衆議院

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第14号 平成29年5月12日(金曜日)

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平成二十九年五月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 三ッ矢憲生君

   理事 黄川田仁志君 理事 新藤 義孝君

   理事 土屋 品子君 理事 中山 泰秀君

   理事 長尾  敬君 理事 小熊 慎司君

   理事 寺田  学君 理事 岡本 三成君

      青山 周平君    今津  寛君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      大野敬太郎君    奥野 信亮君

      鬼木  誠君    金子万寿夫君

      木原 誠二君    木村 弥生君

      熊田 裕通君    佐々木 紀君

      島田 佳和君    鈴木 隼人君

      辻  清人君    松島みどり君

      山田 美樹君    石関 貴史君

      吉良 州司君    中川 正春君

      原口 一博君    渡辺  周君

      浜地 雅一君    笠井  亮君

      足立 康史君    玉城デニー君

    …………………………………

   外務大臣         岸田 文雄君

   外務副大臣        薗浦健太郎君

   外務大臣政務官      小田原 潔君

   外務大臣政務官      滝沢  求君

   政府特別補佐人

   (原子力規制委員会委員長)            田中 俊一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  横田 真二君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  小野 功雄君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 吉岡てつを君

   政府参考人

   (消防庁国民保護・防災部長)           杉本 達治君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   山崎 和之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 三上 正裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 小野 啓一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   相川 一俊君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局南部アジア部長)      梨田 和也君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   茶谷 栄治君

   政府参考人

   (林野庁国有林野部長)  本郷 浩二君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  平井 裕秀君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 早水 輝好君

   政府参考人

   (原子力規制庁次長)   荻野  徹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   外務委員会専門員     辻本 頼昭君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     金子万寿夫君

  辻  清人君     青山 周平君

  松島みどり君     奥野 信亮君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     木村 弥生君

  奥野 信亮君     松島みどり君

  金子万寿夫君     鬼木  誠君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     木原 誠二君

  木村 弥生君     辻  清人君

同日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     武井 俊輔君

    ―――――――――――――

五月十二日

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)

 社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第一三号)

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件(条約第一四号)


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     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 これより会議を開きます。

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長山崎和之君、大臣官房国際文化交流審議官下川眞樹太君、大臣官房審議官三上正裕君、大臣官房参事官小野啓一君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長相川一俊君、アジア大洋州局南部アジア部長梨田和也君、内閣官房内閣審議官横田真二君、内閣参事官小野功雄君、総務省大臣官房審議官吉岡てつを君、消防庁国民保護・防災部長杉本達治君、財務省主計局次長茶谷栄治君、林野庁国有林野部長本郷浩二君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官平井裕秀君、環境省大臣官房審議官早水輝好君、原子力規制庁次長荻野徹君、防衛省防衛政策局次長岡真臣君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田(仁)委員 自由民主党の黄川田仁志です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今週は、日本に対して影響力のある国の選挙が世界で二つございました。一つは、韓国の大統領選挙です。もう一つは、フランスの大統領選挙がございました。

 前回の外務委員会におきまして、韓国の大統領選挙についての質問があったと記憶しておりますが、フランスの大統領選挙についての質問はございませんでした。そこで、本日の議題の日印原子力協定についての質問に入る前に、このフランス大統領選挙の結果についての質問をしたいと思っております。

 極右政党の国民戦線のルペン氏に、議会内に議席がない新興勢力の「前進」を母体とするマクロン氏が勝利し、新大統領になることになりました。マクロン氏は経済政策もオープンであり、EUの枠組みも維持するということで、昨今混迷しておる世界政治にとってもよかったのではないかと思っておりますが、岸田大臣から、このフランス大統領選挙の結果においての見解をお聞きしたいと思います。

岸田国務大臣 先般のフランスの大統領選挙ですが、今委員の方から紹介がありましたように、マクロン候補が次期大統領に当選をされたわけですが、安倍総理から、その直後に祝意のメッセージも送らせていただきましたし、九日夜には、安倍総理とマクロン次期大統領との間で電話会談も行い、直接祝意も伝達させていただきました。

 マクロン次期大統領の勝利は、国際社会で内向きな傾向あるいは保護主義的な動きが広がる中にあって、開かれた社会や自由貿易にとって象徴的な勝利であり、EUへの揺るぎない信任である、このように我が国としても受けとめております。

 我が国とフランスは、自由、民主主義、人権、法の支配、こういった普遍的価値を共有する特別なパートナーですが、安倍総理とマクロン次期大統領が九日の電話会談で一致したとおり、国際秩序への挑戦が国際社会の中で続いております。そういった中ですので、世界の平和と繁栄のためにも、日仏間の協力を一層強化していきたいと考えています。

 我が国は、強い欧州を支持しております。今後、EUが前進していく上で、マクロン次期大統領がリーダーシップを発揮することを期待したいと考えます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございました。

 このマクロン氏でございますが、今、岸田大臣がおっしゃったように、自由貿易に対してのしっかりとした考え方、また、EUへの信任、これに対して日本も注目をしているわけでございますが、マクロン氏の選挙公約そのものには、日本のテレビ、新聞等、報道を含めて、余り注目がございませんでした。

 マクロン氏の選挙公約を見ますと、原発依存度を現行の七〇%から二〇二五年までに五〇%にして、再生可能エネルギーをふやしていくというふうにしております。原発大国であるフランスを含め、ヨーロッパの国々を中心に、原発依存度を下げていくという傾向、また、再生エネルギーをふやしていくという方向であると私は認識しております。

 他方で、本日議題となっておりますインドを含めて、新興国や途上国では、経済発展のために原発の設置をふやしていくという動きがございます。インドでは、原発依存度を現行の三%から二〇五〇年までには二五%にしようとしております。

 そこで、経済産業省にお聞きしたいと思います。

 ヨーロッパでは原発を減少していく傾向にありますが、新興国におきましてはふやしていくということでございます。総じて、世界を取り巻く原発の現状、そして、将来の見通しについてどのように評価をしているか、教えていただきたいと思います。

平井政府参考人 世界の原発市場についてのお尋ねでございます。

 まず、現状でございますけれども、国際原子力機関IAEAによりますと、世界の原発の発電容量、現在、二〇一五年度実績で三・八億キロワットの状況でございます。

 今後、二〇三〇年の世界の原発電容量の見通しというのもあわせてIAEAが出してございます。二つのケースをお示ししているようでございまして、まず、低位ケース、それほど伸びないケースでは三・九億キロワット。ただ、高位ケースということで、大きく伸長するということを前提とするものについては六・〇五億キロワット、約六割ぐらいの増加ということを見込んでいるところでございます。

 長期的には人口の増加、要すれば需要の増加、発展途上にある地域の電力需要についても同様でございます。気候変動や大気環境の悪化への対応という点におきまして、そうした潜在的要因については、原子力発電ということのメリットということを、各地でそれを評価しているというところでございまして、電源構成上、重要な役割を果たすということをしているようでございます。

 さらに、御質問の中にございました地域別のところでございますけれども、原発発電容量で申し上げますと、東アジア地域では、低位ケースでも一・四倍、高位ケースになりますと二・三倍、中東・南アジア地域では、同じく四・〇倍から六・九倍という値が予想されているところでございます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 今、エネ庁のおっしゃられた見通しでは、今後、原発の容量は現状維持、または六割以上ふえていく可能性があるということで、市場も拡大していくのではないかということであったと思います。

 また、原発の評価におきましても、電源構成上重要であるということ、そしてまた、地域的に見ますと、途上国におきましては、今後とも原発の市場、容量とも伸びていくということであると思います。

 そこで、外務省にお聞きしたいと思います。

 やはり原発市場、また、原発の設置が途上国において伸びていくということであるならば、日本が原子力発電にかかわる国際協力ということ、平和協力、また技術的な協力を含めて、やっていかなければならないと思います。そのあたり、どのように考えているか、教えていただきたいと思います。

相川政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、原子力協定の枠組みを整備して二国間の原子力協力を行うに当たりましては、原子力の平和的利用、それから核不拡散の観点、それから相手国の事情、それから日本との協力に関する相手国の意向等を総合的に勘案しつつ、世界で最も厳しいレベルの安全性を追求していくという我が国として、福島の教訓として安全神話に陥ってはいけないということで、そういう教訓を国際社会と共有して、相手国と安全最優先で取り組んでいきたい、そういうふうに考えております。

黄川田(仁)委員 今外務省がおっしゃったとおり、一番大事なのは、やはり福島第一原発での事故の教訓をしっかりと生かしていくということであると思います。

 その上で、日印の原子力協定におきまして、この教訓を生かした安全対策等の支援を積極的に推進していかなければならないという観点から、この協定にどのようにその教訓が反映されているのでしょうか、教えていただきたいと思います。

梨田政府参考人 本協定におきましては、第二条三におきまして、協力分野の一つとして、相互に関心を有する原子力の安全に係る事項が規定されているところであります。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 その第二条3というところでございますが、この条文だけではまだまだ不十分であると思います。やはり、福島第一原発の事故の経験を生かすということが我が国の絶対使命であると考えます。このようなことが、被災地福島の人々に寄り添うという意味でも大切だと思っております。

 よって、今回の原子力協定の対象国であるインドに対して、ロシアやフランス等他の原発建設支援国とは異なる、日本だからこそできる、最先端の安全基準に基づく原発技術の支援、システム構築への協力に努めなければなりません。

 そこで、経済産業省にお聞きしたいと思います。

 政府として考えている日本ならではの支援の具体的な内容は、この協定で書かれていること以外にございますでしょうか。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 福島第一原発の事故の教訓を原発を輸出するに当たっても生かしていくべきであるという先生の御趣旨、我々としても、そのような方針で原発輸出についても臨んでいるところでございます。

 まず、安全の確保というところにつきますと、各国、国民の安全を確保するというのは国家の基本的責務であるという考えからなんだと思いますけれども、その安全確保は立地国がやるというのが基本ではあるわけでございます。

 ただ、我々としては、その上で、福島第一原発事故を経験したという世界でも唯一の国といたしましては、原発の輸出に当たっては、民間事業者と協力しながら、相手国が高い安全性、信頼性の確保に取り組んでいくことを適切に確認した上でこれを進めていくという方針で臨んでいるところでございます。これは、我々がこうした事故を経験した国として、世界の原子力安全の向上に貢献するという観点から必須なことではないかということで進めているものでございます。

 具体的には、この日本の経験というのを十分に説明いたした上で、安全最優先で臨むという相手国の姿勢をまず政府間で確認させていただいて、新興国などにつきましては、必要に応じて、相手国の人材の育成それから制度整備面での支援といったようなことを行っていくというのが一つでございます。さらに、日本企業に対しては、福島の教訓を踏まえた知見や技術を生かして取り組むよう徹底して周知、指導をしているところでございます。

 こうした原発の輸出に当たっては、我々のこれまでの福島の事故、それからそこの復興に当たっての我々が得た知見といったようなことも含めまして、高い安全性を求めていくという姿勢で臨んでいるところでございます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 再三強調いたしますが、この福島第一原発事故の教訓を生かした形での協定づくり、また技術協力、これを外務省そして経産省を中心として行っていくということを強く望みます。

 そして、今後、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、サウジアラビアなど、他の国々とも新たに原子力協定を締結していこうということがあるというふうに承知しております。

 日本がこれらの国々の電力開発に協力していくために、原子力発電が中心であるということであるとは思いますが、この原発のみならず再生可能エネルギーに関する技術支援など、包括的なエネルギー政策支援を積極的に進めていくべきだと考えておりますが、外務省の御見解をお聞きしたいと思います。

相川政府参考人 委員御指摘のとおり、原子力発電、それから放射線医療等に加えまして、再生エネルギー等に関しても積極的に協力していくことが非常に大事だと考えております。

黄川田(仁)委員 前回の委員会でも御紹介がありましたとおり、この日印の原子力協定以外でも、インドにおきましては安倍首相とモディ首相との間でいろいろな包括的なエネルギー政策の取り組みが交わされたというふうに承知しております。ですので、今後とも、ほかの原子力協定を結ぼうとしている国に対しても、多面的なエネルギー協力、こういうことをしていくように政府にお願いをしていきたいというふうに思います。

 以上で日印原子力協定に関する質問を終わらせてもらいたいと思いますが、まだ時間が残っておりますので、一般外交に関する質問をさせていただきたいと思います。

 ユネスコの世界の記憶について少しお尋ねしたいと思っております。

 中国の言う南京大虐殺の文書が二〇一五年の十月に世界の記憶として登録されてしまったことは御案内のとおりであります。

 この世界の記憶に登録された文書は開示義務がございます。したがって、日本は中国に対して、この南京事件に関する文書の公開をずっと求めてまいりました。しかしながら、中国はこの文書の開示を固辞してきたと承知しております。

 その後どのような現状になっているか、また今後の対応について教えていただきたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘ございました南京事件関連資料につきましては、現在に至るまで、いかなる資料が実際に登録されたのか、公開されておりません。また、我が国の資料開示要求に対してアクセスが認められていないという現状はまだ変わっておりません。

 我が国としましては、これまで、中国のみならずユネスコに対しましてもこういった現状について説明いたしまして、累次にわたり資料へのアクセスを強く求めてきているところでございます。引き続き、こういった申し入れ、働きかけを多面的にやっていきたいというふうに考えております。

黄川田(仁)委員 非常に残念な結果と言わざるを得ません。

 ユネスコの世界の記憶の文書開示においては、中国にとっては義務でございます。日本にとっては、アクセスができるということは権利でありますので、引き続き外務省には、開示させるよう努力していただきたいと思います。

 さて、先日、世界の記憶に関する記事を見ました。五月六日の読売新聞の記事で、「「記憶遺産」事前協議制に」という見出しで一面に載っておりました。文章の中では、「「世界の記憶」(世界記憶遺産)」となっていましたが、マスコミには正しい名称で報道していただくようお願いをしたいというふうに思っております。一面の見出しの方が、記憶遺産ということが堂々と前面的に載って、事前協議制にということでありましたので、沖ノ島の世界遺産等の報道もありますので、世界の記憶が世界遺産と混同されてしまうおそれもあり、誤解を招く可能性もありますので、政府として、世界の記憶だということで、何々遺産とは違うということをしっかりと、報道に対しても正しい形で報道するよう求めていただくよう、お願いをしたいと思います。

 さて、少し前置きが長くなりましたが、世界の記憶の事前協議制について、その概要を教えていただきたいと思います。

 今までの制度と比べて、どういう点が改善されることが期待できるかということを説明していただきたいと思います。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 これまで我が国は、ユネスコの世界の記憶事業がユネスコ設立の本来の趣旨と目的を推進するものとなるように取り組んでまいりました。

 そうした中で、先ほど委員から御指摘ございましたように、世界の記憶の制度改善につきまして、専門家によって検討が進められてきたところでございまして、本年三月、その専門家によって進捗報告書というものが作成され、まとめられたところでございます。そして、この五月に行われました執行委員会におきまして、こういった制度改善にかかわる進捗が見られていることを歓迎するという旨の決議が執行委員会全会一致で採択されたところでございます。

 さて、その中身でございますけれども、その進捗報告書の中におきましては、全ての申請案件はユネスコのホームページで公開し、コメントや反論を受け付けること、さらには、対立する案件については関係当事者間で対話をすることといったような内容がまとめられているところでございます。

 今後のプロセスでございますけれども、こういった進捗の報告書を踏まえまして、本年秋の執行委におきまして、ユネスコの事務局長が執行委に対して最終報告書を提出するということが要請されているところでございます。

 いずれにしましても、我が国といたしましては、世界の記憶事業がユネスコ設立の本来の趣旨と目的を推進するものとなるように、制度改善の実現に向けて、引き続き全力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。

黄川田(仁)委員 御説明ありがとうございました。

 世界の記憶が、関係当事者間で事前に通知がなされ、意見がしっかりと言える制度になるということで、大きな改善になるというふうに期待をしております。

 秋をめどに制度改善が行われるということですが、このスケジュールをおくれさせることなく、しっかりとユネスコの動きを注視して、外務省としても力強く制度改善に向けて頑張っていただきたいというふうに思っております。

 また少し話題がかわりますが、この世界の記憶に慰安婦に関する資料を登録しようという動きがあります。申請は既に行われているというふうに承知しております。ですので、これに関連して、最後に岸田大臣に対して御質問をしたいと思います。

 韓国の文在寅新大統領は、二〇一五年の末の慰安婦問題をめぐる日韓合意に対し、再交渉の公約を掲げておりました。しかしながら、我が国としては、再交渉には応じず、新政権に対しても引き続き合意の誠実な履行を求めるということで変わりはないでしょうか。このことを改めて岸田大臣に確認したいと思います。

岸田国務大臣 御指摘のように、韓国の文在寅新大統領ですが、選挙期間中にさまざまな発言をされておられたことを承知しています。

 ただ、新政権の具体的な政策については、これから首相や閣僚の人事が確定してから先の話になりますので、引き続き注視をしていかなければならないと思いますが、御指摘の慰安婦問題、一昨年末の日韓合意につきましては、これは日本と韓国の両国間で約束したものです。そして、この合意が公表された後、多くの国から、この合意を高く評価する、こうしたコメントが発せられました。こういったことを考えますときに、両国において、この合意を着実に実施すること、履行するということ、これは極めて重要なことであると認識をしております。

 そして、十一日、昨日、日韓首脳電話会談が行われたわけですが、その際に、安倍総理からも、日韓合意を含む二国間関係を適切にマネージしていきたい、こうした旨の発言を行っております。

 政府としては引き続き、韓国側に対し、粘り強く、あらゆる機会を捉えて合意の着実な実施を求めていきたいと考えます。

黄川田(仁)委員 ありがとうございます。

 合意の着実な履行をしっかりと求めていくというお言葉を本委員会でしっかりと受けとめさせていただきました。岸田大臣のリーダーシップのもと、外務省を挙げてしっかりと頑張っていただきたいというふうに思います。

 以上で私の質問を終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 皆様、おはようございます。公明党の岡本三成です。

 一昨日に続きまして、質問の機会をいただきました。ありがとうございます。

 まず、大臣にお伺いをしたいと思います。

 一昨日のこの委員会の議論の中でも、この協定と公文をあわせた上で、実際の協定を破棄するときの一つの要因として、インドが核実験を行うというようなことが議論されました。政府側からは、この公文もあわせたときに、そのこと自体は法的に担保されているというふうな御発言があり、質疑者側からはそこに若干の疑問も残るいろいろな議論があったわけですけれども、そのときの議論の一つで、核実験の定義は何なんだというふうな議論がありました。私は非常に重要なポイントだと思っているんです。

 実際には、CTBT等でも規定をされておりますけれども、核爆発を伴うような実験ということがある一方で、現実的には、臨界を伴わないような、核爆発を伴わないような核実験というものの技術も開発をされてきております。

 Zマシンと言われているマシンが今話題になっていますけれども、このマシンというのは物すごいボリュームのエックス線を発射するんですね。エックス線を発射しますと、照射をされたその物質の中では、核爆弾と同等の高圧で高温な状態をつくり出すことができます。

 ですから、このエックス線を例えばプルトニウムに当てますと、プルトニウムがその後にどういう状況になったかという、その物質を分析することによって、爆発は伴わないけれども、核爆弾の技術の向上、また、今ある核爆弾の維持向上ということができるような技術が世界じゅうで開発をされていて、一部には、そのZマシンを使った実験も行われているという報道もあります。

 そう考えますと、今回のこの協定を破棄するときの趣旨というのは、必ずしも、何かの事象、例えば爆発が起こったら、それは核実験とみなして今回の協定をやめることに私たちとして意思表示、行動を起こしますよということではなくて、核爆弾をつくるために、または、さらに技術を向上させるためにそういう実験を行ったときには、私たちが期待をしている今回の技術供与の目的とは異なってくるので今回の協定は破棄するということを相手に納得していただくことが大切なんだと思うんですね。

 一昨日も私は申し上げましたけれども、この協定自体は、理由が何であったって、例えば、あなたのことが気に入りませんから一年後にはやめますと日本が言ったってやめられることになっています。ただ、大切なことは、そのときに、日本側は理由を説明しなければいけない義務があることになっていますので、仮にこの協定が破棄されたとしても日印関係は重要ですから、その十年後、二十年後を見据えて日印関係はよりよいものをつくっていかなければいけないので、この理由で協定を破棄しますというふうに言ったときに、その理由をインド側に納得していただく、この理由だったら協定を破棄されてもしようがないなと思っていただくことが重要なんだと思うんです。

 一昨日の政府の答弁、急な質問だったかもしれませんけれども、残念ながらあやふやなところもありましたので、核爆発を伴うという枕言葉をつけることなく、核実験と明らかに認識できるような実験を行ったときにはこの協定はやめるというふうな政府の方針でいいかどうかということを確認させていただきたいと思います。

岸田国務大臣 まず、今回インドと結んだ協定においては、これは、一昨日、再三説明させていただきましたように、CTBT上で定義されているような核実験を行った場合には、確実に協定を終了して、そして協力を停止する、協力を終了させる、こういった内容になっているわけですが、委員の御質問は、未臨界実験、この場合はどうなのか、これについて明らかにしてもらいたい、こういった御質問であったと思います。

 それについては、まず、現実、未臨界実験を考えた場合に、未臨界実験の定義というのは国際社会でまだ確定はされていません。そして、現実問題、未臨界実験というのは、検知すること、これを把握すること、これが難しい、なかなか把握できないという現実があることは事実であります。

 ただ、その一方で、インドに対しては、核兵器のない世界を目指す、こうした我が国の立場において、核兵器の開発につながるあらゆる行為、これは行われるべきではない、こういった働きかけを行ってきたわけです。

 その中で、今回、協定を結びました。そして、協定の中に、必要であれば、理由のいかんを問わず、協定の終了、協力の停止、これを行うことができる権利を確保したというのがこの協定のありようでありました。

 よって、万が一、インドが核兵器の開発につながるいわゆる未臨界実験を行ったことを我が国が確認した場合、これは、原子力の平和利用というこの日印原子力協定の目的、あるいは、核兵器のない世界を目指す、こういった我が国の立場に基づいて適切に判断し、しっかり対応をしていくということは申し上げておかなければならないと思います。

 未臨界実験、その定義とか、それから把握が難しいという現実の中でありますが、しかし、そうであっても、この協定に基づいて我が国としての立場からしっかり対応するということ、これは私の立場からしっかり申し上げておきたいと思います。

岡本(三)委員 期待したとおりの御答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 要は、いろいろ見つけるのが難しいかもしれないけれども、万々が一明らかになったときには、相手の意思が核兵器の開発であれば、どういう実験であっても今回の協定の停止につながるような判断を適切にしていただけるというふうな御答弁だったと受け取りました。

 続きまして、いわゆるCSC条約とインドの国内法のそごがあるのではないかという問題について質問をさせていただきたいと思います。

 インド自身も二〇一六年にCSCに加盟をしておりますし、ただ一方で、国内法の中での供給者責任のそごがあるのではないかということはずっと言われております。実際、一部報道によりますと、アメリカのGEは供給者責任ということが余りにも大きなハードルとなったがゆえに受注競争から脱退したというふうな報道もされております。

 一昨日のこの委員会の中の答弁というのはどういうやりとりだったかというと、いやいや、もともとCSCの中で事業者が全部負担をすることになっています、ただ、例えばサイドレターを別途入れる、条項を追加するようなことで、供給者が事業者に対してその損害賠償の責任を負いますというふうに別途規定をすれば、それは当然、商行為としてあり得るでしょうというふうな議論だったというふうに思います。

 普通に考えますと、日本の事業者の方々、万々が一何か原発で事故が起こったときに、一つの事業者が負えるような損害ではないことは明確ですので、そういう供給者の損害の責任を負うような受注競争に入っていくような日本の事業者というのはおよそ想定できないというふうには思います。

 であるがゆえに、サイドレターを入れなければいけないとなった瞬間に、その受注競争には入っていかないんだというふうに普通は思うんですけれども、ただ、翻って考えますと、もし、サイドレターを入れてもらうというようなことが、インド側の、原子力発電所の建設を供給者に委託する上での前提だとすれば、サイドレター、供給者責任を果たさないというようなことであれば、その受注競争には日本の企業は入っていくことはできないわけですね。

 実際の原子力発電所の建設の受注というのは民間民間の取引ですから、別に、政府が、この協定、日本の企業の販売促進のためにやっているわけではないと思いますので、事前にそういうことを合意したり話をつけたりするということではないと思うんですけれども、ただ、この委員会でこのように議論をしていて、この協定をつくりました、けれども実際には入り口のところで、原発の供給者の責任がなければ、損害賠償の責任をとるというふうなことがなければインド側としては購入することを一切しませんというふうに言われてしまいますと、この議論自体が何の意味もないことになってしまいます。

 したがいまして、今、外務省がインド側と交渉する中で、こういうふうな供給者責任がなくても十分に受注競争の中には参加できるというふうな、そういう手応えを感じていらっしゃるのか、また、今後、実際の受注になったときに、政府側として、今回の協定のバックグラウンドもしっかりと含めた上で、インド側政府に適切な対応をしていくような御準備があるのかどうか、確認させていただきたいと思います。

梨田政府参考人 現時点におきまして、今委員から御指摘のあったように、インド政府が事業者にそのような求償権を課すというような情報は私どもは持ち合わせておりません。

 以上申し上げた上で、私どもとしては、基本的には事業者が責任を負うということを前提にして、委員御指摘のとおり、契約の条項によっては例外があるということではありますが、いずれにしても、大事なことというのは、インドの国内法令がCSCに適合する形で運用されるということはインド政府の義務であると考えております。

 また、具体的なプロジェクトを遂行するに当たって、事業者及び供給者自身がその契約内容というものを精査する、それが非常に大事なことであって、最後に、日本政府としては、必要に応じて関係する民間企業とともにインド側に働きかけていきたい、そのように考えております。

岡本(三)委員 ぜひ、適切な後押しをお願いしたいと思います。

 今回の協定、私は国際貢献の一環だというふうな側面でも捉えています。

 二〇一三年、一四年とインドを訪問いたしましたけれども、大気汚染がすごいんですね。北京よりも、今、PM二・五の水準はニューデリーの方が高いというふうに言われています。さまざまな要因はあるんですけれども、最大の要因の一つは火力発電所であります。実際に、インドの人口が増大をしていく中で、電力供給が追いつかないということで、比較的燃焼効率の悪い火力発電所をフル稼働させていますので、ああいう大気の状況になっていく。

 一方で、今回、原子力発電所の建設がインドの中で進んでいくことができれば、少なくとも大気汚染の状況を改善していくということにおいてはプラスの要因として働くのであろうというふうに思っております。

 そこで、この大気汚染を予防していく、温室効果ガスの削減に取り組んでいくということの側面で考えますと、パリ協定というものがございます。日本も含めまして全世界がこれに取り組んでいこうとしているわけですけれども、残念ながら、トランプ大統領は、御自分の公約としてこのパリ協定から脱退をするということをうたわれまして、そして大統領に当選をされました。

 アメリカは温室効果ガスという側面でいうと世界第二位の排出国でありますし、今回のインドに対する私たちのこの協定の意義も含めまして、そしてまた日本とアメリカの緊密な関係を考えましても、ぜひ、日本からもアメリカに対して、パリ協定に残って、積極的に先頭で働いて、他国をも後押ししていくような環境をお願いしていくべきではないかというふうに思うんです。

 一部の報道ですと、ティラソン国務長官はパリ協定には非常に前向きだというふうな報道もありますし、先日の外相会談で、岸田大臣とティラソン国務長官の中でこの話題が出たようにも聞いていますけれども、実際にはまだ、トランプ大統領の口から、パリ協定の中にとどまってしっかりとこれを進めていくというふうな発言は出ておりません。

 先ほど黄川田委員から御紹介のあったフランス大統領のマクロン大統領は、トランプ大統領が当選された後、全世界に向けてユーチューブで映像を発信しておりまして、何と言っているかというと、トランプ大統領はパリ協定から脱退することを表明されている、フランスは、そして私自身、大統領自身は、このパリ協定にコミットしている、アメリカで研究をされている皆さん、アメリカでは予算もなくなるかもしれません、どうぞフランスに来てください、イスラム教徒の方でも結構です、フランスはイノベーションを求めています、パリ協定にコミットしています、フランスはあなた方のネーションですと言って、仮にアメリカがこれから脱退をしてもフランスがその責任を負っていくぐらいの決意で取り組んでいるわけです。

 日本は、決意は共有するとしても、角度を変えて、日本とアメリカの関係の中で、アメリカにパリ協定の中でリーダー的役割をしっかりと果たしてもらうというような、アメリカに対する依頼やリクエストをぜひしていただきたいというふうに思うんですけれども、大臣のコメントをいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、我が国は、気候変動問題への対応、これは国際社会が協力して対応すべきグローバルな課題であり、その中にあって、米国の関与というのは極めて重要であると認識をしています。

 そういった認識のもとで米国に対して働きかけを行ってきたわけですが、今委員の方から御指摘がありました三月十六日の日米外相会談の中にあっても、パリ協定を含む気候変動問題への対応は国際社会で取り組むべきグローバルな課題であり、ともに連携していきたい、こういったことを私の方から述べ、日米外相間で引き続き意思疎通を図っていく、こういったことについてティラソン国務長官と一致をした、こういったやりとりをさせていただきました。それ以外にも、さまざまなレベルで、我が国の認識に基づいて米国に働きかけを行っています。

 この問題に関しては、報道等でもさまざまな報道が行われていますが、米国国内でまだ議論が続いているようであります。ぜひ、日本のこの立場、認識を引き続きさまざまなレベルで伝え続け、働きかけを続けていきたい、このように考えます。

岡本(三)委員 ぜひお願いいたします。

 続きまして、パリ協定に絡みまして、パリ協定の目指しているところの目的というのは、安倍総理が本部長を務めていただいております国連のSDGsの目標とも一致するところでありまして、広い意味で、持続可能な世界をつくっていくための最低限の必要条件だというふうに認識をしております。

 このSDGsに関しましては、ことしの七月にハイレベル政治フォーラムが行われる予定になっておりまして、日本も含めまして主要各国が取り組みの状況をレビューするようになっております。

 後ほど、このレビューの状況につきまして、どういうふうなことを発言するという準備をされているか、お伺いをしたいんですけれども、それに加えまして、ぜひ御提案したいことがあります。

 このSDGsというのは、やりますとコミットするのは各国なんですけれども、実際にその取り組みやイノベーションを起こしていくのは、その国の企業であったり、自治体であったり、NGOであったり、さまざまな市民社会と協力をしながらやっていく部分が多くなります。

 このSDGsは、本部長は総理に務めていただいているんですけれども、事務局は、実は今、外務省の中にあるというふうに理解をしております。

 が、実際には、例えば、今、世界の先進企業は、SDGsの基本的な価値というのを自分の会社の長期的戦略に生かして、企業戦略を立てて、さまざまな企業活動を始めています。これを、SDGsの戦略を自分の会社の長期的戦略に入れた会社だけをピックアップいたしましてポートフォリオを組むと、他の企業と比べまして著しく株価のパフォーマンスがいいような状況が起きています。

 これはどうしてかというと、企業の価値というのは、基本的には、その企業が将来稼ぐキャッシュフロー、利益を現在に引き戻したものなんですね。そうすると、どんなにもうかっている企業でも、五年後に潰れてしまったら、五年間の利益を現在価値に直したものが株価になります。ただ、SDGsのように、長きにわたって社会に必要とされているような戦略を共有されることを自分の企業戦略とシンクロさせていきますと、十年後も三十年後も五十年後も社会に必要な企業という取り組みになってきますので、会社が倒産するリスクというのは著しく低下します。そうすると、長きにわたって獲得することのできる利益を現在価値に直しますので、当然、株価というのは高いんですね。

 つまり、会社が倒産しない、そういう状況がつくれればつくれるほど株価というのは高くなっていきまして、その意味で、日本の企業が企業活動をより拡大して、GDPのパイを目標どおり六百兆円、それ以上に伸ばしていって、日本の景気をよくしていく上でも、企業活動をSDGsにシンクロさせていくというのはすごく大切で、日本の企業もそういうことを今取り組もうとしています。

 ただ、これは役所の中で主にどこが旗を振っているかというと、当然、経済産業省なんですね。経済産業省の役割は非常に重要です。

 各自治体も、その自治体において、住みよい町をつくって、人口をふやして、そして企業も誘致しながら、その地域を活性化するためにSDGsという大変重要な取り組みを各自治体ごとにやっていきたいと思っていて、世界でもそういう自治体がふえてきています。日本の中でどこがプロモートするかというと、役所でいえば、それは総務省であります。

 こういう、役所間を、非常に断続的にまたがったところをリードしていく事務局が外務省というのは、若干無理があるのではないかなというふうに思っているんです。ですから、この事務局を内閣官房にぜひ移して、そして省庁をまたがって取り組むような体制をつくっていくことが重要ではないかなというふうに思っているんですけれども、先ほど伺いました、この七月のハイレベル政治フォーラムに対してどういうレビューを御準備されているか、また、事務局を外務省から内閣官房に移すという提案に対してどういうふうにお感じになるか、御答弁をいただければと思います。

岸田国務大臣 まず、事務局の方についてお答えさせていただきます。

 委員がおっしゃるように、SDGsは国の内外における対応が求められますし、幅広い分野における対応が求められます。よって、本当に関係者も幅広く存在することになります。

 こうしたSDGsに対して、我が国としまして、SDGsの推進本部は、関係行政機関相互の緊密な連携を図り、総合的かつ効果的にSDGsに係る我が国の政策の実施を推進するため、総理を本部長として内閣に設置されたものであります。

 そして、委員の方から、事務局、外務省という御指摘がありましたが、これはSDGs推進本部設置要綱、平成二十八年五月二十日に閣議決定されたものを見ますと、「本部及び幹事会の庶務は、外務省その他関係行政機関の協力を得て、内閣官房において処理する。」、このように規定されておりますので、要綱上は、庶務は内閣官房にあるということになっています。ただ、その中で外務省が大きな役割を果たしているというのもまた委員の御指摘のとおりだと思います。

 ただ、これは要綱上は、今言ったように内閣官房に置かれていますので、もちろん外務省もしっかり汗をかかなければなりませんが、ほかの役所としっかりと連携することによって、政府一丸となって適切な対応がとられることが重要だと思います。

 基本的なこうした取り組みの重要性については委員のおっしゃったとおりだと思いますので、そういった目的が果たせるために事務局組織としてどうあるべきなのか、これについては、内閣官房に置かれた庶務を担当するこの仕掛けの中で、外務省もほかの役所としっかり連携しながら、あるべき姿を考えていきたいと思います。

 そして、次回のハイレベル政治フォーラムについての取り組みですが、まず、我が国としましては、これは国会との関係もありますので、しかるべきレベルの出席、しっかり検討したいというふうに思います。そして、日本政府としての取り組みについては、今日までこのSDGs推進本部等で議論した取り組みについて、これを会議において発表し、明らかにしていくということになるかと思います。

 ぜひ、SDGsの重要性を我が国がしっかり認識しているということ、そして、それに向けてどういった体制で臨んでいるかということ、そして、その中で今日までどれだけ具体的な成果が上がっているかということ、このことにつきましてしっかりと明らかにすることによって、SDGs全体の議論に貢献するようしっかり努力をしていきたい、このように考えます。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 最後に、在外公館の件につきまして質問をさせてください。

 私、議員になった後に、海外出張に何回か行かせていただきましたけれども、行った際に、その地域の大使等に常に質問することがあります。それは、大使館やまたは公邸等、これは日本の国有ですか、それとも賃貸ですかとお伺いをするんです。

 外務省の方にまずお伺いをしたいんですが、日本の大使館、総領事館、公邸等、現在幾つが国有で、幾つが借り上げか、教えてください。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 現在、我が国の大使館、総領事館、政府代表部や領事事務所等の事務所は合計二百四十四カ所ございます。うち七十八カ所が国有施設、百六十六カ所が借り上げの施設でございます。また、大使公邸、総領事公邸の数は合計二百九カ所ございます。うち百十七カ所が国有、九十二カ所は借り上げの施設となっております。

岡本(三)委員 要は、賃貸が物すごく多いんですね。二十年以上借り上げている大使館も多数あります。これは、普通の感覚でいいますと、十五年以上リースするのであれば購入した方が安いというのが普通の不動産市場です。にもかかわらず、多くの大使館、公邸等は賃貸なんですね。財政的には全く理論的ではない形なんですけれども。

 私が問題だと思っていますのは、中長期的にはそっちの方がより高いのに、なぜわざわざそういうことをやっているんだということ。もう一つは、さまざまなテロの危険が起こったときに、その公邸や大使館を警備上強化しよう、工事をしようとしたときに、賃貸だと家主の許可をとらなきゃいけないんですね。その家主が一々、ここをこういうふうにして工事してもらうのは困ると言ったら、そういう安全対策も打てないようになります。

 これは、きょう、財務省主計局の方にも来ていただいているんですけれども、単年度決算なので予算をやっていくのが難しいと思うんです、ちょこっとずつ買っているのも知っています。ただ、家賃だけで去年一年間で百億以上払っているわけです。物すごい金額ですから。聞くと、もし買ってくれるんだったら売りますよという家主も結構いるように聞いています。ちょっと購入のスピードを上げるような努力をぜひ財務省にお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

茶谷政府参考人 お答え申し上げます。

 在外公館及び公邸関連の予算につきましては、今委員御指摘のとおり、長期的なコスト低減の観点から、国有物件をふやしていく必要性については我々も認識しているところでございます。

 在外公館及び公邸に係る国有物件の推移について申し上げますと、平成二十五年には百八十九件であったものが、本年には百九十五件となっておりまして、この五年間で六件の増と着実に増加はしてきております。他方、在外公館及び公邸関連の予算についてということで申し上げますと、既存の国有物件の老朽化が進む中で、修繕費等もふやしていく必要性を検討していく必要がございまして、平成二十九年度当初予算におきましては、このニーズが外務省で強かったことを踏まえまして、修繕費を対前年度比で倍増以上となる二十二億円増の四十一億円に増額したところでございます。

 いずれにしましても、在外公館、公邸関連の予算のあり方につきましては、今申し上げたことを総合的に勘案しながら、委員の御指摘も踏まえて、今後外務省とよく議論をしてまいりたいと考えておるところでございます。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 これはぜひ、スピード感を高めていただきたいというふうに思います。実際に海外の公館等へ行かせていただいたときに、確かに老朽化しているようなところも多く見受けられますけれども、他国の、しかも日本よりも明らかに経済力等が落ちるような国に比べましても、我が国の公館がみすぼらしいという例も多々ありますので、公館のクオリティーというのは日本のプレゼンスを世界に高める上でも非常に重要ですから、予算の執行を早めていただいて、なるべく早く多くが日本の国有となるように御尽力をいただければと思います。

 では、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

三ッ矢委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 民進党の小熊慎司です。

 今、さまざまな世界状況の変化の中で、北朝鮮の無謀なああいったミサイル実験も続いていて、安全保障上のいろいろな課題が惹起していますけれども、そういった中で、憲法の問題でも、久々に岸田大臣の気概を見たな、九条に関して変えることはないと。改憲、護憲、また公明党さんの言っている加憲という問題もありますが、私、先輩の政治家が、まずは論憲が大事なんだと。それは岸田大臣も言っておられますけれども、最終的には国民投票で決するわけですから、やはり、しっかりとした国民的な議論が沸き起こってくるという意味では、岸田大臣が九条に言及されたことは大変よかったなというふうに思いますし、引き続き、平和、安全といった観点でさまざまな御意見を発信していただきたい。

 それはやはり国民にとっても必要な議論でもありますので、ぜひそういった観点から、今、平和が脅かされる核兵器の開発といった問題に関して、この日印の原子力協定は、これまでも議論がされてきましたけれども、大きく問われているところでもあります。

 そしてまた、日本がこれまで核廃絶、核不拡散に対して取り組んできたものについても、この道のりについても、この日印の原子力協定をどうするかということで、まさに国内外から、日本のこれまで積み重ねてきたものを崩すのか崩さないのかといったことも言われているわけでもあります。

 非常に重要な議論でありますので、これまで積み上げてきた議論ではありますが、この日印の原子力協定によって、NPTにも入っていないインドなんですけれども、逆に、核の不拡散体制に実質的に参加をさせるんだということを繰り返し主張されていますし、それなりの説明がなされてきましたが、まだ私はそこに理解が至っていません。改めてこの点について確認をさせていただきます。

岸田国務大臣 まず、インドはNPTに参加していません。要は、NPTの枠の外側にいるわけですが、こうしたインドを、このまま、インドの原子力の活動を国際的な不拡散体制の外側に置いたままにしておるよりも、何らかの形で国際的な不拡散の枠組みの中に取り組んでいく、こうした努力をすることは重要であると認識をします。

 その中にあって、原子力供給国グループ、NSGにおいては、まずNSGもNPTを前提としています、このNSGの中で、インドについてどう取り扱うのかという議論の中で、インドが発表している九月五日声明、約束と行動といった政策、こういったものに鑑みて、インドが表明した核実験モラトリアムの継続あるいはIAEAの保障措置の適用、こうした厳しい条件のもとに、例外的に、原子力の平和利用の部分において協力することを考えたらどうかということが、NSGで決定をされたわけであります。

 それに基づいて、各国が、インドの原子力の平和利用に関する協力を検討したわけですが、その中にあって、日本は、米国同様、最も厳しい協定を用意して、インドと交渉を行いました。当然のことながら、核実験モラトリアムの継続等を前提としている協定でありますし、加えて、本協定を締結することによって、インドに対し、我が国との関係において、協定の対象となる核物質等の平和目的に限った利用あるいは不拡散の義務、こういったものを負わせることになり、協定適用対象の核物質等についてはIAEAの保障措置の適用を常に受ける、こういったことを確保することになります。

 こうしたNSGの決定、そして協定、こうした全体の枠組みの中で、インドは原子力の平和的利用について責任ある行動を行う、こういったことが確保されると考えています。このことをもって、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させるということにつながると説明をさせていただいている次第であります。

小熊委員 二〇〇八年の九月五日声明も、これは外務省自身のホームページに出ていますけれども、ぎりぎりの判断で日本は採択に加わったと出ていて、今、さらっと大臣は説明されたので、全然このぎりぎりの判断という切実さが出ていない。

 NPTを否定しているインドにどうやって国際ルール、国際社会の中でたがをはめようかという、まさに苦肉の策なんですけれども、その後ろの背景には、もともとアメリカだって経済制裁をしていたわけですけれども、テロとの闘いということでこれを中断して、こういう方に持っていった。九月五日声明だって、これはアメリカが主導して、日本も渋々みたいなことを言って、外務省のホームページにも出ていますけれども、ぎりぎりの判断でやったけれども、約束を守らなかったら徹底的にやるということを書いているわけですよ、外務省自身が。

 今回のそういった哲学がこの日印の原子力協定に出ているのか出ていないのかといえば、これは民主党時代から始まったんですとみんな自民党の皆さんはよく言うけれども、俺は民主党じゃないから、まあ関係ないとは言えないけれども、そんな言い合いじゃなくて、誰が始めようと、誰が言おうと、どう現実が起きているかということが一番大事なので、結局、日印の原子力協定がここで出ているわけですから。

 考えると、これは高目のボールから始まったのが大分抜かれているわけで、交渉事だからしようがないといえばそのとおりなのかもしれませんが。抜かれた、穴のあいた部分はこれで本当にいいのかということで。これは核不拡散、核廃絶が大きな目的であって、そのために核実験に関して、しちゃいけないんだ、したらやめますよという規定になっているわけですよね。目的は、核兵器の不拡散ということが大目的ですよね。核兵器の開発をさせないんだということが大目的ですよね。

 細かい話に入る前に、この日印原子力協定は、今言ったとおり、国際社会の中でしっかり、NPTには入っていないけれども、インドに縛りをかけるんだというのは、核兵器の開発をさせないということが目的ですよね、大前提として、その趣旨は。細かい話に入る前に、この趣旨について確認したい。核兵器の開発をさせないということなんですよね。どうですか。

岸田国務大臣 インドを国際的な不拡散体制の中に取り組むということであります。こうした協定とあわせて、インドに対して、NPTへの加入、CTBTへの署名等、これを働きかけているのはそういったことからであります。

 ぜひ国際社会のこうした枠組みにしっかり入ってもらう、これが目的であると考えています。

小熊委員 核兵器の開発に関しては、この協定は大きな縛りがかかっていません。

 先ほど岡本委員、未臨界実験前のも出ました。まさにアメリカでさえ、一九九三年以降は核爆発の実験をしていないんですね。先ほど岡本委員が御紹介された実験は二〇一二年のアメリカのもので、今の時代でいえば、インドは過去に核実験を行っていて、それなりのデータを持っていますから、コンピューター上でシミュレーションもできるわけです。これも核実験とみなすのか、みなさないのか。どうですか。

 先ほど、岡本委員の、未臨界前のものはそれが確認された場合にはこれも核実験だというふうに答弁があったというふうに私も認識をしました。であるならば、こうしたコンピューター上のシミュレーションの核実験はどうですか。これは入りますか、核実験に。

岸田国務大臣 未臨界実験、コンピューター上の実験、これを確認することは現実問題難しいわけですが、こうした核兵器の開発につながる未臨界実験を確認した場合には、これは日本としてしっかりと対応するということを先ほど申し上げた次第であります。

小熊委員 今、核兵器の開発と大臣の言葉から出ましたけれども、核兵器というのは弾頭だけじゃないわけですよね。ミサイルもあるわけです。

 では、核実験ではなくて、核弾頭を運ぶミサイルの開発に関して、これが確認された場合はどうですか。

岸田国務大臣 この協定上、ミサイルの部分について触れるものはないと思います。

 先ほど申し上げました、これは、国際的な不拡散の枠組み、NPTがあり、そしてCTBTがあり、FMCTがあり、こうした国際的な不拡散の体制にインドを取り込んでいく努力が重要であり、そのための具体的な対応の一つであるというふうに認識をしております。

 インドも含めて国際社会全体で、核兵器を信頼関係のもとに低減させていき、最後は核兵器のない世界に持っていく、こうした枠組みの中にインドを取り込むことが重要であるという認識のもとに、こういった具体的な取り組みも行っていると考えています。

小熊委員 大臣は広島ですから、とりわけ核兵器廃絶に対する思いは人一倍強いと思いますけれども、実際、インドの原子力協定の問題点というのはこれまでずっと議論もされてきましたけれども、核兵器の開発をこれ以上させないんだ、これが必要なんだ、この原子力協定はそれに大きく資するんだと言っていながら大きな穴があいていて、そんなことにならないだろうということで議論しているわけですよ、我々も。

 今言ったとおり、核兵器の開発を、縛りをかけると言っていながら、ミサイルは入っていないのを知っていて今質問しましたけれども、結局、現実的には、今言った、コンピューター上でやったってなかなか見つけにくい、核弾頭を運ぶミサイルの開発も、これがどうなのかというのがわからない。結局、核兵器の開発が、これによって縛りがきちっとかけられるものではないということが今明らかになったと私は思いますよ。

 枠組みとか入れるとか、それは議論はしていくでしょう。やめてよ、わかりましたみたいな話になってきますけれども、実際はできちゃうんですよ。できるし、今言ったとおり、核実験もできて、過去にインドはやっているし、コンピューター上のシミュレーションで、発見されないように実験もできるし。あとは、兵器というのは、これはやはり年数がたてば老朽化するから常にバージョンアップをしていかなきゃいけないという意味では、地下核実験をやらなくたってバージョンアップできるという今技術的な状況ですよ。ミサイルだって更新していかなきゃいけないわけですよ。これも縛りがかかっていないから、それは更新されますよ、核兵器だって。そういう状況の中で、厳しい条約だなんて言えないんですよ。甘々の条約なんですよ。

 それで、次に移ります。(岸田国務大臣「委員長、委員長」と呼ぶ)いや、僕、質問していますから、いいの。

 次に……

三ッ矢委員長 大臣からちょっと答弁を求められておりますので。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 今現実は、インドはNPTには参加していません。要するに、今、国際社会の不拡散体制の外側に存在するわけです。全く外側にいるインドを何らかの形で不拡散の取り組みに参加させようということで、国際社会で協力をしているわけです。

 さまざまな抜け穴があるではないか、さまざまな指摘がありました。しかし、少なくともインドの原子力の平和利用の部分については、インドに責任ある対応、行動をとらせる、こういったことを確保するものであり、そして、その部分においてはIAEAの保障下に全て置かれるという枠組みを、つくっている国もありますし、日本もこれからつくろうとしているわけです。

 全く不拡散の枠組みの外側にいるインドに対して、国際社会と協力して不拡散体制に参加させるという意味において、これは大きな前進につながると思います。意味がないということはないと我々は思っています。

小熊委員 二〇〇八年の声明からのこれまでの経過の中で起きてきたことや、あのとき外務省はぎりぎりの判断といって、採択に参加をしている中での価値観というか、インドに対する物の見方というのは大きく変わってきたなというふうには思います。

 全く意味がないというのは私も言い過ぎだったかもしれませんが、これで枠組みにたががはまるというのは逆に言い過ぎですよという話なんです。甘いですよという話です。僕も言い過ぎだったかもしれないけれども、これで大丈夫だみたいなのも、これも甘いですよ、もっとちゃんとしなきゃいけないですよという話です。

 では、前に進みます。

 核実験を行ったら協力を停止するということですけれども、実際これは、例えば原発をつくっちゃって、何年間か動かしている中で、もう協力を既にしていた場合に、過去にさかのぼって取り消すということができないんですけれども、現実的に動いているものを、しかも、仮に十年、二十年動いたとして、これで、ではやめましょうと具体的にできますか。全部引き揚げてくるんですか。

梨田政府参考人 協力の停止に関する規定は、我が国がこれまで締結した原子力協定の多くにも規定されております。基本的には、その後の協力の停止を念頭に置いているものであります。

 インドとの協定におきましては、第十七条三項では、この協定に基づいて移転された核物質、原子力関連資機材などの平和的目的に限った利用、それからIAEAの保障措置の適用などに関する規定は、たとえ協定終了後においても引き続き効力を有すると規定しております。

 したがって、インドは、本協定に基づいて移転された原子力関連資機材などを協定終了後も平和的目的に限って利用するという法的目的を引き続き負うことになります。さらに、第十四条四項において、必要があれば、我が国として本協定に基づいて移転した原子力関連資機材を返還するよう要求する権利が確保されております。

小熊委員 ちょっとその協定の、今、確保できると言いましたが、返還条項、今言われた十七条で規定されているのも承知はしていますけれども、では、核物質の特定をするのにどういうものがあるのかというようなもので、いわゆる在庫目録を交換する条項が入っていませんが、どのようにして資機材、核物質というのを把握して、それは返してくれと言えるんですか。在庫目録の交換条項というのはどこにありますか。ほかは、公文にもありますか。

梨田政府参考人 本協定におきましては、第五条二項において、この協定の適用を受ける核物質等の情報、この協定の適用を受ける設備及び技術に関する情報並びにその他の関連する情報を交換すると規定しております。

 これに加えて、第七条三項は、本協定の適用を受けるプルトニウムなどについて、これが貯蔵されている施設の一覧表を毎年交換する旨定めているところであります。

小熊委員 その際に、これはある意味再処理を認めているので、もう既にやっているからということですけれども、もし仮に、日本の協力した原発でプルトニウムがあって、これも返還の対象になりますか。

梨田政府参考人 返還の対象となります。

小熊委員 これは、日本は核兵器を持たない国でありながら、プルトニウムを大量に持っている国として、国際的にもさまざま指摘をされているところでありますけれども、返還されるということですが、それはどうなるんですか、国内に持ってきた場合。日本の国内に回収された場合、それはどういうふうになってくるんですか。

梨田政府参考人 核物質等の返還を要求する権利を行使するかどうかということについては、もちろん、そのときの事情を勘案して、個別に判断する必要がございますけれども、今お尋ねのとおり、仮に我が国がプルトニウムの返還を要求するという事態が生じた場合には、返還後に適切に保管されるよう措置を講ずる必要があると考えております。我が国が措置を講ずるということです。

小熊委員 日本国内に持ってくるということですか。

梨田政府参考人 返還するということは、国内に持ってくるということであります。

小熊委員 どこに保管されるんですか、日本に持ってきて。

三ッ矢委員長 答えられますか。

 時計をとめてください。

    〔速記中止〕

三ッ矢委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 インドがこの協定の趣旨に反し、核実験等を行う等によって協定が停止された場合の対応について今御質問いただいているわけですが、これはまず、基本的にそういったことはあってはならないと思いますが、万が一そういったことが発生した場合の事務的な対応については、今、梨田部長から御説明したとおりであります。

 そして、具体的にプルトニウムをどのように保管するのかというのは、その時点における日本国内のさまざまな状況を判断して、適切に我が国として判断し、対応するというのが当然のことではないかと考えます。

小熊委員 実際、停止は本当にできるのか、それで資機材の引き揚げをどうするのかというのは、十四条で核実験が行われた場合は絶対停止するんだと言い張っている以上、停止した場合に対しての具体的な対応策というのはもっとしっかり国民に説明がなされなければいけないというふうに思ってこれを質問しているわけであります。その状況に応じて適切に判断するというのはもちろんそのとおりなんですが、そういったあやふやな状況でいいものではないと私は思っています。

 福島の事故を踏まえれば、さっきも言葉がありましたけれども、東電の福島の事故はまだ継続中の災害で、本当にあれが何だったのかということはまだわからない状況でもありますし、さまざまな事故調査委員会があった中で、国会の事故調は人災だとも言っています。昨年のある民間団体とのシンポジウムというか会合では、東電そのものが人災であったというふうに言っているんですね。

 そういった状況の中で、東電の原発事故の経験を踏まえてこれをやっているんだと言っている割には、これは全てを想定内に置かなきゃいけないんですよ。そのとき考えればいいという話じゃないんですよ。福島のことを言及するのであれば、それは、軽々に、そのとき適切なということだけでは実は済まされない、私はそういうふうに思います。

 いわゆる十四条の二項がこれまでも議論されてきましたけれども、安全保障上の問題が起きたとき起きるんじゃないかということが言われているわけでありますし、再三、今大臣からも出てきて、この委員会でも出た二〇〇八年の九月五日声明の政権と今の政権とは大きく異なっています。

 今の政権は、これは国際的には否定していますけれども、今の政権の政党のマニフェストには先制不使用の攻撃に関しては否定をしているわけですよ。考えたらそうですよね。パキスタンがやられてからやるんですといったら、インドの国民からするとふざけるなという話になるので、先制不使用の攻撃を否定しています、今の政権のマニフェストの中では。

 考えると、やはり安全保障上の問題でいろいろ緊張感があるということで、決してインドが、これはもちろん、核実験のモラトリアムもあるし、いろいろな縛りもかかって、ゼロではないというのもわかってはいますけれども、実際上は、インドにおける安全保障上のさまざまな緊張感を考えれば、そんなに甘いものじゃないということも言えるわけでありますから、これはより現実にやはり考えていかなきゃいけないと思っています。

 そういう意味では、福島の事故、東電の事故を踏まえるのであれば、私は、我々の持論ではありますけれども、民進党も原発ゼロというゴールはもう共有化しているわけでありまして、日本がやるべきことは、これはインドだって一〇〇%原子力開発にするというわけではありませんから、再生可能エネルギーとか、もっと節電の技術とかを売っていくということがインドの経済に寄与することになるし、ウイン・ウインの関係になってくるということでもあろうかと思います。

 これは、核不拡散の枠組みに入れると大義名分を言っていますけれども、実際には、やはり対中国のことが背景にあったり、あと、インドで、これまでいろいろな国がインドと原子力協定を結んでいますけれども、結局は進んでいない。インドでの原発開発は進んでいません。何でか。これは、いわゆる原発の一つの資機材の大型鍛鋼品は日本のメーカーが八割を占めていますから、これまでインドと原子力協定を結んだアメリカとかフランスから、日本も結べ、日本の製品が入らないとこっちも進まないんだということの背景もあるというふうに思います。

 もう一方は、インフラ輸出で新幹線や何かを売り込むのと一緒にしていますけれども、では、本当にもうかるのという話でいえば、ウェスチングハウスの問題もあるし、だから、もうかるという意味では本当は再生可能エネルギーとか節電の技術を売っていった方が私はいいと思いますよ。

 では、売るということの前提に立って、何かあったときに、では停止しました、大臣は、核実験をやったら何が何でも停止するんだと言っていますけれども、停止したときに賠償請求されないというここの規定も、これはちゃんと留保とかいろいろありますというふうに説明がありましたけれども、これも何となくの縛りで、本当にそういう巨額の損失補償をインドから請求されないということが確認されていませんが、この件について御説明をお願いします。

岸田国務大臣 済みません、委員の方から大変重要な点をたくさん御指摘いただいたので、ちょっとだけ簡潔に触れさせていただきたいと思いますが、まず、福島における原発事故、今も続いている深刻な被害については、政府としても、引き続きしっかり重く受けとめて、しっかりと対応していかなければならない課題であります。

 そして、その中で、先ほどプルトニウムの引き取りの件について触れられたわけでありますが、まず大きな前提として、国際的な不拡散体制の中にインドを何らかの形で参加させようという取り組みの中でさまざまな協定が考えられているわけです。そして、インドの核実験の実施、これはあってはならないことです。あってはならないことですが、あった場合には毅然と対応しなければならない、こういった仕組みをつくったわけであります。

 あってはならないことですが、あったときにどうするか、プルトニウムについてもどうするかを考えるべきだということ、これは大変重要な御指摘だと思います。

 そしてその上で、インドの核政策についてお話がありました。

 モディ首相は選挙期間中はさまざまなことを言っておられた、これは確かだと思います。ただ、今モディ政権も、政権が発足してから後は、核の先制不使用、これを明らかにしていると承知をしています。

 そういったことをまず申し上げた上で、損害賠償についての御質問でありますが、損害賠償につきましては、まず、基本的には、インドの原子力賠償法があり、そしてインドはCSCに入っており、そして、インドの原子力賠償法はCSCと整合的であるとインドは説明をしている、こういった現実があるわけですが、その中にあって、損害賠償というものがどう扱われるかということであります。

 その上にあって、民間の契約によって最終的には確定するわけでありますが、インドにおいてこういった原子力賠償法がある、そしてCSCと整合的であるという説明をインドがしている、こういった現実については、しっかりと民間の企業に、民間の企業がもしビジネスを考えるのであるならば、しっかりと理解してもらわなければなりません。その現実のリスクがどこまであるのかということをしっかり踏まえた上で、現実のビジネスを考えてもらわなければならないと思います。

 そして、万が一、その上でも、現実問題、インドと損害賠償でトラブルが生じたならば、日本の政府としましても、こうしたあるべき姿について、しっかりとインド側に対して働きかけを行うなど協力をしていく。これが、この賠償を考える際の基本的な考え方であると認識をしております。

小熊委員 大臣も立ち戻ってさまざま答弁をいただいたので、私も立ち戻りますけれども。

 あってはならない、もちろんそのとおりですが、インドの今のいろいろな状況を考えると、やはりパキスタンとの関係を考えれば、安全保障上に重大な事案が生じる可能性は高い。また、緊張感も高まっている中で、今後どうなるかわからないというリスクは、ほかの国よりも非常に高いということであります。

 先ほど、今の現政権の話、確かにこれは、先制不使用は否定しましたけれども、先ほど来、それも私は言いました。それは確認、承知もしていますが、与党の選挙マニフェストには、今でも先制不使用に関しては否定の文が掲げられているんですよ。それも、確かにインド国民からすれば、パキスタンからやられて、大量に被害が出てからやるんですかという問いかけになってきますから、それはそうだよねみたいな話になるのも、インドの世間相場としてはそうでしょう。国際的には先制不使用と言いましたけれども、国内的には、それでいいのかと問い詰めるのが政治家じゃないですか。

 我々だって、今、北朝鮮との緊張感が高まっていて、ミサイルを撃ち込まれてからその後を考えるのかといったら、それは国民は怒りますよ、ちゃんと守ってくれよと。

 そういう背景ですよ。表向きはそうは言っているけれども、インドの今の立ち位置というのは、置かれている状況というのは、そんなに平和で緩やかになっているという安全保障上の状況じゃないわけですから、幾らこれで縛りをかけているといっても、これは、そういう状況はなかなかずっと続くということは考えにくいということでもあります。

 先ほど言ったとおり、日本がやるべきことはこういうことではないし、物を売っていくという、インドとの協力関係をよろしくしていくという意味でも、もっと違うことがあるでしょうと。新幹線は否定しませんよ。原発は売る必要ないな。

 それで、とめたとき、資機材を持ってくるところも曖昧で、岡本委員も言われたとおり、何か核兵器の開発があったら停止するんだと言いましたよ、声高に言っていますよ、それで縛りをかけているんだと言っているけれども、その開発に関してもわからないものもある、情報が全て把握されるわけじゃないと言いましたね、大臣。今の時代はそうですよ。地下核実験以外でもやれるわけですから、全てが把握はできないわけです。把握した場合はちゃんと停止しますと言いましたけれども、だから、把握に関して甘いわけですよ、今の。ちゃんとそこはピン打ちされていないわけです。ブレーキがかかっていない。

 だから、それは、やらないよりは多少のピン打ちはされるけれども、このピン打ちが、ブレーキが甘いということです。

 核兵器の開発に関しては全てが把握はできないということも明らかになりました。あって、把握した場合に、停止をして、さまざまな資機材を日本に持ってくるという場合もちゃんと明確に決まっていないということも明らかになりました。損害賠償に関しても、そのとき、ちゃんと対応しますと言いましたけれども、巨額の損失が出るわけですよ。全てのリスクがあるわけですよ。

 だから、その上で、このリスクを考えたらやるべきじゃない、手をつけるべきじゃないということです。それよりやるべきことがあるというふうに私は思いますし。

 インドの核兵器開発にブレーキをかけていくというのはいろいろな形でやっていかなきゃいけないと思いますけれども、この日印の原子力協定で、しっかりこれが縛られるということにはなっていない。ゼロではないですよ。でも、全然なっていない。

 大臣、そうでしょう。だって、核兵器の開発だって、もちろん把握できた場合で、把握し切れないじゃないですか、現実。そうですよね、今の時代。インドの核実験は一〇〇%把握できないですよね。できませんよね。今の日本の情報収集というか、コンピューターでやられたらできないわけですから。一〇〇%は把握できませんよね。核実験、一〇〇%把握できるんですか。できないですよね。

岸田国務大臣 まず、CTBT上、核実験という定義については明らかにされているわけでありますが、その定義の中での核実験はしっかりと検知できます。CTBTにおいては国際的な監査制度を設けています。全世界三百数十カ所に検知箇所を設けて、事実、北朝鮮の核実験もその制度のもとによって検知されているということであります。

 そうしたCTBT上の仕組みがあるのは事実でありますが、御質問は未臨界の実験についてであります。未臨界実験については、これは、先ほど来説明しておるように、定義も定かではありませんが、検知すること、これはインドだけではありません、全世界、アメリカはみずから行っているということを明らかにしていますが、それ以外の国に関しては、これは確認することがほとんど難しいというのが現実であるということも先ほど説明させていただきました。

 その中にあっても、全く不拡散の枠組みの外側にあるインドに対して、何らかの形で不拡散の体制の中に参加させようということで、国際社会が議論をし、NSGの決定があり、各国が協力をしているわけです。我が国もぜひその取り組みの中に参加をしようということで、協定が考えられてきたわけであります。

 我が国が参加するということ、我が国は、原子力の民生利用において、さまざまな技術において、これは世界でも最先端の技術を持っています。もしインドが核実験を行ったならば、我が国の最先端の技術を失うことになるということ、これはインドに対して大きなメッセージ、枠をはめることになるのではないか、このようにも考えます。

 ぜひ、こうした取り組みを続けること、これは全て、これで大丈夫だなどということは申し上げておりません。全くこの枠組みの外にあるインドを何らかの形で参加させる、少なくとも原子力の平和利用において責任ある行動をさせる、IAEAの保障措置のもとに置く、こういった取り組みは、大きな、国際的な不拡散の取り組みの中で、意味のある取り組みではないか、前進ではないか、このように申し上げているわけであります。

小熊委員 時間が来たので終わりますけれども、今言われたとおり、最初に言ったとおり、核兵器の開発をやめさせる、これ以上させないというのが大きな目的であって、それがとりあえず入るんだと言っていますけれども、インドの立場からすれば、このぐらいの協定だからのめるんですよ、甘いから。厳し目だったら、逆にのめないですよ、合意に行かないということを申し上げて、質問を終わります。

三ッ矢委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田学です。質疑をさせていただきます。

 日印原子力協定、三日目の質疑です。与党の方からは採決というお話がありましたが、今留保しています。与党と野党で意見が一致すること、しないこと、いろいろあると思いますので、大臣から私と同感の意見をもらいたいということではなくて、この協定に対しての正直なところ、大臣としての正直な解釈も含めてはっきりとさせていただきたい、それをもって採決ということを考慮したいというふうに思っています。

 大きく分けて、全体的な我が国の核軍縮に対する取り組みと本協定の二つがありますが、一問だけ概括的なことを聞いた上で協定の方に移りたいと思います。

 大臣の方には、通告では、岸田大臣の核軍縮に対する考え方という形で聞いていますけれども、もう一段踏み込んで、やはり、唯一の被爆国である我が国、そしてまた、その原子力爆弾を落とされた広島選出の代議士であり、そして外務大臣である岸田さんのお考え、行動というものは、私は非常に大きな意味を世界的に発信すると思っています。

 言い方はいろいろあると思いますが、最も核開発に対して厳しい態度をとることが世界的に正当化されている唯一の方だと私は思っています。そういう御自身の特別さの自覚というものはまずはお持ちでしょうか。

岸田国務大臣 自分自身の特別さの自覚があるかという質問ですが、自分自身が特別なのかどうかは周りの方が評価されるので、私自身はそれについて何か申し上げることはできません。

 ただ、私も、四年五カ月外務大臣をやる中で、さまざまな核軍縮・不拡散の議論、会議に参加をしてきました。五年に一度開催される二〇一五年のNPT運用検討会議にも出席をし、スピーチをさせていただきました。そういった経験の中で、私自身が被爆地広島の出身であるということを申し上げた際に、会場なりあるいは議論の雰囲気が変わるということは実感したことが何回かあります。そういった立場であるということは何度か感じた経験がございます。

寺田(学)委員 特別かどうかは他人が評価するということですけれども、私は、特別だと思っています。

 私たち衆議院議員、代議士は全国民の代表としてここの場に来ていますが、原子力爆弾を落とされた広島から選ばれた、広島市から選ばれた、中心的に選ばれたのは岸田さん、あなた一人ですので、そういう意味で、非常に特別な立場であり、岸田大臣が、ある種、この核の問題に対して判断する内容が世界的な一つのメルクマールになる。あの日本の、核爆弾が落とされた唯一の国である日本の、その被爆地である広島の外務大臣が認めたことというものの一つのメルクマールがはっきりとでき上がるので、私は、非常に特別な立場だと思っています。

 その意味において、今回、日印原子力協定を政府として提出され、今議論しているわけですが、いろいろ一昨日の質疑の中でもありました。この日印原子力協定についてどのような意義があるのかと。

 私もこの協定を見たときにいろいろな思いはありましたが、当初、外務省から出されている資料等ありますと、インドという地政学的なことも含めた重要なパートナーであるからということが一つの意義、もう一つは、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させて、原子力の平和利用について責任ある立場をとらせたいんだと、意義を二つ述べられている資料が私は手元にありました。

 一昨日の質疑を聞いていますと、大臣からは、ある種、この二つの意義よりは、何よりもインドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させて、平和利用について責任ある行動をとることを確保するのが今回の趣旨なのだ、今回の意義なのだと、二つあったのを一つにかなり絞って強調されておりました。ですので、本当にその意義が果たされるのかどうかということを中心に聞いてみたいと思います。

 さんざん大臣としてお話しされますけれども、今回の日印原子力協定を結ぶことによって、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させるんだと言っています。この意味を少し詳しく述べていただきたいんですが。

 ちょっとアプローチを変えて言いますけれども、二〇〇八年のNSG決定、モラトリアムであったりIAEAの保障措置の適用等、こういうことの合意をしましたけれども、このことは国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにはなっていないんですか。

岸田国務大臣 二〇〇八年のNSG決定は、インドに国際的な不拡散体制に参加させる意味で前提となるものであり、参加に道を開くものであると認識をいたします。

寺田(学)委員 もう一回聞きます。

 このNSGの二〇〇八年の決定は、大臣が言われる、NPT体制に入っていないインドを実質的に国際的な不拡散体制に参加させることにはなっていないんですか。

岸田国務大臣 二〇〇八年のNSG決定、NSGすなわち原子力供給国グループですが、このグループが、厳しい条件のもとに、この条件であるならばインドに対する原子力の平和利用における協力を行うことを認めるというのがこの決定であります。この決定に基づいて、協力をさまざまな国が検討し始めたわけであります。

 実際に実質的に国際的な不拡散の枠組みにインドを参加させるということについては、具体的な協定等が定められた結果として、その参加が現実のものになると考えます。

寺田(学)委員 なるほど。NSG決定自体は大臣の言う実質的な参加という状態に導いていないということですね。

 具体的な協定がなければそれは参加になっていないということでしたので、それでは、米印の原子力協定は、同じように、国際的な不拡散体制への実質的な参加という状態に導きましたか、導いていませんか。

岸田国務大臣 米印の協定についても、二〇〇八年のNSG決定を前提として協定が結ばれています。

 要は、核実験のモラトリアム、IAEAの保障下に置かれる、こういった条件をインドが受け入れることを前提として協定がつくられているわけですから、これも一つインドを不拡散体制の中に参加させる上で意味がある協定であると思います。

寺田(学)委員 質問をかえますけれども、それでは、既にインドは大臣の言う国際的な不拡散体制に実質的に参加しているんですか。この協定を結ぶ前の、今の状態ですけれども。

岸田国務大臣 インドは全くこうした不拡散体制の外側にいた国です。その国が、NSG決定を経て、そしてそれを前提として各国が協定を結んでいく。こういったことによって不拡散体制への参加が前進していると認識をしています。

寺田(学)委員 既に、大臣が今、遠回しに言われていますけれども、今回の日印原子力協定を経ずとも、程度の差はあるのかもしれません、その程度の差があるんだったら説明してほしいですが、インド自身は国際的な不拡散体制に実質的に参加しているんだと思います。

 間違っていますか。

岸田国務大臣 日本より先行して、NSGグループの決定を前提に、さまざまな国々が協定を結んでいます。ですから、その中で、国際的な不拡散体制に実質的に参加するということは進んでいる、前進をしている、成果は少しずつ上がっている、このように考えます。

寺田(学)委員 解釈をお伺いしているので、はっきり、ぜひともお答えいただきたいんですが、今回、日印の原子力協定を結ぶことによって、初めてインドが国際的な不拡散体制に実質的に参加するわけではないですよね。以前からそういう形で参加している中において、日本が入ることによって前進をする、一歩でも前進をするという解釈でよろしいですか。

岸田国務大臣 おっしゃるように、さまざまな国の取り組みによって、インドの不拡散体制への実質的な参加は今までも行われてきたと思います。

 ただ、我が国が参加すること、このことは大変大きい、大きな意味を持っているということも申し上げたいと思います。

 日本は、原子力の民生利用において、そして原子力の平和利用の技術において、これは最先端の技術を持ち、最先進国であると自負をしています。

 もし、インドが、NSGグループの決定といった前提等を無視して核実験等を行ったならば、我が国の持つこうした最先端の技術、これを全て失うことになります。その代償等を考えた場合に、我が国がインドと協定を結ぶことの意味は大変大きいものがあります。

 インドを国際的な不拡散体制の中に参加させる意味において、その効果において、我が国の参加というのは大きな意味を持っているということも申し上げておきたいと思います。

寺田(学)委員 協定本文に書かれていること、公文に書かれていることとはまた別の話として、まあ、別の話というのもあれですけれども、日本が持つ技術を失いたくないというものが核実験等を行うインセンティブをそいでいくんだということの御説明だったと思います。

 実質的に、日本が、インドが欲している日本の技術を渡すかわりに、インドに対してどのような抑制的な縛りをかけていっているのかというところが重要だと私は思います。

 一昨日の質疑の中で、最も厳しい協定内容になっているという発言が大臣からありましたが、なぜ最も厳しいと判断されているのか、その理由を教えてください。

岸田国務大臣 協定の中身については、一昨日もさまざまな議論を行いました。十四条において、協定自体の終了あるいは協力の停止、こういったものを定めているわけでありますし、再処理につきましても、この附属書Bにおきまして、新たに建設されるIAEA保障措置のもとにある再処理施設のみで行われること、こうした厳格な規定を設けているわけでありますし、ウラン濃縮や再処理のための技術及び施設並びにプルトニウムの移転、こうした機微なものに関しましては、第二条4において、この協定を改正しない限り移転は絶対に認めない、こういった中身も設けているなど、これは他の国が結んだ協定と比較しても最も厳しい内容になっているということであります。

 こういったことを指して、最も厳しい協定を用意したという説明をさせていただいている次第であります。

寺田(学)委員 初日に参考人の方からいろいろな御意見を拝受いたしましたけれども、その中で、ヨルダンのような厳しい協定になっていないと。対ヨルダンとの原子力協定のような厳しい形になっていない。本文の中に核実験という言葉が入って停止要件になっている、そういうものが今回の協定にはないので、緩いという判断をされている参考人の方もいらっしゃいました。

 これはどうですかね、大臣。私も、核実験という言葉が本文の中に入る方が厳しい協定内容であるというふうに私的には解釈しますけれども、いかがですか。

岸田国務大臣 他の協定において、停止をさせる条件を具体的に列記しているものがある、それとの比較をおっしゃっているんだと思いますが、列記したものは、その列記されたものに当てはまらないということになれば停止することはできません。今回のインドとの協定、これは、いかなる理由においても停止する権利を持つという内容になっております。このいかなる理由においても停止できるという権利を確保したという意味で、これは協定としては強い内容になっているという御説明をさせていただいております。

寺田(学)委員 限定列挙ではなくて包括的に、どういう理由であっても停止することを権利として保有しているので厳しい内容なんだということでした。

 それがいかに厳しいかということを聞く上で、違うアプローチで聞きますが、それでは、なぜ、ヨルダンでもいいですけれども、限定列挙したんですか。なぜ、今回と同じように包括的な書き方をせずに、限定列挙をし、大臣の価値観としては緩いものにしたんでしょうか。

岸田国務大臣 ヨルダンの協定のときの交渉の経緯、済みません、たちまち今手元に持ち合わせておりませんが、いずれにせよ、他の国と比べても、インドとの協定については、我が国はより慎重でなければなりませんし、より現実においてしっかりとした対応ができる、こうした内容にしなければならない、こういったことから、慎重にこの協定の交渉に臨んだ次第であります。

 そして、協定の中にも、いかなる理由においても停止をできる権利を確保したわけですが、その前提としてNSG決定があり、そしてなおかつ、それに加えて、公文という法的拘束力のある文書を両国の間で交わして、その念押しをしているということであります。全体において慎重を期さなければならないインドの交渉において、できるだけしっかりとした意思の確認を行い、そして現実に対応できる、こういった制度を用意した次第であります。

寺田(学)委員 これはもう主観的な価値判断になるので、次の質問に移りますけれども、今回の協定を結ぶこと、それと、この委員会において大臣が、このインドの協定が最も厳しいものなんだという価値判断をしたことは、私は非常に大きな意味をこれから持つと思います。

 原子力協定を結ぶ上で、本文の中に核実験というものを書かない形で今回インドとは結ぼうとしているわけですけれども、それの方が厳しいんだ、包括的に、限定列挙じゃなく、理由なくやれるんだから、停止できるんだから厳しいんだという価値判断は、被爆国の外務大臣が結ぶということに関しては、いろいろ主観的な意見があると思いますよ。私は、大きな大きな一つの転換点になると思います。

 何かあれば。

岸田国務大臣 これは一昨日も再三説明して言っているところですが、最も厳しいというのは、絶対的な価値判断として最も厳しいと申し上げたことは一度もありません。NSG決定に基づいて各国がインドと協定を結んでいます。その協定の中で最も厳しいものを日本が用意したということであります。

 この協定があらゆる意味において絶対的な価値判断のもとに最も厳しいということを申し上げているものではないということ、これはぜひ御理解いただきたいと思います。

寺田(学)委員 ならば質問を追加します。

 インドが他国と結んだ原子力協定に関しては最も厳しいものだという外務大臣の御判断でした。日本が他国と結んだ数ある原子力協定の中で、これは最も厳しいのですか。

岸田国務大臣 我が国がこれまで原子力協定を結んだ国、これは、NPT体制に参加している国ばかりであります。今回、NPTに参加していない国との関係をどうするか、こうした参加しない国を国際的な不拡散の体制にどう取り込むかということで、まずNSG、原子力供給国グループ、数は忘れましたがこうした多くのグループがあり、その中で、厳しい条件のもとに例外を認めようではないかということになり、その上で協定をつくっているわけであります。

 従来原子力協定を結んでいる国とインドとは、そういった立場が違うということを前提に、慎重に議論を行ってきた次第であります。

寺田(学)委員 質問に答えていません。

 インド自体がどのような立場であるのかということは当然所与の前提として考えた上で、協定自体は他国とさまざま結んでいるわけです。

 日本が、たとえ相手がNPTに入っていないインドであったとしても、協定内容が厳しいか厳しくないか、まさしく大臣が、さまざまなことに対して最も厳しいとか、緩くはないとか言われているわけですから、日本側からさまざまな国に対して原子力協定を結んでいますけれども、それと比較して、インドとの協定は厳しいものなのですかということを聞いているんです。

岸田国務大臣 インドとの協定、いかなる理由においても我が国は停止をする権利を確保しています。そういった意味では、我が国が結んだ協定の中で最も厳しいものであると認識をいたします。

寺田(学)委員 だとすれば、そのいかなる理由というものがどのように解釈されるのかというのは非常に大事だと思います。核実験という限定列挙であれば、核実験が行われたかどうかというのはかなりデジタルに考えられるんですが、いかなる理由でもと、理由が求められるわけですから、それはどのような場合かということを聞いていきたいと思います。

 十四条についてです。核実験を行った場合は例外なく協力は停止するんですよね。

岸田国務大臣 そのとおりであります。

 それを担保するためにNSG決定があり、そして、我が国の場合はさらに上乗せで公文まで結んでいます。核実験が行われたならば、協力は停止いたします。

寺田(学)委員 これは確認に近いですが、協力の停止に関しては双方の合意は必要ありませんね。

岸田国務大臣 これも、いろいろな議論の結果でありますが、条文を見ていただきますと、十四条の二つ目の文章ですが、「この協定の終了を求める締約国政府は、未解決の問題について相互に受け入れることができる解決が得られなかった旨又は協議により解決することができない旨を当該締約国政府が決定する場合には、この協定の下でのその後の協力の全部又は一部を停止する権利を有する。」。要は、未解決の問題について、結論が出なくてもこれは権利を行使できるということを明記しています。

 ですから、協議をして一致しなくても、そうした問題が解決していないとか合意ができていないとかいうことにかかわらず、我が国は独自の権利を行使できるということが十四条の二項に明記されております。

寺田(学)委員 確認のために聞いたので、それも理解しています。

 だからこそ、日本側がどのような価値判断を、ある種一方的にできるわけですから、まさしく、大臣として、政府としてどのように考えているかということを聞きたいと思います。

 それで、一昨日から臨界前実験、未臨界実験の判断について聞きました。確認するのが難しい、または定義が難しいとはいいながら、実際に起きたことが日本政府として判断できた場合に、協力を停止しない場合はあるんですか。

岸田国務大臣 これは、未臨界実験自体の定義が明らかになっていないとか、確認することが難しい現実の中で、協定においてはそれについて明確に書き込むことはできませんが、先ほど申し上げましたように、我が国として、インドが核兵器の開発につながる、いわゆるこの未臨界実験を行ったこと、これについてしっかりと対応するということは、こうした公の場で申し上げておかなければなりません。対応は行います。

寺田(学)委員 何ですか、その対応というのは。今まで協力を停止すると言ってきたわけですよ、核実験に対しては。なぜ未臨界の臨界前実験に対しては、直ちに協力を停止すると言わずに、対応になるんですか。その対応の中には、停止をしないことまで含まれるんですか。端的にお答えください。

岸田国務大臣 まず、インドの核実験については、CTBTにおいて定義されている核実験、これが前提になっています。インドの九月五日共同声明等もこれが前提になっているわけでありますが、ただ、我が国は、この協定の中で、いかなる理由であっても停止する権利を持っている、これを明らかにしたわけですので、我が国の立場としてしっかりと対応するということを申し上げているわけであります。

寺田(学)委員 いや、だから、我が国の対応はどうか聞いているんですよ。未臨界実験を行われても停止をしない、留保をしているんですか。いや、今まではっきりと、核実験を行った場合は停止すると言っているわけですよ。それがなぜか対応に変わるんです。

 事務方でもいいです、専門的なことだったら教えてください。核不拡散に逆行しない臨界前実験というのはあるんですか。

相川政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど大臣から、前の質疑で答弁ありましたけれども、未臨界実験に関しては、今まで実施したというのは米政府しか発表しておりません。その際にはさまざまな理由を言っておりまして、貯蔵している核兵器の安全性、有効性の維持、評価とか、それから、超高圧、超高温下のもとでの核物質の性能を調査する実験等、さまざまな理由を表明しています。

寺田(学)委員 前例がありましたね。この場合には協力を停止するんですか。同じような理由でインドが臨界前実験を行った場合には、協力を停止するんですか、それとも停止しないこともあり得るんですか。

岸田国務大臣 未臨界実験については、今答弁にあったように、アメリカだけが発表しています。そして、今の説明はアメリカの発表であります。そもそも未臨界実験については定義が定まっていませんし、確認することが困難である、こういった現実があります。だからこそ、先ほど私が申し上げたように、インドが核兵器の開発につながるようなこうした未臨界実験を行ったならば適切に対応する、それを協定の中で、いかなる理由においても停止するという権利を確保した上で申し上げているわけであります。

 これは、定義も、そして確認も難しい中にあって、日本としてこの現実をどう把握するのか、これをしっかりと確認した上で行動しなければならない、こういったことを申し上げているわけであります。

寺田(学)委員 権利がどうかということはもう既に議論は終わっていますし、当然わかっていますよ。その権利を持った上で、どういう場合に行使するかということを聞いているんです。しかも、これは合意が必要なく日本の判断だけでできること、そのように御説明されていますから。それで、臨界前実験に関してはどうだと聞くと、留保するんですよね、適切に対応すると。とめると言わないんですよ。認めるんですか。

 私、冒頭お伺いしましたけれども、唯一の被爆国で、しかも広島御選出の代議士が外務大臣になり、この協定を結び、この協定の解釈を聞いているときに、臨界前実験に対して毅然とした態度をとらないでどうするんですか。

岸田国務大臣 NPT体制の外にある、国際的な不拡散体制の外にあるインドをどのようにこの不拡散体制の中に取り込むかということで、国際社会が協力して今取り組みを進めているわけです。

 NSGグループ、先ほど数がはっきりしませんでしたが、四十八カ国、この四十八カ国が協力して、インドに対して例外的に原子力の平和利用における協力を認める、こういったところから始まってさまざまな協力を行っています。そして、その大前提としては、インドはCTBTにおける核実験の定義に当てはまるものを前提にしているということであります。

 その中にあっても、こうした取り組みによってインドを一定の枠組みにはめ込む、この不拡散体制に参加させる、こういった意味で意味がありますが、加えて、日本においては、先ほども申し上げました、協定を設けた上で、先ほど申し上げた対応を行おうとしているわけであります。

 これは、インドにおいて原子力の平和利用において責任のある行動をとらせる、これを確保する上で意義があることであると私は思っております。

寺田(学)委員 なぜ臨界前実験に対して、行われたことが日本として把握できたのであればとめると言えないのか、私はわかりません。わからないので、ぜひともその理由があるとしたら教えてくださいと聞いているんです。

 ちょっと時間がありますので、もう一問進めます。

 今回の協定は三層構造になっていると思います。本文の協定があり、その後に公文があり、公文の中で引用しているムカジー氏の声明というのがあります。ムカジー氏の声明、二〇〇八年のものですかね、九月五日の声明が、ある種両国間の協力の不可欠の基礎だと日本として認めている。

 では、この不可欠の基礎というものがどのような場合には崩れるのかということをお伺いしたいと思うんですが、先ほど小熊委員からもお話がありました核兵器の先制不使用という政策についてです。まさしくこれもムカジー氏の声明の中に書かれているものです。「我々は、核兵器の先制不使用の政策を確認している。」と書かれています。

 お伺いしますが、これからインド政府の中でさまざまな議論が行われ、核兵器の先制不使用の政策が転換された場合には、本協定公文の中にある両国間の協力の不可欠の基礎が毀損したと考えますか、考えませんか。

岸田国務大臣 確認をしましたら、九月五日の声明の中に、中ごろですが、「我々は、核兵器の先制不使用の政策を確認している。」という文章があります。そして、公文の中で、九月五日に行った声明が協定の両国間の協力の不可欠の基礎である旨述べたと一項にあり、そして二項において、両国の見解であるという了解がされる、こういった公文になっておりますので、それを基礎にしているということがここで明らかになっていると考えます。

寺田(学)委員 それは、この声明自体、ムカジー氏の声明が基礎になっていることは公文に書かれているので公文の基礎になっていますという答弁は、何も答えていない。

 だからこそ聞いているんですが、この基礎となっているムカジー氏の声明の中にある、核兵器の先制不使用の政策を確認していると書いています、この核兵器の先制不使用の政策がインド国内において政策転換された場合には、この公文にある基礎は崩れた、毀損したと考えるんですかということを聞いているんです。(岸田国務大臣「委員長、済みません、ちょっと準備させてください」と呼ぶ)

三ッ矢委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

三ッ矢委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 これは、二〇〇八年九月五日の共同声明、我々は核兵器の先制不使用の政策を確認しているという内容があります。これに当てはまるかどうかという判断はもちろんありますが、これに反することがあれば、これは公文との関係において、我が国は協力を停止する権利を行使することはできると考えます。

寺田(学)委員 権利を持っていることはさんざん聞いているんです。どのような場合に行使するんですかと聞いているんです。

 まさしく公文の中においては、ムカジー氏の声明が基礎になっているんだと言っています。だからこそ、このムカジー氏の声明がどのように担保されるんですかと聞いているんです。

 もう一回、同じ質問をします。

 この基礎となっているムカジー氏の声明の中にある核兵器の先制不使用の政策がインド国内において転換された場合には、この公文にある協力の不可欠の基礎は毀損した、崩壊した、そのように判断をされるんですかということです。お答えください。

岸田国務大臣 この協定の基礎になる部分が変更になれば、我が国は権利を行使いたします。

寺田(学)委員 もっとはっきり聞きましょう。

 まさしく私が具体的に聞いています、核兵器の先制不使用の政策が転換された場合には、今大臣が述べたとおり、行使するんですか、権利を。

岸田国務大臣 前提となります声明が変更されたならば、権利は行使いたします。

寺田(学)委員 外交的なもので曖昧にしながら自分の選択肢をふやしていくというやり方は、一般的にはあり得ると思いますが、このように、ある国に対して抑止を図っていく場合においては、一定程度の価値観をはっきりと述べることが、まさしくこちらが望まない結果につながると思います。

 もっとはっきり言いましょうよ。核兵器の先制不使用の政策がインド国内で変わった場合には、この協定を停止する権利を行使するんですね。

岸田国務大臣 共同声明の文書において変更があれば、権利は行使いたします。

寺田(学)委員 なぜはっきり言わないんですか。

 核兵器の先制不使用の政策がインド国内において変わった場合、この政策がなくなった場合に、協力の停止、その権利を行使するんですね。

岸田国務大臣 具体的にどのようなことが行われるのか、予断を持って申し上げることは控えなければなりませんが、おっしゃるように、この基礎となる文書の内容において変更があれば、権利は行使いたします。

寺田(学)委員 文書の内容に、当然ながら核兵器の先制不使用の政策は含まれていますか。

岸田国務大臣 文書の中に、我々は核兵器の先制不使用の政策を確認しているという一文がございます。

寺田(学)委員 それは、変更する、しない、そういうふうに政府が判断する内容ということでよろしいですね。

岸田国務大臣 今申し上げた部分も含めて、共同声明が両国の協定の前提になっています。これに変更があれば、我が国として権利を行使いたします。

寺田(学)委員 最後にします。

 これの中には、今の先制攻撃の不使用という政策は入っていますね。それだけで終わります。

岸田国務大臣 共同声明にある文書全てについて申し上げています。

寺田(学)委員 終わります。

三ッ矢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 日印原子力協定の審議ということで今行われているわけですが、私は、今の審議もずっと、この間も参加をしながら、そして質疑を聞きながら、審議はいよいよこれからだということを痛感いたしております。そういう中で、採決などは論外だということを、まず冒頭に申し上げておきたいと思います。

 何よりも、この協定にかかわっては、二〇一一年の三月のあの東京電力福島第一原発事故がもたらした惨害、そして、その後、六年余りの現実があります。いまだに事故が収束せず、そして事故原因さえ究明をされていない。福島の被災者の皆さん、そして被害の本当に厳しい現実がある。政治の問われる問題があるわけです。切り捨てという問題も問題になっています。

 だからこそ、この協定をめぐっては、参考人質疑でも、インド国民の中で強いやはり反対の運動や不安の声が上がっているということで、広がっているということも紹介をされました。そのもとで、安倍政権の成長戦略に基づいてインフラ輸出を柱とする原発輸出を推進するという問題については、やはり本協定、断じて批准、承認すべきでないということを冒頭強調したいと思います。

 同時に、きょう質疑で伺っていきたいわけですが、前回も触れましたが、本協定は、唯一の戦争被爆国日本が、インドというNPT未加盟かつ核実験を行った核保有国と結ぶ、初の原子力協定であります。これは、従来の日本政府の立場をも逸脱したものであって、核保有国としてのインドのステータスを強めることにもつながって、世界の核軍縮、そして核兵器廃絶の流れに逆行するということを言わざるを得ないと思うんです。

 具体的に岸田大臣に伺います。

 CTBTということで、先ほど来もありました、この間も議論になってきましたが、CTBTにしても、採択から二十年以上が経過をして、そして現在、なお発効しておりません。発効要件四十四カ国のうち、前回の質疑でも確認しました、米国、中国、イスラエル、イラン、エジプト、北朝鮮、パキスタンとともに、インドが批准していないからであります。署名をしていないインドであります。

 そういう中で、インドに核実験をさせるかどうか。させない、中止したらという議論があるわけですけれども、未臨界の問題は重大ですが、核実験させないということであれば、まずCTBTに入ること、そしてCTBTを発効させるというのが大きな課題になってくると思うんですが、日本政府は、では、インドに対して、CTBTの発効に向けてどのように署名、批准を働きかけたんでしょうか。まず、冒頭伺います。

岸田国務大臣 CTBTにつきましては、我が国は、カザフスタンとともに共同調整国の立場にあります。一昨年、私も、国連総会の場で、カザフスタンの代表と共同議長を務めて会議を開催させていただきました。こういった立場で我が国はCTBT発効に向けて努力をし、事務局でありますCTBTOとも協力しながら、CTBTへの参加を働きかけています。

 インドも含めて国際社会に働きかける中にあって、最近ではミャンマーともう一つ、二カ国の新たな参加を得るなど、少しずつ結果を出しているわけであります。インドに対しましても、引き続き、CTBTへの参加、しっかり働きかけを行っていきたい、このように考えます。

笠井委員 では、インドに対して、本協定を交渉してやってきたわけです。その中で、具体的にCTBT発効に向けて働きかけをしたのかどうか、そして、やったのであれば、インドはそれに対してどういうふうに対応して言っているのか、その点はいかがですか。

岸田国務大臣 インドに対しましては、CTBTのみならず、NPTにまず参加するべきだという働きかけをしてきております。これは直接、さまざまなレベルはもちろんでありますし、国連の決議等を通じましても、全ての国連加盟国に対して働きかけを行っているわけでありますし、さまざまな形でインドに対して、NPTあるいはCTBTに対する協力、参加、働きかけを行ってきております。

笠井委員 私は、本協定の交渉に当たって、この問題、特にやはり核実験ということは大きな問題なんだから、どういうふうに働きかけて、相手がどう言ったのかを伺ったんですが、そのことについてはお触れになりませんでした。交渉に当たってもやはり正面から働きかけていないとすれば、そういう中で本協定を締結しても、決してCTBTの発効にもつながらないということは強く申し上げたいと思います。

 もう一点ですが、CTBTの発効ということでいうと、政府はこの間も取り組んできた、そして今も取り組んでいると大臣からもありましたが、二十年たっても発効していないのはなぜか、やはり真剣に考えるときだと思うんですね。

 核兵器全面廃絶に向けて、段階論では部分的措置も進んでこなかった、歴史の事実です。そういう中で、米国を含む核保有国が、二〇〇〇年、二〇一〇年のNPT運用検討会議での核兵器のない世界への誓約に背いて、自国の核軍備を近代化、強化しているから。そういう問題があります。だからこそ、核兵器全面廃絶につながる禁止条約の国連会議が始まったわけであります。

 唯一の戦争被爆国として、その流れを実らせる姿勢に今こそ改めるべきじゃないんですか。その点を改めて伺いたいと思います。

岸田国務大臣 核兵器禁止条約の議論につきましては、まず、我が国の基本的な核軍縮・不拡散に対する方針、核兵器の非人道性に対する正確な認識と厳しい安全保障に対する冷静な認識、この二つをしっかり持ち合わせた上で、核兵器国と非核兵器国の協力を得ながら現実的、実践的な取り組みを続けていく、これが基本的な方針であります。

 核兵器禁止条約の交渉においては、残念ながら、スタートした時点で確認できましたように、核兵器国は一国も参加しておりません。ドイツあるいはオーストラリア、カナダ、こうした、我が国とともに核軍縮・不拡散に取り組んできた中道国も全て参加をしておりません。これは、こうした核兵器国を参加させることなく一方的な議論を進めることによって、核兵器国と非核兵器国の亀裂、今大変深刻な問題になっているこの亀裂をますます深めてしまうことになるのではないか等、こういった判断に基づく各国の対応であると思っています。

 我が国は、唯一の戦争被爆国として、この核兵器禁止条約の初日、参加をした上で、我が国の基本的な考え方をしっかりと訴えた次第であります。ただ、今言った現状においては我が国の基本的な立場を受け入れてもらうことは難しいという判断のもとに、交渉には参加を控えたということであります。この判断は今でも変わっておりません。

 ぜひ、核兵器国と非核兵器国の協力が重要であるということで、両者が参加していく枠組みを辛抱強く追求していきたいと考えています。そういった観点から、二〇二〇年のNPT運用検討会議準備委員会にも私は日本の外相として初めて参加をし、我が国の考え方を明らかにしてきたところであります。

 引き続き、核兵器国と非核兵器国の協力のもとに努力をする枠組み、NPTですとかCTBTですとかFMCT、こういった枠組みを重視しながら、具体的、現実的な対応を続けていきたい、それが核兵器のない世界に向けての最短の道であると信じております。

笠井委員 そういう答弁が、世界から見ると、本当に被爆国政府としては後ろ向きだなというふうに受け取られるわけであります。

 参考人質疑の中で鈴木参考人は、核兵器禁止条約の交渉に対して日本が参加しないということについては私も残念だと思っています、こういうふうに述べられて、禁止条約の交渉に参加していただきたいと主張されました。

 日本政府はそういう方向にこそ全力を傾注すべきであって、現在進んでいる世界の本流との関係でも、日印原子力協定はそれに逆行するものと言わなきゃいけないと思います。

 そこで、協定の中身について伺っていきます。

 前回の当委員会で、岸田大臣は次のように答弁をされました。速記録をちょっと具体的に読んで紹介をしたいと思うんですが。

 一つは、今回のインドとの交渉においては、まず二〇〇八年のNSGの決定、これが全ての国のインドに対する原子力の平和利用への協力の大前提であるとされていると。核実験のモラトリアム、IAEAの保障措置の適用など厳格な条件のもとにインドへの協力を例外的に認めるというものがまずあり、二つ目に、その上で我が国としての協定を定め、いかなる理由でも我が国は協力を停止する権利を持つということを明確にし、そして三つ目に、公文をもって、インドの二〇〇八年九月五日の声明これが全ての基礎であるということを重ねて確認する、こういった仕掛け、三段重ねというか、そういう仕掛けをつくったというものだというふうに答弁されましたが、間違いありませんか。

岸田国務大臣 はい。そのとおりだと思います。

笠井委員 問題は、こうしたインドへの例外扱いに道理があるかという問題だと思うんです。

 まず、大臣が大前提だと言われた二〇〇八年のNSG、現在は日本など四十八カ国の原子力供給グループが入っているということでありますが、この二〇〇八年の決定についてであります。

 二〇〇七年の米印原子力協定の実施には、IAEAとNSGでの承認が必要とされた。その前提になるのはNPTへの締約、そしてCTBTへの署名なんだけれども、いずれもインドはそれに加わらない、拒むという態度を続けていた。そこで、インドだけを対象とする例外措置の、全会一致によるNSGの決定が必要だった。

 まあ、概して言えばそういうことだと思うんですが、そのことは間違いありませんか。

岸田国務大臣 NSG決定が必要とされたという表現をされましたが、NSG決定が協力の前提であるということ、これはそのとおりだと思います。

 そして、全会一致というお話でしたが、全会一致ではなかった……(笠井委員「それは大変ですよ、そんなことを言ったら」と呼ぶ)ちょっと確認します。その部分は確認します。(発言する者あり)済みません。コンセンサス合意でありました。

 では、その点はおいておきまして、今申し上げたように、原子力協力の前提、これがNSG決定であると考えます。

笠井委員 ですから、インドだけを対象とする例外措置をコンセンサスで決めるということで、決定をするということになったということですね。

岸田国務大臣 NSG四十八カ国において、厳格な条件を課した上で、インドに対して原子力の平和利用における協力を行うことを例外的に認めることをコンセンサス、合意で決定したということであります。

笠井委員 ところが、この二〇〇八年のNSG総会というのは、なかなかもめた。先ほどから、決定されたということで、すっと大臣は言われていた、そういう簡単な話じゃなかった。参加国からの意見対立が非常に激しくて、私もそのときの記録も見てみましたが、数度にわたって延長されたり中断ということが繰り返されました。

 米国がインドへの例外措置容認というのを強く主張したのに対して、例えばオーストリアとか、アイルランドとか、スイス、スウェーデン、ノルウェー、ニュージーランドなどとの間で、いろいろとあるけれども折り合いがつかないということで、日本も強い懸念をその会議の中では表明をしていた。

 そして、厳しい議論、交渉の結果、日本政府としては、大局的観点からぎりぎりの判断としてコンセンサスに加わったということだと思うんですけれども、どういう大局的観点から、どんなぎりぎりの判断を日本政府はしたんでしょうか。

岸田国務大臣 大局的な観点、まさにインドを国際的な不拡散体制に参加させる、こういった観点から判断をしたということであります。

笠井委員 いや、簡単じゃなかった。大局的な観点からぎりぎりの判断をしたというのが日本政府ですよね。大変だった。やはり容易な話じゃないということで、ぎりぎりの判断ということを政府自身が言われている。どういう意味なんでしょうか、これは。

岸田国務大臣 現実、NPTに参加していない、国際的な不拡散体制の外側にいるインドとどのように原子力の分野においてつき合っていくのか、これは本当にさまざまな観点から考えていかなければなりません。さまざまな観点を考えた場合に、それこそ、ぎりぎりの判断を行い、やはり大局的な観点、実質的に国際的な不拡散体制にインドを参加させる、こういったことの重要性に鑑みて判断をしたということであります。

 いずれにしましても、この判断、大変激しい議論が行われたという御指摘がありましたが、最終的にはコンセンサスで決定をしたということは確認しておきたいと思います。

笠井委員 NPTの枠の外にあるインド、それだけを例外扱いするということについては、非常に、この間の日本政府の対応からしても重大な懸念があったということだけれども、NSGで、コンセンサスとならなきゃNSGの崩壊になるということになって、ぎりぎりの判断になった。今のお話、答弁を伺って、そういうふうに私は受けとめるわけであります。

 岸田大臣は、インドへの原子力協力というのは、核実験のモラトリアムが大前提だというふうに言われます。そして、答弁もされました。しかし、九月五日の声明、先ほど来ありますが、ここには、我々インドは自発的かつ一方的な核実験に関するモラトリアムに引き続きコミットしているというふうに明記をされております。

 ここでインドが言っている自発的かつ一方的な核実験ということなんですが、これはいかなる状況下における核実験が含まれるのか、インド側から具体的な見解表明はあるんでしょうか。(岸田国務大臣「済みません、ちょっと時間を下さい」と呼ぶ)

三ッ矢委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

三ッ矢委員長 速記を起こしてください。

 岸田外務大臣。

岸田国務大臣 いかなる条件における核実験なのかという質問でありますが、NSG決定の前提となっている声明、すなわち核実験のモラトリアムは、いかなる状況においても核実験というものについてのモラトリアムであると考えます。

笠井委員 いや、違うんですよ。

 九月五日の声明は、インド自身が言っているのは、自発的かつ一方的な核実験と言っているんですね。だから、その意味なんですよ。だから、いかなる核実験も全てだめみたいな話じゃなくて、インド自身がこの声明で言っているのは、自発的かつ一方的な核実験についてと言っているので、そのことを、いかなる状況下の核実験が含まれるか。全てだというふうには言っていないですよね、これは。

岸田国務大臣 これは一昨日の議論でも申し上げましたが、そもそもインドは、核ドクトリンという政策を明らかにしています。必要最小限の抑止力を維持する、これを明言しているわけですし、これを今も引き続き維持しているわけであります。その中にあって、核実験についてはモラトリアムを宣言しているということであります。

 そういったことから、今おっしゃったように、自発的な核実験のモラトリアムという表現が使われているんだと認識をいたしますが、いずれにせよ、核実験を行ったならば、この声明には反することになります。前提が崩れるというのは言うまでもないと考えます。

笠井委員 違うんですよ。

 だって、インド自身が声明の中で、モラトリアムについては、自発的かつ一方的な核実験に関してはモラトリアムと言っているので、核実験全てモラトリアムしますとここで書いてあるわけじゃありませんよね。

 だから、私は、この自発的かつ一方的な核実験ということについて、いかなる状況下における核実験のことをインド自身が言っているのか、それについてはモラトリアムをやるというふうに言っているということですから。核実験全てモラトリアムと言っていないですよね。わざわざこんなことを言っているわけだから、自発的かつ一方的な核実験と。

 これは何なんですかという説明がインドからあるんですかと聞いているんですよ。

岸田国務大臣 声明の読み方として、一方的かつ自発的な核実験のモラトリアムであります。要するに、その二つはモラトリアムにくっつく言葉であります。

 インドは、先ほど申し上げました、核ドクトリンを明らかにし、この政策を維持しています。その中にあって、自発的、一方的にモラトリアムを行う、こういった声明を発していると理解をしております。

笠井委員 違うんですよ。

 読みますよ。「我々は、自発的かつ一方的な核実験に関するモラトリアム」ですからね。

岸田国務大臣 今英文を取り寄せましたが、この部分は、ア・ボランタリー・ユニラテラル・モラトリアムということで、モラトリアムに直接くっついておりますので、私の先ほど申し上げました説明のとおりではないかと考えます。

笠井委員 私、今ちょっと英文が手元にないのであれですけれども、仮訳は外務省がつくったんでしょう、違うんですか。「自発的かつ一方的な核実験に関するモラトリアム」と書いてあるじゃないですか。

 ちょっとこれじゃ審議になりませんよ、こんな。だって、英文ではこうですとか、だからやはり訳が違うんですね。ちょっと、そこはおかしいじゃないですか。僕、ちょっと英文を取り寄せますから、ちょっと休憩してくださいよ。

三ッ矢委員長 ちょっとわかりやすく説明してください。

岸田国務大臣 仮訳、和訳、これは外務省が責任を持ってつくったものでありますが、先ほど委員が紹介された和文、和訳に関しても、先ほど申し上げたような説明はしっかり御理解いただけるのではないかと思います。それが、和訳が誤解につながる、和訳が間違いであるという御指摘は当たらないのではないかと考えます。

笠井委員 だって、九・五、九月五日の声明というのが基礎だってもうさんざん大臣言われているわけですよ。その基礎のところの肝の話なんですよ、これは。

 だって、それだったら、核実験に関するモラトリアムを引き続きコミットすると言えばいいわけですよ。ところが、インドがわざわざ自発的かつ一方的な核実験に関すると言っているので、いかなる状況下における核実験が含まれているのかということについて、インドから説明があるのかと聞いているんですよ。だって、解釈が違うじゃないですか。いろいろあり得るでしょう、これは。

岸田国務大臣 一方的、自発的な「核実験に関するモラトリアム」です。この「核実験に関するモラトリアム」の前に二つ修飾語がついているわけであります。そのことを御説明させていただいています。

 一方的、自発的だということについては、先ほど来御説明しているとおり、インドの維持している政策との関係でこれは当然のことだと理解いたします。

 誤解あるいは誤訳という御指摘は当たらないと考えます。

笠井委員 私、ちょっと、だけれども、先ほど英文を読み上げられて、これと違うんですよ、少なくとも。(岸田国務大臣「それは違う」と呼ぶ)違うでしょう。だって、関するじゃないって今大臣が言われたんだから。外務省のつくった仮訳では、関すると書いてあるんですよ。

 それで、これは例えば読み方ですよ。だって、誰が見たって、一方的でない核実験があるかもしれないわけでしょう。インドはそういうことを言わないんですか、絶対。だって、隣にパキスタンがあり、いろいろな状況があって、相手が核実験をやって、こっちもやるみたいな話になっているわけですよ。だから、ここのところをしっかりしなかったら、だめじゃないですか。だめですよ、こんなの。

岸田国務大臣 まず、その声明の読み方は先ほど御説明したとおりであります。

 そして、この前提は、あらゆる核実験、インドが行う核実験、これに対するモラトリアムが前提になっています。これはインドとの交渉の中にあっても、それからNSGの決定の中にあっても、これはもう確認されていることであると思います。

 よって、その特定の条件のみを想定しているのではないか等の御指摘は当たらないと考えます。

笠井委員 いや、今大臣は、あらゆる核実験に対するモラトリアムが前提だと言われました。だったら、そう声明で言えばいいわけですよ、インド側だって。外に対して声明して、それが基礎になって、NSGもあって、日印の原子力協定だってそれに基づいてやっているんだと、先ほどからずっとそういうことで、それは基礎だ、前提だと言われているわけですよ、もうこの間。

 それは、あらゆる核実験が前提だということは日印の協定の交渉の中で繰り返し言われているというけれども、交渉の中身の話は幾ら聞いたって言わないじゃないですか。いつ、どうやって、何をもって、どういう文書でインド側がはっきりとそれを表明したというのはあるんですか。

 だって、大臣は、交渉の中で、あらゆる核実験が前提でモラトリアムなんだと言われたけれども、我々が国会で審議するに当たって見ているものでは、少なくとも、あらゆる核実験のモラトリアムに関するという声明なんかないんですよ。

 交渉の中でそういうことを確認しているというのは、いつ、どうやって確認したのか、どういう文書があるのか、それを出してくださいよ、では。全然違うじゃないですか。

岸田国務大臣 一方的、自発的というこの修飾につきましては先ほど申し上げたとおりであります。インド自身がこの核ドクトリンを維持している中にあって、インドが一方的に自発的にモラトリアムを行う、これを表現したものであります。

 そして、そのことは、この声明だけではなくして、NSG決定の中にあっても、そしてこの公文の中にあっても、さまざまなところで明らかにされているわけでありますし、当然のことながら、交渉の中でもそのことについては再三インドの意思は確認をしているということであります。

 さまざまな形でそれは担保されていると考えます。

笠井委員 交渉の中で意思を確認しているんだったら、形にするのが当たり前ですよね。それで、協定にする。書けばいいじゃないですか。だけれども、協定にはそういうことを書いていないですよ。協定だって、九月五日の声明というのは協定に、本体にないんだから。ですよね。公文という別の場所に書いてあって、それも、日本側がこれがこうだというふうに表明したという話ですけれども。

 あらゆる場でそう確認していますと言うけれども、では、それは交渉事だからその中身は言わない。この協定が批准されたら、出たものでみんないくわけですよ、協定本体、そして公文が不可分で一体だと言われる。しかし、そういう形でやったものについて、我々はその前提で九月五日の声明があるといってこれを見るわけでしょう。だけれども、そこのどこにも、あらゆる核実験のモラトリアムが前提ですと書いていないんですよ。わざわざ、ここに、インド側は、ムカジー外務大臣当時の声明で自発的かつ一方的な核実験に関するモラトリアムと言っているじゃないかという話なんですね。

 ですから、私は、そもそも質問したのは、これについて、いかなる状況下における核実験が含まれるのかと。つまり、自発的かつ一方的な核実験とわざわざ言っている、それに関すると言っていることについて、インド側から、これはこうですということをはっきりと言って説明があったんですかと聞いているんです。繰り返し、確認しているのが全てだと言われるけれども。

岸田国務大臣 要は、核実験について何か特定の条件がついているのか、いないのか、そういった話だと思いますが、声明の中に自発的そして一方的な核実験モラトリアムというふうに書いてあるわけですが、一方的、自発的の意味は、先ほど申し上げました核ドクトリンが維持された中でありますので、それはインドが自発的に一方的にモラトリアムを行うということ、この表現は当然のことだと思います。

 そして、ですから、その部分については今申し上げたような理由でありますので、結果として、核実験のモラトリアムというものに何か条件はついていないということであります。核実験を行ったならば、日本として協力を停止する権利を行使する、それを公文においてももう一度確認した、こういった仕掛けをつくったわけであります。核実験を行ったならば協力を停止する権利を行使する、これは間違いありません。

笠井委員 間違いありませんと大臣が言われても、条件をつけていないと言われるけれども、じゃ、そもそも前提になるこんな形容詞は要らない。

 ですから、つまり、肝心の大前提のところで違うんですよ。モラトリアムの中身について、これは一方的あるいは自発的でないという話でまたそういう解釈が出てきたら、中身がはっきりしない、モラトリアムの中身が。

 もし、インドなどが核実験などを行ったときに、解釈の違いがあるということで向こうが言ってきたらどうするんですか。原子力協定の全てを失うことになると言われるけれども、そうならないというふうに向こうが主張したらどうするのかという問題ですよ。

岸田国務大臣 インドが違うことを言ったらどうするのかということですが、平成二十八年十一月の日印首脳会談及びその後の共同記者発表での関連発言ですが、安倍総理より、本日の日印原子力協定の署名は大変喜ばしい、今後原子力協力を進めていく上で、核実験の一方的かつ自発的なモラトリアムに関するインドのコミットメントが前提であり、これが維持されていることを評価するという発言を行い、そして、モディ首相からは、インドは核実験の自発的モラトリアムを実施しており、国内の輸出管理体制は世界で最もすぐれている、日印の原子力協力が早期に動き始めることを期待する旨述べた、こういったやりとりがあります。

 こうした声明とも整合的なことが確認をされていると思います。首脳間での確認等によって、インドが違うことを言うのではないかというようなこと、こういったことはあり得ないと考えています。

笠井委員 協定の審議をしているので、協定上、そういう意味では非常にはっきりしないところが私はあると思います、はっきり。例外扱いにやはり道理があるかといえば、なかったということになってきて、NSGの決定が大前提というのは言えないと、私は一つ強く言いたいと思います。

 次に、もう一点だけ質問しますが、本協定第十四条であります。これは先ほど、途中で大臣が何か、寺田議員との間で、答弁、何かニュアンスを変えたような話も私は非常に感じたんですが、私は、前回繰り返し聞きました。ヨルダンやベトナムとの協定のこととの対比で質問をしました。岸田大臣は、結果としていかなる事由においても権利を行使できる、ほかの協定にない最も強い権利を確保した、これが協定の中身だというふうに答弁をいたしましたが、大臣の言う、ほかの協定にない最も強い権利を確保したというのは、先ほど答弁の中であったと私は聞きましたが、具体的にこういう場合などと条件をつけなかった、例えば核爆発装置を爆発させるなどの条件をつけなかったので、いかなる事由でも権利を行使できる、だから最も強くて厳しいんだ、こういうことをおっしゃったわけですか。

岸田国務大臣 要は、私が申し上げたのは、他の協定においては具体的な限定列挙をしたわけです。限定列挙に当たる場合しか権利を行使することができないということになります。インドの場合は、いかなる理由においても権利を行使できるということでありますので、権利の行使の幅、当然広がってきています。そういったことを説明した次第であります。

笠井委員 二〇〇八年のNSG総会でも、大争点は核実験だったわけですね。その問題をめぐって、先ほどぎりぎりの判断という話もあって、ああいうコンセンサスというふうに言われたわけですけれども。日本とヨルダン、日本とベトナムとの協定を見ますと、そこでは、具体的に限定をするということで幾つか書いてある中に、核爆発装置を爆発させる場合にも、協定の停止、終了等の権利を有するというふうに明記をされておりました。

 ところが、本協定にはそういう記述が条文上ないと。いかなる事由と言いますけれども、インドの側から、条文上、核実験については明示していない、こういうふうに主張された場合にはどうするのか。最も強い権利を確保したとは言えないんじゃないかと思うんですけれども、ちゃんと書けばよかったと思うんだけれども、どうでしょうか。

岸田国務大臣 まさにそれを確認するために、NSG決定があり、協定があり、そしてさらに公文も取り交わしたということであります。全体において、核実験を行った場合には間違いなく権利を行使する、これが確保されていると考えています。

笠井委員 全体としてという中で公文の話もされましたが、ならば、なぜ本協定の条文の中に、九月五日の声明が協定のもとでの両国間の協力の不可欠の基礎と書き込まなかったんでしょうか。書けばよかったのに。

岸田国務大臣 まず、我が国は、唯一の戦争被爆国として、二〇一〇年の交渉開始以降、インドを国際的な不拡散体制に実質的に取り込むことを最優先に、インドが核実験を行えば我が国は協力を停止するとの方針のもとで、こうした一貫した姿勢で交渉に臨んできました。そして、交渉の中で、当然のことながら、インドからはインドの立場でさまざまな議論が提起をされたわけであります。そして、結果としてお示しいただいているこの協定になったわけですが、結果として、NSG決定があり、協定があり、公文があり、全体として、我が国が目指したもの、これをかち取ることができたと認識をしております。だからこそ、我が国として、このインドとの協定において、インドとの合意に至ったということであります。

笠井委員 結果としてというのを、大臣、この間、前回のときもそうおっしゃるんですね、結果としてと言われるんだけれども。この間の積み重ねがあって、仕掛けがあってというふうに繰り返し言われるんだけれども、非常に、率直に、一番わかりがいいのは、協定本文の中に、条文の中に、九月五日の声明が協定のもとでの両国間の協力の不可欠な基礎ですよと、はっきりと打ち込んで書けば誤解がないですよね。それをやったら私は賛成というんじゃないですよ。原発輸出は反対ですし、これはだめだと思っているけれども、しかし、それを書かなかった。

 大臣も政府も、公文のことについて言うと、法的拘束力があるんです、こう言われます。本協定の審議の中でもそう答弁されたけれども、ではインド側がそう言っているかと。

 私、昨年十一月の協定署名後のインドの国営通信社PTIの記事を見ました。国営通信社です。十一月十三日に、インドを拘束するものでないと、この協定に署名したことについて見出しで報じて、公文について、日本側は、二〇〇八年九月のインド核実験の一方的モラトリアム声明を挙げて、このコミットメントが破られたら協定は終了すると述べた、それに対してインド政府は、これは単なる双方の見解の記録にすぎないと認識している、こう言っています。あの覚書は特定の問題に関する交渉官同士の見解を単に記録したものにすぎない、それは拘束力を持つ原子力協力協定ではないというふうに言われているとさえ報じているんですけれども、この協定に署名したことについて、公文でこうだからいいんですと言われるけれども、これは解釈が違うんじゃないですか。インドが拘束力はないと言っているんですから。

岸田国務大臣 インドのどなたがおっしゃったのかは知りませんが、この公文を結ぶに当たりまして、公文の構造も法的拘束力のあるこうした文書にしておりますし、そして、インド政府との間において、この公文が法的拘束力があるということ、これは確認をしております。政府間において、この公文は法的拘束力のある文書であるということを確認していること、これは重たいものがあると考えます。

笠井委員 この報道記事ですけれども、インド政府は、これは単なる双方の見解の記録にすぎないと認識していると。私、この点では正しいと思いますよ、あれを読んだら。前回も、緒方委員も私もやりましたけれども、この公文を見る限り、双方の見解を記録している、それをお互いにそう言ったよねといって確認している、そういうことにすぎないと思います。

 最後ですが、この問題でいうと、むしろ十四条自体に、核実験の場合も含めて事由を列挙して、そして、その他いかなる事由でもというふうにすれば、最も強い権利の確保になる。まあ、協定を結ぶ側の立場ですよ。そうなると思うんだけれども、そうなっていない。核実験についても触れていない、この事由のところに。逆に、そうなると、最も強くならないんじゃないかと。

 だから、核実験というのが焦点だったから、それをはっきり書いた上で、停止する、協定をやめるというふうに書いた上で、その他いかなる事由でもと書けば、この間の議論の経過も非常に明確になると思うんです。賛否別にしてもですよ、少なくとも。そうなっていない。

 結局、インドの反対で、日本側が従来の対応を曲げて、協定上、核実験に対する歯どめを曖昧にしたということになっているんじゃないですか。これを最後に聞きます。

岸田国務大臣 我が国は、二〇一〇年以降、インドと交渉するに当たって、インドを国際的な不拡散体制に参加させること、そして、インドが核実験を行ったならば我が国は協力を停止する、こうした一貫した方針のもとに交渉に臨んできました。

 インドはインドの立場があります。そのインドと交渉する中で、さまざまなやりとりがあったのは事実でありますが、結果として、お示しさせていただいたような、この協定、そして公文、さらにはNSG決定、この全体の中で、我が国は目指したものをしっかりと確保したと判断をして、インドとの間において合意をした次第であります。

 協定の条文ということについて御指摘をいただきましたが、この全体の枠組みの中で、我が国は目指すところを確保できたということ、ぜひ御理解いただきたいと思います。

笠井委員 私、理解できないので、例外措置を設けたことについては全く道理がないと私は思います。

 今回の協定をめぐっては、国会に対して、さまざまな方々からの請願署名ということで、この協定を批准するなということでの署名も寄せられて、私も紹介議員になっておりますが、ぜひともこれは徹底審議の上に廃案にするということでしていただきたい、私も引き続き質疑をしたいと思います。

 きょうはこれで終わります。

三ッ矢委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

三ッ矢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。原口一博君。

原口委員 民進党の原口一博でございます。

 質疑の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 前回のおとといの質疑に引き続き、まず公文書の観点から、委員長、資料の配付をお許しいただけますでしょうか。

三ッ矢委員長 はい、どうぞ。

原口委員 皆様のお手元の八ページをごらんになってください。

 私たちは民主党政権で、沖縄の負担軽減、これに取り組んでいました。そして、普天間移設、特に訓練移転、これを検討していたわけです。そのときに鳩山総理が、外務省あるいは防衛省から聞いたものに沿って、この訓練移転を断念しました。

 この書類があるかということを、皆様のお手元の八ページで、私は行政情報開示を求めました。ところが、ちょうど一年前の二十八年四月六日に行政文書不開示決定通知書というのが私の手元に参りまして、中ごろをごらんになってください、当該行政文書の存在を確認することができなかったことから文書不存在のため不開示としたと。この文書はなかったんだというわけです。

 私があっただろうと言っている文書が九ページです。これはどういうものかというと、在京米大、アメリカ大使館ですね、ここで日本側とアメリカ側が議論している。船越外務省日米安保条約課長。芹沢防衛省日米防衛協力課長。それで、六十五海里以上離れていると訓練移転というのはできないんだということをここにるる書いているわけです。これをもとに、総理は断念をした。

 ところが、自民党政権になって、自公政権になってから、訓練移転はもっと遠くにもできるということで、不審に思われた鳩山総理がこの文書の開示を求められたわけです。ところが、ないと。

 もう一回、八ページにお戻りください。この文書にかかわらず、当時の沖縄の負担軽減を議論していたときに文書管理をしている人間がいるはずだということで、おととい、内閣参事官の城戸さん、それから外務省は船越さん、防衛省は芹沢さんであったということが答弁で明らかになったわけです。

 もう一回、九ページをごらんになってください。文書管理の責任者と、その当時ここにいた、アメリカ側と議論をしていた人間が同じじゃないですか。

 外務大臣、これは、この中に総理大臣になる人もいるでしょう。あるいは、もう大臣の経験をした人もいるでしょう。これをやられたら政治はもたないんですよ。

 このときに、外務大臣、いいですか、六十五海里以上は普天間から離れて訓練できないということを、これだけ総理に説明しているんですよ。しかし、今や、その文書はなかったと。そして、文書管理責任者はそこに出席をしていたであろう人たちである。

 これは極めて大きな疑獄問題になる、発展しかねないことだと思います。なぜならば、勝手にこういう文書をつくって、これで私たちの政権、潰れたんですよ。沖縄を何とかしたい、基地が集中するこの沖縄を何とか、訓練も、あるいは普天間も、できたら県外に持っていきたい、そういう思いで私たちはやっていました。しかし、こういう状況です。

 私は問います。

 前回委員会で質問した普天間移設問題に係る米側からの説明文書について、内閣官房、保管していますか。当該文書に基づき総理が普天間移設に関して判断したもので、これは極めて重要な文書です。

 しかし、当該文書を保管していないというのであれば公文書毀棄でしょう。公文書毀棄罪というのは結構重いですよ。文書管理者として不適切だと私は思います。

 事実関係について確認をする必要がありますので、当時の文書責任者、この三人ですね、それから必要であれば鳩山元総理もこの委員会に呼んで、そして直接確認する必要があると思います。

 まず、内閣官房、文書を管理しているか、答えてください。

小野(功)政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の文書に関しまして、内閣官房副長官補室としては保管はしておりません。

原口委員 外務大臣、お聞きになりましたか。

 私、そのときは閣僚でしたよ。これをやられたら、私は元自民党でしたが、自民党であろうが、民主党だろうが、もたぬですよ。役人が勝手にこういうペーパーをつくって、アメリカは六十五海里離れたら訓練移転はできないんだと。総理はそれを信じてやったわけですよ。何が沖縄の軽減だ、沖縄のことを何だと思っているんだと、私は強い怒りを禁じ得ません。

 私が今疑っていることが本当なのか、それとも、いやいや、もともとこんな文書はない、よく手の込んだ文書ですよね、秘密の指定期間、五年になっていますね、指定事由まで書いてあって、出席者もいる。私たちはアメリカ側にもこれは確認をしています。

 きょうは日印の原子力協定ですからこれ以上はできませんけれども、委員長にお願いをいたします。

 ぜひ、理事会で、この三名、特に、船越外務省日米安保条約課長、芹沢防衛省日米防衛協力課長、今NSCに行っているんじゃないですか、どこにいるんですか、この人たち。この方々を当委員会に呼んで事実確認をしていただけるように、理事会でお計らいいただきたいと思います。

三ッ矢委員長 後日、理事会で協議いたします。

原口委員 ありがとうございます。

 本日の議題に戻ります。

 日印の原子力協定についてでありますが、外務大臣、これは、核兵器開発につながるいかなる行為も許さぬ、こういう趣旨でよろしいですか、この原子力協定を結ぶ趣旨は。

岸田国務大臣 本協定、二〇一〇年から日印で協議を始めていますが、その際に我が国が目指したものは、インドを国際的な核不拡散体制の中に参加させるということ、そして、核実験が行われたならばこの協力を停止することを明らかにすること、この二つであります。そういった目的を念頭に協議を行いました。

 この二つの目的については、この協定、公文、あるいはNSG決定等の中で確保できたと認識をしております。

原口委員 そこで、先ほども議論になりましたけれども、ちょっと事実だけ確認しておきたいと思います。また続けて質問しますので。

 まず、日米原子力協定、これは来年三十年ぶりの改定期を迎えると承知しています。昨年、米国に一部規制権がある日本にある研究用プルトニウムを、日本が米国に返還いたしましたね。戻せと言われて戻したんだと思います。その理由を、まず一点、聞きます。

 その上で、日米原子力協定でも終了規定に核爆発が明記されているにもかかわらず、なぜ日印に入っていないのかという議論がずっとありました。例えば、日本製鋼所の圧力容器というのは世界シェア八〇%を占めています。日本が参加しなければ原子力協定のまさに中核部分というものが成立しないんだ、私は、日本の立場というのは非常に強かった、いや、今も強いと思っています。

 そこで、先ほど岡本代議士がすばらしい質問をされましたけれども、未臨界実験について、核兵器の開発につながるあらゆる行為も許さないということであれば、定義が不明であり、あるいは確認が難しいものについて、午前中の質疑では、大臣は、確認された場合には適切に判断するという答弁にとどめておられるんです。

 でも、確認することが難しいのであれば、そもそも協力すべきじゃないんじゃないですか。いわゆる爆発の核実験だけじゃなくて、未臨界核実験というものは何のためにやるんですか。核兵器を使うためにやるんでしょう。核兵器の信頼性を確保するためにやるんじゃないんですか。どうぞお答えください。

岸田国務大臣 未臨界実験につきましては、おっしゃるような効果のために行うものであると認識をしております。

相川政府参考人 プルトニウムの返還の問題に関してお答え申し上げます。

 委員御指摘の日本原子力研究開発機構の保有していた高濃縮ウラン、それから分離プルトニウムでございますけれども、昨年三月のアメリカの核セキュリティーサミットの際に、全量撤去ということを完了したことを発表いたしました。

 これは、核テロ対策の強化と研究開発の推進を両立させながら、まさに機微な核物質の最小化を通じた国際的核セキュリティー向上に貢献するものであったと考えておりまして、当時のオバマ大統領からは、これは核セキュリティーにおける歴史上最大のプロジェクトであるというような評価も受けました。

原口委員 そうですね。

 世界でプルトニウムはどのくらいあるのかな、五百トンぐらいですか。我が国が保有しているものが四十七トン。そのうち三十七トンぐらいをイギリスとフランスに再処理をお願いしている、そういう状況ではないかと思います。

 ちょっと大臣は答えてくださらなかったんですが、確認することが難しい、何のために未臨界核実験をやるかというと、核兵器の、今お答えになったとおりですよ。だったら、そういうことが、やるかどうかわからぬというものであれば、そもそも協力する必要はないんじゃないんですか。いや、協力しちゃいかぬのじゃないんですか。私はそのことを大臣に問うているんですが、お答えください。

岸田国務大臣 未臨界実験につきましては、これは国際社会共通でありますが、まず定義が明らかにされていないことに加えて、確認することが大変困難であります。

 ですから、今、国際社会の中で未臨界実験が確認できているのは、みずから、やりましたという報告をしているアメリカだけであります。それ以外の実験については確認できない、これが現実であります。

 その中にあって、まず、CTBTで定義している爆発を伴う実験については、先日来ずっと御説明をしています、今回の枠組みの中にインドを取り込むことによって核実験のモラトリアムをしっかりと確保する、こういったことができると考えています。

 未臨界実験については、先ほど申しました、国際社会全体として定義がなく確認できていない現状でありますから、枠組みの外側ではありますが、にもかかわらず、我が国としましては、協定の中で、いかなる理由であっても権利を行使できる、こういった規定を求めています。

 その上で、午前中から申し上げておりますように、我が国として、核兵器の開発につながるようないわゆる未臨界実験を確認できた場合には、この協定に基づいてしっかり対応するということを申し上げているわけであります。

 国際社会全体としては爆発を伴う実験にしか対応できないわけですが、この協定は、いかなる理由においても権利を行使できる、そして我が国としては、それを確認したならばしっかりと対応しますということを上乗せで申し上げさせていただいている次第であります。

原口委員 いや、それは午前中の岡本代議士に対するお答えでもう聞いています。だけれども、逆に、確認しにくいんだから、確認できないんだから、そういうものに協力すべきでないと言っているんです。

 それを少し論理的に詰めていきます。

 インドの原子力発電所、この稼働率、きのう外務省から、タラプール一号機からクダンクラム二号機に至る二十二基のインドの原子炉について、その稼働率、平均値、あるいは年次ごとというのをいただきました。

 これを見ますと、皆様のお手元に、この平均を書いております。七ページをごらんになってください。

 インドは世界平均よりかなり落ちるんですよ。それはなぜだろうと思って見ると、彼らはトリウムはたくさん持っているようですけれども、ウランそのものは持っていない。大体、平均稼働率が五割ぐらいなんですね。

 インドが我が国を含め各国との原子力協力を進めることによって、この稼働率は上がっていく。ひっきょう、その産物であるプルトニウムあるいは濃縮ウラン、これは濃縮を認めていますから、つまり、武器に転用できる物質がふえていくんじゃないか、そのように考えるんですけれども、大臣の御見解を伺います。

岸田国務大臣 要は、協力することによって軍事転用できる部分がふえるのではないか、こういった御質問かと思いますが、インドを国際的な不拡散体制の中に参加させるということで各国は努力をしています。そして、我が国のみならず米国を初め多くの関係国がこうした取り組みを行っているわけでありますが、これは残念ながら、完全にNPTに参加させているわけでもなければ、CTBTに署名しているわけでもないわけですから、完全に今の国際的な不拡散体制の中に取り込むことはできていない、これは御指摘のとおりだと思います。

 ただ、もともと全く国際的な不拡散体制の外側にあった国を少しでも参加させようということで努力をすること、このことの意味は大きいと思っています。少なくとも原子力の平和利用の部分において責任ある行動を確保する、さらには、我が国の協力については、全てIAEAの保護下に置かれるということで透明性を高めていく、こういったことは大きな前進ではないかと思います。

 その外側にある軍事利用の部分については、おっしゃるように、確認できない部分はあるわけでありますが、しかし、もともと完全に国際的な不拡散体制の外側にあるインドを少しでも参加させる、こうした取り組みを前進させるという意味において、こうした取り組みは大変重要であるということを御説明させていただいております。

原口委員 大臣、それはもうおととい議論した話ですよ。きょう私が申し上げているのは、実質的に、協力をすることによってインドの軍転する力を高めてしまうんじゃないかということを申し上げています。

 先ほどプルトニウムの話をしましたけれども、プルトニウムの返還も求めることができるという答弁でしたけれども、仮に返還請求する場合には、返還されたプルトニウムを保管するわけでしょう。今だって、原子炉、どうですか、使用済み核燃料であふれている。これをどこにやるんですか。また国民の税金ですか。

 在庫目録の交換条件というのは、これは入っていないでしょう。さっき読んでいたけれども、在庫目録、どこからどこまでが我が方が協力したものの核物質である、それを確認できますか。

 そして、仮に核爆発の実験をやったときも、あれは、過去やった、大臣、コード名がスマイリングブッダとかいう、笑う仏様ですか、そういう核実験をやった。あれは平和的核実験だ、つまり、土木用に使ったような核実験だったと言って核実験をやったんですよ。カナダとアメリカの施設を使って、サイラスとかいう、多分二〇一〇年ぐらいまでそれは動き続けましたよ。

 実際に返還というのはなかなかできないんじゃないですか。プルトニウムがふえることで地域の安定を壊すんじゃないか。そのことについては、大臣、どのようにお答えになりますか。

岸田国務大臣 こうした、インドを国際的な不拡散体制の中に取り込むという努力とあわせて、IAEAの保障措置の徹底というものもインドに対して要求し、そしてそれを実現している、こういった動きがあります。

 事実、インドのIAEA保障措置協定ですが、これは、現行はたしか二〇〇九年に結ばれていると思いますが、その前と比較しましても、対象は原子力発電所六基だけでありましたが、現在は、原子力発電所十四基、あるいはその他八施設、合わせて二十二施設、このIAEAの保障措置の対象、これも着実に拡大をしています。

 これは、インド全体の原子力のありようを考える際に、透明性を高めるという意味で前進であると思います。軍事転用されていると言われる部分も含めて、インドの全体の原子力への取り組みの透明性を高めるということもこうした取り組みの成果として上がっているわけですので、こうした取り組みは決して意味がないということにはならないと考えております。

原口委員 そこで、今おっしゃったIAEAの保障措置ですね。これは皆様のお手元の五ページにございます。三種類あります。一五三型保障措置、これは我が国が受けているような、非核兵器国ですね。それから、今大臣がおっしゃった六六型、これがインドです。最も最悪なのは、自発的協定型、米、英、ロ、中、仏。

 米、英、ロ、中、仏の中で、我が国に核弾頭ミサイルを向けている国はありませんか。この国々はどんな査察を受けていますか。何回受けていますか。

 我が国の査察は、その次のページをごらんになってください。六ページです。四千六百四十七回。世界の中で最大、査察を受けている国の一つが我が国です。

 中国、査察を何回受けていますか。

相川政府参考人 お答え申し上げます。

 査察の回数というのはなかなか、IAEAと当該国の間での関係でございますので、IAEAの保障措置の施設の数……(原口委員「結構です」と呼ぶ)

原口委員 数は言えないと。どこが透明ですか。

 IAEAの保障措置があるから、そこに丸投げすればいいというんじゃないんですよ。我が国のまさに国民の安全と安心。南シナ海、東シナ海を見ればわかるでしょう。

 今、一概には言えないと。透明にすべきじゃないですか。いかがですか。少なくとも日本と同じぐらいの査察を受けるべきでしょう。答えてください。

相川政府参考人 失礼しました。

 先ほどの、中国の保障措置を受けている施設の数でございますけれども、これは、全ての原子力施設のうちの三つでございます。

 それで、NPTの適用上は、核物質の軍事的利用にIAEAの保障措置は適用されない、また、核兵器国は保障措置の受諾は義務づけられていないということでございますけれども、核兵器国は、先ほどの御指摘のとおり、自発的に保障措置協定を締結していると……(原口委員「もういいです」と呼ぶ)はい。(発言する者あり)

原口委員 いやいや、本当に時間がないから、きょう……(相川政府参考人「ただ、一点だけ」と呼ぶ)あなたの答えが非常に中途半端だからです。何回受けているかというのを聞いているので。三つの施設で、そして、それも開示されていないじゃないですか。もういいです。帰ってください。

 皆さん、これはとても大事なことで、IAEAの保障措置があるからといって、それで核のセキュリティーがしっかり守られているなんて思ったら、それはお花畑なんですよ。

 そのことを伝えて、きょうは核セキュリティーについても議論をしたいので、田中委員長、きょう来られています。

 おとといは、EMP攻撃について田中委員長はこのようにお答えになっています、これも皆様のお手元に速記録を載せています、二ページです。EMP攻撃を含む電磁パルスが原子力施設にどのような影響を与えるかについては云々、そして、それについては想定していないと。大臣は、国民の命を守るから、しっかり検討するんだと言われました。

 これは、原子炉規制法を改正すべきだ、そして規制委員会も、そういったことについて、EMP攻撃については想定すべきだと思うんですが、委員長、いかがですか。

田中政府特別補佐人 先日の繰り返しの面もありますけれども、EMP攻撃のような、核を用いた国家レベルの軍事活動については、原子力規制によって対応するということにはなっておりません。

 その上で、日本の法制度全体をどうするかについては、私どもから意見を申し上げることは差し控えたいと思います。

 先日の御議論を聞いておりますと、全電源喪失による安全性についての御懸念があったかと思うんですが、これにつきましては、新しい規制基準で、福島第一原子力発電所の電源喪失の反省を踏まえて、可搬型も含めて、多数あるいは多種類の電源設備、中性子設備を備えることを求めておりますので、EMPということは想定しておりませんけれども、何らかの原因で電源喪失が起こっても、原子炉は安全に停止することができるようになっておることは確認しております。

原口委員 東京電力福島第一原発の事故で、私たちは、皆さんがおっしゃっていたことが必ずしも現実的にはかなわなかったということを経験しました。

 そうすると、サイバー攻撃に対する原子力施設の防護についてはどうなっていますでしょうか。

田中政府特別補佐人 原子力発電所についてのサイバーテロ対策は、原子炉規制法に基づいて、IAEAの最新の基準を取り入れた規則により実施しておるところでございます。

 具体的には、情報システムは、電気回線を通じて妨害行為を受けることがないよう、特に制御系統については外部からのアクセスと隔離し、遮断することを求めております。また、情報システムに対する破壊行為が行われるおそれがある場合または行われた場合には迅速かつ確実に対応できるよう、情報システムセキュリティ計画を策定することも求めております。

 これまでのところ、こういった中で、我が国にこういったサイバーセキュリティー上の問題が生じているということは承知しておりません。

原口委員 外務大臣、お聞きになりましたか。前の新藤総務大臣、いらっしゃいますから、おわかりでしょうけれども、スタンドアローンだから大丈夫だとは全然言えないんですよ。今は、それこそネットにつながっていないところでも、さまざまなマニピュレートがされています。

 資料三をごらんになってください。「情報通信研究機構(NICT)におけるサイバーセキュリティ技術の研究開発」、これはサイバー攻撃を可視化したものです。どの国から集中的に来ているか。私が大臣をさせていただいているときは、ロシアと中国が圧倒的でした。いや、ロシアと中国がやっているというんじゃないですよ。ロシアと中国のまさにアドレスからの攻撃が非常に多かった。この絵でもほとんどそうでしょう。

 私が求めたいのは、FMSに巨額な資金を使うのではなくて、今回も、北朝鮮のあの核ミサイルをトランプ大統領はサイバーで防護したといった意味のことをおっしゃっています。私たちはサイバー空間の防護に特段の力を使うべきであるというふうに思います。

 質疑時間が終わりましたので、最後に、東京電力福島第一原発のいわゆる帰還困難地域における大規模火災、これはよく頑張っていただいたと思います、自衛隊の皆さん、消防の皆さん。あそこは百二十余名の広域消防の人たちが日夜頑張って、そして、火災が起きたら放射性物質も飛散するんじゃないか、その危機をよく乗り切っていただいたと思います。

 そこで伺いますけれども、今回の空間の放射性物質の拡散、これがどうなっているのか、それから濃度、これがどうなっているのか。それから広域消防のさらなる強化、このことを求めておきたいと思います。質問は二つ、一つが要望です。それと感謝です。よろしくお願いします。

早水政府参考人 お答えします。

 火災現場周辺の放射性物質の状況についてお答えいたします。

 まず、空間線量率につきましては、原子力規制庁が従来から設置していた四カ所のモニタリングポストに加えまして、福島県において火災現場により近い三カ所に可搬型のモニタリングポストが設置され、連続測定が行われておりまして、これらのモニタリングポストによる空間線量率の測定結果は火災前と比較して大きな変動は見られていないということです。

 それからもう一つは、大気浮遊じん、ダストについてですけれども、これは、福島県によりまして、火災現場から数キロの距離にある三地点において測定が行われております。五月八日に一時的に濃度の上昇が見られましたけれども、翌日九日以降は七日以前と同じ濃度レベルに戻っておりまして、福島県によりますと、大気浮遊じんの測定値も火災前と比較して変動はないということでございます。

原口委員 終わります。

三ッ矢委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 おとついに引き続きまして、日印原子力協定について質問させていただきます。

 正確な言い回しで確認しておきたいんですが、ちょっと通告から外れますが、事実関係だけ。担当できる人、いますね。インドは、私は、CTBTについてはずっと反対をしてきたと思っていますが、足元でどういうポジションか、確認をさせてください。

相川政府参考人 失礼いたします。

 インドは、CTBTの交渉の際にもCTBT交渉の採択に反対しておりまして、署名もしておりません。当然、批准もしておりません。

 以上です。

足立委員 今回の日印原子力協定に当たって、ごめんなさい、私、森友問題で忙しいものですから、ちょっと確認できていなくて、今回の協定にあってはどういう整理をしているんでしたっけ。

梨田政府参考人 協定交渉の中での、あるいは首脳会談を初めとする日印間のさまざまな接触において、NPTへの加入、CTBTの締結というものは累次インド側に働きかけてきているところであります。

足立委員 おとついの外務委員会で、私は、外務大臣初め外務省の皆様に、とにかく日印原子力協定というのは原発輸出のためであって、いわゆるNPT体制あるいは核不拡散等の問題については、補足的に、対国内対策あるいは対国会対策の中で、政府として、あるいは政府の一貫した立場というか、立場を一貫させるという観点から最大限の調整をしてこられた、こう思っていますが、インドの核政策が今回の日印原子力協定で左右されることは私はないと思っている、こういうことを再三申し上げました。

 あの後、CTBTに対するインドの対応をもう一回私も勉強し直してみましたが、やはりインドは、いわゆるウラン原爆みたいなものに加えて、プルトニウム原爆とか水爆、こうしたものをしっかりと、五大国、核兵器国ですね、NPTレジームの中での核兵器国五カ国に既得権を独占させることなく、インドもしかるべき核オプションをキープするというポジションが一切揺らいでいないということを私なりに確認をしてきました。こういう認識は、大臣、違いますか。

岸田国務大臣 まず、CTBTで禁じているのは、核兵器の実験的爆発または他の核爆発、こうしたものであります。いわゆる未臨界実験のような核爆発は伴わない実験は禁止していない、これが定義、内容でありますが、そして、その中でインドは、CTBTの基本的な義務を、核実験モラトリアムを宣言する中にあって受け入れている、これを宣言しているわけです。

 インドを、今つくろうとしている枠組みの中に参加させるということは、少なくともこの部分においては間違いなく一つの国際的な不拡散体制への参加という意味で前進であり、意義がある、このように感じています。

足立委員 私の趣旨は、改めて申し上げると、インドがモラトリアムを守るというか履行するというか、それを実施していくとすれば、それは、モラトリアムを実施してもインドの核オプションが核兵器国に対しておくれをとらないという、要すれば、何が申し上げたいかというと、CTBTの交渉の歴史をずっと見ると、やはり既存の核兵器国が、核爆発を伴う核実験を行わなくても核体制の維持更新ができる、要は、既得権の人たちは、爆発を伴わなくても、例えば米国を中心に維持できるようになってきている。

 インドも、モラトリアムを維持しているということが即、何かインドが核に対して抑制的になっているということでは私はなくて、モラトリアムを維持できるということは、モラトリアムを維持した上で核兵器国に見劣りすることのないような核オプションをキープできるからだと私は認識しているんですが、認識は違いますか。

岸田国務大臣 CTBT体制は、先ほども申し上げさせていただきましたが、国際社会において、爆発を伴う核実験、これを禁止するという内容になっています。インドは、それに署名すらしていない、こういった現状にあります。CTBTの基本的な義務を受け入れるということをインドに宣言させ、そして、核実験モラトリアムを維持させること、これは国際的なCTBTの枠組みを実質的に実現する上で大変大きなことであると思います。

 加えて、日本とインドの間でこうした協定を結ぶ、こういったことによって、モラトリアムを維持することをよりしっかりと確保することにもつながる、このように思います。

 日本との協力において、核実験を行ったならば、世界最高水準の民生原子力技術を得ることができなくなってしまう、こうした技術を失うことになってしまう、こうした仕掛けをつくることは、インドに対して、こうした原子力の平和利用の国際的な枠組みに参加することの重要性を認識させる意味で意義があることであると認識をしております。

足立委員 この核実験の問題は、おとついに続いてきょうも岡本委員、原口委員初め皆様から質疑がありましたので、きょうはこれで終わりにしたいと思いますが、私は、大臣の御答弁は、インドの言いわけというか、インドの立場をそんたくし過ぎている、こう思っています。むしろ、日本は、核兵器の世界のレジームの中で一体これからどう生きていくのかということを真剣に考えるに当たっては、もう少し辛口の厳しい見立てをしていくべきである、こう思っています。

 ついては、NPT体制について確認をしておきたいと思いますが、とにかく外務省の答弁を聞いていると、NPT体制だ、不拡散だ、朝鮮半島の非核化だと、美しい言葉ばかりが並べ立てられていますが、私の認識は、インド、パキスタン、あとはイスラエルもかな、それから北朝鮮がもう核兵器を保有しているわけでありますから、ポストNPTを速やかに構想すべきである、私はこう思いますが、いかがでしょうか。

岸田国務大臣 NPTというのは、米国、ロシア、英国、フランス、中国、この五カ国を核兵器国とし、核兵器の保有を認めた上で、それ以外の非核兵器国への核兵器の拡散防止を定めるものであります。核兵器国には軍縮の義務を定め、非核兵器国には不拡散の義務を定める、こういった形で、国際社会全体として核軍縮・不拡散を進めていこう、こうした枠組みであります。核兵器国、非核兵器国、多くの双方の国々が参加する、今の国際社会において核軍縮・不拡散を考える上で最も基本的な枠組みであると思います。

 この基本的な枠組みは、我が国としては引き続きしっかりと尊重していきたいと思います。あらゆる核軍縮・不拡散の取り組みの基盤であるNPT、これを損なうということを行うことは我が国としては考えてはおりません。

足立委員 聞き方を変えると、仮に北朝鮮の核兵器を排除できない場合は日本も核オプションを持つべきだと私は思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 我が国としては、NPTの締約国として、核軍縮・不拡散の取り組みの中でNPT体制というのは基盤であると思います。この基盤の上に、国際社会と協力しながら、核兵器のない世界に向けて努力を続けていかなければならないと思います。

 加えて、我が国においては、非核三原則という国としての重要な方針があります。そして、原子力基本法を初めとする国内のさまざまな法律等に鑑みても、我が国が核兵器を保有するということは全く考えられないと認識をしております。

足立委員 仮に北朝鮮が核兵器を保有し続けても、同じ答えですか。

岸田国務大臣 我が国として、核兵器を保有することは全く考えてはおりません。

足立委員 お考えはわかりました。

 加えて、もう一つ更問いでありますが、今、北朝鮮の核兵器について大変厳しい事態がずっと続いている、これはおとついも大臣に認識を確認させていただきました。その北朝鮮の核兵器をやはり排除していくことが極めて今大事なわけですが、それをアメリカの先制攻撃等で行うのは大変なコストを払わなあかんわけですから、あらゆる外交努力ということで今も取り組んでいらっしゃることと思います。

 私は、一番有効な手だては核ヘッジだと思います。一言で言えば、北朝鮮が核を保有するのであれば日本も核オプションを検討すると世界に宣言することが中国や北朝鮮の対応に一番大きな影響を与える、こう考えていますが、そういうオプションは日本は持っていないですか。

岸田国務大臣 そういった選択肢は考えておりません。我が国としては、朝鮮半島の非核化という大きな目標に向けて、関係国としっかりと協力をしていかなければならないと思っています。

 我が国として核兵器を保有するということは全く考えない上で、国際社会と協力しながら、北朝鮮に対して、自制と、さまざまな安保理決議の履行を求めていかなければなりません。そのために、国際社会と協力をして、意味ある対話を行うために、まずは圧力をかけなければならないということで、ロシアや中国、影響力がある国にも協力を求めながら、国際社会として具体的な現実的な圧力をかけようということで取り組みを進めています。この取り組みをぜひ進めていきたい、このように思います。

足立委員 もう時間が限られていますが、あと五分ですね、あと二つだけ確認させてください。

 一つは、Jアラートと避難訓練ということであります。ちょっと時間がないので飛ばしますが、要すれば、避難訓練をちょっとやった方がいいんじゃないか、こう思いますが、いかがですか。

横田政府参考人 お答え申し上げます。

 避難訓練でございますが、本年三月十七日に秋田県男鹿市におきまして、初めて弾道ミサイルを想定した住民避難訓練を実施いたしました。具体的には、国からのJアラートを使った男鹿市への情報伝達、男鹿市の防災行政無線とか登録制メールを利用しました住民への情報伝達、住民による公民館、小学校での屋内避難訓練などを行ったところでございます。

 訓練を実施しました結果、弾道ミサイルが我が国に落下する可能性がある場合に、Jアラート等により伝達される情報の内容や屋内避難が必要なことについて、訓練に参加された国民や報道に接した国民の皆様に対し、一定程度周知ができたものと認識はいたしております。

 しかしながら、今般の我が国を取り巻く環境に鑑み、弾道ミサイルが我が国に落下する可能性がある場合における対処についての国民の理解をさらに広く進める必要があるということから、弾道ミサイルを想定した住民避難訓練の積極的な実施につきまして、全国の都道府県に対し通知をいたしますとともに、国民保護に関する都道府県説明会を開催いたしまして、地方公共団体に対して、積極的な訓練の実施を広く働きかけているところでございます。

足立委員 ありがとうございます。

 そういう政府の取り組みを受けて、いろいろな動きが出ています。

 例えば、吉村洋文大阪市長は、四月二十日の定例会見で、実際にミサイルが飛んでくることがわかった場合にとどまらず、北朝鮮が核実験をした場合、あるいはICBMの動きを見せた場合には、危機事態対策本部を大阪市に設置して、休校とか安全情報の発信とか、そういうことに努めていくことを発表されています。

 滋賀県の教育委員会も、四月の二十五日までに、県立の学校あるいは滋賀県下の市町の教育委員会に対して、弾道ミサイル飛来時の対応についての通知を出されました。これに対して、全滋賀教職員組合などが抗議文を知事に出されています。要すれば、唐突にこういう通知を出すと、児童が、小学生が戦争が起こると泣き出しちゃう、児童生徒に唐突にミサイル飛来の可能性を伝えればパニックが起こるということで、私は当たり前の準備だと思いますが、大変現場では、こういう一部の教職員組合を初め、これに抗議をするという事態が起こっています。

 大臣、これはどう思われますか。私はそういうことは適切ではないと思いますが、いかがですか。

岸田国務大臣 国として、国民の命や暮らしを守るということは最も大切な責務であると思います。そして、我が国を取り巻く安全保障環境は大変今厳しさを増している、こうした認識を持っています。

 その中で、現実的に、具体的に国民の命を守るためには何をしなければならないのか、何を備えなければならないのか、こういったことについてしっかりと準備をしていく、これは大変重要な取り組みであると思います。

 しかし、それを進めるに当たって、何よりも国民の皆様自身にしっかりと理解を得ていかなければなりません。厳しい現実をしっかり説明し、必要な備えについてしっかり理解を得てこうした取り組みを進め、結果として、国民の命を、暮らしを守る、この大切な役割を政府としてしっかり果たせるように努力を続けていかなければならないと思います。

 具体的な取り組みについては丁寧に行う、これが重要であるというのは一般論として当然ではないか、このように思います。

足立委員 時間が来ましたが、大臣、一言だけ確認して、終わりにさせてください。

 きのう、派閥の、宏池会の会合で、九条改正は今は考えないという御発言をされていますが、これは外務大臣としての御発言か派閥の領袖としての御発言か、確認をさせてください。

岸田国務大臣 当然、宏池会という派閥の会長としての発言であります。

足立委員 ありがとうございました。

三ッ矢委員長 次に、玉城デニー君。

玉城委員 自由党の玉城デニーです。

 日本・インド原子力協定締結について承認を求めるの件、私が最後の質疑者となりました。

 質問に入る前に、今、足立委員が最後に岸田大臣に聞きました、安倍総理の憲法九条発言について、派閥の領袖としての意見だ、発言だということがありましたが、では、外務大臣としてはどのような見解をお持ちでいらっしゃいますか。

岸田国務大臣 派閥の会長としての考え方を昨日説明しましたが、この場には外務大臣としての立場で立っております。

 外務大臣としての考え方は、こうした憲法改正については、当然、憲法審査会等において、各党において議論されるものだと認識しておりますので、こうした場では控えなければならない、このように考えます。

玉城委員 私も、実は、きょうの朝日新聞の朝刊を、少しコピーを見せていただいて、安保法制が成立した直後の二〇一五年十月の派閥の研修会で、当面九条自体は改正することを考えないのが私たちの立場ではないかと発言していた、この日の会合では、今日現在まで考えは変わっていないと明言しているということとともに、総理の発言と私の考え方はどこが違うのかあるいは同じなのか一度よく確認をしてみたいとも語っていらっしゃいます。

 私は、決してそれをとがめる立場でもありませんし、とがめようとも思いません。こういう発言はいろいろしてもいいと思うんですが、ただ、例えば、それが総裁としての発言であるとか総理としての発言であるとか、場合によって場面によってそれが変わり得るということが当たり前にあっては、国民は迷うのではないかなと思うんですね。

 やはり、総裁よりも総理の立場の方が重い、派閥の領袖よりも外務大臣の立場の方が重い。国民もそう思うわけですね。グループや政党よりも、パーティーよりも。ですから、あえて私は、外務大臣としての見解はいかがですかというふうに聞かせていただいたのもそういうことです。ですから、この場ではその発言は控えたいという発言も、私は認めます。

 しかし、こういう発言、党内であろうと、あるいは議場であろうと委員会の中であろうと、いろいろな発言は、当然ですけれども、あってしかるべきだと思うんです。我々は一つの政党だから一つの考えで走らなければいけないということの方が、私はよっぽど危ないと思います。

 政党の中にも多様な意見がある。派閥の中にも多種多様な考え方がある。それはなぜかというと、やはり、日本全国いろいろな地域から、国民の声をしっかり背負って国会にやってきている。その中で、日本の進むべき道をどうやって議論するか。特にここ、外交の議論をする外務委員会では、やはり対外的な、発信するという意味においての発言は非常に重たいものがあると思うんですね。だからこそ忌憚のない話し合いをし、そこで決めるときは決める、そういうふうな賛否も確認するわけです。

 ですから、ここまでにしたいと思いますけれども、この日印原子力協定についても非常にさまざまな議論がありました。私は、この自分の持ち時間は、理念的な形で、ぜひ大臣や政府参考人に答弁をいただきたいと思います。

 最初に聞かせていただきますのは、戦争による核被爆国である我が国と、NPTに未加盟、CTBTに未署名のまま核兵器を実質上保有していると認められているインドとの原子力協定を締結することについて、日本が得る国益というのは一体何なのか、お答えください。

岸田国務大臣 まず、これは再三説明させていただいていますが、インドと本協定を締結することによって、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながると考えております。

 具体的には、まず、協定は、インドが表明した核実験モラトリアムの継続等を前提にしています。加えて、本協定を締結することによって、インドは我が国との間で、核物質等の平和的目的に限った利用、あるいは不拡散の義務を負うことになります。これによって、インドが原子力の平和利用について責任ある行動をとること、これが確保されると考えているわけですが、このことは、唯一の戦争被爆国として核兵器のない世界を目指す我が国として、インドを国際的な不拡散体制の外側に置くよりも、取り込んでおくことが重要であるという認識に基づくものであります。

 核兵器のない世界を目指す我が国にとって、インドを国際的な不拡散体制の内側に少しでも取り込む、こうした努力は、我が国の基本的な方針にも整合的であると考えています。

玉城委員 NPT未加盟、CTBT未署名国、あるいは拒否国と言っても過言ではないと思いますが、そのインドにとって、そのような未加盟、否定的な態度をとっている状況であっても、核兵器保有の体制に国際社会から変更を求められることもなく、逆に、日本からの協力を得て、原子力政策を、この協定を締結することによって強力に堂々と進めていくことのメリットが与えられることになるのではないかという懸念があります。

 そうなった場合、国際社会から、核不拡散、核兵器廃絶などに、この外側にいるインドを取り込んでそういう環境を醸成していくんだという立場をとっていると言っている日本に対する国際社会からの対応、あるいは見方が変化するのではないかということも、また他方で懸念されるところです。

 大臣の見解をお聞かせください。

岸田国務大臣 まず、インドに対しましては、従来からも、そしてこれからも、NPT体制、あるいはCTBT等、この国際的な不拡散の枠組みに直接入るべきであるということは言い続けてきましたし、言い続けていかなければならないと思います。

 ただ、現実、インドはこうした不拡散体制の外側にいるわけです。そこで、国際社会が議論をし、NSGとして四十八カ国集まって、そして厳しい条件のもとにインドに例外的に協力することを認めることを決定したわけであります。

 この決定は、NSG自体、NPTを前提とするものであります。NPTを前提とするNSGが厳しい条件のもとにのみ協力を認めるということをまずし、その上で関係国がそれぞれ協定を結ぶことによって、現実的にインドをさまざまな形で原子力の平和利用における責任ある行動を行うということについて確保していく、こういったことが行われているわけです。

 そして、もし日印原子力協定、御了解をいただいたならば、もし核実験等をインドが行ったならば、日本の最高水準の原子力技術、これも失うことになってしまうということを考えた場合に、改めてインドは、NPT体制あるいはCTBT体制、こうした国際的な不拡散体制の重要性を認識することになるのではないかと思います。

 こうした厳しい条件のもとに、少しでもインドをこの不拡散体制の中に引き込もうとする努力、これは他の国から見て誤解をされるということにはならないと我々は信じています。

玉城委員 非常にいろいろな意味で私たちの権利もしっかり明記をし、さまざまなその条件を付してあるというふうなことは今大臣の説明にあったと思います。

 例えば、インドは、本協定を締結しなければ、予定している原発に必要不可欠な資機材を輸入することができないということもあります。いわば、インドの原子力政策に対する、この協定はさらに一段踏み込んだ縛りをかけることができる本来の協定にもなり得るはずなんですね。

 ところが、高濃縮処理を含め、インドが保持しているこれまでの権利を、IAEAの保障という、担保という点を重視する余り、逆に、この協定を締結することによって、ほかの協定では厳しくしているような部分まで緩めてしまうのではないかというふうな懸念はありませんか。政府参考人にお答えいただきたいと思います。

梨田政府参考人 御指摘の点につきましては、まず再処理は、再三御説明しているとおり、既にインドが再処理の能力と方針を有していることから、各国はインドとの協定において再処理を明示的に認めております。また、それを受けて、本協定においてもインドにおける再処理を容認することといたしましたけれども、あくまで極めて厳格な要件のもとで行うことといたしております。

 具体的には、新しく建設されるIAEA保障措置のもとにある再処理施設のみで行われることとして、また、同施設に適用される厳格な保障措置の内容を定めております。

 濃縮につきましては、インドが濃縮技術を既に有しているという事情、二〇%未満の濃縮まで規制するような国際的に確立した統一的な慣行はないという事情、以上を考慮した結果、二〇%以上となる濃縮は同意のある限り認められるという規定になったものの、我が国政府としてこのような同意を与える考えはないという考えでございます。

玉城委員 先ほど大臣は、日本の高い技術もこの協定を結ばなければインドは導入することができないと言いました。他方、今政府参考人からは、インドは既にそういう技術はもう有しているんだという発言もありました。非常にそこもまた曖昧な部分がまだ残っている。

 私は、この協定は、先ほどどなたかの委員からの発言もありましたが、まだやはり議論の端緒であるというふうに思います。さらにもっと精査をしなければいけないところがあるのではないかと思います。

 例えば、本協定の停止あるいは協定終了という判断がなされた場合について、その結果として、原発の、移転された核物質、副産物として生産された特殊核分裂物質ほか資機材についての返還を求める権利が置かれています。しかし、現実として、日本がそれらの資機材を引き取り、移送し、保管することは可能なんでしょうか。

 そのことについての考えをお聞かせください。

梨田政府参考人 本協定におきましては、核物質あるいは資機材等の返還を求める権利というものを定めております。

 我が国として、具体的に返還請求権を行使する場合には、御指摘の点も含めて、適切な措置を講じた上で行うという考えであります。

玉城委員 非常にあっさりした答えですが。

 使っている原発を停止させたら、使用済みの燃料、使用中の燃料の処理が出てきます。しかも、放射性物質に汚染された部品も全部ばらして持って帰らないといけない。具体的に言うとそういうことなんですね。

 それは、いわゆる原子炉内部の格納器であったり、あるいは外郭の建物であったり、建物は持って帰らないかもしれませんが、具体的に言うとそういうところまで全て、本当に現実的に持って帰るという選択肢がとれるのかどうか。私は、とれないと思います。なぜなら、日本にはまだ、原子炉を解体したり、あるいは放射性物質に汚染されたその部品を管理するという技術を確立できていないのではないかと思うからです。

 その点について、技術はある、ない、簡単にお答えください。

三ッ矢委員長 どちらが答えますか。

 梨田部長。

梨田政府参考人 外務省はその点につきまして所管しておりませんので、お答えを申し上げられません。

岸田国務大臣 まず、核実験等によって協力が停止されるということは、インドにとって、我が国の技術を失うだけではなくして、世界第三の経済大国日本との二国間関係についても決定的な影響を与えることになります。それだけこの核実験を行う等の行為は大変重たいものがあります。

 しかし、それでももし行ったならば、我々は、毅然としてこの権利を行使しなければなりません。これは権利であります。そして、権利ですので、これは費用についても、これは協定の中にありますように、我が国がスムーズに権利を行使できるように我が国の費用で引き揚げるということまで明記した上で、この権利をしっかりと行使できる仕組みをつくっています。

 こうした協定は大変重要であると思います。しかし、それだけ重大な事態に陥って、我が国として覚悟を持ってこの権利を行使した以上は、我が国として、その現状、どこまで協力が進んでいたか、これは実際その時点で実情を確認しないとわかりませんが、その時点において最も適切な対応を考え、全力でこの権利の行使に努めなければならないと考えます。

 その現実の中で最善の取り組みを行わなければならないというのが我が国の立場であると考えます。

玉城委員 繰り返すようですけれども、NPTにもCTBTにも批判的なインドを核なき世界の一員に引き入れるということも非常に大きな仕事だろうと思うんですが、他方、今大臣がおっしゃったように、たとえ我々が権利を有していても、いざインドが必要に迫られて核実験を行った場合に、その権利を行使するということは、この協定の中でも、恐らく考慮、配慮されるということが書かれているんだというふうに私は思っております。

 なぜなら、この公文の中にも、一方的、自発的には核実験を行わないと書いてあるんですが、笠井委員が先ほど来重ねて質問をしていたのは、一方的、自発的と置いてある意味は何ですかということなんですね。

 一方的というのは、つまり、自分たちから。自発的にというのはインド側から。しかし、考え方を、逆の立場から考えてみると、隣の国がやりました、要するに、それは我々が自発的にやることではなく、彼らから触発されました、ですから、私たちが勝手に一方的にやることではありません、責任はあの国にありますというふうな論拠を立てた場合に、こういう協定の中でしっかり書いていないということは、協定上の協議の中ではいろいろな話はできたけれども、協定に落とし込んでいないということが非常に問題なのではないか。国際社会では、協定に書いてあるとおりというふうに言われたら、もうそれ以上の反論ができないのではないかと思うんですね。

 最後に質問させてください。

 本協定の締結が、核開発を進める、あるいは進めるかもしれないほかの国に対して、どのようなメッセージを発するものだというふうに捉えていらっしゃいますか。

岸田国務大臣 今の委員の発言の中の前半部分ですが、一方的、自発的という修飾語は、核実験にかかるのではなくして、モラトリアムの方にかかる修飾語であります。自発的、一方的なモラトリアムについて、九月五日の声明についても、また、我が国の公文においても、これは定めているということ、これは誤解がないようにしなければなりません。核実験にかかる修飾語ではないということを申し上げます。

 そして、こうしたインドとのやりとりの中で、インドを少しでも国際的な不拡散の中に参加させる、取り込む努力をしていくということ、そして、その成果として、インドが核実験のモラトリアムを継続し続け、なおかつ、NPTあるいはCTBTといった枠組みに少しでも接近するというようなことを見たならば、他の国々にとっても、改めてNPTやCTBTの重みというものを感じてもらえるのではないか、我々としてはそのように考えております。

玉城委員 ありがとうございました。

 終わります。ニフェーデービタン。

三ッ矢委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 これより本件に対する討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、日・インド原子力協定に反対の立場から討論を行います。

 冒頭、重大な内容を持つ本協定の委員会審議はいよいよこれからというとき、質疑を尽くさず終局し、採決することに強く抗議します。

 インドは、核不拡散条約、NPTに加盟せず、一九七四年と九八年に核実験を実施した核保有国であります。このような国と初めて、唯一の戦争被爆国である日本が原子力協定を締結することは、インドの核保有国としてのステータスを強めるものであり、北朝鮮の核開発が大きな焦点となる中、核兵器全面廃絶につながる禁止条約づくりという世界の流れに逆行することは明らかです。

 本協定において、日本が協力する原子力施設などが保障措置のもとに置かれることにより、日本の支援の結果生成されるプルトニウムなどの核物質が核開発に利用されることはないとしています。しかし、インドが日本から新たに協力が得られる部分を民生用とし、その分、独自に生産する核物質を軍事利用に回すことにすれば、日本の協力が結果として軍事利用に資することになりかねません。

 また、本協定には、日本がベトナムやヨルダンと結んだ原子力協定では明記された、核実験が行われた場合に協力を停止、終了する旨の規定が盛り込まれていません。政府は、協定第十四条により、理由のいかんにかかわらず協定を終了できるため問題はないとしていますが、インド側の反対により従来の日本側の対応を曲げたものであり、協定上、核実験への歯どめが曖昧になったと言わざるを得ません。

 本協定は、安倍政権の成長戦略に基づき、インフラ輸出の柱とする原発輸出を推進するものであります。東京電力福島第一原発事故から六年余り、いまだ事故は収束せず、原因究明さえできておらず、多くの被災者の苦しみが続いているもとで、危険な原発の世界輸出を推進する政府の責任は重大であります。

 原発輸出と国内原発の再稼働の中止、即時原発ゼロへの転換を強く求めて、本協定への反対討論とします。

三ッ矢委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

三ッ矢委員長 これより採決に入ります。

 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

三ッ矢委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

三ッ矢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

三ッ矢委員長 次に、本日付託になりました投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件、社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件及び社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣岸田文雄君。

    ―――――――――――――

 投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件

 投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

岸田国務大臣 ただいま議題となりました投資の促進及び保護に関する日本国政府とケニア共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十六年四月以来、ケニア政府との間でこの協定の交渉を行った結果、平成二十八年八月二十八日に署名が行われた次第であります。

 この協定は、投資の許可後の内国民待遇及び投資の許可段階及び許可後の最恵国待遇の原則供与並びに輸出についての要求を初めとする特定措置の履行要求の原則禁止を規定するとともに、公正衡平待遇義務、収用等の措置がとられた場合の補償措置、支払い等の自由な移転、投資紛争の解決のための手続等を定めております。

 この協定の締結は、我が国とケニアとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、投資の自由化、促進及び保護に関する日本国とイスラエル国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十七年五月以来、イスラエル政府との間でこの協定の交渉を行った結果、平成二十九年二月一日に署名が行われた次第であります。

 この協定は、ケニアとの投資協定と同様の内容を定めるとともに、投資の許可段階の内国民待遇等についても定めております。

 この協定の締結は、我が国とイスラエルとの間の投資の増大及び経済関係のさらなる緊密化に資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、社会保障に関する日本国とスロバキア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十七年十二月以来、スロバキア政府との間でこの協定の交渉を行った結果、平成二十九年一月三十日に署名が行われた次第であります。

 この協定は、我が国とスロバキアとの間で年金制度に関する法令の適用について調整を行うこと、両国の年金制度の加入期間を通算することによって年金の受給権を確立すること等を定めております。

 この協定の締結により、年金制度への二重加入等の問題の解決等を通じ、両国間の人的交流が円滑化し、ひいては経済交流を含む両国間の関係がより一層緊密化することが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、社会保障に関する日本国とチェコ共和国との間の協定を改正する議定書の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十七年十一月以来、チェコ政府との間で現行の社会保障協定を改正する議定書の交渉を行った結果、平成二十九年二月一日に署名が行われた次第であります。

 この議定書は、一方の締約国から他方の締約国に一時的に派遣される被用者に対し当該一方の締約国の法令のみを適用する場合を明確化することにつき定めるものであり、また、あわせて被用者年金一元化等の社会保障制度改革関連法の施行を踏まえ、協定が適用される我が国の年金制度のうちから各種共済年金を削り、国民年金及び厚生年金保険のみに改めることとしています。

 この議定書の締結により、保険料の二重負担の解消が強化され、両国間の人的交流及び経済交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この議定書の締結について御承認を求める次第であります。

 以上四件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

三ッ矢委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時二十二分散会


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