衆議院

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第11号 平成29年4月21日(金曜日)

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平成二十九年四月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ矢憲生君

   理事 黄川田仁志君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 長尾  敬君 理事 小熊 慎司君

   理事 寺田  学君 理事 岡本 三成君

      今津  寛君    小田原 潔君

      小渕 優子君    大野敬太郎君

      熊田 裕通君    古賀  篤君

      國場幸之助君    佐々木 紀君

      島田 佳和君    鈴木 隼人君

      武井 俊輔君    辻  清人君

      松島みどり君    山田 美樹君

      石関 貴史君    吉良 州司君

      中川 正春君    原口 一博君

      渡辺  周君    浜地 雅一君

      真山 祐一君    笠井  亮君

      足立 康史君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        薗浦健太郎君

   法務大臣政務官      井野 俊郎君

   外務大臣政務官      小田原 潔君

   外務大臣政務官      武井 俊輔君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  永井 達也君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 加藤 俊治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 川崎 方啓君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 滝崎 成樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 増島  稔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 飯島 俊郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    森  健良君

   政府参考人

   (外務省中南米局長)   高瀬  寧君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            上村  司君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    能化 正樹君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           七尾 英弘君

   政府参考人

   (国土交通省航空局交通管制部長)         坂野 公治君

   政府参考人

   (海上保安庁総務部長)  一見 勝之君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           齋藤 雅一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 土本 英樹君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  深山 延暁君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十一日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     國場幸之助君

  辻  清人君     古賀  篤君

  浜地 雅一君     真山 祐一君

同日

 辞任         補欠選任

  古賀  篤君     辻  清人君

  國場幸之助君     武井 俊輔君

  真山 祐一君     浜地 雅一君

    ―――――――――――――

四月二十一日

 日印原子力協定を承認・批准しないことに関する請願(阿部知子君紹介)(第八四三号)

 沖縄県民の民意尊重と、基地の押しつけ撤回に関する請願(畑野君枝君紹介)(第九三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長山崎和之君、大臣官房審議官川崎方啓君、大臣官房審議官滝崎成樹君、大臣官房審議官増島稔君、大臣官房参事官飯島俊郎君、北米局長森健良君、中南米局長高瀬寧君、中東アフリカ局長上村司君、領事局長能化正樹君、内閣官房内閣審議官永井達也君、法務省大臣官房審議官加藤俊治君、国土交通省大臣官房審議官七尾英弘君、航空局交通管制部長坂野公治君、海上保安庁総務部長一見勝之君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官齋藤雅一君、大臣官房審議官土本英樹君、地方協力局長深山延暁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺周君。

渡辺(周)委員 おはようございます。

 まず、早速質問に入りますが、十七日、北朝鮮の宋日昊日朝国交正常化交渉担当大使が、平壌を訪れていた記者団に対して、北朝鮮と我が国で約束をしたストックホルム合意、この点について、記者団に対して、合意はなくなったんだ、拉致問題には誰も関心がないと、とんでもない、理解しがたい、けしからぬ発言がありました。

 このストックホルム合意で約束をされた特別調査委員会による再調査、もうこの委員会は解体されたということなんですが、これはあくまで記者会見で言った宋日昊大使の真意といいますか、これはブラフなのか、それとも、今北朝鮮をめぐる情勢が緊迫の度合いを増している、あるいは脅威が大きくなっている中で、アメリカを初めとする国際社会の強力な圧力、その中で我が国に対して何らかの揺さぶりをかけてきたメッセージなのか、どういうふうにこの発言を理解、分析しているのか、まずその点について伺いたいと思います。

岸田国務大臣 まず、まさに委員がおっしゃったように、これは揺さぶりではないかということですが、こうした、北朝鮮側が報道機関に発言したことについて、その一つ一つに振り回されてはならないということであり、これについて直接コメントすることは控えたいと思います。ただ、ストックホルム合意に関して言いますと、昨年の二月、北朝鮮側が核実験及び弾道ミサイルの発射を強行したことを受けて、我が国が新たな措置を発表し、そして、それに対して北朝鮮側が、一方的に我が国がストックホルム合意を破棄したことを公言したことになるという主張を行ったという経緯があります。

 我が国は、拉致被害者あるいは残留日本人にかかわる問題、こうした全ての日本人にかかわる問題、これを解決すべく、ストックホルム合意に基づいて対応していく、この方針は全く変えてはいません。

 ぜひ、引き続き北朝鮮に対して、こうした人道的な観点の問題に対してもしっかりと対応していきたい、このように考えます。

渡辺(周)委員 これまで、二〇一四年の五月の合意から今日まで、もう三年たちました。当初は、何かその年の、二〇一四年の夏や秋のころには何らかの、拉致被害者の帰国があるのではないか、何かあたかも、当時のことをまだ覚えております、夏には、秋には、年内にはといって、結果的にずるずるといって何ら進展がなかった。我が国の方が先に制裁を解除してしまって、結果的に何も得ていないのに制裁だけ解除してしまった、先にあめをやってしまった。結果、今このありさまでございます。

 私たちは、正直我が党としては、事実、このストックホルム合意というのは破綻しているのではないかというような立場に立たざるを得ないんですが、これまでにそもそも二〇一四年の五月から何回協議を重ねてきたんですか。何回のやりとりがあったんでしょう。事務方で結構ですから、教えていただけますでしょうか。

 それから、この今回の宋日昊大使の発言に対して、事前に、このようなことを言うと何かしら情報なりはあったのでしょうか、それとも今回のこの記者会見は寝耳に水だったのかどうなのか、そこはいかがでしょう。

滝崎政府参考人 二〇一四年の五月以降に何回協議があったかというお尋ねでしたので、その部分は私の方からお答えさせていただきます。

 二〇一四年の七月に特別調査委員会ができたわけですけれども、二〇一四年の九月に日朝外交当局間会合というものを瀋陽で行っております。それからその後、同じ年の十月の下旬に特別調査委員会との協議というものが行われております。その後、大使館ルートを通じた連絡というのはありましたけれども、実際に今、協議といった形での会合というのは行われておりません。

岸田国務大臣 寝耳に水だったのかというのは、今回の宋日昊大使の発言についての御質問だったんでしょうか。(渡辺(周)委員「はい、そうです」と呼ぶ)そうであるとしたならば、こうした発言を行うということについて、事前に何か通報があったということはありません。

 ただ、内容においては、先ほども申し上げさせていただきましたが、このストックホルム合意、昨年二月の我が国の措置に対して北朝鮮側が、一方的に日本が破棄を公言したことになるという発言をしている次第であります。このことは全く受け入れることはできない、これは当然のことであると考えています。

渡辺(周)委員 今の事務方からの答弁、二〇一四年の七月に調査委員会が立ち上がった、九月に当局間の会合があった後、十月下旬に協議があったけれども、その後は大使館ルートでのやりとりはあるが、頻繁に起こる北朝鮮の蛮行によって、現実的にはこの合意が履行されないままになってしまった。

 何よりも北朝鮮の、もう蒸し返してもしようがないです、そもそも北朝鮮との約束なんというものが、果たしてこんなものを本当に信用してよかったのかどうか。当時このストックホルム合意ができたときに、そんなにうまい話があるのかなと思いました。しかし、日本が先に制裁を解除しましたから、それなりの相当な見返りが見込めるというふうに正直期待をしていたんですが、やはり北朝鮮は北朝鮮でございます。

 先方は、もうこれは破棄をされたと言っているわけなんですが、我が国として今後どのような姿勢で臨んでいくのかということは、ぜひ尋ねたい。しかも、拉致問題には関心がない、調査特別委員会は解体されたんだけれども、さっき大臣もちょっと触れられましたけれども、人道問題として残留日本人問題に取り組む用意があると。これは、残留日本人問題というのは、第二次大戦のときに何かの事情で帰ってこられなかったという邦人を指すのかということですが、そのような方々が本当にいるのでしょうか。日本人妻でありますとかそういう方々、あるいはよど号犯も含めれば、日本人があの国の中にいるわけなんですけれども、ここで言う残留日本人の問題というのは一体何を指して北朝鮮は言っているということなのか。

 それから、日本側から要望があればといいますけれども、拉致、この最優先で取り組むべき拉致の再調査はこのような態度、しかし、日本としてここをやはり最大重要視をしなきゃいけないわけですから、これを差しおいて、拉致問題の再調査ということを、最も最重要事項である、最優先事項であることをさておいて、この残留日本人の問題、あるいは遺骨の問題ということも言っていますね。北朝鮮に人道的などという言葉を使ってほしくないわけなんですが、北朝鮮がそのようなことを言っている。

 拉致の調査委員会のことを後回しにして、そのようなことを日本側から要望することがあってはならないと思いますが、日本側としての姿勢はいかがなものでしょうか。お答えください。

滝崎政府参考人 委員の方から、残留日本人、日本人配偶者の問題についてどのようなことを把握しているのかというような御質問がありましたので、その部分だけ、まず私の方からお答えさせていただきます。

 戦後、北朝鮮地域で行方がわからなくなったとして、旧厚生省に対して安否調査依頼があった方たちというのが、合計で千四百四十名おられるというふうに承知しております。

 それから、在日朝鮮人などの北朝鮮への帰還事業により北朝鮮に渡った、いわゆる日本人配偶者の総数は、約千八百名というふうに承知しております。

 しかしながら、政府といたしましては、残留日本人やいわゆる日本人配偶者の具体的な現状などについては、その直接確認する手段がないということから、確定的な情報をお答えすることは難しいということでありますけれども、把握しているのは先ほど申し上げたような状況にあるということであります。

岸田国務大臣 まず、ストックホルム合意については、そもそも、拉致問題という安倍政権にとって最大の最重要課題が存在する中にあって、全ての拉致被害者の帰国を実現しなければならない、こうした課題を考えますときに、これは対話という要素を欠くことはできない、そういったことからストックホルム合意というものを結び、そして取り組むこと、これは大変重要なことであるとして、今日まで北朝鮮と交渉を行ってきました。

 しかし、残念ながら、その間、北朝鮮による再三の挑発行動もあり、それに対して我が国は、拉致問題を含むミサイル・核開発、こうした諸懸案を包括的に解決するという方針のもとに、厳しい圧力も行ってきた次第であります。そして、結果として今日に至っているわけです。

 ストックホルム合意は、先ほど申し上げましたように、しっかりとこれからも履行を要求していかなければなりません。そして、ストックホルム合意は、全ての日本人に対して対応するものであります。拉致問題のみならず、先ほど説明させていただきました残留日本人の問題を初め、全ての日本人にかかわる問題を対象にしているということでありますので、このストックホルム合意、我が国はこれからも、これに基づいてしっかりと問題解決に向けて努力しなければならない、このように考えます。

渡辺(周)委員 今、外務大臣、拉致問題のみならずとおっしゃいましたけれども、前回私が尋ねたときには、拉致問題の解決が最重要かつ最優先ではないんですか。いかがですか。

岸田国務大臣 今の答弁の冒頭で申し上げたとおり、最重要課題である拉致問題、これに取り組んでいるということは再三申し上げております。安倍政権にとって最重要課題、これは拉致問題であると認識をしております。

渡辺(周)委員 ぜひ最優先課題ともつけ加えていただきたいですね。

 といいますのは、全ての日本人といいますと、まさに今回北朝鮮側が言っているような、人道問題として残留日本人問題に取り組む用意があると言って、何か、拉致問題じゃなくて、残留日本人であるとか日本人妻であるとか、要は、すりかえているというか置きかえているというか、こっちの方に実は対象を持っていこうとしているんではないかということがあるから、私たちは非常に危機感を感じているんです。

 つまり、拉致問題の再調査が進まない限りは、何ぼ日本人の妻の問題や、あるいはそのほかの遺骨の返還のこともありますけれども、向こう側が人道的などと言っていることに対して、まず解決すべきは拉致問題だということは言い続けますね、いかがですか、大臣。

岸田国務大臣 おっしゃるとおりであります。まず解決すべきものは拉致問題であります。このストックホルム合意をめぐるさまざまなやりとりの中にあっても、再三、最重要課題は拉致問題である、これは繰り返し強調をしてきております。あらゆる機会を捉えて、拉致問題が最重要の課題である、これを解決しなければ議論が進まない、こういったことについては北朝鮮側に強く伝えております。

渡辺(周)委員 ほかの質問もありますので、これは改めてやりますが、拉致の調査委員会は解体された、誰も関心がない、しかし、それ以外の残留日本人の問題については要望があったら取り組むなどという、どうぞ北朝鮮のこの揺さぶりに決して言葉尻を捉えられるような返事はせずに、ぜひ強硬な姿勢を示していただきたいということで、また次の質問に移りたいと思います。

 朝鮮半島情勢についてでございますが、我が国としては、スポット情報を出して注意の喚起を呼びかけている。しかし、韓国の国土警戒レベルというのは今までと変わっていない。そういう中で、和歌山県の高校では、韓国に行っていた修学旅行を渡航延期にした、それは生徒の安全を最優先するためだというようなことが載っておりましたが、韓国の国土警戒レベルというのは今どのようになっていますでしょうか。そして、このような、渡航を見合わせるような学校というのはほかにも何か出てきているのかどうか、その点についてお尋ねをしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、韓国内における警戒レベルについては、現時点において、韓国軍の警戒態勢等のレベルが上げられたということは承知をしておらず、韓国側から平素の態勢が維持されている、こうした説明を受けています。

 そして、我が国が韓国に関してスポット情報を発出したということについては、北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返している中、韓国に渡航、滞在する邦人から朝鮮半島情勢に関する照会等がかなり多く寄せられている、こういった状況にありました。こうしたことを踏まえて、四月十一日に、スポット情報において、韓国への渡航や滞在を控える必要はないが、朝鮮半島情勢の最新の情勢には注意が必要であること、また、従来からお願いしているたびレジや在留届による連絡先の登録について改めて呼びかけたものであります。

 そして、御指摘の修学旅行を延期した和歌山県の高校があるということ、これは承知しておりますが、それ以外にそうした動きについては政府として承知はしておりません。

渡辺(周)委員 だからこそ、少し丁寧な情報提供、説明が必要なんじゃないかなと思うんです。

 韓国では平常ですと。ただ、日本としては、今、北朝鮮をめぐる状況というのが、アメリカの発言などを見るとひょっとしたらということもあるから、しかしということで提供しないと、いたずらに余り不安をあおってもいけないんだけれども、かといって状況は今までとちょっと変わってきている、ぜひもうちょっとわかりやすい情報提供をしていくべきだと思うんですね。

 では、その後、先へちょっと行きますと、では万々が一韓国国内で、日本人がいる場合に、ソウルであるとかあるいはそれ以外の都市で、万々が一のときはどのようにして対応するようにするのか。つまり、韓国の警戒レベルが上がって、韓国が何らかの形で非常事態になった場合には外国人はどうなるのか。

 きょうの新聞ですと、例えば半島有事の輸送計画というのは在韓邦人の退避には自衛隊は使えない、なぜなら韓国は日本の自衛隊に対してアレルギーを持っていて、日本の迷彩服を着た自衛官が韓国の国土に入ってくることを非常に嫌がると。実は私も防衛省の副大臣をしたときに、そういう邦人の救出あるいは輸送という話のときに、相手国の同意となると非常に厳しかった。例えば音楽隊のセレモニーなんかでも、実は日本の自衛隊が行くことについては非常に抵抗があったというような事例も過去にあったというふうに聞いたわけなんです。

 ここで、万々が一の場合に、韓国と連携して、これまでの日本の外交等、外交筋はやってきたと言うんですけれども、邦人退避に関する協議というものは進んでいるんでしょうか。まあ、あの国も、大統領がこんなことになったり、しょっちゅう政党が離合集散したりして、わかりにくい国でございます。意思決定というのがなかなかしっかりとできないときがありますが、こうした場合には日韓でどのような連携ができるかということについては、どのように今協議をしているんでしょうか。

岸田国務大臣 まず、海外で邦人が危機にさらされた際に、安全確保あるいは救出に対応できるようにするということ、これは国にとって大変重要な責務であると考えます。

 そして、平素からさまざまな状況を想定して準備、検討を行っているわけですが、当然のことながら、我が国としてどう対応するか、これにつきましてはさまざまな対応を検討、準備しております。

 そして、御質問は、韓国とこういった相談をしているのか、よく準備をしているのかということでありますが、領事レベルにおいては韓国としっかり意思疎通を行っている、これはしっかり対応しているところであります。

 朝鮮半島において何か有事が起こった場合の対応、これは米国を初め関係国としっかり連携をしながら対応していかなければならない、これは御指摘のとおりだと思いますし、ぜひ米国、韓国、さまざまな関係国と連携をしながら対応していきたい、このように考えます。

渡辺(周)委員 もうちょっと突っ込みたいところなんですが、ちょっと時間の関係がありまして、別の質問に入ります。

 同じ関連ですが、まさに半島有事ということになった場合に、これはもう何回も取り上げておりますけれども、拉致被害者が北朝鮮にいる、その際の、拉致被害者救出の際には米軍に協力を求めるんだというようなことを総理が答弁をされておりますが、現実問題として、拉致問題の背景であるとか情報というものをほとんど持っていないアメリカ軍にお願いするのは無理だろうと。そもそも、朝鮮人の顔も日本人の顔も区別がつかない人たちが、誰が拉致被害者であるのか、例えば名乗り出たところで本人を確認するすべがない。相当機微の情報を持っていて初めて私は奪還、救出できるんじゃないかというふうに思います。

 そこで伺いますけれども、例えば、防衛省の職員、自衛隊の隊員が外務省の職員に身分がえして、連絡員、リエゾンオフィサーというものですけれども、例えば米軍と一緒に行動するということは可能なのでしょうか。いかがでしょうか。

 つまり、日本側の外務省の職員なり防衛省の職員なりが、やはり拉致問題に対して徹底して、拉致被害者の名前も出身地も事件が起きたときも頭にたたき込んで、もしその方が、会った場合は、あなたは何々さんですねと日本語でしゃべる、本人の人定のときもそれができる、それなりの方が一緒にいて初めて実効性があるものだと思いますが、もしこういう救出を米軍に協力を求めるといっても、当然、主体は我が国であるべきだと思いますが、その点についてはどう協議をされているのか。どのようなことを念頭に総理は発言されたのでしょうか、お答えください。

岸田国務大臣 まず、有事の際に拉致被害者の方々の安全を確保する上で、米軍の協力、これは極めて重要であると認識をしています。

 そういったことから、政府としては、米国に対して、拉致被害者に関する情報、こうした情報を提供しております。拉致被害者の安全確保に協力するよう、米国政府に依頼を行っているところです。

 そして、そもそも、この拉致問題について、米国を初め関係国に対しましては、しっかり認識を持ってもらうように、累次にわたって説明を行っている、こういった取り組みを続けているわけです。

 こういったことから、米軍の、そして米国の存在は拉致被害者の安全確保において大変重要であるということを申し上げているわけですが、一方、委員の方から、自衛官に、我が国自身が、今お示しいただいたような形で対応できるのではないか、そういったことを考えていないのかという御質問でございます。

 有事の際に、仮定に基づいて、具体的に何をするかと言うのは控えなければなりませんが、制度として申し上げるならば、例えば、自衛官に外務事務官を兼任させて、在韓国大使館員として発令の上、現地で在韓米軍や韓国軍とのリエゾンオフィサーとして従事させること、これは制度としては可能であると考えます。ただし、これは受け入れ国とか受け入れ機関の調整というものは必要になる、このように制度としては考えます。

 ただ、具体的にどう対応するかということは、仮定に基づいて申し上げるのは控えなければならないと思います。

渡辺(周)委員 少し姿が見えてきたような気がいたします。

 それで、引き合いに出されるのがイラクのCPA、イラクの暫定機構方式が考えられる。つまり、暫定機構がそこの主権を失った国家にかわって統治をしている。

 しかし、例を挙げますと、実はあの年、五月の一日にブッシュ・アメリカ大統領が終結宣言をしてから、安保理決議を経て、実際の暫定機構が出てくるまで一カ月かかっているんですね。それなりの時間がかかっていくわけでございます。

 その間に、我が国としてどうにかしなければいけない。その間の拉致被害者の、救出を待つというところまで、救出を待ってくださいと。早急にやらなければいけない課題は実はあると思うんです。つまり、この暫定機構方式をできるだけ圧縮するということ。

 それから、具体的に、ちょっと繰り返しになりますけれども、こういうオペレーションについて、北朝鮮崩壊時の北朝鮮に残っている拉致被害者を救出するために、米国と具体的な協議に、先ほど情報提供をしていると言っていましたが、協議として具体的な協議をしているのか、それともこれから始めるのか。

 北朝鮮情勢が緊迫したことを受けて、米軍あるいはアメリカ政府とどのような協議を今後していくのでしょうか、その点についてお答えいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、委員の方から、イラクにおけるCPAの設立の例を挙げて御質問をいただきましたが、そもそも、イラクの状況と今の北朝鮮の状況は全くさまざまな条件が違うわけですし、さらには、仮定に基づいて、今後の有事になった場合の対応について具体的に申し上げること、これは控えなければならないと思います。

 ただ、米国との間においては、さまざまなレベルで政策のすり合わせを行っています。特に、米国においては新政権がスタートしました。新しい政権は、北朝鮮問題についても今政策の見直しを行っています。あらゆるオプションを俎上にのせるということで政策の見直しを行っているわけですので、なおさら丁寧な政策のすり合わせが行われなければならないということで、首脳レベル、外相レベルのみならず、さまざまなレベルで政策のすり合わせを行っているということであります。

渡辺(周)委員 政策のすり合わせというよりも、できれば具体的な計画のシミュレーションを共通で行っていただきたいと思うんです。

 確認ですけれども、北朝鮮崩壊時の日本人救出ということについては米軍と具体的にぜひやっていただきたい。あるいは、そこにもう進んでいるのかもしれません。具体的に申し上げなくて結構ですが、その点については、アメリカ政府、そしてアメリカ軍を含めて、ある程度具体的な、一時期よりも新たな脅威の段階に入ってきたと日本政府は認定しているわけですから、本当に具体的な、現実的な有事の際の救出ということについてはアメリカ政府とやっているということで私は認識しておりますけれども、それでよろしいでしょうか。簡潔にお答えください。

岸田国務大臣 政府としましては、あらゆる事態に対応できるようしっかりと検討、調整を行っています。米国とのすり合わせにつきましても、事態の変化に応じて現実的に、実際的に行う、これは当然のことであると考えます。

渡辺(周)委員 終わります。

三ッ矢委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田です。

 一昨日の質疑に続きまして、質問させていただきたいと思います。

 まず、岸田大臣、宏池会結成六十周年、おめでとうございます。ニュースでしか拝見できませんでしたけれども、ニュースのタイトルでは、安倍後を考えるというのがメーントピックになっておりました。

 保守本流の考え方、宏池会の考え方、権力に対しては抑制的に物事を考えていくということは賛同いたしますが、権力を奪取することに関してはもう少しどうもうにお考えになられた方がいいなと、今の安倍政権の方向性を危うく思う一人の議員としてそれは強く思いますので、安倍後ではなく、安倍最中にいろいろな行動を起こしていただきたいということを冒頭申し上げた上で、厳しい質問に移りたいと思います。

 一般質疑の時間を一時間もらいましたので、一昨日質疑を行いましたシリアに対する米軍の攻撃に関して、そして、以前質疑で私少し触れましたけれども、在韓国の大使の一時帰国と帰任に関して、この一連の外交の判断に関しての総括、そして最後は、今法務委員会の方でも議論になっておりますが、共謀罪、テロ等準備罪ですか、それとTOC条約との関係性について、この三つについて、過去の答弁、政府の考え方、発言を踏まえた上で議論していきたいと思います。

 前回の質疑は、条約審議の残った時間で行わせていただきましたので、十分な審議ができませんでした。もちろん、今回の米国によるシリア攻撃に対して日本政府がどのように発言するか、その発言の、声明の内容自体はまさしく外交的に意図的に曖昧にしている部分があることは十分承知をしておりますが、これから将来に、さかのぼって今回の行動に対してさまざま検証する際に、政府としてどのように考えていたのかということを後人の国会議員の仲間たちが議論する上で、外務委員会でしっかりとその内容が審議されていた証左を残しておきたいという思いがありますので、しつこく細かくやりますけれども、ぜひ誠意ある答弁をしていただきたいと思います。

 前回、いろいろ質問させていただきました。きょう、お手元の方に、官邸のホームページの記事、シリア情勢についての会見ということで、米国によるシリア攻撃が行われた日に総理が発言した内容をそのままプリントアウトしました。

 そこは前回も読みましたけれども、肝となる部分は、今回のシリアに対する米国の攻撃を受けて、総理として、日本政府を代表して、「化学兵器の拡散と使用は絶対に許さないとの米国政府の決意を日本政府は支持いたします。その上で、今回の米国の行動はこれ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解しています。 そして、東アジアでも大量破壊兵器の脅威は深刻さを増しています。その中で、国際秩序の維持と同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ大統領の強いコミットメントを日本は高く評価します。」というのが内容です。

 前回、聞きましたけれども、そもそもとして、シリア国内に対する化学兵器による攻撃がシリア政府によるものと政府は考えているんですかということをお伺いしたところ、今、国際機関を含めて調査を待っているところだということの御答弁がありました。

 ここは、まず一つ確認ですけれども、まず、そもそも、この総理が出された声明は、シリアにおける化学兵器攻撃は誰によって行われたか政府として判断できていない段階で発せられたものと考えて間違いはありませんか。

岸田国務大臣 まず、事実の確認ということで申し上げるならば、我が国の立場は、化学兵器禁止条約及び国連に委任された共同調査メカニズム、JIM等によって行われている調査の結果を待ちたいというものであります。

 そして、我が国のこうした、政府としての考え方については、これも再三申し上げておりますが、化学兵器の使用、拡散を許さないという米国の決意を支持したものであります。これ以上事態を深刻化させないための措置であると理解をしている、こうした内容のものであります。

寺田(学)委員 答えておりません。

 私が申し上げたのは、前回の質疑を含めて、このシリア国内における化学兵器による攻撃自体がシリア政府、シリア軍によって行われたものですかということをお伺いしたところ、国際機関の調査中であるからして調査を待ちたいというのは、これ以上のことは申し上げられないと考えていますと御答弁されていますので、もう一度同じ質問をします。

 今回の日本政府の声明は、シリアにおける化学兵器攻撃は誰によって行われたか判断できない、しない段階において発せられたものと考えて間違いはありませんか。間違いがありますか。

岸田国務大臣 我が国は、事実関係については、引き続き、国際機関の調査の結果を待たなければならない、この立場であります。

 我が国は、米国の決意について支持をした次第であります。

寺田(学)委員 もう一度聞きます。間違いはありますか、ありませんか。

岸田国務大臣 我が国が決意を支持した、この段階においては、我が国は国際機関の調査の結果を待つ、こういった立場にありました。そして、それは今も変わっておりません。

寺田(学)委員 だからお伺いしているんですが、今回の総理が発せられた声明は、誰によって化学兵器による攻撃が行われたかということを日本政府として判断していない、その状態において発せられたものと考えて間違いはありませんかと聞いているんです。

 間違いがあるなら、間違いがあると訂正してください。間違いがないのであれば、それで結構です。

岸田国務大臣 ですから、我が国は、その御指摘の事実の判断につきましては、国際機関の調査の結果を待ちたいということを申し上げております。

寺田(学)委員 いずれにせよ、日本政府として、あの化学兵器による攻撃は誰が行ったものだという考えを発することなく行われた声明だということで間違いない、御訂正されませんでしたので、そう解釈いたします。

 それで、先ほどの政府の発言の中で、米国政府の決意を日本政府は支持するという話でした。前回の質疑で、その決意とは何ですかということをいろいろお伺いしたところ、岸田大臣はこう答えられています。「今回の言動も含めて、米国の、化学兵器の拡散、使用は許さないという決意を支持すると申し上げております。」

 更問いを私はさせていただきました。今回の言動というものに、シリア攻撃、米国によるシリア攻撃は入るんですかということをお伺いしたところ、時間がなかったので流しましたけれども、「言動に含まれている、示されている決意、その決意の部分を支持すると申し上げております。」

 決意は何かという話をしたら、今回の言動があるんだ、その言動は何かといったら、言動に含まれている決意なんだと。はっきり言って答弁になっていないんです。

 もう一度ちゃんと整理して聞きますが、今回政府が支持をしている決意というものは何かと聞いたときに、大臣みずからが今回の言動とお話をされました。その言動の中に、米国によるシリア攻撃は含まれているんですか。

岸田国務大臣 今回の米国の行動を含めて、米国の言動の中の決意、込められている決意に我が国は支持を表明したということであります。

 例えば、四月七日、トランプ大統領自身、演説の中で、化学兵器の拡散を防ぎその使用を抑止することは米国にとっても極めて重要な利益である、こういった決意を示しています。こうした言動の中に込められた決意の部分を我が国として支持したということであります。

寺田(学)委員 その後、一昨日は、決意と行動という話をさせていただきまして、なぜ行動の方は支持されないんでしょうかという質問をしました。「なぜ行動は支持されないんでしょうか。」という問いに対して、大臣は、「今回の行動が行われた、示された後、こうした行動に対するさまざまな評価、考え方があります。その中で、事実関係について、あるいは法的な評価については先ほど申し上げたとおりであります。」先ほど申し上げたということは、調査中ですということをお話をされたということだと思います。

 一点お伺いしますが、この調査の内容がいずれ明らかになると思いますし、今現在調査中です、事実関係については今調査中なのでそれを待ちたいと言われていますので、その待っているものがいずれかのタイミングで出ると思いますけれども、出た場合においては、今回、行動に対しては支持をしておりませんが、行動に対する支持という評価を新たに加える可能性はあるんでしょうか。言い方を変えると、調査結果によっては今回の考え方を変えることがあるんでしょうかということです。

岸田国務大臣 まさに今調査が行われている最中、結果について予断をする、仮定に基づいて発言する、これは控えなければならないと考えます。

寺田(学)委員 調査結果がどうなるかということを予想して、それについてああだこうだ言っているわけじゃありません。調査結果によっては考え方が変わることはあり得るんでしょうかということを聞いているんです。大臣みずから調査結果を待ちたいと言われているわけですから、待たれている理由が、留保している理由があるわけですよね。調査結果いかんを問わず、今回の行動に対する日本政府の評価は一貫しているという考え方もあるでしょうし、調査結果によっては考え方が変わる余地があるということも一つの考え方だと思います。

 もう一度お伺いします。調査結果いかんによっては政府の考え方が変わる余地はあるんでしょうか。

岸田国務大臣 政府としては、化学兵器の拡散、使用は許さないという米国の決意を支持しているわけであります。そして、行動の中身については、まさに今、国際機関が調査をしています。そして、行動についての結果についてどうするかということ、まさにこれは予断を持って申し上げることになってしまうと考えます。そのことについては控えると申し上げております。

 決意について支持をする、このことはこれからも変わらないと考えます。

寺田(学)委員 私がお伺いしているのは、大臣の答弁を、その内容を聞いているんです。なぜ行動自体は支持されないんですかと。その決意を支持されているのは十分、何度も答弁されているのはわかります。今回の米国の攻撃に対して支持されますかと聞いたら、今回の行動が行われた、示された後、こうした行動に対するさまざまな評価、各国の評価ですね、そして、事実関係については先ほど国際機関での調査を待っているところですというお話。なので、なぜ行動は支持されないかということの御答弁が、今、さまざまな評価もあるでしょうし国際機関の調査を待っているところですからと。なぜ行動は支持されないかということに対する御答弁です。

 なので、調査結果、どの程度で調査が終わったと、その調査結果をどのようにそしゃくし判断するかということは政府の中で考えられるでしょうが、私が聞いているのは、調査結果いかんによっては考え方が変わる余地があるのかということを言っているんです。変わる内容は何かと聞いているわけじゃないです。これは、どのような調査結果であれ、一貫して今回の理解と支持の対象は変わらないということなのか、調査結果によっては考え方が変わるのか、そのどちらですかということを聞いているんです。

岸田国務大臣 化学兵器というものは、いかなる理由でも、使用、拡散してはならない、こういった思いはこれからも全く変わらないと思います。そうした米国の決意を支持する、これは変わらないと思います。

寺田(学)委員 丁寧に質問しているつもりですけれども。

 決意を支持することは変わらないのは、それは当然だと思います。それは、この間の質問でも、今回の言動を含めた過去から発せられている決意も含めて、そのことに対しては支持をしているということでした。

 今回の具体的なシリアに対する米国の行動自体の評価が、調査結果、あと、前回やれませんでしたのでこれからやりますけれども、国際法上の評価、判断、それが、過去の答弁を引っ張ってみますと米国からの回答待ちですという逃げ方をしていますけれども、いずれにせよ、そのような国際法上の評価、米国側の判断、そしてまた国際機関による調査、誰が化学兵器を使ったのかという調査、そういう内容が明らかになった段階で、この攻撃に対する考え方、評価というものは変わるんでしょうかということを聞いているんです。

岸田国務大臣 先ほど申し上げたとおり、我が国の明らかにしている態度は、化学兵器の拡散、使用は許さないという米国の決意を支持し、そして、今回の行動については、これ以上事態を悪化させないための措置であると理解している、それしか申し上げておりません。このことは、極めて基本的なことであると思っています。

 その上で、さまざまな事態、法的な評価等が明らかになってさまざまな評価が出てくるということだと思います、我が国のこうした、化学兵器の拡散、使用を許さないという決意、そして事態を悪化させない措置であるという理解、これは変わらないと考えます。

寺田(学)委員 外務委員会の理事として、今回のさまざまな条約審議に対しても比較的前向きに取り組んでいるんですが。意見がすれ違うことがあるんだったらいいですけれども、質問がすれ違っているので本当に残念です。

 私は、決意の内容を聞いているんじゃなくて、行動自体が、大臣みずから言われたとおり、今、国際機関の調査を待っているんです、国際法上の解釈は米国からの回答待ちなんですというふうに答弁されていますので、それが明らかになった段階で評価が変わる余地はあるんですかということを何回も今聞いているんです。それを、ひたすら答弁の中では、決意の内容を話されている。すれ違っているんですよ。

 行動自体に対する評価が変わることはあり得るんでしょうかということを聞いています。

岸田国務大臣 我が国が公にしているのは、先ほど来説明している、決意を支持するということと、今回の行動、これ以上事態を悪化させないための措置であるとして理解する、これだけであります。これ以上のことは何も申し上げておりません。これは変わりません。

 ですから、評価が変わるのかということについて、これからいろいろな事実が明らかになる等によってさまざまな評価はあるのでありましょうが、我が国の評価自体は、今申し上げて公にしている我が国の考え方自体、これは変わるものではないと考えます。

寺田(学)委員 もう一つ。この声明の中で言われている「今回の米国の行動」は、先ほど大臣も言われているとおり、「これ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解しています。」。

 理解という言葉も非常にニュアンスが分かれるところだと思うんですよね。大辞泉で引っ張りましたけれども、「物事の道理や筋道が正しくわかること。」。設計自体、そういうものがどうなっているかということを理解すること、「意味・内容をのみこむこと。」というのが一つ。もう一つは、「他人の気持ちや立場を察すること。」。ある種同情的な意思、それを理解、賛同するというニュアンスのものと、単純な意味で、何を言っているか理解しているということの違いがあると思うんですよね。

 今回、この声明の中で、今回の行動はこれ以上の事態の深刻化を防ぐための措置と理解しているというのは、今申し上げた理解に含まれる微妙なニュアンスの違い。大臣、それはわかるでしょう。本当の単純な意味で、制度設計わかっていますという意味の理解というものと、それ自体に対してある種同意の意味が多少にじみ出ている理解というのが二つあると思いますよ。どっちだと思いますか。

岸田国務大臣 我が国が公にしているのは、先ほど申し上げたことだけであります。行動について、これ以上事態を悪化させない措置であると理解している、これだけを申し上げているわけであります。

 この理解という言葉については、今おっしゃったように、かなりいろいろ分解することはできるのかもしれませんが、政府としては、通常、政府として使う理解の意味を持って、理解という言葉を使っております。

寺田(学)委員 最後にもう一点。声明のことですけれども、声明についての解釈のあり方ですけれども、コミットメントです。

 最後の段落から二つ目の段落ですか、「トランプ大統領の強いコミットメントを日本は高く評価いたします。」と。コミットメントの中に、今回のシリア攻撃、米国によるシリア攻撃は入っているんですかという話をされたときに、一昨日、大臣は、こうした全体の米国の姿勢について申し上げているんですとお話しされました。

 今まで理解とか支持とかいう言葉を使われていますが、コミットメントという英語になっています。この文脈におけるコミットメントの和訳をぜひ教えてください。さまざまあります。コミットメント。姿勢ですと言われると、私も英語はすこぶる得意なわけではないですが、それが正しい理解とはなかなか思えません。

 この文脈におけるコミットメントというのは、日本語にするとどのような意味を持つんでしょうか。

岸田国務大臣 国際社会の中にあって、化学兵器を含む大量破壊兵器の脅威が増す中にあって、世界の平和と安全あるいは国際秩序の維持に米国がしっかりと関与していくという姿勢、これをコミットメントという言葉であらわしていると考えております。

寺田(学)委員 その関与していく姿勢の中にシリア攻撃は入るんでしょうか。

岸田国務大臣 こうした関与していこうという姿勢を申し上げているわけですので、個別具体的に、どの事案が含まれる、含まれない、そういったことを申し上げることはできないと思います。この姿勢、基本的な方向、こういったものについてコミットメントということで表現をしております。

寺田(学)委員 冒頭申し上げましたけれども、こういうような状況において日本政府として声明を発するときに、外交的な声明ですから、曖昧な部分を残しながら、どのような形でもとれるように文章を練り上げていくその技術というものは必要だと思いますし、そういうことは大事だと思っています。なので、細かく細かく聞きますけれども、ぼやかし続けるところはぼやかし続ける理由があるのも十分わかった上で質問しているんですが。

 事実関係が間違っていたら申しわけないんですけれども、こういう議論をしているんだという話をしたときに、同僚議員、緒方というのはもともと外務省にいた人間ですけれども、高村外務大臣のときのことを、コソボ空爆の話です。これは、大臣、質問しません、大丈夫です。

 あのときに、緒方が言っていることがちょっとずれていたら申しわけないんですけれども、彼から言われたことは、当時高村外務大臣が、アメリカの国務長官でしょうか、名前はちょっと今思い出せませんけれども、サポートしてくれてありがとう、支持してくれてありがとうと言うのを、ひたすら、私は理解していますと、理解という言葉で返し続けた。三回ぐらいそれの押し問答があって、ひたすら理解をしているということで外務大臣は通し続けて、そのひとときにおいては関係がぎくしゃくをした。ただ、そのときにしっかりとした日本の姿勢というものを、アメリカからどのような、勝手にサポートしてくれてありがとう、支持してくれてありがとうという問いかけに対しても、私は理解をしていますという言葉で返し続けたということを私は伺いました。

 そういう当時の姿勢がよかったかどうかということはまたそれぞれ判断があると思いますが、私自身、今回のシリアに対する米国の攻撃に対して、上手な文章をつくっているとは思いますけれども、そこに流れる日本の政府としての意思というものが私は感じ取れないので、そこを少しかみ砕いて大臣には解釈をお伺いしているというところです。

 これからまたさまざま、米国による軍事行動が起こり得るとは思います。そのときに、まさしく大臣、前回も言いましたけれども、しっかりとした日本の外交姿勢というものを国民の皆さんにわかるように、今回このような大きな攻撃が行われたことに対して、日本政府がどのような意図を持って対峙しているのか、評価しているかということはしっかりと議論してほしい、説明をしてほしいということをお願いしたいと思います。

 次の問題に移りたいと思います。

 配付している資料の二枚目に、新聞の切り抜きをお配りしています。これは年表を見てほしいな、年表というか、時系列を見ていただきたいなと思ってお配りをしました。

 二〇一六年十二月三十日ですか、この記事によると、韓国の釜山の日本総領事館前に市民団体などが少女の像を設置したということ、この一つの事柄をもとに日本政府として外交的な判断をしました。それはさまざま、対抗措置という表現でお話をされていますが、在韓国の長嶺大使を一時帰国させるということをしました。私がいろいろ調べる範囲の中でいうと、大体大使の一時帰国というのは短いんですけれども、三カ月に及ぶ異例の長さで、そして今、帰国をしました。

 前々回ぐらい、私の質疑のときに、言い方は気をつけましたけれども、まだ大使は帰られていませんでしたので、マレーシアでの殺害事件もありましたし、ミサイル発射があった後だったと思いますけれども、大使を戻されることの考え方は必要じゃないでしょうかという御提案をいたしました。

 その提案があったかどうかということは全然別として、結果として今戻っています。そのことに対する、大使が韓国にしっかりと帰任をしていること自体に対しては異論を申し上げませんが、この三カ月間にわたる、大使を一時帰国させ、そして帰任をさせたこの外交的な判断に対しては、しっかりと議論が必要だと思っています。

 自民党の新藤先生がお話をされたので、その記事をお配りしたかったんですが、読み上げます。自民党の新藤前総務大臣は、慰安婦問題という前提が解決していない中で政府の帰任判断はじくじたる思いだ、党内で歓迎の声ばかりでないということはしっかり声を上げていくという異論も出ていましたし、二階幹事長も、そもそも大使を一時帰国させる必要はあったのかというような疑問も投げかけられていました。

 この一連の三カ月間の行為に関しての質問をさせていただきたい、総括をしたいと思っています。

 まず、なぜ対抗措置として大使の一時帰国、またほかの残り三つもありますけれども、それを命じたんでしょうか。

岸田国務大臣 一昨年の末の日韓合意については、慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されること、これを確認しました。この合意は、世界各国から高く評価されたものであります。

 日本、韓国両政府は、この合意を履行する大きな責任を担っているとも思っています。そして、我が国は、この合意の内容を全て履行しました。にもかかわらず、昨年十二月、我が国の公館の前に慰安婦像が新たに設置されたこと、このことを極めて遺憾に感じ、韓国側に抗議の意思を示すとともに、本国での打ち合わせを行うため、一月九日、長嶺駐韓大使及び森本在釜山総領事、これを一時帰国させた次第であります。

寺田(学)委員 何を目的とした対抗措置だったんでしょうか。

岸田国務大臣 日韓合意の重要性に鑑み、我が国としてしっかり韓国側に抗議の意思を示す、これが大きな目的であります。

寺田(学)委員 抗議の意思が目的で対抗措置をとられたということでよろしいですか、今御答弁ありましたように。

岸田国務大臣 おっしゃるとおりであります。抗議の意思、これをしっかりと示すことは重要であると判断をいたしました。

寺田(学)委員 抗議の内容は何でしょうか。

岸田国務大臣 慰安婦問題について、最終的かつ不可逆的に解決する、これを確認した合意について、我が国がしっかりと履行を行っている中にあって、韓国側においては我が国公館の前に新たに慰安婦像が設置された、このことに対する抗議であります。

寺田(学)委員 ウィーン条約に規定する領事機関の威厳を侵害するということも政府はお話しされていましたけれども、少女の像を撤去することを目的とした一時帰国及び対抗措置であったのではないんですか。

岸田国務大臣 この慰安婦像の移転等を求める、これも抗議の内容であります。

寺田(学)委員 撤去を求めること、目的の中に入っていると思いますが、その目的はどのような形になりましたか。

岸田国務大臣 今現在、慰安婦像は、撤去、移転はされておりません。

寺田(学)委員 一時帰国という一つの大きな外交判断をする際に、政府として、この少女の像が撤去されることを帰任の条件と内々考え、それをもとにして一時帰国を命じたわけではないんでしょうか。

岸田国務大臣 慰安婦像の撤去、移転を求めるという内容も含む抗議のために帰国をさせました。

 こうした移転、撤去はまだ実現しておりませんが、これからも韓国政府については日韓合意の履行の重要性をしっかりと強調し、そして慰安婦像の撤去、移転を求めていきたいと考えます。

寺田(学)委員 二階幹事長も言われていますけれども、出口をちゃんと考えてやったことなのかという疑問を投げかけられています。

 この少女の像が設置される前に既に大統領の弾劾に関しての国会での可決がされ、政情が物すごく不安定化するということはわかっている中で行われた行為ですし、それの後に、大臣が言われたとおり、抗議の意味を含め、一時帰国を判断したということだと思います。

 一時帰国を判断するときに、少女の像が撤去される、そこが動くというようなある程度の確証があってやられた行為なんですか。

岸田国務大臣 四月四日に長嶺駐韓大使らを帰任させました。この決定を行うに当たっては、幾つかの点を勘案いたしました。

 まずもって、五月九日に韓国におきましては大統領選挙が行われます。次期政権が誕生するわけですが、この次期政権の誕生にしっかり備えなければならないということ。そして、北朝鮮情勢、大変緊迫した状況が続いております。その中にあって、韓国政府との緊密な連携を図る必要があること。

 そして、さらに、慰安婦問題については、先ほど申し上げましたように、現政府に対してしっかりと抗議を行い、慰安婦像に対して適切に対応を行うよう求めているわけですが、次期政権にもしっかり引き継いでもらわなければなりません。我が国のこの考え方を、まずは黄教安大統領権限代行を初め韓国政府のハイレベルに直接しっかりと伝える、そしてさらには次期政権にも引き継いでもらう、こういったことを行わなければならない、こうした判断のもとに帰任を決定したということであります。

寺田(学)委員 帰任の理由について聞いていません。

 韓国にいる大使を日本に一時帰国させる対抗措置をとる、その決定の段階で、最もそのきっかけとなっている少女の像が撤去されるような見込みを持ってそういう行動を決定されたんですかと聞いているんです。見込みを持っていましたかということです。

岸田国務大臣 慰安婦像の撤去、移転については引き続きしっかり求めていかなければなりません。その問題とあわせて、大統領選挙、北朝鮮問題、そういった問題と理由を勘案し、帰任を決定したということであります。(寺田(学)委員「帰任の話はしていません。一時帰国の話をしている」と呼ぶ)

 失礼、一時帰国については、しっかりとした抗議を行うという意味において、これは意義があったと認識をしています。その上で、この四月の段階の状況を総合的に勘案して帰任を決定した、こういったことであります。

寺田(学)委員 まだ帰任のことについて質問をしていません。一時帰国を判断する際の見込みを聞いているんです。

 一月ですか、一時帰国を決定して、菅官房長官が発表されていますけれども、この段階において、この対抗措置をとることによって、きっかけとなった少女の像の撤去が、物事が進むという見込みがあってされた行為なんですかと聞いているんです。

岸田国務大臣 一時帰国させた後、韓国政府からは、政府として日韓合意の履行を重視するという発言、さらにはさまざまな取り組みが発表はされています。しかし、我が国としては引き続き、韓国政府の具体的な行動、慰安婦像の撤去、移転について求め続けていかなければならない、このように考えております。

寺田(学)委員 委員長、答弁してくれないんですけれども。

 私は、帰任をする、韓国に戻るときの話をしているんじゃないんです。物事を決定するときには、何かしらの見込み、もしこういう対抗措置をすればこういうことがあり得るだろうということを考えた上で物事を決めて、そしてそれが実行されて、結果としてまた帰任されたわけですね。最初の段階の見込みの話を聞いているんです。どういう見込みを持ってこの対抗措置を決定されたのかを聞いているんです。韓国に戻るときの話をしているわけではありませんし、戻ってからの話もまだ聞いていません。

 まず最初に、一月に韓国の長嶺大使を日本に戻すという判断をするときに、どのような見込みを持ってやったんですか。もしかして、見込みがなく、対抗措置、抗議の意思を今示さなきゃならぬということでまずやったんですか、それとも見込みがあってやったんですか、これを聞いているんです。

岸田国務大臣 その後、将来に向けてどういった結果を期待するにせよ、まずは抗議の意思をしっかりと示すこと、これがなければ物事はスタートしません。しっかりとした抗議をまず行う、それがまず第一であるという判断に基づいて帰任をさせました。こうしたしっかりとした意思を示す、このことが今後につながっていくものであると確信をしております。そういった意味で、帰任をさせたことの意味は大きかったと考えます。(寺田(学)委員「一時帰国をさせた意味」と呼ぶ)

 失礼。今、帰任とずっと言葉を使いましたが、一時帰国の意味であります。一時帰国をさせる、しっかりとした抗議の意思を示す、このことは、今後の展開においてまずは原点であり、スタートであります。こうした、一時帰国をし、抗議をさせることの意味は大変大きかったと思っています。

 先ほど帰任という言葉を使いましたが、全て一時帰国の間違いであります。訂正いたします。

寺田(学)委員 一時帰国を一月にさせるときに、まずは抗議の意思を示さなければならない、そこが全てのスタートなんだという御答弁をされました。それは一つの考えだと思います。結果、三カ月、大使が不在の中で抗議の意思を示し続けましたけれども、三カ月後、韓国に長嶺大使が戻りました。何を、この一連の行為で我が日本は得たんですか。

岸田国務大臣 我が国のしっかりとした意思を示すことはできたと思います。そして、この問題は引き続きしっかりと日本政府として働きかけを続けていかなければならない課題ですし、次期政権がこれからスタートしようとするときであります、ぜひ次期政権にもしっかりとこれを引き継いでもらわなければならない、このように考えます。

寺田(学)委員 その意思を示すことによって何を得たんでしょうかということを説明してほしいんです。

岸田国務大臣 意思を示し、そしてその後も、今の韓国政府からさまざまな言動がありました。そして、これからもしっかりと日本は働きかけをし、具体的な日韓合意の履行を迫っていかなければなりません。これからも努力を続けます。

寺田(学)委員 これからの努力ということは当然必要ながら、この一連の、大使を一時帰国させる、そして三カ月たって帰任させる、そのこと自体にどのような意味があったんでしょうかということを、主観的なことを交えずフラットに聞いているんです。

 この一時帰国、抗議の意思を示すために一時帰国をさせること、そして三カ月たって帰任をした、帰任を命じて戻ってもらった、この一連の行為で我が国は何を得たんですかということを説明してほしいんです。(発言する者あり)

岸田国務大臣 我が国のしっかりとした意思をまず示すことができました。そして、これから引き続き日韓合意の履行を迫っていく上において、我が国の意思を示したということは大変重要であったと思いますし、今後の行動につながるものであると考えます。

寺田(学)委員 野党側からの意見を述べてやると、与野党の対立になってぶうぶうあると思うので。二階幹事長の言葉は先ほど申し上げておりますが、政府は結果をちゃんと想定してやるべきだった、そもそも一時帰国の必要があったのかということをオンで、記者会見で二階幹事長は言われている。政府・与党の同じ中です。

 政府は結果をちゃんと想定してやるべきだったという与党幹部の発言に対して、どのようなお考えをお持ちですか。

岸田国務大臣 さまざまな意見、見方があるのは承知をしております。しかし、政府としては、外交において強い意思を示すということ、これは大変重要なことであると認識をしております。そういった思いで一時帰国をさせました。ぜひ、今後につなげていきたいと考えます。

寺田(学)委員 場外から、いや、一定の効果はあったんだというふうに声も出ています。その一定の効果は何だったのかということを先ほどから聞いているんです。

 一時帰国をさせるときに、先ほども申し上げましたが、ウィーン条約に規定する領事機関の威厳を侵害するんだと厳しい口調で菅長官も言われ、やりましたけれども、大臣が御答弁されたとおり、少女像が動くことなく帰任が決まり、三カ月間を終えました。

 ウィーン条約に規定するこの領事機関の威厳を侵害するんだということに対して、何かしらのこの三カ月間の行為によっての一定の効果というのは、どのような形だったんでしょうか。

滝崎政府参考人 ウィーン条約との関係でどういった効果があったのかというお尋ねですけれども、そこは韓国政府も、このウィーン条約との関係で釜山の総領事館前の慰安婦像が問題があるんだということはよく認識をして、その旨きちんと中央政府から現地の釜山市の政府に伝えたというようなこともしておりますので、そこは日本政府の意思あるいはウィーン条約との関係というものをきちんと理解させるのに役に立ったというふうに思っております。

寺田(学)委員 いろいろなこれの評価はあると思います。今後、このこと、抗議の意思を示したことが、これからの政権、新しい大統領との話の中でどのように生きていくのかということは、また再び検証が必要だと思いますけれども。

 このことに対しての最後の質問になりますけれども、この日韓合意、岸田大臣が汗を流されながら合意にこぎつけたことですが、この合意自体が今どのような状態にあるのかということを、最後にまず大臣からもお話をいただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、一昨年末の日韓合意、慰安婦問題について最終的、不可逆的に解決するということを両国で確認した合意、これは大変大きな意味があったと思います。事実、合意を公表した直後、多くの国々、国際社会から高く評価をされたところであります。

 そして、日韓合意の重要性については、先日の日米外相会談の後の記者会見においても、米国ティラソン国務長官から、米国は日韓合意を支持するという発言がありました。他の国々からも、日韓合意について前向きに評価する、こういった発言が寄せられています。

 こうした国際的に評価されている日韓合意、ぜひ日韓両政府でしっかりと履行していかなければならない、そういった責任を負っているものであると思います。こうした国際的な評価もしっかりと追い風にして、この合意の履行に向けて努力を続けていきたい、このように思います。

寺田(学)委員 ごめんなさい、最後と言いましたけれども。本当にこの行為自体がどのような評価があるのかということの材料をいろいろ御答弁していただきましたけれども、一点すごくささいなことが気になったんですが、これはなぜ、一月の段階で大使を一時帰国させる会見は官房長官で、戻れと、帰任をする、さまざまな与党内での批判を受けながら帰任をさせる発表が岸田大臣なのかというのが、ささいなことにおいて、いろいろな政治的なにおいを感じました。

 これはなぜ、最初の段階で、一時帰国をさせることが長官の発表になっているのか、何か内実があったら教えてください。

岸田国務大臣 ちょっと今、記憶が定かではありませんが、少なくとも、長嶺大使の一時帰国を発表したときに私は海外にいたと記憶しております。公務で海外にいたために御指摘のような対応になったと考えます。

寺田(学)委員 要らぬ心配でした。それは終えます。

 記事上だけで追ってみると、何か勇ましいときだけ長官がしゃべって、非常に苦渋の決断をする帰任のタイミングのときだけは何か岸田大臣に押しつけられていたんじゃないかなという、岸田大臣を思う気持ちから出た質問でしたので、御容赦ください。

 共謀罪、いわゆるテロ組織法、テロ犯罪防止法ですか、今法務委員会で議論されていることについて、外務省としての条約の解釈について、まずお伺いしたいと思います。政務官、ありがとうございます。

 一昨日ですか、法務委員会の中でも議論がありましたけれども、私も、このことに関して、以前、きょう座られている方からも詳しく御説明をいただきまして、そもそもこれって何のための条約だったんでしょうかというところが法務委員会でも議論になりましたし、私もレクの中で教えてもらいました。

 これは、そもそもとして、テロの活動、テロ行為を防止するための条約なんでしょうか。これは法務省でもいいです、外務省でもいいです。この条約自体、では外務省ですかね、これはテロを防止することを主とした目的とした条約なんでしょうか。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 国際組織犯罪防止条約につきましては、既に百八十七の国・地域が本条約を締結し、本条約に基づく国際協力を実施しております。未締結国は、我が国を含めわずか十一カ国でありまして、関連する国連の各決議やG7サミット等におきましても、繰り返し各国に本条約の締結が要請されております。

 この条約の目的は、テロを含む国際的な組織犯罪を防止するために、国際社会が協力をしてこれに対抗していくということでございまして、テロ対策も当然この条約の枠組みに入っているものと理解しております。

寺田(学)委員 私がお伺いしているのは、そもそもこの条約自体はテロの防止、テロ対策を目的として始まった条約なのでございますでしょうかと聞いているんです。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 この条約の起草過程におきまして、条約の対象としてテロ犯罪が入るということは、条約の交渉に参加した国からも提起されております。

寺田(学)委員 質問者の意図を必要以上にそんたくして、一生懸命テロの話をしなくてもいいです。歴史的な流れを聞いているんです。私自身も、レクを受けている段階から、ちゃんとその歴史的な正確な事実を聞いています。

 この条約、外務省が出してくれている資料の中を見てみても、金銭的利益その他の物質的利益を直接または間接的に得るため、その目的と書いています。テロ対策が入っていないとは言いません。もともとは、いわゆるこの金銭的利益その他物質的利益を得ることに直接または間接的に関連する目的とした犯罪を、各国連携しながら取り締まっていきましょうねという条約から始まっているという認識でよろしいですか。

飯島政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の金銭的利益その他の物質的利益は、広くこれを解釈すべきというふうに捉えられておりまして、テロ犯罪もこれに入っているというふうに認識しております。

寺田(学)委員 この犯罪の中にテロ対策が入っているかどうかということを聞いたら、その答弁でいいですが、もともと原始的にはどういうところから始まった条約なんですかということを聞いているんです。だからこそ、政府参考人の方々に御登録いただいて聞いているんです。

 外務省が資料をくれましたけれども、もともとはこの条約は何ですかということに関して、金銭的利益その他物質的利益を得ることに直接または間接的に関連する目的のための重大犯罪ということを教えてくれているわけです。別に、テロが入っていないでしょうと言っているつもりじゃないんです。もともとこの条約はどういう成り立ちによって生まれたものなんですかということを、歴史的な背景を聞いているんです。テロが入っているかどうかじゃないです。

 私、言いたくないですけれども、レクでそう伺ったんです。もともとこの条約はそういう理由で始まったものなんです。今審議されている法案がどうかということを聞いているんです、この条約自体の成り立ちを聞いているんです。そこだけちゃんと政府参考人として整理してください。

 この条約自体は、何度も申し上げませんが、もともとは金銭的利益云々、こういうような目的とした犯罪を取り締まるために条約として議論されてきたという解釈で当時はいいですよねということです。

岸田国務大臣 この条約については、まず、委員おっしゃるように、金銭的な利益を得るための犯罪に対応する、こうしたものでありますが、その金銭的な利益を得るための犯罪、その中に、テロ組織が活動資金を得るために資金を得る、こうした行為は、起草段階、要は、条約を採択する前の、条約をつくる段階においても議論され、意識され、条約ができてきた、こういった経緯であったと認識をしています。

寺田(学)委員 テロの対策が入っていないと思っていませんよ。この組織犯罪というものに、そういうことまで包含されることまでは否定しませんが、もともとの起こりは何だったんでしょうかと。わざわざこの目的の前に金銭的利益や何だということを、それを目的とするとわざわざ明示しているわけですよ。ということは、そこから始まっているということを考えるのは、レクの段階でもそうでしたけれども、当然の話だと私は思います。テロが入っていないということを言っているわけじゃないです。

 韓国の帰任の問題であったり、アメリカの空爆においては、余り主観的なことを申し上げておりませんでしたが、今回、今法務委員会で議論されていますけれども、私が非常に残念に思うのは、今まで共謀罪という名前で、まさしくこの条約にのっとった趣旨で議論を重ねてきたけれども、何度も廃案になったので、今度はテロという看板にしましょうという、大臣、異論はあるかもしれませんが、浅はかなやり方をして、正面からちゃんと国会にぶつかってこないところが、やはり、キノコをとったら何でテロ対策なんだという議論を生んでいるんだと思います。

 なので、私は、ちゃんと、いわゆる共謀罪的な法案が必要なんだと政府・与党が考えるのであれば、そういうテロというものを前面に押し出して本質的な議論をあたかも避けるような形でやるのではなくて、正面からやるべきだと思ったので、非常に残念だと思っています。

 質問させていただきますけれども、今まで政府の答弁で、犯罪内容に応じて選別することは国際組織犯罪防止条約上、このTOC条約上できないものと考えているという政府答弁があった上で、今回の法案を審議する上で岸田大臣が本会議で、そういうこの考え方は生きている、ただ、今回の法案自体は、一般の方々が処罰の対象とならないことが明確になるよう、法文上、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記した上、そこが大きな違いなんだということで、答弁の一貫性は保っているということを御答弁されています。

 ちょっと時間がなくて十分やれませんけれども、なぜ、おとといの林刑事局長がお認めになられて、記事にもなっていましたけれども、答弁によってその主体たる対象を絞ることと明文化すること、もともと想定している部分は同じだけれども、答弁で絞っていくことと、法文で明文化することによって今まで犯罪が内容では絞れないと言われたものが急に絞れるようになったということの理解が、私はできないんです。

 これは、法務省が答えるべきことなのか、外務省が答えることなのかわかりませんけれども、なぜ、このような、今までの外務省が条約の解釈を述べていたことが今回の法律によって急に変わるのか、御説明いただければと思います。

岸田国務大臣 まず、条約の解釈は全く変わっておりません。

 そして、絞ることができるようになった経緯については、御案内のとおり、このTOC条約の国内担保法につきましては、過去三回、法案が国会に提出されましたが、残念ながら御了承いただけなかった、こういった経緯がありました。そして、新たな法律を今回提出しているわけです。

 過去のこの法律におきましては、組織的な犯罪の共謀罪に定められていた、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるもの、こういった要件を前提にしていました。だから、これは絞ることはできないと、当時も政府として答弁をさせていただいていたわけですが、今回は、新たな法律を用意いたしました。

 今回のこのテロ等準備罪においては、法文上、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られる、こういったことを明記したわけであります。これは、今までの国会審議の中で、一般の方々が対象になるのではないか等さまざまな不安が寄せられた、こういったことから、今回の法律は、犯罪主体が組織的犯罪集団に限られることを明記する、こういったことを今回の法案のテロ等準備罪においては行ったわけであります。

 その結果、この対象となる法律、二百七十七に限定することができた、このように理解しております。

寺田(学)委員 時間になりましたので、終わります。

三ッ矢委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 国の外交施策に関する件で、きょうは一般質疑で質問させていただきます。

 前半は、防衛省と国交省にちょっと質問をさせていただきたいのですが、その前に、少し地元の話をさせていただければと思います。

 私の出身は、沖縄県の、今、うるま市というところに本籍がありますが、もともと、母は伊江島という島の出身でした。美ら海水族館から見えるちょっととんがった山、地元では城山と言っておりますが、沖縄県のほかの方々は、伊江島タッチュー、タッチューというのはとんがっているという意味で、伊江島タッチューという名前で親しんで呼んでおります。

 実は、戦時中は日本軍の守備隊が配備され、艦砲射撃も含めて非常に激しい戦闘が行われました。私の母は昭和十年生まれで、まだ小学校を卒業しない前に戦争の被害に遭い、捕虜にとられ、結果的に、伊江島から皆さんが戦後捕虜として一旦島から出て、戻ってきたときには、島の半分以上が米軍基地で占領されていました。

 戦後、この間、たび重なる住民の反対運動により、何とか基地は三五%まで段階的に縮小はしておりますけれども、しかし、依然としてこの三五%の軍用地があり、そして、実はオスプレイが普天間に配備されて以降、強襲揚陸艦の甲板の訓練に資するための改造が今行われており、船のデッキ型、つまり着艦する強襲揚陸艦の形をかたどった滑走路状のものとヘリパッドが、新たに工事が進められているということになっております。

 実は、なぜこの話をするかというと、きょう四月二十一日は、その伊江島で、四月十六日に米軍が上陸してから、激しい戦闘が行われた最後の日がきょう四月二十一日です。ですから、毎年四月二十一日には、芳魂之塔という、守備兵士二千人、住民千五百人、合わせて三千五百人が祭られている、そこでみたまに対して慰霊祭が行われるということで、伊江村役場に確認しましたところ、本来、私も、きょう、もし委員会、本会議がなければ参加をする予定でしたが、きょう滞りなく挙行いたしますということで確認をいたしました。

 しかし、もう一つの慰霊祭というのが伊江島にはありまして、伊江島に実は、先ほどお話をしました米軍基地が、島の北側に伊江島射爆場という名前で残っており、今現在、その着艦訓練ができるように改良工事が進められている、その基地の端っこに、基地の中に、伊江島灯台というのがあります。戦前からこの伊江島灯台がありまして、ちょうど伊江島が一九四五年の一月あたりから激しい空襲を受け始めたとき、この灯台も標的になりまして、三人の職員と五人の家族の方が亡くなられています。毎年四月二十一日には、この芳魂之塔の慰霊祭とあわせて、この灯台で亡くなられた職員の方と家族の方々の慰霊祭が、海上保安庁の主催によって行われます。ことしも行われるだろうと思っていましたら、ことしはきょうではなく明日行うということで役場に確認しました。なぜきょうやらないんですかと聞きましたところ、米軍の演習の予定が入っていて基地を使うことができず、明日にいたしますというような内容の確認をさせていただきました。

 なぜその確認をしたかというと、ゆうべ十時過ぎに、私の伊江島のいとこからLINEが届きまして、十時を過ぎたこの時間にもまだヘリかオスプレイの爆音が聞こえると。基地からかなり離れている東江前という集落です。いわゆる島の北側が射爆場であれば、東江前はこのタッチューより沖縄本島側にあるところですから、ほとんど北側のヘリの音やオスプレイの音などは日中聞こえてこないそうです。そのぐらい距離があるところなんですが、ゆうべはこの家の近くから物すごい爆音が聞こえると。これだったら、その射爆場の近くの人たちは、果たしてこの時間、テレビも満足に見ることができているんだろうかというようなLINEがありました。

 つまり、きのうも、夜十時を過ぎて、沖縄県と結んだはずの、深夜は飛ばさない、夜は飛ばさないという協定を無視して訓練が行われ、そしてきょう四月二十一日、慰霊祭が行われる日に、米軍は演習を行い、その演習を目的として、基地の、慰霊祭の挙行を認めず、明日にずれると。

 戦後七十二年たち、一九七二年の復帰から四十五年たちます。しかし、いまだに、基地あるがゆえに、みたまの弔い、慰霊祭を行うことができないということの不条理を、きょう四月二十一日、伊江島で戦闘が終結したこの日に、あえて私は冒頭でそれをお話をしたいと思います。

 と申しますのは、この後、実は赤坂プレスセンターについて、あるいは横田空域についての質問をさせていただく予定でしたので、今あるこの不条理は、東京でも同じことが行われていると言っても過言ではないと思います。基地あるがゆえに常に不安を抱えているのは、国民ひとしく同じだと思います。

 なぜなら、日米同盟はアメリカと沖縄だけの同盟の話ではありません。日本とアメリカ、つまり、国民全体が背負わされている同盟の責任と申しますか、その一端を図らずも、ふだんの生活の中ではうかがい知ることができない状況の中で、時折聞こえてくるヘリの音であったり、あるいは時折見かける米軍機であったり、そういう状況が全国ではたまにあるのかもしれませんが、沖縄では、きょうの地元の新聞でも、「学校正門前に米軍車両」、嘉手納小学校の登校時間に、海兵隊の大型車両が決められたルートを外れて進入したという記事が紹介されています。

 毎回、どんなに英語で看板を出して教育を行っても、必ずこういうことが起こる。大体、こういうことをするのは、沖縄に配備された新兵が多いんです。教育の一環としてハンドルを握らせる、ルートを覚えさせる。しかし、彼らは間違えて、登校前の小学校の校門の前に進入してしまう。そこは、道交法上も、曲がってはいけないところを彼らは曲がり、道交法上も違反をしてそこに進入してしまう。こういうことが日常茶飯事であるということは、委員の皆さんにもこの日にしっかりお伝えして、取り組むべきことには、やはり明確にアメリカに対して協議をし、取り組んでいくという姿勢を明らかにしておくことは非常に私は重要だと思います。

 きょうは、後半では北朝鮮のことも質問させていただく予定です。であればこそ、私は、真の独立国家という姿を一日も早く日本で実現してほしいと思います。真の独立国家とは何か、いろいろな議論があるとは思いますが、私は、かねてから、やはりさまざまな軍事的、政治的、人種的、あらゆるくびきから解き放たれて、独立国家としての姿を明確に国際社会に示すこと、そのことによって解決できる問題はたくさんあるのではないかというふうに思いながら政治活動をさせていただいております。

 僣越ではありますが、そういう思いも述べさせていただきながら、きょう、四月二十一日に伊江島では演習が行われている、慰霊祭のその日に演習が行われているということを、強く個人的にも遺憾を表明させていただきながら、質問に入らせていただきたいと思います。

 済みません、冒頭、ありがとうございました。

 では、質問させていただきます。

 まず、赤坂プレスセンター及び首都圏の空域についてお伺いいたします。

 東京都港区六本木七丁目にある在日米軍基地ですが、二十三区内にある唯一のアメリカ軍基地の赤坂プレスセンター。私は青山宿舎に住んでおりますが、ほぼ毎日、少なくとも二日に一回は連絡用のヘリがプレスセンターに飛んでまいります。米軍のヘリです。ですから、ふだん、ヘリの音を聞くと、どのぐらいの高さで飛んでいるかということが、沖縄に住んでいると少し体感するものですから、どこのヘリだと思って窓を見ると、必ず、私の窓、あれは西側に向いていると思いますが、西側に向いている窓から、斜めにおりていくヘリの姿が確認されます。ですから、東京の中にあっても米軍が基地を運用しているという実態がここにもあるんだなと思うんです。

 そこで、お伺いいたします。

 この赤坂プレスセンターが設置された経緯、運用などの現況等について、防衛省にお伺いしたいと思います。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員のお尋ねの赤坂プレスセンターですが、これは、まず経緯でございますけれども、昭和二十年に、連合軍、実質的に米陸軍でございますが、連合軍が接収をいたしまして、その後、昭和二十七年に米軍の施設・区域として提供を開始いたしたという経緯でございます。

 規模ですけれども、規模は約二万七千平方メートル、使用目的は、事務所、宿舎、そしてヘリポートでございます。

玉城委員 これはネットの情報なんですけれども、単なるヘリポートと宿泊施設があるというだけではなく、アメリカ陸海空軍の最先端技術を探る研究所のアジア出張事務所、勤務する研究者の中には日本人もおり、アジア各国の学会に参加したり、軍用に利用できそうな民間の研究に対して資金を提供したりするなど、情報収集のアジアの拠点であるということがネットでは語られています。つまり、どういうふうな場所なのかということは、それについてちょっと詳しい方々であればもう一般的に広めているということなんですが、では、連絡用と見られるこの米軍ヘリの運用、運航の状況についてはどのように把握していますでしょうか。防衛省、お願いいたします。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 この赤坂プレスセンターは、ヘリコプターによる米国の要人等の迅速な輸送を可能としている施設であると承知しております。

 御指摘のように、ヘリコプター、例えばUH60、UH1などが離着陸していることは承知をしておりますけれども、米軍ヘリの具体的な運用につきましては、これは米軍の運用にかかわることでございまして、防衛省としては承知をいたしておりません。

玉城委員 質問には通告していませんが、国交省はこのヘリの運航の件について何か、フライトプランやそういうものも米軍から提出を受けているわけですか。

坂野政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍のヘリが飛行する場合には、航空法第九十七条などによりまして、国土交通大臣に対して飛行計画の通報が必要となっております。

 しかしながら、米軍ヘリの飛行については、米軍の運用にかかわる事項となることから、国土交通省から明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

玉城委員 つまり、そういう届けは出されていないということで、どういう経路で、いつ飛ぶのかということは米軍任せだという状況が今も続いているということにほかなりません。

 本年二月八日に、港区及び港区議会から防衛大臣稲田朋美様宛てに米軍ヘリポート基地に関する要請書というのが出されています。

  都心港区の市街地に米軍基地(赤坂プレスセンター)が設置され、港区民とりわけ近隣住民は、ヘリポート基地の使用による騒音に悩まされ、事故発生の不安を常に抱えています。

  このため、港区と港区議会は、これまでも旧防衛施設庁をはじめ関係機関に当該ヘリポート基地の早期撤去を要望してきました。

中略、

  一昨年の沖縄県うるま市沖での米軍ヘリコプターによる墜落事故や相模原市の米軍補給施設での爆発火災事故などが記憶に新しくあります。また、昨年二月の横田基地から赤坂プレスセンターに向かう米軍ヘリコプターの調布飛行場への予防着陸は、安全に配慮した措置ではありますが、米軍基地が存在する港区においては、こうしたことが事故につながるかもしれないという不安を区民に与えています。

中略いたします。

 防衛省におかれましては、米国に対し、米軍関連事故の再発防止並びに規律の保持、教育の徹底を求めるとともに、国の責任において区で把握した実態も踏まえ継続的に騒音等の実態調査を実施し、早朝、夜間の飛行をはじめとする騒音等の被害を軽減するとともに、改めて基地撤去へのご尽力をいただきたく、要請いたします。

という文書でございます。

 この港区からのプレスセンター返還要請に関する件について、防衛省にお伺いしたいと思います。

深山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、本年二月八日に、東京都港区長及び港区議会議長から、防衛省、具体的には防衛大臣宛てに、今委員が一部を読まれました、赤坂プレスセンターの米軍ヘリポート基地撤去に関する御要請をいただいているところでございます。また、こうした御要請はこれまでも港区等からいただいているところでございます。

 この赤坂プレスセンターにつきましては、在日米軍にとって、都心で唯一、ヘリコプターによる米国の要人等の迅速な輸送を可能としている施設でございまして、現に米軍が、米側が使用していることでございますので、御要請にはございますが、現時点において全面返還は困難であるものと承知しているところでございます。

 防衛省といたしましては、赤坂プレスセンター周辺におけるヘリコプターの運用に当たっては、航空機騒音等の周辺住民の方々への影響が最小限となるよう、米側に対し今後とも働きかけを続けるなど、適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。

玉城委員 例えば防災に、共同使用するために置いてあるという意見もあると思いますが、防災は防災として、防災拠点は別にまた整備するべきであるというふうに思います。あるから使わせてくれというよりも、別に必要なものを新たにつくるために皆さんがどいていただけませんかということの方が、私は国家として筋が通っているのではないかと思います。

 さて、もう一つ、横田空域の設定及び運用に関する件についてお伺いいたします。

 横田進入管制区、通称横田空域と呼ばれる一都八県に及ぶ広大な空域の航空管制は、横田ラプコン、レーダー・アプローチ・コントロールと呼ばれ、横田基地でその管理が行われるというふうに思料いたしますが、この横田空域の設定及び運用に関するこれまでの経緯についてまずお伺いしたいと思います。

坂野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、御質問の横田空域でございます。

 いわゆる横田空域とは、日米地位協定に基づく合意によりまして、米軍が進入管制業務、すなわち飛行場等からの離陸に続く上昇飛行、また着陸のための降下飛行を行う航空機等に対して管制業務を実施する空域でございます。

 この空域でございますが、これまで段階的に削減が実施されておりまして、現在、東京都を含めまして、北は新潟県から南は静岡県までの地域に及んでおりまして、また高度は二千四百五十メートルから七千メートルにかけて階段状に設定をされております。

 この横田空域でございますが、米軍の排他的使用が認められる空域ではなく、民間航空機については、従来から、必要に応じ、日本の管制機関が米軍と調整を実施した上で当該空域を通過することが可能となっております。

玉城委員 この空域が少しでも縮小されればその効果が出るということで、平成二十年、国土交通省航空局は、横田空域の一部削減に伴う羽田空港出発経路の短縮による効果の試算及び時間の短縮などの試算を出していますね。そのことについて、ちょっとお伺いいたします。

坂野政府参考人 お答え申し上げます。

 横田空域については、先ほど申し上げたとおり、過去八回にわたり空域の削減を実施いたしまして、直近では、羽田空港の再拡張事業に合わせた大幅な削減について合意いたしまして、平成二十年九月から、削減空域の管制権限が日本側に移管されたところでございます。

 これに伴いまして、出発経路の設定に当たって、その複線化及び離陸後の上昇率の緩和ができまして、羽田空港の管制容量が拡大するとともに、燃料の節約、CO2排出の抑制に資する飛行経路の短縮が実現したところでございます。

 この経路短縮により、国土交通省航空局の平成二十年当時の試算といたしましては、例えば、飛行時間について約七千二百時間の短縮、燃料については約三千三百万リットルの節約等の効果があると試算したところでございます。

玉城委員 ありがとうございます。

 実際にこの使用に当たっては特に問題はないということではありますが、私は、毎週末、きょうもこの後地元に戻りますが、金曜日、月曜日にほぼ羽田を利用する空路に乗っております。ですから、そのことを考えると、もう少し真っすぐ上がればいいのにとか、あるいは、おりてくるときもずっと迂回をさせられたりして、非常に羽田空港そのものが混雑気味なんですね。やがて飽和状態になるだろう。

 滑走路が四本あっても飽和状態になるのではないかと思うと、二〇二〇年に向けて、周辺の空港の活用、あるいは成田空港のさらなる活用にあわせて、羽田の、横田の空域の件についても米側としっかり議論をするタイミングではないかというふうに思います。どうぞ、そのことについても、引き続きまた御尽力をいただければというふうに思います。

 では、あともう残り時間が五分ぐらいしかありませんので、少し質問を飛ばしながら、北朝鮮問題についてお伺いしたいと思います。

 まず、本当に深刻の度合いを深めている北朝鮮の対応ではありますが、さりとて、冷静かつ毅然とした対処もまたあわせて考えねばならないと思いますが、あくまでも毅然とした対処は平和的な外交側面を努力するという点において質問させていただきます。

 まず、日本を含めた中国、ロシア、韓国、周辺等との現在の情勢についてお伺いしたいと思います。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 まず、日本ですけれども、これはもう委員もよく御存じのとおり、対話と圧力、行動対行動の原則のもと、日朝平壌宣言に基づいて、核、ミサイル、そして、引き続き最重要課題である拉致問題といった諸懸案の包括的な解決を目指すという方針をとっております。

 それから、アメリカについてですけれども、アメリカは、現在、全ての選択肢がテーブルの上にあるという考え方に立って北朝鮮問題に対処しております。また、拡大抑止の提供を含め、日本及び韓国に対する防衛上のコミットメントを維持しているという状況にあります。

 それから、韓国ですけれども、韓国は、我が国とともに米国の同盟国であり、戦略的利益を共有する最も重要な隣国、我が国にとっては隣国となっております。現在、北朝鮮からの対話の呼びかけに応じることなく、北朝鮮に対する圧力を一貫して強化してきているというふうに認識しております。

 それから、中国ですけれども、習近平国家主席と金正恩国務委員長とのいわゆる首脳会談というのはまだ実現していない状況にありますけれども、中朝間の貿易というのは、北朝鮮の貿易額全体の約九割を占めているという意味で、その役割は極めて重要だというふうに考えております。

 それから最後に、ロシアですけれども、ロシアと北朝鮮との関係については、経済分野などにおいて一定の協力が進められているということでありますけれども、二〇一一年八月に金正日、当時の国防委員長が訪ロして以降、金正恩体制下では、首脳レベルでの往来が途絶えているという状況だと認識しております。

玉城委員 このように、周辺国はやはりしっかりとした対応をとっているわけですが、他方、私が思いますに、国民の皆さんも私たちも、ややもすると、北朝鮮は世界から孤立した国であるという印象を持ちかねません。ところが、実際にはそうではないという現状について、北朝鮮と国交のある関係国及び北朝鮮の外貨の獲得の手段等についてお伺いしたいと思います。

滝崎政府参考人 お答えいたします。

 まず一つ目の、北朝鮮と国交がある国についてですけれども、韓国の外交部の資料によりますと、百六十一カ国が北朝鮮と国交があるというふうに承知しております。

 それから、北朝鮮がどのような形で外貨を獲得しているかということですけれども、こういった外交関係がある、国交がある国との経済取引を含めて、さまざまな手段というものがあるというふうに承知しております。

 幾つか例を挙げますと、例えば、韓国の民間会社の調査によりますと、北朝鮮は、石炭や鉄などの鉱物資源の輸出により、二〇一五年には約十三億ドルの外貨収入を得ているということでありますし、それから、国連安全保障理事会のもとに設けられております北朝鮮制裁委員会の専門家パネルの報告書によりますと、ミサイルなどの武器輸出とか、銅像の輸出、修理サービスなどの提供も行っているということです。

 さらに、二〇一五年に発表されました国連北朝鮮人権状況特別報告者の報告書によりますと、北朝鮮は、ロシアや中国などに合計五万人以上の労働者を派遣して外貨を獲得しているというふうにされております。

玉城委員 産油国でありますクウェートやカタール、中東アフリカなどにも労働者を派遣し、いわゆる出稼ぎで外貨を稼いでいるという状況です。

 さて、最後に、大臣にお伺いしたいと思います。

 これまで、対話と圧力によって北朝鮮に対しては対処してまいりました本邦ですが、拉致問題や核・ミサイル問題は、対話を重ね、そして安保理決議の厳格な履行、関係国による独自の措置などを通じて圧力を加えるという、対話と圧力の方針です。

 現下の北朝鮮の状況等を鑑みますと、今までの対話と圧力が何らかの変更をされるということの予測があるのでしょうか。最後にお伺いしたいと思います。

岸田国務大臣 まず、基本的な方針であります対話と圧力、行動対行動の方針、これはこれからもしっかり守っていきたいと思います。変更することは考えてはおりません。

 平和的な方法によって朝鮮半島の非核化を実現するためには、当然対話が必要ですし、拉致問題において、全ての拉致被害者の皆さんの帰国を実現するためにも、対話という要素は欠かすことはできません。しかしながら、対話のための対話であってはならないわけであり、今はしっかりと圧力をかけなければならないということで、国際社会とも連携しながら圧力をかけているということであります。

 具体的には、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止するために外貨収入を減少させることが重要であるということを念頭に、さまざまな具体的な取り組みを進めているということであります。

 いずれにしましても、北朝鮮から前向きな行動を引き出すためには何が最も効果的なのか、こういった観点から取り組んでいかなければなりません。しかし、その際に、対話と圧力、行動対行動、この基本方針はしっかり守りながら諸懸案解決のために努力を続けたい、このように思います。

玉城委員 ありがとうございました。終わります。ニフェーデービタン。

三ッ矢委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 原口先生、拍手をありがとうございます。なかなか、私が質問に立つと誰も拍手してくれないんですよね。終わったときは大抵一〇〇%してくれないので、ぜひ皆さん、もしいい質疑だったなと思われましたら、拍手をお願いしたいと思います。済みません。

 きょうは、先般の租税条約の審議のときにちょっと時間切れで大変失礼をいたしましたが、そのときの質疑に続いて核の話をさせていただきたいと思います。

 その前にまず、これは、きょう、この国会で、我々がどういう議論をしているのかというのは、日本の国権の最高機関ですから、外交関係にも関係があります。だから、ちょっとこれは関係ないからということではなくて、ぜひ委員の皆様、御理解をいただきたいと思うのですが。

 先ほど大変重要な議論がありました。今、経産委はとまっているのかな、法務委員会も何かぐだぐだみたいですね。大変寂しい残念な状況になっていますが。この外務委員会においても、寺田筆頭が、ちょっといらっしゃいませんが、テロ等準備罪について、共謀罪だろうという、大臣とやりとりがありました。

 私は、どっちもどっちだと思うんですよね。御質問しませんよ、質問しませんが、大体、こういうことになっている背景には、民進党が、だけじゃないかな、共産党もかな、野党四党かな、ごめんなさい、民進党、共産党を初めとする野党の皆様が、平和安全法制のときに、戦争法、戦争法と今でも言っていますよね。それから、僕、厚生労働分野もよくやるんですが、首切り法とか残業代ゼロ法とか、そういうことを、野党がしようもないことを言うから、もう面倒くさいなということで政府・与党もちょっと知恵を絞って名前を工夫しているだけで、先ほど大臣はもうちょっと正確なというか、本質的なというか、中身の話でしっかり御答弁をされましたが、国民から見ればしょせんそういうもので、野党がしようもないことをするから、与党もそれに対応する。

 これは、日本の戦後の政治はずっとそれで来たんですよ。五五年体制のときに、社会党がしようもないことを言うから、与党が、政府が、九条解釈について無理やりいろいろな解釈を継ぎはぎしてきた。結局、五五年体制の与党と野党の猿芝居の結果、今の憲法解釈もいろいろあるわけです。

 だから、私は、野党が偉そうに政府を追及するのが今やるべきことではなくて、過去のそういう日本の五五年体制のつまらない与党と野党の猿芝居にそろそろ終止符を打って、本質的な議論をこの国会でできるようにしていく、これが私たちが目指している政治でございます。

 それから、法務委員会、また刑事局長でもめているらしいですよ。いいじゃないですか、刑事局長に答弁させたら。大体、担当局長を排除するとか、予算委員会で、担当大臣を排除して総理を羽交い締めにするとか。ね、長尾先生、もう北朝鮮の回し者じゃないかと国民は思っていると思いますよ、僕は思っていませんよ、僕は思っていませんが、国民は思っていますよ。だって、この局面で……(発言する者あり)いや、お互いですよ。原口先生、言いたい気持ちはわかりますよ、自民党が野党のときもひどかったと思いますよ。でも、それは結局、五五年体制の亡霊なんですよ、それにとらわれているんですよ、まだ。だから、そろそろそれはやめて、お互いにやめた方がいいということを僣越ながら申し上げておきたいと思います。

 それから、刑事局長、もういいかげんにした方がいいですよね。僕は、とにかく通告のときに、官僚の皆さんが、これはやはり技術的な問題だから私たちが答えますよと言ったら、ぜひそうしてくださいと。僕なんかは係長さんでいいよと言うんですよ、みんな忙しいから。そうしたら、いや、参考人登録できませんとか言って。どうでもいいんですけれども。いや、でも君が一番詳しいだろうと言うんですよ、担当の係長さん、担当の補佐の人が一番詳しいですよ。だから、本当だったらそういう方だって出てきてもらって、僕は説明してほしいぐらいですよ。まあいいや、それは。中身をやりましょうね。

 さて、核の問題でありますが、これは事務方で結構です。核抑止それから相互確証破壊の概念、この辺の基本的な概念、メカニズムみたいなものを、国民の皆様にもわかりやすく、詳し過ぎず、端的過ぎず、御紹介をいただきたいと思います。

川崎政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、抑止力とは、侵略を行えば耐えがたい損害をこうむることを明白に認識させることにより侵略を思いとどまらせるという機能を果たすものであって、核抑止力とは、核兵器の存在によりもたらされるこのような抑止力のことを指すものと承知しております。

 また、一般的に、相互確証破壊とは、敵対する二つの国が相手国の核による第一撃を受けた後でも十分に生き残り、かつ、相手国に対して耐えがたい損害を与え得る核の第二撃能力を確保することによって、お互いに相手国の核攻撃を抑止するという考え方であると承知しております。

足立委員 大変わかりやすい御説明、ありがとうございます。

 その抑止、バランス、これは今、東アジアでそのバランスはとれているということか、その辺、評価というのはできますか。難しい、いや、答弁できるならちょっと。あ、やめたい。

 大臣、こういう抑止のメカニズムというのは、今、北朝鮮がこういう状況で大変緊迫をしている、これをどういうふうに安定した状態に、バランスがとれて、抑止が働いて、バランスがとれて平和が保たれる、そういう事態に早く持っていかないといけないと思いますが、北朝鮮が核を保有するという局面、これをどう阻むかという局面にあっては、バランスが崩れかねない大変際どい状況にあると私は思っていますが、ちょっと簡単にお願いします。

岸田国務大臣 東アジアの平和と安定を守るために、日米同盟そして日米同盟の抑止力、これは大変重要であると思います。

 今現在も東アジアの平和と安定のために日米同盟の抑止力は大変大きな役割を果たしていると思いますし、厳しい安全保障環境を考えますと、引き続き日米両国で協力しながら日米同盟の抑止力をしっかりと充実させていかなければならない、このように考えます。

足立委員 今でも、NPTの核兵器国に加えて、五カ国、英米仏ロ中の五カ国が核兵器国ですね、加えて、イン・パキ、イスラエル、南アフリカはもうNPTに加盟をしました、だからイスラエル、イン・パキ、それから北朝鮮が今課題になっているわけでありますが。

 現在の評価というのは難しいと思うのでそれはいいんですが、仮に北朝鮮が核の保有国になった場合ということを、前回もやりました。これは大臣から、再三それは認められないと。おとついも、朝鮮半島の非核化を実現することは不可欠である、北朝鮮による核保有は断じて容認することはできない、将来に向けてもこの目標はしっかり掲げ続けていかなければならないんだということを繰り返し御答弁をいただきました。

 すると、北朝鮮が核保有を続けた場合、大変、ある種の抑止のバランスが、東アジアにおける、だけじゃないかもしれません、アメリカも含めた世界の核、あるいは通常兵器も含めてかもしれません、広い意味での平和、抑止のバランスというのは、私は、北朝鮮が核保有を続けたら、これはバランスが崩れると認識しているんですが、大臣はどう御認識でしょうか。仮定の話で恐縮ですが。仮定でもないか、今もう既に顕在化していることだと思います。

岸田国務大臣 今現在、北朝鮮自身、核開発を行っているということを明らかにしているわけです。その中にあって、先ほど申し上げました、日米同盟の役割、日米同盟の抑止力の役割、大変大きなものがあると思います。地域の平和と安定のために、引き続き日米同盟の抑止力は充実させていかなければならない、このように考えております。

足立委員 今の御答弁、日米同盟でちゃんと抑止をしていく、これは今の日本国の基本でありますからもちろんわかるんですが。

 私は、繰り返しになりますが、北朝鮮の核保有を望んでいるわけではありません。望んでいる方はこの国会にはいらっしゃらないと確信をしているわけでありますが。しかし、開発をしている。それで、アメリカの北朝鮮に対する攻撃等をもってしなければ、その北朝鮮の核開発を阻止できないかもしれないぐらいの、これはもう日本国にとって大変大きな今岐路にあると私は認識をしているわけであります。

 そうしたときに、仮に日本国民の生命と財産を足元で守るために北朝鮮の核保有を看過せざるを得ないような局面、いや、それは日米同盟でしないということだと思いますが、日本国民の中には、それはちょっと待ってくれと言う人はいはると思いますよ。いや、日米でどうするかももちろん決まっていません。でも、北朝鮮の核保有を阻むために、日米が同盟関係の中で、例えば米朝が一戦交えるというようなことになれば、日本国には、まさに今いろいろ議論されているJアラートとか、皆さん今関心が深まっていますが、ソウルや日本が弾道ミサイルで被弾をする、そのリスクはあると私は思っているわけですよ。

 それと、国民の皆さんは、いや、ミサイルが飛んでくるんだったらちょっとやめてくれという議論だって、私は国民の皆様の間には当然あると思うし、いや、もういい、弾道ミサイルが飛んできてもいいからとにかく潰せ、攻撃してくれという意見もあるかもしれないし、両方あると思いますよ。そういう認識を私は持っているわけですよ。

 大臣にちょっと、何を伺いたいかというと、結局、大臣の今の御答弁だと、既にもう開発をしているんだから、北朝鮮が仮に核保有をすることになったとしても、今の日米同盟の今の体制でちゃんと抑止は働いて、北朝鮮が核をぶっ放すことはないんだ、いや、抑止が働いているんだということをここで断言、先ほどそれっぽいことをおっしゃったと思うんだけれども、それは、北朝鮮が核保有しても今の日米同盟の体制でバランスはとれているんだということですか。

岸田国務大臣 まず、我が国としては、我が国の国民の命や暮らしを守るために高度な警戒監視体制を維持し、いかなる事態にも対応できるよう万全の態勢をとっていく、これがまず基本でありますが、しかし、我が国の安全を守るために我が国だけで対応し切れないということであるならば、これは日米同盟においてしっかりと対応していかなければならない。そして、日米同盟の抑止力というものは地域の平和や安全のために大変重要な役割を果たしている、こうした存在であると認識をしています。

 こうした我が国の独自の努力、そして日米同盟の抑止力、こうしたものをしっかりと充実させながら地域の平和と安全を守り続けていかなければならないと考えます。こうした体制のもとに、北朝鮮に対して、国際社会と連携しながら、累次の安保理決議の遵守あるいは挑発行動の自制、こういったものを働きかけていく、結果として、北朝鮮から前向きな行動を引き出すよう努力をしていかなければならない、このように考えます。

足立委員 もう一つ、ちょっと大臣に伺いたいのは、切り口をちょっとずらすと、日米同盟あるいは核の傘ということがあります。核の傘が世界の、あるいは東アジアの軍事バランスに果たしているバランシングの状況と、日本が核保有をすることとは同じですか、違いますか。すなわち、核の傘によって東アジアでとっているバランスと、北朝鮮でもいいですよ、あるいは中国でもいいですよ、核の傘という形で捉えている核抑止あるいは軍事抑止、軍事バランスというものと、日本がみずから核を保有することによって得られるバランスは同じですか、違うと思いますか。

岸田国務大臣 核抑止と、我が国自身が核を保有することの違いがあるのかということでありますが、まず基本的に、日米が協力しながら抑止力を充実させていくことは大変重要であると再三申し上げていますが、日米の間において、例えばこの二月の日米首脳会談後に発出した共同声明においても、特に北朝鮮について、米国は核及び通常戦力双方によるあらゆる種類の軍事力により日本の防衛にコミットしている、こうした内容が含まれています。

 そして、そもそも、日米安全保障条約第五条に基づいて日本の防衛のための共同対処行動に係る米国のコミットメント、これについて我が国は信頼を置いています。米国のこうした抑止力に関する対応については、基本的に十分信頼を置いています。一方、我が国は、非核三原則を初め、核兵器の保有、こういったものは全く考えておりません。

 そして、結果として、安全保障条約のもと、米軍の前方展開を確保し、核抑止力を含む米軍の抑止力をもって我が国の安全を確保することがこれからも必要であると考えております。

足立委員 大臣は重いお立場ですから、わからぬではないんですが、こういう質疑というのは、だから余り意味がないというか、係長さんと、外務省は係長と言わないのかな、課長補佐の方と、事務所にちょっと来てもらってしゃべれば、これぐらいのことはわかりますよ。だから、もし大臣がその程度の御答弁に終始されるのであれば、民進党がプラカードを掲げるのも気持ちはわかるかなというふうになっちゃいますよ。いや、わからないけれどもね。

 だから、やはり国会はもうちょっと、いや、政府ももうちょっと、国権の最高機関たる国会あるいは国会議員の質問というものにもっと真摯に向き合っていただいた方がいいと私は思いますよ。しかし、民進党、共産党のような党があると、言いたいことも言えなくなるというのもよくわかります。まあいいや、それは。

 さて、大臣、更問いを。ちょっと通告から漏れるかもしれませんが、アメリカの軍事行動の判断をちょっと聞きたいんですけれども。これはアメリカのことですから、いや、そんなの知らぬよということだと思いますが。

 アメリカ本土が北朝鮮のICBMで被弾をするおそれ、リスクが出てきた場合と、日本が被弾をする場合、日本が被弾するリスクというのはもともとあるわけですけれども、アメリカは今、アメリカ本土、米国本土が問題になっているわけです、ずっとね。アメリカの軍事行動は、その両者、アメリカ本土がリスクにさらされることと日本国がリスクにさらされること、これはさっきの核の傘にひっかけてちょっと言っているんですけれども、その二つで。

 わかりやすく言うと、米国という国は、アメリカ本土を守ることは至上命題だけれども、日本に弾道ミサイルが落ちることは、最後は、究極の判断としては、それを容認してでも米国本土を守る国だと私は思うんです。だから、核の傘があるあるといってのほほんとしていたら、日本は日本を守れなくなるんじゃないかという問題提起が今、この国際情勢の中で提起されていると私は思っているんですが、その両者、アメリカの軍事行動はそこで差異はないということでいいですか、大臣の御認識は。

岸田国務大臣 米国政府の判断について申し上げることは、私の立場から控えなければならないと思いますが、ただ、我が国政府の考え方としては、日米安全保障条約五条等に示されている、我が国を防衛する米国のコミットメントに信頼を置いている。この信頼を基盤としながら、我が国の安全保障全体も考えているということ、これだけは申し上げられると思います。

足立委員 私は、やはりそろそろ日本も目を覚まして、自国民の、日本の国民の生命と財産、領土、領海、領空をどのように北朝鮮のような脅威から守るかということについてそろそろ、いや、本当はもうちょっと昔、北朝鮮の弾道ミサイルが日本に飛ぶ、被弾するリスクが少しでも出てきたときに、バランスの問題じゃないですよ、そもそも技術的にそれが可能になった時点で目を覚ますべきだったわけでありますが、まさに今、きょう、るる大臣から御答弁があったような認識に基づいて、日本はそういう議論をしてこなかったわけであります。

 でも、そろそろアメリカ本土が射程に入ってくる中で、日米同盟の一方である米国の判断が、ソウル、日本におびただしい被害が出ることをもってしてでも米国本土だけは守らなければならないという判断を米国がし得るという当たり前の前提に基づいて、外交防衛政策をしっかりと組み上げていくべきであると強く申し上げておきたいと思います。

 やはり、岸田大臣は、ポスト安倍と目されているわけでありますが、私が申し上げるのは僣越ですが、きょうのような御答弁では到底日本国の総理大臣にはふさわしくないと申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございます。

三ッ矢委員長 外務大臣は参議院本会議のために退室されます。

 次に、松島みどり君。

松島委員 まず、二〇二五年の大阪万博の誘致活動について御質問申し上げます。

 これは、ライバルはパリでありまして、万博発祥の地であり、万博事務局も置かれている、非常に手ごわいライバルでございます。ここで、外務省の出番だと私は考えております。

 万博の所管は霞が関の中では経済産業省ということになっておりますが、今回の万博というのは加盟百六十八カ国が一票ずつ投票権を持っております。オリンピックの場合はIOC委員という個人の委員が投票いたしますから、国を一つずつ潰していくということじゃないですが、今度は二カ国外交というものの集積、外務省の力の見せ場だと考える次第でございます。

 担当は経済局ということでございますが、経済局は国別に担当しておりません。ですから、ぜひ、外務省の各地域局の国別の担当、そして課長、局長、そしてまた国際協力の局もそれぞれの途上国に対する国別で担当者がいるわけですから、こういった方々が力を合わせて、国別の、今、誰をどういうふうに押さえようか、どこを持ち込んだらいいかという一覧表をつくる、そういうような考えで万全の体制をしいていただきたいと思っております。

 私たち国会議員も、超党派の二〇二五年大阪万国博覧会を実現する国会議員連盟、これは自民党の二階幹事長が会長を務めますが、そういう会議を持っており、私たちのその議連に対しても、適時、それぞれの国についての適切な情報を提供する、そういう形で一緒に取り組んでまいりたいと思っております。

 どういった国を重点地域にするか、そしてまた、選挙はいつで、どういうふうに活動していくのか、何よりも決意表明という形でよろしくお願いします。

薗浦副大臣 委員御指摘の二〇二五年の大阪万博の誘致でございますけれども、当然、我が省も在外公館を含めて全省でこの誘致に当たってまいりたいと思います。

 四月十一日の閣議了解を受けまして、その同じ日に省内にタスクフォースを立ち上げました。私がヘッドでございます。御指摘のいろいろな局、経済局のみならず地域局も含めた形で立ち上げをしております。

 また、二十四日には木寺大使が立候補表明文書を提出する予定になっておりまして、在仏大にもこうしたチームを立ち上げました。

 選挙は来年の十一月でありまして、一年半余りでございます。御指摘のとおり、百六十八の過半数をとらなければなりません。我々としては、特に、加盟国数が多いアフリカまた中南米、こうした地域からどれだけ票を獲得するかというのが主眼になってこようかと思います。

 いずれにしても、御指摘いただきました議員連盟、それから榊原会長を初めとする経団連の皆さんと協力をしながら、オール・ジャパンで戦ってまいりたいと思いますので、先生にもぜひとも御協力を賜りたいと思います。

松島委員 力強くありがとうございました。

 選挙というものは勝たなければなりません。とにかく、みんなで力を合わせて、オール・ジャパンで頑張っていきたいと思います。

 次に、私は、およそ十年前に外務大臣政務官を務めさせていただきました。その時期に、見える外交、見せる外交という観点で、強い違和感を感じることが二つございました。それについて質問をさせていただきたいと思っています。その後どうなっているかということでございます。

 一つは、在外公館、大使館や領事館の車に多く外国製の車が使われている。日の丸の旗を取りつけて、たなびかせて走っていく大使車がベンツであるという例を数多く見まして、これはおかしいんじゃないかと思いました。今でもそういう状況なのか、これを何とか変えなきゃいけないとずっと外務省に申し入れてきたんですが、どういう状況になっているか、教えていただきたいというのが一点です。

 もう一つは、私が初めて海外出張したのがボスニア・ヘルツェゴビナという国でございました。そのときに、援助の車の車体に、おなかのところに、こういうようなマーク、ちょっと見にくいでしょうか、赤と青で、何か公募の作品の、ODAマークというらしいんですけれども、地球儀と赤い太陽を二つの手で囲んでいるようなマークがついておりまして、これでは日本ということがわかりにくい。これが日の丸のつもりかもしれないけれども、わかりにくい。

 それよりも、やはりストレートに日の丸を表示して、日本からの支援であるということをその国の国民の方々にもわかっていただく。日本人の中には、日本の国民の中には、ODAというのは無駄遣いだと思っている人もいっぱいいます。自分たちの税金をこんなことに使ってと思っている人もいます。せめて、やはり相手の国に理解していただく。

 うれしいことに、アジアの国々などでは、日本がつくった橋や道路について、記念切手とか記念貨幣を出して、そういうのを国内で知らしめてくれている国もあります。日本自身がそれを見せなきゃ一体どうするんだということを言ってまいりました。新藤筆頭理事も、同じような観点、見せる外交という点で、いろいろな場でそれをおっしゃっていたことを記憶している次第でございます。

 現状、この二点、どのように変化しているか、変化していないのか、教えていただきたいと思います。

薗浦副大臣 先にODAの部分について私から申し上げさせていただきますが、ODA、公的資金を活用して当然やらせていただいているわけでございますので、我が国からの協力であるということを明確にするのは非常に重要である、御指摘のとおりだと思います。

 以前は今委員からお示しをいただいたマークというのも使っておりましたけれども、その後、さまざまな御指摘を受けるに当たって、日本の援助であることをより端的に明確に発信する観点から、統一してこうしたマーク、より日の丸とわかる、こういうマークを使わせていただいております。

 いずれにしても、引き続き、委員御指摘いただきました顔の見える援助というものになりますように、全力で取り組んでまいりたいと思います。

山崎政府参考人 御質問がございました大使館や総領事館の公用車の購入状況につきまして申し上げさせていただきます。

 一般的には、在外公館におきます公用車の購入に関しましては、購入後のメンテナンスや部品供給などを考慮し、各現地の自動車ディーラーから購入することとしておりますけれども、その際に、原則として日本車を選択するように現在はしております。この方針は、委員が外務大臣政務官をされていた平成十九年度に、大使や総領事の公用車について日本車を選定することを推奨する旨の在外公館への指示が出ておりまして、その方針に基づいてやっていることでございます。

 現状といたしましては、大使や総領事の公用車は、全世界で二百十八公館にございます。そのうち二百十六公館は日本車でございます。また、全体の公用車では九割が日本車という状態になっております。

松島委員 非常にうれしい答弁をいただきました。やはり日本の車は世界一だと信じております。ぜひ全てが日本の車になるように願っております。

 薗浦副大臣からお答えいただきました日の丸に変わったということも、非常にわかりやすい。そして、一生懸命見たんですけれども、たしかフロム・ザ・ピープル・オブ・ジャパンという言葉が書いてあって、日本国民からの支援であるということの言葉、とてもいいなと思っています。以前のを見ておりますと、オフィシャル・ディベロップメント・アシスタンス、政府開発援助、普通の用語にすぎなかった。それに比べて、日本国民からのプレゼントであるというか、この国も頑張ってほしいなという思いでの支援だということをそれぞれの国でわかっていただければと思う次第でございます。

 次に、今出ました在外公館、在外で、外で勤務される外交官の方々の処遇というか、そういったことについて申し上げさせていただきたいと思っております。

 例えば、アフリカや中南米やいろいろな国々で、マラリアや黄熱病の予防接種をしてから赴任する。何か、ある期間ごとにもう一度接種しなきゃいけないとか、本当に大変な状況で仕事をしておられる方、あるいは家族として一緒に行っておられる方、大勢おられて、敬意を表する次第でございます。そういった方々について、健康管理休暇制度というのがあると伺っております。二百二十の在外公館のうち百三十一公館で健康管理休暇制度があるわけでございます。

 ところが、ちょっと驚いたことがございました。健康管理休暇制度で日本へ帰ってくる場合に、日本国を代表する特命全権大使でさえ、エコノミーを使うように、一番安いルートで帰ってくるようにという規定があると伺いました。これは、私はまずいと考えております。例えばアフリカの任地国から日本へ帰るときに、アフリカから大体ヨーロッパのどこかの空港を経由して来る。アフリカからヨーロッパまではせめてビジネスクラスということにしていただきたいという理由が、二つございます。

 一つは、実際に空港のラウンジとか飛行機の座席、近いと、その国の要人なりと直接話をする、そういう仕事のチャンスも非常に重要です。

 と同時に、健康管理休暇制度というのに、そうした国の非常に非衛生的なエコノミー用のラウンジで、しばしば、途上国というのは、日本と違って、階級の概念とか、そういう階級差というのがある場合があります。ふだんつき合っている先方の国の局長さんたちがビジネスクラスに乗っているのに、日本の大使や日本の大使館員、ODA担当者も全部そう、皆さん含めてですけれども、その方たちが、言っちゃ悪いですけれども、中国からの出稼ぎ労働者が一緒にいるようなところで待っているのでは、それは下手したらステータスにかかわるというか、侮蔑の目で見られかねない。そういう危惧を感じる次第でございます。

 これを改めるお考えは、どっちかというと、外務省は改めたいけれども財務省がうるさいのかもしれませんけれども、そこの状況を聞かせていただきたいと思っております。

薗浦副大臣 委員御指摘の健康管理休暇制度でございますけれども、まさに御指摘のとおり、非常に環境が厳しい任地に赴任をしている職員、またはその同伴者が、一定期間の勤務の後に休暇をしていただいて、心身のリフレッシュとか、病気の治療とか、さまざまなものに利用していただく制度であります。

 ただ、この制度は、最後に委員が少しおっしゃいましたけれども、外務大臣と財務大臣の協議によって認められている制度でございまして、この協議の結果、現状はエコノミークラスの官費が支給されるということになっているわけでございます。

 我々にとって大変ありがたい御示唆をいただきましたので、今後、そうしたことも含めて、支援のあり方というものを考えて、検討していきたいと思います。

松島委員 私、これはいわゆる外務省の職員の応援という意味でなくて、どの役所でも、財務省でも経産省でも国交省でも、在外勤務をするときは外務省職員の身分を持っていくわけですし、これは非常に重要なテーマだと考えております。

 もう一つ、その在外公館の職員の方たちについて、親の介護のための特別休暇制度を設けるべきだと私は考えております。五十代の職員、いや、場合によったら四十代の職員からですけれども、親が介護を必要とする状況になるということはしばしばあり得ることでございます。

 子供の教育というのはもちろん大切ですけれども、いつごろ何歳になるかわかっているし、任地国によったら日本人学校へ入ったりインターナショナルスクールに入ったりして、そういう形で一緒に行くことも可能です。でも、親がある程度の年齢になって、いつ介護が必要な状況になるか、あるいはいつ認知症になるかというのはわかりません。

 私自身も、母親が突然そういう怪しい状況になって、離れたところにひとり暮らししているので、何度も往復して苦労した経験がございます。それでも国内だから何とかなっておりますけれども、外国だとどういうことになるのか。要介護度合いのチェックのための調査員に来てもらうとか、病院での検査につき合うとか、付き添うとか、そういったことはいつ起こるかわからない。

 やはりこれは、在外職員については、親の介護のための特別休暇制度、これをぜひ私は提案したいと思いますが、どういうことになっていますでしょうか。

薗浦副大臣 先生御指摘のとおり、介護と仕事の両立というのは政府としても今非常に重要な課題でして、これは国家公務員といえども例外ではないというふうに思っています。

 外務人事審議会という大臣の諮問機関がありますが、ここからも、在外公館に赴任するに当たって最大の懸念の一つが日本に残した親族の介護であり、このような物理的、心理的な負担を軽減するための支援を行うことは、職員が任地で後顧の憂いなく能力を発揮し、日本の外交力を強化することにつながるという提言を既にいただいております。

 もちろん、国家公務員も介護休暇を取得することはできますが、介護休暇を取得したとしても、在外勤務中であれば、その特殊性によって、それが実質利用できない、頻繁に帰国することができないという面もございますので、先生からきょういただいた御指摘を踏まえて、例えば民間企業で海外に行っていらっしゃる人たちがどういう制度になっているのかということの検討を始めて、そういう支援策を今後検討していきたいと思います。

松島委員 政府の、介護もしながら仕事を続けるという考えにものっとって、民間企業の後追いでなくていいから、まず政府がその姿勢を示して、そしてそれが民間企業に波及していくことを、在外勤務という特殊性から強く考えております。

 最後になりますが、中南米外交について伺いたいと思っております。日本の外交の中で、二百十万人の日系人ネットワークを持つ中南米地域、これは非常に重要なところでございます。そして、カリブの諸国、非常に国が多い。

 特殊性といたしまして、中南米地域、カリブ地域というのは、中国と国交を結んでいなくて、台湾と外交関係を持っているという国が十一カ国に上って、これは非常に特殊な地域だと思っています。さっきの万博誘致もそうですが、国際的な各種投票や選挙においても非常に重要な意味を持つところです。

 ただし、一方で、日本語を知らない四世、五世、六世、そういった人もふえている。新しい時代にどういうふうに取り込んでいくのか。そしてまた、私も政務官のときにパラグアイの方から、パラグアイの人は今一番、日系人の中でも、まだ五十代、六十代ぐらいが日本語を話せる方たちです、それでも子供たちが心配だということで、日本語講師の特別な派遣も求められたことがあります。そういった問題にどういうふうに取り組んでいかれるか。

 最後に、一人当たりGDPがやや高いところでもODAの対象にしようということを、二〇一四年夏、総理が当該地域で発表されました。その後、どのように進展しているか、教えてください。

高瀬政府参考人 まず、私の方から、中南米にいらっしゃいます日系人の方との連携について答えさせていただきます。

 中南米地域には、現地の人々から信頼を集めていらっしゃる世界最大の日系社会がございまして、日本と中南米各国のかけ橋となっていらっしゃいます。

 外務省といたしましては、日系社会を通じて中南米諸国との関係をさらに強化するため、中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会というものを岸田外務大臣のもとに立ち上げたところでございます。有識者からの提言も踏まえまして、日系社会とのさらなる連携強化に向けた今後の施策を検討していきたいと考えております。

 具体的には、日系人の方を日本にお招きするさまざまな招聘事業ですとか、日系社会が行っていらっしゃいます事業や行事への参加、支援を通じまして、日本語を知らない若い世代の日系人の方たちも含めまして、各国の日系社会のネットワークを広げるという取り組みを進めていきたいと思っております。また、ジャパン・ハウスの事業等を通じまして、親日派、知日派の裾野の拡大というものも努めてまいりたいと思っております。

 日本語の教育につきましては、国際交流基金の専門家ですとか、JICAのボランティアといった形で日本語教師の派遣を実施しております。中南米地域におけます日本語学習意欲の高まりに応えて、今後も日本語の普及に取り組んでまいりたいと思っております。

増島政府参考人 私からは、CARICOM諸国への支援についてお答えさせていただきます。

 二〇一四年七月に開催されました第一回日・CARICOM首脳会合におきまして、安倍総理から、CARICOM諸国が抱える小島嶼国特有の脆弱性、これに鑑みまして、一人当たり国民所得とは異なる視点から支援が重要と認識している旨表明したところでございます。

 この方針を踏まえまして、平成二十七年度から二十八年度にかけまして、セントクリストファーネービス、バルバドス、バハマ、トリニダードトバゴに対しまして、防災分野において計七件の無償資金協力を供与いたしております。また、防災、エネルギー等の分野におきまして、これら四カ国から計三十一名の研修員を受け入れたところでございます。

 こうした我が国のアプローチはCARICOM諸国から高く評価されておりまして、今後とも、相手国の状況を踏まえながら、CARICOMの小島嶼国が抱える脆弱性の克服を通じた持続的発展に寄与すべく、必要な協力を行ってまいりたいというふうに考えております。

松島委員 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、辻清人君。

辻委員 自民党の辻清人です。午前中最後の質問でございますが、委員長、理事の皆さんに機会を与えていただいたことに感謝を申し上げます。

 きょうは、日本の中東政策。最近、昨今、シリアを中心として大変緊迫した状況が続いていますが、どちらかというと、戦術、作戦ではなくて、戦略、特に、私は議員になる前にアメリカの国際戦略研究所というシンクタンクに勤めていまして、そこのエドワード・ルトワックさんというアメリカの戦略論の権威の方がいまして、その方の定義によれば、戦略を垂直的にカテゴライズすれば、技術、戦術、作戦、戦域戦略、大戦略、グランドストラテジーですね。

 日本がこれから中東にかかわっていく中で、個人的な私見としては、中東の戦略、これが直接北東アジアの平和と安定に直結していると私は考えていますが、そこの確認の意味も含めて、きょうは外務省さんにいろいろと、大戦略の観点から、大変限られた時間ですけれども、お話をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、我が国の外交において、中東政策の重要性及び基本的なコンセプトを教えてください。

薗浦副大臣 言うまでもなく、エネルギー安全保障、この一点をとってみても、中東と我が国の関係というのは非常に重要でありまして、したがって、中東地域の安定というものが我が国の平和と安定というものに資するということは間違いございません。

 その上で、我々は、偏らない、つまり中東地域のあらゆる国と良好な関係を有しておりますので、こうしたそれぞれの国と友好な関係を有しているということを武器として、総理がよく言われる、中庸が最善という考え方のもとで、中長期的にあの地域の支援、例えば人道支援とか幾つか我が国が得意とする分野がありますけれども、こうしたものを戦略的に行っていく、それもバランスよく行っていくことによって、あの地域の平和と安定というものに寄与していきたいというのが我が国の中東に関する大方針でございます。

辻委員 外務委員の皆さんを前に釈迦に説法だと思いますが、本当に中東情勢、今の現在の、特にシリアを中心とした中東情勢を理解するためには、少なくとも第一次世界大戦、それこそイギリスを中心とした、サイクス・ピコ協定ですとか、フセイン・マクマホン協定、またバルフォア宣言ですとか、いわゆる三枚舌外交を中心とした、列強と当時のオスマン帝国またはアラブ諸国の歴史までひもとかなければいけませんが、そういった大変複雑に、密接に絡んだ中での、日本が戦後一貫して外交の手段として最も得意とすることの一つは私は人道支援だと思っていますが、この人道支援に当たって、ちょっと更問いになりますが、どのような方針に基づき具体的に支援を実施しているのか、教えていただけますか。

薗浦副大臣 委員御指摘のとおり、あの地域は複雑な歴史背景があって、今委員がおっしゃったような国々というのは、それぞれ利益があったり、またいろいろな相反する関係があったりということでやってこられたんだろうと思います。その点、日本というのは、ある意味、経済面において、きちっとした契約を結んでそれを履行するという観点から、あらゆる国と友好的につき合えるという独特の立ち位置があろうかと思います。

 その上で、例えば人道支援といっても、我々の水、下水道といった戦後培ってきた衛生面での技術、それから人材育成、技術をただ持っていって、はい、つくって終わりというのではなくて、現地の人と一緒になってそういうインフラをつくり上げて、現地の方々にそういう技術を身につけてもらうといったような、長い目で見た支援というのが確実に成果を上げてきていると思いますので、そうした面での中長期的な視野に立った支援というものが我々の強みであって、それをこれからも続けてまいりたいというふうに考えております。

辻委員 まさに日本の強みでありまして、特に、例えば今、アサド政権側として支持に回っているイランとも日本は直接のパイプを持っていますし、反政府勢力を支援している側ともまたしかり。ただ一方で、具体的なそういった支援内容、ここ最近だけでも、外務大臣、また総理を含めて、さまざまな支援パッケージを発表していますけれども、なかなか具体的にそれが国民のもとに、表明はされているんでしょうけれども、伝わってきていない部分があると思います。

 そこで、薗浦副大臣は今月四月にブリュッセルで開催されたシリア及び地域の将来の支援に関する閣僚級会合に出席していると思いますが、この会議において、日本の支援は効果的にアピールされたんでしょうか。

薗浦副大臣 御指摘の会議は、国連それからEU、ドイツ、クウェート、ノルウェー、カタール及び英国が共催をして、四月五日にブラッセルにおいて開催をされました。

 ここで私が申し上げたことは、直前に、四月四日に例の化学兵器の話がありましたので、化学兵器の使用というものはいかなる場合も許されないということを申し上げた上で、シリア危機発生以降に、日本からシリア及び周辺国に対する支援が十九億ドルに達している、また、ことしに入っても新たに二・六億ドルの支援を決定したということを申し上げました。

 また、委員がさらに具体的にとおっしゃった分野においては、例えば避難民支援や電力セクター、いわゆる電力供給、送電網の復旧といった分野、またさらには、持続性というものをあの地域に持っていただくという意味で、若者の人材育成、それから女性のエンパワーメントについても、特出しで我々はシリアの国内向けに支援していくということを申し上げさせていただきました。

 会議において非常に高く評価されたというふうに考えておりますけれども、具体的に申し上げれば、その席で、余った時間を利用して、ヨルダンの国際協力大臣ですとか、クウェートの第一副首相、また米国、ロシアの外務次官、国務次官とも個別に会談をいたしまして、それぞれから、日本のアプローチについて、独特であって日本の強みを生かしたものだということで、高く評価をいただいているところであります。

辻委員 ありがとうございます。

 特にシリアなんかについては、直接日本とシリア間でということもなかなか難しいので、どうしても国連を中心とした国際機関並びに地域各国との連携が重要になってくると思います。

 合衆国を含めて、内政干渉にならない程度に私の私見を述べさせていただきますと、ちょうどアラブの春、ないしシリアの内戦が始まる直前に私は帰国してこの世界に入ったんですが、その際に、中東のアメリカの専門家と一緒に議論をすることがありまして、当時言われていたことが、数十年はこの中東の混乱は続くだろうと、全て私が話した方はおっしゃっていました。

 その中で、最近、ちょっとまたその話の延長線で、アメリカがシリアに対して攻撃をしました。その前のオバマ政権のときには、シリアが化学兵器を持っている疑義があった、それについてオバマ政権は動かなかった。トランプ政権はそれを一つの例として今回アメリカは攻撃を行った。そういう関連性を考えているんでしょうけれども。

 ただ、戦略的に考えて、仮にテロを未然に防ぐことが一つの大きな意義であるとしたら、アサド政権側も反政府側もどちらが勝っても、アメリカにとってもこれはまずい結果になることが考えられます。

 例えばアサド政権側が勝つ、それは、イランを中心とした勢力が、アメリカの同盟国のサウジアラビアを中心にそのほかの国々にとっては脅威になる。では、反政府側が勝利をした場合、反政府側の背後にいるのはISを含めたテロリストの方々ですから、彼らは確実にアメリカに対する敵対行為に発展をします。

 その中で、それぞれの敵対勢力が、言い方は悪いかもしれませんけれども、内戦状態で、自分たちに、国外に火の粉が飛び交わないような、仮にアサド政権側が優位であれば反政府を応援し、反政府が優位であればアサド政権を応援し、そういったバランスをとりながら膠着状態を続けていく、オバマ政権での中東政策というのはそういう政策をとっていたと私は考えていまして、表面的に見れば大変ひ弱なとか、そういったことを感情的な部分では言われるかもしれませんけれども、戦略的には大変私は整合性があった戦略だと思っています。

 ただ、政権がかわり、アメリカの対応も変わってきました。その中で一貫して重要なのが、日本の戦略としてその地域に対して何を考えるか。一義的には、日本に対して日本の国民の安全を守ること、そして同時に、その地域におけるテロの根絶、そのための人道支援だと私は思っています。冒頭申し上げたように、国連を中心としたIMF、世銀のブレトンウッズ体制、これに対してはさまざまな批判がございますけれども、戦後構築したこの入れ物に対して改革も進めて、ここが機能するようになってこそ、日本のそういった外交が私は生きてくると思っています。

 その中で、外務省にお尋ねしますけれども、このシリアを中心とした危機を解決するために、国際的に、国連を中心としたさまざまなプラットホームがあると思いますが、どのようなものがあるんでしょうか。お願いします。

薗浦副大臣 委員御指摘の国際的なプラットホーム、枠組みでございますけれども、一番大きなものとしては、二〇一五年十月に米ロ、アメリカとロシアが主導して立ち上げました国際シリア支援グループ、いわゆるISSGがございます。ここは、人道支援また停戦の履行等々について定期的に協議が行われておりまして、現在は二十三カ国四機関が参加をして、不定期ではございますが、閣僚級会合が開催されているほか、ジュネーブの国連本部においては毎週タスクフォース会合が行われています。

 また、シリア政府と反体制派が主に政治プロセスの話し合いを行いますシリア人対話というものがジュネーブで開催されておりますし、また、先般、ロシア、イラン及びトルコが保証国となって、カザフのアスタナにおいてシリア政府と反体制派が停戦について協議をするアスタナ会合というものも存在すると承知をしております。

辻委員 副大臣がおっしゃったISSGですけれども、これはたしか、私の記憶が確かであれば、最初はアメリカとロシアが共同議長だったんですけれども、ちょっと仲が悪くなって、それを国連が引き取ったという経緯だったと思うんですが、昨今のシリア情勢の中で、大変アメリカとロシアが緊張関係にある中で、このプラットホームというのは、両者の関係も含めて機能しているんでしょうか。

薗浦副大臣 委員御指摘のとおり、ISSGには米ロ両国が参加をし、そして共同議長であります。毎週、今、実際にジュネーブでやっている会議にも両方出てきています。両方出てきて、現実、米ロがその会議で話をしております。

 さらには、アメリカとロシアの関係でいうと、確かに、非常に今微妙な状況ではございますけれども、十二日にティラーソン国務長官が訪ロをして、ロシア側と外相会談を行うということで、連絡は継続しているということでありますので、アメリカとロシアの間に一定の意思疎通というものが存在するというふうには認識をしております。

辻委員 そのISSGの中での日本国の、我が国の貢献、我が国はどのような形で貢献をしているのか教えてください。

薗浦副大臣 日本としての対応でございますけれども、二〇一六年二月にミュンヘンで開催されましたISSGの閣僚級会合において参加が承認をされまして、その年の五月のウィーンで開催された閣僚級会合から参加をしております。

 また、昨年九月には、国連総会の機会を捉まえて開催されました閣僚級会合、ここには我が国から岸田大臣が参加をしております。

 以上です。

辻委員 ありがとうございます。

 現在の戦局、政局にとらわれずに中長期的な戦略の視野から人道支援を中心とした日本ができること、これを現実主義に基づいて行うことというのは、私は、これはもう日本の戦後の一貫した外交の強みとしても、また、その地域がしっかりと最終的には国づくりをするための第一歩としてこれからも引き続き支援をしていくことが、今、日本ができる最大限の貢献だと思っています。

 そういった中で、中東は大変複雑な状況でございますが、日本とは地政学的なリスクがないと思っている方も国民の中には多いんですが、ここと北東アジアの平和というのは今直結していると私は思っていますので、引き続き、外務省にはそういった緊張関係の中でやっていただけることをお願いして、私の質問を終わります。

 ありがとうございます。

三ッ矢委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

三ッ矢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 去る四月の十八日に、東京において開催された麻生副総理とペンス米副大統領による日米経済対話の第一回会合について、まず質問いたします。

 ペンス副大統領は、会合後の記者会見で、トランプ政権が離脱したTPPについて、過去のものだというふうに改めて否定するとともに、米国の利益第一の立場を強調いたしました。

 そこで、岸田大臣に伺いますが、TPPが過去のものだというペンス副大統領の発言はどういう意味だったと受けとめておられるでしょうか。

岸田国務大臣 TPPは過去のものだという発言はどういう意味かという御質問ですが、ペンス大統領の発言について私が解説する立場ではありませんが、米国はTPPから離脱することを明らかにしています。恐らく、そのことを表現されたのではないか、このように考えます。

笠井委員 そういうもとで、麻生副総理は四月十九日に、十一カ国でTPPをやろうという話は五月のAPECで出るということで、米国での講演で述べておられます。

 政府は、今後、米国抜きのTPP、RCEP、日米経済対話、そして日・EUのEPAの四本柱で自由貿易を推進する、その方針は四月十三日の閣僚会議において、安倍総理、麻生副総理、岸田大臣、石原大臣、世耕大臣などが出席をされて確認したというのは事実でしょうか。

岸田国務大臣 政府内でのさまざまな打ち合わせ、相談について一つ一つ明らかにするのは控えますが、少なくともTPPにつきましては、我が国の持つ求心力を生かしながら各国と緊密に連携し、あらゆる選択肢を排除せず、何がベストか主導的に議論を進めていく、これが我が国の立場であると承知をしています。

 この立場は、先月チリで開催されましたTPP閣僚会合などにおいて明確にしてきました。チリでのTPP閣僚会合におきましては、出席した十一カ国が結束を確認したところですが、五月にもTPP関係閣僚会合を持って今後の方向性を議論する予定になっています。

 麻生副総理のその発言も、こうした我が国の立場、あるいはTPPの今後について話し合われる、こういった見通しを述べられたものではないかと考えます。

 そして、あわせて、日・EU・EPA、RCEPについても、前向きに精力的に交渉を続けるという方針は変わってはおりません。

笠井委員 安倍政権としては、今後の貿易交渉を進めていくというようなことで今言われましたけれども、そういう中でのスタンスなんですけれども、その際に、いろいろな枠組みがあると思うんですが、関税など貿易の障壁をめぐって、TPPの水準を下回らないということを前提にして今後の貿易交渉を進めていくという立場なんでしょうか、基本的には。

岸田国務大臣 TPPは、何年もの年月をかけて交渉をいたしました。こうした交渉を経て得たTPPの成果というものは、今後の経済連携のルールのモデルになると思います。二十一世紀の経済連携のスタンダードにもなると認識をしているということ、これは再三政府としても申し上げてきているところであります。

 今後の経済連携を考える際に、具体的な中身についてはそれぞれの交渉に委ねられるわけでありますが、TPPにおいて得られた成果というのを念頭に置きながらさまざまな交渉を行うということは当然考えられると思います。

笠井委員 TPPの水準が今後の二十一世紀の経済連携のスタンダードだ、私はこれ自体が非常に重大だと思います。この間も議論してまいりましたが、米や重要産品での譲歩、それから非関税障壁の撤廃を含めて、多国籍企業の利益優先で日本の経済主権を売り渡すようなことは許されないと思います。

 そこで、伺います。さらに行きますが、日米経済対話の方ですが、この当日発表されたプレスリリースがあります。一枚物でありますが、ここに、「本対話が近いうちに具体的な成果をもたらすことで一致した。」というふうに書かれております。

 そこで、大臣に伺いますが、貿易及び投資のルールの項では、このリリースを見ますと、日米両国は高い貿易及び投資に関する基準についての二国間の枠組み等について取り上げることで一致したというふうにあるわけですけれども、そういう点で、近いうちにもたらす具体的な成果というのはどういうものとして考えているんでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の、貿易・投資のルール、課題に関する共同戦略とこの共同プレスリリースの中に記されている部分ですが、これは、日米のリーダーシップで貿易・投資の高い基準を構築し、アジア太平洋地域に自由で公正な貿易ルールを広げていくための議論を行ったと承知しておりますが、同時に、アジア太平洋地域や世界全体における経済戦略や貿易及び投資に関するさまざまな取り組みの現状と課題を議論するとともに、第三国の不公正な貿易慣行等の懸念に対して日米で協力して対処していくことを議論したものであると承知をしております。

笠井委員 ですから、私が伺ったのは、それも含めて全体に係っているのが、「両議長は、本対話が近いうちに具体的な成果をもたらすことで一致した。」と書いてあって、三つ書いてあるわけですから、そういう点で、具体的な成果を近いうちにもたらすという中身については何かということです。

 日米の二国間の自由貿易協定、FTAの批准を目指して、今後、二国間の交渉を進めるというのが中身ではないか、そういうことで目指していくというので、近いうちに具体的に成果、そっちの方向に向かっていくということじゃないんですか、これは。

岸田国務大臣 今回、日米FTA等、具体的な議論は行われなかったと承知をしております。

 御指摘の点については、いかなる二国間枠組みがあり得るのか、こういったことについて精力的に議論をしていく、こうした基本的な考え方を述べたものであると承知をしております。

笠井委員 ペンス米副大統領は、二国間交渉の目標は貿易障壁を打破して米企業が高水準の市場アクセスを持つことだ、そして、二国間での貿易協定の交渉が米国の国益にかなうと心から信じている、こういうふうに記者会見で、この対話の後、明言しているわけであります。

 来日したロス米商務長官も、協定の形をとることを切望していると発言しているわけで、まさにそういう方向で議論が進んでいるということで、アメリカもそういうことを想定してやっている、そういう対話なんじゃないんですか。

岸田国務大臣 まず、日米FTAの言及はなかったということを承知しております。米側からは、二国間貿易・投資関係を重視するという考え方が示されたと承知をしております。

 いずれにせよ、日米経済対話の中で、どのような枠組みが日米経済関係にとって最善であるかを含め、今後、建設的に議論を行っていくべき課題であると考えます。

笠井委員 ペンス副大統領が、終わった後の記者会見で、この経済対話のプロセスを始めようとしていて、それが将来、最終的に二国間の貿易交渉に至る場合もあると思います、自由貿易協定の正式な交渉を開始するという決定を両国が下すかもしれないということをはっきり言っているわけでありまして、まさにそういう点で、米国の利益第一の二国間交渉というのは極めて危険だと言わなければいけないと思います。

 TPPにかわる通商協定の締結を求める圧力を強めているのが米国側であります。例えば農業でありますけれども、アメリカの通商代表に指名されたライトハイザー氏は、去る三月十四日の米国上院の財政委員会公聴会でこう言っております。農業はTPPの受益者だった、だから我々は行動を起こし新しい協定を交渉する、農産物の市場開放でも日本がプライマリーターゲットになると、はっきり発言しておりますけれども、こういう発言をしていることは、大臣、御承知でしょうか。

岸田国務大臣 さまざまな関係者が、それぞれの立場からさまざまな意見を表明していること、こういったことは承知しております。

笠井委員 さまざまな関係者はいっぱいいるわけですけれども、その中でも、通商代表に指名されている、まだ正式にはなっていませんけれども、そのライトハイザー氏の発言であります。

 さらに、来日した米国食肉輸出連合会のフィリップ・セング会長、四月十八日の記者会見で、FTA交渉入りした場合に米国国内にはTPPで合意した水準がスタートになると話す人も多い、可能な限り早く自由貿易協定や経済連携協定などの貿易協定を結ぶことを歓迎するなどと発言いたしております。TPPの譲許表をスタート台に、それを上回る関税、非関税措置撤廃を日本に迫るという、極めて重大な発言を業界関係者がしているということであります。

 そこで、大臣に伺いますが、トランプ政権の対日要求について、USTRと米議会の要求が一層先鋭化して、TPPの日本側の譲許表の水準を上回る関税、非関税措置の譲歩や要求が米国から迫られる、そういう懸念は一切ないというふうに断言できるでしょうか。

岸田国務大臣 まず、今回の経済対話においては、米側から二国間貿易・投資関係を重視するとの考え方が示された文脈で、市場アクセスへの関心、これは示されました。しかし、具体的な市場アクセス向上の要求等はなかったと承知をしております。

 そして、この経済対話を通じて、引き続き日米の経済のあり方について議論を進めていくわけですが、これはあくまでもウイン・ウインの関係でこの議論を行うわけであります。どちらかが一方的な要求を受けるというものではありません。ウイン・ウインの関係を構築するために、これから建設的な議論を続けていかなければならないと考えます。

笠井委員 ウイン・ウインというか、私が聞いたのは、トランプ政権の対日要求について、譲歩や要求を迫られるという懸念はないかということを伺ったんです。

岸田国務大臣 ですから、ウイン・ウインの関係を目指すわけです。一方的に米国からの要求を受け入れるというようなことではないと考えています。

笠井委員 いや、受け入れるかどうかじゃなくて、迫ってくるということがないかと私は聞いているんです。

岸田国務大臣 米国がどんな要求をしてくるのか。少なくとも、今回の経済対話の中においては具体的な要求はありませんでした。今後の要求のあり方について、予断を持って申し上げるわけにはいきません。基本はウイン・ウインです。一方的に要求され、一方的に譲歩するというようなことではないと考えています。

笠井委員 実際に米国では、ライトハイザー次期USTR代表の発言を受けて、全米の肉牛生産者・牛肉協会、全米の豚肉生産者協議会、USAライス連合会などが、農業分野でも相次いで声明を出して、日本に対する一層の市場開放を求める状況になってきております。そして、貿易・投資のルールをつくるということも一つの大きなテーマになって、この対話の枠組みはできているということであって、そういう場を通じてこれからやってくるんだということになるんだろうと思うんです。

 実際にトランプ米大統領のもとでの対日要求というのは、USTRの二〇一七年貿易障壁報告書の記述の中に含まれております。これはトランプ政権になってから初めて出したものでありますが、この中から具体的に何点か聞いていきたいと思うんですけれども、第三項目の「牛肉及び牛肉製品」では、「米国は引き続き、日本がOIE」、国際獣疫事務局「における米国の評価と整合させるべく、全ての月齢の牛及び牛製品を受け入れ、市場を完全に開放するよう働きかけていく。」というふうにあります。これは、米国の牛肉協会等の意向を踏まえて毎年の報告書に記載されているものであります。

 岸田大臣、さきに私が紹介した米国食肉輸出連合会の会長の発言もあります。米国のターゲットの一つに牛肉及び牛肉製品の完全市場開放があるということはお認めになりますか。

岸田国務大臣 米国時間三月三十一日、USTRが外国貿易障壁報告書を公表したと承知をしています。

 同報告書は、一九七四年通商法に基づいて、毎年行政府から議会に対して提出される、米国の貿易相手に対する関心事項についての報告書であり、その一部として、日米通商関係に関する事項についても言及されていると承知をしています。

 政府としては、毎年提出されるこの報告書、内容の分析の上、今後の米政府の対応を注視していくというのが我が国の基本的な方針であります。

 毎年こうした関心事項は報告されています。引き続き関心を持って注視しますし、何よりも政府の対応、今現在のところ具体的な要求は何もありませんが、今後の対応について注視をしていきたいと思います。

笠井委員 今、そういう形で言われました。

 幾つかさらに聞きたいと思いますが、報告書第五項目の「コメ輸入制度」についてはどうかといいますと、「一般輸入分のほとんどが加工用、飼料用又は食料援助用に仕向けられ、消費者に提供されない。」と。アメリカの米業界の調査によれば、「日本の消費者は米国産の高品質米を買うと見込まれるにもかかわらず、米国産のコメが日本の消費者に届く量はわずかである。」として、「米国は、引き続き日本のコメ輸入システムについて、」「監視していく。」というふうにあります。

 こんな要求が出てくるのも、日本の厳格に規制された、不透明な、輸入米に対する輸入、流通制度が日本の消費者への十分なアクセスを阻んでいる、こういう認識が米側にあるからじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 御指摘の報告書については、米国の貿易相手国に対する関心事項についての報告書ですが、御指摘の点も含めて、毎年そういった関心事項が記載されています。

 ことしの報告書で変更点、日本関連部分で変更点があったのは、TPPへの言及がなくなっていること、そして、米国製品輸出に係る幅広い障壁を除去するために、「日本政府と引き続き緊密に連携していく。」という記述があるということ、さらには、「二〇一六年十月から」「羽田空港における新たなアクセスが利用可能となり、」「米国の航空会社四社及び日本の航空会社二社が現存のオペレーションを拡大できるようになった。」という記述、この三点だけであります。それ以外は、毎年行われている報告書、去年と変化はないと承知をしています。

笠井委員 私も、毎年の報告書ということでは対比表も見ました。日本側の譲歩を狙う米国のターゲットの絞り込みがだんだんされてきているというのが経年的に見るとわかります。

 私の質問にお答えにならないんですが、米輸入制度についてこういうことが言われるということについてどう見ているかという認識はいかがですか。

岸田国務大臣 米国産の米が日本の消費者に届く量がわずかであるという指摘があるとは承知していますが、我が国は、ミニマムアクセス米の輸入については、WTO協定に基づいて、競争入札により透明性のある運営を確保しつつ、国内需要や国際相場等を勘案して行っている、これが我が国の立場であり、我が国の説明ぶりであります。

笠井委員 私は米側の要求について聞いているわけですが、結局米側は、米についてもどんどん、日本が国産米をつくるのをやめて米国産米を消費者に買わせるようにせよということを言っているんだ。それに対してどう対応するかというのはまた別問題なんです。

 では、第十項目めの「木材製品及び建築資材」についてどうか。

 この報告書を見ますと、「米国は、日本が国産の木材製品を有利にする国内生産品の補助金プログラムの形態で、全国、県、市町村レベルにおいて数多くの現地化障壁を維持していることに引き続き懸念を有している。」と、「引き続き懸念」と。

 米国政府は、現在も、日本の林業を支援するための国産優先の補助事業、かつ輸入木材製品に対する潜在的な差別とみなされることを日本が行うことに対して懸念が残るとみなしているということではないのか。米国側の要求をどう見ているかということについて、木材分野はどうですか。

岸田国務大臣 まず、基本的には、これは米国の貿易相手国に対する関心事項についての報告書であります。そして、御指摘の米や木材等についても毎年この関心が記載されています。

 今の木材についても、「米国は、日本が国産の木材製品を有利にする国内生産品の補助金プログラムの形態で、全国、県、市町村レベルにおいて数多くの現地化障壁を維持していることに引き続き懸念を有している。」、こういった記載がされているわけですが、その上で、今の政権から新たに何か具体的な要求というものは行われておりません。

 そして、日米のトップの間で、今後は新しい経済対話の枠組みで議論していきましょうということで合意をしています。米国副大統領と日本国副総理との間の経済対話において、今後、ウイン・ウインの関係を築くべく努力が行われていくものであると承知をしております。

笠井委員 米側の要求で今木材の話を言われましたけれども、結局、「引き続き懸念を有している。」というのは、「引き続き」なんですね。

 私がそれで質問したところで、国産優先の補助事業がやられていることは問題だとして、これをやめろという話については、二〇一五年の報告書でそういうことに関する記述があるから聞いたので、そういう要求を引き続き持っているということは明らかじゃないかということなんですよ。

 私、今幾つか質問してまいりましたが、岸田大臣は、ウイン・ウインの関係だ、米国側がいろいろ言っているけれども今度の対話の枠組みの中では具体的にまだ言ってきていないんだということを言われました。

 では、私、質問したいと思うんですが、今度の日米経済対話の意義について、麻生副総理が記者会見の場で明確に述べられております。

 これまで日米関係は摩擦でスタートしたものが初めて摩擦ではなく摩擦から協力に変わっていく、そういう大事な一ページがここに開けたというふうに、記者会見でこの日米経済対話の意義について明確に述べられておりますが、この、摩擦ではなく協力に変わっていくという一ページ、これが日米の経済対話なんだ、これはどういう意味を持っているんでしょうか。

岸田国務大臣 かつて、日米の経済においては、さまざまな摩擦が指摘をされ大きな議論になった、こうした歴史がありました。そういった時代と比較をして、時代は変化してきたという思いを込められた発言ではないかと想像をいたします。

 貿易摩擦等が大きく議論された時代はかつてありましたが、日米がウイン・ウインの経済関係を一層深め、日米関係の新たな歴史を築くために、引き続き、この新しい経済対話の枠組みで建設的な議論を進めていく、こうした思いを語られたものであると考えます。

笠井委員 麻生副総理はこの問題、このことについては、一回だけではなく、記者会見で二回にわたって強調されて、別の部分では、日米の関係はかつては摩擦、大体経済摩擦とか、摩擦でスタートしたのですが、摩擦が象徴だった時代から明らかに協力という時代に移りつつあると、重ねて言われております。

 今、大臣の方からも、それについてはこういうことではないかというお話があったんですが、まさに貿易摩擦がかつていろいろ歴史的にもあった、例えば日米構造協議なんかでもそうだったと。アメリカが要求する、それに対して日本側はこれはだめだと言って、結局その問題が、いろいろやりとりがあったということを含めた摩擦ということで言われているんだと思うんですけれども。従来のそういう圧力、アメリカ側の要求があった、それに対して、日本側とすれば、政府はこれだけはだめと言って、まさにだめと言うから摩擦になってきたという経過だったと思うんですよね。

 今度は相手の側が、この枠組みの中でこれからという話を大臣言われましたが、既にトランプ政権になって対日要求の報告書もUSTRが出しているもとで、まさに具体的に要求を発表し、そして、大きく言うとトランプ政権が日本に対して圧力をかけているというもとで、今度は摩擦ではなく協力ということになれば、つまり、日本は、違うんですよ、ここはだめだよと言うんじゃなくて、わかりましたと譲歩してやるというのが協力で、向こうの要求を受け入れるという方向になる枠組みだということなんじゃないんですか、これは。

岸田国務大臣 かつては日米の間で、例えば米国の貿易赤字の中で日本との貿易分が五〇%を超えていた、こういった時代もありました。今やその割合は一〇%を切っているという状況にあります。こうした変化の中で日米の貿易や経済を考えていくことになります。

 要求が突きつけられているというお話ですが、先ほど申し上げたように、このUSTRの報告書は関心事項についての報告であります。具体的な要求というものは、まだ何も我が国に示されておりません。これからこの経済対話の中で議論をしてまいります。その際に、日米で、あるべき経済の関係についてもしっかり議論をしていかなければならないと思いますし、この日米経済関係、さらに大きく飛躍させて、日米両国で、アジア太平洋地域、ひいては世界の経済成長を力強くリードしていこう、こういった思いもこの経済対話に込められています。こうした前向きな成果に向けて努力をしていくべきだと考えます。

笠井委員 いや、USTRの貿易障壁報告書については、さっき大臣も、暦年ずっと出してきているという話があったわけですが、まさにそういう形で、それを通じて、貿易障壁報告書ということで、米側、USTRが発表して、そのもとで具体的に日米の交渉、通商交渉、貿易の問題、いろいろありました。だけれども、そのときに、そういうことを背景にして、日本側にこれをのめ、これをやれということでやってきたのが経過だったと思うんですよ。

 それで、今大臣が、日米で力強くリードして新たな仕組みをつくっていくんだという話がありましたが、今回の経済対話についても、自由で公正な貿易ルールということが言われております。トランプ大統領自身が、今、就任後もそうですが、日本は不公平な貿易をしていると、まさに日本は不公正という認識を持っているわけですね。そのもとで、自由な、公正な貿易ルールをつくるための枠組みで対話をするとなれば、結局、もっと日本は開放せよ、規制緩和せよという対話をするという枠組みになっていくということじゃないんですか、これは。

岸田国務大臣 日本は不公正な貿易をしているのではないかという御指摘については、先ほど申し上げたように、米国の貿易赤字に占める日本の割合が大きく変化をしているなど、さらには日本企業の米国での投資あるいは雇用への貢献、こういったさまざまな点につきまして丁寧に説明していくことは必要であると思います。

 冷静な、こうした具体的な議論を通じてあるべき姿を考える、これがこの新しい経済対話のあるべき姿ではないか、このように考えます。

笠井委員 では、伺いますけれども、トランプ大統領は四月十八日、ちょうどこういうタイミングですけれども、日米経済対話と同じタイミングで新たな大統領令に署名をいたしました。

 ホワイトハウスホームページを見ますと、トランプ大統領は、バイ・アメリカンとハイヤー・アメリカン、米国内の購買と雇用を促進すると銘打って、一つは、この大統領令は、米国の納税者のお金を米国内の会社に流すことを促進するバイ・アメリカン法を損なう免除及び例外措置の濫用を対象とする、もう一つは、二つ目に、米国政府調達における外国材の不当な優位性を認める免除と例外措置を対象とするなどありますけれども、そういうものとして大統領令が出された、それは間違いありませんかね。

岸田国務大臣 四月十八日、トランプ大統領が、米国製品購入、バイ・アメリカン及び米国民雇用促進、ハイヤー・アメリカン、こうしたものに関する大統領令に署名したことは承知をしています。

 政府としましては、自由で公正なルールに基づく活発な貿易・投資、これは日米経済関係の活力の源泉であると考えております。米国政府の動向を引き続き注視したいと考えます。

笠井委員 トランプ米大統領は、この大統領令で、米国の納税者のお金が米国の会社へ流れるように米国内産の製品調達を優先すると宣言しているということであります。

 このバイ・アメリカン法で、自国への輸入ダンピング等を吟味して自国の国内生産を守る方向をとる一方で、日本に対して自由化を強く迫るということを繰り返している。米国政府が国内生産を保護しながら日本に対して強く自由化の実行を迫るやり方というのは、アメリカの利益第一を押しつけるやり方というのは、これはいいと思われるでしょうか。

岸田国務大臣 日米の間の貿易・投資の現実、実態についてしっかり説明していく、このことは大事だと思います。その上で、米国の理解を得て、あるべき姿をしっかり議論していきたいと思います。

 いずれにせよ、この日米経済対話の枠組みは、一方的に要求を受けるというものではありません。我が国と米国においてウイン・ウインの関係を築いていこうと、麻生副総理、ペンス副大統領の間でも確認した上で議論が進められていくものであると考えます。

笠井委員 ウイン・ウインということでいうと、でも、それぞれ失うものもあるということですかね、ウイン・ウインというのは。

岸田国務大臣 何を失い何を得るかなど具体的な話ですとか、日米の間で全てがゼロサムゲームではないと思います。ともに繁栄できる課題も当然あると思います。具体的にはそうしたものを一つ一つ積み重ねながら、全体として両国が満足できる結果を目指す、そうした経済対話でなければならないと思います。

笠井委員 先ほども議論したわけですが、繰り返し大臣はそういうことで言われるわけですけれども。

 私、どうしても理解できないのは、結局、今回の日米の経済対話の枠組みというのは、摩擦から協力へというのが大きなポイントなんだと麻生副総理は繰り返し言われる。そうすると、結局どういう形で貿易・投資ルールについても議論してやっていくのかというと、片方が、アメリカの側はこれをやれ、もっと自由化しろ、もっと規制緩和しろと言った場合に、それについて、いやいやというふうに言ったら、必ずそこで摩擦が起こりますよね。それはやらない、協力してやっていくという話になるというのは、実態的にはどういうことになりますかね。

 お互いにそれぞれの利益を抱えながらやる、ウイン・ウインだと言われますけれども、しかし、そこには必ず違いがある。それはアメリカにとっては利益があっていいかもしれないけれども日本にとっては困るよねと。農業もそう、自動車もそう、いろいろなことが出てきますけれども、それを摩擦にしないで協力でやるというふうになると、要求した側が、それを受け入れてくれ、いや、受け入れられませんと言ったり、それはまずいね、この対話の枠組みはそうじゃないよ、摩擦じゃなくて協力の枠組みじゃないですかという話になるというのは、実際にどういう対話がなって、そして、通商交渉が進んでいくんだろうかというのが私は非常に理解できないんですね。

 歴史的に見ても、アメリカはかなり強力に対日要求を繰り返しやってきました。大臣もさっき言われたように、摩擦というのが、かつてそういうことがあったんだ、さんざん、そういう意味で、苦渋もあって、そして辛酸もなめて、日本がやられたということで、大分、問題になったことがありました。

 しかし、そういう中で、そうじゃないんだ、ウイン・ウインなんだという形で交渉をやられるというわけですけれども、アメリカはもうそういうことを強く言わなくなる、今度は。トランプは言わない、変わったんだというような前提に立っているのか、その辺が私はちょっと理解できないんですが、ちょっと、わかるように言っていただけたらありがたいです。

岸田国務大臣 米国側の議論におけるスタンスや要望について、今から何か仮定をし申し上げることはできませんが、議論をすることはしっかり行わなければなりません。十分な議論は必要だと思います。その結果が、日米のそれぞれの国益から考えて、ウイン・ウインの関係と言えるような、お互いにとって好ましい結果になる、そういった結果を目指していく議論であるということを申し上げているんだと考えます。

笠井委員 今も私、申し上げたんですが、かつて日米間では、日米構造協議や日米の経済調和対話などが繰り返されて、日本と米国の大企業に都合のよい規制緩和とか、公共投資の大幅拡大などが強行されてまいりました。

 最近のTPP交渉の国会審議の中でも明らかになったのは、農業の重要五品目で無傷なものは一つもないというようなことを含めて、日本側の譲歩が明確になったわけであります。

 今回の日米経済対話も、トランプ米政権の利益第一の要求に応える内政干渉の仕組みになるという危険が濃厚じゃないかと思うんですけれども、そういう心配、全くありませんか。大臣、心配ない、こうおっしゃるんでしょうか。

岸田国務大臣 TPPの議論においても、我が国は、我が国の国益を考え、全体をしっかり見ながら、あるべき姿を議論してきました。日米のこの議論の中にあっても、これは相手のあることではありますが、ともに日米の経済関係、これは世界をリードする、世界の繁栄にも大きく影響する大変重要な関係であるという観点から、両国関係を充実させなければならない、そういった思いで議論が進んでいくものだと思います。

 そういったことをウイン・ウインの関係だと申し上げていると認識をしております。ぜひこうした議論を続けていきたいと思います。

笠井委員 本当の国益を考えられるんだったら、この日米経済対話の枠組みではないだろうと、私は強く言いたいと思います。

 我が党は、二月の日米首脳会談が、米国第一を掲げるトランプ政権に対して、安倍総理が日米同盟第一の立場で追従する、安保政策でも経済政策でも異常なトランプ追随が際立つものになったということで、厳しく批判をいたしました。日米経済対話の新たな枠組みが日本に対する新たな経済的内政干渉の枠組みになることが強く危惧されるとあのとき表明いたしましたが、それが現実のものになりつつあると言わざるを得ません。

 トランプ政権は、牛肉、米、自動車などの輸出拡大を狙っていて、ずるずると交渉を続けるというのは非常に危険だと思います。

 そのような日米の経済対話、そして、日米FTAというのは反対であります。米国の利益第一を許さずに、対等、平等の日米経済関係こそ確立すべきだ、このことを強く申し上げて、きょうの質問は終わります。

     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 次に、原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 これより趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 平成二十年、主要先進国を含む原子力供給国グループは、インドが表明した約束と行動と呼ばれる核実験モラトリアム等の政策を前提として、インドへの原子力関連資機材等の移転を例外的に可能とする決定を行いました。これを受け、インドは、核実験モラトリアム等の政策を着実に実施しつつ、各国との原子力協力を進めてきています。このような経緯も踏まえ、平成二十二年六月以来、インド政府との間でこの協定の交渉を行った結果、平成二十八年十一月十一日に署名が行われた次第であります。

 この協定は、原子力の平和的利用に関する我が国とインドとの間の協力のための法的枠組みを提供するものであり、核物質等の平和的非爆発目的利用、国際原子力機関による保障措置の適用、核物質防護措置の実施、インドにおける再処理等につき定めております。

 また、万が一インドが核実験を行った場合については、この協定は理由を問わず終了できることから、我が国としてこの協定を終了させることとしています。

 この協定は、原子力の平和的利用についてインドが責任ある行動をとることを法的に確保するものであり、この協定を締結することは、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながります。

 よって、ここに、この協定の締結につき御承認を求める次第であります。

 何とぞ、御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

三ッ矢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十二分散会


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