衆議院

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第2号 平成28年10月26日(水曜日)

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平成二十八年十月二十六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ矢憲生君

   理事 黄川田仁志君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 長尾  敬君 理事 小熊 慎司君

   理事 寺田  学君 理事 岡本 三成君

      今津  寛君    小田原 潔君

      小渕 優子君    大野敬太郎君

      熊田 裕通君    佐々木 紀君

      島田 佳和君    鈴木 隼人君

      武井 俊輔君    辻  清人君

      松島みどり君    宮崎 政久君

      山田 美樹君    石関 貴史君

      吉良 州司君    中川 正春君

      原口 一博君    渡辺  周君

      浜地 雅一君    笠井  亮君

      足立 康史君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        岸  信夫君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   外務大臣政務官      小田原 潔君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   防衛大臣政務官      宮澤 博行君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   北崎 秀一君

   政府参考人

   (警察庁長官官房総括審議官)           斉藤  実君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 白川 靖浩君

   政府参考人

   (総務省情報流通行政局郵政行政部長)       安藤 英作君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 金子  修君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 佐々木聖子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           川村 泰久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 正木  靖君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 川崎 方啓君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 大菅 岳史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 相木 俊宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 宮川  学君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 森 美樹夫君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   高瀬  寧君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           松尾 泰樹君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局生涯学習総括官)    佐藤 安紀君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           中井川 誠君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           山北 幸泰君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 河野  章君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深山 延暁君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        田中  聡君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十六日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     宮崎 政久君

同日

 辞任         補欠選任

  宮崎 政久君     小渕 優子君

    ―――――――――――――

十月二十日

 米軍属による凶悪犯罪に抗議し米軍基地撤去を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八八号)

 同(池内さおり君紹介)(第一八九号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第一九〇号)

 同(大平喜信君紹介)(第一九一号)

 同(笠井亮君紹介)(第一九二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九三号)

 同(斉藤和子君紹介)(第一九四号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九五号)

 同(清水忠史君紹介)(第一九六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九七号)

 同(島津幸広君紹介)(第一九八号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一九九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇〇号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二〇一号)

 同(畠山和也君紹介)(第二〇二号)

 同(藤野保史君紹介)(第二〇三号)

 同(堀内照文君紹介)(第二〇四号)

 同(真島省三君紹介)(第二〇五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二〇六号)

 同(宮本徹君紹介)(第二〇七号)

 同(本村伸子君紹介)(第二〇八号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二七八号)

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇九号)

 同(池内さおり君紹介)(第二一〇号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第二一一号)

 同(大平喜信君紹介)(第二一二号)

 同(笠井亮君紹介)(第二一三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一四号)

 同(斉藤和子君紹介)(第二一五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一六号)

 同(清水忠史君紹介)(第二一七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一八号)

 同(島津幸広君紹介)(第二一九号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二二〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二一号)

 同(畑野君枝君紹介)(第二二二号)

 同(畠山和也君紹介)(第二二三号)

 同(藤野保史君紹介)(第二二四号)

 同(堀内照文君紹介)(第二二五号)

 同(真島省三君紹介)(第二二六号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二二七号)

 同(宮本徹君紹介)(第二二八号)

 同(本村伸子君紹介)(第二二九号)

 米軍普天間飛行場の早期閉鎖・返還と沖縄県内移設の中止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第二三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房外務報道官川村泰久君、大臣官房国際文化交流審議官下川眞樹太君、大臣官房審議官正木靖君、大臣官房審議官川崎方啓君、大臣官房審議官大菅岳史君、大臣官房審議官相木俊宏君、大臣官房審議官宮川学君、大臣官房審議官森美樹夫君、中南米局長高瀬寧君、経済局長山野内勘二君、内閣府政策統括官北崎秀一君、警察庁長官官房総括審議官斉藤実君、長官官房審議官白川靖浩君、総務省情報流通行政局郵政行政部長安藤英作君、法務省大臣官房審議官金子修君、大臣官房審議官佐々木聖子君、文部科学省大臣官房審議官松尾泰樹君、生涯学習政策局生涯学習総括官佐藤安紀君、厚生労働省大臣官房審議官中井川誠君、農林水産省大臣官房審議官山北幸泰君、防衛省防衛政策局次長河野章君、防衛政策局次長岡真臣君、地方協力局長深山延暁君、防衛装備庁プロジェクト管理部長田中聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木隼人君。

鈴木(隼)委員 皆さん、おはようございます。

 きのうからフィリピンのドゥテルテ大統領が来日をしておられます。本日、首脳会談が行われる予定であり、また、本年は日・フィリピンの国交正常化から六十周年に当たる節目の年でもあります。そこで、本日は、主に我が国とフィリピンとの関係について御質問をさせていただこうと思います。

 まず、我が国とフィリピンは、戦略的パートナーシップということで安倍政権が位置づけをされているのは周知のとおりであります。こうした中、今後の我が国とフィリピンとの二国間関係の方向性について政府としてどのようにお考えか、お聞かせを願います。

岸田国務大臣 我が国とフィリピンとの関係ですが、委員御指摘のように、両国は長年にわたって友好協力関係を深め、ことし、国交正常化六十周年という節目の年を迎えました。

 そして、自由とか民主主義、法の支配といった基本的な価値を共有する戦略的なパートナーとして、地域の平和や繁栄においても協力をしてきた、こうした関係を築いてきました。

 そして、ことし六月、ドゥテルテ政権が発足をしました。それから後、八月に私もフィリピンを公式訪問させていただき、ドゥテルテ大統領あるいはヤサイ外相とも会談させていただきました。九月、ラオスにおいて行われましたASEAN関連首脳会談の際にも、安倍総理とドゥテルテ大統領の首脳会談を行うことができました。そして昨日から、ドゥテルテ大統領は、大統領就任後初めての日本訪問を行っておられるということであります。きのう、私も夕食会を実施させていただきましたし、きょう首脳会談が予定されています。

 日本とフィリピンの関係の方向性ですが、まずは、この六十年間の両国の友好関係を基盤としながら、新しくスタートしたドゥテルテ政権との間において、要人往来等を通じまして、しっかりとした信頼関係を築いていく。そして、その上で、経済ですとか安全保障ですとかインフラ整備ですとか、さまざまな具体的な協力案件において協力を進めていく。こうした重層的な関係を築くことによって、両国関係をよりしっかりとしたものにしていきたいと願っております。

鈴木(隼)委員 大臣、ありがとうございます。

 今おっしゃられたような重層的な友好関係を築いていくということが非常に大事なんだと私も感じました。

 一方で、少し心配をしていることがあります。今、フィリピンの国内におきまして、麻薬犯罪者に対する人権問題が懸念をされております。そういった中で、各種の経済協力等を我が国が引き続き続けることに関して道義上の問題というものが生じないかどうか、その辺について政府としてどうお考えか、お聞かせいただけますでしょうか。

岸副大臣 お答え申し上げます。

 フィリピン政府によります麻薬、違法薬物対策に関しましては、国連や、あるいは米国から懸念が表されているということにつきましては承知をしておるところでございます。

 人権、基本的自由の尊重はまさに普遍的価値でありまして、また、各国の人権状況は国際社会の正当な関心事項であります。かかる観点から、我が国としては、今後もフィリピンの動向に注視をしてまいりたい、このように考えております。

鈴木(隼)委員 どうもありがとうございます。

 今後も動向を注視していくということでありますけれども、もう一歩踏み込んで、今、例えばきょうの首脳会談で発言をする、そういうことではないんですけれども、事務的にでもいいので、フィリピンの政府に対して人権問題の実態に対する調査を求めるなどの、そういった対応を我が国としてはするお考えはないかどうか、お聞かせいただけますでしょうか。

岸副大臣 先ほども岸田大臣からもお話がございましたとおり、フィリピンは我が国とは戦略的な利益を共有する大切なパートナーであります。フィリピンと日本との関係はそういう意味で大変重要でございまして、両国の関係を安定化させることは、地域や国際社会の平和と安定や繁栄に直結すると考えております。かかる観点から申し上げて、我が国は、同国のインフラ整備、海洋安全保障、ミンダナオ和平といった支援を通じて、フィリピンとの二国間関係を強化してまいりました。

 国際社会が懸念するこの人権をめぐる状況につきましては、今後も、先ほど申し述べましたとおり、注視をしてまいりたい、このようには考えておるところでございます。

鈴木(隼)委員 なかなか明確な答弁はいただけませんでしたが、しっかりと注視をしていっていただければというふうに思います。

 それから、フィリピンとの関係を含めまして、何をおいても、今、南シナ海の問題、非常に重要になってきております。この南シナ海における法の支配の徹底について、我が国として今後どういった方針で臨むおつもりであるか、外務省及び防衛省からの御答弁をお願いいたします。

岸副大臣 お答え申し上げます。

 南シナ海をめぐります問題につきましては、地域の平和と安定に直結いたします、我が国を含む国際社会の関心事項でございます。

 我が国は、これまで一貫して、南シナ海における法の支配の貫徹を支持してまいりました。国連海洋法条約に基づきますフィリピンと中国の仲裁判断は、当事国を法的に拘束するものでありますし、これに当事国が従うことによりまして、今後南シナ海における紛争の平和的解決につながっていくものと、強く期待をしているところであります。

 我が国としては、引き続き、開かれた自由な海を守るために、米国や豪州、またASEAN諸国を初めとして各国に海における法の支配の重要性を訴えかけ、その実効性を高めていく、そういう外交努力を続けてまいりたいと思います。

 また、こうした訴えとあわせて、一方的に現状を変更して緊張を高める行動への強い反対を国際社会と共有しています。こうした輪を広げていくことによって、緊張を高める行動に対してメッセージを送り続けてまいりたいと思います。

河野政府参考人 お答え申し上げます。

 南シナ海をめぐる問題に関しましては、法の支配が貫徹される形で平和的に解決されることが重要であるということは、防衛省としても完全に認識を一致しておるところでございます。

 このような観点から、防衛省といたしましては、ASEAN諸国の国防当局との間で、防衛大臣会合などの際に、法の支配の重要性についての認識の共有ということをこれまでも図ってきているところでございます。

 これ以外にも、自衛隊とこれらの国々によります共同訓練、あるいは自衛隊の艦船あるいは航空機による寄港、さらに能力構築支援や防衛装備協力といったさまざまな協力を推進してきているところでございます。

 また、これらの二国間協力に加えまして、ADMMプラス、これは拡大ASEAN国防大臣会合でございますけれども、こういった枠組みや、あるいはARF、ASEAN地域フォーラムといった多国間の枠組みにおきましても協力を強化してきているところでございます。

 今後とも、こうした二国間さらに多国間の協力を積極的に推進いたしまして、ASEANの国防当局との間での安全保障、防衛分野での連携というものをさらに強めていきたいと考えているところでございます。

鈴木(隼)委員 ありがとうございます。

 引き続き、多様なチャンネルを通じて、法の支配の徹底について政府として頑張っていただきたいと思いますし、私どもも一議員として、議員外交等を通じて、そういった環境が整備されていくように努力を続けていきたいと思います。

 それで、予定していた質問は以上なんですが、少し時間が余っておりますので、せっかくですので、大臣、もしよろしければ、きのうドゥテルテ大統領と夕食会をされておられますので、御感想を一言いただければと思います。

岸田国務大臣 ドゥテルテ大統領はことし六月に就任されたわけですが、その後、八月に私はフィリピンを公式訪問させていただきました。そして、マニラのみならず、ドゥテルテ大統領の地元ミンダナオ島のダバオ市まで足を運ばせていただきまして、大統領の地元の迎賓館において会談をする機会をいただきました。その際に、フィリピン伝統の軽食のもと、大変な歓待をいただいた、こうしたことがありました。昨日の夕食会は、それに対するお返しという意味も込めて催させていただきました。

 大変幅広い話題について意見交換をさせていただきました。先日の中国訪問においての感想も含めて、さまざまな地域情勢についても意見交換をさせていただきましたし、日本とフィリピンの友好、そして日本とダバオ市の友好の歴史など、二国間にかかわる話題についても大変率直な意見交換ができ、有意義な意見交換であったと思います。

 こうした人間関係、信頼関係をしっかり築くことは外交を進める上で大変重要であるというふうに思いますし、こうした友好的な雰囲気は必ずや、きょう予定されております日・フィリピン首脳会談に向けても、いい雰囲気をつくる上で重要であるというふうに認識をしています。

 ぜひ、こうしたさまざまな会談、交流等を通じまして、日本、フィリピンの間における要人往来、そして信頼関係の構築を今後ともしっかり進めていきたいと考えております。

鈴木(隼)委員 急な御質問にもかかわらず、ありがとうございました。

 昨夜温めていただいた、ドゥテルテ大統領との、より深めていただいた関係をもとに、きょうの首脳会談が成功することを祈っております。

 ということで、そろそろ時間も参りますので、私の御質問は以上とさせていただきます。大変ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 皆さん、おはようございます。公明党の岡本三成です。質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 大臣、きょうは御提案させていただきたいことがありまして、その件につきまして質問させていただきます。

 所信の中でも大臣が言及されましたとおり、本年五月二十七日にオバマ大統領が、現職のアメリカ大統領として初めて、被爆地であります広島を訪問されました。ちょうどその二カ月前の四月一日に、この外務委員会の場で私は大臣に、オバマ大統領の訪問時にぜひ広島、長崎を訪問していただけるような事前のさまざまな外交活動をお願いして、実現をお願いしたいということを申し上げました。

 当然、水面下ではいろいろなことをされたと思うんですけれども、そんなことをやりますともやりませんとも言及できないのはよくわかるんですけれども、後からアメリカ大使館の方や政府関係の方にお伺いしますと、政府として大変な努力があったということを伺いまして、すばらしい歴史的な一日をつくることができたなというふうに思っております。

 日本でも報道されました、大統領が被爆者の方を抱擁されているあの写真というのは、世界のトップクオリティーペーパー、例えばフィナンシャル・タイムズでも一面を飾っておりまして、その意味で、日本の核なき世界を実現したいというメッセージが世界に発信されたのはすばらしかったと思います。

 私の提案というのは、このオバマ大統領の広島訪問を歴史的な一日で終わらせることなく、それをスタートとして、今後は、新しく米国の大統領になられる方ですとか海外から日本を訪問されるトップリーダーの元首クラスの方は、訪問時には基本的には広島、長崎を訪問するという伝統、それがスタンダードになるような流れを何とかつくっていけないかということが私の提案であります。

 それで、具体的に質問をさせていただきたいことがあるんですけれども、例えば広島に言及をしてみますと、過去十年間に広島を訪問いただいた元首の方というのは十三人いらっしゃいます。逆の言い方をすると、十年間でたった十三人しかいらっしゃいません。他国の国会議長は四十二人、大臣で六十七人等々であります。

 これは実は、よく伺いますと、外務省の中で軍縮担当の方々がカバーされているような国は、国連を中心にその担当の方が、その国の方が日本を訪問されるときにはさまざまなロビー活動といいますか交渉をして、広島、長崎への訪問を御提案していらっしゃいますが、軍縮担当の方がカバーされていないような国で、直接外務省の中で地域を担当していらっしゃる方々が、その自分の担当している国のトップリーダーの方がいらっしゃるときには必ずしも被爆地の訪問を御提案しているようなことはないんです。

 実際にこの十三人が御訪問された写真等がいろいろなところで報道されています。私はびっくりしたんですが、オバマ大統領の御訪問のときのみ安倍総理、岸田大臣が同行されていますが、それほど平和に対するメッセージが強い我が国なのに、他国の元首の方が訪問されたときに、そこに政治家の姿を私は写真で見たことがないんですね。

 質問させていただきたいんですが、オバマ大統領以外の十二人、広島を訪問されたときに、例えば外務大臣や副大臣や政務官の同行というのはあったんでしょうか。

岸副大臣 お答え申し上げます。

 今委員お尋ねの件につきましては、御指摘のとおり、オバマ大統領御訪問の際に岸田外務大臣が同行いたしましたけれども、それ以外の件につきましては、政務三役は同行しておりません。

岡本(三)委員 今後は、訪問に対するさまざまなアプローチをするとともに、もしそれが実現するときには、それぐらい日本は平和に対するメッセージ、そして核なき世界を実現することに対するメッセージが強いということを発信するためにも、総理大臣は難しいかもしれませんが、少なくとも副大臣や政務官の政府首脳もぜひ御同行いただくような御尽力をお願いしたいというふうに思います。

 関連いたしまして、十二月にはプーチン大統領が山口にいらっしゃいます。山口と広島というのは距離的にも非常に近いところです。万々が一プーチン大統領の広島訪問が実現するようなことがあれば、世界の核保有国の大国二国の元首が唯一の原爆被爆地を訪問したということになりまして、日本のコミットも、また世界に対するメッセージも非常にクリアなものがあるのではないかというふうに思いますので、これがぜひ実現できるための御尽力をしていただきたいんですね。

 そんなに簡単じゃないことももちろんよくわかっていますけれども、さまざまな努力をして、少なくともロシア側にそういうメッセージを伝えることは、相手側からしてもそんなに悪い気はしないのではないかと思うんです。

 そこで、十二月の頭に岸田大臣御自身がこの首脳会談の下準備も含めましてロシアを訪問されるのではないかということを耳にしていますけれども、その際にぜひロシア側の首脳に、これは半日もとりませんので、数時間、時間をつくっていただくことができれば山口から広島に行っていただけるわけですから、岸田大臣の訪問時にぜひ正式な要請をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、五月のオバマ大統領の広島訪問は、広島市民として、あるいは日本国民として、戦後七十一年間待った現職のアメリカ大統領の被爆地訪問ですので、これは歴史的な訪問であったと思っています。ただ、委員おっしゃるように、これは一訪問に終えてはならない、これをぜひ核兵器のない世界を実現するための一つの弾みとしなければならない、このように思います。

 そして、一般論として申し上げるならば、世界の指導者に広島、長崎、こうした被爆地を訪問してもらうということは、核兵器のない世界を実現するための国際的な機運を盛り上げる意味で大変重要なことであると認識をいたします。世界の指導者の被爆地訪問に前向きな姿勢を示していただく、こうした委員の姿勢に心から感謝を申し上げたいと思います。

 そこで、ロシアのプーチン大統領の訪日ですが、まず、十二月十五日に訪日いただくことを予定しています。それに向けて、平和条約交渉を初めとする政治分野あるいは経済分野においてしっかりとした準備を進めていかなければならないと思います。

 そして、その準備の一環として、委員御指摘のように、これは時期はまだ決まってはおりませんが、状況が許すならば、私自身、ロシアを訪問させていただいて、ラブロフ外相としっかりと準備を進めるべく努力をしていきたい、このように思っています。

 そして、日程については、ロシア側とこれから調整しなければなりませんので、今の段階で何か申し上げることは難しいわけですが、ただ、プーチン大統領の訪日を意義あるものにするためにはどうあるべきなのか、そういった観点からしっかり準備を進めていきたいと考えます。

岡本(三)委員 ありがとうございます。ぜひお願いします。

 オバマ大統領が被爆地を訪問してくださったことに関連をして、私は、近い将来、安倍総理に真珠湾を御訪問いただいて、献花をしていただきたいというふうに思っています。アメリカ国民の方々も、オバマ大統領訪問時には、退役軍人の方を中心にいろいろな意見があったものものみ込んで訪問が実現したわけですから、その意味で、私たちもしっかりとしたメッセージを発するためにも、安倍総理の真珠湾訪問、献花をお願いしたいと思っているんです。

 総理の御予定は大変厳しいんですけれども、まず、近い将来どこかで、岸田外務大臣がハワイを御訪問いただいて、真珠湾を訪問し、献花をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 まず、日米両国は、戦後、自由、民主主義、法の支配といった基本的な価値のきずなでかたく結ばれた揺るぎない同盟国となったと考えています。

 その中で、先ほどの五月のオバマ大統領の広島訪問も、核兵器のない世界を目指す上で大変意義ある訪問であったと同時に、これは、日米が希望の同盟として国際社会の課題に貢献していく、こうした姿勢を示す一つの象徴的な訪問でもあったと認識をいたします。

 そして、御指摘のハワイ、真珠湾訪問ですが、今現在、総理や私のハワイ、真珠湾への訪問の計画はありません。

 ただ、いずれにしましても、日米同盟のきずなを一層強化する、アジア太平洋地域の平和と繁栄を確保する、こういった観点から、今後とも主導的な役割を果たしていくために、また、希望の同盟として世界の諸課題に日米がしっかりと手を携えて対処していく、こういった姿勢はしっかり示していかなければならないと思います。

 ですから、外国訪問についても、そういった観点からどうあるべきなのか、これを考えていくべき課題ではないかと考えます。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 大臣は非常に賢明で、慎重な物言いをされますけれども、その根底に、近い将来、私は行きたいぞという思いがあると勝手に受けとめましたので、ぜひ実現をお願いしたいと思います。

 先ほど申し上げたように、五月二十七日のオバマ大統領の訪問をスタートにして、今後、世界のトップリーダーが被爆地を訪問してほしいというメッセージを送りましたが、私、そうはいっても、いろいろな国の元首の方がいらっしゃいますが、一番大切なのは、次のアメリカ大統領が広島、長崎を訪問していただいて、しっかりとした方向性をつけて、流れをつくっていくということだと思うんですね。

 そこで、最後にお願いしたいことがあるんです。

 それは、オバマ大統領の御訪問においても、もちろんオバマ大統領自身が核なき世界の実現に向けて大きなしっかりとした哲学をお持ちで、そのことを大統領就任当時から実現されてきたわけですけれども、ジョン・ケリー国務長官、あとケネディ大使、いろいろな方のアドバイスが実現にさまざまなサポートをしたというふうに伺っています。それで、大統領選挙の後、報道されて、予想として高いクリントン大統領が仮に誕生したとしたときに、クリントン大統領の広島、長崎訪問に一番インパクトを与えられるメッセージは誰が発することができるかというと、きっと、そのときのタイミングでいうとオバマ前大統領なんだと思うんです。御自分自身が訪問されてどういうことを感じて、そしてアメリカにとって、世界にとってどういう価値を創造したかということを、その次の大統領にしっかりとメッセージをして引き継ぎをして提案する、それがすごく大切なんだと思うんですね。

 来年の一月が終わりますとオバマ大統領は勇退されるわけで、比較的、現職のときよりもお時間ができるんじゃないかと思います。そこで、大臣にお願いしたいことがありまして、そのタイミングですぐアメリカを御訪問いただいて、そしてオバマ、そのタイミングでは前大統領に、これまで八年間の日米同盟のさまざまなアメリカ側のアプローチに対してお礼を述べていただくとともに、ぜひ次の大統領に対して、被爆地の訪問の経験、どれぐらい意味があったか、ぜひ次の大統領にも行ってほしいという提案をしていただくように、大臣からオバマ大統領に御提案をいただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたが、世界の指導者が、広島、長崎、こうした被爆地を訪問するということは、核兵器のない世界を実現する上で国際的な機運を高める観点から大変重要だと認識をしておりますし、米国もこの点は十分理解していると考えます。

 米国大統領選挙、今選挙が続いているわけですから、誰が当選するのか、これは確たることを私の立場から申し上げることは控えなければなりませんが、加えて、米国大統領の日程は米国が決めることであります。

 その上で、今回のオバマ大統領の広島訪問について、米国としてもこれは成功であったという認識を強く持っているということは我々も強く承知をしております。そして、ぜひ現政権の考えが次期政権にしっかり伝わることを日本としては期待したいと思います。

 核兵器のない世界の実現に向けて、ぜひ米国としっかり意思疎通を続けていく努力をこれからも行っていきたいと考えます。

岡本(三)委員 ありがとうございました。

 バランスのよい答弁の中に強い決意を個人的に感じましたので、ぜひ御提案の実現に向けて御尽力いただければと思います。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。民進党の原口一博でございます。きょうは、質問の時間をいただいて、ありがとうございます。

 きょう、大臣所信について、お手元に資料がございます、二点について、国家主権という立場から質問をさせていただきたいと思います。

 新藤元大臣がおられますけれども、私は、領土議連の副会長、それから国家主権と国益を守るために行動する議員連盟の超党派の代表をしておりまして、その観点から、まず資料一をごらんください。岸田外務大臣の所信でございますが、「新しいアプローチに基づく交渉を具体的に進め、」とおっしゃっていますが、この中身についてまず伺います。

岸田国務大臣 日ロの間で領土交渉を進めて平和条約を締結していく、これは日ロ間における最大の外交課題であると思いますし、日本の外交にとりましても戦後最大の外交課題の一つであると認識をしています。

 そして、新しいアプローチとは何かという御質問ですが、これまで歴代政権そして多くの先輩たちが、この日ロ間の最大の課題についてさまざまな努力を行い、取り組んでこられました。しかし、残念ながら、戦後七十一年たった今日まで、平和条約を締結することができていない現状にあります。

 その中で、ことしの四月、私は、日ロ外相会談をラブロフ外相との間で行わせていただきましたが、その際に、この北方領土問題につきまして、双方の歴史的な解釈あるいは法的な立場の違いはあるものの、その立場に立って双方受け入れ可能な解決策を作成していく、これを確認し、今後の交渉に弾みを与えるような前向きな議論を行うことができたと思っております。

 そして、その後、五月に日ロ首脳会談が行われ、そして、停滞してきた交渉の突破口を開くために、今までの発想にとらわれない新しいアプローチの交渉を進めていく、こういったことで一致をしたわけであります。

 この新しいアプローチの具体的な中身については、今交渉中ですので具体的に明らかにすることはできませんが、今申し上げたように、今までずっと歴史的な解釈あるいは法的な立場において議論が平行線をたどってきた、こういった経緯もあります。その経緯も振り返りながら、こういった立場の違いはあるものの、未来に向けて、双方受け入れ可能な案をつくっていこうという姿勢のもとにこの交渉を進めていこうというのが、基本的な新しいアプローチの考え方であると認識をしています。

 こうした基本的な考え方に基づいて、具体的な交渉を進めていきたいと考えております。

原口委員 大臣、ロシアにおける外交は誰が一番権限を持っていますか。ロシア外交の権限、これは大統領に集中していると思うんですが、この認識でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 ロシアの政府内の権限について具体的に何か申し上げる立場にはありませんが、ロシアにおいて大統領の権限というのは大変大きいものがあるということ、そして、現プーチン大統領の政権内におけるお力は大変強いものであるということ、これは多くの関係者が一致しているところであると認識をしています。

原口委員 そこで懸念しているのは、今お話しになったラブロフ外相、あるいはメドベージェフ元大統領の発言を見ると、かなり厳しいですね。ということは、彼らはプーチンさんの権限の範囲の外のことを言うことはできないと思いますので、そういう厳しい中での交渉、そういう認識を持った上での交渉というのが大事だなと思います。

 資料二をごらんください。これは、北方領土の日について、昭和五十六年一月六日の閣議了解です。ソ連が崩壊する前は、我が国の基本姿勢は、北方領土の一括返還を実現して平和条約を締結し、両国の友好関係を真に安定した基礎の上に発展させるという政府の基本方針、つまり、四島一括返還というのが基本方針でございました。この認識に誤りはございませんか。

岸田国務大臣 ソ連時代には、ソ連が我が国との領土問題の存在自体を否定していた時期があったこともありまして、我が国としまして、北方四島の一括返還を実現して平和条約を締結するとの方針でソ連との平和条約交渉を行っていた経緯があったと承知をしております。

原口委員 ありがとうございます。

 資料五をごらんください。それが、文言が変わったのがソ連の崩壊後です。北方四島の我が国への帰属が確認されれば、実際の返還の時期、態様云々とここに書いてあります。これは質問主意書に対する政府の答弁書です。こういうふうに変わってきたわけですね。

 そこでは、私たちの先輩が、領土問題は存在しないと言っていたソ連に対して領土問題を認めさせたという大きな成果があった。だから、この七十一年間何にも動かなかったわけではなくて、我が国の外交は、いろいろな場面で、一歩一歩でしたけれども、前に進んできたという認識を大臣と共有しておきたい。

 こういう認識でよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 先ほど答弁させていただいたような経緯もあり、そして、さまざまな、先輩方そして歴代政権の努力によって、この交渉の状況は変化してきたと認識をしています。

原口委員 我が方に、一歩一歩前に進んでいったんですよ。

 三をごらんください。これが地図です。

 本来は、占守海峡と書いてありますけれども、ここから南の島、大きな島だけで約十八ある。これは放棄させられたわけです。今私たちが問題としているのは、まさにこの北方四島、我が国固有の領土であるところをいかに日本に返還させるかというところだと思います。

 資料四をごらんください。資料の四は、これまでの平和条約締結に係る諸文書、諸合意でございます。

 この中でも特に大事なものは、東京宣言であります。つまり、ここで「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題」と。つまり、四つの島を明記した上で、これを話し合っていくんだということが共通のテーブルにのせられたわけです。

 ここで、大臣に伺いますが、プーチン大統領になっても、この東京宣言を入れた文書、声明に署名捺印をしているというふうに思いますが、それは何でしょうか。

岸田国務大臣 御指摘のように、一九九三年の東京宣言、これは、四島の島名を列挙するなど、明確な交渉指針を示した重要な文書であると認識をしています。

 そして、その後の日ロ間の文書においてもこのことは何度も確認されているわけですが、御質問のプーチン大統領が署名している文書、例えば二〇〇一年のイルクーツク声明、二〇〇三年の日ロ行動計画、そして二〇一三年の日ロパートナーシップ共同声明、こうしたものがあると承知をしております。

原口委員 ありがとうございます。

 まさにそのとおりでありまして、私たちはこの東京宣言から下がるということはあり得ないわけであります。それはなぜかといえば、ここは合意していることだからであります。

 新しいアプローチがどんなアプローチか具体的におっしゃれないというのはわかります、外交交渉ですから。それを聞く気はありません。しかし、確認をしておかなきゃいけないのは、ここで、プーチンさんと合意をした東京宣言まで、それまでほごにしたり、なくしたりするというものではないということだけは確認をしておかないと。末次一郎先生、自民党さんにも弟子の方がたくさんおられますけれども、私たちは、末次先生のもとでこの北方領土返還運動、実際にサンクトペテルブルクの歴史資料館に行けば、あそこにも、私たちの、我が国固有の領土であるということが書いてあるんですね。そういう中で厳しい交渉をしてきたので、この東京宣言ということがないがしろにされることはないということを大臣に一言確認しておきたいと思います。

岸田国務大臣 おっしゃるように、政府としましては、これまで作成された全ての諸文書及び諸合意に基づいて、四島の帰属の問題を明らかにして平和条約を締結する、こうした基本方針のもと、粘り強く交渉を続けていきたいと考えます。

原口委員 それは、東京宣言というのは非常に大事な宣言であるということは大臣御認識の上での御発言だと受けとめてよろしいですね。

岸田国務大臣 そのとおりでございます。

原口委員 私は、領土問題に、主権の問題に与党、野党の区別はないと思います。私も、政権時代に総理特使としてモスクワに派遣されようとしました。そのとき、たしか大臣は自民党さんの国対委員長でいらっしゃいました。直接電話をして、行かせてくださいと。私、総務委員長か何かだったと思います。大臣はそのときにも非常に協力をしてくださった。結果は、行けませんでしたけれどもね。行けなかったけれども、協力をしていただいたという認識を持っています。

 やはりこういう重大な問題は与野党の枠を超えて協力して取り組むべきだと思いますし、私は、安倍総理にもその旨は直接お伝えしました、私も全面的に協力しますと。

 大臣の御認識を伺いたいと思います。

岸田国務大臣 先ほども申し上げましたように、今日までの北方領土問題そして平和条約交渉においては、歴代の政権そして多くの関係者の方々の努力が積み上げられてきました。そして、この問題は、ぜひ解決に向けて現政権としましてもしっかり努力をしていかなければならないわけですが、その際に大切なことは、与野党が一致する、要は国論が一致してこの問題に当たるということではないかと思います。

 ぜひこれからも、各党の皆様方からも御理解をいただきながら、我が国外交にとって戦後最大の外交課題の一つである北方領土問題、平和条約交渉にしっかりと取り組んでいきたいと考えます。

原口委員 これは交渉事ですから、四島の日本への帰属が確認されればほかのことについてはある程度アローアンスを政府に与えておかないと、それは交渉にならないと思います。そこははっきり申し上げておきます。ただ、四島における日本の主権というものははっきりと主張すべきであり、これを曖昧にして前に進めるようなものではないということも一方で申し上げておきます。

 この項の最後の質問ですが、四島の主権が確認される場合、我が国は米国と日米安保条約を結んでいますが、これの対象の中ということでよろしいでしょうか。

岸田国務大臣 我が国の施政下にある領域に対しては、日米安保条約第五条が適用されることになると認識をしております。

原口委員 ありがとうございました。確認的な質問でございました。

 次に、TPPの関係について申し上げます。

 大臣、ことし、多くのものが、パナマ文書や、あるいは今まで出てこなかった九・一一の二十八ページ、今、大統領選挙を見ていますと、こんなことをやっていたんだというのが明らかになっています。結果、世界経済、グローバル化という中でやってきたけれども、新自由主義、新保守主義をやって、では皆さん、幸せになったんですか、そういう話だと思うんです。

 その観点から、きょうはISDS条項について質問をいたします。

 二〇一三年四月の農林水産委員会における環太平洋パートナーシップ協定交渉参加に関する決議において、ISDSに関して、「濫訴防止策等を含まない、国の主権を損なうようなISD条項には合意しないこと。」との決議がなされましたけれども、「国の主権を損なうようなISD条項」の意味というのは一体何なのか。合意されたTPP協定は本決議を遵守しているのかということが検証されるべきだ、そう考えています。

 資料をごらんになってください。きょうは、具体的に三つのテーマについて申し上げます。

 資料の七が、今私が読み上げた国会決議です。提出会派、自民、民主、公明。賛成、自民、民主、公明、生活。維新、みんな、こういうふうになっていますが、この中で、国の主権を損なうようなISD条項、これは何ですか。

岸田国務大臣 一般的に、国の主権を損なうようなISD条項とは、締約国がその主権に基づき、公共の福祉に係る正当な目的のための必要かつ合理的な措置を差別的でない態様でとることまでも認められない、そういったものを指すと考えられます。

 そして、TPP協定のISDS条項ですが、締約国が正当な規制目的のための必要かつ合理的な措置を差別的でない態様でとることを妨げるものではありません。実際、投資受け入れ国が公共の福祉に係る正当な目的のために規制措置を講ずることが妨げられていないことは、投資章の複数の規定で確認されていると認識をしております。

原口委員 では、具体的に検証をしてまいります。

 まず、共済です。共済についてアメリカは日本に対して何と言ってきていたかということも資料につけています。

 きょうは農水省に来ていただいていますが、日米規制改革及び競争政策イニシアチブ、これはいろいろな場面で言ってきていますけれども、例えば、平成二十年十月十五日、日本国政府への米国政府要望書において何と言っていますか、共済について。共済は日本の保険市場において相当な市場シェアを有しているにもかかわらず、金融庁所管の保険提供者に義務づけられている規制措置の多くを回避しているというふうに言っているんですね。

 JA共済の事業規模及び規制の実態はどうなっていますか。教えてください。

山北政府参考人 お答えをいたします。

 農協の共済事業についてでございますけれども、平成二十七年度に農協が契約者から収納した共済掛金でございますが、六兆三千三百八十二億円となっておるところでございます。

 また、農協の共済事業につきましては、組合の構成員という特定の者を対象として相互扶助の一環として行っているものではございますけれども、経営の健全性の確保ですとかあるいは契約者保護の観点、そういった観点につきましては、農協法におきまして保険業法と同等の規制を行っているところでございます。

原口委員 税法上、あるいはセーフティーネットは、保険と違うでしょう。保険法と全く同じですか、JA共済は。

山北政府参考人 お答えをいたします。

 税につきましては、共済ということではなくて、協同組合という形での税制を適用しておりまして、それは、普通法人とは税率が違っているというのは事実でございます。

原口委員 セーフティーネットはどうですか。

山北政府参考人 セーフティーネットという趣旨のところについては、御趣旨が明確ではございませんけれども、いわゆる契約者保護機構という点を御指摘の点であるとするならば、契約者保護機構は、生保会社あるいは損保会社につきまして保険業法で手当てされているというものでございまして、農協共済につきましては、その保険業法の適用を受けていないことによりまして、そういう契約者保護機構には入っていないということでございます。

原口委員 資料六が、今のいわゆる保険、共済の日本の全体像です。

 農業共済あるいは消費生活協同組合、例えば全労済なんというのもありますね、そういうものは今お話しのように税法が違うんですよ。だって、主体が違うから。多分、税率だけで三パーぐらい違ったんじゃないですか。そして、セーフティーネット、自分たちが共済を出し合って、その組合員がより強固な守られ方をする。

 大臣、共済について、今回、ISDSの留保はついていますか。

岸田国務大臣 共済については、留保はなされておりません。

原口委員 ということは、この資料をごらんください、先ほど私が読み上げたところですけれども、アメリカはこういうふうに言ってきているわけです。先ほど申し上げたとおりです。

 もし、JA共済あるいは全労済、そういったものが税法上あるいは制度上透明性に欠け、競争政策としておかしいと思われれば、今大臣がお答えいただいたように、ISDSの留保でないですから、訴追される可能性というのは排除できませんね。

岸田国務大臣 TPP協定において投資家がISDS手続を利用することが可能なのは、投資章に規定されている内国民待遇、最恵国待遇等の義務に関する違反が発生する場合でありますが、共済につきましては、この内国民待遇、最恵国待遇等の義務に違反する法令あるいは政策、これは国内には存在しないという判断のもとに、留保を付すことはしていないと承知をしております。したがって、我が国が、共済について、これらの義務に関してISDSにより提訴されることは想定していないと考えます。

原口委員 そこはちょっとおかしくないですか。だって、資料九をごらんください。こう言っているんですよ。「米国は日本に対して、共済制度による保険提供の仕組みを改善する手段を講じるよう」、彼らが言っているのが正しいと言っているんじゃないですよ。だけれども、彼らの立場はこうだと言っているので、誤解のないようにお願いします。「手段を講じるよう提言する。共済は日本の保険市場において相当な市場シェア」、そうですね、先ほど資料で見ました。結構な市場シェアを有しており、「金融庁によって規制を受ける民間保険提供者と直接競合しているにもかかわらず、金融庁所管の保険提供者に義務付けられている規制措置の多くを回避している。」と言っているわけです。「共済の規制環境を改善することは、健全で透明性のある規制環境の確保につながり、消費者および日本の保険市場にとってメリットとなる。」と。

 このときは、あくまで日本の中でのメリットですけれども、今回、ISDSを結べ、それで、今大臣がお答えになったように留保がないとすれば、まさに、こう認識している人たちは訴えてくるでしょう。違いますか。

岸田国務大臣 御指摘いただきましたこの文書、これは、ちょっと日付はわかりませんが、TPP交渉の以前の話だと思います。

 こうした米国との文書があるという御指摘でありますが、その後、TPP交渉を行う中にあって、さまざまなやりとりが行われました。そして、そのやりとりの中で、改めて、共済について、内国民待遇、最恵国待遇等の義務に違反する法令や政策は我が国の中には存在しないという判断のもとに、留保を付すことをしていないわけです。

 いずれにしましても、結果として、ISDSにより提訴されることは想定していないというのが我が国の立場だと認識をいたしております。

原口委員 今聞いておられる方は、TPPのISDSの矛盾をもうおわかりだと思います。我が国はそう言っている、だけれども向こうはそう言っていない。だから、おかしなことをやりなさんなよと。留保していないんだったら、そこは対象にしますよと言われても文句は言えないはずなんです。ここはまた今後詰めていきます。

 では、文科省。

 文科省の初等教育、中等教育、教育というのは国の基本ですね。特に、我が国は地下資源に恵まれていませんから、人材こそ国の礎であります。教育は国家主権そのものであり、国の基本です。

 人材育成は重要なものであって、特に初等中等教育、高等教育は国家の基本となり得るものだと考えますけれども、文科省の見解をお尋ねします。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 教育の根本的な目的は、教育基本法第一条にございますが、人格の完成と、国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成でございます。

 こうした教育基本法の目的を実現するために、内閣の最重要課題として、初等中等教育や高等教育を初めとして、あらゆる教育段階における教育再生に取り組んでいるところでございます。

原口委員 私、その内閣の姿勢を支持します。初等中等教育から高等教育までの全ての段階において、人材育成の観点からも、教育環境への投資をさらに拡大すべきだと考えます。

 取り組み状況を教えてください。

佐藤政府参考人 お答えします。

 教育は未来への先行投資でありまして、その充実を図ることによって一人一人が持つ可能性を最大限伸長することが重要であります。

 このため、平成二十九年度の概算要求では、学ぶ意欲と能力のある学生などが経済的理由により高等教育機関への進学を断念することがないよう、給付型奨学金制度の創設や無利子奨学金の充実、あるいは授業料減免の拡充などの条件整備についての予算、また、教員に関するものでは、教職員定数の充実、教員の資質能力の向上など、次世代の学校創生のための学校指導体制の強化などを盛り込んだところでございます。

 今後とも、教育投資の効果や必要性について広く国民の間で御理解いただきながら、教育投資の充実に努めてまいりたいと考えております。

原口委員 そこで、TPP協定について、どういう留保になっているかというのを示したのが資料十です。皆さんのお手元の一番最後の資料です。

 これは、初等中等教育サービスについては将来留保、将来留保というのは、将来についても、我が国がさまざまな法律をつくったり規制をしたりしても、それはISDSの対象になりませんよと。しかし、高等教育サービスについては現在留保となっているじゃないですか。

 今後、高等教育に投じた予算措置が外国企業に流れたり、また、関連措置がISDS条項の対象になるのではないかというふうに懸念をするわけですけれども、文科省の見解を伺います。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 教育の質の担保の観点から、教育基本法などにおきまして、国、地方公共団体及び学校法人のみが学校を設置できるものとなってございます。この規定は、初等中等教育、そして高等教育であるかにかかわらず適用されるものでございます。

 初等中等教育サービスの提供に当たりましては、我が国の社会情勢の変化等を踏まえまして柔軟に検討していくべきものであり、将来さらなる措置を導入する可能性があることから、将来留保ということになってございます。

 他方で、高等教育におきましては、高等教育の国際化と、国際的な高等教育サービスの自由化に対する要請の高まり等を踏まえまして、我が国はEPAなどの国際貿易交渉の場において既に一定レベルの高等教育サービスの自由化を約束しているところでございまして、我が国として将来に向かってこうした国際約束の趣旨に反する形での規制の強化、導入は想定していないため、現在留保となってございます。

 また、現在留保の対象となっております高等教育サービスでございますが、これは、先ほど述べました学校教育法等におきまして、学校法人により提供することが規定されてございます。我が国の学校法人は非営利目的の法人であることから、外国企業に対して利潤を発生させる懸念はないと認識してございます。

原口委員 いや、書いた答弁を読むんじゃなくて、聞いたことだけ答えてください。

 だって、将来留保がないわけだから。教育とかまで市場化する必要はないんですよ。どうして自由化するんですか。我が国の基本をどうしてよその国に任せられますか。よその国の人たちが税金を払って我が国の子供たちを育てますか。違うでしょう。

 ISDS条項の対象となる可能性はあるでしょう。そこだけ答えてください。

松尾政府参考人 ISDS条項でございますけれども、TPP協定を含む投資関連協定で規定される手続でございますが、TPP協定で初めて採用される制度ではございません。これまで、ISDS手続で提訴された例はないものと承知しております。

原口委員 いや本当に、真面目に答えていただきたいですよ。

 これまであったかないかを聞いているんじゃないんですよ。今回、将来留保をしていないから、高等教育については初等教育や中等教育で僕らがやろうとすることをやろうとしたら、高等教育にも及ぼそうとしたら、ISDSの対象になる。これは論理的な帰結じゃないですか。別に落とし穴を掘った質問をしているんじゃないですよ、普通の質問をしているんですから、答えてください。

松尾政府参考人 繰り返しになりますけれども、現在留保の対象となっています高等教育サービスでございますが、学校法人により提供することが規定されておりまして、これは非営利目的の法人でございます。したがいまして、外国企業に対して利潤を発生させる懸念はないと承知しておりまして、ISDS手続によって提訴される、それは想定してございません。

原口委員 いや、全く納得いきませんね。

 要は、条約は法を超えるわけでしょう。しかも、このISDS。皆さん、TPP協定、自由貿易協定だと思われたあの六千三百ページ、ごらんになりましたか。今、一生懸命英文で読んでいますけれども、あれは、大臣、自由貿易協定とだけ言えませんよ。投資家保護協定、その部分が物すごく強い。

 結果、これは大臣と残りの時間で少し議論したいんですが、我が世界は、この一世紀余り、大きな矛盾に直面してきました。つまり、マネーという記号が実体経済をはるかにしのいで、マネーがひとり歩きして、そして、それが三年に一回、二年に一回、経済危機を起こし、金融危機を起こし、先進国の財政は真っ赤っか。こういう状況を繰り返して本当にいいのか。

 仁政の基本、仁の政治の基本は際をつくることだと古典に書いてありました。際をつくるというのは、あなたの田んぼはここですよ、あなたの田んぼはここですよ、それぞれがそれぞれに責任を持って、そして、よきところを交換する。今、実体経済とバーチャルなマネー、資本の流動性はどれぐらい乖離していると大臣は思っておられますか。

岸田国務大臣 世界経済についての判断ですが、先日のG20サミットの際の判断としましても、国際経済は緩やかに回復しているものの不確実性は高まっている、先進国、開発途上国ともに一致して政策を進めなければいけないということが確認をされました。

 そして、実体経済において、マネーの流動性との関係についてどうかという御質問でありますが、その関係について、要は、マネーの流動性が過剰なのかどうかという判断については、確たる評価はまだ、今の現状においてなされていないと考えます。一つの議論としてあるのは承知していますが、過剰かどうかという判断については、明らかな判断はされていないと認識をいたします。

原口委員 私、ニューヨーク連銀の総裁のときに、前の財務長官、ティモシー・ガイトナーさんともマネーの議論をしました。これは世界経済が直面している問題じゃないですか。一説によると五倍ぐらいある。実体経済とマネーという記号が乖離すれば乖離するほど、貧富の格差は大きくなって、フリクションが大きくなるわけです。ここをもとに戻そうということで、世界連帯税を考えてみたり、いろいろな議論をしているわけです。

 私は、構造改革路線というこの三十年間が破綻をしたんだと思います。構造改革というのは結局何かというと、労働と資源と資本を市場化するという試みなんですね。労働を市場化する、そして資源も市場化する、あるいは資本も市場化する。しかし、そのときに壊れてしまったのは社会なんですよ。

 市場でそこにビジネスチャンスは生まれたかもわからないけれども、結果、何が生まれたかというと、社会そのものが崩壊をしてしまって、際がなくなって、全体がまるでタンカーのように、タンカーはあれで何で沈まないかというと、それぞれにセパレートの部屋があるから一気に浸水しない。ところが、ルールにおける競争ということでこういうことをやってしまったがために、今政府でも、租税回避地への資金の流れについて重大な関心を持って、それをどうにかしなきゃいけないと考えておられるでしょう。だから、そういう問題意識を持っていただきたい。

 私は、このTPP協定、これは自由貿易協定とだけ見ればすぐれた協定でしょう。しかし、もうその時代は超えているんだということを申し上げたい。

 資料の一ページ目に戻ってください。大臣は、「重要な外交的、戦略的意義を有するTPP協定」。アメリカの大統領候補二人とも、このTPPについては、三回目の討論でも極めて慎重なというか反対の姿勢を示しました。我が国の最も重要なパートナーであるアメリカが、戦略的な意義をTPPに見出していない、次の大統領候補が二人とも意味を見出していないということは、これは深刻に受けとめるべきことだと思います。大臣の見解をお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 世界経済の見方につきましては、先ほども申しましたが確たる考えが示されているというふうには思っていませんが、委員の御指摘、これも大変重たいものがあると思いますし、ぜひこうした議論をしっかりと行うことは大変重要であると認識をいたします。

 そして、TPPに対する評価ですが、アメリカにおいて、大統領選挙をめぐりましてさまざまな議論がある、これは承知をしておりますが、一方で、オバマ政権は、十一月八日の大統領選挙以後の残された議会の会期内でTPPの議会承認に向けて全力を尽くす、こういったことを再三表明しています。

 そして、TPPの大筋合意が行われ、そして署名が二月に行われたわけですが、それ以後も、韓国あるいは台湾を初め多くの国々からTPPに対する関心が示されています。こうした多くの国々から、将来に向けて、TPPに向けて関心が示されているということ自体、TPPの経済的な意味合いのみならず、戦略的な意味合いの重要性を示しているのではないか、このように我が国としては認識をしています。

 いずれにしましても、TPP協定の重要性に鑑み、我が国としましては、率先して国際的な機運を盛り上げるべく、国会での御承認を初め早期発効に向けて努力を続けていかなければならない、このように認識をしております。

原口委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、大臣、思い起こしてください。四半世紀前、同じ宏池会で勉強させていただいていました。あのとき政界は、金権政治に対する政治改革で議論が白熱していました。しかし、あのとき私たちは、大臣と私がいた勉強会、派閥では、経済危機をどう乗り切るかということが主眼でした。別の観点を持って冷静に議論していたんです。あの人たちが中心にいたら、今の日本の惨状はなかっただろうと思います。

 TPPで本当に日本は幸せなんですか。世界は幸せなんですか。そして、我が国の主権は確保できるんですか。その問いをもう一回御自身の中で問い直していただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 おはようございます。吉良州司でございます。

 最近、外務委員会の質問に立つ際の前置きになっておりますけれども、これから質問させてもらう内容は、吉良州司、議員としての個人の責任で行う質問でありまして、党を代表するものではないということをまずお断りした上で質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 きょうは、特に地政学的な視点を盛り込んだ外交方針、外交戦略というものについて、大臣を中心に質問をさせてもらいたいというふうに思っています。

 きのうからフィリピンのドゥテルテ大統領が来日されております。もう外務大臣も既にお会いになったようでありますけれども、聞くところでは大変な親日家ということもあって、今回のドゥテルテ大統領の訪日が建設的な、極めて有意義な訪問になって、我が国との有意義な意見交換になることを望んでやみません。

 我が国が南シナ海それから米国との関係ということについてフィリピン大統領に主張することは明確であろうと思っておりますので、その内容についてはもう想像もつきますので、私自身も強く支持をしていきたいというふうに思っています。

 一方で、ドゥテルテ大統領は日本に来る前に中国を訪問いたしました。その際に、少し気になることとして、国際仲裁裁判の判決を事実上棚上げするような合意をしたかに見られること、そしてまた、いろいろな説明はしていますけれども、米国と決別するというような発言もされております。

 ちょっと質問通告はしておりませんけれども、まさに今ホットなタイミングでありますので、このドゥテルテ大統領の中国における発言について、大臣としてどう受けとめておられるのか、どう感じておられるのか、まずそれをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 南シナ海の問題は、我が国にとりましても死活的な、シーレーンにかかわる問題でありますし、地域あるいは国際社会にとりましてもこれは共通の課題であると認識をいたします。法の支配に基づいて平和的に問題が解決されること、力による現状変更を許してはならないということ、こういった観点から、これは国際社会全体の問題として捉えるべきであるということを訴えてきております。

 そして、私も八月にフィリピンを訪問させていただいた際に、ドゥテルテ大統領あるいはヤサイ外相との間において、海における法の支配の重要性ということについては一致をして帰りました。基本的な考え方においては、日本とフィリピン、一致をしていると考えます。

 フィリピンと中国とのやりとりについても今さまざまな情報が飛び交っておりますので、ぜひしっかりと注視していきたいというふうに思っておりますが、今申し上げた基本的な考え方においてフィリピンと一致しているということ、これをまずしっかり確認した上で、具体的な問題にどう取り組んでいくのか、率直な意見交換を行うべきではないか、このように考えます。

吉良委員 大臣がおっしゃった基本的な考え方というものはもう明確だと私自身も申し上げましたし、それをフィリピンと共有したいということも十分わかりまして、ぜひそれはお願いしたいのでありますが、私が今聞いた、大臣がどう受けとめておられるかということで、私自身が実は期待した答弁は、仲裁裁判についても、フィリピンに有利な、または法の支配というものを重視する国々にとって非常に有利な判決がなされたにもかかわらず、中国に対して、当事国であるフィリピンそのものが近寄っていっている、棚上げととられかねない状況をつくり出している。

 では、これが一体、その背景に何があるんだろう、こういうことなんですね。

 それは、東南アジア諸国を初めとして、やはり中国の力、中国が見せつける経済支援の力、これによって、いろいろな正義というものがあろうけれども、花よりだんごじゃないですけれども、中国の力であったり経済的な支援というものにぐっと引き寄せられていってしまう。これが今の、残念ながら、海も含めて中国と国境を接するような国々の対応ではないか。そういう問題意識を持っているわけなんです。

 実は、きょう私が質問をしようとしたタイミングのいい、けさの読売新聞の朝刊に、「「一帯一路」構想加速」と、シルクロード構想、海のシルクロード構想が加速しているという記事がありました。そんなに長いものではないので、さっと読ませていただきますと、

  「一帯一路」は各地で動き出している。九月には英国で中国出資の原発事業が承認されたほか、中国が設立したシルクロード基金や中国主導のアジアインフラ投資銀行を通じ、パキスタンなどでインフラ事業への融資が決まった。

  経済が減速する中国は「一帯一路」で成長市場を取り込み、余剰な生産力を海外に向ける思惑だ。

  インドネシアでは高速鉄道を受注後、中国資本が流入し、中国の直接投資が前年同期比六・三倍と急拡大した。エコノミストのエリック・スガンディ氏は「中国は受注第一で安全性などは二の次だが、中国投資はどの国にも魅力的」と指摘。安全性や信頼が売りの日本は、インフラ受注競争で今後も苦戦を強いられると予想する。

こういう記事が出ておりました。

 もう大臣もお気づきのとおり、安全性などは二の次だが中国投資はどの国にも魅力的。今、私、ドゥテルテ大統領の訪中時の報道にも影響していると申し上げましたけれども、これが実態ではないかというふうに思っています。

 そういう中で、中国は具体的に、上海協力機構という枠組みを、もちろん設立し、その加盟国メンバーを拡大していっています。そしてそれは、経済的な構想でもある一帯一路構想とも密接に結びついています。

 まずお聞きしたいのは、上海協力機構というのは、どのような機構であるかというのはごく簡潔にお願いしたいんですけれども、我が国にとってはどういう存在であるかということについてお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 上海協力機構ですが、加盟国六カ国で構成される機構であり、六カ国の間の相互信頼、友好関係、善隣友好の強化、テロ、急進主義等への共同対処、あるいは政治、貿易、経済、防衛等の分野における地域協力の推進、こうしたものを目的として一九九六年に設立されたものであると承知をしておりますが、こうした中国の動き、先ほど御指摘がありました一帯一路構想あるいはAIIB構想、こうしたものと相まって、中国の動きとして注目を集めています。

 我が国の受けとめ方ですが、こうした中国の動き、国際的なルールですとか法の支配を尊重した上で平和的に発展をしていく、こういったことであるならば、これは日本にとっても大きなチャンスであり、国際社会にとっても歓迎すべきことであると考えます。そうした観点から、御指摘のような動きについても今後とも注視をしていかなければならない、このように考えます。

吉良委員 では、もうちょっと違う視点で質問しますけれども、上海協力機構の地政学的な意味、意義というものはどう見ておられますか。

岸田国務大臣 上海協力機構ですが、加盟国は中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンですので、地政学的に、言うならばユーラシア大陸をカバーする形で、先ほど申し上げました目的のもとに協力を進めていく、こうした枠組みであると認識をいたします。

吉良委員 実は、委員の皆さんにも手元にお配りしている資料をごらんいただきたいと思います。

 これは、今大臣まさに御指摘のとおり、上海協力機構の既に加盟しているメンバー、それからオブザーバー国、さらには対話パートナー。オブザーバー国の中でも、インド、パキスタンは既に加盟を決めております。それをこのように図にしてみますと、ユーラシア大陸をほぼ覆うような機構になっています。

 かつてのモンゴル帝国の再来ですよね。イランだトルコだ、これまで入れればイルハン国。カザフスタンから、カスピ海からロシア側、ウクライナは入っていませんけれども、キプチャクカン国。元そのものは中国でありますけれども、まさに蒙古帝国の再来と言えるようなものだというふうに思っています。

 これを中国が主導でやっている。しかも、大臣が御指摘のとおり、それを経済的にも、AIIBですとか、私が先ほど言いましたシルクロード基金等で金融的にも後押しをしている。こういう構想であって、我が国として、今大臣おっしゃるように、確かに、責任ある大国として中国、そしてその関係国がルールにのっとった形でこの機構が運営されていくのであれば、もちろんそれはいいことでありますけれども、現時点の中国は必ずしもそうなっていないがゆえに、南シナ海でも東シナ海でもいろいろな問題を抱えている。

 そういう中で、このユーラシア大陸を覆うような、地政学的な、ある意味では新たな枠組みをつくっている、中国を中心としたこの機構に対して、我が国として地政学的にどういう対応をしようとしているのか。外交戦略、地政学も念頭に入れた対応というのはいかがなものなのか。それをお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 上海協力機構の取り組み、中国の取り組みについてお話をいただきましたが、こうしたユーラシア地域に対する我が国の取り組みもさまざまな形で続けられています。

 例えば、アジアと欧州を結ぶユーラシアの中心部の地政学的な重要性を持つ中央アジア諸国との関係においても、中央アジアプラス日本という枠組みを設けています。こうした枠組みにおいて対話を続けているわけですし、昨年十月、安倍総理の中央アジア五カ国訪問、こうしたハイレベルの交流も続けています。そして、この地域にはインド、ロシアなど、こういった国々も入るわけですから、それぞれとの関係についても取り組みを続けているわけです。

 この地域における地政学上の重要性、こういったものを考えながら、我が国として、国益に資する形でこの地域とのかかわりを進めているというのが我が国の立場であると認識をいたします。

吉良委員 確かに、中央アジアプラス日本という構想は、あれはたしか川口大臣のころだったですか、始まったというふうに思いますけれども、その動き。そして、インドとの非常に強い協力推進、こういうようなことは、まさに地政学的な上海協力機構に対抗し得るものだというふうに思っています。

 以前、第一次安倍内閣、麻生太郎外務大臣のときにあった自由と繁栄の弧構想というのは、今どうなっているんでしょうか。もう短くて結構です。あれは、ある意味では地政学的なことを想定した構想だったというふうに理解しておりますけれども。

岸田国務大臣 自由と繁栄の弧構想、これは別に、なくなったとか廃止したとかいうことは承知はしておりません。その延長線上において、より発展する形で、今のこの政権の外交姿勢があると認識をしております。

吉良委員 もう深くは突っ込みません。

 ことしの六月に、サンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、これから北方領土交渉を迎えるプーチン大統領が大ユーラシアパートナーシップ構想というものを打ち上げて、そして、中国のまさに一帯、シルクロード経済構想とユーラシア経済連合の統合というものを発表しております。

 日本の今後の北方領土交渉で一番難しいのは、日本の独自の国益と日米関係、これをどうバランスをとっていくか、進めていくかだというふうに思いますが、少なくともこの大ユーラシア構想においては、プーチン大統領、ある意味ではやはりアメリカを意識して、アメリカに対抗するというような目的も持ちながらの構想だというふうに思っています。

 先ほど私、個人の責任でもって発言すると言いましたが、TPPという枠組みは、ある意味では、陸の帝国、海の帝国というような言葉がありますけれども、陸の帝国に対する海の帝国、といっても、どこかが支配権を持つとかそういうようなことではなくて、貿易であれ投資であれ、それから人の動きであれ、まさに自由を尊重する国々の集まりとしての海の帝国、TPPというのはそういう位置づけができるんだというふうに思いますね。

 そういう意味で、このお配りした資料を見ていただければ、上海協力機構という陸の帝国対TPP、海の連携というものの、対立をあおるわけではないですけれども、こういう観点からもTPPというものを推進していかなければならない、私はこのように思っているものであります。

 そういう中で、TPPについて、中身は深くは突っ込みません。世界経済と日本経済とTPP、この三つの関係について、ちょっと漠とした質問でありますけれども、もうちょっと言えば、TPPが日本経済に及ぼす影響、そして世界経済に及ぼす影響について、簡潔に答えていただければと思います。

岸田国務大臣 まず、TPP協定ですが、二十一世紀型の新たな共通ルールをアジア太平洋においてつくり上げて、自由で公正な一つの経済圏を構築する試みであると認識をしています。今日まで貿易等において国を繁栄させてきた、また海洋国家である我が国にとりまして、こうした地域における経済ルールづくりをリードしていくということは大変重要なことであると認識をしています。

 そして、このことは、国際社会においてGDPの四割を占める大きな経済圏をつくるわけでありますから、国際社会の繁栄、安定においても大変重要な役割でありますし、こうしたTPP協定は、それ以外の経済連携の枠組み、RCEPですとか日中韓FTAですとか、こうした経済連携の議論にもよい刺激を与える、弾みを与える、こういった議論ではないか、このように考えます。

 こうした経済的な意味合いに加えて、先ほど来委員の方からもございました戦略的な意義合いもTPP協定は持っているということを認識しながら、この協定の早期発効に向けて努力を続けている次第であります。

吉良委員 ここでもやりとりはしたかったんですけれども、南米のことにも移りたいので、TPPと日本経済、そして日本経済と世界経済を少し簡単に私の方から申し上げたいと思っているんです。

 資料の二ページ目をぜひ委員の皆さんも見ていただきたいと思っています。

 これは、世界、それから先進国の集まりであるOECD、それから新興国の集まりであるBRICS、そしてASEAN、また個別の国として我が国、米国、中国の実質GDPの成長率の推移をあらわした図です。

 これを見て一目瞭然だと思いますが、日本経済というのはほとんど世界とリンクしています。今や日本だけではありません、今言ったOECDもBRICSも米国も、ほとんどが世界とリンクしている。これが実態であります。

 小泉・竹中政権のときに好景気を戦後一番長く維持したと言われておりますけれども、これを見ておわかりのように、二〇〇一年ぐらいからリーマンの手前までは世界全体が伸びています。日本も伸びている。その後、リーマンで、我が国のみならず世界じゅうが落ち込んでいる。だけれども、我が国としては、マーケットを突然失ったようなもので、世界の中で一番大きな影響、マイナスの影響を受けてしまっている。これが実情ですね。

 ここは財務委員会じゃないので。アベノミクスへの批判というのは本当は山のようにしたいんですけれども。今は、本当に人的投資。日本の経済政策、金融政策が一国完結する時代はとっくの昔に終わっていますので、そんな将来的なリスクのある政策を幾ら打っても日本はよくならない。それよりも、これを見て明らかなように、我が国もよくなるのは、周りの経済をよくする、そして世界の経済をよくしていくということが、一番我が国の経済が繁栄する近道なんですよね。

 そういう意味で、今大臣もおっしゃったように、世界のGDPの四割を持つ国々が集まって新たな経済的な枠組みをつくるこのTPPは、こういった我が国の経済を発展させる、世界とリンクした経済を発展させるという意味でも非常に重要だということを私自身は申し上げたいというふうに思っています。

 あと、もう一点。よく、米国大統領候補二人が反対をしているから、日本が先行して批准する意味がどこにあるんだという議論があります。私自身はそうは思っていません。

 世界の中で、江戸時代のように鎖国をしても生きていける国が二つあると言われています。一つは米国です。もう一つはアルゼンチンです。鎖国をしても生きていける国は、俺はかかわりたくないよ、それでも生きていけます。けれども、我が国は自由な貿易・投資ということで、一番これまでも戦後メリットを受けた国であり、今後も受けていかなければいけない。そういう国がまず、ほかがいかであれ、一旦は合意した我が国が、一番メリットを受ける国として先鞭をつける、これが重要だということを私自身申し上げたいと思います。党の見解とはずれていますが、そのことを申し上げていきたいと思います。

 次に、もう少し戦略的な観点から、話を今度は南米に移していきたいと思います。

 大臣、ニューヨークからアルゼンチンに飛行機で飛んだときに、ど真ん中というのはどこか御存じですか。ちょうど中間点というのはどこか御存じですか。ニューヨークからアルゼンチン。私はよく、何十回も飛んでいきましたけれども。

岸田国務大臣 済みません。突然の御質問なので、急に思い当たりません。

吉良委員 実は、結構、世界地図が頭に浮かんでくる人でも、大概の人はキューバですかとかドミニカですかとか、人によってはマイアミですかとか、そういう発言、解答をする人が多いんですが、実はボゴタです。ど真ん中がコロンビアのボゴタなんです。それだけ南米大陸は長いんですが、ある意味では、これも地政学的にというか、米州のど真ん中のへそが、重点に当たるところがコロンビアになるわけですね。

 もう一つ質問をします。米国が本国の外交官を送り出している国で、最大の人数を誇る国はどこか御存じでしょうか。アメリカが、現地採用の大使館員ではなくて、本国から外交官を派遣している最大の国はどこか御存じでしょうか。

岸田国務大臣 幾つか三百名規模の外交官を送り出している国があるということでありますが、コロンビアもその一つだというメモが今回ってまいりました。

吉良委員 今度ノーベル平和賞をもらったサントス大統領が初めて当選されて大統領になったときに、私、特派大使として大統領就任式に出させてもらいました。そのときの情報でありますけれども、そのとき現地の日本の駐箚大使から聞いた話では、今私が質問した最大の国はやはりコロンビアでありました。それだけを聞いても、アメリカにとってコロンビアという国がいかに重要な国であるかということがわかるというふうに思います。

 あと、もう一点だけ。原油ですね、油。世界で一番埋蔵量の多い国がどこか御存じですか。

岸田国務大臣 ベネズエラでございます。

吉良委員 ありがとうございます。

 実は、資料の三ページ目に、世界の国別原油・天然ガスの生産量・確認埋蔵量というものを添付させてもらっていますが、恐らく多くの人は埋蔵量世界一はサウジアラビアだと思っていると思います。でも、実はベネズエラです。そのベネズエラの隣にあるのがコロンビアです。

 まず、大臣に簡潔にお答えいただきたいんですけれども、今回のノーベル平和賞がコロンビアのサントス大統領に贈られたということについての感想、評価を簡潔にお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 コロンビアにおいては、半世紀を超える長い期間にわたりまして、国内において紛争が続いてきました。その中にありまして、サントス大統領がこの和平に向けて大変な御努力をされてこられたことについて、心から敬意を表し申し上げます。その評価の一つがノーベル平和賞であったと認識をいたします。

吉良委員 では、今、日本がコロンビアとの関係で重視していること、そして、日本外交としてコロンビアに対してどう向き合おうとしているのかについて、これまた簡潔に、どなたでも結構です。

小田原大臣政務官 コロンビアは、豊富な天然資源や南米第二位の人口を有する潜在力の高い国であります。経済的にも、欧米との関係強化等、開放経済を推進しています。また、コロンビア革命軍との和平プロセスが進んでおり、国際的な注目も高まっております。

 御指摘のとおり、アメリカはこうしたコロンビアとの関係を重視しまして、二〇一二年にはコロンビアとのFTAも発効しています。ことし二月にコロンビアのためのグローバル地雷除去イニシアチブを主導するなど、さまざまな協力を実施していると認識しております。我が国も、同イニシアチブに参加し、米国と連携をして、コロンビア支援を実施しているところであります。

 我が国としては、コロンビアの和平プロセスを引き続き支援するとともに、同国のさらなる経済発展に資する形で、今後も地雷除去支援、日・コロンビアEPA交渉の推進などを通じて、二国関係を強化してまいる所存であります。

吉良委員 その自由貿易、自由経済を重視するコロンビアが加盟をしている太平洋同盟という枠組みがあります。この太平洋同盟というものがどういう枠組み、そして日本とのかかわりがどうなのかということについて、これもごく簡潔にお答えいただければと思います。

小田原大臣政務官 太平洋同盟の枠組みでありますが、中南米の主要な太平洋沿岸諸国により構成をされております。加盟国の物、サービス、資本及び人の自由な移動を目標として掲げております。

 太平洋同盟のGDPは、中南米全体の三八%、貿易額の約五〇%であります。我が国と太平洋同盟諸国との貿易額は、我が国の対中南米全体の貿易額の七割。

 二〇一二年の六月に枠組み協定が署名をされまして、一五年七月に発効しております。二〇一四年の二月十日、貿易品目九二%の即時関税撤廃などを内容とする協定附属書に署名をしております。これは、二〇一六年の五月一日に発効しております。

吉良委員 その太平洋同盟の中で、メキシコ、ペルー、チリ、これらの国々は、APEC加盟国でもあり、かつTPP加盟国であります。

 コロンビアだけが今入っていないという状況なんですが、これは何か理由があるんでしょうか。政府委員の方でも結構ですよ。

高瀬政府参考人 今委員御指摘のとおり、コロンビアはTPPにもAPECにも入っておりません。特段私どもも詳しい事情というのは存じ上げませんが、TPPにつきましては、APEC参加国の中から交渉が始まっているというふうに承知しております。

吉良委員 これは、正直言って私も、これが理由なんだという明確な理由を実は知りません。ただ、一つあるのは、やはり先ほどのアメリカが本国の外交官を一番多く送り込んでいるということにもあらわれていると思うんですが。

 この意味合いは、先ほど言いました、ニューヨークとブエノスのど真ん中にあるという、地政学的なまさに米州の重心であるということ。それから、隣がベネズエラで、今かわりましたけれども、反米色を非常に明確にしたベネズエラのチャベス政権があった。そして、南にはボリビアというやはり反米政権があった。エクアドルのコレア政権は、今言った国々ほど激しくはないですけれども、それでも、どちらかといえば親ベネズエラというような状況であった。そして、キューバもしかりです。ただ、ここに来て、キューバも米国との間で雪解けが始まっております。

 ただ、コロンビアまでもが今言った反米化すると、アメリカからしてみたら、非常に大きな米州内のリスクを抱えてしまう。それに加えて、今言った、これまで内戦状態であった、反政府勢力FARCとの内戦がずっと続いていたということ、そして、その資金源にもなっていましたけれども、麻薬が横行して、そこの麻薬がメキシコ、アメリカに流入していた、こういうようなことが影響していたのではないかというふうに私自身は思っています。

 そういう意味で、今回、和平合意がなされたこと、そして、ベネズエラについても後継政権ではありますけれどもチャベスさんそのものの政権ではなくなったこと、もろもろ、コロンビアをAPEC、TPPに迎え入れるというような状況があらわれつつあるんじゃないかというふうに思っています。

 私自身は、さっき言った地政学的な観点から見ても、一ページをもう一回見てもらいたいんですが、南米第二の人口を誇るコロンビアで、太平洋にも大西洋にも面していて、鉱物資源にも恵まれ、そして貿易・投資という自由経済を志向するコロンビアがここに入っていないということは、かえって違和感を感じると思っています。

 日本が中心になってコロンビアをAPEC、TPPに迎え入れる、そのように日本外交として努力していただきたいと思っていますが、これも簡潔に。

小田原大臣政務官 我が国としては、太平洋同盟の重要な一員であるコロンビアとの経済関係を重視しています。現在、日・コロンビアEPAの早期締結に向けて精力的に交渉に取り組んでいるところであります。

 他方、TPPは、二十一世紀型の高いレベルの貿易・投資ルールを構築するものであります。今後の経済連携のスタンダードとして、アジア太平洋地域に参加国・地域が広がっていくことを想定しています。

 コロンビアがTPPの高い水準を満たしつつTPPに参加することになれば、アジア太平洋地域の安定と繁栄に大きく寄与すると考えています。

 APECへの新規参加については、現参加メンバーのコンセンサスが必要であるものの、我が国としては、APECへの参加を通じて地域の貿易・投資の自由化、円滑化に貢献しようとするコロンビアの意思を歓迎しているところであります。

吉良委員 もう時間が来ましたので、最後、言いっ放しで終わりたいと思いますが、私自身、日米同盟の強化、日米関係の強化というのは非常に重要だというふうに思っています。ただ、ともすれば、日米関係といいますと、まさに太平洋を挟んで、日米であったり米中であったり米韓であったり、どうしても太平洋だけのことを考えがちなんですけれども、先ほど言いました、アメリカが、ある意味では一番多くの本国の外交官を送り込んでいるのがコロンビア。それだけ関心が高い。中国的に言うならば、核心的利益な国がコロンビアなんですね。

 そういう意味では、日米関係を強化する意味でも、我が国としては、コロンビアに対して深くコミットする。場合によっては、さっき言った我が国の将来的なエネルギー安全保障の観点からも、ベネズエラが最大の埋蔵量である、もちろん油の質がちょっと重いのですぐには利用できないんですが、中東というのがいろいろな意味で不安定な中で、やはり南米にもそういうエネルギー安全保障上の拠点をきちっと位置づけること、そして米国と一緒になってコロンビアのプロジェクトを推進するということ自体が、間接的ながら、日米同盟の、また日米関係の強化につながる、そういう意味でコロンビアを重視していただきたいということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 安倍内閣は、昨日十月二十五日、南スーダンPKOの実施計画の変更について、NSC、国家安全保障会議九大臣会合を経て閣議決定をいたしました。今回の変更によって、UNMISS、国連南スーダン共和国ミッションへの自衛隊部隊等の派遣期間を来年の二〇一七年三月末まで五カ月間延長するというものであります。

 ここに、閣議決定に当たっての、派遣継続に関する基本的な考え方という文書があります。昨日付で内閣官房、内閣府、外務省、防衛省ということで出されたものであります。

 まず、岸田大臣に伺いますが、今回の決定における南スーダンの情勢認識なんですけれども、稲田防衛大臣は、昨日の閣議決定後の記者会見で、マシャール派の報道官が、戦闘行為はまだ続いている、政府軍が先にやっているという認識を示していて、それは首都ジュバでも起こり得るということを電話で答えているがというふうに問われて、稲田大臣は、治安が悪化していることは事実というふうに答えております。

 岸田大臣も同じ認識でしょうか。

岸田国務大臣 基本的には、当然のことながら、同じ認識であります。

 現時点において、地方においては引き続き散発的、偶発的な衝突は見られますが、首都ジュバについては比較的情勢は落ちついている、こうした認識に立っております。

笠井委員 基本的には同じ認識と言われたんですが、情勢は厳しいということなのか、それとも悪化している。つまり、稲田大臣は悪化しているということは事実というふうに言われているわけです。

 その点について確認をしたいんですが、現地を見てきた稲田大臣自身は、治安が悪化していることは事実というふうに言っているんですが、岸田大臣もその認識は同じなのか違うのか、その点はどうですか。

岸田国務大臣 引き続き緊張感を持って注視しなければいけないという認識、政府ですから当然認識は一致していなければなりません。

 七月七日、南スーダンにおいては、現地の治安情勢が急激に悪化したわけですが、その後、七月十一日に、南スーダン政府側は、敵対行為の停止を命じる大統領令を発出、そして、マシャール第一副大統領も、同派の兵士に敵対行為の停止を命令した、こうしたことがありました。

 そして、その後の情勢について、地方において散発的な、偶発的な衝突が見られるが、首都ジュバについては比較的情勢は落ちついていると認識をしており、実際、ジュバでは、地元の商店、スーパー、商業銀行、病院等は現時点においておおむね通常どおり営業していますし、また、主要航空会社はおおむね通常運航していると承知をしております。

 ただ、引き続きまして緊張感を持って注視をしていきたいとは考えています。

笠井委員 稲田大臣が言われたのは、問答ですけれども、要するに、七月に悪化したというんじゃなくて、今、悪化していることは事実だということについて言っているわけです。

 若宮防衛副大臣にお見えいただいていますが、防衛省としては、大臣自身がスーダンの治安が悪化していると認識しているというふうに言っているんですけれども。事実だと。何をもって治安が悪化していることは事実というふうに認識しているんでしょうか。

若宮副大臣 十月の八日に稲田防衛大臣は南スーダンを訪問いたしまして、主にジュバ市内、それからまた状況等を視察させていただきましたが、そのとき、視察の際には、やはり現地は非常に落ちついているということを確認されておられます。また、ジュバ市内につきましても、現時点におきましては落ちついているという認識を持っているのも、これまた私も聞いておるところでございます。

 他方、七月に、笠井委員も御存じだと思いますけれども、やはり比較的規模の大きい武力衝突が発生していることもございまして、今後の治安の情勢につきましては、今、岸田大臣も御答弁されておられましたけれども、十分に注視をしていかなければいけないなというふうに考えているところではないかというふうに思っております。

 また、ジュバ以外の地方につきましては、武力衝突あるいは一般の市民への襲撃につきましては、これはたびたび発生をしているということも承知をいたしているところでございますが、この南スーダンの訪問中に稲田防衛大臣の方がロイ国連事務総長特別代表と会談をさせていただいた際にも、この点についての言及もございました。しかし、先方からは、加えまして、衝突解決の合意については、この履行は維持をされている、衝突については、あるものの、エスカレートしているような状況ではないというような発言もあったというふうにも聞いております。

 南スーダンは、もう御承知のとおり、五年前に独立をした、まだ独立してから非常に間もない、世界で最も新しい国家の一つでもございます。当然、私どもこの日本のように、いろいろな意味での比較をしますと、治安の情勢というのは比較にならないほど余りよくはないというのも、これは厳然たる事実であろうというふうにも思っております。そういった意味でも、稲田大臣はそういった発言をされたのではないかなというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、引き続き私どもといたしましては現地情勢については緊張感を持って注視をしてまいりたい、このように考えているところでございます。

笠井委員 七月の事態について、その後はジュバは比較的安定とかということを繰り返し大臣も副大臣も言われるわけですけれども。

 稲田大臣の記者会見はきのうです。そこで、マシャール派の報道官が、戦闘行為はまだ続いている、政府軍が先にやっているというふうに認識を示していて、それは首都ジュバでも起こり得るということを電話で答えているけれども、そういうことは起こり得ないのか、大臣の認識はどうなのかと言ったら、きのうの時点で、治安が悪化していることは事実と、これはきのう言いましたよね、そういうふうに。若宮副大臣。

若宮副大臣 稲田大臣の方からそのようにお話し申し上げたと思うんですが、南スーダンにつきましては、従来からやはり、全くもって安定している状態であるというふうには、なかなか私どもが確たることを申し上げる状況にはないというのが事実でございまして、だからこそ国連も、ある意味、国の安定のために各国がともに力を合わせて汗を流していこうということであろうかと思いますし、私ども日本の立場といたしましても、日本としてどういった形での貢献ができていくのかということになってこようかと思っております。

 その意味で、稲田大臣が申し上げたのは、いろいろな意味で、全てが何もかも安定しているというわけではないというような趣旨でお話し申し上げたものというふうに考えております。

笠井委員 安定しているわけではないとか厳しいとかというんじゃないんですよ。悪化しているというのは、悪くなっているということなんですよ。そうでしょう。厳しいとか安定しているとは言えないというのじゃなくて、悪くなってきているということなんですよ、悪化というんですから。

 岸田大臣に伺いますが、稲田大臣は、またそれに続けて、将来的にいかなる事態が起きるかということについては、しっかり緊張感を持って見ていかなければならないと。先ほどもそれに似たような御答弁があったとは思うんですけれども、岸田大臣、日本政府として、南スーダンの今後の治安情勢は楽観できない、つまり、何があるかわからない、また二〇一三年末からの事態やことし七月のような事態が再燃しかねないという認識があるのかどうか、その点どうですか。

岸田国務大臣 まず、御指摘の稲田大臣のこの発言は、確かに大臣の方から状況は悪化しているという発言があったと承知していますが、それに続けて、首都ジュバにおいては状況は比較的安定している、そういった発言も続けてあったというふうに聞いております。

 要は、首都ジュバにおいては状況は安定しているけれども、地方において散発的な衝突が発生している、こういった状況を捉えて表現したものだというふうに認識をしておりますし、今後については、そういった状況がどう推移していくのか緊張感を持って注視をしていく、こうした姿勢が政府の姿勢であると考えます。

 いずれにしましても、我が国がPKO活動を続けるに当たりまして、国連のPKO三原則、そして我が国の派遣五原則、こうした原則がしっかり守られていることを確認しながら活動を続けていくべき課題であると認識をいたします。

笠井委員 この基本的考え方というきのうの文書では、今後も南スーダンにおいて武力衝突の発生は十分に予想されるというふうにあります。つまり、その点でいうと、二〇一三年末やことし七月のような事態が再燃しかねないということを言っているんじゃないのですか。そういうことはあり得ない、こういうふうに見ているのか、その点はどうですか。

岸田国務大臣 これは、現状、予断を持って判断することは控えなければならない、絶えず緊張感を持って現実を注視した上で、我が国として、国連のPKO三原則そして我が国の派遣五原則との関係において、しっかりと状況が守られているか、安定しているかどうか、これをしっかり見ていかなければならない、こういった考え方、基本的な姿勢を示していると考えます。

笠井委員 いずれにしても、先ほどからもそうですし、この間も、現時点でジュバ市内は比較的安定と、現時点でと言っているにすぎません。

 それから、反政府勢力の副大統領がかわったということでこの間も岸田大臣から答弁がありましたが、アメリカの議会調査局の報告書の中でも、デン第一副大統領の正統性についていろいろな議論があって疑問符があるんだということも紹介をされている。現在も武力衝突や一般市民の殺りく行為がたびたび生じているということが、この昨日の政府の考え方の中にもある。マシャール前副大統領は、政府側との和平合意は完全に崩壊したと述べて、武力闘争を続ける考えを強調しているわけであります。まさに今、PKOの五原則ということがありましたが、そのものが崩壊していると言われるような事態になっているということを指摘しておきたいと思います。

 そうした情勢の中で、自衛隊部隊の派遣継続を閣議決定した。昨日の政府の、派遣継続に関する基本的な考え方によれば、「自衛隊を派遣し、活動を継続するに当たっては、大きく、二つの判断要素がある。」として、要員の安全確保と意義ある活動を行えるかどうかということとともに、PKO参加五原則を満たしているかという、憲法との関係の判断ということを挙げております。

 その中で、「我が国における、法的な意味における「武力紛争」が発生したとは考えていない。」というふうに記述をされておりますが、そこで伺います。

 自衛隊が南スーダンに派遣された根拠はPKO法でありますが、そこで、武力紛争とは何かということがどういうふうに、何だというふうに定義をされているのでしょうか。

岸副大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 政府といたしましては、従来から、実力を用いた争いが我が国のPKO法における武力紛争に該当するか否かにつきまして、事案の態様や当事者及びその意思等を総合的に勘案して、具体的に判断することとしておるところでございます。

笠井委員 PKO法上、武力紛争を定義した規定があるのか。定義があるのかないのか、そこだけ端的に答えてください。

岸副大臣 PKO法上、武力紛争その言葉として定義をしたということではございません。

笠井委員 PKO法には、武力紛争とは何かという定義がないということであります。

 定義がないのに、なぜ南スーダンで武力紛争が起こっていないというふうに言えるんでしょうか。

岸副大臣 南スーダンにおきましては、本年七月にキール大統領派とマシャール前第一副大統領派の間で衝突が発生をいたしました。

 マシャール派につきましては、系統立った組織性を有しているとは言えません。また、同派による支配が確立されるに至った領域があるとも言えないところです。

 さらに、キール大統領派とマシャール前第一副大統領派の双方とも、事案の平和的解決を求める意思を有していると考えられるところであります。

 これらのことを総合的に勘案いたしますと、UNMISSの活動地域において武力紛争が発生したとは考えておらず、マシャール派はPKO法上の紛争当事者には当たらない、このように考えておるところです。

笠井委員 武力紛争は何かという定義がないのに、南スーダンでは武力紛争が起こっていないと何で言えるのか。これはおかしいですよね。

 では、伺いますけれども、PKO法第三条の一項に、国際連合の総会または安全保障理事会が行う決議に基づきPKO活動を実施するというふうにあります。南スーダンに自衛隊を派遣する根拠となる国連決議というのは何でしょうか。

岸副大臣 根拠につきましては、安保理決議の第二二五二号、二千二百五十二号です。

笠井委員 二二幾つですか。二二五二でいいですか。(岸副大臣「はい」と呼ぶ)本当にそうですか、根拠。

岸副大臣 失礼いたしました。二二五二と二三〇四号でございます。

笠井委員 昨日発表した基本的考え方と一緒に一連の文書があります。その中に、国連南スーダン共和国ミッション、設立年月二〇一一年七月と書いて、設立決議、安保理決議一九九六号というふうになっていますが、これに基づいてPKO法三条一項でやっているんじゃないんですか。その後、累次の決議はあるけれども、自衛隊を派遣している根拠になっているのはこれじゃないんですか。違うの。

岸副大臣 お答えいたします。

 一九九六号が最初の決議でありますけれども、それを更新したのが、先ほど申しました二二五二と二三〇四でございます。

笠井委員 いつ、どういうふうに更新しましたか。

三ッ矢委員長 確認できますか。

岸副大臣 失礼しました。

 今、日付は調べてすぐお答えを申し上げますが、PKOで派遣されるたびに更新をされ、そのときの最新の決議に従って派遣をされている、こういうことであります。

笠井委員 ちょっと、いつというのをきちっと言ってもらえますか。

 この南スーダンミッションという、政府が資料で出したペーパーの中には、そういうことは書いていないですよね。それぞれこういうふうに決議が採択されたということはあるけれども、設立決議ということ以外に、この決議に基づいて変更してやったとかということが書いてありますか。ないんじゃないですか。

三ッ矢委員長 今、わかりますか。

岸副大臣 先ほどの決議の日付でありますけれども、二二五二の方が二〇一五年十二月十五日です。それから、二三〇四が二〇一六年の八月十二日でございます。

笠井委員 いや、国連決議の日付じゃなくて、それに伴ってUNMISSに派遣する自衛隊の要するに根拠になるということで、だから、そこのところを、それぞれ変えたというふうに言われたんだけれども、いつ、どういう形で変えたのかを聞いているんですけれどもね。

岸副大臣 国連の決議に基づいて最初派遣をされております。ですから、派遣が更新をされるという時期には、その更新をされる時期の最新の決議に基づいて派遣をされる、こういうことでございます。ですから、今の時点では、先ほど申しました二つの決議に従って派遣がされている、こういうことでございます。

笠井委員 ですから、更新されるときに、こういう決議に基づいて変えましたということをいつどうやって決めたんですか、そういうことを書いているんですかということを聞いているんです。この文書を見る限りは、設立決議ということ以外ないですから、これに基づいて派遣しているということになっているんじゃないかということですよ。

岸副大臣 派遣をされたときの最初の決議に基づいて派遣が開始されたわけでありますので、その最初の決議を更新される、今回でいうと二二五二、二三〇四というのが最新の決議でありますから、その派遣される時期において最新の決議に従って派遣をされるということが当然である、このように考えております。

笠井委員 それはそうじゃなくて、派遣の根拠になる決議は何かといったら、一九九六でしょう。それでもって派遣してきているんじゃないんですか。その後、国連は決議を上げていますが、それによってまた、国連決議を上げるごとに、更新するときにまた変えているんですか、根拠の決議を。どこにそれが書いてあるんですか。

岸副大臣 最初の決議でもっていわゆるPKOのマンデートを決めます。その上で、派遣の期間が延長されるということを後日の決議で決める、こういうことでございます。

 ですから、今回、また新たな決議によって派遣の、PKOの活動期間が延長される中で、それに基づいて今回の自衛隊の部隊の派遣が決定されている、こういうことでございます。

笠井委員 では、今回延長を決めた閣議決定のときにも最新の国連決議というのはどこかに書いてあるんですか、それに基づいてやるんです、ミッションはこれですと。延長するときやっているというんだったら、書いているんですか。

岸副大臣 自衛隊の派遣期間を延長する際には当然最新の決議がベースになっているもの、こういうふうに考えております。明示的にそのことが書いてあるかどうかにつきましては、ちょっと確認をいたします。

笠井委員 ですから、明示的に書いたものは言えないわけですよ。

 だから、少なくとも、今話を聞いていると、根拠になった設立決議ではっきりこの政府の文書に書いてあるのは、安保理決議一九九六号、二〇一一年ということになります。その安保理決議の一九九六号の冒頭には「二〇一一年七月九日の南スーダン共和国設立を歓迎し、」とあって、南スーダンの勢力がスーダン政府と戦った内戦が終結して独立するときに出されて、国連南スーダン派遣団、UNMISSの設立が決定されたと。

 そのときの紛争当事者というのは、では伺いますけれども、誰だったんですか。

岸副大臣 最初にこのPKOが派遣をされたときには紛争の状態がないということで、すなわち、紛争当事者はその時点においてはいないということであります。

笠井委員 スーダン政府だったんじゃないんですか、南スーダンとスーダンということで。

岸副大臣 UNMISSのその時点での活動地域において、過去に生起した南北間の武力紛争の紛争当事者でありましたスーダン政府、もともとのスーダン政府はもはや存在しないこととなったということであります。そのために、武力紛争が終了して紛争当事者が存在しなくなった場合に該当する、このように整理をしておるところでございます。

笠井委員 そうすると、もともとのスーダン政府は存在しなくなったと。設立根拠になっている話で。日本政府としては、PKO法が安保理決議一九九六号によって発動されたものである以上、その後幾ら南スーダンで政府軍と反政府勢力が激しく争っても、南スーダンと、岸副大臣が今言われた存在しなくなったスーダンが武力紛争を再開しない限り、紛争当事者による武力紛争とはみなさないということになっちゃうんじゃないですか。変な話だけれども、そういうことになるんじゃないですか。

岸副大臣 我が国のPKOの派遣につきましては、あくまでも我が国のPKO派遣五原則に従って行われている、こういうふうに考えております。

笠井委員 いや、五原則とかという話じゃないんですよ、そもそもの根拠を言っているので。武力紛争があったかなかったかということをさんざんこの間やっていても、結局、南スーダンで武力紛争は起こっていないとずっと政府は言ってきたわけですけれども、そもそも、PKOを送っている、設立の根拠は何かといったら、一九九六と。その後いろいろあったんですといっても、いつあったか明示的に言えないと言われたんですよね、いつ変更したかは明示的に言えないと言われたわけですから。

 そうなると、結局、一九九六でやったときには、二〇一一年の七月九日に南スーダン共和国を設立した、これを歓迎してということで、その南スーダンの勢力がスーダン政府と戦った内戦が終わって独立するときに出されて、そしてUNMISSが設立されて、国づくり、こういう話になった。そのときの話で送ってきている。その後、幾ら南スーダンでいろいろな、政府に言わせると衝突、これは戦闘ではないとかとさんざん言うわけですけれども、内戦ではないと言うわけですけれども、幾ら何が起ころうと、紛争当事者による武力紛争というのは起こらないという仕組みになっちゃっているんじゃないですか、今の話で言ったら。

岸副大臣 国連のPKOミッション自体は安保理の決議に基づいて行われているわけでありますけれども、我が国の部隊派遣につきましては、先ほどから繰り返し申し上げていますように、五原則に従って送られている、こういうことでございます。その都度、紛争の有無の状況等についても判断をし、そしてこの五原則に当てはまるかどうかという判断をした上で送っている、こういうことでございます。

笠井委員 国連のミッションは国連決議、だけれども我が国は独自の判断でというのは、違うんですよ。だって、国連の決議があるから送るといって決めたんでしょう、そもそも。さっき一九九六あるいは累次ありましたと言ったけれども、その中で日本がUNMISSに参加して活動するようになっているんじゃないですか。それと関係なく、我が国は五原則でやるんですという話じゃないですよね。

岸副大臣 ですから、PKO活動全体の継続については、もちろん国連の決議に従っているわけです。我が国がそこに参加を継続するかどうかの判断につきましては、その都度五原則に照らして判断をしている、こういうことでございます。

 ですから、全く個別のものというよりも、PKO活動の中で、我が国が派遣をするかどうかの判断を五原則に従って行っている、こういうことでございます。

笠井委員 我が国が判断するに当たって、武力紛争があるかないかという問題とか、政府に言わせれば五原則で行っているような話、それに沿ったっていろいろ問題があるわけですけれども、そもそも武力紛争があるかないかという話については最初から、判断するにしたって、何が起ころうと、つまり南スーダンでどんなことが起ころうと、それは武力紛争ではないんです、だから自衛隊はい続けていいんです、こういう話になっちゃうんじゃないかということを私は言っているんです。全くの詭弁ではないかと私は思うんですけれども。現実を直視しないごまかしになっている。

 国連安保理決議は、その後何度も確かに追加されました。そして、南スーダン政府軍と反政府勢力の紛争ということで、逆に国連決議の中では明記をして、著しい生命の損失、二百万人以上の人々の移送、そして財産の損失が起きたということを、国連決議自身が紛争と明記した上で言っているわけです。例えば、二〇一六年五月三十一日の第二二九〇号決議もそうであります。

 岸田大臣に伺いたいんですが、そういう中で、日本政府は、結局根拠は何かといったら、いや、累次に変えたんですと言うけれども、いつ変えたかは言えないという話なんですね。

 結局、はっきりしているのは、この政府の文書にあるように、設立したのは一九九六でやってきたということで、そこを問題にして、どんなに危険なことが起こっても南スーダンに派遣を続けるということになっちゃうじゃないか、そうなると。どうやったって武力紛争はないんだから。南スーダンとスーダンの間では起こっていないというんだったら、幾ら自衛隊がこう言っていたって、そういうことで、武力紛争はありませんから派遣し続けるんですということになっちゃう。

 こんなことはきっぱりやめて、南スーダンから撤退すべきじゃないかと思うんですけれども、これはどうですか。

岸田国務大臣 国連決議に基づいて我が国としましてもPKOの派遣を決断したわけですが、委員の方から、どんなことが起こってもこれは撤退できないではないかという御指摘がありましたが、そんなことはないと考えます。

 武力紛争についてはPKO法において定義というものはないわけでありますが、ただ、この武力紛争ということについては総合的に、個別具体的に判断するということになっているわけですし、あくまでもPKO参加五原則、この五原則が守られなければ我が国として派遣することはできなくなるわけですから、そうした物差し、基準に基づいて我が国はこの派遣を考えていくことになります。

 状況をしっかり見ながら、憲法との関係においてもPKO参加五原則がしっかりと維持されているかどうかを確認しながら、こうした取り組みを続けるかどうかを判断していく、これが我が国の立場であると考えています。

笠井委員 大臣言われましたけれども、武力紛争の定義はないと、はっきりまた改めて確認されましたけれども。ない中で総合的に判断するといっても、結局、この間ずっと聞いて、どんなことが起こっても、いや、あれは内戦ではない、戦闘ではない、衝突です、散発的です、ジュバは安定しています、こういう話になるわけですね。

 もとをたどったら、ではもともと武力紛争は何かといったら、定義がない上に、どことどこの関係で結局あの武力紛争というのがあって、当事者ということであったのかといったら、スーダンと南スーダンということになって、そのスーダンはもうなくなっているんですという話になったわけですね。どうやったって、これはもうずっといいんですよと、それは五原則を個別に見たらいろいろあると言うけれども、根本のところでそういうことになっちゃうじゃないですか。

岸田国務大臣 委員は、何が起こっても撤退することはないのではないか、こういった御指摘がありますが、PKO五原則の評価については、要員からの報告、我が国の大使館、国連からの情報、こういったことを総合的に勘案しながら、この五原則が維持されているのかどうか、これを判断していくことになります。これは、情勢が大きく変化すれば、当然のことながらこの判断は変わってくるということになるわけであります。

 ただ、現状においてはこのPKO参加五原則は維持されているという判断のもとに、政府としましては継続を決断した、こうした次第であります。

笠井委員 あの五原則そのものが崩壊しているというふうに言われている中で、しかも、その根本になっている、あのUNMISS設立の決議、それから自衛隊を派遣している根拠との関係でも、先ほどからきちっとしたことが言えないわけであります。

 しかも、私、きょうは指摘にしておきたいと思うんですが、今日の国連PKOというのは、そのものが停戦監視から武力を行使しての文民保護に大きく変化してきている、これはこの間、国会質疑でもありました。UNMISSのマンデート自身も国づくりから文民保護へと変更されて、さらに、ことし八月十二日の国連安保理決議の第二三〇四号では、事実上の先制攻撃も認める地域防護部隊、RPF四千人の増派まで決定をしたわけです。そして、それに日本政府も賛成をしたわけであります。

 そもそも、そういう点では、PKO参加五原則とは相入れないのが世界のPKOの実態にもなっている。にもかかわらず、定義もなく、根拠が崩れたという状況の上に、どんどんPKOが変わっていっていても、いや、五原則は守られているんです、それが壊されたらこうなんですと言い続けるということになって、結局はずっとい続けるということになるじゃないか、これは論理的なこととして申し上げたいと思います。

 この文書の中でも、他国は撤退しないというようなことを触れたりもしておりますが、日本の場合は、まさにこの文書自身で言っている憲法との関係というのが一番大きな問題で、それを政府の側は理屈づけをしたかのようにして合理化しているわけですけれども、やはり憲法九条を持つ日本でありますから、日本の政府がすべきは、そういう意味では、こういうPKOから即時撤退して、九条に基づいた非軍事の民生、人道支援強化に転換することだ、ここにこそ本当に踏み切ることが今大事だということを強く申し上げたいと思います。

 自衛隊のPKO派遣期間二〇一一年十一月十八日から二〇一六年十月三十一日までが終了したら、これは延長せずに、直ちに撤退すべきだ、新任務の付与は論外だということを強く申し上げて、質問を終わります。

三ッ矢委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 民進党の小熊慎司です。

 現在、パリ協定についてですが、内容は条約の批准がこの委員会にかかったときに質疑しますけれども、どうしても、各国の批准の状況に関しては、やはり情報を見誤ったというふうに言わざるを得ません。これほどではなかったんですけれども、昨年のAIIBの状況も、外務省の把握した情報がやはりしっかりとれていなかったという感も否めません。

 こういったことで、日本の外交力が問われる中で弱点をさらけ出したんじゃないかなというふうに思っています。情報なくして戦略なしです。正しい情報把握に努めていかなければなりませんし、今回のパリ協定の各国の批准の状況を正しくとれなかったことについては、しっかりと検証して、その問題点を明らかにして、対策も立てていかなければならないというふうに思っています。

 その意味では、大いなる反省の上に立って、再出発をするぐらいの心構えでいかなければならないというふうに思っています。これは本省も含め、在外公館も含め、その体制をもう一回抜本的に見直す、その事例になったというふうに思います。

 では、どう改善していくかといえば、外務省の職員数を見れば、私の福島県の職員数とほぼ同じぐらいで、五千何百人かでやっている。各国の状況を調べると、フランスなんかは六千万人ぐらいの国で一万人近くいる。ドイツも八千二百万ぐらいの国で一万人近くいる。そういうことを考えると、外務省の適正人数というのはどうなのかということももう一度問い直さなければなりません。

 ただ、数だけふやせばいいのかといえば、質もやはり低下していると思いますよ。我々もいろいろな形で、海外に行って在外公館の方と会う、また、外務省の方々と触れ合っていく中でも、すごいなと感心するような職員さん、きょう来ている人たちはそういう人たちばかりかもしれませんが、ちょっとやはり、えっと。前々から言っていますけれども、外務省というのは日本を売り込むみたいなところもありますね。でも、一般の営業マンになったら車を一台も売れそうもない外務省の職員さんもいますから。コミュニケーション能力に欠けているような。

 考えると、やはり質をどう確保していくか。適正な量がどうなのか、そして質を高めるにはどうしたらいいのかというのをこれからしっかりと考えていかなければいけないというふうに思いますけれども、抽象的な観点で、外交力を強化していくという意味での人員、質の向上といった観点での所見を、まずお伺いいたします。

岸田国務大臣 パリ協定につきましては、協定の議論の際にまた我が国の対応について御説明をさせていただきたいと思いますが、外交体制の強化という御質問についてお答えさせていただきたいと思います。

 我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増している、そして、外交課題につきましても、一時代前と比べましても極めて多様化しておりますし、複雑化しています。

 こうした情勢の変化に対応するために、外交体制をどのように整備していくのか、こうした外交実施体制の拡充について不断に検討していくこと、これは大変重要なことであると思います。

 その中で、外交の拠点としての在外公館、これはまことに重要なものがありますが、おっしゃるように、こうした在外公館といった物的な体制のみならず、質の問題、人的体制についてもしっかりと充実をさせ、あわせて、主要国並みの外交実施体制をつくっていかなければいけない。委員の御指摘のとおりだと思いますし、今申し上げたこの考えに基づいて、具体的に体制の充実、引き続き努力を続けていきたい、このように思います。

小熊委員 これは報道ベースで見ているだけじゃなくて、我々は党内の部門会議でパリ協定の情報をどう把握していたかというのを聞いた上できょう質問しているので。パリ協定のときに議論をしたいと思いますけれども、その説明の仕方が悪かったのかどうか、実態がどうなのかという問題もありますが、外務省の説明を聞いた上では、やはりこれは情報収集能力に欠けていたということ。こういう状況がありましたといろいろ聞いたけれども、それも言いわけにしか聞こえなくて、やはりその能力の低下、体制の不備というのをすごく感じたから、きょう質問しているんです。

 これを向上していかなきゃいけない、体制をしっかりしていかなきゃいけないと、方向性を今大臣が示していただきましたけれども、これは具体的にはどうやっていくんですか、具体的には。単に抽象論で、反省しました、努力しなければいけませんねではなくて、具体的にどうしていくんですか。人員の増加も要求していくのか、では、研修をどうしていくのか。

 そもそもインテリジェンス部門がない国ですよ、これは。その中でもよくやっていると思いますけれども、もはや、今大臣が言ったとおり、この急激に変化する国際情勢、混沌としていく情勢の中では、今まで以上に情報収集をしっかりしていかなきゃいけないわけですよ。本当は、いきなりインテリジェンスの部門をつくるぐらいのことがあってもいいとは思うんですが、そうでないならば、具体的にどうしていきますか。

岸田国務大臣 まず、外交実施体制の充実ということで、数字的な面で申し上げるならば、平成二十九年度の概算要求の中で、外務省からは、バヌアツ、キプロス、ベラルーシ、エリトリア及びセーシェル、五大使館の新設、そしてセブ、シェムリアップ及びレシフェ、三総領事館の新設、そしてアフリカ連合日本政府代表部の新設、これを要求しております。

 そして、人員的にも合計で二百十名の定員増を要求しているわけですが、おっしゃるように、質が重要であります。

 やはり研修体制の充実など、人材育成の面からもしっかり取り組みを進めていかなければなりません。従来から、外務研修所における研修、在外研修等を通じて、専門語学あるいは地域情勢等を学ぶ機会を設けているわけですが、管理職、通訳官、秘書、領事など、それぞれの職責に応じて専門性を高めるための研修もより充実させなければなりません。

 そして、来年度の予算要求におきましては、対外交渉能力、日本の立場の多言語での効果的な発信力、緊急事態への対応力、そしてアジア言語を含む通訳能力の強化、こうしたことを目的とする研修、これをより拡充するための予算、こうした予算要求も行っているところであります。

小熊委員 中長期的にどうしていくんですか。来年度どうするとかじゃなくて、中長期的に取り組まなきゃいけない課題ですねと前に言ってあるので、その方向で具体的にどうしていくんですかという質問をしたかったんです。

 まして、今言ったことは通常でもやらなきゃいけなかったこと、問題が起きてなくてもやらなきゃいけなかったことですけれども、先ほど来言っているとおり、去年のAIIBのときもそうですし、今回のこのパリ協定もそうですし、著しく低下している事例が出ているということですから、これはしっかりと、どこに問題点があるからこういうふうにします、こういう問題点があるからこういうふうにしますということにつながっていかなきゃいけないというふうに思うんですね。だから、まず、反省の上に立って、何が足らないからこれを足していくんだ、強化していくんだと。

 今大臣が言ったのは、それはもう総論としては全然オーケーな、もともとあるようなことでもありますから、中長期的には具体的にどうしていくんですか。来年度どうする、来年度こういうふうに要求していますよなんて。では、これは十年かけて外務職員を倍増しますとか、中長期的には具体的にどういう方向を目指していくんですかという話。

正木政府参考人 お答えいたします。

 来年度の要求という点につきましては、さっき大臣から答弁していただいたとおりですが、おっしゃられているように、今後幾つかの、十年間というものをタームにとりまして、主要国並みの在外公館数二百五十を目指すという声もございますので、そういったことも念頭に置きながら、着実に、毎年、定員あるいは機構というものを要求したいと思いますし、今、小熊先生御指摘のありましたように、そういった規模のみならず、情報収集も含めて、質の向上という意味で、研修等々、日々研さんをしていきたいと思いますので、どうか御理解いただければと思います。

小熊委員 十年というスパンで考えているということですから、それはしっかり着実に実行してほしいですし。数は目に見えてくるんですけれども、やはり質の部分は、どう向上していっているかというのは見えにくいものもありますし。

 今後の条約の質疑の中でも、内容ではなくて、こういった問題の質疑をほかの同僚議員からもされると思いますので、ぜひ、今回の批准の状況を見誤ったことに関して、何がそうさせてしまったのか、何でそういうことが起きたのかをしっかりと検証しつつ、その上で対策を立てるということが、まさに質の向上に効果的な対策をとっていけるということになると思いますので、ぜひ今回の件を真摯に反省して、いや、とれなかったのは現実しようがないんですよみたいな言いわけではなくて、しっかりとそこは反省をした上で対策を立てて、質の向上につなげていっていただきたいというふうに思いますので。この件については、また違う形でも、今後いろいろ指摘をして提案をしていきたいというふうに思いますので、ぜひ前向きな議論をよろしくお願いいたします。

 次に、先ほど来、原口先生の方からもありましたが、日ロ関係についてであります。

 これは今交渉中のことですから明らかにできないものもあるんですけれども、この日ロ二国間の友好の進展ということは、これはどんどん進めていくべきだというふうには思いますけれども、片や一方で、やはり、欧米諸国においては、ウクライナでのロシアの軍事行動に対しては批判的な態度をとっていますし、我々日本も力による現状変更は認められないというスタンスですから、そこはやはりロシアにも厳しく当たっていかなければならないわけであります。

 そういう意味では、経済連携なんかも進めるという中で、経済制裁をしていながら日本だけが経済連携を進めるということであれば、この国際的なロシアに対する経済制裁の効力も失われるという側面も危惧をされるわけでありますので、そうした多国間との協調を一応前提としたロシアとの友好というのは、これは配慮していかなければいけないと思いますが、そういった観点についての御所見をお伺いいたします。

岸田国務大臣 まず、ウクライナ情勢ですが、法の支配を重視する我が国としましては、力による現状変更、これは認めるわけにはいきません。ウクライナ情勢についても、ロシアに対して、ミンスク合意の履行に向けた努力をしなければならない、こういったことの必要性を訴えているわけでありますし、そして、他の課題についても、例えばシリアを初めとするさまざまな課題についても、ぜひ、建設的な行動をとるように、役割を果たすように、こういったことを直接働きかけています。

 ロシアに対しては、G7と協調して経済制裁を我が国は行っています。そして、ウクライナに対しても、単独の国としては有数の支援を行い、ウクライナからも高く評価されています。引き続き、こうしたG7の枠組みを重視しながら、この問題にしっかり取り組んでいきたいと考えております。

 そして、アメリカとの間においても、日ロの北方領土問題あるいは平和条約交渉、こうした動きにつきましても、絶えず緊密に意思疎通を図りながら、理解をしっかりと得ながら進めている、これが現状であります。

 引き続き、我が国のこうした外交政策の進め方について、関係国と緊密な意思疎通を図りながら進めていきたいと考えます。

小熊委員 各国と意思疎通をしているということですから、そこは安心をいたしましたけれども。

 先ほど原口委員が言ったとおり、東京宣言に関しては、これは、日本の外交史上、金字塔に値する出来事だったと思います、四島に帰属の問題があるということを両国で合意をしたということは、各国の、ほかのいろいろな二国間の交渉の中でも、まれなケースというか奇跡的に近い、すばらしい成果だったと思います。これから一歩も譲ることなく、ここから前進することはあっても、それを後退させることがあってはなりませんし。

 二島返還というのは、半分返ってくるなというイメージがありますけれども、四島の面積でいえば、歯舞、色丹だけでは七%ですから。と考えれば、やはりこれは、ちゃんと四島を、しっかりと東京宣言を尊重して交渉していくということでやっていかなければなりませんし。四島返還、二島返還でも、こんな簡単に実現するのかなと、何となく思いますけれども。

 いずれにしろ、プーチン大統領が訪日したときに、いろいろな外交の進展がある際に、領土問題も解決しないのに経済協力だけばんばんやっちゃうなんということがないように。もし、いろいろな支援の協力があったとしても、ウクライナの問題をしっかり念頭に置いた上で、各国の理解を得た上で、日ロの関係の友好の進展を考えなければ、日本だけが浮いてしまうということになりかねませんので、そうした点をしっかりと。大臣、重々わかっていると思いますけれども、結果においても、国際社会の中で受け入れられる日ロ関係の進展の結果であることを、しっかりと努力して、一歩たりともそこを譲らないということで、十二月まで交渉に臨んでいただきたいというふうに思います。

 次に移りますけれども、昨晩、ドゥテルテ大統領との夕食会、お疲れさまでした。大変有意義だったと思いますけれども。ただ、小雨の中、大臣、十何分間も迎え入れでお持ちいただいたということもあったと思いますが、風邪など引かれないようにお気をつけいただきたいというふうに思います。

 このフィリピン関係も、非常に親日的な大統領であるということをお聞きしていますし、きのうの夕食会も盛り上がって、もう一回呼んでくれ、そうじゃなければ、大臣、フィリピンに来てくれというふうに御機嫌だったとは思いますが。ただ、やはり心配なのは、今までのアジアの中でのフィリピンの外交のあり方、また、とりわけアメリカとのフィリピンの同盟のあり方とかという意味においては、大きくさま変わりをしています。

 ただ、まだ就任間もないので、大統領の真意がどの辺にあるのか、外交政策の狙いが、アメリカ依存から脱却して多元外交に行くのか、それすらも今わからない状況です。発言も、報道ベースで見ていると相手によってころころ変わるという印象もありますし、どこに行こうとしているのかというのが非常につかみにくいような感覚もありますが、現状において、今政府としては、このドゥテルテ大統領の外交政策について、どのようなものだと把握をして、どのように評価をしているのか、まずお伺いをいたします。

岸田国務大臣 まず、日本とフィリピンは基本的な価値を共有する戦略的なパートナーです。

 そして、ことし国交正常化六十周年を迎えました。六十年間にわたって緊密な友好協力関係を築いてきました。両国関係を進めるに当たって、まずは、今日までの六十年間の友好関係をしっかりと基礎としなければなりません。この六十年間の取り組みがあったればこそ、ことし初めには天皇皇后両陛下のフィリピン訪問も実現いたしました。まず、こうした関係を基盤とするべきだと思います。

 その上で、ことし六月に発足したドゥテルテ新政権との関係を考えていくわけですが、八月に私もフィリピンを公式訪問させていただきました。九月に日・フィリピン首脳会談も開催させていただきました。そして、昨日から、ドゥテルテ大統領、大統領として初めての日本訪問を行っておられるわけでありますが、こうした新政権との間における人的交流あるいは要人往来等を通じてしっかりとした信頼関係をつくっていく、これが、先ほど言いました六十年間の基盤の上にまず積み上げなければなりません。

 そして、信頼関係を積み上げた上で、さまざまな具体的な課題について取り組んでいかなければなりません。ドゥテルテ大統領につきましては、メディア等を通じてさまざまな外交上の発言をされている、これは承知しておりますが、その一つ一つについて評価するのは控えたいと思います。

 ただ、まずは信頼関係を築いた上で、具体的な課題について、ともに、どういった協力ができるのか、これをこれからしっかりとつくっていかなければならない。こうした積み重ねによって、ぜひ、大切な日本とフィリピンとの関係を未来に向けて発展させていきたい、このように考えます。

小熊委員 今の答弁は先ほどの何人かの質疑でも聞きましたので。

 さらにちょっと踏み込みたいんですけれども、大統領が訪日の前にNHKの単独インタビューに答えて、南シナ海の件に関しては二国間でまずやっていくんですけれども、ほかの国の話も聞くとは言っているんですね、意外と聞く耳を持っていて。特に、日本の話は聞くと。アメリカの話はどうかなみたいなことも言っちゃっているんですが。日本も南シナ海の話をしたいんでしょう、であるならば二国間協議の後で多国間協議の席に着く用意があるというふうに、このNHKのインタビューで言及をしています。

 これもどうひっくり返るかわかりませんが、一応やっていますから、今後日本としては、今大臣しゃべられたように、歴史的経緯を踏まえて二国間をどう進展させていくかということですが、今後の話としては、この南沙に関しては中国との二国間協議が先なんですけれども、多国間協議も可能性に言及していますから、これを実施していく。そして、平和的に、二国間だけではなくてアジアの国々がかかわる話ですから、しっかりそこを実現できるような努力も、ぜひ今後フィリピンと交渉していっていただきたいというふうに思います。

 また、日本の役割としては、今の大統領の発言で、アメリカに対して、今までとやはり違うと思います、対応が違ってくると思いますが、まさにアメリカとフィリピンの仲介役というか、つなぎ役として日本の役割がこれからすごく出てくるんじゃないかなというふうに思っています。

 ですから、今後のフィリピン関係というのは、今大臣が言った、これまでの歴史的経緯を尊重しながらこれからさらに深めていくということもありますが、新たなミッションというか、フィリピンへの働きかけとして、アメリカとの仲介役。

 あと、これはきょうの首脳会談でも言及されるようなことも報道ベースでありますけれども、南沙においては二国間だけじゃない可能性も大統領は示していますので、多国間協議の場に国際的な合意をどうつくっていくか、その席にフィリピンにどう着いてもらうかということも、これからこれは努力していただかなければならない新たなミッションだというふうに思います。

 あとは、先ほども出ましたけれども、これは実際、フィリピンの国内では本当に深刻な麻薬犯罪者が多くて、何百万人という方が麻薬犯罪にかかわっている中でどう取り締まったらいいかというのは、本当にそれは国民の悲願だというふうに思っている中で、ドゥテルテ大統領も、これは超法規的な殺人とまで言われていますけれども、確かに法の支配から逸脱している、人権の観点からもこの取り締まりは逸脱しているような状況が続いています。

 これに関して、やはり日本もフィリピンとの関係を深めていく上では、逆に、無視をするわけにもいかないと思いますし、国際社会に向けても、フィリピンとは仲よくやっていきますけれどもやはりここはだめですよねというような発言があってしかるべきだと思うんです。

 それは、特にアメリカが文句を言っているから大統領が怒って、直訳したものとかは、あほなやつとか愚かなやつらという、暴言なのか失言なのかわかりませんけれども、今回日本に来てもそれを言っているわけですよ、余計なことを言いやがってみたいな形で。そういう態度でいますけれども、ただ、ここに関して言及をしないのか、日本の見解を明らかにしないのか、するのか、まずお伺いをいたします。

岸田国務大臣 御指摘の、まず南シナ海につきましては、法の支配を重視し、平和的な解決を求めていかなければならない、力による現状変更は認めるわけにいかない、これが基本的な我が国の立場であり、この点については、もう八月の段階で日本とフィリピン、フィリピンの新政権と我が安倍政権との間において認識を共有しています。

 そして、アジア太平洋地域において、日米同盟、そして米・フィリピン同盟、この二つの同盟はこの地域の平和や安定や繁栄のために大変重要であるというふうに我が国は考えています。そして、フィリピンにおける違法薬物対策についても、引き続き注視していかなければならないと思います。

 そして、こうしたことについて、我が国としてあるべき姿をしっかり働きかけていく、そのためにこそ、先ほど申し上げました、これまでの六十年間の基盤が大事だということ、そして、その六十年間の基盤の上に立って、新政権ともしっかり信頼関係をつくっていくことが大事だということを申し上げているわけです。こうしたしっかりとした六十年間の基盤と信頼関係があるからこそ、今申し上げましたさまざまな課題についての日本側の発言や働きかけも説得力を増していくのではないか、このように考えます。

 しっかりとした日・フィリピン関係を築く中にあって、御指摘のような課題についても、ぜひ率直に話し合い、そしてあるべき姿について意見交換を行う、こうした形をつくっていきたいと考えます。

小熊委員 午前中は時間が来たので、あとは午後やらせてもらいます。よろしくお願いします。

三ッ矢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ矢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。小熊慎司君。

小熊委員 午前中に引き続き質問させていただきます。

 午前中の最後の大臣の答弁で、フィリピン関係、友好を保っていかなければいけないということですが、これは大事なんですけれども、でも、だからといって、言うべきことを言わないというのは、日本の二枚舌っぽいところが出てしまいますし、法の支配、法の支配と、調子いいところだけ言って、調子悪いところでは言わないというのは、これはもう、一貫した姿勢がない、逆に信頼がなくなります。ただ、確かに、批判ばかりして相手の大統領の機嫌を損ねるというのも、これも外交的にはいい結果を生まないということもあります。

 我が党も批判から提案へということで、変えようと。まあ、今変えている途中ですからまだまだ結果はいろいろありますけれども。そういう意味でも、欧米のように人権無視だ何だと言うのではなくて、ただ、注視していくというのは、どっちかというと傍観しているような姿勢になりますし、ほかの国からすれば、あんたら法の支配と言っていながら何でフィリピンに言わないんだとも言われかねませんから、これはやはり、逆にフィリピンに提案をしていく、批判ではなくて提案をしていくということが必要だと思います。

 さきに御紹介したあのドゥテルテ大統領のNHKのインタビューの中でも、日本側からの提案とか向こうが正式に言っているわけではありませんが、防衛やテロ、麻薬対策などの分野でも技術供与してもらうかもしれないと期待感をにじませていますから、逆に、声高に人権無視と言わない、注視していって何も言わないということではなくて、麻薬撲滅のための、違法薬物撲滅のためのさまざまな技術協力、人的協力をしていくということで、そういう批判的な欧米社会に対しては、日本もちゃんとやっていますよ、声高に批判しているわけではないけれども、ちゃんと、それはよろしくない、適正な取り締まりでそういうのを撲滅していきましょうよと提案型でやっているんだというふうになると思うんですね。

 だから、注視していくだけではこれは弱いと思うし、法の支配と言っていることが調子いいようになってしまいますから、そういった提案型で関与していくということ、フィリピンの違法薬物の問題に関してそういうあり方というのはどうでしょうか。

岸田国務大臣 フィリピンの違法薬物対策については、これまでも人的あるいは技術的な支援を行ってきました。これからもしっかり支援をしていかなければならないと思います。そして、その際に言うべきことを言う、これは大変重要なことであります。そのためにも、基盤となります信頼関係をしっかりつくっておくことも大事だということを申し上げております。

 しっかりとした二国間関係に基づいて率直に物を言っていかなければならない、このように思います。

小熊委員 この件に関しても、注視していくということではなくて、ほかの世界の中で、日本はちゃんと関与しているんだということをしっかり訴えていくというか、あらわしていかなければ、傍観者になって何にも言わないんだということになりかねませんから、そういうことがないように、積極的な姿勢をぜひ示していただきたいというふうに思います。

 次に、風評被害についてやりますが、資料を配付させていただきました。一枚目は、御承知のとおり、これは一五年の外国人の日本への訪問者数ですけれども、これを見ていただけるとわかるとおり、中国、韓国、台湾、まあ、香港は別カウントでやっているから香港、これだけで七割以上の方々が来ていただいているということなんですね。これは、世界各国から二千万人日本に来ているのではなくて、まさにアジアの隣国からほとんどの方が来ているということであります。

 この二枚目の資料を見ていただけるとわかるとおり、二〇一〇年、震災前の年、そして震災直後、そして二〇一五年と、各都道府県ごとにやりましたが、いまだにこのインバウンドの果実を得られていないのは、残念ながら、寺田さんのところの秋田もこれはまた何か違う理由があるので、これはこれで秋田問題として置いておいて、福島県がこういうふうに著しくマイナスの状況が続いているわけです、震災前と比べて。

 これは何なんだと。東京からも近い、いろいろな交通インフラも整備されている福島県であってこの極端な数字というのは、やはりこれは風評被害の何物でもない。私も、東京にいると本当に外国人が多いなと思いますけれども、地元に帰ればほとんど見ない、そんな状況であります。

 これまでも、外務省においては風評被害対策をしていただきましたし、科学的根拠のないさまざまな規制に関しては撤廃に努力をして成果も上がっているところでありますけれども。実際こういうふうになっているというのは、日本の中でも韓国や中国や台湾の人が多く来ている中で、この台湾、韓国、中国はいまだに規制がかかっているんですよ。だから、こういう数字になっていると思います。

 まずは、これからも、中国、韓国、また台湾については、しっかりとそうした規制を外していくということの努力がより一層求められますし、それがなければ、外務省も観光立国と言っていても、我々福島県はその観光立国の果実にありつけないわけですよ。

 では、それを今後どうしていくかということについては、これまでもいろいろなイベントとかやってきましたけれども、とりわけ私が重要だというふうに思うのは、例えば佐賀県がタイの人が来ている伸び率が一位なんですね。タイの訪問客が伸び率一位で、数でいえば、それはいろいろありますが。では、何で伸び率一位かというと、タイで佐賀の番組を三つぐらいやったというんですよ。それでタイでの知名度が上がって、訪れる人が多くなった。

 やはり、今までのように、いろいろな情報発信、正しい科学的通知を出したとしても、もうそれは効果としてはなかなか出にくいところまで来たなというふうに思っています。そういう意味では、ソフト的なアプローチで、まさにこういうことこそ新しいアプローチでやってほしいんです。

 これは映像誘致をやっていますけれども、外務省の予算、また来年度の予算も要求していますけれども、風評被害のある地域に関して、そういう外国のメディアを呼んできて番組をつくってもらう。それも深刻な番組とかじゃなくて、温泉特集とか旅番組とか、いいドラマのロケ地として扱ってもらうとか、そういう映像誘致、海外メディアの誘致の枠、外務省で予算を持っていますけれども、これを被災地に特化した形、風評被害という目的に特化した形でやっていくべきだというふうに思いますし、この映像誘致で外国人が伸びている佐賀県の例もありますから、効果がある取り組みだと思います。

 この件に関して御所見をお伺いいたします。

小田原大臣政務官 外務省として、海外メディアのテレビチームや記者を日本に招聘し、被災地等における取材を通じて、風評被害対策、払拭や復興状況などの対日理解の促進に取り組んできているところであります。

 平成二十七年度においても、記者の意向を踏まえながら、招聘したブラジル及びネパールのテレビチームや、中国、韓国、欧州等の二十三名の記者に対して、風評被害関連の取材をアレンジいたしました。

 その結果、各国において報道され、ことし三月には、東北の農作物の安全性や農業復興等に関する動画を作成いたしまして、欧州のテレビ局を通じて、これはユーロニュース社でありますが、約一カ月の間に約八十回、十三言語で放送するとともに、ホームページ上での情報発信を行いました。

 今後とも、積極的に海外メディアを通じた風評被害対策の取り組みを進めてまいりたいと思いますし、御指摘のとおり、風評被害対策の重要性は強く認識をしているところであります。

小熊委員 やっていますって、先ほど言ったソフト的なアプローチですから、現状とか、こんなふうに復興していますよということじゃなくて、政務官は真面目だからそういうふうに言っているんだけれども、旅番組とかグルメ番組とか、そういう方が効果あるでしょう、それで佐賀はそういうことで効果が出ていますよと。

 そんな、眉間にしわを寄せて、こういうふうに直りましたとかじゃなくて、もともといいものもあって、すばらしいものも福島県にはありますから、それを普通の感覚で、被害者を撮るみたいな番組じゃなくて、そういう記者を呼ぶんじゃなくて、温泉ツアーとかバスでめぐるとか、日本でもあるじゃないですか、ああいうものを持ってきてほしいと言っているんです。その方が効果あるでしょうと言っているんです。

 真面目な小田原政務官、もう一回。

小田原大臣政務官 御指摘を踏まえまして、前向きに検討してまいります。

小熊委員 ついては、もう来年度の予算要求をしていますから、来年の予算の中でそういう番組を福島県でつくって、いろいろな国で放映されなければ、今度は厳しく追及させていただきますから、ぜひ御期待を申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 私は、国会議員も四年になろうとしていますが、外務委員会は初めてでありまして、委員長初め外務委員会の皆様方には、本当にまた御指導をいただきながら、できれば末永く外務委員会でまた仕事をさせていただければと思います。

 岸田大臣におかれましても、こうしてこの距離でやらせていただくのは初めてで、予算委員会でいつも質問させていただいている程度でございますが、これからちょっと膝詰めで討論をさせていただきたいと思います。

 まず、民進党の蓮舫代表のことでありまして、岸田大臣におかれましてはゆったりと聞いておいていただけたら。最後にちょっと伺うかもしれませんので、よく聞いておいていただきたいんですが。

 蓮舫代表の話は、私、もう予算委員会で一回やりましたので、蓮舫代表の国籍の問題については、大体事実関係はほぼ、多分こうだなというところまでは来ました。それは、実は私から見れば、大分前から大体こうだろうなと思っていたとおりの展開でありまして、いろいろな、十月三日の予算委員会でも指摘をしたところでございますが、きょうは外務委員会ということですので、パスポートの件とか旅券、こうしたこともありますので、この場を少しおかりして質疑をさせていただきたいと思います。

 きょうは法務省にもおいでをいただいています。

 十月の十八日、法務大臣に対して、記者会見で記者から、民進党の蓮舫代表についてということで、十月七日に日本国籍の選択宣言をしたということを御本人がおっしゃったことについて質問があって、個別の話はなかなか答えられないがと言いつつ、大臣から、仮に国籍の選択の宣言を十月七日にしたとしても、それまでの間の三十年近く違法な状態であった、国籍法上の義務に違反していたという記者会見のあれがありました。

 改めて、そういうケース、蓮舫代表のケースについて御答弁いただくことはできないと思いますが、このときに法務大臣が御答弁された内容と同じでも結構ですから、改めて法務省から御紹介をいただきたいと思います。

金子政府参考人 お答えいたします。

 個別具体的な事案についてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論で申し上げますと、台湾出身の重国籍者につきましては、法律の定める期限までに日本国籍の選択の宣言をし、従前の外国国籍の離脱に努めなければならず、期限後にこれらの義務を履行したとしても、それまでの間はこれらの国籍法上の義務に違反したことになるということになります。

足立委員 本当は逆だと思うんだけれども、詳しくは十月十八日の法務大臣の記者会見を改めてごらんいただければと思いますが、違法であった。

 御本人は、我々国会議員、我々は国権の最高機関のメンバーでありますので、同僚各位がしっかりと、討論というか一緒に国益をめぐって議論できる、そういう同僚であることをやはり確保したいのは当然のことであると思いますが。

 蓮舫代表は、十月の七日に日本国籍の選択宣言をしたとおっしゃっているそうでありますが、私、自民党の小野田参議院議員と同じように、戸籍謄本の該当部分の写しをなぜ公表されないのか、全くわからないんですよ。したらいいと思うんですね。したら、民進党の支持率が上がると思いますよ、もうちょっとは。ちょっとかもしれませんけれども。

 法務省、蓮舫代表の戸籍謄本、プライベートな部分が多いのはわかっているんですけれども、僕らが、私たちがこれを拝見する方法はやはりないということだと思いますが、ないですよね、一応確認。

金子政府参考人 極めて個人的なお話ですので、御本人が判断されるべきものというふうに考えております。

足立委員 今の御答弁のように、今の日本の法体系のもとでは、我々、大事な同僚なんだけれども、蓮舫代表に、戸籍謄本の該当部分だけでいいんですよ、なぜ戸籍謄本の該当部分の写しを公開できないんですかと実は質問したいんですね、私は。

 日本維新の会は、今、自由討議をやりましょうという議員立法をつくっているんです。要は、国会が、単に岸田大臣を初めとする外務省、政府に対して国会議員が質問する場、これが今、国会になっているわけですが、本来、国権の最高機関ですから、政府をチェックすることだけではなくて、例えば、東京一極集中をどう解消するか、国会等の移転、これは国会でやっていました。政府は関係ないんです。国会でやっていたんですよ。だから、本当に、国の形、国のあり方に係る議論は国会が、政府は関係ないんですよ、行政府はおいておいて、国権の最高機関たる国会だけでいいんですよ。政府がないと国会がないんですか。違うんです。政府がいなくても、国会議員だけで議論せなあかんのです。

 だから、私はしっかりと、国権の最高機関のメンバーである蓮舫代表、それだけでも大変なことだと思うが、それに加えて野党第一党の代表ですよ。解散・総選挙で、まかり間違ったら、大体そういうことはないんだという方がどうも多いそうですが、民進党が政権交代を果たしてしまったら、総理大臣になっちゃうわけですね。

 外務大臣、きょう、外務大臣に通告していないので、質問、ちょっとしたいんですけれども、余りしませんが、外務大臣はおわかりいただけると思うんです、僕らの気持ちが、私たちの気持ちが。

 だって、外務省は、きょう、外務省の方がいっぱい来られていると思う、当たり前ですね、外務省に質問しているんだから。みんな、入省するときにぎりぎりやられているんですよ。

 例えば、ブラジルとの二重国籍の方がいらっしゃったんですよ、入省予定者の中に。そうしたら、ブラジルというのはなかなか国籍離脱させてくれないんです。でも、国籍法十四条だけじゃなくて十六条も満たしたいということで、外務省の入省を取り仕切るところは、一生懸命、何とか入省日までに外してくれということで、ブラジルまで往復して、大統領のそばまで、何とか決裁をもらって、ブラジルの国籍を外して入省された方がいらっしゃるんですよ、事実として。

 外務省というのはそうやってやってきている。それをつかさどっている、それをリードされているのが外務大臣。そして、内閣を指揮されているのが安倍総理です。だからこそ、我々は二つの法案を出しているんです。

 一つは、二重国籍禁止法案という法案です。これは、別に、国民一般の方について何か今以上の御苦労をおかけするつもりは、全く、毛頭ありません。きょうここにおられるような、国権にかかわる仕事をされている方々については外務公務員ぐらいの形はやはりとってもらわないといけないということで、国会議員についての二重国籍禁止法案。それから、公務員についても、国家の大きな方針を決める、その国益に係る業務にかかわる方々、防衛省もそうかもしれません、外務省のみならず防衛省、あるいは、TPP交渉にかかわる経産省、農水省、自衛隊。でも、今はその法律が不備だからそれを直しましょうということで、政治家にかかわる公職選挙法改正案と国家公務員法改正案のちょっとプログラム法みたいなものを出しています。

 それは、まあ通らないんでしょう、多分。余りみんな相手にされていませんからね。自民党も大人ですから、なかなか急にそういうことはやりません。

 ただ、皆さんにわかっていただきたいことは、まさにこの外務委員会だからこそ、我々の気持ちを、我々日本維新の会の思いを皆さんは共有していただける、こう思ってお話をしているわけであります。

 加えて、例えば蓮舫代表については、単に国会議員じゃないんです、総選挙一発で総理大臣になるかもしれないんですよ。それはいかぬだろうということで、蓮舫代表には、衆議院の予算委員会の場で、戸籍謄本をやはり開示した方がいいんじゃないですか、該当部分だけでいい、一行でいいですよ、そう促しているんですが、開示をされない。今法務省からあったように、それを開示させる方法はありません。

 仕方ないから、我々がもう一本法律を出しているんです。自由討議云々法案というんです、もう忘れましたけれども、自分で出した法案ですけれども。

 要すれば、国会は、政府をチェックするという仕事は国会が果たすべき仕事の三割ぐらいはそうかもしれない、でも、あとの二割は野党第一党をチェックした方がいいんですよ、いつ政権をとるかもしれないんだから。だから、私は、それぞれの委員会の委員長がお許しくださる範囲内で、いつも、こっちを向かずに、こっちを向いてやっているんですね、質問を。

 反論権がないからとか言うんですけれども、だから、僕らは、反論できるように、自由討議を促進する法案というのを出しているんです。誰も相手にしてくれません。

 でも、そうやってやっていかないと、日本の国益は、このまま民進党のよくわからないプラカードにひっかき回されて、外務、防衛等、あるいは社会保障もそうです、この国は立ち行かなくなるぞという危機感から今申し上げた合計三本の法律を出していますが、ぜひまた御一読をいただきたいと思います。

 すぐこうやって演説をしちゃうのでよく怒られるんですが、外務委員会で特に議論すべきことは旅券です。

 これは、我が党の下地政調会長が予算委員会でやりました。これは、一部在野というか一部言論人というか、ジャーナリストとかよくわからないような人たちが、蓮舫氏を早く検挙しろと言う人がいるんですね。それは何か公職選挙法違反だろうとか旅券法違反だろうとか、僕は、もうちゃんちゃらおかしい、本当にこの日本の言論人の言っていることはあほだと思うんですが……(発言する者あり)いや、言っていることですよ、言っていることはあほなことだと思うわけでありますが。

 外務省、要すれば、今の旅券のハンドリング、マネジメントだと、日本を出るとき、入ってくるときは管理できますが、例えば、蓮舫代表は、何も開示されていませんから、もしかしたら、台湾のパスポートを持っているかもしれません。下地政調会長が言ったこととこれは全く同じだからもう繰り返しませんが、そういう二つのパスポートを使い回して、日本政府のあずかり知らぬところで北朝鮮に入ったり、北京と交渉したりしている可能性は排除できないと思いますが、それでいいですね。

宮川政府参考人 お答えいたします。

 パスポート二つを持っている場合に関しての御質問でございますが、外務省といたしましては、日本旅券所持人の海外渡航履歴を逐一把握する立場にはございません。

 その上で、一般論として申し上げれば、重国籍者が日本と他国の旅券の二つを携行し、日本の出入国の際に日本旅券を使い、第三国との出入国に際し他国の旅券を使うという状況は想定し得るところでございます。

足立委員 NHKのテレビ入りの予算委員会で既にこれはやっていますからもういいんですが。しかし、何かせっかくそうやって御指摘申し上げているんだけれども、政府・与党を初めとして、あるいは国会議員諸氏、同僚諸氏が、そうだなと、廊下ではそういう話をするんですが、なかなか表ではこの話が前に進まないので、まあ、いいんですが、改めてこの話を取り上げているわけであります。

 それで、この話はこれで終わります。要すれば、蓮舫代表の問題というのは、今の法体系のもとでは、もう私はなすすべがありません。皆様の御協力がなかったら、これはもう一歩も前に動きません。

 民進党が次の解散・総選挙でどうなろうと、それは知りませんよ。大阪では、もう民進党はほとんどなくて、自公と日本維新の会の二大政党が、今、大阪ではできつつあります。大阪府議会、大阪市議会は、民進党の議員は一人だけです。ぜひ、私は、こういう状況であれば、国政においても自公と日本維新の会の二大政党をつくっていきたい、つくっていくしかもうない、こう思っているわけであります。

 一つだけ、私たちにまだツールがあることに最近気がついたんですよ。憲法五十五条というのがありまして、憲法五十五条、皆さんはすぐ出てきますから、要は、憲法五十五条に資格争訟という規定があります。これはまだ戦後発動されたことがありません。戦後というか、今の日本国憲法で発動されたことがありません。

 今、法制局と、この憲法五十五条というのは何のためにあるんだと。誰も使っていないんですよ、使う局面がないんです。私は、きっと今回のような、蓮舫代表が解散・総選挙を通じて総理大臣になってしまうようなことを。私は、国会の、国権の最高機関に場をともにしている同僚としてそもそも説明責任を果たしていないと思っていますので。私の主観ですよ。蓮舫議員はやはり説明責任を果たすべきであると改めて思っていますが、それを私が幾ら言っても仕方ないんです。

 ただ、私でもできることは、憲法五十五条に基づいて、蓮舫議員は国会議員にふさわしくないということを提起することができて、衆議院でいうと、懲罰委員会に付託をされれば、されるためには、実は国会の三分の二、憲法と一緒です、国会の三分の二がそれにアグリーしていただければ、懲罰委員会にかけることができて、国会議員の資格を争うことができるという憲法上の規定があります。

 これについて、私たちはまだ党としては議論していません。私が一人でここで言っているだけですが、きょう、こうして蓮舫代表に、私は、予算委員会に続いて、やはり国会議員の同僚として、戸籍謄本の該当部分の写しを公表すべきである、こう申し上げておきますが、それが実現し得ない場合には、私個人ですよ、私個人は、党の中においても、また同僚諸氏に対して、憲法五十五条についてやはり議論した方がいいんじゃないかという問題提起をしていきたいな、こう思っているわけであります。

 あと十分、本来の議論をさせていただきたいと思いますが、岸田大臣、二十分使って、大臣の大変大事な、大臣にとってじゃないか、委員各位にとって大事なこの委員会、二十分使ってしまったんですが、私は、岸田大臣は、私が今申し上げたこと、外務公務員のトップに座る外務大臣であればこそ、私が今お訴え申し上げたことに一分の御理解をいただけるんじゃないかなと思いますが、もしコメントをいただけるようでしたらお願いしたいと思います。

岸田国務大臣 国家公務員の中にあっても外務公務員は、特に法律によって二重国籍が認められない、こういった立場にあると承知をしております。外交にかかわる者、国益にかかわる大変重大な責務を担っているという観点から、こうした特別な扱いが行われていると承知をしております。

 このように、国益にかかわる重大な責務を負う者、その立場についても真剣に考えていく姿勢、これは重要な姿勢ではないか、このように考えます。

足立委員 それでは、冒頭申し上げましたように、私は通産省にはいたことがありますが、いわゆる経済、通商面だけでして、本当の意味での外交、防衛というのは全くの素人でありますが、素人がこういうところで議論させていただくこともこれまた国益には決してマイナスではない、こう思って外務委員を拝命しているわけでありますが、きょうは、残る時間で領土の問題をやりたいんですね。

 だけれども、領土の問題は、これまた橋下徹当時日本維新の会の代表が竹島だとか尖閣についていろいろ発言をされました。そのときに、とにかく左から右からいろいろ怒られるわけです。

 私は、外務委員として、日本維新の会がこれまで言ってきたこととか、あるいはこれから言いたいこととか、その合理性、公正性、あるいは国益に資するんだということを我々は訴え、また政府にそれを求めていきたいと思っているわけですが、その入り口として領土問題、三つ代表的な領土問題、竹島、尖閣、北方領土。私は、この三つ、素人なりに三つを並べてみると、本当に三者三様だな、こう思います。

 釈迦に説法ですし、時間もないので繰り返しませんが、竹島についてはもともと、今実効支配は韓国がしているわけでありますが、我々の立場からすればこれは明らかに日本固有の領土であり、不法に実効支配されているんだ、こう言い続けていますね、外務省は。でも、実効支配はありません。

 一方で、尖閣は、実効支配はあるが、力を背景とした現状変更の試みが中国サイドからなされているという、素人ですから正確じゃないかもしれませんが、そう理解しています。それでどうするんだ、これを御質問すると、いや、冷静に毅然として現場で対応しているんだ、こう言い続けてきているけれども、大丈夫かと国民はみんな心配しています。

 三つ目の北方領土は、まさに、安倍総理、岸田外務大臣でしか果たせない歴史的な大きな歩みをこれから果たしていただきたいということで、国民の多くは期待を持って注視をしているわけであります。

 北方領土と尖閣と竹島、三者三様です。北方領土は、今政府が大きく歩み出そうとしているけれども、尖閣と竹島は一歩も動きません。下手したら、私は尖閣は、きょう時間がないんだけれども、質問の中で入れていたんだけれども、中国の領海法の問題とか、あるいは、いわゆるサラミ戦術と言われるような、サラミをスライスするようにじわじわと日本の実効支配が崩されていく、この脅威を国民は感じているわけですね。私でも感じているんだから、国民はみんな感じていますよ。

 北方領土は進むのに、北方領土は進もうとしているのに、何で竹島、尖閣はこれだけ膠着し、また、尖閣に至ってはこんなに国民が心配するところになっている。全体的にこれをどう理解すればいいか、概括的過ぎて申しわけないですが、素人ですので、よろしくお願いします。

岸田国務大臣 北方領土問題と竹島問題と尖閣をめぐる問題と、この三つの比較、これを単純に比較するのは難しいですが、ただ、極めてポイントだけ申し上げるならば、北方領土そして竹島は、我が国としましては、ともに領土問題が存在すると考えています。

 ただ、この北方領土問題につきましては、今、日ロ両国の間において、ぜひ北方領土問題を解決して平和条約を結ぼうではないか、こうした協議、交渉が続けられています。一方、竹島問題については、韓国側がこの領土問題を認めず、この協議、交渉が成り立たないという状況が続いている。こういった違いはあると思います。

 一方、尖閣に関しましては、尖閣は歴史的にも国際法上も我が国固有の領土であると我が国は考えておりますし、そして、事実、有効に我が国が支配をしています。そもそも領土問題は存在しないというのが尖閣における立場であります。その中で、尖閣においては中国公船による領海侵入が行われている。これは我が国の主権の侵害であるというように理解をしています。

 この三つにつきまして、状況はさまざまではありますが、大きなポイントとして申し上げるならば、今申し上げました点がこの三点において異なっている、そのことが具体的な議論の進みぐあいに大きく影響している、このように考えています。

足立委員 私は、今大臣がおっしゃったことに加えて、素人が大臣に加えるというのも僣越ですが、全体、素人がその三つを眺めていて本当に思っているのは、やはり北方領土については、相当、安倍総理と岸田外務大臣を初めとするこの内閣が、本音でプーチン大統領との信頼関係を築き、そして本音でその出口を探る歩みを進めてこられたのに対して、例えば尖閣は、いや、もちろん領土問題はないんですよ、領土問題はないんだけれども、領土問題がないと言っているだけで、まあ、向こうに対しても言っているんだけれども、それを国内で言っているだけで、例えば八月に中国の海警船舶が本当に入ってきているわけです。これから日本の領土、領海、国民の生命財産を、本当に今の外務省のスタンスで守り切っていけるのか。

 日本維新の会は大変不安に思っているし、では、それをこれからどうしていくかは、またこの委員会でも引き続き議論をさせていただきたいと思いますが、きょうは時間が来ましたので、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

三ッ矢委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 きょうは、個別具体的に質問をさせていただきます前に、外務大臣から一言、所感をいただきたいことがあります。

 実は、五年に一度の世界のウチナーンチュ大会という大きなイベントが、そのイベントと関連イベントが、きょう二十六日から三十日までの五日間、沖縄県内の各地で開催されます。

 世界の各国に住む沖縄県系の方々がふるさとを訪ね、沖縄のルーツやアイデンティティーを確かめ合う、恐らく他県には類を見ないであろう一大イベントで、ことしは約七千人の方々が沖縄に集います。そして、笑顔と文化の交流が期待されておりますが、沖縄の言葉で言いますと、イチャリバチョーデー、出会えば兄弟という言葉がありますが、まさに世界じゅうの兄弟姉妹の皆さんとともに体感できる、国外にいらっしゃる皆さんも、沖縄に訪ねてくるいい機会だと非常に楽しみにしていらっしゃるんですね。

 こういうイベントについて、ぜひ大臣から一言、所感をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のウチナーンチュ大会ですが、平成二年に始まって今回で五回目と承知をしています。それで、委員の方から今、七千人集まると。海外から七千人だと理解しています。国の内外から、合わせますと、これまでの実績でいいますと三十万人から五十万人の方がお集まりになっているという数字を承知しています。

 世界で活躍される沖縄出身の方々が集まって、改めてそのアイデンティティー、そして沖縄の魅力を確認する、そして、そのことによってそれぞれのまた活躍につなげていく、こうした意味で大変意義ある大会であり、そして、これだけ多くの方々が集まるわけですから、多くの方々がこの大会の意義や魅力を感じておられるものであると認識をしています。

 ぜひ、文化においても自然においてもさまざまなすばらしい魅力あふれる沖縄を中心に、こうした人的な交流が広がり、大きな成果につながることを期待したいと思います。

玉城委員 ありがとうございました。質問項目にない項目でしたので、この言葉をいただけたのは非常にありがたいと思います。ありがとうございました。

 では、質問に入らせていただきます。

 犯罪防止、安全体制の現況について伺います。

 本年五月、元海兵隊員の軍属男性による女性暴行殺害死体遺棄事件が発生し、二度とこのような凶悪事件を繰り返させないため、犯罪を抑止し、沖縄県民の安全、安心を確保する対策を推進することを目的に、内閣官房長官をチーム長とし、内閣官房、警察庁、総務省、外務省、文科省、国交省、防衛省などの関係省庁を含めた、沖縄県における犯罪抑止対策推進チームを設置しております。

 対策内容の一項目として防犯パトロール体制の強化を掲げ、沖縄総合事務局において車両百台規模の沖縄・地域安全パトロール隊を創設して取り組みを進めております。

 その件について質問いたします。

 その沖縄県における犯罪防止対策の一環で、県外から派遣されている防衛省派遣職員について、配置人員、措置予算、経過状況、対策効果などを伺いますが、まず内閣府から防衛省へと、それぞれお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

北崎政府参考人 お答えいたします。

 沖縄地域安全パトロールにつきまして、本年六月三日に取りまとめました沖縄県における犯罪防止に関する対策に基づきまして、政府一丸となって、県民の安全、安心の確保を図るため、内閣としてできることは全てやるの方針のもとに実施をしております。

 この対策の中において、沖縄総合事務局において、防犯パトロールを行う非常勤職員を雇用するなどして、車両百台規模のパトロール隊を創設し、県内の繁華街等において緊急防犯パトロールを実施するとされております。

 防犯パトロールの体制、経過につきましては、六月十五日に、車両二十台、四十名規模から開始しまして、現在は、沖縄総合事務局及び沖縄防衛局により、計六十五台、百三十名規模で実施をしているところでございます。今後、車両百台規模の体制とする予定でございます。

 また、防犯パトロールに係ります予算につきましては、平成二十九年度概算要求において、人件費や備品等のために必要な経費として八億七千万円を要求しているところでございます。

 防犯パトロールは、犯罪防止について、事に至らないために何ができるかという点を眼目としておりまして、沖縄県内の繁華街等を巡回することにより、犯罪防止の効果が期待できるものと承知をしておるところでございます。

深山政府参考人 ただいまお尋ねの沖縄・地域安全パトロール隊への防衛省の参加について申し上げます。

 防衛省といたしましても、政府の一員として、沖縄県における犯罪抑止に貢献することは重要であると考えておりまして、内閣府からの依頼に協力することといたしました。

 沖縄防衛局より、六月十五日から、車両十台、人員二十名、八月一日からは、車両二十台、人員四十名、現在、これは十月十二日以降でございますけれども、車両二十八台、人員五十六名を参加させております。

 経費についてもお尋ねがございました。防衛省におきましては、当初、当省の既定経費により対応しておりましたが、平成二十八年度第二次補正予算成立以降は、内閣府の経費により実施することとさせていただいておるところでございます。

 以上です。

玉城委員 この防犯パトロール隊は、青色の回転灯、パトロールライトを車両の上部に取りつけて県内で走っております。実は、これが私の住んでおります沖縄県沖縄市では、子供たちの保護の一環として、希望する方どなたでも、自治会を通して役所にその車両を登録し、お名前を登録すれば、赤色回転灯を借りて、車の上につけて、例えば夕方以降の時間帯に自主的に回れるような、そういう仕組みにもなっているわけですね。それとやや混同している、そういう意見があります。

 さらに、本来なら、米軍人の犯罪発生の抑止のために防犯パトロールが行われているというふうに私は思料いたしますが、その犯罪の抑止のためとする本来の派遣目的から、現実的には、米軍基地建設反対の抗議活動を行う住民の行動を警戒する、米軍基地建設を粛々と進める作業補助のための防衛省職員派遣に切りかえられていないかという報道もありますが、その件についてお伺いいたします。

深山政府参考人 先ほども申し上げましたが、防衛省では、沖縄・地域安全パトロール隊に対する業務のためではなく、こちらの業務にも人を出しておりますが、現在、北部訓練場ヘリパッドの移設工事に関する業務支援のために、本土から七十名の職員を沖縄に派遣しております。御指摘のような、当初パトロール目的で出した人間を転用しているのではないかという現地報道があったことは承知しておりますが、それは事実ではございません。

 沖縄防衛局においては、六月十五日から実施しております沖縄・地域安全パトロール隊に関する業務への対応に加えまして、当時、七月以降は北部訓練場のヘリパッドの移設工事に係る同局の業務量が大幅に増加することを予想しておりました。防衛省といたしましては、これは本省でございますけれども、これらの業務を念頭に、所要の体制準備の一環として、六月下旬、本省から、沖縄防衛局を除く各地方防衛局に対し、職員派遣に向けた準備を依頼しました。

 その後、沖縄・地域安全パトロール隊が行う業務については、地元の地理や事情に通じている者に当たらせることが適切であると判断いたしまして、沖縄防衛局にいる職員で対応させることとし、他の地方防衛局等の職員は北部訓練場のヘリパッド移設工事に関する業務支援のために派遣することといたしました。

 具体的には、約七十名の職員を、本土、これは防衛本省及び沖縄防衛局を除く各地方防衛局から沖縄に派遣しておりまして、北部訓練場におけるヘリパッド移設工事に関する業務を支援させていただいているところでございます。

玉城委員 防犯パトロール体制の強化では、二つ目の項目として、警察力の強化、充実が挙げられ、警察官百名、パトカー二十台の増強等を行うとされ、全国から沖縄県警に本年度末の二カ月半、特別出向させる計画が明らかになっています。

 全国から派遣される警察官の特別出向についての内容及び予算規模、負担の仕組みなどについてお伺いいたします。

斉藤政府参考人 お答え申し上げます。

 本年六月に決定をされました沖縄県における犯罪抑止に関する対策におきまして、沖縄県民の安全、安心を確保するため、警察官百名の増強等により、事件、事故への初動対応やパトロールのための警察力を充実強化することに取り組むこととされたところでございます。

 これを受けまして、現在、沖縄県警察官百名の増員を今年度中に実施をすべく、沖縄県警察と調整をしつつ、先ほど御指摘のございました他都府県からの特別出向を含めて、その体制等について検討を行っているところでございます。

 また、警察官に係る給与費等につきましては、地方交付税により算定をされ措置されることとなるものと承知をいたしております。

玉城委員 警察官もそうなんですが、いわゆる県民が期待するもの、求めるものは、米軍関係者による犯罪の抑止ですね。そのために青色パトロール隊も繁華街を巡回させていると思いますし、警察においては、当然、パトカーで、特に外国人を中心とする犯罪が起こり得るような、予見される場所を回るということを私たちも期待するわけでございます。

 しかし、米軍人らは一般に、日本の警察は日本人の犯罪を取り締まるためのものという感覚であり、県外からの警察官派遣が果たして米軍人や米軍関係者らによる犯罪発生の抑止に帰するものか、あるいは、短期間出向による抑制効果などの実効性については疑わしいという意見も少なくありません。

 そのような現地の実情と、警備の強化による米軍関係者の犯罪予防効果の実効性をどのように見ていらっしゃるのか、改めてお伺いします。

斉藤政府参考人 お答えいたします。

 この対策は、沖縄県警察官を増員して事件、事故への初動対応やパトロール活動を強化することによって犯罪を抑止し、沖縄県民の安全、安心の確保を図ろうとするものでありまして、この趣旨を踏まえまして、具体的にどのような配置、運用とするかについて、犯罪の抑止を効果的に推進するという観点から、沖縄県警察において適切な検討がなされるものというふうに理解をいたしてございます。

玉城委員 他府県から多くの警察官の方々が沖縄に来るということは、沖縄県民自身もその監視の対象になるのではないか、そういう不安も持っているということをぜひ思料していただきたいというふうに思います。

 さて、東村高江の米軍ヘリパッド建設工事の現場では、連日のように、建設強行に反対する住民と警備側との小競り合いが続いています。沖縄県警のほかに、警視庁、大阪府警、千葉県警、神奈川県警、愛知県警、福岡県警の六都府県から警備要員が派遣され、住民わずか百五十人の高江集落の近くで、多いときには五百名もの警備要員が駆り出され、法律根拠のない検問などを実施して、そこを通行する他地域の住民の不安をあおり、現場調査の我々国会議員、あるいは県道管理職務の県職員などの通行をも認めないことがあり、道路を遮断して住民の反対行動を抑え込む、あるいは現地取材の報道記者の行動も反対住民とともに囲い込みするなど、想像を絶する過剰な警備が行われています。

 先般、大阪府警から派遣された隊員による反対行動の住民らへの差別発言など、現場の警備に名をかりた、警察官による常軌を逸するような問題行為がまかり通ることや、過剰な警察権力の行使は決して許されることではないと思います。

 現在、六都府県から派遣されている県外機動隊と、この住民、市民とのさまざまなあつれきについて、これからまたさらに警察官を増員するというふうな方向を考えると、非常に深い協議が必要なところではないかというふうに思います。そのことについてどのような認識をお持ちか、伺います。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄県における米軍北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設工事等をめぐっては、工事に反対する多数の抗議参加者が工事関係車両の通行に合わせて県道上に飛び出す、寝転ぶ、座り込むといった行為をしているほか、正当な理由なく同訓練場内に立ち入り、工事用重機に飛び乗り、しがみつき、あるいは有刺鉄線を切断するなど、危険かつ違法な状況が生じているものと承知しております。

 こうした中、沖縄県警察におきましては、六都道府県警察から警察官の派遣を受け、現場の安全確保、交通の危険の防止、違法行為の抑止等のための必要な警備活動を実施しているところでございます。

 沖縄県警では、現在の現場の状況を踏まえれば、違法行為の抑止等の観点はもとより、多数の抗議参加者の安全を確保する観点からも、相当数の警察官を警備活動に従事させる必要があると認識しているものと承知しております。

 なお、沖縄県警察におきましては、住民の方々からの御意見を踏まえまして、工事関係車両が通行する時間帯を、住民の方々の通勤通学に支障を及ぼさない時間帯とするよう沖縄防衛局に要請したほか、警備措置の過程で、県道で住民の方々にお待ちいただく時間をできるだけ最小限にするよう努めるなど、住民生活にも極力配意しているものと聞いております。

玉城委員 全体的にどのような行動があるかを私は承知しておりませんが、しかし、路側帯も狭い、しかも片側一車線しかない県道七十号線の片側に、多いときには十台から二十台の警備車両を駐車しています。それだけで既にもう交通の潤滑な輸送に支障を来しているということから、さまざまな不安があるということを、いま一度しっかりと御検討をいただきたいということもあわせてお伺いしたいと思います。

 残余の時間は、千葉県へのオスプレイの配備計画について、一、二点、お伺いいたします。

 十月二十四日、千葉県の陸上自衛隊木更津駐屯地に、米海兵隊所属で宜野湾市の普天間飛行場に配備されているMV22オスプレイが飛来し、木更津市並びに木更津市議会の要請によって、同日、防衛省北関東防衛局職員が騒音測定を行っています。

 木更津市へのオスプレイ整備場計画の説明についてどのようにとり行ったのか、お伺いいたします。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 木更津駐屯地へのオスプレイの整備基盤に関する地元自治体への説明の経緯につきまして御説明いたします。

 まず、平成二十六年十月二十一日、防衛省といたしまして、木更津駐屯地を日米オスプレイの共通整備基盤として整備する方針を決定いたし、木更津市及び千葉県に協力を要請いたし、その三日後の二十四日には、木更津市、木更津市議会及び千葉県に対しまして、共通整備基盤の趣旨を御説明申し上げたところでございます。

 さらに、翌平成二十七年十月三十日、木更津市及び千葉県に対しまして、木更津駐屯地で整備を担当する企業が富士重工業に決定した旨を御報告いたし、同年十一月五日には、木更津市、木更津市議会及び千葉県に対しまして共通整備基盤の詳細を御説明するなど、累次にわたり地元自治体に対して御説明申し上げてきたところでございます。

 説明の具体的な内容といたしましては、共通整備基盤を確立することの意義、オスプレイの整備の具体的な内容、木更津駐屯地の格納庫等の改修工事計画、整備の後、オスプレイの試験飛行をする際のルート等につきまして、木更津市等に御説明いたし、また、その際お示しした資料につきましては、防衛省ホームページにアップいたし、情報発信することにより、広く地元の住民の方々へもお知らせをしているところでございます。

 防衛省といたしましては、今後とも本事業の具体的な内容等につきまして、木更津市等の地元自治体に丁寧な説明を行ってまいりたいと考えております。

玉城委員 最後の質問とさせていただきますが、この騒音測定の実施に関する件について、日米間でどのような協議を行ったのか、その内容についての御説明をお願いしたいと思います。

田中政府参考人 昨年十一月五日に地元自治体に対しましてオスプレイの共通整備基盤の詳細を説明した際に、木更津市議会の方から、米海兵隊オスプレイと木更津駐屯地に配備されている陸自CH47JAとの騒音比較を実施してほしいという御要請がございました。

 これを受けまして、防衛省といたしましては、米軍、いわゆる海兵隊でございますが、こちらと調整を行ってきた結果、今月の二十四日、一昨日でございますが、日曜日に行われました観閲式の方にもオスプレイは参加しておりますけれども、その帰路、木更津の方に立ち寄ることができるという御連絡をいただきまして、地元の自治体の方に御連絡申し上げたところ、ではその日にやってほしいというふうに御了解いただきましたので、一昨日実施したところでございます。

 なお、騒音比較の結果につきましては、後日、集計を行いまして、防衛省のホームページにおいて公表する予定でございます。

玉城委員 その測定結果が公表されましたら、また改めて質問をさせていただきたいと思います。きょうはこれで終了いたします。

 ニフェーデービタン。ありがとうございました。

岸田国務大臣 さっき玉城委員の方から、世界のウチナーンチュ大会について御質問いただきました。その際に私、今回は五回目とお答えしたようですが、六回目でございました。訂正しておわび申し上げます。以上です。

玉城委員 ありがとうございます。

三ッ矢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二分散会


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