衆議院

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第3号 令和2年11月12日(木曜日)

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令和二年十一月十二日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 高鳥 修一君

   理事 加藤 寛治君 理事 齋藤  健君

   理事 津島  淳君 理事 宮腰 光寛君

   理事 宮下 一郎君 理事 亀井亜紀子君

   理事 矢上 雅義君 理事 稲津  久君

      伊東 良孝君    池田 道孝君

      泉田 裕彦君    今枝宗一郎君

      上杉謙太郎君    江藤  拓君

      金子 俊平君    木村 次郎君

      小寺 裕雄君    高村 正大君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      鈴木 憲和君    武部  新君

      西田 昭二君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      福山  守君    細田 健一君

      石川 香織君    大串 博志君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      近藤 和也君    佐々木隆博君

      佐藤 公治君    篠原  孝君

      緑川 貴士君    宮川  伸君

      濱村  進君    田村 貴昭君

      藤田 文武君    玉木雄一郎君

    …………………………………

   農林水産大臣       野上浩太郎君

   農林水産副大臣      葉梨 康弘君

   農林水産大臣政務官    池田 道孝君

   政府参考人

   (農林水産省食料産業局長)            太田 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省生産局長)  水田 正和君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  光吉  一君

   政府参考人

   (農林水産省政策統括官) 天羽  隆君

   政府参考人

   (農林水産技術会議事務局長)           菱沼 義久君

   参考人

   (有限会社横田農場代表取締役)          横田 修一君

   参考人

   (日本の種子を守る会アドバイザー)

   (NPO法人民間稲作研究所アドバイザー)     印鑰 智哉君

   農林水産委員会専門員   梶原  武君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十二日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     高村 正大君

  金子 恵美君     宮川  伸君

  神谷  裕君     篠原  孝君

同日

 辞任         補欠選任

  高村 正大君     上杉謙太郎君

  篠原  孝君     神谷  裕君

  宮川  伸君     金子 恵美君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 種苗法の一部を改正する法律案(内閣提出、第二百一回国会閣法第三七号)


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     ――――◇―――――

高鳥委員長 これより会議を開きます。

 第二百一回国会、内閣提出、種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省食料産業局長太田豊彦君、生産局長水田正和君、経営局長光吉一君、政策統括官天羽隆君及び農林水産技術会議事務局長菱沼義久君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高鳥委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。武部新君。

武部委員 自由民主党の武部新です。

 私は、我が党の種苗法改正に関する検討ワーキングチームの座長をしておりました。植物新品種の海外流出防止と保護の強化について取りまとめてまいりました。

 本法案について、一部の生産現場あるいは消費者の間に誤解も不安もあるようですので、委員会の審議を通じて理解を深めていただければと思います。

 まず、種苗法改正の目的についてお聞きいたします。今般の法改正の狙いは何でしょうか。誰のための法改正でしょうか。大臣にお聞きいたします。

野上国務大臣 今般の法改正の狙いは何か、誰のための改正かというお問合せでありますが、優良な植物新品種が海外に流出しまして輸出の機会が失われましたのは、現在の種苗法が国内における権利保護を想定しておりまして、登録品種であっても海外への持ち出しをとめることができないこと、また、しっかり守るべき知的財産の管理がこれまで緩過ぎたことによるものと考えております。

 こうした反省に立ちまして、今回、種苗法を改正して、登録品種について出願時に国内利用限定の利用条件を付せば海外持ち出しを制限できること、また、登録品種の自家増殖については育成者権者の許諾に基づき行うことといった措置を講ずるものであります。

 この改正は、日本の強みである植物新品種の知的財産を守って、産地形成を後押しして、地域の農業の活性化に資するものであり、まさに農業者のための法改正であるというふうに考えております。

武部委員 今大臣のお話にあったとおり、現行法でも品種登録制度はあるんですが、国内での利用を想定していまして、海外への持ち出しの制限ができない、そういう課題があります。例えばシャインマスカットなどは我が国で開発された優良な品種ですけれども、これらの品種が海外に流出して我が国の農業に大きな影響を与えているのは間違いございません。

 そこで、海外流出を防止するには海外での品種登録しか手がないんだ、法改正など必要がないという意見もあるようでございます。しかし、そもそも登録品種の種苗を国外に持ち出さないようにすることが重要であると考えます。農林水産省の所見を伺いたいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 現行の種苗法では購入した種苗の海外持ち出しを防止できないため、海外での無断栽培を防ぐためには外国での品種登録しかないということは事実でございます。

 しかしながら、海外においては特に、侵害者が証拠の隠蔽あるいは侵害のターゲットとなる品種の切りかえを行うことによりまして、対応がイタチごっこになるということが想定をされます。また、侵害が発覚した段階では、既に現地で産地化され、収穫物が出回ってしまい、多額の損害が発生してしまっているということも考えられます。

 当然、海外で品種登録をすることが重要でございますけれども、あわせて、購入した種苗の海外持ち出しを防止することができない現行種苗法の規定を改正いたしまして、海外持ち出しを制限できるようにすることで、そもそも持ち出しをされないようにすることも極めて重要であると考えております。

 なお、法改正をしても、万一海外に持ち出されてしまった場合には、その国での栽培や流通を差し止めなければならないことは変わりはありませんので、予算支援での他国での品種登録ということにつきましては引き続き進めてまいりたいと考えております。

武部委員 ありがとうございます。

 持ち出さないようにするためには、やはり実効性を持たなきゃならないんだと思います。法改正によって、育成権者が輸出先国あるいは栽培地域の指定や制限をできることとなります。これまでは、権利侵害があっても立証するのは大変難しかったんです。といいますのも、品種登録をしたときの現物と比較することが求められていたからです。

 そこで、今回の法改正によって、育成権者の権利の実効性を確保する上で、特性表の活用、これによる効果をどのように考えていますか。

葉梨副大臣 座長としてお取りまとめいただきまして、大変ありがとうございました。

 今御質問にございましたとおり、登録当時の種苗、これを保管して、長いものですと二十年以上になりますが、それを育てて比較するという形でしか侵害を立証することが現在はできないわけなんですけれども、現在の品種登録制度のもとにおいても、大きさ、色などの外形的特性、それから病害特性、耐暑性といった生理的な性質、これを五十項目、百項目で記載した特性表というのを既に作成して審査しています。

 今回、侵害が疑われる品種をその特性表と比較できるように措置いたしましたので、これを活用しての侵害立証ができるということで、育成者権の実効性を確保することができるのではないかというふうに考えています。

武部委員 ありがとうございます。訴訟になったときに、育成権者が裁判でこの特性表を用いることによって、容易に権利を主張することができるようになると思います。

 先ほど冒頭にも申し上げましたけれども、今回の法改正で不安があったり誤解があったりする方がいられます。これについては一つ一つやはりしっかりと説明する責任があると思いますが、その多くの懸念、誤解の一つが自家増殖です。自家増殖は一律禁止になるんだというような誤解が多く見られます。

 改めて、登録品種の自家増殖を許諾制にする趣旨、及び一律禁止になるわけではないんだよということを大臣から御説明いただければと思います。

野上国務大臣 今、自家増殖についての御質問がありましたが、今回の改正によって登録品種の自家増殖につきましては育成者権者の許諾を必要とすることとしておりますが、一般品種の自家増殖というのは自由であります。また、登録品種についても許諾を得れば自家増殖ができるため、自家増殖が一律禁止になるということはあり得ません。

 現行法におきましても自家増殖された登録品種の種苗を海外に持ち出すことは育成者権の侵害になりますが、登録品種の増殖実態の把握ですとか疑わしい増殖の差止め、あるいは刑事罰の適用や損害賠償に必要な故意や過失の証明が困難なことから、海外持ち出しの抑止が困難となっております。

 また、法改正によりまして、育成者権者が海外持ち出し不可の条件を付した場合に正規に販売された種苗の持ち出しができなくなる結果、農業者個人の増殖種苗が今度は狙われることが懸念をされるわけでありますので、このため、登録品種の自家増殖については育成者権者の許諾を必要とするということにしたものであります。

武部委員 ありがとうございます。

 大臣もおっしゃったとおり、一般品種は許諾の対象にならないので、これまでと変わりません。それから、登録品種の割合ですけれども、お米でいえば一七%、果物、野菜については数%から一〇%程度です。ということは、ほとんどが一般品種になります。ですから、一般品種は許諾の対象になりませんので、安心して自家増殖についても行うことができるということを理解していただきたいと思います。

 もう一つの大きな懸念は、生産現場の負担がふえるのではないかということです。生産コストが上がって事務手続が煩雑になるのではないか、そういう不安の声があります。

 今般の法改正によって、許諾料、これが高騰するのではないかという不安の声が事業者の間にありますけれども、自家増殖の許諾料についてはどのように設定されるべきとお考えですか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 育成者権は知的財産権でありますので、自家増殖の許諾料をどのように設定するのかにつきましては、各育成者権者の判断により行うこととなります。

 しかしながら、農研機構や都道府県は種苗を普及することを目的として品種を開発しており、農業者から営農の支障となるような高額な許諾料を徴収することは通常はありません。また、民間の育成会社も農研機構や都道府県の許諾料の水準を見ており、著しく高額な許諾料となることは考えにくい状況でございます。

武部委員 いずれにしましても、まだまだいろいろな不安が消費者の皆さんにも生産現場にもあるんだと思います。現場の懸念を払拭するように丁寧に説明していただいて、周知徹底を図っていただくようにお願いしたいと思います。

 政府は、二〇三〇年までに農林水産物それから食料の輸出を五兆円にするという目標を掲げています。種苗法においても、この改正によって育成権者が輸出先国や栽培地域の指定制限を実効的に行うことができれば、日本の誇る優良な新品種の海外展開やブランド戦略にも大きな効果が期待できると思います。輸出を進めていく上でも、知的財産権を守っていくということは非常に大事なことだというふうに思います。

 例えばなんですけれども、長野県は、リンゴの県育成品種でありますシナノゴールド、これについて海外とライセンス契約を結んでいます。ライセンス契約を結ぶことによって、ライセンス料をいただいたりしているんですけれども、農産物のライセンスビジネスが拡大していく可能性もあるんだと思います。

 その上で、輸出防止の視点も大事でありますけれども、我が国の農産物を安心して輸出していくという観点からも、海外での品種登録を一層推進していくべきだと考えますが、農林水産省の所見を伺います。

葉梨副大臣 武部先生御指摘のとおり、今回の種苗法の改正とあわせて、やはり、優良品種の海外流出防止のためには海外での栽培や流通差止めを行う、そのためには外国での品種登録というのが必要だと思います。

 平成二十八年からなんですけれども、植物品種等海外流出防止総合対策事業というのを、今年度の予算でも予算化していただいておるんですが、今年九月末までに二百九十五品種の海外出願を支援、それから八十五品種を登録させていただいています。海外において侵害を監視して実効的対抗措置をとる、そのためには、個々の育成権者だけではなかなか困難でございますので、今年度予算において海外における権利行使を一元的に支援する体制の構築を行っておるところです。

 これらの対策を通じて、我が国の誇る新品種を海外でもしっかりと守って、輸出促進などにつなげていきたいと思います。

武部委員 ありがとうございます。

 改めて、優良な品種の開発というのは農研機構や都道府県が今一生懸命やっていただいていますし、重要な役割を担っていただいています。しっかりと彼らに品種開発を行っていただけるように、研究開発予算の充実はしっかりやっていかなきゃならないんだと思います。

 開発をしっかり進めること、この新しい種苗法の改正によって育成品種の海外流出を防ぐこと、海外でもしっかりと登録していただくこと、それから、海外の、特にアジアの国々についても、UPOV条約について批准していただくことを我々はちゃんと国にお願いしていかなきゃならないということも、あわせて申し上げておきたいと思います。

 最後の質問になります。

 これもよく、種子法を廃止したときに多くの不安がございました。種子法が廃止されまして、同法に基づいて都道府県が実施していた稲、麦、大豆、この種子の供給にかかわる事務は今後も重要だと考えます。

 種苗法改正を機に、国としても、事務次官通知を見直して、この位置づけを明確にすべきではないかと考えます。今もしっかりと予算は確保していただいているんですけれども、この位置づけをまた改めてしっかりと位置づけるということが大事だと思いますが、農林水産省の見解を伺いたいと思います。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 主要農作物種子法でございますが、昭和二十七年に、戦後の食料増産という国家的要請を背景に、稲、麦類及び大豆の優良な種子の生産、普及を進めるために制定され、食料増産に貢献するところ大であったというふうに考えてございます。

 しかし、その後、お米の供給不足の解消や食生活の変化に伴う需要の減少など、状況の変化が起きた後も法により全ての都道府県に一律に種子供給を義務づけてきたわけでございまして、いわゆるブランド米の種子につきましては多くの都道府県により力を入れて供給が行われる一方で、需要が高まってきている中食、外食用途に適した多収品種などの種子の供給につきましては十分に取り組めていない、さらには、民間の品種が参入しにくいなどの課題が生じてきておりました。

 このため、種子法により全ての都道府県に対し一律に義務づけるというやり方を廃止いたしまして、都道府県の力に加えて、民間事業者の力も生かした種子の供給体制を構築することとしたところでございます。

 平成三十年の法の廃止後も、県で継続していただいておる種子供給業務につきましては、農林水産省といたしましても先生御指摘のとおり重要であるというふうに認識をしておるところでございます。

 先生御指摘の通知につきましては、種子法廃止後の都道府県の役割などについて規定を置いておるものでございますが、現在御審議をいただいておりますこの種苗法が改正されれば、その施行に当たり、必要に応じ、本通知につきましても所要の改正を検討していきたいと考えております。

武部委員 改めて、種苗法の改正、これは、日本の誇る優良な品種を海外に流出させないこと、そして、しっかりとこれを守って、日本の農林水産物の輸出を更に促進していくためにも必要な法改正だと思いますので、しっかりと審議していただいて、この法案を成立していただきますようによろしくお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、細田健一君。

細田(健)委員 先生方、おはようございます。新潟の細田健一でございます。

 質問の機会をいただきましたことを、高鳥委員長を始め理事の先生方に改めて心から御礼を申し上げます。

 同僚の武部委員の質疑に引き続いて、種苗法について質問させていただきます。

 まず、この法律が通過すると農家の負担が増すんじゃないか、農家が過大な負担を強いられるんじゃないかという心配が提起されています。私も大変に心配しています。

 ただ、まずここで強調したいのは、この法律の対象となり、新たな規制の対象になるのは、一般品種と言われている在来型の、古くからある、幅広く栽培されている品種ではなく、いわゆる登録品種というものに限っているわけでございまして、登録品種以外の品種、一般品種についてはこの法律の施行後も全く取扱いは変わらない、新たな規制の対象になることはないということをまず農林水産省に確認したいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 種苗法の対象となりますのは、新たに開発され、登録された品種のみでございます。このような登録品種以外の一般品種につきましては、先生御指摘のとおり、種苗法の対象ではないため、今般の法改正後も全く取扱いは変わりません。

 また、自家増殖につきましても、一般品種を用いる場合には育成者権者の許諾も許諾料も必要はなく、このことは今般の法改正後も変わりありません。

細田(健)委員 ありがとうございます。一般品種は全く規制の対象にならないわけです。

 そうしますと、一般品種、そして登録品種は何かという疑問が生じるわけでございますけれども、今お手元に資料を一枚配付をさせていただきました。これは新潟県の例でございまして、新潟県で主に栽培されている品種について、何が一般品種で何が登録品種であるかということを整理をしたものでございます。これは農林水産省と県にお願いをして作成していただきました。

 これをごらんになっていただきますと、すぐわかると思うんですけれども、いわゆる一般的な、お米でいいますと、例えばコシヒカリでありますとか越路早生、あるいは幅広く栽培されている酒米の五百万石、こういうのが一般品種であって、全く規制の対象にならないわけです。あるいは、イチゴであれば越後姫ですね、私の後援会の会長さんでイチゴ農家の方がいらして、本当に大玉な甘口のイチゴを栽培していただいていますけれども、これも対象にならない。あるいは、果実もいろいろありますけれども、私の選挙区で栽培されている梨であれば、例えば新高という品種、これも全く規制の対象にならないわけでございます。

 これは実は、法律を作成する過程において党の農林部会で私の方から問題提起をいたしまして、新潟県だけではなく全県、全県でこういう表をつくっております。全ての県についてこういう表をつくっていただいて、農林水産省のホームページに掲載されていまして、全県分を見られるようになっております。

 ですから、農林水産委員の先生方、これをぜひごらんになっていただいて御説明などに使っていただきたいと思いますし、また、この表を作成するに当たって各県の担当の方に本当に多大なる御協力をいただいておりますけれども、改めて感謝を申し上げたいと思います。

 これは非常におもしろいです。各県ごとになっていますから、お国自慢もできますし、また、いろいろ私も幾つかの県を拝見しましたけれども、非常におもしろいですね。各県の農業事情というのがかいま見えて、大変興味深い資料になっております。

 さらに、余談ながら、農林水産省の種苗法のホームページ、一番最初に江藤前農水大臣が、なぜ種苗法の改正が必要かという動画が掲載されていますけれども、これも非常に秀逸な動画だと思いますので、ぜひごらんになっていただきたいと思っております。

 規制の対象になるのは登録品種、表の右側にあるものだけなんですけれども、この登録品種についても、一般的に、種を購入して作物をつくってそのまま市場に流す、こういう場合は新たな手続上の追加負担はない。一般的に、種を買って、それを栽培して育て、それをそのまま市場に出すという場合は新たな手続的な負担はないですし、また、種のお金についてもそれほど大きな変化はないというふうに考えられていると思いますけれども、これについての農水省の見解をよろしくお願いいたします。

太田政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案の前提といたしまして、農家が、費用面、手続面でどのような負担が生ずるのか、農家の、種を買って、それを使用しているということについてどのような状況になっているかということでございますけれども、一般的な種につきましては、農研機構や都道府県が普及することを目的として品種を開発しておりますので、現時点で高額な許諾料を徴収するといった状況にはなっておりません。また、民間の種苗会社も農研機構や都道府県の許諾料の水準を見ておりますので、著しく高額な許諾料となっているということにはなっていないところでございます。

 それらを踏まえた上で現在の種苗の価格というのが形成されて、農家が購入をして、その購入をした農家が栽培をして生産物を販売するといった状況になっております。

細田(健)委員 済みません、まず、農水省、しっかりしてくださいね。私が出した問いの五以外は全て基本的には政府参考人に対応していただくということになっているはずですから、そこをきちんとまず整理してください。

 もう一度聞きます。

 登録品種であっても、種を購入してそのまま栽培して、その全量を例えば市場に出す、要するに自家増殖しない場合ですね。種を購入して栽培して、成果物を全て市場に出すという場合は新たな手続等々は必要ないということでよろしいですね。しっかりと確認してください。

太田政府参考人 お答えいたします。

 許諾といった手続も許諾料も必要ございません。

細田(健)委員 ありがとうございます。そうですね。ですから、登録品種で自家増殖する場合に限って新たな規制の対象になるということを改めて確認をしておきたいと思います。

 それでは、先ほどちょっと先に一部お答えがあったんですが、この登録品種を自家増殖している事例あるいは割合、これは現在どれくらいあると考えておられるでしょうか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十七年度に、都道府県を通じまして、登録品種の自家増殖の事例を把握するために調査をいたしました。その結果、自家増殖を行っている農家というのはほとんどいませんでした。登録品種について、五品種以上の自家増殖が把握できた事例というのは稲、イチゴ、果樹の三作目であり、主な品種としては、稲はミルキープリンセス、にこまるなど、イチゴはさがほのかなど、果樹はシャインマスカット、あきづきなどといった状況になっておりました。

細田(健)委員 ありがとうございます。

 今のお答えで明確になったと思いますけれども、要するに、その方向、今、農業も分業が進んでいて、結局、いわゆる種を栽培する専門の農家と、それ以外の一般の農家といいますか、種を買ってきて、それをきちんとつくって市場に流す農家というのはある種の分業が進んでいて、後者の、種を購入して作物を育てて、それを市場に出すという農家、これが数でいうと圧倒的多数だと思いますけれども、この農家についても法律が成立した後も新たな手続、規制の対象にはならないわけでございます。ですから、規制の対象になるのは種をつくっている農家に限られるということですね。この点も確認をしておきたいと思います。

 先ほど武部委員からもお話がありましたけれども、法施行後は種をつくっている農家については許諾をとる必要が出てくるわけでございますけれども、許諾については、できるだけ現場が混乱しないように種々きちんと配慮をすべきだと考えておりますけれども、具体的にどのような配慮を行っていくのか、お聞かせいただきたいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 許諾の手続につきましての御質問でございます。

 許諾の手続につきましては、法改正後、許諾の手続が負担とならないように、団体等がまとめて許諾を受けることが可能となっております。

 農林水産省におきましては、個人の農業者が許諾を得る場合でも簡単に手続できるように、許諾契約のひな形を示してまいりたいというふうに考えております。

 以上のような考え方につきましては、引き続き現場の農業者に対して丁寧に説明してまいりたいと考えております。

細田(健)委員 ありがとうございます。新たな負担が課される農業者、種をつくっている農業者の方がスムースに新しい制度に対応できるように、ぜひ十分な御配慮をお願いしたいと思っております。

 更にお伺いします。

 今お話がありましたが、いわゆる種の育成権について、農研機構が開発した品種がございます。これは、済みません、新潟でいいますと、稲でいえば、みずほの輝き、つきあかり、あきだわら、ゆきみのり、梨でいいますと、あきづき、秋麗ですか、あるいは桃だと、なつおとめといった、農研機構は頑張って新しい品種を開発していただいているわけでございますけれども、農研機構を所管する農水省として、これは当然、新たな制度になったとしても、農研機構は公的な機関ですから、許諾料等々については農家の負担にならないように十分な配慮を行うべきだと思いますけれども、この点についてぜひ、きっちりと指導するということをおっしゃっていただければと思います。

池田大臣政務官 今委員がおっしゃられますように、農研機構は従前から、農業者へ負担をかけずに、すぐれた新品種を普及させることを基本的姿勢として品種を開発してきたところでございます。種苗法が改正されたとしても、この基本的姿勢を変えることなく、農業者の利用に支障がないような許諾料の運用を進めていくこととしております。

 国から農研機構に対しましては、種苗の販売時に徴収している許諾料については法改正を理由として高くすることはございませんし、自家増殖を許諾制とした場合の許諾料については、許諾手続に必要な事務経費等について負担していただくことはあり得るものの、農業者にとりまして過度の負担とならないように指導してまいります。

細田(健)委員 ありがとうございました。

 要は、日本の新しい品種というのは、農研機構を含め、あるいは各県で開発するものもございますけれども、基本的には公的機関が新たに開発したものが多いわけでございますから、今お話があったように、法改正があっても許諾料等々が高騰するといったようなことは考えられませんし、また、そういうことがないようにきちんと農水省の方も目を光らせていただくということだと理解をいたしました。

 それでは、最後にちょっと大臣にお伺いをしたいと思います。

 私、農水政務官のころから、農業分野の知的財産保護は非常に重要な分野だと思っておりました。実際に、日本の農研機構を始め各県の試験場の方々は本当に大変な努力をされて、いい品種を育ててきていただいたわけでございますけれども、ただ、残念ながら、これが例えば各国に持ち出されて事実上日本の国益が毀損しているといったような事実があったわけでございまして、これは本当に何とかしなきゃならぬという強い思いがございました。

 こういう問題意識の上で今回の種苗法の改正が行われたというふうに理解をしておりますけれども、特に、今、農水省の皆さんとお話をしていますと、本当に頑張ってやっておられるので非常に心強いと思う一方で、やはりこの分野は、経済産業省は特許庁という現業の分野を持っておりますし、工業所有権の分野がございましたので、政府内の人的資本という意味で見ると、例えば経済産業省はやはりそれなりのプロがたくさんおりまして、知見においても、あるいは国際交渉の経験においても進んでいる面がございます。

 ですから、例えば経済産業省と人事交流をやっていただいて、人的資本の厚みを増していただくとか、それこそ本当にオール・ジャパンでぜひ取り組んでいただいて、この農業分野における知的財産保護政策というのを本当に強化して取り組んでいただきたいと思っておりますが、大臣の強い御決意をぜひお伺いしたいと思います。

野上国務大臣 今お話がありましたとおり、優良な植物新品種、これは我が国の農業の強みでありますので、しっかりと保護をしていかなければならない。保護をしていくことによって、やはり品種開発の意欲も促進をしてまいりますし、よりよい品種の開発を通じて産地が形成される、地域農業も振興される、更に輸出にもつながっていくということだというふうに思っております。

 農水省としては、今、予算事業によりまして海外における品種登録ですとか現地での侵害対応等の支援をしてまいりましたが、今般の種苗法改正の内容及び制度の活用方法ですとか、地理的表示保護制度、GIですとか商標などを組み合わせた効果的な知的財産の保護方法の周知徹底を図ってまいらなければならないと思っております。

 そういう中で、このような知的財産権の農業現場での活用を推進するに当たっては、先生御指摘のとおり、特許庁の知見も欠かせないものであるというふうに思っております。人事交流も図っているところでありますが、今後とも、特許庁等と積極的に連携を図って、しっかりと知的財産を守ってまいりたいというふうに思います。

細田(健)委員 ありがとうございました。ぜひ、本当にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 あと、ちょっと時間がありませんので、最後に、申しわけないんですが、一点だけ地元の問題について質問をさせていただきます。

 経営継続補助金について、一次募集の採択案件が公表されているわけでございますけれども、この補助対象経費について、今のところ、原則として二〇二〇年五月十四日から十二月三十一日までに出資されたものに限りますということになっております。ただ、一方で、採択案件の公表がややおくれたというようなこともありまして、地元からは、いろいろな対象機器を購入しようとしても、会社に聞いても納期が間に合わないとかいうような声が上がっておりまして、この補助対象期間の終期を後ろ倒しにしていただきたいという強い要望が寄せられております。

 この点についてはぜひ柔軟に対応していただきたいと思いますし、また、今二次募集をやっていると思いますけれども、二次募集のスケジュールについてもできるだけ、一次募集の採択の公表がちょっとおくれたということもありますので、ぜひ採択時期等はあらかじめ明確にしていただいた上で募集、採択を行っていただきたいと思っておりますけれども、この辺についての御回答をお願いいたします。

光吉政府参考人 お答えいたします。

 経営継続補助金の第一回公募で採択された農林漁業者の方々には、委員がおっしゃるように、本年十二月末までに機械等を購入、そして支払いを終えていただいて、この期限内に事業完了ができるようにしていただくことが基本となります。しかしながら、これも委員が御指摘されたように、機械の納品が間に合わないといったお声もお聞きしていることから、こうしたやむを得ない御事情がある場合には、令和三年の二月末までの延長を可能としたところでございます。

 また、今後、事業完了の見通しの調査を行うなど、現場の実態を丁寧に把握をしてまいりたいと思います。そして、機械メーカーなどに対しましても、円滑な供給に向けた協力要請をしたいというふうに考えております。

 第二回公募を今行っているところでございますけれども、これにつきましても、補助金の事務局におきまして速やかに審査、採択の手続が行われるよう、国としても取り組んでまいりたいと思っております。

細田(健)委員 柔軟に対応いただけるという理解をいたしました。本当にありがとうございます。

 終わります。ありがとうございます。

高鳥委員長 次に、濱村進君。

濱村委員 公明党の濱村進でございます。

 本日は種苗法につきまして質問させていただきますが、この種苗法、第二百一回通常国会で提出された後に、その通常国会では審議できずで、今回、この臨時国会での質疑が行えるということとなりました。

 この間、どういう世の中的な反応があったかというと、当時、通常国会で質疑を行おうかと言っていたころに、社会的な反応としても、反応という意味では、反対のお声が非常に多く私の事務所にも届いていたというような状況でございました。

 ところが、農水省やさまざまな方々の努力もあって、その誤解が解けてきたのかどうかはわかりませんけれども、徐々にこの種苗法改正の本質というのが伝わっていったのかどうか、私の事務所に連絡が来るような内容も少し変容をしてきたところでございます。当時は反対反対ということで連絡が来ておったものの、これが慎重審議を求めるというような内容に変わってきたなというふうに実感しております。

 ただ、そうはいっても、非常に多くのファクスや電話、そうしたものをいただいておりまして、世間的な関心もあるのかなというふうに思っておりますが、私は、この点について非常に大きな誤解があったということを実感しております。そうした誤解も一つずつ解きほぐしていきながら、きょうは丁寧に質問をしたいというふうに思っております。

 今回の種苗法改正につきましては、栽培を行う農業者の皆様にとってどのような影響があるのかが私は重要だと思っております。これは、一般品種の場合と登録品種の場合、そして、大半の農業者は種苗というものを購入して、その上で栽培されておるところでございますけれども、種苗を購入している場合と自家増殖している場合とで、どういったところが変わって、どういったところが変わらないのか。農業者の皆様が誤解に基づく内容によって不安を覚えているところから安心していただけるように、ぜひともこれを大臣の方から御答弁いただきたいと思います。

野上国務大臣 まず、今回の種苗法改正でありますが、日本の強みである植物新品種の流出を防止することによって日本の輸出競争力を確保する、また、保護を通じて知的財産を守って、産地形成を後押しする、そして地域の農業の活性化に資するものでありますので、農業者のための改正だというふうに考えております。

 自家増殖を許諾制にすることについては、在来種も含めて品種登録されていない一般品種を利用している場合は、この法改正による影響は全くありません。また、登録品種を利用している場合であっても、ブランド化等を図る産地で種苗を購入して栽培している農業者への影響もありません。特に、米などのブランド化を目指す新品種につきましては、品質管理の観点から既に、種苗を購入することが求められ、自家増殖が行われていない実態があります。

 なお、一部の果樹等では登録品種を自家増殖されている方もいらっしゃいますが、海外に流出することによる産地の損失も大きくなることが懸念をされますので、法改正後は許諾に基づいて自家増殖をしていただくことが必要であると考えております。

 いずれにしても、このことについてしっかりと周知を進めて、優良な品種を守る取組が進むということを期待しております。

濱村委員 ありがとうございます。

 一般品種については全く影響ないということ、そしてまた登録品種についても自家増殖するに当たっては許諾が必要ということでございますけれども、そうした事実に基づいてしっかりと今後も農業者の皆さんが生産活動をしていける、こういう法案であろうと思っておりますし、そもそも種苗における知的財産権をしっかり管理していこうということ、それが今までなされていなかったこと、そしてその結果国外に流出してしまっていたこと、こうしたところを防止しようというためにやっているわけでございます。

 海外との関係でいいますと、少しUPOV条約についても触れておきたいと思うんですけれども、植物新品種保護国際条約ということでございますが、これは、新しく育成された植物品種を各国が共通の基本原則に従って保護することにより、すぐれた品種の開発、流通を促進し、もって農業の発展に寄与することを目的としているというふうに認識しております。新品種の保護の条件とか権利の効力、最低限の保護期間、内国民待遇等の基本的原則を定めておられます。

 育成者権者が登録品種の種苗を譲渡し、その種苗を海外に持ち出しますと、加盟国に対しては育成者権が及びませんし、非加盟国には育成者権が及ぶということになるんですが、そういうことになりますと加盟国に対して登録品種の流出をとめることはできないと考えますが、正しいのかどうか。そしてまた、種苗法改正によって登録品種の流出にどのような効果が期待できるのか。局長に確認します。

太田政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、現行種苗法第二十一条第四項という規定がございまして、譲渡された登録品種の種苗には育成者権が及ばなくなることとされているという規定がございます。それは、譲渡された種苗であっても、当該登録品種につき品種の育成に関する保護を認めていない国、すなわちUPOV非加盟国については種苗を輸出する行為について育成者権が及ぶということになっております。すなわち、これ以外の国、UPOV加盟国につきましては登録品種の種苗を購入した場合には育成者権が及ばなくなるために、UPOV加盟国に持ち出す行為に制限がかからず、流出をとめることができないということになっております。

 今回の改正におきましては、育成者権者が出願時に輸出制限を付す旨の届出をすることによりまして、全ての国に対して登録品種を輸出する行為には育成者権を及ぼすことができるようにすることとしておりまして、持ち出しに制限がかかることから、流出防止に大きな効果が期待できると考えております。

 なお、UPOV条約では育成者権者の意思により登録品種の海外持ち出しを制限するということは認められておりまして、今回の改正案はUPOV条約と整合すると考えております。

濱村委員 輸出制限をしっかりしていきながら、大事なことは海外で権利行使ができるかどうかということだと思っております。海外での品種登録も非常に重要でございますので、しっかり支援をしていっていただきたいというふうに思います。

 もう一点。誤解の一つとして、自家増殖一律禁止というキーワードが非常に多く、インターネット上、あるいは私の事務所にたくさん来るファクス等でも記載されておりました。自家採種というような言葉も多かったわけですけれども、これは大きな誤解だというふうに私は考えております。正しくは、登録品種の自家増殖は許諾に基づいて可能だということでございます。

 許諾を得ることが農業者にとって費用、手続で過剰な負担となると、結果、自家増殖ができないじゃないかという御主張をされる方々もおられるわけでございますけれども、私はそういうことがないというふうに願っておりますし、そのようなことにならないというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。局長に伺います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のとおり、自家増殖につきましては、一般品種を用いる場合には許諾も許諾料も必要はありません。また、登録品種を用いる場合にも、育成者権者から許諾を得れば自家増殖を行うことは可能でございます。

 この許諾料につきましては、まず、農研機構や都道府県につきましては普及することを目的として品種を開発しておりますので、農業者から営農の支障となるような高額の許諾料を徴収するということは通常ありません。また、民間の種苗会社も農研機構や都道府県の許諾料の水準を見ており、著しく高額な許諾料となることは考えにくいと思っております。

 また、許諾の手続が負担とならないように、JAなど団体等がまとめて許諾を受けることが可能となっております。さらに、個人の農業者が許諾を得る場合でも、簡単に手続ができるように、許諾契約のひな形を示してまいります。

濱村委員 自家増殖と増殖の違いについても触れておきたいと思います。

 例えば、イチゴとかカンショ、バレイショ、あるいは果樹、ミカンとかリンゴとかブドウとか、そうしたものでございますけれども、こうしたものの栽培の過程においては、どうしても増殖という行為が必要ということになっております。増殖してから栽培して収穫する、そうしたプロセスを経るようなものとこの自家増殖という境目がなかなか判然としなかったということで、私も当初混乱したところもあったんですけれども。

 これらの増殖と自家増殖、この二つについては収穫物をとるかどうかで区別されるというふうに思っておりますけれども、登録品種の場合は許諾についてどのように整理をされているのか、現状と法改正後でどのように変わるのか、この点を伺いたいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 種苗法における自家増殖につきましては、農業者が種苗を用いて収穫物を生産し、その収穫物を自己の農業経営において更に種苗として用いる、こういった行為でございます。

 例えば、イチゴやサツマイモにつきましては、御指摘のとおり、農業者が原種苗や種芋を入手いたしまして、農業者自身が種苗を必要数増殖した上で収穫物を生産しておりますけれども、これは自家増殖とはならない増殖行為ということでございます。

 このため、農業者は増殖のための許諾が得られている種苗を購入しているということが一般的でございます。このような場合、法改正後も農業者が新たな対応をとる必要はありません。

 他方、果樹などでは、苗木を収穫物の生産前に種苗用に切断して苗木の材料あるいは高接ぎに使用するということは自家増殖とは認められない増殖となりますけれども、収穫物の出荷が開始された後に剪定した枝を種苗として利用する場合には、やはり自家増殖ということになります。

 果樹では、海外に流出することによる産地の損失も大きくなることが懸念されますので、法改正後は許諾に基づいて自家増殖していただく必要があります。このことにつきましては、今後、現場に丁寧に周知を進めてまいります。

濱村委員 これはしっかりと分けた上で、この考え方もしっかり整理して、農業者の皆さんに伝わることを願っております。

 続いて、特性表について伺いたいと思いますが、新品種として登録するという行為自体は、開発の経緯の調査と、既存の品種と違うという区別性、均一性あるいは世代間均一性が担保されなければならないというふうに認識しておりまして、こうしたところをクリアして、登録要件を満たして初めて品種登録されて、育成者権が発生するということとなるわけでございます。

 この育成者権を活用できる環境整備も非常に重要でございます。法第三十五条の二で、品種登録簿に記載された特性、いわゆる特性表でございますけれども、と被疑侵害品種の特性を比較することで両者の特性が同一であることを推定する制度が創設されまして、これによって、苦労して新しい品種を登録することができた育成者権者が他者からの侵害を立証しやすくなるといったメリットが生じるわけでございます。

 これがありますとどういう影響があるのかというのが重要でございますが、私はこれは、どちらかというと開発力の弱いような農業者が育成者権者になったとしてもその知的財産の保護は十分に可能となるというふうに考えておるわけでございますが、農水省の所見を伺いたいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 現行の種苗法のもとでは、育成者権の侵害を立証するには、品種登録がされた当時の登録品種の種苗を長い場合では二十年以上も保存しておき、この種苗と侵害が疑われる品種の種苗を実際に栽培をして比べることしか方法がなく、オリジナルの種苗が失われたり経年変化により変質した場合には育成者権の適正な保護が難しいという課題がございます。

 一方で、品種登録制度では、出願された品種と類似する既存品種の比較栽培を行った上で、植物種類ごとにそれぞれ五十から百項目程度の、大きさや色といった外形的な性質や、病害特性や耐暑性といった生理的な性質を記録した特性表を作成し、審査を行っております。

 今回の法改正では、侵害が疑われる品種をこの特性表と比較できるように措置するとともに、あわせて農林水産大臣がこの比較を行い、育成者権が及ぶ品種かどうかを判定することができる制度を措置しております。これによりまして、必ずしも品種登録時の種苗を長期間保存しておくというような資金力のない個人育種家あるいは農業者が育成者権者となった場合であっても権利行使がしやすくなり、新品種の保護の実効性が上がるというように考えております。

濱村委員 そうした意味においては、比較的資金力に乏しいような方々でも十分に守られるということでございます。

 最後の質問にしたいと思いますが、法第二十一条の二、一項二号で、育成者権の効力が及ばない範囲の特例として、出願品種の産地を形成しようとする場合が規定されております。これはどういった取組を支援するための規定なのか、伺いたいと思います。

太田政府参考人 お答えいたします。

 現行の種苗法第二十一条第四項では、譲渡された登録品種の種苗には育成者権が及ばないとされておりまして、都道府県が地域農業を振興するために開発した品種であっても、他県の農業者の手に渡り、意図しない地域で栽培されたときに育成者権者はこれを制限することはできないところでございます。このため、せっかく開発した都道府県ブランド品種であるにもかかわらず、品質管理が行き届かない地域で栽培され、産地化、ブランド化の取組の支障となってしまうおそれがあります。

 そこで、今般の改正ではこういったブランド品種の指定地域以外での栽培が制限できるようになることといたしまして、それは都道府県の産地化、ブランド化の取組の後押しとなり、また都道府県による品種開発意欲を高める、こういったものであると考えております。

濱村委員 もう時間ですので質問を終わりますが、私もこの種苗法改正に当たって、私は地元が兵庫県でございますので、山田錦の育成者の方にお話を聞きました。種苗法をぜひやってくれと。その上で言われたのが、山田錦も兵庫県産だったらまだ品質は割とそれなりのレベルを保てるが、県外に出ていったものが保てないんだというような話もございました。そうした取組も、産地形成の取組でしっかりと品質を担保できるということで、非常に重要な取組だと思っております。

 私はこの種苗法をぜひとも速やかに改正するべきだと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で終わります。ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、篠原孝君。

篠原(孝)委員 おはようございます。篠原でございます。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 濱村さんは、どうしても改正が必要だと。私も、その点では全く一緒でございます。どういうところが一緒かというと、海外に流出するのを防ぐという点では誰も反対する人はいません。しかし、しかしですよ、そっちはいいんですけれども、そのために何をするかというのを、そこのところが相当おかしいんじゃないかと思います。

 まず、いつも出てくるんですよね、いろいろな資料にも出てきます、海外に流出していると。サクランボ、紅秀峰ですが、それがオーストラリアに渡った、だから自家増殖を禁止しなくちゃいけないんだと。こればかり出てくるんですね。こればかりだといけないので、シャインマスカットとかなんとか、いっぱい出てきますけれどもね。

 海外流出の原因が登録品種の自家増殖を認めていることにあるのかどうかです。こんなことはないと思うんですが、この点、大臣、いかがでしょう。ほかにあるんですか。この一つをもって、一罰百戒で、目のかたきにして、これだけを攻撃して直すのは、ここは絶対反対です、私は。いかがでしょうか。

葉梨副大臣 紅秀峰の話ですけれども、非常にこれは特殊なケースでございまして、オーストラリアで産地化されて、それが日本に再輸出されそうになったということでわかったものでございます。

 他国に日本の種苗が流出しているのではないかというふうに疑われる例というのはインターネット等々を見ても非常に多いわけでございまして、事態を看過することはできないです。違法でないものを、実際に一例しかないじゃないかという点、じゃ、ほかの例は、どういうようなところからどういうふうに渡ったかとわかっているかといったら、なかなかこれは、私は警察におりましたので、調査するというのは難しいんです。

 ですから、そういった意味で、出口というか、出る口をとめていくということがやはり必要である。そして、海外流出のルートというのは市中で流通する種苗と農家の自家増殖と二つあるわけですけれども、それぞれ合理的な範囲で規制を行っていくということが、海外流出をとめる、やはりそういう道なんじゃないかというふうに思っています。

篠原(孝)委員 難しいんですよ、これは。和牛の遺伝資源の保護法、これは楽ちんですよ、言ってみれば。冷凍保存しなくちゃならないので、そう簡単に海外に持ち出せないから、チェックできるんですよね。悪意があれば幾らでもできて、ポケットに種を突っ込んでいくだけでもいいですし、輸出先で種をとって栽培しよう、そういうことが幾らでもできるわけです。

 ですから、これは世界の常識ではどうしているかというと、農家のところにしわ寄せを寄せるんじゃなくて、やはり品種登録をして、そうして育成権者がちゃんと裁判を起こしてチェックしてということをしているんですよ。

 それで、私は資料をお配りしてありますけれども、ちょっとページを打つのを忘れまして、済みませんけれども、四ページ目を見てください。ここに我が国の登録件数の推移があります。後でも出しますけれどもね。

 まず、一番下。一番下に「外国育成」「うち登録」と書いてありますね。外国の方が多いんですよ。例えば、一番多いのは、平成二十九年、二〇一七年には、七百九十五のうち二百八十七、三六%が外国法人なんです。

 日本が一体どれだけ外国で品種登録をしているかというのは、物すごく少ないんですよね。二〇二二年までに百件とかいって、どこかに数字が出ていましたよ。やはり、ちゃんと登録してちゃんと防ぐということをしていなくて、そのしわ寄せを農家にだけ寄せるというのは法体系として間違っていると思います。

 いろいろなものがあるんです、いろいろなルートがある。ほかに考えられないのか。税関でチェックするとか、植物検疫というのは農林水産省の権限としてありますよ、そういったところでチェックするということ。あらゆる手段があるはずなのに、違法な栽培が野方図になっている。それを日本の農家の、典型的な例ですと、角を矯めて牛を殺すというようなことをしているわけです。私は、これはやってはならないことだと思います。ほかにやることはいっぱいあるんです。これだけでやっているというのはおかしいんじゃないかと思いますけれどもね。

 どうしてこんなふうになっているかというと、私は非常にこの一点はよくないと思っているんです。アベノミクスの農政改革で、農協法とか農業委員会法とか全中がどうのこうのとやってきました、農業競争力基盤強化法と。何を書いてあるんだかわからない、変な論理ですけれどもね。だけれども、そこは農家を直接どうこうするというのはありませんでした。農協とか農業委員会の構成をどうこうというのは、そこはある程度目をつぶります。

 しかし、農家や漁業者、漁民に手を突っ込み始めた。二〇一八年の漁業法の改正がそうです、漁業権漁場、漁業権の。有効かつ適切に活用していなかったら漁業権を与えないとか、漁業をやったことのない人たちも漁業に参入できるとか、そういうふうになってきているんです。

 今度はこれです。農家は、いろいろな農家がいます、ですけれども、自分で種をつくって、そしてこれを来年につなげるというのは当然のことです。今問題になっている高収益作物次期作支援事業ってあるじゃない、次期作を支援するのが政府の役割ですよ。次期作を全然支援しないで、次期作のことを考えて種をとっちゃいけないというんだ。それはないと思うんですよ。ここがおかしいので。

 この一点がこの法律の間違いなんです。規制緩和といいつつ、規制を少なくするといいつつ、農家には種とりをしてはいけないというのは、これ以上の規制がありますか。大矛盾なんです。だから僕はこれに反対で、一番バッターに、別に頼んだわけじゃないんですけれどもね。ぎゃあぎゃあ言って、なのでやってくれということになって、やっているんですよ。だから、その声に応えなければいけません。この一点が問題なんです。よく考えていただきたいと思います。

 例えば、言いますと、ちょっと宣伝させていただきます。細田さんも新潟のことを言っておられましたしね。

 信州りんご三兄弟というのがあるんです。秋映、これは私の地元中の地元、中野市のリンゴ農家、個人的にも知っている人です、小田切さんという方が育種をされたんです。その後、長野県の農業試験場、シナノゴールドとシナノスイートとあるんですよ。農家も入っている。農家も実は大事な育成者なんです。その芽を摘むことになるんですよ。だから、これは絶対にやめていただきたい。

 ほかにも、これまた地元のことで恐縮ですけれども、京菜ですね、京都のお菜が、菜っぱがあちこち行く。遺伝学者とか、学者によると、それが広島の気候風土に合って、そして特産物になったのがタカナだ。そして、長野県の寒いところ、雪深いところに行って、私のところの隣の隣、私の選挙区ですよ、野沢菜になっておる。誰がやったのか。企業とかそんなのじゃないですよ。農家が地道に、いい種を、そこの気候風土に合わせて育成していったんです。

 登録品種だ、いや登録品種じゃないとか言っていますけれども、登録品種がだんだんふえていくと、種のところに、これは登録品種にした、これは非登録品種なんて書いてあるんですか。そんなことに一々おどおどしながら農家は種の選別をしたり育種をするんですか。そんなことをさせちゃいけないと思いますよ。そこを問題にしているんです。

 自家採種は大事な農民の権利なんです。漁業者がずっとやってきた海で、地先の海で漁業をやるのも漁民の権利です。それをほかの人に渡すということをし始めた。僕はこれは絶対許せない。組織的に、さっき言いましたけれども、農業委員会とか農協とか、そこをいじくるのはまあいいですよ、それだってそんなにしなくたっていいんですけれども、そうするんだったらそれでいいんですよ。農家がやることを、漁業者がやることを、これをやっちゃいけないと、やらせないというのは、私はやってはいけないことだと思っているんです。

 次ですけれども、登録品種が少ないから大丈夫だというのをよく言いわけで聞かされるんです。しかし、こんなのは簡単に打ち砕かれると思うんですね。米で今一六%だとか言っていますが、優良品種ですと、反対している人たちには、半分以上はもう登録品種だと言っている人もいます。特に地域特産物とか、その地域の特産物は、大半が登録品種になっているものが多いんだと思います。地理的表示、GIで守るというのは、それはそれでいいでしょう。しかし、ほかの地域でつくっちゃいけないというのは、品種改良をしてはいけないというのはアウトです。

 なぜかというと、生物多様性条約があります。さっき言いました、片やタカナになり、片や野沢菜になる、そういう道を閉ざしてはいけないんですね。自由にやらせておくのが一番いいんです。そういう点では、変な規制がない方がいいという正論は正しいんです。

 私は、十年後、二十年後に登録品種が半分以上になっていると思います。そして、農家の経営を圧迫すると思うんですけれども、この点についていかがでしょうか。

池田大臣政務官 委員は専門的な見地から御意見をお述べになりましたけれども、農家による品種開発というものは、御承知のように、種苗法上も、新たな品種の開発を目的とした品種の利用については育成者権の効力が及ばないということとされております。

 また、今般の法改正は、新品種の保護を充実させることで、個人育種家も含めて品種開発のインセンティブを高めて品種の開発を促すものであり、農業の発展の支障とはならないと考えております。

 そして、自由に使えます一般品種の選択肢もある中で登録品種の利用がふえることは、すぐれた新品種が農家に選択され、普及が進んでいることを意味するものと考えられ、生産性の向上や付加価値の向上などが期待できることから、決して悪いことではないというふうに考えております。

 以上でございます。

篠原(孝)委員 池田政務官の答弁の中で、正しいものがあるんですね。登録品種でもってきちんと品質を安定させていくという点、これは正しいことだと思います。だから、主要農作物種子法でもって米、麦、大豆等についてはそれを堅持していたんです。そうじゃないと、変な種で、変なものになっていって、変なふうになっていっちゃうんだから。ウイルスじゃないですけれども、変わっていくんですね、変異していくんですよ、途中で。だから、ちゃんと品質を一定に保つというのは大変なことで、それは種苗業者の皆さんあるいは農家にきちんとやってもらわなくちゃいけないということです。

 だからといって、もとに戻りますけれども、自家増殖を登録品種で全面的に禁止するというのはおかしいんです。

 じゃ、またもとに戻りますけれども、海外流出を防止するというんなら、ほかの対策を考えたんでしょうか。それをこの種苗法の中に入れたりしたんでしょうか。あるいは、種苗法じゃなくてもいいですよ、税関だ、植物検疫だの、そのところで何とかしようということを検討したんでしょうか。ほかに方法があると思うんですけれども。

野上国務大臣 今、先生の方から、何かほかの手法で流出をとめることを検討していないのかという話でございましたが、登録品種が海外に流出するルートとしましては、市中に流通している種苗、それともう一つ農業者が増殖している種苗の二つが考えられると思いますが、市中に流通している登録品種についてのみ措置をするということになりますと、今度は農業者個人の増殖種苗が狙われることになるため、自家増殖についても手当てをしなければならないと考えております。

 これまで育成者権の侵害物品は水際での管理対象となっておりますが、今般の改正では、輸出先に制限がある登録品種を持ち出す場合には例外なく育成者権の侵害物品となることから、輸出差止め申立て制度の利用を通じて、事前に持ち出しの動きを察知して税関で差し止めることも可能となるため、水際対策も強化をされるものということになります。

 また、法改正をしても、万一海外に持ち出された場合に、その国での栽培や流通を差し止めなければならないことには変わりありませんので、これは予算面での、他国での品種登録、これの支援をして、これは引き続き進めてまいりたいと思います。

 これらさまざまな措置をやっておりますが、これらを組み合わせて流出防止に取り組んでまいりたいと考えております。

篠原(孝)委員 組み合わせていろいろやってください。

 どうも日本国政府は、変なものが入ってくるのにはなかなか厳しいんですね。入国管理難民法で、皆さん御存じだと思いますけれども、感染者を入れないんです。ところが、感染者ならぬ、感染のおそれがある人も入れないんですが、おそれもない、そこを通過しただけでも入れないとかいって、銃剣類、麻薬類というのは物すごく厳しいんです。サッカーのフーリガンというのが、日韓ワールドカップサッカーをやったときも、日本のそういう入り口で厳しいというのは知られていますから、ヨーロッパ諸国でもってワールドカップをやると騒ぐ人たちが来て大問題になっているんですが、日本の当局の厳しさに恐れおののいて、遠くて飛行機代がかかるというのもあったかもしれません、来ませんでした。

 しかし、出ていくのに対してはルーズなんですね。典型的な例なのがカルロス・ゴーンです。全然、あんなのにだって逃げられているわけです。種苗も、ゴーンに次ぐ、逃げられて、簡単に出しているものだと思いますよ。これは、びしばしやっていただきたいと思います。ぜひ考えて、検討していただきたいと私は思います。

 次ですけれども、主要農作物種子法の廃止以来、どうも何か、官から民へ、官から民へという動きが多過ぎるような気がするんですよ。これで、これもまたよくわからないんですが、民間に、民間にと。これは余りよくないことじゃないかと思うんです。

 政権がかわったんです。安倍さんは、日本を世界で一番ビジネスがしやすい国にするんだ、自分はその岩盤を打ち砕くドリルになるとかいって、格好いいことをおっしゃっていました。だけれども、今度のコロナ禍でわかったと思いますけれども、官がやらなければならないことはいっぱいあるんですよね。そして、外国に任せてならないものはいっぱいある。例えば、我々みんながやっているマスクですよ。今はみんなやれていますけれども、マスクが手に入らなかったんですよね。やはり、必要なものは国でやらなくちゃいけない、日本国でやらなくちゃいけない。

 それを、さっき言いましたように、種も外国人は登録しているんですよ、ほかの国は。日本がいい市場だから。だけれども、日本に必要なものは日本できちんと品種改良をして、登録して、そして外国に出さないようにしていかなくちゃいけないと思うんですけれども、どうもこれについて認識が甘い。車やITは民間企業がちゃんとやりますよ。しかし、農家が研究できない。さっき、ちょっと矛盾しますけれども、育成者になり得るんだ、農家もと。だけれども、それは限度があります。

 世界じゅうどこでも、品種改良などというのは、国の試験研究機関。それから、私はアメリカに留学させていただきましたけれども、アメリカの大学には、大半は州立大学で、ランドグラントカレッジというので、田舎にあって、必ず農学部があって、そこに研究所があって、農業改良も普及も全部大学とセットです。種の開発も、その州に合った種を開発しなくちゃいけないから公的機関がやっているんですけれども、アメリカというと何でも民間ビジネスで、モンサントなんてそういうのがすぐ出てくるんですけれども、違うんです。日本はそこの姿勢が間違っていると思います。

 この点について、政権もかわったことだし、直していっていただきたいんですが、この点についてはいかがですか。

葉梨副大臣 その点は、国において例えば農研機構、それから都道府県において種子の確保というのはそれぞれ予算措置をいたしまして、我々も、評価の違いはあるかもわかりませんが、一生懸命やらせていただいておるわけです。

 それで、今お話のあった農業競争力強化支援法というのは、当然、都道府県や国がやることはもちろんのこととして、やはり、種子、種苗、そういったものの研究としては民間にも頑張ってもらおうということがございます。

 そこで、平成二十九年八月施行ですけれども、四百二十件の知見が提供されて、提供先は、外国ということではなくて、国内種苗事業者、国内の大学、JA、県内農家などに提供して研究をしていただいているということでございまして、我々の立場としては、当然国もやるし都道府県もやるし、それと相まって、民間もあわせて、産学官一緒になって新しい開発に取り組んでいく、そういう考え方で進めさせていただいているわけです。

篠原(孝)委員 民間にやっちゃいけないと言っているんじゃないんです。やっていただいていいんです。だけれども、民間に任せるところと国が責任を持ってやるべきところがあると思うんです。

 またさっきの四ページ目の登録件数の推移の表をちょっと見てください。圧倒的に登録件数が多いのはどこかというと、草花なんですね。それから観賞樹。外国は、このもうけの種、花ですよ。花や食料安全保障に直接影響がないもの、そういうところは例えば民間にどんどんやってもらっていいんですね。

 ところが、一番上の食用作物、少ないですよね、そんなにもうけにならない。これもよくないことかもしれません、ある程度日本人はおいしい米を求めるからしようがないですけれども、多収穫米よりも食味がいいのを、どこの試験場も、県の試験場もそっちに走っているということです。それはしようがないと思いますけれども、食料安全保障のことを考えたら多収穫米も必要だ。

 皆さん、農業新聞を読んでおられると思います。一週間ぐらい前のところに、中国が十アール当たり二・三トンの多収穫米に二期作で成功したと書いてありました。それは、国を挙げてハイブリッドの父と言われる研究者にお金を出してやっているからなんです。日本にはそういう姿勢が見られないんですね。これは僕は非常によくないことだと思います。

 民間、民間といいますけれども、僕はこの仕事に、ちょっとずつですが、農林水産省で三十年間携わったことがあるんです。

 まず、一九七八年に種苗法ができたときに、松延洋平さんという元気のいい人がおられまして、種苗法をつくるんだとやっていました。私は、わけがわからなかったですけれども、アメリカの留学から帰ったばかりで、それを手伝いました。

 それから、技術会議の研究総務官というときに、僕は筑波の研究者の考え方にほれぼれしたんです。

 どういうことかというと、そのときに、職務開発品種というので、それを登録して、お金をもうけなくちゃいけない、独立行政法人化するんだと。種苗法で登録して、お金をもうけて、そしてそれを次の研究に役立てなくちゃと。国がみんな出していたんです。私は、こんな研究ぐらいはお金を国が出してもいいと思います。そう言っていると言ったら、財務省の主査が、だから農業関係者はみんな経営感覚がないんだ、金銭感覚がないんだと言いました。僕は怒りました。

 どうしてその研究者がそう言っているかというと、自分の研究開発、品種改良をした種、好きな研究をさせてもらってでき上がったこの種は一日も早くみんなに使ってほしい、それが願いだ、役立ててほしいと。それでお金をどうこうというのは、国が日本のために、あるいは世界だっていいと言ったんです、使ってもらいたいんだと。立派な研究者だと思います。

 特許の世界で、皆さん覚えておられると思います、何という会社か忘れましたけれども、中村修二さんという、中村ダイオードですね、LEDで。自分にも特許料をよこせという、大燃えに燃えたのがあります。

 それから、美しい話では、大村智教授の、北里大学の先生で、イベルメクチンでメルク社と提携して、あちらは特許料がいっぱい入ってくる、それでもって北里大学の研究費を捻出し、病院までつくり、地元に美術館まで寄附しているという人がいます。しかし、その人たちも、自分のお金で云々じゃなくて、大村さんの感動的な言葉ですよ、私は微生物の力をかりただけだと。それでやって、全部社会に貢献している。

 研究者なり品種改良をした人たちは、そういう公徳心を持つべきだと思います。だからといって、研究費が事欠いたりするのはいけないし、フリーライダーを許していいとは言っていませんけれども、どこか感覚がずれているんじゃないかと思うんです、私は。

 民間企業に、民間企業に。明治時代じゃないんですよ。明治時代に官の民間への払下げで、政商というのは日本史でも習われているけれども、今はそういう時代ですか。放っておいたって、民間はもうけたり、草花や観賞樹についてどんどん研究開発をしますよ。しかし、国の根幹、食料安全保障に必須な米とか麦とか大豆だとかには国がやっていいはずですし、国しかやっちゃいけないというふうにしたっていいぐらいだと私は思います。そんなものを民間にやらせていったら、二倍、三倍の種代を払わされるんじゃないかと思います。

 一番最初の表を見ていただきたいんですが、どういうふうになっているか、よく頭の中を整理していただきたいと思います。種苗の現行法と改正法、それから国際条約との比較です。

 農業者の権利と育成者の権利。誤解しないように。私は育成者の権利はどうでもいいなんて一言も言っていないです、守るべきだと思います。だからといって、その反対でもって農家の首を絞めることがあってはならない。

 現行の種苗法は、一定の場合を除き育成者の許諾を必要としないんです。当然だと思います。先人は賢いです。農林水産省の先輩は賢かったんです。私もその中に含まれると思いますけれどもね。しかし、自家増殖に許諾が必要になってくるんです。

 国際条約はどうか。完全に日本の流れは世界の流れからずれているんです。

 UPOV、これは一番の原則の条約です。原則として許諾を必要とする、しかし、農業者の自家増殖を育成者の正当な利益を保護していれば認めるんだと言っているんですよ。どこも柔軟なんですね。

 それに対して、ITPGR、食料・農業植物遺伝資源条約、これに日本も加盟しています。そこは、農業者の権利を保護、促進すべきだと。それからその下、線を引っ張ってありますが、種子、繁殖性素材を国内法に従って適切な場合、保存、利用、交換、販売する権利を制限しないという。

 そして、小農の権利宣言、日本は棄権しているんですよね。ずれていると思うんです、こういうところは。種子への権利を有する、それから、小農と農村で働く人々の権利、ニーズ、現実を尊重し、それらを踏まえたものにする、種子政策を。

 国連は、家族農業年、協同組合年と。みんな協同に、お金、お金、お金というんじゃなくて、協同でもってやっていく、家族が大事だ、小農が大事だというふうに言っているのに、日本は小農を切り捨て大規模へと変えてきた。これも誤解しないでいただきたいが、大規模化が悪いなんて言っていないんです。いいんだけれども、だからといって小農を切り捨てるようなことをしてはいけない。EUも、どの国も、世界も、小農をちゃんと保護するという方にやっていっているんですよ。

 この法律は、そういう点では非常に偏った法律になっていると思うんですけれども、大臣、そうは思われませんか。農家に対する思いが感じられないんです。

野上国務大臣 今、先生の方から、UPOV条約、また国連の小農の権利宣言等々、資料で言及をいただいたわけでありますが、このUPOV条約は、自家増殖にも育成者権が及ぶことを原則とする、この資料のとおりでありますが、その一方で、合理的な範囲で、かつ育成者の正当な利益が保護されることを条件として自家増殖に例外を設けることが認められておりますが、これは各国の裁量によるものでありまして、今回の法改正はUPOV条約に即したものであると考えております。

 登録品種の海外流出が問題となっておりますので、今回の改正におきましては、自家増殖による種苗が海外流出の原因とならないような措置を講じることとしたものでありまして、これは農家の利益を守るということにもつながっていくというふうに考えております。

 なお、自家増殖については全て育成権者の許諾が必要となることとしておりますが、農家による登録品種の自家増殖を一律禁止するものではない、許諾のもとで自家増殖を行うということであります。

篠原(孝)委員 資料の二ページを見ていただきたいんですが、これは僕がつくろうとしたんだけれども、「現代農業」が農林水産省がつくるよりもずっとわかりやすくつくっていてくれたので、それをそのままコピーしてきました。種苗法をめぐる年表です。

 右側に、自家増殖してはいけない禁止品目の数がだんだんふえていると。二〇一七年に突然ふえているんですけれども、どうしてこうやってふやしてきたのか。ここからが大事なんですけれども、三ページを見ていただけますか。

 二〇一五年に自家増殖に関する検討会というのを開いた。これはおもしろいんですよね。主要農作物種子法は、規制改革推進会議そして未来投資会議が合同で会合を開いて、えいやでやって廃止したんです。そこでさんざん文句を言われたので、いや、農林水産省でやっているということで、それは真面目ですよ、農林水産省が主導権を握ってやってきた。これで、ややこしく書いてありますけれども、登録品種の自家増殖に育成権者の効力を及ぼす植物の基準というのを、つまり、だめだという品種をどういうふうにするかというのを、A、B、C、Dと。

 ここはちょっと見ておかしいと思うんですけれども、Bのところを見てください。現在有効な登録品種がない植物について効力が及ぶというふうにしているんですよ。皆さん、矛盾にすぐ気がつかれませんか。登録品種をやたら自家増殖されるとよくないから禁止するといいながら、登録品種がないのを自家増殖しちゃいけない禁止品目にしているんです。矛盾じゃないですか、これは。どうもそういうところがおかしいんです。

 そして、Cに新たに栄養繁殖と。これは挿し木や何かです。そして、ここにはクローン技術の進展があるはずなんです。種で繁殖したりするのは、種を選んだりしているから自家増殖を禁止にしていなかったのに、栄養繁殖とかややこしいことを言っていますが、挿し木、接ぎ木の類いで、葉っぱからすぐ出てくるとかそういうのがあるから、見てください、大根とかニンジンとかも禁止になっているんです。

 だったら、それであつれきがないんだったら、私の提案、我々の提案ですけれども、この延長線上で、種苗会社が自家増殖されては困るのは、この線に沿ってふやしていけばいいじゃないですか。それを一律で、全部禁止なんていうのを何でするのか。誰がそういうことを考えるのか。

 私だったらそんなことをしませんよ、徐々にしていきますよ。そして、すったもんだしたら、それを外して、いや、自家増殖をやってもいいでしょう、あなたたちも自家増殖に手をかしてくださいというふうにやりますよ。だから、ちょっと農家を痛めつけ過ぎているんですよ。

 種というのは大事なんです。もうずっと前からですけれども、石油会社が種に投資しているんです。石油でずっともうけてきた。駄じゃれみたいになりますけれども、石油会社が石油化学会社になり、肥料、農薬をつくり、農業のところへ興味を持ち始めるんです。そして気がついたのが、今度の飯の種は種だという、石油じゃないと。だからそこに投資し始めたんです。だから、ダウ、デュポン、シンジェンタ、モンサント、みんな種に相当熱心ですよ。この人たちに日本の種を牛耳られていいんですか。私は許しますよ、花とか観賞樹だったらいいですけれども。米、麦まで手を突っ込まれてはたまりません。

 だから、発想を変えていただきたいんです。どういうことをしていただきたいかというと、この提案について聞いていただきたいんですけれどもね。

 長野県の中山間地域に採種農家がいっぱいあったんです。どうしてでしょうか。天然の隔離施設です。だから変な花粉が飛んでこないんです、だから純粋な種ができるんです。だったら種会社が、タキイやサカタ、野菜についていっぱいやっているんです、ノウハウがある、技術があるというんだったら、中山間地域の活性化のためにそこに投資して、そこで、日本で種をつくってもらったらいいじゃないですか。今このままでいったら外国から、飛行機も飛んでいないし、港でいろいろありますから、種が入ってこなくなるかもしれません。マスクと同じように、日本でつくっておかなければならないかもしれないんです。

 この点について、大臣、どうお考えになりますでしょうか。中山間地域、地方創生の一つの大きな材料だと思いますけれども。

野上国務大臣 今先生の方から、種を中山間地域等々で、生産地としてその振興に役立てるべきではないか、こういう御趣旨の話がございましたが、これは御案内のとおりで、農作物の種子については、当然、適地適作が重要であります。病気に汚染されて、目的とした形質とか性質を発揮できなくなるということがあってはならないということで、適地適作でしっかりと生産をしていくということが必要だというふうに考えております。

 中山間地の中でも、例えば、高温多湿傾向であったり病害虫も多いところ、あるいは、植生が豊かであることから種子を得ようとする作物との近縁種が存在しない環境をつくり出せない、今、種が飛んでくるという話がありましたが、そういう環境がつくり出せなかったり、また、狭い土地に多くの品種が栽培されており交雑防止が困難である、あるいは、高い生産技術が必要でありますので高齢化が進展する中で担い手の確保も困難であるといったさまざまな問題があって、産地を確保するというのは容易ではありませんが、一方で、国内での種子生産は大変重要なことだと考えておりますので、農林水産省としても、種子の生産技術の継承、さらには生産組織の確保等に支援を行ってまいりたいと考えております。

篠原(孝)委員 私がなぜこれにこだわるかというと、外国の企業は目ざといです、日本に照準を合わせています。F1は自家増殖したってだめなんですね。だけれども、今はゲノム編集でもって新しい品種をつくれる、これは栄養繁殖でできるんです。それだったらというので、それを囲い込まなくちゃというので、世界じゅうで品種登録をし始めているんです。日本はぼうっとして放ってあるんですけれども、そこのところをよく考えていただきたいと思います。

 それからもう一つ、最後。表をつくりましたが、この表はなかなか時間がかかったんですけれども、農林水産委員の農水委履歴。

 御自分が何回農林水産委員をやったか数えられたことはないと思いますけれども、十三回もやっておられる。宮腰筆頭理事もそうだ、十三回やっておられる。我が党では佐々木さんが、当選回数が半分の四回で、十三回です。ずっと農林水産委員会にいますから。この網かけは、五回以上農林水産委員会にいて、農政に思いをはせて、いや、初めての人とかがだめだと言っているわけじゃない、これから頑張っていただきたいということですけれども、これだけいる。つまらないんですけれども、野党と与党の五回以上率は、我が党、立憲民主党四〇%、自民党三一%、公明党半分です。これはいろいろあっていいんです、新人もいて、いろいろ意見を闘わすのでね。

 次のページが問題なんです。だけれども、気になさらないでくださいね、皆さんが悪いわけじゃないですから。任命権者がちょっとずれているだけです。

 びっくりしましたよ。ここによく立たせていただいているんです。農林水産大臣、農水委ゼロ。池田さんだけが別格で、八回もやっておられる。副大臣宮内さん、ゼロ。これはないと思いますね。菅内閣は、留任が八人、再任二人とか。だから、プロ化しているにもかかわらず、我が農水の農林水産省だけがこういう布陣です。

 同じようなことがあったんです。人の党のことは言いませんけれども。我が党が政権をとったときに、赤松さんは立派な政治家ですけれども、農水をやっていませんでした。しかし、右を見てください。副大臣に山田正彦、郡司彰、農水大臣になるような経験者です。そして佐々木さん、舟山さんがちゃんと支えていたんです。鹿野さん、二回だけですけれども、私も支えました。

 私も参考までに書いてあります。六期ですけれども、三回しかやっていません。これは皆さんに譲って、党の会合ではしょっちゅう出ていますけれども、余り目立たないように下支えをしているということなんです。ただ、こういう際どいときだけ、ちょっと僕がかわってやるんですけれども。

 ですから、これは、よく聞いてください、こういう状況ですから、政務三役の皆さん、ベテランの農林水産委員の皆さんの意見をきちんと聞いて農政を推進されることを最後にお願いしまして、質問を終わります。

高鳥委員長 次に、宮川伸君。

宮川委員 立憲民主党の宮川伸でございます。

 きょうは、種苗法の改正案について質問させていただきます。

 今、篠原孝先生の方からも農家を痛めつけ過ぎているという御発言がありましたが、私も、この改正に関して問題となってくるのは、農家さんの自家採種、自家増殖に制限がかかるということだと思います。

 そもそも農家さんが持っていた固有の権利という、その権利を抑制をするという部分でありますし、種苗法に関しても、今まで例外事項としてきっちり書かれていたものを、この例外を外そうというふうに動いているわけであります。

 何で農家さんが自家増殖、自家採種に制限を加えられなければいけないのか、ここをしっかりと説明する必要がありますが、大臣、改めてもう一度、なぜ必要なのか、御説明をお願いします。

野上国務大臣 自家増殖についてのお尋ねでありますが、先ほど来、山形の紅秀峰の事例が話題となっておりますが、オーストラリアに流出して、同国で産地化をされて、我が国に逆に輸出をされてしまったという事例が起きておりますが、やはりこれは、これまでの管理が緩過ぎたということだと思っております。

 現行法では、登録品種の増殖実態の把握ですとか疑わしい増殖の差止めですとか、あるいは刑事罰の適用、損害賠償に必要な故意や過失の証明、これが困難となっておりますので、海外持ち出しの抑止が困難となるということであります。

 現行法では自家増殖を行っている農家に対しまして海外持ち出し防止などの利用条件を知らせる方法がありませんし、また、農家にとっても、自家増殖に際してどのような制限があるのかを示すことが重要と考えております。このため、登録品種の自家増殖については育成者権者の許諾を必要とすることとしたいと考えているところであります。

宮川委員 今、海外流出ということを防止していくためという御説明がありましたが、海外流出はとめていかなきゃいけない。海外流出をどのぐらいとめられるのかという話と、農家さんの固有の権利の自家増殖に制限をかけていくのと、この重みの問題だと思うんですね。

 では、どのぐらい農家さんの自家増殖によって今まで海外に流出していっているのかということが非常に重要だと思うんですが、数字だけでいいので、今海外流出しているものの件数と、そのうち農家の自家増殖によって流出したと思われるものの件数を教えていただきます。

太田政府参考人 お答えいたします。

 現行の種苗法では、登録品種であっても、海外への持ち出しというのは法的な制限がございません。また、自家増殖で許諾が必要でなかったことから、種苗の増殖実態の把握をすることもできずに、差止めなどの対応もできておりませんでした。

 このため、多くの品種が海外に流出していると考えられますけれども、何件の流出があったのか、また、どのような経路で誰が流出させたのかにつきまして、全体像を正確に把握することは困難となっております。

 以上でございます。

宮川委員 海外流出によく出てくるのがシャインマスカットであります。

 では、ちょっと個別案件で、このシャインマスカットは農家さんの増殖によって流出したのかどうか、お答えください。

葉梨副大臣 中国や韓国で栽培が確認されておりますけれども、平成二十八年、農研機構が行った調査では、中国関係者が訪日した際に種苗を入手して中国に持ち込んだ可能性が推定されておりますが、これは、日本の農家が中国関係者に譲渡したのか、あるいは市場流通しているものが中国関係者に渡ったのか、そこのところは確実にわかっているわけではありません。

宮川委員 もう一つ、イチゴの章姫ですが、これは農家さんが自家増殖したことによって流出したんでしょうか。お答えください。

葉梨副大臣 これは、静岡の個人育成農家が開発した品種でございます。それで、韓国内の一部の生産者に契約によってこれを利用していいよということでお渡ししたものなんですが、それが、育成権者が把握しないまま、韓国内で広く増殖されたというふうに承知をしています。

 個人の育成権者として渡したということです。まあ、農家ではありますけれども。

宮川委員 今、時間が限られているのでこのぐらいにしますが、農家さんの自家増殖によって海外流出していっているというケースは、わかっているのが限られているわけであります。ほかのケースで出ていっているということもわかっているという中で、農家さんの自家増殖が原因だみたいな感じで話が進むというのは大きなミスリーディングだというように思います。

 それでは、現行法において、農家さんが自家増殖したものを海外に売るというのは現行法では違法なのかどうか、違法の場合はどういう罰則規定があるのか、御説明ください。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 自家増殖した種苗を海外に持ち出すことは、収穫物を自己の農業経営において種苗として用いるという自家増殖の定義には当たらないということになりますので、育成権者の許諾が必要な増殖に当たると思われます。

 そうなりますと、現行の種苗法におきましても、育成権者の権利の侵害については、故意がある場合に限って育成者権侵害罪の罰則が適用されます。個人である場合には十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金、法人の場合は三億円以下の罰金ということになります。農家が自家増殖した登録品種の種苗を育成権者の許諾なく海外に流出させる行為は、このように、故意の場合には適用になってまいります。

 しかしながら、現行の種苗法におきますと、登録品種の増殖実態の把握や疑わしい増殖の差止め、あるいは刑事罰の適用や賠償請求に必要な故意や過失の証明、これは非常に困難でございます。

 そういうことから、この法改正によって、育成権者が海外持ち出し不可の条件を付した場合に正規に販売された種苗の持ち出しができなくなる結果、農業者個人の増殖種苗が狙われるということが懸念されます。このため、登録品種の自家増殖については育成権者の許諾を必要とする、そういうことにしたものです。

宮川委員 今のお答えのとおりで、現行法においても、自家増殖をしている農家さんが海外に持ち出した場合は罰則規定までかかっている。今の法律でも、しっかりと法的に規制がかかっているわけでありますね。そういう中におきながら、今回、なぜ自家増殖にまで手を伸ばさないとこの海外流出がとまらないのかというのを、大臣、もう一度御説明いただけますか。

野上国務大臣 今、葉梨副大臣からも話があったところでありますが、現行法でも自家増殖された登録品種の種苗を海外に持ち出すことは育成者権の侵害になります。そういう中で、登録品種の増殖の実態の把握ですとか疑わしい増殖の差止め、あるいは損害請求に必要な故意や過失の証明等々が困難であることから、海外持ち出しの抑止が今困難となっているわけであります。

 今般、法改正によりまして、育成者権者が海外持ち出し不可の条件を付した場合に正規に販売された種苗の持ち出しができなくなる結果、今度は農業者個人の増殖種苗が狙われるということが懸念をされるわけでありますので、このため、登録品種の自家増殖については育成者権者の許諾を必要として、海外持ち出しですとか持ち出しを目的とする者への販売を禁止する許諾要件を明確にすることで、農業者が許諾されていない行為を正しく理解することや、故意に許諾内容に違反し販売を行った場合の立証が容易になることなど、海外流出の防止に効果があると考えているということであります。

宮川委員 農家さんの自家採種、自家増殖は固有の権利であるということで、先ほど篠原先生も、農家を痛めつけ過ぎているということで、ではほかに方法はないのかということをいろいろ知恵を出す必要があると思うんですね。

 それでは、もう一回大臣にお聞きしたいんですけれども、登録品種に関して、海外に持ち出されたくないというものに関しては、農家さんにちゃんと、これは適当に渡しちゃだめなんですよ、今渡したら罰則規定もある法律違反になるんですよ、ちゃんと、日本の国益を損なわないようにしっかりと守ってくださいよ、こういうことを農家さんにしっかりと説明をしていけば、農家さんは違法な行為をしないんじゃないですか。

 大臣、こういう告知、説明というのはどのぐらい農家さんにやられてきたんですか、今まで。

太田政府参考人 お答えいたします。

 農業者は、品種についての知識があっても、それが一般品種であるか登録品種であるかということを得る情報が少なく、登録品種であるという認識がない場合があるということは御指摘のとおりでございます。

 今回の改正によりまして、登録品種であるということにつきまして表示を義務づけるということをしております。これによりまして、登録品種がどういうものなのかということにつきましてしっかりとわかるということが期待できますし、また、これからもそういった情報提供につきましてはしっかりと取り組んでまいります。

宮川委員 大臣、自家増殖に制限をかけなくても、これを外に売ったら、海外に持っていったら今でも違法ですよ、今でも十年以下の懲役だとかがかかりますよと農家さんに丁寧に説明すれば、農家さんはそれを出さないんじゃないですか。大臣、どう思われますか。

野上国務大臣 今局長からも答弁しましたが、その周知をしていくということも当然重要なことであると思いますが、それを立証するということがなかなか困難であるというふうに思います。

 現行法でも今種苗を持ち出すことは育成者権の侵害になるわけでありますが、実態を把握することですとか疑わしい増殖の差止め、賠償に必要な故意あるいは過失の証明、これはやはり困難であるというふうに考えております。

宮川委員 故意に海外に持ち出していくような人は、私は、この法律改正があっても、故意のものはそう簡単にはとまらないと思います。とまるのであれば説明をしていただきたいんですが。だけれども、故意じゃなくて、知らなくてやってしまった、そういう農家さんは、ちゃんと説明をすれば、丁寧に、今でもやると法律違反ですよと説明をすれば、私はやらないと思いますよ。

 そこのところが、私は、十分に説明がない中で農家さんの権利である自家増殖に規制をかけていく、制限をかけていくというのはやはりやり過ぎなんじゃないか、その前にやることがあるんじゃないかと思います。

 百歩譲って、では少しは規制をかけるということでいえば、自家増殖に制限をかけなくても、登録品種を使う場合に名前だけ言ってくださいよと。育成者権者あるいは種苗会社さんが誰に渡したか名前だけ言ってください、これでは、大臣、足りないんですか。名前だけわかればトレーサビリティーは保てるじゃないですか。大臣、足りないんですか、これでは。

葉梨副大臣 先ほど来のいろいろな議論がございますけれども、結局、育成権者がその種苗を誰かに渡し、それでそれを、例えば農家に行くといったときに、そこのトレースをするのを全て育成権者の義務という形で法定化することが本当に妥当なのかどうか。行政がやれということでしても、行政にとっては、育成権者の、まあ登録はいたしますけれども、そこまでのトレースはなかなかできないわけです。

 ですから、育成権者に義務をかけるというよりは、やはり育成権者の許諾に係らしめるという方が合理的な規制ではないかなというふうに思います。

宮川委員 自家増殖をやりたい方は許可をとらなきゃいけないわけですね。だけれども、自家増殖はできませんよとしなくたって、自家増殖をやりたい方は名前だけ登録してくださいというふうにすればいいじゃないですか。農家さんはそういうふうにしても故意にやるということをおっしゃっているんですか。

 だから、自家増殖する人はどうせ登録するんですから、自家増殖できませんよというのではなくて、自家増殖する人は名前だけ登録してくださいというふうに、百歩譲ってそういうふうにすれば、トレーサビリティーはちゃんと担保できるんじゃないですか。大臣、もう一回お答えください。

太田政府参考人 お答えいたします。

 先生のおっしゃるのは、許諾制というよりは例えば届出制といったことではないかというふうに思うんですけれども、届出あるいは通知であれば、それをすればその後というのは特に、そういうことは、自覚はできるかもしれませんけれども、その後の行為というのはなかなか、今回許諾制にしようとしておりますけれども、届出あるいは通知といったことでは法改正前と特に状況が変わらないので、なかなか流出を防止するという実効性には乏しくなってしまうのではないかというふうに思っております。

 ここで許諾制にすれば、自家増殖をする人の利用条件の遵守が期待できるものであるということが確保できますし、また、利用条件を書面で明文化して周知するということもできますので、流出の効果を高めるということが期待できるというふうに考えております。

宮川委員 とても私は残念に思っています。

 先ほど申したように、海外流出をとめるために何をしなきゃいけないか、これは大事なことです。

 だけれども、その一方で、農家さんの自家増殖をとめなきゃいけないのかどうか、マイナスの部分がどれだけあるのか、この比較でやらなきゃいけないんですが、今お聞きになっていておわかりのとおり、今までじゃんじゃん農家さんが原因で行っていたという証拠もなければ、ちゃんと告知をして、農家さんに、出さないでください、今の法律でもだめなんですから出さないでくださいということもやっていない中で、それで、海外流出のために農家さんの権利を抑制するんだ、この説明では、農家さんに丁寧に説明しても農家さんは守らないというふうに農水省が言っているとしか聞こえなくて、私は非常に残念に感じています。

 ちょっと話題をかえますが、こういった登録品種に関して一律に農家さんの自家増殖に制限をかけている国というのは世界であるんでしょうか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 例えばEUでは、自家増殖について原則として許諾が必要となっておりますけれども、開発に必要な利益を確実に回収するために、許諾料を徴収する仕組みがあることをもって自家増殖を制限しないというふうになっております。その場合でも、一定の小規模農家については、増殖数量の報告を義務づけた上で許諾料を免除するということをしております。

 極端な例として、一律規制をかけている国があるかということでいえば、イスラエルにつきましては一律にかけているというふうに承知をしております。

宮川委員 今EUのお話が少し出ましたが、大臣、ちょっと次をお答えいただきたいんですが、EUは、九十二トン以下の農家さんは例外事項で自家増殖できるということになっているというふうに私も理解をしています。今の日本の農家さんはほとんどがこれに当てはまるということです。

 EUではこうやって例外事項をつくって農家さんが自家増殖できる状況にあるのに、日本の農家さんはここを制限しないと海外流出がとまらない、こういうことで、大臣、いいんですか、理解は。

野上国務大臣 EUにおける新品種保護制度につきましては、今少し言及がありましたが、自家増殖についても原則として許諾が必要となっておりますが、確実に品種の開発者が必要な利益を回収するために、許諾料を徴収する仕組みがあることをもって穀物等の一部の品目で自家増殖を制限しないこととなっているのがEUの保護制度であります。

 また、これら一部の品種の許諾料について、やはり我が国に比べて大変高額であるという中で、例えば小麦であれば生産量が九十二トン以下の小規模な農業者のために例外が設けられている。今先生がおっしゃったとおりであります。ただし、許諾料の支払いが免除される場合であっても、農業者は増殖数量の報告等の義務があるわけであります。

 そういう中で、我が国の状況につきましては、先ほど来、紅秀峰等々の話もございましたが、優良な植物品種の流出、これはいつ起こるかわからないわけでありますので、農家が本来得られるべき所得が失われることはあってはならない、一刻の猶予もないと考えております。

 この種苗法の改正を通じて知的財産を守っていくということは農家のためにもなると考えております。

宮川委員 ちょっとよくわからなかったんですが、ヨーロッパの農家さんはできるけれども、日本の農家さんはできないというふうにお答えされたように私には聞こえました。

 それでは、先ほど申したように、農家さんの自家採種、自家増殖に制限がかかる、これは農家さんがいろいろ心配をされている。では、大臣、一番リスクとして考えられるものは何だとお考えでしょうか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 今回の改正によりまして、自家増殖につきましても育成者による許諾が必要となります。そこで考えられるのが、よく議論になります、許諾料が高くなるのではないかということがリスクとして捉えられがちでございますけれども、一般的に考えまして、農研機構や都道府県が開発した品種につきましては、これを産地に普及するということを目的として開発しておるものでございますから、農業者から営農の支障となるような高額の許諾料を徴収するということは通常ないというふうに考えております。また、民間の種苗会社もこれらの水準を見ますので、著しく高額な許諾料となるということは考えにくいというふうに考えております。

宮川委員 大臣、これは私は通告していましたから、農家さんの立場に立って、農家さんにどういうリスクがあるのか、御自身でちゃんと判断をして、リスクがないんだったらないと、大臣の言葉で私は説明をすべきだというように思います。

 今、農家さんの心配事の一つは、改正があった場合に許諾料が上がって農家の収入が減るんじゃないか、苦しくなるんじゃないかということが懸念をされています。先ほどからの議論の中でも、いやいや、そういうふうにはなりませんよという回答が何度かありましたけれども。

 では、農業競争力強化支援法や、種子法の廃止の中で、民間がこれからふえていく中で、公的機関が今と同じような形でやっていればそれはふえないかもしれませんが、民間企業がふえてきた中で、本当に許諾料が上がったり経営が苦しくなったりしないんですか、大臣。お答えください。

野上国務大臣 今局長からも話がありましたが、農研機構ですとか都道府県、これは普及することを目的としておりますので、通常、高額の許諾料を徴収するということはあり得ないと考えております。民間の種苗会社もやはり農研機構ですとか都道府県の許諾料の水準は見ておりますので、これが著しく高額な許諾料になるということは考えにくいと考えております。

宮川委員 私は今の説明だと簡単にはそうだとは思えないんですが、やはり、民間企業がたくさん入ってきた場合には、許諾料は私は上がっていくんじゃないかと思っています。

 そういった中で、特に有機農業をやられている方々は心配をしています。そういった声がたくさんあります。そういった中で、では有機農業のことですが、有機農業に取り組んでいる農家さんの数と割合、今、日本の状況を御説明ください。

水田政府参考人 お答えいたします。

 我が国の有機農家の数でございますが、約一万一千八百戸でございます。また、我が国の有機農業の取組面積でございますが、二〇一八年のデータでございますが、約二万三千七百ヘクタールとなっておりまして、全耕地面積に占める割合は〇・五%ということでございます。

宮川委員 それでは、海外と比べまして、イタリア、ドイツ、イギリスの有機農業の割合をお答えください。

水田政府参考人 お答えいたします。

 国際的な民間団体の調査によりますと、二〇一八年における各国の全耕地面積に占める有機農業の取組面積の割合でございますが、御質問いただいた、イタリアにつきましては一五・八%、ドイツにつきましては九・一%、イギリスにつきましては二・七%となっております。

宮川委員 日本よりはるかに大きい数字だということがわかると思います。

 ヨーロッパは自家増殖を認めているということでありますが、大臣、これを今お聞きして、法律改正をして、有機農家さんたちの足かせ、有機農家がふえることを阻害する要因にならないんでしょうか。大臣、どう思われますか。

野上国務大臣 まず、今の有機農業の数字の報告がありましたが、我が国の有機農業の取組、全耕地面積の〇・五%で行われているということでありますが、国内の有機市場の市場規模は過去八年間で四割拡大をする、あるいは同期間に有機農業の取組面積も約四割拡大しているところであり、今後も更にこれは拡大が見込まれると考えております。

 農水省としては、本年の四月に新たな有機農業の推進に関する基本的な方針を策定しまして、二〇三〇年までには取組面積を六万三千ヘクタールまでに拡大する、有機農業者数を三万六千人に増加をする等の目標を設定するなど、有機農業に対する支援を行っているところであります。

 今、有機農業の懸念が、自家増殖の制限、大きいのではないか、妨げになるのではないかというお話でありましたが、有機農業者であってもやはり流出のリスクは変わらないと考えておりますので、自家増殖の許諾の例外とすることは適切ではないと考えております。

 しかしながら、有機農業者や自然農法に取り組む農業者については、従来から栽培されている一般品種の利用が多いため、通常の農業者よりは影響は小さいと考えております。

宮川委員 大臣、NPO法人日本有機農業研究会、NPO法人有機農業推進協会、有機農業関係をやられている方々ですが、意見書が出ておりまして、自家採種は農家の基本であり農民の権利、自家増殖規定の廃止は豊かな食と農の未来を損なうというようなものが発表されておりますが、大臣、これを読まれましたか。

野上国務大臣 詳細には読んでおりません。

宮川委員 ぜひ、この有機農家さんたちの声も、今大臣は、いや、有機農家だって種苗法改正が必要だという説明をされていました。そういうふうに、有機農家だって必要なんだというふうに言われるのであれば、しっかり有機農家さんたちの声を聞いていただきたいと思います。

 全体の農家さんはF1物を使っているのが多いから、余り自家増殖はやられていないから当てはまらないということがあるかもしれませんけれども、私は、数の問題ではなくて、数が少なくたって重要な農業をやられている方々もいらっしゃるわけで、こういった人たちを無視して、安易に海外流出だ、海外流出だと。証拠も余りない。あるいは、私が提案したように、ほかにも手だてがある。先ほど篠原先生も、規制、水際対策をすればいいじゃないか、こういう提案もある。いろいろなアイデアがあるのに、安易に自家増殖に制限をかけていくというのは、私は本当に農家さんのことを考えているのかというふうに思います。

 それで、もう一個だけ。

 F1が多いから大丈夫だと言いますが、この先本当にF1がメーンかどうかもわからないじゃないですか、技術革新はいろいろあるわけですから。だから、やはり、私は、今は少数かもしれませんが、こういった少数の方々の声をしっかり聞いていっていただきたい。

 時間になりましたからこれで終わりにしますが、もう少し、幾つか重要な観点がありました。またチャンスがあれば質問をしたいと思うんですが、しっかりと審議をした上で、問題点を洗い出した上で最終的な判断をしていただきたいということをお願いして、私の質問を終わりにいたします。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、亀井亜紀子君。

亀井委員 亀井亜紀子でございます。

 野上大臣にかわって初めての質問になります。よろしくお願いいたします。

 では、初めの質問ですけれども、政府の種子の開発や保護についての基本的な考え方について、まず伺いたいと思います。

 実は、私たちは、廃止されてしまった主要農作物種子法の復活法案を提出しておりまして、過去に一度この委員会で審議をされたまま、ずっと継続審議で、たなざらしになっております。たなざらしになるということは、政府の方は種子法を復活する必要はないと考え、与党もそう考えているから審議をされないのだと思いますけれども、この背景にどういう考え方があるのかというのをまず伺いたいと思います。

 種子法の復活法案についてこの委員会で審議されたときに、自民党の坂本先生がいろいろとお話をされていました。それを読むと自民党さんの考え方というのはある程度見えてまいりますので、政府に伺いたいと思います。

 まず、種子法を廃止した背景として、もともと種子に関しては、戦後、非常に劣悪なものが出回ったので、昭和二十二年に農産種苗法というのができて、そこから、議員立法で、米、麦、大豆が切り分けられる形で、昭和二十七年に主要農作物種子法というものができた。これは、種子法とは言うけれども、要するに、稲、麦、大豆奨励品種増産法だ、増産をするための品種改良法なんですと坂本先生は当時言われています。それで、今、米余りの時代で、食料増産の必要はないから種子法は廃止して構わないということになったと私は理解しました。そして、種苗法の方で種は守ると。

 坂本先生は、本来ならば、昭和五十三年、知的所有権が種子法から種苗法に返されたとき、あるいは、昭和六十一年、民間の参入が許されたとき、参入を認めたときに、また、平成十年、世界の知的所有権の中に、条約に肩を並べたとき、つまり種苗法が改正されたこの平成十年のときに種子法は廃止していてもよかったんだというふうに述べられているので、もう必要ないねということで廃止をされ、だから復活法案の審議もされないのだというふうに私はこの議事録などを読んで思い至ったのですけれども、政府のお考えはいかがでしょうか。

野上国務大臣 国会での御審議についてはコメントは差し控えさせていただきますが、主要農作物種子法につきましては、昭和二十七年に、戦後の食料増産という国家的要請を背景にしまして、稲、麦、大豆の優良な種子の生産、普及を進める観点から制定されて、食料増産に貢献をしてきたものと考えております。

 現在、米の供給不足が解消されまして、食料増産という当初の目的は達成をされました。一方で、都道府県に種子供給を一律に義務づけてきた結果、ブランド米には力を入れて供給する一方で、今需要が高まっております中食、外食用途に適した多収品種にはほぼ取り組めていないですとか、民間の品種が参入しにくいなどの課題も生じてきたところでありますので、こうしたことから、官民の総力を挙げて、多様なニーズに応じた種子供給を行える体制を構築するために、平成三十年四月一日に種子法を廃止されたものと考えております。

亀井委員 私たち立憲民主党及び種子法復活法案を出した提出会派は、種子法を単なる食料増産法だとは思っていないんですね。米、麦、大豆、主要農産物の種子というのはやはり公共の資産であって、近年、さまざまな企業が知的所有権を主張するようになって、登録品種もふえているけれども、やはり、食料自給率に深くかかわる主要農産物に関しては、種子は、公共が前面に出て、予算もきちんと、根拠法を持った状態で国や県の試験場に予算をつけて、良質な、多種多様な種を開発していくということも非常に大事だと考えておりますので、種苗法だけじゃなくて、種子法は必要だという立場です。

 それで、今、政府は、いわゆる種子法は食料増産法であったのだから種苗法の方で種子は守る、そういう方向性の中で、では、種苗法のどの部分で、種子法の廃止を補うような、種子を保護しているような条項があるのですかというのを前回の国会で江藤前大臣に聞きましたところ、種苗法の六十一条だと。あとは、予算については地方交付税措置をするというようなことだったんですけれども。

 その六十一条を読んでも、別に、六十一条というのは、指定種苗の生産、調整、保管それから包装について種苗業者が遵守すべき基準を定めて、これを守らないところには勧告をして、更に守らなければその種苗業者を公表をする、そういう定めであるので、これをもって主要農作物の種子を公共の資産と考えて守っていくような、そういう要素は何も見えないんですけれども、果たして種苗法でどうやって種子を守っていくのか、大臣、お答えいただけますか。

天羽政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御質問の種苗法の第六十一条でございますけれども、この第六十一条に基づく告示というものがございます。種苗の生産等に関する基準という告示でございますけれども、この中で、種子の品質について、発芽率ですとか、異種、異品種粒の混入ですとか、さまざまな項目について、稲、麦、大豆の種子の品質基準を定めてございます。また、圃場の隔離に関する事項なども定めておるわけでございます。

 これは、旧種子法の時代は、旧種子法の四条五項に基づく告示ということでルールとして定められていたわけでございますけれども、種子法の廃止後は、種苗法の第六十一条第一項に基づく告示を改正して、稲、麦、大豆に係る規定を追加したという経緯がございます。

亀井委員 ちょっと、まだ余りすっきりしないんですけれども、関連で次の質問に行きたいと思います。

 種子の開発については、民間企業の協力を求めというか、民間企業にそれを担ってもらうという方向性に法律が変わっていっているというふうに私は見ております。なぜかというと、それは、農業競争力強化支援法八条四号、これにおいて種子に関する知見の民間事業者への提供を推進することとあるので、積極的に税金を投じて種子の開発をしてきたその知見を民間事業者へ提供してくださいということですよね。

 それで伺いたいんですが、今回、優良な種子の海外流出をとめるために種苗法の改正があり、では、果たして自家増殖を禁止することが海外流出をとめることになるのだろうかという質問はほかの議員もされたわけですけれども、そもそも、農業競争力強化支援法八条四号で種子に関する知見を民間業者に提供しなさいとあって、この民間業者というのは外資系企業も含めますよね、含んでいますね。

 これは、種子法の廃止のときの参議院の方の質疑、答弁で見つけてきましたけれども、基本的に、法制度上、外国資本が主要農作物の種子産業に参入することは可能でございますという答弁が、当時、政府参考人からありました。そして、今、外資から見た場合に、我が国の種子の市場がそれほど魅力的ではないというのが実態でございますので、現実にほとんど外資は入ってきていないという状況でございますと書かれているんですが、これはあくまでも日本の市場が魅力的に見えないからということだけでして、法制度上は民間業者に外資系企業というのは含まれ、そして、農業競争力強化支援法の八条四号のところで民間への知見の提供を推進しているわけですから、ここのところに穴があいていて、簡単にいろいろな知見が外資系の企業にも渡ってしまうということじゃないんでしょうか。いかがですか。

葉梨副大臣 お答えいたします。

 農業競争力強化支援法第八条の規定ですが、これは、民間に種子を売り渡すとかそういうことではございませんで、当然、農研機構はしっかり予算をする、それから都道府県に対しては地方交付税措置をするということで、そちらもしっかりやるんですけれども、民間にもそういう知見を提供することで種子の開発をちゃんとやっていただこうということなんです。

 その運用ですけれども、知見を渡す側の都道府県それから農研機構に対しては、これは通達ですが、重要な知見が流出することがないように利用目的をよく確認し、目的外使用や第三者譲渡の禁止を盛り込んだ利用契約を結ぶことなどを、通知を出しまして、指導、徹底しております。

 そして、同法の施行後、都道府県、農研機構は、目的外使用や第三者譲渡の禁止を利用者との契約に盛り込んでいます。この法律によって海外の外資系企業に知見が流出したという事例はございませんし、また、今後も適切に運用をしてまいりたいというふうに考えています。

亀井委員 今のところ事例がないということですけれども、あくまでも運用上の話であって、法律のところで民間事業者への知見の提供は推進しているわけですから、これは今後どう変わっていくかはやはりわからないことだと思います。日本の会社であっても外国資本の割合が高かったりということがありますから。

 そういう中で、ここに穴があいていて、一方で日本の種苗を海外に流出するのをこの法律でとめると言っているのは非常に矛盾をして、今回の改正というのは非常に矛盾しているなと思います。なので、私たちが主要農作物種子法復活法案の中に農業競争力強化支援法の八条四号は削除しろというのを入れているのはそういう理由からです。

 それでは、次の質問に移りますが、これは、果たして登録品種を自家増殖して栽培している農家が今回の改正によってどういうことになるのか、非常に不安を持っている農家が多いので、ちょっと事例を出して質問をしたいと思います。

 イチゴを例にしたいと思います。

 私の地元島根県安来市というところはイチゴの栽培が盛んでして、大体、農業者、六十五軒ぐらいイチゴ農家がありまして、栽培しているものは紅ほっぺと章姫。この二種類は静岡県の登録品種です。

 全体の品種の中で、在来種がほとんどだから、一般品種がほとんどだから登録品種は少ないんだ、そういう論点がありますが、ただ、やはり、ブランドを推進している場合、その少ない登録品種を、地域で中心的にほぼどの農家もその登録品種を栽培しているという例はありますので、全体の中で登録品種の数が少ないから大丈夫だという話ではないと思うんです。

 ある農家は大体、では、紅ほっぺの種苗の価格を一苗二百五十円としましょう。二百五十円を四百苗買ってくる、そうすると十万円ですね。この四百苗を大体一万苗ぐらいに増殖をして販売するんですね。それで、この二百五十円の中に、今は自家増殖は禁止じゃないですし、契約によっては種苗代に自家増殖をする権利も含まれての値段なわけです。

 今、農家にいろいろ誤解が広がっているというふうな指摘が与党側からもありますけれども、最大の農家の不安は、許諾料が幾らになるのかというのと、もし許諾がとれなかったときに、今四百苗十万円の種苗代で済んでいるものが、一万全部買わなきゃいけないとなったら二百五十万になるので、それじゃ経営ができない、そんなことじゃないですよねという。そういうまず不安があるので、そこは違いますということをはっきり言っていただきたいんですが、お願いします。

太田政府参考人 お答えいたします。

 イチゴにつきまして例示を出されましたので、イチゴにつきまして御説明をいたします。

 イチゴにつきましては、農業者が原種苗を入手いたしまして、農業者自身が種苗を必要数増殖した上で収穫物を生産をしております。これは、収穫前でございますので、自家増殖とは認められない増殖行為ということになります。

 このため、現在登録品種でイチゴ栽培を行っている農業者の方々は自家増殖も含めた増殖全体について許諾を得られている種苗を購入しているということが一般的です。このような場合、農業者は種苗代に含まれた許諾料相当分につきまして現在も支払っているということになりますので、法改正後も状況は変わらないのではないかというふうに考えております。

亀井委員 では、イチゴというのは増殖を前提に栽培し販売をするものなので、この法改正後も変わらないというふうに理解をいたしましたが、ただ、値段は変わるのではないかという懸念はありまして、今度はこの部分を伺いたいと思います。

 お配りした資料一枚目、許諾料の例、これは農水省の資料から引いてきたものです。

 それで、イチゴがわかりにくくてですね。まず、A、B、Cとあります。登録品種の、登録されている県、自県農業者に無償提供の場合と、自県でもお金を取る場合と、無償提供、いろいろ、A、B、Cとあって、A、B、Cをどういうふうにそもそも分けるのかというのもわからないんですが。

 では、Aの例をとりましょう。他県一県当たり約百万円とあります。日本の場合、イチゴの苗は、農協ですとか、あと種苗会社がまとめて持っているものが多いとして、じゃ、安来の農協がまとめて買います。買うときに、静岡の登録品種を買ってくるわけですから、一県当たり百万円というのが乗った値段になるのか。一体、どこに許諾料がどの程度かかって、それが農協から種苗を購入する農家にどの程度の負担になるのか全く見えないんですけれども、お答えいただけますか。

太田政府参考人 お答えをいたします。

 この例のイチゴAで申しますと、他県一県当たり約百万円ということで、例えば、この例に当たるかどうかはわかりませんけれども、JAが一括して百万円だけ払っております。そこから農家に販売するということになりますけれども、その販売につきまして、どれだけふやしてもこの百万円というのは変わらないという契約で進んでおりますので、先ほども申しましたように、イチゴについては既に増殖、自家増殖トータルで許諾を受けて、許諾料も他県であれば百万円ということで既に払っておって、それがふえていくというような理由というのも特にないというふうに考えておりますので、仮に法施行となったとしても、許諾料がふえるということにはならないんじゃないかというふうに考えております。

亀井委員 済みません、確認ですけれども、それでは、JAが負担する金額が、例えば三年当たりの許諾料が百万円として、それが新たに発生するということで、けれども、例えば、じゃ、一苗当たり二百五十円の種苗が多少上乗せされて三百円になりますとか、そういうようなことなのか、そうではないのか。

 ちょっとそのあたり、もう一度お願いできますか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 今現在で百万円を払っている場合であれば、法施行後も同じ百万円だということになります。その百万円の許諾を得てふやしているわけでございますけれども、その量が変わらないとすれば、それぞれの中に含まれている許諾料相当分というのは変わらないということになります。

亀井委員 では、今現在も、登録品種を他県で自家増殖するわけですから、その権利を農協が百万円程度支払って買っていて、そういうところであれば、もう既に支払って今までもやってきているのだから状況は変わらない、そういう御答弁ですね。農家側の誤解もあるのかもしれませんけれども、確かに。

 ただ、私がやはり不安に思うのは、そうやって県主体で、県の農業試験場が開発した種子で、JAを通して提供されてきたものですけれども、その権利が先ほど申し上げたように民間の企業に移ってしまったときというのは、やはり、今までのように安価に増殖できるようなことにはならないんじゃないだろうか、許諾料が上がっていくんじゃないだろうかという不安はどうしても残るんですね。

 だから、今回の種苗法の改正というのは、直後には仮にそう影響がなかったとしても、将来的に、やはり、登録品種もふえ、民間が権利を所有する種子がふえるのではないだろうかという不安が拭えないということだと私は思っております。

 次に、自家増殖禁止といっても、例外品目をなぜ設けなかったのかというのが大きな疑問です。

 先ほど、有機栽培の例も出ました。有機栽培については、これも農水省のホームページにあったものですけれども、有機JAS規格というのは原則的に有機栽培由来の種苗の使用が必要で、譲渡、交換や購入によって入手できない場合、又は購入できても著しく高価な場合、しかも自家採種もできない場合に限り慣行栽培由来の種苗を使用することが可能と書いてあるので、自家採種前提なんですよね、有機栽培というのは。

 今、日本は農産物を世界に輸出していくことを強化していて、その際、特にヨーロッパなどは農薬の規制も厳しくなり、有機栽培の作物がかなり人気が出てきていて、日本もその分野に力を入れましょうと言っているときに、有機作物のところも例外にしないで自家増殖は一律禁止ですよとすることの意味がよくわからないんですけれども、矛盾していないでしょうか。お伺いいたします。

野上国務大臣 有機栽培についてのお尋ねでありますが、有機農業者でありましても流出のリスクということは変わらないため、自家増殖の許諾の例外とすることは適切でないとは考えております。しかしながら、有機栽培、有機農業者、自然農法に取り組む、これは非常に重要な取組だと思いますが、この農業者については、従来から栽培される一般品種の利用が多いと。農水省が実施したアンケートでは九割が一般品種であったということでありますが、一般品種の利用が多いため、通常の農業者よりも影響は小さいと考えております。

亀井委員 有機栽培、やはり、変な種を増殖しても意味がないので、優良な登録品種を自家増殖して栽培している農家というのは普通にあるわけでして、国がこれから有機栽培に力を入れましょうというのであれば、私は、有機作物というのは、自家増殖を許諾制にして原則禁止という、そこから例外として外すべきだと考えます。

 もう一つ、きょうお配りした資料二枚目に、これは農水省からいただいた資料ですが、「主要先進国における登録品種の自家増殖の扱い」で、どこの国も例外を設けております。

 例外作物のところをごらんいただきたいんですが、飼料作物、穀類、バレイショでしたり、豆類でしたり。ざっと見ると、その国の主要農作物ですね。こうやって例外作物が設けられていて、米国のところだけ横線が引っ張ってあります。

 部会で質問したときに、日本は例外作物はないんですか、どのパターンになるんですかと聞きましたら、米国パターンですと言われたんですね。米国は横線が引いてあるので、一切例外作物がなくて、日本も一緒ですというような感じで説明をされたんですが、私は、やはり、農水省の説明というのはすごく不誠実だと思います。

 米国のところを見ますと、上の植物特許は自家増殖を認めていないですが、下の品種保護法は自家増殖を認めています。この中身について、私は調べてみました。それが、お配りした三枚目の資料です。

 三枚目の資料の右側の表を見ていただきたいんですが、ここに法律が三つ並んでいます。左から植物品種保護法、植物特許法、特許法とあります。簡単に申し上げますと、もともとは、植物というのは知的所有権の対象ではなくて、植物品種保護法と植物特許法、この二つの法律でカバーされていたそうです。

 そして、上から三番目、保護される植物の種類で、植物品種保護法のところは有性繁殖植物及び塊茎植物と。つまり、雄しべ、雌しべがあるような繁殖植物、それから、塊茎植物というのは芋とか根菜とか、そういうものは植物品種保護法の管理のもとにあるので、この法律に基づくと自家増殖は今でもできます。

 それで、その右、植物特許法の下には無性繁殖植物というのがあって、これは自家増殖が禁止されているんですけれども、実はここからバレイショとキクイモだけは例外品目として外されています。

 それで、一番右、一般特許。これは、もちろん自家増殖は禁止でして、一九八〇年の米国の判決で初めて生物体の一般特許が認められました。ですので、一般特許で出願をされている、そして、認められた登録品種でない限りは全て左二つの植物品種保護法と植物特許法のもとに入りまして、そして、植物品種保護法の方で主要農作物などは全て自家増殖は認められておりますので、二枚目にお示しした農水省の資料で例外がないかのように見せているというのは、非常に私は不誠実だと思います。

 つまり、何にも例外品目をつくっていない、有機農作物も例外でない自家増殖の禁止という法律というのはかなり異例だと思いますけれども、どうして一切の例外品目をつくらないのでしょうか。これは大臣に伺います。

太田政府参考人 お答えをいたします。

 米国の仕組みを、まず簡単に申し上げます。

 米国では、果樹などは植物特許法でございます。そして、穀物、優良作物は植物品種保護法でございます。植物品種保護法は、おっしゃるとおり、自家増殖につきまして育成者権は及びません。このため、大豆、菜種のようなアメリカの主力作物につきましては先ほど言われたような工業特許の方で保護をしておりまして、工業製品と同様に特許法に基づき特許を取得して、自家増殖も含めてコントロール下に置いているということでございます。

 それで、どうして例外品目をつくらないかということでございますけれども、我々が今回提出させていただいた法案につきましては、例えば、何か特定の品目について例外を設けますと、それは、その品種自体、そのもの、その全てについて特に守らないでいいというようなことを意味するということにもなりますし、今回、海外流出につきまして、流出を何とかとめようということで法案を出しておるわけでございますけれども、海外流出を防止しようとする品目が現在ないとしても、将来優良な品種が開発されるということがありますし、それから、同じ一つの品目の中でも、品質を管理して徹底的にブランド化をしようという品目もあれば、新たな病害に対応するために迅速に広範に普及をさせようという品目もあるわけでございますので、こういったことも含めて、一律にということではなくて、許諾下に置いて、普及が必要なものにつきましては許諾を与えるというような方向で持っていこうということでございます。

亀井委員 済みません、何だかよくわかりません。

 そして、これは大事な質問なので私は大臣に伺いたいんですけれども、先ほど申し上げていますとおり、有機作物を推進しようとしている国の方針を考えたときに、そして、他国は主要農作物などを外している中で、どうして全く例外品目のないこういう法律が出てきたのか、私は理解に苦しむんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

野上国務大臣 有機農業者の話につきましては先ほど御答弁申し上げましたが、流出のリスクが変わらないために、自家増殖の許諾の例外とすることは適切でないというふうに考えております。一般品種の利用が多いということも申し上げたとおりでありますが。

 自家増殖できる例外品目を設けることについては、今局長も答弁しましたけれども、やはり、一つの品目の中にもいろいろな用途がある。ブランド化を推進していくものもあれば、迅速に普及をさせていく必要があるというものもある。ある品目に属する品種を全て一律の扱いにすることは適当でないということがあります。それから、海外流出を防止すべき優良な品種がない、そういう品種であっても、将来これが優良な品種になる可能性もあるわけでありますし、例外品目を設けた場合に海外流出させてもよいと受けとめられかねないということもありますので、適切ではないというふうに考えているわけであります。

亀井委員 時間ですので、また次回質問させていただきますので、この件は続きをやりたいと思います。

 以上です。

高鳥委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 種と苗は農業の基本であり、農家にとってみたら種と苗は命そのものであります。その取扱いを変える今度の法改定に当たって、果たして農家は知らされているのでしょうか。

 最初に、野上大臣にお伺いします。

 大臣、農家はこの法改定のことを知っているんでしょうか。ほとんど聞いたことがないと、たくさん私は声を聞きました。大体、自家増殖は原則自由だったので、登録品種であるか否か、それも今も知る必要もなく栽培している、そういう声も聞いたわけであります。農水省は説明をされてきたんですか。

野上国務大臣 農水省では、昨年三月に、農業者が持続的に優良品種を利用していくための新品種の保護のあり方についての検討会を立ち上げまして、幅広い分野の有識者に参加いただいて、計六回にわたって検討を重ねてまいりました。

 この検討会では、全農、全中に加えて農業者二名に委員として御参加をいただき、忌憚なく意見をいただいたほか、有機農業者、大規模農業者、種苗の増殖農家から現場の実情についてヒアリングを行いました。今般の改正案は、現場の意見もしっかりと踏まえた上で提出したものと考えております。

 また、三月の閣議決定後には、法案の説明資料ですとかQアンドAなどの資料を公開するとともに、要請に応じまして、自治体や農協、報道関係者を対象とする各種説明会、十回以上でありますが、あるいは雑誌への寄稿等々も行っているわけでありますが、引き続き丁寧な説明を行ってまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 にもかかわらず、今国会でも、種苗法の改定については、疑問、それから反対、慎重審議、見送れ、こういう声が毎日のように来ていますよね。理解が得られていない人がたくさんいるわけですよ。少なくとも今国会の成立は断念すべきであります。

 質問を続けます。

 本法案の目的は、優良品種の海外流出を防止するためとして、そのために自家増殖を許諾制にするという内容が入っています。自家増殖が、まるであたかも海外流出の温床になっているのではないか、これは余りにもひどいやり方であります。さきの立憲民主党の宮川議員の答弁でも、その根拠、論拠については示せるものがないわけなんですよね。

 農林水産省知的財産課は、二〇一七年十一月一日、農畜産業振興機構、いわゆるALICのホームページに「海外における品種登録の推進について」と題する解説文を出しています。今もこのホームページに載っています。紹介します。海外流出、「この事態への対策としては、種苗などの国外への持ち出しを物理的に防止することが困難である以上、海外において品種登録(育成者権の取得)を行うことが唯一の対策となっています。」こう述べているじゃないですか。物理的に困難であると述べています。

 農家の自家採種をたとえ一律許諾制にしたとしても、種苗の持ち出しをとめることはできるんですか。これは物理的に不可能じゃないんですか。空港、港、それから貨物、税関は、全ての品目について、種が入っている、苗が入っている、チェックできるわけがないじゃないですか。流出は防止できると考えているんですか。

太田政府参考人 お答えをいたします。

 密輸というような形態がありますので、完全にとめられるということが難しいというのはおっしゃるとおりでございますけれども、現在の法律では、国内における権利保護というのを想定していて、登録品種であっても海外への持ち出しをとめるということができない、それから、しっかり守るべき知的財産の管理が緩過ぎたということが海外への流出につながっているというふうに考えております。したがいまして、登録品種につきまして、国内利用限定という利用条件を付せば海外への持ち出しを制限できる、こういった措置を講じるものでございます。

 この改正は、日本の強みである植物新品種の知的財産を守って、産地形成を後押しするということで御理解をいただければというふうに思います。

田村(貴)委員 持ち出しを阻止することはできないということです。

 もう一問聞きます。仮に、種苗が流出して海外で増殖されていた場合に、品種登録をしていなければ、栽培をとめるなどの対抗措置はとることができるんですか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 海外において品種登録をされていなければ、海外における栽培に対する手だてはございません。

 ただ、今回、種苗法を改正いただきまして、海外への持ち出しを制限するという条件がつけられた種苗につきましては、その海外で栽培されたものの国内への持込みにつきまして明らかに違法ということになりますので、そういったものの抑止というのは一定の効果があるというふうに思いますし、引き続き、海外での登録につきまして進めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 それは、生産者に対するちゃんとした説明で終わる話じゃないんですか。なぜ一律に許諾制に持ち込もうとしているわけですか。そこが納得できないわけであります。これは立法事実にかかわる話であります。

 シャインマスカットにしても、開発者である日本の政府がそれぞれの国で品種登録をしてこなかったから育成者権が及ばない、こういう問題になっているんですよ。政府の怠慢を棚に上げて、自家増殖を原則禁止するというのはお門違いだと思いますよ。農家の自家採種が海外流出に結びついているかのようにおっしゃるけれども、何の根拠も論拠も実態も示すことができていません。

 この自家増殖の実態についてお伺いをします。

 登録品種のうち、どれだけ自家増殖されているのですか。農林水産省が五年前に行った平成二十七年度自家増殖に関する生産者アンケートでは、全体で五二・二%の結果でありました。かなりの割合であります。この調査は四十五県、一千五十五の経営体を対象にしたものにすぎないのでありますけれども、この調査以外に自家増殖の実態を示すデータはありますか。イエスかノーかでいいですので、お答えください。

太田政府参考人 お答えいたします。

 今おっしゃった調査でございますけれども、自家増殖を行っている生産者の割合は高くなっておりますけれども、これは、自家増殖を行っていると見られる生産者を調査対象として都道府県に選定いただいた結果ということで、母集団が自家増殖を行っているということに傾いているものであるというふうに思っております。

 これ以外の調査というのはございません。

田村(貴)委員 ないんですよ。自家増殖を一律許諾制にするという大きな法改正があるのに、その実態について示されるデータがないんですよね。資料がないんですよ。これが大問題です。

 もう一問聞きます。

 日本有機農業研究会の調査、二〇〇九年では、有機栽培農家は六割の種子を自家増殖から得ている結果が出ています。

 二〇〇七年の種苗法改正審議の際に、農水省は、有機農業の実態を十分把握し、自家増殖の取扱いについて検討する必要があると答弁しました。その後、有機農家の自家増殖の実態は調査されましたか。

太田政府参考人 お答えいたします。

 昨年度、農林水産省は委託事業として有機農業者を対象にアンケート調査を実施しております。これによれば、自家増殖をしている品種の九割は一般品種との回答を得ております。

田村(貴)委員 ですから、先ほども質問があったように、有機農業をされている方の自家増殖の比率は物すごく高いわけですよ。ですから、そういった方々がこの法改正によってどういう影響を受けるのかというのはちゃんと聞いて、そして、聞いた内容について委員会に示していただかなければ、私たちは審議できませんよ。

 農家への許諾制の影響について伺います。

 影響が及ぶのはごく限られた品種だというふうに答弁があっています。しかし、省令で規制される登録品種の数は何品種あって、法改正されれば、現在登録されている登録品種のうち何品種が新しく許諾が必要となるのでしょうか。この数字についてお答えください。

太田政府参考人 お答えいたします。

 現在も、農林水産省令で定められました栄養繁殖をする植物につきましては、自家増殖に許諾が必要となっております。これは現在、三百九十六種類の植物が定められております。

 これに対しまして、法改正によりまして新しく許諾が必要となる植物の種類は、三百八十四種類となります。

田村(貴)委員 そうすると、新しく五千二百九十四品種が許諾が必要な範囲に入ってくるというわけですよ。非常に大きいですよね。影響が出てきますよ。

 それで、農水省は農家の負担増はさしてないというふうに言ってきていますけれども、登録品種を、ここは聞いてくださいよ、大臣も。登録品種を自家採種して、今は許諾を求められていないという農家があったとします。だけれども、法改正があった後は、許諾を求められる可能性はありますよね。許諾が求められないままで営農を続けられるという保証はどこにありますか。

野上国務大臣 まず、自家増殖については、一般品種を用いる場合には許諾は必要ありませんが、今お話のあった登録品種を用いる場合にも、ブランド米のような現在も種子や種苗を購入している場合ですとか、先ほど議論になりましたイチゴのように現在も増殖が許諾されている種苗を利用している場合には、新たな負担は生じません。また、そもそも、育成者権者が許諾不要との意思を示している場合にも、許諾は不要となります。

 また、負担との話もありましたが、農研機構や都道府県は普及を目的として品種を開発しておりますので、高額の許諾料を徴収することは通常あり得ませんし、民間の種苗会社も著しく高額な許諾料を取るということは、この水準を見ておりますので、考えにくいと思っております。そういう意味では、今般の法改正によって過度な負担が生じるということは考えておりません。

 また、許諾の手続ということもお話がありましたが、団体等がまとめて許諾を受けることを周知するほか、個人の農業者が簡単に手続できるように、許諾契約のひな形を示すなどの対策も講じてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 私が聞いたのは、今、育成者が許諾を求めていないという農業の実態があって自家採種をしている、しかし、この法改正後に権利者が、やはり許諾を求めます、許諾料をいただきますというふうに判断するのは、それは権利者の意思次第で変わっていくんじゃないですかと聞いているんですよ。今の形態が全く同じような形態で続くという保証がどこにあるんですかと聞いているんです。お答えください。

太田政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどイチゴの話でいろいろ御議論させていただきましたけれども、産地で重要となっている品種につきましては、産地化のために都道府県の試験場あるいは農研機構が開発したものでございます。それにつきましては、産地化をする、あるいはブランド化をするということで開発しておりますので、引き続き栽培していただくように許諾が与えられるというふうに理解をしております。

田村(貴)委員 今の答弁は重要ですよ。

 許諾は請求しないんですね。許諾を求めることもなくて、許諾料を請求することも絶対ないわけですね。ちゃんと答えてください。

太田政府参考人 手続としては、許諾を求め、それによって、先ほども言いましたように、産地化を図るというようなことで開発されておりますので、許諾が行われるというふうに理解をしております。

田村(貴)委員 許諾を求めるんですよ、権利者は。ですから、法改正をすることによって権利者の背中を押すことになることは間違いありません。権利者が許諾を要求し、許諾料を請求する、こういう流れになることは間違いないんですよ。だから皆さん心配されているんですよ、自分の許諾料がどうなるのかと。そのことについて、全然納得できる説明資料がありません。

 種苗の海外流出は、自家増殖を禁止したところで防ぐことはできません。海外流出に農家がかかわっていたということも立証されていません。さらに、登録品種の許諾制導入で、農家の負担はふえる可能性があることが明らかになっています。種苗法を変える必要はありません。

 時間が参りましたので、この先の議論については次回の質疑でやらせていただきたいと思います。

 きょうはこれで終わります。

高鳥委員長 午後二時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時三十分開議

高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第二百一回国会、内閣提出、種苗法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、有限会社横田農場代表取締役横田修一君及び日本の種子を守る会アドバイザー・NPO法人民間稲作研究所アドバイザー印鑰智哉君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、横田参考人、印鑰参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、初めに、横田参考人、お願いいたします。

横田参考人 ただいま御紹介いただきました、有限会社横田農場で代表取締役をしています横田修一と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 時間が限られていますので、お手元にお配りしています資料に基づいて、私たち横田農場のやっている取組について御紹介をさせていただこうというふうに思います。

 では、ページをめくっていただいて、二ページ目、右下にページ番号がついておりますけれども、そちらで御案内させていただきます。

 まず、横田農場の御紹介を簡単にさせていただきます。

 横田農場は、茨城県龍ケ崎市というところにございます。茨城県の南の方、千葉県と近いところにございます、比較的平たんな地域でございます。ただ、ここまでも一時間ぐらいで来れるということもあって、どちらかというと、都市化が進んだり、地元に残って農業をやろうという方が非常に少なくて、全国どこでもそうですけれども、高齢化による農業者のリタイアが非常に進んでいるという地域でもあります。

 その下ですね、社員です。役員が二名、父と私ですけれども、あと社員が九名ということで、主に生産を行う者はこのうちの六名ということ、全員でお米をつくっていることはなくて、六人でやっております。その下、事業の部分は、うちは、お米、水稲の生産、販売、それ以外のものは基本的にやっておりません。お米をつくっている農家ということでございます。

 その下に沿革と少しございますけれども、平成八年に法人化をいたしました。それまでは普通の一農家でしたけれども、平成八年に法人化をしております。その下にいろいろ書いてありますけれども、大きいところでいうと、平成二十五年に第五十二回の農林水産祭で天皇杯という大変名誉な賞をいただきましたけれども、この賞をいただいたのも、この後に御説明をするような、多品種を組み合わせて、作期分散を図って、少ない機械、少ない人手、人数で低コストな栽培をするというところが評価されて、受賞させていただいたというところでございます。

 では、次、三ページの方に行かせていただきまして、特徴の一というふうにございます。

 先ほど言いましたように、水稲、稲作、百六十ヘクタールほどございますけれども、これはあくまでもトータルの面積でありまして、実際には田んぼの枚数でいうと合計四百七枚という、比較的小さい田んぼがたくさん、多いということです。十アール未満の田んぼが四〇%を占めるということで、必ずしも大きい田んぼばかりでは、百六十ヘクタールもやっていて、大規模で条件等がいいところでやっているんだねと思われてしまうんですけれども、決してそういうことだけではないんですね。そのかわり、余り積極的に規模拡大をしたわけではないので、比較的狭い範囲の中でやっているというのが、圃場間の移動が少なくてというところが特徴の一つでございます。

 次です。四ページ目のところ、規模がだんだんふえているというところがあります。大規模な農家だというふうに見られてしまうんですけれども、私が農業を始めたのが平成十年ですけれども、そのころは二十ヘクタールぐらいの、それでも大きい方といえば大きい方ですけれども、ということでやってきましたが、だんだん、残念ながら高齢化でやめていく方が多い、そういう方たちの農地、地域の農業者の方の農地をお預かりして、面積がふえているということでございます。

 五ページ目、済みません、速くて申しわけありませんけれども、特徴の二というところに、そういった環境の中で、特徴としてよく言われるのが、一台の田植機、一台のコンバインで百六十ヘクタールの面積を行っているというところが特徴として挙げられます。どうしても米農家は、機械の減価償却費、何でも自動化、機械化して非常に効率的に作業できる、楽に作業はできるんですけれども、そこのコストがどうしてもかかるということで、それをなるべく少ない機械でやろうということで、一台の田植機、一台のコンバインで。

 それをどうやってやるかというと、作期を拡大して、わせからおくてまで、ここには作期拡大のための八品種と書いてあります。作期を拡大するために八品種、厳密に言うと今十品種ほどつくっておりますけれども、それはちょっと、いろいろな目的があってつくっているので。作期を拡大するという意味でいうと八品種ですね、わせからおくてまで。

 品種が持っている栽培適期、生育の適期の時期をずらしながら、田植でいえば四月の下旬から六月の下旬まで二カ月間、田植をずっとやり続ける、稲刈りでいえば八月の下旬から十月の下旬まで二カ月間やるということで、機械をなるべく効率的に稼働して、稼働時間を延ばして、少ない人数、少ない機械でやっているというのが特徴でございます。

 本日の話は、この次、六ページ目のところからでございますけれども、横田農場で種子をどうしているかということでございます。

 横田農場では自家採種を基本にやっております。ちょっと前までは二、三年置きに種を全部購入して更新するということを行っていたんですけれども、二、三年に一回起こる種子の更新のタイミングで大量の種を購入するということになりますので、今は、ちょっと説明がわかりにくいので申しわけないんですけれども、つくっている田んぼの中で、先ほども言いました、今は十品種ありますけれども、それぞれ、面積は何十ヘクタールとかとつくっているんですが、一ヘクタールずつ購入の種子を、一ヘクタールをつくるためだけに買うんですね。それを、うちの採種圃場というふうに決めて、そこからとれるお米のうちの一部を来年の種として使うという形をとっています。それはなぜかといったら、種が古くなったり、おかしくなってまざったりとかということがないように分けているわけですけれども、そういった形で種をとっております。

 当然その種も、種をもみのまま保管すればそのまま使えるというわけではないので、それをまた選別をしたり、当然、選別すると少し減ってしまったりとかということもありますけれども。そういった選別を行って、いい種を、いい種を使わないと僕らはいい栽培ができませんので、そういった選別も自分で、これから冬の時期の僕らの仕事ですけれども、そういうことをやっているということでございます。

 次、七ページの方ですね、種子、実際にどれぐらい種を使っているかということなんですけれども。

 八品種と書いてあるのは実際は十品種でございますけれども、全部で大体七トンぐらいの種もみが必要になります。実際に使っています。そのうち、自家採種として採種したものが大体六千六百キログラム、六・六トンぐらいの種が使われている、自家採種したもので賄っている。あとは、購入したものが大体四百キロぐらいですね。先ほど言った、それぞれの品種の一ヘクタール分ということで、四百キロぐらいずつは購入しているということです。

 種子を購入しようとすると、いろいろな販売先、JAさんとかが主ですけれども、大体、キロでいうと五百円から七百円ぐらいの単価になりますので、これを仮に七トン全部購入するとなれば、三百五十万円とか四百九十万円ぐらいになって、それは大きな負担じゃないかといえば、金額は当然大きいわけですけれども、それは規模が大きいからということもあって、生産コスト全体から見ると一%ぐらいということで、それを大きいと見るか小さいと見るかはそれぞれですけれども、それぐらいの割合になるということでございます。

 今回の法の改正で自家採種に許諾料がかかるということになる可能性があるということを伺っていますけれども、仮にそういうふうになった場合、一、二と書きました。

 つまり、自家採種をする、当然それに許諾料が今度はかかるということですけれども、それと、自家採種したものも当然、先ほども言ったように、そのまま使えるわけではなく、選別をしたりというコスト、人件費も、選別するための機械の減価償却もありますので、そういったコストがかかってくる。それと、例えば、購入した場合のコストですね、今お話しした、購入するとキロ五百円から七百円ぐらいかかりますけれども。それを比べて、どっちの方が経営的に有利なんだろうねということを経営判断をするということになるのかなと思っております。

 八ページ目ですね、先ほどもちょっと触れましたけれども、生産コストに占める種の割合、種が高いということなんですけれども。

 じゃ、それってコストの中でどれぐらいを占めているんだろうねというのが、円グラフに書いてあるものですね。ちょっと、済みません、私の資料が古くて、これはいつも使っていて、古いやつで申しわけないんですが、新しいものは農水省とかに問い合わせていただければと思います。

 左側は、平成二十四年の、農水省が出している生産費調査の六十キロ当たりの生産費、全国十五ヘクタール以上層という比較的大きな階層のものです。そこで言っている種苗費で大体二%ぐらいですね。横田農場でいうと、これは右側、平成二十六年の生産コストなので本当は比べちゃいけないんですけれども、そちらで比べると種苗費の割合は一%ということです。

 先ほど言ったように、自家採種を中心にしたりして、なるべく種のコストを抑えようとしているので、全国平均と比べると少し小さくなっておりますけれども、それでも一%か二%かということで、そんなに必ずしも全体を占める割合として高いと僕は認識していません。むしろ、ほかの部分で、少ない機械でやるとか、ほかにももっと、僕らとしては経営努力でやらなければいけないところは大きいのかなというふうに思っております。

 次、九ページのところですね、横田農場が期待する新品種というふうに書いてあります。

 先ほども言いましたけれども、横田農場の特徴が、作期を分散して長い期間作業する、それによってコストを下げるということをやっているわけですけれども、じゃ、今と同じやり方で作期を、ただ品種を並べればそれだけの期間が延ばせるかというと、必ずしもそういうことではなくて、天候のリスクも、今は、最近、大型の台風が来たりだとか、いろいろな新しい害虫が出てくるとか、病気が出てくるとか、いろいろな問題が経営の中ではリスクが高まっていますので。

 これはちょっとお恥ずかしい話ですが、この折れ線グラフは何かというと、単収の変化なんです。赤い折れ線グラフは全国平均です。二〇〇四年を一としていますので、全国平均でいうとそんなに変わらないわけですけれども、細い線になっているものが、横田農場のいろいろな品種ごとの、その年ごとの収量の変化です。これだけ変化しているんですね。これは決して横田農場のつくり方が悪いとかということだけではなくて、そういうこともあるのかもしれませんけれども、天候とか、いろいろな病害虫とか、いろいろなものがあって、非常に安定させていくのが難しいという状況になってきています。

 我々は、もちろん農家として、技術を高めて安定生産をしていくということは当然やっていかなきゃいけないわけですけれども、こういう気候変動とか新しい病害虫なんというものが出てくると、もともと品種が例えば高温に強いとか、病害虫にも強いみたいなものが当然必要になってくるということだと思います。これまでは、どちらかというと良食味とか、そういったところ向けの品種開発が多かったかもしれませんけれども、これからは、よりそういった視点の品種改良が、新しいものがまだまだ必要になってくるというふうに感じています。

 ですから、新しいものを僕らは使わないと経営的にも厳しいということであれば、新しい品種がどんどん出てくる。育種する人、県とか国とか、民間の場合もあるかもしれませんけれども、そういった人たちがどんどん新しい品種をつくって、それを、僕らがこういう気候変動下で作期を分散しても、安定して生産して、経営をきちっと維持していくということができるような体制をつくってもらうということが、私たち農家にとっても重要かなというふうには考えております。

 以上、簡単で、早足で申しわけありませんでしたけれども、私の方からの御報告とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

高鳥委員長 ありがとうございました。

 次に、印鑰参考人、お願いいたします。

印鑰参考人 まず、このような機会を与えていただいたことに対して大きな感謝を示したいと思います。

 これまで、国内外の食の問題について研究してきました。その観点から、今回の種苗法改正案が持つ問題についてお話ししたいと思います。

 まず、農水省、政府はこの法改正の必要性を、日本の優良な品種の海外流出を避けるために国内における自家増殖を規制しなければならないというふうに言っているんですけれども、これは逆に言えば、日本の国内の農家が国外に流出させている犯人だということになると思うんですね。だったら、その根拠はあるのか、その証拠はあるのかということがまず問われなければいけないと思うんですけれども、その確たる証拠というものは出ていません。根拠の乏しい説明になっていると思います。

 そして、海外での不正な使用をとめるためには海外での登録こそが唯一の解決策と農水省自身が述べられておりますので、これは余りに取ってつけた説明と言わざるを得ないのではないかというふうに思います。

 二番目に、三ページのグラフがあるんですけれども、自家増殖をとめないと種苗企業が新品種をつくる意欲を失ってしまう、こんなことを言っているんですけれども、実際に、一九七八年、今の品種登録が始まる年から、新品種は毎年順調に伸びていました。自家採種ができるにもかかわらず、順調に伸びていたんです。ところが、この十年間、これがとまってしまった、伸び悩んでいます。この原因は何なのかということです。実際に、自家増殖する余裕がなくなってきた農家などもふえていると思いますので、ここで、自家増殖するから新品種が伸びないんだということは、このグラフからは読み取れないと思います、説明としてなっていないと言わざるを得ないと思います。

 そして、今回の法案の説明で更におかしいのは、農家にどのような影響を与えるかということなんです。

 農水省によりますと、種苗法の対象となります登録品種というものは一割程度だ、それ以外が九割だ、自由に自家増殖できるものが九割あるんだ、こんなことを説明されているんですけれども、本当にそうなのか、調べてみました。

 しかし、調べてみますと、五、六になりますが、各都道府県が設定している産地品種銘柄に指定される銘柄を調べてみますと、半分以上が登録品種なんですね。実際に生産は、コシヒカリとかスーパースターがいますので、コシヒカリなんかは一般品種ですから、一般品種の方が生産は多くなるんですけれども、それでもやはり登録品種は三三%ある、一割というようなものではないと言わざるを得ません。

 そして、実際に、県で力を入れている例えば沖縄のサトウキビ、このような品種でも、やはり登録品種の割合というのは非常に高いと考えられるわけですね。

 こうして見ますと、登録品種は、宣伝されているように一割しかないという説明と、現実はかなり違いがあると言わざるを得ないと思います。

 そして、登録品種に関して、自家増殖は規制するのがグローバルスタンダードであるかのような説明がされておりますけれども、実際には、世界で全ての登録品種の自家増殖を規制している国は存在しないと思います。

 EUでも、主食に関するものは基本的には例外に設定されております。自家増殖は認められております。許諾料は払わなきゃいけないよというのはあるんですけれども、実際に、穀類ですと九十二トン、芋ですと百八十五トン未満の農家は許諾料の支払いが免除されています。これはどれぐらいの大きさの農家かといいますと、大体十五ヘクタールとか十八ヘクタールになると思うんですね。

 この規模の農家だったら、日本の農家はみんな許諾免除ですよね。そのような例外がこの種苗法には存在しておりません。やはりこれもおかしいのではないかと思います。

 そして、アメリカの場合は、自家増殖が禁止とされるのは特許が取られた作物のみであって、それ以外のものは基本的に自家増殖ができる。栄養繁殖のものはちょっと除きますけれども、基本的に自家増殖はできるという法制度になっています。

 こうなりますと、このような法制というのは世界で類がないわけですね、そういったものをつくってしまうというのはいかがなものかなというふうに思います。

 そして、農水省は、許諾料はとっても安いから農家には影響を与えないと説明しているんですけれども、しかし、許諾料に関する規定は現在の種苗法改正案には書かれていません。ですから、どうなるかというのは任せている、性善説によっているということになります。独占が進んだら、安いままであるとは限らないわけですね。これが今後高くなっていくことを考えますと、そもそも生産資材の低廉化を目的とした農業競争力強化支援法にも反する立法となってしまうのではないかと言わざるを得ないと思います。

 そして、これもちょっと強調したいんですけれども、農水省の説明では日本の優秀な品種が海外に流出するという懸念ばかりが強調されるんですけれども、今の世界状況はかなり変わってきています。

 十三ページに掲げているグラフを見ていただきたいんですけれども、ここのデータというものはUPOV同盟のデータなんですが、日本は二十年前までは世界第二位の新品種をつくれる国でした。しかし、今は、世界のほかの国がどんどん伸びてしまって、日本だけが純粋に減少を続けています。中国には二〇〇九年に抜かれてしまっている。韓国にも二〇一五年に抜かれてしまっている。二〇〇一年から二〇一八年で、三六%、日本は減少しています。これに対して、韓国は二・八倍、中国は二十二・八倍にふえているんですね。日本だけが何でこんなに減ってしまうんでしょう。その原因は何なのか。

 その原因は、今の日本の国内市場は、スーパーに行けばわかると思います、安い海外の農産物であふれ返っているんですね。これは、農業を犠牲にして進められた自由貿易協定の結果だと言わざるを得ないのではないかと思います。そして、離農者はどんどんふえるばかりです。そうなりますと、農村の衰退に伴って、新品種をつくる必要な人材、能力ある人たち、こういった人も得がたくなってきてしまっている。

 そして、一九九八年までは、地方自治体には補助金という形で種苗事業に安定財源が確保されていました。しかし、それは九八年に地方交付税となってしまって、種苗事業に安定的な投資が行われていないというのが現状ではないでしょうか。ですから、非常に減ってしまっている。

 外国産品と競合を迫られる農家にとっては、その負担をふやす種苗法改正は、さらなる離農者をふやすと思うんですね。そうすると、種、苗を買う人が減ってしまうんです。こうなると、今度は種をつくる側の人たちにとっても、市場が小さくなってしまいますから、逆効果になってしまいますね。こうなってしまいますと、今後の日本の種苗事業にとって大きな問題を逆につくり出すんじゃないかと思うわけです。

 そして、特に強調したいのが、稲の問題、お米の問題です。といいますのは、今、日本が唯一種を自給できるというのは稲しかないんですね。お米は、日本の食料保障の最後のとりでなんです。そのとりでを守ってきた外堀は、種子法廃止で埋まってしまいました。そして今、内堀が埋められつつあるのかなと危惧せざるを得ません。

 アメリカは、大豆やトウモロコシは民間企業任せにしているんですけれども、主食である小麦は農家が自家採種しています。そして、公共機関がちゃんとつくって、安いものを提供しているんですね。この制度はいまだに続いています。日本もそうでした。でも、日本はその制度を今やめようとしています。こんなことで、この最後のとりでがなくなってしまう。

 公的種苗事業が衰退していって民間企業に委ねられた場合、これまで地域を支えていた多様な品種というものはなくなってしまう可能性があるのではないか。種をとるか、とらないかじゃないんですね、買うか、買わないかの問題じゃないんですね、種そのものがなくなってしまう、そういう危険が今あるんじゃないかと思います。といいますのも、稲の多品種を供給する民間企業は存在しておりません。

 食は社会の基盤でもありますし、それを失うことは、独立国としての体裁すら奪ってしまうことにつながりかねません。現在でも、日本に登録される外国品種の法人の割合は激増しています。

 十七ページにグラフがあります。外国企業の割合、日本に登録されている品種で外国法人のもの、これがこのような形で急増しているんですね。この状況は、今はお花の品種だけだから大丈夫だというんですけれども、これも、種苗法で公的種苗事業が衰退していったら、ほかの、お米とか、そういったものにも入っていく可能性は僕は十分にあると思います。

 農水省は、二〇一五年に知財戦略二〇二〇を策定しました。その中で、種苗の知的財産権が大きな柱に位置づけられました。知的財産権では種苗法の育成者権と特許法の特許権の二つの形態があるんですけれども、この二つとも農水省は強化していく姿勢を示しています。ちょっとこれは種苗法から枠を超えてしまう話なんですけれども、知的財産権を強化するということが何をもたらすか、十分注意が必要だと思います。

 といいますのは、十八ページの小さなグラフを見てください。三つの小さなグラフがあると思います。この中で、アメリカでも、一番左のグラフですけれども、順調に登録品種がふえているのは特許じゃない方なんですね。特許の方は、この二十年間ほとんどふえていないんです。しかも、真ん中のグラフに注目していただきたいんですけれども、アメリカですら、特許をとられた種を握っているのはアメリカ企業じゃないんです、外国企業が六割とっているんです。アメリカですら六割ですよ。これを日本でやったらどうなるでしょう。ほとんど外国企業にとられてしまう。つまり、知的財産権を強化していくことによって、逆に外国企業に日本の種苗市場を握られる結果になりかねません。

 そして、看過できないのが種苗表示の問題です。今回の種苗法改正で種苗への表示が強化されるということなんですけれども、これは深刻な話だと思うんですね。というのは、普通の大豆の種だと思って買った、ところがそれはゲノム編集されていた、つまり遺伝子操作されたものを自分は知らないうちにまいていた、こんなことが起きかねないんです。

 しかも、EUやニュージーランドはゲノム編集は遺伝子組み換えとして規制すると言っているんです。韓国や台湾もそれに追従するかもしれません。そうなると、日本の食は輸出できない、こんなことになりかねません。そういった意味で、これをしっかりと表示することは不可欠だと思います。

 これまでの種苗法は、新品種を育成した育成者と、それを使う農家の権利をバランスさせることに大きなエネルギーを注いでつくられたと伺っております。現行種苗法をつくられた方々の御努力に強い敬意を表せざるを得ません。

 しかし、二十ページにありますように、今回の種苗法はそのバランスを壊してしまうものです。このようにバランスを壊してしまうことによって、日本の農業にとっては大きな問題を引き起こすのではないか。自家増殖というのは農業の基幹技術であり、それを失うということは日本の農業にとって大きな制約になってしまう、そういう懸念を持ちます。

 この停滞している種苗育成をどうしていくべきか。その鍵は、二十ページのように、育種家の方、育種家農家、使う側、買う側も含めて両方を底上げする、そういう政策が必要なのではないでしょうか。これがなければ、バランスを失わせることによって、日本はアジアの諸国にも追いつけない、そんな状況が生まれてしまうんじゃないかと思います。

 今、種苗の多様性が危うくなっています。多様性を失うことで、私たちのこの地球の生態系はかつてない危機に瀕していると言われています。これに対して、国連FAOはローカルで多様な食を守ることが今後の人類の生存に欠かせないとしています。そのためには、地方自治体で三百品種近くを今つくっています、在来種を持っている農家の方は、千ぐらいを持っておると言われています、まずはこの多様な種を守ることの方がむしろ大事なんじゃないでしょうか。

 このような、多様性を失っていくことは、私は、民間企業の独占になっていきますと本当に劇的に多様性は失われてしまいます。これは日本の未来が失われるに等しいと思います。

 今必要なのは、このような在来種を守る、そういう方向ではないかと思います。現に、ブラジル、韓国でもそういった方向に進んでいまして、イタリアは、生物多様性を守るために中央政府が地方自治体に権限を移譲して、地方自治体で在来種を守る、そういう政策が今進んでいると聞きます。こういった政策から学ぶ必要があるのではないかと思います。

 最後に、食料・農業遺伝資源条約におきましても、小農及び農村で働く人々の権利宣言におきましても、農家は種を守ってきた貢献者と言われています。つまり、登録品種であったとしても、農家は本の共著者であるわけですね。そういった共著者の権利を一方的に、世界に類例のない形で奪うような法改正はあり得ないと思います。

 残念ながら、今、賛成も反対もほとんど農家の人たちに浸透していません。知らない人がほとんどです。そのような状態で、この審議が進んでしまうということはやはりまずいと思います。地方公聴会も含めて、しっかり、慎重な論議が必要だと思います。

 この十年、世界は大きく変わりました。今の政策は大きく変わりつつあります。これを考えますと、やはり日本も大きく変わらなきゃいけない、今そういう時代に来ていると思います。そのためには、古い考えでもってつくられている種苗法改正案ではなくて、もう一回、今世界で動いている、多様性を守る、地域の種苗をどうやって守るか、そういったことをもう一回考える必要があると思います。

 この改正案は、二十二年ぶりの歴史的な改正になりますので、このようなおかしな説明で拙速な審議をしないようにお願いいたしたいと思います。

 賢明な議論が行われることを心から祈念して、こちらの報告を終えたいと思います。どうもありがとうございました。(拍手)

高鳥委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。野中厚君。

野中委員 自由民主党の野中厚です。

 本日は、横田参考人、そして印鑰参考人、両参考人に御出席をいただきまして、ありがとうございます。

 私は、この委員会を通じまして懸念が払拭され、何のための法改正かということが明らかになればよいなというふうに思っております。

 まず、両参考人にお伺いしたいと存じますが、本法案の改正について評価すべき点、期待する点、また懸念する点などがあれば、お伺いしたいと思います。

横田参考人 この改正で評価するところ、期待するところでございます。

 先ほど説明申しましたけれども、やはり、今までと農業の環境が気候も含めて物すごく変わっているということを考えると、当然新しい品種をつくっていかなきゃいけないということが前提ですので、新しい品種がどんどん出てきて、それも、新しい品種が出ればそれで浸透するかというと、つくってみると思ったようにつくれないとか、そういうことがたくさんあります。新しい品種は今もお米でもどんどんできていますけれども、実際はつくってみると思ったようにいかないとかというのが多くてですね。そういう意味でいうと、やはり新しい品種をいろいろな地域で試してということが必要ですので、新しい品種がどんどん出てきて、しかも、それをつくる人がきちっと権利を守れるというか、つくりやすいというか、そういった環境を整えていくということは必要かなという。そういう意味で、僕は評価できると。それは結果的には農家にもプラスになるんじゃないかなというふうには思っています。

 あと、懸念といいますか、ちょっと心配があるところでいえば、例えば、許諾料みたいなものが高額になって、農家の負担が大きくなるんじゃないかという心配も一部ではあるかと思うんですけれども。例えば、先ほども説明しましたけれども、今、種子、種を買うときにキロ五百円とか七百円とかがかかっていますけれども、つまり、今後でいえば、そこに許諾料みたいなものが含まれているというふうに考えられると思うんですね。

 今後、例えば自家採種にしたときに許諾料がかかるということであれば、今までもそれだけのコストがかかっていますし、これからも、それが何か今までと比べてとんでもない金額になるということは恐らくないんじゃないかなというふうに、楽観的かもしれませんけれども、そういうふうに考えているということと、あと、それが物すごく高額になって、経営に負担がかかるというところまで上がれば、それは、僕らは経営として、そんな品種はちょっとつくれないねと言って、選択しないだけ。それでは今度は逆に、使ってもらえなくて、つくった側も困ってしまうわけですから、その辺は、市場のバランスというか、それが起こってくるんじゃないのかなというふうに考えていて、特別心配する部分ではないのかなというふうには考えております。

印鑰参考人 十五分間、懸念ばかり言ったと思いますので、期待するものをなかなか考えつかないんですけれども。

 特に、先ほど横田さんもおっしゃられましたけれども、許諾料について規定がないんですね。

 インドでは大きな問題が起きました。モンサントに種子企業が買収されてしまいまして、コットンでは、インドの農家はモンサント系の種苗会社からしか種を買えなくなったんですね。デシという在来の種が、すごくいいものがあったんですけれども、それは売れなくなってしまった。その結果、どうなったかといいますと、農家は高い種を買わざるを得なくなってしまった。その結果、インドでは多くの農家が債務まみれになってしまって、自殺が三十万人を超したということがあります。そして、インド政府は、強制的にモンサント社のロイヤリティーを切り下げる、こういう強権発動を行いました。

 じゃ、それを日本政府ができるんだろうか。今の種苗法ではこれは難しいのではないのかなと思います。その点、大きな懸念は尽きることがないのかなと思います。残念ですけれども、僕からはそんなふうに言わざるを得ません。

野中委員 ありがとうございました。

 まず、懸念事項でありますけれども、午前の質疑でもありました、許諾料の額というのは幾らぐらいの規模になるのかということですが、一般論で、公的機関が利益を求めるということもないし、会社が参入しても、それ以上の高目の額を設定すると、先ほどおっしゃったように生産者は買わないという選択肢もありますので、やはり、普通に考えれば、許諾料が新品種を改良したメリット以上の額になることは当然ないということであります。全体の懸念事項も含めて、当然、農水省も今必死にこの種苗法改正法案について発信をしていますけれども、やはり、我々も地元を抱えている議員として、不安を払拭するために、それぞれ、地元で生産者の方々にこれは伝えていかなきゃいかぬなというふうに思ったところであります。

 その上で、これは何のための法改正かというと、先ほど横田さんがおっしゃったとおりに、まずは知財の保護です、まずは。日本の誇るべき農業が海外に流出をしてしまっている、また、海外への輸出促進政策についてもこれは大きな損害です、これをまず守っていく。その上で、守った上で、法改正をして知財の保護を強化する、その中で、品種育成の振興、ひいては農業者全体の所得向上のメリットにつなげていく、これが法の趣旨であるというふうに思っております。

 現に今も、農水省の調査においては、中国、韓国でネット販売されている種苗に、三十六品種、紅ほっぺなど日本で品種登録された名称のあるものが少なくともあるということがありますので、今回この法案を改正することで、農家の方にも利益が及ぶようになるという法律であると私は考えております。

 次に、横田さんに質問させていただきたいと思うんですが、本来、きょうの参考人以外でお会いする機会であれば、いろいろなことを聞きたいんですね。というのは、昭和五十一年生まれでいらっしゃるということで、私も五十一年生まれ、同じ年で、先ほど説明がありました、二十ヘクタールから今百六十ヘクタールまでふやしている。そして、今後の日本の米政策についてどのように考えていらっしゃるのかとか、一台の田植機、コンバインで百六十ヘクタールをやると、何年で切りかえているのかですね。これは質問じゃなくて、次にお会いするときにお聞かせいただきたいというふうに思うんですが。

 本来であれば集積、集約をしてやっていくというのが一般的なんですが、横田さんのを見ると、非常に散らばっている部分もあるし、すごく農機の購入代を抑えた取組をされているなというふうに関心を持ったところです。

 その中で、経営コストを下げるために自家増殖をされているということですけれども、どれぐらいの経営規模であれば自家増殖が有利になるというふうに考えていらっしゃるでしょうか。自家増殖か、買うかということ。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 経営規模には全く関係ないと思います。私も自家増殖を、先ほどもちょっと説明の中にありましたけれども、前までは数年に一度、恐らく僕が農業を始めた当時ぐらいまでは数年に一度交換というふうにしていたんですけれども、それを、先ほど言った、一ヘクタールずつ種をとるという方法に変えました。三年ごとに一度にかえるというときも、三年で交換していないときは自家増殖をしているということですので、自家増殖をずっとやっているわけです。

 種のコストを抑えるとかという視点でいうと、種代は規模にかかわらず十アール当たりが決まってきますので、そういう意味でいうと、規模にかかわらず。横田さんは大きいから意味があるんでしょうと言われると、そんなことはなくてですね。どんな規模であっても、自家増殖をすることによりコストを下げる。それも、必ずしもコストが下がるかどうかは、種の選別とか、そういった手間もかかりますから、それはちょっと、農家自身が購入とどちらがメリットがあるかというのはそれぞれ考えていく必要があると思うんですが、必ずしも経営規模によるものではないというふうには私は考えています。

野中委員 わかりました。その中で、横田さんは自家増殖をされているということです。

 それで、先ほどもありましたけれども、今回の法改正が仮に成立すると、登録品種で自家増殖をされている分については許諾料が発生するということですけれども、その点について、改めてちょっとお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

横田参考人 当然、これから先、仮に成立すればの話でしょうけれども、登録品種については許諾料が発生する、我々はきちっとそれを払っていく、それは当然、限界はあるかもしれませんけれども。それを払ってでも登録品種が、恐らく新しい品種が、先ほども言いましたように、例えば、収量がたくさんとれるんだとか、病気に強いんだとかということがあれば、それは経営として取り込んで、従来の品種よりもより収量がふえる、より安定してとれる、じゃ、種子代に例えば許諾料を払ってもプラスになるからそれを選ぶとか、いや、余りプラスにならないから、じゃ、従来の一般品種を使おうとかということを、一つ一つ経営判断をするということになろうかと思います。

 だから、いずれにしても、それでもメリットがあると感じれば、許諾料を払ってもメリットがある、それと登録品種を使った方が経営的にプラスになるということであれば、それをしっかりと選んで、しっかりと許諾料を払って、それで更に経営をプラスにして安定させていくということが、我々のやっていくことかなというふうには考えております。

野中委員 ありがとうございます。

 横田さんのところの種子の実績を見せていただくと、三百五十万から五百万の種代がかかっているということであります。これは、仮に全量を自家増殖した場合の知財相当分を許諾料として計算すれば、五万から六万程度というふうになるわけです。今、横田さんが説明をしていただいた、選択するのは、改良によって収量が安定するとか、メリットがあればそっちの方に行くし、選択というのは生産者が行うということでありますと。

 その中で、改めて確認をしますが、許諾料が五万なり六万発生するから現在の登録品種の自家増殖分を一般品種にかえるとかいうことはないのか。また、その逆も、何品種か一般品種をつくっていらっしゃると思うんですけれども、仮に作付の時期が重なって、登録品種としていいものがあれば許諾料がかかってもそちらの方に転換するということでいいのか。確認の意味を含めて、お聞かせいただければと思います。

横田参考人 そういうことだと思います。

 先ほども言ったように、種子のコスト、いわゆる生産コスト全体は、私たちの生産コスト全体から見ればそう高くない。そこに少し更に、仮に今の自家増殖よりもプラスアルファでコストがかかったとしても、生産コストから見ればそんなに大きな問題ではなくて、むしろそれよりも、繰り返しになりますけれども、収量がふえるとか、病気に強いとか、それによって防除の回数が減って、防除のコストが減るとか、そういうことの方が僕としてはメリットを大きく感じますので、その場その場で品種ごとに経営判断をして選んでいくということ、それが、決して、許諾料がかかるから選びにくいとかということは起こりにくいというふうには考えています。

野中委員 ありがとうございます。

 横田さんのケースから見ますと、種代の費用が全体の一%、そして、仮に知財相当分を許諾料とするならば、掛ける一%ですから、全体の約〇・〇一%が今回の許諾料のコストということになります。

 その上で、一般品種か登録品種かを選択するのは生産者の自由ですから、そしてそこに、何をもって選択するかというのは、やはり、生産者である横田さんがおっしゃった、単収がいいとか、収量が安定しているとか、味がいいとか、見た目がいいとか、そういったものを総合的に判断をして生産者の方が決めていかれるということであります。

 ぜひ、この種苗法改正法によって、生産者の方の所得が向上するとともに、日本の知財が海外に流出しないことを期待いたしまして、私の参考人質疑とかえさせていただきます。

 お二人の参考人の皆さん、御出席をいただきまして、ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 きょうは、両参考人に、大変お忙しい中、お時間をいただいてお越しいただきましたことに、改めて心から感謝を申し上げる次第でございます。また、先ほど、それぞれのお立場からの御意見を賜りました。

 その上で、少し具体的なことについて、何点かお伺いさせていただきたいと思います。

 まず、横田参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどの御説明、また資料の中でも、実際に、六名での生産、また精米、加工を含めても、この少ない人数の中で百六十ヘクタール、大変な御苦労をされているんじゃないかなというふうに推察しました。その中で、特に、私は、作期の分散を行って八種類の稲を作付して生産しているという、ここに注目しましたが、ただ、先ほどの資料の説明の中では、天候、季節の問題とか、害虫ですとか、作柄、収量についてもかなり、時には上下していくという話もありました。

 そこで、一つお伺いしたいのは、現在、そしてこれからも恐らく、複数の稲の品種を組み合わせていく、そういう経営が重要というふうにお考えかと思うんですけれども、今後もそういうお考えで取り組んでいかれるのかな、それがまず一つと、もう一つは、今後どのような品種の開発ということに期待をされるか、その点についてまずお伺いしたいと思います。

横田参考人 作期分散をしていく、先ほどもちょっと言ったように、天気が非常に、例えば、物すごい、これまでに想像もできないような大型の台風が来て、昨年は、茨城もそうですし、特に千葉なんかはかなり影響を受けましたけれども、そういうことが起こると、その率が高まって、作期分散をすることでより高まるということもあるかもしれません。

 でも、一方で、コストを考えると、そんなに短期間で終わらせようとすると、通常、一般的に、例えば農業経営学会みたいな学会でお話をされている中でいうと、二十ヘクタールから三十ヘクタールぐらいで田植機、コンバインが一台必要と言われていますので、横田農場の規模になれば田植機もコンバインも五台、六台あって当たり前というのが一般的。そうすると、当然、それだけの機械のコスト、それを動かす人のコストもかかるわけですから、それは当然、これから先も作期分散をしていく必要があるというふうには考えています。ただ、作期分散をしていくと、先ほども言った、いろいろなリスクもありますねと。

 先ほどの質問があった、じゃ、これからどんな品種が必要かというのは本当に難しいなと思っています。全部に強い品種なんて、なかなかスーパーマンみたいな品種はなくて、こっちは強いけれどもこっちは弱いみたいなことが当然あるので、それをうまく経営の中で組み合わせて。全部の品種で百点満点をとるのはもしかしたら難しいかもしれませんけれども、こっちは九十点、こっちは七十点だったけれども、平均すればそこそこのところへいくねみたいな、恐らくそういう選択をしていかなきゃいけないかなというふうには思っています。

 もうちょっと細かく具体的に言うと、例えば、夏が暑くなってきて、高温の中で登熟すると白未熟といって品質が低下しますので、そういったものに強い品種、高温でも強い品種をつくっていくとかですね。それは今も結構できつつありますけれども。

 あと、茨城で今問題になっているのは、ヒメトビウンカという、これは稲しま葉枯れ病という病気のウイルスを媒介する虫ですけれども、そういったものが稲についてしまう。

 品種によっては、それに強い品種もありますので、例えばそういう品種、もともと病気にかかりにくいような性質を持っている品種をどんどんと。今はそういう品種が、選択肢がそんなにないので、そういう品種がもっとふえてくれば、もっと選べる。それは、ヒメトビウンカにかかわらず、いろいろな病害虫に対してそうですけれども。そういったものがどんどん必要になってきたりということがこれから起こって、だから、これから栽培の条件が変わってきて、気候とか病気とか天気とかが変わってきて、これから、よりいろいろな多様な品種が求められてくるなというふうには思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、印鑰参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先ほどの説明の資料の中で、七ページの印のある、各都道府県での稲の登録品種の割合ということで、表がございました。これを見ますと、特に北海道、青森での登録品種が稲の場合は割合が高いということで、その上でお伺いしたいと思うんですけれども。

 私も北海道の方にいますので、かつて北海道のお米というのは余りおいしくなくて、残念ながらそういう時代が長かったんですが、近年は、さまざまな品種改良によって、うまい米、それから、売れる米、地域を代表するブランド、自慢のお米というのが北海道から出てくるようになって。ですから、昔々は寒冷地であるがゆえに稲作に適していなかったという地域であったにもかかわらず、長い間、多くの方々の御努力によって、こうした北海道や青森でも作付ができて、今のような状況になった。これはまさに、そういう意味では、登録品種の割合が高いというのは、特に稲に限ったことで申し上げますと、そういうことなのかなというふうに思うんですね。

 ですから、そのことについて参考人はどのようなお考えなのか。ある意味こうしたことがあるということ自体が、私は登録品種の意味合いというものがここにあるのかなというふうに思っておりますが、お考えをいただきたいと思います。

印鑰参考人 とても大事な点を御指摘いただいたと思います。

 今までは、産地品種銘柄というものがありまして、各都道府県に適したお米を選んでいく、なければつくっていくということになると思うんですね。特に、寒冷な地域、青森であるとか北海道、ここでは、そういう品種を新たにつくらなきゃいけない、そういうニーズが高かった。そういうこともありまして、やはり圧倒的に登録品種の占める割合が大きいんですね。

 あと、寒冷地だけではなくて、山間地もそうですよね、ある山間地に適した品種。市場としてはとても小さいんだけれども、その品種があることで農業が続けられる、そういう関係にもなってきていると思うんですね。

 そのようなことを考えますと、登録品種というものは、地域で、特に農業に厳しい地域で農業を続けていくときには特に重要な役割を果たしているというのは言えると思います。そのような意味で、北海道であるとか青森県であるとか、そういった県の公的な種苗事業が継続していくことがとても重要な役割を果たしていくのではないかなというふうに思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、横田参考人にお伺いしたいと思います。

 自家増殖が許諾制になってくると、許諾を得るために手続上の負担が生じるんじゃないか、こういう懸念の声も一部あります。そのことについて、どういうお考えをお持ちなのか。また、仮に許諾制のところを選択していく中で、例えば政府に対してこうしてもらったらどうかとか、そのような要望がございましたら、あわせてお伺いしたいと思います。

横田参考人 当然、農業をやっていれば、いろいろな、やらなきゃいけないことはたくさんありますので、これが今度は許諾という、新しい、また何かやらなきゃいけないことがふえるということであれば、それが負担になるということであれば、我々として困るということになるかもしれませんけれども、なるべく、でも一方では必要な手続、必要なものは当然やっていかなきゃいけませんので、当然、その負担感が、許諾を得るための手続が物すごく煩雑で大変だということでは困ってしまいますので、なるべくそれを簡易的にできるようにするというのは当然必要だと思いますが。

 ただ一方で、余りにも簡単で、もともと許諾ってちゃんと機能するのかというところまで、当然、制度が意味がなくなってしまっては意味がありませんので、もともとの趣旨からずれてしまいますので、しっかりと、育成権者と自家増殖をしたい生産者の間できちっとやりとりができるような、それをいかに手間をかけずにできるようにしていただくということは必要なのかなというふうに思っています。

稲津委員 ありがとうございました。

 次に、印鑰参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどの趣旨の御説明の中でも、許諾料については法文に明記がないんだという御指摘がありました。これは更にいろいろなところで御検討する場面があるかもしれませんが。

 どうでしょうか、許諾料を設定するという場合が仮にあったとして、例えば、適切なというか、許諾料をどうお考えなのか。すなわち、いや、そもそもそれはもう一切だめですよというのか、あるいは、まあこのくらいだったら農家負担が余りないというぐらいの目安みたいなものを何かお持ちであれば、お答えいただきたいと思います。

印鑰参考人 許諾料の目安というものをどう算定するのかというのは、かなり難しい問題かなというふうに思います。

 といいますのは、今、農家、例えば米の場合ですと、生産コストの方が高くなってしまっている、赤字のような状態なわけですよね。そこにわずかであっても足されたら、これは農家にとっては大きな負担になってしまいます。

 ですから、これは本当に社会で、どちらも支えなきゃいけないんですよね。種をつくっていただく人たちと、種を使う側の人たち、これを両方とも支えなきゃいけない。そういう総合的な中でその負担を考えていくべきであって、一方的に農家の方たちだけの負担でやるというのは無理があるのではないかなというふうにも思います。

 ですから、許諾料はいろいろなケースがあると思うんですね。例えば、接ぎ木なんかでやる栄養繁殖の場合は何年も何年も続くので、そういうことをやっている育苗家の方たちは非常に大変な状況になりますから、やはりその人たちがちゃんとペイされなければいけないと思いますし、そういう個別の作物について、どのように育種側を支えるかということを議論していく必要があるのではないかなというふうに思います。

稲津委員 時間がかなり参りましたので、最後の質問になると思いますが、横田参考人にお伺いしたいと思います。スマート農業について触れておきたいと思うんですけれども、これだけ、百六十ヘクタール、そして、今、令和元年からスマート農業のプロジェクトに参画されているということで。

 今後、農家経営の中にあって、これだけ大規模でやっていると、当然、更に労力のコストを下げるとか、機材の導入を更に図るとか、あるいは農地の大区画化とか、こういうことがテーマになると思うんですが、きょうは時間がありませんので、スマート農業についてお考えを簡潔にいただければと思います。

横田参考人 これは、これだけで相当時間を使わないといけないぐらい、複雑な、いろいろな話が必要だと思いますけれども。

 端的に言えば、先ほどからの繰り返しになりますけれども、農業生産をしている環境が大きく変わっていますので、当然、つくるのに使う技術も大きく変わっていく必要があるというふうには思っています。今までと同じやり方、今までのやり方を否定するものでは全くないんですけれども、それを踏襲しながら、でも、やはりいろいろな新しい取組に挑戦していくという意味では、絶対にスマート農業の技術みたいなものにこれから取り組んでいくということは必要不可欠だと思っています。

 今回の話に関係するところでいえば、例えば、省力化のために直まきという技術が昔からありますけれども、私もいろいろな品種で直まき、直接種をまく方法をやっていますけれども、スマート農業の中でも、例えばドローンで種まきをするとか自動化できるとかというメリットはあるんですが、向いている品種、向いていない品種、たくさんありますね。全ての品種を同じやり方で、もともと直播に向いていない品種というのはありますので、省力化をするんだったら、新しい、直播に向いた品種というものがどんどんふえていかないといけないということだろうと思います。

稲津委員 時間が参りましたので終わらせていただきますが、きょうは両参考人に大変貴重なお時間をいただきましたことに改めてお礼を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、亀井亜紀子君。

亀井委員 立憲民主党の亀井亜紀子でございます。

 きょうは、横田参考人、印鑰参考人、お時間をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 まず初めに、農家でいらっしゃる横田参考人に幾つか伺いたいと思います。

 先ほど印鑰参考人のお話で、「国内の農家が海外流出の原因ということになるが、その明白な証拠は出されていない。国内の農家にとってはまったくの濡れ衣以外の何ものでも無い。」と資料にもありましたが、まさに、きょう午前中、この種苗法について審議入りをしたんですけれども、農家が自家増殖をするということと種苗が海外に持ち出されるということが一体どう直接的に関係があるのかということが論点になりました。まさにこの点が、我が党でも非常に大きな議論になっているところです。

 農水省いわく、許諾制にすると、許諾を与えるときに、これは海外には持ち出してはいけませんよというように念押しできるようになるので抑止力になるのだというんですけれども、でも、法改正したところで念押ししかできないのであれば大して変わらないと思うわけですね。ですから、本当に必要なのは、やはり品種登録を海外でも進めるということしか流出をとめる方法はないのではないか。

 つまり、初めから苗を流出させようと思っている人はわざわざ許諾を求めずにこっそりやるわけですから、結果として、これは正直者がばかを見る。正直な農家は許諾をとって許諾料を払って栽培をするのだけれども、初めから悪意がある人はやはり持ち出してしまうから、正直な農家がばかを見る法律じゃないかなというふうに我が党では今議論しているところです。

 そこで、農家である横田参考人に伺いたいんですけれども、自分たちが真面目に、経営上、自家増殖して栽培していることに対して何か海外流出と結びつけられて言われる、もともと歴史的に自家採種することは農民の権利だと思いますけれども、そこに踏み込んできて、自家増殖は原則禁止である、登録品種に関してですけれども、そう言われることに、何かちょっと違和感ですとか、心外だと思われることはありませんか。

横田参考人 御質問ありがとうございます。

 非常に答えるのが難しいなと思うんですけれども、文句を言われたらそれは困ったなと思いますけれども、でも、僕は今回のこの議論はすごく重要だなと思っています。

 私も、一方で、全国稲作経営者会議というお米農家の全国組織にも所属していて、若手の会なんかも私は以前部会長なんかをやらせてもらっていたことがあるんですけれども、そういうメンバーと話をしていても、やはり、ふだん我々は一番重要な種の部分に意識がちょっと薄いというか、そういうことの問題意識がちょっと低いようなところがあったので、今回のこの議論をきっかけにそれがすごく高まったという意味で、僕は今回の議論はすごくよかったなというふうに感じています。

 例えば、稲作経営者会議で私も部会長をやっているときに、海外の米事情をいろいろみんなで調査に行ったんです。そうすると、やはり、海外で、現地で生産された、例えばコシヒカリとかと書いてある品種というものが売っているわけですよ。本当かどうかはわかりません。だけれども、そんなことも売られている、僕らはそれを見て、これは何なんだと思うわけですね。

 先ほどおっしゃったように、例えばそれを農家がこっそり持ち込んでいるのかどうかわかりませんけれども、そういうものを見て、僕らはやはり愕然とするわけです。今後は海外に輸出していく、じゃ、そのコシヒカリか何かわからないものと日本から持っていくもので勝負しなきゃいけないとかということになると、これは何なんだろうなと思ってしまいます。

 やはり、そういう意味で、まず我々農家が意識を高めなきゃいけない。そういうことによって、今回のこれをきっかけにそういうことが起こるでしょうし、先ほど言った、正直者がばかを見るのかもしれませんけれども、でも、やはり業界全体としてそういうものをしっかりやっていかなきゃいけない。もし何かそういうものを見つけたら、これ、だめなんじゃないのということをしっかり言える体制になるというのは僕は重要なのかなというふうには感じています。

亀井委員 正直な御意見をありがとうございます。

 もう一つ、じゃ、横田参考人に伺いたいんですけれども、午前中の質疑の中で、登録品種を自家増殖している農家というのはどのぐらいあるんだろうか、そういう質問があって、農水省の方は、ほとんどありませんというような答弁であったと思います。後で議事録を確認しますけれども、そう多くはないよというようなニュアンスの答弁でした。

 一方、二〇一五年に農水省がアンケートを行っておりまして、農家に自家増殖についてのアンケート調査をして、そのときに、農家の五二・二%は登録品種の自家増殖をしていると。その理由として、生産に必要な種苗を確保するためが三四・六%、それから、種苗代金を節約するため、これが三〇%とあったんですけれども、横田参考人の感覚的なものとして、登録品種を自家増殖している農家というのはやはりその程度はあるだろうと思われますか。

横田参考人 感覚でいうと、自家増殖している人は比較的多いのかな。ただ、ちょっと、米の場合は、注意が必要なのは、例えば横田農場も八品種、正確に言うと十品種ですけれども、つくっていますけれども、全て均等の割合でつくっているわけではなくて、やはり従来から浸透している一般品種の作付の割合が高くて、これから新しいものを導入しようということで、少し、登録品種、新しい品種もつくっています。だから、品種は一品種カウントしてありますけれども、じゃ面積とか作付の規模とかで考えたときにそれがどれぐらいの割合かというと、低いということなのかなという印象は持っています。

亀井委員 それでは、次の質問はお二人にしたいと思います。

 きょう私は午前中の質疑の中で、なぜ例外品目をつくらないのかという質問をしました。つまり、自家増殖を一律に禁止すること自体私はおかしいと思っていますけれども、それを百歩譲って、原則自家増殖を禁止にしたとしても、海外のように例外品目というのをなぜつくらないのですかという質問をして、まだ私は理解できる答えを得ていません。

 海外の事例として、主要農作物ですよね、ですから、穀類であったりバレイショであったり、そういうものが例外になっている。だから、日本であったら、米、麦、大豆ですとか、自家増殖が前提で栽培されているようなものですとか、あともう一つ大事なのは有機栽培です。有機栽培というのは、自家増殖、自家採種を前提として栽培されているので、なぜそういうものを例外として指定しないんですかという質問をしたんですけれども、それについてどう思われますでしょうか。例外を設けてほしいというお気持ちはありますか。

 お二人にお伺いいたします。

横田参考人 大変申しわけないんですけれども、私は米以外をつくっていないので、ちょっと米以外の感覚を持ち合わせていないので、うまく答えられるかどうかわからないんですけれども。

 私の感覚でいうと、農家自身が、やはりこれを守っていかなきゃいけないね、ちゃんと日本の品種を、それは我々が使う大切なものだから守っていかなきゃいけないねという意識を高めるという意味でいうと、これはいいよね、これはだめよねというよりは、原則、基本的に例外をつくらずに全部守っていくんだという姿勢はそんなに間違っていないのかなという印象は持っています。

印鑰参考人 特に、有機の農業にとっては自家増殖は不可欠なものになるわけですね。

 といいますのは、例えば登録品種を使う場合ですと、登録品種、無農薬の種というものは今の日本の制度の中でほとんど確保されていませんので、一回それを自家増殖することによって初めて有機農業に適した種がつくれるわけです。だから、有機農業の種をつくるためのものは例外にするということをやらなかったら、日本の有機農業はだめになっちゃいますよね。その例外をつくっていないというのは、決定的にこれはまずいと思います。

 有機農業というのは世界が向かっています。この二十年間に世界では五倍以上に市場がふえているんですね。それが、日本は今、百九位とか、面積比で九十八位とか、そういう世界の後ろに行ってしまっているわけです。有機農業のパイオニアであった国がそんな状態になっているというのは、これは本当に今回の中で大きな問題になると思います。そのような意味でも、この種苗法の中で例外を設けなきゃいけない。

 それから、あと、例えばオーストラリア政府の知財局のページを見ていただければいいんですね。ファーム・セーブド・シーズというんですけれども、つまり、自家増殖に関して、これは、基本的に人類が何千年もやってきた、エッセンシャル、本質的なことですと書かれているんですね。そして、一番強調されているのは、生存に不可欠だと。

 だから、まず、この問題というのは、何よりも生存の問題なんですよね。食料安全の側からこの自家増殖というものは認められるべきだ、こういう項目があっていいんですけれども、それすらないというのは大きな欠陥ではないかなというふうに思います。

亀井委員 ありがとうございます。

 午前中の政府の答弁では有機農業も例外ではないというようなことでしたので、一方で、国は今、有機農業を、日本の農産品を輸出するという意味で、そちらに力を入れていきたいという方針ですから、そこは矛盾するのではないか。なぜ例外にしないかということは、午前中も本当に何度も質問したところでして、もう少しまた政府に確認をしたいと思います。

 それから、これは印鑰参考人にお伺いしたいんですけれども、先ほどの資料で、外国法人の育種者登録のペースがふえているという資料がありました。それについてなんですけれども、資料の十七のページのところですよね、「二〇一七年新規登録の三六%が外国をベースとした育種者。」とあります。

 それで、また午前中の質疑に言及しますが、我が方の篠原委員が資料を出しまして、二〇一七年に種苗法が改正をされたときに、禁止品目、自家増殖を禁止する品目が拡大されたと。この年から禁止品目の登録の数がふえてきて、二〇一七年は二百八十九種、二〇一八年三百五十六、二〇一九年三百八十七、二〇二〇年三百九十六と急激にふえているわけなんですね。この急激にふえているのと外国をベースとした育種者の登録がふえているというのはちょうど重なっているので、このふえている部分というのは外国ベースの育種者が登録をしていると考えてよいというか、その影響が大きいと思われますか。

印鑰参考人 今、外国企業がふえているものに関しては、お花に集中しているんですね。お花そのものは早くから禁止の対象になっていますので、そこは必ずしも一致しないのかなと思います。

 それ以上に、これから、さまざまな野菜であるとか、これまで野菜は入っていなかったんですけれども、野菜も急速にほとんどの、ニンジン、ホウレンソウ、そういう全てのものが入ってしまいました。それは非常に大きな問題ではないかなと思います。

亀井委員 ありがとうございます。注意して見ていきたいと思います。

 あともう一つは、今回の改正の中に特性表の導入というのがありまして、農家が知らずに在来種だと思い、一般種だと思って栽培をしていたけれども、それとそっくりの登録品種があって、特性表をもとに並べて栽培したら同一のものと判断され、それで訴えられるのではないか、そういう心配の声が上がっております。

 これについては、私も政府に確認をしていきますけれども、過失か故意か、故意ということを証明できなければ罰せられないということではあるんですけれども、ただ、これによって農家が萎縮をして、在来種の数が減っていくような、そういう影響はあると思われますでしょうか。時間が来てしまったので、じゃ、これは印鑰参考人に伺って、終わりにします。

印鑰参考人 萎縮効果はあり得ると思うんですね。この制度で一番問題なのは、従来までは裁判所で証明されるものが、農水大臣が特性表を見て判定できてしまう、その判定に対して異議があったとしてもどのようにできるのか、こういったことに関して全然わからない状態になっています。これではやはり、今、在来種は多くありますので、それをつくっている農家の方が不安になると思うのは間違いないのではないかなというふうに思います。

亀井委員 時間になりましたので、終わりにいたします。

 両参考人、ありがとうございました。

高鳥委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 きょうは、参考人の横田さん、そして印鑰さん、ありがとうございます。早速質問させていただきます。

 まず、横田参考人、お米を大規模農場で生産されていると。そして、御苦労話も聞かせていただきました。お米は、公的種苗の果たしてきた役割が大変大きいというふうに思います。その土地柄に合った、そして災害耐性の強いもの、そして地域の皆さんの食味に合ったもの、まさに地域のブランドがいっぱいつくられました。このお米、野菜、公的機関による種子の開発、供給について、横田参考人の評価はいかがでしょうか。

横田参考人 大変もちろん大きいというふうに思っております。私が今、先ほど言った十品種、正確に言うと十品種をつくっておりますけれども、全て公的機関がつくった品種、三つは県が育種したもので、あと七つは農研機構がつくったものですけれども、公的なところがつくったものを私たちは使わせてもらっていますので、そういう意味では、本当に役割は大きかった、助かったというふうには思っております。

田村(貴)委員 続いて、印鑰参考人にお伺いします。

 世界的に見れば、先ほどお話もあったんですけれども、多国籍の農業関連企業、例えばバイエル・モンサントグループであるとかシンジェンタとか、そうした上位四社が何ともう種苗市場の六割を占有している、驚くべき状況だというふうに考えます。日本での市場参入というのは今後あり得るというふうに私も見ているんですけれども、この辺の流れをどのようにごらんになっておられるか。

 また委員会で質疑もしたいと思うんですけれども、一つは、種子法によって民間参入が障害になっているということで廃止されました。そして、農業競争力強化支援法によって、公的機関の知見を民間に供出しなさいと。それをまた後押しするような形で農水事務次官が地方交付税をちょっとちらつかせるといったような話が出ているので、これは大きな変化を何か行政が起こして、そして淘汰されていくような、非常に強い懸念を私は持っているんですけれども、この動きについて印鑰さんはどのようにごらんになっておられるでしょうか。

印鑰参考人 今の日本のお米の品種をつくる力というものは、まだまだ十分強いと思うんですね。例えば、都道府県がつくっている品種は三百品種近くあります。そういったものがある限りは、多国籍企業といえども、それを上回る品種をつくるというのはまず無理だと思うんですね。

 ですから、公共のそういう品種を守っていれば日本のお米は守れると思うんですけれども、残念ながら、この種苗法改定もありますし、それから農業競争力強化支援法もあります。こういったものによって、政府からちゃんと資金を出さない、予算がつけられないということになってきますと、これが弱っていってしまいます。

 そうなったときにこれが、僕は連合すると思うんですけれども、例えば、個別の企業の名前を出していいのかわかりませんけれども、住友化学はモンサント社と技術提携を組んでいまして、モンサント社の遺伝子組み換えに使える農薬を住友化学が提供するという関係を持っています。そして、その住友化学は日本でも、国内でお米をつくるという生産者でもあります。

 そのような形で、連合してくるという形で、言ってみれば、外国企業が日本を独占するというよりも、無国籍企業といいますか、連合の大きな企業によってそういったお米が独占されていってしまう危険というものは今後高まっていくのではないのか、それに対してやはり、まず公共の品種を守るのが僕は大事だと思います。

 ただ、公共の品種だけじゃなくて、実は、公共品種の中で在来種が抑圧されてきたというようなことを感じておられる方もいらっしゃるわけですよね。まだまだ日本には貴重な、農家が継いでくれたそういったお米もありますので、そういったものを含めて守っていく必要があるのではないかなというふうに思っております。

田村(貴)委員 農家の自家採種、自家増殖を一律許諾制にするというところが、私も納得がいかないところであります。品目においても、それから規模においても、例外規定すらないわけです。

 私は、想像するんですけれども、今度の法改定があって、成立後に育成権者の背中を法律が押すことになるんじゃないかというふうに考えています。やはりこういう法改正でありますから。そうなると、あくまでもやはり権利者の判断になるんですけれども、今までは自由に自家採種して自家増殖していました、そして農家の方は次につなげていた、その自家増殖に対して、いや、もう法律がこうなったので、申しわけないけれども許諾制にしていただくし、許諾料を上げさせていただくという流れは、私はおのずと、もう法律ができるんだから、改正されるんだから、そういう流れは出てくるというふうに思います。

 今は自由にできても、これからは権利者の判断によって農家の不利益がもたらされると考えているんですけれども、いかがごらんになっておられるでしょうか。

印鑰参考人 そのプロセスには何年かかるかわからないと思うんですけれども。といいますのは、例えばお米ですと、まだまだ都道府県がしっかりやっている、そのうちはそれほど入る余地がないと思うんですけれども、これが弱っていった先にそういったものが大きな懸念になるというのは僕は必至ではないかなと思うんですね。

 ですから、特に、今は種の値段は二%にすぎない、これが十倍になったら二〇%になるんですね、そういったことも僕は十分起こり得ると。実際にこれは世界で起きていることですので、日本で起きないとは限らない。そのときに、やはり、私たちのお米、それこそ農協の方たちあるいは地方の、それを支えてきたものが崩れるんだ、これが一番怖いです。これが民間企業にとられてしまったら、地域を支えるものがなくなってしまいます、骨抜きになってしまいます。そこはよく考えていただきたいなというふうに思います。

田村(貴)委員 今、私と印鑰参考人でお話ししたことを横田参考人にもお伺いしたいと思うんです。

 JAから種を買ってきて、それを自家採種して、そして稲作をされていると。許諾制が入ってきて、横田参考人は、物すごい金額になってしまったらこれは困るというふうに言われていました。そうなったときはやはりビジネスで、何をチョイスして何を作付していくかという判断があると言われましたけれども、判断ができない限りにおいて、許諾制が種苗の値上げそれから許諾料の大幅な引上げにつながるとするならばこれは大変なことだと思うんですけれども、横田参考人はいかがお考えでしょうか。

横田参考人 許諾料が物すごく、我々の経営を圧迫するほど上がるかどうかということだと思うんですが、それは、もう農業をやめるかという話ぐらいになってしまいますので、恐らくそこまでの、だから、そんなことをしたら誰もがもうもはや使えなくなってしまうということだと思いますので、実際それはないんじゃないかな。先ほど言った十倍といっても、私のところで一%が、一〇%になるかどうかはちょっとわかりませんけれども、一〇%が小さくはもちろんないですが、まあ、でも、十倍の値段になるかといったら、なれないですよね。

 なかなか想定だけで物を言うのは難しいんですが、そこまでになるわけがないと僕らは確信して、それは、何が起こるかわからない時代ですから、困らないとは当然言えませんけれども、そうならないようにしていく方向が望ましいかなというふうには思います。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 それでは、続けて印鑰参考人にお伺いします。

 資料も、かなり詳細なものを御提示いただきました。この中で、横田さんのところの農場は種苗に占めるコストは少ないという話でした。ただ、品種によっては種苗の占めるコストが物すごくかかるという農業もあります。私自身も、これで許諾料が上がったらもうやっていけないという話もいっぱい聞いていました。

 いろいろな品種を調べていく中で、一律許諾制になると、どういう品種でどういうことが想定されるのか。その辺についても御解説いただけるでしょうか。

印鑰参考人 今の種苗法でも、契約でそれを変えられるということではあるわけですね。そういう必要がある種苗業者の方は契約という方法もとることはできるわけですけれども、ここで一律許諾制にされてしまいますと、全て、種と苗では全く違いますし、これは非常に困った事態が僕は生まれると思います。

 イチゴの場合は変わりはないということが午前中の審議でもされましたけれども、これは今変わりないというだけであって、これが本当に今後も変わりないのかということは、僕は非常に疑いがあるのではないかなと。同様のことが、例えば芋類もそうですし、サトウキビ類でも起こり得ると思うんですね。今では自家増殖しなければ経営が成り立たないというのが、栽培のサイクルで必要になってきますので、やはりそのようなものに関しては大きな問題になっていく。

 そして、やはり、ここでターゲットとなりますのは、米、大豆が大きいのではないか。特に今、大豆に関しましては、大豆の種とり農家の方たちの高齢化が非常に進んでおりまして、今後、日本の多様な大豆、これまで日本の食を支えてきた、そういった品種がなくなってしまう可能性が今言われているんですね。こういったものが実際にどのように確保していけるのか、大きな問題が生じかねない状況が今出てきていると思います。もちろん、農家を支えるということもありますけれども、今、種子法がないというところで、そのような大豆が、種の存続というものが非常に危険になってきている。

 それと、許諾料の面でいいますと、やはり今一番気になりますのは、このような、お米でありますとか、そういう主要な農作物で、今後時間をかけて変わっていく可能性があるのではないかなというふうに思っております。

田村(貴)委員 きょうは、印鑰参考人から、都道府県での稲の登録品種の割合、あるいは重点作物での登録品種の割合というのが出されました。これはかなり膨大な計算が必要ではなかったか。資料は、農林水産省のデータから当てはめて計算されたという理解でよろしいんですね。

 こういう資料を私たちはこの委員会で待っているわけなんですね。どれだけの農家が登録品種で栽培されているのか、そのうち自家採種をどのぐらいされているのか、基本的なデータが全然ない中で審議していることに対して、私は非常に疑問を感じています。

 これを作成されて、農水省の方も見られていると思うんですけれども、何か反応があったでしょうか。

印鑰参考人 このやつは、品種を見ながら、データベースで登録品種かどうか全部調べて、一つ一つやっていくんですよね。だから、何日間もかかりました。本来これをやるのは農水省の仕事だろうと思ったんですけれども、農水省は一割しかないと言っているので、おかしいと思ってやった作業です。

 ですから、これは本当に、ちょっと、その意味でもおかしなことが起きているなというふうに思わざるを得ません。そのとおりでございます。

田村(貴)委員 御労苦に敬意を表したいと思います。

 最後に、種苗の海外流出をとめるために農家の自家増殖を許諾制にすると。わけのわからない提案なんですけれども、種苗の海外流出を防止するためには何が必要だとお考えでしょうか。これは両参考人にお伺いしたいと思います。横田参考人からお願いします。種苗の海外流出ですね。

横田参考人 私は一百姓にすぎませんので、海外のところまで私がきちっと説明できるかはちょっとわかりませんが。

 先ほどもちょっと言いましたように、やはり、我々が日本でつくっている品種なりが海外に流出してしまって、それを、仮に輸出して競争するみたいなことは非常に我々としては苦しいですから、そうならないように、流出しないようにしてもらいたい、それが必要だというのは当然だと思いますし、かといって、どんな形で流出しているのかわかりませんけれども、本当にそれを全て水際なりでとめることができるのかなというのは、私もちょっと、よくわかりませんので。

 いずれにしても、そういう流出がないように、私が勉強している範囲でいうと、今回の種苗法の改正でそれができるんじゃないかなというふうに私は期待していますので、ぜひこの改正を通していただけたらというふうには個人的には思っております。

印鑰参考人 農水省の方が必死に調べられて、日本の品種で海外でつくられているものがないかと調べたら、三十六品種出てきた。それの全てが海外で登録されていない。例えば、昨年、中国政府が新品種として出願した数が五千二百二十二あるんですね。その中で日本のことを言ったのは三十六品種。数字的に考えましても、これは何か、本当にリアリティーがどこまであるのかなという感じもいたします。

 これは、中国の五千二百二十二品種も、中国政府も守りたいと思っているでしょうし、日本政府も守りたいと思っていると思うんですよね、お互いに簡易に登録し合う、そのシステムをつくればいいだけの話なんじゃないのかな、お互いの農家はそれぞれ自家増殖できると。

 ちなみに、中国では種は、農家の種の権利が認められる法改正というものが二〇〇三年ぐらいに行われたと聞いています。WTOに入って、急速に海外から入ってきた種が中国の種をなくしてしまう、それに恐れた中国政府は農家に種をちゃんと守れるようなシステムをつくったというふうに聞いております。

 日本政府にも、やはりこのような度量が必要なのではないでしょうか。そして、お互いに登録し合うというシステムをつくってしまえばそういう懸念もなくなります。国内の農家は自家採種していいと思います。

田村(貴)委員 時間が参りました。

 横田参考人、印鑰参考人、本日はどうもありがとうございました。

 終わります。

高鳥委員長 次に、藤田文武君。

藤田委員 日本維新の会の藤田文武でございます。

 本日は、横田参考人、印鑰参考人、お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。

 時間も限られておりますので、早速質問に入りたいと思います。

 先ほど、横田参考人から、種子のコストが生産コストの一%から二%であるということで、経営努力によって恐らく吸収できるのではないかというお話があったわけですけれども、横田参考人の会社はある程度の規模があられて、経営努力も非常に前向きにされているのではないかとお見受けしたんですけれども、例えば小規模の場合ですと、ある種の規模の経済が働きにくくなって難しいんじゃないか、そういう御意見もあるかと思うんです。

 その中で、先ほど、種は面積に比例するよという話がありましたけれども、小規模農家への免除規定のお話が印鑰さんからもあったかと思うんですけれども、これの必要性というのは横田さんは感じられますかというのと、あと、印鑰参考人には、必要な理由と、それから、もし日本で設定するとすれば規模はどの程度に置くべきかというのを、御所見をいただけたらと思います。

横田参考人 まず、そうですね、例えば、これは農政全般にあるかもしれませんけれども、規模で切ろうとすると非常に難しいところがあると思うんですね。それにかかわらず、ちょっと僕は、先ほどからの話の繰り返しになってしまいますけれども、農家自身が種を、日本のものをしっかりと僕らが守っていく。生産者自身がきちっとそれを、許諾料を払うなりして、新しい品種が出てくる、そういうことを僕らが支援して守っていかないといけないという意識を、お米農家全体、お米だけでなく農業全体で持っていくという意識が必要だと思いますので。

 例えば、小規模の人は別にいいですよということになってしまうと、農業界の中で限られた人たち、どちらかというと数が少ない人たちだけでそれを守っていって、多くの人たちは余り関係ないみたいなことになってしまうのは僕はむしろ逆なんじゃないかなというふうに思いますので、農業界で農業生産を行う農業者の皆さんが、こういったものをきちんと守っていこう、我々でこれをしっかりと維持していくんだという意識が僕は必要だと。そういう意味でいうと、規模は余り関係ないのかなというふうには考えています。

印鑰参考人 小規模の許諾料をどこまで免除を日本で考えられるかということに関しましては、日本のほとんどの形態は正直言いまして小規模と言わざるを得ない、要するに、この問題は特に作物で変わるのかなという気はします。特にお米なんかですと、生産コストが販売価格を超しているぞ、そういう悲鳴が農家からも上がってきています。このような中で、許諾料をお米に対して課すのは極めて難しいと思うんですね。

 そのようなことを考えますと、お米に関しては、横田さんぐらいの方でしたらその中でも何とかやっていけるという方もいらっしゃるかもしれませんけれども、極めてまれだと思いますので、やはり、お米に関しては課さないとかいうことを決断いただく。

 特に大豆ですよね、先ほども言いましたけれども。大豆がなくなったら日本食はもうおしまいですよ。みそもない、しょうゆもない、風味のあるおみそとかしょうゆをつくれなくなったら日本の食文化はおしまいです。そういったものをどうやって守っていくのか。

 これに関しては公的な資金を出して、種をつくる人を支援する、そういう政策が今必要なのであって、許諾料とかそういったものを言っている場合じゃないと思うんですね。大豆に関しては、ほとんど今輸入になっています。これに対して国産大豆をどうやって守っていくのか、それを支えていくのはやはり公的な政策ではないかなというふうには思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 次に、印鑰さんがブログ等で農業競争力強化支援法にも触れられて、いわゆる公的種苗事業の民営化の方向性はやめるべきだというような趣旨のことを私も拝読させていただいたんですけれども。

 例えば、農政全体において民間活力を使っていくということも必要であるとは思うんですが、種苗に関しては、税金を投入された公共が種苗事業の大半をやはり担っていくべきである、そういう設計思想のもとでおっしゃられていると理解してよろしいんでしょうか。

印鑰参考人 特にお米とか大豆とか、特に主要農作物ですね、これに関してはやはり公共がしっかりと、これは食料保障の観点からもやらなければいけない分野だと思います。民間企業に丸投げというのは、僕はできない分野だと思います。

 もちろん民間分野でも、例えば家庭菜園のさまざまなものであるとか、さまざまな領域はあり得ますので、その協力関係は当然、探っていくのはもちろん必要だと思いますけれども、根幹というのはやはり、私たちの生存にかかわること、日本文化の、まあ日本文化といいますかね、地域の食文化の根本をなすものですから、それに関しては公共がつくっていくのがやはり基本ではないかなというふうに思います。

藤田委員 その他の産業と比べて、一律に同じように考え、競争政策、規制緩和と保護政策のバランスをその他の産業に置きかえて考えることは、確かに私も危険だなとは思うんですが。

 先ほどありました新品種の開発力のお話、実際にここ近年は落ちていますよ、そういうお話があったかと思うんですけれども。今回、それの一方で、育成権者の権利を強めることで、育成権者と農家さんのいわゆるバランスがかなり崩れるだろうというふうにおっしゃられていたんですが、であるならば、育成権者の権利が強くなるということは、つまり国内の品種開発のインセンティブもその分強くなるんじゃないかと論理的に考えると思うわけなんですけれども、そうとはならないんでしょうか。インセンティブを与えるのではないかとも思うんですが、いかがですか。

印鑰参考人 将来的なインセンティブは何かというと、種苗市場が広がることだと思うんですね。種や苗がどんどんどんどん売れていく、買う人は誰なんだ。買う人をふやさなきゃいけないわけですよね。その買う人をふやす政策があるのであれば育成者権を強めるというのもあり得るんですけれども、今その政策がないところで育成者権だけを強めるというのは、本当にバランスを欠いてしまう。

 これは結果的に、買う人が減っていったら、種苗企業、特に地域の小さな種苗企業はむしろ困ると思うんですよね。やはり、買っていく農家をどうふやすかというのが鍵ではないかなというふうに思います。

藤田委員 済みません、ちょっと今ので更問いで。

 ということは、今回の育成者権を強めるということは、いわゆる買う方をもう少しふやすという政策とセットであれば許容される範囲という認識でよろしいんでしょうか。

印鑰参考人 実際問題、自家増殖をどう認めるかという部分に関しては、やはりきちっと議論すべきだと思うんですね。といいますのは、これは根幹技術なんですよね、損得の話じゃないんですね。だから、市場でこれはプラスだマイナスだ、それだけで考えると日本の農業が骨抜きになってしまいますので、やはり自家増殖に関しては原則的な議論をした上で、もちろん育成者権を強めることもあり得ると思います。ただし、おっしゃったように、やはりそれは買う側の農家の支援政策が伴わない限りは現実的ではないというふうに思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 今、自家増殖のお話があったので、自家増殖は農業の基本技術、根幹であるというお話、これは確かにそうだなと私も思うんですけれども、今回の改正によって、いわゆる技術が廃れていくというか衰退していく方向に行くというふうにお考えなのか。これはお二人ともにお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。

横田参考人 私はそういうふうには考えておりません。

 本当に繰り返しになって申しわけないんですけれども、種苗法の改正をきっかけに、種子を自家増殖するとかということに対する意識が高まる、権利とかそういうことに対する意識が。これは、さっきスマート農業の話も出ましたけれども、そういうことも、知財とかというのは物すごく重要で、農業者が自分たちの知財をただで配るみたいな、それはやはり危ないことですから、きちっとそういうことを、農家自身がそれぞれ、皆さん、みんながそういう意識を持つということがこれから先は絶対に必要。そういう意味でいうと、種の問題も種苗の問題もそれと同じで重要だなというふうには思っています。

印鑰参考人 現実的に、許諾を求めないと自家増殖ができないというのは、やはり大きな、敷居を高めると思うんですね。実際に今、兼業化が進んだりして自家増殖までできない、やっていたんだけれどもできなくなってきたという方もいらっしゃると思うんです。それに対して更に許諾をつけることによって、ますます難しくなっていく人、やめていく人がやはりふえるのではないかな、それは日本の農業にとって大きな損失になるのではないかなというふうに思っております。

藤田委員 ありがとうございます。

 育成者権を強めることで、許諾料をいただけるという一つの、育成業者からすると収入チャンネルがふえるとも見えるわけなんですけれども、そうした場合に例えば仮にこういうことは起こらないのかということを、可能性があるかどうか、お二人に聞きたいんですが。

 先ほど、自家採種、自家増殖をするプラス許諾料を払うという選択肢か、種子を購入するかと。これをコストとそれぞれの質の担保とかで選択していくという経営判断をしていくということだと思うんですけれども、例えば、許諾料を取るかわりに種子のコストが今までよりもマーケット的に値段が下がるということも合理的に考えるとあり得ない話じゃないんじゃないかなと思うんですが、これは可能性としてはあるんでしょうか。私見で大丈夫なので。

 コストが上がる上がるという議論なので、許諾料のかわりに種子のコストが逆に下がるというメカニズムも働くんじゃないかという仮説なんですけれども、いかがですか。

横田参考人 そうですね、どうなんでしょう、私は、例えばJAさんで販売されているような種子を僕はつくっていないので、ちょっと、何ともわかりませんけれども。

 ただ、米であっても、種子を生産する農家が、例えば富山県とかは物すごく種子をつくっておられますけれども、私も富山の種とかを買うんですけれども、そういうところも高齢化が進んでいって種をつくるのが難しいという話も聞いていますので、なかなか、先ほども議論にあった、市場の原理だけでそれが下がったり上がったりするかというと、むしろそういうところで困るかなというふうには私は感じています。

 だから、そこで、逆に私は、我々のような例えば大きい農家とかが、自分の種もつくるけれども場合によっては人の分の種もつくるみたいな、しっかり許諾を得てですね、という方向性もこれから考えていかないと、種子の生産そのものを賄えない可能性が出てくるんじゃないかなというふうには考えています。

印鑰参考人 今の発言、非常に、僕もまさにそのとおりだなと思いました。

 種もみというのは非常に手間をかけてつくっていますので、その生産コストを下げることというのは極めて難しいと思います。全体的にこれを、今、種もみの生産者自身が減っている状況なんですよね、その中でどうやって維持するのか。今、きゅうきゅうという状態だと思います。それを、今まで何とかやってきたんですけれども、今後は、種をふやす人をどう確保できるのか。日本国内でそれができなくなってくると、海外依存になってしまいかねないんですよね。

 ですから、今、横田さんがおっしゃられたように、その方たちをどうふやしていくのかというのも一つの大きな政策をしていく、そうしていくと種の値段が上がらずに公共の種を維持することができると思いますので、そのような政策をぜひ検討していただけたらなというふうに思います。

藤田委員 ありがとうございます。

 最後に一問だけ。

 本法案の立法事実の一番最上位にあるのは、海外への流出をいかに防いでいくかという課題意識かと思うんですけれども、これについては、今回の法案は私の認識では十分条件ではないが必要条件なのかなという受けとめ方をしているんですが、それはおいておいて、海外での品種登録というのが一番効果があるということは皆さんの共通認識かと思うんですけれども、これを除くと、海外への不正流出を防止するその他のアイデアというのは何かあるものなんでしょうか。専門家の御意見をいただけたらと思います。印鑰参考人に。

印鑰参考人 これは農水省の方がもう既に海外での登録以外あり得ないと言っているので、それに対して僕が、いや、あり得るということを言うのは、本当に差し出がましいといいますか、できないことだと思います。済みません、それしかないと思います。

藤田委員 どうもありがとうございます。これで終わります。

高鳥委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 国民民主党、玉木雄一郎です。

 まず、横田参考人、印鑰参考人、長い間ありがとうございます。大変参考になりました。

 まず、お二人に基本認識をお伺いしたいんですけれども、種苗法の改正について。

 横田参考人は実際現場でされているので、お仲間の農家とかそういう方々に種苗法の改正あるいは中身についてどれぐらい知られているのかな、そういう認識の広がり。こういったものについてどうなのかというところでちょっと、考えがあれば教えていただきたいのと、印鑰参考人にも同じ質問をさせていただきたいと思います。

横田参考人 これは、どういうふうに説明したらいいか、ちょっとよくわからないんですけれども、私、昨年の九月に、農水省の種苗法の改正に関係する検討会に呼んでいただいて、そこで、先ほど説明したのと似たような、私のところの自家採種の取組についてお話をさせていただきました。

 そうしたら、それがどういうわけかネットで何か大分広がってしまったようで、ちょっと困ったこともあったんですけれども、いいか悪いかは別にして、そういうことをきっかけに、かなりいろいろな人も私に、いろいろな、これはどうなっているのとかと聞かれたりという機会もふえたりして、結構、農業者として自分は、関係する者として、議論が起こったり話題が広がったりとかということはあって、それはよかったのかなというふうには思っています。

印鑰参考人 東京大学の鈴木宣弘教授が、学生さんが卒論で、この問題、アンケートをとられたんですね。農家の方たちに、種苗法改正を知っていますか、賛成ですか、反対ですかと。賛成も反対もちょびっとしかなくて、六割が知らないという状態なんですね。これが今の現状をあらわしているのではないかと思います。

 そんなところで、僕も各地で話をしますけれども、多くの農家の人たちが、そんなことになっているとは知らなかったという反応ばかりでした。

玉木委員 今、両参考人に認識についてお伺いしましたけれども、ちょっとお二人でも差があるのかなという気はしました。いずれにしても、中身をきちんと理解をしてもらうということがやはり大事なのかなということを改めて思いました。

 そこで、横田参考人に続いての質問なんですが、やはり、規範意識を高めていくということは大事だと思いますし、先ほどもそういうお話をされたと思うんですけれども、少なくとも中身についてある程度わかっておられる方、あるいはこういう方向になっていくんだという中で、農家の中での規範意識の高まり、こういったことは、ある意味仕方がないのかなということも含めて、こういったことを守っていかなければいけないなという感じになってきているのか。そこはちょっと、実際なかなか難しいなとか、どういう状況になっているのか。そこについて、認識を改めてお伺いしたいと思います。

横田参考人 例えば、先ほどから言っているように、もちろん高齢になっても地域で頑張っている農業者の方も大勢いらっしゃいますが、一方ではそういった方たちの農地を集めている農家、もちろん規模は大小それぞれありますけれども、特に水田ですね。やはり、皆さん誰もが地域のために頑張ると言うんですよ。米農家だったら誰もがそういう意識を持ちます。地域のために頑張るのですよ。一方で、法を犯しているとか、いいかげんなことをやっているということでは、やはり地域を守っていることにはなりませんよね。

 だから、そういう意味では、米農家であれば誰もが地域を守りたいと思っている、じゃ、地域を守るためにはきちっと、ルールですとか、これからの次の世代に渡す農業の、しっかりと受け継げるような形を守っていくということは誰もが考えるべきことだと思いますし、そういう雰囲気ができるような環境になりつつある。これまでたくさん、いろいろな農家がいるときは何でもできることをやるみたいな感じになったかもしれませんけれども、今は少しそこが変わってきているんじゃないかなというふうには感じます。

玉木委員 私たちも、制度見直しについては丁寧に説明をしていかないといけないなというふうに改めて思います。

 そこで、今、横田参考人が言及されました、私も読んだんですけれども、去年の九月の第五回の研究会に参加されて発言をされておられるんですが、そのときに、十一品種をされているという中で、そのうち一般品種と登録品種がそれぞれ、その十一の中でどうなのという話があって、数、もともとの育成者権がどこにあるのか、残っているのはどれで誰が開発したのか、育成者権者が誰なのかということもあわせて質問を受けていると思うんですけれども。

 ちょっと私が紹介しますと、登録品種で、これは農水省が答えているんですけれども、一番星、にこまる、あきだわら、あさひの夢、にじのきらめき、ゆめひたち、ふわりもちがそうです、一番星が茨城県、にこまる、あきだわらが農研機構、あさひの夢は愛知県、にじのきらめきは農研機構、ゆめひたちは茨城県で、ふわりもちは農研機構、以上になりますと。農水省が答えているんですが、これは正しいですか。

横田参考人 一品種減って、ことしは十品種。それは昨年の作付の話でしたので、ことしは十品種になります。先ほど御説明したので間違いなくて、私も今回、これに出るに当たってもう一度確認をしました。そうしたら、ゆめひたちと、あさひの夢については二〇二〇年の三月で権利が切れて消滅していますので、ことしはそれは切れているということでした。

玉木委員 そうすると、十品種のうち五品種が登録品種で、それぞれ、いわゆる公的機関が育成者権者になっているということになるのかなと思いますね。ですから、量的にどうなのかというのが先ほどあったんですけれども、それなりに登録品種で自家増殖されているのも数としてはあるのかなというふうに思いました。

 ただ、ポイントは、いずれも育成者権者が公的機関だということなんですね。私は、これはすごく大切なことだと思っていて。

 ということは何かというと、法改正された後も、例えば農研機構にしても都道府県の農業試験場にしても、そこがきちんと、不当なお金を取らないとか、これまでと同じように適正なやり方をするということになればそれほどコストが上がらないことにもなるし、もっと言うと、印鑰参考人からもありましたけれども、私も、優良品種の開発や新品種の開発について、日本においては公的機関の役割は極めて重要だと思うんです。そこがしっかりしていれば、懸念されるような、海外から種苗会社が入ってきて席巻するみたいなことがないので。

 だから、逆に言うと、公的試験研究機関がどれだけ頑張れるか、あるいは、税金で新品種を開発しているわけですから、国内農家の皆さんにはそれを安く、低廉な価格で広く利用していただくということを国なり県なりが責任持ってやれるかどうかがかかっているんだと思うんですよ。ここについての不安が拭えないので、やれ値段が上がるんじゃないか、外国勢力に侵されるんじゃないかとか、そういうことがあると思うんですけれども。

 改めて横田参考人にお伺いしたいと思うんですが、国とか県の公的試験研究機関による品種開発はとても大切だと思うんですけれども、ここに改めて期待するところ、値段の話でもいいですし、先ほど言った災害に強い品種の開発であるとか、ここにどういうことを期待するのかということを農家として教えていただければと思います。

横田参考人 先ほどもあったように、私のところは今、公的なところでつくっているものが全てですし、これからも恐らくそうなっていくんじゃないかなと思っています。

 なぜかというと、私も育種家じゃないので、聞いた話でしかありませんけれども、育種するときに、当初、どういう品種をつくろうと、当然、目的を持って育種して選抜する、それは時間がかかるので、十年後にどんな品種が求められているのかはなかなかわからないという話はしましたけれども、でも、それは市場という意味で見ればわかりにくいという話で。でも、長期的に、例えば天気の変化とか、高温になっているとか、病害虫がふえているとかというのは長期的なトレンドとしてあるわけですから、そういうものにしっかりと対応できるような品種をつくれるのはやはり公的なところだと思うんですよね。

 逆に言うと、民間だとどうしても、民間の利益のためにつくらざるを得ないところが当然あります。外食に向いているとかなんとか、利益のためにつくるものに当然なっていく方向があると思うので、そういう意味でいうと、公的なところで安定して栽培ができる、そういうものを私たちがつくって安定経営をできるという方向が間違いなく重要。それができるのは、やはり公的な研究機関なのかなというふうには感じています。

玉木委員 ありがとうございます。

 印鑰参考人にもちょっと伺いたいのは、五ページの、これは本当によく調べておられて、産地品種銘柄での登録品種の割合が五二%ということなんですが、この五二%、半分ぐらいが登録品種なんですけれども、今私が申し上げたような、公的試験研究機関が育成者権者になっているのはこのうち何%かという数字はお持ちじゃないですかね。

印鑰参考人 生産量で考えますと、いわゆる民間企業がつくった民間品種はどれぐらいあるか。正確な数じゃない。民間企業がつくっているお米の数というものが、出ている数は検査をしたものなんですね。直取引というのはわからないんです。その部分はわからないんですけれども、検査したもので見ますと、民間品種というのは一%。要は、九九%は公共だと思います。

玉木委員 その意味でいうと、これはちょっと、種苗法そのものじゃないですけれども、種子法の廃止というのは大きな問題であって、やはり、優良品種の開発能力を維持するという観点からも、我々は種子法の復活をぜひすべきだと。都道府県によっては条例で自前でやろうとしていたり、交付税措置で何とかみたいな話はありますけれども、やはり、公的な試験研究機関がちゃんとやるんだ、あるいはそこに財政もきちんとつけていくんだというベースをもう一回復活すべきだと思いますけれども、そのことについてはいかがでしょうか。印鑰参考人に伺います。

印鑰参考人 まさにそのとおりだと思います。

 公共のそういう、種子法のもとで行われてきたもの、今は条例ができていますけれども、二十三ぐらいでしょうかね、つくっていないところが半分ぐらいあるわけですね。ちょっと前までは全国種子計画というものがつくられていました、お互いに調整していく。今は各県で勝手にやっているという状態ですから、調整しようがないと思うんですよね。それを復活させるためには、全国的な制度に戻すしかないと思うんですね。

 種子法だけではもちろん在来種の問題が残りますので、完全ではないですけれども、種子法の復活というものは非常に重要だと思います。

玉木委員 ありがとうございます。

 今回、いろいろな、メリット、デメリットというか、懸念も含めて種苗法にはあるんですね。ただ、権利をしっかり守っていくという大きな方向は多分反対する人はいないので、ここはいずれにしてもきちんとやらなければいけませんし、横田参考人が言ったように、海外に行ったら日本の品種の、米に限らずいろいろなものがあふれていて、それは本当にどうなのかと思うことが多々あるし、逆に言うと、そこは何か正直者がばかを見るみたいな話になるので、きちんと、権利者の権利というか、これは、私は分けて考えた方がいいかなと思うのは、育成者権者というと開発した農研機構とかになるんだけれども、それをちゃんと買ってやった国内農家の権利をちゃんと守らなきゃいけないのかなという気がするんですね。

 だから、農家対育成者権者というんじゃなくて、農家も、ちゃんと頑張っている国内農家を守るという観点もいかに実現するかということは非常に大事だなという、単なる二項対立でもないのかなというふうには思うので、その辺をしっかり法律で実現するところと、あと、不十分なところとか懸念が広がっているところはきちんとやはり補っていくということで、いいものに仕上げていくことが必要なのではないかなというふうに思っています。

 印鑰参考人の資料の中で、私、香川県の出身なんですけれども、キウイフルーツを結構やっているんですね。七〇%ぐらいが登録品種だという。これを全部、県の農業試験場が開発しているんですよ。これがあるから、こうやって売れているので。そういうところはもう一回国としても、都道府県の試験場を含めた公的な機関の開発能力をいかに維持していくのかということを我々国会がもう一回考えなきゃいけないなと思っていますので。

 本当はこの法律の改正とセットで、そういう公的な試験研究機関の品種開発能力をいかに保ち、それをいかに支援するかというところをセットでやればもう少し安心できたし、財政支援がきちんとあれば、じゃ、許諾料をすごく上げて、何かそれで農家に開発負担を負わそうなんということは思わないので。いずれにしても、そこをセットでやはりやらないといけないなということを、お二人のお話を聞いていて改めて思いました。

 とにかく、皆さんが、きょういただいた意見をしっかり我々も踏まえて、最終的にはこの法案の審議、採決に臨んでいきたいと思いますので、改めて貴重な意見をいただいたことに心から感謝を申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

高鳥委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。大変参考になりました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、来る十七日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三十四分散会


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