第11号 令和7年4月23日(水曜日)
令和七年四月二十三日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 御法川信英君
理事 鈴木 貴子君 理事 西田 昭二君
理事 葉梨 康弘君 理事 神谷 裕君
理事 野間 健君 理事 渡辺 創君
理事 池畑浩太朗君 理事 長友 慎治君
大空 幸星君 栗原 渉君
小池 正昭君 武村 展英君
田野瀬太道君 根本 拓君
根本 幸典君 長谷川淳二君
平沼正二郎君 広瀬 建君
福田かおる君 宮下 一郎君
森下 千里君 簗 和生君
山本 大地君 石川 香織君
岡田 華子君 金子 恵美君
小山 展弘君 近藤 和也君
西川 将人君 福田 淳太君
緑川 貴士君 柳沢 剛君
山田 勝彦君 空本 誠喜君
林 佑美君 許斐亮太郎君
村岡 敏英君 庄子 賢一君
角田 秀穂君 八幡 愛君
北神 圭朗君
…………………………………
農林水産大臣 江藤 拓君
文部科学副大臣 武部 新君
農林水産副大臣 笹川 博義君
厚生労働大臣政務官 吉田 真次君
農林水産大臣政務官 庄子 賢一君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) 原 一弘君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局審査局長) 大胡 勝君
政府参考人
(消費者庁審議官) 井上 計君
政府参考人
(文部科学省大臣官房学習基盤審議官) 日向 信和君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 山口 靖君
政府参考人
(農林水産省大臣官房総括審議官) 宮浦 浩司君
政府参考人
(農林水産省大臣官房統計部長) 深水 秀介君
政府参考人
(農林水産省輸出・国際局長) 森 重樹君
政府参考人
(農林水産省農産局長) 松尾 浩則君
政府参考人
(農林水産省経営局長) 杉中 淳君
政府参考人
(水産庁長官) 森 健君
政府参考人
(中小企業庁事業環境部長) 山本 和徳君
農林水産委員会専門員 千葉 諭君
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委員の異動
四月二十三日
辞任 補欠選任
大空 幸星君 広瀬 建君
山本 大地君 福田かおる君
同日
辞任 補欠選任
広瀬 建君 大空 幸星君
福田かおる君 山本 大地君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)
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○御法川委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
本案審査のため、来る五月八日木曜日午前八時五十分、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
引き続き、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として農林水産省大臣官房総括審議官山口靖君、大臣官房総括審議官宮浦浩司君、大臣官房統計部長深水秀介君、輸出・国際局長森重樹君、農産局長松尾浩則君、経営局長杉中淳君、水産庁長官森健君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長原一弘君、事務総局審査局長大胡勝君、消費者庁審議官井上計君、文部科学省大臣官房学習基盤審議官日向信和君、中小企業庁事業環境部長山本和徳君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○御法川委員長 これより質疑に入ります。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。武村展英君。
○武村委員 おはようございます。自由民主党の武村展英でございます。
本日は、質問の機会をいただきましたことを心から感謝を申し上げます。また、質疑の準備に当たっていただきました農水省を始めとする役所の皆様に対しましても、心から感謝を申し上げたいと存じます。
早速質疑に入ります。
今回の法律は、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案ということで、いわゆる食料システム法案ということですが、この法案、二つの部分があります。持続的な供給に要する合理的な費用を考慮した価格形成に関する部分と、農業と食品産業の連携強化など、食品産業の持続的な発展に向けた施策、これら二つを一体として推進するものであります。本日は、この中で前段の、合理的な費用を考慮した価格形成の部分に絞って質問をさせていただきたいと存じます。
この合理的な価格形成を推進するというのは、食料システムの各段階の中で公正な取引が行われ、コストが価格にそれぞれの段階で適切に転嫁をされていく、そういった環境整備を行うものであると理解をしております。今まさに、長年続いたデフレから脱却をし、コストカット型経済から付加価値創造型経済に移行をしていく、そういう正念場にある中で、食料のみならず、経済全体で政府を挙げて取組が行われている最重要課題であると認識をしています。
そこで、この法案に関する取組についてお伺いをする前に、まず、これまでほかの省庁で行われてきた公正な取引に関する取組についてお伺いをしたいと思います。
最初に、公正取引委員会がこれまで不公正な取引に関してどんな取組を行ってこられたのか、お伺いをいたします。
○大胡政府参考人 お答え申し上げます。
公正取引委員会は、不公正な取引方法に係る独占禁止法被疑事件におきましては、調査の結果、証拠に基づき違反行為が認められる場合には、関係事業者等に対して行政処分として排除措置命令等を発出しております。また、調査段階、途中段階でございましても、関係事業者等から提出された改善措置を妥当とし、法的措置として確約計画の認定を行い、実施させる場合もございます。このほか、違反行為の認定まではできないものの違反の疑いがある場合には、関係事業者等に対し是正措置を講じるよう警告を行う場合もございます。さらには、調査の結果、違反につながるおそれのある行為が見られた場合には、違反行為の未然防止の観点から、関係事業者等に注意を行っているところでございます。
○武村委員 ありがとうございました。
引き続いて公正取引委員会にお聞きをいたしますが、食品の取引に関して、この十年間で公正取引委員会が不公正な取引として取った措置についてお聞かせをいただきたいと思います。
また、現行の法律に基づく農水省からの通知の有無についても併せてお伺いをいたします。
○大胡政府参考人 お答え申し上げます。
公正取引委員会が過去十年間において食品に関する不公正な取引方法として行政処分又は警告を行った事案といたしましては、類型としまして、食品メーカー等による再販売価格の拘束事案が三件、食品スーパー等による納入業者に対する優越的地位の濫用事件が二件、食品スーパーによる不当廉売事案が二件、農業協同組合等による組合員に対する拘束条件付取引等の事案が五件ということになっております。このほか、食品の取引において違反行為につながるおそれのある行為が認められた場合には、注意を行っているところでございます。
また、委員お尋ねの、食品等の取引に関し今回の食品等流通法に基づく農林水産大臣からの公正取引委員会に対する通知が行われたことは、実績としてはございません。
公正取引委員会としましては、引き続き、食品等の取引において不公正な取引方法に該当する事案に接した場合には、厳正に対処していくとともに、今後、食品等流通法の規定に基づき農林水産大臣から通知があったときには、適切に対処してまいりたいと考えているところでございます。
○武村委員 ありがとうございました。
価格転嫁に関する施策に関して、参考になる施策として、二〇一三年十月一日に施行され、二〇二一年三月末に既に失効をしていますが、消費税転嫁対策特別措置法という法律がありました。これによって消費税の適切な転嫁が推進をされました。この法律によって取られた措置の実績と、果たした役割についてお聞かせください。
○原政府参考人 お答えいたします。
平成二十五年十月一日に施行されました消費税転嫁対策特別措置法は、令和三年三月三十一日をもって失効しておりますけれども、同法は、消費税率の引上げに際し、消費税の転嫁を阻害する行為の是正等の特別の措置を講ずることにより、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保してきたものと考えております。
同法で規制されておりました消費税の転嫁拒否行為、これに対しまして、公正取引委員会におきましては、平成二十五年十月から令和六年三月までに五十九件の勧告及び三千八百四十六件の指導を行っております。
○武村委員 ありがとうございました。
今、公正取引委員会から、独禁法であるとか消費税転嫁特措法についての取組実績について確認をさせていただきました。
続きまして、中小企業庁にお伺いをいたします。
中小企業庁は、下請法や下請振興法を根拠に不公正な取引に関する取組を行っておられると認識をしておりますが、どのような取組を行ってこられたのか、お聞かせをください。
○山本政府参考人 お答えいたします。
中小企業庁では、取引適正化に向けた取組として、年二回の価格交渉促進月間に基づく発注企業ごとの交渉、転嫁の状況の公表や、事業所管大臣名での指導助言、下請Gメンによる取引実態の把握、業種ごとの取引適正化に係る自主行動計画の改定、徹底、交渉のポイントやチェックリストをまとめたリーフレット等の作成、周知などに取り組んできているところでございます。
また、本年一月に、石破総理から関係大臣に対し、価格転嫁を阻害する商習慣の一掃に向けて取り組むよう御指示があったことも踏まえまして、経済産業省としても、関係業界団体や関係省庁に対し働きかけを行っておるところでございます。
さらに、公正取引委員会と共同で、下請法、下請振興法改正法案を今国会に提出しておりまして、協議に応じない一方的な価格決定の禁止等を通じ、これまで以上に価格交渉をしやすい環境整備に取り組んでまいります。
こうした取組を粘り強く継続し、一層の価格転嫁、取引適正化を推進してまいります。
○武村委員 ありがとうございました。
実態調査であるとか価格転嫁Gメンの取組のほかに、各種ツールも充実をしておりまして、こうした取組も、農水省の取組に対して十分参考になるものだと考えます。そういう意味では、これからも省庁間の連携というものが重要になってくると思います。
続きまして、同じく中小企業庁にお伺いをいたします。
食品製造業、食料品を含む卸売業、それから食料品を含む小売業の価格転嫁の現状についてどのように認識をされているのか、お伺いをいたします。
○山本政府参考人 お答えいたします。
中小企業庁で実施しております価格交渉促進月間のフォローアップ調査によりますと、昨年九月の時点の価格交渉の状況としては、食品製造業では約六割、食料品以外を含む卸売業、小売業ではそれぞれ約五割の中小企業が、交渉が行われたと回答しております。一方で、いずれの業種におきましても、受注の減少や取引停止を恐れ交渉ができなかったですとか、交渉を申し出たが断られたという回答も一割弱程度ある状況でございます。
また、価格転嫁につきましては、全業種平均の価格転嫁率が四九・七%であるのに対し、食品製造業の価格転嫁率は五五・三%であり、業種別では比較的上位にございます。食料品以外も含む卸売業、小売業の転嫁率につきましては、それぞれ五一・二%、四八・八%であり、いずれも平均程度の転嫁状況となっております。
なお、経済産業省では、大串経済産業副大臣から、流通、小売業の業界団体に対し、直接、取引適正化に係る要請も行っております。この中で、流通業界内において下請法に違反するリベート等の事例があることを踏まえ、農水省が策定している食品製造業者、小売業者間における取引推進ガイドラインの遵守徹底を促すなど、業界ごとの更なる取引適正化に向けた取組、推進が必要と認識しております。
○武村委員 ありがとうございました。
食品に関する取引について実態の御認識をお聞きしましたが、まだまだ交渉がなされていないケース、それから、転嫁が不十分なケースが多いということだと思います。
このように、これまで、公正取引委員会であるとか中小企業庁が、政府を挙げて、こうした価格転嫁それから価格交渉、こうした取組をなされてこられました。不公正な取引については独占禁止法に基づいて公正取引委員会が措置を実施しておりますし、中小企業庁は下請法や下請振興法に基づいて取引の適正化のための取組を行っておられます。そうした中でなぜこの法律が必要なのか、想定される具体的な取引も交えてお伺いをいたします。
○笹川副大臣 御質問ありがとうございました。
今、公正取引委員会、中小企業庁からもるるの答弁がございました。現在、他の委員会でも、提出した法案の御審議もいただいているところであります。
我々とすると、今、食品の取引を対象とし、自由な競争の今の現況の中ではコスト割れが生じているということが大きな課題というふうになっております。今申し上げたとおり、公正かつ自由な競争を補完する意味においても、食料の持続的な供給を実現するというのも大事な観点、ですので、この点についての新しい措置をしていきたいということでございます。
改めて、目的については、公正かつ自由な競争というのが全般、それで、我々は、食料の持続的な供給ということを目的というところの差異があるというふうに思いますが、基本的な姿勢として、自由な競争を至上とするか、これを補完する必要ありとするか、というところが差異かなというふうに思います。
○武村委員 ありがとうございました。
公正かつ自由な競争のほかに、食料の安定的な供給というところに差異があるということでした。
それ以外にも、中小企業庁が根拠としている下請法は、対象の範囲が相当狭いということもあろうかと思いますし、下請振興法についても、調査は幅広く行われておりますが、措置の対象となる取引は資本金に制限がある、それからまた、個人は範囲に入っていないということもあって、食料システム全体として考えれば、個人の農家であるとか、個人の取引を行われる主体もこの法案は対象にしているということで、非常に意味のある、そうした法案だというふうに思います。
この法律の執行に当たっては、農水省は実務的に公正取引委員会や中小企業庁と日常的に情報交換を図りながら連携を密にすることで、お互いが効果的な取組が可能となるというふうに考えます。
公正取引委員会の措置というのは、最終段階、非常にハードルが高いものでありますが、実務的には、その前段階から様々な調査が行われています。そうしたことは農水省がこれからやろうとしている取組とも重複する、そうした部分もあろうかと思いますので、連携が非常に大事になってくるかと思います。
また、中小企業庁、これまで取組を行われてこられましたが、配付資料の一番最後につけさせていただきましたが、ツールが非常に充実をしていて、こうした取組は農水省の取組にも非常に参考になるかと思います。
そういう点で、こうした情報共有、それから連携についてこれからどうしていくのか、農水省のお考えをお聞きをいたします。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今し方、公正取引委員会、それから中小企業庁からも御答弁がございましたとおり、取引の適正化に関連した法律の執行に当たりましては既に多くの知見をお持ちでございます。
農林水産省といたしましては、当然、関係省庁と緊密に連携をしていくという姿勢でおります。具体的なその連携の在り方につきましては、実効的な連携となるように十分調整をしていきたいと考えてございます。
○武村委員 ありがとうございました。
続きまして、この法律の対象についてお伺いをしたいと思います。
この法案が対象とするものはあくまで食品でありますので、例えば、農地で生産される花卉などは対象になりません。しかしながら、農地で生産される花卉などの農産物も、農地を活用しているという点では食料安全保障に大きく貢献していると考えます。そういう意味で、農水省も何らかの支援をしていくべきと考えますが、お考えをお聞かせください。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、この法案におきましては、費用を考慮した価格形成というのは、元々、昨年改正されました食料・農業・農村基本法の規定に基づいて措置を講じてございます。基本法の中では食料を対象とするということでございましたので、この法案におきましても食料を対象としてございます。
一方で、この法案には取引実態調査というものがございます。この取引実態調査の対象といたしましては、花卉も含めて実態を調査するということといたしておりますので、コストの実態把握をまずはしっかりと進めていきたいと考えてございます。
○武村委員 ありがとうございました。
まずは実態把握からということで、その後の御支援についてもお願いをしたいと思います。
続きまして、この法案によりますと、通常、費用として認識しにくいものを指定飲食料品として指定をし、費用に係る指標を作成、公表する団体を認定できる旨が規定をされています。そして、当事者間では、今後、こうした指標を参考に交渉が行われていくこととなります。
そこでお伺いをしたいのですが、コストの上昇分というものは全て価格転嫁されるべきものかどうか、例えば、コストのうち、原材料の高騰分、また人件費の上昇分は全て価格転嫁されるべきと考えておられるのかどうかをお聞かせください。さらには、指標がない農産物や食品は取引に当たってどのような交渉を行えばよいのか、また、農水省はこれからどのような周知、助言を行うことを考えておられるのか、それぞれお伺いをいたします。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘ございましたとおり、基本的には、コストの上昇分というのは、費用を賄うという意味において転嫁をできるだけしていただきたいということでございます。ただし、これは、取引条件の最終決定は当事者間で行うということでありますので、その上昇分の説明というものを丁寧に行っていただくということが重要だというふうに考えてございます。
この取引の交渉というのは、今申し上げましたとおり、丁寧に誠実に協議をするということに尽きますので、今回これを努力義務としてございますが、この努力義務の中身を丁寧にまた周知をしていきたいというふうに考えているところであります。
○武村委員 ありがとうございました。
最後の質問をさせていただきます。
農産物というものは、そもそも天候による影響など、様々な要因が価格に影響をいたします。そこで、コストの変動を大きく上回る需給のバランスの変化に起因する価格変動に対してはどのように対応をされるのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今お話のございました、気象災害などによります急激な変動に関しましては、収入保険ですとかナラシ対策、あるいは野菜価格安定制度というセーフティーネット制度が措置をされてございますので、こういった対策への加入を促進していきたいと考えてございます。
御指摘のとおり、平時のコスト割れの抑止だけではなくて、こうしたセーフティーネット対策を併せて初めて一定の収入確保の環境整備が整うと考えてございますので、持続的な食料供給に万全を期してまいりたいと考えてございます。
○武村委員 以上で終わります。ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、平沼正二郎君。
○平沼委員 皆さん、おはようございます。自由民主党の平沼正二郎でございます。
本日は、質問の機会をいただきました理事、委員、皆様に心より感謝と御礼を申し上げる次第でございます。
さて、本法案でございますけれども、初めて聞いたときは、これはなかなかチャレンジングな法案だなと感じました。なぜなら、やはり一般的な価格の決まり方というのは、生産者から販売業者、消費者までのプロセスにおいて、市場原理において自然と形成をされるものと私は理解をしております。一方で、市場原理に過度に依存した場合、売手側が優位性を持つ状況では、生産コストに合わない価格で販売を強いられる事態が発生するという可能性もあるわけであります。
ちなみに、私は、大学卒業後、ある電気機器メーカーに勤めておりましたけれども、その頃、新入社員は、最初、現場を知れということで地方の営業所に行きまして、量販店担当のルートセールスをしていたことがございます。
当時は、もしかすると今も変わっていないかもしれませんけれども、売手側、すなわち量販店側が非常に圧倒的な力を持っていた時代でございまして、かなり安価な価格で商品を販売せざるを得ないという状況が生まれておりました。余り皆さん御存じではないかもしれませんけれども、家電の値下げというのは、必ずしも家電量販店が身を削って行っているわけではなくて、メーカーがいろいろな名目で補填をして安く提供しているという事例もあります。先ほど武村先生が公取のお話もされておりましたけれども。
やはり、何とかフェアとか、いろいろ販売拡大みたいな形でやっているわけでございますけれども、当然メーカー側は、はい、そうですかということで必ず妥協をしていたわけではないんですけれども、様々なハードな交渉を行っておりました。この話は付随していろいろなエピソードがあるわけで、私に興味がある方は私に聞きに来ていただければと思いますけれども。
さて、話を戻しますと、このように市場でいろいろに変化する価格の形成を、昨今の厳しい状況、例えば、肥料や飼料の高騰、地球環境の変化、国際情勢の不安定化、食料安全保障の確保などを踏まえて、農業や漁業や畜産、酪農においてある程度コントロールするということは、ある意味自然の流れなのかなと思う次第でありますし、本法案の早期の成立が生産者の将来予見性の確保につながると考えております。
さて、将来予見性でやはり重要なのが、まずは生産者における収入の確保であると思います。これも何度も本委員会でも指摘をされておりますけれども、例えば、米農家の時給は全国平均で九十円程度、若しくはそれより下回っているではないかとも言われております。これだと、やはり将来農家をちょっとやってみようかなという気にはなかなかならないでしょうし、この収入の低さが、まさに担い手の不足につながるのだろうと思います。
本法律の大本の趣旨も、いかにして日本の生産現場を守り、日本の食料安全保障の確保につなげていくのかということであると私は理解をしております。生産者の安定的な収入の確保は喫緊の課題であります。また、今後、高齢化が更に進み、現在の収量を確保するのはかなり厳しい状況が生まれる可能性が高く、今後は少ない労働投入量で効率的な経営が迫られております。
そこで、まずお伺いをいたしますけれども、この第一次産業における労働生産性について、農水省の見解をお聞かせ願えますでしょうか。
○笹川副大臣 御質問ありがとうございました。
今委員から御指摘をいただいたことは各分野に共通することだというふうに思いますし、たまたま私がいた会社でも、価格転嫁、いわゆる販売価格を上げさせていただきたいという思いをお願いをしましたけれども、結局二十年以上してもらえなかった、そんな厳しい状況もあった中であります。
そういった意味において、もう一つの課題とすると、その担い手、従事者をどう確保していくのかということでございますが、これとて、やはり、少子高齢化の中で、それぞれの分野の中で、確保というのは大変難しいというふうな現況であることは間違いありません。それは、やはり、農業も漁業も取り巻く環境は共通という中で、生産性というところに着目をするならば、この生産性をいかに向上させていくかという取組が大事であるというふうに思います。
そのためには、この四月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画に基づいて、それぞれ今後五年間、農業においては集中的に構造改革を行っていくということであります。同時にまた、漁業についても成長産業化を果たしていかなきゃならないということになりますと、やはり様々な取組、特に先進技術を取り入れたりというようなことをやって生産性を上げていくということは、とても大切な観点、御指摘だというふうに思っております。
○平沼委員 副大臣、ありがとうございます。
農業における労働生産性は、生産者一人当たりがいかに効率的に収量を出せるかということになりますけれども、やはり、この裏づけに重要なのは、コストに見合った収入があるのかということであります。現在の日本の第一次産業の多くは、生産性は結構、徐々に徐々に上がっていると私も認識をしておりますけれども、一方で、収入も一緒に上がっていかないといけないということでありますので、やはり、この法案というのがその是正につながるものではないかなと考えております。
続いて、次の質問に入ります。
今回の法律では、持続的な食料システムの確立がうたわれております。その中で、四つの事業活動、一、農林漁業者との安定的な取引関係の確立、二、流通の合理化、三、環境負荷低減の促進、四、消費者の選択への寄与、この四つに関して計画を立て、この計画が農林水産大臣により認定されれば、長期低利融資や税制の特例などが受けられるわけでございます。
まず、この四つの、それぞれの具体例というのを是非教えていただきたいのと、認定を受けるための計画の作成というのが当然必要なわけでありますけれども、この作成に関して、やはりその作成自体をサポートするような体制や支援というのを立てないといけないと思っておりますので、この辺りはどう考えていらっしゃるか、お聞かせ願えますでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
四つの事業活動計画の具体的な例でございますが、まず、安定取引関係確立事業活動というのがございます。これでございますと、食品製造業者が、原材料の産地の近くに一次加工施設ですとか冷凍冷蔵施設、こういったものを整備いたしまして、農業者との契約取引を拡大して、国産原材料の比率を高める。
それから、流通合理化事業活動でございます。食品流通業者が、物流施設に、パレットに荷を載せる自動化機械、パレタイザーというものがございますが、こういうものを導入することによって、出荷の際ですとかトラックに荷を積むときの作業を効率化するといったような取組。
それから、環境負荷低減事業活動というものがございます。これは、外食事業の方々が、店舗の油揚げ機、フライヤーと呼ばれるようなものでございますが、油の酸化防止装置を導入するということによって、省エネですとか油の使用量の削減に資するというようなもの。
それから、最後の消費者選択支援事業活動でございますが、これは、食品小売業者の方々が、売場などで映像を配信するディスプレーですとか電子POP、こういったものを整備することによって、消費者の方々に、例えば有機農産物ですとか生産の現場の理解醸成を促すといった、こういう取組を想定をいたしてございます。
また、この計画を円滑に策定できるようにという取組でございますが、今回のこの四つの事業活動計画とともに、連携支援計画というものも法定をいたしてございます。
これは、地方公共団体ですとか商工会、あるいは金融機関などの地域の協力者の方々が、事業構想の策定の段階ですとか事業開始後の販売先の確保、こういった事前事後にも備えた計画を策定して支援するというような取組でございますし、そもそも、この四つの事業活動計画自体も、食品事業者だけではなくて、農林漁業者ですとか研究事業者、こういう方々と共同で策定できるというふうにいたしてございます。
最後に、御指摘のありました伴走支援でございますが、運用面で、本省、地方農政局などに相談窓口を設置をいたそうと考えてございます。この計画申請に当たっても、文字どおり伴走支援を行えるように、事業者の目線に立って運用していきたいと考えているところでございます。
○平沼委員 ありがとうございます。
連携支援計画であったり、やはりそれはすごく重要だと思います。
例えば、担当の省庁は違いますけれども、ものづくり補助金とか、中小企業向けの補助金というのは、地域の商工会なんかが非常に伴走支援して、面倒を見て、相談に乗って、実際に申請して受理をされるというパターンが非常に多くあるわけでございますけれども、やはりこういったサポートがあるからこそ制度の利用が促進されておりますので、本制度も実効性が確保できるよう連携機関も含めて取組を引き続きよろしくお願いいたします。
さて、ここからは今回の法律を施行するに当たってコアな部分になるかと思いますけれども、合理的な価格形成とは一体何なのかということでございまして、合理性というのを見出すためには、当然参加プレーヤーがそれぞれの状況を把握しなければなりません。また、その合理性に関しても理解をしていただく必要があるのかと思います。
では、その合理性をどう見出していくかということが大変重要なわけでありまして、今回の法律では、取引実態調査を実施することにより、合理性の確からしさを判断するのかと思います。
しかしながら、先ほど述べたとおり、様々な参加プレーヤーがおりますので、生産者や流通、販売業者等々でございますけれども、それぞれのプレーヤーの更に中身も様々でありますので、例えば具体的には、米農家と野菜農家でも、作る過程、機械などは大分違いますし、野菜だって品目でかなり差があるわけであります。私の地元で考えても、例えば中山間地もあれば平地もある。
つまり、全然生産体制も整備も違うというわけであります。そのような中において、取引の実態を把握するというのはかなり骨の折れる作業になるのではないかなと思っておるんですけれども、そのような多岐にわたる作業において、やはりこの実態を調査する体制の整備が不可欠であると思います。
そこでお伺いをいたしますが、取引実態調査のためには相当数の人員も必要と考えますが、取組状況や今後の予定に関してはどうなっているのか、お伺いをいたします。
○笹川副大臣 委員が御指摘のとおりでありまして、それぞれの分野、段階、本当に様々だというふうに思います。そういった中では、取引の実態調査がやはりこの法律を運用をしていく中でも核の部分ということだというふうに思いますので、令和七年度より、農林水産省本省、地方農政局等で二十名程度の専門職員を配置し、取引実態の調査、把握に当たるということでございますが、これとて十分かという御指摘は必ず出ると思いますので、今後は計画的に拡充を図っていくということが大事だというふうに思っております。
○平沼委員 ありがとうございます。
副大臣も御指摘いただいたとおり、やはり今後、品目の追加だったり、拡充だったりというのも予想されますし、そうなると当然の人員の不足というのは予想されることでありますので、また、昨今やはり人手不足ということもありますので、どういった具体的な調査を行うかにもよるんですけれども、やはり一部DXの力なんかも使って効率的に調査できるような内容、こういったことも検討いただいて、実行可能となるような形で引き続きの検討及び準備をお願いをしたいと思っております。
引き続き、取引実態調査に関してお伺いをいたします。
これは先ほども申し上げましたが、取引や流通には様々な形態や地域特性などがあります。想像するにかなり多岐にわたると思いますが、実態調査としての把握はどのような範囲までを想定しているのかというのを教えていただけますでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
取引実態調査でございますが、まず、生産、製造、加工、流通、販売の各段階の取引を対象に調査をいたします。また、その中身でございますが、価格交渉ですとか商慣習といった取引の状況、それから、取引における協議の状況ということで費用の考慮などについての議論、そうしたものについても調査をする予定でございます。
この法律を御提案差し上げる前に、令和六年度に、私ども、予算措置でコスト構造調査というものを実施してございます。この中では、米、大豆、小麦、野菜、果実、茶、飲用牛乳、鶏卵、食肉、加工食品といった食品に関して、各品目の主産地から首都圏のスーパーマーケットに出荷されるような流通形態に着目しまして調査を行ってございます。
御指摘のとおり、様々な品目の産地から様々な流通ルートがあるというところでございますので、今後、この現場の実態をより一層適切に把握できるように、対象範囲の拡大を含めて充実をしていきたいと考えているところでございます。
○平沼委員 ありがとうございます。
まだまだこれから、検討中という部分はあると思いますけれども、是非、実効性があって、様々なコンセンサスが得られるものになるようにお願いをいたします。
続いて、コスト指標の作成についてお伺いをいたします。
先ほどの取引実態の把握も非常に重要でございますけれども、あわせて、コストの正確な把握というのが合理的な価格形成には欠かせないものかと思います。
今回、コスト指標作成団体により指定された品目に関して、生産者団体、製造業者団体、流通業者団体、小売業者団体からの協力やデータ提供や意見交換により指標が作成されると理解をしております。こちらも当然のことながら様々な関係者があります。
そこでお伺いをいたしますが、まず、指定品目の現状の指定想定を教えてほしいのと、あわせて、コスト指標を作成いたしますけれども、その指標が果たして明確なものであるかの判断というのをどうするのか教えていただけますでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
まず、品目の指定の候補でございますが、現在、米と野菜、飲用牛乳、豆腐、納豆の四つの品目を候補として、品目ごとの関係者によるワーキンググループを設置をいたしまして、どうやったらコスト指標を策定できるのかといったことなど、協議を進めているところでございます。
また、コスト指標作成団体の業務の公正性と申しますか、コスト指標自体の公正性についてでございますが、まず、作成団体につきましては、生産、製造、加工、流通、販売の、理想的には全段階の方々に御参加いただきたいと思ってございますけれども、法律上、少なくとも複数の段階の事業者、事業者団体が参画をしていただいて、偏りのないような議論をしていただくということで、各段階のコストが的確に反映されるようにしていくというふうに留意してございます。
また、様々な企業情報を取り扱うこととなりますので、指標作成団体の役職員の方々には秘密保持義務を法律上課してございまして、こういった措置によって公正な指標の作成を求める、また、そのことを指標作成団体の認定の際に要件として確認することとしてございます。
○平沼委員 ありがとうございます。
答弁いただいたとおり、いろいろな団体、生産者がありますので、いろいろなところでしっかりとコンセンサスを取っていただくというのは非常に重要なんだと思っております。是非、引き続き丁寧な議論の積み上げをしていただいて、混乱を生まないようにしていただければと思います。
最後の質問に移ります。
やはり、価格というのに最も敏感なのは最終の消費者であると思います。私も一応それなりに家事をいたしますので、スーパーに行ったりもいたしますけれども、最近ですと、やはり野菜の値段が高くなったなとか、子供のお菓子の値段も高くなったなとか、調味料なんかも高くなったなと思うわけでありますけれども、食料品の多くで価格が上がっていると実感をしております。
ちなみに、二〇二五年、一年間の値上げ品目数、これは食料品だけではないですけれども、既に四月末時点で一万一千七百七品目と、二〇二四年の通年の九割を超える水準に達しているということであります。
一方で、地元に帰りますと、道の駅とかで販売されている新鮮な野菜や果物というのは、東京とは大分価格が違う、ある程度安く抑えられているなという実感もしているわけでございます。このように、価格というのはなかなか一概にこれだというものを規定するというのが非常に大変なことであると思います。
また、地元の農業従事者の皆さんとお話をすると、生産コストがかかっているなと思うことがほとんどであります。また、時給換算の話を冒頭いたしましたけれども、ある意味、農家の皆さんの労働対価部分を曖昧にしたまま、若しくはちょっと甘えたまま現在来ているのじゃないかなと感じる部分もあるわけであります。
その意味でも、今回の法案の意義は非常に高いと認識する一方で、やはり消費者の皆さんの理解を得るということと、やはりリテラシーを上げるということも非常に重要だと思っております。将来の日本の食を守るためにも、それの基軸となる生産者を守るためにもこの消費者理解は重要であると感じております。
最後にお伺いいたしますけれども、合理的な価格形成には消費者理解は重要だと思っておりますが、食育や理解増進を含めるとなると農水省だけでは難しいと思っておりますので、各省の連携をしながら、なかなか得ることのできない課題かとは思いますけれども、どのように連携等々を考えていらっしゃるか、お聞かせ願います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
消費者の理解が重要というのは私どもも同じ認識でございまして、約二年前から協議会を開催してございますが、消費者団体にも参画いただいて議論してきたところでございます。
御指摘のとおり、農林漁業体験等の地域の食育活動ですとか、学校教育の場の農林漁業教育、こういったことに関しましても、文部科学省を始めとしまして関係省庁と連携強化して、十分取り組んでいきたいと考えてございます。
○平沼委員 以上で終わります。ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、野間健君。
○野間委員 立憲民主党の野間健です。
今日は、まず大臣に、本来、食料システム法の審議ですけれども、現在、トランプ関税問題で、赤澤大臣始め、日米の交渉が行われております。これについてちょっと御質問したいと思います。
ちょっと資料にもつけさせていただきましたけれども、昨日、読売新聞では、この日米交渉に当たって、米の輸入、ミニマムアクセス米等の拡大をやるんだということを政府が検討しているということが報道されています。また、本日の日経新聞では、具体的に七万トンという数字まで出して、こういったことが今検討されているんだ、アメリカから米の輸入拡大をやるんだということが出されています。
そして、二十一日の参議院の予算委員会で、石破総理が、決して我が国は車を守るために農業は犠牲にしないという発言をされているんですが、こういうのを見ていくと、あたかも、恐らく何か、我が国の農産品が一つの交渉の材料として、カードとして、どこか知らないところでやり取りされているんじゃないかという疑念を抱かざるを得なくなるわけですね。
そして、訪米して帰ってきた赤澤大臣から日米の交渉の詳細が分かってきたという報道で、NHKなんかも、農産物について、アメリカ側が関心を持つ品目として、米や肉、ジャガイモ、その他、シーフードとか、私のふるさとの鹿児島県からも養殖のブリが年間二十億以上アメリカに輸出されていますけれども、そういったものの関心項目を列挙した。これに対して、赤澤大臣は、そういったアメリカの要求に優先順位をつけてほしいと求めたということなんですね。
昨日の赤澤大臣も、記者会見、今朝ニュースでやっていました。大臣、今、日米交渉はどうしているんですかといったら、スコーピングをしています、要するに、論点を今絞って、恐らくこの優先順位ということとつながりますよね、論点を絞っているところですと。つまり、じゃ、どういうものを交渉の材料にするかというのを政府内で検討しているんだ。
こういうことを聞きますと、やはり、我が国の農産物が一つのカードとして何か織り込まれてやろうとしているんじゃないか、こう思わざるを得ないんですけれども、大臣、この赤澤大臣の様々な発言に対してどう受け止めておられるのか、お聞きしたいと思います。
○江藤国務大臣 いきなり、行ったら、トランプさんが出てくるということで、何といっても世界一の権力者ですから、赤澤大臣がどれほどのプレッシャーに耐えたかということは想像に難くないと思います。昨日も園遊会で会いましたので、随分話をいたしました。
いろいろな話が向こうから一方的に私は出ているんだろうと思います。そして、優先順位をつけろという話も、報道ベースで出ているわけで、赤澤大臣が帰国して、公式に大臣として、優先順位をつけるように要請をいたしましたといったようなことはないわけでありますから、私は報道ベースの話だろうというふうに思っております。
過去の経済連携協定でも、なかなか日本の農業は非常に負担を負ってきた側面が強かったと思います。しかし、我々は、米国との間に貿易協定がもう既にあるわけでありますから、これがまず基本であるということは、まず間違いがない。
そして、米その他についてもいろいろ言うかもしれませんが、私は農林水産大臣ですので、皆様方と食料・農業・農村基本計画を議論させていただきました。まさに熟議の国会にふさわしい結果になったと思います。これの要諦は、食料安全保障を確立しよう、そして、米についても、やはり水稲もしっかり作っていこう、生産基盤を守っていこう、生産性を向上していこうということでありますから、これに水を差すようなことは私はしてはならないというのが、私の基本的な考え方でございます。
今後の、交渉事でありますから、私も内閣の一員でありますから、余り予断を持ったことは申し上げられませんけれども、とにかく、私も内閣の一員として、しかし農林水産大臣として、最善の結果となるように、政府一丸となって努力してまいりたいと考えております。
○野間委員 内閣の一員としてというところに、大臣の苦しいお立場はよく分かるんですけれども、是非、やはり農水大臣として、安易な妥協、安易に我が国の農業を犠牲に差し出すようなことだけは絶対にさせないように、お願いしたいと思います。
それで、これは農業全般に関わる、ある意味、我々が招いた事態とも言えるんじゃないかと思いますのは、今、トランプさんも含めてアメリカの閣僚というのは、みんなビジネスマンですよね。やはり、商機があれば、ディールをしてもうけよう。今、日本を外から見れば、米が足りないんじゃないか、去年から何倍にもなっている、アメリカから米を買えばいいじゃないか、こう思いますよね、普通。これは我々が招いた事態ですよね。
今大臣がおっしゃった米の生産基盤、正直言って、きちっと確立していなかった、ずっと減反減反、続けてきてしまって、実際、今、こんなことになってしまった、値段も上がっている。アメリカから買えばいいじゃないか、こう言われて、なかなか言い返せないところを、そういう事態を我々自身が今招いてしまっているということは、本当にこれは反省して、基本計画、そしてまた今日のシステム法にしても、きちっと農家がやっていけるようなところを作るというのが、本当は、アメリカ産の米、要りませんよ、日本でこんなにできていますからと言えるぐらいの体制があれば堂々と言い返せますけれども、おまえたち、足りないじゃないか、値も上がっているじゃないか、高い関税を払っても、輸入物もどんどん買っているじゃないか、こういうことを言われると、なかなかこのビジネスマンの人たちには言い返せない。
残念ながら、これは我々が招いた事態でありますので、大いにこれは反省しなきゃいけないと思います。
今、大臣からの決意はお聞きしましたけれども、来週ですかね、月末か月の初めか、また赤澤大臣が訪米されます。そして、今回、政府の対策本部に、農水省の職員からも事務局体制の中に入ったということでありますけれども、これはまだ決まっていないと思いますけれども、農水省の職員の方なんかも同行して、いろいろな向こうの雰囲気を見る、そういうようなことは考えられているんでしょうか。済みません、これは通告していませんけれども。
○江藤国務大臣 今のところ、考えておりません。
我々の、例えば農水の幹部を帯同させるということであれば、まさに農林水産分野は交渉の対象であるということを蓋然的に認めることに私はなるんだろうと思っております。
今回は、メインストリームは何といっても一〇%と車ですよ。何か、新聞を開くと、あたかも農林水産品が交渉のメインイシューであるような報道をされていますけれども、おかしいと思いますよ。そうではないです。我々が一番優先的に取り組むべきは、車に対する突然の課税、そして全製品に対する一〇%の課税、これについて、やはり取り下げてくれということが今回の交渉のメインイシューであって。
ここは農林水産委員会でありますから、先生がそのような御発言をされることは決して不適切だと思いません。まさに正しいと思いますけれども、ただ、よくよく考えてみると、何で新聞を開くと米の話とかが新聞の一面に載っているのかなと、何か私は大変な違和感を感じているところでございます。
○野間委員 まさに我々が感じている違和感はそこでありますので、大臣が今おっしゃったとおりだと思いますので、是非、日本の国益を守るために、よろしくお願いしたいと思います。
それでは、今回の食料システム法について御質問したいと思います。
今回の食品等流通法改正案の目的ですね。当初、いろいろな資材が上がり、生産者も、肥料が上がったり、飼料が上がったり、資材が上がったり、なかなか、しかし、これを価格転嫁ができないというようなことから今回の改正の問題も始まったと思うんですけれども、この法改正の目的、農林水産業に携わる生産者、あるいは食品産業、消費者、この食料システムの中で誰の利益を図るためにやっているのかということをお聞きしたいと思います。
○江藤国務大臣 これは、食料システム全体に関わる方々であります。
先ほど平沼先生からも、大変なバイイングパワーを使うという話がありました。私も、長い政治生活の中で、ある卸売市場には、今まで来たこともないような、例えば、この産地で不作になると、こっちの市場に強力なバイイングパワーを持っている人がいきなりやってきて、全部買うからこの値段だというようなむちゃな取引を要求するようなことがあって、逆にその地域での物が足りなくなってしまうというようなことが起こったような事例も過去にございます。
ですから、元々は、生産者の方々が、価格形成にほぼほぼ我々は参加ができないということに対する長年のやはり不満がある。そして、このままでは生産資材等もどんどん上がっていって、このままの状態を放置していては我々は営農を継続することさえ難しいという声が三年前ぐらいから非常に強くなって、大変長い時間をかけてやりました。
しかし、これは決して農業者のためだけのものではありません。生産者、それからいわゆる食品産業、それから一般の消費者の方々。消費者の方々は、先ほどの御議論の中でも、納得していただくということが大事でありますから、ああ、なるほど、この値段はこういうことでこの値段になっているのねということを分かっていただければ、日本の消費者も私は御理解いただけるんだと思っておりますから、食料システム全般に関わる方々、生産、流通過程、そして最終消費までの方々のために作る法律だというふうに認識をいたしております。
○野間委員 今大臣からお話がありましたけれども、食料システム全般の利益を図る、しかし、とりわけ、なかなかこの声の弱い生産者のコストなど、これについて、やはりきちっと利益を図らなきゃいけないというお立場だと思います。
資料の三で、食料関連産業の国内生産額の構成というものを出させていただいています。大きく、全般で百二十四兆円、これが令和五年度でなんですけれども、食品製造業四十・三兆円、関連流通業が三十八・九兆円、外食産業二十六・六兆円、農林漁業、生産者ですね、十三・三兆円、うち農業は十一・四兆円ということになっていますけれども、それぞれの業種、産業の利益がどれぐらいあるのか。いわゆる付加価値、粗利ですね。恐らく売上げからいろいろな原価を引いたものということになりますけれども、これをちょっと教えていただきたいと思います。
○深水政府参考人 お答えいたします。
二〇二三年の農業・食料関連産業の経済計算におけます各産業の国内生産額に占める付加価値の額の割合、これを付加価値率というふうに表現いたしますと、食品製造業では三四%、関連流通業では六六%、外食産業は三一%、農林漁業は三八%、そのうち農業は三七%となっております。一方、内閣府の国民経済計算における二〇二三年の全産業の付加価値率を見ますと、五一%と高くなっているということであります。
この付加価値率につきましては、減価償却費や人件費等も含んだ付加価値額を使っておりますので、実際の利益は、付加価値額から減価償却費、人件費等を差し引いたものとなりますから、各産業の利益率はこの付加価値率よりは低いものとなるということでございます。
○野間委員 今お話ありましたように、全産業平均ですと五一%。ですから、一千万売り上げたら粗利が五百万ぐらいある。しかし、そこから減価償却とか人件費を払う。そうしますと、なかなか、これはもう人件費なんか払っていたら厳しいですよね。そういう意味で、いわゆる食料システムに関わる産業は今おおむね三〇%台ぐらいですから、これは非常に厳しいということが分かると思います。
次に、この食料システムの一番出口といいますか消費者、消費者がいろいろな食品を買うときの一番の動機、消費者が最も重視しているものは何でしょうか。
○山口政府参考人 お答え申し上げます。
農林水産省は、消費者の日常の消費行動ですとか、あるいは食や農に関する意識を把握するために、令和三年度から、食スタイル、ライフスタイル調査を実施しております。この調査の中には、ふだんの買物で重視することという設問がございまして、その回答で最も多いのが、毎年、同じような商品であればできるだけ価格が安いことという回答でして、これが全体の四五%程度を占めていると承知しております。
○野間委員 資料四でつけさせていただきましたけれども、食で最も重視すること、これは経済性、安いものなんですね。先日、チェーンストア協会の方とお話ししましたけれども、やはり、一円でも一つのものが安いと隣のお店に逃げていってしまう、この戦いを日々やっているんだということでありました。
次に、食品製造業の労働生産性とか、他産業と比べての賃金、これを教えていただきたい。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
食品製造業の労働生産性と賃金、製造業一般と比較をいたしますと、労働生産性では製造業一般の約六割、それから賃金は製造業一般の約八割という低い水準になってございます。
この要因でございますが、食品製造業の生産性につきましては、製造工程への機械の導入が遅れておりまして人手に頼らざるを得ないところが多い、それから、少量で多品目の商品を生産するという特性がございます。また、賃金につきましては、パートタイマーの割合が高いといったことなどが考えられると分析してございます。
○野間委員 これも資料六で出させていただいていますけれども、他産業と比べると生産性とか賃金はかなり厳しい、劣悪と言ってもいいぐらいな、人手がかかる、厳しい条件の中で働いている、利益もなかなか出ていないということがお分かりになるかと思います。
続いて、流通とか小売事業の経営の現状について教えていただきたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
まず、流通でございますが、令和四年度の中央卸売市場の卸売業者あるいは仲卸業者の営業利益率を青果、野菜で見てみますと、卸売業者が〇・三六%、仲卸業者は〇・三七%と、極めて低い水準でございます。
また、小売業者の経営状況について、同じく令和四年度の決算実績に基づいて営業利益率を見てみますと、全産業平均が三・二%でございますが、飲食料品の小売業は〇・七%という低い水準になってございます。
○野間委員 資料七でつけさせていただいていますけれども、今お話ありましたように、卸売業者さんも、青果なんかですと〇・三六%。一千万あっても三十六万円にしかならない。仲卸に至っては、水産とか食肉とかはマイナスですよね。マイナス〇・〇五%、赤字です。
そして、スーパーマーケット、これは、一兆円とか兆円単位で売上げをやっているところですら、本当に一%、二%、三%しか利益が出ていないですね。非常に厳しいということはもう御承知のとおりだと思います。
次に、農業者の所得、人件費について教えていただきたいと思います。
○深水政府参考人 お答えいたします。
農業経営体の農業所得につきまして、令和五年の営農類型別経営統計のデータで申し上げますと、農業所得が主である主業経営体の農業所得は四百四万二千円でございます。なお、自家消費が主などの小規模な経営体も含めた農業経営体全体の平均で見ますと、農業所得は百十四万二千円となってございます。
また、本統計の作成に当たりまして、家族経営に従事した経営主あるいは家族の労働への対価というものは農業所得の中に含まれているということでございます。
○野間委員 今お話ありましたように、全ての、家族農業も合わせると農業所得は百十四万二千円ですよね。これは人件費は入っていないですから、完全な赤字ですよね。実際の生産者、こういうところでやっているということであります。
このように、消費者から生産者、ずっと食料システムの各産業の業態を見ていきますと、一体この食料システムの中で、何か、ほかの産業と比べて、ここはすごくもうかっている、いろいろな利益が出ているとか、そういったところはあるんでしょうか。教えていただきたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
食品産業全体を通してでございますが、売上高営業利益率を見てまいりますと、まず製造業でございますが、製造業全体が四・九%に対しまして食品製造業は二・七%、それから卸売業は全体が二・九%に対しまして食品卸売業は一・三%、さらに小売業全体二・八%に対しまして飲食料品の小売業は二・二%と、全体として一般よりも低位な水準でございます。
これまで食料システム関係の各産業分野においては、コストカットを中心として生産性の向上が取り組まれてこられましたが、いずれも収益性がこういった低い水準でございまして、付加価値を創造するような取組への対応というものが課題ではないかと考えているところでございます。
○野間委員 今お話がありましたように、結局、我が国の食料システム、全体で相当、他産業と比べても厳しい状況にあるというのははっきりしているところだと思います。
ですから、今回の食料システム法案、もちろん、いろいろな指標を作って、少しでも価格転嫁が進むように、そういうことはもう本当にすばらしいことだと思うんですけれども、もう既に今、食料システムの中では、乾いた雑巾をまた絞るような、本当に毎日涙ぐましい、血のにじむような思いをしているんですね。
この前もチェーンストア協会の方から、今、野菜も高い、どうしていますかと。そうしますと、キャベツの芯、今まで捨てていたやつを、これを細かく切ってもう一回野菜として再生させて売ったり、それから、規格外のそろっていないネギも、もうそれは関係なく少し安くして出して、消費者も受け入れてくれていると。こういうあらゆる努力を今もう既に、現に今日もあしたもやっているわけであります。
ですから、そういう中で、これからいろいろな、もちろん大事なことです、実態調査をして指標を作っていく、これもいいんですけれども、ここまでやる前に非常に皆さんはもうやっていますよね、経営努力。皆さんやっています。ですから、ここまでなぜ、ある意味、統制経済的な、コストの指標を作ったりとかそういうことをやる必要がどの点にあるのかということを教えていただきたいと思います。
○江藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、これに携わって三年以上かかっております。私も、チェーンストアの連盟の役員もしておりますし、食品産業議連の役員もしておりますので、様々な幹部の方々、各生産段階、各大規模、小規模、中規模にわたって、どれだけ自分のところの経営が厳しいか、特に、食品産業でいうと外食、中食の小さい規模のところは、本当に江藤さん、厳しいんですよ、利益なんかほとんどないんですよというお話は十分聞いてきました。
しかし、その反面、農家の方々のお話を聞けば、このコストではもうやめざるを得ないということもやはり聞くわけでありまして、ですから、今、付加価値を創造することが大事だということを言われましたけれども、今回の指標の作成は、特に農産品については足が速い。もちろん、保冷をしたり予冷をしたり、そういう手段は取れないことはありませんが、基本的には生鮮食品ですから足が速いということがあって、短期間で商取引をしなきゃいけないということであれば、やはりディールされやすい。平たく言うと、価格交渉で相手方の方は上に立ちやすい。一日遅くなったらもう古くなってしまうわけですから。そういうことであれば、やはり今回指標を設けることが適切だろうということで判断したところでございます。
統制経済的という御指摘がありましたが、決して統制しようということではありません。そういうことではありませんけれども、しかし、各流通段階の方々が御納得いただくディールができて、そして最終消費者の方々、そして最初の生産現場の方々を含めて、やはり、なかなか難しいのは分かっていますよ、オープンプライス方式でできるはずがないんですから。守秘義務を課すという話も先ほど局長から答弁もさせていただきました。
ですから、難しいことは分かっていますが、しかし、チャレンジしなければいけない。このままでは生産基盤を守っていく上でも非常に厳しい状況の中にあるということを踏まえた上で本法案を提出させていただきまして、指標もつけさせていただくということになっておりますので、何とぞ御理解をいただければというふうに思っております。
○野間委員 例えば、大臣、半導体とか鉄鋼とか、いろいろな産業が我が国にありますよね。そういうのに対して政府が指標を作って、こんな一つの目標がありますよということは言いませんよね。これは食料のみに非常に特徴的なこと、今大臣おっしゃったように、足が速い、そういう生鮮食品、これももちろん一つの理由でしょう。
しかし、本当は、やはり食料というものは公的な関与が必要なんですよね。自由経済に任せておけない。つまり、一番人間が生きる上の基礎的なものでありますから、これを保障するというのは自由経済だけに任せていてはいけない。やはりこれは政府がある程度関与する形できちっと確保していく、まさに食料安全保障。そういう観点があるから、こういう指標を作ったり、いろいろな価格についても、はっきり言って、政府がいろいろ口出しする。それはでも必要なことだと思うんですけれども、やはり食料だからこそこういう公的な関与をしているんだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○江藤国務大臣 食料システム法案ですから、もちろんおっしゃるとおりであります。様々なものについては、先ほど、中小企業庁や様々な、公取の方々も参考人として来ていただいて、それぞれの角度で、まあ指標は設けないかもしれません。
特に半導体の世界なんかになれば、処理能力であったり容量であったりそういったものが格段に進歩すれば、価格の変化、そして状況の変化は農産物よりはるかに速いですよ。米は米じゃないですか。もちろん、品種改良したり、食味の向上とか様々なことはあるかもしれませんが、そういった産業と農産物を同列で比較するのは若干無理があるかなというふうに思います。
やはり、先生おっしゃるように、食料は人間が生きていく上で一番基本的なものでありますから、その基本的なものを作っているのは誰かということであればやはり生産者でありますから、生産者の方々が日々汗を流して作られる、そして販売をされる、買い取られていく、それが納得のいく価格であるということがやはり生産意欲の維持につながる、それが食料安全保障の確保につながるという意思も込めてこの法案を作らせていただいたことでありますので、是非御理解をいただきたいと思います。
○野間委員 やはり食料だからこそということが私は基本にあると思います。そういった意味で、今回のこの生産者に向けた、今大臣のメッセージもよく分かるんですけれども。
ただ、この食料システム法案自体で生産者の所得の確保ということはうたわれているわけではありませんよね。結果的に所得が増えるという、もちろん要素があってやっているわけですけれども、今の食料という、最も人間の基礎的な、どうしても取らなきゃいけないもの、これを政府がやはり責任を最終的に持つということ、食料安全保障、こういったことを考えますと、残念ながら、これをやったからといって、じゃ、本当に生産者が増えるのか、生産者の所得が確保されるのか。それは私は、そう簡単ではない、そんな簡単にできないと思います。
ということになりますと、これは、やはり最終的には農家に対する所得の補償ということを、所得の補償といいますか、ある程度安定的な、我々は農地を維持するための一つの直接払いをやるべきだということを訴えておりますけれども、そういったことが、最終的には下支えとしてどうしても、これをやった上で、ある意味、車の両輪としてやっていく必要があるんじゃないかと思います。
生産者の所得を確保するという意味で、いかがでしょうか、大臣。
○江藤国務大臣 先ほど局長からも答弁をさせていただきましたが、野菜価格安定制度だったり、それから、様々な制度、収入保険も含めて、ナラシであったり、様々なものを含めて農業の経営は支えられているというふうに思っております。この法律だけで所得を向上させ、農業経営を確立させようということではありません。その一助となるものとなっていただきたいということでありまして。
また、直接補償の話は、またしっかり議論する場面が多分あると思いますが、現況も、御存じのように日本型の直接支払いを行っているわけでありまして、その内容については、私は、一度テーブルの上にのせてしっかり見直すべきだという立場は最初から全く変えておりません。
ですから、このことについてはまた改めて先生と御議論させていただくとして、この法律ができたら農家の所得の補償につながるんだということを私は断言するつもりはそもそもなくて、しかし、これをやることによって、少なくとも、生産者が販売の段階において異議の申立てをすることができる、そして協議を要求することができる。そういう場面も今まではなかったわけですから、それを法律の上で担保するということは、私は助けになるのではないかというふうに思っております。
○野間委員 是非、生産者の所得の確保の一助になる、いい法案ということになるように、我々もまた審議させていただきたいと思います。
次に、米不足の問題ですね。昨日も、大臣がそれについての、価格の問題等、反省を述べられたというテレビも拝見しましたけれども。
私は鹿児島県でありますけれども、ほかの九州の人にも聞くと、確かに、JA関係のAコープとかそういうところにお米はあると。しかし、それ以外のところは本当に入っていないです。恐らく地域的な、かなり偏りが、備蓄米の、現在いろいろ配分されていると思うんですけれども、起きているように思うんですけれども、これはどうなんでしょうか。そうやって、きちんと各地、満遍なく入っていくんでしょうか。これは、資料九、小売店には〇・三%しか備蓄米は今来ていない。まだ時間がかかっているのかもしれませんけれども、いかがでしょうか。
○松尾政府参考人 お答えいたします。
今般の政府備蓄米の売渡しにつきましては、既に二十一万トン売り渡して、今日から三回目として十万トンの入札ということで、四月から本格的に供給が始まっております。
売り渡した政府備蓄米につきましては、例えば九州の集荷業者、あるいは全国的な集荷団体も落札し、そこから、全国展開する大手の卸売業者や地方の卸売業者に販売されているものと承知しております。
私どもも、地域ごとの需給状況に配慮した供給がなされるのは非常に重要だということで、先月十四日には、集荷、販売、小売業者に対しまして要請を行うとともに、今回、卸売業者が調達された玄米を他の卸売業者にも条件付で販売できるようにすることで、備蓄米が地方の中小の卸業者や小売業者にも届きやすいように、こういうふうにしたところでございます。
引き続き、備蓄米の円滑な流通に努めてまいりたいと考えています。
○野間委員 是非お願いします。
それと、最後の質問になりますけれども、これは現場で非常に困っている問題です。
米不足の価格の高騰で、病院の食事、これが、病院の場合は、いわゆる食事代の公定価格が決まっているんですね。一食六百九十円、これに収まらなきゃいけないということで、米が高くなってしまって、患者さんに出すお米を減らしたり、外米を入れたり、輸入米を入れたり。すると、患者さんが味が違うといって食べなかったり。それから、とにかくお米を減らして別な野菜を入れたりとか、食事の内容が変わってきて、患者さんの健康に大丈夫かという声も上がっているんですね。
あと、学校給食については答弁は求めませんけれども、学校給食についても同様で、お米が高くて、あるいは手に入らないから、お米をやめて野菜とか別なものを入れている、麺類とかですね。そうすると、やはり子供たちも、生育の問題、あるいは米離れ、小さいときにお米を食べていたのが突然なくなってしまう。こういうのが現場で今起きています。
とりわけ病院は深刻な問題だと思うんですね。こういう価格転嫁、病院に納めているお米の業者さんは価格転嫁してほしい、しかし、病院はこれは決まっているからどうしようもできない、こんな状況になっていますけれども、これは厚生労働省の管轄になるかと思いますけれども、どういう対策を今取っていますでしょうか。
○吉田大臣政務官 お答え申し上げます。
厚生労働省といたしましては、令和六年度補正予算における重点支援地方交付金の追加、これを踏まえまして、自治体に対しまして、医療機関等における食材料費の高騰に対する支援、これについての考え方をお示しをし、早急かつ確実な支援につながるように積極的な働きかけを行っているところでございます。
また、委員から御指摘ありましたように、令和六年度の診療報酬改定、これにおいて一食当たり三十円引き上げられた入院時の食費の基準額を、令和七年度より更に一食当たり二十円引き上げているというところでございます。
こうしたことを行いながら、こうした支援が医療機関等に適切に行き届くように、しっかり関係自治体とも連携をしてまいるところでございます。
○野間委員 そういう措置、交付金ということでされているんですけれども、ほとんどの病院はそういうことがされていることは知りませんし、都道府県も、そういうのを積極的に告知されているとも思えません。是非そういう周知徹底をしていただきたいと思います。
時間が参りましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、石川香織君。
○石川委員 立憲民主党の石川香織です。よろしくお願いいたします。
では、法案について質問させていただきます。
生産者の皆さんから、農家は自分で売る物の価格を決められないんだという話を度々聞いておりまして、私もこのことが最大の課題の一つだなというふうに捉えてきました。やはり、再生産可能な値段、きちんと努力とか苦労が価値として反映されている価格なのかということは非常に重要な点だと思います。
一方で、今、物価高の中で、消費者に価格転嫁というのは簡単に受け入れられないという状況があるということもありますし、消費者と生産者の間にサプライチェーンで多くの方が関わっているということで、今回の法案は、ただ単に価格転嫁をすることを理解してくださいねということにならないように、消費者、生産者だけではなく、流通に関わるあらゆる段階で働く人の姿がしっかり見える、納得できる法案にしなきゃいけないというふうに考えます。
取引の中には、生産者と集荷業者であったり、集荷業者と卸業者であったり、卸業者と小売業者、様々な取引があるんですけれども、より高く売りたい人、より安く仕入れたい人、より安く買いたい人、それぞれが思いが違う中で、同じテーブルに着いて、価格の合理化、適正化というものについて、価格を決めるというのはやはり相当なエネルギーが要るんじゃないかというふうに感じています。
この法案も、どこまでがその目標達成まで実効性が高まるかということが大きなポイントだと思いますが、一方で、今まで当たり前と思われていたこと、見直すことができるコストとか習慣を見直していくということのできる、いい機会にもなるのではないかと思います。
最初に、規格外の野菜の扱いについて伺います。
大臣にお伺いしますけれども、ちょっと前段、説明が長くなるかもしれません。ちょっとお聞きいただければと思います。
私は、まず、規格外の野菜とか果物、やはり日本は規格にこだわり過ぎているんじゃないかなという問題意識がずっとありました。スーパーなどで、サイズが統一されていて小分けにビニール袋で包装してあるというのは、本当に見た目もきれいですし、購買意欲も湧きますし、消費者もある意味それが当たり前と思っていると思います。
一方で、海外のスーパーなんかに行きますと、本当にいろいろな形の野菜が山積みになっていまして、消費者が買いたいものを選んで買うということが主流ではないかなと思います。
果たして日本に規格外という野菜はどのぐらいあるんだということをまず質問しようと思ったんですけれども、これは分からないということだったんです。というのは、目安としては、野菜の収穫量から出荷量を引けば、出荷されなかった量が出るということで、例えば二〇二三年産の野菜は、収穫量が一千二百六十三万トン、出荷量が一千百万トンですので、引き算すると、百六十三万トンが何らかの理由で出荷されなかった野菜ということになります。
この中に規格外の野菜も含まれますけれども、この百六十三万トンの中には、家族で分け合ったり、そういうものもあるでしょうし、一方で、取れ過ぎたことによる価格下落で仕方なく出荷できなかったもの、圃場で廃棄される、これも大きな問題なんですけれども、こういうものも含めるということで、規格外という理由で一体どれぐらいはねられたのかということは国も把握できていない、分からないということだったので、まず、個々の農家の事例なんかをいろいろ調べますと、一五%ぐらいがはね物になりますとか、三割がはね物になりますというネギとかがあったりとか、そういうのを調べることはできるんですけれども、まず、国が、本来食べられるものの中で、規格の違いで出荷できなくなっているものがどれぐらいあるのかということをやはり把握していく努力が必要ではないかなということを、要望も兼ねてまず指摘をさせていただきます。
規格外といいますけれども、例えば、キュウリが曲がっているとか、サクランボ、二つくっついてしまったものとか、大き過ぎるとか、味自体は全くこれは問題ないわけです。最近は、気候変動などで、見た目に影響が出てしまうということも多くなってきているということもあります。
消費者庁でこんなアンケートを取っておりまして、令和三年度消費者の意識に関する調査という問題について、規格外農作物、食品についてどのように考えているかという問いがありました。形や見た目が悪くても品質が変わらなければ購入するが五一・一%、通常品よりも値下げされるのであれば購入するというものが三六・六%、そもそも半分以上の方は、値段が少し安ければいいなどのことはありますけれども、見た目には余り抵抗がないと。絶対買わないという人は一二・三%だったんですね、見た目が悪いことで買わないと。
ということは、ほとんどの方が、見た目にこだわらないという方もいらっしゃるというデータ、令和三年度以降はちょっと調査を取っていないんですけれども、これだけ物価高になりますと、一二・三%の人が、見た目を理由にして購入しないといった方、考え方が変わった方はいるんじゃないかなと私は思うんですけれども、つまり、もったいないなと思います。
最近、もったいないとか手前取りとか、いろいろそういう意識は消費者に広がってきたと思うんです。今度は、見た目で決めない、野菜も人も見た目で決めないみたいな、そういうキャッチフレーズもありだと思うんですけれども、農水省が消費者の意識をまず変えていくということは結構大事なんじゃないかなと思うので、大変説明が長くなって申し訳ありません、これを大きなテーマとして、やはり大臣として発信していただくということは重要だと思うんですが、大臣のお考えをお伺いします。
○江藤国務大臣 大いに賛同するものであります。
私も地元を時間があれば一生懸命回っているわけでありますが、必ずもらいます、野菜やら果物やらですね。大体トランクがいっぱいになります。後部座席にも載せなきゃいけないぐらいもらうわけですが、そのときに、やはり農家の方は、出荷前の、例えばキュウリだったら真っすぐなやつをくれようとするんですよ。私は必ず、その横に箱があって曲がっているやつとかがあるので、こっちでいいですよと。どうせ切ったら変わらないので、キュウリなんか輪切りにしたら。いやいや、江藤君、いいからこっちを持っていきなさいと言われますが、なるべく出荷できないものをもらって帰るようにしています。それは、今委員がおっしゃったように、まさにもったいないという気持ちからです。
ただ、農家の気持ちとして多分あるのは、B級まではまだいいんですよ。宮崎の例を言うと、キュウリでいうとA品ですね、真っすぐのキュウリ、これは二百二十円から高いときで四百五十円ぐらいなんですね。サイズはMです。これが、ちょっと曲がっているB級になると、百六十七円から三百六十円になるんです。だから、急に五十円、九十円下がっちゃうんですよ。C級を出すとまさにもっと下がる。
ですから、これは難しいところで、例えばB級、C級を消費者が積極的に選ぶようになったら、販売価格が下がるじゃないですか。ただ、価格と量が農家の収入ですからね、P掛けるQが。ですから、そこはよく考えなきゃなりませんが、農家としては余り、B級、C級を減らしてA級を増やすことが農家の所得にはやはりつながるという側面があるんですよね。
私の地元では、本当に名人がいますから。全国から、売ってくれと玄関先、ハウスの前まで集荷に来るぐらいの人がいますよ、大名人が。そういう人はやはり絶対にB、Cは作らないということ。私も長くなって恐縮ですが。
ただ、言われることはよく分かります。そして、加工ということもありますから、今、国においては鉄のコンテナに対する支援をしています。ですから、しっかり集荷するには傷まないようにしなきゃなりませんが、例えば漬物にするのであれば、鉄のコンテナにばあんと入れて、輸送コストを減らすためにどおんと運ぶ。その鉄のコンテナの導入に対する支援であったり、様々なことをしたいと思っています。
そして、規格外の野菜を使った料理とか、そういうものについての発信をホームページでもいたしておりますが、これも強化をしたいなと今日の御質問をいただいて思いました。
それから、直販サイト、もったいない野菜というのもありますよね、これもなかなか人気があるようでありますから。それから、複数のJAでは、ふぞろいの野菜、「ふぞろいの林檎たち」というのが昔、若い人は知らないでしょうけれども、私たちはみんな見ているんですが、そういう名称をつけて、様々な取組が始まっておりますので。
やはり、せっかく作ったものを無駄にしない、そして、それにこだわらない人が、言われるように、これだけ物価が高くなって賃金の上昇が思わしくないと、一二・三%ですか、減っているかもしれませんので、こういった意識調査も随時行っていくことが必要だろうというふうに思っております。
○石川委員 熱い答弁、ありがとうございます。確かに価格の問題はあると思います。安くなってしまったら、これは所得につながる話ですので、いけないわけですけれども。
平成十四年までは国が目安となる標準規格というのを設定していまして、今はあくまでニーズなんですね。売手と出し手のニーズ、契約上でこういう規格が欲しいということで作るということになっておりますので、国自体も、簡素化、簡略化していこうということを後押ししているということで、実際にパンフレットなども作られているということでした。
選別する作業というのは、すごくコストとエネルギーがかかると思うんです。私も実際に、ハーベスターに乗って、ジャガイモと石を分けたりとか、規格を分けるということをやったんですけれども、物すごい大変な作業ですし、一方で、そういうところで働いてくださっている方もいるということもあって、いい機会ですから、いろいろな消費者のマインドとか、それから、いろいろなコスト全体がカットできる部分がもしあれば、こういうところも頭に入れるということ、これは非常に重要ではないかなと思いますので、思いを共有させていただければと思います。
続いて、二問目ですけれども、今回の適正な価格というのは何なのかというのは、とても難しいことだと思います。
今回、どのぐらいコストがかかったのかということで、コスト指標の作成をするということになっています。しかし、同じ作物を作っていても、作っている場所であったり農家の規模であったり、それぞれ違うために、生産コストそのものは異なると思います。
例えば、中山間地と大規模経営とか、あと、産地によって物流コストも変わりますし、今、九州のタマネギが出ていますけれども、北海道は秋にタマネギが出てくるとか、いろいろ条件が違う中で、同じ作物でみんなが納得する価格というのをどうやって設定していくのかというのは非常に難しいのではないかなと思います。
農水大臣が認定された民間の団体がデータを集めてコストを計算をして、農水相が監督した上で、このデータの扱いについては秘密保持の義務があったり、違反したら罰則ということにもなるんですけれども、準備期間を経て、一年で施行されるということになっています。このスピード感で実行されることは可能なのかということ、それから、この作業はどのぐらいの時間を費やせば結果が出る、つまり、消費者が、どれぐらい時間がたてば価格が変わったなということを実感できるのかという点についてお伺いさせていただきたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
コスト指標でございますが、消費者の手元に届けるまでのコスト指標を作成するということで、大変難しい課題でございます。
御指摘にもございましたとおり、取引の適正化に関する規定の公布は一年以内でございますので、現在、これに間に合わせることができるように、品目ごとのワーキング、関係者に集まっていただいてワーキングを設置いたしまして、議論を進めているというところでございまして、この施行に何とか間に合わせられるように取組を進めていきたいというふうに準備をしているところでございます。
それから、コスト指標が変わった場合に、小売価格にどれぐらいの時間で反映されるかという御指摘でございますが、ちょっとこれは、恐縮でございますが、先に結論を申し上げますと、一概にどの程度というのは言い難いというのが結論でございます。
少し御説明をさせていただきますと、コスト指標の使い方についても、現在、関係者で協議をいたしてございます。コスト指標が変化したときに、その変化した変化率を応分、見直しをするというような使い方、それから、コスト指標が変化した機会に合わせて交渉を改めてするというような使い方、様々な使い方があろうかと思いまして、こういう協議も今してございます。まだこれは協議中でございます。
こういった協議を経た上でも、最終的には取引条件は取引当事者間で決定をいたしますので、どういう使い方をされるかというのはまた当事者間で決まるということでございますので、なかなか一概に言い難いという結論でございます。
○石川委員 まだちょっと分からないことだらけということなんですが、今回の法案の中で、指定飲食料品等として指定されるものとして、具体的に、飲用牛乳、納豆、豆腐、米、野菜が協議会のワーキングチームにおいて議論されております。
価格の交渉をする場というのは、農畜産物ごとに機会があります。
例えば豆腐は、年に二回、交渉する機会があるというケースがあるそうなんですけれども、実態は、新商品が出たときに新商品の価格の話で終わってしまったりすることが多くて、なかなか、既にある商品も含めた実際の価格交渉という形に至らないということがあります。
また、生乳や乳製品の場合は、乳価交渉が実質、生産者の収入に直結する直接的な交渉の場になっております。乳価は、毎年、年末頃に生産団体とメーカーが協議して決めています。双方の努力によって乳価が上げられてきた。しかし、生産現場からは、今回の交渉というのは乳価交渉と何が違うのか、生産者の所得が増えないと意味がないのではといった声が上がっています。
そもそもコスト指標作成団体とは一体何者なのかということと、乳価交渉の場と、コスト指標を基にして行われる協議の場というのは何が違うのかという点についてお伺いします。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
まず、コスト指標作成団体についてでございますが、このコスト指標作成団体でございますが、生産、製造、加工、流通、販売の各事業者あるいは団体、こういった方々に入っていただきまして、理想的には全て、それから、少なくとも複数の段階の方々に入っていただきまして、なおかつ秘密保持義務なども役職員に課して、業務の公正性を担保しようとしているところでございます。
また、ここで策定されますコスト指標でございますが、例えば飲用牛乳についてでありますと、酪農の関係ですとか乳業の関係の皆様方がこういった団体に参画をして、ここで、全体を通して、コスト指標というのは大体こんなものですねということを合意しながら、合意形成しながら作っていくということを想定してございます。
これと乳価交渉の関係でございますが、乳価交渉自体は、これまでどおり、個々の生産者団体あるいは乳業メーカーとの間で行われることになるかと存じますが、交渉に当たって、指標作成団体が作成いたしました生産段階ですとか集乳段階のコスト指標、こういったものを乳価交渉の場で一つの交渉材料として活用されるというようなことを想定をしているところでございまして、交渉の場が二つあったり、重なってあるとかではなくて、交渉の場は乳価交渉の場一つで、ここの中でコスト指標が活用されるということではないかと考えてございます。
○石川委員 まだまだ生産者の方はちょっとイメージできていないところもあるようです。結局、乳価交渉の場というのは、メーカーが更に頑張って乳価を上げるということが農家の収入に直結するということもありますので、しっかり、今回は、法案の中でのやり取りの中と、それから、国としてどういう支援をして生産者の所得を上げていくかということも、別でやはり考えていかなきゃいけないということを感じております。
申し訳ありません、ちょっと五番に飛びまして、大臣にお伺いさせていただきたいと思いますが、今回、いろいろな方とお話をする中で、特に小売の方が、今回、消費者がこの議論、不在じゃないかという指摘をされている方がいらっしゃいました。なぜこの価格になったのかという根拠とかプロセスを、やはり相当な熱意で伝えていかないといけないのではないかというふうに感じます。
消費者に納得してもらうために、付加価値をつけることというのは大変重要だと思います。特に、農畜産物に関しては新鮮な状態で買ってもらうということが最大の価値ではないかと私は感じておりますけれども、新鮮な状態で消費者に届けるためには、物流の問題は切っても切り離せないと思っています。
昨年四月から始まった働き方改革で、トラックの残業時間の上限規制がありまして、人手不足ですとか、いろいろな問題があるんですけれども、各地で、新鮮な状態で農畜産物が運べなくなったりする、付加価値が下がったりする、値段が下がったりするという問題が起きているようです。
道東のある漁協では、水揚げされたサンマとかカレイとか、お魚の約一割が生の状態で出荷できなくなってしまって、価格が安い冷凍用に回さざるを得なくなってしまったという話がありました。
それから、青森県では、知事が既に、トラックの残業規制の緩和をしてほしいという要望を国交省にしておりますけれども、新鮮なリンゴを運ぶのに、今までは一日だったのが二日かかるようになってしまったということで、こういう要望も既にされております。
宮下知事も東京と青森の距離を論点に挙げておられましたけれども、私も、かねてから、この働き方改革、物流の問題は、産業とか地域によってはマッチしない状況があるのではないかと。ましてや、トラックの上限規制のルールによって、かえって収入が下がってしまう、それから物流コストがかかってしまうということが発生してきていると思いますが、物流の問題は、コスト面でも付加価値の面でも大変重要だと思っています。特に地域性を加味したルールも含めた視点も重要だと思っておりますけれども、大臣にこの点について伺います。
○江藤国務大臣 この点は、まさにこの議論を始めたときから、本当に中心的な話題になりました。特に、二〇二四年の前からやっていたわけでありますから、二〇二四年をまたいでどうするんだ、いわゆる上限規制がかかって、私のところは宮崎ですから、もっと遠いんですよ、青森よりも。ですから、私たちのピーマンなんかは実は東北まで行っています。岩手とか福島とか、そういうところまで買っていただいているんです。そういうところが出すということになれば、二日ないしは三日かかってしまう可能性があるということで、様々な議論を進めてまいりました。
ということでありますから、委員おっしゃるように、農産物の生産地は、茨城みたいなところはとても羨ましいんですけれども、大体遠いですよね。ですから、資材費、家族労働費、それから光熱費、こういったものは非常に、それに加えて、まさにそれと同じかそれ以上に、物流費というものは大きな負担だというふうに思っておりますから、当然、物流費は加味されるべきものだというふうに思っております。
ですから、この問題を解決することはどうしたらいいのかということで、局長とも長年議論をしてきたわけですが、その頃はまだ課長だったですけれども、例えば、福岡に大型の予冷施設を造りますと。予冷施設に入れるといったって、一旦トラックから降ろして、積んで、冷やして、また積み直して、人手もかかるやないか、時間もかかるやないかと、様々な議論をしましたが、先生がおっしゃるように、鮮度というものは農林水産品にとっては命でありますので、できる限りこういった予冷施設であったり、あとは物流を速くする。パレタイザーというのがありまして、ギュー、ピュー、ピューと積めるやつがですね、そのパレタイザーなんかを導入する支援も積極的にやることによる物流の効率化をしないといかぬのだろうと思っております。
まさに、今日御指摘いただいたことは大きな議論の一つであります。生産、流通、加工、販売。
そして、消費者が不在じゃないかという御指摘はありましたが、ただ、申し上げておきたいんですけれども、議論の最初の段階から消費者団体の方々にテーブルに着いていただけたというのが今回非常に大きな成果だったと思います。途中から入ってもらったのではなくて、議論の初めから消費者団体の方々にはこの御議論には参加していただいておりますので、もちろん一般消費者の方が入っているわけじゃありませんよ、団体の方ですから。でありますけれども、消費者不在でこの法案をまとめてきたということではないということは最後に申し上げておきたいと思います。
○石川委員 この物流の問題も、これは農水省だけのルールだけでは解決できないわけですけれども、是非、大きな論点として、今置かれている環境整備を整えるという点で要望させていただきたいと思います。
次なんですけれども、同じ付加価値ということについてなんですけれども、やはり、これぐらいの値段がするんだという納得感を得るためには、生産者、生産現場のイメージをしていくということは大事なことだと思います。
例えば、小さい頃に農作業を実際に体験するとか、ふだん見られているということであれば、大変な苦労なんだなということが分かると思いますし、私も実際に作業を一緒にさせていただくと、一層その苦労が分かる。この納得するというのは大変重要だと思うんですけれども、いろいろなやり方があると思います、付加価値をつけるのに。
例えば、商品に生産者の顔写真をつけるとか。私もこれは一気に感情移入します。ああ、この人が作っているんだと。インタビューの動画とかがスーパーで流れたりしますけれども、あれも見ちゃいます、ずっと。やはりそういうのは結構大きいのではないかなと。でも、そうするとコストがかえってかかるじゃないか、シールを作ったり、そういう指摘もあるかもしれませんけれども、例えば、農水省の方に聞いたのは、豆腐を作っている方が、豆腐に印字をつけるだけで高級感が増して付加価値がつくんだという話もされていたということで、なるほどなと思いました。
この付加価値をつけるというのは、難しそうには見えるんですけれども、工夫次第でコストがかからなくてもできることもあるということで、消費者に納得してもらうためのこの付加価値をどのようにつけていくかということ、イメージが湧くような答弁をいただければと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今委員からお話ございましたとおり、まず、取組をきちんとやるということと、それを発信をしていくということの二面があろうかと思ってございます。
まず、取組をしっかりやるという意味においては、この法案の中でも、国産原材料の利用を促すような計画制度、それから環境負荷を低減しているというような取組を進めているというような、そういう計画制度を導入してございます。
また、その計画制度の中にも、消費者に効果的に情報が発信できるように、そういう取組を進めるというので、委員から御指摘のございましたようなディスプレーですとかPOP、こういうようなものの設置を促すような取組というものも制度として盛り込んでございます。商品自体に表示をするということと、それから店舗などの店頭できちっとPRする、あるいは、昨今ですと動画なども皆さんよく御覧になりますので、そういうものを総合的にきちんとやれるように、この法案を通じて後押しをしていきたいと考えているところでございます。
○石川委員 いろいろなアイデアがあると思うんです。ネーミングもその一つだと思うんですけれども、平成三年に、収穫間近のリンゴ、ちょっと今日はリンゴの話が多くてあれなんですけれども、リンゴを襲った台風で、収穫間近のリンゴがたくさんおっこってしまった、木に残ったリンゴを落ちないリンゴとして受験生に向けて商品化したところ、これは付加価値がついた、すごくいい話だと思います。それから有限会社落ちないりんごという会社を設立されたそうなんですけれども。
やはり、こういうアイデアというのは本当に困ったときに出るものでもありますけれども、是非、いろいろなアイデアがあると思いますので、生産者の皆さんに期待をしたいなと思います。
では、最後の質問に参ります。大臣にお伺いさせていただきます。
消費者は、小売の方々に話を聞きますと、バスケット単価を重視する傾向が強いと。このバスケット単価というのは、籠いっぱいで総額幾らになったか、これを意識されているということで、一つ一つの商品は値上がりしていると思います、例えばキャベツは、二〇二〇年を一〇〇としますと、今年は二倍以上の値段になっているということで、キャベツの売上げはやはり下がっているそうなんですね、チェーンストア協会さんの話によりますと。
一方で、スプラウトとか豆苗とか、水耕栽培で比較的安定した価格で販売できるものの購入が増加しているということで、高くなってしまった野菜、例えば、例にキャベツを出しますけれども、どうしてもキャベツでなければいけないという方もいれば、キャベツが高かったらほかの野菜でも代用するかと考える方もいらっしゃる。私も実際どういうふうにお買物しているかというと、これを買うぞという日もあるんですけれども、これが安いからこれで料理してみようかなという気持ちにもなる。やはり多くの人が値段というのを決め手にしているということが分かってくると思います。
今回の法改正で、物価高に大変苦しんでいる消費者の方が許容できない範囲まで価格転嫁が進んでしまいますと、消費の落ち込み、国産品離れを起こしかねません。それは生産者にも回り回って不利益をもたらすことになるのではないかということで、その危険性についての認識、それから、先ほど野間委員の質問にもありましたけれども、今回の法改正は農家の所得向上にどれぐらい寄与するのかというところ、この点について大臣にお伺いさせてください。
○江藤国務大臣 もちろん、各流通段階でそれぞれが強い主張をして、各段階で全部プラス、プラス、プラス、プラスとなれば、それは足し算ですから、当然小売の価格は上がるということはあり得ると思いますが、論理的にはですよ。しかし、現実にはなかなかそうはならないんだろうなというふうに思っております。
ですから、そもそも、何度も御議論させていただきましたが、このままでは百十一万人の生産者の方々は減っていく一方、耕作放棄地も増えてしまう、これでは食料安全保障、食料自給率の向上は見込めない、やはり農家がしっかり手取り、そしてもうかる農業にしていかないといけないんだということは、やはりこの原点にはあります。もちろん、農家のためだけの法案ではないということは何度も答弁させていただきました。
ですから、そういうことが起こらないようにせねばなりませんが、しかし、そもそも、委員もおっしゃっていただいたように、いかに付加価値をつけるか。例えば、麦わら帽子をかぶっている農家の方の写真、シールが一枚貼ってあるだけで、何か、ふっとした気持ちになって、ちょっと手に取ってみようかなとか、そういう工夫についても農林水産省としてはやはり応援をしていかなきゃなりませんし、各地域のそういう成功事例も是非集めて、このシステム法案が全ての流通に関わる方々にとってプラスになるように、やはり法律はできた後の運用が一番肝腎でありますから、しっかり、通していただいた暁には運用にも十分に気を遣ってまいりたいと考えております。
○石川委員 では、時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、山田勝彦君。
○山田(勝)委員 立憲民主党の山田勝彦です。
通告の順番を変更させていただいて、十番から、日米関税交渉について、まず大臣にお伺いしたいと思っております。
赤澤大臣がワシントンで行った閣僚交渉で、アメリカ側は、関心を持つ農産物として、米や肉、ジャガイモなどを列挙したと報道されています。そもそも今の状況は、二〇二〇年に発効された日米貿易協定の約束違反ではないでしょうか。トランプ大統領は、当時も日本の自動車への関税引上げをちらつかせ、結果、日本は米国産の牛肉や豚肉の関税を大幅に引き下げられました。
一方、日本の自動車や自動車部品の関税撤廃はいまだに放置され続け、アメリカの関税はまだ下がっていない状況。日本政府は、当時、自動車の追加関税が課されないことが約束されたと繰り返し国会で答弁しています。にもかかわらず、日本の車へ追加関税をかけ、下げてほしければアメリカの車や米をもっと買えと言わんばかりです。交渉というより、まずはアメリカに約束を守ってもらうことが先ではないでしょうか。
前回も、江藤大臣へ、トランプ大統領の米の関税七〇〇%という不正確な発言に対し、おかしいことはおかしいと堂々と主張し、日本の国益を守っていただきたいとお願いをいたしました。現在、日本は米騒動で、一キロ三百四十一円の関税がかかっていても、今スーパーでは、はるかにアメリカ産の米の方が安く並べられています。これまで自由貿易によって日本の一次産業は常に犠牲になってきました。日本の農業は十分に市場開放していると思います。もうこれ以上差し出すものはありません。大臣も同じ思いではないでしょうか。
日本の食と農を守る決意と覚悟、全国の生産者や消費者の皆さんに日本の農林水産大臣としてのメッセージをお願いいたします。
○江藤国務大臣 前回、貿易交渉をやったとき、トランプさんのときは茂木外務大臣で、私が農水大臣でした。あのときのことを思い出すと、まさに雑巾を絞って、最後の一滴まで、からっからになるまで絞って出したのがあの案だと私は思っております。そして、あのときに約束した日本側の約束は正確に履行しています。牛肉の関税もCPTPPの国と同じスピードで下げております。一方、対米輸出の方は二六・四と、日本に入れるよりも向こうに出す方が関税が高いという状況の下にありますが、やはり大国同士、国同士が結んだ約束ですから、それは約束を守ることはまず大前提だと私も思いますよ。
ですから、私は昨日も記者会見でいろいろ言いましたけれども、例えば外国の米を大量に入れるということになったとしますよ。ただ、カリフォルニアローズは中粒種ですからね、国民の皆様方は勘違いしていらっしゃると思いますよ。日本のお米は短粒種ですから、基本的に違う米だということですね、味はいいのかもしれませんが。
もしそういうことになって、国内の生産基盤が弱まってしまって国内生産ができなくなれば、結局のところ、またこのような米が足りないと。私は今でも生産は十分できているという立場を取っていますけれども、本当に生産基盤がなくなっちゃったりすると、米がなくなって米が逆に高くなってしまうというような事態もないとは言えないじゃないですか。
国民にとっても、やはり国内の生産基盤はしっかり守らなきゃいけないし、そして米国に対しても言うべきことはしっかり言わないと、それが対等なパートナーシップだというふうに私は思っております。
○山田(勝)委員 心強いメッセージをありがとうございます。大臣が言われたとおり、対等な日米関係、そういう思いに立ったときに、やはり今回のこういった一方的な話は到底受け入れられないと思います。
今の米騒動の状況、そして、ようやく畜産農家も子牛の価格が上がってきたという明るいニュースが出ました。是非、米も、そして牛肉も、もうこれ以上、日本の農産物をアメリカに売り渡す、市場開放する、そういうことはないんだという強い覚悟で交渉に臨んでいただきたいと強く思っております。
その上で、今回の法案の審議に入ります。食品流通の合理化、取引適正化法案についてです。
フランスでは、二〇一八年に農業と食品産業の取引関係を改善するための法律が制定されました。主な目的は、農業者と取引相手との間の価格交渉の透明性を高め、農家がより公正な価格で取引できる環境を整備することです。
今回の法案は、フランスのエガリム法、そして二〇二一年に制定された改訂版のエガリム2法がモデルだと思われます。しかし、大臣からは、国会で、フランスのエガリム法はできたが、なかなか成果は上がっていないという答弁がありました。
農水省にお聞きします。
なぜフランスでは十分に機能していないのか、農水省としてどのような分析をされているでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今議員から御指摘のございましたフランスのエガリム法、今回の私どもの法案の検討の議論の端緒になったということは事実でございます。一方で、今回の法案の内容は、生産から消費の方々に参画いただきました協議会の議論、こういったものをベースにして取りまとめをしてきているところでございます。
一方で、フランスのエガリム法の評価でございますが、まずはその内容ですけれども、生産者が取引をする際に、価格の決定方法などを書き込んだ書面契約を義務づけするというのが一番大きなポイントではないかと思っております。その際に、費用が変動した場合には、自動的に円滑に価格転嫁が進む、こういうのがポイントではないかと思ってございます。
これまでの運用状況について把握しているところでございますが、この書面契約の締結がなかなか進まないということを承知をしてございます。こういったことから、生産者の方からは、なかなかこの法律のプラスの影響が出てきていないという評価を得ているというふうに承知をしているところでございます。
この気づきといたしましては、制度と、あと、やはり運用、現実に履行されるかどうかということも捉えた制度設計をするということが重要かというふうに考えているところでございます。
○山田(勝)委員 ありがとうございます。
私は、このエガリム法だったり、今回審議に入っている食料システム法、この理念は大変すばらしいと思います。ただし、課題は、今御説明があったように、フランスでもそう、そして日本でも同じだと思いますが、実効性、この実効性をいかに確保するか。
大臣にちょっと紹介させていただきたいんですけれども、私の地元の生産者団体に、ながさき南部生産組合という団体があります。この取組がモデルになるのではないかと思っています。
今から五十年前、五名の青年農業者が有機農業と産直を目指し発足し、今や島原半島一帯に組合員百三十名を抱える農事組合法人となられました。この法人が、組合員さんのために購入者と農産物の価格交渉を行います。
資料一を御覧ください。実際に南部生産組合さんが使っている指標を使わせていただいております。
その際、品目別の生産原価表を提示し、生産コストを上回る価格でしか販売しないというルールを徹底されています。例えばトマト、四キロ二千円で取引した場合、組合員である農家には千五百三十円を支払っています。そこから、種、肥料、農薬などの農業資材や労務費などの生産原価を引いた金額が、この表の上にある農家所得の七百七十六・八円となります。
この近藤一海代表理事は、こう言われています。取引相手へ農家の意思を反映させた結果、大きくもうかりはしないが、後継者は育っていると。
そしてまた、注目すべきは、先ほど農水省の方からもお話があったとおり、なかなか、エガリム法は、がちがちの契約に縛られているということで、自由度がないために農家さんが選択しないという話がありました。南部生産組合さんでは、取引相手と価格を交渉するときに、例えばキロ百円の生産原価とした場合に、上限と下限を決めて取引すると。
やはり、市場でどうしても農産物の価格は変動しますから、その農産物の価格が上昇傾向であったとしても、上限の百二十円でストップする。代わりに、逆に、その農産物の価格が下がっている傾向のときであっても、百円の生産原価に対して下限の八十円までで購入してもらう。なので、いいときも悪いときも、お互いに支え合って、協力し合って生産者の持続可能な価格形成というのを構築しているということなんです。
これは今回のこのシステム法においても大いに参考になるモデルではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○江藤国務大臣 これも見させていただいて、率直に言って、すごいなと思いました。そして、上限、下限という話も非常にすばらしいと思います。率直に言って、すばらしいと思います。
私も、随分昔ですけれども、オランダに行きまして、おととしも行ったんですけれども、オランダのアールスメールという花市場に行きました。オランダは世界一の花の生産国でありますが、そこで聞いた話は、市場に出す生産者は自分で最低価格を決めるんです、そして入札です、入札で落ちなかったら廃棄します、捨てると。売れなかったからどこかに売るんじゃなくて、捨てますと。すごい覚悟だなと思いました。自分がコスト計算をして、これだけの価値があるという計算をして市場に出して、この値段で売れなかったときには、諦めてゼロでいいと。いや、ここまでの覚悟はなかなかできないよなというふうに思いました。
そこまでのことではないにしても、特に、上限も設けているというのは、やはり安定的な商取引に多分つながるんだろうと思います。高いときにも安値で売ってくれるし、その代わり、下がったときにも、この農事生産法人ですかの方々とは安定的に今後も取引をしたいということでこういうことをされているということでありますから。しかも、百三十名も参加されれば、かなりスケールメリットがありますよね。ですから、量も出せないと、やはり価格交渉力、商取引はなかなかできません。ちょっとしか出せない人間はしんどいので、これだけの人たちがやはり集まったということは、これを五十年前からやられているということは、私は称賛に値する取組だと思います。
是非、自分としても、役所を交えて更に深掘りして勉強をさせていただきたいと思います。
○山田(勝)委員 ありがとうございます。
こういった生産組合がある地域においては価格交渉ができるんですが、しかし、全国の多くの各地域においては、なかなかこういった生産者団体があるわけではありません。
今回の法改正の中には、大きな柱として、流通の合理化を図るとうたわれています。ほとんどが、現実的には地域の農協さんに販売を委託しているケースが多いと思っております。農協の流通システムは、系統三段階と呼ばれており、市町村レベルの単位農協、都道府県レベルの連合会、そして全農、それぞれからマージンが取られています。
実際、私も、長崎県の長与町、ミカンが盛んなところなんですけれども、ミカン農家さんたちから話を伺うと、JA長与、JA全農ながさき、全農、さらには市場や仲卸からもマージンを取られていて、農家が食べられない状況だ、農協改革が必要だ、そういった声を聞いています。
また、別のミカン農家さんからは、四年前、JAに卸していたときは、ミカン一キロ百二十円しか売上げがなかった、赤字でどうしようもないので、自分で販路を開拓して、今、キロ二百円程度で売れるようになったというお話も聞いています。
農水省として、多くの農家さんが今依存している農協の流通、この系統三段階からそれぞれ何%マージンがかかっているのか、把握されているでしょうか。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
農協系統の委託販売の手数料でございますけれども、各農協がその組合員と話し合った上で決められるものであり、地域、品目によって異なりますけれども、令和五年度の平均では、総合農協は二・八%、あと、経済連、都道府県連ですが、これは〇・九%、全農は同じく〇・九%となっていると承知しております。
○山田(勝)委員 今のように、結局、三段階それぞれで複数回の手数料を取られていれば、農家の手取りが増えない、こういった声が多数上がるのは当然だと思っています。そして、多くの農家さんは、この三段階だけではなくて、市場や仲卸からも手数料を取られていると。
本法案には、商習慣の見直しとあります。資料二を御覧ください。これは野菜の市場の手数料として、出荷奨励金、そして完納奨励金、昭和の時代から続く商習慣が、令和のいまだに存在しています。農家にとっては、この手数料の内訳は全く不明です。
それぞれについて、農水省から簡潔に説明を求めます。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘のございました、まずは出荷奨励金でございますが、卸売業者から産地の出荷団体に交付されるものでございます。これはまとまった出荷を行うための誘引というふうに承知をいたしてございます。
それから、もう一つ、完納奨励金でございますが、これは卸売業者から仲卸業者に交付されるものでございますが、卸売業者への早期の販売代金の支払いを奨励するというものでございます。
○山田(勝)委員 説明を聞いても、やはり理解できないんですよね。
出荷奨励金、これは、生産振興のために、本来は生産してもらっている農家さんに還元されるべきです。ただ、実態は、農協など出荷団体にまとめて支払われ、組織の維持経費に充てられているケースが多く存在しているようです。農家に還元されている農協もあるようですが、事前にこの辺りも確認したところ、農水省は実態把握されていませんでした。
さらに、完納奨励金、これも驚きの商習慣です。約束した期日までに代金を払ってもらうというのはビジネス上当たり前の話ですし、今はもうネット上で顔を見たこともない人から物を購入する時代になっているにもかかわらず、いまだに、こういった古い、あしき商習慣が卸売市場で存在している。
また、出荷奨励金は、言われたように、元々は産地の大型化というのを応援していく意味合いもあったかと思います。ただ、その役割ももうとっくに終えているはずです。
大臣に伺いたいんですけれども、本当に農家さんのために、大臣も、何とか所得を上げたいという、この法案に対する思い入れも強いと思います。
改めて、資料二を御覧ください。このケース、農家は、市場手数料として、一箱当たり八十五円、既に市場に払っているんですね。しかし、その八十五円から、出荷奨励金として農協へ八円、完納奨励金として仲卸へ十円支払われています。
この十八円は、本来、農家の皆さんに還元されるべきではないでしょうか。大臣、農家の手取りを上げるために、この商習慣、廃止すべきだと提案しますが、いかがでしょうか。
○江藤国務大臣 これはなかなかな御指摘だと思いますよ、大変、率直に私はそう思います。長い商習慣、もう古いんですよ、物すごく。しかし、農家の中には、規模がちっちゃくて、やはりまとめてもらわなきゃ困るという人たちもいることもまた事実でありますし、そのために卸売市場があるということもまた事実でありますので、規模がでかくなれば自分で販路を開拓してということもまた可能になってきますが、それぞれの役割がある。
しかし、今回の法案は、御指摘のように、持続的な供給に資する取組に関して提案があった場合はしっかり協議をしなさいということになっておりますから、これは関係者の方々と今後十分やはり協議をする必要があるんだろうと思います。問題意識を持っていないということではありません、決して。しかし、関係者の方々としっかり協議をしないといけないと思いますので、今日は、委員の御意見をしっかり承ったというところで一応止めさせていただきたいと思います。
○山田(勝)委員 今も大臣がおっしゃっていただいたように、この法案の三十六条には、取引の相手方から取引条件に関する協議の申出がされた場合には誠実に当該協議に応ずることとあり、さらに、取引の相手方から持続的な供給に資する取組の提案がされた場合には必要な検討及び協力を行うことと法律に明記されています。
つまり、こういった農家の側から見たときに、不透明な市場の手数料を、直接、生産者の皆さんが、自分たちに還元してほしい、こういった提案ができるようになっているという法改正だと理解しておりますので、是非この法律をしっかりと活用して、大臣も言っていただきました、法律は作るよりも運用する方が大事だということですので、この問題意識、しっかり農水省として取り組んでいただきますことを強く願い、次のテーマに移りたいと思います。
農家さんたちからお話を聞くと、農協の存在というのは大きいんですよね。やはり地域に欠かせない、地域の農業を支えている存在であることは間違いありません。
そして、そういった農協に農家の皆さんが何を望んでいるかというと、やはり自分たちの作った農産物をもっと高く販売してほしい、そして農業資材をもっと安く売ってほしい、この二つの声が圧倒的に多いです。農協改革なくして農家の適正な利益の確保はあり得ないと思っています。
以前、農協改革が進められました。農協の販売方式を委託販売から買取り販売に拡大していくという方針が示されました。先ほど紹介した、まさに南部生産組合は、コストを積み上げていって、最終的に販売価格がちゃんと農家の適正利益になるような交渉をするやり方です。
一方で、今、残念ながら、多くの農協の販売方式というのは、最終価格から各手数料を引いて農家へ支払われる方式が取られています。
そうではなくて、農家さんからまず買い取る、自らリスクを取る、そして、そのことによって、より高く売る努力が期待されるのではないでしょうか。買取り販売こそ、農家が望む正しい改革だと思います。現状、この改革はどのように進行しているのでしょうか。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
総合農協における買取り販売額ですけれども、農協改革前の平成二十七年度は約千五百四十一億円、これが令和五年度では約二千七十六億円となっており、四割増加しております。
また、買取り販売に取り組んでいる農協の割合も、農協改革前の五三%から、令和五年度には七二%と着実に増加をしております。
しかしながら、総合農協の令和五年度の販売取扱高合計に占める買取り販売額の割合は約四・六%にとどまるということも事実でございます。
買取り販売は、委員御指摘のように、これは農業者と農協の間で販売契約が結ばれるということでございますので、この段階での合理的な価格形成の取組は非常に我々も重要だと思っておりますので、本法案を契機に、買取り販売において農協が適切な対応を行うように指導していきたいと考えております。
○山田(勝)委員 力強い御答弁、ありがとうございます。
本当に大切なことですので、こういった農協改革を着実に進めていくことが農家の皆さんの手取りを引き上げていくことになると思っております。
その上で、もう一方で、農業資材、この問題は強い要望がありますが、事前に農水省の方々とも打合せしましたが、なかなか進んでいないような現状です。
実際、肥料や農薬などは、農協さんから買うより町のホームセンターで購入した方が安く買える、これは恐らく、ここにいらっしゃる委員の皆さんが現場の農家さんから聞いたことがあるお話ではないかと思います。ここでも、農業資材の販売においても、こういった各段階、三段階の流通マージンが発生している、こういったことも改革していかなければならないのではないかと思っております。
その上で、資料三を御覧いただきたいんですけれども、二〇一六年に施行された改正農協法で示された、農協は、農業者の所得の増大を目的とし、的確な事業活動で利益を上げて、農業者などへの還元に充てる、農業者に選ばれる農協と、すばらしいビジョンが示されています。しかし、もう九年もたちました。現場を回る限り、ほとんど変化を感じません。
大臣に伺います。
この農協改革が進んでいない理由は何なのでしょうか。農家の所得向上のためには、やはり農協改革を加速させていく必要があると思いますが、いかがでしょうか。
○江藤国務大臣 農協法という法律がありますので、国のガバナンスがないというわけではもちろんありません。農林水産省としてもしっかりとした指導助言はしていく必要があります。
ただ、全く農協改革が停滞しているかというと、例えば私の宮崎は、大変な農業県でありますが、一県一農協になったんですよ。もうこれはすさまじいエネルギーを使いました、皆さん方。やはり組合長というポストがなくなる。特に中山間地が多い宮崎においては、例えば高千穂に農協があったわけですね、高千穂町に。それがやはり、高千穂農協という看板を下ろさなきゃいけないわけでありますから。しかし、それでもコストを削減しなきゃいけない、そして農業者に選ばれる農協にならなきゃいけない、そういうことをみんなで何年もかけて議論した結果、一県一農協として今、仕切り直しをいたしております。
ですから、全く農協改革が進んでいないということはないということを申し上げておきたいと思います。
でも、変化が必要だということはそのとおりです。私は、九年前の農協改革のときは、主要メンバー、いわゆる農林インナーとしてこの議論には毎日参加をいたしておりましたので、鮮明に覚えております。今言われたことを、買取りも含めて、選ばれる農協とならなければならない、新しい姿に変わってほしいということを提案したのが農協改革でありました。
ですから、一応四十七都道府県全部においてヒアリングは行っております。農協法に基づいて、それから監督指針に基づいて指導も行っておりますが、ただ、今局長から答弁させていただいたように、四・数%というような状況であれば、あのときの掲げた理想とはなかなか遠いなというところは事実でありますので、今回の法案の趣旨もしっかりJAさんは理解していただいて、合理的な価格形成の中にも、しっかりそのシステムの中に入っていただいて、コミットしていただければありがたいというふうに思っております。
○山田(勝)委員 時間が参りました。
農家にとって適正な価格形成、農家の手取りを引き上げるためには市場の改革、農協の改革が必要だということを強くお訴えしまして、私の質疑を終わります。
ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、林佑美君。
○林(佑)委員 日本維新の会、林佑美です。
本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。
早速ですが、前回、養殖業の重点的な取組についての質問を残してしまいましたので、その質問から入らせていただきます。
私が小さい頃、子供を連れて実家に帰りますと、ウニとかイクラ、そしてフグとか、あとはマツタケとか、いいものを非常に出してくれるんですけれども、子供はやはりサーモンが好きで、サーモンはないのと親に聞くと、うちは回らないすし屋だからサーモンは出せないというふうに答えていました。両親が八十以上になりまして、閉業して今はやっていないので、今一緒に回転ずしに行くことがあります。母が一番にサーモンアボカドとオニオンサーモンを食べる姿を見て、何かやはりサーモンはどの世代にも人気なんだなというふうに改めて感じました。
その大人気のサーモンなんですけれども、ほとんどが輸入されているのが現状です。サーモンで有名なノルウェーでは百五十万トンが養殖されて、日本にも数万トンが輸入されています。日本の養殖を見てみますと、サケ・マス類で二万トンと、ノルウェーの百五十万トンに比べると遠く及びません。養殖全体で見てみますと、漁業生産量に占める養殖の割合は海外では六割ぐらいですが、日本では二割にとどまっているようです。
かつては日本は広い海を活用した漁業大国だったと思いますが、漁業ができる水域のこともあり、漁業生産量はかなり減ってしまっています。養殖にも力を入れて漁業生産量を維持できていたのであれば、今でも元気な漁村がたくさんあったのではないかと思います。
そこで質問なんですけれども、世界に比べて日本全体の漁業生産量に占める養殖業の割合が少ないのはどのような理由があるとお考えでしょうか。
○森(健)政府参考人 お答えいたします。
FAOの統計によりますと、世界の水産物生産のうち養殖の占める割合が年々増加しておりまして、二〇二三年には世界全体で約六割に達しているところでございます。
これを国別に見ますと、その割合は様々でございまして、例えば、世界の養殖生産量の八割を占めております中国、インドネシア、インドでは、全水産物生産量に占める養殖の割合は約八割、あるいは、サーモン養殖が盛んでありますノルウェー、チリでは約四割、他方、アメリカでは約一割というふうになっているところでございます。
我が国につきましては、養殖の占める割合は約二割で推移をしております。この背景といたしましては、我が国もノリ、ホタテガイ、カキ、ブリ、マダイなどの養殖が非常に盛んでございますが、やはり、歴史的に、豊かな漁場、海に囲まれて南北で様々な魚が漁獲されて、漁船漁業が盛んだということ。さらに、養殖の適地、沿岸の内湾ということになるんですけれども、この地域については、例えば、漁業による利用も含め、船の航行ですとか、様々な沿岸開発でも利用されているために、非常に海面利用が複雑であることといったようなところが背景にあるというふうに考えております。
○林(佑)委員 ありがとうございました。
養殖は、これから水産業全体を成長させる意味でも、大切な点だと思っております。水産庁でもいろいろ頑張られているようでして、養殖については、養殖業成長産業化総合戦略を出しておられるようです。養殖業も大変だとは思いますが、飼料をコントロールして品質を安定させたりできる点では、大きなメリットだと思います。また、餌を自動で行う技術や、たしか許斐議員が言っていらしたと思うんですけれども、陸上で養殖する技術などを見ると、まだまだ水産業は発展すると感じております。
そこで質問ですけれども、養殖業の成長に向けてどのようなことに重点的に取り組んでいくお考えでしょうか。
○庄子大臣政務官 御質問ありがとうございます。
気候変動あるいは海洋環境の変化がございますので、どうしても水産資源の漁獲というのは不安定に近年なってきております。そういう意味でいうと、計画的、安定的に生産が可能な養殖業への期待は非常に高いというふうに思います。
そして、世界的に見ましても、水産物の需要というのは拡大をしております。日本もインバウンドによる消費といったものが伸びていますので、水産物の需要拡大が期待をされます。
こうした観点から、令和二年七月に策定をいたしました養殖業成長産業化総合戦略に基づきまして、一つ、マーケットイン型養殖業への転換、二つ、沖合域等の新規漁場の開拓、三つ、飼料原料の国産化や優良種苗の開発、四つ、中小養殖業者による協業化、五つ、スマート化によります生産性の向上、こうしたことを支援をしております。
養殖業の成長産業化、こうしたことをしっかり農水省としても実現をしてまいりたいというふうに思っております。
○林(佑)委員 ありがとうございます。
養殖業の更なる成長に向けて、先ほどもありましたけれども、スマート養殖やICT技術の活用、そして高付加価値化の推進については、これからの水産業の在り方を大きく変える可能性があると私自身も感じております。
持続可能でありながら、消費者に信頼されるおいしい水産物を安定的に供給するという点で、養殖業の役割は今後ますます重要になってくると思いますので、引き続き、官民連携の下で、現場の声も丁寧に拾っていただきながら、力強く後押ししていただければと思っております。
今回の法改正により、食品等の流通における合理化や取引の適正化を更に進めていくという国の方針は、私としても非常に重要な意義を持つものだと受け止めております。特に、持続可能な供給体制の確立や消費者への適切な情報提供、さらには環境負荷の低減といった視点は、今後の日本の食と農を支える上で欠かせない方向性だと思っております。
その上で、今回の改正で導入される事業活動計画の認定制度についてです。
この制度では、安定取引関係確立事業活動、流通合理化事業活動、環境負荷低減事業活動、消費者選択支援事業活動の四類型が設けられ、それぞれに対して農林水産大臣が認定を行うという仕組みが導入されています。
この考え方自体は、政策目的を明確化し、国として重点的に支援していく事業の方向性を整理する上で、非常に理にかなっていると理解しています。
しかし、一方で、現場の事業者の声に耳を傾けますと、こうした類型別の計画申請となることで、かえって手続の複雑さに悩まれるのではないかという懸念もあります。
例えば、ある食品流通企業では、仕入れ先との関係強化と物流効率の改善、さらには環境対応型のパッケージ導入まで、複数の分野にまたがる取組を既に進めております。しかし、これらを一括して申請できるのか、それとも類型ごとに分けて申請し、それに異なる審査対応が必要になるのかという点で、制度の実務的な運用に不安を抱いているとの声が届いております。
また、中小企業にとっては、計画ごとの申請書類や評価項目を把握し、制度に乗っていくまでのハードルが高いのではないかという御意見もあります。制度趣旨に賛同しながらも、使いたいけれどもどうしてよいか分からないという戸惑いが出てくる可能性は否定できません。
農林水産省としては、これらの制度設計に当たって、現場の実態や中小規模の事業者の状況も踏まえた上で、制度の柔軟な運用や実際の申請支援、情報提供体制の整備といった面でも配慮をされていると思いますが、改めて、今後、どのように事業者が制度を円滑に活用できるように支援していくか、また、認定手続における煩雑さをどう軽減していくお考えか、御見解をお伺いいたします。
○庄子大臣政務官 大事な御指摘をいただいたと思っております。
委員御指摘のとおり、この法案では、事業活動計画、四つの計画の認定の仕組みを設けているわけでございます。農林漁業者との安定的な取引関係の確立、流通の合理化、環境負荷の低減、消費者の選択に資する情報発信の四つであります。
こうした計画制度を円滑に活用していただきますように、四つの事業活動計画の申請に当たりましては、食品事業者が農林漁業者や技術開発に関わる研究事業者と共同で策定することも可能というふうにしておりますほか、四つの計画の円滑な実施を促すために、地方公共団体や商工会、あるいは金融機関、地域の協力者が、事業構想の策定や事業開始後の販売先の確保等、事前そして事後にも備えた連携支援計画を作成できるというふうにしているところであります。
また、運用面に当たりましては、本省及び地方農政局等に相談窓口を設置をいたしまして、相談に対応しながら伴走支援をしていきたいというふうに思っております。構想の内容が複数の計画にまたがるような場合につきましては、手続の煩雑さを軽減するという観点から、委員御指摘のとおり、複数の計画を一括で申請をしていただくという事業者の目線に立った運用を行ってまいりたいというふうに思っております。
○林(佑)委員 ありがとうございました。
共同での作成も可能だとか一括申請も可能というお答えがございました。しかし、実際に多角的な取組を行っている事業者ほど、どの類型に該当するか分かりにくいですとか、書類作成が負担に感じるといった声が出やすくなっておりますので、今後も現場の実情に即した運用を是非お願いしたいと思います。
せっかくのよい制度ですので、より多くの事業者が安心して取り組めるよう、引き続き、現場の声に耳を傾けていただきながら、制度の周知と実効性確保に御尽力いただきますよう、よろしくお願いいたします。
次に、今回の法改正では、食品等の取引の適正化を図る観点から、取引条件の協議に関する新たな規定を設けることとしています。特に、仕入価格の見直しや物流費、エネルギーコストなどの上昇分をどう価格に反映するかという課題は、今や、どの業界においても非常に切実な問題となっており、それに対して国が一定の方向性を示されたことは大変意義深いことだと受け止めております。
農林水産省としても、食品の安定供給を支える流通構造を維持強化するために、川上から川下までの関係者が公正で対等な関係を築くことが重要だという問題認識を持っておられると理解しております。
その上で、協議の申出があった場合には誠実に対応することが求められるという努力義務を新たに明記されたことは、取引の透明性や信頼性向上に向けた一歩として評価すべきものだと思っております。
ただ一方で、現場からはこうした声も聞こえてきています。ある中堅の農産物加工会社の経営者の方から伺った話ですけれども、近年の物流費や原材料費の高騰を受けて、継続的な供給を続けるためには取引価格の見直しが必要であることを取引先に丁寧に説明したそうです。しかし、相手方からは契約上変更は難しいと一蹴され、価格交渉に応じてもらえなかった、その後、発注量も減少して、結果として一部の生産ラインを縮小せざるを得なくなったという事例でした。
このようなケースを見てみますと、幾ら誠実に協議する努力義務が規定されていても、それが実際の交渉現場でどこまで機能するのか、つまり実効性に課題が残るのではないかという懸念が拭えません。法的拘束力を伴わない努力義務である以上、結局のところ、立場の強い側が主導権を握りやすい構造は変わらないのではないかという声も一部にございます。
もちろん、官が過度に民間の取引内容に介入すべきではないという大前提がある中で、今回のような努力義務の明文化という柔軟なアプローチを取られたことには一定の理解を示したいと思っております。しかし、その上で、この新たな努力義務が絵に描いた餅とならないようにするためには、今後どのように実効性を担保していかれるお考えなのか。例えば、事例の蓄積や指導の在り方、あるいは第三者的な相談窓口の活用など、制度の実運用においてどのような工夫をしていかれるのか、見解をお伺いさせていただきます。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
この制度の実効性の担保についてでございますが、御指摘のございましたとおり、今回、努力義務を定めます。この努力義務をもう少し解釈いたしまして、各事業者の方々が取るべき行動規範、これを判断基準という形で法律上は規定してございますが、これをまた関係者と協議をしながら省令で定めるということを予定をしてございます。この判断基準の中でどういう行動を取るべきかということをまた一層明らかにしていきたいと考えてございます。
その上で、こうした努力義務、判断基準に照らして、必要な場合には指導助言、それから勧告、さらに、勧告に従わない場合には公表といった形で実効性を担保していきたい。特に、この公表というのは事業をなさる方々にとっては非常に大きな要素ではないかというふうに考えてございます。
それから、運用面では、本年度から、本省、地方農政局などに専門の職員を配置いたします。ここでは、相談窓口としての機能を果たすとともに、外部からの通報なども受けるということを考えてございます。
このほか、この法律の中では、一連の私どものこの過程で不公正な取引方法に該当する事実があると思料する場合には、公正取引委員会に通知するというふうにも規定いたしてございます。
関係省庁とも連携しながら、制度の運用をしっかりと図ってまいりたいと考えてございます。
○林(佑)委員 ありがとうございました。
制度を形式的に整えるだけではなく、実際に現場で機能し、事業者の方々が話し合えばちゃんと理解してもらえると実感できる環境づくりこそが重要だと思っております。
今後も、中小企業や一次産業の現場の声がきちんと届くような仕組みの整備と運用をお願い申し上げます。そして、是非、事例や課題が見えてきた段階で、制度の更なる改善を視野に入れていただければと思っております。引き続き、現場目線での丁寧な御対応をよろしくお願いいたします。
次に、今回の法改正の中でも、費用指標の作成と公表に関する新たな仕組みは非常に注目すべき点だと受け止めております。食料品の価格に対する国民の関心は、物価高の影響も相まって、今や極めて高い水準にあります。そうした中で、農林水産省が、単に価格の安さだけではなく、その背景にある生産、流通などのコスト構造を見える化しようとされていることは、消費者にとっても事業者にとっても価格に対する納得感を生む取組であり、私は非常に評価しております。
その上で、費用指標を作成、公表する団体を農林水産大臣が認定するという今回の制度について、地元の農産物を使って加工食品を製造し、地域の卸売業者や小売店と細やかな取引を重ねながら事業を継続されている方の声として、今回の制度について、もし費用指標を作る団体が大手企業や中央の業界団体ばかりになれば、現場感のあるコスト感覚が反映されず、逆に誤解を生む可能性があるのではないかと強い不安をおっしゃっていました。
また、こうした中小企業者の多くは、情報収集のリソースも限られており、仮に団体の公表する指標が市場に影響を与えるような存在になってしまった場合、自分たちがその議論の外に置かれてしまうことに対して懸念を感じているということでした。
このように、中小事業者の立場から見ると、どの団体がどの基準で認定されるのか、そのプロセスの公平性や透明性が担保されていることが何よりも重要であると考えております。
農林水産省としては、こうした制度の導入に当たって、客観性や中立性、そして多様な現場の実態を反映した費用指標となるよう様々な観点から御配慮をいただいていると理解しておりますが、改めて、団体認定の基準や透明性の確保のための考え方、そして中小事業者の声がきちんと制度の中に組み込まれるための工夫について、お考えをお聞かせいただければと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘ございましたとおり、今回の法案では、品目を指定してコストの指標を公表する、これは消費者の理解醸成のために非常に重要なツールだろうというふうに考えてございます。
このコスト指標を作成する団体の公正性についてでございますが、まず、その認定をするときに、この業務が費用の明確化にきちんと資するものであるかどうかということを確認をいたします。その上で、その運営に関しましても、生産、製造、加工、流通、販売に関わる事業者の方々の参画を求めてまいります。
さらに、手続といたしましても、団体の認定に当たりまして、農林水産省、農林水産大臣が生産、製造、加工、流通、販売の全ての段階の関係者の方々から意見を聞くという手順を踏むことといたしてございます。さらに、公正取引委員会にも協議をするということといたしてございます。
御指摘のありましたとおり、農林漁業者、中小食品事業者は、家族経営ですとか中小事業者が非常に多うございます。こういった厳正な要件や手続をもって、きちんと中小事業者の方々の声も反映できるように、公正な運営に努めてまいりたいと考えてございます。
○林(佑)委員 ありがとうございました。
現場の実感に即した指標でなければ、本来の目的である価格の透明化や消費者の理解促進にはつながらないのではないかと強く感じております。特に、情報発信力に差がある中小の事業者が制度から取り残されないよう、引き続き現場の声に寄り添った制度設計と運用をお願いしたいと思います。是非、今後も、認定団体の選定に当たっては、多様な業態、多様な規模の声を反映しながら、信頼性のある指標作りが進められることを期待しております。
次に、費用指標を作成、公表する役割を担う団体の認定制度に関する点です。
農林水産大臣の認定を受けた団体が責任を持って指標の作成、公表を行うという枠組み自体は、制度としての信頼性を確保する意味でも非常に理にかなっていると理解しております。しかし、一方で、こうした新たな役割を担うことになる団体の現場、特に中小規模の団体にとっては、その運営上の負担が大きなものになるのではないかという懸念の声が聞かれております。
地場流通関連の方からは、指標を作るためのデータ収集、集計、分析にかかる人材やシステムが確保できるかが分からず、自分たちにそのような重い役割が果たせるのか不安があるという声がありました。
さらに、情報の公表に当たっては、消費者にとって分かりやすく、かつ、正確性を担保した形で伝える必要がありますが、それもまた広報力や専門的知見を必要とする業務であり、必ずしも全ての団体がそれに対応できるとは限りません。
もちろん、農林水産省としては、認定基準において、適切な能力、体制の確認を行い、信頼できる団体を選定されることとは存じておりますし、制度設計における御尽力には敬意を表したいと思っております。
その上でお伺いしますが、この制度の運用に当たり、特にリソースの限られた団体が適切に役割を果たしていけるようにするための支援策、例えば情報作成のための技術支援や広報サポート、研修機会の提供など、どのような支援措置を検討、用意されているのか。あわせて、選定後のフォローアップ体制についても、農林水産省のお考えを伺えればと思っております。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のありましたとおり、コスト指標の策定というものは、これまでやったことのない新しい業務でございます。ですので、必要な後押しをしていくという考えでございます。
まず、農林水産省におきまして、生産から販売に至ります各段階のコストの実態調査、これは六年度に実施いたしましたが、七年度も行う予定にしてございます。こういった結果を、コスト指標の作成に活用可能にするようにしていきたいというふうに考えてございます。
さらに、六年度の補正予算と七年度の当初予算におきまして、コスト指標の作成ですとか活用方法などの実証を行うための予算というものも措置をいたしてございます。
こういった形で、団体の取組を後押しをしていきたいと思ってございます。
このコスト指標、随時改善を図ることが不可欠であろうというふうに考えてございますので、引き続き、農林水産省にて、常時フォローアップを行っていきたいと考えているところでございます。
○林(佑)委員 ありがとうございました。
今後とも、現実的かつ持続可能な制度設計について、御尽力よろしくお願いいたします。
時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、池畑浩太朗君。
○池畑委員 日本維新の会、池畑浩太朗でございます。兵庫県の西播磨、中播磨から参りました。
今回、食料システム法案について質問させていただきたいと思います。
本法案は、今ずっと委員の先生方からいろいろ質問ございましたけれども、生産者サイドがコストをいかに示して流通サイドと交渉していくのかが鍵と考えております。
最近では、ユーチューブでも、米の流通とか価格転嫁について、キャスターの古舘伊知郎さんとかユーチューバーのヒカルさんとかが上げられておりますが、農作物の生産コストは、農法や経営方針によって様々あることであります。どのような指標を使うかは、しっかり検討する必要があるというふうに考えます。
例えば、有機農産物でありましたら、有機の生産コストに見合った指標を作る必要があるというふうに私は思っております。そうでなければ、せっかくこだわって付加価値をつけたものを、統一的な生産コストの指標によって、価格の下げ圧力が発生する可能性があるのではないかというふうに思っております。
私の地元の兵庫県も、コウノトリ米など、有機米の生産面積をどんどん広げてきた地域もあります。中山間地域が多くて、平地に比べたら生産コストが高い。農法だけではなくて、中山間地域などにおいて、条件不利地域によって考慮が必要でないかというふうに考えております。
そこで、農林水産省にお聞かせをいただきたいんですが、生産コストの指標は、同一の作物の中でも、農法や立地によって分けることを考えておられるか、また、それはどこまで細かく指標に示すものと考えておられるか、付加価値がつくようなもの、生産コストがどうしても高くなるものへの配慮をどういうふうに考えておられるか、まず、農林水産省からお聞かせいただきたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、生産コストは、同じ品目であっても、その栽培方法ですとか立地条件、当然に様々になってまいります。
一方で、このコスト指標というのは、消費者の理解醸成を得るためにも、非常に重要なファクターだというふうに思ってございます。
現在、品目ごとに関係者に集まっていただきまして、いろいろと協議をしている状況ではございますが、例えば、まずは全国各地での一般的な栽培方法を対象に最初のコスト指標を策定し、その上で、順次、栽培方法あるいは立地条件などについて、バリエーションを拡大、細分化していくという方法論が一番現実的ではないかというふうに考えているところでございます。
コスト指標の策定自体、まだまだ調整すべき課題が非常に多い話ではございますが、関係者とも十分協議して、実情をきちんと反映した、消費者の理解を得られるようなものにしていきたいと考えているところでございます。
○池畑委員 答弁ありがとうございました。
やはり、今、まずやってみるということが大事だということと、そういった経緯を見て変えていくということも大事だというふうに思いますので、是非ともお願いをしたいというふうに思います。
さて、次に、農作物を持続的に生産するためには、消費者に適正な価格で購入をしていただく一方、事学校給食においては、子供たちが元気に成長できますように、国産米が安定的に調達できるようにしておくことが必要だというふうに考えております。
また、今回の米の価格高騰は、学校給食の食材の調達とか、地方がこれは決めていることではありますけれども、上限、給食費の範囲に収めることは困難だというふうに聞かせていただくことが多くなってきました。
農作物の価格が上昇したとしても子供たちが安心して食べられるように、学校給食の食材、こういったところを柔軟に調達ができるようにしていくべきではないかというふうに考えております。党内でも食料安全保障の調査会を立ち上げて、その事務局長も今やらせていただいておりますが、党内でもいろいろとその話が出てまいりました。
そこで、まず、武部文部科学副大臣にお聞かせいただきたいんですが、今回の米の価格高騰によって、調達や、給食費の範囲内に収めることが結構難しいといった地域の実情があるというふうに聞いております。
その中で、調査をしていないのであれば早急に調査をしていただきたいというふうに思っておりますし、また、農作物が上昇しても子供たちが十分な量を食べられるように、国庫によります負担、そして、柔軟に制度を、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思っておりますが、文部科学省と武部副大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
○武部副大臣 学校給食における物価高騰の現状把握と対応について、対策について質問があったと承知しております。
文部科学省では、学校給食の現状を把握するため、各学校や自治体における給食担当者との情報共有を図っております。
今般の物価高騰を受け、幾つかの自治体へ聞き取りを行いました。その結果、主食の米については、年間使用量を契約しており、値上げはある程度見越した価格で調達している、また、肉、野菜等の食材については、給食費の増額を防ぐため、より安価な食材へ変更している、保護者負担額との差額を市で負担するなどの対応をされていると伺っております。
また、対策でありますけれども、学校給食が、現下の物価高騰の影響に左右されることなく、安定的に実施されることは重要だと考えております。
物価高騰への対応としては、令和六年度補正予算において、重点支援地方交付金に推奨事業メニュー〇・六兆円が計上されております。物価高騰に伴う食材費の値上げによる保護者負担を軽減するための支援に活用することが可能となっております。
文部科学省としても、現下の食材費の高騰が続く中でも学校給食の質が確保されるよう、昨年十二月に教育委員会等に対して本交付金の積極的な活用を通知したところでありまして、今後も引き続き、重点支援地方交付金の活用について周知を行うなど、給食の質の確保を図ってまいります。
○池畑委員 武部副大臣、御無沙汰しております。このホームに帰っていただくということで、ありがたいなというふうに思っております。
その中で、今、新たな食材という話がありまして、ちょっとそこがひっかかるんですが、やはり、今ここで、文科省に私たちも聞かせていただいたんですが、特段、余り地方からそういった声は上がってきていないということもお聞かせいただきましたが、やはり、そこも含めまして、是非、次は農林水産大臣にお聞かせいただきたいんですけれども、学校給食を、制度を柔軟にしても、市場に米がなければ安定的な調達はできないというふうに考えております。
そこで、各自治体や学校で備蓄する考え方もあるというふうに思うんですが、その中で、政府備蓄米のように、学校給食用の米を別建てで確保するということも必要だというふうに私は考えております。その中で、価格が上昇したりとか市場に出回らなかったりしたとしても、安定的に子供たちに米を供給できるような制度創設をすることはできないかというふうに考えておりますが、まず、今の段階での農林水産大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
○江藤国務大臣 子供たちにしっかりお米を食べてほしいという気持ちは、自分も強いものであります。
ちなみに、今、備蓄米を保管して、棚上げ備蓄をしたりしておりますが、これでも逆ざやが発生しまして、五百億ほど財政負担が生じております。これは私は適正だと思っておりますが、ある役所はいろいろ言いますけれども。
しかし、これを例えば学校給食用で備蓄するということになると、当然備蓄の経費等もかかるわけであって、それぞれ地域ごとに聞くと、宮崎県は、宮崎の米を宮崎の子たちに食べさせたいという気持ちがやはり強い。ということになると、では、自治体単位で備蓄するのかという話になると、なかなかこれも複雑な話になってきますので、お気持ちはよく分かるんですが、なかなかちょっと現実的には難しいかなと思います。
学校給食法において学校給食は保護者負担になっていますので、一定の予算の枠内でメニューを決めるということであれば、栄養士さんたちも大変な御苦労をしていると思います。先ほど、B級品の活用という話もありましたけれども、子供たちはB級品でいいというわけではありませんが、様々な工夫をしながら、やはり文科省とも連携しながら、子供たちの給食の質を下げない努力は我々としてもしていきたいと考えております。
○池畑委員 でも、大臣、米飯の数を減らしたり、今、武部副大臣からもありましたけれども、新たな食材で対応していくということも今の段階でもやっているということでありますから、今、地域の米も大事だというふうに思います。そして、有機の話もさせていただきましたけれども、是非、食材の価格変動にも対応する柔軟な法制度を求めて、質問を終わりたいというふうに思います。
ありがとうございました。
○御法川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前十一時五十二分休憩
――――◇―――――
午後一時開議
○御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。村岡敏英君。
○村岡委員 秋田県出身、国民民主党の村岡敏英です。
法案に関して質疑を行いたいと思います。
この法案が出てくる前提として、ロシアによるウクライナへの侵略戦争によって世界的なエネルギーや食料の価格が上昇、さらに、トランプ関税という状況もあり、日本もガソリンや電気代、資材等が値上がりしている。さらに、帝国データバンクによると、主要百九十五社が三年足らずで値上げした加工食品などは七万品以上に上っている、こう報告されています。
物価高騰は農家の経営も消費者の生活にも直撃している、その中で適正価格ということですから、まさに時機を得てやらなければならないと思っていますが、実は、農産物は価格転嫁がしづらいと言われてまいりました。
消費者は、当然、この物価高騰ですから、安い店を探していきます。それとともに、三十年間給料が上がらないという中で、当然、お店の方も、安いものを仕入れて安いものを売ろうとしていた。その部分の中で、なかなか農産物が転嫁できないということがあります。
そして、一方、農家にとっては、肥料や飼料や機械、これは節約できないんです。ですから、メーカーが価格を上げても、高くても買わなければならない、そのコストが乗せられなかったという大変な思いをしているところであります。
そこでなんです、費用の考慮について申出があった場合に誠実に協議するという意味合い、誠実というのはなかなか難しく、この実現可能性に不安を持っている生産者の方がたくさんいらっしゃいます。法案にはいろいろ書いてありますが、もう一度、改めて、どんな計画で進めていくのか、農林省の方にお聞きしたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今の、努力義務、誠実に協議するというところでございますが、この法律上も、判断基準を策定するということを規定してございます。この努力義務に関して各事業者がどういう行動を取っていればよいのか、その行動規範を判断基準として策定していくという方針でございます。
この中身に関しては、作ること自体も重要ではありますが、その中身を関係者が納得しながら作っていくということが重要だというふうに考えてございますので、品目ごとの生産から販売に至ります関係者、こういった方々と現在も協議を続けているところでございます。この中身に関して、よく意見を酌み取りながら、実態をきちんと踏まえたものにしていきたいと考えているところでございます。
○村岡委員 二〇一五年に、産業連関表という形で、国内生産した農産物が消費者まで行き渡るという表が作られました、資料では今配っておりませんが。二〇二〇年を農林省に頼んで作っていただきました。今日できてきたのでちょっと配れなかったんですが、国内の生産者が九・五兆円生産している、その次に卸売市場に六・三兆円行き、そして卸売市場外経由で三・三兆円、それが外食産業や食料小売業者に行って五十九・五兆円、そして消費者に渡るときには七十六・一兆円。これは二〇二〇年までしか出ていないので、ちょっと、コロナなので、これよりは額は上がっていると思います。
やはり、生産者から卸売市場に行く、この段階のところがなかなかコストが見ていただけなかったということの問題意識だと思うんです。
最終的には、九・六兆円、もちろん、付加価値をつけて、そして加工して、七十兆、八十兆になるわけですけれども、この辺のところをしっかりと把握しなければこれはでき得ない政策だと思っていますが、農林省、どう思っていらっしゃるでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘ございましたとおり、これまで協議会などで協議をしている中では、やはり食品に関しては、川下の方々の取引上の地位が非常に強い。それはどういうことかと申しますと、この品目であれば価格帯はこの価格帯なんだということで先に小売価格が決まって、その逆算で取引価格というか納入価格が決まるというようなことから、場合によってはコスト割れになるような品目も出てきたということが起きていたというふうに承知をしてございます。
今回は、きちっと、コスト割れをしないように費用を考慮するということを各取引段階に求めていくということをできる限り周知する、そしてまたここを法的措置で担保していくということで、今御指摘のあったようなところを少し押し上げていきたいというふうに考えているところでございます。
○村岡委員 それに関連するんですけれども、今日の審議でも、質疑でも出ておりますが、フランスでは法により認定された専門職業間組織が担うが、指定作成団体は農林水産大臣に認定申請するとしか日本ではされていない。客観性が保てるのかどうかという不安があります。
同じ品目でも、当然、生産コストが高い小規模経営や条件不利な中山間地域、有機や、栽培方法の違い、転嫁されにくい個人農家の家族労働費など見えないコストの考慮など、多様な農業形態に配慮した指標とすることが欠かせない。ここの部分をしっかりとしなければ、やはりコストの正しい導きができない、こう思っていますが、農林省はどう考えているでしょうか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
コスト指標を今回策定するということになってございますが、この策定自体、今回初めて行う取組でございます。まずは、代表的な、標準的なものをまず一つしっかりと作るというのが第一段階かというふうに考えてございます。その上で、今御指摘のありましたように、できる限りきめ細かく、バリエーションを増やしていくということが現実的ではないかと思ってございます。
それから、コスト指標の作成団体につきましても、公正性をきちっと法的に担保するようにということで、手続面それから認定要件の面でも規定をしっかりとしてございます。まずはこういうことをしっかりと運用していくということが大事ではないかというふうに考えているところでございます。
○村岡委員 大きく言って四者になるんでしょうけれども、生産者、卸売、それから小売の販売、消費者とありますけれども、その各段階で了解を、納得感がなければコストは乗せられないということになります。
まず、生産者は、コストを乗せていくことをこれから指標をもってやっていく。そして、卸はどういう納得感が必要だと。このコストをただ、コストがこれぐらいかかります、じゃ、この値段で買いましょうとなるのかというと、そうではない。それはどう考えていらっしゃいますか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘のとおり、やはり販売を担う側の立場の方々は、この価格でこの品質で売れるかどうかということを当然に考慮しながら取引交渉をなさることになろうかと思います。当然、そういう現実も、納入される生産者側の方も確認をしながら、生産性向上ですとか付加価値の向上ですとか、そういう取組もその次のステージとして併せて取り組んでいく、この循環を続けていくということが重要ではないかというふうに考えているところでございます。
○村岡委員 もちろんコストは出てくると思うんですよ。その中で、卸で買っていただける方に生産者の努力を理解してもらうということが必要になってくると思います。
例えば、いろいろな、生産していく上で、切れ目なく安定した供給をする生産者の努力は、卸にとって、消費者に対して売りやすくなる。それからまた、その製品自体がおいしいものを作るという中でいろいろな努力をしている。そういう目に見えない努力も農林省が卸の方に伝えていかなきゃいけない。もちろん生産者も伝えるわけですけれども、その辺のこともなければ、コストだけ言って、それが卸の方で、はい、コストはこのぐらいかかりましたとならない。
やはり、生産者の努力している細かい内容、そして、それが品質がよくなっているということを伝えることを、法的にはできなくても、考えていかなければならない、こういうふうに思っていますが、どういう見解でしょうか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
この法律の話とは若干外れますけれども、今回、食料システムということで、協議会も、生産から製造、それから卸、販売、小売の方々まで一貫して集まって話合いをする場がございました。これまでこういう場もございませんでしたが、きちっとお互いに話合いをする、これまでであれば利害相反の関係であった方々が、きちっと食料を提供していくということにおいて共同体になってきたということは、大きな一歩ではないかというふうに考えてございます。
それから、コロナなどがあって、ちょっと途中断絶していることが多いかと思いますが、従来であれば、卸売業者の方々、バイヤーの方々が多く産地を訪問するというようなことがございました。こういった取組も、やはり目に見えない取組を理解していく上では重要であろうかと思います。これは商慣行の中に入ろうかと思いますが、そういう取組も当然今後とも促進をしていく必要があるだろうというふうに考えているところでございます。
○村岡委員 それは是非、法的にも目にも見えないけれども、そういうことが実際あってこそ、卸で買ってくれる人たちにも、このぐらいの価値のあるものだということのために、これは農林省、やっていただきたいと思っています。
そこでなんですが、もう一方、消費者に理解を得るというのはどのようなことだと考えていらっしゃるんですか。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
消費者の理解が今は一番難しい課題だというふうに思ってございます。
まずは、取っかかりというか最初の一歩として、きちっと、どれだけコストがかかっているのかということを見えるようにしていくということですとか、それから、生産の現場、製造の現場というものが今どのような実態にあるのか、こういうことをまず把握し、それから、それをきちんと伝わるようにしていくということが重要ではないかと思ってございます。制度だけではなくて、これは予算措置も含めて、現在、私ども、フェアプライスプロジェクトというものを行ってございまして、その中では、インターネット動画の配信なども行ってございます。それからイベントも行ってございます。
そういったような取組を通じて消費者理解というのを、一朝一夕ではできないと思いますけれども、取組を進めていきたいと考えているところでございます。
○村岡委員 大臣にこの件に関し質問通告していませんが、一つ大臣にお聞きしたいんですが、私も国会で使わせていただきましたけれども、国会議事堂の前が芋畑、食料の安全保障というのは、食料が断絶すると国民は本当に困ってしまうということをまずは知っていただくことが必要だ、こう思っています。
それにプラスして、農林省もいろいろな取組をしているんですけれども、私、大臣室に行かせていただいたときに、新聞大の、全国四十七都道府県の農産物を紹介した新聞が大臣室にありました。しかし、それは、農林省の人に聞いたら、大臣室ぐらいしかないと言うんです。見たことがある人が少ないんです、農林省の職員でも。だから、そういうものももっと、せっかくいいものを作っていて、しっかり宣伝していないんですね。
いろいろなホームページを見ても、農林省のいろいろな紹介ページというのはいいものがいっぱいあるんですよ。ところが、職員の方さえ知らないというのでは、やはりそれは、せっかくいいものを作っているわけですから、もっと宣伝をしなきゃいけない、消費者に見てもらうようにしなきゃいけない、こういうふうに思っています。
さらに、やはり三十年間給料が上がらなかったわけですから、賃上げと今政府は求めていますが、賃金が上がっていかなければ、やはり消費者もコストが乗ったやつを買えない。これは、我々の言っている、百三万円を百七十八万円にしていくことも、そしてガソリンも暫定税率を廃止するというような対策を取って、消費を喚起しなければならない。そのときに一緒に食品のコストを、しっかりと、生産者が努力して、国民においしく、そして健康的で、大変努力して作っているということが分かってこそ消費者の理解が進むと思いますが、大臣はどのように考えていますか。
○江藤国務大臣 おっしゃることはよく分かります。
芋の話は、大分昔に先生が委員会でやっているのを見て、私もそれを予算委員会で使わせていただいたことが実はあるんです。ですから、やはり食料安全保障の確立というものはそんなに簡単でない、そして、そういう悲惨な時代が八十年、たった八十年前にあったということは、やはり教育の場でも教える必要があると思います。
そして、有機の世界も、これから目標を立ててやらなければなりません、みどりの食料システム戦略。ということであれば、それに価値を感じて、楽に買っていく、五割高くても買っていける人もおられます。私も、麻布十番の有機の専門店とか、いろいろなところを回りました。かなりお金持ちそうな人ばかり買物していたなと思いますけれども、分からないですけれどもね、そんな印象でした、私の個人的な印象ですが。
ですから、おっしゃるように、消費者の理解が醸成されても、理解はするけれども買えないというところに行き着いては意味がないと思うんですよ。分かった、この値段なのはなるほどそういうことなのね、分かったけれども、でも私の懐では買えませんということでは話になりませんので、これからみどりの食料システム戦略を実行する上でも、消費者の購買力の向上というものはやはり欠かせないんだと思います。
いいものに価値を見出して、それに見合う対価を払うだけの財政力を御家庭にも持っていただくことが大事なので、政府としても、これから、物価高騰に負けないような賃上げの、所得の上昇に向けて、内閣を挙げて努力してまいりたいと考えております。
○村岡委員 国会議事堂の前が芋畑というのを、教科書に載って、子供たちがやはり農業の大切さ、食の大切さを分かるような感じになっていただければありがたいなと。やはり、食というのは、なければ人間は健康に生きられない、そういう形が教育の中でも出てくることが大切なんじゃないかな、こう思います。
そこで、ここから離れて、大臣が今一番御苦労している米ですけれども、米不足、そして米の高騰とありますけれども、ストックという中で、いろいろ流通過程のやつも言われています。
しかし、流通だけではないようなことがいろいろなところで今言われ始めています。やはり二年前の、民間の在庫が少なくなって、その中で先食い先食いしていった形が今になって表れた。これは別に、そのようなことの事態になると、夏の例えば高温とか、それが全て予測できたわけじゃないので、農林省を責めるわけではありません。
しかし、様々な要因をしっかりと分析して、日本の主食ですから、この主食に対して、原因を調べた上で、今後このようなことがないように対策を立てなきゃいけない、こう思っていますが、大臣はどのように思っていますか。
○江藤国務大臣 確かに、民間の在庫、二月末で二百五万トンですから、大体ざっくり言って三十万トンぐらい、平均と比べて少ないということであります。
二年前からそういうトレンドがあったことは、過去を振り返れば、あれが原因だったのかなというふうに思わないではありません。ありませんが、ただ、我々も、もうずっと申し上げていますが、十八万トン余計に作っているはずだ、そして、それぞれの段階、生産段階、卸の段階、どれぐらい今持っていますかと調査をかけたら、生産者の方々も米を持っています、卸の方々も前年と比べて余計に持っていますということでありますから、米がないということではなくて、米は高いけれどもスーパーの店頭には並んでいるという状況が去年とは全く、去年は米はなくなったわけですから。ですから、今は備蓄米を使ったブレンド米も並んで、三千三百円ぐらいのやつも出てきました。
ですが、委員が言われるように、しっかりこれは勉強しなきゃいけないと思っています。やはり政治は、過去を振り返って学ぶことと、そして常に、やっていることが正しいんだというふうに開き直ることは私は間違いだと思うんですよ。やはり、自分の身をしっかり律しながら、今後このようなことが起こらないようにするためにはどのような調査をし、どのような政策を組んだらいいのか、それは不断の検証をすることは、委員がおっしゃるとおり、必要なことだというふうに認識いたしております。
○村岡委員 不足のやつは、備蓄米を出して、ある程度そういうのが流通してくると直ると思います。高騰がなかなか直らなくて、思惑どおりにはいっていないと思います。その原因のものが何なのかという分析もしなきゃいけない。
その中で、例えば、今、概算金が、米価、買うときにありますけれども、秋田だと、買取り方式、先ほど午前中話題になった、米も買取り方式でやろうということであったり、それから、流通過程の中で、生産者の米価と、結局、消費者に売る米価と、大体二倍ぐらい違う。しかし、米は不足していたということで二倍近くになりましたけれども、今の現時点で、消費者に売る値段も二倍になっていますけれども、そこまで、いろいろな流通過程で、トラックだとかそういうのが本当に高くなったのか。何かそれも引きずられて二倍になっているんですね。
高騰の原因は、不足が解消されてくれば全て直るのか、それともほかに原因があると分析しているのか、そこを大臣にお聞きしたいです。
○江藤国務大臣 なかなかお答えするのは難しいと思います。
やはり、もう何度も申し上げましたが、昨年、南海トラフの臨時情報とか、夏が暑かったとか、様々な複合要素が重なって、消費者の方々も店頭に走って、米を買いだめをされました。そして、今回の調査においても、御家庭においても約四万トンぐらい余計に前年に比べて今でもストックがあるということは分かりました。
ですから、業者の方々にしてみれば、やはり、品物が途中で途切れてしまうのが卸は怖かったんだろうと思います。持っていないわけじゃないんですけれども、だけれども、なくなったら困るのでということで、やはり苛烈な集荷競争が起こり、そこにまた新たなプレーヤーが四十四万トン集荷しているということも明らかになっているわけですから。四十四万というと、大体五%強か、六%ぐらいになりますか、全体の。全体の六%近くを新しいプレーヤーが持っていったということになれば、それは既存の流通に関わる方々は焦りはあったと思いますよ。
ですから、そういうことを考えると、今まで考えられなかったことがやはり起こっている。そして、農家の直販なんかも増えている。
そして、私も随分批判をされましたけれども、高千穂の、本当に米をやっている山の上の農家のところまで知らない人が来て、米はありませんかというような話も出てきた。そういったものは、やはり人の世界というのは、うわさとか口コミというのは怖いですから、そういったものが広がって、様々な複合要素によってこういう事態が起こったんだと思いますので、しっかり分析もさせていただいて、今後にも備えていきたいと考えております。
○村岡委員 ちょっと時間がなくなってきたので急ぎますけれども、米不足のやつは、やはり増産ということを前に言いました。それは、もう今年度は始まっていますけれども、安心していただいて、生産者も価格的に余り下がり過ぎればこれは農家は続けられなくなりますので、その部分と、消費者が余り高いと米離れが始まる、そこを両方やるのは難しいですけれども、かじ取りをしっかりやっていただきたい、こう思っています。
こういう状況の中、トランプ関税が来ました。そして、前回も質問しましたが、七〇〇%だとか非関税障壁だとか、いろいろなことを言われています。
これは、大臣、普通、与野党でいけば対決することが多いわけですけれども、この件に関しては与野党とも大臣に全員賛成だと思うんですよ、日本の農業、食を守る。内閣の一員としてしっかりと行動すると言っていましたけれども、これは、日本の国会議員として、しっかり日本の農業は守るということをもう一度言っていただけませんか。
○江藤国務大臣 現状、内閣の一員であることは変えようがないんですよ。ただ、内閣の一員であるから、私の言ったことに重みが加わるということもまた事実だろうと思います。昨日の記者会見でちょっといろいろ申し上げましたが、それについては様々な反応が、党内を含めて、官邸も含めて、いろいろありましたよ。それでいいんだろうと思います。
ただ、私は、政治家をやっている上で、国益になる、国民を守るためであれば、いつでもこの職を去ってもいいという覚悟は常に持っています。政治家という職業を辞めなければならないところに追い込まれても、それでも、自分の人生としては十分だと思っています。
ですが、物事は、けつをまくるのは簡単です。けつをまくるのは簡単ですよ。安倍総理の下で様々なことを経験しました。TPP交渉のときは、ワシントンから朝の五時に安倍総理が電話してくれて、私に懇々とオバマさんとの合意内容を説明してくれましたよ。様々なことを経験した上で、何度もけつをまくろうとしたことはあります。でも、今ここに立っています。
ですから、やはり、閣内にあって言うべきことをしっかり言うことも、それは委員の御期待に応えることに私はつながるんじゃないかと思っておりますので、覚悟を持ってしっかり取り組んでまいります。
○村岡委員 けつをまくらないで頑張ってください。みんな応援しています。よろしくお願いします。
終わります。
○御法川委員長 次に、角田秀穂君。
○角田委員 公明党の角田秀穂でございます。
本日も質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。
食料システム法について順次お伺いをしていきたいと思いますけれども、初めに、米の供給ということについて幾つか質問させていただきたいと思います。
国民の主食である米の価格が昨年の夏以来著しく高騰していることについてですけれども、この原因とされる流通の目詰まりを解消するため、備蓄米の運用、これを見直して、三月に二十一万トン、さらに、今日から十万トンの入札が開始をされております。
これから夏まで毎月入札を行うという方針も示されておりますけれども、これだけ僅かな期間で、備蓄米として確保すべき水準の約三分の一程度が取崩しをされ、これをいつ買い戻して百万トンの備蓄水準を回復できるのか、これも不透明な状況であります。
本来、備蓄米は、凶作あるいは連続した不作でも国産米で対処し得る水準として必要とされる量を確保しておく、そのためのもので、それ以外の事情で備蓄米を取り崩すということは、あくまでも、ほかに手だてがないときの最後の手段であるべきだと考えます。
加えて、今回の備蓄米の活用について見ても、供給の正確な実態が把握しにくくなっている中で、売渡しのタイミングやその規模が政府の裁量に委ねられているというところがあり、その判断の基準、これも不明瞭であって、こうした運用は、やはり望ましい運用の在り方とは言い難いのではないかとも思います。
今回のように、不足ではない、生産量は需要を十分に満たす水準であるはずにもかかわらず、消費の現場に届いていない、価格が一年で約二倍も高騰し、消費者が入手することができない状況が生じたということを踏まえて、こうした場合には、備蓄米の取崩しの前に、ある程度一定のルールの下で迅速に対応できる何らかの新たな手だて、仕組みを組み入れるべきではないかと考えます。
そもそもは、米の供給は、国が需要を予測して、その予測を基に計画的に生産をしているわけですが、当然のことながら、正確に需要というものを予測するということは困難で、例えば令和五年産では、当初見通しが六百八十万トンであったものが実績値は七百五万トンと、二十五万トン上振れして、一方で生産も見通しを下回ったことが、昨年夏の民間在庫が価格安定の目安とされる水準を下回り、米価高騰の一因ともなったと思われます。
国が行う需要予測の精度を十分に確保できないことを踏まえて、需給ギャップを迅速に調整するための仕組みを用意すること、これはある意味、国の責務でもあると考えますが、この点、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
○江藤国務大臣 備蓄米の趣旨について十分な御理解をいただき、やはり今回、異常事態、ほかに手がないということで緊急的に出したということで、今回限りにしたいなという強い思いを持っております。御指摘は極めて正しいと思います。
じゃ、これを使わずに、米はちゃんと作られているんだけれども、なかなか消費者の方々のところにお米が届かない。しかし、届かないというのではなくて、今価格高騰に消費者の方々は非常に悩んでいらっしゃるというところは、若干また言わせていただきたいと思います。昨年は、店頭から米が消えたという状況でした。
そして、大手のスーパーの方々とこの間話もしましたが、お米の売上げは、金額ベースでは上がっています。上がっていますが、売上げ自体のやはり量は下がっていますので、値段の問題もあるのでしょう。
ですから、様々あります。ですから、先生が言われる新たな仕組み、是非お知恵があれば逆に出していただきたいなと思うんですけれども、備蓄米を出さずに済めば、それが一番よかった。本当に、ほかのところでも質問されましたけれども、江藤さん、本当に今年大凶作でも起こったらどうするの、六十万トンだよ、もう一回出したら五十万トンだよと。六十万トンというと、大体国民の一か月分です。一か月分しかないよと。それで食の安全保障を国は担保できるのかと言われると、言葉に詰まりますよ。MAを使いますけれども、いざとなったら。
ですから、先生の御指摘はしっかり受け止めさせていただいて、どんな知恵があるか、省を挙げて検討させていただきたいと思います。
○角田委員 ありがとうございます。
今、今の状況は米の不足ではなくて価格の高騰だというお話がありましたけれども、その価格の高騰についてなんですけれども、今回の米価格の高騰を見ても、米需要、この価格弾力性が極めて小さい。言い換えて言えば、僅かな需給の変化でも価格が大きく変動するということが改めて示されたと思います。
今審議をしている食料システム法は、食品等の持続的な供給を実現するため、流通の合理化や取引の適正化によって合理的な価格形成を目指すというものですけれども、それが実現したとしても、消費者が選択できない、消費者が手を出せないということであっては、持続可能な生産の確保も難しいと思います。
米の価格高騰が続いている今年の家計調査報告を見ても、一年前との比較で、電気代、ガス代などの光熱水費の増加で、食料全体の支出は減少しております。ただ、その中でも、米の消費支出はそれほど減っていない。その一方で、野菜や果物の消費支出は大きく減少をしております。
食料システム法が目指すところは、消費者も含めて誰もが納得する価格の実現であって、そのために費用の指標を明らかにする、それによって適正な価格かどうかの判断もつきやすくなると思いますけれども、その反面で、納得ができない価格に対しての不満、これもより大きくなっていくのではないかというふうにも思います。
消費者に資する食品全体の合理的価格形成の上からも、特に米については、国民生活の混乱を防ぎ、安定を確保するためにも、需要に応じた生産、需給を迅速にバランスさせる仕組みを設けることについて、これは今、検討いただくというお話がありましたけれども、しっかりとこれは検討していただきたいと思います。
あともう一点、要望させていただきたいんですけれども、今回のケースでは、八月の品不足、価格高騰から、備蓄米の活用、それが流通の末端に届き始めるまで約八か月かかったわけです。
迅速な対応をするためには、生産、流通の把握を始め情報収集、分析体制を強化する、しっかりアンテナを張っておくことが求められると思いますが、この点、農水省は霞が関の省庁でも最も多くの統計職員を抱えています。農林水産行政を進める上で統計データが極めて重要なことの表れだとも思いますが、この統計職員の数は、三十年前は六千二百人いましたが、これが二十年前には四千四百人、十年前には千八百人、現在、令和六年度末では千五十三人と、千人を割りそうなところまで削減をされています。
これは減らし過ぎじゃないかと私自身は思うんですけれども、民間を活用することで支障が出ないようにしているのだといっても、年間契約等で委託しているような場合に、一言で小回りが利かないのではないかとも思います。こうした情報収集、分析体制の強化もしっかりしていただきたい、これも要望させていただきたいと思います。
それから、食品の物価高騰について、現在も食品の物価高騰が続いているわけですけれども、その中で今、合理的な価格形成を図ろうとしているところですが、既に食品の物価上昇が続いているこの状況について、この物価上昇の要因については、費用の価格転嫁が進んでいるものと見ているのかどうか、現状についての認識を伺いたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
まず、総務省が公表いたしております二〇二四年度の平均の全国消費者物価指数、これを見てまいりますと、全体の総合指数が対前年比で三・〇%の上昇に対して、食料は対前年比五・〇%上昇と、やはり高い水準でございます。
ただ、食料というのは、一概に整理するというのはなかなか難しいというふうに考えてございまして、動きとしては二極化しているのではないかというふうに私ども受け止めてございます。
昨年後半から、御指摘のありましたように、米ですとか生鮮野菜、こういったものは値上がりがしてございます。また、加工食品などは転嫁が進められて、価格改定が度々行われているところでございますが、農産物に関しましては、コストが考慮されずにコスト割れでの供給が出てくるというようなこともございまして、費用の価格転嫁が進んでいるとは言い難いのではないかというふうに受け止めているところでございます。
○角田委員 それで、適正な価格形成、これから進めていく上で、合理的な価格だといっても、その価格で手が出せない人、そうした人たちの食料へのアクセスを確保していくことも重要な課題だと思っています。物価高騰に対して、低所得世帯など必要な食料を入手できない方々、また、物理的に食品アクセスに困難を抱えている方々に対する支援、これも強化していく必要があると思っています。
今年から始められたフードバンクへの政府備蓄米の無償交付について、交付申請は半年ごとの年二回が予定をされており、二月に第一回の申請受付が行われ、七十六の団体等から申請があった合計八百二十三トンの備蓄米が交付決定をされましたが、現場から、足りないという声も聞いております。米の価格が高騰している現在の状況を踏まえ、数量、申請受付についても柔軟な対応をお願いできないかと思っております。
子供食堂、子供宅食への備蓄米の無償交付は、昨年九月から、年四回の申請期間が通年で申請ができるようになりましたけれども、フードバンクへの提供についても、現場の声を丁寧に酌み取って、より利用しやすいよう、申請受付の通年化など柔軟に対応していただきたいと思いますけれども、この点について見解をお伺いしたいと思います。
○庄子大臣政務官 お答えいたします。
フードバンクへの政府備蓄米の無償配付につきましては、御党を始め多くの皆様から度々御要請をいただきまして、令和六年度からスタートいたしました。今お話がありましたとおり、本年三月、申請された全量に当たります八百二十三トンの交付決定を初めて行いまして、順次配送を行っております。
子供食堂あるいは子供宅食は、申請数量が一回六百キロと小口でありますので、通年で申請をしていただきまして、その都度配送しております。他方、フードバンクは、一団体当たり最大五十トンと大口でありますので、年二回申請を受付し、毎月、計画的に分割して配送しているところでございます。
本制度は令和六年度から始まったばかりでありますので、今後の状況をしっかり確認をした上で、必要な運用改善を検討してまいりたいと思っております。
○角田委員 現場の声を聞いて、必要とされる運用の改善、これについても検討を進めていただければと思います。
もう一点、フードバンク支援については、主に食品ロス削減を目的に、昨年の十二月に食品寄附ガイドラインが作成をされ、寄附の拡大、これが図られようとしております。
このガイドラインでは、食品事業者などが寄附をちゅうちょする主な要因となっている転売や品質、衛生管理体制など、そうした信頼性を確保するために、一定の管理責任を果たすことができる、そうしたフードバンクを認証する仕組みを設けることで、食品寄附への社会的信頼を高め、寄附の拡大につなげよう、そうしたことを目指していますが、令和八年度からの認証制度スタートに向けて、令和七年度にどのような取組を行っていくのか。
また、食中毒など事故時の対策として、現行の保険では十分に損害をカバーできないとの指摘もありますけれども、食品寄附促進へ向けて、こうした在り方を検討する必要もあると考えますけれども、この点、見解をお伺いしたいと思います。
○井上政府参考人 お答えいたします。
御指摘のフードバンク認証制度については、令和八年度から本格的にスタートできるよう、今年度に認証の実証事業を行うこととしております。
具体的には、まずは、比較的規模の大きい中核的なフードバンク団体を対象に、昨年十二月に食品寄附等に関する官民協議会において策定した食品寄附ガイドラインに示される遵守事項、例えば、転売禁止を含む合意書の作成、施設や設備の衛生管理、保険の加入などの適合性を第三者が評価する仕組みを検討することとしてございます。
また、保険につきましては、委員御指摘のように、食品事故に関して、食品寄附に特化した保険が存在しないことや、食品寄附について、簡易な手続で対応できるものがないといった課題があると認識しております。
このため、昨年度、食品寄附に対する信頼性確保に資するよう、フードバンク等が加入しやすい保険の仕組みについて、官民協議会の下に専門的議論を行う分科会を設け、保険制度のスキーム、補償内容等について課題の整理を行ったところでございます。
消費者庁としましては、この結果を関係事業者に周知するとともに、これを踏まえ、通年で入れる安価な食品寄附に特化した保険の仕組みについての検討が促進されるよう、事業者に対する働きかけなどを引き続き行ってまいりたいと考えてございます。
○角田委員 ありがとうございます。
次に、地域計画について質問させていただきたいと思います。
食料システム法の目指すところでもある、将来に向かって持続可能な農業構造への転換を図っていく上で、人口の減少、高齢化の進行による担い手の急激な減少に対して地域の農地を守って、将来に向かっていかに農業を維持していくかを関係者が話し合って策定する地域計画が今後の政策展開のベースともなっていきますけれども、今年三月末までに、速報値で一万八千六百三十三地区で地域計画が策定をされたものと理解をしております。
地域計画は、これは策定して終わりというものではなくて、むしろここからが始まりで、その目的である、農地をどう利用していくのか、どのように担い手に集約をしていくのか、将来像を明確にするために不断に見直して、よりよいものにブラッシュアップしていくための支援、これが必要であると思います。
地域計画策定を進めるために、これまでにも、マニュアルの作成であるとか、モデル地区の選定、先行事例の紹介、関係者の協議から計画取りまとめに至るまでの専門家による各種の支援などが行われてきましたが、これまでこうした取組を進めてきた経験を基に、今後どのような支援が必要とお考えになっているのか、見解をお伺いしたいと思います。
○杉中政府参考人 お答えいたします。
地域計画でございますけれども、議員御指摘のように、三月末で、全国約一万九千地区で策定をされました。残念ながら策定に至っていない地域も存在しますので、なぜ策定できなかったかということについてもしっかり分析をしてまいりたいと思っています。
また、策定された地区につきましても、農地の集積、集約、更に課題が残っているところも多いと思いますので、より充実した内容にブラッシュアップすることが必要であり、そのためにも継続した話合いの実施が不可欠だと考えております。
円滑な話合いの実施をするということが求められているんですけれども、例えば、徳島県の海陽町というところでは、第三者の大学教授をコーディネーターに迎え、仲介役として話合いを進めたということによって、前向きな議論を行う雰囲気が生まれたという事例もございますので、こうしたいい事例を横展開をして、更なるブラッシュアップを図っていきたいと考えております。
また、地域計画で、十年後に有効利用される見込みのない農地、これが多く存在することが明らかになったわけでございますけれども、各地域への聞き取りでは、こういった利用される見込みのない地域の多くは分散しており、まとまった農地がない、また、そういった農地の多くは基盤整備されていない、また、地域の中に受け手がいない、そういった課題が挙げられておりますので、今後、地域計画の分析をしっかりと行い、農地の有効利用に向けた支援の在り方についても検討していきたいと考えております。
○角田委員 ありがとうございます。
時間がなくなりましたので以上で終わりとさせていただきたいと思いますけれども、この地域計画、今後に向けて策定、これを支援していく人材、この確保と育成、これが非常に重要だと思いますけれども、こうしたことも含めまして、農地を守る地域計画の策定がしっかり進むよう取組をお願いをして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、八幡愛君。
○八幡委員 れいわ新選組の八幡愛です。
毎週質問ができて光栄でございます。本日もよろしくお願いいたします。
連日、日米の関税交渉で政府が米国産の米輸入拡大を検討しているかのような報道がなされております。大臣は午前中の委員会で、農水省の関与しないところでこれらの報道がされているとの認識を示されましたが、国産米の価格高騰で、関税分を上乗せしても輸入米の方が安いということで、店頭ではカリフォルニア米やブレンド米を見かけるようになりました。
この前、スーパーに行ったら、意外とおいしいから食べてみてというPOPがつけられていたんですよ。大分なじんできているななんて感じていたんですけれども、先週十五日に、財務省の財政制度分科会が米の安定供給のためにミニマムアクセス米の活用を提言したとも報道されていて、何かタイミングがよ過ぎるんじゃないかと思っていましたら、今朝の日経新聞で、米国産のお米は特別枠として七万トン輸入拡大する案を政府検討と出ておりました。
江藤大臣は、昨日の記者会見で、主食であり自給可能な米を米国に限らず海外に頼る体制を築いてしまって、日本の米の国内生産が大幅に減少してしまうということが国益なのか、食料安全保障の観点からもこれは問題だとの認識を示されました。もうこれは当然です。
そもそも、私、思うんですが、農林水産省の所管に関する事項はこの委員会で議論されるべきだと思うんですね。それなのに、なぜ財務省主導でミニマムアクセス米を輸入拡大する云々言われないといけないんでしょうか。
それと、自民党の中に輸入したらええやんとおっしゃっている方が本当にいるなら、誰が言っているのか、教えてください。お願いします。
○江藤国務大臣 財政審はタイミングがよ過ぎるなというふうに御指摘いただきましたけれども、年に二回やるんですよ。毎度毎度のことでありまして、二十年政治家をやっていると全然珍しい話じゃなくて、春は大体中期的な財政運営についてやりますので、別にこのタイミングを狙って出してきたというわけではないだろうというふうに思っています。
財務省さんの考え方は、できる限り財政負担を減らしたいということが根底にありますので、そこら辺の発想があるのかなと、私の推測ですけれども、多分当たっていると思いますけれども、そういうふうに思っているところであります。
そして、これは受け止めなきゃいけないんですよ。私も行政の一員なので、受け止めなきゃいけないので受け止めますが、御提案は御提案ということであります。
昨日の記者会見でも申し上げましたように、もし国内の生産基盤が大きく壊れるようなことになったとしますよ、そうしたら本当に米が足りなくなりますよ。やはり日本人は日本のお米を食べたい。
そして、申し上げておきますが、カリフォルニア米は中粒種ですから、日本の米とはそもそも違いますので、それはまずいとかいうわけじゃないですよ。そして、アメリカから運んでくるんですから、時間がかかっていますよね。米というのは、精米して、なるべく早く食った方がうまいんですよ。ですから、食味の上でも、やはり国産を食べた方が絶対いいと私は思います。
消費者の方は、テレビを昨日、私は見ていたんですが、あるおばあさんが、高くなっちゃったので、今まではちょっと高めのお米をこれ試しに食べてみようかなと思ったけれども、この値段だとそれもできなくて寂しいと言っているおばあさんがいました。ああ、なるほどなと思いましたよ。ですから、やはり日本のお米を食べたいんだなというふうに思います。
ですから、決して、言われるように、こういったことは外交交渉でありますから、農林水産委員会では、かつては決議をしていただいたり、様々なことで外交交渉を後押しをしていただきました。そういう歴史はありますが、内容についてまでは、やはり内閣というか官邸中心に決められるということは御理解をいただきたいと思います。
そして、最後の質問については、お答えすることを避けさせていただきます。
○八幡委員 この農林水産委員会におられる方は、そんな国内を差しおいて海外の物を入れたらええやんというようなことをおっしゃっている方はいらっしゃらないと思うんですが、本当にこれだけ食料安全保障と言っているのに、これ以上の自給率の低下は断固としてやはり阻止すべきであると考えます。今回の米国との交渉に、米も農産物も渡さないということを望みますので、是非大臣、国民、国益のために信念を貫いていただきたいと思います。
そして、今回審議されます食料流通システム法にも関わってくると思うんですけれども、全国的に米の供給不足や価格高騰が続いて、今現在も、十五週連続値上げということで、小売の現場も混乱しております。これらの事態は、流通の出発点となる例えばJAさんとかが供給を独占していることも大きく影響しているんじゃないかとも、ちまたでは言われております。
これはやはり考えたら分かることですが、先週私が大臣に質問したときには、流通に関してもそれぞれ工夫をしてもらうとおっしゃっていました。私は、備蓄米に限ってはもう入札方式をやめるぐらい大胆なことをしないと解決しないのではないかと申しましたが、そういった中間業者さんへの不信感も募って、消費者は、産地直売所やインターネット通販なども含めて、生産者からの直接購入先を確保するという動きがあります。
今回の米騒動の当初、政府は米が足りていると言っていたんですけれども、市場にはなかった。何でないんですかといったら、JAなどの大手出荷業者を通さない直接取引の分があるからだと発表されたときもありました。私、それを聞いたときに、あっ、また人のせいにしているなと思ったんですけれども。
ここで改めて確認したいんですが、生産者と消費者の直接取引は当然違法ではないと思うんですが、政府としての見解をお願いいたします。
○松尾政府参考人 お答えいたします。
生産者から消費者の直接取引は今でも行われているところでございまして、例えば、米穀機構の調査におきましては、令和五年度で、生産者からの直接購入が四・八%、それからインターネットショップからの購入が八・六%、こういうふうな状況になっております。
○八幡委員 当然違法ではないということなんですけれども、やはりこれだけ国産のお米が高騰して、食べたくても食べられないなとなったとき、こうやって食品の流通の在り方も変わってくると思うんですね。
ユーチューバーのヒカルさんが、彼が先週、お米の店頭価格が高騰しても利益が届いていない農家の厳しい現状を訴え、元気だ米プロジェクトというのを発表されました。日本の農家が直面する危機、特にお米を作れば作るほど赤字になるという現状を解決することを目指すとして、農家から米を高値で買い取ります、六十キロ当たり二万三千円だそうです、そして消費者には五キロ当たり三千九百八十円プラス送料の約八百円で販売する、サブスクリプション形式にして農家を支援するというビジネスモデルを提案されたんですが、これには当然、賛否両論あります。JA批判をしておきながら自分が利益を取っているやんなど様々言われているんですが、ただ、もう既に地元農家や地元行政を巻き込んでいて、新しい流通の形が形成されようとしているんですね。
消費者からすると、ちょっと高くても、おいしい国産のお米を食べたい、農家を応援するユーチューバーから買いたいという人も確実に存在していますし、それこそ、今回の法案でも目指そうと言われている消費者の理解とか、あと何らかの付加価値がもう形成されているんです。企画した彼らや農家、そして消費者は、政府がやらないから自分たちでやるんだという思いがあると思うんですが、一方で、小規模農家さんにお話を聞くと、JAさんがいるから安定してお米が出荷できるんだという意見も当然あります。
大臣は、今月十七日の本会議で、食料安全保障を確保するためにも、利益が農家に還元されるような産業構造に転換していくことが必要だと発言されているんですが、私は、このプロジェクト自体の是非を問いたいのではないんですけれども、このままいくと、食品流通法とかをやっても、もう市場がめちゃくちゃにならないのかなとも危惧いたします。付加価値が、誰が売ったとか、ヒカルの米を、割高だけれどもそれは夢を買っているんだとか、否定はしませんけれども、そういった付加価値は一時的かもしれないし、食の安定供給からは外れてしまうと思うんですね。だからこそ、農は国の基です、政府がしっかりと今こそ支えないといけないんですよ。
大臣、これらの流れ、どう思われますか。
○江藤国務大臣 なかなか難しい御質問だと思いますが、ただ、今回、合理的な価格形成については、生産から流通過程、最終的には消費者のところまで、流通について焦点を当てた法律でありますので、全く新しい手法ができ上がることについて無視することは、私も適切ではないと思います。
ただ、申し上げると、食糧法においては、農政局に届出をしていただくということが必要です。そして、食料衛生法においては、保健所に届ける、それから、HACCPなどの水準に沿った衛生管理をしっかりやっていただかなきゃいけません。
一部報道等でありましたけれども、玄関先に米を積んでいるとか、これから暑くなりますから、米は、しっかり温度を管理しないと、すぐカビが生えますし、いろいろ虫も湧きますので、このヒカルさんという人を私はよく知らなかったんですが、なかなか影響力のある方のようですから、こういう方が米に関心を持ったということについて、自分の立場で是であるとか非であるとか言うつもりはありません。ただ、やるんであれば、ちゃんとやっていただきたいと思います。
聞くところによると、二万三千円という価格で買うとおっしゃっているということでありますが、これは、新潟あたりの、概算金になるのかな、新潟は概算金が二万三千円ですから、その後精算しますので、最終的には二万三千円を上回るわけですよ。ヒカルさんの買取り価格を上回るということですね、農家所得としては。
ですから、こういう方々について、私の立場でなかなかコメントはしづらいんですが、この市場に参入してこようとする人たちは、それなりの覚悟を持ってやっていただきたい。しっかり品質を管理して、そこから買った人が、品質が悪かったとか、思っていたのとは違っていたとか、そういうようなことがないように、米のマーケットに参入する方には覚悟を持ってやっていただきたいというのが私の率直な気持ちであります。
○八幡委員 ありがとうございます。
先ほど品質の話もありましたけれども、品質でいうと、そもそも備蓄米も、放出はいっぱいされますけれども、それこそ味が落ちるんだとかいう話も聞きます。ただし、生産者からすると、ようやく三十年前の取引価格に戻ってきたのに、これからまた下がっていくのかという不安もあるでしょうし、やはり、最終的に消費者次第という流れに私は反対をします。政府は、価格保障と所得補償をしていくべきだと考えております。
そして、時間がないですが、生産者のコスト割れを強いている現在の価格決定の構造や商慣習を見直して、農畜産物の適正な価格を形成するという今回の法改正なんですけれども、その価格を決定するために、コスト構造を反映した指標を第三者機関が作り、農家らの売手側が指標に基づいて価格交渉できる仕組みをつくろうとするとあるんですが、適正な価格形成に関する協議会というのがありまして、その協議会の中身を見てみたんです。
農業団体は、生産の危機を訴え、コストを反映した農産物価格の実現を主張している。加工、流通側は、消費者の値頃感を主張して、価格転嫁に抵抗するとともに、加工コストの開示には消極的。消費者側は、コスト上昇には一定の理解を示すんだけれども、消費者が買える範囲の価格、適正な価格、消費者が納得できる価格を主張していて、何か平行線のような気がしました。
こういった協議に基づいて作成された、本改正案、コスト指標概念が極めて曖昧だと思うんですが、どのようにコスト構造を反映した指標を作成されていくのか、教えてください。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
コスト指標でございますが、生産、製造、加工、流通、販売の各段階のコストを積み上げて、消費者の手元に届くまでのコストを作るというものでございます。例えば生産段階であれば、肥料、飼料などの資材費、それから光熱費、輸送費、それから、もちろん人件費もカウントをいたしてまいります。
今委員から御指摘のあった各段階の当事者のやり取りというのは、協議会の段階の一番最初の頃の様子ではないかと思うんですが、今回は、とにかく国民に食料をきちんと供給していくためにはみんなが協力しないといけないというところの総意は得られているというふうに考えてございますので、その総意の中で、こういうコスト指標を、みんながある程度納得できるようなものを作り上げていくために、現在も協議を進めているという状況でございます。
○八幡委員 是非何度でも協議をしていただきたいと思いますが、繰り返しになりますけれども、この改正法が目的としているところは、共感もします。ただ、これだけだと、生産者コストの価格転嫁というのは、最終的に消費者の負担増、負担の増加となるたてつけのため、調整が私はやはり困難になると思っております。食料安全保障というならば、農業予算を倍増させて、価格保障、所得補償を断行するのが政治家の責任であると申し上げて、質問を終わります。
ありがとうございました。
○御法川委員長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 有志の会の北神圭朗です。
まず、今回、私も非常に野心的な法案だというふうに思っています。今、高騰していますけれども、例えばお米農家さんなんか、地元を歩いても、やはりふだんから、今の状況は別にして、要するに安過ぎる、やればやるほど赤字が出るというのが、もう心の叫び声だというふうに思います。今の高騰している分も、高騰している、していると世間で言われているけれども、自分たちはそんなにもうかっているわけでも何でもないと。こういう状況の中で、今回の法案というのは非常に重要な法案だというふうに思っています。
まずお聞きしたいのは、法案の第四十二条第一項で、協議体を設置して、そこでコストの指標、いわゆる費用の指標というものを作るということなんですが、生産、加工、流通、販売とそれぞれやると思いますが、私が気になるのはやはり生産者のことであって、今申し上げたように非常に苦しい。この生産者を代表するのはどこになるのか、どういう方、あるいは団体を想定しているのか、お聞きしたいというふうに思います。
というのは、恐らく、すぐ浮かぶのは農協さんだと思います。農協法の第一条にもいわゆる生産者の経済社会的地位の向上をうたっておりますから、それはそうなんですが、これは大臣に聞くことになっていると思いますけれども、違うかな、どっちでもいいですけれども。要は、やはり、それはそうなんだろうけれども、生産者にしてみたら、やはりできるだけ高い概算金を求めている。それから、肥料とか農機具とか、そういったものを買う取引先でもある。何を言いたいかというと、利益相反的な面もありますので、そこだけが生産者を代表するということでは、少しいびつなコスト計算になるのではないかという問題意識です。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
このコスト指標作成団体の構成員に関しましては、まだ現時点では確たる言及ができるような段階にはございませんが、この検討を進めるに至りました協議会におきましては、今御指摘のございましたのは、JA系統、全中さんと全農さんにも参加いただいておりますが、一方で、農業法人協会にも参画をいただきまして、きちっとその辺りの意見の多様性に関しては留意をしながら議論を進めてきたところでございます。
○北神委員 是非、ほかの、特に中山間地域の小規模農家にも声を与えるような、そういう機会もつくってもらいたいというふうに思っていますので、よろしくお願いしたいと思います。特に、この前も質疑で私、申し上げましたけれども、農協への集荷が今四割ぐらいに、大分減っていますので、そういった意味でも、もう少し多様な意見が求められるというふうに思います。
次に、その指標の中で、資料にもございますけれども、当然、皆さん御案内のとおり、作付面積によっても、同じ生産費用といっても、大分違う。平均すれば一・八ヘクタールで、大体六十キロ当たり一万五千九百四十四円となっていますが、平均の数字のマジックで、実際、例えば〇・五ヘクタール未満の方は二万七千五百四十四円もかかる。逆に、北海道の大規模なところなんかは一万二百二十円で済む。ですから、単純に平均値を出しても、これは非常に、それぞれの作付面積の経営団体にとっては、こんなものでいいのかと。
そして、例えば、一ヘクタール未満、三十五・八万もいわゆる経営体数がありますけれども、大体、全体の六二%ぐらいなんですね。ですから、私の思いとしては、やはりそういったところのことも忘れないでほしいということなんですが、一方で、北海道なんかにしてみたら、下手すると、下手な数字だと、押し下げ圧力、いわゆる値段をもっと下げろということになってしまう。
ここは非常に難しいところだというふうに思いますが、この辺の事情をどのように反映するお考えであるのか、お聞きしたいと思います。
○江藤国務大臣 極めて大事なことだと思っています。
例えば、北海道に行けば、田んぼでももう五町歩、一区画であるとか、宮崎にはそんなところは一つもありません。そういうところを基準にして米の平均的な生産コストを計算したら、なかなか西の方は大変なことになってしまいます。
ですから、自分としては、全国各地でそれぞれ、中山間地域も御指摘をされましたけれども、全国各地で、やはり最初は標準的なものを作るんだということを局長が何度も答弁されましたが、最初は標準的なものを作るのはいいと思うんですよ。そこから、やはり、東北や北海道とそれから関東、近畿、西日本、米一つ取っても全然条件は違いますので、そして、西日本の中でも中山間地域とそれから平地では全然条件が違いますので、そこら辺はできる限りきめ細やかにする必要があるんだろうと思っております。
それをやらないと、どこかに数字を取ったがゆえに変に下がったり、こっちはこっちで数字を取ったゆえに変に上がったり、得する人と損する人が変に偏在するようなことになるのはまずいと思いますし、それはこの価格形成の合意という一番大事な部分、これに支障を来すことになりかねませんので、しっかり配慮していきたいと考えております。
○北神委員 ありがとうございます。
地域的な要素も反映していく努力をされるということだと承りました。
最後の質問ですけれども、この資料にありますように、ちょっと法案の条文を読んでいて私も首をかしげざるを得なかったんですけれども、今申し上げた費用の指標というのは、この四十二条で規定されている。大事な大事な要素である三十六条の方で、これは実際、例えば、生産者とその集荷団体の間で、生産者の方がこれを協議してほしい、高温でかなりコストがかかっているというような話をしたいときにはそれを努力義務として規定されているということなんですが、この三十六条の条文で、下線を引いていますけれども、簡単に言うと、費用を考慮を求める事由を示して、取引条件に関する協議の申出がされた場合には、誠実に当該協議に応ずることというふうに書いてあります。
我々、議論を聞いていると、当然、四十二条のいわゆる費用指標というものがここに入ってくるんだろうというふうに思うんですが、普通、法律であるならば、例えば、この費用の後ろに、括弧四十二条の一項にある費用指標をいうとか、そういう何か示すべきだというふうに思うんですが、これをなぜ除いているのか。何か解釈で、飛躍して読まないと分からないようになっている理由を是非教えていただきたいと思います。
○宮浦政府参考人 お答え申し上げます。
今御指摘のございました三十六条の一項一号でございますが、正確に申しますと、「持続的な供給に要する費用その他特に当該持続的な供給を図るために考慮を求める事由」というバスケットクローズがございます。
ですので、このバスケットクローズの中で、コスト指標も入りますし、それ以外の様々な事由も読み込めるようにしてあるというような状況でございまして、ここでコスト指標も含めて解釈をしているというところでございます。
○北神委員 ちょっと私個人は釈然としないのは、そのバスケットクローズで読み込むということなんでしょうが、普通ここまで、四十二条で、かなり法律の中核的な部分であるコスト指標というものを普通は明示してしかるべきだというふうに思うんですが、もう時間がありませんので、私の推測をすると、基本的に、これはやはり、価格というのは民民で決めないといけないから、余り行政が関わったコスト指標というものを押しつけるわけにいかぬ、こういう理解だというふうに思っていますが、もう時間がないので答えなくていいですけれども、是非そこを明確にしたかったという思いでございます。
以上、終わります。ありがとうございました。
○御法川委員長 次回は、来る五月八日木曜日午前八時四十分理事会、午前八時五十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後二時十分散会