衆議院

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第9号 平成31年4月24日(水曜日)

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平成三十一年四月二十四日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 若宮 健嗣君

   理事 小野寺五典君 理事 木原 誠二君

   理事 新藤 義孝君 理事 武井 俊輔君

   理事 堀井  学君 理事 寺田  学君

   理事 小熊 慎司君 理事 遠山 清彦君

      穴見 陽一君    泉田 裕彦君

      小田原 潔君    小渕 優子君

      黄川田仁志君    高村 正大君

      佐々木 紀君    杉田 水脈君

      鈴木 憲和君    鈴木 隼人君

      辻  清人君    中曽根康隆君

      中山 泰秀君    三ッ林裕巳君

      山田 賢司君    岡田 克也君

      櫻井  周君    山川百合子君

      青山 大人君    高木 陽介君

      穀田 恵二君    杉本 和巳君

      玄葉光一郎君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         河野 太郎君

   外務副大臣        あべ 俊子君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   外務大臣政務官      鈴木 憲和君

   外務大臣政務官      辻  清人君

   外務大臣政務官      山田 賢司君

   防衛大臣政務官      鈴木 貴子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  清水 茂夫君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   下川眞樹太君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 桑原  進君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 安藤 俊英君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 船越 健裕君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宇山 秀樹君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            岡   浩君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   岡村 健司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房輸出促進審議官)       渡邊 厚夫君

   政府参考人

   (水産庁次長)      山口 英彰君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長)   松永  明君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁資源・燃料部長)        南   亮君

   政府参考人

   (国土交通省航空局航空ネットワーク部長)     久保田雅晴君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 石川  武君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十四日

 辞任         補欠選任

  黄川田仁志君     三ッ林裕巳君

  高村 正大君     泉田 裕彦君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     高村 正大君

  三ッ林裕巳君     穴見 陽一君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     黄川田仁志君

    ―――――――――――――

四月二十三日

 投資の促進及び保護に関する日本国とアルゼンチン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスペイン王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とクロアチア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とコロンビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエクアドル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 投資の促進及び保護に関する日本国とアルゼンチン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスペイン王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とクロアチア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とコロンビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエクアドル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

若宮委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房長下川眞樹太君、大臣官房審議官飯田圭哉君、大臣官房審議官桑原進君、大臣官房参事官安藤俊英君、大臣官房参事官船越健裕君、大臣官房参事官宇山秀樹君、中東アフリカ局長岡浩君、内閣官房内閣審議官清水茂夫君、財務省国際局次長岡村健司君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君、農林水産省大臣官房輸出促進審議官渡邊厚夫君、水産庁次長山口英彰君、経済産業省大臣官房福島復興推進グループ長松永明君、資源エネルギー庁資源・燃料部長南亮君、国土交通省航空局航空ネットワーク部長久保田雅晴君、防衛省防衛政策局次長石川武君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

若宮委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

若宮委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。

小野寺委員 きょうは質問の機会を与えていただきまして、理事そしてまた同僚議員に感謝を申し上げます。

 まず、きょうお伺いしたいのは、WTOにおきます今回の日本の逆転敗訴と言われている内容について質問させていただきたいと思っております。

 韓国による東京電力福島第一発電所事故の被災地からの水産物の全面禁輸を、これはWTOの場で日本としては科学的根拠を持って日本の主張が正しいということをずっと訴えてき、そして、第一審、小委員会では日本を支持する判断が出ました。ところが、今月十一日でありますが、その上級審であります上級委員会において、韓国の禁輸を不当な差別とした第一審、小委員会の判断を破棄するという報告書が出ました。これは事実上、日本の逆転敗訴と報道されております。

 ただ、その際、政府は、日本産食品の科学的な根拠については証明されているということを繰り返し発表されておりますが、ここに来まして、実は、有識者の方から、実際には第一審の報告書には日本産食品は科学的に安全との記載はなかったということ、これを学識経験者等が、数人ではありますが、指摘をし、そして報道機関に広く報じられております。

 とすれば、日本政府が言っていることが違うということになりますし、また、被災地におきまして、水産食品は安全だと主張してきた多くの生産者や流通業者の言っていることが違うということになります。

 政府としてどのような見解をお持ちか、お伺いをしたいと思います。

河野国務大臣 我が国は、適切な基準値の設定、モニタリング及び適切な出荷制限管理により、日本産食品の安全性を確保してきております。

 これらの取組により、パネルでは、日本産食品中の放射性セシウムの濃度が、国際的な基準を踏まえて設定された日本及び韓国の基準値、一キログラム当たり百ベクレルを下回ることを認めております。

 例えば、パネルの報告書のパラ七・三〇九においては、パネルが選任した専門家は、日本が提供したデータが、二〇一五年までに日本産食品中の放射性セシウムの濃度が一般的には一キログラム当たり百ベクレルを下回る水準に戻ったことを合理的に支持することを確認したと記述されております。

 また、上級委員会は、韓国側の輸入規制がWTO協定に違反するとしたパネルの判断について、その分析は不十分であるとして取り消す判断をいたしましたが、既にパネルが認めている日本産食品の安全性に係るパネルの事実認定は上級委員会でも変わりませんでした。

 四月二十六日に開催される予定のWTO解決機関会合において、上級委員会が変更を加えた部分を除くパネルの報告書及び上級委員会報告書の両方が採択されることになります。つまり、日本産食品の安全性に関する事実認定部分は、上級委員会によって変更されていないため、そのまま採択されることになります。

 一部のメディアが、あたかも日本産の食品の安全性に疑義があるかのようなことを想起させるような極めて不適切な報道をしていることは、これまでの被災地の方々の努力を無にしかねないものであって、極めて遺憾であると思います。

 政府としては、そうした誤解を招きかねない報道についてはきちんと訂正をしていきたいというふうに考えております。

小野寺委員 私も被災地に住む者の一人として、水産関係の皆さんが一つ一つきちんと測定をし、全く影響がないということを確認をした上で出荷をしているという姿をずっと見ております。その積み上げた努力を、このような報道あるいは一部の学識経験者の指摘ということ、これで世界にそれは事実ではないということを知らしめることは、日本にとっては大きな損失でありますし、また、被災者にとっては許しがたいことでもあります。ぜひ、このような、誤解なのか、しっかりとした根拠を持ってこれらのことについては打ち消していただきたい、そう思っております。

 もう一点確認をさせていただきたいんですが、下級審、小委員会では日本の主張が認められたということですが、それならば、どうして上級審において今回このような結果が出たのか。

 私は、このWTOの問題については、従前からその不健全なあり方ということが国際社会の中で議論されているのは認知をしておりました。であれば、もしかしたら、このような、私どもからしたら、おかしな判断が上級審でも出るのではないか、そういう不安も当然あったと思います。本来であれば、それも踏まえてしっかりと対応すべきだと思いますが、今回、なぜこのような逆転敗訴になったか、その原因についてお答えをいただきたいと思います。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 本事案において、WTO上級委員会は、韓国側の輸入規制措置がWTO協定に違反するパネル、第一審でございますが、その判断について、その分析、法的分析が不十分であるとして取り消す判断をしたということは委員の御指摘どおりでございます。他方で、上級委員会は、韓国の措置がWTO協定に整合的かどうかは明示的には判断しなかったというふうに理解をしているところでございます。

 WTO紛争解決制度は、貿易上の紛争を解決するための制度にもかかわらず、今回の上級委員会の報告書が、主要争点となった措置自体について協定違反かどうかの判断を明示的に行っておらず、紛争解決に資さないと我々は考えているところでございます。

 そもそも、WTOは自由貿易をつかさどる国際機関でありますし、設立協定、マラケシュ協定にも、前文で、貿易障害を実質的に軽減し、国際貿易関係における差別待遇を廃止する、自由貿易体制を維持発展させるという理念を有しているところ、我々としてはこれは非常に問題だというふうに認識をしているところでございます。

小野寺委員 本来、この上級委員会も、委員のメンバーがたしか七人ほどいて、その中から今回三人を選ぶというような、それが基本だというふうに聞いておりますが、実際、現在この委員は四名しかいない、そのうち三名を選ぶという、逆に言えば、この上級委員会自体が非常に機能不全に陥っているということもあります。ぜひ、WTO改革自身もしっかり対応していただきたい、そのように思っています。

 さて、その中で、そうはいっても、もう敗訴という形、これはもう仕方がないことでありますし、それから、この再開に向けて外務省は努力をしていただいておりますが、昨日も金杉大洋州局長が韓国側の局長と議論をしましたが、韓国側としては、これは韓国の国民の健康と安全が最優先ということで、日本の申入れについては応じないということになります。恐らく、今後、韓国の日本の被災地からの水産物の輸入禁止というのは相当期間続くのではないかと思っています。

 その中で心配なのは、実は今回、被災地の中でさまざまな水産物に影響が出ているんですが、特にホヤの影響が大変大きいと言われています。特に、韓国ではホヤの需要が高まり、日本産のホヤが非常に高値で取引をされておりました。ただ、今回の状況において、ホヤが韓国に輸出できないということが続いておりますし、これによって漁業者が大きな打撃を受けております。このことに対して東京電力が従前から補償をしていただいている、それは感謝をいたします。

 ただ、実は、この補償なんですが、つい先ごろ、ホヤの漁業団体であります宮城県の県漁協と東京電力が合意をしたことがあります。それは、恐らく今回のWTOの小委員会、パネルで日本は勝つだろう、日本が勝つということは韓国へまたホヤが輸出できる、実はそのことを前提として、今回、県漁協と東電が合意した内容というのが、二〇二〇年をもってこの補償は終了する、あるいは、ホヤの処理というのは、当然売れないものですから、それを廃棄物として処理をする、その廃棄物の処理費は二〇一八年をもって終了する、実はこういう合意をしてしまっています。

 これはあくまでも日本が勝訴するということを前提に行ったということですが、今回、逆転敗訴となりました。ということは、漁業者は、今後、韓国に輸出はできない、だけれども、東電からの補償は二〇二〇年で終わってしまう。

 このような状況について、これは日本政府としてしっかり東電に対してこの補償について求めていく姿勢が必要ではないかと思いますが、きょうは経産省に来ていただいております、ぜひ、国として東京電力に、ホヤを含めた補償について、しっかりと申入れをすることについて確認をしたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 宮城県産のホヤに関する賠償につきましては、現在、宮城県の漁業協同組合から東京電力に対しまして、状況の変化を踏まえました合意内容の再協議の申入れがなされていると伺っております。現在、東京電力におきましても、この申入れを踏まえまして、しっかりと真摯に対応を検討しているものと承知しております。

 経済産業省といたしましては、今後とも、厳しい状況に置かれました漁業者の皆様の状況に寄り添いながら、賠償につきまして誠実かつ適切な対応が行われるよう、東京電力をしっかりと指導してまいりたいと考えております。

 以上でございます。

小野寺委員 現場の漁業者の声として、これは今月の十三日、地元の河北新報に出た内容でありますが、漁業者としては、早ければ来年か再来年には輸出が再開できると見込んでいた、崖から突き落とされる気分だ、このような話をしております。

 そして、私どもとしては、このホヤをこれからも安全な食品として世界に売っていきたいと思いますが、まずその主な取引先の韓国は難しいということになると、当然、ホヤの漁業者には大打撃になります。ぜひ、補償を最後までしっかり対応できるように、これは国として、ある面ではWTOの交渉に敗訴したということが原因でありますので、対応していただきたいと思っております。

 さて、その中で、確かにこれは、ホヤがなかなか海外に売れないということになれば、国内で供給がだぶついてしまう。そうすれば、ほかの魚種に転換ということも一部考える必要があると思います。

 ホヤからほかの漁業種に転換するということでありますが、実は、これもその新聞の記事によりますと、女川町でホヤ養殖を営む方ですが、別の魚種に転向するにも資材や人手の確保が難しいということ、これはむしろ、水産庁がしっかりとこれらの漁業者に対して、ホヤから別な漁業種への転換ということも支える必要があると思いますが、水産庁の取組についてお伺いをしたいと思います。

山口政府参考人 お答えいたします。

 宮城県のホヤ養殖業は、東日本大震災以降、着実に生産回復が進み、国内市場拡大の取組を行ってきておりますけれども、韓国への輸出の需要を超える規模の需要創出にまでは至っておらない状況でございます。

 韓国の禁輸措置が継続している状況に鑑み、政府といたしましては、国内の販路を開拓する取組に対し各種の支援を実施しているところであり、国内最大のホヤ生産地が維持発展できるよう引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

 ただ、残念ながら、韓国の禁輸措置が当面継続される場合には、やむを得ずホヤ以外の養殖魚種に転換を希望する養殖業者も出てくると考えております。こういった方々に対しましては、地域の行政、水産団体等関係機関の意向も伺いながら、速やかな魚種転換が実現できるよう検討してまいりたいと考えております。

 東日本大震災の被災養殖業者に対しましては、がんばる養殖復興支援事業により経営の再開を支援しておりまして、これまで、宮城県、岩手県等九百八十一の養殖経営体がこの事業を活用し、速やかな養殖業の再建を果たしておられます。今回の宮城県のホヤ養殖業者に対しましても、この事業の活用を視野に入れた支援を検討してまいりたいと考えております。

小野寺委員 震災復興から水産庁がさまざまな事業で被災者を支援していただいたことには感謝を申し上げます。

 ただ、こういう事業というのは、一回使ってしまうと二回目はないというのが普通であります。この事業を使ってホヤの再開をした漁業者は、今度はホヤからほかに転換しなきゃいけないということになります。その運用についてぜひ柔軟な対応をお願いしたいと思います。

 私ども震災の被災地の者からしましたら、今回のWTOでの敗訴というのは大変悔しい思いをしております。まず、この改革をお願いしたいということ。それからもう一つ、そうはいっても、今困っている多くの方々がいます。そのことに関して丁寧な対応をしていただくことを改めてお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・無所属フォーラムの櫻井周です。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、アメリカとの貿易協定に関する交渉について質問させていただきます。

 この交渉については、昨年の九月の日米共同声明において貿易協定の交渉を開始するというふうに、これはもう既に報道されているとおりでございます。このときに、FTAというのかTAGというのかというところは一つ我々も議論させていただいたところではございますが、ただ、その後、実際の協議がスタートしたのは今月に入ってからということで、いつごろ交渉が終わるのか、交渉が妥結するのかということについてまずお尋ねをしたいというふうに思っております。

 報道されているところでは、早期の成果、それから議論を加速というようなことを言っている。一方で、マスコミ報道では、交渉決着は二〇二〇年ごろではないのか、こんなふうにも言われておりますが、この交渉スケジュールの見通しについてまずお伺いをいたします。

清水政府参考人 お答えいたします。

 先週、米国ワシントンにて第一回目の日米物品貿易協定交渉を行い、茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で、今後、昨年九月の日米共同声明に沿って協議を行い、早期によい結果を出したいということで一致したところでございます。

 今後の具体的なスケジュールにつきましては、今後、日米で調整することになっております。

 交渉の結果をまとめる時期につきましては、現時点で予断することはできず、交渉を進める中でタイミングは見きわめることになると思いますが、できる限り早期にいい結果を出したいと考えているところでございます。

櫻井委員 日本とアメリカの貿易のことについては、日米同盟と言われながら、一方では、特に一九八〇年代、九〇年代にもありましたけれども、貿易摩擦、時には貿易戦争とも言われるぐらい激しい時代もございました。しかしながら、そうした時代であっても、日米安保のこういった同盟関係については取引材料にしないというのが双方の共通認識であったと思います。

 ところが、トランプ大統領は今までのアメリカの大統領とはちょっと違う方のようにもお見受けするというところで、特にディールが大好き、こういうことを公言されているような方でいらっしゃいます。何でも交渉材料に使えるのであれば取引材料に使ってしまうのではないのか、そんなふうにも心配をするところです。

 特に、今のこの時点で、二〇一九年のこの時期に始めると、どんなに急いでやったって一年ぐらいかかるだろう、そうすると、二〇二〇年、大統領選挙で一番盛り上がっているときに結果を求められるということになると、なかなかあちらとしては譲れるものも譲れなくなってしまう、そんな時期に差しかかるのではないのか、こんなふうにも心配をするところです。

 ちょっと大臣にお伺いをしたいんですが、この日米貿易協定の交渉、これが日米同盟にどのような影響を与えるのか、大臣の御所見をお聞かせください。

河野国務大臣 日米関係は、安全保障、人的交流、そして経済関係の三本柱ということで成り立っているんだろうと思います。

 一九九〇年代初頭には、アメリカの貿易赤字の約三分の二が日米間に起因するものだったということで、貿易摩擦の時代と言ってもよかったのかもしれません。しかし、さまざまな、日本の、特に製造業が対米直接投資を行うことによって、日米間の貿易摩擦、貿易赤字は減り、日本企業がアメリカのさまざまな州で多くの雇用を生み出すという状況ができて、貿易摩擦の時代と言われている時代から、現地の雇用、現地の経済に日本の企業が貢献をする、そういう時代になってきたと言っていいのではないか。日米経済はむしろ協調の時代と言われる時代になり、日米関係のベースの一つとなってきたと言ってもいいのではないかというふうに思っております。

 そういう中で、茂木大臣とライトハイザー通商代表の交渉が始まったわけでございますから、この交渉を通じて、日米間の投資・貿易を更に拡大をさせ、安定した日米関係をつくっていくように努めてまいりたいと思っております。

櫻井委員 今大臣おっしゃられたとおり、一九八〇年代には激しい貿易摩擦があって、ちょうど私も中学生でしたけれども、アメリカに一年間いて、当時の地元の報道なんかでは、中国の方が日本人と間違えられて殺されちゃったとか、何かそんな事件まであったのを記憶をしております。それぐらい激しいものがございました。

 しかし、そういったことも踏まえて、日本の、特に製造業、自動車メーカー等は、やはり純粋な商売というふうには割り切れないものだ、やはり政治にもちゃんと目くばせをしなきゃいけないということで、地域の雇用とかそういったことにも配慮するということで、アメリカにもいろいろ工場をつくったという大臣の今のお話のとおりだと思います。

 一方で、アメリカ・メーカーと言われるような自動車会社の方は、むしろ、メキシコとか海外に出ていって、日本メーカーの方がアメリカ・メーカーじゃないかみたいな、そういったちょっとねじれた状況もあろうかと思います。

 ただ、そうはいっても、やはり一九八〇年代の記憶がいまだに残っている方々もアメリカの中にはそれなりにいらっしゃるようで、やはり日本はアメリカに自動車をどんどん輸出しているのではないか、確かに輸出している部分もありますけれども、それは日本が、ある種、為替が円安に振れて、どんどん輸出しやすいようにしているのではないのかということを言っている人たちもいるのも事実だと思います。

 今回の日米の貿易協定の交渉に当たっては、ムニューシン財務長官が、為替も議題となり、協定には通貨切下げを自制する為替条項を含めることになるというような発言もされているというふうに報道されているところです。

 そこで、ちょっとお尋ねをいたしますが、今回の日米の貿易協定において、為替も議題となるんでしょうか。

岡村政府参考人 お答え申し上げます。

 貿易協議に関連いたします為替の取扱いでございますが、これは二〇一七年二月の日米首脳会談における合意のとおり、専門家でございます日米の財務大臣間で緊密な議論を行っていくということでございます。

 そして、今回、ムニューシン財務長官と麻生財務大臣が面会をするわけでございますが、この面会では、二国間、多国間の幅広い経済、金融に係る事項について議論を行う予定でございまして、したがいまして、為替につきましても議題となるということは十分想定されるわけでございますが、いずれにしましても、専門家であります財務大臣同士での議論ということでございますので、これは茂木大臣とライトハイザー通商代表との間で行われております通商交渉の一部ということではないということで認識をしてございます。

 いずれにいたしましても、米国との協議におきましては、為替につきましても日本の国益をしっかりと確保してまいりたいという所存でございます。

櫻井委員 この貿易の協定についての交渉は茂木大臣が日本側の主たる窓口になって交渉するということ、そのことは了解しておりますが、ただ、そこで完結する話じゃなくて、これは二国間ですから、ほかの担当の大臣も話に加わる、為替については麻生大臣が話をして、結局、だから、貿易協定の中に為替条項が入るかどうかというのが一つポイントだと思うんですね。例えば、メキシコ、カナダとの協定、昔、NAFTAと言っていたものが、改定をされてUSMCAというようなことになったわけですが、ここには為替条項が入っている。

 こういった形でまた入ってくることになるのではないのか、こういう質問なんですけれども、どなたが担当しようが、協定の中にこういったものは入ってくるというふうに想定されるということでよろしいでしょうか。

岡村政府参考人 お答え申し上げます。

 米国と為替条項の事柄についてどういったやりとりをしておりますかということにつきましては、財務大臣同士で為替に関するやりとりというのは日常的にあるわけでございますけれども、その具体的なやりとり、貿易協議に関連しての為替のやりとりについて、これからの交渉でございますので、今具体的なやりとりについてはお答えを差し控えさせていただきたいと存じます。

櫻井委員 交渉自体はこれからのことですので、入るか入らないかも含めて、これが交渉事になるということだとは思います。

 その上で、ただ、為替というのは非常に微妙なところでございまして、為替そのもので、わかりやすい関与の仕方として為替介入というのはありますけれども、ただ、最近はもうこうした為替介入というのはよっぽどのことがない限り行われない。最近でいえば、東日本大震災のときに、急に円高に振れたというときに一時的に介入をしたという事例はございますけれども、それぐらいで、もうそういった為替介入というのは行われない。

 しかしながら、一方で、国内の金融政策として、デフレ対策ということで金融政策を打っている。デフレ対策ということで金融緩和をする、それが結果的に通貨安に結びついていくというところで、そこも問題だというふうに言われるようになってくると、今度は国内の金融政策も、ある種、こうした協定に縛られることになるのではないのか、金融政策の裁量の幅が狭まっていくことになるのではないのか、こういう影響をちょっと心配をしているんですね。このことについてどのようにお考えですか。

岡村政府参考人 お答え申し上げます。

 USMCAに入ってございますのは、先生御指摘のとおり、通貨について、競争的な通貨の切下げを回避するという条項が、ほかの国の間の協定ではございますけれども、確かに事実として入ってございます。

 一方で、日本銀行の金融政策が二%の物価安定目標の達成という国内目的のために行われておりますこと、この点につきまして、国内目的のために行われる金融政策ということ、それから、こうした、競争力のために為替レートを目標にしないことというのは、G7やG20、これはもちろん日米ともにそのメンバーになっているわけでございますが、こうしたことが許されるというか許容されるというような認識というのは米国とも共有しているところでございます。

 したがいまして、貿易協議に関連いたしました為替の取扱いにつきましても、こうした認識を踏まえた上で財務大臣間で緊密な協議をしていくということと考えてございます。

櫻井委員 そうなんですね。通常のそういう金融政策の中で、金融は緩和をしたり引締めをしたりということをその時々の景気状況によってやるわけですので、それはある。それまでだめだと言われるともう金融政策は一切できないということになってしまいますから、そんなことはないということで、これはIMFなり、それからG7、G20、そういったいろいろな枠組みの中で共通理解としてあるということだと思います。それはおっしゃるとおりだと。

 ところが、日本の場合は、通常の次元の金融緩和ではなくて異次元の緩和をやっている。G7のほかの国で、それこそ不動産投信、J―REITみたいなところとか、それから、株式、上場株式、ETFのようなものを大量に買い込むというようなことはやっていないわけですね。ほかのG7の中央銀行はやっていない中において、我が国だけがこうした異次元のものをやっている。異次元の部分については問題視される可能性があるのではないのか、こういう心配をしているんですね。

 きょう、ちょっと、日本銀行は政策会議があるということで、来てくださいとお願いしたんですが、きょうは無理ですと断られちゃいましたので、御答弁もなかなか難しいと思いますので、またの機会にこの続きをさせていただきたいというふうに思います。

 通告していたこの貿易協定の話は終わりまして、きのう、外交青書について発表があったので、この点についてちょっと大臣にお聞かせいただきたいというふうに思います。

 ちょうど三週間前の四月三日のこの外務委員会におきまして、私、北方領土について、我が国固有の領土というふうに総理大臣もそれから外務大臣も最近言わなくなった、国会答弁で、どうですかと言っても言わないという状況が続いていると。一方で、文部科学省に聞けば、学習指導要領にはちゃんと北方領土は我が国の固有の領土ですと書いている、高校でもそのように教えている、こういうお話でございました。

 そういった中にありながら、この問題について河野大臣に聞いても、「政府の法的立場に変わりはございません。」こういう答弁でした。政府の法的立場に変わりはございませんということなんですが、昨日公表されました外交青書においては、「北方四島は日本に帰属する」という文章、これまでずっと記載されていたこの一文がなくなってしまっております。

 政府の法的立場に変わりはございませんということなんですが、あったものがなくなると、何か変わったのかなというふうにも感じるんですが、これは、大臣、どうしてなくなっちゃったんでしょうか。

河野国務大臣 この委員会で累次申し上げているように、政府の法的立場に何ら変わりはございません。

 この外交青書というのは、その青書が記載をする当該年度に我が国が行った外交を総合的に勘案して作成をしているものでございまして、全てのことをここに列記をしているわけではございません。

櫻井委員 書く書かない、基本的には、去年書いていたところから、これは新しいものを追加して、古いものを削っていくという作業をしているんだと思うんですが、この「北方四島は日本に帰属する」という文言を、もう今回書かなくていいよと、今までずっと、過去何年かわからないですけれども、何十年と書いてきたことを、書かなくていいよ、こういう判断を誰かがされたんだと思うんですが、これはどなたがこういう判断をされたんでしょうか。

河野国務大臣 外務省がそういう判断をしたわけでございますから、責任者として私ということになります。

櫻井委員 今、外務省が判断したと。それは、そのトップは外務大臣、河野外務大臣ということで、河野外務大臣がこの一文を削除するということを了承した、こういうことでよろしいですか。

河野国務大臣 外務大臣として、それは私の責任でございます。

櫻井委員 了承したかどうかをお尋ねしているので、事務方でこうやって文章をつくりました、発表しました、でき上がっちゃいましたというのを事後的に知ったのと、それから、この削るという判断をして了承したというのとでは意味合いが違うと思うんですね。了承したかどうか、いかがですか。

河野国務大臣 これは外務省として責任を持ってやっているわけでございますから、そのトップの私の責任でこれは全てやっているということでございます。

櫻井委員 私の質問は、責任の所在を聞いているのではなくて、事前に削除するということを大臣として認識をされて、それで了承されたのかということをお尋ねしているんです。了承されたんですか。

河野国務大臣 これは私の責任でやっておりますから、了承も何も、私の責任でやっているということでございます。

櫻井委員 ちょっと押し問答ですけれども、では、これは、でき上がる前に、事前に、この一文がなくなっていることを大臣は御存じでしたか。

河野国務大臣 知っております。

櫻井委員 では、知っていた上で了承された、こういう理解でよろしいですか。

河野国務大臣 了承するも何も、これは私の責任でやっているものでございます。

櫻井委員 外交青書はそれなりの分厚いものですから、何がどう変わったか、一文一句全部大臣がチェックするというのは、これはなかなか難しいものだと思うんですね、もちろん、全部の責任は大臣にあるとおっしゃっても。ただ、この膨大な量がある中で、やはり重要なところ、例えばこういう、「北方四島は日本に帰属する」、この一文というのは、これまでずっと話をしてきた中で続いてきたものですから、非常に重要な一文なわけです。

 こういうところは、やはり大臣まで上げて判断をするのかどうかということで、これは大臣がそういうふうに判断をし、そして、今回は載せない、これまでずっと載せてきたけれども、今回は載せない、そういう判断を大臣がしたのかということでお尋ねをしているんです。大臣が判断をしたということでよろしいですか。

河野国務大臣 判断も何も、これは私が責任者として出しているものでございます。

櫻井委員 今のお話だと、外交青書の全ての部分について大臣は御存じで、全部承知をしているということで、どこを聞いてもわかるということになってしまいますけれども、そこまで全て、隅から隅まで御承知されているわけではないと思うんですね。重要なところについてやはり判断をしているはずなんですけれども、これは大臣が判断をした、こういうことでよろしいですか。

河野国務大臣 句読点一つ一つまで確認したかと言われりゃ、それはなかなかできませんけれども、これは私の責任でつくっているものでございますから、何かあれば、それは私の責任でございます。

櫻井委員 ちょっともう時間が過ぎてしまいましたので、きょうはこれで終わりにさせていただきますが、ちょっと大臣も、いつも肝心なところは言葉を濁されるといいますか、ということですので、また引き続きこうした問題について取り上げていきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

若宮委員長 次に、山川百合子君。

山川委員 立憲民主党・無所属フォーラムの山川百合子でございます。

 きょうは、まず、インドネシア・インドラマユの石炭火力発電所の建設プロジェクト及びこれを含む日本の資源外交についてお伺いをしたいというふうに思います。

 具体的な事案としてのインドラマユ石炭火力を取り上げますが、質問の中では、その具体的な内容の一つ一つもそうですが、資源外交というか、資源開発の支援のあり方の日本政府としての姿勢についても伺っていきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。

 まず、このプロジェクトの背景なんですけれども、インドネシアの西ジャワ州インドラマユ県での石炭火力発電事業・拡張計画、これは、一千メガワット、第一次の一基で二千億円が予定されているということでありますが、国際協力機構、JICAが二〇一〇年に実行可能性調査、つまりフィージビリティースタディーズを実施した後に、二〇一三年三月に基本設計、入札補助、施工監理等を対象としたエンジニアリングサービス、ES借款貸付契約、十七億二千七百万円、これを締結して、貸付けが実行中である案件です。

 また、今後、相手国政府から正式な円借款要請があれば、本体工事に対する融資検討を行う、こういうふうな事業であるというふうに理解をしています。

 それで、この事業に対して、地元住民及び国際社会から、環境面や人権の観点などから大きな反対運動が起こっています。去年、またつい先日も住民、弁護士、NGOの代表らが来日をして、また先日は、来日をしたときに、外務省、JICAを訪問し、事業の現状を訴え、本事業に対する支援停止を求める要請書を提出しています。

 この要請書に対して賛同する多くの市民社会の動きがありまして、去年の段階で既に二十六カ国、百八十八団体の署名もございます。

 少し長くなりますが、二〇一七年十二月には、地元の住民の反対運動が訴訟を起こしまして、地元裁判所が、事業の前提となっている環境許認可を取り消す判決を下しました。それに対して県が控訴、そして高裁では、住民の提訴期限が過ぎているということを理由に地裁の判決を取り消した。これに対して住民側は、ジャカルタ高裁の判決は法規定の誤った適用であるとし、再審請求をしている、そういう案件でございます。

 それで、まず伺いたいんですけれども、この事業の、ESではありますが、本計画の現状、支援の経緯、そして本計画に対するJICAの今後の方針、これについてまずは伺っておきたいというふうに思います。

 御説明をいただく際に、この事業の必要性というものについても御説明を丁寧にいただきたいというふうに思います。

 というのは、そもそも電力需要と供給がどうなんだということが一つ提起されていると思うんですね。

 ちょっとローカルな話になりますが、ジャワ・バリ系統における電力の需要と供給に関するデータ、これはPLN電力供給総合計画の中で示されている数字なんですけれども、二〇一一年に示された数字と直近の二〇一九年に出されたデータでは、電力ピーク需要予測に約九千メガワットの開きがあるわけでありまして、またさらに、二〇二八年までの電力供給予備率はおおむね三〇から四五%を見込まれていて、非常に電力の需要と供給が、過剰ではないかという指摘もあるわけですが、これも含めて、まずはこの事業についての御説明をいただきたいと思います。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の事業については、二〇一一年八月に日本政府とインドネシア政府との間で、エンジニアリングサービス借款の供与に係る交換公文が締結されたものです。現在、コンサルタントによる基礎設計が実施されているところです。

 これまで累次にわたって行われてきた現地住民と在インドネシア日本国大使館との対話や本邦NGOからの要請書等を通じて、現地で反対運動が起きている現状は承知しているところであります。

 他方、現時点では、インドネシア政府から本体工事の円借款の要請が接到していない以上、外務省として、本件事業に関する個別の状況について何らかの評価を行うことは差し控えたいと考えています。

 いずれにしましても、円借款の供与を含む今後の方針の検討については、本体工事の円借款の要請が接到した後に、JICA環境社会配慮ガイドラインも踏まえつつ行うこととなります。

 必要性につきましてはまた別の者が答えますので、ここで失礼します。

安藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、インドネシアの電力需給状況でございますけれども、インドネシアは、経済成長に伴い、電力供給が需要に追いつかなくなるなど、深刻な電力不足の問題に直面していると承知しております。この問題を解決すべく、インドネシア政府は、二〇一四年から二〇一九年の五年間で新たに三十五ギガワットの電源を整備する三十五ギガワット計画を発表していると承知しております。

 それから、石炭火力につきましてですけれども、インドネシア政府及びインドネシア国有電力会社、PLNの電力政策が記載されましたインドネシア電力供給計画二〇一九―二〇二八におきまして、石炭火力が他の化石燃料と比較して安価であるということを踏まえまして、石炭火力発電所を主力電源として引き続き活用する旨記載されております。また、ジョナン・エネルギー鉱物資源大臣も同様の趣旨の発言をしている、このように承知しております。

山川委員 ありがとうございます。

 今の御説明では、インドネシアにおける電力の需給でまだまだ必要だ、石炭火力が安価だということで、インドネシア政府からの要請だという御説明がありました。

 基本は、それで事業が、まずはフィージビリティースタディーズとESと行われると思うんですけれども、ただ、では、今度は日本側から見たときに、海外の石炭火力発電所に係る公的支援についての政府の方針について、今度は日本側からちょっと伺ってみたいと思います。

 これはこのインドラマユだけに限ったことではないんですけれども、石炭火力発電所は、高効率、最新鋭の超超臨界圧の設備であっても、天然ガス等に比べてもCO2の排出量が格段に大きいということは、皆様も御承知のことと思います。火力発電は、温暖化対策、気候変動対策に逆行しているというふうに、国際的な批判が今非常に大きくなっているわけであります。

 そのため、実は、環境委員会の方で中川環境大臣が、これは去年の五月の委員会の質問に対する答弁で、石炭火力発電所に関する融資は引き揚げるのが世界の潮流であるというふうに述べられています。

 ちょっと引用させていただきますが、石炭火力発電所につきましては、排出ガスの、CO2の量が天然ガスの発電所に比べて二倍はございます、これは高効率でもそのような排出をするということでございまして、経済効率性という観点からのみ石炭火力発電所の新増設を進めるということは許されないことだと考えておりますということと、あわせて、また、海外に対する石炭火力の、高効率、超超臨界といえども、これは今、世界の流れに対する、融資はもう引き揚げる、あるいは、もう新規の融資はしないという流れがどんどん起こっております、そういう意味では、我が国もそのような流れをしっかりと認識していただいて、適切に対応してもらうことが大事ではないかというように考えておりますというふうに御答弁をされていらっしゃいます。

 これに対して河野外務大臣や世耕経済産業大臣は、OECDで定められたルールに従って、天然ガス等に比べてCO2排出量の多い石炭をエネルギー源として選択せざるを得ない開発途上国に対しては、要請があれば高効率の火力発電所の建設に対する公的支援を行うと述べられておられます。

 このそれぞれの大臣の御発言ですと、政府内での立場にそごがあるようにも見受けられるんですけれども、河野大臣から、この点について、政府としての統一された見解について、国民にもわかりやすい御説明をいただければというふうに思います。

河野国務大臣 日本政府といたしましては、パリ協定を踏まえ、気候変動対策に資するように、また、相手国のニーズに応えられるように、再生可能エネルギーや水素などを含め、CO2排出削減に資するあらゆる選択肢を相手国に提案し、その選択に応じた支援を行う方針でございます。

 その際、当然に、我が国の環境社会配慮ガイドラインに合致したものでなければならないというのは言うまでもございません。

山川委員 そうしますと、立場としてはというか、統一された政府の見解としてはわかるんです、その答弁はほかのところでもございますのでわかるんですけれども、このインドラマユ石炭火力拡張計画では、発電所一基で年間約三十三万トンのCO2排出量が削減可能であり、このES借款については気候変動対策円借款供与条件を適用していらっしゃると思うんですが、この発電所が稼働した場合のCO2排出量は一基で年間約五百七十五万トン、そしてこれが何十年も続くことになると思うんですね。

 片側で、要請に応じてということではありますが、もちろん、要請に応じるということは当然基本であることは承知はしているんですけれども、日本側からして、こういったCO2排出であっても、これが気候変動対策になるんだという御説明をもうちょっとわかりやすくいただけるとありがたいんですが、お願いします。

河野国務大臣 御指摘のインドラマユ石炭火力発電所の本体工事につきましては、インドネシア政府からまだ何ら円借款の要請が接到しておりませんので、外務省としても、何も今評価をしておりません。

山川委員 まだESの段階で、要請が来ていないので、要請が来てから検討するということでいらっしゃると思うんですね。そうしますと、もう少しまたそのときにも聞いていきたいというふうには思うんですけれども。

 では、あわせて、これは支援をするかどうかはまだ決めていないとしても、もし支援するとしても支援しないとしても、決めていないということなんですが、大気汚染対策についてのインドネシアに対する支援というものは、どのような姿勢で臨んでいかれるのか、それについてお伺いをしておきたいというふうに思います。

河野国務大臣 これまでも日本は、インドネシアの環境対策、大気汚染対策というものを支援をしてきております。

 有害物質の排出を抑制するごみ焼却施設の設置支援、あるいは、ことしの三月に開業いたしましたジャカルタのMRTは、これは我が国の支援により行ったものでございますが、自動車から公共交通機関へ通勤通学の転換を促すということで、渋滞の解消とともに、温室効果ガスの排出削減につながるというふうに考えております。

 引き続き、インドネシア政府と連携をしながら、インドネシアに対する環境対策、大気汚染対策支援というものを日本として行っていきたいというふうに考えております。

山川委員 では、もう一つ、インドラマユの件を取り上げて、この件について質問させていただいていますので、地元住民への説明、補償や社会的合意、人権の観点から、現状を少しお伝えしながら伺っておきたいと思います。

 まだ要請が来ていないから答えることはできないという御答弁になりそうな気もするんですけれども、やはり、人権侵害も含めて社会的合意が得られていないというのは既に起こっている、ずっと起こっていることでありまして、このことで地元の人たちが日本にわざわざ、去年も、そしてことしもやってくるというような事態になっておりますので、伺っておきたいというふうに思います。

 河野大臣のお手元にはその要請書が届いていると思いますので、読んでいただいているんじゃないかなというふうにも思いますけれども、健康被害とかあるいは農作物への被害、そして、その要請書の中では、不当逮捕などの人権侵害も行われていることが、その実情がよくうかがわれるような要請書になっています。

 住民側、そしてインドネシア、日本、またその他多くの国のNGO、いわゆる市民社会ですけれども、社会的合意が得られていないこの事業について懸念をしているわけでありますが、これは、地域住民の社会的合意に関して、JICAが定める環境社会配慮ガイドラインをクリアしているのかどうか、その点を伺いたいというふうに思います。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 インドネシア国有電力会社が住民に対して補償や生活水準の維持の提案を行い、事業に対する理解を得るべく取り組んでいると承知しております。

 日本政府としても、インドネシア政府に対して、本体工事への借款の供与を望む場合には環境社会配慮ガイドラインを遵守すべき旨、繰り返し説明しており、これからも伝えていく所存でございます。

山川委員 遵守するよう伝えていく、要請があればその時点で判断をするという御答弁だと思うんですけれども、そうしますと、その要請があった時点で、要請がある前から、既にESの段階からそれが起こっているわけで、その要請があってからというところはどうなのかなというふうに思うわけですが、では、要請があってからということを繰り返されるのであれば、要請があったときにストップするというか、要請があっても、それを受けないこともあるということでよろしいでしょうか。

河野国務大臣 我が国は、ODAの要請を全て受け入れているわけではございません。相手国と協議をしながら、実施をする事業もあれば、実施しない事業もあるということでございます。

山川委員 私も、NGOのスタッフとしてインドネシアで事業もやっていましたし、この要請を受けて、直接、住民の方あるいは弁護士の方ともお話をしましたけれども、私自身がそこで生活をしていて、自分の実感というか、自分自身が経験したものとしてわかる、書面から伝わってくる実情というのは私自身も体感としてわかりますので、ぜひ、文字だけを追うのではなくて、本当に実態をしっかりと踏まえていただきたいなというふうに思います。

 それでは、もう一つ、きょう二つ目の質問でありますが、イスラエル、パレスチナ問題について、四点用意はしたんですが、ちょっと時間もないので、少しまとめて質問をさせていただきます。

 中東和平ということで昨年の十二月にも少し質問させていただきましたけれども、そのときに、パレスチナの国家承認について河野大臣の御見解をお伺いしました。そのときの御答弁は、まず、国家承認のための要件があるのかということで伺った上で、要件を御説明いただいた後、要件がそろっているからといって承認をする義務はないということをまず伝えた上で、日本がパレスチナを国家承認するかどうかはタイミングを見てというような御答弁をいただいたというふうに理解をしています。

 中東問題については、日米同盟がある中で、日本は必ずしもアメリカと同じ立場をとってこなかったというふうに思います。

 米国によるエルサレムのイスラエル首都認定の撤回を求める決議案に対して、我が国は反対の立場を示すとかということも具体的にしておりますので、この問題に対して、アメリカとあるいはトランプ大統領とどんな議論をしているのか、もし伺えることがあればお伺いをしたいというふうに思います。

河野国務大臣 我が国は、このイスラエルとパレスチナの中東和平については、二国家解決というものを支持してまいりました。エルサレムの最終的な地位の問題を含め、これまで累次国連で採択されてきた安保理決議あるいはこれまでの当事者間の合意に基づいて、当事者間が直接交渉することによって解決すべきというのが我が国のこれまでの立場でございます。

 そういう立場を踏まえ、さまざまな日米首脳会談あるいは外相会談の中で、米側とも意見の交換をしてきているところでございます。

山川委員 日本が当事者間で解決をするという立場であるということは私も承知をしているんですが、十二月の質問でも少し触れましたが、日本が和平の仲裁国たらんとする信念と覚悟を持って、より積極的に取り組んでいくべきだと思うし、いくことができるのではないかというふうに私は思っているわけであります。

 ジェリコのJAIPのプロジェクトですけれども、これはパレスチナの支援というふうに思っておりましたが、今後の展開で、昨年、ちょっと私は国会開会中で行かれませんでしたが、夫が行ってきまして拝見させていただきまして、パレスチナの支援だというふうに思っておりましたけれども、ここは今後、主要幹線道路などもつくって、パレスチナだけではなくて、インフラを整備して、イスラエルとパレスチナ両国にわたる経済発展に資するビジョンで取り組まれているというふうに伺いました。

 それは、幹線道路が通って、そして物が移動していくことによって、人の交流もより活発になる。そういうことを通して、パレスチナ及びイスラエル両国の人々をつなげていく、そういうことの支援にも資するというふうに伺ったわけでありますね。そういう役割を日本がもう既にしているということであります。

 個人的なことにはなりますが、昨年の夫のジェリコ訪問では、パレスチナ側の人々の声を聞いて、そしてことしは、先日ですけれども、ジューイッシュ・エージェンシーの皆様との接点もできまして、これはクリスチャンとしての立場でいろいろなネットワークが広がっているんですけれども、日本という国が、やはり、大臣が前おっしゃったような、国際的な機運が熟したら国家承認をするという以上に、二国間の問題ではあるけれども、より日本という立場、日本という国が果たせる役割として、むしろ、日本が積極的な役割を果たすことによって国際的な機運を積極的に動かしていく、そういう役割が日本はできるんじゃないかと思うんですが、ぜひこの観点から河野大臣の御見解をお伺いいたしたいと思います。

河野国務大臣 これまでも日本というのは、民族的にも宗教的にも中東では中立の立場でございますし、歴史的にも何もネガティブな足跡を残していないというのが日本だというふうに思っております。その一方で、中東に非常に強い影響力を持つアメリカとは同盟関係にあり、何でも率直に話合いができるという、この日本の立場というものをこれまでも利用してきて、JAIPを始めとするさまざまな中東和平に資するような活動を行ってきたわけでございます。

 最近は、そうした日本の活動が極めて高く評価されつつあり、昨年の国連では、UNRWAに関する支援国会合の共同議長が日本にオファーをされる、あるいは、この地域に係るさまざまな国際会議には必ずと言っていいほど日本に声がかかるようになってまいりました。それは、日本のこれまでの我が国独自の立場を利用した支援活動というものがさまざまな国の中で認められてきたということなんだろうと思います。

 委員から御指摘をいただきましたJAIPに関しても、これだけ長い間パレスチナで工業団地の支援をやってきたというのは、日本以外にはないと言ってもいいのではないかというふうに思っております。

 そういう日本の立場をこれからもしっかりと活用して、この中東和平を後押しできるような取組を日本としてもやってまいりたいというふうに考えております。

山川委員 ありがとうございます。日本としてできることをやっていきたいということでお伺いしました。

 アメリカとの同盟関係で、アメリカにも配慮するというのはもちろん当然あるわけで、ただ、日本外交において、その日米同盟を大事にするとともに、やはり日本らしさ、今既に大臣の御答弁で、それを遺憾なく発揮しているということは御答弁いただいているんですが、例えば一昨年のアメリカによるエルサレム首都承認から大使館の移転に対して、むしろ、例えばそのタイミングで日本がパレスチナの国家承認を決定することが、国際世論を逆の、均衡を保つというんでしょうか、そういうタイミングであったのかもしれないななんというふうに思っていることをお伝えしまして、時間が来ましたので、質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 国民民主党の小熊慎司です。

 先ほど小野寺委員も質問いたしましたWTOの上級委員会報告について質問いたします。

 これは今後の対応、更にこれまでの努力以上にしなければいけませんし、私はホヤの話はしませんが、女川の町長は元県会議員の仲間でもございますので、たびたびいただいているんですけれども、本当に世界一のホヤで、すばらしいものが正しく評価をされないというのは私も非常に問題だなというふうに思っていますので、小野寺委員の方からまた須田町長にお伝えをいただきたいというふうに思います。

 これは一部報道についても適正でないというのは、大臣は記者会見でも述べられましたし、この委員会でも先ほど述べているところですが、一応確認をさせていただきます。

 そもそも、第一審の報告書に、日本産食品は科学的に安全という明確な記載はあったのかどうか、まず確認をさせていただきます。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 我が国は、適切な基準値の設定、モニタリング、適切な出荷制限管理により、日本産食品の安全性を確保しています。

 これらの取組により、パネル、第一審は、日本産食品中の放射性セシウムの濃度が、国際的な基準を踏まえて設定された日本及び韓国の基準数値、一キログラム当たり百ベクレルでございますが、これを下回ることを認めております。

 例えば、パネル報告書のパラ七・三〇九においては、パネルが選任した専門家は、日本が提供したデータが、二〇一五年までに日本産食品中の放射性セシウムの濃度が一般的に一キログラム当たり百ベクレルを下回る水準に戻ったことを合理的に支持することを確認したというふうに記述されています。

 上級委員会はこうした事実認定を取り消していないため、パネルの日本製食品の安全性に関する事実認定は、今後開催されるWTO紛争解決機関会合において上級委員会報告書とともに採択されることというふうになっております。

 このような事実関係を踏まえ、政府の説明ぶりは、これらの点をより簡潔な表現で説明したものというふうに考えておるところでございます。

小熊委員 再度お聞きします。

 であれば、第一審は日本産食品の安全性の認定をしたという、それを簡潔に表現したということでありますが、認定されたということでよろしいですか。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 韓国の措置のWTO協定整合性を分析するためには、その分析の前提となる事実を理解することが不可欠であり、そのため、パネルは、日本産食品の安全性に関する事実認定を行ったということでございます。

小熊委員 これは本当にセンシティブな問題でもあって、報道ぶりでも、逆に新たな風評被害を生むことにもなりますし、実際、この細かな話はしなくても、WTOで結果がひっくり返ったという事実は、これが世界に広がっている中では、細かに読み込むような一般の方々は実は少ないわけでありますから、印象としてはやはり、日本産の食品に対するイメージというのは、世界にネガティブな発信をしたことになっています。ですから、今回の敗訴は、捕鯨のことも含め、外務省としては大きな失点だったというふうに言わざるを得ません、残念ながら。

 大体、韓国は、第一審の是正勧告の後に、紛争対策チームをいろいろな省庁横断でつくってやろうとしているのがわかっているわけですよ。これに対して、韓国がそういう紛争対策チームをつくったという事実をまず把握していたのか。把握しているのであれば、それに対して、どうこの上級委員会に向かっていったのか。

 まず、韓国が対策チームをつくったことに関して具体的にどう対応したのか、お聞きいたします。

河野国務大臣 政府は、外務省だけでなく、外務省、水産庁、資源エネルギー庁などの関係省庁が一体となって、本件のWTO紛争解決手続に臨みました。また、政府関係者のみならず、この分野で有数の国際弁護士事務所に支援を依頼し、充実した体制をつくることができたというふうに思っております。

 また、この上級委員会の審議においては、我が国の主張を認めたパネルの判断がきちんと維持されるように、パネルの報告書に含まれている説明を更に強化すべく努めたわけでございます。

 このパネルは、韓国の措置の政策目的や構造、食品中のリスクに加えて環境的な要素を考慮し、総合的に評価をしていたというようなことを日本側から上級委員会に丁寧に説明をし、パネルの分析が不十分だったという韓国側の指摘は当たらないという反論をしたところでございます。

 こうした努力をしたにもかかわらず、我が国の主張が認められなかったということは、まことに残念でございます。

小熊委員 万全のことはやったということでありますが、再度お聞きいたします。

 事前にどんな根回しをして、また、関係者、関係国などにはどのように対応してきたのか、もう一度確認させてください。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 WTOは、担当の上級委員に対して、韓国及び第三国、参加している関係国がいない場で日本側と会うことを禁止しております。また、WTOは、当該案件を担当していない上級委員にも、これらの行為を行うことを明示的に禁止しております。仮に、これに違反していることが発覚した場合には、当該委員が失職するのみならず、上級委員会の審理が無効となる可能性もございます。我が国を含む全ての加盟国がこれらの規則を遵守する必要があるということは申し上げたいと思います。

 こうした制約の中でも、ジュネーブ代表部もございますし、大使等いろいろな社交の場がございます。その場合においては、上級委員会関係者、WTO事務局関係者に対して積極的にいろいろな交流をするように努力をしてきたということを申し上げたいというふうに思います。

小熊委員 上級委員会には接触してはならぬということでありますから、ただ、その周りの状況を考えると、今回、報告書にも指摘をされているところがありますけれども、日本の食品に対して設けている放射線量の基準は韓国の基準も満たしているという日本の主張は当然のことでありますし、これは韓国にも伝わっているところであります。しかしながら、韓国側の主張は、それはわかっているけれども、更に韓国の国内で流通する食品リスクをできるだけ抑えたいんだ、だから上告したんだという主張があったわけですよ。これに対して、ただ単純に、日本の食品は、放射線量の基準は韓国の基準も満たしているんだという一本やりだったんじゃないんですか。

 基準は満たしているのはわかるけれども、更に食品リスクを、韓国国内のリスクを抑えたいんだという韓国の主張に対してはどう押し返していったんですか。

飯田政府参考人 我が国としては、韓国が主張する健康保護の水準、これは、国際的な基準、コーデックス等いろいろございますが、年間一ミリシーベルトの被曝量という基準を下回ることで達成可能である。これは、いろいろな資料を提供して、韓国、それぞれ日本でのモニタリングの結果、いろいろな数値等を丁寧に説明して、上級委員会でも当然そういたしましたし、我が国としては、そうした考えを改めて丁寧に主張してきたということは申し上げたいというふうに思います。

小熊委員 丁寧にやっていたけれども、韓国国内のさらなる食品リスクの回避をしたいんだというのが韓国の主張ですけれども、そこに対しては具体的にどう言ったんですか。

 今のは基準の話ですよ。基準が下回っているというのは認めているわけですよ、韓国だって。日本の基準で合致しているし、更に韓国の基準でもそれはクリアしているんだけれども、より食品流通に関してのリスクを取り除きたいんだという主張に対してはどういうふうにやっていったのか。ただ一本調子で、科学的に大丈夫ですと言っていただけなんですか、結局は。さらなる要求に対してどう応えていったのかということです。

飯田政府参考人 審理の中では、いろいろな数値等を利用して、韓国が主張する健康の水準が、やはり一ミリシーベルトという被曝量の基準を下回ることで達成可能であるということを丁寧に御説明をしたということでございます。

 国民感情とかいろいろなことがあってということは、それは風評被害ということだと思いますけれども、それはそれでまた別途、いろいろな意味でのリスクコミュニケーションといいますか、いろいろなことは対応していかないといけないと思いますが、この裁判の場では、我々はいろいろなデータを提供して、科学的、合理的な範囲で、それが韓国の目指す保護水準を達成するということを丁寧に御説明をしてきたということでございます。

小熊委員 韓国の国民感情というのもありましたけれども、更に健康に対するリスクを十分に考慮はしているんだけれども、韓国側の主張している潜在的なリスクに対しては、上級委員会の報告書でも、全然議論が欠けていたということで、これも根拠に、日本が一部、主張が退けられたというところがありますけれども、この点に関しても、潜在的なリスクに関してしっかり説明してきましたか。されていないというのが上級委員会の報告書にあると思うんですけれども、どうですか。

飯田政府参考人 確かに委員御指摘のように、パネル、第一審段階で、韓国は、自国の輸入禁止措置及び追加検査要求が、食品摂取がもたらす潜在的に有害な影響から国民を保護するための規制であるというふうに説明をしていたわけでございます。

 ただし、これを踏まえ、上級委員会においては、我が国は、適切な基準値の設定、それからモニタリング、適切な出荷制限により、日本産の食品について安全性を確保して、そのような潜在的リスクも適切に対処できる体制であるということを丁寧に説明してきたということでございます。

小熊委員 これが通らなかったわけですよ、残念ながら。たびたびこの委員会でもやっていますけれども、風評被害も、単なる科学的根拠を一本調子にやったところで払拭できないのと同じように、今回の韓国の上級委員会への提訴に関しても、科学的根拠を超えたところのまた感情的なものを含めてやっていると思いますよ。そこに対してのやはり説明が足りていなかったからこういう結果になったというふうに思います。

 何度も言っています。生真面目にやっているだけじゃだめなんです。もっと幅広い対応をしていかなきゃいけないということなんですよ。

 今回のことだけではなくて、従前から、真面目にただただ数字を積み上げてやっているだけで、それはやっていないとは言いません。だけれども、足りていないんですよ、努力が。発想もそこが足りていない。もっと幅広にやらなきゃいけない、もっと外交的にやらなきゃいけない、政治的にやらなきゃいけないところを、ただ単純に教科書どおりやっているからこの結果なんですよ。

 その指摘を受けて、上級委員会がそう判断したと思いますよ。本当は上級委員会だって、白黒はっきりしなきゃいけないのに、こんな玉虫色のことをやって、何がWTOだと言いたいところはありますけれども、でも、やはり外務省として、これは、努力はしていないとは言いませんが、万全の努力はできていなかったと言わざるを得ません、残念ながら。

 それで、もう出てしまった結果ですから、今後、二国間でも更に努力していくということではありますけれども、二国間のこととはいえ、これは国際機関での判断ですから、先ほど言ったとおり、こういう悪い印象がやはり広がりますよ、細かく内容を見る人なんてほとんどいないわけですから。そうしたら、これまで以上の努力が必要になってくるんですね、安全性が保たれていますよと、あと、国際的な風評被害の払拭について。

 二国間の取組は、韓国に粘り強くやっていくしかありませんけれども、今回のことが広がらないために、今まで以上の努力をどうやってやっていきますか。

河野国務大臣 おっしゃるとおり、韓国との二国間の問題は、これを踏まえ、少し難しくなるかもしれませんが、今回のWTOの結論は、我が国の食品が安全であるということを科学的にパネルが証明をしたわけでございますから、その事実をきちんと諸外国に伝えていくということを積極的にやってまいりたいと思います。

小熊委員 これは、そうはいうものの、日本のマスコミにもちゃんと大臣のもとでもっと発信していくときに、あの当時、敗訴、敗訴、敗訴と並びましたし、与党の部会の中でも何だという指摘を受けたのが、これがだから世の中ですよ、一般的な感覚ですよ。認定されたということが伝わっていません。

 これを今これから伝えていくということでありますけれども、ちょっとまた飛びますが、であれば、外務省は率先してやらなきゃいけないし、安倍内閣は全ての大臣が復興大臣という、言葉だけは美辞麗句を並べていますけれども、やめた大臣の発言もありましたし、過去においては、外務省においても、飯倉公館で被災地のものを一年以上にわたって一切使ってこなかったということで、外務省だって言葉だけですよ。

 その後、今どうなっているのか。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘の点ですが、外務省では、被災地産品に対する風評被害対策といたしまして、平成二十九年六月付で、飯倉別館でのレセプションについては、料理の材料及び飲物に被災地の産品を必ず含めるよう、会計課長名で全課室に通達したところでございます。

 それで、直近の数字を調べました、平成三十年度で申し上げますと、飯倉別館におけます計十回のレセプションにおきまして、被災地産の肉、魚介類、野菜、飲料等を提供し、来賓に召し上がっていただいたところでございます。

 このほか、外務本省内で行われる会議、会合等の機会には、被災地産の飲料水を利活用するといったような取組も行っているところでございます。

 外務省といたしましては、引き続き、さまざまな機会を捉えまして、被災地の復興に関する発信を強化し、被災地産品を積極的に活用してまいりたいというふうに考えております。

小熊委員 被災地だけじゃなくて、不当な輸入規制をかけられている県産品についてはどうですか。

下川政府参考人 そういう不当な輸入規制を行っている国を含める在外公館におけますPRのイベントですとか、会食、レセプションというのは、各国の関係者に実際に我が国の魅力を発信する重要な機会であるというふうに考えております。

 したがいまして、在外公館におきましても、日本産食品の安全性や被災地の魅力発信等のPRイベントを開催するとともに、要人との会食、そして天皇誕生日祝賀レセプション等の大規模行事の機会におきまして、被災地の日本酒を積極的に用いているところでございます。

 一例を挙げますれば、平成三十年度におけます実績といたしましては、約六千本の被災地産の日本酒を在外公館に送付いたしまして、活用に努めているところでございます。

小熊委員 質問していないことで、先の質問を答えちゃっているんだけれども。だから、飯倉公館で今は被災地のを使っていると言ったけれども、今、二番目の質問、質問していないことを答えたからあれなんだけれども、ちゃんと聞いていてくださいね。

 飯倉公館で今被災地のを使っていますと言ったけれども、輸入規制がかかっている県、青山さんの北関東もはまっちゃっているわけですから、飯倉公館でもそれをやっているのという話。被災地のものを使っていますと言ったけれども、輸入規制がかかっている県が、被災三県だけじゃなくて、あるわけですよね。飯倉公館はそれを使っていますかという話。

下川政府参考人 具体的には岩手県、宮城県、福島県、それ以外にも被災地という意味では熊本県なども想定いたしまして、広く産品を活用するようにしているところでございます。

小熊委員 僕はちゃんと通告しているんですよ。飯倉公館などの会合で被災地や不当な輸入規制を強いられている産品の活用実績について伺うとやっているので、ちゃんと使ってくださいね。

 だって、一年前か何かで、飯倉公館で使われていないといったときに、被災地だけじゃなくて規制をはめている県とかもちゃんとやってくださいよ、戦略的にやってくださいよと指摘もしていて、やりますと言っていて、配慮がないわけですよ。だから、言われたからやるとか、戦略的じゃないじゃないですか。

 被災地の応援もあるけれども、輸入規制の撤廃は、かかっているのは東北三県だけじゃなくて、今熊本の話は僕はしていませんからね。熊本の応援もしなきゃいけないけれども、それは被災地として応援しなきゃいけない。風評被害の払拭だし、輸入規制撤廃のためのどういう運動だということですよ。輸入規制撤廃の運動であれば、台湾であれば北関東も対応していかなきゃいけないし、そういうことでしょう。それを言っているんですよ。その答弁がしっかり出てこないということは、何を考えているのということなの、結局。だから、通り一遍のことしか情報発信できないし、風評被害に対してどう対応していくかという発想がないから、結果、変わらないんですよ。

 お手元の資料のとおり、これは東京大学の大学院と福島大学の、二年前ですけれども、風評被害のアンケート調査がありますけれども、とりわけやはり規制をかけている国が大きいわけですよ。これは一般の人ですよ。だから、国に対して言っているというけれども、一般の国民にも、規制をかけている国はやはり伝わっていないんですよ。これをしっかりやっていかなきゃいけないというのに、やっていないとは言いません、今まで言っていたとおり。やっていただいているけれども、どう足りていないか、その知恵がないというか、気づきがない。だから、答弁もこんなふうになっちゃう。

 在外公館でイベントをやっているというけれども、我々も委員会で公館にお邪魔したりして食事をいただいていますけれども、真っ先に被災地のお酒が出てくるとかないし、米は福島県のを使っています、宮城県のを使っています、生ものはやれないからホヤの薫製が出てくるとか、見たことがない。

 どうなっていますかといえば、それはそうですよ、大使だの総領事だのの差配でそれはやれるんですけれども、だって、安倍内閣は全部が復興大臣というつもりだし、これは安倍政権というか、政府も一体なんでしょう。意識がないもの。だったら、もうそんな言わなくていい。それぞれいっぱいありますから、日本全体を売らなきゃいけないですから、さらっと言ってもらった方がいい。寄り添っていますとか、簡単に言わないでほしい。

 総領事館でどれだけどんな酒を使い、どんな食材を使い、今度調べてください。後で教えてください。

 次に行きます。WTOに戻りますけれども、そもそもWTOの役割というのはどうなっているんだということですよ。

 ドーハ・ラウンドが失敗、失敗、結論も先延べ、先延べということで、何の結論も出していない中で、存在意義を失っていた中で、紛争解決機能はそれなりに機能していたけれども、今回の上級委員会の報告書でもあやふやなものしか出せていないということですから。まして、自由貿易の進展はやらなきゃいけませんけれども、実際には二国間の協定とかマルチの協定とかでこれは進んでいるわけです、世界市場の拡大に向けては、WTOなんかなくても。まして、昔どおりのルールでやっているから、今の価値観に当てはまらないでやろうとするから、なおさら進まないわけですよ。十年、二十年前のルールで今はめようとしたって無理ですもの、世界の状況も変わっているし。

 だから、もうWTO自身の存在価値がないと僕は思っています。唯一あった紛争解決処理機能もこんな状況だし、先ほどあったパネルの数ももう足りなくなっているということで、アメリカとは違う理由で、私はもうWTOなんて脱退すべきだというふうに思っていますよ。

 まずは、では、WTOをどうやって改革するのか、見解をお伺いします。

河野国務大臣 今の質問にお答えをする前に、先ほどの委員のおっしゃった発言について一言申し上げたいと思います。

 飯倉公館でさまざまな外務大臣のおもてなしをやります。そのときに、さまざまな国から来られる外務大臣が、どこの国がどこの県のものを輸入規制をしているか、それは自分の国なら知っていますよ。だけれども、ほかの国の産品について知っている人がどれだけいるかといえば、恐らく知らない人の方が多いんだろうと思います。多くの国は、もうそんなもの輸入していますよ、そういうことなんだろうというふうに思います。

 ただ物を出せばいいというのではなくて、いろいろな人に対して、我々があるいは我々の大使が、それぞれの国でどうやったら理解をしてもらえるかというのをさまざま考えてやっているわけですから、いきなり酒を出して、これは福島の酒だ、これは福島の米だと相手に言ったら相手が理解するかといえば、それこそそれは違うんだろうと思います。

 十把一からげに、寄り添っていないとか、寄り添っているとか、そういうことをおっしゃるのはやめていただきたいというふうに思います。

 WTOの改革について申し上げれば、委員おっしゃるように、このWTOのルールが現状に合っていないというところは多々あるわけでございます。

 恐らく、大きく言って、三点、直さなければならないところがあろうかと思います。

 一つは、現行のWTO協定が、新しい、発展途上の経済の台頭など、世界情勢の変化にしっかりと対応していない。二十一世紀の現実を反映をしたルールというところに直すことができるような交渉機能というものを再活性化する、こういう必要があると思います。それからもう一つは、今、上級委員会の委員を選出するプロセスが残念ながら開始できていない、ここを改善をしなければならないというふうに思っています。それからもう一つは、WTOに対する通報という義務があるわけですけれども、この通報義務が十分に守られていないということを受けて、やはりこの部分の改革をやらなければならないと思います。

 そういう三点がやはり問題だということが多くの加盟国の中で共有をされ、今議論が始められているところでございますので、そこはしっかり対応していきたいというふうに考えております。

小熊委員 私の言葉にやったけれども、それはもうやっているんですよ、レクで。規制をかけている国の人が来たらそれを出さなきゃいけないでしょうと。もう何でもかんでも出せなんて言っていませんから。レクの段階で言っていて、それで答弁が出てこないからもう一回言っていただけであって、大臣の言うとおりのことは僕は言っていますから。それで、答弁をちゃんとつくってくださいということを通告しているんですから。あほみたいに出せなんて言っていませんよ。

 だから、戦略的にやれというのは一年前も言っていたし、韓国が規制をはめているところは出せばいいし、かけていないところは、それはもちろんそうです、そのとおりですよ。それはちゃんと伝えていますからね。それでこの答弁なんです。だから、そういう意味で姿勢がなっていないと言っているだけですから。

 戦略的にやってくれと言っていますよ。大臣と同じことを言っているんですよ。この答弁ですからね。ちょっと省内で整理してください、これ。この間だって、部屋に来たときにこの話をしているでしょう、そうやって。その国によって出すものを変えてくれと。北関東にはめていれば北関東のものを出せとちゃんと言っていますから、大臣の言うとおり。何でもかんでもなんて言っていませんよ。

 だから、こういうことだから緩んでいるんでしょうということです、外務省が。そのことを指摘してきたんですよ、一年前も、何年前も。変わっていないんですよ。それが問題です、大臣。大臣はわかっているんだから、しっかり指導してください。何も変わっていません、この数年間、そういうことです。

 以上で終わります。

若宮委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 国民民主党の青山大人でございます。

 私も、被災県の茨城県でございますので、ちょっと今の小熊さんに絡んで、WTOの判決について、引き続き質問をさせていただきます。

 その前に、ぜひ、茨城県も被災地でございますので、東北三県、先ほどの食材の件ですけれども、そこに茨城県もしっかり加えてほしいということをまずは要望をさせていただきます。

 そこで、ちょうど四月十二日も、この委員会が始まる未明にWTOの上級委員会の発表が出たということで、その直後だったので、私も幾つか質問をさせていただきました。それから日数がたった中で、それまでのいきさつの分析もそうですけれども、当然、今回のパネル、上級委員会の報告書を、問題点をきちんと分析して、中国とかシンガポールとか台湾とか、まだ二十三カ国、茨城県を含む被災地の輸入禁止措置が続いているわけで、今後、そういった国に対して、どうやって規制解除に向けて取り組んでいくかが重要だと私は思っております。

 改めて大臣に、この分析とそして今後の戦略についてまずはお伺いをいたします。

河野国務大臣 今回の一連のWTOの決定は、日本産の食品が韓国が定める安全性の数値基準を十分クリアできるという事実認定をしたわけで、日本産の食品が安全であるということをしっかりお墨つきをいただいたわけでございます。

 我々としては、その事実をもって、さまざまな輸入規制をしている国々にきちんと説明をしていきたいというふうに思っているところでございまして、一部のメディアがそれをさまざまおかしな取上げ方をしているというのは極めて遺憾に思っております。

 さらなる風評被害がつくられることがないように、政府として、おかしなメディアにはきちんと対応していきたいというふうに考えております。

青山(大)委員 まさに大臣おっしゃるとおり、そういった誤った報道がされないようにきちんとやってほしいことは当然ですけれども、今回、韓国との二国間でそういった判決が出てしまったわけですけれども、もちろん、当然、ほかのWTOの加盟国との関係では何ら法的な関係はないわけでございます。

 私は、逆に、そういったパネルの方で日本の安全性というのは認められているわけですから、例えば、今言ったような台湾とかシンガポールとか中国とかに向けても、ある意味、今回のWTOのいろいろなことを踏まえた上で、改善した上で、むしろ逆に、WTOを使って、ほかの中国とかの国に対して協定違反の認定をとっていきながら韓国に対して是正していくというのも一個の手段かなとは思っていますけれども、そういったような戦略的な考えはどうでしょうか。

河野国務大臣 WTOを利用するという考え方は政府でも持っております。ただ、時間もかかることでございますので、どのようにWTOを利用していくのが一番効果的かという観点から検討しているところでございます。

青山(大)委員 あと、先ほど小熊委員の質問の中でも、やはり韓国側からすると、パネルで韓国側の主張が認められなかったということで、韓国政府は、その後、上級審に向けていろいろな対策をとった、専門家を招聘したりとか省庁横断的にいろいろな対策をとった、そういった質問があって、先ほども大臣は、いや、日本も当然、上級委員会に向けて、できる限りの対応はしっかりやっていたという答弁があったんですけれども、でも、実際、細かい内容はともかく、覆ってしまった部分もあるのは事実でございますし、やはりそこら辺はしっかり日本も取り組まなきゃいけないと思っています。

 そういった中で、大臣、別にWTOに限らず、今各国と経済、通商の外交的なルールづくりをいろいろやっていますけれども、我が国はそういった通商外交の専門家の人材というのはやはり今足りていないような状況なんですか。それとも、そういった育成が、育っていないとか、どういった課題とかがあるんでしょうか。

河野国務大臣 これだけさまざまな自由貿易協定の交渉が行われ、また、このような国際的なルールに基づく紛争解決というのが行われている中で、やはり必要な人材というのはこれからふえてくるんだろうと思います。

 これは、政府の中で人材を育成するのも当然でございますけれども、政府の外の民間の専門家を必要なときには活用していくということも考えていかなければいけませんし、そもそも、活用できる人材が民間にふえていくということも必要でございますので、そうした対応を政府として今後しっかりやってまいりたいというふうに考えているところでございます。

青山(大)委員 まさに外部の専門家の招聘もそうですし、そもそも、人材の養成を含めて、そこはちょっと政府としても改めて現状を分析してもらって、今後に向けて、そういう人材の育成も含めた取組、予算も含めてやってほしいなと思いますので、よろしくお願いいたします。

 私も、冒頭言いましたように、茨城の出身でございまして、やはりこの問題は地元の関係者も大いに関心を持っていますので、これが余計なまたさらなる風評被害を生むことがないようにということと、今後に向けての戦略の方をきちんととっていってほしいということを改めて要望させていただきます。

 では、次の質問に移らせていただきます。

 内閣府でやっております北方四島の交流訪問事業がございまして、委員長始め委員の皆様の御配慮で、今回、今年度の第一回の北方四島交流訪問事業に私は行ってまいります。

 私も北方四島へ行くのは初めての機会でございますし、一緒に行く方たちの中には、北方領土に居住していた方ですとか、それに関係する方も一緒に行くことになっていますけれども、今いろいろな、領土交渉もロシアと行っていますけれども、大臣から、私も元島民の方々と一緒に行くので、そういった方たちに対して、何かメッセージですとかお伝えすることがあればお伺いしたいんですが、いかがでしょうか。お願いします。

河野国務大臣 北方四島に関して言えば、領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針のもと、粘り強く交渉をし、平和条約を締結をし、自由に訪問ができるようにしていきたいというふうに考えております。

 当面、政府といたしましては、元島民の方々が御高齢になられていることを考慮して、人道的な観点から、航空機墓参の実施、あるいは臨時の追加的入出域地点の設置など、現行の枠組みによる訪問の改善というものを図ってきているところでございます。

 今後とも、元島民の皆様の思いに寄り添いながら、政府としてできる最大限の努力を続けていきたいというふうに考えております。

青山(大)委員 しっかり取り組んでほしいというふうに思いますし、私の祖父も戦時中は樺太の警察に勤務していたものでして、そういった中、私も今回、いろいろな思いがあって行くんですけれども、そういった大臣のメッセージも伝えながら行きたいというふうに思っております。

 次の質問に行きます。

 ちょっと趣旨は変わるんですけれども、ちょうどことしの四月から、新たな外国人材の受入れ制度が開始されました。この制度では、特定産業の分野ごとに、それを所管する省庁が中心となって受入れの協議会を設置することとなっております。

 各省庁それぞれ協議会を構成するわけですけれども、今回、外食業に関して、農林水産省さんが所管する外食業に関しまして、この協議会の構成メンバーについてまずはお伺いをいたします。

渡邊政府参考人 お答え申し上げます。

 協議会のメンバーにつきましては、食品産業特定技能協議会規約の第四条に定めております。具体的には、特定技能所属機関、登録支援機関、外食業者団体、関係行政機関などとなっております。その他協議会が必要と認める者といった規定になっております。

青山(大)委員 今回、なぜ外食のことを聞いたかといいますと、この新たな制度が始まる前も、外食関係ですと、外国人の留学生なんかを中心に、結構外食産業に従事されている方がもう既に多い。聞くところによりますと、外食産業で働いている外国人の方たちで労働組合に加盟している方も今現在も結構いらっしゃるというような現状の中で、私は、これは提案なんですけれども、そういった協議会のメンバーに、今後、やはりそういった労働界の代表も加えることも一つ必要なのかなと思います。

 もちろん、今回、いろいろな業種が新たになった中で、まだまだ外国人の数が少ないところもありますし、これからのところもあります。ただ、特に、現にそういった外食産業でたくさんの方が働いている中で、まさに今おっしゃった協議会のメンバーの中に労働界の代表も加えることが必要なのかなと思いますけれども、農水省の御見解をお伺いいたします。

渡邊政府参考人 お答え申し上げます。

 現段階におきまして、外食業分野における協議会の中に労働者の代表は含まれておりません。

 ただ、先ほど申し上げましたように、その他協議会が必要と認める者も協議会の構成員になることができる、こういう規定になってございます。

 したがいまして、委員からの御指摘も踏まえ、労働者側の代表を構成員に加えることにつきまして、今後の協議会の運用状況などをよく踏まえながら適切に判断をしてまいりたいと考えております。

青山(大)委員 前向きな御答弁をありがとうございました。ぜひ、踏まえながら前向きに検討してほしいというふうに重ねて要望させていただきます。

 それでは、次の質問を伺います。

 訪日誘客支援空港のフォローアップ制度についてお伺いをいたします。

 当然、今、訪日外国人の旅客数をふやそうということで、さまざまな取組がされております。二〇一七年に全国で二十七カ所の地方空港を訪日誘客支援空港として認定をいただきました。この中に茨城空港も含まれております。

 茨城空港は、私も当時、開港する前とそのときにちょうど県会議員をやっていたもので、非常に思い入れがあって、当時は国内最後の空港ということで、無駄な空港だとか、いろいろマスコミにも批判されたりですとか、ここは自衛隊百里基地との共用もあったので、さまざまなことがありました。

 ただ、今現在、御承知のように、LCC対応に特化して、ターミナルビルも簡素化されて、本当に今では国内、国際便含めて非常に充実している。最近では、ベトナムのバンブーエアウェイズ航空が、日本で初めての乗り入れが茨城空港に決まったといったことも私も聞いております。

 そういった中で、先月、三月末に国交省の方で訪日誘客支援空港に関する取組状況についての評価結果が公表されて、これはS、A、B、Cの四段階というふうに聞いているんですけれども、茨城空港が上から三番目のBという評価でございまして、私としてもこれは何でかなと思って、県民の皆様もそうですし、県庁の方たちもちょっとこれは残念だなというような、私も感じました。

 そこで、改めて、訪日誘客支援空港のフォローアップ制度とは、これは一体どんなものなのか、そもそもそれをまず伺いたいと思います。

久保田政府参考人 お答え申し上げます。

 明日の日本を支える観光ビジョンが定めます訪日外国人旅行者数、二〇二〇年四千万人、二〇三〇年六千万人の目標の達成に向けましては、地方創生の観点からも、国際線の就航によります地方イン、地方アウトの誘客促進が大変重要となります。

 このため、国土交通省におきましては、先生御指摘のように、全国二十七の地方空港を訪日誘客支援空港として認定をいたしまして、着陸料やグランドハンドリング費用の軽減等の新規就航や増便への支援、ボーディングブリッジ等の旅客受入れ施設整備への支援等を実施しているところでございます。

 本制度におきましては、翌年度に各空港におきまして更に効果的な取組を行っていただくため、毎年度、その空港におけます取組内容や国際定期便数や訪日外国人旅行者数の目標に対する達成状況につきまして、有識者によるフォローアップというものを実施しているところでございます。

 これは、S、A、B、Cとございますが、この評価結果につきましては、支援メニュー適用の可否を決めるものではございませんで、各空港におきましてみずからの取組を更に効果的なものにしていただくためにお示しをしているものでございまして、その際出ました有識者からのコメントとともに他空港におけます優良事例なども紹介しながら、翌年度の取組の参考にしていただくことを期待しているところでございます。

青山(大)委員 御丁寧にありがとうございます。

 別にこの評価によって支援の内容とかが変わるわけじゃないというのは御答弁いただきましたけれども、結局、目標はそれぞれの空港ごとに独自に設定するという答弁がございましたけれども、やはり我々茨城県人は真面目で、しっかり高い目標を設定してしまうからなかなか届かないわけで、これはある意味、変な話ですけれども、目標を最初から低く設定しちゃえば達成できるわけじゃないですか。なので、もしこういう評価をするんだったら、ある程度客観的な目標の基準なんかを逆に国交省側で設定した方がもっと客観的な評価になるのかなと思うんですけれども、その点、いかがでしょうか。

久保田政府参考人 お答え申し上げます。

 訪日誘客支援空港に対します支援制度と申しますものは、国際線誘致に意欲高く取り組む地域を支援する観点から私ども実施しているものでございまして、その意味から、目標設定におきましても、地域の意欲を尊重して、高いモチベーションを持って取り組んでいただくために、国によりまして一定の基準等を示すものは余り適当ではないと考えておりまして、各空港、各地域それぞれにおいて御検討の上、設定いただくこととしておるところでございます。

 御指摘のように、茨城空港につきましては、先生おっしゃいましたように、高い目標を掲げて取組を進めていただいております。その結果、例えば国際定期便数が、平成三十年度の評価におきましては、対前年一八〇%となるよう非常に順調に実績を上げられているところでございますが、目標の達成には至っていないということからB評価となっているところでございます。

 ただ、その際には、有識者の方から、例えば、新たな戦略展開の必要性もやった方がいいのではないか、北関東地域連携もうまくやった方がいいのではないかという御指摘もありました。もちろん、茨城県の方においては、自治体において、グランドハンドリング機材の提供でありますとか、県内宿泊を条件とします二十四時間千円レンタカー、そういった提供もされている、独自の取組をされている、こういったものは評価する声もあったところでございます。

 いずれにしましても、国土交通省におきましては、引き続き、高い目標に向かって、成果を上げている空港の事例も参考にしていただきながら、取組を緩めることなく進めていただくことを期待しておるところでございます。

青山(大)委員 わかりました。

 せっかく高い目標を掲げてやって、評価を見て、通信簿を見たら低くて、下がっちゃったら意味がないので、それはちょっとまた何か改善できる部分は改善してほしいなと思っていますし、引き続きさまざまな御支援のほどもよろしくお願いいたします。

 では、最後の質問を伺います。

 本委員会でも議論した日本とEUとのEPA、ことし二月に発効されたわけでございますけれども、これは私も昨年この委員会でも同じ質問をしたんですけれども、やはり、このEPAの第十六・三条で、一九九八年の労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言で示された八つの基本的なILOの条約に関して、「各締約国は、自己の発意により、批准することが適当と認める基本的なILOの条約及び他のILOの条約の批准を追求するための継続的かつ持続的な努力を払う。」と規定をされております。

 そういった中で、日本は基本的な八つの中で二つが批准されていないわけでございます。EPAを結んだわけでございますし、今後、この未批准の二つの締結に向けてどのようなスケジュールを描いているのか、また、EU側から両条約が未締結である理由を問われた場合にどういった対応をするのか、最後に質問させていただきます。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国においては、個々のILO条約について、条約を批准することの意義等を十分に検討し、批准することが適当と考えられるものについて、国内法制との整合性をきめ細かく確保した上で批准してまいりました。

 お尋ねのあったILO第百五号条約及び第百十一号条約に関しては、国内法制との整合性についてなお検討すべき点があり、現在、批准の可能性について慎重に検討を行っているところでございます。

 また、外交上のやりとりの詳細についてお答えすることは差し控えたいと思いますが、本協定の履行に関する意見交換においてEU側からILO条約に関する照会がある際には、我が国の国内制度の状況などについて説明しているところでございます。

青山(大)委員 これ以上は質問しませんけれども、EPAが発効されてちょっと状況も変わってきたので、それを踏まえて、今後、これまでとは違ったような対応をこれからよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わりにします。ありがとうございました。

若宮委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 沖縄の米軍普天間基地の問題について質問します。

 先日、ワシントンで行われた日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2の共同発表は、名護市辺野古の新基地建設が普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策とし、建設計画を可能な限り早期に完了すると明記してあります。

 しかし、政府が辺野古の新基地建設に固執すればするほど、普天間基地の危険性が増している実態があります。

 普天間基地所属の米軍機が過去五年に起こした主な事故を調べてみました。今皆さんにお配りをしている、普天間基地の所属機の過去五年の主な事故というのがあります。

 二〇一六年十二月にMV22オスプレイが名護市安部に墜落するなど、普天間基地所属の米軍機による事故は過去五年間で計二十九件にも上っています。二〇一七年、二〇一八年は特に事故が多く、一年で十件以上あります。二〇一七年十月にCH53ヘリが東村高江で不時着、炎上しています。同年十二月には、宜野湾市の緑ケ丘保育園と普天間第二小学校に窓枠など立て続けに部品を落下させています。二〇一八年も一月だけで三件も米軍ヘリが基地外に不時着し、その後も鹿児島、長崎などで緊急着陸が相次ぎ、ことしも、四月一日、MV22が伊丹空港に緊急着陸しています。

 そこで、河野大臣に伺いたい。普天間基地所属の米軍機が沖縄県民の命にかかわりかねない事故を立て続けに起こしている異常な実態を大臣はどのように認識されているのか、お答えいただきたいと思います。

河野国務大臣 住宅や学校に囲まれ、世界でも危険と言われている普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければなりません。政府としては、地元の皆様の御理解を得る努力を続けながら、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現するため、全力で取り組んでいく所存でございます。

 我が国における米軍機の運用に際し、安全性が最大限確保されることは当然のことと考えており、外相会談を含め、さまざまなルートを通じ、アメリカに対し、これまで累次にわたり申入れを行ってきているところでございます。また、今般の日米2プラス2においても、飛行の安全及びこの問題に係る国民の懸念に対処する重要性について、四閣僚の間で認識の一致を見たところでございます。

 米軍も、平素から、日々の定期的な整備、飛行前後の安全点検、隊員教育などを実施し、安全管理に努めていると承知をしておりますが、引き続き、米側に対し、そのような取組を徹底し、安全面に最大限配慮するよう強く求めてまいりたいと思います。

穀田委員 認識が一致したとか安全管理に最大限努めるといって、何回もこれは約束していてこういう事態がずっと続いているということに対して、私は怒りを禁じ得ません。

 辺野古新基地建設に伴う環境影響評価書によれば、新基地には事故を起こした普天間基地所属の米軍機と同じ機種が全て配置されることになっています。これでは、辺野古に新基地が建設されたところで何も事態は変わらない。負担軽減どころか危険性は全く除去されないんじゃないかと率直な懸念を皆さんは持っているわけですけれども、大臣はどうお考えですか。

河野国務大臣 先ほども述べたとおり、我が国における米軍機の運用に際し、安全面が最大限確保されるのは当然のことでございます。

 辺野古への移設が実現すれば、飛行経路が海上となることで安全性は格段に向上し、騒音も大幅に軽減され、住宅防音が必要となる世帯は一万数千戸からゼロとなるものと承知をしております。

 一日も早い普天間飛行場の全面返還を実現するために、政府として全力で取り組んでまいりたいと思います。

穀田委員 今大臣から御答弁あった、実現すればという話自身については、私ども共産党の赤嶺議員が、どれほど実態が踏まえられていないかということについては、総理大臣とのやりとりを何度もしているものですから、記憶を呼び起こしてほしいと私は思います。

 政府が普天間基地周辺の住民の生命財産を最優先に本当に考えるならば、辺野古の新基地建設にかかわりなく、政府の責任で一日も早い運用停止こそ行うべきだと考えます。

 そこで、今もお話あったように、政府は普天間の固定化は絶対に避けなければならないと何度も答弁しています。しかし、そう言いながら、実際には、辺野古新基地が完全に運用可能となるまで普天間基地を継続使用するための改修事業を推し進めているのが現実であります。

 防衛省は、二〇一二年四月の日米2プラス2の共同発表に基づいて、二〇一三年度から、雨水排水施設など五つの改修事業に総額五十六億円を負担してきました。さらに、二〇一六年以降は、アメリカ側の要求に応じて行った老朽調査に基づいて、現在、新たに十九施設の改修事業を進めています。

 原田防衛副大臣、普天間基地での新たな改修事業を検討するに当たって、アメリカ側からはどんな要求が出されたのか、明らかにしていただきたいと思います。

原田副大臣 お答えをいたします。

 普天間飛行場の補修事業は、委員御指摘のように、二〇一三年より実施をいたしておりますが、設置から五十年以上が経過をいたしまして日々施設の老朽化が進んでいる一部施設について、安全な運用の維持等を図るため、日米間で協議を行っておりまして、隊舎、貯水槽、格納庫等の十九施設の補修事業を追加的に日本側で実施する旨、平成二十八年八月に公表したところでございます。

穀田委員 防衛省が普天間基地での新たな改修事業を発表したのは、今お話あったように、二〇一六年八月であります。同じ年の三月には、新基地建設に伴う防衛局の地質調査で、大浦湾に軟弱地盤が存在することが判明しています。

 これも私どもの、先ほど述べた赤嶺議員が再三追及して、ずっと隠し続けてきたというのがありましたけれども、普天間での改修事業に当たっては、米側から、大浦湾の軟弱地盤によって新基地建設が長期化することを見込んだ上で普天間基地の施設の改修要求が出されたのではないですか、お答えください。

原田副大臣 私の方では、そのようには認識いたしておりません。

穀田委員 えらい簡単ですな。

 沖縄防衛局の地質調査で軟弱地盤の存在が判明したのは、今お話ししたように、二〇一六年三月、これは確かだ。うんと言っておられるので、確かだ。普天間基地での新たな改修事業が発表されたのは、その五カ月後の八月。

 こうした経緯から見ても、アメリカ側から出された普天間基地での改修要求は辺野古新基地建設の長期化を見込んだもの、そうであることは容易に推察できるところだと思います。私だけがそう思っているんじゃなくて、多くの方々が、メディアも含めて、そういう考えを持っているということは御承知かと思います。

 そこで、防衛省が普天間基地で行っている十九施設の改修事業で、既に終了した施設ごとの予算額をお答えいただきたいと思います。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 十九施設のうち、教育施設及び工場については工事が完了しておりまして、格納庫の補修の一部として大扉及びはりの工事が完成したところでございます。

 教育施設につきましては三億二千四百万円でございます。工場につきましては二億五百万円でございます。格納庫につきましては一億二千七百万円でございます。

穀田委員 私は、二〇一五年の四月二十二日、本委員会で、普天間基地の改修事業に日本側が費用負担することは、政府が言うところの普天間基地の危険性の除去、また固定化の回避に逆行するばかりか、普天間基地の二〇一九年二月までの運用停止が空約束、口約束にすぎないということを自己暴露するものだと当時指摘しました。当時は左藤副大臣でした。これに対して左藤副大臣は、さらなる補修事業は予定していないと繰り返し強調していました。

 ところが、その後の事態は、当時私が懸念したように、五年以内の運用停止はほごにされ、その上、新たな改修計画によって既に三つの施設の改修事業に、さっき三つありましたよね、三つ合計しますと約六億五千万円もの思いやり予算が投じられているということになります。

 防衛省はこれまで、普天間の改修事業は必要最小限のものだと説明してきました。ところが、沖縄防衛局が二〇一六年に行った老朽調査の特記仕様書、皆さんにお配りしている、これですね。ちょっと縮小、半分にしているので。老朽調査業務委託特記仕様書、これですね。この資料を見ますと、十九施設の改修事業は基地全体の六割強にも及ぶ範囲を対象とした大規模なものとなっている。これがその写真ですね。基地全体の図と、その中でやる中身、内容、大体わかると思いますが、約六割強というふうになります。

 今お話ありましたけれども、一部は隊舎とか教育施設といったってあれなんですけれども、十九施設の改修事業には、隊舎、教育施設、格納庫などの十六施設を対象とする補修計画と、それから、保安施設や貯水槽、駐車場の三施設を対象とする整備計画の二つがあって、このうち、整備計画については、文化財調査や大規模造成等により、長期的な整備計画となる懸念があると明記されています。

 原田副大臣、特記仕様書にそうした記述があることは間違いありませんね。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 平成二十八年八月に追加の十九施設を公表した後に、各施設に関し、必要な補修内容を把握するため、平成二十八年十月から同年十二月にかけまして、沖縄防衛局は普天間飛行場の老朽度調査を実施いたしました。

 当該調査の特記仕様書において、補修計画については、現地調査の結果を踏まえ、各施設ごとに補修の工法、範囲、そして期間及び概算数量及び金額を作成する、なお、補修計画は、原則として、現行米軍基準に従って、日本国の法律及び規則等に基づき計画される、ただし、文化財調査や構造補修等により長期的な整備計画となった場合には、その代替手段を検討することといたしております。

 また、整備計画につきましては、十九施設のうち、保安施設、貯水槽及び駐車場は、建てかえ又は補修要望でございまして、原則として、現行米側基準に従って、日本国の法律及び規則等に基づき計画される、ただし、文化財調査や大規模造成等により長期的な整備計画となる懸念がありまして、その代替手段や工法、期間及び概算を検討することとしておりまして、なお、作成に当たっては、段階的に監督官や米軍関係者と調整が必要であることといたしております。

 当該調査結果を踏まえ、十九施設のうち、先ほども御答弁申し上げましたように、教育施設、工場、格納庫の一部については、日米間で調整を終了いたしまして、補修を実施をしたところでございます。十九施設のうち、残りの十七施設については、引き続き日米で具体的な工法について協議中でございまして、協議が調い次第、補修を実施していく考えでございます。

穀田委員 今、十九あって、三つやって、十七と言ったけれども、十六とちゃうか。いや、いいんだけれども。

原田副大臣 失礼しました。

 格納庫の残りの補修事業を含めた場合に十七とお答えをさせていただいたということでございます。

穀田委員 手つかずだというのがあるのはわかっているんですけれども。

 それで、今の答弁というのは、結局、私が示したこの特記仕様書を、簡単に言うと、読んだだけなんですよね。それやったらそのとおりだと言ってもらえばいいわけなんだけれども。

 防衛省は、これまでの改修事業の期間について、二年から三年程度で完成するということで私どもの質問に答えています。ところが、完成した施設は現時点で三つのみで、残りの十六施設はまだ手つかずだと。しかも、今答弁ありましたように、特記仕様書には、整備計画では、文化財や大規模造成等により長期的な整備計画となる懸念があり、その代替手段や工法、期間及び概算を検討すると記されています。改修内容についても、防衛省は、現有機能の維持が目的で、必要最小限のものだと説明してきました。

 しかし、特記仕様書には、保安施設など三つの施設は新設又は建てかえと記されており、現有機能の維持にとどまるものでは決してないと。私は、こうした事実を米側と調整中として隠してきた責任は重大だと指摘せざるを得ません。

 更に聞きますけれども、防衛省は、十九施設の改修事業によって、一体、普天間基地の耐用年数がどの程度延びると想定しているのか、昨年改修事業が終了した教育施設などの三つの施設ごとの耐用年数はどのくらいなのか、お答えいただきたいと思います。

原田副大臣 お答えをいたします。

 普天間飛行場の補修事業は、普天間飛行場の安全な運用の維持等を図る上で必要最小限の補修を行ってきたところでございまして、十九施設のうち、教育施設については内外装、屋根、空調設備等の補修、工場につきましては内外装、空調設備等の補修、格納庫の一部については大扉とはりの補修を行っておりまして、これらの補修は建物の構造等にかかわる工事ではありませんで、あくまで部分的な補修でありますことから、この補修をもって教育施設、工場及び格納庫の耐用年数をお答えすることは困難でございます。

穀田委員 耐用年数について困難だと。

 普通、おうちを建てる場合、内装だってその一つの中身なんですよ。何か外だけやれば耐用年数が延びるわけじゃないんですね。内装だって耐用年数が来るからやる。それは、自分のところで、みんな、おうちを持っていたり、借家を持っていたりするし、みんなそういうふうにして耐用を決めますやんか。それは当たり前の話ですやんか。

 だから、内装が中心やから、建物の構造とは関係ないからそういうわけじゃないんだ、そういう理屈は通らぬですよ。普通、だって、皆さん、そう自分のところのことをやりませんか。しかも、内装というのは、少し剥げかかってきたり、いろいろなことがあるから直すんでしょう。そういうのについて言えば、結果としては耐用を考えてやるわけなんで。

 改修事業というのは、当該工事を施したことによって対象施設がどの程度耐用年数を延ばせるか考慮して行われるものであって、要するに、建物の構造上、無意味でなくて、それ自身が持っている意味というのは、当然、耐用年数を延ばすためにやっているわけですね、これはあかんようになってきたからというわけでしょう。したがって、答えられるはずだと思うんです。

 そうしますと、どの程度の耐用年数になるよう、どのぐらいこういうことをやったら、まあもつわな、あと十年、あと二十年とかいうのを含めてやるわけですやんか。そういう意味での、お話あったように、必要最小限の補修を行った、どの程度の耐用年数に、耐えられるようになるんですか。

原田副大臣 お答えをいたします。

 繰り返しになりますけれども、今私が答弁させていただきましたように、これらの補修は建物の構造そのものにかかわる工事ではありませんで、あくまで部分的な補修であることから、この補修をもって教育施設、工場及び格納庫の耐用年数がどれぐらい延びるかということは、耐用年数をお答えすることは困難でございます。

穀田委員 困難だ。

 私は、三つの施設の改修事業に投じられた費用は何ぼかと最初聞きましたよね。そうしたら、お話ありましたやんか、合計でいうと六億五千万円に上ると。国民の血税をそれほど使っておきながら、その結果、どの程度耐用年数が延びたのか、答えを拒否するというのは私は許せないと思うんですね。

 委員長、この際、ちょっと一つ言っておきたいんですが、私、要求したいんです。

 要するに、困難だと言っているわけだけれども、事実上これは答えていないわけですよね。耐用年数というのは、要するに、内装とかを含めて部分的だと言うけれども、何せ六億円もかかっている仕事なわけですよ。したがって、私は当たり前のことを答弁を求めていると思うんですね。

 困難だじゃなくて、困難だということはあるんだけれどもなかなか難しいと言っているのか、それを含めて、きちんとした議事の整理として私は要求したいと思うんですが、いかがですか。

若宮委員長 ただいまの件につきましては、理事会で協議させていただきたいと思います。

穀田委員 では、角度を変えて聞きますけれども、配付資料にあるように、沖縄防衛局の老朽調査の特記仕様書には、十九施設の補修、整備のいずれの計画も、現行のアメリカ側基準に従って行うと記されています。

 私、ここに持ってきましたけれども、ここに米国防省が定める財務管理規則があります。この文書には、米軍が所有する資産ごとに耐用年数が列記されており、建築物では、施設改修で二十年、改修で二十年、構造物では、構造物の施設改修で十五年の耐用年数を求めています。こういう形で出ているんですよね。これがアメリカ側の基準によって行うという基準の根本にある。

 この国防省の定める耐用年数は、当然、在日米軍の施設にも適用されるものであって、普天間基地の改修事業もこのアメリカ側基準に従って行われているんじゃないんですか。

若宮委員長 ちょっと速記をとめていただけますか。

    〔速記中止〕

若宮委員長 速記を起こしてください。

 原田防衛副大臣。

原田副大臣 委員お示しのように、米側の基準ももちろんでございますけれども、日本国の法律及び規則等に基づいても計画をされておりまして、ただし、文化財調査や構造補修等によって長期的な整備計画になった場合には、その代替手段を検討することといたしております。

 重ねてになりますが、今委員お示しのように、現行米軍基準に従って、日本国の法律も加味して計画されておるというところでございます。

穀田委員 特記仕様書にありますように、事は普天間基地の継続使用にかかわる重大問題なんですね。アメリカ側の基準に従って改修事業を行ったのであれば、昨年改修が終了した教育施設など三つの施設も、二十年の使用を想定して行われたはずであります。

 結局、一方で辺野古新基地建設を強行し、一方で普天間基地の二十年もの長期にわたる使用を予定している。固定化そのものじゃないか、全く許しがたいやり方だと思います。

 私は、その意味で、そんなことないというんだったら、この特記仕様書には、ちゃんとアメリカ側の基準に従って、その後ろに書いていますよ、「日本国の法律及び規則等に基づき計画される。」と書いてまっせ。だけれども、一番最初に書いているのは、米側の基準に従ってという、これだと書いているわけですやんか。だから、これに基づいてやればそうなる。法律も含めてやればどのぐらい縮まるのか知りませんで。そういうのについてはっきりと答えるべきと違いますか。

若宮委員長 速記をちょっととめていただけますか。

    〔速記中止〕

若宮委員長 速記を起こしてください。

 原田防衛副大臣。

原田副大臣 建物の構造等に、先ほどから申し上げておりますように、工事ではございませんので、部分的な補修であることから、耐用年数がどれぐらい延びるかというところは答えが困難ということを、先ほど申し上げたとおりでございます。

穀田委員 わざわざ仕様書に書いていて、アメリカ側の基準があってということの、あなた方の文書の中にあるからわざわざこれを出しているわけじゃないですか。それも、結局、困難だということは言うけれども、否定できなかったということだと思うんですね。

 米海兵隊が公表した二〇一九年航空計画では、普天間基地を二〇二八年まで使用する計画が記されています。防衛省が実施した改修事業は、それを更に十年上回る二〇三八年までの継続使用を想定している、つまり二十年というようなわけだからそういうことだということになりますよね、これによれば、ということになる。まさに、基地の固定化にはつながらないといいながら、実際はこんな長期使用を事実上認めているということになると思います。

 沖縄防衛局では、二〇一六年に行った老朽調査に関する報告書を作成しているはずであります。報告書の全文を直ちに提出していただきたいんですけれども、どうですか。

原田副大臣 老朽度調査の結果につきましては、米軍施設の現状等に係る情報が含まれておりますために、現在、米側と公表できるか否かの調整を行っているところでございます。調整が済んだものにつきましては公表が可能でございます。

穀田委員 報告書を直ちに提出することを私は要求します。

 この間、本委員会の理事会でも再三問題になっていますが、報告書の提出に関して言いますと、きょうも、朝、理事会において報告がありました。同じことを言っているだけなんですね。私は、いわば三十の日米の訓練の問題について出しなさいと言っているのが、一つだけしかまだ明らかになっていないということで、相変わらず拒否している。これは私は全く許しがたいことだと思うんですね。

 日米の2プラス2の共同発表が行われた二日後に投開票された衆議院沖縄三区の補欠選挙は、辺野古新基地建設が最大の争点となりました。オール沖縄の屋良朝博候補が圧勝しました。与党の候補は、初めて辺野古推進を公然と掲げて敗北したわけであります。もはや、その点では言いわけがきかないと思います。県民の民意は揺るぎません。辺野古新基地建設を直ちに中止し、普天間基地を固定化する改修事業も直ちに中止すべきであります。

 普天間基地の早期閉鎖、無条件撤去を強く求め、そして報告書の提出を直ちに求めて、質問を終わります。

若宮委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳です。よろしくお願いします。

 きょうは、山川さんが中東のJAIPのプロジェクトなんかも取り上げてくださっていて、私、ヨルダン国王の国会招致をいつも提案させていただいていますけれども、私だけでなくて、多くの方にそういった方向を賛同いただければと思っております。

 いつも地球は回っていて、いろいろ出来事がということを申し上げさせていただいていますけれども、御案内のとおり、スリランカのテロがあり、そして、近隣国でいくと、フィリピンが、マニラの北の方で強目の地震があったということで、八人亡くなったとかいう情報もございます。インドネシアの大統領選挙では、選挙の事務の関係で死亡者が出たとかいうような情報もございます。

 総理はフランス、イタリアと首脳外交を展開されている中で、外務大臣はきょう質疑ということですが、率直に私は、総理と外務大臣の役割分担というのはどうなのかなと。冷静に考えて、私なりの理解としては、積極的平和主義を掲げる安倍政権としてなんですけれども、やはり外務大臣の役割というのは日本の平和と安定にとって極めて重要で、日々のあるいは通常の外交、こういった意味での外務大臣同士のホットラインとか、あるいは大臣以外の外務省の方々の、外交官としての日々の根回しというかコミュニケーションといったものが平和の構築につながっているのかなということで、引き続き御尽力いただきたいということを申し上げたいと思います。

 外務大臣は、情報によりますと、十連休のところでは、中東・アフリカ地域、今調整中という情報ですけれども、行かれるようですし、公式発表されたきょうの情報ですと、五月九日から十一日にモスクワでラブロフ外相と会談をされるということなんですが、大臣、もう御案内だと思うんですけれども、バイカル地域でまた火事が発生して、村一つ、大変な被害に遭っておられるということで、バイカル地域の場合は、二〇一六年の秋、それから二〇一八年の初めだったと思いますけれども、そして直近ということで、何度も火災が起きているようでございますけれども、やはりお見舞いをきちっと伝えていただくことも、ちょっと僣越ですけれども、大事なことではないかなということで、ちょっとニュースを見ながらそう思っております。

 それで、きょうは、外交官の方々の御活躍という点で、改めて、杉原千畝さんのことを確認しつつ、ちょっと地元愛知県の関係の質疑をさせていただきたいというふうに思っております。

 それでは、まず事実確認として、杉原千畝さんの名誉回復という表現がありまして、それで、杉原千畝記念館というのが、これは私の東海地域でいきますと岐阜県加茂郡八百津町に記念館があって、そちらのホームページにこういうことが書いてございます。

 一九九一年、当時の鈴木宗男外務政務次官が千畝の行動を高く評価すると夫人に伝えました、千畝生誕百年に当たる二〇〇〇年、勇気ある人道的行為を行った外交官杉原千畝をたたえてと顕彰プレートが外交史料館、飯倉ですね、に設置された、除幕式で当時の河野洋平外務大臣が戦後の外務省の非礼を認め、正式に遺族に謝罪しました、これにより千畝の名誉は回復したのですということがホームページに書かれてあります。

 それで、まず、大臣の御答弁をいただく前に、事実確認として、二〇〇六年の三月二十四日の小泉純一郎総理の答弁書、内閣衆質一六四第一五五号というところで、外務省には懲戒処分の証拠書類ですか、証拠がないというような答弁書があるようなんですけれども、この事実は今も変わっていないかどうかをまず確認させてください。

下川政府参考人 お答え申し上げます。

 答弁書から何ら変更はございません。外務省において保管されている文書により確認できる範囲では、杉原千畝在カウナス領事館副領事に対して懲戒処分が行われたとの事実はございません。

杉本委員 懲戒処分の事実はないということを改めて確認させていただきました。

 それで、外務省の中で働かれている外交官であり、あるいは事務次官であり、どんどんかわられて、理解の仕方がまた杉原千畝さんに対して変わってきているという認識はあるんです。

 ちょっと歴史をさかのぼると、申し上げた一九九一年の鈴木外務政務次官のころの話ですけれども、当時の佐藤外務省大臣官房長が、千畝の退官は日本の降伏に伴う外務省の大規模なリストラの一環でなされたというようなことを言っておられたり、一九九二年の話ですけれども、草川昭三さんは公明党の議員でいらしたと思いますけれども、の質問に対して、兵藤外務省欧亜局長が、いろいろと答弁する中で、訓令違反ではあるが、数千人の人命を救うかどうかというより大きな問題があったとして、切迫した状況における杉原領事の判断を支持したということが九二年。

 そして九四年に、批判的みたいにとられていたという中において、外務事務次官をされた小和田元国連大使でもありますけれども、自分が批判的立場に立っているみたいなことに対して、そういう報道は心外です、私としては反対したという記憶はありませんというようなことを言われる中で、二〇〇六年に、小泉総理の答弁書で懲戒処分の証拠がないという確認がされているわけですけれども、その間、申し上げた二〇〇〇年に、河野外務大臣、現外務大臣じゃなくて元外務大臣が演説をされておられます。

 これまでに外務省と故杉原氏の御家族の皆様との間でいろいろと御無礼があったこと、御名誉にかかわる意思の疎通が欠けていた点を外務大臣としてこの機会に心からおわび申し上げたいと存じます。日本外交に携わる責任者として、外交政策の決定においては、いかなる場合も、人道的な考慮は最も基本的な、また最も重要なことであると常々私は感じております。故杉原氏は今から六十年前に、ナチスによるユダヤ人迫害という極限的な局面において人道的かつ勇気のある判断をされることで、人道的考慮の大切さを示されました。私は、このようなすばらしい先輩を持つことができたことを誇りに思う次第です。

 これは二〇〇〇年十月十日の河野洋平外務大臣の演説でございますが、それから月日が二十年近くたったわけでございます。

 改めて、現河野太郎外務大臣に、この河野洋平大臣の演説もありましたけれども、現時点の大臣としての御評価、特に、最近は外務省がリードしているSDGsの関係でいくと、人権とか平和とか、そういう切り口というか観点で、普遍的価値でもあるような人道というような点も踏まえて、改めて、現外務省、大臣の御見解を伺いたいと思います。

河野国務大臣 杉原千畝氏が出しました、俗に命のビザと言われているもので大変多くのユダヤ人の命が救われたということ、そして、それが今各国でも高い評価を受けているわけでございます。

 外務省として、こうした先輩の業績をしっかりと後世に語り継いでいくということが何よりも大切なことだというふうに思っております。

杉本委員 ありがとうございます。

 コンプライアンスという言葉が企業なんかではありますけれども、やはり組織論というのがある中で、より高次元の判断というのが個々人にも求められているという点で、大臣今御答弁いただきましたけれども、我々の仕事のあり方という意味では、杉原千畝さんの御活躍というか御功績は、我々は肝に銘じて行う必要があるということを申し上げさせていただきます。

 次に、この杉原さんの関係で、これは外務省の方に伺いますけれども、二〇一八年の十月十二日に、地元の知事である大村秀章さんが常々言われているんですけれども、愛知県の県立の瑞陵高校、百年以上の長い歴史の旧制五中と言われる学校で、初代卒業生が江戸川乱歩さんで、第六期生がこの杉原さんに当たられるということのようなんですけれども、十月十二日に、顕彰施設をこの学校の中に、杉原千畝広場、センポ・スギハラ・メモリアルというものを設置し、助けた方々の名前まで刻んであるということで、歴史に造詣のある大村氏ならではの、記念の銅像をつくられたり、メモリアルのものを設置されたわけでございます。

 きょうもセントレアの方々が私のところに御挨拶に来てくださったんですけれども、おかげさまで、大阪は大変訪日外国人がふえている。東京も御案内のとおりで浅草始め。おかげさまで、愛知県名古屋、観光客もふえているんですけれども、やはり歴史的な施設であるとかゆかりの地というのは、長い意味で、食べ物だとかそういうところとまた違う観点から観光客に来ていただける観点ではないかと思うわけでございます。

 こういった点で、瑞陵高校のメモリアル、この対外的な発信、リトアニアだったりイスラエルだったり、ユダヤ関係の方々が多くいる国々などに対して、外務省としてどんな発信をしてくださっているかどうか、改めて確認をさせてください。

宇山政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の杉原千畝広場、センポ・スギハラ・メモリアル、完成記念式典の際には、外務省から宮川国際文化交流審議官が出席いたしまして、杉原氏が卒業された瑞陵高校の在校生に対して、杉原氏の人道精神によって世界の人々から尊敬される日本人として活躍されることを祈りますといった旨のメッセージを発信いたしました。

 その式典の前日、昨年の十月十一日でございますが、訪日中のスクバルネリス・リトアニアの首相が瑞陵高校を訪問いたしまして、センポ・スギハラ・メモリアルを視察いたしました。

 翌十二日に日・リトアニア首脳会談が行われておりまして、その際にも安倍総理とリトアニア首相の間で、杉原氏を通じたかたいきずなをもとにして両国関係を更に強化していくということで一致をいたしております。

 そして、リトアニア、イスラエル等々関係国の国民に対しての発信でございますが、在外公館による杉原千畝氏関連行事、いろいろと主催あるいは参加しておりまして、さらに、SNSを通じた関連情報の発信、訪日招聘プログラムに杉原氏ゆかりの地の訪問を加えるといった取組を行っているところでございます。

 例えば、昨年、リトアニアにおきましては、杉原千畝記念館がございますカウナス市と在リトアニア日本国大使館が協力いたしまして、杉原ウイークというものを開催いたしまして、そこで杉原氏の偉業を映画の上映とかシンポジウム等を通じて発信するとともに、日本文化に関する情報発信もあわせて行って、これを一週間にわたって実施したといったような例がございます。

 私からは以上でございます。

杉本委員 ありがとうございます。

 世界各国に助けられたユダヤの関係の方々というのはいらっしゃるので、リトアニアとの関係、かなり深くあるということは改めて伺わせていただきましたけれども、イスラエルとかほかの、アメリカにもユダヤの関係の方々はたくさんいらっしゃるし、ロシアにもいらっしゃるでしょうしというようなことなので、全世界から中部セントレア空港に着陸していただくというような流れになるように、更にお力を発揮していただきたいということをお願いさせていただきます。

 それでは、同じ愛知県のかかわりで、最後の質問になりますので若干早く終わるかもしれないんですけれども、二〇二三年の技能オリンピック、五輪の国際大会、日本、愛知への招致といったことを愛知県では力を入れておりまして、東京二〇二〇のオリパラ、この間、鈴木新大臣とも質疑させていただきましたけれども、大阪でも、おかげさまで、日本国が行う大阪・関西の万博が二〇二五年ということなんですけれども、その間に、二〇二三年に技能五輪国際大会、愛知で開催すべく、今、六十九カ国がことしの八月に投票権を行使して決定されるということで、立候補している国が日本とノートルダムの被災があったフランスということでございまして、マクロン大統領は強い意向を持って技能五輪の招致に力を入れているということを伺っております。

 万博をフランスが辞退して、逆にこちらに力点を置いているやにも聞いておる次第なんですけれども、そういった中で、外務省さんが技能五輪についていかに認識をされ、愛知県とどんな連携をしていただいて、六十九の投票の機会を持っている国々にアプローチをしてくださっているか等を最後の質問として伺えればと思っております。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、我が国は、二〇二三年技能五輪国際大会の愛知への招致のために、本年八月に行われる選挙に向けて取り組んでいるところでございます。

 具体的には、厚生労働省、愛知県等が共同事務局となっている二〇二三年技能五輪国際大会招致委員会を中心に招致活動を展開しておられるというふうに外務省としても承知をしております。

 本年三月には、ワールドスキルズインターナショナル会長ら幹部の方が日本を訪問され、検証活動をされたということで、その際にも関係団体が一体となった取組が行われたというふうに理解をしております。

 外務省としては、昨年十月の立候補を受け、在外公館を通じて、投票権を有する正式加盟国の政府機関やWSI加盟組織等に対して働きかけを行ってきているところでございます。

 今後とも、八月の開催地決定まで、厚生労働省とも密に連携して、招致活動に取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

 また、委員から御紹介ありましたように、二〇二三年の本件愛知大会の開催は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック、それから二〇二五年の大阪・関西万博の中間に行われるものとして、世界の関心を日本に途切れなく引きつける重要な意義があるというふうに認識をしております。

 選挙戦は予断を許さない状況でありますけれども、厚生労働省、愛知県など関係者一丸となって、外務省も取り組んでまいりたいというふうに思っているところでございます。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 杉原千畝さんのゆかりの愛知・名古屋あるいは岐阜であったりというような東海エリアも、東京と関西・大阪とともに、極めて日本のエンジンとして、あるいは観光の地としても大切なところでございますので、ぜひ外務省の方々にも更に御活躍で、この愛知にもお力添えをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、玄葉光一郎君。

玄葉委員 玄葉光一郎です。

 本日は、北方領土問題について質問をさせていただきたいと思います。

 安倍首相の掲げる戦後の外交の総決算の象徴的テーマでもございます。昨年の十一月、リスクをかけて勝負に出たということではないかというふうに思います。

 ただ、河野外務大臣は、前回の質疑の中でも、一回、二回とラブロフ外相と外相会談を行って、手応えを感じる、こういうお話でございましたけれども、私などは、雲行きが怪しいのではないかと危惧をしているところであります。

 河野外務大臣、五月の日ロ外相会談、連休明けにあるというふうに聞いておりますけれども、その日ロ外相会談での対処方針、並びに、先ほども質問に出ていたようでありますけれども、二〇一九年度の外交青書で、北方四島の帰属について、「北方四島は日本に帰属する」という表現を削除したということについて御説明いただけますか。

河野国務大臣 連休明けに日ロ外相会談を行う予定にしております。領土問題を始め、平和条約交渉を含む二国間のさまざまな問題について協議をしてまいりたいというふうに思っております。

 外交青書の記述に関しましては、先ほども申し上げたとおり、政府の法的立場には変わりはございませんが、外交青書は、その対象となっている当該年の政府の外交活動に関して総合的に勘案をし記述をしているものでございます。

玄葉委員 そういうふうに、ずるずると原則的な立場が後退しているのではないかということにも危惧の念を抱いているということでもあるんです。

 現政権の北方領土交渉におけるいわばスローガンでもあると思いますけれども、新しいアプローチという言葉がございますけれども、この新しいアプローチとは何を指しているのか、御説明いただけますか。

河野国務大臣 北方領土問題の解決のためには、過去にのみとらわれるのではなく、日ロ間で北方四島の未来像を描き、その中から双方が受入れ可能な解決策を探し出そうという未来志向の発想が必要であるというところから、この新しいアプローチという考え方が出てきたわけでございます。

 二年前の首脳会談以降、この新しいアプローチで問題を解決しようという方針のもと、元島民の方々の航空機による墓参、そして共同経済活動の実現に向けた二度の現地調査、そして民間中心のビジネスミッションの派遣など、北方四島における日ロの新しい協力が実現をしているところでございます。

 こうした取組の積み重ねを経て、シンガポールでの首脳間での平和条約交渉を加速化しようという合意に至ったものであり、この二年前の首脳会談での合意を着実に進展させ、領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉してまいりたいと考えております。

玄葉委員 そうすると、交渉の基礎を五六年宣言にいわば限定というか、五六年宣言を基礎に交渉していくということをも含めて新しいアプローチというふうに言っているのかどうか、御説明いただけますか。

河野国務大臣 新しいアプローチという中に、広く言えば、今やっていることを含めていいのかもしれませんが、この一九五六年の共同宣言というのが、両国の国会、議会が御承認した唯一の文書でございますので、それに基づいて今回の交渉をやっていこうということでございます。

玄葉委員 共同経済活動とか元島民の航空機墓参などで信頼を積み重ねていく中で、その信頼の積み重ねの上に領土交渉をしようではないか、こういうことなのかなというふうに想像します。

 そもそも国際環境の変化もありますので、全て領土交渉が進まなければ何も進めないという姿勢はかたくな過ぎると私も思いますので、さまざまな日ロ協力を進めながら同時に領土交渉を進めるということ自体は私は理解をいたしますけれども、肝心の共同経済活動などは、果たして議論は進んでいるんでしょうか。

河野国務大臣 四島における共同経済活動に関して申し上げますと、海産物の共同増殖、養殖、温室野菜栽培、島の特性に応じた観光ツアーの開発、風力発電、ごみの減容対策といった五つのプロジェクト候補を出しまして、それぞれについて、今後の作業の道筋を具体的に確認をするロードマップにより、道筋を明確にしていこうとしているところでございます。

 一月の首脳会談の中で、早期にこうしたプロジェクトを実現させるために共同作業を着実かつ迅速に進展させるよう首脳から関係者に指示があり、それを踏まえて、二月の外相会談でも具体的な進め方について議論を行いました。

 今週の二十二日に行われた森外務審議官とモルグロフ・ロシアの外務次官との協議においても、このロードマップを含むこれまでの積み重ねの上に具体的なやりとりを行い、共同経済活動に関するまず法的側面について課長級の作業部会を立ち上げるということで一致をしたところでございます。

玄葉委員 かなり国際法上、お互いの法的立場を害さないで枠組みをつくるというのは大変なことだろうというふうに思います。本当に進むのか、懸念をしています。

 二年前、山口県で確認された八項目の経済協力プラン、これは進んでいるんでしょうか。政府委員でも結構です。

宇山政府参考人 委員御指摘の八項目の協力プランにつきましては、例えば医療とか都市開発とか極東開発……

若宮委員長 もうちょっと大きな声でお願いできますか。

宇山政府参考人 失礼いたしました。

 八項目の協力プランにつきましては、医療、都市開発、エネルギー、極東開発等々、八つの分野におきまして現在さまざまなプロジェクトが進行しておりまして、現在、百七十以上のプロジェクトにつきまして、民間企業が主体になりまして合意等が結ばれておりまして、進捗をしているところでございます。

玄葉委員 私のところには、民間企業の悲鳴が聞こえてきています。官邸の声がけなので断れないから行っている、渋々行っている、正直そういう声が多々聞こえてきていて、残念ながら、実益につながる具体的な成果というのは上がっていないのではないかというふうに思います。

 北方領土でロシアの軍事拠点化がこの二、三年特に進んでいるというふうに思いますけれども、そのことについて外務大臣の見解を伺います。

河野国務大臣 そうした問題を根本的に解決するために、この平和条約を締結し領土問題を解決するのが必要なわけで、そこはしっかりと平和条約締結に向けて粘り強く交渉してまいりたいと思います。

玄葉委員 互いに領土問題の存在を認め合ってこの議論をしている最中に軍事拠点化を進めるというのは信義則違反だと思いますけれども、いかがですか。

河野国務大臣 我が方の立場として受け入れられないものについては、ロシア側に申入れをすると同時に、必要ならば抗議を累次してきているところでございます。

玄葉委員 次に、安倍首相の述べる、北方領土問題について必ずや終止符を打つ、この言葉の意味を教えてください。

河野国務大臣 戦後、まだこの問題が残っている、ロシアとの間での平和条約の締結がなされていないというのが残っているわけで、この領土問題を解決し平和条約を締結する、それによって第二次世界大戦の残された未解決な問題を解決するという決意でございます。

玄葉委員 平和条約の交渉の対象は四島の帰属の問題であるというふうに菅官房長官が言い、かつ、この場で河野外務大臣も、菅長官の方針が政府の方針である、こういうふうにおっしゃったわけでありますけれども、ということは、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する、こういうことだと思います。

 四島の帰属について決着をつけるというのが平和条約交渉であるというふうに考えてよろしいですか。

河野国務大臣 そのとおりでございます。

玄葉委員 ということは、平和条約交渉の際には、確実に国境線をどこかで引く、四、〇か、三、一か、二、二か、一、三か、〇、四かわかりませんけれども、必ず国境線をどこかに引く、こういうふうに考えてよろしいですね。

河野国務大臣 領土問題を解決しと申し上げておりますので、どのような解決になるか今申し上げるのは差し控えますが、領土問題を解決し平和条約を締結しようということでございます。

玄葉委員 安倍首相が、平成三十一年、ことしの二月十二日に、国境線が画定されたことをもって、この領土問題、いわば平和条約を解決するという考え方にのっとっているというふうに言っておりますが、これは当然、外務大臣も同じ考えだということですよね。

河野国務大臣 領土問題を解決しようということでございますから、そういうことになろうかと思います。

玄葉委員 ということは、平和条約を締結するということは、国境線を画定するということでございます。ということは、逆に言えば、国境線が画定されなければ平和条約は締結しない、締結できないということになるわけであります。

 俗に、メディアの報道で、平和条約締結に当たって、歯舞、色丹の二島先行論というのが、十一月、十二月、にぎわしたわけでありますけれども、二島先行というのは、残りの国後、択捉の二島については継続協議になるということをどこか指しているわけでありますけれども、そういう二島先行論のようなことは、当然、国境線を引くということですから、あり得ないということでよろしいですね。

河野国務大臣 交渉に当たっての政府の方針を今の場、公の場で申し上げるのは差し控えます。

玄葉委員 でも、国境線が画定するということは、平和条約交渉は国境線を画定することで、国境線が画定されなければ平和条約の締結はなし得ない、これはいいですね。

河野国務大臣 先ほどから答弁申し上げているとおりでございます。

玄葉委員 ということは、いわゆる、幾つかの島について継続協議にするということではなくて、先ほどおっしゃっていたように、何らかの形で全て決着をつける、こういう考え方で交渉に当たっているということでよろしいですね。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、交渉の方針を対外的に今の段階で申し上げるのは差し控えます。

玄葉委員 率直に申し上げると、この二島先行論というのは、十一月に、日ソ共同宣言を交渉の基礎にすると安倍総理が言われた中で、メディアはほとんど二島先行論と書き立てましたけれども、私は、あり得ないということをそのときから言っておりました。

 つまり、仮にこの交渉が進んだら、一番よくて二島で最終決着ということになりますということを説明していたんですが、そのとおりになっていると思いますし、残念ながら、歯舞、色丹の二島も、どうも大丈夫かという感じに今なっているのではないかなという危惧を持っているということなんです。

 一九九三年の東京宣言の内容と二〇〇三年の日ロ行動計画の内容について、政府委員に確認してもらいたいと思います。

宇山政府参考人 今の御質問は、東京宣言、それから二〇〇三年の日ロ行動計画の北方領土問題に係る……(玄葉委員「内容をお知らせしてほしい」と呼ぶ)ということでございますね。全部読み上げますとちょっと長いものですから、はしょって……(玄葉委員「サマリーでいいです」と呼ぶ)はい。

 まず、九三年の東京宣言におきましては、北方四島の帰属に関する問題を解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続するということが書かれております。

 それから、二〇〇三年の日ロ行動計画の採択に関する日ロ両首脳の共同声明、ここにおきましては、一九五六年の日ソ共同宣言、一九九三年の東京宣言等、一連の諸合意の名称を引用した上で、これらに基づいて北方四島の帰属に関する問題を解決することにより平和条約を可能な限り早期に締結するということが書かれております。

玄葉委員 外務大臣、日ソ共同宣言が交渉の基礎であるということは高らかにうたっているわけでありますけれども、今政府委員から説明のあった一九九三年の東京宣言、二〇〇一年のイルクーツク声明、これもあわせて交渉の基礎だと考えてよろしいですか。

河野国務大臣 一九五六年の共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるというのが今回の首脳間の合意でございますので、それに基づいて交渉を行っているところでございます。

玄葉委員 安倍首相は、日ロ間ではこれまで、一九九三年の東京宣言を始め多くの諸文書、諸合意を作成してきており、これらの諸文書、諸合意を踏まえた交渉を行ってきています、こういうふうに述べていますけれども、今後も、これらの諸文書、諸合意を踏まえた交渉を行っていくということでよろしいですか。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、一九五六年の共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるというのが首脳間の合意でございますので、それに基づいて条約交渉を行ってまいります。

玄葉委員 安倍首相は、この考え方のもとで交渉しているわけでございますと。これはたしか岡田委員との質疑だったと思います、予算委員会での。

 もう一度申し上げますけれども、日ロ間ではこれまで、一九九三年の東京宣言を始め多くの諸文書、諸合意を作成してきており、これらの諸文書、諸合意を踏まえた交渉を行ってきていますという、この行ってきていますというのは過去形のようにも聞こえるのでありますけれども、これらの文書はもちろん有効だし、この考え方のもとで交渉しているわけでございますと言っているのですが、河野外務大臣と安倍首相は違うということでしょうか、考え方が。

河野国務大臣 違うとは思いません。

玄葉委員 ということは、今申し上げた、一九九三年の東京宣言を始めこれらの諸文書、諸合意を踏まえた交渉を行っていくということでよろしいですか。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、一九五六年の共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるという首脳間の合意に基づいて平和条約の交渉を行っているところでございます。

玄葉委員 これは、そうすると、安倍さんと考え方が違うということに私はなると思います。

 予算委員会の質疑と安倍総理の答弁、そしてきょうの答弁を精査していただく必要があるし、これは、安倍総理と河野外務大臣が考え方が違うということになると思います。

 委員長、差配してください。

若宮委員長 今の件につきましては、理事会で協議させていただきたいと思います。

玄葉委員 先ほどから申し上げていますけれども、安倍首相は、一九九三年の東京宣言を始めこれまでの諸合意、諸文書のもとで交渉を行ってきている、今も行っていると言っているのですけれども、それについて河野外務大臣の見解を聞いています。

河野国務大臣 繰り返しで恐縮でございますが、一九五六年の共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるというのが首脳間の合意でございますので、それに基づいて条約交渉を行っているところでございます。

玄葉委員 これはもう質疑時間が終わったので終わりますけれども、そうすると、これは安倍首相と考え方が違うということになってしまうんですね。

 この問題は、この場で言えること、言えないこともあるのは十分承知しています。ただ、なかなか私は難しい状況になってきているのではないかというふうに思っていまして、むしろ深追いすると傷が深くなるんじゃないかという気さえしています。

 二島最終決着、悪く言えば二島放棄のこの路線がどうも行き詰まりそうな気がしています。ですから、その危惧の念を抱きながらきょうは質疑をさせていただきましたが、ぜひ、方針転換をしたのであれば、私は、したと思いますけれども、そのことの最低限の国民に対する説明責任を果たしながら交渉を進めていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

若宮委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 希望の党の井上一徳です。

 きょうは、前回に引き続いて、自衛隊の地位協定について質問したいと思いますけれども、その前に、新聞記事で横田基地について幾つか出ていましたので、これについて事実関係を聞いておきたいと思います。

 これは毎日新聞の記事ですけれども、政府は、二〇二〇年東京五輪・パラリンピックに向けて首都圏の空港の発着数をふやすために、在日米軍横田基地の臨時的な軍民共用化を米国に打診したということで、米国は検討する姿勢を示している、ちょっと飛ばしまして、米側に恒久的な横田基地の軍民共用化を水面下で打診した、しかし、米側が軍用機の運用が制限されるとして慎重姿勢を示したため、臨時措置とする案に切りかえたというのが毎日新聞の記事で、その後、各紙が、在日米軍司令官が今、日米間で調整を進めているというような報道もありました。

 こうした報道の事実関係、それから米側とどういう交渉を行っているのか、大臣に御説明いただきたいと思います。

河野国務大臣 アメリカ政府は、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けて政府を挙げて協力するとしており、今般の2プラス2の閣僚会合においても、日米間で引き続き緊密に協力する意図を確認をしたところでございます。

 お尋ねの横田飛行場の軍民共用化のあり方についても、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、さまざまな考え方があることは承知をしております。日米間でこのオリンピック・パラリンピックの成功に向けていかなる分野で協力を行うのか、また、かかる協力に関する協議がどこまで進展しているのかなどについては、米側と調整をしている最中でございますので、個別にお答えすることは差し控えたいと思いますが、いずれにしろ、東京オリンピック・パラリンピックの成功に向けて、関係省庁や東京都と連携し、適切に対応してまいりたいと思います。

井上(一)委員 ぜひ、恒久的な横田基地の共用化、それから、前から求めておりますけれども、横田空域の全面返還、これらについてもしっかり米側と協議をしていっていただきたいと思います。

 それでは、自衛隊の地位協定について質問させていただきます。

 四月十二日に、この件で大臣から、これは米軍と自衛隊の相手国における滞在の目的、性格が違うわけですけれども、そういう違いを踏まえて、また、防衛省・自衛隊のニーズがどのようなものがあるかということも勘案しながら、自衛隊のいわゆる地位協定については十分検討していくべき課題だという旨の御答弁がございました。

 それで、防衛省・自衛隊に対しまして、自衛隊が米国領土内で訓練などを行う際のニーズに関してどのようなものがあるか、お聞かせいただきたいと思います。

鈴木(貴)大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 自衛隊員が米国を訪問する例としては、共同訓練、留学を含む教育のための派遣、装備品の試験の実施、連絡調整や情報収集のため等の派遣があります。

 これらを実施するに当たり、これまで、訪問部隊の地位協定がないことにより支障が生じたことがあるとは現状では認識はしておりません。

 他方で、これらの訪問における人員の展開や装備品の輸送をより容易とすることを含め、自衛隊の活動の円滑化に資するような方策としてどのようなものがあり得るかについては、防衛省としても、一つの課題である、このように認識をしております。

井上(一)委員 豪州とも部隊の訪問協定、今交渉を進めているということですので、やはりこれはしっかり進めていく必要があるのではないかというふうに思っています。

 これは政府参考人で結構ですが、これまで自衛隊が米国領土内で公務中に、自衛隊員が事件、事故を起こした事案があるか、そして、その場合にどういう対応をしたか、教えていただきたいと思います。

石川政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの自衛隊員が米国領土内において公務中に事件、事故を起こした事案についてでございますけれども、これは極めてまれなケースではございますけれども、例えば一九八九年、三十年前でございますけれども、航空自衛隊パイロットが米国内で飛行訓練中に放送施設に損害を与えた事案があるというふうに承知をしております。

 米国領土内で自衛隊が起こした事故等への対応につきましては、個々の事案の具体的事情を踏まえ、米国及び関係機関と調整を行い、適切に対応しているところでございます。

井上(一)委員 公務中に自衛隊員が米国領土内で事件、事故を起こした場合において、外務省のこれまでの説明を踏まえると、一般に、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受入れ国の法令の執行や裁判権等から免除されるということですので、自衛隊員が米国の領土内で起こした事件、事故についても、同じような考え方で、この米国の法令の執行や裁判権等から免除される、こういう考え方でよろしいでしょうか。

船越政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、一般に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員等は、個別の取決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受入れ国の法令の執行や裁判権等から免除されていると考えておりまして、こうした考え方は国際的に広く共有されていると理解しております。

 その上で、一般に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員は受入れ国の法令を尊重する義務を負いますため、自衛隊が米国において訓練等を実施する場合にも受入れ国である米国の法令を尊重する義務を負っていると考えております。

井上(一)委員 日本政府はそういう考え方だとは思うんですけれども、これは米国政府も当然そういう認識だというふうに考えておいてよろしいでしょうか。

船越政府参考人 米国政府が公式見解を対外的に明らかにしているとは承知しておらず、我が国として、アメリカの立場についてお答えする立場にはございません。

 他方、いずれにいたしましても、我が国といたしましては、一般に、受入れ国の同意を得て当該受入れ国内にある外国軍隊及びその構成員等は、個別の取決めがない限り、軍隊の性質に鑑み、その滞在目的の範囲内で行う公務について、受入れ国の法令の執行や裁判権から免除されているとの考え方は広く共有されていると認識しているところでございます。

井上(一)委員 私は、日本政府はそう考えているとしても、米国政府は本当にそう考えているかは、これは確認してみないとわからないと思いますので、やはり米側とこれは協議すべきだと思っているんです。

 そういう意味で、自衛隊の地位協定については、やはり自衛隊側のニーズもあるわけですから、これはしっかり協議を開始すべきだと思いますけれども、外務省、どうでしょうか。

河野国務大臣 前回もお答えしたとおり、検討に値する課題というふうに認識をしております。

井上(一)委員 いや、そこは検討に値する課題で終わらずに、米側としっかり、先ほどの考え方でいいのかどうかも含めて、やはり確認をしておくということが、これからますます自衛隊の部隊が米国で訓練するケースがふえてくるわけですから、その場合に、万が一、事件、事故があったときに、米側との間で認識の違いがあったらこれは問題になりますから、やはりこれは今すぐにでも米国と協議を進めるべきだと思いますけれども、重ねて御答弁をお願いしたいと思います。

河野国務大臣 検討に値する課題だと認識しております。

井上(一)委員 今の話を聞いていると、検討に値する課題だということは、直ちに米側と協議をする考えはないということでよろしいんでしょうか。

河野国務大臣 この問題は検討に値する課題だと申し上げております。

井上(一)委員 同じような答弁の繰り返しになりますけれども、私はやはり、検討に値する課題でとどまらず、米側と協議を速やかに開始すべきだということを申し上げて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

若宮委員長 次に、投資の促進及び保護に関する日本国とアルゼンチン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスペイン王国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とクロアチア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とコロンビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエクアドル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣河野太郎君。

    ―――――――――――――

 投資の促進及び保護に関する日本国とアルゼンチン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスペイン王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とクロアチア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とコロンビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエクアドル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河野国務大臣 ただいま議題となりました投資の促進及び保護に関する日本国とアルゼンチン共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十八年九月以来、アルゼンチン政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成三十年十二月一日にブエノスアイレスにおいて、我が方在アルゼンチン大使と先方外務宗務大臣との間で、この協定の署名が行われました。

 この協定は、投資の設立段階及び設立後の内国民待遇及び最恵国待遇の原則供与を規定するとともに、公正衡平待遇義務、収用等の措置がとられた場合の補償措置、支払い等の自由な移転、投資紛争の解決のための手続等を定めております。

 この協定の締結は、我が国とアルゼンチンとの間の経済関係のさらなる緊密化に大いに資するものと期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とスペイン王国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十九年四月以来、スペイン政府との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、平成三十年十月十六日にマドリードにおいて、我が方内閣総理大臣と先方首相との間で、この条約の署名が行われました。

 この条約は、現行の租税条約を全面的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税のさらなる減免、税務当局間の徴収共助の手続の整備等の措置を講ずるための規定等を盛り込んでおります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、我が国とスペインとの間で課税権の調整がより効果的に行われることとなり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とクロアチア共和国との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成三十年三月以来、クロアチア政府との間でこの協定の交渉を行いました。その結果、平成三十年十月十九日にザグレブにおいて、我が方外務大臣政務官と先方財務大臣との間で、この協定の署名が行われました。

 この協定は、日・クロアチア間で二重課税の除去を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この協定の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この協定の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とコロンビア共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成二十九年十二月以来、コロンビア政府との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、平成三十年十二月十九日に東京において、我が方外務大臣と先方外務大臣との間で、この条約の署名が行われました。

 この条約は、日・コロンビア間で二重課税の除去を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とエクアドル共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 政府は、平成三十年八月以来、エクアドル政府との間でこの条約の交渉を行いました。その結果、平成三十一年一月十五日にキトにおいて、我が方在エクアドル大使と先方外務大臣との間で、この条約の署名が行われました。

 この条約は、日・エクアドル間で二重課税の除去を目的とした課税権の調整を行うとともに、両国における配当、利子及び使用料に対する源泉地国課税の限度税率等を定めるものであります。

 この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上五件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

若宮委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る二十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十分散会


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