衆議院

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第11号 平成30年5月16日(水曜日)

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平成三十年五月十六日(水曜日)

    午前八時二十二分開議

 出席委員

   委員長 中山 泰秀君

   理事 小田原 潔君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 鈴木 貴子君

   理事 山口  壯君 理事 末松 義規君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      小渕 優子君    黄川田仁志君

      熊田 裕通君    高村 正大君

      佐々木 紀君    杉田 水脈君

      鈴木 隼人君    辻  清人君

      渡海紀三朗君    中曽根康隆君

      堀井  学君    山田 賢司君

      阿久津幸彦君    篠原  豪君

      宮川  伸君    山川百合子君

      関 健一郎君    岡本 三成君

      岡田 克也君    穀田 恵二君

      丸山 穂高君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   農林水産副大臣      礒崎 陽輔君

   経済産業副大臣      西銘恒三郎君

   内閣府大臣政務官     村井 英樹君

   外務大臣政務官      岡本 三成君

   外務大臣政務官      堀井  学君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三田 紀之君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 浩司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松浦 博司君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    鈴木 量博君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            岡   浩君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   三上 正裕君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 岸本  浩君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房国際部長)          渡邉 洋一君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林 一久君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十六日

 辞任         補欠選任

  阿久津幸彦君     宮川  伸君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川  伸君     阿久津幸彦君

    ―――――――――――――

五月十五日

 沖縄県民の民意尊重と、基地の押しつけ撤回に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一一七二号)

 同(藤野保史君紹介)(第一二三五号)

 沖縄・高江の米軍ヘリパッドを撤去することに関する請願(志位和夫君紹介)(第一一七三号)

 オスプレイの飛行中止と配備撤回に関する請願(藤野保史君紹介)(第一二三四号)

 辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(藤野保史君紹介)(第一二三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官石川浩司君、大臣官房審議官松浦博司君、北米局長鈴木量博君、中東アフリカ局長岡浩君、経済局長山野内勘二君、国際法局長三上正裕君、内閣官房内閣審議官三田紀之君、TPP等政府対策本部政策調整統括官澁谷和久君、財務省大臣官房審議官岸本浩君、農林水産省大臣官房国際部長渡邉洋一君及び経済産業省大臣官房審議官小林一久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮川伸君。

宮川(伸)委員 おはようございます。立憲民主党の宮川伸でございます。

 本日は、TPPに関して御質問させていただきます。

 冒頭になりますが、アメリカ大使館のエルサレム移転について、多くの死傷者が出ているということで、今の日本政府の現状認識とそれについての考え方について、最初にコメントいただけますでしょうか。お願いします。

河野国務大臣 日本政府は、米国がエルサレムに在イスラエル米国大使館を移転するという報道があってから、これがきっかけとなって、中東和平をめぐる状況が一層厳しさを増すことになったり、あるいは中東全体の情勢が悪化し得るという懸念を持っておりました。

 残念ながら、十四日以降、この問題をめぐり暴力的な衝突が起き、多くの方が亡くなられ、また負傷者が出ているというニュースに接し、深く憂慮するとともに、懸念を持って情勢を見ているところでございます。

 日本政府といたしましては、全ての関係者に強く自制を求め、これ以上こうした暴力的な衝突がエスカレートしないことを求めたいと思います。もちろん、パレスチナの人々が平和的なデモをする権利はあるわけでございますが、ややデモが平和的と呼べない状況になっているのも確かでございますし、また、そうしたデモの鎮圧のためにイスラエル軍が実弾を使っているという情報もございます。イスラエルに対しては更に強く自制を求めたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、中東の平和と安定は我が国にも直接大きく影響するものでございますので、日本政府として、これ以上事態が悪化しないよう注視をしつつ、中東和平に向け日本としてできることはしっかりやっていきたい。

 特に、ジェリコの工業団地のプロジェクト、つい先日、パレスチナ、イスラエル、ヨルダンの閣僚をヨルダンの死海リゾートに迎え、四者による閣僚会議を開いて、第二フェーズのスタートに向けて四カ国の合意ができたところでございますので、こうした試みを通じて、日本としても、パレスチナの発展に寄与すると同時に、中東和平にしっかりとコミットしてまいりたいと思っております。

宮川(伸)委員 ありがとうございます。

 こういうニュースを聞くと、なぜ人は争うのかということで非常に悲しい気持ちになるんですけれども、これ以上死傷者がふえないことを強く願って、TPPの質問に入りたいと思います。

 私の考え方としては、今保護主義が非常に強く台頭してきているということで、懸念を強く持っておりますが、一方で、過剰なグローバリズムということに関しても十分注意をしながらやっていかなければならない。そういった視点できょうは質問できればというように思います。

 最初に、先週、我が党の亀井亜紀子議員が質問をされておりますが、このTPPに入ることで関税がなくなって税収が減るということでありますが、税収がどのぐらい減るのか、そしてその補填分をどうしようと考えているのか、教えていただけますでしょうか。

岸本政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11協定が我が国の関税収入に及ぼす影響につきましては、協定発効後の輸入動向などについて予測することが困難であることから、正確に見積もることは困難でございます。

 その上で申し上げますと、我が国以外のTPP11協定の交渉参加十カ国からの輸入実績が将来にわたって一定であることなどの仮定のもと、機械的な試算を行いましたところ、TPP11協定による関税収入減少額は、協定発効初年度で二百四十億円程度、協定による関税引下げなどが全て終了する最終年度で七百四十億円程度となるという結果になったところでございます。

 次に、その補填に関するお尋ねでございます。

 ただいま関税収入減少の試算について申し上げましたが、これは、我が国以外の交渉参加十カ国からの輸入実績が将来にわたって一定であることなどの強い仮定を置いた機械的な試算でございます。すなわち、TPP11協定発効後の実際の輸入動向などがどうなるか、具体的に予測することは困難でございます。また、貿易・投資の機会の拡大が国内経済の好循環につながることで我が国の経済成長が見込まれるということもございます。

 これらを踏まえますと、協定発効によって今後の関税収入が実際にどうなるかにつきましては、現時点で確たることを申し上げることは難しいということを御理解いただきたいと存じます。

 いずれにいたしましても、今後の歳入歳出のあり方につきましては、毎年度の予算編成を通じて適切に議論、検討がなされていくものと存じます。

宮川(伸)委員 今、補填分に関しては、今のところアイデアがないと。一つは、経済的に発展することでそこが補填できるのではないかということでありますが、TPPの12と11で、アメリカが抜けたということで、経済規模がかなり小さくなっているということ。それと、貿易収支で見ますと、昨年で見ますと、アメリカが入ったTPP12であれば我が国日本は黒字の状況だと思うんですが、これが、アメリカが抜けると、11だと赤字になるというように私は認識をしております。

 それとともに、輸出額でいっても、アメリカがTPP12の中で半分以上我が国日本の輸出対象国だというふうに私は認識しておるんですが、こういったところから、やはりアメリカが抜けることでかなり状況が大きく変わっているのではないか。

 そういった中で、今政府の方が見積もっているGDPの押し上げでありますが、アメリカがいたとき、12のときにはGDP二・六%アップということでありますけれども、現在はGDP一・五%というふうな話になっていると思います。約四割減ということでありますが、ちょっと私の根拠のない直観からすると、もうちょっと下がるんじゃないかなというような気があるんですが、ただ、計算からするとそういうことだということであります。

 そういった中で、これはGTAPという経済モデルで計算されているという理解ですけれども、このGDP一・五%を達成させていくというのが一つ大きなポイントだと思うんですが、それを達成させていく上での課題、あるいはクリアしなければならないポイントというものはどのようなものを考えているんでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月、TPP11の経済効果分析をお示ししたところでございますが、今先生御指摘のGTAPというモデルは、CGEという、経済学の教科書に載っております計量、一般均衡モデルの一種であるわけでございますけれども、これを用いてお示ししたものでございます。私どもの分析では、関税などが減る、あるいは非関税障壁がなくなることによって貿易・投資が盛んになるといった効果に加えて、そうしたものによる生産性向上、労働供給増といったような効果も含めて総合的な試算を行っているところでございます。

 先生、今リスクファクターというふうにおっしゃいましたが、この私どもの数字、結論は、TPPが発効すれば自動的にこうなるというものではなくて、さまざまな政策手段を駆使してTPP11の効果を最大限に発揮するという前提で組み立てられたものでございます。その意味で、TPPによる成長メカニズムをお示しすることで、それに伴う政策、どういうものが必要かということを示す政策分析の一種だというふうに考えているところでございます。

 したがいまして、その実現に向けては、TPP11の早期発効を実現するのはもちろんでございますが、それに加えまして、昨年取りまとめました総合的なTPP等関連政策大綱に盛り込んださまざまな施策、中小企業の海外展開の支援でありますとか国内産業の高度化、高付加価値化、あるいは農林水産業の体質強化といったような各種施策を着実に実施していく必要があるものと考えているところでございます。

宮川(伸)委員 ありがとうございます。

 もう少し、そのGTAPなんですが、このGTAP、一・五%アップというのがやはり一つ大きなメルクマールになっているのではないかと思うんですが、このGTAPの信頼性というのがどの程度あるのか。あるいは、このGTAPを使って、別のケースでいいんですが、実際にうまく、当たったんだよというような例があるのかどうか、教えていただけますでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 GTAPというのは、グローバル・トレード・アナリシス・プロジェクトという、Pはプロジェクトでありまして、アメリカのパデュー大学に設置されているものであります。一種のモデルを提供しているわけですけれども、それに対して、OECDあるいはWTO、日本国政府もそうですが、アメリカのITC、国際貿易委員会など、先進国の政府機関あるいは各種民間の研究機関などがみんな参加をいたしまして、データベースの更新など、さまざまな研究を合同でやっている、そういう一種のプロジェクトであるわけでございます。

 したがって、そのモデルは、WTOなどの国際機関やアメリカのITC、特にアメリカのITCは長年このモデルを使っているところでございまして、主要国政府でも経済連携の効果を分析する際に広く使用されて、一種の国際標準の分析ツールというふうに言われているところでございます。

 我が国では、私の知る限り政府として初めてこれを用いたのは二〇一三年、TPPの交渉に参加する前の政府統一試算でありまして、その後二〇一五年、TPP12がまとまった後TPPの経済効果分析で用いて、今回が三度目ということになるわけでございます。

 事例といたしましては、USITC、OECD、WTO等々が長年使っているところでございまして、ただ、先進的な機関というものは、独自のアプリケーションを付加をして、ある意味さまざまな改良を加えて分析を行っている、こういうふうに考えているところでございます。

宮川(伸)委員 ありがとうございます。

 違う視点で、このGTAPで、例えば違うグループだとか、あるいはアプリを変えたりとか、そういう違う条件でやった場合に、TPP11かあるいは12の結果がどういう結果が出ているのか、そういうものがあるのかどうか、教えていただけますでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 GTAPは、モデルと、それからデータベースから成るパッケージであるわけでございます。多くの機関や研究者に利用されている理由は、ユーザーが、自分の分析目的に応じて、提供されているベーシックモデルに改良を加える、アプリケーションを付加したり加工したりする、しかもそれをお互いに、それぞれの改良事例をGTAPのホームページに載っけてみんなで共有しているというところが特徴であるわけでございます。私どもが使用した生産性向上でありますとか労働内生化といったものも、他の研究者等が既に使用しているところでございます。

 GTAPを用いてTPPの経済効果分析を行った事例としては、世界銀行、それからピーターソン研究所、アメリカのITCが試算を出しておるところでございますが、世界銀行それからピーターソン研究所の結果は、たまたまだと思いますけれども、ほぼ私どもの試算と一致しているところでございます。

宮川(伸)委員 読み物を読んでいると、ほかにも幾つか例があるようでありますが、いろいろな仮定の問題もあるかもしれないので、どの数字が適当なのか、今おっしゃっている中で、政府の試算にかなり信頼性があるのかなというような気がしております。

 そういった中で、先ほど、GTAPの計算をしていく中での仮定の説明が少しありました。これは、輸出入だけではなくて、実際に経済が活性化していく中で、商品の価格が下がるということで、そういった中で需要がふえる、あるいは投資がふえていく、あるいは、企業間の競争が活発になることで効率化あるいはイノベーションが起こっていく、そして、実質賃金が上がっていく中で労働力も要求がふえるというような要素を含めて計算されているというように認識をしております。

 本日、この紙をお配りしておりますが、下の方がTPP11の話になります。結果、GDP一・五%アップの部分で、下の方に輸出と輸入が書いてありますが、輸出分、輸入分、これだけ見るとマイナスなのかもしれないんですけれども、それプラス、今言ったような効果があるので、民間消費、投資、政府消費ということでGDP一・五%アップが維持されるということだというように理解をしております。

 そういった中で、今の日本の経済の状況を見てみると、大手企業でいうと、内部留保が多くなっていてなかなか投資に回らない。国民に関して言えば、将来不安が大きく残っていて貯蓄の方にお金が回ってしまっている、実質賃金がなかなか上がらないというのが今の状況だと思うんですが、このままの状況でGDP一・五%が達成していけるような感じなのか。その点に関してはどのようにお考えでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 既に御説明いたしましたとおり、TPP11が発効するだけで自動的にこの効果が達成される、そういう分析ではないわけでございます。先ほど申しましたとおり、昨年十一月に改定したTPP等関連政策大綱に基づく施策の着実な実施が求められるところでございまして、そうした政策対応も含めて、こういう結果を期待しているということでございます。

 まずは、そういう意味では、TPP11の早期発効の実現に加えまして、先ほど御指摘いたしましたが、中小企業の海外展開の支援に加えて、国内産業の高付加価値化というのを政策大綱に盛り込んでいるところでございまして、そうした国内産業の活性化、あるいは働き方改革等々も含めました国内の諸施策とあわせて、TPPを契機として、我が国の新しい成長経路に乗せるという政策を総合的に展開していく必要があるというふうに考えております。

宮川(伸)委員 もう一つ、労働力の問題なんですが、今、このGTAPの計算どおりにいくと、四十六万人ぐらいの労働力増加というような計算になっていると思いますが、逆に、労働力をしっかりと補填できない状況だった場合に、このGDP一・五%がどういうふうになるのか。そういった中で、労働力を入れていかなきゃいけないんですが、今、例えば、保育園の問題だとかいろいろ、介護離職の問題だとか、そのような問題がある中で、海外からの労働力に頼らないと経済活性化がうまくいかないというような考えになっているのか。その点についてお答えいただけますでしょうか。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 経済効果分析は一種のウイズ・ウイズアウト分析でございまして、TPPがなかった場合とあった場合、この違いを比べるという、そういう分析手法でございますので、二年前の特別委員会でも、労働人口がどんどん減っていく中で労働供給がふえるという結論はおかしいじゃないかという御指摘をいただいたんですが、それは、TPPがなかった場合に比べればこれだけふえる、こういう試算結果だというふうに御理解をいただきたいところでございます。なお、新たに輸入する外国人労働力については、特段の想定を置いていないところでございます。

 国内の労働者、基本的にGTAPは完全雇用モデルであるわけでございますけれども、生産性が向上して経済が拡大することで、新たに働き始める労働者が、TPPがない場合に比べてこれだけふえる、こういうような試算を行っているところでございます。

宮川(伸)委員 今の労働力のところ、もう少し本当は聞きたいところなんですが、ちょっと時間の関係もあるので、最後に、このエリアに関しては村井政務官さんにぜひお伺いしたいんです。

 今、経済モデルはあくまでもモデルであって、実質的に国がどういうふうになっていくのかというところがやはり重要なポイントだと思います。

 先ほど申していたように、今国内でなかなか将来不安がある中で、消費に回らないだとかそういった保育園の問題だとかそういうものがある中で、これを推し進めていく中で、GDPが例えば一・五%アップになったとしても、結局、格差が非常に開いてしまう、あるいは国民生活が、一般市民の生活でいうと実質賃金がなかなか上がらない、あるいは海外からの労働力によって国内の失業率がふえる、そういうようなことがないというように言えるのかどうか、御所見をお願いいたします。

村井大臣政務官 宮川委員から、TPPの国民生活への影響、この点について御質問をいただきました。

 TPPは、単にGDPを拡大するのみならず、国民一人一人にとって、域内のさまざまな商品を安く手軽に入手することが可能となり、また、商品の選択肢がふえることによって消費の満足度も高まるものと考えております。

 さらに、先ほど来お話しいただいておりますけれども、昨年末のTPP11協定の経済効果分析では、日本の実質GDPを七・八兆円押し上げると試算をされておりますが、ここでは、貿易・投資の自由化が成長を促すメカニズムだけではなく、消費者、家計にもメリットがもたらされるメカニズムを明らかにしております。

 具体的に、この分析でいえば、関税や非関税障壁が撤廃されることにより小売価格が低下して、家計の負担が減少、実質所得が増加をする。さらに、経済活動が活性化して生産性が向上することで、賃金等も上昇して、四十六万人の新たな雇用が生み出され、家計所得が増加することが期待をされているところでございます。

宮川(伸)委員 ありがとうございます。

 村井政務官におきましては、お忙しいと思いますので、退席されて大丈夫です。お願いします。

 続きまして、農業分野の方に参ります。

 GDP一・五%アップの中には農業の部分ももちろん含まれていて、その中に仮定も含まれているということでありますが、まず、農業において、食料自給率が、今後TPPに参加した場合にどういうふうに推移をしていくと予想されていますでしょうか。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 昨年十二月に公表したTPP11の定量的な影響試算におきまして、国内農林水産物の生産額への影響とあわせて、食料自給率への影響についてもお示ししたところでございます。

 その中で、具体的には、影響試算の結果、価格の低下による生産額の減少が生じるものの、国内対策により国内生産量が維持されると見込んでおりまして、食料自給率の水準は、平成二十八年度カロリーベースで三八%という水準と同程度になるものと見込んでいるところでございます。

宮川(伸)委員 最初の私の余り勉強していない段階での認識だと、農作物がたくさん入ってきて農業にかなりのダメージがあるのではないかというようなイメージを持っていたんですが、今の御答弁の中でも、しっかり国内で農業の強化をしていくということで、国際競争力をつけて、その部分、少なくとも食料自給率に関しては下がらない状況でやっていけるんだという御説明だというように思います。

 そういった中で、農業体質強化対策というのがやはり非常にキーになると思いますけれども、今どういう中身になっているかという中で、例えば大規模化だとか機械化、そういうようなところにお金が入っていっていると思うんですが、実際上、その食料自給率が下がらなかったとしても、中小農家の皆さん方が大きく職を失っていくというようなことは予想されないんでしょうか。

礒崎副大臣 お答えいたします。

 現在、農業の成長産業化に向けて農政を展開しているところでございますが、その中で、将来に向けて農業で生計を立てていく意欲と能力のある農業者、すなわち、地域農業の担い手であれば、経営規模の大小、あるいは、法人、家族経営の別にかかわらず、幅広く支援していくことといたしております。

 今回のTPP対策においても、国内生産が維持されるよう、経営感覚にすぐれた担い手の育成などの体質強化策、また、協定発効に合わせた経営安定対策等、多様な国内対策によって、小規模農家も含め、多様な農業者を支援していくことにしているところでございます。

 また、こうした施策とともに、日本型直接支払制度などの多面的機能を発揮する政策も着実に実施することといたしております。

 これらの取組を総合的に組み合わせながら推進することによりまして、多様な農業者の意欲的な取組をしっかり後押ししてまいりたいと考えているところでございます。

宮川(伸)委員 この部分、やはり非常に重要だと思っています。多くの農家さんが不安に思われているということ、それとともに、先ほど申したように、GTAPの計算の中にもこれが入っているので、この農業分野で大きくマイナスになった場合、別の部分にも影響が出てくる可能性があるということで、もう一度ちょっとお聞きしたいんですが、今行っている、今プランとして出ているこの農業体質強化対策、これを続けていくことで、しっかりと、生産量を減らすことがなく、食料自給率が下がることなくやっていけるというようにお考えでしょうか。

礒崎副大臣 委員の皆さん御承知のとおり、既にTPP対策については、その体質強化策については既に前倒しで一部実施しておりまして、また、TPPが発効した段階でまた追加的な国内対策をやるもの、そういうものもありますので、先ほども言いましたように、そういうことを総合的に組み合わせることによって、規模の大小等にかかわらず、日本の農業をしっかり守っていく、国内生産量はきちんと維持していく、これはもう一番大事なことでございますので、そうなるように、農林水産省といたしましてもしっかりと努力を続けてまいりたいと思います。

宮川(伸)委員 もう一つ、その今の農業体質強化対策をやっていくということでありますが、TPPという視点で見た場合に、日本の国内農業に大きく政府がお金を入れていく、そして国際競争力をつけていく、そうすると、海外の企業から見ると、それは不当に政府がサポートしているんじゃないかというようにも見えるわけでありますが。

 この農業体質強化対策への支援、あるいは、我が党は戸別所得補償制度に高い関心を持っておりますが、こういったものを農業政策として入れていったときに、例えば、ISD条項だとか他の条項で、こういうものを抑制しなければならないというような条項は、今の中には入っていないんでしょうか。

渡邉政府参考人 お答えいたします。

 TPP協定におきましては、総合的なTPP等関連政策大綱に盛り込まれた体質強化対策など、国内農林水産政策を禁止するような、制約するような規定はないというふうに理解をしております。

宮川(伸)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、今回、12から11ということで、二十二の項目が凍結されております。その多くが知財等にかかわるもので、イノベーションにかかわるものが多く入っています。

 ですから、アメリカがいたときと状況が変わった中で、私は、凍結項目の二十二項目の多くが我が国、日本にとってマイナスになる項目が多いんじゃないかというように思うんですけれども、特に知的財産の部分について、ちょっと残りの時間でできるだけお聞きをしたいんですが。

 その中で、例えば医薬品関係のもので、医薬承認審査に基づく特許期間延長、一般医薬品データ保護、生物製剤データ保護というようなものが凍結をされるわけでありますが、今、バイオの分野というのは成長戦略の一つで、非常に重要な分野だというように思っています。

 そういった中で、AMEDをつくって、そして例えば再生医療も含めたイノベーションの部分に多額の研究費を出しているわけでありますが、そういった状況の中で、なぜこういう項目を凍結するというような判断に至ったのでしょうか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11協定では、議員御指摘のとおり、知的財産分野の十一項目を含みます二十二項目を凍結することで合意したところでございます。

 これは、TPP12、オリジナルのTPPが有しているハイスタンダードな水準を維持しながら十一カ国全てが合意に参加できるバランスのとれた協定を実現するために、さまざまな要素を総合的に考慮し、交渉の結果、こういうことになったというところでございます。

 今委員御指摘の医薬品の部分でございますけれども、例えば、特許期間延長にかかわる第十八・四八条の規定の適用ということが凍結されているところでございますけれども、例えばこの医薬品の承認審査に基づきます特許期間延長制度は、我が国においては既に国内法で措置されております。さらに、TPP11に参加しているほかの国でも似たような制度を有していることがございますものですから、本件の項目が凍結されたことによります我が国の医薬品産業への影響は限定的ではないかというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、知的財産を含む凍結項目は、TPP12の協定が有しているハイスタンダードな水準を維持しながら実現した結果だというふうに御理解いただければと思います。

宮川(伸)委員 本当は特許の方もお話をしたいところだったんですが、ちょっと終了になったので。

 医薬品の部分でいえば、開発に、臨床試験に非常に時間がかかる中で、その部分、特許期間が短くなってしまう。ですから、日本で発明した、日本でイノベーティブ産業としてつくっていったものを海外に売るときに、特許期間がどうしても短くなってしまう。ですから、それをしっかり長くして、我が国で発明したイノベーティブな商品をしっかりと海外に出していけるような土台をつくっていくというのが、政府が後押しするのに必要なんじゃないかと私は思っています。

 特許の方に関しても、やはりベンチャー企業を始めとしたそういう小さい企業は特許が本当に命であって、その期間がどれだけ長いのかというのが我が国のイノベーション産業を育てていく上で非常に重要であるということを最後に申しまして、私の質問といたします。

 本日はありがとうございました。

中山委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 国民民主党の小熊慎司です。

 まず、TPPに入る前に、北朝鮮についてお伺いをいたします。

 直近の報道でもまた米朝会談がどうなるかというところがありまして、北朝鮮も、心理学的には安っぽい人の気を引く手法でやっておられますし、大臣が十四日のテレビでも言及された、北朝鮮北部の核実験場を廃棄する式典においては、アメリカ、韓国、イギリス、中国、ロシアのマスコミは招待するけれども日本は招待しないという、あえて無視して気を引こうとしているのか、非常に安っぽい手法でいろいろとやっているなというふうには思いますけれども。

 まず、北朝鮮の核兵器の廃棄に関しては、しっかり粛々と対応していかなければいけないというふうに思っています。大臣が十四日のテレビでも言及された、この北部の核実験場が廃棄されるということはいいことだと思いますけれども、もともとこれは、国際的にも、北朝鮮の核兵器の廃棄に関しては、検証可能でなければならないという点と、不可逆的、後戻りできないようにしなきゃいけない点とかいろいろありますけれども、この検証可能だということを阻害する要因になるんじゃないかというふうに思っています。大臣もこれはIAEAとかいろいろな形で、やはり見た上で廃棄ということにならなければ、爆破した後にこれが本当に使えないものになったのかどうかと検証するのには大変な作業が必要になってきますし、だまされかねないというところもあります。

 この点について、大臣、改めてお伺いいたします。

河野国務大臣 北朝鮮が核関連施設を閉鎖する、放棄するというのは、これは前向きなことだと捉えてもいいんだろうと思いますが、委員おっしゃるように、こうしたことは検証可能で不可逆的でなければならないということを国際社会は常々申し上げているわけでございまして、現時点で、この核実験場を閉鎖するのに専門家が招待されているというのは、我々もまだ聞いておりません。そういう意味で、本当にこれが正しく閉鎖をされる、放棄をされているのか、あるいは、実験がどうだったのかという検証に影響が出かねないのではないかという委員の懸念はあるだろうというふうに思います。

 現時点でまだ国際社会と北朝鮮の間の合意ができていないわけでございますから、やめろと言うわけにもいきませんので、我々としては、そこはしっかり注視をしてまいりたいと思いますし、いずれにしろ、米朝会談の後、核の放棄に向けて北朝鮮がしっかりコミットをするという場合には、こうしたことを含め、どうなのかということはしっかり検討をしていかなければならないというふうに思っております。

小熊委員 この点に関して、いろいろな方が日本は置き去りにされているんじゃないかというコメントもありますが、私は、必ずしもそういう側面ではないというふうには評価をしているところであります。

 ただ、この廃棄に関してトランプ大統領は、ツイッター上ですよ、本心はわかりません、ツイッター上では、喜ばしいということだけ言っていて、この検証がちゃんとされるのかという点が指摘されていません。そういう意味では、日本は置き去りにされていないという前提に私は立ちますけれども、国際連携は必要だ、ちゃんとやっているという大臣の答弁はこれまでの委員会でもありました。

 この点に関して、アメリカを始めほかの国に、こんな招待されていたって、その前にこれはちゃんと検証可能な状況で廃棄されなければならない、安易な北朝鮮の一方的な爆破は認められないということを言っていこうぜみたいなことは、各国と連携で意見調整しましたか、言ってありますか。注視していくって、日本だけではだめですよね。連携していくということがあるわけですから。

 この点について、大臣、どうでしょうか。

河野国務大臣 北朝鮮のこの核の問題につきましては、米国を始めさまざま連日のように情報交換、意見交換をしているところでございます。

 何をどうということは公の場で申し上げるわけにはございませんが、そこはしっかり対応してまいりたいと思います。

小熊委員 トランプ大統領の喜ばしいというツイッターは全世界に発信されています。見る人も多いわけです。単純にこれを認めるということをやはり許してはならないと思います。交渉事で明らかにできないということであれば答弁は要りませんけれども、しっかりアメリカにくぎを刺さなきゃいけないです、この点については。

 今まで皆さんも言っているとおり、北朝鮮にはだまされ続けている。そして、喜ばしいと言ったって、日本の政府の見解ですよ、総理も言っている、大臣も言っている、前大臣の岸田さんも言っていた、原因は全て北朝鮮にあるわけですから。喜ばしいじゃなくて、当たり前のことです、廃棄するのは。

 こういった間違った発信で北朝鮮を増長させてはいけませんので、しっかりと、この点については、この二十三から二十五のやつは、はっきり言えば中止させて、ちゃんとした査察の上で、どう処理されるかというのを含めて国際合意の中で廃棄されていかなければ、まさに不可逆的なことが検証されたとは言いがたいというふうに思っています。その点については厳しく関係各国と連携をとってやっていただきたいということを言及させていただきます。

 あわせて、昨日、同僚議員の黄川田さんも同席しましたけれども、現在、島サミットのために訪問されているサモアの首相と、サモアとの議員連盟の会長である遠藤利明さんと食事をさせていただいて、その後、総理との会談、夕食会ということで、この北朝鮮についても南太平洋島嶼国と連携を図っていくという方向性が打ち出されたのは大変喜ばしいことであります。

 このサモアの首相、ツイラエパ首相は、公式実務訪問賓客という扱いで来日を果たすことができました。これは、大臣始め日本政府、外務省の努力の結果ですが。国家元首がいながら賓客として待遇していただいたということは、まさに南太平洋島嶼国の日本に対する思いが伝わっているということで、異例の待遇をしていただいたことの努力にまず感謝を申し上げたいというふうに思いますし、ぜひ、この島サミットの中で、北朝鮮に対する広い意味での国際的な連携を図っていける結果を出していただきたいというふうに思います。

 サモアには直接二億ドルの予算づけを総理からも発表されましたけれども、近年、この地域は、もともと近い国でありましたが、オーストラリアやニュージーランド、アメリカがかなりお金を投じていたわけですけれども、ニュージー、アメリカは大分減額をして、今、太平洋地域での寄附というか、やっているのは、オーストラリアが一位ですけれども、二位がもう中国になってしまいました。

 日本も連携を図っていく、南太平洋の島嶼国議連としてもしっかり日本もやっていきましょうということ、海洋開発も含め、また法整備といった価値観外交も含めやっていこうということでありますが、これはやはり形にしていかなければなりませんので、ODA始め、しっかりこれは見直しを図っていただいて、この島サミット、PALM8をきっかけに、北朝鮮問題、新たな国際課題もありますので、ぜひ、日本としての島嶼国に対する実のある支援をこのPALM8の中で御検討いただいて、宣言に至っていただきたいなということもあわせてお願い申し上げて、TPPの方に入っていきたいというふうに思います。

 るるありましたけれども、これは先週の十日の日に農水委員会で我が党の後藤祐一議員がやっていますが、いわゆるTPP12からTPP11に変わっています、サイズダウンをしました。その中で、さまざま調整も図られましたけれども、これはやはり私は議論が煮詰まっていないというふうに思っています、幾つかの部分については。最終的にアメリカが入らないということが確定すれば、第六条によって内容の修正を求めることができますけれども、修正に簡単に応じる状況があるのかどうかというのは、これは疑念があるところです。

 例えば、これは十日の農水委員会でも議論になっていますけれども、TPPワイド、乳製品七万トン枠、これはアメリカを抜いた上でも七万トン枠になっちゃっているんですね。アメリカが絶対に入らないということが確定した場合にはこれは修正を図っていく、もともとそういう前提になっていると言っていますけれども、これが修正をかち取れなかった場合はどうするんでしょうか。アメリカ抜きで七万トンって、アメリカを抜いたら七万トンじゃなくてもっと下げなきゃいけないはずなんですよ、サイズダウンしているんですから。ほかのTPPワイドもありますけれども。

 こうした、TPP11とTPP12の差の中において差が詰め切れていない。一例として乳製品を挙げました。答弁をお願いします。

山野内政府参考人 TPP12の第六条におきましては、累次御答弁申し上げておりますけれども、締約国は、TPPの第二十七・二条の規定を適用するほか、TPPの効力発生が差し迫っている場合又はTPPが効力を生ずる見込みがない場合には、いずれかの締約国の要請に応じ、この協定の改正及び関係する事項を検討するため、この協定の運用を見直すということになっているところでございます。

 御指摘の農産品のTPPワイドの関税割当ての点でございますけれども、TPP11協定の第六条において、こういった米国を含めたTPP12協定が発効する見込みがなくなった場合などには、締約国の要請に基づいて協定の見直しを行う旨規定しています。この点、米国からの輸入量も念頭に合意された、いわゆるTPPワイドの関税割当てにつきましては、第六条に基づく見直しの対象になると考えているところでございます。

 こうした我が国の考え方につきましては、閣僚会合の場も含め、茂木大臣から各国の大臣に明確に伝えておるところでございます。これに対して、各国からも特段の異論がなかったものと承知しておりまして、この点について各国の理解を得ていると考えております。

小熊委員 これはアメリカが、私はもう入らないというふうに思っています。もう日本でこれは質疑しているわけですから、衆議院の中で。これはだから、七万トン枠をどうするのかというのは、言っていきますじゃなくて、こうなりますということを言ってもらわないと、我々、賛成、反対ということも言いにくいですよ。

 これが守られたのかどうか。聖域は守られたと言い張っていますけれども、未確定じゃないですか。いつ、アメリカが入らないという前提で修正を図っていくんですか。まだ採決がどうなるかは我々与野党で合意していませんけれども、これは来年という話にはならぬわけですよ。未確定のままに、さまざまな国内産業に、関係ある人に、わからぬけれどもこういうふうにしましたよなんて、我々、責任持って言えないですよ。大事な話ですよ、これは。

山野内政府参考人 TPP11協定の第六条におきましては、先ほど御答弁申し上げましたとおり、米国を含めたTPPが発効する見込みがなくなった場合には、締約国の要請に基づいて協定の見直しを行うと規定しているところでございますが、ここで言う発効が見込まれない場合については、米国の通商政策の新たな動向などを踏まえて判断するという考え方でいるところでございます。

小熊委員 アメリカが入らないという前提では、大きく変えなきゃいけないんですよ。参加国の中で貿易の取引量が小さいところであれば、これはそのサイズダウンの仕方はいろいろありますけれども、アメリカが入らないということは大きなサイズダウンをしなきゃいけないわけですから。アメリカを入れた上で七万トンと決めているんですよ、アメリカを入れなかったら半分以下にしなきゃいけないんですよ。大幅な修正ですよ。

 七万トン入ってくるか三万トン入ってくるかで、国内産業、この農業分野においては全然大きな違いですよ。これはいつ決めるんですか。

山野内政府参考人 我が国といたしましては、TPP11協定の早期発効のために全力で取り組んでいるところでございます。その際、TPPが日米両国にとって最善であると考えておりまして、日米の間で、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始するわけでございますけれども、その立場を踏まえまして、日本としては米国のTPP復帰を促していくという立場でございます。

小熊委員 これはだから、もう我々は審議しているので、アメリカが入る入らないというのもある程度確定した後、審議したいです、私は。全然違いますからね、入った場合と入らない場合では。だから、今採決することすら、私はこれはいかがなものかと思いますよ、委員長。そうでしょう、全然前提が違いますよ、12と11では。

 11を前提に採決してくれと言うのであれば、これは我々は検討しなきゃいけないし、その上で、こうしたサイズダウンの結果がどうなっているかというのもきちっと詰めなきゃいけない。12か11かわからないで、これ採決お願いしますって、そもそもおかしくないですか、これは。いいの、そういうので。そういうあやふやなやつで我々は判こを押さなきゃいけないんですか。

山野内政府参考人 TPP11協定におきましては、累次御答弁申し上げていますけれども、もともとのTPP12協定の特徴であるハイスタンダードを維持するという観点から、米国が不在であっても、協定の内容を維持しながら一部分のルール等について適用の凍結ということで、お諮りしているところでございます。

 TPP11におきましては、米国のTPP復帰というのを促すという前提に立ちながら、十一カ国で合意したものが、今、国会に出している協定でございまして、その中で、将来のさまざまな状況に対応できるような、協定の第六条というものを入れているというところでございます。

小熊委員 では、大臣に聞きます。

 そもそも、TPPに関しては出だしがよくなかったと思います。

 私は、旧民主党の人間でもありません。TPP、野党の中でもずっと賛成をしてやってきていた。一般論として自由貿易というのは、これはやはり、もうかる国、もうからない国が出るんじゃなくて、世界全体の経済が成長してポジティブサムゲームになるんだ、もちろん比較劣位の産業も出てくるけれども、これをしっかり比較優位の産業から所得移転をして手当てをしていくことによって世界全体の経済が潤っていく、これが、一般論として自由貿易とは何たるかというふうに私は捉えていましたから、自由貿易というものをしっかり進めていくことが日本のみならず世界全体の利益だと思って、ずっと賛成をしてきました。

 自民党が選挙で、やらないと言っていながら、聖域は守る、しかも農業分野の五項目全て守るって、そんなこと私はないという説明をしていました。農家の人々、農協の人々は、自民党がそう約束したと。そんな交渉はあり得ないと言っていましたよ、僕はずっと外務委員会にいたから。これは品目ごとにやるんだ、五項目全部聖域なんてあり得ない、そんな交渉をしたなんて外務省から聞いたことがないと言っても、信じませんでしたよ、その当時、農家の方々。自民党の皆さんが守ると言ったから。委員会でも決議したと言っていた。

 そのとき、農水委員会まで行って、当時の林大臣とも議論しましたよ。これは全部パッケージで守るということか、いや違う、ちゃんと品目ごとにやるという意味ですよと。でも、そんなふうに捉えない形で説明していたんですよ、今の与党の皆さんは、いけしゃあしゃあと。

 こうした、国民をだまして進めるということ自体が政治の信頼を失うし、自由貿易の何たるかということを曲解してしまうんですよ。正しい情報を発信していく、正しい意見を言っていく、そのことによってしっかり理解を得た上で、国内産業の政策も理解してもらえるんですよ。今、この国民的な理解なんてないですよ。そういう中でこうしたあやふやなことで進めていくことは、更に輪をかけていく。

 そして、この五月十日の農水委員会でもやったとおり、質疑を見ましたけれども、我々は別個に法案を出しますけれども、いわゆる牛と豚のマルキンも、これはTPP対策といって最初予算づけ、もう、TPPが通ってもいないのに牛の部分では予算づけされていますけれども。これはTPPと関係ない国内対策ですからと言い切っちゃっているんです。だったら、もうこのTPPとは切り分けて法案審議しようじゃないですか。我々は出します、その案を。

 こんな大事な話をいい加減にやっているからよくないんですよ。半分だましながら、うそをつきながら。はっきり言えば、うそですよ。そんな覚悟のない政策を進めようとしているんだから、こんなの、足元を見られて当然ですよ。まして、12から11になって、メンツを守るためかどうかわからぬけれども、アメリカをまだ入れますなんて言っている。では、アメリカが入るか入らぬかはっきりしてから国会で審議すればよかった。

 大臣、どう思いますか、これ。大臣はしっかり言ってきたと思いますよ。でも、多くの同僚議員がうそをついていたのは、大臣は目の当たりにしていたと思う。そんな政治でいいんですか。正直な政治じゃなきゃいけないんじゃないですか。

 大臣、この国民の理解、ちゃんと理解されていないという点について、大臣、どう思われますか。

河野国務大臣 このTPP11は、二十一世紀型の自由で公正な貿易・投資のルールをアジア太平洋地域に構築するという経済的意義にとどまらず、基本的価値を共有する国々が経済のきずなを深め、地域の平和と安定を強化するという長期的な、戦略的な意義があるものでございます。

 こうした意義につきましては、これまで国会審議のほか、各種の情報発信や説明会の開催など、政府として丁寧に説明する努力を重ねてきたところでございますので、今後も、しっかりと理解を得られるように説明を続けてまいりたいと思います。

小熊委員 大臣、本音はまた違うところを多分言いたいんだというふうに思います。

 自由貿易を推進することによって貧しい国も経済の恩恵にあずかれるということですから、これはどんどん進めなきゃいけないんですが、やはり痛みを伴うのも事実です。産業構造改革もしなければなりません、それぞれの国で。その痛みを緩和をしていく、所得移転をちゃんとしていく、比較劣位の産業をしっかり、それに携わる人たちを保護していくということが必要なので、今言った七万トン枠だって、これは痛みを伴う部分なので、しっかりとはっきりしておかなきゃいけないんですよ。これは、利益のところがどうなるかわからないという話よりも、損するところがどうなるかというのがはっきりしていなければ、比較劣位の産業に携わる人々にどんな説明すればいいんですか。

 自由貿易だって万能のつえじゃありません。そのことによって失業者があふれたら、自由貿易の恩恵を受けない場合もありますから、かえってマイナスになるということだってあり得るわけですよ、これは。じゃ、それがないようにと、ちゃんと対策もとらなきゃいけないし説明もしなきゃいけないんです。これがはっきりしていないということは重大な問題です。はっきりするまで実は採決できないぐらいの問題だと思っています。

 だって、それが一番わかっているのは、逆に与党の皆さんですよ。農協を始め農家の皆さんに約束したんだから。今さらどの口でこれを説明できますか、皆さん。地元に帰って、何も決まっていないよと。署名もしたんでしょう、農協の皆さんに。そうやって、私はもうはっきり、早く進めるべきだと言っていた。国内対策の議論をしましょうと農家の方々には言ってきていた。でも、絶対守ってくれると農家の人は信じていた。

 この四年、五年が無駄な、国内対策の議論が国民とともにできるはずが、失われたんだ、皆さんによって。

 四、五年たった上でも結局これですか。何なんですか。いつはっきりしますか、これ。

山野内政府参考人 累次御答弁申し上げているとおり、TPP11協定は、米国を除く十一カ国で見ても、人口五億人、GDP十兆ドル、さらに貿易総額五兆ドルという巨大な市場をアジア太平洋につくり出していくものでございまして、我が国の国内産業の改革の促進と新たな経済成長をもたらすなど、我が国の国益に資する経済的、戦略的意義を持つものでございます。

 その上で、日本として、アジア太平洋におけるハイスタンダードな貿易・投資の枠組みの早期確立を図るということは非常に重要だと考えているところでございます。

 さらに、このTPP協定の早期発効が米国のTPPへの復帰を促すことにつながるという観点もございます。かつ、それが十一カ国の共通の期待であるわけでございますので、政府としては、そういう観点からTPP11の協定の早期発効に全力を挙げるということでございますし、先生御指摘のさまざまな問題に対処するために協定の第六条があり、そこについては、先ほど答弁申し上げたとおり、日本側の考え方ということについては関係十カ国の理解を得ているものというふうに考えております。

小熊委員 これは未確定なので、ちゃんとなされない限り、これはもっと私は質疑の時間が必要だというふうに思いますし、まして、連合審査を求めて多角的にやっていかなきゃいけない中で、連合審査もまだどうなるか確定をしていません。

 そして、アメリカが入るか入らないかで内容が大きく変わります。国内対策もしなければなりません。予算が伴います。血税を使わなければなりません。これが確定せずして、これに賛否を問うという段階には今ないというふうに思っています。さらなる質疑時間を求めていきたいというふうに思いますし、きょうはできませんでしたけれども、こうした貿易の中で、大臣の努力によって中国との映画共同製作協定がなされましたけれども、こうしたこともどんどん拡充していくということを、ぜひこのTPP11の中でも進めていただきたいと思います。

 さらに、貿易立国を目指すという意味においては、原子力の輸出に関しては、これはもうほとんどの国で頓挫していますから、損するようなことはやめていただきたい。これは大臣が一番わかっているというふうに思いますので。日本が売るべきものはもっとほかにある。この貿易、輸出に関しては抜本的な見直しを求め、まさに貿易の中で世界の利益を確保していく、そして、国内産業の痛みを伴う部分については明確に対策が打てるということでなければならないということを指摘いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 きょうは、TPP11協定におけるISDS条項、すなわち投資家と国との間の紛争の解決条項について、主として、確認と議論をしたいというふうに考えております。

 まず最初に、大臣に御見解をお聞きしたいと思います。

 政府は従来から、TPP協定に関するISDS条項について、我が国企業が海外で投資活動をする上で予見可能性、法的安定性を向上させる制度であるというふうに説明をしてこられました。基本的に、この説明は今でも変わっていないというふうにお考えでしょうか。

河野国務大臣 TPP11協定を含む投資関連協定のISDS条項は、投資受入れ国の司法手続に加え、中立的な国際投資仲裁に紛争を付託できる選択肢を投資家に対して与えることによって、投資受入れ国において日本企業がビジネスを行う上での予見可能性や法的安定性を高めるものであります。このように、海外投資を行う日本企業を保護する上で有効であり、日本の経済界も重視している規定でございます。

 我が国としては、こうしたISDSの意義を踏まえ、投資関連協定においては引き続きISDS条項が盛り込まれていくよう取り組んでいく考えでございます。

岡田委員 そこで、局長の答弁で結構なんですけれども、まず確認したいと思いますが、このTPP11の締約国の中で、もう既に日本との間に個別の投資関連協定などを持ち、その中でISDS条項を持つ国については、このTPP11協定によってではなくて、バイのそういった協定で手当てがされている。

 そういう意味では、今回このTPP11を締約することで新たにISDS条項が適用されるのは、基本的には豪州、ニュージーランド、カナダの三カ国。もちろん、ほかの投資関連協定を締結している国の中に部分的に欠けている部分がありますから、それは別とすると、基本的にこの三つの国が新たにTPP11協定のISDS条項によって国際的仲裁に付託されることになる、そういうふうに理解していますが、そういう考え方でよろしいでしょうか。

山野内政府参考人 委員御指摘のとおり、TPP11協定によりまして、新たに、豪州、ニュージーランド及びカナダにおいて活動する我が国の投資家にとっては、ISDSの手続が利用可能になるということでございます。

岡田委員 そこで、今回、そのISDS手続の適用の一部が凍結されるということになっているわけです。

 具体的には、締約国による投資の許可、投資に関する合意に締約国が違反し投資家が損害をこうむった場合、こういう場合にISDSを提起することを可能とする措置、これが停止されるということになっているわけですが、先ほどの大臣の御説明の、我が国企業にメリットのある制度だとすると、その適用が停止されるということは、むしろデメリットをこうむることになるのではないかというふうに思いますが、局長、どういうふうに整理したらいいんでしょうか。

山野内政府参考人 委員御指摘のとおり、TPP11協定の投資章におきましては、TPP12と比べますと、投資の許可の条項及び投資に関する合意に関する条項が凍結されたわけでございます。

 しかしながら、TPP11の投資章におきましても、この投資の許可、投資に関する合意の条項を除く内国民待遇、最恵国待遇などの投資章における中心的規定の違反によって損害が生じる場合には、ISDSを提起することが可能となっているところでございます。

 さらに、このTPP11の投資章では、ISDSに関する規定のほかにも、投資受入れ国の規制の透明性を高めるネガティブリスト形式の留保表であるとか、ロイヤリティー規制の禁止を含む幅広い形での特定履行措置の要求の禁止条項などの質の高い投資家保護のルールが導入されておりまして、一部の項目が凍結されたわけでございますけれども、海外に進出する日本企業にとって非常に有意義な内容になっているというふうに考えているところでございます。

岡田委員 私がお聞きしたのは、締約国による投資の許可、投資に関する合意に締約国が違反し投資家が損害をこうむった場合にISDSを提起することを可能とする措置については停止されている、それはなぜそうなったのかということをお聞きしているわけです。

山野内政府参考人 累次御答弁申し上げていますとおり、TPP12から米国が離脱するという状況のもとにおいて、TPP11におきましては、もともとのTPP12の特徴であるハイスタンダードを維持するという観点から、米国が不在であっても協定の内容自体を最大限維持しようという形で関係国と交渉を重ねてまいりまして、こういう中で、今回TPP11の協定全体に合意が至ったというところでございます。本質的なところにつきましては、12協定で獲得していたISDSの基本的な部分については、11においても維持されているというふうに考えているところでございます。

 さらに、先ほど委員御指摘ございましたけれども、既に個別のFTAで、二国間のFTAで、シンガポール、マレーシア等々につきましてはISDSについて規定はございましたけれども、我が国の投資家にとってはこの11によりまして更にISDSを利用できる範囲は拡大しているということもあわせて申し述べたいと思います。

岡田委員 重要な部分が凍結されていない、停止されていないというそのことは理解した上で、今、私が先ほど申し上げた二項目についてなぜ停止をしているのかということを私はお聞きしているわけです。

 もうちょっと具体的に言いますと、例えば豪州やニュージーランドは、これを停止することについて何らかの主張をされた結果こうなっているんだと思いますけれども、どういう主張をされたんでしょうか。

山野内政府参考人 12協定から11協定になる過程で、十一カ国全てが合意に参加できるバランスのとれたものを目指すという観点で最終的な形で合意したところでございます。

 これは累次申し上げているとおりでございますけれども、個別の凍結項目につきまして各国がどのような主張をしたかということにつきましては、外交交渉の性格上、相手国との信頼関係のほか、交渉経緯を明らかにすることによりまして累次の交渉での我が国の手のうちをさらすことにつながりかねない、公益を害しかねないという観点から、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

岡田委員 一般論として局長が言われることはわかるんですが、今回のこの話で、では、日本の手のうちをさらすことになりかねないとおっしゃるんだけれども、一旦合意したものを停止しているわけですね。そこについてのやりとりを明らかにすることが、なぜ日本の手のうちをさらすことになるんですか。手のうちをさらすというのは、具体的にどういうことですか。御説明ください。

山野内政府参考人 これは、日本の大きな経済外交の大戦略として、日本の貿易量に占める七〇%以上をFTAの網の目ですくっていく、海外の活力を日本の国内の成長につなげていくという観点から、今後もFTAの交渉は続いていくわけでございます。

 その過程で、ISDSの部分というのは非常に重要な要素でございますので、その個別のところにつきましてこういうやりとりがあったということを対外的に明らかにするということは今後の我が国の交渉の姿勢に悪影響を及ぼす、そういうことでございます。

岡田委員 御説明、全く理解できないんです。

 しかも、一旦認めたものを停止するということになった、そのことについても、理由は、外交交渉だから全く説明できないと。それでは、国会は要らないですよ。国民に対して何も説明しない。きちんとした理由があるならいいですよ。今の説明というのは私は全く理解できないんですね。ちゃんとお答えください。

山野内政府参考人 TPP11の交渉の過程でさまざまなやりとりがあったということでございます。

 ただ、その結果合意したものが国会に御提示していることでございますし、それが全てでございますので、そこを見て御判断いただければというふうに思います。

岡田委員 ちょっと大臣に答弁いただきたいと思います。

 我が国としては、先ほどの大臣の御答弁のとおり、このISDS条項は我が国にとってプラスである、企業にとって意味があるということで、当然このTPPの中に入っていることを評価しておられる。それを今度、少しバックしたわけですね、制限することにした。そのことについて、なぜそうなったのか。

 オーストラリア、ニュージーランド等とのやりとりということになるんでしょうが、日本はどういう主張をしたのかということすら国会で説明できない。ということは、TPP11の必要性について説明しなくても国会で採決していい、そういう話につながることになるじゃないですか。最低限のことぐらい、ちゃんと説明したらどうですか。

河野国務大臣 自由貿易協定は、これから、日韓のFTAもございますし、RCEPといったこともございます。また、このTPP11は、タイ、台湾を始め、さまざまな国がこれに参加をしたいということを言っているわけでございまして、当然、今後もISDSを含む自由貿易の交渉というのはつながるわけでございます。

 そのときに、日本がこれまでどういう主張をしていたかということを公につまびらかにするということは、そうした交渉に影響が出るということは十分に予測ができますので、今、これまでの交渉について手のうちを明かさないということにしているわけでございます。そこは御理解をいただきたいと思います。

岡田委員 手のうち手のうちと言われるが、要するに、我が国としては、我が国企業にとってISDS条項は有用であるということで、それをこのTPP協定の中で認めた。しかし、一部の国との関係で、今回それを凍結した。これがなぜ手のうちになるんですか。ちょっと私は理解できないんですよ。御説明ください。

河野国務大臣 日本として、ISDSは当然必要だということで、これまでもISDS条項を投資関連協定の中に入れるように努力をしているところでございますが、そうでない考えを持っている国も当然あるわけでございます。そうした国とも自由貿易協定を今後やらなければいけないということが十分に予測される中で、なるべく、日本がこれまでどういう交渉をやってきたかということを外に出さず、日本の手のうちを明らかにしないというのが、日本が次の自由貿易交渉を我が国にとって有利にするために必要だというふうに考えております。

岡田委員 例えば豪州、ニュージーランドとの間に確かにISDS条項はないということですが、今回、このTPP協定の中で、局長の説明でも11でもかなりの部分、そして12であれば全面的にISDS条項が適用されるということになるわけですから、今後、豪州やニュージーランドとのバイの交渉で、何かISDS条項について問題が発生するとか議論する際に手のうちをさらすわけにいかないとか、そういうことにはならないじゃないですか。もう十分議論した上で現在のこの姿になっているわけじゃないですか。

河野国務大臣 RCEPにしろ日韓のFTAにしろ、あるいは、そのほかにもさまざまな自由貿易協定の交渉というのが今後出てくることは想定いただけると思います。その際に、ISDSをめぐる交渉をする中で、日本はどういうときに譲った、あるいはどういうものを重要視しているということを相手の国に知られるということは、手のうちを明かしたまま交渉をするということになりますので、そうしたことはなるべく避けたいというのが政府の考えでございます。

岡田委員 私は、このISDS条項というのは、バイの関係で、譲った譲らない、そういう問題ではないのではないかというふうに理解しているんですね。

 そういう観点から少し質問したいというふうに思いますが、一方で、このISDS条項について、大臣の御指摘されたような、我が国企業にとってメリットがある、そういう面は当然あると思いますけれども、同時に、それは企業のサイドに立って考えればそうですが、国のサイドに立ってみると、強大な多国籍企業に国としての主権が制限されてしまう、そのおそれがあるという見方も当然あるわけですね。

 そこで、お聞きしたいというふうに思います。

 今までこのISDS条項が使われて国家としての主権が制限された、そういう事例はあると思いますけれども、特に、日本から見て問題があるような、そういう決着が図られた、日本自身じゃないです、国家というのは日本自身ではなくて、外国政府が多国籍企業との間でISDS条項が適用された結果、首をかしげるような結論がなされたということについて、どういう事例があるか、ちょっと御説明ください。

山野内政府参考人 委員御承知のとおり、TPP11協定におきましては、投資家がISDSを利用して提訴することが可能なものは、投資章に規定されています内国民待遇あるいは最恵国待遇などの義務に違反する措置を国が講じた結果、投資家が損害をこうむった場合にということでございます。

 TPP協定の投資章に関しましては、正当な目的のための必要かつ合理的な規制を差別的でない態様で行うことを妨げるものではございませんので、国家主権を制約するというものではございません。

 過去のISDSの事例を見た中で、国側が破れた具体例として申し上げれば、例えば、野村証券のオランダにおける子会社、サルカ社というのがあるわけですが、チェコ政府を提訴した事案がございます。

 これは、サルカ社が、チェコの金融市場で重要な地位を占めていました国営の四つの銀行がございます、昔の旧国営の四つの銀行のうち一つの銀行の株式を四六%保有していたところでございますけれども、この旧国営の四銀行はいずれも多額の不良債権を抱えていたところでございます。

 チェコ政府は、この四つの旧国営の銀行のうち、三つの銀行につきましては公的資金の投入などの財政支援を行ったわけでございますが、野村証券のオランダ子会社のサルカ社が株式を保有していたIPBという銀行に対しては行わなかったということで、このIPBは経営が悪化したことにより公的管理下に置かれました。最終的には別の国営銀行に譲渡されたということで、サルカ社は、一連のチェコ政府の措置が、オランダとチェコの間で結ばれていました投資協定に違反するということで仲裁廷に申立てをしたところでございます。

 仲裁廷は、チェコ政府の措置が公正衡平待遇に違反すると判断し、最終的にチェコ政府は投資家側に対して約百八十七億円とその利子を支払ったという例があるというふうに承知しております。

岡田委員 ISDS条項のメリット、企業サイドに立てば、日本企業の立場に立てば、それはメリットはたくさんある、しかし、じゃ、日本国が、海外の企業、例えば強大な多国籍企業からISDS条項に基づいて手続を進められるということを考えたときに、果たしてこの条項が日本の国益から考えてどうなのか、やはり両面から見ていかないといけないというふうに思うわけですね。

 私は、ちょっと日本の政府の対応というのは企業サイドの立場に立ち過ぎているのではないかというふうに思うわけです。先ほどのオーストラリア、ニュージーランドも、このISDS条項について、12のときは合意したけれども、しかし11で一部凍結を主張した。中身は御説明をされないのでわかりませんけれども。

 もう一つ、EUがあるんですね、ISDS条項に関する慎重論はEUにもある。日・EU・EPA交渉における投資家保護と紛争解決の扱いについての協議というのは現在どうなっているかということをまず御説明ください。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 EUとの関連でございますけれども、日・EUのEPAにつきましては、交渉は妥結しているところでございますけれども、投資保護規律及び紛争解決につきましては継続協議というふうになっております。

 四月に事務レベルで実施した協議におきましても、できる限り早期の妥結を目指し、引き続き協議を継続していくというところでEU側と一致したところでございます。

 日・EUの経済関係に照らしまして、どのような投資保護の仕組みが適当かという観点から、できる限りの早期の妥結を目指して、精力的に協議しているところでございます。

岡田委員 このEUとの間の投資家保護と紛争解決の扱いについての協議というのは、これがまとまらないと日・EU・EPAというのはスタートできないという関係にあるんですか。それとも、それは完全に切り離されているんですか。

山野内政府参考人 日・EUのEPAにつきましては、先ほど御指摘しました、投資保護規律と紛争解決につきましては継続協議ということでございますけれども、投資の自由化規律を規定するという形では日・EU・EPAにつきましては交渉が妥結しているところでございまして、投資保護規律及び投資紛争解決手続につきましては、どのような形が適当かを含め、今後EU側と協議していくということでございます。

岡田委員 わかりやすく答えてもらいたいんですが、この投資家保護、紛争解決の扱いについての協議がまとまらなくても、日・EU・EPAというのは発効することは可能なんですね。

山野内政府参考人 日・EU・EPAの大宗につきましては交渉が妥結しているところでございまして、できる限りの早期の発効に向けて日・EU側で協議を続けているところでございまして、そういう中で投資保護規律と投資紛争解決手続は継続的に協議するということでございます。

岡田委員 もうちょっとわかりやすくお答えいただきたいんですが、今の局長の答弁は、切り離されているというふうに私は理解したんですが、そうすると、日・EU・EPAが成立した暁に、そういった投資家保護とか紛争解決の扱いについては規定が合意されていないわけですから、結局は従来と同じ、そういう扱いになるというふうに理解していいんですね。

山野内政府参考人 日・EU・EPAの中には、国と国の紛争解決手続というのはしっかり入ってございますものですから、今委員御指摘のとおり、投資保護規律と投資紛争解決手続について継続協議となっている場合におきましては、その他にある規律や手続に従って対処されるものということでございます。

岡田委員 それでは、EUがISDS条項について、日本は当然それを主張したと思うんですけれども、それに対していろいろなことを言ったと思うんですが、どういう懸念を主張したんでしょうか。

山野内政府参考人 EU側の個別の見解につきまして、政府としてお答えする立場にはないわけでございますけれども、そう申し上げた上で、EU側の公表している資料によれば、EU側は、ISDSにつきましては、仲裁人の独立性あるいは判断の一貫性に懸念があるというような考え方を持っているというふうに承知しております。

岡田委員 仲裁人の独立性に懸念を持っているというのは、具体的にどういうことなんでしょうか。それから、判断の一貫性についてももう少し具体的に御説明いただけますか。

山野内政府参考人 これは、EU側が公表しております資料の中での記述を私は述べたところでございまして、それ以上、EU側がどういう考えを持っているかということを私が有権的に申し上げる立場にないというふうに思います。

岡田委員 公表された文書以上のことは一切言えないんだというのは、それはおかしくないですか。いろいろな交渉をしている中で、その理由とか、もう少し具体的に説明を受けているはずですよね。それは一切言えない、公表している資料しか言えない。では、国会というのは何なんですか。国民に対する説明はどうなっているんですか。もう少しきちんと説明してください。

 それから、あわせて、EU側のその文書の中には再審の可能性がないということも指摘されているはずですね。そのことについても御説明ください。

山野内政府参考人 日・EUのEPAにつきましては、まだ署名に至っているわけではございません。日・EU双方で早期の発効を目指して最終的な調整も行っているところでございますので、この場は日・EUのEPAを議論するということではないという点は御指摘させていただいた上で、今、EU側の公表資料によりませば、さまざまなことについて幾つか言及している中で、一審制ではなくて再審が可能なものが重要だという考えも示されているというところは、委員御指摘のとおりでございます。

岡田委員 ほとんど説明がないんですけれども、独立性とか一貫性とか、それから再審の可能性がないとか、いずれも私は重要な指摘だというふうに思うんですね。ですから、もう少し敷衍して御説明いただきたいと思ったんですが、ほとんど言えないという、非常に問題がある御答弁だったというふうに思います。

 EU側は、対案としてどういう仕組みを提案しているんですか。

山野内政府参考人 まことに恐縮でございますけれども、また、日本とEUのEPAにつきましてはまだまだ国会に合意を提出する段階に至っておりませんので、日本側とEU側とのやりとりの詳細について言及することは控えさせていただきたいと思いますけれども、公表資料によれば、幾つかの点で、まずISDSについては、ケース・バイ・ケースで設置されているという点についての問題意識がございますし、あと、中立性、一貫性、上訴ができるできないということについての問題意識が示されているところでございます。

岡田委員 私の理解するところ、EU側はそれにかわる恒久的な機関というものを提案しているというふうに理解しているんですが、公表ベースでそういうことはないんですか。

山野内政府参考人 EU側が常設の投資裁判所に関心を持っているということは示されているところでございます。

 ポイントは、投資家をいかなる形で保護するのが一番適切であるかという観点から、日本とEU側で協議を重ねているというところでございます。

    〔委員長退席、新藤委員長代理着席〕

岡田委員 私はいろいろ聞いているんですが、全部がお話しできないのはわかりますが、公表されていることすら何か聞かないと答えないというのはどういうことなんですか。

 もう少し具体的に、公表されているベースで結構ですから、EU側がどういう提案を行っているかというのを御説明ください。

山野内政府参考人 EU側の立場ということに関しまして申し上げれば、EUがこれまで交渉してきた自由貿易協定や投資協定には、投資家と国の間の紛争解決手続が含まれているものもございます。

 さらに、二〇一五年十一月、米国とEUの間のFTA、TTIPと呼ばれておりますけれども、その交渉、その他のFTA交渉を見据えて、EU側は常設裁判所の設置、ICSでございますけれども、を提案しているところでございます。その後、カナダ及びベトナムとの間では、このICSを含むFTAを締結しているというところでございます。EUは、マルチの常設投資裁判所の設置を目指すという立場を示しているところでございます。

 EUは、ICS設置の目的として、以下を挙げているところでございます。投資保護のルールの明確化と改善、これは国家の規制の権利の確保など。さらに、投資紛争解決システムの改善、これは、法廷地あさりの回避、根拠のない紛争の早期解決、訴訟資料へのアクセス改善を通じた透明性の確保、仲裁人の利益相反回避、協定解釈への加盟国の関与の確保、上級審の設置を通じた一貫性のある判決の確保などでございます。

 EUは、マルチの常設投資裁判所の設置案について、以下を挙げているところでございます。常設の投資裁判所、上級審、専門の事務局の設置、裁判官の質の確保、裁判官の恣意的な選択の排除、同一の紛争の再提起の回避、判決の効果的な履行の確保、全ての関心ある国に開かれた裁判所というのがEU側の立場であるというふうに承知しています。

岡田委員 それだけEU側が指摘をして、そしていわば対案として常設の機関の設置を提案しているということは、やはり我々は、ISDS、日本の企業にとっていいことだからいいね、そういう発想からは脱して、プラスマイナスをもう少しきちんと踏まえて議論していく必要があるんじゃないかというふうに思うわけです。

 私は別に、ISDS、頭からけしからぬと言うつもりはないんです。しかし、マイナスがあることも事実だし、先ほどの、オーストラリアあるいはニュージーランドも、そしてEUも、ISDS条項について問題意識を持って、EUなどは具体的提案もしている。

 私の理解している限りでは、EUとアメリカとのFTA交渉もこの問題で頓挫したというふうに私は理解しているんですけれども、そういうときに、いや、ISDS条項はいい制度だからという、そういう話ではないんじゃないかと思いますが、大臣いかがですか。

    〔新藤委員長代理退席、委員長着席〕

河野国務大臣 日本は、ISDS条項が有する意義も踏まえて、投資家の保護と国家の規制権限との適切なバランスの確保に努めつつ、我が国が締結する投資関連協定にISDS条項が盛り込まれるように取り組んできたわけでございます。

 御指摘のように、国家の規制権限を不当に制約するものではないかといった問題提起、あるいは仲裁人の独立性に利益相反が起きるような懸念があるのではないかといった議論をEU側がされているということも承知をしておりますし、さまざまな国と投資関連協定の交渉をしたときに、相手国からISDSについての懸念が出されたということもあります。

 しかし、ISDS条項というのは、公共の福祉に係る正当な目的のために必要かつ合理的な規制措置を差別的でない態様で講ずることを妨げているわけではありません。

 また、ISDS制度は、投資家にとって海外の投資先の国におけるビジネスへのリスクを軽減できるツールであり、海外投資を行う日本企業を保護する上で、これまでも有効な制度であったというふうに認識をしております。

 また、ISDS手続の透明性、中立性に関する懸念も踏まえて、TPPの投資章においては、仲裁手続を原則公開する、仲裁人の行動規範を策定するといったことを規定しているわけでございます。

 おっしゃるように、ISDSへの懸念に全く耳をかさないということではないわけでございますが、ISDSをもっといいものに改革していこうという議論もありますので、そういうものにも建設的に日本として貢献しながら、しかし、日本として、このISDSという手続は、これまで同様に、我が国の投資家を保護する上で有効な制度だというふうに考えております。

 全く批判に耳をかさないということではございませんが、日本としては、これがベストなのではないかという立場から、建設的に議論をしてまいりたいと思います。

岡田委員 日本が、まだ司法制度に対する信頼感が場合によっては十分ではないかもしれないという国に対して投資をする際に、このISDS条項というのは企業に安心感を与えて投資しやすくする、そういう面はあると思います。

 しかし、全く逆の立場になったときに、例えば、グローバル企業、場合によっては国家を超えるようなそういう力を持ったグローバル企業が、日本に対して、あるいはそのほかのより小さな国に対して、圧倒的な力の差があって、そして国際的な人脈網もあって、このISDS条項にのっとって公正でないような判断がされるおそれというのは、私はやはりそのおそれについて十分考えておくべきだというふうに思うんですね。

 そういう意味では、ヨーロッパが言っているような、例えば再審の可能性がないことなどというのは、私は一つの正当な疑念ではないかというふうに思うんです。

 今、日本政府の立場を言われましたが、この問題、日本政府の中で真剣に、専門家、識者の意見も聞いて、ISDS条項について議論したことはありますか。

山野内政府参考人 ISDSあるいは投資家が直接かかわる紛争解決の仕組みということにつきましては、委員御指摘のとおり、二面性があると思います。

 海外に進出している日本の企業にとってみれば、進出先でその投資が不当に害されるというようなことがあったときに、その投資を守るという観点からISDSの役割は非常に大きいというふうにも言えますし、あるいは、日本も国を開き、海外からの投資を受け入れている国でございますので、委員御指摘のとおり、日本国政府としては訴えられる危険性もそこに介在しているという点につきましては、両面があるわけでございまして、その両者のバランスを図っていかなければいけないというところでございます。

 そう申し上げた上で、我が国が正当な目的のために必要かつ合理的な規制を差別的でない態様で行っている限りにおきまして、投資章の義務に違反するということにはなりませんし、そのような規制について、外国投資家がISDS手続に基づいて提訴するということは考えられないものでございまして、今までISDSについて我が国が提訴されたということはないところでございます。

 ただ、ISDSにつきましては、先ほど御指摘があったような、さまざまな国でさまざまな見方もあるところでございまして、これにつきましては、我が国政府としても、よりよい投資家保護のあり方ということにつきまして研究を重ねているところでございまして、日本の企業の方々からも意見を聞くなどして、あと、国際場裏でも、さまざまな投資紛争処理のメカニズムのよりよきあり方について国際的な議論も進んでおりますので、そういうところに積極的に参加している次第でございます。

岡田委員 現実に日本とEUの間で議論しているわけですから、やはりそれはよほどきちんと識者の意見も聞いて日本国政府としてのスタンスというのを決めていかないと、これは外務省だけの、あるいは日本国政府だけの判断ということであってはならないというふうに私は思うんですね。

 大臣、そういうお気持ちはありますか。

河野国務大臣 投資の保護というのは、日本からの投資あるいは日本への投資、両面で非常に大事なことだと思いますので、この議論をどこかで、そこから先はしないということにはならないんだろうというふうに思います。不断の努力というのが必要なんだろうというふうに思いますので、それは政府としてしっかりやってまいりたいと思います。

岡田委員 政府の中で不断の議論をされるのはいいんですが、やはりこの問題は、私は余り軽く見ない方がいいというふうに思うんですね。日本政府としてのスタンスを固めるためにも、外部の有識者、専門家の意見もきちんと聞いて、そして基本的な考え方をまとめるべきじゃないか。

 これからも、これは11が12にもしなるとしたら、そのときにもう一回議論になりますよね。当然、オーストラリアやニュージーランドが一旦凍結したわけですから、それを単純に戻すという議論にならない可能性が高いというふうに私は思うわけですね。

 そういう意味で、もう少し幅広く意見を聞いて、国益に沿った判断をしていただきたいというふうに思います。

 このISDS条項について、例えば日中韓FTAあるいはRCEP、その交渉がこれから重要だというふうに先般総理も言われたわけですが、こういう規定における、日中韓FTAやRCEPにおけるISDS条項の取扱いというのは、現時点ではどうなっているんでしょうか。

山野内政府参考人 日中韓のサミットにおきまして、質の高いRCEPの早期妥結及び日中韓FTAの交渉加速に向けて連携していくというところで一致したところでございます。

 委員御質問のRCEPあるいは日中韓FTA交渉におけるISDSの取扱いについてでございますけれども、今後の交渉次第であるというところでございます。

 今、両協定とも交渉中でありますので、まことに申しわけありませんけれども、具体的な交渉の内容についての詳細は控えさせていただきたいというふうに思います。

岡田委員 終わりますけれども、誰もが容易に想像できるわけですが、中国がISDS条項についてイエスと言う可能性は、私はほとんどないんじゃないかというふうに思います。

 いずれにしても、この続きはまた次回行いたいと思います。

 終わります。

中山委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からもTPPのお話をさせていただきたいと思いますが、中東情勢もなかなか劇的な動きを見せておりますし、お互いが我がのことを言い合っているような国際社会において、いかにその中で自己の主張をして、国益をかち取っていくかという点で非常に日々大変なお仕事をされていらっしゃる大臣にまず敬意を表したいと思いますし、このTPPも、米国が抜けるという話が出たときに、ああ、もうこれは厳しいなと正直多くの方が思った中で、まずこの11から前に進めるんだという強い意思を持って政府全体で取り組まれたんだというふうに考えております。

 ただ、当時、このTPPの質疑、あれだけもめましたけれども、ずっと私も質疑してきた中で、政府側はかたくなに、アメリカなしにはやはりこのTPPは意味がないんだという形でずっと主張されてまいりました。そうした中で、今回、米国抜きで進める意義について一転して語られているわけで、そうした部分が若干気になりますので、きょうはTPPということで、重複もございますが、通告の関係上お許しいただきたいと思いますし、この点からまず聞いていきたいんですけれども。

 まず、根本的なところなんですが、アメリカ抜きのTPPを進めた理由についてそもそもお伺いしたいんですけれども、アメリカがなくてもやるんだという政治的な戦略的意義について、大臣はどのようにお話しになられるでしょうか。

河野国務大臣 このTPP11は、まず、二十一世紀型の貿易・投資のルールをアジア太平洋地域につくるという経済的な意味合いだけにとどまらず、基本的価値を共有する国々で経済的なきずなを深めることによって、地域の平和と安定を強化するという戦略的な意義があるというふうに考えております。

 また、世界じゅうで保護主義の流れが強まっていく中で、日本は、自由貿易の旗頭として、TPPに参加している国以外ともさまざまな経済連携協定の交渉をしてまいりました。TPP11が推進するということは、こうしたTPP11以外の国々とも経済連携協定について大きく後押しをすることになってきたというふうに考えております。

丸山委員 まさに私はそうだと思うんですが、問題は、何を申し上げたいのかというと、当時、二年ほど前ですかね、あのときは総理も大臣も、あらゆる閣僚の方々が、アメリカが絶対に入る必要があるんだ、アメリカがなければ意味がないんだとまでおっしゃっていました。

 例えば、一六年十一月のアルゼンチン訪問時、APECに総理が出られているんですけれども、安倍総理は当時、記者会見でも、TPPは米国抜きでは意味がない、ここまで断言されているんです。再交渉が不可能であるのと同様、根本的な利益のバランスが崩れてしまうという御発言をされているんですね。

 当時、じゃ、この根本的なバランスというのは何をお考えになっていて、何が今変わったのかというのは当然国民も気になる部分ですし、我々としても、あれだけ質疑してきた中で、ずっと意味がないとおっしゃっていた中で変わっているのはどういうことだというのは自然な疑問だと思うんですけれども、それはこの協定では崩れていないという認識なんでしょうか。根本的なバランスって何なんでしょうか。

河野国務大臣 まず、TPP12協定は、アメリカの参加を前提として、参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げてきた、いわばハイスタンダードでバランスのとれた、ガラス細工のような協定だと思います。

 この利害を調整しバランスのとれた協定をつくり上げた、これはもうガラス細工を積み上げたような協定でございましたので、その微妙なバランスを指して、根本的なバランスというふうに総理が発言をされたものだろうと思います。

 日本は、先ほど申し上げましたとおり、このアジア太平洋地域における高いスタンダードの枠組みを早期に確立する観点から、アメリカが離脱を宣言した後も、十一カ国でまずこのTPPを早期に発効させ、TPP12が持っている高いスタンダードのものを維持しながら十一カ国全てが合意できるバランスのとれた協定というものをつくることができたというふうに思っておりますが、我々は依然として、アメリカにとってもTPP11参加国にとっても、アメリカの復帰というのが最も望ましい、最も利益を高めることができるものというふうに認識をしておりますので、アメリカに対してTPPの持つ意義を粘り強く説明をし、TPP復帰への建設的な議論を引き続き行ってまいりたいというふうに思っております。

丸山委員 若干理屈としては厳しいかなというのは正直思っていまして、TPP12のときは、さんざんアメリカなしには意味がないんだという強弁をされていまして、今回、11の方になった場合には、なくても前に進めるんだという理屈で、私は、それは言えることは言えると思います、11に対して。私は必要だと思っていますし、12も、それは米国が入ればいいと思うんですが。しかし、国会審議で、逆に言えば、米国抜きでは意味がないとまでおっしゃる、逆に、あのときにそこまでおっしゃる必要があったのかなと今は思います。それは、入っていただきたいし、入るように交渉を持っていくのは重要ですが、一方で、そこまで言うことで、逆に言えば、ある意味、うんっ、どういうことだろうというふうに国民に疑念を抱かせてしまっています。

 特に、総理は、国会答弁で強弁されることも結構あると思います。だから、今回の加計問題の件にしてもいろいろなところでひずみが出ているのは、若干発言が、一歩踏み込んだ発言をされるところがあるからかなというふうに思っていまして、そういった意味で、このTPPも当時は少し言い過ぎだったんじゃないかと思いますが、結果として、しかし米国は抜けるという判断をした、その中で日本の国益はどこにあるのかというのを追求されて11というのを結ばれたという点に対しては、しっかりやっていただいていると思うし、更に前に進めていただきたいというふうに思います。

 そうした中で、今大臣御答弁あったように、アメリカを、やはりまだ何とかこれは交渉したいという思考でいらっしゃるということでいいんですよね。それは、マルチの、多国間だけじゃなくて、二国間も含めて締結していくんだというふうに政府としても考えているという認識でいいんですね。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、自由貿易の旗手として、世界で最もダイナミックに成長していますアジア太平洋地域において、あらゆる手段を通じて自由で公正な貿易ルールを構築していくというのが大戦略であるということでございます。

 アメリカとの関係では、アジア太平洋地域の現状をしっかり踏まえた上で、地域のルールづくりを日米が主導していくことが重要であるというふうに考えております。

 どのような枠組みが日米経済関係あるいはアジア太平洋地域にとって最善であるかということにつきましては、引き続き建設的に議論していくということでございます。

 その上で、TPPでございますけれども、TPP12は、日米がリードして世界に二十一世紀型の経済秩序をつくり上げるという観点から、協力して、米国とともに、もともと十二カ国で推進してきたものであります。そういうことを踏まえましたら、日本としては、TPPが日米両国にとって最善であると考えておるわけでございます。

 大臣からも答弁申し上げましたとおり、TPPには、経済的な重要性に加えて、戦略的な意義も非常に大きいわけでございまして、最もグローバル化や技術革新が進んでいる米国でありますので、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであるということを引き続き粘り強く説明してまいりたいというふうに思います。

丸山委員 その方針において、アメリカとしては、基本的には、彼らが主張した部分は、今回、11では軒並み凍結されているわけですね、アメリカから見れば。そうした部分というのは、アメリカがこのTPPに入る、復帰する、若しくはそういったふうな交渉をする中で、非常にある意味弊害にもなってくるというふうに思いますが、この点、どのように関係を考えていらっしゃるのか、政府の答弁を求めます。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 我々として、米国の通商政策につきましては、米国の内政と密接にかかわっていることもございますものですから、そこについてはしっかり情報を収集し、分析を行っているところでございますけれども、TPP11協定における凍結項目は、TPP協定が有しているハイスタンダードな水準を維持しながら、十一カ国全てが合意に参加できるという観点から、バランスのとれた協定を実現するためのさまざまな考慮、判断、そして交渉した結果でございます。

 御指摘のとおり、米国が強い関心を有する項目も含まれていますが、八千ページの協定の中の二十二項目が凍結されたということで、TPPのオリジナルの、TPP12がそこで規律した多くのマーケットアクセスルールは、基本的には11でも維持されているというふうに考えております。

 いずれにしても、十一カ国としては、TPP11協定を早期に発効させる、それが米国の復帰を促すことにつながるだろうというふうに考えておりますし、米国に対しては、TPPの持つ経済的、戦略的意義を粘り強く説明して、引き続きTPPへの復帰を働きかけていくという考えでございます。

丸山委員 八千ページ中の二十二項目と、ページと項目が一緒の土台なのがよくわからなかったんですが、しかし、何でもそうなんですけれども、交渉事というのは、ほとんどは合意するものがもう入っているわけですよ。でも、その中のごく一部に関して非常にそれぞれの国の国益がぶつかって、その細かい交渉をして、恐らくこの二十二項目を含めてアメリカは入れ込んだ部分もあるわけで、恐らくそこが最重要なんですね。日本の国益だって、八千ページ全部がもちろん大事とおっしゃるでしょうけれども、その中での交渉の部分はごく限られているわけで、そういった意味で、私は、その一部だという論は若干論理が飛躍しているというふうに思いますが。

 問題は、米国が復帰の可能性を示唆した場合、トランプ大統領の外交を見ていますと、非常に急激に急旋回をする可能性を多分に含んでいるなと思いますし、また、急旋回するときは非常に高目の球をお投げになるというのがトランプ外交の基本姿勢だというふうに、これまでの外交の動きを見ていて感じるところなんですが。

 こうしたTPP復帰の話、TPPに復帰しましょうよと日本から呼びかけて、ほな復帰しますか、ちょっと協議しましょうかという話になったときに、問題は、じゃ再修正に関して協議する、再交渉する、ガラス細工でつくり上げたものを、もう一回またそれを再交渉するという認識でまず政府としてはいらっしゃるんでしょうか。そこはどうなんですか。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 従来申し上げているとおり、これは総理大臣も国会で答弁されていますが、TPPは、参加国のさまざまな利害関係を綿密に調整してつくり上げた、ハイスタンダードで、バランスのとれた、いわばガラス細工のような協定であります。政府としては、一部のみを取り出して再交渉する、変える、こういったことは極めて困難であると一貫して述べてきているところでございます。

丸山委員 結局、またこの間の二年前と私同じことを感じるのは何かといいますと、米国抜きでは意味がないんだという形でずっと答弁されてきたわけですよ。それに対して、今回、結果として11になる、アメリカ抜きでやって、非常に、それも国益だといって、しかもガラス細工だという話があって、一方で、米国には入るように交渉していく、言っていくんだという姿勢で、しかし、この再交渉に関しては、非常にガラス細工だから、11に関してもこれをいじるのは難しいという今御答弁ですけれども。

 そうしたら、この再交渉なんて難しいんじゃないですか。むしろ、アメリカに入ってくれというのは難しいんじゃないか、また答弁が覆るんじゃないかなと非常に危惧しているんですが、このあたりの整合性について、どういうふうに捉えればよろしいんですか。

河野国務大臣 TPPは、たびたび申し上げておりますように、さまざまな国の利害を調整してつくったガラス細工のようなものでございますから、これを、一部を取り出して再交渉する、変えるというのは極めて難しいというのが、恐らく十一カ国の共通認識なんだろうというふうに思います。

 アメリカは、もともとのTPP12の中で最もグローバル化あるいは技術革新が進んでいたのがアメリカ経済ということを考えると、アメリカにとって、恐らくTPPというのが、アメリカの経済、雇用にとって、恐らく加盟国の中でも最もプラスになるものなんだというふうに考えておりますし、恐らく当初アメリカはそう考えていた。だからこそ、アメリカがイニシアチブをとったTPP12というのができたわけだと思います。

 そうした、もともとのTPPの持っている、アメリカにとっての雇用のプラスということ、そして、このアジア太平洋地域における戦略的な意義ということをやはりアメリカにきちんともう一度理解をしてもらうというのが大切だと思いますので、今回、茂木大臣、ライトハイザー通商代表の間で行われる、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議でしたか、略称FFRと呼ばれるような場、あるいはペンス副大統領、麻生副総理の経済対話、こういった場を使って、アメリカに、TPPの意義あるいはアメリカの経済、雇用にとってのTPPのもたらすであろう利益というのをもう一度しっかり認識をしていただいて、アメリカにTPPへの復帰を促すということになるんだろうと思います。

丸山委員 大臣、その意気込みはわかりました。ぜひそれはやっていかなきゃ、国益につながる部分だと思うんですが。

 私が聞いているのは、そこの国益の部分というよりは、答弁の今後の整合性も含めて、そこまでおっしゃる必要はないんじゃないのというところなんです。もともとは米国抜きでは意味がないとおっしゃったようなものも、今回ある意味覆っているわけで、同じように危惧しているのが、今回の御発言で、ガラス細工のようにつくっている、これはTPP11の方も同じだと。同様に、今非常に複雑な交渉の中でやっているから、これを変更することに対し否定的な御答弁をされているわけです。

 しかし、米国が入る余地があるんだったら、恐らく答弁としても、それは各国との交渉の中で非常に意味があるのであれば変わる可能性もあるという答弁でいいと思うんですが、そこに関して、要は、一貫して否定する中で、なぜか米国だけ取り入れるんだと言われたときに、聞いている方は、それは大丈夫なのかな、どういうことなんだろうというのを考えるのが自然だと思うんですが、この辺についてどういうふうに答弁されるのかというのをお伺いしたいんですよ。

 だから、その意気込みに関しては、大臣おっしゃるとおりやっていただきたいし、しっかりアメリカも取り込んでいくんだというのは国際社会の中で非常に重要だと思うんですが、一方で、そうするためには、ある程度この条項に関しても、その場合にですよ、仮の場合なので答えにくいのはわかっていますが、アメリカを引き込んでいくんだというんだったら、この交渉内容だって、自然に、そこは見直す部分も出てくるかもしれないというのが当然の理屈だというふうに考えるんですが、そこに関してどうなんですか。答えられないんですか。

河野国務大臣 繰り返すようで恐縮でございますが、このTPPというのは、ガラス細工のように積み上げてきたものでございますから、これを一部取り出して直していこうというのは極めて難しいというのが、恐らく十一カ国の共通認識でございます。

 その上で、アメリカにとっても、TPPに復帰するのがアメリカの経済、雇用にとっても重大な利益をもたらすということは、アメリカの政府に対して再認識していただく必要がある。日本として粘り強くそれをアメリカに対して働きかけるという政府の方針に変わりはございません。

丸山委員 まあ、これ以上申し上げても同じ答えが続くと思いますが、非常に私自身もこれは前に進めていただくべきだと思いますし、米国抜きであろうが、米国はもちろん交渉の中で取り込んでいくんだというのは私も賛成なんですが、非常にこの御答弁だけ、若干、矛盾まではいきませんが、将来的に言われるようなところだと思いますので、非常にそこは危惧しております。

 一番気になっておりましたので、長い時間を使いましてお話をお聞きしましたが、残りの時間で細かい部分をお伺いしていきたいと思います。

 このTPPに関して、政府は、これは二十一世紀型の新しい自由で公正なルールなんですよというお話をたびたびされてきました。その例として、投資とか電子商取引、あとは国有企業等々、幾つか具体的なものを挙げられていて、肯定的な評価をされていますが、この辺について、まず、具体的なものを挙げて評価されている、この具体的なものを挙げた理由というのはどういうふうにお考えでしょうか。

山野内政府参考人 委員御指摘のとおり、TPPは、単に関税を下げるというマーケットアクセスのところだけではなくて、投資、電子商取引、国有企業の規律など幅広い分野について、二十一世紀型の自由で公正なルールをアジア太平洋地域につくり出すものでございます。

 投資の自由化、あと、安全かつ自由に電子商取引を行う環境の促進、民間企業も公的企業も公正に競争できる環境の整備、これは、成長の著しいアジア太平洋地域に大きなサプライチェーン、バリューチェーンをつくり出すものでございまして、こういったルールが相まって、地域の人、物、資本、さらに情報、これの往来を活発にするというものでございまして、その点が、まさに二十一世紀型の自由で公正なルールであるというふうに考えております。

丸山委員 私もそう思いますが、具体的に挙げられたものはこれだけという認識なのかという点に関しては、非常に、何でこれを挙げられたのかなと思っていまして、例えば、このTPP協定の条項を見ていますと、労働関係だとか、あと環境とか、ほかの部分も具体的に挙げられたらいいんじゃないかなというふうに思います。安倍総理も、実際にこうした部分に関しても発言されていますが、どうしてこれらの部分は挙げられていないんでしょうか。

山野内政府参考人 先ほど、質問が投資、電子商取引、国有企業ということでございましたのでそこに絞らせていただきましたけれども、委員御指摘のとおり、環境あるいは労働、こういった分野の規律も非常に二十一世紀型の自由で公正なルールであるというふうに我々は認識しておるところでございます。

 例えば、環境ということでいえば、高い水準の環境の保護あるいは効果的な環境法令の執行の促進、こういった点が規定されております。労働につきましては、ILOの宣言に述べられている権利をそれぞれの締約国の法律で採択し維持するといったようなことも挙げられているところでございまして、こういった点はまさに二十一世紀型の貿易・投資のルールをアジア太平洋に広げていくということにつながるものであるというふうに認識しております。

丸山委員 資料を拝見していて、非常にそこだけ役所チックじゃないといいますか、何となく、役所の皆さんだと、網羅して全部入れちゃって、逆に、こんな全部網羅したらどこが重要かわからないというふうにお叱りを受けていらっしゃるのをよく見るんですが、一方で、逆に今回は絞っていらっしゃるなと思って、特に環境とか労働なんというのはよく言われそうなところだと思ったので気になってお聞きしたんですが。でも、絞り込みは大事だと思いますが、しかし、抜いているからといってこれをそういうふうに捉えていないわけじゃないというのが今御答弁でわかりましたので、ありがとうございます。

 そうしましたら、関連して、RCEPの関連をお伺いしたいんですけれども。

 今、今回、TPPということですが、将来的にはFTAAPもRCEPも、大臣もたびたびお話しされていますように、その先に見据えての部分だというふうに思いますが、一方で、関係各国の動きを見ていますと、ばらばらとまでは言えませんが、非常に思惑がそれぞれあって、ずれを感じるところもあります。

 例えばマレーシアなんかは、インドとかオーストラリアとかニュージーランドあたりは若干外したがっているんじゃないかとか、また、シンガポールなんかは中南米との動きみたいなものを模索しているみたいな報道もあって、非常にずれを感じるところもないとは言えないんですが、このあたり、政府としてどのように捉えられているのか、見解をお伺いできますか。

山野内政府参考人 TPP11協定は、何度も申し上げておりますけれども、二十一世紀にふさわしいハイスタンダードな貿易・投資ルールの基礎となるものであるというふうに考えておりますが、こういったTPP11協定の早期発効が、RCEPを含む我が国が交渉中のそのほかの経済連携協定の交渉の加速につながるものというふうに期待しておるところでございます。

 RCEPにつきましては、TPPに参加していない中国や韓国、あるいはASEANの国々も含んでおります、インドも含んでおります、非常に大きな巨大広域経済連携であるというふうに考えております。我が国企業にとって、世界で最もダイナミックに成長する地域のサプライチェーン、バリューチェーン構築に寄与するものというふうに考えているところでございます。

 同時に、RCEP、十六カ国で交渉しているところでございます。交渉事である以上、各国の思惑、各国の利害がさまざまに交錯するところでございまして、そういう中で、各国とも国益をかけて真剣に交渉しているというところでございます。

 いずれにしても、我が国といたしましては、アジア太平洋地域において自由貿易をしっかり推進する、そういう観点から、TPP協定の早期発効を目指すとともに、RCEPをできる限り質の高いものとすべく、精力的に交渉を進めていくという考えでおります。

丸山委員 不思議なのは、RCEPとFTAAPに関しては、国際交渉の場でそれぞれの国益を主張してそこで合意に至るのでという話があるのに、それまで、今までお聞きした、米国がもし仮に入った場合には、その部分に関して変わることはないんだ、変えることは難しいんだという御答弁を前にされていて、なぜかここだけこういうお話をされることに非常に私は違和感を感じながらお聞きしていたんです。しかし、恐らく、TPPが合意された中で関係各国との関係上申し上げられない、また、国会答弁の状況上、変えるとまで言ってしまったらぎゃあぎゃあおっしゃるような方が出てくるかもしれないということも裏にはあるのかもしれませんが、ちょっとそこは今びっくりしながら聞いていたんですが。

 最後、時間がなくなってきましたので、もうちょっと細かい部分、特に国内への影響について、終わりたいと思うんですが、特によく言われる懸念で、よく聞くのは、結んでしまうと人件費の安い国に更に生産拠点が移っちゃうんじゃないのと、事業効率化をどんどん考えていった中でですね。そうすると、産業の空洞化とか雇用創出みたいな部分に関して非常に懸念の声も高くなっていると思うんですが、これについて政府はどのように御答弁されますか。

三田政府参考人 お答え申し上げます。

 TPPのような広域的な経済連携は、既存の貿易が拡充する効果のみならず、従来のサプライチェーン、これの枠組みを超えた新たなバリューチェーン、これが生まれてくる効果が期待される、このように考えておるところでございます。

 具体的には、我が国の高い技術力を持った中堅・中小企業が新たなバリューチェーン、これを通じてビジネスチャンスを広げる、ひいては我が国への投資、これにつながる、こういうことが期待されると考えております。

 また、TPP協定の原産地規則におきましては、完全累積制度、これが導入されることによりまして、締約国のどこでつくっても関税優遇を受けられるということになるわけでございます。このため、技術力を持った日本の中堅・中小企業、我が国の企業が国内にいながらにして海外展開を行う、こういったことも可能になると考えておるところでございます。

 昨年十一月に、私ども、総合的なTPP等政策大綱、これを改定したわけでございますけれども、ここでは、TPP等を通じた国内産業の競争力強化、これを政策の柱に、大きな柱の一つに据えているところでございまして、今後とも、この政策大綱に基づく各種施策を展開することで、TPPの効果を国内の産業の活性化、これにつなげていくよう関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと考えております。

丸山委員 直接お答えいただいていませんが、しかし、今の御答弁だと、基本的には、国内にいながら、しかし国外での生産ということは、生産は国外なわけで、そうすると国外に雇用みたいな形が逃げる可能性もないとは言えないと思うんですけれども、どっちもあると思うんです。逆に言えば、日本で労働需要が伸びるような産業もあり得ると思うんですが、このあたり、どういうふうに想定されているんですか。伸びる部分もあれば、下がる部分もあると思うんですけれども、この辺をお伺いしたいんですけれども。

三田政府参考人 お答え申します。

 政府としては、TPPの12、そしてTPP11に係る経済効果分析、これを行っているところでございますが、これは、TPPによる経済成長のメカニズム全体を明らかにして、これによって生み出される我が国全体のマクロ経済的な効果、これを試算したものでございます。

 産業別の細かい分析でございますが、これを行うにはかなり多くの仮定とシナリオ、こういうのを想定する必要があって、このような分析は現在行っていないところでございます。

 ただ、政府といたしましては、やはり個別の分野、要はここでの影響というのはありますので、金融、情報通信、医療、環境等、具体的な十一の分野につきまして、TPP協定による関連規定あるいはメリット、影響、こういったものについて、TPPの分野別ファクトシートとして資料を作成して公表しているところでございます。

 今後も、こういったまさに具体的な分野、これが重要になってくると思いますので、ここにおけるTPP協定によるメリットあるいは影響、こういったものをしっかり説明していきたい、このように考えております。

丸山委員 劇的な雇用の変化というのは非常に難しい部分がありますが、中長期的に見れば私は当然の流れだと思っていますし、日本自体の人口が減っていく中で、生産は海外でしながら、その富としてはこちらにもある程度、一定程度いただくというのは、先進国の最終的な形としては当然あり得るものですし、今よくいろいろなもので出てくるAIとかも、うまく使えば、人間が働く時間を減らしながら富をふやしていくという非常に次の時代にふさわしい形をつくっていけると思いますので。

 その中では、やはり調査していく、予測していくための統計をとって、それでそれを政策に反映するというのは非常に大事です。そういった意味で、内閣官房さん、内閣府さんの力というのも非常に大事になってきますので、難しいのはわかっておりますが、しっかりと政府としても、実はこの後、総務委員会で統計法の審議があしたあるかもしれないという話になっていまして、そこでもお話ししようと思いますが、政府統計は非常に大事だと思います。そういった意味で強化していただきたいというふうに思います。

 最後にお伺いしたいのは、政府としても一応、大綱で目標を出しておられまして、二〇二〇年までに中小企業、中堅企業の輸出額を二倍にするんだ、あと、一九年の農水産物、食品の一兆円目標達成を目指すという目標もきっちり掲げられているんですが、これは、具体的には、どのような輸出先でどのような品目を輸出されようというもくろみなのか、ここはかなり具体的にされているんですが、これについてはどんなお考えなんですか。

三田政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員から、二つの目標、TPP等関連政策大綱におきまして、中堅・中小企業の輸出額を二倍にする、あと農林水産物、食品の輸出額一兆円目標という御指摘がございました。

 まず、前者の、二〇二〇年までに中堅・中小企業等の輸出額を二〇一〇年度比で二倍という目標でございますけれども、これは工業品だけでなくて農産品、食品も含む幅広い品目について、TPPの参加国、そしてあとEU、こういった国への展開を図る中堅・中小企業を支援していくというふうに考えてございます。

 また、農林水産物、食品の輸出額一兆円の目標でございますけれども、これは、TPPと日・EU・EPAでは、水産物、緑茶、牛肉、こういったものを含みます我が国の輸出重点品目のほとんど全てについて関税の撤廃を獲得してございますので、これによってTPP参加国あるいはEU向けへの輸出の拡大が期待される、このように考えております。

丸山委員 時間が来ましたので、終わります。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私、河野大臣そして政務官堀井さんと、今度のTPPの問題と日米関係を中心に議論したい、御質問したいと思います。

 ホワイトハウスの副報道官によりますと、トランプ大統領は四月、TPPへの米国復帰を検討するよう、ライトハイザー米通商代表とクドロー国家経済会議委員長に指示したと言われています。

 そしてトランプ氏は、思い出しますと、二〇一六年の大統領選挙でTPPを最悪の協定と批判し、就任直後の一七年一月、TPPから永久に離脱するとした大統領令に署名しました。ところが、ことし一月になって、スイスのダボス会議に出席した際に、米国のテレビとのインタビューで、我々にとって明らかに十分によい協定になるならTPPにはオープンだと述べ、再交渉を経て復帰することもあり得るとの考えを示しました。

 安倍総理は、五月八日の衆議院本会議で、トランプ大統領から米国がTPPに参加する可能性について言及があったと強調されましたが、その前提は、米国に有利になることを前提としたTPPへの復帰ということではないのか。

 全体の問題について、まずお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 たびたび答弁申し上げておりますように、アメリカにとりまして、TPPに復帰するということがアメリカ経済並びにアメリカの雇用にとって非常に有益なものになると考えております。だからこそアメリカは、TPP12というものをリーダーシップをとってつくり上げてきたわけでございますので、我々としては、アメリカにそれをもう一度しっかり理解をしていただくということが大切だというふうに思っております。

穀田委員 その問題について言いますと、大体答弁はいつも、有益であるということを理解してもらう、それを説得する、こうくるんですね。

 今、河野大臣は、TPPの当初の問題についてのリーダーシップも含めてアメリカのことについて言及されました。しかし、トランプ大統領は、四月十二日のツイッターで、オバマ大統領のものより明らかによい協定になる場合にだけTPPに加わると述べています。したがって、次元といいますかね、どういう線を引いているのかということをよく見なくちゃなりませんし、トランプ氏が検討を指示したというTPPへの復帰は、あくまでも現TPPよりも米国に有利な協定であることが前提だということは、この一連の言動からしてはっきりしていると私は思います。

 その上で、TPPはもともと、国境を越えてもうけを追求する多国籍企業を後押しする協定だと私どもは考えています。トランプ氏がTPPに批判的だったのは、アメリカ第一、米国第一の立場からすると得るものがまだ少ないと考えてのことだと私は考えます。TPP復帰を検討した結果、米国の業界の要望も取り入れ、現TPPに盛り込めなかった米国の、より身勝手な要求を突きつけてくるおそれは十分にあるんじゃないでしょうか。その辺はいかがお考えでしょうか。

河野国務大臣 それは、要求を突きつけるというのはどの国もやるわけでございますが、このガラス細工のようなTPP11をなかなか変えるというのは難しいというふうに十一カ国が思っているわけでございます。

 トランプ大統領にも、TPPというのが実はアメリカにとって有益なんだということを理解していただくというのが、まず日本政府がやらなければいけないということだと思いますので、それに向けてしっかり働きかけはやってまいりたいと思います。

穀田委員 河野大臣、何回聞いても、大体、要するに、有益だ、有利だ、おたくのところももうかるんやからというような話をいつもしはるねんけれども、そういうことで済むのかなと思うんですよね。

 といいますのは、トランプ大統領の指示は、NAFTAの再交渉、それから鉄鋼、アルミニウムの輸入制限、そして知的財産権侵害を理由とした対中国制裁関税の予告など、米国の一方的行動と並行して行われたわけですよね。だから、これらの通商交渉への効果を考慮したと考えるのが私は自然だと思うんですね。相手が何を考えて、どう行動しているかということだと思うんです。

 しかも、調べてみますと、ことし二月、米共和党の上院議員二十五名が大統領宛てに出した、TPP交渉復帰を支持、奨励する書簡ではどう言っているかといいますと、加盟国・地域における同盟国との関係強化に寄与し、中国の影響への対抗手段となり、同国が前向きで実質的な経済改革を選択するための圧力を強められる、カナダ、メキシコとの貿易近代化に向けた機会を提供すると、TPPの効果を強調しています。ですから、彼らの考え方が何であるかということをしっかりつかまなくちゃならぬと思うんですね。

 そこで、これは常識的な話なので聞いておきますけれども、堀井政務官、TPP11の十一カ国のうち、米国とFTAを締結している国は何カ国ありますか。

堀井(学)大臣政務官 豪州、ニュージーランド、カナダ、メキシコ……(穀田委員「ニュージーランドは違うでしょう」と呼ぶ)

 大変失礼いたしました。通告を受けておりませんので、後ほど調べて回答したいと思います。

穀田委員 普通のことだったので。それは、要するに、さっきも言いましたように、上院議員なんかも含めて、どういうふうにやろうとしているかという、推進勢力全体が何を考えているかということの一つの基本軸というのは二国間協議なんですね。だから、二国間協定を、簡単に言うとFTA、自由貿易協定を締結している国は何カ国かと。大体、数字は六カ国と、普通は言うんですよ。通告していなかったからと言うんだから、それはそれでいいですけれども。

 私が知っている、また、みんなも知っているのは、オーストラリア、シンガポール、チリ、ペルーがFTAを締結し、先ほどありましたけれども、カナダ、メキシコとはNAFTAを締結している。これが、世界で言うところのいわば協定ですよね。

 そこで、トランプ大統領は、ことし一月のダボス会議の際に、TPP11のうち、オーストラリア、カナダ、シンガポール、チリ、ペルー、メキシコの六カ国との間でそういう議論をしているわけですよね、そういうことを締結していると強調して。結局のところ、二国間交渉を引き続き重視する姿勢を示しているわけです。そこで言っているのが、長年貿易で米国を手痛い目に遭わせてきた日本とも話し合っていると述べているわけですね。

 だから、政府は、米国の復帰を働きかける一方で、復帰しない場合でもTPPを実施できる本協定、つまりTPP11の締結を主張してきました。しかし、本協定はTPPの装いを変えただけにすぎず、しかも、米国のTPP復帰の道も用意した協定ということではないんですか。性格ですね、それについてお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 このTPP11というのは、TPP12でつくり上げたスタンダードの高いルールを維持しながら、アメリカが復帰ができるように考えてつくったものでございます。

穀田委員 スタンダードの高いというのがいつも、これもまた常套句であります。

 御承知のとおり、この協定の文書も六ページほどで、そして、別の協定とはいえ、一部を除いて旧協定の条文をそのまま組み込んであって、簡単に言えば、TPPをよみがえらせるものだということが言えると思うんですね。

 そこで、四月の日米首脳会談は、新たな通商協議の枠組み、FFRを立ち上げることを合意しました。

 会談で安倍総理は、TPPから離脱したトランプ大統領に、TPPが日米両国にとって最善と考えていると復帰を促しました。しかし、トランプ氏は、TPPには戻りたくないと拒絶された。これほど日米両国首脳の食い違いが、記者会見の場でそういうことが鮮明になったというのは異例のことだと思うんですね。

 そこで、昨年二月の日米首脳会談では、麻生副総理とペンス副大統領による日米経済対話が設けられました。これに加えて、四月の首脳会談では、通商問題の担当閣僚による協議を立ち上げることで、結局、米国が具体的な要求を突きつける枠組みができた。

 どの国もやるし、しかし変えるのは無理だという話は先ほど大臣がおっしゃって、またそういう答弁が返ってくるのではちょっと困るわけで、結局、新しい枠組みをつくることによって、米国が具体的な要求を突きつける枠組みにまた更に踏み込んだんじゃないのかという、事柄の性格について聞いています。

河野国務大臣 自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議という、随分長ったらしい名前の協議でございますが、これは、公正なルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋地域の経済発展を実現するために、日米双方の利益となるように日米間の貿易や投資を更に拡大させていこうという目的で行われるものであって、ライトハイザー・アメリカ通商代表と茂木経済再生担当大臣の間で協議を行い、その結果を麻生副総理、ペンス副大統領の日米経済対話に報告をしていくというものでございます。

 これは、要するに、日米双方でこのアジア太平洋地域の経済を実現、発展をさせるために、そして、それが日米双方の利益となるように何をやったらいいんだろうかという議論をするものであって、当然、アメリカ側からもいろいろな意見は出ると思いますが、日本側からもいろいろな意見を出し、そこで議論をしていこうというものでございます。

穀田委員 二つのそういう枠組みを、形式的にはこういうことになっているというふうに述べたにすぎないと私は思うんですね。

 そこで、日米は、七〇年代以降、繊維や鉄鋼、自動車などの貿易交渉を繰り返してきました。トランプ氏が会談で、米国は日本との間に巨額の貿易赤字を抱えている、対日貿易赤字を縮小し、できれば均衡を達成したいと発言し、さらに、米国製自動車を日本に輸出する際の障壁を取り除かなければならないと述べています。

 しかし、既に日本の輸入車関税はゼロ、その一方で、米国は輸入日本車に二・五%の関税をかけているではありませんか。そして、米国全体の貿易赤字に占める日本の比率は下がっているのではありませんか。それは、外務省、堀井さん、いかがですか。

河野国務大臣 日本への自動車の輸出関税はゼロでございますし、アメリカは、乗用車で二・五%、トラックで二五%でしたかの関税がいまだ維持されている。しかも、対日貿易赤字は八〇年代と比べると大幅に減り、今、アメリカの貿易赤字の相当部分は対中貿易の赤字という状況になっているわけでございます。

穀田委員 今、河野大臣から状況認識がありましたように、そのとおりなんですね。だから、トランプ大統領が言っているところの、巨額な貿易赤字を抱えている、こういう問題の意識というのは明らかに、一九八〇年代は六割五分近くあった比率。それが今や、お話がこれからもあるんでしょうが、中国に取ってかわられて、全体の比率は、日本の占める比率は下がっているということですよね。

 だから、確かに、米国の商務省の米貿易赤字の国別内訳推移を見ますと、日本の比率が断然下がっているということは明らかであり、アメリカも認めているわけです。それをこういうふうに言ってくるわけですからね。そういう点でも、私は、状況認識が違うし、そこをきちんと指摘しなくてはならぬと思うんです。

 トランプ政権が、今述べた貿易赤字をやり玉に上げるのは、これは米国第一というものの立場であって、全く筋の通らない主張だと私は考えます。

 トランプ氏は共同会見で、米国による鉄鋼、アルミニウムの輸入制限について、新しい合意を米国と日本で模索すると、これまた述べています。安倍総理は五月八日の衆議院本会議の答弁で、トランプ大統領の発言にある新しい合意や交渉材料の意味するところについては私の立場でコメントすることは差し控えたいと答弁していますが、これは、日本への関税除外は協議次第だというふうに理解してよろしゅうございますか。

河野国務大臣 日本の鉄鋼生産量は恐らく一億五百万トンをちょっと超えているぐらいなのではないかと思いますが、そのうち、アメリカへ輸出されている鉄鋼の量というのは百七十一万トン、二%未満でございます。

 そういう中で、このアメリカへ輸出されている鉄鋼のほとんどは、自動車製品、あるいはシェールガス、シェールオイルのパイプ、あるいは鉄道のレールといった、大変高い品質で、アメリカ製の鉄鋼では置きかえられないものが大部分でございます。今現在、二五%の関税をかけられても、アメリカの市場の中では、日本製の鉄鋼製品というのは価格競争力を維持できております。

 恐らく、この関税をかけるよと言われたときに、ちょっと数字がうろ覚えで申しわけございませんが、アメリカ国内でトン当たり七百十ドル程度だった鋼板、中国市場で六百五十ドルぐらいだったと思います。今現在、トン当たりの中国での価格は六百五十ドル近辺を維持しているのに加えると、アメリカでのトン当たりの価格というのは大幅に上がってきております。これは、アメリカの自動車産業あるいはシェール産業といった、日本製品を置きかえられないもの、産業からしてみれば、単純にコストが上がり、アメリカの産業に対して大きな向かい風になっているという現実があるんだろうというふうに思います。

 そうしたことを私どもはアメリカにきちんと伝えると同時に、だからいいということではなくて、このアメリカの一方的な措置というのは、WTO、戦後、この国際経済を発展させてきた自由貿易体制の基礎になっているWTOを基礎とする体制に対してかなり悪影響を及ぼすというところが、日本としては受け入れがたいということをアメリカにも伝えているところであります。

 一方、EUあるいは韓国は、この適用除外を求めるために数値目標、数値割当てというようなものとバーターにされる、てこにされるということがございますので、日本としてはそういうWTOルールに違反をするような措置は受け入れないということを明確にして、しかし、日本製の鉄鋼、アルミに対して関税をかけるということは、ひいてはアメリカの産業、アメリカの経済に対して悪影響を与えるものであるということを伝えているわけでございます。

 ですから、先ほどから委員おっしゃるように、TPPに復帰をするということは、アメリカの経済にとって、アメリカの雇用にとって、アメリカとしてベストの選択なんだということをしっかりとアメリカに伝えることによって、トランプ大統領にもそれを理解していただく。

 トランプ大統領に、日本の鉄鋼に二五%の関税をかけるのはアメリカ・ファーストに実はなっていないんだ、同様に、TPPにアメリカが復帰することがむしろアメリカ・ファーストにつながるんだということを日本としては粘り強く働きかけをする、そしてアメリカが復帰したTPP12になるというのが、アジア太平洋の地域的にも、アメリカにとっても、日本にとってもいいことなんだということを粘り強く働きかけをしていきたいというふうに思っております。

穀田委員 そこは、私、論点がちょっと違うといいますか。つまり、米国第一ということが、それは日本が提供する新しいTPP11も含めてそうなりますよという話を、簡単に言えばわからせようということですわな、簡単に言えば。

 私はそれではないと思うんですね。TPPが持っている負の側面、少なくとも、日本の国民の経済やさまざまな分野に与える影響について、これをまず我々は考えて物事を処理しなくちゃならぬという立場から物を言っていますからね。そういう意味で、さらに、米国が言っているそういう新たな、オバマ時代よりも比べても更にとか、そして、今述べている鉄鋼の関係にしましても、それを交渉材料に使っているということの状況をしっかり見ながらやらないとだめなんじゃないかということであります。

 米側が日本に求めているのは、自動車市場の障壁の撤廃や、とりわけ、さらに、農産物市場のさらなる開放、そして米国製武器の直接購入の拡大など、もっとリアルにきているんですね。農産物に関しては、クドロー国家経済会議委員長が、日本に幾つかの市場開放を求めていきたい、特に農業分野だと、米国のメディアに語っています。

 トランプ政権は、十一月に中間選挙を控え、農民の支持をつなぎとめようと、日本に米国産農産物の輸入拡大を迫っています。起点となるのは、TPP交渉で日本が米国に譲った線であります。これはさきの、さきとは、まあ、TPPのいわば国会で議論の行われたところの中心問題の一つでもありました。

 それで、今後の日米協議では、TPP以上に、日本国民の利益と日本の経済主権に反する取決めが話し合われることになるんじゃないか、それが我々の視点であります。そういう疑問を私は持たざるを得ない。

 そこについて、いかがお考えでしょうか。

河野国務大臣 アメリカの農業者は、今、アメリカの政権に対してTPPに早期に復帰するように求めている。つまり、TPPに復帰することがアメリカの農業にとって非常に大きなメリットをもたらすということを、アメリカの農業界はよく理解をしてくださっているということなんだろうと思います。ですから、さまざまな二国間交渉をやっても物事は動きませんけれども、TPPに入れば同じメリットをアメリカは享受することができるようになる、それはもう業界の方はよくわかっているわけですから。

 アメリカのさまざまな産業界と一緒になって、やはりトランプ大統領にTPP復帰のメリットをしっかりと理解していただくということをやらなければならないというふうに思っております。

 トランプ大統領はいろいろなことをおっしゃっておりますけれども、それは、なかなかできないものを一生懸命おっしゃるよりは、できることをすっとやった方がメリットがあるということを、恐らくいつかの段階で気づかれるんだろうというふうに期待をしているところでございます。

穀田委員 それははかない期待になるだろうと思います。

 今、お話があったように、アメリカの農業界というのは、このままでいけば、ニュージーランドやオーストラリアを始めさまざまな大きな農業国に日本の市場が大きく食い荒らされる、それに後で行けばなかなか難しい、だから早く参入せよと。それは当たり前の話ですよ。

 問題は、それを受ける側の日本の農業がどうなるか。そういう、経済主権、日本国民の利益がどうなるかという視点がないということがはっきりしたと私は思います。

 そこで、二国間という話が出ましたから。

 クドロー委員長というのは、首脳会談の直前、どこかの時点で日本とFTAを結ぶことを望むと、日米FTAを目指す姿勢を明らかにしています。トランプ大統領は安倍総理との共同記者会見で、二国間協議の方がいいと明言しています。関税だけでなくて経済ルール全体にわたって取り決めるFTA交渉は、米国が日本に際限のない譲歩を迫る場となることは明白ではないでしょうか。その点、いかがですか。

河野国務大臣 米国は二国間ディールとトランプ大統領がおっしゃっているのは承知をしておりますが、我々は、TPPが両国にとって最善だと思っておりますので、そうしたことをしっかりとアメリカに認識していただけるように、このFFRという場を利用していきたいと思っております。

穀田委員 だから、私は明確に、際限のない譲歩を迫る場となるという可能性が強いということを言っているわけであります。

 そこで、いつもそういう、通商代表の問題や、今、話合いの場ということを必ず強調されるわけですけれども、ライトハイザー通商代表はことしの一月のワシントン米商工会議所での講演で、日本との経済関係について、いつかはFTAを結びたいと思うと語っています。

 こうした流れを見ても、二国間協議は、米側が狙うFTAに一段と踏み込むものではないかと私は考えます。日本の経済主権も食料主権も踏みにじられ、自動車にとどまらず、牛肉や米を含む農産物など、TPP以上の要求を突きつけられることになるんじゃないかと率直に危惧するんですが、いかがですか。

河野国務大臣 繰り返すようで恐縮でございますけれども、アメリカは二国間ディールがいいと考え、我々はTPPがいいと考えているわけでございまして、別に、このFFRは、FTA交渉をやる場でもなければ予備交渉をやる場でもございません。アジア太平洋にしっかりとした貿易・投資のルールをつくって、日米双方にとってメリットのあるようなことを考えていこうという場でございますから、ライトハイザー通商代表と茂木大臣の間で、当初はさまざまな自説を述べるということがあるかもしれませんけれども、その後はしっかりと、何がお互いにとってベストなのかという議論をする場になるんだろうというふうに思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、そこでさまざまな議論をいたしますけれども、アメリカの経済にとって、さまざまなアメリカの産業にとって、TPPに復帰すれば、これはもうさまざまなメリットをその場で受けることができるわけでございますから、これはアメリカの産業界の中でも理解が広まりつつあるわけで、大統領にも認識していただけるようにしっかり努力してまいりたいと思います。

穀田委員 前半の答弁は、本会議でも総理大臣が行っているところであります。

 我々が危惧しているのは、やはり日本の経済主権、食料主権の話であって、相手がもうかる、日本がもうかる、日本がもうかるとは日本の国民が別にもうかるわけじゃないんですよ。そこははっきりしておきたいと思うんです。なぜ私たちがこういう問題を気にしているかといいますと、一連の歴史的経過を振り返ってみると、譲歩、譲歩の繰り返しではなかったのかということを私どもは認識しているからです。

 そこで、USTRがことし三月に公表した二〇一八年の外国貿易障壁報告書の概要を見ると、二十二項目にわたって政策が列記されています。

 最初の項目の貿易関係の概観にはどのようなことが記されているか、紹介してほしいと思います。

堀井(学)大臣政務官 先ほど失礼いたしました。

 先ほどの六カ国でありますが……(穀田委員「もうそれはいいです。僕、言いましたから」と呼ぶ)大変失礼しました。

 米国の貿易収支でありますけれども、先ほどの質疑であります。中国、四六・三%、そして日本は八・六%、ちなみに、メキシコは九・四、ドイツは八・〇、カナダは二・九となっております。

 ただいまの質問でございます。

 さきの日米首脳会談では、経済については、日米両国がリードして、インド・太平洋地域に自由で公正なマーケットをつくり上げていくことが確認され、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することで合意されたところであります。

 議論の詳細については、外交上のやりとりであり、お答えは差し控えたいと思います。

 以上であります。

穀田委員 時間を浪費して、前の話はするわ違うことは答えるでは、ちょっとあかんのちゃう、それでは。

 私が言っているのは、報告書はありませんかと。それの第一項目、貿易関係の概観を述べてくれと言っているわけだから。

堀井(学)大臣政務官 昨年九月に施行した新たな……(穀田委員「時間をとめてよ、ここで」と呼ぶ)

中山委員長 答弁者はしっかり答弁をしてください。

堀井(学)大臣政務官 大変失礼いたしました。

 米国の日本との物品貿易の赤字は、二〇一七年、六百八十八億ドルで、二〇一六年からは〇・一%の増加……(穀田委員「委員長、それはさっきもう終わりました。今言っているのは、報告書について述べろと言っているんです」と呼ぶ)

中山委員長 まず、答弁を言ってください。

堀井(学)大臣政務官 はい。

 国境における障壁及び、日本市場における米国製品やサービスを参入させそのプレゼンスを拡大するに当たっての障壁を含め、米国輸出に係る幅広い障壁を除去することを求めていくため、米国政府は、日本政府と引き続き緊密に連携していくこととなります。

 また、原料原産地表示制度についてでありますが、日本の国内産品が輸入原料を使用して生産される場合、日本の生産者は、原産地表示の負担を最小限に抑える方法として、米国を含む複数国からの食材を使用することを避ける可能性があるため、米国の輸出食材に悪影響を及ぼす潜在性があります。また、日本の食品加工会社が、原料が海外から調達されている場合、誤表示の可能性も残しております。

 以上であります。

穀田委員 最初に、一、貿易関係の概観と言ってくれればいいんですよ。そして、中身を言っていただきたい。

 二番目の話はまだ聞いていなかったんですけれども、二番目もお話があったので、両方聞くということが多分伝わったんでしょう。

 私は、まさに身勝手な要求じゃないかと思うんですね。この中身が、よく見たらわかりますように、こういう形で相手は要求している。

 一九八〇年代末には日米構造協議が持たれる、それから二〇〇一年には対日経済指針が出されて、成長のための日米経済パートナーシップを立ち上げて、そこで年次改革要望書がまとめられる。その結果、それを実行せざるを得ないということになっている。だから、USTRの元官僚も、年次改革要望書は二国間交渉の一つの理想型でしょう、文書に掲載することで、日本が米国の意向を酌み取り、国内調整をして貿易障壁を取り除いてくれるのですからということで、アエラに、二〇〇五年四月十八日号で述べているほどなんですね。

 ですから、極めてこれは、何というんですか、そう簡単じゃなくて、日米間におけるそういうやり方をよくつかんでおかないと、あかん。

 今、せっかくですから、二番目が原料原産地表示制度でありますね。ここには、今お話があった、日本の生産者はということで、原産地表示の負担を最小限に抑える方法として、米国を含む複数国からの食材を使用することを避ける可能性があるため、米国の輸出食材に悪影響を及ぼす潜在性がある、また、日本の食品加工会社が、原料が海外から調達されている場合の誤表示の可能性も残している、これは今お読みになったところですよね。これはまさに新しい概念という形でなってきていまして、こういった方向性について、では、せっかく堀井さん、お話がありましたから、このような米国の認識を日本政府は是とするのか、この今述べた内容は。

堀井(学)大臣政務官 昨年九月に施行した新たな原料原産地表示制度は、消費者庁で所掌しているものでありますが、加工食品の重量割合上位一位の原材料について、その原産地の、原則、国別重量順で表示する制度がありますが、複数国の産地のものを使用していて国別重量順表示が困難な場合には、過去の実績等に基づき表示を行う、又は表示や大くくり表示を認めていると承知をいたしております。

 米国は、USTR外国貿易障壁報告書の中でこの新たな原料原産地表示制度について、米国産の食材調達状況に悪影響を及ぼす懸念があることなどに言及していると承知をいたしております。

 しかし、この新たな原料原産地表示制度については、消費者の自主的かつ合理的な選択に資するための制度であり、表示を実際に行う事業者の実行可能性にも配慮して、有識者等の意見も踏まえてできたものであり、我が国としては、今後も機会を捉えて、米国側の懸念を払拭すべく、消費者庁においてしっかりと新たな表示の意味などについて説明が行われるものと承知をいたしております。

穀田委員 消費者庁の話にしているねんけれども、そういうやり方で来ていることについて、いろいろ分けて防御していくみたいな言い方をしているねんけれども、そういう考え方を是としているのかということの、そこの本質を聞いているんですよ。

河野国務大臣 済みません、ちょっと質問の御趣旨がよくわからないんですけれども。

 これは別にアメリカだけが求めているわけでなくて、日本も当然アメリカに対して、こういうことをおかしいとかこういうことをやれとかということは言っているわけでございます。

 その結果、例えば、今スーパーに行けば、豆腐なんかに、これは遺伝子組み換えはしていませんという表示がありますけれども、あれはもともとアメリカが猛反対をしていましたけれども、日本の消費者にちゃんとした情報を与えるための科学的根拠のある表示をやることがどこがおかしいのかといって、それはアメリカも認めて、ああいう表示がきちんとできるようになっているわけでございますから。それはこの表示の問題一つをとっても、日本は日本の主張をし、アメリカはアメリカの主張をし、お互いそれを考えて、消費者の利益になることはやる、国益に反することはやらない、そういうことをやってきたわけでございます。

穀田委員 しかし、そういう経過を通じてこれは随分争い事があった。消費者問題特別委員会で、私、この問題もやってきましたよ。いかに大変だったかということについては、圧力の問題も暴露してきたところであります。

 問題は、新しい概念でそういう形でやってきているのを是とするのかということについて、やはり、明確な態度が示されないということだと私は思います。

 私は、最後に、米国抜きのTPP、本協定は日本が国際的に約束した市場開放や規制緩和の到達点であって、米国との二国間協議は、この到達点に立って、より大幅な譲歩を求める米国にとっては新たな出発点になるんじゃないか、その枠組みの、問題の性格の理解についてお聞きしたいと思います。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、このTPP12は、アジア太平洋地域に経済の質の高いルールをつくるだけでなく、地域の平和と安定にも寄与する戦略的な意義があるということで日米で一生懸命やってきたものでございまして、日本としては、アメリカがこのTPPに復帰をするのが、地域にとってもアメリカにとってもベストだというふうに考えておりますので、今度の場は、そうした日本の思いをアメリカにしっかりと伝えていく場として使用させていただきたいというふうに考えているところでございます。

穀田委員 それは、私、はっきり言って、もちろんトランプ氏とのかかわりで、先ほど大臣は、いろいろなことを言う人だ、最後はこういうことを理解してもらうと言っていますけれども、そういうふうにはなかなかならぬということは一つ言っておきたいと思います。

 米国にとっては個別交渉というのは、多国間交渉と比べて、言っていますよ、短時間で処理が可能であって安全保障などの政治問題との抱き合わせがしやすいということだということをはっきり、彼らは戦略的な位置づけを述べています。したがって、貿易の政治問題化が進んでいくだろうということははっきりしていると思います。

 私は、TPP交渉で譲歩した線をスタートとして日米FTA交渉で際限のない譲歩を迫られることが強く危惧される上に、米国大企業の身勝手な要求の受皿となる可能性がある、危険性があると。

 今求められているのは、私は改めて言いますけれども、先ほど、アメリカにとっても利益になる、日本にとっても利益になるという、肝心なところの、じゃ、日本国民にとっての利益、日本国民の主権や経済主権、こういうことになると言を左右にして大体語らないというこの間の経過があります。私は、何といっても、各国の食料主権それから経済主権を尊重した平等互恵の経済関係を発展させる道に進む、こういう大道に立って立ち向かっていくことが必要だということを述べて、終わります。

中山委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 希望の党の井上一徳です。よろしくお願いいたします。

 最後になりますけれども、どうぞよろしくお願いします。

 本日は、主にTPPについての質問をさせていただきますけれども、その前に、地位協定に関する質問を幾つかさせていただきたいと思っております。

 配付資料で配らせていただいておりますけれども、資料一を見ていただければと思うんですが、二年前に沖縄県うるま市で発生した米軍属による女性殺害事件の遺族への補償問題に関してのものでございます。

 この殺害事件、二年前ですけれども、私、当時、沖縄の防衛局長をしておりまして、本当に衝撃な事件でありまして、罪のない若い女性、しかも結婚を間近に控えた女性、それが米軍属に暴行され、そして殺害され、そして林の中に遺棄されるという、本当に県民にとっても大変衝撃な事件でありました。

 この事件が、二年たって、配付資料の記事もありますけれども、「進まぬ遺族補償」ということで、日米地位協定の解釈に日米間で相違がありまして、なかなか遺族への補償が進んでいないというような状況にあります。

 私は、この件で一度、三月二十日の安保委員会でも河野大臣に質問をさせていただきました。そのときは、大臣より前向きに、「今、日米で協議が行われているところでございますが、日本政府としては、御遺族になるべく御迷惑をかけないようにするというのがこれは当然のことだと思いますので、きちんと、早急に、この日米協議を取りまとめ、対応してまいりたいというふうに考えております。」という答弁をいただきました。

 ただ、一カ月経過してもなかなか交渉に進展が見られない状況でありますので、先般、資料二につけておりますけれども、質問主意書を出しました。今月の十二日に、もう一枚めくっていただいたところに、答弁いただいたんですけれども、「お尋ねについては、現在、米国との間で様々なレベルで協議中であり、また、個人のプライバシーに関わることから、お答えすることは差し控えたい。」ということで、どうもまだなかなか進捗していないというような状況だと思っております。

 やはり、被害者の遺族の立場に立って早急に対応するように改めて求めたいと思いますけれども、現在の協議の進捗状況について伺いたいと思います。

河野国務大臣 平成二十八年四月に沖縄県のうるま市において発生いたしました、今御指摘をいただきました米軍属による殺人事件は極めて遺憾でございます。

 本事件は大変痛ましい事件でありまして、御遺族のお気持ちを考えると、本当にいかばかりかと思います。せめて御遺族にきちんとした正当な補償が一刻も早く行われるよう、政府として誠心誠意努力をしてまいりたいと思っております。

 米側との協議につきましては、さまざまなレベルで今早急に対応しているところでございます。御遺族になるべく御迷惑をかけないようにするのは当然のことと考えておりますので、しっかりと調整をしてまいりたいと思います。

井上(一)委員 私は、河野大臣を大変信頼しておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 それから、地位協定に関して、もう一問質問をさせていただきたいと思います。

 先週の末松先生の質疑を聞いておりまして、私も地位協定の基本的な考え方について同じ問題意識を持っております。資料に、三ということで配らせていただいておりますけれども、済みません、これは末松先生のをそのまま引っ張らせていただきました。

 地位協定の基本的な考え方としては、やはり、この国際安全保障諮問委員会の報告書にあるとおり、当該国の法令が適用されるのが一般的に受け入れられている国際法の原則である、駐留軍地位協定はこの原則に関する合意された例外を規定するものであり、協定によって受入れ国は派遣国の利益のために本来有する一定の管轄権及びその他の権利を放棄することに合意している、これがやはり国際的な基本的な考え方だというふうに私も思います。

 ただ、外務省の日米地位協定のQアンドAの認識、これはここにつけておりますけれども、同じように上につけておりますが、「一般国際法上、駐留を認められた外国軍隊には特別の取決めがない限り接受国の法令は適用されず、このことは、日本に駐留する米軍についても同様です。」「米軍の行為や、米軍という組織を構成する個々の米軍人や軍属の公務執行中の行為には日本の法律は原則として適用されませんが、これは日米地位協定がそのように規定しているからではなく、国際法の原則によるものです。」と。

 やはりこれは国際的な認識と違うのではないかと思いますけれども、改めて、先日も末松先生には御答弁いただきましたけれども、外務省の考え方をお聞かせいただきたいと思います。

鈴木政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの日米地位協定と一般国際法との関係についての外務省の考え方は外務省ホームページに記載しているとおりでございますが、その上で、あえて一般論として申し上げさせていただければ、一般国際法上、軍隊が接受国の同意のもとでその国に所在している場合、その滞在目的の範囲内で行う公務について、当該軍隊はその裁判権等から免除されることとなります。

 その上で、個別の具体的な事象において、派遣国と接受国のいずれの管轄権が優先的に行使されるかという点につきましては、こうした一般国際法上の考え方を踏まえつつ、必要に応じて派遣国と接受国との間で協議等を通じて具体的に取扱いが決定される、これが一般的であります。

 日米地位協定は、こうした具体的取扱いについてあらかじめ定めたものだというふうに考えております。

 以上でございます。

井上(一)委員 これは、沖縄県の方でもいろいろ各国の地位協定を国際比較しておりまして、これを中間報告で発表しております。

 それによれば、日本と同じように米軍が大規模に駐留しているイタリア、それからドイツ、そういう国では、一つとしては、米軍の活動に国内法を適用する、それから二つ目として、受入れ国に基地の管理権や立入り権がある、三つ目として、訓練計画の承認など米軍の訓練に受入れ国が関与する仕組みがある、四つ目として、米軍基地を抱える地元自治体の要求、要望を運用に反映させる協議体が設置されている、こういう仕組みがあるというふうな指摘がございます。

 そういうような実態を踏まえると、先ほど、私いろいろ読み上げましたけれども、やはり、国際安全保障諮問委員会の報告書にある考え方が国際法の一般的な考え方ではないかと思います。

 ただ、これ以上議論する時間もございませんので、やはり、そういう実態も踏まえて地位協定の基本的な考え方を示していただかないと、恐らく国民の方々が誤った理解をしてしまうのではないかと思います。

 私は、そういう意味で、後ほど政府の正確な考え方を質問主意書で確認させていただこうと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 それでは、余り時間もございませんけれども、TPPについて質問をさせていただきます。

 TPPは、アジア太平洋地域において、自由かつ公正なルールのもとでの貿易を推進するということを志向しており、日本が積極的に貿易ルールの形成に携わっていくということは国際社会への貢献につながっているということで、評価をしているものでございます。

 委員会での議論を聞いていますと、TPP11の早期発効をなし得た後に、TPP11の拡大ということが課題になってくるというふうに思いますし、その旨、河野大臣もいろいろ、早くTPP11を発効させて、そしてTPPを質の高いルールとして拡大をしていきたい、そのときに、「インド・太平洋地域にこうしたものを広げていくというのは、自由で開かれたインド太平洋戦略とも非常に整合する戦略でございますから、積極的にそうしたことをやってまいりたい」というふうに答弁をされております。

 関心のある国として、イギリス、インドネシア、韓国、コロンビア、タイ、台湾が関心を示しているということでしたし、アメリカもTPPの復帰ということを言うようになってきたということでございました。

 それで、TPP11の拡大の今後の方向性について、ちょっと大臣にお伺いしたいと思います。

 具体的には、米国の復帰を優先して考えるのか、それから、アジア諸国であるタイ、インドネシア等々の参加を優先して考えていくのか。それとも、アジア太平洋を超えて世界への拡大を目指していく、そういうことでイギリスの参加を優先していくとか、いろいろな考え方があると思いますけれども、今後どのような考え方でTPP11を拡大していくのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

河野国務大臣 まず、TPP11の発効を急ぎたいと思っておりますが、その後は、これをしっかりと、新しい、高いスタンダードのルールとして広げてまいりたいと思っております。

 今現在、タイ、韓国、台湾、イギリスを始め、さまざまな国々が興味を示してくださっておりますので、そうした関心国・地域に対して必要な情報提供あるいは加盟に向けての協力というものをしてまいりたいと思っております。

 おっしゃるように、アメリカのTPP復帰なのか、新しい加盟国への拡大なのかという議論もあるかもしれませんけれども、TPP11協定への新規加入につきましては、第五条に規定されているとおり、締約国と新規加入国・地域との間で合意する条件に従って加入してもらうことになります。最終的にいかなる条件で加入することになるかは、それぞれの候補国との交渉の結果、個別具体的に決まっていくものだというふうに思いますので、そうしたものが個別具体的に決まってきたその流れで拡大をしていきたいというふうに考えております。

 もちろん、アメリカのTPP11への復帰というのは我が国にとって関心事項でございますが、どれを今の時点で優先しようということではなく、TPP11の拡大に向けてしっかり努力してまいりたいというふうに考えております。

井上(一)委員 これは私の意見ですので、あえて答弁を求めませんけれども、アメリカの復帰ということもあるかとは思いますけれども、まずは、やはり、大臣も言っておられるように、このTPPの戦略的意義、それから地域の平和と安定の確保、こういうのを考えると、ASEAN諸国とか、それから、先ほど小熊先生が言っておられましたけれども、ポリネシアとかミクロネシアの太平洋島嶼国、こういった国々の参加ということを追求していく方が私はいいのではないかというふうに思っておりますので、これはあくまで私の意見です。

 済みません、最後の質問をさせていただきたいと思います。

 ちょっと飛びまして、TPPは、日本企業の海外展開を促進するいい機会を提供してくれると思っております。

 例えば、平成二十九年の清酒の輸出数量、これは前年比で一九%増で、過去最高というふうに聞いております。私の地元、京都北部なんですけれども、日本酒の酒造業が盛んで、おいしい酒もたくさんあります。今回の協定によりまして、カナダ、ベトナムといった国が日本酒の関税撤廃が行われるというふうになっておりますので、輸出増も期待されるということであります。

 この日本酒の酒造業のみならず、海外展開を目指す中堅・中小企業に対して、具体的に輸出拡大のためにどういう支援をしていくのか、伺いたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11のメリットが、これまで海外展開に取り組んでいない中小企業等を含め、全国津々浦々に行き渡るよう取り組んでいくことが必要と考えておりまして、経済産業省としましては、二つのアプローチで対策を講じていくということとしております。

 第一に、TPP11を新たな市場開拓のチャンスへと変えるため、TPP11を始めとする経済連携協定のメリットや利活用のための支援策について説明会を実施しており、中堅・中小企業に対しまして、引き続き丁寧な情報提供を行っていくということにしております。

 第二に、二〇一六年二月に、中堅・中小企業の海外展開を支援するため、ジェトロが事務局となり、中小企業基盤整備機構、商工会議所、商工会、地域金融機関、地方自治体等の支援機関を結集し、新輸出大国コンソーシアムを設立したところでございます。

 これによりまして、市場情報の収集、計画策定から販路開拓に至るまで、さまざまな段階にある企業をきめ細かく支援しておるところでございまして、これまでも七千社以上の企業が登録しており、成功事例も出てきているところでございます。

 また、先月、経済連携協定の進展を踏まえ、第四回の新輸出大国コンソーシアム会議を開催し、支援強化の方向性について議論を行ったところでございます。その中で、重点支援対象企業の拡大、伴走型コンサルティングサポートの強化、越境Eコマースの活用促進、地域レベルでの支援策の広報強化など、幅広い観点での支援策の強化を打ち出したところでございます。

 引き続き、中堅・中小企業の海外展開支援に積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

井上(一)委員 積極的によろしくお願いします。

 どうもありがとうございました。

中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時二十八分散会


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