衆議院

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第12号 平成30年5月18日(金曜日)

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平成三十年五月十八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中山 泰秀君

   理事 小田原 潔君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 鈴木 貴子君

   理事 山口  壯君 理事 末松 義規君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      石崎  徹君    小渕 優子君

      黄川田仁志君    熊田 裕通君

      高村 正大君    繁本  護君

      杉田 水脈君    鈴木 隼人君

      辻  清人君    渡海紀三朗君

      中曽根康隆君    堀井  学君

      三浦  靖君    山田 賢司君

      和田 義明君    阿久津幸彦君

      篠原  豪君    山川百合子君

      関 健一郎君    岡本 三成君

      岡田 克也君    穀田 恵二君

      丸山 穂高君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   外務副大臣        中根 一幸君

   外務大臣政務官      岡本 三成君

   外務大臣政務官      堀井  学君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  三田 紀之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 松浦 博司君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山野内勘二君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         天羽  隆君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林 一久君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     三浦  靖君

  佐々木 紀君     和田 義明君

  辻  清人君     繁本  護君

同日

 辞任         補欠選任

  繁本  護君     辻  清人君

  三浦  靖君     小渕 優子君

  和田 義明君     石崎  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  徹君     佐々木 紀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官松浦博司君、経済局長山野内勘二君、内閣官房内閣審議官三田紀之君、農林水産省大臣官房総括審議官天羽隆君及び経済産業省大臣官房審議官小林一久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中曽根康隆君。

中曽根委員 皆さん、おはようございます。衆議院議員の、自由民主党、中曽根康隆でございます。

 本日は、初めての外務委員会での質問となりますけれども、貴重な機会をいただきまして、大変ありがとうございます。

 世界情勢が非常に速いスピードで変化をしている中で、外交の重要性というのはますます増していると考えております。表舞台でも、水面下においても非常に難しいかじ取りが求められている中で、一歩間違えれば日本の国運すら左右するような、非常に緊迫した状況であると考えております。

 その中で、日本の顔として河野太郎外務大臣が精力的に活動していただいていること、心から敬意を表する次第でございます。

 本日はTPPの質疑ということですけれども、一点、その前に、北朝鮮に関してお伺いをしたいと思います。

 北朝鮮の金第一外務次官が、今月の十六日にメディアを通して、アメリカ政権が我々に一方的な核放棄だけを強要しようとするなら首脳会談に応じるか再考するしかないと発言をいたしました。六月十二日に予定をされております米朝首脳会談を牽制するようなこの発言について、トランプ大統領は、様子を見るという発言をされています。

 この北朝鮮の発言に関して、大臣のお考えを教えていただきたいと思います。

堀井(学)大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 北朝鮮の言動の一つ一つについてお答えすることは差し控えたいと思います。

 我が国としては、北朝鮮の動向について、重大な関心を持って平素から情報収集、分析に努めているところでございます。引き続き注視をしていきたいと考えております。

 いずれにせよ、北朝鮮が全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全な、検証可能な、かつ不可逆的な方法での廃棄に向けた具体的な行動をとることが必要と考えております。

 また、国際社会による圧力の成果として、北朝鮮側から対話を求めている中、この機運を拉致問題の解決にもつなげていく必要があると考えております。

 こうした観点から、来る米朝首脳会談が、核、ミサイル、そして何よりも重要な拉致問題が前進する機会となることを強く期待をしております。

 その準備において日本側の考えをしっかりと米国に伝えながら、米国とともに準備を進めていきたいと考えております。

 以上であります。

中曽根委員 ありがとうございます。

 いずれにしても、日米韓がしっかりと足並みをそろえていくことが大事だと思いますし、日本独特の問題、拉致であったり、短距離ミサイルの脅威であったり、こういったところを考えますと、やはり日本は自国のことは自国で守るという強い意識を持った上でかじ取りに当たっていただきたいと思います。

 それでは、TPPの質問に入らせていただきます。

 日本は、戦後、やはり、外交がどうしても受け身の外交と言われてくることが多くあったと認識をしております。アメリカであったり、旧ソ連、前のロシア、そして中国、そういったところが発信する波にどう対応するか、どう対処するか、そういった側面が多く見られたと思います。

 今、この時期だからこそ、日本がしっかりとみずからの波をつくり世界に発信していく、そういった攻めの外交が必要な時期だと思っておりますけれども、今回のTPP11は、まさに日本がリーダーシップを発揮して、世界を巻き込みながら中心になって主導した、これはすばらしいことだと私は思っております。

 アメリカが離脱して一年、TPP11がことしの三月八日にチリのサンティアゴにおいて署名をされました。保護主義の風潮が世界で出てきている中で、自由貿易を推進する観点からいうと非常に有意義なものであると思いますし、今申し上げたとおり、この複雑な交渉を日本が主導してまとめたということは大変すばらしいことだと思っております。

 ここで御質問いたしますけれども、この合意に至るまでに日本が主導して進めることができた、その要因は何でしょうか。お願いいたします。

河野国務大臣 昨年の一月にアメリカがTPPの離脱を発表して、一時モメンタムが失われたということがあったと思いますが、昨年の七月、箱根で会合を開き、日本が議論を主導することになりまして、わずか半年で署名に至るということになりました。

 世界的にさまざま保護主義的な動きが広がっている中で、このアジア太平洋地域で自由で公正な経済ルールをつくろうという我が国のこの一貫した取組、これが自由貿易を支持するそれぞれの国々から賛同を得た、そしてそれがこのTPP11協定が早期に署名につながることになったのではないかと考えております。

 日本は引き続き自由貿易の旗頭として、日・EUのEPAもございますし、日中韓FTA、あるいはRCEPといったものもございますので、積極的にそうした場で、自由貿易を推進するという立場から交渉のリーダーシップをとっていきたいというふうに思っております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 今国会の外交演説の中でも、河野太郎大臣が、TPP11の早期発効のために最大限の努力を傾注すると述べられておりました。

 そこで、次の質問ですが、このTPP参加国の他国の国内の手続の状況を教えていただきたい。また、この早期発効という明確な目標に向けて、他の参加国に対して日本がどういった働きかけをどういったタイミングでしていくのか、教えていただきたいと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 三月八日のチリでの署名式の際にも、多くの国から、年内の締結に向けて前向きな発言があったところでございます。

 TPP11協定の早期発効に向けて、現在、各国において国内手続が進められております。具体的に申し上げますと、メキシコにおいては、先月、十一カ国の先陣を切って国内手続を終えたところでございます。また、オーストラリアそれからニュージーランドでは既に議会での審議が始まっておるところでございまして、各国で手続が順調に進んでいるというふうに認識しているところでございます。

 我が国としても、ぜひこの国会で御承認をいただき、早期発効に向けた機運を高めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

 また、こうしたTPP11協定の意義に共鳴したさまざまな国あるいは地域がTPPへの参加に関心を示しているということも歓迎したいと思っております。発効後のTPPの拡大も視野に入れて、さまざまな機会を捉え、そうした関心国・地域に対して必要な情報提供を行い、TPPの輪を地域や世界に広げていくというふうに考えているところでございます。

中曽根委員 ありがとうございます。

 そんな中で、アメリカが離脱したことによって、人口で見てもGDPで見ても、今回の枠組みは大分規模が縮小したものとなりました。

 TPPからの永久離脱とおっしゃっていたトランプ大統領が、ことしの一月に一転して、以前よりも合意した条件がより大幅によくなる場合においてはTPP復帰の可能性に言及をいたしました。

 しかし、ガラス細工という総理の発言にもありますように、アメリカが望む再交渉というのは各国の非常に複雑な利害関係を調整しなくてはいけないですし、また、トランプ大統領が十一カ国に対して強い要求をしてくるというのは、NAFTAの再交渉を見ても明らかであります。

 そういった中で、アメリカのTPP復帰に対して日本としてはどのように動いていくべきか、そして、再交渉に関してのスタンスはいかがなものかを教えていただきたいと思います。

堀井(学)大臣政務官 米国にとって、TPPは経済的、戦略的重要性を有しており、特に、最もグローバル化や技術革新が進んでいるのが米国であることから、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであると考えております。

 実際、米国では、議員や農業団体などの間でTPP復帰を求める声が上がってきております。自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議や、日米経済対話といった政府間の対話の場に加えて、米国の企業関係者や有識者などを含め、幅広くこうしたメッセージを訴えていきたいと考えております。

 また、TPPの再交渉といった将来の協議などについて予断を持ってお答えすることは困難でありますが、いずれにしても我が国はTPPが最善と考えており、いかなる国とも国益に反するような合意を行うつもりはございません。

 その上で、TPPは、二十一世紀型の自由で公正な新しいルールをつくり上げていくものであり、今後の通商交渉のモデルとなっていくものであると考えております。アジア太平洋地域の現状を踏まえた上で、地域のルールづくりを日米で主導していきたいと考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 個人的には、アメリカ復帰に関しては、やはりしっかり外堀を埋めていくと同時に直接の対話をしていくということが大事だと思います。

 外堀を埋めるというのは、参加を希望している国々をしっかりと早期に巻き込んで、TPPをより広域で連携をとれたものにしていく、また、EU・EPAだったりRCEPというものをしっかりとまた日本が主導してその枠組みをつくっていく、そういったことでアメリカに危機感を持たせる、これが外堀を埋めていくということでありまして、また、直接対話という意味では、昨日の内閣委員会でも総理の答弁でありましたけれども、アメリカにとって非常に大きなメリットであるということをしっかりと訴え続けていくということが大事だと思っております。

 この二つを同時進行していくという前提として、私個人としては、まずTPPを発効させてからアメリカを取り込んでいく努力を継続してやっていくということが現実かなと考えておりますけれども、政府としてはこの締結のタイミングに関してはいかがお考えか、教えてください。

堀井(学)大臣政務官 我が国は、二十一世紀型の新たなルールづくりを日本がリードし、アジア太平洋におけるハイスタンダードな貿易・投資の枠組みの早期成立を図る観点から、TPP11協定の早期発効に全力を挙げていく考えであります。

 三月八日、チリでの署名式以降、メキシコが議会の承認を得るなど、参加各国においても国内手続が加速をしております。日本がリーダーシップをとってまいりました早期発効に向けた機運を高めていくためにも、現在御審議いただいているTPP11協定及び関連国内法案の早期承認、成立を目指したいと考えております。

 このように、まずTPP11の早期発効に全力で取り組むこと、その上で将来的な米国のTPP復帰が望ましいことについて、参加十一カ国は認識を共有しております。

 また、米国に対しては、引き続き、TPPの持つ経済的、戦略的重要性、特に、最もグローバル化や技術革新が進んでいるのが米国であることから、TPPが米国の経済や雇用にとってもプラスになるものであることをしっかりと訴えてまいりたいと思います。

 また、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議や日米経済対話の場を通じて、改めて米国に伝えてまいりたいと思います。

中曽根委員 ありがとうございます。

 アメリカに対して、戻ってきてくださいというスタンスではなくて、戻りたくなるような、戻らなきゃならないと思わせるような、そういった枠組みをしっかりとつくっていただきたいと思います。

 続きまして、凍結項目の中にあるISDSについて、一点お伺いをしたいと思います。

 このISDSについての各地域のスタンスというのも、よく見てみるとばらばらでありまして、EUなんかは、第三者機関を置くこと自体には異論はないけれども、やはり違った形の、もっと公平性の高いものを設置するというような発言もございますし、また、途上国においては、先進国の企業からの提訴リスクというものをやはり懸念して、やや後ろ向きなスタンスであると考えられます。アメリカに関しても、オバマ政権のときのようなISDSありきということではなくて、トランプ政権になってから、自分たちの都合のいいように使うといったら変ですけれども、そういったようなスタンスに変更が見られてまいります。

 そういった中で、日本のこのISDSに関するスタンスをお教えください。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11協定を含む投資関連協定の中のISDS、投資家と国との間の紛争解決条項でございますけれども、これは、投資受入れ国の司法手続に加えて、中立的な国際投資仲裁に紛争を付託できる選択肢を投資家に与えるものでございます。

 これによって、投資受入れ国において日本企業がビジネスを行う上での予見可能性や法的安定性を高めることから、海外投資を行う日本企業を保護する上で極めて有効であると考えておりまして、日本の経済界もこれを重視しているというふうに承知しているところでございます。

 我が国としては、こうしたISDSの意義を踏まえて、投資関連協定の交渉において、引き続きISDS条項が盛り込まれるように取り組んでいく考えでございます。

中曽根委員 ありがとうございます。

 日本としても現行のISDSありきというわけではなくて、日本として、また海外に進出する日本企業にとってプラスになるような、そういった枠組みを柔軟性を持って考えて進めていただきたいと思います。

 TPP11の発効によって、日本のGDP、プラス七・八兆円、パーセントにして一・五%の上昇、また、民間消費がプラス四・七兆円、雇用が四十六万人ふえるという試算が出ております。

 この一連の効果が出るまでにどれぐらいの期間がかかると想定されているのかをお伺いしたいと同時に、この結果が出るまで一定のタイムラグが生じると思いますけれども、その間に、特に農業分野等において、少なからずマイナスな、ダメージというものが考えられますけれども、それに対する対策を教えていただきたいと思います。

三田政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP11の効果の発現の時期でございますけれども、これは一概には申し上げられませんが、例えば、日本の工業品輸出額の約九割の関税は、即時、すなわち発効のタイミングで撤廃されるなど、発効直後から大きな経済効果が見込まれる、このように考えております。

 政府といたしましては、TPP11協定の発効を視野に、農業者や中小・小規模事業者の皆様の海外販路開拓や体質改善、商品開発などを支援し、TPP11の経済効果ができる限り早期に発現されるよう全力を挙げてまいりたい、このように考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 農業に関連して質問させていただきますけれども、私の地元群馬県前橋市は、とんとんの町と言われておりまして、豚が非常に有名であります。養豚も盛んでありまして、豚肉の産出額は全国でトップクラスでありまして、ブランド銘柄もたくさんございます。

 この豚肉に関しても、従来の関税率でいうと、キロ当たり四百八十二円であったものが、今回の11の枠組みの中で、十年目以降にキロ五十円と、安価な値段で豚肉が入ってくるということになります。

 豚肉に限らず、ほかの農産物等、安い値段で日本に入ってくることに対して、地元の農家の皆さんも懸念を示しているところでございます。

 再度お伺いしますが、このTPP11が農業関係者に対して不利益につながらないかどうか、お願いいたします。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 TPP交渉におきましては、農林水産分野について、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかり確保し、関税割当てやセーフガードなどの措置を獲得したところでございます。

 先ほど先生お話のありました豚肉につきましても、差額関税制度及び分岐点価格という我が国豚肉生産にとって重要な仕組みを確保したということでございます。

 その上で、国内対策についてでございます。

 平成二十七年十月のTPP協定の大筋合意により、我が国農林水産業は新たな国際環境に入ったと考えております。また、昨年十一月にはTPP11協定の大筋合意にも至ったということでございまして、生産者が安心して再生産に取り組むことができるよう、総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて万全の対策を講ずることとしてございます。

 具体的にはということでございますが、まずは体質強化策でございます。

 既に平成二十七年度の補正予算以降、対策を進めてきておりますが、一つには、産地の競争力を強化するための産地パワーアップ事業、二つに、畜産、酪農の収益力強化のための畜産クラスター事業、また、農林水産物の輸出額を一兆円にする目標がございますが、この目標達成に向けた輸出拡大対策などの施策を講じているところでございます。

 また、協定が発効した後の経営安定対策といたしましては、例えば、お米につきましては国別枠の輸入量に相当する量の国産米を政府備蓄米として買い入れる、牛や豚につきましてはいわゆるマルキンの法制化と補填率の引上げ、お砂糖につきましては糖価調整法に基づきまして加糖調製品を調整金の対象に追加するといった措置を講ずることとしておるところでございます。

 さらに、生産者の努力では対応できない我が国農業の構造的問題の解決を図るため、農業競争力強化プログラムに基づきまして、生産資材価格の引下げ、農産物の流通・加工構造の改革にも取り組んでいるということでございまして、引き続き、農林漁業者の方々の不安や懸念にもしっかり向き合って十分な対策を講じてまいりたいというふうに考えております。

中曽根委員 ありがとうございます。

 今おっしゃっていただいたその十分な対策、これは言うのは簡単ですけれども、やはりしっかりと農家の皆様が実感する、また使えるものでなくてはいけない、そうでなくては意味がないと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 最後になりますが、今、アメリカが保護主義に走り、また中国が一帯一路という、地域を包括したルールを主導しようとしている中で、日本の存在感、プレゼンスというのはますます大事になってきていると思っております。

 東南アジアを含めた他国に対して日本の良識あるリーダーシップというものをしっかりと見せるすばらしい機会だと考えておりますし、これまでの成果を自信に、堂々とこれからも世界の中で日本のプレゼンスを世界に示していただきながら、政府としては早期のTPP11の発効に向けて全力で取り組んでいただきたいと思います。

 以上で私の質疑は終わります。ありがとうございました。

中山委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 おはようございます。公明党の遠山清彦でございます。

 きょうはTPPの協定の質疑でございますが、久しぶりの質疑ですので、最初に、外務大臣に二、三、日中韓サミット、朝鮮半島情勢等についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 五月九日に開催されました第七回日中韓サミット、これは約二年半ぶりということでございますが、大変大きな成果があったというふうに高く評価をさせていただいております。中国の首相の来日は七年ぶりということでございます。また、韓国大統領の訪日も六年五カ月ぶりということでございました。

 私としては、やはり、今いろいろなことが急速に動いている中で、日中韓のサミットの開催の頻度、これをもっと上げていかなければならないと思いますし、また、日中及び日韓の間の首脳レベルの交流も、シャトル外交という言葉も今回のサミットの中で発言をされたと承知をしておりますが、いずれにいたしましても、この日中韓サミットをもっと頻度を上げる、そして日中また日韓の首脳レベルの交流もさらに定例化を目指していくべきだと考えておりますが、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。

河野国務大臣 今回の日中韓サミットは、二年半ぶりの開催ということになりました。日中韓協力の新たなスタートになったのではないかと思いますが、首脳の間でも、この日中韓サミットの定期開催というものを再確認いたしました。

 また、日中首脳会談では、海空連絡メカニズムあるいは社会保障協定を始めとするさまざまな成果があったと思います。両国のこれからの協力を無限に広げていきたいというふうに思っているところでございます。

 今回、李克強総理から、安倍総理の年内訪中のお招きをいただきました。今後、両国首脳のハイレベルな往来を通じて、新しい日中関係を築いてまいりたいと思っております。

 また、日韓に関しましても、日韓両首脳によるシャトル外交を実施していくということを改めて確認をいたしました。引き続き、首脳レベルあるいは外相レベルでも緊密な意思疎通を行いながら、未来志向の日韓関係を築いてまいりたいと思います。

遠山委員 外務大臣、ぜひその方向でお願いをしたいと思います。

 私も、公明党の国際局長を、今、国際委員長ですが、約十年やっておりまして、特に中国と韓国は毎年欠かさず行かせていただいております。時々でいろいろな難しい事件とか事故とか懸案があるわけでありますが、やはり、直接、相手の国に行って、相手の顔を見て話をすることでいろいろなことが動いていく、いい方向にですね、ということを私も議員外交の中で実感をさせていただいておりますので、ぜひ政府レベルでも、とにかく定期的に会うという方向で御調整をいただければと思います。

 今回のサミットの成果の大きな一つは、日中韓の首脳で朝鮮半島の完全非核化で一致をしたということだと認識をいたしております。

 ここで大臣に確認の御答弁をいただきたいのですが、この朝鮮半島の完全非核化ということでありますけれども、これは、日本側としては、核兵器の完全廃棄、全ての核実験場の閉鎖にとどまらず、核以外の大量破壊兵器の廃棄、またその運搬手段であるミサイルの廃棄ということも含むという理解でよろしいかどうか、御答弁をいただきたいと思います。

河野国務大臣 今回の日中韓サミットでは、北朝鮮問題につきまして、核兵器を含む全ての大量破壊兵器及びあらゆる射程の弾道ミサイルの完全、不可逆的かつ検証可能な方法での廃棄に向け、安保理決議に従って三カ国で協力を進めることを確認しております。

遠山委員 ありがとうございます。

 日朝、日本と北朝鮮ですね、この国交正常化の話題も、今メディアでも大分頻繁に取り上げられるようになりました。日本政府としては、拉致問題の早期解決、今お話しになった核、ミサイルの廃棄の問題に加えまして、拉致問題の早期解決というのを日朝平壌宣言に基づく国交正常化交渉の大前提に位置づけているわけでございます。

 これは、大臣もいろいろなところで聞かれてお答えになっているわけでありますが、拉致問題の早期解決といったときに、具体的にどういう内容を指すのか。この拉致問題の早期解決というのが、時折報道されております日朝首脳会談の開催の条件だとも言われているわけでございますけれども、これは外交上相手にカードを全部見せられないという考慮もあろうかと思いますが、大臣がこの場でお答えできる範囲で、拉致問題の早期解決と政府がおっしゃった場合のその中身についてお話しいただければと思います。

河野国務大臣 政府といたしましては、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国、拉致に関する真相究明並びに拉致実行犯の引渡しのために全力を尽くす方針でございます。

遠山委員 大臣に端的に伺いますが、総理よりも先に、外務大臣として北朝鮮と直接交渉する用意はございますか。

河野国務大臣 まず、六月十二日の米朝首脳会談の結果というものをしっかり見きわめたいと思います。そこから先は、まあいろいろなやり方があるだろうと思いますので、何かというやり方を決め打ちするのではなく、まず米朝首脳会談の結果を見ながら、我が国として外交方針をしっかりつくってまいりたいと思います。

遠山委員 ありがとうございます。

 答えにくい質問だったと思いますが、個人的には、河野外務大臣の行動力を大変高く評価をしている者の一人として、ぜひ動くべきときはばっと動くということでよろしくお願いをいたします。

 さて、TPP協定について幾つか質問をさせていただきたいと思います。

 まず、これは野党の先生方からもこれまでの審議でございましたけれども、今回のTPP11、非常に短期間で、外務省を始め日本政府が強いリーダーシップを発揮してこの協定の合意をまとめ上げたことにつきまして、私も最大限の敬意をこの場をかりて表したいと思っております。

 今後の最大の課題といたしましては、けさの自民党の中曽根委員からも同じ御指摘があったと思いますけれども、トランプ政権になって、TPPを抜けてしまった米国の復帰の問題だというふうに理解をいたしております。

 TPP担当の茂木大臣は、大筋合意をした段階で、米国の復帰の土台ができた、こう発言をされているわけでございますが、これは外務大臣も同じ認識だと思っております。ただ、トランプ大統領は、時折独特な大統領の表現で復帰を示唆しつつも、アメリカ政府全体の発言を見ておりますと、日米FTAのような二国間交渉の枠組みで進めることも断念はしていないというふうに見えているわけでございます。

 もう既にこの委員会で何度か大臣お答えになっているわけでございますが、米国を復帰させるための日本としての基本的な戦略について解説をいただければと思います。

河野国務大臣 TPP11を早期発効させることが米国のTPPへの復帰を促すことになるというのが、十一カ国の共通の期待でございます。

 アメリカに対しましては、引き続き、TPPの持つ経済的な重要性だけでなく、戦略的な重要性、そして、最もアメリカ経済がこの中でグローバル化、技術革新というものが進んでおりますから、TPPがアメリカの経済、雇用にプラスをもたらすんだということを粘り強く説得をし、理解をしていただいてTPPの復帰を促してまいりたいと思います。

 我が国といたしましては、米国にとってTPPに復帰をするということがアメリカの経済にとって最もプラスになると考えておりますので、しっかりとアメリカと話合いをしてまいりたいと思います。

遠山委員 ぜひ米国の復帰を、TPPへの復帰を確保できるように、日本政府としてあらゆる努力をしていただきたいと私からも申し上げたいと思います。

 さて、ちょっと視点を変えまして、TPPと中国、韓国との関係について一問御質問させていただきたいと思います。

 先ほど言及させていただきました日中韓サミットにおきましては、質の高いRCEPの早期妥結、及び、この三カ国の間におきましては日中韓FTAの交渉の加速化ということについて連携をしていくことで、三カ国の首脳が一致をしたと理解をしております。

 TPPにつきましては、韓国はこの参加に前向きなわけでございまして、これは報道されておりますけれども、韓国政府としてTPPに入るかどうか結論を年内に出すということが表明をされているわけでございます。一方で、中国につきましては、自由貿易の推進ということでは一致をしているわけでありますが、中国は、一帯一路の構想、またAIIBを主導するという立場でございまして、いわば独自の路線をとってきているわけでございます。

 そこで、外務大臣にこれもお伺いをしたいと思いますが、まず、日本政府として、韓国がTPPに参加を前向きに検討しているということをどう捉えているのか、また、中国については、アジア太平洋の大きな貿易の公正なルールを定めた画期的な枠組みであるTPPに中国も入った方がいいよと促す立場なのか、それとも、ブラントに申し上げて、そのままほっておくのか。このTPPとの関係で、韓国、中国に対してどういう立場を日本政府として現在とっているのか、あるいはこれからとっていこうとされているのか、御見解をお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 今、東アジア地域の成長というのが世界経済を引っ張ろうとしているんだろうと思います。この東アジアの地域における貿易の自由化あるいは効率的なサプライチェーンを構築していくということは、日本の経済発展に不可欠な要素だと思っております。

 そういう観点から、日本といたしましては、TPPなどの多国間の経済連携協定あるいは二国間の経済連携協定といったものを重層的に張りめぐらせていくというのが我が国の経済戦略でございまして、こうしたことを積極的に推進をしていきたいというふうに思っております。

 その中で、東アジアの中で、大変経済的にも政治的にも大きな地位を占め、なおかつ日本と経済連携協定を締結していないこの中国、韓国とのそうした連携を積極的に進めるというのは、これは我が国にとって非常に重要なことだというふうに思っております。

 一般論として申し上げれば、中国、韓国がTPPに入るというような可能性があれば、日本としては、TPP参加への関心を歓迎し、情報提供を積極的にやってまいりたいというふうに思っております。

 まずは、このTPP11の早期発効に向けて全力を尽くすわけでございますが、発効後、このTPP11を拡大していきたいというふうに思っておりまして、中国そして韓国がこのTPPの求める高い水準を満たす用意があるというならば、日本といたしましては、その参加への関心を歓迎し、しっかりと情報提供をやってまいりたいというふうに思っております。

遠山委員 河野大臣から、かなり明確に、韓国はある意味当然だと思いますが、韓国のみならず、中国も将来的にTPPに入るという意向があれば、日本政府として歓迎をして情報提供していきたいというお話で、私も端的に外務大臣と同じ考え方をとっておりまして、これはやはり、エクスクルーシブじゃなくてインクルーシブにアジアの諸国はふやしていくべきだと思いますので、そういった方向で御努力をいただければと思います。

 続きまして、二〇〇六年のAPEC首脳会議で提唱をされたアジア太平洋地域自由貿易構想、いわゆるFTAAPがございます。

 実は、この今審議をしております、前の12のときからそうですが、TPP協定の前文には、このTPPというのはFTAAPの基礎を創設すると明記をされているわけでございます。

 このFTAAPについて、外務省の基本的なスタンスをお伺いしたいと思います。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員からございましたFTAAP、フリー・トレード・エリア・オブ・アジア・パシフィックの略で、アジア太平洋自由貿易圏というふうに呼んでおりますが、この構想は、御指摘のとおり、二〇〇六年のベトナムでのAPECのときに提唱されました。

 その後、二〇一〇年の横浜でのAPECの会合の際にアジア太平洋自由貿易圏への道筋というものを採択し、さらに、二〇一六年、ペルーのAPECでFTAAPに関するリマ宣言を採択している、こういう流れがございます。

 こういう中で、我が国といたしましては、自由貿易の旗手として、アジア太平洋地域において、こういった自由貿易推進の流れを確固たるものとしていくという考えでございまして、昨年十一月のAPECの首脳会議及び閣僚会議において、安倍総理及び河野大臣からそのような発言をさせていただいたところでございます。

 我が国の主導で今般TPP11が合意に至り署名も行われたという中で、これはFTAAP実現に向けた大きな第一歩であるというふうに考えているところでございます。

 同様に、FTAAP実現への道筋という意味では、もう一つ、RCEPもございます。質の高い協定を早期に妥結できるよう精力的に交渉を進めているところでございまして、APECにおいても、我が国は、こういった取組を通じて、FTAAPのための能力構築の取組も実施しているというところでございます。

 我が国といたしましては、質の高いFTAAPの実現のため、APECのメンバーと引き続き議論を深めていきたいというふうに考えているところでございます。

遠山委員 もうこれは周知のとおり、APECのメンバー国というのは、今回のTPP11を相当上回るグループになっているわけでございまして、ぜひ、このFTAAP、TPPがFTAAPの基礎であるということでありますから、TPPを土台としてこのFTAAPに進んでいく、その過程の中で必然的に米国も入れていかなければいけないということでありますので、最終的には、全てを包括した、同じ文脈の中でこの自由貿易の権益というのを増大させていくということが必要だと思っております。

 ところで、関連で事務方に細かいことを伺いますが、APECに未加入のコロンビア、これは、私も二年前に山口代表と初めて訪問させていただきまして若干びっくりしたのですが、コロンビアは、サントス大統領のもとに内戦を終わらせて和平を実現して、人口規模も大きいですし、経済的な潜在力も強い国でありますが、APECには未加入ということでございます。

 他方で、APECに未加入でありながらTPPには参加したい、こういう意欲を表明を公式にしているようでありますが、こういうコロンビアの国を日本としてはどういうふうに扱うのか。私は、先にAPECに入ってからTPPを考えてくださいと言うのか、しかし、別にAPECのメンバーじゃなくてもTPPに入ることは法律上阻害をされていないと考えればそれを受け入れるのか、この辺について、ちょっと確認の質問をさせていただきます。

山野内政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のTPP11協定の第五条でございますけれども、ここには、「国又は独立の関税地域は、この協定の効力発生の日の後、締約国と当該国又は独立の関税地域との間で合意する条件に従ってこの協定に加入することができる。」というふうに記しているところでございます。したがいまして、TPP11協定の新規加入国・地域の扱いにつきましては、この第五条にありますとおり、TPP11協定の締約国と新規加入国・地域との間で合意する条件に従って加入するということでございますので、APECに加盟していない国もTPP参加は可能であるというふうに考えているところでございます。

 新たな国、地域の加盟を通じてTPPのハイスタンダードでバランスのとれた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていくことが、TPP参加国共通の思いでございます。その意味で、コロンビアを含むさまざまな国、地域がTPPへの参加に関心を示していることを歓迎したいというふうに考えております。

遠山委員 よくわかりました。

 次に、TPPの日本企業へのメリットとして、外務大臣の御答弁にもたびたび出てまいりますが、日本の中小企業の海外進出の促進効果というものがよく指摘をされているわけでございます。すなわち、TPP協定によりまして、グローバルなバリューチェーン、サプライチェーンが形成をされて、そしてそのチェーンの中に日本の中小企業がより積極的に参画できる、そういう期待、効果があるということであります。

 しかし、これは一方で国際競争の世界の話でありますので、例えば人件費などが日本よりも安いTPPの締約国に生産拠点が集中をして、結果として、日本の産業の空洞化あるいは雇用喪失が大きくなってしまうのではないかという批判的な指摘もあるわけでございます。

 そこで、日本企業が、TPPのメリットとしてよく指摘をされている、グローバルな、これから更に強化されて形成されていくサプライチェーン、バリューチェーンの中に日本の中小企業が入っていくことを後押しするために、外務省及びJICAとしてどういう役割を果たしていこうとされているのか、御答弁をいただきたいと思います。

堀井(学)大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 新興国を始めとする海外の経済成長の勢いを取り込み、日本経済の着実な成長を後押しする観点から、政府による日本企業の海外展開支援は極めて重要と考えております。

 外務省としても、本省、在外公館が一体となって、他省庁、機関と連携して、オール・ジャパンで、さまざまな日本企業支援に積極的に取り組んでいるところでございます。

 具体的には、世界で二百二十三に上る在外公館のネットワークを生かして、一つ目といたしまして、現地経済情勢のブリーフなどの情報提供、二つ目といたしまして、在外公館と企業が一体となった外国政府当局への働きかけ、三つ目といたしまして、公館を活用した日本産品のプロモーション活動、四つ目といたしまして、日本人弁護士の協力を得つつ、トラブルに巻き込まれた日本企業への法律相談など、多様なメニューで支援を行ってきているところでございます。

 また、JICAにおいても、ODAを活用した、中小企業による途上国での調査の支援などを通じ、ODAによる中小企業等の海外展開支援を積極的に推進しているところであります。

 TPP11協定の早期発効により、日本企業の海外展開が一層活発化することを見据え、外務省として、今後も現地情勢やニーズに応じた柔軟なサポートを積極的に行ってまいりたいと考えております。

 また、御懸念のことにつきまして、国内産業の空洞化や雇用の喪失への懸念については、昨年十一月に取りまとめました総合的なTPP等関連政策大綱に基づいて、政府として、国内産業の競争力強化や対内直接投資の促進に向けた施策を講じてまいる所存でございます。

 以上であります。

遠山委員 TPPのメリット、この点がよく言われているわけでございますが、私は地元が九州、沖縄ですけれども、九州、沖縄で中小企業の現場を回っておりますと、まだまだグローバル展開というか海外進出をしたいんだけれどもできないというお話も頻繁に伺っているわけでございまして、ぜひ外務省、JICAそして関連の機関に総力を挙げていただきたいと思います。

 これで持ち時間的に最後の質問になろうかと思いますが、政府を挙げてということで申し上げますと、既に政府におきましては、日本企業の輸出促進によるグローバル展開を後押しするための、新輸出大国コンソーシアムという枠組みが立ち上げられているわけでございます。約二年立ち上げられてから経過をしていると伺っていますが、その実績や成果というものをどう評価しているのか、お伺いをしたいと思います。これは経産省ですね。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、二〇一六年二月にジェトロが事務局となり、新輸出大国コンソーシアムを設立したところでございます。

 市場情報収集、計画策定から販路開拓に至るまで、さまざまな段階にある中堅・中小企業をきめ細かく支援しているところでございまして、これまで七千社以上の企業が登録しており、成功事例も出てきているなど、着実に成果を上げてきていると認識しております。

 今後、TPP11が実現される中、中堅・中小企業の海外展開支援におけるコンソーシアムの重要性は増していくというふうに考えておりまして、さらなる支援強化に取り組んでいく考えでございます。具体的には、重点支援対象企業の拡大、伴走型コンサルティングサポートの強化、越境Eコマースの活用促進、地域レベルでの支援策の広報強化などを進めていくこととしております。

 TPP11のメリットが全国津々浦々に行き渡るよう、引き続き中堅・中小企業の海外展開支援に積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

遠山委員 ぜひ、日本の中小企業が、このTPP協定締結後に数字の上で更に海外に進出できているという結果が出るように、外務省また経産省、関係機関、力を合わせて頑張っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

中山委員長 これにて本件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより討論に入ります。

 討論の申出がありますので、順次これを許します。山川百合子君。

山川委員 立憲民主党の山川百合子です。

 私は、立憲民主党・市民クラブを代表し、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件に対し、反対の立場から討論いたします。

 まず冒頭、この協定の必要な審議が全く尽くされていないことを指摘しておきます。

 各党の質疑でも、乳製品や牛肉セーフガードのTPP枠の問題、経済効果分析における労働力補填の問題、医薬品に関する知的財産の問題、国家主権にかかわるISDS条項への我が国の姿勢等々、まだまだ議論を深めるべき点が指摘され、政府にただすべき点は数多く残されています。

 このような状況で、たった三日間の質疑での採決、ましてや、本日の本会議への異常とも言える緊急上程は、到底認められるものではありません。

 その上で、本件に反対する理由を申し述べます。

 まず、TPPに関する政府のたび重なる方針転換、情報不開示、国民へのアカウンタビリティーの欠如もあり、TPPを推進する国民的コンセンサスはいまだ得られてはおりません。

 国民の間にTPPに根強い懸念と反対の声があるにもかかわらず、政府は国会審議の時間や回数を十分に確保したと主張していますが、国内対策が行われない場合の影響さえ示されないのですから、幾らノリ弁と称される黒塗りの資料が示されても、国民の皆さんが納得することは到底できません。

 さらに、TPP12と11の間で行われるべき調整に関して、米国が抜けた本協定では、乳製品の七万トンのTPP枠や牛肉のセーフガード発動数量のTPP枠について、当然行うべき見直しが行われておりません。

 政府は、米国のTPP復帰がなくなった時点で、本協定の見直し協定に基づいて協議を行うとしていますが、一旦この枠で利益を得た国々が枠の縮小に合意するとは考えがたく、米国から二国間交渉で新たな要求を突きつけられる可能性もあるのです。

 そもそも、米国は、日本を中心にまとめられたTPP11の条件を大前提として、日米FTAを迫る構えです。米国抜きのTPP交渉など意味がないと主張されていたのは、安倍総理御自身だったはずです。

 政府は、米国のTPP復帰を強く求める一方で、我が国の農業に与える影響を十分に想定していません。ISDS条項の凍結解除が復帰の条件とされるとき、我が国の皆保険制度の存続が危惧されます。

 訴訟大国米国抜きで、TPP11の範囲の中で聖域を守りました、TPP交渉参加前の衆参農林水産委員会決議を守りましたと説明することは、とても不誠実なことだと思います。

 以上が、本件に反対する主な理由です。

 改めて、本件の審議が全くの不十分であり、TPPに対する国民の十分な理解を得るには到底至っていないということを強く申し上げ、反対討論といたします。(拍手)

中山委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 国民民主党・無所属クラブの小熊慎司です。

 私は、会派を代表して、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定、いわゆるTPP11の反対討論を行います。

 まず最初に、今回、TPP11の審議時間は全く十分ではありませんでした。議論の進め方も、国会をまるで軽視する最たるものでありました。まだまだ審議をかけなければならない一方で与党議員の質疑が時間足らずで終わることにも、真摯な対応と言えないというふうに厳重に抗議をしたいというふうに思います。

 また、条約と関連法案は不可分のものにもかかわらず、本会議や委員会もばらばらで討論を行い、関連委員会との連合審査の機会も全く与えられないまま、たった数時間の議論を行っただけで質疑終局、採決となります。

 これまでの各国との交渉の経緯、日本の経済への影響など全くまともに情報も開示せず、議論を深めようにも深められない五里霧中の中での質疑をせざるを得ませんでした。これだけの議論では、TPP11がいかに日本の国益にかなうのか不明であり、政府の説明責任の放棄に厳重に抗議します。

 わずかな議論でも明白になったのは、TPP11は、TPP12よりも更に日本にとって得るものは少ないばかりか、TPP12の総GDPの六割を占めているアメリカが抜けたにもかかわらず、TPP11の締結を急ぐ余りに、例えばTPPワイドの乳製品の関税割当て枠など調整することなく不透明なままに放置されており、将来のさらなる農業分野のダメージにつながるおそれは払拭ができませんでした。

 一方で、日本が攻めていく分野である自動車の関税については、相も変わらず十五年後に初めて税率が下がり始めるという、不平等とも言える協定です。今回は、アメリカが抜けてしまい、その恩恵はほとんど期待はできません。

 そもそも、TPPを安倍総理は成長戦略のかなめと豪語し、二〇一六年十一月には、総理本人が、TPPは米国抜きでは意味がない、再交渉が不可能であるのと同様、根本的な利権のバランスが崩れてしまうと言ったのは総理本人です。こういった点についても全くの説明がなかったことが残念でなりません。

 この審議を通して、乏しい政府の情報をもってしても、守るものをどうやって守ったのか、攻めたものをどうやって攻めたのか、そういった傾向はTPP12からTPP11になって更にわからなくなったとしか思えません。

 政府は、今回のTPP11が日本の国益にかなうものであるという説明ができていませんし、そもそも二〇一二年の選挙のときに与党の皆さんが何を訴えてきたのか、そのことについて国民に真摯に向き合ってこなかった、そのツケが更に大きくなったと言わざるを得ません。

 まだ不透明な中のTPP11、この国益がどうなっていくのか、この不透明な中での採決にも強く抗議したいというふうに思います。

 つきましては、現段階でのこの採決について、また内容についても無責任であるということを申し上げ、そして環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定に対しての反対討論を終わります。(拍手)

中山委員長 次に、岡田克也君。

岡田委員 無所属の会の岡田克也です。

 私は、無所属の会を代表し、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について、反対の立場から討論を行います。

 反対理由の第一は、既に何度も述べられたように、国会審議が極めて不十分であることです。

 今回のTPP11の委員会審議は、わずか六時間。審議不十分と言われたTPP12と比較しても、その十分の一にすぎません。しかも、委員会で趣旨説明が行われたその日に審議入りし、たった一週間で本会議採決しようとしているのです。余りにも拙速、余りにも乱暴な委員会審議ではないですか。

 最も重要なメンバー国である米国が離脱し、経済効果もTPP12の六割にとどまるなど、TPP12と11は似て非なるものです。その意義、内容について、改めて十分な議論が必要であることは明らかです。

 第二に、TPP11はその内容も不十分です。

 例えば、投資家と国との間の紛争解決を定めたISDS条項は、TPP12においても最大の論点の一つでした。巨大なグローバル企業に有利に運用され、国家の主権を制限する結果になっているのではないかとの強い指摘がなされています。

 確かに、政府が言うように、ISDS条項は、海外でビジネスを行う日本企業の投資活動に資する制度であるという側面もあります。しかし、それは、企業側のプラス面だけを考えた一面的な見方です。日本政府がグローバル企業に訴えられるケースも当然想定されます。その際、我が国の裁判権が及ばないことを意味するわけであり、安易に考えるべきではありません。

 TPP11当事国の中でも、豪州やニュージーランドが懸念を表明し、今回、ISDS条項の一部が凍結されました。また、合意に至った日・EU・EPAにおいても、ISDS条項については、EUが異議を唱え、交渉が続いています。ISDS条項に懸念や異議を唱える主要な国々の主張に注意を払うとともに、有識者や専門家の意見を幅広く聞くなど、もっと慎重に検討すべきです。

 しかし、政府は、委員会審議における私の質問や問題提起に対し、手のうちをさらすことになるなどとして、まともに答弁すらしませんでした。あるいは、答弁できなかったというのが実情かもしれません。政府内で十分な議論、検討がなされていないからです。

 以上、今回のTPP11は、手続的にも内容的にも非常に問題が多いと言わざるを得ません。政府・与党の対応に強く抗議するとともに、もっと時間をかけて丁寧に本委員会で審議することを求め、私の反対討論といたします。(拍手)

中山委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 私は、日本共産党を代表して、包括的・先進的TPP協定、TPP11に断固反対の立場から討論を行います。

 私は、何よりまず、当委員会における質疑終局と採決に厳しく抗議するものであります。

 食の安全、国民の暮らしと生命、労働にかかわる問題、ISDS条項など、本協定が抱える問題について、審議は尽くされていません。引き続き徹底した審議が必要であること、まして採決は論外であることを強く主張するものであります。

 限られた委員会質疑を通じても、本協定が、日本政府が米国にTPPへ復帰する道筋を用意するものであるという重大な問題点が明らかとなりました。

 TPPはもともと、国境を越えてもうけを追求する多国籍企業を後押しする協定です。TPPの条文と譲許表などをそのまま組み込むものであり、関税・非関税措置の撤廃というTPPの本質はそのまま生きており、アメリカが復帰しなくても、アメリカの大企業が国境を越えてもうけを最優先に追求する活動を更に後押しするものにほかなりません。

 二〇一六年の特別委員会で大問題になった、国会決議に真っ向から反する状態なども何ら改善されておらず、認めることなど到底できません。

 四月の日米首脳会談で、日米の新たな経済協議の枠組みをつくることで合意したことは極めて重大です。

 新たな経済協議の枠組みが、米国第一を掲げるトランプ政権の身勝手な対日要求の受皿とされる、我が国の経済主権にとって深刻な危険があります。二国間協議は、米側が狙う日米FTAに一段と踏み込むものであり、米側は、USTRの外国貿易障壁報告書に基づいて強力な取引を進め、自動車にとどまらず、牛肉や米を含む農産物など、TPP以上の要求を突きつけてくることは明白であります。

 今求められているのは、各国の食料主権、経済主権を尊重した平等互恵の経済関係を発展させる道に進むことだということを強く指摘して、反対討論とします。(拍手)

中山委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより採決に入ります。

 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時二分散会


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