衆議院

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第6号 令和2年5月13日(水曜日)

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令和二年五月十三日(水曜日)

    午前九時十五分開議

 出席委員

   委員長 松本 剛明君

   理事 岩屋  毅君 理事 木原 誠二君

   理事 鈴木 憲和君 理事 中山 泰秀君

   理事 山田 賢司君 理事 大西 健介君

   理事 山内 康一君 理事 竹内  譲君

      畦元 将吾君    尾身 朝子君

      城内  実君    黄川田仁志君

      新藤 義孝君    杉田 水脈君

      鈴木 貴子君    鈴木 隼人君

      武井 俊輔君    中曽根康隆君

      中谷 真一君    中山 展宏君

      西田 昭二君    阿久津幸彦君

      小熊 慎司君    岡田 克也君

      玄葉光一郎君    森山 浩行君

      岡本 三成君    穀田 恵二君

      杉本 和巳君    井上 一徳君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   外務大臣政務官      尾身 朝子君

   外務大臣政務官      中谷 真一君

   外務大臣政務官      中山 展宏君

   国土交通大臣政務官    和田 政宗君

   防衛大臣政務官      渡辺 孝一君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          田中愛智朗君

   政府参考人

   (外務省大臣官房地球規模課題審議官)       塚田 玉樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 小野 日子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 吉田 泰彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 赤堀  毅君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 田村 政美君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   久島 直人君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    鈴木 量博君

   政府参考人

   (外務省国際協力局長)  鈴木 秀生君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 有泉  秀君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 石川  武君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十三日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     畦元 将吾君

同日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     西田 昭二君

同日

 辞任         補欠選任

  西田 昭二君     小野寺五典君

    ―――――――――――――

五月十二日

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルゼンチン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウルグアイ東方共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とペルー共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジャマイカとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウズベキスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とモロッコ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルゼンチン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第六号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウルグアイ東方共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第七号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とペルー共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第八号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジャマイカとの間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第九号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウズベキスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とモロッコ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

松本委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房地球規模課題審議官塚田玉樹君、大臣官房審議官小野日子君、大臣官房審議官吉田泰彦君、大臣官房参事官赤堀毅君、大臣官房参事官田村政美君、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長久島直人君、北米局長鈴木量博君、国際協力局長鈴木秀生君、内閣府大臣官房政府広報室長田中愛智朗君、財務省大臣官房審議官有泉秀君、防衛省防衛政策局次長石川武君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

松本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

松本委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。

岡田委員 立国社の岡田克也です。

 きょうは、核の問題について大臣の御見解を聞いて議論したいと思います。

 まず、二〇一八年のNPR、「核態勢の見直し」ですね、米国政府が発表しました、トランプ大統領のもとでのものですが。これに対して、当時の河野外務大臣は、我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にしているとして、今回のNPRを高く評価するというふうに言われたわけです。

 私はかなり違和感を持って聞いたわけですが、茂木大臣もこの二〇一八年NPRに対して高く評価しているんでしょうか。

茂木国務大臣 まず、NPRについてでありますが、委員も御案内のとおり、東西冷戦終えんの五年後、一九九四年に米国でクリントン大統領が同政権としての「核態勢の見直し」、NPR、ニュークリア・ポスチャー・レビュー、これを発出して以来、各政権ごとにNPRを発出してきたところであります。

 これら歴代政権のNPRは、その時々の安全保障環境がどうなっているかとか政治的スタンスの違い等によって一定の差はあるものの、基本的にはニュークリア・ポスチャー、核態勢のレビューでありまして、一つは、核攻撃の抑止を核兵器の目的の基本に置いていること、そして、冷戦後も同盟国に対して拡大抑止を提供していくこと、さらに三つ目として、核軍縮・不拡散の努力を継続していくこと等の大きな方針については一貫した内容になっている。私は、これがまず大きなポイントである、そのように考えております。

 二〇一八年のNPRにおきましても、北朝鮮によります核・ミサイル開発の進展であったり、ロシア、中国の動向などから、オバマ政権がNPRを発出した二〇一〇年以降、安全保障環境が急速に悪化したとの評価から、二〇一〇年のNPRと比較すればそのトーンや具体的記述に一部変更はあるものの、今申し上げたとおり、大きな方針についての一貫性は保たれている、このように考えております。

 その上で、核兵器のない世界の現実に至る道のりにおいて、我が国にとっても、現実に核兵器などの安全保障の脅威が存在する以上、NPRの柱の一つであります核抑止を含みます米国の拡大抑止は不可欠であると考えております。

 これらの観点から、二〇一八年二月に米国が発表しましたNPRは、米国による抑止力の実効性確保と我が国を含む同盟国に対する拡大抑止へのコミットメントを明確にしているものでありまして、このような方針を示したニュークリア・ポスチャー・レビュー、これを我が国としては高く評価している。

 だから、核攻撃の抑止、これを核兵器の目的の基本に置きつつ、核軍縮・不拡散の努力を継続している、こういう大きな方針は変わらない中で、同盟国への拡大抑止へのコミットメント、これを明確にしている、こういった点で高く評価をいたしております。

岡田委員 私は、二〇一〇年、オバマ大統領のNPRが出たときに、外務大臣としてこれを高く評価したものであります。

 二〇一〇年と一八年を比べますと、大枠で大臣の言われたようなことが言えるのかもしれませんが、しかし明確な違いがある。それは、核兵器の役割をどう考えるかということだと思います。

 オバマ大統領のもとでのNPR、二〇一〇年NPRは、核兵器の役割を低減させるということを明確に打ち出した点で従来とも異なったわけであります。例えば、消極的安全保証、核兵器を持たない国には核兵器を使用しないということを明確にした。それから、核兵器の役割を核攻撃の抑止という唯一の目的に限定すること、ソールパーパス、これについては、そこまではいかないものの、そのような政策が安全に採用され得る条件を創出するように努力していく。かなりソールパーパスに近づいたというのが当時の私の評価でありました。

 それに対して二〇一八年のNPRでは、消極的安全保証について、これを積極的に評価するということはなく、そして、先ほどの、核兵器の役割を核攻撃の抑止という、ソールパーパスはともかくとして、核の使用についてかなり具体的に書いた。つまり、核兵器国が、核で攻撃しない場合にも核の抑止あるいは核の使用ということを、まあ従来から認めてきているわけですが、具体的に二〇一八年NPRでは、米国や同盟国の一般市民やインフラに対する攻撃、これは核攻撃に限らないわけです、攻撃を例示して、そういう場合には核の使用を認め得るということです。これは、やはり核の役割というものをかなり拡大したと言わざるを得ないし、一般的にそういう評価をされていると思うんです。

 ここは、大臣、どう思われますか。

茂木国務大臣 先ほど冒頭の答弁でも申し上げましたが、やはり安全保障環境の変化というものによってNPRというものは当然変わってくると思っておりまして、二〇一八年のNPRは、核兵器の役割を拡大するか縮小するかというよりも、急速に変化する安全保障環境、例えば、北朝鮮によります核・ミサイル開発の進展等に対処するために、核兵器の役割というものを改めて明確にし、敵側の誤認や誤算のリスクを減らすことで米国の抑止力の実効性を確保することを意図したもの、このように理解しております。

 そして、もう一つ、ソールパーパスの話があったわけでありますが、二〇一〇年のNPRにおきましても、また二〇一八年のNPRにおきましても、先ほど申し上げた大きな方針の一つに、核攻撃の抑止を核兵器の目的の基本に置くこととしております。一方、二〇一〇年のNPRでも、委員も御案内のとおり、米国は、唯一の目的、ソールパーパスを採用する用意は現時点ではできていないとしておりまして、いわゆる唯一の目的を採用しないという安全保障環境の認識、そして核兵器の目的に対する考え方に対して本質的な違いがあるとは認識しておりません。

 それでも、二〇一八年、具体的に書いているじゃないか、こういう御指摘かと思いますが、その上で、二〇一八年のNPR、これは核兵器の目的を明示的に列挙しておりますが、これらは、核兵器の役割を改めて明確にすることで、敵側の誤認や誤算のリスクを減らし、米国の抑止力の実効性を確保することを意図したもの、このように理解をいたしております。

岡田委員 先ほど言いましたように、ソールパーパスは採用していないものの、ベクトルは違うわけですね。ソールパーパスを明確に否定したトランプ大統領のNPR、しかし、オバマ大統領のNPRにおいては、そのような政策が安全に採用され得る条件を創出するよう努力していくということで、明らかにベクトルは異なるということは申し上げておきたいと思います。

 これは多分、大統領選挙の結果、どちらの候補者が大統領になるか、次の大統領選挙ですね、それによってまたかなり異なってくるのではないかと私は思っております。

 それじゃ、もう少し具体的に聞きますが、二〇一〇年のNPRでは、新たな核弾頭の開発を行わない、それからトマホークを退役させる、こういったことを具体的に提案をいたしました。これに対して二〇一八年NPRでは、逆に、小型核の開発や新たな艦船発射型巡航ミサイル、SLCMの開発が強調されています。ここは明らかに異なる点ではないでしょうか。

茂木国務大臣 これは考え方というか解釈にもよるんだと思いますけれども、例えば低出力の核の導入、二〇一八年のNPRにおいて米国は、米国自身も低出力核を保有することで、相手側に例えば限定的な核の先制使用の余地があり戦略的優位性を得られるとの誤った認識を持たせないことによりまして、相手側によります核の先制使用であったりとか核のエスカレーションのリスクを低減するものであって、核の敷居を下げるものではなく、むしろこれは上げるものである、このように説明していると理解をしております。我が国としても、そのような意図によるものと受けとめているところであります。

岡田委員 そうすると、大臣は、そういった非戦略核、戦術核と言ってもいいかもしれません、それが核使用の敷居をむしろ上げるというトランプ大統領のNPRの考え方に賛同するということですか。

茂木国務大臣 私がトランプ大統領の考え方に賛同するかどうかというよりも、一般的な考え方として、この例えば核の抑止力、これをきちんと確保するために、相手側に誤算があるということは決していいことではない。相手側にきちんと、こちらが持っているものがどういうものであるか、またそれをどうしているかということを示すことが核抑止力の実効性を高める、そのように考えております。

岡田委員 明確に答えてもらいたいんですが、これは両説あるわけですね。そういった戦術核を持つことが核使用の敷居を低くする、むしろ使いやすい、使える核ということで核使用の可能性が高まるという考え方と、いやいや、そういうものがむしろ敷居を高くするんだという考え方があります。

 先ほど大臣は、そういった戦術核あるいは小型核を持つことが核使用の敷居を高くするというアメリカの考え方について、それを肯定的に言われたと思うんですが、いかがですか。

茂木国務大臣 肯定的に捉えられる面もあると考えております。

 例えば、さまざまな核能力をお互いに持っているとする。例えば、私が素手だけしかない、素手の次はピストルしかない、そこで岡田委員が竹刀を持っていらっしゃる。竹刀でたたいたときに、まさかピストルでは攻撃しないだろう。こういうふうな誤認を与えることというのは避けることができるんだと思っております。

岡田委員 そこは考え方としては二つあると思いますね。ですから、そういった戦術核の使用というものが、結局、戦術核の使用をすればそのことが戦略核まで行き着いてしまう、そういうリスクがあるという、そこを重視する考え方も当然あるわけで、どちらの考え方に立つかということは、これは非常に、私は、これからの日本の安全保障を考える上で重要なところであると。大臣は、はっきりとはおっしゃらなかったんだけれども。

 以前、エスカレーションラダーという表現をこの委員会でも使われたと思いますが、これは核についてのどういう考え方ですか。

茂木国務大臣 いわゆるラダーですから、はしごでありまして、はしごには当然段というのがあるわけであります。お互いの段が合っていれば、同じような形での抑止力が機能する。しかし、その段の例えば間隔がずれていた場合に、相手側がその中間の段階の段、そのレベルで何かのことをしたときに、こちら側がどちらの段で対応するかということによって、上の段でまさか対応することはないんであろうと。こういうことがあった場合に、これが中間の段での相手側の攻撃の余地があるのではないか、若しくはそれによってお互いがエスカレートしていく、ラダーがエスカレートしていく、こういう誤解、誤認を避けるために核攻撃の目的等々を明確にしている、このように考えております。

岡田委員 解説はいいんですが、大臣としては、このエスカレーションラダーという考え方をとるべきだというふうにお考えですか。

茂木国務大臣 エスカレーションラダーをとるべきかとるべきでないかというよりも、恐らく、このNPRも一九九四年にできたわけでありますけれども、東西冷戦が終えんをして、多分これから、米国にとっても国際社会にとっても安全保障環境が大きく変わっていく。単にアメリカがソ連だけを見てこの問題に対処すればいい、こういう時代ではなくなってきている。特に東アジア地域においては、そういったさまざまな新しい安全保障上の脅威というのが存在をするようになってきている、また、それが急速に増大をし、さらには不透明感が高まる、こういった中においては、よりきめ細かな核体制のあり方、こういったものを模索していく必要はある、こう考えております。

岡田委員 そこで、東アジア地域で、北朝鮮、中国、ロシア、それぞれの核の脅威というものが抽象的には存在するというふうに思うんですが、そうすると、大臣の今の御発言を踏まえると、日米同盟あるいは米国と言ってもいいんですが、そこでは、戦術核というのは東アジアにはないということですから、そこに空白がある。したがって、東アジアにおいて、そのエスカレーションラダーではないですが、同じようなレベルでの核戦力、戦術核というものが必要である、そういうお考えですか。

茂木国務大臣 そのように申し上げているわけではありません。実際にアメリカも地上発射型の中距離ミサイルを開発中でありますが、米国からは、直ちに配備する状況ではなく、また具体的な配備先についても検討は行っていないとの説明を受けているところであります。また、米国は、開発する中距離ミサイルは、核弾頭搭載型ではなく、あくまで通常弾頭搭載型である旨述べているところであります。

 恐らく、岡田議員、多分、もう核については戦略核にとどめて、それ以外のものはできるだけ持たないようにしよう、こういうお考えをお持ちなんじゃないかなと思うんですけれども、現状においては、通常兵力とそういったものを組み合わせた抑止力を持っていくということが現在の環境からは必要なんだろうと思っております。

岡田委員 私は、核についての議論をしているのであって、戦略核による抑止、それに加えてミサイルディフェンスやあるいは通常兵器による抑止というものの組合せの中で日本の安全というものを保っていく、そういう考え方ができるのではないかというふうに思っているわけです。

 一方で、いや、戦術核はどうしても必要である、そういうふうに恐らく日本政府は考えているのではないか、そういうふうに私は思うわけですね。

 もちろん必要だというのは、もちろん日本に配備をするということもあるかもしれませんが、政治的にそれが困難だとすれば、やはり米軍が戦術核を持って、そして抑止力を発揮するということが不可欠であるというふうに日本政府は考えているのではないか、いろいろな状況から私はそう判断しておりますが、そういうことはないんですか。

茂木国務大臣 必ずしもそういう考えは持っておりません。

 NPRにしましても、冒頭申し上げたような大きな三つの柱のもとで米国は核態勢というのをつくっている、こういう理解のもとで、しかし、現実に今出てきた米ソ冷戦構造とは違う形の、さまざまな核を始めとする脅威に対してどういう対応をしていくか。これは、安全保障環境も変わってまいりますから、いろいろなオプションというものを、ある意味採用するかどうかも含めて、ある程度検討する、また開発をする、こういったことは、御案内のとおり、じゃ、あしたから持ちましょうと言って、すぐに持てる話ではないわけです。

 トマホークがなくなる、そうすると、一旦やめたときに、来年からまた再開しましょうという話にならないわけでありますから、いろいろな状況を想定しながら開発であったりとか検討する、これは当然私は必要なことなんだと思っています。

岡田委員 トマホークについても、その退役、米国政府が決定したものですが、それに対して日本政府として異議を唱えたということはないんですか。

茂木国務大臣 済みません、ちょっと質問の趣旨がよくわからないんですけれども、もう一度お願いします。

岡田委員 トマホークの退役というのは米国政府がもう既に決定をしているわけですが、そこで、いや、トマホークの退役は困るというふうに日本政府が言った可能性もあるわけですね。

 実は、私が外務大臣のときに、メディアで報じられたことですけれども、米国議会が設置した戦略態勢委員会において、トマホークの退役にブレーキをかけたというふうに受け取られかねない発言があったと報じられました。私が調べた限り、明確なそういう発言はなかったというふうに判断をいたしましたが、しかし、疑念が完全に晴れたわけではない。

 今回のトランプ大統領のNPR作成に当たっても、トマホークにかわるものをぜひ開発するようにというふうに日本政府からアメリカ側に伝えた、そういうことはないんですか。

茂木国務大臣 済みませんでした。

 米議会の戦略態勢委員会のいろいろな検討の話だと思いますが、当時のやりとりについては私以上に岡田委員の方が詳しいと思いますので差し控えたいと思いますが、我が国は、米国の特定の装備体系の保有等について判断する立場には当然ないわけでありまして、米議会戦略態勢委員会とのやりとりにおいて、今御指摘のような特定の装備体系を米国が保有すべきか否かについて述べたことはございません。

岡田委員 私は戦略態勢委員会の件についてこれ以上言うつもりはありませんが、ただ、トランプ大統領になって、ロシアや中国の核に対抗して米国の核能力を強化しようと。具体的には、それは戦術核。したがって、東アジアにおける戦術核レベルでの態勢の見直しが始まっているというふうに私は理解をしております。小型核の開発とか、あるいはトマホーク退役後の最新のSLCMの開発を強調しているというのはそのあらわれであるというふうに考えております。

 このトランプ政権になってからの米国政府の考え方、東アジアにおける戦術核レベルの態勢を見直していこう、今はないわけですから、それをもう一度配備していこうという考え方について、どうお考えですか。

茂木国務大臣 昨年の八月二日にINFの全廃条約が終了したわけでありますが、この背景には、米国が主張するところのロシアによります深刻な条約違反が継続してきたことに加え、むしろ私はこちらの要因が強いのではないかなと思いますが、INF全廃条約で米ロに廃止が義務づけられてきたミサイルをそれ以外の国々が開発、実戦配備している、こういう状況の変化があると考えております。

 もちろん、日米間では、安全保障環境のあり方、これについてさまざまなやりとりは行っておりますが、そういった安全保障環境の中で核兵器も含めてどういった形の抑止力を持っていくか等々は、まさに、すぐれて米国が判断する問題であると思っております。

岡田委員 それは、すぐれて米国が判断する問題ではなくて、日本の安全保障政策の根幹でもあると思うんですね。果たして戦術核を東アジアに必要とするのかどうか。したがって、それはアメリカが決めることだと言って逃げることは私はできない、しっかりとした議論が必要だ、そういう思いで今議論をしているわけですが、いかがですか。それはアメリカが勝手に決めれば済む話なんですか。

茂木国務大臣 先ほどの答弁と今の答弁をあわせてお聞きいただければと思うんですが、先ほど答弁申し上げましたのは、米国は地上発射型の中距離ミサイルを開発中でありますが、米国から、直ちに配備する状況にはなく、また、具体的な配備先について検討は行っていないとの説明を受けている。また、米国が開発する中距離ミサイルは核弾頭搭載型ではなく、あくまで通常弾頭搭載型である旨述べていると理解をしております。

 そして、直前の答弁におきましては、私が申し上げた前に、この安全保障環境のあり方については日米間でさまざまなやりとりを行っております、こういう前提をつけた上で、最終的な判断は当然アメリカが行っていくものだ、こういうふうに答弁をさせていただきました。

岡田委員 トマホークは核を搭載することもできるし、通常の弾頭を搭載することもできる。だから、一方だけに限ったものをこれから新たに開発するということは、私は全くないんだ、どちらも可能なようなものとして開発していくというふうに思うんですね。それから、二〇一八年NPRでも、必要に応じて米国は核兵器を北東アジア等の地域に配備する能力があるということも言っています。

 ですから、そういった新しいミサイルの開発だけではなくて、例えば爆撃機に積む核爆弾といいますか、核を配備するとか、そういったことも考えられるし、それから地上発射型のミサイルに核を搭載するということも考えられる。いろいろなオプションがあるというふうに思うんですね。

 そういったことを、米国が志向している対中国、あるいはロシアだって、INF条約が全廃された以上、極東に同じような核ミサイルを設置をする可能性だってあるわけですから、それに対抗してアメリカが設置をするというようなことはあり得ないんでしょうか。私は、十分考えておかなければいけないことではないかと思うんですが。

茂木国務大臣 戦力というものは、確かに岡田委員がおっしゃった能力もありますが、あと、意思との組合せということになってくるんだろうと思っております。意思があっても能力がなければ、それは抑止力にはならないというのは明らかなのではないかなと思っております。

 そして、米国が最近言っていますことは、これは米ロだけではなくて、米ロを超えてより広範な国家、より広範な兵器システムを含む幅広い軍備管理の重要性、これを指摘しているわけでありまして、我が国としては、本件は、東アジアの安全保障にも直結することから、米国と連携しつつ、東アジア地域における望ましい安全保障環境の確保、透明性の向上の観点からしっかり議論していきたい、また、アメリカとも連携をしていきたいと思っております。

岡田委員 確かに、例えば中国の核、NPT加盟の核を保有している国の中で核能力を増強しているのは、現時点では中国だけ。それに対して日本が関心を持つことは当然であり、何とかして軍縮の方向に持っていかなきゃいけない。私も、実は外務大臣のときに、相当中国とこの問題では激しい議論をしたこともあります。ただ、その方法論としてINFを全廃してしまったことが賢明な道だったのかどうかというのは、相当私は疑問を持っているわけであります。

 この続きはまた次回に行いたいと思いますが、私は、どうも日本政府が、もう既に戦術核を、東アジアにその存在があることを期待して、かなり前のめりに米国と協議しているのではないかという、いろいろな情況証拠からそういうふうに疑念を持っておりますので、それは前のめり過ぎないか、もう少ししっかり国としての議論を経た上でそういう選択をとる、説明責任を果たしてとるというならともかくとして、そういうものがないままにどんどんどんどん前のめりになってしまっているとすると、それは国を誤ることになりかねないということを申し上げて、続きは次回にしたいと思います。

松本委員長 次に、山内康一君。

山内委員 立憲民主党の山内康一です。

 きょうは、最初に、コロナ危機にかかわるODAについて、特にNGOへの支援などについてお尋ねをしたいと思います。

 一次補正において八百四十億円、新型コロナウイルス対策関係のODA予算が組まれました。迅速な対応で、敬意を表したいと思います。

 コロナの問題、先進国でさえ大変な状況に陥っておりますが、発展途上国ではより深刻な状況になりかねません。医療崩壊という言葉がありますけれども、ふだんから医療水準が低い、もう前から医療が崩壊していた、そういう国が発展途上国にはたくさんあるわけですね。

 例えば、一説によると、一九一八年から一九年、スペイン風邪のときに、死者の六割は西インド地域であったという説もあります。西インド地域だけで二千万人亡くなったという説もあります。実は、ヨーロッパやアメリカ、日本といった先進国以上に発展途上国の方が深刻な事態に陥りかねない、そういうことがあると思いますので、ぜひ、二次補正、今、これから用意されることとなると思いますが、手厚くODA、途上国のコロナ対策、医療や公衆衛生の改善に関する予算をつけるべきだというふうに思います。

 それに関して、まず、外務大臣には人道援助の現場の余り末端の細かいことまでは報告が行っていないんじゃないかと思いますので、どういうふうに緊急人道援助の現場が動いているかということをちょっとだけお話しさせていただくと、例えば、難民キャンプでUNHCRの職員が自分たちで難民に食料を配るということは、実際、余りありません。実際には、難民キャンプの運営をやっているのは、UNHCRのインプリメンティングパートナーといって、契約を結んだNGOが実務に当たることが多いです。

 あるいは、国連食糧計画、WFPの職員が直接村に行って食料を配るということは、実際には余りありません。WFPは首都とか主要都市にある倉庫まで食料を輸出して、その末端の枝葉の部分の分配というのは大体NGOが実施をしております。

 あるいは、ユニセフが井戸を掘る、そういった場合も、実際にはユニセフと契約したNGOが現地で井戸を掘っている。オックスファムとかウォーターエイドとか、日本のピースウィンズ・ジャパンとかセーブ・ザ・チルドレン、そういう国際NGOが大体現場の仕事を担っているというケースが多いわけですね。

 例えて言うなら国交省の職員が自分で道路を建設しないのと同じことでして、国連職員でいったら、大体フィールドの一番の末端の仕事というのはNGOに委託する場合が非常に多いわけです。

 そういった意味では、国連に拠出して現地の支援活動を支えるというのも一つですけれども、直接NGOに資金を流す、日本のNGOに資金を提供する、そういうやり方もあります。その方が、恐らく、よく外務省の言う日本人の顔の見える援助という文脈では望ましいと思いますので、ぜひ、これから外務省、ODAの中で、特にコロナ危機対応のような緊急人道援助におきましては、NGO連携無償、あるいはジャパン・プラットフォームという仕組みがありまして、そういったNGOに対する支援をお願いしたいと思います。

 もう既に、日本のNGO、例えばジャパン・プラットフォームの関係団体、私、三週間ぐらい前に聞いた段階ですけれども、十三の日本のNGOが、世界二十四事業、約五億円ぐらいの事業の計画があるそうです。それをこれから外務省に申請をしてお金を出していただくという方向になると思うんですが、そういったNGOに対する支援のあり方について、大臣でも参考人でも結構ですが、お尋ねしたいと思います。

茂木国務大臣 まず、海外でのNGOの活動についてよく御案内の山内委員の方からさまざまな、例えばUNHCRにしてもWFPにしても、活動するに当たってNGOと連携をする、特に、ラストワンマイルといいますか、最後の部分というのはNGOの担っている役割が大きい、こういう御説明をいただきましたことに感謝を申し上げます。

 私も、外務副大臣時代もイラクの復興支援等々にかかわってまいりまして、山内委員ほどではありませんが、実際に現場を見る中でそういった感触も持っているところであります。

 そして、山内委員御指摘のNGOからの要望、NGO十三団体から現段階で四億八千万円規模の要望が出ている、これについては外務省としても把握をしておりまして、多くの我が国NGOが新型コロナ対応のためにさまざまな支援活動を検討していることを高く評価しているところであります。

 新型コロナの対策には国際協調が不可欠でありまして、感染拡大防止のために官民が連携して取り組んでいく必要があります。

 一昨日も、米国を始め七カ国の外相とテレビ会談を行ったところでありますが、そこでもやはり、今回の問題はそれぞれの国だけが対応するのでは難しいんだ、国際協調が必要であり、特に医療体制等々が脆弱な国で、また、例えばアフリカを見ましても、全体で人口十二億ぐらいでありますけれども、この感染の伸びのスピードというのは、大体、インドの人口、同じぐらいですけれども、そのペースぐらいという状態でありますが、今後、一旦広まったときに、それが医療崩壊につながったり、経済にもさまざまな悪影響が及ぶというのは、先進国以上の危機感を持たなければいけないと思っております。

 そういった中で、NGOによります支援については、現地の支援ニーズにきめ細かく対応することが可能でありまして、政府や国際機関による支援では手の届きにくい草の根レベルでの効果的な支援が可能であると考えております。

 外務省としては、まず、令和二年度の当初予算から、ジャパン・プラットフォームへの拠出も念頭に、新型コロナへの対応も含みますNGOの活動を引き続き支援をしていきたいと思っております。

 また、今後の新型コロナに関します国際協調、協力については、世界各地での感染の拡大状況、かなりピークを打っているなという国と、残念ながら、まだこれから感染者がふえていくんじゃないかな、こういう国もありまして、恐らくアフリカなんかもここら辺がまだら模様になっているという状況でありますが、そういった感染の状況であったりとか、それぞれの地域で必要とされる医療、保健ニーズなどを見きわめて、円借款、そして無償資金協力、技術協力、国際機関への拠出など、適切に判断して、実施をしていきたいと思っております。

山内委員 御丁寧な答弁、ありがとうございます。ぜひ前向きに、特に日本のNGOに対する資金提供について検討していただきたいと思います。

 それと次に、今大臣からも円借款のお話がありました。今こういったコロナ危機で、恐らく経済危機がこれからもっと深刻になってくるんじゃないかと思います。

 そういった中で、借款の問題あるいは債務の繰延べの問題についてお尋ねをしたいと思います。

 世銀、世界銀行グループとIMFは、既に三月二十五日に、所得水準の低い途上国に対する債務削減について共同声明を発表しました。それから、四月十五日のG20の財務大臣・中央銀行総裁会議におきましても、債務の猶予を求める最貧国の債務返済の時限的な猶予を支持するという声明を出しております。

 やはりこういう時期ですので、特に、貧しい開発途上国で、債務の返済よりも先にコロナ対策、医療体制の整備にお金を使わなきゃいけないのに、その限られた予算を借金の返済に充てる余裕がない、そういう国はふえていくと思いますので、債務の猶予について日本政府としても前向きに取り組むべきだと思います。

 その中で、G20の際の声明で、最貧国についての債務の返済猶予をするということですけれども、最貧国の定義について、政府参考人にお尋ねをしたいと思います。

有泉政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘ございましたとおり、ことしの四月の十五日に、G20財務大臣・中央銀行総裁会議及び主要国の債権国の集まりでございますパリ・クラブにおきまして、最貧国の公的債務の支払いの猶予をすることに合意したところでございます。

 お尋ねのございました最貧国の定義についてでございますが、世界銀行グループの最貧国向けの支援機関である国際開発協会、IDAの対象国か、これは七十六カ国ございます、国連が定義する後発開発途上国、これは四十七カ国のどちらかに属する国と定義されてございます。これを合わせますと、最初に申し上げました七十六カ国足すアンゴラ一カ国、これは重なりがございますので、はみ出るものとしてはアンゴラがございまして、合計の七十七カ国が対象になるということでございます。

山内委員 IDAの借入国という定義だと、実は日本の円借款の対象国というのはそんなに多く含まれません。例えば日本にとって非常に近い関係のあるASEANでいうと、最貧国の定義に含まれるのはカンボジア、ミャンマー、東ティモールの三つ、三カ国だけです。本当は日本にとって援助対象国、主要な対象国に含まれる国でも、例えばインドネシアとかベトナムとかフィリピンのような国というのも、これから非常に厳しい経済状況に見舞われると思います。そういうときに、円借款の債務の猶予、カンボジアとミャンマーと東ティモールしか対象じゃないというのは、ちょっと狭過ぎるんじゃないかなと。

 このIDAの借入国、最貧国の定義をもう少し広げて、これから先、日本にとって非常に重要な、ベトナム、インドネシア、フィリピン、こういった主要な国から債務の猶予の要請など、これからあるかもしれません。そういったときには、この最貧国の定義にこだわることなく、もう少し広い範囲を対象にして債務の猶予を考えるべきだと思います。それについて一言、政府の方からお願いします。

有泉政府参考人 お答え申し上げます。

 IDAの最貧国の定義につきましては、これは一定の基準に基づいて決まっているところでございます。委員御指摘の、今、そのほかの国についてということでございますが、今回の措置では、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に対して、とりわけ保健衛生面、経済面で脆弱な最貧国を対象とする、そういうような考え方になってございます。

 御指摘のございました、例えば中所得国の公的債務の支払い猶予についてですが、一般論を申し上げますと、当該国からの要請に基づきまして、パリ・クラブにおいて、IMF、世銀による債務に関する分析も踏まえながらどのように対処するかということを検討する、このようなことになってございます。

山内委員 最貧国、開発途上国一般の債務ということに関しては、やはり九〇年代ぐらいの構造調整政策の非常に大きな弊害ということもありました。これからコロナ危機で大変財政が厳しくなる国が多いと思いますので、行き過ぎた借金の返済を求めて緊縮財政を強いることがないように、特に、医療や教育といった分野への支出が減らないように、ぜひ、円借款など、そういった医療、教育あるいは公衆衛生といった分野に対する支出を支えられるように努力していただきたいと思います。

 ぜひ、外務大臣におかれましても、円借款、こういう医療や教育といった分野を削ることにならないように、減らすことにならないようにお願いをしたいと思います。

 次の質問に参りたいと思います。次は外務省に対して御質問をします。

 コロナ対策というと、どちらかというと、防護服とかマスクとか、あるいは薬品の提供ということに目が行きますけれども、もう少し広く対策を考えていく必要があるかと思います。まず手を洗えと言いますけれども、そもそも安全な水にアクセスできない人が何十億人と世界にいる状況ですから、コロナ対策といっても、狭く捉えずに広く、公衆衛生の改善あるいは保健教育の改善、こういったものまで含めていくことが大事だと思います。

 例えば、日本であれば、なぜウイルスにかかるかというと、ウイルスが例えばどこかドアに付着している、あるいは食事のときに手が汚れているとウイルスがそこから入ってくる、こういうことは小学校、中学校ぐらいでしっかり習うので常識なんですけれども、これが、発展途上国で初等教育も受けていない人にとっては、ウイルスという概念を理解させることが難しいということがあります。あるいは、字が読めない人にとっては、薬品と農薬を間違えて農薬の瓶を飲んでしまう、こういう悲しい事件が識字率の低い国では今でもよく起こっているわけですから、保健医療あるいは基礎教育、公衆衛生教育、こういったものも含めて日本として支援をしていただきたいと思います。

 そのために、一個ぜひお願いしたいのは、教育のためのグローバルパートナーシップ、GPEという基金があります。これは、事務局は世銀に置かれているんですけれども、日本も過去に拠出したことがあります。そういった教育のためのグローバルパートナーシップ基金、ここでも、コロナ対策、保健教育、感染症に関する教育、啓発キャンペーン、あるいは、学校の水回りを整備する、学校の公衆衛生、トイレの整備、こういったことも含めた支援を行っております。ぜひこういったところにも支援をしていただきたいと思っております。

 それから、もう一つ教育に関して。これは二〇一六年の世界人道サミットで設立された、教育を後回しにできないという名前の基金があります。これはエデュケーション・キャンノット・ウエート、ECWと略すんですけれども、こういった基金に対して、ぜひ日本としても拠出を考えていただきたいと思うんですけれども、外務省のお考えをお聞きしたいと思います。

塚田政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、衛生教育あるいはこの分野の子供の教育は大変重要であるというふうに考えておりまして、GPEあるいはECW、いずれも、緊急時、こういった紛争下の教育支援ということでいろいろな活動を行っているということを承知しておりまして、日本はGPEにはこれまでも拠出してきているところでございますが、ECWには今のところ直接の支援は行ってございません。ただ、ユニセフですとかあるいはGPEを通じて、緊急事態下の教育支援については実施してきている実績がございます。

 ただ、今委員御指摘のとおり、衛生教育を含む教育分野への支援というのは、今回の新型コロナウイルス感染症の世界的流行に鑑みまして極めて重要な分野であるというふうに考えますので、今回の御指摘も踏まえまして、こうした機関の特性をよく見ながら今後支援を検討していきたいというふうに考えております。

山内委員 今申し上げたGPEとECWの二つの基金のうちECWの方は、特に危機の国の教育を支援する基金です。例えば紛争地とか災害に見舞われた地域の学校の再建とか、あるいは難民キャンプでの教育、そういったものを支援するための基金ですので、今回、コロナ危機、世界じゅうで学校の休校が広がっております。そういった中ではECWの方にも日本政府として拠出すべきだと思いますので、二次補正以降検討すべきだと思いますので、お願いをしたいと思います。

 それと、GPEに関してですけれども、あるNGOの人に聞いたんですけれども、日本政府、外務省の人からGPEの担当者に連絡があって、教育支援に関しては、日本企業が裨益するプロジェクトでないと支援できませんと言われたと言っていました。外務省の担当官が日本企業の利益になる事業以外には金は出さないと言ったという証言があるんですけれども、これは大変問題のある対応だと思います。

 そもそも教育というのは、大体、途上国の教育というのは公教育ですから、企業が入り込む余地は余りありません。せいぜい建設会社が学校建設にかかわる、そういったことはあるかもしれませんが、ほとんどの場合は、途上国の教育省とか、そういった公的機関に対して支援することになりますので、日本企業がかんでくる余地というのはほとんどないと思います。そういった意味で、日本企業が関係していない資金は出せませんという外務省の担当者のそういうコメントというのは、非常に問題があると思います。

 これについて、外務省から説明を求めたいと思います。

茂木国務大臣 恐らく、今回の補正予算、大きく二つの柱からできておりまして、その一つは、今一番緊急のコロナに対して、その終息に向けたさまざまな取組をする。もう一つが、コロナ後の経済、我が国経済のV字回復、これを図っていくためのさまざまな施策を行っていく。

 この後者の中には、例えば海外に展開する日本企業に対する支援であったりとか、今後、グローバルなサプライチェーン、この見直しを行っていく、こういうための支援というのも入ってきまして、それは当然日本企業を裨益するような形で進められる趣旨のものだと思いますが、公衆衛生それから保健教育の分野というのは、私は必ずしもそれにはなじまない分野だと考えておりまして、まずは、委員、冒頭お話のありました、水をどうするか、そして、やはり衛生環境、手洗いをするとか、そういったことにおいては日本らしい支援もできると思いますし、GPEであったりとかECWに対して拠出を行うことによってそういったことの相乗効果をもたらすことも可能ではないかな、こんなふうに考えております。

 細かいやりとりの部分はわかりませんが、そういう今回の補正の性格上二つのものがあるということは確かでありますけれども、この公衆衛生、保健教育の分野は、むしろ、まさにコロナに対応する、V字回復の後ではなくてコロナに対応する、こういう観点から対応していきたいと思っております。

山内委員 私も、日本企業が専門性があって価格競争力があるのであれば、国際的な国連などの仕事をどんどん受注してほしいと思っていますが、他方で、日本企業が受注できないんだったら日本政府は金を出しませんよというやり方はちょっとあんまりだと思います。特にこういう人道的な目的の基金に関してそういう姿勢をとるというのは、日ごろ日本政府が言っている人間の安全保障とかSDGsとか、そういう視点とちょっと言行不一致になるかと思いますので、そういった、日本企業がもうからないんだったら金は出さない、そういう姿勢というのは改める必要があると思います。そういうふうに相手に伝わっているんだとすると、説明の仕方も問題があったと思いますので、注意をしていただきたいと思います。

 ちょっと時間がなくなってきたので、最後に外務省とシンクタンクの連携についてお尋ねしたいと思いますが、余り時間がないので先に結論を申し上げますと、日本の外務省は、かなりアメリカとイギリスの大学やシンクタンクにはお金を出しております。

 例えば、コロンビア大学に、平成二十六年度に四億八千五百万円、平成二十七年度に十一億円、二年間でコロンビア大学だけで十六億円、お金を出しております。コロンビア大学出身の国会議員の方も自民党に何人かいらっしゃいますけれども、大変日本研究が盛んなのは承知しておりますが、コロンビア大学、日本の大学でもこんなに多額の助成というのはなかなか出ないと思います。一つの大学に二年で十六億円も外務省はお金を出している。

 あるいは、ジョージタウン大学に、平成二十八年度、五億五千万円、お金を出しております。たしか河野太郎さんが出身だったかなと思いますが。それから、マサチューセッツ工科大学、平成二十八年、五億五千万円。平成二十九年、ニューヨーク大学法科大学院、六億円。トロント大学国際問題研究所、六億円。それから、アメリカのハドソン研究所、平成三十一年度、五億六千万円。相当な多額の金額を一つの大学なり研究所に、どかんと五億とか六億を出しているわけですね。

 そのお金の使い方、悪くはないと思うんですけれども、もうちょっと値切ってもいいかなという気もしますし、もうちょっと日本のシンクタンクにもお金を出してあげてもいいんじゃないかなと。半分、外務省の直営と言ってもいいような日本国際問題研究所、これが令和元年度で八億円です。私は、日本の国際問題研究所にもっと頑張ってほしいと思います。そこが、しかも外務省の半分直営みたいな研究所が八億円しかもらっていないときに、コロンビア大学が二年で十六億円。このバランスを考えると、もう少し日本のシンクタンクや日本の大学にお金を出せる仕組みがあってもいいと思うんですけれども、それについて外務省の見解をお尋ねしたいと思います。

赤堀政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、海外のシンクタンクへの支援もございます。他方、日本の国内のシンクタンクへの支援もございまして、外務省は、日本の外交シンクタンクの全体の育成強化を目的に、外交・安全保障調査研究事業費補助金として、令和二年度は五億五千四百十八万四千円を計上しております。また、国際共同研究支援事業費補助金により、シンクタンクの領土、主権、歴史に関する調査研究、対外発信活動を支援しており、令和二年度は五億一千二十一万五千円を計上しております。

 このようなことを通じて、また、人的交流あるいは国内のシンクタンクの研究と外務省員との緊密な連携ということを通じて、引き続き支援していきたいと存じます。

 以上です。

山内委員 私、個人的には、昔JICAにいたときに、ASEANの大学に対する研究協力プロジェクトを担当しておりましたが、こんな、一年で六億とか十億みたいな結構ぜいたくな使い方を見てすごいなと思いました。これについて一言、外務大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

 私は、アメリカの大学とかシンクタンクにお金を出すのは全然問題ないと思います。ただ、すごい額だなと思うのと、例えばですけれども、五億円を一つの大学に寄附するよりも、五千万円を十校の大学に寄附した方が、もしかしたら効果があるかもしれない。まあ、いろいろな考えがあると思います。それについて大臣の御所見をお伺いしたいと思います。特に、日本の国問研に対する支援の手薄さについて御意見をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣 恐らく、いろいろな拠出につきましては、どこに出すというよりも、まずは、どういう調査研究、これを今必要としているか、それが最も効果的に達成できる機関はどこなのか、こういう視点から出すことが多いんだと思いますが、その一方で、委員の問題意識でもあると思いますけれども、例えば世界のシンクタンクのランキングを見てみますと、百五十位以内に入っている日本のシンクタンクは残念ながら四つしかありません。大体、日本の教育機関と一緒ですよ。やはりトップテンの中にはとても入ってこない。こういう段階でありまして、日本の経済規模であったりとか国際的なプレゼンスから考えても、やはり私は低いと思います。

 そのためには、こういった国問研を始めとする日本のシンクタンクをしっかり育てていくということが重要でありますし、支援はしていきたいと思いますが、同時にシンクタンクの側にも、ある意味、自分で寄附が集まるような、いい研究をするという自負を持ってもらうことも必要なのではないかなと思っておりまして、先ほどのアメリカの機関の説明の中には、私の母校のハーバードは入っておりませんでしたけれども、金を稼ぐのがうまいんですよ、物すごく、資金を集めるのが。やはり資金が集まるからいい人材も集まる、そういう循環もつくっていきたい。

 ただ、今そういう段階ではありませんから、ある程度公的な支援も含めて、そういった世界のトップクラスに並び、これはやはりシンクタンクでもコミュニティーですから、そのクラブに入らないとやはりいろいろな交流もできなくなってきますから、そういったコミュニティーに入れるような一流のシンクタンクが育つということが、さまざまな形で国際世論を引っ張っていく上でも重要になってくるんじゃないかなと考えております。

山内委員 もう時間は済んでいますが、アジアでは、韓国やインドもかなりシンクタンク大国になりつつあります。日本はなかなか、アメリカほど寄附文化が発達していませんし、税制の問題もあって、企業もそんなに寄附をしてくれません。そういった意味では、一定、政府の助成というのは不可欠だと思いますので、同じ出すなら、アメリカばかりじゃなくて、国内の日本のシンクタンクにもお金を出して、世界のベストテンに確実に入れるのを一つ、二つはつくっていっていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。

松本委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 共同会派立国社の小熊慎司です。

 新型コロナウイルス感染症について、まずお伺いをいたします。

 過日も委員会で質問させていただきましたし、今の同僚の山内委員からもありましたとおり、国内の感染終息を万全の体制で目指さなきゃいけないという中にありながらも、国際的な連携が求められているところでもあります。

 アビガンについてまずお聞きいたしますが、無償供与については、過日の参議院の本会議でも大臣答弁がありましたし、その後の記者会見でも詳細な状況を述べておられますけれども、日本における世界への無償供与について、日々これはいろいろな申出もあるでしょうから、直近のこの状況をお聞かせいただきたいというふうに思います。

茂木国務大臣 私、ここのところ連日のように、海外の外務大臣と電話会談、テレビ会議等々を行うわけでありますが、アビガンに対する関心は本当に高いな、こんなふうに実感をいたしておりまして、これまで八十カ国近くから外交ルートでアビガンの提供要請を受けているところであります。五月八日に一カ国目に対して供与を行いました。これはエストニアでありますが、また、既に四十六カ国について具体的な供与を調整済みでありまして、調整が済んでいる国に対して順次供与を行っているところであります。

 エストニアに今供与済みでありますが、先般、エストニアのレインサル外務大臣、電話会談を行いましたが、大変感謝をいたしておりました。また今、オランダ、カザフスタンに対しては、恐らくきょう供与が行われる予定でありまして、さらに、ルクセンブルク、ハンガリーといった国々についても、近日中に輸送すべく調整中であります。これが現状です。

小熊委員 供給状況は次の質問でやろうと思っていたんですが、今答えていただいたので。

 まあ、そういう状況の中で、ただ、これは臨床研究目的なので、原則二十人分、最大でも百人分ということでもありますが、でも、これは、今大臣が言われたとおり、世界じゅうがある意味注目をしていただいているということで、臨床研究目的ではなくて、二十から百といったらまさに実験的な話でしかなくて、でも、需要はもっとあると思うんですね。これは国内的にもありますし、国際的にもあると思うんですが、治療薬として提供していく、橋渡しをしていくというような考え方、また方向性といったものは今検討しておられるのかどうか、お伺いをいたします。

茂木国務大臣 アビガンにつきましては、まず、このコロナの治療薬として早期承認が行われることが重要でありまして、そのための治験が行われているということでありますが、それと同時に、現在、生産量が限られておりまして、その中間財等、海外でつくっていたものを新潟の工場に戻すとか、そういうことも含めながら、二百万人分の国内備蓄を早期に達成しよう、こういったところで努めているところであります。

 そういった中で、海外におきましても、こういった臨床研究ではなくて、本来、治療に使いたいというのは当然の話であると思っておりますが、まずは、今、日本でも終息は残念ながらしておりません。そして、本当に効果のある薬というのがない中で、やはり国民の皆さんの不安というのも高まる。ですから、短期的には治療薬、そして中長期的にはワクチンを開発するというのが局面転換をする上で極めて重要でありまして、そこの中でアビガンというものが一つの有力な候補として挙がっているわけでありまして、そういった、日本でどれくらい使うようになるのか、また、どれぐらい備蓄が進むのか、こういった状況も見ながら、また、海外でどれだけのニーズも出てくるかということを考えながら、今後検討していきたいと思っております。

小熊委員 今後、柔軟に対応していただけるということでもあります。もちろん、まず国内の終息に万全の体制で臨まなければなりませんから、そうした中でも国際連携をしていくという中で、状況に応じてやっていただきたい。

 今大臣からもありましたとおり、これは、アビガンだけではなくて、ほかの治療薬も日本発のものが注目をされております。そうした問合せなんかもあるかというふうにも思いますし、また、ワクチン開発がまさにその根本的なところだというお話も今ありましたけれども、この治療薬、ワクチン開発が、国際的にも競争が激しくなっています。

 一方で、これはあえて言いますけれども、米中の覇権争いのように、それは理想主義的に物事を見ているだけでも仕方ありませんから、それも現実であり、アフターコロナ、もしくはコロナウイズという言葉もありますけれども、コロナのパンデミック以後の世界の中で、いろいろな覇権争い、経済競争なども起きているのも事実であります。

 ただ、その中でも、日本がどう国際連携、外交を展開していくのかというのがまさに真価が問われているところであり、先ほど山内委員の質疑の中でも、大臣から日本らしさという国際貢献のあり方の言葉がありましたが、まさにこれまでの実績、そして国際的な評価も含めれば、日本らしさをここでもまた発揮をして、国際連携を目指していかなければならないというふうに思っています。

 この治療薬やワクチンの開発については、例えばイギリスのある大学においては、これは開発がなされたとしてももうけに走るんじゃなくて、ほかの国にもどんどんつくってもらって結構ですよ、我々はもうけなくていいですというようなところもあります。一方で、もうけに走ろうとしている製薬会社もあるし国もあるわけでありますが、日本はやはり、国際連携の中でもそうしたまさに人道的な見地に立って、覇権争いやまさに経済競争にこのコロナの対応については陥ることなく、まさに日本らしさの中で国際連携を目指していかなければならないというふうに思います。

 こうした、アビガンの記者会見のときにも大臣は言及されておられますけれども、開発については国際的な協力を進めていくというふうにおっしゃっていました。

 具体的に、大きく言えば二つあるわけですよ。まさに覇権争いみたいにやっていこう、もうけようというようなところの製薬会社もある。一方で、イギリスの大学のように、もうそんなの関係ないんだ、無償で、もし開発されたら提供しますよというようなところもある。どういった国と、どういう機関と連携していくのかということで、日本のやはり真価が問われます。その辺については、具体的にどのように連携を進めていくのか、お伺いいたします。

茂木国務大臣 基本的な問題意識、小熊委員と一緒だと思っておりますが、当然、今コロナの一日も早い終息を図っていく、そこの中で国際協調を進めるわけですが、各国は、ポストコロナの国際秩序のあり方というのは当然念頭に置くんだと思います。

 そこの中で、同じようで違うのは、ポストコロナの国際秩序の中で、今やり得る支援というものが各国の信頼を得るものなのか、それとも自国の影響力を強めるためにやるものなのか、似ているようでやはり違うんだと思っておりまして、私は、日本はやはり前者の立場に立ってさまざまな協力というのを進めていきたいと思っておりますし、治療薬だけではなくてワクチンにつきましても、CEPI、ここで開発するための拠出もしますし、更に言いますと、アフリカとかそういう国に配るとなりますとGAVIの役割というのも重要になってきますので、そちらに対する資金提供等々も行うことによりまして、日本らしい、結果的に信頼される国、こういう支援を行っていきたいと思っております。

小熊委員 その方向性、非常に大事でありますし、更にそこを突き詰めていけば、今起きていることというのは、まさに先ほど米中の話をさせていただきましたけれども、アメリカの大統領選があるから、そうした選挙の背景もあるかもしれませんが、アメリカもどちらかといえば覇権争いに、ポストコロナの影響力を上げようとしている嫌いもあるというのはあります。

 ただ、一方で、アメリカの中でもビル・ゲイツ財団のように、まさに人道的な立場に立って取り組もうとしているところもありますし、中国においては、今アフリカの話がありましたけれども、中国のアフリカ支援の話はこの委員会でも、コロナ前でもいろいろな問題点が議論されてきました。今でも続いていますし、ましてヨーロッパに対するいろいろなプレゼンスも中国は上がっていて、各国で中国の企業進出が非常に比率が高まっている中で、コロナが起きてからも、更にこうした中国における企業買収が続いています。

 こういったことも含め、そうした間違った覇権争いを抑止していくというためにも、更に日本が果たす役割というのは大きいというふうに思っています。

 大臣、御承知だと思いますが、アフリカの話がありましたけれども、日本においては治療薬、ワクチン、注射だとやはり打てる人、打てない人、医療従事者の数もあるので、鼻から入れるのは二、三年かかるけれども、日本はそういうのを開発しよう、それは後進国のためにやっていこうという研究者もいます。まさに、美しい話が正しい話だというふうに思っています。そうしたものもしっかり政府で支援していきながら、そうした、大臣の言われた国際協調を目指していかなければならないと思いますが。

 あえてもう一度、踏み込んでお聞きいたしますけれども、こうした米中の間違った、間違ったというか、先ほど大臣が言われた覇権争いにくみしないあり方というのをしっかりやっていかなければいけませんし、ただ、そういう狙いを持った国や機関というのは幾つかありますから、そうした国としっかり連携をしていく。米中のそうした覇権争いの部分をしっかり意識しておられるのかどうかも含めて、今後の方向性についてもう一度お伺いいたします。

茂木国務大臣 今必要なのは国際協調だ、そのように思っております。

 そういった中において、国際協力にかこつけて自分の影響力を増すということを主目的にするようなことはすべきではない、こんな考えを持っております。

 そういった中にあって、短期的に何か物を送る、これも不足しておりますから、そういったことも必要なんだと思いますけれども、同時に、今、小熊委員の方からもお話ありましたように、中長期的にその国の脆弱な医療提供体制、また医療技術者を育てる、こういった支援というのも必要だと思っております。

 一旦終息したにしても、また新たな感染症であったりとかコロナが再発する、こういう危険もあるわけでありまして、そういったときも含めた備えができるような、より中長期的で包括的な支援、これが日本らしい支援だと思っております。

小熊委員 具体的には言えないんでしょうけれども、ぜひ、まさに覇権争いではないという視点においては、中国やアメリカの覇権争いに巻き込まれている国もあるのも事実ですから、そうしたことにしっかりフォーカスをして、そういう影響力を排除していくためにも、少しピンポイントでそういう国々への支援というものを戦略的に考えていただきたいと思いますし、それがまさに松本委員長が以前言われた地球を俯瞰する外交、地球儀を俯瞰するではなくて地球を俯瞰する外交になるというふうに思いますので、そうしたよからぬ覇権争いを排除していくという意識もしっかり持ちながら支援の体制を整えていただきたいというふうに思っています。

 次に移ります。

 これはコロナ終息後が前提ではありますけれども、既に一次補正の中にゴー・トゥー・キャンペーン、観光に行こう、またゴー・トゥー・イート、食べに行こう、イベントに行こう、商店街に行こうというのがあって、一兆六千七百九十四億円余りの予算がつけられました。

 これは非常に大きい予算ですけれども、昨日、関係省庁に説明をお聞きいたしましたけれども、この中でも大体ざっくり、この後、少し前後すると言っていましたが、一兆三千億円ぐらいがゴー・トゥー・トラベルになっているわけでありまして、これは国内旅行がほとんどなんですけれども、一方で、今まで国家戦略の一つとしてインバウンドに取り組んできている、その目標値も、被災地福島県は特に目標値に全然達成はしていませんでしたが、国際的な風評被害の中で、日本全体でいえば堅調に右肩上がりで、訪日外国人がふえてきて経済を支えていたのも事実であります。

 ただ、コロナパンデミックが起きてからは、ざっくり聞いたらインバウンドも九割減っているという話、もちろん渡航制限もあったり飛行機が飛んでいなかったりもしていますから、これはもちろん当たり前のことではありますが、ただ、私の地元でも、コロナ終息後を前提に、インバウンドの獲得を目指して、自然の中で入る、野湯というんですけれども、温泉の開発を今のうちからしていこうと。確かに、終息してから、あしたから急にお客さんが来るという話でもないです、特に外国人観光客は。

 やはり中長期的なスパンで準備をしておかなければならないというところもありますから、コロナ後の経済再生のためのインバウンド、しっかり取り組んでいかなければならないというふうに思っていますし、巨額の予算をつけているわけですから、これもしっかり有効活用しなければならないというふうに思っています。

 まず、九割ぐらい減ったとざっくりは聞いていますけれども、コロナ以後、インバウンドの落ち込み、具体的にどのぐらいになっているのか、お聞きいたします。

和田大臣政務官 お答えをいたします。

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、日本向けに限らず世界じゅうで旅行控えが発生していること、多くの国々において政府による入国制限や海外旅行の禁止等の措置が講じられたこと、航空便が大幅に減少したこと等により、全世界的に旅行客の往来が大幅に減少し、本年三月の訪日外国人旅行者数は、対前年同月比マイナス九三%の十九万四千人となっています。

 こうした訪日外国人旅行者の大幅な減少に加えまして、日本人旅行者のキャンセルや予約を見送る動きが相次ぎまして、宿泊業、旅行業のみならず、貸し切りバス、ハイヤー、タクシー、レンタカー、フェリー、飲食業や物品販売業など、地方経済を支える観光産業は大変厳しい状況に置かれています。また、四月七日の緊急事態宣言によって更に厳しさが増したものと承知をしております。

小熊委員 そういう中で、終息が先ほどから言うとおり前提ではありますが、でも、一次補正にもゴー・トゥー・キャンペーンなんというのは入れていますから、これは国内の中でも、それから、和田さんの地元は私の隣、宮城ですけれども、緊急事態宣言も、これは宮城にしろ福島は解除はされていくんだと思いますが、首都圏とか一部都市部では解除されない中で、じゃ、観光を頑張りましょうといって、そういうところから来たら、やはり緊張感があるわけですよね。でも、経済を動かさなきゃいけないという中でありますし、インバウンドにしてもそうです。

 こういう、これは少し似ている部分がありますが、三・一一以後の福島の状況もそうでありました。大丈夫だという科学的知見を示しても、なかなか風評被害というのがあったとおりであり、これは終息したとしても、海外から来たら大丈夫かなと思ってしまう。観光業者だけじゃなくて、地元の人たちですよね。外人がばっと有名な観光地に来ていて、その周辺住民が不安がるというのも、これは背景で出てくるというふうに思います。

 そういう中で、インバウンドをどうやって推進していくのか。私もいろいろな観光業の地元の方と電話をしていて、これは大丈夫だって言われても、呼び込むという、コロナ以前みたいに、来てくださいみたいなのがなかなか言いにくいと。自粛警察みたいなところまでいかないけれども、世間体的に、おい、大丈夫かよみたいな目で見られてしまうのもあるだろうという心配もしています。

 そういう中でこれを推進していかなければいけませんが、今後、このコロナ以後のインバウンドのあり方というのは、今までとはやはり違った取組をしなきゃいけないというふうに思っています。安全だけじゃなくて、やはり安心をどう醸成していくかということが重要でありますが、そうした観点に立って、今後のインバウンドへの取組はどうするのか、お聞きいたします。

和田大臣政務官 お答えをいたします。

 まずは関係省庁とも連携をいたしまして、一刻も早い感染の封じ込めに努めるとともに、深刻な影響を受けている観光関連事業者の皆様の雇用の維持と事業の継続に向けた支援に全力で取り組んでまいります。

 その上で、国内の新型コロナウイルス感染症の状況が落ちつき次第、ゴー・トゥー・トラベル事業を開始することとしておりまして、具体的には、旅行代金の二分の一相当、最大一人一泊当たり二万円分の宿泊日帰り旅行商品の割引と、地場の土産物店、飲食店、観光施設、交通機関などで幅広く使用できるクーポンの発行により、国内の観光需要を強力に喚起してまいります。

 また、訪日旅行につきましては、国、地域ごとの感染終息を見きわめつつ、誘客可能となった国等では、航空便の復活とあわせて速やかに航空会社と連携した訪日プロモーションを開始し、インバウンド需要の回復も図ってまいります。

小熊委員 そこで、いわゆる受入れというのは、ある意味、観光業の人だけではなくて日本人全体でやらなきゃいけない中で、いわゆる福島県民が味わったような差別や誤解や偏見といったものも排除していかなければ、まさにおもてなしができないわけでありますし、観光業に携わる方々も大手を振って外国人を呼び込むということもできないわけであります。まだコロナが始まりのころ、私の地元でも、インバウンドに成功していた地域や宿泊業のところは、真っ先に、国内の人があそこは外国人がいっぱいいるから行かないとか、キャンセルを受けてしまったという事例もあります。これがまさに現実だというふうに思います。

 そして、その安心の情報発信、安全だけではなくて安心の情報発信というのもしっかり努めながら、これは走っていかなければならない点でありますから、その辺にしっかり留意をしてキャンペーンを張っていただきたい。また、状況を見ながら柔軟に対応していただきたいというのを要望して、次の質問に移ります。

 通告した部分、タイトルが間違っていたんですけれども、いわゆる今のこの情報というのが非常に大事で、そういった中でも、国際的なパンデミックの中で間違った情報やデマが広がって、一部の人からはデマデミックとまで言われています。

 まさに、これはアメリカ政府も言っていますけれども、陰謀説みたいに、コロナの発生起源がどうだとか、また予防、我々もいろいろな人から、地元からも、こういうのがきくんだってねみたいなところで、予防策からいろいろな治療法に至るまでいろいろな情報が飛び交っているのが、これは世界じゅう、そうです。世界じゅうのことであります。

 こうしたデマに汚染されている状況が一部、世界じゅう、日本を含め、あるわけでありますけれども、これはやはり命にかかわるものでもありますし、又は、国内でも散見されますけれども、誹謗中傷また差別といったものにもつながっていくところでありますし、今ほどの質問でもあったとおり、これは観光振興の上でも、こうしたデマによって打撃を受けてしまう、出ばなをくじかれるという点もあります。

 こうした今のコロナの状況下の中で、しっかり、こうしたフェークニュースといったものに対してどう対応していくのかというのも、命を守る上でも、また人を守る上でも、経済を守る上でも重要な観点かというふうに思います。

 そうした中で、これはコロナがあったからということではありませんが、総務省においては、プラットフォームサービスに関する研究会というのが何十回と開催をされ、最終報告書ができたばかりで、ことしに入ってありました。その中でファクトチェック、フェークニュースに対するファクトチェックの対策が言及されていますけれども、このファクトチェック、最終報告書でも指摘をされていた方向性において、今回のコロナに関する世界的なこうしたデマやフェークニュースに対してどのように対応しておられるのか、まずお聞きをいたします。

中山大臣政務官 お答え申し上げます。

 世界各国におけるインターネット上でのデマ、フェークニュース等には、それぞれの国がプラットフォーム事業者と協力して対処することが基本と認識しておりますが、それら全てを外務省が網羅的にチェックすることは困難であります。

 その上で、主要な外国メディア等において著しく事実と異なる日本関連情報が見られる場合には、正確な情報を積極的に発言するなど、適切な対応に努めてきております。

 フェークニュース等への対応については、委員御指摘のように、総務省において検討が行われていると承知しております。国際的な連携などにおいて、外務省としても協力してまいりたいと考えております。

小熊委員 国際的な連携という言及もありました。そういう中で、ユネスコの方から各国政府に対して、独立系報道機関の不可欠な役割を損ないかねない表現の自由規制を課すのでなく、権力者にとって不都合な検証済みの情報や、十分な情報に基づく意見を発表することがあったとしても、ジャーナリズムをデマに対抗する勢力として認識するよう求めているというのを承知をしております。

 これはやはり、ここでは深く言いませんが、これまでの安倍政権のさまざまな体質や、これまで起きてきたいろいろな事件、事案に関しては、国民の不信を招いているのも安倍政権の一つの事実であろうかというふうに思います。

 そういう中で、実は、今、国際連携と言いましたけれども、このファクトチェックに関しては、日本は国際的な評価は低いんです。まさに規制の方だという話です。今、ユネスコからの指摘のように、逆に、ジャーナリズムをデマに対抗することとして、時の政権に厳しくても、これをしっかり連携して使っていった方がいいんだ。実際、ほかの国のファクトチェックはそういうふうにしています。ここが日本の、実はこの研究会でも方向性は出していますが、弱いところです。

 ぜひ、最終報告書は、これは研究会の最終報告書ですから、しっかり外務省としても総務省と連携をしながら、まさに国際基準というか指摘されている点をクリアできるように、ファクトチェックをして、こうしたデマを封じ込めていくという体制が必要だと思います。

 まさに、そうした部分は安倍政権の弱いところだというふうに思っています、情報のあり方に関して。情報発信はしていますけれども、やはり、国際社会で言われているファクトチェックの体質は安倍政権は相入れない部分もありますから、そういう不得意な部分をしっかりやっていきながら対応していくということが、まさに命を守り、人権を守り、差別をなくし、経済を守っていくことに重要な部分ですよ、この情報のあり方を、しっかり国民に正しい情報を伝えていくという意味では。

 そういう観点から、ユネスコからの指摘もありますけれども、どういうふうにやっていくのか、最後にお聞きいたします。

中山大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、ユネスコは、表現の自由及び情報へのアクセスの観点から、ジャーナリストに関する取組を行ってきております。

 例えば、昨年四月の執行委員会において、アズレー事務局長は、報道の自由はディスインフォメーション及びネットでの憎しみの拡散と戦いであり、ヘイトスピーチとネット上のディスインフォメーションに関する国連全体としての取組にユネスコも関与していく旨を発言しております。

 ユネスコとしても、コロナウイルスパンデミックに乗じたディスインフォメーションに警鐘を鳴らし、正しい情報を広められるためにも、ジャーナリズムの活動を支えていくことが重要である旨、指摘しております。

 我が国としても、国連におけるジャーナリストへの取組を支持しております。

 その上で、特に、委員御指摘の、表現の自由及び情報へのアクセスの観点から、ジャーナリストの安全の取組に関して、我が国は、オーストラリア、スウェーデン等、欧州諸国が主にリードしておりますが、ジャーナリストの安全に関するフレンズ会合に参加をしております。これまで、関連する執行委員会の決議を支持し、また、決議によっては共同提案国にもなっております。ニューヨークにおける国連総会第三委員会であったり、また、ジュネーブの人権理事会でもジャーナリストの保護の決議が例年採択されております。我が国は共同提案国にもなっております。

 委員の御指摘のことも踏まえて、しっかり努めていきたいと思っております。

小熊委員 ぜひ、このファクトチェックに関しては日本は欠落している部分があると受けていますから、命にかかわる問題でもありますので、しっかりその点を留意しながら、今後、また改善をして対応していただきたいというふうにお願いを申し上げ、質問を終わります。

 ありがとうございました。

松本委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十時四十七分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時二十二分開議

松本委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 本日は、在日米軍基地での新型コロナウイルスの感染拡大問題について質問します。

 在日米軍関係者の新型コロナの感染状況については、米国防総省が三月三十日、個別の事例を公表しない方針を示し、政府もそれを容認しているもとで断片的な情報しか明らかにされない、いわば感染実態が闇に包まれた状況にあります。

 しかし、詳細情報が公表されなくなった以降も、佐世保基地や横田基地などでも米軍関係者の感染が相次いで確認されており、先日、在日米海軍のフォート司令官が明らかにしたところでは、横須賀基地でも三十名近くの感染者が出ていると言われます。もはや在日米軍内でも感染が拡大していることは疑いのない状況であります。

 しかも、横須賀基地やキャンプ座間では日本人の従業員にも複数の感染者が出ており、在日米軍内での感染拡大は、今や、そこで働く日本人の従業員や周辺住民を始め、日本国民の命と安全を脅かす問題となっています。

 米国防総省によれば、米軍関係者の五月八日時点の感染者総数は一万一千名に達し、集団行動をとる軍隊の特性から感染増加に歯どめがかからない状況だと言われています。

 そこで、茂木大臣に聞きます。政府は、新型コロナに関する水際対策の強化として、四月三日以降、米国全土からの外国人の入国を拒否する措置を講じています。これには在日米軍の施設・区域から入国する米軍関係者も含まれているのでしょうか。

茂木国務大臣 米軍の構成員は、出入国管理及び難民認定法に基づきます今般の上陸拒否の措置の対象とはなりませんが、実態として、現在、米国防省は、米軍関係者、軍人軍属及びそれらの家族があらゆる国との間の移動をすることを原則として六月三十日まで禁止としております。また、米側からも、日本国外から米軍関係者が日本に入国することは、例外的に許可をした場合を除いて想定されていないとの説明を受けているところであります。

 その上で、在日米軍は、米軍関係者が我が国に入国する場合、水際対策も含む日本政府の方針に整合的な措置をとることとしております。

 これまでも、四月六日及び十五日の在日米軍司令官によります公衆衛生非常事態宣言の発出及び五月十二日付での同宣言の延長を含め、日本側の水際対策措置に先駆けて厳格な措置を実施しているところでありまして、こういった措置を一層厳格に徹底するように求めてまいります。

穀田委員 もう一度改めて聞きますけれども、一番最初のところなんですよね。対象にはなり得ないと。つまり、在日米軍の施設・区域から入国する米軍関係者は、政府の入国拒否の対象に含まれないという理解でいいんですね。

茂木国務大臣 それで結構であります。

穀田委員 それはつまり、日米地位協定第九条第二項では、「合衆国軍隊の構成員は、旅券及び査証に関する日本国の法令の適用から除外される。合衆国軍隊の構成員及び軍属並びにそれらの家族は、外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される。」と定めています。こういうことの理解でいいということでありますね。再度確認したいと思います。

茂木国務大臣 結構です。

穀田委員 後半、大臣は、アメリカ側がさまざまな措置を講じておられるということで、ある意味では、しかし、日本国外から入国することは例外的に許可を得た場合を除き想定されないとおっしゃっていました。

 そこで、アメリカ軍の在日米軍の司令部の公式ホームページを見てみますと、新型コロナの感染拡大に伴う情報が掲載されています。

 その中の渡航者への通知というのがございまして、その文書を見ると、日本政府は特定の国からの渡航者を禁止しているが、SOFA、日米協定ですね、地位協定、関係者の日本への入国は許可していると書かれています。また、在日米海軍司令部が四月二十二日に出した司令官のメッセージを見ても、同じく、日本政府は四月三日から米国を含む国からの入国を拒否しているが、SOFA関係者は対象外だと明記しています。

 そういう点でいいますと、あれやこれやとそういう規定をしている、規制をしている、こうしているということ、想定していないというふうにおっしゃいますけれども、実際は、これらの関係文書をひもといてみるまでもなく、米軍関係者は日米地位協定によって政府の入国拒否の対象になっていないことは明白であります。したがって、幾ら水際対策の強化を言ったところで、米軍関係者の入国を許しているのでは、玄関を閉めて裏口をあけているようなものだと言わざるを得ません。

 茂木大臣は、先ほどもお話ありましたし、四月三日の衆議院安保委員会で次のように述べています。米国防省は、現在、米軍関係者があらゆる国との間を移動することを六十日間禁止しており、米側からは、日本国外から米軍関係者が日本に入国することは例外的に許可を得た場合を除き想定されていないと説明を受けていると答弁されました。

 そこで聞きますけれども、例外的に許可を得た場合とはどんな場合なのか、米側からはどんな場合、例外的に許可を与えていると説明されたのか、お尋ねします。

茂木国務大臣 まず、移動制限についてでありますが、現状でいいますと、六月三十日まで禁止ということになっております。

 その上で、米国防省の指針は、渡航禁止の例外として、医療上の治療、米軍人の人事異動といった具体的事例を限定列挙しております。また、同指針は、追加的に、次の場合には米軍の権限にある当局による書面によって渡航が認められるとしておりますが、これらの場合であっても全てが認められるわけではなくて、あくまでケース・バイ・ケースで判断される旨明記をされております。

 では、具体的にどういうことかといいますと、一つは、渡航が不可欠な任務、ミッションエッセンシャルである場合、そして二つ目に、渡航が人道的な理由により必要である場合、三つ目に、極めて困難な状況がゆえに正当な理由がある場合、ワランテッド・デュー・ツー・エクストリーム・ハードシップ、このケースを挙げております。

 その上で、在日米軍からは、米軍関係者が我が国に入国する場合、水際対策を含みます日本政府の方針に整合的な措置をとることとしている旨説明を受けております。

穀田委員 今のお話にあった内容は、国防総省の四月二十日付の文書で、適用除外というのを含めた内容と、以下のような場合は書面で認められるということを内容とした、ミッションの問題や人道問題や、さらには極度の云々と、それも、しかしケース・バイ・ケースだ、こういうことだと思うんですね。

 確かに、米国防総省は、三月十三日以降、米軍関係者の海外での移動を六十日間制限するという措置を実施しました。四月二十日には、その期間を、先ほど大臣お話があったように、六月の末、三十日まで延長することを発表しています。

 そこで、大臣は、ケース・バイ・ケースの方も書面であるけれどももっと厳しいみたいな言い方をしていますが、逆に私は、この移動制限には多くの例外措置が定められていて、統合軍司令官や統合参謀本部議長、軍事関係部門の長官などが任務上不可欠と判断すれば、ケース・バイ・ケースで移動を許可するものとなっています。

 大臣は、書面で出してもそれでも認めない場合があるというような言い方を、どちらかというときつ目に言われるけれども、私の方は逆に、あっちの文書を見ますと、例外措置が多くて、その議長や司令官や長官などが任務上不可欠と判断すれば、ケース・バイ・ケースで移動を許可するものとなっています。つまり、米側の裁量で事実上幾らでも移動できるということだと思うんです。

 米側のそういう説明に対して、茂木大臣は、先ほどもありましたように、整合的な、そういう入国する場合云々かんぬんとありますけれども、米軍関係者が日本に入国することは想定されていないと説明を受けたと繰り返すわけですけれども、これでは事実上の、お互いに共有している文書の話をしているわけですけれども、それでは歯どめにならないんじゃないかということについては、いかがお考えですか。

茂木国務大臣 先ほども、どういった場合に認められるか、ケース・バイ・ケースでというお話をしましたが、そこの中で、ミッションエッセンシャル、エッセンシャルはかなり強い言葉です、不可欠な任務、さらには、ワランテッド・デュー・ツー・エクストリーム・ハードシップ、単なるハードシップじゃない、エクストリーム・ハードシップ、極めて困難な、こういう言葉も使っておりまして、そういった意味におきまして、極めて限定的なケースに、ケース・バイ・ケースで判断して行われるものだと考えております。

穀田委員 読み方が全然違うなということが、同じ文書で、もちろんそういう文書を書いていますよ。それはここにも私も持っています。私の方は日本文書になっているので、大臣がおっしゃっている中身とは理解がいろいろ違うかもしれません。

 しかし、私は、国防総省の移動制限には明らかに例外措置が設けられているということは確かだということ、そして、お話あるように、任務上不可欠と判断すれば、米側の裁量で事実上幾らでも移動できるようになっているというのが今の実態だと思うんです。この実態について、少し突いていきたいと思うんです。

 私は、ですから、このことが歯どめになっているのかどうかということを聞いたわけです。制限となっている、限定的だ、こうおっしゃるけれども、事実上の歯どめになっているのかどうか、そのことを聞いたわけですね。

 そこで、話を進めましょう。

 実際、米側は、移動制限期間を延長する一方で、米国から軍用機やチャーター機を使って在日米軍基地に入国している実態があります。

 私は、米航空機動軍団、AMCが公表した運航計画などをもとに、直行便の、例えばボーイング767、ボーイング747などのチャーター機の飛来状況について調べてみました。その結果、米側は、移動制限を課した三月十三日以降も、五月十二日、昨日までに、アラスカ州のエレメンドルフ基地やカリフォルニア州のトラビス基地から、横田基地に九回、嘉手納基地に四回、三沢基地に一回飛来してきています。ハワイの国際空港やグアムのアンダーセン基地からも、横田基地に十六回、嘉手納基地に十一回飛来しています。

 これがそういう資料なんですけれども、そのほかにもパトリオットエクスプレスと呼ばれる直行便で、これはシアトルから横田という便があるわけですけれども、これがAMCというマーク、記章が入った文書でずっと出しているわけですよね。それでいいますと、直行便でいうと、シアトルのタコマ国際空港から、三沢基地に九回、横田基地に十八回、さらに、横田基地を経由して岩国と嘉手納基地にそれぞれ九回飛来しています。だから、シアトルから横田、岩国、嘉手納、こういうふうな感じで来るわけですよね。

 それで、これらを合わせますと、米国から直行便による在日米軍基地への飛来は、三月十三日から昨日までに計八十六回に上っています。日本への入国は想定されないどころか、制限とかなんとかと言っていますけれども、これほどの実態があるんじゃないかということについて、北米局長に答弁を求めます。

鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。

 例外的な渡航の承認につきましては、茂木大臣から御説明したとおりでございまして、そして、かつ、四月二十日の国防省の指針、この中におきましては、例外を認める判断というのは各司令官に委ねられているというふうに明記されております。

 その上で申し上げますと、在日米軍においては、三月、そして四月以降、在日米軍司令官が発出した公衆衛生非常事態宣言のもとで、極めて厳格な水際措置が引き続きとられているというふうに説明を受けております。具体的には、この水際措置と申しますのは、米国を含むあらゆる国から入国した者に対し、十四日間の移動制限の義務づけ、空港から自宅等に移動する場合には非公共交通機関の利用の義務づけなどなど非常に厳格な措置をとっているということでございますので、例外的な入国が認められる場合であっても、在日米軍司令官のもとでこのような非常に厳格な水際措置がとられているということだと認識しております。

穀田委員 北米局長、私が聞いているのは、そういう相手方が言っている管理の文書、それは何回も見ているんですよ。それをやっているということは、何回も繰り返して説明していますよ。

 私が聞いているのは、では、そういう実態があるということを知っておられるかと。つまり、厳格にやっているとかなんとか言っているけれども、いわば、飛来しているのはどんどんどんどん来ているんじゃないか、そういう問題について、この実態について御承知か、認めるのかということを聞いているんですよ。

鈴木(量)政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍が必要な運用上の活動をやっているということについては私どもも承知をしておりますが、繰り返しになって恐縮でございますけれども、そういう中で、日本政府が出した各種の緊急事態宣言、水際措置、こういうものも念頭に置いた上で、在日米軍は公衆衛生非常事態宣言というものを出しております。その中で、しっかりとした水際措置、例えば、米軍人が日本国内に入る場合には必ず十四日間の隔離措置をとる等、そういう日本がとっている措置と同様の厳格な措置をとることによって、しっかりとした防疫をしているというふうに認識しております。

穀田委員 そういうことばかり言ってちゃだめですよ。何ぼ入っているのかということについて正確に知らなきゃ、そんなこと、それこそ、やっています、やっていますって、自分がやっているわけじゃないので、アメリカがやっている話について、やっています、それで信用せいというような話自身がとんでもない話だと私は思うんですね。

 それで、米側は、入国を拒否した四月三日以降を見ても、直行便のチャーター機で在日米軍基地に五十八回も来ているわけですよね。しかも、この公表資料によりますと、パトリオットエクスプレスについては、既に五月末までの運航計画が公表されているんですね。あしたから三十一日まで、計十四回も飛来する計画になっているんです。

 それで、在日米軍司令部の公式ホームページでは、地位協定の関係者が日本に入国する上で、このパトリオットエクスプレスが最良の方法であり、この手段を使うことによって、移動制限が課せられた中でも最終目的地まで途切れることなく渡航できると推奨しているんですね。

 幾ら水際対策だ、幾ら厳格なことをやっていると言ったとしても、こうした入国を容認していたのでは、懸念される在日米軍内の感染拡大から国民の命を守ることはできないんじゃないかと思うんですね。

 在日米軍司令部の報道官は、米国メディアの取材に対して、移動制限がある中でも米軍関係者が日本に入国してくることを認めています。こうした入国を認めておきながら、水際対策というのを強化とは何なんだと言いたいと思うんです。

 そこで、更に問題は、では、聞きましょう。

 米軍がまともにやっているという話を言っておられるんだから、では、軍用機やチャーター機を利用して在日米軍基地に入国した米軍関係者が一体どれだけの検疫を行っているのかということだと思うんですね。

 陸上自衛隊の座間駐屯地の公式ツイッターによれば、陸自では、四月十五日と十六日の両日、在日米陸軍と感染防止対策に関する共同検疫訓練を行ったとあります。

 当然のこと、ここで防衛省に聞くわけですけれども、防衛省では、在日米軍が、米軍の施設・区域から入国する米軍関係者に対し、どんな検疫を行っているのか。先ほど、日本のあれに従って厳しくやっているんだと言ってはるんやから、そういう内容について、どんな検疫を行っているのか、これまでどの程度の検疫を実施しているのか、詳細を把握していると思うんですが、それをお答えください。

渡辺大臣政務官 具体的な検疫方法並びに検査の方法等については、私は報告は受けておりませんが、防衛省といたしましては、茂木大臣の発言にもございましたように、しっかりと日米の連携の中で情報共有を果たし、しっかりと感染防止に努めているというふうに聞いております。

穀田委員 聞いておりますと言って、それで、例えば、感染者の問題だとかそういった問題を、日本の政治にかかわる人たちが、日本国民の実態について聞いておりますというようなことで済みますか、政務官。

 つまり、少なくとも日本と同等のとか厳しいとか厳格とか、修飾語はいっぱいつけるんですよ。修飾語はいっぱいつけるんだけれども、どのくらいの検疫を行っているのか、では、防衛省では詳細を把握しているのかと聞いているわけですよね。

 河野防衛大臣も、四月三日の記者会見で、米側は日本の検疫に基づいて同様の措置を現在とっていると答えています。いつも、先ほども北米局長もそうだけれども、みんな、厳格にとか日本の決めたようにとか言っているんだったら、どういう検疫方法をやって、どのぐらい数字がなっているんだというのぐらいつかむのが当たり前じゃないですか。

 今の話を聞くと、報告を受けていないがと、こう来るわけですよね。だから、どっちやねんと。要するに、詳細を把握しているのかとお聞きしているんです。だから、それがないということは、結局、答えないというのは、把握していないのと違うかと思うんですが。

渡辺大臣政務官 先ほど、より具体的な検査等々の御質問というふうに受け取りましたので、そこまでは私も報告は受けておりませんけれども、日米間では、当然、人、動物、植物の検疫手続に関する日米合同委員会合意に基づきまして、米国人等が米軍施設・区域において入国する場合は、米側の検疫手続を実施することとしております。その際に、検疫伝染病が発見された場合には、直ちに日本の当局に対して通報が行われるとともに、日米の当局間で対応を適宜協議することになっております。

 詳細につきましては所管省庁にお尋ねいただきたいと思いますが、なお、在日米軍では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止や水際対策として、海外への渡航調整や外出制限、会議また訓練の中止等の厳格な措置を実施していると認識しておりまして、防衛省としましても、引き続き在日米軍と緊密に連携の上に適切に対応してまいりたいと思っております。

穀田委員 今、問題は、随分言ってはりますよ。日米間の合同委員会、それ自身は、新型のインフルエンザのときも問題になったんですよね。そういう内容は内容としてやっているんだけれども、では、実際、具体的な内容はどういう形でやっているのか、詳細は、こう聞くと、言わないわけですよね。そして、通報を行うとか協議すると。そんなもの、前から決まっておる話なんですよ。

 問題は、今私たちは、感染者数を含めて、日本全国でいいますとどうなっているのかということで、PCR検査の問題も含めて、非常に少ないとか多いとか問題になっていて、その全容をつかむことが一つの大きなポイントになっているということは御承知のとおりですよね。だって、日本全国でそれが新しい波が来るのか、それともずっと来ているのかとかということを含めて、全容が大事だということが今一大ポイントになっているわけじゃないですか。政府が一番苦慮しているのは、そこの全容がなかなかつかめないということで、数字はこの間上下したりして、いつの間にか上がったり下がったりするけれども、その科学的根拠となる実態についていかにつかむかということで、今、日本の政治は腐心しているわけじゃないですか。

 そのときに、一つの固まりである在日米軍の実態について、関係省庁に聞けって、防衛省がやっているわけだから、おたくのところが知らぬでどないしますのや。だから、はっきり答えてほしいんだけれども、もう一度聞きますけれども、要するに、どういう検疫が行われて、何ぼやっているかという詳細については、それは報告を受けていない、つかんでいないということですか。

渡辺大臣政務官 検疫措置につきましては、各所管省庁が米側と適切に連携していると承知しておりまして、何も問題があるとは考えておりません。

穀田委員 それは、何も問題あると考えていませんって、所管省庁がつかんでいるからって、そんなこと言い出したら、私はこれを質問しますって言うているのやから、質問項目の中に入っているのやから、所管省庁って、では、どこが所管省庁なんですか。では、検疫の件数をつかむのはどこで、検疫の内容をつかんでいるのはどこで、それはどこなんですか。

渡辺大臣政務官 検疫に関しては厚生労働省というふうに承っております。

穀田委員 では、聞きますけれども、厚生労働省は検疫の実態と検疫の実数をつかんでいるというふうに言っていいんですね。

渡辺大臣政務官 それは、私に聞かないで、ぜひ厚生労働省に聞いていただければと思います。

穀田委員 私はあなたにそのことを聞きますということを言っているわけですよ、質問通告で。だから聞いているんじゃないですか。そうしたら、あなたが聞いてきて、それこそ厚生労働省が所管だと言うなら、厚生労働省から聞いて答えればいいじゃないですか。

 つまり、防衛省としては、今の段階ではつかんでいないということは確かだということですね。

渡辺大臣政務官 いずれにいたしましても、政府としましては、検疫措置につきましては、所管省庁と米側がしっかりと連携していると承知しておりますので、何ら問題があるとは考えておりません。

穀田委員 実態もわからずに問題がないなんということがよく言えるね、しかし。

 私はきのう言ったんですよ。防衛省から、四月十日に回答があったということで、米側が行うと言っている新型コロナに関する検疫実績について、防衛省としての把握状況、米軍の施設・区域ごとの検査の実数や割合など把握している内容を聞くからと言ったんじゃないですか。質問項目もきちっと聞いて、きちんと私は言ったわけですよ。そういう内容を、その内容もわからずに、信頼する以外ない、そんなことを言っていたら国民は黙っていませんよ。

 だから、では、もう一度聞きますけれども、これはちゃんと言っているわけですよ、質問で私は。こういう通告をしているわけですよ。だから、それだというと怠慢のそしりを免れないということじゃないですか。

 と同時に、そのことは、私どもは、在日米軍の中にあるだけじゃなくて周りまで来ているという問題がある。しかも、在日米軍というのは、やっていますとしか報告を聞いてないということからしますと、それでええのかということを心配しているから物を言っているんじゃないですか。そういったことを言わなくちゃならぬのですよ、私は。

 だから、では、PCR検査を受けているのかもわからないということだよね。

茂木国務大臣 今、例えばさまざまな形で、入国制限がかかっている国からも、特段の事情のある外国人も入国しております。一日平均数十人から百人を超える日もあるわけであります。

 そういった中で、先ほども御答弁申し上げましたが、米軍人の場合、またその家族等の場合、先ほど言ったような三つのケース、それもケース・バイ・ケースでありますけれども、そこの中で認めた場合であっても、まずは十四日間隔離措置をとる。日本の場合はこれは勧告ですけれども、米軍の場合は義務です。さらには、公共交通機関、これを使わない。日本の場合は勧告でありますけれども、米軍は義務です。そういった形でやりながら、それ以外の公衆衛生上の措置につきましても米軍の責任においてしっかり行われていると理解をいたしております。

穀田委員 移動の問題についての義務は知っています。だけれども、検疫の問題について義務だと言っているわけじゃないんですよ。ここには、検疫の共同訓練までやっているんですよ。だからどんなのをやっているのやと聞いているわけで、やっていないと言うんだったらこっちもあれだけれども。

 在日米軍では、今言っているように、厳格なことをやっているということをずっと大臣はおっしゃるわけですやんか。しかし、佐世保基地では、先ほど義務だと言っていましたよね、四月十五日、米軍属が日本到着後に課せられた十四日間の移動制限に違反し、基地の外に出るなどの事案が発覚しています。では、茂木さん、こうした事案があることも御存じでしょう。

茂木国務大臣 違反につきましては、当然、米軍において適切に対応するものだと考えております。

穀田委員 米国のメディアの報道によれば、二名の米軍属は、佐世保基地の軍人が頻繁に通う基地の外のバーにいたというところで摘発されているんですよね。このことは、在日米軍司令部が四月十五日に出した司令官からのメッセージでも公表されている問題なんですね。これほど大問題になっているということだと思うんです。

 私は、ずっとこの三十分間話を聞いていると、結局、政府は、いかに在日米軍内の感染拡大が懸念されようとも、米軍の運用を最優先して感染実態を公表しない。そして、地位協定によって米軍関係者の入国を拒否できないという実態はある。その上で、先ほど私が述べましたように、軍用機や直行便のチャーター機などでの入国を事実上容認している。それはやられている。そして、さらに、米側がどれだけの検疫を行っているのかについてはわからない。そして、米側の移動制限に違反する事実があること、これもなかなか皆さん御存じないということなんですね。これでは、在日米軍内で広がる新型コロナの感染から、日本の従業員の方や周辺住民を始め、国民の命と安全を守ることなど到底できないと思うんです。

 私は、先ほど言われたように、万全ですみたいなことを何の根拠もなしに言うなどということでは、防衛省が科学的根拠と具体的事実に基づいていろいろなことを考えるという本来のあり方からしても、行政やそれから省の仕事のあり方からしても、適当な話をしちゃだめだよと。適当な話の根幹には、やはり住民の命だとか、そういった問題について本気になって心配するという態度が欠けているということを言って、私の質問を終わります。

松本委員長 次に、井上一徳君。

井上(一)委員 井上一徳です。よろしくお願いいたします。

 最初の質問は、資料をお配りしておりますけれども、「中国公船、日本船を追尾」ということで、五月八日に日本の領海に侵入したという事案がありました。それで、それだけで終わるわけではなくて、九から十日には中国公船二隻が二十六時間にわたり領海にとどまったという事案がございました。

 これについては私も、その前から中国公船による領海侵入が続いておりますので、四月十日の外務委員会でも、大臣に対して、これは中国に強く言ってほしいということで、大臣もこれは話をしてみるということでありました。

 それで、四月二十一日に電話会談をされて、新型コロナウイルス感染症の拡大防止に対する話とともに、大臣の方からは、尖閣諸島周辺海域等の東シナ海を始めとする海洋安全保障分野の課題、これを改めて提起して、中国側の行動を強く求めたということでございました。

 私は、これは期待していたんですけれども、中国の状況は、態度を改めるというよりは、むしろより好戦的になっているような気がしているんです。私、こういう状況だと、習近平主席の日本訪日については、これは延期の状況になっているというふうに認識しておりますけれども、一旦ここは白紙にしてもいいのではないかというぐらいに強く憤りの気持ちを持っているんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 井上委員御指摘のように、先月二十一日の日中外相電話会談におきまして、私から王毅国務委員兼外交部長に対しまして、御指摘の問題につきまして、中国側の賢明な行動、これを強く求めたところであります。

 ところが、その後も引き続きこういった行動が起こっているということに対しては極めて遺憾だ、まずそのように思っております。

 そして、その行動が起こるたびに、日本側としてもしっかりした措置をとり、また厳重な抗議、これをその都度行ってきているところでありまして、中国とは、御指摘のものも含め、さまざまな懸案というのは存在しているわけでありますが、首脳レベル、外相レベル、ハイレベルでしっかりした申入れを行っていく、日本として主張すべきものは主張していく、こういったことは必要だと考えております。

 日本と中国は、地域、そして世界の平和と繁栄に大きな責任を有しておりまして、習主席の国賓訪問につきましても、こういった日中両国が地域、国際社会が直面する課題にともに責任を果たしていくことを内外に示す機会にしていく、こういった考えに変わりありませんが、それとは別にして、この問題については毅然と対応していきたいと思っております。

井上(一)委員 ぜひ、大臣、中国に対してはやはり強く引き続き言っていただきたいと思いますし、やはり、このままの状況が続けば、私はとても習近平主席の訪日が国民の歓迎のもとにできるとは思いませんので、その点も中国側に強く言っていただきたいと思います。

 次は、資料の二につけておりますけれども、この十八日からWHOの年次総会が開かれるということで、この点に関して二つ御質問したいと思います。

 一つは、WHOによる中国・武漢への調査であります。これについては、多くの国が、発生源の調査ということで、やはりWHOが武漢に入って調査すべきだという声が強く、中国側も、専門家の調査の受入れを検討するということで、前向きな発言があるようですけれども、やはりこのWHOの年次総会で、日本側から強くこれは中国に対して調査を受け入れるということを提示していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 今回の新型コロナにつきましては、中国から発生したものでありますが、ウイルスの発生源等につきましてはさまざまな意見があるところでありまして、今回のような全世界に甚大な影響を与える感染症に対しては、自由、透明、迅速な形で各国の情報や知見が共有されることが重要だと思っております。

 さらに、今後、同様の事態に備えるためにも、WHOを中心にして、国連関係機関や中国を含む関係各国が国際社会として連携をして、その発生源がどこであるのか、そしてまた初動対応がどうであったのか、こういったことも含めて、適切なタイミングで十分検証が行われるべきだ、これが日本の立場であります。

井上(一)委員 もう一点です。

 台湾のWHOへのオブザーバー参加であります。このオブザーバー参加につきましては、二〇〇九年から台湾はオブザーバー参加が認められてきておりますけれども、ただ、蔡英文政権の発足を機に、中国の圧力で、三年連続で認められていないという報道もございます。

 私は、この感染症対策においては、空白地域をつくらずに国際社会で対応するという観点から、台湾のWHOへのオブザーバー参加を支持したいと思っております。

 この点について、日本も、感染症の空白地域をつくらないという観点から、台湾のオブザーバー参加は支持していると思っておりますけれども、ぜひ十八日からのWHO総会、これに加わるように、日本も強い働きかけをしていただきたいと思います。既に十三カ国から要望が出されたというふうに承知をしておりますので、日本としてもぜひ強く働きかけをしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 委員おっしゃるように、こういった国際的な感染の拡大が起こっている中では、地理的な空白を生じさせない、こういったことは極めて重要でありまして、我が国は、WHO総会への台湾のオブザーバー参加、一貫して支持をしてきているわけであります。

 同時に、今回のコロナウイルス感染症に対する対応を見てみましても、台湾は相当やはりうまくやっていると思います、私は。いろいろな意味で、どこよりも早く、入国制限をしたり、ヒト・ヒト感染が起こる懸念について警鐘を鳴らしたり、マスクの問題、そして人の移動の問題、IT技術等々も使ってさまざまな取組をして、それによって感染者数そして死者数、非常に低く抑えられているということでありまして、そういった知見からも、国際社会、WHOが学ぶこと、吸収すべきことというのは非常に大きいんじゃないかな。

 こういう観点から、率直に言って、中国の問題はあるんですよ、どうやってやっていくかということは工夫しなけりゃなりませんけれども、できるだけ台湾がオブザーバーとして参加できるように、努力をしてみたいと思っております。

井上(一)委員 ぜひ、十八日までまだ時間がございますので、ぎりぎりまで、台湾がWHOへのオブザーバー参加ができるように働きかけをしていただきたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

松本委員長 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルゼンチン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウルグアイ東方共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とペルー共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジャマイカとの間の条約の締結について承認を求めるの件、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウズベキスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件及び所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とモロッコ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件の各件を議題といたします。

 これより順次趣旨の説明を聴取いたします。外務大臣茂木敏充君。

    ―――――――――――――

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルゼンチン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウルグアイ東方共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とペルー共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジャマイカとの間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウズベキスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件

 所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とモロッコ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

茂木国務大臣 ただいま議題となりました六件につきまして、提案理由を御説明いたします。

 まず、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とアルゼンチン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和元年六月二十七日に条約の署名が行われました。

 この条約は、二重課税の除去を目的として、アルゼンチンとの間で課税権の調整を行うものであります。この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウルグアイ東方共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和元年九月十三日に条約の署名が行われました。

 この条約は、二重課税の除去を目的として、ウルグアイとの間で課税権の調整を行うものであります。この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とペルー共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和元年十一月十八日に条約の署名が行われました。

 この条約は、二重課税の除去を目的として、ペルーとの間で課税権の調整を行うものであります。この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とジャマイカとの間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和元年十二月十二日に条約の署名が行われました。

 この条約は、二重課税の除去を目的として、ジャマイカとの間で課税権の調整を行うものであります。この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 次に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とウズベキスタン共和国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和元年十二月十九日に条約の署名が行われました。

 この条約は、現行の租税条約をウズベキスタンとの間で全面的に改正するものであり、投資所得に対する源泉地国課税のさらなる軽減のための規定等を盛り込んでおります。この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、ウズベキスタンとの間での課税権の調整がより効果的に行われることになり、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 最後に、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国とモロッコ王国との間の条約の締結について承認を求めるの件は、令和二年一月八日に条約の署名が行われました。

 この条約は、二重課税の除去を目的として、モロッコとの間で課税権の調整を行うものであります。この条約の締結により、脱税及び租税回避行為を防止しつつ、両国間の人的交流及び経済的交流が一層促進されることが期待されます。

 よって、ここに、この条約の締結について御承認を求める次第であります。

 以上六件につき、何とぞ、御審議の上、速やかに御承認いただきますようお願いいたします。

松本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十五日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十五分散会


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