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第2号 平成31年2月4日(月曜日)

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平成三十一年二月四日(月曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 野田 聖子君

   理事 井野 俊郎君 理事 後藤 茂之君

   理事 坂本 哲志君 理事 田中 和徳君

   理事 堀内 詔子君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 渡辺  周君

   理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    石破  茂君

      今村 雅弘君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大隈 和英君    奥野 信亮君

      河村 建夫君    小泉進次郎君

      佐々木 紀君    笹川 博義君

      鈴木 俊一君    田野瀬太道君

      竹本 直一君    土井  亨君

      中山 泰秀君    野田  毅君

      平沢 勝栄君    古屋 圭司君

      宮澤 博行君    村上誠一郎君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山田 美樹君    山本 幸三君

      山本 有二君    池田 真紀君

      小川 淳也君    大串 博志君

      川内 博史君    武内 則男君

      長妻  昭君    本多 平直君

      宮川  伸君    早稲田夕季君

      奥野総一郎君    後藤 祐一君

      階   猛君    西岡 秀子君

      太田 昌孝君    岡本 三成君

      高木美智代君    藤野 保史君

      宮本  徹君    浦野 靖人君

      松原  仁君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   総務大臣

   国務大臣

   (マイナンバー制度担当) 石田 真敏君

   法務大臣         山下 貴司君

   外務大臣         河野 太郎君

   文部科学大臣       柴山 昌彦君

   厚生労働大臣       根本  匠君

   農林水産大臣       吉川 貴盛君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      世耕 弘成君

   国土交通大臣       石井 啓一君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    原田 義昭君

   防衛大臣         岩屋  毅君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     菅  義偉君

   国務大臣

   (復興大臣)       渡辺 博道君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)       山本 順三君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (少子化対策担当)

   (海洋政策担当)     宮腰 光寛君

   国務大臣

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)     平井 卓也君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   茂木 敏充君

   国務大臣

   (地方創生担当)

   (規制改革担当)

   (男女共同参画担当)   片山さつき君

   国務大臣         櫻田 義孝君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   環境大臣政務官

   兼内閣府大臣政務官    菅家 一郎君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    横畠 裕介君

   政府参考人

   (内閣官房国土強靱化推進室次長)         山田 邦博君

   政府参考人

   (人事院事務総局職員福祉局長)          合田 秀樹君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   海堀 安喜君

   政府参考人

   (総務省大臣官房政策立案総括審議官)       横田 信孝君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 定塚由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総括審議官)         土生 栄二君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  宇都宮 啓君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局長)            土屋 喜久君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 藤澤 勝博君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      村瀬 佳史君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            木村  聡君

   政府参考人

   (国土交通省国土政策局長)            麦島 健志君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  池田 豊人君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    岩並 秀一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 森田 治男君

   政府参考人

   (防衛省統合幕僚監部総括官)           齋藤 雅一君

   参考人

   (独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長)   樋口 美雄君

   参考人

   (日本銀行調査統計局長) 関根 敏隆君

   予算委員会専門員     鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月四日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     大隈 和英君

  小田原 潔君     佐々木 紀君

  田野瀬太道君     小泉進次郎君

  吉野 正芳君     土井  亨君

  武内 則男君     長妻  昭君

  太田 昌孝君     高木美智代君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     秋本 真利君

  小泉進次郎君     田野瀬太道君

  佐々木 紀君     小田原 潔君

  土井  亨君     山田 美樹君

  長妻  昭君     宮川  伸君

  高木美智代君     太田 昌孝君

同日

 辞任         補欠選任

  山田 美樹君     宮澤 博行君

  宮川  伸君     池田 真紀君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     吉野 正芳君

  池田 真紀君     武内 則男君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成三十年度一般会計補正予算(第2号)

 平成三十年度特別会計補正予算(特第2号)


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     ――――◇―――――

野田委員長 これより会議を開きます。

 平成三十年度一般会計補正予算(第2号)、平成三十年度特別会計補正予算(特第2号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房国土強靱化推進室次長山田邦博さん、人事院事務総局職員福祉局長合田秀樹さん、内閣府政策統括官海堀安喜さん、総務省大臣官房政策立案総括審議官横田信孝さん、厚生労働省大臣官房長定塚由美子さん、厚生労働省大臣官房総括審議官土生栄二さん、厚生労働省健康局長宇都宮啓さん、厚生労働省職業安定局長土屋喜久さん、厚生労働省政策統括官藤澤勝博さん、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長村瀬佳史さん、中小企業庁事業環境部長木村聡さん、国土交通省国土政策局長麦島健志さん、国土交通省道路局長池田豊人さん、海上保安庁長官岩並秀一さん、防衛省大臣官房審議官森田治男さん、防衛省統合幕僚監部総括官齋藤雅一さんの出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

野田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

野田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。今村雅弘さん。

今村委員 おはようございます。自由民主党の今村雅弘でございます。

 私は今、党の方では、災害対策特別委員長、そして、政務調査会では国土強靱化あるいは防災の担当をしております。

 また、このたびの補正予算、第二次補正予算は、約三兆円。そのうちの約三分の一強の一兆円強が国土強靱化に充てられるということであります。国民の皆様方の関心も大変強うございますので、まず、トップバッターとして、第一番にこの強靱化予算について質問をさせていただきます。

 さて、総理、本当に、お忙しい中、東北の被災地には幾たびも足を運ばれ、そしてまた、いろいろな災害が起きておりますが、そのたびごとに直ちに現地に駆けつけていただき、皆さんを励まし、そしてまたお見舞いをし、的確に、迅速にいろいろな措置をとるような指示もされてきたところでございます。本当に、総理の御尽力には、心から敬意を表し、また感謝申し上げる次第であります。

 そういった思い、あるいは体験を反映させて今回のこの第二次補正の中身になっているかと思います。本来なら、直ちにその思い、あるいは狙いをお聞きしたいところでありますが、その前に、ぜひ国民の皆様方の理解を得るためにも、今日までの経緯ということについて若干お話をさせていただきます。

 我が党は、東日本の大震災、あるいは、同じ年でありましたが、紀伊半島の大きな土砂崩れの災害等を受けて、国土強靱化をしっかりやろうということで、二階幹事長を先頭に、その強力なリーダーシップのもとで、もう百回以上会合を開き、そしてまた、その都度的確な対策を講じてきたところであります。

 そして、議員各位の御理解、御協力を得て、国土強靱化の基本法を制定することができた。そして、それを受けて、政府の方でも総理を本部長とする国土強靱化戦略本部を立ち上げて、さまざまな対策を練ってきたところであります。

 そして、この一年、本当にいろいろな災害が起きました。そういったことを受けて、とにかくもっと早く手を打たなきゃということで、昨年の九月に、総理から重要インフラの総点検ということを指示されたわけでありまして、それを受けて、昨年十二月には、実に百六十項目から成る三カ年の緊急対策ということを策定がされたわけであります。

 そして、この中身は、三年間で事業規模約七兆円。そして、この三十年の補正と三十一年度の予算で合わせて二兆四千億を従来からの国土強靱化の方に上積みする。そして、とにかく急いでやろうということで今回の補正になっているわけでございます。

 この総額もそうでございますが、もう一つは、今回のこの内容、お手元に配っておりますが、配付資料の一を見ていただくとわかりますが、あるいは二もそうでございますが、私がただいま言ったことをここで挙げておりまして、先ほど言いましたように、七兆円の規模、そして二兆四千億の上積みということで、中身でありますが、四十五の起きてはならない最悪の事態を避けるためにどうするか、そしてまた、それを更に集約して二十の重点化を図って今回の予算はできている。

 極めてこれは力強い対応でありまして、規模もさることながら、スピード感、そして特に、とかく強靱化というと従来は土木構築物を主体とした感じが強かったわけでありますが、それだけではだめだ、いろいろな意味で今社会インフラの構造が変わってきている、そしてソフト対策も大切だということで、こういった今回の内容になっているわけであります。

 この力強い予算、今、案として出ているわけでありますが、先ほど言いましたように、まさにこれは総理の熱い思いがこもっている、その思いと狙いというものを総理の口からぜひ御披瀝願いたいと思います。よろしくお願いします。

安倍内閣総理大臣 昨年は、大変災害の多い一年だったと言えると思います。集中豪雨、地震、そして激しい暴風雨、さらには異常な猛暑、異次元の災害が相次いだと言ってもいいと思います。

 災害への対応は、もはやこれまでの経験や備えだけでは通用せず、命にかかわる事態を想定外と片づけるわけにはいきません。

 このため、昨年末に、これまで培ってきた最新の知見を踏まえまして、中長期的な目標や方針を明らかにする国土強靱化基本計画の見直しを行うとともに、インフラ総点検の結果などを踏まえ、事業規模が七兆円程度の防災・減災、国土強靱化のための三カ年緊急対策を取りまとめ、必要となる経費を今年度補正予算及び来年度予算に計上いたしました。

 災害時にも重要なインフラがその機能を維持できるよう、ハードからソフトまであらゆる手を尽くして、三年間集中で着実かつ迅速に対策を実施し、災害に強い国づくり、安心できる国づくりを進めてまいります。

今村委員 ありがとうございました。

 今、総理の思いをぜひこれからしっかりと具体化していくということが大切だというふうに思っております。

 そういうことで、担当の閣僚の皆さん方に御質問を続けていきたいと思います。

 御存じのように、平成の時代、ことしでかわるわけでありますが、本当に激動の時代であったと思います。内外にわたって、そして政治経済にわたって、そしてまた、何よりも災害ということで、我が国は大変な目に遭ったわけであります。阪神・淡路、あるいは東日本大震災、あるいは熊本、そしてまた、さまざまな洪水や台風ということでありました。

 もともと、やはり我が国は、国土の成り立ちとか、あるいは東モンスーン気候に位置するというようなことから、災害は多い国であったわけでありますが、最近は、それに加えて、やはり三つの大きな変動が更にそういった災害を大きくしているというふうに思っております。

 三つの変動というのは何かというと、一つには、やはり地殻の変動でございます。地面ですね。それからもう一つは気候変動。そしてもう一つは社会構造の変動という、この三つではないかというふうに思っております。

 地殻の変動は、御案内のように、日本の周辺には四つのプレートがぶつかっているわけでありまして、その中で、大きな地震が起きたり、あるいは火山の噴火が起きるということでありまして、非常に、とみに最近、それが活発化しているような気がしております。

 そして、第二は気候変動、温暖化ということでありますが、やはり、これによって莫大な量の水蒸気が海面から上がってくる、そしてそれが日本に襲いかかってくるということでありまして、近年の大変な強い台風とか豪雨はまさにそのせいであるというふうに思っております。

 そして、第三の社会構造の変動ということでありますが、第一に、やはりこれは、非常に今、都市にいろいろな機能あるいは人口が集中する、そしてまた、片一方では地方が過疎化が進んでいる、あるいは高齢化が進んでいる。そういったことで、非常に、便利な反面、脆弱性を増しているということでありまして、この三つはそれぞれに関係もあります。

 そういったことを頭に置きながら、今後のいろいろな強靱化対策にしっかりと取り組んでいく、そしてまた、連携を深めながらやっていかなければいけないわけであります。

 今回の重点プログラム等々にはそういった要素をしっかり入れて、非常によくできているというふうに思っております。まさに、これまで我々が被害を受けたことをしっかり学習して、その効果に成果を上げてきているというふうに思っているわけでありますが、問題は、これをどういうふうに、先ほども言いましたが、具現化して、また、実行していくかということであります。

 これには、まさに防災担当あるいは強靱化担当大臣が司令塔として、そして、それぞれの実行官庁とよく連携をとりながらやっていくことも必要でありますし、中央と地方等の連携した取組も必要であります。

 こういったことについて、進め方について、ぜひ担当大臣の御所見を伺いたいと思います。

山本国務大臣 今村議員にお答えをいたします。

 昨年は、本当に全国各地で大変大きな災害がございました。私どもも、国民の安心、安全を守るために、全力を挙げて防災、減災に取り組んでいかなければならない、そのための国土強靱化をしっかりと対策を打っていかなければならないと決意を新たにしておるところでございます。

 今ほどお話がございました三つの変動ということでありますけれども、そういったことが恐らく大きな原因の一つになっておるんだろうというふうに思っておりますけれども、総理から三カ年緊急対策を対応していけという御下命がございまして、それに基づいて、国土強靱化基本計画に位置づけられた重点化すべきプログラム等二十のプログラムに当たるもので、特に緊急に実施をすべきハード、ソフト対策について、その実施内容、それから達成目標、事業費等を明示した実効性のある対策として取りまとめたところでございます。

 緊急対策は、自然災害が発生した際に国民の生命財産を守るとともに、国民の生活、経済に欠かせない重要インフラ、この機能を維持するために、国が、地方公共団体や民間の病院、それから空港のターミナル会社、通信事業者、鉄道会社等の多様な主体と連携しつつ実施することといたしております。

 緊急対策の着実な実施を図るために、関係府省庁連絡会議の開催を通じ、進捗状況の定期的なフォローアップ等を行いながら、三カ年で所定の達成目標、これを達成できるように尽力してまいりたい、このように思っておるところでございます。

今村委員 今お伺いしたことを、しっかりとこれを具現化していってもらいたいと思いますが、特に、私が最近感じますのは、従来の災害を見て、やはり自然の力には勝てないなということを痛感しております。一番の課題は、そういったことからいかに早く逃げるか、あるいは、その前にさまざまな我々ができることをやって、防災、減災のいろいろな仕組みをつくっていかなきゃいけないということであります。

 昔の人は、ある意味ではそういったこともよくわかっておられたようでありまして、例えば、私の地元でも、河川の管理をする一つの手法として野越しという、そういったこともあります。

 これはどういうことかというと、川の片一方の堤防をちょっと低くする。そして、その低くした方にはどちらかというと水田地帯が広がっている。低くしていないところは都市部が広がっている。ですから、ある程度大きな水量の水が流れたときには、もう堤防がもたないというときにはそちらの方に水を流して、そして最小限に食いとめるということであります。

 昔はそういった水田地帯が多かったわけでありますからそういうこともできたんでありましょうが、今これだけいろいろなところで都市化が進んでいると、なかなかそうもいかない。しかし、考え方としては、そういったことをしっかり頭に置きながら、これからのいろいろな土木構造物等々をつくるときにしっかりと取り組んでいただきたいなというふうにお願いしておきます。

 それからもう一つ、やはり早く逃げることであります。これについての対応、また後ほどもしっかり聞いてまいりますが、その関連で最近ちょっと、これもぜひ要望ということになりますが、地震の予知ですね、これは本当に難しいんだろうか、できないんだろうかということであります。

 昔から、怖いものといえば、地震、雷、火事、おやじと言っております。これはなぜ豪雨とか台風とか入っていないんだろうかと思いますが、まさに、地震、雷、火事、おやじというのは、瞬間的にやってくるものであるというふうに思っております。

 しかし、そういう意味で、じゃ、地震は本当に予知できないのかということでありますが、今、いろいろな人工衛星を使って地面のひずみをはかる、そういったこと。あるいは、このひずみによって変化する地磁気の変化とか、そういったいろいろなデータをつかむことができる。あるいは、これは昔から言われていることでありますが、やはり地震が起きるときには、生物が、生き物が反応するということもあるわけでございます。そういったことをぜひ、いろいろな意味でやはり軽んじないで、総合的に取り組んでいく体制が必要じゃないか。

 どうも、長期予測といいますか三十年内に来る、そういった予測は文部科学省で、あるいは、直前あるいは発災したときの対応は気象庁でということもあるようでありますし、あと火山も、これは先ほど言ったように大変地殻変動と関係があるわけでありますが、やはり火山学者は火山のことだけで、そういった地震だ何だとの関連で研究しているかというと、どうも、ちょっと疑問のところがあるわけであります。

 ですから、これは要望でありますが、そういったいろいろな知見をまとめて総合的に取り組んでいくということを、ぜひ、これは担当大臣になっているかと思いますが、もし決意のほどがありましたら、お考えを伺わせてください。

山本国務大臣 貴重な御提言、要望、ありがとうございます。

 地震は、御案内のとおり、大震法では予知できるという前提で法律の枠組みをつくっておりますけれども、残念ながらなかなか予知ができないというような状況の中で、今回の南海トラフについては、地震が起こった場合にそれがどういうふうに連動していくかということについての議論をまとめたところでございますけれども、今ほどのお話のとおり、総合的な対策を講じなければならない。

 実は、私のところで、今現在、各専門の方々に順次お集まりいただいて、例えば、火山の専門家、地震の専門家、そして、そういった方々のお話を聞きながら、防災の観点からどういうふうな総合的な対策、今ほどお話のあった対策をつくっていくべきかという、内閣府内の英知を結集する、そういう勉強会を始めておりまして、ぜひそれを早くにまとめて、今の御要望に十分お応えができるように努力をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

今村委員 ぜひ精力的な取組をお願いします。

 それから、このプラン、予算面もしっかりできていると思いますが、問題は、昨今のいろいろな人手不足とか等々で、これだけ三年間に集中するということになったときに、本当にこれに沿った対応が工事その他でできるのかどうか大変心配しております。

 ですから、いろいろなことを考えて知恵を出していただくと思いますが、ぜひ、斬新な工法、発想の転換をしてやってもらう。そして、百点満点じゃなくていいから、まず八十点とれる工法でてきぱきとやっていく。そういったこともぜひしてほしいと思いますが、その点いかがでしょうか。

山田政府参考人 お答えいたします。

 三カ年緊急対策は三年間で集中的に実施するものでありますので、着実に実施することが重要であると認識しております。

 一方で、御指摘のとおり、一部の職種や地方におきまして人手不足感が強くなっている状況などが懸念され、各省庁では、例えば、昨今の資材費及び労務費の動向を踏まえた一部の国庫補助金基準単価や積算基準の改定などの措置を講じているほか、適切な規模での発注などによる建設技術者等の効率的な活用などに努めている状況と聞いております。

 三カ年緊急対策の実施に当たっても支障を来すことのないよう、関係府省庁とも連携をとりながら万全を期していきたいというふうに考えているところでございます。

今村委員 ぜひスピード感を持ってやってください。やはり時間というのはある意味ではコストになるわけですから、それはぜひお願いしたいと思います。

 さて、先ほど言いましたが、今回の予算案、ハード、ソフト、極めてバランスのとれた中身になっているわけでありまして、土木構造物以外でも、電力とか通信、情報、あるいは上下水道、あるいは医療等々もありますが、そういったハード、ソフトの対策も講じられております。

 その中でいろいろ聞きたいことがありますが、電力、これは昔はそんなにウエートが高くなかったと思います。我々の小さいころには、台風が来たりして停電すると、おい、ろうそくを持ってこいということでありましたが、今はもうろうそくを持ってこいじゃないわけですし、まさに医療から何から、あるいは家庭の電化製品が多い中で、命にかかわる私は大変重要なインフラだというふうに思っております。

 これについても電力会社もいろいろなことをやっておりますが、無電柱化ですね、これはやはりもっともっとピッチを上げてやっていかなきゃいけないんじゃないか。

 外国の例を見ても、ロンドン、パリ、ニューヨークはほとんど一〇〇%近い。あるいはアジアの国でも相当進んでいるわけであります。

 しかし、日本は、全国でいうと一%であります。全体で三千五、六百万本あるわけでありますが、一%。東京二十三区でも、オリパラを控えておりますが、いまだに七%という状況なわけであります。昨年の関空を襲った台風でも、電力量がとまって大変なことが起きたわけでありますが、こういったものについてもっとやはり力を入れてほしいなと。

 まさにこの無電柱化というものは、昔は都市の景観あるいはバリアフリーという要素が強かったわけでありますが、今や最重要な私は社会インフラじゃないかというふうに思っておりまして、電力会社もそういったやはり社会的な責任を大きく負っているというふうに思っております。

 ぜひこの主体である電力会社でしっかり取り組んでいってほしいわけでありますが、何が進まない原因なのか。あるいは、今後、この関係する役所としてどういうことを指導していくつもりでいるのか。それをお伺いしたいと思います。

石井国務大臣 無電柱化は、良好な景観形成や安全、円滑な交通の確保に加えまして、防災の観点からも大変重要な政策であります。

 このため、国土交通省では、二〇二〇年度までの三年間に、緊急輸送道路を始めといたします千四百キロの無電柱化に着手をする無電柱化推進計画を策定したところであります。

 これに加えまして、昨年の台風による電柱の倒壊を踏まえまして、防災・減災、国土強靱化のための三カ年緊急対策といたしまして、緊急輸送道路のうち、風による倒壊の可能性の高い一千キロメートルの無電柱化に着手することとしております。

 無電柱化は幅広い関係者の協力が不可欠でございますので、道路管理者、電線管理者等から成ります地方ブロック無電柱化協議会等を活用いたしまして、計画の策定及び事業の実施が円滑に行われるよう努めております。

 また、コストがかかるのではないかという御指摘をいただいています。コストの縮減につきましては、基準を改正いたしまして、管路を浅く埋めます浅層埋設方式や小型ボックス活用方式の普及を図るとともに、ケーブルを地下に直接埋設をいたします直接埋設方式の導入に向けた実証実験を行うなどの取組を進めております。

 国土交通省といたしましては、地方公共団体や電線管理者と連携をいたしまして、無電柱化を積極的に推進してまいりたいと考えております。

世耕国務大臣 電力事業を所管する立場からお答えさせていただきます。

 特に電力の送電線を地中化することによって、地震や台風などの自然災害に対する強靱性が高まるというふうに考えています。

 阪神・淡路大震災のときの実例を見ても、やはり空中に架線される架空ケーブルと地中ケーブルを比較すると、地中ケーブルの方が被害を受ける率が半分ぐらいになるというようなデータも出ています。

 問題はコストでありまして、電線の敷設費用をキロメートル当たりで見ると、やはり地中に設置する方が、ざっと試算をすると、十倍ぐらい高いといった面もあるわけであります。

 そこで、経産省としても、この無電柱化、地中化の低コスト化に資する調査、実証などに事業者の取組を促してきたところであります。

 また、今後は、昨年策定された無電柱化推進計画、そして、防災・減災、国土強靱化のための三カ年緊急対策の実現に向けて、国交省など関係省庁や自治体、電力事業者の関係者で構成される各地方の協議会などにおきまして具体的検討が進められていくことになっているわけであります。

 経産省としても、電力会社に対して、計画に基づいた着実な無電柱化の実施を求めていきながら、国交省とも連携をして取組をしっかりと進めてまいりたいというふうに考えております。

今村委員 今、お話を伺いました。ぜひそうやって力強く進めていってもらいたいと思いますが、いまだに実は年間六万本から七万本の電柱が片一方ではつくられているということ、これもどうかと思いますが、ぜひ、先ほど来のことをしっかり受けて、全力で取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 さて、次に、先ほど、早く逃げた方がいいということを申しました。これには、やはり速やかに警報を出す、そしてすぐ逃げてもらうということが大切なわけであります。

 ただ、どうもやはりいま一つ、警報が出ても緊迫感がない、あるいは、逃げようと思っても、先ほど言った、地方で高齢化社会それから過疎化が進むと、逃げるに逃げられないというようなところもあるわけでございます。

 そういったところの警報の出し方、あるいは、ハザードマップの本当の意味での国民に対する認識を深めるということ、そして、先ほど言った、逃げる場合の組織としても、行政だけではもうこれは手が負えないわけでありますから、地元のいろいろな自治会とか老人会、あるいは身障者関係の団体とかそういったもの、そしてまた消防団、そういった組織を、常に共助組織ということの中で活動してもらうことが大事だというふうに思っております。

 そういったことについて、どういうふうに今進めていかれるのか、担当大臣、お話を聞かせてください。

山本国務大臣 二点の質問があったと思います。

 まず、避難情報についてでありますけれども、七月の西日本豪雨災害におきましても、行政が発信する情報がしっかりと住民の皆さんに届いたかどうかということ、それから、その情報が住民の皆さん方の避難に結びついたかどうかというようなことでの検証を我々も行ったところでございます。

 中央防災会議の下に、水害それから土砂災害、これの避難に関してのワーキンググループをつくりまして、そのワーキンググループで検討いただいた結果、一つは、住民がみずからの命はみずから守るとの意識を持って地域の災害リスクやとるべき避難行動等を把握すること、それからもう一つは、行政は住民が適切な避難行動をとることができるように避難に関する情報等をわかりやすく提供する、この提言が昨年の十二月に出されたところでございます。

 本提言を踏まえまして、災害時に住民が避難行動を容易にとれるように、さまざまな機関が発信する防災情報を、災害の切迫度に応じて五段階の警戒レベルに整理をいたしました。例えば、警戒レベル三で高齢者等が避難せよということ、それから、警戒レベル四では全員が避難など、わかりやすく提供することなどによりまして、住民の主体的な避難を支援していくという予定でございまして、今後とも、関係省庁と連携しつつ、住民が適時的確に避難できるように対応を進めてまいりたいと思います。

 それからもう一点、共助という観点から、地域の皆さん方やいろいろな方々としっかりと連携をとっていくべきではないか、そういう御質問でございました。

 災害の多い我が国においては、まず、行政による公助、これはもう当然でありますけれども、それに加えて、国民一人一人がみずから取り組む自助、そして、地域、企業、学校、ボランティアなど互いに助け合う共助を組み合わせることは大変重要でございます。

 このために、地域住民がふだんから地域のリスクを把握し、避難計画を立てる地区防災計画の取組が極めて有効でございます。

 先般の代表質問で安倍総理の方からお話ございましたけれども、例えば、昨年の西日本豪雨に際して、愛媛県の大洲の三善地区というところがございますけれども、こちらにおいては、地区防災計画を事前に策定して、それから、災害・避難カードをつくりまして、これによる避難訓練等をしっかりと実施していたことが役に立って、住民全員が無事に避難をすることができました。

 内閣府といたしましては、地域の防災リーダーを中心に市町村や住民等が地区防災計画や避難計画等の策定に取り組みやすくなるように、例えば、アドバイザーの派遣、それからシンポジウムの開催、このシンポジウム、ことしは大阪で地区防災計画フォーラム二〇一九ということで開催する予定にいたしておりますけれども、そのシンポジウムの開催や、あるいは優良事例のホームページでの公開など、地域防災力の向上に向けた取組を今後もしっかり支援してまいりたいと思っております。

今村委員 よろしくお願いします。

 それで、ちょっと時間がせってきましたので少し急ぎますが、まさにこの避難所の整備、これはふだんからやはり、備えよ常にということがありますが、しっかりこれをやっていただきたい。そして、それをやはりきちんとチェックする体制をしっかり構築しておいていただきたいと思います。

 それから、先ほど消防団と言いましたが、本当に消防団の皆さん、もう献身的に活動してもらって、ありがたいというふうに思っております。

 そういう中で、いろいろな装備等も強化してきているとは思いますが、まだまだだというふうに思っております。そういった消防団活動の充実ということで、担当大臣にぜひ決意を聞かせてもらいたいと思います。

 ついでにと言っちゃなんでございますが、この個人の装備、そういったものは交付税措置になっているということのようでございます。ですから、一人当たり、この間いろいろ聞きましたら、大体十万人の都市で一億円目安でやっているということであります。そうすると、日本全国一億二千万とすると、一千二百億円ぐらいたしか行っているはずでありますが、きちんと消防団のために行っているのかどうか、そのところを、これは交付税ですから、任せたよということで済まないで、ぜひ大臣にもその辺の指揮もとっていただきたいと思います。どうでしょうか。

石田国務大臣 今村委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 最近の大規模災害におきましても、消防団の皆さんには本当にさまざまな場面で御活躍をいただいておるわけであります。

 同時に、広域な大規模災害が発生した場合に、常備消防だけでは対応し切れない、そういう場面が出てくるわけでありまして、その際には、まず初期対応していただけるのは、地域に密着している人ということになります。そして、そのリーダー的な役割を果たしていただいているのが消防団ということを感じているわけであります。

 一方で、全国の消防団員数は年々減少傾向にあるというのも事実でございます。そうした中で、消防団を核として地域防災力の充実強化を図る必要がある、そういう観点から、平成二十五年の地域防災力充実強化法の制定がなされたところでございます。

 私も、昨年十月の総務大臣就任以来、昨年の七月豪雨、それから北海道胆振東部地震の被災地、さらには福島県を視察をさせていただきまして、応急復旧活動に携わった消防団員などの声を直接聞かせていただきました。地域の防災力を全国的に強化する必要があるということを改めて感じたところでございまして、こういう認識のもとで、平成三十年度の第二次補正予算案及びこの後御審議いただく平成三十一年度当初予算案では、対前年度比で二・六倍の消防団関係の予算額を確保をお願いしているところでございます。

 とりわけ消防団の装備を充実させ、災害対応能力、それの強化をしたいというふうな思いから、消防団の救助活動用の資機材等の整備、これを進めるための補助金を成立したところでございまして、今後とも、消防団の充実強化に向け、全力で取り組んでまいりたいと考えております。

 また、今御指摘のある点につきましても、総務省として普通交付税で措置をいたしておりまして、御指摘の点を踏まえまして、今後しっかり対応してまいりたいと思っております。

 以上でございます。

今村委員 よろしくお願いします。

 さて、ちょっと視点を変えまして、昨今の災害が大変広域にわたるということがございます。そういう中で、果たして今の体制、これは、中央で霞が関、そして現地、これは知事を中心とする対策本部になりますが、二段階方式、二階建て方式だというふうに思います。

 しかし、果たしてこれが、ある程度広域になったときに、それだけで対応できるのか。やはり現地でまとめて指揮をとる体制も必要ではないかということも考えられるわけでありますが、いや、そうすると余計、中二階のようなのができてやりにくいという話もあるようでございます。

 ただ、私は、この間思ったのは、いろいろな、そういったものもあるけれども、やはり広域でやる体制もつくる必要はあるんじゃないかなという感じがしております。特に、いろいろな機材等々の面ですね。

 実は、先日、昨年になりますか、佐賀県で防災ヘリを入れるという話がありました。佐賀県、そんなの要らないだろうと言ったら、いや、全国で防災ヘリがないのは沖縄と佐賀県だけだということで、それを聞いたときに、子供がおもちゃを欲しがるような感じがしたんですけれども。そのときに思ったのは、いろいろ調べてみると、防災ヘリは、各県に一機あるいは三機等々、消防庁等々も含めてあります。全部で七十五機です。しかし、大体、機材等も似たような機種でありまして、そういうのが各県に一つずつあっても、本当に災害が起きたときにこれで大丈夫なのかと。そしてまた、そういったヘリは、夜間は飛べない、天気が悪いときにも飛べない、そういったことになっております。

 ですから、もう少しこれを集約して、拠点基地をつくって、機材もいろいろな装備を兼ね、そしてまた重量物も運べる、そしてまた、乗組員、乗務員も日ごろからそのブロックの地域に、地形に習熟している、そういったことも大事じゃないかというふうに思っております。

 そういったことも含めて、この広域防災体制の指揮命令系統のあり方について、考え方を伺いたいと思います。

山本国務大臣 お答えをいたします。

 災害の発生が予想される際には、内閣府が中心になって、政府一体となった警戒態勢をとり、部隊派遣等の準備を行うとともに、地方自治体と緊密に連携をして、住民の事前避難を促す等、国民の命を守る対策に万全を期することになっております。

 広域的な大規模災害におきましては、被災地の市町村、都道府県のみでは対応に困難が生じるということでございまして、国の職員を直ちに現地に派遣いたしております。そして、被災地の状況やニーズを直接把握した上で、政府の対策本部等において、被災地への応援が各省庁により適切に行われるよう、必要な調整を行うことといたしております。

 平成三十年七月豪雨におきましても、発災前から、関係省庁災害警戒会議、これを開催いたしまして、政府として必要な体制を確保した上で、地方自治体や関係機関への注意喚起、避難にかかわる助言等を実施したところでございまして、発災後には、非常災害対策本部において、被害が甚大な岡山、広島、愛媛、各県のニーズを把握した上で、必要な部隊派遣等、各省庁による災害応急対策活動の調整に当たったところでございます。

 今後とも、必要な体制の検討と訓練、実践を重ね、不断の見直しを行うことにより、広域的な大規模災害時の災害応急対策に万全を期したいと思っておりますし、熊本地震のときから我々も対応いたし始めましたけれども、プッシュ型の支援ということで、国がもう市町村の要望を聞く以前に必要なことはしっかりやっていこうという、そういう体制も整ってきたように感じておるところでございます。

今村委員 わかりました。

 それで、広域対応でもう一つ大事な組織として、自衛隊があるわけであります。

 本当に、自衛隊の皆さん、昨年のこの岡山の被災のときにも、暑い中で大変な思いをして頑張っていただきました。これからも待遇改善等々を含めて、今度の補正でもたしか隊舎の改善等々含めて四千億ぐらい配慮してもらっているようであります。ぜひ進めていただきたい。

 それに関連して、先ほど機材の話をしましたが、例えば、ヘリにかわるものとしてオスプレイ、こういったものをもっと災害対応に活用できないか、あるいは、いわゆる「いずも」型の護衛艦ですね、そういったものもこれからはいろいろなサプライチェーンに対する対応、あるいは救急医療等々でも大きな力を発揮するわけでありますが、この辺の活用について、防衛大臣の見解をいただきます。

岩屋国務大臣 まず、自衛隊の活動について御理解と激励をいただきましたことにお礼を申し上げたいというふうに思います。

 今、今村先生御指摘のオスプレイですけれども、御承知のように、固定翼機のように速く飛べる、長い航続距離がある、また高高度を飛行することが可能でありまして、また回転翼機のように垂直に離発着ができるという特性がございますので、この高い能力を活用して災害対処や離島における急患輸送にも極めて有効に使えるというふうに考えております。

 「いずも」型の護衛艦はもともと多用途につくられておりまして、中には手術室もあれば歯科医療の機材も積んでおりますので、いざというときは医療船にもなるということでございます。

 そこに今度、短距離の離発着ができる航空機を積む機能を加えようということでございますが、オスプレイも含めて、災害時にはそういう装備をフル動員して被害を最小限に食いとめるということにしてまいりたいというふうに考えております。

今村委員 ほかにもサプライチェーンの話等々も聞きたかったわけでありますが、ぜひよろしくお願いします。

 最後に一言。

 今回これだけの取組をされるわけであります。ぜひこれを実効あらしめるものにして、そして、安倍総理のときにこれだけ日本国が強くしなやかになったという一つのレジェンドができるように、ぜひリーダーシップを発揮していただきますことを心から祈念申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

野田委員長 この際、宮下一郎さんから関連質疑の申出があります。今村さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。宮下一郎さん。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、まず統計調査問題に関連した質問をさせていただきたいと思います。

 今回の毎月勤労統計調査の誤りは、追加給付を生じさせ、そして予算の閣議決定のやり直しという事態を招いた点で大変重大な問題でありまして、特に厚生労働省には猛省を求めなければならないというふうに考えております。

 一方で、我が国経済の状況、特に賃金や所得の状況について、これをどう判断すべきかということについては冷静な議論が必要だと考えております。

 実体経済の変化を分析、理解をして、そして今後のさらなる発展に向けた政策を打ち出していくためには、特定の、一部の統計を見るだけではなくて、さまざまなデータを見ながら全体を俯瞰して的確な情勢判断を行うことが必要でございます。

 そこで、まず、政府として、我が国の雇用、賃金、所得の動向について、俯瞰的な視点から、どのような認識を持つべきか、茂木経済産業担当大臣にお伺いをしたいと思います。

茂木国務大臣 賃金の動向についての認識として、政府として、これまで賃上げについては、中小企業を含め、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが五年連続で実現しているとお答えをしてきております。

 さらに、アベノミクス、三本の矢でデフレからの脱却を目指す中で、名目GDP、これは五百五十兆円と過去最大になりまして、一人当たりの名目賃金、これが額面の給与に当たるものでありますが、この名目賃金についても、二〇一四年にプラスに転じて以降、四年連続で増加をいたしております。

 一方で、一人当たりの実質賃金については伸び悩んでいるとお話をしてきておりまして、この要因としては、一つには、景気回復に伴いまして雇用が増加、実際、この六年間で就業者数三百八十万人増加をしております。こういった雇用が増加する過程において、女性や高齢者など、比較的労働時間が短く、また賃金の低いパートで働く方がふえたこと。実際、女性の就業者、昨年一年だけでも八十七万人増加、そしてまた、六十五歳以上の方につきましても五十五万人増加している。これが一つであります。それからもう一点、デフレからの脱却に向けた我々の取組、さらに、原油、エネルギー価格の上昇、これによりまして物価が上昇した、こういった要因があったと説明をいたしております。

 なお、我が国全体の賃金所得を示します総雇用者所得については、雇用が増加する中で、名目、実質ともに、二〇一五年半ば以降、増加傾向が続いております。

 もし毎月勤労統計について、これとの関係で御質問がございましたら、改めてお答えさせていただきます。

宮下委員 茂木大臣から、非常にマクロ的に明確なお話があったと思います。特に、景気回復、拡大期においては、実質賃金はどうしても低くなりがちだ、そういうバイアスもかかっているということは大変よく理解できました。

 今回、この毎月勤労統計調査に関しまして、過去のデータ、特に平成二十九年以下のデータを計算し直した、補正をしたことによって、そのレベルが上がりました。したがって、平成三十年の賃金の前年比伸び率は逆に小さくなった、こういうこともございます。これに関して、賃金の上昇に関してさまざまな指摘が行われております。

 少し詳しく御紹介いたしますと、平成二十九年までは、毎月勤労調査というのは、原則、五百人以上の事業所は全数調査、四百九十九人以下、三十から四百九十九は抽出調査ということでやってきましたけれども、この抽出調査の部分は、三年に一度、調査対象を全部かえる、こういうことを平成二十九年までやってきたということです。

 ところが、その調査方法、全部三年ごとにかえてしまうと、その中に景気のいい会社がある、ないとか、そういうのでがくっと段差ができてしまう、こういう指摘もあって、これは数年来の議論を経て、平成三十年の調査からは、およそ半分の事業者だけを入れかえて、一部は残して、そんなに段差が大きくならないようにという配慮でやろう、こういう計算をしたわけです。そういうふうに半分だけかえて抽出をやって、そして全体を計算した、これが平成三十年度の本系列と言われる公表数値、これであります。

 これに対して、そういうことで入れかえをしない部分を残したわけなので、この入れかえをしなかったところだけを取り出して、二十九年、三十年、両方回答している事業所のデータだけ取り出して計算した、それが共通事業所系列と言われるデータでありまして、これは平成三十年から調査対象となる事業者が入れかわった際の影響を考慮するための参考値ということで公表をされております。

 野党の皆様から、平成三十年の賃金伸び率は、前年と同じ事業所のデータを抜き出して計算しているこの参考値こそ見るべきで、これを見ると、本系列よりも伸び率が低いじゃないか、この伸び率から便宜的にインフレ率を差っ引いて実質賃金をえいやっと計算してみたらマイナスになる、これこそが実態をあらわしているんじゃないか、こういう主張がなされております。これも、そういった面も、先ほど来、実質賃金がなかなか上がらないという構造もお話がありました。経済の一部を見ているにすぎませんで、この数字のみで経済全体を判断するのはやはり問題があるというふうに思います。

 もう少し言いますと、なぜなら、前年に存在しなかった、新たに生まれた元気のいい企業というのは、この共通事業所系列には入ってこないわけですね。それから、この残した一部の企業というのは、全体のサンプルの約半分以下でありますので、更に統計としては標本誤差も大きくなる、こういうことなので、これだけを見て全体がわかるというのは、いささか危険な議論、乱暴な議論なのではないかなというふうに思います。そもそも、非常に事業所数が多い中で抽出自体が一部を見ているということですから、更にその一部を見るという話になりますので、そこには十分配慮しなければいけないというふうに思います。

 そこで、こうしたことを踏まえまして、参考値を見ると、実質賃金は下がっている、これこそが実態だという野党の指摘に対して、どのような御認識をお持ちなのか、茂木大臣からお伺いをしたいと思います。

茂木国務大臣 まず、毎月勤労統計、なかなか専門的でおわかりにくい方もいらっしゃると思いますので、簡単にその算出の仕方、一人当たりの賃金の算出について申し上げますと、まず、この統計調査では、事業所ごとに月々の労働者数、それからもう一つは全従業員に支払われた給与の総額を調べております。その上で、この給与の総額を労働者数で割ることによって一人当たりの平均賃金を求めて、事業所規模別、産業別の適切なウエートづけをすることで、全体の一人当たりの平均賃金を算出しております。更にこれを物価で割り戻したのが実質賃金ということになるわけであります。

 ここで注意が必要なのは、支払われた給与額にしましても実質賃金でも、同一事業所ごとの一人当たりの平均賃金を計算しているわけでありまして、特定のAさん、同一労働者を時系列でとって、その人の給与がどうなっている、これを計算しているわけではありません。

 そうなると、例えば、ある事業所、B製作所で仕事がふえて、前の年よりもっと人手が必要になって、女性や高齢者などをパートの労働者として新たに雇用することになりますと、これは日本経済全体にとってはとてもいいことなんですけれども、統計上は、計算式の分母、つまり労働者の増加分ほど分子の給与総額はふえずに、一人当たりの平均賃金の伸びは抑制され、さらに、物価が上昇すれば実質賃金は更に低くなるというわけであります。ただし、これは、これまで勤めていたAさん本人の賃金が下がったということではありません。

 このように、毎月勤労統計の調査結果につきましても、再集計値、これも含めて、先ほど私が御説明をさせていただいたこれまでの政府の答弁と整合的であると考えておりまして、全く説明は変わりません。

 その上で、御指摘の共通事業所系列は、何か共通事業所系列というと、標準的な事業所、グループをずっと毎年調査をしている、こういう印象があるかもしれませんが、これは単純に二年連続で調査サンプルに入った事業所に限った調査結果の比較でありまして、これについては、昨年の九月、統計委員会におきまして、サンプル事業所の入れかえやウエート変更による断層、ギャップを回避できて賃金変化率を連続で捉えやすい、こういうメリットがあるとされた一方で、共通事業所系列、これは、今、ビジネス環境が非常に激しい中で、ことし新しく設立された事業所というのは前の年はないわけですから共通事業所には入ってこない、こういう、サンプルに偏りが出る可能性がある。また、連続調査した事業所ということで、何年もつなげることが統計的に難しかったり、また、御指摘のように、サンプル数が少なくなるため標本誤差が大きくなる、こういったデメリットがあるということも指摘をされておりまして、本系列、サンプル全体の集計値と共通事業所系列の双方をうまく組み合わせたりしながら見ていくことが適正である、そのように考えております。

 もちろん、長年にわたって、国民生活そして日本経済の実態を正確にあらわすべき基幹統計において不正、不適切な方法がとられてきたこと、このことは極めて遺憾でありまして、それを察知できずに来た責任、我々政治の責任もあると非常に反省をしなければならないと考えております。

 そして、事実関係を明らかにし、二度とこのような事態が起こらないようにしっかり再発防止策を立てていく必要がありますし、また、雇用保険であったりとか労災保険、これが給付が過少になっている方について速やかに追加の給付を行っていく、こういったことに全力で取り組んでいきたいと考えております。

宮下委員 茂木大臣との議論を通じまして、やはり、この雇用の水準の話を見ても、本系列と共通事業所系列、両方見ていかなければバランスいい判断はできないんだ、片っ方の一部だけ見て判断はできないということもよくわかりましたし、特に総所得、これが伸びている、こういったことも忘れてはいけないというふうに強く感じたところでございます。

 ここで、厚生労働省による統計調査の問題につきましては、この後、自民党厚生労働部会長でもあります小泉先生が議論される予定ですので、私は、次に統計制度全体のあり方について議論をさせていただきたいと思っております。

 今回の毎月勤労統計調査の問題発生を受けまして、官房長官の御指示によりまして、総務省が、きちっと決められた手順で調査が行われているかなどチェック項目を示した上で、各省に点検と調査の実施を求めました。この結果、五十六の基幹統計のうち二十三に誤りが見つかった、こういうことであります。それに加えて、今、総務省の統計委員会では、点検検証部会を設けて二百三十三種類の一般統計も総点検する、こういうことも伺っております。

 こういった事態を受けて、一月二十八日に発表されました日本経済新聞の世論調査では、政府統計を信頼できないとする回答が七九%、そして信頼できるはたった一四%、こういう結果でありまして、まさに政府統計のあり方が問われていると言っても過言ではない状態に至っております。まさに信頼回復が急務ということを強く感じます。

 統計については、なかなか日が当たらないからこんなことが起こったんだという報道もありましたが、実はこれまでも数次改革が行われてきましたし、議論も行われてきました。特に、昨年の統計法の改正では統計委員会の機能強化が図られましたし、また昨年からは、政策立案をデータや分析に基づいて行ういわゆるEBPMを担当する政策立案総括審議官、それから統計業務の総括を行う統計幹事、こうした方々が各省に配置された、これも大きな意義があることだったと思います。

 今回の毎月勤労統計調査の問題がわかったのも、昨年十二月に、この調査について、サンプル調査の仕方を、さっき言ったような一部だけをかえる、いわゆるローテーション方式に変える、これに関して議論をしている中で、統計委員会においてこれが明らかになった、こういうことですので、昨年の法改正そして体制整備がある意味機能したということも言えるのではないかなと思います。

 そこで、改めまして、統計委員会の機能強化を含む統計法改正の意義につきまして、石田総務大臣に伺いたいと思います。

石田国務大臣 宮下委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 昨年の統計法の改正は、我が国の経済社会構造が急速に変化する中で、限られた資源を有効に活用して国民により信頼される行政を展開するため、統計改革推進会議最終取りまとめ等に基づきまして、証拠に基づく政策立案、今御指摘のEBPMと統計の改革を車の両輪として一体的に推進するために行われたものでございます。

 改革事項のうち、統計委員会の機能強化は、各府省内の統計部門を束ねて統計委員会と調整、連携を行う統計幹事を設置したほか、総務大臣の諮問によることなく自律的、機動的に意見を述べることができるようにするとともに、公的統計基本計画についての勧告及びフォローアップを行うことができるようにするものであり、この部分は昨年の六月一日に既に施行されました。

 総務省といたしましては、このような改正統計法をしっかりと機能させまして、政府全体の統計整備を総合的かつ計画的に推進してまいりたいと思っております。

宮下委員 もう一つ指摘したいのは、今回、この事態発覚から短時間、約十数日で各省の基幹統計のチェックが行われまして、この二十三の不適切事案が把握できたということでありまして、逆に言えば、自己点検に意味があることが立証された、こういうことも言えるのではないかと思います。

 また、更に言えば、じゃ、なぜこうした自己点検が行われてこなかったのか。長年全くこういう点検はなかったんだな、このことにこそ問題があるのではないかなと思います。

 私は実は銀行員出身でございますが、最初に社会に出て支店で働き始めたときには、いかにミスをなくすか、そういう哲学を徹底的にたたき込まれたという思い出がございます。

 自分で伝票を書いたら、作成者は責任を持って判こを押しますし、それをきちっと、金額とか計算ですね、もう一人の人がチェックをして、精査印を押す。そして、誰がつくり、誰が精査しているのか、そのトータルを見て課長が判こを押す、それでようやく一枚の伝票ができ上がる。

 そういったことで、入り口をまずチェックをして、それから、一日の出入りは、支店全体で一円まできっちり合わせる、こういうことで日々チェックしていましたし、あわせて、定期的に本店検査とか日銀検査とか外部の検査を受けて、そして、現物がちゃんと帳簿と合っているかとか、ミスはないか、判このとり漏れはないか、いろいろチェックをしてやってきた、こういうことです。いわばダブルチェック、トリプルチェックをしてミスをなくしている、こういうことなんですね。

 そこで、国の統計部門にもこうした民間のノウハウ、哲学も取り入れて、今回の基幹統計の点検に準じた方法で定期的な点検を行うべきなのではないかと感じております。石田総務大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

石田国務大臣 宮下委員にお答えをさせていただきます。

 今般の毎月勤労統計の事案を受けまして、基幹統計について緊急に点検を行ったところでございまして、手続等に問題があるものがあったということは、まことに遺憾であります。

 これらにつきましては、各府省において、調査計画の変更手続の実施など、速やかに必要な対応がとられるわけであります。

 また、統計の信頼回復に向けまして、統計委員会に新たに点検検証部会が設置をされました。基幹統計や一般統計調査について、まずは再発防止、統計の品質向上を目指した徹底した検証を進めてまいりたいと思っております。

 その上で、委員の御提案につきましては、この検証結果も踏まえまして、今後の統計全体を考えていく中で検討させていただきたいと思っております。

宮下委員 統計改革につきましては、これまでもさまざまな場で議論をされてきました。

 この統計法改正につながった議論としては、平成二十九年に、自由民主党の新経済指標検討プロジェクトチーム、ここで提言が出されております。

 この中でも、現在の脆弱な統計作成部門の体制を強化し、時代に合った精度の高い統計の作成に資する分厚い人材層を政府部内に構築していくためには、まずは、長年続いてきた統計部門の人員、予算の削減に歯どめをかけ、必要な人員増を図ることにより十分なリソースを確保するとともに、中長期的な視点から人材育成に取り組んでいくことが必要である、このため、統計専門家のためのポストの整備、民間研究者やOBの活用も含めた人材の確保、統計専門家としての人事ローテーションや処遇、研究機関等との人事交流といった統計人材の確保、育成に関する指標を持って、全省的に取組を進めていくべきであると書かれております。

 さらに、今後、AI等によるビッグデータの解析能力を持った専門人材や、データ解析手法を政策立案や政策の選択肢の提示など政策形成に活用していく人材が必要であり、政府においても、専門知識を持った職員の採用、育成と民間の専門家の活用を組み合わせながら人材の育成を図っていくべきであると書かれております。

 また、昨年には、我が党のEBPM確立若手議員連盟、ここが各省の基幹統計についてヒアリングを行って、提言が出されております。

 やはりここでも、調査員の担い手不足、調査環境の悪化などが指摘されておりますし、今後、ICT技術、SNS、ビッグデータなどを活用したデータ収集の検討や、各府省の職員全てに基本的な統計リテラシーを根づかせるための研修の充実、また、統計業務のアウトソーシングの品質確保のためのルールの強化、徹底などが提言されております。

 また、去年の統計法改正によって、統計委員会は自律的に意見を述べる建議ができるようになりました。これを受けまして、統計委員会から、昨年七月二十日に、平成三十一年度における統計行政の重要課題の推進のための統計リソースの重点的な配分に関する建議、これが当時の野田聖子総務大臣に出されておるわけです。この中では、やはり人材確保、育成や外部人材の活用なども提言されています。

 これらの提言、いずれも大変傾聴に値するものだと思います。まさにこれからの統計改革の進め方に一つの指針を与えていると思いますけれども、共通しているのは、多くの提言におきまして、統計部門への十分な人材確保と中長期の人材育成、そしてICT、AI、ビッグデータ等の先端技術を活用した品質確保が大事だ、こう言っているわけですね。

 一方、お手元に配付した資料をちょっとごらんいただければと思うんですが、国の統計職員数の推移という、これを見ますと、農水省は二〇一一と一二に段差がありまして、これは構造要因ですが、各省、横に見ていただくと、大体ずっと低減傾向、足元二年ばかりはふえてきているんですけれども、総体的には減少してきたという歴史があります。

 一方、海外の状況を見ますと、政府の統計改革推進会議がまとめた海外の数字、アメリカは約一万四千人以上、フランスは二千五百人以上、カナダは約五千人ということで、人口比で見ても海外では格段に充実した体制になっておりまして、これに比べると、足元で若干ふえたといっても、この二〇一八年の千九百四十人という我が国の体制は、決して十分とは言えないのではないかという状態でございます。

 そこで、今回の問題を受けまして、政府全体として、人材確保、人材育成、先端技術を活用した機能強化、こうしたことに努めるべきではないかと思いますが、安倍総理から御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 公的統計は、国民にとって合理的な意思決定を行うための基盤であり、EBPM、すなわち証拠に基づく政策立案を支える基礎であります。その品質確保、向上を図るためには、統計に関する専門性を有する人材の確保、育成が重要であるとともに、ICTが進展する中で、AIの導入、ビッグデータの活用等による統計作成も有効であると認識をしています。

 統計委員会からは、昨年七月、こうした取組について、統計リソースを重点的に配分する必要がある旨、建議をいただいています。また、今日の統計をめぐる問題を受けて、統計委員会に点検検証部会を設置し、各府省が所管する統計について、調査対象、調査方法等が妥当かを含め、再発防止や統計の品質向上といった観点から、徹底した検証を行うこととしております。

 公的統計の信頼性を確保するため、これらの取組をしっかりと推し進めてまいりたいと考えております。

宮下委員 それでは、次の話題に移らせていただきます。

 ことし四月から、いよいよ新たな外国人受入れがスタートいたします。昨年の臨時国会の改正出入国管理法成立を受けまして、この在留資格の四月導入に向けまして、制度の詳細を定めた基本方針、また十四分野での分野別運用方針が決定されました。また、社会全体、共生社会実現のための総合的対応策も打ち出されたところでございます。まさに今、こうした決定を受けて、関係業界の皆様、また地方自治体、送り出し国において準備が進められているのが今の状況かと思います。

 昨年の臨時国会では、特に、一つの新しい制度の入り口となる技能実習制度において、送り出し国の悪質なブローカーが紹介料とか保証料とかいろいろな名目で多額の借金を実習生に負わせて、これが原因となって実習生がより高い賃金を求めて失踪してしまう、こうした例があることなどが大きな問題として取り上げられました。これに対しては、一昨年から新たな制度での取組が行われていると理解しておりますけれども、では、現在の状況がどうなっているのか、伺いたいと思います。

 あわせて、四月一日から始まる新たな外国人材の受入れ制度ではどのような取組を行うこととしているのか、山下法務大臣に伺いたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 宮下委員御指摘のとおり、有為な外国人材が我が国を訪れて生活、就労できるようにするためには、来日しようとする外国人から不当な保証金や違約金を徴収するなどの悪質な仲介事業者、ブローカー、この介在を防止するための措置を講ずることが必要でございます。

 これにつきましては、委員御指摘のように、入管法あるいは平成二十九年に施行されました技能実習法等関係省令などにおいて対応しておったところでございますが、昨年十二月の総合的対応策においてもこれは指摘されたところでございます。

 そして、御質問の技能実習の関係で、二国間取決め、これが非常に重要でございます。やはり、相手国から、送り出し国から、送り出し機関、不当なものがあれば、これは排除する必要がある。そういった意味の情報交換において、今、二国間取決めは、十一カ国が二国間取決めできるようになっております。

 そしてさらに、技能実習生の送り出し国として多い中国、インドネシア、タイについても、早期に二国間取決めを締結しようということをやっております。この三カ国が締結できれば、技能実習生の送り出し国としては一〇〇%ということになろうかと思います。

 また、新たな人材の受入れにつきまして、特定技能の受入れにつきましても、同様の二国間取決め、これを早期に締結するよう今進めておるところでございます。

 また、ブローカー排除のためには、受入れの段階において、技能実習計画の認定申請の際、あるいは、新たな外国人材の受入れであれば、入国する際に、入国前に在留資格認定証明書において不当なあっせん機関がないか把握した上で、もしあればそれは入国を認めないというふうな制度になっております。このことを、相手国あるいは外国人材にしっかりと周知させていただきたいと思っております。

 そして最後に、これは、例えば国内に入った後でも、不当に外国人に転職を繰り返させたり、不当なブローカー、こういったものが介在することがあり得ます。そうしたことにつきまして、国内ブローカー対策として、警察庁や厚生労働省の関係機関と連携して、不法就労等の取締りの強化であるとか悪質ブローカーの排除、そういったことをしっかりと進めていきたいと考えております。

宮下委員 また、昨年のもう一つ大きな議論は、新たな制度では技能実習制度と違って転職が可能ということなので、入国された外国人の方々が賃金の高い大都市に集中してしまうのではないか、東京一極集中で人手不足に苦しむ地方の状況は改善しないのではないか、こういう懸念があるということでありました。

 基本方針には、本制度の運用に当たっては、人材が不足している地域の状況に配慮し、特定技能の在留資格をもって本邦に在留する外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労することとならないようにするために必要な措置を講ずるよう努めるものとすると書かれておりますし、運用方針にもそれぞれ十四分野の対応方針が書かれていますが、いずれも抽象的といえば抽象的表現にとどまっております。

 そこで、より具体的に、どのような取組を考えておられるのか、山下法務大臣にお伺いをしたいと思います。

山下国務大臣 お答えいたします。

 まず、委員御指摘の、外国人材が大都市圏に集中するのではないか、特に転職可能な特定技能という新たな外国人材受入れについてということでございます。

 これにつきましては、都会に集中するのではないかということについて、まず、全体として、暮らしやすい地域社会づくり、これを政府を挙げて全国的に進めてまいりたいというようなことを、先ほど委員も御指摘の外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策ということで、しっかりやらせていただきたいというふうに考えております。

 その中において、例えば、外国人材が相談したいときにワンストップで相談できる、いろいろな情報が入るというワンストップセンターを、四十七都道府県、そして政令指定都市、あるいは外国人集住都市で、全国百カ所に十一言語対応の整備をさせていただくというふうなことを考えております。

 また、そういったことを通じて、例えば、今回、総合的対応策ということで、関連する施策は百二十以上、関連する予算は二百億円以上ということを今申請しておりますが、加えて、地方自治体で外国人の受入れに係る先導的な取組、そういったものに対して、地方創生推進交付金における支援ということも考えておるところでございます。

 外国人材において地方でどのような取組がされているのかということを十分承知していない場合がある。そうした場合において、例えば地方において地方定着を促進する優良事例の受入れ機関あるいは地方自治体への紹介ということ、あるいはそういったものを認識したいと。本日委員がお配りになりました飯田市やあるいは伊那市でのお取組、こういったものもしっかりと参照させていただいて、好事例に関しましては全国展開をさせていただきたいと思っております。また、こういったメリットを外国人に周知させていただきたいと思っております。

 そしてまた、先ほど委員御指摘の、新たな外国人材受入れにおきまして、基本方針あるいは分野別運用方針において、そういった取組、あるいは地域偏在を防止する方策について、しっかりと地域で御説明をしたいというふうに考えております。

 そういった意味で、今週から鳥取県を皮切りに、地方における説明会、こういった場で地方の悩み、そういった御意見をしっかり承って、また同時に、こういった伊那市や飯田市などの好事例なども勉強させていただいて、地方の不安を解消したい。

 そしてまたもう一つは、これは分野別運用方針においても記載されておりますが、各分野ごとに分野所管省庁の御指導で協議会というものを設けるようになっております。この協議会で全国的な分布を見ていただく。もちろん法務省も全国的なものを把握するんですが、この協議会において、全国的に過度な集中があるようであれば、この是正措置を協議会の中でとっていただくということを考えております。

宮下委員 今、法務大臣からも言及いただきましたが、もう一つ、皆様のお手元に新聞記事を二つお配りしてございます。これは私が正月に見つけた記事なんですが、出されたのは十一月と十二月なんですが、地元の取組で、ああ、これはなかなかすばらしい取組だなということであります。

 ここのセラミックの部品会社、エムケーセラという会社ですが、もともとベトナムにも合弁会社を持っているんですが、日本国内にはベトナム人の方は働いていらっしゃらなかった。それを新たに、向こうの工業系の大学を卒業した人を高度技能者として受け入れよう、こういうことであります。その仲介をとったのが伊那市のAICという会社であります。その両者の話を私も聞いてきました。一方、その外国人の受入れに対応して日本語教室、外国人の窓口対応なんかをやっている飯田市役所の対応なんかも聞いてきたということであります。

 それで、一つ、外国人受入れについてこの仲介をとったAICの小林社長さんからのアドバイスは、やはり外国人の方々を受け入れるのは、会社が受け入れる準備をする。この記事では、このエムケーセラというところが、社長さんが事前にベトナム人の人たちと面接して、その人たちのことも含めて社員の皆さんに、今度こういう人たちが来るよ、ベトナムではこういう暮らしをしているんだよ、ベトナムの主な言葉はこうだよといろいろきめ細かく、だから仲間として一緒にやっていこうねという研修会をやったんですね。それで、一月からはその二人も元気に働いているわけですけれども。

 こういった、会社もしっかり受け入れる準備をする、それから、住んでいる近所の方も何かあったら声をかけてあげるとか、そのコミュニケーションの中で、ああ、困っても助けてくれる地域だなと思ってくれる。また、支援機関の支援ももちろん必要ですけれども。

 こういった三位一体の支援がしっかりできている地域は、やはり外国人の方に、若い人に支援されるだろう、ちょっとぐらい給料が高くても、孤立しちゃうようなところには若い人は行きたくないんだ、そういうことで、やはり準備をしっかりやって、みんなで、仲間と一緒に働こうという環境を整えることが今大事ですよ、こういうアドバイスをいただきまして、なるほどなと思いました。

 まさに、これから四月に向けていろいろな方面で準備を進めていっていただきたいなと思います。

 また、このAIC社は、現地企業と合弁でベトナムに日本語の学校を開設して、そこでしっかり日本語を勉強してもらって、試験も合格してもらって日本に来てもらう、こういう体制を組んで、日本の風習とか暮らし方も含めて勉強をしてもらうということをやっているということであります。

 こういうことで、やはりその体制整備が必要だと思いますが、ちょっと時間がなくなってきたので、済みませんが、こういった海外での日本語の教育をどう強化していくのか河野外務大臣にお伺いしたいのと、あわせまして、日本の学校では、いろいろな経緯で、なかなか日本語がうまく話せない子供たちもふえております。そして、日本で働く人も、引き続き働きながらも日本語を学びたいというニーズも本当に大きいです。こうした地域の日本語教育、今、ボランティアベースだったり市の単独事業だったりすることが多いんですけれども、これをぜひ充実強化していってほしい、この点について柴山文部科学大臣から、それぞれ短くお答えいただければと思います。

河野国務大臣 外務省は、国際交流基金と連携をしまして、まず、アジアの九カ国において、日本語の能力をはかるテストを始めます。また、それに伴いまして、各国の日本語学校にさまざまな教材の支援、カリキュラムの支援、あるいは日本語を教える教師の育成、養成といったことの支援に取り組んでいきたいというふうに思っているところでございます。

柴山国務大臣 国内における日本語教育の充実についてお答えをいたします。

 生活に必要な日本語教育の充実に関しては、外国人に学習機会が行き渡ることを目指した全国各地の取組、具体的には、県や政令市の日本語教室、こういったものへの支援、あるいは日本語教室の空白地帯、こういったところには、立ち上げのためのアドバイザーの派遣、ICTを活用した学習教材の開発、あるいは日本語教師のスキルを証明する新たな資格の整備の準備、こういったことを進めております。

 また、外国人の児童生徒に対する教育の充実に関しては、日本語指導に必要な教員定数の義務標準法の規定に基づいた改善、十年間で十八人に一人は確保したいと思いますが、その着実な推進、日本語指導等に係るきめ細かな支援、例えば、母国語の支援ですとか、あるいは日本語指導教員の支援員、こういった方々の確保、外国人高校生等に対するキャリアの教育、こういったことを進めていきたいと思います。

 いずれにいたしましても、先ほど法務大臣から紹介のありました総合的対応策も含めて、宮下委員のおっしゃった三位一体の協力関係を築いていきたいと考えております。

宮下委員 時間がなくなりましたので、最後に、もう一問一答になってしまうかと思いますが、消費税引上げ時の対策について一言質問をさせていただきます。

 住宅対策、そして自動車対策など大き目の頭もありますけれども、多くの皆様に関係が深いのは、やはりキャッシュレスポイント制度じゃないか。

 ただ、これがわかりにくいぞという話もあって、クレジットカードもあるし、デビットカードもあるし、QRコード決済もあるし、プリペイドもあるし、まあ、不公平という話もあるんですが。ただ、私、クレジットカードを持っていないからという人には、これは……(発言する者あり)ちょっと済みません、時間がないので。プリペイドカードをつくって、それで、クレジットカードがなくても使えるものもありますし、スマホを持っていらっしゃれば、クレジットカードがなくてもQRコード決済ができるとか、いろいろな種類があるので、しっかりこれを広報いただきたいというふうに思います。

 その中で、ちょっと懸念は、この入金サイクルがあって、なかなかお金が入ってこないことがあるんじゃないか、それから決済手数料が大きいという場合もあるんじゃないか、そういうことで、懸念もあります。その点について、いろいろな御懸念についてはどのような配慮をされているのか世耕大臣からお伺いしたいのと、済みません、時間がないので、それから、この週末、土曜日に戸越銀座へ行かれてキャッシュレスの体験を総理みずからされたという話なので、その御感想も含めて、その推進に向けた言葉を一言いただきたい。

世耕国務大臣 決済サイクルが長くなるんじゃないかという懸念があるのは十分承知していますが、今、いろいろな事業者がキャッシュレスに参入していて、逆に、これから決済サイクルの短さというのも一つの競争要因になってくるんじゃないか。

 万が一、決済サイクルが延びたことによって経営が苦しくなるような事業者が出ないように、そういった場合は、日本政策金融公庫によるセーフティーネット貸付けなどによってしっかり支援をしてまいりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 時間がなくなりぎみなんですが、ちょっと二分ぐらいおかりして答弁させていただきたいんですが、今、日本を訪れる海外からの観光客、安倍政権ができる前、八百万人だったものが、昨年、約四倍、三千万人を超えましたね。このインバウンドの消費の合計は四兆五千億円になりました。つまり、地域に一大産業が登場したと言ってもいいんだろうと思います。

 同時に、海外では今、急速にキャッシュレス決済が普及をしておりまして、日本を訪れる外国人の七割が、キャッシュレス決済ができればもっとお金を使うと回答しておりまして、来年は、まさにオリンピック、パラリンピック、四千万人目標を立てておりますので、このインバウンド消費拡大というチャンスをつかむためには、全国各地の商店街を始め、中小・小規模事業者の皆さんにキャッシュレス決済の導入を進めていく必要が、これは非常に強いものがある、こう思っています。

 今御質問にあったように、土曜日に戸越銀座商店街に参りました。花屋さんと魚屋さんに行ったんですが、花屋さんではQRコードを初めて使いました。何か名前からいってこれは難しいんじゃないかと思ったんですが、そんなことはなくて、非常に簡単だったんですね。花屋さんの店主も、特段の設備は不要で、店頭にQRコードを一枚置くだけで簡単に導入できた、こう言っていました。

 今回、ほかにも、クレジットカードや電子マネーなど幅広い決済手法を対象としますが、決済端末が必要な場合にも、導入支援を行うことで負担はゼロになります。決済事業者の手数料が高いという指摘もありましたが、三・二五%以下とした上で、さらに、その一部を補助いたします。中小・小規模事業者の皆さんがキャッシュレスを導入しやすい環境を整えていくということであります。

 また、先ほど野党の方々から、カードを持っていない人が多いじゃないかという御批判があったんですが、例えば、土曜日には、コンビニでつくったばかりのプリペイドカードを使って魚屋さんでお刺身を買わせていただいたんですが、プリペイドカードを初めてつくったんですが、コンビニの店頭ですぐにつくることができます。入金も店頭でできますし、ATMでも入金できて、大変便利でありました。

 キャッシュレスという言葉を聞いて、大変だという印象を持っている方も多いと思いますが、また、実際、クレジットカードを持っていないという方もおられると思いますが、今回は、プリペイドカードなども含めて、消費者の皆さんに幅広い選択肢を用意する考えであります。

 また、どこで何ポイント還元してもらえるのかわからないという方もいらっしゃるのでありますが、消費者の皆さんが一目でわかるように、ポイント還元の対象となる店舗には還元率を明記したポスター等を張る予定でありまして、幅広い消費者の皆さんがポイント還元のメリットを受けられるように取り組んでまいりたい、こう思っています。

 また、レジを締めるレジ締めに必要な手間の削減による生産性の向上も期待できる、このように考えています。

宮下委員 終わります。ありがとうございました。

野田委員長 この際、小泉進次郎さんから関連質疑の申出があります。今村さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。小泉進次郎さん。

小泉(進)委員 おはようございます。小泉進次郎です。

 きょうは四十五分間、基本的質疑のお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 実は、予算委員会の質問に立つのは六年ぶりでありまして、六年前の二月以来、つまり、二〇一三年の二月ですから、自民党が政権復帰して間もない、そういったころでした。

 そのとき質問したのは、一つは復興、そして二つ目が社会保障、そして三つ目にTPP、この質問をしました。

 当時の状況は、その質問の翌週が安倍総理とオバマ大統領の日米首脳会談で、まさに、この国会の状況、自民党の状況というのはTPP一色で、賛否分かれ、私も、党内で少数派の、交渉参加、即すべきだ、そういった立場で、総理に交渉参加を決断すべきじゃないかということを訴えたことを覚えています。

 その後何があったかはもう周知のとおりでありますが、私は今、自由貿易圏の拡大というのは、この安倍政権の一つの大きなレガシーだと思っています。

 去年の年末にTPPがついに、アメリカは抜けた形になりましたが、発効して、そして日・EUのEPAはことしになって発効して、最近のニュースでも、ワインとかチーズとか、そういったものが値下げをされているようなニュースもふえてきました。

 一方で、この安倍政権のレガシーということに関しては、日ロだとか憲法改正とか、いろいろな言葉が出てきます。しかし、私は、この人口減少の中で、これから世界と自由貿易圏を拡大してつながっていくというこの意義が物すごく大きいのではないかなと思いますので、六年前の質問がTPPでしたから、まず最初、安倍総理から、日・EU、TPPを始め、この意義というのを一言総理からお話しいただければと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま御質問を伺っていて、六年前にまさに小泉議員から、総理が決断すればできるんだからという非常に力強い、半分おどかしとも言える質問をいただいたところでございますが、昨年十二月末にTPP11が発効し、今月一日にはEUとのEPAも発効しました。

 TPP11は、人口五億人、GDP千二百兆円、そして日・EU・EPAは、人口六億人、GDP二千四百兆円を占める巨大な自由貿易圏が誕生したわけであります。日本の人口が減少している中にあって、新たな市場を私たちは手に入れたと言ってもいいんだろうと思います。日本の次の時代の成長のエンジンをつくり上げることができました。

 この六年間で、国際情勢も大きく変化をして、保護主義の台頭があるわけでございますが、日本はまさに自由貿易によって戦後の成長があったと言ってもいいんだろうと思います。であるからこそ、今まさに、自由貿易の旗手として、自由で公正な経済圏を広げていくという、日本にはそういう使命がある、こう思っています。

 知的財産や環境、労働規制、国有企業の競争条件の規律、電子商取引など、幅広い分野にわたって二十一世紀型の新しい経済秩序のモデルともなるものができたんだろう、こう思っています。

 WTO誕生から四半世紀、世界経済は国境がなくなり相互依存を高めておりますが、新興国は目覚ましい経済発展を遂げておりまして、経済のデジタル化が一気に進んでおります。その中で、G20、今度日本で初めて開催するわけでございますが、自由貿易の旗手として、しっかりとしたルールづくりに向けて、日本はその役割を果たしていきたい、このように思っております。

小泉(進)委員 総理の決断、これは多分、後世に振り返ったときに、あのときに決断しておいてよかった、そう思われると思います。

 トランプ大統領が出てきて、もともと全ての国が自国優先主義なのは当たり前ですが、その傾向が更に強くなってきて、それが今到来している中で、あのとき決断していなかったらと、そういったことはすごく、今後ますますその重要性は高まってくると思います。

 きょう同じことを触れるんですが、あのときやっておいてよかったなと思われるためにも、これから私が触れる厚労省の問題、毎月勤労統計、そして賃金構造基本調査、こういったことも含めて、あの問題があったから統計改革ができた、そして、あの問題があったから厚労省の改革が進んだ、そういったことにしなければいけないと思います。

 そして、もう一つは、平成が終わろうとしている今、本当にこのままの国会を続けていいのかという、あのとき国会改革をやっておいたから、その後、自民党が与党にいようと今の野党の方が与党になろうと、あのときやっておいてよかったということをやらなければいけないと思いますが、この基本的質疑は、目の前の、テレビを見ている方もこの景色を見ているように、全ての大臣が出席をしなければいけないことになっています。

 一方で、一問も質問を受けない大臣もいっぱいいます。朝の九時から夕方の五時まで、お昼の休憩を挟めば一日七時間、そして、あしたも一問も質問の要求がない大臣もいます。

 そういったことを見たときに、きょう、これから官房長官は記者会見がありますので少し抜けられると思います。官房長官の記者会見は大事です。だから、国民の皆さんに、今の政権で起きていることは何なのか話さなきゃいけない。記者会見で抜けられるのであれば、なぜ、質問通告が一問もない大臣も、ほかの大事な仕事を抜けてやることができないんでしょうか。

 これは、調べたら、平成十一年の国会改革のときに、与野党の国対委員長の申合せによって、全員出席が決まっています。そして、翌平成十二年から、質問がなくとも全ての大臣がこの部屋に七時間座っていなければいけないことになりましたが、テレビを見ている国民の皆さんは、本当に大臣に、質問に答えることがないのに七時間この部屋に座っていることを国民の皆さんが望んでいるでしょうか。私は望んでいないと思います。

 だからこそ、与野党でともに決めたのがこのルールであれば、もう一度与野党で、二十年たったんですから、平成が終わる前にこのルールも考え直すべきではないでしょうか。

 官房長官、記者会見があると思いますから、どうぞ。このタイミングで抜けていただいて構いません。

野田委員長 内閣官房長官菅義偉さん。(小泉(進)委員「いや、抜けていただいて結構です」と呼ぶ)失礼いたしました。

小泉(進)委員 もしも官房長官が一言あるんだったら、ぜひ、記者会見の前にお願いします。

菅国務大臣 今の点については、与野党の皆さんともそう思っていらっしゃるだろうというふうに思っています。あとはそれぞれ議会の中で判断をしていただければと思います。

小泉(進)委員 この国会改革については、河野大臣が、これは、一議員としても長年、与野党の期間を通じて取り組んでこられました。そして、私は、とうとう本会議場で外務大臣が国会改革に触れてくれることが来たんだと大変心強く思ったのが、この前の本会議場での大臣の演説でした。

 河野大臣からも、外務大臣に就任されてから、お答えできる範囲で構いませんので、この件について何かございますでしょうか。

河野国務大臣 国会改革ということでいえば、幾つか与野党の皆様にお礼を申し上げなければならないことがございます。

 一つは、二〇〇二年に臓器移植のドナーになりました。その後、中山太郎先生の御指導のもと、臓器移植法の改正案を熱心に取り組ませていただきましたが、与野党の皆様の話合いで、党議拘束を外していただいて採決を行って、この改正案が成立するということがございました。

 また、私が国家公安委員長だったときに、木曜日の午前中に国家公安委員会が開催をされるわけですが、国会の都合で出られないということが何度かあったときに、公安委員の皆様から、国家公安委員長はこの会議を主宰し代表するのに、なぜ、官房長官は記者会見で抜けるのに、公安委員長は抜けられないんだという大変厳しい問題提起をいただきまして、その後、与野党で、木曜日の午前中は公安委員長をなるべく国会に呼ばないという仕切りをしていただいて、公安委員会を主宰することができるようになったということがこれまでもございましたので、改めてお礼を申し上げたいと思います。

 私が昔、アメリカの議会でインターンをしていたときに、アメリカの本会議場へ行くと、そのときに発言をする数人しかいない、あとは誰も議員がいないというのを目の当たりにして驚いたことがございます。イギリスの本会議場なんかは、そもそも全員が来ると座れるだけのシートが用意されていない、そういう中でございます。

 また、いろいろな国の本会議場へ最近行きますと、ITCが非常に活用されていて、電子投票はもとより、IT機器を持ち込んで、それが活用されているというのが多くの国の現場でございます。

 最近は、IPUですとか気候変動に関する議員の会議とか、国会議員がマルチの場、バイの場で、いろいろなところへ出ていくこともふえておりますし、イギリスのように、そういう場合は与野党の議員がペアリングして、採決に影響が出ないということも、かつてから伝統的に行われております。

 外務大臣あるいはそのほかの閣僚も国際会議が随分ふえてまいりましたし、外交演説で申し上げましたように、霞が関の働き方改革をやらなければ、霞が関に有能な人材を集められなくなるというおそれも抱いておりますので、この問題はぜひ、国会でお決めになることでございますので、与野党で将来を見据えた御議論をしていただけたらというふうに思っております。

 問題提起、まことにありがとうございます。

小泉(進)委員 画期的なやりとりだと思います。ここまで国会改革のやりとりがこの予算委員会で展開されることはなかったと思います。

 今大臣がおっしゃったとおり、官房長官の記者会見だけではなくて、国家公安委員長の会議のときも抜けるということが与野党の共通の理解のもとにできたわけです。これから一つ一つそういったことを前に進めていくべきだと思いますし、総理に、TPP、日・EUのことを含めて、外交のことも触れましたが、やはり、これから外交がダイナミックに動いていく時代に、安倍総理ほど、世界の先進国で、国会の中で時間を使っている首脳はいません。トランプ大統領は、これは大統領制ですけれども、年に一回だけです。そして、同じ議院内閣制のイギリスは、日本の首相の出席日数の三分の一です。

 ぜひ、きょうテレビを見ている全ての国民の皆さんには、皆さんが望んでいる大臣の働き方というのは、質問がなくても七時間ずっとこの部屋に座っていることが、本当に国民の皆さんが求める議員や大臣の働き方なのかということを少し考えていただきながら、この質問を最後まで聞いていただければ幸いですし、野党の皆さんのことを含めて、いつか野党の皆さんも与党になるときが来るわけですから、そのときに、あのときやっておいてよかった、そういうふうに言われるような結果を、一緒になって知恵を絞っていけたらな、そういうふうに思います。

 それでは、今から、私も自民党の厚労部会長ですから、最近話題になっている厚労省の問題について触れたいと思います。

 私が特にこの問題について、今すぐ取り組まなければいけないし、今すぐ答えを出さなければいけないと思っていることは、実害が発生している約二千万人の方に、いつ追加給付が、どのようにできるかということを明らかにすることだと思います。

 厚労部会ではずっと、この追加給付ということを工程表を示して、今コールセンターにかけても余りわかりませんから、それをしっかりと、早くめどがつくようにお示しすべきだということで、工程表の提示を求めてまいりました。

 根本大臣にお伺いをします。

 この工程表、役所の中で協議をしたと思いますが、これはめどが見えたでしょうか。

根本国務大臣 今回の事案に関し、雇用保険や労災保険などの給付に不足が生じ、そして国民の皆様に御迷惑をおかけしていること、まことに申しわけなく思っております。一日も早く追加給付が行われるよう作業を進めております。

 本日、今委員の御指摘がありました、給付の種類ごとに現時点でのスケジュールの見通しを示す工程表を公表いたします。そして、この内容は厚生労働省ホームページでも御案内いたします。

小泉(進)委員 今、大臣からはっきり答弁がありました。工程表を公表するということで、この内容は厚生労働省のホームページでも御案内をするということであります。

 それでは、一つ一つ、その工程表という中身を確認して、テレビを見ている約二千万人の対象の方々に少しでも安心をしていただきたいと思っています。

 まず、今、雇用保険、そして労災、船員保険、こういった保険の給付を受けている方々、この方々については、来月、三月から六月の間に順次追加給付を開始することが既に公表されていますが、そのとおりでよろしいですか。

根本国務大臣 委員御指摘のとおりであります。

小泉(進)委員 そして次に、今受給している方が過去に受け取るはずだった額、これを追加給付をする、このスケジュールはどうなっていますか。

根本国務大臣 現在給付を受けている方に対する過去分の追加給付、これは、給付の種類に応じて、三月から十月ごろにかけて順次お知らせを開始することを考えています。お知らせがお手元に届いた後、順次お支払いをしていきます。

小泉(進)委員 今御答弁があったとおり、現在給付を受けている方々というのは約百万人いらっしゃいます。この百万人の方々に対して、今受けている方に対しては特定ができていますので、すぐにお支払いの方向に入ることができます。

 そして、過去の部分について、今答弁があったとおり、三月から十月に順次お知らせを開始してお支払いをする、これは振り込みということでよろしいんですね。

根本国務大臣 現在受給中の方に対する追加給付については、原則として新たな手続をとっていく必要はありません。要は、もうこちらにデータがありますので、振り込みでやっていただいて結構であります。

小泉(進)委員 今御答弁があったとおりです。今コールセンターにもかけている方は多いと思いますが、現在受給している方については特定ができていますので、原則振り込みで対応できますので、そこは御安心をいただきたいと思います。

 そして、今は給付を受けていないけれども、過去に給付を受けていた方が約千九百万人いらっしゃいます。その方々に対して、現在は生存されている方と亡くなっている方というのがいらっしゃいます。

 まずは、生存している方についてお尋ねします。

 この生存している方の中でも、住所を把握できている方だけでなくて、住所を把握できていない方もおられるということですが、それぞれの対応方法を大臣から御説明をお願いします。

根本国務大臣 お知らせを追加給付の対象となる方に確実にお送りするためには、現住所の把握が不可欠です。

 現在、当方で保有している住所データをもとに現住所を特定できた方については、給付の種類に応じて、四月から十一月ごろにかけて順次お知らせを開始することを考えています。お知らせに同封する用紙に振り込み先口座等を御記入の上、返信用封筒を使うなどにより返送いただければ、お支払いをさせていただきます。

 一方で、当方に住所データがなく、他のデータでも住所情報を補完できない方については、住民基本台帳の住所情報を活用し、追加給付の可能性がある方とその住所を把握した上で、四月から十一月ごろにかけて順次お知らせを開始することを考えています。お知らせが届き、お心当たりがある場合には、振り込み先口座に加え、仕事をやめた時点のお勤め先などの情報を御記入の上、返信用封筒を使うなどにより返送をいただきます。御本人の確認がとれ次第、順次お支払いをさせていただきます。

小泉(進)委員 今、大臣が御答弁されたことを少し整理すると、今、住所が厚労省の方で保有していて特定ができている方については、これは雇用保険、労災、船員保険とそれぞれ別にありますけれども、四月から十一月にかけて順次お知らせが届くようになっています。そして、お知らせに同封している紙に振り込み先の口座等を御記入していただいて、返信用の封筒を使うなどしていただければ、これも振り込んで対応することができるというのが、今、住所の特定ができている方に対しての対応です。

 そして、住所のデータがない方については、追加給付の可能性がある方とその住所を把握した上で、これも四月から十一月にかけて順次お知らせを開始して、お心当たりがある方に対しては、振り込み先の口座に加えて、仕事をやめた時点のお勤め先、この情報を御記入をしていただいて、返信用の封筒に、出していただいて、御本人だということの確認がとれ次第、こちらも振り込みができるということであります。

 次に、既にお亡くなりになられた方々については、これらの方々についてどのように対応するんでしょうか。

根本国務大臣 親族の方が未支給の給付をこれまで受けられていた場合には、該当する親族の方の情報に基づいて住民基本台帳の住所情報を把握した上で、給付の種類に応じ、四月から十一月ごろにかけて順次お知らせを開始し、その後お支払いを行うことを考えています。

 他方、今回初めて追加給付を受ける権利を得ることとなった親族などについては、当方に情報がありませんので、こうした方々への周知方法などについて、過去の対応事例や有識者の意見も伺いながら、特にプライバシーへの配慮を十分に考慮した上で、どのように対応するか検討してまいります。

小泉(進)委員 最後に、全体を少し、今答弁されたことを確認させてください。

 現在の受給者について、新たな支給分は三月から、そして過去の追加支給分は最も早い方で四月から順次支給をされて、受給者の方の作業は原則として不要、つまり原則振り込み、こういったことでよろしいですね。

根本国務大臣 そのとおりです。

小泉(進)委員 そして、過去の受給者の方については、受給者が生存されている場合には、過去の追加支給分は、住所が特定できていれば、厚労省側からの御案内に対して、口座など給付に必要な情報を記載の上、返送していただいて、給付の種類ごとに、四月から十二月、これも順次お支払いを開始するということでよろしいですね。

根本国務大臣 その方針で準備を進めています。

小泉(進)委員 そして、住所が特定できていない場合には、先ほど確認したとおりでありますが、本人確認がとれ次第、その後、給付種類ごとに、これも四月から十二月で順次お支払いをする、これも振り込みで最終的には原則対応できる、そういった整理でよろしいですか。

根本国務大臣 その方針で準備をしています。

小泉(進)委員 このように、給付の追加については、ある程度のスケジュール感と、そして、これは厚労省側のミスで発生したことですから、特定できて、その支給に対しては原則振り込みで対応するということが明確になったと思います。

 ぜひ、その方針で進めていく準備をしているという御答弁ですから、この追加支給、待っている方が大変多くいますので、きょうの明らかになったことをしっかり形にして進めていただきたいと思います。

 この追加給付については大分見えてきました。しかし、まだ見えていないなと思うことは、なぜこの問題が発生したのかというこの問題の根っこの部分と、そして、やはり、きょうの新聞でもまた次々にいろいろ出ますが、厚労省、本当に大丈夫かという、厚労省の未来については、私はまだ全然見えていないと思います。

 そして、この問題は、少し整理をすると、私は問題は三つあると思います。一つが、原因の究明。そして二つ目が、今言った追加の給付、この早期の実施です。そして三つ目が、再発防止と信頼回復。

 この三つに分けられますが、この一の原因究明については、今も再調査が続けられていますが、やはり第三者性、客観性、そういったことについては大きく疑われてしまったのも無理がないと思いますし、やはりこの点については、大臣、少し、厚労省の中でやる調査にもかかわらず、第三者性ということを強調し過ぎた点は率直に反省をした上で、いかに理解が得られるかということを考えられた方がよろしいんじゃないでしょうか。

根本国務大臣 現在の特別監察委員会については、より中立性、客観性を高めるために、有識者の方でやっていただこうという思いでつくりました。そこを、委員御指摘のように、第三者性を強調し過ぎたのではないかということについては、私も反省をしております。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。御静粛にお願いします。

小泉(進)委員 大臣にも反省すべきところはしっかりあるということを踏まえた上で、このように野党から、これは与野党ありませんから、しっかりと、なぜこんなことが起こったかというのは、究明する最善の努力をしてください。

 この問題を、やはり私は、さっき総理にも言いましたが、あの問題があったから統計改革もできるようになったし、厚労省改革も進んだということにつなげていくことが必要だと思っています。そして、この統計改革については、先ほど宮下委員からもお話がありましたし、私自身も反省があるのは、この問題が起きるまで、こんなに統計のことを考えたことはありませんでした。そして、これは多くの方もそうではないかなと思います。

 ですので、この統計ということの重要性を鑑みて、自民党では既に二年前に、プロジェクトチームでも統計改革の提言をしています。そして、今、行革推進本部についても、これから統計改革はどのようにあるべきか。私はこの問題、モチベーションの問題とか、またキャリアの問題とか、そして、なかなか人材の問題とか、いろいろあると言われていますが、かといって安易に単純に人を増強することではなくて、しっかりとデジタル化を進めて、やはり世界に冠たる統計の基盤をつくっていくことも大事だと思いますが、いずれにしても、これはしっかりと、時間がかかることだと思います。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。

小泉(進)委員 ですので、私からは、厚労省の今回の問題で明るみになった対応の問題というのは、少し見ていきたいと思っています。

 特に、私が問題意識を持っているのは、この毎月勤労統計の問題の経緯の中で、十二月二十日というポイントです。この十二月二十日、この日は大臣に初めて毎月勤労統計で問題があったということが上がってきている日であります。

 その前のことが何があったかというと、一週間前の十二月の十三日に、総務省から厚労省に対して問題があるということが伝えられ、そして、そこで厚労省は気づき、翌日の十二月十四日に、厚労省が出した三府県に対する抽出という通知が、これは翌日に撤回をされています。そして、そこで気づいていて、だから撤回しているにもかかわらず、その後、省内で、官房の幹部たちに対して担当の部局から毎月勤労統計でこのようなことがあったということが、私が知る限りは二回、官房の幹部、次官を含めて、説明が入っていると思います。その上で、二十日に大臣に一報が上がっているんです。

 それで、私がこの過程で非常に疑問に思っているのは、なぜ翌日の二十一日の毎月勤労統計の確報の公表があるという事実を、厚労省の官房の幹部の説明が、二回は入っているにもかかわらず、それが大臣に上がらないのか、私はそこが不思議でなりません。これは、大臣、どのように受けとめておられますか。

根本国務大臣 私への報告については、危機管理の鉄則として、早い初動、特によくない情報ほど早く上げよという観点からして、今回の事案は報告までに私は時間がかかり過ぎていると思うし、毎勤統計の次の日の確報値の公表についても上がっていなかった、私は大変遺憾であります。

小泉(進)委員 これは、きょう、事務方の方も座っていると思いますけれども、私、不思議なんです。二十日に大臣に一報が上がっている前に、そこまで幹部で、この問題が十三日に総務省から言われたということがあるのに、なぜ、二十日に大臣にお伝えしているのに、その場で翌日が確報の公表の日ですという基本的なことが大臣に上げられないんでしょうか。

藤澤政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまの十月分の確報値でございますけれども、今回の事案について具体的な経緯等が明らかではなかった状況の中で、毎月定例の業務として、思いが至らずに、事務的に公表したものでございます。

小泉(進)委員 藤澤さんもいますけれども、これは土生さんからも何かありますか。

土生政府参考人 御説明させていただきます。

 十月分確報値の公表の経緯につきましては、ただいま藤澤政策統括官から御説明をさせていただいたとおりでございます。

 私ども官房の幹部としましては、定例業務である毎月勤労統計の確報値の公表日程につきまして、そもそも認識をしていなかったということでございまして、その点につきまして大臣に速やかに御報告できなかったことは大変申しわけないことであると思っております。

小泉(進)委員 私、ここになぜこの問題を取り上げたかというと、厚労省の組織の危機管理能力の欠如なんです。

 私は、想像すると、この毎月勤労統計という事案が、大臣に報告が上がる、その日程が入ることの時点で普通のことではないと思います。これは定例的に入るレクチャーの案件ではありませんから。

 その時点で、私は、大臣を支える周りが、なぜこの問題が大臣に上がるのかという危機感を働かせなかったか。その危機管理の、これだけ何度も説明があったのに、二十一日、大臣の報告の翌日がその公表だということに思いが周りが至らなかったこと、これも私は責任があると思いますし、もちろんその場で確認をしなかった大臣の責任もやはりあると思います。

 その上で、もう一つの新たに出てきた問題が賃金構造基本統計調査。これは、厚労省の記者会見をした審議官自身が、本来であれば調査員が調査をすべきところを郵送でやっていたということは、隠蔽をしていたことは否定はできないということを記者会見でも言っています。

 大臣、毎月勤労統計ではない方の賃金構造基本統計の事案について、これは何について隠蔽の意図が否定できないんでしょうか。事務方でもいいですよ。

藤澤政府参考人 お答え申し上げます。

 賃金構造基本統計調査でございますけれども、調査員調査により実施するとされておりましたところを郵送調査により実施をしていたなど、統計法に基づく調査計画と異なる取扱いがなされていたところでございます。

 また、このことについて、一月二十四日に公表された総務省の一斉点検の際に報告されず、その後、一月二十八日になって公表に至ったという経緯がございます。

 一斉点検の際に報告をいたしませんでしたのは、担当室長は、調査計画と異なる実態を承知しながら、報告を行うことにより以前から予定していた調査計画の変更申請ができなくなることを危惧して、報告しないこととしたものでございます。

 また、上司であります担当政策統括官も、同様に実態を承知しておりましたけれども、これは、二十五日に至るまで総務省への報告に含まれていないことに気づかなかったという経緯でございます。

 今申し上げましたように、担当室長は一定の意図を持って報告しなかったことが明確であり、隠そうとした意図は否定できないものというふうに考えているところでございます。

小泉(進)委員 毎月勤労統計調査と、そして賃金構造基本統計、この二つの問題に対応している厚労省の今の姿からあらわになっているのは、毎月勤労統計調査については、もう危機管理上でアウトだと思います。そして、ガバナンスという面においてもそれは欠如していると思います。そして、この賃金構造基本統計については、組織の隠蔽体質のあらわれ。

 これを考えたときに、私はやはり不安を覚えるのは、今後、安倍総理の訴える全世代型の社会保障、国民生活に直結している、人生百年の人生設計を支えるための社会保障改革を進めていく主なプレーヤーが厚労省なわけで、その厚労省の信頼というのは非常に大きなところがあります。

 一つ確認させていただきたいんですが、今の時点で、厚労省が今回、統計の問題について犯した法律違反は、私が調べている限り、今のところで統計法違反は三つだと思っているんですけれども、これは三つで合っていますか。

根本国務大臣 承認された計画どおりにやっていなかった、そごがあった、それが三つです。

小泉(進)委員 私がお尋ねしているのは、これは今もう恐らく明らかになっていることだと思うんですが、毎月勤労統計の、毎勤の方では二つ、統計法違反の可能性が濃い。そして、この賃金構造基本統計調査、これについては、まさに本来、調査員がやらなきゃいけないことを郵送でやっていた、これが総務省に対して上げている報告と違う、だからこれも違反。そういったことで、合わせて三つだと思うんですけれども、そこはどうですか。

根本国務大臣 要は、総務省にこういう計画でやりますよと言って、それを承認されている、そのとおりにやっていない、そごがあった。その点において、統計法九条、十一条違反であります。

小泉(進)委員 これは、今後また検証が続いていくと明らかになることだと思うんです。

 私はこれで何が言いたいかというと、これは民間だったら許されないことですよ。法律違反が連発の組織、これがこのまま歩き続けるのかということに問題意識をすごく持っています。

 ただ、これは私も、大臣の責任はこの一連の中ではあると思いますが、野党の方が言うように、大臣をかえて済む問題かといったら、それは違うと思います。

 この毎月勤労統計調査の問題は、今の時点でわかっていることは二〇〇四年からです。この二〇〇四年から今まで約十五年間に、厚生労働大臣はいっぱいかわりました。調べてみたところ、十五年間で厚生労働大臣は十三人です。そして、十三人いて、自民党の大臣が八人、民主党の大臣が四人、公明党の大臣が一人。このように、大臣どころか政権がかわったって、不正は見抜けなかったんですよ。

 そのことを考えたら、この問題は、大臣をかえたらこの問題は起きないかというと、私は、そういう問題ではなくて、まさにこの問題であらわになったことは、やはり……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。静かにしてください。

小泉(進)委員 これだけ幅広い課題を、年金、医療、介護、子育て、障害者雇用、そして安倍政権の進める働き方改革、そして外国人労働者の問題。次々に大きな課題が降りかかる幅広い業務を、一人の大臣、一つの役所、そして国会は一つの委員会、これで本当に回るんだろうかとなったときに、私は、政権交代も経験した日本ですから、やはり、組織の問題ということは政治としてしっかりと受けとめて、この問題を契機に厚労省の改革がされたということにしなければいけないと思いますので、私は、大臣は、厚労省改革にしっかり旗を振っていただいて、あのときから厚労省が国民生活に責任を持っている組織として信頼されたと思うように、厚労省改革を取り組んでいただきたいと思うんですが、根本大臣、いかがですか。

根本国務大臣 私も、厚生労働省改革が必要だと思っています。

 まず、今回の一連の事案について、高い専門性と信頼性を有すべき統計分野によって長年にわたって誤った処理が続けられ、それが見抜けなかった責任、そして、今般の事案が発覚してから、厚生労働省の対応に大きな不手際があって、統計への信頼、厚生労働行政への信頼を損なうことになってしまっていることについて、私は、率直に国民の皆様におわびを申し上げます。

 政治家は常に、私は、国民の皆様に寄り添って国を動かしていく、これが責務だと思います。特に東日本大震災のときには、被災者のつらい思い、不安、痛みを私は肌で感じてきました。そして、復興大臣として、被災者の心に寄り添って、現場主義に立って、全身全霊を傾けました。そのときに感じたのは、私は、政治家が先頭に立って、政治家と官僚がお互いに信頼し合って、力を合わせて難局に対処することだと思います。

 今回の一連の問題の対応に当たって、私は今、復興大臣のときと同じ思いでいます。統計への信頼あるいは給付の問題、厚生労働省に対して国民の皆様の不信感が高まっている、危機管理能力も欠如している、そのとおりだと思います。しっかりと受けとめて、役割を果たしていかなければいけないと思います。

 私は、厚生労働大臣として、職員に対しては、行政のプロとしての誇りを胸に、持てる力を存分に発揮してほしい、そして、常に国民の皆様の目線を忘れてはならないと申し上げてまいりました。まさに厚労行政は国民の日々に直結する分野ですから、これに寄り添う行政を展開していくという姿勢を改めて徹底したいと思います。

 私は、厚生労働省には、今委員が申し上げられたように、社会保障改革と働き方改革、その両方をやりたいんだという熱い思いでこの役所に入ってきた若手もいる。彼らに私はぜひ意見を聞きたい。そして、厚生労働省に何が、改革に何が必要かを考えていきたいと思います。

 統計に対する姿勢を根本から正し、再発防止を徹底する。何よりも、追加給付について、できる限り速やかに、簡便な手続でお支払いできるよう万全を期す。そして、私が先頭に立って、厚生労働行政の重みに対応したしっかりとした組織のガバナンスを確立する。これに全力を尽くして、国民の皆様の信頼回復に努めることが私の責任であると考えています。しっかりとやり遂げていきたいと思います。

小泉(進)委員 時間が来ていますが、今、小野寺委員から一分いただきたいということで、いただきました。

 平井大臣、この問題については、追加給付の問題も、相当、IT、そしてシステム、この改修等も含めて必要です。そして、今後の厚労省のあり方、働き方、これを見直す上でも、人はミスを犯しますから、人に依存しない、そういった不正が起きない、こういったシステムについても、私は、デジタル化、IT大臣のサポートとかも必要だと思いますので、今回、追加給付についても内閣官房のIT室のサポートもあると思いますが、平井大臣からも一言お願いします。

平井国務大臣 きょう、委員と根本大臣のやりとりをずっと聞いておりまして、工程表とやらなきゃいけないことが決まったと思います。

 あれは、実は、システム改修と新しい開発の要件定義なんです。つまり、これが工程表どおりにできるかできないかは、システム開発が間に合うか間に合わないか、そこにかかっていると思いますので、IT総合戦略室で全面的にバックアップしたい、そのように考えています。

 あとは、統計も含めて、今国会でデジタルファースト法案を、私、提出させていただく予定ですので、全て、やはりデジタル化は、目的ではありませんが、今度、全体の業務を見直すという意味で、もっと深く議論をさせていただければと思います。

 全力でサポートさせていただきます。

小泉(進)委員 力強い御答弁、ありがとうございます。

 そのデジタル化でいうと、最後に、これで終わりますが、国会のデジタル化、やりましょうよ。

 今回、隣に座っている立憲民主党の逢坂先生も、そして国民民主党の玉木代表も、以前、本会議の演説でタブレットを使いたいと。それを認められませんでした。これは、ネットの回線がつながっていると検索とかして延々と話されちゃうからとか、いろいろな懸念はあるかもしれませんが……(発言する者あり)そうなんですよ、そういった懸念は、そのときはネット回線につながないとか、いろいろな形で知恵を働かせることはいっぱいできます。それに、もともとそんなことを意図しているわけではないと思います。

 ですので、こういった当たり前のことから国会が本当に変わらないと、四月から働き方改革が、民間が頑張るのに、一番働き方改革が進んでいないのがまさにこの国会であり……(発言する者あり)

野田委員長 静かにしてください。

小泉(進)委員 霞が関であり、我々政治の世界だと思いますので、そこをしっかりやって、四月から進んでいく働き方改革に官民一緒になって頑張ろうということで、総理からも一言ございましたら、答えられる範囲で構いませんので、お願いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まさに、働き方改革を進めなきゃいけない……(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。お静かに。

安倍内閣総理大臣 この国会においても、また政府においてもそうなんですが、デジタル化のスピードは非常にまだ遅い、遅々として進んでいない。その中で、政府としては、平井大臣が今一生懸命やっています。

 しかし、ほとんどがまだ紙という状況である中においては、この紙の作成に相当の時間がかかって、働き方改革にも、大きな負荷が働いている人たちにかかっているという状況の中で、働き方改革をしっかりと進めていきたい、このように思っております。

小泉(進)委員 ありがとうございました。

 終わります。

野田委員長 この際、小野寺五典さんから関連質疑の申出があります。今村さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。小野寺五典さん。

小野寺委員 自由民主党の小野寺五典です。

 済みません、きょうは、総理と外務大臣、防衛大臣にしか聞きません。ほかの閣僚の皆さん、大変恐縮に思っております。

 私も、ぜひ国会改革、進めていただきたい、そう思っております。

 きょうは、最近緊迫感を増します、実は、日韓の関係、このことについてお話をしたいと思います。

 特に、昨年末発生しました、我が国の海上自衛隊の哨戒機に対して韓国の海軍から火器管制用のレーダーが照射された事案、そしてまた、できればもう少し日韓の関係の問題についても触れたいと思っております。

 まず冒頭、私ども、共通の認識としておきたいのは、実は北朝鮮はまだ、核、ミサイルの廃棄に向けた具体的な動きに、何も行っていないということ、そして、米朝の首脳会談が今月末に行われるということでありますが、先はなかなか見通せない、そういう中で日本が行っておりますのは、北朝鮮の安保理決議違反、これをしっかり取り締まるための、瀬取りということ、これを、自衛隊は哨戒機やあるいは艦艇で行っております。

 実は、自衛隊のこの艦艇の活動に呼応していただいて、例えばアメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドといった国々が日本に哨戒機や艦艇を派遣して、我が国を主体に、この北朝鮮の瀬取り行為などの監視をしていただいております。

 先日、河野大臣、岩屋大臣、日仏の2プラス2へ行っていただきましたが、今度は、その成果もありまして、フランスも参加するということ、こういう国際社会の取組を行う中で、私ども、北朝鮮に圧力をかけている。そのさなかに、事もあろうに、その哨戒活動に当たっている日本の自衛隊の哨戒機に、韓国の艦船から火器管制用のレーダーの照射をされるということ、これは、隊員の危険ということもありますが、日本のこの活動、国際的なネットワークの輪を乱す、看過できない重大な事案だと思っております。

 少しこの事案の詳細について述べたいと思います。

 事件は、昨年十二月二十日午後三時ごろであります。自衛隊の哨戒機が能登半島沖の我が国排他的経済水域において、韓国海軍の駆逐艦から火器管制レーダーの照射を受けたということであります。

 この写真は、日本の哨戒機が捉えた韓国駆逐艦の写真であります。線で囲っておりますが、この船には、前後二カ所、火器管制用のレーダーが設置されております。そして、その一つは自衛隊機の方を向いている、これがわかります。

 レーダーの照射は、複数回、一定時間にわたりました。火器管制レーダーを照射するということは、これは攻撃を前提としてロックオンするということ、例えれば、相手のこめかみに銃を突きつけ、引き金に手をかけるような行為、本当に危険な行為であって、あってはならないことであります。

 我が国の哨戒機は、平時から、ほぼ毎日、東シナ海や日本海において常時継続的に警戒監視を行い、軍艦も含めて、航行する船舶の状況を確認しています。この日の監視飛行も、通常の監視の一環であり、何ら特別な行動をとったものではありませんでした。

 レーダー照射を受けた自衛隊機は、冷静に対応したと思います。火器管制用レーダーの照射は確認したものの、目視で大砲、砲塔が自衛隊機に向いていないことを確認し、直ちに攻撃はないという判断をして、速やかに回避行動をとりました。この際、韓国艦艇に無線で連絡をとりましたが、応答はありませんでした。

 もし、韓国側が言うように単なる救助活動なら、むしろ通信に応答し、救助活動に協力要請するのが普通であります。しかし、韓国の駆逐艦は、自衛隊機に火器管制用レーダーを照射し、退避行動をとらせる、いわば追っ払おうとしました。全く理解できない行動であります。

 そもそも、ここは日本の二百海里内、日本の排他的経済水域内であり、北朝鮮の漁船が操業すること自体、違法であります。一体、この北朝鮮漁船はここで何をしていたのか、そして、なぜ韓国の軍艦と韓国の警備艦がこの海域にいたのか、謎であります。

 まず、海上保安庁に伺います。

 当日、そのような場所で遭難事故があり、そして救助を求める例えばSOSのようなものがあったかどうか、確認をしたいと思います。

岩並政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の事実が発生しました昨年十二月二十日におきましては、能登半島沖の船舶から、海上保安庁が遭難通信を受信した事実はございません。また、隣接国の海上捜索救助機関から関連する情報を受けた事実もございません。

小野寺委員 今長官からお話がありましたが、実は、ここでSOSのような通信は一切なかったということ、これは、そばにいた海上自衛隊の方にも確認をしましたが、やはりそのようなことは確認されなかった。現場の海域はないでおり、遭難するような状況ではありませんでした。

 韓国側に確認をしても、韓国海軍の駆逐艦と韓国の警備艦が行っていたのは北朝鮮の遭難漁船に対する人道的作戦であるという一点張りであり、詳細な報告はありません。本当に漁民だったのか、その救助だったのか、不可解さは消えないと思っております。

 いずれにしても、救難活動であれば韓国船が日本側に応援を求めるのが通常であり、ましてや、火器管制レーダーを照射したり、こちら側の呼びかけの通信に応えないというのは大変不自然です。

 この事案発生後、防衛省は、二十一日に韓国側に強く抗議をしていただきました。岩屋大臣も先頭に立って抗議をしていただいたと思っております。そして、この事案を公表し、外交当局の協議や実務者を通じて抗議と再発防止を行ったということ。ですが、韓国側は非を認めていない。このため、年末に防衛省から、哨戒機が撮影した当時の動画を公表したということであります。

 韓国は今でも非を認めておりませんが、実は、事案発生からの韓国の反応を見ると、これは、韓国がいかに苦慮しているかということ、それがわかると思います。少し検証したいと思います。

 お手元に資料がありますが、実は、韓国側の主張がころころ変わっているということがあります。二十一日に日本側が抗議をいたしました。翌二十二日、韓国側は、レーダーを使用したところ、日本の哨戒機が瞬間的にレーダーの範囲内に入ったと言っています。翌二十三日、韓国側は、航海用レーダーと射撃統制レーダーをフル稼働していたと言っています。そして、二十四日になると、北朝鮮の遭難漁船を捜索するため火器管制レーダーを使用していた。実は、韓国側が当初、使用を認めております。

 ところが、二十四日、この日には、同時に国防省、恐らくこの流れではよくないと思ったんでしょうが、追跡レーダー、装着された光学カメラを回した。実は、火器管制用レーダーには脇にカメラがついています。そのカメラを使うためにそっちの方に向けたんだ、電波は発していないと言うんですが、通常はこれは連動して動くものですから、カメラだけをわざわざ使うということはおよそ想定されません。

 そして、二十八日になりますと、追跡レーダーは照射していない、こう言い始めました。そして、一月三日になると、今度は、低空脅威飛行について、むしろ自衛隊が悪いんだ、そして謝罪をしろということ。

 この一連の流れを見ると、初めは、実は照射したということを言っていて、その後、そんなことはないと言っていて、そして、現在は、むしろ自衛隊機が悪いんだ、低空飛行した自衛隊機が悪いんだ、こういうふうに話をすりかえている感があります。

 これをあえて証明する必要はないと思いますが、自衛隊機が本当に低空飛行したかということ、これは、韓国政府が公開した動画をあえて御紹介いたします。

 実は、丸で囲った、日のP1と書いていますが、これが日本の哨戒機ということになります。日本の哨戒機の長さは三十八メートルあります。この見える小さい横棒、これが日本の哨戒機の大きさ。手前には北朝鮮の遭難したと言われる漁船が写っており、右奥には韓国の軍艦が写っております。

 実は、この哨戒機の長さを、例えば縦に何個入るかと置いてみると、おおよそ、とても韓国が言うような六十メーターの低い航行ではなく、既に二百メートル以上高い高度を飛んでいるということがわかります。ですから、韓国側が証拠として出した資料自体が、実は、日本側の言っていることが正しいということを示しております。さらに、韓国側はこういうふうに見えたと言っているんですが、一体この点を脅威と感じるのかどうか。実は、こういうことがさまざまあります。

 しかしながら、私ども、この韓国側の苦悩の末の話というのは、これは、そうなんだなとこちらで受けとめるべきものではないと思いますが、それ以上に看過できないものがあります。

 実は、一番私が心配しているのは、一番下にあります一月の二十三日、ここで韓国側が何と言っていたかといいますと、再びこういう行為、低高度近接脅威飛行を繰り返す場合、韓国の対応行動規則にのっとって強力に対応していく。

 これはどういう意味か。私は、通常、軍の専門家であれば、強力な対応、自分の行動規則ということになれば、これは自分たちが意に反していなければ、相手側に攻撃をするというふうにも読み取れます。大変危険な発言をしている。実は、現場で哨戒活動を行っている自衛隊機は、より一層危険な行為に及ぶ、そういう可能性も出てまいります。

 ですから、今私どもがすべきことというのは、韓国が言っている、私どもとしてはとても理解できない、しかも、韓国自身がレーダー照射をしているというこの事案について、一々やりとりで、同じ土俵で戦うのではなく、むしろ一番私ども心配すべきなのは、今この瞬間も現場で日本の警戒監視活動に当たっている自衛隊員が万が一攻撃をされるようなことがあったら、これは大変心配な事案になります。

 ぜひお願いしたいのは、まず、警戒監視に当たる自衛隊員が危険にさらされないように、しっかりと韓国側に、同種事案の再発防止、そして自衛隊員の安全確保のためにさまざまな対応をとる、これが私は防衛当局の役割だと思っております。

 防衛大臣にお伺いいたします。この事案に対して韓国にどのような形で再発防止を求めていくのか、そして、隊員の安全確保にどのような対応をされるのか、お尋ねしたいと思います。

岩屋国務大臣 本事案に関するこれまでの日韓間のやりとりについては、今、小野寺委員、前大臣から詳しく紹介をしていただいたとおりでございます。

 私ども、二度の実務者協議を行いました。一度はテレビ会議、二回目は実際にお会いして、シンガポールというところを選んで、両方の大使館を使って丸一日かけてやりましたけれども、見解を一致させるには至りませんでした。

 そこで、二十一日に私どもの最終見解を示し、その最終見解は、このような事案は二度とあってはならないことであって、韓国側はこの事実を認め、再発防止を図られたい、このことを強く求めるという内容でございます。

 そもそも、海自の哨戒機は、今委員おっしゃっていただいたように、二十四時間三百六十五日、日本の近海を、国際ルールあるいは国内法にのっとって適正に警戒監視をしているわけでありまして、特に北朝鮮の瀬取りの事案がございますので、熱心に適正に警戒監視活動をやっていたわけでありまして、指摘されるような低空脅威飛行は、記録もちゃんととっておりますが、そのような事実はございません。また、韓国に対して私どもが脅威飛行を行う意図もなければ、そもそもその理由もございません。

 したがって、ぜひ韓国側には、この事実を認めて、冷静かつ適切な対応をしていただきたい。我々、防衛交流のパイプを切るつもりはありませんので、話合いはしていきながら、韓国側に引き続き再発防止をしっかりと求めていきたいというふうに思っております。

小野寺委員 私は、今回の事案を見て、六年前、中国海軍から同じような射撃用のレーダーを照射された事案、このときの教訓が一つ生かすことができるのではないかと思っています。

 二〇一三年一月、東シナ海において、中国の海軍から日本の哨戒ヘリと護衛艦に火器管制用のレーダーが照射される事案が発生しました。事案発生後、直ちに中国側には抗議をしましたが、それだけではなく、私どもとしては、国際社会に強く訴えました。米国あるいは西側の国が、日本の主張に全面的に賛成そして支持をしてくれました。

 この結果、中国との間で、一定の冷却期間はありましたが、一年後、二〇一四年ですが、射撃レーダーの禁止に関する海軍間の行動基準、これはCUESと言います、これが制定をされ、中国もこれに参加をいたしました。そして、その後、中国は確かにさまざまな活動はしておりますが、このときの抗議事案、そして国際社会として中国を牽制した中で、現在まで、中国から我が国の自衛艦隊や、自衛艦船や航空機に射撃用のレーダーが照射されたという事案はないと思います。

 私どもとしては、再発防止という観点からぜひ、相手国に明確なメッセージを出すだけではなく、国際社会にしっかり訴えていくこと、これがむしろ、今回大事な案件ではないかと思っております。

 私どもとして具体的に言うと、例えば今、瀬取りに、協力をしているアメリカやカナダやオーストラリア、ニュージーランド、多くの国がありますが、これらの国の航空機も、もしかして、自分たちが哨戒活動をして、韓国の艦船からレーダー照射を受けるんじゃないか、恐らく心配もしていると思います。こういう一緒になって活動している国々に、まず、しっかり日本の内容について同調していただき、韓国に対して強い圧力をかけていく、これが大切だと思っています。

 このためにはぜひ外務省のお力をいただきたいと思います。防衛省は今、懸命にこのような努力をしていますが、外務省もしっかり支えていただきたい。その方針について河野大臣にお伺いしたいと思います。

河野国務大臣 この事件に関する事実関係を米国を始めとする関係国に正しく認識していただくということは非常に大事だと考えておりますので、これまでも適切に説明をしてきたところでございますし、今後とも必要に応じてしっかりとした説明を関係各国に行ってまいりたいと思っております。

小野寺委員 ぜひ、ここまで来ますと、やはりこの問題というのは、国際社会の中でしっかり訴えていくこと、日本の立場が正しいということをしっかり支えてもらうことが大事ですし、特に中国との事案でつくり上げました海軍間の話合いの場、CUES、この開設を至急お願いをし、そのCUESの場で韓国に対しての抗議、これを行うことが、私は、瀬取りを、安全に各国ができるということ、そして、何より隊員の安全が確保されながら日本の警戒監視ができるということになりますので、早急に対応していただきたい、そう思っております。

 次にもう一つ。これはもう一つの日韓の、今大きな課題でありますが、旧朝鮮半島出身労働者賠償請求問題について触れたいと思います。

 この問題については何度も議論をされておりますので詳細は省きますが、日韓は過去の負の遺産を清算するために、一九六五年に日韓請求権協定を結んで、日本は五億ドルの資金協力を韓国に行い、さらに、日本が朝鮮半島に有する資産などを放棄することで、日韓の請求権に関する問題は完全かつ最終的に解決され、両国はいかなる主張もしないと約束をいたしました。

 これまでの韓国の司法当局は、韓国の民間人から提訴された日本企業への賠償請求について、日韓請求権協定を根拠に訴訟を退けてきました。しかし、昨年十月、韓国の大法院は初めて賠償請求を認め、日本企業に賠償の支払いを命じたということになります。

 このことに関して、文大統領は司法の判断と言っておりますが、私が不思議に思うのは、韓国の大法院、日本でいえば最高裁に当たるところですが、文政権になり、十四名の判事のうち八名が実はかわって、文政権下で判事になりました。過半数以上が実は入れかわったわけです。その判決に注目が集まっていた中で、やはり日本にとっては承服ができない判決が出された。非常に残念であります。

 実は、日韓請求権協定は日本にとって血の出るような協定でありました。その賠償金、これは賠償金とも言える、資金協力ということで日本は出しておりますが、有償、無償を合わせて五億ドル、当時の韓国政府の予算の一・六倍にも当たる巨額のものであります。この資金について韓国政府は、韓国の白書の中でも、日本の支援に大変ありがたいという感謝を表明しております。

 そして、当時、特に韓国政府は製鉄所をつくりたいと考えておりました。その製鉄所をつくりたいという韓国に対して、当時、国際通貨基金や世界銀行などは、韓国政府にはまだその能力がないということで融資を断りました。そのため、日本が提供した資金によって浦項製鉄所は建設。そして、ノウハウがないため、その建設の設計、施工やあるいは技術支援に当たったのは、大切な日本の特許も含めたさまざまな技術支援を惜しげもなく提供したのは、時に日本の企業であります八幡製鉄所と富士製鉄であります。皮肉なことに、今、賠償請求を出されているのは、この両社が合併した新日鉄であります。

 五億ドルの資金提供をしただけではありません。実は、当時、日本は朝鮮半島に莫大な資産を持っておりました。企業の資産はたくさんありますが、それではなくて、北朝鮮領内には三十万人、韓国領内には五十九万人の民間人がいました。この民間人の皆さんは、避難するとき、退避するときにこの資産を全て韓国に残して、身一つで帰ってまいりました。これは、全て個人資産と合わせると五十一億ドルになるという、当時試算が出ております。これは一九四五年のときの数字ですから、いかに莫大な資産を私どもは朝鮮半島に残してきたかということであります。実は、日韓請求権協定でこれも全て放棄をいたしました。

 それだけではありません。実は、戦後、韓国側から一方的に日本の漁船が拿捕されるという悲惨な事案が起きました。韓国は、李承晩ラインというのを一方的に設定。操業する日本漁船を拿捕し、漁民を監禁、非人道的な扱いをし、四千人の日本漁民が最長三年半にわたり監禁され、そのうち八名が死亡。射殺された方もいました。実は、この補償は日本政府が行いました。本来、韓国側が行うべきものであります。

 実は、これだけのものをこの賠償請求で日本は放棄をいたしました。今、もし韓国と同じように日本の中でこの請求権が出てきた場合、これは大変なことになります。こういう泥仕合はやめましょうということで実は日韓の請求権協定があるということ、この事実、日本の払ってきたこの努力、これを同じく国際社会にしっかりと訴える、これが大切だと思っております。

 最後に、総理にお伺いしたいと思います。

 日韓においてさまざまな問題が発生しております。私どもとしては、ぜひ、言うべきことは言うという姿勢を貫いていただきたい。そして、困難が続く日韓関係、これは努力が必要ですが、やはり、日本の主張を国際社会の中で言う中で、韓国の中に、なるほど、こういうことかというその機運が高まる中で、日韓関係を解決していただきたい。今後の日韓関係の方向についてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 まず、レーダー照射事案について、私からもお答えいたします。

 韓国軍艦によるレーダー照射事案については、専門的、技術的観点から防衛当局間で協議が行われたところでありますが、この事案等に関する認識及び今後の対応については、これまで防衛大臣そして外務大臣が述べたとおりであります。

 そして、旧朝鮮半島出身労働者の件につきましては、旧朝鮮半島出身者の問題を始め、これまで日韓両国が築き上げてきた関係の前提すら否定するような動きが出ていることは大変遺憾であります。

 そして、日韓請求権協定の交渉において、今委員が既に御説明になられましたが、日本側から個人に対する支払いを提案したのに対し、韓国側は、日本に対し国として請求した上で、韓国内での支払いは国内措置として行う旨述べたという経緯があるのは事実であります。実際に、韓国政府は、日本政府が日韓請求権協定に基づき供与した五億ドルの一部を使用する形で、旧朝鮮半島出身労働者に対する補償を支給したと承知しています。

 この問題については、先般、日韓請求権協定に基づく協議の要請を行ったところであり、韓国側に対し、誠意を持って協議に応じるよう粘り強く働きかけていきたい、こう考えております。

 今後とも、政府として、国際裁判も含めあらゆる選択肢を視野に入れ、国際法に基づき毅然として対応していく考えであり、我が国の一貫した立場に基づき、主張すべきは主張し、韓国側に適切な対応を求めてまいります。

 と同時に、委員が指摘されたように、国際社会の理解を得る努力をしていくのは当然のことであろう、このように考えております。その上で、韓国との間では、北朝鮮問題を始め、連携すべき課題についてしっかりと連携していくことが必要である、このように考えております。

小野寺委員 今総理がおっしゃいました、実は国際社会の中でこの問題をどう見ているかということで、興味深い一つの記事がありました。これは、元米国NSCの日本・朝鮮部長、現在はシンクタンクにいますマイケル・グリーンさんが、韓国の新聞であります中央日報の英語版へ、先月一月二十一日に寄稿した内容であります。ちょっと紹介します。

 文政権にとって厳しい現実は、現在の日本との関係の袋小路において、ソウルは政治的に高い位置にあるのではないということである、オーストラリアからシンガポールまで、アジアのほとんどの政府は、現在の日韓関係の悪化の主要な原因は韓国にあると見ている。

 実は、このような論調が国際社会の中で今出つつあります。私どもとして、特にこの国に対して何か言うというよりは、むしろ、国際社会のこのような雰囲気、これが韓国に対して強いメッセージを与えることだと思っております。

 韓国と同じ土俵でさまざまなやりとりをしても、私は、これは仕方のないこと、むしろ国際世論に訴える、そして、今の韓国には、むしろ事実に基づいた冷静な抗議、そして、韓国が言うさまざまな問題については、同じ土俵で戦うことではなく、むしろ丁寧な無視をするくらいの心構えが必要ではないかと思っております。

 いずれにしても、北朝鮮の問題を含め、私どもとしては、隣国の韓国とこれから正面からまた向き合うということ、これが大切でありますし、そして何よりも、きょういらっしゃる政府の皆さんにお願いしたいのは、今でもこの瞬間、この国を守る自衛隊員がいる、そして、その自衛隊員にまかり万が一危険が及ぶようなことがないように、そのための最善の努力をお願いしたい、そのことをもって、本日の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

野田委員長 これにて今村さん、宮下さん、小泉さん、小野寺さんの質疑は終了いたしました。

 次に、高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 本日の本題である第二次補正予算、我が党が強く求めてきた災害復旧、また、防災・減災対策、教室のエアコン設置、ブロック塀対策、さらには風疹対策などが盛り込まれております。いずれも、地方議員、また自治体からの強い御要望を受けとめたものでありまして、国民生活に密着した緊急性の高いものと承知しております。

 初めに、命を守るという観点から、山口代表を先頭に取り組んでまいりました風疹対策について質問をさせていただきます。

 一月の下旬、生まれた赤ちゃん一人が先天性風疹症候群、CRSと診断をされました。この先天性風疹症候群、風疹に免疫のない妊婦さんが二十週ごろまでにかかりますと、おなかの赤ちゃんも感染をして、難聴、心臓病などの症状が出るという可能性が高いもので、中には死に至ることもあります。昨年は首都圏を中心に風疹患者が急増しまして、二〇一七年の約三十一倍、二千九百十七人が罹患をしました。

 大半は、このパネルにありますとおり、予防接種を受ける機会がなく免疫を持たない、一回も接種していない、抗体保有率七九・六%という三十代から五十代の男性、年齢でいきますと三十九歳から五十六歳ということになります、その方たちが実は感染拡大の要因であったということです。

 前回大流行した二〇一二年、一三年、ここでは四十五人の赤ちゃんに先天性風疹症候群の症状が見られまして、十一人が亡くなっております。日本産婦人科医会も、一万六千人を超える患者が確認された二〇一三年の大流行の前兆に類似した状況であると指摘しておりまして、厳重な警戒が求められておりました。既に、アメリカの疾病対策センター、CDCは、日本の感染に関する警戒レベルを三段階のうち二番目の勧告にまで引き上げ、自国の妊婦には、風疹の流行がおさまるまで日本に渡航しないように呼びかけております。

 これから、ラグビーワールドカップ、また来年の東京オリンピック・パラリンピックなど、海外からの観光客も更にふえることが予想されます。我が国が風疹感染国になるわけにはいかないと思っております。

 この問題に対して真っ先に動いたのは、公明党の山口代表でございました。昨年十一月、記者会見で感染防止策の拡充を訴え、そして一貫してリードしてまいりまして、また、十二月には石田政調会長らが政府に申入れをするなど、迅速に取り組んでまいりました。

 厚生労働省の現在の対応を伺いたいと思います。

根本国務大臣 風疹の感染拡大防止のため速やかに対応することが、国民生活の安心にとって極めて重要です。

 現在の風疹の患者の状況を見ると、委員御指摘のとおり、三十代から五十代の男性が全体の約三分の二を占めています。これは、これまで公的に予防接種を受ける機会がなかった現在三十九歳から五十六歳の男性の抗体保有率が約八〇%と、他の世代に比べて低いことが一因であると指摘されております。

 このため、厚生労働省として、御党からの御意見も踏まえつつ、昨年十二月、風疹に関する追加対策を取りまとめ、現在三十九歳から五十六歳の男性を対象として、三年間、全国で原則無料で抗体検査と予防接種を実施することを決定いたしました。このように成人男性に対して公費で集中的に予防接種を行うのは、これまでの風疹対策にはなかった初めての取組であります。

 現在、風疹に関する追加的対策の推進に向けて、地方自治体、医療関係者などと調整を進めており、円滑な事業実施のためのガイドラインも可能な限り速やかに作成しながら、スピード感を持って対応していきたいと思います。

高木(美)委員 やはり、今大臣から御答弁いただきましたとおり、社会全体の取組が重要だと思います。

 今回の対象は三十九歳から五十六歳男性、いわば働き盛りの世代でありまして、その方たちが抗体検査、またもう一回予防接種、こういうことを何度も受けるために医療機関に行くということは非常に難しいと思います。いかに受けやすくするのか、アクセスしやすい環境をつくるということが何より重要だと思っております。

 そこで公明党は、知恵を絞ってほしいと強く訴えてまいりました。例えば、抗体検査は企業の健診また国保の特定健診のときに受けられる、そして予防接種は、企業の医務室であるとか、またお昼休みに会社近くのクリニック、そしてまた夜間、休日診療機関でも可能、こういうことができれば画期的ではないかと思っております。

 そのためには、今大臣御指摘のとおり、自治体、企業、地域の医師会、健保組合など関係団体の協力が不可欠でございます。どのような場所で、どのような機会に受けられるように進めていらっしゃるのか、具体的に、国民の皆様にわかりやすく御説明をお願いします。

宇都宮政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘いただきましたように、対象世代の男性の多くは働く世代であることから、抗体検査と予防接種を受けていただきやすい環境を整えることが重要でございます。

 そのため、まず、抗体検査につきましては、お住まいの近くの医療機関に加えまして、例えば、自営業の方などは毎年の特定健診の機会を活用して受けられるようにすること、それから企業にお勤めの方は毎年の事業所健診の機会を利用して受けられるようにすることなど、利便性を高めるための環境を整備することとしてございます。

 また、予防接種につきましても、お住まいの近くの医療機関だけではなくて、例えば、職場の近くの医療機関で受けられるようにすること、それから、休日、夜間に受けられるようにすることなどを推進することとしているところでございます。

 このような職域との連携を通じまして勤務地などお住まいの市町村以外で抗体検査や予防接種を受けられるようにする取組はこれまでにないものでございまして、その実現に向けて、現在、地方自治体、事業者団体等と調整を進めているところでございます。

高木(美)委員 しっかりと進めていただきたいと思います。

 次に、軽減税率の対策につきまして、質問をさせていただきます。

 まず、最近、商店街の方にお会いしますと、決まって、軽減税率に対応するにはどうしたらいいのかというふうに聞かれます。全くやり方がわからないと。でも、この軽減税率は、消費税を一〇%に引き上げさせていただく中で、せめて食べるものは税率を据え置いておいてもらいたい、こうしたお声にお応えをしたものでございます。多くの反対の中で、公明党がぶれずに一丸となって取り組み、政府・与党と力を合わせて実現をさせていただきました。

 その円滑な実施が急務です。小売店などで複数税率に対応したレジの導入、また受発注システムを改修していただく必要があります。この第二次補正予算にも、軽減税率対策補助金として、五百六十・六億円が計上されております。

 現在の取組状況につきまして、世耕大臣に伺います。

世耕国務大臣 中小・小規模事業者の皆さんが、十月の消費税率引上げとあわせて実施をされるこの軽減税率制度に対応できるよう、毎日の売上げですとかあるいは仕入れの記帳を八%のものと一〇%のものに区分をすることですとか、税率を区分した領収書が発行できるようにレジを導入したり改修をすることなど、必要な準備の内容を周知、広報するとともに、軽減税率対策補助金を通じて、レジの導入、システムの改修の支援などの取組を行ってまいりました。

 具体的には、商工会、商工会議所、中小企業団体と連携をして、相談窓口を設置したり、説明会を開催したり、パンフレットを配布といったことを行ってまいりました。また、団体に所属していない事業者のためには、都道府県、市町村を通したり、民間金融機関、税理士会、青色申告会など、いろいろなルートを使って周知、広報を徹底しているところであります。

 また、これに加えて、事業者の事前準備を強く後押しするために、レジのシステムの導入、改修を支援する軽減税率対策補助金について、ことしから補助率を従来の三分の二から四分の三に引き上げて、更に請求書管理システムの改修も補助対象に追加をいたしました。

 そしてさらに、この今御審議をいただいている補正予算案に五百六十・六億円を更に追加計上して、基金額の積み増しを行ったところであります。

 この補助金は、九月三十日までにレジとかシステムの導入、改修が終了しているということが条件になりますので、ぜひ事業者の皆さんも早目にこの補助金を御活用いただきたいと思いますし、我々も、しっかり使っていただけるように周知、広報を更に徹底してまいりたいと考えております。

高木(美)委員 大臣、この内容なんですが、周知徹底がやはりどうしても、なかなか、もう一つ進めなければいけないと思っております。やはり、公明党が昨年行いました百万人訪問・調査でも、こうした中小企業支援策全般について、いろいろこういうことがありますと説明をしたときに、事業者の方たちから、これはもうぜひやってもらいたいんだ、これもあったら使いたい、でもこういうことを知らなかったという実は声も既に届いておりまして、この周知徹底の課題というのが浮き彫りになっているという状況でございます。

 ことし一月の民間調査におきましては、半数以上が対応方法を知らない、必要な対応内容がわからないというのが三一・六%、そもそも対応が必要かどうか、うちの店でどうすればいいのかがわからない、二四・八%という状況でありまして、そのことを考えますと、この九月三十日までの導入完了、改修完了、支払い完了、こういうことに対して、後でやっておけばよかったというふうにならないように、これは積極的に活用していただきたいと思っております。

 そこで、大臣、提案なんですが、先般、昨日、総理は品川の戸越銀座商店街に行っていただきまして、そこで早速、これはスマホ決済の方ですが、これをしていただきました。キャッシュレスの決済をしていただき、そして、大臣、ぜひ、この商店街のところに、やはり商店街は一番中心ですので、ここに経産省の職員の方、一日、日にちを決めていただいて、一斉に出かけていって、商店街の方たちにダイレクトに対話してくるという、こういうぐらいにしていただく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

世耕国務大臣 今、私も、災害が起こったときはやはり職員を現場に派遣して個社に張りつける、あるいは下請Gメンに全国を回らせるなんということもやらせております。

 経産省は現場主義を徹底してまいりたいと思います。貴重な御提言と思いますので、しっかり検討してまいりたいと思います。

高木(美)委員 ぜひともお願いいたします。

 私の地元の商店街でも、なかなか難しいので、この際、店を閉じようかというような声も聞こえてまいります。でも、それは、軽減税率を、これをしっかりと進めていくというのは国民の皆様の要望ですので、その商店街の方たちに、やはりこうした制度があるのだということを、私自身もこれをしっかりと伝えてまいりたいと思っております。

 この軽減税率対策、政府と一体となりまして我が党も進めてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 以上で終わります。

野田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。高木美智代さん。

高木(美)委員 公明党の高木美智代でございます。

 午前中に引き続きまして、午後は、毎月勤労統計問題等につきまして質問をさせていただきます。

 まず初めに、今回の厚労省の毎月勤労統計や賃金構造基本統計等の不適切な調査の問題につきましては、私は、昨年十月までの約一年間、厚生労働副大臣を務めてまいりまして、見抜けなかった、そしてまた監督責任を果たせなかった、このことに対して、まず国民の皆様に心から深くおわびを申し上げます。

 この毎月勤労統計は、賃金や労働時間に関する重要性の高い統計でありまして、失業給付、労災保険の給付、平均賃金の算定などに利用され、いわば国民の皆様の最も苦しいときを支えるための給付などに直結しております。

 さらに、一月二十八日、賃金構造基本統計調査におきましても、調査員が訪問して配付、回収としていたところを実際は郵送で行っていたということが公表されました。

 さらに、この統計につきましては、厚生労働省のみならず、政府全体に波及し、基幹統計数五十六のうち、統計法上何らかの不備があったとされているのは二十四と聞いております。政府統計への信頼は地に落ちたと言わざるを得ません。

 本来、統計は国の姿をあらわすものであり、政策を決定し、それを国民の皆様にお諮りしていくという重要な基盤です。極めてゆゆしき事態と考えます。徹底した原因究明と再発防止に、私自身、全力で取り組んでまいります。

 まず、今回の厚生労働省の不正な取扱いで国民にどのくらい損害を与えたのか。

 これは毎月勤労統計に関するデータでございますが、厚生労働省の推計では、雇用保険で一人当たり平均千四百円、延べ約一千九百万人、また労災保険で、年金給付の場合、一人当たり平均約九万円、延べ約二十七万人、休業補償の場合、一人一カ月当たり平均約三百円、延べ四十五万人。このほか、船員保険の年金給付や事業主向け助成金があります。

 厚生労働大臣、まず、この推計で間違いないでしょうか。

根本国務大臣 まず、毎月勤労統計について不適切な調査が行われ、そしてセーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様におわびを申し上げます。

 厚生労働省としては、今般の事案を受け、平成十六年以降に雇用保険、労災保険、船員保険の給付を受給した方の一部及び雇用調整助成金など事業主向け助成金を受けた事業主の一部に対し、追加給付を行うこととしております。

 各種制度における影響を受ける給付内容そして対象者数などについては、今委員がお示ししたとおりであります。

高木(美)委員 厚生労働省が統計を不正に取り扱った結果、これだけ多くの、合計二千十五万人という国民が被害に遭ったわけです。先ほど私は政治の責任ということを申し上げましたが、厚生労働省には猛省を促したいと思います。

 特にこの中でも、一番上にあります平均千四百円というのは、少なく思う人がいるかもしれません。しかし、本当に困っている人にとってみれば、この千四百円があれば助かったという方もいらっしゃるはずです。食事三回分になったかもしれません。

 午前中の質疑で、大臣は、今後の追加給付のスケジュールについて明らかにされました。公明党は、部会や先日の代表質問などで、速やかな追加給付をすべきだと政府に強く求めてまいりました。それを受けて、根本大臣が本日、追加給付のスケジュールを示していただいたわけでありまして、その努力は多としたいと思います。

 しかしながら、その上でもう一重努力し、一刻も早い支払いをお願いしたいと思います。給付額が低く抑えられている方にしてみれば、十一月、およそ約一年、いかにも遅過ぎるではありませんか。もう一段の努力を、大臣、ここでお約束してください。

根本国務大臣 先ほど、具体的なスケジュールを公表いたしますと答弁をさせていただきました。委員がおっしゃるとおり、できるだけ早く、しっかりと対応していきたいと思います。

高木(美)委員 しっかりとお願いいたします。

 公務員は、国民に対する全体の奉仕者であります。働く人や事業者が汗水流して払った保険金や税金で雇用保険また労災保険などが成り立っています。お金を徴収していながら払うべきものを払っていない、その詐欺的行為には私も怒りを覚えます。

 大部分の職員の方は真面目な方たちで、その職務の精勤ぶりを私も知っております。なぜ一部の職員がこのような不正を行ったのか。それは、組織に悪を生む温床があるのではないか。

 一月二十二日、特別監査委員会が報告書を取りまとめました。私もこれを読みましたが、この不正行為の実行者は一体誰なのか、不正の発生源はどこにあるのか、全く国民の疑問に答え切れていないと思っております。

 報告書には漫然と引き継がれたとありますが、それは、職務不履行、無責任のきわみとしか言いようがありません。

 また、組織的な隠蔽は認められなかったとありますが、その根拠は何なのか。不正があるとわかっていて伏せていた行為は、明らかに隠蔽ではありませんか。この具体的なやりとりとその経緯が明らかにされるべきだと思います。それがなければ、うみを出し切ることはできないと考えます。

 厚生労働大臣は、この報告書をどう受けとめ、どのような対応をしたのか、伺います。

根本国務大臣 特別監査委員会では、ヒアリングから得られた供述内容や関係資料の精査などを通じて、中立的、客観的な立場から集中的に検証し、事実関係と、関係職員の動機、目的、認識など、さらに、責任の所在を明らかにしていただいたものと思います。

 そして、特別監察委員会の報告書における、厚生労働省としての統計の正確性というものに対する余りにも軽い認識や、組織としてのガバナンスが欠如しているとの御指摘を真摯に受けとめなければならないと考えております。

 また、特別監察委員会からは、言語道断との厳しい指摘も受けており、全くもって返す言葉もありません。

 現在、特別監察委員会においては、国会審議等における御議論を踏まえ、改めて、事案に関連した幹部も含めた職員などに特別監察委員会の委員のみが質問する形式でのさらなるヒアリングを行っていただいております。

 私としては、今回の問題を統計部門だけの問題として捉えるのではなく、省全体として、統計に対する姿勢を根本から正し、再発防止の徹底に努め、厚生労働行政に対する国民の皆様の信頼の回復に努めてまいりたいと思います。

高木(美)委員 しっかりとよろしくお願いいたします。

 実は、先週の金曜日、この毎月勤労統計調査について問合せを受けるコールセンターの視察に行ってまいりました。圧倒的に多い問合せは、自分がいつ、幾ら受け取れるのか、果たして自分はその対象者なのかという、こうしたお問合せであったと聞いております。

 延べ二千万人もの方が自分の追加給付がどうなるかわからないという、今そういう状況にあります。午前中の答弁に続いて、更に本日、その工程表を明らかにされるということを聞いておりますが、実施に当たっては、大臣のリーダーシップのもとで、厚生労働省は全力で取り組んでもらいたいと思います。追加給付分は、本来、被保険者のものでありまして、くれぐれも事故やミスがないようにしていただきたいと思います。

 そして、何よりもまず、こうした方々にわかりやすい情報を迅速に提供していくことが必要と思います。コールセンターでも提案を受けたわけですが、SNSの活用や、また政府広報、電車などのあらゆる場を通じて、機会を通じて、積極的に対応をしていくべきではないかと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 委員御指摘のとおり、広く国民の皆様にわかりやすく、かつ迅速に情報を提供していくことが何よりも重要だと思います。

 これまでも、専用ダイヤルを設置して国民の皆様からのお問合せにお答えするとともに、厚生労働省ホームページなどを活用した広報を行ってまいりました。

 その上で、本日、給付の種類ごとに現時点でのスケジュールの見通しを示す工程表を作成し、公表するとともに、ホームページでも御案内をいたします。これによって、給付の種類ごとにお知らせの開始時期や支払い時期のめどを御案内してまいります。

 また、今委員が御提言がありました、ホームページ上の情報についてはスマートフォンでも見やすいように掲載しているほか、SNSでも情報発信をしております。

 今後とも、さまざまな取組を通じ、国民の皆様への情報提供を積極的に行ってまいります。

高木(美)委員 実は、コールセンターでは、せっかく電話をかけても、いつから支払われるのか、自分が果たしてそれに該当するのか、ちっともわからないという声があります。

 できれば、先ほどホームページという話がありましたが、ホームページにアクセスできる方もいらっしゃれば、できない方もいらっしゃる。できる方については、御自分のデータを入力していきますと、御自分の、果たしてそれが、対象者なのか、金額がどのくらいになるのか、そのスケジュールは大体どの辺なのか、こういうことを知ることができるシステムなど、工夫していただきたいと思います。大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 雇用保険等の追加給付については、給付の種類ごとに現時点でのスケジュールの見通しを示す工程表を作成し、公表いたします。今お答えいたしました。このため、今後は、問合せ専用ダイヤルにおいても、追加給付の対象となる可能性がある方に対し、給付ごとにお知らせの開始時期や支払い時期のめどを御案内してまいります。

 一方で、それぞれの方が追加給付の対象になるかどうか、あるいは追加給付の額の御照会については、現時点ではお答えすることはできませんが、具体的に、関係システムを構築し、対象者の特定、追加給付額の算定ができるようになった段階で、個別のお問合せに対してより詳細な御案内をしてまいります。

 こうした御案内が可能になるまでの間において、雇用保険については、委員から今御提案がありましたが、御本人がみずからの受給当時の賃金日額や給付内容を入力すれば、追加給付額の大まかな目安をお示しできるようなツールの開発、公開を検討しております。

 このような取組を通じ、広く国民の皆様にしっかり情報をお伝えしていきたいと考えています。

高木(美)委員 伺った先週の段階では、コールセンターの応答率、比較的落ちついていたわけですが、恐らく、先ほどの大臣の御答弁を受けまして、もう既に問合せがふえているのではないかと思います。迅速に、回線数をふやすなど、体制を増強していただきたいと考えますが、大臣、いかがでしょうか。

根本国務大臣 問合せ専用ダイヤルでは、一月十一日の開設から一月末までで、約六万三千件のお問合せをいただきました。開設した当初は、問合せが非常に多くて、応答が困難な状況も見られましたが、現在では、おおむね応答できている状況にあります。

 これまでも、できる限り国民の皆様に御不便をおかけしないよう、問合せの多い時期には回線数をふやしたり、お問合せが集中する午前を避けるため、午後の時間帯がつながりやすいことをホームページやSNSで周知するといった取組を行ってきました。

 今後も、問合せが大幅にふえた場合には回線数をふやすことも含めて、国民の皆様のお問合せに適切に対応してまいります。

高木(美)委員 一人一人に寄り添う決意で、よろしくお願いいたします。恐らく、お一人お一人、いまだに厳しい環境に置かれている方もいらっしゃるという、そのことを念頭にお取り組みいただきたいと思います。

 次に、総理に、この毎月勤労統計の数値の修正についての影響を伺いたいと思います。

 今、賃金偽装じゃないかとか、またアベノミクス偽装とか、そうした批判の声があります。それでは、GDPや最低賃金、また高度プロフェッショナル労働制適用労働者の最低賃金水準、これを千七十五万円と明記をしたわけですが、そこへの影響があるのかどうか、現段階での見解を伺います。

安倍内閣総理大臣 毎月勤労統計について、不適切な調査が行われ、雇用保険、労災保険といったセーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様におわびを申し上げます。

 高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において、長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめます。

 今回の事案によって、GDPについて影響はないものの、それ以外のどのような経済指標に影響が及ぶかについては、現在、関係省庁において調査が行われており、まとまり次第公表させる方針であります。

 なお、高度プロフェッショナル制度の年収要件、千七十五万円でありますが、については、今回の修正によって影響を受けることはありませんが、詳細は根本大臣から答弁させたいと思います。

根本国務大臣 高度プロフェッショナル制度の年収要件については、毎月勤労統計を用いた年間平均給与額の三倍の額を相当程度上回る水準とされており、具体額は厚生労働省令で決定しています。

 昨年十二月二十六日の労働政策審議会労働分科会において、この具体額を一千七十五万円と定めた省令案要綱について、おおむね妥当と答申されました。

 この一千七十五万円は、制度にふさわしい年収要件として、審議会において議論されたものであります。法令上の要件に照らしても、年収要件への影響はありません。

高木(美)委員 よろしくお願いいたします。

 次に、統計委員会のことを確認をしておきたいと思います。

 午前中の質疑にもありましたが、今回の不正事案を指摘したのは、総務省に設置されている統計委員会でした。この統計委員会の位置づけと果たす役割などについて、総務大臣から御説明を求めたいと思います。

 また、今回の問題をどのように捉えていらっしゃるのか、答弁を求めます。

石田国務大臣 高木委員に答弁をさせていただきます。

 統計委員会は、平成十九年十月に、専門的かつ中立公正な第三者機関として設置された審議会でございまして、公的統計基本計画の立案や基幹統計調査の計画などについて、総務大臣からの諮問に応じて答申をしているところであります。

 昨年の統計法改正におきまして、その機能が強化をされました。各府省内の統計部門を束ねて、統計委員会と調整、連携を行う統計幹事を設置したほか、総務大臣の諮問によることなく自律的、機動的に意見を述べることができるようにするなど、所要の規定が整備をされました。

 今回の事案は、毎月勤労統計のさらなる改善を統計委員会が自律的に審議する過程で発覚したものでございます。このたび、統計委員会におきましては、統計の信頼回復に向けまして、新たに点検検証部会が設置されたところでありまして、専門的な知見を生かし、基幹統計や一般統計調査について、再発防止、統計の品質向上を目指した徹底した検証を進めていくことに大きな役割を果たすことになるものと期待をいたしております。

 総務省としても、この活動を支援するため、二月一日に総勢約三十名の政府統計検証チームを設けたところであり、統計委員会をしっかり支えてまいりたいと思っております。

高木(美)委員 それでは、統計委員会に伺いたいと思います。

 政府の基幹統計五十六のうち二十四に不適切事案が見られたということですが、主にどういう内容なのか、また悪質なものはどのようなものか、答弁を求めます。

横田政府参考人 一月二十四日に公表いたしました点検結果に関しましては、毎月勤労統計のように、承認された計画や対外的な説明内容に照らして、実際の調査方法や復元推計の実施状況に問題が見られた事案はございませんでした。

 一方、報告があった事案の中には、事業者の誤記載により誤った結果数値を公表したもの、それから、計画上の集計事項の一部が集計あるいは公表されていないもの、その他手続等にミスがあったものといった内容がございました。これらについては、各府省において速やかに必要な対応がとられるものでございます。

 さらに、一月二十八日に追加公表いたしました厚生労働省所管の賃金構造基本統計に関しましては、調査票の配付、回収方法が承認された計画と異なっていた等の報告があったものでございます。

 厚生労働省におきまして、これまでの事実関係について調査結果が既に公表されたところでございます。引き続き調査が進められるものと承知してございます。

 なお、二月一日に公表いたしました小売物価統計調査の事案がございます。これは、国からの指示に問題があった事案ではございませんが、点検の範囲外の事案でございます。

 これは大阪府の統計調査員により不適切な事務処理が行われたものでございますが、毎月勤労統計の事案のように、承認された計画と実際の調査方法が異なるというものではございません。大阪府において適切な対応がなされるものと承知してございます。

高木(美)委員 ありがとうございます。

 要するに、大半は手続上の問題が多く、なおかつ、それについては速やかに手続をするということかと思います。

 ただ、いずれにしても、この統計委員会の存在、非常に重要でありまして、今、基幹統計について順次調査をした中で今回の事案が発覚をしたという大臣からの御答弁がありました。それを更に今度は一般統計に広げていくという話も聞いておりますが、そこのところは、先ほどお話ありました、もう一つの専門部会的な、ここのチームでしっかりとそれを行っていくということでよろしいんでしょうか。

 恐らくこれにはすぐには、短い期間で終わるとは思えませんので、工程表をつくりながら順次進めていくということですが、そのスケジュール感について、もし今御答弁いただけるようでしたら。

 一応、三年間というふうに、私は三年程度と聞いておりますが、いずれにしても、これから統計委員会で御議論いただきながら進めていく話かと思いますが、ここも速やかに検証をしていただきますように、この場をおかりしましてお願いをさせていただきます。

 そこで、これは総理に申し上げたいことなのですが、今回の問題の本質、その根底には、担当職員の職務遂行意識の問題ということが一つ。それだけではなくて、もう一つ、私は組織体制にも問題があったのではないかと考えます。

 政府全体の統計部門において、専門家も少ない、また人事異動のために専門人材も育たない、予算も足りない、したがって意識も低下したという、こうした実態が多くの専門家からも指摘されております。

 実は、日本の政府統計職員は、今、千九百四十人と聞いております。比率でいきますと、アメリカは日本の二・四倍います。また、カナダは八・九倍の統計職員がいるというデータもあります。

 そうしたことを踏まえますと、やはり日本において国際ルールへの対応というのもおくれているということが今懸念されております。もう既に、例えばGDPの調査においても、まとめにおいても、速やかにということで、二〇〇八年、基準が変わったにもかかわらず、やっと日本はその方針が今出たところ、各国は既にその対応が終わっているという、こうした話も届いております。

 今、職員は、毎月の統計をまとめてそれを出すのに手いっぱいで、社会変化に応じた研究開発まではとても届いていない。現状がそういう状況で、これからITの活用とか、また、間違いをチェックするAIの開発とか、進めなければいけないと思いますが、そうしたことにも手が届いていないという現状があります。

 今後、ビッグデータとしてこうした統計のデータを活用していくように、できるように精度を上げていくこととか、また、リアルタイム性が求められる統計分野の対応が必要と考えます。

 やはり、今回の信頼を回復する抜本改革の一つは、統計委員会の機能を強化して、例えば、これは私の考えですが、八条委員会から思い切って強い権限を持つ三条委員会に拡充して、統計改革を更に進めるべきということもあるかと思います。

 総理のお考えを伺います。

安倍内閣総理大臣 公的統計は、国民にとって、合理的な意思決定を行うための基盤であり、EBPM、すなわち証拠に基づく政策立案を支える基盤であります。

 その品質確保、向上を図るためには、統計調査の体制を確保する上で必要な予算、人員の確保、特に統計に関する専門性を有する人材を確保、育成することが重要であるとともに、先ほど御指摘になったように、ビッグデータの活用等による統計作成も有効であると認識しております。

 統計委員会からは、こうした点について建議をいただいており、公的統計の信頼性を確保するため、これらの取組を更に推し進めてまいりたいと思います。

 他方、統計整備の司令塔機能を果たす統計委員会については、昨年の統計法改正によりその機能が強化され、各府省の所管する統計調査について、予算や人材の配分も含め、自律的、機動的に政策提言等を行うことが可能となったところでありまして、まずはこうした機能を十分に活用していくことが重要であると考えています。

 また、今回の統計をめぐる問題を受けて、統計委員会に点検検証部会を設置し、各府省が所管する統計について、再発防止や統計の品質向上といった観点から徹底した検証を行うこととしましたが、そうした結果も踏まえつつ、総合的な対策を講じてまいる所存でございます。

高木(美)委員 また引き続き御検討をお願いしたいと思います。

 次に、防災、減災について伺いたいと思います。

 今や、災害は忘れたころにやってくるではなくて、災害はいつでもやってくるという時代になりました。防災意識社会への転換を進め、一人一人が我が事として準備していく必要があると考えます。

 公明党が昨年行いました百万人訪問・調査におきましても、防災意識が高まっているという実感を受けました。身近な道路、河川、空き家といった危険箇所に対する不安のお声が多く寄せられたわけでございます。第二次補正予算案では、そうした住民の声に応えるために、公明党から強く要請をさせていただきました。

 その内容につきましては、昨年の西日本豪雨などで河川の氾濫、また土砂災害が相次いだことなどを踏まえて、防災・減災、国土強靱化のための緊急対策といたしまして、河川の堤防などの強化、かさ上げ、耐震化、そして、私の地元もそうですが、ゼロメートル地帯の堤防強化、砂防ダム、ため池の整備、また、災害拠点病院等の非常用電源や水の確保などのインフラ整備に向けた予算が大幅に増額されております。

 また、学校のエアコン設置、ブロック塀対策、さらには避難路におけるブロック塀対策も盛り込まれたところと承知しております。

 近年の厳しい気象条件に対応して、子供たちの健康を守るために、第一次補正予算では、全ての小中学校等の普通教室にエアコンを設置するための費用といたしまして八百二十二億円が盛り込まれました。第二次補正予算におきましても、さらに、耐震化であるとか、またエアコンの設置は確保されておりまして、着実に進めることとしております。

 実は、特にきょう申し上げたいこの学校の教室のエアコンの設置についてでございますが、公明党は早くからエアコンの学校教室への設置を訴えてまいりました。最初に取り上げたのは二十八年前になりますが、平成三年、公明党の東京のある区会議員でございます。過去の気温上昇を比較調査しまして、それを根拠に教室のエアコン設置を議会で粘り強く主張し続けて実現をしました。それが横のネットワークの力でまた東京都に広がり、また都議会公明党と地方議員の粘り強い取組によりまして、実は、教室については東京はほぼ完了しております。

 こうした政策実現に当たりましては、まず、受けた要望をもとに私たちは勉強する、そして政策を取りまとめて議会で取り上げる、役所と協議して予算を確保し、予算案を通し初めて実現をするものでありまして、本当に、見えないところでの努力があって初めて形になるわけで、一朝一夕ではできないという状況でございます。

 このエアコンの設置、熱中症対策だけではなくて、子供の学力向上やまた集中力を向上させるために有効なことは、もう既に自治体の調査などでも明らかになっております。

 教室が完了したところ、ここは今、特別教室、給食室などを進めておりまして、それが終わっているというところも多くあります。そこについては、体育館のエアコン設置を強く希望しております。体育館で、猛暑の中、運動していて気分が悪くなった生徒という、その例も報告をされております。また、災害時に避難所になるということはよく言われますが、私の地元でも日ごろから、地域行事やその練習とか、体育館を使っておりまして、地域の支え合いを進めるための拠点機能を持っているとも位置づけられると思います。文部科学省のお考えを伺いたいと思います。

柴山国務大臣 これまで累次にわたるお取組、感謝を申し上げます。

 今御紹介をいただいたとおり、昨年十一月七日に成立した平成三十年度第一次補正予算におきましては、御党の西田実仁議員を始めとして、たくさんの方々に、熱中症対策として公立小中学校等へのエアコン整備のため所要額を計上するとともに、御紹介をいただいた新たな交付金も創設をいたしました。

 そして、本補正予算においては、児童生徒の日々の学習に際して、熱中症を予防し安全を確保する観点から、まずは児童生徒が最も長時間を過ごす普通教室へのエアコンの新設を引き続き優先的に措置をさせていただきました。

 なお、今お話しのとおり、避難所の指定を受けている小中学校等の体育館において避難者の生活環境の改善のためエアコンを地方単独事業で整備する場合には、起債、すなわち、緊急防災・減災事業債制度の活用などが可能であります。その旨を地方自治体に周知をしていきたいと考えております。

高木(美)委員 わかりました。

 文部科学省が今展開しております公立学校施設整備費というこの事業と、それから、今大臣が御指摘ありました緊急防災・減災事業債、この両方をしっかりと組み合わせながら進めていけばこれが可能になるということでございまして、ちなみに、この緊急防災・減災事業債につきましては、対象事業として指定避難所における避難者の生活環境の改善のための施設ということで、空調であるとかWiFi、バリアフリー化に係る施設等という内容が盛り込まれております。これをそれぞれ自治体で上手に使っていただきながら、この地方債の充当率一〇〇%、なおかつ、交付税措置につきましては、元利償還金についてもその七〇%を基準財政需要額に算入をするという、こうした事業もしっかりと、それぞれ現場で工夫していただきながら取り組んでいくということが非常に重要かと思っております。

 いずれにいたしましても、今、体育館のエアコンの設置につきましては、多くの自治体から、そしてまた地元の多くの方たちから御要請があるところでございまして、先ほど申し上げた東京都は、既に教室、特別教室、ほぼ終わっているということから、体育館へのエアコンの設置をことしの夏に間に合わせようということで、補正予算を編成して進めております。設計費、断熱工事費など一体となって行われる工事、またリース契約についても対象としているところでございます。

 こうした、自治体から現場のニーズに応じて出てくる提案というものもやはり国はしっかりと受けとめていただきまして、体育館のエアコンの設置、ぜひとも麻生財務大臣にもお力をいただきまして、前に進めさせていただきたいと思っております。

 私たち公明党、この体育館のエアコンの設置、また今後しっかりと取り組んでまいる所存でございますので、ぜひとも今後ともよろしくお願いを申し上げます。

 本日は、体育館につきましては、そのような形で終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

野田委員長 これにて高木さんの質疑は終了いたしました。

 次に、長妻昭さん。

長妻委員 立憲民主党の長妻昭でございます。よろしくお願いをいたします。

 昨年、日本列島は、台風、豪雨、地震を始めとする数多くの災害に見舞われました。いまだ仮設住宅で多くの方々が暮らしておられ、復興は道半ばです。政府としてしっかりとした対応をお願い申し上げます。そして、立憲民主党も、各地の県連を先頭に、災害対策に全力で取り組んでまいります。

 さて、ことしは元号が変わり、新しい時代を迎えます。私たち立憲民主党は、新しい時代にふさわしい価値を大きく掲げて、来るべき国民の判断、審判を仰いでいきたいと思っております。

 これまでの一つの価値観を押しつける政治ではなく、多様な生き方、お互いの多様性を認める政治へ転換しなければなりません。

 今の政治では、異論が排除され、集団同調圧力が強まるばかりです。それが、組織において、不正まがいの指示がおりてきても、誰も疑問の声を上げることができないという空気の支配を強め、そんたくがはびこる現状を生み出しているのではないでしょうか。

 空気を読み過ぎるのではなく、一人一人の持ち味が十分発揮できると同時に、空気を打ち破る異能、異才が活躍できる社会をつくり上げなければなりません。それが結果として、中長期的に社会や経済の発展をもたらすと立憲民主党は考えております。

 また、自己責任一辺倒で一生を終えることのできる人はほとんどおられないでしょう。困ったときにはお互いさまに支え合うことのできる社会の実現が重要な課題です。

 私たち立憲民主党は、社会の支え合いを支える仕組みをきちんとつくり上げることを大きな目標としており、昨年は、政策を具体化するために三十本以上の議員立法を国会に提出しました。しかし、残念ながら、さっきも国会改革の話がございましたが、ほかの先進国と違って、日本は野党の議員立法をほとんど審議するという慣例がございませんので、こういうことも国会改革、我々、提言しております。ホームページに提言をしておりますので、ごらんをいただければ、ぜひ与党・政府もお考えいただきたい。

 そして、これら政策を立案するに当たっては、言うまでもなく、正確な現状把握が不可欠です。現状把握のための重要なツールが政府統計、その中でも政府基幹統計です。今回は、主にこのテーマで質疑をいたします。

 かつての民主党政権でも、毎月勤労統計調査の不正を把握することができませんでした。深く反省するとともに、私たちの責任は、与野党問わず、徹底した実態解明を進めると同時に、雇用、労災保険を始めとする各種給付について、正しい支給額をお支払いすることにあります。これに全力で取り組んでまいります。

 しかし、困ったのは、今、政府が実態解明にブロックしていると言わざるを得ない状態になっていることです。与野党協力してというふうに思っておりましたけれども、ブロックを政府・与党がするのであれば、それを突き崩すしかありません。

 この観点から、私は、きょう、非常に問題だと思いますのは、私も参考人を四人登録をしておりまして、もう先週の木曜日あたりから申し上げていた方もおられるわけでございますが、一人は大西政策統括官、これ、閉会中審査で、国会で答弁されておられるんですよ、この問題で。

 きょう、突然、私が木曜日に厚生労働省にこの方もお呼びしたいんですと申し上げましたら、翌日金曜日の朝に更迭されて官房付になったと。そうしたらば、官房付は呼ばないんだということで、これは別に理事会で決めれば呼べるわけですね。これはなぜ呼ばないんでしょうか、委員長。

野田委員長 ただいまの件につきましては、既に理事会で協議中です。

 改めて、後刻、理事会で協議をしていただきます。

長妻委員 これは協議中といっても、私、その質問で組み立ててきているので、一旦ちょっと中断して、もう一回協議していただけませんか。

野田委員長 長妻議員にお願いいたします。

 既に、委員会が始まっておりまして、この参考人については、理事会にて、この状態で進めさせていただくということで始まっております。御了承いただいて質問をお続けください。

 委員長としては、理事会で協議の末、現在、この参考人のリストで進めさせていただくということで委員会を再開いたしました。ですから、それに従って、きょうはこの参考人のリストに沿って質疑をなさってください。

 長妻委員、先ほど理事会で協議をいたしまして、きょうはこの参考人のリストで委員会を再開することを決めております。ですから、とめる必要はないと思います。このまま質問を続行してください。

 既に理事会で、この委員会、お昼に協議をいたしました。協議の結果、決裂せずに委員会が再開しているわけであります。ですから、その前提に基づいて、ぜひ質問をなすってください。

長妻委員 いや、委員長、さっき継続中だと言うから、一回中断して、ここで、今、結論出してください。

野田委員長 参考人のあり方について協議中です。後刻、また理事会で協議いたします。本日の参考人については、委員会を再開したことによって、質問を続けてください。

 長妻さん、質疑を再開してください。

長妻委員 さっき委員長が継続的な審議だと、理事会で。これは、じゃ、呼ばないと決まったということでいいんですか。

野田委員長 違います。(長妻委員「じゃ、だから、ここでやってくださいよ」と呼ぶ)参考人のあり方について協議をしているところで、本日の参考人については……

長妻委員 いや、だから、私が質問をそれで組み立てているので、一回ここで休憩して結論を出してくださいと申し上げているんです。

野田委員長 それには及びません。ぜひ質問を続行してください。

 参考人のリストについては、理事会で与野党各理事で見ていただきまして、そして、これについての拒否はございませんでしたので、委員会を再開しているわけであります。

 ですから、質疑を続行してください。

長妻委員 そうしましたら、これは別に、さっき私も申し上げましたように、与野党を問わず実態解明なので、別にその方をお呼びしたら与党に不利になるとか政府に不利になるという話じゃないんですよ。いや、本当にそうなんです。実態解明をするキーマンなんですよ。

 これは今までも前例ありますよ。別に官房付を呼んだケースだって民間人だってあるわけで、今回、お役人の方でありますから、委員長、本当に呼んでいただきたいんですけれども、継続審議を、じゃ、呼ぶ方向でしていただくということでいいんですか。そうであれば続行します。

野田委員長 後刻、理事会にて協議します。

長妻委員 これはちょっと、なぜなのか。

 総理にちょっとお伺いしたいんですが、総理は自民党総裁という立場でもございますけれども、ぜひ、総裁の立場から、前向きに検討しろと。国会改革、国会改革といいことは言っておられると思いますけれども、我々も言っていますが、ただ、与党の国会改革というのであれば、ここへ参考人呼んでくださいよ。

 それが、私は、国会改革の本丸は行政監視機能を更に高めることだと思いますよ。日本の国会、弱過ぎますよ、行政監視機能が。

 ぜひ、総理、自民党総裁として前向きに考えたらどうだと御発言いただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 従来から申し上げておりますように、私は内閣総理大臣としてこの場に立っているわけでございまして、ただいまのこの参考人のやりとりは今ここで私初めて知ったわけでございますので、お答えのしようがないわけでございます。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛にお願いします。

安倍内閣総理大臣 それは国会の運営でございますから、まさに委員会でお決めになることだろう、このように思います。

長妻委員 これは、テレビをごらんになっている方は、ああ、総理は行政府のトップで、国会で決めることは国会で決めなきゃいけないのかなと思われるかもしれませんが、私も長年国会議員をさせていただいておりますけれども、そうじゃないんですね。

 実際に、証人喚問とか参考人を呼ぶときに、官邸がストップをかけている、そして、官邸からゴーサインが出たから呼べます、こういう話も多いんですよ。ですから、総理は、じゃ、御存じなくても、前向きに呼んだらどうだと一言言えば、すぐ今来ると思います。どうぞ。

安倍内閣総理大臣 きょう、私は今ここで初めてこの事態を知ったわけでございますので、いずれにいたしましても、委員会において見識を持って御判断をいただきたいと思います。(発言する者あり)

長妻委員 いや、だから、理事会と今声が出ましたから、ぜひやってください、今、理事会。自民党からも今、理事会開けという声がありました。お願いします。

野田委員長 傍聴席の方、御静粛にお願いします。

 後刻、これについては理事会で協議するということをお昼の理事会で決めておりますので、そのときにしっかり協議をさせていただきます。

 お続けください。

長妻委員 私も立憲民主党を代表して今質問しているんですが、きょう、立憲民主党の議員、会派の議員が三人質問するんですよ、このテーマで。きょう、あしたから呼ぶとかあさってから呼ぶというのは嫌がらせにすぎないんじゃないですか、そうしたら。何で立憲民主党が質問するときには呼ばないんですか。そして、後刻協議して、そして後刻呼ぶんですか。

 例えば、私も、なぜこの大西さんをお呼びするかということは、まず、具体的に、十二月二十日、大臣に報告をした、第一報を報告したのがこの大西さんであるということが第一点。常識的に考えると、翌日は予算の閣議決定なんですね、あるいは毎勤の確報値が出るんですね。そうすると、前の日に、私どもの経験では、大臣に一報を入れておこうということで報告したはずなんで、そこについての資料と中身を知りたい。

 そして二点目は、この大西さんは、去年十二月十三日に統計委員会委員長が厚労省に初めて指摘した、この不正についての疑いですね。そうしたときに、この指摘された室長が大西さんに報告しているんですね、そのときに。何でずっとそれを握ったままなのか。監査報告書に書いていません、理由が。

 そしてもう一つ、三番目は、この大西さんの名前で去年の九月二十八日、資料が統計委員会に出ているんですよ、政策統括官の名前で。それで、その資料が大うそが書いてある、後で言いますけれども。うその、虚偽の資料が総務省の統計委員会に提出されているんです、政策統括官の名前で。ですから、何でそんなうその資料をつくったのか。

 もっと挙げればいっぱいありますが、主要なものでもこの三点が鍵を握るんですよ。一体、今回のケースは、本当にうっかりミスなのか。監査報告書を私も熟読しました。線を引いて、もう何度も何度も読みました。ここに書いてあるのは、うっかりミスでした、悪気はありませんと書いてあるんですよ。うっかりミスであれば、注意すれば直るでしょう。しかし、本当にうっかりミスだというふうに政府や国会が認識したままこれから進んでいいんでしょうか、こういう問題意識があるんですよ。

 ですからお呼びいただきたいということなんで、ぜひ、委員長、呼ぶのであれば、この次、大串議員が質問しますから、それまでに決断いただきたい。そうでないと、立憲民主党のときは呼ばないという変な前例を、厳しい質問のときに呼ばないというのかどうかわかりませんけれども、そういうことになりかねないんじゃないかというふうに思います。

 そして、きょうは、独立行政法人の理事長も来られておられますかね。樋口理事長、来られておられると思います。

 総理は、先週の本会議、衆参で、第三者機関の調査ですね、独立性を高めるということをおっしゃいましたけれども、具体的に、総理、どういうふうに高めるんですか。総理本人がおっしゃいましたから、総理に。いや、総理本人がおっしゃっているんです。大臣はおっしゃっていないんですよ。総理がおっしゃっているんで、事務局機能も含め、より独立性を高めた形で更に厳正に調査を進めると総理がおっしゃっているんで、別に総理を責めていないんですよ、何で答弁されないんですか。一緒に、だから解明しましょうということなんですよ。総理、どうですか。

根本国務大臣 特別監察委員会は、今般の事案について、統計の専門家、弁護士などの外部有識者による中立的、客観的な立場から集中的に検証を行い、事実関係と関係職員の動機、目的、認識等、さらに、責任の所在を明らかにする報告書を一月二十二日におまとめいただきました。

 そして、今、国会の御指摘等も踏まえて、特別監察委員会については、事案に関連した幹部も含めた職員等に関し、さらなる……

野田委員長 根本大臣、適切にお答えください。

根本国務大臣 委員が直接質問する形でさらなるヒアリングを行っております。

 そして、特別委員会の運営については、委員会において御判断をいただくものですが、特別委員会には、特別監察には、今後、事務局機能も含め、より独立性を高めた形で厳正に調査を進めていただきたいと考えています。

安倍内閣総理大臣 まず、毎月勤労統計について不適切な調査が行われ、セーフティーネットへの信頼を損なう事態を招いたことについて、国民の皆様におわびを申し上げます。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

安倍内閣総理大臣 高い専門性と信頼性を有すべき統計分野において長年にわたって誤った処理が続けられ、それを見抜けなかった責任については、重く受けとめております。

 その上で、厚生労働省の特別監察委員会において、更に、事務局機能を含め、より独立性を強めた形で厳正に検証作業を進めていただくこととしております。

 そのため、具体的な運営方法についても、特別監察委員会においてお決めいただくことが適当だと考えていますが、事実の検証や実態の解明に関する部分については、職員の関与を極力排除した形で行われることが望ましいと考えています。

 また、樋口委員長は、統計委員会の委員長を務められるなど、統計の専門家であるとともに、労働経済研究の専門家であること等から、その個人の資質に着目して特別監察委員会の委員長をお務めいただいているものと承知をしております。

長妻委員 それで、樋口委員長にお伺いしますけれども、樋口委員長は、本業は厚生労働省の独立行政法人労働政策研究・研修機構理事長でございますが、ここの組織は、どこから予算を幾らもらっておられますか。

樋口参考人 樋口でございます。

 平成三十一年度の予算案につきましてお答えいたします。

 二十七億五千五百万円を頂戴しております。うち、国費が二十七億百万円、そして自主財源が五千三百万円でございます。

 二十七億百万円の内訳でございますが、運営費交付金が二十三億、そして施設整備費補助金が三億一千万ということでございまして……(長妻委員「どこからですか。厚労省から」と呼ぶ)厚労省といいますか、国からそういう意味ではいただいております。

長妻委員 これは厚労省の予算なんですね。言いづらいのかもしれませんけれども。

 厚労省の独立行政法人の理事長。私は、樋口先生は立派な方だと本当に思っております。尊敬も申し上げているんですが、でも、酷ですよ、根本大臣。独立行政法人のトップ、厚労省に陳情に来て予算をお願いして、それで運営費交付金をもらっているわけですよ。私も厚労省の中にいたからよくわかりますけれども、そこが、現役出向も受け入れていますよ、中立的な立場で、厳しいことを書けるわけないじゃないですか。酷ですよ、それは。

 そして理事長、職員の方からちょっとこんな話もあって、いや、監察の仕事が忙しくて今理事長職がなかなかできていないというようなお話もあるんですが、相当理事長職以外の仕事が多いということなんですか。

樋口参考人 監察委員会の、時間をどれぐらいとられているかということにつきましては、これはまた後日の話になるかというふうに思いますが、私は、今、JILPTの理事長の業務については遂行しているというふうに思っております。

長妻委員 後日というのがよくわからないんですが。

 理事長、専任という前提で、約束で、お給料も専任ということでお支払いをしているわけでありまして、これは聞きづらいんですけれども、理事長としては、御自身が、第三者委員会の責任者として、中立的な立場で本当に厚労省の職員に厳しい判断をできるというふうに理事長は思われておられますか。それとも、できればほかの方にかわった方が公正が保てるんじゃないかと。世間の目も含めて、どういうふうに御自身では思われておられますか。

樋口参考人 私自身、今回、統計の専門家ということで、長い間統計に携わってまいりました。また、統計委員会の委員長も務めたというような経験も持っております。

 今回の問題、やはり、解明する上では、どうしても統計的な知識といったものが必要である、そしてまた、それにおいて事実を明らかにし、なおかつその再発防止について対策を考えていくということではこの知識が必ず必要になるというふうに思っておりまして、そういう理由によって、私の責任感から、正義感から、それを受けたということでございます。

長妻委員 これ、なぜ一週間で結論を出して、それをまた再調査ということになったんでしょうか。そして、本当に組織的隠蔽はないというふうに確信されておられるんですか。

樋口参考人 本日、独立行政法人の労働政策研究・研修機構の理事長として招致されているというふうに認識しております。このため、ただいまの御質問につきましては答弁を差し控えさせていただきたいというふうに思います。これは中身に関連してくるもの、特別監察委員会の中身に……(長妻委員「誰に言われたんですか」と呼ぶ)誰にも言われておりません。

長妻委員 これ、ちょっと。

野田委員長 長妻さん、どうぞ。

 では、樋口理事長、もう一度御答弁をしてください。(発言する者あり)いや、答弁はしてくださいと申し上げました。お静かにお願いします。

樋口参考人 特別監察委員会の内容についての御質問だろうというふうに思いますので、私がきょうここに呼ばれておりますのは、繰り返しになりますが、独立行政法人の労働政策研究・研修機構の理事長として……(発言する者あり)

野田委員長 答弁中。静かに。

樋口参考人 そういうふうに私は認識しております。

長妻委員 これは別に私、細かいことを聞いているので、なぜ再調査になったのかと。そして、独立行政法人として、繰り返しですけれども、樋口先生は私もよく知っていて、本当に立派な方だと思うんですが、ただ、厚労省に予算をもらう立場で、現役出向も受け入れて、そういう力関係の中で、酷ですよ。

 総理が、独立性を高めるという先ほど詳細の答弁で、樋口委員長はかえないというふうな趣旨の答弁をされました。これは、この人事では我々容認できません。きちっともっと体制を、お気の毒ですよ、樋口委員長も。

 ですから、そういうことについて、それで、ここでも答えられないというのは、多分、樋口委員長が御自身でお考えになったのか、誰かがそういうサジェスチョンしたんですかね。ちょっとそこら辺はわかりませんけれども。

 それで、もう一つ、ちょっと大西さんが来られないんで核心の質問ができないんですけれども、であれば、別の、もう一つ重要な給付の話でございます。

 先ほども、午前中、自民党から給付の話がございましたけれども、根本大臣、そうすると、二千万人の給付漏れの方は待っていればいいわけですか、御自宅で。待っていればいつかは厚労省から必ず連絡が来る、こんなような答弁でございましたけれども、それで間違いないですね。

根本国務大臣 先ほど私も申し上げましたが、現に受給されている方は全部わかっていますから、それはきちんとお支払いをする。そして、今の二千万のうち、政府が住所を把握していない方、これは、今般の雇用保険の追加給付の対象となる方の中で、ハローワークシステムで住宅情報を保有していないなどにより住宅情報の特定が困難な方がおられるのは事実です。わかる方にはこちらからお知らせをいたします。

 具体的には、住宅情報がない方は延べ一千万人以上はおられるものと想定しています。実際の人数の把握には、システム改修によって追加給付の対象者を具体的に特定する必要があります。

 そしてまた、ハローワークシステムなどで住宅情報を保有している方であっても、転居等により住宅情報が変わっている方もおられるものと想定されます。こうした方については、住基ネットやハローワークで保有している住宅情報の活用を含め、我々、さまざまな手法を検討して、できる限り多くの方々の住所を特定できるように最大限努力をしていき……(長妻委員「じゃ、待っていればいいわけですね」と呼ぶ)いや、あと、我々、情報を提供していますから、自分が該当するのではないかと思われる方にもぜひ手を挙げていただきたいと思います。我々は把握する努力をしっかりさせていただきます。

長妻委員 ちょっと、今びっくりしました。午前中には、きちっと待っていればいずれ住所を特定して連絡が来るという趣旨の話で、自民党の質問者も、追加給付については大分見えてきたということで、すごく評価をされておられたように聞き、全然話が違いますね。

 つまり、一千万人ぐらいの方が住所もわからない、それで、できる限り住所は特定するけれども、わからない場合はちょっと連絡がないかもしれないということなので、これは根本的に、根本大臣、原因究明をしないといけないんですが、今もどんどん問合せをいただいている方が多いんですよ。そしたら、その問合せをいただいている方の電話番号とか住所とか名前を詳細に記録してください。記録をして、後日必ずその方に、わからなくても、一定期間後レスポンスを返してください。そういうような対応をしないとだめなんですよ。それで、住所がわからないので、こういう方々の住所がわからない可能性があるので御自身から名乗り出ていただきたいという告知もした方がいいと思うんですよ。

 いろいろな意味で取り組まなければ、今、午前中の審議だけ聞いていたら、全部完璧にできる、スケジュールが全部、十一月まで、あるいは工程表ができたというふうに誤解するので、自民党もきちっと質問してください。誤解しますよ。待っていればいいというわけじゃないんだから。きちっとシステムとか給付の仕組みをつくり上げていただきたい。これはお願いをいたします。

 そして次に、私は、政治的な統計の中立性、これについて議論をしていきたいと思うんですが、非常に今回不可解なことがたくさん起こっているところでありまして、第三者委員会が突っ込み不足なんです、本当に。ぜひもっと突っ込んでいただきたいと思うのでございますが。

 一つは、まず、パネルの三番でございますけれども、これが、名目の現金給与総額の対前年同月比、公表されているものでございますが、これは古いやつです、これまでのやつです、総理。このブルーのところが公表値で、参考値、これは共通事業所と言われるものでございます。これは従来の、これまでの、不正がばれる前のですね。

 そうすると、これを見ていただきますと、公表値につきましては、六月にがんと上がっていますね、六月に、ここにですね。平成三十年の六月、前年同月比、どんと三パー以上上がっている。

 これはすごいなということで、新聞が出ました。こういう報道が出て、これは経済が回復したんじゃないか、名目賃金二十一年ぶり上昇だとどんと出た。

 ところが、今回不正が明らかになって、実は、東京の五百人以上の事業所については全数調査をする予定が、三分の一しかしていなかった。ただ、復元を、黙ってこそっと三十年の一月から復元していましたから、東京は、それまでは三分の一しかしていないものが、三十年の一月以降、その三分の一までしていないものを三倍に、簡単に言うと、逆数をかけて補正をした。それは、三倍にしたのと三分の一なのと、お給料が上がるのは決まっているじゃないですか。比べ方が違うんですから、総理。どんと上がっているんだ、ブルーが。これはもう、これをつくった人はわかっているわけですよ、こんな上がるからくりが。わからないのは世間だけ、去年。

 ところが、これは悪質だと思いますのが、参考値というものについては共通事業所で過去さかのぼるんですが、参考値については、実は過去も復元していたんですよ、この不正の復元を。だから、どんと伸びていないんですよ。ところが、公表値だけは三十年一月以降三倍にした。参考値はそれまでも、二十九年も二十八年もその前の二十七年も三倍にして補正しているんですよ。ですから、そんなの、公表値というのが表に出ますから、どんと高くなる。非常にこれは悪質なんですね。

 これで隠蔽の意図がないと言えるんですかね、総理。だって、こっちは、赤はちゃんとやっているんですよ。

 それと、もう一つ、この今の新聞の記事でございますけれども、ここの記事にも出ているんですが、厚労省が、何でこんなに高く出たんだと聞かれたらば、こんな説明をされているんですね。ボーナスの支給が七月から六月に前倒しした可能性も考慮する必要がある。つまり、ボーナスの支給が六月に前倒しされたから、今回どんとこれは高くなったんだよ、こういううその説明をしている。このときに、過去を調べると、昨年、四つか五つか、ちゃんと話す機会があったんですよ、不正を告白する機会があったんです。ここでもうそをついて、つまり、賃金が水増しされているというのを言わずに、うその説明をしている。

 そして、もう一つ、もう一つのパネルで、きわめつけは、この四ページ、四番でございますけれども、これについては、きょうは、委員長、統計委員会の委員長もお呼びしたんですが、これもだめだということで呼んでいただいていないんですよ。これは統計委員会の委員長が第一発見者ですからね、今回の不正の。別に与党とか野党に不利、有利じゃないんですから。何で呼んでいただけないんでしょうか。何にも国会でできないですよ。

野田委員長 お答えします。

 先ほど理事会でも御報告がありましたけれども、ただいま西村さんは米国に出張中ということで、本日来られないということです。(長妻委員「代理の人は。代理は」と呼ぶ)代理という御要請がなかったものですから、参考人。ですから、御本人がいなければ、もうそれで……(長妻委員「阿部さんは。阿部さんもお呼びしましたよ、厚生労働省の検討委員会」と呼ぶ)今、統計委員長のお話をされていたので……(長妻委員「検討委員会の阿部さんも呼びましたよ。それもだめ」と呼ぶ)それについては、協議調わずで招致しておりません。

長妻委員 これは、まあ本当に、こういう専門的な議論をするときに、ひどい話だと思います。立憲民主党の質問のときに来ていただけないということで、厳重に抗議をいたします。

 これについては、まさに統計委員会に、厚生労働省の政策統括官、当時大西さんの名前で示された資料で説明もしております。

 これは統計委員会に聞かれたんですね、何でこんなに賃金が上がっちゃったんだと。聞かれたときに、従来、上の説明をしていたんですよ。上の説明は、二千八十六円差があります、新旧の差があります。平成三十年の一月の旧ベンチ、旧サンプル、新ベンチ、新サンプルを比べると、ある。その中で、ベンチマーク、労働者の数の補正ですが、これが千七百九十一円分。サンプル入れかえ分、全取っかえ方式からローテーションサンプリング方式に変えた。二百九十五円だと。〇・七と〇・一だと。この右の復元分は言っていなかったんですよ、これはまたばれていませんから。この二つという数字をつくったんですよ、厚生労働省が。そして、うその数字を御丁寧につくって、二千八十六円ということで示していたわけです。

 ここまで巧妙に手の込んだ形でうそをついて、そして、ばれた後、再集計をしてもらいましたらば、二千八十六円は同じです、これは差が。ところが、復元分、ここですね、一番右のところが不正の部分で、七百八十二円上乗せになっていた。これを言わずに、この数字をまぶして数字をつくっていた。

 こういうようなことが発覚して、これでも組織的隠蔽がなくて、うっかりミスと言うんですかね、総理。根本大臣、そうなんですかね。ちょっと時間もないので後で聞きますけれども。

 こういう、具体的に数字をつくり上げるとか、マスコミに虚偽の説明をするとか、統計委員会に虚偽の説明をするとか、公表値だけはインチキにして参考値はちゃんと正しくするとか、そういう手が込んでいるんですよ。

 それで、一つ、さっきの三ページの表ですが、三十年の一月というところがポイントなんですね。ここで、不正を隠蔽するために復元もしましたが、実は、同時に統計のとり方を変えたんですね、三十年一月に。ここの経緯も不可解なんです。

 ここで麻生大臣にちょっとお伺いをするんですが、これは配付資料にはございますがパネルにはございませんけれども、麻生大臣発言、あるマスコミは、昨年の報道ですけれども、鶴の一声があった、こういうふうに書いているマスコミもございますが、つまり、どういうことかといいますと、経緯を申し上げますと、平成二十七年の九月に、厚生労働省に設置した毎勤統計の改善に関する検討会というのがございました。そこの座長が阿部さんということで、きょうお呼びして、呼んでいただけないということなので、その方に詳細を語っていただこうと思ったんですが。

 ここで毎勤の統計について正確性を期するための議論が行われたと。ところが、ここでいろいろ議論をして専門の先生が入って、その先生方とも私、何人ともお話ししましたけれども、こういう結論が出たと。全取っかえ方式と一部サンプルを入れかえるローテーション方式について、「サンプルを一定期間固定することに伴うバイアスは、ある程度存在するとしても、賃金分析の判断に影響を与えているとまでは考えにくい。」ということで、いろいろ考えたけれども、現状のままでもいけるのではないか、むしろ現状のままの方がいいのではないかと複数のいろいろな考え方を相当詳細に検討して、そして最終報告書、中間報告ですけれども、平成二十七年九月に出たんです。厚生労働省としては、じゃ、そのままでいこうということになったんです。

 ところが、翌月、なぜか麻生大臣が、経済財政諮問会議、平成二十七年十月に、副総理という立場で細かい統計の話を相当し始めた。議事録もございます。

 その議事録を読みまして、なるほどと思いました。議事録のタイトルは、アベノミクス第二ステージに向けて、こういう議事録の中で、麻生大臣がこんな発言をされておられる。「毎月勤労統計については、企業サンプルの入替え時には変動があるということもよく指摘をされている。」「ぜひ具体的な改善方策を早急に検討していただきたい」。変えろということなんです。

 配付資料にもございますけれども、配付資料の二ページ目の真ん中でございますが、こういうふうに毎勤統計が下に下がっちゃっている、下振れしているから、もっとこれ、何か、何とかしろみたいな話に私は聞こえるんでございますけれども。

 そして、この経緯が、実は、私もさっき熟読した監査の報告書の中に二カ所も、コピペを忘れたんだと思いますが、同じ文章で二カ所出てくるんです、同じパラグラフが。

 ここに何と書いてあるかといいますと、こういうことが書いてあるんですね、この監査報告書に。ローテーションサンプリングの導入議論、つまり、麻生大臣は、全取っかえ方式ではなくて、一部ずつサンプルを入れかえるローテーションサンプリング方式など、別の方式を考えろ、こういうことを受けて、こういう報告書、監査報告書に書いてあります。

 毎勤統計については、厚労省内でも「その改善について有識者による検討が行われていた」、それは今御紹介したとおりです。今の現状でいいという結論が出たわけですが、「行われていたが、平成二十七年十月に開催された経済財政諮問会議において、全サンプルを三年に一度一時に入れ替えることによって「事業所サンプルの入替え時に「非連続的な動き(数値のギャップ)」が生じているのではないか」との指摘があり、」この指摘をしたのは麻生大臣ですが、「この指摘を踏まえ、総務省の統計委員会で毎月勤労統計調査へのサンプルを毎年三分の一ずつ入れ替えていくローテーション・サンプリングの導入等の議論が行われた。」

 この行われたという書き方なんですが、これは厚労省が提案したんですね。厚労省も、いろいろやはり上からの話があったのか、提案せざるを得なくなって、審議会の結論とは別の、逆の提案をしたということなんです。

 その後の、ここに書いてあります報告書を読みますと、「ローテーション・サンプリングの導入に向けたプログラム改修を指示した。その中で、それまで実施していなかった東京都における規模五百人以上の事業所に係る抽出調査の結果及び三十人以上四百九十九人以下の事業所のうち東京都と他の道府県で抽出率が異なる一部の産業の調査結果についてプログラム上適正に復元されるよう改修がなされた。」こういうふうに書いてあるわけですね。

 つまり、どういうことかといいますと、まず麻生大臣がそういう改善を言って、そこでローテーション方式に変わる、その機に乗じて不正の復元もした。しかも、分析をいたしますと、麻生大臣が唱えた方式でも〇・六の乖離が出ているというようなことも明らかになりまして、麻生大臣、どんな意図でこれはお話しになったんですか。

麻生国務大臣 経済財政の運営をするに当たりましては……(発言する者あり)

野田委員長 お静かにお願いします。

麻生国務大臣 当たり前の話ですけれども、政策判断の基礎となる統計というものは、精度の向上というのが常に求められているのは当然のことでしょう。

 このような認識のもとで、平成二十七年の十月の十六日の財政諮問会議において、経済情勢を的確に把握するため、基礎統計の充実に努める必要があるということを訴えたところで、その一例として、毎月勤労統計においてサンプルの入れかえ時の変動が大きくなって、経済情勢のいわゆる的確な判断が難しくなっている現状というのがあるわけですから、その現状を紹介して、統計の精度向上に向けた取組というものを私どもとしては促した。これは当然のことなんだと思います。

 なお、サンプルの入れかえ方式の変更というのは、これは私が発言する以前の二十七年の六月から、厚生労働省のいわゆる検討会で議論が既に開始されていたものだと私どもとしては承知をいたしております。

長妻委員 これは麻生大臣、誰にそういうふうに言われたのかわかりませんが、その二十七年云々かんぬん、厚生労働省の検討は、現状でいくと。専門家の先生、相当議論しましたよ。それでそういう結論になっているんですよ。

 麻生大臣、一体どうしてそういう発想が出るのか。全取っかえ方式、ローテーションサンプリング方式、全取っかえ方式も、厳密な全取っかえ方式じゃないんですよね。例えば三年、サンプルを固定したらば、三年と一カ月だけは、新サンプルと同じ一カ月ダブらせて、そこでの賃金差を過去三年にさかのぼって賃金指数を補正する、三角補正と言われていますけれども、それをきちっとやっているんですよ。

 ですから、そういうような形で、やみくもに変えろみたいな指示をおろしていくというのは、うがった見方をすると、賃金が下がる方向に改定するたびになるので、何かそういうことは嫌だなというふうに思われたのかどうか。そこら辺の真意を教えていただきたいんですよ。どこの具体的な問題を感じてお話しになられたのか。

麻生国務大臣 冒頭申し上げましたように、こういう政策判断、これは財政とか経済とかそういうものを運営するに当たっては、政策判断の基礎となる統計というものの精度の向上を求める、これは当然のことなんだと思っておりますので、その中で、今引用されました厚生労働省の監察委員会の記述の趣旨について私がコメントする立場にはありませんけれども、少なくとも、私の発言が不適切な取扱いのきっかけになったというような記録はないというように理解をしております。

 いずれにせよ、平成二十七年十月の十六日の経済諮問会議の私の発言というものは、重ねて申し上げますが、経済情勢を的確に把握するために基礎統計の充実に努める必要があるということを訴えたものなのであって、今回の発言若しくは問題というのは、私が財政諮問会議で訴えていたこととは全く関係がないことだと思っております。

長妻委員 いや、結局は、それが相当上振れ要因に、麻生さんがおっしゃった、その後の上振れ要因になって、かつ、そこに不正も紛れ込んだというようなことが現実には起こっている。

 しかも、その不正の説明は、去年は我々はわかりませんでした、誰もわかりませんでしたけれども、世間に向かっては賃金が上がった理由をボーナスが前倒しされたとか、そして統計委員会にもうそをついて、なぜそれを正直に言わなかったのか。

 この第一回目の平成二十七年の厚生労働省の毎勤の改善検討委員会、平成二十七年六月三日ですが、わざわざ厚生労働省の統計部長が、一回目の挨拶にこんなことをおっしゃっているんですね。皆様方も御承知のように、アベノミクスの成果ということで、賃金の動きが注目されております。昨日、四月の速報を発表させていただいて、プラス〇・一%ですけれども云々かんぬん。夕刊、朝刊にもこんなにいっぱい記事が出たのは何十年ぶりではないかというぐらい久しぶりに大きな記事になっておりまして、世間的な関心が大変大きくなっているというようなことをおっしゃっていた上で、相当議論をして、そして結論が出たと。バックデータも配付資料につけておりますけれども、結論が出た。

 それを、私は不可解なのが、財務省の麻生大臣、財政諮問会議の中で、資料を片手に、どんとひっくり返すような御発言をしたというようなことについて、報道などでも、麻生大臣の鶴の一声とか、あるいは、統計データで賃金上昇をアピールしたい安倍政権の意向を官僚組織がそんたくしたのではないか。これは麻生発言のことではないですけれども、厚労省が政権の意向をそんたくし、あえて詳細な説明を避けてきたのではないか。

 これは去年の報道で、つまり、この不正がばれる前にも説明が二転三転したのを取り上げた報道でございますけれども、こういう非常に、政治的中立性が保てるのかどうか、財政諮問会議の中枢の人間が厚労省から出た結論をひっくり返すような御発言をされているということについて、きょうは実は、四人お呼びした参考人の方の中から、ある程度の証言を得られる方もお呼びしていたんですが、これも呼んでいただけないということなので、次回に必ず呼んでいただきたいというふうに思います。

 そして、実質賃金の話でございますけれども、これについても国会が解明しなきゃいけません、今の話も。政治的な中立性がどこまで保てるのか。日本は、政治的中立性が非常に危ういんじゃないかという議論もあるわけでございますので……(安倍内閣総理大臣「ないよ、そんなもの」と呼ぶ)

 いや、総理、御存じですか。今、日本の統計が相当脆弱になっているんですよ、総理。日本は戦後、統計は先進国の中で非常にレベルが高いとも言われていました。

 私も統計の専門家と議論したら、こんなことをおっしゃっていました。戦前は、政治に統計が左右されて、いいかげんな統計がいっぱい出て、それがあの誤った戦争の判断の一つにもなってしまった。そういう強烈な、先達たちは反省に立って、政治に左右されない正確な統計をつくろうつくろうというふうに努力をしてきたけれども、これは私たちの責任でもあると思うんですが、統計を軽んじて、余り重きを置かずに、人、物、金をどんどんどんどん削減をしていった。そのツケが回って、大学にも統計学部が日本はないんだ。ほかの学会に出ても、今は統計の人材が一気に細っている。そして、今回こういうようないいかげんな、私に言わせたら、なぜか、うっかりミスにしては全部が賃金が高く出るようなうっかりミスなんですよ。何でそんなうっかりミスになるんだろう。(安倍内閣総理大臣「逆」と呼ぶ)

 いや、逆じゃないですよ、総理。平成三十年には賃金が高く出るんですよ、総理。つまり、二十九年までは下がっていた、おっしゃるとおりです。かさは下がっていたけれども、平成三十年にどんと上がった。過去を復元しないで平成三十年は上がったから、三十年は上昇率が高く出るじゃないですか、総理。

 そうしたら、総理、もう一つおっしゃっています。実質賃金について、まずそこから答弁をぜひいただきたいと思うんですが、省庁で議論している、実質賃金の参考値の公表について議論をしていますということを本会議でもおっしゃられたので、それについてぜひ出していただきたいと思うんですが、いかがですか。

野田委員長 総理の御答弁の前に、まず、担当の茂木大臣から。(発言する者あり)関係あります。

茂木国務大臣 経済の動向についてでありますから。

 まず一つ、テレビをごらんの方も若干混乱しちゃうのが、五百人以上の事業所については全数調査をする、そしてそれ以下についてはサンプルのローテーションということになっています。それで、五百人以上については……(発言する者あり)

野田委員長 では、茂木大臣、速やかに。

茂木国務大臣 言わせてください。簡潔に言いますから。

野田委員長 簡潔に。

 簡潔に言った後、総理が。長妻さん、簡潔に、今、たくさんの質問があったので整理してから。(長妻委員「だから、わかりましたけれども、立憲民主党の時間を延ばしていただけますか、そうしたら。さっきもずっと時計をとめていただかなかったので」と呼ぶ)いやいや、それは違います。答弁している最中なので、聞いていただければ。内閣総理大臣の答弁の前の、今までたくさん質問いただいたから整理して……(長妻委員「じゃ、短く」と呼ぶ)はい。国民の皆さんにわかりやすく。

茂木国務大臣 三十年分については、東京都の五百人以上の事業所、本来これは全数調査をするんですけれども、サンプル調査しかしなかったために、本来高い東京都のウエートが低く出た。ところが、二十九年まではこの加重をしていなかったために、二十九年まで低過ぎたために、結果的に三十年の伸び率が高くなっているんです。三十年の値が高いわけではないんです。

 更に言うと、実質賃金について申し上げると、我々になって、デフレではない状況が生まれて……

野田委員長 茂木大臣、簡潔にお願いしますね。

茂木国務大臣 雇用が拡大をした、これによってということであります。

長妻委員 それは私もよくわかっていますよ。さっき申し上げたじゃないですか。(安倍内閣総理大臣「わかっていない」と呼ぶ)わかっていますよ。

 平成二十九年、二十八年、これは、五百人以上が三倍に補正をしていない、復元をしていなかったと。それは低く出る。ところが、平成三十年の一月から復元をしたから、それは高く出るから、伸び率だけでいうと、平成三十年の一月から、どんと、前年同月比、高く出ると。これは当たり前じゃないですか。

 私が聞いているのは、名目は出ました、しかし実質が出ていないんですよ、実質賃金が。そこで、総理に先週来本会議場で聞きましたら、今、省庁で、実質賃金、参考値、共通事業所、出すように努力しているというような趣旨の話が、総理、ありましたので、いつ出てくるんですか、実質賃金。

安倍内閣総理大臣 先ほど茂木大臣が答弁させていただいたところが大変重要な点で、長妻委員が、まるで三十年にいきなり私たちが高くしたかのごとくの質問をされましたから、その誤解を解くために、まさに補修がなされていなかったものを補修したからそういう値になったということ。それはおっしゃらなかったから、今、誤解を解くために茂木大臣が答弁しようとしたら、何かそれを妨害されたから、やはり、それをあえてまた更にしっかりと茂木大臣から答弁させていただく。

 こういう議論は、ちゃんと数値を分析して……(長妻委員「じゃ、参考人を出してくださいよ、そんなことを言うのなら。もっと実のある議論ができますよ、参考人を出したら」と呼ぶ)ちょっと待ってください。これは、今、テレビ、皆さん見ておられるんですよ。

 そこで、参考人を出してくださいという議論を先ほどしましたよね。今しているのは、果たしてこの数値がどういう数値かということを冷静に議論しているわけでありまして、長妻さんが、まるで三十年に安倍政権がいきなり、安倍政権がやっていることをよく見せるためにそれを糊塗しているような、そういう印象だったものでありますから、茂木大臣から、冷静にちゃんと分析をさせていただいたということであります。

 そこで、議員御指摘の平成三十年の参考値については、今回の再集計でそれほど大きな影響を受けていないものと承知をしており、そのことがこれまでの賃金動向に関する判断に影響を与えるとは考えていないわけでありまして、その上で、参考値をベースとした実質賃金の算出が可能かどうかということについては、これは担当省庁において検討を行っているということでございます。

長妻委員 ですから、参考人の方を、別に与党に不利になるとは思いません。統計委員長とか、あるいは毎勤の、麻生大臣も触れられた阿部座長などなどを呼んで議論をしたいと思ったんですが、それがかなわないので、非常にちょっと消化不良なんですよ、この質疑が、せっかくの時間をいただいたのに。

 私が申し上げているのは、一体、日本の実質賃金の伸びはどのくらいなのかが今わからない状態になっているんじゃないか。つまり、例えば、従来の公表値は二・五%。一番高い、昨年の六月の実質賃金、前年同月比ですけれども、二・五%。再集計値が二%。これは出ました。〇・五下がっている。

 しかし、西村委員長も含めて、統計委員会、あるいは厚労省もそうです、比べるときは参考値が必要だ、こういう見解を出している、五枚目、五ページですね。これは御存じのように、賃金の変化率の捉え方、自民党がこの「水準」を消せと言うのでこれは消しましたけれども、タイトル。統計委員会としては、景気指標としての賃金変化率は共通事業所を重視していくことが適切、こういうふうに明言しています。厚生労働省としても、継続標本(共通事業所)による前年同月比を重視していく、景気指標としての賃金変化率はというふうに書いてあるところでございます。

 ですから、この野党試算といいますのは、これは共通事業所で、統計委員会もおっしゃっているように、比較をするときは共通事業所ということで、野党が試算をすると〇・六になるんですね。つまり、昨年の実質賃金の伸びは、プラスになったのが五カ月なんですね、政府発表資料は。ところが、統計委員会あるいは厚労省が推奨するやり方、そちらの方を重視すべきというやり方で野党が計算をすると、一カ月しかプラスにならない、〇・六。

 これは相当ないろいろな判断に影響が出てくると思うのでございまして、これについて公表してほしい、数値を。別に怪しいことはないですよね、公表しても。皆さんが困ることもないわけで、我々も含めて。日本国が正しい情報を出すことが国益にかなうことでございますので、根本大臣、いつ出していただけますか。

根本国務大臣 委員、いろいろなことをおっしゃられましたので、多少整理して……(長妻委員「いやいや、これだけ。じゃ、いい。ちょっと待ってください。これだけ参考人を呼ばないで、時間を削られているんですから」と呼ぶ)違う違う、ちょっと言わせてくださいよ。待ってください、待ってください。これは私が所管していますから、答えさせてください。

野田委員長 じゃ、大臣、長妻さんの御質問についてまずお答えください。

根本国務大臣 いいですか。(長妻委員「まず、じゃ大臣、いつ出すのか」と呼ぶ)ですから、それは、ちょっと、共通事業所系列というのはどういうことを意味するかということをしゃべらせてくださいよ。(発言する者あり)

野田委員長 静粛に。

根本国務大臣 共通事業所系列というのは、あくまでも景気の実感を示すのが共通事業所系列で……

野田委員長 簡潔に。

根本国務大臣 ですから、景気指標で見る場合には、西村委員長は共通事業所系列と言っておられます。一方で、毎勤の賃金総額を示す現金給与総額、これは実際の水準を示すから、こういうものは雇用者保険なんかで使う。ですから……(長妻委員「いつ出すんですか。じゃ、いつ出すだけ言ってくださいよ」と呼ぶ)いいですか。もともと、この統計数字はどういう利用目的でやるのか、これが大事ですよ。

 それともう一つ。もし、実質賃金、実質化する場合には検討する必要がある。(発言する者あり)説明ではない。(長妻委員「じゃ、大臣、まず結論から言ってください。いつ出すのかだけ、まず初めにおっしゃってください」と呼ぶ)

野田委員長 今大臣が答弁していますので、ちょっと待ってください。

根本国務大臣 共通事業所系列については名目値しか出しておりません。そしてこれを、実質値を出すためには、じゃ、共通事業所系列にどういう課題があるのか。

 一つは、共通事業所系列については作成が開始されてまだ十一カ月ですから、観測を開始したばかりで蓄積のない指標であること。あるいは、東京都の五百人以上規模を全数調査することによって変動する可能性があることなどの課題も専門家から伺っておりますので、実質化をするのは、実質値を示すのはいろいろなやり方がありますが、ただ、この実質を示すときにどういう観点でつくるのか、ここは統計の専門家にしっかり審議してもらわないと。ただ単に実質化すればいいということではない。

 ですから、統計の専門家もたくさんおられますから、私はこういう統計の問題は統計の専門家にしっかり検討していただいて……

野田委員長 大臣、簡潔にお願いします。

根本国務大臣 その上で結論を出すというのが私は政治の責任だと思います。(発言する者あり)

野田委員長 皆さん、御静粛に。ちょっと聞こえないんですね、質疑のやりとりが。ちょっと御静粛にお願いします。

長妻委員 これは、安倍総理が本会議場で何度となく厚生労働省が検討しているというようなお話を総理がいただいていて、今、出す出さないの質問を、全く私の質問に答えておられないということは、参考人も呼ばないし、まともに質問も答えない、厳重に抗議をしていきたいと思います。

 これは、日本国の実質賃金が今さっぱりわからない状態になっていると言わざるを得ません。これは本当にきちっとやっていただかなければ国家の信頼も回復できないと思っています。

 総理、ちょっと聞きますと、いや、ちょっと待ってください、総理。時間がないんですから。参考人の件でずっと時計をとめないで、これはもう時間があと三分しかないんですよ、総理、いいですか。

 それで、総理にちょっと聞きますと、連合の数字を、賃上げ、よくおっしゃるんですが、連合は組織率がどのくらいか御存じですか。

茂木国務大臣 連合の調査で、五年連続の高い、今世紀に入って最も高い賃上げが続いている、このように申し上げておりますが、その連合の調査の中で、集計組合のうち七割は組合員数三百人未満の中小企業の組合、このように承知をいたしております。

安倍内閣総理大臣 組織率は急な御質問でございますからすぐにお答えはできませんが、中小企業の賃上げについても、二十年間において最高水準の賃上げが行われているということは申し上げておきたいと思います。

 それと、今、長妻委員が実質賃金がわからないかのごとくのお話をされましたが、それは参考値の話でありまして、テレビを見ておられる皆さん、参考値というのはどういう数字だろう、こう思われるんだろうと思いますよ。

 それは、共通事業所系列については、昨年九月の統計委員会において、標本交代やウエート変更による断層を回避でき、賃金変化率を捉えやすいというメリットがある一方、この後も大切ですからよく聞いていただきたいと思うんですが、共通事業所系列は、新設事業所の影響が反映されていないため、標本に偏りがある可能性がある、これはお認めになられますよね。そして、標本数が小さくなるため、標本誤差が大きくなるというものがあるわけでございます。

 一方、公表値は、これは全体のものでありますが、こちらは標本が偏っているものである、こういうことでございまして、全体のものについては、それは数値等もお示しをしておりますし、私たちが大切にしているのはまさに、いつも私は総雇用者所得をお話しさせていただいているわけでございまして、今三百五十万人雇用がふえている中においては、当然……

野田委員長 総理、簡潔にお願いします。質問時間が終了しています。(長妻委員「組織率を聞いただけなんですが、総理、私ちょっとびっくりしましたのは……」と呼ぶ)

 長妻さん、私が指名してから御質問いただけますか。

 長妻さん。

長妻委員 はい。

 総理、私びっくりしましたのは、総理はこういうふうにおっしゃっているんですね。五年連続で今世紀最高水準の賃上げが行われた。出所を言わないときと言うときがあります。最近は連合というふうにおっしゃっていますので、そこで組織率を聞いたんですよ。

 つまり、連合の調査というのは組合員だけの調査ですよね、当たり前ですけれども。連合の組織率は一五・九%ですよ。全国民、労働者のこれだけの数字で。しかも、総理、企業規模で百人未満、ちょっとちょっと、総理、聞いてください。百人未満の企業、企業規模が百人未満で組織率がどのくらいか御存じですか。知らないで言っていたんですか、そんなことを。〇・九%ですよ。百人未満企業規模で〇・九パーですよ。ですから、中小零細企業はほとんど入っていないんですよ。千人未満と百人以上が一一・七%ですよ、組織率。そして、千人以上の企業規模だと四一・五%。大企業中心で、そして、賃上げが全体の一五・九%の組合員で今世紀最大最大。

 これ、聞いている人は勘違いしますよね、総理。これは統計の、総理自身がちょっと誤解を招くような発言をされているんじゃないかなというふうに私は言わざるを得ません。さっき組織率、御存じないというのは、そういう意味で聞いたんです。

 もう時間がありませんので、質疑時間が終了するんですが、では、今のと、もう一問聞きます。

 消えた年金のときに、総理も大うそをついたじゃないですか、大うそを、国会で。何か言うことはありますか。

安倍内閣総理大臣 まず、最初の件ですが、連合の調査について、対象となる組合の約七割を組合員数三百人未満の中小組合が占めており、また、中小組合の賃上げ率は過去二十年間で最高となっているというのは先ほど申し上げたとおりでございます。

 そして、常に今、毎勤統計でおっしゃるわけでありますが、毎勤統計で示される数字というのは、事業所ごとのこれは人件費を、事業所で働いている人たちで割ったものであります。物価が上がれば、物価で割り戻すわけでございます。

 ですから、例えば十人の事業規模のところが、仕事が発注があったから、パートの方を二人、三人雇った場合は、当然、二人、三人の賃金は安くなるんですが、その前の十人の方々の賃金が同じであったとしても、十三で割ったら平均賃金は下がっていくということになりますから、我々が大切にしているのは、いつも私がお答えをさせていただいているのは総雇用者所得でございまして、総雇用者所得においては、これは名目においても実質においてもプラスで推移をしているわけでございます。

 景気が回復している、安倍政権においては三百八十万人雇用がふえていますから、当然その中では非正規の方々もおられる。そして、団塊の世代の方々が引退して、正規から非正規に変わっていく中においては、今申し上げましたように、こうした形で、総雇用者所得はふえていきますが、一人当たりについては十分伸びていない。そしてまた、同時に、デフレから脱却をしておりますから、デフレから脱却をしている中においては実数が低く出ているということでございます。

 また、年金につきましては、これは残念ながら最後のお一人までお支払いするということは難しくなったのでございますが、長妻委員が厚労大臣のときにもそれは難しかったかということを実感なさったんだろう、このように思いますが、今回は、先ほど根本大臣がロードマップでお示しをしたような形でしっかりと対応させていただきたい、このように思います。

長妻委員 これで質問を終わりますけれども、これは、総理、最後に言ったのは、消えた年金の問題で、今そういうことをおっしゃいましたけれども、平成十九年六月十四日、参議院の厚生労働委員会で、何度もこれは言っているんですが、一つはここですね。安倍総理が、最後の一人に至るまで徹底的にチェックをし、そして全てお支払いするということはお約束したいと思いますと。

 今初めて、それは難しいことをおっしゃったわけでありまして、これは私自身も、厚生労働大臣のときに、全てお返しすることはできませんでした。それはなかなか難しいと私たちも思っていて、全部返すなんということはなかなか言えませんでした。

 ただし、言えるのは、相当な金額をお返ししました。今現在でいいますと、一千五百万人の人の記録が戻りました。生涯賃金で二・七兆円のお金が戻りました。五千万件中、残念ながら全件ではありません、三千二百万件が解明しました、五千万件中。これでも、我々が……(発言する者あり)いや、あなただけと言いましたけれども、自民党はふたしたんですよ。だって、安倍総理が不安をあおるなとおっしゃったじゃないですか。そして、認めなくて、ずっと認めなくて、我々が追及してやっと認めて、それでこういうような形で進んでいるんですよ。我々が大騒ぎしなかったら、ふたをされていましたよ、これは。何言っているんですか。

 それで、私が言いたいのは、確かに私たちの政権のときも全件の照合はできませんでしたが、ただ、相当、人、物、金をかけて進みました。しかし、どうですか、今。全然やる気ないじゃないですか、総理。総務省に第三者委員会、記録回復、これも廃止しました、今の政権が。そして総務省の年金等監視委員会、これも廃止しました、今の政権が。ほとんどやる気がありません、消えた年金問題。

 総理、これは私は、まだ一千九百万件残っているのにほとんどやる気がない、食い散らかして。これほどの大うそはないですよ、最後の一人までと総理が言って。

 今も一生懸命やっているなら私も評価しますけれども、本当に、言ったことはちゃんと守っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の質疑といたします。

 ありがとうございました。

野田委員長 この際、大串博志さんから関連質疑の申出があります。長妻さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。大串博志さん。

大串(博)委員 立憲民主党・無所属フォーラムの大串でございます。

 早速質疑に入らせていただきます。

 私も、統計不正の問題を中心に取り上げさせていただきたいと思います。

 なぜならば、統計、確かな情報を知った上で、事実を知った上で政策判断をしていくというのは、私、国の基本だと思うんですね。統計あるいは確かな事実、数字がはっきりしない中で政策判断をすると、必ず国は間違った方向に行ってしまうんじゃないか。そういう意味で、確かな事実、情報を踏まえていくべきときにこの統計不正、非常に私、国の信頼の根幹を揺るがすところに来ているというふうに思うんですね。

 そこで、まず、この問題に入る入り口のところで、今申し上げた、事実、そして事実認識が正しいのかどうかという観点に関連すると思いますので、麻生財務大臣の昨日の福岡での発言に関してお問合せをさせていただきたいと思います。これは、先ほどお昼に通告させていただきましたから。

 麻生財務大臣、昨日、福岡で開かれた会合で少子高齢化問題に触れられました、国政報告ですね。その中で、少子高齢化問題に対する言及の中で、いかにも年寄りが悪いと言う変なやろうがいっぱいいるけれども、間違っていますよ、子供を産まなかった方が問題なんだから、こういう発言をされていますね。

 少子高齢化、非常に国としては大きな問題です。だから、これに対しては、どういう原因で、どういう事実関係でこれがなっているのかということを分析した上で、認識のもとにやらないと、正しい解決策に私は至らないと思います。にもかかわらず、中枢大臣である財務大臣が、子供を産まなかった方が問題なんだから。何ですか、この発言は。

 多様な生き方を認めなければ、何を笑っているんですか、大臣。にやにやにやにや、こんな問題が大きいときに。多様な生き方が認められなければならない。あるいは、カップルの方で子供を持ちたいと思って一生懸命不妊治療もされている中で、どうしても、でも結果が出ない。私の友達でもいました。本当につらい思いをされているんですよ。それを、子供を産まなかった方が問題なんだからと。女性の方も含めて、極めて私は感度の低い不適切な発言だと思いますよ。これは、撤回されて謝罪された方がよくないですか。

麻生国務大臣 御指摘の発言は、昨日の福岡での会合での発言だと思いますが、申し上げた話の内容というのは、随分、大分長くしゃべりましたので、その中で、少子高齢化の問題は少子長寿化ということとして一つにくくられていますけれども、高齢化とか長寿化とかいうのが問題というよりは、少子化の方が社会経済の活力とか社会保障とか財政の持続可能性の脅威となるんだということを申し上げたというものであって、全体を聞いていただければその趣旨は御理解いただけるものだと思いますが、私の発言の一部だけが報道されて、本来の発言の趣旨が伝えられずに誤解を与えるようになったというようなことなんだと思います。

 そういうように捉えたというのであれば、その発言は今度気をつけたいと思いますし、そういった発言だけを捉えたというんだったら、撤回をさせていただきます。

 いずれにしても、この少子化問題というのは、これは家族のあり方に関する多様性が尊重されるべき点とか、子供を産みやすく又は育てやすい環境をつくっていくということが重要なんだというように考えている点では、当然なんだというように考えております。誤解を与えたとすれば撤回させていただきます。

大串(博)委員 この手の発言のときには、誤解を与えたとすればと、常にそういうのはつくんですけれども、もう明らかにおっしゃっていますからね、子供を産まなかった方が問題なんだからと。私、この発言は本当に、私の知る人でも、悩みながらこの問題に直面されている方の心を傷つけたと思いますよ。

 撤回された、撤回されるんですけれども、麻生大臣、撤回、多いですよね。過去の発言でも、最近でも、人の税金で大学に行ったみたいに人のことを言ったりね。この軽さですか、事実関係を極めて軽い言葉で話してしまう。

 私は、財務大臣としての資質を常に前々国会から問い続けていますけれども、この問題は引き続き問わせていただきたいと思います。

 さて、統計不正の問題に入らせていただきますけれども、午前中の質疑で、小泉議員の方から国会改革、ありましたけれども、私も同じように、国会改革、お願い申し上げたいと思います。大臣の質疑の問題、出席の問題もありましたけれども、ぜひ、与党の皆さんとも建設的な議論をするとすると、与党側の観点からで言われるのではなくて、私たち野党側の観点も踏まえていただきたい。

 それは、一つは、先ほど長妻さんが言われたように、国会に来てもらうべき人、この方が来てもらえれば、問題の解明、事実解明も早く進むであろうというのがわかり切っているんですね。

 大西政策統括官も、問題の中心中の中心なんだから、彼に語ってもらえれば事実関係の解明が進むのは誰が見てもわかるわけです。それを呼ばないんですね。あるいは、森友・加計学園問題でも、柳瀬当時の総理秘書官やあるいは加計理事長、証人喚問や参考人招致であの場で来てもらえれば一発で問題解決した可能性があるものを、与党の皆さんの反対で呼ばない。だから、いつまでも真相解明に時間がかかってしまう。

 こういったことに対して、与党の皆さんもぜひ真摯に、国会にちゃんとした人に来てもらうということで、議論に臨んでほしいと思います。

 加えて、実は私、この議論の中で申し上げますけれども、この統計不正の問題が起こってから、教えてほしいなということで、厚生労働省を始め政府の皆さんにたくさんの資料の提出をお願いしているんです、二週間以上にわたって。ついぞ待てど出てこない資料。簡単な資料だと思われるにもかかわらず、出てこない資料がたくさんあるんですよ。

 きょうも申し上げさせていただきますけれども、こういう資料の提出も含めて、しっかり国会に出していただく。これは、去年、夏に衆議院議長もおっしゃっていますよね。行政執行全般を監視する責務と権限を国会は有している、これらの権限を適切に行使し、国民の負託に応えるためには、行政から正しい情報が適時適切に提供されることが大前提となっていることは論をまちませんと、衆議院議長がおっしゃっているんですよ、去年の夏。全くそれが今でも果たされていない。ここはぜひ注意を喚起して、よろしくお願いしたいと思います。

 その上で質疑に入らせていただきますけれども、総理に、まず全体的な認識をお尋ねします。

 毎月勤労統計の不正行為があって、その後も幾つかの不正行為が見えています。日本全体の統計に関する信頼度が大きく下がっていると言わざるを得ない状況になっていると私は思いますけれども、総理、今、日本の統計の信頼度に対する御認識、私は非常に低下していると思いますけれども、どう認識されていますか。

安倍内閣総理大臣 このたび、長年にわたって勤労統計に不正な調査があり、セーフティーネットに対する信頼を損ねたこと、そしてまた、長年にわたってそれを見抜けなかったことについて、改めて国民の皆様におわびを申し上げたいと思います。

 このことによって、統計に対する国民の皆様の信頼を損ねる状況となっている、このように認識しております。

大串(博)委員 総理みずからが、政府統計に対する国民の信頼を損なっている状況になっているとお認めになっているわけですよね。

 その中で、私たち、補正予算の審議をしているわけです。補正予算というのは、当然、本予算とも連関しています。本当にこの補正予算でいいのか、必要なのか、こういう内容でいいのかというのを考えるときに、総理自身が、統計に対する国民の信頼を損ねていると言われちゃったら、私たちはどうやって審議したらいいんでしょうか。

 こういうことも含めて、私たちは資料の提出も求めているんです。にもかかわらず、極めて鈍い動きしか政府からはないから、私たち、この審議においても非常に難しいなと思いながらやっているんですね。

 根本大臣にお尋ねしたいと思います。

 この統計の不正に対してやるべきは、私は、一刻も早く真相を解明し、背景を解明し、そして再発防止を打っていくということだと思いますけれども、まずは真相解明、事実解明、背景の解明が大切だと思います。

 根本大臣自身がそれに対してどれだけ真剣に取り組んでこられたかというのは極めて大事だと思うんですね。もちろん、歴代、私たち民主党政権のときも含めて見抜けなかったという責任は負います。負った上で、起こってしまった問題に対して、どうこれを解決していくか、乗り越えていくかという面において、根本大臣あるいは政府の皆さん、大きな責任を負われると私は思うんですね。

 根本大臣、十二月二十日にこの第一報を受けられました。問題になっているのは、その翌日に十月分の毎月勤労統計の確報値が出される、これを、統計が不適切に集計されたというのを知っていながらとめることがなかった。これに関して大臣は、事務方に確認したら、思い至らなかったと聞いておりますというふうに、人ごとのような発言で国会で答弁されているんですね。事務方に確認したら、思いが至らなかったと。

 先ほどは、事務方のトップたる官房の人間も、思い至らなかったと言っていますけれども、大臣、これは毎月勤労統計なんですよ、毎月。毎月出ている統計なんですよ。名前を見ても、そのとおりなんですよ。報告が十二月二十日に上がってきたときに、これは毎月となっているじゃないか、次の統計には影響を与えないのかいと一言でも質問しなかったんですか。大臣、いかがですか。

根本国務大臣 私は、十二月二十日に事実関係の一報を事務方より受けました。

 具体的には、五百人以上規模の事業所において全数調査とすべきところ、東京都において抽出調査を行っていたこと、抽出調査の結果に必要な統計的処理を加えず、適切な復元処理を行わずに集計していたこと、これについて報告を受けました。

 ですから、私は、経緯などについて速やかに徹底的な調査を行うように指示をいたしました。

 そして、今議員から、そのとき気がつかなかったのか、あるいは、その時点では毎勤統計を公表するということの報告は受けておりませんでした。そして、私が事務方に確認したところと申し上げたのは、一月四日の新年の初の閣議後の記者会見のときにそういう話があって、そして、私は事務方に確認しました。確認したところ、今回の事案について具体的な経緯等が明らかでなかった状況の中で、思いが至らずに、毎月定例の業務として事務的に公表したという報告を受けました。

 私は、毎月勤労統計調査の確報値の公表について、日常業務としては大臣に報告すべきなのかなと考えておりますが、毎月勤労統計調査について不適切な取扱いがあると判明した中で、事務方から私に十二月二十一日に速報値の公表がある旨の報告がなかった、これは遺憾であります。こうした不手際があったことについては、私は厚生労働省の責任者として率直におわびを申し上げたいと思います。

大串(博)委員 私が聞いているのは、大臣御自身、毎月という言葉を聞いて気づかなかったんですかということなんですよ。

 しかも、今おっしゃった、一月四日の初閣議のときにそういう話があったので、事務方に確認したところ、そうだったので、聞いたところ、思いが至らなかったと。つまり、一月四日まで大臣は、十二月二十一日に確報値が出されていることを知らなかったということですか。どういうことですか。

根本国務大臣 私は、毎月勤労統計調査をやっている、そういう調査がある、それは当然認識しております。ただ、委員の話のように、では、確報値がいつ出るんだということをその時点で確認してはおりません。

 確かに重要な統計ですが、毎月の確報値、公表値についていつ公表されるのか、それは、その聞いた時点では、私はそこは事務方に確認をいたしませんでした。それが事実であります。

大串(博)委員 事実確認はされなかった。しかも、一月四日の初閣議のときまで、ほかから知らされて気づいて事務方に問うたところ、事務方が、思い至らなかったということを言っていると。私、大変なタイムラグだと思うんですよね。

 かつ、十二月二十一日には予算案が決定されているわけですね。大臣は、当然、十二月二十一日に予算案が決定されることは御存じだったと思うんですけれども、なぜこの予算案の決定をとめるということをしなかったのかということを国会で問われて、大臣は、事案の具体的な内容が明らかになっておらず、予算案との関係を判断できる状況にありませんでした、こういうふうに国会に答弁されていますね。

 事案の具体的な内容が明らかになっておらなかったというのは、どういった報告を十二月二十日に受けていらっしゃったんですか。

根本国務大臣 ちょっと一点だけ訂正させていただきます。

 私が新年の閣議後の記者会見と言ったのは、一月八日であります。

 十二月二十日に一報を受けた時点では、先ほど申し上げましたように、一報を受けた中身というのは、五百人以上規模の事業所において全数調査とすべきところ、東京都において抽出調査を行っていたこと、抽出調査の結果に必要な統計的処理を加えず、適切な復元処理を行わずに集計していたこと、この二点ですから。

 私は、やはり、統計というのは当然復元すべきものだと思いますよ。ですから、これが具体的にどういう状況になるのか、そしてどういうところに影響するのか、要は、それを含めて、とにかく徹底的に調査をせよ、こういう指示を受けました。その時点では、事案の具体的な内容や影響が明らかになっておりませんから、予算案との関係性を判断できる状況にはなかったということであります。

大串(博)委員 一月四日じゃなくて一月八日に、閣議のときに指摘されたので、十二月二十一日に確報が出されていることを事務方に確認したと。これは更におくれていますよ、大臣。更に十二月二十一日に確報値を出しちゃったということの問題点を認識するのが遅かったということですから、訂正していただいたのはありがたいですけれども、更に手抜かりが大きいということを言わざるを得ないですね。

 そして、今、十二月二十日の日にそのような報告を受けたという話は聞きました。ただ、本当にそれだけかなと思って、私は、先週来、十二月二十日に大臣に事案の一報を説明したときの資料を出してくださいと、再三再四にわたって厚労省に言っているんです。しかし、待てど暮らせど出てこない。

 なぜ私がこんなことを言っているかというと、例えば、配付している資料の一ページを見ていただくと、その後に出てきた賃金構造統計の問題、これは、厚労省に、この問題が発覚した後、どういうことか説明してくださいとレクに来てもらったら、真っ先に持ってきた資料がこれですよ。これと、どういうふうな問題だったかを持ってきてくれたんですけれども、見ると、「賃金構造基本統計」の中に、調査概要、主な結果、利活用例として、最低賃金に影響を与えるとか、労災の保険給付に影響を与えるとか、ちゃんと影響とかも書かれているんですよ。

 普通はこういうふうにして大臣のところに持っていくものじゃないかなと私は思うものだから、毎月勤労統計についても、だから資料を出してくださいと私は十二月二十日分に関して言っているんです。しかし、出てこない。これは何で、大臣、出してもらえないんですかね。

根本国務大臣 私が報告を受けたのはその二点ですから。ですから、私の記憶では、その二点を報告を受けました。(大串(博)委員「資料は」と呼ぶ)私の記憶では、資料はなかったように思います。

大串(博)委員 いや、資料がなかったとは思えないですね。私も役人をやっていましたけれども、こんな重要な問題を大臣に説明するのに、資料なしで飛び込むということは考えられないですね。

 大臣、訂正するならもう一回どうぞ。

根本国務大臣 私の、報告を受けたのはその二点ですから。これを口頭によって事案の一報を受けました。

大串(博)委員 いや、本当に口頭かどうかは、私、よく確認しなきゃいけないと思うんですよ。

 この鍵を握っているのが、まさに大西政策統括官なんですよ。持っていかれた人がその人ですからね。なぜ、口頭で伝えているんだったら、口頭でよかったのかということも確認しなきゃならないし、やはり大西さんに来てもらわないと、政府予算案をとめるということに、これは問題になるなというふうに思わなかったのかという極めて重要な判断に関して検証ができないんですよね。検証ができない。だから大西政策統括官に来てもらわなきゃならないというふうに言っているんですけれども、この国会においては、理事の皆さんの間で話が調わず、呼べないということになっているんですね。

 大臣……(発言する者あり)与党の方の反対で出せないということなんですね。私、事実解明に対して極めて後ろ向きなこの状況は、厚生労働省のみならず、与党も含めて組織的隠蔽をされようとされているのかなぐらいに感じますよ。

 じゃ、大臣にもう一つお願いしたいんですけれども、大西さんですけれども、もし、官房付だから大西政策統括官を出せないと与党の皆さんがおっしゃるのであれば、大臣にできることが一つあるんですよ。大西政策統括官に対して、国会対応の政策統括官の任務は引き継いでもらうというところだけやってもらえれば、これは大臣の判断でできる話ですから、新しい統括官の方に統計問題と政策評価問題は担ってもらう。しかし、これまでの経緯に関する説明に関しては、大西さん、あなたが担ってねというちゃんとした指示を大臣が出せば、政策統括官ポストは一応足りていますから、できるんですよね。

 大臣、組織的隠蔽と言われないためにも、大西さんに政策統括官として国会への説明を含む対外説明を負ってもらうわけにはいきませんか。どうですか。

根本国務大臣 大西統括官については、統計の信頼回復に向けて、我々、必死になって取組を進めておりました。そういう中で、基幹統計に関する一斉点検に際し報告漏れがあった。これは私は大変遺憾ですから、引き続き統括官の職務を担わせることは適当でないと考えて、今回の人事を行いました。

 職務を行わせることが適当でないと考えて異動させましたので、こういうことについての対応あるいは厚生労働省の所管する統計に関することについては、国会の答弁も含め、これは当然ですが、新たに任命された統括官が対応することが適当だと考えています。

大串(博)委員 こういう問題が生じたから、いわゆる統計情報と政策評価に関することに関しては新しい政策統括官に担わせる、これはわからぬでもないですよ。それは判断があるでしょう。

 しかし、事実解明するというのも今回極めて重要な任務じゃないですか。事実解明をしていくというのは、あるいは対外説明もする、情報開示をするというのは極めて重要な任務じゃないですか。そこをできるのは大西さんだけなんだから。そこを大西さんに任命できるのは大臣だけなんですから。逆に言うと、大臣は任命できるんだから。これを任命しなかったら、事実隠しと言われるんだから。厚生労働省の信頼が更に下がるんですから。

 厚生労働省をつかさどる大臣としては、厚生労働省の信頼が下がらないように、大西さんに、国会対応を含めた対外説明の任を帯びた政策統括官として活動せよと大臣が今指示をしていただければ、それはできるんだから。だって、金曜日にすぱっと一瞬で、大臣、大西さんを更迭しちゃったんだから、任命は一瞬でできるはずですよね。いかがですか、大臣。

根本国務大臣 私が統括官の職務を担わせることは適当でないと考えたのは、この一斉点検に際して、これだけ我々が信頼回復に向けて全力を挙げて取り組んでいる中で報告漏れがあった、これは大変遺憾だと思って、私は職務を担わせることは適当でないと考えました。

 ですから、職務を担わせることが適当でないということでかえた。そして、当然のことながら、統括官の職務を引き継ぐのは新たに任命された統括官が対応することが適当であると私は考えております。

 その上で、前統括官に国会において政府参考人として答弁を求めるかどうかについては、国会でお決めいただければと思います。(大串(博)委員「国会じゃないんです」と呼ぶ)国会でお決めいただきたいと思います。

大串(博)委員 いや、大臣、繰り返し言いますけれども、大臣の判断で大西さんがここに来れるようになるんですよ。それを大臣が判断しないということであれば、これは大臣も組織的隠蔽に加担していると言われますよ。私は、それは政府にとってはいいことじゃないと思うから言っているんです。

 しかも、賃金構造基本統計に関して、一斉点検、総務省から言われたことに対してこれを答えなかった、よって、これを更迭した、こういうことですけれども、二月一日に発表された内容、そして二月一日に記者会見を厚生労働省の審議官がやった内容を見ると、この一斉点検に対して、答えるべきじゃないな、報告すべきじゃないなと判断して報告しなかったのは、政策統括官じゃなくて、その下の室長さんじゃないですか。この室長さんに関しては、記者会見でも、調査をやった人が、隠蔽したと言われても仕方ないと認められている。

 一方、政策統括官たる大西さんに関しては、隠蔽をしたかどうかに関しては認定できないとまで言われているんです。本当に隠したのは室長さんの方なんです、下の。大西さんじゃないんですよ。大西さんはちゃんと、実は翌日に決裁が上がってきて、あっ、これは構造統計に関してまだ変わっていない、郵送統計というふうに変わっていない、これはいかぬじゃないか、俺が言ったことと違うじゃないか、すぐ是正しなさいと言って、翌日に是正の指示を出しているんですよ。ちゃんとしているんですよ。

 ちゃんとしている人を更迭して、室長はそのままですか。何かあべこべのことをやっていないですか。いかがですか、大臣。

根本国務大臣 統括官は、調査員調査を郵送でしているということは十二月の段階で室長から聞いているんですよ。だから知っていたんですよ。知っていたにもかかわらず、実態を承知しながら、総務省に報告をするときにこれを正すことがなかった。

 ですから、これまで十二月二十日以降、この信頼回復、そして統計に関するさまざまな問題、毎勤統計に関するさまざまな問題、実態解明、事実は何か、どういうところに影響するのか、これは我々は全力を挙げて取り組んでいたそのさなかにこの問題が発生しましたから、私は、これは任にあらずということで、統括官の異動をさせたものであります。

 なお、これ全体の室長を含めての対応については、これは全体の事実関係を含めてしっかりと調査した上で、その後に、その処分を含めたあり方は考えていきたいと思います。

大串(博)委員 いかにも口封じをしようというのがありありですね。

 これだけ大きな問題を起こしておきながら、そして、基幹統計ですから、信頼を回復することの大きな責務を大臣自身が負いながら、その真相解明をしていく、対外的にきちんと情報開示をしていく。このことに対して一番の責任を負う人をわざわざ更迭して隠して、これはもう大臣自身が組織的隠蔽に加担していると言わざるを得ないじゃないですか。

 もう一つ、情報開示に関して極めて消極的な姿勢に関して、私、気になるんですけれども、十二月二十日に大臣は知った、しかし、総理に報告したのは十二月二十八日であった。しかし、大臣、先ほど言われましたね、この問題、事務方が総務省から指摘されたのは十二月十三日であったと。しかし、自分のところに報告が上がってきたのは十二月二十日、一週間もかかっていた、これは遺憾である、遅いと。しかし、大臣自身が総理に報告するのを一週間もおくらせてしまっているじゃないですか。どういうことなんですか。事務方には、一週間もおくれて報告してけしからぬと言いながら、自分は、総理に対して一週間もおくれて報告することをよしとするんですか。

 なぜこれを私が言っているかというと、予算に関して影響するかどうかわからなかったかもしれない、もしそうであったとしても、一報が上がってきたときに、これは大変だ、これはまず世の中の皆さんに一報を開示して、一報を情報開示した上で、これから原因、真相解明あるいは影響等をお知らせします、こういうふうに言っておけば、もう少しスムーズな移行段階ができたんじゃないかと思うんです。

 それを結局、総理に対する説明は十二月二十八日。しかも、世の中に対して説明したのは一月八日ですよ。事案を聞いてから三週間もたって、大臣は世の中にこれを説明しているわけです。この、自分のところで情報を囲い込む、これは隠蔽していると言わざるを得ないですよ。

 なぜかというと、八日の三日後、十一日に、いわゆる追加給付のことも含めて、予算のことも含めて全部をまとめて報告している。そういった体制が整うまで報告をずらしていた、おくらせていたと言わざるを得ないじゃないですか。こういう、世の中に対して説明しない態度に関して、大臣自身はどういうふうに思われているんですか。

根本国務大臣 私が十二月二十日に報告を受けたのは、もう繰り返し申し上げませんが、その二点ですよ。

 そして、これを総理に報告するかどうか。五百人以上規模の事業所において全数調査とすべきところ、抽出調査を行っていた。そして、抽出調査の結果に必要な統計的処理を加えず、適切な復元処理を行わずに集計していた。これがどういう影響があるのか、あるいは事案の具体的な内容、これは明らかになっておりませんから、それを総理に報告するのは、私は少なくとも大臣の責任として、私の手元で、ある程度の内容や影響が明らかになる、その上で総理に報告する、これは私は大臣の責任だと思います。

 そして……(発言する者あり)ケース・バイ・ケースですよ。

 私は、この問題を、これを即、総理にその時点で報告するということは、そこは判断しておりません。それはケース・バイ・ケースですから、いろいろなテーマがあるわけですから。

 そして、十二月二十七日に、抽出を復元しなかった結果、統計上の賃金が低目に出ていた可能性がある、あるいは、国民経済計算や経済見通し、雇用保険、労災保険給付等への影響が明らかになったことについて報告を受けましたから、私は、可能性があるということだから、具体的に影響をしっかりと見定めるようにという指示をいたしました。

 その意味で、総理に対しては、十二月二十八日に、厚生労働省から官邸秘書官を通じて、事案の概要と、考えられる影響について報告したところであります。

 なお、総理への報告が十二月二十八日となったことについては、把握された事案の概要、その影響がその時点で、ある程度明らかになったということで総理に報告をいたしました。

大串(博)委員 総理に、事案の内容、概要がわかったところで報告する前に、私、この手の話は一報、報告するべきだと思うんです。だって、基本構造統計あるいは小売物価統計、問題が発覚して即座に発表しているじゃないですか。こういう基幹統計で信頼が害されてしまう、これは大きな問題ですよ。

 そうやって賃金構造統計やあるいは小売物価統計などで即座に発表している中で、これだけ三週間も発表がおくれている、あるいは総理に対する連絡が一週間もおくれている。これは初動を間違ったというふうに私は言わざるを得ないというふうに思うんですよね。

 初動を間違ったという点に関しては、私は、中間報告、二十二日に出されました、これに関してもしかりだというふうに思います。

 私も、厚生労働委員会、閉会中審査に審議させていただきましたけれども、第三者がやっているから正確性は保たれている、客観性は保たれていると言われながら、実は第三者ではなく、三分の一が身内によってヒアリングを受けていたということが明らかになりました。

 これに関して……(発言する者あり)三分の二がね、三分の二が、身内で調査されてヒアリングをされているということがわかりました。

 これに関して、今、追加調査を行っているということでありますけれども、追加調査をしてどうなるのか、本当にいいものになるのかという点が私は極めて重要だと思うんですね。

 大臣にお尋ねしますけれども、中間報告においては、組織的隠蔽はなかったというふうな判断でいらっしゃいました。追加報告、追加調査を受けて、組織的隠蔽はなかったという結論以外の結果が出ることもあり得るという理解でよろしいですね。

根本国務大臣 今、特別監察委員会の委員の皆様から直接聞き取りを、さらなる聞き取りをしていただいておりますが、今委員の御質問ですが、調査が今継続されておりますので、私から結論を申し上げることは控えたいと思います。

 ただ、少なくとも、課長級職員、元職員は事実を知りながら適切な対応を行う機会を逸したということですから、いずれにしても大変遺憾であります。

大串(博)委員 大臣、追加調査を行うということを発表されたその日、二十五日ですけれども、記者の皆さんに問われて、組織的隠蔽はなかったという理解でいいんですかと聞かれたときに、私はそのとおりだと思いますと引き続きおっしゃっていますよ。

 この二十五日における自分の発言は取り消されるということでよろしいですか。

根本国務大臣 特別監察委員会の中で、事実、あるいは原因究明、そしてその責任、これについては、報告書という形で明らかにしていただきました。その報告書を私も読ませていただきました。

 その中では、組織的隠蔽があったということは報告書の中では認定されておりませんので、有識者にしっかりと検証していただいたということの報告書の中でそういう事実関係の認定が触れられておりましたので、私はそれを読んだ中で、組織的な隠蔽と言われるまでの状況にはなかったという理解をしております。

大串(博)委員 大臣、ちょっといいかげんなことを言わないでくださいね。

 私、ここに二十五日の大臣の記者会見を持っていますけれども、一々あげつらいませんけれども、組織的隠蔽はなかったと思いますと、そのことに関してはっきりおっしゃっているんですよ。自分の発言にぜひ責任を持って言っていただきたいと思いますし、組織的隠蔽があったかなかったかに関しては、そうすると、調査委員会の追加調査において判断されるであろうということですね。

 そうすると、ここがある意味肝のところだったわけですね、この中間報告に関しては。組織的隠蔽がなかったかどうか、これは非常に大きな点でした。そこに関してまでこれは追加調査、監察委員会の皆さんの調査によってということであれば、中間報告は一回撤回されたらいかがですか、大臣。

根本国務大臣 特別監察委員会の中では、さまざまなそれまでの資料あるいは聞き取りに基づいて、特別監察委員会としての報告を出していただいたものであります。その上で、更に特別監察委員会の委員の皆様が直接に今聞き取りを改めて再度行っておりますので、私はその結果を待ちたいと思っております。

大串(博)委員 わかりました。追加調査の結果を待って組織的隠蔽のことも変わってき得るということですね。

 そうであれば、この追加調査は極めて大きなこととなっていくわけであって、本当に第三者性が確保されるのかという点にますます私は注目せざるを得ません。総理も本会議答弁の中で、事務局機能も含め、独立性をより強化する中で調査が行われるものと思われるというふうにおっしゃっていました。

 大臣にお尋ねしますけれども、今の追加調査は第三者性はどういう点で強まっているんでしょうか。

根本国務大臣 まず、特別監察委員会をつくった。これは、それまで監察チームでやっておりましたが、より中立的、客観的に行うために、有識者だけで構成される特別監察委員会をつくりました。

 そして、今、特別監察委員会においては、その過程で官房長等が同席していたということでありましたから、いささかも疑念が持たれないように、監察委員会の委員の皆様に直接聞き取りを行っていただくということにしております。

 そして、厚生労働省についてはもう事務方に徹底しておりますから、そこは私は、有識者の皆様が、有識者として、特別監察委員会として、主体的に判断をしていただいております。

大串(博)委員 総理も、事務局機能を強めてとおっしゃる。大臣は、事務に徹して、あるいは庶務に徹して、こういうふうに言われていますね。(根本国務大臣「違う違う」と呼ぶ)

野田委員長 ちょっと大臣、待ってください。

 では、大串さん、質問を続けてください。

大串(博)委員 事務に徹して、庶務に徹して、こういうふうに言われていますね。事務に徹する、庶務に徹するというのは具体的にはどういうことなんでしょうか。

 つまり、委員会の皆さんがヒアリング、質問はされている、その質問をされるときに、ベースとなる質問項目、メモみたいなものですね、こういったものがきちんと委員会の皆さんがちゃんと自分で判断できるようなものになっているかどうか、この辺も事務としてどうなっているのかなと私、思うわけでございます。

 定塚官房長、あるいはほかの事務方の方にお聞きしたら、一月二十五日に追加調査を発表して以降、その後の週末も含めて四十人の方々、三十七人から四十人にふえているんですけれども、一生懸命ヒアリングをされたそうです、土日も含めて。これはありがたいことだと思います。

 その中のヒアリング、確かに監察委員会の皆さんがやられたそうなんですけれども、そのときの質問項目、質問事項、質問メモ、これは事務方の方々がつくられているらしいんですね。これがどういうものであったか、それによって、本当に監察委員会の皆さんが独立した判断で判断できたのかということを左右すると思うんですよ。

 大臣、その際に、監察委員会の皆さんにヒアリングしていただくときに事務方がつくったメモ、質問のメモですね、これはどういうものですか。

定塚政府参考人 事実関係でございますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 一月二十六日以降行っている特別監察委員会におけるヒアリングにおきましては、委員からの質問項目につきましては、委員から具体的な質問項目、このようにしたいという意向が示されまして、それを紙に書くという作業、それは事務方が行っておりますけれども、今申したように、委員の意向を踏まえてそれを、質問項目をつくっているということでございます。

 また、そのほか、関係資料を整えるなど、事務的なサポートに徹するということをしております。

大串(博)委員 委員会の方々が一月二十五日以降、四十人の皆さんにわたってヒアリングをやられた。その資料、先ほど言われたように、質問項目を事務方がつくって渡していらっしゃるんですね。関係資料も一緒に渡していらっしゃるんです。私、先週から、これを見せてくださいと、これも再三再四、要望、要求しているんです。しかし、ついぞ出てこないんです、これも。

 大臣、この質問項目を私たちに見せてもらうことぐらいできないものですか。何ができないんですかね。第三者性が本当に確保されているかどうかを私たち国会としても責任を持って確認するために、どういう質問項目がなされているのか確認する必要があるんですが、大臣、国会に出していただけませんか。

定塚政府参考人 お答え申し上げます。

 一般的に、このような聴取、不祥事の際の聴取について、どのような質問をするかという質問項目をつくる場合がございますけれども、こうした資料についてはお渡しをしていないところでございます。

 これは、不祥事等の聴取の際にどのような質問をするかということがわかってしまいますと、対象者に対して今後事情聴取がしにくいということから、公開をしていないというものでございます。

大串(博)委員 定塚官房長の話は極めて信憑性に乏しいものがありますね。

 なぜなら、前回の厚生労働委員会閉会中審査の中でも、定塚さんは私にこう答弁しました。処分にかかわるヒアリングのことなので、一切公開しないのが常でございます、こういうふうに言われたんですね。これは、誰がどう、誰に対してヒアリングをしたか出してくださいと言ったときに対して、答弁として、処分に関するヒアリングですから一切出せません、こういうふうに言われました。

 しかし、その後、出てきたじゃないですか。誰が誰に対していつ。名前は抜かれていますよ、名前は抜かれているけれども、誰が誰に対していつヒアリングをしたか、全部出てきたじゃないですか。定塚さんの国会答弁は信頼に値しないんですよ。

 さっきの資料に関しても、個人にわたるところは黒塗りにしてもらっていいんですよ。だけれども、第三者がやっているかなということをきちんと確認するために出してくださいと言っているんです。

 大臣は、そういう政治判断をするのが大臣じゃないですか。どうですか。

根本国務大臣 まず、この特別監察委員会の運営、これは、委員会の御指示のもとに、厚生労働省は事務的なサポートに徹しております。そして、委員からの具体的な質問内容を紙に記載する作業、あるいは関係資料の整備など、事務的な補助を行っているものであります。

 そして、お尋ねの特別監察委員会のヒアリング関係の資料については、処分につながるヒアリングであること、そして、正確な事実の把握を行うために非公開を前提に実施しているものである、こういうことから、開示をすることは適当ではないと考えています。

大串(博)委員 この点は非常に重要な点で、第三者が本当に客観的に調査をしているのかというのを検証する意味で、非常に大切です。

 理事会の場で、この資料、四十人のヒアリングに関する質問項目、個人にわたるところは黒塗りで結構ですので、出していただくように理事会でお取り計らいをいただきたいと思います。

野田委員長 ただいまの件につきましては、後刻、理事会で協議いたします。

大串(博)委員 ここまで、つまり、事務局機能を厚生労働省が負っている段階において、私は、極めてこの第三者性を欠いていると思うんです。

 先ほど、樋口先生のお立場という論点もありました。これに加味して、事務局を厚生労働省が負っているという点において、私は、この問題に関する客観的な国民の信頼をかち得る調査にはなかなか既になり得ないんじゃないかというふうに思っているんです。だって、今の定塚さんの説明だって覆っていたことがわかっているわけですからね。

 大臣、ここは事務局も含めて厚生労働省以外でやっていただくという判断をした方がいいんじゃないかと思いますけれども、どうですか。

根本国務大臣 今、厚生労働省は事務的なサポートに徹しています。また、今後、事務局機能も含め、より独立性を高めた形で更に厳正に調査を進めていきたいと考えています。

大串(博)委員 今後、事務局的機能も強めるって、一体どうするんですか。言ってくださいよ。

根本国務大臣 事務局機能も含めて、より独立性を高めた形でやりたいと思いますが、事務局機能をどう高めるかという具体的方策、これについては、特別監察委員会の運営については委員会で検討いただくものであって、具体的な方策については委員会でお決めいただきたいと思います。

大串(博)委員 私は、極めてお手盛りの感が強くなってきていると言わざるを得ないと思うんですよ。

 この追加調査にしても、なぜか大臣は、この事務局機能のところは厚生労働省に、厚生労働省にということで手放さないんです。私も役人だったからわかります。いろいろなやり方で議論の流れを、まあ、コントロールするという言葉はよくないけれども、役所側から差配することはできないではないんですよ。だから、私は、事務局機能も含めて厚生労働省以外でやった方がいいんじゃないかと申し上げているんです。

 消えた年金のときも、厚生労働省ではなくて総務省でやっていただきましたよ。そういうふうにやって初めて、基幹統計の信頼が揺らいでいることに対する徹底的な調査ができるんじゃないかと思うものだから、そういうふうに私は申し上げているんです。

 ところが、根本大臣はこういうふうに、厚生労働省の事務方の皆さんから言われていることをそのまま言われているのかどうかわかりませんけれども、事務局機能は厚生労働省に、一切動かそうとされない。この点において、私は、既に大臣としての資質を失っているんじゃないかと思うんですね。ぜひ大臣に、これはまた続けて問いますから、事務局機能は厚労省以外のところでやっていただくことを検討を続けていただきたいと思います。

 なぜなら、この基幹統計の問題は非常に大きな問題だからです、総理。基幹統計の一つが大きなこの問題を生じた。改定もしなきゃいけないわけです、数字を。これがどれだけ日本全体の統計に影響を与えているか。これは日本の統計の信頼に影響を与えることですね。どれだけこの基幹統計が改定されたことが政府全体の統計に影響を与えているか。これは知る必要があると思うんです。だって予算を審議するわけですから、私たち。私たちが見ている統計が全部影響するかもしれない、影響しないかもしれない。どこまで影響するかわからない中で予算審議なんて無理ですよ、総理。

 どうですか、この基幹統計が改定されたこと、どれだけ政府の統計あるいは発表物に対して影響を与えるんですか。

安倍内閣総理大臣 GDPには影響がないということでございますが、他の統計については今関係省庁で精査をしているところでございます。

大串(博)委員 誰が担当大臣として精査しているんですか。

茂木国務大臣 正確に質問していただければと思うんですけれども、もう一度申し上げます。

 例えばGDPでいいますと、これはアウトプットですから、基本的には。設備投資、さらには消費、さらには政府支出、そして輸出入の差額、こういったものを積み上げていきますので、賃金とは関係いたしません。

 どの部分について……(大串(博)委員「済みません、誰が担当かですから」と呼ぶ)

根本国務大臣 どういうところに影響があるかについては、厚労省の方から各省庁と今協議をしているさなかです。

大串(博)委員 これ、厚生労働省が調べることですか。基幹統計の一つたる毎勤統計がリバイスされた、改定された。これがどれだけ各省庁の統計、発表物に影響を与えるかということを調べるのが厚生労働省の仕事なんですか。私は違うと思うんですよ。

 ちなみに、厚労大臣、各省庁に今集計をしている、いつから、どのような方法でやっているんですか。

根本国務大臣 この毎勤統計の事案が発生してから、各省庁には、どういう影響があるのかということを厚生労働省の方から問合せをしています。

大串(博)委員 それは、いつ、どのような方法で調査を始めてやっているんですか。具体的にお答えください。

定塚政府参考人 申しわけございません、今手元にいつからという資料はございませんが、現在、関係省庁から影響を把握して調査中ということでございます。

大串(博)委員 これは、先週、私、極めて詳細にレクしているんですよ、この点に関して。

 加えて言いますと、私、資料を要求しているんです、先週から。厚労大臣がと聞いていたので、厚労大臣が各省庁にどういう統計、公表物に影響がありますかということを聞いているというふうにおっしゃるものだから、じゃ、いつ、どういうふうに出したんですか、資料を出してくださいというふうに先週から延々聞いているんですよ。これも答えが出てこないんです。

 大臣、このことを知らなかったんですか、どうですか。

根本国務大臣 要は、毎月勤労統計の集計値、これは再集計値をお示しして、この毎月勤労統計の賃金水準等々を利用している統計、あるいは施策に利用しているところ、さまざまあると思いますが、それは調査をしているということであります。

 各省庁にお伝えして、そしてこのデータももう全て公表していますから、これでそれぞれの省庁の持つ統計あるいは施策、どういうふうに活用しているか、それを含めて今調査をしている、こういうことであります。

大串(博)委員 これは極めて大きな問題なんですよ。予算審議しているのは私たちなんです。予算というのは、国の根本を議論しているようなものなんですよ。毎月勤労統計が不正によってリバイスされた、改定された。だから、どこに、政府の統計のどれに、あるいは発表物のどれだけにどれだけ影響があるかというのを知らないと、予算審議なんかできないじゃないですか。だから、先週から聞いているんです。

 先週二十五日には、野党国対委員長が与党の国対委員長に対して、政府の統計、発表物に対してどれだけ影響があるか精査して出してくださいと、先週二十五日にはもう出しているんです、そういう要望を。私、だから、それからずっと資料を出してくれと言っているんです。いまだに答えない。こんな中で予算に対して議論してくれって、できるわけないじゃないですか。

 委員長にお願いします。厚労省で各省に発注しているという、どれだけの各省の統計及び発表物に影響があるかという発注のペーパーなりメールなりやり方なり、あると思うんです。その資料を提出いただくように、これは早急にお願いしたいと思います。いかがですか。

野田委員長 まず、厚生労働大臣から何かこのことについて御答弁ありますか。それを聞いて、確認させてください。

根本国務大臣 今回の事案によって、先ほど総理からもお話がありました、GDP等については影響がないことが確認されております。それ以外にどのような経済指標に影響が及び得るかについては、現在、関係省庁の協力を得ながら把握を進めているところであり、まとまり次第公表する方針です。

大串(博)委員 先ほどの件、よろしくお願いします。

野田委員長 ただいまの件につきましては、後刻、理事会で協議をいたします。

大串(博)委員 基幹統計の一つで不正があったということで、もう一つの側面、ほかの基幹統計は大丈夫なのか、ちゃんと集計されていたのかという論点があります。

 これに関して、先週、二十四日ですか、総務省の方で基幹統計調査を発表されて、二十二が誤りがあったと。その後、一つ、二つふえて二十四ということになっています。この調査は本当に信頼できるんでしょうか。すなわち、基幹統計という極めて重要なものが間違っていないかを確認した上でじゃないと、なかなか予算の審議はしにくい。これは事の理です。だから、急いで調査されたと思う。

 しかしながら、基幹統計の五十六統計に対する総務省から行われた調査、これは資料をお渡ししていますけれども、三ページを見てください、これが実施要領です。対象統計、基幹統計五十六。点検項目、以下の項目について、承認された調査計画や対外的な説明のとおりに行われているか。丸、調査対象の選定方法、全数調査、抽出調査の別、抽出方法、抽出率、報告者数等。また、復元推計の実施状況についても調査、抽出調査について、統計的な処理、復元が適切に行われているかということを聞けと。その下は加工統計に関してですね。ということなんです。

 これを見ると、今回の毎勤統計で起きた事案に関する同じようなことがないですかということを聞いているだけなんですよ。その他一般に基幹統計で何か問題があることはありませんかということは聞かれていないんです。毎勤統計と同じような問題、つまり、抽出を一部だけしかやっていなかった、しかも復元もしていなかった、そんな例はありませんかということだけしか聞いていないんです。一般にほかの問題はありませんかということは聞いていないんですよ。

 こんな調査で本当に基幹統計全体の信頼が得られていると言えるんですか。総務大臣、いかがですか。

石田国務大臣 大串委員にお答えをさせていただきます。

 今般の基幹統計の点検は、総務大臣が承認した計画に記載されている事項と実際に行われている調査の内容、方法に相違がないかという点について重点的に確認を行いました。

 当初の各省への指示では、計画記載事項のうち、毎月勤労統計事案で問題となった事項、全数調査と抽出調査のいずれか、抽出率、報告者数等のみを明示的に確認してもらうこととしておりましたけれども、その後、他の計画記載事項、結果公表の方法あるいは公表期日等についても、追加的に明示的な確認を行ったところでございます。

 このほか、今回の点検では、計画と実態の相違に限らず、各府省が点検の時点で把握していた不適切な事案についても報告してもらうこととしておりまして、調査結果の訂正等の必要な対応が行われることになったところでございます。

 今後、新たな事案が発覚した場合には、事実関係を把握して、調査結果の訂正、公表等の対応を速やかに実施することといたしたいと思っております。

 また、統計委員会に新たに点検検証部会が設置されたところでございまして、再発防止等の観点から、徹底した検証に取り組んでまいりたいと思っております。

大串(博)委員 今おっしゃいましたね、ここに書かれていること以外に、そのほか、決められたやり方以外にやっている調査がないですかというのを、その後追加調査を求めましたと。それは、いつ、どのような方法で各省に伝達したんですか。

石田国務大臣 大串議員にお答えをさせていただきます。

 基幹統計の調査、重点的に行いましたけれども、その後、先ほど申し上げたような、それ以外の項目についての報告があったものですから、その時点その時点で断続的に、各機関に対してその調査の依頼をしたところであります。(大串(博)委員「ペーパーですか。どういうような方法で、紙ですか、口頭ですか」と呼ぶ)ちょっと待ってください。

野田委員長 確認してください。(発言する者あり)静かにしてください。

石田国務大臣 済みません、大串委員にお答えをさせていただきます。

 紙で伝達をいたしております。

大串(博)委員 つまり、二十八日に新しい問題が構造統計で出てきた、それを受けて、あら、いかぬ、報告徴求に漏れがあったということで、紙で出したということですね。

 そうしたら、じゃ、その日付の入った各省への伝達紙、これも出していただけますか。

 なぜなら、私は、口頭で言っていたと聞いたんですよ、事務方から。口頭で各省に、そのほかも何か問題があったら教えてくださいねとは伝えていましたと聞いていたんです。その程度のものだと聞いているんです。

 紙があるんだったら、出してください。各省庁に、しかも十分な調査ができるような有意な早いタイミングで出しているものがあったら、出してください。つい最近出しているようであれば、基幹統計全体に対する信頼を取り戻すような調査は行われていないと断ぜざるを得ません。

 しかも、今私たち、補正予算の審議をやっています。そういう中で、基幹統計全体が本当に問題ないかということを明らかに今できないようじゃ、補正予算の審議、おぼつかないと言わざるを得ないと思います。

 最後に一つ。厚生労働大臣に一つお聞きしたいと思います。

野田委員長 総務大臣の答弁はいいんですか。

大串(博)委員 いいです、お願いですから。

 厚生労働大臣に今お願いしています。

野田委員長 ちょっと、じゃ、訂正があるそうです。

石田国務大臣 大串委員にお答えさせていただきます。

 大変失礼いたしました。先ほど文書ということを申し上げましたけれども、電話とメールということのようであります。

大串(博)委員 では、電話とメールを出してください。いつやったか。(発言する者あり)メールを出してください、メールをね。

 厚労大臣に最後、一つお尋ねします。(発言する者あり)

野田委員長 御静粛に。

大串(博)委員 追加調査が行われて、組織的隠蔽も含めて、これからもう一回検証されるということでありました。

 となれば、厚生労働大臣、新しい結果が出たら、処分、二十二人に対して、この間二十二日に国家公務員法に基づく処分を出されました。追加報告の結果、組織的隠蔽も含めた新しいものが出る可能性もある。いろいろな状況はあるんでしょう。処分に関しては、見直されることがあるんですか。

 というのは、今までの人事院の見解によると、一回国公法上の処分を出して、それがその後、あらら、軽きに失したなんて、処分権者の判断ミスで後から処分が重くなるみたいなことはあってはならない、これが国公法の解釈なんですよ。

 だから、今回、一月二十二日に大臣が処分を出された、それはどうなるんだろうなと私は思うんです。でも、これから新しい事実が出てくる。でも、大臣は、国公法の解釈によると、新しい処分は出せない。このこと一つをもっても、私は、大臣が大臣たる任にはもうないと思っているんです。

 処分も出せない、そんな大臣が大臣であれますか。どうするつもりなんですか、大臣。答弁ください。

根本国務大臣 現在、特別監察委員会においては、国会審議等における議論も踏まえ、さらなるヒアリングを行っていただいております。この中で新たな事実が判明した場合、あるいは追加の対応を行うことも考えられますが、現在、委員の皆様に精力的に御議論いただいているところでありますから、私は、予断を持って述べることについては差し控えたいと思います。

大串(博)委員 これで終わりますが、私、厚生労働大臣がいかに役所をグリップしない中でこのことに関する信頼回復が難しいかという、大臣の職責にあらずということは強く申し上げさせていただきたいと思います。

 終わります。

野田委員長 この際、小川淳也さんから関連質疑の申出があります。長妻さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。小川淳也さん。

小川委員 立憲民主党・無所属フォーラムの小川淳也です。

 まず、委員長、賃金がはね上がったのは去年の六月です。システム改修が始まったのは去年の一月です。システム改修を指示したのは一七年五月、一昨年五月の当時の石原統計室長です。それはなぜだったのか。そこには、賃金の水準を、まさにアベノミクスの成果を偽装するために、少しでもいい数字を出そうという思惑はなかったのかどうか。

 中間報告を読んでもわからないので、私はきょう聞きたかった。参考人要求していますが、なぜ来ていただけないのか、委員長のお答えを求めます。

野田委員長 先ほども申し上げましたが、お昼の理事会において協議をいたしましたが、協議が調いませんでした。一部の参考人の招致については、協議が調いませんでしたので、招致をしないことと決定いたしたところです。

小川委員 この国会に対して、これだけの統計不正が起きているわけですからね。ほとんど関係大臣ですよ。そして、この国会に対して、一定の真相究明、国民の期待は高いです。しかし、肝心の真相を知っている人を更迭するわ、出さないわ、全くもって真相の究明のしようがないじゃないですか。

 もう一人。一回チャンスがあったんですよ、これは。中間報告を見ると、一七年の冬に当時の石原室長は上司に報告をしている、実は不正をしていたと。それを聞いた当時の酒光統括官、すぐに正しなさいと指示をしている。しかし、石原さんはそのまま放置をし、酒光さんも一切その後お構いなし。この辺の経過が、なぜ監督責任を果たせなかったのか。

 私は酒光元統括官にも聞きたかった。参考人要求をしましたが、なぜこれも受け入れられないんですか。

野田委員長 小川委員にお答えいたします。

 今後の招致については、引き続き与野党で協議をしていただきたいと思います。

小川委員 委員長、今のお言葉は重いと思いますよ。ここだけやり過ごせばいいということではありませんから、委員長の責任においてしっかりリーダーシップを発揮してください。

 与党側も与党側ですよ。なぜ同意しないんですか。今私が申し上げたキーマンを呼ばなければ何もわからないじゃないですか。一緒に解明するんじゃなかったんですか、与野党を超えて。激しく苦言を申し上げたいと思います。

 本題に入りますが、安倍総理、去年の六月に三・三%という驚異的な数字の伸びがありました。二十一年五カ月ぶりと大きく報じられたわけであります。当時、安倍総理は、初めて民間に対して具体的な数字を挙げて賃上げ要請をしています。その数字が三%でありました。したがって、この三・三%という数字が大きく報じられたときに、何らかの印象なり記憶なり感想なりがあったと思うんですが、まず、それをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御存じだと思いますが、私は、そのときの毎勤が上がったことについて発言したことは一度もございません、私自身は。ですから、私自身が非常に印象に残っていればそうだったんだろうと思いますが、私自身、それが上がったということについて、実は、一々毎勤統計については私は報告を受けていません。

 私が統計で報告を受けるのは、失業率と有効求人倍率を閣議において厚労大臣、総務大臣から報告を受けるときでございまして、基本的に、一々の毎勤統計について私は一喜一憂する考えはございませんし、そもそも、もう小川委員もお気づきになっているでしょうけれども、むしろ私は、この毎勤統計について、それは先ほども御説明をしたんですが、事業所において、その事業所の職員で割ったものの平均でございますから、経済の実態を直接示しているかどうかということについて、むしろそれは総雇用者所得で見るべきだという議論をいつもしていたわけでございまして、ですから、そういう意味において、そこを私は特別な印象を持っているわけではないわけでございまして、実態から見れば、ぶれがあることもあると。

 あと、その前に入れかえも行われたということだったということもあるんだろう、こう思う次第でございます。

小川委員 今のは今ので、非常につれない御答弁だと思いますね。

 これだけ毎年民間に賃上げ要請、賃上げ要請、そして、昨年は初めて具体的な数字まで出して、そして、毎月毎月、一々と聞いていませんよ、二十一年五カ月ぶりという大きな報道があったわけですから、何らかの印象が残っているのではないかと期待をして私は聞いたわけであります。しかし、残念ながらその数字はうそだったわけでありまして、今その善後策にてんやわんやされているわけであります。

 長妻委員がさっき午前中に指摘しかかったこと、少し追いかけさせていただきたいんですが、この勤労統計、つまり、いろいろと反論はあるでしょうけれども、幾つもの段階で去年の数字はかさ上げされているわけです、幾つもの段階で。単に三倍補正で復元したという話ではないわけです。

 さっき長妻委員が指摘されたように、この議論は一五年の六月から始まっています、厚生労働省内で。しかし、慎重意見がたくさんあって、結論は出さなかった。むしろ、慎重だという結論を出した。

 ここにこう書いてあるんですよ、この検討会を設置したときに。根本大臣、検討会の中間整理はごらんになっていますよね。

 近年、政策の効果をはかる指標の一つとして、特に労働者の賃金に関心が高まっており、増減率の動向について注目度が高い。増加から減少に転じた月、つまり入れかえによってですね、が発生したことで、各方面からわかりにくいといった意見等が寄せられた。

 根本大臣、お答えになれる範囲で結構なんですが、各方面から下がったことに対して意見が寄せられた、各方面とは誰ですか。

根本国務大臣 この問題については、例えば統計の専門家などからの指摘もあったと聞いております。

小川委員 それは、過去から確かにこの勤労統計についてはいろいろ話はあるんですが、大事なことは、七十年同じ方式で調査してきたんです。少々エコノミストから言われたとか、少々外部から言われたで、私は急ハンドルを切るとは思えない。

 思い返すと、総理、これも御記憶だと思うんですが、私ここにいまして、一四年当時でした、十月の三日だったか四日だったか、当時、前原さんがアベノミクスの誤算という質疑をしたんですよ。悪い物価上昇が続いている、つまり原油高と円安ですね。そして実質賃金が上がらない、そして輸出数量が伸びない。私は、非常に力のある質疑だったと今でも記憶しています。一四年のそれが秋のことです。

 そして、一四年の十二月に何があったか。総理は、消費税を先送って衆議院を解散するという新手に出たわけです。これは、増税必至だった財務省に激震が走ったと思いますね、当時。まさに政権にとっては、アベノミクスにとっては、雇用も成長率もいい数字が欲しい。増税必至の財務省にとっても、何が何でもいい数字が欲しい。一四年の秋から一五年にかけてそういう思惑なり熱意が生じたとしても、私は不思議ではない。それが、この一五年十月の麻生発言につながるんじゃありませんか。

 麻生大臣、ちょっとお聞きします。

 わざわざ十月の経済財政諮問会議で、勤労統計を名指しして、おかしいから見直せと言っていますね。一体これは、財務大臣、何の権限に基づいて統計にここまで具体的に示唆しているんですか。

 それから、ぜひ聞きたい。これは、大臣が発言したいから財務省に資料を用意しろと言ったのか、それとも、財務省からぜひこの趣旨で発言してくださいと言われたのか。それも含めて、大臣の当時の発言の真意を聞かせてください。

麻生国務大臣 勤労統計というのか、毎月勤労統計、いろいろありますけれども、こういったようなものは、私ども財政をいろいろやっていく上において正確な基礎統計というものが出ていないと話になりませんから、そういったものをきちんとやってもらいたいというものの中の一つで、例えば消費者物価なんかでも、いわゆる通販が入っていないじゃないか、今どき通販が入っていなくて何で消費者物価がわかるんだというような話やら何やらいろいろなことをしているんですよ、ここで。

 その中の一環で、私どもとしては、この勤労統計の中においても、いわゆるサンプルのあれがえらく動くというのを毎年よく言われている、今までもよく言われている話なんで、こういった話をして、精度の向上に向けて取決めでやってもらいたいという話をしたのであって、これを私どもが、財務省からこれを言ってくださいと言われたような記憶はありません。

小川委員 では、大臣のイニシアチブで、発案でこの発言はしたと受けとめました。

 統計の精度を上げろというその言葉なんですよね。大体そう言うんですよ。正確な統計を出せ、時代に合った統計を出せ、精度を上げろ、大体そう言うんですよ。それが本当かどうか。裏に隠された意図はないのか。私は、そこを今回非常にいぶかっています。

 ちょっと資料をごらんいただきたいんですが、これはまさに麻生大臣が経済財政諮問会議に提出した資料ですよ。よく見ると、極めて私は意図的だと思う。

 まず、右の端、ごらんいただきたいんですが、消費関連指数が乖離しているじゃないかと大臣は発言しているわけです。しかし、上の青い曲線は、これは小売側の統計です。そして、下の赤い曲線は家計調査です、買った側の統計です。つまり、売った側と買った側が合っていないんじゃないかと言っているわけですが、正確に議事録を申し上げると、気になっているのは、統計について、家計調査だと言っている。つまり、上の小売統計については何も言っていないわけです。下振れしている家計側、買った側の数字がどうかしているんじゃないかと暗に示唆している。

 二番目の、まさにこれは毎月勤労統計です、勤労統計。これはサンプルを入れかえるんですよ、後ほど議論させていただきますが。サンプルを入れかえたときに、確かに数値が下がるんですよね。この資料、ちょっと黄色マークしたところを見てください、真ん中。大臣は、公式には、段差が大きいのが問題だと言っている。しかし、資料には、下方修正していることが問題であるかのような表現になっている。わざわざですよ。だから、上がったら文句言っていなかったんじゃないか、下がっているから問題だと言いかけているように私には見える。

 さらに、右側。ネット販売、今、さっきおっしゃいましたが、ネット販売がふえているんだから、それを統計に入れろとか、あるいは、リフォームがふえているんだから、それもつかめ、数字をつかめと。それはそうかもしれませんが、これは財務大臣が目くじら立てて統計に言うようなことですかということを私は申し上げている。

 極めて政治的な意図が裏に隠れているんじゃないですか。精度を高めろ、正しい統計を出せと表では言いながら、裏では、数字を上げろ、いい数字を出せと暗に政治的圧力をかけているんじゃありませんか。

麻生国務大臣 役所におられたらおわかりと思いますけれども、圧力をかけたら数字が上がるものでしょうか。

小川委員 役所にいたから聞いているんですよ。ちょっと、この政権は公文書を書き換えさせていますからね。それは具体的に指示したんですか。指示していないのに何でやるんですか、官僚がそんなことを、追い詰められて。そういう政権なんですよ。そういう体質を持った政権なんだ。その前提でこの数字について聞いているわけです。

 では、ここから先、ちょっと議論しましょう。七十年間、毎月勤労統計がこういう全数入れかえをやってきたにはそれなりの理由がある。そして、わざわざ、自前の研究会では、それをしないという結論を出した。その後、厚生労働省では一度も公式に研究していません。いきなり統計委員会の場に持っていかれた。つまり、相当政治的な力学が働いたと私には思えてならない。

 ちょっと、具体的な議論に入る前に指摘したいことが幾つかありまして、まさに、この一五年の時期から、極めて統計に対して政治家が発言するんですよ、安倍政権のもとで。私に言わせれば、統計に政治の手が入っている、統計が政治化している。

 具体的に言いますよ。これは翌年、二〇一六年です、一六年。これは経済財政諮問会議の骨太方針。二〇一六年の六月ですね。副題は「六百兆円経済への道筋」ですよ。

 私は、先に申し上げておきますが、麻生さんの発言、大臣の発言が一五年の十月です。一五年の九月に何があったか。安倍総裁が自民党総裁選挙で再選されているんです。そして、九月二十四日、アベノミクス新三本の矢と大々的に発表した。その一本目がGDP六百兆円なんですよ。

 このGDP六百兆円という大本営発表に、一生懸命官僚がついてきたんじゃないですか、霞が関を挙げて。何とかつじつまを合わそうと。そういう文脈の上でお尋ねしています。

 心して聞いていただきたいと思いますが、この骨太方針、第二章は成長と分配の好循環、そして、その二が成長戦略の加速なんですね。成長戦略の加速ですよ。

 その中に、まあわかりますよ、東京オリンピックやろうじゃないか。PFI、TPP、国土強靱化、まあまあわかりますよ。しかし、最後に、TPPやオリンピックやPFIや国土強靱化と並んで、統計改革、統計改善と書いてあるんですよ。

 何でですか。ちょっとこれは誰が担当ですか、茂木さんですか。なぜ統計改革が成長戦略なんですか。

茂木国務大臣 御指摘のこの統計の問題、計算方法の変更、これは二〇一六年の十二月に実施しましたGDPの基準改定、このことを指しているんだと思います。(小川委員「聞いたことに答えてください」と呼ぶ)お聞きください、冷静に。

 これは、RアンドDの資本化など、最新の国際基準に対応するとともに、最新の産業関連表であったりとか推計手法を反映した改定であります。この改定によりまして、日本経済の実力をより正確に計算できるようになったと考えております。

 なお、この基準改定は、先生が与党にいらした民主党政権時代の一一年に対応方針が決められ、その後、専門家で決めさせていただいた話であります。

小川委員 答えられないんですよ。なぜ統計改革が成長戦略に位置づけられるのか、答えられないんですよ。それはそうでしょう。統計なんて、極めて技術的、客観的、科学的、中立的にやってこそです。

 もう一つありますよ。

 この委員室にもおられると思いますが、山本幸三先生。当時、経済財政担当大臣だった。(発言する者あり)ごめんなさい、行革でした。失礼しました。訂正します。おわびして訂正します。立派なお仕事です。

 一六年の、いいですか、今のが六月。一六年の十二月に、今度は山本大臣がわざわざ臨時議員として経済財政諮問会議に出かけていった。何を言ったのか。政治主導の統計改革を実現しようですよ。何でですか。なぜですか。なぜ統計改革を政治主導でやらなきゃいけないんだ。

 いいですか。皆さん、一党一派に偏った政治家ですよ。一党一派に偏った政治家が、やれ統計改革、やれ統計改革、そんな旗を振ること自体が不謹慎だ。おかしいんですよ。

 誰か答弁したい人いますか、これ。じゃ、総理、どうぞ。

安倍内閣総理大臣 これは山本大臣が政治主導の統計改革と言ったのは、別に一党一派に偏るような統計をしろと……(小川委員「偏っている人ですから。みんな偏っていますから」と呼ぶ)いやいや。偏るような統計改革をしろと言ったのではないですよ。これは、議事録が残るところでの発言でありますから。

 つまり、第四次産業革命が今進行中である中において、今までの統計のやり方を墨守していていいのかということなんです。

 もちろん専門家がやりますが、それに対して政治家がまさにこの新しい時代の変化をしっかりと嗅ぎ取りながらこういうことをやっていくべきではないか。しかし……(発言する者あり)

野田委員長 静かにしてください。

安倍内閣総理大臣 つまり、その中でもう一度統計のあり方を専門家で考えてもらったらいいのではないか、こういうことであります。

 それは一切、では、一切、我々は一言も口を出すなということなんでしょうか。そうではなくて、専門家が決めていくことではありますが、今までのやり方でいいのかどうか検討しろということは、これは政治主導でないとできないんですよ、それは。政治主導でなければできないということは申し上げておきたい、こう思うわけでございます。

 この際、ずっと今まで小川先生がおっしゃっていた、まるで私たちが統計をいじってアベノミクスをよくしようとしている、そんなことできるはずがないじゃないですか。そんなことできるはずがないんですよ。

 今、やっているじゃないですかという声があったんですが、でも、これは、もし東京の五百人以上の事業所をちゃんととっていれば、我々が政権をとった後の指標はもっとよくなっているんですよ。景気回復は東京からよくなっていくし、どちらかというとやはり大手の方からよくなっていきますから、もっとよく差が出てくるんですよ。

 それを、むしろそのまま、下がっていたから、今度、雇用保険も労災保険も船員保険もこれは対応しなければいけなくなっていたわけであって、私たちがもし上に何かかさ上げしていたんだったら、これは逆になるわけでありますから。

 だから、もっと冷静に、何が何でも安倍政権が何か偽装しようとしていたかという結論ありきになると正確な議論ができませんから、やはりここは落ちついて統計の議論をされたらどうなんでしょうか。

小川委員 これは私が思っているだけじゃありませんからね。多くの論評でありますよ、これはエコノミストから、外国のメディアから。そして、後ほどお聞きしますが、日銀と内閣府の間でもやりとりしているんですから。もとデータを出せ、そんな話になっているんですよ。

 更に言います。

 山本大臣が政治主導で統計改革をやるべきだとわざわざ出張っていかれて発言したのが一六年の十二月。そして、一七年の二月に、今度は菅官房長官を議長として統計改革推進会議なるものができているわけですよ。

 メンバー。梶山行革担当大臣。茂木、当時もそうですね、経済財政政策大臣。そして予算委員長、総務大臣。そして麻生財務大臣。世耕経産大臣。もちろん学識もいますけれどもね。

 こうして、相当統計に政治のエネルギーというんですか、政治の、よく言えばリーダーシップというのか、私に言わせれば政治的圧力だ、これは。

 現実に、この時期、統計委員会における統計手法の変更件数はふえている。大体、民主党政権のころは九件とか七件というんですけれどもね、年間ですよ、統計手法を変更したのは。安倍政権になって、十五、十三、十二、十五、十二、物すごい数の統計手法の変更をさせているんですよ。これは事実だ。

 それこれ見ると、今総理がおっしゃったような、何か全体を見ているんだという安気な話なのか、麻生大臣がおっしゃったような精度を高めているんだというようなきれいごとで済むのか。私にはとてもそう思えない。

 具体的に、勤労統計について少し議論させてください。

 麻生大臣、よくお聞きいただいて、できれば、麻生大臣、それから根本大臣も、わかる範囲で結構ですから御答弁いただきたいんですが、今回、不正調査をしてきたことは明らかに問題であり、違法です、長年にわたって。しかし、午前中、長妻さんが指摘したように、これは単なる不正の復元だけでこの数字は出ていないわけです。不正の復元を隠蔽したことも問題。しかし、それ以上に、これだけ高い数値が出るには、もちろん、公表ベースでいえば、サンプリングを入れかえたとか、標本で大企業の割合がふえたとか、もっともらしいことを書いていますよ。

 しかし、正面から、私はこの制度改革をした二つの点について議論させていただきたい。

 一つは、まさに麻生大臣が嫌がった全数入れかえを部分入れかえに変更すると何が起きるかということです。これは誰に御答弁いただきましょうかね。

 七十年間、全数入れかえをしてきたんですよ、三年に一回。麻生大臣、三年に一回全数入れかえをすると、麻生大臣が嫌がるとおり、数字は下がるんですよ。私、これは驚きました。昭和四十年代、五十年代、もう高度成長期かと、バブル以前の成長率の高いときですら下がっている。

 なぜだと思いますか、麻生大臣。

麻生国務大臣 私は、そのことをやれば上がるとか下がるとかいうことを私どもは指摘したわけではありません。

 私は、統計の数字がきちんとしたものが出ないと、入れかえるたびに上がったり下がったりするのはいかがなものかというので、きちんとしたことをやってもらいたいという話を申し上げた結果なのであって、その数値の結果についてより、私は、そこに出てくるいわゆる問題が大きいんだということを申し上げた。先ほど、どなただったか、通販の話をしたんでしたかな、今の時代に通販が入っていないということ自体おかしいじゃないですかというような一連の話の中から出たんだと記憶しています。

小川委員 私もその数字が正しいのかどうかを議論しているわけですから、大臣、ちゃんと真面目に議論に向き合ってください。わからないならわからないで結構です。

 大臣はいつも、俺は経営者だ、経営をやっていないやつにはわからないだろう、よくそういう反論を飛ばしてこられますよね、国会質問で。だから聞いたんですけれどもね。

 では、言います、大臣。なぜ三年に一回全数調査を入れかえれば数値は下がるのか。

 この国の一年間の廃業率を御存じですか、麻生大臣。御存じですか。知っていたら首を縦に振って、知らなければ結構です。(麻生国務大臣「知らないですな。今でしょう」と呼ぶ)今。大体、これは五%なんですよ、廃業率が。

 それで、五年に一度の経済センサス、つまり経済界に対する国勢調査ですね、見てもそうなんですが、ということはなんですが、企業の五年生存率は約八割なんです、毎年五%ずつ企業は淘汰されていきますから。そして、企業を全数入れかえするということは、廃業、倒産直前の企業も入るわけです。そして、もちろん生まれたての新発企業も入る。しかし、いずれも賃金水準は低いんですね。

 ところが、継続サンプルで一年目、二年目、そして三年目と継続調査をすればするほど、比較的優良な成績を上げた企業の、賃金水準の高い企業が標本として残るわけです。だから、三年間これを続けると賃金水準が高く出、そして、三年後にサンプルを全数入れかえで入れかえると必ず低く出るわけです。

 そこで、大臣に聞きます。どちらが国民の経済実態に近いですか。優良企業ばかりじゃないですよ、世の中は。どちらが実際に働いている現場の労働者の賃金感覚に近いですか。

麻生国務大臣 多分、全数入れかえの方がと言いたいんだと思いますけれども、景気の事情によって違うわね、今の話は。景気が変わってくると随分変わるような気がするけれどもね、今の感じは。

小川委員 それが間違いだから聞いているんですよ。さっき申し上げたでしょう。昭和五十年代から、あるいは平成に入って一桁、まだまだそんなに、今みたいに言われていないころですよ。調べてみてください。毎回下がっている。二年、三年に一回。それぐらい企業の生き残りバイアスと、これは統計委員会で議論された資料です。読み上げます。

 ローテーションサンプリング、つまり一部入れかえ制導入に伴う留意点として、賃金の水準を見ると、継続調査されている共通事業所の賃金は、全ての事業所の合計よりも約四千円、一・五ポイント高くなっている。継続調査されている事業所の賃金水準が、新規事業の水準よりも高くなっていること、ちょっとややこしいね、結論だけ言います。つまり、生き残りバイアスが一定程度存在することを示している、これが統計委員会の結論です。

 したがって、段差があることに麻生財務大臣はちょっと文句をつけておられますが、これは健全な段差だったんですよ。七十年間この手法で調査してきたんだ。それを鶴の一声で今回変えさせた、それで一段目、積み上がったわけです。

 厚労大臣、認めてください。全数調査をした方が世の中の実態に近い、つまり労働者の受け取っている賃金感覚、いい企業もあれば、そうでもない企業もあります。これを継続している会社にすれば、企業の継続バイアスがかかり、生き残りバイアスがかかり、比較的賃金は高く出る。これは統計委員会でこう言われていますから、大臣、ここで認めてください。

根本国務大臣 今その点についてお答えします前に、委員は本当にこの問題の本質を言っているんですよ。

 全数を入れかえるでしょう、三年に一遍。そうすると、おっしゃるように段差が生じるんですよ、段差が生じる。だから、今までどうしてきたかというと、補正する、段差を調整するためにさかのぼって補正するんですよ。

 実はここが問題にされたんですよ。基幹統計九統計の……(小川委員「されてもはね返さなきゃいけなかったんだ」と呼ぶ)いやいや、違う違う。これは、九統計のうち、私の記憶ではローテーションサンプリングをやっている統計がたしか六統計あると思いますよ。ですから、どういう統計のやり方が正しい数値をあらわすか、極めて私は、これは統計の専門家の議論で、ですから、おっしゃるとおりなんですよ。だから、三分の一、いや、二分の一ずつ入れかえれば、これは段差が生じるということはないから、そうすると、これからはその指標で見ていきましょうと。

 ですから、段差が生じるかどうか、これは勤労統計でも長年の課題で、これはいろいろな議論がされてきた。今回それを統計委員会で、客観的な統計委員会で、段差を修正して補正するのがいいのか、ローテーションサンプリングでやるのがいいのか、そして、ローテーションサンプリングでいいという結論を、これでいきましょうという結論を出したんですよ。

 それと、委員のおっしゃる継続している事業所のお話、これはあれですか、共通事業所系列のお話ですか。(小川委員「違いますよ。制度論、一般論」と呼ぶ)わかったわかった。だったら……(小川委員「もういい、大臣」と呼ぶ)いや、違うんです。ちょっとしゃべらせてくださいよ、聞かれているんだから。

 だから、例えば三年に一遍だと、やはり倒産していく企業がある。そうすると、おっしゃるように、生き残っている企業、そしてサンプルを入れかえると、そこは段差が生じるんですね。ですから、もちろん継続してやっている企業だけをずっととれば、それは高く、だから高く出る可能性が、だってだめな企業は潰れていくんだから。だから、それはそういうことですよ。そういうことじゃないですか。

 だから、三年に一遍がらっとかえると旧サンプルと新サンプルで段差が出る、そこが問題視されたということですよ。

小川委員 大臣、何を御答弁されている。

 つまり、そういうことなんです。それで、段差が出ることは統計処理上課題がある。それはそのとおりです。したがって、これを三分の一入れかえ制にすれば比較的統計は連続するでしょう。しかし、それは、世の中の経済実態から少しとはいえ乖離した指標が出がちになる調査方法に変更したということです。しかも、一七年と比較すると一八年は比較的高く出る、これで一段目のげたを履いたわけです。

 もう一つ聞きます。

 この年、もう一つやっていますよね。これまで勤労統計は常用雇用者について調べているわけですが、常用雇用者の定義から日雇労働者を外しましたね。それまで、月に十八日間勤務していた日雇労働者は、常用雇用者に含めて計算をしていた。ところが、この一八年一月から、常用雇用者からこの日雇労働者を除いた。これも賃金は高目に出るんじゃありませんか。

根本国務大臣 日雇を除いたのは事実です。

 その結果どういう影響が出るかというのは、私は、にわかには、今お答えはできません。

小川委員 わかる範囲でお答えいただければいいとはいえ、どう考えても上がるでしょう。

 御紹介しますよ、統計委員会の部会での審議。

 実は、今回の勤労統計の統計手法の見直しに当たって、ここは統計委員会から相当警告が来ているんですよね。それを振り切ってやったんですよ、今回、厚生労働省は。

 読みますよ。まず部会の委員から、これはどのぐらいの影響があるんだと質問している、議事録を見ますとね。そうすると、労働者数でいうと、大体全体の一%だという統計はとれているという答弁がありました。しかし、残念ながら、これは、賃金水準の調査が明確にあるわけではないので、わからないということになっているんですが、納得のいかない委員が、更に追いかけてこう言っているんです。

 ざっとイメージしようじゃないですか。常用雇用者の賃金が大体三十万円として、仮にです。日雇労働者の賃金が大体二十万円だとすると、労働者数が一%であれば、これは賃金水準に最大〇・三%の影響がある可能性がありますよ。それは黙っていていいんでしょうか、頬かむりしていていいんでしょうか、そのまま先へ進むというのはやはり難しいんじゃないでしょうかとまで立派な意見を言っている人もいるんです。これを振り切ってやったんだ。

 統計の正確さを正そうとか連続性を高めようとか、それは美名のもとにいいですよ。しかし、実際には、あの手この手を尽くして、賃金水準を少しでも上げてやろう、そういう絵姿が見え見えじゃないですか、これは。この上に三倍補正をやったんだ。それで三・三%なんという二十一年ぶりの数字。しかも、総理は、それは余り記憶にないと言う。

 今回、これで無理をした結果、長年陰に隠れていた不正が明るみに出たわけです。異常に高くなったからです。そして、異常に高くなった背景には、こういう、それをそれと気づかせない、隠された意図、隠れた故意で、統計の数字に政治が介入してきた疑惑がある。

 これが果たして、勤労統計だけなのか、それにとどまらないのか。私は、徹底的な検証が必要だと思いますよ。なぜなら、この政権は、公文書を書き換えさせているからです。

 私も霞が関の出身ですよ。官房長官、よく聞いていただきたいんですが、最近、この質問の準備をするに当たっても、あるいはその他ででも結構ですよ。現場で、私は野党ですから、幹部の方は来られません。せいぜい係長、課長補佐、若い人が来ますよ。しかし、彼らのモラルは今どうなってしまったんだと思うことが多々ある。組織にこびへつらって、何が正しいかではなく、何が都合がいいかを一生懸命探し、一生懸命、この政権に対して、尻尾を振れば必ず出世し、盾突いて正論を吐けば飛ばされて左遷される。どうですか、霞が関の皆さん。そういう体質が蔓延してきているんじゃないですか。

 私は、民主党政権のときに十分に国民の期待に応えられなかったことは、今でも良心の呵責です。その後、自民党は立派だと思ってきた面もある。確かにプロですよ、政治の運営にかけては玄人だ。しかし、政権が、それでも、これだけ長く続くと、この霞が関のあんな若い人たちまでこうしてしまうのかと。私は、やはり長期政権はかえなきゃいけないと。非常に強い危機感。これはやがて社会の隅々まで、末端までモラルを崩壊させる。正義感や倫理観を失わしめる。政権の延命以外に目的がないじゃないですか。私は、今回それぐらいのことを感じているわけです。私だけですかね、この統計に関して言っているのは。

 きょう、お忙しい中、日本銀行に来ていただきました。関根局長は、大変お忙しい中ありがとうございます。

 ちょっと、私もこの記事、驚いたんですが、もちろんここで言えること、言えないことあるでしょう。しかし、こういう報道が出たこと自体、非常にゆゆしき事態だと私は思います。しかも、公的機関の最たるものである日本銀行が、政府、内閣府の出している統計を信用できない、もとデータを出せといったようなことを言うというのは前代未聞。

 関根局長、ここで言えること、言えないことあると思いますが、なぜもとデータを出せというところまで言わなければならなかったのか。私に言わせれば、言うところまで追い込まれたのか。この政府統計の不信に対するあなたの考えをここで述べてください。

関根参考人 私がこの場に出席させていただいておりますのは、日本銀行調査統計局長としての立場でございます。

 統計委員会では、日本銀行としてではなく、一有識者としての立場から御意見を申し上げておりました。統計委員会に関する事項については、本日はお答えする立場ではございませんので、御理解を賜れればと思います。

小川委員 関根さん、立場は理解しますよ。それは言えないでしょう、ここではね。だけれども、相当いろいろなやりとりをしていることは統計委員会の議事録にも残っていますから。そして、内閣府がそれに抵抗をし、一定の折り合いをつけたんでしょうが、少なくとも、それが外部に漏れて、これだけの報道の紙面を飾ったということ自体ゆゆしきことです。

 関根局長、これから内閣府からデータをもらうんでしょう。それは自宅に持ち帰って趣味で扱うわけじゃないでしょう。日本銀行の調査局に持ち帰るんですよね。そして、いろいろ、金融政策を考えるに当たって、経済指標の分析に使うはずだ。統計委員会の一員としてであって日銀の背景はないという御答弁は、大分割り引いて、私も立場をわきまえたいと思いますが、それでも不適切だと思いますよ、不正確だと思う。だから、こういう報道につながっているんです。

 最後に、勤労統計について、その隠れた意図があると私は思っている、隠された意図があると私は思っている。しかし、何といっても、アベノミクスの本丸はGDPでしょう。

 麻生発言の前の月に、安倍総理は、私だけではないと思いますが、相当世の中は、あるいは国際社会は、GDP六百兆というのは唐突に受けとめました。なぜなら、その時点でのGDPは五百兆に届いていなかったからであります。そして、五年間で六百ということは、四%近い成長を毎年しなきゃいけない。しかし、その時点まで、まさに今世紀に入って、二〇〇〇年代に入って、この二十年、実現できた成長率は、三%に到達した年はありません。

 したがって、これは経済界からも、単なる政治的なメッセージではないか、あるいは外国メディアも、これは根も葉もない、余りまともに取り合う必要がないんじゃないかという冷ややかな受けとめでありました。

 しかし、後にややちょっと驚いたことがあるわけですけれども、ちょっと先にお聞きしましょう。

 総理は、このGDP六百兆円構想、私の仮説では、この六百兆円構想がエンジンになっているんですよ、いい数字を出すということに関して、経済指標、雇用指標。これにみんな仕えているわけです、一生懸命。この六百兆という構想をぶち上げたときに、総理は、どの程度の確信なり、あるいは自信があったんですか。まず、それをお聞かせください。

安倍内閣総理大臣 五年で六百兆ではなくて、二〇二〇年代の初頭という言い方をした、こう思っております。ですから、二〇二〇年にということではないわけでございます。

 その中で、デフレではないという状況をつくった。この後、黒田総裁と政府との間で、インフレについて、物価安定目標を二%としているわけでございまして、この二%はデフレーターとイコールではございませんが、この中で、しっかりと成長を確保し、この物価安定目標に近づいていくことによって成長を確保していけば、十分に可能性があるのではないか。それと同時に、観光も伸びておりましたし、あるいはまた、この第四次産業革命の大きな波の中で、生産性を上げていくということではないかと思います。

 その中で、別に、その六百兆円目標に向かって、統計をいじるということではなくて、いかにこれは、生産性を上げていくか、投資を伸ばしていくか、あるいは人材に投資をしていくかという、みんなでそういう目標を共有することが大切だ、こう思ったところでございます。

小川委員 ただ、実際には、総理、総理の御発言が一五年の九月です。一六年、翌年の十二月、GDPの計算方法が大幅に見直されました。それによって、何とGDPは三十一兆円、こんなに、GDPの国際基準に合わせるという名目のもとにですよ、計算方法を変えて、成長率を伸ばした国はほかにはありません。

 わかればでいいんですが、一六年の時点ではじいたGDPは、一五年のものなんですね。その時点で、一五年のGDPは史上最大規模になりました、伸ばしたことで。もし統計方法を変えなければ、一体、史上何番目ぐらいのGDPが史上最高になったか、おわかりの方はいらっしゃいますか。茂木大臣、いかがですか。

茂木国務大臣 二〇一五年度のGDPにつきましては、旧基準と比べて、国際基準への対応によりまして二十四・一兆円、最新の産業連関表や推計手法の反映によりまして七・五兆円、合計で三十一・六兆円の上方改定となっております。

 なお、先ほど申し上げましたが、この方針は、先生が与党時代、二〇一一年の民主党政権時代に基本的な方針を決められ、その後、実際には、統計委員会を始め、民間の有識者によります審議を経た上で行われた。

 いずれにしても、古い基準、これを日本だけが使い続けて、いい悪いと言ってもしようがないんですよ。やはり、国際競争力を強めて、潜在成長率も上げて、正しい、実力として六百兆円経済を目指していく、これが安倍政権の方針であります。

小川委員 わかりました。

 お言葉ですが、大臣、内閣府に、国民経済計算、つまりGDP計算、次回基準改定に関する研究会で、具体的な方針の検討に入ったのは一三年の三月です。いいですか。そこでの検討を踏まえて、統計委員会GDP計算部会における具体的な審議に入ったのは一四年の十月です。この具体的な検討の中で、何は入れる、何は入れない、入れるとしてどう計算する、入れないならなぜという検討をやっているわけです。

 お答えになりませんでしたから、私の方から申し上げましょう。

 二〇一五年のGDPは最高水準になっています。総理は今も、一六年のGDP、一七年のGDP、一八年の速報値、毎回のように本会議を始め会見でも、GDPは史上最高になりました、史上最高になりました、毎回のように繰り返しておられる。

 しかし、ごらんのとおり、これは、図、わかりますでしょうか。一六年にGDPの計算方法を改定して、こんなにかさ上げされているわけですね。過去までさかのぼって試算すると、全てにおいて上昇しているわけです。しかし、上昇幅は昔はさほどない。安倍政権になってから、上昇幅はワニの口のように開いている。つまり、旧基準で計算したGDPより新基準で計算したGDPは、安倍政権になってからのはね幅、上げ幅が大きいということです。

 茂木大臣、先ほどもきれいごとをおっしゃいました。国際基準に合わせたんだとおっしゃる。その部分、確かにあるんですよ。

 しかし、このグラフを見てください、今お手元。国際基準に合わせたのは、あくまで、このグラフ、棒グラフでいう白い部分です。ここはわずかに三%程度の上昇にしかなっていません。実は、これは研究開発費を入れたとかその手の話なんですが、確かに、今大臣おっしゃったように、国際基準に合わせて、先行しているのはヨーロッパ諸国なんですよ。ここでも確かに大体二%から三%上げているんですよね。それでいうと、日本もそれに符合するんです。

 ところが、この赤い部分、わかりますか。ちょっと資料が白黒の先生方には申しわけないんですが、赤い部分は、国際基準適合と違う、その他の部分ですから。その他の部分で、過去のGDPは、試算すると押し下げ要因になり、そして、安倍政権になってからの三年間はウナギ登りの上昇要因になっている。いろいろ説明も聞きましたよ。わかるところ、わからないところ、ある。でも、結果においてこれは不自然だ。どう見ても不自然です。

 このその他の部分を少しわかりやすく線グラフでも御用意しましたので、ちょっと見ていただきたいんですが、どうですか。安倍政権になる前はほとんどマイナスでしょう、このその他の伸び率が。ところが、安倍政権になるとウナギ登りなんですよ。

 こういう状況で、総理、一つ聞かせてください。

 一五年の九月に総裁に再任されてGDP六百兆円を打ち出したとき、翌年の統計改定で三十兆円以上GDPがかさ上げされるということは御存じだったんですか。

安倍内閣総理大臣 基準改定が行われること自体は承知をしておりましたが、具体的な計算方法までは説明を受けておりませんから、それが果たしてどういう方向に行くかということについては私は存じ上げませんでした。しかし、目標というのは、絶対できるからということで立てるというよりも、やはり、これから、ある種のそこで跳躍をして進んでいくということでありました。

 確かに、これは随分高い目標だなということは私は感じておりましたが、しかし、それは、例えば農林水産物の輸出額一兆円だって、これは絶対できないと言われていました。あるいはまた、昨年ですね、海外からの観光客が三千万人を超えるなんということを六年前に誰が想像していましたか。大体八百万人がずっと壁だったんですから。

 そういう中において、しっかりと目標をつくったことでそれが達成できたわけでありますから、達成できないかもしれないというリスクはありましたが、それをみんなで目標にしていこう、こういうことでありました。

 ですから、その目標に向かって、こういう、基準値をどうのこうのということは、これは考えられないことであります。

小川委員 私は、今の御答弁は怪しいと思いながら聞きました。

 当時、経済財政担当大臣は甘利さんなんですよ。総理のまさに盟友中の盟友とお聞きをしております。そして、内閣府はさまざま試算をやっているらしいですね。ちょっと私も、これは公開資料からしかたどり着けないので、どれほど詳細に、どれほど具体の数値を挙げて、どれほどのオプションを議論しているかはわかりません、正直。

 しかし、例えば、報道ベースで御紹介すると、霞が関は、既に内閣府は、ひそかに二〇一一年からGDPを新基準で再計算していて、総理の六百兆円表明の時点では、まあ二十兆以上は上乗せされることは織り込み済みだと自民党関係者は言っているとかですね。

 しかし、その裏には、後にこういう記事も出始めるんですが、GDP六百兆円が見えてきた。これは日本経済新聞です。内閣府の幹部はしびれたと言って驚きを隠さない。数字を見てですよ。恐らくこれは試算の数字でしょうね。そして、与党の一部や日銀、財務省は、GDPを始め政府統計が実体経済を反映できていないとして見直し圧力を強めている。これに対し、当の内閣府からは、改善は大事だが、GDPを押し上げるために統計の仕事をしているわけではないんだと幹部からの恨み節が聞こえてくるという報道もあるわけです。

 火のないところに煙が立っているんだとおっしゃりたいんでしょうが、私はなかなかそうじゃないと思いますよ。

 総理が今おっしゃったのが本当かどうか。これは統計委員会の公開資料なんですが、一四年の十月の時点で、研究開発費の算入、暫定試算で三%から三・六%程度押し上げるだろう。防衛装備品、軍事物資、軍事装備品の算入により〇・一%程度押し上げるだろう。不動産の仲介手数料を計算に入れることにすれば〇・二%程度上昇するだろう。土地改良の対象範囲を見直せば〇・三%上昇するだろう。中央銀行の産出額の計算方法を見直せばわずかだが上昇するだろう。まあ、どうすればGDPが上昇するかの試算を連発しているんですよ。

 茂木大臣、もし知っていたら答えてください。このとき、国際基準に合わせるという名目のもとに、一つ議論になったことがあるんですね。それは私立学校の扱いなんです。従来は、非営利法人、非営利性の事業体としてカウントされていました。しかし、一定程度授業料収入がありますから、私立学校の場合は。これは市場性の事業法人に位置づけるのが国際基準に倣ったやり方なんです。けんけんがくがく統計委員会でこの点を議論されています。

 まず、この議論があったことを御存じですか。

茂木国務大臣 存じ上げませんので、また確認をさせていただきますが、一点だけ。

 我々は、統計をよくして経済を上にさせよう、そんなことは考えていません。先ほど先生がお示しいただいたグラフ、これは、GDPの算定方法を変更する前でも後でも、前の政権の時代より圧倒的にGDPは伸びているんですよ。

 我々は、人づくり革命を進める、生産性革命を進める、そういった中で潜在成長率を高めていく、こういったことによって六百兆円経済をしっかりと、正々堂々と目指していきたいと思っております。

小川委員 ぜひそうしてください。ここで統計をさわってGDPを上げようなんて思っていますなんという人はいないんですよ、この場で。それが本当かと、一つ一つ情況証拠を積み上げながら聞いているわけです。私にも証拠はない、内部資料は持っていないし。しかし、情況証拠はかなりいろいろ怪しいですよと申し上げている。

 それで、まさにおっしゃった正々堂々とでいいんですよ。最後のパネルを見ていただきたいんですが、これは極めてちょっと政治的に、どうなんですか。前の総選挙、二〇一七年、総理、これは自民党広報のツイッターか何かだと思いますが、ぜひ拡散してくれと。この五年間でGDP、五十兆円以上ふえたんだということを盛んにPRしているんですよね。

 それは勝手といえば勝手ですよ。しかし、問題にしたいのは、GDPの基準を改定した後、一六年、一七年の旧基準の数値は出さないことになっているんですよね。私は出してほしい。

 なぜなら、国民は、イザナミ景気を超えたんですか、今。一体、誰がそんなに好景気を実感しているんですか。七割以上の人が、ほとんどない、全くないですよ。しかし、GDPは史上最高だと総理はおっしゃる。

 ちなみに、税収も史上最高ですとおっしゃいますよね、総理。消費税を五%も上げた総理大臣、過去いませんからね。これだけで十数兆、十五兆円近い増税ですよ。むしろ、私の経済政策の成果ですと誇らしく言うんじゃなくて、私は史上最高に増税した総理大臣です、国民負担をお願いした総理大臣ですと申しわけなさそうに謙虚に言ってもいいぐらいだと私は思う。

 新基準で五十兆円ふえたという主張はわかりますが、旧基準だったらどうなのか。私、見てみたいので出してください、総理。

安倍内閣総理大臣 安倍政権で名目GDPは一割超えて五十四兆円増加をしておりますが、これは基準改定後の数字同士の比較でありますから、前の数字が改定前の数字で、今がそうでなければ、それはおかしいと思います。

 それと、私が二〇一二年の政権交代前にお約束をしていたのは、GNI、国民総所得ですね、失われた五十兆円を取り戻します、こう申し上げて、このお約束はかなり早い段階で達成したわけでございます。

 それと、ちなみに、来年度予算の税収の見込みでございますが、六十二・五兆円、これは過去最高になるんですが、これを、次の二%の引上げ分を引いてもこれは過去最高になるということは、一応つけ加えさせていただきたいと思います。

小川委員 その前に三%上げているじゃないですか、総理。

 茂木大臣、今ちょっと言い忘れたんですが、結果として、いろいろ議論あったようですが、私立高校は入っていないんですよ。国際基準に合わせなかった。もし合わせていたら、GDPは〇・八兆円下がっていたんです、どうも議事録を読みますと。

 つまり、いろいろ理由はあるでしょう。が、取捨選択しているということです、安倍政権になってから。

 最後に、こんなことを聞きたくないけれども、つまり、統計の信頼は揺らいでいる、これは認めていただけるでしょう。そして、それには、技術的なものもあれば、役所が隠蔽してきたこともある。そして、その背景に、背後に、政治的なプレッシャーがあるのかないのか。これは間違ってもないようにしてもらわないとということは重ね重ね申し上げたい。

 それで、もうこんなことを聞きたくないんですが、最後、菅家政務官、来ていただきましたので、今どきまた家庭にカレンダーを配って歩いているというのは言語道断じゃありませんか。

菅家大臣政務官 御指摘の点は、あくまでも政策広報用の室内用ポスターとして作成をいたしました。希望者のみに作成趣旨を説明いたしましてお渡しをしてきた点でございますが、ただ、国民の皆様方に誤解を与えている点については、心から反省し、おわびを申し上げます。

 以上です。

小川委員 内部資料という説明は通らないと思いますよ。カレンダーという有価物にあなたの写真を入れたんだ。そして、配っている。公職選挙法違反だと思いますよ。

 引責する気はありませんか。

菅家大臣政務官 室内用ポスター、ごらんになったと思うのでありますが、あくまでも政務官の集合写真です、を踏まえて、やはり、そういった、私も政府の一員として職責を、しっかりと取り組んでいくということを多くの支援者の方々にPRする、広報するための目的としてつくったものでありますので、まさに政策広報用の室内用ポスターでございますので、当然、職責を全うしてまいりたいと思います。

 以上です。

小川委員 極めて軽率きわまりないと思います。

 委員長、次回は、必ず、私どもが要求した参考人をこの場にお呼びいただくことを心からお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

野田委員長 後刻、理事会にて協議をいたします。

 次回は、明五日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時散会


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