衆議院

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第15号 令和7年5月16日(金曜日)

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令和七年五月十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 西村智奈美君

   理事 小泉 龍司君 理事 津島  淳君

   理事 中野 英幸君 理事 鎌田さゆり君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 米山 隆一君

   理事 金村 龍那君 理事 円 より子君

      井出 庸生君    稲田 朋美君

      上田 英俊君    金子 容三君

      上川 陽子君    神田 潤一君

      草間  剛君    寺田  稔君

      平沢 勝栄君    森  英介君

      山田 賢司君    若山 慎司君

      有田 芳生君    篠田奈保子君

      柴田 勝之君    寺田  学君

      平岡 秀夫君    藤原 規眞君

      松下 玲子君    萩原  佳君

      藤田 文武君    小竹  凱君

      大森江里子君    平林  晃君

      本村 伸子君    吉川 里奈君

      島田 洋一君

    …………………………………

   法務大臣         鈴木 馨祐君

   法務大臣政務官      神田 潤一君

   最高裁判所事務総局刑事局長            平城 文啓君

   最高裁判所事務総局行政局長            福田千恵子君

   政府参考人

   (警察庁刑事局組織犯罪対策部長)         江口 有隣君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           笠置 隆範君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 堤  良行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          松井 信憲君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    竹内  努君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    森本  宏君

   政府参考人

   (法務省矯正局長)    小山 定明君

   政府参考人

   (法務省保護局長)    押切 久遠君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁次長) 杉山 徳明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 濱本 幸也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 柏原  裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 町田 達也君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           橋爪  淳君

   法務委員会専門員     三橋善一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  河野 太郎君     大空 幸星君

同日

 辞任         補欠選任

  大空 幸星君     河野 太郎君

同月十六日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     金子 容三君

  河野 太郎君     草間  剛君

  棚橋 泰文君     山田 賢司君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 容三君     上川 陽子君

  草間  剛君     河野 太郎君

  山田 賢司君     棚橋 泰文君

    ―――――――――――――

五月十六日

 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案(内閣提出第四三号)

 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案(内閣提出第四三号)

 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第四四号)

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件


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     ――――◇―――――

西村委員長 これより会議を開きます。

 裁判所の司法行政、法務行政及び検察行政、国内治安、人権擁護に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 各件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、警察庁刑事局組織犯罪対策部長江口有隣さん外十二名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 次に、お諮りいたします。

 本日、お手元に配付いたしておりますとおり、最高裁判所事務総局刑事局長平城文啓さん外一名から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

西村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

西村委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。稲田朋美さん。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 今日は、夫婦の氏と、それから再審法についてお伺いをしたいと思います。

 まず、夫婦の氏ですが、民法七百五十条は夫婦の同氏を、そして、七百九十条一項は夫婦の間の子は父母の氏を称することを定めています。これらの規定があることによって、夫婦と未婚の子供、すなわち家族が同氏となって、その同氏の家族単位で戸籍が作られることになっております。

 私は、社会の最小単位の家族を同一の名字で表すこと、その単位で戸籍が作られる今の制度は、家族の大切さ、一体感という意味からも価値のある制度だと思っております。

 また、民法では、家族の間には扶養義務、相続権が強いものとして規定されています。家族間のつながりというのは他の関係よりも強固で特別なものであるという感覚は、国民の中にも広く共有されていると思います。

 家族が一つの呼称を共有してきたことは我が国に根づくものであって、ファミリーネームに価値があるというふうに考えております。別氏にしても選択だからいいじゃないか、選択肢が増えるだけという意見もありますが、別氏が選べるということは、民法から、家族の呼び名である夫婦の共通氏、つまりファミリーネームを定めなくてもよいということになります。

 民法における婚姻の規定は、多くの国民の家族観を基礎とするものでなければならず、将来にわたっても我が国の家族のつながりを支えていくものでなければならないと思っています。そのような思いから、私は、単なる夫婦別氏には反対をしています。多様な家族形態を尊重することは当然ですけれども、民法の制度は、基本的な国民の認識、家族観を前提として定めていくべきものだと思っております。

 そういった観点からしますと、婚姻制度の在り方、そして夫婦とその間の未婚の子供は同じファミリーネームを共有するという家族観を民法及び戸籍上の制度として守るべきだと思いますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

鈴木国務大臣 夫婦同氏制度、これが合憲であると判断をした平成二十七年最高裁判決ということになりますが、ここにおきましては、氏につきまして、夫婦及びその未婚の子や養親子が同一の氏を称するとすることにより、社会の構成要素である家族の呼称としての意義がある、そして、夫婦が同一の氏を称することは、家族という一つの集団を構成する一員であることを対外的に公示し、識別する機能を有しているとの判示がされていると承知をしております。

 また、現行の戸籍制度におきましては、一組の夫婦及びこれと氏を同じくする子が編製単位とされておりまして、氏は個人をいずれの戸籍に記載するかを決定するための基準となっております。

 その上で、夫婦の氏の在り方、これは家族の一体感あるいは子供への影響などの観点から、家族の間で氏が異なり得る制度に懸念を持たれている、そうした御意見等々もあると承知をしているところであります。

稲田委員 大臣がおっしゃったように、最高裁では、ファミリーネームの価値、家族の呼称としての価値を認めていて、私は、社会の最小単位である家族に統一的な呼称、ファミリーネームがないという状況は、社会に根づいている家族観には合っていないように思います。

 また、法制審案だと、結婚するときに子供の氏を決めるというんですが、健康上子供の産めない女性もいるし、高齢者の結婚が増えていることを考えると、そういうカップルへの配慮が欠けた案とも言えると思います。

 一方で、九五%の女性が名字を変えている、これは実質的に平等なのかという疑問が最高裁で争われています。個人の尊厳、つまり、一方当事者が名字を失う喪失感や不利益が、九五%という数字で明らかなように、より女性に多く生じている点をどうするのか。憲法二十四条一項の両性の合意のみで成立する婚姻の障害になっていないのか、同条二項の個人の尊厳と両性の本質的平等に反していないのかということです。

 婚姻前の氏を法律上の制度として安心して使用することができる新たな選択肢が必要だと私個人は思っておりますけれども、この点について大臣はどのようにお考えですか。

鈴木国務大臣 厚生労働省の人口動態統計によりましても、今御指摘のように、夫の氏を選択をする夫婦の割合、これは令和五年度で約九四・五%ということで、この三十年ぐらい、そういったことでは大きな変化はないという状況であります。

 そうした状況の中で、女性の側が氏を改めるということによって、仕事上あるいは日常生活上様々な不便、不利益が生じているとの御意見がある、この点についても承知をしております。こうした御意見はまさに真摯に受け止める、そうした必要があるのではないか、私どもとしてもそう考えているところであります。

 その上で、夫婦の氏の在り方につきましては、現在でも国民の間に様々な御意見があると承知をしておりまして、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方、これは各党、各議員において様々な考え方があると認識をしております。

稲田委員 今大臣がおっしゃったように、不便、不利益もあるんですけれども、最高裁で違憲判決を出した五名の裁判官は、やはり本質的平等、それから個人の尊厳というところに着目をしているということであります。

 また、通称が広く認められているのでいいという意見もあるんですけれども、通称だと、法的な呼称ではないので、通称を使うかどうか、いつ使うかは決まっていないし、自由な使い分けを許すダブルネームになるおそれがあり、悪用すれば社会は混乱します。

 また、法的なものではないので、本人確認が高度に必要な年金、クレジット、パスポートのICチップには入れません。通称だと限界があるということです。また、夫婦の氏の後に括弧書きされるだけの場合もあるし、また、いずれにしても、一旦名字を変えて通称使用の手続が必要な場合が多いです。

 さらに、通称を法律上の制度にしてはどうかという議論もあります。ただ、通称は通称であって、法律上の氏ではないので、氏と通称が併存してしまい、パスポート等、国際的な場面でかえって混乱を生じさせることにもなります。

 このように、通称だと全ての不便を解消することができず、個人の喪失感を解消することはできないという限界があると思いますが、大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 今御指摘の通称使用、これは日本独自の制度ということで、今御指摘もありましたように、国際的な様々な場面で理解されづらい、あるいはダブルネームということで不正を疑われる等々、様々な状況、これは我々も認識をしております。

 現行法の下での旧姓の通称使用の拡大、あるいは旧姓の通称使用に関する法制度の導入では、社会生活上の不利益、これが全て解決をされるのかといえば解消されるわけではないといった、そうした御指摘、特に、パスポートのお話もされましたけれども、いわゆるマシンリーダブルゾーンと言われるところにおいて、これは当然、単記ということはなかなか今の状況では難しいということもあろうかと思います。

 そういった中で、他方で、現行の制度の維持、あるいは旧姓の通称使用の法制化、これを希望される方々におかれましては、家族の一体感あるいは子供への影響などの観点から、家族の間で氏が異なり得る制度には懸念を持たれている、そうしたことも一方であるということも承知をしております。

 私どもといたしましては、今委員御指摘の観点も含めて、様々な御意見、御懸念を考慮の上、立法府、この国会におきまして建設的な議論が行われ、より広い国民の皆様方の間での理解、これが形成をされるということが重要と考えているところでございます。

稲田委員 私は、法制審案、選択的夫婦別氏か現状維持かの二者択一ではない、このように考えております。民法七百五十条の夫婦同氏、家族同氏のその規定は守りつつも、旧姓、婚姻前の氏を法的な個人の呼び名として使い続けることができる制度をつくってはどうかということをこの法務委員会でも提案をしているところでございます。

 届出を要件とするので、届出によって、戸籍や子供の氏の決定など家族に関する規律についてはファミリーネームが用いられるけれども、個人は個人としての呼び名を法律上使うことができるということでありますが、この問題についてはまたの機会にまた質問したいと思います。

 次に、再審法についてお伺いをいたします。

 現在の再審法、刑訴法四百三十五条から四百五十三条、たったの十九条。これは、大正時代にできたものを現行憲法になって不利益再審を削除したのみのものであります。その結果、現行憲法の三十一条以下のデュープロセスの保障の精神が再審手続に全く生かされていない。いわば、現行憲法下での改正が八十年近くも置き去りになったことによって、袴田事件のように、迅速な裁判を受ける権利や幸福追求権、個人の尊厳など、憲法に違反する状況を生んでしまったとも言えます。

 再審に関しては、手続規定はたったの一条、刑訴法四百四十五条、裁判所は、必要があるときは事実の取調べができるという規定のみでございます。ルールがないというのは致命的、裁判官の熱意次第、再審格差という言葉があるぐらいであります。

 また、再審開始決定に対する検察官の機械的ともいうべき抗告の繰り返しで、憲法三十七条が保障する迅速な裁判を受ける権利が侵害されていると言っても過言ではない状況にあると思います。

 証拠開示のルールのないことに関して、昨年の六月十九日の当委員会において、井出委員が再審請求審における証拠の開示について質問をされました。その際、裁判所が検察に対して行った証拠開示の勧告について、検察が法令上許されないとして拒否した事例を二つ挙げられております。

 井出委員が資料として提出した検察官の回答書には、再審請求審において、検察官に証拠開示や証拠の一覧表交付の義務はなく、裁判所がこれらを検察官に命令することは現行法上許されないと書いてありました。大阪強姦事件でも、再審請求審で裁判所は検察官に対し証拠の標目の開示命令、命令を出したんですが、検察官は開示を拒否いたしました。

 証拠開示の規定がないことについて、かつて、ここに座っておられる小泉大臣は、手続法が定められていないから、即それが遅滞につながっているということではありません、むしろ、遅滞を防ぐために職権主義でさばいていく、そういう仕組みを入れているところですと答えられておりました。

 再審請求審において、裁判所の職権による訴訟指揮に検察が従うことが私は前提だというふうに思います。

 刑事局長に伺います。

 再審請求審において、検察の立場は、当事者ではなくて公益の代表者です。再審請求審は、裁判所の職権による事案解明を前提としております。なぜ、裁判所の職権を前提とする再審請求審において、裁判所の検察官に対する証拠提出勧告、証拠開示命令を違法だとして検察が拒否できるんですか。局長にお伺いします。

森本政府参考人 お答えいたします。

 まず、再審請求審における証拠開示について定めた法令の規定というものはございません。裁判所が再審請求審において検察官等に証拠開示を命ずることができることを判示した最高裁判例もないものと承知しております。

 その上で、下級審の裁判例の中には、今委員御指摘のように、再審請求審においても訴訟指揮権に基づく証拠開示命令をすることができる旨判示したものがございます。

 他方で、再審請求審と通常審の手続の構造の違いや、再審請求審においては、再審開始事由について、再審請求権者から新規かつ明白な証拠が提出されていることが前提とされている手続の内容などを踏まえまして、再審請求審において、特定の証拠の保管者に開示の義務を認めて、裁判所の事実取調べの権限に基づいて証拠開示命令まで発することは現行法では予定されていない旨判示したものもあるというふうに承知しております。

 このように、裁判所が再審請求審において証拠開示命令をなし得るか否かにつきましては、様々な解釈があり得、裁判所の判断も分かれているところでございまして、これを前提とする論点である、今先生御指摘の、検察官が裁判所による証拠開示命令を拒否できるか否かについても、法務当局として、現時点では一概にお答えすることは困難という状況かと考えております。

稲田委員 私は、このルールがない状況において、裁判所が提出命令を出したら、それは従うべきだと思います。今局長がおっしゃったのは、判例の説明じゃないですか。私は、別に判例の説明は聞きたくないんです、知っているから。そうじゃなくて、刑事局長としてどう思うんだという、公益の代表者の検察を所管する刑事局長としてどう思うのかということを聞いているんです。

 もう一回答弁してください。

森本政府参考人 裁判所は、再審請求審において、訴訟指揮権に基づいて証拠開示命令をなし得ることを前提とした場合であっても、例えば、その訴訟指揮権の行使が適正な裁量権の行使を逸脱することなどを理由として検察官が当該証拠開示命令に従わないこと、これにつきましては、一般論としては認められる場合もあると考えております。

稲田委員 私は別に一般論としてどうかということを聞いているんじゃなくて、今ここで、立法を議論しているところで、やはりそれは従うべきだというふうに私は思っているけれどもどう思いますかということですけれども、答弁がないので。

 当時の、当時のというのは、井出さんが質問したときの当時の松下局長は、個別の事案については答えられないとして、検察官が保管している証拠の提出を裁判所から求められた場合であっても、裁判所の判断にとって必要かどうか、それから、請求人側から必要と関連性が十分主張されたか、関係者の名誉やプライバシー保護、将来のものも含めた今後の捜査、公判への影響などを勘案しつつ、裁判所の意向等も踏まえて判断するというふうに答えておられます。

 私は、この中で、名誉やプライバシー保護、それは納得するんですけれども、裁判所が再審開始するかどうかに必要な証拠だから出せと言っているのに、検察独自の判断で、裁判所さん、それはあなたには必要ありませんといって提出を拒否することはできるんですか。

森本政府参考人 証拠開示勧告の時点におきましては、法的には、法的拘束力はないものというふうに理解しております。その場合でも、先ほど申しましたとおり、その訴訟指揮権の行使が適正な裁量権の行使を逸脱することなどを理由として意見を述べることはあるものというふうに考えております。

稲田委員 これは、松下局長は一般論と言っているので、一般論で聞いているんですよ。

 裁判所が必要だから出してくださいと言ったときに、裁判所、あなたは必要ありませんと。なぜ必要ないか、私だけが、検察だけが証拠を持っていて、この証拠を見て、裁判所、必要ありませんよと言うことができるんですか、できないでしょうということが一つと、そんなこと、何で検察が決めるんですかということですね。

 それから、裁判所が再審開始事由の存否を判断するかの、必要かどうかの判断基準ですよね。判断基準、何も示されずに、必要じゃありませんといって拒否ができるということが私はおかしいと思います。

 もう一つの例である、請求人側から開示を求める特定の証拠について必要性と関連性が十分に主張されたか、これは検察官が判断することですか。これは裁判所が判断することじゃないですか。請求人が言っているのが、必要性、関連性があるかどうかを裁判所が判断して、出しなさいと言っているものを、いやいや、検察官が裁判官に成り代わって、それは関連性、十分に言っていませんよ、だから出しませんよと。

 検察官は当事者じゃないんです、再審請求審では。公益の代表者なんです。そんなことを言う権限はあるんですか。

森本政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、検察官において、今御指摘のような点が訴訟指揮権の行使として適正な裁量権の行使を逸脱するというふうに判断した場合に、そのことなどを理由にして検察官としての意見を述べることは許されるものと考えております。

稲田委員 その判断がすごく恣意的になりませんかということなんですね。

 私は、人一人の命と人生が懸かった再審請求審で、職権主義だと言いながら、裁判所が必要だから出しなさいといった勧告や命令をしているのに証拠を出さない、持っているのに出さない、若しくは、ないと言いながら後から出す、しかも、その証拠は冤罪を示すものだった、こんなことがあってはならないと思いますよ。

 熊本の松橋事件では、再審請求審で、検察が冤罪の証拠を出さずに隠していたことが分かって再審開始になって、そして、それでも抗告と特別抗告をしているんです、検察は。それで、無罪になって国賠も認められているんですね。このような事例があると、検察の判断で、裁判所、必要ありませんとか、請求人の主張は十分にありませんと証拠を出さないということは認めるべきではないと思うんですけれども、再度、刑事局長に聞きます。

森本政府参考人 なかなか、個別の事件での場面場面においての対応について、お答えできる範囲があるので難しいところはあるんですけれども、先ほど申しましたとおり、その時点において、訴訟指揮権の行使が適正な裁量権の行使の範囲を逸脱するというふうに考えている場合に、検察官として意見を言うということはあり得るし、それ自体は許されているというふうに考えております。

稲田委員 意見を言うんじゃないじゃないですか、出さない、拒絶する。しかも、裁判所が違法だということを言って拒絶しているんですよ。

 私は、今日の答弁を聞いていて、やはり、証拠開示についてルールを法律の中に規定をすべきだ、再審法改正の立法事実はあるというふうに思います。

 抗告についても同じなんですね。資料を示します。

 表を見ますと、検察はほぼ機械的に抗告をして、それによって救済は遅れております。

 袴田事件では、事件から六十年、袴田さんの人生そのものが葬り去られています。

 大崎事件では、過去に三回も再審開始決定がなされていますけれども、抗告によって再審が開始されず、アヤ子さんは間もなく九十八歳であります。平成十四年の最初の再審開始決定で再審公判に行くべきではなかったでしょうか。

 福井女子中学生殺害事件では、平成二十三年に再審開始になったにもかかわらず、異議申立てで再審開始決定が取り消され、昨年、再審開始が決定されると、今度は、検察は異議を申立てしない、再審公判では、異議を申立てしなかったのに有罪を主張する、有罪は主張するのに立証はしない。もう検察官がやっていることは意味不明なんですよね。この事件は、捜査機関が違法な誘導で虚偽の証言をさせたことが今回の第二次請求審で明らかになりました。最初の再審開始で公判に進んでいれば、十三年もの年月を無駄に過ごすことはなかったわけであります。

 質問しても、個別の事件だから答えられないとおっしゃるので聞きません。でも、私は、人一人の人生が懸かった問題なので、やはり、個別の事件ですとかいうので片づけてほしくないんです。検察は無罪の人でも有罪にすることができる、そういう強力な権力を持った組織なんですから、私は、その自覚と謙虚さを持ってこの再審法の改正に臨んでいただきたいというふうに思います。

 再審開始が決定されたら、検察は再審公判で争えるし、控訴もできるわけです。また、開始の要件というのはとても厳しくて、無罪を言い渡す明らかな証拠を新たに発見したときというその厳格な要件を裁判所が認めて再審開始したのであれば、再審公判で有罪を立証していけばいいし、控訴もまたできるというふうに思うわけであります。

 再審請求審では、何回も言いますけれども、検察は当事者ではなくて公益の代表者なんですね。その公益というのは、疑わしきは被告人の利益で、無実の人の救済の端緒をつくるということです。

 ところが、今までの検察の行動は、これが混同されていて、再審請求審の段階でも当事者のように振る舞い、不利な証拠は持っていても出さず、何度も何度も抗告して、できるだけ再審開始にならないようにしておきながら、一旦、再審開始になったら、再審公判では争いもしない、立証もしない、控訴もしないという事件が多々あります。このような行動がいかに公益の代表者である検察の立場から逸脱しているかということを、私は自覚をしてほしいというふうに思います。

 この表を見ても、再審開始されて無罪にならなかったもの、一件もないんですね。おかしいじゃないですか。再審開始されて、公判で有罪を立証して有罪になることがない、みんな無罪というのは、再審開始すべきものが開始されていないんじゃないですかという疑いを抱くわけであります。そして、いかに検察が再審開始を阻止することに全力を傾けているかが分かるわけですね。

 検察官の抗告禁止若しくは制限の必要性について、刑事局長の見解を伺います。

森本政府参考人 改めてでございますが、再審に関する手続を申し上げますと、再審請求審につきましては、再審事由の存否について審理を行い、請求に理由があるときは再審の開始を決定する手続であるのに対しまして、再審開始決定が確定した事件について行われる再審の公判におきましては、証拠調べ等の更なる訴訟手続が行われた上で、裁判所が改めて有罪か無罪かなどを判断する手続でございまして、まず、再審請求手続と再審公判の手続は異なる手続でございます。

 このようにして、再審は、あくまで確定判決の存在を前提として、法定の再審事由がある場合に限って開始することとされており、再審を開始すること自体に違法、不当がある場合に、これを放置したまま再審公判に臨むことは確定判決の存在を軽視することにもなりかねませんので、そういった意味では、再審を開始すること自体に違法、不当がある場合に抗告をするということはあるものというふうに考えております。

稲田委員 違法、不当というのは何なのかということが問われてくるというふうに思います。今のような機械的な抗告を見ていると、違法、不当じゃなくて、とにかく抗告をする、何回も何回も抗告して、さっきの松橋事件なんて、無罪の証拠が出ているのに抗告しているじゃないですか。おかしいと私は思います。

 あと、刑事局の答弁を聞いていると、刑事局って検察なんですかと思うんですね。刑事局と検察というのは一体じゃなくて、法務省の特別機関が検察庁で、刑事局は検察の代弁じゃなくて、検察に対して刑事訴訟のあるべき姿を示すということが刑事局の仕事で、今のような答弁だと、私は、非常に、その役割をどう考えているのか、もっと早くこの再審法の改正に刑事局、法務省が率先して取り組むべきだったというふうに思います。

 最後に、大臣にお伺いをいたします。

 今、議連では、核心的な証拠開示や抗告の禁止などを含む案を作っているところですが、法制審にかけられました。法制審で長くかかるのであれば、これは一体何をやっているのか、被害者の救済がどんどん遅れるじゃないかと思います。また、国会は国権の最高機関で、唯一の立法機関ですから、むしろ議法の方が優先するんじゃないでしょうか、憲法上は。

 そういうことを考えますと、いつまでも法制審の答申を待っているわけにはいかないんですが、大臣のこの改正にかける意気込み、それからスピード感について、法制審にどのように指示をされているか、お伺いします。

西村委員長 鈴木法務大臣、時間が参ります。済みません、簡潔にお願いします。

鈴木国務大臣 この再審制度、一部の再審請求事件について審理の長期化、これが指摘をされておりますし、制度の在り方についても、立法府においても様々な御指摘、あるいは国民の皆様方からも様々な関心を持たれている状況と認識をしております。

 そういった中で、やはり、こうした中での再審手続に関する規律の在り方、これは、再審請求事件の実情を踏まえながら、今御指摘の観点も含めて、幅広い観点から検討していただくために、私の方からも、三月二十八日に、こうした規律の在り方について法制審に諮問をいたしました。

 スピード感ということでありますが、やはり法制審、取りあえず議論を見守る、これは我々の立場でありますが、同時に、この関心の高さ、あるいは、これまでも、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会等々でも議論をいただいたということも含めて、やはり、できる限り早期にこの答申をいただけるように私としては働きかけをしてまいりたいと思っております。

稲田委員 様々な意見があるとおっしゃっていますけれども、検察と法務省以外、早くやれと、議法でやれとみんな言っているんですよね。私は、議法による早期の成立を是非大臣にも応援いただきたいと思います。

 終わります。

西村委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時三十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時八分開議

西村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤原規眞さん。

藤原委員 立憲民主党・無所属の藤原規眞です。

 まず、本年四月二十九日から五月三日にかけて、鈴木法務大臣は、中央アジアのキルギス共和国とウズベキスタン共和国を訪問なさいました。

 キルギス共和国は、かつて、民族間の衝突をめぐる恣意的捜査と拷問、あるいは弁護士への暴力、へんぱな裁判所等の問題が人権団体から指摘されていました。また、ウズベキスタン共和国では、児童労働や強制労働が数年前まで横行するなど、同じく人権問題への課題が指摘されていました。

 私は、閣議後の鈴木法務大臣の記者会見を拝見し、鈴木大臣が心血を注ぐ法の支配の価値をゴールデンウィークを返上して中央アジアに浸透させる活動をされた、すばらしい取組であったと考えています。

 さて、本題に移ります。

 刑法二十八条は、懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができると定めています。この条文は、できると規定しており、行政官庁たる地方更生保護委員会の裁量が予定されています。しかし、更生保護法三十四条一項の文言並びに法務省保護局長通達一三四号の規定に照らせば、裁量の幅というのは相当に限定的な羈束裁量と解するのが合理的であるというふうに考えます。少なくとも、恩恵だというふうに捉えるべきではないと考えます。

 日本には現在、終身刑という概念は存在しません。死刑か無期懲役です。その中間の終身刑を創設するとしたら、それは国会で法律を作らなければならないわけです。無期懲役の場合でも、仮釈放が認められるか否か、認めるとしたらどのタイミングか、これは一定の裁量があるとしても、法律によらずに実質的な終身刑が創設されることがあってはならない、これは当然のことです。唯一の立法機関は国会だと憲法四十一条に示されているわけですから。

 そこで、大臣に伺います。

 行政機関が終身刑という新しい刑を運用であれ実質的に創設することがあってはならない、終身刑を創設するのであれば、あくまで国会の法律によるべきだ、そのことについては法務大臣は認識しておられますか。

鈴木国務大臣 現行法に定められております無期懲役、禁錮については、刑法の第二十八条において、仮釈放することができるとされております。

 そのことからすれば、お尋ねが、これらの刑とは異なる仮釈放のないそうした終身刑、この創設ということを指すということであるとすれば、その創設のためには、御指摘のとおり、法改正、これは当然に必要になると考えております。

藤原委員 ところが、最高検察庁は平成十年六月十八日に、第八八七号依命通達、「特に犯情悪質等の無期懲役刑確定者に対する刑の執行指揮及びそれらの者の仮出獄に対する検察官の意見をより適正にする方策について」、以下マル特通達と称しますけれども、これを発出しています。

 そのことが、四年後の朝日新聞の記事、平成十四年一月八日の夕刊、これによって明らかになっています。資料一です。この内容は恐るべきもので、無期懲役刑が確定した事件のうち、検察官が特に犯情が悪質と判断した者については、マル特無期事件と位置づけて、他の無期囚よりも長期間服役させるという内容になっています。

 具体的な手続としては、地検や高検が最高検と協議してマル特無期事件を指定する、その事件の判決が確定したらすぐに刑務所に、安易に仮釈放を認めるべきではなく、仮釈放申請時には特に慎重に検討してほしい、仮出獄の申請に当たっては、必ず事前に検察官の意見を求められたい旨通達したものであります。しかも、その中で、終身又はそれに近い期間の服役が相当と認められる者もいると明示しているわけです。

 これは、平成十年、一九九八年です。二十七年前に発出された通達ですが、この終身という二文字の文言を含め、このマル特通達の内容については、現在でも変更はないんでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の通達は、平成十八年五月二十四日に一部改正された平成十年六月十八日付最高検次長検事通達のことと思われますけれども、一部、形式的な文言の改正がございましたが、同通達中の御指摘の記載については、現在も変更はございません。

藤原委員 糸数慶子参議院議員が、平成三十年七月十九日に質問主意書を出されています。それに対する答弁として、これらの通達等、今のマル特通達のことです、の一部については、公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるとの理由から公表を差し控えているというふうにしています。

 そこで、伺います。

 このマル特通達は、法律に基づく通達なんでしょうか。基づくとしたら、根拠法令の条項まで示していただきたいと思います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 無期懲役の判決を受けた者でも個々の事件ごとにその犯情などには大きな違いがあり、比較的早期に仮釈放が許されてしかるべき者がいる反面、そうではない者もいると考えられるところでありますが、刑の執行は、そのような犯情にも即して適正に行われるべきと考えております。

 そこで、御指摘の通達につきましては、刑事訴訟法第四百七十二条や検察庁法第四条によりまして裁判の執行を指揮し監督する権限を有する検察官として、無期懲役の判決を受けた者のうち特に犯情が悪質な者の事件につき、矯正局長に対して、将来仮釈放の申出をするか否かの審査を行う場合に、次に規則を述べますけれども、犯罪をした者及び非行のある者に対する社会内における処遇に関する規則による検察官の意見を求めるよう依頼をするとともに、矯正施設の長や地方更生保護委員会からの求意見がなされた場合に適切な意見を述べることを定めたものでございます。

藤原委員 今、森本局長も犯情という言葉を言われましたけれども、犯情が悪質という御答弁をなさいましたけれども、これはどの時点での悪質をおっしゃっているんでしょうか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 済みません、先ほど、私、矯正施設と読むべきところを矯正局長と読んだ部分がございましたので、そこを訂正いたします。申し訳ございません。

 その上で、犯情の判断につきましては、基本的に、裁判が行われて裁判で判決が下された、その時点のものを、一審、二審、三審とあるかもしれませんけれども、基に考えておるというふうに承知しております。

藤原委員 じゃ、基本的にということは、ほかにもあり得るということですか。それとも、裁判時のものに尽きるということですか。犯情が悪質、その時点。

森本政府参考人 検察官の意見という意味では、その前に多分求刑とかするものですから、それも含めて判決時までということであれば、判決時までのもので検察官は判断しているというふうに考えております。

藤原委員 糸数参議院議員に続き、私もマル特通達について質問主意書を出しています。資料二です。それに対する答弁書、資料三ですけれども、これによってマル特通達が平成十八年五月二十四日に改正されたことを知らされました。先ほど森本局長も御答弁なさいました。

 しかし、憲法二十一条一項が保障する知る権利を尊重するならば、改正された内容も全て公開にすべきではないでしょうか。法律に基づく通達であればなおのことです。

 法務大臣、この公開、非公開についてどのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 この点は、若干繰り返しになりまして恐縮でありますけれども、御指摘の通達、これは検察庁内部における事務の運用方針あるいは考え方を示したものであります。

 そういった中で、不開示情報として、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報を含むということから公表することとはしていないということ、私もそうした認識でございます。

藤原委員 これは人権に関する問題なんですね。しかも、誰が当事者になってもおかしくない。自分はそんな悪いことをしないよと皆さん思っていますけれども、でも、それでも誰が当事者になってもおかしくない。私がやるかもしれない、大臣がやるかもしれない。

 その処遇を秘匿する、これは現代社会においておよそあり得ないことだと考えるんですけれども、犯罪の予防、鎮圧、捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ、これを理由に公開しないというふうにしているんですけれども、具体的にどのような支障を想定しているんでしょうか。教えてください。

森本政府参考人 お尋ねは、当該通達の情報公開請求がなされた際に、検察当局においてその一部を不開示にしたことについてのものであるというふうに理解しておりますが、その当該一部不開示部分は、その通達の対象者に関する部分でございます。

 対象者関係部分を明らかにした場合、個々の無期懲役受刑者においては自分がその対象者に該当するか否かを考えることになると思われ、その結果、受刑者の改善更生の意欲や処遇の在り方に影響を与え、ひいては刑の執行に対する支障を及ぼすことになると考えております。

 なお、情報公開・個人情報保護審査会の答申においても、この通達の不開示部分について同様の判断、すなわち、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれのある情報に該当する旨の判断がなされております。

藤原委員 マル特通達には、依然として、有期懲役刑の最長期である二十年を下回る者が相当数占められておりというふうに、早期での仮釈放を問題視する、懸念するかのような記述が見られます。

 一方で、平成十六年の刑法改正で、有期刑の最長は三十年となっています。遅くとも平成十六年の時点で厳罰化を先取りしたマル特通達は廃止すべきであったと私は考えるんですけれども、廃止はされていません。

 平成十六年法改正によって無期刑の重罰化が実現されているのにもかかわらず、なぜマル特通達はその時点で廃止されず、現在も生きているんでしょうか。

森本政府参考人 御指摘の通達は、先ほど述べました、刑事訴訟法第四百七十二条や検察庁法第四条により裁判の執行を指揮し監督する権限を有する検察官として、無期懲役の判決を受けた者のうち特に犯情が悪質な者の事件につき、矯正施設の長に対して、将来仮釈放の申出をするか否かの審査を行う場合に検察官の意見を求めるよう依頼するとともに、矯正施設の長や地方更生保護委員会から求意見がなされた場合に適切な意見を述べることを定めたものでございます。

 当該通達は今申しましたような趣旨で定められたものでありまして、有期刑の最長刑が引き上げられた後もこの趣旨は引き続き妥当しているというふうに考えていることから、御指摘は当たらないものというふうに考えております。

藤原委員 ある記者さんが、平成十年のマル特通達を開示請求により入手しました。これは資料四番です。黒塗りも一部ありますけれども、そこには、終身又はそれに近い期間というふうに書かれています。ところが、私の質問主意書に対する答弁書においては、終身という文字がなぜか削除され、相当長期間にわたりという言葉のみが残っています。これは資料三番です。

 これは、何か後ろ暗い点があるから、ホームページで公開される答弁書は終身という文字を消したんじゃないんですか。見えないところでは終身というのを言い、見えるところでは終身を外す。これは都合がよ過ぎると考えるんですけれども、その意図を示していただきたいと思います。

森本政府参考人 説明のために若干繰り返しになるところがあって恐縮でございますが、通達は、先ほど申しましたように、刑事訴訟法四百七十二条や検察庁法四条により裁判の執行を指揮し監督する権限を有する検察官として、先ほど述べたような趣旨の、その意見を述べるに際して、その意見を求めるよう依頼するとともに、その際に適切な意見を述べることということを言っているものでございまして、御指摘の通達で、その適切な意見を述べることについてということを言っている部分が、先生の資料でいうと二ページ目のところにそれがありますので、その二ページ目のところを引用してきているということでございまして、先ほど先生がおっしゃったような意図ではなくて、まさにその趣旨を説明するためのところを答弁書に引用しているということでございます。

藤原委員 平成十年のマル特通達でも用いられていますが、質問主意書への答弁書で、無期懲役刑受刑者の中でも、特に犯情等が悪質な者についてという、答弁書に書かれています。先ほど森本局長も、犯情等が悪質という言葉を使われました。

 犯情という言葉は、犯罪事実に関する情状になります。先ほど局長も言われましたけれども、これは、犯情というのは裁判時に考慮し尽くされて、それを踏まえて裁判所が刑を言い渡しているわけですね。それゆえに、判決が確定した後に犯情が悪質と判断する、それも行政が判断して刑期が変わる、これは二重処罰等の禁止をうたう憲法三十九条後段に抵触しないですか。

森本政府参考人 お答えいたします。

 刑法二十八条は、改悛の状があるときに仮釈放を許すことができる旨定めており、犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則二十八条は、仮釈放の判断に当たって、再び犯罪をするおそれがないこと、社会の感情がこれを是認すると認めること等を検討することとしておりまして、それに当たって、犯罪の罪質、動機、態様、結果等の犯情が考慮されるものと解しているものというふうに承知しております。

 したがって、当該通達に基づき検察官が意見を回答するなどする場合に犯情を考慮することは、法令上予定されているものというふうに考えております。

藤原委員 これは、規則に書かれているから憲法三十九条後段に抵触しないとか、予定されているというのは、説明にならないと思うんですけれども。

 実質的に、この犯情というのを、刑期を最後に決める、行政に戻ってきたときにそれを考慮するというのは、これは非常に問題があるということを再度指摘させていただきたいと思います。

 平成二十六年一月から令和五年十二月までの間に、地方更生保護委員会による無期刑受刑者の仮釈放の許否、これが判断されたのは三百八十五件です。これら全てが刑務所長の申出による審理というふうに仮定いたしましても、各刑務所長は年平均三十九件しか申出をしていないことになるんですね。令和五年末の刑務所在所の無期刑受刑者数は千六百六十九名です。

 なぜ年平均三十九件という僅かな件数しか刑務所長が審理の申出をしていないのか、その理由は何かという質問主意書への答弁では、個々の事案に応じて適切に行われてきた結果であると認識しているというふうに答弁されているんですけれども、これは、何を根拠にして適切に行われた結果という認識になるんでしょうか。

小山政府参考人 矯正施設の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当である場合には、地方更生保護委員会に対し、仮釈放を許すべき旨の申出をすることとされております一方、社会の感情が仮釈放を是認すると認められないときは、この限りでないとされているところでございます。

 また、仮釈放を許すべき旨の申出をするか否かに関します審査につきましては、仮釈放の法定期間の末日までに行い、その後の審査は、少なくとも六月ごとに行うものとされております。

 その際、審査に当たり必要があると認めるときは、審査の対象となる者の処遇に関係のある当該矯正施設の職員以外の協力者、当該矯正施設の職員以外の精神医学、心理学等の専門的知識を有する者、裁判官又は検察官に意見を求めるものとされておりますほか、裁判官又は検察官から、当該審査の対象となる者について仮釈放に関する意見が表明されているときは、当該意見を考慮するものとされており、必要に応じ、訴訟記録を閲覧するものとされております。

 お示しのような実態につきましては、矯正施設の長により、ただいま申し上げましたような関係法令の定めるところに基づきまして、個々の事案に応じて適切に審査が行われてまいりました結果であると認識してございます。

藤原委員 マル特通達は平成十年七月一日に施行されています。平成元年から九年までの無期刑囚の仮釈放許可人員の数は、平成三年の三十三件をピークに、九年間の平均で年十六・八九件ありました。年十六・八九件。一方で、マル特通達施行翌年から令和五年までは、平成十九年のゼロ件を含め、年平均七・〇四件です。十六・八九件から七・〇四件。

 これは明らかに有意な差があるわけなんですけれども、これも個々の事案に応じて適切に行われた結果という理屈で片づけられますか。これは、立法にもよらず通達一本、しかも、全面公開されていない通達一本で生じていい差ではないと思うんですけれども、いかがですか。

押切政府参考人 お答えいたします。

 一般に、仮釈放を許すか否かについては、地方更生保護委員会の三人の委員で構成される合議体において審理の上、判断をしております。無期刑受刑者の仮釈放審理においては、原則として、複数の委員で審理の対象となる受刑者の面接を行うなど、個別の事案ごとに適切かつ慎重に行っているものと承知しております。

 お尋ねの仮釈放者数については、仮釈放の審理が個々の事案に応じて適切に行われた結果であると認識をしております。

藤原委員 立法によらずに、このような年間十六・八九件が七・〇四件に激減する。これは、行政による国会の立法権の侵害である、あるいは同時に、司法が、裁判所が下した判決、無期懲役判決に、仮釈放ありの無期懲役Aと仮釈放なしの実質終身刑たる無期懲役B、これを検察がつくって適用しているという点で、司法権の侵害にもなると考えるんですね。これはもはや、終身刑を法務省、検察庁オリジナルで創設したと言われても過言ではないというふうに考えるんですけれども。

 マル特通達、この在り方、これは行政が出す通達一本で、法のありよう、しかも刑という、すごく人生を左右する、そういったものが左右される。マル特通達、これは廃止する必要があるというふうに私は考えるんですけれども、先ほど大臣は、必要はないという認識だというふうにお考えをお示しになりました。

 しかし、例えば法の支配を国際社会に浸透させるためにゴールデンウィーク返上でキルギスやウズベキスタンを訪問した、それほど人権を大切にする鈴木法務大臣の下、マル特通達の廃止を含め、廃止とまで言わないにしても、マル特通達のありようにつき調査して検討すべきじゃないですか。大臣、お考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 今事務方からも御答弁しました御指摘の通達、これは、刑訴法第四百七十二条、検察庁法第四条によって裁判の執行を指揮し監督をする権限を有する検察官として、無期懲役の判決を受けた者のうち特に犯情が悪質な者の事件について、矯正施設の長に対して、将来仮釈放の申出をするか否かの審査を行う場合に検察官の意見を求めるように依頼をするとともに、矯正施設の長や地方更生保護委員会から求意見がなされた場合に適切な意見を述べるということを求めたものであります。

 そして、仮釈放を許すか否かの判断、これは地方更生保護委員会の権限に属するというものでありまして、まさに地方更生保護委員会において、そういった検察官の意見等も考慮しつつ、個々の事案に応じてこれは適切に行われていると承知をしておりまして、そういった趣旨からすれば、この通達、法律によって定められた仮釈放制度の運用の範囲であると私どもとしては考えております。

 そうした中にあって、まさに本日、様々御議論を拝聴いたしましたが、この通達の趣旨、ここについては、現在も妥当するものではないかと私としては考えておりまして、廃止を検討するというような状況ではないのではないかと私としては考えております。

藤原委員 では、廃止は検討しないにしても、この運用の在り方、さっき内部の事務運用というふうに大臣はおっしゃいましたけれども、それでも、年平均、通達一本で十六・八九が七・〇四にまで変わる、これは本当に法律を定めて変えなければならないぐらいの有意の差が生じているわけですね。なので、廃止じゃなくても、この通達のありようについて再度検討する、その用意はありますか。

鈴木国務大臣 まさに、この点につきましても、それぞれの、例えば仮釈放について言えば地方更生保護委員会等々、そういったところでの適切な判断に基づいていると私どもとしては考えております。そうした適切な判断をしっかりとするように、きちんとした運用の適切性、そこについては常に私も現場に対してはしっかりと督励をしていきたいと考えております。

藤原委員 人権について高い意識を持っておられる鈴木大臣が在任中に、マル特通達について、そのありようについて具体的な改善が図られるということを期待いたしまして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

西村委員長 次に、寺田学さん。

寺田(学)委員 寺田です。質疑時間、ありがとうございます。

 本日は三件について、法務大臣の、先ほども言及ありましたけれども、ゴールデンウィーク中の海外出張についてと、来月からですかね、変わります矯正処遇の在り方、刑の在り方、刑務所の中での役割の在り方の理念的な変更も含め、最後は、今制限されている受刑者の選挙権の行使について、この三点を質問します。

 附属する資料がありますので、お手元で後ほど御覧になっていただければと思います。

 まず、法務大臣のゴールデンウィークというのは、一般的な意味で、海外出張について、国会をやっている間においては確かに国会との関係の中で様々議論があっていいと思いますが、今回の件とは別に、まず一般論として申し上げると、私は、本当に国力が残念ながら衰退しかねない我が国にとって、積極的に海外に出ていって仕事をすること自体は非常に前向きに考えていますし、外務大臣政務官とかは、逆に言うと、もう日本にいなくていいので、ずっと海外を回って日本の立場やプレゼンスを示し続けることも大事だと思いますし、もっと踏み込んで言うと、私は議員外交も含めてもっと積極的にすべきだと思います。

 特に、国際会議への出席自体が、うちの国、非常に、海外に議員が出ること自体も議運の許可が必要になりますので、開会中自体はなかなか出席もできなくて、日本の議員だけいないということ自体、私は国の利益を失うと思いますので、そういうことを含めて、一般的には非常に前向きに考えていますが、大臣が国会中海外に出られたことに関して、私はしっかりと議会に対しても説明すべきだと思っています。

 その意味で、今回のキルギスとウズベキスタンを訪問した趣旨とその成果をしっかりと説明してください。

鈴木国務大臣 今、寺田委員から、まさに日本のそうした国際社会におけるプレゼンス等々についても言及がございました。そうした見識、改めてそこは敬意を表させていただきたいと思います。

 その上で、この度、院の皆様方の御理解を得まして、キルギス、そしてウズベキスタン、出張をさせていただきました。

 まず、この両国ということで申し上げれば、私は、これは所信の中でも、ASEAN地域のみならず、中央アジア等々について、法制度整備支援、これをしていくべきだ、そのことを申し上げております。

 この趣旨は何かといいますと、やはり、今非常に地政学的に大変厳しい環境になっております。我が国周辺のアジアあるいは太平洋地域におきまして、例えば、ロシア、そして中国、こうしたことを除いた場合に考えたときに、やはり、我々としてしっかりと注目していくべきところ、きちんと、そうした同じ価値、これをしっかり確認しながら促進をしていくべきところということで申し上げれば、やはりASEANであり、あるいは中央アジア、そういったことになろうと思います。

 これは、まさに地政学的にそういった判断、これはあったところでありますし、同時に、そういった観点から、政府としても、昨年の八月に、中央アジアプラス日本ということでの首脳会議を設定し、そしてそれを実行しようとしたところでありました。それが、昨年の八月、ちょうど九日の予定でありましたけれども、八月八日に南海トラフの臨時情報というものが出まして、そして岸田総理が、当時の総理が、そこに、急遽その当日に伺えないということになってしまいました。

 まさに、そういった中で、どのようにしてしっかりとしたプレゼンスを発揮するのか、これは極めて大事だという判断、同時に、そうした状況だからこそ、閣僚として、石破内閣、今日本の内閣の閣僚がしっかりと行くということ、そこの意義、さらには、先ほども少しお触れになられましたけれども、やはり、法制度支援という中で、法の支配、これをどうきちんと共有できるのか、この意味で極めて重要だったと考えております。

 その当地におきましては、キルギスの、例えば司法、法務大臣だけではなくて首相であったり、あるいは、ウズベキスタンにおいても、様々なそうした要人と、そうした様々な確認、これもできたところでありますし、さらに、こうした協力関係、これを深めていく、そういったところにおいても合意ができたところでありますので、そうした意味において、御理解をいただきますと大変幸いでございます。

寺田(学)委員 ウズベクに関しては、二年前ですかね、私、法務委員会の筆頭理事をやっているときに、委員長と与党側の筆頭及び理事の皆さんとウズベクに行って、日本の法務省がしっかりと司法支援をやっている関係というのを、実情を見てきました。

 そういう意味で、今何か外務大臣みたいな言い方をしていましたけれども、ちゃんとしっかりと法務大臣としての役割というのを十分果たしてほしいと思いますし、しっかりと説明を重ねてほしいというふうに思います。

 二年前の海外派遣、委員会の海外派遣の話に続くんですが、そのときに私自身が是非とも足を運びたいと言って足を運んだのがオスロです。

 オスロの、今日、お手元の方に資料を、朝日のグローブの記事を出していますが、ハルデン刑務所というところを是非ともこの目で見てみたいと。最も人道的な刑務所と言われているハルデン刑務所、ノルウェーの中でほかにもあるんですけれども、想像以上でしたよ。もちろん北欧ですから、自然がきれいだということは当然の前提なんですけれども、一人一人の受刑者に対して許されている内容及びその環境自体が、日本のそれとは全く違う、次元が違うものでした。

 ちょっと記事を、一部抜粋なので、是非とも見てほしいんですが、共用のリビングスペースには大きなテーブルやソファーがあって、私が一番びっくりしたのは、そこに、自分たちで食事を作ったりするんですが、ナイフもありました。それで、自分だけの個室があって、自分で鍵を閉める。基本的に様々なことが許されていて、一枚目の表の下ぐらいには、一人ずつに与えられている居室のほか、DVDや本が整然と並んで、音楽室も見たんですが、本当になかなかの設備でした。ここの一番下に、所長が言っているのはそのとおりだなと思うんですが、釈放されたときに趣味があるのが絶対大事だ、薬より音楽にはまる方がはるかにいいと。

 裏側を見てほしいんですが、模範囚含めて、家族との面会も日本に比べてはるかにありますし、個室で会えます。ここには、入口の籠にはコンドームが入っていて、要は配偶者とも会えるし、私は、何か配慮が本当に出ているなと思ったのは、子供にも十分会えますし、模範囚だと二泊できる。子供だけが通れる、要はお父さんが刑務所に入っているということを感じさせない特別の通路があって、家族がその場で暮らすことができる。

 日本であるならほとんど考えられないことなんですが、その下の方に、これは所長の言葉なんですが、外では朝、家で起きて、オフィスや学校に行って、同じだ、ここはミニ社会なんだと。朝、居室の鍵が開けられると、リビングで食事をし、作業していくんだと。午後、様々作業をした上で、夜は自分の部屋に戻るんだと。とにかく、受刑者が外と同じように、そのミニ社会の中において、その社会の一員として生活するということを徹底的にここでトレーニングをしていく。

 そこまでするのはなぜかと中段にあるんですが、もう徹底的に更生と社会復帰、再犯の防止のためでした。我々視察団も、余りに環境が想像以上だったものですから、ここまでするってどういうことなんですかと言われたときに、同じように、法務省の副大臣かな、から言われたことは、ここにも書いているとおりに、ここにいるのは、やがてあなたの隣人になる人たちだ、どんな人に隣人になってほしいかということだと。国民に対してどう説明しているんですかと聞いたときには、どういう隣人があなたの隣に住んでほしいかということを考えてもらうように政府として国民には呼びかけていると。実際に、こういうような施策をしたことで、再犯率は六〇、七〇ぐらいあったものが、二〇ぐらいまで落ちたという成果が出てきているというところです。

 我が国においても、来月からですが、いわゆる拘禁刑が施行されるということではあるんですが、ここは、矯正局に聞きますが、今回、来月から拘禁刑が施行されるに当たり、刑事施設における受刑者に対する矯正処遇の目的、どういう変化を考えてやっているんですか。御答弁ください。

小山政府参考人 拘禁刑は、令和四年六月に成立いたしました刑法等の一部を改正する法律により創設されまして、御指摘のとおり、六月一日から施行、導入されることとなってございます。

 これまでも、刑事施設におきましては、受刑者の資質及び環境に応じまして、その自覚に訴え、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図ることを目的とし、矯正処遇として作業や改善指導、教科指導というものを実施してまいりました。

 これまでの懲役刑では作業の実施が前提とされておりましたが、拘禁刑の導入後はそうした前提がなくなりますことから、個々の受刑者の特性に応じて、作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇を実施することで、より効果的な改善更生を図ることが期待されております。

 安全、安心な社会の実現のため、引き続き、改善更生の意欲の喚起及び社会生活に適応する能力の育成を図るという目的を達成すべく、一層効果的な処遇を実現するための取組を進めてまいりたいと考えております。

寺田(学)委員 私が紹介したハルデン刑務所とは、その程度の差は違えども、思いという、進んでいこうという道筋というのは同じだと思っています。まさしく社会更生、社会復帰をいかにうまくさせるかということで、今回そういう制度変更をしたということなんだと思います。

 それで、今回の質問の主眼なんですが、今受刑者は選挙権の行使が制限をされております。これは、国が訴えられていることですので、なかなか政府として話しづらいところはあるかもしれませんが、私は、これはちゃんと国会で取り上げて、政府と議論を重ね、国会の議員同士でもしっかりと問題意識を持つべきだと思います。

 お手元の方にこれも資料がありますので、記事を読んでいただきたいんですが。

 選挙部長、そもそも受刑者の投票が制限されている理由は何ですか。ごめんなさい、端的にお願いします。

笠置政府参考人 禁錮以上の刑に処せられている者は、一般社会と隔離されて拘禁されるような重大な犯罪行為を行った者であるので、選挙に関与させることは適当ではないということから、選挙権及び被選挙権を停止することとしているものと承知しております。

寺田(学)委員 罪を犯したんだったら、おまえなんて投票する権利ねえんだよという理由自体は正直よく分からないし、ぼやっとし過ぎですよ。

 憲法改正手続法、通っていますけれども、憲法改正は投票できるんですか。まずイエスかノーか。

笠置政府参考人 国民投票法につきましては、投票できるということですね。

寺田(学)委員 何で一般的な選挙は投票できなくて、最も最高法規たる憲法改正は投票できるんですか。理由は。

笠置政府参考人 国民投票法でございますが、こちら、提案者の説明といたしまして、国の形をまさに決める憲法改正に係る国民投票におきましては、国政選挙以上に幅広い国民の参加が望まれるということ、そしてまた、その投票、国民投票でございますけれども、国民投票は頻繁にまた定期的に行われるとは考えられないわけでありますから、たまたまその時期に公民権停止で参加ができない、これもいかがなものかというふうに考えるというように述べられているところでございます。

寺田(学)委員 もう詰めないですよ。理屈としてまず成り立っていないですよ。一般的な選挙自体には投票権はないけれども、最も最高法規たる憲法改正には参加できる、なぜなら、幅広に皆さんの意見を得れるからだと。冒頭、説明された選挙の公正さなんてどこかに行っちゃっているわけですよ。皆さんが言う選挙の公正さですよ。

 私は、受刑者が投票するのは権利だと思っています。ただ、その権利というところを強く言うのではなく、今回、法務委員会として違うアプローチで言うんですが、そのためにさっきハルデン刑務所の話をしたんです。できる限り外と同じ生活をして、結果として刑期を終えて出たときには、社会復帰がうまくいって、再犯を防いで、それで更生が成功したということなんですよ。

 ハルデンだけじゃなくて、「ショーシャンクの空に」というのは好きな映画の一つで、あそこに、ブルックスというカラスを育てているおじいちゃんがいるんですが、余りにも刑務所生活が長過ぎて、外に出た瞬間になじめなくて、結局自ら命を絶つという一つのストーリーなんですが、やはりそこは、僕はハルデンほどやれと今からは矯正局には言いませんが、理念としては、できる限り外と同じ生活をし、外になって、社会の一員としてやっていくトレーニングをしっかりとするのが私は大事だと思っているんです。

 一点ですけれども、これは大臣に、選挙権を与えるべきかどうかという、今、訴訟していますが、まず別にして言いますよ。刑務所の中に入っている受刑者が、日常的に社会問題に関心を持って、どうすれば社会がよくなるかということを考えたり情報収集をするということ、そういう行為自体は、社会復帰してからの、犯罪を犯さない、社会復帰にとってプラスだと思いませんか。まず一般的に聞きます。

鈴木国務大臣 一般論ということになりますけれども、受刑者の社会復帰、まさにそれは社会のルールを守る、そういったことを学ぶことは極めて大事だと思いますし、そうした健全な社会人となる上で必要な知識、これを得るということは重要なことではないかと考えています。

寺田(学)委員 刑務所の中にいたとしても、自分の世の中が外と隔絶されず、世の中がどうなっているのか、その世の中をどう変えていった方がいいのか、それも含めて、自分がどのように変わるべきなのかということを考えること自体が、まさしくその刑務所の中にいる受刑者にとって最も大事なことだと思うんです。

 これも一般論として聞きます。そのようなことを様々考えた上で、刑務所の中も一つの社会ですから、社会の中でどうあるべきなのかということも含めて考えた上で、例えばですけれども、その物事に対して、自ら考えた上でルール決定に参加をして、そして、自らそのルールに、自分で決めたルール及び自分で選んだことに対して、最終的にしっかりと従っていくということは、受刑者にとってとても大事なことのように思いますが、大臣はどう思いますか。

鈴木国務大臣 先ほど来議論をされている社会復帰、これを円滑にしっかりとしていく、そうした観点からも、まさに今お話をされましたような、社会のルールであったり、そういったことを決めるということに参画をするということ、これはルールを守るということを学ぶことと同様、大事だと考えております。

寺田(学)委員 ですよね。受刑者に選挙権を与えるべきか、制限をしていることを、今、制限している状態を国は訴えられているわけですけれども、与えるべきかどうかということ自体を直接的に聞くのはなかなかあれだと思いますが、刑務所内で投票すること、その投票、選挙に参加をすることというものは、社会復帰に有益だとは思いませんか。

鈴木国務大臣 先ほど来申し上げましたように、一般論として申し上げると、社会のルールを決めることに参画をする、そのことについては、社会復帰ということの上で極めて重要だと思います。ただ、その一方で、やはり様々国民感情等々もあると思います。

 そういった中で、やはり、こうした点については、私どもとしては、公選法を所管していないというところもありますので、なかなか具体的な言及をすることは困難でありますけれども、まさに、そうしたことも含めて各党会派において御議論いただくということであろうかと私どもとしては考えているところであります。

寺田(学)委員 係争中というか、裁判をやっている最中ですから、様々昔決められたこの制限自体を所管する政府として、総務省として、その理屈にのっとって訴訟で意見をしているというその立場は十分分かりますが、権利という意味でも当然ですし、矯正行政、社会復帰をできるだけうまくさせる、そして、再犯をせずに、社会の一員として、犯罪を犯さずに、平穏な生活を本人としても、周辺の方々も、社会としても過ごしていくことは、国が望むことだと思いますので。

 私は、その意味でのアプローチとして、受刑者に対して選挙権を制限せずに、受刑者もしっかりと、憲法改正には今の時点でできるわけですから、その整合性のなさも解消する意味で、しっかりと選挙権を与える、制限するべきではないというふうに思いますし、手元に具体的なものはないですが、様々議論されている中において、アメリカだと、逮捕歴のある人の中でも、選挙に参加している人の方が選挙に参加していない人よりも再犯率が低いという社会学者の実証研究もあるということだそうです。

 元々は当然ながら権利ではありますけれども、しっかりと社会に復帰をすることに資するという意味、観点においても、私は、受刑者の投票権を制限するべきではないと思いますし、それを解消するということが必要だと思います。

 国会の中では余りこれは議論されていないことらしい、でしたので、私自身としては、議論するということも大事だと思いますし、与野党の中で、これは同様のという言い方はしませんけれども、被後見人がずっと制限されていたのを、違憲判決が出て、その後、逢沢先生だったかな、あとは、うちの泉とかも、そこら辺が加わった上で、議員立法で改正をしたという経緯もありました。

 今、最高裁の判決を待っている段階ではありますけれども、何か最高裁で示されたという前に、政府としても、そして立法府としても、私は何かしら前向きな行動を起こすべきではないかなというふうに思っています。

 これ自体、答弁するのはなかなか難しいと思うのであれですけれども、この委員会に所属される委員の皆さん及び立法府に所属される皆さんに、是非とも、これを心に留めて、行動を起こしましょうということを呼びかけて、ちょっと時間前ですけれども、終わりたいと思います。

西村委員長 次に、有田芳生さん。

有田委員 有田芳生です。

 今日は、質問のタイトルとしたら、韓国現代史の暗部と、それから入管法の陥穽、つまり落とし穴について質問をいたします。

 日本の政治や社会あるいは文化と朝鮮半島の関係というのは、日清、日露の戦争当時から深い関係があるんですが、戦後だけ捉えても、例えば、一九六一年五月に朴正熙軍事クーデターが起きました。あのとき、KCIA、韓国中央情報部ができて、私はこの法務委員会でも質問しましたけれども、当時、統一教会と深い関係ができていった。そして、日本で統一教会が活動する中で、一言で言えば、反共謀略組織的な活動をかつて行っていたという問題もあります。

 しかし、韓国の社会、政治にとっていえば、例えば、一九六一年の朴正熙軍事クーデター、あるいは全斗煥クーデター、これは、皆さん御承知のように、映画などでも様々な作品ができていて、今年も光州事件についての、ある家族の悲劇が映画になりましたし、これまでも、「タクシー運転手」という優れた作品もありました。

 あるいは、今日のテーマにも関わるんですけれども、「一九八七、ある闘いの真実」、これは、ソウル大学の学生が軍事独裁政権の下で逮捕されて、水責めの拷問に遭って命を失う。そのことが韓国社会に物すごく大きな影響を与えて、百万人の集会デモが起きて、民主化闘争に関わっていくという、そういう歴史があった。

 そのように、韓国の映画文化というのは、直接、民主主義に関わっているということは明らかなんだけれども、そういう中で、日本社会、今にも関わりがあるテーマについて、今日、特に入管にお聞きをしたいというふうに思います。

 朴正熙軍事クーデター、あるいは全斗煥軍事クーデターの下において、日本で暮らす在日コリアンが、祖国を訪問した、留学をした、あるいは仕事をしていたときに、政治犯として逮捕されて、拷問を受けて大変な目に遭うという、そういう歴史が、特に一九七〇年代、八〇年代ありました。

 そのことについて今日はお聞きをしたいんですけれども、まず、そういう歴史的事実があったことについて、外務省は事実として確認されていますよね。

柏原政府参考人 お答えいたします。

 韓国の国内法に基づく公的機関が発出した報告書において、一九七〇年代及び一九八〇年代に、韓国に留学中の在日韓国人がスパイ容疑等で韓国において逮捕され、韓国において不当な形で有罪判決を受ける事案があったということについて記載されているということを承知しております。

有田委員 当時は、そういう裁判が韓国で行われると、日本大使館の方もよく傍聴されていたということですから、今答弁ありましたように、政府としても、そういう在日政治犯、いわゆるスパイ事件があったということは、これは歴史的な事実なんだけれども、今日問題にするのは、そういう在日コリアン、韓国人の方々が日本に暮らしていたときに、特別永住資格があったわけですよね。ところが、裁判があるだけではなくて、逮捕、拷問、刑務所に入らざるを得ないから、資料がありますけれども、多い人だと十年、十四年、十七年と、獄中にいなければならないということがあった。

 そうすると、ある特定の期間に日本に戻ってこれないと、特別永住資格は失われてしまったんですよね。それが今も続いているんですよ、今も、冤罪にもかかわらず。この仕組みを何とか変えなければいけないと、これは与党の方々も含めて、野党も超党派でずっと取り組んできたんだけれども、いまだ解決していないんですよ。

 ですから、まずお聞きをしたいのは、入管に御説明いただきたいんですけれども、特別永住資格というのは、簡単に言うと、どういう仕組みなんでしょうか。

杉山政府参考人 特別永住者とは、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法、いわゆる入管特例法によりまして、日本に永住できる法的地位を有する方々であります。

 具体的には、終戦前から引き続き我が国に在留し、日本国との平和条約の発効により日本の国籍を離脱することとなった在日韓国・朝鮮人及び台湾人並びにその子孫で、我が国で出生し引き続き在留している方がその対象となります。

有田委員 離脱することになったといったって、日本側が一方的に、そういう仕組みにある日突然したわけでしょう。違うんですか。

杉山政府参考人 日本側がしたといいますか、終戦前から引き続き我が国に在留していた方々、それらが、日本国との平和条約の発効により日本の国籍を離脱することとなった、そういう経緯がある方が対象となるという趣旨でございます。

有田委員 離脱することになったじゃなくて、サンフランシスコ平和条約に基づいてそういう措置になったわけでしょう。

 だから、自分たちが意図して、ああ、日本国籍を離脱しましょうという、そういう歴史じゃないじゃないですか。まあ、それが今日のテーマではないので、そういう事実だけをお伝えをしておきますけれども。

 じゃ、特別永住資格があることとないこと、どういう不利益が起きるんでしょうか。

杉山政府参考人 特別永住者につきましては、歴史的な経緯及び我が国における定着性に鑑み、入管法に規定する一般の永住者に比べて、次のような特例措置がございます。

 一つ目は、個人識別情報の提供についてでありまして、一般の永住者は、再入国許可による上陸の際、上陸申請時に個人識別情報を提供する必要があるのに対し、特別永住者は提供が免除されております。

 二つ目は、上陸拒否事由について、一般の永住者については、上陸の際に、入管法五条一項各号に規定する上陸拒否事由への該当性を審査し、該当した場合には上陸を拒否することとなりますが、特別永住者については、上陸拒否事由への該当性の審査は行わないこととされております。

 三つ目は、退去強制事由についてでありまして、一般の永住者の方は、入管法二十四条各号に規定する退去強制事由に該当した場合に退去強制の対象となりますが、特別永住者については、内乱、外患、国交に関する罪等、我が国の重大な国家的利益が侵害されたような場合に限り、退去強制の対象となります。

 四つ目は、特別永住者証明書の携帯義務についてであり、永住者につきましては在留カードを常時携帯する義務がありますが、特別永住者は特別永住者証明書を携帯する義務はないということとなっております。

有田委員 入管の専門的な説明、これを一般の方が聞いてどこまで分かるんだろうかという、いつも法務委員会の難しい議論があるわけですけれども、もっと簡単に言うと、例えば、特別永住資格があった人がその資格がなくなったら、その方が海外へ行ったときに、日本に戻ってくるときに、どういう対応を取らなければいけないんですか。

杉山政府参考人 再入国ということに関しますと、一般の永住の方は、先ほど申し上げたように、個人識別情報の提供が必要ですので、指紋、顔写真等の提供が必要となりますが、特別永住者の場合はそれが必要ない。

 それから、上陸拒否事由について、一般の永住者であれば、その都度審査をすることとなりますが、特別永住者については、その該当性の審査は行わないということとなります。

有田委員 先ほど言いました在日政治犯たち、しかも冤罪であることが分かっている人たちが非常に多い。私が持っている資料だけでも、そういう原状回復をしてもらいたいという人は五十人近く、今もいらっしゃる。中にはもうお亡くなりになった人もいるんだけれども、少なくとも、一九七〇年代、八〇年代、韓国において、軍事独裁政権の下で、百人を超える在日の方々が逮捕、投獄、拷問されていた。

 私は当事者にもお話を聞きましたけれども、これは余談ですけれども、すごい拷問だったんですよね、KCIAも含めてだけれども。拷問、水責めだけではなくて、竹刀で殴る、蹴るのときも、日本語で気合入れるぞと言うんですよね。何で気合入れるぞと言うのか、まあ、日本の植民地にあったから、日本語が話せるようになっていた。しかも、KCIAを含めて、保安司令部も含めてですけれども、特高警察の下で働いていた人たちが多かったものですから、そういう学生たち、あるいは労働者たちを逮捕、投獄、拷問したときに、気合を入れるぞとやられたというんですよね。直接そういうお話を聞きました。

 そういう歴史があるんだけれども、とにかく、二〇一〇年の段階で、ある方は再審無罪になっているんですよ、二〇一〇年に。それが最初のケースなんだけれども、この方は十年間拘束されておりました。

 先ほど特別永住者の御説明をいただきましたけれども、特別永住者が例えば韓国に行ったときに、どのぐらいの期間で日本に戻ってこなければいけなかったんですか。

杉山政府参考人 まず、前提といたしまして、特別永住者の地位を失うケースといたしましては、再入国許可を受けずに出国した場合ですとか、再入国許可の有効期限内に入国しない場合、あるいは日本国籍を取得した場合等が考えられるところでございます。

 御指摘いただいた点につきましては、再入国許可の有効期限内に入国しない場合という点が問題になろうかと思います。

 先生御指摘いただきました一九七〇年頃当時の再入国期間という点で申し上げますと、現在の入管特例法の制定前でございます。現在の特別永住者に相当する協定永住者等という形で本邦に在留する者につきましては、その再入国許可の有効期限は、当時の出入国管理令に基づき、一年とされていたところでございます。

 なお、現行の入管特例法におきましては、特別永住者の再入国許可の有効期間の範囲は六年となっておりまして、在外公館での延長制度を含めると、最大七年となっているところでございます。

有田委員 つまり、今御説明いただきましたように、かつて、一九七〇年代、八〇年代に在日コリアンが韓国に渡って、冤罪だけれどもスパイ容疑で逮捕、投獄、拷問された。そして、長い人では、十年、十七年刑務所に入っていなければならなかった。だから、帰ってこれないんですよ、一年で。帰ってこれないけれども、日本の法律だと、帰ってこれなかったから特別永住許可は失われてしまうわけですよね。

 だから、そういう人たちが冤罪が明らかになって日本に戻ってくるときには、どういう資格で日本に入ってきたんでしょうか。

杉山政府参考人 個別のものについて申し上げるという立場にはないということは御理解いただければと思いますが、そもそも、特別永住者であれば当然再入国ができたものが、特別永住者の資格がなくなるということになりますと、一般の外国人と同じような形で、入国審査を経て入国していただくということになろうかと思います。

有田委員 そうすると、繰り返しですけれども、韓国において冤罪であったことが明らかになった、だけれども、日本に戻ってくるときには一般的な形で入ってこざるを得なかった。でも、日本に入ってくると、それまで持っていた特別永住資格は失われていた。

 その失われてしまったことによって、御本人だけではなく、家族の方々、あるいは子供さんたちにも影響はあったんでしょうか。

杉山政府参考人 これもあくまで一般論ということで御理解いただければと思いますが、先ほど申し上げましたとおり、特別永住者につきましては、先ほど申し上げた日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者という要件と、そのほかにも、そういった者を対象として、出生した子供というような要件がございますので、例えば、平和条約国籍離脱者の子孫というような要件がございますので、そこの、平和条約国籍離脱者というところの要件が外れてしまいますと、前提として、その子孫の方も対象にならないということは考えられるかと思います。

有田委員 そういう不条理がずっと残っているんですが。

 次に、法務大臣にも伺っていかなきゃいけないんだけれども、平成二十一年、二〇〇九年に、出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律、長い長い名前なんだけれども、その附則六十条三項、これはどういう内容なんでしょうか。

杉山政府参考人 御指摘いただきました入管法等改正法附則第六十条三項は、平成二十一年、国会において、衆議院による修正により追加されたものでありまして、その内容は、「法務大臣は、永住者の在留資格をもって在留する外国人のうち特に我が国への定着性の高い者について、歴史的背景を踏まえつつ、その者の本邦における生活の安定に資するとの観点から、その在留管理の在り方を検討するものとする。」というものであると承知しております。

有田委員 そこに法務大臣というのが出てくるんですよ、「法務大臣は、」と。鈴木大臣の時代じゃないので、なかなかお聞きしにくいところもあるんだけれども、「法務大臣は、」が主語になって、「在留管理の在り方を検討する」、法務大臣が検討するになっているんですよ。

 まず、入管当局に伺いたいんですけれども、何を検討したんですか。

杉山政府参考人 平成二十一年改正法の施行後、この附則の規定する、永住者の在留資格をもって在留する外国人のうち特に我が国への定着性の高い者、その範囲ですとか、現行の在留資格制度の下で具体的にどのような在留管理を行うべきかについて、内外の諸情勢を踏まえつつ、検討してまいったということでございます。

有田委員 続いてお聞きしたいんですけれども、その附則六十条三項にある特に我が国への定着性の高い者、これはどういう人たちなんでしょうか。

杉山政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、この附則につきましては、衆議院による修正で規定されたものでございます。

 その当時の国会審議においてどのような議論がなされたかということを挙げますと、終戦当時、朝鮮半島への一時帰郷で本邦を一時的に離れていたために特別永住者の要件に該当しない者、母親が日本人であって、講和条約の前に生まれたが、条約発効後に朝鮮籍である父親が認知をした際に日本国籍を離脱した者、在留期間二十年以上の永住者という例が挙がるなど、様々な議論があったというふうに承知しております。

 入管庁として、こうした議論を踏まえまして、どのような外国人が特に我が国への定着性が高い者に該当し得るのか、一概にお答えすることは困難でありますが、そういった点も踏まえて検討をしてまいったということでございます。

有田委員 そこで、今日のテーマでお聞きをしている問題なんですけれども、冤罪のために再入国許可期間内に日本に戻れなかった方々はどういう位置づけなんでしょうか。

杉山政府参考人 御指摘いただいた附則に関しましては、検討するという附則に基づいて検討してきて、また、検討を継続しているということでございまして、先生御指摘の具体的な対象の方々についてどうするかというのは、結論が出ているというわけではございません。

有田委員 だけれども、何年検討していて結論が出ないんでしょうか。非常に問題だというふうに思います。

 それで、大臣にお聞きをしたいんですけれども、やはり韓国において、まあ、ほかの国なんだけれども、冤罪で日本に戻ってこれなくて、ようやく冤罪が晴れて、名誉は回復されたんだけれども、特別永住資格という、いわゆる原状回復はできていないんですよね、かつても今も。だから、それを何とかしなければいけないという当事者たちの思いもありますし、これは誰が考えたっておかしなことが続いていて、やはり、法律の解釈とか運用で前に進めることはできなかったんでしょうか。

鈴木国務大臣 今御指摘をいただいた点、まさに、それは韓国の再審で無罪となった方のケース、それを念頭に置かれていると思いますけれども、こうした方々に対して特別永住者の地位を認める措置を取る、これは、入管特例法の解釈上、なかなか難しい問題がある、これは当局からも答弁したとおりでありますが、同時に、今御指摘をいただいたように、そうした方々、配慮をしなければならない事情あるいは酌むべき事情、それもやはりこれはあるんだろうと思います。

 そうした中で、これまでもそうした検討は行ってきたと承知をしていますけれども、どういった措置を取ることができるのか、この附則第六十条第三項あるいは附帯決議の趣旨、これも踏まえながら、これはしっかりと引き続きまた検討させていきたいと思います。

有田委員 入管当局に重ねてお聞きをしたいんですけれども、どうしてそういう不条理なことが続いていて、それを解釈や運用で解決できなかったんでしょうか。

杉山政府参考人 一つは、法律上のやはり解釈の限界というところはあるんだろうというふうに考えているところでございます。

 入管特例法は、特別永住者として永住するためには、平和条約国籍離脱者というふうに定めておりますし、先ほど申し上げたように、終戦前から引き続き本邦に在留する者であるということを法律上明記されているということでございます。そうしますと、再入国許可を受けて出国したものの、その有効期間内に再入国しなかった場合には、在留資格を行うこととなりますため、やはり、法律上の引き続き本邦に在留する者に該当するということを、解釈上これを認めるということはなかなか困難であろうというふうに考えているところでございます。

有田委員 そうすると、法律を変えるしかないんですよ。

 これは、日韓議連などでずっと、自民党、公明党の皆さんも含めて、野党も取り組んできた問題で、実は、公明党の遠山清彦元議員がこの問題に熱心に取り組んでいらして、もう既に、二〇一四年段階で法律案を作られているんですよね。公明党さんはもうそのときに党内手続を終えているんですよ。

 ほかの党も検討したんだけれども、平和条約国籍離脱者等地位喪失者に係る日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の特例に関する法律案というのができているので、これは立憲民主党も党内手続をもう既に終えていて、賛成なんですよ。だから、そこを進めていくしかないというふうに思っているんですよね。

 二〇一四年の衆議院法務委員会の質疑の中で、当時の谷垣法務大臣は、遠山議員の質問に対して、どういう措置を取ることができるのか、改めて、最も適切な方法について真摯に検討せよと指示をした、法務当局に指示をしたと。これは二〇一四年五月なんですよね。できるだけ急いで結論を出したいと思います、できるだけ早く結論を出したいと言って、もう十一年たっても困っている人たちがまだいらっしゃる。やはり、日本の政治の、ここは問題点、克服しなければいけない課題だというふうに思っているんですよ。

 ですから、確かに議員立法を成立させなければいけないんだとは思うんだけれども、それをもっと促進させるために、法務大臣のお気持ちを少しお聞かせ願えればなと思うんですが。

鈴木国務大臣 私ども、現行法の施行をする立場からすれば、どうしても、そういった意味ではなかなか、様々限界もあるという中ではありますが、ただ、その様々おっしゃる御指摘の趣旨、これについては理解をするところであります。

 もちろんこれは、超党派、そうした立法府の中での取組ということでありますから、私としてお答えをする立場にはありませんが、しかし、やはりそうした問題の所在、これは谷垣当時の法務大臣の御答弁もあります。私としても、我々としても何ができるのかといった点については検討もさせていただきたいと思いますし、同時に、これは、立法府の方でのお取組、そうしたことについても、引き続き、そうした動きについても、私どもとしても動向を見守らせていただきたいと思っております。

有田委員 今お示ししましたように、法律案というのはもう既に十年以上前からできているものですから、これをやはり日韓議連を中心にしながら各党で十分に検討して、速やかにこれを実現しなければいけないという思いを強くしたということをお伝えして、質問を終わります。

西村委員長 次に、金村龍那さん。

金村委員 日本維新の会の金村龍那です。

 今日は、外国人との共生社会を中心に質問をさせていただきたいと思います。

 今、なかなか日本も経済成長していない、豊かな暮らしってどうなんだ、やはり逼迫した暮らしの中で鬱屈した思いを抱えている人も非常に多い時代が続いているなという中で、他国籍、外国籍の人との共生というものの中で、我々としては、絶対にヘイトの側に偏ることなく、しっかりとある種人権意識を持って、共にその地域で生活者としての視点を大切にして共生社会をつくっていくということが最も大切であることは前提であって、加えて、日本国として、外国人を受け入れた中で日本の成長をどうつくっていくのか、そういった新しい定義とまではいきませんが、やはり、しっかりとした方向性を持ってこれからの時代を切り開いていく必要があるんじゃないかなと思っています。

 その中で、我が国として、いわゆる外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ、一部変更したものが令和六年度に改めてお示ししてあります。その中で、三つのビジョンと中長期的な四つの重点事項とあるんですけれども、つまるところ、外国人側から見ても、そして日本人側から見ても、やはり言葉、言語の問題が最も壁になりやすく、そして、意思疎通が難しいことによってなかなか共有や思いをしっかりと形にしていけない、障害になっていると思っています。

 その上で、まず政府参考人に質問をさせていただきます。

 このロードマップの中で、やはり一番初めに掲げてあるのが日本語教育に対する取組となっておりますが、現在の外国人の皆様に対するこの日本語教育についてどのような見解をお持ちなのか、お答えください。

杉山政府参考人 政府におきましては、令和四年六月に決定した外国人との共生社会の実現に向けたロードマップにおきまして、目指すべき外国人との共生社会のビジョンとして、安全、安心な社会、多様性に富んだ活力ある社会、個人の尊厳と人権を尊重した社会の三つを掲げるとともに、取り組むべき中長期的な課題として、円滑なコミュニケーションと社会参加のための日本語教育等の取組を含む四つの重点事項を掲げ、関係省庁が連携して各種施策を進めているところでございます。

 御指摘いただきました日本語教育に関する施策といたしましては、外国人のニーズに沿った日本語教育の提供、外国人の子供の母語や母文化に配慮した日本語指導体制の構築等に関する様々な施策が盛り込まれているところでございます。

金村委員 留学生向けの日本語教育と、実際に外国人で日本に来られてから生活者として必要な日本語教育というのは、少しレベルも違いますし、また機会の提供も更に必要になってくると思うので、丁寧な配置が必要なんじゃないかなと思っている中で、とりわけ外国人の立場になって考えたときに、例えば、成人して自らの意思で日本に来た外国人、そしてその子供たち。

 つまり、治安の面で見ていくと、御自身の意思で来た父母世代というのは、ある種、そういう苦労があったとしても、自分の意思で来ているわけですから、その困難と向き合えばいいと思うんですけれども、御子息、子供たちについては、親の都合で一緒に来た人もたくさんいるわけですね。そういう中で、日本語教育が行き届いていかない、例えば、言語によるコミュニケーションが地域の中で果たせないとなると、結果として、少し横道にそれてしまったり、徒党を組んでしまったり、また犯罪行為に手を染めたりという、入口が、私は言語に、言葉の問題にあるんじゃないかなと思っていまして、改めて文科省にお伺いしたいのが、外国人の子供たちに向けた日本語習得に向けた支援、今地域の中でどのように展開しているのか、教えてください。

橋爪政府参考人 お答え申し上げます。

 日本語指導が必要な外国籍の児童生徒は、令和五年度に約五・八万人ということで、約十年間で二倍に増加しておりまして、支援の充実ということが求められていると認識してございます。

 この外国人児童生徒等の日本語習得に関しまして、文科省では、日本語指導のための特別の教育課程、これを制度化いたしますとともに、日本語指導に必要な教員定数の着実な改善、それから、日本語指導補助者や母語支援員の配置など、外国人児童生徒等への支援に取り組む自治体に対する支援などを行っているところでございます。

 引き続き、日本語指導が必要な外国人児童生徒等に対する支援の充実に向けて取り組んでまいります。

金村委員 私の地元川崎でもそうなんですけれども、なかなか公教育の中でのみ込むというのは正直難しい側面もあると思いますので、サポート体制を強化していただきたいと思いますし、一方で、私は、二〇一三年から二一年まで障害児支援の事業所を経営した中で、あるときから外国人のお子様がすごく施設に通う機会が増えたんですね。その中で、それが発達における偏りなのか、それとも言葉による、習熟度が上がっていかないことによって子供がかんしゃくやパニックを起こしているのかというのは、これは非常に難しいんですね、判別が。

 だから、そういう意味では、言葉の問題というのは、世代を超えてずっとつながっていく。子育ての中でも、親の言葉と地域の言葉が違えば子供は混乱するわけですから、子供たちへの日本語習得に向けたサポートというのは更に力を入れて取り組んでいただきたいと思います。

 その上で、もう一問、文科省にお伺いしたいんですけれども、いわゆる日本語教育機関の認定というのが、一昨年だったと思うんですが、昨年かな、法案が成立したと思います。

 その中で、いい、良質な日本語教室ですよというのが認定され、そこで認定された日本語教員が日本語をしっかりと教えていくというのが、今、日本の中で広がりを見せていると思うんですけれども、実際に、今、都道府県の中でどのぐらい配置されていて、実際にその日本語教室を通して外国人がどのぐらい受講されているのかという受入れ状況を教えてください。

橋爪政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国に在留する外国人の方が、日本人とともに円滑に社会生活や日常生活を送ることができるように、日本語教育の環境を整備するということは重要でございます。

 文部科学省では、昨年度に、留学生や就労者、生活者に対しまして日本語教育を提供する、先生も御指摘にありました、一定の質の担保された日本語教育機関を認定する制度、それから、認定日本語教育機関における日本語教員の国家資格制度を創設いたしまして、日本語教育の質の維持向上に取り組んでいるところでございます。

 状況でございますけれども、令和六年四月一日から制度が開始されまして、令和六年度は、今、計四十一機関が認定日本語教育機関ということでなってございます。

 それから、文部科学省といたしましては、そういったことに加えまして、地方自治体による地域における生活者としての外国人に対する日本語教育の総合的な体制づくりへの支援等も行っているところではございます。

 こうした施策を通じまして、引き続き、外国人の方々との共生社会の実現に向けた日本語教育環境の整備にしっかりと取り組んでまいります。

金村委員 これは文科委員会でも僕は質問したんですけれども、やはり補助とか助成とかサポートがないと、結局、いい日本語教室ですよという認定を受けても、通う外国人の側のハードルが下がらなければ、結局はいい日本語教育につながらないと思いますので、現場の声を聞いて、更なる知恵をここからつくり出していただきたいなと思います。

 そして、言葉の問題ということは、共生社会をつくり上げる中で全員が共有できる課題だと思うんですけれども、その上で、言葉の問題があるということは、やはり対面でしっかりサポートしていく必要が共生社会をつくる上で外国人にとっては必要だ。

 確かに今、ホームページも充実して、母国語で検索できて、そして、母国語で自分の、例えば困難や壁をきちんと解消するアンサーを出してくれたりするような充実は見られるんですけれども、結局は、地域社会の中では、対面でしっかりコミュニケーションを取って、その地域における課題を解決していかなければならないという意味では、今般創設された外国人支援コーディネーター、これは物すごい大切だと思うんですね。

 先日、子育てケアマネという、子育てケアマネを求めようなんていうことがSNS上で発信されて、少し炎上するきっかけもあったんですけれども、やはり対面で支援する価値というのは、外国人との共生社会という意味では非常に大きいと思うんですけれども、今、外国人支援コーディネーター養成制度、これは第一期は終わっていると思うんですけれども、今の状況を教えてください。

杉山政府参考人 御指摘いただきました外国人支援コーディネーター養成制度といいますのは、外国人の生活上の様々な困り事に関する相談に応じ、適切な連携先につないで、解決まで導く相談対応支援及び外国人の方々の生活上の困り事の発生を予防するための情報提供等を行う予防的支援を担う専門人材の育成、認証を目的としているところでございます。

 令和六年度からこの外国人支援コーディネーターの養成研修を開始しましたところ、令和六年度中に研修を修了した五十二名を外国人支援コーディネーターとして認証をいたしました。

 当面の目標といたしまして、令和八年度までに三百名程度の外国人支援コーディネーターの育成、認証を目指しており、令和七年度はこの養成研修を二回実施することとしております。

 出入国在留管理庁におきましては、外国人支援コーディネーターが生活上の困り事を抱える外国人を適切に支援し、その役割を十分に果たせるよう、育成や認証にしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

金村委員 これはすごくいい取組だと思うんですけれども、まず数がまだ全然足りていないと思うんですね。

 結果として、例えば同じ国籍の外国人が一定の地域にお住まいになって、そして、例えば治安が悪化するようなことがあってから介入すると、もっと負担は増えているわけですね。そうであれば、居住した段階、共生社会がスタートした段階からこういったコーディネーターが地域全体をしっかりとケアしていけると、そういった不測のことが起こりにくくなる。

 まさに外国人を受け入れる側にとっての一定の負担というものはやはり存在するわけで、そこを解消していくためには、この外国人支援コーディネーターがもっと増えていかなければならないと思いますので、より強化をしていただきたいと思います。

 その上で、今、外国人を受け入れている地方公共団体に向けて、いわゆる環境整備交付金というものが存在していると思います。私は、これは一律な制度ではなくて、その地方公共団体における外国人の割合とかそういうもので、上下ですね、交付金の額をしっかり変えていった方がいいと考えているんですが、実際に今、地方公共団体に向けた交付金の活用状況を教えていただけますか。

杉山政府参考人 出入国在留管理庁では、在留外国人に対する情報提供や相談対応を多言語で行う一元的相談窓口の設置、運営に取り組む地方公共団体を、御指摘いただきました外国人受入環境整備交付金で財政的に支援しているところでございます。令和六年度は、二百五十九の地方公共団体に対してこの受入環境整備交付金の交付決定を行いました。

 なお、出入国在留管理庁では、適宜入管職員を相談窓口に派遣して相談対応に当たったり、相談員への情報提供や研修を行ったりするなど、財政支援以外の取組等も行っているところでございます。

 入管庁におきましては、引き続き、この外国人受入環境整備交付金による支援や相談員への情報提供等に取り組んでまいりたいと考えております。

金村委員 これは我が党の藤田委員も重ねて質問してきましたが、やはり、外国人との共生、外国人をどう受け入れていくかというところで、国は制度をもちろんつくって、その制度に合致した人たちが日本に来ているわけなんですが、その後というのが、どうしても地方公共団体だけが対応している。国が一括して、直轄して対応することが、今の制度上、それは認められていないというか、やるべきことに入っていないと思いますので。

 そういう意味では、地方公共団体全てを対象に、一つの色で見るんじゃなくて、やはり、特定の地域に特定の外国人がすごく偏っている事実というのは既に存在しているわけなので、しっかりその地方自治体に向けて、その地方自治体にとって満足度の高い交付金になるような制度設計をいま一度考えていただきたいと思います。

 そして、いわゆる外国人の受入れの中で、高度人材というワードをよく我々は使うと思います。特定技能や技能実習というのが従来あって、そして高度人材の対象となる外国人人材をしっかり日本は受け入れて成長を果たしていくんだとか、通り一遍のそういうコミュニケーションというのはよくあるんですけれども、私単位でいえば、高度人材というのはどの人を指しているのかというのも、実際には既に把握はしておりませんでした。

 今、高度人材や未来創造人材ということで、実際に専門性を持った人材、さらには、若くて有望な一定の学歴や経歴を持った人を、そういった在留資格をもって日本が受け入れている実態というのは既にあると思うんですけれども、この高度人材や未来創造人材というのはどのぐらい活用されているのかというのをお聞きさせてください。

杉山政府参考人 これまで、高度な能力を有する外国人の受入れを促進するため、平成二十四年五月から高度人材ポイント制を導入いたしまして、在留資格、高度専門職を付与する者等に対しまして、出入国在留管理上の優遇措置を実施してきたところでございます。

 また、これまでのポイント制とは別に、令和五年四月二十一日から、新たな制度として、学歴又は職歴と年収が一定以上の者にも高度専門職の在留資格を付与する特別高度人材制度、いわゆるJ―Skipと呼んでおります、それから、優秀な海外大学の卒業生に本邦での最長二年間の就職活動や起業準備活動を特定活動の在留資格を付与して認める未来創造人材制度、J―Findと申しておりますが、の運用を開始しているところでございます。

 これらの制度の創設以来、高度外国人材の在留者数は増加傾向にあり、令和六年十二月末現在で、在留資格、高度専門職での在留者数は二万八千七百八人であります。また、未来創造人材制度を活用しての在留者数は、令和六年六月末時点で六百十五人でございます。

 これらの新たな制度によりまして高度人材の受入れが更に進み、我が国の学術研究、経済産業にイノベーションがもたらされることで、我が国の経済成長が期待できると考えられるところでありまして、引き続き本制度の周知を行い、更に高度外国人材の受入れが促進されるように努めてまいりたいと考えております。

金村委員 私が地域で活動していると、外国人の存在というのは、母数でいうと大体三年間ぐらいで一・五倍ぐらいに増えているなという体感はあります。私の選挙区の川崎は現場仕事の方も多いですから、そういう意味では、かつてでいえば技能実習や特定技能なんかで来られている外国人も多いんですけれども、日本という立場で見たときに、この高度人材ももっと受入れが必要ですよね。

 一方で、日本で技術を学び、そして母国に帰ることも含めて選択肢となる技能実習や特定技能も必要ですけれども、実は、中間層というか、我々が普通に目にする中で外国人と共同で仕事をするとか、そういう中度程度の外国人の人材を増やしていくことが日本にとっては一番いい選択肢なんじゃないかなと思ったりするわけなんです。

 そうなると、在留資格で見ると、技術・人文知識・国際業務、この在留資格が、私が考える、仮に、高度人材があって、これから仕事の技術を学びますよという人たちがいるとすれば、中くらい程度の、日本の中でしっかり仕事もしていけるし、高度人材ほど専門性もない、そういう中度程度の人がどのぐらい受入れが増えているのかというのを少しお示しいただけますか。

杉山政府参考人 中度程度というようなことになりますと、評価になりますので、なかなかお答えはしづらいのでございますが、先生御指摘いただきました在留資格、技術・人文知識・国際業務という点でいいますと、学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする活動、外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事する活動をしようとする場合に認められる在留資格でありまして、この在留資格、技術・人文知識・国際業務を持って在留する外国人は増加傾向にありまして、令和六年十二月末現在の在留者数は四十一万八千七百六人となっております。

金村委員 中程度という表現がどうなのかというのは議論があると思いますけれども、一番大切なのは、外国人を受け入れていくという方向性、方針の中で、あくまでも自分が日常で携わらない場で外国人が増えていくこと、ともすれば労働者として受入れをしていくんだというだけで外国人の存在を捉えてしまっては、共生社会は実現できませんし、また、外国人も、そこで働く日本人も、満足度は上がっていかないと思うんですね。

 だから、そういう意味では、各層に外国人の受入れをしっかりとしていって初めて共生社会につながると思っていますので、在留資格を、必要なものがあれば追加すればいいと思いますし、一方で、受入れをどう緩和していくのかというのも議論していただきたいと思います。

 そして、我が党の柳ヶ瀬議員の質問で、永住許可と帰化要件というのが少しマスコミの中で注目をいただきました。

 これは、単純比較は、永住許可と帰化要件というのは全く異なるものだという認識を私は持っているんですけれども、改めて、永住許可と帰化要件の関連、違いがあるなら違うものなのだということも含めて明らかにしていただきたいんですけれども、お願いします。

杉山政府参考人 まず、私から永住許可について御説明させていただきます。

 永住許可は、外国人が永住者の在留資格への変更を希望する場合に、法務大臣が与えることができる許可でございます。

 永住許可を受けた外国人は、永住者の在留資格により我が国に在留することとなり、在留活動や在留期間に係る制約を受けなくなるが、退去強制手続や在留資格の取消しの対象とはなり得ます。

 なお、入管法上、外国人が永住許可を受けるためには、原則として、素行が善良であること、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、日本国の利益に合すると認められることの要件を満たす必要があります。

竹内政府参考人 帰化の許可についてお答えをいたします。

 帰化許可制度は、日本の国籍を有しない外国人からの申請に対して、日本国民たる資格という包括的な地位を与えるものでございます。

 帰化の申請がされた場合における帰化の許否の決定は、国籍法第五条第一項に定められている帰化条件の充足の有無を中心としつつ、個別の事案における具体的な事情を踏まえた上で、日本国籍を与えることが適切か否かという観点も踏まえて、総合的な判断に基づいて審査を行っているものでございますが、国籍法五条には、引き続き五年以上日本に住所を有すること、十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること、素行が善良であること等の要件が、六つの要件が設けられているところでございます。

金村委員 これは、少し話題になったのが、五年、十年の要件のところですね。帰化要件は五年間引き続き日本に住んでいる人、永住許可は十年、五年と十年だけを単純比較して、五年の方が緩いじゃないか、だから帰化ってこんなに緩いんじゃないかみたいな論調になると非常に危ういなと思って、あえて確認をさせていただきました。それぞれ、制度ができた理念とか根っこの部分で違いがあるので、今の段階は、一緒くたにして議論することは危ういと思っています。

 しかし、一方で、これから日本として外国人を受け入れた中で、どう成長をつくっていくのか、どう安心、安定をつくっていくのかという大きな議論をしていくと、やがて、永住許可や帰化要件というものも議論の対象になるかもしれませんので。

 まず、大臣にここでお伺いさせていただきたいんですけれども、これから日本が外国人の受入れをして、どう成長をつくっていくのか、そして、外国人の皆様と我々自身が共生社会を実現し、そして、ある一定程度までは共に分かち合い、しっかり納得して、日本の中で外国人も一生を終えていく、そういうことが十分想定されるんですけれども、さらに、そこから、これまでのお題目だけではなくて、今の行政のいろいろな窓口がある中で、例えば、法務省はここを管轄する、文科省はここを管轄する、内閣府はみたいな、多岐にわたっているものを一つにまとめていく作業がなければ、やはり次の時代をつくることは少なくとも僕はできないと思っているんですけれども、その考え方について、大臣、お示しいただけますか。

鈴木国務大臣 まず、現在のところの外国人材の受入れということで申し上げれば、我が国の経済社会の活性化に資する専門的、技術的分野の外国人、ここは積極的に受入れをする。同時に、専門的、技術的とは評価されない分野の外国人の受入れについては、社会のニーズ、経済的効果や雇用全体への影響、社会保障等の社会的コストなどの幅広い観点から、国民のコンセンサスを踏まえつつ検討する、これが基本の方針であります。まさに、様々な在留資格、そこによっているものであろうと思います。

 今後どうしていくのかということでありますけれども、やはり我々としても、これから人口が減少していく、そうした推計がある中であります。そうした中にあって、こうした人口動態あるいは生産年齢人口の推移、これを踏まえて、どう経済的に考えるのか、この観点は非常に大事だろうと思います。

 ただ、同時に、各産業における人材確保のニーズ等々の産業政策の視点ということもあろうと思いますし、また同時に、税、社会保障への影響であったりとか、あるいはコミュニティーへの影響、いわゆる集住というところもありますから、そういったことをどう考えていくのか。あるいは、治安、安心への影響ということ、こういったことも総合的に考えていく必要があると思っております。

 まさに、そういった中にあって、これは様々御議論も今いただいておりますので、必要なそうした様々な観点から、政府全体で多角的な観点からの検討を行っていく必要があると思っておりますし、まずは、先ほど、各省にまたがるところについてどうするんだという話もありました。法務大臣の私の下で、経済学、社会学、あるいは諸外国の外国人受入れ政策に精通をした有識者の方々から様々な御意見をお聞きする私的な勉強会という形で今検討しておりますが、将来の外国人受入れの在り方も含め、しっかり検討していきたい。

 先ほど、ヘイトになってはいかぬということもおっしゃっていました。同時に、諸外国を見たときには、日本以外のG7においては、かなりこの外国人の問題、非常に大きな、深刻な課題となっています。まさに、そういったことを幅広く考えつつ、最適な解を模索していきたいと考えております。

金村委員 負担ばかりが目につくのではなくて、成長のためなんだ、それをしっかりと発信していくことが必要だと思いますので、今後もよろしくお願いします。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、小竹凱さん。

小竹委員 国民民主党の小竹凱です。

 本日、質疑の機会をいただき、ありがとうございます。

 質疑に入りたいと思います。

 昨日、五月十五日は改正刑訴法の一部改正部分の施行日でありまして、その事案に絡むようなところも含めて、今日は質問をさせていただきたいというふうに思います。

 例を挙げるこの事件の概要について説明しますと、台湾で発生した事件で、二〇二四年の八月から十月にかけて、二人の男性、フィットネストレーナーが同僚から依頼されて二人の六歳未満の未就学児の世話をしていた際に、しつけと称して反復的な虐待を行っていたという事案がありました。

 これを、現地の地方検察署は二人を傷害罪及び強正罪などで起訴しまして、また、地方裁判所は、二人に対して保釈金を設定し、居住地の制限と定期的な検察報告を義務づけておりました。しかし、保釈された被告の一人は今年の三月末の公判に無断で欠席し、調べた結果、既に海外に出国していたというようなことがありまして、これを受けて、裁判所は、保釈金を没収し、被告に対して指名手配を行い、外交部領事事務局に対して被告のパスポートの無効化を要請したというようなことがありました。

 この例、まさに、今回施行された改正刑訴法の、公判期日等への出頭及び裁判の執行を確保するための規定の整備は、重大な事件の被告人が逃亡するケースに対応できるようにということだと承知しておりますが、これを順次ちょっとお聞きしていきます。

 まず、保釈時についてですが、日本において保釈が許可された際に、被告人のパスポートを弁護人が一時預かるケースと、またそうでもないケース、過去の事案を見てもあるのですが、これはどのように判断されているのでしょうか。

平城最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 被告人の保釈を許可するに当たっては、住居を制限するなどの保釈条件を付すことができることになっております。最高裁として全てを把握しているわけではございませんが、例えば、被告人が外国人であるケースにおいて、御指摘のような条件が付された例があるということは承知しております。

 保釈条件につきましては、被告人の逃亡等を防止し、出頭を確保するために必要かつ有効であるか否か、こういう観点から、保釈についての当事者双方の意見や個々の事案における具体的な事情を踏まえて定められているものと承知しておりまして、御指摘のような条件を付す一般的な基準があるかと言われますと、そういうわけではないというふうに理解しております。

小竹委員 ありがとうございます。

 それでは、今回新たに施行される、拘禁刑以上の刑に処する判決を受けた者に係るいわゆる出国制限制度、これは具体的にどういうことを行う中身になっているのでしょうか。その制度の説明をお願いいたします。

森本政府参考人 お答えいたします。

 令和五年五月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律のうち、拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告を受けた者等に係る出国制限制度に関する規定が、昨日、令和七年五月十五日でございますけれども、施行されました。

 具体的には、拘禁刑以上の刑に処する実刑判決の宣告を受けた者等の国外逃亡を防止し、その刑の執行を確保するため、刑事訴訟法上、拘禁刑以上の刑に処する実刑判決の宣告を受けた者は、裁判所の許可を受けなければ出国してはならず、当該許可を受けないで本邦から出国しようとした場合等においては、裁判所は勾留等の決定をすることができることとなりました。

 また、出入国管理及び難民認定法上、刑事訴訟法の規定により出国制限を受けている者が出国確認の留保の対象に加えられたことによりまして、その者が出国しようとした場合、入国審査官による出国確認の手続を一定時間留保し、その間に関係機関が所要の措置を取ることができるようになったものでございます。

 法務省といたしましては、同制度の趣旨を踏まえた適切な運用がなされるよう努めてまいりたいと考えております。

小竹委員 昨日始まったばかりですので、制度の運用をお願いいたします。

 今回の台湾の事件では、国外逃亡者に対して指名手配やパスポートの無効化が行われました。日本において、仮にですけれども、被告人に海外逃亡された場合にパスポートの即時無効化をすることは可能なんでしょうか。教えてください。

町田政府参考人 我が国におきましては、警察等の関係機関から逮捕状を発付した旨の通知及び旅券返納命令に係る要請がなされました場合、旅券法に基づきまして、返納期限を設けて旅券返納を命じることができます。期限までに返納されない場合は、法の規定により、当該旅券は失効いたします。

小竹委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間の関係で一問省略しますけれども、被告人に対しても、いわゆる赤手配を出すことも可能と承知しております。

 また、日本には、犯罪人引渡条約締結国がありまして、国外、犯罪人が海外にいる場合、基本的にはこの条約に基づいて引渡しが行われるというふうに承知しておりまして、実際に、逃亡犯罪人の引渡しについて、運用実績を是非教えていただきたいと思います。

森本政府参考人 お答えいたします。

 我が国は、適用可能な逃亡犯罪人引渡条約があれば、それを根拠として逃亡犯罪人の引渡しを求めておりますが、適用可能な条約がない場合でありましても、国際令状に基づきまして、外国に逃亡犯罪人の引渡しを求めております。

 平成二十六年から令和五年までの十年間におきまして、我が国が外国から引渡しを受けた逃亡犯罪人の人数は、合計六名でございます。この六名のうち、逃亡犯罪人引渡条約に基づいて引渡しを受けた人数は五名となっております。

小竹委員 ありがとうございます。

 日本のこの引渡条約というのは、条約締結国自体がそもそも非常に少ないために実務上の限界が大きいと承知しています。

 一方で、短期間の滞在で日本へ出入国する場合は、短期滞在ビザ申請手続が不要な国が現時点で約七十か国あると認識しておりまして、これらは信頼ある国同士という関係で見ることができます。

 一方で、犯罪人の逃亡、不処罰を許す法的空白にもなされておりまして、こういったこともあって今回の施行になったと思いますが、もちろん、ビザ免除国は軽い行政措置であるため、法制度の厳密な整合性を求める引渡条約とはそもそもの体質が異なることは認識した上でお聞きしますが、日本の犯罪人引渡条約を結んでいないビザ免除国に対して重大な刑事被告人が逃亡した場合、日本は、引渡しはあくまでもお願いすることはできますが、請求権ということではなくて、相手からすれば義務ではないというのが現状です。

 こうした状況を受けて、ビザ免除国と条約締結を優先して検討すべきと考えますが、この点についての見解を伺います。

濱本政府参考人 お答え申し上げます。

 いかなる国と犯罪人引渡条約を締結するかということでございますが、我が国としましては、相手国との犯罪人引渡しの具体的必要性の有無、それから、相手国の刑事司法制度が適切に運用されることにより我が国から引き渡された者が不当な扱いを受けることがないかとか、そういった点を、諸般の事情を総合的に勘案して判断してきているところでございます。

小竹委員 ありがとうございます。

 双方の法体系であったり、いろいろな絡みがありますが、日本が条約締結国を拡大できていない主な原因の一つに、特に欧州諸国との間で交渉が進まない一因として、日本の死刑制度というのが度々大きな障壁となることも言われています。

 この死刑の在り方については、日本では一定の支持がされている中で、世界的にはちょっと問題視されているという、これはまた別の議論をしたいと思いますが。

 こうした中で、注目すべき手法が死刑回避の誓約でありまして、これは、まさに死刑制度を有する国が、引渡しされた者に対して死刑を科さないことを明言して、身柄引渡しを求めるための外交的な、法的な保障であります。実際に、アメリカなどでは、イギリスやドイツなどの国々から死刑を求刑しないことを誓約することで引渡しを受けたという事例が複数存在します。

 日本はこれまで死刑回避の誓約を活用した具体的な事例というのが公表されておりませんが、こういう柔軟な手法も活用して引渡条約の拡充を図ることが重要ではないかと考えておりますが、死刑制度を理由にこういったことが進まない現状に対しての、今後の拡充していくべきという検討状況があるのか、また、国際的な司法協力体制をどのように構築していくのか、政府の戦略的な取組がありましたら、教えていただきたいと思います。

森本政府参考人 我が国が外国に対して逃亡犯罪人の引渡しを求めるに当たりましては、相手国が法定刑として死刑が定められている犯罪についての引渡しに消極的な立場を取る国でありましたとしても、引渡しの条件を合意することなどによって相手国から引渡しを受けられることもあるため、死刑制度が存在することが逃亡犯罪人の引渡しにとって直ちに支障となるとは考えておりません。

 その上で、引渡しの条件は相手国の意向を含む各事案の具体的事情に基づいて関係機関において適切に判断すべきものでありまして、その内容について一概に申し上げることは困難でございますが、引渡しを受けることに向けて我が国として行うことがあり得ることといたしましては、例えば、引渡犯罪の内容、法定刑、あるいは同種事案の裁判例における量刑の傾向に関する情報などの客観的な状況を踏まえた上で、そういったものをお示しするなどして、当該事案が死刑相当事案であるか否かの判断に資する資料となると考えられますが、そういったものを提供することなどが考えられるところでございます。

 法務省といたしましては、引き続き、個別の事案に応じまして、相手国の当局と十分に協議をいたしまして、相手国の協力を得られるように努めてまいりたいと考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 死刑の在り方に関しては議論はあると承知していますが、アメリカなどでの例はこの死刑回避の誓約をすることによって引渡しが可能になったというケースがあるので、一つ、ここがネックになっているというのは間違いないのかなというふうに考えております。

 次のテーマに移りますが、家族法の改正、民法改正、共同親権の実現に向けた取組について伺いたいというふうに思っています。

 来年の五月までの施行が決まっておりますが、私も前回、前々回と質疑させてもらった様々な件を、QアンドA、法務省の方で作成されているというように承知しておりますが、この進捗状況といいますか、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 今御指摘のQアンドA形式の解説資料につきましては、民法改正法の趣旨、内容を十分に理解していただけるように、現在、関係府省庁等連絡会議において関係府省庁等と意見交換を行い、法案審議の過程あるいは今国会で御質問いただいた、そうした点のほか、私ども法務省あるいは関係府省庁に対して寄せられた御疑問等も踏まえながら、なるべく具体的な場面を想定したようなものとなるように検討を行っているところであります。

 この解説資料につきましては、先般、四月の二十二日に開催をされました関係府省庁等連絡会議幹事会の第三回会議におきまして、たたき台段階のもの、これを資料として配付をした上で、これは現在、関係府省庁と検討、調整の途上にある、そういった状況であります。この四月の前回会議後も関係府省庁等との間で検討、調整を継続しているところであります。

 今後、いつの時点でどの段階の解説資料を公表、公開するか、公開することができるかという点については未定でございますが、いずれにいたしましても、民法改正法に関する周知、広報、この重要性は極めて高いものがありますので、委員の問題意識も踏まえまして、スピード感を持って施行準備、しっかりと取組を進めていきたいと考えております。

小竹委員 ありがとうございます。

 このQアンドA、まさに具体的な中身を詰めていくということだと思いますが、現場省庁だけでなくて、パブコメといいますか、皆さんの声も是非反映させた方がいいと思いますので、アジャイル開発のように、まさに壁打ちを何回もして、第一弾、第二弾と、どんどんどんどん、PDCAでもないんですけれども、回していくことが重要ではないかと思って、いきなり完成までを求めてどんと出しても、なかなか、家族観のことに答えなんて、そもそも、なかなかないところもありますから、そういったところは何回も、第一弾、第二弾と出していけばいいのかなと私は考えております。

 このことに関して言いますと、共同親権ということで、推進派の方にもよくあるのですが、私としては、親同士の綱引きを、どちらかに加勢するような考えではなくて、家族観の中で、真ん中に子供がいて、それを共同で養育していくことがいかに子にとっての利益、重要性かということを軸をぶらさずに議論をしたいなといつも考えているんですが。

 私の周りでも、今は三組に一組が離婚する時代ですので、いわゆる片親で育ったという方は結構珍しくないんですね。そんな中で、そんな方々に直接聞いたりSNSとか町中で聞いたりしますと、よくある言葉として、昔は同居親、同じ住んでいる親からいろいろと相手のことを刷り込みされて思ったけれども、自分が大人になって両親の方を見ると、どっちもどっちだったなということをよく言うんですね。これは結構重要な指摘だと思っていまして、同居親の方にばかり、どうしても愛情が乗ってしまう分、冷静な判断ができないかもしれないんですけれども、実際、大人になって考えてみると、両方に是も非もあったということを判断できるケースだと思っています。

 子供が思想形成されていく中で、様々な考え方、価値観に関わるというのは非常に重要な点だと思っていまして、例えば、憲法十九条の部分でいきましても、思想、良心の自由、又は思想形成プロセスの自由なども含まれていると考えているんですが、現実的には、離婚とか別居で片方の親になかなか直接に会えないというようなケースが少なくありません。

 こうした中で、こういう状況下にある子供たちは、本来であれば、それぞれの価値観、思想、生き方に触れながら人格を形成していくことが重要だと考えておりまして、言い換えれば、そういった様々な価値観に触れられないということも、一つ、子供にとってのリスクでもあると私は考えます。

 一方の親との接触が閉ざされてしまった子供の思想的な影響に対してのリスク、また、思想を形成していくプロセスでの自由との関係性というのはどういう見解をされているのか、是非お聞きしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の憲法十九条でございますが、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」と規定をしておりまして、一般的には、国民がいかなる思想、良心を持とうとも、それが内心にとどまる限り、国家権力から不利益を課されたり、特定の思想を抱くことを禁止されたりしない権利を保障するものと理解をされております。

 お尋ねの、一方の親により他方の親と子供との接触が絶たれたという場面でございますが、私人である親と子供との関係が問題とされているという場面でございまして、憲法十九条との関係について直ちにお答えすることは困難ではございますが、一般論といたしましては、父母の別居後や離婚後も、適切な形で、親権者とならなかった親と子との交流の継続が図られることは、子の利益の観点から非常に重要であると認識をしております。

 令和六年民法等の一部を改正する法律でございますが、こうした観点から、婚姻中の父母の別居時における親子交流に関する規定や、家庭裁判所が当事者に対し親子交流の試行的実施を促すための規定を新設しましたほか、父母は子の人格を尊重してその子を養育しなければならないこと、父母は子の利益のため互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明確化する規定を設けたところでございます。

 民法改正法の趣旨及び内容が広く理解されるように、委員の問題意識も踏まえながら、引き続き改正法の周知、広報に取り組んでまいりたいと考えております。

小竹委員 とにかく子供の利益、子供を真ん中にして、様々な愛情に育まれながら成長できることを切に願いまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 同性パートナーとの婚姻の平等保障について質問をさせていただきます。

 まず、確認ですけれども、多数決の原理では救済することが難しい少数者の人権をも尊重、擁護することが司法の責務であるということを、二〇二五年三月七日、名古屋高等裁判所の判決では繰り返し指摘をしています。

 これは司法だけの責務と考えるのかという点で、少数者の人権を尊重、擁護する、このことは政府、国会の責務であるというふうに考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 少数者の方々の人権の尊重、擁護、ここにつきまして、政府といたしましては、全ての方々が生きがいを感じて、尊厳を損なわれることなく、多様性が尊重される包摂的な社会、この実現、これは極めて重要であると考えております。まさにそうした趣旨かと思います。

 同時に、国会ということでありますと、これは立法府のことでありますので、私の方からそこについて御答弁することは差し控えさせていただきたいと思います。

本村委員 少数者の人権の尊重、擁護というのは、国会においてもその責務であるというふうに考えます。

 今日、資料を、名古屋高等裁判所の判決そして福岡高等裁判所の判決、二つ抜粋して出させていただいております。

 今年三月七日の名古屋高裁の判決は、同性パートナーとの法律婚の制度がない現行の制度は法的な差別取扱いであって、憲法十四条一項、憲法二十四条二項に反していると判断をしております。判決の中では、法改正をこうすればできるということも書かれております。例えば、民法の婚姻の効力に関する諸規定について、夫婦を婚姻の当事者、夫又は妻を婚姻の当事者の一方、こういうふうにすれば膨大な立法作業も必要となるとは言えないということも書かれている判決です。

 私は、昨年の三月二十七日の質問の中で、この同性カップルの婚姻の平等保障がない中で、自分の存在意義を失ったり、あるいは喪失感にさいなまれている、そういう当事者の方々のお声や判決を紹介させていただきました。この苦難をなくすためにも制度を改善するべきだということを質問させていただきまして、その当時の小泉法務大臣が、国民的コンセンサス、理解が得られるように、法務省として力を尽くすというふうに答弁をしていただきました。しかし、大勢の方々がいて、様々な御意見があるということもおっしゃいました。

 そこでお伺いをしますけれども、様々な意見があるというふうに言いますけれども、性的少数者への偏見や蔑視を考慮要素にすることはあってはならないというふうに考えますけれども、見解を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 私ども法務省といたしまして、性的マイノリティーの方々に対する偏見あるいは差別の解消、ここに向けた取組を行っているものであります。

 同性婚の問題、これは国民生活の基本に関わるものでありますし、国民一人一人の家族観と密接に関わるものでありますので、国民各層の御意見等、これを注視していく必要があると思っております。

 ただ、もちろん当然のことながら、その際に、性的マイノリティーの方々への偏見であったり、あるいは、そうした方々を蔑視するような、そういった意見に影響される、そのようなことがあっては当然ならないと考えております。

本村委員 国民の皆さんの様々な感情があって、一様ではないということに関しましては、大阪高裁の判決、今年三月二十五日ですけれども、婚姻の意義や主観的な価値は国民一人一人が自らの価値観に照らして見出すものであり、同性婚に対する国民感情が一様でないことは、同性婚を法律化しない合理的理由にはならないとした上で、同性婚の法制化によっても社会の多数者が婚姻と同じ保護を得ることを認めなければ同性カップルの保護を認めないとすることは、性的少数者の権利利益を不当に制限するものであり、憲法十四条一項の解釈として採用することができないというふうに、これは大阪高裁でははっきりと判断をされております。

 国が、名古屋高裁の裁判の中で、民法の婚姻の規定について、性的指向それ自体に着目した区別を設けるためのものではなく、性的指向について中立的な規定であり、控訴人らが主張する法的な取扱いの差異は、本件諸規定の適用の結果生じる事実上又は間接的な効果にすぎない旨の主張や、異性愛者であっても同性愛者であっても異性と婚姻することができるという意味で法的な取扱いを異にしていないというふうに主張をしております。

 しかし、名古屋高等裁判所は、その主張は採用できないというふうに判断をしております。婚姻の本質は、両当事者が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思を持って共同生活を営むことからすると、国側の主張は採用できないということを結論づけているわけです。

 国や法務省は、婚姻の本質に関するこの判決の指摘を真摯に受け止めるべきだというふうに思います。

 同性パートナーと婚姻ができない今の制度の下で、自分の存在意義を失ったり喪失感にさいなまれている、そういう当事者の方々に、異性と結婚できる、そういうことを言って傷つけることはあってはならないというふうに思います。こういう理不尽な主張はもうやめるべきだというふうに考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる同性婚訴訟におきましては、婚姻制度に関する民法及び戸籍法の諸規定が異性愛者と同性愛者とで法的な取扱いを区別しているか否かという点が問題となっております。

 被告である国は、その争点について、本件規定は、制度を利用することができるか否かの基準を、具体的、個別的な婚姻当事者の性的指向の点に設けたものではなく、本件規定の文言上、同性愛者であることに基づく法的な差別的取扱いを定めているものではないから、この点に法令上の区別は存在しないと主張をした上で、同性愛者と異性愛者との間に性的指向による差異が生じているとしても、それは性的指向につき中立的な本件諸規定から生じる事実上の結果ないし間接的な効果にすぎないと主張したものでございます。

 委員御指摘の、同性愛者も異性との間で婚姻をすることができる、結婚することができるという部分でございますが、国がそのとおりの主張をしたというわけではなく、相手方である原告がその主張を基礎づける証拠として提出された文献の中に御指摘のような記載があることに言及したにとどまるものと承知をしております。

本村委員 こうした個人の尊重あるいは個人の尊厳を保障する、そのことに反する主張、理不尽な主張はもうやめるべきだということを強く求めたいというふうに思います。

 二〇二四年十二月十三日の福岡高等裁判所では、異性婚のみを婚姻制度の対象とし、同性カップルを婚姻制度の対象外としている現行制度は、幸福追求権を保障する憲法十三条に違反するというふうに指摘をしております。

 その条文を指定した部分、お示しをいただきたいと思います。最高裁、お願いをいたします。

福田最高裁判所長官代理者 福岡高裁の判決の判断部分が示された部分ということでございますけれども、最高裁の方で特定をするというのが難しくございますので、特定していただければと思います。

本村委員 判決の十一ページ下から六行目、「憲法十三条は、」から、十二ページの二行目、「いうべきである。」まで、また、十二ページの八行目、「性的指向は、」から、十二ページの十九行目まで、さらに、十二ページ下から二行目、「したがって、」から、十三ページの三行目、「いわざるを得ない。」まで、御紹介をいただきたいと思います。

福田最高裁判所長官代理者 委員御指摘の部分のうち、判決文十一ページの下から六行目、「憲法十三条は、」から、十二ページ二行目、「いうべきである。」までをまず読み上げさせていただきます。

 憲法十三条は、婚姻をするかどうかについての個人の自由を保障するだけにとどまらず、婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利をも認めていると解するべきであり、このような権利は同条が定める幸福追求権の内実の一つであるといえる。そして、上記のとおり、婚姻が人にとって重要かつ根源的な営みであり、尊重されるべきものであることに鑑みると、幸福追求権としての婚姻について法的な保護を受ける権利は、個人の人格的な生存に欠かすことのできない権利であり、裁判上の救済を受けることができる具体的な権利であるというべきである。

このように記載されております。

 続いて、判決文十二ページ八行目、「性的指向は、」から、十二ページ十九行目、「重大である。」までを読み上げさせていただきます。

 性的指向は、出生前又は人生の初期に決定されるものであって、個々人が選択できるものではなく、自己の意思や精神医学的な方法によって変更されることはないところ、互いに相手を伴侶とし、対等な立場で終生的に共同生活をするために結合し、新たな家族を創設したいという幸福追求の願望は、両当事者が男女である場合と同性である場合とで何ら変わりがないから、幸福追求権としての婚姻の成立及び維持について法的な保護を受ける権利は、男女のカップル、同性のカップルのいずれも等しく有しているものと解される。にもかかわらず、両当事者が同性である場合の婚姻について法制度を設けず、法的な保護を与えないことは、異性を婚姻の対象と認識せず、同性の者を伴侶として選択する者が幸福を追求する途を閉ざしてしまうことにほかならず、配偶者の相続権(民法八百九十条)などの重要な法律上の効果も与えられないのであって、その制約の程度は重大である。

このように記載されております。

 最後に、判決文十二ページ下から二行目、「したがって、」から、十三ページ三行目、「いわざるを得ない。」までを読み上げます。

 したがって、本件諸規定のうち、異性婚のみを婚姻制度の対象とし、同性のカップルを婚姻制度の対象外としている部分は、異性を婚姻の対象とすることができず、同性の者を伴侶として選択する者の幸福追求権、すなわち婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利に対する侵害であり、憲法十三条に違反するものといわざるを得ない。

このように記載されております。

本村委員 ありがとうございます。

 高等裁判所の段階では、もう五つの高等裁判所で満場一致で違憲という判断が下されております。同性パートナーと結婚をしたいという方の幸福追求権、異性パートナーと結婚したいという方と同じように保障するべきではないかというふうに思いますけれども、大臣、前に進めていただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 同性婚について、これが認められないということによって負担を感じていらっしゃるそういった方々、その声や思い、これは十分に承知をしております。

 その一方で、同性婚制度を導入ということになりますと、親族の範囲、あるいは、そこに含まれる方々の間にどのような権利義務関係等を認めるかといった、国民生活の基本に関わる、まさにそういったものであると思います。国民一人一人の家族観と密接に関わるものであります。

 そのため、やはり国民各層の御意見、あるいは、この国会、立法府における議論の状況、同性婚に関する訴訟の動向等、引き続き私どもとしては注視をしていく必要があると考えております。

西村委員長 本村さん、時間ですので、御協力をお願いします。

本村委員 石破総理も、等閑視することはいたしませんということで答弁をしておりまして、放置することはしないんだという答弁をしております。

 是非前に進めていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西村委員長 次に、吉川里奈さん。

吉川(里)委員 参政党の吉川里奈です。

 本日は、戸籍と夫婦別姓について伺ってまいります。

 本年五月の八日から九日にかけて、SNS上で、戸籍制度を、行政手続が煩雑で無駄、ただのデータベースと否定する発信が相次ぎました。こうした廃止論を言論人やインフルエンサーが展開をしていますが、大臣は戸籍制度を廃止すべきと考えますか。お答えください。

鈴木国務大臣 戸籍、これは日本国民の親族的身分関係、これを登録、公証する唯一の公簿であります。真正な身分変動の登録、公証という重要な機能を持つもの、そう認識をしておりますので、私どもといたしましては、戸籍制度、これは今後とも必要なものと考えております。

吉川(里)委員 戸籍制度を維持すべきという御認識を伺いました。

 戸籍制度は、国籍、家族身分関係を一体で証明できる、他国に類を見ない制度です。災害時の身元確認や犯罪捜査、そして外国人との法的区別にも不可欠であり、マイナンバーや住民票とは明確に役割が異なります。

 同時に、これは、家族を社会の基礎とする日本の価値観を支え、祖先とのつながりを記録する文化の柱でもあります。婚姻届を出せば夫婦は家族となり、子が生まれて戸籍に登録されればその子は家族の一員、そして国家の一員として法的に認められます。この制度の下で、私たちは国の保護を受け、社会的権利を享受しております。

 確かに手続は煩雑かもしれませんが、社会の一員としての責任のあかしであります。もし制度やつながりを否定するのであれば、その自由の代償として国家が築いてきた法やインフラの恩恵を当然とすべきではないと私は考えます。個人は社会の中に生きている、戸籍は日本の国柄と秩序を支える根幹です。私は、これを守るべきであると強く訴えます。

 二問目、少し省きます。

 選択的夫婦別姓は別姓か同姓かを選べる制度と語られることがあります。しかし、実際には、家族内の対立や社会の分断を招きかねず、同じ姓が家族の一体感を支えると考える人々にとっては、その価値観が軽視されていると感じる場面もあります。

 この議論は、家族の一体感、家族のアイデンティティーか、個人のアイデンティティーか、どちらを重んじるかという根本的な価値観の対立をはらんでおります。多様な価値観がある中で、あえて分断を生む制度を導入すべきなのか、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 夫婦の氏に関する制度の在り方について、現行制度の維持、あるいは旧姓の通称使用の法制化、こういったことを考えておられる方々からは、委員御指摘のように、家族の一体感、あるいは子供への影響等の観点から、家族の間で氏が異なり得る制度、ここに懸念を持たれている、そのことは重々承知をしております。

 その一方で、選択的夫婦別氏制度、これを望まれる方々からは、氏を含む氏名、これは個人のアイデンティティーに関わるものである、さらには、夫婦、親子の氏が違っていても、夫婦を中心とする家族の一体感、きずなには影響がないなどの御指摘があると承知をしております。

 まさに、こうした価値観ということではそういった対立があるという状況でありますが、同時に、やはり、婚姻によって氏を改めることに伴う社会生活上の不利益を解消するということ、これは政府としてもしっかり責任として取組を進めていくべき、このこともやはり極めて重いんだろうと思います。

 まさに、そうした中で、私どもといたしましては、家族の形態、国民の意識の変化、家族の一体感、あるいは子供への影響など様々な御意見、御懸念への配慮がされながら、この国会において建設的な議論が行われ、より広い、幅広い国民の皆様方の理解が形成される、そういったことが重要ではないかと考えております。

吉川(里)委員 現行制度のままでよいと答える女性も少なくありません。本年一月放送のNHK「クローズアップ現代」でも、旧姓の通称使用で十分だという声であったり、家族と同じ名字に一体感を持てるという意見も紹介されていました。私の周囲でも、現行制度に満足し、変える必要はないと考える方も多くいますので、今声を上げていない多数の国民の思いもしっかり拾っていただきたいと思います。

 大臣は、別姓について、過去の答弁で、令和六年十二月十八日には、今何が論点となり得るのかということを中心にしっかり情報提供をしていきたい、また、令和七年三月十二日には、国民の皆さんに幅広くこの議論をしていただくための環境整備は我々の責務であり、子供の意向や心理的影響を含め、国民の意識の動向を適切に把握するための調査の在り方を不断に検討すべきとの御回答をいただきました。

 これらの発言を踏まえて、政府は具体的にどのような取組を実施してきたのでしょうか。私は、昨年十二月の段階でも、国民への十分な情報提供がされないまま議論が進むことに強い懸念を示してきました。にもかかわらず、政府の対応が不十分であるとすれば、これは国民に対する責任の観点から極めて重大な問題かと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 まさに今御指摘のように、十分な議論が行われ、国民の間でより幅広い御理解をいただいていく、そのための情報提供は私どもとしても極めて重要だと思っております。

 そういった中で、例えばホームページで、令和三年に行われました世論調査の結果をまとめたチャート等、あるいは内閣府大臣官房政府広報室ホームページへのリンク、あるいは現行法、選択的夫婦別氏制度に対応する戸籍の記載例等を掲載するなど、私どもとしては、分かりやすい情報提供、これに努めていると考えております。

 ただ、様々、見づらいという御指摘もいただいたのも承知をしております。しっかりと、より分かりやすいような、そういった情報提供、こういったことをしっかりとしていくつもりでございますし、子供の意向やあるいは心理的影響の観点も含め、まさに国民意識の動向等を適切に把握するための調査の在り方等についても不断に検討してまいりたいと思っておりますし、しっかりとしたそういった発信についても努めてまいりたいと考えております。

吉川(里)委員 検討してまいりますというお言葉は前回もお聞きしましたし、情報提供するといっても、元々載ってあるものを説明を受けているだけで、何も変わっているとは、私は認識しておりません。

 しっかりと政府に説明の責任があると思いますので、そちらも併せてお願いしますことを強く申し上げ、私の質問を終わります。

西村委員長 次に、島田洋一さん。

島田(洋)委員 日本保守党の島田です。

 不法滞在者として親とともに退去強制の対象になった子供たちの問題ですけれども、外国人の子供たちですね。これは、心情的には、日本に居続けたいというその気持ちに寄り添ってあげたいなと誰もが思うわけですけれども、一方で、日本では難民申請を繰り返しているうちに子供が生まれればずっと居続けられるんだ、日本はそういう甘い国なんだということになれば、今日、アメリカ・トランプ政権の下、あるいはヨーロッパ等でも不法移民の強制送還がどんどん強まっている中で、じゃ、日本に行こうじゃないか、そういう波を起こしかねない、大変クリティカルなポイントに来ていると思うんです。

 その点で、二年前に齋藤健当時の法務大臣が、特別の人道的な配慮として、在留特別許可を約百四十人の子供に出した、これは問題ではないかという私の昨年末の質問に対して、鈴木大臣は、あくまで一回限りであって、今後繰り返されることはないと明言されたんですが、最近、他の議員の質問に対して、その議員は、子供たちがかわいそうだから、温情的措置として鈴木大臣も特別許可を出してやってほしい、こういう質問ないし嘆願をされた。それに対して、大臣は、諸般の事情に鑑みて在留特別許可を出す場合も当然あり得ると答えられたんですが、これは前言を翻したということでしょうか。

鈴木国務大臣 説明をさせていただきますと、前回御答弁申し上げたのは、まさにこの改正入管法によって、保護すべき者は適切に保護する、その一方で、送還すべき者はより迅速に送還をするということが可能になったということで、今後、在留資格がないまま在留が長期化をする子供の増加、これは抑止をすることが可能になったと我々としては考えている、まずその大前提。

 その上で、齋藤元大臣が示されたその方針については、まさに本邦で出生をし、既に在留が長期化している子供に対し、旧法下で迅速な送還を実施することができなかったことを考慮して、一回限り、そのときに限り行うということで、特別許可をする方針で検討するというものであったということであります。したがって、それを今後繰り返し行うということは、これはございません。

 ただ、この答弁の趣旨として申し上げると、五月十二日の趣旨は、一般論として、退去強制手続の中で、個別案件ごとに、今回の事案ということではなくて、一般論として、そうした総合的な勘案の下での在留特別許可、そうすることをする場合については一般的にあり得る、そういったことを申し上げたところであります。

島田(洋)委員 非常に分かりにくい答弁で、大臣の答弁が揺れ動くと、その分抑止力が弱まるので、これはしっかり、今後繰り返さないなら繰り返さないと明言し続けていただかないと困るわけです。

 この外国人の子供の問題、これは日本でも、いわゆる帰国子女、たくさんおられます。慣れ親しんだ土地から離れて、友達とも別れて帰らないといけない。かわいそうだけれども、これを人道問題とは言いませんよね。だから、日本から帰らないといけないという外国人の子供に関しても、これを人道問題と見るのはおかしいと思いますけれども、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほどの点でありますけれども、今後こうしたことで繰り返しそれを行うことはない、これは前回も明言したとおりであります。

 ただ、その一方で、それとは関係なく、法務大臣が諸般の事情を総合的に勘案して在留特別許可、これをする場合、これは当然、排除はされない、これは一般論としてですね。そういったことで、それを一切、これからも、一人たりとも、その件に関係なく、一切やりませんということではないということでありますので、その点は是非御理解をいただきたいと思います。

 その上で、先ほどの日本にも帰国子女は多数いるではないかという話ですが、ここは外国政府が行う事柄でありますので、なかなか私からお答えすることは困難ですし、恐らく、その帰国子女の親は、別に在留資格のない送還忌避者ではないのではないかと私は個人的には感じております。

島田(洋)委員 子供の位置づけに関しては同じだと思いますが、ちょっと先に行きますけれどもね。

 先日、生稲外務政務官に来ていただいて、というのは、スリランカに二月に行かれて、大統領、首相、外務大臣なんかと会われたと。スリランカは、そのときも言いましたけれども、難民申請者数が二年連続一位です。そして、難民認定された人数はどれだけいるかというと、ゼロですね。だから、全員が偽装難民と、少なくとも法務省はそう考えている。

 そういう国に外務政務官が行きながら、生稲さんははっきりとおっしゃっていましたけれども、この難民問題は取り上げなかったと。これは、日本は重視していないんですよ、この問題をという、大変間違ったメッセージを与えたと思うんですが、外務省に聞きますけれども、生稲さんがスリランカに行く前に、法務省とも認識をすり合わせて、生稲政務官にこの難民問題をレクチャーしなかったんですか。

柏原政府参考人 お答えいたします。

 日本に在留するスリランカ人に関する課題につきましては、法務省との間で日頃からやり取りを行ってきて、緊密に連携してきているところでございまして、今後とも引き続き適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

島田(洋)委員 要するに、レクチャーしなかったと見ざるを得ないわけですけれども。

 ちょっと最後に大臣に聞きますけれども、最近、ウズベキスタンに出張されましたけれども、ウズベキスタンも、難民申請者数がこの三年間で七位、八位、十位と非常に多い。これも、難民認定された人はゼロなんですよね。

 最近、ウズベキスタン人の五人組による、女性のハンドバッグを強奪するとか、そういう事件も起こっているし、ひき逃げ事件なんかも起こっている。

 大臣、ウズベキスタンに行かれて、この偽装難民がどんどん日本に来ているという問題を取り上げて、それなりの措置を要請されたんでしょうか。

鈴木国務大臣 何分、この会談の中身、これは外交上の話で、先方との関係もありますので、そこについて明らかにすることについては差し控えさせていただきたいと思いますが、私どもとしては、入管行政において、適切に様々な対応を行っているところでございます。

西村委員長 島田さん、時間が参りましたので、御協力をお願いします。

島田(洋)委員 それじゃ、時間が来たので終わりますけれども、外務政務官も法務大臣も、難民問題で特に問題のある国に行ってきちんと取り上げないというのは、これは非常に抑止力を弱めますから、しっかりやってもらいたいと思います。

 では、終わります。

     ――――◇―――――

西村委員長 次に、本日付託になりました内閣提出、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案及び譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。鈴木法務大臣。

    ―――――――――――――

 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案

 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木国務大臣 譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 この法律案は、不動産担保や個人保証に依存しない資金調達を促進するため、動産、債権等を目的とする譲渡担保契約及び所有権留保契約の効力、譲渡担保権及び留保所有権の実行、破産手続等におけるこれらの権利の取扱いについて定めようとするものであります。

 その要点は、次のとおりであります。

 第一に、譲渡担保契約の効力について、譲渡担保権者の優先弁済権に関する規定を設けるほか、動産譲渡担保権設定者による目的である動産の使用及び収益に関する規定、集合動産譲渡担保権設定者による目的である動産の処分に関する規定、集合債権譲渡担保権設定者による目的である債権の取立てに関する規定、数個の譲渡担保権が互いに競合する場合の優劣関係に関する規定等を設けることとしております。

 第二に、譲渡担保権の実行について、裁判所の手続によらない動産譲渡担保権の実行に関する規定、動産譲渡担保権の実行のための引渡し命令に関する規定等を設けるとともに、債権譲渡担保権者による目的である債権の取立てに関する規定等を設けることとしております。

 第三に、破産手続等における譲渡担保権の取扱いについて、譲渡担保権者については、破産法等における質権を有する者に関する規定を適用し、破産手続において別除権者として取り扱うこととする規定等を設けるとともに、再生手続等における集合動産譲渡担保権及び集合債権譲渡担保権の実行手続の取消し命令に関する規定等を設けることとしております。

 このほか、所有権留保契約について、その対抗要件に関する規定等を設けるとともに、譲渡担保契約に関する規定を準用する規定等を設けることとしております。

 以上が、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律案の趣旨であります。

 続いて、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。

 この法律案は、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴い、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律ほか二十五の関係法律に所要の整備等を加えるとともに、所要の経過措置を定めようとするものであります。

 以上が、譲渡担保契約及び所有権留保契約に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の趣旨であります。

 何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いを申し上げます。

西村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十一日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十三分散会


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