衆議院

メインへスキップ



第8号 平成31年4月17日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十一年四月十七日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 若宮 健嗣君

   理事 小野寺五典君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 武井 俊輔君

   理事 堀井  学君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      木村 弥生君    黄川田仁志君

      国光あやの君    高村 正大君

      佐々木 紀君    繁本  護君

      杉田 水脈君    鈴木 憲和君

      辻  清人君    中曽根康隆君

      福山  守君    山田 賢司君

      岡田 克也君    櫻井  周君

      山川百合子君    青山 大人君

      高木 陽介君    赤嶺 政賢君

      杉本 和巳君    玄葉光一郎君

      井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   外務副大臣        あべ 俊子君

   国土交通副大臣      牧野たかお君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   外務大臣政務官      辻  清人君

   外務大臣政務官      山田 賢司君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局長)        重田 雅史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 田中 勝也君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 齊藤  純君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            鈴木  哲君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    山上 信吾君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部審議官)            太田 愼吾君

   政府参考人

   (国土交通省海事局次長) 大坪新一郎君

   政府参考人

   (国土交通省航空局安全部長)           高野  滋君

   政府参考人

   (気象庁地球環境・海洋部長)           大林 正典君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 上田 康治君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局長)  中村 吉利君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  鈴木 隼人君     木村 弥生君

  中曽根康隆君     繁本  護君

  中山 泰秀君     福山  守君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 弥生君     鈴木 隼人君

  繁本  護君     中曽根康隆君

  福山  守君     国光あやの君

  赤嶺 政賢君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  国光あやの君     中山 泰秀君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件(条約第三号)

 二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第四号)

 二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件(条約第五号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

若宮委員長 これより会議を開きます。

 中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件、二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件及び二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官鈴木秀生君、大臣官房審議官岡野正敬君、大臣官房参事官長岡寛介君、大臣官房参事官安藤俊英君、大臣官房参事官齊藤純君、総合外交政策局長鈴木哲君、経済局長山上信吾君、内閣府総合海洋政策推進事務局長重田雅史君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、長官官房審議官田中勝也君、水産庁資源管理部審議官太田愼吾君、国土交通省海事局次長大坪新一郎君、航空局安全部長高野滋君、気象庁地球環境・海洋部長大林正典君、環境省大臣官房審議官上田康治君、防衛省地方協力局長中村吉利君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。杉田水脈君。

杉田委員 自由民主党の杉田水脈です。きょうはよろしくお願いいたします。

 中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定について質問をいたします。

 近年、北極海に対しては、北極海沿岸の国だけではなく、EU諸国や中国なども高い関心を示し、取組を活発化させています。一月の日ロ首脳会談においても議題になったと報道などで伺っております。

 日本にとって、北極海航路の利用や資源開発、そして安全保障上の観点からも非常に重要な課題かと認識しておりますが、政府の北極海をめぐる課題への取組を教えてください。

重田政府参考人 お答えします。

 我が国はアジアにおいて最も北極海に近く、その航路の利活用や資源開発など、経済的、商業的な機会を享受し得ることなどから、北極政策は極めて重要な政策課題と考えております。国際社会において我が国のプレゼンスを一層強化するよう努めていく必要があります。

 このため、昨年五月に閣議決定されました第三期海洋基本計画におきましては、北極政策の推進を主要施策として独立の項目と扱い、五年間の計画期間中において、まず、北極域に関する観測、研究体制の強化などの研究開発、次に、国際ルール形成への積極的な参画などの国際協力、そして、北極海航路の利活用や北極域の持続的な海洋経済振興の三つの分野を柱として取り組むこととしております。

杉田委員 ありがとうございます。

 先ほども申し上げたとおり、近年、北極海に対する関心が国際的に高まってきておりますが、特に中国は、昨年初めて北極白書を公表するなど、活動を活発化させています。

 この北極白書なんですけれども、氷上シルクロードとして北極政策と一帯一路構想を関連づけたもので、資源や航路だけではなくて、潜在的には軍事的な背景もあるのではないかという指摘があります。

 政府は中国のこの北極政策についてどのように認識しておられますか。

河野国務大臣 中国は、一九九〇年代半ばから、北極への関心、そして北極での調査というのを本格化しております。

 北極圏の各国との首脳外交というものを始め、また、国産の砕氷船の建造ということもやりました。そして、今委員おっしゃったように、昨年の一月でしたか、こうした北極政策についての白書を出すというようなことをやってまいりました。

 日本政府としては、こうした中国との取組についても意見交換をしながら、中国の政策の意図の透明性を高めるというようなことを働きかけをしてまいりましたし、今後も中国の政策あるいはその意図といったものをしっかりと注視してまいりたいと思っております。

杉田委員 ありがとうございます。大変力強い答弁を大臣からいただきました。

 今回の協定は遠く離れた北極海についてのものですが、日本の周辺水域においても二国間の漁業協定等が結ばれておりますが、中国、韓国、ロシア漁船などが日本の排他的経済水域で違法に操業するという事例が後を絶ちません。

 水産庁によると、平成三十年の外国漁船への取締り実績、これは公表されているんですが、それを見てみますと、立入検査が十四件、拿捕が六件、そして、日本のEEZ内で発見された外国漁船によるものと見られる違法設置漁具の押収件数が二十六件となっています。また、日本海の大和堆周辺水域において、外国漁船に対して延べ五千三百十五件の退去警告が行われています。立入検査数十四件のうち、これを国別に見ますと、韓国が九件、中国が三件、ロシアが二件となっています。

 この三国はいずれも本協定の署名国ですが、二国間の漁業協定すら守らない国に対してどのようにこの協定の遵守を促していくのでしょうか。

河野国務大臣 公海上の船舶は、原則として、その旗国が排他的な管轄権を有するということになっております。この協定に基づく保存管理措置などを通じて、一義的にはこの当該船舶の旗国が自国籍の船舶によるさまざまな規制されていない漁獲の防止などを行うことになっております。

 この協定では、それに加えて、締約国の会合においてこの協定の実施状況が検討されるということを定めておりまして、協定上の措置と一致しない締約国の対応については、こうした会合を通じてその国に対して必要な措置をとるように求めていくことになると思いますので、マルチの圧力というものがしっかり対応しない国にはかかってくるということになろうかと思います。

杉田委員 ありがとうございます。それぞれの国と力を合わせて圧力をかけていくという形になっていくものかと思います。

 なぜこのような質問をさせていただいたかといいますと、先ほど五千三百十五件の退去警告と言いましたが、これは立入検査十四件とか拿捕が六件とかと比べて極端に多い数字となっているんですね。

 私自身、中国ブロックの選出でもございまして、島根県隠岐の島の漁業関係者の方にお話を伺う機会がありましたが、警告して退去したところで、とっていた水産物をそのまま持ち去ってしまうために、地元で漁業を営んでいる方は大変困っているという声がたくさん寄せられております。

 例えば、自分の家の畑に他人が入ってきて野菜をとっているとなって、急いで警察を呼びに行きました、でも、警察の方が来てくれて、さっさと出ていきなさいと言うだけで、出ていってしまったら、自分の畑のものはとられたままなので、そういった被害という形になって、野菜は返ってこないわけですよね。

 本来、そこで漁業を営んでいる地元の方々の収穫になるはずだった水産資源が盗まれたままで、被害者である地元の漁業関係者の方々は泣き寝入りをするしかないという現状は私はおかしいとしか言いようがないと思うんですね。ただ単に、ここは違法だから出ていきなさいというふうな警告をするだけではなくて、なぜもっと立入検査とか拿捕の件数をふやせないのかというのが甚だ疑問でございます。

 お聞きしたいんですけれども、協定を結んでも守らない国に対しては何もできないんでしょうか。二国間協定に違反してそういう違反操業をしている者に対して、もっと何か実効的な対策とかを講じることはできないのでしょうか。お尋ねしたいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 韓国や中国との間では、漁業協定に基づきまして、これらの国の漁船について、我が国の相互入会水域では、我が国の関係法令、漁業許可のもとで操業を行わなければならないこととするとともに、いわゆる暫定水域等では、相手国の漁船に対して漁業に関する自国の関係法令を適用しないなどとしております。

 これらの国の漁船が我が国の相互入会水域において我が国の許可を受けずに操業し、又は許可内容等に違反して操業する場合には、水産庁は、海上保安庁とも連携しつつ、取締りを行っておるところでございます。

 また、漁業協議の場はもとより、ハイレベルからも含めまして、さまざまな機会を活用して規制の遵守を相手国に強く求めているところでございます。

杉田委員 先ほども申し上げましたが、年間で五千三百十五件もの退去警告が行われている、これはやはり異常だと思うべきだと思います。なので、もっとしっかりとしたことが対策として講じられることを私は強く望みたいというふうに思います。

 次の質問に参ります。

 今回のこの協定なんですけれども、北極圏国ではない日本、中国、韓国も北極評議会のオブザーバー国になっています。本協定の署名国に北極評議会のオブザーバーであるインドとシンガポールが含まれていないことにはどのような背景があるんでしょうか。

河野国務大臣 今回の条約は、まず、北極海の沿岸国五カ国、アメリカ、カナダ、ロシア、ノルウェー、デンマーク、この五カ国が、規制されていない水域での漁業を規制をするという目的で集まって取決めをつくり、さらに、そこから、この水域で漁業をする能力のある国、日本、韓国、中国、アイスランド、EU、この五カ国に呼びかけて、十カ国で正式な交渉を開始をするということになったわけで、そういう経緯があるものですから、今おっしゃったインド、シンガポールというところはこの枠には今のところ入っていないということでございます。

杉田委員 単にオブザーバーであるかどうかではなくて、それぞれの国々の漁業に対する能力であるとかそういうことに関してという背景だということで、よく理解ができました。

 それでは、次の質問に参ります。

 本協定は、地球温暖化により北極海の氷が解けて、将来的に漁獲が行われる可能性がある水域が拡大しているという背景があると認識をしております。

 こういった万が一の将来に向けての準備も大事なんですけれども、そもそも、北極海の氷が解けないように地球温暖化を食いとめることも非常に大事ではないかというふうに考えます。なので、本協定の署名国で、北極海の氷が解けないように努力していくといった趣旨の協定とかそういったものは検討されているのでしょうか。

河野国務大臣 北極海の漁業を含めた資源の開発あるいは北極海航路というのは、今委員がおっしゃったように、北極海の氷が解けないとできない、しかし、北極海の氷が解けてしまうということは地球が温暖化をしているということで極めてゆゆしき事態という、喜んでいいのか悲しんでいいのかよくわからぬ、そういう状況にあろうかと思います。

 今、北極海の氷が解けるような温暖化を防ぐためにこの条約の締約国で何かやっているかというと、私の知る限り、そういうことはないわけでございますが、これは難しいのは、北極だけ温暖化を防ぐというわけにいきませんので、温暖化を防ぐときにはパリ協定を含めた全地球的な気候変動の対策が必要で、それがきちんと行われることによって北極海の氷も維持することができるということになるわけでございますから、パリ協定の確実な実施ということが、やはり温暖化防止、北極海の氷が解けることを防止する、そういう意味では必要なんだろうというふうに思います。

杉田委員 大臣の方から、パリ協定の確実な実施であるとか、そういうことで地球の温暖化を防いでいくという答弁をいただいたんですけれども、私自身は、今回こういう協定に手を挙げている国々が率先して実はそういうふうなことも、協定をやっているけれども、将来的なことで、氷が解けないようにすることも率先してやっているんだという、そういう取組の姿勢を見せていくということも大事ではないかというふうに思いますので、ぜひ大臣にはリーダーシップをとって、特に大臣、こういうところには関心が深いところでいらっしゃると思いますので、ぜひ頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

若宮委員長 次に、遠山清彦君。

遠山委員 公明党の遠山清彦でございます。

 私も、本日議題となっております条約三本についてお伺いをしたいと思います。

 まず一問目が、中央北極海無規制公海漁業防止協定についてでございますが、この条約は、先ほども同僚の杉田委員からるるございましたとおり、中央北極海における氷の範囲の減少に伴って漁獲が行われ得る水域が拡大することを前提に、無規制の漁獲を防止するための暫定的保存管理措置や、科学的調査、監視に関する共同計画の策定等を定めるものでございますけれども、北極海において、まだ商業的漁業が見込める段階ではない、こういう指摘が専門家からなされております。

 そういう若干早い段階で、我が国を含む九カ国とそれからEUが、ここは加盟国が多いわけでございますが、この協定を締結するメリットは端的に何なのか、また、あわせて、本協定の有効期間が効力発生後最初の十六年間とされた根拠は何か、お答えをいただきたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず、お尋ねの協定でございますが、この協定の目的は、協定水域でございます中央北極海の公海水域につきまして、魚類資源に関する予防的な保存管理措置の適用を通じて規制されていない漁獲を防止することでございます。

 そうした協定の目的を踏まえまして、日本にとってのメリット、意義といたしましては、まずは、協定水域において我が国の将来の漁業機会を保全、確保しておくということがございます。また、もう一つには、こういった協定という枠組みを通じて、北極の当該水域における、いわば法の支配の促進に日本として貢献するというメリットがあると考えております。

 さらに、お尋ねの、なぜ適用期間が十六年になったかということでございますが、この協定の考えですが、まさに委員御指摘の予防的な考え、氷の範囲の減少が観察されることから、予防的な考え方に基づいて、地域的な漁業管理機関を設立するかどうか、こういった判断をするまでの暫定的な性質のものとして作成された協定でございまして、実は交渉過程でいろいろな議論がございました。有効期間をより長くとろうとする国もあれば、短くていいんじゃないか、こういった立場を踏まえて交渉を行った結果、有効期間が十六年となった経緯がございます。

遠山委員 局長、ありがとうございます。

 そうすると、日本にとってのメリットは、一つは将来の我が国の漁業機会の確保の法的な足場にしていくことと、あとは法の支配の確立ということがございました。そのとおりだろうというふうに思いますが、この二つ目の法の支配に関係する質問を外務大臣に次にさせていただきたいと思います。

 南極につきましては一九五九年の南極条約がございますが、北極は、南極と違って大陸ではございませんので、そのような条約はない。もちろん、海でございますので、国連海洋法条約等が適用されている地域でございますが、先ほども、前の同僚議員の質問にもあったかと思いますが、この北極地域における資源開発やあるいは北極海航路の利用についての国際ルールとかガバナンスのあり方については、漁業分野に限らず、その全体を国際社会で真剣に議論を始めなければならない時期に入りつつあると考えておりますが、政府の見解をお伺いをしたいと思いますし、私個人といたしましては、この北極に関する新たな国際ルールの構築に日本として主体的に関与していくべきではないかと思いますが、大臣の御見解をお願いいたします。

河野国務大臣 委員おっしゃるように、南極は大陸でございますので南極条約、北極は海ですので国連海洋法条約を始めとする関連条約、関連国際法が適用されることになります。

 この北極の利用、悩ましいのは、北極の氷、雪の上をそりで行く分にはいいんでしょうけれども、北極海航路を利用する、漁業あるいは鉱物資源といったものを開発する、利用するということは、これはもう地球温暖化と裏腹ということがございますので、一義的には、まず気候変動対策、パリ協定に基づく地球温暖化対策をしっかりやるということが必要なんだろうと思います。

 それがうまくいくと、なかなか北極海航路やら北極の資源の利用ができないということになるのかもしれませんけれども、やはり地球全体を考えれば、この気候変動というのは非常に大きな問題でございますから、生態系への悪影響を始めさまざまな問題が出てくる、もちろん人類にも影響が出てくるわけでございますから、これをどういうふうにするかという課題への対応が急務となっているわけでございますが、他方、さまざまな利用に関して、望ましい北極というのをどうしていくかという議論も当然にあるわけでございますから、科学的な研究あるいは秩序ある利用に関する国際的な法体系、こういったものの議論、研究というのは当然に必要になってくると思います。

 日本はこの条約に最初から交渉に参加をしてきたわけでございますから、北極の利用あるいは北極の環境の維持、こういったことに積極的な役割を日本政府としても果たしてまいりたいというふうに考えております。

遠山委員 大臣、御丁寧な御答弁ありがとうございます。

 私も全く同意をさせていただきたいと思いますが、大臣の今の御答弁の中で、望ましい北極がどうあるべきかということについて科学的な調査が必要だという論点があったかと思いますが、次の質問は、それに関しまして、現在、日本は北極海で運用可能な砕氷船、英語ではアイスブレーカーシップですけれども、これを保有していないということでございます。

 これについては、昨年の五月に閣議決定されました第三期海洋計画におきまして、砕氷機能を有する北極域研究船、研究のための船であり、砕氷機能ですから、氷があっても前に進める、こういった船の建造を検討する趣旨が盛り込まれたと理解をしております。

 これにつきまして、大臣御自身も、今、北極海について、気候変動とか温暖化のことも念頭に科学的調査が重要だという御指摘があったかと思いますが、それをするためには砕氷機能を持った研究船が必要だろうということで、これは政府として閣議決定までして検討しているわけですけれども、いつごろまでに結論を出すのか。

 財政に限りがあるのは存じ上げておりますけれども、こういう条約を国会で議論しているということですから、これも私個人の意見ですけれども、そろそろ砕氷機能を持った船を日本としても北極海に派遣をするということがあってもいいかと思いますが、政府の御答弁を求めたいと思います。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の砕氷機能を有する北極域研究船、これの建造につきましては、本件を所掌しております文部科学省におきまして、今年度の予算に、安全航行システム等の搭載機器に関する設計を行うための経費を計上しております。まずはその実施をしっかりやった上で、その結果を踏まえて、関係省庁とも連携しながら着実な検討を進めていきたい、そういうふうに考えてございます。

遠山委員 ありがとうございます。

 ぜひ、検討はしっかり進めていただいて、今、文科省所管のお話だったかと思いますが、外務省としても、日本の戦略的見地から北極政策を推進していただければと思います。

 次の質問もまた大臣で恐縮でございますが、違う条約でございます。燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約についてお伺いをいたします。

 我が国の現行制度では、我が国の外航船舶には保険加入が義務づけられておりますが、内航船舶については今までは義務づけられておりませんけれども、この条約に加入することによって保険加入が内航船にも義務づけられるということでございます。

 しかし、大臣御承知のとおり、我が国の内航海運業者の九九・六%は中小企業ということでございまして、事業基盤が脆弱でございます。本条約によってこれらの海運業者に保険への加入を義務づけることは過度な負担になるのではないかという懸念、御指摘がございますが、これについての政府の対処方針をお伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 委員御指摘のとおり、内航船にも保険加入の義務がかかるようになるわけでございますが、国交省の調査によりますと、今もう既に内航船の九割以上が船主責任保険に加入をしているということでございます。今、さまざま関係業界と、検討会などを通じて御説明をし、この新たな保険加入の義務についても御理解をいただいているというふうに思います。

 そういう意味で、新たにかかる義務については、さほど大きな経済的な影響は出ないものというふうに考えているところでございます。

遠山委員 大臣、ありがとうございます。

 九割以上が既に保険加入ということですが、今回新たにこの条約に加入することで、細かいことですけれども、保険料負担がまた過度に上がらないように、しっかり政府としてもモニターをしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。

 最後の質問になりますが、今度は、難破物の除去に関するナイロビ国際条約についてお伺いをしたいと思います。

 本条約によりまして、被影響国、つまり、自分の国の海域、水域で難破物が生じて影響を受ける国のことでございますが、この被影響国が難破物を除去した場合の費用は、船舶の登録所有者が維持している保険の保険者等に直接請求することができるようになります。

 つまり、これは、費用の回収が困難となるリスクが、被害者である被影響国から保険者に移るということが言えるわけでございますが、そうしますと、本条約に我が国が加入することが、保険事業者に与える影響が大きいという指摘がございますけれども、それについて政府としてどういう御見解か、御説明をお願いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、このリスクを保険者の方にいわば移転する、これはこの条約の肝の部分でございます。

 主な船籍国は既にこのナイロビ条約を締結済みでございまして、これに応じて、多くの保険会社は、委員御指摘のような、船舶所有者からの費用の回収が困難となる、こういうリスクもよく踏まえた上で、この船主責任保険の保険料でございますとか保険契約の内容というのを設定していると考えております。

 国内のそういった保険事業者に対しましても、今回、この二条約の国内実施については、あらかじめ十分な説明を行い、理解を得ているところでございます。

 こうしたことから、条約締結に係る保険事業者への経済的影響というのは限定的なのではないかというふうに政府としては考えているところでございます。

遠山委員 終わります。ありがとうございました。

若宮委員長 次に、寺田学君。

寺田(学)委員 寺田学です。

 議題となっております三条約に関して質疑をさせていただきたいと思います。

 この三つ、海というおおらかなくくりで、一括で審議をさせていただいております。北極と燃料油と難破物ということで海に関するものですが、質疑するに当たり、この背景含めていろいろ調べていきますと、大きく分けて二つの見方があると思うんです。

 北極は、これから起こり得ることに関して先んじて条約を結んでいきましょうというような意図が見えるものでありますけれども、あとの燃料油と難破物に関しては、過去もう既に締結をされているものに、言い方は悪いですけれども、後追いのような形で今回日本が入っていくということになっていますので、三本とも反対する理由がありませんので賛成はしますけれども、こういう機会ですので、しっかりと背景含めて議事録に残すような形の議論ができればと思います。

 まず、北極の方からなんですけれども、現時点で締結することのメリットは、さきの質疑の中でも議論ありましたけれども、条約本文の方をちょっと一度拝見をしました、日本語訳ですけれども。その前文の方に、商業的漁業が近い将来に中央北極海の公海水域において可能となりそうにないこと及びこのため中央北極海の公海水域に関する追加の地域的又は小地域的な漁業管理のための機関を設立し、又は枠組みを設けることが現状においては尚早であることを確信しという、平たく言うと、近い将来ここで漁業が可能になるということは考えられないよねというような前文がある上で、今回、この協定自体は、将来的に漁業が行われることを想定しながら枠組みを決めていくという形になっています。

 これは別に難癖をつけるわけではないですが、ちゃんと説明をしてもらいたいなということですので、この条約の前文の中には、中央北極海の公海水域において可能になりそうにないというふうに言われていますので、これをどういうふうに解釈しておけばよろしいのか、御説明いただければ。

山上政府参考人 お答えいたします。

 今委員御指摘の前文の記述でございますが、この背景には、実態として、協定が対象とする水域は現時点でほとんど氷に覆われており、商業的な漁獲が行われていないという実態がございます。

 無論、この商業的漁獲につきましては、北極海の公海部分では行われていないんですが、他方、北極海の沿岸水域においてはタラなどが漁獲されている、こういった実態があるということで、まさにその実態を踏まえて、御指摘の協定前文で、商業的捕獲が近い将来に中央北極海の公海水域において可能となりそうにないという記述があるわけでございます。

 他方、この協定のほかの前文の部分で、これは冒頭部分でございますが、この協定水域において氷の範囲が減少している、こういった認識も記載されておるところでございます。

 そこで、将来の課題でございますが、氷の範囲の減少が進み、規制がないままに商業的捕獲が将来的に開始された場合、当然、海洋生態系に影響を及ぼす可能性は否定できないということで、予防的に規制されていない漁獲を防止するといった目的でこの協定が作成された次第でございます。

寺田(学)委員 もう少し質問を絞って御説明をいただきたいと思うんですけれども。

 前文にもあるように、商業的漁業が近い将来に中央北極海の公海水域において可能になりそうにないということですけれども、この近い将来というのはどのような時間軸で我々は考えた上でこの条約に対しての姿勢を考えればよろしいんでしょうか。この近い将来というのをどう読めばいいのか、御説明いただければ。

山上政府参考人 先ほど、氷の面積の減少ということを申し上げました。この点に関して申し上げれば、年ごとの変動はございますが、一九八〇年代以降、海氷面積というのは減少傾向にあり、現在は二十世紀後半と比べますと約六〇%から七〇%となっている、こういうふうに言われているわけでございます。

 さて、その上で、近い将来とはいつかということは、まさにこのあたりについては今後の科学的調査等によるところもございまして、今の時点で、締約国の間で、近い将来とはいつごろかということについて現時点で共有された考えというものはございません。

寺田(学)委員 トレンドとして氷がなくなっていっている、それは先ほど大臣が言われたとおり、ゆゆしき現象なのかもしれませんが、トレンドとして氷が減少していることと、今回の条約が一つ目当てとしている水域における漁業が行われるという将来的な見通しがいつごろになるのかというのは、トレンドの話と推測の部分とありますので、しっかり説明してもらえればと思うんですけれども、いずれにせよ、今後このまま続けば、どのようなタイミングかは別として、漁業が開始されることが起こり得るだろうから先んじてやっておこうという予防的な条約であるということは十分理解をしております。

 今回、先ほども議論がありましたけれども、北極海沿岸の五カ国に加えて、主要関心漁業国及び機関ということで、日本、中国、韓国、アイスランド、EUが加わった十カ国になっていますけれども、基礎的なことですけれども、主要関心漁業国になるならないというのはどのような形で決められ、今後、主要関心漁業国及び機関というものはふえるものなのかどうか、この主要関心漁業国のあり方について御説明をいただければと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 先ほど、大臣からこの協定の交渉経緯について説明がございましたように、もともとは、北極海沿岸のアメリカ等を始めとします五カ国というものの存在があって、これらの五カ国が、彼らが、漁業を行う能力があるだろうということで日本ほかの五カ国に声がけをして、十カ国で協定を作成することになったという経緯がございます。

 今の時点で、これ以外の主要関心漁業国、漁業能力を北極海で有する国があるか。先ほど、インド、シンガポールといった言及もございましたが、特にこれらの国がなるだろうという認識はまだ生じていない。このあたりは今後の漁業実績等を踏まえて議論が行われることになるだろうと受けとめております。

寺田(学)委員 ありがとうございます。

 北極海についてはもうこれで終わりたいと思いますけれども、まさしく漁業という一つの切り口でこういう枠組みをつくっておりますけれども、もちろん、当該国においては、漁業のみならず、今後の北極海における航路も含め、さまざまな意味での北極海でのプレゼンスを考えた上での第一歩だと思っていますので、そういうことを日本政府としても考えながらやられていると思いますけれども、しっかりと足がかりをつくってやっていただきたいと思います。

 大臣、答弁は求めませんけれども、ここにアイスランドが出てきて、この間、公館法でも申し上げましたけれども、現地でいろいろ話を聞くと、やはり中国の方々のプレゼンスが年々高まってきている。この北極海をめぐる国に対しての中国のプレゼンスというのは非常に戦略的にやられていると思いますので、ぜひとも大臣としても意識をもう一段高めていただければというふうに思います。

 では、次の燃料油の方に話を移したいと思いますけれども、今度は、この北極海とは違って、燃料油に関しては、採択が二〇〇一年と約二十年前で、発効自体が二〇〇八年ということで十年ちょっと前に発効して、十年おくれという言い方は語弊があるかもしれませんけれども、今回、締結、この国会の方に条約がかかってきたということです。

 これは、先ほどの北極海とは違って、かなり様子を見ながら今に至っているわけですけれども、今の時期になった理由というのをまずしっかりと説明していただきたいと思います。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 日本は、二〇〇四年に船舶油濁損害賠償保障法、いわゆる油賠法を改正して、一定の船舶、外航船とかに対する保険加入の義務づけなど、両条約の内容の一部は既に国内独自措置として実施しているというところでございます。

 他方、両条約上、内航船にも保険加入を義務づける必要がありますけれども、二〇〇四年の調査では、内航船の船主責任保険加入率は七割に満たなかったということでございまして、保険加入を義務づけますと、中小企業が大半を占める内航船の所有者にはやはり大きな経済的影響をもたらす可能性があったと思います。

 また、二〇〇四年当時では、燃料油汚染損害の民事責任条約の締約国数は五カ国と極めて少なかったということで、裁判所判決の相互承認等の条約締結によるメリット、これが国内事業者等への影響を上回るとは必ずしも考えられなかったということでございまして、このため、申し上げましたような国内独自措置という形をとったわけでございます。

 しかしながら、近年、船舶所有者が保険に加入していても、契約条件を理由に保険金が支払われない、こういった事例もあり、さらなる対応が必要となってまいりました。

 両条約を締結し、油賠法を改正することで、被害者が保険会社等に対して賠償額や費用の支払いを直接請求することが可能となり、一部の免責事項を除き、現状では対応困難な事例でも賠償、費用の支払いが確保される、そういうことが期待されるとともに、燃料油汚染損害については、裁判所による賠償命令が他の締約国でも執行されるということになります。

 現時点におきまして、内航船の船主責任保険加入率は九割以上まで高まっておりますので、今回条約に加入して保険加入が義務づけられても、経済的影響というのは限定的だと考えられております。加えて、国内の事業者からも検討会を通じて理解をいただいておりますことから、今般、国会にお諮りすることとなったものでございます。

寺田(学)委員 今御説明の中で、二〇〇四年当時の調査でどういう状況であるかということと、今回、締結、この条約を審議するに当たる上での動機、近年という言葉を使われましたけれども、動機を説明されました。

 もう一段御説明をいただきたいんですけれども、二〇〇四年の説明はわかりました。二〇〇四年のときに何で入らなかったのかという話をしたら、内航船に関しては七割ぐらいしか保険の契約をしていなかったんです、かつ、この締約国自体が五カ国と少なかったからです、なので二〇〇四年は見送ったんですという話を説明されたと思うんです。

 それで、今入るときに、それの、二〇〇四年、入らなかった理由のトレンドの変化ということは補足的には言われましたけれども、やはり、この条約に加盟しようという話をする直接的な理由は、近年、保険金が支払われないケースがふえてきたからだという話をされました。なので、二〇〇四年のときに、締約国が少ないし、内航船の保険の契約率が七割にとどまっているから入らなかったんですと言いながら、今回、前向きになろうとした理由は、そのこととは別の話での前進になっている説明になっていると思うんです。

 なので、ちょっと聞き方を変えますけれども、二〇〇四年当時は、今参考人から説明をされた、保険金が支払われないケースというものが見込まれてはいなかったんですか。結局のところ、そのときにそういうことが見込まれていたのに入らなかったというのであれば、やはり遅くなったなという議論が成り立つとは思うんです。

 もう一回丁寧に言いますけれども、今回、この条約に対して前向きになろうとした理由が、保険金が支払われないケースがふえてきたからだという話だったので、当初のころ、二〇〇四年のころでもいいですけれども、そういうことが想定はされなかったんですか、どうですかということをお答えいただきたいんです。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 もちろん、いろいろな船の座礁あるいは油の損害というのは以前からもございました。他方、最近におきましては、だんだんと船体の大きさも大きくなってきたということもあり、さまざまな被害、例えば、二〇一三年にはカンボジア籍の貨物船アンファン八号が青森県で座礁した例、あるいは、二〇〇八年、ベリーズ籍の貨物船が明石海峡で衝突するなどのいろいろな事件がございました。こういうことを踏まえて、やはりこの条約に加盟する意義というのが出てきた。

 特に、近年、締約国数がふえてきたということがございます。先ほど、二〇〇四年の時点では五カ国のみだということでございましたけれども、現時点においては九十二カ国というふうに大きくふえてきたということがございます。したがいまして、この条約を締結することによって損害賠償を確実にする、そういうメリットがより大きくなってきたということが言えるかと思います。

 そのような事情で、今回、この条約を締結したいということでお諮りをしている次第でございます。

寺田(学)委員 これはレクレベルで聞いておけばよかったのかもしれないですけれども、二〇一三年のアンファン号の事故がありますけれども、この前にいわばこの条約を締結した場合には、このアンファン号の件は保険金が支払われなかったことになっていますけれども、何かしらカバーされていたんですか。ごめんなさい、そこの事実関係を教えていただければ。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 アンファン八号座礁事件、青森県でございますけれども、結局、青森県の費用負担によって、油の防除措置、それから座礁船舶の除去を行っております。その際の青森県の費用負担は計約三億円だったというふうに承知をしております。

 このような費用につきましては、自治体に対して一定の割合で補助金を支給するというような制度があって、それによって少なくとも一部はカバーされているというふうに承知をしております。

寺田(学)委員 私の質問が悪かったのかもしれませんけれども、二〇一三年、事故当時にこの条約を締結した場合には何かしらのプラスの効果はあったんでしょうかということです。そのとき入っていても入っていなくても変わりありませんということなのか、何かしら影響は、こういう条約を今結ぼうとしているわけですから、プラスの意味での影響があったのかどうか、そのことの事実関係だけ教えてください。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 本条約を締結することによりまして、賠償請求を船主だけではなくて保険業者にも直接請求できるということが可能となりますので、この当時もし条約に入っていたら、そのような形でちゃんと費用を回収する、そういう担保はより強いものになっていたということは言えるかと思います。

寺田(学)委員 だから遅かったじゃないかとか、そういうことを言うつもりはありません。さまざまな見通しと反省にのっとりながら物事は進んでいくものだと思いますので、そういう意味で、本条約に関しては反対するものではないですけれども、余り過去をびほうすることもなく、真摯に見通しを振り返って、どうあるべきだったか、本当であればもっと早く国会の中で議論して締結するべきだったのかどうかということも議論すべきだと思いますけれども、その点に対しての見通しの振り返りの御答弁をいただいてこの件に関しては終わりたいと思いますが、総括的な答弁で結構です。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申しましたとおり、条約を締結することによってそういう損害賠償をより確実なものにするというメリットはもちろんございます。他方で、先ほど御説明申し上げましたように、これに加入すると、日本の内航船、非常に零細企業もたくさんあります、そういう内航船にも保険加入の義務が生じる。そういうことによって、そういう脆弱な内航船業者に対する経済的負担、これもまた一方で考えなければいけない。

 その辺のバランスを考えながら常々検討してまいりましたが、先ほど申しましたように、今、内航船の九割が保険に加入しているということで、そういう負担というものは限定的、なおかつメリットの方が大きくなってきた、そこのちょうど潮どきではないかということでお諮りをしたということでございます。

寺田(学)委員 質問するかどうか悩みますけれども、最初にこの条約に対して説明を受けたときは、昔、何で二〇〇一年採択、二〇〇八年発効のときにやらなかったんですかと言ったら、内航船の方々の保険の負担が重いのでということで、今は九割なのでという話を聞いて、ああ、そういうことかと思ったんですけれども、詳しく聞くと、先ほど御答弁ありましたように、二〇〇四年当時でも七割入っているわけですよね。二割の進展ですよ。たった二割と言うつもりはないですよ、一つ一つ中小企業の中で負担を強いなきゃいけない部分があると思うので。

 ただ、実際のところ、二〇一三年で事故が起きて、本当であれば、締結していれば担保される部分はあったと御答弁がありましたけれども、そこら辺、殊さら、今九割になりましたからといったって、事実を考えてみれば、過去は七割まで上がってきているわけですから、そこまで大きな大きな理由でもないんじゃないかなと思います。

 これ以上何か言うつもりはありませんけれども、さまざまな条約に関しても、しっかり、どういうタイミングでやるべきなのか、みんな見きわめながらやっていると思いますけれども、見通しに関しては、ちゃんと過去を振り返って、反省しながら、今後の条約締結に関してのタイミングを含めてやっていただきたいと思っています。

 残り六分ですけれども、日ロのことについてお伺いしたいので、大臣、よろしいですか。

 交渉内容を聞いても、大臣はいつものとおりお答えになられないと思うので、違う聞き方をしますが、内容には触れませんが、交渉は進んでいるんですか、進んでいないんでしょうか、お答えください。

河野国務大臣 交渉の速度というのも、これは内容と緊密につながることでございますから、お答えは差し控えたいと思いますが、外相間そして政府特別代表間の交渉は、しっかりと日程を決め、動かしているところでございます。

寺田(学)委員 交渉しているかどうかは十二分にわかっていますので、その交渉、具体的な内容は私は問いませんけれども、その交渉自体は進展しているのかどうか。

 そしてもう一点、六月末のG20がありますけれども、そのG20に一定の成果を残す、そこに一定の成果を持つようなスケジュール感でやられているんでしょうか。

河野国務大臣 平和条約の交渉について、これは両首脳の間で条約の交渉を加速化させようという合意はございますが、特にいつまでにどうというのを、タイムフレームを何か中で決めて、一つ一つの問題に当たっているわけではございません。

寺田(学)委員 もう一回聞きます。

 交渉は進んでいるんですよね。進んでいますか。

河野国務大臣 平和条約の交渉というのは、内容というのは大体決まっているものでございますから、交渉のスピードというのも当然に内容と密接にかかわってくるものでございますので、中身について申し上げるのは差し控えます。

寺田(学)委員 交渉がどれぐらい進んでいるのかとは聞いていません。進んでいるか、進んでいないのか。交渉しているのはわかっています。進んでいるのか、進んでいないのか。速度は聞いていません。どっちですか。

河野国務大臣 前へ行っているのか、後ろへ行っているのかと言われれば、前へ行っております。

寺田(学)委員 それと、きのうの記事ですかね、2プラス2が日ロで五月三十日、三十一日に行われるという報道がありましたけれども、行われるんでしょうか。

河野国務大臣 今、日ロで2プラス2を行っておりまして、ことしは日本で行うということにしております。今、日程その他については調整をしているところでございます。

寺田(学)委員 これもちょっと一度ちゃんと聞いておきたいなと思ったんですけれども、きのうの記事を見ると、五月三十、三十一日に日ロで2プラス2が行われるということを、鈴木宗男さんが総理にお会いになった後に官邸で記者団に話したという記事のたてつけでした。

 これは誤解のないように申し上げておきますけれども、さまざまなチャネルで交渉していくということは、時として別に必要なことだと思うので、一概には否定はしたりしないんですが、どういう位置づけなのかということは、私は立法府にいる人間として、そして交渉を見守る人間としても、しっかりと交渉当事者の外務省としてお答えをいただきたいなと思っているんですけれども、政府にとって鈴木宗男さんというのはどういうお立場の方になるんでしょうか。

河野国務大臣 特にどういう立場でもないというふうに認識をしております。

寺田(学)委員 日ロ交渉には広義の意味で関与されているんでしょうか。

河野国務大臣 しておりません。

寺田(学)委員 私はきのうの記事しか情報を得るものはありませんので、記事の中で正確にその文言を読んでいくと、外務次官、モルグロフ外務次官ですか、固有名詞を間違えていたら申しわけないんですけれども、次官と面談をされたという事実と、その面談や、その外務次官や幹部から聞いた話として記者に紹介をしたという内容が、五月三十日、三十一日に2プラス2を日ロで行うという話でした。

 内々にさまざまなことで動かれていること自体は、外交活動ですので、言うつもりはありません。記者団にお話をされていますので、それは表に出たものとして外務省としてしっかりと把握をしていただきたいというか、説明をしていただきたいと思っているんですけれども、鈴木宗男氏が外務次官とお会いになられていることの認知、及びその内容に関しては大臣として承知はされているんでしょうか。

河野国務大臣 さまざまな方が、個人の資格でさまざまな外国を訪れて、外国の政府の関係者に会うということはあるんだろうと思います。

 アレンジをしているのであればその事実は把握を当然にしておりますし、同席をしていれば内容は把握をしております。そうでなく、個人のつてで会われているという場合には、その日程や内容を全て外務省で把握していないということも当然あるんだろうと思っております。

寺田(学)委員 個人でお会いになられているもの全てを省として認知をすることは難しいと思いますけれども、首脳間で取り決めた窓口の事務方の一人である外務次官とお会いになられ、そのことを日本の首脳、総理に御報告をされているという記事が載っている以上、そのことに対してどのように省としてアプローチされているのかということ自体は、私は当然関心を持ちますし、外務省としても、河野大臣及び岩屋大臣がお会いになる日程を、総理とお会いになった後にお話をされているわけですので、これはどのように我々として、我々というのは立法府ということなんですが、国民も含めてですけれども、こういう表になったことに対して解釈すればいいのかというのはわからないんです。

 さまざまなチャネルを使いながらやることは、私は否定しませんし、時としては歓迎すべきことだと思いますけれども、この鈴木宗男さんの行動自体を我々はどう捉えるべきなのか。個人でやっている範疇を超えて総理にお会いになられていますし、外務大臣の日程のことをお話をされていますので、このことに対して、ちゃんと大臣として御説明をいただきたいというものです。御答弁いただければ、それで質疑は終わります。

河野国務大臣 2プラス2の日程は、今政府間で調整をしているところでございます。

 鈴木宗男さんが個人で行かれて、先方からどういう話を聞いているかというのを今私が承知をしているわけではございませんが、さまざまな外交日程については、政府間の調整が終わり、国会あるいは閣議といった手続を経た上でしっかりと公表するということにしております。

寺田(学)委員 以上で終わります。

若宮委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 国民民主党の青山大人です。

 まずは、中央北極海無規制公海漁業防止協定について質問させていただきます。

 これまでの各委員さんからの質問や御答弁で、北極をめぐるさまざまな問題に関するルールをつくるのに我が国も主体的にかかわっていく必要性があるためというふうな認識は共有させていただきました。

 そこで、ちょっと視点を変えて質問させていただきます。

 本協定の水域の海氷には、太平洋北部の太平洋ごみベルトと呼ばれる海域等から流れ着いたマイクロプラスチックが大量に蓄積されていることが明らかとなっており、気候変動で海氷の融解が進むことで、マイクロプラスチックが放出されることによる周辺海域の汚染や海洋生態系への悪影響等が懸念されております。

 そこで、まずは、北極海におけるマイクロプラスチックによる汚染の現状についてお伺いをいたします。

上田政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、マイクロプラスチックは北極海でも観測されたとの報告もあり、海洋プラスチックごみ問題については地球規模で広がっているものと承知をしております。

 環境省では、マイクロプラスチックの実態を把握するため、日本の沖合海域や沿岸海域における分布状況を調査するとともに、マイクロプラスチックに含有、吸着している有害物質の分析等も行い、その結果を公表しているところでございます。

 調査の結果、マイクロプラスチックは、日本周辺の沖合及び沿岸海域において全体的に確認されており、これに含有、吸着する有害物質の濃度は、他の先進国で観測されているものと同程度で、世界的な傾向と一致していることなどがわかっておるところでございます。

 今後とも、こうした調査研究結果を取りまとめ、公表するなど、海洋ごみ対策に必要なデータの蓄積、提供に努め、海洋ごみの実態把握に努めてまいりたい、このように考えております。

青山(大)委員 そこで、マイクロプラスチック問題に関する国際的な取組ということで、昨年、G7のシャルルボワ・サミットにおいて、プラスチック削減について達成期限付の数値目標を含む海洋プラスチック憲章が発表されていますが、もちろん、この憲章は法的拘束力は有していませんが、G7のうち、アメリカと我が国は承認をしておりません。

 政府として、ことし、間もなく開催されますG20大阪サミットで、海洋ごみに関する問題に取り組む方針を明らかにしておりますけれども、海洋におけるマイクロプラスチック問題に関して、法的拘束力や実効性のあるルール形成を日本が主導すべきではないかとも考えますけれども、御見解をお伺いいたします。

河野国務大臣 マイクロプラスチックの問題は、非常に大きな問題に地球規模でなっております。ただ、この問題を解決するためには、G7のような先進国だけでなく、プラスチックのごみの排出の多い発展途上国も含めた多くの国が取組をするということが大事なんだろうというふうに思っております。

 今回、G20でこれを一つの議題として取り上げまして、実効性のある取組を多くの国が行っていく、そういう具体的な行動にまずつなげていくというところでリーダーシップをとっていきたいと思います。

 ただ、法的な拘束力のある取決めで、出すのをやめましょうといってもなかなか実効性が上がりませんので、さまざま、海で分解されるバイオプラスチックというようなものをしっかり開発していく。

 逆に言うと、分解されるからいいだろうというので、ごみがふえてしまうというおそれがあるという警告をされている方もいらっしゃいますから、何がいいのかという議論をまずしっかりした上で、多くの国が実効性のある取組をやっていく、その中でさまざまなルールを決めていく必要があろうかと思っておりますので、G20でこうした実効性のある取組が始められるようなリーダーシップをしっかり日本としてまずとっていきたいというふうに考えております。

青山(大)委員 ぜひ、大臣、取り組んでいってほしいと思います。よろしくお願いいたします。

 次の条約の方に行きます。二つ、三つ目、燃料油汚染損害の民事責任条約と難破物除去ナイロビ条約についてお伺いをいたします。

 私が認識しているのが、船舶油濁汚染損害賠償法の改正のきっかけの一つが、二〇〇二年の、私の地元茨城県の日立港沖での北朝鮮チルソン号の座礁事故だと。この座礁事故によって、結果的に茨城県が約五億円という多額の費用を負担して燃料油の防除対策や船舶の撤去を行ったということでございます。そういった中で、やはり今回の条約は、こういったケースを踏まえて、被害者保護につながる重要な条約と私は考えております。

 そこで、改めまして、今回の両条約では、締約国を旗国とする船舶と締約国に入出港する船舶に保険の加入を義務づけていますけれども、我が国が両条約を締結した場合、我が国の近海において無保険の船舶が航行するということはなくなるんでしょうか。また、非締約国を旗国とする船舶にも保険の義務づけの効力は及ぶんでしょうか。お伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 両条約の締約国は、旗国として自国船舶に保険加入を義務づけるとともに、寄港国として、自国の港等への入出港船舶について、船籍や所有者等の属する国を問わず、つまり締約国であるか否かを問わず、一律に保険等の効力を確保する義務を負います。

 このため、非締約国を旗国とする船舶であっても、締約国に入港する場合にはその入港国の国内法が適用される。その結果として、有効な保険に加入していることが求められる。すなわち、両条約上必要な保険に加入していないような船舶というのは、実質的に締約国の港には寄港できなくなるということになるわけでございます。

 現在、既に、主な船籍国は両条約を締結済みですし、主要国の多くも、両条約を締結しているか、又は国内の独自措置によって保険加入を義務づけております。このため、多くの海運業者にとっては、国際航海に従事する上で保険への加入が既に必須だ、そういう状況が生じていると言えるかと思います。

 このように、非締約国を旗国とする船舶に対しても保険加入のインセンティブを働かせることとなるため、この両条約上の強制保険実効性というのは十分に確保されておる。したがって、日本近海において無保険の船舶が航行するリスクというのは低いというふうに考えております。

青山(大)委員 今、リスクは低いという御答弁をいただきました。

 今回の二つの条約、両条約が想定する事案というのは重なる部分が多いというふうな認識をしているんですけれども、燃料油汚染損害民事責任条約の方は九十二カ国がもう締結されていて、一方、難破物の除去ナイロビ条約の方は四十二カ国と、締約国の数に差があるように思うんですけれども、その理由というか、これだけ差があるのでも同じようにカバーできるんでしょうか。お伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 条約をいつ締結するか、これは各国の判断事項でありますので、この差がどこから生じてくるのかというのは必ずしも明らかではございませんけれども、燃料油汚染損害の民事責任条約は採択が二〇〇一年、発効が二〇〇八年であるのに対して、難破物除去ナイロビ条約は採択が二〇〇七年、発効が二〇一五年と比較的最近発効したものであるということが、この両条約の締約国に開きがある、その主な理由であるというふうに考えております。

青山(大)委員 最初の燃料油の方は九十二カ国ということで、そうすると、船舶量で見た場合、全世界の大体何%ぐらいをカバーしているんでしょうか。

 また、逆に言うと、まだ難破物除去のナイロビの方は四十二カ国ということなので、これは全世界の何%ぐらいをカバーできるんでしょうか。お伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、燃料油汚染損害の民事責任条約でございますけれども、現在の締約国数は九十二カ国で、世界全体の商船の船腹量の約九三%を占めており、主要海運国や主要船籍国も締結済みであります。

 二問目の難破物除去ナイロビ条約につきましては、四十二カ国でございますけれども、これで世界全体の商船の船腹量の約七二%を占めております。保有する船腹量の多い主要な船籍国、例えばパナマ、マーシャル諸島、リベリアなどの国々はいずれもこの条約を締結済みでありますし、主要海運国、例えば中国、ドイツ、シンガポールなどの国々はいずれもこの条約を締結済みでございます。

青山(大)委員 大体二〇%ぐらい違うという御答弁ですけれども、最初に御答弁あったように、もともと採択、発効された時期が違うということでまだ差があるということですけれども、だんだん徐々に今後はナイロビ条約の方も燃料油汚染損害条約のように数がふえていって、同じくらいの締約国になるというような認識でよろしいんでしょうか。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 また他国の判断にかかわることでございますので、なかなか見通しがどうかということは申し上げにくいところがございますけれども、我が国としては、なるべく多くの国々が加盟する、参加するということが世界の海運の安定、そして被害者の保護にも資すると思いますので、たくさんの国が、より多くの国がこれを締結するように働きかけていきたいというふうに思います。

青山(大)委員 ぜひ、日本としてもそういった働きかけを行ってほしいというふうに思いますので、お願いいたします。

 我が国の近いところを見ますと、韓国やロシアは難破物除去ナイロビ条約を締結していないとのことですが、この点についての政府の見解をお伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、韓国及びロシアは難破物除去ナイロビ条約を締結しておりません。

 その理由は必ずしも明らかではございませんけれども、韓国に関しては、難破物除去ナイロビ条約を国内実施するために、現在、関連の国内法令を改正することについて検討中でいらっしゃるというふうに承知しております。

 ロシアについては、検討状況を必ずしも承知はしておりませんけれども、ロシアもこの条約の採択会議に出席し、特段の反対の表明はなかったというふうに承知をしております。

青山(大)委員 承知しました。

 次に、燃料油汚染損害民事責任条約では、燃料油による汚染によって損害を受けた被害者は、保険会社などに直接賠償額の支払いを請求できるというふうになっておりますが、燃料油が流出すれば周辺の海域は当然汚染され、漁業者に大きな影響が出ます。養殖場でも汚染されて損害が出ることもあると考えますが、漁業関連の被害についても、漁業者から保険会社等に対して直接請求できるようになるのでしょうか。それとも、あくまで請求できるのは地方自治体などの公的機関なのでしょうか。お伺いをいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 燃料油汚染損害の民事責任条約に基づいて損害賠償を請求することができる燃料油汚染損害には、御指摘のとおり、漁業関連の被害も含まれます。

 具体例といたしましては、船舶の衝突事故により燃料油が流出し、付近漁民の養殖場を汚染したことによって生ずる損害、あるいは、その汚染により漁業者が操業できず、一定期間休業したことによる経済的な影響、いわゆる逸失利益などが挙げられます。

 条約上の強制保険の対象であります総トン数一千トンを超える船舶によってこのような漁業関連の損害が生じました場合には、被害者である漁業者は、損害を生じさせた船舶が契約を締結している保険会社等に対して直接賠償額の支払いを請求することが可能となります。

青山(大)委員 では、漁業者も直接請求できるということで、わかりました。

 これも確認なんですけれども、本条約の場合でも、船主の責任限度額以上の損害については、取扱いについてはどうなってしまうのでしょうか。やはり被害者が引き受けることになってしまうのか、それとも何かしらの手だてはあるんでしょうか。お伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 責任限度額を超える規模の被害があった場合については、それを超える部分について、いろいろなケースによって適用される法令が違いますので一律には申し上げられませんが、一定のケースにおいては、さまざまな被害を補填する補助金があるというふうに承知をしております。

青山(大)委員 わかりました。

 もう少し質問したいんですけれども、船舶の海難などに伴う海洋汚染への対応に係る国際的な枠組みとして、本日提案されています燃料油汚染損害民事責任条約や難破物除去ナイロビ条約がありますけれども、こういった条約以外に、まだ日本が締結していないような国際的な条約、危険物等に関するまだ日本が締結していないような条約はあるのでしょうか。お伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 危険物質等に関する条約で日本が未締結のものは、危険物質及び有害物質の海上運送に関連する損害に対する責任並びに賠償及び補償に関する国際条約の二〇一〇年議定書、いわゆるHNS条約があります。

 HNS条約は、化学物質や液化天然ガス、LNG等の危険物質及び有害物質によって発生した損害についての船舶所有者の責任及び強制保険、船舶所有者による賠償を補完するための国際基金による補償、締約国の裁判所が下す判決の承認等について定めるものでございます。

青山(大)委員 では、それは何年ぐらい前に発効されて、そして、今日本がまだ締結されていないのにはどういった理由があるのでしょうか。そして、また今後この条約について日本が締結するようなお考えはあるのでしょうか。お伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答えを申し上げます。

 HNS条約はいまだ未発効でございます。

 HNS条約に関しましては、多種多様な物質を措置の対象とするものであり、関係業界が非常に多岐にわたる、そういうことに加えまして、国際基金への拠出を伴うため、国内実施についての調整、あるいは国内事業者への影響に係る慎重な検討が必要だというふうに考えております。

 危険物質及び有害物質による損害が発生した場合に、被害者保護を充実させるためにはHNS条約は重要と考えておりますが、その一方、関係業界への影響も大きいということから、日本としても、条約の締結の可能性については、引き続き関係業界を含めて検討を進めてまいりたいと思っております。

 各国の締約状況としては、四月十日現在、締約国はカナダ、デンマーク、ノルウェー、トルコの四カ国のみという状況にあり、発効要件は満たされておりません。

 発効要件は、一定の船腹量を有する国を含む十二カ国の締結ということになっておりまして、具体的な発効時期について見通しをお示しすることは難しいところはございますけれども、今、まだしばらく時間がかかるのではないかというふうに思っております。

青山(大)委員 詳細な御答弁、ありがとうございました。

 被害者保護の観点からも大切だけれども、まだその関係者たちの合意形成に至っていない。先ほどもほかの委員から、燃料油汚染の損害条約の方もどうして発効とタイムラグがあったのかという御質問もありましたけれども、こっちの方は国際的にもまだ十二カ国そろっていないという御答弁もありましたけれども、恐らくそういったような、締結する流れに行くのかなと思いますし、そういったことを含めまして、関係者との調整の方をお願いしたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 最後の質問でございますけれども、昨年、国会でも議論されましたシップリサイクル条約ですかね、改めてですけれども、シップリサイクル条約は、船舶における有害物質を含む装置などの設置や使用の禁止や船舶のリサイクル施設の要件を定めることを通じて、船舶の安全かつ環境上適正な再資源化を確保しようとするものであり、条約の作成に当たっては我が国が主導的な役割を担ったというふうに伺っております。

 そのシップリサイクル条約では、締約国の船舶再資源化量の合計が全体の三%以上となることを発効の要件の一つというふうに聞いております。ただ、主要な船舶再資源化国である中国やインドがまだこの条約を批准していないため、四月現在、未発効であるというように伺っております。

 シップリサイクル条約について、中国やインドの批准に向けた動向並びに早期発効の見通しについて、政府の認識をお伺いいたします。

鈴木(秀)政府参考人 お答えを申し上げます。

 シップリサイクル条約につきましては、昨年四月に国会で御承認いただきました後、国内法制の整備を経て、我が国といたしましては、本年三月二十七日に締結をいたしました。ありがとうございました。

 中国とインドについてのお尋ねでございますけれども、中国は締結の意思を示しているというふうに承知しております。また、インドについても、現在、関連国内法の整備を進めており、早期の締結が見込まれている、そのように認識をしております。

青山(大)委員 わかりました。

 今回、海に関する三つの、最初は北極海の公海漁業防止の協定、そしてその後は二本の条約についていろいろ質問させていただきました。

 先ほど、当初、マイクロプラスチックにおける取組についても大臣の方から前向きな御答弁をいただきました。ぜひ、国際的な枠組みにおいて、日本がさまざまな立場で、主導的な立場でリードしていってほしい、そのようにお願い申し上げ、若干早いですけれども、私の質疑を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 条約については、いずれも賛成であります。

 きょうは米軍犯罪について質問をいたします。

 四月十三日、沖縄県北谷町のアパートで米兵が会社員の女性を殺害し、その後、自殺するという痛ましい事件が起こりました。心からお悔やみを申し上げるとともに、このような事件がまた繰り返されたことに強く抗議するものであります。

 地元紙の報道によると、被害者と家族ぐるみのつき合いがあった友人の方は、軍や警察に何度相談しても犯罪行為や嫌がらせがとまらず、なぜこんな理不尽な目に遭うのか悩んでいた、痴情のもつれなどではなく、彼女は軍と県警の管理の甘さの犠牲になった、このように訴えています。

 警察庁、事件の概要と、米軍兵士の所属、階級、どこの居住だったかを明らかにしていただけますか。

田中政府参考人 本年四月十三日の朝でございますが、沖縄県中頭郡北谷町のアパートにおいて、一一〇番通報によって臨場した警察官が、男女二名が血を流して死亡しているのを発見したものと承知をいたしております。

 現在、沖縄県警察において、関係者からの事情聴取や死体の司法解剖の結果等を踏まえ、米軍人の男が知人女性を殺害した後、自殺したとの疑いも視野に入れ、捜査を行っているものと承知をいたしております。

 死亡いたしました米軍人につきましては、在沖米海兵隊第三海兵師団第三偵察大隊に所属する三十二歳の米海軍三等兵曹であり、現在捜査中でありますが、名護市にあるキャンプ・シュワブ内に居住していたものと承知をいたしております。

 本件につきましては、引き続き、沖縄県警察において、米側当局と連携しつつ、本件の経緯、背景を含め、全容解明に向けた捜査を進めていくものと承知をいたしております。

赤嶺委員 外務省に伺いますが、米海兵隊所属の米海軍三等兵曹というのは、これはリバティー制度の対象になりますか。

岡野政府参考人 リバティー制度は、在日米軍が自主的措置として設けた、勤務時間外行動の指針であり、日本国内に所在し、活動している全ての軍人を対象とするものと承知しております。

 そのため、お尋ねの米軍人についてもリバティー制度の対象になると考えます。

赤嶺委員 米海兵隊は、ことし二月までに、リバティー制度に基づく外出規制措置を緩和いたしました。三等軍曹以下の兵士の門限も一時間延長いたしました。それでも、午前一時から五時までは外出が禁止されています。

 事件はその時間帯に起こりましたが、なぜこの米兵は基地の外にいたんですか。

岡野政府参考人 この事件の事実関係については、現在、沖縄県警察が捜査中であると承知しており、当該米軍人が外出していた時間帯を含め、当該人とリバティー制度との関係といった個別の状況について断定的にお答えすることは差し控えたいと思います。

赤嶺委員 いやいや、リバティー制度によって外出が禁止されている時間帯に、外出が禁止されていた兵士が基地の外で事件を起こしている。何でこんな時間帯に外にいたのかということを聞いているのであります。

 私は、これまでも、リバティー制度が、外出規制時間帯の基地の出入りを規制するだけで、その後、基地に戻れば何のおとがめもない、抜け穴だらけの制度だということを指摘してきました。制限時間が過ぎて基地の中に帰ればおとがめがないわけですから、その間、どこかで、あるいは民家に入り込んでいたという事件もありました。そのリバティー制度の欠陥が今回の事件の背景になっていることだろうと思います。

 被害女性は、以前から米軍の憲兵隊に相談していたとされています。米軍には、DVや児童虐待の可能性がある場合に、加害米兵が被害者に接触できないように司令官が命令を出す制度もあると聞いております。そうした点での米軍の対応はどうだったんですか。

岡野政府参考人 米軍のミリタリー・プロテクティブ・オーダーの制度は、ドメスティック・バイオレンス等の被害者を保護する観点から、米軍の司令官が、その隷下にある特定の者に対して、特定の場所や特定の個人に対し接近、接触することを制限するものであると承知しております。

 これ以上の詳細については、米軍内部の制度であるため、外務省としてはお答えは差し控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 今、ちょっと、理事の方から、定足数を割っているからという提案があるんですが、委員長、どうですか、確認してくれますか。

若宮委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

若宮委員長 速記を起こしてください。

 赤嶺君。

赤嶺委員 それでは、質問を続けます。

 事件当時、米軍の接近禁止命令、MPOというんですか、これの発令された状態にあったんですか、その米兵は。

岡野政府参考人 委員御指摘のミリタリー・プロテクティブ・オーダー、このオーダーの対象になっていたと承知しております。

赤嶺委員 対象になっていた。

 そして、事件当時はそういう発令された状態にあったということですね。

岡野政府参考人 御指摘のとおりと理解しております。

赤嶺委員 けさの報道ですと、ことし一月には、被害女性は、加害米兵から性的暴行を受け、米軍に通報していたと報じられていますが、これは事実ですか。そして、なぜそのときに逮捕、拘束しなかったんですか。

岡野政府参考人 ただいま申し上げましたミリタリー・プロテクティブ・オーダー、この制度は米軍内部の制度でございまして、かつ、御指摘の事案については引き続き捜査中であることもあり、同制度についてこれ以上外務省としてお答えすることは差し控えたいと思います。

赤嶺委員 事実が解明されていくと同時に、極めて重大な事件だという認識を覚えております。

 外務大臣に伺いますが、事件の詳細は今後明らかになってくると思います、なぜ事件を防ぐことができなかったのか、米軍のリバティー制度や管理体制を含めてしっかりと検証し、事件の全容と再発防止策を明らかにしていただきたいと思いますが、いかがですか。

河野国務大臣 今回のこのような事件の発生は極めて遺憾であり、被害者の方の御冥福を心よりお祈り申し上げたいと思います。

 米軍人軍属による事件、事故は、地元の皆様に大きな不安を与えるものであり、そもそもあってはならないものでございます。

 今後も、米側に対し、事件、事故防止の徹底をしっかりと求めてまいりたいと思います。

赤嶺委員 極めて重大な事件であることがはっきりいたしました。

 次に、米軍普天間基地問題について伺います。

 今月十日、普天間飛行場負担軽減推進会議が開かれました。

 防衛副大臣に伺いますが、普天間基地の五年以内の運用停止についてどのようなやりとりがありましたか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 四月十日に開催をされました普天間飛行場負担軽減推進会議におきましては、玉城知事から、五年以内運用停止が実現されなかったことはまことに遺憾である旨とともに、普天間飛行場の一日も早い危険性除去の実現に向けて取り組むことについて強い要請がございました。

 岩屋大臣からは、残念ながら五年以内ということは実現できませんでしたが、何より、国、沖縄県の双方が、移設が完了するまでの間における普天間飛行場の危険性除去について、認識を共有し得るような環境をつくっていくことが大事であると思う旨の発言があったと承知をいたしております。

 もとより、政府としては、一つ一つ危険性除去の成果を積み重ねてきたところでございまして、今後とも、沖縄の負担軽減、そして普天間飛行場の一日も早い全面返還に向けて全力で取り組んでいく考えでございます。

赤嶺委員 安倍総理と当時の仲井真知事が鳴り物入りでテレビ中継もあったああいう場面の中で、五年以内の運用停止、その期限がことしの二月でしたが、今の原田副大臣のお答えによりますと、雲散霧消した、何も議論されなかったということですか。

原田副大臣 お答え申し上げます。

 そのようなことではございませんで、普天間飛行場の五年以内の運用停止について、例えば、日米2プラス2等の機会に外務大臣及び防衛大臣からも米側に対して説明するなど、政府としては、適切な機会を捉えて米側にしかるべく説明をしてきたところでございます。

 できるだけ早く実現をするようにということで、安倍総理からも、累次の日米首脳会談の際に、沖縄の基地負担軽減に関する日本政府の立場についてはしっかりと説明してきていると承知をいたしております。

 五年以内の運用停止については、防衛省としては、適切な機会を捉えて米側に対して説明をしているところでございます。

赤嶺委員 説明をしてきたというのは、私たちが、あるいは、当時の仲井真知事もそうだったんでしょうけれども、五年以内の運用停止について日米両政府が外交交渉で交渉をするというのが県民の思いでありました。それを聞いても、仲井真知事の時代から、米側に説明しかしてこなかった、ふんふんと聞くだけで、それで終わった。まさに霧のごとく消えていって、何の反省もない。

 むしろ、普天間基地の危険性を考えたら、運用停止を直ちに米側に求めるべきではありませんか。

原田副大臣 お答え申し上げます。

 辺野古に移設されるまでの間においても普天間の危険性除去は重要な課題であるという認識を仲井真元知事と共有をしておりまして、沖縄県から示された平成二十六年二月から五年をめどとする考え方に基づいて、埋立承認をいただいて、県と協議をしながら、辺野古への移設を進める中で、米軍を始め相手のあることではありますが、全力で取り組んできたところでございます。

 このような経緯を踏まえると、五年以内の運用停止の実現には、普天間飛行場の辺野古移設について地元の御協力が得られることが前提ではございますけれども、普天間飛行場の移設をめぐる状況については、その後、沖縄県が埋立承認を取り消し、さらには埋立承認を撤回するなど、根本的な部分で大きく変化をいたしておりまして、このような状況の中で五年以内の運用停止を実現することは難しいということは、これまで累次にわたって申し上げてきたところでございます。

 その上で、政府としては、普天間飛行場の危険性除去について、これまで成果を積み上げてきておりまして、空中給油機については、先生も御存じのとおり、十五機全機の岩国飛行場への移駐を実現をいたしました。緊急時における航空機の受入れ機能も福岡県の築城基地、宮崎県の新田原基地へ移すことを決定しておりまして、そのために必要となる自衛隊基地の滑走路の延長や弾薬庫の設置など施設整備について、昨年十月、日米合意を行ったところでございます。さらに、辺野古移設までの間、普天間に残るオスプレイの運用機能につきましても、訓練活動の県外移転を着実に進めておるほか、定期整備は千葉県木更津駐屯地において実施しております。

 残念ながら、五年以内ということは実現できませんでしたが、何より、国、沖縄県の双方が、移設が完了するまでの間における普天間飛行場の危険性除去について、認識を共有し得るような環境をつくっていくことが大事であると思います。

 いずれにせよ、政府といたしましては、普天間飛行場の危険性除去と辺野古移設に関する政府の考え方や沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという政府の取組について丁寧に説明をし、御理解、御協力を得られるよう粘り強く取り組んでいく所存でございます。

赤嶺委員 長い答弁でしたが、結論は、辺野古ができ上がる時期は政府としても説明できないが、辺野古に係る予算も説明できないが、しかし、それまで普天間の危険性は甘んじて受けろというような結論にしか聞こえませんでした。

 外務大臣は、普天間基地の負担軽減推進会議の場でどのような発言をされたんでしょうか。

河野国務大臣 私から、主に以下の点について申し上げました。

 沖縄の負担軽減は政府の大きな責任であり、外務省としても最優先課題として精力的に取り組んでいる、普天間飛行場が固定化され、危険なままに置き去りにされることは絶対に避けなければならない、これは地元の皆様との共通認識である、引き続き在日米軍再編の推進や負担軽減の取組につき米軍に協力を求めていく、こうしたことを申し上げました。

赤嶺委員 引き続き、外務大臣に伺います。

 きょう、資料を配付してあります。これは防衛省の目視調査をもとに、普天間基地における外来機の離着陸の状況をまとめたものです。調査を開始した二〇一七年度四月以降の状況を見ると、急増しているのがわかります。とりわけ、ことしに入って以降は、一月に三百七十八回、三月も三百一回に上っています。市に寄せられる苦情件数も、二〇一八年度、これは過去最多になっています。

 政府が今、一日も早い危険性の除去を強調する普天間基地で、何で外来機の飛来が急増しているんでしょうか。外務大臣はどのように認識しておりますか。

河野国務大臣 普天間飛行場における飛行活動などの実施は、米軍の運用上、必要不可欠なものではございますが、他方、航空機による騒音は周辺住民の方々にとり深刻な問題であり、飛行場周辺の騒音軽減は重要な課題の一つとして認識をしております。

 このため、普天間飛行場における外来機の飛来については、防衛省において実態把握に努めていると承知をしております。

 政府としては、これまで累次の機会に、さまざまなレベルから、米側に対し、騒音規制の措置の遵守など、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう申入れを行っております。

 今後とも、米側に対し、航空機の運用に当たり、周辺住民の方々に与える影響を最小限にとどめるよう申入れをしてまいりたいと思います。

赤嶺委員 最小限にとどめるよう申し入れても、外来機はどんどんどんどん飛来がふえていくという状態、これをどのように認識しているかと外務大臣に伺ったんですが、答弁はありませんでした。

 防衛省が辺野古で新たな区域への土砂投入を開始した先月二十五日、普天間基地にはハワイの海兵隊基地からオスプレイ四機が飛来しました。さっき原田副大臣はオスプレイも別のところで訓練するように努力しているとおっしゃっておりましたが、ハワイからオスプレイ四機が飛来したわけですね。

 今月十一日には、米海兵隊のステルス戦闘機F35B十機が相次いで飛来をいたしました。

 一昨年十二月、米軍ヘリの部品落下があった緑ケ丘保育園の神谷園長は、子供たちのおやつの時間にF35が保育園上空を飛行し、子供たちは爆音に耳を塞いでいたと話しています。

 これらの米軍機は何のために普天間飛行場に飛来したんですか。事前の通知はあったんですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 三月二十五日、委員御指摘のとおり、普天間飛行場に、ここに所属ではございません四機のMV22オスプレイが飛来をしております。また、四月十一日には十機のF35Bが飛来をしているところでございます。

 これら飛来につきまして米側に照会をしたところ、作戦保全の必要性から、航空機の移動や訓練に関する詳細には言及いたしかねるという回答があったところでございます。

 また、いずれの場合におきましても、米側から事前の通知はございませんでしたが、飛来の事実につきましては宜野湾市に情報提供を行っているところでございます。

赤嶺委員 普天間飛行場の危険性の除去というのは日本政府の一番大きな課題ですよね。そして、危険性除去のために努力している努力しているということをおっしゃっていたじゃないですか。

 ところが、外来機が飛んでくる、ハワイのオスプレイが飛んでくる、F35Bが飛んでくる。なぜだと聞いたら、米軍は答えてくれない、日本政府はなぜだかわからない、わからないけれども危険性を除去する。これは主権国家ですか。

 自分たちの国に、そして自分たちの国民が米軍の爆音や飛来によって苦しめられている。政府は、国会の答弁では、いや、危険性の除去に努力しているんだといいながら、米軍はどんどん普天間基地の運用を強化している。それを聞いたら、答えられない、教えてくれない、だから説明できない。こんなことでいいんですかね。これは主権国家ですかね。外務大臣、いかがですか。

河野国務大臣 普天間飛行場における飛行活動などの実施は、米軍の運用上、必要不可欠なものではありますが、他方、航空機による騒音は周辺住民の方々にとり深刻な問題であり、飛行場周辺の騒音軽減は重要な課題の一つと認識をしております。

 政府としては、これまでも累次の機会に、さまざまなレベルから、米側に対し、騒音規制措置の遵守など、地元の皆様に与える影響を最小限にとどめるよう申入れを行っております。

 今後とも、米側に対し、航空機の運用に当たり、周辺住民の方々に与える影響を最小限にとどめるよう申入れをしてまいりたいと思います。

赤嶺委員 普天間の負担が増大している。嘉手納でも増大している。危険性の除去というのは建前で、そういう外来機の飛来についてもとめられない。とめられないけれども、県民に向かっては、辺野古をつくらなきゃ普天間は危険性を除去できないぞというような言い方をする。

 もっと、沖縄に向かって物を言う前に、アメリカに向かって、外来機来るなというようなことを言うことが日本政府の役割じゃないか。今、非常に惨めな、主権のない日本政府の姿が見えているんじゃないかということを申し上げまして、質問を終わります。

若宮委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳です。

 まず、質問に入る前に、通告しておりませんが、大臣には、もし感想等があれば伺って、法案の質疑については政府参考人からの御答弁でも結構だということを冒頭申し上げますが、今、赤嶺代議士からも指摘がありましたけれども、まずは、沖縄の弱い立場の女性が殺害され、米軍関係者によって殺害されたという疑いがかかっているわけでございますけれども、故人の御冥福を謹んでお祈りし、日米双方ともに、より真剣にこれは取り組んでいかなければならないということを申し上げさせていただきたいと思います。

 次に、外務委員会ですので、どなたもおっしゃられなかったんですが、あえて申し上げたいですが、フランスのノートルダム寺院の大聖堂が火事に見舞われたということで、我が国も文化を大事にしていますが、本当に文化の歴史、古いものがあるフランスに対し、謹んでお見舞いを私は申し上げたく存じます。

 立て続けで申しわけないですけれども、三つ目は、私が2プラス2をいろいろやった方がいいのではないでしょうかということを申し上げてきて、できれば中国や韓国ともということを申し上げた中で、先ほど寺田代議士が御質問をされておられました。

 北方領土のお話は極めてタッチーであるということを私も十分認識しておりますので、そういった意味では、広い意味でロシアとも2プラス2、我が国の平和の維持強化という意味で進めていただきたいということをお願いいたします。それが三つ目。

 次に、記者会見で大臣はおっしゃられていたかと思うんですが、イランの元大使ですか、前大使ですか、セクハラがあったということで、先日も、私は、別のロシアの課長さんの件で、ベラルーシ着任が大丈夫かという質問をさせていただいた記憶がありますけれども、報道によると、告訴をし、厳しい処分で臨むという記者会見での発言が大臣はあったようです。

 正直、組織ですから、いろいろな方がいるということは残念ながらあるわけですけれども、内閣の大臣の答弁であったり、あるいはこういったセクハラが省内であったりということは、やはり子供たち、孫たちのためには決してよき見本では全くないというような状況に、私は、今政府も国会もあるのではないかというふうに思っております。

 そんな意味で、まず四点ほど指摘させていただきましたけれども、もしお言葉があれば伺いたいと思います。

河野国務大臣 先ほどの沖縄の事件に関しては、故人の御冥福をお祈り申し上げるとともに、今警察が事件の全容解明のための捜査を行っております。その結果を待った上で、再発防止策、しっかりと米軍とともに再発防止に努めてまいりたいというふうに思っているところでございます。

 二つ目、ノートルダム。これは、恐らく多くの日本の方々がフランス国民の方々と悲しみを共有しているというふうに認識をしております。私はてっきり石づくりだと思っておりましたら、相当な量の木材が使われているということであります。修復に何か必要ならば、日本としても協力をいたしますということを、先日、フランスのルドリアン外務大臣宛てメッセージを送ったところでございます。

 三つ目は何でしたか。(杉本委員「2プラス2です」と呼ぶ)失礼、2プラス2。私が外相に就任をしてから、日米、日英、また、ことしに入って、日仏それから日ロと2プラス2をやってまいりました。

 インドとも2プラス2を閣僚レベルで始めるということで合意をいたしましたので、インドの総選挙が終わり、ことしの恐らく後半になるだろうと思いますが、2プラス2を、第一回ということを開催をすることになると思います。先方の用意ができれば日程調整に入りたいと思っております。

 日ロの2プラス2は、さまざま、両国の信頼醸成ということにもつながってくると思いますので、非常に有意義だろうと思っております。今、日程調整をしているところでございますので、正式に確定し次第、発表していきたいと思っております。

 また、セクハラに関して申し上げれば、これは許されるものではないということで、外務省として厳しく臨むということでやってきております。セクハラは被害者がいらっしゃいますので、被害者の思いというものを外務省としてまず受けとめた上で、それに寄り添う形でしっかり対応していきたいというふうに思っておりますが、必要ならば厳しい処分を外務省としてもとるということで最近の事件については対応してきておりますし、また、今後とも、こうした事件があれば厳しい処分で臨んでまいりたいというふうに考えているところでございます。

杉本委員 ありがとうございます。確認させていただきました。

 もう幾つかだけ、ちょっと。

 地球はぐるぐる回っていて、本当に、質問通告した後、いろいろ動きが出てくるという状況であったり、私の把握が若干遅いのかもしれませんけれども、スタン各国ということでこの間も質疑させていただきましたけれども、カザフスタンでは、どうやら議長をされているお嬢さんが世襲で大統領に着任するんじゃないかという動きが出ている。

 直近では、大臣は中国に、世耕経産大臣ほか何人かの大臣と、中国と対話をされているということがあり、やはり隣国中国とは、アメリカとの関係も大切ですが、中国との関係もバランスよくお願いをしていく必要があると思っております。

 加えて、最後、あえて指摘しておきたいのが、皆さんにぜひ共有いただきたいですけれども、OECDの対日経済審査報告、これが出たようで、それで、プライマリーバランス黒字化をするためには消費税は最大二六%まで引上げが必要だという指摘があったようで、かつ、日銀の国債保有比率がGDP比八五%と、ほかの国と比べて高い水準にある点も指摘されたということでございます。

 デフレ脱却ということの中での金融緩和は続いているわけでありますけれども、一方で、我が国の、政府の信頼は正直厳しいと思っていますが、日銀の信頼ですら厳しくなってきているという状況とこの財政危機という状況は、外から見ると、OECDから見て、ここまで厳しい指摘を受ける。フェルドマンさんからも、私、大分前にこの二〇%台の指摘を受けた記憶があるんですけれども、大きな公的機関であるOECDからもこういった指摘がされているという点は、ぜひ、大臣もですし、国会議員の皆様方にも共有をいただければと思っております。

 特に何かございましたら、伺えればと思います。

河野国務大臣 昨日、OECDのグリア事務局長と会談をいたしました。この消費税二〇から二六%というのは、これは純粋に、今の財政を均衡させるために、それ以外の措置を何らとらない、つまり、支出の削減もせず、ほかの税収を上げることもせず、純粋に消費税の税率のみで調整をしようとした場合にどういう数字になるかというのを、これは単純に、数理的に計算をしただけでございますので、何か特定の政策を求めているわけではないというふうに認識をしております。

 いずれにしろ、こうした財政、非常に厳しい状況でございますので、政府としてしっかりと、今立てている財政の目標を後退させることなく、財政再建に努めてまいりたいと思います。

杉本委員 大臣とは財政の問題は共有させていただいていると思いますが、内閣全体として本当に真剣に捉まえていらっしゃるのかなというのは正直私は危惧をしておりますので、そういった意味では、内閣の主要閣僚である大臣には、閣議等でも、担当は麻生副総理・財務大臣でいらっしゃいますけれども、機会があれば、そういった発言をしていただければありがたいと思います。

 あとは法案審議に入らせていただきます。

 重複は避けたいので飛ばすことも多いかと思いますが、外務省さんの我が党への説明でもあったかもしれませんけれども、まず、北極海の関連で、本協定締結の意義、殊にSDGsとのかかわりという点は私は注目したいと思っていますけれども、この点はいかに理解すればいいかということ。

 それと、ちょっと重ねて、御説明にあったんですけれども、十カ国批准するんだけれども、日本が先頭を切っていくんだというような、日本がイニシアチブをとるというような御発言だったかと思うんですけれども、先行的に批准するというか、進めていくところの意義は一体何なのか、効果はどうなのか。

 もう一つだけ言っちゃいますけれども、共同計画というのがあるようで、このイニシアチブをとることを目指しているのかどうか。あくまでも、やはり北極海ですから、周辺国というか、沿岸国五カ国主導で、それを補完的に我が国は動こうとしているのか。

 こういった点について、ちょっとまとめて恐縮ですが、御答弁をいただければと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず、この協定の目的でございますが、協定水域である中央北極海の公海水域につきまして、漁業資源に関する予防的な保存管理措置の適用を通じて規制されていない漁業を防止するということでございますので、この協定の締結によりまして、我が国にとっての漁業機会の保全、確保をするということが一つ。また、もう一つは、協定の枠組みを通じて法の支配の促進に貢献するという意義を有するものでございます。これらは、持続可能な社会を志向するSDGsの実施にも資するものであると考えております。

 また、二つ目に、委員から、我が国が他国に先んじて締結する意義についてお尋ねがございました。

 実は、三月末の時点でロシアが締結したという情報が寄託国政府であるカナダから寄せられております。

 いずれにしましても、この協定自体は十カ国全てが締結して発効するということでございまして、我が国としては、やはり北極に関する国際ルールの形成、ここに積極的に参加することが大事であると受けとめておりまして、そうした観点から、早期に締結させていただきたいと考えておる次第でございます。

 最後に、三つ目としまして、共同計画の策定にどうかかわるのかというお尋ねがございました。

 確かに、委員御指摘のように、沿岸国と漁業国五カ国ずつという違いがありますが、実はこの協定の一つのみそは、沿岸国と漁業国がいわば同じ立場に扱われているということ、ここは漁業国である我が国としては最大限に活用していくべきであろうと考えております。

 したがいまして、共同計画の策定につきましても、沿岸国任せにするのではなく、むしろ、我が国としてもこれらの議論に積極的に貢献してまいりたいと考えております。

杉本委員 山上経済局長、ありがとうございます。

 積極的平和主義と掲げる我が国の外交ですから、そういった意味では、沿岸五カ国主導ということではなくて、積極的にぜひ我が国も、日本国も関与していただきたいとお願いを申し上げます。

 それで、次に、ちょっと重複を避けたいんですけれども、どうしても御答弁が重なるかもしれないですが、協定水域の範囲、これは、例えば広さでいくと東京ドーム何個分ですみたいな話がよくあるわけですけれども、例えばインド洋ぐらいの規模なのかどうか。この協定水域の範囲というのが、氷があって、温暖化で氷が小さくなっていっているとかいうような話もありますけれども、氷の部分、漁獲可能部分は、どの程度その中で占めるのか、また、夏と冬でどれほど違うものなのか、教えていただければ。

 あわせて、ちょっとテクニカルですけれども、一番をとりたかったですけれども、残念ながら、ロシアが先に三月末にということだったので、二番に甘んじることになりましたけれども、この協定で、テクニカルな確認として、カナダが受領し、その後三十日に発効、三十日たってという意味だと思いますけれども、発効するとありますけれども、地球は丸くてと何度も言っていますけれども、時差があるわけですけれども、カナダの受領日から起算して、受領日は含まない日数がこの三十日であるという認識でよいのかどうかも確認させてください。

山上政府参考人 お答えいたします。

 まず最初に、協定水域の広さでございますが、これは北極海の公海部分ということで、数値にしますと約二百八十万平方キロメートルでございまして、地中海が約二百五十万平方キロメートルでございますので、ほぼ似たようなサイズかというふうに受けとめております。

 氷との関係でございますが、現時点におきましては、この協定水域のほとんどは氷に覆われております。協定水域に限定した氷の面積を含めて、氷の割合とその他の割合というのは現時点で詳細なデータはございませんで、むしろ今後の科学的調査などによって明らかになるものと考えます。

 一つ参考までの数値でございますが、この協定水域ではなくて北極海全体ということでございますれば、過去五年間の記録では、冬場には氷が約千四百万平方キロメートルまで拡大する、片や夏場には四百万平方キロメートル台にまで縮小しているというふうに理解をしております。

 また、最後に、三十日の起算の仕方でございますが、ここは委員の御指摘のとおりでございまして、受領の日は含まない、その翌日から数えて三十日で効力を生ずるということでございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 次の質問はちょっと重複になりますので飛ばさせていただいて、この協定の発効の見通しと、障害が何かまだあるかどうか、この点を確認させてください。

山上政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御説明いたしましたとおり、協定の発効は、十カ国全てが締結することによって効力を生ずるということでございます。

 先ほど申し上げましたとおり、ロシアが既に手続を終えている、また、日本も国会の御承認をいただければ締結できるということで、いずれにしましても、この十カ国相互の間では、できる限り早く締結しようではないかという意思の合致がございます。

 例えば、ほかの国でも、アメリカなどでは、この協定につきましては議会の承認を要さないことになっているというような制度の国もあるようでございますので、ぜひ、我が国としては、率先して締結することによって他国の締結を働きかけたいと考えております。

杉本委員 恐縮です。内閣府の重田局長さんと国交省の大坪海事局次長さんにお運びいただいているんですけれども、ちょっと時間がなくなってきたので、済みません。

 最後の質問ということで、南極の問題を確認させていただきたいんです。

 南極条約、一九五九年に十二カ国の採択の中で日本が入って、現在五十三カ国という状況のようで、そして、現時点で、南極条約に絡む協議国会議というのがあるようでございますけれども、私が確認した限り、観光問題が環境問題に影響を与えているような情報を入手しているんですけれども、この南極をサンクチュアリーとするべきであると私は思っていますけれども、領土の保有を主張している国もあるようですけれども、この環境保全といったようなことを含めて、ちょっと南極の現状を、概括、確認させていただければ。

 これを最後の質問にしたいと思います。お願いします。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 南極地域につきましては、委員御指摘のとおり、南極地域の平和的利用、科学的調査の自由及び国際協力の推進等を内容とした南極条約、これがございます。

 そして、同条約のもとには、南極の環境と生態系を包括的に保護することを目的とし、南極地域を平和及び科学に貢献する自然保護地域として指定する環境保護に関する南極条約議定書がございます。

 さらに、南極地域の各種海洋生物資源の保存のための取組について定めた南極の海洋生物資源の保存に関する条約などがございます。

 こうした国際的枠組みは、南極地域の環境保全のための取組を推進する上で非常に重要な役割を果たしていると認識しております。

杉本委員 ありがとうございます。

 以上で終わります。

若宮委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 希望の党の井上一徳です。

 まず、北極海関連の質問をさせていただきたいと思います。

 質疑の中でも、「我が国の北極政策」として平成二十七年十月十六日に総合海洋政策本部が決定したものがあり、その中で三つ、研究開発、国際協力、持続的な利用ということで、これを三本柱として取り組んでいるという話がございましたが、改めて、我が国にとっての北極の戦略的位置づけ、それから、海氷の減少に伴い、我が国に対してどのような影響があるのか、御説明いただきたいと思います。

重田政府参考人 お答えします。

 日本の北極の戦略的位置づけいかん、こういうことでございますが、我が国は、北極の気候変動を極めて受けやすい地理的位置にありまして、また他方、アジアにおいて最も北極海に近く、その航路の利活用や資源開発など、経済的、商業的機会を享受し得ることから、北極政策は重要な政策課題と認識しております。これまで、民間のヤマルLNGプロジェクトに関連した北極海航路の利用など、取組の進展が図られてきております。

 委員御指摘のように、平成三十年五月、昨年五月でございますが、閣議決定されました第三期海洋基本計画では、第一期、第二期と比べまして、この北極政策を独立した一つの重要な施策として位置づけております。研究開発、国際協力、持続的な利用に係る諸施策を引き続き重点的に推進してまいります。

井上(一)委員 今の答弁の中で、やはり我が国は気象の影響も非常に受けやすいという話がございました。

 資料の二でつけておりますけれども、「北極海の海氷減少がもたらす初冬のユーラシアの低温」ということであります。

 お聞きしますと、こういった北極海の海氷減少は、日本における異常な気象現象を引き起こして、豪雪等が増加するのではというふうに専門家の方が言われているということをお聞きしましたが、この点について、もう少し詳しく気象庁の方で説明していただけますでしょうか。

大林政府参考人 お答えいたします。

 北極海の海氷が日本の気象に与える影響につきましては、さまざまな研究が行われております。委員がお示しになったものはその一例でございまして、気象庁が開催しております異常気象分析検討会において報告されたものでございます。

 これは、冬季において、北極海の海氷の減少によってシベリア高気圧が強まり、これにより日本付近が低温となるという研究成果と承知しております。

 気象庁といたしましては、研究の進展を周知しつつ、一定の成果が得られたものにつきましては、当庁の業務に活用してまいります。

井上(一)委員 いろいろな影響があるということで、この点についてはまた研究開発をしっかりやっていただきたいというふうに思います。

 それでは、この協定ですけれども、あくまでも公海漁業を防止する、制限をするという協定になっています。

 先ほど、南極については、いろいろ、南極地域の平和利用とか科学的調査等々、包括的な条約となっておりますけれども、この北極では、漁業に関する取決めに今のところ限定されているということで、漁業の規制のみで十分なのかどうか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

山上政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、陸地のある南極と違いまして、北極は海洋であるということで、まずは、基本的な法的枠組みとしては、国連海洋法条約の関連する国際法が適用されるわけでございまして、その上で、具体的な分野については、必要に応じて追加的に枠組みが検討されることになるということで、漁業の分野につきましては、まず北極海の沿岸五カ国がイニシアチブをとる形で、主要漁業国である日本などの五カ国に働きかけて、この協定、ルールづくりが進んできたという経緯がございます。

 しからば、では漁業以外はどうなのかということで、これは今後の協力の発展、それから実態の積み重ねというものが大きな影響を与えるんだろうと思います。

 現時点で、漁業以外に何か法的ルール、枠組みをつくろうとする動きがあるのかというお尋ねであれば、現在のところは承知しておりません。

 ただし、必要に応じ、今申し上げたような全体の枠組み、それから追加的な協力という枠組みがございますので、必要に応じて、漁業以外の分野でも枠組みが検討されることになると考えております。

井上(一)委員 資料一で、平成二十六年版の防衛白書からとってきた地図を載せているんですけれども、ロシア、米国、カナダ等々、いろいろ北極海に関しては関係が深いということであります。それぞれの国について、北極海に対してどのような戦略的な意義を持っているのかということをお聞きしたいと思います。

 まず、ロシアにつきましては、二〇〇七年以降、長距離爆撃機による北極圏での哨戒飛行を再開したということ、それから、ここにコテリヌイ島というふうに地図で描いてありますけれども、ここに北洋艦隊の艦艇が資材を運んで、ここにある飛行場が再開され、そして海軍の航空部隊が北極海航路上の哨戒飛行を強化しているというようなことであります。

 まず、ロシアにとって、北極海の戦略的位置づけ、これはどうなっているか、教えていただきたいと思います。

齊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 北極圏国であるロシアは、安全保障や資源開発を含む経済の側面から北極に高い関心を有していると承知しております。

 本年二月には、極東発展省が北極圏開発を担当する極東・北極発展省に改編され、先週には、プーチン大統領出席のもと、我が国を含む関係国を招いた国際北極フォーラムを開催しております。特に、経済面においては、北極圏に位置するヤマル半島のLNGプロジェクトを推進し、二〇一七年二月には、同半島より初めてLNGを出荷したと承知しております。

 また、氷の減少を背景に、北極海航路の潜在性に関心が集まっていることから、沿岸国として北極海航路の整備に注力しているものと承知しております。

井上(一)委員 同じように、次に、中国の北極政策について聞きたいと思います。

 この審議の中でも、氷上のシルクロードを建設するという話がございました。二〇一五年には、中国艦艇五隻が、北極海と太平洋の間にあるベーリング海、ここに艦艇を出したということで、将来的に北極海に進出する足がかりにしているのではないかというような話もありますけれども、中国の北極政策、これについて伺いたいと思います。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中国は、一九九〇年代半ば以降、北極調査を本格化しておりまして、とりわけ近年におきましては、北極圏諸国との首脳外交の展開、あるいは国産の砕氷船の建造といったことを進めております。昨年一月には、中国として初めての北極政策に関する白書を発表するなど、積極的に北極に進出する動きを見せていると承知しております。

 こうした中国の北極政策の動向につきましては、我が国としても日ごろから注視しているところでございまして、中国の関連動向について引き続き情報収集してまいりたい、このように考えております。

井上(一)委員 最後に、アメリカについても聞いておきたいと思います。

 二〇一六年の十二月に、オバマ大統領は、海洋資源を保護するために北極圏の大半などにおいて新たな石油、天然ガスの掘削を禁止する決定をしたということでしたが、トランプ大統領になって、このオバマ大統領の決定を覆す大統領令に署名したというような状況です。

 アメリカが北極海についてどのような戦略を持っているのか、教えていただきたいと思います。

鈴木(哲)政府参考人 お答えいたします。

 アメリカにつきましては、二〇一三年、オバマ政権のときでございますけれども、北極圏国家戦略を策定しております。同戦略において、一つには安全保障上の利益の増進、二つには北極圏の責任ある管理、三つ目には国際協力、この三つを柱として北極に取り組んでいくことを明記しております。

 また、アメリカは、北極評議会、あるいはアメリカが立ち上げました北極科学大臣会合、これに積極的に参加をすることによって、関係国とともに、北極における持続可能な開発、それから環境保護といった課題の解決に向けて取り組んでいるものと承知しております。

井上(一)委員 それぞれ、ロシア、中国、アメリカ、いろいろな考え方を持って北極海に対して向き合っていると思いますけれども、やはりこういった大国は国益をかけてぶつかり合うという可能性も考えられますので、先ほどの「我が国の北極政策」についても、安全保障の観点も踏まえて、ぜひ取り組んでいただきたいというふうに思います。

 次に、燃料油汚染損害の民事責任条約、これについて質問をさせていただきます。

 まず、タンカーの場合は、油流出によって、国際条約で、独自の責任限度額を設定した上で、その賠償が不十分なときは補償基金による補償がなされるということになっております。他方で、本条約では、責任制限ということで、タンカーのような基金も存在しないので、十分な補償とならない可能性もあるのではないかというふうに考えられますけれども、この条約で十分対応が可能となっているんでしょうか。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 タンカーによる油汚染損害については、確かに、汚染規模は極めて甚大となることが多いことから、例外的に、油汚染損害の民事責任条約において、独自の責任限度額を定めた上で、船舶所有者による賠償のみでは被害額を補填できないことを想定し、国際基金による補償の枠組みが定められているところでございます。

 他方、タンカー以外の船舶による燃料油汚染損害については、責任限度額を超える規模の汚染損害を生ずること、これは非常に少ないということから、IMOにおける条約交渉の場において、CLC条約や基金条約のような特別の枠組みを設ける必要があるということの議論にはならず、現行の枠組みとなったものでございます。

井上(一)委員 そういう可能性は少ないということではありましたが、やはり、絶対ないかといえば、そういうことはないと思うんです。

 もし、この責任制限では対応できない、地方自治体の負担がどうしても出てしまうというようなときに、政府としてその自治体に対して何らかの支援があるのかどうか、お答えいただきたいと思います。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 タンカー以外の船舶による燃料油汚染損害については、先ほど申しましたように、責任限度額を超える規模の汚染損害を生ずることは少ない。しかし、例外的な事例が発生したこともあることは事実でございます。

 例えば、二〇〇八年に明石海峡で発生した船舶三隻の衝突事故では、地元自治体が沈没船舶から油の抜取りを実施し、責任限度額を超えるような負担が発生したと承知をしております。

 この件につきましては、沈没した船舶の所有者からは、当時の責任限度額に相当する約一億七千万円が賠償されました。しかし、それを超える部分につきましては、地方自治体に対する国による補助として、国庫補助金七億円、特別交付税五億円が支出されたというふうに承知をしております。

井上(一)委員 やはりそういう可能性もあるので、政府としてしっかり支援をしていただきたいということを申し上げ、質問を終わりたいと思います。

若宮委員長 これにて各件に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 これより各件に対する討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 まず、中央北極海における規制されていない公海漁業を防止するための協定の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

若宮委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千一年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

若宮委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 次に、二千七年の難破物の除去に関するナイロビ国際条約の締結について承認を求めるの件について採決いたします。

 本件は承認すべきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

若宮委員長 起立総員。よって、本件は承認すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各件に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

若宮委員長 次回は、来る二十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.