衆議院

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第2号 令和5年3月8日(水曜日)

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令和五年三月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笹川 博義君

   理事 あべ 俊子君 理事 武部  新君

   理事 若林 健太君 理事 渡辺 孝一君

   理事 近藤 和也君 理事 緑川 貴士君

   理事 足立 康史君 理事 庄子 賢一君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      伊東 良孝君    泉田 裕彦君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    勝目  康君

      神田 潤一君    小寺 裕雄君

      坂本 哲志君    杉田 水脈君

      高鳥 修一君    土田  慎君

      西野 太亮君    平沼正二郎君

      細田 健一君    宮路 拓馬君

      宮下 一郎君    保岡 宏武君

      山口  晋君    梅谷  守君

      金子 恵美君    小山 展弘君

      佐藤 公治君    森田 俊和君

      山岸 一生君    山田 勝彦君

      渡辺  創君    池畑浩太朗君

      掘井 健智君    稲津  久君

      角田 秀穂君    長友 慎治君

      田村 貴昭君    北神 圭朗君

    …………………………………

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   農林水産副大臣      野中  厚君

   外務大臣政務官      高木  啓君

   農林水産大臣政務官    角田 秀穂君

   農林水産大臣政務官    藤木 眞也君

   国土交通大臣政務官    古川  康君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           安彦 広斉君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         杉中  淳君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         高橋 孝雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)

   (農林水産技術会議事務局長)           川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)         菅家 秀人君

   政府参考人

   (農林水産省消費・安全局長)           森   健君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  平形 雄策君

   政府参考人

   (農林水産省畜産局長)  渡邉 洋一君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (農林水産省農村振興局長)            青山 豊久君

   政府参考人

   (林野庁長官)      織田  央君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石坂  聡君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     土田  慎君

  西野 太亮君     勝目  康君

  宮路 拓馬君     杉田 水脈君

  小山 展弘君     山岸 一生君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     西野 太亮君

  杉田 水脈君     宮路 拓馬君

  土田  慎君     神田 潤一君

  山岸 一生君     森田 俊和君

同日

 辞任         補欠選任

  森田 俊和君     小山 展弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 農林水産関係の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 農林水産関係の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官杉中淳君、大臣官房総括審議官高橋孝雄君、大臣官房技術総括審議官・農林水産技術会議事務局長川合豊彦君、大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官菅家秀人君、消費・安全局長森健君、輸出・国際局長水野政義君、農産局長平形雄策君、畜産局長渡邉洋一君、経営局長村井正親君、農村振興局長青山豊久君、林野庁長官織田央君、水産庁長官神谷崇君、文部科学省大臣官房審議官安彦広斉君、国土交通省大臣官房審議官石坂聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。保岡宏武君。

保岡委員 ありがとうございます。自民党の保岡宏武です。本日は、質問の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 委員長始め理事、同僚委員の先生方に感謝を申し上げます。また、野村大臣始め政務三役、そして当局の皆様にも答弁のためお時間をいただき、重ねて御礼を申し上げます。

 また、本日は国際女性デーです。私は特にフェミニストではございませんが、いつも私を支えてくれている妻や女性スタッフ、そしてこの委員会始め国会内でも多くの女性の方が支えていただいております。また、私を産んでくれた母を始め、全ての女性の皆さんへの感謝を伝え、質問を始めさせていただければというふうに思います。

 大臣、私は本当に今日の日が来ることを夢見ておりました。決して夢見ていたというのは大げさな表現ではなくて、地元の大先輩である野村先生、先生が農林水産大臣になられ、農林水産委員会で質問をさせていただく。農林水産委員会に配属をされたその日から、そういう日が来ないかなという思いをずっと持ち、そして、昨年の参議院選挙も、その夢の実現のために頑張ったと言っても過言ではございません。

 本日は、先生の胸をおかりする気持ちで、質問の最後に存分に思いのたけをぶつけてみたいというふうに思っております。ぶしつけであったり、突拍子もないことを申し上げるかもしれませんが、何とぞお許しをいただきますようよろしくお願いいたします。

 さて、三月に入り、高校入試も一段落してきた頃だというふうに思います。

 先週、地元鹿児島でも県立高校の入試が終わりました。学校ごとの志願倍率も発表されましたが、少子化の影響か、地方は軒並み定員割れで、団塊ジュニア世代の私たちの頃とは大きく様変わりをしておりました。とりわけ農業高校は、すべからく定員割れの状況で、鹿児島県内十校ある農業高校全体、七百四十九名の募集に対し、志願者は三百五十名、平均倍率〇・五という状況でございました。

 文科省に伺います。全国の農業高校の平均倍率がどうなっているか、お示しいただけますでしょうか。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、農業高校の入学の倍率でございますが、最新の、令和四年度の入試についてでございますけれども、公立農業学科の募集定員、約二万八千余りでございますが、これに対する入学者数の割合であります充足率で申し上げますと、全国平均では八二%となっております。

 以上でございます。

保岡委員 ありがとうございます。

 今お答えのように、全国平均も一を割っておりますが、農業生産額全国二位の鹿児島の〇・五という数字は、野村大臣もそうですが、同郷の私も、足下で進む人口減少と農業離れを示す数字として、大変重要な数字かというふうに思っております。

 引き続き、文科省に伺います。

 では、農業高校への予算措置は普通高校と比べて特別なものがあるのでしょうか。同時に、農水省としても、文科省とは別に農業高校への予算措置などがあるのでしょうか。併せて伺いたいと思います。お願いいたします。

安彦政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省におけます農業高校を始めとします専門高校への予算措置でございますが、まず、産業教育のための施設、設備の整備に関する経費の補助というものがございます。これは令和五年度の予算案でございますが、約六百九十億円の内数として措置しております。

 また、産業界と農業高校が一体となりまして、地元の産業の成長を牽引します最先端の職業人材の育成を推進しますマイスター・ハイスクール、こちらの事業の実施におきまして、令和五年度予算案におきまして三億円を計上しているところでございます。

 また、このほかにも、専門高校の特色、魅力の発信、また、中学生、保護者に対する理解、関心を高める取組としまして、産業教育フェアという全国的なイベントの実施やポータルサイトの構築、こういった経費を計上しているところでございます。

藤木大臣政務官 お答えいたします。

 私も農業高校の卒業生の一人でありますけれども、地域における将来の農業の担い手を育成する上で、農業高校は、農業を志す若者が農業技術や農業経営を学ぶ場として、重要な役割を担っていると考えております。

 このため、農林水産省では、農業高校の生徒が技術や経営をしっかり習得できるよう、研修用機械、設備の導入、スマート農業技術を体験する現場実習、地域の先進的農業者による出前授業の実施など、教育の高度化に必要な取組を支援するとともに、農業高校の活動などを紹介するパンフレットや動画の作成などの農業高校の魅力を伝えるための取組についても、支援を行っているところでございます。

 先生御指摘のとおり、鹿児島県、今年が〇・五八倍、私の熊本県も〇・五八倍ということで定員割れをしておりますけれども、私が卒業した熊本農業高校は二・五八倍と、例年、非常に高い倍率を誇っております。ただ、逆に、農家の子弟の方が試験で合格できないというような、そういう現象も起きているのも学校の先生にとっては悩みの種だというようなお話も聞いてございます。

 引き続き、文部科学省とともに連携をしながら、農業高校の教育環境の充実や魅力発信を図り、農業の担い手の確保に努めてまいります。

保岡委員 ありがとうございます。

 藤木大臣政務官におかれましては、先日、鹿児島までもお越しいただきまして、誠にありがとうございました。

 今、政務官がお話しになられましたように、政務官、お父様も政務官もお子様も、三代にわたって農業高校の御出身だというふうに伺っております。農業高校にも人一倍思い入れがおありかというふうに思います。そしてまた、御卒業された熊本の農業高校の事例は非常に羨ましい限りだなというふうにお話を聞いていて思いました。

 うちの選挙区のとある地域のことなんですが、隣接する鹿児島市の私立高校がスクールバスを出し、その地域の高校生を運んでいっています。もちろん、地域にある農業高校は定員割れの状況です。スクーターで通えばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、今の時代、そういう細かなところで学校が選ばれる時代でもあります。せっかく地元に子供がいるのだから、将来の農業の担い手として何とかその地域に残って学んでほしいと、その地区にある農業高校の先生はおっしゃっていました。

 予算に関しては各自治体ごとによるものもあるかとは思いますが、農業の担い手、地域の担い手を育てる農業高校に関して国ももう少し目くばせをし、今の地域の置かれた様々な状況を鑑みた地方創生並びに少子化時代の農業並びに農村の担い手確保など、時代に即した視点からの農業高校への農水省の予算措置なども、是非お考えいただけたらありがたく存じます。

 大臣政務官におかれましては、差し支えなければ、もう御退室いただいても結構でございます。ありがとうございました。

 続きまして、大臣所信、食料安全保障強化政策大綱、岸田内閣の進める新しい資本主義下の農業を踏まえて、幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。

 岸田内閣の進める新しい資本主義下の農業は四つの柱で構成をされています。一つ目、スマート農林水産業等による成長産業化。二つ目、農林水産物・食品輸出の促進。三つ目、農林水産業のグリーン化。四つ目、食料安全保障の強化の四本柱です。

 まず一つ目の、スマート農林水産業等による成長産業化ですが、現在、ドローンによる農薬散布などによって時間も労力も大幅に削減できたとか、データを活用した生産やロボットを使うことによって生産効率を上げたとか、成功事例も多くある中、スマート農業化による成長産業化に私も異を唱えるものではございません。

 ただ、デジタルを活用した問題解決となると、私が地元の農家さんたちを回っていると、それ以上に必要性を感じるものがございます。それは、各種手続がもう少し簡便にならないかというようなことでございます。

 今国会でマイナンバー法等の一部改正も審議されると伺っておりますが、今後、マイナンバーやマイナンバーカードを利活用した生産者の各種補助金の申請であったり申請手続の簡便化について、農水省の方でお考えなどございましたら、方向性などございましたら、お示しいただけますでしょうか。お願いいたします。

菅家政府参考人 お答え申し上げます。

 農林水産省におきましては、生産者の方々の申請の負担を軽減する観点から、所管の法令、補助金等、全ての行政手続につきまして、申請等の手続に係る書類や申請項目等の抜本的な見直し、こういったことを行うとともに、パソコンやスマホ、タブレットからオンラインで申請を行えるようにする農林水産省共通申請サービス、いわゆるeMAFFでございますけれども、この整備を進めているところでございます。現時点で、約三千三百ある手続のうち、九割以上についてオンライン化が完了しているところでございます。

 このeMAFFでオンライン申請を行うためのIDを取得する際に、先生御指摘ございましたマイナンバーカード、これによって本人確認を行うことができることとしております。

 引き続き、マイナンバーカードの活用を、こういった形で進めていきたいというふうに考えております。

保岡委員 ありがとうございます。

 次に、農林水産物・食品輸出の促進について伺います。

 現在、国内の縮小するマーケットから海外の拡大するマーケットへという取組がなされておりますが、特に、国内の需給バランスがとりわけ悪く、逼迫している業種がございます。酪農でございます。

 現在、牛乳・乳製品の輸出の状況がどうなっているのか、今後どのように農水省として推進なりをしていくのか、お考えがあればお示しいただけますでしょうか。お願いいたします。

渡邉政府参考人 お答えをいたします。

 牛乳・乳製品の令和四年、二〇二二年の輸出実績でございますけれども、対前年比三一%増加の約三百二十億円ということでございまして、過去最高となってございます。

 牛乳・乳製品でございますけれども、輸出重点品目に位置づけられておりまして、二〇三〇年には七百二十億円の輸出目標を設定してございます。

 この達成に向けまして、堅調な輸出動向を更に強化するために、オール・ジャパンでのプロモーションなどの取組に加えまして、生産者、乳業者、輸出事業者の三者が連携したコンソーシアムによる、産地の特色を生かしたプロモーションあるいは商談の実施、輸出先国のニーズに合わせまして牛乳・乳製品を製造するための、輸出先国が求める水準を満たす乳業施設の整備、輸出先国におけます輸入規制の緩和、撤廃の働きかけなどを通じまして、更なる牛乳・乳製品の輸出拡大を推進していきたいというふうに考えてございます。

保岡委員 ありがとうございます。

 出口のところ、非常に大事かと思いますので、実効性ある取組を是非よろしくお願いをいたします。

 また、昨年、輸出額が一兆四千億円を超えて、目標値の、二〇二五年までの二兆円、三〇年の五兆円も視野に十分入ってくる数字となっておりますが、目的は、より高く売り、国内の生産者の稼ぎ、利益が増えることに資するということに尽きるというふうに思っております。

 このような観点から、指標が輸出額だけで十分かと常々考えておりますが、例えば、来日観光客数も、人数だけではなくて、掛ける幾らお金を落としてくれたかというところが非常に大事なポイントかと思いますけれども、このような輸出額、総額だけではなくて、何かほかの指標みたいなものがあるのかどうか。ありましたら教えていただけますでしょうか。

水野政府参考人 お答えいたします。

 農林水産物・食品の輸出に当たりましては、海外のマーケットをしっかりつかみ、日本の高品質な農林水産物・食品が、その価値に見合った価格で販売されることが重要と考えております。

 このため、輸出先国において高価格で販売されている事例等を引き続き収集し、GFP、農林水産物・食品輸出プロジェクトなどを通じて生産者に情報発信することで、生産者の意欲向上につなげているところでございます。

 これらの取組によりまして、更なる輸出拡大に向けた支援を進め、農林水産業の稼ぐ力の強化に取り組んでまいります。

保岡委員 ありがとうございます。

 例えばですけれども、これも私の地元の例ですが、キャベツが大体一玉、市場平均でいくと百円ぐらいのところを、ある輸出の会社が百三十円で生産者から買い取り、輸出業者はそれに大体一五%ぐらい利益を上乗せして、輸送料を加え、大体百五十円プラス輸送料ということで海外に、香港に出し、香港では、二十五香港ドル、十七円計算で四百二十五円。百三十円が百五十円、輸送料を合わせて、向こうに行くと四百二十五円になっているというような状況もございます。

 これが適切なのかどうか、ちょっと私にはまだ判断ができませんが、是非そういう個々の事例なども参考に、何が適切な価格かということは是非追跡をしていただければありがたいというふうに思います。

 また、輸出に関してもう一つ、農水産物の知的財産も非常に重要なポイントだというふうに考えております。

 植物新品種や和牛の遺伝子資源など、育成権者に代わって、その保護の目的、育成権管理機構が今回立ち上がりますが、当該国に保護法がない場合など、その実効性の確保にいささか心配がございます。どういうようになっているか、実効性の確保などについてお示しいただけますでしょうか。お願いをいたします。

水野政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の育成者権管理機関につきましては、来年度から、農研機構を中心に関係者が連携し、育成者権者に代わって、海外出願や海外ライセンス等に向けた取組を開始することとしております。

 一方で、この取組が効果を発揮するためには、品種保護制度が外国で整備されている必要があるため、特に東南アジア諸国について、制度整備に向けた取組を行っているところでございます。

 具体的には、東アジア植物品種保護フォーラムの開催などを通じまして、各国の政府関係者に対して、法整備に関するセミナーや審査技術の研修などを行うほか、CPTPPでのUPOV、植物品種の保護条約への加盟義務づけなどがございますので、これらを踏まえまして、政府間での働きかけを行っているところでございます。

 農林水産省としては、日本の新品種が海外においても適切に保護されるよう、他国政府による制度整備も含めて、取組を進めてまいります。

保岡委員 ありがとうございます。

 農林水産物の知的財産、非常に輸出に対して重要なポイントかと思いますので、是非、注意をしながらお願いいたします。

 それと、先日、自民党の部会において、お茶の輸出をされている輸出の会社が、抹茶とかお茶というのを日本製品に限って言えないかなというようなことをおっしゃっていました。なかなかそれは難しいのかもしれませんが、お茶は本当に日本の大事な食文化にもなっています。例えば、ビールといえばドイツ、ドイツのビール法、ワインといえばフランス、フランスのワイン法などに準じたというか、そのようなお茶法というものが日本にあってもいいのかなというふうに考えておりますということも、問題提起としてお示しをしていきたいというふうに思います。

 次に、農林水産業のグリーン化についてでございます。

 この項目の中に、オーガニックビレッジの創出という項目がございます。これも私の地元でございますが、南さつま市に、ありのまま分校という、オーガニックビレッジの計画の中に挙げられているものがございます。この南さつま市というのは健康元気都市を目指しておりまして、健康の源は食にある、医食同源というところに着目をして、自然農法普及員の指導の下で、自然農法を学びたい農家さん、また一般の方が参加をされています。

 地元の農業高校ともコラボをして、定員割れということを先ほど申し上げましたけれども、農地も幾分か余っておりますので、そういったものを市に貸出しをして、農業高校の生徒さんもそこに行って実習をしたり、一緒に販売をしたり、そのような取組をしているところが南さつま市のありのまま分校でございます。非常に、これは私、みどりの食料システム戦略を実現していく上でも大事な取組の一つになろうかというふうに考えております。

 現在、オーガニックビレッジについて、二〇二五年までに全国百市町村、二〇三〇年までに二百市町村の目標となっておりますが、現状の進捗状況などをお示しいただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

平形政府参考人 お答えいたします。

 農林水産省では、委員御指摘のとおり、有機農業の生産から消費まで一貫して地域ぐるみの取組を進める市町村、オーガニックビレッジを目標を持って進めているところでございますが、現在は、南さつま市も含めまして、三十二の道府県で五十五市町での取組が開始されているところでございます。

 具体的には、栽培技術の普及、実証などによる地域での有機栽培の拡大、さらに、御指摘もございましたけれども、学校給食での利用ですとか農業体験など、地域の住民や子供が有機農業に触れる様々な機会の創出、さらに、マルシェや道の駅等での販売を通じた販路拡大など、地域ぐるみでの取組が展開されております。

 農林水産省としては、まずは目標で掲げました二百地区の早期達成を進めるとともに、更なるオーガニックビレッジの拡大を進めてまいる考えでございます。

保岡委員 ありがとうございます。

 昨年の時点で五十五市町村ということは、非常に達成率としてはハイペースで今進んでいるというふうに拝察いたします。是非、これは非常に見える取組だと思いますので、私たちが実感できるみどりの食料システム戦略の実現に向けての施策として活用をしていただきたいというふうに思います。

 次に、木材に関してですが、昨年の通常国会で省エネ建築法の改正というのがございました。先生方御存じかと思いますけれども、その中で、木材を利用した省エネ住宅の促進というのが、この改正法後、全国で広がっているというふうに伺っております。具体的な事例などがございましたら、国交省の方から、先進事例などをお示しいただけますでしょうか。お願いいたします。

石坂政府参考人 二〇五〇年のカーボンニュートラルに向けて、建築物の省エネ化対策とともに、吸収源対策として地域材を含む木材の活用は大変重要と考えているところでございます。

 このため、先生からお話がございましたように、昨年、建築物省エネ法を改正しまして、二〇二五年度以降の全ての住宅建築物の省エネ基準の適合義務化とともに、中大規模建築物の木造化の促進に向けた建築規制の合理化を講じたところでございます。

 また、各地域の取組でございますけれども、鳥取県では、地域材を活用しつつ、県独自の高い省エネ性能を満たした住宅の新築に対して独自の支援制度、こうしたものを行っているということで承っております。

 また、国交省におきましては、地域の中小工務店が実施する省エネ性能の高いZEH水準の木造住宅の整備に対して支援を行っておりますが、さらに、構造材の過半に地域材を使用する場合には戸当たり二十万円の加算、さらに、五年度予算案では、構造材の全てに地域材を使った場合には三十万円に加算する、こうした措置も盛り込んでいるところでございます。

 さらに、今般の建築基準法の規制の合理化は、CLTを始めとする、そうした木材を活用する中大規模木造建築プロジェクトの実現に寄与するものでございます。国交省におきましては、先導性の高いプロジェクトあるいは木造化の普及に資する優良なプロジェクトに対して支援を行っているところでございます。

 引き続き、こうした取組を通じて、林野庁さんを始めとする関係省庁と連携しながら、地方創生にも資するよう、建築物分野において地域材を含む木材活用を推進してまいりたいと思います。

保岡委員 ありがとうございます。

 今、省エネ住宅のお話をしましたのは、野村大臣御存じかと思いますが、地元鹿児島は、ヒートショック、お風呂から上がった後の死亡数というのが全国でワースト六位でございます。決してこれは寒い地域だけの問題ではなくて、私たち南国に住む者も、健康という観点から非常に大事な施策でございますし、しかも、出口戦略として県産木材やら国産木材を使っていくというところも、この林野庁の方針と合致すると思いますので、是非林野庁も連携をして進めていただきたいというふうに思います。

 加えて、CLTの活用、例えば、今回、上智大学では三階建ての校舎を、CLTを活用して造ったりもしております。文科省などとも同時に連携をしたりしていくことも必要かと思いますが、林野庁として、今後、どのような他省庁との連携を進めていくのか、お示しいただけたらありがたく存じます。

織田政府参考人 お答えいたします。

 戦後造成されました人工林が本格的な利用期を迎える中で、この森林資源の循環利用を促進し、脱炭素社会の実現に資するとともに、林業、木材産業を成長産業化させ、地方創生にもつなげていくためには、やはり大きな需要が期待できる建築物分野において国産材の利用を拡大することが非常に重要だと認識してございます。

 農林水産省におきましては、都市の木造化推進法で創設されました木材利用促進本部の本部員であり、建築基準等を所管される国土交通省とも連携しながら、住宅分野における国産材の利用拡大、あるいは、これまで木材が余り使われてこなかった中高層・非住宅の建築物等での木材利用を促進しているところでございます。

 具体的には、例えば、強度に優れた、先ほど話がありましたCLT、あるいは木質耐火部材等の製品、技術の開発に当たりまして、国土交通省の方から御助言をいただきますとともに、得られた成果を踏まえて国土交通省において建築基準を整備いただく。あるいは、公共建築物の木造化、木質化の促進に当たりまして、農林水産省において施設整備を支援しますとともに、国土交通省において技術的な相談に対応いただく。さらには、民間建築物等での木材利用促進に向けて立ち上げました、川上から川下まで幅広い関係者が参画するウッド・チェンジ協議会というのがございます。この協議会に国土交通省にも参画いただいて、御助言をいただくなどの連携を行っているところでございます。

 令和五年度予算におきましても、新たに、木造建築物の担い手となる工務店への技術的サポート等への支援を計上してございます。引き続き、国土交通省を始め関係省庁とよく連携をして、建築物における木材利用の拡大に取り組んでまいる考えでございます。

保岡委員 ありがとうございます。是非、他省庁とも連携をして、できる限りの推進をお願いいたします。

 今ちょうど、御存じのように、国産林、材木として使うのに、ちょうどいい伐採の時期だというふうに伺っております。ここで伐採をし、また、炭素を都市に固定化をさせることによって、そしてまた新たな植林をする。ちょっと私も、今年、花粉症に非常に悩まされておりますけれども、エリートツリーなどでまた花粉の量も半減するというふうに伺っておりますので、是非そのようないい流れをつくっていただければありがたく存じます。

 最後の前にもう一つ、これは問題提起だけというふうにさせていただきますが、先日、全国漁協青年部の方とお話をする機会がございました。漁師さんたちは、特に海に潜っている海士さんたちなどは、日々、気候変動、環境の変化というのを感じているというふうにおっしゃっていました。次の世代に日本の漁業をつないでいくためにも、環境問題にもっと取り組む必要があるということで、海の藻場の育成、ブルーカーボンへの取組もしておいでです。現場からの声として傾聴に値するというふうに思いますので、是非、そのようなバックアップも、支援もよろしくお願いをいたします。

 最後に、食料安全保障の強化についてでございます。生産資材の価格高騰に伴う価格形成と国民理解の醸成という点で質問をさせていただければと思います。

 まず、先生方、ニッポンフードシフトという言葉を聞いたことがおありでしょうか。また、そのニッポンフードシフトのホームページがあるのですけれども、御覧になったことがおありでしょうか。恥ずかしながら、私はつい最近までこのことを知りませんでした。でも、実際に見てみると、非常に優れた、これは国民理解の醸成、すなわち、自分たちの口にするものがどのようにつくられ、どのようなものであるかということを理解するのに非常にいいツールだなというふうに感じております。

 今日は、参考資料に、そのホームページの一番トップページをお届けしておりますので、まだ御覧になっていらっしゃらない先生がおいででしたら、是非御覧いただけたらありがたく存じます。特に、「華麗にマイル」というのは、最後、感動なくしては見られない映像になっておりますので、是非御覧いただけたらありがたく存じます。

 そのような観点から、ニッポンフードシフトというものの定義やら、また、どんどん先生に見ていただきたいというようなPRを、端的で結構ですので、農林水産省の方から一言いただけたらありがたく存じます。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 消費者が日々の生活の中で農林水産業を身近に考えることが少なくなっていることから、我が国の食と農の重要性に対する国民理解の醸成、これが非常に重要であるというふうに考えております。このため、現行の食料・農業・農村基本計画におきまして、食と農のつながりの深化に着目した、官民協働による新しい国民運動に取り組むことを定めたところでございます。

 これを踏まえまして、令和三年七月より、「食から日本を考える。ニッポンフードシフト」ということをスローガンとした取組を展開しておりまして、特にZ世代と言われる十代から二十代前半の、未来を担う若者を重点的なターゲットといたしまして、例えば、若者に農業や食品産業の現場を体験してもらい、彼らの目線から情報発信を行うなどの取組を進めているところでございます。

 こうした取組を通じて、食と環境を支える農林水産業、農山漁村への国民の理解を醸成し、国産の農林水産物の積極的な選択といった具体的な行動変容に結びつくように、官民協働による取組を推進し、我々としても積極的にこれを展開し、広めていきたいというふうに考えております。

保岡委員 ありがとうございます。

 最後に、野村農林水産大臣にお伺いをしたいと思います。

 今私も、農家さんたちが、再生産できる環境を少しでもつくるために武器を多く持っていただきたいという思いで、輸出やEコマースによる直販など、自分が考え得ることは全て挑戦してみようというふうに考えております。

 そんな中で、今、生産資材の価格高騰というものに直面をした農家さんから多くの声も、地元に帰ると伺います。持続可能な農業のためには、適正価格での販売が必要不可欠と考えています。原材料高騰の中でも、農家に野菜の価格を決定することができない今の市場流通について、農家を守るための再生産価格の保持ができる市場の役割など、検討をいただきたいという声も多く聞いております。今年六月にも取りまとめられる食料・農業・農村基本法の見直しに、このような観点を入れていかれるのかどうか。

 また、産業としての農業の自立、持続可能という問題と、社会政策としての食料アクセスの問題、例えばフードバンクであったりとか、アクセスが困難な方への提供。生産、流通コスト等を価格に反映しやすくするための環境整備をすると、日常的には食料へのアクセスがしづらくなる人も必ず出てきます。今後、この議論は避けて通ることはできないというふうに思いますが、大臣がどのようにお考えになられるか。

 また、今日はいろいろな質問もさせていただきました。トータルで、農林水産大臣から最後に一言、お考え、お答えがいただけたらありがたく存じます。

野村国務大臣 保岡委員にお答え申し上げます。

 今あなたの質問されている姿を見ますと、やはりお父さんをほうふつさせるような感じで、大変感慨深いものを覚えていたところでございます。

 今御質問にございました価格転嫁の問題でございますが、予算委員会でも、いろいろこういった御質問もいただきました。政府では、中小企業等が賃上げの原資を確保できるように、コストの上昇分を適切に転嫁できる環境の整備を進めております。

 また、先ほどお話がありました基本法の改正に向けて、今、検証部会を開いて、十回ほど開きましたが、その中でも同じような御意見もありましたので、何らかの形でやはり整理をしていきたい、また、外国の事例等も踏まえながらそういったものを検討していきたい、こんなふうに思っているところでございます。

 また一方、御指摘のありました食料品にアクセスしづらい方々への対応につきましては、現在、我が国でも各省庁が取り組んでおり、農林水産省においては、食育や食品ロス削減の観点から、子供食堂やフードバンク等への支援などの取組も行っているところでございます。

 御質問にありました、適正な価格形成や経済的弱者への対策の在り方については、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会においても議論が行われているところであり、今後、食料政策全体の中で是非検討を進めてまいりたい、このように思っております。

保岡委員 ありがとうございます。

 大臣の双肩にかかる重責は、本当に並々ならないものかというふうに思いますが、大臣でしたら、その困難を皆さんの力を合わせて突破できるというふうに思っております。

 私も、一番取り組みたいことは地方創生なんですが、とりわけ、鹿児島も含め、地方において農業と観光というのはキーワードかというふうに思っております。一番理想的なのは、フランスのシャンパーニュやボルドー、スペインのバスク地方のように、都会と比べても遜色がない所得がその地域で確保できるということが私にとっての地方創生の一丁目一番地でございまして、そういった点では、今後、このような大きな問題もそうですが、地元のサトウキビであったりカンショ基腐れの対策であったり、現在進行している鳥インフルエンザ、様々な問題がございます。

 また、今後、大臣や森山先生が進める耕畜連携であったり、希望の見える分野もございますし、是非、地元で一円でも多く農家の方が収入をいただく、そのような未来を描いて、一緒にまた農家の方々とも取り組んでまいりたいと思いますので、どうか引き続き御指導、御鞭撻賜りますようにお願いを申し上げ、質問とさせていただきます。

 今日は本当にありがとうございました。

笹川委員長 次に、庄子賢一君。

庄子委員 公明党の庄子賢一でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず一問目は、大臣も所信表明の中で触れておられますG7の宮崎農業大臣会合についてでございます。

 四月の二十二、二十三の二日間にわたりまして開催をされることになっておりまして、大臣が議長を務められるわけでございます。

 所信表明の中で大臣は、農業の持続可能性について各国と胸襟を開いて議論したい、こう述べておられます。

 今、国際社会は、食料安全保障の問題等々、非常に深刻な課題に直面をする中で、この会合というのは非常に注目度も高いというふうに思っております。

 大臣は、議長として、この表明された所信の中でおっしゃっている農業の持続可能性について、どういう方向性で取りまとめていきたいとお考えになっているか、伺いたいと思います。

野村国務大臣 庄子委員にお答えを申し上げたいと思いますが、先般の所信の中で、先ほど御指摘ありましたようなことを申し上げました。食料安全保障の確保が、これは世界的な関心を集める中で、農業生産性を向上させつつ持続可能性をいかに確保するか、これは日本だけではなくて国際的な問題だというふうに捉まえております。

 我が国は、みどりの食料システム戦略を通じて、議員御指摘の生物多様性の保全も含め、持続可能な農業、食料システムの構築を進めているところでございます。

 そこで、G7農業大臣会議におきましても、この持続可能な農業、食料システムの構築に向けて力強いメッセージを発信したいというふうに考えておりますが、ただ、まだ四月の二十二、二十三日でありますので、七か国との調整を今させていただいておりまして、皆さんで同じ方向に向かいながら力強いメッセージを発出したい、こんなふうに思っておりますので、議長として議論の取りまとめを行っていきたいと考えているところでございます。

庄子委員 御期待を申し上げます。

 昨年、臨時のG7農業大臣会合がございました際に、金子前大臣が出席をされました。このときはウクライナ情勢が非常に皆さん念頭にあった時期だったものですから、金子前大臣からは、全ての人々が十分で安全かつ栄養のある食料にいつでもアクセスができるように関係機関が協働する必要があるということを発言をされておりまして、今回の会合でも、野村大臣のリーダーシップの下で、今おっしゃっていただいたような、国際社会の懸案を乗り越えていけるような力強い声明を出していただきたいなというふうに思っております。

 私は、この農業の持続可能性というのは二つの側面があると思っておりまして、一つは、農業それ自体をどう持続可能なものにするかということと、もう一つは、地域の環境をどう持続可能なものにできるか、そこに農業はどういうふうに貢献できるかという、この二つの側面があるというふうに思っておりまして、二問目は、この観点から、ネイチャーポジティブの対応についてお尋ねをさせていただきたいと思います。

 昨年十二月、生物多様性条約締結国会議、COP15、これが開催をされました。昆明・モントリオール生物多様性世界枠組が決定をいたしまして、二〇三〇年までの間に生物多様性を回復軌道に乗せる、いわゆるネイチャーポジティブの実現という新たな国際目標が決まったわけであります。

 これを踏まえて、今年の二月には、二〇三〇生物多様性枠組実現日本会議、これがネイチャーポジティブ宣言を発表をしておりまして、今、国内外で、生物多様性の損失を食い止め、反転させ、回復軌道に乗せていく方向性に大きな潮流を感じる一人でございます。

 農林水産省はこの生物多様性の保全についてどう対処していくか、お考えを伺います。

野中副大臣 昨年十二月、COP15におきまして採択されました昆明・モントリオール生物多様性枠組において、生物多様性の損失を食い止めるとともに反転させるための緊急の行動を取るという、庄子先生御指摘のネイチャーポジティブの概念を二〇三〇年の目標に掲げているところであります。

 私どもとしましては、この新しい枠組み、また、みどりの食料システム戦略を踏まえまして、今月末に向けて、農林水産省生物多様性戦略の改定案をただいま議論しているところであります。その中で、農山漁村における生物多様性と生態系サービスの保全、サプライチェーン全体の取組、生物多様性への理解と行動変容の促進など、基本方針や具体的な施策の方向性を今示しているところであります。

 これらを踏まえまして、引き続き、生物多様性の保全の取組を進めてまいりたく存じます。

庄子委員 重要な御答弁を頂戴したと思っております。改定されるこの戦略を踏まえて、次はいよいよ食料・農村・農業基本法、これも今作業中でございますが、ここにどう落とし込んでいくのかということを、是非お願いをしたいと思っております。

 これまで、この食料・農村・農業基本法では多面的機能の発揮という目的が示されておりまして、これは生物多様性が十分に守られてきたかどうか、生物多様性が多面的機能の発揮という目的の中で十分に達成されてきたかどうかということについて、私は検証する必要があるというふうに思っておりますが、現行法には生物多様性という表現はございません。自然環境の保全という表現にとどまっております。

 現行法の施行から時間もたっております。多面的機能がこの間一定発揮され、成果を上げてきたということは評価をいたしますが、一方で、農地あるいは里山から多くの生物が姿を消して、また、絶滅の危惧に瀕している種も少なくございません。

 現行法では明確に規定されておりません生物多様性の保全や向上、これを目的として基本法の中に明記すべきと提案をいたしますが、いかがでしょうか。

野村国務大臣 お答えを申し上げます。

 委員おっしゃりますように、現行基本法の中には、生物多様性という表現はありません。が、第三条及び第四条に、多面的機能の発揮や自然環境の維持増進が位置づけられておりまして、これに基づいて、生物多様性保全のための施策を現在推進しているところでございます。

 現在、基本法の検証、見直しに向けた検討を進めておりまして、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会におきまして、農業者なり、あるいは食品事業者、あるいは消費者団体等の幅広い関係者から御意見をいただきながら議論を進めているところですが、引き続き、この検証を進めまして、国民的なコンセンサスを形成しながら、六月をめどに政策の新たな展開方向を取りまとめてまいりたいと思っているところでございます。

庄子委員 確かに、多面的機能の中に生物多様性は包含されるという、そうした見方もあるんですけれども、ただ、細かいことを申し上げるようですが、素掘りのいわゆる水路をコンクリートで固めて、それで結局生き物たちが姿を消していっている。それでは、多面的機能は発揮できるかもしれないけれども、生物多様性を保全することはできないという、そうした負の側面もあるということを、十分、是非踏まえていただいた上で、基本法の中に反映をしていただきたいということを、重ねて御提案をさせていただきたいと思います。

 次は、福島第一原発の処理水の問題についてでございます。

 去る三月四日の日に、我が党の山口代表等と一緒に一Fに行ってまいりまして、時間をかけて視察調査をしてまいりました。十二年の時間が経過する中で、多くの作業員の皆様の御尽力で非常に作業環境も改善をされて、何の防護服もつけずに、マスク一つで構内が歩けるといったところまで環境がよくなってきておりまして、今も四千人以上の方が構内でお仕事をしていただいておりますけれども、関係者の皆様には改めて感謝を申し上げたいというふうに思っています。

 いよいよ春から夏にかけて処理水の放出ということが表明をされました。この敷地の中では、ヒラメとアワビ、実際に現場も見てまいりましたが、普通の海水と、そして処理水と、同じ環境で二つの水槽で飼育をし、残留するかしないかといったことについてのモニタリングをしていただいております。現在は何の異常もないという報告を伺いました。今後、海藻類も新たにそこで飼育をしていくということが示されたわけでございました。

 この処理水についてですけれども、やはり、三陸沿岸地域の漁業関係者等を始め、非常に不安の声も寄せられてきておりまして、安心して事業を継続できる仕組みを是非つくってほしいという声を頂戴をしております。

 農林水産省は、いわゆる生産者にも消費者にも一番近い立場でございますので、科学的根拠に基づいた客観的かつ分かりやすい情報の発信に是非努めていただき、風評被害の払拭に尽力をしていただきたい、このように思っておりますが、具体的にどのように対応されますでしょうか、伺います。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 ALPS処理水の処分に伴う対策といたしましては、ALPS処理水の処分に係る行動計画に基づき、各国・地域への情報発信や国際会議の活用など、国際社会への戦略的な発信を政府全体で行うとともに、水産関係対策といたしましては、風評を生じさせないため、従来から実施していた水産物のモニタリング検査にトリチウム検査を追加するとともに、担い手の育成、確保や水産物の販売促進など、生産、加工、流通、消費、それぞれの段階において各種支援策を講じております。

 特に、ALPS処理水の海洋放出直後には、生産者、消費者の皆さんに早期に情報を提供できるよう、短時間でトリチウム検査が行える手法を導入し、迅速に分析結果を公表してまいりたいと考えております。

 今後とも、関係省庁と連携しながらモニタリングを進めるとともに、科学的根拠に基づいた説明を国内外に向けて透明性高く発信することで、風評対策に取り組んでまいります。

庄子委員 これまで、この処理水の問題というのは、経産省あるいは復興庁が中心となって対処してきたというふうに思っておりますが、もし仮に、どこかのXデーがあって、海洋放出ということになるとすれば、そこから先は、むしろ、先ほど申し上げたとおり、事業者にも近い、消費者にも近い農水省が前面に立って、情報発信と風評払拭の先頭に立っていただきたい、大臣には是非そこで手腕を発揮していただきたいということを強くお願いを申し上げておきたい、こう思います。

 最後の五番目ですけれども、これは二月一日の予算委員会の中で大臣とも議論をさせていただきましたが、新規就農者支援について二問、お尋ねをさせていただきたいと思います。

 就農準備資金の親元就農につきまして、親元に就農した人が、就農後五年以内の経営継承、そして、独立・自営就農要件というものがございます。しかし、親がまだ年齢がそこまでいっていないケースなどもございますし、新規就農者は非常に大事ですので、一層この親元就農の促進につながってまいりますように、法人化しない個人経営体における共同経営、これも一形態として認め、例えば、農業委員会立会いの下で家族経営協定での共同経営も対象というふうにできないものか、こう提案をさせていただきますが、いかがでしょうか。

村井政府参考人 お答えいたします。

 就農準備資金は、就農に向けて農業技術や経営ノウハウを習得するために研修中の方の所得を確保する観点から給付をしておるものでございます。

 将来、親元就農する場合には、制度の創設当初は、経営リスクを伴わないことから支援の対象外としておりましたが、平成二十五年度補正予算からは、就農後五年以内に経営を継承しリスクを負う場合に限って支援対象としたところでございます。

 これに加え、親が個人経営体だったとしても、就農後五年以内に経営を法人化し、親と共同経営を行う場合も事業を活用できる仕組みとしており、農家子弟が親とともに経営を行うことを可能としておりますけれども、経営リスクの観点から、御指摘のありました個人経営体での共同経営を交付対象とすることについては難しい面があることを御理解いただければというふうに考えております。

 今後も、若い世代の新規就農者を育成、確保できるよう、委員の御指摘や現場の声を踏まえつつ、新規就農者の支援の在り方については引き続き重要な検討課題として受け止めるとともに、親元就農による現行の事業の活用方法については、その周知をしっかりと行ってまいりたいと考えております。

庄子委員 恐らく、親元就農と全くの新規参入の人との公平性やバランスということを念頭に置いての御答弁かとは思うんですけれども、それは十分理解はいたしますが、しかし、この後も触れますけれども、やはり人手不足にあえいでいるというせっぱ詰まったこの状況において、余り過度なハードルといいますか、要件というのを振りかざさないでいただきたいなというふうに私などは思います。

 ここは大臣とも委員会で質問をさせていただいた点ですが、経営開始資金及び就農準備資金の交付要件の中に、前年の世帯全体の所得が六百万円以下という縛りがある点につきまして、これは大臣も答弁をいただいているんですが、地方に裁量権があるんだというお話だったわけでございます。しかし、裁量権があると言われても、国が六百万円という基準値を示している以上、勝手に地方がそれを大幅に乗り越えたり、大きく緩和するということはできない地方公務員のメンタリティーがあります。当然です。

 今後、県や市町村に対して、国からいわゆる手引書あるいはガイドラインといったものを示し、地方の担当者が適切にその裁量権を行使し、判断できるように、交付対象として安心して認定できるように、運用を改善すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

角田大臣政務官 経営開始資金及び就農準備資金については、生活確保の観点から支援の必要性の高い方々に対して資金が活用されるよう、支援対象者について、前年の世帯所得六百万円以下という要件を設定しているところでございます。

 前年に六百万円を超える世帯所得があったとしても、地方自治体の判断によって交付対象とすることを可能にしておりますが、先般、予算委員会で委員から御指摘のあったとおり、地方自治体だけで判断するのは難しいという御意見をいただいているところです。

 このため、今後、県、市町村に対して、どのような場合に交付対象とし得るのか、具体的な事例を含めたガイドラインなどをお示しし、市町村の担当者が安心して交付対象として認定できるよう、改善を行ってまいります。

庄子委員 ありがとうございます。

 是非、具体的な事例を分かりやすくお示しをいただきまして、できるだけ速やかに、そうした国の指針をお示しをいただきたいと思っております。

 以上で質疑を終わります。ありがとうございました。

笹川委員長 次に、小山展弘君。

小山委員 立憲民主党の小山展弘です。

 それでは、早速質問に入らさせていただきたいと思います。

 久々に、系統組織出身の大臣、また政務三役として、藤木政務官、野村大臣が就任をされました。私も大変期待をいたしております。

 ただ、このことについて、三月をもって国家戦略特区委員を退任をした竹中平蔵氏は、読売テレビの番組で、系統出身者が大臣になったといったことを理由に批判をしたことがネットニュースで記載をされておりました。

 私は、この竹中氏の発言とは異なる意見を持っておりまして、現場出身の方でも、時にはそうでない方であっても、どのようなバックグラウンドを持った方でも就任することを否定するべきではなく、それが民主主義であり、行政機構に対する国民の統治であると考えております。

 現場出身、系統出身ということを理由に批判することは明らかに私は暴論であると考えておりますけれども、そういった批判を跳ね返して、現場出身の大臣、政務三役として、意気込みを野村大臣、藤木政務官より語っていただきたいと思います。

野村国務大臣 小山委員からエールを送っていただきまして、非常にありがたいなと思っているところでございます。

 私は、元々、国会議員になろうなんて思ってJAに入ったわけではありませんし、いろいろないきさつがあって国会に出てまいりましたが、非常によかったのは、三十五年間という、JAの中で農業部門の役員になるよう、ずっとやってきましたので、そのことが生かされているし、そして、現在も、どういう問題があるかというのは、すぐに組合員なりあるいは職員さんに電話をかけて、現場の声というのがすぐに吸収できるというのは非常に大きなメリットがある、こんなふうに思っておりまして、いろいろ、人はおっしゃるかもしれませんが、一生懸命やらせていただいているということでございますので、是非、これからも御協力をよろしくお願いいたします。

藤木大臣政務官 お答えいたします。

 私もJAとは関わりのある人間だとは思います。ただ、私の場合は、JAにお世話になって経営を続けてきた一農家でありまして、最後は組合長という立場をいただきましたけれども、職員としてJAに携わった人間ではないということであります。

 そういう中でありますけれども、今大臣も言われたように、やはり現場にいた関係で、農家の皆さん方の気持ちというのは誰よりも近くで感じてきた人間の一人でありますし、政策の決定に当たっては、幅広く現場の声にしっかりと耳を傾けることが何よりも重要だと考えております。

 内閣から任命を受けた農林水産大臣政務官として、しっかりと職責を果たしていく覚悟です。

小山委員 御答弁ありがとうございます。

 また大変期待したいと思いますけれども、国家戦略特区会議や規制改革推進会議につきましては、その委員の選定について、選挙で選ばれたわけでも試験で選ばれたわけでもない、こういった委員が、例えば去年の三月で竹中氏や八田氏が国家戦略特区委員を退任しましたけれども、あるいは、今もワーキングチームの委員を続けている林いづみさん、八年継続しておりまして、このように、何で何年も再任されるのかということの方が異例であります。

 また、竹中氏については、民間会社の会長や役員をしながら、その企業に関連する規制改革や特区会議のメンバーとなっていることについて、利益相反の疑いがあるということも指摘をされております。こういう疑いを持たれるような方から野村大臣や藤木政務官が批判される筋合いは全くない、私はそう思っております。

 是非、現場の声を届ける農政を展開していただきたいと思います。

 藤木政務官、大変お忙しい中、こちらに御出席をいただきまして、ありがとうございました。御退席していただいて結構です。

 それでは、大臣所信表明のことについて質問させていただきたいと思いますが、食料安全保障は生産者だけの問題ではなく、消費者を含めた国民一人一人に関わる国全体の問題ですと所信表明の中で大臣は述べておられます。

 食料安全保障が語られる上で、必ず引き合いに出されるのが食料自給率の概念です。私は、日本の食料自給率が低下したことについては、生産者や供給側だけの問題ではないのではないかと考えております。

 食料自給率の低下については、内外価格差の拡大に伴い輸入が増えたこと、また、消費者の食文化、ありていに言えば御飯食からパン食が大幅に増加したという、こういった変化といったことも大きな要因として考えられるかと思いますが、この点について政府はどのように認識されていらっしゃいますでしょうか。

角田大臣政務官 我が国においては、これまで、食生活の洋風化等が進み、国内生産で需要を賄える米の消費が減少する一方で、海外から輸入する飼料で生産される畜産物や輸入大豆などを原料に製造される油脂類等の消費が増大をしてきました。

 このように、食生活の変化が主な要因となって、国産では需要を賄えない油糧種子やトウモロコシなどの飼料原料の輸入が増加する一方で、米の消費が大幅に減少したことで、食料自給率が長期的に低下してきたものと考えております。

小山委員 是非、こういった国民の消費に対する理解醸成といったことも、食料安全保障や食料自給率を考える上では重要な点かと思いましたので、大臣所信の中になかったものですからお尋ねをさせていただいたんですけれども、この食料自給率を高めていくためには、逆にこれは大臣所信の中にあった文言ですけれども、需要に合った作物を作る戦略、国内において生産余剰の稲作から小麦や大豆の生産に転換する、あるいは米粉の利用を増やして小麦の代替商品とするといったことが必要である、これは大臣所信の中にもございました。

 ただ、もう一方で、今の国民の理解醸成という点ですけれども、先ほど保岡議員のニッポンフードシフトのお話もございましたが、食育の推進などによって日本食の需要を増やすこと、消費者や国民全体の食料安全保障から始まって、日本食に対する理解を深めることも大事ではないでしょうか。

 農業は、他の製造業と違って、もう先生方には釈迦に説法もいいところですけれども、日本の気候風土などの自然条件で生産できる農作物というものは制約されると思います。適地適作で、生産したものを国消国産、地産地消、あるいは旬産旬消で、消費することが本来は基本ではないでしょうか。そうすれば、実は自然と自給率は一定のところまで上がると思うんですね。

 湿潤なアジア・モンスーン地帯の日本で作ることに適している米は余っているのに、日本での生産に適しない小麦を輸入してそれを食べるというような、しかも、その輸入に際してはCO2が大量に輸送中に使われるという、日本の国土の自然条件、生産条件と異なる食文化が定着してしまったことも、食料自給率低下の大きな問題ではないかと思っております。

 また一方で、最近、円安、円安と言われております。ただ、名目為替レートのみならず、今日お配りした円の実質実効為替レートというものを是非御覧いただければと思うんですけれども、これは、名目為替レートだけではなくて、ドルのインフレ率と円のインフレ率の差、ここ数年はドルの方がインフレ率が高いものですから、そういうこととか、ユーロとか、あるいは貿易量なども勘案した実質実効レートで見ますと、よく野田内閣のときに、円高、円高といって海外に、産業が空洞化したと言われましたけれども、指数で見ると、二〇二〇年を一〇〇としておりますが、野田内閣のときは指数一三五・八六。一番円が価値があって強かったのは村山内閣の一九三・九七。野田内閣のときには、中曽根内閣とほぼ同じぐらいの円の強さ、円の価値である。

 一方で、今の岸田内閣の為替レート指数七五・四七というのは、名目の円相場だけ見ると中曽根内閣のときよりも円高に見えるんですけれども、この実質実効為替レートで見ると、実は田中角栄内閣の八八・四三よりも弱い、こういうようなことになってまいります。

 こうしたときに、今の実質実効為替レートとか為替というものは、国力とか経済成長率とか、国のファンダメンタルズを反映しているとも考えられますけれども、そうしますと、今後も中長期的に円安とか円の価値の低下傾向というのは続くのではないかという予想もあります。既に一部では、水産品などで買い負け現象も起きていると聞きますけれども、逆にこのことは、逆手に取れば、今こそ国内生産が可能な米の見直しが進んで、米の消費拡大の大チャンスが到来しているとも認識できようかと思います。

 これらを踏まえて、野村大臣より、米の消費拡大や食料自給率の向上について、基本認識を伺いたいと思います。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思いますが、食料は、将来にわたって安定的に確保して自給率を高めるためには、一つは、安定的な輸入もあります。それからもう一つは、適切な備蓄、これを組み合わせて、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していこうというのが基本的なスタンスになってございます。

 やはり、資源の乏しい、あるいは農地面積の小さい日本ですから、全てを賄うということにはなかなか難しいわけですので、適切な備蓄と組み合わせながら、そうやってやりたいと思いますが、特に、小麦や大豆の生産拡大とともに、主食である自給可能な米の消費拡大は大変重要だと思います。

 それともう一つは、米の需要拡大対策としては、今まで学校給食等への取組をしていただきまして、現在、週に三・五回、米飯給食になっておりますし、さらに、やはり今後、パック御飯等が今二十万トン、そして輸出も千四百トンということで、パック御飯が大変今、輸出を含めて伸びております。

 それから、もう一つは、新たな取組としてやっていかなきゃならないのが米粉であります。今まで進めてきました米粉というのは、普通のいわばジャポニカ米の、そして、なおかつ、主食用米の米を粉にしてというのが多かったんですが、自民党の方でもいろいろ検討していただきまして、いろいろな事例を実は学ばせていただきました。

 特に、パン等については、私はいつも言っていて、役所で怒られるんですが、東南アジアのインディカ米の米粉のパンというのは、これは大変おいしいパンです。それは福井の農家が作っておられるパンなんですが、本当においしかった。ですから、そういうものに切り替えていけるというのが、自信が湧きました。

 そうして、農水大臣になりまして、米穀課長を呼びまして、インディカ米をこれから普及しようじゃないかと言ったら、大臣、それよりもまだジャポニカ米でいい米が、適した米がありますと。笑みたわわという品種なんだそうですが、こういう専用品種がありますので、これらをやはり米粉として、そして麺だとか、あるいはまたパン用に、こういったことで仕向けていけば、米の消費拡大というのが当然できていくんだというふうに思っております。

 また、関係省庁と連携した和食文化の保護、継承、これについてもやはり取り組んでいきながら、米の消費拡大についての取組を強化してまいりたい、このように思っております。

小山委員 私の尊敬する川勝平太県知事が、かつて学者時代、「日本文明と近代西洋」という本を書いておりまして、実は、戦国時代は非常に海外から物が入ってきたりということだったんですが、江戸時代は鎖国というネガティブなイメージが強いわけですけれども、実は、あらゆる必需品を国内生産をして、国内化していった時代だった、これができたのはイギリスと日本だというようなことを著書の中で述べています。

 そういう経験もありますので、是非、国内、これからの食料安全保障、食料自給率の向上、日本にできないことはないと思っております。

 次に、国民の農業に対する理解深化と担い手の獲得ということについて。

 かつて高度成長時代は、製造業やサービス産業にお勤めの方でも、実家は農家というケースが今よりもはるかに多かったと思います。ですから、農業とか農家のことに非常に理解が自然とあった。現在では、実家も非農家、本人も非農家、農業から離れて、また、土と離れた、離れざるを得ない、そういう状況の方が非常に増えたと思っております。

 元農中総研の蔦谷栄一さんは、都市農業を都市民と農業の交流の場として、都市民が農業に触れることで農業や農業生産への理解を深める、行く行くは都市民から新規就農者が輩出され、日本国民の多くが何らかの形で農業生産に関わることによって関心を高める、これを国民皆農ということを提唱されていらっしゃいます。

 このぐらいの国民的な農業に対する理解の広がりと深化がなければ、なかなか食料安全保障に対する理解も深まっていかないのではないかということも感じますけれども、野村大臣は、このような国民皆農の考えについて、どのようにお考えになりますでしょうか。

野村国務大臣 お答えいたします。

 都市農業は、これは都市住民の身近に存在する農業として、食料生産のみならず、今委員おっしゃいましたように、農業体験なり交流の場の提供等の多様な機能を有しております。

 つい先日、日曜日に、NHKと全国農協中央会が主催する日本農業賞の表彰式がございました。私も出席をさせていただきましたが、その中でやはりびっくりしましたのが、横浜市の方が日本農業賞の特別賞をお取りになりまして、その方は、やはり都市農業ですから、野菜を中心に、ブロッコリーなり、あるいはキャベツ、大根、こういった身近な野菜を作って、そして都市農業として立派にやっておられるから特別賞が授与されたと思うんですが、そういったような、都市住民の農業に対する理解の醸成をこういう形で図っていただくし、重要であるというふうに私も認識しております。

 農水省としましては、都市農業の有する多様な機能が十分に発揮されますように、都市農業に関する情報発信や農業体験の取組を推進するなど、引き続き、都市農業の振興にお手伝いをさせていただきたいと思っております。

小山委員 ちょっと、質問の順番を少し入替えさせていただければと思います。

 先日、予算委員会の一般質疑の中でも触れさせていただいたんですが、以前、農協改革と言われた、農協法から中央会の指導権限を定めた規定の廃止などが行われた法制度の変更から、約八年が経過をいたしております。

 先日は全国監査機構の監査のお話をお尋ねさせていただきましたけれども、中央会の指導権限等を農協法から廃止したメリットというものは、今、八年たって、どのようにお考えになられていますでしょうか。あるいはまた、八年たってみて、デメリットが存在するのであれば、今後、中央会の指導権限等の法制度の見直しも検討していくべきと考えますけれども、大臣の御認識をお尋ねしたいと思います。

野村国務大臣 お答え申し上げたいと思いますが、党の中におりましたら存分に言えるんですけれども、大臣というやはり職責がありますので余り申し上げられませんが、個人的な思いはいろいろあります。

 ただ、小山委員おっしゃいましたように、メリット、デメリット、双方あるんだろう、こんなふうに思います。

 例えば、監査の仕組みを外出しをしましたが、これはやはりよかった、メリットの方だろうというふうに思います。それは、いろいろ外部から言われておりました、全国中央会がやっている監査機構の監査は内部監査だろうというふうに言われておりまして、そして、今では公認会計士が入って、完全な外部監査という形でやっておりまして、それでどうだということにはならないんですけれども、ただ、第三者の皆さんが見たときに、ああ、農協はきちっとした健全な経営ができるように監査も外出しをしてやっているなというのがやはり評価としてあると思います。

 ただ、そのほかに、中央会のいわば指導権限のところが弱められましたけれども、これは全中だけであって、各県はそれぞれ、今まで中央会の方で指導権限を持っておりましたが、これがなくなりまして、JAバンク法の中にこれが入れられたというのはちょっとやはり奇異には感じましたけれども、ただ、やはり、今まで中央会が果たしてきた役割、このことで、農協の皆さん方は十分分かっておられますので、今の時点では余りそういった問題は出ておりませんが、これから先、昔の中央会というようなことで、少し中央会の指導機能というのがやはり、これはもうなくせろという話でしたから、これが完全になくなっていくのはどうなのかなということは、私は個人的には考えております。

 ですから、そういったようなこともありますが、メリット、デメリット、双方あるので、いつかの時点ではこれはやはり検証することが必要だろうな、こんなふうに思っております。

小山委員 御答弁しづらいことをお尋ねしまして、少し申し訳なく思います。

 一方で、農林中金というのは、私も出身ですけれども、あくまでも金融部門ですので、そこだけでJAさんの全ての経営を考えていくということは、どうしてもこれは限界がある。コスト削減で人員も減ってきているところもありますし、そういったことも含めて、やはり、系統グループということの、協同組合組織というのは株式会社とは異なりますので、一度、徐々に、現場の声も伺いながら、常に制度というものは見直しをしていく、あるいは検討していくということが大事なことではないかなと思っております。

 それと、インボイス制度の導入について、懸念の声が上がっていることについてお尋ねしたいと思います。

 農協さんに対しては特例が設けられることになっておりますけれども、一方では、例えば私の地元でいいますと、茶工場とか茶農協とか、こういった生産組織では特例が適用されず、インボイスに対応しなければいけないのではないか、そのようにお考え、認識されている方が多くて、私の地元で申し上げますと、静岡県内なんかでは、インボイス対応の事務コストの増加とか数年来の茶業による収益減少から、廃業を検討する茶工場、茶農協さんもございます。

 こういった茶農協さんや茶工場さんに対しても農協特例を適用するべきではないだろうか、あるいは、適用できるのであればその周知が必要であると考えますが、いかがでしょうか。

野中副大臣 インボイス制度の協同組合特例でありますが、組合員である生産者が、出荷した農産物について、売値や出荷先等の条件をつけず、その販売を農協等に無条件で委託する場合でありまして、一定期間に出荷した同種、同規格、同品質ごとの農産物の平均価格による共同計算で精算を行う場合、すなわち、誰の生産物が誰に買われていったか分からない場合ということでありますが、これが特例の対象になり得るものでありまして、総合農協のほか茶農協、また、茶工場を経営する農事組合法人も対象となり得ます。

 本年十月のインボイス制度開始から六年間は、免税事業者からの課税仕入れを一定額控除可能とする経過措置が設けられておりますので、茶農協や茶工場におかれましては、この期間を生かして、是非、今後の対応を検討していただきたいというふうに思っております。

 また、私どもも、先週、三月二日でありますけれども、国税庁と共同で、静岡県農協茶業者集会の場において説明を行わせていただきました。今後も必要な情報提供を図ってまいりたいというふうに思っております。

小山委員 是非、これからも周知活動に御尽力賜りたいと思っております。

 それで、済みません、ちょっと質問の順番を戻させていただきまして、今、資材とか肥料、飼料、あるいは燃油等の複合的な物価高騰によって、生産現場のコストというのは非常に急上昇しております。一方で、先ほどの質問にもございましたが、生産者販売価格は上昇しないことから、農家の経営はこれまでにない厳しい状況にございます。販売価格が上がらず、むしろスーパー等から、バイイングパワーが強過ぎて、これまでも買いたたかれると感じられるような状況が続いてまいりました。

 ただ、一方で、そのスーパーや小売業の中にも、全てでというわけではないでしょうけれども、大変厳しい環境下にある経営体があり、これは、人口の減少とか実質賃金の低下などによって、国民の購買力とか需要低下があるということも考えなければいけない部分もあろうかと思います。

 ただ、それを踏まえても、それでもなお、やはり生産者の側に立った流通というのが今こそ求められているのではないかと。十九世紀のライファイゼン協同組合が成立した頃のように、生産者の交渉力が弱まっているのではないかとすら感じます。生産者の側に立って、生産者の販売価格を少しでも上げる、高く買い取る。あるいは、委託を受けて、少しでも消費者には安く提供しつつ、生産者には少しでも手数料を高くお支払いをする。こういうような、流通コストを下げるような非営利の流通が求められているとも考えられ、まさに系統の流通、協同組合による流通の出番ではないかと思いますけれども、この点について、大臣の御認識をお尋ねしたいと思います。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 小山委員がおっしゃる、いろんな販売価格のところをどうするかというのは、予算委員会でも、衆でも参でも出てまいりました。何とかコストを販売の価格に上乗せできないのか、こういったようなお話もございました。

 要は、これは今からまた検討も検証部会の中でやっていかなきゃいけないというふうに思っておりますが、現在のところは、有利販売を行うことで農協の方でもいろいろ努力していただきまして、買取り販売を実施する農協が、実は私もびっくりしたんですが、全体の七割まで増加している、買取り販売が。これは品目じゃなくて、農協が、そういうことをやっているというところが七割あるということで、大変、農協が販売事業に力を入れてき出したなというのを実感したところでございます。

 また、全農では、青果物の卸や流通会社との業務提携、あるいは共同配送やパレットの共通化の、流通の合理化に向けた取組も進めているというのは、もう委員も御承知のとおりでございまして、我が省としても、農協が地域の農業を支えるリーダーとしての役割を果たすよう、農業者の所得向上のために、こうした販売から流通まで、農協の取組を後押しをしていきたい、こんなふうに思っております。

小山委員 昨年の十月に労働者協同組合法も施行になりまして、これは二〇二〇年の十二月に全会一致で通った議員立法ですけれども、こういった協同組合というものが今世界的にも見直されつつある、新自由主義とは違う経営の在り方ということで見直されつつあると思いますので、是非この点も踏まえて、農水省の方でも、こういった協同組合の経営の在り方というものに、また再び注目をしていただければと思っております。

 それでは、これで質問を終わります。

笹川委員長 次に、金子恵美君。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 野村大臣は、大臣所信の冒頭、高病原性鳥インフルエンザについて述べられておりまして、引き続き、最大限の緊張感を持って発生予防と蔓延防止に全力で取り組むとともに、発生養鶏農家の経営継続への支援についてもしっかりと取り組んでいくという御決意を示されました。

 私たち立憲民主党は、高病原性鳥インフルエンザの広がりのスピード、これを大変危惧して、早い時期から対策の必要性を考えておりまして、発生予防、蔓延防止のため、あるいは、養鶏農家、自治体支援ということで、大臣にも申入れをさせていただいていたところでもございます。

 あの当時は、とにかくやるべきことはやっているというような大臣の回答もいただいてはおりましたけれども、やはり、本当にやるべきことを全てやり尽くして、その上で、今もしっかりと現場を支援できているのかどうかということも検証していただきながら御対応を是非いただきたいというふうにも思っておりますし、今やはり現場の声を聞いていると、殺処分は終わったけれども再開まで時間がかかるということであったり、その中でやはり諦めという方向になっている方々もいらっしゃるということです。そうしますと、養鶏農家の方々が本当に消えていくということになってしまうかもしれない。そうならないように、とにかく全てしっかりやるべきことはやっていく、支援を進めていくということだと思いますので、是非よろしくお願いしたいというふうに思います。

 その上で、今本当にまた更に厳しい状況にある我が国の酪農についても質問させていただきたいと思うんですが、もうこれは危機にあるということです。ここで生産者を支えなくては、本当に我が国の酪農は崩壊してしまうのではないかというふうにも思っています。

 まず最初に、要となります配合飼料の価格高騰対策について伺いたいと思いますけれども、高止まりしている、だから対策が必要だということで、一月の二十四日、政府の第六回物価・賃金・生活総合対策本部において、岸田総理から野村農水大臣に対しまして指示が出た、昨年末の配合飼料の高止まり対策を継続し、本年度第四・四半期についても対策を講ずるようにとの指示だったというふうに伺っております。野村大臣におかれましては、本件については現在のところ検討中と御説明されていると承知してもおります。

 まず、この一月の総理指示への対応はどのようにされるのか、お考えをお伺いしたいということと、また、二月二十四日の第七回目の物価・賃金・生活総合対策本部においては、岸田総理から、本年四月以降についても配合飼料の価格高騰対策を講ずるように、このような指示があったというふうに報道されておりますので、この二月の総理指示についてもどのようにこれから実行されるのか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

 二点、伺いました。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 もう金子委員も十分御承知のように、予算委員会でも、飼料の高騰対策、特に酪農対策について農水省はどうするんだという御質問を衆参でいただきました。

 先ほど御指摘いただきましたように、総理の方から、物価・賃金・生活総合対策本部におきまして、餌の価格というのは四半期ごとに決まっていくものですから、ですから、十二月までのやつは平準化した形で対策が打てたんですが、じゃ、一月から四月の分をどうするんだというのはまだ決めておりませんでした。そのときに総理から指示があったのは、三・四半期と同等のような激変対策をやれと。こういうことで今検討を進めておりまして、ほぼ、今週中には大体の結論が、それが出てくるんじゃないかというふうに思っておるところでございます。それは、四月までの餌の価格をどうするかというのが今週末ぐらいには出てくるんじゃないかと思っております。

 それと、二つ目の質問で、じゃ、その高止まりしている、例えば今年の四月以降の餌をどうするんだというのがありまして、これについてもいろいろな御指摘を委員の皆さんからもいただいておりますので、これについても今検討をいたしておりまして、どういう仕組みがいいのか。これはやはり、四月から、今度は次、四、五、六、三か月分のところ、あるいはその後もまた高止まっているかもしれませんし、そのところなんかをどうするか。

 というのは、トウモロコシの価格がどうなるかによって餌が相当変わるものですから、八月に大体トウモロコシの出来高が分かりますので、四、五、六から、それから八月までのところをちょっと見越しながらやっていこうじゃないかということで、今、現業課の方では検討を進めているところでございます。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 第四・四半期については今週にでも結論が出るということでありますし、四月以降については更なる検討が必要ということでありますけれども、本当に現場は苦しい状況にあるということはもう大臣も御存じのとおりであります。そして、不安だと思います。とにかく、酪農家の皆さん、特に離農が進んでいるという状況もありますので、しっかりと不安を払拭するような情報発信を早くやっていかなくてはいけないと思います。早く決定していただきたいというふうに思いますので、お願いいたします。

 それで、今、離農の状況について、厳しいということを申し上げましたけれども、このことについて、二月二十四日に野村大臣は記者会見で御紹介されていますが、中央酪農会議のホームページにて指定団体別出荷農家戸数というのを示されていまして、私もそれを拝見しましたが、確かに、大臣がおっしゃるとおり、飼養戸数については、例年、前年比四%程度の減少傾向がずっと続いてきたところでありますけれども、本年一月では、出荷農家戸数が六・八%もの減少ということになっているということ、そして都府県に限れば八・四%減少となっているということです。この極めて厳しい結果についてどのようなお考えをお持ちかということ、そしてまた、今何をすべきとお考えになられているか、教えていただきたいと思います。

 また、実は、福島県、私は地元が福島県でありますけれども、このデータを見ますと本年一月で一二・一%減少となっておりまして、大変大きな変化がもたらされているというふうにも思いますが、この福島県の数字についても、見解があればお伺いしたいと思います。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 今、金子委員お話がありましたように、本来なら二月の初めに実態調査をやって、報告するのは十月頃になっているということでありましたので、役所の方で、もうそんなんじゃ遅いということで、先般、予算委員会で報告をしたとおりでありますが、金子委員の福島県も二十八戸、五年一月で減少しておりまして、一二・一%というお話がありました。

 全国的には六・八%、その前が五・二%ということで、大体五%から六%ぐらいが減少率だったんですが、餌高なりそういったようなこともございまして、今回は五年の一月で見ますと、全国平均で六・八%という高い離農率がやはり出てきております。

 そこで、二月二十四日の物価・賃金・生活総合対策本部におきまして、総理より、飼料価格の高騰を受けて、特に経営の厳しい酪農あるいは養鶏など幅広い農業者の負担軽減を図る飼料価格高騰対策の具体化を進めなさい、こういう指示がございました。

 具体的には、先ほどもちょっと申し上げましたが、四年度第四・四半期については、昨年の対策を継続して配合飼料コストを抑制するための追加対策を講ずる、それから、先ほども申し上げましたが、本年四月から六月期以降も見据えた激変緩和措置を講ずるよう指示をいただいておりますので、生産者の皆様が安心して経営ができるように具体的な対策を現在検討しているところでございます。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 重ねて検討の内容についてお示しいただいたんですけれども、取り組んでいただいているというのはもう理解をしています。でも、本当にこの厳しい状況、酪農の灯も消えてしまうのか、そういう状況になりますので、是非よろしく、しっかりと取組をしていただきたいと思いますので、お願いいたします。

 次に、食料・農業・農村基本法の見直しの議論についてということでお伺いさせていただきたいんですが、これも今、先ほど来お話がありますように、基本法検証部会で見直しの議論が進んでいるということであります。

 そもそも見ていきますと、基本法が成立したのは一九九九年でありますが、一九九三年にウルグアイ・ラウンドの妥結があって、一九九四年に農業基本法の見直しが提起され、そして議論が進められ、一九九八年に当時の橋本総理大臣の諮問機関の答申があって、一九九九年に食料・農業・農村基本法が施行され、二〇〇〇年に基本法に基づく基本計画の決定があったということで、十分な時間、ある一定の時間をしっかりと議論をして流れをつくられて、そして食料・農業・農村基本法ができている、存在しているということだというふうに思うんです。

 この間、もう二十年以上たって一度も改正がなされなかったというわけなんですけれども、ここのところ、本当に緊急事態だからなんでしょうか、新しい資本主義の下、先ほど来お話がありましたけれども、スマート農業、輸出促進、みどりの食料戦略、食の安全保障、そういうキーワード、四本の柱、これに基づいて基本法を改正するということを言ってきている。

 私は、新しい資本主義がそもそも何なのかよく分からないので、そこの議論にも立ち戻らなくてはいけないとは思っておりますが、我々立憲民主党も、新食料・農業・農村基本法検討ワーキングチームを昨年末に立ち上げさせていただいて議論を進めているところではあります。検証部会で精力的に審議、議論はされているということであっても、本当に十分な時間を取ってこれまでの検証というのがなされているのかというと、そこは疑問でもあります。

 つまり、施策効果の検証が足りない、そういう指摘をする声があるということでありますので、六月を目途に新たな展開方向を取りまとめるということをおっしゃっていますが、私は、ここはもっと、本来であれば十分な議論も必要なのではないかというふうに思っています。

 お考えをお聞かせいただきたいと思います。

野中副大臣 食料・農業・農村基本法の見直し、そして検証については、先生おっしゃるとおり、今、基本法の検証部会で議論を積み重ねていただいております。

 大臣の諮問に対しての議論でありますが、私ども、大臣の強い思いがありまして、その議論の場も政務三役で可能な限り傍聴しようということで、全十回でありますけれども、可能な限り大臣の下で出席をしております。

 私も、その席に出席させていただいている立場としては、非常に内容が濃い議論を積み重ねていただいているという感想を持っております。必要なのは期間ではなくてやはり密度でありまして、そしてまた各界各層から幅広い議論をいただいて、その上で国民的コンセンサスを得ていくことが重要であるというふうに思っております。

 時期については、やはり今般の厳しい状況、農業を取り巻く環境、厳しい状況もございますので、私どもとしましては、昨年十二月に総理から御指示がありました内容を踏まえまして、来年度中に食料・農業・農村基本法の改正案を国会に提出することも視野に入れて、本年の六月を目途に新たな展開方向を取りまとめさせていただきたく存じます。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 今、とても重要なことをおっしゃっていたんですが、あくまでも視野に入れてということで、出口が決まっているわけじゃないということで、副大臣、よろしいですか。

野中副大臣 来年度の法案提出を視野にということで、訂正をさせていただきます。

金子(恵)委員 どちらなのか少しはっきりしたいなと思うんですが、来年の通常国会に法案を提出することをゴールとしている、あるいはそうではない、どちらか答えてください。

野中副大臣 まず、検証部会で今年六月に一定の方向を示すことを目標としております。

 その上で、総理から指示がございましたので、その六月の検証結果を踏まえて、来年度の国会の提出を視野にということであります。

金子(恵)委員 分かりました。

 私の理解では、私たちの理解では、じゃ、まだ決まっていない、視野に入れている、そういうことだと思います。そうであれば、十分にしっかりと審議をし尽くして、それで、改正するということであれば、改正の内容をしっかりと決めていただきたいと思っています。

 その上で、大臣が、やはり今回、各界各層から幅広く御意見を伺い、国民的コンセンサスの形成に努めながら、しっかりと検証、見直しを進めていきということをおっしゃっておられます。この国民的コンセンサスというのは一体何なのかということ、それを改めて伺いたいと思います。これだけのことを所信の中でおっしゃっているわけですので、改めて、国民的コンセンサスは何なのか、そしてどのように形成されるのか、お伺いしたいと思います。

野中副大臣 この基本法の検証部会も、先ほど各界各層ということを申し上げました。メンバーの先生方も、農業、農村の専門家、国際貿易、地域経済、気候変動の専門家に加えまして、農業、食品産業、消費者、経済界、地方自治体の代表など、非常に多岐にわたる方々に出席をいただいて議論をいただいております。

 また、ヒアリングを行う対象も、輸出に取り組む事業者、フードバンクの推進に取り組む協議会、スマート農業に取り組むスタートアップ、有機農業に取り組む国際NGO等々、様々なことに取り組んでいる事例を聴取して、それを基に議論していただいているということがあります。

 多岐にわたる幅広い意見をいただいて、その中で方向性を示していくというのが、まず国民的コンセンサスを得るという入口でありまして、そしてさらに、それをやはり発信していかなきゃいけないということも重要であるというふうに思っておりますので、私ども農水省も、各農政局もあります、そしてまた各自治体、各団体もありますので、様々なところで提供して、この情報を発信していきたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 そうしますと、検証部会等で議論をしている、その中で意見を聞く、そしてそれが国民的コンセンサスという、そういうことでよろしいですか。

野中副大臣 まず、そこで御議論いただくのもその一つでありますし、また、基本法検証部会での議論のみならず、様々な場で様々な意見の立場の方が議論を行っていただく、そしてまた関心を、理解を深めていただくことが重要であるというふうに思っております。

金子(恵)委員 様々な場で、やはり、この見直しの議論をしているということを私は発信していただきたいというふうに思っているんです。

 それで、例えば、先ほど来お話があるんですが、生産コストが上昇している、上昇分については、最終的には適切な価格転嫁がなされなければならないと所信でも述べられているわけなんです。

 これは、やはり、もしそれを進めるのであれば、国民の皆さんの理解が必要、これは間違いのないことで、食料の安定供給のためには適正な価格形成が重要であるということを国民の皆さんにも知っていただかなくてはいけないということです。でも、今、物価高で苦しんでいる国民の皆さんがいらっしゃいますので、当然、ここについては、価格が上がることに抵抗感を示すかもしれません。今後も恐らくそういうことだと思います。

 でも、食料システム、食料、農業、農村政策の理解をしっかりと得ることによって、その食料システムの一つの議論として、やはりその適正な価格というのはつくり上げていかなくてはいけないということを、国民の皆さんは理解をしてくださるに違いないとも思います。

 だから、一緒にここは議論をしていかなくてはいけないと思うんです。ですから、食料・農業・農村基本法の見直しについても、私は、改めて、国民の皆さんをしっかりと巻き込むような形での国民的議論を進めていく必要があるというふうに思っておりまして、その結果がこの国民的コンセンサスの形成であればいいのではないかと思っているところでもありますが、この国民的議論をどのようにお考えになりますでしょうか。

野中副大臣 まず、食料・農業・農村基本法、農業の在り方というのは、先ほど来申し上げるとおり、環境変化に伴いできるだけ早く方向性を示したいというのはありますが、先生もおっしゃるとおり、やはり最後は消費者の理解というのは非常に重要であると思っております。

 例えばみどりの食料システムもそうですが、消費者の理解、やはりそれが最後に求められるものであるというふうに思っておりますので、例えばみどりについては、広報について予算も取らせていただきました。最終的にこのルールを作るに当たって、消費者の理解というのは非常に重要であると私も思っておりますので、各地域の農政局を始めしっかりと浸透できるように、情報提供に努めてまいりたいというふうに思っています。

金子(恵)委員 今、みどりのことをおっしゃっていただいたんですが、みどりの食料システムの中で、この中でもやはりオーガニックビレッジ宣言を、私の地元の二本松というところでも二月二十五日にしました。私も記念マルシェには参加させていただきまして、これは、二十五、二十六で実は日本有機農業研究会の全国大会が開催されたものですから、それと同時に、二本松市はオーガニックビレッジ宣言をしたわけなんです。

 こうやっていろいろな方々を、地元の方々も巻き込みながら、例えばみどりの食料戦略についての理解は深まる、そこが基本法の中にどういうふうに組み込まれるかというのは、一緒に考えることもできるかもしれません。

 でも、それだけではありません。反対に言うと、食料自給率を上げなきゃいけないはずのものが、その議論をもっともっと進めたいのだけれども、輸出促進というのを表に出されると、とても分かりにくい。そしてまた、食料安全保障とやはり食料自給率の関係、ここも分かりにくいというふうにも思います。

 それで、食料安全保障については、これもやはりしっかりと定義づけなくてはいけないのではないかというふうに議論もしていると思いますが、現段階では、第二条四項に食料の安定供給の確保というのがあって、第十九条に不測時における食料安全保障というものがありますけれども、平時の食料安全保障についてはどうするのかというのは現段階でまだ分かっていません。そこと食料自給率、自給力の向上というものがどういうバランスとなっていくのか。

 反対に、平時の食料安全保障というのを言うことによって、例えばそのことが、低所得者の方々に対する支援であるとかそういうことを言った場合に、もしかすると、安価な食料を調達しなくてはいけないということになるかもしれない。そうなると、安いものは外から入れましょう、輸入のものに頼るのか、そういう議論がないわけじゃないと思うんです。そうなりますと、反対に、やはり、食料自給率とか自給力の向上の根拠というのが弱まる可能性もある、そういう議論もあろうかというふうに思うんですけれども、一言、いかがでしょうか。

野中副大臣 今御議論いただいている、食料・農業・農村基本法の検証、見直しの審議をしている部会においても、食料安全保障を、国民一人一人が活動的かつ健康的な活動を行うために十分な食料を将来にわたり入手可能な状態と定義して、いわゆる平時からその達成を図るべきじゃないか、こういった議論をいただいております。議論の途中ですからまだ確定ではないんですが、こういった議論を踏まえながら、基本法の見直しを図ってまいりたいというふうに思っております。

金子(恵)委員 議論の過程ではありますが、だからこそ、この議論の過程にやはり国民の皆さんを巻き込むような形、そういう仕組みも考えていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 時間の関係で最後の質問になってしまうかと思いますが、ALPS処理水について御質問させていただきます。先ほどもありました。もうすぐ三・一一がやってまいります。

 このALPS処理水は、この春から夏にかけての間に海洋放出されるということは政府内では決まっている。しかしながら、これは関係者の方々の理解なしで処分することはしないと、東電とそして政府と約束を交わしているはずなんですね。今、関係者の方々は本当に理解をしているのかということです。

 私、三月の六日に、立憲民主党の東日本大震災復興対策本部として、福島県の浜通り、いわき市に行ってまいりまして、ここで、福島県漁業協同組合連合会の野崎会長らと面談をさせていただきまして、意見交換をさせていただきました。ここでおっしゃっているのは、処理水の海洋放出については反対の考えは変わりませんということでありました。

 これは、全漁連でも以前からそのような考え方を示していらっしゃいまして、全漁連の坂本会長も、「我々JFグループは、ALPS処理水の海洋放出に反対であることはいささかも変わるものではない。そのうえで、漁業者の不安を払拭するため、国に対し申し入れをおこなってきたところである。」という、これは談話の一部でありますが、一月に発信をされています。こういう状況です。

 大臣、漁業者を守る、そういうお立場でございます。関係者の方々の理解は得ていません。ということは、処分はしないということでいいでしょうか。

野村国務大臣 お答えする前に、一つだけ金子委員に御訂正を申し上げたいと思いますが、私、先ほど、飼料の対策について今週中にも決定する旨を申し上げましたけれども、現在検討中で、まだ時期は決まっていない、こういうことでございますので、まあ、近々にはやらなきゃいかぬと思っていますけれども、まだ詰めをやっている最中であるということで、今週中は間違いでございました。御訂正をさせていただきたいと思います。

 それで、ALPS処理水の話でありますが、先ほどおっしゃいました福島漁連の野崎会長さんには、私も、大臣就任後、いわき市を訪問いたしまして、各漁協の組合長の皆さんや野崎会長と面談をいたしまして、いろいろ意見の交換をさせていただいたところでございますが、その中で、ALPS処理水の海洋放出については、全国の漁業者が安心して漁業を継続できる環境を整備してほしいと。これは、福島だけではなくて、全国の漁業者の皆さん方も大変心配をされております。したがいまして、引き続き、福島を始めとする漁業の復興が確実に進むように、今後も対話を重ねていきたい。

 それともう一つは、漁業者の皆さんの御要望を酌み取り、皆様に寄り添いながら、漁業を安心して継続できる環境が整備されるように万全を尽くしていきたい。これは、渡辺防災担当大臣ともそういう話をしているところでございます。

金子(恵)委員 処理水放出、風評起きる、九三%。この数字が、全国世論調査、日本世論調査会で行った調査の数字でございます。四日に発表されています。説明不十分、八八%。こういう状況です。

 野崎会長は、海は自分たちだけのものではないんだという言葉もおっしゃって、複雑な胸のうちも語られました。そんな状況でありますので、今の段階で本当に、関係者、本当は全ての国民も関係者だと私は思っていますが、理解なしで海洋放出をするというのは本当に問題だというふうに申し上げさせていただきまして、一方で、しっかりと漁業者の方々を支えていただきたいということをお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

笹川委員長 次に、近藤和也君。

近藤(和)委員 石川県能登半島の近藤和也でございます。どうかよろしくお願いいたします。

 質疑に入らせていただく前に、まず、笹川委員長、そして、あべ与党筆頭理事、また各理事の皆様に感謝を申し上げたいと思います。

 今、酪農農家の方々が大変厳しいという中で、牛乳消費を喚起していこうということで、昨日から農林水産委員会が始まったということで、牛乳を飲んでいこうということで、今、理事会室で、昨日から、各委員の皆様に、牛乳は本当はこの委員会室で飲めるように更に踏み込んでいきたいんですけれども、ただ、少しだけハードルが高いということで、今、理事会室で、それぞれ一本、牛乳を飲むことができるということで、配慮をいただきまして、ありがとうございます。

 そして、少し内々に委員長とお話をさせていただきましたら、当委員以外の大臣や副大臣、政務官の方も含めて、特に今日は外務政務官であったり国交政務官の皆様にお越しいただいていますので、どうか牛乳を、質疑が終わりましたら、飲んで帰っていただければありがたいなというふうに思います。本当にありがとうございます。

 そして、さらに、質問に入らせていただく前に、大臣、この「銀の匙」という漫画、皆様御存じでしょうか。さすが、農林水産委員の方々であれば、うなずいていただいている方がたくさんいらっしゃるんですが、これは、農林水産省が主催をしたコンテンツ・アワード・オブ・ジャパン・フード・カルチャーで大賞を受賞した漫画でございます。映画化もされまして、受験戦争で疲れ果てた少年が、農業高校、先ほど保岡委員が農業高校のことを取り上げていただいて、以心伝心だなというふうにも思いました。本当にありがとうございます。そして、農業高校に入りながら、様々な壁とぶつかり、いろいろな人と出会い、そして牛や豚や馬、様々な経済動物たちと触れ合いながら、そしてそれらの動物の死とも向き合いながら成長していく、そういった漫画でございます。御興味のある方は、私の部屋で、全十五巻ございますので、いつでも与党、野党関係なくお越しいただければと思いますし、一巻、二巻見ていただいたら、買いたいなという気持ちになるのではないかなというふうに思います。

 ちなみに、この作者さんは「鋼の錬金術師」という大ヒット漫画の作者さんでございまして、そして、元々酪農農家で生まれ育って、そして北海道の農業高校の卒業生でもありますので、本当にリアルに物語が書いてあります。勉強という意味でも大変参考になりますので、どうか皆様、御興味を持っていただければと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 酪農農家の厳しい現状についてということですけれども、お手元に資料を配らせていただきました。

 ちなみに、こちらは二月のときに予算委員会でも使わせていただいた資料なんですが、御覧になっていない方も多いと思いますので、簡単に申し上げますと、売上高に対して飼料費、水道光熱費等が、例えばですけれども、令和三年、令和四年度、昨年の半期まで、これを倍にして考えますと、売上げはそれほど変わっていない中で、飼料費が四千万、五千二百万、そして昨年でいけば、倍をすれば五千六百万。四千万かかっていたものが五千六百万もかかっているという状況です。そして、水道光熱費も、五百万、六百万、倍をすれば八百六十万ということで、やはり大変厳しいのがこの売上高損益金額、これは企業の経営でいけば粗利というものですけれども、粗利の段階でもう既に赤字、これだけ厳しいということでございます。

 そして、先ほど金子委員からの質問の中にもございました、酪農農家の方々がどれだけ厳しいか、離農の現状について把握しているか、このことについては、私も二月の予算委員会のときに、大臣、早くしてくださいということで質問いたしまして、すぐ動いていただいたことを感謝をいたします。

 改めて、この六・八%という厳しい数字、大変だなというふうにも私も感じましたが、これに対してどのように感じていますかということも質問通告を出していましたが、金子委員との中で、あれもやっています、これもやっていますということをおっしゃっていただいたので、その次に進みたいと思います。

 実際には、飼料対策のものであったり、ほかの激変緩和、四―六も考えていきますということも、私も評価は当然いたしますけれども、ただ、これらのメニューがいろいろやってくれるだろうという前提の下でも、離農が進んでいるという現状なんですよね。これでも足りないというのが酪農農家の方々の声だと思っています。

 ですから、私も前回、質問の中で、共同で利用するものの、やめていかれる方の負担、これを何らかの形で、負担増にならないか。先ほど、六・八%もやめられるということであれば、一〇〇のものを負担をしていたら、この六・八%の方々が抜けられて、残りの方で、その分負担がどんどんどんどん、みんなで一〇ずつやっていたら、一人抜けたら一一ずつ負担していかなきゃいけないわけですよね、こういったこともやはり考えてほしいと思います。

 例えばですけれども、今の酪農農家の方々の窮状というのが、やはり約十年近く前からのバター不足から来て、そしてTPP対策も含めて、クラスター事業も含めて、さあ、どんどんどんどん酪農を増やしていきましょうよ、予算、補助金もつけるし、お金も貸すし、これは豚熱のときにも同じようなことを言われたんですけれども、国策として進めてきて、産めよ増やせよじゃないですけれども、拡大していきましょうねと言った途端、今度は牛乳が余って牛を処分していくことに対してお金をつける、こういう振れ幅が大き過ぎて、皆様はついていけない。そういった部分もあるわけなのです。

 例えばですけれども、二〇一四年、一五年以降からの、国策として規模拡大を進めていく中での融資の部分、一部減免をしていくとか、一つのアイデアですよ、そして、先ほど新規就農の質問もございましたけれども、例えば継続就農ということに対してお金をつけるとか、何とかして今を生き延びていただくということに対しては、いま一度、更に踏み込んだ私は対応が必要だというふうに思っています。

 そして、この後、山田委員からも質問があると思いますけれども、恐らく酪農農家の方々が、あれをしてほしい、これをしてほしいという様々なアイデアもあると思います。これなども含めて、もうちょっと柔軟に積極的に動いていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

野村国務大臣 近藤委員にお答えを申し上げたいと思いますが、酪農問題は先ほども金子委員といろいろ議論をさせていただきましたが、いずれにしても、餌高騰から端を発して、そして農家の経営が非常に厳しいというのは、これはもう我々も十分認識をいたしておりまして、いろいろな形で飼料価格の高騰に対する対策、あるいは酪農経営の収益性の悪化を、特に、都府県、例年と比べて戸数の減少率が拡大している離農については非常に厳しい状況だなということは認識しておりまして、実は、中身の分析もちょっとさせていただきました。

 この飼料高でもって経営をやめたという方々なのかということでちょっと中身の分析をさせていただいておりますが、はっきりしたことは申し上げられませんけれども、ただ、やはり、高齢化とともに、今やめるチャンスだというような方々が大変多いんじゃないかという分析結果が、年齢から見て取れます。

 ですから、これは個人個人に全てを聞いたわけじゃありませんので、数字から出てきたもので、年齢構成とかそういうもので分析をしておりますので、そういう意味で、一人一人の意向を調査したわけでもないし、そういうようなまた集計したものもありませんが、大体、飼料が高くなって、そして経営がこうして赤字で、もうやっていけないぞということで離農されるというよりも、むしろ、先ほど言いましたように、年齢的な問題があって離農された方の方が多いということは実質的に出てきていると思います。

 ですから、ただ、それでいいのかという話になりますが、要は、やはり、一番厳しい皆さん方ですから、飼料価格の高騰対策をどうするかというのが、今一番、コストの中では五割を占めているわけですから、そういうようなことについての対策を検討させていただき、また、総理からも指示もいただいて検討している最中でございまして、酪農経営をまだまだ、どういったような対策を打てば、酪農家の皆さん方がもう一遍気持ちを入れ替えて、やっていこうというお気持ちになっていただけるのかどうか、その辺も我々も再度検討させていただきたい、こんなふうに思っております。

近藤(和)委員 この離農の原因については、やはり想像ではなくて、本当の声を聞くということも、今、続けていきたいという方の声と離農された方の声ということも、私は聞いていってもいいんじゃないかなと。

 先ほどの「銀の匙」の中にも、離農される農家、そしてそこのお子さんの苦悩、そして連鎖倒産の危機、そういった厳しい局面も出てくるんですけれども、もうやめたという人に、どうしてやめたんですかと言うのは正直つらいと思います。酷だと思うんですね。

 そうなので、やりづらいとは思いますけれども、例えば、何枚かの紙に書いていただいたら、少し心ばかりのものをつけさせていただくとか。でも、それも私は有効な投資だと思うんですよ。去り行く方々からの大事なメッセージを今後続けていかれる方の政策に生かしていくということも含めて、こういったことも新たな考えとして動いていただければなというふうに思います。答弁は求めません。

 そして、次はカレントアクセスについて伺います。

 こちらについても、二月の三日の質疑のときに、不落じゃないか、いや、まだ年度が終わっていないんだから不落と言えない、そういった押し問答でそのときの質問が終わっていましたが、そのときには、まだまだ頑張っていくんだということと、あと、二月二十二日の予算委員会の質疑の中で、脱脂粉乳はもう入札に上げないとおっしゃっていただきました。これはこれでよかったなというふうに思います。そして、それ以降、二月二十八日にはバターという形で三百トン入札を行われていますが、まだあと、十三・七万トンへ向けて、生乳換算であと七千トン弱、この後も別のもので入札していくということでよろしいでしょうか。

野中副大臣 委員今おっしゃるとおりに、残りは脱脂粉乳以外の乳製品で入札を行う予定であります。

近藤(和)委員 実際には、この十三・七万トンで、もう今年度分はほぼ終わりですよね。問題はここじゃないんですよ。来年度から、四月以降からをどうしていくかという方が大きいと思います。

 そして、こちらについての数字も、脱脂粉乳は七百五十トン、ホエーは四千五百トン、バターオイルは百八十五トン、バター八千トンということでよろしいでしょうか。

野中副大臣 その数値で間違いございません。

近藤(和)委員 生乳換算で直して、これで十三・七万トンということですよね。

 そして、こちらについても、脱脂粉乳は再度七百五十トンにチャレンジと。チャレンジという言い方がいいかどうか分からないですが、今年度は三百二十一トンだったということで、こちらについてはこだわり続けるんだなということと、あとは、そもそもが十三・七万トンの乳製品の輸入に対して、これを何とかしてくれ、自分たちはもう捨てている状態なのにということで、酪農農家の方々に頑張ってくださいよという私はメッセージにならないんじゃないかなと思っています。

 これは、総理の答弁でも、国内需給に極力影響が出ないように様々な工夫をしていくということであったり、国内需給に配慮しながら製品を輸入しているということも総理の答弁の中であったんですが、今回、例えば今年度でいけば、三百二十一トン。七百五十トンの目標に対して、脱脂粉乳は目標、目標というか機会提供の努力はしたわけですよね、実際には。これで国際的な約束は果たしたわけですよね。ちょっと固まったので、進めます。

 要は、頑張ったけれども駄目だったということは私は許され得るのかなというふうに思いますし、頑張ろうという姿勢は見せるけれども、やはり国内需給を考えて、そして生産農家の方々を考えた上でのこのカレントアクセスを新年度も進めていこうと思っている、場合によっては、脱脂粉乳のような事態も起こり得るんじゃないかということに対して、幅を持って進めていくというメッセージがあるだけで生産農家の方は安心すると思うんですが、この点について、大臣、お答えください。

野中副大臣 先ほどありました、まず十三・七万トン、そしてまた、脱脂粉乳七百五十トン、これが国際約束でありまして、先生の場合、それを、目標を頑張ったけれども果たせなかったら、国際約束を果たしたじゃないかという御意見をいただきましたが、まず、七百五十トンの、当初振り分けて、これは義務でありまして、そこに達しなかった場合、他の品目に振り分けて入札するというのも貿易義務であるというふうに思っております。

近藤(和)委員 機会の提供ということでの努力、結果的に、今年度はそれを果たせるか果たせないか、トータルでは果たそうということが見えてきているのかなというふうに思いますが、今、為替の状況も、一時期よりは円高になっていますけれども、再度円安になっていくかもしれません。今日も百三十七円ぐらいということで、円安に振れていっています。

 この為替の動向というのは、正直、専門家でさえも外すわけですから、この動向というのは分からないんですが、もし望まない方向になったとした場合でも、ちゃんと農林水産省は国民の生命財産を守っていく、酪農家を守っていくんだという姿勢、柔軟にやっていくということの、私は、この柔軟にやっていくというメッセージだけでも、明日続けようかだとか、来年やろうかとか、そういうメッセージにつながると思うので、柔軟に動いていきたい、考えていきたいという言葉を、野村大臣、欲しいんですが、お願いいたします。

 その行間のところを、あえて外の世界へ向けて、どうこう言われるから言いづらいと思いますけれども、柔軟にやっていきたいんだ、酪農家を守っていきたいんだというお言葉を私は頂戴したいんですが、いかがでしょうか。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思いますが、カレントアクセスについては、本当に、予算委員会の中からでも何回も御連絡があって、先生方とやり取りをしておりますが、これはもう委員も御存じのように、買うという義務ではなくて、これは輸入の機会を提供する義務だけなものです。

 しかしながら、その中で、当初、大体、毎年一月に翌年度の数量を設定して、そして五月と九月にその見直しを実はしているんです。一月にやりましたので、今、脱脂粉乳が七百五十トン、それからホエーが四千五百トンというのがあったんですが、脱脂粉乳につきましては、前も申し上げましたように、在庫が積み重なっておりますので、これはほかのものに振り分けようということで、今回、あと七千トン残っておるものは、バターなりホエーの方に切り替えて輸入しようというふうに今やっているところでございます。

 したがいまして、委員おっしゃるような意味はよく分かるんですけれども、なかなかそこを簡単に、十三万七千トンを変えるというわけには、なかなかこれは無理がある。これはWTOの中で決められて、そして二十七年から、二十七年だったかな、ずっとやってきている制度ですから、このことについては、日本がそういう問題を提起しますと、今度は、日本がほかのものを求められてくるというまた懸念も出てくるものですから、非常に今、国際的にある程度形成されたものを日本から変えていくというのはなかなか無理がある、困難だということは申し上げたいと思います。

近藤(和)委員 外向けのメッセージと国内向けのメッセージ、私は、二つのメッセージがある程度あってもいいと思っています。どちらにも都合のいいように取れるメッセージはあると思いますので、何とか生き延びていただくというその姿勢を、やはり、意味はよく分かるということからもう少し本当は踏み込んでいただきたかったんですけれども、今日はこの辺りにいたしたいと思います。

 そして、輸入、入りを制するということと、もう一つ、出を量るということで、やはり、食料援助、今、世界の中で貧困国、大体十数%前後じゃないかといったことも言われていますけれども、食料支援を求めている飢餓国というところもたくさんございます。

 この中でも、例えば、自民党の鈴木さんであったり、我が党の石川さんからも、食料支援していくべきではないかと、過去にも何度か脱脂粉乳だけでも出したこともあるし、駄目だと言っていたけれども、突然二〇〇六年にはウズベキスタンへ脱脂粉乳を出したといった事例もございました。

 そして、その中で、お米のときにも、去年、お米が余って大変で、何かお米の支援ができないかといったときにもやり取りがありましたが、要は、要請主義だから相手から欲しいという声がないとなかなか出せないという答弁も何度かいただいたんですけれども、例えば、好きな人がいてつき合いたいなと思っても、相手から、本当は自分から言わなきゃいけないけれども、言ってくれたらうれしいというのはあるじゃないですか。うなずいていただいて、ありがとうございます。

 それで、こういった国々を、出してくれとは言えないけれども、あなたのところに渡そうかと言われたら、ありがとうという、私はそういうことはあると思うんですよ、恐らくは。その国のメンツだけではなくて、WTOの、その中の監視の中で、そこをかいくぐるような形も含めて、お互いにとってウィン・ウィンのやり取りというのはできるんじゃないかなというふうに思うんです。

 今、開発協力大綱の見直し、二〇一五年のときにもこの要請主義からの脱却を図ろうということの議論はあったと思いますが、今どのような議論が行われているのか、今後の可能性も含めて外務省からお願いをいたします。

高木大臣政務官 お答え申し上げます。

 我が国の開発協力は、開発途上国の経済社会開発を目的に、被援助国などからの要請に基づいて実施されてきておりますが、現在、委員御指摘のとおり、開発協力大綱の改定をめぐる議論において、こうした基本原則を維持しつつも、日本の強みを生かして、相手国のニーズを引き出す支援メニューを積極的に提示していくべきとの意見も出されておりまして、そうした方向で検討していきたいと考えております。

 なお、委員御指摘の国内余剰品について、一般的に、食料支援では、現地のニーズ、輸送のコストや衛生管理の状況などを踏まえまして、近隣の地域での調達となることが多い点にも留意をすることが必要でありまして、個別具体的に検討してまいりたいと考えております。

近藤(和)委員 個別具体的にということは、少し、半歩なのか、〇・二五歩なのか分かりませんけれども、前進してもらえるのかなということで、是非とも外務省さんにも頑張っていただきたいと思いますし、野村大臣始め政務三役の皆様も、それぞれの国、いろいろなところに、また、ゴールデンウィークのときにも行かれると思いますので、いつでもポケットの中からカードを出せるように準備をして、外遊、出かけていただけたらと思います。行ってくださいというわけではないです。恐らく行かれると思いますので。

 済みません、時間がかなり過ぎまして、経産省さん、そして国交省さん、お越しいただいておりますが、まず、経産省さんにインボイスと農林水産業ということで、今、インボイスの導入へ向けてIT補助金等が出ていますけれども、どの程度申請があるのか、そしてその中で一次産業の割合がどの程度なのか、お答えください。

笹川委員長 近藤委員、済みません、経産省は通告落ちでございます。続けてください。

近藤(和)委員 失礼いたしました。経産省さんは来ていただかなくてもいいということで。

 実際にはこちらの件数は伺っているんですが、これが多いか少ないか。三万二千百九十一件のうち三百四十一件、これが多いか少ないかということも農水省として捉えていかなくてはいけないと思いますし、一部の方では、弱い者いじめじゃないか、お米農家の方であれば、農協以外に出している人はどうなるのかといった声であったりとか、十月、今年できる米は大丈夫だよねといった勘違いの声もありますので、受け止めていただきたいと思います。こちらは後に質問いたしたいと思います。

 そして、国交政務官にもお越しいただきました。ありがとうございます。

 地域公共交通の在り方について、今度、法律改正ということで法案が国会に提出をされています。その中で、やはり、この地域公共交通活性化再生改正法の中で、鉄道をなくす、なくさないかといったところも最終的に俎上に上がってくると思いますが、食料の安全保障、食料の安定供給、食料の低コストの輸送、こういったことも含めて、農林水産委員会としても非常に関心が高いです。大臣所信の中でもあったんです。

 今後の議論の中で、こういった食料といったことも含めて議論を進めていってほしいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

笹川委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。

古川大臣政務官 お答えを申し上げます。

 今お話がございましたように、食の安全保障の観点から、鉄道などの公共交通が食料の輸送に果たす役割は極めて重要であるというふうに認識をしているところでございます。

 昨年、国交省におきまして開催をいたしました地域モビリティ検討会の提言では、貨物列車が現に走行している線区などの基幹的な鉄道ネットワークを形成する線区については、引き続き鉄道の維持を図っていくことが強く期待されるとされております。これを踏まえて、適切に制度を運用してまいります。また、地域公共交通活性化再生法の協議会を活用いたしまして、農作物の貨客混載などについて議論をするということも可能にいたしております。

 国土交通省としては、それぞれの地域の公共交通に関する実情に応じて、有効な課題解決の取組をしっかりと支援してまいります。

 以上でございます。

近藤(和)委員 どうもありがとうございました。

 以上で質問を終わります。ありがとうございます。

笹川委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 昨年、みどりの食料システム法が成立し、農林水産省を挙げて有機農業の推進にかじを切る、力強いメッセージが出されました。その本気度を感じる取組をまず皆様に紹介したいと思います。

 資料を御覧ください。

 各省庁食堂における有機農産物の使用について。令和四年二月二十五日、閣議決定をして、国などの庁舎における食堂について、有機農業の推進に係る配慮事項を新たに設定、農水省では、六月一日から、食堂で有機農産物をふんだんに使用したメニューを提供している。

 大変すばらしい取組でございます。そしてまた、この農水省の取組を各省庁でも、今、取り組めるように要請中ということですし、私たち国会議員の会館事務所の食堂も、是非こういった形で有機のメニューが並ぶということがすばらしいんじゃないかなと思っております。

 そして、昨年十月、この有機のうねりを感じさせるイベントがありました。全国オーガニック給食フォーラム、なかのZEROで開催され、全国各地、オンラインも含めて、三千人を超える方々が参加していました。確実にオーガニック給食に対する大きなうねりが起こり始めています。

 その全国大会で、千葉県いすみ市の太田市長が実行委員長を務めておられました。実は私、そのいすみ市に、先月、地元長崎県の各自治体議員の皆さんとともに、オーガニック給食の視察に行ってまいりました。大変勉強になりました。

 そこで、興味深い独自の取組について御紹介したいと思います。

 有機農業に対し、十アール当たり国の環境型直接支払い交付金一万二千円、それに対し、いすみ市では、独自の予算で、スタートアップの二年間限定で二万八千円の加算をつけています。つまり、十アール当たり四万円の交付額に設定をされています。

 実は、私自身も、長崎県佐世保市で、農福連携事業でオーガニックの農園を運営しております。本当に、このオーガニック、始めるときの最初の二年、三年が大変厳しい、その環境になじむまでになかなか思うように生産がいかない、これは、有機農業の、もう全国的に認められている見解だと思われます。こういった状況の中で、いすみ市の取組は、これから有機農業を行おうという生産者にとって大変後押しになる仕組みでございます。

 このいすみ市のような取組、是非農水省も行っていくべきだと思っておりますが、いかがでしょうか。

角田大臣政務官 委員御指摘のとおり、有機農業に新たに取り組むには、栽培技術の取得であるとか土づくりなどが必要となるため、円滑に転換できるように支援していくことが非常に重要だと考えております。

 このため、農林水産省では、環境保全型農業直接支払交付金により、有機農業に対し十アール当たり一万二千円を支援するとともに、令和四年度からは、有機農業を開始する農業者に対して技術指導を行う際に十アール当たり四千円を加算して支援しております。

 さらに、新たに有機農業に取り組む農業者に対して、令和四年度の補正予算において、土づくりなど初年度に要する取組を支援するため、十アール当たり二万円の支援を開始したほか、有機JASの早期認証取得を支援するため、研修や初回の圃場実地検査を受講、受検する取組に対して支援を行っているところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。大変前向きな御答弁をいただきました。

 つまり、国の方でも、いすみ市のように、四千円、さらには二万円というところで、スタートアップの、有機農業の新たな推進に対して後押ししているという御回答でした。大変すばらしいと思っております。

 こういったことが大事になってきますし、できましたら、いすみ市のように二年とか若しくは三年とか、その期間が延びればより安心して取り組めると思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 続いて、もう一つ、有機農業を推進する上で重要な課題があります。これは本当に大事なポイントだと思っているんですが、有機JASの取得です。無農薬で頑張って作った、それに対して、ちゃんと消費者に理解してほしくて付加価値をつける、差別化を図っていく上でとても重要な、魅力的な認証なんですが、実際はハードルが様々高い。コストもかかるし、書類も大変。有機農業に取り組む人たちはほとんど現実的にはこの認証を取れていないという状況です。また、検査員の旅費を自己負担しなければならないとか、様々な課題がある状況です。

 そこで、有機農業を推進する農水省として、有機JAS、このコストを、一年目十四万ぐらい、二年目以降約九万円程度かかると今言われているところです。この有機JASの取得に対し、もっともっとみんなが挑戦していこうと思えるような公的支援が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

角田大臣政務官 有機JASの取組拡大のため、農林水産省では、新たに有機農業に取り組む農業者を対象とした有機JAS制度に関する研修の受講等の支援であるとか、有機農産物等の輸出の拡大に向けた有機JAS認証の取得の支援、都道府県を通じた有機農業指導員の育成による指導、相談体制の整備を進めているところでございます。

 これに加えて、令和三年から、農業者の負担軽減に向けた有機JASの運用改善を行うとともに、その効果を検証するために認証費用の支援を措置いたしまして、リモート調査を活用して認証費用の削減につながった事例も生じてきております。

 これらの支援の活用を図りつつ、関係者の御意見を伺い、必要に応じ、有機JAS制度の更なる運用の改善を検討するなど、有機JAS認証を取得しやすい環境を整備してまいります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。運用改善、リモート調査、大変すばらしいと思います。

 あと、公的に、予算的な措置、有機JASを取るに当たって、先ほど言ったような十四万とか、運用コスト、ランニングコストに九万とかかかる、この費用に対する支援は何かないんでしょうか。(発言する者あり)

笹川委員長 時計を止めてください。

    〔速記中止〕

笹川委員長 進めてください。

 農林水産省高橋総括審議官。

高橋政府参考人 失礼いたしました。お答えいたします。

 先ほど政務官からお答えした部分と重なる部分もございますが、輸出拡大に向けました有機JASの認証制度につきましては定額の支援を、また、有機JASの効果を検証するための認証費用の支援につきましては二分の一補助で支援を行っているところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 二分の一も支援が出るということなんです。十四万円の初期コストに対しては約七万円程度、そして、ランニングコストの毎年の九万円に対しても約四万五千円も今現在農水省は予算的にも後押ししているということで、大変すばらしいと思います。各地域でこういった有機JASの取得が進み、有機農業が広がることを心から願っております。

 続いて、酪農、畜産の危機についてです。

 現在、畜産農家の皆様は、飼料、燃料、生産コストが急激に高騰しているにもかかわらず、乳価や畜産物価格に転嫁できずに、かつて経験したことのない深刻な経営危機に直面されています。

 昨年十二月、物価高対策や食料安全保障の強化に向けた総額八千二百六億円もの令和四年度第二次補正予算が組まれましたが、農業者が求めている飼料代の高騰分を直接補填する内容にはなっていませんでした。それどころか、米粉の商品開発、鳥獣被害対策、農地の集約化など、全く緊急性を要しない、物価高と直接関係のない事業が多く並べられており、現場の危機感が全く共有されていない、本当に必要としている支援内容と余りにもかけ離れた予算でありました。

 今月末までのその補正予算、現在までの執行状況はどうなっているのでしょうか。

角田大臣政務官 令和四年度第二次補正予算については、食料安全保障の強化に向けた構造転換対策など、現下の情勢に速やかに対応するために必要な予算として八千二百六億円を措置したところでありまして、本年一月末時点での執行率は約四割となっております。

 対策の効果を速やかに発揮するため、事業内容の周知や現場との調整などをしっかりと進めつつ、早期執行に努めていきたいと考えております。

山田(勝)委員 全くもって現場の皆さんに届いていないという状況です。この内容、現金がどれだけ届くかということが本当に大事な状況になってきています。

 現場の皆さんから悲痛な声がたくさん届いています。幾つか紹介させてください。

 Aさん。もう限界です。地元では夫婦で命を絶った人もいます。現場に足を運び、状況を見てほしい。Bさん。国の支援がいまだに届きません。対応が遅過ぎます。Cさん。先週廃業した。地獄のように苦しみ、決断した。家族の一員だった牛たちと死に別れないといけない思いが分かるだろうか。他の人が廃業しないようにしっかりとした支援と、廃業した人への支援も考えてほしい。

 これは、全国の酪農家や畜産農家さんの声を代弁している。

 そして、昨年十一月から、低能力の牛を処分すれば一頭当たり十五万円を支払う制度が始まっております。しかし、実質、廃業は対象としない方針が示されています。赤字が膨らみ、借金が膨らみ、もう限界。誰もが廃業したくて廃業するわけではない。膨大な借金を背負いながら廃業しろとでも言っているようなものです。やむを得ず廃業する方々も対象にしていくべきではないでしょうか。そもそも、過去に増産を促したのは農水省です。国の責任をどう考えているのでしょうか。

 野村大臣、お答えください。

笹川委員長 農林水産省渡邉畜産局長。(山田(勝)委員「大臣」と呼ぶ)

 答弁の後。

渡邉政府参考人 大変恐縮でございますが、御指名ですのでお答えを申し上げます。

 平成二十六年のバター不足などを契機に、牛乳・乳製品の供給責任を果たすということで、生乳の生産基盤の強化対策、これは、生産者や乳業者が一生懸命取り組むところを後押しをしてきたところでございます。

 こうした対策の成果もありまして、生乳生産は、令和元年度以降増加に転じましたけれども、新型コロナの感染拡大による需要の減少などで、そういった不測の事態が重なって、現在、需給バランスが大きく崩れております。

 生産コストの上昇を価格に適正に反映できる環境を整備することが重要でありますので、在庫低減対策、消費拡大の取組、また、生産者団体が自ら生乳生産の抑制に取り組んでおられるということで、自らお金を出し合ってやるような取組が既にスタートしてございましたので、国としてもそういったものを後押しするということでやってきたものでございます。

 また、飼料価格の高騰などによりまして酪農経営の収益性が悪化しているというのは十分理解しておりまして、飼料価格の高騰に対しましては、これまでに、配合飼料価格安定制度の異常補填基金への累次の積み増し七百六十八億円、また、令和四年度第三・四半期に対しましては、一トン当たり六千七百五十円の補填、そういった特別対策として、補正ではございませんけれども、予備費で五百四億円、累計千二百億円超を措置をするなど、対応をしてきたところでございます。

山田(勝)委員 家族同然に育ててきた牛を殺すことが、今本当に困っている現場の人たちの事業を救うことなんでしょうか。需給調整を図りたいのであれば、先ほど近藤委員も指摘していましたが、カレントアクセス、これを止める、これが最も有効なのではないでしょうか。こういったことをしっかりと取り組むことが牛を殺さずに済む農政ではないか。

 大臣、お答えください。簡潔にお願いします。

野村国務大臣 山田委員のお気持ちは分からないでもないですけれども、ただ、カレントアクセスと今おっしゃったものでの相殺みたいなことは、これはなかなか難しいというふうに言わざるを得ないと思います。

 それはやはり、今回の過剰になりましたものを、何とか需給のバランスを取っていかないと、最終的にはこれはまた農家を苦しめることになりますので、今、一生懸命、農家の自助努力、そしてまた国の方からも三月からそういった支援をやり出したということで、これは需給を引き締めるというやり方でありまして、ただ牛を殺せ、こういう話ではありません。

山田(勝)委員 大臣が所信で述べられている食料安全保障とは、一体何なのでしょうか。国民を守ることより、義務でもない海外との約束をかたくなに守ろうとされる。多くの酪農家や関係者の皆様は、今の答弁に失望していることでしょう。

 農家の皆さんの廃業が止まりません。ある団体が酪農家にアンケートを取ったところ、昨年十二月の段階で九八%が赤字、二七%が今年の三月までに改善されなければ廃業を考えていると答えています。このような状況です。

 私も、地元の若手の酪農家から直接話を聞きました。五十頭から六十頭飼育の酪農家で毎月百万円の赤字、貯金を崩したり親牛を売ったりしながら何とか家族で食べていけるようしのいでいる状態、このままでは借金を抱えたまま廃業するしかない。

 今こうして議論しているその瞬間でも、廃業を決断している酪農家がいるかもしれない。昨年より更に状況はひどくなっている。

 政府から、廃業を食い止めるための有効な施策がいまだに打ち出されていません。この危機を救う唯一の政策は、現場への現金給付です。そして、昨年のような一頭当たり一万円ではなく、もう恒常的な赤字が一年ぐらい続いています。事業を継続してもらうためには、一頭当たり十万円の緊急支援を早期に実施すべきではないでしょうか。

 大臣、お答えください。

野中副大臣 お答えいたします。

 現在、飼料価格の高騰等によりまして酪農経営の収益性は悪化しております。特に都府県において、例年と比べ離農が進んでいる状況というふうに承知をしております。

 このため、飼料価格の高騰については、これまで予備費や補正予算によって累次の支援を行ってまいりましたが、先般の二月二十四日の総理からの指示を踏まえ、配合飼料の高騰対策に加え、収益性が悪化している酪農経営に対する必要な対応等について検討してまいります。

 また、先ほど一頭一万では足りないというお話もありました。これらについても、収益性が悪化している酪農経営対策として検討しております。

山田(勝)委員 ありがとうございます。検討をいただいているということでした。

 昨年実施した一頭一万円の財源が約七十億です。十万円に引き上げて七百億円程度です。昨年の補正予算は八千億円以上計上されています。財源的にも問題ない、政治決断でできることですので、是非進めていただきたいと思います。

 続いて、資料二を御覧ください。

 配合飼料安定基金補填金の予算、これは全く足りていません。直近の令和四年十月―十二月、表にしてまとめていますが、合わせて補填額が一万四千五百円です。現在、トン当たり、配合飼料は約十万円ほどしています。価格が安定していた時期は、トン当たり約五万円から六万円でした。つまり、今、四万円から五万円もトン当たり上昇しているのです。にもかかわらず、一万四千五百円程度の交付額となっています。つまり、三〇%程度しか補填されていないのです。

 このままの支援内容、現状維持では、赤字から脱却できないのは明白です。抜本的に制度を改革し、交付額を大幅に引き上げていくべきだと思いますが、通告しています、大臣、お答えください。

野村国務大臣 お答え申し上げます。

 飼料価格の高騰に対しましては、これまで、先ほど来何回も言っておりますが、異常補填基金への累次の積み増しとして七百六十八億円、そして、四年度第三・四半期に対して配合飼料トン当たり六千七百五十円の補填、予備費から五百四億円、これで、合計しますと千二百億円を措置してきたところです。

 また、総理からは、四年度第四・四半期について、昨年末の対策を継続して、配合飼料コストを抑制するための追加策を講ずるほか、本年四月―六月期以降も見据えた激変緩和対策を講ずるよう御指示をいただいておりますので、生産者の皆さん方が安心して経営継続ができるように対応したい、こんなふうにも思っております。

 これに加えまして、二月二十四日の物価対策本部におきまして、総理から、購入粗飼料の高騰による、特に収益性が悪化している酪農経営に対する必要な対応について検討しなさい、こういう指示をいただいておりますので、購入粗飼料に対する対策も検討を今しているという状況であります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 現状維持では全く足りませんので、是非とも予算の増額をお願いしたいところです。

 さらに、以前から問題提起を私はさせてもらっているんですが、自家配合農家に全く支援が届いていないんですよね。大臣も何度かやり取りがあっていると思います。自家配合農家に、例えば政府がやった異常補填、こういった緊急対策支援が届いていない。これは明らかな差別ではないでしょうか。

 自家配合農家さんは、飼料用米の自家生産で、国内自給率の向上や、食品残渣の利用などエコフィードの取組、国策に大変大きく貢献されています。なぜ、もう一年近くになりますが、いまだに自家配合の農家に対して全く国は支援しないんでしょうか。お答えください。

野村国務大臣 お答えいたします。

 今、山田委員からありました、自家配の農家の皆さんからも何か補填はないのかという強い御要請がございました。

 したがいまして、そのような方向で今検討をしておりますということだけは申し上げます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 以前からすると、検討しているということで、進んではいるんですけれども、今本当に厳しい状況なので、スピード感を持って、いつまでにどれくらいの規模感で自家配の農家さんたちに支援が届くのかというのを早急に示していただきたいと思います。

 ここで、御参考までに資料を提示させていただいております。これは、実際に自家配の、地元長崎の養豚農家さんからもらった、資料三なんですが、どれだけ厳しいか。

 トウモロコシ、そして大豆かす、共に、二〇一九年の十一月、例えば、二万四、五千円だったトウモロコシが、もう現在六万円ぐらいまで上がっている。大豆も同様です。こうやって、自家配の皆さんは全て商社から仕入れているので、数量も確実に把握できています。そして、この自家配の人たちの約九〇%はこのトウモロコシと大豆なので、この二品目を対象にして急激に上がっている原価を補填する、その仕組みを早急につくっていただきたいと思っております。

 さらに、資料二に示している資料なんですが、異常補填を行っているわけです。

 自家配の農家さんたちは、確かに、セーフティーネット基金に参加できていないということで、通常補填が受けられないことは理解されています。しかし、この緊急事態に異常補填すら受けられていないというのは大変な問題ですので、これも差別を解消していくためにも早急に取り組んでいただきたいポイントでございます。

 農水省の示した実態調査によれば、昨年一年間において全国で六・五%もの酪農家が減少しているという厳しい現実があります。大臣が所信で強調されている食料安全保障の強化、食料自給率の向上、こういったことを実現していく上で、今、逆行しているような状況になっている。どんどんどんどん離農者が、廃業者が増えています。

 私たちは食べることでしか生きていけません。大砲よりバター、ミサイルより飯。これ以上の廃業を食い止めるためにも、農水省の予算の選択と集中を図り、一頭当たり十万円の現金給付、飼料代の補填額の大幅引上げを早急に実現していただきますよう、強く要請いたします。

 続いて、食料自給率の問題についてです。

 国は、二十年以上、食料自給率向上を目標としながら、四〇%前後を推移し、先進国中最低の水準です。みどりの食料戦略が画期的だったのは、明確な数値目標を掲げた点です。二〇五〇年までに有機農地の面積を現状の〇・五%から二五%まで拡大すると公言しました。一方の食料自給率の目標値は、二〇三〇年度までに四五%という相当低い設定でしかありません。達成したとしても、依然、先進国中最低レベルです。

 野村大臣、食料安全保障を強化したいという大臣の思いがこの目標からは全く伝わってきません。このまま四五%の目標で本当にいいのでしょうか。私は、食料自給率八〇%を目指すべきだと考えますが、大臣の数値目標を聞かせてください。

野村国務大臣 お答え申し上げますが、山田委員の御質問になかなかお答えできないのが、難しいのは、ただ、高い目標の設定については、現行の目標は四五ということでございますが、これは精いっぱいという、我々はまだこれにも達していないわけですから、まずはこの現行の目標の四五%を達した段階で検討したい、こういうことしか申し上げられません。

山田(勝)委員 今の大臣の御答弁を聞くと、あと二十年このままなんじゃないか、そういう危機感すら覚えました。五〇%、そしてその先に六〇、七〇、八〇と具体的な目標を立てていくべきだということを強くお訴えさせてもらって、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

笹川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 今日は、大臣所信質疑ということですので、農業から水産業まで、できるだけ根本的な問題を大臣にお聞きしたいということで準備をしてきておりますが、少し、私がバッターにこうやって立たせていただく前の午前中の質疑で、ちょっと聞き捨てならない議論がありました。ここにいらっしゃいますが、小山さんが、小山展弘代議士が、規制改革会議、国家戦略特区のことを取り上げられました。ひどい話ですね。

 小山さんが取り上げられた議論の発端は、これは何月かな、昨年の九月の十八日の読売テレビの「そこまで言って委員会」の中で、竹中平蔵さんが大臣のことを、こんな族議員の人がそのまま大臣になっている内閣は初めてと批判したと。今の農水大臣、どういう方か御存じですか、農協出身者ですよとあおったと。テレビだからね。これを取り上げて、うそじゃないですよね。いや、やめておきましょう。

 族議員というのは悪いことじゃないでしょう。悪いの。だって、悪いんだったら、小山さんこそ族議員ですよ。農林中金だよね。大体、農林中金の出身者がここで堂々といろいろ議論していること自体が族なんですよ。総務省のコニタンこと小西さんとか、それから奥野総一郎さんとか、私、総務委員会でずっとやってきましたけれども、彼らは郵政省出身ですよ。郵政省出身の人が、郵政省の文書を取り上げて、総務委員会で元総務大臣と今の総務大臣を突き上げると。何をやっているんだと。いや、僕はあれはいいと思いますよ、いいと思いますが、族という意味では、族じゃないですか。大臣、族議員ですよ。悪いんですか、それは。

 何を僕が怒っているかというと、さっき小山さんは何と言ったか。国家戦略特区にはいろいろな委員がいる、国家戦略特区の委員たちは選挙で選ばれていないんだと。当たり前ですよね。農水省の審議会の委員で選挙で選ばれている人はいますか。小山さんは何と言ったか。選挙で選ばれていない、試験も通っていないやつが何言っているんだと。やつとは言っていないけれども。そういうことを言うわけですよ。民間人の名前まで挙げて、例えば八田達夫先生、極めて公明で公正なすばらしい先生ですよ。特定の林いづみさんという女性の委員の方を取り上げて、八年もやっているんだと、委員を。そうやってなじりました。そんなことを言っているから農林水産業はよくならないんですよ。ねえ、大臣。

 ちょっと追加で、杉中総括審議官に先ほど追加で質問通告をさせていただきました。

 食料・農業・農村政策審議会に、今回、昨年、基本法検証部会が立ち上がりました。この部会長は何年やっていらっしゃいますか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 基本法検証部会の部会長を務めていただいている中嶋康博部会長ですけれども、累計で、平成二十二年八月から令和元年一月までの九年と昨年九月から現在までの約半年間の累計九年半在籍をいただいております。

足立委員 九年以上やっているところ、それをやっているのは大臣ですよ。その大臣に、何か気に食わないからといって、改革を進めている国家戦略特区を取り上げて、それで、国家戦略特区について私がむきになるのは、あなたの政党は、立憲民主党というんですけれども、あなたの政党は、篠原孝議員、森裕子議員が、国家戦略特区の座長だったかな、原英史さんを取り上げて、様々な誹謗中傷を毎日新聞と結託してやった。どうなったか。篠原さんと森さんは一審で不法行為認定、損害賠償ですよ。さらに、篠原孝さんに至っては、二審で損害賠償額引上げですよ。

 あなたの政党は、立憲民主党は、こういう不当な、不法行為を国会議員がやっているわけですよ。外でブログで書いているから、それは裁判で負けているわけです。立憲民主党の議員たちはぼこぼこ裁判で負けているわけですよ。でも、国会で言っていることは全部議事録に残ったままです。自ら削除した方がいいよ。

 委員長、今日の小山議員の発言は大変不穏当であり、私は、懲罰にふさわしい、こう思いますが……(発言する者あり)懲罰にふさわしいと思うよ、民間人を取り上げてなじるわけですよ。だからこれは、ちゃんと小山議員にこの農水委員会で謝罪をさせるべきだと私は思いますので、理事会で御協議をいただきたいと思います。

笹川委員長 後刻、理事会で協議をさせていただきます。

足立委員 ということで、大臣、大臣は悪くないんです。私は族議員大好きですから。

 ただ、やはり、養父市の改革とか、いろいろなことを国家戦略特区でやってきた。ところが、立憲民主党が暴れたものだから、モリカケ騒動で私の敬愛する安倍晋三元総理がぼこぼこにたたかれて、そして、獣医学部一個つくるのに二年も三年ももめたわけですよ。そういうことをやっているようでは私は日本に未来はないと思うので、あえて今日、所信質疑で、この小山さんのひどい国会質問について、それから、立憲民主党の議員たちの、裁判で負けまくっているんだからね、損害賠償。そういうことはもうやめようよという話を申し上げたいと思います。

 大臣には、是非、さっきの小山さんが、規制改革会議、国家戦略特区について誹謗中傷しました。でも、八年とおっしゃいましたけれども、大臣がやっている審議会は十年近くですよ。だから、小山さんのさっきの発言は間違っていると、大臣、お願いします。

野村国務大臣 私は、国会議員になってから、やはり、自分の長年の経験を生かした、そういった政策をやっていきたいという思いで、ずっと自民党の農林部会で鍛えていただきました。

 ですから、そういう意味では、農林以外をやったことがないので、族と言われれば族だと思いますが、ただ、族というのは、やはり私は、さっきも申し上げたように、自分で三十五年間JAにおりましたので、その三十五年間というのはこれは財産でありまして、農家の皆さん方と非常に親しく、膝を交えて、突き合わせてやってきたこと、あるいはまた、JAの職員の人たちとずっと一緒に、共々に闘ってきた、やってきた、そういったことが私の財産になっているから、何かあったときには私はすぐそういう農家の人に電話をしたり、あるいは職員に電話をして、今ここはどうなっているか、あるいは酪農のことは今どうなんだというのはすぐにもう連絡が入りますので、そういう意味では、先ほど言いましたように、財産だ、こんなふうに思っておりまして、私のその経験を消すわけにはいきませんので、それを是非生かしたい、こういう気持ちでここに立たせていただいております。

足立委員 農林水産大臣としては分かりました。しかし、大臣は国務大臣です。規制改革だって内閣ですよ。内閣の審議会が誹謗中傷されたんですよ。ちゃんと反論してください、反論。

 だから、大臣が族議員であることを誇りに思っていることは分かりました。さっきも聞きました。問題は、規制改革会議ですよ、国家戦略特区ですよ。小山さんは、個人の名前、私人の名前を出して誹謗中傷しました。だから、それはやはりよくないね、小山さん、ちゃんとしなさいと。それぐらいお願いします。

野村国務大臣 いろいろ申し上げたいことはありますけれども、ただ、やはり内閣の私も一員でありますから、そこはやはり気をつけながら、そしてまた、総理から言われて、ちゃんと日本の農政を変えていくんだぞということを実現していくために私はここにいるというふうに思いますので、ほかのことについては余り触れさせないでいただきたいと思います。

足立委員 ちょっと私も最近、優しくなっていますので、ほどほどにしておきたいと思いますが、小山さんは、まだ続けるかという感じですけれども、結構根に持つタイプなので。小山さんは、もっとひどいことに、利益相反と言ったんですよ、利益相反。民間企業の人たちが自分の会社のために規制改革をやっているんじゃないか━━━━。(発言する者あり)いや、指摘もあるって、逃げるなよ、そういうところで。いや、ひどいね、ちょっと。

 では、食料・農業・農村政策審議会の基本法検証部会、キリンの社長ですよ、キッコーマンの会長CEOですよ。これは利益相反じゃないんですか。それから、今何か問題になっているColaboの有識者会議、あれをネットの保守系の人たちが利益相反だと言っているけれども、立憲民主党と一緒だよ。だから、私は彼らのことを、名前は言いませんが、立憲、共産党と一緒だと言っているんですよ。

 また……(発言する者あり)久しぶりだね、こういうの。いやいや、委員長、続けますから。

 与党の皆さん、立憲民主党というのは、自分たちは好き勝手言いながら、ほかの党の委員が発言をすると黙れと言うわけですよ。ちょっと、筆頭理事、絶対にそういうことをもう二度としないでくださいよ。だって、私の発言権なんだからね、委員長。いや、委員長に余り、委員長もちょっと不安げな顔で見ていらっしゃるのでもうやめますが、しかし、やはり立憲民主党というのはそういうおかしなことをするんだなということを改めて痛感をする今日は午前中でしたので、一言申し述べさせていただきました。

 ちょっと大事な質疑があるので中身に入りたいと思いますが、今年は、日本の農政にとって、本当に、三十年、五十年に一度の大事な年だと思います。これは大臣も所信表明で、ターニングポイントだ、こうおっしゃった。基本法も改正される。その背景には、やはり、いろいろなものがありますが、昨年二月のウクライナ戦争もあるという中で、食料安全保障が議論になっている。

 また立憲民主党の悪口になっちゃうんだけれども、さっきの山田勝彦さん、山田勝彦さんってどの人だっけ、いない。山田勝彦さんは大臣に、自給率、四五パーじゃ足りないんだ、八〇パーにしろと。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━山田勝彦さんのような、四五パーを自給率八〇パーにしろとあおるような国会議員がいるから日本はよくならないんですよ。

 さて、その自給率というのは、私は、全てを日本が、日本という大国が全てを自給するなんということは難しいですよ、それは。大臣も首を横に振っている、それは難しいと振っておられる。

 では、日本の食料輸入先国を見ると、もう資料を見たら明らかですよ。ほとんどは米国、カナダ、豪州、ブラジルなんですよ。友好国ばかり、同盟国ばかりですよ。

 私は、単なる自給率ではなくて、この輸入先国の構成がどうなんだと。例えば、政治的に安定している国であるのか、相手が中国なのか、中国なんてちょっとしか輸入していないですよ、日本は。ちょっとといってもそれなりだけれども、大きくはないんですよ。大きいのはアメリカ、カナダ、豪州ですよ。そうした輸入先国の構成をしっかりと見ることが食料安全保障の問題を考えるときに必要だ。それを何か数字だけ取り上げて、四五パーを八〇%にしろと言って、大臣が、それはちょっとむちゃ言うなと言ったら、いやあ、ちょっと根性がないとかね。根性がないというか、レベルが低いのは立憲民主党の議員ですから、ちょっと言ってやってください、大臣。

 いや、質問は、そういう輸入先国の構成というのは、要は、政治的に安定している国もあるんだから、そういうところをちゃんと見ていくことが大事ですよね、大臣、どうですかと。

野村国務大臣 足立議員に御答弁を申し上げますが、今おっしゃいましたように、我が国の輸入先は米国、カナダ、豪州であります。それに日本の自給率を足しますと、この三か国と日本の自給率を合わせてカロリーベースで八割が輸入と国内で賄っているということでありまして、これら主要輸入先国からは小麦や大豆、飼料穀物などの大部分を購入しておりまして、これが安定的な輸入を支えている。一方で、先ほどおっしゃいましたように、気象変動等が起こったときに、これは、不作も頻発しておりますので、やはり特定国に限定されているというのはリスクがあるというふうに認識をいたしております。

 このため、主要輸入国との関係を維持しながら、安定的な輸入を継続していくとともに、小麦や大豆、飼料作物の生産拡大、さらに、輸入食料への過度な依存を低減していくことにより我が国の食料の安定供給を確保してまいりたい、このように思っています。

足立委員 同感であります。

 じゃ、更に言うと、安全保障の観点から何が大事かというと、私は、ボトルネックを見つけることだと思うんです。だって、どこにリスクがあるかですよ。やはり輸入先国についても中身を見る必要がある。

 それから更に言うと、幾ら自給率を高めて、立憲民主党のレベルの低い意見、個人攻撃はしていないですよ、意見がレベルが低いわけです。そういう八〇%とかそういう問題じゃなくて、日本の食料のバリューチェーン全体を見たときに、ネックはどこにあるんだ、例えば燃油、農業機械の燃油はボトルネックになり得るのか、なり得ないのかとか、あるいは種苗はどうなんだと。どこにボトルネックがあるかが大事。バリューチェーン全体の頑強性を高めることこそ大事で、自給率の数字で何か表層的、表面的にあおることは全く、例えば数字が上がっても脆弱性は悪化する可能性もあるわけですから、そこはしっかり、私は、今回、基本法の見直しに当たっても議論をすべきだと思いますが、大臣、いかがですか。

野村国務大臣 お答え申し上げますが、委員は食料の安定供給に関するリスク検証を御覧になっておっしゃっているんだろうな、こんなふうに思っておりまして、今現在、食料の安定供給に影響を与える可能性のある二十五のリスクについては、農産物の三十品目を対象として網羅的な検証を行っております。

 そこで、昨年六月に食料の安定供給に関するリスク検証として公表をしたわけでありまして、そのことを委員は御覧になって御質問をしてくださったというふうに思っておりますが、このように、世界的な食料情勢なり国内の農業構造の実態など、我が国の食料供給に関する様々なリスクを分析、検証し、そして、我が国の食料安全保障強化のための施策の検討に活用していくことは極めて重要だというふうに思っておりまして、例えば、イギリスでは二〇二〇年に、英国農業法に基づき、世界の食料供給能力や国内の食料供給源などを項目とする食料安全保障に関する報告書を公表していると承知をいたしております。

 我が国におきましても、食料安全保障をめぐる国内外のリスクを把握し、これを低減していくため、どのような手法が有効であるか、引き続きしっかりと検討してまいりたいと思っています。

足立委員 ありがとうございます。

 今大臣が御答弁くださった、去年の六月かな、「食料の安定供給に関するリスク検証(二〇二二)」というのがあります。すばらしいです。まさにこういう議論をやるべきだと。私も十分に勉強していなかったんだけれども、教えていただいて、これはいいと。いいけれども、まだまだ途上です。でも、こういうリスク検証をしながら、安全保障、食料安全保障の頑強さというものを高めていくことで、私は、だから自給率はもう忘れてもいいぐらいだというぐらいの気持ちで、これからまた質疑をさせていただきたいと思っています。

 一旦この安全保障の話は終わりまして、ちょっと、今日、冒頭、午前中の質疑が余りにひどかったので時間を取っちゃいましたので、ちょっと間を飛ばして、大臣はちょっと休憩で、神谷水産庁長官、お越しをいただいています。

 二〇一八年の改正漁業法、これで、いわゆるTACとか、例えばノルウェーを始めとする北欧等のそういう水産資源管理をモデルに水産業の改革をしていくという方向にはなったと思うんですが、大分、日本がやってきたことと、これまでの歴史とノルウェー型の水産資源管理との間には距離があると思うんだけれども、この辺りの、改正漁業法の改正目的と、その後もう、だって一八年だから五年ぐらいたちつつあるわけですね、その後、この進捗具合はどんな感じか、教えていただきたいと思います、水産庁長官。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 二〇一八年の漁業法の改正では、漁獲量の低迷や漁業者の減少が続く状況を踏まえ、水産資源の適切な管理を通じて、水産業の成長産業化を図ることを目指し、科学的知見に基づく水産資源の数量管理の仕組みの導入を始め、漁業許可制度や漁業権制度の見直しなどを行いました。

 これにより、MSYベースのTAC魚種の拡大を目指し、対象魚種を大幅に追加し資源評価を順次行うなど、資源管理の着実な実施を図るとともに、漁船のトン数制限撤廃の前提となるIQ制度を導入する魚種を拡大するほか、養殖業で新規に漁業権を免許する事例が見られるなど、改正漁業法に基づく取組は着実に進展してきております。

 魚種、漁法や漁業者数などの漁業実態の違いはございますが、科学的根拠に基づく数量管理は、国際的な潮流である持続可能な社会を実現する上で不可欠であることから、ノルウェーやアメリカを始めとする各国の取組も参考としながら、引き続き、我が国の漁業実態を踏まえて、水産資源の適切な管理と利用を推進し、水産業の成長産業化を図ってまいる所存でございます。

足立委員 これが、五年たったわけですけれども、例えばTAC。TACの魚種と今おっしゃった。魚種は、例えば、今例に挙げられたアメリカとか豪州というのはすごい数ですよね。ちょっと今はないかもしれぬけれども、数百の魚種がTAC指定、TACの対象になっているわけです。

 じゃ、日本のTAC、魚種は幾つかお答えできますか。

神谷政府参考人 アメリカのTAC魚種は、全部で大体四百魚種ぐらいでございます。ノルウェーですと三十魚種。

 現在、日本は八魚種でございます。これを今拡大するように、鋭意努力しておるところでございます。

足立委員 だから、私は方向は間違っていないと思うんですよ。方向は間違っていない。だから、漁業法改正は私は賛成しました。

 しかし、百年かかりますよ、これをやっていたら。ただ、漁協とか、いろいろな日本の海岸線をずっと守ってこられたこれまでの日本の漁業の歴史ということを踏まえるとなかなか難しい面があるわけですが、そこは、だから、やるのかやらないのかですよ。そういうところで、さっきの小山さんのようなことを言っていると話にならないので。だから、私たち維新の会は、やらないならやらないと決めたらいいし、数量管理、科学的なそういう水産資源管理を導入していくのであれば、しっかりやろうよということを申し上げています。

 その際に、あと一問、水産業の話ですが、ちょうどその頃ですよ、二〇一八年の漁業法を改正した頃に、これは多分、東京財団かな、の検討会で、要は、漁業制度というのは難しいんだと。何が難しいかというと、無主物占有の原理というのがあって、要は、日本の水産資源は誰のものだというときに、アメリカとか豪州とかでは、これは国が持っているんだということで、相当公の性格が強いんですが、日本では、民法のフレームがベースになって、民法の無主物占有の規定をベースにしているので、一言で言うと捕った者勝ちなんだ、こういう法体系の違いから、なかなか、今話をしました科学的な資源管理がうまくいっていないんだという指摘をしている人がいるんですが、これは重要な論点なのか、いやいや、その話は余り関係ないんだということか、ちょっと教えてください。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 一つの国の法律におきまして、国が天然の水産資源を所有する旨規定している国は、ロシアなどの一部の国にとどまっております。

 他方、資源管理において先進的であるアメリカにおいては、日本と同様、水産資源は国民に帰属する共有財産としては定義されておりません。国民が採捕前の水産資源について法的な権限を持つことも規定されていないと承知しております。

 日本においても諸外国においても、水産資源の帰属にかかわらず、水産資源をいかに管理するかが重要であり、管理する権能が国などに付与しているものと考えられておりますので、我々も一生懸命資源管理の方に努めてまいりたいと思っております。

足立委員 ありがとうございました。

 今日、所信質疑で水産業のことを取り上げたのは、産業だけではない、安全保障面からも、日本は海洋国家です。だから、アメリカ、あるいは豪州、イギリス、こういう海洋国家と、今、豪州とイギリスは準同盟国ですよ。英語で言うと、もう同盟国に等しい。だから、日本は、アメリカ、豪州、イギリスとは同盟国です。

 そういう海洋国家として、いわゆる、食料じゃない、本当の意味での安全保障も、今、日本国としてやっている中で、食料安全保障あるいは農林水産業を考えるときにも、日本は世界第六位の海洋国家なんだと。なぜ世界第六位の海洋国家が水産業でこんなにあたふたして、衰退をして、何か、現場に行くと技能実習生なくして成り立たないみたいな、そんなことになっているのかということについて、私は大変深い憂慮の思いが、もう時間ですね、もう時間なので質問は控えますが、大変憂慮をしております。だから、水産業の話はこれからもやります。

 今日はできませんでしたが、農協、二〇一五年に農協法が改正されました。これも、信用事業の上部団体への譲渡等が進んでいないとか、様々な問題を今日、本当は取り上げる予定でした。

 更に言うと、今年こそ、来年に向けて基本法の議論、農水省でも大臣もやっていただくと思いますが、この委員会でも是非基本法の議論をしていきたい。

 私の選挙区も実は大阪府の北端でありまして、茨木市、箕面市、池田市、池田市はちょっと今度十増十減で変わるんですが、茨木市、箕面市、豊能町、能勢町。豊能町、能勢町というのは、私の選挙区の北半分はもう山です。そういう中で、中山間地の在り方、これをしっかり大臣にもまた御指導を賜りながら、議論をさせていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次に、池畑浩太朗君。

池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。

 農林水産大臣所信、そして令和五年度農林水産関係予算の説明を、大臣から、そして野中副大臣からいただきました。その上で質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、農林水産物の輸出に関して質問させていただきたいと思います。

 先月、私の地元の宍粟市そして佐用町でも生産されておりますいわゆる神戸ビーフが、今、二月の二十四日に、神戸ビーフをサウジアラビアに向けて初めての、初の輸出の出発式に出席をさせていただきました。私も、和牛の輸出に関しましては、県会議員時代から十年ぐらい、足かけ十年ぐらい取り組んでおります。その中で、年間約百五十頭が輸出が決まり、三月の一日にはサウジアラビアの首都のリヤドに到着したということでありました。

 神戸ビーフだけではなくて宮崎牛も二頭行ったということで、こちらに宮崎の議員が二名おられますけれども、その中で、私も父の仕事の都合でサウジアラビアのカフジというところに小学校時代は生活をしておりましたので、その中で、ハラールといった認証の食品そして方法についてはよく触れることがありましたので、改めて、市場の開拓ということで、この中東地域に限ってのお話をまずさせていただきたいというふうに思います。

 神戸ビーフは、昨年度は七十三トンの輸出量がありました。前年度比六四%増になっております。今までは、先ほど申し上げましたように、欧米とか香港、台湾などが輸出先になっておりましたけれども、輸出の安全基準を満たすためのハラール処理、それを満たすための食肉の処理の施設を兵庫県にも設置をされました。中東に輸出が可能になりまして、それぞれ、やはり、サウジアラビアとかインドネシアとか、いろいろなイスラム圏がありますので、ちょっと微妙にその審査の方法が違ったり検査の方法が違ったり認証の方法が違ったりはするんですけれども、今後は、十八億人もおられますそのイスラム圏への輸出については積極的に取り組んでいく必要があるというふうに私は思っております。

 その中で、県会議員時代からというふうに先ほど申し上げましたとおり、現場主義を掲げております。大臣も同じだというふうに思いますが、現場をよく知って、現場を回ることで理解ができることがあるというふうに思っております。

 その中で、小さい頃サウジアラビアにいたということはございましたけれども、近年、大人になってから、さらに、ハラールの実態がどうなのかということも含めて、インドネシアも含めて、最近は首長国連邦のアブダビに行かせていただきました。そこで大使館ともお話をさせていただきまして、そのときに経済班の方がそちらにおられました。今、アブダビに赴任して五年ぐらいなんだというお話でございましたけれども、これは委員の皆様もよくお話を聞かれると思うんですが、国が営業に関わる、積極的に関わっていくということは結構多いというふうに聞くんです。

 日本の今の現状、特にそういう中近東、余り我々がどんな会社があるのか分からない、どんな企業があるのか分からないような状況のときに、こういう大使館があるわけですから、積極的に、おせっかいぐらい関わっていく必要があるのではないかと私は思うんですけれども、今の政府はどのようにお考えか、答弁をいただきたいと思います。

野村国務大臣 池畑委員にお答え申し上げますが、もう御存じのように、牛肉の輸出につきましては大変日本も力を入れておりまして、アジアや欧米を中心にその輸出を伸ばしているのは御存じのとおりでございます。

 この中で、委員御指摘の中東地域を含むイスラム諸国に対しては、昨年の牛肉の輸出実績は、これは非常に伸びたんですが、前年比一三六%の二十五億となったところでございます。

 イスラム諸国向けの輸出を更に拡大させていくためには日本産牛肉の認知度を一層向上させていく必要があることから、オール・ジャパンによるプロモーション活動等の取組を行っているところでございまして、その一環として、先月二十日には、ドバイで開催されました国際見本市、ここに藤木政務官に行っていただきまして、派遣しまして、直接日本産牛肉のプロモーションを行わせたところでございます。

 藤木さんを何でかといいますと、彼は畜産の、自分で牛を七百頭飼っておるものですから、非常にもう詳しいです。ですから、藤木政務官にドバイの方に行ってもらったんですが、委員御指摘のとおり、現地の状況を把握することは輸出拡大に際して必要であります。特に、やはりハラールの問題というのがなかなかこちらでは分からないところもあるものですから、また、国によって違う、そういったような非常に難しい面もあるものですから、輸出拡大に際して必要であるものについては我が省としては現地の在外公館やジェトロ等と連携して積極的に情報を収集しつつあるわけでありますが、今後も適切に対応してまいりたい、かように思っています。

池畑委員 答弁ありがとうございました。

 やはり、市場を開拓していく上で、一番最初の頃と、私は、七年ぐらい前に三田市にありますハラール用の屠畜場を造ったときにも、なかなか海のものとも山のものとも分からない状況でございましたけれども、海外の、特に中東の方の、今答弁もいただきましたけれども、状況や会社をやはりきちっと把握していく。先ほど申しましたその経済班の方は個人的に、五年もおられますから、あの会社が、この会社がということもよく御存じでおられましたけれども、情報をデータベースとして残しておられると思いますけれども、その人がいなくなってしまったらそういう細かい情報までは分からない、そういう情報が結構日本の企業にとってはいい情報だったりいたしますので、しっかり国としても把握をしていただきまして、情報提供する機関をつくっていただくぐらいの気持ちでいていただきたいというふうに思いますし、輸出商社とかバイヤーさん、物流会社について支援もいろいろ考えておられるというふうに思いますけれども、そういった支援の取組というのは、今申し上げました輸出商社さんの、バイヤーさんに限っての今はお話になりますけれども、そういった支援に関しても考えておられるのでしょうか、それとも取り組んでおられるのでしょうか。

角田大臣政務官 輸出に取り組む国内の商社、卸売業者、物流事業者等に対して、農林水産省では、農林水産物・食品輸出プロジェクト、いわゆるGFPを通じて、生産者とのマッチングや交流イベントの開催など、きめ細かな支援を行っているところです。

 また、イスラム圏への輸出は、今後の伸びが期待できるものの、現地の情報が少ない点が課題であって、現地の食品市場や規制に関する情報の提供が特に重要だと考えております。

 このため、GFPの取組として、輸出商社等向けのセミナー開催やメールマガジンの送付などによって現地の最新情報を丁寧にお伝えをしているところです。

 こうした取組を通じまして、マーケットインの発想で中東向け輸出の拡大を推進していきたいと考えております。

池畑委員 是非とも取り組んでいただきたいと思います。

 以下、続いていく質問も、やはり是非、輸出にこだわって質問をさせていただきます。あちこち行っているような質問かもしれませんけれども、最終的にはきちっと輸出を拡大するための質問をさせていただきたいというふうに思いますし、続けていきたいと思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 次は、畜産農家の経営に関して質問をさせていただきます。

 当選当初から、私は、一年半近くたって、最初から最後までこの質問をさせていただいております。また、他党の方からも多く質問がありますし、金子委員もありました、いろいろな委員からありましたので、ここはしっかり取り組んでいただきたいというふうに思います。そして、取り組んでおられるというふうに思います。

 まず、私も予算委員会で取り上げさせていただきましたけれども、地元の赤穂市で、先月、兵庫県最大の最新鋭の牧場がスタートしたというお話をさせていただきましたけれども、激務だというふうに思いますけれども、大臣が視察というのはなかなか難しいとは思いますが、政務の方、是非見ていただきまして、どういった状況かというのも、この今の時期に最新鋭の牧場を造る、これは二十七億円ぐらいかけて造られた牧場でしたけれども、この先どういうふうに採算を合わせていくんだということも含めまして、是非現地を見ていただきまして、激励を含めてやっていただきたいというふうに思っております。

 その中で、食料の安全保障なんかは貢献していただいていると私は思っていますので、最終的にしっかりと応援をしていただきたいんですけれども、この三月八日、現時点で、今いろいろ答弁もいただきましたけれども、政府として、今の現状をどういうふうに認識をしていらっしゃるか、また、この危機を乗り越えるためにどのような取組をしていらっしゃるか、改めて答弁をいただきたいと思います。

野中副大臣 畜産、酪農経営でありますが、飼料価格も上昇していますし、生産コストも上昇している。そしてまた、酪農においては、需給ギャップの問題もありますから非常に厳しい状態というのは承知していますし、私も実際、生産者の方からお聞きしております。

 まずは、これまでの支援体制ということでありますけれども、私どもとしては、配合飼料に対して予備費等を活用した特別の支援を行ったほか、国産粗飼料の利用拡大を図るための酪農経営の緊急対策、生産需給ギャップ解消に向けた生産者の生産抑制の取組の支援等を行ってまいりました。

 また、二月二十四日に総理からの御指示がございましたので、第四・四半期における配合飼料価格を抑制する具体的な対応策や、購入粗飼料等の高騰等により収益性が悪化している酪農経営に対する必要な対応、第一・四半期以降も見据えた激変緩和対策等について鋭意検討を進めております。

 また、持続可能な畜産物生産を進めていくためには輸入飼料からの脱却も必要ということでありますので、国産の飼料生産基盤に立脚した足腰の強い生産構造への転換、これは、耕畜連携とか、県をまたいでの国産飼料の輸送に対する輸送負担の支援等も重要であるというふうに考えております。

 いずれにしましても、厳しい状況を何とか乗り切って、畜産、酪農の経営者の方々が引き続きやっていけるような支援をしていきたいというふうに考えております。

池畑委員 本当に、一回乳牛を放出してしまいましたら四年から五年かかるわけですから、しっかりと今の段階で踏ん張っていただけるような、今、山田委員、金子委員からもありました、全国でいろいろな声がありますので、取り上げていただいて、しっかりと守っていただきながら、そして技術も継続をしていただけるように守っていただきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 その中で、野村大臣は、昨日の所信の中で、これから輸出額を伸ばしていくというお話もありました。国内のプレーヤーをつなぐハブ機能の強化、そして国内の農林水産業の発展に資するよう輸出の拡大を進めるというふうにお話をいただきました。国もサポートをしっかりやっていきますよというお話をいただきましたけれども、基本計画では、令和七年に二兆円、令和十二年までに五兆円にするという目標が設定されておりますが、農林水産物の食品の輸出が増えるということは大変いいことだと思いますけれども、率直にお聞きさせていただきたいと思います。

 輸出額が七年に二兆円、十二年までに五兆円に増えることによって、いろいろな角度があると思いますけれども、国民にはどのような利益がもたらされると理解をされておられますか。

野中副大臣 輸出拡大によって国民にどのような影響があるかというのは、主に二点、大きく二点だと思います。

 一つは、国内のマーケットが非常に縮小してきているということで、国外市場に日本国の農林水産品を輸出していくということで、結果、今まで、そしてそれ以上の体制基盤を維持拡大できるということで、この輸出促進によって有事の際の国民への安定的な食料供給にも資するという、いわゆる食料安全保障の面があります。

 もう一点が、農林水産品というのは地域経済に大きく関わっておりますから、これらを生産拡大することで、地域経済、また雇用にもよい好影響を及ぼすというふうに考えております。

 以上の二点から、食料安全保障、そして地域経済の両面から国民全体に利益をもたらすというふうに考えておりますので、昨年一兆四千億を超えたところでありますから、二〇二五年二兆、二〇三〇年五兆に向けて、そういった国民に好影響を与えるという面でも取り組んでまいりたいというふうに思っております。

池畑委員 野中副大臣、ありがとうございました。

 まさに、今お話がありました、農作物の生産をする基盤をつくりつつ、つなげつつやっていただく、その分を輸出に回しながら、有事のときには、その輸出している分を国内でというふうに捉えましたけれども、それでよろしいんだと思いますけれども、私もそれには賛同をさせていただきます。

 やはり、国内に何か余剰が、余っているという状況ではなくて、攻めの農業というふうに自民党さんはよく言われますけれども、きっちり輸出をするための作物を生産しながら、有事のときには国内でそれを消費していく、それも具体的に認識をしておられるということは、更にもっと理論的に、やはりここに関しては輸出をする、今言った神戸ビーフとかというのはとても技術的にも大変ですし、これは、言うとちょっと生産者の方にいろいろ御指摘を受けてしまうかもしれませんけれども、あえて誤解を恐れずに言いますと、神戸ビーフは、ある意味食料というよりは嗜好品の部分が強いというふうに思えてしまいます。

 ですから、私としては、食料となり得る生産物はきっちり生産基盤を使っていかなければ、今副大臣もお話をしていただきましたけれども、今農家に離農されてしまいますと、その基盤も全部なくなってしまうということですから、輸出を拡大するということは食料安全保障だと今お話をいただきましたので、今酪農家を守っていただくというところにも、とどのつまりにはなってまいりますので、是非そこをよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 そして、もう時間がなくなってまいりましたので次に質問を移らせていただきますけれども、今は食料の安全保障の観点からというお話でした。これからも輸出を拡大していくというお話をいただきました。

 それで、昨年の農作物の輸出額を見ると、アルコール飲料や清涼飲料水、お菓子等の加工食品が半数を占めておりまして、一次産品については約四割程度となっております。一次産品の国内生産基盤を強化する、先ほどお話をいただきました、そして国産の供給力を拡大しなければいけないというふうに思っています。

 その中で、農林水産物の食品の輸出を増やしたことによって、振り返って、今、生産者に、農家さんにお金がそれで残っているんでしょうか。農家の所得を向上させるために、輸出そして輸入、一生懸命やられて、輸出を今取り組むんだというお話ですが、しっかり農家さんに利益が残っているのかどうか、そして農家にお金を残すためにはどのような取組が必要であると考えておられるか、答弁をいただきたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 昨年の農林水産物・食品の輸出額は一兆四千百四十八億円となりました。この輸出額が農林水産物・食品の生産額全体に占める割合は現状で二%程度ですが、輸出額が五兆円になった場合は、これが一割程度となり、需給の引締めによる価格の下支え効果が大きくなると考えております。

 また、輸出には、海外市場での高値販売を可能にし、また、国内の規格外品のサイズも海外では販売可能になるという所得向上効果も見込まれるため、輸出拡大はこの効果を増大、広域化するものであると考えております。

 このように、輸出拡大は、価格の下支え、所得向上などを通じて、生産者に裨益する効果が高いと考えております。

 このため、農林水産省としましては、このような点を農林漁業者によく理解してもらうべく、情報発信をしつつ、このための支援をしっかり進めていきたいと考えてございます。

池畑委員 答弁ありがとうございます。

 まさに、隣の農家の方は輸出もできて利益は上がっているんだけれども、こっちの農家はそうでもない。今答弁いただいたときに、レクを受けさせていただきましたけれども、県庁にヒアリングをしたというお話をいただきました。そのときに、横のつながりで農家さん同士が、やはり輸出はこうやってやるんだよと。酒蔵もそうなんです。

 うちの、たつの市というところに室津という漁港があるんですけれども、そこで輸出をしていらっしゃる業者さんもいれば、何もしていない業者さんもいらっしゃる。是非、輸出をして、成功していらっしゃる業者さんの話を横のつながりで聞いていただいて、利益をみんなで上げられるように考えていきたいというふうに思いますので、是非よろしくお願いいたします。

 その中で、原発のお話もありました。輸出先の拡大をするという観点から、五十五か国で規制がありましたけれども、停止は今現在では五か国、輸入規制を継続しているところは大体七か国というふうに聞いております。ちょっと数字が違うかもしれませんが。輸出先の第一位であります中国は、福島第一原発事故を受けて、なかなか輸出ができない状況になっているというふうに思います。

 農作物の安全性が問われる事態になっておりますけれども、ここで、輸出の再開を是非希望する、その中で、事あるごとにいろいろな場面で、輸出の規制を解除してもらうためにお話を持っておりますという官僚の方からの御説明を受けました。しっかり、今の段階で政治規制を行うようなことがあってはならないというふうに思いますので、このように規制がずっと続く状態は余りいいことではないというふうに当然思います。

 今現在、政治的判断でどのように考えておられるか、どのような取組をしていらっしゃるか、答弁をいただきたいと思います。

水野政府参考人 お答えいたします。

 原発事故に伴う日本産食品の輸入規制につきましては、現時点で規制を維持しているのは、一部の都県等に輸入停止を続ける中国、台湾、香港等に加えまして、産地証明書等を要求するEU、ロシア等の十二の国、地域となっております。

 日本産食品の安全性は科学的に証明されており、輸入規制は科学的知見に基づき早期に撤廃すべきというのが我が国の立場でございます。

 農林水産省としては、関係省庁と連携し、いまだに規制を維持する全ての国、地域に対して、あらゆる機会を捉えて規制の早期撤廃を働きかけているところであり、今後、一層の働きかけを行ってまいります。

池畑委員 今、あらゆる機会というふうに答弁をいただきました。

 ちょっと通告はしていないんですけれども、農林水産大臣、今回、G7の宮崎の農業大臣会議があるというふうに思います。今のようなお話を是非G7の宮崎の農業大臣会議でしていただきたいと思います。公式の場でなくてもそういったお話ができるというふうに思います。

 大臣、是非答弁をいただきたいんですが、そういった場面で、こういった規制を撤廃してもらえないかというお話をしていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

野村国務大臣 今委員からお話がありましたように、四月に開かれますG7の農業大臣会議は大変貴重な場になるというふうに思っております。

 さらには、先般、私、ドイツに行かせていただきまして、農業大臣会合がありました。その中では、やはり日本からの輸出を規制している特にEUに対して、日本の規制を解いてくれということを、バイ会談でも何か国かと話をしながらお願いしたところでありまして、そういったあらゆる機会を捉まえて、日本の農産物の安全性というのを主張しながら、そして、なおかつ日本の食品のおいしさというのも、今度、宮崎で十分堪能してもらおう、こう思っているところでございまして、特に、宮崎で開くものですから、宮崎のおいしい牛を是非食べていただこう、こんなふうに思っているところです。

池畑委員 ありがとうございます。

 それプラス、やはり規制をされている現状の福島県、いろいろなところの県のものを含めて、農産物のお話をしていただきたいというふうに思います。

 時間が参りましたが、最後に、シャインマスカット等の知的財産の流出について質問させていただきたいと思います。

 これは、今、種苗法のために相手国と結ぶライセンス契約について、現状どうなっているのかということと、これは分科会で質問させていただいたことがあったんですが、和牛遺伝子の資源についての保護に対しての法律、そして、今現状どうかということをお聞かせいただきたいと思います。

笹川委員長 答弁は簡潔にお願いいたします。

水野政府参考人 お答えいたします。

 我が国の優良な品種の海外流出を防止するためには、育成者権者の品種を適切に管理することが重要でございます。

 このため、農林水産省では、育成者権者が海外での品種登録や侵害対応を適切に行えるよう、従来から、侵害情報等の提供や海外出願に係る経費支援等を行ってきたところでございます。これに加えまして、来年度からは、農研機構を中心に関係者が連携して、育成者権管理機関の取組を開始することとしておりまして、育成者権者に代わって海外出願や権利侵害の対応、海外ライセンス等を行うほか、この取組によりまして、ライセンスを受けた海外の事業者が現地で無断使用の監視を行うことが期待できると考えております。

 より実効性の高い品種の保護が実現するよう、育成者権管理機関の適切な運用に向けて、農林水産省としても必要な支援を行ってまいります。

笹川委員長 簡潔に。

渡邉政府参考人 和牛についてお尋ねがございました。

 和牛は日本の宝でございまして、その遺伝資源の不正な海外流出を防ぎ、知的財産としての価値を保護することが極めて重要であると考えてございます。

 このため、令和二年に施行されました和牛遺伝資源関連二法に基づきまして、家畜人工授精所への立入検査の実施による流通の管理の適正化、あるいは契約の普及による知的財産としての保護を進めているところでございます。

池畑委員 農家を守るための政策を頑張っていただきたいと思います。是非よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 大臣が所信でも触れられていましたけれども、また、今日午前中にも金子委員からもありました鳥インフルエンザ、大変、今現在猛威を振るっているところでございます。

 殺処分した鳥の数が千五百万羽を超えている、今の時点で既に過去最多ということになっておりますけれども、これから気温が上昇し、渡り鳥が北に移動する時期と帰る時期ということもありまして、ウイルスを保持して移動するおそれもあります。昨年は五月にも、北海道や岩手県で鳥インフルエンザが発生したということもございました。

 このような状況でちょっと気になっていることがございます。埋却地の問題です。鹿児島県出水市の養鶏場で発生した鳥インフルエンザの殺処分、埋却地から白い液体がため池に漏れ出した、それによって異臭がするという苦情が近隣の住民から寄せられた件が年末にあったかと思います。

 これに関しては、県が防疫措置の不備を認めて謝罪されたということでございます。これだけ、全国最多、過去最多ということで各地で発生していますと、埋却後の近隣住民とのトラブル等がもしかしたら増えているんじゃないかというふうに心配になっております。

 そこで、まずお尋ねしたいと思います。

 政府は、この鳥インフルエンザの殺処分後の、埋却後のこういったトラブルにつきまして件数を把握しているのでしょうか。さらには、この埋却地、今現在足りているという認識かどうかにつきましても併せて伺いたいと思います。

森政府参考人 お答えいたします。

 今議員御指摘の鹿児島県におけるため池の事例につきましては、県の方から情報提供をいただいておりまして、国としても承知をしているところでございます。

 こうした防疫の現場での要調整事例、トラブル事例等については、基本的に都道府県が対応しているということでございまして、農水省といたしましては、都道府県の方から相談があれば技術的助言を行うなど対応しているということでございます。

 また、埋却地なり、あるいはその焼却施設ということでございますけれども、大体、全国の家禽における埋却地等の確保状況につきましては、令和二年七月の時点で未確保が六・七%ということでございましたけれども、令和四年七月時点では三・八%ということで、改善が見られているという状況でございますし、特に採卵鶏で五十万羽、肉用鶏で二十万羽以上の大きな農場につきましては、全ての農場で埋却地等が確保済みという状況でございます。

長友委員 今の御答弁ですと、それぞれ各県で責任を持って対応している、その中において埋却地についてはおおむね確保できているということでございました。

 しかし、私のちょっと地元の話で恐縮なんですけれども、やはり鳥インフルが発生しました。鳥インフルエンザが発生して、その埋却地で実はちょっとトラブルが起きています。

 これは、鳥インフルが発生した養鶏場のそばで和牛を肥育している方の、ホールクロップを育てている畑が埋却地に指定されていたんですね。それは、結果的に、養鶏をやっている方と口約束をしたかもしれない、何か鳥インフルが起きたときにここに埋めさせてもらってもいいかと七、八年ぐらい前に社長が来たときに、ううん、そのときはそれで考えるねとは言った覚えはあるけれども、実際に自分の牛を育てている、しかも無農薬でホールクロップをやっている畑が埋却地になっているということは知らなかったということが起きていたんですね。

 鳥インフルが発生しました、役場から電話が来ました、埋却地に指定されているので今から速やかにここに埋めますとまくし立てられたんだけれども、そんなのは寝耳に水だ、聞いていない、なぜうちの畑がその業者さんの埋却地になっているんだということで、今トラブルが起きています。

 実は、このトラブルに関しては、当初、県も地元の役場も、これは民民の問題だ、口約束したという契約に関しては行政等は知らない、民間同士で補償等を対応してくださいということで、民民の関係では一応補償してもらえることになりました。埋却した後の畑で本当は育てるはずだった飼料稲、それの換算したお金と、それから四年間作れない、そしてまたそれを原状復帰するための費用等、何とか補償していただけることにはなったんですけれども、そもそも、その畑の持ち主が、他人の業者の、すぐそばで養鶏をされている方の埋却地になっていたということを知らずに、書面上で埋却地になっていたということが問題だと思うんですね。

 じゃ、それは県の家畜保健所が、そこが埋却地だということを業者さんが言ったから登録していたという話ではあるんですけれども、果たして、その程度の、いわゆる口約束したものが申請されても、じゃ、県はそれを認めているという状況が果たして健全かどうか。

 これは全国的には珍しい例なのかもしれません。もしかしたら、他県ではしっかりできていて、たまたま私の県でそういうことが起きてしまったということかもしれないんですけれども、改めて教えていただきたいことがございます。

 埋却地の確認、県がどのような手続でやっているか、農水省として把握している範囲で教えていただけますでしょうか。

森政府参考人 お答えいたします。

 埋却地や焼却施設につきましては、家畜伝染病予防法及び飼養衛生管理基準に基づきまして、家畜の所有者が自ら確保することが求められているということでございまして、さらに、家畜の所有者には、埋却地等の確保状況について、所在地でございますとか、また、仮にその土地が自己所有でない場合には、その土地所有者が誰であるかといった点も含めまして、都道府県に定期的に報告するということが義務づけられているということでございます。

 また、特定家畜伝染病防疫指針におきまして、都道府県は、家禽の所有者に対して、埋却地等の確保に係る指導等を徹底するとともに、周辺住民の理解の醸成に向けた取組を行うよう指導などを行うということとなっているところでございます。

 そういった意味で、埋却地の確保状況を始めとした飼養衛生管理基準の遵守状況につきましては、都道府県が指導を実施をするということでございますけれども、農林水産省といたしましても、埋却地の確保に関するトラブルを始め、防疫措置を実施する上で留意する必要があるといった点について、必要に応じて全国会議などにおきまして注意喚起などを行うなど、必要な対応を行ってまいりたいと考えております。

長友委員 ありがとうございます。

 牛の肥育農家さんとしては、大変、驚くと同時に、こんなことが起きることにショックを受けていらっしゃるんですね。それに対する補償は行政からはないんですよ。口蹄疫のときはありました。原状復帰のための補助というものを国が出していただきましたけれども、鳥インフルに関してはないんですね。自力でやらないといけない。

 その状況において、こういうトラブルが願わくば他県で起きないように、この事例をしっかり全国の会議等で共有いただいて、県の家畜保健所さんに御指導をいただきたいというふうに思います。

 続いて、農作物の適正な価格転嫁についての話を伺いたいと思います。

 飼料や肥料などの資材価格が高騰する一方で、価格転嫁が進んでおりません。農業経営は悪化の一途をたどっているというのが、私も、地元の人の話を聞く中で、実情として感じています。

 そこで、参考にしたいのが、生産コストに基づいて農産物の適正な価格形成を促すフランスのエガリム法です。日本も、消費者に理解を促して、適正な価格転嫁ができる環境整備が必要だと感じています。産地にとって、高騰が続く肥料などの支援策が急務なんですけれども、持続可能な策とは言えません。農作物を安売りの目玉とするのではなくて、適正価格で販売できる仕組みというものを構築しない限り、最終的に農業者にしわ寄せが行くというふうに感じています。

 フランスでは、農家報酬を守るエガリム法が制定されまして、三年以上の複数年契約が定められたり、農業者と一次購入者の契約の文書化が義務化されています。価格の決定や改定の基準に生産コストを中心に考えておりまして、問題があれば農産物取引紛争解決委員会が介入できるということが定められているわけです。直接所得支払い政策に加えて、価格転嫁が法律化された点に大いに注目しているというところなわけなんですけれども、農作物の適切な価格転嫁について、農林水産省は、フランスで施行されたこのエガリム法について調査研究するということで現地に職員を派遣されたというふうにも伺っています。

 日本にもエガリム法のような制度を取り入れることが実現できそうなのかどうか、現状の認識を伺いたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員から御指摘がございましたように、フランスのエガリム法につきましては、二〇一八年十一月に、農業生産者と取引相手の関係を見直し、持続可能性に配慮すること等を目的として公布されました。

 また、同法の施行後、生産、流通コストを反映した価格形成、これを推進する観点から見直しが行われまして、エガリム2法が二〇二一年十月に公布され、本年一月から全面的に施行されたと承知しておりまして、現在、その状況等について調査を行っているところでございます。

 現在、農林水産省といたしましては、円滑な価格転嫁に向けまして、政府で取りまとめました転嫁円滑化パッケージに基づく取組のほか、消費者等に対してコスト上昇の背景を分かりやすく伝える広報活動を行っているところでございますけれども、今後、外国の事例も参考にしながら、我が国の生産から流通までの実態等を踏まえまして、それぞれの段階でコストを反映した価格が形成されるには何が必要かをしっかりと検討し、加工・流通業者や消費者の皆様の理解も得ながら、適切な価格転嫁のための環境整備を進めてまいります。

長友委員 フランスの生産から流通の過程と日本の生産から流通の流れが違う部分で、そのまま制度の設計が参考になるわけじゃないかもしれませんけれども、価格の転嫁の問題は、市場のメカニズムに委ねていてもなかなか難しい部分があると思いますので、法整備、法制度が必要だと思いますので、是非そこの部分で取り組んでいただきたいということと、仕入価格の転嫁がそのまま消費者価格にしわ寄せされると、今度は消費者の方もなかなかつらい部分が出てきてしまいますので、政府の責任で環境整備を行っていただくということをお願いしてまいりたいと思います。

 続きまして、みどりの食料システム戦略、有機農業につきまして質問します。

 私の地元に二つの町が、高鍋町と木城町というところですけれども、有機農業推進協議会を立ち上げまして、現在、有機農業を推進する実施計画を策定する、この三月ぐらいまでにまとめるということで動いていらっしゃいます。各地でワークショップ等に取り組んだり、有機農業に携わる方の人材育成等を考えているという話を伺っているんですけれども、その際に、有機農業を学ぼうと思っても、有機農業を教えていただく適任者というのがなかなかうまく見つからないという悩みが現場にあるというふうに聞きました。

 その点におきまして、政府としまして、有機農業を学びたい、有機農業を誰か指導していただく人を自治体として迎え入れたい、そういうことが、自治体から講師や指導者の照会があった際、政府としてどのように対応しているのか、農水省としてどのように対応しているのかについて伺います。

平形政府参考人 お答えいたします。

 有機農業の取組を拡大していくためには、その栽培技術を指導できる方を全国で確保して、自治体も含めて、現場の求めに応じて、指導に当たる方を派遣することができる体制を整えることが必要であると考えております。

 具体的には、指導員を求められる市町村ですとか協議会にはまず都道府県に問合せをいただく、これが一番近いんですが、農林水産省に照会していただいた場合には、各都道府県が、有機農業への栽培技術、それから経営を指導する有機農業の指導員を任命されております。こうした方を都道府県から紹介をしてもらうこと、あるいは官民の有機農業を学べる学校ですとか研修受入先、これを紹介させていただいております。

 またさらに、オーガニックビレッジに取り組む、今お話ございました木城町、高鍋町がそうなんですけれども、こういった市町村に対しては、必要に応じて、民間の支援団体から、販売戦略等について助言をするオーガニックプロデューサー、これを派遣していただくといった対応を取っているところでございます。

長友委員 今、全国的にそういう人材を育てていこうと。農林学校でもそういう有機コースをつくるという動きが出ている中で、適切に御指導いただける方が必要だなというのを非常に感じております。

 私の知り合いで有機農業に携わっている方は何人もいらっしゃいますけれども、皆さんそれぞれにこだわりとやり方が違うんですね。化学肥料を使わない、農薬を使わないという中で、自分でぼかし肥料を作ったり、独自で発酵飼料を作ったりと。そういう中で、どれが一番オーソドックスなのかというのを決めるのは難しいと思います。ほとんど手をかけないでほったらかすだけの自然農法に近い有機農法をやっている方もいますし、いわゆる教科書というものがなかなか難しいんじゃないかなと思う中で、国として、いわゆる有機農業とはこれですよという、しっかりと御指導できる人の人材確保、それがないと現場が戸惑うということが声として上がってきていますので、取組を進めていただきたいというふうに思います。

 次に、午前中に小山委員からも山下惣一さんの話がございましたけれども、私も、山下惣一さんの考え方が今の日本に必要だなと思っているんです。

 佐賀県唐津市の農民作家の山下惣一さん、昨年お亡くなりになりました。享年八十六歳でした。

 山下さんは、小説「減反神社」で直木賞候補になったほか、五十以上の著作を残されました。その仕事の根底には、国が奨励したミカン栽培に乗り出したものの、輸入の自由化による価格下落で一家が翻弄されたというつらい経験もあるというところが下地になっていたりします。

 その山下さんは、二〇一六年に小農学会を立ち上げまして、共同代表を務めていらっしゃいました。小農とは、利潤追求のためではなく、そこに住み、暮らしを目的に営む農業で、家族農業とも称されます。

 山下さんの著書「小農救国論」や「新しい小農」には、小農について、次のように記されています。

 近代化農政は、規模拡大、単作化を掲げて、小農を切り捨ててきたが、農業の重要性は持続することにある。自給的農家は統計から除外され、小農の存在が軽視されているが、国連は、農業の専門特化はリスクを高めるとして、家族農業を評価している。世界の農業の九割以上が家族農業であり、その理由は、一、農業の規模が家族で行うのに適している、二、その地に暮らすことを目的としているなりわいである、土地を所有するとその土地に縛られることになるが、それゆえに故郷になり、国の土台を形成する、三、年寄りや子供の労働力が生かされ、それぞれの役割が与えられる、四、お天気任せゆえに不作や豊作に左右されるが、だからこそ、規模拡大や専門特化より、小さく地道に、なりわいとして農を営めば倒産することはないというふうに記していらっしゃるわけなんです。

 小規模分散型の複合経営だからこそ、持続可能でリスクに強い。この考え方は、国が勧める副業や半農半X、また、世界情勢による資材高騰で高まる、外部依存しない自給圏とも重なる。また、感染症や災害対策にも対応できるレジリエント、回復する力、しなやかな強靱性に通じるものだと私は思うんですね。

 政府は確保する農地面積の目標を掲げていらっしゃいますが、私の地元も中山間地域がそうなんですけれども、地域からは、農地を維持できないとの声が多く上がっています。特に、棚田などを数多く有する中山間地域などは、急勾配な傾斜地で農業をこれまで行ってきました。そのような地域では、農地の集約や規模拡大を進めることは難しいというふうにもう分かり切っているんですね。

 それにもかかわらず、政府が効率的かつ安定的な農業経営を育成しようと、農業の法人化を進め、大規模経営の土地集積を進めようとすることに大変胸を痛めているという話を聞きます。農業のスマート化や輸出拡大などの成長産業化だけでは守り切れない農地をどうするか、そういう議論が足りないのではないかというふうに言われるわけです。

 ヨーロッパは、農地を維持し、環境を守るという視点で、農業支援の方向にかじを切ってもいます。直接所得補償は農家の経営安定のためのツールとして活用していきながら、基盤整備や大規模農家への集約化などの構造改善は別々に進めるべきだと考えます。でなければ、中山間地域を始めとする農村の生産基盤は著しく弱体化し、多面的機能を有する農地を耕す人はいなくなってしまうんじゃないかというふうに思います。

 そこで、改めて確認をさせていただきます。

 政府は、農山漁村をどのように位置づけているのか。農山漁村のあるべき姿、目指すべき全体像について、大臣の見解を伺います。

野中副大臣 まず、大規模農家のみの政策ではなくて、就農者数が減少しておりますから、大規模農家が面積の負担割合は軸になるかもしれませんが、やはり小規模農家や兼業農家の方に頑張っていただく、みんなで国土を支えていただくというのは重要な考えだというふうに思っております。

 農山漁村につきましては、国土保全もありますし、また水源の涵養、そしてまた、私も行ったことがありますけれども、そこでしか見ることができない景観を守っていくとか、非常に大事な国の根幹を支えていくべきであるということは十分認識しております。

 一方、残念ながら都市部に比べて利便性が悪いとか所得が低いということで、人口減少、そしてまたその先に限界集落を迎えているなど、様々な問題があるというふうに認識しておりますので、私どもとしましては、農村型地域運営組織の形成などを通じた農山漁村に人が住み続けるための条件整備、地域資源を活用して所得や雇用機会を確保していけるような農山漁村発イノベーションなどの取組、生産活動や共同活動に対する日本型直接支払制度による下支えを推進するとともに、地域資源やデジタル技術を活用しつつ、社会課題の解決に取り組む意欲的なデジ活中山間地域を関係府省と連携して支援することで、農山漁村における生産活動を支えてまいりたいと思います。

長友委員 ありがとうございます。

 小農であったり家族経営、家族で農業を営む方々にも、絶対切り捨てることがない、そのように政府がしっかりメッセージを発信していただければ、中山間地域で今、国土を守っていただいている農家の皆さんもしっかりモチベーションを上げていけると思いますので、そのメッセージはずっと発信し続けていただきたいと思いますし、忘れないでいただきたいなと思います。

 最後になります。

 G7の宮崎農業大臣会合があるということは、この委員会でも先ほどから出ておりますが、議長を野村大臣が務めていただきます。

 私、自分の地元宮崎で行われることも誇らしいんですけれども、是非この宮崎農業大臣会合において強くメッセージを出していただきたいなということが幾つかございます。

 例えば、この委員会でもまた議論されますけれども、クリーンウッド法の見直しがあるかと思います。合法伐採の木材等の流通及び利用の促進ということになりますけれども、宮崎は、杉の丸太、素材生産量が三十一年以上日本一だったりします。その中において、違法伐採というものが、特に海外から入ってくるものが懸念されるわけなんですね。各国における非合法な組織の資金源となっているということとか、森林減少に拍車をかけているということとかもございますので、宮崎でやっていただくに当たって、そのようなこともG7の方で議長国たる日本がイニシアチブを取っていただきたいというふうにも思いますし、先ほど私も御指摘させていただきました価格転嫁の部分ですね。これは日本だけの問題じゃなく、世界中の農作物生産者の皆さんで世界の胃袋を満たしていかないといけないというときに、農業に携わる皆様がしっかり、この物価高、世界的な価格高騰をする中で、農業を持続可能にしていくということを日本を含めて世界各国で取り組むんだ、そういうメッセージを是非強く発信していただきたいと思います。

 最後、野村大臣に意気込みをお伺いしたいと思います。

野村国務大臣 四月は宮崎で二十二、二十三、G7の農業大臣会議、大変お世話になりますけれども、よろしくお願いいたします。

 ロシアによるウクライナ侵略などを背景に、食料の安定供給が世界的な課題となっておりまして、食料安全保障の確保はG7各国とも同じ関心になっておるというふうに理解をいたしております。

 我が国は、みどりの食料システム戦略により、農業の生産性を向上させつつ、持続可能性を確保する取組を進めており、そのためのイノベーションの活用に取り組んでいるところでございまして、宮崎でのG7農業大臣会合に当たっては、まだ各国とも協議を今している最中で、何を最終的にテーマを定めて議論をしていくかということは、今調整中でございます。

 したがいまして、今さっきおっしゃいました森林資源の問題なんかも、やはりテーマとしては非常に、ちょうど適宜なテーマになり得るというふうに思っておりますが、あとの国がそれに賛同してもらわなければ日本が幾ら言ってもどうしようもないんですが、そういったようなことも含めて各国との協議をし、そして、我が国の取組の、例えば宮崎の取組の例を示しながら議論をリードしていきたい、こんなふうに思っておるところでございまして、大変、宮崎という場所を選んでよかったな、こんなふうにも思っておりますので、是非御協力をお願いを申し上げたいと思います。

長友委員 大臣、ありがとうございました。

 以上で私の質問を終わります。

笹川委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に、食料自給率について大臣にお伺いします。

 大臣は所信表明で、輸入食料や輸入生産資材への過度な依存を低減する構造転換対策として予算措置をしている、国内の生産基盤を維持強化するとともに、安定的な輸入と適切な備蓄を組み合わせながら、国内で生産できるものはできる限り生産をしていく必要があると述べました。

 現在、国の計画は四五%が目標で、午前中の質疑では、これが精いっぱいだ、そして、現行の四五%を達成したいというふうに述べられました。しかし、大臣は、食をめぐる今の情勢がターニングポイントだと言われているし、それから、過度な依存を改善すると大目標を掲げている。だったら、やはり思い切った自給率を掲げて私はしかるべきだと思って、生産者も生産団体も大臣の思いに注目をされていると思うんです。

 お伺いしたいのは、食料・農業・農村基本計画、この見直しの過程にあります。そして、新しい実施計画も策定されてまいります。この法改正と新しい農業基本計画、ここにおいても四五%というのは固定のままなんでしょうか。更に上を目指すというお考えはないんですか。

野村国務大臣 田村委員にお答え申し上げますが、今回の所信表明におきまして、食料の自給率の重要性につきましては、先ほどおっしゃいましたように、国内で生産できるものはできる限り国内で生産していく必要があるということを申し上げたところでございまして、今、日本にあるものを使って日本で生産していくという基本的な考えの下、輸入する食料や生産資材への過度な依存を低減していく構造転換に向けて、小麦や大豆、そして飼料作物などの海外依存の高い品目の生産拡大や米粉の利用拡大、あるいは加工・業務用野菜の生産拡大、畑地化の推進などを着実に実施してまいりたいというふうに思っておりまして、それらを通じて食料自給率を引き上げていくということになります。

 先ほど数字のところをおっしゃいましたけれども、四五%というのは基本計画に盛った目標であります。ただ、これを今、四五%まで持っていけるのかどうか、あるいは、四五%をそのまま次の計画でも維持していくのかどうか、まだ議論をしておりませんが、どういう形で、じゃ、その自給率目標なるものを設定していくのかというのは、今から、作業部会といいますか、そういったところで検討を今後させていただきたいというふうに思っております。

田村(貴)委員 七〇年代は六割でした。そして八〇年代が五割になった。かつてそういう水準にあったわけですよね。そして今、基本計画でも定めた目標が達成できない。

 逆に、やはり、生産基盤を引き上げていく、数値目標を明らかにする、そのために、輸入の農産物の割合をどの程度減らしていくのか、自給率をどの程度上げていくのか、そうしたところの目標に向かって、私は、ロードマップを作ってちゃんと実行していく必要があると思うんですよ。何か、やったらやっただけ、後は結果次第みたいな、それじゃ駄目なので、あるべき目標に従って、国内で生産できるものはできる限り生産していくといったところの数値目標というのは示していただきたいなと思っています。

 じゃ、大臣、どうぞ。

野村国務大臣 ありがとうございました。

 今朝からもちょっと言っておりますけれども、この基本計画に基づいて今いろいろ検討部会で検討していただいておりまして、六月には大まかな方向を出したい、こんなふうに思っておりますので、その六月で大まかな方向が出てきた段階で、じゃ、自給率目標を出すか出さないか、あるいは、出すとしたならばどのぐらいを出すのかというのを、専門家の皆さん方の議論をいただきながら、設定をしていくのかしないのか、そこも含めて検討したいと思っておるところでございます。

田村(貴)委員 次の質問に移ります。

 酪農の危機対策です。

 先月、国会に全国の酪農家が集まって、酪農の灯を、畜産の灯を消すなと訴えました。安全安心な国産牛乳を生産する会の加藤博昭事務局長は、全国百七の酪農家に対するアンケートで、国内の酪農家全てが赤字であること、昨年十二月の時点で既に一一%の農家が廃業を決めており、三月でやめるとした農家が一六%だったと報告されました。合わせて二七%の農家が廃業している事態になっています。

 岸田総理は、離農の状況について、実態把握は重要で、農水省に検討させると答弁しています。

 農水省にお伺いします。

 どういう調査をしたんでしょうか。結果を報告してください。

渡邉政府参考人 委員にお答えをいたします。

 酪農における離農の現状を把握するために、総理の発言も受けまして、生産者団体の協力を得て、指定生乳生産者団体に対して生乳を出荷している酪農家の戸数の動向を把握したものでございます。

 その結果でございますけれども、令和四年以降、特に都府県において、例年と比べて戸数の減少率が大きくなっておりまして、離農が進んでいることがうかがわれたものでございます。

 具体的に申し上げますと、いずれも対前年との、一年前との比較でございますけれども、全国では、例年ですとおおむね四%程度の減少率で推移していたものが、本年一月は一年前に比べまして六・八%の減少、また、都府県でございますと、例年おおむね五%の減少率で推移していたものが、本年一月は一年前との比較で八・四%の減少となってございました。

田村(貴)委員 大臣は所信で強固な生産基盤が不可欠と述べましたけれども、牛乳・乳製品の生産基盤が本当に音を立てて崩壊している状況にあります。

 自由民主党は、一月十八日、「配合飼料価格高騰対策に関する緊急決議」を取りまとめて、野村大臣に申し入れました。岸田首相がこれに対応して指示をしたと報じられています。

 では、具体的にどのような指示がなされたのでしょうか。第三・四半期の飼料価格高騰緊急対策事業五百億円、この対策というのは焼け石に水滴と言われております。これを第四・四半期にも続けるということなんでしょうか。牛一頭一万円の補助と高止まりの飼料代の値上げを抑えるだけの対策にとどまるのか、それとも、それ以上のことをするのか、そうしたら廃業は止まるのか。この見通しについて、しかと説明をしていただけますか。

野村国務大臣 二月の二十四日の物価・賃金・生活総合対策本部におきまして、総理より、今、田村委員がおっしゃいました、飼料価格の高騰を受けて、今一番経営が苦しい酪農家等、畜産農家に対する、幅広い畜産業者の負担軽減を図る飼料価格高騰対策の具体化を進めるようにという指示がございました。

 それは、今、さっきおっしゃいましたように、三・四半期の餌価格を、そのまま四・四半期、いわゆる一月―三月までそれを継続をしていく、値上がりはしましたけれども、それを継続をしていくということで今作業を進めているところでございまして、それが一つ。

 それから、二つ目は、飼料の場合の価格改定というのは三か月ずつですから四半期に一回ずつ、そうしますと、四月以降は、じゃ、どうするんだ、まだずっと高止まっているじゃないか、こういう問題がございます。そうすると、基金の発動がなかなかできないということもありまして、この四月以降のものについても激変緩和をやりなさいというのが総理指示ですから、じゃ、これについては新たな視点で我々は取り組まなきゃいかぬな、そのまま継続という形では基金の発動がありませんので、そのことをまた検討していかなければならないということで、要は、極端に言えば、餌対策で何とかこの急場をしのいでいただきたい、こんな考え方でございます。

田村(貴)委員 それで、大臣、試算してみました。現在と高騰前のトン当たりの飼料価格の差に年間の輸入数量を掛けると、およそ四千億円から四千三百億円程度になります。これだけの負担が畜産農家全体にかかっています。それで、配合飼料価格安定制度の支給金額の国負担分、これが九百七十億円です。そして、第三・四半期の、先ほど言いました飼料価格高騰緊急対策事業費、これが五百億円、この二つを差し引いても三千億円近くが農家の負担のままになっている。

 やはり、ここの負担への支援がなかったら廃業を回避することにならないのじゃないか。これぐらいの予算規模で継続あるいは新しい新規施策が必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

野村国務大臣 今、田村委員おっしゃいましたのはコストの方ですから、そうしますと、今度は逆に売上げの方でどうなっていくのか。特に、酪農の場合は毎日生乳を出荷しておりますから、生乳を何とか上げられないかということで、今、関東とそれから近畿が、生販連、いわゆる指定団体のところがメーカーと交渉いたしておりまして、近畿が二十円、それから関東が十五円上げてくれということで、価格転嫁といいますか、交渉ができるのは酪農の部門だけでありまして、今交渉をしているところでありまして、こういったような形で転嫁したものをメーカーと今、話合いを進めているというのが一点はあります。

 ですから、どのぐらいのところで価格が落ち着いていくのか分かりませんが、いずれにしても、十五円なり二十円を要望しておりますから、どこかのところでメーカーとの話合いができて、そして落ち着くところに落ち着くんだろうとは思いますが、いずれにしても、一方ではコストが上がってくる、そして、それはできるだけ国の方で抑えておく、そして一方では、特に酪農の場合は生乳価格を上げていくというのが、これは一つの農家に対する対策になっていくんだろう、こんなふうに思っております。

 ただ、ほかの、例えば牛にしたり豚にしたり、ここのところは今の市場価格にそのまま委ねておるわけでありますから、幸いにして、養豚もあるいは牛肉についてもまあまあの価格で今、枝価格が推移しておりますので、これをどうにか維持しながら今を耐えてほしい、こんな思いでございます。

田村(貴)委員 食料・農業・農村基本法の検証部会で中家徹全中会長がこのように述べておられます。

 農畜産物輸出は六千億円増えている一方で、輸入は二兆七千億円増えている、輸入の増加が国内農業生産を弱体化させていると。

 重要な指摘だと思います。

 農水省は、農業基本法検証部会で、食料・農業・農村をめぐる情勢の変化という資料を毎回配っておられます。輸入依存についての検証に当たる資料がほとんど見当たりません。なぜなんでしょうか。第一回検証部会で去年の九月二十九日の農政審の資料が出されただけであります。輸入自由化によって国内農業がどんな影響を受けて、そして毀損されてきたのか、こうした検証はしないんですか。それとも、これからやっていくのですか。ここは最も重要な論点だと思いますが、いかがでしょうか。

角田大臣政務官 TPPや日・EU・EPAにおいては、交渉の妥結時に関税削減等の国内生産への影響を分析をいたしました。その分析結果に基づき、必要な国内対策を実施をしているところです。

 TPPや日・EU・EPA等の協定発効後の輸入実態を見ると、発効前の二〇一八年と比べて、一時的に輸入量の増減が見られる品目はあるものの、主な品目の世界からの輸入量で大きな変化はないものと考えております。

 今後も更に協定の実施が続くところ、その輸入動向、国内生産への影響は引き続き注視していきたいと考えております。

田村(貴)委員 検証部会でしっかり検討していただきたいと思います。

 最後に、有明海再生について伺います。

 諫早湾干拓事業に係る福岡高裁の請求異議差戻し審判決に対して、三月二日、最高裁が上告棄却の決定を行いました。司法は行政による公共事業をチェックする役割があるにもかかわらず、国の主張を追認したものであり、私は全く不当な決定であると考えます。

 今日は、まず最初に農水省に基本的事項を確認したいと思うんですけれども、開門を命じた二〇一〇年の確定判決、開門確定判決は、これは無効になったということなんでしょうか。違いますよね。いかがですか。

青山政府参考人 お答えいたします。

 平成二十二年の確定判決は、確定判決として残っております。

 ですので、国は開門義務は負っておりますけれども、今回の請求異議訴訟で、開門しなかった場合の強制措置というか間接強制は許さないということになりまして、平成二十二年の開門義務は残っております。

田村(貴)委員 確認しました。

 そこで、野村大臣にお伺いします。

 「有明海の再生を願う皆様へ」とする大臣談話が三月二日に出されました。私も読ませていただきました。ここの中で、述べます。

 今後は、関係者の皆様が、平穏な環境の下で、積み重ねられた司法判断と最新の科学的知見に基づき、有明海の未来を見据えた話合いを行い、合意した有明海再生の方策を、協議して実施していくべきですとしています。

 一方で、国は、平成二十九年の農林水産大臣談話の趣旨を踏まえつつ、国、地方公共団体、漁業関係者、農業関係者等の関係者の話合いの場を設けるとしています。

 この平成二十九年の農林水産大臣談話というのは、開門によらない基金による和解を目指すことが本件の問題解決の最良の方策と考えます、こういうふうにされているわけです。

 大臣、ここはちょっと矛盾があるんですね。協議が大事だとおっしゃる、その入口で条件をつけていくおつもりなんでしょうか。これをまず答えてください。

 まずは、関係者が一堂に会してそれぞれの思いを伝え合う、その中から合意点を探求していく、これが協議というものではないでしょうか。平成二十九年の農林水産大臣談話、これを絶対条件とするならば、野村大臣がおっしゃる協議そのものが成り立たないのではないかと私は考えますけれども、いかがでしょうか。

野村国務大臣 私は今回大臣になったばかりで、今までのいきさつも読ませていただきますと、もう二十六年もたって、非常に、お互い、佐賀、長崎という形でいわば話合いも行われてこなかったということで、何とか今回の裁判を契機にしながら話合いを進めていただきたいというのが、この前の談話であります。

 ですから、そういう意味では、開門だ、閉門だということではなくて、どうしたら有明海を宝の海にしていけるのかという、私は率直な気持ちで申し上げたところでございまして、今委員がおっしゃいましたように、二十九年、この司法判断、国の判断基準といいますか、国の、大臣談話がそのときも出されたわけでありますけれども、その趣旨にやはりこれは国として、国としてというより、私としてもずっと引き継いできているわけですから、それはそれとして、今回、改めて談話を発表したということになろうかと思います。

田村(貴)委員 ちょっとよく分からないところがあるんですけれども、談話はまだ続くんです。

 平成二十二年の確定判決の勝訴原告であり、請求異議訴訟の相手方当事者でもある方々が、今回の最高裁の決定に対して、これは漁民のことですね、割り切れない思いを抱いておられることは、十分に理解できますと。

 大臣、ここまで、十分に理解できるとおっしゃっておられる。そうであるならば、協議の入口で条件をつけたらいけないと思います。それは事務方に引っ張られてもいけないと思うんです。ここは本当に大事なところだと思います。開門か閉門か、それもあるけれども、まずはやはり協議の入口に関係者が一堂に会することが大事じゃないか、門戸を狭めては私は駄目だと。ここは、今日はこれ以上言いませんので、大臣のイニシアチブを発揮していただきたいと思います。

 もう一点、大臣、二日のときの会見ですか、訴訟はおやめいただきたいというふうにおっしゃいました。この点について、これはやはりよくない発言だったなと思います。

 国民は、憲法三十二条によって、裁判を受ける権利を保障されています。そして、有明の漁業者は二十年以上にわたって筆舌に尽くせぬ不漁の被害に遭ってきたわけであります。干拓農地においても、これは農民ですね、冷害、食害、排水不良といったたくさんの問題があります。私もこの間確認してまいりました。行政行為によって不利益が生じて、そして解決できない場合に司直の判断に委ねるのは、これは当然の国民の権利であります。

 大臣にお伺いします。

 誰彼は問わず、被害の補償を要求する権利、裁判を受ける権利は失われていないと私は考えますけれども、いかがですか。

野村国務大臣 開門あるいは反対の立場にかかわらず、有明の再生については、早期の実現を願うのは同じ思いでありまして、今回の最高裁の決定を二十二年確定判決に係る本件紛争の一つの区切りとして、関係者一同が団結して豊かな海の再生に向けて取組を進められるよう努力してまいりたい、こういう気持ちで申し上げたところです。

田村(貴)委員 大臣、そこは違う。

 訴訟はおやめいただきたいというのは、国民の基本的権利、それから、これまでの経過からして当然やはり司直に訴えてきたんです、その権利はありますよね、否定されているものではないですねとお伺いしているんです。もう答弁原稿は要らぬですよ。大臣の思いで言ってください。

野村国務大臣 裁判を受ける権利は、おっしゃいましたように、憲法三十二条に定められておりまして、権利でありますから、何人も奪われないものと承知しております。

 ですから、それはもう委員がおっしゃるとおりだと思います。

田村(貴)委員 もう一つ、大臣、余計な一言があったんですよ。よかったと。もうよかったの一言だと、最高裁の決定について。これも、大臣としてはこういう発言をしては駄目なんですね。そのことがやはり間違いだったのではないかなと。後で感想を言ってください。

 それで、大臣、私は佐賀県庁にも行ってきたんだけれども、ノリですよ、ノリの不作。今見ますと、今漁期の生産状況なんですけれども、佐賀県、生産枚数は、六回の入札を経て六億三千万枚、これは通常なら十六億枚なんですね。生産金額、百三十三億四千万円、これは通常なら二百億円。枚数で五割、金額で七割、こんな状況です。まさに、もう大変危機的な状況です。

 農地についてもいろいろな問題がある。今から一生懸命解決しなければならない。課題はたくさんありますよね。だからこそ協議が必要だということだと思います。

 大臣の二日の発言も含めて、これからどうされるのか、最後におっしゃってください。

笹川委員長 恐縮ですが、簡潔にお願いいたします。

野村国務大臣 はい。

 大臣談話を発表する際に、マスコミの皆さんが、今のお気持ちはどうですかとおっしゃったものですから、ああ、これでよかったというのは、私の本音のところは、やはり一つの区切りになる、この裁判の結果が。そして、その後、関係者が協働して有明海を豊かな海に戻すという協議をしていただくということを考えての発言だったということを理解していただきたいというふうに思います。

 ですから、よかったという意味はそういう意味で、区切りが一つついたな、そういったようなことで、もう二十六年お互いに見合っているわけですから、早くこれを解決をしていかなければ両方にとってもよくないのではないか、こんなことを思った次第でございます。

田村(貴)委員 終わりますが、その一言が関係者の心を逆なでているということを指摘せざるを得ません。

 また議論します。終わります。

笹川委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 もう最後なので、あと一踏ん張り、よろしくお願いしたいと思います。

 私は食料安全保障について質問をしたいというふうに思います。

 私の問題意識をまず申し述べますと、非常に不幸なことですけれどもウクライナ戦争とかがあって、私は、国民もかなり、農村とか農業だけじゃなく、一般的にも食料安全保障に対する危機感というものが芽生えているというふうに思います。ですから、こういう中で、私は、やはり食料安全保障というものをできるだけ万全なものにしていくべきだというのが一つ。

 もう一つは、この機会に、必要な予算というものを獲得して、獲得するだけじゃなく、やはりこの疲弊している農業、中山間地域、こういったところを、本当にそこで生活ができるような、そういう体制というものを本格的に構築すべきだというふうに問題意識として持っています。

 ただ、この食料安全保障というと、私も分かったようなつもりで、ずっと二十年来、政治を志してからこれを地元で訴えているんですが、農水省の職員と議論をしていくと、だんだん分からなくなるような、分かったようで分からないような、そういう概念だなという気がしております。

 そこで、やはり法律に戻って、食料・農業・農村基本法に掲げている食料安全保障の定義というのはどういうものなのか、教えていただきたいと思います。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 現行基本法におきまして食料安全保障という用語が使われている場面でございますけれども、凶作や輸入の途絶など不測の要因によって国内需給が逼迫又はそのおそれがある場合にも、国民が最低限度必要とする食料の供給が図られなければならないという観点から、基本法第十九条において、不測時における食料安全保障に関する条文が規定をされております。

北神委員 ありがとうございます。

 基本法の十九条に書いてあって、表題だけ食料安全保障と書いてあると。逼迫、輸入とかが全く途絶したときに国民に最低限の生活ができるような食料を確保する、意訳をするとそういうことだというふうに思います。

 これはそのとおりなんですけれども、例えば、大臣の所信表明を読みますと、ウクライナ戦争とかあるいは世界の人口増でいわゆる需要が増大している、こういうことに対して食料安全保障を確保しないといけないと。これは、ある意味では、私の理解では、今の十九条の話ではなくて、第二条の方の平時の安定供給の話だというふうに理解しています。

 これは言葉の話なので別にいいんですけれども、多分、大臣も理解していただけると思いますけれども、一般の国民が今特に気にしているのは、もちろん農家の方は飼料、肥料の高騰で非常に困っている、これはこれでしっかり対応しないといけない。しかし、一般の国民が危機を覚えているのは、このウクライナ戦争もそうですけれども、台湾有事とかそういったときがあったときに、もちろん全ての輸入ルートが閉ざされるかどうかは分かりませんけれども、食料がなかなか入ってこない、こういったときに、今の話、最低限国民が生活するぐらいの食料がちゃんと手に入るのか、もっと言うと、国産の食料というものがちゃんと食べられるのか、これが多分みんなの一般の意識で、私も、食料安全保障の厳密な定義としてはそこがすごく大事で、十九条はそのとおりだと思うんですが、ただ、あれでは抽象的なので、やはりもう少し具体的な議論をしていかないといけないというふうに思います。

 二点目は、いわゆる不測時の食料安全保障においては、大事なのは、国産の、いわゆる農業の生産基盤の拡大、増強、それからもう一つは、輸入ですね、輸入をできるだけ多角化する、さらには備蓄ということです。

 やはり、本当に厳しいシナリオを考える。厳しいシナリオはやはり危機管理上大事だと思うんです。一番厳しいシナリオでできるだけ対応できるような体制をつくって、あと、現実にはそれよりも緩いものであればそれなりに対応できますので、それが大事だと思うので、例えば、全く輸入が入ってこなくなる、そういったときに備蓄があると思いますけれども、これで大体どのぐらい対応できるんですか。

杉中政府参考人 お答えいたします。

 備蓄については、基本法の検証部会でも議論しておりますけれども、現行の備蓄制度につきましては、自給している米につきまして、不作による生産量の減少により供給が不足する場合に対処できる水準として約百万トン、あと、多くを輸入に依存している食糧用小麦や飼料穀物につきまして、代替輸入に必要な期間を踏まえた水準として、それぞれ約九十万トン、約百万トンを備蓄をしております。

北神委員 これでは、正確には分かりませんけれども、半年とかそのぐらい、備蓄だけ見ると、そのぐらいの食料ぐらい確保できるかなと。答えなくていいですけれども、そんなに、これだけでは不十分だ、当たり前の話ですけれども、備蓄だけですから。だから一時的なものだと。こういうことになると、大臣所信でもおっしゃっていますが、やはり国内の生産力というものを今から増強していかないといけない。これがずっと、どんどん落ち込んでいるわけですから、何とか歯止めをかけて、そして、更に増強しないといけない。

 でも、先ほど、食料自給率というのは、余り、どうでもいいという話もありましたが、私も、食料自給率というのは指標としていろいろな問題点があるというのは理解しております。分母が消費量で、分子が生産量で、それから、分母の方で、例えば消費量が下がったら食料自給率は上がるとか、そういったいろいろな問題点があるのはよく分かっています。

 ただ、やはり明確な指標がないと国内の農業基盤というものを拡大する旗がないというか、そういう意味ではやはり食料自給率というのは非常に重要だと。ただ漠然と、食料自給率を上げるという話ではなくて、やはり品目別に。

 不測の事態に当たってやはり大事なのは、エネルギー量の高い、熱量の高い、小麦とか、いわゆる穀物、こういったところの自給率が非常に大事だというふうに思っていますけれども、農林水産省の認識ではどの部分がまだまだ自給率が足りないと、品目別にお答えいただきたいと思います。

杉中政府参考人 まず、主要な穀物の自給率でございますけれども、米は九八%ですけれども、小麦は一七%、大麦、裸麦は一二%、大豆は七%、穀物としてのトウモロコシは一%未満となっております。

 今、輸入リスクというのが高まっている中で、需要が高い小麦、大豆、飼料穀物等については、国内で作れるものは作るという形で生産を拡大していく必要があるというふうに認識しております。

北神委員 お米はそれなりの自給率があるけれども、それ以外の穀物についてはかなり厳しい状況だというふうに理解しました。

 品目別を足し合わせたのが全体の食料自給率なんですが、これについても、先ほども話がありましたけれども、二〇〇〇年から二十年間、五年ごとに、四五%、四〇、まあ、一回五〇%というのもありましたけれども、全然達成できていない。これをずっと続ければ続けるほど、恐らく、大臣も余り食料自給率について言いたくない、あるいは農林水産省として言いたくないのは、こんなに目標を何回も掲げて、何回も、達成するどころか、逆に下がっている、こんなのでは全く士気が下がってしまうということだと思いますけれども、なぜ上がってこなかったのか、なぜ上げられなかったのか、この辺の総括というものをしなければいけないというふうに思いますけれども、この辺について、いかがでしょうか。

野中副大臣 食料・農業・農村基本計画で四五%に目標を設定しておりますが、近年、大体三八%前後で推移をしております。

 要因としましては、増加分については、小麦、大豆等の生産量が増えてきた。一方、押し下げの要因となっているのは、やはり、米の年間消費量が約十万トンずつ減っている、減少しているということが要因でありまして、トータルして大体三八%前後で推移しているという現状であります。

北神委員 つまり、先ほど申し上げた、食料自給率というのは分母と分子でできていて、その分母の消費量、お米の部分がかなり下がってきて、あっ、下がってきているということですね、それで食料自給率が上がっていると。ちょっと今、理解できなかった。もう一回お願いします。

野中副大臣 米の消費量が毎年年間約十万トンずつ減っているということであります。

北神委員 そうしたら、自給率は上がるはずですよね、分母が下がって。それ以上に生産量が下がっているということでよろしいんですか。(野中副大臣「生産量が」と呼ぶ)生産量が下がっている。はい、分かりました。そこが食料自給率というのは非常に難しい概念だと思います。

 これは私の意見ですけれども、不測の事態、輸入が途絶えたときに大事なのは、皆さんが掲げているもう一つの指標で、食料自給力、これは食料自給率の分子の部分ですね。大臣が所信でおっしゃっている、生産基盤、農地、それから農業技術、あるいは農業従事者の数、こういったものを確保することが非常に大事だと。

 これは、農地なんかはもう六百万ヘクタールから今四百万ヘクタールに落ち込んでいますし、農業の従事者は大体平均年齢が七十歳近くになり、二十年来もうずっと減ってきている。だから、これではなかなか不測時には対応できないということで、もう時間がないので、簡単に言うと、やはり、お分かりのとおり、農業をやればやるほど赤字が生じてしまう、これがほとんどの、一部を除いて、ほとんどの農家の嘆きです。

 だから、やはり、所得補償がいいのか、いろいろ議論はあると思いますけれども、ただ、今回、予算をいろいろ確保して、既存の予算を拡充するだけではとても構造的な転換はできないと私は思っていますので、やはり本格的に、農業によってそれなりの生活が成り立つような、そういった仕組みをこの機に考えるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

野村国務大臣 今委員おっしゃいましたけれども、我が国においては、既に、先ほど来数字も出ましたが、麦、大豆の生産者に対する畑作物の直接支払い金、これは、まだ自給率は非常に低いんですけれども、直接支払交付金で何とか農家の皆さん方に麦や大豆を作っていただきたいということでやっておりますし、それから、米は毎年十万トンずつ消費が減っているということもありまして、それで、ほかのものを作ってもらおうということで、水田活用の直接支払交付金、こういったような、いろいろな対策を打ちながら、農業者に対する直接支払いを行っているところでございます。

 さらには、ナラシ対策や収入保険等でもセーフティーネットを構築しながら農家の経営安定も図り、そして、生産基盤をしっかりと支えていかなければいけない、こういう考え方で今進めているところでございまして、そのことが、結果的に、必要な自給率の確保ができていくのではないか、こんなふうに思っています。

北神委員 ただ、おっしゃっている政策で、ずっと自給率は上がってきていないというのが現実ですね。だから、そういう意味で、これは時間がないのでまた議論を続けていきたいと思いますけれども、そういうところをやはり工夫していくことが食料安全保障の確立につながるというふうに思っています。

 我々も、やはり予算が非常に大事だというふうに思っていますので、そういったところも全力で協力をしてまいりたいというふうに思っていますので、よろしくお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次回は、来る十四日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四分散会


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