しているところでございます。

 今回の判決において、岐阜県警察側の主張が認められなかったことは残念でありますが、上告審で岐阜県警察側の主張を十分に立証することは困難であると判断するに至り、上告及び上告受理の申立てを行わないこととしたものと承知をしております。これによりまして本判決が確定することとなり、警察庁としてもこのことを重く受け止めているところでございます。

藤原委員 収集した情報の管理について伺いたいんですけれども、判決後、岐阜県警本部や各警察署は、判決で抹消を命じられた文書、紙の文書四十九件をシュレッダーで廃棄したというふうになっています。ただ、廃棄されたのは紙の文書だけなんですね。普通、パソコンで作成して、それが顕在化したのが紙媒体なわけですけれども、それを四十九件シュレッダーにかけましたと。これは不自然じゃないかと原告の一人が言っているんですね。

 紙ぺらだけありましたと言われて信用できるかということなんですけれども、どのように信用性を担保するんでしょうか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 岐阜県警察において、警備部内各課及び各警察署警備課において保有している電磁的記録を含む文書の中から、判決において抹消が求められた原告らの個人情報が記載されているものを漏れなく特定したものと承知をしております。

 その上で、特定された文書につきましては、岐阜県公安委員会委員長立会いの下、シュレッダーによって裁断処分したとの報告を受けております。

藤原委員 公安委員長を立ち会わせた理由は何でしょうか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 都道府県公安委員会につきましては、都道府県警察の民主的運営を保障し、また、独立の合議体としての中正な運営により政治的中立性を保障するため、都道府県の住民を代表する者が警察の管理を行うことを目的として設置されているものでございます。その委員会の委員長である岐阜県公安委員会委員長に立会いをしていただいたということでございます。

藤原委員 公安委員長が立ち会うというルールが明確に定められているわけではないですよね。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のようなルールがあるというわけではないものと承知をしております。

藤原委員 場当たり的な対応と言われても仕方がないと思うんですね。制度化すべきだ、ルール化すべきだというふうに考えますけれども、それについてお考えはどうでしょうか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 岐阜県警察におきましては、判決確定後速やかに、岐阜県公安委員会委員長立会いの下、判決において抹消が求められた原告らの個人情報を抹消したものと承知をしております。

 また、情報管理、警察が収集した情報の取扱いにつきましては、個人情報保護法や公文書管理法等の関係法令に基づいて適切に取り扱っているところでございます。

藤原委員 適切に管理するということが、警察内部ではそういうふうに判断をしたとしても、実際に情報を取られた者からすると、疑心暗鬼になっているというのが実情です。

 資料二を御覧いただきたいんですけれども、原告の一人が、本当に消去されたのか、ほかになかったのかということを開示請求したんですけれども、結局、存在自体を明らかにしないという形で、不開示というふうになっています。

 これは国民のプライバシーの情報そのものなんですけれども、例えば、公安調査庁も国民のプライバシーを扱う情報について取り扱うわけですけれども、法務大臣、人権擁護の観点から、そういった情報の管理、あるいは抹消も含めて、そういったことについてルールを明定すべきだというふうにお考えにならないでしょうか。

鈴木国務大臣 今お話がありました情報の管理、これは極めて大事なこと、これは当然のことだと思います。

 公安調査庁についても、例えば、破防法、破壊活動防止法あるいは団体規制法、具体的には第三条ということになりますけれども、この中にも、いやしくも権限を逸脱して、思想、信教、集会、結社、表現及び学問の自由並びに勤労者の団結し、及び団体行動する権利その他日本国憲法の保障する国民の自由と権利を、不当に制限することがあってはならない、調査についてもこうした濫用をしてはならないということが決められて、その下で適切にそういった調査がされているというふうに私としては承知をしているところであります。

藤原委員 リベンジポルノという、ちょっと本件と外れますけれども、例えば、そういう自分のあられもない姿とかを写真に撮られて、それが、交際関係が終了するとネットで流通させられるという被害が社会問題化していますけれども、それと近いと思うんですね。情報を取られて、それを確実に抹消されたかどうかを、自分なり、あるいは第三者機関で確実にチェックできないということ自体が情報に対する管理として私は甘いと思うので、是非、立法措置の必要性も含めて、改めてちょっと考えていただきたいとは思っています。

 次に、本件の情報収集活動そのものについて伺いたいと思います。

 二〇一五年の五月二十六日に、参議院の内閣委員会において、本件の、この大垣の事件について、本人同意なしに情報収集、あるいは本人同意なしに第三者に情報提供をしたということについて、山下芳生委員からの質問に山谷国家公安委員長が、通常行っている警察業務の一環というふうに答弁をしています。

 結局、通常と思っていたことが実は違法だと名古屋高裁に断じられたわけなんですけれども、このことが本当に深刻な問題だという認識はできているんでしょうか。残念だという受け止めを最初に伺ったので、あえて伺いたいと思います。

千代延政府参考人 これまで、国会等におきまして、大垣署員の活動は通常行っている警察業務の一環であると申し上げてまいりましたが、これは、警察活動は公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであり、大垣署員の活動もそのような考え方を念頭に置いて行われたものであるということを申し上げたものであります。

 しかしながら、結果として、今回の判決により、大垣署員の活動は違法との判断が示されたところでありまして、警察としては、この判決を重く受け止め、判決確定後は速やかに、判決において抹消が求められた原告らの個人情報を抹消したところでございます。

 いずれにいたしましても、警察活動が警察の責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであることは当然のことでありまして、今後とも、不偏不党かつ公平中正に職務を遂行するよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

藤原委員 これまで、通常行っている、しかも正しくやっていると言っていたことが、結果として違法だと。結果として違法という受け止めということは、これからしっかりやりますと言っても、本来何らの改善も見込まれないような対応にしか聞こえないんですけれども、何か具体的に、これから、こういった第三者に対して本人の同意なく情報提供をしませんとか、こういった違法な情報収集はしません、一切やりませんという通知を出す、そういうお考えはありますか。

千代延政府参考人 お尋ねの件につきましては、令和六年十月三日、各都道府県警察に対しまして、適切な情報収集活動について通達を発出しまして、目的の正当性、行為の必要性及び相当性という過去の判例で示されてきた情報収集活動の基本原則の遵守や、個人情報保護法等の関係法令に基づく個人情報の適正な取扱いについて改めて指示したところでございます。

 また、警察といたしましては、警察法第二条に規定する公共の安全と秩序の維持という警察の責務を果たすために、必要な範囲内で情報収集活動を行っているところでありまして、今後もその責務を果たすために、目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則を遵守した上で、情報収集を行う必要があるものと考えているところでございます。

藤原委員 今のお答えは、資料四に少しお配りしていますけれども、この通達なんですね。

 目的の正当性、行為の必要性、相当性と、在来、要件としてきたもの、これまでも守ってきました、これからも守らせますという趣旨なんですけれども、しかし、今回違法の断罪を受けているわけですね。在来の対応と何ら変わらないと思うんですけれども、この通達では。

 こういった調査のやり方、あるいは第三者への提供を一切やらないという通知は出せないですか。

千代延政府参考人 繰り返しになりますけれども、令和六年十月三日、各都道府県警察に対しまして御指摘の通達を発出したほか、全国警察の警備部門の責任者を集めた会議や警察庁担当者の出張による指導の機会におきましても、都道府県警察に対して、こうした基本原則や個人情報の適正な取扱いの必要性について重ねて指導しているところでございます。

 引き続き、様々な機会を捉えて、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

藤原委員 では、この判決後は、一切、このような同意なき情報収集と同意なき第三者提供は一切やっていないと断言できますか。

千代延政府参考人 先ほど申し上げましたように、警察としましては、警察法第二条に規定する公共の安全と秩序の維持という警察の責務を果たすために、必要な範囲内で情報収集活動を行っているところでありまして、今後もその責務を果たすために、目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則を遵守した上で、情報収集を行う必要があるものと考えております。

 また、個人情報の提供につきましては、個人情報保護法等の法令を遵守して行われるべきものであると考えておりまして、引き続きその適正を図ることが必要であると考えております。

藤原委員 引き続き適正を図る、その引き続きって、今回違法だったわけですよね。私は何らかの法律上の手当てが必要だと考えています。

 資料三を御覧いただきたいんですけれども、本件は、風力発電をめぐる中部電力の子会社、シーテック社と市民とが緊張関係に立ったという案件です。テロなり治安を揺るがす事案ではないわけです。犯罪案件でもないわけです。にもかかわらず、中部電力側に警察が肩入れして、市民の情報を学歴、病歴まで調べ上げて提供する、これはおよそあり得ない情報収集活動あるいは情報の管理なんですけれども、これを通常行っている警察業務の一環と考えてやってのけたとしたら、それこそ人権意識の重大な欠落があったと言われても仕方がないんですけれども、それについてどうお考えですか。

千代延政府参考人 今回の控訴審判決におきまして岐阜県警察の主張が認められなかった要因は、警察の情報収集活動という事柄の性質上、岐阜県警察からその目的、態様等を明らかにすることができなかったことにあると考えておりますが、警察としては、確定した控訴審判決を重く受け止めておりまして、そうした中で、お尋ねの議事録の記載内容が事実か否かにつきまして改めて論評することは適切ではないと考えていることを御理解いただきたいと存じます。

 いずれにいたしましても、警察としては、今回の控訴審判決を重く受け止めた上で、判決確定後は速やかに、判決において抹消が求められた原告らの個人情報を抹消したところでございます。

藤原委員 では、警察としては、今回の判決は立証に失敗したからにすぎないという受け止めということなんですか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 本件の原審及び控訴審におきましては、警察の情報収集活動という事柄の性質上、岐阜県警察からその目的、態様を明らかにすることができませんでした。上告審で岐阜県警察側の主張を十分に立証することは困難であると判断するに至りまして、上告及び上告受理の申立てを行わないこととしたものと承知をしております。

藤原委員 公権力が違法に収集した情報を第三者に同意なく提供したと。これは、個人の人権、プライバシーを著しく侵害するものなんですけれども、法務大臣としてそういう、公安調査庁なり、情報を収集することがあるわけですけれども、法務大臣として本件についてどのように受け止めますか、第三者への情報提供について。

鈴木国務大臣 法務大臣としてということでございます。

 本件は警察の活動ということですので、大変申し訳ないんですが、そこは法務大臣としてはお答えをする立場にないということで御理解いただければと思います。

藤原委員 本件は、シーテック、中部電力さんの子会社さんですね、対住民という、要は私人間の対立関係についてなんですけれども、どうして警察は一方に肩入れしたんだということなんですけれども、シーテックさんの親会社の中部電力さんに警察のOBが調査役として天下っているんですね。監査役じゃないです、調査役です。私は弁護士なんですけれども、会社のガバナンスにはそれなりに詳しいですけれども、調査役というのは余り聞き慣れないんですね、調査役。

 これは、警察の情報を仕入れるためにOBを天下らせている。シーテックでやっていることというのは、ほかの会社でも恒常的にやっているんじゃないですか。

千代延政府参考人 今回の控訴審判決におきまして当方の主張が認められなかった要因は、警察の情報収集活動という事柄の性質上、当方からその目的、態様等を明らかにすることができなかったことにあると考えております。

 一般論として申し上げれば、警察は、管内において各種事業等に伴い生じ得るトラブルの可能性について、公共の安全と秩序の維持の観点から情報収集を行う場合があると考えております。

 今後とも、不偏不党かつ公平中正に職務を遂行してまいりたいと考えております。

藤原委員 企業側から見ると、情報の仕入れ係として警察のOBの方を採用しているというふうに想像できてしまうんですけれども、OBの先輩からの依頼を受けて警察が個人の情報を調べる、あるいは提供する、これは日常的にやっていないですか。やっていないと断言できますか。これはイエスかノーかで答えていただきたいと思います。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来申し上げておりますように、警察の情報収集については基本原則にのっとって行っておりますし、情報提供につきましては、個人情報保護法等、関係法令に従って適切に行っているものと承知をしております。

藤原委員 これは、私人間の問題で、OBがいる方に警察が肩入れしたと言われても仕方がない事案なんですね。今のお答えなんですけれども、明確にノーとは言えない、そのことは指摘させていただきたいと思います。

 裁判まで起こされているのに、中部電力さんに警察から天下りをさせている。令和四年四月一日付で愛知県警本部の警備部長さんが中部電力さんに、あるいは令和二年四月一日には愛知県警の刑事部参事官兼刑事総務課長さんが中電さんに再就職している。懲りないなというふうに思うんですけれども、このようなこと自体、いろいろな疑心暗鬼を招いているということは改めて指摘をさせていただきたいというふうに思っています。

 違法な調査をして、少なくとも名古屋高裁に違法と断じられる調査をして、それを民間業者に提供するということは、明らかに人権侵害なんですね。例えば、いろいろな情報を扱う行政の機関、国の機関、このようなことが起きないように何らかの法律上のルールを定めるべきだというふうに考えるんですけれども、人権をつかさどる法務大臣としていかがお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 調査の結果得られた情報の取扱いということで、私ども法務省としては、一義的には公安調査庁のということになろうかと思いますけれども、公安調査庁においては、公文書管理法等の関係法令に基づいて適正、適切に管理を徹底しているところでありますので、私どもとしては、御指摘も踏まえながら、法の適切な運用というものを徹底していくということに尽きるかと思います。

藤原委員 では、あくまで運用という形で、何かルールを定める、ルールを設けるということは、現段階では全く考えていらっしゃらないということですか。

鈴木国務大臣 私どもの関係組織であります公安調査庁については、そうであります。

藤原委員 今回の件は、極めてイレギュラーな事態だ、全く想定していなかった失態だというふうに警察としてはお考えなんでしょうか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 警察活動は公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであり、大垣署員の活動もそのような考え方を念頭に置いて行われたものと承知をしております。

 しかしながら、結果として、今回の判決により大垣署員の活動は違法との判断が示されたところであり、その要因は、警察の情報収集活動という事柄の性質上、岐阜県警察からその目的、態様等を明らかにすることができなかったことにあると考えておりますが、警察としては、この判決を重く受け止め、判決確定後は速やかに判決で示された原告らの情報を抹消したところであります。

 いずれにいたしましても、警察活動が警察の責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであることは当然のことでありまして、今後とも、不偏不党かつ公平中正に職務を遂行するよう、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

藤原委員 資料四の通達にあるとおり、あるいは今の御回答のとおり、判決を重く受け止めるということは重ねておっしゃっています。

 では、今回の違法な行為をした者に対して処分はされたんですか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 今回の控訴審判決において警察の情報収集活動が違法であったと判断され、岐阜県警察の主張が認められなかったことは残念でありますが、その要因は、警察の情報収集活動という事柄の性質上、岐阜県警察からその目的、態様等を明らかにすることができなかったことにあると考えております。

 したがいまして、岐阜県警察からは、本件の関係職員を処分することは考えていないとの報告を受けております。

藤原委員 事柄の性質上やむを得なかったというふうに聞こえるんですけれども、それでは同じようなことがこれからも繰り返されるんじゃないですか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 警察活動は公共の安全と秩序の維持という責務を果たす上で必要な範囲で行われるべきものであり、大垣署員の活動もそのような考え方を念頭に置いて行われたものであると承知しております。

 その上で、一般論として申し上げれば、警察の情報収集活動については目的の正当性、行為の必要性及び相当性という基本原則を遵守して行われることは当然であり、違法な情報収集等が様々行われるとの御指摘は当たらないものと考えております。

藤原委員 全く質問に答えられていないんですけれども、公共の安全と秩序の維持が大事だということは誰も否定しないわけですね。その手法について問うているわけです。

 今回、違法と断じられたわけですけれども、これは、結果的に違法でした、これからもいろいろなことを今までどおりやって、後で事後的に裁判で違法とされたら、そのたびに重く受け止める、その繰り返しにしかならないと思うんですけれども、何らかに新しい策を講じる、それは全く考えていないということですか。

千代延政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの件につきましては、令和六年十月三日、各都道府県警察に対しまして通達を発出し、目的の正当性、行為の必要性及び相当性という情報収集活動の基本原則の遵守や、個人情報保護法等の関係法令に基づく個人情報の適正な取扱いについて改めて指示したところでございます。

 また、全国警察の警備部門の責任者を集めた会議や警察庁担当者の出張による指導の機会においても、都道府県警察に対して、こうした基本原則や個人情報の適正な取扱いの必要性について重ねて指導しているところでございます。

 引き続き、様々な機会を捉えて、都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

藤原委員 警察限りではもう改善する意欲もないというふうに受け取られても仕方がないと思うんですけれども、これは国民の人権そのものに関わる問題なんですけれども、これは法務大臣として、こういう情報の在り方、扱い方、何かお考えはないですか、新しいルールを設けるとか。

鈴木国務大臣 先ほどからの繰り返しで申し訳ないんですけれども、これは警察の活動ということであります。法務大臣として、警察の活動についての法規制ということになりますので、そこは私としてはお答えをする立場にないということは御理解いただきたいと思います。

藤原委員 人権擁護の観点から、個人情報の扱い、それについて問うているんです。警察に限った話じゃなくて、公安調査庁の件も含めて。法務大臣のお考えを伺いたいと思っています。

鈴木国務大臣 今の御指摘の点、公安調査庁については、法務省の組織ということでありますので、そこはきちんと私どもとして、必要があればということになりますけれども、今のところ、私どもとしては、様々今の現行法令の中で適切に取扱いがされていると承知をしております。これは適切な運用に我々としては努めていく。そして、警察の活動については、警察庁の方でそこは考えられることであろうと思います。

藤原委員 適切にできていないからこのような違法だと判断される出来事が起こってしまったということですので、そこは法務大臣としても、広く人権擁護の観点から、立法の措置、立法の手当てというのはちょっと考えていただきたいというふうに思っています。

 実際に、資料五に示しましたけれども、今回の件を受けて、九月二十六日、国家公安委員会で本件について報告と意見交換があったわけです。各委員から、本件を真正面から受け止めて対応すべき、後日の裁判で説明、立証に使える資料を作成しておくようにすべき、警察としても個人情報保護に関するリテラシーを高めなければならないといった意見が出ているわけですね。もはや運用で解決できる問題ではない、少なくともそう読み取れるわけです。

 情報収集活動について、この通達、資料四にあるような、警察自らが目的の正当性、行為の必要性、相当性というもので律するだけではもう到底足りないというふうに考えるのが普通なんですけれども、警察はいまだにその問題意識は共有いただけないということでよろしいんですか。

西村委員長 千代延長官官房審議官、ちょっと同じ答弁の繰り返しになっていますので、明確に答弁をお願いします。

千代延政府参考人 今回の控訴審判決につきましては、本年九月二十六日に開催された国家公安委員会に報告がなされ、その際、各委員から、個人情報の適正な取扱いや訴訟対応の在り方について発言があったところでございます。

 お尋ねのあった情報収集活動については、まずは警察庁において、都道府県警察の情報収集活動が基本原則にのっとって行われ、個人情報が適正に取り扱われるよう指導を徹底していくことが何よりも重要であると考えているところでございます。

 引き続き、情報収集活動が適切に行われるよう、警察庁として都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

藤原委員 引き続き適切に行われるようって、違法と断じられているので、その認識自体が誤っていると思うんですけれども、それは今でも考えは変わらないですか。イエスかノーかで答えてください。

千代延政府参考人 引き続き、情報収集活動が適切に行われるよう、警察庁として都道府県警察を指導してまいりたいと考えております。

藤原委員 全く答えていただけない、それが警察の姿勢だということが今回で明らかになったと思います。

 質疑時間が終了しましたので、これで終了いたします。どうもありがとうございました。

西村委員長 次に、松下玲子さん。

松下委員 立憲民主党の松下玲子です。

 国会議員として初めての質問です。どうぞよろしくお願いいたします。

 鈴木大臣の所信の「はじめに」では、法務省に課された使命について述べられています。法務省がその任務を通じて、国民の安全、安心を守り、国民生活の基盤を維持整備するという重要な役割を担っていること、そして、その役割を果たすことで我が国の社会正義を実現し、さらには、一たび社会正義が失われた場合には、困難を抱える方々に手を差し伸べて社会正義が保たれた状態に戻すことが使命であるとおっしゃっています。崇高な役割と使命を果たすため、法務行政における具体的課題に文字どおり全身全霊で取り組んでまいりますと、その決意をおっしゃいました。

 では、社会正義とは、また正義とは何でしょうか。正しい社会を考える上で、正義論というのは実はとても重要な位置にあるのだと思います。何が正しいか。私の正義とあなたの正義は同じなのか違うのか。正義とは人によって異なるのか、社会によって、また時代によっても異なるのか。

 正義とは何かをじっくりと考えた上で、大臣のおっしゃる我が国の社会正義について考えてみたくもあるのですが、法務委員会の限られた質疑時間で正義論について議論することはできかねますので、私は、社会正義の定義を、社会の構成員である人々が平等に扱われ、社会全体の福祉の保障と法秩序の維持を実現すること、また、そのために社会の構成員である一人一人が持つべき考え、心の在り方や守るべき社会ルールと定義した上で、基本的人権を有する社会の人々が公平に扱われることが重要であり、そのためにも社会ルールが必要であるという前提で幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 無罪である人を有罪にしてしまう冤罪は国家による最大の人権侵害の一つであり、冤罪のない社会を実現することこそが、まさに我が国の社会正義の実現につながると私は考えます。

 では、なぜ冤罪が起きるのか、二度と冤罪が起きないためにどうすべきと考えるか、お答えください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 まず、冤罪の定義については法務省として特定の見解を有しているものではございませんけれども、当然のことながら、犯人でない方を処罰することがあってはならないことだというふうにまず認識しております。

 その上で、具体的事件において無罪判決が言い渡される理由は様々でございまして、犯人でない人を処罰するような事態が生ずる原因としてどのようなものがあるかということを一義的に申し上げることは困難であろうと思っております。

 他方で、一般論として申し上げますと、検察当局においては、無罪判決等があった場合には、当該事件における捜査、公判活動の問題点を検討して、必要に応じて検察官の間で問題点を共有し、反省すべき点は反省した上で、今後の捜査活動の教訓としているものと承知しております。

 そして、過去の無罪判決等におきましては、客観証拠の吟味が不十分であったこと、自白の信用性に対する吟味、検討が不十分であったことなどの指摘がなされてきたものと承知しており、これを受けまして、検察当局におきましては、客観証拠を適切に収集、分析すること、積極、消極を問わず十分に証拠を収集、把握し、冷静かつ多角的にその評価を行うこと、供述の任意性の確保その他必要な配慮をすることなどの基本に忠実な捜査、公判活動の適正な遂行に努めているものと承知しておりまして、引き続き、こうした基本に忠実な捜査、公判活動に努めていくことが肝要であるというふうに考えております。

松下委員 まず今、お答えの初めに冤罪、特定の定義を有していないというお答えでした。実は、今回、私自身、質問作成に当たって、過去の国会の議事録や質問主意書なども幾つか確認しました。冤罪に関しては法令用語にはないようで、どうも法務省は過去の事件含めて冤罪という言葉では認識をしたくはないのかなという感じがしてならないんですね。そして、この後、私、今日の質問では再審制度に関して質問していきたいと思いますので、そのためにも、冤罪についてのまずは見解を伺いたいと思いました。

 例えば、法務委員会で、過去、刑事局長が、冤罪という言葉の定義がどのように捉えたらいいか難しゅうございますので、お答えすることは困難でございますという答弁もありました。

 冤罪の定義を尋ねている質問主意書でも、冤罪という用語の定義めいたことを述べながらも、一般論、今も一般論とおっしゃいましたよね、それを実は定義とはせずに、法務省の作成している文書の中で冤罪という言葉を使ったのはやむにやまれず用いたんだというような前置きをした上で、政府としては、過去の個別具体的な事件について、それが冤罪に当たるか否かをお答えすることは困難であるという答えもありました。答えているようで答えていないんですね。

 ちなみに、私は、東京都人権啓発センターが発行している「TOKYO人権」第七十七号、「冤罪を生まない社会に必要なこと」として、村木厚子さんのインタビューの紹介を、確認をいたしました。その中では、冤罪は、憲法が保障する自由や名誉といった基本的人権を脅かす、深刻な人権侵害です、冤罪はなぜ起きたのか、そして、冤罪被害者を生み出さないために必要なことは何か、事件当時の状況と併せ、刑事司法制度と社会の問題点について、村木さんからお話を伺っているものでした。

 村木さん御自身が経験したとても苦しい冤罪事件について振り返り、冤罪を防ぐために見直すべき司法制度についても提言されています。事件を検証して再発防止策を考えることの重要さを教えてくれてもいます。今もお答えの中でも、再発防止ということもあったのかなと思います。

 冤罪の救済のために再審制度があると認識をしています。

 今年九月二十六日、静岡地裁で再審の結果、死刑が求刑されていた袴田巌さんが、長きにわたる裁判の末、無罪判決となりました。十月九日に無罪が確定をしています。死刑囚だった袴田さんの無罪が確定したことは本当によかったと思います。袴田巌さん御本人のみならず、ずっと長い間裁判を支えてこられた御家族、お姉様の秀子さん、支援者の皆様の喜びは、言葉では言い尽くせないものだと思います。

 でも、同時に、事件発生から五十八年という長きにわたり、そのほとんどを勾留されて自由もなく、命がいつ奪われるかも分からずに生きてこられた袴田さんを思うと、奪われた日々を思うと、悔しさと申し訳なさでいっぱいにもなります。

 袴田さんの事件を始めとして再審事件について調べていると、再審請求から再審開始までとてつもなく時間がかかっていることが分かりました。なぜすぐ再審が開始できないのか。請求から開始までの規定はないのか。これまでの再審無罪となった事件の反省から、その実態を調査し、ちゃんと検証しているのかどうか、とても疑問に思います。

 袴田事件に関して、今年十月八日に検事総長談話が公表されています。談話の最後には、今後の方針として、「最高検察庁としては、本件の再審請求手続がこのような長期間に及んだことなどにつき、所要の検証を行いたいと思っております。」とおっしゃっています。

 再審請求手続が長期間に及んだことや、冤罪に関して二度と起こさないためにも、検証は必要だと考えます。

 そこで、所要の検証はいつからどのように行うのか、国会や国民にどのように検証の経緯や結果をお伝えいただけるのか、お伺いします。

森本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の検証につきましては、現在、検察庁において所要の検討を進めているところであるというふうに承知しております。

 その具体的な公表時期等については、検察当局において今進行しているところでございますので、今後適切に検討した上で対処するものと思っております。

松下委員 検証すると検事総長御自身がおっしゃっているんですね。それを検討していると今お答えでしたけれども、何か、検証する、検討するって、全くちょっと中身が見えないですね。

 まず、今回のこの事件に関して、袴田さんの大切な人生、家族との穏やかで健やかな大切な日々を結果として奪ってしまった。冤罪によって一生を奪われたことの重さを鑑みると、「再審請求手続がこのような長期間に及んだことなどにつき、所要の検証を行いたい」、これはやはり残念でならないんですね。手続が長期間に及んだことだけではなくて、なぜこうした人権侵害が起きてしまったのか、捜査、公判、再審手続の過程について検証し、ちゃんと反省の下で、二度と起きないようなルール作りをすべきと私は考えます。

 冤罪から質問を始めました。冤罪被害者でもある村木厚子さんも委員として参加をした法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会で約三年の議論を行った後、全会一致で取りまとめられた答申に基づいて、二〇一六年に刑事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しています。そして、この刑事訴訟法等の一部を改正する法律には、衆参両院で附帯決議が採択されて、法律には附則もあります。この経緯の中で、現在、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会が開催をされているのだと私は認識をしています。

 この在り方協議会開催から既に二年が経過をしていますが、在り方協議会の今後の予定と議題はどうなるのか、ゴールはどこに設定をしているのか、刑訴法改正時の附帯決議に込められた思いを重く受け止めて、再審における証拠開示の法制化や検察抗告の禁止などを議題として、スピード感を持って行い、結論を出すのか出さないのかを含めて取りまとめるべきと考えますが、いかがですか。

森本政府参考人 まず初めに、先ほどの私の答弁で、私の発音が悪くて、検証の検討ではなくて、検証を今進めているところ、検証は行っておりますという答弁をしたつもりで……(松下委員「検証はしているんですね」と呼ぶ)はい。今しておりまして、それがいつ取りまとまって発表されるかについては、今後、検察当局において適切に対処するというふうに申し上げました。

 大変失礼いたしました。

 その上で、お尋ねの在り方検討会議でございますが、これにつきましては、平成二十八年成立の刑事訴訟法等の一部改正法の附則で定められている検討に資するために、これまでに、まず第一段階目の議論としてと、第二段階目の議論が行われております。

 現在までに、先生御指摘の期間でありますけれども、十六回の議論をいただいておりまして、その中で、第一段階目の議論として、事務当局や構成員から配付資料などに基づく説明がなされるなどして実務における運用状況等が検討されたということがございまして、現在、第二段階目の議論として、それを前提にしまして更に検討すべき項目について議論が行われているという段階でございます。

 再審関係につきましては、これまでに四回にわたって協議が行われておりまして、その第二段階目の議論といたしまして、先月でございますが、令和六年十一月二十二日に開催された前回会議でも再審関係が議論され、次回会議におきましても再審に関する議論が行われる予定となっております。

 同協議会における協議の進め方などは、構成員の方々の御意見を踏まえつつ決すべきものであることなどから、現時点において今後のスケジュールあるいは議事内容について確固たることをお答えすることは困難ではございますが、法務省といたしましては、引き続き、同協議会におきまして充実した議論が行われるように尽力してまいりたいと考えております。

松下委員 検証を検討しているのではなくて、検証はしているんだというお答えでした。

 検証したことは、内部で検証するだけじゃなくて、ちゃんと国会で報告をすべきだと私は思います。そして、国民に知らせるべきだと思います。これだけ重い、人一人のほぼ生涯です、五十八年という、結果的に奪ってしまったことをやはりちゃんと重く受け止めて、なぜこうした事件が起きたのか、再審開始の手続が長かったことだけじゃなくて、その捜査の過程において違法性はなかったのか、なぜ冤罪を防ぐことができなかったのか、そうした視点でちゃんと検証を行って、そのことは広く国民にも伝えるべきだと私は思っていますので、しかるべき、やっていますというように聞こえましたが、やっているだけじゃなくて、ちゃんと報告をして、今後の再発防止策につなげていただきたいと思います。

 そして、今お答えのあったこの協議会なんですけれども、最も新しい十一月二十二日、再審法に関して議論したものが、議事録がまだ出ていないんですよ。私は、確認したいと思って、今、未定稿でも見れませんかと聞いてみたんですけれども、見れませんと言われて、見れていません。たしかこの前の回のも出ていないかな、二回議事録が出ていないような気がするんですけれども、議事録、二、三か月、発言者の確認が必要だということは承知しているんですけれども、できるだけ早く上げていただきたいと思います。

 そして、その上で、過去の議事録も確認をいたしました。構成員の中には、再審事件の具体的な個別事件について、ここで議論をすべきというような意見もあったかなと私は認識をしています。でも、実際に、この在り方協議会の中では、再審事件に関して、個別の事件、事例を検証しようというような内容にはなっていないですね。これはせっかくの協議会ですので、是非そこは検討していただきたい、議論をしていただきたいと思っています。

 そして、やはりこの先のゴールが見えていないんですね。二年がもう過ぎています、既に二年。この先どこまで議論を続けるのか、やはり、スピード感を持って議論を行って答申を出すのか、取りまとめをどういった形で出すのか、中間のまとめを出して国民の皆様にパブリックコメントを取るのか、そうしたことをスケジュール的に示していただきたいんですよ。構成員の皆様の中で話しているから、ちょっとそれは言えないというように、私、今、受け取れたんですけれども、ここでの合意点や結論を出すか出さないかも含めて取りまとめていただきたいと思うんですね。

 というのも、やはり法改正時の附則や附帯決議というのを私はとても重いと思っています。そして、附帯決議の中では、何か、協議会の名前が在り方協議会となっていて、改正訴訟法に関する刑事手続の在り方を協議するというふうには、もちろん在り方を協議しているんでしょうけれども、附則とか附帯決議の中では、二〇一六年の法改正時に積み残した課題、再審法のルールをどうするかとか、そうしたことをちゃんと法施行後に議論しようねということだと私は思っているんですね。積み残した課題があるからこそ協議会があって、その協議会を基にしっかりと今後どうすべきかというのをまずは提起をしていただきたいと思っています。

 過去の法務委員会や衆参の予算委員会における再審法の質疑を議事録等で確認をしてまいりました。超党派の議員が再審法を改正すべしという立場であるなと質疑を見て私は感じました。今のままでよいと思っている議員は、質疑を通じては一人もいらっしゃらないと私は思いました。

 冤罪がなぜ起きるかという質疑の中で、当時の、私が確認した議事録の中でですけれども、岸田総理も、再審請求の手続が迅速に進められるということは事案の真相に、真相を早期に明らかにする観点から重要であると認識いたしますとお答えになっているんですね。

 再審請求の手続をルール化すること、請求手続を迅速に進めることは、冤罪被害者の人権を守る観点からも、本当の犯人をちゃんと見つけて有罪にするという社会正義の観点からも重要であると私は考えます。

 そこで、御質問いたします。検察の証拠全面開示の必要性や検察抗告の禁止について見解を伺います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 まず、前段の証拠開示の方でございますが、再審請求審において証拠開示制度を設けることについては、以前の法制審議会の部会においても議論がなされました。その際、再審請求審は通常審と手続構造が異なるため、通常審の証拠開示制度を転用することは整合しないでありますとか、再審請求審における証拠開示について一般的なルールを設けることは困難であるといった問題点が指摘されて、法整備がなされなかったという経緯がございますところ、今そうした指摘をも踏まえまして、十分な検討を要するものというふうに考えております。

 また、検察官の抗告の禁止につきましては、先生御指摘のとおり、再審手続の長期化を防ぐために、再審開始決定に対する検察官の抗告を禁止すべきであるとする意見がある一方で、仮に検察官による抗告を禁止すると、再審開始事由がないのに再審開始決定がなされた場合など、違法、不当な再審開始決定がなされた場合でも、これを是正することなく再審公判に進むことになり、確定判決が軽視されることになるなどの意見もあるものと承知しております。

 その上で、これらにつきましても、今御指摘の改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会において協議が行われているところでありまして、繰り返しになりますが、法務省としては、同協議会において充実した議論がなされるように尽力してまいりたいと考えております。

松下委員 私が確認した過去の答弁とほとんど一緒なんですけれども、今お答えいただいたのは。

 再審と通常審の違いみたいなのをおっしゃっているんですけれども、例えば、公判段階において証拠開示制度がなかった時代の事件について、再審段階でも弁護人が検察官の手持ち証拠にアクセスができないとすれば、それは誤った裁判、誤判だとか冤罪を、それを是正するというのは極めて難しいですよね。だからこそ、再審における証拠開示と抗告の禁止、これは法制化をしていくというのが喫緊の課題であると私は考えます。袴田巌さんの事件の再審無罪判決から今度こそ学ばなければいけないのではないでしょうか。

 同じ過ちを二度と繰り返さないためには、例えば独立の第三者委員会などを立ち上げて、袴田事件における誤判の原因や救済までの長期化の原因、再発防止策などについて、改めて事件全体を見直す公的検証が必要であると私は考えます。そして、その後に必要な法改正が速やかに行われる必要があるのではないでしょうか。誤りに学び、より公正な制度をつくることは、社会正義の実現につながるはずです。

 そこで、冤罪被害者の再審法改正を早期に実現する議員連盟というものがございます。今年三月に発足をしていて、私も、十月に初当選をいたしましたので、この議連に加入をいたしました。役員一覧、幹事長代理には鈴木馨祐と、大臣のお名前がございます。議連の名前どおりに、再審法改正を早期に実現すべきと考えますが、鈴木大臣のお考えを伺います。

鈴木国務大臣 ここは法務委員会の場ですから、法務大臣としての答弁になることは是非御理解をいただきたいと思います。

 法務大臣として、今の再審法の改正ということ、再審制度について当然様々な御意見、御議論がある、これは承知をしているところでございます。

 その上で、再審制度の在り方については、確定判決による法的安定性の要請、そして個々の事件における是正の必要性、この双方の考慮が必要だと思います。そういった中で、様々な角度から慎重かつ丁寧に再審法の改正ということについては検討していく必要があると考えております。

 これは、法務省の方で開催をしている改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会において今現在まさに協議が行われているところでありますので、私法務大臣としては、その協議の進み方というか、その議論をしっかりと見守っていきたいというふうに思っております。

松下委員 鈴木法務大臣が法務大臣であるということはもちろん認識をしています。でも、法務大臣であると同時に、一人の議員であるというのも事実だと思っています。その上で、今年三月にこの議連に入られているわけですよ。入っているだけじゃないんですよね、幹事長代理ですから、そのお立場もお持ちの上で、冤罪被害者のための再審法改正を早期に実現する、その思いを是非大臣としても発揮をしていただきたいと思います。

 今、在り方協議会を見守りますみたいな、最後の締めくくりでしたけれども、二年もたっているんですよ、二年です。長いですよ、二年。二年ずっと在り方を協議しているんですか。附則もあり、また附帯決議もあり、今まさに冤罪の被害者が、袴田さんは無罪が確定をしましたが、今なお再審請求の手続をしている方や冤罪の被害に苦しんでいる方もいると思うんですね。そうした方にとって、一分一秒でも惜しいはずなんです。それを是非御認識をいただきたいと思います。

 そして、やはりルールを作ることが大事だと思うんですね。確定判決の安定性って、これも何度も議事録でも見ましたけれども、確定判決の安定性を求めているのは誰でしょうか。国民は、誤った判決であれば正してほしい、そう求めているはずなんですね。安定性というのならば、決まったものはもう変えませんというふうに言っているように、一度決めたものは変えませんと言っているように思えて仕方ないんですね。

 でも、歴史的な経緯の中で、刑事訴訟法も改正されてきました。証拠や、またDNA鑑定など、録画とか録音とか、いろいろな、過去にはなかった手法も用いられてきています。袴田さんの事件に関して言うと、検察による捏造が、三点かな、確認をされています。事件の証拠が捏造されていて、それによって有罪、死刑が確定をされてしまっていたその人のことを思うと、これは本当にやりきれない思いでいっぱいです。

 私が今日の質問の最初にお話をした、大臣自身がこの所信の始めにお話をされている社会正義、そしてその社会正義が失われた場合、困難を抱える方々に手を差し伸べて社会正義が保たれた状態に戻すことが使命であるとおっしゃっているんですよ。

 まさに、冤罪の被害者というのは、社会正義が失われて、誤判という形によって、その誤判もいろいろな理由があると思います、今日もるるお答えもいただいておりますが、そうした中にあっては、誤った判決をしたくてしている人はいないはずなんです。みんなそれぞれの正義感で動いています。裁判官も検察も、弁護士もみんな正義感の中で動いていて、それでも人はやはり誤ってしまうものだ、どんなに完璧と思う人でも誤ることはある。だったら、その誤りを正すためのルールをみんなで作りませんか、それがまさにこの議連の名前にもなっている、冤罪被害者のための再審法改正、これを、私自身も一人の議員として、正しい社会、公正な社会、社会正義、それを実現する上でも取り組んでいきたいという思いでございます。

 是非、もうお答えは求めませんが、今、議連に入られて、幹事長代理でいらっしゃる鈴木大臣とこの法務委員会で御一緒できることを私はとてもうれしく思いますし、だからこそ、再審法改正実現に向けて共に取り組んでいきたいという思いを持っています。

 次に、選択的夫婦別姓制度についてお伺いをしたいと思います。

 私自身は実現に向けて取り組みたいと思っている立場です。

 鈴木法務大臣の所信表明、これは、性同一性障害特例法の違憲決定への対応等の中で、夫婦の氏の在り方について、多様な考えがあることを踏まえ、国民の間はもちろん国会でも御議論いただけるよう、情報提供を行ってまいりますと述べられています。

 そこで、どんな情報提供をいただけるのか、これまでとこれからの情報提供の詳細について教えてください。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 選択的夫婦別氏制度につきましては、十分に議論が行われ、国民の間により幅広い理解を得ていただくことが重要であると考えております。

 そのような観点から、法務省としては、ホームページ等において積極的に情報提供を行っているところでありまして、具体的には、平成八年の法制審議会の答申の内容ですとか、検討の経過、現行法や選択的夫婦別氏制度に対応する戸籍の記載例、我が国における氏の制度の歴史、平成二十七年及び令和三年の最高裁大法廷の判断、内閣府において令和三年に行われた世論調査の結果、あるいは選択的夫婦別氏制度の導入に対する主な賛成意見や反対意見の理由ですとか、旧姓の通称使用に関する取組などを紹介しているところでございます。

 法務省といたしましては、引き続き、国民各層の意見や国会における議論状況等に応じまして、必要となる情報について積極的に情報提供してまいりたいと考えております。

西村委員長 松下さん、時間になりましたので。

松下委員 はい、済みません。

 もうこの問題は議論が尽くされていて、情報提供の段階は過ぎているなと思っています。鈴木大臣も、今から五年近く前に、選択的夫婦別姓制度は、思想ということではなくて、現実に困っている方がいらっしゃる実務的な問題の課題解決のために実現すべき取組ですと、X、当時のツイッターで述べられています。今もそのお気持ちに変わりはないか、鈴木大臣自身が御持論どおりに自民党内で選択的夫婦別姓実現に向けて取り組まれることをやっていただけるのか伺いたいと思います。

西村委員長 松下さん、ちょっと、時間になりましたので。

 鈴木大臣、一言だけお願いします。

鈴木国務大臣 これも、法務大臣としてということと、また個人ということで、ここは法務大臣として出ていますので、そこの点は御理解いただきたいと思います。

松下委員 はい、済みません、ありがとうございます。

 以上で終わります。

西村委員長 次に、鎌田さゆりさん。

鎌田委員 まだおはようございますのお時間だと思いますが、立憲民主党の鎌田さゆりでございます。

 鈴木大臣の所信表明に対する質疑ということで、お時間をありがとうございます。

 この法務委員会、西村委員長の下で、また、松本筆頭、そして黒岩筆頭理事の皆さんとともに、充実ある議論を重ねていきたいと考えている一人であります。

 まず、鈴木大臣、所信の中でも述べていらっしゃいましたけれども、総合法律支援の充実強化というところがございます。これは、まさに、法テラスの総合法律支援の一層の充実に取り組むというふうに述べていらっしゃる内容なんですが、まず、役所の方に伺いたいんですけれども、現在の総合法律支援法では、能登の被災者の皆さんへの法テラスの支援、期限はいつまでになっていますでしょうか。

松井政府参考人 お答え申し上げます。

 総合法律支援法では、法テラスによる被災者法律相談援助の実施期間について、著しく異常かつ激甚な非常災害の発生日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める期間に限るものとされております。

 これを受けて、令和六年能登半島地震による災害については、政令により、本年十二月三十一日までの実施期間を定め、法テラスによる資力を問わない無料法律相談を実施しているところです。

鎌田委員 ありがとうございました。

 今、御答弁の中に政令という御回答が二か所出てきましたけれども、まさにおっしゃるとおりで、我が党でいきますと、能登半島、石川では近藤和也衆議院議員、そしてまた、衆議院の予算委員会でも多くの方が、この疑問、この点について、今年の十二月三十一日、ここで終わってしまうということに疑問を呈している方々もいらっしゃいました。

 予算委員会の議事録を見てみますと、公明党の方も質問されていまして、そのときに、石破内閣総理大臣は、今のところ十二月末まで、今の御答弁と同じですね、ということになっておりますが、そういうようなニーズは、まさに法テラスが被災地で必要とされているというニーズは継続しておるというふうに認識をいたしております、また、奥能登豪雨というものも、これも一体として考える必要性も合理性も十分にあると考えています、詳細につきましては法務大臣に検討いたさせますというふうに答弁をしているんですね。

 そこで、この能登の皆さん方に対する総合法律支援、そしてまた政令でできるものですから、法テラスでの法律支援制度、総合法律支援の弁護士の方々の支援、これは延長すべきじゃないでしょうか。いかがですか。

鈴木国務大臣 まさに今、鎌田先生おっしゃいましたように、十二月五日の予算委員会におきましても、総理の方から、今まさにお話がありましたように、奥能登豪雨についても、これも一体として考える必要性も合理性も十分にある、そういった中で指示をさせますということで、私も承っているところであります。

 そういった中にあって、この法テラスによる援助の御要望もありますので、こうした要請も踏まえて、来年の、令和七年の一月一日以降も、資力を問わない無料法律相談を実施することについて、今具体的に検討を進めているところであります。

 今、この今日の段階では、ちょっと、以上でお答えとさせていただきたいと思います。

鎌田委員 今大臣から、来年の一月一日以降も法テラスで支援が、相談に乗れるような体制を、調整を今しているような御答弁に聞こえたんですけれども、ただ、もう今日は十二月の十八日ですね。来年の一月一日以降も、法テラス、ちゃんと運用できるようになりますというお知らせは、一月一日以降も延長できるのであれば、本来ならお知らせはしなくちゃいけないはずですよね。

 今まだ検討されているというのは、とても前向きな御答弁に取れたんですけれども、お知らせはいつなさっていかれますか。

鈴木国務大臣 もちろん、それは一月一日以降ということで、もう日が迫っているというのも事実でありますから、そこはきちんと対応ができるように今検討しているところであります。

鎌田委員 きちんと対応できるようにしていきたいということなんですが、だから、今日は十二月十八なので、一月一日というのはもうすぐなんですよ。

 きちんとやっていくという大臣の御答弁は重いと思うんですけれども、そこを、じゃ、やっていくということで、一月一日以降も法テラスは延長して運用されるということでよろしいですね。

鈴木国務大臣 必要な法令上の手当てということも当然必要になってまいりますので、そこの状況できちんとつつがなく進めていくことができるように私どもとしてもきちんとした形で検討しているところでありますので、そこは御理解をいただければと思います。

鎌田委員 ありがとうございました。

 もうこれ以上はいたしませんけれども、委員長にお願いを申し上げます。

 今の大臣の御答弁ですと、法テラス、これは総合法律支援法に基づいての政令によるものですけれども、来年の一月一日以降もなされるような御答弁でございましたので、是非、この法務委員会の理事会に、一月一日からどのくらい延長されるのか、豪雨もありましたので、そこは非常に被災地の皆様にとっても私たちにとっても大事な課題ですから、理事会に、何日からお知らせをして、何日まで延長するということを、法務省の中でどのように決まったのかを報告を求めたいと思いますので、お取り計らいをお願いいたします。

西村委員長 理事会で協議いたします。

鎌田委員 ありがとうございました。

 続きまして、通告の二番目の質問に移らせていただきます。

 今日、お手元には資料としてお配りをしておるんですけれども、大臣も所信の中で、困難を抱える子供たちへの取組等ということで、今年の民法等の改正のときに、共同親権の導入、これをこの法務委員会で多くの方がかんかんがくがくの議論をいたしました。結果として、所信にあるとおり、関係府省庁と連携しつつ、円滑な施行に向けた準備を着実に進めると。

 でも、施行までまだ二年あるんですね。施行まで二年という数字については様々意見もありましたけれども、ちょっとここで見ていただきたいのは、資料の一枚目と二枚目、これは保育所の異動届なんです。

 保育所の異動届で、一枚目は、これは川崎市と右上の方に書いてありますから、これは川崎市から取り寄せたものなんですけれども、保育所を異動する際に届出を出すものなんです。右上の方に、保護者の氏名が一人分、一名分書く欄があります。一枚目の資料をめくっていただいて二枚目なんですが、実はこれ、新しい方なんです。国立国会図書館のインターネット資料保存集から取り寄せたんですが、同じ川崎市内で保育所を異動するときに、保護者の氏名を、今まで一名だったのに、二名書かなくちゃいけなくなっているんですね。

 もちろん、川崎市さんに問合せをすれば、きちんと事情があれば二名のところを書かなくてもいいようにお伝えしていますとなっているんですが、今、新しい方の保育所の届け、転園届が二名書かなくちゃいけない。そうすると、まさに共同親権導入の際に議論になりました、今、DVなどで子供を連れて避難をしている、怖い思いをしている、そういう片方の親にとって、保育園を転園するときに二名書かなくちゃいけない。これが自治体レベルで実際に起きているんです。

 この資料を御覧いただいた上で、まずは役所に伺いたいんです。これはどう思われますか。ちょっと印象を伺いたいんです。本来なら、二年間、丁寧に準備をして、きちんとやっていくというはずだったのに、この一つの川崎市の例をもってもそうなんですが、ほかの自治体でも先走り的にこういうことが行われているところがあるんですよ。これについて、どのような感想をお持ちになりますか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 各地方自治体における保育所の入退所の手続について、法務省で具体的に把握しているわけではないことは御理解をいただきたいところでございますが、委員御指摘のように、一部の方々の間で、父母双方が親権者である場合には、保育所の入退所の手続をするために父母の双方の同意を必要とすべきであると主張する意見があることは承知をしております。

 その上で、保育所の入退所の手続についての一般論として申し上げますと、当該手続を所管する関係府省庁の説明によりますれば、父母双方が親権者である場合でありましても、現に監護する者のみによってその手続を行うことが可能であるとの整理がされていると承知をしております。

 そのため、申請書に父母双方の氏名を記載する欄があるからといって、常にその双方の同意がなければ保育所の入退所の手続をすることができないというわけではないものと理解をしております。

鎌田委員 確かに、法務省は、保育園は違う、厚生労働省でしょうとおっしゃるかもしれない。だけれども、この共同親権導入に関する民法の改定のときの中心は、やはり法務省じゃないですか。そして民事局じゃないですか。さんざんそれは議論してきましたよ。

 だから、保育園だから厚生労働省だから知らない、学校の遠足だから文部科学省だから知らないじゃ駄目でしょう。違いますか。きちんと一元的に情報を取るところ、窓口を決めて情報を取っていただかないと、各自治体でこういうことが起きていると、本当に今怖い思いをしている保護者の方がどれだけいるかということを民事局の皆さんは感じていらっしゃらないのかなというふうに私は思ってしまうんです。

 資料の三枚目なんですが、これは同じく川崎市なんです。これは文教委員会だから市議会なんですけれども、陳情があって、その陳情の際に市議会の文教委員会で配られている資料は、下に四ページと振っている資料の四なんですけれども、事務所で下に横線を引いております。

 近年、離婚協議中の云々とあるんですけれども、それを読んでいきますと、保護者の一方のみの意思に基づく転園、退園処理によるトラブルを回避するため、両保護者に記名をお願いしているものであるがという部分があったりします。あと、さらに、線を引いたところの二行目は、異動届の保護者記名欄を二つ設けて、原則として両保護者の記名をいただくようにしていると。

 原則として両保護者となったら、これはやはり萎縮しちゃいますよ、今避難をしている、自治体から支援措置を受けている保護者の方は。どんなに怖い思いをしている人がいるかということをやはり民事局には分かっていただかないと困りますし、情報をきちんと窓口を一元化して取っていただかないと困ります。

 そこで、伺いたいんです。大臣に伺います。

 今後、各省庁にまたがる話です。ですが、人命が関わっています。法務省がきちんと中心になって情報を取るように指示をしていただきたいし、そして、情報をちゃんとデータとして把握をするように民事局に指示をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 もちろん、委員も御理解をいただいていると思いますけれども、法務省において、ほかの、他省庁が所管の政策について全て、それを指示をするとか、そういったことは現実的にはなかなかしづらいというか、するべきではないだろうと思っておりますが、もちろん、情報ということはきちんと適切に収集をしておくべきだと思います。

 また同時に、川崎のということでお話がありましたので申し上げれば、これはやはり、あくまで一般論ということになりますけれども、それぞれの置かれた状態、状況は様々あると思います。そういった中で、それぞれの事情に応じて適切な対応、これは当然自治体においても大事なことであると我々としては考えておりますが、もちろん、自治体のことについて法務大臣としてコメントするということにはどうしてもこれはならないところでありますけれども、我々の認識としてはそういったところであります。

鎌田委員 大臣、それはとても残念です。

 もちろん、大臣のお立場で今の御答弁も理解しないものではないんですけれども、でも、民法を改定をしたということで波及していくところが各省庁にまたがって、そして、全国に暮らしている日本国民で、今怖い思いをしている保護者さんたちに関わってくる話なんですよ。

 実際に私のところに寄せられている声ですと、例えば、ここの自治体に何歳まで住んでいたけれども、引っ越しておいてよかった、今、自分が住んでいた自治体は二名の保護者の名前を書くことが原則になっていると。もちろん事情も聞かれるけれども、聞かれたくない方だっているじゃないですか。

 だから、私が今日資料としてあえてお伝えをして、川崎の例を見ていただいたんですけれども、ネット上では川崎モデルとまで言われているんですよ。でも、川崎市の自治体がそんなことを言っているわけじゃない、自分たちがこれは川崎のモデルですと言っているわけじゃないんですよ。共同親権を進めたい一部の方々が、川崎モデルという言葉を使って、ネット上でそれを非常に多く拡散をしていらっしゃる。それで怖い思いをしている人たちがたくさんいるんです。

 ですので、大臣、ここは法務省の大臣として、各省庁の情報をきちんと収集できるようにこれから努力をしていくという答弁でも結構です、そのくらいの気持ちはお持ちいただけませんか。

鈴木国務大臣 当然、私は法務省の所管をする法務大臣という立場であります。その点は是非御理解いただきたいと思うんですが、もちろん、それぞれ各省庁、あるいは自治体ということであれば自治体ということになりますけれども、それぞれにおいてそこは適切な対応というものが重要だというふうには、当然それは考えております。

鎌田委員 また引き続きこれは、施行まで二年ありますし、課題がたくさん残っていますので、引き続きということで、次の、三番目の通告に従って質問させていただきます。

 大臣の所信の中にもありました区分所有法ですね、区分所有法制の見直しに向けた関連法案を国会に早期に提出することができるよう、所要の準備を進めますという所信の表明がございました。

 そこについて関連して伺っていきますけれども、私は今日、資料としては五枚目、この五枚目の資料は、今年の二月に法制審から出された答申、この区分所有法に関わる答申なんですけれども、これを見ながら進めていきたいと思うんです。

 まず、局長、これは通告していないんですけれども、現在の区分所有法、現在ある区分所有法の解釈ですと、集合住宅のマンションの共用部分に瑕疵があって、その瑕疵の欠陥をつくり出してしまった業者が任意に修理をしないというときに、マンションの管理人さんがいらっしゃいますけれども、その管理人の方が、現行法の二十六条四項に基づいて、管理組合の理事長に当たる方がですね、その方が、規約又は集会の決議に基づいて、各区分所有者を代理をして、損害賠償請求訴訟を提起して、そして裁判で認められたら、賠償金をもって共用部分の瑕疵を補修するという仕組みになっている、こういう解釈でよろしいですよね。

    〔委員長退席、米山委員長代理着席〕

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現行の区分所有法では、共用部分について生じた損害賠償請求権について、区分所有法上は管理者といいますが、管理組合の理事長が区分所有者を代理するという規定がございます。管理者が原告になって訴訟を提起することもできます。実際に賠償金を得たときにそれをどう使うかというところまでは、区分所有法は特に決めておりません。

鎌田委員 ありがとうございました。局長、済みません、通告していないのに。

 ただ、代理をして提起をすることができるということで、集会の決議で、理事長などがですね、そういうふうになっているんですけれども。

 そこで伺いますが、大臣にこれはまず伺いたいと思うんですけれども、今年の二月十五日に法制審から答申の要綱が出されました。その要綱が今日皆様に配付している資料の五枚目に当たりますけれども、この要綱の中の「共用部分等に係る請求権の行使の円滑化」、まさにこのタイトルになっているものですが、これの意図、目的を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 今御指摘のところで、これまでの下級審の判決において、損害賠償請求権が発生した後に一部でも区分所有権が譲渡されると、その譲渡した区分所有者のみならず、ほかの区分所有者も含め、管理者において訴訟追行することが一切認められないと判断をされたものがあると承知をしております。

 その中で、今回、この要綱においては、区分所有者等の有する請求権の行使の円滑化を図るという趣旨で、管理者は請求権を有する区分所有者又は旧区分所有者を代理し訴訟追行することができるものとする、そういった提案がされているということであると我々としては理解をしております。

    〔米山委員長代理退席、委員長着席〕

鎌田委員 旧区分所有者という文言も答弁の中で今おっしゃっていただいたんですけれども、私は、今回のこの要綱の中でとても気になるのは、この六番の「共用部分等に係る請求権の行使の円滑化」なんですけれども、3ですね、「1及び2の規律は、管理者に対して書面又は電磁的方法により別段の意思表示をした旧区分所有者には適用しない。」と。

 この「別段の意思表示」というのがよく分からないんですね。何でこの要綱にこの「別段の意思表示」というのが入ったのかなというのがよく分からないんですけれども、それはちょっと後でまた時間があったら聞きたいと思うんですけれども。

 では、伺いますが、これは民事局長で結構です。要綱案では、要綱案からするとですけれども、既にマンションを売却してマンションとは無関係となった旧区分所有者、これが例えば、瑕疵のあった共用部分を修理する、補修をすることになったけれども、あなた、管理者に、代理人に頼んでいいかというときに、裁判を起こすことに反対の意思を表示した、そういうときは、管理組合又は理事長は、代理してこの権利を行使することを認めないという意思表示をすることができるという例外になってしまうんじゃないかなと思うんですね。

 そこはいかがでしょう。そのように読んでいいんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、要綱におきましては、旧区分所有者が管理者に対して別段の意思表示をした場合には、旧区分所有者の請求権については管理者による代理や訴訟追行が認められないこととされております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 そうすると、例えば、仮に、マンションを転売した旧区分所有者が反対の意思表示をしない、しなかった。理事長が区分所有者も代理してその損害賠償請求権を行使したとしても、旧区分所有者から後で自分の分の損害賠償金を下さいと求められたら、この理事長、代理をした人、これは拒絶できないということになるんでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、現行法の規律におきましても、管理者は各区分所有者が受領すべき損害賠償金等を代理して受領するものですから、受領した損害賠償金等は各区分所有者に返還しなければならないということになると思います。

 要綱に示された規律が設けられた場合も同様でありまして、管理者は受領した損害賠償金等を現区分所有者や旧区分所有者に返還しなければならず、現区分所有者や旧区分所有者から返還を求められれば、これを拒むことはできないと考えられます。

鎌田委員 今の御答弁だと、そうすると、修理に例えば五千万かかるとしたら、旧区分所有者、今は住んでいないんですよね、マンションに、その旧区分所有者が自分の分も下さいと言ったら、その五千万かかるうちから減るわけですよね。そうすると、必要としている共用部分の補修、一〇〇%はできないという可能性も残りますよね。いかがですか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 まず、現行法の規律でも、受領した損害賠償金等は各区分所有者に返還すべきものとなります。

 そして、そもそも損害賠償金は、法律上、当然に建物の修繕費用に充てられるというものでもありませんで、要綱の規律を設けたことによって補修を実現することが難しくなるというわけではないと考えております。

 その上で、要綱では、共用部分についての損害賠償請求権等の行使の円滑化を図るため、損害賠償請求権等が発生した後に区分所有権が譲渡された場合であっても、管理者の訴訟追行権限が失われないことを明確化すること、これが提案されておりまして、この提案は、各区分所有者の負担する補修費用などの損害の円滑な回復に資するものと考えております。

鎌田委員 御答弁を聞いていると、そのマンションに今住んでいる、現在住んで暮らしている区分所有者の方々にとって、大丈夫です、共用部分なんだから、皆さんにとっての共用部分なんだから、そこを補修する金額を、そこを造った、最初の建物を造ったところに対して訴えを起こして、その損害賠償請求金が来たら、それに基づいて、そのお金を元に補修ができるというふうに聞こえるんですけれども、私の解釈、間違っていたら指摘してください。

 私が心配しているのは、旧区分所有者は、結局、五年前とか十年前とか二十年前にもう譲渡して、そして、そのときに損害賠償請求権を譲渡しなかったからといって、今住んでいる方にその権利がないということで、東京地裁の平成二十八年の判例を見るとそのようになりますけれども、だから、その辺の不都合を直すための要綱だというのも重々承知しているつもりなんですが。

 では、ちょっと聞き方を変えて、平成二十八年の東京地裁の判決で、これじゃもう、マンションなどの補修のために裁判を起こそうという気持ちは、とてもじゃないけれども起きなくなるよというような判例が出ているんです。その判例の不都合さを解消するためにもこの要綱があるというふうに読んでよろしいでしょうか。

竹内政府参考人 委員御指摘のとおり、下級裁の判決では、区分所有法の委員御指摘の規定につきまして、損害賠償請求権の発生後に区分所有権が譲渡された場合には、管理者は、その人を含め、全区分所有者を代理することはできないというような判決がございまして、それではなかなか不都合もあろうということで、その手当てをしたのが今回の要綱でございます。

鎌田委員 では、今後は、東京地裁の平成二十八年のこの判決はあるけれども、来年、年明けの通常国会にも出されるかもしれませんが、区分所有法の改正の中で、今、全国にお住まいの住人の方々、その方々は、不動産屋さんからそういう説明は受けていない、だって、不動産屋だってそんな説明はできませんからね、売るときに。実はもう二十年たっているマンションなので瑕疵の部分があるかもしれませんとか、もしかしたらこれから先、損害賠償の裁判が起きるかもしれませんということは言えませんので。

 でも、これから先、国交省も絡んでくる法案ですから、マンションの建て替えですとか補修に関わる法案なので、マンションで暮らす全国民の方々、安心して、何か起きたら、共用部分の補修は大丈夫なんだと。いなくなっちゃった人を捜しに、例えば海外まで行かなくちゃいけないとか、あるいは、裁判になるといったら、私は嫌だという人だって出るかもしれないじゃないですか、旧区分所有者で。もう十年前に売っちゃった人ですよ。そこに住んでいないのにね。その人にも権利を与えてあるわけだから。

 そうすると、今住んでいる区分所有者と旧区分所有者と、そこで、裁判になるといったとき嫌だと言ったけれども、お金を取れるといったらやはりお金が欲しいという人も、人間ですから、出てくるかもしれないんですよ。

 そういったトラブルが私はなるべく起きないでほしいし、今住んでいる方々には安心してこれからも住み続けていただきたいと思っていますので、そこのところは大丈夫です、この区分所有法の改正はそういうトラブルにもちゃんと対応していけますというふうに言い切っていただけますでしょうか、局長。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 今回の要綱につきましては、先ほど申し上げましたような、現行法下での不都合を解消しようということで、請求権行使の円滑化を図るという趣旨でございまして、委員おっしゃるように、これはマンションに住む方多くに利害が関係することであると思いますので、うまく利害が調整できるように法案を策定していきたいと考えております。

鎌田委員 ありがとうございました。

 新しい法務委員会になってから、そして鈴木大臣の下での質疑は初めてでありましたが、時間が参りましたので終わります。また来年も、充実ある議論をよろしくお願いいたします。

 以上です。ありがとうございました。

西村委員長 次に、有田芳生さん。

有田委員 有田芳生です。

 今日は、統一教会についてお尋ねいたします。

 世界基督教統一神霊協会、略称、統一教会。一九五四年に韓国のソウルで生まれました。そして、日本へは一九五八年にある信者が密航して日本に上陸をして、そして一九六四年に東京都の認証を経て宗教法人となりました。そして、二〇一五年に名称変更して、世界平和統一家庭連合、いわゆる家庭連合、略称ですけれども、そして今があります。

 政府は、旧統一教会という名称で、大臣も所信的挨拶でも語られていましたけれども、私は、統一教会の本質というのは何も変わっていないという判断をしておりますので、今日の質疑では統一教会と呼ばせていただきます。

 まず、大臣にお聞きをしたいんですけれども、二〇二二年七月八日に安倍晋三元総理が銃撃でお亡くなりになった、それをきっかけにして、統一教会問題というのは、メディア、そして国会での質疑というものも行われてきました。岸田文雄前総理、それから石破茂現総理も、答弁の中では、問題ある団体とは関係を持たない、断絶をする、二年前からそういう発言を各大臣も含めてなさってきたんですけれども、まず大臣にお聞きをしたいのは、問題ある団体ということなんだが、どういう問題があるんですか。

鈴木国務大臣 この団体、旧統一教会ということになりますけれども、これは、所管、所轄庁である文部科学大臣において今解散命令請求を行っている状況であります。

 まさにそれは、実際の所管である文部科学省の方で実際に言っているところであると思いますし、そこの問題というものが問題だというふうに私も、関係の閣僚会議等も行われている状況でありますので、閣僚の一員としてそう考えております。

有田委員 質問は、問題があることが問題だという、その問題とは何かとお聞きしたいんです。

鈴木国務大臣 実際の、具体の所管ではないので、そこは大臣としてということで、文部科学大臣の解散命令請求のところになりますけれども、ここにおいては、信者が、長期間にわたり、献金獲得や物品販売等に伴い、多数の人に対して財産的損害を与えたばかりでなく、その方々の家族を含めて、それらの方々に看過できない重要な影響を与え、甚大な被害を及ぼして全国的な社会問題と扱われるまでに至ったということで書いてございます。

 ここの中身ということが、まさにその問題ということであろうかと思います。

有田委員 分かりました。

 岸田前総理も石破現総理も、問題ある団体だということを言いながら、この二年間、メディアも含めてなんですけれども、何が問題なのかということは全貌が明らかになっていないと私は判断しているんです。

 確かに、今からお聞きをしますけれども、解散命令請求に関わる諸問題、例えば霊感商法であるとか高額献金であるとか二世の問題であるとか、いろいろな課題はこの二年間、議論になり、報道もされてきたんだけれども、今日お聞きをしたいのは、統一教会という組織、宗教団体は、そこにとどまらない大きな問題があるということを今日明らかにしていきたいというふうに考えております。

 まずは文化庁にお聞きをしますけれども、解散命令請求が出された経過、そしてその根拠、そして現状、そしてこれからについてお聞きをいたします。

小林政府参考人 御質問にお答えいたします。

 文化庁では、昨年十一月以降、宗教法人法第七十八条の二の規定に基づき、旧統一教会に対して、七回にわたり報告徴収、質問権を行使するとともに、全国弁連や百七十を超える全国の被害者等の方々から、旧統一教会の業務の実態等を把握するための資料、情報を収集し、分析を丁寧に進めてまいりました。

 旧統一教会は、遅くとも昭和五十五年頃から長期間にわたって継続的に、その信者が多数の方々に対し、相手方の自由な意思決定に制限を加え、正常な判断が妨げられる状態で献金や物品の購入をさせ、多額の損害を被らせ、親族を含む多くの方々の生活の平穏を害する行為を行っていると認められました。

 不法行為として損害賠償を認容する民事判決の賠償額や和解、示談の解決金等は、対象者約千五百五十人、総額約二百四億円に上っており、家族を含めた経済状態を悪化させ、将来の生活に悪影響を及ぼしたり家族関係が悪化するなど、本人や家族、親族に与えた精神的な損害も相当甚大であることなどから、民法上の不法行為に該当し、宗教法人法第八十一条第一項第一号に定める解散命令事由に該当するものと認めました。

 また、旧統一教会が財産的利得を目的として申し上げたことを行ったことは、宗教法人の目的を著しく逸脱するものでもあり、宗教法人法第八十一条第一項第二号前段に定める解散命令事由にも該当すると認めました。

 これらのことから、昨年十月十三日に東京地方裁判所に対して解散命令請求をしたところです。

 その後の裁判所の手続につきましては、恐縮ですが、非訟事件手続法に基づきまして非公開で行われていることとされておりますので、お答えを差し控えさせていただきます。

有田委員 物品販売で様々な多額の被害者が出た、そのとおりでして、今お話しになったのは、昭和五十五年あたりから、つまり一九八〇年あたりから霊感商法の被害が明らかになっている。これは一九七五年の七月に統一教会の文鮮明教祖が、日本の組織に対して、もっと送金をせよという命令を出して、そこから霊感商法のノウハウというものを見出して十年間で二千億円もの被害が出ているという、それを今回、調査をしてくださった、一部を、という根拠で解散命令請求が出ていると思っているんです。

 元々、統一教会の信者さんたちというのは、今もそうなんだけれども、とても真面目な人たちが多いんですよ。だから、日本に入ってきてから、リヤカーで廃品回収をやったり、いろいろなお金を集める努力をしていたんだけれども、韓国の組織と日本の組織との関係で、とにかく教祖が、金を出せということで、キリスト教系の団体であるにもかかわらず、先祖の因縁を使って、つぼとか多宝塔とか印鑑を不当に高額に販売をしてきた。

 ですから、今回の解散命令請求のプロセスの中で、本当に、百七十人を超える被害者、関係者の方々からお話を聞いていただいたというのは、これは単に話を聞いただけじゃなくて、物すごく時間をかけて努力をされた結果として今があると思うんですよね。ですから、解散命令請求が出されて、ところが、今どういう状況になるかというのはお話しできない。そのとおりなんです、しゃべっちゃいけないわけだから。

 ところが、NHKの報道、共同通信の報道の最近のを見ていると、来年の一月二十七日までに国と教団側は最終的な見解を出して、それでもう終わるというようなことが、教団側の弁護士がぺらぺらぺらぺらしゃべっている。これは、裁判所にとっては本当に心外な状況なんですけれども。

 だから、一月で終わるということも文化庁としては言えないわけですね。

小林政府参考人 今先生がお話しなさった報道については承知しておりますが、スケジュールについては、私どもは申し上げられません。

有田委員 一点、先ほどの解散命令請求の根拠として様々なお話をなさってくださいましたけれども、民事裁判が三十幾つ、それは解散命令請求の根拠になっているわけですよね。三十四でしたか。

小林政府参考人 請求時点で三十二件というふうに申し上げました。

有田委員 そこでお聞きをしたいのは、刑事事件については考慮なされていないんでしょうか。例えば、一九八〇年代の青森事件、恐喝で逮捕されている。あるいは、二〇〇九年の新世事件、これも信者たちが逮捕されている。統一教会の渋谷教会にもガサ入れが入った。この刑事事件については、解散命令請求の根拠にはなっているんでしょうか、いないんでしょうか。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 解散命令請求の事由につきましては、先ほど申し上げました事由ということで、大変恐縮ながら、それ以上のコメントはこの場では控えさせていただきます。

有田委員 そして次に、警察庁に伺いたいんですけれども、今回の解散命令請求に至る文化庁の本当に大変な努力を私はかいま見ているんですけれども、一九八〇年代から、実は、国会でも問題になっているんですよね。

 先ほども言いましたように、文鮮明教祖は一九七五年の七月から送金命令を出して、霊感商法というのが全国で広がってしまって被害者が増えていって、特に一九八〇年代には、ずっと全国で被害が出てきた状況の下で、衆議院でも質疑があったんですよ。

 警察庁に伺いたいのは、一九八七年のたしか五月十五日、衆議院の法務委員会で警察庁答弁があったと思いますけれども、どういうやり取りがあったんでしょうか。お答えください。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 当時の国会会議録によれば、都道府県警察の相談窓口等に対しまして、先祖のたたりがあるとか、たたりを解消するためと称して高価なものを売りつけるという相談が多数あったこと、この種の商法というのは、人の弱み、人の不安につけ込むというもので、悪質商法の中でも最も悪質なものの一つであるということで、全国警察に対しまして、繰り返し厳しく取り締まるよう指示していることなどといった趣旨の答弁の記録が確認されたところでございます。

有田委員 その答弁の中では統一教会のトの字もないんですけれども、各種の悪質商法の中でも最も悪質なやり方だという、その背景には、当然、警察当局として統一教会が一つ念頭にあったと理解してよろしいですか。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 先ほどのお尋ねでございますが、当時の詳細について資料を確認いたしましたところ残っておらず、ちょっとその辺の経緯については、大変恐縮でございますが、確認ができておりません。

有田委員 当時は、先ほども言いましたように、いわゆる霊感商法というのがこの日本社会で広がっていった経過の中で、一九八〇年代、国会での質疑があった前後というのは、朝日新聞、それから朝日ジャーナルが霊感商法の批判キャンペーンを一番強めていて、そして被害が一番高かったところですから、私たちからすれば、やはり警察庁の答弁というのは、霊感商法、統一教会に関わるものだというふうに理解をしたんです。ただ、資料が残っていないということで、それは承知をいたしました。

 そして、そういう統一教会、これまで多くの人たちは、先ほども言いましたけれども、霊感商法であるとか高額献金であるとか、あるいは二世信者の問題であるとか、そういったことがこの二年間報道されてきて、国会でも議論になったんだけれども、実は、統一教会というのはそのレベルの組織ではないということで、外務省にお尋ねをしたいんです。

 一九七八年にアメリカの下院のフレーザー委員会が統一教会についての最終調査報告書、統一教会だけではないんだけれども、韓米関係の調査についての報告書を出されましたけれども、そのフレーザー委員会の最終報告書の中で統一教会というのはどのように位置づけられているでしょうか。外務省にお尋ねします。

熊谷政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のフレーザー委員会でございますが、一九七〇年代に、米韓関係の調査、これを目的としまして、米国連邦議会下院に設置されました小委員会でございます。

 この委員会でございますが、委員長の名にちなんでフレーザー委員会というふうに呼ばれておりまして、一九七八年にいわゆるフレーザー報告書を公表したところでございます。

 この報告書でございますが、米国の立法府により作成されたものということでございますので、政府として逐一を説明する立場にはないのでございますが、その上でということで申し上げれば、統一教会について、例えばでございますが、その機能と基本的な組織構造においては、現在では多国籍企業に似ており、製造、国際貿易、防衛契約、金融、その他の事業活動に従事している。しかし、宗教、教育、文化、イデオロギー、政治的な事業も包含している点で、それ以上のものとなっている。下級メンバーの訓練と活用においては準軍事組織に似ているが、その他の点では厳格に規律された国際政党としての特徴も備えている。そして、小委員会は、それらを一つの組織体と捉え、本報告書では、それらを総称して、文氏組織、英文原文ではザ・ムーン・オーガナイゼーションと書いてありますけれども、文氏組織と呼ぶといった記述があると承知しております。

有田委員 そのとおりなんですよ。

 アメリカの下院では、韓国政府と統一教会についての分析を詳細に、一年半以上にわたって下院で検討して、聴聞会なども開いて明らかにしていった。その結果が、今お示しくださったように、統一教会というのは文鮮明機関だ、ムーン・オーガニゼーションなんだと。つまり、宗教団体であると同時に、各種の多国籍企業的なものも持っていて、そして政治とも関わっていて、さらには、信者たちが一心不乱に行動するという意味においては、準軍事組織的な内容を持っている。つまり、具体的に言えば、当時のフィリピンの反政府組織とか南米の軍事組織などにも関わっていた、そういう分析を行っているんですよ、一九七〇年代の段階で、アメリカの下院は。

 何でこんなことが起きたかというと、もう簡単に言いますけれども、一九六一年の五月十六日に朴正熙軍事クーデターが起こった、KCIAができた。そして韓国政府は、そういう状況の下で、北朝鮮との関係で緊張関係を持っていくんだけれども、ところが、七〇年代に入って、アメリカではリチャード・ニクソン政権ができて、中国に接近する。韓国についても、在韓米軍の撤退をしようという動きがあって、そして、朴正熙政権は、統一教会を使ってアメリカの政治工作をやっていったんですよ。

 一九七一年には、日本から統一教会の女性信者たちがアメリカに入っていく、韓国からも入っていく。それをPRチームと言ったんです。つまり、アメリカの上院、下院の議員たちの工作を七〇年代には行った。だから、それで、アメリカ政府からすれば、何で韓国政府が、あるいは宗教団体がアメリカに来て、上院議員、下院議員の政治工作をやっているんだというので問題になって、フレーザー委員会ができたんですよね。

 ところが、これがアメリカにとどまらなくて、そのアメリカの上院議員、下院議員を工作したPRチームというのは、実はこの日本でもできたんですよ。アメリカでは失敗した、だけれども、日本ではいろいろな工作が行われる。それも実はPRチームと呼んでいたんですよ。拠点はこの永田町にあった、永田町のあるビルに。誰がやっていたかというと、国際勝共連合の女性信者たち。だから、国会議員の議員会館を回って文鮮明教祖の本を置いたりして、あるいは、いろいろな政治的な内容についても、よろしくお願いしますよというのはずっと続いてきた。

 だから、アメリカでのフレーザー委員会が問題にしたような行動がこの日本でも行われていたということを指摘をしておいて、そして、フレーザー委員会が明らかにしたように、単なる宗教ではなくて、先ほど紹介してくださいましたけれども、軍需産業も持っていたんですよね。統一産業とか統一重工業。武器なんかも作っていた。

 だから、それがこの日本にも実は関係していた。この二年間、全く国会でも問題にならなかったけれども、実は一九六八年に、これから警察庁、経産省にもお尋ねしますけれども、一九六八年の段階で、統一教会の軍需産業が作っていた散弾銃、鋭和BBBという散弾銃が、一九六八年の段階でこの日本に二千五百丁輸入されていたんですよ。警察庁、それは確認されていますか。あるいは経産省、確認されていますか。

猪狩政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘ございました昭和四十六年三月二十六日の衆議院地方行政委員会におきまして、当時、通商産業省の方から、委員から御紹介ございました、昭和四十三年一月に幸世物産に対し空気散弾銃二千五百丁の輸入を許可した、こういう答弁をしてございます。

有田委員 コウセイ産業ではなくて、シアワセ産業です。統一教会系の輸入会社。

 つまり、一九六八年の段階でもう既に二千五百丁が輸入されていたということは、そういう理解でよろしいですね。

猪狩政府参考人 大変失礼いたしました。

 幸世物産という会社でございますけれども、当時でございますが、昭和四十三年二月にこの幸世物産が空気散弾銃二千五百丁を入れた、輸入したという答弁を当時してございます。

有田委員 じゃ、警察庁にお尋ねしますけれども、その一九六〇年代後半に散弾銃が、これは十メートルのところで撃ったって二センチの板を貫通する殺傷能力はあるんだけれども、それが日本に輸入されたときに、実は、統一教会の信者たちというのは、全国で約一千人が各警察署に散弾銃の所持許可申請を五月雨式に出していたんですけれども、これは承知されていますか。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 警察庁におきまして、そうした記録は存在せず、御指摘の事実は確認できなかったところでございます。

有田委員 当時、警察が捜査しているんですけれどもね。それは、資料がなくなったのか、それとも、承知していないという今の理解でいいんですか。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 現時点において、記録を確認したところ、存在していない、そういうことでございます。

有田委員 各地で、当時は警察署が、統一教会の信者さんたちが散弾銃の所持許可申請をざっと出してきたものだから、千人近く、一九七〇年安保の一種騒然とした社会状況の下で、何でこんなことをやっているんだろうかという関心が当時はあったんですよ。それで警察も関心を持った。だけれども、それが、先ほど経産省に答弁していただきましたけれども、七〇年代に入ってくると、今からお聞きをしますけれども、この衆議院で何度も質疑されているんです。

 一九七一年三月二十六日、衆議院地方行政委員会、どういう質疑があったでしょうか。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 当時の国会会議録によれば、銃砲刀剣類所持等取締法の対象となる銃砲は、狩猟、競技等の目的が決まっているが、その目的に照らすと、昭和四十三年一月に輸入業者が輸入の許可を受けた空気散弾銃が適切なものかという点に警察庁が疑問を抱いたこと、また、当時の農林省が、当該空気散弾銃は猟具として不適切であることから、規則を改正し、第二回目以降の輸入を禁止する処置を取ったなどといった趣旨の答弁の記録が確認されたところでございます。

有田委員 統一教会側の韓国の軍需産業は、日本が鋭和BBBという散弾銃が輸入できなくなったら、今度は空気銃を作り出したんですよ。鋭和BBB、3Bといったのを、鋭和B3というのを作って、それを日本に輸入しましたよね。これは、経産省、国会でも当時問題になっていますけれども。

猪狩政府参考人 お答えいたします。

 当時の会議録を確認してございますけれども、当時の答弁の中におきまして、鋭和3Bという単発銃を輸入するのは適法だということで許可したという答弁をしてございます。

有田委員 その一連の衆議院での答弁の中で、後藤田正晴、当時の警察庁長官も答弁をなさっていますけれども、後藤田答弁のポイントというのはお示しいただけますでしょうか、警察庁。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 繰り返しになりますが、先ほどの答弁で申し上げたとおり、当時の国会会議録によれば、銃砲刀剣類所持等取締法の対象となる銃砲は、狩猟、競技等の目的が決まっているが、その目的に照らすと、昭和四十三年一月に輸入業者が輸入許可を受けた空気散弾銃は適正なものかという点に警察庁が疑問を抱いたこと、また、当時の農林省が、当該空気散弾銃は猟具として不適切であることから、規則を改正し、第二回目以降の輸入を禁止するという処置を取ったことなどの趣旨の答弁の記録が確認されたところでございます。

有田委員 後藤田正晴、当時警察庁長官の答弁のポイントを教えてほしいんです。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げた内容が、後藤田当時長官の答弁の趣旨でございます。

有田委員 国際勝共連合、統一教会の関連団体と幸世物産との関係についても後藤田長官は触れられておりまして、非常にこの問題は、ゆゆしきという表現じゃなかったんだけれども、注目しなければいけないということを当時語っていらっしゃるんです。

 警察庁に更にお聞きをしたいんですけれども、結果的に、散弾銃が輸入できなくなったら空気銃を一万五千七百丁輸入しているんですが、それは、経産省、間違っていないですね。国会答弁にも当時出ていますから。

猪狩政府参考人 お答えいたします。

 先生御紹介ございました答弁を当時してございます。昭和四十五年に三千丁、四十六年に九千丁、四十七年に八千丁、鋭和3Bの輸入をしているという答弁をしてございます。

有田委員 つまり、統一教会関連組織は、韓国の統一教会関連軍事産業から散弾銃を日本に輸入した。だけれども、それは、更に一万五千丁輸入したかったんだけれども、入れることができなくなって、法律が変わって、その代わり、散弾銃じゃなくて空気銃を作り出して、それが一万五千七百丁輸入できたんですよ、当時。

 そして、警察庁にお聞きをしたいんだけれども、当時、全国各地に統一教会の信者さんたちがやっている銃砲店が幾つもありましたけれども、確認されていますか。

大濱政府参考人 お答えいたします。

 警察庁におきまして、そうした記録は存在いたしませんので、御指摘の事実は確認できなかったところでございます。

有田委員 残っていないということですね。いや、いいです、時間がなくなってきたので。

 とにかく、一九七〇年代には、北海道札幌から九州鹿児島まで日本全国に、私が確認しただけでも二十四の銃砲店があったんですよ。それがどんどん潰れていったんだが、今でも東京とか名古屋には存在するんです、信者さんがやっている銃砲店が。

 文鮮明教祖は三十八か所あると言うんだけれども、それはちょっと盛り過ぎの話で、一体何をしようとしていたのかということを、実は、警察当局はずっと関心を持っていたんですよ。

 もう時間が来てしまいますから最後に行きますけれども、一一六号事件、未解決事件というのはどういう内容だったでしょうか。

松田政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの事件につきましては、昭和六十二年一月に朝日新聞東京本社に対する散弾銃発砲事件、同年五月に朝日新聞阪神支局における散弾銃使用による同記者殺傷事件、同年九月に朝日新聞名古屋本社の寮に対する散弾銃発砲事件、昭和六十三年三月に朝日新聞静岡支局に対する爆破未遂事件、同年八月に東京都港区内の株式会社リクルート前会長宅に対する散弾銃発砲事件が発生したことから、これらはいずれも赤報隊を名のる犯人による一連の事件と見まして、警察庁において、警察庁指定第百十六号事件に指定し、関係都県警察において捜査を行ったものでありますが、平成十五年三月までにこれら全ての事件について公訴時効が成立したものであります。

有田委員 犯人像については、当時の犯行声明を見ても、反日朝日は戦前に戻れとか、あるいは実行部隊として統一戦線義勇軍別動赤報隊というようなことが書いてありましたから、統一戦線義勇軍というと、いわゆる新右翼の人たちが捜査対象になった、あるいは右翼の人たちが捜査対象になった。同時に、統一教会関係、信者さんたちも捜査対象になった。それはお答えできないという返事が来ていますから、やめますけれども。

 皆さんにお配りをした捜査資料、統一協会重点対象一覧表、ここには五十二人の統一教会信者たちの名前が出ております。そして、私は持っておりますけれども、当時の捜査資料として銃砲店一覧というのもある。つまり、統一教会というのは単なる宗教団体ではないんだ。

 今後、また機会があれば質問したいと思いますけれども、時間が来ましたので、終わります。

西村委員長 次に、平岡秀夫さん。

平岡委員 立憲民主党の平岡秀夫でございます。

 今日は、大臣所信といいますか、大臣の挨拶に関係して御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 残念ながら、今回の大臣挨拶の中には、袴田事件、日本社会で大きな関心が持たれ、かつ、一九八〇年代の四つの死刑再審無罪事件以来、三十五年ぶりに再審無罪となった事件ですけれども、この事件から得た教訓というものが全く示されていなかったように思うんですけれども、大臣としては、この袴田事件から何か法務行政について教訓は得ておられないんでしょうか。

鈴木国務大臣 元法務大臣経験者の平岡先生には、どうぞよろしくまた御指導もいただきたいと思います。

 今、袴田事件ということでお話ございました。個別の事件ということで、裁判所の判断に関する事柄について法務大臣としてということで、なかなか述べづらい状況であることは御理解いただきたいと思います。

 その上で、本件について再審請求手続が長期間に及んだことなどについて、今、最高検察庁において所要の検証を進めているという状況でありますので、法務大臣として今のところで申し上げられることとして申し上げれば、まずは検証の結果が出ることを見守っていくということであろうかと思います。

平岡委員 袴田事件、再審事件ですけれども、非常に時間がかかったということについて問題意識を持っておられるということは分かりました。

 ただ、私としては、それだけにとどまらずに、もっといろいろな分野において教訓を得るべきではないかというふうに思いますので、それに関連して幾つか質問していきたいというふうに思います。

 まず、再審の問題なんですけれども、先ほど同僚の松下玲子議員がかなり詳しく質問をされましたので、私はなるべく重ならないように質問したいと思いますけれども、実は、私が法務大臣をやっていた当時の、平成二十三年十二月一日の参議院法務委員会で、再審における証拠開示の問題が質問をされていまして、そのとき、私はこう答えているんですよ。これは再審における証拠の開示の問題なんですけれども、証拠の開示の問題も、法令にのっとって適切に証拠の開示が行われているということ、検察の基本規程の中で法令の遵守ということを明記させていただいておりますので、その趣旨にのっとって適切に対応するということを私としては期待しておりますというふうに答弁しているんですね。

 これは、当時の法務省の皆さんから、証拠の開示の問題について質問があったときに何と答えたらいいのかということを協議したときに、ちゃんと検察の基本規程の中で法令の遵守というふうに書いてあって、それを守って適切に対応しているし、対応していくつもりですというふうに言われたので、ああ、そうですか、では、皆さんを信頼して、そういうふうに答弁しましょうというふうに思ったんですけれども、事実、そういうふうに答弁したんですけれども、でも、実際は、やはり証拠の開示が十分にできていなかったなというふうに思うんですね。

 そういう意味で、検察の姿勢だけに任せるのではなくて、きっちりと、松下議員も言われたように、制度の中で、法令の中で、証拠の開示の問題についても再審法の中でしっかりと規定していくべきだというふうに私としては思っています。

 この質問をすると、先ほどの答弁では、在り方協議会で検討しているから、それを待ちたいというような話になってしまうのかなと思うんですけれども、でも、再審事件でこれだけ大きな問題になったわけですから、大臣としては、是非早く結論を出すように在り方協議会に要請をしていく、お願いをしていくべきじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 今の証拠開示の話、今先生も御指摘のように、在り方協議会の中で今も検討されている項目であると承知をしております。

 そして、この証拠開示の制度についての議論、当然どこかでこれは結論を出していかなくてはいけないことだと思いますし、そこについては、この在り方協議会においても今鋭意それぞれ専門家の方々に議論していただいていますので、そこについてはしっかり、もちろんいつまでも延ばしてということではないと思いますので、きちんとした結論が出るように私も期待したいと思います。

平岡委員 私の質問は、期待したいということを答弁することを期待したんじゃないんですよ。私は、やはりこれだけ大きな問題が社会的にも起こっている以上は、再審の在り方については、再審法の問題については早く協議会の方でも結論を出してほしい、それを踏まえて必要なことはやっていきたい。むしろ、先ほどもありましたように、鈴木大臣は議員連盟の中でも幹事長代理だったかな、というような立場に立っておられて、問題意識としては十分に持っておられるんだろうと思うし、早くしなければいけないということについてもよく分かっておられるのだと思うので、そこはやはり、大臣として、早く結論を出してほしいということを協議会に対して要請、お願いをすべきじゃないかと思うんですけれども、その点についてもう一度御答弁願います。

鈴木国務大臣 この協議の進め方、これは我々としてどこまで口を出すべきなのかというところは当然ありますし、構成員の方々、これはやはり、十分に充実した議論をしていただくということも極めて大事だと思います。

 やはり、この証拠開示のことも含めて、いろいろそれぞれの論点、大変大事なところでありますので。ただ、もちろん、当然いつまでもだらだらということではないと思いますし、あるいは拙速過ぎてもということもありますので、そこは適切に充実した議論で適切な結論を得られるように、私としてもしっかりとそこは見守っていきたい、申し訳ありませんが、見守っていきたいという答弁で、そこは御理解いただきたいと思います。

平岡委員 これ以上言っても同じことを繰り返すだけでしょうから、時間の無駄になるのでこれ以上言いませんけれども、在り方協議会が協議している中身というのは、先ほどの答弁にもありましたけれども、非常に多岐にわたっているんですよね。これを結論を出そうと思ったら、物すごくやはり時間がかかると思いますよね。そうじゃなくて、やはり再審の問題については非常に社会の関心も高くなっているし、緊急性も要する問題であるので、是非この点については早く結論を出してほしいという、そういうリーダーシップを是非、鈴木大臣には取っていただきたい、このことをまずお願いしておきたいというふうに思います。

 続きまして、袴田事件の教訓という意味でいきますと、冤罪の問題なんですね。冤罪については先ほど来も松下議員とのやり取りの中でいろいろありましたけれども、それを繰り返すことはいたしません。冤罪の定義については別に聞く必要もありません。世間的に考えているものとして理解していただければというふうに思います。

 この袴田事件の再審判決の中では、三つの証拠捏造、検察官調書、五点の衣類、ズボンの端切れ、これが具体的に指摘をされているんですよね。それで、畝本検事総長は、長引いたことについては検証するというようなことを言っておられますけれども、先ほどの松下議員との議論の中では、長引いたことだけじゃなくて、証拠の捏造というような事実関係が生じたことについて検証するということも考えていると理解していいのでしょうか。これは政府参考人で結構です。

森本政府参考人 お答えいたします。

 今、検証を進めているというのは先ほど申し上げたところです。総長談話の中では、長くかかったことなどについて検証をするというふうに記載されているものと承知しております。

 それ以上の具体的な中身については、今、検察当局において、捜査段階から、それから確定に至るまでの全段階において検証しているところでございますので、その具体的な内容については、お答えを今の段階では差し控えさせていただきたいと思います。

平岡委員 ちょっと分かりにくい答弁だったんですけれども、長期間にわたったということだけじゃなくて、なぜそういう証拠捏造のようなことが行われたのかも含めて検証をするということでいいんですよね。

 更に聞きますと、その検証は、検察の中のどこがやるんですか。

森本政府参考人 まず、先生お尋ねのうち、三点の捏造という点に関しましては、そこの点についてはいろいろお考えはあると思いますけれども、検事総長談話の中では、それ自体は承服はできないという形の記載がなされております。

 それを踏まえまして、捜査、公判に問題点があったのかなかったのかということも含めて、検察庁では検証を行っているということでございます。

 具体的にどこで検証を行っているのかということにつきましては、再審公判を担当しましたのが静岡地検、それから東京高等検察庁、それから最高検察庁と三つのところが関わっておりますので、それぞれの段階のものを精査する必要がありますが、最高検察庁が主体となって今、検証を進めております。

平岡委員 最高検察庁のどの部署ですか。

森本政府参考人 部署、基本的に言うと、事件を担当しておりますのは最高検察庁の刑事部が中心となりますので、刑事部が主体となっているはずですが、刑事部だけで全てがとどまりませんので、検証ですので、チームとしてやっていると承知していますので、そういう意味では、最高検察庁が主体ということでございます。

平岡委員 例えば、アメリカでの話として、聞くところによると、検察庁の中に冤罪調査部門、コンビクション・インテグリティー・ユニットというそうですけれども、こういうものが設けられて、二〇一六年の例でいえば、冤罪が解かれた事件、雪冤事件百六十六件のうち七十件について調査をしたというふうに聞いているんですよね。

 検察庁として、先ほど検証すると言われましたけれども、何か、聞いていると、仲間内同士で傷をなめ合いながら検証するんじゃないかというような印象も受けてしまうんですけれども、こうした、ちゃんとした組織を立てて検証するということじゃないんですか。いかがですか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 刑事事件の手続につきましては、裁判所の訴訟指揮の下で、裁判所を含む訴訟関係者により遂行されるものでありますことから、いわゆる第三者機関のようなものを設置して検証を行うということについては、司法権の独立の観点からも問題が生じるのではないかというふうに考えております。

 また、検察は……(平岡委員「ちょっと答弁が違うと思う。それは次の答弁だと思うんだけれどもね」と呼ぶ)済みません、その前の段階で、まず、検察庁の内部でそういう冤罪について、先生がおっしゃる冤罪についての検証をしないかということでございましたか。

平岡委員 今答弁の中で、司法権の独立に関わる問題になってしまうというような答弁があったので、違うんじゃないかと言ったんです。

 私は、今の質問の中は、検察庁の中で検証するに当たっても、特別にそのためのチームというか、組織をつくってやるべきじゃないか、どこがやっているかよく分からないような形でやるんじゃなくて、きちっとやるべきじゃないかということを質問したんです。

森本政府参考人 大変失礼しました。

 まずは、検証を行うに当たりまして、先ほど申し上げましたが、中身を、どういう訴訟遂行をしてきたのかということを分かっている者が関与しないとその経過が明らかにならないということ。

 それから、では、どこがやるのかということになりますと、なかなか御理解いただけるかどうか分かりませんけれども、最後は検察として責任を持ってやるとなると、やはり最高検察庁でやるということになりますので、メンバーをどうするかは別としまして、やはり、責任を持ってやれるところということになると、最高検察庁がきちっとやるということになろうかというふうに考えております。

平岡委員 今の答弁の中でも、内容が分かった者が関与しなければいけないと言うけれども、それはそのとおりだと思いますね。でも、その人たちは、関与した人たちは、調査する立場ではなくて、調査される、検証される立場の人たちですから、そういう人はちゃんと入れて検証してほしいと思うし、やはり、検察庁の中でやるということについて私、否定しているわけじゃないんだけれども、検察庁の中でやるにしても、しっかりとした組織をつくって対応してほしい、このことは要請しておきたいというふうに思います。

 ただ、逆に、今度畝本検事総長の話によると、何か、捏造なんかについては承服し難いような話とか、あるいは長期間かかったことについては検証するというような限定された話とかしておられて、これに対して、法務大臣も総理大臣も、証拠の捏造なんかの問題について検証するというようなことについて、問題意識を持っているということについても全然触れられていないんですよね。そういう状態の中で検察庁が検証したとしても、私は、国民が納得するような検証はできないんだろうと思うんです。

 先ほど松下議員からも、第三者機関的なものを設置して、そこで検証すべきではないかというふうに質問がありましたけれども、もう一度、その質問に対して、大臣としてのお考えをお示しいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 今、森本刑事局長から少し答弁の中でも触れましたけれども、司法権との関係ということ、やはりこれは少し我々もきちんと考えなきゃいけないんだと思います。

 この刑事事件の手続は、裁判所の訴訟指揮の下で、裁判所を含む訴訟関係者によって遂行されている、そこのプロセスについての調査、検証ということ、やはり、これも進め方いかんによっては、そこは司法権というものの独立ということを考えれば差し障りが出る可能性も当然あると思います。

 そういった中にあっては、我々としては、今回、調査、検証する、これは内部でやはりやるべきであろう、第三者機関ということではなくて内部でやるべきだろうというのが私どもとしての見解であります。

平岡委員 最高検も検証するというふうに言っているから、私としては、いきなりもう第三者機関を設けてやれということを強行するつもりはありませんけれども、検証の結果を見ながら、本当にこれは検証できているのかという状況の中で、またこの問題については提起をさせていただきたいというふうに思います。

 次の教訓に移りたいと思いますけれども、次の教訓はやはり死刑制度なんですよね。今回の袴田事件を見ていて、死刑制度については幾つかの問題があるなということは多くの方が感じたんじゃないかというふうには思うんです。

 一つには、冤罪による死刑執行であったとするならば取り返しがつかないことになるなというふうなことです。この冤罪による死刑執行については、別の事件で、その疑いがあるという形で、死後再審というのが行われている事件もあります。これはもう法務省がよく御存じのとおりですけれども、やはり取り返しがつかないという問題がある。

 もう一つは、執行直前の死刑執行の告知というものが、死刑囚といえども人間である以上、非常に大きな精神的負担になっているのではないかということ。

 もう一つは、死刑執行に当たっては、心神喪失の死刑囚については執行が停止されるというのが法律上きちんと書いてあるんですけれども、果たしてそういう手続が、手続というのは、心神喪失の状態にあるかどうかということについての診療というものが果たして行われているのかというようなことを私としては感じたんですよね。

 それはそれとして、実は、今日、高村法務副大臣にも来ていただきましたけれども、高村副大臣のお父様であられる高村正彦法務大臣は、西暦二〇〇〇年の十二月五日から二〇〇一年の四月二十六日の間、法務大臣を務めておられますけれども、法務大臣時代、死刑執行をしていないというふうに私としては理解しているんですけれども、そのとおりでよろしいでしょうか。

森本政府参考人 まずは事実関係からでございますが、先生お尋ねの期間中に死刑の執行は行われておりません。

平岡委員 私も、なぜ高村大臣がされなかったのかということについては全く知識がありません。事前の調査もしておりません。

 ただ、高村副大臣に来ていただいたのは、もしかしたら死刑を執行されなかったことについて何か聞いておられるんじゃないかなと思ったので、今日はあえて来ていただきました。もしかしたら、そこに死刑についての問題点、いろいろ感じておられたことがあるのではないかなというふうにも思いますので、聞いておられることがあったら御紹介いただきたいと思います。

高村副大臣 平岡先生、質問ありがとうございます。

 なかなか答えづらいあれです。今、私自身も法務副大臣として来ておりますし、個別の死刑執行に関する事柄であることで、高村正彦の子として個人的に認識している事情があるか否かも含めて、お答えすべきではないんじゃないかと思っております。大変申し訳ございません。

平岡委員 常識的な答弁だったとは思いますけれどもね。これをきっかけにして、高村副大臣におかれても、死刑問題について真剣に取り組んで、国民的議論が行われるようにまた努力をしていただきたいというふうに思います。

 そこで、ちょっと死刑問題についてもう少し入ってみますと、実は、今年の十一月の十三日に、日本の死刑制度について考える懇話会、通称、懇話会と言っていますけれども、これが報告書を出したんですね。この懇話会には、こう言ってはなんですけれども、職務とは全く関係はありませんけれども、西村委員長も平沢委員も参加をしておられたというような経緯もあります。決して変な団体ではないという、むしろ役所のOBの方々とか有識者の方とかがいろいろ集まっていて、本当に真剣に議論していただいたんだろうと思います。

 その方々が、先ほど言いましたように、十一月の十三日付で報告書を出しているのでございますけれども、法務大臣はこの報告書は御覧になったでしょうか。どうでしょう。

鈴木国務大臣 今の報告書、事務方からも言われまして、概要ということでは目を通しております。

平岡委員 是非またじっくりと読んでいただければというふうに思います。

 概要を読んでいただいたということを前提に、この報告書の提言というところでは、実はこう書いてあるんですね。早急に国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置するということを提言しておられるのであります。

 実は、この順番でいくと国会が先に書いてあるものですから、この懇話会は、既に衆議院議長に対してはこの報告書を届けて、私もそれに同席させていただいたんですけれども、三十分にわたって議長はしっかりと中身を聞いておられました。

 それはそれとして、次は内閣にまた要望しに、報告書を届けに行かれるんだろうというふうに思うんですけれども、どうでしょうか、鈴木大臣、内閣においてこのような公的な会議体を設置するということについて、お考えはありますでしょうか。

鈴木国務大臣 死刑制度の在り方、非常に重い話であると思っています。一方で、国民の間では、やはり多数において、悪質な凶悪犯罪においては死刑もやむを得ない、そういった見方が多いということも同時にある中で、この懇話会で御指摘をいただいた様々な論点もあると承知をしております。

 そういった中において、現状はどうなのかということで申し上げれば、法務省として、今現在の状況でありますけれども、死刑制度を廃止することは適当ではないと考えております。現時点において、死刑制度の存廃ということで検討するための会議体を法務省として設けるかということであれば、その考えは今現在のところではないということであります。

 ただ、これはやはり我が国の刑事司法制度の根幹に関わる大事な問題でありますので、懇話会の議論も、大変、委員長も、平沢先生も含めて、御参加をいただいて、多くの識見のある方々の議論であると承知をしております。

 そういったことも含めて、国民全体できちんとした議論、それはしっかりと進めていっていただきたいと思いますし、そこについての議論の推移というものも私どもとしてはしっかりと関心を持って注視をしていきたいと思っております。

平岡委員 ゼロ回答ではなかったので、ちょっと時間がないから先へ進めますと、実は、法務大臣は挨拶の中で、選択的夫婦別氏制度に関して、夫婦の氏の在り方について、多様な考え方があることを踏まえ、国民の間はもちろん国会でも御議論いただけるよう、情報提供を行ってまいりますというふうに言っておられるんです。鈴木大臣もこの選択的夫婦別氏制度についてはかなり御理解があるというふうに聞いておりますので、こういう発言になっているのかもしれませんけれども。

 ただ、死刑制度についても、先ほどちょっと国民の世論の話をされましたけれども、国民世論の状況も多岐にわたっているんですよね。実は、一般的には、死刑もやむを得ないというのが八割いて、死刑は廃止すべきだというのが一割しかいないというようなことしか余り言われていませんけれども、更に問いを探っていくと、状況が変われば将来的には死刑は廃止してもよいが約三割、終身刑が導入された場合は死刑を廃止する方がよいが約三五%と。それから、年齢的にも、若い層になったら死刑の廃止ということについてより積極的な状況になっているというように、結構意見が多岐に分かれているんですよね。

 そういうふうに意見が多岐に分かれていることであるならば、法務省としても、この選択的夫婦別氏制度と同様、積極的に情報提供を行うべきではないかというふうに思うんですけれども、取りあえず手始めに、国会議員による刑場の視察を認めるという形で情報の提供をしていただいたらどうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 今の先生の御指摘、国会議員に対してということでよろしいですかね。(平岡委員「はい」と呼ぶ)もちろん、一般の公開ということであると、なかなか、これは厳粛な場でもありますし、死刑の確定者あるいはその家族の名誉、心情に対する配慮等を考えれば、一般の方にということはなかなかなじまないのではないかというところがありますが、法務委員会の決定ということで、もちろんそれは、国政調査権、持たれている状況であります。そういった中で、その発動の一環として刑場視察の要請があった場合ということでいえば、過去にも実際にそういったことはございましたし、法務省として、特段の事情がない限りは協力をこれまでもさせていただいているところであります。

平岡委員 法務委員会で国政調査権ということに限定された話でしたけれども、いや、もっと広くしてもいいんじゃないかと思いますので、また引き続き議論していきたいと思います。

 ちょっと時間がないので、次に、特別永住者問題について質問いたします。

 平成二十一年、二〇〇九年成立の出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律附則第六十条第三項では、法務大臣は、永住者の在住資格をもって在留する外国人のうち特に我が国への定着性の強い者について、歴史的背景を踏まえつつ、その者の本邦における生活の安定に資するとの観点から、その在留管理の在り方を検討するものとすると規定されていますけれども、その検討状況はいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 御指摘のこの入管法等改正法附則第六十条第三項、平成二十一年の国会において、衆議院による修正により追加をされたものと承知をしております。

 そういった中で、施行後に、この附則に規定する永住者の在留資格をもって在留する外国人のうち特に我が国への定着性の高い者の範囲であったり、あるいは、現行の在留資格制度の下で具体的にどのような在留管理を行うべきかにつきましては、附帯決議の内容や内外の諸情勢を踏まえながら、法務省としても検討をしているところでございます。

平岡委員 検討しているということなので、またこの問題についても引き続き委員会等で検討していきたいというふうにも思います。

 最後になりました。済みません。拉致問題ですけれども、今年も、十二月四日から十日の間は人権週間であり、十日から十六日は北朝鮮人権侵害問題啓発週間ということで、拉致問題についてもいろいろなところで取り上げられたのだろうと思います。

 他方、石破総理は、今年の十月十七日に総理官邸で拉致被害者家族等の皆さんと面会した際、これまでの経緯等をもう一度検証し分析し、何が最も有効であるかという手だてを講じてまいりたいというふうに発言をされています。

 そこでお聞きしますけれども、もう一度検証し分析しということの対象となっている、経緯等については、どのようにお考えになっていますでしょうか。

西村委員長 辻内閣府副大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。

辻副大臣 政府としては、拉致問題を含む北朝鮮との諸懸案の解決に向けて、これまでの取組等について整理をするとともに、北朝鮮情勢に関する情報収集、分析、国際社会と連携しつつ何が最も効果的かという観点から検討してきているところですが、詳細については、今後の対応に影響を及ぼすおそれがあることから、明らかにすることは差し控えたいと思います。

西村委員長 平岡さん、もうまとめてください。

平岡委員 大変大事な問題なので、この問題については引き続きいろいろな場で議論させていただきたいというふうに思います。

 以上で質問を終わります。

西村委員長 次に、金村龍那さん。

金村委員 日本維新の会の金村龍那です。

 大臣、前国会では、政治改革特別委員会で時間を共にさせていただきました、政治資金規正法の改正。そういう意味では、この法務委員会も、来年には夫婦別氏制度が当然議論されると思います。渦中の中に大臣ありと、私も一生懸命議論してまいりたいと思いますので、同世代、川崎と横浜、隣ですから、よろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、いわゆる闇バイト対策についてお伺いさせていただきたいと思います。

 大臣や、そして私が、少年や青年、十代や二十代を過ごしていたときは、見た目で怖そうな方というのは、よく、視覚で分かるような時代ですね。こっちを見てきたら目をそらすとか、危ないとか怖いとか、そういったものを肌感覚で学んできたんだと思います。

 ただ、この闇バイト、調べれば調べるほど、もう何か犯罪の類が変わってきたんじゃないかと思うぐらい巧妙で、そして、我々が過ごしてきた時代では到底想像できないような、なぜこの人が犯罪をしてしまったんだろうかと考えざるを得ないような事由が多く発生しています。それも、やはりテクノロジーの進化、携帯電話や、そしてインターネット、さらにはスマートフォンと、まさに時代が変わった象徴がこの闇バイト問題に行き着くんじゃないかなと考えています。

 その中で、先日、犯罪対策閣僚会議も開かれたと聞いています。その中で、この闇バイト対策、当然警察も取り組んでおるものだと承知しておりますが、法務省や警察庁の取組、そしてさらに、先ほど申し上げたとおり、今私は四十五歳ですけれども、我々が少年や青年、十代や二十代を過ごしたときは、犯罪に手を染める人というのは、何となく姿形で、ああ、そうだったんだよねみたいなことが言えたと思うんですけれども、今や多くの人が犯罪の入口に立ってしまっている。そういう意味では、犯罪行為に対するリテラシーをしっかり強化していくことが必要だと思うんですが、そういった取組についてお伺いさせてください。

森本政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、法務省といたしましても、この問題については喫緊の課題であるというふうに認識しております。

 法務省におきましては、今御指摘ありました、今年六月に政府の犯罪対策閣僚会議において決定された国民を詐欺から守るための総合対策を踏まえまして、関係省庁と連携し、SNS等を利用した犯罪について、犯人の特定や犯罪の立証に必要な証拠を迅速に収集できるようにするため、SNS事業者等と協議し、証拠収集のやり方を見直すこと、あるいは、犯罪の実行者の募集などに関する投稿をSNS事業者等が削除できる場合を明確にする総務省のガイドラインの策定作業に協力するなどの闇バイト対策に取り組んでおります。

 また、昨日には、犯罪対策閣僚会議において決定されました、「いわゆる「闇バイト」による強盗事件等から国民の生命・財産を守るための緊急対策」を踏まえまして、警察庁においても検討を進めている仮装身分捜査の導入についても必要な協力を行っていくこととしております。

 さらに、検察当局につきましてもこれを周知しておりまして、その総合対策の内容も踏まえまして、この種事案に法と証拠に基づき厳正に対処しているものと承知しております。

 こうした新たな捜査手法の導入を含む様々な対策に取り組むとともに、この種事案に厳正に対処することが、若年層を含む社会一般に対しまして、安易に闇バイトに手を染めれば、必ず検挙されるので割に合わないという理解を広げ、委員御指摘のリテラシーの向上や犯罪の抑止にもつながるのではないかというふうに考えております。

 法務省といたしましては、引き続き、関係省庁と連携の上で、闇バイト対策に取り組んでまいる所存でございます。

金村委員 アプリの進化が目覚ましいですよね。私も、昨年、SNS上でアプリでやり取りさせていただくときに、私はLINEぐらいしか使っていないんですけれども、テレグラムをやり取りさせてほしいと言われたときに、あっ、身近な人でそういうものを使う人がいるんだと本当に感じたんですね。

 だから、そういう意味では、本当に、我々には想像できないようなツールを使いながら、その犯罪を隠しながら、そして、一番現場に近いところで、無知で、そして知らずに、まさに犯罪に手を染めてしまう人がいるので、しっかり対策をいただきたいと思います。

 その上で、再犯防止についてお伺いさせてください。

 日本は、もう皆様御承知のとおり、再犯率が約五〇%と、非常に高い我が国の数字となっています。私は、再犯防止に欠かせないのは、やはり生活の安定、雇用だと考えています。実際、法務省の中でも、いわゆる協力雇用主、ここに登録している事業会社が二万五千社あると聞いています。しかし、実際には雇用が生まれているのは千社程度と、稼働はしているんでしょうけれども、なかなかうまく雇用が実っていない。

 一方で、これは、再犯防止の観点でいえば、確かに雇用は欠かせないよねとなるんですが、一方で、その負担を企業側にだけかぶせてしまうと、企業側にとっては、やはり犯歴のある人を雇用するというのは一定のリスクを伴う、それも当然ですね。

 だから、そういう意味では、法務省がしっかり、再犯防止には雇用が大切だ、そして暮らしの安心、安全、安定があれば、再犯防止につながるんだということをしっかりと発信していくことと、一方で、その雇用される側と雇用する側をうまくマッチングというか引き合わせていく場をしっかり法務省の関係機関の中で提供していくことができれば、まさに雇用の安定につながると思うんですけれども、こういった取組について、現在何かあればお伺いさせてください。

押切政府参考人 お答えいたします。

 刑務所出所者等の就労については、その前歴等を承知の上で雇用や指導をしてくださる協力雇用主の方々に大変な御尽力をいただいております。

 委員御指摘のとおり、保護観察所に登録いただいている協力雇用主の数は、令和五年十月一日現在約二万五千社と増加傾向にありますが、実際に刑務所出所者等を雇用している協力雇用主の数は、約一千社にとどまっております。

 刑務所出所者等の就労支援の課題の一つとして、委員御指摘のとおり、事業主とのマッチングが挙げられ、この点について法務省では、更生保護就労支援事業を全国二十八か所で実施しております。この取組は、刑務所出所者等に対する就労支援のノウハウを有する民間の事業者に、刑務所出所者等の希望や適性に応じた、より適切な就労先のマッチングや、協力雇用主と刑務所出所者等の双方へのきめ細かな寄り添い型の支援を委託して実施するものです。

 法務省としましては、今後とも、協力雇用主のニーズや刑務所出所者等の適性などの把握に努めつつ、効果的な就労支援策の在り方を検討してまいります。

金村委員 私が期待したいのは、特に若年層ですね。例えば少年院や少女院を出所した方々へのしっかりとした雇用や学び、そういうところにつなげていくことが、後の長い人生において必ず、成長していくと思うんですね。確かに、雇用ですから、世代や技能によってなかなかうまくいかないこともあると思いますが、再犯防止には、まず雇用あってのスタートだと私は考えています。

 その上で、雇用が生まれたとしても、また再び犯罪に手を染めてしまう、この一つの根にあるものは、私は依存症だと思っています。

 例えば、依存症でも、当然、違法薬物、あとはアルコール、さらにはギャンブル、こういった依存症を抱えて、それで普通の暮らしができなくなり、雇用を自ら切ってしまうような状況が生まれて、そして犯罪に手を染めてしまう。だから、この依存症対策というのは徹底していかなければならないと私は再犯防止の観点でも考えておりまして、その中で、刑務所の中、そして出所後、こういったところでどういう取組をされているのか教えてください。

小山政府参考人 私からは、刑事施設の関係につきましてお答えをさせていただきます。

 覚醒剤等の薬物依存のある受刑者に対しまして、薬物依存離脱指導を実施しておりますほか、例えば交通事犯や財産犯などであって、犯罪の背景にアルコール依存やギャンブル依存の問題が認められた受刑者に対しましては、委員御指摘のとおりで、再犯防止の観点から、アルコール依存回復プログラム、ギャンブル等依存症指導を実施しております。

 これらのプログラムはいずれも認知行動療法に基づくものでございまして、再発に至らないための知識やスキルを習得させますとともに、関係機関の協力を得つつ、出所後も継続的に回復に向けた治療及び援助を受けることの必要性を認識させることなどを内容としております。民間自助団体の協力も得ながら、グループワークや講義などの方法を適宜組み合わせて実施をしております。

 こういった依存症の問題を抱えている受刑者に対しましては出所後も見据えた息の長い支援が重要であると考えておりまして、引き続き、関係機関との連携を図りつつ、プログラムの更なる充実に努めるなど、再犯防止を着実に推進してまいりたいと考えております。

金村委員 さらに、再犯防止には雇用、そして依存症対策、その背景にあり、見過ごしているものの一つに、私は境界知能の問題があると思っているんですね。

 有名な著作で、「ケーキの切れない非行少年たち」という本があります。少年院で知能検査をしたところ、今、日本全体で境界知能の方は一四%、一千七百万人いると言われているんですが、少年院で調査をした結果、三四%、境界知能だと。境界知能というのは、知的障害よりも知能指数は高く、そして平均的な知能指数よりも低い、数字でいうと七〇から八四、この水域を指しているんですけれども、やはり、我々が及びつかない理解をして、そしてそれが、善悪が全くつかずに、気づいたら犯罪行為に加担している、こういうケースが間々あるんですね。

 私は、この法務委員会の前は文部科学委員会に所属しておりまして、やはり学校教育の中でも、境界知能に対する対策、これは発達障害とかグレーゾーンとは全く違う数字の出方をしますので、この境界知能に対する対策が必要だ。

 これは質問通告はしていなかったんですけれども、刑務所で境界知能、いわゆる知能検査ですね、こういったことはされているんでしょうか。

小山政府参考人 刑事施設におきましても、少年院と同様に、入所時におきまして一定の検査をさせていただいております。

金村委員 知能指数に基づいて人生を決めていくということはあってはなりません。ですが、そういう傾向が強いのであれば、事前にしっかりとそこに対する対策を取り組んでおけば、無用な、闇バイト対策も、実際にはリテラシー強化とかいろいろやることはあるけれども、根にあるのは、私は、理解不足、知識不足が犯罪をしてしまう側にあると思っていますので、この境界知能についても、再犯防止の観点も含めて取り組んでいただきたいと思います。

押切政府参考人 恐縮でございます。

 先ほど委員の方から、出所後の社会内における薬物、アルコール、ギャンブルなどの依存症対策について法務当局に問うという御質問をいただきましたので、私の方から、お時間をいただきまして答弁させていただきます。

 社会内における保護観察所においては、薬物、アルコール、ギャンブル等の特定の行動を繰り返してしまう者について、その抱えている問題や属性等によって類型化し、類型ごとに問題の背景や犯罪に結びつきやすい考え方等に焦点を当てて処遇を行う類型別処遇を実施しております。

 また、依存性薬物等の使用を反復する傾向を有する者や、アルコールの問題を抱える飲酒運転等の事犯者等に対して、認知行動療法を理論的基盤とする専門的処遇プログラムを実施しており、プログラムの中では、保護観察対象者の認知の癖など、自己の問題性について理解させるなどして、依存等の問題の改善に向けた指導を行っております。

 引き続き、これらの取組を始めとする再犯防止対策を着実に進めてまいります。

 ありがとうございます。

金村委員 午前中、もう時間になりましたのでこれで終えさせていただきますが、再犯防止は、やはり問題の原因をしっかりと分析してそこにしっかりとアプローチしなければ、結局は絵に描いた餅につながってしまいますので、原因の分析をまたしっかりと考えていただきたいと思います。

 午前中はこれで終わります。ありがとうございました。

西村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。金村龍那さん。

金村委員 大臣、午後もよろしくお願い申し上げます。

 午前中に引き続きまして、再犯防止、もう一問質問させていただきます。

 私は、選挙区は川崎なんですが、川崎の保護司の皆さんとよく意見交換をさせていただいています。熱心に保護司の活動、そして啓蒙活動とかやられているグループが幾つかあるんですけれども、現状をお聞きすると、やはり人手不足、なり手不足。一方で、この保護司の活動そのものが、どうやったら立ち直りに本当にいい効果、影響を及ぼしていくのかというのはかなり属人的なところがあるようでして、そういう意味では、悩まれている。そういう方のお声を聞いていく中で、やはり保護司というお仕事というか役回りが、初めて、罪を犯した人たちにとって一助につながるんだなということを、実は、保護司の方の生の声を聞いて私自身も実感しています。

 そういう意味では、今は、国会議員が保護司になるということは保護司の性質上難しいんですけれども、いつか、自分が議員という職を終えたときに、保護司になりたいなと私自身は思っているんですね。

 そういう中でお聞きいたしますけれども、本年五月、保護司の方が、立ち直りを支援していた方による刺殺事件というのが起きました。やはり、こういった事件、事故がございますと、どうしてもなり手が不足する。安全はどうやって確保していくんだ、一方で、保護司制度そのものの持続可能性はどうなんだというのは現場からも声として起きています。

 この保護司制度を維持したり、安全確保について、大臣所信の中にもございましたので、今どういう取組をされていて、また、どういうふうに発展させていきたいのか、大臣の見解をお答えください。

鈴木国務大臣 今、金村先生御指摘の、今年五月の事件、本当にこれは、大変熱心に活動されていた保護司の方が殺されるという事件でありました。非常に痛ましい事件でもございまして、改めて哀悼の意を表したいと思っております。

 こうしたことも受けまして、やはり、保護司の方々にはどう安全に安心して活躍をいただけるのか、このことは極めて大事だと思っています。

 そういった中で、今年の十月にも、持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会の報告書というものもありましたし、同時に、様々な保護司の皆様方、あるいは保護観察所での取組も含めて、保護司の方々の御意見も踏まえて、保護司複数指名制、これを活用していく、あるいは保護観察官による直接の関与、これをどう進めていくのか、これをどう強化していくのか、そして、あるいは、やはり自宅以外の場所でどう面接場所というものをきちんと確保していくことができるのか、これはそれぞれ、各自治体にもいろいろな形で御協力もいただいているところでもあります。

 予算措置も含めて、こういったところをしっかりと進めることで、より安心、安全に保護司の皆様方に活躍をいただけるような環境をつくっていきたい、我々としてはそう思っております。

金村委員 本当に、何十万、何百万分の一のああいった痛ましい事件であったことは事実だと思いますけれども、その結果、多くの人が逡巡し、立ち止まってしまうことにつながってはなりません。必ず、保護司を通して立ち直りをしっかり支援していく。とりわけ、少年少女の非行、ここは愛着不足、愛着構造のゆがみ、こういったことが原因の一端であると言われておりますので、そういった意味では、保護司の方がしっかりと接点を持つことで立ち直りを見せることもたくさんありますので、是非保護司の活躍の場を広げていただきたいと思います。

 そして、続いて、外国人の就労や出入国、そして共生について幾つか御質問をさせていただきます。

 今年、人材育成や人材確保を明確にした上で、技能実習制度から育成就労制度、さらには特定技能一号、二号と、大きな転換を果たした年だと私は認識しています。

 個人的な感想になってしまうんですが、私は、随分移民政策にかじを切ったような印象を受けています。実際、私の選挙区においても、外国籍の方の就労や学生、そういったものを踏まえると、多分、人口ベースでいえば一・五倍ぐらいにこの三年ぐらいで増えている印象です。

 その上で、もちろん、就労支援で入国をして、そしてしっかりと技術を磨いて本国に帰る、こういったケースはたくさんありますので、何もこの制度が至らないんじゃないかとか、そういう指摘をしたいわけではなくて、むしろ、私の選挙区は、土建屋さんや建築屋さん、土木業とか、こういった現場仕事の事業会社を営んでいる方がたくさんいらっしゃいますので、そういう意味では、半分は大げさですけれども、四分の一程度は今や外国人の方が就労支援を受けて働いているという現状があります。

 その上で、この新しい制度、就労支援制度を通して、法務省として、この先、外国人がこの支援制度を受けてどのぐらい日本に入国されるとお考えなのか、まずそこをお聞きさせてください。

杉山政府参考人 まず、移民という言葉は様々な文脈で用いられており、明確に定義することは困難でありますが、国民の人口に比して一定程度の規模の外国人及びその家族を期限を設けることなく受け入れることによって国家を維持していこうとする政策を指して、いわゆる移民政策と表現することがありますが、政府としては、そういった政策を取る考えはないとしているところでございます。

 その上で、委員御指摘の育成就労制度及び特定技能制度におきましては、国内労働市場への悪影響を生じさせないよう、有識者等の御意見を踏まえながら、生産性向上及び国内人材の確保の取組を行ってもなお不足する場合に限って、特定産業分野ごとに受入れ見込み数を設定し、これを上限として受け入れることとしているものでございます。

金村委員 聞き及ぶと、大体、数年間で八十万人程度を見越していると聞いています。大体、海外から日本に、育成就労や技能実習や、こういった制度を通して入ってくる方というのは、年齢にすると十代後半から二十代が多いと思うんですね。じゃ、日本で二十代というのはどのぐらい国民の数がいるのかというと、大体一千三百万人。その中で就労している人というと、多分一千万人ぐらい。そうすると、例えば、五年後に、一千万人ぐらいの日本人の数の中にオンされて八十万人ぐらいの外国人の人材がいるということになりますので、これは結構なボリュームですよね。そんなに少ないわけじゃない。

 十人に一人は大げさですけれども、体感として非常に多く感じると思いますので、だからこそ、制度をしっかりつくり、そしてその制度の範疇の中でしっかりと、事業会社もそうですし、御本人もそうですし、環境ですね、まさに共生社会、そういったところを、制度設計がまず持続可能性をつくれるかどうかの肝だと思いますので、しっかり、今後も、改正も含めて考えていただければと思います。

 その上で、まず、外国人との共生についてお伺いさせてください。

 今回、私も、パンフレットをいただきました、ハーモニアップとか、何かそういう名前だったと思うんですけれども。もちろん、外国人支援、共生となると、法務省もそうですし、文科省、総務省や、場合によっては厚労省とか、多岐にわたると思います。さらに、地方自治体ですね。その中で、既に外国人支援の窓口業務を務めている方々を対象として、外国人支援コーディネーターという職責というか肩書が創設されるとパンフレットで拝見をいたしました。

 実際、アンケートによると、三一%の外国人が、どこで何を相談すればいいか分からないというアンケート結果があります。そういう意味では、外国人支援コーディネーターが、外国人の皆さんの困り事、それをしっかりと専門性を持って支援していくことによって、本来ならなくてもいい困難や壁、そういったものを取り除いていければ、よりしっかりとした共生社会がつくれると私も考えています。

 その上で、外国人支援コーディネーターに必要なスキル、さらには、研修が二〇二四年度に行われるとなっていますが、まだ実際には行われていないんじゃないかなと記憶しておりますので、そういう意味では、研修の内容だとか、その辺りを教えていただければと思います。

杉山政府参考人 外国人支援コーディネーターは、生活上の困り事を抱えた外国人を適切な支援につなげることのできる人材でございます。外国人支援コーディネーターは、この役割を果たすために、外国人の在留状況を正確に把握する能力、異なる文化や価値観を理解する能力、外国人の複雑、複合的な相談内容に対して適切な解決まで導く能力、外国人を適切な支援へ円滑につなげる能力を備えている必要がございます。

 現在実施しています外国人支援コーディネーター養成研修、今現在実施しております、八月から実施しているところでございます。この研修では、これらの能力を備えるために習得すべき専門的知識、技術を学ぶこととしているところでございます。

金村委員 働き手の満足度につながることもこの制度はあり得ると私は考えていますので、一層強化していただきたいと思いますし、一方で、私はこれまで、国会議員になる前は障害児支援事業をしてきました。いわゆる福祉の現場ですね。その中で、コーディネーターとか、こういった名称がつく人たちというのは、非常に狭い職域で、専門性を高め、門外不出みたいな感じで、村社会みたいなものを形成しやすいんですね。だから、そういう意味では、外国人支援コーディネーターという専門性を持った職域をつくると、逆に、その中の本来必要な知見が外に出ていかずに、結局、自分たちの自己満足につながってしまうというおそれがあると思います。

 そういう意味では、大臣に改めてお伺いしたいのが、外国人との共生社会の実現の観点から、この外国人支援コーディネーターを通して、現状ある課題の洗い出し、さらにはどういう共生社会をつくり上げていくのか、こういった思いをまず大臣にお伺いさせてください。

鈴木国務大臣 外国人との共生ということ、これは非常に重い、極めて大事な課題だと思っています。政府としても、今、日本が、そういう意味でいうと、選ばれる国にしていく、そういったことは極めて大事だと思っています。

 その一方で、今、その問題というものもいろいろと指摘もされている状況です。恐らく、今、G7の主要国もそうですし、あるいは、様々な国で、やはり外国人とどうきちんとうまく関係ができるかどうか、これは、実は、政治の非常に大きな、各国で課題、テーマになっています。恐らく、日本も今非常に大きな、ある意味での分岐点、そういったところに差しかかっているんだろうと思います。

 そういった中にあっては、一つは、こういったそれぞれの困り事というものをどう把握して、しっかり社会の中で共生していくことができるのかということもそうですし、やはり、そういったことが、ある意味で犯罪といったことも未然に防ぐということにもなろうと思います。まさにそういったことで、先生がおっしゃったように、外国人支援コーディネーターはその意味でも大きな役割があるんだというふうに私は思っています。

 そういった中で、生活上の様々な困り事に関する相談に応じて、適切な連携先につないで解決まで導くという相談対応支援であったり、あるいは生活上の困り事の発生を予防するための情報提供を行っていく予防的支援、こういったことをコーディネーターの役割にいたしますけれども、まさにそういったことを通じて、地域における外国人の実態であったり、あるいは制度運用上の課題というものを把握していくということになると思いますので、そういった意味においては、共生社会をどうつくっていくのか。まさに選ばれる国になると同時に、やはり、日本の皆さんが安心、安全の中でそういった外国人の方との共生を図れるような、そういった形をつくる上では非常に大事なこの仕組みでありますので、きちんとそういった対応をこれから進めていきたいと思っています。

金村委員 今大臣おっしゃったとおり、先進国における今の政治的な混乱と言えば適切かどうか分かりませんが、経済の低成長、そして国民の高負担、その背景には移民政策、私は、この三つが先進国のジレンマとなり、そして民主主義が膠着してしまう。ともすれば、我々からすると対岸の火事とは呼べなくなるのかもしれませんので、やはり、しっかりこの入口の段階で制度設計をしてやっていただきたいと思います。

 その上で、今、外国人支援コーディネーターの役割の一つで、つなぐという表現があったかと思います。私も、地元の企業の皆さんとお話しすると、外国人の方を就労支援で雇用して、そこに行き着くまでに、監理団体や送り出し機関とかも当然あるんですけれども、もうちょっと身近に相談できたり話せたり、それは自治体の窓口がそういう機能があるとほとんどの方は言われるんですけれども、実は、そういう機能は、雇用主側はそんなに活用していないんですね。外国人にとっての窓口であって、雇用主にとっての窓口じゃないことは、結構、間々あるんですね。

 だから、そういう意味では、この外国人支援コーディネーターが、例えば、実際に外国人が雇用されている会社、その会社の側と少しコミュニケーションを取ったりだとか、会社の側からの相談を受け付けてそれをさばいていくとか、そういう業務というのは範疇に入っていくんですか。

鈴木国務大臣 ちょうど昨日も、地方の公共団体、そのトップの方々との意見交換をする中でも、実は、全国、ある意味で満遍なくというか、しっかり、こういった育成就労というところへの転換も含めて、どう皆さんがうまくマッチングしていくのか、それが非常に大事だ、そういった指摘もありましたし、どうしても、首都圏であるとか、そういったところに集中しがちなので、それでやるとやはりよくないだろうということの指摘もありました。

 そういった中で、やはり雇用主、雇主の方々がいろいろな意味で不安を持たれている、あるいは、そうした困ったことがあったときにどうしたらいいのかということも、非常にこれは解決すべき大きなポイントだと思っています。

 そういった中にあって、この外国人支援コーディネーター、まさに今御指摘いただいたように、雇用主側と連携を取ることで、様々な、適切な支援につながるというケースも当然これは出てきますので、そういったことも含めて、きちんと考えていきたいと思っています。

金村委員 ありがとうございました。

 その上で、もう一点大臣にお伺いさせていただきたいのが、私は、地元の企業の社長から一番言われるのが、監理団体に毎月お支払いする、監理料というか、会費みたいなお支払いをするんですが、これを働き手に渡せたらどれだけうれしいかというのをよく言われるんですね。監理団体の中身が見えにくいという問題も若干はあると思うんですけれども、いわゆるこの、監理料と言えばいいですかね、監理団体にお支払いする金額を、適正化を図っていくというお考えはありませんか。

鈴木国務大臣 今の技能実習制度においても、監理団体につきましては、職業紹介費や講習費、監査指導料などの監理事業に通常必要となる経費等について、実費に限り、あらかじめ用途及び金額を明示した上で、監理費として実習実施者から徴収することができるとしておりますが、高額な監理費を徴収する監理団体があるとの課題も指摘をされています。

 我々としても、どうこの監理費の適正化、これをしていくかが非常に大事だと思っていまして、育成就労制度においては、監理支援機関が徴収する監理支援費については、技能実習制度における実費徴収の原則を踏襲した上で、監理支援機関に、徴収する監理支援費の算出方法等を明確にしてインターネットで公開をすることを義務づけて費用を透明化すること、そして、費用の算出の基準となる考え方を運用要領等で示すこと、そして、外国人育成就労機構による実地検査時の確認や指導等を徹底して、過大な監理支援費を徴収するなど悪質な監理支援機関に対する厳格な対応を行うことなどによって、適切な運用を図ってまいりたいと思っております。

金村委員 監理団体に対する質問みたいになってしまうんですけれども、やはり、雇用主が全く満足できていないのならばもったいないですし、一方で、働き手にとっても、それが例えば所得につながらなかったりすると、それももったいないなと思いますので、引き続き、この制度は、ここで終わりじゃなくて、改善、改善を続けていくものだと思いますので、私自身は現場の声をしっかり伝えていきたいと思います。

 今日はありがとうございました。

西村委員長 次に、萩原佳さん。

萩原委員 日本維新の会の萩原佳です。

 今回まず、前回、先週ですね、ちょっと質問しようと思っていてできなかったものの続きをさせていただきたいと思っております。

 裁判官の採用関係に関して、定数の充足について確認させていただきます。

 令和六年度の裁判官の定数、これは三千二十名となっておりますが、現状の裁判官の人数は何人であり、欠員数、充当率は何%なのかお示しください。判事、判事補別に、それぞれ定員数と併せて御説明ください。

 そして、裁判所の新卒採用者、いわゆる二回試験合格者の採用者数をお聞かせください。

 また、比較のため、五年前の令和元年と十年前の平成二十六年、これらの年のデータも併せてお示しください。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 それでは、お尋ねの数字について、順次御説明をさせていただきます。

 まず、判事について御説明をいたします。

 平成二十六年十二月一日現在の数字になりますが、定員は千九百二十一人、現在員は千八百七十六人、欠員は四十五人ということになりまして、充足率は九七・七%ということになります。

 令和元年十二月一日現在では、定員は二千百二十五人、現在員は千九百九十六人、欠員は百二十九人でございまして、充足率約九三・九%ということになります。

 令和六年十二月一日現在では、定員は二千百五十五人、現在員は二千五十七人、欠員は九十八人となりまして、充足率約九五・五%ということになります。

 続きまして、判事補について御説明をいたします。

 平成二十六年十二月一日現在で、定員は千人、現在員は八百三十二人、欠員は百六十八人でございまして、充足率約八三・二%となります。

 令和元年十二月一日現在では、定員は九百二十七人、現在員は七百七十九人、欠員は百四十八人でございまして、充足率は約八四%ということになります。

 令和六年十二月一日現在では、定員は八百四十二人、現在員は六百七十三人、欠員は百六十九人でございまして、充足率は約七九・九%ということになります。

 最後に、判事補の採用人数につきましてお尋ねでございますのでお答えしますと、平成二十六年が九十六人、令和元年は八十二人、令和六年は八十一人ということになります。

 以上でございます。

萩原委員 直近でいうと、判事関連は九〇%、九五%前後というところで、過去より一定数字は落ちているものの、人員を確保している。

 一方、判事補、これに関しては、八三%から今八〇%を若干切るような状態になっているということでしたが、このように、判事補の定数、これが約二〇%も下回っている理由、要因、これはどこにあると想定されているんでしょうか。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 裁判所としては、裁判官にふさわしい資質、能力を備えている者に任官をしてほしいと考えているところではございますけれども、判事補の給源となる司法修習終了者の人数が減少してきたことに加えまして、弁護士として活躍する分野が広がっているということだけでなく、大規模法律事務所等との競合が激化していること、大都市志向の強まりや、配偶者が有職であることの一般化に伴って異動への不安を持つ司法修習生が増えていることなどが理由になりまして、新任判事補の採用数が伸び悩んでいたというふうに認識をしております。

萩原委員 ありがとうございます。

 民間の四大事務所であるとか、特に異動のところ関係かなと。弁護士の友人とかに聞いていると、条件面は言われているほど悪くないねという話はよく聞くんですけれども、やはり異動に関してというところがかなりネックになっているのかなとは思っております。

 また、ちょっとこの文脈でお聞きするんですけれども、あと、今回採用されている方、九十六、八十二、八十一という形で若干人数は減っていっているようなところではあるんですけれども、この採用者の平均年齢、これは何歳ぐらいになるんでしょうか。充当率の問題もありますけれども、裁判官や、特に判事の方など、司法試験合格者の中でも、こういう言い方がいいかどうか分からないんですけれども、皆さん非常にエリートというか、有名大学の一部の中からえりすぐりの相当若い方を採用しているのではないかなと考えておりまして、それがより人員不足に拍車をかけているかなと思っているから、お聞きしております。

 令和六年の採用の裁判官、これが最新の情報かなと思っておりまして、令和六年採用の皆様の司法試験合格年次が、司法試験、修習期間一年ということを考慮しますと、令和四年の司法試験合格者の皆さんが採用対象になると考えておりますが、令和四年の司法試験合格者の平均年齢と令和六年の採用者の平均年齢、これをお示しください。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 令和四年の司法試験合格者の平均年齢ですけれども、令和四年十二月末時点での年齢分布が十八歳から六十八歳で、平均年齢が二十八・三歳というふうに承知をしております。

 他方、七十六期司法修習生から令和六年一月十六日に採用された判事補の採用時の年齢分布は二十二歳から四十三歳でございまして、平均年齢は二十六歳でございます。

萩原委員 ありがとうございます。

 平均年齢二十六歳ということでした。令和四年の司法試験合格者の平均年齢が二十八歳で、その方が二回目試験を終えられたのが、令和六年の平均年齢が二十六歳ということは、司法修習期間が一年と考えると、平均より大体三年ぐらい若い方を採用されているという方々で、法科大学院までほぼほぼストレートで通ってきた方が多くて、初就職が裁判官という方がほとんどじゃないのかな、まあ四十三歳の方もいらっしゃるということですけれども、と思っております。

 本当に順当な道を歩いている方だなと思うんですけれども、人材の多様性という意味から、非常に狭いというか偏りを感じてしまうんですけれども、特に年齢的な偏り、平均二十五歳というところで、これが見受けられる現状についてどのように考えられているのでしょうか。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 最高裁としては、裁判官としてふさわしい資質、能力を備えた人につきましては、年齢、性別などを問わず、できる限り任官してもらい、活躍できるようにすることが重要であると考えているところでございます。

 今後とも、裁判官としてふさわしい資質、能力を備えた人にできる限り任官してもらえるよう努めてまいりたいと考えております。

萩原委員 ちょっと、かなり言葉はきれいな回答だったとは思うんですけれども、採用された方は非常に真面目な方が多分多いのかなと思っておりますし、そして、ただ、そういう高学歴で真面目な方というのは、似たような家庭環境、似たような学習環境というところで、割と均質的な経歴をたどっている方が多いかなと考えています。

 そういう意味では、裁判官の皆さんというのは、スカウト方式ではないですけれども、かなり人を絞って声をかけているのかなともお聞き及びしますので、是非、今のままの採用基準でいいのかというところは、広い視野からの検討、これをお願いしたいなと思っております。

 次は、定員数、ちょっとそれに関して少し違う視点からお聞かせください。

 判事補については、定員数の絶対数が足りない中業務をこなしているということは、一人一人の業務が過重になっていることが想定されますけれども、それでも業務が回っているということは、その想定している定員数が少々過大になっているのではないのかなと考えてしまうんですけれども、その可能性はないのか、考えをお示しください。

小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 判事補につきまして、相当数の欠員が生じているというのは、先ほど委員の方から御指摘をいただいたとおりでございます。

 判事補の定員、これまで、直近の事件動向でありますとか、判事補の充員が困難な状況が続いているということ、そして、本委員会でいただきました附帯決議等を踏まえまして、これまでも令和四年度及び令和五年度に減少させてきたところでございます。

 一方で、裁判所としましては、できる限り充員に努めているところでございますけれども、採用数や行政官庁等での勤務による出入りというのは常に同じ数ではなくて、欠員が全くない場合には人事上問題が生じるということもあり得るところでありますので、ある程度の欠員を抱えておく必要があるというふうに考えております。

 また、充員のためには新任判事補の採用を増加させるということが必要になりますけれども、先ほど御説明があったように、その一方で、裁判官にふさわしい資質、能力を備えた人材というものを採用するという観点も踏まえる必要がございます。渉外事務所等の法律事務所との競合も激化しているということなどから、裁判官にふさわしい資質、能力を備えた人材の確保には厳しい状況が続いております。

 そのような中で、採用者も近年は増加傾向にあるというところでございます。具体的には、令和三年の採用者は六十六人、令和四年には七十三人、令和五年は七十六人、令和六年は八十一人というような形になってございます。

 このように、相当数の判事補定員を減少させてきたということ、あるいは、近年の判事補の採用状況などを踏まえますと、令和七年度の予算要求におきましては、判事補の定員は維持することとしているところでございます。

萩原委員 ありがとうございます。

 いざというときのためにバッファーを持って採用しているというか、定員数を設けているということです。あと、人材の確保という意味では、一時期よりも採れるようになったというところで、その要因は種々あるとは思うんですけれども、ちょっと時間の関係でそこのところはあえて聞かないんですけれども、ただ、やはり、定員数より少ない状況で、十分回っているのかというところはあるかもしれませんが、仕事が回っているということは、本当にその数は合っているのかなと思ってしまいます。

 民間企業は、今、本当にどこでも人がいないような状態です。そして、そのいない人の中でどうやって仕事を回していくのか、また、そのために仕事の効率化が図られたりとか業務改善、これをしていくような形で、無駄な作業、これが削られていく側面が大きいと思っておりますので、今の考えというのが本当に、業務が違うんだと言われればそれまでなのかもしれませんが、やはり、民間のやり方というところ、考えというところを是非取り入れて、定員数、御検討いただければなと考えております。

 また、今ちょっとお聞きしたところでいうと、人材確保について確認させていただくんですけれども、ずっと定員数が少ない状況で、一定、幅を持たせているということではあったとは思うんですけれども、このような継続した人材不足への対応、これはどのように行っているのかなと。特に判事補の方が定員と比べてかなり少ないと考えておりますので、判事補についてお聞きします。

 また、中央省庁では、中途採用、これを増やしているとお聞きしています。先ほどのやり取りの中でも、やはり人を確保していくことは大変だということではあるとは思うんですけれども、そうなると、中途採用、これを増やしていくような形を取っていくというのが必要かなと思っておりますが、この人材不足への対応、これはどのように行われているのか、お聞かせください。

 また、人材の多様性の観点から、様々な経験をした人が裁判官になるというのは非常に大事かなと考えておりますけれども、裁判官の中途採用についてはどのように行っているのか。過去三年間の中途採用の数とともにお聞かせください。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。

 まず一つ目の、判事補の採用を増やすという観点からの取組でございますが、裁判所といたしましては、これまでも、実務修習の指導担当裁判官や司法研修所の教官から司法修習生に対し、裁判官のやりがいや魅力、異動の希望や負担にはできる限り配慮していることを伝えるということをしてきたほか、若手裁判官にその仕事内容や司法修習生へのメッセージを話してもらう企画を実施するなどして、裁判官の仕事の実情とその魅力が司法修習生に伝わるよう取り組み、充員に努めているところでございます。

 また、二つ目でございます、裁判官の中途採用ということでございますが、この位置づけということになりますと、弁護士任官制度というのがそれに位置づけられるものと認識をしております。現在の複雑で多様な事件に裁判所が適切に対応するためには多様な給源から裁判官の人材を得ることが重要でありまして、弁護士として豊富な実務経験を有する優れた法律家が裁判官として活躍することは有意義なことと考えておりまして、最高裁としても、日弁連と協議しつつ、弁護士任官の推進を図ってきたところでございます。

 最近の弁護士任官の直近の三年間の任官者数というお尋ねでございますが、弁護士任官者数の数は、令和三年度は三名、令和四年度は任官者はおらず、令和五年度は四名となっております。

 今後とも、優れた弁護士に多数任官してもらえるよう取り組んでまいりたいと考えております。

萩原委員 今の人材確保の方策に関しては承知いたしました。

 弁護士の人とか、聞いていると、ちょっと意識が高い人がなっているみたいな話も弁護士の方が言っているので、そういうふうなことを言う人たちに対してもきっちりと、やはり裁判官になってみたいなと思われるようなアプローチをしていただければなと思っております。

 また、中途採用ですね、今、弁護士任官制度を取っているということでしたけれども、過去三年で七名ということでした。この数というのはかなり少ないんじゃないのかなと思っていて、裁判官の方は、合わせると、現職で今二千七百人少しいらっしゃると思うんですけれども、その中で七人。過去の定員法の改正の資料を確認すると、在職者は、去年の十二月一日時点で僅か六十一名しかいないような状態です。

 定員、定数充足の確保という観点からも、また、多様な人材の確保の観点からも不十分じゃないのかなと思ってしまうんですけれども、より拡充していく方向がいいと思っていますが、どのように考えられるのか。その際に想定される課題、これもお答えください。

 また、弁護士の場合、紛争事案に関する調整能力とか事案能力ということはもとより、営業能力というのがかなり求められる。司法試験に出てこないような項目、それに出てこない、そういう知識、技術が必要とされると思うんです。

 そういう意味でも、弁護士よりも裁判官にある意味適性がある方というのはかなりいるんじゃないのかなと思っておりますので、是非、拡充する方向だとは思うんですけれども、それに加えて、あと定員、採用者数の定数目標というのも定めた方がいいんじゃないのかなと考えておるんですけれども、お考えをお聞かせください。

徳岡最高裁判所長官代理者 お答えを申し上げます。

 まず、課題という点でございますが、弁護士任官者が増加していない理由としましては、弁護士として活躍して、依頼者等との関係も安定している弁護士が裁判官という新しい仕事に飛び込むことにはかなりの決断を要することでありますとか、事件や顧問先の引継ぎに難しさがあることなど、様々な事情から応募者が増加していないということがあるかと考えております。

 弁護士任官の意義は先ほど御説明申し上げたとおりでありまして、最高裁といたしましては、弁護士任官者に対する研修や配置についても工夫をして、弁護士任官者が裁判官の仕事にスムーズに移行できるよう配慮するなどしてきております。

 また、弁護士がその業務を行いながら裁判官の権限と同等の権限を持って調停手続を主宰する調停制度というものがございまして、この制度によりまして、裁判官への任官を考えている弁護士にとっては、裁判官の職務、執務形態への一層の理解を深める機会が得られるとともに、事件や顧問先の引継ぎなどについて検討を進めることができると考えております。現に、調停官としての経験を経て弁護士任官をした者も出てきているところでございます。

 今後とも、優れた弁護士が多数任官するよう、引き続き改善に向けた検討を進めてまいりたいと考えております。

 なお、御指摘の、目標値を定めるべきではないかという点でございますが、最高裁としては、裁判官にふさわしい資質、能力を備えた人に任官してもらう必要がありますことから、弁護士任官の目標数、採用予定人数というものは定めることはしておりませんけれども、そのような人に多数任官してもらえるよう、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

萩原委員 定数目標は設けないということなんですけれども、裁判官の定数という目安がある限り、中途採用者の定数目標というのは立てる必要があるんじゃないのかなと思っています。目標値があるからこそ、そこに向かって動いていく。制度をつくれば何ぼでも人が来る、そういう状況ではないと思いますので、年間採用者人数を見て、明らかに人が足りない、来ていないということだと思うので、人ありきというところだとは思うんですけれども、それでも定数目標というのは、策定というのは必要だと思いますので、是非御検討いただくことをお願いして、時間も過ぎておりますので、私からの質問は終了させていただきます。

西村委員長 次に、円より子さん。

円委員 国民民主党の円より子です。

 本日は、選択的夫婦別姓について、主に質問させていただきます。

 大臣も御臨席の委員の方々もよく御存じのように、国連は、一九七〇年から日本に対し、女性の地位向上のための行動計画の策定を促し、その中に夫婦の氏についても言及しております。そこで、我が国は、一九九六年に、五年にも及ぶ準備をして、法制審議会が法案を答申いたしましたが、残念ながら、自民党内の強い反対意見で、閣法としての提出を見送らざるを得ませんでした。

 そこで、私は、次の年に、そのときは新進党だったんですが、選択的夫婦別姓だけではなく、そのときはまだ通っていなかった非嫡出子の相続差別の問題などを含めた議員立法を提出させていただきました。

 ちょっと、皆様にお配りした資料を委員の方々にも御覧いただきたいんですが、資料一は、法制審議会が答申をなさった二日前に毎日新聞に出た、一九九六年のものでございます。

 当時は、今私は自民党内の強い反対でと申し上げましたが、それは、閣法として出すには野党が反対しても関係がないので、そう申し上げましたが、実は新進党内にも、野党にもたくさんの反対がございました。

 ここに、野田聖子さん、それから山崎順子(じゅんこ)と読めます、それから、この横に中井洽さん、村上正邦さん、賛成派と反対派のインタビューが出ているんですが、実は、山崎ジュンコとしか読めないんですが、これはヨリコと読みます。私、円より子のことなんです。

 それで、次の資料二を見てくださいますか。

 資料二は、これが今申し上げました民法の一部を改正する法律案、発議者山崎順子、これは私、円より子でございます。ちなみに、賛成者の上の段の左から二番目の西川玲子さん、これは松あきらさんでございます。昔、参議院にいた方はよく御存じだと思いますが。その下の林久美子さんは、但馬久美さんなんですね。このように、多分、扇千景さんも、そのときは本名で、林でやっていらっしゃいました。

 当選したとき、すぐに私は、参議院議長に、通称使用の円より子を使わせてほしいと申し上げたんですが、衆議院の方では不破さんという共産党の方が通称使用されておりました。参議院は、ここをどこだと思っている、貴族院だぞと言われまして、通称使用が何と四年以上もできませんで、私の議事録は全部、山崎ジュンコとしか読めませんから、これは誰のことかというような議事録がずっと残っております。

 そんなふうで、実は二つの名前を持って、大変苦労してきたんですが、鈴木法務大臣にお伺いしたいんですが、大臣は、自民党の選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟の幹事長をなさって、選択的夫婦別姓の実現に向けた、随分熱心に取組をなさってきたと私は承知しております。そういう方が法務大臣になられたことは大変心強く思っているんですが、私が議員立法を出した頃はまだまだ世論の方にもいろいろな反対意見もございました。それからもう三十年近くたっているわけですが、なぜ遅々として進まないのか。せっかく法制審が出したのに、法務省としては残念でならないと思っていらっしゃるのではないかと思うんですが、なぜこんなに導入が遅れているのか、その理由は何だと大臣はお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 今、円先生おっしゃいましたように、平成八年に、法制審の答申に基づきまして、民法の一部を改正する法律案ということで作成はしてございますが、法務省といたしましては、平成八年、そして実はもう一回、平成二十二年、これは民主党政権のときだったと承知していますが、そのいずれにおいても、準備はしていたものの、提出には至らなかったというところであります。

 まさに国民の間にいろいろな意見があり、あるいは政権の中にも様々な意見がある。これは今の国会構成の中でも、恐らく、それぞれの党で、それぞれの様々な意見がある状況であろうと思います。

 そういった中で、この議論というもの、様々な議論がされている状況であると思いますけれども、いまだに、そういった意味では、様々な議論というものが続いているというのが今の率直な状況ではないかと思っております。

円委員 おっしゃるように、本当に様々な反対理由があるかと思うんですが、家族のきずなやつながりに、私は、政治が介入するのはいかがなものかと考えているんですね。両親と子供、そして同じ姓というだけが普通ではないと思うんです。

 離婚した家庭の子供たちを、春、夏、合宿にいつも毎年連れていき、何十人という子供たちと接していましたが、彼らはすごく、普通ということにやはりこだわっていました。それは、社会が、両親がいることが普通だと周りがやはり思うし、メディアもそういうふうに書くしということで、でも、父子家庭だろうが母子家庭だろうが、みんな一生懸命相手を尊重して生きていて、どれもが普通であって、別の普通ということはないんだよなんて私はよく子供たちに話したことがあるんですけれども。

 大臣は、何か困っている人がいたら、それを解消するために動かなくてはならないのが政治の役割である以上、選択的夫婦別姓に関しても、現実的な困り事を解決するという極めてプラグマティックな問題だと受け取っていますとある本でお話しになっていらっしゃいますが、私もまさしく同じ意見でございます。それならば、そしてまた二百七十八もの地方議会が意見書も採択している、こうした状況の中で、世論も今は六割から七割が選択的だったらいいんじゃないかという賛成派が多くなっている中で、こうした反対の人たちを何とか説得して実現させるという方法はないんでしょうか。

鈴木国務大臣 法務大臣ということで、民法を所管する立場からという答弁にこれはなるわけでありますけれども、まさに様々、今、地方議会の話もされました。あるいは、様々な御意見の御紹介もいただきました。

 そういった中で、やはり夫婦の氏の在り方、まさにこれは広く国民の暮らし全体に影響を与える重要な問題であります。そういった意味で、様々なところ、これは国民、皆さんの間ということももちろんそうですし、あるいは国会の中もそうですし、まさにそういった中できちんと議論が深まっていく、そのことはまさに今皆さんで進めていただいているところであろうと思います。

 そういった状況というものをきちんと、まずはしっかりと見ていきたいというふうに思っております。

円委員 今ちょっと申し上げました、多くの地方議会が採択していることについてはどう思われますか。

鈴木国務大臣 まさにそこはそれぞれの議会において決議をされ、そしてこちらに、そういった意味では、提出されてきた意見書ということだと基本的には承知をしております。

 そういった意味においては、地方議会の中においても様々な議論が深まって行われている、そして、その結果としての意見書が提出をされている状況であろうと思います。

円委員 地方でも、そして女性たちの多くも、この法案を待っている方たちがたくさんいらっしゃるということを是非考えてくださって、実現に向けて努力していただきたいと思うんです。

 ちょっとあれなんですが、大臣お忙しくて御覧になっていなかったかもしれませんが、今年の前半のNHKのテレビドラマで「虎に翼」というのがあったのは御存じでしょうか。御覧になっていますか。

鈴木国務大臣 名前はよく耳にいたしますが、残念ながら、私、ちょっと見ていません。済みません。

円委員 女性で初めて弁護士になり、また裁判官で、家裁の方をやっていらした三淵さんをモデルにしたテレビドラマなんですが、まだ弁護士も裁判官も、明治のときではありませんが、明治時代は、裁判官も政治家も検察官も弁護士も、誰も女性がいなかったわけですよね。そういうときに、強姦罪は変わりましたけれども、そのときに作られたものや堕胎罪や、まだいろいろ残っております。

 この「虎に翼」のドラマは、かなり多くの、特に働く女性だけじゃなく、主婦の方々、いろいろな女性たちの共感を呼んだドラマだったんです。実は、共感を呼ぶこと自体が、逆に、今と昔と余り変わっていないなという、そういう状況を映し出しているんじゃないかと私は思いまして、この選択的夫婦別姓の問題もそうなんですけれども、経済界からですら、通称使用ではなくて選択的夫婦別姓制度の導入をという提言が出ている時代です。

 一部の政党や一部の政治家によって変わらないということはとても残念なんですが、先ほどから、いろいろ世論やそういうものを鑑みながらとおっしゃっていますけれども、多くがもう選択的夫婦別姓は導入してもいいんじゃないかと思われている、そこにもう少し踏み込んで、大臣として何か行動を起こしていただけないかと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 様々な御意見、私も、いろいろ拝読したり伺ったりしております。

 実際、私も、九・一一テロ直後のアメリカで仕事もしていたりとか、あるいは中東、アラブの方でもいろいろと仕事で行くことも多い状況もある中で、実際かなり、例えば空港とかのいろいろな取調べを受けたこともありますし、そういった状況でもし幾つかの名前がその中で見つかったらこれは大変なことになるなという、そういったことも私自身も体感をしたこともございます。

 あるいは、研究者の方を中心に、いろいろな論文のということも耳にしている状況ですし、本当に多くの方がお困り事として実際にそういったことに直面されている、この実態というものを私も承知をしております。

 その一方で、やはり逆に、家族の一体感、これはいろいろな見方が当然あると思いますけれども、そういったところで危惧をされている方々もまだいらっしゃるのも事実だろうと思います。

 そういった意味では、まだ、国民の間でいろいろな議論が本当にある状況だと思います。そういった中で、どのようにしてそういった課題を解決をしていくのか、こういったことについてのやはり議論を、これは国会を始め国民の中で深めていただく、そのことが大事だと思いますし、加えて、実際に例えば法制度として議論を進めていくのであれば、子の氏をどうするのかとか、そういった様々な論点についても、これもまた様々な議論、様々な意見があるとも承知をしております。

 今そういった状況でありますので、私も、法務大臣としてどうということよりも、法務省といたしましては、やはり皆様方のそういった議論のこれからの推移、まさにこれは国民の多くの方々がというか、全ての方々が関係してくる問題でもありますので、そこのところについてはしっかりと議論のこれからの展開というものを注視していきたい、それが私から今申し上げることでございます。

円委員 ありがとうございます。

 後で、今大臣がおっしゃったことも含めて、ちょっと通称使用のことも質問させていただきたいと思いますけれども。

 その前に、民法七百五十条は、婚姻の際に、夫婦は、定めるところに従い、夫又は妻の氏を称すると規定しておりますよね。そうすると、これは別に男女平等に反するものではなく、どちらかの姓を選べばいいとされているわけですが、一見、でも、男女平等のように見えるんですが、同姓を義務づけていることと、もちろんどちらでもいいのに、九五%もの女性が夫の氏を称している、これはどうしてなのか。大臣はどう思われますか。

鈴木国務大臣 厚労省の方の人口動態統計によれば、今先生おっしゃいましたように、夫の氏を選択する夫婦の割合が令和四年時点で約九五%となっております。どうしてそういったことになるのかといったことを御指摘もいただいているということも承知をしております。

 夫の氏を選択する方が多い、これは様々な理由があって、一概にお答えすることは難しい状況でもありますし、そもそも、この歴史を振り返れば、元々夫婦で同じ氏ではなかった最初の太政官令ですか、その頃から実態的にはかなり変わってきて、実態として夫婦同氏になった、そういった経緯も含めて、いろいろこれはあるんだろうと思うんですね。

 ただ、その上でやはり、女性の方が多く氏を改めることで、仕事の上であったりあるいは日常生活上、様々な不便、不利がある、そのことは実際、多く私、耳にいたします。そういった声をしっかり真摯に受け止めていくこともまた必要であろうと思っております。

円委員 今大臣もいろいろおっしゃってくださいましたけれども、そもそも、やはり、今は共働きの夫婦の方が多くなりましたけれども、長い間、男性は働くけれども、女性は結婚したら家に入った方がいい、そういう感覚、社会通念が結構多かったように思うんですね。そういうときには、それほど多分、姓について不便だと言う人たちはなかったかもしれません。学者で論文を書いたり、ビジネス界で昇進したりというような人が、女性が増えてきて、旧姓を変えるということが大変不便だというようなこともやはり出てきたこともありますが、どう考えても、九五%の方がまだいまだに夫の氏を名のるというのは、まさしく夫が主で妻が従というか、男性が主で女性が従であるというような家族観がいまだに色濃く残っていて、親も、それから親戚周りも、結婚するときに夫の方が変えるなんて言ったら、婿養子に行ったのかとかいろいろ言われてしまうような、そういう社会の風潮もありますし、メディアも社会も、そして何より女性本人が夫の姓になることが当たり前というように幼い頃からどうも教育されてきた、インプットされてきた、そんなことがあるのではないかと思っておりまして、こうした家父長制度とか性別的、固定的な役割分担とか、そういうような意識を少しずつやはり変えていかないと、これからの日本の社会は、女性の活躍ということも難しいでしょうし、女性の活躍が難しければ経済の成長だってなかなかできない、そういう、遅れてしまうというようなこともありますので、是非ともこの選択的夫婦別姓は変えていっていただきたいと思うんですが、これが、私なんかは、男女平等だけじゃなく、少子化とか社会の発展、そういったことにもマイナスになるように思えてならないんですが、その辺りの御意見は、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 夫婦の氏ということで申し上げれば、私の知っている範囲でも、男性で氏を変えてビジネスをされてという方もいらっしゃいます。そういった中で、ただやはり女性の方が多いということで、そこはいろいろな、アンコンシャスバイアスの話もされましたけれども、そういった面もあるのかとは思います。

 その一方で、しっかりこれをどうしていくのか、このことは国民のそれぞれのところで、あるいは国会の場でも、議論をしっかりしていただきたいと思っております。

 少子化あるいは経済という意味でどうなのかということになりますと、法務省、法務大臣としてお答えするのはなかなか難しいところではありますけれども、そういった意味では、それぞれの者がきちんと活躍をしやすい社会をつくっていく、このことは当然法務省としても共有をしておりますし、そういった中で、議論が深まることを我々としてもしっかりと期待をさせていただきたいと思います。

円委員 大臣というよりも鈴木先生個人みたいな形でお聞きできたらと思うんですが、もし今大臣がこれから結婚をしようという立場だったとして、生涯を共にしたいと思うお相手から、自分の姓に、氏に変えてくれたら結婚してもいいわよと言われたらどうなさいますか。

鈴木国務大臣 法務大臣としてこの場に立っておりますので、お答えはしづらいことでありますけれども、まさに婚姻を考えている当事者の双方が共に氏を変えたくないという理由で、法律婚をすることを断念をして事実婚にとどまっている方がいらっしゃる、そのことも、そういった意見も承知はしております。

 そういった中で、こうした様々な現状というものを考えながら、同時に、様々な意見があるのも事実でございますから、そういったことをしっかり我々としても見させていただいて、また、国会の場を中心にきちんとした議論が深まっていくことを我々としても注目していきたいと思います。

円委員 個人的な見解を是非お答えいただきたかったんですが。

 いずれにしても、女性だけじゃなく男性でも、最近は、じゃんけんで決める人もいれば、女性の方の氏に変わる人ももちろんいらっしゃいます。その場合に、男性にとっても、やはり社会的に活躍している場合に氏を変えることは大変だと思うんですね、幾ら愛する人のためであったとしても。

 そのときに、通称使用ということが考えられると思います。この通称使用について、先ほど大臣は、ちょうど同時テロのときにアメリカにいらして、幾つかの姓を持つということ、複数の姓を持つことが結構危険視されるというようなこともお話しなさっておりました。

 それから、今ビジネス界で働く女性たちから、いろいろな不利益、不便を申し立てていらして、それで経済界からも、是非、選択的夫婦別姓制度を導入してほしいという提言が出てきたんだと思いますけれども、それ以外にも、今大変デジタル化が進んでおります。そういう社会では、セキュリティーとかプライバシーの問題とか様々発生すると思うので、まさしく複数の姓を持つことというのは大変で。

 先ほど私も、通称と本名と違って、北京で世界女性会議が一九九五年にあったときに、国内から電話があったのを、円より子なんて泊まっておりませんと言って、電話をつないでもらえなかったことなんかもあって、いろいろ不便をしてまいりました。

 この通称使用というもので十分というふうに大臣はお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 旧姓の通称使用あるいはいわゆる選択的夫婦別氏、これは、要は、一個決まったものがあるというよりは、様々な解釈がそれぞれの方でもあるんだろうと思います。

 そういった中で、どちらがどっちということはこの場でそれぞれ挙げて申し上げることはいたしませんけれども、例えば、先ほど申し上げましたように、旧姓の通称使用ということであれば、やはり海外でなかなか理解されない、そういった状況の中で、先ほど申し上げましたように、ダブルネーム等の状況でいろいろな不利益を被る可能性があるという声は拝聴しておりますし、実際、そういった可能性があるだろうと、私もそれはそう思います。

 そういった中で、どういうことが実際にあり得るのか、そのことについて、こういったことも真摯に受け止めながら、いろいろとまた見させていただきたいと思っております。

円委員 選択的夫婦別姓制度をきちんと導入した方が、私は、通称使用の弊害が逆になくなっていいのかなと思ってはいるのですが。

 選択的という言葉がありますよね。これは、最初の頃、議員立法を出した頃は、絶対にそんな別姓なんか嫌だわという方の、たくさんの国会議員の中にも反対をいただきました。いや、そうじゃなくて、これは選択的ということだから、同姓を選びたい人や、同姓で今いる方々の公的な、いろいろ問題を、侵害するものではないんですよと申し上げたら、そうしたら、まあいいという方が随分多かったんですけれども、その辺りをもっと、選択的なんだということの理解を社会に進めていけば、もう少しこの法案に対する賛成者が増えるんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 政府でやっている調査ということで申し上げれば、内閣府での調査というものもございます。いろいろな過去からのトレンドを見ていても、どういう状況なのか、いろいろな議論、意見があるんだろうと思います。

 そういった中で、選択的ということの意味合い、同時に、例えば子にとってどうなるのかということも、恐らくきちんとみんなで考えることではないかと思っております。

 まさにそうしたそれぞれの論点、これは、選択的であるということ、強制的ではないということもそうですし、あるいは、親、夫婦ということに加えて、やはり家族ということであれば、子であったりということもありますので、まさにそうしたそれぞれについての正確な理解が広がっていく、これは議論の一番の大前提として当然のことであろうと思いますし、そこの理解がきちんと広がる環境、それは私どもも情報提供をするというのはそういった趣旨もありますので、そういった意味では、きちんとした情報提供によって正確な理解の下で、議論が国民の皆様方の間であるいは国会の間で深まっていくということを私としても注視をしていきたいと思っております。

円委員 是非、大臣も法務省もそうした理解が進むように努力いただきたいと思っております。

 さて、最高裁の方で二度も同姓が合憲、七百五十条が合憲と出たことが、女性たちはそのことに大変ショックを受けた人たちが多いんですけれども、でも、その合憲とした最高裁も、国会でこれは議論すべき、そして判断すべき問題だと言っております。つまり、国会にまたボールが投げられたわけですよね。

 ですから、余計、その最高裁が二度もそういうことをやっているわけですから、こうした最高裁の投げられたボールに対して、こちらの側の国会はしっかり応えていかなきゃいけないと思うんですが、これについては、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 夫婦の氏の在り方ということでありますけれども、今、円先生御指摘のとおり、平成二十七年の最高裁判決におきましても、この種の制度の在り方は、国会で論ぜられ、判断されるべき事柄にほかならないとされておりますし、令和三年の最高裁決定でも、この判断は踏襲をされていると承知をしております。

 まさにそういった意味で、この立法府において、国会において、これは国民それぞれの間での議論も当然でありますけれども、まさにそこで建設的な意見がより具体的に行われていく、このことが極めて大事だと思いますし、そのことを通じて、国民の間でも更に広い、深い理解が広まっていくということが望ましいことではないかと思っております。

円委員 つい最近、今年の十月二十九日ですけれども、女性差別撤廃委員会が、日本政府に対して、婚姻後の夫婦同姓が強制されている民法の規定を改正し、夫婦が婚姻後も別姓を選択できる制度を導入することを求める勧告を行いました。御存じのように、これはもう四回目の勧告であり、しかも、二年以内に対応状況の報告を求めるフォローアップ項目になっております。法的拘束力はないものの、締約国として差別をなくす義務があるわけです。

 先ほども申し上げましたように、最初に勧告された二〇〇三年から比べますと、世論は確実に理解が深まっているように私には思えるんですが、是非とも、この二年間というフォローアップ項目に入ったということで、二年以内にどうしようということを少しお考えいただきたいんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 今御指摘の国連の女性差別撤廃委員会からの勧告、そこは承知はしております。ただ、やはり、氏の話、これは極めて重要な、国民の全ての方が関係する、そういった重要な問題でもあります。まさに家族ということもそうですし、まさにこれは日本の国としてそこは判断をしていくべき問題であると思いますし、そういった意味においては、きちんと国内において国民の皆様方、そして国会において議論が深まっていく、それは、当然拙速ということではいけないと思いますし、同時に、いつまでもということでもないんだろうと思います。そういった意味では、そうした議論が深まっていくこと、これを、再びの言い方で恐縮ですが、私としてもしっかりと期待をしていきたいと思っています。

円委員 今日は十二月十八日です。実は、一九七九年のこの日、第三十四回国連総会で女性差別撤廃条約が採択された日なんですね。今、大臣に御質問したその勧告をしたのが、この女性差別撤廃条約に基づくものなんですけれども、その本体から二十年遅れて、一九九九年十月六日に選択議定書が採択され、締約国は今百十五か国になっております。

 実は、OECD加盟国の三十八か国中で、批准していないのはアメリカ、イスラエル、エストニア、ラトビアと日本なんです。これもまた地方議会からは、早期批准を求めて三百五十議会が意見書を出しています。

 自民党の法務大臣をなさった南野知恵子さんも、国連で、選択議定書の批准に更に尽力、努力してまいりたいとおっしゃっています。これが二〇〇九年。それが遅々として進まずに、外務大臣をなさった茂木さんは、二〇二〇年三月二十六日に、論点はある程度明らかになってきているので、関係省庁との間でずるずる引っ張るということではなくて、しっかりと議論をして、どこかで結論を出さなきゃならない問題だと考えていると答弁なさっております。

 二〇〇九年の南野さんの国連での発言、二〇二〇年の茂木外務大臣の答弁、なぜずっとこんなにも、それこそずるずると引っ張られていて、選択議定書が日本は批准されないのか、批准をすると何かよほど困ることがあるのでしょうか。

鈴木国務大臣 この女子差別撤廃条約の選択議定書の批准ということでありますけれども、この中で規定をされています個人通報制度、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度と考えております。

 他方で、この個人通報制度の受入れということになりますと、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題がどうなのか、そういった有無がどうなのだということ、あるいは、この個人通報制度を受け入れる場合の実施体制についての検討課題、こういったものがあると認識をしております。

 これは、引き続いてということになりますけれども、外務省を中心とした関係省庁と連携をして、これは政府全体で、各方面の御意見を伺いながら、個人通報制度の導入の是非、ここについては検討をしてまいりたいと思っております。

円委員 今の大臣の御答弁は、ずっと議事録を、私はこの十四年間国会にいなかったんですけれども、その間の議事録も見ましたけれども、ほとんど同じ答弁なんです。つまり、二十年間ずっと、選択議定書を批准しなさいと言われてから延々と同じ答弁で、つまり、検討をずっとなさっていて何も進展がないのがとても不思議なんですが、どうして進展がないんでしょうね。外務省のせいなんでしょうか、それとも法務省のせいなのか。是非是非その辺をきちんと、同じ答弁じゃなく、鈴木大臣には期待しておりますので、次回、通常国会ではいい答弁をなさっていただきたいと思うんです。

 選択議定書とは、もう釈迦に説法ですが、女性差別撤廃条約の実効性を高めるために採択された附属の条約で、女性差別撤廃条約の違反に対して委員会に申立てをできるもので、今おっしゃったように、個人の救済をするための個人通報制度と女性差別撤廃委員会による調査制度があるわけですね。

 今、個人通報制度には注目すべきだとおっしゃってくださいましたけれども、この実現を待っている具体的な事例としては、男女の賃金格差の問題を訴えた方。もう本当にこの賃金格差をなくさないと、我が党が一生懸命手取りを増やすと言っていますけれども、私は女性の手取りも是非増やしたいと思っているところなんですが、その問題を訴えた方や、また、婚外子差別の戸籍の記載の裁判に敗訴された方、そういった方々がいらっしゃいます。この個人通報制度を利用したいと思っていらっしゃるんですね。

 つまり、日本でも裁判をするのは本当に労力が要って大変なんですけれども、それで、敗訴して、また女性差別撤廃委員会にまで行こうなんて、もう本当にエネルギーのある方々だと頭が下がる思いですけれども、そうした方々を何とか救済していくには、やはり国内法の整備がまず先にあった方がいいんじゃないかと私は思っているんですが、もう一つ、選択的夫婦別姓の裁判です。

 これについても、是非、国内の法整備を通じて権利を確保するよう、皆さん求めていらっしゃいます。私が三十年前、国会議員になった頃に私のところに来られた方は、本当にあの時代にすごく会社で活躍しておられて、海外との様々な交渉を一手に引き受けていらっしゃる女性だったんですが、それで、名前が変わることが大変で、結婚してもずっと御自分の姓を名のっていらして、籍を入れなかったんですね。子供が生まれて、また夫の籍に入れて、また一応、実質上、離婚みたいな形でということで、ずっと暮らしていらした方から、つい先日、夫が本当に元気だったのに突然死して、それで全く相続ができなくなった、そんな話も聞きました、別氏をしていたことで。

 本当に三十何年間、選択的夫婦別姓制度を待っていたのに、本当に残念というお手紙、メールをいただいたんですが、そんな方もいらして、是非とも早く法整備を進めていただきたい。そしてまた同時に、議定書の批准を実現してくださるか。もう一度大臣の御答弁を聞いて、質問を終わりたいと思います。

鈴木国務大臣 いわゆる選択的夫婦別氏の話でありますけれども、先ほど答弁申し上げましたが、私どもとしても、いろいろな困難というか、そういったことに直面をされている方が多々いらっしゃる、これは実際、実態として我々も承知をしております。

 どのような形でこういった解決を図っていくのか、そのことを、やはりこれは本当に多くの方が、様々な意味で、選択的ということであっても、これはいろいろな方が影響を受けることでありますので、そこはやはり幅広く、しっかりとした議論をしていただく。そして、特に、最高裁の方も含めて、立法府でということもありますので、そこは立法府の方できちんとした議論を深めていただく。そのためにも、我々としては、適切に情報提供していくということが極めて大事だろうというふうに思っております。

 様々、議定書であったり、いろいろなことはありますけれども、やはり我が国の国内のこと、当然、一義的に、我が国のこととしてしっかりとした議論、我々が日本の国会としてあるいは行政府として、きちんとした議論をして決めていくということに尽きるんだろうと思いますので、引き続き、そうした議論の推移を我々としてもしっかりと見守っていきたいと思っております。

円委員 私は、どんな問題であれ、様々な意見があっていいと思っているんです。ですから、自分の意見と違うからといって、その方々を排除したり、その方々を非難したりなんてすることは愚の骨頂だと思っておりますし、選択的夫婦別姓に反対の人とも私はとても仲よしですし、そういうことはあるんですけれども、ただ、やはり先ほども質問で申し上げましたが、選択的ということで、それを選択したいと思っている人の人生を阻むというのが政治的にどうなのかなという気がいたしますので、是非とも、鈴木法務大臣が法務大臣でいらっしゃっている間に、この法案を実現させていただきたいということを強く願って、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

西村委員長 次に、平林晃さん。

平林委員 公明党、平林晃と申します。

 本日は、大臣の所信演説に関連して質問をさせていただけたらと思います。よろしくお願いを申し上げます。

 まず、鈴木大臣、御就任おめでとうございます。今の内閣閣僚の中で、恐らく中野さんと同世代の、本当に若い世代の大臣だというふうに思っております。豊かな国際感覚もお持ちですし、日本の若きリーダーとして、これからの御活躍を心から御期待を申し上げます。

 その意味で、ちょっと所管とは外れますけれども、日本の若きリーダーにということで御質問させていただけたらと思うんですけれども、二〇二四年のノーベル平和賞、日本原水爆被害者団体協議会に授与されました。言うまでもなく、今回の受賞は、被爆者の皆様の自らの壮絶な経験を通して核のタブーの確立に多大な貢献をしてきたことをたたえたものであると同時に、そのタブーが今破られかねない、この強い危機感の表れでもある、このようにも認識をさせていただいておるところでございます。

 こうした厳しい国際情勢における日本被団協のノーベル賞受賞に関しまして、鈴木法務大臣から、御感想ということで結構ですので、いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

鈴木国務大臣 なかなか、所管ということではないのであれなんですけれども。

 被団協は、長年にわたり、核兵器の廃絶、あるいは被爆の実相に対する理解促進に取り組んでこられた団体であります。今回、ノーベル平和賞という大変栄誉ある賞を受けられたということで、そのことは大変意義深いことと考えておりますし、これはまさに協議会の長年の御努力と、今回の受賞に対して心から敬意を表させていただきたいと思っております。

 官房長官からも、その点でいえば、記者会見で、核兵器のない世界に向けた国際社会の取組を主導することは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命であると考えていると述べられていると承知をしております。

 その上で、私の、法務大臣としてというか、所管ということで、関連で申し上げれば、やはり、様々、国際環境はかなり厳しくなっているという話が、今、平林先生からもございました。まさに、法の支配あるいは司法外交ということで考えても、やはり今、中国であったり、あるいは北朝鮮、ロシアと、まさに核兵器を保有している、あるいは保有していると思われる国に囲まれている、大変日本としては厳しい国際環境であります。

 そういった中にあって、こうした司法外交あるいは法の支配ということ、法の秩序ということを、世界的にも、我々としてもしっかりと押し出していくということが極めて大事だと思いますし、今回この受賞を見てそういったことを改めて感じたところであります。

平林委員 ありがとうございます。

 司法外交というお話が出ましたけれども、これは少し後で質問させていただこうと考えているところでございますが、日本政府がこれまで核兵器のない世界に向けて御努力をしてこられていることは、心から敬意を持っているところでございます。

 その上で、ノーベル平和賞に後押しをいただいて、被爆八十年を迎える明年三月に行われます核兵器禁止条約締約国会議へのオブザーバー参加、これは今しかないことだと考えているところでございます。委員会が異なりますので議論するものではございませんけれども、公明党は先日、斉藤代表を中心に総理に申入れもさせていただいております。政府が参加を決断できますよう、引き続き後押しをさせていただけたらと思っております。

 続きまして、大臣所信演説の中におきまして、国際情勢が引き続き緊迫する中、まさに今おっしゃられましたけれども、法の支配や基本的人権の尊重といった価値を国際社会に浸透させるべく、司法外交を一層強力に展開します、このように述べられたわけでございます。

 世界では民主主義が本当に危機的状況にある、そういう中でありますけれども、この民主主義的価値観を広めていくことは本当にとても重要な取組でありまして、これまで専心的に取り組んでこられました先輩の皆様に心から敬意を表するものでございます。

 その上で、今回の大臣所信演説においては、ASEAN地域のみならず、太平洋島嶼国、中央アジア、ウクライナ等にも戦略的に拡大すると述べておられました。

 これもまた、今まさに取り組んでいくべき重要な方向性と、私も賛同を申し上げるところでございます。

 この取組、具体的に何をどう進めていかれるのか、法務省の御見解を伺います。

堤政府参考人 お答えいたします。

 法務省では、相手国の主体性や自主性を尊重した寄り添い型の支援を重視し、これまで三十年にわたって、ASEAN地域を中心とする開発途上国に対し、基本法令の起草やその運用、人材育成などを内容とする法制度整備支援を行ってまいりました。

 法制度整備支援は、法の支配が定着し、ガバナンスが強化された安定した社会の確立に資するものでありまして、法の支配といった価値を国際社会に浸透させる司法外交の柱となる取組であることに加えまして、法適用の予見可能性が高まり、法執行の透明性が向上することからも重要でございます。

 近時、国際社会におきまして、開発途上国を含むいわゆる新興国の存在感が高まる中で、法制度整備支援の意義も高まっております。

 そこで、法務省におきましては、ASEAN地域にとどまらず、広く国際社会において、長年培ってきた法制度整備支援の経験を生かして、各国における法の支配の定着に寄与したいと考えております。

 具体的には、ASEAN地域から東西に手を伸ばす形で、これまでに支援を行っていない太平洋島嶼国や、ASEAN地域と比べて必ずしも支援が行き届いていない中央アジア諸国等にもその活動を広げていくべく検討しております。

 また、ウクライナにつきましても、ロシアによる侵略の被害からの復興等を支援するため、本年八月にウクライナ司法省との間で署名、交換した協力覚書に基づきまして、現在、具体的な支援内容について協議を進めております。

 引き続き、関係省庁、関係機関と連携しながら、戦略的に法制度整備支援を進めてまいります。

平林委員 ありがとうございます。

 先ほど大臣もおっしゃられましたけれども、我が国を取り巻く状況を考えると、こういったところへの支援は非常に大事だと思いますので、是非、着実に成果を上げていっていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 続きまして、話が少し、少しというか、がらっと変わります。

 検事による不適正な取調べ、最近耳にすることが非常に多くあるような感じがしております。

 先月の報道では、和歌山に来られていた岸田前総理の近くに爆発物を投げ込んだとして起訴された被告に対して和歌山地方検察庁の検事が人格を否定するような発言をしたとして、被告の弁護士が検察に抗議をして、最高検が認定をしていた、こういう報道がありましたし、少し遡れば、六月には、学校法人の土地取引をめぐる横領事件で大阪地検特捜部に逮捕、起訴された、さらに無罪が確定した不動産会社の元社長への取調べに対して、捜査を行った検事が取調べ中の発言を不穏当だったと認めた、こういうことも報道されている。さらに、まさにこれは昨日報道されておりましたけれども、東京地検特捜部が太陽光発電関連会社の社長を逮捕、起訴した詐欺、会社法違反事件をめぐり、最高検が特捜部検事の取調べを不適正と認識をしていたと報道されているところでございます。

 この発言の内容はここでは言いませんけれども、本当に、ちょっと何か、ひどいなと感じる内容でございます。本当に次から次へと出てくる、こういう印象を持ってしまいます。

 そこで、法務省に伺います。

 こうした不適正と考えられる事案、どの程度把握されているのでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 検察庁職員の捜査、公判遂行上の不適正行為等を把握し、これに適切に対応することを目的として、最高検察庁に監察指導部が置かれていて、その監察指導部が監察の概況を公表しております。

 その公表内容でございますが、取調べに関する不満等という類型で監察案件として立件したものの件数が、令和四年十月一日から令和五年九月三十日までの一年間で百三十件余りとなっており、同じ期間内に監察結果が示されたもの、立件と処理がずれますので件数がずれますが、百六十件余りでございまして、そのうち、同種事案の再発防止に向け一層の注意喚起というものを最高検としてしたものが六件、原庁で注意、指導が行われて、それで足りるとしたものが四十八件、指摘すべき問題点がないとされたものが百十件という内訳になっております。

平林委員 法務省の御主張としては、決して多いわけではない、こういうことなのであろうと思います。それはそうであると信じたいところです、一国民として。

 ただ、一件でもこういうことがあると、我々市民は安心して外も歩けない、こういうことにもなってまいります。不適正な取調べを可能な限り減らす、理想的には根絶していく、このことが重要であると考えております。

 二〇一六年の改正刑事訴訟法では、取調べの録音、録画制度が取り入れられ、二〇一九年から義務化をされている。しかし、その対象が起訴事件の二、三%程度と限定的である。であるにもかかわらず、録音、録画データの中から、この限定的な中から不適切な事案などの場面が見つかる。そうすると、残り九七はどうなっているのかと当然考えてしまうところでございます。

 録音、録画の範囲の拡大、あるいは取調べにおける弁護人の立会い、こうした改正は今どのように議論されているのか、法務省の見解を伺います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 まず、今先生御指摘の問題につきまして、様々な御議論があることは承知しております。

 取調べへの弁護人の立会いの方でございますが、その制度化については、以前、法制審議会で議論されたものの、証拠収集方法としての重要な機能を有する取調べの在り方を根本的に変質させて、その機能を大幅に損なうおそれが大きいなどの問題点が指摘されて、法整備の対象とはされなかったものと承知しておりまして、慎重な検討を要するものと考えております。

 また、取調べの録音、録画の制度につきましては、平成二十八年成立の刑事訴訟法の一部改正法により導入された際に、一律に録音、録画を義務づける必要性、合理性や、運用に伴う人的、物的な負担等を考慮し、裁判員裁判対象事件及び検察官独自捜査事件における逮捕、勾留されている被疑者の取調べが制度の対象とされたものでございます。

 もっとも、検察当局におきましては、逮捕、勾留されている被疑者については、今は原則として、ほぼ、ほとんどの事件について録音、録画を実施しているという現状ではございます。

 いずれにしましても、御指摘の点につきましては、その改正された刑事訴訟法の附則で定められている検討に資するために、法務省で開催しております改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会において協議がこれについても行われているところでありまして、法務省といたしましては、同協議会において充実した議論が行われますよう尽力してまいりたいと考えております。

平林委員 しっかり議論をしていっていただきたいと思います。

 最後に、もう時間がなくなってまいりましたので、なるべく簡潔な答弁をお願いできればと思うんですけれども、二〇二三年の刑法改正におきまして、強制性交罪が不同意性交罪と改められ、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態であれば処罰できるようになったということでございます。

 このような法改正に至った背景と目的、簡潔によろしくお願いいたします。

森本政府参考人 改正前の強制性交等の暴行又は脅迫を用いてとの要件や、準強制性交等の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じといった要件については、判例上の解釈として、抵抗を著しく困難にさせる程度であることを要するとされておりますが、そういった要件が判例上課されていることから、個別の事件において、これらの罪の成立範囲が限定的に解されてしまう余地があるとか、あるいは、安定的な運用を確保する観点からは、処罰する行為を適切に捕捉しつつ、構成要件該当性にばらつきがない規定とすることが重要であるといった指摘がなされ、それを踏まえまして改正がなされたものでございます。

平林委員 ざっくり、グレーゾーンというか、そういったものをなるべくなくしていこう、こういう改正なのではないかなというふうに思っているわけですけれども、それでも、性犯罪の立証は相変わらず容易ではない。

 今、私も重大な関心を持って、大阪地検の元検事正の事件について報道を拝見しております。

 被害者の御主張ですけれども、性犯罪事件において、どのように主張すれば逮捕や起訴を免れやすいか、無罪判決を得やすいかを熟知した検察のトップにいた元検事正が、主張を二転三転して被害者を翻弄し、世に蔓延する、同意があったと思っていたなどとこそくな主張をして無罪を争うことが、私だけでなく、今まさに性犯罪被害で苦しんでいる方々をどれほどの恐怖や絶望に陥れ、被害申告することを恐れさせているのか。そのとおりと私は考えます。被害者の心情を察するに余りありますし、司法によって適切な判断が下されること、このことを期待をしております。

 その上で、ここまでの話を一次被害と呼ぶならば、ここからの話は二次被害であり、誹謗中傷、生活環境やネット、職場。この被害者はこうも述べられています。環境が、私は孤立させられ、職場が安全でなくなり、病休に追い込まれた、私の傷つけられた名誉を回復するような措置はいまだ何一つ講じられていないということも言っておられるわけです。私は、このことも本当に同じように思うわけでございます。

 こうした被害者支援体制について、法務省の取組を伺います。

西村委員長 時間が来ておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

上原政府参考人 お答えいたします。

 先ほど刑事局長からもお答えしましたとおり、昨年の通常国会で成立した刑法等改正法等による法整備、こちらは、性犯罪の被害の実情を踏まえて、事案の実態に即した対処をする上で大きな意義を有するものと考えております。

 また、同じく昨年の通常国会で成立しました刑事訴訟法改正法につきましては、こちらは、犯罪被害者等の氏名の、個人特定事項の秘匿措置に関する規定も整備されておりまして、この点につきましては、犯罪被害者等の氏名等の情報を保護することができることになりました。

 こういったことも含めまして、法務省におきましては、関係府省庁とも連携して、これらの規定が適切に運用されるよう、その趣旨及び内容の周知、広報、そして検事への研修などを進めているところでございます。

 また、さきの通常国会で成立しました総合法律支援法改正法におきましては、性犯罪を含む犯罪の被害者等が、精神的、身体的被害やそれに伴う経済的困窮によりまして様々な対応を行うことが困難な場合があることから、こうした被害者等に対しまして、弁護士による包括的かつ継続的な援助を行うため、犯罪被害者等支援弁護士制度の導入、これを規定整備されたところでございまして、法務省としては、これが早期に円滑かつ充実した運用を開始できるよう準備を進めているところでございます。

 法務省としましては、関係府省庁とも連携しながら、引き続き、犯罪被害者に寄り添う形で、こういった性犯罪、性暴力対策を進めてまいりたいと考えております。

平林委員 しっかり、よろしくお願い申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 二〇二四年九月二十六日、静岡地方裁判所で袴田巌さん無罪の判決が出されました。一九六六年の事件から五十八年間の深刻な人権侵害に対し、法務大臣はまずどのように受け止めておられるか、お伺いをしたいと思います。

鈴木国務大臣 今御指摘の事件、袴田さんが被告人として起訴された強盗殺人等の事案であります。昭和五十五年十二月に死刑判決が確定をいたしましたが、令和五年三月二十日、再審開始決定が確定し、本年九月の二十六日に再審無罪判決が言い渡され、本年の十月九日に無罪判決が確定をしたものと承知をしております。

 大変申し訳ありませんが、個別の事件における裁判所の判断に関する事柄について法務大臣として所感を述べるということについては差し控えさせていただきたいと思いますが、その上で申し上げれば、検察当局においては、組織の見解として、袴田さんに対し、相当の長期間にわたり法的地位が不安定な状況となり、その間、とても言葉にはできないようなつらいお心持ちで日々を過ごされたことにつき、刑事司法の一翼を担う検察として大変申し訳なく思う旨謝罪をするとともに、今回の事件について、袴田さんを犯人と申し上げるつもりはなく、犯人視することもない旨を申し上げたものと承知をしております。

 私といたしましては、袴田さんが結果として相当の長期間にわたりその法的地位が不安定な状況に置かれてしまうこととなったことについて、申し訳なく思っているところでございます。

本村委員 今大臣がおっしゃられたのは、検事総長の談話と重なる部分がありますけれども、それについては後で申し上げたいというふうに思います。

 もしも、袴田巌さんや姉の秀子さんが、警察、検察、裁判所が自分の声を聞いてくれないという中で、無実であることを訴えることを諦めてしまっていたら、無実の袴田さんを死刑にする危険性がありました。生きていて無実を訴えてくださって、無実を訴え続けてくださって本当によかったというふうに心から思っております。

 無実の袴田さんを死刑にする危険性があったということに関し、どのように受け止めておられるか、その点も伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 まず、個別の刑の執行の判断に関わる事柄について、法務大臣として所感ということを申し述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、今御指摘の死刑ということでありますけれども、人の生命を絶つ極めて重大な刑罰であります。そうした中で、袴田さん、結果として相当の長期間にわたりその法的地位が不安定な状況に置かれてしまったということ、この点、誠に申し訳ないというふうに思っているということでございます。

本村委員 袴田さんが無罪になったということで、人権の回復や名誉の回復はまだできていないというふうに思っております。警察、検察、裁判官、そして政府、そして国会、この放置してきた問題が問われているというふうに思っております。

 死刑が執行されていたら本当に取り返しのつかないことになっておりました。死刑というのは、そうした冤罪に関しても大変大きな問題があるというふうに思っております。

 この重要な証拠が、事件から四十四年後、四十七年後、四十八年後、四十九年後に重要な証拠が次々と出てまいりました。警察、検察、長期にわたって重要な証拠を隠していたというふうに言わざるを得ません。

 資料の六ページを見ていただきたいんですけれども、袴田さんの冤罪事件の第二次再審請求審からの経過を笹森学弁護士がまとめてくださった資料です。

 事件は一九六六年に起きたわけですけれども、多くの証拠が開示されたのは第二次再審請求審からでした。

 二〇〇八年四月二十五日、静岡地裁に袴田さん事件の第二次再審請求が行われました。そして二〇〇九年の三月二日、秀子さんが保佐人に選任をされ、第二次再審請求の請求人要件が整って、二〇一〇年五月二十八日、第一回の三者協議の際に、やっと裁判所が、できるだけ証拠開示をということを勧告いたしました。そして二〇一〇年九月十三日、三者協議で、検察側は弁護側が求めていた証拠の一部を開示いたしました、二十八点。

 そして二〇一三年七月五日、静岡地裁は、静岡地検に証拠を開示するよう、また勧告をいたしました。そして二〇一三年七月二十六日、静岡地方検察庁は百三十点の証拠を開示いたしました。そして二〇一三年九月十三日、静岡地裁は、五点の衣類について証拠の開示を地検に勧告をいたしました。しかし、このとき静岡地検は、存在しないと開示を拒否いたしました。

 二〇一四年三月二十七日、静岡地裁、再審開始と死刑及び拘置の執行停止決定が、二〇一四年になってやっと再審開始の決定が行われました。そして二〇一四年三月二十八日、東京高裁は、拘置の執行停止の取消しの検察官の抗告を棄却いたしました。二〇一四年九月十日、東京高検が、静岡地裁での再審請求審で存在しないとしていた五点の衣類が、やっとこの証拠が、発見直後のカラー写真のネガの約九十三枚が開示をされた。

 その後、二〇一五年一月三十日、東京高検、昨年静岡県警で見つかったとされる袴田巌さんの取調べ録音テープ、オープンリール二十三巻、書証二十八点を開示いたしました。開示された証拠は、地裁分百三十プラスアルファということで、含めて六百点に及んでおります。

 このように、事件から四十四年後、四十七年後、四十八年後、四十九年後に次々と重要な証拠が出てまいりましたけれども、証拠開示になぜこれほどまでに時間がかかったと考えているのか、これは法務大臣にお願いしたいと思います。

鈴木国務大臣 今お尋ねの点、個別事件における検察当局の訴訟活動の内容に関わる事柄ということで、また、法務大臣として所見を述べるということについては差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、あくまで一般論ということで申し上げますけれども、再審請求審、これは通常の公判手続とは異なっておって、検察官が犯罪事実の立証責任を負うものではない上に、当事者主義に基づく手続ではなく、裁判所が職権により事実の取調べをするものであるために、一般的な証拠開示のルール、これは適用されないものと承知をしております。また、再審請求審においては、請求人側から提出をされた証拠が、確定判決が明らかに誤りであることを認めるべき新たな証拠に当たるかなどの再審開始事由の存否が判断の対象となるということでございます。

 それを前提に、検察当局は、証拠開示の判断に当たっては、裁判所が再審開始事由の存否を判断するために必要と認められるか否か、そして、請求人側から開示を求める特定の証拠につき必要性と関連性が十分に主張されたか否か、そして、開示した場合における関係者の名誉やプライバシーの保護、あるいは、将来のものということも含むことになりますけれども、今後の捜査、公判に対する影響等を勘案しつつ、裁判所の意向等も踏まえ、誠実かつ適切に対応するものと承知をしております。

 今回、再審請求手続が長期間に及んだということ、今、最高検において所要の検証を進めているところと承知をしておりますので、検察当局による本判決に対する対応、これは法務大臣としても見守っていきたいと思っております。

本村委員 今の再審法では、やはり人権侵害を引き起こすことは明らかです。最高検の中で検証するとおっしゃっておりますけれども、その検察庁が信用ならないというわけでございます。

 それが、資料の一、二を見ていただきたいんですけれども、袴田さんの無罪判決後、十月八日、検事総長が控訴しない旨の談話を出しました。まず、こうした談話は異例だと思いますけれども、見解を伺います。また、この談話は検事総長個人で出したものなのか、組織的に出したものなのか、確認をさせていただきたいと思います。

森本政府参考人 お尋ねの検事総長談話について、一般に確立した定義や様式があるものではございませんが、過去にも検事総長による談話は、出された例はあるというふうに承知しております。

 また、本件の検事総長談話の内容は、検察当局において組織的に決定した内容ということでございます。

本村委員 この総長談話は組織的に作られたものなのだと。組織として異常な人権侵害の談話を出したと私は考えております。

 この十月八日の検事総長談話のところを見ていただきますと、二つ目の資料になるというふうに思いますけれども、二つ目の資料の「控訴の要否」の部分ですね。「本判決は、その理由中に多くの問題を含む到底承服できないものであり、控訴して上級審の判断を仰ぐべき内容であると思われます。」というふうに書かれています。

 これは、無罪と判決をされた袴田さんを犯人視するものであり、深刻な人権侵害と考えますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 検察当局が談話を発表したこと、その内容等の本判決への対応に関する事柄については、個別事件における検察当局の活動に関わるものでありますので、法務大臣としてということでは、所見を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上でということになりますけれども、検察当局におきましては、今回の談話は、不控訴という判断を行った理由そして過程を説明するために発表したものでありまして、そのために必要な範囲で判決内容の一部に言及をしたものであると承知をしております。

 そして、検察当局においては、この総長談話発表当初から、無罪判決を受け入れ、これを確定させる以上、今後、袴田さんが本件の犯人であるなどと申し上げるつもりはなく、犯人視することもない旨を対外的に述べていると私としては承知をしております。

本村委員 資料の一を見ていただきたいんですけれども、検事総長の談話に対する弁護団の声明がございます。

 その中に、「検事総長の談話の要旨は、」「これは控訴はやめておくが、巖さんを冤罪と考えてはいないということであり、到底許し難いものである。」というふうに書かれております。また、その下の方ですけれども、「要するに、検事総長がいまでも袴田さんを犯人と考えていると公言したに等しい。これは、法の番人たるべき検察庁の最高責任者である検事総長が、無罪判決を受けた巖さんを犯人視することであり、名誉毀損にもなりかねない由々しき問題と言わなければならない。」というふうに指摘しております。

 このほかにも、検事総長の談話の中で、「しかしながら、再審請求審における司法判断が区々になったことなどにより、袴田さんが、結果として相当な長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致し、熟慮を重ねた結果、本判決につき検察が控訴し、その状況が継続することは相当ではないとの判断に至りました。」という言葉がありますけれども、これも上から目線だと私は感じました。

 深刻な人権侵害を引き起こしたという反省の言葉がないのではないですか、この談話には。大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 繰り返しになりますけれども、検事当局が談話を発表したこと、そして、その内容等の本判決への対応に関する事柄については、個別事件における検察当局の活動に関わるものでありますので、法務大臣としてその所見を申し述べることについては差し控えさせていただきたいと思っております。

 その上で、検察当局で、この総長談話発表当初から、先ほど申し上げましたように、無罪判決を受け入れ、これを確定させる以上、今後、袴田さんが本件の犯人であるなどと申し上げることはない旨、対外的に申し述べておりまして、そして、本年十一月二十七日には静岡地方検察庁検事正が袴田さんの御自宅に訪問をいたしまして、袴田さんに対して直接、相当の長期間にわたり法的地位が不安定な状況となり、その間、とても言葉にはできないようなつらいお心持ちで日々を過ごされたことにつき、刑事司法の一翼を担う検察として大変申し訳なく思う旨を謝罪をしているところでございます。そして、今回の事件について、袴田さんを犯人と申し上げるつもりはなく、犯人視することもない旨申し上げたと承知をしております。

 今回、上から目線ではないかというお話でございますけれども、こういった形で対応させていただいているということを申し述べさせていただきたいと思います。

本村委員 袴田さんの弁護をされてきた弁護団の皆さんが、これは無罪判決を受けた巌さんを犯人視することであり、名誉毀損にもなりかねないゆゆしき問題だ、到底許し難いというふうに言われております。これは、そう受け止める側が悪いのでしょうか。談話を発した側が問題があるんじゃないですか。

森本政府参考人 事実関係について補足して説明させていただきます。

 まず、検事総長談話が発表されました。その後、弁護団の御指摘をいただいて、その後に、大臣からも言及がありました、静岡地検の検事正は、袴田巌さん、それから秀子さんのところに謝罪に赴いて、その席で、もし誤解があるといけませんので、決して犯人視するものではありませんということを申し述べた、そういう経緯であったというふうに承知しております。

本村委員 では、この検事総長の談話は人権侵害であるということをお認めになるということですね。

森本政府参考人 検事総長の談話につきましては、先ほど大臣からも言及がありましたが、不控訴に至る判断、それから過程を説明する中で、判決理由の一部について言及したものであるというふうに承知しております。

 談話の当時から、犯人視するつもりはない、そういうことを申し上げるつもりはないということは、談話を発表した当初から検察当局としての考えに変わりはございません。

本村委員 でも、これはホームページにずっと載っているわけですよ。名誉毀損にもなりかねないゆゆしき問題だと言われているのに、ホームページに載り続けているわけですよ。それ自体が、私は人権侵害だというふうに思っております。

 この検事総長の談話は深刻な人権侵害であり、これ自体を謝罪し、そして撤回するべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 重ねてになりますが、検察当局が談話を発表したということ、そして内容、これは本判決への対応に関する事柄ということであります。個別事件における検察活動、検察当局の活動に関わるものということで、法務大臣としてそのことについてということで申し上げることはなかなか困難だということは御理解をいただきたいと思います。

 今当局からも申し上げましたけれども、今回、この談話については、不控訴という判断を行った理由や過程を説明するために発表したもので、そのために判決内容の一部に言及をした、必要な範囲でということでございますので、その点、御理解をいただきたいと思います。

本村委員 この談話に関しましては、弁護団の皆さんが、反省がないじゃないかということを指摘をしているわけでございます。その反省のない検察庁がこの袴田さんの事件を検証するというのは、期待できるわけがないということも指摘をされているわけです。

 この弁護団の皆さんの声明の中では、巌さんに対する非人道的な取調べや五点の衣類の捏造について反省すらないもので、何ら謝罪になっていない、そして、違法な取調べが行われ、五点の衣類等の捏造がされたこと、さらには、死刑再審事件でありながら、重要な証拠が隠されていたこと等を深刻に受け止めなければならない、その上で、こうした重要な冤罪を生み出してしまい、その誤りを改めることに五十八年もの年月を要した原因を明らかにし、二度と繰り返さないようにするため、捜査、公判手続全般にわたって厳正かつ真摯な検証を行うべきというふうに書かれております。

 そこでお伺いしますけれども、この袴田さんの事件、五十八年間をやはり第三者が検証するべきだというふうに思います。もう一つ、袴田さんの第一次再審請求審、これは二十七年間かかっています。証拠開示も一切認められませんでした。この第一次再審請求審の審理状況の第三者の検証、このことも求めたいというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

鈴木国務大臣 先ほど別の質疑の間でも申し上げましたけれども、御指摘の今の事案、五十八年がかかっているということ、今、最高検察庁におきまして、再審手続がこれほど長期間に及んだことなどについて所要の検証を進めております。

 第三者機関でやるべきではないのかという、そういった御指摘でありますけれども、刑事事件の手続、これは、裁判所の訴訟指揮の下で、裁判所を含む訴訟関係者により遂行されるものでありますので、いわゆる第三者機関を設置をして検証を行うということになりますと、まさにこれは司法権の独立ということで、三権分立の話も含めて、問題が生じ得るというところであります。

 また、検察は、一連の本件の刑事手続を訴訟関係者の一員として遂行してきたということもありますので、その経緯や事実関係を把握している検察というのがやはり検証の主体としては適切だというふうに考えております。

本村委員 私は、検察が検証することでは駄目だというふうに申し上げたいと思います。

 法律時報の六十一巻八号には、以前の死刑確定判決で、再審で無罪となった免田、財田川、松山事件に関して検討報告というものが出されているということが書かれております。当時の検察は、再審請求審で証拠を提出することを絞るということを考えていたということが書かれております。検察に任せていたら、証拠を開示することを絞るという思考になっていくわけです。いかに犯人にしていくかというところに焦点が当たっていくということにもなりかねません。ですから、やはり検察ではなく、第三者が検証するべきだというふうに考えます。

 もう一度、大臣、これは刑事局とか検察とか、そういうところに聞いていては、やはりそういうふうにはならないと思うんです。政治主導で是非第三者の検証を行っていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、やはりこの司法権の独立というところに関わってくる話になります。そういった中で、やはり、第三者ということはなかなかそういった意味からも問題が生じることにもなろうかと思いますし、同時に、先ほど申し上げましたけれども、検察が今回、この一連の刑事手続を訴訟関係者の一員として遂行しておりますので、その経緯、事実関係を把握をしております。そういった意味で、この検証の主体、そういった意味合いもあろうと思います。

 同時に、この検証は、基本的に客観的な事実関係を前提としたものとなります。そういったことにおいて、検察当局において検証を行うことがその適正さに疑いを生じさせるということにはならないと考えられております。そしてまた、関係者の名誉、プライバシーということを考えても、なかなか第三者機関でということは難しいと考えております。

本村委員 やはり、検察が検証するのでは駄目だということ、そして、真摯な検証を行って、その上で再審法の改正を行うべきだと。証拠の全面開示ですとか、検察官の抗告権はなくすという方向で是非法改正をしていただきたいということを強く求め、これ以上、人権侵害を起こさせないために法改正を是非お願いしたいということを申し上げ、質問を終わらせていただきます。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。どうぞよろしくお願いいたします。

 参政党は、さきの衆院選でも、選択的夫婦別姓について公約で明確に反対の立場を示してまいりました。私個人も、子を持つ母親として、選択的夫婦別姓については反対です。

 我が党が選択的夫婦別姓に対して有する三つの懸念点の一つ目は、少子化の加速に対する懸念です。夫婦や親族間で姓をめぐる対立が生じ、結婚や出産を敬遠する若者が増えることが否定できません。このような動向は出生率に悪影響を与え、国の少子化対策に逆行する潜在的な危機を招く可能性があります。

 二つ目は、家族の一体感の喪失です。家族で姓が分かれることで、家族のまとまりやきずなを弱め、特に親子別姓の場合は混乱や違和感が生じ、社会的、心理的影響を否定できません。この親子別姓は子供のアイデンティティー形成にも影響を与える懸念があります。さらに、我が国の伝統的な戸籍制度にも混乱をもたらす懸念があります。

 三つ目は、伝統文化と社会基盤の破壊についての深い懸念です。選択的夫婦別姓の背景には、マルクス主義を源流とする批判的人種理論や、それに基づく過激なジェンダー運動の影響があることがしばしば指摘されます。実際、元FBI捜査官クレオン・スカウセン氏は、裸の共産主義者という書籍の中で、文化破壊の戦略として家族制度が標的にされていると警告しています。このような動きは日本社会においても深刻な分断と混乱を引き起こす可能性があり、私たち参政党はこれに強い懸念を抱いています。

 本日は、実は選択的夫婦別姓について多くの国民が望んでいないのではという視点で伺っていきたいと思います。

 まず、こちらのパネルです。

 本年五月のNHKの世論調査では、選択的夫婦別姓に賛成が六二%、反対が二七%と報じられています。本年七月の朝日新聞の調査でも賛成が七三%とされ、賛成が多数派の意見として扱われております。また、今回の予算委員会においても賛成が多数であるかのように扱われておりました。

 しかし、これらの調査はいずれも賛成か反対かの二択で実施をされています。

 次のパネルを御覧ください。

 一方、産経新聞が本年七月と九月に実施した調査、七月では二択、九月では同姓維持かつ旧姓通称使用を加えた三択で行われました。その結果、九月の調査では、同姓を維持するという回答が多数を占めています。

 このように、選択肢の設定が結果に大きな影響を与えることが明らかです。

 では、こちらになります。令和三年の十二月、内閣府の世論調査の結果を御覧ください。

 ここでは三択で質問がされております。現在の夫婦同姓を維持した方がよいが二七%、現在の夫婦同姓を維持しつつ旧姓使用についての法制度を設けた方がよいは四二・二%、選択的夫婦別姓を導入した方がよいというのが二八・九%となっております。このデータを基にグラフを御覧いただきますと、同姓を維持すると回答した人は六九・二%。つまり、約七割の回答者が現状の夫婦同姓の維持を望んでいることが分かります。

 ここで伺います。

 このマスコミが行う二択形式の世論調査と内閣府が実施する三択形式の質問では、選択的夫婦別姓に対する国民の意見が大きく異なる結果が示されております。この相違について、政府はどう受け止めていらっしゃるのでしょうか。政府はどちらの結果を国民の真意と捉えているのか、大臣、お答えいただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 今、吉川委員がおっしゃいましたように、いろいろな調査が実際あります。内閣府の調査も、過去何回も行われていて、今回、コロナもあって郵送にしたものですから、分かりやすくするということで若干その内容も変わったりとか、いろいろなことがありました。

 そういった中で、やはり、どれか一つを取って、これが国民の意見だというのは、なかなかそれはそういうものではないんだろうと思っています。それぞれ、マスコミの調査であったり、あるいはこの内閣府の調査であったり、それぞれにおいて、そのときの数字が出ていると思いますけれども、それにしてもやはり、先ほどほかの質疑でもありましたが、例えば通称法の法制化とか、そういったことも、それが具体的に何を意味しているのか、あるいは選択的夫婦別氏というものが何を意味しているのか、そういったことの理解もまちまちというところも恐らくあるんだろうと思います。

 そういった中で、やはり、こういった調査をそれぞれ、我々としても、国民の意見として受け止めながら、やはり、きちんとした理解をきちんと深めていただく。そうやって国民の皆さんの間で、あるいはこの国会の中できちんとした議論を、同じ議論の土俵でやはりやっていかないと、これはなかなかしっかりとした結論になりませんから、そういったことを我々としては、情報提供しながら、注目をしていきたいと思っているところであります。

吉川(里)委員 大臣、ありがとうございます。

 このように、二択か三択かといった質問の仕方によっては全く逆の結果が示されることがございます。三択の結果では国民の多くは別姓制度を望んでいないのですが、マスコミの世論調査が多く採用する二択形式では賛成が多数だと報じられておりますが、三択における反対の結果は、この結果が国民に広く行き届いていないということが私はうかがえると考えております。

 大臣所信において、夫婦の氏の在り方について、多様な在り方を踏まえ、情報提供を行っていくと述べられておりましたが、こういった三択のときには賛成と反対の意見が逆転するという、こういった状況を、どのように国民の皆様に情報提供を行っていくのか、大臣、お聞かせいただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 今おっしゃいました話で、それぞれの世論調査の正確な中身を伝えるというよりは、やはり、どういった制度というものがあり得て、そして、どういった問題、課題があって、どういった影響がいろいろ出る可能性があるのか。あるいは、恐らく、それぞれの選択肢においても、例えば子の氏をどうするかとか、これは別氏ということの中でもいろいろな議論が分かれております。恐らく、通称使用ということでも様々な考え方の相違もあろうと思います。

 まさにそこで、先ほど私申し上げましたけれども、意見はそれはいろいろ相違があるんだと思いますけれども、やはり同じ理解というのは必要だと思いますし、何がこの論点で何が選択肢なのか、どうするのがいいのか、そういったところを深めていくことが一番大事ではないかと思っております。

 そういった意味で、この調査の内容ということではなくて、やはり、今何が論点となり得るのかということを中心にしっかりと情報提供していきたい、そういった趣旨でございます。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 ちなみに、夫婦の同姓制度を維持しつつ旧姓の通称使用について法制度を設けた方がよいと回答された方が、この結果では多数いらっしゃいました。

 先ほどの大臣のお話でも、情報提供を行っていくということでありましたが、現行の制度において、旧姓使用についての具体的内容を国民の皆様がなかなか知らない方も多いという現状がありまして、そちらについて教えていただけますでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 政府におきましては、これまで、婚姻によって旧姓を使えないことによる不便、不利益を軽減するという観点から、旧姓の通称使用の拡大に向けた取組を進めてきたところと承知をしております。

 その結果、住民票、マイナンバーカード、運転免許証等において、戸籍名に加え、旧姓併記が可能となっているものと承知をしております。また、法務省所管の制度におきましても、例えば、商業・法人登記においては役員等について、不動産登記においては不動産の所有権の登記名義人について、いずれも旧姓併記が可能となっているところであります。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 こちらのパネルを御覧ください。

 夫婦の名字が違うことによる夫婦間の子供への影響の有無について、令和三年十二月の内閣府の調査結果によれば、全世代を通じて国民の六九%が、夫婦の異なる姓が子供に好ましくない影響を与えると考え、親子同姓を望んでいます。

 しかし、選択的夫婦別姓制度は、姓を選択できるのは夫婦だけであり、子供には選択の自由が奪われるという、必然的親子別姓という構造的な課題が生じます。

 こちらのパネルのデータを踏まえて、大臣はこれをどうお捉えになられているか、お聞かせください。

鈴木国務大臣 御指摘のとおり、この令和三年の内閣府の世論調査では、夫婦の名字、姓が違うことによる夫婦の間の子供への影響の有無については、子供にとって好ましくない影響があると思うと回答した方の割合が六九・〇%であったと承知をしております。

 その一方で、夫婦、親子の名字、姓が違うことによる夫婦を中心とする家族の一体感、きずなへの影響の有無については、きずなには影響がないと思うと回答した方の割合が六一・六%であったと承知をしております。

 まさに、子供の氏、それをどう、例えば婚姻時に定めるとするのか、あるいは、生まれた、出生時にそれぞれが決めるのか等々、いろいろそれは、別氏ということをおっしゃる方の中でもいろいろな意見があると承知をしております。まさにそういった、具体的な制度がどうなるかでかなりこれは変わってくることでもあろうと思いますし、恐らくそれは戸籍等への影響ということも同様であろうと思います。

 まさにそういった議論を深めていただく中で、より議論というものが国民の皆様方の間でしっかりと共有をされることで、恐らく、建設的な様々な議論、更に深まっていくことになると思いますので、我々としては、また繰り返しになりますけれども、そういった形の情報提供をさせていただいて、国民の皆様方の間で、そしてこの国会の間できちんとした議論が行われていくことを我々としては注目をしていきたいと思っております。

吉川(里)委員 ありがとうございます。

 こちらのデータの、子供にとって好ましくない影響があると思うとお答えになった方に対して、具体的に、友達から親と姓が異なることを指摘されて、嫌な思いをするなどして、対人関係で心理的負担が生じるとお答えになった方が七八・六%いらっしゃったり、姓の異なる親との関係で違和感や不安を覚えると答えた方が六〇・一%いらっしゃったりと、これは複数回答可能な選択なんですけれども、こういった結果もございます。こういった結果を鑑みますと、夫婦の選択のみならず、家族や子供の視点からの議論が非常に大切であると私は考えております。

 児童の権利条約では、第三条に、児童の最善の利益が考慮されるとされており、別姓を選択した夫婦の子には親子別姓を強制する選択的夫婦別姓はこの条約に違反すると考えております。

 こちらの会議室の中においても、賛成派の方が非常に多くを占めている現状であります。ですが、賛成か反対かの二択の質問の場合であると賛成という答えが多く出ておりますが、三択の質問の場合は多くの国民は望んでいないという結果も出ている、これが現状だと思います。

 日本だけが同姓の制度だとよく報じられていますが、多様性を重視する時代でございます。日本のこのファミリーネームという、同姓制度というものは、世界に例を見ない唯一の制度である、この日本の文化や伝統を守りながら、時代の適応に応じたこの通称制度の法制度をしっかりとつくっていくということも大切であると我々参政党は考えております。また、現行の制度で、結婚時に夫の姓を選択しなければならないというような意見も多数見受けられますが、機会としては均等に与えられており、女子差別ではないと私たちは考えております。

 そして、経団連の方の御意見であったりとか、国連の意見であったりとか、様々な御意見があるかと思いますが、我々参政党は、日本は日本だ、日本人らしさをしっかりと保っていきたいと考えております政党でございますので、そして、先ほどの質問の中にもありましたように、情報提供が大事だと思うんですね。なので、テレビやマスコミでは二択の答えばかりが出ておりますので、これは法務省には関係ございませんが、マスメディアはやはり三択の答えも出していく必要、三択においては、同姓制度を維持するべきである、そういう情報も出ておりますので、それも国民の真意として捉えていただき、これから先しっかりと、賛成、反対、議論が建設的に行われていくことを切に願いまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、島田洋一さん。

島田(洋)委員 日本保守党の島田です。

 まず、難民認定制度の現状について伺います。

 大臣も所信の中で、不法滞在者等退去強制すべき者を早期に送還するのが重要だと強調しておられたわけですけれども、来年一月二十日からアメリカではトランプ政権が復活をして、不法滞在者、不法越境者に対する取締り、本国送還を格段に強化するということを宣言しておるわけですね。また、ヨーロッパにおいても、イタリアのメローニ首相等を中心に、やはり不法越境者に対する取締り、送還を強化すると。その中で、日本だけが甘い態度を取っていると、発展途上国からどっと就労目的、出稼ぎ目的の方が難民申請して押し寄せてくるということにもなりかねない。

 では、一般論として、かつては先進国が、文明というのを旗印に、文明を広げるんだというので発展途上国をどんどん植民地化していった。現在は、これは方向が逆転して、人権、人権擁護というのを旗印に、途上国の側から先進国を植民地化しようという動きが強まっている。これはますます強まると予想されますから、やはり、国境管理、不法滞在者の本国送還等、しっかり対処していかないといけないと思っております。

 それで、これは法務省の方からいただいた……

西村委員長 島田さん、理事会で協議していない資料の掲示については控えてくださるようにお願いします。

島田(洋)委員 そうですか。失礼しました。分かりました。

 法務省の資料、いただいたやつとか、それから、ごく最近も、産経新聞の特別取材班が、トルコの、クルド人の方々の集住する村を十日間にわたって取材して、現在川口市等でクルドの方々が就労目的で入っているんだけれども、難民申請して、要するに滞在期間を延ばしてお金を稼ぐという実態が報告されているわけです。そこで、日本で難民申請して認められずにトルコに帰った方が、難民申請したというかどで本国で迫害されたというような例は法務省においては把握をされていないと聞くんですけれども、そういう認識でよろしいんでしょうか。

杉山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のような事例は、法務省としては把握してございません。

島田(洋)委員 本国でパスポートを発行されて、普通に航空券を買えて、そして空港のチェックを何の問題なく通り抜けて旅行者として日本に来ている、もうこの時点で難民じゃないと言ってもいいと思うんですけれども。

 そこで、昨年の八月四日、当時の齋藤健法務大臣が、強制送還の対象になった、要するに難民として認められなかった、そういう在留資格を持たない外国人の子供に対して、そのまま、かわいそうだから日本に特別在留許可を出す、子供だけ置いて親は帰れというわけにはいかないので親もいていい、こういう決定を下した。これは鈴木法務大臣は、大変間違った決定だというふうに考えておられると聞くんですけれども、いわゆる一般の帰国子女と言われる人たち、親の都合で海外で生まれ育って都合で日本に帰ってくる、こういう人たち、これは人権侵害の被害者じゃないですよね。あるいは、その慣れ親しんだ環境とか友達と別れないといけない、気の毒だけれども、これは日本における転校生一般にも言えることであって、したがって、特段の人権侵害の被害者として難民同様の扱いをして保護しないといけないという理屈は成り立たないと思うんですけれども。

 鈴木大臣としては、齋藤健法務大臣が行ったような、まあ、齋藤さんは一回限りとか言っていましたけれども、この特別在留許可をそういう難民認定されなかった子弟、家族に与える、これは考えておられないと理解していいんでしょうか。

鈴木国務大臣 令和五年の入管法の改正、改正入管法によりまして、保護すべき者は適切に保護をする、その一方で、送還すべき者はより迅速に送還をするということが可能になりました。そのことを受けまして、今後、在留資格がないまま在留が長期化する子供の増加、それは抑制、抑止をすることが可能になったと我々は考えています。

 その意味で、お尋ねの齋藤元法務大臣が示した方針については、本邦で出生し、既に在留が長期化している子供に対し旧法下で迅速な送還を実現することができなかったことを考慮して、一回限り、今回に限りということで、家族一体として在留許可を、特別許可をする方針で検討するというものでありましたので、今後、繰り返し行うことはございません。

島田(洋)委員 次に、北朝鮮による拉致問題に関して伺いたいんですけれども、大臣の所信の中でも、非常に重要な問題としてしっかり取り組んでいくという言葉がありました。それで、石破首相に対して北朝鮮内部の情報とか拉致問題に関する最新の動きを適時的確に伝えていくということが大事でしょうし、かつ、日朝首脳会談が行われるということになった場合、一体その首脳会談の場に誰が日本側から出るのかというのが、非常に重要な問題になってきます。

 小泉純一郎首相の第一次訪朝のとき以来、パターンになっているのは、首相はもちろんいます、それから政務の官房副長官の一人、それから外務省のアジア大洋州局長、通訳と、このセットで北朝鮮側に対峙するというのがパターンなんですが、今、官房副長官、政務の二人、橘慶一郎議員と青木一彦議員。

 いずれも、それぞれの得意分野を多分持っておられるんでしょう、そっちでは活躍されるかもしれませんが、お二人とも、北朝鮮問題、拉致問題で何らかの見識を示されたというのは聞いたことがない。したがって、はっきり言うと、余り戦力にならないと思えるわけですね。小泉さんの場合には安倍さんが官房副長官としてついていったので、我々も安心して見ていたんですけれども。

 そこで、例えば、拉致被害者の家族会の非常に信頼が厚くて、北朝鮮の内部情報にも精通していて、朝鮮語も完璧にできる、私の同僚だったら、西岡力救う会会長というのがいますけれども、彼のようなレベルの人を首相の拉致担当補佐官に就けて、首脳会談の場にも同席させるということがもしできれば、北朝鮮側も、よく分かっている人間がいるな、我々のひそひそ話も聞き取って理解するのがいるなとなれば、安易な欺瞞工作もできなくなるということで、私は、例えば西岡氏レベルの人間を補佐官にと主張しているんですが、この拉致問題、内閣全体の最重要課題と位置づけられていて、大臣も内閣の一員ですから、同じような、そういうレベルの補佐官を就けろというのを石破さんに進言していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 私も、拉致議連は役員もしておりましたし、北朝鮮、この拉致問題始め核、ミサイルも含めて、これは日本のまさに主権、安全保障に関わる問題と思っておりますし、この内閣においても最重要課題であります。

 ただ、その一方で、首脳会談とか、その同席者とか、そういったことを法務大臣が、私がこの場で言うと大変なことになりますので、そこはコメントを差し控えさせていただきたいと思いますけれども、北朝鮮ということで申し上げれば、私どもとしては、重大な関心を持って、公安調査庁を中心として、関係の関連情報の収集に努めているところであります。

 まさに、北朝鮮、先ほど答弁でも申し上げましたけれども、中国やロシアと並んで、やはり日本にとっても大きな脅威でありますので、拉致被害者の方々の帰国に向けて、石破総理中心に内閣を挙げて取り組んでいきたいと思っております。

島田(洋)委員 選択的夫婦別氏制度の問題ですけれども、たしか平成八年の法制審議会の答申では、結婚の際にあらかじめ子が名のるべき氏を決めておく、夫婦の間で、そして子供は全員同じ氏を名のる、これが法制審議会の答申だったと思うんですけれども、仮にこの答申どおりの法案が出てきた場合、旧姓の通称使用をばっちり法制化するということと、一体どの辺が更に違うのかという疑問を持つ人が多いと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 法制審でのその案というのは、今先生御指摘のとおりであります。

 一方で、この旧姓の通称使用というところでいうと、恐らく言っている方それぞれで違うことをイメージされていることも多いんだろうと思います。

 そういった中で、政府においては、これまで、婚姻によって旧姓を使えないことによる不便、不利益を軽減する観点から、旧姓の通称使用の拡大に向けた取組、これまでも進めてまいりました。

 もちろん、まだ拡大できるところは当然あろうと思いますけれども、旧姓の通称使用の拡大によって社会生活上の不利益が全て解消されるわけではないという指摘があるのもまた事実であります。

 今日もいろいろ、この委員会でも様々な議論、それぞれの視点からございましたけれども、今先生御指摘の通称使用のことも含めて、更にいろいろな情報提供を通じて議論が深まることを我々としては期待をしていきたいと思います。

島田(洋)委員 最後に、前回の質疑でも取り上げたんですけれども、昨年、最高裁が性同一性障害特例法の生殖機能を失わせるという部分が憲法違反だという判決を下して、私はこれは非常に問題だと思っています。

 繰り返しにならないように簡単に言いますけれども、いわゆるトランスジェンダーと言われる方々の中に、例えば男性で、自分が男性の体であることが耐えられない。したがって、男性外性器を切除する手術を受けたり、できるだけ女性の外観、体に近づけたり、こういう方が女性専用スペースに入っていったとしても、既に手術も受けているし、特に女性の身に危険が及ぶということはないと思いますが、いわゆるオートガイネフィリアと言われる自己女性化性愛症、つまり、自分が女性の格好をする、女性の下着をはいたり化粧をしたり、できるだけ体も女性的にすることに性的快感を覚えるんだけれども、性的対象は女性、性的快感を得る手段も男性外性器である、だから手術をかたくなに拒む、こういうタイプの方がトランスジェンダーと称して女性専用スペースに入っていくというのは、これは極めて危険な事態を生みかねないわけで、したがって、私は、最高裁の判決は、全く世間を知らない、おかしいものだと思っています。

 やはり、そういう性器の切除等が、性別、仮に変更を認めるとしても、これは絶対条件でなければ女性を保護できないと思いますが、個別の判例の評価は別にして、この点、大臣の見解を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 当然のことながら、女性の安全、これは極めて大事なことであります。

 女性専用スペースの問題等も含めて、各施設の利用に関してということであれば、それはそれぞれ民間のところでございますし、各施設の管理者の判断に委ねることでありますので、法務大臣としてということでコメントは差し控えたいと思います。

 その上で、法務省として申し上げるとすれば、性同一性障害特例法を所管をしております。その特例法の定める要件、手続によって性別変更が認められた場合に、変更後の性別とみなされるということになります。

 他方で、このような性別変更が認められない限り、本人がトランスジェンダーと称しているのみで性別変更を前提とした取扱いが認められるものではないというのが私どもの認識でございます。

島田(洋)委員 では、もう時間が来ましたので、これで終わります。

西村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十三分散会


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