衆議院

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第7号 令和3年4月9日(金曜日)

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令和三年四月九日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 あべ 俊子君

   理事 伊藤信太郎君 理事 鈴木 貴子君

   理事 鈴木 憲和君 理事 辻  清人君

   理事 中根 一幸君 理事 阿久津幸彦君

   理事 小熊 慎司君 理事 佐藤 茂樹君

      小田原 潔君    木村 次郎君

      城内  実君    黄川田仁志君

      國場幸之助君    新藤 義孝君

      鈴木 隼人君    薗浦健太郎君

      高木  啓君    中谷 真一君

      穂坂  泰君    松島みどり君

      簗  和生君    青山 大人君

      岡田 克也君    吉良 州司君

      緑川 貴士君    山川百合子君

      渡辺  周君    竹内  譲君

      穀田 恵二君    田村 貴昭君

      浦野 靖人君    山尾志桜里君

    …………………………………

   外務大臣         茂木 敏充君

   農林水産副大臣      葉梨 康弘君

   内閣府大臣政務官     和田 義明君

   外務大臣政務官      國場幸之助君

   外務大臣政務官      鈴木 隼人君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  藤井 敏彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  安東  隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 曽根 健孝君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長岡 寛介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 田島 浩志君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 御巫 智洋君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    四方 敬之君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房輸出促進審議官)       池山 成俊君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房生産振興審議官)       安岡 澄人君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           牛草 哲朗君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           田村 暁彦君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     風木  淳君

   外務委員会専門員     小林 扶次君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月九日

 辞任         補欠選任

  尾身 朝子君     木村 次郎君

  中曽根康隆君     高木  啓君

  山川百合子君     吉良 州司君

  穀田 恵二君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 次郎君     尾身 朝子君

  高木  啓君     穂坂  泰君

  吉良 州司君     山川百合子君

  田村 貴昭君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  穂坂  泰君     中曽根康隆君

    ―――――――――――――

四月八日

 沖縄県民の民意尊重と、基地の押しつけ撤回に関する請願(本村伸子君紹介)(第七七五号)

 日米地位協定の抜本的改定に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七七六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件(条約第一号)


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     ――――◇―――――

あべ委員長 これより会議を開きます。

 地域的な包括的経済連携協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房審議官曽根健孝君、大臣官房審議官長岡寛介君、大臣官房審議官田島浩志君、大臣官房参事官御巫智洋君、経済局長四方敬之君、内閣官房内閣審議官藤井敏彦君、内閣審議官安東隆君、農林水産省大臣官房輸出促進審議官池山成俊君、大臣官房生産振興審議官安岡澄人君、大臣官房審議官牛草哲朗君、経済産業省大臣官房審議官田村暁彦君、貿易経済協力局貿易管理部長風木淳君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

あべ委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がございますので、順次これを許します。黄川田仁志君。

黄川田委員 自由民主党の黄川田仁志です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 地域的な包括的経済連携協定、RCEPについてですが、世界のGDPの約三〇%を占める巨大な貿易圏構想が形になったことの意義はとても大きいと思います。

 これまで、日本は、TPP11や日・EU・EPAなど経済的な多国間連携を模索し、実現してまいりました。私も、これまで様々な国際会議に参加させていただきましたが、日本のこの多くの国と歩む姿勢、国際協調を重んじた取組に対して、国際社会から大きな評価と期待をされていることを肌で感じております。

 このRCEPをまとめたことは、経済的にも政治的にも、日本の国際的なプレゼンスを高めることになると思います。多くの点で日本に利益をもたらす可能性があるRCEPですが、若干心配な点もございますので、本日は、そのことを中心に質問させていただきます。

 日本と中国やASEAN諸国の間には、既に高度なサプライチェーンが構築されております。そして、このRCEPにより、産業界から、RCEP域内のサプライチェーンが更に高度化し、より効率的になることを期待されているわけでございますが、しかし、他方で、新型コロナウイルスのパンデミックによって、マスクや防護服など医療用具の輸出入が途絶えたことから、経済安全保障の観点から、生産設備の国内回帰やサプライチェーンの見直しが日本にとっても課題となっております。

 国内回帰等により国内需要を安定的に確保しつつ包括的経済連携を推進することは、一見すると相反するようにも見えますが、この点について、政府の見解はいかがでしょうか。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 RCEP協定の締結は、必ずしも特定国への依存を高めるものではございませんで、国内の需要に対する供給の安定確保と相反しないものだと考えてございます。

 その理由といたしましては、全てのRCEP参加国が関税を削減あるいは撤廃することで、日本国内で製造して相手国に輸出をするという選択肢を取りやすくなりまして、結果的に、日本国内の製造基盤の維持強化につながると考えているからでございます。

 このような効果を実現するためにも、政府といたしましては、RCEP協定の早期発効と全ての締約国による着実な履行、そして日本企業による協定の利活用の促進に取り組みたいと存じます。

 なお、サプライチェーンの脆弱性という問題に対する対応という観点で、生産拠点の海外集中度が高い製品、部素材等の生産拠点を整備するためのサプライチェーン補助金を措置してございまして、RCEP協定に加えまして、このような予算措置も活用しつつ、サプライチェーンの多元化あるいは強靱化にしっかりと取り組んでまいりたいと存じております。

 以上です。

黄川田委員 ありがとうございます。

 RCEPと経済安全保障は両立するということでございますが、いろいろな政策メニューを用意しているということでございますけれども、それぞれの企業戦略に任せる向きも大きいという感じもいたします。政府がどの生産分野が日本国内にあるべきかということを戦略的に考えて強く誘導する必要もあると思いますので、経産省には、よく考えて、更に政策を進めていただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

 また、今回のRCEPにおいて、インドの離脱ということについては非常に残念でございます。今後のRCEPにおいて、中国を警戒して今回参加を見送ったインドの加盟という問題が残されております。

 インドの加盟が進むためには、インドが再び興味を抱くRCEPにしていかなければなりません。経済的には対中輸出の増加は重要でございますが、一方で、RCEP参加国に対する中国の影響力拡大というリスクをどう防いでいくか、日本は、ASEAN諸国と連携して方策を考えていかなければならないと思っております。中国主導のRCEPになるという危惧があれば、インドの参加は見込めないと思います。このことについて、外務大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。

茂木国務大臣 このRCEPでありますが、元々インドも含めて十六か国で交渉を行ったわけでありますが、残念ながら、インドが最終的に署名できないということで、十五か国の署名に至りました。それでも、この十五か国で、世界人口、そして世界のGDP及び貿易総額の約三割をカバーする経済連携協定でありまして、世界の成長センターであるこの地域の経済成長に寄与することが期待をされます。

 このRCEP協定、我が国とともにASEANが推進力となって交渉を進めて合意に至ったものでありまして、我が国として、この協定が中国が主導の枠組みである、こういった認識はいたしておりません。私も、何か国かのカウンターパートといろいろな話をしましたが、中国から言われてこうとか、そういった声は余り聞かなかった、これが交渉の現場での実態であったんじゃないかな、こんなふうに思っております。

 その上で、本協定、後発開発途上国を含め参加国の経済発展状況が大きく異なる中でも、物品・サービスにとどまらず、投資、そして知的財産や電子商取引をも含めた新たなルールまで盛り込んだものでありまして、日・ASEAN関係を更に強化しつつ、この地域の望ましい経済秩序の構築に向けた一歩になると考えております。

 我が国としては、まず、このRCEP協定、早期発効を実現させた上で、ASEAN、そしてTPP11にも参加をしております豪州やニュージーランドとも緊密に連携しながら、RCEPを通じて、地域におけるルールに基づく経済秩序の形成に主導的な役割を果たしていきたいと考えております。

 また、十三億人の人口を有するインド、IT等の分野でも非常に競争力を持ち、また着実に経済成長を実現をしておりまして、経済大国への歩みを進めているところであります。

 なかなか、ぎりぎりのところで説得したんですが、やはり、国内経済への影響とか様々なことから、今の段階で入ることは困難であった、こういう結論でありますが、我が国としては、インドのRCEP復帰に向けて、インドとも更に対話を行い、RCEPの内側から引き続き主導的役割を果たしていきたい、こんなふうに思っております。

黄川田委員 ありがとうございます。

 外務大臣から、中国主導でのRCEPではないということをお伺いしました。引き続き、しっかりとASEAN諸国との連携強化に取り組んでいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 そのためには、日本が積極的にASEAN諸国と連携して、加盟国全体の経済の底上げに寄与することが重要だと思っております。

 加えて、ASEAN諸国に対して、公衆衛生や環境、安全な上下水道の整備等、インフラ整備を行って、信頼を得る必要もあると思います。

 それが実現できれば、中国主導を危惧していて交渉に参加できなかった、今回脱落したインドに対して、復帰への強い後押しとなると思いますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 更に質問を続けたいと思います。

 このRCEPにおきまして非常に心配をしていることの一つに、中国企業の異質さについてがあります。

 経済連携協定の大目標でございます共通のルールの下での自由で公正な経済圏を拡大するためには、特に、中国の国有企業や補助金の実態を把握し、共通のルールにのっとった経営形態等に改善されるよう、他国と連携して対応する必要があると思います。

 TPPに存在する国有企業に関する取決めはRCEPには入っていないということは承知をしておりますが、この中国の特異な企業形態を認め続けることは、将来必ず協定のひずみになるのではないかと思っております。

 例えば、日本の企業が大変苦労している造船業界においては、中国国有企業が不当な安い価格で船舶を造り、売っているのではないかという疑いが晴れません。

 同じく造船大国であります韓国に対しては、不当な造船補助金の存在が明らかになり、それを証拠に、協定違反として日本はWTOに今提訴をしているところでございます。

 しかし、中国は、そもそも国有企業の実態が分からない、不透明なので、提訴することすらできない状況でございます。このような状況は、造船以外の業種にも波及することも十分に考えられます。

 今後、国有企業や補助金の在り方について、各国と改善に向けた協議をする予定はおありでしょうか。また、RCEPにおける将来の国有企業に関するルール化について、現時点での政府の見解を教えていただきたいと思います。

曽根政府参考人 お答え申し上げます。

 日中経済さらには世界経済の更なる発展のためにも、中国における国有企業や産業補助金に関する対応を含めまして、真に公平公正かつ安定的なビジネス環境を構築していくことが不可欠である。この点につきましては、先般の日中外相会談等の機会を含めて中国側にも働きかけを行ってきているところでございます。

 また、産業補助金につきましても、WTOでも重要な課題と認識されておりますので、日米欧の枠組み等でも議論を進めているところでございます。

 先般行われた日米外相会談、また茂木外務大臣とキャサリン・タイ米国通商代表との電話会談等におきましても、市場の歪曲的な措置などの課題について、対応の必要性について認識をしておるところでございます。

 我が国としましては、引き続き、日米、さらには日米欧の連携を進めながら、中国に対しても、大国としての責任を果たしていくよう働きかけを強化していきたいというふうに考えております。

四方政府参考人 委員から御指摘のありましたRCEP協定との関係でございますけれども、先ほど茂木大臣からも言及がありましたとおり、RCEP協定は、後発開発途上国を含め、国内制度や経済発展状況が大きく異なる十五か国による経済連携協定でありまして、交渉の結果、国有企業や補助金に係る規定は盛り込まれませんでした。

 他方、委員御指摘のとおり、政府といたしましても、各国における企業間の公正な競争環境を整備する観点から、国有企業や補助金のルールは重要であると考えておりまして、協定発効後、必要に応じまして、RCEP合同委員会等の場を活用しつつ、協定のルールの更なる改善、向上に向け、引き続き各国と議論を行っていきたいと考えております。

黄川田委員 ありがとうございます。

 引き続き協議をしていただくということで、期待をしております。

 もう一つ、中国企業の特異性について質問でございます。

 国有企業、民間企業にかかわらず、中国の企業内に共産党組織をつくるよう指導されています。その企業内共産党組織が最近活発化しておりまして、企業の人事や経営等、あらゆる面で介入する場面が多くなってきたとの情報もございます。

 中国の国家情報法の存在に加えて、このような状況で公正な経済活動ができるのか、大変心配をしております。

 この点について日本政府としてどのような対応を取っているか、教えていただければと思います。

曽根政府参考人 お答え申し上げます。

 中国がそのような国内法制度をつくったということも承知しておりますし、様々な問題について、日本の企業の方からも、政府に対して、ないしは大使館に対して協力、相談等もございます。そういうものに対しては、中国政府に対して、あらゆる機会を使いまして、日本側の立場、考え、あと問題点の改善に努めておりまして、引き続きしっかり取り組んでいきたいというふうに考えております。

黄川田委員 よろしくお願いします。

 今後、RCEPを正しく運営していく上で、先ほどもお話がありましたように、合同委員会が重要な役割を果たすと思っております。その合同委員会の概要や設置時期等を教えてください。また、合同委員会と事務局の関係、事務局長ほか事務局体制の構築などについても併せて御説明いただければと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 RCEP合同委員会は、RCEP協定の実施及び運用に関する問題を検討することなどの役割を持っておりまして、この協定が効力を生ずる日から一年以内かつRCEP担当閣僚の第一回会合よりも前に開催し、その後は、締約国が別段の合意をする場合を除くほか、毎年会合を行うことが規定されております。

 RCEP事務局は、協定発効後に開催されるRCEP合同委員会によりまして、締約国によって合意された条件で設置され、またRCEP合同委員会によって監督されることが定められております。

 RCEP事務局は、RCEP合同委員会及び補助機関の事務局機能を担い、RCEP合同委員会及び補助機関に対し技術的な補佐を行うこととなっております。

 RCEP事務局の人員、予算、場所等、具体的な態様につきましては、発効後に開催される合同委員会において決定されることになっておりまして、現時点では何ら決定しておりませんけれども、我が国といたしまして、RCEP協定の早期発効及びその協定の履行の確保を通じまして、自由で公正なルールに基づく経済秩序の構築に取り組んでまいる考えでございまして、こうした観点も踏まえ、適切な在り方を検討してまいりたいと思います。

黄川田委員 ありがとうございます。

 大国間の対立に引っ張られることなく、ASEAN諸国を含む加盟国全体の経済底上げに寄与できる事務局体制が必要だと思っております。日本政府には、自由で公正な経済圏に寄与する事務局体制づくりに積極的に取り組んでいただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げます。

 済みません、時間が迫ってまいりましたので、本来、RCEPに関連して、TPPについて御質問したかったんですが、ちょっと時間も来てしまいましたので、申し訳ないですが、ちょっと今回は割愛させていただきます。済みません。

 最後に、RCEPについて私からお願いがございます。

 RCEPにおいて一番の懸念は、やはり中国の存在であるというふうに思っております。

 香港や新疆ウイグルでの人権弾圧により、国際社会で孤立を深める可能性がある中国が、RCEPをきっかけにして、アジア地域での存在感を高め、米国に対抗する力を得たいと考えていると思っております。さらに、自国経済の成長を目指し、共産党体制の強化を図ってくるはずです。

 中国のそのような動きを牽制するために、日本政府は、香港や新疆ウイグルでの人権弾圧の問題を国際問題として、欧米と協調して取り組んでいただくことを強く希望いたします。そして、RCEPを新しいツールとして、中国に対し、法の支配の重要性を説き、国際法のルールにのっとった行動を促すことを最後にお願いを申し上げ、質問を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

あべ委員長 次に、中谷真一君。

中谷(真)委員 自民党の中谷真一です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、心から感謝を申し上げます。

 二十分と時間が少ないですから、早速質問に移りたいと思います。

 このRCEP、人口でいきますと世界の三〇%、さらに、GDPでいってもこれは三〇%ぐらいあるということで、非常に大きな経済圏を形成することになります。ただ、本日は、このRCEPに対して警鐘を鳴らすつもりで質問をしたいというふうに思うところであります。

 米中の対立が激化をしているという認識であります。これは、トランプ政権に始まり、バイデン政権ではどうなっていくかということを見ていったわけでありますけれども、ブリンケン国務長官は、上院の外交委員会の公聴会、これは閣僚承認のためですね、ここでの発言では、我々は中国を打ち負かすことができる、トランプ大統領の強硬な対中政策は、手法は同意はできないが、基本原則は正しいというふうに述べています。これは、トランプ政権でのトランプ大統領の考え方を踏襲していくということを発言したものであるというふうに思っております。

 当然、日本も日米同盟の堅持を言っているわけであります。

 また、先日、三月の十九日にアラスカで開かれましたブリンケン国務長官とヨウケツチ政治局員の会談でありましたけれども、もう、あの言い合いというか非難をし合う、ああいう姿を見ていますと、何か私は米ソ冷戦期のようになってきているのではないかという認識を持っております。

 それで、今日は資料を準備したんですが、これは米ソ冷戦期のいわゆる構図であります。アメリカを始めとする西側諸国がブルーで、ソ連を始めとする東側諸国が赤となっております。

 次のページは、ヨーロッパをクローズアップしたところであります。この米ソ冷戦期のいわゆるホットゾーンについては、これはまさにヨーロッパでありました。やはり軍事というのは方向がありまして、ソ連は、この当時、やはりヨーロッパ方向を向いていたわけであります。日本は、その裏庭にいたというような認識であります。

 三枚目をめくっていただきますと、今度、これは私が色鉛筆で塗ったんですが、中国とアメリカを色をつけております。こう見ますと、いわゆる軍事の方向としては、まさにホットゾーンは、この東アジアがまさにホットゾーンになってくるというふうに思っているところであります。

 一枚目に戻っていただきますと、この青と赤、東側、西側諸国は当時どうであったか。通商のことを申し上げますと、これは全く別だったんですね。全く別の経済圏を形成をしていたというところであります。

 これは何を申し上げたいかというと、いわゆる安全保障政策と全く違う通商政策を取り得るのか、そういう問題意識を持っているところであります。これについて、外務省から今の状況認識を始め、お聞きをしたいというふうに思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 安全保障と経済を横断する領域で国家間の競争が激化する等、近年、安全保障の裾野が経済、重要・新興技術の分野等に急速に拡大しておると認識しております。

 その中で、米中対立も含めました大きな国際情勢の流れも踏まえながら、重要技術の流出防止やサプライチェーンの強靱化といった経済安全保障上の課題に対応するため、関係国と連携強化をしていく必要があると考えております。

 他方、RCEP協定は、物品市場アクセスの改善のみならず、発展段階や制度の異なる多様な国々の間で、知的財産、電子商取引等、幅広い分野のルールを整備する経済連携協定でございまして、中国を含むこの地域で自由で公正なルールに基づく秩序を形成する大きな一歩となると考えております。

 米国との関係でも、通商政策を含めまして、幅広い分野について緊密に意思疎通してきております。法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を実現していく上で、自由で公正なルールに基づく秩序が重要であるとの認識で日米間では一致しております。

 いずれにしましても、我が国といたしましては、経済成長と安全保障の確保を両立していくためにも、自由で公正な秩序、ルールの構築に向け、より一層主導的な役割を果たしてまいりたいと考えております。

中谷(真)委員 私、状況認識を聞きたいんですよね、外務省の。いわゆる米中対立はこの後どうなっていくのか、これは激化していくんじゃないですかということを申し上げているんです。

 あとは、日本にとっても、対中として、これは安全保障上非常に大きな懸念があるんじゃないかというところを、それをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

茂木国務大臣 まず、委員おっしゃるように、東西冷戦構造時代と今のいわゆる米中対立を始めとした大国間の競争というのは違っている。かつて、冷戦構造の時代は、NATOとワルシャワ条約機構、こういう二つの大きな枠組みの中で、ある程度経済もそれぞれの中で完結をしていた。そんなに相互依存性というのは高くなかった。こういう状態で、安全保障を中心にして、アメリカとソ連、若しくはその代理といった形での対立というのが深まったわけでありますが、今、米中の対立というのがある。

 これも複雑になってきておりまして、単にこれが安全保障だけではなくて、経済の分野でも様々、安全保障とも関連するような分野というのが出てきているということでありますし、実際に、経済活動でいいますと、中国の市場に多くの企業が輸出をしたり投資をするということで、一定の経済関係、相互依存関係というのが存在している。

 今後考えなきゃならないのは、こういった経済の裾野が様々な形で重要・新興技術に関連をしてきたり、そういった形で、安全保障とは切り離せなくなってくるということになります。

 そうなりますと、一つは、そういう機微情報そして重要技術が流出をしないか。さらには、新技術等々を開発していく上で、価値観を共有している国々の連携、これも図っていかなければならない。さらに、恐らく、今回のコロナで、医薬品であったりとかそういったもののサプライチェーン、これの脆弱性というものも明らかになってきた。さらには、今後、デジタル技術であったりとか電気自動車、こういったものを考えたときに、レアアースであったりとか半導体、このサプライチェーンというのも強靱化していかなきゃならない。こういった意味で、米国を始め関係国と連携を取ることが極めて重要になってくるんじゃないかなと思っております。

 さらには、通常の取引をするにしても、中国の場合は、国有企業がある、産業補助金がある、また、WTO上も世界最大の途上国として様々な恩恵をまだ受けている、こういうゆがんだ構造もあるわけでありまして、こういったものを正していかなきゃならない、そのように思っております。

 そういった意味で、米中対立、様々な分野に及んでくると思いますが、協力できる分野もある。相互依存になる分野もありますけれども、一方で、かなり、安全保障、経済も含めて、そういった意味では、我々の戦略をしっかり立てて、中国の台頭というものに臨んでいく必要があると思っております。

中谷(真)委員 この米ソ冷戦期というのは、非常にやりやすい相手だったと言ってもいいかもしれません。完全に経済圏も違った。米国は、今度は中国を相手にというふうに言っておりますけれども、これは非常に、経済的な結びつきもあって、やりにくい相手であるという認識であります。

 そう考えたときに、これは日本も、どちらにつくんだといったら、日米同盟を堅持するというふうに言っているわけでありますから、中国に対して今回関税を引き下げていくということを行っていくわけであります、これには非常にしっかりとした戦略を持って行わなければいけないというふうに思っているところであります。

 そこで、安全保障上非常に懸念のある対中という観点で、このRCEPを行っていくというところでありますけれども、これはやはり通商政策と産業政策というのは一体でなきゃいけない。特にチョークポイントを守っていかなければいけないというふうに考えているところであります。

 先日、バイデン大統領は、半導体のチップをこう持って、このサプライチェーンを守るんだということを大きな声で言っておりました。日本も、そういう重要な機微技術、こういったものを今後守っていくという、まさに産業政策も併せてこの通商政策でやっていかなきゃいけないというふうに考えているところであります。

 それについて、外務省、経済産業省にお聞きをしたいと思います。

風木政府参考人 チョークポイントの点、お答えいたします。

 まさに委員御指摘のとおり、米中による技術覇権をめぐる対立はかなり激化しております。そうした中で、技術優位性の確保は、経済力の維持向上、安全保障の確保に直結するものでございます。逆に、技術優位性が失われれば、安全保障さらには経済安全保障上の懸念につながるものという認識でございます。

 このため、経済産業省としては、統合イノベーション戦略二〇二〇、昨年七月に閣議決定されておりますが、これに基づき、内閣官房を始めとした関係省庁と連携しながら、三点進めております。

 第一に、機微技術に関する我が国の優位性と脆弱性、まさに議員御指摘のチョークポイント、これを把握していく、知るということでございます。

 それから第二に、外為法に基づく輸出管理、それから投資スクリーニングなど、機微技術の流出経路に応じた流出防止対策の構築、守るということをしっかりやっていく。

 それから三点目でございますが、経済安全保障上の重要技術の開発やサプライチェーンの強靱化のための国内投資の促進、これは育てる。まさに御指摘の産業政策面、こうした面を統合的に進めております。

 特に、優位性と脆弱性の把握については、まさに産業政策、それから産業競争力、安全保障の観点から、重要なサプライチェーン等に関する情報の収集、分析作業を進めております。そうした分析を踏まえまして、技術開発や設備投資の促進に取り組んでおります。

 具体的には、経済安全保障の観点から重要な技術や物資としての、先ほどから出ております半導体それからレアアースなどが挙げられるところですが、例えば半導体については、令和元年度及び二年度の補正予算で二千億円を基金として設置し、それで先端半導体の製造技術開発の支援を進めているところでございます。

 引き続き、関係省庁と緊密に連携しながら、知る、守る、育てるの各取組を統合的に進めてまいりたいというふうに考えております。

茂木国務大臣 大体、国内としてやることについて、今経済産業省の方から説明があったこととそごはないと思っているんですが、大切なことは、全部これは日本ではできません。恐らく、アメリカである物を造って日本で組み立てるとか、様々な同盟国、同志国の間で安心できるサプライチェーン等を構築していく、また、技術の共有、こういったことを行っていくということが、優位性をできるだけ早いタイミングに確保していく、こういう意味からも極めて重要なのではないかなと考えております。

 先般の2プラス2でも、重要技術の流出防止であったりとかサプライチェーンの強靱化、これらの分野における連携強化についても議論を行いましたし、外務省としても、米国を始めとする関係国との連携強化を進めていきたいと思っております。

 さらに、外務省の内部でも、このような安全保障の裾野の拡大を踏まえて、一昨年十月に新安全保障課題政策室、これを設置をいたしまして、昨年八月にはこれを経済安全保障政策室に改組をしたところであります。こういった組織を中心にしながら、それぞれの分野にわたっていきますので、省を挙げて、この新しい問題、そしてまた、これから大きくなってくる重要な問題についてしっかりと対応していきたいと思っております。

中谷(真)委員 ありがとうございます。

 経済産業省にお答えいただいたんですが、半導体を取って、基金を二千億積んだという話でありましたけれども、この半導体に関してだけ申し上げても、米国は今回、この研究開発投資に三・八兆積んでいます。さらには、欧州は十八兆、そして、中国は十兆を超えるというふうに言われています。さらに、台湾は二・七兆円ですよ、これ。これはちょっと桁が違うんですよね。本当に守り切れるのかとすごく心配になってくるわけであります。

 ただし、政策判断としては、やはり経済産業省だけに任せる話じゃない、政府全体として、もうそういうふうな大きなかじを切って、もちろん、これは総理に発信していただかなければいけないぐらいのことだというふうに思うんです。茂木大臣には是非そこを主導していただきたい。これはもう本当に、非常に重要なことだ。中国に本当にチョークポイントを握られてしまうと、私は、日本国として何も言えなくなってくるということになっていくのではないかという非常に心配をしているところであります。是非、大きな政策判断としてかじを切っていただきたいというふうに思うところであります。

 更に質問を続けたいと思います。

 今回のRCEPを締結する上での一つの理由といたしまして、ASEANを守る、中国にASEANを取られないようにというのも一つの理由だったというふうに思っておるところであります。このASEANをどう今後つなぎ止めておくのか、そういった戦略が必要だというふうに思います。ですから、ここは、RCEP内でのルール形成、こういったところには日本のプレゼンスをしっかり発揮をしていかなければいけないと思いますし、さらに、ASEANに対しての、安全保障、またその他ODA等、こういったことで支援をしていかなきゃいけないというふうに考えているところであります。

 そして、もう一つは、今回のRCEPと軌を同じくしておりますけれども、TPP11があるわけであります。これは米国が抜けてしまいましたが、私は、この枠組みが今後重要になってくるのではないかというふうに思っているところであります。もちろん、米国の復帰、さらには、ASEANも一部しか入っていませんから、ここにASEAN、残りの国を誘導していく、こういったことを行って、やはり、私どもの安全保障、さらに価値観を同じくする国々との経済圏、こういったものも形成していく必要があるのではないかというふうに考えているところであります。この点について、外務省の見解をいただきたいと思います。

曽根政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、ASEANとの関係の強化についてでございますが、人口六・五億人のASEANは、世界の成長センターであるとともに、インド太平洋の中心という地政学的要衝に位置しております。そういう観点からも、自由で開かれたインド太平洋実現に向けた要である。また、東アジア首脳会議やASEAN地域フォーラムといったフォーラム等もございます。そういったインド太平洋地域の地域協力の中心であるというふうに認識しております。

 その中で、ASEANは、二〇一九年に、開放性や法の支配といった原則を掲げる、インド太平洋に関するASEANアウトルックという文書を発出しております。これに関して、昨年の十一月の日・ASEAN首脳会議で、このASEANアウトルックと日本が推奨する自由で開かれたインド太平洋が本質的な原則を共有しているという点を確認する首脳声明を発出しております。

 今後、このアウトルックの重要分野である海洋協力、連結性、SDG、経済、こういった分野で具体的な協力案件を進めていくということが重要だと認識しておりまして、こういった協力を通じまして、日・ASEAN戦略的パートナーシップを一層強化するとともに、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて取り組んでまいりたいというふうに考えております。

四方政府参考人 委員の方からTPP11について御指摘がありました。

 TPP11は、市場アクセスにおいてもルール面でも高いレベルの内容となっておりまして、関心表明を行っているエコノミーがこうした高いレベルを満たす用意ができているかどうかについてしっかり見極める必要があると考えておりますが、新規加入に関心を示すエコノミーの動向を注視しつつ、戦略的観点も踏まえながら、引き続きTPP11の着実な実施及び拡大に取り組んでまいります。

 これに対して、RCEP協定は、後発開発途上国も含め、発展段階が大きく異なる十五か国による経済連携協定でございまして、この地域の望ましい経済秩序の構築に向けて重要な一歩となると考えております。

 日本としまして、TPP11にも参加しているオーストラリア及びニュージーランドとも緊密に連携し、地域におけるルールに基づく経済秩序の形成に主導的役割を果たしてまいりたいと考えております。

茂木国務大臣 我が国、大きな経済連携協定としては、TPP11、そして日・EU・EPAから始まりまして、個別の日米貿易協定、そして日英包括的EPA、さらには今回のRCEPと歩んできたわけでありますけれども、恐らくかなり大きなベースになっていくのはTPPでありまして、ハイレベルなルールというものを設定した、これに対して、先進国等々から英国、タイ等が関心を示す。TPPというものは、この後膨らみを持っていくんだと思っております。

 我々としては、元々メンバーであった離脱をしたアメリカに対して、今後も、アメリカ経済にとってもTPPに復活することがいいんだ、こういったことも働きかけながら、このTPPの確実な拡大、こういったものを図っていきたい。

 日・EUの場合は、どうしてもEUという決まった形と日本の間でありますから、これがどこまで広がりを持てるか。また、地域的にも、ある程度ヨーロッパの国との間の協定であります。

 一方、このRCEPについては、発展段階の違う国々、これが十五か国一緒になって、物品貿易、サービスだけではなくて、今回、知財であったりとか電子商取引、こういったルールまで設定できた。

 ただ、TPPと比べたらまだ完全ではないところがあるわけでありまして、RCEPを引き上げる、こういう作業をしながら、最後の仕上がりとして、このTPPとRCEPが並ぶようなものになっていくのか、若しくは、重なっているメンバー、日本とかニュージーランドとかオーストラリアとかベトナムとかシンガポール、マレーシアとあるわけでありまして、これが最終的に一つのものになっていくのか、これは、今後のTPPの拡大であったりとかRCEPの実際の運用、こういったものを見ながら判断していくということになっていくと思います。

中谷(真)委員 戦略を持って、通商政策、産業政策を進めていただきますことを切に願いまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 おはようございます。公明党の佐藤茂樹でございます。

 私は、このRCEP協定については、昨年の臨時国会で、十一月の十三日また十八日、二回にわたって質問をさせていただきました。

 今日からこのRCEP協定の審議が始まるわけでございますが、今日は最初の委員会でもありますので、内容に即して、原則的な、基本的なことを何点かお聞きをさせていただきたいと思います。

 昨年にも申し上げたんですけれども、今回のRCEP協定、参加国十五か国で世界の人口の約三割、さらには世界のGDP、貿易額の約三割、日本から見ましても、日本の貿易総額の約五割をカバーする巨大な経済圏が生まれるわけでございます。

 特に、日本企業にとっては、アジア全体にサプライチェーンをしっかりと構築しておりますので、そこで関税等が下がっていくと、非常にやはり日本にとってもこれからメリットが生まれる可能性のある意義ある協定ではないかと私自身は思っているんですけれども。

 まず、今回、RCEP協定を締結することによって日本の国益上の成果はどうなのかということについて、特に物品の貿易については、攻めるべきものはきちっと攻める、守るべきものはしっかりと守る、こういうやはり攻めと守りのバランスというのも非常に大切だと考えているんですが、協定自体は非常に広範囲な分野が含まれておりますけれども、物品の貿易とルール分野を中心に、RCEP協定について日本から見た成果というものについて、日本政府としてどのように認識されているのか、お伺いをしたいと思います。

茂木国務大臣 このRCEP協定、物品市場アクセスについては、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めた。また、物品・サービスの貿易だけではなくてルール面まで踏み込んだ、新たなルールを設定することができたと思っております。

 佐藤委員がおっしゃるように非常に大きな協定でありまして、RCEPは、後発開発途上国を含みますASEAN十か国、日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、合計十五か国が参加をしまして、物品・サービスの市場アクセスを改善するだけではなくて、知的財産、電子商取引、幅広い分野の新たなルールを構築をいたしまして、地域の貿易・投資を促進するなどを目的とした経済連携協定がこの地域にでき上がったということであります。

 十五か国のGDPの合計、そして参加国の貿易総額、人口は、いずれも世界全体の約三割を占める。さらには、RCEP参加国と我が国の貿易額は、我が国の貿易総額の半分、五割弱を占める。こういう大きな市場また経済圏になってくるわけであります。

 そこの中で、具体的に、市場アクセスの攻め、守りがどうなったかということでありますが、物品市場アクセスについて、まず、いわゆる守りについては、特に農林水産品について、全ての参加国との間で、いわゆる重要五品目、米、麦、牛肉を始めとする重要五品目について、関税削減、撤廃の約束から全て除外し、関税撤廃率は近年締結された二国間のEPA並みの水準といたしました。

 これに対して、攻めに関しては、我が国の関心品目であります自動車部品や鉄鋼製品を含みます工業製品について、対象国全体で九二%の品目の関税撤廃を実現をいたしました。また、農林水産物、食品についても、我が国の輸出関心品目、日本酒であったりとか幾つか入ってきますが、こういった品目について関税撤廃を獲得しているところであります。

 ルールについて申し上げると、例えば、知的財産については、著名な商標が自国や他国で登録されていないこと等のみを理由として保護の対象から外すことを禁じる規定を盛り込んだり、また、投資について、ロイヤリティー規制や技術移転等を含む特定措置の履行要求禁止の規定の具体的成果、こういった成果が得られたと思っております。

 RCEP協定によりまして、今申し上げたような世界の成長センターであるこの地域と我が国のつながりがこれまで以上に強固になることによって、それは、我が国にとっても、この地域にとっても、経済発展の大きな礎になっていく、そのように考えております。

佐藤(茂)委員 今網羅的に外務大臣から御答弁いただきましたけれども、更に加えて、今まで自由貿易協定を結んでこなかった中国と韓国、これも日本から見て大変大きな貿易相手国ですが、結果的に初めて結ぶ自由貿易協定になったということも意義があるのではないかなというふうに考えております。

 その上で、今もう外務大臣がほとんど網羅的に述べられたんですけれども、今日、農水省と経産省に来ていただいておりますので、簡単に。

 特に、農水の分野というのが常に自由貿易協定を結んだときには焦点が当たるんですね。今まで日本も、TPP11、先ほど自民党の先生方もおっしゃっておりましたが、こういうものを結んだり、あるいは日・EU・EPA、そういう協定を結んだときにも、日本の農業はどうなのか、日本の農業に与える影響はどうなのかということが常に焦点に当たるわけですが。

 今回、農林水産品について、具体的に、今外務大臣が答弁されたのと重なるかも分かりませんが、物品の関税で、攻めと守りのバランスというのはどういうことになっているのか、どのような成果があったのかということを中心に、物品の関税やルールの分野における日本の成果というものを、どういうものがしっかりと言えるのかということについて、農林水産省に御答弁いただきたいと思います。

牛草政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産品についてのお尋ねでございます。まず、物品の関税でございます。

 先ほど外務大臣から御紹介がありましたとおり、日本側の農林水産品の関税に関して、重要五品目、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物でございますけども、これらについて、関税削減、撤廃からの除外を確保いたしたところでございます。

 また、日本側の農林水産品の関税撤廃率でございますけれども、ASEAN各国、豪州及びニュージーに対しては六一%と、近年締結された二国間EPA並みの水準としております。そして、初めてEPAとなる中国及び韓国に対してですけれども、中国に対しては五六%、韓国に対しては四九%と、更に低い水準に抑制いたしております。

 一方、日本から輸出するときの相手国側の関税でございますけれども、先生の御指摘があった初めてEPAとなる中国及び韓国について申し上げれば、中国のホタテガイ、それから韓国のお菓子類など、我が方の輸出関心品目で関税撤廃を確保しております。

 そして、ルールでございますけれども、このRCEP協定によって、通関の手続でございますとか衛生植物検疫措置、いわゆるSPS措置と言われるものですけれども、これらに関する統一のルールが定められました。

 これによって、全世界の人口の約三割に相当する大きな市場へ、日本の農林水産物、食品の輸出促進に関する環境が整備されたものと考えております。

佐藤(茂)委員 それでもう一つは、工業製品ですね。

 今日は経産省に来ていただいていると思うんですが、今まで自由貿易協定を結んでいなかった中国や韓国とも、今回、RCEPによって無税品目の割合なども非常に上昇したというようにもお聞きしておるんですが、農林水産品の関心だけではなくて、工業製品の関税というものが具体的に日本から見てどのような成果があったのか、お聞かせいただけますでしょうか。

田村政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の今御質問のございました、RCEPにおける鉱工業品の関税分野におきます成果に関してでございますけれども、まず総論的に、我が国の関心品目でございます自動車部品、鉄鋼、化学、繊維素材等を含む鉱工業品につきまして、先ほど茂木外務大臣からも答弁ございましたけれども、対象十四か国全体に関しまして、九二%の品目の関税撤廃を獲得いたしました。

 また、先生の御指摘のございました、初めてFTAを結ぶ相手国でございます中国及び韓国に関しましては、RCEP協定によりまして、我が国からの工業製品の輸出品目に占める無税品目の割合が、対中国に関しましては現在八%のところが八六%まで上昇いたしますし、対韓国といたしましては現在一九%が九二%まで上昇いたしまして、輸出額に換算いたしますと、合計で約十六兆円分が無税となるという計算でございます。

佐藤(茂)委員 是非、農林水産品また工業製品についても、これは時間がかかるんですけれども、関税撤廃への流れの中で、こういう巨大な経済圏が生まれることをしっかりと生かしていただきたいと思うんですが。

 その上で、今日、農水省にあえてお聞きをしたいと思うんですが、農林水産省は昨年四月に、農林水産物・食品輸出本部というものを設置されたというように伺っております。

 今回、初めてEPAとなります中国や韓国についても、中国に対しては、例えば、パック御飯、あるいはホタテガイ、ブリ、しょうゆ、切り花など、現在一二%から一〇%、七%と高い関税がかかっているものを下げていく、また、韓国に対しても、キャンディーや板チョコレート、あるいは窓用等の建築用木工品など、現在八%の関税率の物品、そういうものが下がっていく。

 さらには、インドネシアに対しても、ここは人口が非常に大きい東南アジアの大国ですが、ここについても、牛乳やしょうゆなど現在五%の関税率の物品の関税撤廃が合意されました。

 それぞれ輸出拡大が非常に日本から見ても期待される品目であります。ただ一方で、特に中国については、今までも、従来から検疫上の課題であるとか、あるいは知的財産侵害への対応といった、そういう課題も指摘されているわけでございます。

 このRCEP協定によって、今後、農林水産品の輸出拡大に向けまして、日本政府としてどのように取り組んでいかれるお考えなのか、農林水産省の戦略についてお伺いをしておきたいと思います。

池山政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員から御指摘ございましたように、我が国の農林水産物、食品の輸出拡大に向けまして粘り強く交渉した結果、中国に対しましてはパック御飯等、米菓、ホタテガイ、ブリ、しょうゆ、切り花、韓国に対しましては菓子、インドネシアに対しましては牛肉等の、輸出拡大が期待される品目の関税撤廃を獲得いたしました。

 また、このRCEP協定におきましては、要請が行われた場合のSPS措置に関する協議の場の設定についても定められております。

 一方で、昨年十一月に取りまとめました農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略におきまして、二十七品目の輸出重点品目を定めております。その多くにとってアジア諸国は重要なターゲット国でございまして、輸出産地を中心に、マーケットインの発想でアジア諸国の規制やニーズに対応した生産を行うこととしてございます。

 このような中で、輸出の障害を克服するため、必要に応じてSPS措置に関する協議の場も活用しながら戦略的な協議を実施いたしますとともに、我が国の品種や生産加工技術などが海外に流出し、日本の事業者の輸出等の支障にならないよう、知的財産対策も強化いたしたいと考えてございます。

 私どもといたしましても、このRCEPの枠組みは我が国の輸出促進に対して大きなチャンスと考えてございまして、この協定による成果を活用しながら、輸出拡大実行戦略をスピーディーに実行することで、更なる輸出拡大を図ってまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 是非、この協定が発効されるまでにもいろいろ戦略を練っていただいて、活用して輸出拡大につなげていただきたい、そのように思います。

 その上で、今日は、最後、持ち時間を使いまして、RCEP協定で懸念されることについて、まず一番目、今日は一問だけお聞きをしていきたいと思うんですが、RCEP協定で電子商取引分野のルールが新たに規定をされました。

 一つ目は、情報の電子的手段による国境を越える移転を禁止又は制限してはならないという、いわゆるデータフリーフローの規定であります。二つ目は、コンピューター関連設備の設置要求、すなわちデータローカライゼーションを原則として禁止する、そういうことでございます。ただし、日本が結んだTPP11協定であるとか日米デジタル貿易協定等に規定されている、ソースコードの開示要求の禁止等についての規定はございません。協定発効後、対応を行っていくことが規定されているんですけれども、これは課題として残っていると思います。

 その上で、先ほど申し上げました二つのルールですね。電子商取引分野のこの二つのルールの例外として、二項目挙げておられます。二つの例外を挙げていまして、一つは、公共政策の正当な目的を達成するために必要であると認める措置、二つ目が、安全保障上の重大な利益の保護に必要であると認める措置、こういう場合には、締約国が必要性を決定して、先ほどの二つの電子商取引の分野のルールについて、例外として守らないことも認められるわけですね。

 これは極めて締約国に大きな裁量が与えられておりまして、運用次第では、例えば公共政策の正当な目的を達成するため、あるいは安全保障上の重大な利益の保護のためという理由でこれが濫用されれば、せっかく決めたルールの規定が形骸化するおそれがあるんです。

 現に、例えば、今回十五か国の中というのは、やはり発展段階が様々な国がありまして、現に起こっていることとして、ミャンマーなどの、ミャンマーの国軍によるクーデター、こういうものも起こるような、やはり不安定な国もありますし、また、必ずしも法の支配、自由、民主主義という価値観が定着していない、そういう国も今回RCEPの協定の中には入っているわけですね。

 そういう国々が、先ほど言いました、安全保障であるとか、あるいは公共政策の正当な目的を達成するという理由で、せっかくRCEP協定で決めたこの電子商取引分野のルールというものがないがしろにされる、骨抜きにされる危険性があるのではないか、そういう懸念を持つわけですが。

 具体的に、この例外措置として一般的に認められる具体的な内容をどのように認識されているのか、あるいは、例外規定の濫用を招かず適切な運用を確保するために、各国は交渉の過程で合意しているルールあるいは決まり事などがあるのか、そういうルールが決まっていないというのであれば、どのように例外規定の適正な運用を確保していくのか、政府の答弁をいただきたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 RCEP協定における電子商取引章におきましては、委員御指摘のとおり、情報の越境移転の制限の禁止、コンピューター関連設備の設置要求の禁止といった、電子商取引を促進するための規定が盛り込まれておりますが、これらの規定の例外として、締約国が公共政策の正当な目的を達成するためや、自国の安全保障上の重大な利益の保護のために必要であると認める措置を講じることが認められております。

 何が例外に該当するかにつきましては、措置の目的や内容を含めまして具体的に検討する必要がございますけれども、一般論として申し上げれば、例えば、個人情報保護は公共政策の正当な目的に当たると考えられます。また、安全保障上の重大な利益につきまして、経済安全保障分野に関するものも含まれ得ると考えております。

 他方、こうした例外規定を恣意的に援用することは許されず、これは交渉参加国の一致した立場であると考えております。

 RCEP協定における電子商取引章では、電子商取引章の規定の解釈及び適用に関する協議及びRCEP合同委員会の付託について規定しておりますところ、我が国といたしまして、こうした規定の活用も含め、協定が適切に運用されるよう、しっかり取り組んでまいりたいと思います。

佐藤(茂)委員 今御答弁ありました、RCEP合同委員会でもいいんですが、運用がやはりきちっと適正にされなければ骨抜きにされる可能性がある。といいますのも、やはり発展段階が様々な国が参加されている、価値観も、やはりいろいろな価値観を持っている国が参加されている中で、どう適正に運用していくのかということがこれから大事ではないかと思いますので、そういうことも頭に置いた上で、せっかくの協定ですので、適正に運用されることを是非政府に期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 おはようございます。吉良州司です。

 今日は、外務委員ではないにもかかわらず質問の機会をいただきましたこと、委員長、理事の皆さん始め、感謝を申し上げます。

 今日は、RCEP協定の審議ということでありますけれども、私の認識としては、RCEPを議論するということは、中国とどう向き合っていくのかということとほぼ同義だという認識を持っていますので、最初には、その中国とどう向き合っていくのかということについて、そして、後半で、RCEPとTPPとの対比の中で議論をさせていただきたいというふうに思っています。

 これまで、黄川田議員、中谷議員、佐藤議員もそうですけれども、皆さん、中国とどう向き合うのかということを議論されてきました。私も同じく、世界の工場であり、日本としても多くの投資をしている、そして、世界の巨大市場となった中国の経済力、特に買う力、この経済力、買う力に引きつけられてしまう、魅せられてしまう企業、それから経済界の立場、それから、これまでの議論にも出ていますように、一方、南シナ海、東シナ海、香港、チベット、ウイグル、そして、何よりも私たちとしては尖閣、こういったことについては、政治的に決して譲ることができない。

 この今言った中国の経済力、買う力に引きつけられる企業、経済界の立場と、それから、政治的には、正義を貫き通す以上は譲ることができない、この立場、このはざまで日本がどう中国と向き合っていくのか、これが今、我が国にとっての最大の課題だと思っています。

 そして、その問題意識が、米中覇権争いが激化する中で、余計股裂き状態になっているというふうに思っています。日本の国益を冷徹に見詰めたときに、花も大事、だんごも大事、経済も政治的正義を貫くことも大事というのは誰でもが分かっていることです。ただ、それぞれの人によって、より経済を重視したり、より政治的な正義を大事にしたり、この辺の微妙なバランス、加減が違うんだろうというふうに思っています。

 今日、私は、中国とどう向き合うかに当たって、一つは、ナショナリストが、ナショナリズムが高じて、中国はけしからぬと言うと、そうだそうだとなっていく。気持ちは分からないでもないですけれども、多くのナショナリズムを掲げる方々が、さっき言いました中国の経済力、買う力、このようなものの実態を知らないまま拳を上げていることが多いというふうに思っています。

 そこで、私は、まず、中国の経済力、それも世界の中において今や圧倒的な存在感、影響力を持ち得るようになっている中国の経済力についてどのように認識をされているか、茂木大臣の認識を問いたいと思います。

茂木国務大臣 確かに、中国はこの二十年で圧倒的に経済成長をしております。今、世界第二位の経済大国でありまして、GDPでは世界全体の一六・四%と、アメリカにもう本当に肩を並べるようになってまいりましたし、また、貿易総額では世界の一三・一%を占める貿易大国であります。

 十四億人の人口を抱える巨大市場ということもありまして、また所得も上がっておりますから、その市場の魅力といいますか、それも増している。輸入額では二兆五百五十八億ドルで世界の一一・五%を占め、多くの国にとって最大の貿易パートナーとなっている。様々な国がこういった形で中国とは深い経済関係を有しておりまして、中国の経済動向、そしてその経済政策の方向性は、世界経済のみならず、外交、国際社会においても大きな影響力を与え得るものだと考えております。

 恐らく、五年前と比べて、アメリカ、ヨーロッパ、そしてまたASEAN、そこの外相であったりとかいろいろな専門家と議論をすると、五年前は、経済大国としてのマーケットの魅力のある中国、こういうことが先に来たんですが、今は、経済大国として本当に中国が正しいことをやっているんだろうか、そのことについては警戒をしなきゃならない、こういう議論が必ず同時に提起をされるわけでありまして、経済大国であるということは、国際経済秩序の維持強化であったりとかルールの確立に向けて、責任ある大国であることを意味するわけであります。もうフリーライダーでいる訳にはなりません。

 これだけ大きいんですから、自分のことだけではなくて、世界経済全体についても責任ある立場を取っていかなきゃならない。また、巨大市場ということは、単に購買力がありますよということだけではなくて、中国に進出をする、輸出をする企業に対して、公平公正な、安定的なビジネス環境を提供していく、こういう責務というか、ことも求められてくるんだと思っております。

 そして、一言で言いますと、こういった経済力というものは、世界経済全体の発展、自国ももちろん発展しますが、世界経済全体の発展に活用されるべきでありまして、それが特定国に対する経済的威圧とか圧力に使われることはあってはならない。

 私がここ一、二年、いろいろな話を聞いていますと、大体、今、最後の部分で私が集約したような話で一致をするところが多いわけでありまして、そういった話は中国に対しても率直に申し上げております。

 責任ある大国としての役割を、それは外交、安全保障面だけではなくて経済面でも果たしてほしい、こういうことは、直接、率直にお話をさせていただいて、働きかけもしているところでありますが、今後の中国の動向、どういった形でこういった国際社会の期待に応えてくれるか、これも注視をしていきたいと思っています。

吉良委員 ありがとうございます。

 私自身も、茂木大臣の今答弁された問題意識、認識、共有しているところであります。

 その上で、最初に私の問題意識を述べましたけれども、私、結構ビジネスの世界、会社員を二十二年間やっていまして、正直、取引先の中には、このやろうと思う会社もあり、これは何だ、耐えられないと思うような担当者もいる。けれども、そのときに、悔しいけれども、やはり頭を下げて、にこっとしてということもある。ただ、同時に、自分としては、いざ、もうどうしても我慢できないときにはということで、ある意味、辞表を持ちながら、ふざけるんじゃねえといって辞表をたたきつけて、もうこれ以上頭を下げていられるかと、その葛藤の中でビジネスマン生活を送ってきたつもりであります。

 そういう意味で、今、経済大国になったけれども、正しい行動として責任ある行動を取っているのかという問題意識があるというお話でしたけれども、まず、その経済大国、買う力の大きさについて、ちょっと外務委員の皆さんと共有したいと思っているんです。

 資料を見ていただきたいと思うんです。「二〇一九年の世界経済における中国経済の存在感は圧倒的」というものであります。これはどういう図かといいますと、横軸は、世界経済、世界のGDP、これは名目です、名目GDPにおける、それぞれの主要国がどれぐらいの割合を占めているかというものを表した図です。そして縦軸は、当該年度における実質経済成長率を表しています。二〇二〇年はコロナでどこの国も通常の経済ではありませんので、あえて二〇一九年を取っています。

 今言いましたように、横軸は世界経済におけるその国のGDPの割合、そして縦軸が実質経済成長率ですから、この面積が大きければ大きいほど、その当該年度の世界経済における影響力が大きいということをある意味表していると思っています。面積どおりかは別として、そういう傾向があるということは言えると思います。

 これを見てお分かりのように、中国は、先ほど大臣も答弁ありましたけれども、世界のGDPの中で一六%強を占めている。二〇一九年については六・一%の成長。我が国はというと、かつては一四パーあったにもかかわらず、今は五・八%の割合。そして、一%を切る成長。結果的に、日本の面積はこういう小さなものであります。多くの人たちが、実はこの意識、感覚を持っていないまま、対中国について議論をしていると思っています。

 では、GDPというよりも個別のものを少し見ていきたいと思っていますので、次のページを見ていただきたいと思います。上の図は、米国、中国、日本のGDP。二〇一〇年に日本を追い越して以降、もう今や中国は三倍のGDPになっています。日本だけが横ばい。

 一言、ちょっと余計なことを言いますと、日本の折れ線グラフは赤で示していますけれども、その下に実数値を入れています。民主党政権、二〇一〇年、一一年、一二年、二〇一二年のGDPは六・二兆ドル。その後ずっと第一次安倍政権が続きますけれども、二〇一九年、五・一五兆ドル。民主党政権時代を一度も上回ったことはありません。そして、一兆ドル減少しています。為替云々ということは、もうここでは論じません。それはいいですけれども、中国が、今申し上げたように三倍になっている。

 そして、下の図を見ていただきたいんですけれども、ある意味、日本の経済を支えているのは、今、自動車産業と言っても過言ではないと思いますが、その自動車市場、日本はざくっと五百万台強、本家本元であるアメリカが一千七百万台、そして中国は、米国を二年前は一千万台上回る、一九年は二千五百万台ですけれども、その前は二千八百万台、二千九百万台に近い数字でありました。

 その次も見ていただきたいと思います。これは、昨今、コロナ禍では多くの人が通販を利用していますけれども、世界のインターネット通販市場、各国規模を見ていただきたいと思いますが、何と中国がほぼ五五%を占めています。米国ですら一六%です。世界のクレジット決済、日本発はJCBでありますけれども、日本人の多くがVISAだ、マスター、アメックス等を使っていますが、中国のユニオンペイが三〇%を占めている。

 その下を見ていただきたいと思いますが、重工業の根幹を担う鉄鋼業、その原料である鉄鉱石、輸入額は中国が七二%です。その右、銅鉱石、これは中国が五六%を占めています。

 これだけの買う力を前にして、やはり、なかなか中国の経済を無視するわけにはいかない。というよりも、経済界、企業の立場からすると、政治的な正義云々はともかく、食っていくためには尊重せざるを得ない。これが経済界、企業の立場だろうと思っています。

 そういう意味で、私自身は、本当に、正義を通していくということはいいと思っています。ただ、今申し上げたように、これだけの影響力のある中国に対して強く出たりする場合には、覚悟と備えが必要だろう。

 その意味で、私自身がある意味驚きを持って尊敬する国はオーストラリアです。オーストラリアの資源を一番買ってくれていたのは中国。その中国に対して堂々と正義を貫き通している。このオーストラリアの姿勢は、私は見事なものだと思っています。

 ただ、先ほど来の質疑でもありましたけれども、もう日本は、中国に対して第一の投資というか、日本から世界の中で中国に一番投資をしている、一番の貿易相手国である、このようなことを考えたときに、日本も全く同じような態度を取れるのか、これが課題だろうというふうに思っています。

 先ほど茂木大臣が、責任ある大国として行動してほしいという話がございました。中国は、正直言って、世界中に摩擦をもたらしていると私は思っています。その中国は、既存の世界秩序に対して何を守り、何に挑戦しているのか。覇権争いと言われるぐらいですから、世界の秩序に対して挑戦していると思っていますが、その世界秩序の何を守り、何に挑戦していると認識されているか、大臣の考えを問いたいと思います。

曽根政府参考人 お答えします。

 中国が世界第二位の経済大国となり、また、経済に限らず政治、軍事、技術など様々な面で、その行動が国際社会への影響力を増しているということは間違いないということでございます。

 中国は、特に東アジア、東シナ海、南シナ海などの海空域で、既存の海洋法秩序と相入れない独自の主張に基づく行動や、力を背景とした一方的な現状変更の試みを続けており、深刻に懸念しているところであります。また、軍事力の広範かつ急速な増強を含め、その軍事行動は、国防政策や軍事力の不透明性と相まって、我が国を含む地域の国際社会の安全保障上の強い懸念となっております。

 中国は、国際秩序や自由貿易体制、さらには気候変動問題などでも、もはやフリーライダーではございません。責任ある大国として貢献することが求められている。例えば、WTOなどにおきましても、中国が最大の途上国として独自の制度を維持し、様々な恩恵を受け続けるということは、もはや適合しなくなってきているというふうに考えております。

 その上で、中国との安定した関係は、日中両国のみならず地域及び国際社会の平和と繁栄のために重要であると考えており、日中は、世界第二位、第三位の経済大国として、地域及び国際社会の諸課題に取り組んでいく責務を共有しております。両国が、国際社会のルールにのっとり、その責任をしっかり果たし、国際社会の期待に応えていくことが重要だと考えておりまして、先般の日中外相会談におきましても、両国が共に責任ある大国として地域、国際社会に貢献していくことの重要性を確認しているところであります。

 中国との間では様々な懸案が存在しておりますけれども、引き続き、首脳会談や外相会談等のハイレベルでの機会を活用しまして、主張すべきはしっかりと主張し、懸案を一つ一つ解決し、中国の具体的な行動を求めていくということで臨んでいきたいというふうに考えております。

吉良委員 外務省としては、多少失礼な言い方ながら、教科書的な答弁をいただいたというふうに思っています。それ自体は間違いではないんだろうと思っていますが。

 ここ最近の日米中関係を見ていると、中国は、トランプ政権時代に中国たたきが激しくなった頃から、やはり日本に少しずつすり寄ってきているといいますか、仲よくしようとしてきているように見受けられます。ところが、尖閣等の動きを見ると、一向に日本への配慮を欠きといいますか、今言ったように、非常に既存秩序を侵すような行動を取り続けている。

 これはどう読み解けばいいんだろうと思いますと、先ほどWTOの話はありましたけれども、総じて言うと、戦後、米国、西側諸国がつくってきた世界秩序、その中で、経済版と言えるような、今なかなか聞かない言葉になりますけれども、IMF・ガット体制、その延長にある経済的なインフラになっているシステム、これについては余り大きく反発をしたり乱したりはしていない。また、今言った米中の覇権争い、アメリカによる中国たたきが激しくなると、日本に仲よくしようと、ある意味では握手を求めてくる。

 これは、経済については、今言った世界的な経済秩序も含めて常にウィン・ウィン関係を求めようとしている。けれども、米国が中心となった安全保障体制、これについては決して同調しない。それについては、まさに覇権争いとしてチャレンジしていく、こういう対応を中国はしているんだろうというふうに思っています。

 今言った何に挑戦しているかということについての、ある意味では冷静な分析が私は必要だというふうに思っておりますので、そのことについて、先ほどの答弁の内容は、教科書どおりと言いましたけれども、間違っていないと思いますので、引き続いての対応をお願いしたいと思っています。

 私が今後心配するのは、今言いましたように、中国は、安全保障環境等については既存秩序を受け入れない、かえって自分が都合のいい秩序をつくろうとしている。経済は、できればうまくやりたい。けれども、今後、先ほど私が覚悟と備えが必要だということを申し上げましたけれども、米中覇権争いのはざまにあって、日本はどうしても日米安全保障条約というか日米同盟、これの方が優先されることは多くの人が認めるところでありまして、私もそうですから。アメリカと協調せざるを得ない。

 アメリカは、今言った、政治と経済をトランプ時代以降切り分けていない。そう考えてきますと、当然、アメリカが制裁を科していく、そして日本もついてこい、これを要求されるというふうに思っています。

 そして、今言ったように、経済と政治が切り分けられているのであればぎりぎりのところで妥協点を見出すんだけれども、アメリカと政経一体となって中国に向かってくる、経済制裁を科していく、そうなってきたときには中国は反発をするんだろう。そして、場合によっては、経済的なウィン・ウィン関係というものを度外視して、また、二〇一〇年等にあった日本企業の、また日本の店舗の打ち壊しだとか、ストだとか、又は当時のレアアースの事実上の禁輸であるとか、そういう、反発に伴う対日本たたきに出てくる可能性がある。

 こうなった場合に、日本企業、日本経済にどのような影響が出ると認識されていますか。

曽根政府参考人 お答えします。

 先ほども申し上げましたけれども、中国は世界第二位の経済大国ということで、我が国にとっても隣国として重要な貿易パートナーであり、中国に進出する日系企業や駐在する日本人社会、日本人の社員は極めて多い状況になっております。経済環境を含め、日中関係は日本にとっても最も重要な二国間関係の一つであり、中国との安定した関係は、両国のみならず地域及び国際社会の平和と繁栄にとっても重要であるというふうに考えております。

 ただ同時に、経済や気候変動などの分野で協力するからといって、法の支配、尖閣諸島を含む主権、領土、民主主義、基本的人権の尊重、航行の自由など、基本的価値に関して譲ることがあってはならないというふうに考えております。

 我が国としては、米国ともよく連携しながら、主張すべきはしっかりと主張し、懸案を一つ一つ解決し、また中国側の具体的行動を求めていきたいというふうに考えております。

 その上で、政府としては、引き続き、進出している日系企業の事業の環境の維持向上にしっかりと取り組んでいきたい、そのことが当然取り組むべき課題であるというふうにも考えております。

吉良委員 たまたま答弁の中で、私が次に質問しようと思っていたことも出てまいりました。

 今答弁されたことも教科書どおりで、間違いがないんだろうと思っていますけれども、私が心配しているのは、やはりアメリカの立場と日本の立場は違うんだということです。日中関係、日米関係を考えたら、それは、安全保障も経済も、あらゆることを考えて、米国の方が大事だということは誰もが分かっていること。それでも、米国の対中国関係と日本の対中国関係は明らかに違う、国益が違う。

 次の質問に移りますけれども、今、いわゆる価値観外交的な話をされました。自由、民主主義、基本的人権、法の支配、これに市場経済を加える場合、加えない場合はありますけれども、こういった価値観、これが大事なことははっきりしています。それを主張することも時と場合によっては正しいというか、ある意味普遍的な価値とも言えると思います。

 ただ、私は、やはり、トランプ大統領を米国が選んだ、そしてこの四年間トランプ大統領が何をやってきたか、その影響によって今米国内で何が起こっているのか、そういうことを考えたときに、アメリカと一緒になってこの価値観外交を推し進めていくことが日本の国益なのかという問題意識を持っています。

 残念ながら、今はバイデン政権ですけれども、バイデン政権はあれだけの僅差でようやく勝った、半分近くがいまだにトランプを支持していた。そして、トランプ大統領がまき散らした種によって、アメリカは引き続き分断が続いている。悔しいけれども、アジア人だというだけで突き飛ばされ、暴力を振るわれ、撃ち殺されている。これが今アメリカで起こっていることです。

 断っておきますけれども、私、五年半アメリカに暮らして、物すごくいい時代のアメリカを経験させてもらって、豊かさとは何ぞやということを勉強させてもらいました。大好きな国です、大好きな人たちです。けれども、今のアメリカを見ていると、とても、今言った基本的人権、多くの国が、今言った価値観をアメリカから言われたときに、あんたにだけは言われたくないよと。これが今現在の、今の今、現時点での国際社会の本音ではないですか。

 武田信玄ではないけれども、正義は力なり。アメリカは圧倒的な力、軍事力も経済力も力があるから、みんな表立っては言わない。けれども、本音では、あんたにだけは言われたくないよというのが今の今ですと私は思っています。そういう中で、価値観を前面に出しての、日本の経済、企業が大打撃を受けるような形の行動は取ってもらいたくないと思っています。

 先ほど、答弁でありますように、私自身も申し上げたように、香港だ、ウイグルだ、チベットだ、このようなところで何が起こっているか。これは容認できないことです、言っていくことが大事です。けれども、それが、今言った、アメリカと一緒になって、そして、結果的には日本の経済、日本の企業だけが打撃を被るようなことがあってはならない、このように思っているつもりですけれども。

 茂木大臣、答弁の順番じゃないかもしれませんけれども、今私が申し上げたことに対しての御見解があれば伺いたいと思います。

茂木国務大臣 吉良委員の方から、今日、非常に大きな国際社会の動き、そこの中で、大国となった中国の問題であったり、さらにはアメリカ社会の問題まで踏み込んで御発言をいただきました。

 私も、八〇年代、アメリカに住んでおりまして、当然様々なエスニックグループの学生とも話をして、様々なことを感じました。アメリカという国、そういう格差があったり溝がある、そういったことを意識しながらどう乗り越えていくかということで、私は、一九六〇年代のシビルライツムーブメント以来進んできた国であるかなと思っております。

 なかなか、格差というものを覆い隠すというよりも、格差があるんだ、この格差をどうするかということで、今バイデン政権も真剣に取り組んでいるのではないかなと私は考えているところであります。

 問題があると、ある国で問題があるということだから、ほかの国の問題について何か言えないということではなくて、私は、物事について、自分の国でも改善しようとしている、あなたの国についても問題があるし、改善した方がいいよということはお互いに言い合える関係になる、こういったことが重要ではないかなと思っておりまして、ある国が、言われたときに、あんたの国でも問題があるんだから言う権利はないよ、こういうことでは健全な議論というのは進まないんじゃないかなと思っております。

吉良委員 おっしゃるとおり健全な議論は進まないかもしれないけれども、本音のところであんたに言われたくないよと思っていたときには、本当にいい関係は築けないと私は思っています。

 特に、今アメリカ国内で、とてもというか、目を覆うようなことがずっと続いていることに加えて、これはかつてずっと言われていることですけれども、原子力政策において、インドに対するダブルスタンダードだとか、人権外交といいながら、人権といいながら、サウジアラビアの状況はどうなんだ、カショギ氏暗殺についてどうなんだ、これは問わずというようなことがあり。

 まあ、繰り返しますけれども、その掲げる価値というのは普遍性を持つし、大事なことなんですけれども、今の今、アメリカと一緒になってそれを出して、そして、日本の経済に大きな打撃が返り血として来るようなことについては慎重であってほしい、こういうことを申し上げています。

 ちょっと、非常に時間がなくなってまいりましたけれども、TPPとRCEP、この二つの枠組みについての戦略的な位置づけを簡潔に答弁いただきたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 世界で保護主義や内向き志向が強まる中、日本は、TPP11以来、日・EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA、RCEP協定など、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してまいりました。

 TPP11は、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の通商ルールとして、世界各国から注目されている多国間協定でございます。我が国は、今年のTPP委員会の議長国として、新加入に関心を示すエコノミーの動向を注視しつつ、戦略的観点も踏まえながら、引き続きTPP11の着実な実施及び拡大に取り組んでまいります。

 RCEP協定は、我が国とともにASEANが推進力となって交渉を進め、ASEAN、日中韓、豪州、ニュージーランドの十五か国が署名したEPAであり、中国主導の枠組みであるとは認識しておりませんが、この協定は、先ほども茂木大臣から御説明があったとおり、経済発展段階が大きく異なる中でも、物品・サービスにとどまらず、知財、電子商取引も含めた新たなルールまで盛り込んだものでございまして、この地域の望ましい経済秩序の構築に向けて重要な一歩になると考えております。

吉良委員 私自身もこのRCEP協定に異論を唱えるつもりはありませんけれども、私が従来から言い続けてきていたのは、TPPの方がより戦略的価値が高いということで、TPP当初12、そして、その後、米国が抜けた後でも、TPP11をまとめ上げていただいたことに大変感謝をしております。

 その上で、最後、資料を見ていただきたいんですけれども、四枚目になります。これは、TPP加盟国及びTPP参加表明国バーサス上海協力機構及び一帯一路参加表明国の図であります。TPP側は赤、ピンク、上海協力機構、一帯一路側はブルー系になっています。

 これを見てもある意味明らかなように、やはり、赤、ピンク系のTPPは、ある意味シーパワーなんですよね。海の帝国、シーパワーの国々の集まり。そして、ベトナムとか政治体制は違うところがありますけれども、先ほど来出ている、価値を大事にしている国がTPPに参加している。

 何か私、矛盾したようなことを言っているようですけれども、内部で矛盾していないと思っていますが。

 一方、上海協力機構そして一帯一路、これについては、ある意味でランドパワー。ランドパワーの特徴は、陸続きの国であると、軍事力が強い、その国の影響を受けやすいということですね。

 前回の2プラス2会談の中でも、日本は先ほどの価値を大事にして、ある意味中国を名指しをしましたけれども、韓国は名指しを避けた、そういうことも含めて、東南アジアもその傾向があると思っています。

 私自身は、矛盾しているように聞こえるかもしれませんけれども、大事な価値観を共有する国々とのこの戦略的な枠組みをより強化、拡大していくべきだ、このように思っておりまして、今EUを離れた英国がTPPへの参加表明をしている、そして、東南アジアの大国であるタイもインドネシアもフィリピンも参加表明して、こういう国々を是非TPPに組み入れてといいますか迎え入れて、特に英国については、やはりヨーロッパとTPPを結ぶ懸け橋になると同時に、経済規模は決して大きくないかもしれませんけれども、イギリスの背後にはコモンウェルス諸国がある、EUを離れたイギリスとしては、当然国際社会で影響力を行使するために、大英帝国以来のコモンウェルス諸国との協調関係を図ってくる。

 そういう意味で、私は、シーパワーであるこのTPPをより拡充していってもらうことをお願いしたいと思っています。

 RCEPについては、正直言うと、やはり中国の影響力がもろに出る枠組みなので、本来ならTPPを優先して、RCEPはある意味、やめたとは言っちゃいけないけれども、たなざらしにしておいていただきたいというのが私の本音ではありましたけれども。

 同時に、先ほど言いましたように、何が何でも駄目だというような協定ではない、中国、韓国との初めての自由貿易というような価値もあると思っていますので、そのことは認めた上で、最後にいま一度TPPの拡充というものをお願いしたいということで、もし大臣からあれば、時間が終わっていますので簡潔にお願いします。

茂木国務大臣 TPP11、まさに私が担当大臣として取りまとめ、最終的にまとめたものでありまして、吉良委員の方から大変高い評価をいただいて、ありがたいと思っておりますし、このTPPを世界各国に広げていく、このことは、日本の国益にも、また世界の発展にもつながると考えております。

 TPPが二〇一九年の一月に発効しました。二月に日・EU・EPAが発効し、そして昨年の一月に日米貿易協定が発効しと、順序を踏んで発効してきておりまして、恐らくこのRCEPについても、早くても今年の末か来年、こういうことになるかと思うんですけれども、順を追ってそういうものを進めながら、やはり、先にやってハイスタンダードなものというのがほかのものを引っ張っていくということになるのは、私は間違いないんじゃないかなと思っておりますし、そのための努力もしていきたいと思っております。

吉良委員 ありがとうございます。

 終わります。

あべ委員長 次に、阿久津幸彦君。

阿久津委員 立憲民主党の阿久津幸彦でございます。

 本日は、大変短い時間ではありますけれども、RCEP協定の重要性については十分に理解した上で、一、米国の政権移行期になぜ締結を急ぐのか、二、人権外交という視点で考えた場合、中国やミャンマーという参加国に問題はないのか、三、中国を念頭に、ルール、運用に懸念はないのかなどについて、時間の許す範囲でお尋ねしたいというふうに考えております。

 それでは、伺いたいと思います。

 間もなく、米国バイデン大統領と初めての日米首脳会談が行われます。米国の対中政策、対北朝鮮政策、日米韓の役割分担、日米豪印、クアッドへの期待、米国のTPP復帰など、RCEP協定に重大な影響を与える米国の政策に変化の兆しを予見することができます。

 これらの安保政策と通商政策などの変化はRCEP協定にどのような影響をもたらすのか、お考えをお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、伊藤(信)委員長代理着席〕

茂木国務大臣 来週、菅総理、ワシントンを訪問して、最初の外国首脳としてバイデン大統領と首脳会談を行うわけでありますが、既に電話会談等々も行ってきておりますし、日米間では外相会談、さらに2プラス2、こういったことも行ってきておりまして、かなり意識が合った状態で会談できると思っております。

 日米同盟、これは今、日米二か国の関係にとどまらず、地域、そして世界の平和と安定の礎になっている。さらには、自由で開かれたインド太平洋を実現していく。そのために、日米豪印、こういった枠組みであったり、さらにはこれをASEAN、様々な国々に広げていく、こういったことでも完全に考えが一致をしているところであります。

 恐らく、その一つは、北朝鮮政策、ここについても、基本的な考え方、非核化の問題、さらには拉致の問題、一致をいたしておりますが、北朝鮮政策については、今米国がまさに政策のレビューの真っただ中でありまして、そこの中でどういう議論ができるかということだと考えております。

 また、通商政策について、まずは国内の労働者、これを米政権として重視をして、それまで新しい通商協定は結ばない、こういう方針だと思っておりますが、同時に、このインド太平洋地域の経済秩序、これをしっかりさせていくということは極めて重要だということにおいては一致をしておりますので、その点はそごはないのではないかな、こんなふうに考えております。

 このRCEP協定についても、既に、様々な協議を進める中で、米国側についても、日本の政策、外交政策、経済政策も含めて説明する中で、この進行状況等々についても説明をしてきたところでありまして、そんなに驚きはないのではないかなと思っておりまして、日米首脳会談について、私は、いい雰囲気の中で、またいい成果も出すことができるんじゃないかなと思っております。

 先日、岡田委員から、最初の首脳会談だから外務大臣もついていった方がいいんじゃないかな、こんな御指摘もいただきまして、岡田外務大臣は、菅(かん)総理のときについていかれたと。考えてみたら、私も菅(かん)総理だったら行ったかな、そういうふうに思ったんですが、失礼です、菅(すが)総理だったら大丈夫じゃないかなと思います。

阿久津委員 アメリカがどんなふうに日本のRCEP参加を理解しているのかなというところが非常に心配だったものなんですけれども、今のお話を伺う限りは、大体、おおむねオーケーなのではないかなということと理解させていただきました。

 ただ、大臣、日本がRCEPから受ける恩恵も大きいと思うんですよ。ただし、初めての経済連携協定参加の中国が受ける恩恵の大きさというのは計り知れないですから、そこのところ、是非、微修正含めて、菅総理にもアメリカでちょっと議論をしていただければなと。

 私が特に心配しているのは、今、大臣は大丈夫だとおっしゃったんですが、自由で開かれたインド太平洋政策の足を引っ張ってしまわないかなという懸念を勝手にしているわけなんですけれども、その辺の心合わせ含めて、よろしくお願いしたいと思います。

 ついでに一つお伺いすると、先ほどから話が出ているTPPあるいはTPP11なんですけれども、米国の加入あるいはTPPへの復帰を強く迫るお考えというのはございませんでしょうか。

茂木国務大臣 これは、トランプ前政権の時代、私はカウンターパートとしてロバート・ライトハイザー通商代表と八回にわたって交渉してきたと思うんですが、そういった議論の中でも、今、経済のグローバル化が一番進んでいる、また先端技術を一番持っているのも米国ではないか、このTPPという最先端の協定に加わることによって、これは米国の雇用にも、そしてまた経済にもプラスになるんだ、こういう話はしたんですが、なかなか理解を得ることはできませんでした。

 今、バイデン政権、様々な形で同盟国、同志国との協調、こういったことを言いながら、例えば、WHOにもパリ協定にも復帰をする、また、イランとの間でも様々な関係を模索するということでありますけれども、また、通商政策について言いますと、これについてはレビュー中でありまして、国内も、これは日本もそうでありますが、アメリカも相当コロナで傷んでいるという状況で、まずは、国内の経済、労働者をどうするのか、こういう立て直しを行ってから通商政策については考えるのではないかなと思っております。

 いずれにしても、先日も、キャサリン・タイ、新しい通商代表とも話をさせていただいて、日米間で通商問題も含めて緊密に意思疎通をしてまいりたいと考えております。

阿久津委員 次にお尋ねしたいのが、時間軸の問題なんですけれども、バイデン政権の誕生、政権移行期ですね、それから、インドの参加見送り、さらに、最近の中国の大国らしからぬ振る舞い等を考慮すると、RCEP協定の国内承認手続や発効を、あるいは先ほどの各党の議論から見ても、急ぐ必要はないと。私は遅らせるべきだというふうに思うんですが、そこのところはいかがでしょうか。端的にお願いいたします。

    〔伊藤(信)委員長代理退席、委員長着席〕

茂木国務大臣 我が国、TPP11から始まって、保護主義が台頭する中で、自由貿易の旗手として様々な協定というのを主導してきた、リードをしてきたわけであります。このRCEP協定にしても、日本とともにASEANが交渉をリードして署名に至った、こういう経過も大きいと思っております。早期に、この協定、国内でも御承認をいただき、そして発効させたいと思っております。

 いろいろ細かい問題も出てくるんですけれども、恐らく、議長国を決めるというのも、批准した順番になってくるということが多いんですね。やはり、先に批准をした国が一つの協定ではリーダーシップを取れる、こういったことも考え、また、これまでの経緯も考えたときに、一貫して、やはりこういった経済連携協定を日本がリードする、こういう姿勢は貫きたい、このように思っております。

阿久津委員 次に、人権外交視点でちょっと伺います。

 我が国は、自由、民主主義、法の支配、基本的人権の尊重を前提に、国際秩序や国際法の諸原則に基づいた外交を展開しているはずです。

 そんな中で、ミャンマーの参加容認についてはいかがなんでしょうか。御存じのとおり、今も自国民への暴力や殺りくを続けるミャンマー軍による政権をRCEPに受け入れてよいのかどうか、率直にお伺いしたいと思います。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 RCEP協定は、ASEAN、日中韓、豪州、ニュージーランドの十五か国が署名したEPAでありまして、我が国としては、この地域の望ましい経済秩序の構築に向けた重要な一歩になると考えております。

 ミャンマーにつきましては、我が国は、事案発生以来、ミャンマー国軍に対して民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきております。我が国といたしまして、ミャンマーにおけるクーデターの正当性を認めることはございません。

 いずれにしましても、ASEAN諸国を始め、ほかのRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら、今後の対応を検討してまいりたいと考えております。

茂木国務大臣 今、大体、ミャンマーのこのRCEPについてお話をさせていただいたんですが、今のミャンマーの状況から考えて、国内体制を整えてこの国内手続を進める、こういうことは非常に困難だと思っております、率直に言って。日本としては、まず、この事態の鎮静化を図り、早く民主的な体制になる、そして早く民主的な体制に戻った中で批准をしてほしい、こんなふうに今考えております。

 当然、こういった協定をやる上では、いろいろなケースを想定するということはあり得るんだと思いますけれども、ミャンマーについては、RCEPよりも、まずは暴力の停止、こっちから始めるべきだと思っています。

阿久津委員 中国は、ミャンマーの参加、別に反対しないと思うんですよ。

 それで、最後に、もう私だけ一方的に言って終わりにしたいと思うんですが、今回、参考人としてお声かけはできなかったんですけれども、同志社大学法学部の寺田貴教授は、本年二月一日付の提言、API地経学ブリーフィング、ナンバー三十八において、習近平国家主席のこうした言葉を引用しているんですね。国際的なサプライチェーンを我が国、つまり中国に依存させ、供給の断絶によって相手に報復や威嚇できる能力を身につけなければならない、そういうふうに習近平国家主席はおっしゃっているんですね。寺田先生は、この言葉を引用しながら、中豪、中国とオーストラリアの関係悪化の波紋ということで、日本も無関係じゃないよと警鐘を鳴らしております。

 これだけ、是非、委員の皆様方にも御理解いただいて、注意深くこのRCEPを私たちがチェックしていかなければならないなということをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

あべ委員長 次に、浦野靖人君。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 まず初めに、本協定が我が国にもたらすメリットについて教えていただきたいと思います。

茂木国務大臣 RCEP協定、これは御案内のとおり、ASEAN十か国、そして、日、中国、韓国、豪州、ニュージーランドの計十五か国で参加をして、物品、市場サービスのみならず、知的財産、電子商取引等の幅広い分野での新たなルールを構築して、地域の貿易・投資を促進することを目的とした経済連携協定であります。

 先ほど来、若干かぶっちゃうところもあるんですが、この参加十五か国のGDPの合計、また貿易総額、人口、それぞれ世界全体の三割に当たる。また、RCEP協定参加国と我が国の貿易額は、我が国の貿易総額の半分、約五割近くを占める、こういう状況であります。

 RCEP協定によりまして、世界の成長センターであるこの地域と我が国とのつながりがこれまで以上に強固になり、これを通じて、我が国及び地域の経済発展に寄与することが期待をされるわけであります。

 そして、経済的なメリットだけではなくて、私は、これまでの日本の経済外交、主導的に取り組んできて、TPP11以来、こういった取組によって、日本の国際社会でのプレゼンス、これは間違いなく高まってきていまして、また、このRCEP協定、これは途上国も含んだ協定でありまして、こういったことをまとめ上げたということで、また一つ日本のプレゼンスを上げることができたのではないかなと思っております。

 世界で保護主義とか内向き志向が強まる中で、自由で公正な経済圏を広げる、こういった取組をこれからも日本としてしっかり主導していきたいと思っております。

浦野委員 丁寧にありがとうございました。

 先ほどの阿久津委員とも少しかぶるんですけれども、ミャンマーのRCEP参加についてです。

 本協定は、昨年の十一月に参加各国が署名をして、ミャンマーは、その当時はアウン・サン・スー・チーさんが率いる、今の政権ではない正規の政府ですかね、が署名したんですけれども、二月に、皆さんも御承知のとおり、クーデターで、ミャンマーは軍事政権が政権を掌握しました。

 ミャンマーの国内手続というのは、各国で、国内手続、国内法でまちまちだそうですけれども、このクーデターの発生前に終わっているという認識なのか、また、国内手続がクーデター発生前に終わっていない場合は、現在の軍事政権の下での国内手続を有効と認めてこれを進めるのか。つまり、ミャンマーの参加を認めるのかということなんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

四方政府参考人 RCEP協定の昨年十一月の参加国の署名の際にはミャンマーも署名をしたわけですけれども、我が国として、ミャンマーも含めまして、他国の国内手続の状況につきまして責任を持って答える立場にはございませんが、現時点で、RCEP協定の批准書等を寄託した国はないと承知しております。

 その上で申し上げますと、ミャンマーにつきましては、我が国は、事案発生以来、ミャンマー国軍に対して民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきております。我が国として、ミャンマーにおけるクーデターの正当性を認めることはございません。

 いずれにしましても、オーストラリア、ニュージーランド、ASEANを始めとして、ほかのRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら、今後の対応を検討してまいりたいと存じます。

浦野委員 ありがとうございます。

 ということは、今現在のミャンマーの軍事政権とはRCEPの話を進めないということになるとは思うんですけれども、是非、これはまだこれから各国と協議をしないといけない部分もあるでしょうから、慎重に事を運んでいただき、もちろん、今の軍事政権とRCEP協定を結ぶということになると、その政権を認めるということになりかねないので、政府としては慎重に対応していただけたらと思います。

 ミャンマーの情勢なんですけれども、少し、先日の委員会でちょっと時間切れで聞けなかったことを、ついでにと言ったら怒られますけれども、聞いていきたいと思います。

 以前の質問でも、外務省から領事メールなどで情報提供、注意喚起をしているということでしたけれども、かなり、治安というか、悪化の一途をたどっていると思うんですね。ミャンマーの人権団体の報告によると、死者はそのとき既にもう五百人、今はもっと増えていますけれども、これはまだまだ増えていく。

 例えば、カメラを軍隊の方に向けて、撮っていたか撮っていないのか分からないですけれども、向けただけで催涙ガスを在留日本人の方の家の中に撃ち込まれたりとか、そういうことも実際もう起きているということなので、本当に、もう既に邦人救出という事態になりかねないと思うんですけれども、そういうシミュレーション、検討していただいているということだったんですけれども、そのシミュレーションは具体的にやっていますか。

茂木国務大臣 ミャンマーは、二月の一日にクーデターが起きまして、二月の一日以降、状況というのは残念ながら悪化、こういう状態が続いております。

 二月の九日にスポット情報を発出して以降も、随時、領事メールを発出し、現地の最新の状況を踏まえて、在留邦人に対して注意喚起と不要不急の外出を控えるよう呼びかけております。また、帰国できるならば帰国することも検討してください、こういう呼びかけも行っております。今後、順次、状況等を見ながら、新たなスポット情報等の発出も適時適切に行っていきたいと思っております。

 そして、政府としては、平素から、在外邦人の保護について、様々な状況を想定して必要な準備、検討を行ってきておりまして、邦人の保護の強化を図っております。

 ミャンマーについても同じでありまして、昨年来、これはコロナでありましたけれども、世界中でいろいろな出国、帰国、これが困難になるという中で、本省そして在外公館を挙げて、武漢から始まりまして世界各国、特にアフリカなんかの場合は、それぞれの国にいる人が非常に少ない、なかなかチャーター便もないということで、十五の国にいる人を十のルートで、当時唯一定期便が日本に飛んでいたアディスアベバまで移動してもらって、そこから日本に帰国する、こういう難しいオペレーションもやりまして、合計で百一か国、一万二千人を超える方の出国、帰国というのが実現できたわけであります。

 例えば、アフリカで考えたことというのは、まずは、何かあった場合は、民間便で帰れるような状態、こういうのをつくる。そして、それがどうしても駄目な場合、武漢なんかの場合、チャーター機を使ったわけでありますけれども、チャーター機も考えなきゃならない、チャーター機何台かで運べる分まで数をまず減らしておく、こういう形でありまして。

 そういったそれぞれの地域の状況に応じながら、邦人の安全な帰国であったりとか、また、現地でビジネスをやって、一番お感じになっていらっしゃるのは本人ですから、そういう方と連絡を取って、自分はまだ残りたいとか、いろいろな御意向も尊重しながら、できるだけの支援、こういったものを行っていきたいと思っています。

浦野委員 外務省のホームページ等で、渡航先の、していいかどうかとか、そういう危険情報とかのレベルの公表もしていますけれども、この間見た時点ではまだミャンマーは最高レベルではなかった、レベル3という表示だったか、忘れましたけれども、渡航したら駄目とか、そういうレベルまではまだいっていないけれども、実際、今のミャンマーにわざわざ行こうと思う人は、例えばマスコミの方だとか報道の方だとかぐらいしかいないかなとは思うんですけれども、やはり、日本としては、かなり神経を使っていただけたらなと思っていますので、よろしくお願いいたします。

 ちょっと時間の都合で、質問を先に進めたいと思います。次に、RCEPにおける不安要素についての質問です。

 非常に、日本に対しての経済的なメリットはかなりあるということですけれども、結構、RCEP承認反対の嘆願書とか、ツイッターとかなんかでもすごくたくさん来るわけですね。

 その中の、不安に思われていることの、今回は二つお聞きしますけれども、このRCEPが締結されると、食品表示に原産国の表記が消えて、他国産の材料を日本産と偽ることができて食の安全が脅かされるというのが一つ。協定を締結した国や地域内での人の移動が自由になり、移民の流入に制限がなくなり国内の治安が悪化して、低賃金化競争を招き、日本人の所得低下による失業が発生するということをおっしゃっているんです。

 これは明確に政府として反論をお願いしたいと思います。

四方政府参考人 委員御指摘のような懸念を一部の方々が有しておられるということは承知しておりますけれども、いずれも誤解であるということを明確に申し上げたいと存じます。

 まず、食の安全に関しまして、RCEP協定により食品の安全や食品の表示要件に関する我が国の制度の変更を求められるようなことは一切なく、政府として、食の安全確保につきまして、引き続き万全を尽くしてまいりたいと存じます。

 また、人の移動に関しまして、RCEP協定により我が国の出入国管理制度が緩和、変更されることはなく、これまでどおり厳格な査証発給や上陸審査が徹底されます。

 したがいまして、RCEP協定によって食の安全が脅かされたり移民の流入に制限がなくなるといった事態は生じることはございません。

浦野委員 そういう誤解をしている方は少数だとは思うんですけれども、この協定に不安を持っている方というのは少なからずいらっしゃいますので、こういったレベルのものからもう少し妥当なネガティブな意見にも外務省として真摯に答えていっていただきたいと思うんですけれども、そういう発信をしていただく必要があると思うのですが、いかがでしょうか。

四方政府参考人 RCEP協定につきましては、国会に提出させていただきました協定文及び説明書に加えまして、協定の概要、ファクトシート、経済効果分析結果等、外務省ホームページに関連資料を掲載しております。

 引き続き、委員御指摘の情報発信につきましては適切に対応してまいりたいと思います。

浦野委員 ありがとうございます。

 続いて、インドの交渉離脱についてお聞きします。

 当初はインドは参加していましたけれども、二〇二〇年の十一月にインドが離脱したまま署名されました。発効日から、加入のために、その窓口を開放する旨が規定されているんですけれども、インドの将来的な加入の円滑化、関連会合のオブザーバー参加の容認等を確認する十五か国の閣僚宣言も発出されていますけれども、この協定にインドが参加しなかった理由をお聞かせいただきたい。続けて、理由を教えていただきたいことと、インドが離脱したことによって、本協定において中国が主導権を握るのではという指摘もあります。こういった指摘に対して、政府の見解をお願いします。

茂木国務大臣 このRCEP協定につきましては、まず、我が国そしてASEANが推進力となって交渉を進めてきた協定でありまして、私もそのプロセスはよく存じておりますが、決して中国が主導権を握る、こういう形にはならないと思いますし、また、そういったことについては、実際の発効後しっかりと注視をしていきたい、こんなふうに思っております。

 インドについては相当やったんですけれども、本当に残念なところがありました。

 様々な要因はあるんだと思うんですけれども、一つは、やはりこの協定によって、今でも大きな貿易赤字、これが更に膨らんでしまう。さらには、インドも、地方、どうしてもそこで貧しい方々がいらして、そういった方々が中小企業であったりとか農業とかを営んでいらっしゃる、非常に家族経営的で本当に経営基盤も弱い、これが海外との協定によって非常に大きな打撃を受ける、こういったことは大変大きな要因だったんじゃないかな、そんなふうに思っておりますが。

 それでもやはり、インドは十三億人の人口を有する国でありまして、着実に経済成長を実現しておりまして、インド太平洋地域における経済大国の歩みを進めておりますし、ITでもそうでありますし、ワクチンの製造国としても世界一流ということであります。

 このRCEP協定、発効後十八か月を経て、他の国、地域の加入のために開放されるということになるんですが、インドについては特別に、発効後いつでもRCEPに加入できる旨の規定が盛り込まれておりまして、インドが希望すれば直ちにそのための交渉を行うことができるようにしたわけであります。

 RCEP協定の署名に際して、インドの加入円滑化そして関連会合へのオブザーバー参加容認等を定める閣僚宣言も発出をいたしました。これらは我が国のイニシアティブによって、ほかの署名国の支持も得て行ったものでありまして、今後も、我が国として、インドのRCEP参加に向けて、RCEPの内側からしっかり働きかけを続けていきたいと思っています。

浦野委員 ありがとうございました。

 質問、インドに関係してあと二つあったんですけれども、今大臣の御答弁いただいた中に答弁の内容も含まれていますので、質問は、今日はもうすぐ時間が終わりますので、これぐらいで。

 インドは、本当、今大臣がおっしゃったみたいに十三億人の人口を抱える大国です。農村地域はそういうことだということなんですけれども、ところが、例えば、日本が四苦八苦してまだ全く進まないマイナンバーの制度ですけれども、インドは同じような制度を日本より遅い段階で始めて、もう既に十三億人の全国民にできてしまっているんですね。だから、インドって本気出したらすごい国やというのは、もうそれだけでも分かりますし、是非、このRCEPにインドが入っていただけるように、しっかりと政府として交渉をよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、山尾志桜里君。

山尾委員 国民民主党の山尾志桜里です。

 今、茂木大臣、中国が主導権を握る形にならないという答弁がありましたが、改めて、ちょっと本会議の代表質問でお答えをいただけなかったので、大臣に御質問いたします。

 我々が今承認を迫られているRCEP、この加盟国の価値観や対中外交姿勢をかいま見る一つのファクトだと思います。

 昨年、国連人権理事会で、六月三十日でしょうか、香港国家安全維持法について、懸念表明に参加をした国、支持表明に参加をした国、沈黙をした国。今回、RCEP加盟国十五か国について、懸念に参加した国はどこなのか、支持表明に参加した国はどこなのか、沈黙した国はどこなのか、お答えください。

 これは、代表質問で、私、大臣に質問したときに、大臣から答弁がなくて、ちょっと答弁漏れと言いたかったところですけれども、数字だけだったんですね。国名でお答えください。

茂木国務大臣 代表質問でありましたので細かく御説明申し上げなかったんですが、改めて答弁させていただきます。

 昨年六月三十日の国連人権理事会におきまして、RCEP協定参加国のうち、日本、オーストラリア、ニュージーランドの三か国が香港の国家安全維持法に懸念を示す共同ステートメントに参加をいたしまして、中国、カンボジア、ミャンマー、ラオスの四か国が中国の政策を支持する共同ステートメントに参加をし、残りのブルネイ、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの八か国がどちらの共同ステートメントにも参加しなかった、そのように承知をいたしております。

山尾委員 そうです。これは、価値観の問題と、あとは、対中外交政策というか、どこまで物を言えるのかという両面あると思いますが、まず、その両面の結果として、今、日本が入ろうとしているこのRCEP、価値の観点で中国に物を言える国は、昨年六月三十日時点で三か国、日本、オーストラリア、ニュージーランドということがうかがえるということはまず認識をすべきだというふうに思います。

 その上で、発効要件について伺いたいんですけれども、今回、ASEAN十か国、そしてそれ以外の五か国から成るRCEPですが、発効要件はどういった条件でしょうか。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 RCEP協定は、ASEANの構成国である署名国十か国のうち少なくとも六か国、及び、ASEANの構成国ではない署名国五か国、すなわち、日中韓、オーストラリア、ニュージーランドのうち少なくとも三か国が、批准書等を寄託者であるASEAN事務局長に寄託した後六十日で、それらの署名国の間で発効することとなっております。

 その後は、その他の署名国がそれぞれ批准書等を寄託した後六十日で、それぞれの国について発効するという規定になっております。

山尾委員 なので、まず、各国が、批准、受諾、承認といった国内手続を終え、そして、批准書、受諾書、承諾書というのを寄託して六十日で発効するんですけれども、国としては、ASEANのうち少なくとも六か国、それ以外の国のうち三か国というのが発効要件と伺いました。

 そうすると、質問します、例えば、ASEAN以外で五か国あるうち、日本、中国、韓国、そしてASEANのうち六か国、こういった九か国で発効するという可能性もあるということですか。

四方政府参考人 先ほど答弁いたしましたとおり、このRCEP協定の発効要件を満たす形で、ASEANの構成国のうち少なくとも六か国、ASEANの構成国でない署名国のうち三か国が批准書等を寄託した後六十日で、それらの署名国の間で発効するということでございます。

山尾委員 それはすごく懸念するんですね。同じ価値観を持って中国に物を言える国が日本、オーストラリア、ニュージーランド三か国という状況の中で、オーストラリアとニュージーランドの国内手続なしに発効する可能性があるという状況です。

 オーストラリア、ニュージーランドは国内手続を開始しているんでしょうか。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 他国の国内手続の状況について御説明できる立場にはございませんけれども、これまでのオーストラリア、ニュージーランドの発表等を踏まえますと、本年、国内の手続を進めるよう、今手続が進行しつつあるところだと承知しております。

山尾委員 二〇二一年、本年に国内手続を進めよう、そして発効させようということは、昨年十一月時点の合意のときもそういう雰囲気はあったんだというふうに思いますが、例えばミャンマーなんかの状況は、その合意時とは全く今状況が違うわけですね。そういう中で、本当にオーストラリア、ニュージーランドが今国内手続をこの状態で進めていこうというような状況にあるのかどうかということを明確にお答えをいただけなかったわけですけれども、私が仄聞している限りは、そういった状況、国内手続開始、まあ、私たちも開始してしまっていますね、開始という状況にはないというふうに把握をしております。

 ちなみに、ほかの参加国も含めて、こういった書面を寄託した国というのは現時点であるんですか、ないんですか。

四方政府参考人 現時点におきまして、批准書等を寄託した国、RCEPの署名国の中では、ないと承知しております。

山尾委員 ゼロなんですよね。

 これはちょっと大臣に伺いたいんですけれども、オーストラリアもニュージーランドも国内手続の開始というような状況が見えない、そして実際寄託した国というのはゼロという状態で、日本が一番乗りをするかもしれないという状況で、今承認を進めていくことが本当に賢い外交なんでしょうか。

 今、結局、合意時には予測もしていない非人道的な国軍による市民の虐殺が繰り広げられているミャンマー。そして、中国のウイグル問題では、アメリカ政府やカナダ議会がジェノサイドと認定するなど、合意時よりも更に火を噴いているわけです。香港の一国二制度についても、今年の全人代での選挙制度の改革で、風前のともしびどころか、そのともしびがもう消えかかっている、消えたと言っても過言ではないような、こういう状況です。

 相当人権環境が激変しているわけです、加盟国の中で。こういう状況で、一番乗りのリスクを取って日本にどういうメリットがあるんでしょうか。

茂木国務大臣 まず、基本的な考え方として、我が国として、国際社会における普遍的な価値であります自由、そして基本的人権の尊重、さらには法の支配、これがRCEP参加国においても保障されることが重要であると考えております。

 それで、署名した国がどれだけ早く国内手続を終えるか。

 私の拙い経験からいいますと、オーストラリア、ニュージーランドは始めたらすごく速いです、もうさっとやります、今まで見てきて。それから、比較的、シンガポール、ベトナム、これも速い国ではないかなと思います。日本もそこの中の一つだと思いますけれども。

 なかなか、カンボジア、ミャンマーが今この状況、ラオス、そこまで早いというのは一般的には想定されにくいかなということでありまして、山尾先生が心配されているような状況が起こるということは、少なくとも私の今まで通商を様々やってきた経験からいうと、少ないかもしれません。

 ただ、もう一つ重要なことというのは、それぞれの国が懸念事項というのは抱えていると思います、そういった中で、だからそういう国とは断交する、経済も何もやらないということではなくて、やはり必要な経済的な連携はしつつ、一方で、譲れない価値観、これについてはきちんと対峙をしていく、こういう姿勢が必要だと思っております。

 譲れない価値観というものがあるがゆえに、経済連携もやりません、貿易も全部止めます、こういう形ではなくて、そこは使い分けながら、しかし一方では、きちんとそういう関係があるからこそ働きかけをしていくということが重要なのではないかなと思っております。

山尾委員 私も、価値が違う国と断交せよとか経済連携を切れと言っているわけではないんですね。

 ただ、オーストラリア、ニュージーランド、私よりずっとずっとずっと経験を持っている茂木大臣が、さっとやる国だとおっしゃっていますけれども、今、少なくともこのRCEPについてさっとやっていないわけですね。

 そういう中で、本当に今は、よくよくオーストラリア、ニュージーランドと連携しつつ、ミャンマーの状況も日々動いていますし、対中外交についても、国際社会が物すごいスピードで、ちょっと驚くようなスピードで割と圧を強めているという状況もある中で、やはりここは一呼吸、二呼吸置くのが日本の外交として適切なんじゃないかということを、私、もう本当に拙い経験ながらも、玄人ではないかもしれません、でもやはり思うわけです。

 一点、また伺いたいんですけれども、これは参考人の方で結構ですが、ミャンマーが国軍として仮に国内手続を終えてRCEPの事務局に書面を寄託してきたら、これを承諾するかどうかについては、全員承諾、要するにその時点での加盟国の全員承諾、全員のオーケーというのが要件になっているのかいないのか、その辺はどうなんでしょうか。

四方政府参考人 RCEP協定上、署名国は批准書等を寄託者であるASEAN事務局長に寄託することになっておりますけれども、協定におきましては、寄託が承諾されるかどうかといったことについては特段の規定はございません。

 一般論として申し上げますと、RCEP協定の実施及び運用に関する問題につきましては、RCEP参加国間で緊密に意思疎通をしながら今後対応を検討していくこととなると考えております。

山尾委員 そこが心配なんですよね。特段の規定がないということなんです。

 やはり、中国は、皆さん御案内のように、ミャンマーでの国軍による市民数百人の殺害に関する国連安保理の声明について、制裁可能性を示唆するような文言の削除、あるいは殺害を死亡というふうに文言の変更、こういったものを求めたという報道がありますし、実際に文言はそういうふうになっているという事実がありますね。

 そういう中で、これはまた参考人に聞きますが、国軍の状態で書面をミャンマーが寄託をしてきた、そして、日本以外のその時点の加盟国が承認に賛成してしまった、合意のコンセンサスをつくる、そういった会合の中で前向きだという場合、全員承諾が必ずしも発効要件になっていない中で、ミャンマーの加盟というのが認められる可能性はありますか、ありませんか。

四方政府参考人 ミャンマーにつきましては、我が国は、事案発生以来、ミャンマー国軍に対して民主的な政治体制の早期回復を強く求めてきております。我が国として、ミャンマーにおけるクーデターの正当性を認めることはございません。

 委員の御質問との関係では、我が国といたしましては、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN諸国を始めほかのRCEP参加国とも緊密に意思疎通しながら、今後の対応を検討してまいりたいと思います。

 先ほど申し上げましたけれども、RCEPの協定上、RCEP閣僚会合あるいはRCEP合同委員会といった場がございますけれども、こういった場で意思決定を行う場合には、コンセンサス方式によることが規定されております。

山尾委員 なので、そのコンセンサス方式というのを見て、じゃ、どういう価値観の国なんだろう、どういうぐらい中国に物を言える国なんだろうというのを、私、大変心配になって、最初の質問をしてきたわけなんですね。

 今の話でいくと、日本としては、やはり国軍の正統性というのを認めるつもりはないけれども、しかし、条約の仕組み上、全員承認ではないので、ミャンマーの加盟が認められる可能性は制度上はあるというふうに私としては認識せざるを得ないわけです。

 時間も押してまいりましたが、あと一点か二点なんですけれども、メリットとしてよく言われる、電子取引や知的財産を含む自由で公正なルールに基づく秩序を形成しとありましたが、そもそも、日本としては、データ原則を共有する国の連携を図って、むしろ中国のような国家情報独占主義の国にいわば適切な形で勝っていこう、対抗していこうというのが安倍政権時代からの日米欧でのデータ流通圏の構想だったと思うんですけれども、今回のこのRCEPというのは、むしろそういった方向に逆行するような気がするんですけれども、その点、大臣から答弁いただきたいと思います。

茂木国務大臣 逆行するとは思いません。ただ、一般的なルールを作る、そのことは、中国であってもASEANの後発途上国であっても必要なことではないかなと思っております。

 その一方で、最新のデータの流通のルール、データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト、これにつきましては、日米豪、こういった国が主導しながら最先端のルールは作っていく、そんな必要があると思っております。

山尾委員 必ずしもトラストがない国とデータ・フリー・フローを結んでいくというこのRCEP、私、来週の水曜日、参考人そして質疑、採決という話が与党からもあり、立憲民主党からも賛成という声が一部ありましたけれども、本当に、これはもうちょっと一呼吸置くためにも、参考人の方の意見をちゃんと参考にして賛否を決めるためにも、やはり、水曜日以降、きちっと質疑を続けて、時間を取ってちゃんと議論するべきだと主張して、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

あべ委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 協定に入る前に、牛肉のセーフガードについて質問をします。

 三月十日、アメリカからの牛肉輸入量が基準数量を超えたということで、日米貿易協定により緊急輸入制限、セーフガードが発動されました。この背景を含めて説明をしていただけますか。

四方政府参考人 お答え申し上げます。

 日米貿易協定に基づく牛肉のセーフガードにつきまして、三月上旬時点で二〇二〇年度の発動基準数量を超過したことによりまして、三月十八日から四月十六日まで米国産牛肉の関税が引き上げられることとなりました。これを受け、日米貿易協定に関連して作成された交換公文に基づき、三月二十五日に日米間で第一回協議を実施したところでございまして、日米間で引き続き協議を行ってまいる所存です。

田村(貴)委員 基準数量二十四万二千トンを超えて、二十四万二千二百二十九トンが輸入されたということであります。

 日本の畜産を守るために発動されるのがセーフガードです。元々三八・五%でした。それが大きく引き下げられて、昨年は二五・八%に、これが三八・五%に僅か三十日間戻るだけなんですね。その後は更に〇・八%引き下げられて、二五%になっていきます。

 日米貿易協定では、交換公文で、セーフガード発動後十日以内に発動基準数量を引き上げるための協議の開始が約束されているところであります。

 茂木大臣にお伺いします。

 先ほど説明のあった三月二十五日の一回目の協議では、発動したことをアメリカ側に報告しただけであって、要求は何もなかったとのことでありました。アメリカは、必ず発動基準、この数量の引上げを求めてくると思いますけれども、日本側は断固拒否の構えで臨むということでよろしいんでしょうか。

茂木国務大臣 交換公文に定められた手続に従って、協議は誠実に行わせていただきます。

 では、どう進めるかということにつきましては、まさに全体の数量、これから決まってまいります。そして当然、どうして米国の牛肉がセーフガードにかかったのか、オーストラリアからなかなか入ってこなかったと、今年の場合は。様々な要因があるわけであります。そういった要因も分析しながら、お互いに協議をするということになります。

 協議の進め方、これはまさに今後の交渉でありますから、今後の交渉に影響を与えますので、それにつきましては控えさせていただきたいと思っております。

 いずれにしても、国益に反するような交渉、また国益に反するような合意を行うつもりはございません。

田村(貴)委員 同じ質問ですけれども、農林水産省はどういう受け止めなんですか。アメリカ側が基準数量の引上げを求めてきた場合に、農水省としては、これは私も農水委員会で大分聞いてきましたけれども、どういう立場で臨まれるんでしょうか。

葉梨副大臣 当然、ルールにのっとって交渉を進めていくことになろうかと思いますけれども、どういう結果になるかということについては、予断を持ってなかなか申し上げるわけにはいかないと思いますけれども、しっかりと日本の畜産を守ることができるように、しっかりした交渉を行っていきたいというふうに思います。

田村(貴)委員 きっぱりお答えになりませんね。何か弱腰であるような印象を受けました。

 続けて伺います。

 日本は、TPP11で、牛肉のセーフガードの基準数量を、アメリカも含めたままで六十一万トンを設定しました。ところが、日米貿易協定では新たに二十四万二千トン分を設定しました。

 本来ならば、TPP11の牛肉のセーフガード発動基準数量の六十一万トンからアメリカ分の二十四万二千トンを引かなければならないわけであります。その交渉はどうなっているんでしょうか。状況について説明してください。

和田大臣政務官 お答え申し上げます。

 米国産牛肉に対するセーフガードの発動基準につきましては、二〇二三年度以降についてTPP11協定が修正されていれば、米国とTPP11条約国との輸入を合計してTPPの発動基準を適用する方向で米国と協議する旨を、米国との間で交換公文で確認をしております。

 TPP11の牛肉セーフガード措置に関しましては、いずれかの時点でTPP関係国と協議を開始する必要があるというふうに考えておりまして、これまでも、昨年の夏の第三回TPP委員会を含め、いろいろな機会を捉えて、TPP関係国に対してこうした我が国の考えを伝えているところでございます。

田村(貴)委員 伝えてはいるけれども、この矛盾については交渉に入っていないということですよね。そんなのでいいんでしょうか。こんなことでは、これからまた大変なことになるのではないかと思います。

 昨年は、たまたまオーストラリアが干ばつで数量が減ったから、アメリカ分の牛肉が増えたということです。しかし、このままオーストラリアの生産、輸出が拡大していれば、際限なく輸入されることになってくるのではないですか。そういう懸念を持ちますけれども、いかがですか。

和田大臣政務官 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、TPP11の関係国と対応を進めてまいりたいと思います。

田村(貴)委員 私は、そういう矛盾を解決しないままやったら、オーストラリア産、干ばつで減ったんだけれども、平時だったらもっと増えてくることになりますよ。だって、TPPにアメリカ分も入れているんだから。その分、六十一万トンで攻勢をかけてくるわけですから。そのことが何で解決されていないのかといったことをお伺いしているわけです。

 国益を脅かす制度上の矛盾も解決しないで楽観的なことを言われても、これは信用できません。現に、日米協定ではセーフガードを超えているわけでありますから。

 また、牛の乳雄です。国産牛肉も競合するのではないでしょうか。アメリカとオーストラリアが日本への輸出で競い合って、その陰で国内の肥育、酪農の農家が大きな影響を受ける懸念もあるわけであります。

 大臣、バイデン政権が発足しました。バイデン政権に移行して、アメリカは、TPPへの復帰を念頭に更なる上乗せを要求してくるのではないでしょうか。

 日米貿易協定で併せてお伺いしたいことがありますけれども、協定で、日本は、自動車・自動車部品の再交渉によって関税を撤廃すると言いました。自動車の関税撤廃の話は、今どうなっているんでしょうか。

茂木国務大臣 バイデン政権の通商政策、これは、まずは国内の雇用政策等を重視して、それまで新たな貿易協定を結ばないという方針であると理解をいたしておりますが、引き続き、通商政策を含め、しっかりとアメリカとの間では意思疎通を図ってまいりたいと考えております。

 牛肉の輸入の話、先ほど冒頭も申し上げましたけれども、オージービーフとアメリカのビーフは、かなり価格帯的にも肉の質の面でも競争します。そうすると、では、オーストラリアの肉が戻ったときに同じような形で米国の肉が伸びるかどうか、そこについては、専門家の間でもかなり意見が分かれるというか、委員の意見とは違う意見というのが大半を占める部分というのは私はあるのではないかなと思っております。

 TPPの枠の問題については、内閣府の方にお聞きいただければと思っております。

 なお、自動車・自動車部品につきましては、単なる交渉の継続ではなくて、関税の撤廃に関して更に交渉する旨明記をされております。すなわち、関税撤廃がなされることを前提に、具体的な撤廃時期等について今後交渉を行うことが日米間で合意をされているということであります。

 こういった貿易交渉も、御覧になるとゼロサムゲームのように見えるかもしれませんけれども、日本として取りたい分野、またアメリカとして取りたい分野、それぞれあって、そこの中でポジティブサムなゲームというのはつくれる。単純な、交渉の最初に出てくるような、本の、ジ・アート・アンド・サイエンスでもゲッティング・イエスでも結構ですけれども、カー・セールス・ゲームから、どうユニオン・ストライク・ゲームに移っていくか、この過程の様々な分析の中で決まっていくものだと思います。

田村(貴)委員 おととし、日米貿易協定で、農産物については米国産農産物の七十二億ドル分の関税を撤廃、削減することを認めました。一方で、自動車は見送られたままです。いろいろおっしゃいましたけれども、見送られたままです。当時、安倍首相はウィン・ウィンの関係だと言われましたけれども、日本の一方的譲歩であったことは間違いありません。この協定からは脱退すべきだと考えます。

 RCEPについてお伺いします。

 RCEPは、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランドにASEAN十か国を加えた大規模な自由貿易圏を構築するものであります。政府の説明では、重要五品目は関税削減、撤廃から全て除外したというふうにおっしゃっていますが、私は、そこからしておかしいというふうに思います。

 日本以外のRCEP十四か国で、オーストラリアとニュージーランドは、既にTPP11で五品目は譲歩済みです。それから、あとの十二か国で見ますと、お米、砂糖以外は輸出の余力も実績もありません。砂糖で見れば、主要輸入先国はオーストラリアが七一%を占めています。これもTPPで譲歩済みです。ですから、除外したから大丈夫というのは、これはごまかしにすぎないと思うわけです。

 協定の中身を見ると、数多くの問題があります。野菜や果物など、多数の輸入関税が撤廃されています。これは日本の生産物と完全に競合します。

 資料をお配りしています。表の一を御覧になってください。

 例えば、高知県や熊本県で栽培されているショウガを始め、青森県や茨城県のゴボウ、鹿児島県や愛知県のエンドウ、カボチャ、ブロッコリー、アスパラ、キャベツ、枝豆などであります。果物では、リンゴ、ブドウ、キウイ、柿、梨、ミカン、グレープフルーツのほか、オレンジやブドウ果汁も関税が撤廃されます。

 こうした作物は高収益作物です。中山間地の農業や新規就農者の経営確立にとって非常に重要な作物であります。これらに影響が出たら、これはもう大変なことになってしまいます。

 資料の左上の円グラフを御覧になってください。

 輸入生鮮野菜の八〇%はRCEP参加国です。わけても、隣国中国は六四%を占めています。こうした協定だったら、必ず国内の生産者に、果物それから野菜の作物に影響が出てくるんじゃないですか。いかがですか。

葉梨副大臣 田村先生がお示しの資料の、例えばショウガでございますけれども、日本産の生鮮で流通するものと、輸入品や加工品で流通するものの価格差は四、五倍ございまして、関税はゼロから九%ぐらいなんですが、それがなくなったとしても、そのすみ分け自体には影響はないのかなというふうに見ています。

 その中国の例ですけれども、タマネギやニンジンなどの加工・業務用等で、その分野で国産の巻き返しを図りたい品目、さらには、イチゴやリンゴなど国産品と、先生がおっしゃったような競合する可能性のある品目、これについては、関税の削減、撤廃からの除外を確保させていただいています。

 その上で、冷凍した野菜調製品、乾燥野菜、ショウガ、今申し上げましたショウガですが、品質や用途などで国産と輸入品のすみ分けができているもの、あるいは大根、梨、桃など、輸入のほとんどない品目についても、これは関税撤廃の対象とはいいながら、長期の関税撤廃期間を確保させていただいております。

 ですから、この協定によって、野菜、果樹への特段の影響、これは見込み難いものだというふうに考えています。

田村(貴)委員 特段の影響はない、特段の影響はないと言いますけれども、全く影響はないと言い切れますか。そうじゃないですよね。葉梨副大臣も、店頭に行かれたら、御承知のように、ショウガですみ分けをしていると。しかし、生鮮のショウガだって、中国産と国内産と並んで売っていますよ。それから、実際の流通の現場では、これは境目がない話なんですね。やはりシビアに見ていかないといけないと思います。

 関税が設定されているというのは、この品目は国内生産と競合するから守るんだというあかしで関税が設定されてきたんじゃないんですか。それが国の意思表示でもあります。これをゼロにするということはどういうことなのか。生産者の立場に立ってみたら、これからは自由競争だ、頑張ってくださいよ、国内産は政府にとってはもう守らないという意思表示につながるような、それがゼロなんですよ。

 国内生産者にとって、これはやはり戦々恐々です、関税ゼロになるというのは。少ないから影響はないというんじゃなくて、ゼロにすることの重みをやはり受け止めるべきじゃないですか。農家の立場に立った答弁とは思えません。

 中国が、例えば、関税撤廃品目に照準を当てて輸出戦略を立てる可能性は、これは誰しも否定できません。だって、日本だって輸出戦略を取っている。各国だって戦略を取るわけですよ。これは、この機会を逃さず戦略を取ってきますよ。

 ニュージーランドで見てみましょう。リンゴの生産量は、日本の七十万トンに近い五十五万トンもあります。しかも、キウイは、日本国内でミカンからの転作となって今伸びてきています。しかし、ニュージーランドのキウイは四十七万トン生産されています。一七%の関税がゼロになったら、これは大きな障害になるんじゃないですか。

 もし、影響がない、ないと言われますけれども、影響が出たら政府はどうしますか。責任を取って、国内生産を守るためにどういう対策を講じますか。ショウガ、ブロッコリー、リンゴ、ブドウ、キウイ、柿、桃、梨、ミカン。国内生産に影響が出たらどういう策を施されるのか、お聞かせいただきたいと思います。

葉梨副大臣 田村先生、キウイの例を出されましたけれども、確かに、たくさんニュージーランドから輸入しています。我が国においても転作という形で図っていますけれども、ニュージーランドと日本の場合は気候が反対なものですから、まさに端境期に日本のキウイを出すということでのすみ分けもできておるということです。

 この協定の合意内容にかかわらず、やはり国内農業の競争力、これの強化というのは喫緊の課題だと思っています。

 野菜については、輸入品が三割を占める加工・業務用野菜の国産への切替え、これを進めるために、先ほど申し上げましたとおり、タマネギ等は除外品目とさせていただきました。水田を活用した新たな産地育成や国産品の端境期における生産拡大、これも支援をしてまいります。

 果樹については、産地の生産基盤を強化するため、労働生産性の向上が見込まれる省力樹形や優良品目、品種への改植、新植等の取組を応援することによって、国内のニーズに応じた国産の野菜、果実の供給力の強化を図っていく所存でございます。

田村(貴)委員 そうやって、大丈夫だ、そして、すみ分けしているとずっと言い続けてきました。だけれども、葉梨副大臣も、もう農水省では一番大きな問題だと私思うんだけれども、やはり農業センサスで、この五年間で四十万人の農業従事者が減った。田んぼも畑もどんどん減っている。この状況は、やはりこういう自由貿易協定がもたらしてきた結果じゃないですか。

 資料の図二を御覧いただきたいと思います。

 今、果実の輸入量は四百三十四万トンにも上っています。外食などで使われる業務用冷凍野菜も含めて、加工用冷凍野菜も含めて、中国からの野菜の輸入は、一九九〇年の三十万トンから二〇一八年の百五十五万トン、中国からの野菜は六倍にも膨れ上がっているわけです。全体では三百万トンです。果物も、一九六〇年の貿易、為替自由化計画大綱では、以前には十万トン足らずだったんです。今こんな状況にまで膨らんできた、輸入増になってきたということです。これはもう国境措置の撤廃が原因であります。

 果物、野菜に限らず、農業の担い手が減って供給量が落ちているのではありませんか。そうした輸入依存の食料政策に拍車をかけているのが自由貿易協定ではないかと思いますけれども、副大臣、いかがですか。

葉梨副大臣 確かに、この図二にありますように、果実の国内生産量というのは下がってきておりますが、現状を見ますと、果実、作れば売れる状況なんです、我が国においては。我が国の、例えばミカン、リンゴ、リンゴは大分輸出も増やしていますので横ばいということですけれども、作れば売れる状況なんだけれども、何で生産量が減っているかというと、なかなかしんどいものですから、やる人がいない。

 そういうことで、やはり担い手がしっかりいて生産をすれば、現状においても、日本国内の生産量を上向きにして、しかも確実に売れるという状況をつくっていくことは可能であるというふうに思っています。

 ですから、先ほど申し上げましたように、省力樹形です。こういったものをしっかりと定着をさせる。これによって労働力が非常に効率化されますし、また機械化も導入できるというようなことで、先ほど申し上げましたような国内生産力の基盤の強化というのをしっかり図っていきたいというふうに思っています。

田村(貴)委員 そうなんです。農家の担い手が減っているんですよ。それはそうでしょう。何でも関税がゼロになっていく、そして引き下げられていく、そうしたら将来に、農業をやっていけないじゃないかと。私も九州の畜産業者からいっぱい聞きました。今はいいけれども、将来に展望が見えないと。だから担い手が減っているんですよ。

 ここまで関税が下げられて、そのたびに影響はない、影響はないと言われてきました。しかし、その一方で、農山村は衰退していく一方であります。その結果、食料自給率は三八%まで落ち込んでいます。もうこういうことはやめるべきであります。

 自由貿易体制そのものの見直しを求める意見も上がってきています。日本はこの六年間で、二〇一五年の日豪EPAを皮切りに、二〇一八年にはTPP、二〇一九年には日欧EPA、二〇二〇年には日米FTA、二〇二一年には日英EPAと、矢継ぎ早に自由貿易協定を締結し、発効させてきました。自由経済圏を際限なく拡大してきました。

 特に、TPPは世界の国内総生産の約一三%、EU・EPAは世界の国内総生産の約三割をカバーするメガFTAであります。今回の協定であるRCEPも、世界のGDP、貿易総額、人口の約三割を占める巨大経済圏であり、これまでのメガFTAと合わせて更に巨大な自由貿易圏を形成することになります。

 昨年七月、国連食料への権利特別報告者であるマイケル・ファクリ氏が、WTO農業協定またRCEPなどの地域貿易協定について報告をしています。

 マイケル・ファクリ氏は、WTO農業協定が強国と企業を守る一方で、小規模農家などは不当に軽視され、全ての人が食料を適切に入手する権利の障害になっていると報告しています。セーフガードや例外措置も実効性に乏しく、失敗に終わっており、協定の見直しではなく、協定そのものを段階的に廃止すべきだ、そういうふうに述べておられます。

 そして、地域貿易協定については、途上国で生活を改善する有効な道とはならず、各国間の不平等な関係を再固定化している、ここまで述べておられるわけであります。

 当然、政府は、この国連食料への権利特別報告者マイケル氏の報告を承知だと思いますけれども、どのように受け止めておられますか。

葉梨副大臣 国連人権理事会、特定のテーマに関して特別報告者を任命して調査報告を実施させる制度がある、その中でございます。その中で、マイケル・ファクリさんが昨年五月に食料への権利に関する特別報告者に任命され、同年七月、御指摘のとおり、国際貿易法及び政策の文脈における食料への権利という報告書を提出したことは承知しております。

 特別報告者は、特定の人権に関するテーマ等に関して調査報告を行うため、人権理事会から個人の資格で任命された独立の専門家であり、その見解は、国連又はその機関である人権理事会としての見解ではないと認識しておりますため、我々農林水産省としては、この報告書に対する評価、コメント、これは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

 その上で、このRCEPについてですけれども、世界のGDP、貿易総額、人口の約三割を占める地域のつながりがこれまで以上に強固となり、発展段階や制度の異なる多様な国々で構成される地域全体の経済発展にも寄与することが期待されるものと考えています。

田村(貴)委員 重要な提案をそのように受け止めておったら、やはり駄目ですよ。

 茂木大臣、お伺いしますけれども、コロナ禍の下で情勢は変わっているんですよね。現実に、サプライチェーンの寸断や輸出規制が世界の国で行われました。輸入食品に対する日本の立場としては、一たび輸出規制が行われれば、食料の高騰などで食料の入手自体が困難になる可能性が出てまいります。

 近い将来、慢性的な食料不足が人口増大によって起こると国連も報告しており、自給率の向上は死活問題であります。世界中の人々の食料の権利の観点から、WTO体制を改めて見直していくマイケル・ファクリさんの提案をやはり重く受け止めるべきではないでしょうか。

 貿易体制の根本的な転換を求めるこの報告について、やはり政府は、この知見をきちんと分析を行って施策に反映していくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

茂木国務大臣 WTO改革につきましては、先日も非公式の閣僚会合を行いまして、様々な議論、それは国営企業であったり補助金の問題から始まりまして、コロナにも関連いたします、これは医薬品、さらには食料品を含みます様々な品目について過度な輸出規制があってはいけない、これをきちんとルール化して透明化していこう、こういう議論も進めさせていただいているところであります。

 今日、田村委員の発言をお聞きしまして、農業政策、貿易政策、かなり旧ソ連の時代のものに近いな、そんなふうにお聞きをいたしたりしたんですが、かなりあれが失敗したのは間違いないと思っておりまして、ブラックチェリーが日本に入ってきたとき、山形のサクランボは駄目になると言われましたけれども、しっかり佐藤錦は、品質的にも価格的にも市場ですばらしい地位を占めていると思っております。

田村(貴)委員 日本が輸出する量の十倍ですよ。この国は、外国からの農産物に頼っているわけですよ。異常ですよ。食料自給率三八%ですよ。食料・農業・農村基本計画、一度も達成したことがないんですよ、この国は。そういう状況の下で、また自由貿易協定を拡大して、そして農業生産者を減らして……(茂木国務大臣「反論になっていないよ」と呼ぶ)そういうことを言いますか。

 もう一問お伺いします。

 先ほど山尾議員の質問で、こういうことですか、RCEPの協定批准は、各国が国内での手続を終えて、ASEANの事務局長に批准書を提出して初めて批准となるということを伺っていますけれども、十五か国のうち、日本を除く十四か国のうち、批准済みの国はまだ一国もないということですね。

四方政府参考人 現時点におきまして、RCEP協定の批准書等を寄託した国はないと承知しております。

田村(貴)委員 なぜ急ぐんですか。国連貿易開発会議の試算では、本協定が発効された場合、参加国の中で最も輸出が伸びているのが日本だと言われます。中国も韓国も輸出増になるという判断です。しかし、ASEANの主要国六か国のうち、伸びるのはタイ、このほかの国はマイナス若しくは一%の微増にとどまるというふうな報告が上がっています。貿易収支も発効前に比べて軒並み悪化すると言われています。

 この協定が、東アジアの互恵的な協定と果たしてなり得るのか。強い国がより強くなって、そして、今から経済を強めていこうという国々にとってみたら互恵的な協定にならない、損をするばかりだ、そういう検証もやはりしっかりと行っていく必要があるんじゃないかと思います。

 時間が来たので、また質疑をさせていただきたいと思いますが、今日はこれで終わります。

    ―――――――――――――

あべ委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 本件審査のため、来る十四日水曜日午前九時、参考人として学習院大学国際社会科学部教授伊藤元重君、日本貿易振興機構アジア経済研究所主任研究員浜中慎太郎君及び東京大学大学院教授鈴木宣弘君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

あべ委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、来る十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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