衆議院

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第2号 令和元年10月23日(水曜日)

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令和元年十月二十三日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 松本 剛明君

   理事 岩屋  毅君 理事 木原 誠二君

   理事 鈴木 憲和君 理事 中山 泰秀君

   理事 山田 賢司君 理事 下条 みつ君

   理事 山内 康一君 理事 竹内  譲君

      尾身 朝子君    大西 宏幸君

      城内  実君    黄川田仁志君

      國場幸之助君    新谷 正義君

      新藤 義孝君    杉田 水脈君

      鈴木 貴子君    鈴木 隼人君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      中曽根康隆君    中谷 真一君

      中山 展宏君    百武 公親君

      務台 俊介君    阿久津幸彦君

      小熊 慎司君    岡田 克也君

      玄葉光一郎君    森山 浩行君

      岡本 三成君    穀田 恵二君

      杉本 和巳君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   外務副大臣        鈴木 馨祐君

   農林水産副大臣      伊東 良孝君

   経済産業副大臣      松本 洋平君

   外務大臣政務官      尾身 朝子君

   外務大臣政務官      中谷 真一君

   外務大臣政務官      中山 展宏君

   政府参考人

   (内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官)  澁谷 和久君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局次長)           佐々木雅之君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   大塚 幸寛君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 竹内  努君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際文化交流審議官)       志野 光子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小林 賢一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    鈴木 量博君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  鈴木 秀生君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   岡野 正敬君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    水嶋 光一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           辺見  聡君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         浅川 京子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           永山 裕二君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    森   健君

   政府参考人

   (水産庁資源管理部長)  神谷  崇君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  新川 達也君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           渡辺 哲也君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     飯田 陽一君

   政府参考人

   (国土交通省航空局交通管制部長)         河原畑 徹君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     加藤  進君

   政府参考人

   (海上保安庁総務部長)  宮澤 康一君

   政府参考人

   (環境省大臣官房審議官) 瀬川 恵子君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 川嶋 貴樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  槌道 明宏君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         本清 耕造君

   参考人

   (独立行政法人日本貿易振興機構副理事長)     信谷 和重君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十三日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     大西 宏幸君

  尾身 朝子君     高木  啓君

  武井 俊輔君     新谷 正義君

  中谷 真一君     務台 俊介君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 宏幸君     國場幸之助君

  新谷 正義君     武井 俊輔君

  高木  啓君     尾身 朝子君

  務台 俊介君     百武 公親君

同日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     小野寺五典君

  百武 公親君     中谷 真一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事本清耕造君、独立行政法人日本貿易振興機構副理事長信谷和重君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房国際文化交流審議官志野光子君、大臣官房審議官小林賢一君、大臣官房参事官赤堀毅君、大臣官房参事官長岡寛介君、北米局長鈴木量博君、国際協力局長鈴木秀生君、国際法局長岡野正敬君、領事局長水嶋光一君、内閣官房TPP等政府対策本部政策調整統括官澁谷和久君、人事院事務総局給与局次長佐々木雅之君、内閣府大臣官房長大塚幸寛君、法務省大臣官房審議官竹内努君、厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官浅沼一成君、大臣官房審議官辺見聡君、農林水産省大臣官房総括審議官浅川京子君、大臣官房審議官永山裕二君、水産庁漁政部長森健君、資源管理部長神谷崇君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官新川達也君、大臣官房審議官渡辺哲也君、貿易経済協力局貿易管理部長飯田陽一君、国土交通省航空局交通管制部長河原畑徹君、観光庁審議官加藤進君、海上保安庁総務部長宮澤康一君、環境省大臣官房審議官瀬川恵子君、防衛省大臣官房審議官川嶋貴樹君、防衛政策局長槌道明宏君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中山泰秀君。

中山(泰)委員 おはようございます。自由民主党の中山泰秀でございます。

 本日は貴重なお時間を賜りましたことを、与野党理事各位、そして委員長に感謝を申し上げたいと思います。

 それでは、早速質疑に入りたいと思いますが、その前に一言、議会人の立場として、一点だけ思うところを申し述べさせていただきたいと思います。

 先週末は、いろいろな意味で、金曜日、外交が、すごく情報発信が政府から多かったというふうに思います。

 特に、きょうの私が質問をしようと思っております、我が国に関係する船舶の安全確保のための取組についてということに関する官房長官からの記者会見がございました。そしてまた同時に、大和堆を荒らしている北朝鮮の船、こういった船が日本の水産庁の船に体当たりをする、そういった映像が公開された、そんな日でもありました。

 そしてまた、翌朝の朝刊、土曜日でありますけれども、各紙大体報じておりましたけれども、中国当局による邦人の拘束事案という問題もございました。

 そして、週をまたぎまして、昨日のお祝いをまたいで、けさ、NHKなんかでは、朝五時台のニュースで、マイク・ポンペオ・アメリカ国務長官と茂木外務大臣との会談の報道というのがございました。

 これだけたくさんの外交に関する報道が出ていて、そして、なおかつ、即位の礼にかかわって各国要人が来て会談を繰り広げている。そんな中で、働き方改革その他、公務員の方々の御負担、そういったものも考えて、質問の事前通告というものをでき得る限り前の日の五時までにということで、一応の、内々の決まりのようなものがございます。他方で、前日が祝祭日だったりする場合は、そのまた一日繰り上がっての手前の夕方ということになります。

 外交というのは、地球が動いていますので時差もございます。また、その時差の間に、いろいろと世界で変化が外交上起きてくるということもございます。そういった意味では、ぎりぎりまで質疑者の立場、気持ちとしては質問を考えて、そして世界じゅうの情勢を速やかに国の方にお伺いをしていきたいという立場もございます。

 そういった意味では、議会における議員の質問権という観点から考えますと、こういった部分もしっかり担保をされながら、なおかつ、国家公務員の皆様、この質疑、国会に携わられる、答弁を準備される皆様方の負担も軽減をする、両方をにらみながら、しっかりと議会というものを、先例も見据えながら、時代を、きちっと議論が深まるように整えていかなければならないなということを冒頭に考えておりましたので、申し述べさせていただきたいというふうに思います。

 また、さきの台風の十九号の被害を受けられ、とうとい命を天に召されたみたまの御冥福を心より冒頭お祈りを申し上げたいと思います。また、被災地、被災者の皆様方に対しまして、衷心よりお見舞いを申し上げます。

 引き続き台風が日本列島の方向にやってきているという予報もございますので、くれぐれも、万が一の場合には命を守る行動をおとりになられますように御注意をいただきたいと思います。

 また、茂木外務大臣のお地元、栃木五区におきましても、台風の猛威が極めて厳しい爪跡を残していると承知をいたしております。

 消防庁の情報、十月二十一日午前七時現在、死者、お亡くなりになられた方が四名、これは大臣のお地元、栃木県の栃木市、足利市で一名ずつお亡くなりになられておられます。そして、鹿沼市で二名でございます。重傷が二名、これは栃木県でございますが、重傷が二名、軽傷が二十名、住家被害が、全壊一件、一部損壊が十七件、床上浸水九千八百二十一件、床下浸水九千二百十一件。避難の状況につきましても、内閣府情報、十月二十一日午前七時現在、避難者が、二百四名の皆様が十六カ所の避難所に、栃木の場合、分かれて避難されておられます。

 大臣のお地元がこのような状況の中にあっても、昼夜を分かたず、地元の災害復旧対策対応はもちろんのこと、日本の主体的外交の展開に獅子奮迅の御努力をされておられる茂木外務大臣に敬意を表したい、かように思います。

 また、各協定の署名に先立ちまして、九月二十五日には、日米両国首脳間で合意内容を確認する共同声明に署名をしており、十月七日には、日本の杉山駐米大使、それからライトハイザー米国通商代表部、USTR代表との間で署名を行われました。日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定、デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定については、特に御尽力をされたと記憶をいたしております。

 大臣の並々ならぬ御尽力、そしてまた、お人柄とも言えるフェアな交渉姿勢が、絶妙なタイミングという環境も味方につけられて、日米双方にとってウイン・ウインで、双方ともに満足のいく交渉結果を導き出せたことに、近年まれに見るよい貿易交渉であったのではないかと内外ともに評価している方は多いと思います。

 そういった意味では、本当にお疲れさまでございましたと、まず冒頭申し上げたいと思います。

 そして、昨日は、何と申しましても、即位礼正殿の儀が厳かにとり行われました。

 天皇陛下におかせられましては、即位礼正殿の儀を挙行され、即位を内外に宣明されました。心から国民の一人としてお喜び申し上げます。

 また、上皇陛下の歩みに深く思いをいたされ、国民の幸せと世界の平和を常に願い、国民に寄り添いながら、日本国憲法にのっとり、象徴としての責務を果たされるとのお考えと、日本が一層発展し、国際社会の友好と平和、人類の福祉と繁栄に寄与することを願われるお気持ちを伺い、深く感銘を受けるとともに、国民の一人として敬愛の念をいま一度新たにいたした次第であります。

 この場をおかりして、謹んで即位礼正殿の儀のお祝いと、令和の時代が平安でありますように、天皇皇后両陛下、皇室のいやさかをお祈り申し上げたい、かように思います。

 さて、本日は、第二百回国会、最初の外務委員会におきます一般質疑であります。忌憚のない意見を申し述べさせていただきますので、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 それでは、早速でございますけれども、まず最初にお伺いしたいのは、先ほども申し上げましたように、官房長官からも既に会見において発表がございました、我が国に関係する船舶の安全確保のための取組についてお伺いをしていきたいと思います。

 「中東地域の平和と安定について」という会見の内容でございました。

 一つ、中東地域の平和と安定は、我が国を含む国際社会の平和と繁栄にとって極めて重要であります。中東における緊張緩和と情勢の安定化に向けて、安倍総理が六月のイラン訪問や九月の国連総会時の日米首脳会談、日・イラン首脳会談を行うなど、政府として外交的な取組をしっかり進めてまいりました。

 二、同時に、世界における主要なエネルギーの供給源である中東地域において、航行の安全を確保することは非常に重要であります。こうした観点から、米国が海洋安全保障イニシアチブを提案しているほか、フランスは欧州のイニシアチブを検討すると承知しており、インドも独自の艦船を派遣しています。我が国としても、これまで航行安全対策を講じてきました。

 三、このような中、国家安全保障会議などにおいて、総理を含む関係閣僚の間で行った議論を踏まえ、我が国として中東地域における平和と安定及び我が国に関係する船舶の安全確保のために、独自の取組を行っていくこととし、政府として、以下の方針を確認しました。一つ、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向けさらなる外交努力。一つ、関係業界との綿密な情報共有を始めとする航行安全対策の徹底。一つ、情報収集態勢強化のための自衛隊アセットの活用に係る具体的な検討の開始。

 四、以上の三つの方針のうち、自衛隊アセットの活用については、以下の考え方を基本として、今後具体的に検討していきますとおっしゃっています。一つ、米国が提案する海洋安全保障イニシアチブは参加せず、日本独自の取組を適切に行っていきますが、引き続き米国とは緊密に連携していく考えであります。一つ、自衛隊のアセットについては、新規アセットとの艦艇派遣や既存の海賊対処部隊の活用の可能性について、今後、検討をしていきます。一つ、活動の地理的範囲については、オマーン湾、アラビア海の北部の公海及びバブ・エル・マンデブ海峡の東側の公海を中心に検討していきます。一つ、今回の派遣の目的は情報収集態勢の強化であり、防衛省設置法上の「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」として実施することを考えます。一つ、現在、直ちに自衛隊アセットによる我が国に関係する船舶の防護の実施を要する状況にはありませんが、いずれにせよ、我が国に関係する船舶の安全確保のために必要なさらなる措置について検討していきます。今後、この方針に基づき、政府一体となって取組を進めていくとともに、検討を進めてまいります。

 以上、詳細は防衛省を始めとする関係各省にお尋ねをいただきたいと思いますと、冒頭、その官房長官会見で読み上げられた後、記者の人たちから質問があったというふうに、内閣の方の発信しているビデオで、私、昨晩何回も見せていただきました。

 そもそも、このような対応が求められるようになる要因の一つは、ホルムズ海峡タンカー攻撃事件があるのではないかということは、これは国民の皆様方の等しい共通した認識だと私は思います。

 このホルムズ海峡のタンカー攻撃事件というのは、二〇一九年の六月十三日の現地時間早朝に、中東のホルムズ海峡付近で日本とノルウェーの海運会社が運航するタンカーが襲撃を受けた事件でありまして、日本の国華産業所有のタンカー、コクカ・カレイジャスと、ノルウェーのフロントライン社所有のタンカー、フロント・アルタイルが、リムペットマイン、いわゆる吸着型水雷、若しくは飛来物による攻撃を受け、両船で火災が発生したということが起きています。アメリカとイランの軍関係者は、攻撃後、各船から乗組員を救出するなどの対応を行ってくださいました。

 この襲撃事件は、二〇一九年五月のオマーン湾での事件の一カ月後、そして、アメリカのトランプ大統領の仲介をすべく、安倍首相がイランの最高指導者アリー・ハメネイ師と会談したこの同日に発生したと認識をいたしております。

 イランとアメリカの間の関係が非常に緊張が高まる中で発生した事件であり、アメリカは、攻撃の責任はイランにあると非難をしております。サウジアラビアとイギリスはアメリカを支持いたしましたが、日本とドイツはイランに責任があることの証拠についてさらなる調査を求めておりまして、イランはこの疑惑を否定し、米国が虚偽の情報を広め戦争を挑発していると、逆にアメリカを非難するようなことになっております。

 日本の国華産業所有のタンカー、コクカ・カレイジャスが攻撃を受けたのは、何年何月何日何時でしょうか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 コクカ・カレイジャスは、本年六月十三日、日本時間午前十一時四十五分ごろに攻撃を受けたものと承知しております。

中山(泰)委員 ノルウェーのフロントライン社所有のタンカー、フロント・アルタイルが攻撃を受けたのは、何月何日何時でしょうか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 フロント・アルタイルは、同じく本年六月十三日、コクカ・カレイジャスが攻撃を受けたのと近接した時刻に攻撃を受けたものと承知しております。

中山(泰)委員 安倍総理とイランのハメネイ最高指導者が会談をしたのは、何年何月何日何時ですか。

長岡政府参考人 お答え申し上げます。

 安倍総理とイランのハメネイ最高指導者が会談を行ったのは、本年六月十三日木曜日、日本時間で午後二時半、現地時間では同日の午前十時から約五十分間でございます。

中山(泰)委員 ということは、先ほども申し上げておりますように、安倍総理とハメネイ師が会談をした、まさにその同じときに日本のタンカーが攻撃を受けるということが起きていることが、もう皆様にも御理解をいただけたと思います。

 ちなみに、アメリカのポンペオ国務長官は、会見を行い、そして、わざわざ会見の後ろ側にディスプレーを置いて、そこに日本に関係する船舶が炎上している映像を出されながら、イランが行った攻撃だと厳しく非難をしたということであります。安倍総理大臣がイランに歴史的な訪問を行って、事態をエスカレートさせず対話に応じるよう求めたのに、イランは拒絶をし、日本のタンカーを攻撃して乗組員の生命を脅かし、日本を侮辱した、そしてイランが対話の席に戻るよう、経済的、外交的な努力を続けると。あくまでも経済的な圧力をてこにイランに対話を迫る考えをアメリカのポンペオ国務長官は示しているわけであります。

 イラン外務省の報道官は、ツイッターにこんな書き込みをしております。日本の総理大臣がイランの最高指導者と面会するのと時を同じくして、日本に関連するタンカーが攻撃されるという怪しい事件に懸念を表明するというふうに書き込んでおります。

 また、国連のグテーレス事務総長は、民間の船舶に対するいかなる攻撃も強く非難する、事実関係と攻撃の責任を明らかにしなければいけない、国際社会が対応できなければ、これは中東地域の本格的な衝突になるというふうにおっしゃっています。

 そこで、ちょっと確認をしたいんですが、皆様方にお配りをしております私の資料をごらんいただきたいと思います。これは六枚の資料、ホッチキスどめで右肩をとめてございますが、まず一番上に地図が載っております。

 この地図をごらんいただくと御理解をいただけますように、今回のフロント・アルタイル、またコクカ・カレイジャスが攻撃を受けた場所というのは、このオマーン湾になるわけであります。ホルムズ海峡のすぐ東側ということであり、今回、菅官房長官が週末に会見をなさった、我が国に関係する船舶の安全確保のための取組についてという会見の中で、四のエリア指定の中に、活動の地理的範囲については、オマーン湾、アラビア海北部の公海及びバブ・エル・マンデブ海峡東側の公海を中心に検討していくと言った、まさにそのエリア内で攻撃を受けるという事態が二件続けて、近接した時間で起きているということであります。

 こういったことを考えますと、本当に心配になってくる向きは非常にあるし、緊張感は実は高いのではないかという懸念もあるわけです。

 次に、二枚目をごらんいただけたらと思うんですが、二枚目は、毎日新聞に六月十八日、ちょうど攻撃のあった数日後に掲載された資料でありますが、実は、皆様方も御存じのように、最初にポンペオ国務長官がエビデンスとして示した、軍の方が撮っているという望遠レンズの動画のビデオが公開をされていますが、画像が鮮明ではないといういろいろな指摘を受けられたのか、鮮明な画像で、なおかつカラーのものをあえてアメリカが発表した、ペンタゴンの方から発表されたのが、この二枚の写真になるわけであります。

 上は、革命ガード、いわゆるイランの革命防衛隊という組織でございますが、革命防衛隊がリムペットマインを仕掛ける若しくは剥がすというような行為、これは米国が指摘している行為、これを行った船と思われるものを上空から撮影した模様です。

 そして、下のこの緑の破片のようなもの、これは、次のページをおめくりいただいたらわかりますように、次はニューヨーク・タイムズの動画からスクリーンショットでいただいたものですが、十七・五インチのリムペットマインの底に、こうやって右側の方にぽつぽつぽつぽつと丸が数珠つなぎのように並んでいますが、このうちの一つの、吸着盤というんでしょうか、磁石というんでしょうか、くぎというんでしょうか、そういったものが船の、まさにコクカ・カレイジャスの側壁に張りつけてあるところでありまして、右肩の上の図柄は、このリムペットマインを真上から撮影するとこういう形、下段の写真は、リムペットマインの吸着側の方を見るとこんな形になっていると。まさにこれが動かぬ証拠であるということと同時に、剥がすときに、作業に当たった者と思われる者の指紋等がまさに証拠として現場から拾われている、収集されているということでございます。

 ここで、イランの革命ガード、よく聞くんですけれども、この革命防衛隊という組織はどんな組織かといいますと、イランというのは、そもそも正規軍が約四十万人おります。非常に大きな組織であります。主に四つの柱の部隊から成っていますが、陸軍司令官、海軍司令官、空軍司令官、そして防空軍司令官という形。

 一方、ハメネイ師という最高指導者直属の革命ガードというのが、同じく十二・五万人の組織をなしています。主に、これも四つの柱、一つが陸軍司令官、もう一つが海軍司令官、そしてもう一つが航空宇宙軍司令官、そして最後がコッズ部隊司令官という、ある意味サイバー戦争に備えるような形、若しくは、各国の、今、先進国のトレンドである宇宙軍というキーワードまでが出てくる部隊が、最高指導者ハメネイ師という宗教リーダーから直接組織として直轄になっている。そして、コッズ部隊司令官という形、これは、実はある意味の特殊部隊、ある意味、親衛隊と言っても過言ではないような形で構成をされているということであります。

 こういったことを考えますと、今回、いろいろな意味で、いわゆる我が国の船、関係する船を守るという意味において、活動の地理的範囲については、オマーン湾、アラビア海の北部の公海及びバブ・エル・マンデブ海峡の東側の公海を中心に検討しますとの発表が行われましたが、この発表にはなかった紅海の中心付近の海域に位置するエリアに関しても活動の地理的範囲に含まれるということになるのかなということも、私自身は個人的に想像しました。

 これはなぜかといいますと、話はちょっと戻りますけれども、菅官房長官の先ほど御紹介した読み上げに対して、記者会見で共同通信の記者からの質問に対する回答の中で、まず、現時点において、直ちに我が国に関係する船舶の防護を実施する状況にはないものの、十月十一日のイラン石油タンカー爆発事案などに見られるような昨今の情勢に鑑み、我が国として情報収集の取組を更に強化する必要があると判断をし、政府として航行安全対策や外交努力を継続しつつ、情報収集態勢の強化のため、自衛隊のアセットの活用について具体的な検討を開始することにしましたと。

 また、米国とでありますけれども、米国とはこれまでにも緊密に連携をしてきておりまして、九月の日米首脳会談においても、中東における緊張の緩和と情勢の安定化に向け、引き続き日米両国で協力していく、このことで一致をしております、その上で、中東における我が国に関する船舶の航行安全を確保するためにどのような対応が効果的であるかについて総合的に検討した結果、米国で提案している海洋安全保障イニシアチブには参加せずに、日本独自の取組を適切に行っていくこととなりましたということです、このように長官が答えていらっしゃいます。

 回答の中で言及しておられます十月十一日のイラン石油タンカー爆発事案でありますが、この事件は、サウジアラビア西岸の港湾都市ジッダ沖の紅海、すなわち、先ほど私がお配りをした資料の、このサウジアラビアの西側、十月十一日のイラン石油タンカー爆発事案、ペケをつけているところで実は発生をしている、攻撃を受けたというものなんですけれども、こういった部分も、要するにエリアに入るのかなと思うような言及が長官からされておられます。

 本来は日本に関係する船舶の安全確保ということであると思うのですが、テロ攻撃情報全般についても情報収集の取組をされるという意味で私は理解をいたしております。将来的にどのような任務、オペレーションが発せられようとも、情報収集、精査、分析にまさるものはないと思いますので、しっかりと米国とも連携をされ、日本関係船舶の安全を守り抜いてほしいと思います。

 ちなみに、米軍は、イランの革命防衛隊が攻撃した若しくは関与した可能性が高いと、先ほども指摘したように明言をしていますが、日本は、政府は、それについてどのように考え、どのような具体的対応をとっているのでしょうか。お答えください。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 米軍による御指摘の本件コメントについては、承知しております。

 ホルムズ海峡付近では、六月の我が国に関係する船舶の被害事案を含む複数の事案が発生しております。また、先般のサウジアラビアの石油施設攻撃や紅海におけるイランの石油タンカー爆発事件などにより、中東情勢が深刻の度を増していることを強く懸念しております。

 政府といたしましては、六月十三日にホルムズ海峡付近において我が国の海運会社が運航する船舶が攻撃を受けた事案を、我が国の平和と繁栄を脅かす重大な事案として深刻に受けとめ、断固非難するとともに、関係国と緊密に連携しつつ、情報収集、分析を進めているところでございます。

中山(泰)委員 日本の国華産業所有のタンカー、コクカ・カレイジャスとノルウェーのフロントライン社所有のフロント・アルタイルを攻撃した者は一体何者なのか。日本政府は、原因究明そして犯人特定ができていますか。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 政府といたしましては、関係国と緊密に連携しつつ、情報収集、分析を進めておりますが、その詳細についてお答えを差し控えさせていただきたいことにつき、御理解をいただきたいと存じます。

中山(泰)委員 答えを差し控えるのは結構なんですけれども、そうすると、双方が指摘している怪しい事件ということが、ずっとそのままやみくもになってしまうということもあると思いますので。

 私は、今後、アメリカとも真剣にある意味連携をするということ、これはもう、日米安全保障条約の中で、平時から日本とアメリカの関係というのは緊密であるのがもう当たり前であるというふうに思いますし、それが日本の国家国民の生命と財産を守るまさに生命線だということも指摘をしておかなければなりません。

 そういった意味では、やはり旗色鮮明という言葉がございますけれども、ある意味、旗色鮮明にしなければ旗色が悪いということになってしまうものが継続するので、ここは、ある時点で、やはり判断というものも必要なんじゃないかなと思います。世の中の出来事というのは、原因があって結果があるということだと思います。

 今回、日本に関係する船舶を防護するため中東に自衛隊を派遣することも、まさに原因があって結果ということであります。これは一つの序章にしかすぎない可能性をはらんでいるということを考えておかなければならないわけであります。

 自分の国に関係する船舶を自分の国で守るというのは当たり前のことだと私は思います。その意味において、NSCの方で議論がなされ、今回の政府決定、指示がおりたということを心強く思っておりますが、改めて、今回の政府決定における意義を伺いたいと思います。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 国家安全保障会議等において総理を含む関係閣僚間で行った議論を踏まえ、我が国として、中東における我が国に関係する船舶の安全確保のための独自の取組を行っていくとの考え方のもと、政府方針として、三つ確認いたしました。

 一、中東の緊張緩和と情勢の安定化に向けさらなる外交努力。一、関係業界との綿密な情報共有を始めとする航行安全対策の徹底。一、情報収集態勢強化のための自衛隊アセットの活用に係る具体的な検討の開始でございます。

 この政府方針のもとでの取組が中東における我が国に関係する船舶の航行の安全確保に資するものとなるよう、防衛省を始めとする関係省庁とともにしっかりと取り組んでまいります。

中山(泰)委員 自衛隊を派遣するに当たっての法的根拠、それからこのオペレーション、すなわち任務、一体、任務の目的は何なんでしょうか。念のため、明確にお答えください。

槌道政府参考人 お答えします。

 今回、自衛隊アセットを活用して実施することを検討しております活動は、その目的は情報収集ということになります。

 したがいまして、その場合、その法的根拠につきましては、防衛省設置法第四条第一項第十八号に規定します「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」として行うということと理解しております。

 今回の派遣につきましては、中東における我が国に関係する船舶の安全確保のための独自の取組として情報収集態勢を強化するということでございますので、自衛隊のアセットの派遣は、そのまさに情報収集を行うということでございます。

中山(泰)委員 アフリカ、ソマリア沖で海上自衛隊が行っている民間船舶の護衛や警戒監視は、海賊対処法に基づいて行われています。この法律では防衛大臣が部隊の活動する区域や期間を定めることとされていて、現在の活動区域はソマリア沖・アデン湾とされています。

 他方で、政府が今後検討を進める新たな自衛隊の活動は、防衛省設置法の調査研究に基づく情報収集活動とされており、活動場所も海賊対処を行っているソマリア沖とは別の海域を想定されています。

 海賊対処法に基づき派遣された艦艇や哨戒機にそのまま新たな任務を担わせることはできるのですか。それとも、改めて別の命令を出すことが必要になるのでしょうか。お答えください。

槌道政府参考人 自衛隊のアセットの活用に係る具体的な内容につきましては、今後検討していくものでございまして、現時点で決まってはおりませんけれども、新規アセットとしての艦艇の派遣や既存の海賊対処部隊の活用の可能性を含めて検討をして、判断をするということとなっております。

 その上で申し上げますと、現在、ソマリア沖・アデン湾で海賊対処に従事しております部隊は、海賊対処行動命令に基づき派遣をされております。仮に、この部隊に我が国に関係する船舶の航行の安全を確保するための情報収集を命ずることになれば、当該活動は、先ほど申しましたように、防衛省設置法に基づく調査研究として実施することになりますので、海賊対処行動命令とは別途、防衛大臣が何らかの命令を付与することが必要になるものと考えております。

中山(泰)委員 調査研究を行っている場合においても、当然リスクに直面することも可能性としてゼロではない。その場合どういった対応ができるのか、ちょっと教えてください。

槌道政府参考人 まず、現時点におきまして、直ちに自衛隊アセットによる我が国に関係する船舶の防護を要する状況にはないということでございますし、また、仮に自衛隊アセットを派遣したといたしましても、自衛隊に対する攻撃が想定されるような状況ではないと考えていることは申し上げておきたいと思います。

 その上で、あくまで一般論として申し上げれば、防衛省設置法に基づく調査研究に従事している自衛隊部隊に対して侵害行為が発生した場合でございますが、そうした場合には、自衛隊法第九十五条に基づきまして、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段である武器等を防護するため、当該武器等を職務上警護する自衛官が、その事態に応じて合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができるということになっているところでございます。

中山(泰)委員 そうはいっても、私の資料でもお示ししたように、米国という日本と安全保障上切り離せない関係のある国が、ここまでおかしい、怪しいぞ、イランはこんなことをやっているんじゃないかという指摘を、証左に基づいて指摘をしている。その中でこういったことが議論されていて、日本の関係する船が実際に攻撃を受けている中で、どうやって守るための、安全を確保するための調査研究をやるかということが主題だと思います。

 いずれにしても、リスクというのは二つぐらい最低でも可能性があると私は考えています。一つは自衛隊に対する攻撃があった場合、もう一つは日本のタンカーに攻撃が生じた場合ということであります。この二つの場合、どのような対応、対処ができるのか、またその法的根拠について教えていただきたいと思います。

 いずれにしましても、やはり、日本のいろいろな対応というのは、シームレスというのが一つのキーワードとなってくると思います。今、直ちにという言及もございましたけれども、確かに、直ちに今現在はということかもしれませんが、少なくとも国民は報道等で、世界じゅうの人も含めて、この地域の安全性について、ある一定度の見識というのはそれぞれ個人個人でお持ちだと思います。六月から比較する現在という意味であろうかと、私の場合はそのように個人的に考えますが、先ほど申し上げているそういった場合、どのようなシームレスな対応ができるのかも含めて、法的根拠を教えてください。

槌道政府参考人 御指摘の点も含めまして、自衛隊アセットの活用に係る具体的な内容については今後検討していくものではございますけれども、中東における我が国に関係する船舶の航行の安全確保に資するものとなるように、しっかりと検討を進めてまいりたいと思います。

 その上で、先ほども申し上げましたように、現時点におきまして我が国の船舶に対する攻撃が想定されるような状況ではございませんけれども、今後、こうした状況が変化する場合には、我が国に関係する船舶の安全確保のために必要なさらなる措置についても検討するというふうになっているところでございます。

 その場合の法的根拠というお尋ねでございましたが、仮に、こうした状況が変化して、我が国に関係する船舶の安全を確保するために必要な措置についてということになりますと、そうした措置をとる場合には海上警備行動の発令ということが考えられるところでございます。

中山(泰)委員 自衛隊のアセット若しくは自衛隊アセットの活用という表現で会見ではおさまっていますが、どのようなコンビネーションでアセットを動かすのか、相当考え、準備をし、また計画を前進させる必要性があると私は思います。

 手のうちを明かすようなことを伺いたくはないという思いを念頭に持ちながら、しっかりとリスク回避のできる状態、かつ、日本関係船舶が被害、損害を受けることが一切ない形での任務遂行を前進させていただきたいと思いますし、現場で自衛官が憂えることがないような形というものを、私ども、政府と一体になって考え、検討していくことが重要だ、そして何よりも結果を出していくことが重要だと思います。

 また、今後検討していく場合においては、国会での議論も非常に重要だと思います。より多くの情報を国民に可能な限り開示しつつ議論していくことが必要不可欠だと思います。特に、今回は情報収集態勢強化のための調査研究を根拠に派遣が検討されていることと改めて認識をしておりますが、中東情勢が悪化した場合に備えて情報収集が検討されているのであって、当該地域の情勢変化等によっては継続の対応が必要な場合が仮に生じたときには、どのようなことが想定されますか。また、準備すべきことはありますか。

槌道政府参考人 繰り返しになりますけれども、先ほどもお答えいたしましたように、仮に情勢変化をするという場合に考え得ることとして、我が国に関係する船舶の防護を実施する状況には今はないけれども、将来必要になった場合ということは考えられるわけでありますけれども、そうした場合の我が国に関係する船舶の安全確保のために必要なさらなる措置についてということについては検討していく必要があるということでございます。

中山(泰)委員 次に、中国政府における邦人拘束事案について伺いたいと思います。

 資料の四枚目をごらんください。「日中改善に影響せず 邦人拘束で中国外務省」ということで、時事通信の一部報道を御紹介しております。

 これまでも、邦人が中国政府当局によって拘束されています。また、その中でスパイ容疑と思われる拘束もあるやに聞いています。現在の解放に向けての中国政府当局との交渉状況を含め、言える範囲で、何名、そしてどういったケース、そしてどのような形で交渉を行っているのか。

 特に、政府は日中関係が今までにない新たなステージに来たとまで言及をしていますが、新たなステージに来ている割には今回のような事案が起きていることをどのように考えられるかということ、また、解放に向け、どういう効果的な取組を今後なさるおつもりなのかということ。

 それから、北朝鮮による拉致問題とは単純比較はできませんが、邦人保護という観点からも超重要課題だと私は認識しています。特に、拘束されている御家族で日本の国内におられる御家族、ここにどなたかが、若しくは拘束をする者側の関係者が家族をおどすようなことなんかも想定をしておかなければなりません。これは国内治安にも影響のある話ですが、どのようにお考えでしょうか。

松本委員長 外務省水嶋領事局長、申合せの時間が少なくなっておりますので、簡潔に答弁願います。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御質問ありました中国政府当局の拘束事案でございますが、現在何名が拘束されているのか、スパイ容疑で拘束されているのかということにつきましては、事柄の性質上、従来より対外的には公表しておりませんので、お答えすることは適切ではないというふうに考えてございます。

 一方で、この対応につきましては、これまで、日中の首脳会談、日中外相会談も含めまして、あらゆるレベルで中国側に対して厳正に申し入れて、前向きな対応を求めてきております。

 今後とも、邦人保護の観点から適切に対応してまいりたいと思っております。

中山(泰)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

松本委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 まず、質問に先立ちまして、私からも、今般の甚大な被害をもたらした台風十九号によってお亡くなりになられた多くの皆様の御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災され苦しんでおられる方々に心よりお見舞いを申し上げる次第でございます。

 そこで、本日は、急激に悪化している日韓関係につきまして質問をいたしたいというふうに思います。その中でも、最大の論点であります徴用工問題について質問をいたしたいと思います。

 資料を用意しておりまして、日韓基本条約でございます。皆様よく御存じのとおりだと思いますが、第二条のところに、私、ちょっと傍線を引かせていただきました。

 日韓基本条約は、書いてあるとおりではございますけれども、いわゆる植民地支配に関する条約及び協定はもはや無効であることが確認されるということが書いてあります。英語の方でも、オールレディー・ナル・アンド・ボイドということで、もはや全く無効である、こういうふうに書いてあるわけでございますけれども、この解釈をめぐって韓国側と対立があるというふうに言われています。

 この条約によって、この日韓基本条約第二条によって、日本による韓国に対する植民地支配は一九一〇年から無効とするのか、それとも、朝鮮独立を承認したサンフランシスコ講和条約発効から無効となるのか、この解釈の違いが全ての出発点ではないかというふうに言われているわけでございます。

 日本側は、当時の国際法に照らして、植民地支配は合法であって、これが無効とされるのはサンフランシスコ講和条約発効からであるというふうに理解をしていると言われています。これに対して、韓国側は、日本による植民地支配はそもそも一九一〇年当初から不法行為であり無効であると主張していると言われております。

 日本側の主張によりますと、日本が支払った資金、無償三億ドル、有償二億ドルというのは経済協力という意味合いになりますし、他方で、韓国側の言うように、一九一〇年から無効ということになると、それは植民地支配という不法行為による損害賠償請求権に基づく支払いという性格を帯びるのではないかというふうに言われているわけであります。

 そこで、今後も韓国側が新たに不法行為が発見されたと主張すれば、半永久的に損害賠償を請求できることになるようにも思いますし、植民地支配の賠償をこれからも引き続いて請求可能というふうになると思います。

 日韓基本条約では、この点は曖昧であり、どちらとも解釈できる余地があると言われておりまして、この詰めは棚上げされたとも言われております。

 まず、この点について、この日韓双方の解釈の違いとその効果について、外務省の当局の認識をお伺いしたいと思います。

小林政府参考人 日韓両国が長年にわたる交渉の上締結した日韓基本条約は、その第二条におきまして、韓国併合に関する条約がもはや無効であるということを確認してございます。

 また、日韓両国は、一九六五年の国交正常化以来、日韓基本条約及び請求権協定の基礎の上に友好協力関係を発展させてまいりました。

 特に日韓請求権協定につきましては、日本から韓国に対して無償三億ドル、有償二億ドルの経済協力を約束するとともに、両締約国及びその国民の財産、権利及び利益並びに両締約国及びその国民の間の請求権に関する問題につきましては完全かつ最終的に解決されるとし、いかなる主張もすることができないことを定めてございます。

 韓国政府の見解につきましては、日本政府として説明する立場にはございませんが、その上で申し上げますれば、韓国政府は、一九七〇年代に立法措置を行い、日本政府が日韓請求権協定に基づき供与した五億ドルの一部を使用する形で、旧朝鮮半島出身労働者に関連した補償を支給したと承知しております。

竹内委員 日韓請求権協定がありまして、これも皆様はよく御承知のとおりでありますが、これによって、この請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決されたことを確認するというふうになっているわけであります。

 また、当時の交渉経緯を見ると、韓国側が八項目の対日請求要綱を提示しておりまして、その中にいわゆる徴用工問題が含まれている。日本側の交渉の記録によりますと、日本側からわざわざ個人への支払いを提案したのに対して、韓国側が、国として受け取って、韓国内の支払いは韓国政府が責任を持って行うというふうに主張している。そして、残っております合意議事録でも、この請求権に関する問題は、韓国の対日請求要綱の範囲に属する全ての請求が含まれていると明記されているわけであります。

 きょう、資料をもう一つ用意しているんですけれども、これは韓国側の公開資料でありまして、二〇〇五年八月二十六日に、韓国の国務調整室報道資料ということで、当時のイ・ヘチャン国務総理主催で、韓日会談文書公開フォローアップ対策に関連する官民共同委員会を開催して、一九六五年の韓日請求権協定の効力範囲問題及びこれによる政府の対策の方向等について協議した文書であります。

 私が傍線を引っ張っているんですけれども、ここに、一ページにありますように、「韓日交渉当時、韓国政府は、日本政府が強制動員の法的賠償・補償を認めなかったことにより、「苦痛を受けた歴史的被害の事実」に基づき政治的レベルにおける補償を要求したのであり、このような要求が両国間の無償資金算定に反映されたと見なければならない。」「請求権協定を通じて日本から受け取った無償三億ドルは、個人財産権(保険、預金等)、朝鮮総督府の対日債権等の韓国政府が国家として持つ請求権、強制動員被害補償問題解決性格の資金等について包括的に勘案されていると見なければならない。」その下に、「政府は受領した無償資金のうち、相当金額を強制動員被害者の救済に使わなければならない道義的責任があると判断される。」このように明記をされています。

 そして、三ページの右の方に、青瓦台民情首席というのが政府委員としてありまして、この方が今の文在寅大統領であると言われているわけであります。

 こういう韓国側の記録から見ても、これはやはり今の韓国側の主張というのはなかなか難しいんじゃないか。これはやはり日本側の方に正当性があるように思いますけれども、改めて日本政府の見解を問いたいと思います。

茂木国務大臣 竹内委員の考えと全く同じでありまして、まず、日韓請求権協定の第二条におきましては、両締約国及び国民の間の財産、請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決されたことを確認して、全ての請求権に関していかなる主張もすることができないと規定をされております。

 また、当時の交渉の中で韓国側が日本に示しました八項目の対日請求要綱には、被徴用韓人の未収金や補償金及びその他の請求権が含まれておりまして、日韓請求権協定についての合意された議事録での完全かつ最終的に解決された財産、権利及び利益並びに請求権に関する問題にもこの八項目の範囲に属する全ての請求が含まれておりまして、いかなる主張もなし得ないと規定されております。

 その上で、委員の方から資料も提供していただきましたが、御指摘の二〇〇五年の国務調整室の報道資料において、韓国政府は、日本から受け取った無償三億ドルは、強制動員被害補償問題解決の性格の資金等について包括的に勘案をされ、さらに、日本から受領した無償資金のうち相当金額を強制動員被害者の救済に使わなければならない道義的責任があるとの見解を、みずから設置をしました官民の合同委員会、メンバーもお示しいただきましたが、その合同委員会の発表として公表したと承知をいたしております。

 日韓間の財産、請求権の問題、日韓請求権協定によりまして完全かつ最終的に解決済みであるとの我が国政府の一貫した立場でありまして、かかる立場に基づき適切に対応していきたいと思っております。

竹内委員 そこで、そうなんですけれども、最近、文大統領がおっしゃっているのは、韓国でも三権分立の原則があって、これに従わなければならないと主張されているわけですね。しかし、日韓関係は両国間で締約された条約及び国際法の原則に従わなければならないと私は思いますし、韓国の三権分立制度を根拠として日本が国際法違反の状態を甘受しなければならない理由はないというふうに思うわけであります。

 それでもう一つ、きょうは資料にはなっておりませんけれども、文大統領の、韓国の韓国大統領府統一外交安保特別補佐官文正仁さんという方がいらっしゃるんですけれども、この方が最近、日本のメディアにこのようにおっしゃっているんですね。請求権協定に基づき、韓国政府が徴用工裁判原告団の外交保護権を日本政府に対して行使できる権限が消滅したことは私たちも認めますと。この外交保護権、徴用工裁判原告団の外交保護権が消滅したと認めますと。しかし、被害を受けた各個人の請求権は生きている、だから個人がそのような形で民事訴訟を起こしたときに韓国政府が訴訟するなと言えないのが基本構造ですというふうにおっしゃっているんです。

 この外交保護権、消滅はしているという意味ですよね、なんですけれども、一般的には、韓国政府が原告にかわって日本に請求できる権利は消滅した、こういうことだと思うんですが、しかし、でも個人が訴訟することはこれはどうしようもないんだ、こういうことをおっしゃっているんですけれども、これに対して日本側としては法的な部分でどのような反論を行いますか。

岡野政府参考人 日韓両国は、日韓請求権協定第二条1で、財産、請求権の問題は完全かつ最終的に解決されたものであることを明示的に確認し、第二条3で、一方の締約国及びその国民の他方の締約国及びその国民に対する全ての請求権に関していかなる主張もすることができないとしています。

 したがって、韓国の裁判所が日本企業に対して韓国国民への慰謝料の支払いを命じてその請求権を救済することは、日韓請求権協定に反するということでございます。

 現在問題になっておりますのは、個人の請求権というよりも、韓国の大法院の判決であります。韓国の国家機関が日本の企業に対して韓国国民への慰謝料の支払いを命じることは、日韓請求権協定に反すると考えます。

竹内委員 まあ、私もそういうふうに思いますけれども、個人の請求権が消滅しないというのは日本の最高裁判所も認めている部分がありまして、原告がかつて日本政府に対して訴訟を起こしたときに、最高裁は、それはもう棄却しているわけです。ただ、個人の請求権が消滅するとまでは言っていないですね。消滅しないと言っているわけでありまして、そういうところをついて、今回、原告団としては、日本企業を民事裁判で訴えてきた。非常に悩ましい、法的には悩ましい問題があろうかと思います。

 引き続きいろいろ質問していきたいと思っておりますけれども、時間の関係もございますので。

 公明党の私の目から見ても、この徴用工問題は、日本の主張に私は法的には正当性があるというふうに思いますし、大局的に見ても、巨額の賠償を既にやっておりますから、これが全く意味のないというか、幾らでも植民地支配の不法性を訴えて請求できるというのも、全体観としてはいかがなものかというふうに思います。

 しかしながら、やはり、かつての歴史とはいえ、戦争被害者の痛みに思いを寄せるというようなことは大切なことであると思いますし、また、結果として両国の国民感情が悪化することはよくないことであろう。また、経済や文化の交流が途絶えていくというのは非常に残念なことであるというふうに思っているところであります。

 そういう意味で、今後、日本側としても、棒をのんだような主張だけではなくて、いろいろ知恵をめぐらせてこの事態の打開に当たるべきではないかというふうに思っておりますけれども、その辺、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 日韓両国は、一九六五年の国交正常化以来、日韓基本条約及び請求権協定の基礎の上に友好協力関係を発展させてきたわけであります。

 北朝鮮問題等への対応のために、日韓であったり日米韓の緊密な連携が今ほど重要なときはなく、未来志向の日韓関係を築いていくことが重要であります。この点、九月の国連総会の際に日韓の外相会談を行いまして、康外交部長官とも確認をしているところであります。

 その上で、こういう大法院判決で国際法に違反した状態があるということでありまして、韓国に対しては、一刻も早くこういった国際法違反の状態を是正するように強く求め続けるわけでありますが、韓国が重要な隣国である、このことは間違いないわけでありまして、日韓両政府の関係が困難な状況にあっても、外相レベルを含めて外交当局間での意思疎通、また相互理解の基盤となる国民間の交流、こういったものはしっかり続けていくべきと考えておりまして、こういった点も、康外交部長官とは国連総会の際に確認をさせていただいております。

竹内委員 ありがとうございます。

 やはり、今大臣がおっしゃったように、文化や経済の交流が途絶えるということはよくないと思いますし、やはり、いろいろな形で、法的正当性は主張しつつも、どうすればこの問題を解決できるか、いろいろ我々も積極的に考えていかなければいけないということをきょうは申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。ちょっと、いろいろ残った部分はまた次回にということにさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立国社の小熊慎司です。

 まず初めに、このたびの台風十九号で犠牲になられました皆様方、また被災されました皆様方に心からお見舞いを申し上げる次第でありますし、十九号はもとより、ことしは台風十五号など水害も多かったので、それらの水害に遭われた皆様にもあわせてお見舞いを申し上げる次第であります。

 外交こそ国益という言葉は、この委員のメンバーで、きょうまだ来ていませんけれども、百四十二代の外務大臣だった玄葉光一郎代議士が二十代のときに、百九代の外務大臣だった伊東正義先生に手紙を送ったときの言葉が、我が県内では広く伝わっているところでもあります。

 これまでの間、抑制的で安定的だった岸田外務大臣、個性的で行動的だった河野大臣、それを受けて、やはり個性的で実力派の茂木大臣におかれましては、この国益の最先端を行く外交にしっかりと取り組んでいただきたいということを冒頭申し上げ、就任されたばかりですからこのぐらいの御祝儀は言ってもいいのかなと思いますけれども、ぜひ頑張っていただきたいなというふうに思っていますし、外交、安保は、これは党派を超えて取り組まなければいけない重要な課題でもありますので、以後よろしくお願いしたいなというふうに思っております。

 では、質問に移らせていただきます。

 大臣の所信の中でも、海洋国家の日本の使命が高らかに述べられておりました。重要なことだというふうに思いますし、この海洋国家たる日本として、さまざまなテーマについて、日本がリーダーシップをとっている点もあれば、逆に海洋国家たる日本であるのにおくれている部分もあります。

 そこで、SDGsの開発目標にも入っている、いわゆる違法・無報告・無規制にかかわる漁業、いわゆるIUU漁業について、まずお伺いをいたします。

 この間、これは国際的な取決め、また国内的な取組をしっかりしていくということがこのIUU漁業に対しては必要でありますけれども、我が国も違法漁業防止寄港国措置協定など締結をしておりますし、国内的な法整備も進んではいますが、さらなる法整備を取り組むということをこの間の外務委員会でも確認をしているところでありますが、このさらなる法制化、来年あたりにされるというふうに聞いておりますけれども、このスケジュール感をまずお聞きいたします。

森政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、水産資源の適切な管理を脅かすというものとして、IUU、違法・無報告・無規制漁業の撲滅に向けて積極的に取り組んでいるところでございます。

 先ほど委員の方から御指摘のありました違法漁業防止寄港国措置協定でございますとか、地域漁業管理機関における漁獲証明制度の導入等、あるいはそれに対応した国内措置ということで取り組んできているところでございます。

 こうした水産物についてのIUU漁業対策等の観点から、いわゆるトレーサビリティーの導入についても関心が高まっているということを踏まえまして、現在、水産庁におきまして、このトレーサビリティーの出発点となる水産物の生産地や生産者を証明する漁獲証明制度の整備に向けた検討を進めているというところでございます。

 本制度、幅広い関係者の取引に影響を与える可能性があるということでございます。現在、学識経験者、生産者団体などの関係者を集めました検討会の方を開催いたしまして、丁寧な意見聴取を行うこととしております。

 議論が順調に進めば、年内にも議論を取りまとめるという方向で考えているところでございます。

小熊委員 昨年の臨時国会でもこのテーマについて質疑をさせていただいて、そのとき外務大臣の河野さんからは、日本がリーダーシップを、しっかり責任を果たしていくという言葉をいただいているんですが、ことし、幾つかのランキングが発表されました。

 これは海外のコンサルですけれども、一つは、ノルウェーの外務省が委託したコンサルでやったIUU漁業指数、百五十二カ国中、日本、百三十三位です。英国系のコンサルがやった、IUU漁業に逆に関与している、それを支援しているというわけじゃないけれどもそれを後押ししちゃっているという、いわゆる関与している方は百五十二カ国中十九位です。いずれも悪い数字です。

 このIUU漁業指数の中で特に悪いのは、脆弱性と普及と対応というところが、三点、これがチェックされていますけれども、その中で脆弱性がワースト二位です、百五十一位です。というのは、今言われたとおり、トレーサビリティー、まさに流通過程の中でどうやっていくかというのがやはり弱いという点が、国際的には日本は見られてしまっている。リーダーシップをとる、海洋国家日本だと言っていながら、このIUU漁業に関しては、残念ながら、やはり周回おくれどころか最下位の集団を走っている。

 さらに、このIUU漁業はいろいろな観点からやはりよくないということが国際的な認識です。海洋資源が枯渇をしてしまう。また、漁業関係者の利益を奪っている。さらに、ここには法的な措置が及ばない操業が多いので、まさに児童労働の問題も出ている。あらゆる意味において撲滅をしなければならない。日本もその認識は持っていて、これまでも取組をしてきたことはもちろん否定はしません。

 しかしながら、リーダーシップをとっていくんだと言いながら、海洋国家日本としての地位をしっかりしていくと言っていながら、実態としては最下位のレベルです。このおくれをしっかりと取り返していかなければいけません。

 今、トレーサビリティーの問題がありましたけれども、とりわけアメリカなんか、また欧米の方は全魚種に当てはめています、対象魚を。そこまでするということが今議論されていますか。幾つかの魚種にやはり限られて、先ほど言った、確かに、これは流通から漁業関係者から、かかわっている方々は多いわけでありますけれども、実際これをどうしていきますか。やはり絞るんですか。全魚種に、欧米並みにするのか。そして、このおくれを取り戻すのか。その点についてどう議論されているか、お聞きいたします。

森政府参考人 現在、先ほど申し上げました漁獲証明制度の導入検討ということで議論をしているところでございます。

 こういった検討に当たりましては、具体的な対象魚種をどうするかといった点、諸外国の事例も参考にしながら、IUU漁業対策の必要性が高いものから順次拡大をしていくという方向で検討を進めていく必要があるというふうに考えております。

 ちなみに、諸外国におけます輸入水産物の漁獲証明制度の対象ということにつきましては、例えば、委員御指摘のとおり、EUでは養殖魚を除いて全ての魚種という形になっております。他方、米国や韓国では一定の魚種に限定をされての対象ということになっているところでございます。

 こうした諸外国の事例も参考にしながら、検討を進めてまいりたいと思っております。

小熊委員 今出たアメリカの方では州法でもやっていますけれども、これは厳しくトレーサビリティーをやっています。逆に、日本の流通業者がそれをしっかり支えている、逆に民間の方がちゃんとやっているという、先行している事例もありますから。

 徐々に魚種を拡大していくということでありますけれども、今言ったとおり、IUU漁業指数、百五十二カ国中百三十三位、逆に関与してしまっているランキング十九位。しかも、これは、一位とかになっているのが中国とかロシアとか、まさに近隣諸国なんですね。まさにこの地域全体のイメージも悪い、取り組んでいない。世界から、そういう意味では悪い意味で注目されているということでありますから、着実にやっていくことも大事ですけれども、こうした今のイメージを払拭していく。

 言葉では、リーダーシップを発揮していく、海洋国家日本と格好いいことを言っているのであれば、やはり行動が伴わなければいけません。今言った説明では、これは更にやはり進めていく対応を求めて、次の質問に移ります。農水省はもう結構です。委員長、結構です。

松本委員長 水産庁森漁政部長、どうぞ。

小熊委員 次は、インバウンドの推進についてであります。

 着実にこの外国人観光客、進んできているわけでありますけれども、受入れのさまざまな対応はもっともっと進めていかなければなりませんし、また、このインバウンドの中の七割以上が中国、韓国、香港、台湾といった近隣の地域からの人たちでありますが、この国こそが、まさに東日本大震災、原発事故災害での科学的根拠のない規制をかけている地域、国でもあり、その分、私の福島県はもとより、風評被害でこのインバウンドの恩恵を受けていない部分もあるわけでありますから、こうした、日本全体は数字が上がっているけれども、地域格差もしっかり埋めていってもらわなければならないということも、指摘をこれまでもしてきました。

 まず、受入れの問題。来年、東京オリンピック・パラリンピックもあるわけであります。

 受け手という部分では、これは宿泊の部分が非常に大きなウエートを占めますし、私の選挙区も多くの観光地を抱えていますけれども、観光客がその地域のイメージを持つというのは、やはり宿泊先のサービスがどうだったかと、お土産物屋さんとか、見学した場所、飲食した場所、実は限られていて、全員の人と会って、ここよかったねという話ではなくて、まさにそうした、この国の印象を決める最前線に宿泊業の方々というのは立っているわけであります。

 ただ、ここで私、もうちょっと変えた方がいいなと思うのは、これは観光庁、一生懸命やってもらっているわけでありますけれども、まさに戦略的にいろいろな対応もとっていただいているところでありますが、いわゆる監督官庁を細かく見てみると、民泊は主体が観光庁。しかし、旅館、ホテルは旅館業法で厚労省になっています。ここでやはり戦略的に攻めの姿勢でいくといったときに、厚労省は、やはりそれは規制官庁ですよ。安全に宿泊、衛生的に宿泊してもらうというところで、それは役割を果たしてもらわなきゃいけないけれども、攻めの姿勢という点では、厚労省がアクセル踏めるのかなと。

 だから、ここは、やはり多少法改正をして、メーンの旅館業法は観光庁がしっかりやって、そして、そのさまざまな衛生の観点や部分については厚労省がやっていくべきだというふうに思います。

 もちろん、国際旅館というのは観光庁がやっていますけれども、それは一部ですから。別に、外国人の観光客がその指定されたホテルに行くだけではないわけです。

 ですから、今言った方向性の話として、しっかり一元的に戦略を持つという意味で、観光庁が主体となって、こうした宿泊業の支援、また施策を推進する方向にしていった方がいいと思いますけれども、見解を求めます。

加藤政府参考人 お答えいたします。

 旅館に関しまして、観光庁といたしましては、訪日外国人旅行者数の増加など、いわゆるインバウンドの推進に向けまして、旅館におけるWiFi環境の整備、あるいは案内表示の多言語化など、訪日外国人旅行者の受入れ環境の整備、さらには、旅館におけるバリアフリー環境の整備などの取組を既に推進しているところでございます。

 また、公衆衛生の向上などの観点から、厚生労働省が旅館業法に基づき所要の取組を行っているものと承知しております。

 あと、委員御指摘のいわゆる民泊サービスについてですけれども、こちらは、住宅宿泊事業法に基づきまして、多様化する宿泊ニーズへの的確な対応や観光振興の観点から観光庁が、一方、住宅宿泊事業を営む者の衛生面などの適正な運営を確保する観点から厚生労働省が、これはそれぞれ所要の取組を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、インバウンドの推進に向けまして、今後とも、厚生労働省を始めとする関係省庁としっかり連携していきながら適切に対応してまいりたいと考えております。

小熊委員 連携はいいんです、それはもちろん連携してもらわなきゃ困るんですけれども。

 だから、ざっくり言うと、済みません、私の年代は野球にすぐ例えちゃうんですけれども、普通のホテルはピッチャーが厚生労働省、民泊は観光庁がピッチャー。これじゃよくない。どっちもそれは、主体的な監督官庁は観光庁がしっかりやっていくべきだというふうに思うわけです。そういった方向性については、見解はどうですか。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げました観光庁の取組についてでございますけれども、例えば訪日外国人の受入れ環境の整備の支援につきましても、これは観光庁が今、補助事業として支援しておりますけれども、こちらにつきましても、旅館業法の営業許可を受けた宿泊事業者、旅館、ホテル等を対象としているところでございます。

 観光庁といたしましても、旅館を始めとする宿泊施設におけるインバウンドの受入れ環境の整備などをしっかりと推進してまいりたいと考えているところでございます。

小熊委員 それは多分、国際観光ホテル整備法といったものの法関係だというふうに思いますけれども、今言ったように、これは、すごい人数が来たら、その整備法の範囲内の旅館、ホテルだけではなくて、もちろん安いホテルに泊まる外国人もいますから、普通の旅館、ホテルに泊まったりもするわけですよ。

 あと、本当は、国際観光ホテルだというものとそうじゃないというもののわけでもなく、それを分けて外国人も泊まったり泊まらなかったりするわけではないので、全体的な宿泊受入れをどうするかということを考えれば、だから、観光庁が一部の、一部というか、一生懸命頑張っているとは思うんですけれども、ぜひ、厚労省が、もうピッチャーマウンドからおりて、まさに守りだけに徹してもらって、攻めの部分はもう一体的に観光庁がやっていかないといけないと思っています。

 今言ったとおり、観光客の印象を決める非常に重要な施設になってきますから。僕は、ある意味ではもう民間大使と同じぐらいだと思っていますよ、旅館、ホテルの方々というのは。そこでのおもてなしがやはり日本のイメージを決めていくということは、非常に大事な部分だ、しっかり国としても後押しをしていかなければならない。これは、あとは政治判断になってきますから答弁は要りませんけれども、やはり、そうした方向性も役人の皆さんのレベルの中でも考えていただいて、やはり主体は観光庁、そして守りの部分で厚労省もかかわるという、変えていかなきゃいけない。

 今言ったとおり、民泊の部分と普通の旅館、ホテルの部分と、やはりその仕組みというか取り組み方は差がありますからね。これはやはり一体でやってもらわなければ困る。今言ったように、旅行客からすれば民泊であろうと何だろうと関係ないわけですから。この構造的な仕組みを変える、攻めの姿勢をしっかりやっていくという意味でぜひ議論していただいて、このインバウンドの推進に寄与していただきたいというふうに思います。

 何かありますか。どうぞ。

浅沼政府参考人 お答え申し上げます。

 インバウンドの推進をしていく上では、旅館業法と住宅宿泊事業法とが相まって、健全な事業者が育成され、旅館、ホテル、いわゆる民泊によって訪日外国人旅行者の多様なニーズに対応した宿泊サービスが提供されることが重要であるというふうに考えております。

 このため、旅館業法におきましても、平成二十八年に旅館業法施行令を改正し、簡易宿泊営業の面積要件を緩和して営業許可を取得しやすくし、また、平成二十九年には、法改正によりまして、違法民泊を行う者に対する取締りを強化する一方で、ホテル営業と旅館営業の営業種別を統合し、旅館業の規制緩和を進めるとともに、民泊と旅館業との公平で健全な競争の確保を図ったところであります。

 厚生労働省といたしましても、引き続き、観光庁と連携しながら、訪日外国人旅行者の多様なニーズに対応した宿泊サービスが提供されるよう環境整備に努め、インバウンド推進に取り組んでまいりたいと考えております。

 以上でございます。

小熊委員 今言ったように、規制緩和とか、逆に、やはり守りの方なんですね。アクセルの部分が見えてこないという意味では、アクセルはやはり観光庁ですから、ぜひそこは今後議論していただきたいというふうに思います。

 次に移りますから、観光庁もいいです。

松本委員長 観光庁加藤審議官、どうぞ。

小熊委員 厚労省も。

松本委員長 厚労省浅沼生活衛生・食品安全審議官もどうぞ。

小熊委員 先ほど触れました国際的風評被害、これはいまだに、国内もそうですけれども、続いているところであります。

 最近話題になりましたいわゆる汚染水、トリチウム水の課題についてでありますけれども、もちろん、事実だけ言いますと、世界じゅうの今事故の起きていない原発からもトリチウム水が海洋放出されているのは私も知っているところであります。

 とりわけ、科学的根拠のない間違った事実を流布している、また、今の日韓関係に福島県を悪用しているという点については許されざるべきことであり、私も日韓関係は友好な関係に改善しなければならないという立場ではありますけれども、その韓国でも、月城原発では年間十七兆ベクレルのトリチウム水を流しておりますし、カナダの原発では、今福島県の中にたまっているトリチウム水と同じレベルの一千兆ベクレルを超えるものを一年間で流していますし、フランスに至っては、ラ・アーグ再処理施設において一京三千七百兆ベクレルも年間で流しているというのも事実です。

 その事実を踏まえて、しっかりとした基準の中で流すという意見、前環境大臣、また何人かの専門家の言葉はそこから発しているというふうに思いますけれども、それは事実ではありますが、では、なぜこれを流すということにさまざまな議論があるかといえば、こうした国々でも、やはり健康に被害があるんじゃないかということで議論がされているのもまた一方の事実であります。

 フランスにおいては被曝線量が試算をされています。その放射線影響は非常に小さいということがフランスでは確認されています。でも、この日本で、影響はあるけれども非常に小さいという言葉は、非常にせつない言葉というか、厳しい言葉です。ゼロリスクを求める社会だから。

 今、福島県で、この収穫の秋、お米は全袋検査をして出していますけれども、風評被害は続いています。安全ですよと言ったところで、何かがあるんじゃないか、風評被害があるということで、やはりこれは慎重な意見が出てきているわけです。いまだに、検査をして安全性が確保されているのに買い控えされる部分がある、消費者がいるということです。

 科学的根拠や安全性をしっかり示す、また、ほかの専門家や政治家の方々も言っていますけれども、トリチウム水だけになっていると言ったのが、幾つかの核種が残っていた。これをちゃんとしなければならない、それをちゃんと証明しなきゃいけない、安全性をはっきり言えという人もいるけれども、それでは解消されないから我々は慎重なんですよ。その点がわかっていない。

 だから、前大臣は、それは科学的根拠でそういう発言があったと思うけれども、そこの部分、人の心理の部分をわかっていない。だから、科学的には正しいことを言ったんでしょう。言うべきだと、政治家の覚悟だと言ったと思います。だけれども、それは被災者、福島県民に寄り添っていない。今の風評被害がわかっていないという証左です。

 しかも、多くの人が、またマスコミを始め評論家も、あと二年で限界が来る。本当にそうでしょうか。何で二年なんですか。これは東電の敷地内がいっぱいになるだけです。国が前面に立つというのであれば、東電以外の土地を借りて、ため続けなきゃいけないんじゃないんですか。

 そしてまた、福島県民の理解といいますけれども、今言ったように、消費者の理解がなければこれはできませんよ。福島県民がオーケーと言ったって、福島県の漁業関係者がオーケーと言ったって、買っていただける方の理解がなければならない。

 大阪市長の松井さんが、大阪湾で引き受けてもいい、途端に反対が出たじゃないですか。大阪の人たちだって、科学的根拠にはオーケーだといったって、やはりだめなんですよ。

 じゃ、大臣、大臣のところは海がないけれども、この所属の皆さんの地元の海で、一トンでも二トンでも、科学的根拠はオーケーだからどうぞと言っていただく方はいますか。そうなったときにどれだけ騒ぎが起きるか、反対が起きるか、想像にかたくないはずです。そこの部分をしっかり対応しなければ、科学的根拠がどうだとか安全性がしっかりしていますとかで解決できる問題ではないんです。

 そこで、まずお聞きしますけれども、ALPSの膜を開発したアメリカのピュロライトの会長とも、CEOとも、昨年、私、対談をしましたけれども、これ、取れていない核種、一回だけでトリチウム水だけになるというふうな説明も聞きましたが、やはりもっとやらなきゃいけないという話も専門家から聞きました。実際のところ、どうですか。

新川政府参考人 お答え申し上げます。

 多核種除去設備、ALPS等で浄化処理した水の取扱いにつきましては、風評被害など社会的な観点も含めた議論を政府の小委員会において行っているところでございます。

 昨年十月に開催した政府の小委員会の中で、東京電力は、環境中に放出する場合には、その前の段階で処理水の再浄化を行い、トリチウム以外の放射性物質について、環境放出の場合に求められる水準を満たす方針を示していると承知をしております。

 また、御質問のALPSにつきましては、条件を適切に整えれば、一回の処理でトリチウム以外の放射性物質を環境放出の際に求められる水準まで浄化処理する能力を有していると認識をしております。

 現時点では処分方法を決めた事実はございませんが、どのような方法や工程であっても、生活圏への科学的な影響を与えないことがまずは重要でございますし、御指摘の風評被害への対応をきちんととることが重要であると認識をしております。

小熊委員 これは、二年で僕は理解を得られるとは思っていません。であれば、先ほど言ったとおり、東電の敷地外の土地を使ってタンクをつくっていくという選択肢はありますか。

松本副大臣 今審議官からお話をさせていただきましたとおり、ALPS等で浄化処理いたしました水につきましては、今、小委員会におきまして総合的な議論が行われているところであります。

 その議論の中におきましては、敷地外での保管も含めまして、貯蔵継続、長期保管ができないかという点につきましても、小委員会におきましての議論を行っているところであります。

 少し、その八月、九月に行われました小委員会での議論を御紹介をさせていただきますと、現在の敷地内での廃炉作業をやり遂げることが基本方針であり、敷地を広げることはリスクの存在地点が広がること、敷地全体の利用については、使用済み燃料や燃料デブリの一時保管施設などの用地が必要であり、さまざまな制約はあるものの、多少のタンクの増設も含めて検討の余地があること、敷地外での保管は、新たな土地の確保や輸送手段に課題があることといった点が小委員会で議論をされたというふうに理解をしているところであります。

 こうした点を踏まえまして、小委員会では、保管の継続については、タンクの増設も含めた敷地の有効活用を徹底的に進めるべきという方針で進めることとされているところであります。

 いずれにいたしましても、ALPS処理水の取扱いにつきましては、まずは小委員会で議論を尽くしていただくことが大変重要であります。結論ありき、スケジュールありきではなくて、小委員会でしっかりと議論を、そして検討を進めていただきたいと考えております。

小熊委員 これは、あと二年といって、半分おどされた感じがしますよ、福島県民。まず、スケジュール感は遅いし、物理的制約があると言っているけれども、一番は、やっぱり福島県民の心、漁業関係者の理解ですよ。ここがなければなりませんよ。それじゃなくて、やはり重要なことは物理的ですとかと言われた日には、それは詮ない話ですから。心の部分です。物理的な話じゃない。心の部分をしっかりと捉えて対応していってもらわなければいけないし、あと二年でいっぱいになるというんだったら、もう準備しなきゃいけないです、土地の確保だって。今、小委員会で議論している場合じゃない。どうするか、もう決めてもらわなきゃいけない、スケジュール感を持って。

 ぜひそこを認識して対応をとっていただきたいと思うし、理解というのは、先ほど言っていた風評被害というのは、全国民、全世界民に通じるわけですよ。この件について、だから韓国に利用されているわけです。これはしっかり対応をとってもらわなければいけないし、大臣のところだって、内陸といっても、これは世界的には川に流している原発だってありますからね。茂木大臣におかれても、自分のところで流してもという松井市長のような気持ちがあるかどうかという、言うか言わないかは、それは言うことが重要だとは思いませんけれども、そのぐらいの気持ちで、この問題については、それぞれが自分が当事者だと思って当たっていただきたいし、この二年という時間的制約は前面に出さないでしっかり検討していただく。

 私は二年では足りないと思うので、もう土地の確保については具体的に取り組むべきだということを主張させていただいて、時間がありませんが、最後にSDGsとODAについてお聞きいたします。

 きのう即位の礼がありまして、各国の元首が来られていて、きょう私も議連のメンバーとして、この後、太平洋諸国の元首たちとの昼食会に参加をする予定でありますが、これ、太平洋諸国だけではなくてアフリカでも指摘されていますけれども、いわゆる中国の国際貢献という名の、ちょっと言葉は悪いですけれども、間違った国際貢献によって、そうした国々の政治が混乱、また将来的な不安を抱えているところであります。

 お金では、もうこれははっきり言えば勝てないなというのはあります。太平洋諸国は特に、関与していたオーストラリアやアメリカが金額的には減らしている傾向にもあります。その中で日本は頑張っている方ではありますが、中国に対抗するには、お金の面では日本も対抗できるようなものではないなというふうに思っています。

 日本の利点というのは、やっぱり人的な、まさに質での貢献で、これは私も感じていますけれども、サモアの独立五十周年に行ったときに、申しわけないけれども、中国の人たちがパレードしたときの拍手と、日本の人たちが元首の前でパレードしたときのサモアの国民の拍手は、もう段違いにありました。それはやはり、日本人のさまざまな生真面目さを始めとするその特性が、人的な部分が評価されていたというふうに思います。そうした点においてしっかりと、こうした諸国に支援をしていく中で、中国のこのゆがんだ国際協力から守っていかなければならないというふうに思います。

 ただ一方で、お金に制約はあるとはいえ、やはりODAは、大臣、私はODA倍増論者でありますので、今まで、外務省も拡充に努めるという言葉にも変わってきましたし、あのODAに厳しい目を持っていた河野大臣でさえODAの予算をふやしていただいております。こうしたさまざまな課題、いっぱいありますけれども、そういった観点から、大臣、このODAに関しての倍増論について御見解をお聞きいたします。

茂木国務大臣 小熊委員の福島県、立派な外務大臣を輩出されておりまして、この委員会にも、お隣に岡田元外務大臣そしてまた玄葉元外務大臣と並んでいらっしゃいまして、これまでの先輩の外務大臣、そして先人たちの努力の上に日本の外交を更に前に進めていきたいと思っておりますが、そのための重要なビークルになるのが委員御指摘のODAである、このように考えておりまして、国際社会と協力して世界全体の平和と安定及び繁栄に貢献することは、我が国自身の国益の確保にもつながると思っております。

 やはり、質の高いインフラの整備であったりとか、御指摘のありました人材の育成、こういった面で日本が貢献をしてきている。

 実は今週、私も、即位礼正殿の儀に出席するために訪日されている多くの海外要人、東南アジアであったり太平洋諸島国、さらにはアフリカの外相と会っていますけれども、日本は早くからやってくれた、そして、日本の援助というのは一発限りではなくて、それが、人材育成であったりとか、さまざまな形で国の発展につながっている、感謝、そして大きな評価をいただいたところであります。

 当然、中国のボリューム感、こういったものは我々もよく考えていかなきゃならないわけでありますが、一方で、現在起こっている、テロであったり、難民、貧困、感染症、こういう新たな課題、これにやはり先進的に取り組めるのは日本だ、こういう思いでしっかり取り組んでいきたいと思いますし、そのためには、質も重要でありますけれども、予算のボリュームというのも当然重要になってくるわけでありまして、しっかり予算を確保できるように、令和二年度の予算におきましても五千五十一億円概算要求しておりまして、しっかりした予算を、SDGsの達成であったりとか自由で開かれたインド太平洋の具体化のために確保していきたいと考えております。

小熊委員 ぜひ、ボリュームの点についても御指摘いただいたので、これはしっかりと形にあらわれるようにしていただきたいと思いますし、技術の面じゃなくて、青年海外協力隊、またシニア層のボランティアたちがその国の農村に行って、技術供与じゃなくて、日本人として真面目に働いている姿を見て感動したとか影響を受けたという、まさに目に見えない効果もありますから、そういう意味でも、このODAを通じて、また協力隊なども支援をしていただいて、日本の国際貢献に寄与して、そして、まさに玄葉元外務大臣が言った外交こそ国益という名のもとに、しっかりと対応していただきたいというふうに思います。

 どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、阿久津幸彦君。

阿久津委員 立国社の阿久津幸彦でございます。

 まず初めに、さきの台風十九号の被害に際しまして、世界各国からも多くの温かいお言葉を賜りました。このことを、この場をおかりいたしまして心から感謝申し上げたいというふうに思います。

 まず初めに、中東情勢について伺いたいと思います。

 中東地域の平和と安定化に向けて検討が開始された自衛隊の中東派遣について大臣に伺いたいと思うんですが、まず初めに、米国が提唱する有志連合構想には参加しない、独自の活動ということでよろしいんでしょうか。米国の理解は得られているというふうに理解してよろしいんでしょうか。この点、伺いたいと思います。

茂木国務大臣 自衛隊のアセットの活用に関する具体的な検討、まさにこれは、中東における我が国に関する船舶の安全活動のための、日本としての独自の取組であります。

 同時に、この情報収集等によって得られました情報につきましては、米国とも共有をしていきたい。この点につきましては、昨日も夕刻の電話会談でポンペオ国務長官と確認をしているところであります。

阿久津委員 いずれは海上自衛隊の護衛艦や哨戒機の派遣も検討すると、十月十八日、菅官房長官が表明されておりますけれども、これは、いずれは有志連合構想に参加するという含みがあるんでしょうか。大臣にお聞きします。

茂木国務大臣 まさにこれからの検討ということになりますが、現時点でそのようなことを想定しているわけではありません。

阿久津委員 続いて、ちょっと防衛省の方に伺いたいというふうに思うんですが、情報収集が目的のためということなので、日本船舶の防護は任務に含まれていないということでよろしいでしょうか。

槌道政府参考人 今般、政府方針として示されておりますのは、情報収集態勢を強化するために自衛隊アセットの活用に関する具体的な検討を開始せよということでございます。

 まさに具体的な検討はこれからでございますけれども、まず、我々の自衛隊アセットを派遣するのは情報収集のためということであって、現時点において、中東地域において船舶を防護するような必要性が生じている事態ではないというふうに理解をしております。

阿久津委員 現時点ではということだと思うんですが、もし命令が変更される場合、海上警備行動の発令が行われる場合というのは、これは閣議決定だけでできるんですか。確認です。

槌道政府参考人 あくまでも、現時点で我々が検討を開始いたしますのは、情報収集態勢を強化するためということでございますけれども、あえてということでお尋ねでございますので、一般論として、海上警備行動を発令する場合には、内閣総理大臣の承認を得て防衛大臣が命令をするということでございますので、その内閣総理大臣の承認に当たって閣議決定が必要であるということでございます。

阿久津委員 続けて、防衛省に伺いたいと思います。

 政府の検討する調査研究の活動地域というのは、オマーン湾やアラビア海北部の公海、イエメン沖ということでございますけれども、調査研究は比較的安全な地域と解説する一部報道もありますけれども、安全か危険かということでの活動地域の制約はそもそも設置法の調査研究の概念にはない、法的には調査研究であっても危険地域へ行けるというふうに考えていいんでしょうか。

槌道政府参考人 御指摘のように、情報収集を行う場合には、その根拠は一般的に防衛省設置法の第四条第一項第十八号における調査研究ということになります。そこにおいては、地理的な要件や、今先生御指摘のありました安全性といった要件が法律上規定されているわけではございません。

 その上で申し上げますけれども、情報収集を行うという場合において、情報収集の目的として武器を使用するということは認められておりませんので、我々が情報収集を命じるに当たりましては、そうしたことも勘案しながら、その活動の範囲ですとか任務の内容について大臣から御命令いただくということになろうかと思います。

阿久津委員 政府が検討する活動地域には、イランの保守強硬派と言われる革命防衛隊の活動地域とか、イエメン現政府の反体制派組織フーシ派の活動地域も隣接すると思われます。一歩間違えば戦闘に巻き込まれる可能性が極めて高い危険な地域に自衛隊派遣を出すというふうに言わざるを得ません。

 また、日本の中東への自衛隊派遣は、我が国の中立的な中東外交に疑念を抱かせ、イエメンなど複雑な地域に悪影響を及ぼしかねないという懸念もございます。私は、防衛省設置法に国会承認という歯どめを設けるべきではないかということを政府に提言いたしまして、次の質問に移らせていただきます。

 次の質問は難民問題です。

 今後の難民問題に対する我が国の戦略、戦術及び現実的な対応としてのNGO活用について外務省にまずお伺いしたいと思うんですが、イエメンの難民支援について。

 イエメンでは、まさに人道危機が起こっています。内戦にサウジアラビアやイランが加わり、更に大国も関与して収拾がつかない状況です。その結果、半分以上の建物が壊され、二〇一七年末にはコレラ感染者約百万人、二〇一八年のデータでも、栄養失調は人口の七〇%、二千万人に達する勢いだと。子供の飢餓は五百万人という深刻な状況でございます。

 そのイエメンの危険地域の設定及び危険地域へのNGOによる海外渡航について、イエメンは安全か、危険地域のレベルはどんなかを含めて、外務省、お尋ねしたいと思います。

水嶋政府参考人 お答え申し上げます。

 イエメンの危険情報といたしましては、二〇一五年から全土に避難勧告、いわゆるレベル4を発出しております。

 NGOの職員でありましても、邦人であることには変わりはございません。この退避勧告、レベル4を出しております地域への邦人NGO職員の渡航についても、安全確保が極めて困難であるということから、容認することは適当ではないというふうに考えております。

 邦人保護は外務省の最も重要な責務の一つでありますので、外務省が発する危険情報に従っていただくように政府としても要請をするということになろうかと思います。

阿久津委員 御答弁のとおり、イエメンは深刻な人道危機に見舞われるとともに、大変危険な地域でもあります。

 しかし、イエメンでは、まさに命がけというんでしょうか、国連のWFPや国境なき医師団、セーブ・ザ・チルドレンなどが直接的又は現地スタッフを使った間接的に人道的な活動を続けているのも、外務省は御存じのとおりだというふうに思います。

 そこで、あくまで一般論として、イエメンを離れて、NGO、NPO活動や人道支援活動にも大変造詣の深い鈴木馨祐外務副大臣にお尋ねしたいというふうに思うんですが、難民支援に向けたNGOの活用に伴う課題について、きちんとトレーニングを受けたNGO職員と一般人との危険地域の設定を分けることはできないのか、あるいは例外事項として、海外渡航を例外事項をもって運用すべきではないか。危険管理トレーニングを受けた特定のNGOの特定の個人に対しては危険地域への外務省の渡航許可を限定的に出すことはできないものかどうか、将来的な視点も含めて、副大臣の御意見を伺いたいと思います。

鈴木副大臣 阿久津先生御指摘の点についてお答えをさせていただきたいと思います。

 これから、御指摘のように、NGOについてもいろいろな戦略的な形でさまざまな活躍をいただいていく、そういった時代になってくると思います。ついては、従来政府がやっていた分野ということについても、あるいは政府ができない分野についても、大きな役割を担っていただく必要があると思っております。

 その中で、やはりNGOそれぞれのキャパシティービルディング、これをきちんとやっていくことが必要だということは我々としても認識をしているところであります。

 しかし、一方で、今答弁にもありましたように、海外における邦人の安全確保、これは同時に政府の非常に重要な責務でありまして、そこのバランスをどうしっかりととっていくのかということが大事なことになっていくと思っております。

 その中で、今、レベル4という話がありましたけれども、実際、レベル4という退避勧告、そしてあるいはレベル3の渡航中止勧告、こういったところをどう考えていくのかということが非常に大事なことだろうと思いますけれども、今、イエメンの御質問がありましたが、南スーダンということで申し上げれば、今、レベル3のところ、あるいは最近ではレベル4のところについても、いろいろな制約がついた状況でありますけれども、一部活動していただいている、そういったケースも出てきております。

 ただ、同時に、我々考えていかなくてはいけないのは、それぞれのNGO、あるいはそのNGOの中でも個人によって当然スキルの違いというものが出てきますし、あるいは、地域によっても、例えば危険な地域の偏在の仕方あるいは危険の、リスクの置かれている状況というものは大変違ってくる状況があります。

 ということでありまして、一律にということではなくて、恐らくこれは個別に判断をしていかざるを得ない、そういった問題であろうと思いますし、そういった点はしっかりと、我々も邦人保護という観点をしっかりと、我々としては、責務を果たしていく中で、そうした判断を適切に下してまいりたいと思っております。

阿久津委員 大変いい御答弁をありがとうございます。

 NGOの今後の活動範囲を広げていくというか、役割を増していく中で大きな課題は、もう一つ、万が一、危険地域あるいは危険地域に準ずる地域で、一生懸命、命をかけて活動していて、命を落としてしまったときに、我が国としてどういうふうにその死を捉えることができるかだというふうに考えております。

 自衛隊員が名誉の死に陥ってしまったときには、もちろん、国民全体としても敬意を表して扱わせていただくわけでございますけれども、平和あるいは安定という、さまざまな目的を持って、命をかけて現地に向かったNGO、合法的に向かったNGOの方々に万一のことがあったときには、ぜひ、国民全体としてもそれをとうとぶような、そんな姿勢で見守れればいいなというふうに考えておりますので、副大臣、一言あれば。一言で結構です。

鈴木副大臣 今お話がありましたような事態、これは、あらゆる事態においてそういったことがあっては当然ならないわけですし、そういったことがないように我々としても万全の対策を尽くしてまいりたいと思っております。

 その中で、今後、いろいろな活動が広がっていく場合にはという話だったと思いますけれども、しっかり、我々としてはそうした責務をきちんと果たしていくということでお答えとさせていただきたいと思います。

阿久津委員 ありがとうございます。

 鈴木副大臣におかれましては、ここまでで結構でございます。

 次の質問に移らせていただきます。

松本委員長 では、鈴木副大臣、どうぞ。

阿久津委員 がらっと質問がかわりまして、横田基地の空路について伺いたいというふうに思います。

 羽田空港新飛行ルート設定における横田基地空域との関係について、特に新飛行ルートの一部が米軍の横田基地空域に含まれますものですから、そのときの管制権は日本と考えていいのかどうか、その場合、管制権のシフトによる安全性の確保についてしっかりできるのか、御見解を伺いたいと思います。

河原畑政府参考人 お答え申し上げます。

 都心上空を飛行する羽田新経路は、年間の約四割ある南風時、かつ、一日のうち三時間程度運用されるものでございまして、いわゆる横田空域の一部を通過するものであります。

 この羽田新経路により横田空域を通過する航空機につきましては、日本側が一元的に管制をすることとしております。

阿久津委員 私は、管制権というのは極めて大事で、事故に遭わないように確率を減らしていくにはシンプルであるべきだというふうに思っております。米軍が横田空域の一部を別に放棄しているわけではないですから、その米軍のある種役割がそのまま担われる中で、管制権を一時的にシフトして民間機を通すというのが果たして安全なものなのかどうか、疑念が私にはございます。

 引き続き、羽田空港新飛行ルートの安全管理については、国交省及び米軍横田基地空域も絡むという観点で外務省にも確認をしながら、私の方でも安全を目指していきたいというふうに考えております。

 次の質問に移らせていただきます。

 一つちょっと飛ばしまして、国際結婚をされたお子さんたちの二重国籍について茂木外務大臣にお尋ねしたいと思うんですが、実は、河野前外務大臣はこの問題について大変積極的に発言をされまして、国際結婚された方々のお子さんの国籍の問題について、日本の国際的な力というものをふやしていく中で、どういうふうに国籍を考えていくのかというのは、これは外務省だけではなく法務省その他関係府省と連携して考えてまいりたいと思いますというふうに、平成三十年三月二十三日の外務委員会での私とのやりとりの中で答弁されております。

 茂木大臣は経済の方に非常に視野が広くて、経済的な意味でも国際結婚をされた方々のお子さんたちの有効活用というものは大事なことだと思うんですが、この点に関して、国際結婚をされたお子さんたちの二重国籍について、茂木新外務大臣の御見解を伺いたいというふうに思います。

茂木国務大臣 経済的メリットというよりも、例えば大坂なおみさん、見ていても、活躍されている姿は日本人の多くの人が本当に頼もしいと思っていたりとか、非常に優秀な人材が多い、こういう基本的な認識を持っております。

 その上で、重国籍者に対します法制度については国籍法を所管する法務省の所管、御案内のとおりでありますが、国際社会において我が国の力を増進していくということは重要でありまして、そのために何ができるか検討していきたいと考えておりますけれども、重国籍につきましては、御案内のとおり、さまざまな意見の方がいらっしゃいます。そういった中で、関係府省庁ともよく考えてまいりたいと思っております。

阿久津委員 大臣、私は、大臣御存じのとおり、国力というのは人口が減少すると必然的に落ちてきますから、一般的な、国際的なスタンダードで計算するとですね。この日本の人口減少社会というのはかなり深刻なものだというふうに考えております。それを補っていく意味では、最終的には、外国人人材も日本に取り入れていくことをもっともっと積極的に検討しなければならないのかなというふうに思うわけですけれども。

 国際結婚をされて、そのお子さんたちというのは、まさに、私たちが教えるまでもなく、日本に対する郷土愛があるし、そして極めて優秀な方々が多いという印象を受けますし、また、愛情というんでしょうか、日本に対する、愛情を日本に、二つの祖国というのか、そういうものも備えた方だと思っております。

 そういう方々を、むしろ、一般的な外国人の登用以前に、できるだけ日本の有効な人材として活用していくというのに対して、さまざまな意見があったとしても、また法務省の管轄であったとしても、外務省を含めて各省からもうちょっと積極的にいろいろな知恵を出していただきたいと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 御意見として、個人的に十分理解をいたします。

 今後、日本の将来の姿を考えるときに、やはり人口は多い方がいい。ただ、人口をふやすためにというよりも、やはり、日本の魅力というものを増大させていくためにどういう制度が必要か、こういったことも含めて検討していきたいと思います。

阿久津委員 どうもありがとうございました。

松本委員長 次に、山内康一君。

山内委員 立憲民主党の山内康一です。

 きょうは、まず最初に、いわゆるロヒンギャ難民問題について質問したいと思います。

 ミャンマーの西部、バングラデシュの国境に近いラカイン州というところから大量の難民が発生しております。武装勢力とミャンマー政府の治安部隊あるいは軍との衝突をきっかけにして、二〇一七年八月以降、ユニセフの報告によると七十四万五千人の難民がバングラデシュ側に流出しているといったようなことがあります。

 このロヒンギャ問題というのは、日本ではそれほど注目されていないかもしれませんが、国際社会、特にイスラム諸国の間で非常に注目されている問題です。

 こういった問題への対処を誤ると、もともとラカイン州で武力衝突を起こしている武装勢力とパキスタンやバングラデシュの反政府組織、テロ組織との関係も報道されておりますので、こういった問題への対処は、テロ対策、そういった観点からも重要だと思います。そして、ロヒンギャ難民が流出しているバングラデシュ、あるいは近隣のインドネシア、マレーシアといった日本にとっても重要な国に大きな影響を与える大変重要な問題だと思っております。

 これについて、今の日本政府の対応をお尋ねします。

茂木国務大臣 我が国は、ミャンマー・ラカイン州の状況改善とバングラデシュからの避難民帰還の促進のため、ミャンマーそしてバングラデシュ両国政府自身の取組を後押しもしてきたわけであります。

 バングラデシュ側におけます避難民及びホストコミュニティーに対します支援、これを継続するとともに、ミャンマー政府に対しまして、国連の協力のもと、帰還のための環境整備を進めるよう働きかけをしてきております。

 人権侵害疑惑に関しては、信頼性と透明性のある調査を実施された上で、適切な措置がとられるべきと考えておりまして、我が国の働きかけの結果、昨年八月にミャンマー政府は外国人を含みます独立調査団を設置して、現在、同調査団が調査を進めているところであります。

 この独立調査団によります調査の進展、これをしっかりと確保して、適切な措置をとることが不可欠であることにつきましては、ミャンマー側にも繰り返し働きかけを続けております。

山内委員 これまでも、日本政府も取り組んできましたし、河野外務大臣はみずからバングラデシュの難民キャンプを訪れて現地を見られてということで、一定程度、日本政府としても関与してきたことは事実だと思います。

 ただ、中身を見ると、どちらかというと、国連機関にお金を出す、あるいは、JICAがやっている既存のプロジェクト、既存の事業をちょっと範囲を拡大するといった形で、このロヒンギャ問題だけのために特に始めたプロジェクト、そういったものは余り多くありません。まあ全くないわけではないですが、余り多くありません。もっと日本のプレゼンスを示せるような協力というのが必要じゃないかと思います。

 特に、ミャンマー側が特にそうですけれども、人権侵害などが多く報告されている場所に関しては、日本人、外国人がいるというだけでも人権侵害に対する抑止力になります。ぜひ、日本の援助実施機関、日本のNGO、こういった日本人の顔の見える形で現地での活動を拡大する必要があると思いますし、日本はそれだけの人材も資金もあると私は思っております。

 特にバングラデシュ側ですね、バングラデシュで難民を受け入れている地域も、もともと決して豊かな地域ではありません。もともと森林地帯だったところに、今や百万近い、難民キャンプができてしまっている。そういった意味では、バングラデシュの人たちも、地域のホストコミュニティーも非常に困難な状況に置かれている。環境破壊ですね、薪にするために森林が破壊されたり、あるいは、もともと人が住んでいないところ、森林が伐採されていますから、自然災害に対して非常に弱くなっている。そういったホストコミュニティーへの支援ということは十分日本でもできるはずですし、日本もやっていただきたいと思っております。

 そういった、日本としての独自の協力ということについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 御指摘の、バングラデシュ・コックスバザール等におきましては、避難民のみならず、避難民の受入れをしているホストコミュニティー、この生活状況も大変なところでありまして、そこに対しまして、国際機関だけではなくて、日本のNGOであったりとかJICAを通じた、水、衛生、保健医療、教育分野等の支援をこれまでも実施をしてきているところでありますが、私もやはりさまざまな形の支援というのを見ていて、日本の顔が見える支援、こういったことは極めて重要だと考えておりまして、そういったことも含めて、更に内容を充実してまいりたいと考えております。

山内委員 私もNGOで難民支援にかかわっていたことがあるんですが、難民支援の方はまだ寄附金が集まりやすいんですね。ところが、ホストコミュニティーを支援しますというのは意外と穴になりがちであって、そういうところこそ日本もやれますし、その方が、特にバングラデシュの政府からはより感謝される協力になると思います。

 そういった意味で、ホストコミュニティーへの支援に関しては何の制約もありません。治安の問題もそれほどないと思いますから、そういったところ、今大臣おっしゃったJICAのプロジェクトは、実はロヒンギャのための特別のプロジェクトではなくて、もともとやっていたバングラデシュ全体のプロジェクトをちょっと範囲を拡大しましょうとか、その一部の機材を難民を受け入れているコミュニティーに振り向けましょうという程度の、足が速いという意味では既存の事業だから速いんですけれども、そのためだけのということでは全くないので、ぜひロヒンギャ難民及び難民を受け入れているコミュニティーの支援ということを、日本の旗を立ててしっかりやっていただきたいというふうに思っております。

 それからもう一つです。ロヒンギャの難民は長期化のおそれがあります。もう既に何十年も前からいる難民がバングラデシュ側にいますし、今、独立調査委員会のお話がありましたけれども、当初、八月に報告書が出るはずが、来年まで延びていると、今、外務省の担当者から聞いておりますが、なかなか簡単に結論が出ないと。

 特に、ロヒンギャというのは、難民ですけれども、ミャンマー政府が自分たちの国民と認めていないので、難民として認定されないという大きな問題がありまして、長期化のおそれが非常にあるということは、ミャンマーに戻れない難民、例えば、バングラデシュ内でも、今、コックスバザールのところには大量の難民が一カ所に住んでいますが、これを分散させるとか、あるいは第三国の定住、日本も第三国定住を受け入れてもいいと思います。そういった長期的な支援が必要になってきていると思います。そういう長期的な支援も含めて、日本政府として考えていただきたいと思います。

 そのためには、私は、例えば外務省、あるいはもっと言うと実施機関のJICAにこういうロヒンギャ問題の専門の支援担当の部署、こういったものをつくってもいいんじゃないかと思います。かつて、たしか私の記憶では、アフガニスタン支援のために、特別にアフガニスタン支援室みたいなものを設置していた時期がありました。そういった専門の部署をつくって、ロヒンギャ問題、日本として力を入れていく、そういう姿勢を示すということをやるべきだと民間のNGOや学識経験者の方もおっしゃっています。

 ロヒンギャ問題専門の部署をつくる、こういったことについて、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 先ほどのJICAの話でありますけれども、やはりスピード感というのも大切でありますから、既存の事業といいますか、それを使って応用できるところをやっていくということも重要だと思いますし、山内委員がおっしゃるように、より長期的な取組という観点から、それにテーラーメードした形の支援というのは考えていく必要があるなと思っております。

 そういった政策を進める上で、どういう組織体制が必要か、こういうことにつきましては、また検討させていただきたいと思います。

山内委員 前の河野太郎大臣はODA半減論者だったわけですけれども、先ほどの答弁の中で、茂木大臣、ODAを拡充すべきだというお考えのようですので安心しておりますが、ぜひ、拡充するときは、まずはこういう人道的にも非常に大きな問題があって、かつ日本にとっても重要な地域だと思います。日本はミャンマーともバングラデシュとも両方の国と良好な関係を保っているわけですから、そういった意味で、日本こそが中心になって、ロヒンギャ問題に関する援助、主導権を握っていただきたいと思います。

 よく、大きな援助受入れ国に関しては、援助国会合というのをつくります。例えば、アフガニスタン援助国会合とかインドネシア援助国会合。そういったものに関して、例えば、ロヒンギャ問題の援助国会合を開いてもいいと思います。それを日本の茂木外務大臣が世界に呼びかけてもいいと思います。既存の事業もいいと思うんですけれども、更に拡充していく。特に、これからふえていくODAの分は、なるべくこういう人道的な危機の起きている国に対して振り向けていただきたいと思います。

 もう今やミャンマーにも日本企業も大分進出していますし、日本とのつながりは更に深まっています。そういうミャンマーの内政が安定することは、日本にとっても国益だと思います。

 そういった意味で、より関心を持っていただいて、積極的平和主義というのであれば、ペルシャ湾に自衛艦を送るだけではなくて、ぜひこういう人道的な危機に対して日本としての存在感を示していただきたいと思います。例えば援助国会合、東京でホストする、そういったことも考えていっていいと思います。

 それについて、改めてもう一度、大臣の御所見をお聞きします。

茂木国務大臣 貴重な意見として承らせていただきます。

 状況を改善していくことが必要だということについては委員と全く考えを共有していると思っておりまして、そのための組織のあり方とか会議の持ち方、これについてはよく検討したいと思います。

山内委員 これまでの日本の対応に関しては、私も評価できる部分は多いと思います。特に、独立調査委員会などは日本政府も提案していたことだと思います。

 同時に、ミャンマー政府が設けた独立調査委員会、調査団ですけれども、とは別に、もう既に国連などもたくさん調査報告を出しています。そういった既に出ている報告も踏まえて、日本としてもより踏み込んで、そして日本は人権やあるいは環境といった問題に強い関心を持っている国として、こういったロヒンギャの難民の問題、あるいはロヒンギャ難民が発生したミャンマー側、ラカイン州の開発のためにも貢献できると思います。

 例えば中国もこういったミャンマー西部、ラカイン州にかなり投資をしておりますが、天然ガスとか、そういう資源確保の観点で中国が出ていって、地域住民の間ではいろいろな問題も起きています。天然ガスの開発というと、立ち退きが発生したり、あるいは利益の配分をめぐっていろいろな問題が起きています。

 日本は中国とは違う性質の援助ができると思います。余りよその国の、特に中国の悪口ばかり言うのもあれですけれども、やはり環境と人権に関しては、中国の援助というのは十分な配慮がなされておりません。日本がお手本を示して、本来ODAというのは、国際協力というのはこういうふうにやるんだというふうに、環境や人権の問題に配慮した質の高いインフラをこういった難民が発生している地域でもやっていただきたいということをお願い申し上げまして、次の質問に行きたいと思います。

 次に、ちょっとマニアックな質問になりますが、在外公館の数についてということを質問したいと思います。

 二〇一九年の外交青書を読みますと、バヌアツに今年度大使館を新設すると書いてありました。たまたま書いてあったのでバヌアツの例を取り上げますが、例えば新しい大使館を一個つくると、どれぐらい外務省の職員を派遣して、どれぐらい年間の維持費あるいは設置に費用がかかるんでしょうか。

茂木国務大臣 一つの公館の新設に要する費用、これはどういう国につくるかとか、また公館の規模等々、国の状況によって大きく異なるわけでありまして、例えば、参考までに、こんなイメージということで聞いていただければと思うんですが、過去三年間で新設をいたしました大使館、総領事館、政府代表部、兼勤駐在官事務所、それから領事事務所の設立のために計上いたしました予算を単純に平均しますと、一公館当たり約一・六億円、こういう額になります。

 この予算の中には、公館の事務所であったりとか公邸、この設置工事費、さらには通信機器の設置費、警備機器設置費等の初期費用に加えまして、賃料、また現地職員にかかわります人件費等の三カ月分の維持費というものが、平均で申し上げました一・六億円の中には含まれているということであります。

 また、各公館の一年当たりの維持費ということになりますと、それは、その公館によっても相当違いがありますし、また年によってもどんな活動をやるかということで異なってくるために、一概に申し上げるのはちょっと困難なのかな、また、かえってそれはミスリーディングになるのかな、そのように思っております。

山内委員 例えば一つ大使館を設置すると、恐らく大使は必要ですし、多分、公使がいて、電信官とか会計とか、最低でも七、八人は要るのかなと思うんですけれども、大体、一つの大使館をつくりました、一年間に何人、外務省の職員がそこに張りつくことになるんでしょうか。

茂木国務大臣 公館の大きさにもよると思うんですが、これから新しくつくっていく公館で想定される人数、多分、五人であったりとか六人、これがミニマムな形にはなってくるのではないかなと思います。

山内委員 多分ミニマムでも、五人か六人かな、もうちょっと要るんじゃないかなと思うんですけれども、たしか。ミニマムが五、六人なんですか。仮に五、六人だとしても、ざっくり言っても、人件費だけでも恐らくウン千万になるわけですよね。

 ですから、これまで、二〇一三年以来ずっと在外公館の数はふえてきました。外務省が予算要求で説明しているこの資料を見ますと、確かに昔はちょっと主要国よりも少ないと言われていたんですけれども、大分ふえてきました。二〇一三年に二百三だった在外公館が、二〇一八年には二百二十六までふえました。五年間で二十三カ所ふえていますから、結構なペースでふやしてきていると思います。

 ただ、いい感じでふえてきて、今見ると、イギリス、ドイツよりは多くなりましたし、日本より多い国も大分少なくなってまいりました。そろそろ打ちどめにしてもいいんじゃないかな、あるいは、もう一度、在外公館の人員や予算の配置、これでいいのかなと見直す時期に来ているのではないかなと思います。

 例えば、さっき申し上げましたように、たまたま出ていたバヌアツを例にしますと、バヌアツの人口二十九万三千人です。在留邦人八十二人ですね。これで大使館員が六人ふえたら、在留邦人の一割近くは大使館。しかも、多分、バヌアツの在留邦人八十二人といっても、青年海外協力隊とかが半分ぐらいじゃないかなと思います。恐らく半分はODA関係か大使館関係みたいな状況になると思います。それから、これも外務省のデータですけれども、バヌアツに進出している日本企業、三社ですね。そこにあえて新しい大使館を置くことが本当に戦略的にいいことなんだろうか。

 同じく外務省の資料を見ると、今、在留邦人が百三十五万人世界にいます。百三十五万人中八十二人しか在留邦人がいないバヌアツにあえて新しい大使館を設置する。兼轄で十分じゃないかなと思わざるを得ません。

 このバヌアツ、特にバヌアツに恨みはないんですね、私は、いとこがバヌアツに協力隊員として派遣されていたことがあったぐらいで、どっちかというと親近感のある国なんですが、ただ、人口二十九万、在留邦人八十二人、日本企業三社、そこに日本大使館を設置した、これを戦略的に正しい判断とは私はちょっと思えません。もっと必要なところに人と予算を振り向けるべきじゃないかなと思うんですが、これについて、印象、どうお考えでしょうか。大臣の御所見をお聞きします。

茂木国務大臣 個別の国に対する大使館の設置の可否、いろいろな議論はあるかと思いますが、確かに、人口の問題、それから、邦人が何人ぐらいいるか、進出企業がどれくらいか、一つの指標にはなってくるかと思うんですが、例えば、国際場裏におけるさまざまな日本の主張を支持してもらえる、また、その地域において一つの固まりをつくっていく、こういった意味からも、例えば兼館でありますと大使がいないんですね。実際に、今度、例えば、国にもよりますけれども、移動とかが大変でありまして、なかなか、そうなりますと、実際に向こうの要人と会うときに、大使でないと会えない、こういう状況も生まれてくるのは事実であります。

 私は、大使、これから、若い大使であったりとか中堅どころの大使というのがいてもいいと思うんですけれども、そういう活動的な人間がそういう地域で活躍することはあってもいい、このように考えております。

 今、外務省として、二百五十公館体制というところを目指しておりまして、まだ道半ばというところであります。これは十数年前から、私、森元総理始め、一緒に取り組んできた活動でありまして、当時、アフリカなんかを見ますと、中国、アメリカの大使館の数に対して日本の大使館の数は半分ぐらい、こういう状況の中で、本当にTICADをやるんだったら、やはりきちんと根をおろしてやるべきだ、こういったことで、それまで年一公館、せいぜい二公館しかできなかったのを、それを倍増する、三倍増するということで取組を進めてきているところでありまして、もちろん数だけの問題ではなくて、外交実施体制、情報収集、人員の充実、こういった質、量両面から、面的に、また戦略的にこの在外公館の問題に取り組んでいきたいと思っております。

山内委員 何年か前にアメリカのワシントンDCの大使館に行ったときに、例えば議会担当の人が何人いるか聞いたことがあります。そうしたら、恐らくワシントンの日本大使館は世界最大の日本大使館だと思いますが、そこで議会班と言われるのは四人しかいないと言っていました。一人は衆議院の職員の出向、一人は参議院の職員の出向、あと二人はプロパーかもしれませんが、ほんの四人でアメリカ議会を見ていると。アメリカみたいに大統領が決めても議会がうんと言わないといけない、そういう国ではもっと議会対策というのは積極的にやるべきだと思います。

 もし、バヌアツ、ちょっと特定の国を出し過ぎましたけれども、そういう在留邦人八十人、人口二十九万人の国に、在外公館、五人派遣する人がいたら、アメリカ大使館とか中国の大使館とかもっと大事なところの政治情勢とか情報分析とか、外務省にしかできない仕事があると思います。もっと、ある程度選択と集中というのも必要じゃないかなと申し上げて、次の質問に移りたいと思います。(茂木国務大臣「ちょっと一言言わせて」と呼ぶ)はい。

茂木国務大臣 今、ワシントンの例が出たわけでありますけれども、確かに、専門の体制ということでいいますと、委員おっしゃるとおりの部分はあるかと思うんですけれども、例えば向こうのUSセネット、上院の議員と会うときは、大使でないとほとんどアポはとれません。下院議員であっても、公使であったり、相当のランクでないとなかなかアポをとれないということで、ワシントンの大使館としては、ある意味総がかりで議会対策というのは進める、大使を中心にということでありまして、なかなか、若い職員で、いわゆる議会対応はこの四人でやっていますというのではなくて、全体として、特にかなり上のレベルでこういった議会対策にも取り組んでいる、これは理解していただければと思います。

山内委員 上院議員に会うのは大使だと思いますが、恐らく、上院議員のスタッフに会ってアポをとって売り込むのは、多分、大使館の職員の人たちだと思います。

 アメリカ議会というのはスタッフが非常に大事だと思いますし、恐らく、御承知のとおり、一人の上院議員のオフィスに二十人ぐらい何かスタッフがいるみたいな世界ですから、そういうところはやはり若い職員も含めてマンパワーも必要だと思いますし、あるいは、議事録をちゃんと精査するとか議会でどんな議論をやっている、これはやはりマンパワーが必要だと思います。両方必要だと思います。大使を二人にするわけにいきませんから、そこは職員を充実させるといったことが必要だと思います。

 ちょっと時間がなくなってきたので、ぜひ外務省に予算をもっと振り向けていただきたい分野として、国際交流基金について、もう時間がないので一方的に言う形になるかもしれませんが、質問させていただきます。

 とりあえず、せっかく参考人に来ていただいたので、交流基金の年間予算、そして定員、そして海外の拠点についてお尋ねします。

志野政府参考人 国際交流基金の令和元年度予算は二百三億三千万円、人員につきましては、令和元年十月一日現在、国内、海外合わせて役職員二百七十四名でございます。

山内委員 これは大臣も御承知かもしれませんが、ぜひほかの国と比べてほしいのは、在外公館の数だけではなくて、文化交流基金、機関の予算と人員です。

 例えばブリティッシュカウンシル、イギリス政府の機関、これは年間予算が大体日本円で千八百億ぐらいあります。交流基金の九倍ぐらいあるわけですね。スタッフの数も、国内、海外合わすと、英語教師とかも入れると一万人を超えているそうです。職員だけでも八千三百何人いるそうですね。

 それから、日本よりも経済規模が小さいという意味ではドイツもそうですけれども、ドイツのゲーテ・インスティトゥート、これは年間予算が大体五百億ぐらいですね。人の数も三千六百人職員がいるといいます。

 拠点の数が日本よりも、両国、断然多いです。ブリティッシュカウンシルは、百七カ国百七十二都市。日本でいうと、飯田橋に結構立派な建物があります。ゲーテ・インスティトゥート、九十八カ国百五十七都市。赤坂にあります。両方行ったことがありますけれども、特にブリティッシュカウンシルは非常に充実した施設を持っています。

 こういうものこそ、今、ソフトパワー、大臣の御出身のハーバードのジョセフ・ナイさんがおっしゃっているソフトパワーの源泉だと思うんですね。これがわずか二百三億円、人員が二百七十四人、二十四カ国、これは余りにも寂しいと思います。

 例えば、中国は北京にしかない。やはり上海にも置いた方がいいと思います。香港にもあった方がいいと思います。アメリカにも二カ所しかないんですけれども、いずれにしても、世界二十四カ国二十五拠点、余りにも少ないと思いますね。在外公館が少ないというよりは、むしろ、こっちの方をもっとふやしていただきたいなという思いもあります。

 もう時間が来ましたので、大臣から一言コメントを頂戴して、終わりたいと思います。

茂木国務大臣 パブリックディプロマシーは極めて重要だと思っておりまして、確かに、ブリティッシュカウンシルであったりとかゲーテ・インスティトゥートと比べて、規模等々で、国際交流基金、十分な活動ができていない部分もあると思っておりまして、いかにそこの中で人員、予算を確保できるか、最大限の努力をしていきたいと思います。

山内委員 終わります。ありがとうございました。

松本委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時二十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岡田克也君。

岡田委員 岡田克也です。

 きょうは、茂木大臣に三つの問題について基本的なことを質疑したいと思っております。一つは北方領土問題、二つ目は北朝鮮問題、三つ目が日米貿易協定ということであります。

 まず、北方領土問題について、二〇一六年十二月の長門会談で共同経済活動を行うということが確認されて、そのための特別な制度を検討することになりました。特別な制度というのは、日ロ双方の立場を害さない法的枠組みということであります。このことの現在の検討状況をお聞きしたいと思います。

 私がお聞きしているのは法的枠組みの検討状況ということであって、例えば、観光パイロットツアーが計画されているとか、個々のプロジェクトがそれぞれ議論されているとか、そういう中身を聞いているのではなくて、法的枠組みについてどういう検討状況か、お答えいただきたいと思います。

茂木国務大臣 御指摘の日ロの共同経済活動、これは、日ロがともに北方四島の未来図を描き、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくという新しいアプローチでありまして、この共同経済活動を進めるに当たって、日ロ双方の法的な立場を害さない形でプロジェクトを実施していく。そのための法的な課題につきましては、次官級、局長級、課長級などさまざまなレベルにおきまして、今時間を割いて議論を進めている途中であります。

岡田委員 現在の検討状況を、その一端でもいいからお話しいただきたいというふうに思います。

 大臣も今おっしゃったように、この共同経済活動、これを進めることによって相互の信頼関係を増し、やがては領土問題の決着につなげる、そういう新しいアプローチとしてこれをスタートしたはずですが、その前提となる共同経済活動の法的枠組みが、もう三年近くたっても、長門会談というのは二〇一六年十二月ですから、三年近くたっても全く説明もされないということでは、これはとても納得できないわけで、現在どういう状況で、何が問題になってこれだけ時間がかかっているのか、御説明いただきたいと思います。

茂木国務大臣 これは、日ロ間の今後の領土交渉、そして平和条約を締結していく、こういった中での協議でありまして、それに絡む問題でありまして、岡田委員も外務大臣を経験して、そういった日ロ間の交渉の機微につきまして答弁をさせていただくことは控えさせていただきたいというのはおわかりいただけるかと思うんですが。

 まず、パイロットプロジェクト、今実際に進んでおりまして、これにつきましては、四島交流と同じ方式、手続を用いて実施をしているわけであります。

 それ以外に、共同経済活動のためには、双方で人の移動、こういったものが発生いたしますので、その移動の枠組みについては次官級協議、それから、人の移動に関する局長級作業部会において協議を行っている。

 もちろん、人の移動だけではなくてさまざまな問題が出てまいりますので、それを含めて、先ほど申し上げたような次官級、局長級、課長級におきまして協議を進めているという段階であります。

岡田委員 今の大臣の答弁で、ちょっと私が理解できなかったのは、この共同経済活動とそれから領土交渉の関係ですが、これが密接に関係するというふうにお答えになったように聞こえたんですが、私は、共同経済活動は共同経済活動として行っていく、その中で信頼感を増して領土交渉に本格的に入っていく、領土交渉を本格化する、そういうふうに理解していたんですが、密接に絡み合うわけですか。

茂木国務大臣 冒頭申し上げたように、共同経済活動、これは、日ロがともに北方四島の未来図を描いて、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくというアプローチの一環であります。その実現に向けた取組を通じて北方領土問題の解決、そして平和条約締結につなげていくとの考え方のもとで、この実施を考えているところであります。

 もちろん、共同経済活動、これを実施することによって日ロ間の信頼関係を醸成していく、さらには、それぞれの国民の間の交流も深め信頼関係を醸成していく、そういった環境の中、含めて、領土問題の解決、さらには平和交渉の締結、こういったことにつなげていきたいと考えております。

岡田委員 これは、三年たっていまだに何も出てこないというのは、そもそも非常に難しい問題をいとも簡単にできるような錯覚に陥って合意したというふうにしか私には思えないんですね。

 共同経済活動を行っていくということになれば、例えば法律関係、民法にしても刑法にしても、どちらの法律を適用するのか。日本の立場からすればロシアの法律を適用するわけにはいかない、当然そうなります。ロシアも同じでしょう。そういう中で双方が納得し得るような、そういう法律の適用について、私はちょっとアイデアが思い浮かばないんですね。

 基本的なことでいいですから、そういうことについてどういう考え方で整理しようとしているのか、話していただきたいと思います。

茂木国務大臣 領土問題が解決をしていない、ですから、平和条約が締結をされていない段階で行う共同経済活動ということになるわけでありますから、当然、双方の法的な立場を害さない形で、このプロジェクトというものは、民法上も刑法上も、そしてまた人の行き来、移動といったものでも進めていかなきゃならない、このように考えております。

岡田委員 そこまでは従来から言われていることで、具体的にどういうふうにして、無法状態というわけにいかないわけですから、どっちかの法律を適用するしかないと思うんですね。しかし、双方が相手方の法律を適用するわけにはいかないと。

 これはどうやって、例えば、これで商業活動、共同経済活動を行っているときに損害賠償で訴えられるとか、あるいは、たまたま刑事事件に巻き込まれるとか、そういうことはあり得るわけですね。しかし、日本としては、ロシアの法律で、ロシアの裁判所で裁かれるということはそれは認めがたい、当然そうなると思います。

 では、どういうふうにしてこれを解決しようとしているんですか。しかも、三年間もうたっているんですよ。

茂木国務大臣 五つの共同経済活動、それぞれに活動の内容も異なっております。そして、進めるに当たりましては、あくまでこれから進めるわけですから、どういう事態が起こってくるかという中で、岡田議員の御指摘のような事態が起こらない方がいいんですが、起こることも想定しながらやっていかなきゃならないということでありまして、当然、日本としてはロシアの法律下でということにはならないし、ロシアとしても日本の法律でということにならない中で、それぞれの事案ごとといいますかプロジェクトごとに、どういう枠組みが適切であるか、こういった形であったら両方の法的な立場を害さない、こういったことについて、シミュレーションも含めさまざまな協議を行っているということであります。

岡田委員 大臣もお認めになったように、それぞれ相手国の法律の適用を認めるわけにいかないわけですから、というと一体どうなるのかというのは全く想像つかないんですね。もう少し具体的に説明していただけませんか。

茂木国務大臣 でき得れば、それぞれの国が自分の法律で、その方が経済活動をするにしても、自分の国の企業であったりとかそういったものの権益であったりとか権利、こういったものが守れるわけでありますが、私が申し上げたのは、それぞれの法的な立場を害さない範囲でと。そうなりますと、同じプロジェクトを進める中でも、こういう問題についてはこういう処理の仕方があるね、そういったことを一つ一つ積み重ねながら、実際に共同プロジェクトが実施できるような状況をつくっていきたいと思っております。

岡田委員 今の御説明だと、例えば北方領土は日本の領土である、これは日本国の立場ですね。であるにもかかわらず、日本の刑法や商法、民法が適用されないということを、そういう場合もあり得るということですか。

茂木国務大臣 そのように申し上げているわけではなくて、北方四島に対する我が国の法的な立場は変わっておりません。

岡田委員 法的立場を害さないというのは、最初に日ロ双方の立場を害さない法的枠組みということで定義づけられて、二〇一六年十二月の長門会談で決まって、そこから三年間交渉してきて、同じことを繰り返しておられるわけですね。だから、全く事態は進んでいないのではないか。それぞれのプロジェクトが動いているような、先ほど言いましたように、観光パイロットツアーをやりますよとか、そういったことはやっている状況にはなっているが、肝心かなめのところは全然詰まっていないんじゃないか。これでは実際に民間企業は手を挙げませんよ。挙げられませんよね。どういう法律関係になるのか。

 したがって、これは、本来不可能なことを余り十分な検討をしないままにぶち上げてしまったんじゃないか、長門でというふうに私には思えてならないんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 七十年以上解決されていない問題を解決する、これは決して簡単なことだとは考えておりません。したがいまして、それを突破していくためには新しいアプローチが必要であるということで、共同経済活動をスタートすることになった。

 日ロがともに北方四島の未来図を描いて、その中から双方が受入れ可能な解決策を見出していくということでありまして、確かに、この共同経済活動を進めるに当たって、お互いの法的な立場を害さない、そういう取組というのは困難なものである、そんなに簡単にクリアできるものではない、そのように考えておりますが、同時に、領土問題の解決、そして平和条約の締結、ここに向けてはやはりこの道は避けては通れない。こういったことができないのに、領土問題を解決して平和条約を締結することもできないというのも事実だと思います。

岡田委員 いや、領土問題を解決したら、つまり国境が明確に引かれれば、経済活動は、その引かれた国境に基づいて、どの国の法律が適用されるか明らかになるわけですから、それはできるわけですよ。

 これは、どこかの国で、同じような国境問題を抱えた問題で、今回と同じような事例というのはあるんですか。この共同経済活動を新しいアプローチということで打ち出された以上、何らかの成算があってやっておられるはずだと思うんですが、先例みたいなものに基づいてやっているんでしょうか。

茂木国務大臣 岡田委員おっしゃるように、この領土問題が解決すれば、お互いの法的な立場を害さないということになるのは間違いないわけであります。ただ、それができていないから、どうアプローチしていくかということで、新しいアプローチを考えている。

 当然、こういった共同経済活動を行うに当たりましては、これまで他国の間でさまざま行われてきた交渉であったりとか活動、こういったものも参考にしながら、しかし、全く状況は同じわけではありませんから、そこの中で、この北方四島で行う経済活動としてどういった対応が必要であるか、こういったことを考えております。

岡田委員 それでは、その共同経済活動的なものを領土交渉に先立って打ち出した、どの国とどの国の領土交渉でそういうことがあったか、お教えください。

茂木国務大臣 きょう、概要でいただいておりまして、それにつきましては、詳細につきましてまた改めて、御要請がありましたら提出をさせていただきます。

岡田委員 では、それは後ほど、事務方でも結構ですから説明をお願いしたい、説明に来ていただきたいというふうに思います。この委員会にも提出していただきたいと思います。

 それではもう一つ。ラブロフ外相と外相会談を九月二十五日に行われて、その中で平和条約交渉を含む今後の協議の進め方について議論したという報告があるわけですが、私の知る限り、ラブロフ外相の基本認識、これは私が外務大臣のときも同じだったんですけれども、四島は、第二次世界大戦の結果、ロシアのものとなった、そのことをまず前提とするというのはラブロフ外相の一貫した立場ではないかと思うんですが、茂木大臣、同じような認識ですか。

茂木国務大臣 ラブロフ外務大臣とは、先日、国連総会の際に初めて外相会談を行いまして、平和条約交渉の締結を含む今後の進め方について話合いをさせていただいた。そして、例えば、来月になりますとG20の名古屋のサミットがございます。そこにはラブロフ大臣、お越しになられる。また、ラブロフ大臣の方からも、できるだけ早くモスクワを訪問してほしい、こういうお招きがありましたので、これは諸般の情勢が許せばということでありますが、できれば年内にも訪問したい、そういうスケジュールであったりとか、さまざまな話合いをさせていただいた。

 当然、お互いの立場、今一致しているわけではありませんが、九月のウラジオストクにおきましても、両首脳間で、交渉責任者であります外相に対して、双方が受け入れられる解決策、これを見出すための共同作業を進めるように指示をする、こういう指示がおりていますので、その指示に沿って今後の交渉を進めていきたいと思っております。

岡田委員 ラブロフ外相が、四島は第二次世界大戦の結果、ロシアのものになった、そういう認識である限りは、これは交渉のやりようがないと思うんですね。その認識を変えられる、そういう見通しが具体的にあるのか。もし変えられないとしたら、平和条約交渉を含む今後の協議の進め方について協議を行ったと日ロ外相会談の結果として発表されていますが、私は交渉のしようがないのではないかというふうに思いますが、いかがですか。

茂木国務大臣 まず、日本政府としてでありますが、日本政府としては、一九五六年の共同宣言、これを基礎として平和条約交渉を加速させる、こういった両首脳の合意を踏まえて、領土問題を解決して平和条約を締結する、こういった基本方針のもと、引き続き粘り強く交渉をしていきたいと思っております。

 先ほども申し上げたように、現時点において、お互いの立場が完全に一致しているとは思っておりません。交渉事というのはそういうものだと私も思っております。

 また、この委員会におきましても、この後、いずれかの段階で、日米の貿易協定等々についても御議論いただくことになると思います。TPP11のときもそうでした。日米の貿易交渉のときも、当初から、国と国との間、国益も違うわけでありますから、完全に立場が一致するわけではありません。そこの中でどうやってお互いの立場を埋めていくか、これがまさに外交交渉だ、こういった思いで臨んでいきたいと思っております。

岡田委員 私が申し上げているのは、完全に一致しているわけではありませんじゃなくて、完全に平行線じゃないか、そういう中でどういうふうにして交渉していくのかということを問うているわけです。

 今、大臣は、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎とするという日ロ首脳間での確認、共通認識を言われました。私はこれも極めて不思議なことだと思っておりまして、従来、東京宣言とか、海部内閣から細川内閣、それからそれ以降も含めて、日ロの首脳間では、北方四島に領土問題が存在するということは確認されてきた。

 しかし、安倍総理は、プーチン大統領との間では、そういった四島の話ではなくて、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎とする、それだけを、従来は東京宣言なども基礎とするということを明確に言ってきたにもかかわらず、一九五六年の日ソ共同宣言のみを取り上げて、これを基礎とするというふうに言われた。

 これは、みずから交渉の対象を、国後、択捉は交渉の対象でないということを認めたに等しいと私は思うんですが、大臣の認識はいかがですか。

茂木国務大臣 今の点につきましては、岡田委員と若干認識が違っております。

 正式に申し上げますと、日ロ間では、一九九三年の東京宣言、それから二〇〇一年のイルクーツク声明を始め、これまで多くの諸文書や諸合意が作成されてきておりまして、これら全ての諸文書や諸合意を踏まえた交渉を行ってきているわけであります。

 そこの中でも、一九五六年の共同宣言、これは、両国の立法府が承認をし、そして両国が批准をした唯一の文書であります。そして、現在もこれは御案内のとおり有効であります。

 そして、一九五六年の共同宣言の第九項、ごらんをいただきますと、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されること、これを規定しているわけでありまして、じゃ、この九項の平和条約交渉が継続されている、この部分でありますけれども、従来から説明しているとおり、ここに言う平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、これが政府の一貫した立場でありまして、したがって、一九五六年の共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させるとの合意、これは領土問題を解決して平和条約交渉を締結するという従来の我が国の方針と何ら矛盾するものではない、このように考えております。

岡田委員 私は詭弁だと思いますね。

 百歩譲って我が国の基本方針はそうなんだということを言ったとしても、私が聞いているのは、我が国の基本方針を聞いているんじゃないんです。日ロ間での交渉の対象はどうなのかということを聞いているわけです。交渉の対象として、日ソ共同宣言を基礎とするということだけを言って、従来いろいろ言ってきた東京宣言その他のその文言を落としてしまったということは、やはり歯舞、色丹だけが対象であって、国後、択捉は対象から外しているということを日ロの首脳間で合意したということにほかならないんじゃないですかということを言っているわけです。

茂木国務大臣 今も申し上げたんですけれども、この九項でありますが、平和条約交渉が継続されること及び平和条約締結後に歯舞群島、色丹島が日本に引き渡されること、これを規定しております。

 そして、ここで言う平和条約交渉、この対象は四島の帰属の問題である、こういう理解でありますから、何ら矛盾はしていないと考えております。

岡田委員 平和条約を締結するときには、もう国境線が引かれているわけですね。というか、国境線を引くことをもって平和条約であるということは、私と安倍総理との間の予算委員会の質疑でも、安倍総理みずからが明らかに言われました。

 ですから、平和条約を結びます、その後、歯舞、色丹を引き渡しますということは、国後、択捉はその平和条約に入っていないということを認めたようなものじゃないですか。

茂木国務大臣 必ずしも、先ほどの九項の解釈は違っておりますが、北方四島の帰属の問題を解決して、国境を画定することなくして、平和条約を締結することはない、そこについては岡田委員と考えが一緒だと思っております。

 同時に、では国境を画定するだけかといいますと、当然、どうなるかわかりませんけれども、補償の問題であったりとか、さまざまな問題がどうなるか、一般的な場合、平和条約締結という場合は、そういった問題も含めての解決ということになってまいりますが、国境の画定、これは極めて重要な要素だと思っております。

岡田委員 補償の問題というのは基本的に日ソ共同宣言の中でもう書いてあるわけですから、基本的にはそこで解決しているというふうに私は思っているんですね。

 したがって、やはり国境の画定ということが残された課題である。日ソ共同宣言では歯舞、色丹についての引渡しのみ書いてあって、それ以外のことは書いていないということは、もう交渉の対象は歯舞、色丹、その帰属の問題に限定されていると見るのが私は普通だと思いますよ。だからこそ、外務省は従来、東京宣言始め、四島の帰属が残っているということを、何度も何度も努力しながら粘り強く交渉して残してきた。それを安倍さんは切ってしまった。

 私は、切ることによって本当に歯舞、色丹だけでも返ってくるということを確信を持ってやられたのなら、それは一つの考え方、私は反対ですけれどもね。面積でいうと七%しかない、そこで決着をつけることは反対ですが、だけれども、そこまで覚悟して、日ソ共同宣言を基礎とするというふうに安倍さんが覚悟を持って言われたのなら、それはリーダーとして一つの判断だというふうには思います。

 しかし、その歯舞、色丹ですら今全く動いていない状態ということだと、何のために大事なカードを切ってしまったのか。これは安倍さんだけじゃなくて、その次の総理もその後もずっと拘束されますよ。せっかくとった東京宣言その他の表現がないまま、それが事実として、交渉の前提はやはり日ソ共同宣言だということは残りますよ。だから、私はこれは外交の大失態だと思うんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、この一九五六年の共同宣言、ここでの平和条約交渉の対象は四島の帰属の問題である、このように理解しておりますので、その意味では、後退した、こういう御指摘については、若干私は意見が違うところであります。

 一九九三年の東京宣言、二〇〇一年のイルクーツク声明、確かに出されて、一つの成果文書である、それもベースにしながら交渉を進めてきたわけですが、現実にそこで国境線は引かれていないわけです。そこの中で、どうやってこの七十年以上一ミリも動いてこなかった問題を解決するか。さまざまなアプローチというのは必要でありまして、共同経済活動によります新しいアプローチもそうでありますし、お互いにできるだけ認識をそろえながら一歩ずつ歩み寄っていく、こういうアプローチが必要になってくると思っております。

岡田委員 一九五六年、日ソ共同宣言で、四島の帰属の問題だというのは、日本政府はそう思っていたかもしれませんが、ロシア、当時のソ連政府は全くそんなことは考えてもいなかったわけですから、それは日本の考え方としておっしゃっているだけで、別に共通認識には立っていないわけですね。

 いろいろ、動かないものを動かすためにというふうに言われましたが、先ほど最初に申し上げたように、共同経済活動の法的枠組みも具体的な検討が進んでいない。そして、二島に、日ソ共同宣言に戻るという一つの決断を下したのに、歯舞、色丹ですら全く先が見えない。

 私は、外交は結果責任だと思いますよ。こういう状況になっていることについて、私は当然、安倍政権として責任をしっかりと負うべきだと思いますが、いかがですか。

茂木国務大臣 まさに今、交渉の途中であります。そして、四島におけます共同経済活動についても、双方の法的な立場を害さない取組というのはどうなのか、これにつきましても、先ほど申し上げたように、さまざまなレベルで議論を進めている段階であります。

 成果を出す、こういったつもりで、しっかりと粘り強くこれからも交渉に臨んでまいりたいと考えております。

岡田委員 中身がないから、交渉の回数で何とか言い逃れをしているというふうに私には見えて仕方ありません。

 では、次の北朝鮮問題について簡単に聞きたいと思いますが、十月五日の米朝実務者協議は、北朝鮮側に言わせると決裂ということになりました。米国側の認識は若干異なるようです。

 この実務者協議あるいは米朝協議の行く末について、米国政府からどういう説明を受けておられますか。

茂木国務大臣 十月の四日から五日の米朝の実務者協議に関しましては、米国ともさまざまなやりとりを行ってきております。きのうの晩もポンペオ国務長官とは電話会談を行わせていただきましたが、いずれにしても、重要なことは、昨年六月の米朝首脳共同声明のとおり、朝鮮半島の完全な非核化に向けた北朝鮮のコミットメントを含む両首脳の合意が完全かつ迅速に履行されることだと考えております。

 その上で申し上げますと、米国との間では、現地時間でありますが十月の八日、ワシントンDCにおいて行われました日米韓六者会合の首席代表者会合や、その際の滝崎アジア大洋州局長と米国のビーガン米国北朝鮮担当特別代表との個別の意見交換等を通じて、先般の米朝実務者協議について米側から詳細な説明を受けたところであります。

 また、昨日も電話会談、日米外相で行ったところでありまして、北朝鮮をめぐる最新の情勢について意見交換を行って、今後の方針のすり合わせをするとともに、引き続き緊密に連携をしていく、こういったことを確認したところであります。

 朝鮮半島の非核化に向けて、米朝プロセス、しっかりと日本としても後押しをしていきたいと思っております。

岡田委員 日米間で緊密な情報交換をしているという御説明ですが、その中で、短距離ミサイルあるいは日本に到達可能なミサイルの扱いというのはどうなっているんでしょうか。

 トランプ大統領はたびたび、それは交渉の対象ではないということを明言しておられます。しかし、日本にとってはそういう交渉であっては困るわけですから、当然そのことについて米側にいろいろとお話をされているはずですが、交渉の対象に短距離ミサイルも含まれるということについて、米側は明確に回答しているんでしょうか。

茂木国務大臣 あらゆる射程の弾道ミサイルの発射が安保理決議違反であることは明確でありまして、この点は米国とも累次の機会に確認をしてきているところであります。きのうも確認をしました。日米両国として、引き続き安保理決議の完全な履行を進めていきたいと思っております。

 同時に、我が国としても、弾道ミサイルの発射を始めとする北朝鮮の軍事動向について、引き続き、米国等と緊密に連携しながら、必要な情報の収集、分析に全力を挙げてまいります。

岡田委員 安保理決議違反であることは、これは間違いのない事実ですが、私が聞いているのは、米朝交渉の対象に短距離ミサイルがなっているのか。今は、トランプ大統領は、それはなっていないと何回も明言されているわけです。では、そのことについて、日本政府として、それでは困る、きちんと対象にすべきだということを言っているんですか。

 別に、安保理決議の話じゃないんですよ。安保理決議は国連の話です、安保理の話ですから。米朝協議というのはトランプ大統領と金正恩委員長がやっているわけですから。そこの議論の対象になっていないと思われるから、きちんと対象にすべく日本政府として努力していますか、あるいは今対象となっているんですかということを聞いているわけです。

茂木国務大臣 日米の首脳会談におきましても、あらゆる弾道の、短距離ミサイルの発射、これは安保理決議違反でありますし、これは単に日本だけの問題ではなくて、日米双方にとっても大変遺憾な問題である、こういった点につきましては米側とも意見を共有しているところであります。

 トランプ大統領、非核化に向けた米朝プロセス、まさに進めているところでありまして、大統領の発言、これは米朝首脳同士の信頼関係にかかわるやりとりの中で行われた発言と理解しております。その上で、トランプ大統領が金正恩委員長との間で相互不信の殻を破り、非核化の先の明るい未来を共有して、北朝鮮の行動を促すという新しいアプローチをとってきている、このことを評価しているところであります。

 いずれにしても、弾道ミサイルの発射、これはあらゆる射程のものが安保理決議の違反であることは明確でありますから、最終的には安保理決議の完全な履行、こういったことを北朝鮮が行うような協議を進めてもらいたいと思っております。

岡田委員 進めてもらいたいという希望はわかりますが、現実に交渉の対象になっていないとすると、米朝協議、私は簡単なことでは合意しないと思いますが、合意されたときに短距離ミサイルがそこから抜け落ちているということになれば、それは極めて日本にとって国益を害することになるわけです。

 だから、そうならないように、きちんと米側に、例えば国務長官との間でも、両国政府の間でも確認をして、そして、トランプ大統領の今まで対外的に明らかにしている短距離ミサイルは対象外だという発言を訂正させなければ、私は非常に国益を損なうことになってしまっていると思うんですが、もう一回明確に答えていただけますか。

茂木国務大臣 ポンペオ国務長官との間では、あらゆる射程の弾道ミサイルの発射、これが安保理決議違反である、そういったことを踏まえた交渉をお願いしたいという話をしております。

 その上で、トランプ大統領、まさに大統領の発言、これは米朝首脳同士の信頼関係にかかわるやりとりの中で行われた発言、このように理解をいたしております。

岡田委員 何を言っているかさっぱりわからないんですが、私の能力では。ここは本当に日本外交は試されているというふうに思います。

 しかし、そうは言ってもしばらくは、北朝鮮の問題は米朝間での首脳会談が行われていて、これはトランプ大統領にとっても極めて重要なテーマですから、なかなか日本独自の外交というのは発揮しにくい面があるというふうには思いますが、拉致問題というのが日本に当然あります。

 今回、国家安全保障局の責任者に北村さんがなったというのは、私は、やはり拉致問題の解決を念頭に置いての人事だというふうに思います。ただ、外交経験のない北村さんですから、やはり外務省との連携というのは非常に大事になるというふうに思うわけですが、NSS、国家安全保障局と外務省の関係、これはアメリカでも安全保障担当補佐官と国務省の関係というのは時として非常に微妙な関係になったりするんですが、茂木大臣のもとで、新しい局長との関係あるいは総理も含めた三者の関係というのはきちんと築かれているでしょうか。

茂木国務大臣 そのように考えておりますし、更にそういった連携を強化していかなけりゃいけないと思っております。

 北朝鮮との間で、核、ミサイル、そして日本にとって最も重要である拉致問題、こういった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化につなげていく、こういう基本的な考え方のもとで、これはNSCともしっかり連携をしながら外務省としても取り組んでいきたいと思っております。

岡田委員 国家安全保障局と外務省の関係というのは、一般論としてもこれはなかなか微妙だと思うんですが、特に北朝鮮に関して言うと、より難しい問題が私はあると思うんです。

 かつての小泉総理時代の田中審議官、そしてミスターXとの交渉、批判する方もいる。安倍さんなんかは非常に批判しておられましたけれども。やはり、個人間の交渉という色彩が非常に強くて、組織を挙げてということにはなかなかなりにくい。保秘の関係もあって、そういうことになると、カウンターパートと北村さんがほぼ一対一で話し合って話を煮詰めていく、そういう場面があるのかもしれません。そこまでの関係ができているのかどうか、私はわかりませんけれども。

 そういうことになったときに、総理と局長が相談ずくで進めていくとしても、そこにやはり外交の視点というのが入らないといけない。そうすると、外務大臣は少なくともきちっとそこに組み込まれていないといけないわけですが、そういうお気持ちはおありですか。

茂木国務大臣 恐らく、日朝の平壌宣言をつくる前の段階、田中アジア大洋州局長、この時代というのは、まだ官邸の方にNSCがない時代でありました。そういう時代、田中局長の行動についてどう評価するか、これは歴史的な評価もあるかと思いますけれども、その上で、今実際にNSCというものができて、新しい体制ができている。

 当然、私と総理の間、それから私と北村局長の間、三者の間の連携というのは極めて重要だ、北朝鮮の問題、それ以外の問題を解決する上でも極めて重要だ、こういう思いで関係を強化していきたいと思っています。

岡田委員 私は、北朝鮮の問題は、殊さらそういった三者の関係がきちんと連携がとれていないと、さっきの北方領土問題じゃないけれども、間違った方向に行ってしまう、そういうリスクも非常にあるんじゃないかというふうに思っております。秘密交渉という色彩が強いだけに、そういうリスクが常にある。

 大臣、一つお願いしておきたいんですが、ぜひ、この局長の北朝鮮のカウンターパートとの交渉、これは当然通訳が入るわけですから記録はある、それは公文書として残していただきたい。もちろん、それが公開されるのは随分後になるということはわかりますが、記録としてはきちんと残してもらいたいと思いますが、いかがですか。

茂木国務大臣 済みません。NSCの記録の保管の仕方、それは当然法的な手続に沿ってやられるものだと思いますが、ちょっと私からコメントするのは控えさせていただきます。

岡田委員 しかし、そこでどういう交渉が行われたかというのは、将来の日本と北朝鮮の関係を規定しますよ。向こうに記録があってこっちが何もないというんじゃ、言われっ放しになるじゃないですか。だから、きちんと記録は残しておく責任が日本政府としてあると思いますよ。安全保障局の話だから外務省とは違うということではなくて、それは政府としてきちっと記録を残されるべきじゃないかというふうに思います。

 かつて、安倍総理が、小泉政権時代の田中さんを評して、記録も残していないといって批判をしたことを私は覚えております。総理もみずからそう言われた以上、記録はきちんと残していただきたいと思いますが、そういったことで働きかけをしていただくとお約束いただけませんか。

茂木国務大臣 さまざまな交渉につきまして、その結果というのは、何らかの合意であったりとか何らかの協定、何らかの条約というものに全て反映をされるべきだと思っております。そして、その過程で行われました交渉の経過につきましては、それぞれ国内の手続、公文書の管理のやり方に従ってやっていくということで、外務省については私コメントできますが、これは外務省のことではないのでコメントしていないという話を申し上げているだけであります。

岡田委員 将来の外交にもかかわる話、そもそも国家安全保障局、あるいは局長がやっているとしても、外交の一部ですから、そんな、突然、役所が違うからコメントできないなどということを言うんじゃなくて、これは政府としてきちっと記録を残すということを、場合によっては総理とも御相談の上で確認していただきたい。

 普通は、外交交渉というのは記録を残しますよ。結果だけじゃないですよ、もちろん。だから、そういう交渉の経緯をきちっと記録に残してもらいたい。公開するかどうかというのは、それは将来の話ということを、もう一度御答弁いただけますか。

茂木国務大臣 委員の御意向については十分理解いたしました。

岡田委員 次に、日米貿易協定について、少し入り口だけやりたいと思いますが、鉄鋼製品、アルミ製品への通商拡大法二百三十二条の適用について、この日米貿易協定交渉の中でどのような議論がなされたんでしょうか。交渉当事者ですから、大臣は。簡単に御説明いただきたいと思います。

茂木国務大臣 日米貿易交渉は幅広い議論を行っているわけでありますが、この自動車の問題もそうでありますし、鉄鋼、アルミの問題もそうでありますが、広範な貿易制限措置、これは、世界市場を混乱させ、WTOルールに基づく多角的な貿易体制にも悪影響を及ぼしかねないものであり、極めて遺憾である、日本の立場についてはこうであるということを申し上げ、そして具体的には、今回でいいますと九月二十五日の日米共同声明のパラグラフの四、去年の九月二十六日の共同声明でいいますとパラグラフ七に、「他の関税関連問題の早期解決に努める。」こういった文章を入れさせていただいております。

岡田委員 通商拡大法二百三十二条、同盟国である日本からの輸入が米国の国家安全保障を損なうおそれがある、そういう論理は全く認められないということは主張されたわけですね。

茂木国務大臣 主張いたしております。

 そして、その上で、日本からの鉄鋼やアルミニウムの輸入が米国の安全保障に悪影響を与えることはなく、むしろ高品質な日本製品は米国の産業や雇用にも多大に貢献している、こういう旨はしっかりとライトハイザー通商代表にお話をさせていただいております。

岡田委員 そうだとすると、どうして鉄鋼製品二五%、アルミ製品一〇%という追加関税を残してしまったんですか。日米貿易協定交渉の中で、こういう問題を解決した上で協定を締結すべきだったんじゃないんですか。

茂木国務大臣 日本の鉄鋼製品、これは委員も御案内のとおり、高品質で代替困難なものが多いこともありまして、製品別の除外の仕組みを通じて、追加関税について、輸出国の中、つまり、日本であったりとか、ほかの、韓国であったりとか、そういう輸出国の中で最も多くの適用除外を獲得しているところであります。

 今後とも、日本政府として、こういった適用除外の獲得状況であったりとか業界の要望等を踏まえて、この問題は、若干、通商交渉そのものとは違ってくる。つまり、関税の、通常の関税引上げの交渉で扱う性格とは若干違ってきますが、今後も日本政府として米国政府にはしっかりと働きかけを行っていきたいと思います。

岡田委員 私が聞いているのは、通商拡大法二百三十二条に日本からの輸入というのを適用するのは、これはおかしいという日本の主張、先ほど、大臣、お認めになりました。そうであれば、そこをしっかり解決した上で協定を結ぶべきだったんじゃないんですか、貿易協定を。

 今や、この日米貿易協定と、そして、鉄鋼製品、アルミ製品に対する通商拡大法に基づく追加関税というものが並立している状態を認めてしまった。だから、この二つは矛盾しないんだということを制度的に担保してしまったんじゃないですか。いかがですか。

茂木国務大臣 いや、そういうことはありません。通常の関税がどうなるか、これにつきまして基本的には交渉をさせていただいて、今回の合意のような結果になったと考えております。

 その上で、この鉄鋼、アルミの追加関税の問題は通常の関税の引下げ交渉とは異なる性格のものでありますが、先ほど申し上げたように、かなりの部分で、日本の企業、適用除外の獲得をしております。さらには、業界の要望等々につきましてもいろいろな話を聞いております。

 そういったものも踏まえて、米国政府とは今後も話合いを続けていきたいと思っています。

岡田委員 実害が少ないからいいという話じゃなくて、基本的考え方としてどうなのかということを私は問うているわけですね。

 ですから、この貿易協定と通商拡大法の二百三十二条が併存しているという状況を認めたということは、将来的に自動車あるいは自動車部品についても通商拡大法二百三十二条が適用される余地を私は大きく残してしまったんだということになるということを申し上げているわけですが、いかがですか。

茂木国務大臣 自動車それから自動車部品につきましてはまだこの適用が行われていないというわけでありまして、この部分につきましては、昨年の日米共同声明におきましてもパラの七で、今回もまた改めてこの扱いにつきまして、誠実な履行がなされている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動はとらない、その旨が明記をされまして、日本の自動車・自動車部品に対する追加関税は課されない、こういう趣旨であることは、首脳会談の中でも、二対二、つまりトランプ大統領と安倍総理、私とポンペオ国務長官四人のとき、それから拡大会合といいます大きな会合においても、二回にわたって確認をさせた。

 もちろん、日本として、この協定、発効しましたら誠実にこの協定を履行していきたいと思っておりますので、自動車・自動車部品に対する追加関税を課されるということはない、このように考えております。

岡田委員 その追加関税を課すことのないということの理由が問題なんですね。

 ですから、アメリカ側は、米国の国家安全保障を損なうおそれがあるという論理を持ち出して、通商拡大法二百三十二条の適用を鉄鋼製品、アルミ製品について認めた。鉄鋼製品、アルミ製品の輸入が国の安全保障を侵すおそれがある、損なうおそれがあるというアメリカの論理が残っている以上、それは幾ら口頭で確認したとしても、国家の安全保障を損なうおそれがあるというふうに認定すれば、やはり自動車・自動車部品についても追加関税の可能性は大いに残っているというふうに考えるべきじゃないんですか。

茂木国務大臣 これは、さまざまな経済連携協定がありますが、この中で、TPPもそうでありますし、日・EU・EPAもそうでありますし、日本が関連しないほかの経済連携協定でも、安全保障上必要な措置がとれるということはほぼ大半の協定で私は規定をされていると思います。

 そういったことをそれぞれの国に認めるという形になっておりますから、こういったものが残っているということ、それをもって日本の自動車・自動車部品について追加関税が課される可能性が高いというのは少し私とは考えが違いますし、それにつきましては、そういった懸念が出ないような形できちんと共同声明の中にも明記をし、その趣旨を具体的に確認をさせていただいたということであります。

岡田委員 今私が議論しているのは、今回の日米貿易協定案の中におっしゃるような表現があることについて議論しているのではなくて、日米貿易協定と鉄鋼製品、アルミ製品が併存しているということをもって、いわばアメリカの論理を受け入れてしまっている。そうすると、同じような鉄やアルミ製品が国家安全保障に重大な影響がある、損なう、そういうアメリカ側の論理を半ば認めてしまっている以上、自動車・自動車部品についても同じ論理を持ち出されることがあるんじゃないか、そういう余地を残してしまったんじゃないか。

 だから、鉄鋼、アルミ製品についてきちっと解決して、追加関税を撤廃した上でこの貿易協定を結んだならわかりますけれども、併存させてしまったということは私は大きな問題だということを申し上げているんです。いかがですか。

茂木国務大臣 鉄鋼、アルミの場合は、日米通商交渉が始まる前から既に発動されていたものであります。一方、自動車・自動車部品については、この追加関税等々について、トランプ大統領の発言はありましたけれども、発動されているものではない。そういった中で交渉を進めた結果、車につきましては、二三二について回避をした。また、鉄鋼、アルミにつきましても、他の関税関連問題の早期解決に努める、こういったことを明記をしておりまして、これは基本的に努めるということで合意をしているんですから、今後、その方向で考えていることであります。

岡田委員 まあ、車について回避をしたということで、総理みずからも国会答弁の中で、そのことはトランプ大統領との間で確認をしましたということを繰り返しておられますが、これは予算委員会で玉木委員が求めた議事録ですね、日本側がどういう主張をして、アメリカ側がどういうふうに答えたか、これがないと実は本当のところは判断できないわけです。

 したがって、これは予算委員会だけではなくて、本委員会でも議事録をきちんと提出をしていただきたいというふうに思いますが、委員長、いかがでしょうか。

松本委員長 御提起をいただきましたら、理事会で協議をさせていただきます。

岡田委員 その上で、では、数量規制については、これは首脳間ではなくて、ライトハイザー・茂木間で確認をしたというふうに伺っております。

 茂木大臣はどういうふうに発言されたんですか。

茂木国務大臣 九月二十三日の夜でありますが、私とライトハイザー通商代表との間で、この日米貿易協定また日米デジタル貿易協定について最終合意をする、その確認の中で、数量規制、輸出自主規制等の措置を課すことはない、アメリカとして。こういう旨をライトハイザー代表に対して確認をさせていただいて、このことについては、対外的に発表するということでアメリカもいいかということを確認をとりまして、結構だ、そのように発表してくれて結構だと。こういった形で発表させていただきました。

 ちょっと日にち、もしかしたら訂正させていただくことがあるかもしれませんが、五月の中旬ぐらいに一度そういったニュースが出ましたので、一度確認をとっておりました。

 この問題は何度も出てきたんですが、こういう数量規制とか輸出自主規制とか、絶対反対だからという話をしてきまして、それはよくわかっている、そういうつもりはないからということで、最終的に、最後にもう一回確認させていただくということで閣僚間で確認をさせていただいて、これは対外的に発表する、アメリカ側もそれでいいかということで、アメリカ側の了解も得て発表いたしております。

岡田委員 数量規制といってもいろいろな態様があると思いますが、ガット十一条との関係はどういう議論になったんですか。

茂木国務大臣 WTOに整合的でない、そういった数量制限、輸出自主規制等の措置を課すことはない、こういったことで確認をいたしております。

岡田委員 アメリカがWTOに違反するような数量制限、自主規制は行わないと言ったとしても、もうアメリカは既に、数量規制、いろいろやっていますよね。メキシコ、カナダ間でもやっているし。ですから、それはアメリカ側としてはガット十一条に反するものじゃないという前提に立っているんじゃないですか。ですから、約束したといっても、思っているところが違うから約束になっていないんじゃないですか。

茂木国務大臣 御案内のとおり、USMCA、さらには新KORUS、これには数量規制の規定が入っております。日米貿易協定、これは全く入っておりません。そういった意味では全く別物だと。

 アメリカは、そういう意向を持ってメキシコなりカナダ若しくは韓国と交渉されて、その結果がそうなったのかもしれませんけれども、日本との間では数量規制は課さない、そして輸出自主規制も求めない、こういったことで了解をして、そのことについて何ら今回の協定では触れられていないというのが結果であります。

岡田委員 ですから、口頭でその確認をとったということですが、協定の中には書いていないわけですね。やるとはもちろん書いていないんだけれども、やらないとも書いていない。そういう状況で、これから第二弾の交渉がスタートするというときに、そういった主張がなされることは絶対にないということを断言できますか。

茂木国務大臣 そのつもりでこれまでも何度も話をしてきております。

 そして、アメリカ側として、数量規制さらには輸出自主規制、これが必要だと考えたのなら、USMCAであったり新KORUSのように、具体的にその規定を盛り込んだんだと思います。そういう意向はないということで確認をとり、対外的に発表しても構わないということで、全く今回はそういった規定は入っていないということでありまして、今後、このことにつきましても交渉を行うというつもりはありません。

 そして、今後の交渉につきましては、まず両国間で協議を行うということになっております。この協議の中で、どういったことを今後の交渉の対象としていくかということが議論をされるわけでありますが、この協議を通じて日米双方が合意した内容、これが当然協議の対象となるということでありまして、日本として全く協議をしようと思っていない項目、同時に、アメリカとしてもそれについて了解した項目、これが協議の対象となることは全く考えられません。

岡田委員 そうはいっても、自動車の関税についての協議はしなきゃいけないですよね、撤廃に向けての。そういう中で、その逆としての追加関税とかあるいは数量制限ということは、絶対にアメリカ側は持ち出さないということをお約束いただけますか。

茂木国務大臣 そのような交渉にしていきたいと思っております。

岡田委員 それから、先ほどの記録の話なんですが、安倍総理は、十月十一日の衆議院予算委員会でこういうふうに言っておられるんですね。自分の発言は紹介していいが、相手の発言は言わない、こういうルールがありますと。これは、一般的なルールとしてはわからないわけではありません。しかし、今回のことは、協定のまさしく核になる部分、コアの部分ですから、あえて相手方も含めて明らかにするようにということを我々は言っているわけです。

 安倍総理も、相手方の発言についてはそう言っているものの、自分の発言は紹介していいがというふうに言っておられるんですね。だから、少なくとも、日本側の安倍総理そして茂木大臣の発言については、これは直ちに出せるはずだと思うんです。その問いかけによっては大分意味合いが違ってくる可能性がある。

 だから、これはまず第一弾として、全体は予算委員会で、理事会で協議していただいていると思いますが、日本側の数量規制、関税引上げ、それぞれの安倍総理、茂木大臣の発言については、これはこの委員会に提出をしていただけませんか。いかがですか。

松本委員長 理事会の方に御提起をいただきましたら、理事会で協議をさせていただきたいと思います。

岡田委員 もう終わりますが、これは安倍総理御自身が認めているんですよ。自分の発言は紹介していいが、相手の発言は言わない、こういうルールがあると。だから、発言していいというルールがあるということをお認めなんですから。しかも、これ、この協定の議論をする上で本当に大事な部分なので、少なくとも、まずは日本側の発言はきちんと明らかにしてもらいたい。

 公表は全体を求めますが、まずは第一弾として、茂木大臣と安倍総理の発言はこの委員会に提出をしていただきたい。そのことを重ねて申し上げておきたいと思います。

 終わります。

松本委員長 次に、森山浩行君。

森山(浩)委員 質問の機会をいただき、ありがとうございます。立国社、森山浩行でございます。

 先ほどの岡田委員からの御質問の中で、追加関税、これを回避ができたことが、今回、日米の交渉がウイン・ウインであったというようなところの中核部分であるというふうに認識をしておりましたが、大臣、それでよろしいですか。

茂木国務大臣 今回の日米貿易交渉、日米双方にとってウイン・ウインな成果になっている、そのように考えております。

 農業の分野につきましては、昨年の九月二十六日の日米共同声明に沿いまして、過去の経済連携協定の範囲内、全てが範囲内でおさまっております。御案内のとおり、TPPワイドの三十三品目等々も含めてそうなっております。そして、過去のさまざまな通商交渉で焦点になってきました米、これは加工品も含めて完全除外、こういう形になっております。水産物、林産品につきましても除外という形になっております。

 また、その他工業品につきましても、御案内のとおり、日本にとって輸出関心が高く、また貿易量が多い品目を中心に、即時撤廃を含め早期の関税撤廃、こういったことが実現をしているわけであります。

 一方、アメリカにとりましては、TPP11が発効する、さらには日・EU・EPAが発効する、こういった中で、オーストラリアを始め他国に劣後している、こういった状況を一刻も早く解消したい。この解消というのが、今回の合意によって、また協定の発効によってなされるわけでありまして、そういった意味も含めて、ウイン・ウインの内容を幾らでも私説明できるんですが、ウイン・ウインな結果になっている、このように考えております。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 今お話がありましたように、特に工業製品あるいは自動車部品を含めまして追加関税の部分というのがどのような交渉であったのかというのが非常に関心の高いところだと思いますので、総理及び大臣の発言についてはぜひ公開をしていただきたいというふうに思います。

 それでは、用意をした質問からいきたいと思います。

 まずは、先日の豪雨、台風十五号あるいは十九号におきまして亡くなった皆様の御冥福、それから被災者の皆様へのお見舞いを申し上げたいと思います。

 この間、私、災害の担当ということで、千葉あるいは静岡、埼玉、福島といろいろな被災地で被害の聞き取りをしてまいりました。非常に同時多発に起こるというようなことで、大変、今の体制だけでは十分ではないのかなというような印象も受けています。

 防災については、内閣府の防災で、百人足らずの方がヘッドクオーターで動いておられるというようなことで、全政府的にこれをやっていくところだと思いますが、昨今、こういう災害が多発をする中で、では、日本だけでなくて外国の力をかりるというようなことはこれまであったのかというふうに調べておりました。

 東日本大震災のときには、多くの外国から支援の申出をいただきまして、受入れをしているということなんですけれども、このところの状況、支援の受入れというような形で、これは内閣府の担当になるようですけれども、申出があったときには、外務省が窓口となって、それの調整をしながら、各省庁、これは要るよ、要らぬよ、あるいはこんな部隊だったら来てほしいよというようなことを調整をされたというふうに聞いております。では、日本にない物資、あるいは日本にない部隊、こういったものについては、特にこっちからお願いをするなんというようなことも含めて考えるべきだと思います。

 当時の物資、これを見てみますと、イスラエルからコート。韓国から靴下。ベトナムは下着、靴下。韓国、タイから飲料水。レトルト食品、シンガポール。コーンフレーク、タイ。缶詰、カザフスタン。紅茶、スリランカ。コーヒー、タンザニア。缶詰、インドネシア。マスク、タイ。タオル、ベトナム。毛布、モンゴル、フランス、トルコ、韓国、タイなどなどというようなことで、物資などにつきましては、何か日本にないようなもの、高度なものというよりは、数が要るものをとにかく下さいというような形で受入れをしているように思います。

 この辺のところ、受入れに関して当時どうだったか、また、日本にない物資あるいは部隊、こういったものを整理をされているのかということをお聞きをしたいと思います。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 災害が起きたときは、もちろん各国からさまざまな支援のお申出がございます。それと同時に、被災された地域においてもさまざまなニーズがございます。それを可能な限りマッチングさせて、必要なところに必要なものを持っていく、このような調整が非常に大事になるわけでございますけれども、そういう調整に当たっては、私ども外務省、そして在外公館、あるいはその国の在京の大使館などを通じて鋭意調整を行っております。

 最大限の努力をしておりますけれども、引き続き努力をしていきたい、必要なものを必要なところに届けさせていただく、そのようにさせていただきたいと思っております。

森山(浩)委員 特に申出があったものというような話になると、こんなものが要るんじゃないかというような思い込みの部分も出てくるかと思います。

 当時、東日本のときですけれども、おつき合いのあったアラブの大使から、ああ、じゃ、水を送るよと言われました。アラブは水がありませんので、フランスで買って送るよというような話だったので、それならちょっとお金にしてもらった方がいいかもしれないというようなお話をしたことがありますけれども、こちらからも、こんなものが要るんだというような発信も含めて整理をして、これは平常時からやっていただくとありがたいなというふうに思います。

 当然、国際協力ということですので、こちらから出すときというのが非常に重要になってくると思います。

 これだけの多くの災害に対応してきている日本でありますので、まず、この実績についてお知らせください。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 海外における大規模自然災害への我が国の対応、これは、被災国政府の意向を尊重して、要請に基づいて行われているところでございます。

 二〇一五年度以降の実績といたしましては、緊急援助物資五十六件、緊急無償資金協力二十四件、国際緊急援助隊派遣十八件の緊急支援を実施したところでございます。

 海外における大規模災害への対応の一つである国際緊急援助隊の派遣については、国際緊急援助隊の派遣に関する法律で定められているとおり、被災国政府等からの要請に基づき、かつ、隊員の安全が十分確保される、そういう状況のもとで活動を行っております。

 代表的な支援といたしましては、例えば二〇一七年九月二十日、日本時間でございますが、メキシコで発生いたしましたマグニチュード七・一の地震により、同国に甚大な被害が発生した、そのようなとき、我が国は、先方政府からの要請に基づき、同日のうちに国際緊急援助隊救助チームの派遣を決定し、翌二十一日より捜索救助活動を実施するなど、迅速な支援を実施したところでございます。

 国際緊急援助隊救助チームは、外務省だけではなく、警察庁、消防庁、海上保安庁、JICAなどより計七十二名で構成され、現地での捜索救助活動を行いました。

 このようなチームの現地での活動に対して、メキシコ政府及び国民から深謝の意が表明されたところでございます。

森山(浩)委員 チームを出すときの条件、要件というものは、どんなものがあるでしょうか。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 まずは、やはり被災国政府の要請があるということでございます。これなくしては、なかなか私ども効果的な支援ができません。それから、緊急援助隊を派遣する場合には、やはり隊員の安全、これが十分に確保されるということが大変大事なことだと思って、その辺は気をつけて実施をしております。

森山(浩)委員 安全確保、すごく大事な部分ですが、その要請という部分なんですけれども、先日の台風なんかでも、例えば千葉県などでは政府に要請するのがおくれたなんというような報道もありましたが、どうしても、災害の当事者となりますと、誰にどれを頼んだらいいのかというようなところ、優先順位も含めて、難しい部分があるかと思います。

 ですので、要請を強要するようなことはできないと思いますが、ふだんおつき合いをされている外務省の窓口であれば、こんなことができますよというようなことをちゃんとお示しをしていくというようなことも非常に大事だと思いますが、いかがですか。

鈴木(秀)政府参考人 お答え申し上げます。

 今し方御説明いたしましたメキシコの例をとりますと、例えば、まさに地震が起きたすぐに、安倍総理及び河野外務大臣からお見舞いのメッセージ、そして日本として全面的に支援する用意がある、そういうメッセージを発出しております。

 これに基づいて、現地そして東京で鋭意調整をし、その結果として、先ほど申し上げたような支援を実施したということでございまして、積極的にそのような支援の手を差し伸べている、そういうところでございます。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 ぜひ、この方向、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 災害が非常にふえておるということで、特に日本につきましては地球温暖化、気候変動、これがもとになって、これまでにないような、数十年に一度の台風あるいは水害というようなものが起こっているというような状況なんですけれども、この気候変動の問題につきまして、先月、国連の気候変動サミットが行われました。

 済みません、環境省さんに来ていただいておりますので、経緯と成果について御説明ください。

瀬川政府参考人 お答え申し上げます。

 国連気候アクションサミットは、本年九月、グテーレス国連事務総長主催により開催されております。

 これは、パリ協定の実施のための地球規模の野心の向上、これに向けまして、政府、地方自治体、民間、市民社会などの関係者が集まり、取組の発表を行ったものでございます。

 また、これにあわせて、各種の関連イベント、またハイレベルの会合も開催されております。

 小泉環境大臣は、長期的に脱炭素化の実現を目標とすることを宣言した国々の集まりであります炭素中立性連合、これへの参加表明を行いました。

 また、東京都、京都市に続く、横浜市、二〇五〇年までの脱炭素化表明、こういった積極的な我が国の取組を国際社会に発信しております。

 取組でございますが、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略に基づきまして、我が国のさまざまな取組を実行していくこと、これが重要と考えております。

 環境省といたしましては、関係省庁と連携し、イノベーションに光を当て、環境と成長の好循環を加速し、脱炭素化社会の早期の実現に取り組んでまいります。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 国として気候変動に取り組んでいくという部分に関しましては、日本は非常にこれまでも取り組んできた国であるというふうに思いますが、私、四月に国土交通委員会でフライデーズ・フォー・フューチャーという若者のデモについての説明をさせていただきましたけれども、今回、グレタ・トゥンベリさんという十六歳の高校生でありますが、この気候変動サミットにおいて演説をされた。

 二〇五〇年、遅い、二〇三〇年、もっと早くというような形での部分も含めて演説をされたわけですけれども、こういった若者の動きに対して我々大人がしっかり取り組まなきゃいけないというところについて、大臣、この演説をお聞きになって、多分報道にもいろいろ出ておりますのでごらんになったかと思いますが、この演説あるいは運動に関してどのように思っておられますか。

茂木国務大臣 十六歳の一人の少女の訴えというよりは、これから次の世代の人間がこの地球についてどう考えるのか、こういうことについて非常に共感の持てる、そういう演説であった、このように考えているところであります。

 我が国としても、これから、先日も台風等の大災害もありました、そして、我が国だけではなくて、今、海水面の上昇であったりとか、さまざまな気候変動による影響が出ているわけでありまして、しっかりとした取組が必要であると思っているところであります。

 それで、立ったついでに、立ったついでで失礼、先ほどの自動車の二三二条の追加関税と数量規制の取扱いなんですが、先日の予算委員会で総理から、また、きょうも私から説明させていただいているところでありますが、記録ということで申し上げますと、先ほどから申し上げているように、こういった協定の結果というのは、共同声明であったりとか協定本文、そして交換文書に全て反映をされていると考えておりまして、文書等の取扱いについては、今回、日米それぞれが関連する国内法や外交上の配慮から適切に対応することとしております。

 もちろん、委員会で委員の御要望についてどう扱うか、これについては理事会で協議をしていただければと思っております。

森山(浩)委員 まずは、追加で言っていただいた部分につきましては理事会で、ぜひ委員長、御検討いただきたいというふうに思います。

松本委員長 はい。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 グレタさんの演説について、日本のようなおとなしい若者が多いところであっても、もう既にこのデモが起こっているというようなことも含めまして、しっかり受けとめていきたいと思いますし、ぜひ、受けとめた上で、政策、日本のあり方について考えていただきたいというふうに思います。

 グテーレス国連事務総長は、七十七カ国が二〇五〇年に温暖化ガス排出実質ゼロにすることを約束したという形で締めくくりをしておりまして、日本においてはまだ都市というようなところにとどまっているかと思います。

 京都議定書、これ以来、この環境という分野につきましては、日本は技術面でも、また考え方というか思いの面でも、国際社会の中で先頭を走ろうというような思いでやってきた部分であると思いますし、私もそれは誇りに思っているところでありますけれども、今後、むしろおくれるというようなことがないようにしっかり引っ張っていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 我が国も、本年、経済と環境の好循環のもと、最終到達地点としての脱炭素社会を掲げ、野心的な長期戦略を策定いたしました。また、G20でもこのような考え方を踏まえた行動志向の大阪首脳宣言、御案内のとおり、取り上げたところであります。

 外務省としても、脱炭素化に向けた日本の技術、モデルを国際展開していくべく、経済界とも連携をしながら取組を強化していきたいと思っております。

森山(浩)委員 ぜひお願いします。

 クリーンコールというような形で石炭火力の話なども具体的には個別に出てきているところでもありますので、しっかり国際社会に発信できるような形で、各分野、頑張っていただきたいというふうに思いますし、それを踏まえて、外務省、外務大臣の方から発信をしていただければというふうに思います。

 さて、私、この国会での最初の質問がJICAとジェトロの連携ということで、国際貢献、私も社会活動の最初がカンボジアの学校建設というところでございますので、非常に関心のあるところなんですが、どうしても昔から、JICAといえば、JICAに行くかNGOで働くかを迷ってJICAに行ったな、あるいはジェトロであれば、ジェトロに行くか商社に行くかを迷ってジェトロに行ったなというような人、もともとの人々の持つ文化というのがなかなかまじり合わなかったりというようなことが指摘をされてきたところでもございます。

 だから、JICA、援助の面で基本的な基盤を一生懸命日本が整えた後に他国が入ってきてどんどん開発をやってしまう、おいしいところというか、非常に重要な部分を海外にとられてしまって、ジェトロが行ったころには他国と同じようなスタートラインあるいは一歩おくれてのスタートというようなことで、日本のせっかくの技術、一貫してやっていけばその国のためになるような部分、こういったものがなかなかつながらなかったというようなことも踏まえて、これは二〇一八年七月二十四日ですが、ジェトロとJICA、企業の海外展開支援強化のための連携覚書を締結というようなことにつながってきたと思います。

 この覚書、この前後で変わったこと、あるいは最近気をつけていることというような形で、ジェトロの方からお話を聞きたいと思います。

信谷参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、ジェトロは昨年七月にJICAとの間で、それぞれが有する支援制度あるいはネットワークを一緒に組み合わせていこうということで、覚書を結んでおります。中小企業の海外展開、あるいは開発途上国の経済社会開発、そして日本国内の地域の活性化ということを目的にしたものでございます。

 この覚書を結んだことによりまして、昨年度には両機関が一緒になって五十七件のセミナーを開催いたしました。また、本年八月には、第七回アフリカ開発会議、いわゆるTICAD7におきまして、スタートアップに焦点を当てたイベントを一緒に実施しております。

 また、ジェトロとJICA、両方の制度を活用して海外展開を実現した中小企業もあらわれてきております。富山県にあります川端鉄工さんという中小企業でございますけれども、JICAの調査を活用しましてミャンマーで小水力発電事業をやろうということで始まりまして、続きまして、ジェトロの専門家のハンズオン支援というものを使っていただいて、現地法人の設立までやっております。

 今後とも密接な連携を図って、引き続き、日本企業の海外展開支援に取り組んでまいりたいと思っております。

森山(浩)委員 わざわざ来ていただいてありがとうございます。

 それでは、JICA側の方からも、同じ質問ですけれども、この協定の前後、また最近気をつけていることを含めて、お願いいたします。

本清参考人 お答え申し上げます。

 JICAは、御指摘のとおり、途上国の開発に日本の民間企業の技術、ノウハウを生かし、日本と途上国の双方に裨益することを目的として、二〇一二年度より、ODAを活用した中小企業海外展開支援等の民間連携事業をジェトロとの連携を強化しつつ推進してきております。中小企業等における途上国への進出を促進するため、海外ビジネス支援のノウハウ、経験を有するジェトロと途上国支援に実績を有するJICAが連携することは、極めて重要であると考えています。

 先ほどのアフリカ開発会議第七回、TICAD7において、両機構に国連開発計画、UNDPを加えた形で、日本、アフリカの民間セクターの連携とビジネスを通じた課題解決を促進すべく、業務協力覚書を締結しました。

 これまで、両者の海外展開の支援制度やその活用事例を紹介する事例集を企業向けに作成しております。

 また、双方の支援制度を活用して海外展開を実現する企業もあらわれてきております。例えばベトナムでは、玉田工業株式会社がガソリンスタンドの火災、環境汚染のリスクを解消すべく、二重層のタンクの普及、販売に向けて、JICAの調査、実証事業とジェトロの専門家派遣事業の双方の支援制度を活用しております。その後、ベトナムの現地法人を設立して事業を拡大しております。

 今後一層、両機関で連携を密にしていく考えでございます。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 助走期間もありましたけれども、早速さまざまな事例を積み上げていっていただいているよということでございます。

 官民連携というのが、二〇一五年、ODA大綱が開発協力大綱となる中で入ってきた部分でありますけれども、それに加えて、国益の確保に貢献というような文言もこのときの改正で入っています。ここにおける国益というものはどういうものか、大臣、お願いいたします。

茂木国務大臣 我が国が国際協力を通じて我が国の平和と安全の確保、さらなる繁栄の実現、安定性及び透明性の高い社会の実現、付加価値を共有した平和で安全な社会の実現といった国益の確保、これを追求しております。

森山(浩)委員 つまり、日本がもうかるとかいうような形で、狭い意味の国益ではないということでよろしいですか。

茂木国務大臣 おっしゃるとおりだと思っております。

 森山委員も、カンボジアでの学校の建設、非常に熱心に取り組んでおられますが、私も何人かの仲間とカンボジア、ラオスで学校の建設、ここ十何年か進めておりまして、この小学校の開校式にも行ったことがあるんですが、本当に学校のなかった地域の子供たちが学校ができることによって目を輝かせている、こういった姿、これがやはり日本のあるべき支援の姿なんじゃないかなと思っております。

 今回、即位礼正殿の儀、これに合わせて多くの海外要人の方が今日本にお越しでありまして、私もこの機会に東南アジア、太平洋諸島国、そしてアフリカの外務大臣等々と会談を重ねてまいりましたが、質の高いインフラの整備であったりとか、教育、医療、人材育成といった日本の国際協力、非常に高く評価をされ、また感謝の言葉をいただいたところであります。

森山(浩)委員 ありがとうございます。

 この日本の国際協力が非常に高い評価を得ているというようなことをうれしく思います。

 ただ、この間、額としては減ってきていまして、これについては、先ほどからの質疑の中でも、ふやしていくんだというような意気込みをいただきましたので安心をしておりますけれども、しかしながら、世界トップに返り咲くなんというようなことはなかなか難しい部分であろうかと思います。

 お金で大きなプロジェクトをやるというよりは、例えば、小さな部分でより細かいニーズを拾っていくということでありますとか、先ほどの中小企業の海外展開のような形で、生活に密着した部分、これをしっかりと支えていく。

 あるいは、現在、大学生が海外へ日本から留学をするというような意欲が非常に減っているんだというようなことが問題視をされたりしていますけれども、大学生、あるいは中高生、中高生であれば、留学したら、同級生というような感覚は大学生よりも更に大きいかと思います。世界二百カ国しかありません。その中で、日本からの留学生を送り出していくであるとか、あるいは留学生を受け入れていくといった形での人材交流、こういった部分にもしっかり力を入れていただきたいというふうに思います。同じ金額であっても、人に投資をするということが、お互い末永い関係にもプラスに働くんだというふうに考えております。

 質問をしようと思いましたが、時間になってまいりました。

 国益というものはしっかり広い形で対応するんだということ、国際協力の中で、日本が世界の中で感謝をされる、名誉ある地位を占めるというような感覚でODAあるいは援助というものに取り組んでいただきたいというふうに思います。

 一方で、何か日本の中に関して、いろいろな国際交渉の中で守るべきものは守るというような経済の部分もあるかと思います。この間、水道の民営化、あるいはカジノというような形で外資系がばんばん入ってくるというようなことについて、どのように国内の産業を守る、あるいは国内の人たちの影響を抑えるというような形をしていくのかということも、これは外務省として、一方、非常に大事な部分だと思いますので、そういう話はまた今後議論をしていきたいというふうに思いますが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 以上で終わります。

松本委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 初めに、日米貿易協定の影響試算の問題について茂木大臣に伺いたいと思います。

 私が要求して、先週十八日の夕方、内閣官房と農水省から影響試算の暫定版、暫定値が届けられました。A4判で、わずか二枚の資料でした。これです。

 安倍内閣総理大臣は、十月九日の参議院本会議で、経済効果分析については既に作業に着手したところであり、できるだけ早く情報提供させていただくと答えました。

 茂木大臣も、十月十一日の衆院予算委員会で、協定の審議に当たりましては、経済についての効果、これは用意をさせていただきたいと答えていましたが、この二枚の資料がそれですか。

茂木国務大臣 先日十八日に内閣官房が公表いたしました日米貿易協定の経済効果分析、そのお示しいただいたものがそれに当たると思っております。

 きちんとGTAPモデルを回して、これはスタティックモデルでありますが、均衡する値でどういう結果になるか、こういったことについての暫定値が示されているものであり、そこの中で、我が国の実質GDP、これは日米貿易協定がない場合に比べて約〇・八%押し上げられるとの見込みでありまして、これを二〇一八年度GDP水準で換算をいたしますと、約四兆円に相当するということです。

穀田委員 おっしゃる点は、今お話ありました、途中からは中身について説明しているんですけれども、これやねんなということを聞いているわけですね。

 そうしますと、私、外務委員会にこの間所属していまして、TPP11や日欧EPAの審議では、二〇一七年に内閣官房と農水省から公表された二百ページ近くの試算があります。これです。これはTPP11、そしてこれが日欧EPA。ですから、これらをもとに質疑が行われました。それが、今回の日米貿易協定ではわずか二枚。しかも、暫定値だ、暫定版だということしか公表しない。

 茂木大臣、日米貿易協定の審議は、あすの二十四日から本会議で始まります。政府はこのわずか二枚の暫定試算の公表で済まそうというのかどうか、ここは最初にお聞きしておきたいと思うんです。

澁谷政府参考人 お答え申し上げます。

 直接経済効果分析を担当している者でございますけれども、TPP12のときは、経済効果分析、初めて合意内容についてGTAPを回したということで、相当大部な説明資料を用意させていただきました。

 TPP11と日・EUのときは、内閣官房の経済効果分析に関しては、そんなに多くの資料ではなかったと思います。要は、TPP12のときの説明書で方法論は全て書いてあるという趣旨でございます。

 今回も同様でございまして、TPP12と全く同じ手法でGTAPを回したというのが内閣官房でございまして、暫定値と申し上げているのは、過去の分析のときは経済学の専門家の先生三名の方に検証をお願いしていたわけですけれども、まだその作業が整っていないからということでございまして、暫定値とは言っておりますけれども、結果はほぼこのとおりだというふうに考えております。

穀田委員 私は、これは政治家である茂木大臣に聞いたわけです。

 これは審議の前提なわけですよね。大部であるか、大部でないか、それはいろいろな意見があるでしょう。しかし、どういう影響があるかということについては、それこそ、こっちの方でいきますと、合板から何から、それから農林水産物の生産額への影響についても事細かに全部出ていますよ。

 それが今度の場合、誰が考えたかて、こういう二枚でおしまいになる、そして、御説明なさろうとしたけれども、どういうメカニズムでやろうとしているかというような話をしたとしても、どういう影響があるかというのはさっぱりわかりはしないというのが今日の問題だと思います。そこで、私は、そういう意味でいいますと、国会軽視も甚だしいと言わなければならないと思います。

 十月十九日付の日本農業新聞はこのように語っています。「政府は今回、審議を急ぐため、過去のような」今お話ありました、「専門家の分析や農産品の品目ごとの分析などを欠いた「暫定版」を公表した。確定する頃には、協定は」「承認されている可能性すらある。」と批判しています。まさに私はそのとおりだと思うんです。

 同時に、このことは何を意味するかということなんですね。総理は、また大臣も、ウイン・ウインな形だとか、日米双方に大きな好影響だとか、国民にとって利益だ、こう何回もその都度その都度言っています。しかし、そういうものが、では、国民にとって理解を求めるという姿勢が欠けていては、幾らそんなことを言ったって私はだめだと思うんです。

 したがって、国民に理解を、この資料で国民が理解する、そういったものについて深く自分たちの問題として議論し深めるということにならないということだけは、誰が考えたかて確かだと思うんです。

 そこで、私は、審議に当たって正式な試算を公表しないことがいかに重大かということについて少し述べたい。

 農水省の暫定試算を見ると、日米貿易協定によって農産物の生産額が最大一千百億円減少するとあります。品目ごとの影響を見ると、牛肉、豚肉、乳製品の減少額だけで全体の八五%、九百三十七億円を占めます。

 このうち最も大きな影響を受けるのが牛肉で、最大四百七十四億円減少するとあります。この牛肉について、二〇一七年のTPP11の試算では最大三百九十九億円減少するとされていたわけで、今回の試算と比べると、日米貿易協定によって牛肉は、TPP11を七十五億円上回る、すなわちTPPを超える減少額となるわけですが、農水省に聞きます。この数字は間違いありませんね。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の農水省が発表した資料でございますけれども、牛肉の生産減少額は約二百三十七億円から四百七十四億円となってございます。

穀田委員 合うているということですわな、要するに、簡単に言うと。

 要するに、四百七十四億円がいずれにしても今回の場合には減少するということだということですよね。そうおっしゃった。前の数字はもうちょっと小さ目に言うてはりましたけれども。

 何か口を開けばTPPを超えるということにならないということを言っておられる。私は、TPPを超えなきゃいいかという問題はまた別だという意見なんですね。TPPそれ自身が大きな国内産業に対しての打撃を与えたということですから、何か、このことを超えなけりゃいいんだという立場をとっていません。しかし、あなた方が言うところのTPPを超えるということについて言えば、この減少額というのは明らかに超えているということだけは確かだ。

 暫定試算によれば、TPPを超える影響を受けるのは牛肉だけではありません。日米貿易協定によって、TPP11では影響が見込まれなかった鳥肉でも最大三十二億円、鶏卵でも最大四十八億円の減少額となる。これについてもそのとおりですね、農水省。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回試算として出しました、鶏肉につきましては影響額が約十六億円から三十二億円、鶏卵につきましては二十四億円から四十六億円となっております。

穀田委員 あなた方が出した数字でこう言っているわけで、どうしてこう少な目に次々と言うのか、それがようわからぬ。いずれにしても、今まで、あなた方が仮にそういう数字を、多少違う数字を出そうが、前回の中にはなかったものだということだけは確かであって、そして、大きな減少額が見込まれるということは確かだと。

 だから、私、鶏卵関係や鶏肉関係の方も、いろいろ聞きましたけれども、今後どうなるか、それは見きわめてみたい、そして、そういうものが更に下がる、関税の税率が下がるとなれば大きな問題になるだろうという話をしていらっしゃるということについては言っておきたいと思うんです。

 したがって、私は、この審議に当たって今数字がいろいろ出ます、だけれども、暫定試算では、大体、日米貿易協定とTPP11と合わせると、生産額が最大二千億円減少とされているわけだけれども、その具体的な試算の根拠や、そして品目ごとの比較分析など、審議に当たって重要な資料が一切明らかにされていない、それだけは確かだというふうに思います。これだけしかないんだから。

 私は改めて大臣にお聞きしたいんですけれども、総理は農家の不安にしっかり寄り添うと強調されました。茂木大臣は、わずか二枚のこの暫定試算で農家の不安が払拭されるとお思いでしょうか。

茂木国務大臣 先ほどからの農水省の答弁を聞いておりますと、多分、TPP11と比べてどうなるかという話でありまして、全体のTPP12と比べた場合はまた違った数字というのが出てくるわけであります。それは御案内のとおりだと思いますけれども、それと比べれば低くなるわけであります。

 そこの中で、一つ一つ、今回の審議の中で、農家の皆さんにとっても更に懸念等が払拭できるように、丁寧に説明をしていきたいと思っております。

穀田委員 前の方から言うと、やはり、TPP11との関係でいけば、牛肉は多うなっているんですよ。こちらの説明どおりなんですよ。

 問題は、今、今後とも説明していきたいということは、逆に言うと、今の段階では極めて不十分だと。まあ、不十分か、不十分だとは言っていないけれども、今後も説明が必要だということだけはお認めになったということでよろしゅうございますね。まあいいです。そういうことですよ。要するに、今後丁寧な説明が必要だということはおっしゃった。

 そこで、私はなぜこんなことを言っているかというと、安倍総理が、日米貿易協定によって、TPP11と日欧EPAを合わせて世界経済の六割を占める自由経済圏が誕生される、こう何度も強調されているんですよね。しかも、今度の場合、この影響試算について言うならば、残念ながら、暫定試算には、影響試算も、日欧EPAについての試算も示されていない。結局のところ、日欧EPAを加味すると一体どれほどの生産減少額となるのか、明らかにするのが筋だと思うんですね。

 私、そこで、外務委員長に言いたいと思うんですね。影響試算は日米貿易協定の審議の前提となるもので、この暫定試算では審議のしようがないじゃないかと。

 当時、松本委員長も外務大臣も経験なさっていらっしゃいます。そういう意味では、これで審議ができるのかということは、本当に、率直に言って、変やなと誰かて思いますわな。

 したがって、二〇一七年のTPP11の試算や日欧EPAの試算との比較分析とともに、正式な品目ごとの試算を国会に、なかんずく当委員会に、審議する当委員会に提出させるべきだと思うんですが、いかがお考えですか。答える立場にありませんか。

松本委員長 委員長としては、理事会で御協議をいただいた、合意を得た中で委員会の運営を進めてまいりたいと思います。

穀田委員 私は、そういう今述べた資料を本委員会に提出することを改めて要求します。

松本委員長 理事会にて御提起をいただいたものは、理事会で協議をさせていただきたいと思います。

穀田委員 一言言いますと、理事会で提起されたらじゃなくて、委員会で私は提起しているんですよ、出すべきだと。だから、それだったらそれを受けて、理事会で議論しますと言えばいいんですよ。理事会で、では、また改めて提起しなきゃできないというものじゃないということを言っておきます。そんな委員会運営はないと一言述べておきます。

 次に、牛肉のセーフガードについて少し聞きます。

 牛肉のセーフガード、緊急輸入制限措置ですね。これは、現在およそ六十万トンを占めているTPPの発動基準数量とは別に、アメリカのみを対象とした発動基準を新たに設け、二〇二〇年度の二十四・二万トンから三三年度には二十九・三万トンに拡大するとしています。

 そこで、確認ですけれども、TPPで定めている現在のセーフガードの発動基準数量というのは、アメリカがTPP交渉から離脱する前に合意されたものであって、これには米国分も含まれている、間違いないか、確認です。

澁谷政府参考人 TPP12で合意をした際の牛肉のセーフガードの発動基準数量は、TPP国全体、すなわち、当時アメリカも入っておりましたので、アメリカ込みの数字でございます。TPP11協定がまとまった際は、まだアメリカがTPPに戻るということについて、参加国同士、そういう思いがあったということもありまして、それは一切修正をしていない、そういうことでございます。

穀田委員 今、二つありました。

 TPPの発動基準数量が、現在もアメリカ分を含んだ水準のままだということなんですね。したがって、修正はしていない。それ自体が、私は極めて重大なことだということを述べておきたいと思うんです。

 要するに、アメリカがTPPを離脱した後も、発動基準数量からアメリカ分が差し引かれないで、縮小もされずにあるということなわけであります。つまり、現時点で、TPP参加国にはセーフガードが実際には発動されにくい状態にあるということは、客観的な数字上の問題でもあります。

 TPPの参加国からの輸入には、結果として、事実上セーフガードがきかない状態にあるということじゃないのか。なぜなら、今お話があったように、アメリカが離脱した後にも六十万トンを発動基準としていたということは、TPP参加国にしたら、当時四十五万トンぐらいがアメリカを除く分なわけですから、その程度から上限が高くなったことを意味する。したがって、セーフガードの発動の要件が緩くなっているということであり、先ほど述べたように、事実上セーフガードがきかない状態にあるということではないのか、確認したいと思います。

澁谷政府参考人 TPP国からの牛肉の輸入が我が国の牛肉の輸入のほぼ九九%近くを占めておりまして、アメリカが大体四割近くを占めているところでございます。そういう数字である、そういうことでございます。

穀田委員 数字を聞いているのと違うて、能弁でばあっと長い方が、今度は珍しく短いですな。

 要するに、私が聞いたのは、事実上セーフガードがきかない状態にあるんじゃないのかと。四割を占めている、それは結果としてそういうことでしょう。

 私が聞いているのは、その数字の範疇の四割を占めているかどうかなんてことを聞いているんじゃなくて、そういう実態にあるということは、そういう事実からすれば、セーフガードが発動しにくい、きかないという事態になっていることはお認めになりますよね。

澁谷政府参考人 まさにTPP協定というものを所管している者として、なかなか、これはきかないものだとかそういう発言は私としてはできないわけでございますけれども、ただ、TPP12のときに想定していた状況とは違っているというのは事実でございます。

穀田委員 できないというのは発言できないと。それは妙な話ですね。

 十月三日付の日本農業新聞は、澁谷統括官が、二日に行われた公明党の対策本部の会合でこのように述べたということを記しています。TPP参加国からの輸入は、現時点では事実上、セーフガードがきかないと認めたと報じています。

 与党には、では、そういう説明をしているということですな。

澁谷政府参考人 そのような御指摘があって、たしか私はそれを否定しなかったというふうに記憶しておりますけれども、今回も、穀田先生の話を私は否定しているわけではございません。

穀田委員 否定していないという、まあ、珍しく穏便にお答えになっているわけですけれども、そういうことだと認めたというのは事実上の、いや、私ね、何でそんなことを言っているかというと、それだけかいなと思ったら、こう言っては悪いんですけれども、元大臣政務官が、そういうTPPの担当の方がわざわざその記事を引用されてホームページに張りつけているぐらいやから、それほど、こういうときにはセーフガードがきかないと認めたということを公に発表されておられる方がいらっしゃる。本人はもごもご言っていて、否定していないという形でやんわり逃げる。それはあきまへんで。やっぱり、要するにそういうことなんだということはようわかりました。いや、ほんまに。

 我々の論というのがそういう形で時々展開しますけれども、今回は、澁谷統括官がお認めになったという点では極めて大きいことだなと思っています。簡単に言えば、結局、アメリカのTPP離脱後も発動基準数値が見直されないで、現在もアメリカを含んだ基準のままだということだと。やっぱり、きかないということがあるということですわな。

 問題は、では、そのような状態のもとで日米貿易協定が発効されれば一体どうなるのかという問題なんですよね。

 アメリカを含んだそのままのTPP発動基準数量とアメリカ向けに新設された発動基準数値が併存することになり、TPPを超える影響が出るおそれがあるんじゃないかと推察されるんですが、いかがですか。

澁谷政府参考人 先生よく御存じだと思いますけれども、我が国の牛肉市場というのは、外国産牛肉と、競合する国産牛肉、これはかなりの内外価格差があるわけでございます。ほぼほぼすみ分けが成っておりまして、TPP11、日・EU発効後も、国産の牛肉の価格等に影響は出ていないという状況でございます。

 また、二大輸入国、彼らにとっての輸出国であるオーストラリアとアメリカ、過去の例を見ますと、どちらかの輸出がふえるとどちらかの輸出がその分減る。つまり、お互いに競合し合っているという状況にあるわけでございます。

 特に、二〇一八年度でありますけれども、外食産業等で輸入牛肉の需要が非常にふえたということで、現在は三八・五%の高関税がかかっているアメリカの牛肉の需要が非常にふえたという実態がございます。二〇一八年度のアメリカの輸入実績が二十五万五千トン、これは近年の中で最も高いシェアでありまして、TPP国とアメリカを合わせた輸入全体のアメリカのシェアが二〇一八年度四一%、これは近年で最も高い数値であります。

 今回、通常、セーフガードというのは、直近の実績よりももうちょっと上の数字でセットするというのが通常のセーフガードの発動基準数量の決め方なんですけれども、アメリカの牛肉が現在三八・五%であるにもかかわらず非常に引きが高い、こういう状況の中で、アメリカの牛肉については、アメリカには大変申しわけない形になっているわけですけれども、実績よりも低い数字でスタートするということで、二〇一八年度の輸入数量を下回る二十四万二千トンから、しかも二〇二〇年度からスタート、そういうことであります。

 先ほど申しましたとおり、二〇一八年度のアメリカのシェアは四一%ですので、アメリカの牛肉のセーフガード発動基準数量はTPP全体の発動基準数量の全て三九%台におさまっているということですので、合わせてもTPP12を上回るという事態にならない。

 牛肉の市場の実態をよくわかっている方、私もいろいろお話を伺いましたが、アメリカが関税が下がるということに対してアメリカに厳しいセーフガードをかけるということが、結果として、TPP国全体も含めて、我が国の国産、国内の牛肉への影響を最小限に抑えられる、こういうふうに考えた次第でございます。

穀田委員 少し能弁になりましたけれども、私が言っていることと余りうまくかみ合って答えていないことは確かだと。国内産の問題ではなくて、併存するということはTPPを超えるということになるんじゃないのかということを言ったわけであります、私は。

 いずれにしても、セーフガードの問題のあり方について、日本政府としては、ずっと文書で書いていますように、TPP参加国に協議を求めなくてはならぬということは確かですよね。そこはいいですよね。

澁谷政府参考人 いずれ日米協定が発効して、その後の輸入状況などを見ながら、適切な時期にTPP国とはよく相談をしていきたい。

 その旨は、既にTPP委員会がニュージーランドで十月の初旬に開かれまして、各国にその旨の説明をしているところでございます。

穀田委員 いずれじゃなくて、相手方は随分早くからそういう話はしているわけですからね。私は、TPP参加国に協議を求めなければならないということ自体がこれまた極めて重要だと思います。

 政府は輸入量が全体としてふえないよう協議すると言うけれども、先ほど指摘したように、TPP参加国にとって現在のセーフガードは事実上発動されにくい状態にある。それを現在より発動されやすくするという形での協議や見直しに各国が応じるとは到底思えません。

 実際、八月二十七日付の日経新聞によれば、日本の輸入牛肉シェア一位のオーストラリア、マッケンジー農相は、取材に対し、「TPPの再交渉は考えていない」とおっしゃっています。

 茂木大臣、先ほど、その後にはとありましたけれども、TPP参加国が見直し協議に応じる保証が一体どれほどあるとお考えですか。

茂木国務大臣 今、外務大臣として、日米貿易協定、この審議については答弁をさせていただきますが、TPPの問題は内閣官房西村大臣が担当されると思っております。

穀田委員 それはそれで確かですな。しかし、従来そのことをやってこられた方の見識をお伺いしたつもりでしたけれども、領域問題でお逃げになったということですな。

 マッケンジー農相は、「TPPに参加するカナダやニュージーランドが牛肉の対日輸出を増やし、米国は貿易協定がなくても輸出を伸ばしている」ということで、日米合意にある意味では危機感を示したと言われています。このことを見ても、TPP参加国が見直し協議に応じる保証がないのが私は実態だと思っています。

 それで、私、もう一つ、仮に、統括官からお話があったように、協議が行われたとしても当然一致しない場合があるわけですよね。そうしますと、その間、アメリカ分を含めたTPPのセーフガードは事実上発動されず、TPPで想定した以上の数量の牛肉が低関税で流入するおそれがある。もちろん、すみ分けとか競合とか、いろいろ言っていますけれども、客観的にはそういう問題をはらんでいるということだと思うんです。

 しかも、重大なのは、茂木大臣、これだけはお伺いしたいんですけれども、日米貿易協定の交換公文では、セーフガードが発動された場合、日米両国が、「適用のある発動水準を一層高いものに調整するため、協議を開始する。」と明記しています。

 茂木大臣、これは、事実上、セーフガードを無力化するものではないでしょうか。

茂木国務大臣 交換公文、サイドレターの話がありましたが、牛肉のセーフガード措置がとられた場合の協議、行うとされておりますが、協議の結果を何ら予断しているものではありませんので、いずれにしても、我が国として、今後そういった協議が行われる場合も国益に反するような合意をするつもりはございません。

穀田委員 そういう話をした場合、必ず協議という話をすると次に答えが出てくるのは、フレーズが決まっていまして、国益に反する合意はしない、こういうふうに言うわけですよ。だけれども、このことについて言うならば、今のセーフガードよりも一層高い形でセーフガードを決めるという交換公文それ自身が反しているんじゃないかというふうに私は思うわけですね。

 だから、セーフガードが発動された場合というのは、国内の畜産農家に重大な損害を及ぼす数量の輸入がアメリカから行われるということであって、そんな事態になるにもかかわらず、交換公文では発動水準を一層高いものに調整する協議を行うというのは、論理的に言って、今の現実からいえば、更に言えば、セーフガードを事実上無力化する以外の何物でもない。したがって、日米貿易協定がTPPを超えることは明らかだと思います。

 私は、審議に欠かせない資料も提出せずに、TPPを超える影響を受けるおそれがある日米貿易協定については承認すべきでない、このことをあらかじめ主張して、質問を終わります。

松本委員長 次に、杉本和巳君。

杉本委員 維新の杉本和巳であります。

 きょうは、十人質問者がいて、九番バッターでございますが、おつき合いのほど、お願いします。

 まず、やはり、この被災の問題、院としては発言の機会がなかったということもあり、まずもって、台風十九号、その前の十五号、特に、午前十時二十六分発表のNHKでは、八十四名の方が亡くなり、九人の方がいまだ行方不明ということで、御冥福、捜索の強化、そして、被災された方々へのお見舞いを申し上げたく存じます。

 そして、昨日、即位礼正殿の儀が行われました。私が印象に残ったのは、国民の幸せ、世界の平和、国民に寄り添うというお言葉と憲法にのっとりというところが非常に印象に残りましたけれども、当外務委員会においては、やはり世界の平和という点で、私どもは対話を重ねていかなきゃならないと思いますし、私ども維新としては、代表が談話で、国政と地方の両輪で、令和の新時代にふさわしい日本を築くための大きな役割を果たしていくことを改めて決意するということを申し上げさせていただいております。

 そういう経緯がある中で、大臣が九月十一日に御就任されて、そして、先般、御挨拶をいただきました。

 通告していなくて大変申しわけないんですけれども、大事なところだと思ったので、改めて大臣に伺いたいんですが、地球儀を俯瞰する外交というのは安倍政権になってずっとお伺いしているんですけれども、今般、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」というお言葉があったかと思うんですけれども、この部分が岸田外務大臣だったり河野外務大臣とまた違っていらっしゃるように私は認識しているんですけれども、この部分の意味はどんなところにあるのか、どういう狙いがあられるのかを教えていただければ、大変、質問通告なくて恐縮なんですが、教えてください。お願いします。

茂木国務大臣 安倍総理は、この六年と九カ月、積極的平和主義のもとで、地球儀を俯瞰する外交、こういったものを展開してきたわけでありまして、それを更に前に進めるために、包容力と力強さを兼ね備えた外交を展開していきたいと先日申し上げました。

 包容力、世界にはさまざま、多様な国があります。そういった多様性、そういったものを尊重しながら、日本ならではの調整力というのを発揮していきたい。

 もう一つ、力強さ、これは、やはり今、さまざまな形で世界情勢が混沌とする、新しいルールをつくっていく、こういった中でもリーダーが欠けるという中で、日本がしっかりとリーダーシップを発揮し、また、事に臨んでは毅然と対応する、法の支配の問題であったりとかそういったことで毅然と対応する、そういった力強さを兼ね備えた外交を進めてまいりたいと考えております。

杉本委員 わかりました。ありがとうございます。方向感が読めました。ありがとうございます。

 それで、大臣、御就任されて、私がまだビジネスマンというか銀行員だった、たしか二〇〇三年ごろ、小泉政権のときに、テレビの映像で非常に印象に残っているシーンがございまして、そのシーンはいつかといえば、確認させていただきましたけれども、二〇〇三年三月三日、当時の小泉総理の特使として、大臣は副大臣でいらっしゃったようですけれども、当時の大臣は川口順子さんでいらっしゃいますけれども、このときにバグダッドに行かれて、旧体制のイラク、タリク・アジズ、外務大臣でもいらっしゃいましたけれども副総理という立場だったかと、調べたらそうなっていましたけれども、その会談が行われました。そして、その後、二週間余りの後、イラク戦争が勃発するというようなタイミングで、大変、本当に厳しい会談というか、なかなか相手がよく読めないという中で特使として行かれたという状況があったかと思います。

 その後、イラク戦争、ちょっとここは余り触れたくない部分ではありますがあえて申し上げますと、今、さっきお話があったリーダーシップが欠けるというような、イギリスが今ブレグジットの関係でもめていますし、リーダーシップを発揮できなくなってきているような状況の中で、当時、ブレア首相が、大量破壊兵器の問題でアメリカに追随してしまった、逆にフランスとかドイツは追随しなかったみたいなところがあって、我が国はどうだったかという点はきちっとレビューをしていく必要はあると私は思っています。

 そういった当時もありましたけれども、その当時から、イラクの変化、あるいは昨今のシリアの状況、あるいは、この後また質問をさせていただくクルド難民の住んでいらっしゃる地域の問題、こういった現下の中東情勢を、いかに御認識を持っておられるか。

 これはこの間の挨拶の第四番目のあたりで発言されたことに関係するかと思いますけれども、お伺いできればと思います。

茂木国務大臣 委員御指摘のように、二〇〇三年の三月、私は外務副大臣でありましたが、イラクをめぐって情勢が緊迫している中で、平和的解決をぎりぎりまで追求する、こういった外交努力の一環として、総理の特使、スペシャルエンボイとしてイラクを訪問したところであります。

 タリク・アジズ副首相と会談を行いまして、小泉総理大臣からフセイン大統領に宛てた親書を手交して、英語、日本語、そしてアラビア語と織りまぜて、会談は二時間以上に及んだところでありますが、残念ながら、当時のフセイン政権、平和的解決の道を選択せずにイラク戦争に至ったということは、委員も御承知のとおりであります。

 その後の中東地域の情勢等を見てみますと、今のイランの情勢、さらにはシリア、トルコの問題を含め、関係諸国間の対立軸、これは更に今複雑化をして、また、テロの脅威が中東地域から世界じゅうに今拡散する、こういう状況に直面しているわけであります。

 こうした中、我が国としては、先般のサウジアラビアの石油施設への攻撃事案などによりまして、中東情勢が深刻の度を増していることを強く懸念をしております。中東の平和と安定、これは国際社会全体の平和と安定にとって極めて重要でありますし、原油輸入の八割以上をこの地域に依存する日本の国益にも直結をする問題であります。

 このように、中東情勢が厳しい状況であればあるほど、米国との同盟関係にあり、また一方で、中東の国々、イランも含めて、長年友好な関係を維持してきた日本ならではの役割、これを果たしていきたい、こんなふうに思っております。

 古代ギリシャの英雄アレキサンダー、わずか十年でマケドニアからインダス川にわたります大帝国を築いて、まさに力の象徴のように見えるアレキサンダーでありますが、アレキサンダーも、剣によって得られたものは長続きしないが、優しさと節度によって得た愛は永遠である、こういう言葉を残しております。

 これからも、日本として粘り強く対話を続け、中東地域の緊張緩和、平和と安定の実現に向けて、できる限りの努力をしていきたいと思います。

杉本委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりだと思いますが、きょう山内委員がたしかジョセフ・ナイさんの話をされて、ハードパワーじゃなくてソフトパワーだとおっしゃったんですが、何かスマートパワーという表現もあるようでございますので、そういった意味で、日本の立ち位置といった意味では、ソフトパワー、スマートパワーを発揮していただきたいと思っております。

 それで、あと、ちょっときょうは日米自動車交渉については触れませんけれども、一つだけ、質問はしませんが。

 日米自動車交渉が、当時、橋本通産大臣とミッキー・カンターさんの間で行われた際に、口では約束したことと契約文がずれていて、結構通産省の御当局、当時通産省、今経産省ですけれども、大変御苦労があったというようなことを漏れ伝え聞いた記憶がございまして、先般、担当の北米局関係の方々から御答弁いただいたら、当時と、WTOになって大分違っているので、そういうことはないです、御心配なくという御指摘はいただきましたけれども、本当に大丈夫なのかという点は交渉の中で御留意いただいておきたいなということをちょっと付言させていただきます。

 さて、次に、直近、ペンス米国副大統領がトルコに行かれて、数日か、停戦という状態にエルドアン大統領との話合いで持っていったということが記憶に新しいわけですけれども、今のシリアの内戦の状況、まずはロシアが入っていき、そして直近、米軍が撤収するという流れになり、クルド人のエリアにトルコが侵攻しているという状況ですけれども、ちょっと今御答弁があった部分と重なるかもしれませんけれども、殊にこの中東の平和と安定にどういう形でいかに取り組まれていくのか、改めて、再度伺います。

茂木国務大臣 中東情勢、力の空白がどういうまた偶発的な衝突を生むかとか、本当に目を離せない状況である、こんなふうに思いますが、シリアで現在も、一部地域で軍事衝突が継続をしておりまして、多数の難民であったり、国内避難民が存在するなど、深刻な人道状況、これも続いているわけであります。

 シリア北東部におけます軍事作戦については、シリア危機の解決をより困難にさせ、また人道状況のさらなる悪化を招くとの観点から、十七日のアメリカとトルコの合意であったり、昨日二十二日に行われましたロシア・トルコ首脳会談等も踏まえ、我が国としても関心を持って事態を注視していきたい。シリア危機に軍事的な解決はない、このように思っております。

 我が国としては、シリア国内の人道状況の改善と国連安保理決議に基づいた政治プロセスの進展に向けて、関係国が建設的に関与することを期待いたしております。日本としても、シリア及び周辺国での人道支援を通じて、シリア危機の解決に向けて国際社会と引き続き連携をしていきたいと思います。

杉本委員 答弁ありがとうございます。

 それで、中東といっても、私はその経験が大臣みたいに深くはないんですけれども、私が感じている限りでは、中東といってもやはり一言で言い尽くせなくて、例えば、友好的なヨルダンの方々は、実は湾岸諸国に出稼ぎに行って、稼いで家族を養うみたいなという部分と、やはり資源がある国々とない国々というような、南北間格差というんですか、南北が逆かもしれませんけれども、そんな状況もあるかというふうに認識しています。

 申し上げたヨルダンでは、シリアの難民がザワタリ・キャンプというようなところで、北の方、ヨルダンの北のあたりで難民を抱えて御苦労されているという現場もちょっと見てきた記憶があります。

 そんな中で、河野前外務大臣と結構質疑をさせていただいて、提起をさせていただいて、予算委員会でも、麻生副総理、予算を握っていらっしゃる財務大臣がいらっしゃるところであえて質疑もさせていただいたんですけれども、ヨルダンとの関係というのをもうちょっと生かして、我々、中東に対する意識というのは、政府の方々のみならず、国会皆が共有を更にしていただくことが望ましいかと私は思っております。

 そんな意味で、十七日には、安倍総理とアブドラ国王と、十分間電話で会談、協議があったと。総理は、九月にニューヨークで大変有意義な首脳会談ができたことを言われ、引き続き緊密に連携したいと日本側の意向を伝えた。アブドラ国王からは、台風十九号の被害についての最大限の支援があるとの申出を頂戴し、総理は謝意を述べられたということですし、昨日の即位礼正殿の儀では、国王ではありませんでしたけれども、皇太子殿下がお運びいただいているというような極めて友好的な関係であり、国交樹立ちょうど六十五年に当たるのがことしではないかというふうに思っております。

 中東の平和と安定、そして、より我が国が、国会も含めて、行政だけではなくて立法府もより中東にコミットしていくというような意味から、たびたび日本にお運びいただいているという認識は持っていますけれども、ヨルダン国王に来日時に国会演説をしていただいて、我々はより理解を深めるべきではないかということを何度か申し上げているんです。

 関係者からは、相手の御意向があるということは十分伺っていますし、まずは先方からのアクションみたいなものが必要だというふうにも伺っておるんですけれども、今臨時国会は日にちが厳しいし、いろいろ日程もということで大変厳しいかもしれませんが、できればこの臨時国会で、あるいは次の通常国会で、解散がなければということもあるかもしれませんけれども、そういった意味で、我々、特に私は首の皮一枚でつながっていますので、何ともですけれども。

 とにかく、この日本の、天皇陛下が言われた平和を、世界の平和ということを進めていくためには、アブドラ国王の国会での演説をぜひ大臣並びに関係の外務省の方々からうまくお誘いいただくようなことで、決してネガティブに御返事が来ると私は思えないので、ぜひアブドラ国王の国会での中東問題に関する、あるいは世界の平和についての演説等をしていただけないかなと思っておりますけれども、就任された大臣の御所見を伺えればと思います。

茂木国務大臣 先月九月の国連総会の際の日本とヨルダンの首脳会談、アブドラ国王陛下との首脳会談、私も同席をさせていただきました。それから、冒頭指摘のありましたあの二〇〇三年当時、私は二回イラクに行っておりますけれども、いずれもヨルダン経由でイラクに入るという形でありまして、ヨルダンは、御指摘のように、今多数のシリア難民を受け入れて、中東和平であったりとか、テロ、過激主義対策に全力で取り組んでいる、中東地域における安定のかなめでありまして、また、日本が中東外交を強化していく上で不可欠な戦略的なパートナーであると考えております。

 アブドラ国王陛下は大変な親日家であります。そして、卓越したリーダーシップによりまして安定した国家運営にも取り組んでおりまして、九月の首脳会談でも、中東情勢について本当に深い、そして幅広い見識をお持ちだと、大変私も感銘を受けたところでありまして、国王陛下に国会で演説をいただく、こういう御提案につきましては、今後訪日が実現する場合、もちろんヨルダン側の御意向、こういったものもあるわけでありますが、国会で御判断いただくものだと考えておりますが、そのような方針が決まった場合には、外務省としてもしっかり対応したいと思っております。

杉本委員 ぜひ前向きに、本当に、世界の平和と、令和の時代に入りまして、天皇陛下のお言葉にもございますので、ぜひ国会も協力し、実現をお願いしたいと、各大臣始め皆様にお願いをさせていただきます。

 時間がもうなくなってきましたので、残余の質問については次回に回させていただこうかと思っていますけれども、特にこれは政府全体にお願いしておかなきゃいけないですが、次なる質問につなげてという意味で私から一方的に申し上げますけれども、やはり少子高齢化というのが実はデフレの主要原因ではないかと私は認識をしております。

 そんな中で、投資先を見つけなければならないという意味からすると、やはり中東も一つの方向感かもしれないですし、あるいはアジアであり、あるいはアフリカといった地域が、やはり我々が、マーケットとして、まあ言い尽くされているかもしれませんけれども、成長する地域にこそ我々の投資先があるということで、国内に投資先がない中で無理やり投資先をつくるというのは、政府が需要をつくる以外は、なかなか民間が何か投資をというのは難しいと思うので、そういった意味で、海外のマーケットを民間がより開拓しやすいような形にしていくというために、ぜひ外務省挙げて、大臣に御活躍いただいて、今後、RCEPであるとかTICADの活用とかそういったこともお願いをさせていただき、時間となりましたので、終了させていただきます。

 ありがとうございました。

松本委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 希望の党の井上一徳です。

 私は二つ、シベリア抑留者の遺骨取り違え問題、それと、水産庁の船舶と北朝鮮の漁船が衝突して沈没した事案、この二つについて質問をさせていただこうと思います。

 まず、こちらのシベリア抑留者遺骨取り違え問題ですけれども、資料でお配りしておりますが、戦没者の遺骨、これは全体でいうと海外の戦没者が二百四十万人おられて、収容遺骨が約半分の百二十七万六千柱、それから、未収容の遺骨がまだ百十万二千四百柱残っているということです。

 それで、今回のシベリアの方ですけれども、この旧ソ連邦を見ていただきまして、戦没者が五万四千四百人おられ、そのうち、収容できているのが二万一千九百十体、三万二千四百九十柱がまだ未収容の状況にあります。

 そういう中で、この遺骨収容、収集というのは、ボランティアの方が本当に使命感を持って熱心に取り組まれております。そういうような取組もあるんですけれども、まだこういう状況にとどまっている。

 その中で、報道がありまして、平成十一年から平成二十六年にかけてロシア国内の九カ所で収集した遺骨についてDNA鑑定を行ったところ、五百九十七人分については日本人でない遺骨の可能性がある、三百三十六人分が千鳥ケ淵戦没者墓苑に納骨されているという問題であります。

 これは本当に、熱心に、信念を持って遺骨収容、収集されているボランティアの方々にとっても大変驚きでありますし、慰霊の根幹にかかわるような大変深刻な問題だというふうに思っております。

 まず、この問題について茂木外務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

茂木国務大臣 御指摘の事業は、一九九一年に締結をされました日ソ間の協定に基づいて、厚生労働省が所管して取り組んできた事業でありますが、外務省としては、厚生労働省の要請に基づいて、外交ルートを通じて事業の年間計画をロシア側に通報するなど、必要な支援を行ってきたところであります。

 また、御指摘のような事態になった、日本人でない遺骨が収容された可能性が明らかになった七月以降、厚労省との間で連絡をとり合っているところでありまして、外務省としては、厚生労働省からのロシア側との協議の要請について、外交ルートを通じ先方に伝達するなど、引き続き必要な支援を行っていく考えであります。

井上(一)委員 ぜひ、政治家茂木大臣としても、この問題についてはしっかり取り組んでいただきたいと思います。

 この取り違え問題が生起した結果、報道によりますと、先月下旬に予定されていた日本の遺骨調査団の派遣がロシア側の意向で中止になったとか、それから、長年、国の遺骨収集事業に協力してきた日本のNPO法人、日本青年遺骨収集団、この皆さんも当分の間、事業への参加の中止をすることに決めたということで、今後の遺骨収集に多大な影響が出る可能性が指摘されております。

 今後、ロシアとの協議も含めて、このシベリアでの遺骨収集、どのように進めていかれるのか、お聞きしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の事例を踏まえまして、九月に課長級職員がロシア外務省を訪問し、ロシア側と意見交換を行ったところでございます。本件につきまして、今後も情報共有と意見交換を継続して行う必要があること、また、ロシアにおける遺骨収集は、協定に定められているとおり、人道的視点に立脚し、両国民間の相互信頼のもと、これまで実施してきたところであり、今後とも継続して行う必要があることにつきまして、双方が一致したところでございます。

 現在、今後の遺骨収集の作業手順等について、有識者会議において御議論をいただいているところでございます。

 ロシアにおける遺骨収集事業の実施につきましては、外務省と連携し、有識者会議における議論の内容をロシア側とも共有することなどにより、ロシア側の関係者の理解を得ながら協議を進めてまいります。

井上(一)委員 ぜひ、外務省と連携をとって、この事業がスムーズに進むように尽力していただきたいと思います。

 千鳥ケ淵戦没者墓苑、先ほど申し上げましたように、日本人でない可能性のある三百三十六人分、これが納められているということで、やはり参拝者がわだかまりなく慰霊できるようにするということが非常に大事だと思うんですが、この三百三十六人、日本人でない遺骨が収納されている件については今後どのような対応を考えておられるか、お聞きしたいと思います。

辺見政府参考人 お答え申し上げます。

 千鳥ケ淵戦没者墓苑には、埋葬地資料、現地調査等で得られた証言など入手可能な証拠に基づき、日本人の遺骨である蓋然性が高いと収容時に判断し、持ち帰った遺骨であって、御遺族に引き渡すことができないものを納骨しているところでございます。

 戦没者遺骨のDNA鑑定会議におきまして日本人でない遺骨が収容された可能性が指摘された埋葬地に係る遺骨につきましては、現在、有識者会議のもとに設置された専門技術チームにおいて、日本人である可能性の確認を進めているところでございます。

 本件の御遺骨の取扱いにつきましては、こうした確認結果も踏まえ、御遺族を始めとする関係者の方々の声を伺いながら、適切に対応してまいる所存でございます。

井上(一)委員 ぜひ、遺族の方々の御心情というのが非常に大事だと思いますので、遺族会とよく話もしていただきたいというふうに思います。

 それで、今の遺骨収容事業というのは厚生労働省が中心になってやっているわけですけれども、私はやはりこれは政府全体で体制を組んでやるべき本当に大事な仕事じゃないかと思っておりまして、やはり内閣官房なり内閣府にきちんと担当室を設けて取り組む必要があるのではないかと思っていますが、この点についてはいかがでしょうか。

大塚政府参考人 お答えをいたします。

 このシベリア抑留者の遺骨の収集の問題につきましては、所管省庁が厚生労働省ということで設置法等でも位置づけられ、その上で、関係省庁と連携をしながら今のこの事業が進められているというふうに承知をしてございます。

 一方で、内閣府設置法では、この遺骨の収集に関する事務は所掌事務に含まれてございませんので、まずはその所管省庁、厚生労働省を中心に対応いただくのが適切と考えているところでございます。

井上(一)委員 国の命令で戦地に赴いて、そこで戦い無念にも亡くなった方々の御遺骨を確実に必ず祖国に返還するということは、やはりこれは国の責務だと思いますので、ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。

 それでは次に、水産庁の船舶と北朝鮮の漁船の衝突事案について伺いたいと思います。

 これはビデオを見せていただきました。大変危険な業務だというふうに思っておりますし、水産庁の船舶の方々、大変よく対応されたというふうに思っております。

 ただ、私、ちょっと違和感がありますのは、これは水産庁の船舶ではなくて水産庁の用船だというふうに聞いております。

 これは資料の二で見ていただきたいんですけれども、これは水産庁のホームページからとった資料なんですが、水産庁の所属船舶としては、漁業取締り船は七隻しかありません。他方で、水産庁に聞くと四十四隻あるということなんですが、残りの三十七隻は民間から借り上げた船舶だと。

 今回の衝突した事案があった船舶は「おおくに」ということですが、この「おおくに」もいわゆる用船だということで、乗組員の人はみんな民間人、その中で一人だけ漁業監督官が乗っておられるということなんですけれども、大和堆での事案はやはり国際問題に発展する事案でありますし、しかも、やはり公権力を執行するとなると、漁業監督官一人で公権力の執行というのはほとんど私は不可能に近いんじゃないかと思っています。

 そういう意味で、やはりこういった大和堆での事案については、水産庁の所属している船舶、これで対応すべきだというふうに私は思っているんですけれども、政府として今後どういうふうに対応を考えておられるか、お聞きしたいと思います。

伊東副大臣 お答えいたします。

 大和堆周辺水域におきましては、広域な水域で多数の違法外国漁船に対応するために、水産庁といたしましては、海上保安庁と連携しつつ、官船の指揮のもと、水域を分けて用船を配置する形で漁業取締り活動を行っているところであります。

 官船に関しましては、本年度末には新造船一隻を追加配備いたしますとともに、既存船一隻につきましては、大型化し性能を向上させた代船を配備する等の体制強化を図っているところであります。ちなみに、令和三年度には、更にもう一隻、官船を配置する予定でございます。

 なお、用船につきましても、官船と同様の装備を有しておりまして、違法漁船に対峙できる能力を備えており、通常の場合は十分に取締りの任務を果たせるものと考えております。

 また、用船に乗船する漁業監督官についてでありますが、漁業取締り体制の強化の観点からも増員を毎年図っているところでありますが、引き続き必要な人員を確保できるよう更に努めてまいりたい、このように考えております。

井上(一)委員 これから、大和堆での事案というのはこれからも発生する可能性が非常に高いと思いますので、ぜひ体制強化をしっかりしていただきたいと思います。

 この漁業監督官それから乗組員、これは、先ほどビデオを見ましたけれども、海上において非常に危険な業務に従事しているということですが、この処遇については、他の海上で任務に当たっている公務員と比べてそんな高くないというか、低いというふうに聞いております。

 やはり同様の処遇を行うことが非常に大事だと思うんですけれども、今、農水省としてどのような処遇改善に取り組んでおられるか、それから、その要求をしているというふうに聞いておりますので、それを踏まえて人事院として今どういうような対応を考えておられるか、それぞれ質問して終わりたいと思います。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産庁の官船に乗船している漁業監督官につきましては海事職俸給表が、用船に乗船している漁業監督官につきましては行政職俸給表が適用され、給与が支払われております。また、立入検査等に従事した漁業監督官に対しましては特別手当が支給されているところでございます。

 漁業監督官の処遇につきましては、類似の業務に従事する他省庁の例も参考に、関係機関とともに、現在その改善に努めておるところでございます。

 以上でございます。

佐々木政府参考人 お答えいたします。

 漁業監督官を含め、公務員が高い士気を持って職務に精励するよう適正な処遇を確保することは、国民の安心、安全な生活を実現する観点からも重要と考えております。

 漁業監督官の給与処遇につきましては、引き続き、水産庁から実情等を伺いながら、必要な検討を行ってまいる所存でございます。

井上(一)委員 ぜひ、処遇改善、しっかり確保していただきたいと思います。

 では、以上で終わります。ありがとうございました。

松本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時六分散会


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