衆議院

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第13号 令和6年5月31日(金曜日)

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令和六年五月三十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 勝俣 孝明君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 貴子君

   理事 中川 郁子君 理事 藤井比早之君

   理事 源馬謙太郎君 理事 鈴木 庸介君

   理事 青柳 仁士君 理事 竹内  譲君

      畦元 将吾君    上杉謙太郎君

      小田原 潔君    黄川田仁志君

      高村 正大君    島尻安伊子君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      西銘恒三郎君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    堀内 詔子君

      宮路 拓馬君    小熊 慎司君

      松原  仁君    屋良 朝博君

      鈴木  敦君    徳永 久志君

      和田有一朗君    金城 泰邦君

      穀田 恵二君    吉良 州司君

      塩谷  立君

    …………………………………

   外務大臣         上川 陽子君

   厚生労働副大臣      宮崎 政久君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   外務大臣政務官      高村 正大君

   外務大臣政務官      深澤 陽一君

   厚生労働大臣政務官    塩崎 彰久君

   政府参考人

   (内閣府総合海洋政策推進事務局次長)       木原 晋一君

   政府参考人

   (出入国在留管理庁出入国管理部長)        君塚  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   志水 史雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 池上 正喜君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 北村 俊博君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 中村 和彦君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 藤本健太郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 林   誠君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 大河内昭博君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局軍縮不拡散・科学部長)   北川 克郎君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    有馬  裕君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       堀内 俊彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           鳥井 陽一君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局感染症対策部長)   佐々木昌弘君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局付)           山口 博之君

   政府参考人

   (経済産業省商務情報政策局商務・サービス政策統括調整官)         山影 雅良君

   政府参考人

   (防衛省地方協力局次長) 山野  徹君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           田中 利則君

   外務委員会専門員     大野雄一郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十一日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     堀内 詔子君

  深澤 陽一君     畦元 将吾君

  穂坂  泰君     高木  啓君

  佐藤 公治君     屋良 朝博君

同日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     深澤 陽一君

  高木  啓君     穂坂  泰君

  堀内 詔子君     武井 俊輔君

  屋良 朝博君     佐藤 公治君

    ―――――――――――――

五月二十七日

 女性差別撤廃条約選択議定書の速やかな批准を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第一六三二号)

 同(新垣邦男君紹介)(第一六八五号)

 同(大河原まさこ君紹介)(第一六八六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一六八七号)

 代執行による辺野古新基地建設工事の中止と普天間基地の無条件撤去に関する請願(宮本徹君紹介)(第一六三三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際情勢に関する件


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     ――――◇―――――

勝俣委員長 これより会議を開きます。

 国際情勢に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として、お手元に配付のとおり、外務省大臣官房長志水史雄君外十七名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

勝俣委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

勝俣委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。島尻安伊子君。

島尻委員 自由民主党、島尻安伊子でございます。

 まず、本日は質問の機会を頂戴いたしましたことを感謝申し上げたいと思います。

 本日は、女性の健康政策についての質問をしたいと思います。

 海外の女性関連政策をお聞きしつつ、我が国の女性政策の現状課題を確認したいと思っております。その上で、上川大臣に、我が国の外交政策としてこの女性の健康政策を捉えることができないのか、むしろ上川大臣にリーダーシップを取っていただきたい、そのような観点での質問とさせていただきたいと思っております。

 女性活躍、男女共同参画社会に向けまして様々な政策がこれまで進められてまいりました。その結果、女性の就業人口もかなり増大しているということでございますが、他方で、年代別に大きく変化いたします我々女性特有の健康課題につきましては、これまで、仕方のない体の不調ということで見過ごされたり、あるいは我々自身が諦めてしまったりということであったと思いますけれども、近年は、それに伴うQOL低下とともに、莫大な社会的、経済的損失が明らかになってきまして、世界各国においても女性の健康支援を国家戦略に位置づける潮流が生じているところでございます。また、ジェンダード・イノベーションとして様々な分野での振興が進められております。

 それでは質問に入らせていただきますが、まず、主な国々で、ウィメンズウェルネスということで、女性の健康についてどのような取組がされているかをお聞きしたいと思います。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 まず、米国におきまして、バイデン大統領が中心となりまして、昨年十一月、女性の健康研究に関するホワイトハウス・イニシアチブを立ち上げ、本年三月には、女性の健康に関する政府調査を拡大する大統領令が発令され、女性の健康研究に百二十億ドル拠出することが表明されたと承知しております。これを踏まえまして、米国の連邦政府機関では、女性の健康研究への優先的な投資と額の増加、女性の健康に関するイノベーションと発見の促進、女性の健康に関するデータ収集、解析の拡充と活用、生涯にわたる女性の健康増進等の取組を進めていくものと承知いたしております。

 また、例えばイギリスにおきましては、二〇二一年に更年期障害に関する対策本部が設置されまして、法整備によるホルモン補充療法への補助や、企業及び教育現場における対策の強化が行われており、また、本年二〇二四年の優先事項としては、婦人科疾患や月経の問題に対するケアの改善、格差是正に向けた取組、脆弱な女性への支援の改善、女性の健康に関する研究の促進等の取組が示されております。

 このほか、フランスでも、二〇二二年一月に、マクロン大統領が子宮内膜症対策の国家戦略を発表するなどの取組が行われているものと承知いたしております。

島尻委員 今、米国それからフランスについての取組をいただいたわけですけれども、ほかの国についてはいかがでしょうか。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 今、イギリスについての取組も申し上げましたけれども、ほかには、例えばオーストラリアでも、一九九六年から、女性の健康に関する大規模縦断研究が実施されているなどの取組が行われていると承知しています。

島尻委員 ありがとうございます。世界において女性の健康支援を国家戦略と位置づけている潮流がここで確認できたと思っております。

 我が党自民党では、高階恵美子先生を中心に、女性の生涯の健康に関するPTが二〇一三年から議論を続けてきております。我が国としても近年やっと前向きになってきているのかなと感じております。その証左といたしまして、女性の健康ナショナルセンターを設置して研究開発に取り組むことになったと承知しておりますけれども、今どのような状況かも含めて厚労省にお聞きしたいと思います。

鳥井政府参考人 お答えいたします。

 私どもの政府における研究の取組状況を答弁させていただきます。

 女性の健康に関しましては、その心身の状態が人生の各段階に応じて大きく変化するという特性を踏まえて、生涯にわたる包括的な支援を行うことが大変重要であると考えております。

 その際、科学的知見が必要でございますので、厚生労働省におきましては、これまで、女性の健康の包括的支援に関する制度設計等に資する研究事業に取り組んできたところでございます。

 また、令和六年度には、AMEDの研究開発目標として、性差・個人差・個人内の変化の解明と予測への挑戦が採択され、女性の健康、医療科学に関する基礎研究が重点的に推進されていると承知しております。

 さらに、御指摘の、現在設置が進められております女性の健康ナショナルセンター、これはまだ仮称でございますけれども、ここにおきましては、自治体や全国の医療機関等との連携協力を通じて、女性の健康に関するデータセンターの構築、女性のライフコースを踏まえた基礎研究、臨床研究の積極的な推進などに取り組むこととしております。

 こうした様々な取組を通じまして、全国各地の研究者間のネットワークの構築を含めた研究体制の整備、普及啓発、人材育成、地域や職域における専門的かつ総合的な支援の在り方などについて検討を進めてまいります。

島尻委員 ありがとうございます。

 自民党のPTの議論の中で、疾病によっては痛みの伝わり方に性差がある、男性と女性の差、痛みの伝わり方の差があることが分かってきているというお話も伺ったところでありまして、そういった観点から、今後、いろいろな医療の取組以外にも、こういったところの研究開発が大変大事になってくる。つまり、データを蓄積していくことが大事になってくると思っておりまして、今お話のあった女性の健康ナショナルセンターというのが、我が国での日本人女性のデータの蓄積もさながら、今後、世界中のこういった女性の健康ナショナルセンターとの連携でもって、世界中の女性の、それこそウィメンズウェルネスというところに向かっていけばいいのかなと感じているところでございます。

 特に、今後は、先ほども申し上げましたけれども、ジェンダード・イノベーションなど、様々な切り口で女性の健康課題の対策を考えていく。

 いつもは座っておられる宮路先生が今日はお見えになりませんけれども、フェムテック議連というのもございます。このフェムテックに関しては、これそのものがビジネスチャンスでもありますし、その活用で女性が元気になることで、社会全体にも非常にいい影響を及ぼすということは周知の事実だと思っております。

 経産省、厚労省、それぞれにお聞きいたしますが、最近算出された労働損失額も含めまして、この課題への取組を教えていただきたいと思います。

山影政府参考人 お答えいたします。

 経済産業省といたしましては、経営者が従業員の健康増進に戦略的に取り組むこと、これは、人的資本投資の土台となりまして、生産性向上、ひいては企業価値の向上につながるため、いわゆる健康経営の推進を積極的に進めてきたところでございます。

 とりわけ、最近では、女性特有の健康課題が業務効率あるいは就業継続といったものにも大きな影響を与えてございまして、健康経営を進める上で、男女の差による健康課題をよく理解して、より細やかに取り組むことが重要との認識を強めてございます。

 この度、今議員から御指摘がありましたけれども、女性が長く健康に働ける環境整備を広く促す趣旨から、女性特有の健康課題による経済損失を可視化したところ、更年期による労働生産性の損失など、経済損失額は社会全体で年間約三・四兆円と推計されたところでございます。

 女性を始めとする多様な人材の活躍とイノベーションの創出などの企業パフォーマンスには一定の相関があるところが各種データからも示されておりまして、既に一部の企業では、社内研修、あるいはアプリを使った健康管理など、性差に基づく健康課題に配慮した取組の実践がなされているところでございますが、仮に、日本のあらゆる企業、法人が取り組んだと仮定した場合には、先ほど申し上げました経済損失は、年間最大で約一・一兆円の縮減が可能という推計もされているところでございます。

 経済産業省といたしましては、職域における性差を捉えた取組を推進していただきまして健康経営の質を高めていくことで、社会経済損失規模を縮減するとともに、企業のみならず、社会全体の活力向上につなげていきたいと考えているところでございます。

 引き続き、厚生労働省を始めとする関係機関とも連携しながら健康経営を推進しまして、女性を含めた多様な方々がより多く、生産性が高く、健康的で充実して働くことができる職場環境を整えていただけるように進めてまいりたいと考えてございます。

鳥井政府参考人 女性特有の健康課題が社会経済に与える影響を踏まえることは大変重要だと考えております。

 厚生労働省では、更年期障害が日常生活に与える影響等に関する調査研究でございますとか、女性の健康に関する情報提供サイトによる普及啓発、市町村が実施する健康相談への補助等を進めてきたところでございます。

 また、労働現場における女性の健康支援ということで、女性の健康に関する問診項目の事業主健診への追加について検討しておりますほか、独立行政法人労働者健康安全機構が全国に設置しております産業保健総合支援センターで職場の産業保健スタッフに対する研修を実施する、あるいは、働く女性の心とからだの応援サイトにおきまして女性の健康のための職場における取組ポイント等をお示ししているところでございます。

 こういった取組を今後も推進してまいります。

島尻委員 ありがとうございます。

 損失額が出たということは大変大きいことだと思っておりまして、特に、経産省の損失三・四兆円のところは、かなりインパクトもありますし、そこをターゲットにしていろいろなビジネスチャンスも生まれてくると思っておりますので、厚労の政策とも相まって、是非全体でいい方向に行くようによろしくお願いしたいと思います。

 結びですが、上川大臣にお聞きしたいと思います。

 今の答弁を聞いていてもお分かりになると思っておりますけれども、世界的なこの分野の潮流というのを感じているところであります。大臣はこれまでも、WPSなどを始め、多くの国々との連携に尽力されております。是非、このウィメンズウェルネスといった観点、これを外交政策として我が国がリーダーシップを取りつつやっていくためには、上川大臣のリーダーシップが必要だと思います。最後に御答弁をお願いいたします。

上川国務大臣 我が国が外交面で主導しておりますユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けまして、母子保健や、性と生殖に関する健康と権利を始め、女性の観点を取り入れることは不可欠であると考えております。この観点からも、日本政府として、女性を対象とした保健分野におきましての国際協力につきましては、これまでも、またこれからも積極的に行っていくということでございます。

 まず、この健康分野につきまして、この間、日本の貢献として、母子手帳を各国に使っていただくべく展開をしてまいりました。この母子手帳は、お母さんの体と赤ちゃんの体、ちょうど二つの体の記録という形で、極めて重要な妊娠期、出産期の大きなデータがここに含まれているところであります。また、この記録、また母子手帳のようなものはパスポート代わりにも使われている、こうした事情もございます。

 こうした点につきましても、ベースがあるところでありますし、高い評価を得ているところでありますので、その流れの中で主流化していくことは極めて重要であると認識しております。

 また、今回、マダガスカル等、アフリカ諸国にも伺わせていただきましたが、紛争地域における女性の活躍ということで、まさにWPSの重要性については、現実の中でどのように動いているかも触れてきたところであります。

 その中におきまして、マダガスカルでありましたけれども、モバイルクリニックという形で、周産期の医療の現場につきまして、健診などにつきましても、普通、医療にかかることができないエリアに対しまして非常に重要な役割を果たしている。こういった実践例というものも数々世界の中で日本の支援として展開しているところでございます。

 こうして得られた知見は、今、女性の健康ナショナルセンターということでありますが、拠点ごとにデータを集積しながら、さらに、今のデジタル化にふさわしい形でその技術を使いまして展開していくということは、新しいモデルも開発できるものと思っておりまして、海外の外交と内政のリンケージを図ることも可能となってまいりますので、この点については積極的に取り組んでまいりたいと思っております。

島尻委員 時間が来ました。これで終わります。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、金城泰邦君。

金城委員 おはようございます。公明党会派、金城でございます。

 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。

 まず初めに、中国との友好交流の再開について質問をさせていただきます。

 一昨日、山口代表を始めとする我が党幹部と中国共産党中央対外連絡部の劉建超部長、呉江浩駐日大使らと会談をいたしました。上川大臣も会談先でお会いされていると思いますが、席上、劉部長からは、自民党、公明党と中国共産党との与党交流協議会の再開を準備したいと発言がありました。

 昨年十一月に山口代表は訪中をいたしまして、中国共産党中央政治局の蔡奇常務委員と会談をしました。蔡奇常務委員からは、戦略的互恵関係を踏まえ、与党交流協議会を再開させたいとの提案がなされました。そして、今回の劉部長の発言へとつながっているわけでございますが、与党交流協議会の再開が現実的に一歩前進したと思います。日本と中国との友好交流の促進のための大きな契機となると考えております。また、あわせて、劉部長は、我が党と中国共産党とのメカニズムとしての相互交流の提案もなされました。

 そこで、このことに関しまして、外務大臣はどのように評価されますでしょうか。大臣の御所見を伺いたいと思います。

上川国務大臣 日中間におきましては、昨年十一月に、岸田総理と習近平国家主席との間におきまして、戦略的互恵関係の包括的な推進と建設的、安定的な関係の構築につきまして再確認をし、五月二十六日にも、岸田総理と李強国務院総理との間におきまして、大きな方向性に沿って、日中間の様々な課題や懸案につきまして様々なレベルで対話を積み重ね、両国の間に存在する様々な可能性を実現していくということを確認したところでございます。

 そうした中、今般、劉建超中国共産党中央対外連絡部長が訪日をされました。自民党、公明党との間におきまして日中与党交流協議会を再開する方針で一致をし、また、公明党との相互交流につきましても議論が行われたことは、この大きな方針の中で、重要な柱であります議員、政党間交流を後押しする観点から有意義であると考えております。

 今般の劉部長の訪日も踏まえまして、政府といたしましても、引き続き、中国との間で戦略的互恵関係の包括的な推進と建設的かつ安定的な日中関係の構築に向けまして尽力してまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、答弁ありがとうございました。

 今ほど日本と中国との平和外交が重要なときはないと思っておりますので、しっかりと取り組んでいただきたいと思っております。

 続きまして、核軍縮・不拡散に向けた取組について質問をさせていただきます。

 本年三月の国連安全保障理事会において、グテーレス国連事務総長は、核戦争のリスクが過去数十年で最高レベルにまで悪化している、また、核保有国が対話のテーブルに着いていない、また、核保有国はいずれの国も核兵器の先制使用国にならないことに早急に合意しなければならない、当然ながら、いかなる国も、いかなる状況においても使用すべきではないと発言されております。

 五月二十一日、横浜市で核兵器のない世界に向けた国際賢人会議の第四回会合が開催されました。周知のとおり、国際賢人会議は、岸田総理が呼びかけ、核保有国と非保有国双方の有識者が集まり、核廃絶への議論を行う会議であります。会議閉会後の記者会見で、意見の相違があるにもかかわらず、核不使用の継続には対話、対話だ、これが会合での合意だとの見解が示されたとお聞きしました。

 ところが、核をめぐる対話というのは、現在、見通しのない状況でございます。核保有国は非保有国との対話に背を向けていると言われております。非保有国も、核の傘下にある国々と核兵器禁止条約実現を推進してきた国々との間の対話もまだできていない状況でございます。

 日本は、核保有国と非保有国双方の橋渡し役を掲げております。橋渡し役として今後どのような戦略で対話の糸口を見つけようと考えているのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 現下の国際情勢の下、核兵器のない世界に向けました道のりは一層厳しいものとなっていると考えております。だからこそ、我が国は唯一の戦争被爆国として、核兵器国を関与させるよう努力をしながら、現実的なアプローチで、核兵器のない世界の実現に向け、全力で取り組む必要があると考えております。

 例えば、我が国は核兵器廃絶決議を毎年国連に提出し、核兵器国や核兵器禁止条約締約国を含みます多くの国々の支持を得て採択されております。その過程におきましても、様々な国々と対話を深め、核兵器不使用の継続、透明性の向上、また、被爆の実相への理解向上のための軍縮・不拡散教育の重要性など、情勢に応じた課題を国際社会に呼びかけてまいりました。

 また、本年三月におきましては、安保理におきまして、私自身、議長として、核兵器不拡散をテーマとする閣僚級会合を主催したところであります。核兵器国、非核兵器国間での実質的な議論を加速化させる契機となったと考えております。

 そうした機会に、岸田総理のリーダーシップの下、我が国が取りまとめる形で、核兵器国も参加をするFMCTフレンズの立ち上げを表明し、今後、地域横断的な十二か国の間におきまして、FMCTに対する政治的関心を一層高め、議論を深めていく予定でございます。

 こうした取組も含めまして、引き続き、ヒロシマ・アクション・プランの下での取組を一つ一つ実行していくことによりまして、現実的かつ実践的な取組を継続、強化してまいりたいと考えております。

金城委員 ありがとうございました。

 続いて、アフリカとの連携強化についてお伺いしたいと思います。

 一九九三年以来、日本政府が主導し、国連及び国際機関と共同で開催してきたアフリカ開発会議の第九回目が、来年横浜で開催されます。政府は、この第九回アフリカ開発会議開催の機会を捉え、アフリカにおける高度人材の育成、人的交流の強化、日本企業との連携、スタートアップ支援等、日本らしい国際協力の推進を掲げておられます。

 アフリカといっても、広大な地域で、五十四か国あります。全ての国に対応できればそれにこしたことはありませんが、現実的には難しさを感じます。来年のアフリカ開発会議開催に向けて、政府また外務省として、具体的にどの国々に対し、どのような取組を進めていけるのか、お考えをお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 委員御指摘のとおり、アフリカでございますが、五十四の国連加盟国を有し、二〇五〇年に世界人口の四分の一を占めると言われております。

 アフリカは、様々な課題を抱えながらも、若い人口構成や豊富な資源も背景にダイナミックな成長が期待できる地域であると認識をしております。有望な市場、また生産拠点、新たなビジネスモデルの実証の場として今後も大きな成長が見込まれるところであります。

 また、グローバルサウス諸国が今世界で大きな存在感を示す中にありまして、その一角を成すアフリカ諸国との連携強化は、我が国の経済安全保障面を含めました国益にかなうとともに、国際社会における分断と対立の動きを協調へと導くものと考えております。

 そのような問題意識の下、四月末でありますが、外相就任後初めてサブサハラ・アフリカを訪問いたしました。アフリカに言語圏が複数ある中にありまして、今回は、仏語圏のマダガスカル及びコートジボワール、そして英語圏のナイジェリアに絞って訪問し、連結性の強化、そして投資促進、スタートアップ支援に焦点を当てたところでございます。

 連結性強化の観点からは、地域のハブとなる拠点づくりの重要性を感じたところであります。訪問先におきまして、大学、病院、港湾、図書館、こうした関係者の方々と意見交換をし、多くのすばらしい取組を点のレベルにとどめず、面的に展開する必要性を実感したところであります。

 また、現地の日本企業関係者との意見交換におきましては、一つの国を拠点に、国境を越えて他の国々へ面的にビジネス展開を進めている状況や、また、中東等のアフリカ以外の地域、国を含めました第三国連携の可能性につきましてもお話を伺うことができました。

 今回のアフリカ訪問でございますが、日本企業の活動の実相に触れることによりまして、アフリカ訪問に先立って発表いたしました経済広域担当官の活用のポテンシャルも感じたところであります。

 日本とアフリカとの間におきましては、三十年以上にわたりますTICADプロセスを通じて培われてきました信頼関係がございます。今回のサブサハラ・アフリカ訪問で得たヒントを生かしつつ、アフリカ各国の多様な状況、固有のニーズ、これらを踏まえた日本らしいきめ細やかな取組を通じまして、更なる関係強化を進めてまいりたいと考えております。

 八月には、TICAD閣僚会合が開かれます。また、来年のTICAD9に向けまして、アフリカのダイナミズムを日本に取り込むとともに、アフリカの経済成長及び平和と安定を実現する方策を、アフリカとともに共創していく、共につくっていくということに心がけて、推進してまいりたいと考えております。

金城委員 今後のアフリカとの連携、しっかり期待しております。よろしくお願いします。

 続きまして、WPSの更なる推進と国際社会におけるネットワーク強化についてお伺いをいたします。

 先ほど島尻先生とのやり取りも象徴的でありましたけれども、上川大臣はあらゆる場面でWPSを力強く推進すると述べられており、これまで、行動計画の策定や、タスクフォースの設置、各国の女性リーダーとの会談など、様々な取組を進めてこられました。

 大臣のこれまでの精力的なWPS推進の取組を評価しております。その上で、WPSの更なる推進のためには、大臣自らが各国の女性リーダーとの連携をより一層強化するとともに、国連や国際機関における我が国の女性職員を増加することなどが重要だと考えます。

 WPSに関して、これまで実施してきた成果について、また今後の推進計画と取組について、さらには上川大臣の御決意を伺いたいと思います。

上川国務大臣 私は、就任以来、WPSを主要外交政策の一つと位置づけまして、省内にタスクフォースを設置し、バイ、マルチのあらゆる機会を捉えましてWPSの重要性について発信してきたところでございます。

 紛争下において特に影響を受けるのは女性や子供たちであります。二月の日・ウクライナ経済復興推進会議でWPSセッションを開催いたしましたけれども、復興に女性や子供の視点を組み込むべく、ウクライナ政府、企業、市民社会の現場で活躍する女性たちと有機的な議論を行ったところでもございます。

 四月のアフリカ訪問におきましては、国内避難民の女性の皆様から、直接、切実な状況、また、現地におきまして女性自らがリーダーシップを振るいながら自立に向けて努力をしている姿を視察することができました。WPSの視点を踏まえた取組の必要性がますます重要となっているものと認識をしているところであります。

 一連の活動を通じまして、WPSを日本とともに推進したい、こうした反応が着実に増えております。そして、WPS推進の輪が広がり、支持の層は厚みを増していると確かな手応えも感じているところでございます。

 今後も、あらゆる施策に女性の視点、WPSの視点を取り入れていくことによりまして、平和が持続し、公正性のある国際社会の構築に従来以上に貢献していく必要があるというふうに思っているところであります。

 支援案件の形成におきましては、緊急支援から復興に至る全てのフェーズにおきましてWPSの考え方を積極的に取り入れて、日本の行動計画に掲げます防災、災害対応に関する知見も踏まえてまいりたいと考えております。これまでの取組で得られた示唆やネットワークも十分に活用をしてまいりたいというふうに思っております。

 私自身、約二十年ぶりの女性外務大臣ということでありまして、国連等国際機関におきまして、我が国女性職員の増加も含めまして、国際場裏における日本からの女性の参画拡大につきましてもリードしてまいりたいと考えております。

金城委員 大臣、御答弁ありがとうございました。

 残余の質問があったんですが、時間が参りましたので、これで終わります。

 ありがとうございます。

勝俣委員長 次に、松原仁君。

松原委員 今日、私はこの質疑、大変に緊張して臨ませていただいております。なぜならば、在大阪中国総領事のこの間の行動というものは、極めて深刻に我々は受け止めなければいけないし、まさにこのことこそ、カナダの事例を見るまでもなく、ペルソナ・ノン・グラータを発動するべき案件であるということをこの場で明確にしたいからであります。

 他方において、私は評価するところは評価するという姿勢を従来から持っておりまして、岸田総理大臣が中国首脳と会ったときに、ブイの問題に触れたであるとか、また、日本における排他的経済水域、EEZを拡大することに貢献したとか、これは後の質問で触れますが、それ自体は、私は、政府はいいことをやっていると、そこは評価したい。

 ただ、もっとも、ブイの問題に関しては、いつそれを撤去するのかというところまで踏み込んだ議論を実務的に上川さんが中心になって行わなければいけないということを含めて、これも後ほど質問をさせてもらいます。

 その上で、まず申し上げたいことは、中国が台湾統一について武力統一を排除しないと言っているわけでありますが、歴史的な経過を確認したいと思っております。

 アメリカのキッシンジャー氏が、一九七二年、周恩来との上海コミュニケにおいて、台湾が中国の一部であることを認識するが承認してはいないというニュアンス、アクノレッジという英語を使ってそういうことを言っている。つまり、中国の主張は認識する、承認しない、こういうことを上海コミュニケで言っているということ。

 また、そのときの、日中共同宣言に携わった栗山元外務省事務次官が、万が一、つまり、これが平和裏に台湾が統一されるのであればそれは国内問題である、しかし、中国が武力で台湾を統一しようとするときはそれは国内問題ではなくなるという見解を示しているということについて、外務省は認識をしているかどうか、お伺いいたします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 米国と中国との一九七二年の上海コミュニケにおきましては、米国は、台湾海峡の両側の全ての中国人が、中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張していることを認識、原文で申しますと、委員御指摘のとおり、アクノレッジとしている旨述べられていると承知しております。

 また、栗山元外務次官が「論説 日中国交正常化」におきまして、「万々が一中国が武力によって台湾を統一する、いわゆる武力解放という手段に訴えるようになった場合には、これは国内問題というわけにはいかない」旨記されていることについても承知しているところでございます。

松原委員 これは極めて重要な歴史的な経緯だと思っております。上海コミュニケについてはここで質疑をする時間はありませんが、アクノレッジ、認識しているということでありまして、承認はしていない。そして、栗山さんはそのときの外務事務次官でありましたが、この両岸関係が平和裏に統合されるのであればこれは国内問題である、しかし、平和裏でないならば国内問題ではなくなるという見解を持っていたということを表明している。これは日本の外交を考える上で大きな視座であると申し上げておきたい。

 また、インド太平洋地域の有事の際に戦略を遂行する最高指揮官、サミュエル・パパロ司令官は、これは日経新聞ですかね、インタビューにおいて、中国が五月二十三、二十四日に実施した台湾を包囲する形での軍事演習は、台湾侵攻に向けた予行演習ではないかとの旨発言をしている。

 日中共同声明において、日本側は中国を一つと認めていますが、安倍晋三元総理は、令和三年十二月一日の台湾の研究機関が主催するイベントで、オンライン講演の際、台湾への武力侵攻は、地理的、空間的に、必ず日本国土に重大な危険を引き起こさずにはいられない、台湾有事は日本有事だと発言しております。実は、大平外務大臣等も、一九七二年段階でそういった認識を表明していると私は承知しております。

 こうしたリスクがあるということを外務大臣は御認識をされておりますでしょうか。

上川国務大臣 御指摘の発言につきましては承知をしておりますが、台湾有事という仮定の質問についてお答えすることは差し控えさせていただきます。

 あくまで一般論として申し上げますと、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、我が国及び我が国国民の安全と繁栄を確保するため、政府として、いかなる事態に対しても対応できるよう、平素からの体制の整備を含め万全を期していくことは当然であると考えております。

松原委員 大臣、もちろんそういう答弁しかできないのかもしれませんが、大平外務大臣の時代は、外務大臣はもっと踏み込んだ答弁をしていますよ、当時の議事録を読むと。だから、日本の国益を主張する最前線にいる上川大臣は、やはり踏み込むところは踏み込んでもらいたい。今日は踏み込んでもらいたいと思っています。

 さて、質問は次に飛びますが、外務省の政府参考人にお伺いします。

 ペルソナ・ノン・グラータ、これはウィーン条約においてどのように決まっているのか、お伺いいたします。

中村政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねのペルソナ・ノン・グラータにつきましては、外交関係に関するウィーン条約第九条に規定がございます。

 そこにおきまして、接受国は、いつでも、理由を示さないで、派遣国に対し、使節団の外交官がペルソナ・ノン・グラータであることを通告することができる、かつ、その通告を受けた場合には、派遣国は、その者を召還し、又は任務を終了させなければならない、以上の趣旨を規定しているところでございます。

松原委員 このペルソナ・ノン・グラータです。

 さて、駐日大使の呉大使、昨年四月二十八日にどのような発言をしたのか、それに対して当時の林外務大臣はどのように対応したのか、お伺いいたします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 呉江浩駐日中国大使は、昨年四月に、日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる等の発言をしていると承知しています。

 この呉江浩駐日中国大使の発言につきましては、在京大使の発言としては極めて不適切であり、外交ルートを通じ厳重に抗議を行ったところでございます。

松原委員 これに関して、外務大臣は、林さんは何か言っていませんでしたか。お伺いします。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 当時の林大臣の発言は今手元にございませんけれども、いずれにしても、大使の発言としては極めて不適切であるということと、外交ルートを通じて厳重に抗議を行っているということを述べていると承知しております。

松原委員 私、通告で外務大臣はどう発言したかと書いてあるので、発言を林さんがしていないならしていない、しているなら、こういう発言をしましたということをきちっと答弁してもらわないと。真剣さが欠けていますよ。

 このときに、どういうルートで抗議をしたのか、お伺いします。

林政府参考人 お答えを申し上げます。

 昨年の抗議についてのお話と承知しておりますけれども、外務省アジア大洋州局審議官から在京の中国大使館公使参事官に対して抗議したところでございます。

松原委員 これも質問通告しているので、そんな悩まないで答弁してくださいよ。

 もう一回確認しますが、審議官から在京の公使に対して抗議をした、そういうことでよろしいんですか。もう一回、確認です。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、昨年四月の発言に対しましては、アジア大洋州局審議官から在京中国大使館公使参事官に対して抗議したところでございます。

松原委員 もうちょっとはっきりと、答弁が聞こえないよ。自信を持ってはっきりやってくださいよ、自信を持って日本の外交をやっているんだったら。お願いしますよ。

 それで、結局、また同じことをこの呉さんが言ったわけですよね。日本の民衆を火の中に連れ込む。これは暴力的な発言であるというふうに思っていますが、大臣、どう思いますか。

上川国務大臣 今回の発言も極めて不適切でありまして、これにつきましては、様々な機会を通じまして、我が国の立場を厳格に申し入れるなど、中国側とは必要なやり取りを明確に直接行ってきているということでございます。

松原委員 前回も審議官から抗議をした、こういうふうに政府参考人の御答弁があった。

 前回の抗議というのは、大臣、率直にお伺いしたい。全く効果がなかった、こういう認識でよろしいですか。

上川国務大臣 今回、在京の大使としての発言ということでありますが、極めて不適切でありまして、外交ルートを通じまして厳重な抗議を行ったところであります。こうした抗議につきまして、全く意味がなかったということについては考えておりません。

 しかし、今回の発言も極めて不適切でありまして、様々な機会を通じまして、様々なレベルで我が国の立場を厳格に申し入れるなど、中国側とは必要なやり取りを明確に直接行ってきており、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 私、そのことを聞いているんじゃないんですよ。前回の抗議というものが効果を持っていないということは認識をしていますかと聞いているんですよ、答えてください。

上川国務大臣 私、繰り返し申し上げるところでありますが、昨年の四月の呉江浩駐日中国大使の発言は、在京大使の発言として極めて不適切でありまして、外交ルートを通じて厳重な抗議を行ったところであります。こうした抗議に意味がなかったということについては考えておりません。

松原委員 甚だしく大臣としては不適切な発言だと思います。結果論ですよ、結果で見るのが政治ですよ。結果として同じ発言をしたということは、前回の抗議が功を奏していなかった。

 今回のグラハムさんに対してもそうですよ、原子爆弾の。広島、長崎の原爆の投下が正当だったと、抗議をしたにもかかわらず、グラハムさんがNBCでまた同じことを言った。抗議が有効に結果論として伝わっていないということは、それは意味があったという話にならないということを、私は外交の専門家である上川さんに明確に申し上げておきたいわけであります。

 もう一回申し上げますが、今回、ここに産経新聞がありますが、産経新聞が一面トップで載っけているんです、私も内々情報は持っていましたが。こうやって産経新聞が一面トップで、これはもっと強烈で、後の質問になりますが、台湾と接触するな、往来するなと、日本の国会議員に対して中国の薛剣駐大阪総領事が言っている。こういった記事がここまで大きく出て、一般の国民や諸外国の知るところになり、これに対して何らの対応をしないのであれば、もう本当に腰砕けの外交と言われてしまうのではないかと私は大変に危惧の念を持っているわけでありますが、呉大使の発言も同じですよ。

 では、大臣にお伺いしますが、日本の国民、民衆を火の中に連れ込むという発言をする駐日大使というのは、日本と中国の懸け橋として活動する大使として適任者だと思うかどうか、答弁してください。

上川国務大臣 呉江浩駐日中国大使の発言につきましては、昨年の四月及び五月の二度にわたる発言であります。駐日大使の発言として極めて不適切であると考えております。様々な機会を通じまして、様々なレベルで我が国の立場を厳格に申し上げる等、適切な対応を継続してまいりたいというふうに考えております。

松原委員 質問が違うんですよ。

 呉大使のような大使が、日本の民衆を火の中に連れ込むと、極めて暴力的な発言を昨年も行った。先ほどの政府参考人のお話だと、きちっと抗議をした。にもかかわらず、一年たってまた行った。このような大使が日本と中国の懸け橋になるのに適切かどうかというのを聞いているんです。適切と思うなら思うと、不適切だと思うなら不適切ではないかと、分からないなら分からないで結構ですよ。答えてください。

上川国務大臣 駐日中国大使は極めて重要な立場でございます。その方が在京大使の発言として行ったこの発言は極めて不適切であると認識をしているところでございます。その意味で、外交ルートを通じまして厳重な抗議を行ったところでございます。

松原委員 ここで質問と答弁が繰り返されても申し訳ないんだが、一回目の発言だったら初犯ですよ。二度目の発言をしたことについてどういうふうな所見をお持ちなのか。二度目ですよ。日本民衆を火の中に連れ込むと一年たって二度目の発言をした、抗議を審議官からしたにもかかわらず。

 この二度目の発言を受けてどういうふうな感想をお持ちか、答弁してください。

上川国務大臣 繰り返し申し上げて大変恐縮でございますが、今回の駐日中国大使の発言につきましては、二度目ということでございます。極めて不適切でございまして、外交ルートを通じまして厳重な抗議を行ったところでございます。

 このやり取りにつきましても、直接行ってきているところでございまして、今後とも適切に対応してまいりたいと考えております。

松原委員 この産経新聞を見ると、情報源は明らかにされていませんが、今回は担当課長から向こう側に抗議を行ったというふうにされているわけであります。

 担当課長から言うというのは、前回は審議官と言っていましたか。ちょっと答えてください。

林政府参考人 お答えいたします。

 昨年四月の抗議は、アジア大洋州局審議官から行っております。

松原委員 今回は課長からということですから、ランクを上げたということなんですか、下げたということなんですか、教えてください。

林政府参考人 お答えいたします。

 今回の抗議につきましては、昨年四月の発言の際よりもレベルを上げて抗議を行ったところでございます。

 内容としては、呉大使の発言は、駐日大使の発言として極めて不適切であると考えているので、我が国の立場を厳格に申し入れたものでございます。

松原委員 大臣、この担当課長から向こうに、二度同じ発言をした、日本人を、人民を火の中に連れ込むと発言した大使に、課長からの抗議、厳重抗議と言えるかどうかは分かりませんが、この抗議は適切であったと大臣は思っているんですか。答えてください。

上川国務大臣 今、抗議につきまして、レベルを上げてと答弁をいたしたところであります。レベルを上げて抗議をいたしたところであります。

松原委員 はっきり言って、私は、もうこれは、二度同じことを言った呉大使はペルソナ・ノン・グラータの範囲だと思っている。不適切な発言を、前は記者クラブか何かですよね。今度は大使館に様々な政治関係者も呼んで発言した。

 不適切な発言を二度発言した大使は不適切である、こういうふうに思いませんか。確認です。

上川国務大臣 呉江浩駐日中国大使の昨年四月及び今年五月の二度にわたります発言は、駐日大使の発言として極めて不適切であると考えております。

松原委員 私が言っているのは、不適切な発言をこんな反省もなく二度も行う、暴力的な発言を。それは、不適切な、先ほどペルソナ・ノン・グラータという話がありました。接受国にとって不適切な者はお帰りいただくということが行われるわけでありまして、私は、そこに該当しているということを明確に申し上げておきたい。

 検討してください。検討しますか、確認です、大臣。

上川国務大臣 呉江浩駐日中国大使の発言としては極めて不適切であると考えておりまして、これを受けまして、様々な機会を通じて、様々なレベルで我が国の立場を厳格に申し入れるなど、中国側とは必要なやり取りを明確に直接行ってきているところでございますが、今後ともこうした適切な対応を継続していく考えであります。

 その上で、御指摘の点も含めまして、今後の更なる対応につきましては、現時点で予断を持ってお答えすることにつきましては差し控えさせていただきます。

松原委員 予断を持って言えないという大臣の言葉を私は尊重したいと思う。ペルソナ・ノン・グラータを適用してくださいよ。それが日本国のプライドを守ることにつながる。二度言っているんですよ、二度。一回目の抗議はほとんど功を成していない。

 さて、そこでお伺いしますが、カナダにおける中国大使館外交官へのペルソナ・ノン・グラータはどんな経緯で行われたか、説明してください。

有馬政府参考人 お答え申し上げます。

 二〇二三年五月、カナダ政府は、趙巍氏をペルソナ・ノン・グラータと宣言することを決定したと発表したと承知しております。

 この発表におきまして、カナダ政府は、カナダはいかなる形の内政干渉も容認しない、カナダに滞在する外交官は、このような行動を取れば帰国させられると警告している、この決定は、あらゆる要素を慎重に検討した結果下されたものである、我々は民主主義を守ることが最も重要であるとの決意を堅持していると述べていると承知しております。

松原委員 つまり、カナダは、ペルソナ・ノン・グラータを明確にして、カナダにおいてウイグル問題等に関して活動し法律を作ろうとしていた、こういった議員に対して様々な圧力を加えた、そのことはペルソナ・ノン・グラータとしてきちっと対応し、政府は、その主権といいますか、矜持を明らかにしたわけであります。

 さて、日本の大阪の総領事の発言でありますが、この産経新聞には、この委員会に所属している和田有一朗議員の名前が出ているわけであります。

 和田議員も、これ、脅迫めいた文書を受け取ったんですよね。まあ、首を縦に振っていますから、受け取ったんだと思いますよ。

 私はここに、和田議員ではありませんが、同じくその文書を受け取った北神圭朗衆議院議員の文書を持っています。これ、中華人民共和国大阪総領事館と書いてある。これ、直筆のコピーなのでちょっと読めないんですが、薛剣と書いてある。この文書であります。

 産経新聞に事細かに載っていますが、この文書を一体何人の日本の国会議員に送付されているか、私は知りません。しかし、ここにいる和田有一朗衆議院議員も、北神さんはこのペーパーを私に出していただいた。

 北神さんと話しましたよ。北神さんは、今から数年前、サイバーアタックを受けたということを言っています。恐らくその国はどこだか、皆さんは分かると思います。そのことをなぜ北神さんは承知をしたかといえば、警察の人が来て、大阪で二か所サイバーアタックを受けた、一つがあなたの事務所だ、そういうふうに警察の人が言ったと。

 私は、事は深刻だと思います。秘密警察の話もありますが、こういうことで、日本の国会議員に対して、そういうふうなサイバーアタックがあった上でこういう文書が来たら、これは極めて恫喝効果があると私は思います。

 この文書で幾つか、書いてありますから、読みましょう。頼氏がリードする民進党当局が島内で引き続き政権を担当することは、平和統一の未来を破壊し、平和統一の空間を圧迫するだけで、両岸関係の情勢はより複雑で厳しくなる、こう言っている。

 大臣、中国のこの薛剣大阪総領事、彼が言っているのは、大臣はどう思いますか。所見をお伺いしたい。今初めて言っているので、答えられなかったら答えないでも結構ですが、直感的に言えるはずですよ、大臣だったら。教えてください。

上川国務大臣 御指摘の報道につきましては承知をしておるところでございますが、今、書簡の全容について把握をしているわけではございませんので、ここでそれについての所感ということにつきましては差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 全容が分かったときは、当然、このことに対して、上川大臣として鮮やかな政治的な決断をしてもらえる、こういうことでよろしいですか。これは仮定ではなく、全容は分かりますから。仮定の質問ではなくて、全容が分かったときにどういう処断をするのか、お伺いしたい。

上川国務大臣 この総領事の書簡の内容などにつきましては精査をする必要があるというふうに考えております。今後必要な対応につきましては適切に検討していくことになるということでございます。

松原委員 適切な対応には、まさにペルソナ・ノン・グラータが入ると私は思っております。

 この署名の直前の文章、これも産経に載っていましたが、こう書いてあるんですよね。

 台湾といかなる接触も往来もせず、中国人民の台湾独立に反対し、国家統一を求める正義の事業を理解、支持し、実際の行動をもって中日関係の大局を守っていただくよう強く希望しておりますと。敬語を使っていますけれども、完全に恫喝だと私は思います。

 日本の国会議員に対して、台湾と接触するな、往来するな、こう言っているわけであります。かねてから往来している人間は少なからずいるわけであります。上川さん、この部分は、そうですかと了解できるでしょうか。答弁してください。

上川国務大臣 文書の全容について把握をしておりませんので、今読み上げていただきましたけれども、まさにその部分についての精査が必要であるというふうに思っております。

松原委員 精査は早くしてくださいよ。こんなのは今ここで渡してもいいぐらいですよ。読めばすぐ分かる。精査は早めにしてもらって、そして、カナダにおいてペルソナ・ノン・グラータが発動されたように、日本の国会議員に、当然これは各党の国会議員に対してこういう文書が行っている、これから、これも調べれば出てきますよ。

 そうなったときに、こんなことをやるということが、それは、もしかしたら内政干渉ではないか、こういうふうに私は言いたいわけでありますが、これをいろいろなところであやを込めて言って、ある種の恫喝に近いものがある。

 総領事は、そういった恫喝を日本の国会議員に対して加える。大使は、一般の日本人民は火の中に連れ込むと言っている。ちょっとやり過ぎじゃないですか。この二つを合わせて、大臣、どういうお考えか、おっしゃってください。日本の大臣として、こんなことを言われていて、どう思うんですか。お伺いしたい。

上川国務大臣 繰り返しになるところでございますが、この度の総領事の書簡の内容などにつきましては精査をすることが必要であると考えておりまして、今後必要な対応につきましては適切に検討していくことになるところでございますが、今後の対応につきましては、現時点で予断を持ってお答えすることについては差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

松原委員 予断を持ってというのをおっしゃっているので、ペルソナ・ノン・グラータをやるかどうか。我々日本国民の多くがそれを真剣に見守っているだけではなく、私は、ここまで大げさな話になったときに、世界が上川大臣の行動、判断を、何もしないのか、何かするのか、注目しているということは明確に申し上げておきたいと思います。

 あと、汪報道官が言ったんですね。中国の汪報道官、彼が、事実に基づいており、道理は正しく言葉は厳格、完全に正当なものだと言った。この正当なものだと言ったのは、呉大使が日本人民を火の中に連れ込むと言ったことに対して、彼が正当なものだと言った。

 この呉大使の発言に対して汪報道官の発言、これは、外務省の政府参考人、コメントしてくださいよ。大臣に申し上げるんじゃ恐縮だから、あなたが答えてください、強いトーンで。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の中国外交部報道官の発言は、呉大使の不適切な発言を正当化するものであり、全く受け入れられるものではありません。

 今後の対応については、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 今後の対応は予断を持って言えないということで、やはりそれなりに主権国家としての矜持を示してもらいたい。

 同じ文脈で、前回質問の途中でしたが、韓国の曹国国会議員が竹島上陸をした。

 ちょっとお伺いしますが、入管法の七十条一項二号においては、入国審査官から上陸の許可等を受けないで日本に上陸した者は、三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万円以下の罰金に処すとありますが、このことは、入管の方、入管法の条文の中にこの文面はありますね、簡単に答えてください。

君塚政府参考人 今議員からお尋ねがあった条文というのは、入管法の七十条一項二号に、いわゆる不法上陸を罰する規定ということで定められております。

松原委員 五条一項十四号は、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為、主権侵害は完全にこれに該当するわけでありますが、これは日本に上陸することができない、ブラックリストだと。これはありますね。簡単に答えてください。

君塚政府参考人 今御指摘のございました、これは上陸拒否事由の一つでございますけれども、「法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」について、上陸を拒否することとされております。

松原委員 さて、大臣、これは法律上は取り締まれるんですよ、条文を見る限り。法律上は取り締まることができる、条文上は。許可なく上陸した人間は懲役三年、罰金三百万円以下、また、そういったことをした人間は日本国に入国させないことができると書いてある。しかし、これができない。では、その理由を入管の立場から簡単に言ってください。

君塚政府参考人 この規定でございますけれども、入管法上の手続を取ることはできることを前提として、上陸の許可等を受けないことを問題とするものでございまして、我が国固有の領土である竹島につきましては、現実に我が国が施政を行い得ない状況にございまして、入管法上の手続を取ることのできない地域であることに照らすと、入管法の適用の前提を欠くものと考えております。

松原委員 この答弁は間違っているんですよ。つまり、これは法律を見ればそう書いてある。それを後で、そういうふうにごにょごにょ言っているんですよ。

 だから、私はここで大臣に確認したい。施政権が及ばない場合は、今言った入管法の五条一項十四号、七十条一項二号、これが死文化してしまう、成立しないというふうな判断をどこの段階でしたのか、なぜそういうばかげた判断をするのか、なぜ日本の主権を縛るような判断をするのか、なぜそういった判断をして、やられたい放題、やられっ放しなのか、大臣、答えてください。

上川国務大臣 韓国は竹島におきまして警備隊等を常駐させ、灯台、ヘリポート、接岸施設等を設置するなど、国際法上は何ら根拠がないままに竹島を不法占拠しているところでございます。

 一九五四年に始まりました韓国側の不法占拠によりまして、現在の竹島は、現実に我が国が施政を行い得ない状況にございます。

松原委員 そんなことを聞いているんじゃないんですよ。法律の条文は、条文どおり読めば、実際にそれができるかどうかは別にして、判決を出すことすらできる、三百万円、三年間。そして、再び日本に曹国氏が何らかのことで上陸する場合に、ブラックリストで拒絶できるということが書いてあるんですよ。

 次回の質問で行うつもりですが、アメリカではワームビア法案というのがあって、ワームビアさんの息子が北朝鮮で植物人間になって死んでしまった。北朝鮮側は裁判に出てこないですから、処罰できない。しかし、その法律を作って、すさまじく、ワームビアさんの補償、賠償金を北朝鮮側から取り立てていますよ。

 私は、それは一つの典例として、典故としてあると思うんですが、私が申し上げたいのは、我々は、法体系としては彼らをそうやって追い詰めることができる。それができないのは、政治的な判断で、施政権下においてはこういった入管法の法律は適用できないというふうに日本政府が自らの手足を縛っているからですよ、自らの手足を。縛ったのは外務省だと私は思っています。この表現が最初に出てくるのは外務省の答弁ですよ。

 もう一回確認します。なぜ日本の主権の手足を縛るようなこういった一つの理屈を、上川さん、外務省はつくっているんですか。答えてください。

上川国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、韓国は竹島に警備隊等を常駐させ、灯台、ヘリポート、接岸施設等を設置するなど、国際法上何ら根拠がないままに竹島を不法占拠しているところであります。

 一九五四年に始まりましたこの韓国側の不法占拠によりまして、現在の竹島は、現実に我が国が施政を行い得ない状態にあるという状況でございます。

松原委員 質問に対して、次回質問したときは明確に答えてください。

 日本自身で日本の主権を手足を縛って行使できなくするということを、なぜそんな自虐的な判断をするんですか、それを私は問いたい。外務省が、入管がこれを答える立場じゃないですよ。私は何回も言っているが、上川さんは内閣の一員ですよ。内閣ということは、全ての問題に対して発言し、全ての内閣の法律に署名するんです。全てのことに責任を持つのが内閣の一員です。そのことを明確に認識をして、このことに関しては次回のときに明快な答弁をお願いしたい。

 それから、次回、恐らくこの場における私の時間もいただけるかもしれない。そこで、その段階で、今予断を持って語れないと言っていた呉大使若しくは例えば薛剣総領事、ペルソナ・ノン・グラータを適用するのかどうかを明確にしていただきたい。

 今日話しませんでした、ペルソナ・ノン・グラータは日本は既にやっています、いろいろなときにやっている。その大使、その総領事、その人間の問題でやることもあれば、外交上の対抗措置としてそれをやることもあるということは、これは一々、本当は今言いたかったけれども、時間がないから言わない、やってきていますよ。

 だから、竹島に関しても、もしこういった法律を生かすのでなければ、私は、一方において、竹島新法を作るであるとか、また、韓国の大使館のしかるべき者をPNG、ペルソナ・ノン・グラータでそのような適用をする、外交上のツールとして各国はペルソナ・ノン・グラータを使っていますから。

 そういったことを含めて、遺憾だ遺憾だと言っているんじゃなくて、毅然たる、行動する外交を期待しているんです。次回、このことを質問します。最後に、大臣、今のことを含めて一言答えてください。

上川国務大臣 今日、今、御質問をいただいた趣旨につきましては十分理解したところでございます。

松原委員 理解したら、理解した上で行動してください。日本国民の一人として強く要請して、質問を終わります。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、屋良朝博君。

屋良委員 立憲民主党の屋良朝博でございます。

 今日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。大臣、よろしくお願いします。

 まず最初に、今月二十七日に、四年ぶりに日中韓首脳会談が開かれて、自由貿易協定の交渉再開で合意したところでありますけれども、その中で開かれた日中首脳会談で、岸田首相が李強首相に対して、和牛肉の輸入再開を特出しの形で求めております。

 御承知のとおり、現在、和牛肉は、BSEや口蹄疫の影響も解消して、各国への輸出が行われているにもかかわらず、中国は市場を閉じたままであります。今後、和牛の取引について早期に再開されることが、中国のFTAへの本気度を示す前提となると思います。

 大臣も御承知と思いますけれども、今、コロナの影響もあって、和牛肉の消費が冷え込んでいる。畜産業者も本当に苦しい状況に追い込まれております。是非とも中国に市場開放を求めていただきたい。大臣の御決意を伺います。

上川国務大臣 日本産牛肉の輸出再開に関しましては、委員御指摘のとおり、先般のソウルにおきます日中首脳会談におきまして、岸田総理大臣から、輸出再開に係る調整を加速させたい旨述べたところでございます。

 外務省といたしましても、農林水産省を始めとする関係省庁とも緊密に連携をし、日本産牛肉の輸出の早期再開を目指し、今後とも様々な機会を通じて働きかけてまいります。

屋良委員 大臣、ありがとうございます。

 今、子牛を育てても、売るときにコスト割れした値段でしか売れないということで、補助金を受け取らないと畜産業をやっていられないような状態なので、是非とも対応を早期にお願いしたいところでございます。

 次の質問に移らせていただきます。

 在日米軍の基地の中の従業員が、まだ定年延長が決まっていない。決まっているのは六十一歳まで、そこで止まっているんですね。

 質問通告で、来年度予算で予算要求とかは大丈夫なんですかというふうなことを伺いたいと申し上げたところ、昨日、防衛省からのレクで、そこは大丈夫ですよ、予算についてはしっかりと対応していくというふうな御回答があったので、それはしっかりと対応していただきたいという要望にとどめておきたいと思います。

 しかし、問題は、なぜ定年延長が基地従業員に関してこれだけ調整が遅れているのかということなんですね。もう来年からは経過措置が終わって実施に移らないといけないというせっぱ詰まった状況だと私たちは認識しているんですけれども、ここでの一つの焦点は、基地従業員が定年を超えて働く場合でも業務内容は全く変わらない、にもかかわらず、給与を三割カットされるという不利益であります。

 労働組合からヒアリングしたところ、雇用主である防衛省は国家公務員の定年延長制度をそのまま当てはめようとしている。それは、国家公務員については、等級を下げて業務量を減らす、責任も下げていくというような措置が取られるので給与三割カットだというような理屈で行われておりますけれども、しかし、基地従業員に関しては、業務は全く変わらないんですね。にもかかわらず、給料が下げられるということに対して、現場では大変不満が大きくなっているということなんですね。

 そういった状況を防衛省は認識しているのかどうか。そして、労働組合のそういう指摘をどう受け止めるのかということを防衛省に確認させてください。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、国家公務員の役職定年制のお話でございますけれども、管理監督職に就いている職員につきまして、管理監督職勤務上限年齢に達した日の翌日から最初の四月一日までの間に、管理監督職以外の官職等に降任又は降級を伴う転任をさせる制度と承知をしておりまして、当該四月一日以降の給与については、管理監督職時の俸給月額の七割に措置されるところでございます。

 一方、管理監督職以外の国家公務員につきましても同様に俸給月額の七割に措置されるところでございまして、しかしながら、働き方は六十歳前後で同じでございます。在日米軍従業員の給与についても、この制度に準じているところでございます。

屋良委員 業務量は変わらないということで理解していいですか。防衛省はそこは承知している、その上で定年延長について協議をしているということで理解していていいですか。そこだけ、一点だけお願いします。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍従業員につきましては、必要とする職位、ポストごとに職務内容と責任に基づいて給与が格付される一職種一等級制、いわゆるジョブ型の雇用形態を取っているところでございます。

 そういった意味で、先生御指摘の点については承知をしているところでございます。

屋良委員 そうすると、働く人たちはやはり不満を覚えるわけですよ。業務は一緒、しかし給与が三割カット。これは、それをやっていていいんでしょうか。

 こういう状況、防衛省は、日本の関係法令に合わせてこれが適正になされるものなのかどうか、そこの認識を教えてください。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁を申し上げましたが、国家公務員の管理監督職以外の国家公務員につきましても同様に俸給月額の七割に措置をされるというところでございまして、働き方は六十歳前後で同じということでございます。在日米軍従業員の給与につきましても、この制度に準じているというところでございます。

屋良委員 なぜ準じる必要があるんですか、基地従業員は国家公務員なんでしょうか、そこをひとつ明確にしてください。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 基地従業員、在日米軍従業員につきましては、国家公務員ではございませんが、国家公務員に準ずるような形で措置をさせていただいているというふうに承知をしてございます。

屋良委員 準ずるのと国家公務員でないということの境目がいつも基地従業員については曖昧になっていて、非常にグレーゾーンの中で、彼らは非常に厳しい労働環境の中で働かされているというふうな印象を持っているんですけれども。

 一九五二年の法律百七十四号、これで明確に国家公務員ではないというふうに規定されている、もうかなり昔の話ですよ。それから、いろいろな政府の答弁書を見てみても、アメリカ合衆国との間で労働条件については協議はするところであるけれども、国内法令はそれに沿って対応しているというふうになるのであれば、これは立場的に国家公務員じゃないじゃないですか。そういうふうに見た方がすっきりするはずであります。

 今回のように、労働条件は全く変わらないけれども給料が下げられる、これは不利益の変更というふうに受け止められるんですけれども、そういう認識はございますか。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 労働条件の不利益な変更という認識をしてございます。

屋良委員 そうすると、国内の労働三法、労働関係法が適用されるというのであれば、原則的に不利益の変更は認められないはずですよ。さらには、個人の了解、了承を得ないといけない。そしてもう一つ、労働組合との交渉も調わなければ、不利益の変更はなされないはずです。その辺、どのように認識しているか、教えてください。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 定年延長によりまして給与を引き下げる労働条件の変更につきましては、過去の判例により、国家的な政策課題があり、労働組合からも同様の提案がされるなど、労働条件を変更する高度な必要性があること、定年延長を導入するために、全労働者の賃金水準を改めず、従来の定年年齢以降の労働条件のみを修正することはやむを得ないこと、同業他社や社会一般の給与水準と同様であること、労働組合と交渉、合意をして変更されたこと等に該当する場合、その変更は合理的なものとされていると承知をしてございます。

 在日米軍従業員に関しましても、高年齢者雇用安定法により六十五歳までの雇用義務が課され、労働組合からも同様の要望があるなど、労働条件を変更する高度な必要性があること、定年延長を導入するために、全従業員の賃金水準を改めず、従来の定年年齢である六十歳以降の労働条件のみを修正することはやむを得ないこと、国家公務員や社会一般の給与水準と同様であること、労働組合と交渉、合意をして変更されたことといった同様の事情がある場合において、定年延長により給与を引き下げる労働条件の変更を行っているところでございます。

 今回についても、そのように該当するというふうに認識をしているところでございます。

屋良委員 今読み上げていただいたとおりだと思いますけれども、労働契約法第十条を見た上でも、労働条件の変更があって給料を引き下げるという不利益の変更、これは労働組合と合意しないといけないということですね。そこだけ一つ、その一点だけ確認させてください。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 契協約の改正について合意をしているところでございます。

屋良委員 今確認できたのは、防衛省は業務内容が定年後も変わらない実態を知っている。知っていながら、不利益の変更を行おうとしている。その上で、大事なのは、当人と組合の合意が必要であるということですね。それでよろしいですか。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 おっしゃるとおりでございます。

屋良委員 そこだけ確認させていただきました。

 これは来年で経過措置が切れるので、そこは非常に大きな問題だと思います。あと一年ちょっと、一年ももうないですね。そういった大変大きな問題があって、不利益の変更をどのようにクリアしていくのか。

 賃金はカットするけれども同じ業務だよということをごり押ししていく、その理由は、国家公務員に準じていますと。準じているかどうかはよく分かりませんけれども、しかし、日本の労働関係法は彼らに適用されるというのは、一九五二年にもう既に決まっているわけですよ。にもかかわらず、こんなに交渉が長引いているというのは、これはごり押しをしようとしているから、無理筋を一生懸命やろうとしているということだと思います。

 もう一つ、基地従業員の定年延長を定めるにおいて、使用者側、米軍は協議の当事者なのかどうかというのを確認させてください。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 米軍は駐留軍労働者の使用者ということでございますので、当事者でございます。

屋良委員 大臣、これはちょっと注目すべき事案だと僕が思っているのは、アメリカ側は、アメリカ国内法で、年齢による労働の、賃金の差別とかを禁じる法律があります。これは日本ではまだ耳慣れないものですけれども、アメリカとか欧米とかでは当たり前になっているというふうなものでありまして、例えば、アメリカでは、一九六七年に成立した雇用における年齢差別禁止法というのがあります。だから、使用者はこれに違反したら駄目なんですよ。

 だから、アメリカ軍が、日本の基地従業員の年齢が六十歳をオーバーしたからといって賃金を下げる、それが許されるかどうかというと、これまた大きな大きな課題がここに横たわっている。そういったこともあるので、これほど長く交渉が続いてきたということなんですけれども、アメリカが基地従業員の定年延長に問題提起しているということは、防衛省さん、御承知ですよね。お願いします。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍従業員の定年年齢の引上げにつきまして、基本的には国家公務員の制度改正と併せて定年年齢を引き上げるという考え方に日米間でそごはないと認識をしております。その上で、日米間で六十二歳以降の処遇について引き続き協議を続けているところでございます。

屋良委員 いやいや、聞いているのは、アメリカ独自の法律、労働法でしょうかね、をアメリカ側が提起しているということを御承知かどうかということです。交渉の議題に上ったことがあるかどうかということなんですけれども、ここを明確にしてください。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘のお話は、アメリカの雇用における年齢制限禁止法についてのことだと思いますけれども、そのような法律があることについては承知をしてございます。

屋良委員 それをどのように調整していくんでしょう。もう時間も余りないですよね。そこの方針というか方向性をお答えください。お願いします。

山野政府参考人 お答え申し上げます。

 在日米軍従業員の六十五歳までの定年年齢の段階的な引上げにつきましては、日米間で合意をしているところでございます。

 いずれにしましても、私どもは、在日米軍従業員の定年年齢引上げにつきましても、早期に合意できるよう米側と真摯に引き続き協議を続けてまいりたいというふうに考えているところでございます。

屋良委員 これは非常に大きな課題が幾つもあるということが分かっているんですけれども、まずは不利益の変更、それをどう考えるか、そして、アメリカ側の、アメリカの国内法とどう向き合っていくのかということなんですけれども、せっかく副大臣がいらっしゃっているので、今後の方向性、どうこれを解決していこうとしているのかということを御説明ください。

鬼木副大臣 お答えします。

 国家公務員の定年年齢が段階的に引き上げられ、六十五歳になることを受け、在日米軍従業員の定年年齢も段階的に引き上げ、六十五歳とするよう米側と調整をしているところであります。昨年五月には、定年年齢の六十一歳までの引上げについて日米間で合意しており、六十五歳までの定年年齢の段階的引上げについても、早期に合意できるよう努めてまいります。

 また、在日米軍従業員の定年年齢の引上げについて、基本的には国家公務員の制度改正と併せて定年年齢を引き上げるという考え方に日米間でそごはないと認識しております。その上で、日米間で六十二歳以降の処遇について引き続き協議を続けているところでございます。

 六十五歳までの定年年齢の段階的引上げに関し現時点で合意に至っていないことについて、在日米軍従業員の皆様が不安を抱かれていることは承知しております。米側と早期に合意できるよう努めてまいります。

 以上です。

屋良委員 もう時間がないので、私の時間もなくなっちゃったんですけれども、時間が限られているので、安全保障、日米同盟を支えている基地の従業員の方々に不利益にならないように、是非とも早期に対応していただきたいと思います。

 実はもう一つ質問を用意していたのですけれども、時間がオーバーしてしまって、今度また別の機会で、私、時間をいただきましたら、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、小熊慎司君。

小熊委員 立憲民主党の小熊慎司です。

 質疑をさせていただきます。

 知事選、大臣、お疲れさまでした。この結果が、秋には総理大臣になっていたかもしれない可能性がどうなるかは分かりませんが、総理になるかもしれない上川外務大臣にお聞きをいたします。

 二十九日に、中国共産党中央対外連絡部長の劉建超さんと大臣が会われました。我が党の泉代表もお会いをさせていただいて、日中のしっかりとした連携の下に地域の安定、世界への貢献なども、共有した部分はありましたが、泉代表と昨日ちょっとお話をしたら、やはり厳しいことはしっかりお伝えをしたというふうにもおっしゃっていました。

 大臣におかれましても、いろいろな課題、一致できる部分もあったし、先ほどの質疑にもあった台湾問題なども、中国とはちょっと見解が違う部分もしっかり日本の主張をされたと思います。

 また、いわゆる東電の原発事故によるALPS処理水についても、禁輸の措置を早く全面撤回してくれということをお伝えしていただいているというのも承知をしているところでありますが、劉部長は、核汚染水といった敏感な問題を適切に処理すべきだとか、科学的な根拠に基づく安全性が確認できていないなどとして、禁輸措置の撤廃については否定的な反応であったということが報道等でも聞いているところであります。

 そこで、全面撤回しろという主張もさることながら、核汚染水という言葉は違うでしょう、そういう指摘もしていただきましたか、まず確認をさせてください。

上川国務大臣 ALPS処理水でございますが、中国側は、御指摘の点も含めまして、科学的根拠に基づかない発信を行っております。

 海洋放出開始後のモニタリングにおきましても科学的観点から何ら問題は生じておらず、ALPS処理水の安全性につきましては広く国際社会からの理解と支持が得られているところでございます。

 先般の会談におきましても、こうした点も踏まえて、我が国の立場につきまして明確にお伝えをしていたところでございます。

小熊委員 だから、そういうふうに主張してもらったのは分かっている。核汚染水という言葉を使っていることにも抗議しろという話、ちゃんと細かく通告しているんですよ。何でこんな答弁書を書くの、外務省は。

 核汚染水という言葉は、それは間違っていますよと指摘しましたか。イエスかノーかで、大臣、お答えください。

上川国務大臣 政府といたしましては、核汚染水という事実に反する表現を含め、科学的根拠に基づかない発信は全く受け入れることができず、これまでも繰り返し申し入れてきているところでございます。

 今般の会談におきましては、その点のみならず、中国側の関連の対応につきまして、我が国の立場を明確に伝えることが重要と考え、対応したところであります。

小熊委員 余計な答弁をしないでください、時間がないんだから。中国側に抗議したことは、それは評価すると言っているじゃないですか。だから、こういうこともやっているのかと確認しているだけですから。余計なことはやらないでくださいね。

 中国が言っている科学的根拠というのは、何を示せと言っているのかということは話を詰めましたか。大臣は長いから、外務省、それを詰めているの。私は前も言ったとおり、政治的に吹っかけてきているだけだから。

 日本はWTOへの提訴、これは理事会でお認めいただいているので、山上さんの本、私はまだ全部読破はしていませんが、見たら、負けちゃうからWTOに提訴しないとかと書いていて、かつてのチャイナスクールの人たちは、中国のために働くんだとも言っていたと。山上さんのことが全部が本当なのか、また、その真偽は私も分かりませんし、山上さんの観点が全て正しいかどうかも、それは読んだ皆さんに判断をしたいと思いますが、そんなことでやられては困るし、WTOの中には、食品の安全を決めたSPS協定があって、中国も合意している中で、そういう科学的根拠のことも書いてあるわけで、協定にあるわけですよ。

 なおかつ、日本は昨年やっと参加したけれども、多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント、これはずっと参加していない、これも参加したので、それまでは確かに、提訴してもこれが本当に物が動くのかという疑念があって、総合的に判断するということで提訴はしなかったけれども、このアレンジメントに日本も参加したので、ここの有効性を考えれば、提訴する時期に今来ているんじゃないかと思います。

 だから、その科学的根拠というのはちゃんとそれを詰めているか。あんたたちの言う科学的根拠というのは何と、何によって証明されるんだという話を詰めていますか、外務省。

北川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、中国の劉部長の発言を含め、中国側の主張について説明する立場にはございませんが、中国側は、海洋放出の安全性やモニタリングの有効性などについて、隣国の懸念を解決していないなどと主張していると承知しております。

 我が国は、ALPS処理水の海洋放出については一貫して科学的根拠に基づいて対応しております。引き続き、科学的に立脚した議論を通じて、ALPS処理水に係る中国側の科学的根拠に基づいた正しい理解が進むようしっかりと取り組んでまいります。

小熊委員 では、WTOに提訴したらどうですか。今MPIAにも日本は参加しているんだから、このルールでやっていけばいいんだもの。でも、この山上さんが言うとおり、韓国に提訴したとき負けたそのトラウマ、それとも、皆さんは、やはり中国のために働くわけ。違うでしょう。提訴、どうですか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 中国が日本産食品に対する科学的根拠のない輸入規制を導入していることは極めて遺憾であり、二国間だけでなく、多国間の場におきましても、輸入規制の即時撤廃を一貫して求めてきております。

 具体的に申しますと、WTOの関連委員会等の場におきまして措置の撤廃を求めているほか、SPS、衛生植物検疫措置協定でございますけれども、同協定に基づいて、中国の規制措置に係る討議を要請し、これに応じるよう累次働きかけているところでございます。

小熊委員 IAEAのレビューも処理水は受けているので、それに匹敵するような科学的根拠なんて中国は用意できるわけがないんですよ。もっと理論的に詰めて、しっかり撤廃に向けて努力していただきたいのと同時に、委員長にちょっと申し上げます、議事整理権は委員長にあるから。

 大臣の答弁をこれまでもずっと我慢していたけれども、原稿を棒読みするだけで、聞いていないことまで答える。これは理事会でちゃんと協議していただいて、委員長の手元で議事整理をしっかりしていただきたい。

 そんなのじゃ総理になれないよ、上川さん。こんな原稿を棒読みだけする外務大臣は見たことがない、俺は外務委員会にずっといるけれども。ひどい。

 以上で終わります。

勝俣委員長 次に、徳永久志君。

徳永委員 徳永久志です。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、いわゆるWHOのパンデミック条約についてお伺いいたします。

 このパンデミック条約は、新型コロナウイルスの世界的な蔓延を受けて、そうした中でのワクチンや治療薬等の配分の在り方、あるいは様々な蔓延防止策について課題が生じたことを受けて、これを世界的にしっかりと取り決めていきましょうという趣旨で今議論が行われていると承知しております。

 ただ、途上国と先進国との間での議論の対立があって合意には至っていないということでありますが、まずはこの条約の大ざっぱな概要についてお知らせください。

北村政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御説明がありましたとおり、新型コロナウイルス感染症対策の教訓を踏まえまして、パンデミックに対する予防、備え、そして対応の強化に資する国際的な規範を作る必要がある、そういう観点から、二〇二二年からになりますけれども、WHOの場でいわゆるパンデミック条約の交渉が行われてきているところでございます。

 現在、ジュネーブで第七十七回世界保健総会が開催されておりまして、それまでの採択を目指して交渉が行われてきたところでございますけれども、各国間で意見の隔たりがある論点が多く残されたため、総会前の交渉妥結には至らなかったところでございます。

 現在、交渉妥結には至らなかったんですが、条文自体はWHOのホームページ上で公開されておりまして、全部で三章、三十七条の条文が公開されております。その中で、主なものとしましては、国際的な感染症拡大の予防、備え及び対応、そういった観点から、例えば、各国の保健システムの強化、あるいはパンデミック関連医療製品へのアクセスの促進、そういった内容が含まれているところでございます。

徳永委員 今もお話がございましたとおり、この条約は、新たな第二、第三のコロナが世界に蔓延することをいかに防いでいくか、そういったことについての議論が中心になっているということであろうかと理解させていただきます。

 ただ、世間では、この条約には大反対だと声高に叫んでいる人が少なからずおられます。反対されている方の主な理由としましては、この条約は、加盟国の国民全員にワクチンの接種を義務づける、強制するものだ、けしからぬというようなお声であります。聞くところによると、外務省にもこの趣旨で大反対だという抗議の電話が直接かかってくることもあるとお聞きしております。

 そこで、私も条約をざっと見せてもらいましたけれども、見落としがあるのかもしれませんので、確認です。現在示されている条文案の中に、ワクチン接種を強制するだとか義務づけるだとか、そういった文言が入っているんでしょうか、確認させてください。

北村政府参考人 お答えいたします。

 現在、WHOのホームページ上に掲載されております条文案は、先ほども申し上げましたように三十七条ございまして、合意できている部分、できていない部分が明らかになっておりますけれども、その条文案の中にはワクチンの強制接種に関する条文は含まれておりません。また、これまでの交渉におきましても、そのような内容の議論は行われてきていないところでございます。

徳永委員 条文の中にそうしたワクチン接種を強制するようなものは入っていないし、また、そのような議論も行われていないということでございます。

 ならば、なぜ、ワクチン接種を強制する条約だと、ある種そういったことが言われるようになってきているのか。別に悪いことをやっておられるわけじゃないので、こういう言い方がいいか分かりませんが、思い当たる節はあるんですか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、このパンデミック条約に様々な御意見があることは承知しております。

 その背景につきまして政府として一概にお答えすることは困難でございますけれども、これまで交渉そのものが原則非公開で行われていること、あるいは、条文案の内容、文書について具体的な形式がまだ確定しておりません。そうした中で、対外的に説明できる内容には一定の制約があった。そういう中で、これまで、外務省としましては、外務省のホームページにいろいろな情報を掲載する等しまして、国民の皆様に対する情報発信に努めてきたところでございます。

 ただ、御指摘のいろいろな御意見がある中で、国民に対して正確な情報を積極的に発信していくことは非常に重要だと考えておりますので、今後とも適時かつ丁寧に、分かりやすく情報発信に努めていきたいと考えているところでございます。

徳永委員 しっかりと情報発信に努めていただきたいと思います。

 そこで、もう一度確認させてください。

 この条約の第三条、条約の原則という章がありまして、ここには、国家の主権的権利、人権、基本的自由の尊重、これが掲げられているわけですから、それが掲げられている以上、ワクチン接種が強制される、義務づけられることはあり得ないと私は理解します。大臣からもその旨を明確に御発言をお願いいたします。

上川国務大臣 WHOのホームページに公開されております条文案でございますが、ワクチンの強制接種に関する記述は含まれていないところであります。また、交渉の過程におきましても、そのような内容の議論も行われていないという状況であります。

 新型コロナウイルス感染症のような世界的な健康危機に際しましては、こうした対応を国際社会が一致して行う必要があると認識しております。パンデミックに対しましての予防、備え、さらには対応の強化に資する国際的な規範を作ることは重要でありまして、日本としては、このような取組につきまして引き続き建設的に参加し、貢献してまいりたいと考えております。

徳永委員 この条約がワクチン接種を強制するものではないという確認ができたことはよかったと思います。

 それでは、次に参ります。

 先ほどの松原仁先生の質問とかぶりますが、今回の呉江浩中国大使の発言について伺います。発言通告では、外務省としてどのような対応を取ったのですかという通告がありましたけれども、松原さんへの答弁と重複しますので、そういう聞き方ではなく、ちょっと確認させてください。

 今回の呉江浩大使の発言に対して、外務省としては、担当の課長が先方の在日中国大使館公使参事官に抗議をしたということでよろしいですね。日本側は担当課長、中国側は公使参事官、これでよろしいですね。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたとおりでございますが、昨年四月の発言の際よりレベルを上げて抗議を行ったところでございます。

 具体的なレベルについて申し上げますが、岡野外務次官から呉大使本人に対して直接行っております。

徳永委員 担当課長ではない。岡野外務事務次官が抗議をされたということですか。先ほど松原さんへの答弁では担当課長とおっしゃいませんでしたか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げたのは、繰り返しになりますが、昨年四月の発言の際よりもレベルを上げて抗議を行ったというふうにお答えしたところでございます。

 今御答弁したとおり、具体的なレベルにつきましては、岡野事務次官から呉大使本人に対して行ったところでございます。

徳永委員 先ほどおっしゃいませんでしたか、担当課長と。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 政府側からの答弁ではそのような発言はしておりません。

徳永委員 分かりました。

 担当課長から先方の公使参事官に抗議をしたということは、マスコミ報道ではそのように流れておりますので、これは明らかに誤報である。

 岡野事務次官から直接公使参事官に抗議をしたということで、もう一度、それは確定させてください。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 様々なレベルで抗議を行うことはございますけれども、今御指摘のとおり、今回はレベルを上げて行ったということで、岡野次官から呉大使本人に対して抗議したということでございます。

徳永委員 岡野事務次官から公使参事官に抗議をした。違う。

林政府参考人 もう一度申し上げます。

 岡野事務次官から呉江浩大使本人に抗議したところでございます。

徳永委員 岡野事務次官から、この発言の主である大使御本人に直接抗議をされたということでいいですね。電話とかじゃないですね。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 抗議の形式につきましては、召致して行う場合と電話などで行う場合がございます。時々の状況に即して判断しているところでございます。

 今回どのような形式で抗議したかにつきましては、外交上のやり取りの詳細でございますのでお答えを差し控えたいと思いますけれども、我が方の考え方については明確に伝わっていると承知しております。

徳永委員 直接召致して抗議をしたのか、電話して抗議をしたのか、どちらですかとお尋ねして、外交上のやり取りですからお答えできません、これは答えになっていますか。日本語の問答として成立していないですよ。もう一度。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 抗議の形式、どのような形式で抗議したかにつきましては、外交上のやり取りでございますので、お答えを差し控えたいと思います。

徳永委員 それでは次に行きますが、呉大使の今回の発言は、日本が中国分裂を企てることは民衆を火の中に連れ込むことになるというふうに、いわば仮定の部分でいくと、日本が中国分裂を企てるならばというふうに私は読みました。さらに、昨年四月の同大使の同様の発言の際には、台湾有事は日本有事であるという認識の下ならば、日本人民を火の中にというふうに私は文章的に受け取りました。

 そこで、確認ですけれども、中国分裂、これはいわゆる台湾独立を指すんだろうということは明白であります。となると、中国分裂あるいは台湾独立を支持する可能性を示唆する発言、あるいは台湾有事は日本有事という発言を、政府の立場にある者が公式な場で発言したことは事実としてあるんでしょうか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、台湾との関係は、一九七二年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持していくこと、また、台湾海峡の平和と安定は重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待する旨、これまでも一貫して表明しているところでございます。

 政府として、委員が御指摘のような認識を示した事実はございません。

徳永委員 今のお話は、中国分裂あるいは台湾独立を支持することをほのめかす発言もないし、台湾有事は日本有事だということを正式に述べた事実もないということですよね。

 ということは、政府の立場としては、台湾に関する問題は対話によって平和的に解決することを望むものであって、台湾及び中国政府のいずれか一方の立場を支持するものではないし、台湾有事は日本有事という認識を公式見解としたこともない。これは政府の立場として明言をもう一度大臣の方からお願いいたします。

上川国務大臣 今答弁したとおりでございますが、我が国の基本的な方針でございますが、台湾との関係につきましては、一九七二年の日中共同声明を踏まえまして、非政府間の実務関係として維持していくということ、また、台湾海峡の平和と安定は重要であり、台湾をめぐる問題が対話により平和的に解決されることを期待する旨、これまでも一貫して表明してきているところでございます。

 そのような状況の中で、政府として、委員が御指摘のような認識を示した事実はございません。

徳永委員 それならば、大臣、確かに呉江浩大使のカウンターパートは外務省事務次官になるんでしょう。しかしながら、ここは、こうした発言を二度繰り返している大使本人に直接大臣の方からしっかりとその旨は伝えた方がいいんじゃないですか。

 せっかく日中韓サミットが開催されて、これから中国とは戦略的互恵関係を再確認し、日中韓FTA交渉等々を進めていこうといった矢先にこうした発言を一度ならず二度もされてしまうと、そうした機運に水を差すことになりやしないかと非常に心配するんです。

 ですから、呉大使が述べられた中国分裂だとか、台湾独立だとか、台湾有事は日本有事だとか、そういったことは政府としては一切公式見解としては持っていないし、発言もしていないし、そういった部分についてはしっかりと理解してくださいと述べた上で、これからの日中友好についてはお互いに力を合わせて頑張っていきましょうというような場をしっかりと国民にも絵として見せる必要があると思うし、そういった部分について直接大臣の方から大使に向かって申し伝えることが私はこの場面では必要だろうと思うんですけれども、いかがでしょうか。

上川国務大臣 まず、御指摘の呉大使の発言につきましては、極めて不適切であるという旨を外交ルートで明確に伝えてきておりまして、今後の対応につきましては、現時点で予断を持ってお答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、今委員から御指摘いただきました点に関しましては、先日の日中韓首脳会談の際の日中首脳会談を含めまして、我が国の台湾に関する基本的立場は繰り返し中国側に伝達してきているところでございます。引き続き、様々な機会を通じまして伝達していく所存でございます。

 その上で、中国との間におきましては、外相レベルを含みますあらゆるレベルでの意思疎通を重ねて、そして、引き続き、戦略的互恵関係を積極的に、包括的に推進するとともに、建設的かつ安定的な日中関係の構築を双方の努力で進めていく、こうした方向につきまして、様々なレベルでもやり取りをし、これからもそのような方針で臨んでいきたいと思っております。

徳永委員 答弁の趣旨は理解します。

 私が申し上げているのは、言ってみれば、呉江浩さんは日本における中国側政府の代表者ですよね。その方が、赴任先の国民を火の中に連れ込むなどという発言をされた以上、日本国民としては怖いですよね、そんなことを言われれば。ですから、ここは、いろいろな場面で日本政府の立場をおっしゃっていただいているのは分かりますけれども、やはり大使本人と大臣とが直接会って、そして、こちら側の話をしっかりと伝えているという場面を国民に見てもらうことも重要だというような思いから今のような質問をさせていただいたということで御理解をいただきたいと思います。

 若干残っていますが、あとは鈴木さんに譲ります。ありがとうございました。

勝俣委員長 次に、鈴木敦君。

鈴木(敦)委員 今日は先ほど来ずっと中国の駐日大使の話が出ていますけれども、はっきりとしたことを言わないからいろんなことに影響が出てくるんだと私も思います。

 今日、私は、中国が日本に対して課している輸入制限についてお話をまず伺いますけれども、これにしたって、はっきりしたことを言わないと、これから先、何の話もできなくなるということは話の大前提として申し上げておきます。

 まず、一つ農水省に確認しますけれども、日本から中国に何かを輸出しようと思うと、どこで取れたか、あるいはどこで加工したかを登録する必要があります。インターネットで統一したリストが公開されています。これは中国の登録管理規定に明記されているものですが、インターネット上から日本の施設が一切削除されているという状況になっています。

 レクの際にも話を聞きましたけれども、改めて質問している、回答を待っているという話でしたけれども、追加の回答はありましたでしょうか。

山口政府参考人 お答えいたします。

 水産加工施設等の登録情報の削除につきましては、五月上旬に中国海関総署のウェブサイト上で発見した後、中国側に文書で質問を送ったところ、五月二十一日に、今回の措置は登録そのものを取り消したものではない旨の回答を中国側から得たところでありまして、そのことにつきまして追加の質問もしているところでありますけれども、それに対してはまだ回答はないところでございます。

 いずれにしても、昨年八月以来の中国の日本産水産物の輸入停止は、全く科学的根拠に基づかない措置でありまして、これに合わせて海関総署のウェブサイトを変更したことも含めて遺憾でありまして、引き続き、日本産食品に対する輸入規制措置の撤廃に向けて、政府一丸となって強く働きかけを行っていく考えでございます。

鈴木(敦)委員 ウェブサイトから削除したけれども、登録そのものを削除したわけではないというその話の意味が分からない。それで農水省は理解しているんですか。

山口政府参考人 中国側の説明といたしましては、日本産水産物を一時的に輸入停止したことに合わせて海関総署のウェブサイトを変更したということでありますけれども、そのことも含めまして再質問しているところでありまして、その回答についてはまだ来ていないという状況でございます。

鈴木(敦)委員 中国の登録管理規定によれば、水産物だけではなくて、肉や蜜蜂とか、そういったものも入っていますよね。水産物だけ特出しして削除されたということでしょう。お答えください。

山口政府参考人 水産物だけということでありまして、そのとおりでございます。

鈴木(敦)委員 であれば、中国の主張はおかしいじゃないですか。日本が中国に輸出できなくなっているものは水産物だけではないはずですよ。なぜ水産物だけを削除したのか。おかしいと思いませんか。

山口政府参考人 繰り返しになりますけれども、その意味するところにつきましては今再質問しているところでありまして、その回答を待っているという状況でございます。

鈴木(敦)委員 一番最初に回答を得たのが二十一日。もう十日ですよ。隣の国の税関と話をするのに十日も返答がないというのはどういうことなんですか。外務省、遺憾だと思いませんか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 現状につきましては今農水省から回答したとおりでございますけれども、現在、外交ルートを通じて中国側に確認しているところでございます。

鈴木(敦)委員 ですから、地球の裏側とか月じゃないでしょう。十日かかるというのはどういうことなんですか。

 農水省の説明を聞いたら、いつも税関当局は連絡が遅いんだというような説明もありましたけれども、十日間も連絡が返ってこないところに毎月毎月皆さん登録していたんですよ。二週間から三週間で登録が返ってきていましたよね。知らないと思ってごまかしちゃ駄目です。彼らはちゃんと返答してくるはず。

 返ってこないのは意図的に返していないんですよ。そう思いませんか、農水省。

山口政府参考人 お答え申し上げます。

 意図的かどうかというところにつきましては、先方のことでありますのでお答えはできませんけれども、いずれにいたしましても、我々としては回答を待っているという状況でございます。

鈴木(敦)委員 待っているだけですか。もう十日待っているじゃないですか。中国が全面的に輸入を停止してからも待っているだけですよね。何を言っても彼らは聞かないでしょう。

 しかも、今日も小熊さんの話の中にありましたけれども、SPS協定に基づいても彼らが検疫に使っているという基準が不明確ですよね。何を根拠に日本産に疑義を持っているのかすら彼らは言わないまま輸入を停止している。これはSPS協定に明確に反しているし、提訴しなければおかしい話ですよ。やめてくださいではなくて、では、あなたたちの基準は何ですかと。

 これは一体どうなっているんですか、農水省。

山口政府参考人 その点につきましては、日本の外務省とも相談しながら、どのような対応をしていくのが一番よいのかというところは検討しているところでございます。

鈴木(敦)委員 どうするのかではなくて、彼らが求めるものは何なのか、何で分からないんですか。去年から全面的に輸入を停止しているんですよ。去年の段階で、日本産の何がいけないんでしょう、あなた方の基準は何なんでしょうと聞いているはずですよね。何ですか。

山口政府参考人 先方の主張につきましては、SPS協定の五条7ということで一時的に停止しているという説明でございますけれども、おっしゃるとおり、昨年八月以降続いているわけでございますので、その点も含めて外務省とともに即時撤廃に向けて働きかけを行ってまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 今の御説明は明らかにおかしい。SPS協定の五条の7は、情報が不十分だった場合に暫定的に停止する措置を取ることができると規定しているだけでしょう。我が国が出している科学的な根拠にどこに不十分なものがあるんですか。ワールドスタンダードでしょう。みんなが認めている。中国だけが認めていないものを何で暫定的措置を認めるんですか。農水省、おかしいでしょう。日本が出している基準というのはもう既に国際的基準ですよ。

山口政府参考人 日本側として中国側の主張を認めているわけではございませんので、様々な方法を使って中国側に対する働きかけを今後とも続けていくということでございます。

鈴木(敦)委員 ありがとうございます。はっきり言ってくれましたね、中国側の主張を認めているわけではないと。

 ということは、双方の主張に隔たりがあるということですよ。これは紛争解決の小委員会、パネルに提訴すればいいじゃないですか。どうですか。

山口政府参考人 この問題につきましてどのように対応していくのが一番いいのかということにつきましては、外務省とも相談しながら進めていきたいと思っております。

鈴木(敦)委員 では、外務省、答えてください。どうですか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 中国によります日本産の輸入規制に関しましては、WTO関連委員会の場で措置の撤廃を求めているほか、委員御指摘のSPS協定に基づきまして、中国の規制措置に係る討議要請を行っているところでございます。また、これに応じるよう中国側に累次働きかけているところでございます。

鈴木(敦)委員 その働きかけというのをいつからやっているか、あえて聞きませんが、やっても来ないんでしょう、今の段階において。であれば、やるべきですよ。

 実際に、中国との間にはステンレス鋼のアンチダンピング税について事件がありましたけれども、それは、パネルの主張をそのまま、小熊さんも言っていましたけれども、多国間暫定上訴アレンジメントの中で解決しましたよね。

 実際にやる手はそういうことがあるんだから、どんどんやらないと。幾らだって言うことはあるし、やれることはあるのに、相談しながらって、あなたたちだって毎日毎日膝を突き合わせて議論するわけじゃないじゃないですか。何か月かかるんですか。実際にそれで被害を被っている人たちを背中にしょっているということを考えてくださいよ。いつやるんですか。いつまでに結論を出すんですか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 今後の対応につきましては、WTO及びその他の関連協定の枠組み等の下で、何が最も効果的かとの観点から、中国側の対応も見極めつつ、様々な選択肢を不断に検討してまいる所存でございます。

鈴木(敦)委員 いつまでにやるのかを決めないと、ずっと様子を見て、相手の出方を見ると言いますけれども、もっと言いますよ。質問状を送って十日間待っているんですよ、税関に話をして。これはどういうことなんですか、あなたたちがやった処分は何なんですかと聞いているだけなんだから、それに十日間待ち続けるということをほかの段階でやったら、一体何か月、何年待つんですか。我が国の主張をするということであればちゃんと主張してくださいよ。協力してとおっしゃいますけれども、最終的には誰かが判断しなきゃいけませんよ。見ているだけではどうにもならないんですよ。

 だから、上川外務大臣に伺いますけれども、これは誰かが音頭を取らないとできないですよ。はっきり言った方がいいと思うし、我々は全く不当なことじゃないと思っています。

 先ほど韓国の放射性核種の輸入制限事件の話が出ましたけれども、あれで日本は負けたわけじゃないです。上級委員会で全面的に覆ったのは、パネルの内容が不十分だという回答をしてきているだけですよ。日本の主張がおかしいとも言っていないし、韓国の主張が正しいとも判断していないんです。前回のパネルで本来明らかにしなければいけなかった基準が全く不明確ですという、ただそれだけのことが上級委員会から返ってきたんですよ。だから、日本が次に中国を提訴するという話になったときも恐れずにやらなきゃいけないんですよ。

 外務大臣、どうですか。

上川国務大臣 今答弁させていただいたところでございますが、WTOの枠組みの中におきましては、措置の撤廃を求めてきておるところでありますし、また、SPS協定に基づきまして、中国の規制措置に係る討議を要請し、応じるよう累次働きかけを行ってきているところでございます。

 今申し上げたとおり、何が最も効果的かという観点から、中国側の対応を見つつ、様々な選択肢につきまして不断に検討を行っているところでございます。

 WTOに対しましては、中国の主張がございます。それに対しましてしっかりと反論する書面を提出してきているところでございます。また、WTOの関連委員会におきましても、日本の立場につきまして説明をしてきているところでございます。

 日中両国が締結しておりますRCEP協定の緊急措置に関する規定に基づく討議の要請も行ってきておりまして、この協定の義務に従って討議に応じるよう、引き続き求めてまいりたいと思っております。

 この件につきましては、極めて重要な案件でありますので、あらゆる手段を講じていくということをしっかりと検討しながら進めてまいりたいと思っております。

鈴木(敦)委員 今、ちょっと疑問ですけれども、中国には中国の主張があるとおっしゃいました。

 中国の主張はあるんですか、農水省さん。中国はどういう水準に基づいて検疫体制を整えているので日本産は入れられませんと主張しているんですか。

山口政府参考人 中国側の主張につきましては、今手元に資料がございませんけれども、先ほど申し上げたように、SPS協定の五条7に基づきます一時的な輸入停止措置ということでありまして、それにつきましては、我々としては、認められないというか、同意しているわけではないということでございます。

鈴木(敦)委員 今、五条の7と言うから、五条の7を読みますよ。「他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報に基づき、暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる。」と書いてあります。

 中国はたった独りぼっちでいるわけじゃないんですよ。韓国だってあるだろうし、ほかの国ともやり取りをしているはず。そこから得られる情報に基づいて暫定的な措置を取るんですよ。

 中国の周りで日本産の水産品を全面的に輸入停止している国はあるんですか。

山口政府参考人 一部の都道府県からの水産物の輸入を禁止しているところはございますけれども、全面的にというところは中国だけと理解しております。

鈴木(敦)委員 それぐらいはっきり言えばいいじゃないですか。そんなものは中国だけですよ。それ以外の国々は、条件はあるかもしれないけれども、全面的ではないはずですよ。

 だから、五条の7を適用するという主張はおかしいし、仮にするんだとしても、五条の7で、どのぐらいの水準で措置を取っているのか、何ミリシーベルトなのか、何ベクレルでやっているのか、昨年来それを正式に受け取りましたか。

山口政府参考人 それにつきましては受け取っていないと認識しております。

鈴木(敦)委員 そんなものは主張とは呼ばない。国際社会でしっかりと対応した方がいいということを申し上げておきたいと思います。

 次の質問ですけれども、厚労省さんにお願いしますが、マスクの着用というのは推奨されるということになっていると思います。外国に行っても同じような措置になっていますけれども、一部の日本の機関では、半ば義務になっている地域もあります。

 まず、これは国が予期したものなのか、あるいは予期しない中で行われた措置なのか、お答え願います。

塩崎大臣政務官 お答えいたします。

 マスクの取扱いにつきましては、政府対策本部決定を踏まえまして、令和五年三月十三日から見直すこととされております。

 具体的には、従来の、屋内では原則着用、屋外では原則不要としていた取扱いを改めまして、行政が一律にルールとして求めるのではなく、個人の主体的な選択を尊重し、マスクの着用は個人の判断に委ねることを基本とし、併せて、各個人のマスク着用の判断に資するよう、感染防止対策としてマスクの着用が効果的である場面などを示して、一定の場合にマスクの着用を推奨することとしたものでございます。

 これを踏まえ、厚生労働省では、高齢者などの重症化リスクの高い方への感染を防ぐために、医療機関を受診するとき、そして、高齢者等重症化リスクが高い方が多く入院、生活する医療機関や高齢者施設等を訪問するときなどをマスク着用が効果的な場面として例示しているところでございます。

 こうした着用を推奨する場面を含めて、引き続き丁寧に周知してまいりたいと考えております。

鈴木(敦)委員 ですから、聞いているのは、一部義務化されてしまっているものは国が想定したものか、そうでないかということです。

塩崎大臣政務官 お答えいたします。

 厚生労働省としては、今お答えをさせていただきましたように、マスクの着用については基本的に個人の判断とさせていただいておりますので、義務化という形での対応は取っておりません。

鈴木(敦)委員 対応を取っていないのは分かります。ただ、一部そうなっているという実態に対して、国はそういう趣旨でやっているわけでは全くないということ、それだけ、はいかいいえで言ってください。

塩崎大臣政務官 お答えいたします。

 委員のおっしゃる義務化されているという事例が具体的にどういう場面か承知しておりませんが、厚生労働省の立場としては、今申し上げましたように、あくまで個人の判断というスタンスでございます。

鈴木(敦)委員 そういうことをはっきり言っていただかないと、今日は厚生労働省の役所の方も来ていますけれども、誰一人マスクをしていませんよ。そういうことですから、よろしくお願いします。

 では、防衛省さん、お願いします。

 護衛艦の空撮の事件以降、取られた対応について御説明願います。

鬼木副大臣 鈴木委員に先般御質問いただいた護衛艦「いずも」を撮影したとする映像についてでありますが、分析を進めた結果、実際に撮影された可能性が高いとの認識に至っております。御指摘のとおり、防衛関係施設に対してドローンにより危害が加えられた場合、我が国の防衛に重大な支障を生じかねないことから、防衛省・自衛隊としては今回の分析結果を極めて深刻に受け止めております。

 昨今、ドローンの普及が進むとともに、無人機関連技術も急速に発展しつつあり、より探知困難な無人機が出現する可能性もあります。こうした傾向に的確に対応できるよう、基地警備能力等を高める不断の努力が必要となっております。

 具体的には、電波妨害による違法ドローンの強制着陸といった、法令の範囲内での厳正かつ速やかな対処の徹底、より能力の高いドローン対処器材の早期導入が必要となっています。

 こうした観点から、既に、各部隊に対して違法ドローンへの対処を徹底する旨を通知し、ドローンへの探知、識別、対処を含めた効果的な基地警備訓練を実施しているところであります。

 また、より能力の高いドローン対処器材の導入についても、司令部機能を持つ基地等、我が国の安全保障上特に重要な機能を有する施設については、今年度中の配置も含め、速やかな導入を検討するなど、スピード感を持った対応をしていきたいと考えております。

 さらに、現在、高出力マイクロ波技術や高出力レーザーシステムといったドローン対処に活用し得る高出力エネルギー技術の研究も進めており、防衛省・自衛隊としては、現有装備品に加えてこうした新技術も活用しつつ、ドローン対策に万全を期してまいります。

 以上です。

鈴木(敦)委員 トライ・アンド・エラーでやってください。外国はイタチごっこになっていますので、よろしくお願いします。

 大臣、済みません、また今度よろしくお願いします。終わります。

勝俣委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 今日は、浮島丸事件に関連し、質問します。

 戦争終結直後の一九四五年八月二十四日、朝鮮人労働者やその家族数千人を乗せた旧日本海軍の輸送船浮島丸が京都府舞鶴港で爆発、沈没し、五百人以上が死亡しました。浮島丸事件として知られています。

 そこでお聞きします。

 上川大臣はこの浮島丸事件をどのように認識しておられるか、御答弁ください。

上川国務大臣 今委員御指摘の浮島丸事件でございますが、まさに、一九四五年に発生したということでありまして、大変多くの方々が犠牲となった痛ましい事件であったと認識しているところでございます。

穀田委員 浮島丸事件とは、終戦の一週間後の八月二十二日夜、青森県下北半島の大湊港を出港し、韓国の釜山に向かった浮島丸が、釜山には向かわず、京都舞鶴港に入港、二十四日夜、突然爆発、沈没し、五百人以上が死亡した事件です。乗船者の多くは朝鮮半島から日本に強制連行された朝鮮人労働者でした。海軍省は、八月二十日、全部隊に朝鮮人などの徴用を解除するよう指示しています。大湊警備府はいち早く、徴用解除した朝鮮人を朝鮮半島に送還しようとしていたのであります。

 そこで、厚生労働省にお聞きします。

 浮島丸事件から今年で七十九年が経過する中、政府が長年存在していないと言い続けてきた浮島丸事件の乗船者の名簿が、今回、情報公開請求によって開示されました。私も厚生労働省に資料要求し、入手しました。これです。これだけあるんです。これは一部ですけれども、厚さ二センチ、枚数にして百九十六ページあります。

 そこで、厚生労働省に聞きますが、今回開示された資料の中に三種類の名簿があります。それについて一つ一つ聞きます。

 まず、皆さんにお配りしている資料の一、この乗船名簿は誰によっていつ作られたものか、どのような内容が記されているのか、御答弁ください。

宮崎副大臣 先生御指摘の資料につきましては、乗船名簿との表題があり、表紙に昭和二十年八月二十四日乗船と記されているものであります。作成は大湊海軍施設部が作成したものでありまして、乗船予定者の本籍地、氏名などが記載されているものでございます。

穀田委員 青森県の大湊海軍施設部作成の乗船名簿、これは、総員二千四百二十九名とあり、その後の方には、個人情報が隠されているけれども、乗船名簿が記されて添付されているわけであります。そして、用紙には海軍という用紙が使われていまして、今若干ありましたが、職種、氏名、生年月日、本籍地等が掲載されており、よく見ると、その中には徴用年次とも書かれているものもあります。

 次に、資料二、これは船乗者名簿の件に記されている名簿です。これも同じように御答弁ください。

宮崎副大臣 御指摘の資料は、船乗者名簿の件報告との表題でありまして、表紙に昭和二十年八月十九日と記されております。大湊海軍施設部第四部隊長が作成したものであります。記載の内容は、先ほどとおおむね同様のものでございます。

穀田委員 第四部隊長海軍技術中尉名の船乗者名簿ノ件報告は、八月十九日に作成され、名簿総数は三百三十三名分あります。

 配付資料三、この浮島丸乗船朝鮮人名簿は誰によっていつ作られたものか、同じく御答弁ください。

宮崎副大臣 御指摘の資料は、浮島丸乗船朝鮮人名簿との表題があり、表紙に昭和二十年八月二十二日と記されております。日本通運株式会社大湊支店が作成したものでございます。

穀田委員 それがこれですけれども、日本通運大湊支店、浮島丸乗船朝鮮人名簿。これは、八月二十二日作成で、百四十四名分ある。

 この三つの名簿は、いずれも個人情報に関する部分はマスキングされています。こんな感じです。こういうマスキングが全部されているわけです。

 そこで聞きますけれども、今説明のあった三つの名簿は日本政府がいつから保管していたのですか。

宮崎副大臣 いずれの名簿も旧海軍が保有していた資料でありまして、第二復員省、復員庁を始めとする厚生労働省の前身組織から継続して保有しているものでございます。

穀田委員 さらりと言っていますけれども、極めて重要な事実が明らかになっているということなんです。

 いつから保管していたか。旧海軍省が旧厚生省の所管となったのは一九四八年、昭和二十三年です。だから、七十六年間も保管していたということになるわけです。これを確認します。

 そこで、浮島丸事件について、一九九二年、日本政府に対する真相究明と謝罪、補償を求めた国家賠償請求訴訟が提訴されました。その中で、原告団は、乗船名簿や名簿に類する資料の開示を繰り返し求めてきました。しかし、日本政府は、厚生省社会・援護局においてはそのような名簿は保管していない、名簿の存在はこれまで確認されていないし、存在を明らかにする資料も見当たらないと説明してきています。ところが、今あったように、今から数えまして七十九年間この名簿は存在していた。何で見当たらないと説明してきたのか、御回答ください。

宮崎副大臣 今先生から御指摘がございました訴訟でございますが、平成四年八月に浮島丸事件の御遺族の皆様などから提起をされた訴訟の中で、乗船者名簿の存在についてのやり取りがあったところでございます。当該名簿は乗船に際して作成された名簿を意味するものと思われるが、厚生省社会・援護局においてはそのような名簿を保管していないとの意見を述べたものでございます。

 今回開示した名簿は、いずれも乗船に際して作成されたものではなく、実際に乗船した者が記されているかどうかは定かでないものでありまして、いずれにしましても、訴訟において保管していないと意見を述べた名簿とは別のものでございます。

穀田委員 副大臣、違う名簿だと言っているけれども、名簿であることは確かだ。名簿だと言っている。彼らはどう言っていたか。乗船名簿や名簿に類する資料と言っているんです。しかも、あなた方は乗船者名簿ではないからというようなことを言っていますけれども、先ほど説明があった資料は、副大臣、言うたように、八月十九日、八月二十二日、そして二十四日と、いずれも出港前や出港の日が記載されている。だから、この日付を見れば、乗船の際に作成されたものと考えるのがごく当たり前で自然ですよね。誰が考えたかて、この人らが乗るのやなということですやんか。

 裁判で原告側が求めてきたのは、乗船者の氏名等が記録されている名簿、そして乗船名簿とそれに類するもの、これを請求してきたわけですやんか。これらの三つの名簿が作成された日付を見れば、これらの名簿こそ原告側が求めてきたものではないかと思いませんか。

宮崎副大臣 裁判の中で、平成九年九月でありますけれども、原告の皆様から裁判所に対して先生が御指摘のような形での文書提出命令の申立て書が提出されて、被告、国側との間での意見書のやり取りがされたことを今先生御指摘だと思っております。

 この中で、過去の既に結審した裁判でありますけれども、法令に基づいて作成されるのが乗船者名簿でありまして、国側からは、先ほど申し上げましたとおり、乗船に際して作成された名簿を意味するものと思われるが、そのような名簿を保管していないというふうに意見を述べたものでございます。

穀田委員 副大臣、そういうのを何と言うかというと、詭弁というんですよ。乗船者名簿、乗った人が誰か、乗っている人が誰かというだけの話ですやんか。じゃ、その名簿というのはどういう意味なのかということになりますわね。

 要するに、重要なことは、事件後に調査したかどうかにかかわらず、乗っている人の名簿であることは確かなんですよ。それは違うと言うの、逆に言うと。乗った人ではないという名簿なんだということをあなたは言っておられるんですか。

宮崎副大臣 乗船を確認したものを乗船者名簿といいますけれども、それは乗船に際して確認した上で作成されるものであります。

 先ほど先生から御指摘いただいた名簿類については乗船者名簿ではなくて、要するに、乗船を予定されている方が記載されている名簿で、法令の乗船者名簿ではないと申し上げているということでございます。

穀田委員 それやったら、それはありまっせと言ったらよろしいがな。あの方々は、朝鮮の方々は、誰が亡くなったのかということを含めて、乗船している方々の名簿を欲しいと思っているわけでしょう。それに応える気がないということだと改めて私は感じましたよ。そんな詭弁を弄してはあきませんで。やはり乗船の名簿を明らかにすることこそが大事だと思います。

 併せて聞きますけれども、厚生労働省には浮島丸関連文書の中に名簿とつく文書がほかにもあるんじゃないですか。あるとすれば、その文書名と作成日、どこが作成したかについて大枠を述べてください。

宮崎副大臣 厚生労働省が保管しております浮島丸に関する資料の中に、例えば、舞鶴地方復員局が作成した浮島丸死没朝鮮人名簿についてなど、旧海軍等の組織が作成して表題の中に名簿とつく資料が複数ございます。

 これらの名簿の具体的内容については、今後、厚生労働省において速やかに精査してまいりたいと思っているところでございます。

穀田委員 今、複数と言われましたけれども、複数というのは、一桁、二桁、三桁、いろいろあるわけで、どの程度の話をしてはるんですか。複数というと、ほんの二、三冊でも複数ですわな。何冊ぐらいありますのや。

宮崎副大臣 実は、私も、今回先生から御質問をいただいて、保管資料を現物を見ました。束になっていて非常に大部のものでございます。

 今確認できている時点で、一つ、二つということではなくて、現時点ですけれども、おおむね七十ぐらいはあるというふうなことを聞いておりますが、精査しないとそれを数としてしっかりお答えできる段階ではないので、現時点のお答えとしてこのようなことで御容赦いただければと思っております。

穀田委員 現時点で七十ぐらいある。複数という話を聞くと、三つか四つかなと思いますやんな。七十ほどある。とにかく名簿と名がつく文書が桁違いに多い。七十もあるということは重大なことだと指摘しておきたいと思います。

 今答弁のあった全ての名簿についてリストの提出を求めたいと思うんですが、それは約束できますね、リストやったら。

宮崎副大臣 先ほど御答弁させていただきましたとおり、精査した上で対応させていただきたいと思っております。ただ、既に多くの請求に対して対応をもうしているところもございまして、隠匿するとか隠蔽するとか、そういう趣旨ではございません。

 また、情報公開法に基づく請求がなされた場合にも、法律の規定に従って適切に対応する所存でございます。

穀田委員 最後の方は当たり前の話で、私が今言っているのは、今私が提起しているリストは厚生労働省として国会に出せるよね。

宮崎副大臣 ただいま精査中でございますので、精査した上で適切に対応させていただきたいと思っております。

穀田委員 精査したらリストぐらいは出せる。全部出せと言っているんじゃない。リストは出してもらう。よろしいな。

 私に提出された名簿には個人情報を理由に全てマスキングされていますが、日本政府は、韓国政府から協力要請があれば、マスキングを外した名簿を引き渡す考えは当然ありますね。

宮崎副大臣 仮定の御質問でありますので、お答えは困難でございます。

 厚生労働省としましては、必要に応じて関係省庁と連携して適切に対応していく所存でございます。

穀田委員 適切にと言って適当にごまかしちゃ駄目ですよ。予断を持ってとか、それから仮定の質問とか。それは、仮定は仮定です。だけれども、この浮島丸に乗船していた朝鮮の人々は、資料にあるように、徴用など強制動員がなければそんな事故には遭ってないわけですやんか。このような名簿、資料が発見された、どうぞお使いくださいと提供するのが筋じゃないですか。

 日本政府は、一九九〇年五月の日韓外相会談の際に、韓国政府から終戦前に徴用された者の名簿の入手について協力要請があったことを受けて調査を行って、九一年三月、九二年十二月に朝鮮人徴用者に関する名簿の写しを韓国政府に引き渡しているんです。そして、政府として今後も可能な限り協力していく、この考えを質問主意書に対する政府の答弁書で表明しております。

 上川大臣、実際に日本政府から韓国政府に朝鮮人徴用者に関する名簿を引き渡しているわけですから、しかも、今後協力していくという方針、これは承知していますね。

上川国務大臣 この間の様々な情報につきまして、両国間の中でそのようなやり取りがあったことについては承知しております。

穀田委員 様々なという話じゃなくて、的を得ている話をしているんですね。名簿を提出してきたその間の経過を踏まえて今後も協力していく。つまり、名簿を提出するのは当たり前のことなんですよ。そういう点をきちんとせなあきません。私は、今回見つかった乗船者名簿をきちんと渡すべきだと思います。

 最後に、この問題と関係して少し言っておきたいんですけれども、韓国の浮島丸遺族団体会長は、日本のメディアに対して、遺族は高齢化しており、日本政府は一日も早く韓国政府を通じて乗船者名簿を公開してほしいと訴えています。

 乗船者名簿は、このように遺族の方々がずっと望んできたものです。例えば、こんなふうにも言っているんですね。親戚から父親が浮島丸に乗船して亡くなったと聞いたが、死没者名簿に名前がなく、事故現場の舞鶴港にも何度も足を運び、父親の痕跡を捜し続けてきた、今回の乗船者名簿に父の名前があるかもしれないと語っています。

 私は、こういうことを踏まえると、乗船者名簿について、ないと言ってちゃ駄目だ。その実、名簿の類いが存在していたことを七十数年にわたって隠し続けてきて、何の調査もしていない。これ自身を反省する気持ちがあるのなら、最大限の調査を行って可能な限りの説明をする義務がある。私は、それを明らかにすることは犠牲になられた方々に対する最低限の礼儀だと思います。

 私は、この間ずっと問題提起してきました。侵略戦争と植民地支配の真摯な反省の上に立ち、日本政府としてそれらを明らかにすることが重要です。来年は浮島丸事件から八十年です。日本政府は、この歴史的な事件に誠実に向き合い、浮島丸事件に関わる名簿と関連文書を全て全面公開するよう改めて求めて、今日の質問は終わります。

勝俣委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会、吉良州司です。

 今日は、前回の質問で自分的には積み残してしまった一九九六年十二月のペルー大使公邸占拠事件について、前回の質問時の上川大臣の答弁については、非常に納得性の高い答弁をいただいて、そこに対しては敬意を表しておりますけれども、日本外交、そして外務省、在外公館を縁の下で支えている民間企業をもっと理解し、大事にしてもらいたい、そういう思いを同事件の実話を例示しながら外務省に要望したいと思っています。

 なぜそのような要望をするかというと、前回も申し上げましたけれども、上川大臣は、国民の理解と支持を得ながら外交を進めていくということをおっしゃっています。でも、海外においては、実は、現地現場では、民間企業であったり国際機関の職員であったり、そういう人たちが現地に深く入り込んで直接間接に日本外交を支えている。

 この外務委員会の中でも、立憲の鈴木庸介さんだとか、青柳仁士さんだとか、それぞれ海外での経験を踏まえて非常にすばらしい質問、提言をしていると思っていますので、そのことについては上川大臣も外務省の方々も皆さん理解していただいていると思っています。

 ペルーの占拠事件では、結果的には、あれだけの人質が、しかも百二十二日間だと思いますけれども人質になっていて、最後は突撃、それも地下から爆破して突撃して、武力解放というのは台湾ではありませんけれども、そういう突撃という形態を取ったわけです。残念ながらペルー側の方が二人亡くなられましたけれども、日本人の犠牲者、命的には犠牲者は一人も出なかった。

 もしあのときに日本人の人質がどなたか犠牲になっていたならば、外務省は相当な批判を受けたと思っています。そういう意味で、一人も犠牲者を出さなかったことについて、私は、民間企業の方々の英知が結集した結果だと思っています。

 私は当時、ニューヨークに駐在していて、ペルーにも多くのプロジェクトを抱えていたので、そしてまた現実的な契約交渉をやるような話があったので、それこそ月に一回ぐらいのペースでペルーに赴いていました。それは事件後もそうです。ですから、事件後は、この前も言いました、十日間人質になっていた私の大親友と、突撃まで人質になっていた先輩から詳細な話をペルーに出張するたびに聞いておりました。

 先ほど言いました実話的な例示といいますと、最初に、十二月十七日に犯行グループが襲撃したときには、もしその犯行グループが当時最も過激なゲリラグループであったセンデロ・ルミノソという組織であったならば、自分たちは生きてこの場を出られないだろうと思ったそうです。ただ、実際には、犯行グループはトゥパク・アマル。センデロ・ルミノソに比べれば比較的そこまでの過激度はないというグループだったので、これはうまくやれば生き延びられるかもしれないと思ったそうです。

 ただし、同時に、当時ペルーにいた人たちはアルベルト・フジモリ大統領を皆さん尊敬していました。私も尊敬していました。どういう大統領でどういう性格の人か皆さんよく知っていましたので、人質になった日本人の駐在員たちは、アルベルト・フジモリは必ず突撃、解放を試みる、安易に犯行グループと妥協はしない、したがって、自分たちは突撃まで生き延びなきゃいけないし、突撃を生き延びなければならない、そういうある意味では悲壮な思いでそれから人質生活を送っていました。

 私が尊敬する会社の大先輩の佐藤繁徳さんはむちゃくちゃスペイン語がうまかったので、すぐに犯行グループと仲よくなった。それは、世間で言われていたような、犯人側と人質が同じ釜の飯を食いながら長期間一緒に過ごすと情が移って親しくなってしまうというストックホルム症候群ということが言われていましたけれども、そんなことは全くない。佐藤さんが言っていたのは、いざ突撃のときまで含めて自分たちが生き延びるために、このグループと少なくともこちら側は表面的に親しくなる、向こうからは好意を持ってもらう、いざというときに備えたリスクマネジメントだと。

 ちょっと言葉は選ばなければいけませんけれども、犯行グループも気の毒な面もあって、余りにも貧しいがゆえに教育を受ける機会も一切なく、ある程度の年頃になれば戦闘員として訓練され育てられる。ですから、正直、あのときに人質になっていた人たちは、ペルーの政財官、軍、ペルーに駐在している民間企業のトップたち、そして、南米を中心にペルーに来ている大使館の人たちでありましたから、それはもう上層部。その人たちと今言った貧しいがゆえに教育も受けられなかった人とは正直言って会話が成り立たないと言っていました。

 けれども、それでも相手に合わせながら、相手には好意を持ってもらうということを心がけて人質生活を送って、そして、一九九七年の四月二十二日、現地時間ですけれども、突撃があったときには、実際には、犯行グループの一人が、爆発してある意味では驚き、犯行グループも当然不安があったと思いますけれども、そういう中で日本人がいた部屋にだあっとドアを開けて入ってきて銃口を一度は人質たちに向けた。けれども、そのときに、今言った親しくしていた佐藤繁徳先輩が、名前は知らないですけれども、何々やめろ、出ていけ、こういうふうに言う中で、一度は向けた銃口を、くるっと背中を向けて部屋を出ていった。

 その後は、聞いたこともあると思いますけれども、駐在員全員で大使公邸の二階の部屋をみんなで肩をぶつけて壁をぶち抜いて、そこから二階から降りた、そういう経緯があるわけです。

 先ほど言いましたように、フジモリさんなら必ず突撃する、突撃の事態に、最悪の事態に備えなければいけない、そういうことで親密さをある意味装って、でも、それが実際に当日役立って日本人の犠牲者が出ることがなかった。これは本当に外務省を救った冷静な行動、勇敢な行動、そして深謀遠慮のある行動だったと私は思っています。

 このように、外地、特に発展途上国では、現地に深く深く入り込んだ駐在員の情報が、それから人脈がある意味では在外公館、外務省そして外交を支えている、こういうことがあります。今言ったように、自分たちを救ったと同時に外務省を救ったと思っています。それがゆえに、今、外務省、在外公館が民間企業をないがしろにしているとか全く思っていないです、途上国に行けば行くほど仲はいいとは思っていますけれども、こういう実話を踏まえて、改めて外務省には、外地での民間企業、国際機関職員をとことん尊重して大事にしてほしい、こういう要望でありますけれども、上川大臣の所感、感想があれば一言お願いします。

上川国務大臣 一九九六年の在ペルー日本大使公邸での占拠事件ということで、先回と今回御質問をいただきました。

 今、まさに現場の体験を直接触れる機会があった委員からのお話ということでございまして、私も、そうしたリスクは必ず今もある状況の中で、現場で、日本の企業、国際機関で働いていらっしゃる日本人の皆様、日本人だけではありませんけれども、そういう中の最前線で命懸けで頑張っていらっしゃる、まさに使命感を持って取り組んでいらっしゃる、このことが外交の極めて大きな基盤になっているということを改めて実感しているところであります。

 このことをしっかりと意識しながら、これからの外交に生かしていく努力を重ねてまいりたいと改めて決意したところでございます。

吉良委員 ありがとうございます。

 実は、この事件が終わった後、私は何回も入って契約交渉をして、最後に契約にサインした日付はいつかというと、一九九七年の十二月十七日です。事件が起こった一周年。我々は契約をこの日にすると決めて契約交渉をして、最終的に十六億円ぐらいの契約を決めたんですけれども、実は、その契約がどういう契約だったかというと、中国の首鋼集団というんですけれども、発音的にはショウガン・イエロ・ペルーということで、ペルーの鉄鉱石鉱山を中国企業が買い取りまして、そこで運営して中国本国に鉄鉱石を輸出していた。実は、その中国が買収したペルー企業に対して私の会社がリスクを負ってファイナンスをした上で、アメリカのキャタピラーという会社の大型建設機械を納入するということだったんです。

 今、米、中、日、いろいろ言われています。そしてまた、今、経済安全保障ということで、いろいろと民間企業のビジネスに国が介入しようとしています。もちろん、安全保障上の必要性は私も十分分かっているつもりであります。本当はここをもうちょっと突っ込みたいんですけれども、最初のところで時間を費やしてしまったので。

 今言ったように、中国資本の会社に米国の製品を日本企業がリスクを取って売り込む。そこには実は中国もアメリカも日本もないんです。ビジネスというのは需要があるところに供給あり。需要があれば、その需要に応えていこうということでビジネスが成立していきます。

 これは言いっ放しになりますけれども、経産省が中心になっているかもしれませんけれども、外務省については、民間企業が国境を越えてやっていくビジネスについてできる限り制約を課さない。ビジネス上の制約を課さず、できる限り民間企業の自由度を増したビジネスができるように支援していっていただきたい。そのことはお願いであります。答弁は求めません。

 次に、最近頻繁に取り上げていますけれども、ウクライナ情勢について伺います。

 まず、ロシアでは大統領選挙が行われ、やり方がどうであったとかいろいろな評価があると思いますけれども、プーチン大統領が再選されました。

 一方、ウクライナにおいてはゼレンスキー大統領が任期を超えて大統領職を継続しているという状況でありますが、ゼレンスキー大統領が大統領の任期を超えて今なお大統領職を務めていることについての上川大臣の評価について伺いたいと思います。簡潔にお願いします。

上川国務大臣 戒厳令に関しますウクライナ国内の関連法令でありますが、まず、戒厳令下におきましてウクライナ大統領の任期が満了した場合、その任期が戒厳令解除後に選出される新大統領就任まで延長される旨、また、第二に、戒厳令下における大統領選挙の実施は禁止される旨をそれぞれ規定しているものと承知しております。

 同戒厳令につきましては、定期的にウクライナ議会において承認を受けているものと承知しております。

 その上で申し上げれば、現在の状況にウクライナが陥っているのは、ロシアによるウクライナ侵略が原因であるということを忘れてはならないというふうに考えております。

吉良委員 こういうような場ではなかなか言いづらいことではあるんですけれども、私自身は、ゼレンスキー大統領がクリミアも含めて取り返す、それは主権国家としてある意味では大事な意思だと思っています。けれども、一方で、これまで再三言い続けてきています、それを通そうがために多くの国民が犠牲になってしまっている。何よりも優先されるべきは終戦であり、停戦であると思っています。

 時間が既になくなってきましたので、皆さん方のお手元に、私のメールマガジンですけれども、二〇二二年三月九日ですから、侵攻後三週間たたないときに、既に五回シリーズで、この後全部で十二回シリーズで、ほぼ三か月ぐらいでそれだけのシリーズを書いています。

 そこの最初の一ページ目の二のところに書いてありますが、私も実際にウクライナを訪問したときは、二〇〇五年、オレンジ革命の直後でありましたけれども、一ページ目の二のところに書いてありますが、オレンジ革命によって誕生したユシチェンコ、西側志向の代表のような大統領でありますけれども、この方が大統領に就任した直後に訪問したのはロシア・モスクワであります。プーチン大統領と面談しています。

 天然資源、特に天然ガスを全面的に依存している。そして、安全保障上にらまれたくない。今回のように侵攻されてはたまらぬ。先ほどの人質事件ではないですけれども、そういう深謀遠慮の中で、自分は西側志向を代表する大統領であったにもかかわらず、真っ先にロシアを訪問し、リスクを最小限にしていく行動を取り続けた。

 次のページを見ていただきたいと思いますが、二ページ目に、ウクライナ独立以降、ゼレンスキー大統領に至るまでの大統領がどういう氏素性で、特に、西ウクライナ、東ウクライナのどちらの支持を得て、そして、親ロシア、親西側、どういう主張を掲げて大統領選を戦い、そして大統領になったかというようなことを書いています。

 大事なことは、ゼレンスキー大統領になるまでは、誰が大統領になっても、西側も大事、ロシアとも少なくとも表面的には友好関係を崩さないように行動してきたということを示したいがためにここに書いています。

 今回のウクライナ侵攻というのは、私は、いつだったかこの委員会でも言いましたが、ソ連崩壊時、皆さんも覚えておられる当時、モスクワの店にパン一つない、肉一つない、経済的に本当にどん底にあるときにソ連が崩壊し、そして、ソ連を構成していた十四の共和国がアズ・イット・イズでそのままで独立しました。もしあのときにロシアを含めてもう少し経済力なり国力なり対外交渉力があったならば、もう少し今の情勢は変わってきたんだろう。

 つまり、ソ連が崩壊してそれぞれのソ連構成共和国が誕生するときに、実はいろいろなひずみが残っていて、けれどもそれを調整する力がどこにもなくて、その中で生まれている今の秩序、その中でウクライナの問題があり、ジョージアの問題があり、今は問題になっていませんけれども、バルト三国に住んでいるロシア人、ロシア語話者、そういう人たちの扱いがいろいろな意味で問題になっていると思っています。

 時間が来ましたので、ここは大臣に再三の要望ですけれども、G7がこうだ、アメリカの意向がこうだではなくて、我が国としてはあくまでも、とにかく戦争を終わらせる。終戦なんだ、停戦なんだ。それに一歩でも近づくための外交努力をしていただきたいということをお願いして、質問を終わります。

勝俣委員長 次回は、来る六月十二日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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