衆議院

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第4号 令和5年3月15日(水曜日)

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令和五年三月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 笹川 博義君

   理事 あべ 俊子君 理事 武部  新君

   理事 若林 健太君 理事 渡辺 孝一君

   理事 近藤 和也君 理事 緑川 貴士君

   理事 足立 康史君 理事 庄子 賢一君

      東  国幹君    五十嵐 清君

      伊東 良孝君    泉田 裕彦君

      上田 英俊君    江藤  拓君

      加藤 竜祥君    神田 潤一君

      小寺 裕雄君    坂本 哲志君

      高鳥 修一君    橘 慶一郎君

      中曽根康隆君    西野 太亮君

      平沼正二郎君    細田 健一君

      宮下 一郎君    保岡 宏武君

      山口  晋君    梅谷  守君

      金子 恵美君    神谷  裕君

      小山 展弘君    佐藤 公治君

      山田 勝彦君    渡辺  創君

      池畑浩太朗君    掘井 健智君

      稲津  久君    角田 秀穂君

      山崎 正恭君    長友 慎治君

      田村 貴昭君    北神 圭朗君

      仁木 博文君

    …………………………………

   農林水産大臣       野村 哲郎君

   財務副大臣        秋野 公造君

   農林水産副大臣      野中  厚君

   農林水産大臣政務官    角田 秀穂君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           奥  達雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         高橋 孝雄君

   政府参考人

   (水産庁長官)      神谷  崇君

   政府参考人

   (水産庁次長)      安東  隆君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術参事官)         遠藤 仁彦君

   農林水産委員会専門員   飯野 伸夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十五日

 辞任         補欠選任

  上田 英俊君     橘 慶一郎君

  宮路 拓馬君     中曽根康隆君

  金子 恵美君     神谷  裕君

  稲津  久君     山崎 正恭君

  北神 圭朗君     仁木 博文君

同日

 辞任         補欠選任

  橘 慶一郎君     上田 英俊君

  中曽根康隆君     宮路 拓馬君

  神谷  裕君     金子 恵美君

  山崎 正恭君     稲津  久君

  仁木 博文君     北神 圭朗君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――

笹川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官高橋孝雄君、水産庁長官神谷崇君、水産庁次長安東隆君、財務省大臣官房総括審議官奥達雄君、国土交通省大臣官房技術参事官遠藤仁彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。緑川貴士君。

緑川委員 皆様、おはようございます。立憲民主党・無所属の緑川貴士です。

 野村大臣、そして役所の皆様、本日は衆参双方で審議がいろいろと忙しい中でまた御審議いただくことを、感謝を申し上げたいというふうに思います。今日はよろしくお願いいたします。

 議題となっているのは、日本政策金融公庫の貸付業務の特例として、水産加工業者が製造加工施設を整備した場合などに長期で低利の資金の貸付けを受けることができる、その期限を五年延長する法改正であります。

 加工原料にしていた水産物が、例えば、今、中国など旺盛な需要のある国に買い負けをしてしまって輸入物が確保できない、あるいは国内産でも水揚げ量が減って確保ができない、そうした場合などには、原料をほかの水産物に切り替えて、それに対応した施設整備を低利融資で後押しをするということには私は意義があるというふうに思っていますが、一方で、この融資の対象である魚種というものが限られています。

 それを選んでいる基準、そして、その基準を設けているのはなぜなんでしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産加工資金につきましては、指定水産動植物については全国の生産量、未利用又は利用の程度が低い水産動植物につきましては県別の生産量及び全国の産出額を勘案して、その対象となる種を選定しております。

 これは、相当量が利用されている指定水産動植物を原材料とする水産加工品の製造などを促進し、水産加工品の安定供給を図るとともに、未利用又は利用の程度が低い水産動植物を原材料とする水産加工品の製造などを促進し、水産資源の有効な利用の促進を図るという目的を背景とするものでございます。

緑川委員 今、神谷長官からおっしゃっていただいた、水産加工品の安定的な供給、それに資するというお話がございました。

 まず、全体の話としては、水産庁が今資源評価しているのは、その魚は百九十二種あります。今回の法改正で、今の、現行制度の対象魚種になっているのは、多獲性の魚種、あるいは低利用、未利用の魚種、合わせて三十一種類であるというふうに伺っております。つまり、百九十二のうちの三十一の種類ということで、極めて限定的な、一部の対象魚種になっていると言わざるを得ないですし、水産加工品の安定的な供給に資するという観点からは、むしろ、様々な水産物を加工できるように資金を活用できる、そんな制度の方が私は望ましいというふうに思います。

 制度の対象は、水産庁の言う相当程度の生産量、あるいは低・未利用魚種なら都道府県別に見て遜色のない生産量のある魚種、これは五年ごとに、法改正ごとにその対象というものは、一部なんですけれども、変わってまいりました。この対象魚種とするかどうかについては、これは水産庁のみだけで最終的に決めるのではなくて、財務省との、省庁間の協議で決まるということで、この関係している財務省にもお尋ねをしたいと思います。

 コスト対策として加工原料の切替え、あるいは、今、気候変動、海洋の変動なども指摘されている中で、これまで捕れていた魚が捕れなくなっている、一方で、これまで捕れなかった魚が最近は捕れるようになっている。そういう、場合によっては対象になっていないような魚を加工原料として切り替えるための施設整備の需要があると思いますし、これからも出てくると思います。

 その原料の切替えが柔軟にできるように、余り対象をこの時点で限定せずに、選択肢を広く持っておく必要性について、どのようにお考えでしょうか。

秋野副大臣 日本公庫の貸付制度の見直しに当たっては、まずは制度所管省庁において政策的必要性等の観点からその改正内容を検討して、私たち財務省に対して要求をするということになってございます。

 財務省においては、その要求を踏まえて、民業補完性や、必要な貸付財源、金利引下げ財源が確保されるかといった観点から、貸付制度の改正が適当かどうかの確認を行っているところであります。

 その上で、御指摘の、日本公庫の水産加工資金につきましては、令和五年度貸付条件改定の要求において、水産庁との協議を経て、加工材料指定魚種の一部拡充を含めた見直しを、要求どおり認めているところでございます。

 財務省としては、今後とも、貸付制度の見直しの要求があった場合には、適切に検討してまいりたいと考えてございます。

緑川委員 財務省に引き続き問いたいと思うんですけれども、水産庁の、よく担当の方ともお話をしますと、これはできるなら、やはり今、三十一の魚種しかないわけなんですね、現行では。これまでも、そのぐらいの規模でしか対象というものは決まっていませんでした。ただ、よくよくお話をすると、この対象魚種というのは本当はもっと広げていきたいというのが本音なんだ、ただ、それを出すことができない、協議の中では財務省から一定のラインを求められるんだ、こういうお話もあるんですけれども、財務省として、これはどのように捉えていらっしゃいますか。

秋野副大臣 農水省、水産庁から具体的な御相談をいただいた場合には、制度の趣旨などに照らして、関係当局でよく相談をしてまいりたいと存じます。

緑川委員 まずは、この協議の中で、今回の法律に直接一義的に責任を持つのは水産庁でありますけれども、やはり水産庁でまずは決めていただくというようなスタンスで財務省の方はお話をされますけれども、例えば、水産庁が様々な、これからいろいろな気候変動とか、あるいは魚種が、取れ高が上がっていないものを、一方で捕れるようになっている魚もやはり重視したい。様々な魚種を確認した上で、財務省とのルールの中での基準に照らして、これは対象を広げても問題ないんだということに対して、財務省はそれを尊重して、その意思を、決定を曲げずに、そこは協議の中で進めていくという認識でよろしいですか。

秋野副大臣 指定基準及びそれに照らしてどの魚種を指定するべきかについては、水産庁で検討するべきものでございまして、それ自体について財務省が協議を受けているものではございません。

 その意味では、先ほど申し上げたとおりでございますけれども、農水省、水産庁から具体的な相談をいただいた場合には、制度の趣旨などに照らして、関係当局でよく相談をしていきたいと思います。

緑川委員 例えば、一つの協議の中のルールとしてお話を聞いたのは、今回の改正の中で、次の対象魚種を選ぶというお話の中で、今、直近の生産量ということを基準にすると。それは、過去五年間、直近の五年間、例えば今回でいえば二〇一六年から二〇二〇年の間の生産量の平均を取って、それと、二〇一八年時点で過去の基準も踏まえたもの、その基準と比較をして、それで生産量の平均が下回っていれば対象から外れるし、それが上回っていれば対象から引き続き継続ということになっていくということを伺いましたが、そのルールの下で進んでいるということでよろしいですか。

秋野副大臣 繰り返しになりますけれども、農水省や水産庁から具体的な相談をいただいた場合に、制度の趣旨などに照らして、関係当局でよく相談をしていきます。

緑川委員 同じような繰り返しの御答弁で時間を進めるわけにはいかないんですが。

 例えば、今お配りしている資料を御覧いただきたいんですが、対象魚種の一つのハタハタの生産量を見ていただきたいんですけれども、現行制度の対象になっているハタハタなんですけれども、特に資料の二枚目の、2の方の、西日本を中心に分布しているハタハタの西部系群の方が分かりやすいんですが、五年間という期間で見たときに、皆さん御覧いただきたいんですけれども、多く捕れている年とそうでない年には結構なばらつきがあるわけですよね。漁獲が相当多い年もあるのに、その平均を取った結果、ぎりぎり基準に達していないからといって、平均を取ったばかりに、仮に対象から外れるということになるとすれば、やはり不合理な線引きではないかというふうに考えてしまいます。

 魚種の線引きが求められている。やはり、対象を、極端な話、全部これを対象にするわけにはいかないという水産庁の苦渋の基準、そういう線引きのように見えるわけなんですね。これといった基準をつくれない、でも、理由づけをやはりしていかなければ、なかなか認めてもらえない、協議というものがあるんだ、こういう、水産庁の、ある種、悩ましさというものを感じているわけであります。

 水産庁の神谷長官にもお伺いをしたいと思いますが、現行制度のこの五年間では、融資の実績を見ると、件数、そして貸付けの額共に、過去よりも下がる傾向にあります。コロナ禍で資金繰りが悪化をしている、施設整備の余力がないといったことも要因になっているということですから、当然、融資の利用が今回なかった魚種、そんな魚種もあるわけなんですね。

 ただ、本当はコロナがなければ活用したかった、コロナの影響があったから今回は見送ったというケースが当然にあると思います。五年間で利用がなかったからといって、やはりこの基準を基に除外をせずに維持しておくべきでありますし、対象を維持したり広げること自体に予算がかかるというわけではないと思います。

 融資の一件一件も、これを見ると、一億円を超えるような大口のものばかりではありません。中小の水産加工業者の、そうした支援をするための融資であります。既存の施設を改良する際に、少額の設備投資でも対応できる場合があると思います。低利の対象を広げれば、少額の施設整備の細かい需要も喚起することができる。この対象をもっと広げれば、それだけ間口も広がるわけですから、利用したい方がそれだけ増えていく傾向に持っていけるというふうに思います。

 現場のきめ細やかなニーズにも対応していく、そういう観点で、この対象魚種を広げる方向で、長官、この協議に臨んでいただきたいというふうに思っていますが、いかがでしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産加工資金法は、委員も御承知のように、二百海里水域の設定に伴う水産加工品の原材料の供給事情の著しい変化に対応し、水産加工品の安定的な供給を確保するための臨時措置として創設されたものでございまして、本法が政策金融のいわば深掘り的措置であることに鑑みますと、政策的優先度が高いと認められる範囲の魚種を対象としてきたところでございます。

 一方、水産加工資金では、五年間の期間内に最大限の効果を上げるために、臨機応変に貸付条件を見直せるよう、具体的な内容は政令以下で定める仕組みとなっておりますので、加工原料の多様化などの状況に応じて、対象魚種についても随時検討してまいります。

緑川委員 やはり、この五年を見ると、特にコロナという特殊な事情があるにせよ、この五年間で見た場合には、貸付けの実績というものは下がっている。つまり、貸し付けられる余力というものも、ゆとりがあることも踏まえて、次の協議にしっかりと、まず水産庁として、加工業者の支援、しっかりときめ細かいニーズに対応するという御認識、そうした意識で、僭越ですけれども、しっかりと臨んでいただきたいというふうに思っております。

 時間がありませんので、残りの質疑もしっかりお話を聞きたいと思っております。

 水産庁としては全魚種を対象にしたいという、その思いが私は本音であるというふうに思っております。何といっても、食用の魚介類の七割という、消費の七割が水産加工に向けられているわけですから、水産物の付加価値を高めるという加工業、非常に重要なものであるというふうに捉えております。水産物の付加価値をやはり高めるために、そして低利融資の対象魚種は広く取っておいて、どの魚種を活用していくか、厳しい線引きをせずに、中小の現場をお支えいただきたいというふうに思います。

 現場で確保できる加工原料となる水産物は、やはり海水温の近年の上昇、周期的な資源変動、いわゆるレジームシフトというような環境的な要因であったり、あるいは、小さな魚、市場に出回らないような、市場価値が低い間に捕ってしまう、そうしたことで環境にも影響を与えてしまう、いわゆる成長乱獲といった人為的な要因なども、様々、資源量の減少については指摘をされていますが、こうした、複合的に影響して水揚げ量が安定しない、その時々で手に入りやすい加工原料というものをやはり多様化する、多様化していくという視点で考えていかなければならないというふうに思います。

 例えば、加工施設を見ても、これは魚種ごとにやはり細かい施設というものがあります。ただ、これからを考えると、なるべくコストをかけないでシンプルに、一つの製造加工施設だけでなるべく収まるように、多くの種類の魚を処理できるような施設に整備していくという視点も大切だと思います。

 魚を例えば三枚に下ろすフィレマシンというものがありますが、中型から大型サイズの魚、タイ、ブリ、カツオ、マダラなどを一括で処理できるタイプがあります。そういう、魚の大きさや形状が変わっても、人の調整なしで的確に対応していく、魚の骨を、中骨を自動的に取って三枚に下ろす、しかも、さばくごとに刃物はすぐに洗浄される、ですので、洗う手間がない、人が一々洗う必要がないということで、導入経費はかかっても省力化することができる。作業のコストを抑えれば、しっかり元は取れるというふうに思います。

 こういう施設整備を促していくということが今後の水産加工経営の安定につながっていくというふうに考えていますが、御見解はいかがでしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産加工業におきましては、加工原材料である魚種ごとに、利用できる加工機器が異なるのが一般的ではございますが、一部の機器によっては、複数魚種に対応可能なものもございます。

 水産加工資金においては、水産加工業者が行う新商品の開発や、原材料の転換などを行う場合に、施設整備などに対して融資を行っており、具体的には、サバ、イワシを加工する、委員も御指摘されましたフィレマシンや、アジ、イワシの選別機などについても融資実績がございます。

 今後とも、加工施設の技術の進歩に応じて、水産加工業者が必要とする施設の導入を支援してまいる所存でございます。

緑川委員 水産加工計画、水産計画の中にも、そうした原料の切替えに伴う様々な機械、設備に対する導入などもあるというふうに聞いております。この様々な事業も活用して、そして周知が大切だと思います。この長きにわたる水産加工融資法についても、まだまだそれが認知されていないという部分もあると思いますから、やはり水産加工に係る様々な制度をもう少し分かりやすく現場の方に、例えば原材料の切替え、多様化についてはこういうメニューがありますというような形で、是非、現場に分かりやすく御説明、お知らせをいただきたいというふうに思っております。せっかくの事業が、予算執行率が悪ければもったいないことだというふうに思っておりますので、是非進めていただきたいというふうに思います。

 ハタハタの質問ということをちょっと考えておるんですが、その前に、非食用の水産加工品として、今、養殖魚向けの飼料というものがあります。養殖魚の餌の一つに配合飼料があるんですが、これは魚粉などだけではないんですね、様々なものが飼料として使われています。魚粉に代わる、また飼料原料が多くなっているものとして、大豆やトウモロコシ、菜種といった植物性の原料のほか、鳥肉とか、また鶏の羽根なども原料とした配合飼料などもあります。魚粉が値上がりをしている状況の中で、やはり業者としては可能な限り魚粉の割合を少なくしたいと、こういう極力魚粉を使わない、低魚粉の飼料を作っているところもあります。

 そこで、水産加工というのは、やはり水産物を使ったものでありますから、これが、原料がどのぐらいの割合まで使われれば水産加工なのか、あるいは、魚粉が一%でも入っていれば水産加工と言えるのか、そういう基準が非常に曖昧になってきている部分があると思います。その基準は、いかがお考えでしょうか。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思いますが、今御質問のありました、どのぐらいの含有率によるものかという御質問だと思いますが、法令上は、食用、非食用を含め、原材料となる水産動植物の含有率に係る規定はございません。

 一方で、例えば水産動植物の含有率が相当程度に低い場合等には、製品の実態を総合的に判断して、社会通念上、水産加工品に該当するか否かについて、これは公庫の方で判断をしていくということになろうかと思います。

緑川委員 要は明確なものがないということで、水産庁からもお話を聞いても、社会通念上とか常識的な範囲でということで、今や常識にとらわれない餌づくりというものもやはりあるわけなんですね。養殖魚に与える飼料の需要というものは、今や養殖業は漁業生産額の四割を占めておりますから、その需要はますます高まっていきます。地域に根差していく、そういう中小の加工現場の取組、知恵を絞る、いろいろな原料を使うことは大事ですけれども、水産加工という基準は明確にしておくべきではないかと思いますので、御検討をお願いしたいと思います。

 ハタハタの資源量に対する国の認識についてお伺いしたいと思いますが、資料を再びまた御覧をいただきます。

 大まかには、資料の1が青森から富山沖までの沿岸五県の北日本を中心とする北部系群です。資料の2は石川から島根までの沿岸六県の西日本を中心とする西部系群、この二つに区分されています。

 漁獲量なんですが、例えば資料1の、私の地元秋田は赤い棒グラフなんですが、北部系群の主産地です。一九六〇年代に、御覧になるように二万トン余りを記録したんですが、グラフのように、七〇年代後半には一万トンを割り込んで、それから急速に減って、九一年には過去最低の、桁違いです、七十一トンにまで落ち込みました。資源が枯渇しないように、県としては、その翌年の九二年から三年間、漁業者が自主的に全面禁漁に踏み切りました。解禁後は、漁獲量に上限を定めて資源管理に取り組んで、しばらくは回復傾向にありましたが、再び、近年、減少が加速して、一千トンを割り込んだかと思えば、その後、六百トン、四百トン、そしてこの冬は二百トンにも届かず、禁漁明けの九五年に次ぐ記録的な不漁となりました。

 やはり漁業者の高齢化もあって、ハタハタを捕る網の数自体が減っているということで、これまでの漁獲規制を見直して、操業日数で漁獲を管理する入口規制に切り替えたりとか、あるいは、幼魚を逃がして中型以上のハタハタを効率よく捕るために、定置網や底引き網の網の目を広げる漁具の改良なども進めてきたんですが、資源に配慮して抑制的に設定している漁獲目標にさえ届かない、そんな数字が続いています。

 国の資源評価では、北部系群は資源水準が低位で、資源の回復状況が横ばいというふうに評価していますが、主産地である秋田の漁獲状況も踏まえて、この資源が低水準で、なかなか回復が進んでいないとする要因、水産庁としてどのようにお考えでしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 委員からの配付資料の1にございますように、一九七〇年代後半からの急激な漁獲の落ち込みというのは、明らかに過剰漁獲によるものであったと認識しております。

 一方で、二〇一〇年以降の漁獲の落ち込みでございますが、これは様々な要因が考えられますし、今の努力量規制というのが適切なのかどうかというのも、もう一度判断してみないといけないところではありますが、一つ、最近の兆候として出ておりますのは、日本海のハタハタ資源というのは、元々水深十メートルぐらいの浅いところで産卵するわけでございますが、これが最近、水深が百五十とか二百メートル程度の深いところでしか産卵しないような事例も生じております。

 そういった、本来、産卵場でない場所で産卵するようなことが起こりまして、秋田県の水産振興センターによりますと、調査で採集される稚魚の数が非常に減少しているというような結果も得られておりますので、海洋環境の変化というものが稚魚の生き残りに悪影響を及ぼしている可能性も指摘されております。

緑川委員 やはり長年の漁獲の中でも、明らかになってきている科学的な分析というものが出てきているわけですね。それに応じた対応というものが求められると思いますし、国としてやはり考えていかなければならない。

 一歳から二歳のときに広く回遊して、秋田県の沿岸で生まれた魚の一部が兵庫や鳥取でも漁獲されていると言われていますし、北部系群のハタハタでも、島根の隠岐諸島付近まで回遊しているといった研究成果も発表されています。こうしたことを考えると、一つの県だけで資源管理に取り組むというのは非常に難しいです。二十五年以上にわたって独自の枠組みをつくって、県、漁業者共に思いを持って管理してきた魚でありますが、今、厳しい現状にあります。

 この複数の県をまたぐ魚ということを考えて、国が主導して、資源全体をカバーできるように規制の枠組みを考えていく時期に来ているのかというふうに思いますが、大臣、最後に御所見を伺いたいと思います。

野村国務大臣 委員から御提出の資料を見ますと、本当にもう激減しているという状況でございまして、今お話のありました資源管理措置をやっておりますのは関係四県で、あと、ほかの県に回遊しているということになっていくんだろうと思いますが、こういったようなことを、関係の行政機関あるいは試験研究機関等とも十分検討させていただきたいと思います。

緑川委員 御答弁ありがとうございました。

 また議論させていただきます。

笹川委員長 次に、山田勝彦君。

山田(勝)委員 立憲民主党、長崎二区の山田勝彦です。どうぞよろしくお願いいたします。

 水産加工業施設改良資金融通臨時措置法、現状の厳しい水産現場の状況から、引き続き、水産加工業者向け、長期の、そして低金利の融資が継続されるのは当然であろうという私も立場です。

 その上で、昭和五十三年から融資実績があるようですが、そもそも、なぜこの融資制度は始まったのでしょうか。お答えください。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産加工資金法は、国連海洋法条約の設定に伴う二百海里水域の設立によりまして、日本漁船が外国水域から締め出されるという事情が生じ、水産加工品の原材料の供給事情の著しい変化が生じ、これに対応するために、魚種転換などに伴う設備投資を支援し、水産加工品の安定的な供給を確保するために、昭和五十二年に臨時措置として創設された経緯でございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 水産庁の資料によれば、水産加工業者の皆様が直面している課題、原材料の確保が困難、六八・二%、売上高、利益率の低下、六四・五%が挙げられています。問題の本質は、水産加工業者の皆様の経営状況が大変厳しい、そういう状況に置かれているということだと思っております。

 資料一を御覧ください。

 漁業生産量、約四十年前のピーク時から三分の一ほど、現在激減しています。さらに、漁業就業者も御覧のとおり大幅に減少しています。地方や島の基幹産業である漁業の担い手が不足しており、地方や島の人口減少が加速している大きな要因となっています。海洋国家日本にとっても、漁業の衰退は深刻な状況であると受け止めるべきだと考えます。

 野村大臣、なぜ我が国の漁業はこのような状況に陥ってしまっているのでしょうか。

野村国務大臣 お答えを申し上げたいと思います。

 今、漁業生産量の減少はなぜか、こういった御質問だったと思いますが、一つは、各国の排他的経済水域の設定による我が国漁船の操業可能な海外漁場の縮小が一つございます。

 それから二つ目は、マイワシの漁獲量の大幅な減少、これは、ピーク時にはマイワシだけで四百万トンを超えていた時代もあるわけでありますが、現在、二〇二一年で漁獲の総量が四百二十万トンですから、マイワシだけでもこんなにも減ったということが二つ目であります。

 それから三つ目は、地球温暖化等を背景にした海洋環境の変化が挙げられる、こんなふうに分析をしているところでございます。

 もう一方の、漁業就業者の人口でありますけれども、これは、漁獲量ピーク時の四十三万九千人から、二一年には十二万九千人で、七一%の減少になっているところでございます。

 漁業就業者の減少の要因につきましては、委員ももう御承知のとおりだと思いますが、先ほどの、生産量の減少に伴う産業規模の縮小がまず一つ挙げられます。それからもう一つは、急激な少子化、少子高齢化の進展に伴います若年就業者の減少、それからもう一つは、高齢者のリタイア、これは農業ほどじゃないんですけれども、漁業者のリタイアということが言われると思います。

 我が国の漁業が持続的に発展していくためには、水産資源の適切な管理と利用を確保するとともに、さらに、新規就業者の確保とその定着を図ることが重要だという認識は十分いたしておりますので、資源管理の徹底と、それからもう一つは、経営体育成総合支援事業などによります漁業就業者の確保を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 二百海里、そしてマイワシ、こういった要因も確かにあろうと思います。しかし、本質的な理由ではない。海の環境や生態系に大きな影響を与えているのは、大臣もおっしゃいました温暖化、そして、いそ焼けです。海の中の海藻が極端に減少し、海が砂漠化してしまういそ焼けと呼ばれる異常現象、サザエもアワビもイカも小魚も、海藻あってこそ豊かに繁殖できるものです。明らかにいそ焼けにより、かつての宝の海が激変してしまいました。

 私の地元対馬で長年水産加工業を営み続けている株式会社うえはらの上原社長が、こう教えてくれました。イカがいなくなり、ヒジキも減った、アワビやサザエが全く捕れなくなった、海藻を餌とするウニには身が入っていない、加工用の原料を調達するのが困難な理由はいそ焼けであり、豊かな海を取り戻すために最も必要なこともいそ焼け対策であると。

 このように、全国各地の海に深刻な影響を与え続けているいそ焼けの原因を水産庁はどのように分析し、そして、これまでにどのような対策を取られてきたのでしょうか。お答えください。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣も申されましたように、現在、我が国の漁業生産量は、かつての一千二百万トンから四百二十万トンまで、非常に大きく減少しております。そういった中で、いそ焼けという対策も非常に重要でございますが、いそ焼けは、食害生物、海水温の上昇など、様々な要因によって藻場が衰退する現象でございます。実効性のあるいそ焼け対策を実施するためには、海域ごとに衰退要因を把握し、適切な対策を講じることが重要と認識しております。

 このため、各都道府県におきまして、藻場の衰退要因や対策を盛り込んだ藻場ビジョンというものを策定いたしまして、対策として、海藻が付着しやすい基質の設置や、母藻、基となる親の海藻の設置など、ハード、ソフト一体的な取組を進めておるところでございます。

 また、各地の取組事例を踏まえ、磯焼け対策ガイドラインを作成するとともに、磯焼け対策全国協議会を毎年開催し、各地域における最新の取組などの情報共有を図っているところでございます。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 その磯焼け対策ガイドラインで、優良事例として対馬市の取組が紹介されています。資料二を御覧ください。いそ焼けの食害魚の資源化に向けた島内流通及び加工、販売を行う丸徳水産の取組です。

 この取組が画期的なのは、これまで廃棄されるしかなかった食害魚をおいしい食材に変えた商品開発です。まさに食べるいそ焼け対策。食害魚を新たな資源とし、漁獲から流通の仕組みをつくるため、地元の漁協や物流業者、水産加工業者との連携体制を構築し、地元のスーパーや学校、老人ホームの給食に提供しています。

 実は、先月、対馬で、この丸徳水産の船に直接乗って、いそ焼けの現場を視察してきました。対馬の海を何十年も潜り続けている丸徳水産の犬束社長に、いそ焼けの原因を伺いました。温暖化による水温の上昇が原因だ、三十年前から海藻を食べるイスズミは存在していた、しかし冬はいなくなっていた、十五年くらい前から温暖化の影響で一年中イスズミがいるようになり、そのイスズミを駆除しないので一気にいそ焼けの被害が拡大した。

 対馬の海を守るため、犬束社長は、様々な挑戦と失敗を繰り返しながら、三つの答えを導き出されました。

 一つ目の答え。ヒジキの周りに侵入防止のフェンスを設置し、イスズミが入ってこられないようにした。すると、畑のイノシシ対策の柵と同じです、ヒジキの養殖に成功しました。食害魚の侵入を防ぐことができれば、海藻を育てる力は海に残されていることが分かった。

 そして二つ目の答え。イスズミにタグをつけて生態を分析した。すると、イスズミは特定の地域をすみかにすることが分かった。そのすみかを狙って大量のイスズミを一気に駆除することに成功した。目視でイスズミの劇的な減少を確認できた。

 そして最後、三つ目の答えです。このイスズミの大規模な海域内での駆除に成功した後、フェンスありでヒジキの養殖に成功した同じ場所で、今度はフェンスなしでヒジキの養殖に挑戦し、現在二年目で、私も現場で直接見ました、立派に育つことを証明されています。

 つまり、何が言いたいかといえば、正しい方法でいそ焼け対策を行えば海の森は必ず復活することができる、そのことを証明しています。この成功モデルをいかに広げていくかが大事になります。

 そこで、大臣、いそ焼け対策でこのように成果を上げている優良事例をモデル事業として広域に展開していくべきです。是非とも御検討いただきたいと思っております。

 そして、対馬の海に出て、いそ焼けの現場を目の当たりにして感じたのが、農地の鳥獣被害対策と原理はほぼ同じだということです。海の植物を育てる海域は海の畑であり、イノシシや鹿同様に、食害魚の侵入を防ぐフェンスが海中に必要です。そして、イノシシ一頭の駆除につき一万八千円などの褒賞金が自治体からもらえるように、食害魚の駆除にも漁業者に日当が支払われています。

 漁師さんたちは、私たち国民への食料供給だけでなく、海の環境を守る公的な担いがあります。壱岐の島の漁師さんたちから、食害魚の駆除や海底清掃などの仕事をもっとさせてほしい、今の予算では年間六日間程度しかできない、二十日間以上できるようになれば、もっと広域に駆除が可能になり、いそ焼け対策の効果も確実に上がる、いそ焼け対策の予算を増やしてほしい、こういう切実な声を各港で聞いています。

 資料三を御覧ください。

 その農水省の鳥獣被害対策予算と、いそ焼け対策の予算を比較しました。圧倒的に足りていません。鳥獣被害対策には毎年百億円を超える予算が計上されている一方、いそ焼け対策の予算は、一番下の表になりますが、十六・五億円程度です。

 大臣、海の畑を守るため、豊かな海を取り戻すために、いそ焼け対策の予算、大幅な拡充が必要ではないでしょうか。お答えください。

野村国務大臣 お答えを申し上げます。

 さすがに長崎出身の山田先生だけあって、いろいろな現地を御覧いただいておるなということをお聞きをさせていただきました。

 いそ焼けの問題で、予算の話が出ましたけれども、一つは、いそ焼け対策のガイドラインといいますか、いろいろな優良事例をまとめた方がいいのではないかというのも御指摘の中にあったと思いますが、当然、いそ焼け対策で成果を上げております全国の事例などを取りまとめた磯焼け対策ガイドラインを作成をいたしておりまして、さらには、試験研究機関あるいは地方公共団体、漁協等の参画する磯焼け対策全国協議会を毎年開催しておりまして、国や各地域の取組について情報の共有を行っているところでございます。

 それと、予算のこと、確かにこれは鳥獣被害に比べれば、いそ焼けのこの予算というのは少ないんですが、ただ、一つ気になりますのは、例えば鳥獣被害の場合は、イノシシを一頭捕って、そのイノシシの例えば尻尾だとか、そういうのをきちっと持ってきた人に対して一万二千円から一万八千円ぐらいの手当が支払われるわけですけれども、いそ焼けの、こういった食害に対するものに対する証拠といいますか、私は聞いていて、そういった立証するものが非常に難しいのかなということも思いました。

 ただ、どういったような方法があるのかも、これはまた十分検討をさせていただきたいと思います。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 実は、鳥獣被害対策、これは資料を見てもらったら分かるんですが、民主党政権時の平成二十二年から、二十三億円、そして平成二十三年に一気に百十三億円も、予算が五倍ほど引き上がりました。すると、鳥獣被害対策に確実な成果が上がり、今なおその予算が継続し続けています。

 私自身、オーガニック農園を運営していて、イノシシの被害に悩まされていました。そこで、行政に相談したところ、侵入防止の柵、これは今、無償で提供していただいています。大変助かります。さらに、柵の補助だけではありません。鳥獣被害対策では、ジビエの利用拡大に向けた取組として、食用処理加工施設に国から二分の一の補助金が出ているのです。

 民主党政権で予算の大幅アップ、実現できました。今度は、是非、野村大臣の政治決断で、いそ焼け対策の予算を大幅に引き上げていただきたい。海の畑を守るフェンスも同様に、漁師の皆さんに無償提供していただきたい。さらに、先ほどの対馬のように、イスズミ等々が分かりにくいというお話だったんですが、食害魚を利用拡大することが大事だと思っています。

 こういった食用処理加工施設の整備に対し、鳥獣被害同様に、二分の一の補助金をつけるべきではないでしょうか。野村大臣、是非とも、大臣の政治決断で、リーダーシップで、いそ焼け対策の予算を大幅に引き上げていただきたいと心から願っております。

 時間がないので、ちょっと次の質問に移らさせていただきます。

 こういったいそ焼けの原因は、複合的な要素があります。食害魚だけの問題ではありません。私も様々現場を歩くと、漁師さんや農家さんたちから話を聞きます。農薬として使用されている除草剤も原因ではないか、除草剤を散布している農地の下の海では海藻が枯れている、こういう声が様々聞こえてきます。農林水産省として、いそ焼けの一つの原因として除草剤、位置づけているのでしょうか。お答えください。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 いそ焼けの原因でございますが、委員御指摘のように、食害生物、海水温の上昇など、様々な要因が影響していると考えられます。

 この中、水産庁では、各都道府県に、藻場衰退要因を、理由をいろいろ提出してもらっておりますが、その提出された藻場ビジョンの中におきましては、除草剤などの農薬は、藻場の衰退要因として、今のところはまだ挙げられておりません。

山田(勝)委員 余りにも危機感が薄いように感じます。

 除草剤といそ焼けの因果関係を研究している長崎大学水産学部の桑野教授よりお話を伺いました。資料四を御覧ください。これは、桑野教授が藻類増殖学研究室の学生と一緒に行った興味深い実験データです。

 海中の中に、グリホサート系除草剤であるラウンドアップ入り培養液を濃度別に加えていきながら、海藻が成長するかどうか実験しました。四週間後、六十四分の一の濃度ではその成長抑制が働き、十六分の一より濃い濃度では全く成長しないという結果が得られました。つまり、除草剤は草を枯らしていくものです。海藻も当然、そういった意味で、除草剤によって成長が抑制される。

 さらに、海水の中で、一か月間ほど、このグリホサート系除草剤の毒性が低下しなかったことも分かりました。

 大臣、今、農水省挙げて、みどりの食料戦略を推進しています。有機農業の推進が海の環境保全にも重要な役割を果たしているということも証明されています。都道府県から報告がないから除草剤といそ焼け対策の因果関係がないのではなく、大臣、水産庁として積極的に調査研究するべきではないでしょうか。

神谷政府参考人 いそ焼けの原因につきましては、藻場ビジョンを策定している都道府県と意見交換を行っていくとともに、学会などにおける動向にも注視し、情報収集には努めてまいります。

山田(勝)委員 大臣にと聞いたからには、大臣にお答えいただきたいと思います。

 政治決断で、これは大事な問題ですので、可能性としてかなりあり得るし、是非、長崎大学のこの桑野教授なり、ヒアリングをしていただきたいと思っているところです。

 続いてのテーマ、これも大変重要なテーマでございます。

 いそ焼け対策の予算を引き上げるべき理由、大きな理由がもう一つあります。それは、日本政府自身が、二〇五〇年までに脱炭素社会、カーボンニュートラルを宣言しました。これは大変すばらしい目標設定です。

 資料五を御覧ください。海の緑地、ブルーカーボン、この主体は海藻です。そして、そのCO2吸収力のポテンシャルは、実は、農地の土壌に匹敵するぐらいあると言われています。いそ焼け対策の予算を拡充し、海の森を復活することでCO2対策にもなるという、とても前向きな話です。

 資料六も御覧ください。そして、もう既にブルーカーボンによる取引がスタートしています。令和四年度で、CO2吸収量が約三千七百三十三トン、認証件数二十一件、うち取引実績が八件、取引額が総額で約一千四百万円ということです。

 そこで、国土交通省にお伺いします。いそ焼け対策に取り組む漁業者や水産加工業者も、このCO2吸収量の創出者として認証可能なのでしょうか。簡潔にお願いします。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国におけるカーボンニュートラルの実現に当たりましては、ブルーカーボン生態系を活用したCO2の削減を図っていくことが重要と考えてございます。

 そうした中、国土交通省が設立を認可いたしました技術研究組合では、藻場の保全活動等の実施者により創出されましたCO2吸収量をクレジットとして認証する制度を施行してございます。

 令和四年度におきまして、委員御指摘のとおり、二十一のプロジェクトについてCO2吸収量が認証されておりまして、CO2吸収量の創出者には、いそ焼け対策に取り組む漁業者や水産加工業者も含まれます。

 国土交通省といたしましては、引き続き、ブルーカーボン生態系の活用に積極的に取り組んでまいります。

山田(勝)委員 ありがとうございます。

 大変明るいニュースだと思っております。

 農水省のいそ焼け対策予算の大幅アップ、必要なんですが、このように国土交通省が推進しているブルーカーボンで、CO2吸収量の購入企業から、いそ焼け対策の活動費を現場の漁協や水産加工業者が受け取ることができるようになります。こういった取引が活性化すればするほど、より海の森が復活していくことでしょう。

 融資に頼らない水産加工の経営を、融資に依存しているところを脱却するためにも、本質的ないそ焼け対策、しっかり取り組んでいっていただきたい。そのことを切にお訴えさせてもらいまして、私の質疑とさせていただきます。

 ありがとうございました。

笹川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時五十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

笹川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 早速、質問に入らせていただきます。

 漁業、水産業、本当に大切だと思っています。それは大臣所信質疑でも申し上げたというか、みんなで共有していることだと思いますが、今日は、さきの改正漁業法等も含めて、TACとか、QAでしたっけ、等の科学的管理、資源管理、これについて質問をさせていただきたいと思います。

 一番最初に、いわゆるTACの消化率の話です。

 クロマグロ以外の七魚種については、TACの消化率がクロマグロほど高くないというふうに認識をしています。それが資源量が十分にまだ回復していっていない理由だと私は思っているんですが、この辺、どう御認識か、御答弁をお願いします。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のクロマグロにつきましては、近年、資源の回復によって、我が国周辺水域への来遊が非常に増加しており、それだけでなく、単価が高いということもございまして、漁業者としてもTACをできるだけ消化するインセンティブが働いていると考えられます。

 一方、マイワシやマアジなど他の主要なTAC魚種につきましては、直近年のTACの消化率が大体五〇から七〇%程度となっておりますが、今、TACは資源の状態に応じて適切に設定しておりますが、それでも消化率が若干低いという点は、毎年の漁場形成や漁場への来遊時期が最近よく変動が激しくなっておりますので、そういったもので一定の未消化が発生するというのはある意味避けられない状態にございます。

 一方で、資源の回復につきましては、改正漁業法に基づくTAC管理の実施によりまして、生息の主体が日本水域である魚種につきましては、資源量、漁獲圧力共に適切な資源状態にあるような魚種、例えばマアジの日本海系群やマサバの太平洋系群、又は、資源量はまだ回復途上であるけれども、漁獲圧力が非常に適切な水準以下に抑えられておるので、早急に回復していく資源などがございます。

 今後とも、TACを適切に管理、設定していくことで、資源量を適切な水準に維持、回復してまいります。

足立委員 これまでも、TACの下で資源量の回復はする、すると言われてきたけれども、まだしていない、十分にはしていない。漁業法も改正されたので、これからは回復していくんだということが思いだと思うんですけれども、今までは十分に回復してこなかったけれども、これからはするんだ、そこをもう少し、なぜそれが見込まれるのか、そこをちょっと、分かるようにお願いします。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 これまでのTACの設定というのは、資源の回復目標をどこに置くかという点で、乱獲でないぎりぎりの状態までに回復すればいいというのを目標に置いて、また、いつまでに回復させるかというのが三十年先であったり、さらに、それで達成する確率も明確に示してこなかったということがありますので、ある資源では、三十年先に何とかぎりぎりのところまで回復します、ただ、達成確率は四〇%ですとかいうような状況にございました。

 これを、漁業法を改正して、我々は、資源の回復を、MSY水準を達成するところまでに十年以内に回復させましょうという明確な目標と、そのために必要な漁獲努力量の調整とTACの設定を行っておりますので、基本的には、これから資源が回復の方向に向かっていくものだというふうにある意味確信しております。

 ただし、サンマなどのような短命の魚で環境変動の影響を大きく受けるものにつきましては、環境が変わってくること自体で生息するキャパシティーが変わってきておりますので、そこは今ちょっと様子を見ておるところでございます。

足立委員 確信とおっしゃっていただいて、大変いい答弁だと思います。

 神谷長官は、やはり読まない方がいいですよ。部下が書いた答弁を読むと神谷長官のいいところが出ない。今、更問いで、用意していないものを聞くと、非常に分かりやすいし、もうこれから紙なしでやっていただきたいと思います。

 今ちょうどこの裏で、参議院の予算委員会、立憲民主党が何かまた総務省の行政文書の問題をやっておりまして、もう本当に今、ツイッターのハッシュタグで、何やったかな、もうつまらないやったかな、何か立憲民主党批判のハッシュタグが今一番上に来ていまして、だから、そういうしようもないことについて、高市大臣辞めろとか、そういうのはやめて、今みたいな、今、神谷長官がおっしゃった、十年以内に回復をしていく、これはもう確信をしているんだ、こうおっしゃっていただいた。これができなかったら大臣を辞めるぐらいの、大臣、その……(野村国務大臣「一年で辞めますから」と呼ぶ)ちょっと、私より上手でありました。まあ、それは聞きませんが。

 でも、本当に、やはりこれから政治に大事なことはこういうことですよ。

 政策をつくり、目標をつくる、それが、五年、十年、少子化対策もそうですけれども、できなかったらやはり辞めるぐらいの気持ちで、少なくとも私たち維新の会は、地方政治では、そういうことで初代代表が辞め、次の松井一郎代表がこの四月で辞めるというところになってしまっているわけでありまして、私たちは、やはり政治、行政というのはそれぐらいの覚悟でやらなあかん、こういう思いでやっております。

 今、神谷長官から御答弁がありました。

 是非、今までとは違うんだ、改正漁業法の理念を実際に実現をして、日本の水産業、漁業がしっかり隆々と盛り上がっていくことを期待したいと思います。

 TACの話なんですけれども、もう少し紙なしでちょっとやりたいんですけれども、神谷長官。

 TACの消化率なんですけれども、今おっしゃった、今御答弁で、TACの消化率が十分でない。十分でないということは、そもそもTACが高過ぎるからいわゆる乱獲みたいなことが止まっていないのではないか、だから回復していかないのではないかみたいな私は議論なんだけれども、神谷長官は、いやいや、漁場、魚がどこに集まってくるか、漁場の問題、あるいは時期、漁期みたいなもので、なかなかそこは目いっぱいまでいかないんだという御答弁でした。

 しかし、それだったら、世界中のTACが消化率が低いはずですよね。そうでしょう。もし長官が今おっしゃったようなことであれば、世界中の資源管理が同じですよ、そんなものは。そうであれば、世界中のTAC導入国が消化率が同じように低いみたいなことがあっていいと思うんだけれども、でも、数字を見ると、そうじゃないと思うんですよね。日本だけ、それも、導入している八魚種のうち、クロマグロを除く七業種で五〇パーから七〇パー。クロマグロはもっと、九割以上でしょう、たしか。

 やはり何かが間違っているのではないか。何かが間違っていると、神谷長官は確信していると言うんだけれども、大丈夫か、こうなるわけですが、その辺もう少し解説は可能でしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 これまでのTACの設定というのは、これは一つの極端な事例でございますが、科学的に捕っていいという勧告の四倍ぐらいの量のTACが設定されていたこともございますので、そうしますと、当然TACの全量を捕り切れるわけでもなく、TACを守っていても資源が減少するという状況が続いておりました。今回からは、そういうことなしに、資源の状況に応じたTACの量を設定しておるわけですが、それでも消化率が低い。

 他方、他国では消化率が高いではないかという御指摘でございますけれども、例えばアメリカなどでは、連邦政府の資源の管理というのは、距岸五・四キロより遠くが連邦政府の管理で、それより内側は州政府の管理、つまり、連邦政府は日本でいいますと大臣許可漁業だけの管理になっておりますので、そういう漁業ですと、大臣許可漁業というのは許可の範囲が広うございますので、魚がいるところまで捕りに行ける。

 一方、日本の場合は多数の沿岸漁業がございます。沿岸漁業というのは、大体、県知事の許可漁業でございますので、どうしても自県の沖合だけでしか操業ができませんので、資源が仮にあったとしても、そのときの海況、来遊の状況の違いによって、その県に魚が来なければ漁獲できない。一方で、大量にある県に来たら途中で漁獲をストップしないといけなくなる。そういうことをならすと、どうしてもTACを満遍なく完全に消化するという状況が起きにくくなっております。

 一方、クロマグロは、日本各地にかなり回遊しておりますし、極端な場合、一本何十万円とするものでございますから、漁師さんがどうしても自県の沖で一生懸命探すというような、そういう違いがあろうかと思っております。

足立委員 やはり紙がない方がいいですよね。大変分かりやすい御説明ですが、私は、この議論はやはりちゃんともう少しやった方がいいと思うのは、いずれにせよ、いや、今まさにおっしゃったのは分かりやすいんだけれども、そうであればなおさら、例えば沿岸をこれからどうしていくんだと。沿岸と沖合と遠洋みたいな形で全然違う世界が広がっているわけだから、ちゃんと資源管理という意味で、有効な形でTACを設定し、だって、結局、消化率が低いということは、TACが機能していないということですから。IQでしたっけ。TACの下は何でしたっけ。(神谷政府参考人「TACの下はIQです」と呼ぶ)IQ。要は、具体的なやり方ね。

 IQの、いろいろなやり方も含めてだと思いますが、やはり消化率が低いということは、ルールとしてバインディングじゃないわけだから、今おっしゃった別の理由でこれまでと同じような漁業というものが続いて変わっていかないんじゃないか、そういう危惧をやはり私は持たざるを得ません。

 ごめんなさい、通告でいうと二と三がひっくり返るみたいな形にさせていただきたいんですけれども、今申し上げたように、まさにノルウェーとかと比べたときに、日本の沿岸漁業の実態は、それは歴史があるし、まさに漁協を中心とする人間関係とかいろいろな地域の特色とかでできてきているわけですよね。それを尊重する限りは今みたいな話になっちゃうわけですよ。いや、尊重してもいいんだけれども、それは、沿岸の漁業の在り方、また、沖合あるいは遠洋漁業みたいなことで、一つの漁業といってもそれは別の漁業なわけだから、その在り方をしっかりと分けながら、もっと戦略的な、漁業、水産業振興ビジョンみたいなものをもっと確立をしていかなければ、たとえ上からTACですと言っても、IQですと言っても、それはやはりトップダウンが過ぎて、トップダウンとボトムアップのすり合わせができないんじゃないかと思いますが、長官、いかがですか。

神谷政府参考人 ありがとうございます。

 今、水産庁では、今までの方式と違って、資源を回復させることで漁業の成長産業化を図ろうという施策に転換いたしましたので、まず我々が目指しておるものは、この十年間で減少した資源量、漁獲量を次の十年間で同じレベルまで回復させようという大きな目標を立てまして、それを実現するために、資源の評価の対象魚種を、従来五十種ぐらいだったのを二百種まで拡大しましょう、そのうち三十種ぐらいはTACにしましょう、残りの百七十種ぐらいは、TACではないけれども努力量管理というような形で管理していきましょうという、資源を縦軸にした大きな方針を作りまして、そこの漁獲量とか努力量の配分の仕方を大臣許可漁業と沿岸漁業でどのようにやっていくかという、縦横のマトリックスができるわけですけれども、主に数量管理、三十五種をTACに入れますと、大体それは大臣許可漁業が中心となってまいります。一部は沿岸漁業でも新たなTACということになりますけれども、残りの百七十種近くは沿岸漁業において努力量管理でしていくということ、基本的にはそういう構成になっておるわけです。

 TACの中で、さらにIQ、船ごとに管理するというのは、新しい漁業法が採択されましたときの附帯決議で、沖合漁業を中心でやっていくということも採択されておりますので、そういったものを総合いたしますと、沖合はTACまたIQの管理を主体とした成長産業化を目指して、沿岸漁業は資源をちゃんと管理しながら努力量管理が主体となる方向でいく、ただ、漁場的には沖合漁業も沿岸漁業も重複してなっておるわけですから、どちらも同じTACでカバーされる部分も生じる、そういう構造になっております。

足立委員 一部、一部というか、おっしゃっていることは分かりますが、なおさら、今おっしゃったことを見える化していくというか、マトリックスとおっしゃったこと、農水委員の皆さん、同僚の皆様は御存じかもしれませんが、私は、素人、今回農水委は初めてなので、ちゃんと理解していません、理解できていません。

 是非、そのマトリックス、魚種、それから、今あった沿岸、沖合、遠洋みたいなことをちゃんと整理して、トップダウンで国がつくる制度と、それから現場の漁協。今御答弁いただいたように、県の権限みたいなことが多分非常に重くのしかかっているような気も、今日は、御答弁を聞いてしました。

 だから、農水省もいろいろ、いろいろなところに配慮しながらやっておられるのかもしれませんが、やはり国会、私たちとしては、国と県の関係とか、既存のものに余りとらわれずに、本来、戦略として海洋国家日本が水産業、漁業をどうしていくべきか、しっかりこのビジョンを、有効なビジョンづくりを私たち党としてもまたやっていきたい、こう思います。

 最後に、二〇〇九年に独立行政法人水産総合研究センターというところが「我が国における総合的な水産資源・漁業の管理のあり方」という立派な報告書を出されています。そこに三つのシナリオというのがあります。グローバル競争シナリオ、いわゆるノルウェー型ですね。それから、生態的モザイクシナリオ、これは、今みたいに、沿岸の既存の漁協さんに十分配慮しながらもハイブリッドでやっていくというシナリオ。それから三つ目が、国家食料供給保障シナリオみたいな、国家管理をもっと強めていく。

 こういう整理、若干極端な整理でありますが、こういう整理学に沿っていうと、もう既に長官的にはさっきの答弁で答弁が終わっちゃったかもしれませんが、この報告書をベースに、もしおっしゃっていただけることがあれば追加でお願いします。

神谷政府参考人 ありがとうございます。

 この報告書ができましたのが二〇〇九年でございますので、当時は、いろいろなファクターをどのようにトレードオフするかということも検討が加えられておりましたので、トレードオフの中に、資源管理と例えば別の部分をどうトレードオフするかというような形になっておりましたので、これは、逆に言いますと、今我々が進めておる改正漁業法の概念とは若干一致しないものがございます。改正漁業法の概念では、まず資源を回復させて、その下で、残ったものをどういうふうにトレードオフするかという観点になっております。

 そこを申し上げた上で、あえて申しますと、ノルウェーなどは漁獲の九五%を輸出しておるので、まさにノルウェーのような形には日本の沿岸漁業はならないと思っておりますので、配分の方は、どうやって日本型のものをやっていくかというのを進めていきたいと思っております。

足立委員 大変いい、私としては、思ったとおりの議論ができました。また引き続き、この水産業、漁業を取り扱っていきたいと思います。

 今日はありがとうございました。終わります。

笹川委員長 次に、仁木博文君。

仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。今日はよろしくお願いします。

 時間がございませんが、令和四年度の水産加工業者に対するアンケート調査におきまして、何が一番困っているかということにおきまして、原材料確保が難しいというふうな答えが出ております。

 そういう中で、今までなりわいとしてやっていた水産物が商売道具にならないような状況になっている方々に対する対策としての今回の案でございますけれども、大臣にお尋ねしたいのは、これはちょっとレクのときに問題になりましたが、先ほど、今議論に出ていました、TACの対象になっている、例えばミンククジラとかがありますけれども、鯨とかに関しましてなりわいをしていた、例えば和歌山県の太地町とか、そういったところの加工業者に対する施策というのは、今回のは当てはまるんでしょうか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 本法の水産加工資金は、水産加工品の供給安定ですとか水産資源の有効利用という政策目的から対象種を指定をしてございまして、先生御指摘の鯨につきましては、国内での漁獲量が少ないことから、本法の水産加工資金の対象種とはなっていないところでございます。

仁木委員 それでしたら、二〇一九年六月三十日にIWCを撤退した日本でございまして、その後どういった捕鯨の状況か分かりませんが、またそういったなりわいとしてやってきた漁村のことも思い起こしていただいて、対策も個別に考えていただきたいというふうに思っております。

 さて、そういった原材料が少ない中で、今、私の地元徳島県においても、いわゆる養殖という業界の方に入っていく、そういった同業業者が結構出てきています。

 今回のお金の流れですけれども、そういった、例えばカキの養殖をして稚貝を育てるとか、あるいは養殖する、あるいは稚魚、そういったことにも今回の予算というのは当てはまるのでしょうか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の水産加工資金は、水産加工業者等が施設整備等を行う際に必要とする資金の貸付けを行うものでございまして、養殖業者さんですとか、ほかの漁業者さんでも、加工までやられる方につきましては、この加工資金を利用することが可能でございます。

仁木委員 申し上げたいのは、例えば、稚貝を全国に配送するんですけれども、最近は保存的な技術も進んでおりまして、パッキング等々、これもいわゆる加工というふうに広い意味では取れると思うんですけれども、そういうことも込みでということの理解でよろしいですか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のような施設も加工施設に、ちょっと、個別の施設ごとに公庫の御判断という、最終的にはあるんですけれども、一般論から申し上げますと、加工施設に該当すると思われますので、今回の加工資金の対象になり得ると考えます。

仁木委員 ありがとうございます。

 時間が来たようでございますので、これで終わりたいと思います。ありがとうございます。

笹川委員長 次に、渡辺孝一君。

渡辺(孝)委員 十分間、大臣始め皆さんにおつき合いをいただきたいと思います。

 まず最初に、昭和五十二年から始まりましたこの制度、かなりの年数がたっておりますけれども、今まで積み上げてきた件数、あるいは公庫からの融資の総額を若干教えていただけますでしょうか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 水産加工資金のこれまでの融資実績は、四十四年間の累計で二千五百九十二件、三千八十三億円となっており、近年は年間約四十件程度の貸付け例があるところでございます。

渡辺(孝)委員 四十四年間の間にいろいろな経過があったと思いますし、そのとき折々で、制度の改正なんかも行っていると思います。

 私が言いたいのは、この制度の件数や融資額が多い少ないのことを言いたいわけじゃなくて、これがどのように本当の意味で加工業者の方々に生かされているかということを、まず水産庁の方でしっかり検証していただきたいなというふうに思うんです。

 実は、この質問が当たったときに、私も地元で、もっとじっくり時間をかけて調べたかったんですけれども、大中小の加工場の経営者の方々にお話を聞かせていただきました。水産加工場の規模によっても、全然、捉えている問題、あるいは抱えている問題も違いますし、この法案でそこが解決できるかどうかというのは、またこれは微妙なところもありますけれども、例えば、大手の水産加工場でいえば、やはり、先ほど長官からもお話があったように、原材料の確保というのが非常に大きな悩みだそうでございます。ロシア、ウクライナの事案から、あるいは円安の状況でしょうか、いろいろなことがありまして、非常に海外からの原材料の輸入に苦慮しているという話を聞かせていただきました。

 また、小さな加工場に行きますと、何といっても、やはり一番には人手不足ということで、ICT化したらいいんじゃないかなどという話を社長にも投げかけますけれども、公庫の融資というのも、非常に評価はされていますけれども、加工場の皆さんにすれば、つまり借金でございます。やはり、将来、加工場の先行きがなかなか見えない、また、水産業のいわゆる動向がいまいち読めないということでは勝負に出られないというような話もされておりました。

 今ほど足立議員の質問に長官が、今後漁獲量も増やしていきたいというような話もありましたので、是非、これを地元の水産業者の方々にも伝えて、頑張る努力を促してあげたいというふうに思います。

 それで、質問の二番目に行きますけれども、水産加工場がよくなることによって、当然、漁業者や漁業関係者の方もよくなるわけでございますけれども、作ったものに対して、やはり消費されるという形が伴わないと、なかなか発展していかないのかなと思います。

 国内、国外の消費、いわゆる国内の消費と、国外というと恐らく輸出に関わると思いますけれども、この水産加工物の消費を、ちょっと、分かる範囲でいいですから、国内、国外の状況を教えていただけますでしょうか。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 水産加工品を含めた食用魚介類の消費の動向でございますけれども、一人一年当たりの消費量は平成十三年度の四十・二キログラムをピークに減少傾向にありまして、直近の令和三年度においても、前年度から〇・四キログラム減少し、二十三・二キログラムとなっておりまして、消費の拡大が喫緊の課題だと認識してございます。

渡辺(孝)委員 やはり消費量の減少というのが水産加工場にも大きく影響が出るかと思います。

 私は思うんですけれども、確かに、今回、コロナや、あるいは円安、ウクライナの問題、本当にこの三年間厳しい状況で、特に飲食店関係の方々が悲鳴を上げていたのは、ここにいらっしゃる議員の皆さん、皆さん地元で聞いているかと思います。やはり消費を上げていくというのは、一大、大きな課題だ、共通課題だというふうに思っております。

 確かに、そのことが、水産加工場の収支だけではなく漁業者の所得にも大きく影響が出ます。しかし、今この漁業関係で抱えている問題を見ますと、非常に、漁獲制限の問題やら、あるいは海洋環境の変化、そして、直接そのことが影響して、やはり漁業者の所得や後継者問題にも大きく影響が出ているかと思います。

 そういう意味では、確かに今回、施設の制度の法案ですけれども、水産庁では、恐らく中身で水産庁の中でいろいろ議論なされていると思いますので、ある意味パッケージの中で水産業の発展というのを考えていただき、その中にこの施設整備の事業もあるんだということを是非声を大にして、漁業者あるいは水産加工業者の方々に、農林水産省はしっかり水産業を後押しするよというそのメッセージをもっともっと強く訴えていただき、彼らに是非勇気を与えて、そして、先行き明るい光を見せていただくような、そんな水産業を目指していただくことを大臣に心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。

 今日はどうもありがとうございます。

笹川委員長 次に、庄子賢一君。

庄子委員 よろしくお願い申し上げます。

 最初に、実績をお伺いすることにしておりまして、今、渡辺議員の御質問の御答弁の中にも出ておりましたので、そこは少し割愛をさせていただきますけれども、昭和五十二年、第八十二回国会におきまして五年間の時限立法ということで本法は制定をされたということでございまして、以来、法律の期限の延長、あるいは融資対象の拡充など、六回にわたって改正を経て、そして今日に至っているということでございます。

 そこで、まず、同法による融資実績なんですが、先ほど御答弁の中で、四十四年間で二千五百九十二件とおっしゃいましたでしょうか、金額に直せば三千億円ちょっとというお話があったと思いますので、それは了として、その上で、償還の状況についてどうかということをお尋ねをさせていただきたいと思います。

 また、加えて、東日本大震災から十二年経過をいたしましたが、被災した沿岸の事業者にとってこの資金はどのような効果をもたらしてきたのか、そのことについてお尋ねをしますとともに、実際に被災の事業者においては、生産能力の回復に比べまして、いまだ売上げが回復できていないという現状がございます。今後起こり得る大規模災害発生時にどのように対応していくお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 償還実績についてでございますが、日本政策金融公庫において、これが残念ながら対外非公表となっておりますが、水産加工資金を含む、公庫の農林水産事業全体におけるリスク管理債権比率は、令和三年度末時点で三・七二%となっております。公庫の貸付事業全体の比率である七・〇六%より低い割合でございますので、水産加工資金の償還は着実に行われているものと認識しております。

 さらに、東日本大震災との関係でございますが、水産加工資金は、東日本大震災により被災した水産加工業者が、水産加工施設の復旧復興のために活用されております。

 具体的には、自己資金と合わせて施設整備を行うほか、東日本大震災復興交付金のうち水産業共同利用施設復興整備事業等の各種補助事業を利用する際の自己負担分、いわゆる補助残の借入れに充てるといった活用で活用されております。

 なお、被災地における復旧復興に必要な資金の貸付金利は、別途予算措置により実質無利子化の対象となっており、また、償還期限及び据置期間が延長されております。

 さらに、水産加工資金に加えまして、被災地の水産加工業の本格的な復興を果たすため、水産加工業の販路回復に必要な取組や、被災地の水産物や水産加工品を販売する取組などについても支援を行っているところでございます。

 今後、大規模災害が発生した場合におきましては、これまでの対応も踏まえて、どのような対応が必要か、検討されるものと考えております。

庄子委員 今申し上げましたとおり、大分、施設も含めた基盤は整ってきているんですが、売上げの回復が非常に遅れているという現状がございますので、是非、引き続きの御尽力をお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、気候変動や海水温の変化によりまして漁獲量が減少して、入手困難な魚種から、漁獲が増加をしている魚種に加工原料を転換するケースが増えていると私は認識をしております。国の水産基本計画におきましても「資源量が増えている又は資源状況の良い加工原料への転換や多様化を進めること」ということが示されておりまして、こうした水産業を取り巻く環境の変化にあって、この施設改良資金は非常に有用なものだというふうに認識をしているところでございます。

 しかし、実際には、最近の融資実績が金額、件数共にやや減少傾向になっている。この要因についてはどのように考えていらっしゃるか。また、今後の見通しについてもお尋ねをいたします。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 融資実績が減少傾向となっている原因でございますが、令和元年に融資額が減少している要因といたしましては、東日本大震災後の復興に伴う設備投資などの需要がある程度落ち着いたこと、東京オリンピック・パラリンピック需要などによる建設資材の不足や建設費高騰に伴う設備投資の延期が見られたことにより、資金需要が大幅に落ち込んだことなどが考えられます。

 令和二年度や三年度におきましては、さらに、新型コロナウイルス感染症により、資金繰りが悪化し、新規での大型の設備投資や既存の施設の改良などを行う余力がなかったことなどが考えられます。

 一方、令和四年度につきましては、年度途中ではございますが、現在までの状況を公庫から聞き取ったところ、令和三年度と比較して、融資額は回復傾向にあると伺っております。

庄子委員 十分な周知広報も含めて、この資金の活用を是非促していただきたいと思います。

 三つ目なんですが、午前中の質疑にもあったんですけれども、現在、この法律によって、指定水産動植物というのは、いわゆる、カツオとかイワシとかサンマといった二十品種、これが沖縄県を除く四十六都道府県で対象とされております。また、低・未利用については、十一種が十六道県で対象になっている状況でございます。

 一方で、何度も申し上げますけれども、気候変動に伴う海水温の上昇などが影響し、漁獲魚種には大きな変化が見られる中、現在、指定水産動植物に入っていない魚種も対象とする、そうした柔軟な見直しについて是非お願いをしたいと思いますとともに、低・未利用の水産動植物とその対象地域の指定についても、大きな環境変化に対応し、追加、見直し、これを検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

角田大臣政務官 水産加工資金法は、そもそも二百海里水域の設定に伴って水産加工品の原材料の供給事情が著しく変化したことに対応して、水産加工品の安定的な供給を確保するため、臨時措置として創設をされたものでありまして、その後も、臨時措置として政策的優先度が高いと認められる魚種を対象にしてきたところです。

 水産加工資金では、五年間の期間内に最大限の効果を上げるため、臨機応変に貸付条件等を見直せるよう、具体的な内容は政令以下で定める仕組みとなっており、指定水産動植物については全国の生産量、未利用又は利用の程度が低い水産動植物については全国の産出額及び県別生産量を勘案して選定をしているところであります。

 今後も、状況に応じて、対象魚種については随時見直しを検討していきたいと考えております。

庄子委員 これは午前中の緑川議員の質疑の中でもやり取りがありましたけれども、対象魚種は海洋環境の変化で是非柔軟な対応をお願いしたいと思っていて、例えば私の宮城県ではホヤが低・未利用という指定を受けているんですね。でも、宮城県にとってホヤは、低利用でも未利用でも実はありませんで、県民は、常にスーパーにも並んでいるし、飲食店でも常に提供されている品種でございます。原発事故の影響で韓国が禁輸としている影響で、韓国ではこれは未利用に今はなっているかもしれませんが、実はそうではないということをお伝えをした上で、水産関係者の皆様にお聞きをすると、むしろ、ほかの魚種で、例えばカナガシラ、あるいはナガヅカといった、これまで本当に低利用、未利用だった魚、魚種が、加工の仕方によっては、だしの隠し味になっていたり、いろいろな用途が広がっているというお話を伺ってまいりました。

 こうした現実に是非柔軟に合わせていただいた上で、対象の見直し、検討をお願いをしたいと思います。

 最後に、水産加工業全般の振興策について大臣にお尋ねをさせていただきます。

 水産加工業は、地方部においては雇用をもたらす基幹的産業の一つであります。漁業とともに沿岸地域の経済を支える基幹的産業です。特に就業者は女性の比率が多いというのも特徴であります。同時に、多くの加工業者は、従業員十人未満の中小・小規模事業者で、労働生産性は低く、自己資本に乏しいというのが特徴でございます。

 令和四年度の水産加工業経営実態調査によれば、加工業の原料となるサケやイカの不漁の影響を受けている、あるいは、やや受けていると答えた企業が六五%を占めています。また、直面する課題は、原材料確保の困難さ、売上げ、利益率の低下、生産コストの上昇といったところが上位になっています。

 これらを踏まえまして、水産加工業の事業基盤、これをどのように強化をし、振興していくのか。そのための政策の在り方について、基本的な見解をお示しいただきたいと思います。

野村国務大臣 庄子委員にお答えを申し上げたいと思いますが、私のところも四方を海に囲まれておりまして、水産加工業者も多いところでございます。漁業とともに、加工業者の皆さん方は車の両輪としての役割を担っておられる、こういうふうに思っておりますが、漁港周辺地域を中心に、十四万人の雇用を創出する、漁村経済を支える重要な基幹産業だという認識をしております。

 また、食用水産物の七割が水産加工品の原材料として使用されるなど、我が国の食料安全保障においても大変重要な役割を担っていただいておるというふうに認識しております。

 その一方で、水産加工業者の多くは、中小零細企業でありまして、大変厳しい経営を強いられているというふうに認識いたしております。

 こうした現状を踏まえまして、農林省としましては、特定魚種の不漁等、環境の変化に適応可能な産業への転換、あるいはまた、マーケットインの発想に基づく売れる物づくりやICT等の活用による商品の高付加価値化、あるいは、先端技術を活用した省人化、省力化のための機械導入や業務の共同化による生産性の向上等を推進することによりまして、水産加工業界の産業全体としての体質強化を目指していきたいと思っております。

庄子委員 ありがとうございます。

 震災の話に触れさせていただきますが、水産業、加工業界の皆様が大きな被害を受け、しばらく電気が通りませんでしたので、加工用の冷凍冷蔵施設が止まったまま、それまで保存していた加工食品が腐って、物すごい異臭が漂ったあの沿岸地域のことを今でも思い出します。

 ようやく、今、設備が回復し、また、販路を取り戻し、スーパーの陳列棚に自分のところの商品が並び出しという、ようやくこの十年で回復の軌道に乗ってきているところで、今回のコロナがあって、また腰が砕けてしまっている側面もあります。是非、農林水産省として、国としての力強い御支援、バックアップをお願いを申し上げまして、質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次に、長友慎治君。

長友委員 国民民主党の長友慎治です。

 最初に、魚介類消費のトレンドをまずはちょっと押さえさせていただきたいと思います。

 まず、魚介類は、世界の動物性たんぱく質の供給量の一六%を担う重要な食料資源ということになっています。世界の一人当たりの食用魚介類の消費量は過去半世紀で約二倍に増加しております。これは水産庁のホームページで確認をしました。

 国連の食糧農業機関は、世界的な魚介類の消費量の増加の要因として、輸送技術等の発達により食品流通の国際化が発展し、都市人口の増加を背景に国際的なフードシステムとつながったスーパーマーケット等での食品購入が増えているということをまず挙げています。また、この結果として、経済発展の進む新興国や途上国では芋類などの伝統的な主食からたんぱく質を多く含む肉、魚等を中心とした食事へと食生活の移行が進んでいるということなども挙げています。さらに、健康志向の高まりも魚介類の消費を後押ししているものと、そのように、今の魚介類の消費のトレンドを分析しているわけです。

 その中で、一人当たりの魚介類の消費量の増加は世界的な傾向なんですけれども、とりわけ、元々魚を食べる習慣の強いアジアの地域では、生活水準の向上に伴って顕著な増加を示しているという状況です。特に、中国では過去半世紀に約八倍、インドネシアでは約三倍となるなど、伸びが目立っています。

 一方、動物性たんぱく質の摂取が既に十分な水準にあるヨーロッパや北米地域では、その伸びは鈍化傾向です。

 そして、我が国の一人当たりの魚介類の消費量は、高水準ではありますけれども、五十年前と同水準まで減少してきており、世界の中では例外的な動きを見せている。これが今の魚介類の消費のトレンドということになります。

 このことからも分かりますように、日本の水産加工に携わる皆様の売上げを上げるためには、世界のマーケットを狙うということが重要な成長戦略ということになります。

 そこで、伺います。

 日本の水産加工品の輸出先が増えれば国内の水産加工業者の売上げも上がるわけですが、現在、日本の水産物、海外で人気のあるもの、どのようなものがあるのか、農水省として把握しているのでしょうか。お伺いします。

野中副大臣 水産物の輸出実績でありますが、二〇二二年で三千八百七十三億円、これが直近十年で最高額であります。

 そして、主要な輸出水産物でありますが、ホタテガイが約九百十一億円、ブリが約三百六十三億円、真珠が約二百三十八億円となっており、主に東アジアそして米国向けに輸出をされております。

長友委員 輸出額ベースでのトレンドをお答えいただきました。ありがとうございます。

 ホタテが非常に伸びている。これはウイスキーや牛肉よりも輸出額が多いということで、かなり、特に中国などで、縁起物ということもあって人気だということは聞いております。

 その魚介類の消費量の増加と並行して、世界の人口も増えているわけです。この結果、世界全体での魚介類の消費量が過去半世紀の間に約五倍となっています。

 世界人口は今後も増加し続け、二〇四〇年には九十億人、二〇六〇年には百億人を突破するということが予想されています。一人当たりの魚介類の消費量が急激に伸びているアジア地域においては、今後四十年間にわたり人口増加が続くと見られています。

 また、最大の人口増加が予想されるアフリカ地域でも、経済成長に伴う動物性たんぱく質摂取量の増加が見込まれます。このため、今後も世界の水産物に対する需要の増大は続くものと考えられます。

 ですので、そこを見越した水産加工業者の皆様への支援、サポートが必要であるということが明確になっているわけです。

 さらには、こんなデータもあります。海外の日本食レストランの数です。

 海外の日本食レストラン、二〇〇六年の約二万四千店から、二〇二一年には六・六倍の約十五万九千店に増えています。これは農水省調べで調査結果が公表されていますが、すしブームが長く続いているという背景もありますし、居酒屋ブームということで、日本人の居酒屋の業態というものも各地で人気が出ている。さらに、今は円安で、輸出を伸ばすには絶好の機会という背景もございます。

 このような水産加工業者にとってはウェルカムな状況の中で、日本の水産加工品だったり、また水産物の輸出を伸ばすための支援強化に政府は取り組むべきだと思いますが、政府の見解を伺います。

野中副大臣 委員おっしゃるとおり、日本は人口減少を迎える中で、世界は人口がこれから増えていく、そこの市場に向けて輸出をしていくというのは非常に大切な取組であります。

 それで、輸出拡大に向けて、輸出先国等の規制、条件に対応した、これはハラールとかHACCPでありますけれども、水産加工施設の新設及び改修、機器整備への支援を行っております。

 日本食レストランはたしか六・六倍に増えているんですが、やはり現地に行くと玉石混交なものがありまして、しっかりとした、我々の認識する日本食を提供するレストランで実際の素材を知ってもらう、そして調理の仕方を知ってもらうという、そのプロモーションを行うというのは非常に大切であります。今年度に六か国・地域に設置した輸出支援プラットフォームを中心にして、取組を強化していきたいと思います。

長友委員 日本食、和食ブームの中で、本物の日本のいいものをよりPRしていただくことで、更に日本の漁業者、加工業者のものが価値を認められるということで、是非取組を強化していただきたいんです。

 私が今日、お話として訴えたいのが、つまりはコンサル力だと思うんですね。水産加工業者に対する売上げを上げていくためのアドバイス、サポートを現場できちんとできているのかと。販路拡大や新商品の開発、コラボや連携といった提案をして売上げアップを実現する。その先に従業員の皆様の賃上げもありますし、漁師の皆様の売上げも上がると。

 日本政策金融公庫は水産加工業者への長期それから低利融資を引き続き行っていただくわけですけれども、同時に、水産加工業者の皆様の売上げを上げるためのコンサル力の機能強化ということも大変必要だというふうに考えていますが、日本政策金融公庫によるビジネスマッチングの事例というものが増えているのかどうか、伺いたいと思います。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政策金融公庫では、取引先への支援活動の一環として、全国の支店網を活用して販売、購入のニーズを収集し、情報提供を行う、先生御指摘のビジネスマッチングを推進していると承知しています。コロナの影響もありまして、一時期実績が減少しておりましたけれども、最近は回復傾向にあると伺っております。

 また、公庫単独のマッチングのほか、民間金融機関や行政機関、商工会等の関係機関と連携したマッチングや商談会にも取り組んでいただいているところでございます。

長友委員 まさに地方の現場で求められているのは、ただお金を長期で低利で貸していただけるというだけじゃなくて、そこから、いわゆる経営のいい相談相手になるということも日本政策金融公庫さんには期待をされているということを私も声を聞いております。マーケットインの発想による目利き力、また提案力を日本政策金融公庫に期待していきたいと思います。

 そこで、もう一つ、最後の質問になりますけれども、水産加工業者に対するコンサル力強化の取組を日本政策金融公庫として、マッチングの数というわけじゃなくて、いわゆる成長産業だということで力を入れるような取組、また、農水省と日本政策金融公庫が水産加工業者の売上げアップに連携して取り組んだ事例というものがあれば、御紹介をいただきたいと思います。

安東政府参考人 お答え申し上げます。

 日本政策金融公庫では、取引先の実態を把握し、課題を共有するとともに、その解決を支援していくコンサルティング活動に取り組んでいると承知しております。

 具体的には、公庫担当者と経営者が一緒に経営改善計画を作成しながら、経営改善策等について意見交換を行い、外部専門家とも連携し、取引先の経営改善の取組を支援しているところでございます。

 また、農林水産省と日本政策金融公庫との連携の御指摘でございますけれども、補助事業と資金融資を組み合わせることで、水産加工業者の売上げアップにつながる設備投資を支援してございます。

 事例の御指摘がございましたけれども、具体的には、地元で水揚げされたサバ、イワシを加工、販売している事業者が、アメリカやアジア諸国を中心に販路拡大を行うため、加工場の更新や加工機器の導入に対して農林水産省の補助金を活用し、公庫が補助残を融資しているという事例で、結果、稼働三年後の売上げが約二倍になったという事例も出てございます。

 農林水産省といたしましては、引き続き、公庫とも連携しつつ、水産加工業の振興に努めてまいりたいと考えております。

長友委員 引き続きの力強いサポートをお願いしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

笹川委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 配付資料の一を御覧いただきたいと思います。JF全漁連の作成資料にある、青年漁業者の環境変化に対する実感です。青年漁業者とありますけれども、青年に限らないとのことでありました。

 例えば、旬の時期に旬の魚が捕れない、福岡。数年前からいそ焼けがひどい、福井。南方系の魚が大きくなってきた、富山。四、五年前から海水温上昇、北海道。等々、資源の枯渇、海洋環境の変化が全国から報告され、皆さん、大きな不安を抱いておられます。そして、その原因が一体何なのか、究明を切に求められています。原材料となる魚介類が捕れなければ、水産加工業も成り立ってまいりません。

 大臣に伺います。

 原因究明、漁業者、水産加工業者のなりわい継続へ一層の支援が必要だと考えますけれども、いかがでしょうか。

野村国務大臣 田村委員にお答え申し上げます。

 今の資料を見せていただきましても、近年、海洋環境の変化を要因としたイカ、サンマ、サケ等の不漁が継続する一方で、南方での魚種が北方でも捕れるようになるなど、資源の変化というのが見られております。

 このような海洋環境の変化に対応して漁業経営の安定を図るためには、適切な資源管理を推進するとともに、資源の変動を踏まえた魚種の変更など、最適な操業形態への転換を実現していくことが必要だ、こんなふうにも思います。

 このため、農水省におきましては、海洋環境の変化に対応した漁業の在り方に関する検討会を開催いたしまして、漁獲される魚種の変化の状況や要因を把握、分析するとともに、漁業経営、操業の在り方や対応の方向性について検討をしているところでございます。

 これからもこの議論を踏まえて、今後、海洋環境の変化に対応するための施策の在り方について検討していく考えでございます。

田村(貴)委員 しっかり進めていただきたいと思います。

 海洋環境の変化は、人為的行為によっても引き起こされます。自然環境を壊し、海洋水産資源を枯渇させた公共事業の最たるものが、私は諫早湾干拓事業の潮受け堤防だと思います。

 今、日本一の生産量を誇る有明海のノリ養殖が非常に厳しい状況となっています。昨年、佐賀県西南部でひどかった赤潮による色落ちは今や有明海全体に広がり、生産枚数は佐賀、福岡で前年同時期の約五割、熊本で約六割の不作に見舞われています。供給量の不足で全国のノリの価格が高騰、おにぎりや、すしなどの販売にも影響が出ています。

 先週末、私は、佐賀県の鹿島市のノリ漁師さんたちからお話を伺ってまいりました。大臣、国に対する不満、そして不満を超えて怒りの声をたくさん聞いてまいりました。今期ノリゼロの人もおられるわけですね。

 資料二を御覧ください。養殖を断念して、残念ながら海から引き上げたノリ網です。たくさんあるんですけれども、降ろしてもらいました。緑色に色落ちしています。これは全く商品価値がありません。これは自然に腐食するのを待って、また網だけを使うということなんです。悲しいと思いませんか。

 漁師さんたちの声を、大臣、ちょっと聞いてください。

 新規にノリ養殖を始めた人。不漁でなくても借金があるのに、生計を維持するために更に借金をしなければならない。漁済、積立ぷらすはあったとしても、上限額が下がっていくために、来年、再来年は成り立たない。そして、やめておかに上がる人はまだいい方だ。借金があるために、やめるにやめられない。もう何年もこの状態が続いている。

 こうした悲痛な声が寄せられました。

 大臣、有明ノリの大不作、これは一大事という御認識はありますか。それについてお答えください。

 そして、有明海特措法第二十二条、「赤潮等により著しい漁業被害が発生した場合においては、当該漁業被害を受けた漁業者の救済について、当該漁業被害に係る損失の補填その他必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」と定めてあります。漁済と積立ぷらすでは損失補填はできていません。二十二条、法が定める必要な措置を定めるべきだと考えますが、いかがですか。

野村国務大臣 先ほどのお話ですが、今回の有明海のノリの不漁、色落ちについて、大変漁業者の皆さん方が困っておられるという話は随分聞いておりました。これは、私のところも有明海に面したところもあるわけで、そこのところも、最近は余り大したことはないんですけれども、それまでも何回も赤潮が出まして被害が出たことがございました。

 そこで、先ほどの御質問ですが、有明海特措法の二十二条を適用して漁業被害を受けた漁業者の救済として損失の補填を講ずるようにということであります。

 この二十二条は損失の補填を講ずるように規定されておりまして、漁業収支における損失を補填することを求めている規定ではございません。これはよくお分かりいただいていることだと思います。これを超えて生活費まで補填するものではないと認識をいたしておりまして、ノリ養殖漁業者からは漁業環境の改善を求める意見が非常に強いということがございます。

 したがいまして、同法二十一条に基づく海底耕うんや二枚貝の増殖等に取り組み、赤潮等による漁業被害を回避し、生産性の向上を図ってきておるところでございます。

田村(貴)委員 水産庁長官にお伺いします。

 水産庁の方は、漁済、積立ぷらすでとんとんだと言うんですけれども、これは平均ですよね。平均ということは、半分はいわゆるノリの養殖に対するコストを下回っているわけですよ。だから、これはなりわいが継続できないんですよ。もう今日、明日にもやめざるを得ないという人たちがいるわけですよ、この時点で。

 今大臣から答弁がありましたけれども、じゃ、この先どうすればいいんですか。それをお伺いしたい、神谷長官。

 漁では生計が成り立たない。借金しろということですか。おかに上がって稼ぎを賄えということですか。それが農水省として、有明漁民へのメッセージとしていいんですか。いかがですか。

神谷政府参考人 お答えいたします。

 有明海特措法第二十二条では、漁業被害を受けた漁業者の救済として損失の補填を講ずるよう規定されておりますし、また、これは、繰り返しになりますが、漁業収支における損失を補填することを求めている規定であって、これを超えて生活費まで補填するものではないと認識しております。

 また、現時点においてどのようなものかという点では、現在はまだ漁期途中でございますので、引き続き生産状況を注視してまいりたいと考えております。

 なお、昨年水産庁が行った経営実態調査においても、漁業共済及び積立ぷらすにより、昨年におきましても収支とんとんまで損失が補填できていることが明らかとなっております。

田村(貴)委員 開き直るんですか。本当、数年この状況が続いているんですよ。それで見守るだけですか。そして、漁済、積立ぷらすでとんとんとまだ言い張るんですか。それは現地では通用しませんよ。来てくださいと言われています。話を聞いてくださいと言われています。

 大臣、ちょっと、指示を出して、じかに話を聞きに行ってもらってくれぬですか。

 大臣、もう一回聞きますね。

 ノリの生産枚数が半分なんです、去年と比べて。タイラギ漁は十一期連続休漁なんです。そして、魚が捕れないんです。有明海は著しい漁業被害が発生しているとの認識はお持ちですか。いかがですか。答えられませんか。

野村国務大臣 今御質問のありましたことでございますが、なかなか実態を私どももつかんでおりません。

 ただ、数字上は、先ほど長官が御報告申し上げたとおり、先ほど来委員は収支とんとんというお話でありましたが、積立ぷらすと共済で何とかそこまでは行き着いていると思っておりますけれども、近々水産庁を現場に行かせます。それだけは約束します。

田村(貴)委員 大臣、いみじくも実態をつかんでおられないと言ったので、しっかり実態をつかんで、未来につながるノリ漁がずっと続けられるようにしていただきたい。

 そのことを要請して、今日の質問を終わります。

笹川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

笹川委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、水産加工業施設改良資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

笹川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

笹川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

笹川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時十一分散会


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