衆議院

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第5号 令和5年11月21日(火曜日)

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令和五年十一月二十一日(火曜日)

    午前八時五十八分開議

 出席委員

   委員長 小野寺五典君

   理事 上野賢一郎君 理事 越智 隆雄君

   理事 加藤 勝信君 理事 島尻安伊子君

   理事 牧島かれん君 理事 逢坂 誠二君

   理事 後藤 祐一君 理事 漆間 譲司君

   理事 佐藤 英道君

      井野 俊郎君    伊東 良孝君

      伊藤 達也君    石破  茂君

      今村 雅弘君    岩屋  毅君

      衛藤征士郎君    尾崎 正直君

      大岡 敏孝君    奥野 信亮君

      金田 勝年君    亀岡 偉民君

      菅家 一郎君    後藤 茂之君

      下村 博文君    田中 和徳君

      平  将明君    塚田 一郎君

      中川 郁子君    中山 展宏君

      橋本  岳君    平沢 勝栄君

      藤丸  敏君    古屋 圭司君

      牧原 秀樹君    宮路 拓馬君

      山田 美樹君    山本 有二君

      若林 健太君    若宮 健嗣君

      渡辺 博道君    伊藤 俊輔君

      泉  健太君    大西 健介君

      金子 恵美君    源馬謙太郎君

      神津たけし君    近藤 和也君

      堤 かなめ君    西村智奈美君

      藤岡 隆雄君    本庄 知史君

      道下 大樹君    緑川 貴士君

      森山 浩行君    屋良 朝博君

      湯原 俊二君    吉田はるみ君

      渡辺  創君    浅川 義治君

      一谷勇一郎君    奥下 剛光君

      林  佑美君    赤羽 一嘉君

      伊佐 進一君    金城 泰邦君

      角田 秀穂君    中野 洋昌君

      斎藤アレックス君    宮本  徹君

      緒方林太郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   総務大臣         鈴木 淳司君

   法務大臣         小泉 龍司君

   外務大臣         上川 陽子君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   文部科学大臣       盛山 正仁君

   厚生労働大臣       武見 敬三君

   農林水産大臣       宮下 一郎君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      西村 康稔君

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    伊藤信太郎君

   防衛大臣         木原  稔君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     松野 博一君

   国務大臣

   (デジタル大臣)

   (規制改革担当)     河野 太郎君

   国務大臣

   (復興大臣)       土屋 品子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (国土強靱化担当)

   (防災担当)

   (海洋政策担当)     松村 祥史君

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)          加藤 鮎子君

   国務大臣

   (経済再生担当)

   (新しい資本主義担当)

   (経済財政政策担当)   新藤 義孝君

   国務大臣

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (経済安全保障担当)   高市 早苗君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (地方創生担当)

   (アイヌ施策担当)    自見はなこ君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  小杉 裕一君

   政府参考人

   (内閣官房国土強靱化推進室次長)         岡村 次郎君

   政府参考人

   (内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長)     井上  学君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   高橋 謙司君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官)            渡邊 昇治君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  井藤 英樹君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 岩本 桂一君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)            河邉 賢裕君

   政府参考人

   (外務省欧州局長)    中込 正志君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            長岡 寛介君

   政府参考人

   (文化庁次長)      合田 哲雄君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         宮浦 浩司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房技術総括審議官)       川合 豊彦君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           関村 静雄君

   政府参考人

   (農林水産省輸出・国際局長)           水野 政義君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  村井 正親君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    茂木  正君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長)            井上 博雄君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松浦 哲哉君

   政府参考人

   (国土交通省都市局長)  天河 宏文君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十一日

 辞任         補欠選任

  岩屋  毅君     中川 郁子君

  下村 博文君     菅家 一郎君

  塚田 一郎君     中山 展宏君

  古屋 圭司君     大岡 敏孝君

  宮路 拓馬君     若宮 健嗣君

  山本 有二君     藤丸  敏君

  若林 健太君     山田 美樹君

  渡辺 博道君     井野 俊郎君

  西村智奈美君     堤 かなめ君

  藤岡 隆雄君     屋良 朝博君

  吉田はるみ君     神津たけし君

  渡辺  創君     泉  健太君

  守島  正君     浅川 義治君

  金城 泰邦君     中野 洋昌君

  角田 秀穂君     伊佐 進一君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     渡辺 博道君

  大岡 敏孝君     古屋 圭司君

  菅家 一郎君     下村 博文君

  中川 郁子君     岩屋  毅君

  中山 展宏君     塚田 一郎君

  藤丸  敏君     山本 有二君

  山田 美樹君     若林 健太君

  若宮 健嗣君     尾崎 正直君

  泉  健太君     金子 恵美君

  神津たけし君     吉田はるみ君

  堤 かなめ君     西村智奈美君

  屋良 朝博君     湯原 俊二君

  浅川 義治君     一谷勇一郎君

  伊佐 進一君     角田 秀穂君

  中野 洋昌君     金城 泰邦君

同日

 辞任         補欠選任

  尾崎 正直君     宮路 拓馬君

  金子 恵美君     渡辺  創君

  湯原 俊二君     緑川 貴士君

  一谷勇一郎君     守島  正君

同日

 辞任         補欠選任

  緑川 貴士君     道下 大樹君

同日

 辞任         補欠選任

  道下 大樹君     伊藤 俊輔君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 俊輔君     藤岡 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和五年度一般会計補正予算(第1号)

 令和五年度特別会計補正予算(特第1号)


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     ――――◇―――――

小野寺委員長 これより会議を開きます。

 令和五年度一般会計補正予算(第1号)、令和五年度特別会計補正予算(特第1号)の両案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官小杉裕一君、内閣官房国土強靱化推進室次長岡村次郎君、内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長井上学君、内閣府政策統括官高橋謙司君、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局統括官渡邊昇治君、金融庁企画市場局長井藤英樹君、外務省大臣官房審議官岩本桂一君、外務省総合外交政策局長河邉賢裕君、外務省欧州局長中込正志君、外務省中東アフリカ局長長岡寛介君、文化庁次長合田哲雄君、農林水産省大臣官房総括審議官宮浦浩司君、農林水産省大臣官房技術総括審議官川合豊彦君、農林水産省大臣官房審議官関村静雄君、農林水産省輸出・国際局長水野政義君、農林水産省経営局長村井正親君、経済産業省大臣官房商務・サービス審議官茂木正君、資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長井上博雄君、中小企業庁事業環境部長山本和徳君、中小企業庁経営支援部長松浦哲哉君、国土交通省都市局長天河宏文君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野寺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野寺委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。若宮健嗣君。

若宮委員 おはようございます。自由民主党の若宮健嗣でございます。

 本日は、自由民主党・無所属の会を代表して、経済対策を始め、外交、安全保障など当面する政治課題について、総理、そして関係閣僚の皆様方にお伺いをさせていただきます。

 まず、総理に政治姿勢についてお伺いをさせていただきます。

 総理は常々、経済対策、防衛力強化、子供、子育て政策など、先送りできない課題に取り組んでいくという決意を示されておられますが、重要な課題ほど、国民の皆様方の理解と協力、そして何よりも信頼が必要だと考えております。

 しかしながら、僅か数週間の間に副大臣や政務官が三人相次いで辞任をするという事態が発生しております。政府のみならず、私たち与党の一員としても襟を正していかなければならないと考えておるところでございますが、総理御自身がこのような状況をどのように認識され、また、現在の傷ついた国民の皆様方からの信頼をどのように回復していこうとしておられるのか、お考えをお伺いできればと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘の、辞任が続いている等、政治に対する信頼が揺らいでいるという点については、まずは謙虚に、こういった御指摘、批判を受け止めなければならないと思います。任命責任者として重く受け止めているところです。

 そして、その上で、政府一丸となって信頼回復に努めなければならないわけですが、政治の役割は、課せられた課題に対して、国民の皆さんの声を丁寧に聞きながらも、最後は自ら決断し、そして結果を出すことであると思います。

 今、政治に課せられた課題、物価高騰を始め、国民生活に係る大きな課題が突きつけられています。こうした先送りできない課題に対して、臆することなくしっかりと判断をし、そして結果を出していく、こうした姿勢をこれからも持ち続け、そして努力をしていくことを通じて、国民の皆さんの信頼回復に努めていく、そうした強い覚悟を持って努力を続けていきたいと考えております。

若宮委員 かしこまりました。

 それでは、早速ですが、経済対策についてお伺いをしてまいりたいと思います。

 政府は今月二日に、デフレ脱却のための総合経済対策を決定いたしました。約二十兆円という規模といい、足下の物価高への対応、あるいは持続的賃上げに向けた環境整備を始め、成長力強化のための投資の促進、人口減少を乗り越え、変化を力にする社会改革、さらには国民の安心、安全など、あらゆる分野に目配りした内容といい、非常にバランスの取れた対策だと考えておりますが、どうもマスコミ各社の世論調査を見てみますと、なかなかうまく国民の皆様方に理解をされているとは言い難い状況だと感じております。

 近年の経済対策は、いわゆるコロナ禍から国民の命と健康を守り、暮らしと産業を支えるためのものという色彩が強かったかと思いますが、その意味で、昨年までの経済対策と今回の対策とでは、根本的に性格が異なるものだと考えております。

 まずは、今回の対策の意義は何か、そして、この対策によってどのような効果を狙っているのか、改めて総理に分かりやすく御説明いただければと思います。

岸田内閣総理大臣 今回の経済対策の目標は、その題名にも掲げておりますように、デフレからの脱却、これが大きな目的であります。

 私たちの経済は、三十年近くにわたってデフレに苦しんできました。賃金が上がらない、物価も上がらない、また、投資も進まない、こうしたデフレの悪循環が続いてきたと言われてきました。

 その中にあって、アベノミクス等を通じてデフレからの脱却を目指した。また、この二年間は、新しい資本主義という経済対策で成長と分配の好循環を目指した。その結果として、今、明るい兆しが出てまいりました。三十年ぶりの、三・五八%の賃上げ、三十年ぶりの株価水準、五十兆円にも及んだGDPギャップの解消、また、民間においては、百兆円、過去最高の投資が見込まれている、こうした明るい兆しが出てきました。

 デフレの悪循環から脱却する明るい兆しが出てきましたが、大事なことは、これを持続させることができるかどうかということであり、今がその正念場であるという判断に立っています。

 是非、この明るい兆しを来年に引き継ぐために、今回の経済対策においては、まずは賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を維持強化するために、供給力の強化の政策を用意いたしました。

 そして、何よりも賃上げを来年、再来年と続けていかなければいけないわけですが、来年の段階においては、賃上げ道半ばでありますので、物価高騰との関係において、十二分に上回ることというのはそう簡単なことではない。

 よって、来年においては、こうした賃上げに加えて、給付ですとかあるいは減税ですとか、あらゆる政策を用意して、可処分所得、すなわち国民の皆さんの自由に使えるお金、これをできるだけ確保することによって、消費を落ち込ませるということがないように配慮する必要があると考えた結果として、今申し上げました賃上げの原資となる企業の稼ぐ力、供給力の強化と併せて、所得税、住民税の減税、給付を始めとする可処分所得を下支えする政策、これを組み合わせることによって、明るい兆し、デフレ脱却の兆しを来年から再来年につなげていく経済政策を用意しなければならない、こういったことで、今回の経済政策を用意いたしました。

 是非、三十年来、デフレから脱却しなければいけない、ずっと願い続けてきた、努力をしてきた、この成果を来年に向けてしっかりと引き継いでいくことができるために、今回の経済政策、しっかり国民の皆様方にも御理解いただき、そして活用していただき、日本の経済の新しいステージにつなげていただければと強く願っております。

若宮委員 今総理が御答弁いただきました可処分所得、これを増やしていくことが何よりだというふうに私も思っております。そして、その可処分所得が増えたことによって、増えたお金の分を消費に回す、その消費に回った分がぐるぐるっと世の中を回って、お金が回ることによってプラスのスパイラルが生まれれば、日本経済がデフレマインドから脱却できるのではないかな、私もそう感じております。強くその経済政策を進めていただければと思っております。

 もう一点お伺いいたしたいのが、今はデフレ脱却のための様々な形の政策ですが、給付についてもお伺いをさせていただければと思っております。

 どうしても、この減税と給付、セットで扱われておりますが、やはりここは切り離して考えていく必要もあろうかと思っています。デフレマインドを払拭するには、国民全体の可処分所得を上げる、そして、そのために減税を実施するということは一つの方策でもありますが、何といっても、来年の六月頃ということで、少々時間がかかってまいります。

 そもそも、これまた非課税世帯の方々からすれば、その効果というのは及ばないことにもなります。そして何よりも、今回のまた特徴というのは、非課税世帯よりも所得がちょっと高い方々にもしっかりと目を向けていくということも大きなポイントになってこようかと思います。

 この方々は、納税額が少ないために、比較的、効果的な減税のメリットが少ないというふうにも思われております。さらには、非課税世帯ではないために、低所得者の支援、こういった対象からも外れてしまうということも考えられます。こういった部分についてはきめ細やかな対応が必要だと思っております。

 具体的な制度設計につきましては年末までに成案を得るということになっておりますが、この減税や給付に見合った支援となることをお願いしたいと思っております。

 また、経済対策といいますと、全体の予算額あるいは事業規模ベースで何千億とか何兆円とか、大きな数字を、どうしても新聞の見出しが躍ることになります。

 そうしますと、特にこれは、大きな金額をやったんだぞ、こんな形になるんですが、実は、お一人お一人の国民の皆様方、あるいはお一つお一つの事業者の皆様方からしますと雲をつかむような話で、実際の手元に来るのは一体何が来るの、幾らが自分のところに来るの、こういった感覚からすると実感が湧かないのが正直なところだと思います。

 例えば、今回の対策でも、リスキリングの支援、あるいは年収の壁への対応、あるいは家事支援サービスの活用、また中小企業への支援など、きめ細かな施策も盛り込まれておりますが、そもそもどのような施策、サービスがあるのか、あるいはどこに誰が行けば申し込めるのかについて、なかなか十分にお分かりいただけていない状況かと思います。

 どんなに盛りだくさんのメニューをつくりましても、一般の国民の皆様方、事業者の皆様方が利用されないのでは、これではやったことには全くなりませんし、やらないのと等しいということになってしまいます。

 まずは、個人が受けられる施策や利用できるサービスにはどんなものがあるのか、あるいは事業者向けにはどんな施策があるのか、ラインナップをどのように国民の皆様方や事業者の皆様方に伝えて御利用していただくのか、対策の取りまとめに御尽力をされました新藤経済財政担当大臣にお伺いしたいと思います。

新藤国務大臣 今御質問いただきましたように、これから経済を新しいステージに持ち上げていく、それは何よりも、目の前で物価高に苦しむ、ここを支援をする、そして、低所得者の所得層の、最も物価高の厳しい、そういう影響を受けている方々には素早く給付をする、それが三万円プラス七万円の十万円。それに加えて、生活者支援のための重点支援地方交付金、これを拡充いたします。さらには、これに、子育て世帯の皆さんにはもう少し御支援できるような、そういったことも考えています。

 総理が先ほどから再三申し上げておりますように、可処分所得を向上するんだと。その上で、じゃ、それは企業の業績拡大につなげていかなくてはなりません。ですから、そうした、まずは企業の業績を支援するための新しい省人化投資だとか、そういったものも今回入れております。さらには、新しい産業を牽引するフロンティア、そういったものも今回の対策に落ち込んでいる。

 是非、私たちが皆さんにお分かりいただきたいのは、たくさんの施策があって、それを総合的に組合せをして、日本の経済は大きく強く、しかも新しい形になっていくんだ、それをやはり丁寧に説明していかなければならない、このように思っているわけであります。

 その中で、委員が御指摘いただきましたように、それをどうやって一人一人の、自分の生活にどう影響されるかということ、これを分かっていただく必要があると思います。

 ですから、きめ細かな広報、これもきちんとやりたいと思いますし、家事支援サービスと言っていただきました。これは新しい取組です。中小企業が、福利厚生の一環として、社員の皆さんが働く時間を確保するために、お掃除だとか洗濯だとか、そういう家事サービスをあえて業者さんに頼む、その場合には、国がその業者さんに対して、そもそもの、皆さんに補助金を出して、低い予算で、安くそういった家事サービスが受けられるような、こういったものも盛り込ませていただいております。

 これは、しっかりとした、それぞれホームページだとかSNSでPRしながら、要するに、すぐに、どこに聞けば分かるか、そういったことを分かりやすいPR、これは予算が成立した後に素早く出せるようにしていきたい、このように考えております。

若宮委員 ありがとうございます。

 私自身も、有権者の方からも御相談いただいたり、あるいは知人からも御相談いただくんですが、実際に、御自分が困っている方について、どこの窓口に相談したらいいのか。例えば、多分経済産業省にかけたらいいのかなと思って代表番号にかけるんだけれども、そこの担当の部署につながるまでにえらい時間がかかって、なかなか、こっちじゃありません、あっちじゃありませんといって、最終的にどこなんだろうかというところがどうも分かりにくかったり、あるいは、そこの電話が混んでいたりとか、様々な事態が実際に見受けられるのが現実であります。その辺り、いろいろな各省庁、連携しながら、いい形でのお伝えの仕方を心がけていただければと思っております。

 続きまして、外交、安全保障にちょっと論点を移させていただきたいと思います。

 昨年二月のロシアのウクライナへの侵攻以来、国際秩序は大きく揺らいでいます。なかなか国連の実績というのも、うまく機能していないような状況も見受けられます。

 この大きな歴史の転換点にありまして、我が国は、力による現状変更は一切許さないという強い決意を持って、G7を始めといたしました同じ価値観を有する国々と連携しながら、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守っていかなければならないと考えております。

 ウクライナにおけるロシアの侵攻、あるいはガザ地区での戦闘行為の継続など、世界が緊迫の度合いを高めている中、総理におかれては、先週、サンフランシスコでのAPECに出席をされました。特に、一年ぶりの中国との首脳会談は非常に国際的にも注目をされておりましたが、中国以外も含めまして、各国首脳の皆様方とどのような議論があったのか、そしてまた、今後どのような展開になるのか、あるいは、日本国政府にとって実際的な外交的な成果はどんなものだったのか、お聞かせいただければと思います。

岸田内閣総理大臣 御指摘のAPEC首脳会議、APECは、アジア太平洋地域の経済を中心に議論する会議体でありますが、そのAPECの会議体においては、アジア太平洋地域の持続的な成長を目指すために、日本として積極的に貢献する姿勢、これを訴えながら、ルールに基づく多角的貿易体制の重要性や、気候変動など、こうした地球規模の課題について日本の考え方を示し、そして成果文書の中にそれを盛り込むことができた、こういった会議でありました。

 そして、委員御指摘のように、中国を始め七つの国・地域のリーダーと意見交換をさせていただきました。

 その中にあって、まず中国との関係においては、一年ぶりの習近平国家主席との首脳会談でありました。その中にあって、やはりまずはALPS処理水を始め我が国の懸念事項について率直にはっきりと先方に伝えた上で意思疎通を図り、結果として、建設的かつ安定的な日中関係を目指していこう、そのために対話を積み重ねていこう、こうした大きな方向性を確認したことは大きな成果であったと思います。

 その他、アメリカとの間においても、厳しい安全保障環境の中で、日米同盟の重要性はより一層高まっているということで、連携を確認するということも大きな意味があったと思いますし、その他の国々との間においても、今、国際情勢が、中東であったりウクライナであったり、大変大きく変化していく中にあって、やはり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序、こうした国際法を始めとする法の秩序は弱い国の立場のためにこそあるものであるという考え方に基づいて、ルールや法の支配に基づいた秩序を考えていくことが重要だ、こういった基本的な考え方、さらには人間の尊厳という考え方の重要性、こういったことを確認する場となりました。

 それぞれ、今の激動する国際秩序の中で意義ある会談であったと振り返っております。

若宮委員 次に、総理は、今月八日にウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談をした際に、強力なウクライナ支援に引き続き取り組むことや、あるいは、ウクライナと共にあるというメッセージを伝えたと承知をいたしております。また、来年早々には日・ウクライナ経済復興推進会議を開催することで合意もしております。

 今後、どのような形でウクライナ支援に関して続けていくのか、総理にお伺いできればと思います。

岸田内閣総理大臣 日本はこれまで、ウクライナ支援に関しては、総額七十六億ドルの支援の協力、これを表明し、そして実施をしております。

 そして、ウクライナの支援に関しては、今後、中長期的な復旧復興に向けて、我が国の経験を生かしつつ、地雷対策ですとか瓦れき除去、あるいは電力等の基礎的なインフラ整備を含む生活再建など、日本ならではの細かい支援を実施していくことが重要であると考えております。

 そして、委員御指摘のように、来年二月十九日に日・ウクライナ経済復興推進会議、これを東京で開催することを予定しております。ウクライナの復興復旧には、政府はもちろんでありますが、民間あるいは企業関係者、こういった関係者の関与も不可欠であるということで、官民一体でウクライナの復旧復興を進めていく姿勢をこの会議を通じてしっかり示していきたいと思っています。

 これに向けて、昨日二十日の日には、辻外務副大臣と岩田経済産業副大臣がウクライナに、日本企業の参加も得て、経済ミッションとして訪問をさせていただいております。こうした復興復旧に向けて意見交換を行ったところでありますが、こうした成果も踏まえながら、ウクライナの復興に向けて政府一丸となって取り組んでいきたいと考えております。

若宮委員 ありがとうございました。

 またちょっと中東の方に目を転じてみたいと思います。

 この度のハマスのテロ行為により、イスラエルに大きな損害が生じています。イスラエル国民を始め各国の市民を拉致し、そして人質とすること、こういったことは決して許されるものではなく、強く非難をし、ハマスは即刻人質を解放すべきであると考えております。一方で、イスラエルの攻撃によって、ガザ地区の多くの一般市民にも犠牲者が出ています。

 現代の戦争はまさに情報戦、SNS等を活用されていますが、お互い双方から自らを有利にするような発信が続けられて、また、周辺各国を含めた形での関係各国の事情、これもかなり思惑が入り乱れている中、日本政府におかれては、懸命な外交努力を続けておられます。

 各国の働きかけもあり、ガザ地区での支援物資の輸送、これは少しずつ行われているものの、エネルギー不足などによって新生児が亡くなるなど、連日痛ましい情報が世界に発信をされています。

 また、この週末には、イエメンのフーシ派によって貨物船の乗っ取り事案が発生をいたしました。

 この中東地域の安定というのは、まさに私たち日本のエネルギー事情と直結をいたすと思います。日本政府として、今後、イスラエル・パレスチナ情勢にどのように貢献をしていくのか、関与していくのか。日本だからこそできる支援、そしてまた、この混乱の中、苦しんでいる方々に適切な形で支援が届くようにしていかなければならないと考えておりますが、ガザ地区への人道支援の在り方について、総理にお伺いさせていただければと思います。

岸田内閣総理大臣 中東の情勢、これは世界の国際秩序にも大きく関わる重大な状況になっていると考えています。日本外交としても、しっかりと存在感を示し、貢献していかなければならない、こうした問題意識を持ち、既に、上川外務大臣に現地に行ってもらうなど、取組を進めているところであります。

 私自身も電話会談等で各国の首脳とやり取りをしておりますが、現地の状況も含めて、御指摘の点について、上川大臣から少し報告をさせていただきたいと思います。

上川国務大臣 ガザ地区及びこの周辺におきましては、今もなお多数の死傷者が発生しているところでありまして、今も現地の緊張度は刻一刻増している状況であります。情勢は全く予断を許さない状況にあると言っても過言ではないと思っております。我が国といたしましても、深刻な懸念を持って注視しているという状況であります。

 我が国は、これまで、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、三つの方針、一つ目は、人質の即時解放、そして一般市民の安全確保、そして二つ目として、全ての当事者が、国際法、国際人道法を含めまして国際法に従って行動をするということ、そして三点目として、事態の早期鎮静化、これを一貫して求めてきているところであります。

 まずは、ガザ地区の一般市民に必要な支援が行き届くよう、人道的休止及び人道支援活動が可能な環境の確保、これが必要でありまして、イスラエルに対しましては、私自身、先般のイスラエル訪問の機会を含めまして、一般市民の保護の重要性、国際人道法を含む国際法に従った対応等を直接要請してきているところであります。

 また、先般のG7外相会合におきましては、ガザ地区における人道危機、これに対処するための緊急行動を取る必要がある点を含めまして、今般の事態に関する一致したメッセージを文書の形でまとめ上げることができました。

 こうしたG7外相会合の成果につきましては、十一月十四日、出張先のアメリカ・サンフランシスコにおきまして、今般の事態への対応におきまして重要な役割を果たしているエジプト及びヨルダンの外相とそれぞれ電話会談を行いまして、G7外相会合での議論を紹介をしつつ、今後も連携して一致して取り組んでいくということといたしたところであります。

 また、現在の現地の人道状況の悪化を踏まえまして、ガザ地区の一般市民に一日も早く必要な支援を届けることが目下の最優先課題であるとの考え方から、我が国は、食料、水、医療等の分野で一千万ドルの緊急無償資金協力を決定したほか、パレスチナに対し、今後、総額約六千五百万ドルの追加的な人道支援を行うべく取り組んでいるところでございます。

 引き続き、刻一刻と動く現地情勢を踏まえつつ、関係国、関係機関等としっかりと意思疎通を行い、早急に児童を含む人道状況の更なる悪化を防ぐため、先般我が国も賛成して採択されました安保理決議も踏まえた上で、この人道状況の改善及びそれに資する人道目的の戦闘休止、さらに、事態の早期鎮静化に向けた外交努力を粘り強く積極的に進めてまいりたいと考えております。

若宮委員 ありがとうございました。

 非常に微妙な、機微な問題を含む難しい外交のかじ取りだと思いますが、引き続きの御尽力、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 APECでは、米中会談も行われました。来年は、アメリカの大統領選挙、あるいは台湾の総統選挙の年でもあります。このインド太平洋地域、とりわけ東アジアの地域の均衡が崩れるような事態が起きますと、アメリカは三正面での対応を迫られることとなり、我が国にとっても、これはまた中国の海洋進出、あるいは、今朝も報道されましたが、北朝鮮の衛星の打ち上げ等々ございます。国際社会にとっても、この東アジアの安定、極めて重要だと考えております。

 そんな中、実は、これは私が防衛副大臣を務めたときに実施された、TC90という練習機がございますが、これをフィリピンへ譲渡をさせていただきました。また、同じ頃に始まりました装備移転で初の完成品となります警戒管制レーダーが、この十月にフィリピンに引き渡されました。さらには、部隊間の協力を円滑にする協定の交渉入りも決定したところでもあるかと思います。また、OSA第一号の案件として沿岸監視レーダーを供与することを岸田総理、マルコス大統領立会いの下、決定するなど、日本とフィリピンとの防衛協力、様々なツールを使い、進捗をしているものというふうに認識をいたしております。

 フィリピンとこのように協力関係を進めていくこと、これは私ども日本の国益にとってどのような形でつながるのか、上川外務大臣にお答えいただければと思います。

上川国務大臣 フィリピンは我が国と同じ海洋国家であります。基本的な原則や価値を共有する戦略的パートナーでもあります。フィリピンとの間におきましては、先般の岸田総理のフィリピン訪問の成果も踏まえまして、OSAを始めとする安全保障、防衛協力分野における具体的な協力を着実に実施していく考えであります。

 私も先週、APEC閣僚会合等の機会にフィリピン外相と会談をいたしました。国際情勢がますます厳しく複雑化する中におきまして、こうした取組を通じ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持強化し、人間の尊厳が守られる世界、これを確保すべく、フィリピンと緊密に連携してまいりたいと考えているところであります。

 OSAにつきましては、我が国にとりまして望ましい安全保障環境を創出する、この目的に鑑みまして、インド太平洋地域を主要な支援対象として、対象国を拡大しつつ、海洋安全保障分野等におきまして、日本の安全保障、また地域の平和と安全の維持強化にとりまして有意義な支援を行っていく考えであります。

若宮委員 ありがとうございました。

 現在、防衛装備移転の三原則とこの運用指針につきまして、実は予算委員長の小野寺先生が座長でもありますが、与党の国家安全保障戦略等に関する検討ワーキングチームで実務者協議を進めております。

 昨年取りまとめられました国家安全保障戦略では、その意義の一つとして、インド太平洋地域における平和と安定のために、力による一方的な現状変更を抑止して、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出することとしています。

 昨今、世界を見回してみますと、以前とは大きく異なり、力、いわゆる相対的なパワーですが、多極化しています。同盟国はもちろんのこと、友好国、同志国との密接な連携、提携は欠かせないものと考えております。その観点からも、防衛装備品を共有することは、部隊間のコミュニケーションの向上、あるいは、いざというときの継戦能力の向上にもつながり、我が国の防衛力の向上に大きく寄与するものと考えております。

 例えば、F2後継機となります、これは航空自衛隊が使っている戦闘機ですが、将来戦闘機に関しまして他国と共同開発をしていく案件、これは、昨年、日本と英国とイタリアと三国で開発をしていくことでまとまり、次のステップに進捗させていく段階となっています。

 しかしながら、この防衛力の抜本的な強化に関して、国民の皆様方の理解がいま一つではないかな、そう感じています。どうも、兵器を海外に売り込んでいくための議論じゃないかな、こうした誤った見方があるのも事実かと思います。

 共同開発や装備移転、あるいは、先ほどのOSAを有効に活用することは、相手国のみならず我が国の安全と安心に直結するものと考えておりますが、改めて総理にこの意義についてお答えいただければと思います。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面する中、我が国の主権と独立の維持、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の強化、力による一方的な現状変更の抑止など、望ましい安全保障環境の創出に向けて取り組むことが必要であります。

 このような観点から、装備移転を適切な管理の下で円滑に実施するための基金や、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化を目的とした政府安全保障能力強化支援といった、今年度から具体化した措置を活用し、官民一体となって防衛装備移転を進めていく考えであります。

 こうした取組を通じて、同盟国、同志国とも協力しつつ、我が国にとって望ましい安全保障環境の創出や抑止力の強化に取り組んでまいりたいと考えております。

若宮委員 ありがとうございました。

 引き続き、まだ継続のものがたくさんあろうかと思いますので、しっかりとお取組もしていただければと思っております。

 さて、少しまた話を変えたいと思います。

 今、私ども自民党と公明党では、与党、実効的な被害者救済の推進に関するプロジェクトチーム、これを設置させていただき、これまで七回にわたって、関係省庁、全国統一教会被害対策弁護団、あるいは被害者、宗教団体関係者、憲法学者など有識者からのヒアリングを行いました。

 特に、被害当事者の皆様方からのヒアリングにおきましては、孤独、孤立にあえぎ、生活困窮に苦しみ、宗教二世として、親への愛情とのはざまで心の悩みにさいなまれるなど、被害の深刻さやこれまでの御苦労、そして、本当に被害者の方々の声に真摯に耳を傾けさせていただきました。被害者を、一日でも、そして一人でも、早く救い上げるために、議論を深め、実効的な被害者救済に向けて精力的に検討してきたところでございます。

 そして、今現在、被害者の資力を問わずに支援するなど、法テラス法の特例を定めるとともに、不動産の処分等の際には事前に公告を行うなど、宗教法人法の特例を講じることを内容とする法律案を提出するべく、党内手続を進めているところでございます。

 一方で、会社法の包括的な財産保全規定と同様に、解散命令請求から解散命令までの間、宗教法人に対して包括的な財産保全を可能とする定めを置くべきとの議論もございます。

 そこで、盛山文部科学大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。

 宗教法人法には会社法のような財産保全措置に関する規定が置かれておりませんが、これはどういった理由からでございましょうか。

盛山国務大臣 お答えいたします。

 会社法は、包括的な保全がどのような要件を満たした場合に可能であるかを具体的に規定はしておりません。

 宗教法人につきましては、会社と異なり、経済的自由とされる財産権のみならず、精神的自由とされる信教の自由との関係でも影響を与えることから、同様の規定を設けることについては、憲法上の問題を踏まえた慎重な議論と検討が必要と考えられます。

 なお、過去の経緯では、宗教法人に対する解散命令を裁判所が行う制度となりました昭和二十年の宗教法人令から昭和二十六年の宗教法人法の制定を通じて、財産保全の制度は設けられておらず、平成七年の宗教法人法の改正においても、財産保全の制度の導入は見送られております。

若宮委員 それでは、ただいまの答弁を踏まえまして、内閣法制局長官にお伺いをしたいと思います。

 宗教法人の財産に関して、株式会社等の他の法人と比べて、憲法の保護する信教の自由の観点からどのような点に配慮が必要なのか、憲法の観点からお答えいただければと思います。

近藤政府特別補佐人 ただいまの御質問に対しまして、憲法の観点から一般論として申し上げますと、解散請求に伴う宗教法人の財産の保全は、宗教法人や信者がその財産を用いて宗教活動を行うことの制約になり得ることから、そのような財産を保全することを可能とする制度については、憲法が保障する信教の自由との関係から、個別具体的に慎重な検討が必要であるというふうに考えております。

若宮委員 次に、小泉法務大臣にお伺いをしたいと思います。

 これまでの民事保全の実務に照らしますと、仮に宗教法人を対象とした包括的な財産保全制度が導入されたとしても、保全すべき債権が確定していないにもかかわらず、今後被害者が出てくるかもしれないという推測に基づいて裁判所が包括的な財産保全を認めるとはなかなか考えにくいとは思いますが、いかがでございましょうか。

小泉国務大臣 法務大臣といたしまして裁判所の判断の在り方について答弁することは差し控えたいと思いますけれども、以下、一般論として申し上げたいと思います。

 まず、民事保全法においては、財産を保全するに当たって、保全されるべき個別具体的な請求権の存在及び額のほか、保全の必要性の疎明が必要とされております。

 一方で、会社法上の保全処分でございますけれども、これは個別の権利の実現を目的とする民事保全とは性格を異にするものでありますとともに、これまでに適用された例を承知しておらず、どのように運用されるかを的確に予測することは困難であります。

 ただ、これも一般論として申し上げますと、会社法上の保全処分は、請求権の存在やその額などを含む様々な事情を踏まえた上で、裁判所が必要と認める場合に命じられるものと考えられます。そうしますと、御指摘のような、今後被害者が出てくるかもしれないなどという推測のみに基づいて包括的な保全処分が命じられる可能性は低いのではないかと考えております。

 いずれにしても、解散命令が確定した後の清算手続において個々の債権者が弁済を受けるには、自己の請求権の存在、その額を明らかにする必要があるため、個別の請求権の存在及びその額を確定することが重要となると考えております。(発言する者あり)

小野寺委員長 御静粛にお願いいたします。

若宮委員 被害者救済のために最も効果的かつ確実な方法、これは個々の被害者が民事訴訟の提起等をすることであると思っています。しかし、現在、民事訴訟係属中の事件というのは僅か数件であります。また、民事保全手続係属中の事件はゼロであります。

 このように民事事件手続がほとんど利用されていない原因として、被害者への法律相談体制が十分でないこと、また、訴訟や保全を行うための費用を捻出することが困難であることなどがヒアリング等々から見えてまいりました。

 そこで、もう一回法務大臣に確認をさせていただきたいと思いますが、被害者救済のため、法テラスに関する特例措置を設けて、資力にかかわらず民事手続に関する援助ができるようにしたり、あるいは、弁護士費用等の立替金の償還免除等の拡充を図る必要があると考えておりますが、現状の取組についてお伺いしたいと思います。

小泉国務大臣 法テラスでは、霊感商法等対応ダイヤルにおいて、旧統一教会問題に関する相談に対し、関係機関等と連携しながら、弁護団を始めとする適切な相談窓口等を紹介するなどしております。さらに、法テラスが行う民事法律扶助業務として、資力の乏しい方に対し、民事訴訟手続、民事保全手続等に関する弁護士費用の立替え等を行っております。

 法テラスでは、こうした相談対応や民事法律扶助の積極的な活用等により、被害救済を図っているところでございます。

若宮委員 また、国等が解散命令請求をした宗教法人の資産流出、これを防ぐためには、当該団体の資産状況を把握していくことが重要であると思います。現行の宗教法人法の仕組みでは、不動産処分の公告の仕組みがございますが、この対象は信者と利害関係者に限られています。また、財産目録等を所轄庁に提出する制度もありますが、年に一回に限られており、対象となる法人の資産状況を適時に把握できないのではないかとの懸念もございます。

 そこで、盛山文部科学大臣に確認をさせていただきたいと思いますが、国等が解散命令請求をした宗教法人の資産流出を防ぐために、不動産処分に関して広く公告することや財産目録の提出回数を増やすなどの措置が考えられると思いますが、現状の取組についてお聞かせをいただければと思います。

盛山国務大臣 現行の宗教法人法では、宗教法人が不動産等の財産の処分等を行う場合には、少なくとも一か月前に信者その他の利害関係人に公告しなければならないこととなっておりますが、例えば、事務所等の掲示板で公告する方法も認められております。

 また、宗教法人に対し、財産目録等を作成し、毎会計年度、所轄庁へ提出させるとともに、利害関係人に閲覧させることとしておりますが、閲覧を認める判断は宗教法人が行うこととなっております。

若宮委員 ありがとうございました。

 実効的な被害者救済を図る上で必要な対策を講じる観点から、私たちが考える法案では、被害者の方々が保全手続を含む民事事件手続を幅広く活用できるようにするため、法テラスの業務の拡充を図る、さらに、財産の隠匿や散逸防止のために、不動産の処分等の際には事前に公告を行う、あるいは資産状況の把握に関する措置を行うなど、様々、細かいところは今ここでは申し上げませんが、考えているところでもございます。

 さて、続きまして、ちょっとまた話を変えたいと思いますが、大阪・関西万博の開催につきましてちょっとお伺いをさせていただきたいと思っております。

 私自身、総理の最初の内閣で国際博覧会担当大臣も務めさせていただきました。コロナの影響で、実は、この大阪・関西万博の一つ前、これはUAEのドバイで開催をされましたが、これがやはり一年以上遅れた形での開催となり、二〇二一年の十月から始まり、半年間の二〇二二年の三月に閉幕をいたしました。私がちょうど担当をしておりました時期、海外の諸国からは、ドバイがこれから始まるから、大阪・関西万博に今すぐ参加しろと言われても、なかなか、返事はちょっと待ってほしいという御要望が多々ありました。

 そもそも、スタートが、通常よりも、コロナのせいとはいえ、一年ぐらい遅れてスタートをさせていただいたような状況でもございました。当初は参加国は五十か国ぐらいでした。マスコミの皆さんからも、全然集まっていないんじゃないの、あるいは、目標の百五十、果たして集まるんですかというようなことを言われましたけれども、多くの皆様方の御尽力によって、何とか私の任期の二〇二二年の八月頃までには、おおむね百五十か国、国際機関を含めてですが、集めることができました。

 また、さらに、内容につきましても、単に各国のパビリオンの展示のみならず、一か国あるいは一つの地域だけでは解決できないようなテーマ、例えば環境ですとか、宇宙ですとか、災害ですとか、気候変動ですとか、あるいは水資源ですとか、こういったことをテーマにして、横串を入れて、いろいろなシンクタンクや、各企業や、あるいは役所が集まりながら国際社会で全体で捉えていき、次の時代、未来に向けての提言となるような新しい形の万博も模索をさせていき、今実行に移っているところかと思います。

 また、さらには、全国の自治体の皆様方との会合、これも連携をさせていただきました。各地から、日本の伝統文化、あるいは特産品、特産物などを、万博でも、御地元でも、各地で披露していただいて、それを併せて世界へ発信していただくことによって更に日本の農産物や水産加工物等の売上げも広がっていくな、様々な工夫を考えて仕組みづくりもさせていただきました。

 これは、海外からのインバウンド効果も踏まえた、大阪、関西のみならず全国の地域に広げていくことで、さらには地方創生にもつながっていくな、そう思って、あわせて、デジタル田園都市国家構想の担当大臣もさせていただきましたので、こういった形の取組をさせていただきました。そして、各地に機運醸成の輪を広げていこうとも考えたところでもございます。

 いよいよ二〇二五年の四月に開催予定の大阪・関西万博、開幕までもうあと僅か一年半足らずとなりました。五百日前のこの十一月の三十日には、いよいよチケット販売も開始をされてまいります。

 そこで、自見万博担当、地方創生担当大臣に、全国的な現状の機運醸成について、現在の取組についてお伺いをさせていただければと思います。

自見国務大臣 お答えいたします。

 まず、若宮大臣時代に道筋をつけていただきまして、未来のコミュニティーとか、あるいはモビリティー、また、地球の未来と生物多様性や、あるいは人権と平和など、地球規模の課題をテーマとして設定をした、様々な主体が集い、解決策を話し合う対話のプログラムですとか、あるいは、具体的な行動のためのビジネス交流を行うテーマウィークを御導入いただきましたこと、心から感謝申し上げてございます。

 また、御質問いただいております全国の機運醸成でございます。

 言及いただきましたように、大阪・関西万博の開催まで一年半を切り、十一月三十日にはチケット販売も開始される予定でございまして、全国に、万博に関心を持っていただけるよう、機運醸成を図るということは非常に重要でございます。

 これまでも、万博がもたらすメリットを全国が享受できるよう、全国の交流人口の拡大を目指す万博交流イニシアチブを打ち出し、万博を契機に全国の地域の活性化につなげていく取組を進めているところでございますが、今般の補正予算におきましては、万博を契機といたしまして、開催後のレガシーにもつながる地域活性化の取組を全国で一層進めていくための様々な取組を御用意してございます。

 全国の子供たちの、万博の学習機会への活用につながりますような出前授業等の実施、あるいは、全国の自治体と万博の参加国の交流の促進、そして、自治体が万博の機運醸成のために地域の文化資源を活用して実施する文化芸術事業への支援、そして、万博を契機として都道府県において新たに実施する地方創生に資する取組への支援等でございます。

 これら各府省の施策と連携をいたしまして、合計約三十億円を計上しているところでございます。

 これらの取組を通じまして、全国各地で万博を契機とした地域活性化に取り組んでいくことで、機運醸成をしっかりと進めてまいりたいと考えております。

若宮委員 初めて行われた万博から、この国際博覧会というのは、人類の科学的、文化的な成果や新たな次の時代の未来像を提示する世界の祭典でありました。そして、将来を担う子供たちにとっては絶好の学びの場となることも確かだと思っております。

 一九七〇年の大阪万博では、人類の進歩と調和をテーマに、多様な文化の調和の意味を世界に問いかけ、近未来的な展示が多くの人を魅了いたしました。実は、前回の万博も、直前まで余り、それほど盛り上がってはいませんでした。今ほどSNSとかいろいろな情報伝達手段がなかったんですが、行かれた方が、やはり、これは面白いということで、最終的には六千五百万人の方々が来場されました。これは、その後は中国に抜かれるまでずっとナンバーワンをキープしておりました。

 実は、私自身、当時九歳でした。この前回の一九七〇年の大阪万博に参りましたが、今でも鮮明に記憶に残っておりますのが、もちろん、アメリカの月の石もありました、様々な国を見ることも大きな楽しみでもありましたが、携帯電話、電気自動車、ロボット、動く歩道、この四つというのが、私が九歳のときに一番脳裏に焼き付き、そして今、その四つは既に皆様方の日常の生活のインフラになっています。

 二〇二五年の大阪・関西万博でも、今もう既にいろいろなアイデアが出されています。空飛ぶ車、まあ、ちょっと、大分空飛ぶ車は言われ続けて、空だけ飛んでもしようがないのかな、海もついでに潜ってもいいのかなとも思うんですが、自動翻訳システム、これは逐次翻訳や自動同時通訳等の、様々な新しい技術の芽出しが準備されています。

 万博は、日本が強みを持つ様々な技術開発あるいは革新を加速させて、未来社会をショーケース化して世界に発信する絶好の機会でもあると考えますが、この万博開催の意義について、改めて、再度、自見万博担当大臣からお話しいただければと思います。

自見国務大臣 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、近年の万博は、見る万博から、参加、体験、そして行動する万博に、また、人類共通の課題を解決する場へと変化しているところでございます。

 大阪・関西万博では、新たな技術やシステムを実証する場として、国内外の様々なプレーヤーによるイノベーションを促進し、それらを社会実装していく未来社会の実験場とすることをコンセプトに掲げてございます。

 このため、会場全体をショーケースに見立てて、空飛ぶ車、自動翻訳システム、水素・アンモニア発電など、新たな技術やシステムを実際に体験できる機会を提供することとしております。また、先ほど申し上げたテーマウィークも非常に重要だと考えてございます。

 こうした取組によりまして、大阪・関西万博が、新たな技術や新たなチャレンジを生み出す場としても、また、多くのビジネスマッチングを促進するとともに、多くの子供や若者たちにも夢と力を与える場となるように、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。

若宮委員 ありがとうございます。

 残り期間がかなり限定されてございますので、タイトな期間でありますが、タイトな状態だと思いますけれども、様々な取組を凝縮した形でお進めをいただければと思っております。

 さて、コロナ禍で深刻な打撃を受けましたインバウンドの回復が見込まれる現在、海外からもこの万博には多くの来場者がいらっしゃると思います。先ほどお話し申し上げたドバイの万博では、およそ二千八百万人ぐらいの来場者が見込まれました。そして、これを契機といたしまして、日本全体が躍動感にあふれて、日本国民一人一人が元気を取り戻して、そしてまた、各地域もそれぞれがまた稼げる地域になるような、地域の活性化につなげる大きなチャンスでもあると考えております。

 しかしながら、昨今、かかる経費が大幅に増加をしております。そして、大きな批判があるのも事実であります。昨年のロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰、あるいはウッドショックやアイアンショックなど、こうしたものに端を発する資材価格の高騰、そして、建築に関わる人件費の高騰など、様々な課題はあるかと思います。

 ただ、課題を乗り越えて、かかった経費以上のリターンを、メリットを国民にもたらそうという気迫と、そして、必ずややり遂げて成功させていくぞという覚悟を総理からお聞かせいただければと思っております。

岸田内閣総理大臣 委員からもお話がありましたが、大阪・関西万博、これは、実質的にはコロナ後に行われる最初の万博という位置づけになると思います。

 そして、万博というものは、私たち人類の未来を実感する、体験する大変重要な場であるという御指摘もありましたが、近年の万博というものは、参加して、体験して、そして行動する、こういう万博を目指すんだという考え方が強く強調されています。参加して、体験して、行動する、これが万博の重要なポイントだとしたならば、コロナ後、本格的に世界中から国民の皆さんが参加をし、そして交流をして、そしてこの会場において共に行動する本格的な万博であるということ、これは大変大きな意味がある、意義があると感じております。

 是非、万博という場、国際社会が今内向きになっていると言われている現代であるからこそ、こうした場を通じて世界が交流することは大きな意義があると思いますし、何よりも、これを機に、日本の魅力を世界に発信する絶好の機会にしたいと思っております。

 そして、あわせて、御指摘のように、こうした万博と連携して全国で様々なイベントを行うですとか、外国観光客には、是非、万博会場だけではなくして日本各地を訪れてもらうですとか、世界中から多くの方々が日本に集まることによって地方創生にも寄与していく、こうした日本全体が元気になっていく一つのきっかけになればと強く期待をしております。

 是非、こうした万博を、日本としてオール・ジャパンで、成功に向けて力強く前に推し進めていきたいと強く願っております。

若宮委員 ありがとうございます。

 私たちの責務というのは、各党会派、様々な立場や考え方は違いますが、目の前の、そして十年後、二十年後の日本国民の安心と安全と幸せを追求すること、そしてそれを導き出していくことであると考えております。その原点を決して忘れることなく邁進してまいりたい、こう思います。

 質問を終わります。

小野寺委員長 この際、島尻安伊子さんから関連質疑の申出があります。若宮君の持ち時間の範囲内でこれを許します。島尻安伊子さん。

島尻委員 自由民主党、島尻安伊子でございます。

 本日、予算委員会での質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 特に、本日は、子供政策についての質問を中心に進めさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いします。

 僭越ですが、うちの家族構成をちょっと御披露させていただきたいと思います。私は、四人の子供に恵まれまして、子育てをしてまいりました。夫はたった一人でございますけれども、平成二年の長男、そして平成四年、六年の次男、三男、末っ子、長女は平成十二年生まれでございまして、にぎやかな家庭でございました。おかげさまで、孫も一人恵まれまして、一人おります。

 沖縄に嫁ぎまして、沖縄での子育てはまさにユイマールでありまして、うちの子も隣の子もみんな同じというような、助け合いの子育て環境でございました。本当に助かりました。この環境は、今後、少子化対策を考える上での一助にもなるのではないかというふうに思っております。

 このような子育ての現場におりますと見えてくるものが多くございまして、行政の子育てサービスをこんなふうに変えたらいいんじゃないかとか、こんなアイデアはどうなんだろう、こういう思いをずっと持っておりまして、子育て政策を主に訴えて政界入りをさせていただいたところでございます。

 沖縄担当大臣を拝命したときには、沖縄の子供の貧困対策事業を立ち上げまして、本土とは違う沖縄の問題、特に若年妊産婦の居場所づくりも併せて事業化することができました。そのときに大変お世話になった加藤勝信筆頭も、四人のお子さんをお持ちでございますお父さんであられますけれども、当時、一億総活躍、そして少子化担当大臣をされていて、本当にお力添えをいただいたことを覚えております。ありがとうございました。

 さて、岸田内閣においては、子供ど真ん中を合い言葉に、加藤鮎子大臣の下で、こども家庭庁が頑張っておられます。まさに御自身も子育て真っ最中の加藤鮎子大臣にエールを送りつつ、質問に入らせていただきます。

 まず、総理にお伺いをいたします。改めてではありますけれども、我が国の子供政策についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 子供、子育て政策というもの、これは、人口減少ですとか少子高齢化等を通じて、我が国の社会保障制度や経済制度のみならず、地方の創生や地方のコミュニティーの維持、こういったものにも関わる、我が国にとりまして中長期的な、大変大きな課題であると認識をしています。

 よって、こうした政策を進める上で、まず第一に国民の皆様方に訴えさせていただいているのは、子供、子育て政策は、決して子育て世代、若い世代だけの問題ではなくして、こうした国のありようにも関わる課題であるからして、高齢者ですとか独身の方も含めて、あらゆる世代が自分たちの国のありようですとか自分たちの国の未来を考えていかなければならない、あらゆる世代で取り組むべき大きな課題であるという基本的な考え方、これを訴えさせていただいてきております。

 そして、御指摘のように、本年四月にはこども家庭庁を創設し、こどもまんなか社会の実現に向けて努力をしているわけですが、その中で、六月にまとめたこども未来戦略方針において、三つ、大きな柱を掲げさせていただいています。

 一つ目の柱としては、特に若い世代の所得を増やすこと、これは重要な課題であるということ。そして二つ目として、社会全体の構造や意識を変えることが重要だということ。そして三つ目として、子供たちは絶えず成長していきます、全ての子供、子育て世帯を切れ目なく支援をするということ。この三点を柱に据えて、少子化対策の強化に取り組んでいるところです。

 この少子化の傾向、ますます進んでいます。是非、スピード感を持って、こうした国家的な課題に取り組んでいかなければならないと考えています。

島尻委員 ありがとうございます。

 今総理がお示しなさった三つの柱について、こども家庭庁として具体的なアクションを持ってそれを実現化に向けてやっていくということだというふうに思っておりますが、本日、三つ、一つは子供の居場所づくりについて、そしてもう一つは放課後児童クラブについて、そして三番目に幼児期までの子供の育ちに係る基本的なビジョンについて、この三点について御質問を進めていきたいというふうに思っております。

 まず、子供の居場所づくりでありますけれども、こども家庭庁では、今年度末に向けて、子供の居場所づくりに関する指針を策定中であるというふうに聞いております。この度の令和五年補正予算においては、子供の居場所づくり支援体制強化事業として、これの調査費が計上されております。

 加藤大臣にお聞きをいたします。この子供の居場所づくりに対しての意欲を、まずお聞かせいただきたいと思います。

加藤国務大臣 島尻委員にお答え申し上げます。

 地域のつながりの希薄化や少子化の進展により、地域の中で子供が育つことが難しくなっていることに加え、不登校の児童生徒数や児童相談所の虐待相談対応件数等が増加するなど、今現在、子供を取り巻く環境の厳しさが増しているというふうに受け止めております。

 一方で、島尻委員が体験されてきたように、多くの方々や地域の方々が子供、子育てを応援をしたり、子供の居場所になるということは、とても重要なことだと考えてございます。

 私自身も、こども家庭庁を所管する大臣といたしまして、子供の居場所をしっかりとつくっていくことに全力を挙げてまいりたい、このように考えております。

島尻委員 ありがとうございます。

 加藤大臣も、まさに子育て真っ最中の大臣として本当に期待を一身に浴びておられるというふうに思います。是非頑張っていただきたいというふうに思っております。

 現時点でのこの指針の概要を拝見をいたしました。子供の居場所づくりをするに当たっての基本的な視点として、増やす、つなぐ、磨く、そして振り返るということ、これを循環させていくというふうに書いてありました。豊かな内容の、居場所を多くつくって、そしてつないでいく、居場所を磨く、つまりこの内容を深化させたり関係者の連携を強化していく、その上で、振り返るとして、しっかりと検証も必要という視点が明確に入っているというふうに思っております。

 選挙区であります沖縄では全国に先んじて居場所づくりが進んでおりますけれども、これを見ておりますと、大切だと感じるのが、学校との連携とか地域との連携、つまり、地域に開かれたものにするということが大事だというふうに感じております。

 居場所の運営を担う人、そして、サポートする行政はもとより、学校の協力も必要ですし、地域の人たちとの連携を、これを常に風通しをよくしておくこと、これができている居場所とそうでない居場所は、もういわば雲泥の差がついていると言っても過言ではないというふうに感じております。

 さらに、これらの居場所同士の連携というのも必要だと思っておりまして、これに関してコーディネーターも配置するというふうにお聞きしておりますが、このコーディネーターの役回りがいわば鍵になるというふうにも思っております。

 そして、もう一つ沖縄の例を申し上げますと、地元の大学コンソーシアムとこの居場所をつなぐことで、大学生が居場所に出入りをして、子供たちの宿題を見たり、遊び相手になっているというケースがございます。このコンソーシアムに企業などが寄附を入れて、そして大学生の交通費などが生み出せるような仕組みにもなっております。

 大学生の話をじかに聞いたことがあるんですけれども、子供たちの悩み、時々恋愛相談も受けているそうでありまして、こういった、先ほど総理もおっしゃった、若い人たち、子育てに直接の、家庭ではないけれども、若い人たちの力も入れてやっていくことができるのではないかというふうに思っております。

 沖縄の子供の貧困のところは、子供の貧困という言葉で分かるわけで、貧困問題というのが大きな視点となっておりますので、こういった環境を変えなければならない子供を見つけ出して、探し出しても、子供の居場所につなげていくということも課題となっておりまして、全国的にもこういった環境の子供たちのための居場所も設置が早く進むといいなというふうに考えているところです。

 次に、放課後児童クラブに移りたいと思います。

 放課後児童クラブの存在も、子供の居場所と同じように、子育て世帯にとってはすごくありがたいものだというふうに思っております。

 現行の新・放課後子ども総合プランは今年度が最終年度になっているようでありますけれども、質問取りに来られた方が、なかなか、掲げた目標に達するのは様々なハードルがあって難しいと苦悩の表情を込めておりましたけれども。

 加藤大臣にお聞きをいたします。

 この放課後児童クラブのこれまでの取組と、年末にも取りまとめられる予定とお聞きしておりますけれども、放課後対策パッケージを見据えて、今後の展望などをお聞かせいただきたいと思います。

加藤国務大臣 御質問にお答えを申し上げます。

 放課後児童クラブにつきましては、二〇一八年九月に策定をした新・放課後子ども総合プランに基づき、今年度末までに約百五十二万人分の受皿を整備するという目標を定め、これまで取組を進めてきたところでございます。

 令和五年五月一日現在の速報値におきましては、利用している児童数は約百四十五万人と、昨年に比べて五万三千人増加をしてございますが、他方で、待機児童も約一万七千人と増加をしており、プランの整備目標を達成することは厳しい状況にあり、放課後児童クラブの更なる受皿整備、これは喫緊の課題だと認識をいたしております。

 受皿整備では、場と人材の確保の両方が重要であると考えており、まず、場の確保といたしましては、文部科学省と連携をし、学校施設の更なる活用に関する自治体への通知の発出、また、待機児童が発生している自治体に対する整備費の補助率のかさ上げ等を実施をしてございます。加えて、今般、補正予算案におきまして、整備費の自治体負担分に対する財政支援を盛り込んでいるところでございます。

 また、人材の確保の面におきましては、職員に対する各種の処遇改善事業の実施に加えて、こども未来戦略方針において常勤職員配置の改善を図ることを盛り込んでおり、早期の実現に向けて検討を進めているところでございます。

 全ての子供が放課後を安心、安全に過ごし、多様な体験活動を行うことができるよう、放課後児童対策の充実は重要な課題であり、文部科学省とも連携をし、スピード感を持って取り組んでまいりたいと思います。

島尻委員 ありがとうございます。

 放課後児童クラブも、子供の居場所も、共通項として重なるところもあると思います。せっかくこども家庭庁に一元化をしましたので、今後、効率よく箇所数を増やしていっていただきたいというふうに思います。

 当初ではありますが、令和五年度の予算で運営費が拡充されておりまして、待機児童に対してや障害を持つ子に対しての調整予算も入っているというのは評価したいというふうに思います。ここは大変大事なところでありますので、是非、更なる予算を積み増して頑張っていただきたいというふうに思っております。

 この子供の居場所でちょっと問題視するのは、公立の放課後児童クラブが増えないと、放課後の居場所が本当に必要な家庭の子供が、民間の児童クラブの使用料がちょっと高額であるという理由で、入れずに孤立してしまうケースが多くあるということでございます。これまでもこういった孤立のケースから非行に走ってしまう子供も少なくないということもデータで見えてきておりますので、そこに対する手当てをしっかりお願いしたいと思います。

 ちょっと聞いてみたら、公立の場合、平均の使用料が月四千円から六千円。自治体にはばらつきがあるものの、民間だと一万円を軽く超えるというところもあるようでございまして、地域にかなりのばらつきがあるということ。これは、今後しっかりと調査をした上で、増やしていくということをお願いしたいというふうに思います。

 それでは、幼児期までの子供の育ちに係る基本的なビジョンについてお伺いをしたいと思います。

 これも、こども家庭庁において、幼児期までの子供の育ちに係る基本的なビジョンを策定していると聞いております。この策定の意義と、目指すものは何なのか、再度加藤大臣にお聞きをしたいと思います。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 虐待による死亡事例が〇―二歳児において多く発生をしており、また、就園していない子供などにおいては、異なる年齢の子供や大人、社会文化、自然などに触れる機会が家庭環境に左右される中で、誰一人取り残さず、全ての子供の幼児期までの育ちを保障する必要がございます。

 このため、妊娠期から幼児期までを人生で最も重要な初めの百か月と位置づけ、全ての子供の育ちを支え、生涯にわたるウェルビーイングの向上を図るために、幼児期までの子供の育ちに係る基本的なビジョンを策定し、政府全体の取組を推進するための基本的な考え方を示したいと考えております。

 本ビジョンの策定に向けて、こども家庭審議会で検討が行われており、十一月十三日に示された答申案におきましては、身近な大人が子供に寄り添うアタッチメント、愛着を土台として豊かな遊びと体験を応援をすることや、また、様々な人が子供の育ちを支える環境や社会の厚みを増すことなどの基本的な考え方が五つのビジョンとして示されております。

 今後、こども家庭審議会から総理への答申がなされるものと承知をしております。こども家庭庁としましては、本答申の内容を踏まえまして、年内の閣議決定に向けて検討を、対応を進めてまいります。

島尻委員 ありがとうございます。

 今答弁の中にあった、初めの百か月というキーワード、大変分かりやすいという印象を受けました。妊娠から出産、そして、子供が五歳、つまり小学校一年生に上がるまでの切れ目ない支援を、策定されるビジョンから具体的なアクションへと導いていっていただきたいというふうに思います。あらゆる手を尽くして頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 国際協力の在り方、特に、その中での子供を切り口とした国際協力、人道支援の在り方についてお伺いをしたいと思います。

 最近のニュースを見ますと、紛争、戦争の映像ばかりが目について、中でも、生まれたばかりの赤ちゃんや子供たちの苦しむ姿は本当に心が痛みます。国家間でも相当な努力はしているものの、民間といいますか、人として何かできないのかというふうな思いを持っている方が世界中にたくさんおられるというふうにも思います。

 我が国日本としても、これまでも国際協力、人道支援として様々な活動をしてきておりますが、他方、現在の各地で起こっている領土をめぐる紛争、劣悪な医療環境、感染症、あるいは時代遅れの社会習慣などで子供たちが犠牲になるケースが増加していくというのは目に見えていると思います。

 これまで、国際協力への予算というのは、国際機関ごとに各省庁がばらばらに予算づけを行っているという事実がございます。例えば、GFFには財務省、WHOには厚労省と外務省、IPPFとかUNFPA、国連ですけれども、これは外務省というふうに聞いております。しかも、当初予算とか補正予算とか、安定感が余り感じられず、これではなかなか、今後、本当にボリュームを上げていかなければならない国際協力、人道支援として、ままならないといいますか、我が国がこれだけ貢献していますと、その総額も含めて、国民の目に留まらないのではないかという心配をしております。

 そこで、一つ提案なんですけれども、この際、子供に関する国際人道支援を一本化して、こども家庭庁を窓口として、そこにどんと予算をつける、これまで懸案だったポリオの撲滅も一気にやる、喜ばれている母子手帳の普及も加速させていく、そして、紛争、戦争でこれからますます増えるだろう救済すべき全ての子供に支援をいち早く行き渡らせるということが、日本らしい貢献としてできるのではないかというふうに思っております。

 ちょっと時間の関係で、外務大臣そして加藤大臣にもお聞きしたかったんですけれども、これは総理にお聞きをしたいと思っております。

 我が国の掲げるこどもまんなか社会、これを、こどもまんなか世界として世界中の子供たちに波及させる、しかもスピード感を持って。そして、身体的、精神的、社会的に幸福な生活を送ることができるように広げていくという日本の国際協力、人道支援。これは総理、こどもまんなか世界、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、子供、子育て政策については、先ほども申し上げたように、我が国国民、世代を問わず関わる国家的な課題であり取組であると認識をしています。

 この取組を世界に向けて、こどもまんなか政策、アピールするべきだ、こういった委員の御指摘でありますが、まず基本的に、母子保健の分野において、国際機関に対する協力ですとか、さらには世界に対する発信をより一元化するべきである、そういった基本的な考え方、これは大変重要なことだと思います。

 ただ、具体的に組織としてそれを一元化するということになりますと、委員御指摘のように、IPPFですとか、UNFPAですとか、WHOですとか、いろんな国際機関がある、今御紹介がありましたが。それぞれの国際機関との連携ですとかつながりの歴史、経緯ですとか、さらには人脈等を考えますと、これを、母子保健というテーマだけで一つ組織を集中するというのは、たちまちはちょっと現実的ではない部分もある、いろいろ話を聞いておりますとそういう部分もある。

 しかしながら、五月の広島サミットにおいても、また、先日の国連総会のUHCのハイレベル会合においても、実際、外務省、厚生労働省、あるいは財務省、こども家庭庁も含めて、母子保健という分野においてこれは連携をし、そして協力し、発信をしている、こういった実績があるわけですので、こうした連携の在り方について工夫をしていく、こうした努力は続けていきたいと思います。

 是非、実質的に、国際社会に対して母子保健の分野において我が国の取組をアピールする、方策について工夫をする努力は政府一丸となって続けていきたいと考えています。

島尻委員 是非、こどもまんなか世界、よろしくお願いをしたいと思います。

 最後になりますが、WPSについて上川大臣にお聞きをしたいと思います。

 まず、WPSについて、政府参考人にと思いましたが、ちょっと時間の関係で、これも含めて、上川大臣、これまでWPSの日本側の代表として御活躍でもございますし、先日アメリカで御講演があったというふうに聞いております。是非、その内容も含めて御披露いただきたいと思います。

上川国務大臣 御質問いただきましたWPSでございますが、女性・平和・安全保障、ウィメン・ピース・アンド・セキュリティーということでありますが、女性や女児の保護や救済に取り組みつつ、女性自身が指導的立場に立って紛争の予防、また復興や平和構築に参画をすることにより、より持続可能な平和に近づくことができるという考え方であります。

 WPSは、二〇〇〇年の安保理で採択されました決議第千三百二十五号ということでありますが、その後の九本の安保理決議に基づく取組でありまして、国際社会で急速に主流化をしている状況であります。国際情勢が不透明さを増す中でありますので、このWPSの考え方はますます重要になっていくというふうに考えております。

 日本は、安保理理事国としてWPSの議論を国連の重要アジェンダとして推進していくとともに、WPSに関する国際的な協力を進めていく、こうした方針で臨んでいるところであります。

 私自身でありますが、外務大臣就任前からWPSに取り組んでまいりました。御一緒させていただいてまいりました。現在は外務大臣として、WPSを一つのアジェンダとして推進していくということで、取組を加速化しているところであります。

 今年九月に国連ハイレベルウィークに際しましてニューヨークに出張いたしましたが、その折に、女性・平和・リーダーシップのシンポジウム、これを始めとして、WPSの関連行事に参加をいたしました。

 また、本年十月に東南アジア諸国を訪問したところでありますが、その際におきましても、あらゆる機会でWPSにつきまして問題を提起をいたしまして、いずれの先からも大変前向きな回答をいただいているところであります。

 さらに、先般、APECの閣僚会議に際しましてサンフランシスコを訪問した際でありますが、御指摘いただきましたとおり、「WPS+イノベーション」、こうしたシンポジウムで基調講演を行いまして、平和と安定が揺らいでいる現代におきまして、経済と平和と安定とを不可分のテーマとして議論すべきではないか、こうした問題提起に対しまして、パネリストの方々からWPSとイノベーションの相互作用について御議論をいただいたところであります。

 一連の活動を通じまして、日本外交の一環としてWPS推進の重要性を確認したところでありますので、今後とも積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

島尻委員 是非よろしくお願いします。

 終わります。

小野寺委員長 この際、平将明君から関連質疑の申出があります。若宮君の持ち時間の範囲内でこれを許します。平将明君。

平委員 自由民主党の平将明です。よろしくお願いいたします。

 まず、総理に質問をさせていただきます。

 年収の壁についてであります。

 本年二月一日の予算委員会で私も問題提起をさせていただきましたし、また、一月には萩生田政調会長からも問題提起をさせていただきました。

 人手不足の現場では、人を集めるために時給を上げるんですが、パートやアルバイトの皆さんにはいわゆる年収の壁があるので、時給を上げれば上げるほど働く時間を抑制しなければならない、結果、更に人手不足が進むという無間地獄が展開をされていたわけであります。そして、頼れるパートさんほど、年末を前に時間調整に入る状態に陥っていました。

 ここは政治決断で、総理のリーダーシップでこの状況を打開すべきではないかという提案をさせていただきましたが、社会保障分野としてはあり得ないスピードで施策のパッケージを今実装していただいている、そのように認識をしています。

 一方で、先般、地域のそこそこ大きいスーパーの社長さんと話していたら、この制度を知らなかったんですよね。また、パートさんの中にもまだまだ知らない人が多いのではないかと思いますので、全ての関係者に、働きたいのであれば壁を気にせず働けるんだということを更に広く広報していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の年収の壁の問題は、長年、多くの関係者が指摘をしてきた課題でありました。その中にあって、従来から経済政策はスピード感が大事だということを申し上げてきましたが、年収の壁、緊急強化パッケージについては、最低賃金の引上げと併せて、先月十月からもう既に開始をさせていただきました。

 そして、この問題については、私も全国で車座対話をする中で、多くの関係者から大変高い関心を示していただいています。しかしながら、委員御指摘のように、まだまだPRが足りない。パートやアルバイトの方々、御本人ももちろんですが、雇用する事業主の方々にも、こうした制度がもう既にスタートしている、そして、利用していただくことの大切さ、年末を前にして、そういったPRをしていくことの大切さは改めて強く感じております。

 パート、アルバイトを多く雇用される業界の業界団体に対して協力をお願いする、もちろんでありますが、政府としても、電話でのお問合せをワンストップで受け付ける年収の壁突破・総合相談窓口、これを開設したところでもあります。

 様々な取組を通じて、こうした年収の壁・支援強化パッケージ、長年の課題について一歩前進したわけでありますので、それを人手不足等でお困りの事業者も含めて大いに活用していただくために、政府としてもアピールをしっかりやっていきたいと考えております。

平委員 今日、せっかく全国にテレビで放映もされておりますので、何それと思った方は、年収の壁で検索をしていただいて、政府のホームページを御覧いただければと思います。

 続きまして、西村大臣にお伺いをいたします。

 戦略物資のサプライチェーンの強化であります。

 私は今、自民党の新しい資本主義実行本部の事務局長をさせていただいて、越智さんとかと一緒に中身を作って、提言もさせていただきましたが、アメリカではインフレ抑制法というのがあって、戦略物資においては、サプライチェーン全体を見渡して、そして漏れなく補助金とか減税とかの措置を講じる。さらには、投資をする側の予見可能性を高めるために、十年というそこそこ長い期間で対応している。繰越しも長期間認めていますし、さらには、イニシャルの投資、初期投資で減税というのはよくあるんですが、ランニングのところもちゃんと減税措置をしているということもあります。

 さらに、私、驚いたんですが、税のインセンティブが、所得税が出てから税金をまけるんじゃなくて、タックスクレジットといって、インセンティブの税を換金できるというような仕組みまで、アメリカではインフレ抑制法で対応している。

 我々の自民党の新しい資本主義実行本部でも、こういったサプライチェーン全体の強化策を、米国のインフレ抑制法に倣って日本にも導入すべきだということで、自民党の税金の議論でも取り上げられると承知をしておりますが、この辺、同等の仕組みを日本に実装すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

西村国務大臣 お答え申し上げます。

 まさに世界では、自国内での戦略物資の投資を増やそうという観点から、産業政策の競争、これが激化をしているところであります。特に、御指摘のアメリカのインフレ抑制法、削減法においては、十年もの期間にわたって生産段階における投資減税、支援を講じるなど、大胆な支援を行っております。

 日本としても、こうしたアメリカの政策を参考にしながら、まさに戦略分野への投資を増やしていきたい、促進したいと考えております。

 具体的には、今お話ありましたとおり、初期投資のコストが大きいもの、企業が投資をちゅうちょするようなものについては、補助金で大胆に初期投資支援をしていきたいと考えていますが、一方で、総事業費が大きく、特に生産段階でのコストが高いものについては、初期の投資促進策だけでは国内の投資判断が容易ではないことを踏まえまして、まさに新たな投資促進税制を検討中であります。具体的には与党で様々御議論いただいているところでありますが、電気自動車、半導体、蓄電池、こういった戦略分野において、投資後もその生産量に応じて減税する、こうした制度を検討しているところであります。

 足下、企業の投資意欲は非常に強いものがありますので、これを更に後押しして、こうした戦略物資について、国内投資を進め、まさに技術で世界をリードしていく、そして所得を向上させていく、そうした好循環を実現していきたいと考えております。

平委員 これは今までになかった仕組みが前に進みそうな、そういう予感を感じるわけでありますが、更に進んでタックスクレジットまで検討していくというところで、是非共有をさせていただきたいと思います。

 次に、AIの戦略について、高市大臣にお伺いをいたします。

 私が座長を務めます自民党AIの進化と実装に関するプロジェクトチームは、今年の一月に組成をして、精力的にヒアリングや議論を重ねて、三月にホワイトペーパーを発表しました。その後、四月には、総理にオープンAI社のサム・アルトマンCEOともお会いをいただいて、そしてG7デジタル大臣会合、そして広島でのG7首脳会議、さらには広島AIプロセスへとつながっていって、今、日本が事務局をしながら、世界のルール作り、特にG7を中心にルール作りが進展をしている、そのように承知をしています。

 一方で、世界は、この広島AIプロセスの先を見据えて実際にはもう動き出していて、先般、イギリスでAIセーフティーサミットというのが開催されましたけれども、ここでもかなり、有力者がたくさん集まって議論をし、その成果として、英国ではAIセーフティーインスティテュートという研究所ができたと聞いています。ここはかなり、世界のいわゆる有力なメンバー、イギリス人のみならずグローバルなメンバーの配置をして、今これから動き出そうとしている。米国も、バイデン大統領が御承知のとおり大統領令を発出して、AIに対する対応を加速しています。

 現在、ファウンデーションモデル、いわゆるチャットGPTが話題になりましたけれども、いわゆるファウンデーションモデルとかラージランゲージモデルとかいうわけでありますが、この辺のリスクをどうコントロールするかという議論になっていまして、我々がホワイトペーパーをまとめたときも、これはテロに使われるんじゃないかとか、あと、ディープフェイクですよね、生成AIができたので、ディープフェイクの大衆化といいますけれども、誰でもできるようになった。岸田総理のディープフェイクもこの間出回ったところでありますが、誰でもできるようになった、こういったリスクをどう考えるのか。

 さらには、今一番議論されているのは、今回のサム・アルトマン氏の解任もそういう背景があるんじゃないかと言われていますが、いわゆるラージランゲージモデル、この大きなモデルが指数関数的に進化をしていくので、近い将来、人類がコントロール不能になるんじゃないかというところが今大きな議論になっています。

 それに対して、かなり慎重な姿勢の人たちと、いやいや、そうはいったって、またほかの国は、G7に入っていない国はどんどん開発を進めるわけですから、これは進めるべきだ、こういう二つの大きな議論があります。言うまでもなく、安全保障上のリスクなども対応していかなければなりません。

 その上で、やはり日本一国だけではどうにもなりませんので、同盟国、同志国との連携が今まで以上に必要になると思います。多分、英国とは我々は組みやすいと思いますし、米国とも組みやすいんだというふうに思います。

 その観点から、英国でつくったAIセーフティーインスティテュート、また、米国はNISTとかを中心に多分そういった組織をつくるんだろうと思いますが、そのカウンターパートになり得るAIセーフティーの研究をする機関を日本国政府としてもつくるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

高市国務大臣 AIが非常に便利なものである一方で、相当なリスク、特に、テロに使われる、また、サイバー攻撃のツールの作成ですとかディープフェイク、こういった問題があるということで、ただ、日本政府も手をこまねいているわけではなく、委員がおっしゃっていただいたとおり、広島サミットでは、岸田総理のリーダーシップの下、これから国際的なルールを作る、特に開発者向けの国際的な指針、行動規範を策定して、G7の議長国として、安心で安全な信頼できるAIの普及に向けて議論を主導しております。

 また、AIに関係している大臣が多いので、私から全てお話はできませんが、例えば私の関係でしたら、今、経済安全保障推進法に基づくKプログラムで、AIセキュリティー技術の確立、これも今週中に公募が始まりますが、この研究開発、それから、偽情報分析に係る技術の開発、これは来年一月からの公募に向けて準備中でございます。

 また、内閣府としては、AI事業者が守るべき行動規範の履行確保の在り方について、基礎的な調査をいたします。さらに、総務省と経済産業省で、AI事業者向けのガイドライン案の年内の取りまとめに向けて検討をいただいております。

 委員がおっしゃったイギリスのAIセーフティーインスティテュート、これはAIの安全性評価の実施など、公共部門が安全性確保に係る重要な機能を担うという取組の一つで、画期的なものだと思います。ただ、この研究所としては、国際的な政策立案にも情報を提供するとされておりますので、是非、協力を進めていければいいなと思っております。

 内閣府は総合調整役ですので、米国、英国を含めた国際的なパートナーと連携が取れるように、同様の機能の確保の在り方も含めて、今後、関係省庁と連携して検討をしてまいります。

平委員 ここは多分、そういう研究所をつくる、つくった方がいいですよと政府に言うと、経産省の下のIPAでやっています的な話が来るんですが、かなりAIの進化というのは深刻な話で、さらに、安全保障にも関わる話なので。日本の政府の機関というのは、ちゃんと座組をしておかないと、安全保障の話ですとなった瞬間にフリーズしますよね。なので、安全保障もちゃんと議論するカウンターパートが必要だというのが一つ。

 もう一つは、この最先端のAIは、AIの技術、これからどういうリスクがあるかとかどういう技術展開をしていくかといったところは、これは世界の多分常識だと思いますけれども、セキュリティークリアランスのない国には、一番大事な情報は共有されません。

 なので、これはサイバーセキュリティーもそうだし、アクティブディフェンスとかのいろいろな議論もありますけれども、この最先端のAIのところは、安全保障がちゃんと議論できる座組をしていただかないと機能しませんし、更に言えば、セキュリティークリアランスがなければ機能しませんので、意見として言わせていただきますけれども、是非、政府としてはかなり緊張感を持って対応していただきたい、そのように思っております。

 それでは、河野大臣にお伺いをしたいと思います。

 マイナンバーカードでいろいろな課題が出てきましたけれども、今、その解決に向けて一つ一つ取り組まれていることと承知をしています。

 私がコロナのときにデジタルの担当副大臣と防災の担当副大臣を兼務していて、その頃はデジタル庁も何もない時代でしたけれども、意外とこれはデジタルを使ったら何かできるんじゃないのという提案をたくさんいただいたので、その対応に奔走していた時期があります。

 その当時、外国の成功事例で、オードリー・タンさん、あの台湾の天才のオードリー・タン大臣が、品不足のマスクを、全体をコントロールして、そして、国民に対して、あなたのマスクはどこで購入できますよ、たしか一週間で二個だったと思いますけれども、配給する範囲で、薬局に行くとマスクを入手することができる、そういう仕組みをつくったんです。

 これはどういう仕組みかというと、まず、配給の仕組みをつくりました。マスクの在庫をクラウドで全部管理をするという仕組みをつくりました。それを扱っている薬局がどこにあるかというのをマップで分かるように、これは多分、いわゆるスタートアップ企業とかの協力を得て、例えば、この辺の近くだったら、あそこの薬局に何個在庫があるというような仕組みだったんです。

 実は、キーファクターは、台湾の保険証にはICチップが入っているんですよ。日本の保険証にはICチップは入っていないですね。写真も入っていない。台湾の人は、ICチップ入りの保険証を薬局に持っていって、薬局の端末にかざして、ああ、平さんはあと二個権利がありますとか四個権利がありますといって、そこで入手するんです。

 私も、デジタル担当副大臣として予算委員会に呼ばれて、何で台湾でできるものを日本はできないんだと大分叱られましたけれども、そのときのマイナンバーカードの普及率は一三%でした。日本の保険証にはICチップが入っていませんでした。なので、オードリー・タンさんがもし日本の大臣でやっていたとしても、あの仕組みは残念ながらできなかった。なので、そのときに、やはりマイナンバーカードの普及がすごく重要ですというお話をさせていただきました。

 その点から考えて、あれから、いわゆるコロナ禍のまさに教訓を踏まえて、デジタル庁ができ、DXが進み、マイナンバーカードの普及が一気に進んだわけでありますが、やはりこれは止めてはいけないと思います。次のパンデミックが今いつ来るか分からない状況の中で、その環境をつくるということは極めて大事で、今から保険証にICチップを入れるなんというのはナンセンスなので、それはマイナンバーカードとひもづけて、マイナンバーカードを保険証として使う、そして、これをできるだけ広げるというのが喫緊の課題だというふうに思っております。

 これをしっかり推進をしていきたいと思いますけれども、大臣の所感がありましたら。

河野国務大臣 おっしゃるとおりだと思っております。

 今、マイナンバーカードは、保有枚数ベースで九千百万枚になっておりますので、かなりインフラとして進んできたのではないかなというふうに思っております。パンデミックだけでなく災害時にも、マイナンバーカードを使って、避難所への入所登録から、様々なことをやれるようになりました。つい先日は、小田原でもそういう実験をやって、その効果が試されたところでございますので、デジタル化を進め、データ連携をきっちりやることで、いざというときにしっかりとした対応ができるようにしていきたいと思っております。

 また、コロナのワクチンのときに使いましたVRS、これをしっかりと整備をして、いざ次のパンデミックでワクチン接種をやらなきゃいけないというときには、このVRSを再びすぐに使えるように、そういう対応も取っておりますので、しっかりデジタル化を進めてまいりたいと思います。

平委員 あともう一つ、私がすごく苦労したのが、役所の縦割りの問題というのはよくありますよね。縦割りで何か機動的に対応できないとよく批判をされますが、それ以上に問題だったのは、レイヤーの壁ですよね、横割り。自治体、都道府県、政府、縦割りもあるんだけれども、横割りもあるんですよね。

 コロナが発生をします、クリニックに行きます、陽性ですと言われて保健所に行きます。保健所はどこに報告をするかというと、自治体ですよね。自治体から都道府県、都道府県から厚労省に上がってくる。そこが結構、ファクス、ファクス、ファクスだったので、どこかで目詰まるんですよね。このレイヤー構造を緊急時のときはいかに飛び越えて対応できるかが極めて重要で、その教訓からも、やはり強力にこれを進めなければいけないというので出てきたのが、クラウド化ですよね。

 だから、各省庁の縦割りも、各省庁がそれぞれサーバーを持っている、いわゆるオンプレサーバーという、個々にサーバーを持っている。しかも、これがベンダーロックインされていて、共通の仕様になっていない。だから、この政府の縦割りも、クラウドを使うことによって、ここにアクセスしてここから情報を取ることによって、壊さなくても壁が機能しないんですね。それと一緒に、横割りも、これはクラウド化することによって、一々ファクス、ファクス、ファクスで上げなくていい。クラウドに登録してください、そうしたら必要な情報はそこから取りますということで、当時やったのが、厚労省主導でHER―SYSというクラウドの登録システムをやりましたが、今何をまさにやるかというと、政府全体でクラウド化を進めていくということです。

 今デジタルガバメントを進めていく中で、いよいよ二〇二五年を目途にガバメントクラウドというのを導入しようとなったんですけれども、これは本当にやっておいてよかったと思いますよ。個々の自治体でサイバーセキュリティーをやれといったって、人材がいませんから。なので、やはりクラウド化しておくことによって、ここを横軸でモニタリングして、サイバーセキュリティーをやることができる。

 さらにここから一歩進んで、AI、我々はAIのプロジェクトチームでかなりやっていますが、AIが進化してきました。テキストベースでチャットGPTを使った人は、その滑らかな受け答えに多分びっくりしたと思いますが、今はもうマルチモーダルなので、言葉でしゃべれば言葉で返ってきますよね、あのレベルで。

 なので、私は、ここを一歩進めて、デジタルガバメントと来たらガバメントクラウドと来たので、ガバメントクラウドと来たらガバメントAI、いわゆる汎用的なAIをつくって、これを政府に実装することによって政府の生産性を一気に高めることが必要だと思いますけれども、そういった先進的なAIの政府の導入も含めて、大臣の所感をお伺いいたします。

河野国務大臣 AI技術を政府の中で使わない手はないというふうに思っております。

 AIをしっかり使って政府の業務の高度化、効率化をやっていかなければいけないと思っておりますので、今年の五月に政府の中でAIを使うための申合せをし、九月に、大分慣れてきましたので、機密性一ならば一々報告しなくてもいいよというふうに申合せを改定いたしました。

 今、デジタル庁では、しっかりとAIを使う環境整備をすると同時に、ワークショップをやりながら技術検証もやって、AIを政府の中でしっかり使っていける、そのユースケースを一つずつ積み上げていこうというふうに思っておりますので、もう既に、公開されている資料の要約のようなことはやられておりますが、政府の中で更に高度化、効率化、このAIを使ってやってまいりたいというふうに思います。

平委員 我々AIPTも、いろいろな使い方があるのではないかということでいろいろな検討を進めているわけでありますが、とにかく今すぐにでもできそうなことは、いわゆる政府答弁の作成資料支援ですね。これは結構能力を発揮すると思います。過去の議事録を全部読ませて……(発言する者あり)

小野寺委員長 御静粛にお願いいたします。

平委員 いやいや、違うんです。全然、後藤さんは分かっていないですね、AIのことを。

 これは生産性の向上なので、そこからどうクオリティーを上げていくかというのは人間の仕事で、AIに全部任せていいという話じゃないんですよね。コーパイロット、副操縦士です。決してメインパイロットでもないし、オートパイロットでもないです。

 ただ、いろいろな文献とかいろいろな過去の答弁資料を、アナログで当たるんじゃなくて、事前に読ませておいて、そこからアウトプット、来たものを土台に話を進めるというのは、これは合理的だろうというふうに思います。

 更に言うと、行政手続の対応窓口、若しくは行政の問合せ窓口、一括窓口。それも、何々省、何々省、何々省と決めるんじゃなくて、政府AIが受ける。しかも、それは政府のみならず、自治体の問合せも、都道府県の問合せも、全部政府AIが受ける。

 というのはどういうことかというと、次にまたパンデミックが来ました、いろいろな状況の中で、お上からお酒は出しちゃいけないとか営業は十時までにしろとか言われた、そのとき補助金をもらえるらしい、でも、実際に商売をやっている人は、これはどこに聞いていいか分からないですよね。そういう問合せをその政府AIにすると、手続も終わるし、必要なものは自治体に下ろしてくるし、必要なものは都道府県に下ろしてくる。

 今の三層構造のレイヤーというのは、そもそもデジタルのなかった時代なので三層構造になっているだけなので、これからマイナンバーカードとマイナポータルで国民から直接つながると、そこでかなりの部分ができるんですよね。更に言うと、市町村とか都道府県は人手不足ですから、圧倒的に。そこで頑張って人を囲い込んじゃうと民間の人手不足に拍車をかけるので、省力化できるところはやはりどんどん省力化をしていくべきだろうというふうに思います。

 我々が目指す行政改革は、デジタルガバメント、ガバメントクラウド、そしてさらには政府AIを入れることによって、いわゆるデジタルでしかできないワン・トゥー・ワン・マーケティング、一人一人にフォーカスを当てて、その人にとって必要な政策をその人にとって必要なタイミングで十分な支援の手を差し伸べる、助けなくていい人は助けないというのが、デジタルガバメントで実現をするんだろうというふうに思います。

 そういった行政のいわゆるやらなきゃいけないことというのはどんどん広がっていきますが、財政制約があるので、大きな政府かちっちゃな政府かというよりは、やらなきゃいけないことは大きな政府だけれども、財源には限りがあるので、そこはやはり小さな政府でいく。それを実現するのがデジタルでありAIだというふうに思っていますので、我々はそういう行革をデジタル行財政改革としてやっていきたいと思っています。

 最後に、河野さん、一分、二分でちょっと御答弁いただいて、終わりたいと思います。

河野国務大臣 高齢化あるいは少子化が進む中で、行政のニーズというのは変わってくると思いますが、そう国も自治体も行政職員を増やすことはできませんので、デジタル化でデータ連携をし、バックエンドを効率化することによって、必要なところに必要な人を配置するということをやらなければいけないと思いますし、また、デジタル化によって業務を効率化して、必要なところに予算をしっかりつけていくということも大事だと思います。

 デジタル化によってビッグデータを活用して、更に行政を効率的にやっていくということが大事だと思いますので、やはりこれからのいろいろな基本は、デジタルをどうやって進めていくか、そして、そこに今委員おっしゃったようなAIをどうやって活用していくか、そういうことだと思いますので、デジタル庁、しっかりと世界に追いつき、追い越せるように頑張ってまいりたいと思います。

平委員 ありがとうございます。

 最後の二問は、質問通告にない中で御答弁いただきまして、ありがとうございます。

 次回は、是非サイバーセキュリティーについてお話をさせていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

小野寺委員長 この際、山田美樹さんから関連質疑の申出があります。若宮君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山田美樹さん。

山田(美)委員 自由民主党の山田美樹です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 私からは、経済産業分野、成長力強化と中小企業支援について質問をいたします。

 質疑の前に、細田博之前衆議院議長の訃報に接し、心からお悔やみを申し上げます。

 数々の御功績の中でも、経済、エネルギー分野での御尽力をしっかりと引き継いでまいりたいと思います。

 最初に、日本経済の成長力強化の観点から、政府の半導体支援策について質問いたします。

 私は、日米半導体協定が終了した一九九六年に通産省に入省し、通商交渉を担当する部署に配属になりました。私に与えられた机の上には山のように資料が積んであって、その中に日米半導体交渉と書かれた分厚いファイルが並んでいたのを記憶しています。

 大学の同級生の中でも、電子工学を学んだ優秀な友人たちは、次々に日本のエレクトロニクス産業に就職していきました。高い技術と豊富な経験を持ったエンジニアの方々が、今、働き盛りの年齢を迎えています。

 かつて全世界の半分を誇っていた日本の半導体のシェアは、この三十年で一割まで低下しました。しかし、ここ数年、政府は、矢継ぎ早に半導体産業の復活のための戦略を打ち出し、熊本などでは大きな経済効果を生み出しつつあります。

 私は、日本のエレクトロニクス産業の発展に大きな希望を抱いて取り組んでこられたエンジニアの方々が、この三十年の間、失望したり、落胆したこともあったでしょうが、もう一度夢を持って仕事に取り組める、そんな環境をつくっていただきたいのです。

 岸田総理にお伺いします。政府は、半導体支援策を通じて、日本経済再生の道筋をどのように描いておられるのでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の半導体ですが、デジタル化や、あるいは脱炭素化においても重要な存在でありますが、あわせて、昨今、経済安全保障の観点からも重要であり、日本の将来、産業競争力、これを左右する重要な戦略物資であると認識をしています。

 半導体分野での大型プロジェクトによって、地域における直接的な雇用が増えるなどの効果のみならず、我が国の強みとする素部材あるいは製造装置、サプライチェーンですとか、こうした産業全体の活性化が左右される、経済基盤の強化にもつながる、成長と賃上げの好循環にもつながる、こうした存在であると認識をしています。

 実際、今、半導体投資が進んでいる熊本県の工場においては、全国平均より五万円以上高い水準の初任給が実現しています。そして、その効果は九州七県にも広がっているということで、九州七県における設備投資額の伸び率、これは、全国平均が二〇・一%ですが、九州七県においては六一・七%、過去最高を記録する、こうした効果が周辺に広がっている、こういった実績が指摘をされています。

 こういった流れを日本全体に継続させていくことが重要であると思いますし、今回の経済対策においても、賃上げにつながる企業の稼ぐ力を強化するということで、供給力の強化を訴えているわけですが、その中においても、御指摘の半導体への大型投資ですとか、次世代半導体開発、これは重要な取組だと認識をしており、合計で約二兆円をこの経済対策の中にも盛り込んでいる、こうしたことであります。

 是非、こうした支援策の効果が日本経済の活性化につながっていくよう、しっかり取組を進めてまいります。

山田(美)委員 総理、御答弁ありがとうございます。総理の御答弁が半導体産業を支える方々への激励のエールとなればと願っております。

 続きまして、物価高と賃上げについてお伺いします。

 内閣府の統計によりますと、全国の二人以上の世帯を所得水準ごとに十個のグループに分けた場合、最も所得の低いグループでは、電気、ガス、ガソリン、食料への支出が収入に占める割合が四八%。つまり、収入の半分が食料とエネルギーに消えてしまうという非常に深刻な状況にあります。雇用の七割を占める中小企業が継続的に賃上げできる環境整備が不可欠です。

 ところが、日本商工会議所などの調査、分析によりますと、中小企業の実に四割近くが、業績の改善が見られないのに賃上げを実施しているとのことなのです。人手不足対応のための防御的な賃上げなのでしょうが、本来ならば、価格転嫁と生産性向上が実現して初めて継続的な賃上げが可能になります。

 そこで、まず価格転嫁についてお伺いします。

 原材料費や光熱費と比べて、更に価格転嫁が難しいのが労務費です。公正取引委員会が労務費の転嫁の指針を策定していますが、発注者側にコストとして認識してもらい、労務費だけでも交渉できるようにしてほしいと中小企業の方々から多くの声をいただいています。また、発注者との交渉に臨む際にどのような資料で交渉したらよいのか分からないので、何らかの目安を示してほしいという御意見も聞かれます。

 政府として対応が可能でしょうか。お伺いします。

新藤国務大臣 非常に重要な御指摘だと思うんです。

 そして、価格転嫁の中で、物件費は比較的根拠が示しやすい、しかし、労務費に対して、それを根拠とともにどうやって価格に転嫁していくか、これは非常に重要なことだと思います。

 その意味で、今回、公正取引委員会において、業界ごとの労務費に係る実態を調査、把握いたします。そして、その上で、十一月中に、適切な転嫁のための価格交渉に対する指針、これを発表するということにしております。

 その中で、既に骨子はお示ししているんですけれども、この十一月中に策定いたします価格交渉に関する指針、まずは、発注者側は、転嫁に関する取組方針を経営トップの関与の下に決定、運用する、社長まで上げてくれということですね。それから次に、子会社側との定期的な協議の場をつくってください、これが二つ目。そして三つ目は、賃上げに関する公表資料、これは、最低賃金の上昇率だとか春闘の妥結額とか、そういったものを取りまとめた資料がありますから、こういった資料を使って子会社が交渉することをきちんと受け入れてほしい、こういうことをお示ししたいというふうに思っています。

 その上で、今お話が出ました、赤字の会社にはなかなか賃上げは難しい。でも、今回頑張って賃上げするならば、黒字に転換したときにそのときの税をそこまで繰越控除するから、ですから賃上げをしてください、こういうことも含めてお願いしていきたい、このように考えているわけです。

山田(美)委員 具体的な詳しい御説明、ありがとうございます。是非、分かりやすい指針を作っていっていただければと思います。

 次に、交際費への課税についてお伺いします。

 いわゆるBツーC、企業と個人との間の取引の分野では、消費者離れを懸念してなかなか値上げがしづらいとの声を聞いています。私の地元である東京の千代田区、新宿区にはたくさんの飲食店がありますが、コロナ禍の営業自粛要請などにより売上げが大幅に減った上に、ゼロゼロ融資の返済も始まっている中、法人需要の低迷と仕入価格や光熱費の高騰、人件費の増加などによって、依然として経営が厳しく、賃上げが難しいと伺っています。

 交際費の範囲から除かれる、損金算入できる飲食費の上限額は、現在一人当たり五千円以下ですが、物価高の現状を踏まえれば一万円以上に引き上げることが必要だと考えます。法人の需要を喚起することで景気を刺激し、中小の飲食店でも賃上げが可能になるように、交際費課税の特例を現実に合わせて変更すべきと考えますが、いかがでしょうか。

武見国務大臣 交際費から除外され、損金算入されて非課税となる飲食費の上限額は、二〇〇六年度税制改正により、一人当たり五千円以下とされました。その後、二十年近くたっておりまして、物価の上昇などから飲食を伴う企業活動の円滑な実施が困難になっているとの関係団体の要望も踏まえまして、厚生労働省としては、令和六年度の税制改正要望において、当該上限額の引上げを要望しております。上限額の引上げによりまして、企業の飲食店利用が促進され、足下の物価高騰などの影響を受け厳しい経営を余儀なくされている飲食店の価格転嫁が、賃上げ等の押し上げにつながっていくものと考えております。

 なお、本件については、今後とも、与党の税調とも御議論をいただくことと承知をしております。

山田(美)委員 武見大臣、力強い御答弁ありがとうございます。

 地元の商店街や飲食店の方々からは、今こそ、こういうときにこそ、GoTo商店街、GoToイートのような施策をやってほしい、疲弊している地域経済を活性化してほしいという切実なお声を伺っています。コロナ禍で失われた人と人とのつながりを取り戻し、景気回復を軌道に乗せるよう、是非御尽力をお願いいたします。

 続きまして、昨今の深刻な人手不足への対応について伺います。

 今回の補正予算案には、中小企業が業務の省力化につながるAI、人工知能やロボットなどを導入するのを後押しする新たな支援策が盛り込まれています。例えば、製造業では、生産工程を自動化できるロボットやAIを搭載することで人の代わりに品質検査を行える設備など、また、外食や宿泊といったサービス業では、清掃や接客などの業務を効率化するロボットなどを想定していると伺っています。

 これまで、中小企業それから小規模事業者の方々からは、デジタル化を進めろと言われても、どこから手をつけていいのか分からないよという声を伺ってきましたが、この新たな支援策は既にニュースなどでも報道されており、事業者の方々からも期待の声が寄せられています。

 面倒な申請手続を省くために、あらかじめ補助の対象となる設備や製品をまとめたカタログを用意すると伺っていますが、このカタログ型支援とはどのようなものでしょうか。申請手続はどの程度簡略化されるのでしょうか。

西村国務大臣 まさに御指摘のように、少子高齢化の中で、地域の経済、特に中小企業の皆さんにとっては、この人手不足が最大の課題であるというふうに認識をしております。これを乗り越えていくためのまさに省力化の設備投資支援、これを大胆に行っていきたいと考えています。

 具体的には、今お話ありましたけれども、ロボットとかセンサーとか無人の決済システムとか、これはハード、ソフト両面から、事業の実態に合わせてそれぞれの事業者が業務効率化に向けた取組を選択しやすいように、今回の補正予算によって五千億円の規模の支援策を用意をしようとしているところであります。

 その際、今お話ありましたように、どこから手をつけたらいいか分からない、どんなものに投資すればいいか分からないという声もたくさん聞きますので、まさにカタログ方式ということで、結婚式の引き出物で時々あるような、自分で選べるようなメニューをハード、ソフト、広くお示しをしながら、そこから選んでいただいて、手続も簡素化する中で容易に導入できるような、こうした仕組みを構築していきたいというふうに考えております。

 こうした支援策を含め、中小企業がまさにこの人手不足を乗り越えて売上げ、収益を拡大していけるような、そうした環境をしっかりつくっていきたいというふうに考えております。

山田(美)委員 力強い御答弁、ありがとうございます。是非一日も早く、このカタログ、御準備いただければと思います。大いに期待を申し上げております。

 続きまして、中小企業の資金繰りについてお伺いします。

 コロナ禍で利用が進んだ実質無利子無担保のゼロゼロ融資の返済が始まりましたが、昨今の燃料高、資源高の影響を受けて、返済が思うように進まないというお話を伺います。

 都内で金属加工業を営む方からは、資材の購入先はあしたの納品からすぐ値上げだと言ってくるけれども、客先からは値上げは一か月待ってくださいと言われるんです、その間は原価割れで製造しないといけないんですよという切実なお話を伺いました。

 こうした中で、貸付けを受けるのではなく、売り掛け債権を売却し、代わりに手数料を差し引いた現金を受け取るファクタリングと呼ばれるサービスが広がっています。金融機関からの融資と比べて迅速な資金調達が可能なため、急場をしのいだという方も多い反面、中には、著しく高額な手数料を要求したり、闇金業者がファクタリングを装って実質的に貸付けを行うなど、いわゆる偽装ファクタリングが問題化しています。

 法的には債権の売買契約であるため、貸金業法の規制は適用されません。健全なファクタリング事業者さんの間では、既に業界の自主規制に向けた議論が始まっていると伺っていますが、金融庁は、ファクタリングに対する規制の在り方についてどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 売り掛け債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取る、いわゆるファクタリングは、それが適正に行われている場合、先生御指摘のとおり、原則として貸金業法上の規制は適用されません。

 また、ファクタリングが適正に行われている場合には、売り掛け債権を売却する事業者にとっては、資金調達の一つの有効な手段となっている面もあるということも認識してございます。

 一方で、これもまた御指摘のとおりですけれども、悪徳なファクタリング業者の中には、捜査当局に摘発されたような事例もあるというふうに承知しております。

 ただ、ファクタリングに対して一律の規制をかけるような法整備を行うかどうかという点につきましては、これも先生が御指摘されたとおりですけれども、一部のファクタリング業者の間では自主規制を行う動きがあるというようなことも私どもは承知しておりまして、幅広い観点から慎重な検討をしていく必要がある問題であるというふうに考えてございます。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 新たなビジネスモデルの健全な発展と、それからもう一方で利用者の安心、安全とのバランスをしっかり確保していただければと思います。

 続きまして、今回、補正予算の目的の一つにエネルギー価格高騰への対応がございますが、ここで、中小企業の視点とはまた異なりますけれども、一般家庭の省エネについてお伺いをいたします。

 一般の御家庭でのエネルギー消費量の三割が給湯器によるものであり、高効率な給湯器の導入は家庭でのエネルギーコストの大幅な削減につながります。また、住宅での熱の出入りの七割は玄関や窓などの開口部からであり、断熱窓への改修によって冷暖房の利用を大幅に下げることができます。

 私の地元の地域の方々とお話ししておりましても、こうした御家庭での省エネ対策、これは小規模事業者の省エネ対策にもつながっていくところでございますけれども、重要性が余り知られておらず、政府からもしっかりと趣旨をお伝えして、普及を進めていくべきだと感じております。

 政府は、一般家庭ないし小規模事業者さんの省エネ促進をどのように進めていくのか、お伺いします。

西村国務大臣 まさに家庭部門の省エネの取組は非常に重要だと思っております。当面、春までは電気料金、ガス料金の負担軽減策を継続していきますが、今のうちに、エネルギーを使わない構造、省エネの構造に変えていくことが極めて重要だと認識しております。

 具体的には、御指摘がありましたように、家庭部門で最もエネルギー消費の多い給湯器について、古くなったものを高効率なものに替えていく、そして断熱窓への支援と改修、これも、御指摘がありましたように、冷暖房費も少なくて済むということでありますので、こうした取組をしっかりと支援をしていきたいと考えております。

 今回の補正予算におきまして、この高効率給湯器の導入、そして断熱窓への改修、これまでも行ってきておりますが、これを更に拡充をして、住宅の省エネ化支援として、国交省、環境省とも引き続き連携しながら進めることにしております。住宅のバリアフリーの改修などと併せて行うケースも非常に多いわけでありまして、そうした場合も含めて、合計約四千二百億円の支援策を盛り込んでおります。

 特に、去年の補正で手当てをし始めたんですけれども、町の工務店の皆さんが、バリアフリーとかの改修のときに併せて提案をされたり、非常に営業に活用されて、利用が非常に増えているところであります。そうした中で、給湯器の導入については、補助額の増額とか、それから賃貸集合住宅向けの支援策の新設とか、こうした新たな取組、拡充をしているところであります。

 いずれにしても、家庭の省エネを着実に進めていけるように、しっかりと支援をしていきたいと考えております。

山田(美)委員 各御家庭にも非常に有益だと思いますし、中小工務店の方々にとっても、景気回復ということで非常にいい取組だと思っております。是非、こうした制度、進んでいくことを願っております。

 続きまして、中小企業関連の税制について伺います。

 中小企業をめぐる税制については、これから年末にかけて議論が進みますが、ここ最近、中小企業の経営者の方々から御心配の声をいただいているのが外形標準課税の問題です。

 支払いを免れるために資本金を一億円以下に減資することの是非はともかくとして、少なくとも、真面目にやっている中小企業に対して課税強化となることがないように、くれぐれもお願いしたいと思います。これは質問でなく、意見にとどめます。

 一方で、今月二日に発表された総合経済対策の中には、賃上げ促進税制の強化が盛り込まれています。中小企業の賃上げを税制面でどのように引き続き支援をしていくのか、お伺いします。

西村国務大臣 経済全体に賃上げの流れができてきておりますけれども、これを中小企業にも幅広く広げていくということが大事であります。まさに労働者の七割が中小企業で働いておられますので、その中小企業に広げていくことが重要だと考えております。

 そのために、価格転嫁対策、それから生産性向上のための支援策、これを強力に推進する、支援していくというのは当然のことでありますが、それに加えて、御指摘のありました賃上げ促進税制、既に中小企業が、これまで大体年間十数万社が活用していますけれども、更に中小企業が使いやすいように拡充をしていきたいと考えております。

 具体的には、赤字のために賃上げ促進税制を使えなかった中小企業が使いやすくなるように、繰越控除措置の創設であるとか、それから、仕事と子育ての両立、女性の活躍支援に積極的な企業への控除率の引上げであるとか、こうしたことについて、現在、与党の税調におきまして精力的に御議論いただいております。

 具体的な制度に向けて、政府としてもしっかりと連携して取り組んでいきたいと考えております。

山田(美)委員 是非しっかりとこの中小企業の賃上げを後押ししていただければと思います。

 続きまして、確定申告におけるインボイス対応についてお伺いします。

 先月からインボイス制度がスタートをいたしました。コロナ禍以降、経済が戻ってきておらず、物価高、資源高などで厳しい経営環境にある中で、小規模事業者やフリーランスの方々などへの対応に課題を抱えての制度開始となりました。

 政府では、インボイス制度に関する関係閣僚会議を開催して、来年三月の確定申告時期までの間の施行状況をフォローアップし、運用上の課題などを把握、共有して、必要な対応策を講ずるとしていますが、是非しっかりと現場の声を聞いて御対応をお願いいたします。

 既にインボイス導入に踏み切った事業者の方々からは、新しい制度での確定申告や消費税申告への不安の声が非常に多く、また、課税事業者を選択するかどうか決めかねている小規模事業者の方々の中には、来年の確定申告までには決めようと思いますという方も多くいらっしゃいます。

 税理士の先生方からは、顧客先はもちろん、例年行われている確定申告の無料相談ですとか、商工会議所や青色申告会などでの協議派遣事業などでも混乱が生じないだろうかと大変御心配されています。

 こうした御不安に対して、政府はどのような対応を考えていらっしゃいますでしょうか。お伺いします。

鈴木(俊)国務大臣 御指摘のように、来年の確定申告は、インボイス制度が開始されてから初めての確定申告になります。そうした中で、新たに消費税の課税事業者になった方々に加えまして、専門性をお持ちの税理士の皆様にあっても、申告手続への心配や不安を抱えていらっしゃる、そのように承知をいたしております。

 まず、新たに課税事業者となられた方々に対しましては、これまでも国税庁におきまして二百回以上の説明会を開催してきたところでありますが、今後更に一千回程度の説明会を予定をするとともに、今後個別に周知の御連絡を申し上げ、納税額を売上税額の二割に軽減する激変緩和措置を利用した場合には、課税売上高を把握するだけの簡易な手続で消費税申告が可能であること、その二割特例の申告書は自宅からでも作成可能であることなどについても併せお知らせをいたしまして、確定申告に係る事務負担についての不安、心配の払拭に努めたいと考えております。

 また、円滑な申告納税に向けて多大な御協力をいただきます税理士の方々との間でも、これまで複数回にわたり意見交換を実施してまいりました。税理士の皆様からの御要望を踏まえ、税理士の皆さんが事業者からよく聞かれる質問をQアンドAの形式で公表するなど、業務の側面支援を行っているところであります。

 今後とも、事業者や税理士の方々が期限内に円滑に申告手続を行うことができますように、引き続き丁寧な対応に努めてまいりたいと考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 是非、そうした様々な施策を進めていっていただければと思います。大変な税務関係の業務に従事していらっしゃる皆様に尊敬と感謝の言葉を申し上げたいと思います。

 質問は以上といたしますが、最後に、私、最近非常に励まされておりますのは、こんなに世の中景気が悪いと言われている、経済状況が厳しい中でも、新たな事業を立ち上げている方がいらっしゃるということなんです。コロナ禍で閉店した空き店舗を居抜きで借りて新しく飲食店をオープンした方ですとか、息子さんが会社を引き継ぐということを前提に、このコロナ禍、そして経済が非常に厳しい中でも社内で新規事業に乗り出した方など、果敢に挑戦するお姿に私も非常に元気づけられております。

 しかし、ベンチャーですとか新規事業に対する支援というのは、既存の事業への支援よりも更に厳しいのが実情であります。先行きの売上げ見込みがないと金融機関が融資してくれないですとか、メーカーさんであれば開発段階でいまだ形になっていないものには助成金が下りないなど、制度があっても使えないというお声なども伺っておりますので、今回、この補正予算案の中には、真っ正面からベンチャーですとか新規事業支援というふうに銘打ったものはありませんけれども、政府は様々な施策があろうかと思います。こうした方々を是非しっかりと支援をしていっていただければと思います。いつの時代もチャレンジこそが未来への扉を開くと信じて、私もそうした方と一緒に頑張ってまいりたいと思っております。

 本日は、成長力強化そして中小企業関連について質問のお時間をいただき、そしてまた大変御丁寧な答弁をいただき、ありがとうございました。

 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。

小野寺委員長 この際、尾崎正直君から関連質疑の申出があります。若宮君の持ち時間の範囲内でこれを許します。尾崎正直君。

尾崎委員 高知二区の尾崎正直でございます。

 本日は、予算委員会で質問の機会をいただきまして、本当にどうもありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 私は、高知の出身であります。今日は、高知の思いも込めまして、地方の諸課題につきまして御質問をさせていただきたい、そのように思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 まず、今後の農政の展開についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 気候変動、世界的な人口増加、更に言えば、世界的な安全保障環境が不安定になっているということもありまして、我が国にとりましても、いつでも安価に食料を輸入できるという状況ではなくなりつつあるという状況でありまして、食料安全保障、これを強化をするということが急務となってきております。

 この食料安全保障の強化に当たっては、農地の確保とか技術の確保とか、様々に重要なことがあろうかと思いますが、何といいましても、担い手の確保を図るということが大事だろう、そのように思うところです。

 しかしながら、基幹的農業従事者の皆様方は、この二十年間で半減をいたしております。いかにして担い手を守っていくかということがこれから本当に大きな課題となろうかと考えるところです。

 本日は、農政の中でも、担い手の確保に関わる諸問題について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、農産物、食品の適正価格の形成についてお伺いをいたします。

 今、多くの担い手の皆さんが悩みを抱えておられます。コスト高となっても価格転嫁できないという悩みであります。市場の競りで値段が決まる多くの農産物の場合、コストが高いか低いかにかかわらず、時々の需給に応じて値段が決まります。他産業のようにコスト高を適正に価格に反映できないという仕組みとなっているわけであります。

 政府は、中小企業にはコスト高に伴う価格転嫁を促していますが、農業ではそれがかないません。今般の経済対策では、地域独自の物価対策を可能とします重点支援地方交付金を手厚く配置していただきまして、更に言えば、施設園芸向け燃料価格高騰対策なども講じられておりまして、これは大変有効なことだ、そのように思います。

 ただ、先々の見通しを持って農業を続けていくためにも、他の産業と同様に、農業でも、あくまで消費者の理解を求めつつということではありますけれども、高騰するコストを価格に適正に反映できる仕組みが必要だろうと思いますし、これが担い手の再生産を支え、日本の食料安全保障を支えるのだ、そのように思うところでございます。

 こうした中、政府は八月に、適正な価格形成に関する協議会を設置して検討を始められました。十月の第二回検討会においては、飲用牛乳、豆腐・納豆を今後の議論の対象とすることをお決めになったわけであります。

 これらは、いわば競りではなくて当事者間で価格決定がされる品物でありますけれども、これらについて、適正価格の形成に向けて、生産から消費までの各段階の関係者が一堂に集まり、協議をすることとなったということであります。一言で言うと、これは全く新しい取組であって、本当に画期的なことだ、そのように思うところであります。今後に大いに期待をいたしているところでございます。

 しかしながら、今回対象とされませんでした野菜とか米とか果物などにつきましても、同様の検討が必要だと思いますし、農業者の皆様方の期待感も大変大きいものがあります。

 確かに、簡単なことではありません。エガリム法を持つフランスでも卸売市場等での取引は対象外とされているなど、競りによる作物の場合、世界的にも先例のない、難しい課題であることはよく承知をいたしております。

 しかしながら、これは極めて重要なことであります。是非その他の作物につきましても、知恵を練って、適正な価格形成を実現する仕組みの検討を継続していただきたいと思うところでございますが、この点につきまして宮下大臣の御見解をお伺いいたします。

宮下国務大臣 先生御指摘のように、農林水産省では、適正取引を推進するための仕組みを検討するために、八月から、生産から消費までの各段階の関係者が一堂に集まります、適正な価格形成に関する協議会を開催しているところでございます。

 現時点では、お話がありましたけれども、まずは、流通経路が簡素で、コストの把握も比較的容易であり、生産等の持続性を確保すべき品目として、飲用牛乳と豆腐・納豆、この二つを対象として、それぞれワーキンググループを設置しまして、具体的な議論を行っているところであります。

 また、御発言もありましたが、その他の品目も重要でありますので、他の品目につきましては、消費者の理解を得ていく観点から、生産、流通、販売の各段階のコストを明らかにしていく必要があります。

 これらが明らかになっていないケースも多いことから、まずは産地、品目ごとにコストデータの把握、収集を行っていくとともに、同じ品目であっても、全国各地に様々な産地があって、生産者の作付規模も様々であるのが現状でありますので、消費者にも分かりやすいコスト指標をどのように作るのかという視点も大事です。

 また、現在、契約取引が行われている中で、価格交渉や契約においてどのような課題があるか等についても調査、検証をしていくこととしております。

 適正な価格形成については、生産者から消費者に至るまで非常に関心が高い大きいテーマだと思いますので、関係者間で議論を尽くして、消費者の理解を前提としまして、我が国の実態に即した価格形成の仕組みづくりを進めてまいりたいと考えております。

尾崎委員 大臣、どうもありがとうございました。本当に大事な取組だと思います。是非継続的な御検討をよろしくお願いを申し上げます。

 続きまして、畜産業の担い手にとりまして今大問題となっております肉用子牛の価格下落問題についてお伺いをいたします。

 令和五年になりまして、肉用牛の子牛価格が大きく下落をしております。令和四年には一頭七十万円から八十万円でありましたものが、令和五年になりまして一頭五十万円ぐらいまで下落をして、先日、主産地であります都城では、十一月十四日、十五日の競りで、何と一頭四十九万円と、五十万円を割り込むという事態に至ったということでございます。

 政府が再生産を確保するために必要と定める保証基準価格は五十五万円でありまして、これを下回るまで下落をしてしまった。実に、約二十年ぶりに子牛補給金が発動されるという異常事態となっているわけであります。

 政府は、令和二年度から、輸出拡大も視野に入れまして、繁殖雌牛の増頭奨励事業を行ってこられました。繁殖雌牛を増やすことは、我が国の肉用牛生産の基盤強化のために極めて重要なことだ、そのように思います。

 しかしながら、物価高騰による国内需要の低迷に加えまして、期待されました中国向け輸出の再開が見通せないなど、本当に状況も変化をしてきているところであります。

 また、高齢な繁殖雌牛から生まれた子牛価格が特に低迷しているなど、新たな課題も出てきております。

 以上に鑑みますと、増頭奨励事業については、一旦休止をして、新たな課題も踏まえて事業の在り方を見直す、政策の在り方を見直すということが重要ではなかろうかと思うところでございますが、大臣のお考えをお聞かせください。

宮下国務大臣 御指摘のように、肉用牛の繁殖雌牛の増頭奨励事業につきましては、これまでの牛肉の旺盛な国内需要への対応、また、輸出の拡大に向けて生産基盤強化を図るために、令和二年度から実施してきたところであります。

 その結果として、繁殖雌牛の飼養頭数は増加傾向で推移しておりまして、令和二年の六十二万頭から、令和五年で六十五万頭となっております。

 一方、お話がありました牛肉の輸出でありますけれども、本年の一月から九月の累計では対前年同期比一一三%と、過去最高でありました二〇二一年を上回るペースで推移をしているものの、大きな需要が期待されます中国向けの輸出は、平成十三年のBSE発生以来停止しておりまして、近年の輸出再開に向けた協議等への取組にもかかわりませず、いまだ再開に至っていないという状況であります。

 また、最近の物価高騰に伴う消費者の生活防衛意識の高まりなどを背景として、食肉の中でも比較的単価の高い和牛肉の消費が伸び悩んでおりまして、枝肉価格や子牛の価格は低迷しているところでございます。

 このような現下の情勢を踏まえて、御指摘のように、これまでの増頭奨励事業の実施は当面見合わせることとしまして、今年度補正予算においては、高齢の繁殖雌牛から、成長がよく肉質に優れた若い繁殖雌牛への更新に重点を移して支援することとして、能力の高い子牛の生産に向けた牛群構成への転換を推進することによって、肉用牛生産基盤の強化を図っていきたいと考えております。

尾崎委員 どうもありがとうございます。柔軟な形で政策の対応を見直していただきまして、本当にありがたいことだ、そのように思うところでございます。

 輸出促進とみどりの食料システム戦略について、お話をお伺いをいたします。

 国内市場が人口減少に伴って縮小している中で、国内の生産基盤を守っていくためにも、輸出促進を継続するということは大事だ、そのように思います。

 そういう中に当たって、農林水産物・食品の輸出額というのは、十年前は五千億円程度だったものが、二〇二二年には一・四兆円まで、約三倍拡大をしている、本当に大きな成果が上がっているということかと思うところでございます。

 ただ、今後、二〇三〇年、五兆円との目標を達成していくためには、より厳しい、チャレンジングな市場にも挑戦をしていかなければなりません。特に、残留農薬基準が大変厳しい、そういう国々に対しても輸出を進めていかなければならない。そういう中にあって、そういう厳しい基準に対応できる産地づくりということが非常に重要になってこようか、そのように考えるところです。

 みどりの食料システム戦略は、環境負荷の低減とか、さらには農薬使用量の減によるコスト低減とか、そういう意味も非常に大きいと思いますが、あわせて、そのような厳しい基準を要求してくる市場に対する産地づくり、そういう意味においても大変意義深いものか、そのように思います。残念ながら、まだまだみどり戦略についてはハードルが高いという声もあるわけでありますが、輸出促進のために不可避な方向性であるということを打ち出していくことでもって、より普及していくのではないか、そのように考えるところです。

 是非、輸出促進戦略とみどり戦略、この二つにつきまして、連携して取組を進めていただきたいと思うところでございますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

宮下国務大臣 議員の御指摘のとおり、輸出の拡大のためには、輸出先国の残留農薬基準に対応した生産、また、付加価値の高い有機農業に取り組んでいくことが重要であると考えております。

 このため、農林水産省では、そのような生産方式への転換に地域ぐるみで取り組む産地への支援をGFPフラッグシップ輸出産地形成プロジェクトと名づけまして、進めているところであります。

 また、このように、地域ぐるみで有機農業への転換や化学農薬の低減など環境負荷低減に取り組むことは、輸出拡大に資するだけではなくて、みどりの食料システム戦略で目指す持続可能な農業を実現することにもつながるものだと考えます。

 このため、農林水産省では、フラッグシッププロジェクトによりまして輸出産地の形成を進めた上で、輸出に取り組む生産者の増加など、輸出向けの生産転換が一定程度進んだ産地につきましては、みどり戦略関連交付金、その他の補助事業での支援に移行するなど、輸出産地の形成に向けた切れ目のない支援を行うこととしてまいります。

尾崎委員 誠にありがとうございます。

 それでは、この項の最後に、総理に食料安全保障強化に向けた御決意をお伺いをいたします。

 総理は、先月七日に栃木の酪農家、茨城の林業関係者を視察されますなど、これまでも各地の担い手の声に耳を傾けてこられました。この成果が十月の食料安定供給・農林水産業基盤強化緊急対応パッケージであり、今般の経済対策だ、そのように考えるところです。

 担い手を守り育てることこそ食料安保強化の肝だ、そのように思います。当然のことですが、この担い手は平野部の大規模農家だけではありません。我が国には、意欲を持って取り組む中山間の小規模家族経営農家、半農半X農家など多様な担い手がおいでになります。いや、むしろ、我が国の場合、中山間地域が総農家数の約四割、農業産出額の約四割を占めておりまして、この中山間の担い手を守ることなくして日本の食料安全保障は成り立たない、そのように思うところでございます。

 私の地元でも、中山間の狭隘な地にあって、デジタル化した園芸ハウスで、さらには、茶畑で、ユズ園で、輸出も視野に、意欲を持って創意工夫を重ねる若者がたくさんいます。是非、彼らの挑戦を力強く応援する施策を展開していただきたいと思うところであります。

 総理に、改めまして、多様な担い手の後押しも含めまして、食料安全保障強化に向けた御決意をお伺いをいたします。

岸田内閣総理大臣 まず、委員先ほど言っておられましたように、食料安全保障あるいは食料の安定供給のためには、農地の確保、技術等ももちろん重要ですが、何といっても、意欲ある担い手、これをしっかりと支えていく、これが不可欠な取組であると認識をしています。

 実際、全国各地を歩かせていただきまして、各地で、スマート農業による生産性の向上ですとか、あるいは輸出促進に向けて意欲的な取組を進めているとか、意欲ある担い手の取組、展開をしていると承知をしています。

 委員の御地元の高知におきましても、自動運転トラクターですとかドローンの活用ですとか、ああいった姿、あれは私が総理になる前でしたが、現地に行かせていただいて、意欲的な取組を見させていただいた、こういったことも覚えております。

 今回の経済対策においても、こうした意欲ある担い手の方々をしっかり支援させていただく、こうした要素を盛り込んだわけですが、その際に、委員御指摘のように、経営規模の大小ですとか経営形態にかかわらず、意欲ある方々を支えていく取組が重要だという考えに基づいて様々な支援を用意いたしました。

 担い手、そして農地、こうした食料安全保障にとって不可欠な基盤、これを確保して、食料安全保障の強化を進めていく。今回の経済対策も含めて、政府として取組を力強く進めていきたいと考えています。

尾崎委員 総理、どうもありがとうございました。

 それでは、林業、木材関連産業の振興について、続いてお伺いをいたします。

 日本の人工林面積というのは世界第八位でありまして、林業の振興とか木材関連産業の振興をするというのは、我が国が持てる資源を生かす道であります。そして、杉を伐採をする、そしてこれを低花粉杉の苗に替えるということは、花粉症対策の根治対策でもあるということでありますし、そして何よりも、地方創生のために、中山間振興のために、この林業、木材関連産業の振興というのは非常に重要です。

 課題は二つあると思っていまして、ウッドショックのときに、やはり、林業のサプライチェーンマネジメントを強化をしないといけない、そのことが本当に痛感されたところでありました。基幹的林道の整備とかストックヤードの整備とか、さらには、川上から川下までに至る情報共有とか、いろいろな取組が行われています。

 ただ、あわせて、需要面においても、課題が大きいことや、ある意味チャンスがあるだけに、その課題を何とか克服したいと思うこと、そのことがございます。

 大臣も御尽力されました都市の木造化推進法の成立によりまして、公共建築物に加えて民間建築物でも木造化の機運が高まっておりますし、更に言えば、防耐火規制の合理化もなされまして、CLTとかLVL等の木質部材によって、少なくとも、地方都市に多い四、五階建てのビルはおおむね木造化が可能という状況になりつつあります。

 しかしながら、まだまだ、例えば、部材の標準化がなされていないので小ロット受注生産となって割高になるとか、汎用的な設計方法がないので非常に難しいとか、そういうこともありまして、施主にも設計士さんにも敬遠されがちという状況があるところでございます。

 こうした状況を打開できれば木材需要の抜本的な拡大が見込めるわけでありますが、現在のお取組につきまして、大臣にお伺いをいたします。

宮下国務大臣 初めにお話をいただきましたウッドショックの話でありますけれども、まさに輸入材リスクが顕在した事象でありました。その際には、短期的な需要の増加に十分に対応することができなかったということでありますので、まさに、御指摘のように、川上から川下までの林業、木材産業対策を総合的に支援をして国産材のシェアを高めていくということが重要だと考えております。

 このため、川上では、現場の生産性を高める路網整備や高性能林業機械の導入、川中では、木材加工流通施設、保管施設等の整備、川下では、需要拡大を図るため、中高層・非住宅建築物の木造化をやる。それから、御指摘ありましたが、川上から川下までの関係者の間での需給情報の共有の促進、これも大変重要だと考えております。

 これらを推進することによって、国産材のサプライチェーンを強化し、海外情勢の影響を受けにくい需給構造の構築を図ってまいりたいと考えています。

 特に、需要拡大に必要な標準化等々の話でありますが、御指摘のように、建築用木材の需要の拡大に向けては、住宅分野に加えまして、これまで木材が余り使われてきませんでした非住宅また中高層建築物について、都市の木造化推進法の下で、関係省庁と連携して木材利用を推進していくことが重要と考えております。

 このため、農林水産省におきましては、まず、中層建築物等の木造化モデルの作成、普及を支援すること、強度に優れたCLTについて寸法の標準化を支援すること、また、木質耐火部材等に係る技術、製品の開発や、品質、性能の確かなJAS構造材の普及を支援すること、さらに、公共木造建築物の建築を支援する、こうしたことに取り組んでいるところであります。

 今後も、関係省庁と連携を図りながら、民間の非住宅また中高層建築物における木材利用の拡大をしっかり推進してまいりたいと考えております。

尾崎委員 ありがとうございました。

 続きまして、国土強靱化についてお伺いをいたします。

 豪雨災害が激甚化していることは御承知のとおりであります。データによりますと、一時間五十ミリ以上の豪雨の発生回数というのは四十年で約一・五倍に増えている。また、気温が二度上昇すれば洪水発生頻度は約二倍にも至るという試算もあるわけでございます。また、最悪の場合、想定死者数三十二・三万人とされる南海トラフ地震の脅威も刻々と迫っております。

 国土強靱化対策、これを加速する必要があると思いますけれども、まず、総理の御決意をお伺いさせていただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、気候変動等を背景にしながら、自然災害の激甚化そして頻発化、強く指摘をされているところです。そして、御地元の高知を含む南海トラフ地震など、大規模災害のおそれ、これも切迫しています。その中にあって、国民の命、財産を守り、一人でも災害に遭われる方を減らす、こうした取組は国家にとっても最も重要な使命の一つであると認識をしています。

 政府においては、これまで、五か年加速化対策に基づいて、防災・減災、国土強靱化を進めてきました。これを加速化させてきたわけですが、今年七月には、新たな国土強靱化基本計画を策定いたしました。従来のこうした防災・減災、国土強靱化におけるハード面の充実のみならず、デジタルを始めとした新技術を活用するとか、地域力を発揮するとか、ソフトの重要性も強調した新たな計画を策定したところです。

 今後とも、この基本計画ですとか、さきの通常国会で改正しました国土強靱化基本法、こうしたものに基づいて、五か年加速化計画後についても、中長期的な見通しの下に、継続的そして安定的に、さらには切れ目なくこうした取組を進めていきたいと考えています。

 災害に屈しない国土づくりを政府としても一体となって進めていく覚悟であります。

尾崎委員 ありがとうございました。

 巨大災害に対しては、やはり事前防災を徹底することが大事であって、そして、この事前防災の中でも究極の事前防災は、危険な地域から居住地を移すということ、これが一番大事だ、そういうふうに思います。

 ただ、国交省の防災集団移転促進事業、こういう居住移転を、危険なところからの居住移転を応援していただく事業でありますが、残念ながら、被災後の高台造成は盛んに応援してくださってきましたけれども、被災前にこれを使おうとしますと大変にハードルが高くて、東日本大震災後におきましても、これが適用されて移転がなされたのは全国で僅か十四戸にすぎません。こういう状況を何とか改善しなければならないと思います。

 細かい説明は避けますけれども、一言で言うと、被災前の事前移転の場合は、同事業を使うためには、堤防等のハード整備を行わないことについて、事実上、対象地域の全住民の同意を必要としているということであります。しかしながら、住居は移転したとしても事業所は残したい人もいますし、そもそも、津波の浸水想定区域のように、対象が何千人、何万人となるときに、全員の同意を得ることはほぼ不可能だということかと思います。

 そうした地域でも、津波で被災した後には、東日本大震災後もそうであったように、新たに高台造成がなされるのだ、そういうふうに思います。しかし、多くの人が亡くなった後ではなくて、多くの人が亡くなる前にこそ高台への移転を後押しすべきだ、そのように考えるところです。同事業の見直しが必要だと思いますけれども、国土交通大臣の御見解をお伺いいたします。

斉藤国務大臣 防災集団移転促進事業、災害が発生した地域、若しくは、これから発生するおそれがある地域から安全な地域へ集団移転をしてもらおう、そういう自治体を支援する事業でございます。

 今、尾崎委員おっしゃいましたように、この事業により、被災地における住居移転につきましては、これまで約三万九千戸適用しておりますが、事前移転につきましてはまだまだ少ないという状況でございます。

 事前移転にこの事業を活用する際には、移転前の地域で堤防等のインフラ整備を行わないことが要件とされております。これは、二重投資を防止する、こういう意味です。堤防を望む住民などから合意が得られない事例も見られ、特に、多数の住居が立地する市街地での移転の取組が進みにくいという課題がございます。

 このため、現在、この課題の解決に向けまして、甚大な津波被害が想定される市街地において、一定の場合に、より円滑に事前移転に取り組めるよう、関係機関との協議を進めているところでございます。

 今、ぎりぎりの協議をしておりまして、これ以上細かく言えないのが残念でございますが、今、尾崎委員御提案の趣旨に沿って、事前移転に取り組めるように、しっかり取り組んでいきたいと思います。

尾崎委員 最後に、国土強靱化基本法の改正によりまして、新たに実施中期計画が策定をされることとなりました。今、資材、それから労賃が上昇しています。是非、実質ベースで事業量が確保できますように、その点を御配慮いただきたいと思いますし、災害の激甚化、要するにゴールが遠のいていっていますので、それを踏まえていただきたいと思いますし、事前移転というような、このような踏み込んだ対策も盛り込んでいただきたいと思います。大臣の御見解をお伺いいたします。

松村国務大臣 お答え申し上げます。

 先ほど総理から御決意がありまして、細かく御答弁がありましたけれども、私ども、近年、異常気象が激甚化、また頻発化いたしますから、国民の生命財産を守ること、これは、やはり何よりも我々の、政府においての使命であると考えております。

 その上で、防災・減災、国土強靱化のための五か年対策を着実に推進をしているところでございます。さきの通常国会におきまして、国土強靱化法が改正をされまして、実施中期計画が法定されたことは、これは意義のあることだと思っておりますし、切れ目なく対応できる。

 委員御指摘の点でございますけれども、現在、政府といたしましては、施策の実施状況の調査など、実施中期計画策定に向けた必要な検討をしっかり進めてまいりますが、御指摘の、災害の激甚化の観点や、ハード対策とソフト対策の連携などの観点を含めまして、様々な事項について考慮した上で検討してまいりたいと考えております。

尾崎委員 本当に、災害が激甚化をしてきているという状況でございます。災害対策の最前線におります自治体の職員も大変苦労が増しているという状況でございます。そういう中で、国土交通省の地方整備局のTEC―FORCEの皆さん、私も知事のとき本当に助けていただいて、ありがたいことでございました。

 是非、職員の皆さん、前方展開もしていただいて、バックアップ機能をこれから強化していただきたいと思いますし、さらには、防災DXを進めていただいて、総合防災情報システムもでき上がる。これなんかも本当に、暗中模索の中で災害対応をする人にとっては心強い動きでございます。

 是非とも、今後とも、この防災対応の強化、国土強靱化に向けての対策の強化、政府を挙げて進めていただきたい、このことをお願い申し上げまして、私の質問とさせていただきます。

 本日は、本当にどうもありがとうございました。

小野寺委員長 これにて若宮君、島尻さん、平君、山田さん、尾崎君の質疑は終了いたしました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小野寺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。伊佐進一君。

伊佐委員 公明党の伊佐進一です。

 本日も質問の機会をいただきまして、委員長並びに与野党の理事の皆様に御礼を申し上げたいというふうに思います。

 まず、総理、賃上げ、伺いたいというふうに思います。まず、基本的なスタンスを確認をさせていただきたいというふうに思っております。

 今、この物価高騰、資材高騰、こういう中でも、中小企業の皆さんには賃上げを政府としてお願いしているという状況でありますが、その中で、行政が賃上げを決められる分野があります。例えば、医療、介護、保育士さんとか、もっと言えば学校の先生とか消防士さん。これは、いわゆるエッセンシャルワーカー、公的な役割を担っている皆さんです。こういうところは、診療報酬だったりとか介護報酬、公定価格、こういうもので決まる、あるいは大きく影響を与えることができるというふうに思っております。

 民間の企業も大変な中で政府としてお願いしている以上、当然、こうした公的分野においても総理はしっかりと賃上げを行っていくということだというふうに理解をしておりますが、まず確認をしたいというふうに思います。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、介護、医療、保育、さらには教育分野における賃上げ、これは喫緊の重要な課題であると認識をしています。

 岸田政権においても、これまで、公的価格の見直し、こうした課題を掲げてまいりました。今般の経済対策、もちろんでありますし、この後に診療報酬などの同時改定、これも予定されています。こういった様々な政策を通じて、処遇改善にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

伊佐委員 ちょっと今の現状を確認したいと思うんですけれども、パネルを見ていただければというふうに思いますが、これは医療や介護の関連の賃金の動向です。

 一番上が、これが全産業の平均ということになります。その下の部分が医療関係職種、コメディカルと言われています。病院にいらっしゃる医療関係者の皆さんです。その下が介護の職員の皆さん。さらに、その下が介護補助者、これはいわゆる病院の介護職員です。病院での介護職員の皆さんが看護補助者というふうに言われております。

 この医療、介護の業界というのは、見ていただいた一番上の全産業の平均と比べて軒並み下回っています。こういう処遇もあって、ずっと人手不足が本当に今厳しい状況です。

 例えば介護で申し上げますと、今々で二十万人足りません。これは、将来にわたって、二〇四〇年には六十九万人足らないと言われておりまして、ここを何とか賃上げしなきゃいけないというので、例えば介護でいえば、この十年間は、処遇改善加算、いろいろな措置をしながら、少しずつ実は全産業に、少しずつではありますけれども近づいてきている。昨年の状況で、全産業との差が介護だったら七万円ということになっています。

 ところが、今、この物価高、全産業が賃上げをしているという状況の中で、この差が縮まるどころか引き離されています。春闘だと三・五八%の改善ですけれども、医療界の賃上げは一・九パー、介護は一・四二パー。つまり、半分にも満たないわけですね。

 これもよく御存じのように、何で上げられないかというと、人件費を上げようと思っても、そもそも医療や介護、障害福祉、ここは診療報酬とか介護報酬で公的に価格が決まっています。つまり、価格転嫁できないというわけです。

 この年末に、さっき総理も言及していただいた報酬改定を迎える、この価格をついに決定する。二年に一度、医療の世界は。介護の世界は三年に一度。賃上げのトレンドが今全産業で続いていく中で、じゃ、医療、介護、先行き三年間を見てどう確保できるかというのが今回の年末の大事な報酬改定じゃないかというふうに思います。

 賃上げのために十分な報酬改定が必要だと厚労大臣も思っていらっしゃると思いますが、しっかり上げるんだという宣言を大臣にしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

武見国務大臣 昨今の高水準となる賃上げの動向や人手不足の状況を踏まえれば、医療、介護における賃金を始めとする人材確保への対応は喫緊かつ重要な課題だというふうに認識をしております。

 今年の春闘などを通じた各産業で賃上げが行われている中で、医療、介護分野では賃上げがほかの産業に追いついていかないという状況は、委員御指摘のとおりであります。また、リハビリテーションなどを担う医療関係職種に加え、介護関係職種の賃金は、全産業平均を下回る水準で推移をしております。

 さらに、医療、介護分野における人材確保の状況は、有効求人倍率が全職種平均の二から三倍程度の水準で高止まるとともに、特に介護分野では、足下では離職超過が生じ、小売などの他産業への人材流出が見られるといった極めて厳しい状況にございます。

 このような状況の中で、約九百万人、これは全産業の労働者の一三%ほどでありますが、この医療、介護分野の労働者、着実な賃上げ、処遇改善は、日本経済の消費をつなげ、そして成長と分配の好循環を実現するためにも大変重要だと考えます。

 このような認識を踏まえて、令和六年度の同時改定においては、物価高騰、賃金上昇、経営の状況、支え手が減少する中での人材確保の必要性、介護、利用者負担、保険料負担への影響を踏まえて、患者、利用者が必要なサービスが受けられるよう、必要な措置、対応を行ってまいりたいと思います。

伊佐委員 厚労大臣の認識は、喫緊かつ重要だというふうに言っていただきました。

 今回の報酬改定は、本当に、医療、介護、障害の分野を政府がどう認識しているか、どう評価するかというメッセージだと思っています。固唾をのんで見守っていらっしゃると思いますが。

 じゃ、財務大臣、お金を握っている財務大臣として、どう思っていらっしゃるか。

 昨日、財政審が建議を財務大臣に提出をされました。報道で知る限りで何と書かれているかというと、来年度の診療報酬改定、人件費などを引き下げて負担軽減という報道がなされています。診療報酬改定はマイナス改定だと。財務大臣はどのように受け止められたか、伺いたいと思います。

鈴木(俊)国務大臣 まず、十一月一日に財政制度等審議会が開催をされまして、そこでは社会保障をテーマに議論が行われました。

 そして、この十一月一日の財政審の資料といたしまして、二〇二四年度改定においては、財務省の調査では、診療所の経営状況が極めて良好であること等を踏まえて、診療所の報酬単価を引き下げる等により、現場従事者の処遇改善等の課題に対応しつつ診療報酬本体をマイナス改定とすることが適当である旨の記述を含む資料が、財務省の事務方から提示された、そのように承知をしております。

 そして、この意図でございますが、政府全体として賃上げを最重要課題とする中で、医療分野における現場従事者の処遇改善は重要な課題である。一方で、国民が負担する保険料等が増加すれば現役世代の賃上げ効果を損なう面があるとの問題意識に基づきまして、国民負担を極力抑制するためにいかなる方策を取るべきかとの観点から提示されたものと承知をいたしております。

 こうした考え方は昨日取りまとめられた財政制度等審議会の建議においても示されているところですが、いずれにいたしましても、二〇二四年度の同時改定においては、国民負担を最大限抑制しつつ、現場の方々の処遇改善に構造的につながる仕組みをどう構築すべきか、このことについて、厚労省を始め、年末に向けて検討を深めてまいりたいと考えています。

伊佐委員 大臣、申し訳ないけれども、今の答弁は、まさしくコストカット経済そのものだというふうに思います。負担も減らすけれども、給付も減らしますと。いわゆる縮小思考じゃないかと思っています。

 総理は、今回、コストカット型経済から持続的な賃上げへというふうに言っていただいていて、さっきの経営状態が良好だという話もありましたが、私もデータを見させていただきましたけれども、これはどこと比べているかというと、コロナで一番ダメージを受けた二〇二〇年と比べて、二一年、二二年、大分調子いいですねという話をされています。当然、そこと比べたら回復してきたというだけだというふうに私は思っていますが、実際の現実は、今これなわけです。

 これだけ全産業の差が今開いてきていて、医療関係職種、例えば理学療法士さんともこの前話しましたけれども、G7の各国の理学療法士さんの皆さんの所得と比べて、今、日本は半分ぐらいなんです。圧倒的に評価されていない。看護補助者だって、賃上げの中で、これはむしろ下がっているんです、今。

 では、介護はどうかというと、介護は本当に今大変。経営状況、最新の状況が今月出ました。衝撃だったのは、介護の施設系が全て赤字経営ということです。令和四年度を前年度と比較しても、特別養護老人ホームは経営がマイナス二・二%、老健はマイナス二・六%です。この令和四年度の数字は、電気代とか人件費はもう上がっているときです。食料品はまだそこまで上がっていないときでこの数字なんですよ。だから、令和五年度はもっと大変な状況じゃないかというふうに思っています。

 では、厚労大臣に伺いますけれども、さっき施設系の話をしました。訪問介護と通所介護、施設系じゃないところ、この数字も出てきたんですが、訪問介護の経営状況はプラス七・八%。悪くないように見えます。財務省は、もうかっているからここを減らしますねと言っているんですけれども、厚労大臣に聞きたいんですが、訪問介護と通所介護は今もうかっているんでしょうか。

武見国務大臣 先日公表した介護事業経営実態調査に基づきますと、訪問介護と通所介護の収支差率は前年度比でそれぞれ上昇しておりますけれども、特に通所介護は、新型コロナの影響もあって、一・五%と厳しさが続いていると考えています。

 訪問介護と通所介護の状況を分析いたしますと、支出のうち人件費が減少していることが収支差率の上昇の要因というふうに認識をしております。特に訪問介護は、ヘルパーの不足というので人数が減少しておりますので、一人当たり逆にそれで賃金が上がる、そういう状況がつくり出されております。なお、訪問介護及び通所介護の事業所は、多くは小規模であり、元々一月当たりの収入が数百万円規模であるために、月に数万円程度の収支の改善で相対的に収支差率の大きなプラスにつながっていると考えています。

 介護報酬におけるサービス類型ごとの経営状況をしっかりと踏まえることが重要だと考えます。

 以上です。

伊佐委員 そうなんです。収支率はよくなっているように見えるんですが、中身を見ると、大臣おっしゃったとおり、収入はほぼ変わっていない。支出が減っている。その減っているのが何かというと、人件費。つまり、人が辞めて減っていっているという状況なんです。

 介護の分野からどんどん離職していっている。こういう悲惨な状況にあって、私もこの前も地元で話を聞いていると、ある介護事業者の皆さんが、急に今すごい勢いで辞めていますと。何でかというと、その介護事業者の近くに大型のショッピングモールができました、そっちの方が処遇がいいから、介護事業者を辞めてそのスーパーのスタッフにみんな行くわけですよ、という状況だと。

 是非、私、ちょっと総理に検討していただきたいことがあります。それは何かというと、今の一番の問題は、社会保障、医療や介護や年金が、常に枠内で財政を考えなきゃいけない、ゼロサムで考えなきゃいけない。

 例えば、診療所を充実させるためには、じゃ、薬の値段、薬価を削りましょう、それでそれを持ってくるとか。あるいは、今回だって、子供、子育て、これを充実するために三・五兆円。子供、子育ても、また社会保障なので、じゃ、その中で何とかしてね、歳出改革してねと。つまり、医療や介護を削らざるを得ない状況にまたなってくるかもしれません。

 それを考えると、こうして少子高齢化も進む、また、政府の方針として子育て支援も充実させる、こういうようなときには、同じような社会保障の枠内で全部収めろというのは、私はもう限界に来ているんじゃないかなというふうに思っております。これは何もなくても自然増するわけですよ、高齢化だから。それを毎年毎年こうやってたたいているわけです。

 今、デフレ経済からいよいよインフレ経済に向かっていくという形の中で、新たな社会保障財政の在り方、診療報酬の在り方、これを考えていかなきゃいけないというふうに思っております。せめて、賃上げ、物価高騰、ここの部分は別枠で考えるべきときじゃないかというふうに思いますが、総理、見解を求めます。

岸田内閣総理大臣 処遇改善あるいは社会保障に対する予算に対する考え方について、委員の方から、賃上げとか物価高騰、別枠で考えるべきではないか、こういった御指摘がありました。

 だからこそ、今回の補正予算においても、重点支援地方交付金、これを増額する形で、全国の医療施設あるいは介護施設におけるエネルギーやあるいは食料の高騰に対する支援を行う、また介護職員の支援等も盛り込んだ、こういったことであります。

 そして、これから年末、同時改定が行われる、その中で処遇改善も考えていかなければならないわけですが、基本的な社会保障費に対する考え方については、今年の骨太の方針の中で、基本的な考え方、これを明らかにさせていただいております。基盤強化期間においてその実質的な増加を高齢化による増加分に相当する伸びに収めることを目指す方針とされていること、そして、その上で、経済、物価動向等を踏まえ、その方針を継続する、こういった方針を明らかにしています。

 先ほど来ありますように、厚生労働大臣そして財務大臣に対しても、様々な関係者から様々な実情が訴えられています。こういった多くの関係者の声、これを丁寧に聞くことは大事だと思います。そういった声を踏まえながら、先ほど申し上げました政府としての骨太の方針、基本方針に基づいて、今後の社会保障費、考えていきたいと思います。

 いずれにせよ、同時改定について今の段階で私から何か申し上げることは、それは控えなければなりません。是非、多くの声を聞きながら、政府として判断していきたいと思っています。

伊佐委員 総理、骨太の方針も私も理解しているつもりなんですが、私が申し上げているのは、基本的な今までの枠組みを、新しい経済の形にしようと思えば、やはり考え直さなきゃいけないんじゃないかということです。

 恐らく一番問題になるのは財源です。財源はあります。消費税の増収分です。

 これを見ていただくと、所得税の税収は、今回十九・二兆円から二十二・五兆円に増えた分、ここを減税として一人四万円で還元します、物価高騰で苦しんでいらっしゃる国民の皆様にこの三・三兆円を還元するということにしていただきました。

 この間、消費税も二十一兆から二十三・一兆に増えているんです。令和五年までいくと、二十三・四兆円まで増えています。

 消費税は法律で、よく御案内のとおりで、社会保障に使うというふうになっているはずなんですね。それであれば、この増収部分は、今々のこの大変な状況は、借金返しに使うんじゃなくて必要な社会保障に使うべきだ、報酬改定なり子供、子育ての支援なりに使うべきだと思いますが、いかがですか。

鈴木(俊)国務大臣 消費税につきましては、急速な高齢化等に伴い年々増加する社会保障給付費の財源確保が課題となる中で、全世代型社会保障制度を支える重要な財源として位置づけられておりまして、消費税収については、増収分も含めて、年金、医療、介護、少子化対策の社会保障四経費に充てることとされております。

 現状では、令和五年度補正予算において、地方交付税分を除いた国分の消費税収は十八・五兆円でありますが、その一方で、国の社会保障四経費は三十二・七兆円と大幅に上回っておりまして、その結果、十四・二兆円を消費税以外の税収や国債等で賄っているのが現実の姿でございます。

 さらに、急速に進展する高齢化等を背景に、社会保障給付費は引き続き増加していくことが見込まれております。

 このため、消費税の増収分については、引き続き、社会保障の負担を将来世代に先送りさせない対応として、増加していく既存の社会保障給付の財源に充てることで、社会保障制度を持続可能なものとする必要があると考えております。

伊佐委員 でも、私は納得できないんですよ、毎回聞くんですけれども。

 それは何でかというと、そんなことを言うのなら、先送りさせないための対応、つまり、はっきり言えば借金返しに使っている。だって、元々が税収と比べて支出の方が多いんだから、足らない部分があるから、そこに使わざるを得ませんということだと思いますが。

 それであれば、所得税の増収分だって、既に足らざる部分がこれだけ国費であるわけですから、そこも使われてしまっていることになりますよね、本来。でも、それを還元すると言っているわけで。だから、本来、今の理論だと還元できないはずなんですよ。

 だから、社会保障は、これまでも足らざる部分というのを大宗は借金で埋めてきました。税収が増えるということは、その増えた分、足らざる部分を埋める部分が減るので、つまり、借金が減る、借金返しに使うというのと私は同じ意味だというふうに思っておりまして。

 それだったら、私はやはり、毎回、社会保障の議論をしている中で、何かやろうと思うと、じゃ、財源をどうするんですかと財務省に言われるわけですよ。その財源で、じゃ、ここのところを何とかとやって、どこを削るかという議論をするわけですけれども、何か一対一対応で財源を求めてくる。

 それをおっしゃるのであれば、じゃ、ここの部分を一対一対応で、新たな社会保障に必要な部分、増収分を使ってはどうかということで申し上げています。

 私、総理に実は通告していましたので、総理からも一言いただきたいというふうに思います。

岸田内閣総理大臣 社会保障費を始め様々な政策課題にどういった財源を使うのか、どのように予算を用意するのか、こういったことについては、やはり何よりも、その支出、何に使うのか、これをしっかり考えることが大事だと思います。

 社会保障費に向けて消費税をどのように考えるかということですが、先ほど委員の方から、所得減税についてもこの課題と比べてどうかという御指摘がありました。あちらも、要は、来年度に向けて国民の可処分所得をしっかりと底上げするためにどのように財源を使うのかという観点から使い道を決めたわけであります。

 ですから、今回も、社会保障費をどのように拡大していくのか、このことについて議論をし、そして必要なものはしっかり用意しなければならない、そしてその財源を用意するということで考えなければならないと思います。

 財源があるからどうするのではなくして、今の政策課題において何が求められているのか、どのような国としての支出が求められているのか、それをまず考えた上でそれぞれの支出を決定する、それをどのように財源で支えるのか、順番はそのように考えるべきだと思います。

 ですから、先ほど、可処分所得を支えるための所得税、住民税減税についても、そして、今議論になっています社会保障費をどれだけ拡大するのか、まずは必要な支出を考えるという観点から議論を深めるべきであると考えております。

伊佐委員 総理、何が必要かというのを今までずっと、だからそれは賃上げだというふうに私は申し上げているわけで、是非また御検討いただきたいというふうに思います。

 次の話題に行かせていただきたいというふうに思います。大阪・関西万博について。

 このパネルを見ていただいて、皆さん御案内のとおりで、会場建設費が、最初は千二百五十億円、二〇二〇年に千八百五十億円、今回二千三百五十億円と、必要経費がどんどん上がっている。これは、国と府市と経済界で三分の一、この二千三百五十億円を割ります。

 私、地元大阪ですので、大阪市民にとってどれぐらいの負担感かというと、市の負担は三百九十二億円です。人口二百七十七万人で割ると、一人当たり一万四千円。大阪市民は当然大阪府民ですので、大阪府民としての負担は四千円。当然国民でもあるわけですから、国民負担が六百円で、合わせて大阪市民は一人当たり一万九千円の負担をしながらこの万博を迎えるということになります。物価高で苦しんでいる私の地元の大阪市民にとって、一万九千円の公費を使って万博をやるのという声がやはりすごいあります。

 週末、私は幾つか、何会場かで語る会をやらせていただいて、その中でみんなに聞いたんです。この中で、万博は中止すべきだと思う人、あるいは、それでもやはり国のメンツのことを考えて、やるべきだという人、あるいは、分からないという人。聞いたら、六割ぐらいが中止すべきだというのが今の声なんです。共同通信の調査は、万博が不要だと言った人は六八・六%。だから、私が聞いたのと大体一致している状況です。

 まず、この点をどう受け止めるかを伺いたいと思います。

西村国務大臣 万博に対して様々な御意見があることは承知をしております。

 私どもとして、この大阪・関西万博、まさに新しい時代のイノベーション、新しい技術を示し、「いのち輝く未来社会のデザイン」ということですので、コロナがあり、それから世界中でいろんなことが起こっている中で、命の大切さ、重み、こうしたことをしっかり発信しながら、そして、世界が平和で豊かであり続けるように、そのための新しい技術であったりイノベーションであったり、それをしっかりと示し、世界がそういった方向に進むようにする、そういう万博でありたいというふうに思っております。

 その意味で、アンドロイドのロボットとか、再生医療でどくどくと動くiPS細胞から作った心筋シートとか、様々な新しい技術をお示しをしながら世界に発信をしていきたいというふうに考えております。

 ちなみに、今月半ばに、参加各国約百五十か国、七国際機関が集まって、日本で五百名が参加をして参加国会合が開かれました。この中で、参加国の、まさにそれぞれの国の熱い思いが語られましたし、日本に対する強い期待も寄せられたところであります。まさに、この百五十の国、七国際機関からは、力を合わせて新しい時代の万博を成功させよう、皆さんにとってすばらしい万博となるよう力を合わせていこう、そういう強い思いが共有されたところであります。

 様々なお声に耳を傾けながら、しっかりとこの万博の必要性、重要性についても発信をして御理解をいただき、すばらしい万博にしていきたいというふうに考えております。

伊佐委員 大臣、私は、国の管理監督責任がどうかというのをちょっとまた質問させていただきたいと思っておりまして、というのは、今回は物価高騰とか資材高騰が原因だと言っていますが、これは二回目なんですね、会場の建設費が膨らむのは。

 一回目は六百億円増です。この六百億円増も、どういう内容かを取り寄せると、例えば、木製のリング、あの大きな、取り壊すことが決まっているリングにお金がかかるのでプラス百七十億円、入場の際の日よけのために屋根が必要ですというのでプラス三十億円。最初からこういうのはちゃんと計画しておくべきものじゃないかなと思うんですが。

 極めつけはトイレ。当初、パビリオンにそれぞれトイレがあるから会場には要らぬやろうといってトイレがなかった。これも、そんなわけにいかないのでプラス三十億円とか。そもそもの当初からの計画が相当ずさんだったんじゃないかというふうに思っております。

 私ははっきりさせたいのは、ある自治体の長は、これは国の行事ですからと言っています。本当にそうかをはっきりさせたい。

 国は万博の実施主体を指定します。そこで私がやりますと言ったのが博覧会協会です。博覧会協会が設計とか建設とかの運用に当たる。だから、実施主体は博覧会協会。その博覧会協会の副会長に大阪府知事、大阪市長も参画していただいている。意思決定をするボードメンバー、当事者なんですね。

 今回の増額に対して、府知事が博覧会協会を呼びつけて、マスコミ公開で質問したということがありました。私はすごい違和感を感じまして、自分が博覧会協会の副会長をされていらっしゃって、意思決定できるポジションにいらっしゃいます。会社の副社長が部下を呼んでプレスに公開して詰めるということは、普通はないんじゃないかというふうに思いますが。

 私、申し上げたように、国にも責任があります。管理監督責任があります。実施主体は博覧会協会、ここを管理する立場ですので、国も責任逃れはできないし。だから、国も大阪府も大阪市も責任逃れはできないんです。

 これをまずはっきりさせていただいた上で、ここは国会ですので国の責任を問いただしたいと思いますが、この管理監督責任をしっかり果たしているのかということを伺いたいというふうに思います。

西村国務大臣 お答え申し上げます。

 今回の増額は、人件費、様々な物資の金額が上昇していることを受けてのものでありますが、前回は、今御指摘あったように、ベビーセンターであったりトイレであったり、それから、これだけ暑くなってきているということで、日よけのための施設なども相当、入場ゲートの屋根とか、かなり増やしていると聞いております。

 ただ一方で、パビリオンなどのコスト削減とか水上広場とか構築物の削除などもやっておりますので、そうした努力の上で必要額を、前回の増額のときも協会内で、理事会で議論し、政府内でも議論した結果というふうに承知をしております。その上で、この費用については、国、地元府市、そして経済界、この三者で負担することになっております。

 当然、万博の事業は、先ほどおっしゃったように、国の責任で行うものでありますので、博覧会協会、これは万博特措法があります。その特措法に基づいて博覧会協会をしっかりと監督する責任が私どもにありますので、その責任に基づいて予算執行の管理を徹底して行っていきたい、コスト削減に向けて不断の努力を続けていきたいというふうに考えております。

伊佐委員 総理にもっと根本的なところを問わせていただきたいというふうに思います。そもそもの、今回の万博の意義は何なのか、何をもって成功とするのかという点です。

 ここが恐らく国民の皆さんと共有できていないんじゃないかというふうに思っておりまして、だから、増額になったときに、国民の皆さんも万博の意義を共有してくださっていれば、それはもう仕方ない、やろうと、もしかしたら受け入れていただけるかもしれません。

 五十年前の大阪の万博、これは私は国民でその意義を共有できていたというふうに思うんです。当時、さきの大戦で日本が敗戦をして、そこから戦後復興で一生懸命皆さん御努力をされた。そして昭和三十一年に国連加盟がある、東京オリンピック、東海道新幹線ができて、首都高ができて、そしていよいよ大阪万博と。これからいよいよ日本も世界からお客さんを迎えるんだと、三波春夫のこんにちはというので、みんなで口ずさんで、みんなで一緒になってやったような気がします。その集大成が大阪万博で、ようやく先進国に仲間入りができたというわくわく感、そこに月の石もあったというふうに思っていますが。

 今それがあるのか、万博にどういう意義があるのかを総理に伺いたいというふうに思います。

岸田内閣総理大臣 まず、万博というもの、先ほど経産大臣からも答弁がありましたが、やはり、今我々が生きている世界において、これから未来を、多くの人々が、世界中から人々が集まることによって思いを巡らし、そして考えていく貴重な機会であるということは間違いないと思います。特に今、世界の動きがますます速くなっている中にあって、私たち人類の未来はどうなっていくんだろうか、これを多くの人々が集まり、思いを巡らす、万博の意義はまず基本的にはそこだと思っています。

 その上で、今の現代社会のありようを考えますと、まず、コロナ禍を振り返りますときに、コロナ後、実質的には初めての万博となります。また、中東を始め国際社会の状況を見ますときに、対立や分断、世界が内向きになっていると言われています。そういった時代にあって、世界中から人々が集まって共に人類の未来を考える機会という万博。これは今のタイミングという意味においても、意味ある行事であると考えています。

 何をもって成功と考えるかという御質問でありますが、今申し上げたように、今の世界における未来を考えるための機会ですとか、分断が進む世界において人が集まることの機会ですとか、あるいは、日本でこれを開催する、日本の魅力を世界に発信する機会ですとか、こういった目的を果たすことができたと感じられるとき、これが成功したと評価されることになるんだと思っています。

伊佐委員 「失敗の本質」という書籍、総理も読んだことがあると思います。日本が大戦中になぜ失敗したのかということを分析した中で、そこで、やはり、その結論として書かれているのは、作戦目的が曖昧だったということです。

 つまり、何のために万博をするのか、政府の皆さんも一生懸命、大臣を含めて発信をしていただいていますが、これが国民の皆さんと共有されていないので、本当に物価高騰で必要だとなったときも、本当にこんなにかけてやるのというのがやはり先に出るわけですよ。そこは、いかにこの作戦目的がしっかりしているか、しかも、それを国民の皆さんと共有できているかというところが一番私は大事なんじゃないかというふうに思っております。そうじゃないと、国民の皆さんが置き去りになってしまったままでは、私は成功はおぼつかないんじゃないかというふうに思っております。

 そのほか、高齢者の皆さんの生活の安心の質問であるとか、子供、子育て支援の質問をいろいろと用意させていただいたんですが、時間になりましたので終わります。

 ありがとうございました。

小野寺委員長 この際、中野洋昌君から関連質疑の申出があります。伊佐君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中野洋昌君。

中野(洋)委員 兵庫八区、尼崎市選出、公明党の中野洋昌でございます。

 伊佐議員に続きまして、通告に従いまして、早速質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まず冒頭は、総理に、物価高対策についてお伺いをしたいというふうに思います。

 今、地元を回りましても、例えば食料品ですとか、あるいは粉ミルクですとか、お菓子ですとか、本当に身近なものが値上がりをして、生活を圧迫をしている。会社に行きましても、原材料あるいは資機材、いろいろなものが高騰している、本当に経営が苦しいんだ、大変に厳しいお声、これをいただきます。

 総理には、物価高対策、是非現場の声をしっかりと受け止めていただきたいというふうに思っています。今政府がやろうとしている総合経済対策、いろいろな御意見があります。でも、しっかりとこの声を受け止めていただいて、何としても物価高を乗り越えていくんだ、総理の強い御決意、そして、総理が目指されていく、何を目指していくのか、こういうものをしっかりと訴えていただきたい、そういう思いで、私、予算委員会に臨ませていただきます。よろしくお願いいたします。

 今、いろいろな還元策も打ち出されておりますけれども、やはり物価高を超える賃上げができるのかというのが非常に大きなポイントだと思っております。なかんずく、やはり雇用の七割を中小企業が占める、こういうことであります。中小企業の賃上げができるのかということであります。

 私の地元尼崎市は、いろいろな、昔は阪神工業地帯、製造業もあります、そして様々な業種が立地しておりますが、中小企業、特に下請の企業の方ですとかは、持続的に今年も来年も賃上げ、それは非常に厳しい、やはりこれが現場の声であるというふうに思います。

 やはり、中小企業の賃上げをしていくためには、いろいろな政策資源を導入して応援をしていかないといけない、こういうことで、公明党は、中小企業等応援トータルプラン、こういうものも策定をさせていただきました。ちょっとパネルにも示させていただきます。

 大企業と違いまして、中小企業、先ほど下請のような企業も多いということもお話をさせていただきましたけれども、賃上げをするといっても、人件費や労務費、これが元請のところから価格転嫁されないと、そういう原資がないとやはり賃上げができない、こういうお声が非常に強うございます。しっかり価格転嫁をしていくというところが非常に大事だと思います。

 あわせて、やはり生産性の向上を応援をしていく、あるいは資金繰りや、そして今回、政府も、賃上げ促進税制、中小企業を、賃上げをする企業を応援する、こういうことも非常に大事だというふうに思います。

 総理も、デフレの完全脱却に向けて、持続的な賃上げ、これが大事だということをおっしゃられております。しかし、中小企業の賃上げというものに向けては様々なハードルがあるということが現実であろうかと思います。ですから、デフレの脱却、そして、その中でも特に中小企業の賃上げ、これに向けて具体的にどういう政策を行われるのか、まず冒頭、総理に答弁いただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、委員が、国民が物価高騰で苦しんでいるという御指摘をされました。私も全くそのとおりだと思います。多くの国民の皆さんが、私も全国車座対話等をやる中で、苦しい状況について訴えておられます。

 この物価高に苦しんでいる皆さんがおられるからこそ、賃上げ、これが何よりも基本だということを再三強調させていただいています。様々な支援等ももちろん用意いたしますが、何といっても、賃上げ自体がしっかりと底上げされなければ、こうした物価高騰に対する基本的な対策は用意できない、こういったことだと思っています。

 そして、我が国は、三十年間、賃金が上がらない、物価も上がらない、そして投資も進まない、こうしたデフレの悪循環で苦しんできました。その中で、二年間、新しい資本主義など経済政策が進む中で、賃上げについては、三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、それ以外にも、三十年ぶりの株価ですとか、デフレギャップの解消ですとか、民間においては過去最高の百兆円の投資、賃上げの原資である投資も用意されている、こういった明るい兆しも出てきた。大事なのは、これをこれから持続できるかどうか、こういった正念場に今あるんだということだと思います。

 ですから、来年に向けて賃上げをしっかりと持続、継続、押し上げていくために、今回の経済対策においても、賃上げの原資となる企業の投資をしっかりと後押しする供給力の強化、こういったものを用意し、なおかつ、賃上げ、来年から再来年とどんどん伸ばしていかなければいけませんが、まだ物価高騰、厳しい中でありますので、来年は賃金が確実に物価高騰の上に押し上げられるように、更に言うと、可処分所得、国民の皆さんの使えるお金が物価高騰の水準を超えるように、賃上げとともに所得税減税、住民税減税、そして給付金、あるいはエネルギー支援等様々な政策を用意する、これが今回の経済対策の基本的な考え方であります。

 その中で、委員の方から、中小企業、本当に大丈夫かという御質問をいただきました。

 中小企業には格別に手厚い支援を用意しなければいけないということで、賃上げ税制についても、より活用しやすい形を用意するですとか、あるいは価格転嫁についても、特に労務費の転嫁が大事だということで、価格転嫁の価格交渉、これを支援しなければいけないということで指針を策定するとか、あるいは人手不足に苦しむ中小企業のために省力化投資を後押しするとか、様々なメニューを用意いたしました。

 是非、七割の雇用を担っていただいている中小企業をしっかりと支えることによって、先ほど申し上げた賃上げ、しっかりと盛り上げ、そして可処分所得を確保して、新しい経済のステージに来年は突入できるように協力をしていきたいと思っております。

中野(洋)委員 総理から具体的にお示しいただきました。

 少し各論にも入らせていただきたいと思うんですけれども、やはり賃上げに向けてということで、いろいろな関係者もいます、経済界にもしっかりと協力していただかないといけない。やはりここは総理がリーダーシップを持ってしっかりと引っ張っていただくということが大事だということで、改めてお願いを申し上げます。

 ちょっと少し各論に入りまして、先ほど総理がおっしゃった労務費の価格転嫁、これは現在政府の方でも指針を作っているということで、新藤大臣に少しお伺いをしたいんですけれども、午前中でも議論がありました。なかなか人件費や労務費というのは価格転嫁が進まない現状がある、だから政府が指針を作るんだ、こういうことであります。

 これは、業種によってもいろいろな状況があるというふうに思っております。例えば重層下請の運送業ですとか建設業ですとか、なかなか転嫁の進まない業種もあって、ほかの法律もしっかり対応してやっていくような業種もありますし、指針といっても、単に作っただけでは本当に実効性があるのかということで、非常に皆さん期待もされておられるので、やはり期待外れになってはいけないというふうに思うんです。

 ですから、しっかりと各業種、いろいろな各省庁とも連携をしていただいて、この指針で本当に賃上げができる、実効性のあるものを是非作っていただきたい、こういうことを考えております。

 具体的な中身について、新藤大臣に答弁いただきたいと思います。

新藤国務大臣 非常に重要な、しかも、やはり分析が必要だというふうに思っています。

 私どもも、この労務費増加分の価格転嫁、四割以上が実施できた、こういった業界は、業種はどうなっているか、こういうデータがございます。商工会議所が調査したものでございますけれども、その中では、実は労務費の増加分、労務費ですね、物件費ではなくて。ここの四割以上の価格転嫁を実施できた割合というのは、商工会議所の調査によれば、建設は四七・九%、一方で、小売は三〇%、サービス業は二四・四%。

 それぞれ業態によって、物件費、そして労務費の転嫁率というのは違ってきます。ですので、今回、公正取引委員会が実態調査をして、その上で、今月中に出したいというふうに思っておりますけれども、適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を公表しようというふうに考えているわけであります。

 その中で、やはり、基本的に、既にお出ししている骨子の範囲でいいますと、まず、親会社、発注者側は、転嫁に対する取組方針を経営トップまで上げた上で決定、運用してください、これをまず皆さんにお願いしたいと思います。そして二つ目に、子会社側との転嫁に関する定期的な協議の場、こういったものをつくろうじゃないか、これもお願いしたいと思います。三つ目に、子会社側が準備する賃上げのための価格交渉の資料、これは、公取の方で公表資料を作りますので、それぞれの業界単位の最低賃金の上昇率とか春闘の妥結額、そういったものを使った上で、是非、根拠に基づいた、そして、先の、これから景気をよくしていくんだ、そういう下で賃上げをしていこう、こういうことを両方が合意できるような形でお手伝いをしていきたい、このように思っているわけであります。

中野(洋)委員 大臣から、指針の在り方ということで、今御説明もございました。今月ということでありましたので、しっかりと我々も中身も見させていただいて、そして、この指針を、本当に現実の価格交渉の下でこれが使えるのかということがやはり一番大事であります。

 これは西村大臣にお伺いをしたいんですけれども、今でも中小企業庁が価格転嫁についてはいろいろなフォローアップもしております。今、労務費の価格転嫁で指針を作るということでありますので、じゃ、これが本当に、交渉をして労務費の転嫁に進むのか。これを後押しをしないと、単に作って、後はよろしくということであればやはりこれは進まないというふうに思いますので、是非、中小企業庁を所管する経済産業大臣が力強く後押しをしていただきたい、こういう思いであります。

 具体的に、もし指針ができればどういう取組をされるのか、是非、大臣にお伺いをしたいと思います。

西村国務大臣 この労務費の転嫁は非常に重要だと認識をしております。

 私ども、三月と九月を価格交渉促進月間ということで、大体四月と十月に調達価格は決定されますので、その前の月を交渉月間として促進を進めているところでありますが、その際にも調査を行って、その結果を関係省庁と連携をして取組を進めています。

 今回も内閣官房と公取でこうした指針を出されるということでありますので、当然、内閣官房、公取とも連携しながら、そして、私どもが中心となって、関係省庁にも、関係団体などに配付などをしていただけることも含めて取組を進め、広く周知をしていきたい。また、商工会議所、商工会の皆さんにも御協力をいただきたいと思いますし、広く周知をして、その上で、また改めて調査をして、その結果で足らないところがあれば更に改善をしていくということで、中小企業の労務費、人件費、賃金の転嫁を強力に後押しをしていきたいというふうに考えております。

中野(洋)委員 是非お願いをしたいと思うんです。

 中小企業の皆さん、やはり価格交渉というのは、非常に、こんなことを言っても大丈夫かなとか、断られるんじゃないかとかいろいろな中で、一番深刻なのは、そういうのを交渉すると、じゃ、もういいよ、おまえはいいから、違う会社とやるからということになってしまうと仕事も失いかねないという状況の中での価格交渉であります。

 ですから、指針ができても、指針はお題目としてはあるんだけれども、現実的にはこんなものは使えないねということであればやはり転嫁は進まないということでありますから、さっき後押しをということで大臣おっしゃいましたので、これは経済産業省、また政府を挙げて転嫁の後押しをしていくということを是非お願いをしたいと思います。

 もう一つ、価格転嫁はもちろんそうなんですけれども、中小企業の皆さんも、やはり効率化はしたい、自分の業務も効率化をしたい、生産性を上げたい、強い思いも持っておられます。やはり、DXとかAIとかいろいろありますけれども、ただ、現実的に、自分の企業の中でこういうDXの人材がいるかというと、ちょっとなかなかいない。じゃ、外のコンサルに頼むかというと、これもすごくお金がかかるということです。

 午前中も、大臣、中小企業にも使いやすい、例えばカタログみたいなものにしてそういう支援をするということも少し答弁しておられましたけれども、私は、是非これも、本当に使いやすい、また効果のあるものにしていただきたいと思うんですね。この業種はこういう取組をすればこのくらい下がるよということがはっきり分かって、皆さん、これが効果があるものだということであれば、やはり使っていかれるというふうに思います。

 ですから、実際にこれもカタログの中身がやはり大事だと思いますので、このつくり込みを是非しっかりお願いしたいと思うんですけれども、大臣、いかがですか。

西村国務大臣 まず、先ほどの労務費の価格転嫁のための指針でありますが、中小企業の方にも、もちろんこれを使って価格交渉するようにということで広く周知させたいと思いますが、親企業の方にも、これで交渉が来るからちゃんと受け入れてくれということも徹底して知らせていきたいというふうに思います。

 その上で、中小企業が賃上げをするには、やはりこの人手不足を乗り越えて収益を上げていくことが大事でありますので、私どもとして、御指摘のあった省力化投資と、それからエネルギー価格に対応するための省エネ投資と、更に成長するための事業再構築とかものづくり補助金とか、こういった幅広い投資を支援していきたいと考えております。

 そして、特に省力化投資。人手不足で非常に苦しんでいる企業が多い中で、御指摘のようなカタログ方式で、ハード、ソフト、ロボットだったり無人決済だったりセンサーだったり、ソフトウェアでオンラインで何かやる。様々な、大小ちりばめた、先ほども申し上げましたけれども、結婚式の引き出物で選ぶように、自分の会社に合った、自分の事業に合ったものはどれかと、そういったカタログをしっかりとつくり込んでいきたいと思いますし、その中から、手続も含めて容易に導入できるような仕組みで、この中小企業の人手不足を乗り越えていく努力をしっかりと応援していきたいと考えております。

中野(洋)委員 是非よろしくお願いをいたします。

 少し次の話題に変えまして、総合経済対策におきましては、総理も、還元策ということで、定額減税あるいは給付措置、こういったものを発表されております。

 ただ、こうしたいろいろな措置をやりますと、制度のはざまにいて支援が受けられない、こういう方がいつもいらっしゃる、ここが問題になると思っております。こうした方たちへも丁寧にしっかり対応していただきたいというのが私の問題意識であります。

 制度設計は、具体的には年内に、これから決めていくということだと聞いておりますので、今日は総理に、具体的に少し指摘をさせていただきたいと思います。

 今回、給付措置というのが一つあります。所得の低い世帯の皆様、これは迅速に対応していかないといけないということで、給付、グラフで緑に塗られたところですね、住民税非課税世帯。今年三万円、もう給付は既になされておりますが、追加で七万円の一世帯当たり給付ということで、一世帯当たり十万円の給付ということが総合経済対策に盛り込まれております。あわせて、低所得の子育て世帯、ここについてもしっかり支援を行っていくということになっております。

 この給付のはざまの部分が、よく言われますのが、住民税非課税世帯の少し上の所得の世帯。例えば、具体的に言うと、住民税均等割のみが課税されている世帯。これに加えて、ある基準日のところでは住民税非課税ではなかったんですけれども、新たに住民税の非課税世帯となったような、例えばこういう方。こうした方々についても、何らか対応が必要だというふうに考えます。

 住民税非課税世帯の方と同水準の支援ということでございますので、やはり一世帯当たり十万円の給付をこうしたはざまの世帯の方に対してもしっかりと行っていくべきである、このように考えますけれども、総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、お示しいただいた図でありますが、先ほど、まず賃上げが基本だと申し上げました。そして、あわせて、可処分所得を底上げするために、所得税、住民税の減税、定額減税、これも用意する、可処分所得を支えていく、こういったことを申し上げました。

 しかし、何といっても、今、物価高で苦しんでおられるのはやはり低所得者の方々であり、そういった方々にまず寄り添うところから始めなければならないということで、この図でいいますと緑の部分、住民税非課税世帯の方々に対する給付金、これはもう既に三万円はスタートしているわけですが、上乗せ七万円、計十万円、これをできるだけ早く、年内をめどに上乗せする。

 それを始めるわけですが、御指摘のように、その隣の、図でいうとオレンジの色になっているんでしょうか、その部分について、要は、ぎりぎり住民税非課税に入らない方々、こういった方々についてしっかり配慮しているんでしょうねという御質問だったと思いますが、当然、配慮をしております。

 物価高対策のために、重点支援地方交付金を上乗せすることによって対応を考え、住民税非課税世帯の方々と同水準を目安に支援をできるように、検討を年末に向けて進めてまいります。是非、そういった方々に対する支援もしっかり用意していく、こうした方針であります。

中野(洋)委員 もう一点なんですが、定額減税のところの、一定の所得以下の方が、減税の恩恵を十分に受けられない方が出てしまうということがあります。こうした方は給付も併せて行う必要があるというふうに考えております。

 他方で、これは実務的には、じゃ、例えば、本当に一円単位で減税と給付を組み合わせるのかといったことを考えたときに、かなり複雑で時間がかかる仕組みになるのではないか、こういう御懸念の声も寄せられていることがございます。

 制度としては、迅速で簡素な給付ができる仕組みに是非していくべきではないかというふうに思っております。例えば、何段階かの所得に応じて給付額を決めていくようなものも考えられると思います。

 他方で、余り簡素な形の決め方にすると、定額減税の方々よりも下回るようなことはあってはならないのではというふうにも思っておりまして、そうならないようにしっかり制度設計を、例えば、何段階かの所得に応じて給付が決まるのであれば、金額を切り上げてしまえばいいと思うんですけれども、迅速で簡素で、かつ定額減税の方の金額も下回らないといった、しっかりしたそういう制度にしていただきたいと思いますけれども、これについてはいかがでございますか。

新藤国務大臣 そこのところは、総理からの御指示がありまして、私の方が調整することになっております。

 御案内のように、簡素でかつスピーディーに、また、自治体の負担が過度にならないような、そういう工夫をしなきゃならないと思います。

 ですから、今御指摘の、減税の効果が四万円に及ばない、こういう方々については、その部分を、今度は重点支援地方交付金、これも含めた形で同等の支援をしたい、このように思っておりますし、そこの、どのようなところで切るかというのは、年末までかけて税制と一緒に検討することになっておりますが、そこは十二分に考えて、そして、大事なことは、可処分所得の向上のためのものでありますので、マイナスはあり得ないわけでありますけれども、ある程度の枠の中でやはり適切な交付をする、このように考えていきたい、このように思っています。

中野(洋)委員 新藤大臣、様々御答弁いただきましたが、私の質問は、簡素で迅速で、定額減税の方を下回らないような制度設計なのではないかということだったんですけれども、そうしたことを受け止めて検討していただけるということでよろしかったでしょうか。

新藤国務大臣 それをお受け止めした形でやると申し上げたつもりなのでございますが、そのとおりでございます。

中野(洋)委員 よろしくお願いいたします。

 最後に、子供、子育て政策についてお伺いをしたいというふうに思います。

 出生率も最新の数字だと過去最低ということで、大変な少子化の加速というものがあります。今回、こども未来戦略方針で様々な施策を具体化いたしました。妊娠、出産、乳幼児期、充実をしてきているというふうに思います。

 そして、やはりライフステージに応じた支援というのが大事だというふうに思います。結婚、妊娠、出産から、育って、大学、巣立つまでしっかり支援をするという中で大事な要素が、一つは児童手当でございます。

 総理にお伺いをしたいと思うんですけれども、今回、高校生の世代へ児童手当が拡充をするというのは、ライフステージに応じて支援をするという大きな決断であったと思います。多子加算の増額、これも非常に大事だと思います。

 ただ、先日の予算委員会でも我が党の高木陽介議員からも指摘をさせていただきましたけれども、第三子がどこまでかというカウントの方法が、逆にこれでちょっと問題となっているのではないかと思います。子供三人の場合、一番上の子が高校を卒業すると、第三子加算がなくなる。しかし、大学等に進学すると逆に負担は重くなる中で加算がなくなる、これはちょっと実態にそぐわないんじゃないか、こういう指摘をさせていただきました。

 総理からも、しっかり受け止めて制度設計をしていくという御答弁もそのときありましたので、もう少し踏み込んだ提案をさせていただきたいんですけれども、具体的にはどこまでかというのは当然いろいろな議論があるとは思うんですが、例えば、大学生というと、二十二歳の年度末までだというふうに思います。ただ、若い方だとやはり親御さんが経済的な負担をしている場合もあると思いますので、学生かどうかにかかわらず、親御さんが経済的な負担をしている二十二歳の年度末、ここまではしっかりカウントしていく。それも、余り厳密にやるのではなくて、これも簡素な確認手続でできるようにする。

 やはりこういうふうな制度に切り替えていかないと実態にそぐわないのではないかというふうに思いますけれども、総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、本年六月のこども未来戦略方針において、児童手当の第三子以降の支給額、これを月三万円に倍増し、かつ支給期間を高校生まで拡充するということにしたわけですが、御指摘の児童手当の第三子のカウント方法ですが、これについて、従来どおりの方法を維持した場合には、第三子が高校生として月三万円を支給されるケース、すなわち今般の児童手当の拡充の効果が発揮されるケースはかなり限定されることになる、こういった問題意識を私も持っておりました。

 そこで、今般の児童手当の拡充が、あくまでライフステージを通じた切れ目のない子育てに係る経済的支援の強化策の一環として、高等教育費の負担軽減などと併せて行うという趣旨を考えますときに、月三万円受給できる第三子の範囲、これをできるだけ広げる必要があるという問題意識で、今関係省庁に指示を出しているところであります。

 委員の方から今具体的な御提案をいただきました。この御提案も踏まえて、現行の第三子のカウント方法、これを見直して、月三万円受給できる第三子の範囲、広げていきたいと思います。

中野(洋)委員 総理の方から、やはり実態にそぐわない、これは広げるんだということで答弁もいただきました。しっかりと制度設計、いろいろな形があるとは思うんですけれども、しっかり広げていく、こういうこともいただきましたので、是非、制度設計をお願いをしたいというふうに思います。

 先ほど総理もおっしゃいました、子育て家庭にとって負担が大きいところというのは、ライフステージに応じてということで、やはり高等教育が負担が大きいというふうに思います。様々なデータもございますけれども、OECD諸国と違って、日本の場合は、高等教育私費負担、私の家計で負担をしているというところが三分の二だというデータもありまして、これはOECD諸国の倍以上の負担をしているということであります。子供二人、大学に同時に行きますと、調査によれば、可処分所得の半分近くが教育費負担になってしまう、一番ここがお金がかかるということであります。さっき総理の方から、多子加算、第三子のカウントの仕方を広げるということで、一つここが充実をしていくと思います。

 もう一つは、やはり高等教育負担の軽減そのものであります。こども未来戦略方針ではまだ具体的な内容がはっきりしていないということで、この具体化を急ぐべきであるというふうに思います。

 特に大学教育は、私は将来的にはやはり無償化を目指してしっかり取り組んでいくべきだと思います。党の方からも、二〇三〇年代までには無償化を目指すということを、本会議等でも申し上げさせていただいております。しっかりビジョンを示していくべきだと思います。

 今回、多子世帯支援というのがこども未来戦略方針でも書かれておりますので、まず文部科学大臣にお伺いをしたいんですけれども、今、大学等の授業料減免や給付型奨学金、これを、やはり多子世帯は例えば所得制限を撤廃をする、あるいは所得制限を大幅に引き上げていく、思い切った負担軽減が今回必要だというふうに思います。

 また、今の大学生は二人に一人が奨学金を借りている、こういう調査の結果もありまして、返還も大きな負担であります。私の地元の兵庫県では、県内企業に就職した学生への返還支援、企業と自治体とということでやっております。こうした大学の奨学金の返還支援も併せて充実をさせていくべきだと思いますけれども、盛山大臣、いかがですか。

盛山国務大臣 御答弁申し上げます。

 個人的には、私のところも多子世帯でございましたので、今やっと大学へ行っているのは一人になりましたけれども、負担の重さというのは私も実感したところでございます。

 御指摘の多子世帯の学生等を対象とした支援につきましては、本年六月のこども未来戦略方針において、授業料等減免を対象に、執行状況や財源等を踏まえつつ、対象年収の拡大も含め、更なる拡充を検討し、必要な措置を講ずることとしており、年末までに具体化を進めてまいります。

 多子世帯への無償化を、所得制限を設けることなく、又は大幅に引き上げて実施すべきとの御提案につきましても、しっかり受け止め、対象年収の拡大も含め、検討してまいります。

 また、貸与型奨学金の返還につきましては、返還する本人が無理なく行えることが重要と考えており、厳しい経済状況などで奨学金の返還が困難な方に対しては、返還の猶予や毎月の返還額を減額する減額返還制度などにより支援を行ってまいりました。令和六年度からこの減額返還制度の年収要件を緩和し、更なる負担軽減を図ることとしています。

 加えて、地方公共団体による奨学金の返還支援や企業等による奨学金の代理返還についても、引き続き全国的な普及に努めてまいります。

中野(洋)委員 しっかり、年内までにということで、是非この拡充はお願いをしたいと思います。

 最後に、加藤大臣、ちょっと時間も短いんですが、一問だけ。

 大綱に、多様な支援ニーズへの対応ということでいろいろなことが記載されておりまして、今回の総合経済対策でも、居場所づくりですとか、あるいはアウトリーチ、宅食支援、食事やおむつなどを配ったりですとか、地元からも非常にこういうことが大事だというふうに言われております事業が今回計上されております。

 でも、これは補正予算の事業でありますので、いつまで続けられるかということもあります。私は、これは非常に大事な事業ですから、子供の貧困、児童虐待、こうした支援は、是非、補正ではなくて、今後恒久化も含めて、最後、しっかり検討していただきたいと思いますけれども、大臣、いかがですか。

加藤国務大臣 お答え申し上げます。

 今月二日に閣議決定をされた経済対策においては、こども未来戦略方針に基づく子供、子育て支援をスピード感を持って実行することとされたところであります。

 これを踏まえて、今般の補正予算案においては、多様な支援ニーズへの対応として、居場所づくりの強化として、支援を必要としている子供の早期発見、早期対応につなげる、地域こどもの生活強化支援事業の創設、さらに、アウトリーチ事業の支援の強化として、虐待や貧困に苦しむ学生等への、寄附等による食料配付や相談支援の実施、子育ての困難を抱える家庭に対する宅食などの支援の充実を盛り込んでおります。

 多様な支援ニーズへの対応を強化するためには、補正予算案に計上しているこれらの事業が早期に実施されるとともに、より多くの地域で実施されることが重要と考えております。年末に策定されるこども未来戦略においては、これらの事業も含め、貧困、虐待防止、障害児、医療的ケア児に関する支援策の更なる充実が図られるよう、引き続き、予算編成過程において、施策の拡充を検討してまいります。

中野(洋)委員 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

小野寺委員長 これにて伊佐君、中野君の質疑は終了いたしました。

 次に、泉健太君。

泉委員 立憲民主党の泉健太でございます。

 ここからが野党の質問ということで、政府をしっかり、厳しく、正しくまたチェックをしていきたいと思います。

 まず総理、我々、パレスチナの情勢、特にガザ地区の情勢は大変心配をしておりますし、何とか無辜の市民の命がこれ以上侵されることがないようにというふうに思っております。

 今、直近のニュースだと、停戦の合意が近づいているというふうにも報道がなされています。是非、改めて、このガザに対する支援、そして、今後のパレスチナの復興ということに日本はリーダーシップを取っていただきたいということを、まず冒頭、申し上げたいと思います。

 総理、日米首脳会談、そして日中首脳会談と行われてきたわけですが、アメリカのバイデン大統領とは、そういった点も話し合われたと思います。日本も、独自の二国家解決というアプローチでやってきたところがありますから、是非、引き続きその努力をしていただかなきゃいけない。

 ただ、パレスチナへの支援というのは、本当に苦しんでいる住民にまで支援がなかなか届かないとも言われていますので、是非、そういったことも気をつけて、日本からの支援のお金が適正に使われるようにということも努力をしていただきたいと思います。

 質問したいのは、日中首脳会談でのことについてなんです。

 まず一つは、いわゆる水産物の輸出の禁輸状況、これなんですが、協議と対話を通じて解決法を見出すということであるのだけれども、これは時間軸がよく分からない。果たして、中国側と対話をする、何か技術的な、モニタリングなのか、どんなことをするのかよく分かりませんけれども、これは、来年、再来年、いつまでそういった状況を続けるのか、総理自身の時間軸を聞かせてもらいたいと思います。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の日中首脳会談においては、御指摘のALPS処理水をめぐる問題を始め、尖閣列島、あるいは邦人の拘束問題を始め、我が国の懸念事項、これを具体的にしっかり指摘した上で、意見交換を行いました。その上で大局的な方向性を確認したということで、会議は意義があるものであったと思いますが、その上で、御指摘のALPS処理水については、それぞれの立場をしっかり述べた上で、今後に向けて対話、協議を続けていくことを確認し、そして、これから専門家レベルでのやり取りが始まると考えています。

 具体的な方法については詰めることになっていますが、まず、こうした意思疎通を図ることによって、我が国としては、中国の食料品の禁輸措置を解除する、こうした結果につなげていきたいと思います。

 御質問は時間軸ということでありましたが、まずこの第一歩がなければその先は見えてこないということで、今、確定的に時間軸を申し上げることはできませんが、一つ解決に向けて一歩を踏み出したと考えております。

泉委員 今のお話を伺うと、外交というのは両国が主張することを主張してということでいうと、まだ残念ながら平行線なのかなと。日本、そして世界、中国以外と言うと分かりやすいかもしれませんが、日本の海産物が安全であるということはもう国際的に私は合意されているようなものだと思っております。そういった意味では、しかしながら、中国との会談を経ても、光が見えるといってもようやくテーブルに着くということであって、残念ながら、まだ当面、この禁輸が続くというような状況であるということが分かりました。

 もう一つは、EEZ、日本の排他的経済水域におけるブイ、中国側によるブイの設置ですね。

 これは、高市大臣も発信をされていますから。当然といえば当然だと思うんです。要は、日本側のEEZに中国がブイを設置した、これが七月ですね。七月に設置をして、日本政府としてはそれを九月に抗議をして、当然、七月の設置の時点で発見はしているわけですから、九月に抗議をしている。しかし、今はもう十一月ですね。結局、撤去要請をしても、もう撤去をする意向、方向性はないんじゃないですか。日本の側が撤去をしなきゃいけないんじゃないですか。

 これは、ちょうど官邸の閣僚懇の議事録なんかを見させていただいて、直近のものが載っていないので、もしかしたら、直近、例えば高市大臣が閣僚懇でそういう発言をしているのかどうなのか分かりませんが、果たして本気で物事を動かそうとしているのか。もう二か月たっていますよ、抗議してから。

 総理、改めて、このブイ、日本側で撤去をするということはもう決めないんですか。

岸田内閣総理大臣 一年ぶりの日中首脳会談において、御指摘のブイの撤去についても私の方から具体的に指摘をし、そして、結果として、この問題についても各レベルで協議、対話を続けていく、このことを確認いたしました。

 具体的な方法について確定はしておりませんが、この問題解決に向けても様々なレベルで意思疎通を図っていく、これを両国首脳で確認した次第であります。

泉委員 総理、ブイというのは単なる置物じゃないことは分かっていますよね。ブイから様々な通信が、データが日々送られているんじゃないですか。

 例えば、アメリカの場合は、あれは領土の上ということですが、風船が飛びましたよね。その風船のようなものがずっとEEZの内に置かれている状態なわけですよね。そこで海洋の様々なデータが送られ続けているんじゃないですか。それを、話合いをずっと続けて、その間、データが送り続けられる、そういうことを放置をしておくということですか。

岸田内閣総理大臣 こうした具体的な案件を解決するためにこそ対話が始められなければならないという考えに基づいて、首脳会談を行いました。是非、各レベルでの対話、協議、これを行うことによって、御指摘の具体的な課題等について、解決に向けて双方で努力することが重要だと考えています。外交の場を通じてこうした方針を確認できた、これは一つ大きな取組であったと考えています。

泉委員 どこが大きな取組なのか、全く、高市大臣、分かりましたか、どこが大きな取組だったか。分からないですよね、多分。

 これは、恐らく自民党の皆さんだって反対しない話だと思うんです。何も、中国のブイを日本側が撤去して、破壊して中国に返すなんという話ではないと思いますから。恐らく、撤去して、何らかの形で中国側に引き取ってもらうということを想定するんだと思いますよ。

 我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くという考えの下、毅然かつ冷静に対処していくと。これのどこが毅然なんですか。もう抗議してから二か月たっているわけでしょう。抗議してから二か月たって、撤去要請もして二か月たっていて、中国側で、じゃ、撤去する動きがもう見られるということですか、総理。

岸田内閣総理大臣 日中の関係を考えますときに、特に中国の今の体制を考えますときに、中国のトップと直接議論することの重みを改めて感じています。一年ぶりに中国のトップと直接、具体的な案件について協議、対話を行う、これは問題解決に向けての一歩であると考えています。それを今回の首脳会談において一つ実現した、こういったことであります。是非、結果につなげるべく、各レベルで協議を続けていきたいと思っています。

泉委員 改めてですが、標識が単に置かれているわけではないんですね。ブイといっても立派なものですよ。そこからデータが日々送られている、七月からそういった状況が続いているということを放置をすればするほど、恐らく、どういったものに使うのかというのは様々なことが想定されるわけですが、日本のEEZ内において中国がブイを設置をし、それが日々データを送っている状況にあって、残念ながら、今、その撤去ということに日本政府が動いていないということが分かりました。大変残念であります。

 さて、この間、適材適所という話が、不適材不適所というふうにも言われているわけですが、改めて、副大臣、政務官人事、ここまで様々、疑惑ですとか、もう既に辞任になっているケースもあるわけです。

 総理、適材適所に努力をしているということではなく、適材適所とはやはり言えなかった、それが国民が思っている率直な思いだと思いますよ。現時点では、残念ながら適材適所とは言えなかった、そういうことを率直に言っていただくべきだと思いますが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 人事というものは、当然のことながら、常に適材適所を考えなければいけないというものでありますが、御指摘のように、政治は結果責任であります。結果として政務三役の辞任が続いたこと、このことは任命権者として重く受け止めなければならないと責任を感じております。

泉委員 そういったことからも、残念ながら適材適所ではなかった。今後、さらに、現職の方々に対してどういう調査をしたのか分かりませんが、こういうことが起きてしまうということであれば、それこそ本当に任命権者の大きな責任だと思います。

 さて、よく各派閥均衡だなんて言われますけれども、派閥というものが、よく派閥の事務総長会議なんかが自民党本部で開かれたりするということで、自民党においては大きい存在でありますが、これは、総理、率直にちょっと聞きたいんです。恐らく、国民は、この映像を見ていますから、総理の表情で、何が本当かというのを見抜くと思いますよ。

 改めて聞きたいと思いますが、今、各派閥で、いわゆる収入の不記載、これが合計四千万円を超えるのじゃないかということで、各派閥のそれなりの立場の人物が任意聴取を受けているということで、事実を確認し、適切に対応すると。例えば、総理自身の派閥である、総理が会長である宏池会は二百万円台の不記載が今言われているということであります。

 改めて、総理、本当のことを語っていただきたいわけですが、宏池会の事務局長からもう既に報告は受けていますか。そして、総理は、例えば、改善はもう指示をされましたか。お答えください。

岸田内閣総理大臣 派閥、政策集団の収支報告についての報道があることを承知しております。

 他の政策集団のことはともかくとして、私自身が一つの政策集団の長でありますので、宏池会という政策集団の長としての立場で申し上げるならば、派閥として御指摘を受けて収支報告書を訂正した、こうした対応をしたという報告は受けております。

泉委員 ちなみに、その報告を受けるまで、こうした不記載の事実があったことは知っていましたか。

岸田内閣総理大臣 訂正の報告を受けるまでは、私自身はそういった内容については承知しておりません。

泉委員 これは、薗浦議員という自民党の前議員だった人物が、不記載で結局議員辞職をしているわけですね。

 総理の団体において、総理が派閥の長である団体においてこうした不記載があった。総理、この責任を、御自身、どう考えますか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の修正ですが、これは、政治資金パーティーの対価の支払い者について、支払い額が二十万円を超えた場合には、この支払い者、具体的な名称を報告しなければならない、こういった法律になっているわけですが、この支払い者の一部の記載漏れが判明したということだと報告を受けております。

 パーティー券を複数回購入いただき、支払い額の合計が二十万円を超えた場合、政治団体等の一部について、報告しなければいけない、この支払い者の名称を記載しなければいけないところ、その報告が漏れていた、そういったことで修正をした、こういった報告を受けております。

 今後、こうしたことはあってはならないと思っております。適切に今後対応するよう、努めてまいります。

泉委員 それで許されるかどうかは、今後、また我が党の同僚議員が詳しく問いたいと思います。

 さて、経済対策であります。

 まず、総理、経済対策と考えたときに、総理の考える主要な項目は所得減税ということになるわけですが、普通、減税と言えば国民は喜ぶわけですよね。そうじゃない、まあ、そうじゃないのかもしれませんが、国民は普通、減税と言えば喜びますよ。しかし、残念ながら、減税と言ってここまで支持率が下がるというのは歴代なかなかないんじゃないですかね。

 これは、国民はやはりすぐに感じたと思うんですよね。ああ、総理の減税、このタイミングの減税というのは、残念だけれども選挙対策だ、そういうふうに見たんじゃないですか、国民は。それは、総理がどうこうじゃなく、国民がそう見たということですよ。

 これはなぜかといえば、補欠選挙の直前、あの十月の二十日に、まず無理やり国会を開こうとしましたよね。そして、総理の所信表明演説だけをやろうとした。恐らく、自分のやりたいことをそこで発言をわあっとやって勢いをつけようと思った。しかし、それが認められないとなると、今度は記者団に向けて、この十月二十日に所得税減税を言及した。

 総理、これも、やはり国民は、そういう出し方の減税には共感はしないということですよ。

 その意味では、投票日の前に減税の発信をしようという、ちょっと私もやり過ぎた、そういう色気がやはり出てしまったんだということだと認めませんか、総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、国会の日程は国会でお決めいただくことだと思いますが、今回の臨時国会開会前から、今最大の課題は経済対策であるということを申し続けてきました。そういった、国会を前にして経済対策について論ずるということは決しておかしなことではないと思っております。

 是非、経済対策、物価高で苦しむ中で、国民生活をどう支え、そして、何よりも賃上げの流れを来年につなげられるかどうか、日本の経済は正念場を迎えているという観点から経済対策を用意した次第です。是非、御理解いただけるよう努力を続けていきたいと思っています。

泉委員 これは、今年の食品の値上げ品目数なんですね。この一月からスタートして、二月、三月、四月、そして六月、七月、そして九月、十月と、これはかなりの値上げの品目数の数ですね。合計三万二千百八十九品目、これは前年に比べて一二四・九%ですから、前年以上の値上げというような波が来ているわけです。

 私たち立憲民主党は、この状況を考えたら、まさに、通常国会は閉じているけれども、その後、七月、八、九、十と、もう一千品目以上、毎月毎月値段が上がっているわけですから、早く経済対策を打つべきだ、早くこの物価高対策をやるべきだと言ってきたけれども、総理は残念ながらこの数か月間やってこなかったですよね。

 我々の言ってきたスケジュールでいえば、やはり今年の給付は、総理は今年始めると言っているんですよ、そうじゃない、今年中に給付を終えるタイミングをつくれたはずなんですよ。これがやはり遅れなんです、間違いなく遅れなんですよ、これは。それは遅いんですよ。遅くないというんですか、総理。遅れているんですよ、遅くないというんですか、総理、お答えください。

岸田内閣総理大臣 物価高騰対策、今回初めて行うなどというものではありません。昨年来、再三にわたって経済対策は用意してきました。そして、低所得者層に対する給付など、そして電力、ガス、燃料油に対する激変緩和措置など様々な措置を繰り返し繰り返し行ってまいりました。その中で、今回更に経済対策として上乗せする。そして、何よりも大事なことは、こうした物価高騰に対しての対応策、何よりもの対策、これは賃上げであるということで、賃上げを来年に向けて押し上げるためのこの対策を用意した、こういったことであります。

 物価対策については従来から繰り返し行ってきました。なおかつ賃上げの流れを確実なものにする、これが今回の経済対策であります。

泉委員 やはり、総理のその御主張と国民の感覚がずっとずれ続けているということです。

 それは総理の主張ですね。しかし、残念ながら国民はそう思っていないですよ。だって、夏ぐらいにガソリンだってやはり一時期値上がって大変だったじゃないですか、切れ目ができたわけですよ。またその後に補助を出すという話になったけれども、タイミングが常に遅いということを私は言っているんですよ。

 それで、総理、不思議なのは、なぜ幾つかの政策がある中で所得税減税という選択肢を総理は選んだのか、これが解せないんですよ、やはり。増税イメージを払拭するためぐらいしか、本当に恐らくみんな思いついていないですよ、残念ながら。だって総理、即効性でいえば、やはり給付の方が早いじゃないですか。これは認めますよね、総理。即効性でいえば給付の方が早いですよね。それは認めざるを得ないですよ。間違いない。

 そこのことについて答えますか、即効性について。

岸田内閣総理大臣 給付に即効性がある、それは御指摘のとおりです。だからこそ、昨年から様々な給付も行ってきたわけですし、そして、夏からも住民税非課税世帯に対して三万円の給付は続けておりますし、それに更に上乗せをして、十万円の給付を先行して行う、こうした対策を用意しています。

 そして、賃上げをしっかりと下支えするための所得税、住民税の非課税措置を来年に向けて用意する、失礼いたしました、定額減税も用意して、可処分所得をしっかり支えをする、その政策にしっかりつなげていくべく経済対策を用意した次第であります。

泉委員 先ほどから言う非課税世帯への給付というのも、対象はやはり狭いわけですよね。特にワーキングプア層、これはもう常に言われてきていましたけれども、その方々も、この物価高ですから、このグラフを見ていただいて分かるように、相当な物価高の中で、残念ながら給付対象にならないということで。総理がおっしゃるように、今後はなんですよ。だから総理、そこでいつも総理は、いやいや、私はやっていますよと言うんだけれども、時間軸が違うんですって。遅いんですよ。それは遅いんです。そこの、やはり、いやいやというところが国民とずれているということなんです。

 本来であれば、早く対策を打てば今年中に給付はできたし、そして、立憲民主党の経済対策の中で、先にちょっと紹介しますけれども、我が党は三万円の給付というのを、今回は全世帯のうちの六割で給付をするという考え方なんですね。ですから、ワーキングプア層もしっかり入ってくるわけですよ。

 そういう幅広い層が物価高で苦しんでいて、これは我が党の様々な調査や試算でも、例えばこれは帝国データバンクの調査ですけれども、今年の家計の負担額というのは、前年度の月平均に比べて、同じ消費をしようと思ったら、最大で四千円を超えるアップなわけですよね。ですから、四、五千円、生活費が毎月上がっているイメージ。ですから、立憲民主党としては、その掛ける六か月ということで三万円という給付を幅広い世帯に行うということで、我々のターゲットはちゃんと持っているわけですが、政府の考え方というのはそのターゲットも非常に狭いということです。

 そして、総理、同じ減税でも、これは様々な政策を選択すると考えたときに、例えば経済効果を考えるのであれば、恐らく消費減税の方が効果は早く、間違いなく出るんじゃないですか。

 これは第一生命の経済研究所の永浜さんという首席エコノミストが言っていますけれども、内閣府のマクロ計量モデルを基にして所得減税と消費減税の例えば五兆円減税効果を比較すると、消費減税の方が一年目に二倍以上も効果が大きくなる。それはまあそうですよね。消費をして減税になるわけですから、たんす預金みたいな形にはならないわけですよね。

 総理、それでもやはり、この所得減税というのはたんす預金のおそれ大いにありというふうに言われますが、こういった消費減税ではなく所得減税を選んだということも私は理由を説明していただきたいと思うし、そして、更に言えば、この永浜さんが言っているのは、先行き不安を解消したいということであれば、減税よりも、そもそも将来の増税について撤回すべきだ、そういうことを言っているわけなんですよね。

 ですから、これは、即効性でいっても、そして経済効果の早期の発現という意味でいっても、そして先行き不安の解消という意味でも、所得減税の方がすばらしいと思いますか、総理。

岸田内閣総理大臣 まず、消費税の減税については、これはもう再三申し上げておりますが、少子高齢化が進む中にあって、社会保障費の増大が続く中にあって、社会保障の貴重な財源である消費税については減税は考えない、これは再三申し上げているところであります。そして、来年、再来年につなげていくためにも、賃上げ、これをしっかり盛り上げていかなければならない、成長と分配の好循環を実現してデフレから脱却しなければいけない、これを申し上げています。

 ただ、来年の段階では賃上げ道半ばでありますので、それこそ、物価高との関係において、十分に可処分所得を確保しなければ消費が落ち込んでしまうことになりかねない。よって、自由に使えるお金、これをしっかり下支えしていく、そのためにも、来年のタイミングで消費税の定額減税、これが重要だということを用意しました。いや、所得税の定額減税を用意しました。(発言する者あり)

小野寺委員長 答弁中ですから、御静粛に。

岸田内閣総理大臣 それで、先ほど申し上げました、将来の増税について撤回することが大事ではないかという御指摘がありました。これについては、防衛費を支える税制措置については、そもそも所得税については今の家庭に影響が出ない、こういった内容にしております。そして、法人税についても、九四%は対象外としております。

 こうした、経済に対する最大限の配慮と、そして、内容だけではなくしてタイミングについても考えている、これが防衛力強化を支える税制のありようであります。

 こういった点から考えても、まずは来年の賃上げ、これを確かなものにするために、所得税、住民税の定額減税、これで可処分所得を押し上げることが重要だ、このように判断をいたしました。

泉委員 総理、一点聞きたいんですが、政府内では増税という言葉は使えないルールになっているんですか。税制措置と言わなきゃいけないんですか。防衛増税と、総理、言えるんですか。まず、ちょっとお答えください。

岸田内閣総理大臣 政府では税制措置という言葉をずっと使っておりましたが、増税という御指摘、増税の中身について今申し上げました。経済への最大限の配慮が行われているからして、防衛増税ということについても、これは防衛力強化のために重要であるということを申し上げております。

泉委員 改めてですけれども、総理が先ほどからデフレを脱却する云々というふうに言っているんですが、ちょっと、では、こちら、岸田総理版の所得減税の特徴というところで、目的のところに大きくデフレ脱却と。これは、今回の経済対策の表題がデフレ完全脱却ですから。

 ただ、さっきのグラフももう一回見ていただくと、これだけ物価が上がり続けているわけですよ。これだけ物価が上がり続けていて、国民は今どう思っているか。デフレだと思っていますかね、総理、国民はそもそも。これはデフレじゃないんじゃないですか。だって、これまで、もうずっと物価が上がり続けて、消費者物価指数は二十五か月連続上昇ですよ、二十五か月。しかも、実質賃金は、九月マイナス二・四%。前年を下回ったのは十八か月連続ですよね。その状態で、国民はデフレだなんて思っていませんよ。

 なのに、これをデフレ脱却と言い続けるから、大型の補正予算も組まなきゃいけないし、そして、場合によっては本当に更なる物価高を招くと、総理、聞いていませんか。いろいろな経済学者だとかエコノミストの人たちから、景気を刺激し過ぎたらどうなるか、更に物価が上がって、また低所得者の生活が大変という、違うサイクルになっていくということを聞いていませんか、総理。聞いているでしょう。

 そういうことを考えたら、ちょっとこのデフレ脱却というものにこだわり過ぎるが余りに、むしろ、経済の判断、また、経済対策の在り方というのを間違えているんじゃないかと思うんですね。

 総理、もう一回、今、春闘や賃上げの話も出てきましたから、改めて聞きたいんですが、来年、賃上げは物価上昇を上回ると考えていますか。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、賃上げ、来年は物価高騰を超える水準まで伸ばしていきたいと思っておりますが、しかし、まだ、来年、再来年と賃上げを盛り上げていく過程にあります。来年の段階では十分に国民の皆さんが自由に使えるお金が確保できない、可処分所得が十分でないということであるならば、消費を冷え込ませてしまうことにもなりかねない。そうしますと、成長の好循環、これが止まってしまいかねない。よって、可処分所得を支えるために減税も考えていかなければならない、このように考え、経済対策、用意をいたしました。

泉委員 ここも立憲民主党と岸田政権では考え方がやはり大分違うということですね。

 今、大分、消費というのは回復してきていますよ。自律的な経済の再生の途上にある。だからこそ、これだけ物価高というか値上げ品目も多くなってきているわけなんです。そこからまた賃上げに結びついていって、ただ、確かに、企業物価に比べると、まだ消費者物価は低いですから、これからも恐らく値上げは続いていくと思いますよ。でも、そういう中で賃上げも行われていって、本来は自律的なやはり経済の循環というのは行われていくべきだと思うんですね。

 ただ、総理、今足りない、今生活費が少ないということに対して、我々はやはりすぐ給付をするべきだと。これは、ある意味、補填というか、後から対策を打っていくということが一つ自律的な経済のために私は必要だと思うんですけれども、総理の場合、来年の六月の、先の話をしちゃっているわけですよね。

 これは、よく考えてください、来年の春闘ですよ。総理は、一生懸命、春闘のために風を吹かそうとしている、勢いをつけようとしていますが、来年六月に大型の減税が、この後、総理の力によって決まってしまうわけですよね。大型の減税が決まると、企業、特に中小企業は、どうこの春闘を闘いますかね、経営者側は。

 自分たちの会社はまだまだ経営が厳しい、しかし、そういう中で賃上げをしなきゃいけないと思うかもしれないけれども、一方では、総理が大型減税をやるということで、もう早々と発表してしまっていますから、うちの会社は今回は厳しいからちょっと賃上げは見送って、政府から支援があるからいいや、政府から大型減税があるじゃないか、そういうふうに、ある意味、むしろ賃上げのマインド、機運を低めてしまうんじゃないですか。総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 先般の政労使の意見交換の場でも申し上げたわけでありますが、今の日本経済の明るい兆し、賃上げや投資における明るい兆し、これを持続させるかどうか、今、私たちは正念場に立っているという認識にあります。こうした賃上げを、構造的に、持続的に賃上げを続けていくためにも、日本経済の稼ぐ力をしっかりと維持しなければいけない、こういったことで、今回の経済対策の大きな柱としています。民間そして政府、官民連携することで成長と分配の好循環を持続させようということを呼びかけています。

 是非こうした、来年に向けてこの流れを維持することが中小企業を含めた民間の方々にも大きなプラスになるんだということを御理解いただき、官民共に協力して、政府もあらゆる政策手段を用意いたします、民間の皆さん方にも協力し、そのことが結果としてそれぞれの企業の更なる成長につながっていく。こういったことで、御協力をいただくようお願いを続けていきたいと思っています。

泉委員 この岸田版の所得減税というところでいうと、一番下、歳入面への影響というところで、結局、減税、還元だといいながら、やはり国債の発行が増えるじゃないかという話ですよね。

 財務大臣は、税収の増えた分、総理は還元すると言っているんだけれども、政策経費や国債の償還などで既に使っている、減税をするなら国債の発行をしなければならない、これは財務大臣の答弁ですよね。

 結局、総理は還元と言うけれども、還元じゃなくて、いわゆるスーパーでいうと還元セールというのがありますけれども、そうじゃなくて、これは出血セールじゃないですか、総理。これは出血ですよ、間違いなく。しかも、総理、これは総理の懐じゃないんですよ。国民の懐から総理の人気取りのために出血しているセールなんですよ。これがおかしいという話なんですね。

小野寺委員長 答弁を求めていますが。

泉委員 答弁は求めていません、まだ。

 改めてですけれども、今ここまで私はお話をして、ああ、大分やはり総理の認識、考え方というのは我々と違うなと思うのは、一つは、そもそもデフレ脱却という目的に立っているので、大型のものを組まなきゃいけなくなっている。一方では、総理のこれまでの政策というのは、基本的には円安放置ですよね。円安が放置されているから、これだけ物価も上がっていく、輸入物価なんかが上がっているわけですから、国民はそれであえいでいるわけです。特に、食料品の輸入に関しては、かなり食料品の値上げが大きいのも、この円安の影響によるものだと思います。

 そして、このデフレ脱却ということがあるために、大型の予算を組むことによって、総理は消費を支えたいと言うけれども、本当に過度な景気の刺激になれば、やはり物価は上がりますって。そこを我々は本当に懸念をしているわけです。

 そういうところがやはり大きく違うわけですが、改めて、総理、還元といったって、お金は既に使ってしまっています。そして、結局のところ、増収分といったって、総理、うちのスーパーは借金経営なんですというそもそもの考え方を持ってください、総理が経営者だとすればですよ。この国は借金経営をしているんじゃないですか。そのときに毎回毎回還元セールをしていたら、これはやっていけないんじゃないですか、お店としては。

岸田内閣総理大臣 まず、還元ということについては、鈴木財務大臣は単年度における国家の財政の構造について申し上げたと理解をしています。

 そして、単年度ではなくして国全体の財政ということを考えますと、国民の皆さんからいただいた所得税、住民税を減税という形でお返しする、こういったことだと思いますし、国民の皆さんから見れば、まさに、自分の納めた税金を減税という形で返していただく、これは還元ということに当たるんだと我々は思っています。

 そして、財政の単年度主義ということを考えた場合に、当然のことながら、毎年度毎年度、財政について考えなければいけない。令和六年度の財政として財源を考えていく、こうしたことになるんだと思います。

 ただ、こうした日本の財政全体を考えたならば、税金としていただいたものを国民の皆さんにお返しする、こうした考え方、還元という言葉で表現させていただいた、こうしたことであります。

泉委員 これは、野党側から、立憲民主党の側からは、総理をいさめるという意味で諫言しなきゃいけないなと思いますね、本当に。ちょっとおかしいですよ。

 じゃ、総理、そのおっしゃる還元というのは、何か財務省や政府の一本筋の通った考え方なんですか。じゃ、これからも還元し続けるんですか。そんなこと言ったら、増収した分、毎回毎回還元になるじゃないですか。なぜ今回やらなきゃいけないんですか。

岸田内閣総理大臣 還元が目的ではありません。何のために還元するのか、これを先ほど来申し上げております。デフレからの脱却、賃上げ、これを確実なものにしなければならないということを申し上げています。

 来年に向けて、賃上げの原資となる企業の稼ぐ力、これをしっかりと経済対策で支えていきましょう、しかしながら、賃上げは、来年、再来年と道半ばでありますから、来年腰折れさせてはならないということで、来年は可処分所得、国民の皆さんがしっかり使えるお金、これを減税でしっかり下支えすることによって消費を落ち込ませないようにする、経済の好循環を維持する、これが大事だということを申し上げています。このために所得税そして住民税の定額減税、これを用意した、こういったことであります。還元は、そのためのものであります。

泉委員 今の総理のお話を伺っていると、もう既に、来年の春闘では物価上昇に追いつかないと宣言しているようなものですよね。全然、やる気というか、本気で春闘で物価上昇を上回ろうと考えているとは思えない。だって、それをもう補う手段を考えちゃっているわけですから。

 だって、そうですよ、来年のまさに六月に、物価高に対して春闘では追いつかないから、だからそれを支えるために所得税減税をしたいともう言っちゃっているわけですよ。そんな弱気なことじゃ、賃上げをもっとやらなきゃいけないんだと私は思いますよ。そういう弱気な姿勢は本当に考えられないなと思います。

 改めてですけれども、先ほどから繰り返しているように、これは、本当に、一方では厳しい局面で、刺激をし過ぎると本当に物価が上がってしまうという、だからこそ、限定をして、本当に社会構造を変えるためのところに予算を絞っていかなきゃいけないと思うんですね。

 ですからこそ、我々は、特に中小企業を応援するという意味で、これは立憲民主党の案ですね、インボイスについては廃止をするということを言ってきたわけですね。

 まず、その一番上、経済対策の規模ですよ。我々は、政府のように、ただ規模ありきとか、どんどんどんどん刺激をすればいいというスタンスに立たない。それは物価を殊更に上げないというためですよ。ちゃんと規律を持って考えるということで、必要なところにはお金を届けながら、ばらまきはせず、そして物価を過度に上げさせないという考え方だから、我々はこういう考えに立っている。

 そして、インボイスを廃止して中小企業を応援をする。そして、インボイスなんか、これは実質増税と言われていますから、そういった意味で応援をする。

 そして、ガソリン負担についてはトリガーの減税をしっかりとやるということ。

 そしてやはり、賃上げと言っているわけですから、これを見てください、政府、岸田政権の今言おうとしている介護等処遇改善、介護とそして障害者施設で働く方々の職員の支援ですが、政府はこの状況においても月六千円と言っていますよね。我々はやはり月最低一万は上げなきゃいけないという、これはもう以前から言い続けているわけです。自分のお給料の方が、総理、上がっちゃっているじゃないですか、それは返納するかもしれないけれども。自分の給料の額面が上がる以上にやはり上げなきゃいけないのは、現場で働く方々の、国民のお給料じゃないですか。そういうことを我々は言っている。

 そして、これは給食費無償化の、下から二行目を見てください。今、自治体の判断なんです。政府は交付金をいろいろ出しているというふうに言うんですけれども、今、自治体の中で、給食費の無償化をやっている自治体というのは、まだ全国百にも満たないですよ。でも、やっている自治体があるんです。やっている自治体があって、一番困るのは、その隣の自治体ですよ。向こうはやっているのにうちはやれていない、そういうふうに困る。みんな、医療費の無償化とか、こういう給食費の無償化というのは、自治体ごとにされるというのが各自治体の首長さんたちにとっても一番困ることなんですよ。本当にみんな、やりたいんです。これは国全体でやったって四千億ですよ、総理。四千億ですよ。十分やれるじゃないですか。この給食費無償化、やろうじゃないですか。これこそ、十七兆円台前半の中で、その予算、出せるでしょう。

 だって、総理、今、河野大臣なんかがいろいろと仕分云々でやられている基金ですけれども、この補正予算で措置するのは計三十一基金、四兆三千九十一億円ですよ。基金の仕分をやっていると思ったら、基金の既存の数が二十七なのに、更に四つ増えるんですよ、基金が。宇宙だとか漫画、アニメ、デジタル端末の更新、ワクチンの臨床試験、どうしてそんなものをどんどん増やすのか。

 ちなみに、ドイツだと、そういった、例えば余ったコロナ対策予算を別用途に振り向けて基金化をしようとしたところ、ドイツの場合はこれが基本法違反だということで、他の用途への変更は駄目というような財政のルールまでちゃんとあるというんですが、日本は残念ながらそういうルールがないものですから、予備費についても、四兆から二兆に減らしたといっても、結局、用途を変えて、今回は賃上げもなぜか予備費に含めたおかしな呼び名の、原油価格、物価高騰対策、賃上げ促進環境整備対応予備費、二兆円。

 総理、私、事務方に聞いたんですよ。賃上げ促進環境整備対応予備費。これは、そもそも今全力で賃上げ対応をやらなきゃいけなくて、各施策は中小企業の賃上げ対策とか、総理、盛り込んでいるわけですよね。それをやらなきゃいけないのに、なぜ今から賃上げ予備費二兆円必要なんですか。これは何を想定しているか、答えてみてください。

岸田内閣総理大臣 まず、政府の経済対策と立憲民主党の経済対策の比較から話が始まりましたが、これはまず、今の経済の状況に対する認識の違いだと我々は思っています。今の経済状況、供給面においては、長年のコストカット経済、低成長の結果、潜在成長率、今現在ゼロ%台半ば、これは低い水準にまだとどまっています。これをしっかり下支えしなければならない。そして、なおかつ、賃金上昇が物価に追いついていないから、可処分所得を支えなければいけない。この二つを用意した、それがこの規模の違いになっていると思っています。

 そして、予備費について御質問がありました。コロナ禍を乗り越えて、平時への移行を踏まえてコロナ対策を対象から外したということでありますし、そして、減額、これも二・五兆円の減額を行う、こういったことであります。そして、賃上げと物価高騰に特化した形で予備費、これを用意した次第であります。

 賃上げについては、今、これから来年に向けて、中小企業の支援等、様々なメニューを用意しましたが、それに対して、更に充実すること、さらには、地方に対して、重点支援地方交付金、これを増額いたしましたが、こうした対応も含めて、来年に向けて賃上げを確実なものにするための予備費ということであります。

 この予備費、これは間違いなく、将来を見通せないからこそ予備費を用意するということでありますし、今申し上げた賃上げに対する支援、これは予備費としてしっかり支える、これは重要な取組であると認識をしております。(発言する者あり)

小野寺委員長 泉健太君、もう一度質問をしてください。

泉委員 委員長、答えていると思いますか。一切具体的なことは言っていないですよ。この予備費で想定されることは何ですかと、賃上げの予備費で想定されること、一つも答えていない。

小野寺委員長 今、予備費についての説明をされていますので、再度お願いいたします。

岸田内閣総理大臣 予備費、具体的なものを示せということですが、具体的なものを示せるのであれば、それは具体的な項目として挙げるのが当然のことであります。

 予備費というのは、こうした不透明な状況の中にあっても機動性を持って対応できるために用意するのが予備費でありますから、それを具体的に今から何が必要なのか挙げろというのは矛盾した質問であると思います。

 予備費、賃上げに向けても、物価高騰に向けても、しっかりと用意することは重要であると思っております。

泉委員 今、逢坂筆頭が言いましたが、だったら単なる予備費で、何も想定できないんでしょう、だって、総理。中身も思いつかないんですから、だったら単なる予備費じゃないですか。

 わざわざ賃上げ促進環境整備と銘を打っておいて、中身を聞いたら何一つ、それを実際やるかどうか分からないよ、やるかどうか分からないけれども、あれがあります、これがあります、こういうオプションを考えています、だから予備費が必要かもしれないんですだったら分かる。だけれども、中身が一つもない、こういういいかげんな今回の補正予算の組み方なんですよ。

 さっき言ったように、繰り返しますが、基金は膨らんでいる、そして、予備費も、もうコロナのときのような状況じゃないのに、平時に戻っていると多くの方々が思っているのに、いつまでも予備費をこうして積み続ける。

 そして、これは我々は堂々と総理にぶつけたいと思いますが、やはり考え方が違います。これだけ物価がどんどんどんどん、もう二年にわたって二%を超えて上がり続けているときに、いまだデフレだと言って、デフレ脱却だと言っている。もう十分、今、物価高で国民は苦しんでいるというのが我々立憲民主党の実感ですよ。しかし、総理はまだそうじゃないんだとおっしゃっている。ここの大きな違い。

 だからこそ、我々は、その物価高をこれ以上招かない、どうやってその中で狙い撃ちして経済対策をするかというところで、七・六兆円であり、そして三万円給付であり、先ほど言った給食費の無償化などやっておりますけれども、総理は十七兆円台前半という、多くのエコノミストもこれはやり過ぎじゃないかと言う規模になっているし、そして、基金も膨らんでいるし、そして、残念ながら、給付は今年中にはほぼ行われないという状況になっているということで、我々としては、極めて残念な経済対策になっているということを言わざるを得ません。

 是非、今後、我々の仲間たちがまたこうした中身について、詳細、質問させていただきます。総理には誠実な答弁をお願いをして、私の質問を終わります。

小野寺委員長 この際、大西健介君から関連質疑の申出があります。泉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大西健介君。

大西(健)委員 立憲民主党の大西健介です。

 私からも補正について幾つか質問をまずさせていただきたいと思いますが、今、泉代表からあった賃上げ促進環境整備対応の予備費でありますけれども、先ほどまさに総理が言われたとおりなんですが、そもそも予備費というのは、年度の途中における予期せぬ事態の発生により不足が生じたり、新たな経費が必要となる事態に迅速に対応するためのものです。

 でも、賃上げというのは、今もう必要なことなんですよ。これから起こることじゃないんです。今二兆円余計に、何に使うのか分からないお金を積んでおくんだったら、今賃上げのために使ってくださいよ。普通の予備費五千億円はそのまま残っているんです。

 総理、この補正予算は物価高に苦しむ国民を助けるためのものですよね。今回、この補正予算には経済対策関係費として約十三・一兆円が計上されていますけれども、そのうち、物価高から国民生活を守るという予算は二・七兆円です。全体の二割にすぎません。

 先ほどもお話があったように、総理は、コロナのような予測困難な状態から平時に戻った場合には、予備費の計上は通常に戻していく、これは財金委員会の答弁ですけれども、そう言われています。通常に戻すということは、昔は、コロナ前はずっと予備費というのは五千億円だったんです。これが急に膨張している。

 じゃ、戻すということであれば、今言ったように、何に使うのかよく分からない、まだその使い道も分かっていないものが二兆円もあるんだったら、賃上げのために今使えばいいし、そしてもっと言えば、その半分はもう既にこの補正の財源として使っているわけですから、これは全部財源に使ってしまったらいいんじゃないですか。

 先ほども泉代表から言いましたけれども、我々立憲民主党の経済対策であれば、真に物価高に必要な、効果的と思われるものに絞ってやっているわけです。そうすると、我々は七・六兆円ですよ、先ほどいろいろなメニューを示させていただきましたけれども。それであれば、もう新たに八兆八千七百五十億円もの新規国債発行をして借金を新たに積み増す必要はないんじゃないですか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、経済対策の最大の主眼は、賃上げ、デフレからの脱却だと申し上げてきております。

 その中で、予備費について御質問いただきました。

 これは、物価高騰、そして原油価格、そして賃上げ、こうした目的についてこの予備費を用意したということであります。これら合わせて従来の半分の金額に減額した上で用意する、これは大変重要な予備費であると認識をしています。

 こうした物価高騰、原油価格、そして賃上げ、この三つの目的のための予備費として、賃上げ自体も道半ばである現状において、こういった予備費を用意すること、これは決しておかしな対応ではないと考えております。

大西(健)委員 今議論しているのは令和五年度補正ですよね。令和五年度というのは来年の三月末までですよね。それまでの間に、先ほど泉代表が言ったように、賃上げ環境整備が必要になる事態というのは一体どういう事態なんですか。これが説明できていないじゃないですか。

 だから、賃上げ促進で予備費が支出されるというのは一体どういう具体的な場面なのか、これが総理は全然説明できないのに二兆円も積んでいる。賃上げは今必要なんですよ。だったら、今二兆円使って賃上げすればいいじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 この予備費は、原油価格、物価高騰、そして賃上げ、この三つの目的のための予備費であります。この三つの課題について、今の年度末に向けて様々な事態に対応する、機動的に対応する、これは政府として大切な対応の仕方であると考えております。

大西(健)委員 例えばですよ、二兆円もあったら、さっき示したように、介護職、我々は一万円と言っていますけれども、政府・与党は六千円と言っている、この差を埋めることだってできるじゃないですか、これを使ったら。賃上げに使えるじゃないですか。ここにお金があるんですから、二兆円も。それをやればいいんじゃないですか。

 もう一つ、今、原油価格高騰という話がありましたけれども、物価高の中で最も生活を直撃しているのは原油高です。このガソリン高ですけれども、まず確認なんですけれども、このガソリン高のうち、価格上昇分のうち、円安、為替の影響というのはどれぐらいあるというふうに、総理、考えられていますか。

西村国務大臣 ガソリン価格、末端価格、これは市況によって変化もありますので、なかなか原油価格の変化だけで定量的にお示しすることは難しいんですけれども、この制度を開始したときは原油が一バレル百二十ドルぐらいでした。そして、一ドル百十五円。それが現在は七十ドルから八十ドルの間ぐらいで、為替が百四十九円、百五十円という状況でありますので、その分、ガソリン価格は全体として落ち着いてきています。もちろん、円安の分だけ、その分はコストがかかっていますけれども、全体としては落ち着いてきています。

 したがって、かつては四十円強支援したものを、今は三十円前後負担軽減をしているという状況であります。

大西(健)委員 私が聞いているのは為替の影響なんです。それを聞くと、政府は、定量的に示せないと答えるんですけれども、例えば、日本エネルギー経済研究所の柳沢研究主幹の試算によると、昨年の一月から九月までの価格上昇分のうち、円安による輸入コストの増は全体の八割を占めていると言っています。やはりこれは、政府も激変緩和措置を延長するんだったら、私は為替の影響分というのをしっかり試算すべきだと思います。

 そして、補助金交付による価格抑制の効果ですけれども、これについては、会計検査院の検査結果というのをお配りをしているんですけれども、こちらはお手元に配付していますので見ていただきたいんですけれども、まず、実際の抑制額は補助金の交付額を百一億円下回っているということが分かりました。そして、七百のサービスステーションで事業開始前後の小売価格と卸売価格の価格差を分析したところ、四百八十六については価格差が拡大、百二については変化なしという結果になっています。

 これで果たして本当に十分な価格抑制効果があると言えるんだろうかと。少なくとも、私は、円安の為替の影響だとか価格抑制効果というのをちゃんと分析して、十分検証した上で激変緩和策というのを延長すべきだというふうに思います。

 なぜ、業界大手に補助をするというやり方にここまでこだわるのか。石油連盟が毎年五千万円、自民党の国民政治協会に献金をしているからなんでしょうか。これなら、私は、トリガー条項を発動して、やはりガソリン税の当分の間税率を引き下げる方が透明性も高いし、そして、本則の税率に上乗せしていますから、ですから、この上乗せ分を下げれば、これはまさに還元と言えるんじゃないですか。こっちの方がいいと思いますけれども、総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の激変緩和措置ですが、委員の方から、何か、業界に対する支援に使われているのではないかというような発言がありましたが、そういったことは全くありません。

 会計検査院の指摘、これをよく読んでいただきたいと思いますが、これは期ずれによって生じるものです。すなわち、一定の期間を区切って支援額と抑制額を出すということになりますと、支援を行った後、小売価格への反映、一定のタイムラグが生じます。一定の期間で区切ると、支援額とそして抑制額、これはずれがあるわけですが、これ全体をならした場合には、間違いなく支援額は原油価格抑制に反映されているということを申し上げたいと思います。

 それがために、様々なモニタリング調査を行って、間違いなく支援が抑制につながっていること、これは政府としても絶えず確認をしているところであります。

 この支援額が業界の支援につながるということはありません。

大西(健)委員 その支援額が業界の支援につながっているか分かりませんが、国民政治協会に毎年石油連盟が五千万円を寄附しているのは、これは事実です。

 今、モニタリング調査をちゃんとやっているんだという話がありましたけれども、そのモニタリング調査が無駄じゃないかということを会計検査院が指摘しています。

 もう一枚の資料を見ていただきたいんですけれども、全国二万か所以上のサービスステーションに毎週電話や現地視察等で調査を行うモニタリング業務、六十二億円かけてやっています。ただ、これが非公表、この結果は非公表なんですよ。その上、これは小売価格の抑制効果の分析には用いられていません。そして、資源エネルギー庁が支給単価を決定する際には、本庁で行っている石油製品小売市況調査を使用している。そして、この二つの調査結果にはほとんど相違がなくて、単に全国の小売価格の推移を把握するのであればエネ庁の調査結果を活用すれば十分対応可能というふうに検査院がここに書いています。

 ガソリン高に苦しむ国民がこれを見たときに、こんな、六十二億円も無駄遣い、二重の調査をして無駄遣いするんだったらガソリン下げてくれよと言うんじゃないですか。総理、いかがですか。

西村国務大臣 私ども、いわゆる大手元売を中心に、卸の事業者が卸価格を下げたことを確認して、その分、事後精算で払っていますので、その企業への補助になっていることはありません。下げたことに対して行っている。そして、それが確実に、着実に小売、末端で下がっていることを確認するために、確実なものとするために全数調査を行ってきました。

 そして、今回、会計検査院から、ガソリンスタンドは三万弱ありますので、その全数調査を行っているんですが、二千の市況調査について、これが使えるんじゃないかという御指摘をいただきましたので、私ども、その御指摘を受け止めて、もっと効率的にできることはないかということは考えていきたいと思いますが、まず、大手、卸に何か行っているわけではないということと、末端価格、先ほど百億の差があると言いましたけれども、一日当たりで五十億円の支援を行っていますので、二日分の在庫のずれぐらいがあるのかなというふうに認識しておりますが、いずれにしても、この点もよく分析したいと思っています。

大西(健)委員 このモニタリング調査ですけれども、これは、経産省の天下り先にもなっている全国石油協会が受けて、更に広告代理店に委託されて、更に再委託して調査をやっているんです。これは、スタンドも同じような電話が二回もかかってきて迷惑だと言っていますので、やはり私は無駄だと思います。しっかり見直していただきたいと思います。

 それでは、次のテーマに移りたいと思いますけれども、先ほど泉代表の質問の中でも、副大臣、政務官の不適材不適所人事という話がありましたけれども、これは、やはり派閥の人事要望をそのまま受け入れて順送りの人事をやってきた結果ではないかというふうに私は思います。

 自民党の派閥というのは、ポストを確保することと、もう一つは、政治資金を集めて配る、こういう機能を持っています。そこで、自民党の主要五派閥というのはそれぞれに政治資金パーティーを行っていて、多くの業界団体がパーティー券を購入しています。

 もう一度、何が問題なのかというのを改めてテレビを御覧の皆さんに説明をしたいと思うんですけれども、政治資金規正法は、同一の者から政治資金パーティーの対価の支払いの合計額が二十万円を超える場合には、氏名、住所、金額、年月日を収支報告書に記載するように義務づけています。違反した場合にはもちろん罰則もありますし、そして、故意が認定できない場合にも、重過失であれば罪になります。

 ところが、二〇一八年から二一年の各派閥の収支報告書を確認したところ、実際には二十万円を超えるパーティー券を購入してもらっているにもかかわらず不記載になっているものが多数かつ多額に上っていることが分かりました。そして、政治資金規正法違反で東京地検に告発状が提出されています。このことは、新聞各紙を始め、先週は週刊新潮も大きく報じました。

 具体的な例で説明したいと思います。

 ちょっとこのパネルを見ていただきたいんですけれども、これは、二〇二〇年の日本酪農政治連盟の収支報告書が上です。ここには、岸田総理が会長を務められている宏池会のパーティー券を三十二万円購入しましたということがちゃんと書かれています。これは二十万円を超えていますから、当然宏池会の収支報告書の方にも載っていないとおかしいんですけれども、それが載っていなかったということなんですね。これは今は書いてありますけれども、下の赤囲いのところを見てもらえば分かりますけれども、十月二十八日付で訂正して、書き加えているんですね。こういうものがいっぱいあるんです。

 ちなみにですけれども、宏池会は実は五派閥の中では一番少ないんですけれども、総額二百十二万円ということですけれども、今回、宏池会会長の岸田総理は告発状の中で被告発人になっています。

 宏池会は、二〇二二年の十月二十八日と十一月七日に、これ以外の不記載部分、五団体あるんですけれども、二百十二万円分、これを全部訂正しているんですけれども、なぜ訂正されたんでしょうか。また、なぜ訂正する前にこのパーティー収入を記載していなかったんでしょうか。これについては会計責任者に確認をした上で御答弁をいただくように事前に通告しておりますので、宏池会会長の総理から御答弁いただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のように、政治資金パーティーの対価の支払い者について一部の記載漏れが判明したことから、所要の訂正を行ったという報告を受けております。

 具体的には、政治パーティーのパーティー券、これは各議員が協力をして、それぞれ手分けをし、団体としましては複数回購入いただき、その結果として宏池会に集まったお金、支払い額の合計が二十万円を超えていた、こういったことについて、政治団体の一部について報告漏れ、すなわち支払い者の名称の記載漏れ、これが生じたという報告を受けております。

大西(健)委員 今の答弁で確認ですけれども、訂正したのは、取材があったから訂正したんですか。

岸田内閣総理大臣 これについては、市民団体等から御指摘があったというようなことは聞いております。

 いずれにせよ、指摘を受けた上でこうした訂正を行った、このように報告を受けております。

大西(健)委員 実際、この十月二十八日という日付は、ちょうど報道が出る直前、取材があったんですよ。それで修正をしているということですから、逆に言うと、取材がなかったら多分修正しなかったと思うんですね。

 もう一つ、今、報道によると、特捜部が各派閥の担当者から任意で事情を聞いているというふうに言われていますけれども、宏池会の会長として、今、報告を受けたという話ですけれども、宏池会の担当者も特捜部から事情聴取されているということでよろしいですか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 今御指摘のような個別の案件、捜査に関わるような案件について何か申し上げることは当然控えなければならないと思っています。

 派閥として修正報告をしたということについて、私は報告を受けております。

大西(健)委員 私が聞いているのは、まさに内容じゃないんです。だから別に捜査に影響も与えないし。

 任意で事情を聞かれているということはありますか、ありませんか。それだけ答えてください、事実。

岸田内閣総理大臣 これは、当然のことながら、私の立場からそうした具体的な案件における動きについて申し上げることは控えなければならないと思っております。

 一般論として申し上げるならば、御指摘のような捜査当局の動きについて申し上げることは控えます。

大西(健)委員 まさに総理は、先ほども言いましたように、告発状で、被告発人、告発を受けているんです。そして、呼ばれているか呼ばれていないかということは別に捜査に影響を及ぼさないし、こういうふうに、捜査が始まっていると、行われているような話になると、みんな、捜査が行われているからと逃げるんですけれども。

 私の手元に、二〇一一年の十月二十五日、ちょうど自民党が下野した当時の「自由民主」という自民党の機関紙、「岸田文雄国対委員長に聞く」という紙があるんですけれども、インタビューがあるんですけれども、ここにこう書いてありますよ。「司法への影響を気にするあまり、立法府が国民に対する説明責任を放棄したならば、三権分立に影響を与えるのではないでしょうか。立法府は、国民の疑念に応え、政治の信頼回復に努力していかなければなりません。」と言っているんです。

 ですから、司法に影響を与えるから国会で説明できないなんというのは、違うことを国対委員長当時言っているじゃないですか。いかがですか。(発言する者あり)

小野寺委員長 答弁中です。御静粛にお願いします。

岸田内閣総理大臣 説明責任を果たすことは大事であります。しかし、具体的な個別の案件について政府の立場、総理の立場から申し上げることは控えると申し上げております。

大西(健)委員 もう一つは、やはり先ほど来出ているのは、総理は派閥の会長なんですよ。

 それで、その点についても聞きたいんですけれども、首相在任中は派閥のトップを離脱するというこれまでの自民党の慣例を破って派閥にい続けることについて、菅前首相から、今年の一月の月刊誌で、派閥政治を引きずっているとのメッセージになって、国民の見る目は厳しくなると苦言が呈されていましたけれども、にもかかわらず、宏池会の会長をやり続けるという決断をしたのは総理御自身じゃないですか。現職総理が、まさに菅前総理が心配したとおりのことになっているわけです。

 もう一つ言うと、この委員室に今座っておられますけれども、一月の予算委員会で自民党の牧原委員が、〇九年、自民党が下野したときには党の三役全員が派閥離脱をした、そういうことも言って、そのときは派閥について答弁しているんですよ、総理。していますよ。

 私は、現職総理が派閥のトップとしてパーティーを開いて金集めしていること自体がそもそもおかしいと思います。この際、派閥の会長を辞められるべきじゃないですか。

岸田内閣総理大臣 現職の総理で派閥の会長を続けて行った例は、過去にも幾つもあります。これは、要は、大切なことは、派閥の会長であることが内閣総理大臣としての立場に影響を与えるということがあってはならないということだと思っています。

 内閣総理大臣としての職責、しっかりと果たしていきたいと考えております。

大西(健)委員 まさに派閥の会長だから答弁せざるを得なくなっているわけじゃないですか、この予算委員会で。まさに菅前総理が懸念されたことが事実になっているということです。

 もう一度改めて聞きますけれども、今回、先ほど言われたみたいに、何かうっかり記載漏れだったみたいな御説明をされていましたけれども、確かに、私、不注意による記載漏れというのはあると思います。しかし、この不記載は五つの派閥全てにあって、多数の団体、多額に上っています。

 告発の対象になっている二〇一八年から二一年の不記載の額を派閥ごとに一覧にしてみました。これは告発の対象になっているものです。告発状から、私、拾いました。

 そして、これを上から見ていきますと、清和政策研究会、旧安倍派、千九百四十六万円、志帥会、二階派、九百七十四万円、平成研究会、茂木派、六百二十万円、志公会、麻生派、四百十万円、宏池政策研究会、岸田派、二百十二万円、総額が四千百六十二万円です。これほど多額の不記載を単純なミスというふうに見ることは、私は難しいのではないかというふうに思います。

 告発人の上脇神戸学院大学教授は、意図的に不記載にしており、自民党内にその手口が共有されている可能性がある、売上総額を過少にして裏金をつくっているのではないかとの疑惑を指摘しています。これは上脇さんがそう指摘している。

 自民党の主要派閥全てでこのように多額の不記載があることを、自民党総裁として、岸田総理、どう思われますか。

岸田内閣総理大臣 それぞれの政策集団において、それぞれの収支報告、これは責任を持って提出しなければなりません。

 宏池会としては、先ほど申し上げたように、訂正を行った上で、今後こうしたことが起こらないようにしっかり対応してまいりたいと考えております。

大西(健)委員 政治資金というのは、そもそも適切にきちんと対応しなければならないものなんです。それができていないから、今問題になっているんですね。

 そして、先ほどもちょっと泉代表の質疑のときも出てきましたけれども、パーティー収入を過少記載していたことで、薗浦健太郎前衆議院議員は議員辞職して、政治資金規正法違反で有罪になっています。

 昨年十一月に、薗浦氏が四千万円分の収入を収支報告に記載していなかったことが発覚して、このときも、もう既に任意の聴取を東京地検がやっていたんですけれども、そのときに総理は、参議院予算委員会でこう答弁しているんですね。説明責任を果たしてもらわなければならないと強く思っている、まずは実態把握をしなければならず、党に対し指示を出したい。これは岸田総理御自身の言葉です。

 自民党総裁として、本件に関しても、実態把握をして、自民党として説明責任を果たすように指示をしていただけませんか。

岸田内閣総理大臣 確認でありますが、これは政治資金収支報告書で公開されておりますが、訂正を行っても、対価の支払い総額、これは全く変わっておりません。総額は変わっておりませんが、その中で、二十万円を超えた支払いについて、支払い者の名称を記載しなければならないところ、それが漏れていたということであります。裏金云々という御指摘は当たらないと思っております。(発言する者あり)

小野寺委員長 御静粛に。

岸田内閣総理大臣 そして、宏池会については、今申し上げたとおりであります。

 各政策集団がそれぞれ説明責任を果たすべきであると考えます。

大西(健)委員 まず、宏池会については、会長ですから、ちゃんとその説明責任について言っていただかなきゃいけないんですけれども。

 具体的に、説明責任を果たすとよく言われるんですけれども、じゃ、どういうふうにするんですか。例えば、各派閥が会計帳簿を公表して、派閥の事務総長が記者会見をして説明する、こういうことが私は説明責任だと思いますけれども、そういうことを宏池会でもやっていただけるんですか。

岸田内閣総理大臣 法律に従って適切に報告を行う。その内容につきまして、透明性についても、法律に従って適切に対応する。これに尽きると考えております。

大西(健)委員 確かに、政治資金規正法というのは、自主的な訂正に関しては期限や回数というのを定めていないんです。

 しかし、先ほど来言っているように、形式上の不備とか軽微なミスだったら私は修正というのはあり得ると思いますけれども、これだけ多数、多額の不記載、四千万円を超える不記載、しかも各派閥みんな同様にやっている。こういうことがある以上は、こんなの前代未聞ですよ。

 これは、訂正すれば済む話では私はないと思いますけれども、総理は、訂正したら済む話だということですか。

岸田内閣総理大臣 法律に従って、政治資金の収支、明らかにしていかなければなりません。法律に従って適切に報告することが求められていると認識をしています。それに基づいて報告をいたします。

大西(健)委員 要は、法律は訂正すればいいということになっているので、じゃ、それで済むという話なんですかね。私はそうじゃないと思いますよ。例えば、民間事業者が四千万円を超える収入を申告しなかったら、許されるわけないですよ。薗浦氏は、さっきも言いましたように、同じ、パーティーの収入の不記載で議員辞職して、有罪が確定しているんです。

 そもそも、こういう制度が何であるか。これは、政治資金の透明性を確保することで、国民の不断の監視と批判の下に置いて、政治活動の公明と公正を確保する、そういう趣旨でこの政治資金規正法というのがあるんです。

 ところが、その透明性が確保されていない、うそが書かれているわけです。こんなことがまかり通ったら、今回だって、さっき言ったように、指摘を受けなかったら訂正しなかったんですから。だから、分からないんですよ。

 だから、こんなことが広くこれだけ行われているのに、これに対して説明責任というのはどうやって果たすんですかと私は申し上げているわけです。これは、ちゃんと帳簿を公表するなり、派閥の例えば事務総長なりがちゃんと説明をすべきだと思います。

 その点で、三番目に不記載が多い平成研ですけれども、新藤経済再生担当大臣は、現在でも、茂木派の、平成研究会の事務総長をお務めです。

 多数かつ多額の不記載があったことについて、新藤大臣は、会計責任者、事務担当者から相談、報告等を受けているかどうか、また、先ほどと同じですけれども、事務担当者が東京地検特捜部に任意で事情を聞かれているというのは事実かどうか、お答えいただきたいと思います。

新藤国務大臣 今、私は政府にいる立場でございます。個々の政治団体に関するお尋ねについて、政府にある立場としてお答えすることは差し控える、このように考えています。

 そして、政治団体のそれぞれの活動については、それぞれの責任において適切な対応がなされている、このように思っております。

大西(健)委員 新藤大臣は、第二次安倍内閣の総務大臣をやった人ですよ。総務大臣は政治資金規正法の所管大臣です。

 今も平成研の事務総長をやられているわけですから、是非、じゃ、今大臣としてここで答えられないんだったら、事務総長として、事務担当者に不記載の経緯を確認して、本委員会に報告していただけますか。

新藤国務大臣 私は確かに平成研究会において事務総長をやっておりますが、これまで、私たちの政策研究会で閣僚になった人たち、政府の中にいる人たちは、それぞれの場面においてございます。でも、私も今、事務総長ではありますが、閣僚でありますから、当然、活動は制限されているわけであります。そして、それぞれ、私がいない分は、その他の仲間の皆さんが分担してやっていただいている、その中で適切な対応がなされている、このように思っておりますし、私としては、今、この内容につきましては、個々の政治団体の活動についてのコメントというのは差し控える、このように申し上げているわけであります。

大西(健)委員 今のような、現事務総長がああいう答弁をしていて、どうやって総理は、各団体において適切に説明責任を果たされるべきだと思いますと答弁されましたけれども、果たしていないじゃないですか。現事務総長が果たす気がないんですけれども、これを見て、先ほどの総理の答弁は、じゃ、全く、ただ答弁しただけで、実際に説明責任は果たされないということになるんじゃないですか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 新藤大臣は、閣僚の立場にあるからして今の答弁を行ったと思っております。

 各政策集団において、政治資金について透明性を持って報告をし、説明をする、こうした努力を続けることは大事だと思っております。

大西(健)委員 ですから、先ほど言ったように、その説明というのは、じゃ、例えば、記者会見を開いて、記者の質問にもちゃんと答えて、説明をするということですか。一方的にただ訂正しましたと言っただけで、それでその説明責任なるものが果たされたということになるんですか。

岸田内閣総理大臣 私は、派閥の会長として先ほど答弁をさせていただきました。各政策集団において、それぞれ説明責任を果たすべきだと思います。

大西(健)委員 全く、本当に説明責任を果たすつもりがないということが私は明らかになったんじゃないかというふうに思います。

 ちなみに、一番不記載の額が多いのは、これは清和研でありますけれども、この清和研についても、この期間、事務総長を務めていたのは松野官房長官とその後任の西村経産大臣ですけれども、それぞれにお伺いしますけれども、これだけ多額かつ多数の不記載があるということは、これは意図的なものであって、会計責任者が独断でやるということは私は考えられないと思うんですよ。政治家にちゃんと相談してやっている。特に事務総長なる人はその相談を受ける人だと思っていますけれども、このことを知っていましたか。また、当時の事務総長として責任を感じられませんか。それぞれから答弁をいただきたい。

松野国務大臣 大西先生にお答えをさせていただきます。

 個々の政治団体に関するお尋ねであります。政府にある立場としてお答えすることは差し控えさせていただきます。

 その上で、一般論として申し上げれば、政治資金収支報告書の訂正があった場合には、まずは各政治団体がそれぞれの責任においてその原因を点検し、必要な対応を行うべきと認識しており、それぞれの政治団体の責任において必要な対応をするものと承知をしております。

西村国務大臣 今、官房長官から答弁のあったとおりですけれども、それぞれの政治団体、法令に従って適正に政治資金の報告をすべきであるというふうに思います。誤りがあった場合には、それは訂正がなされるという、それぞれの団体の責任においてなされるべきことだというふうに認識をしております。

大西(健)委員 ですから、先ほど来言っているように、形式的な不備とか軽微なミスを修正するということは、私はあり得ると思います。

 ただ、これだけたくさん、これだけ多額の、そして全ての派閥に共通して行われているということについて、何で訂正したのか、その訂正する前に、ちゃんと書いていなかったということについて説明をしてもらわないと分からないんじゃないですか、その説明をしてくださいと言っているけれども、今の答弁を聞く限り、全く誰もするつもりがない。総理は、各派閥、団体において説明責任を果たされるべきだと思いますと言うけれども、みんな、聞いてみても、会長を務めている宏池会も含めて、その説明責任を果たす気がないというのが私は今の答弁だというふうに思います。

 これは、仮に政治資金規正法の抜け道となるような手口が政権与党自民党の主要派閥の間で広く共有されていたとすれば、これはもう大問題だと思います。政治資金規正法の趣旨を没却するものだと思います。

 また、江東区の区長選挙では、違法な有料ネット広告をめぐって法務副大臣を辞任した柿沢議員が、今、買収容疑で特捜部の捜査を受けています。

 それで、政治と金の問題での本委員会での私は集中審議を求めたいと思います。そして、各派閥の事務担当者から、是非この件についてこの委員会に報告を求めていただきたいと思いますけれども、委員長、よろしくお取り計らいいただきたいと思います。

小野寺委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

大西(健)委員 本当に、先ほど来言っていたように、二〇〇九年に下野したときに、自民党はもう派閥政治というのはやめようと言ったはずなんですよ。ところが、この派閥の弊害がまた出てしまっているんですね。

 もう一つ、私は、派閥の弊害が出てしまっている、それがまさにこの政治とお金、この派閥の収支報告にも出ているし、そして、先ほどの副大臣、政務官の相次ぐ辞任、これも派閥の人事リストに沿って順送りの人事をした結果がそういう結果になっているということを、総理、宏池会の会長としてよく反省をしていただきたい、このことを申し上げて、私の質問を終わります。

小野寺委員長 この際、金子恵美さんから関連質疑の申出があります。泉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。金子恵美さん。

金子(恵)委員 立憲民主党の金子恵美でございます。よろしくお願いいたします。

 今日は、主に農林水産関係予算について質問させていただきたいというふうに思います。

 今、政治と金の問題がこの場で議論をされたところで、その後でありますけれども、このような重要な予算委員会の場でこれをしなくてはいけない状態をつくり上げている今の政権に私は憤りを感じます。

 しかし、今、農業者の方々も大変苦しんでいる状況、そしてまた、物価高の中にあって消費者の方々も苦しんでいる、国民みんなが本当に厳しい状況の中にある中、農林水産関係、どのような形で前進をさせることができるのかということを議論させていただきたいと思います。

 補正予算案には、農林水産関係費八千百八十二億円が盛り込まれているところでございます。食料安全保障の強化に向けた構造転換対策や、物価高騰等の影響緩和対策などに用いるとされています。

 本来、重要な施策に必要な金額は、当初予算においてしっかりと確保すべきことだというふうに思います。しかしながら、特に農林水産関係予算においては、毎年、当初予算の金額よりも補正予算の金額の方が多い事業が幾つもあり、そのような予算編成が当然のことのようになってしまっています。このような状況は、従来から批判の声があるように、場当たり的な農林水産政策を象徴しているのではないかというふうに思います。

 ニーズはあるかもしれませんけれども、畑地化促進事業などは、令和四年度の補正予算で二百五十億円。でも、令和五年度の当初予算は、これは畑地化促進助成となっておりますが、二十二億円。そして今回、令和五年度の補正予算案では七百五十億円という形になっています。これは例の一つでありますけれども、本当に重要であれば、何とか当初予算から入れるべきではなかったかなと。

 それ以外にも、スマート農業の総合推進対策とか、みどりの食料システム戦略推進総合対策。総理も所信表明の中で、グリーン化、スマート化、とても重要だということを、そういう趣旨の御発言をされているわけですけれども、こういうものも全て、当初予算は本当に少ない。全て補正予算で上げようとしているということでもありますし、また、現場でとてもニーズのあります産地生産基盤パワーアップ事業、また畜産クラスター事業も、これはそもそも補正予算のみにいつも計上されているんですよ。

 これはおかしいなと思うのですけれども、総理、所信の中で、大切なものは大切とおっしゃっていただいたのだというふうに思いますけれども、当初予算からしっかり獲得する、確保するということが、私は本来、予算としては必要だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 農林水産予算ですが、当初予算と補正予算について御指摘がありました。

 当初予算については、当然のことながら、農林水産行政全般にわたって必要な額、これを用意しなければならないと考えています。そして、補正予算においては、緊急に必要な対応に重点的に予算を用意する、こうしたものであると思っています。

 今回の補正予算においては、世界の食料安全保障のリスクの高まりに対して、過度に輸入に依存している作物、こうしたものについて国内生産の拡大を進めるなど、現下の状況に鑑みて進めるべき施策、これを当初予算から増額して配置している、こういったことであります。

 当初予算とそして補正予算、行政全般に対する予算と、そして緊急、必要な対策の予算、それぞれ相まって農林水産予算全体の充実を図っていく、これが基本的な考え方であります。

金子(恵)委員 基本的な部分と緊急を要するもの。でも、私、先ほども申し上げましたように、本来、当初予算に入れるべきものが補正予算に入っている。緊急性というところは見えない部分もあります。

 もし、でも緊急性があるんだとおっしゃるんだったら、もう当初も補正も関係ないぐらい、今の農林水産の現場では全て緊急性を要しているということでいいんですか。

宮下国務大臣 先生御指摘のように、様々な課題、緊急を要していると思いますけれども、特に畑地化の促進事業について御指摘がありましたけれども、前回の予算では、多くの皆様が手を挙げていただいたんですが、そこに対応し切れなかったということもございます。そこの皆さんにしっかり応える、そして、これからも畑地化に取り組んでいただく方に応えなければいけない、こうした緊急の要請に応えるもの。

 それから、今、肥料とか飼料が高騰していますので、堆肥や下水汚泥資源など国産資源を緊急に肥料化するとか、また、国産飼料の生産、利用拡大をするとか、こうした、まさに価格高騰も踏まえて今やらなければいけないことを補正に重点的に盛っているということだと思います。

金子(恵)委員 手を挙げる人がたくさんいた、でも足りなかったから補正で上げる。でも、手を挙げる人がたくさんいたということは、それは農業を大きく変えなくてはいけない重要な時期に来ている、そのように大臣が今御説明いただいたのだというふうに理解をさせていただきますが。

 そうすると、今、転換期、構造を変えなくてはいけない大切な時期に来ている、そういうことだと思うんですけれども、食料安全保障の強化というのは本当に喫緊の課題でありますが、今まさに農政の新たな政策をつくり上げるとき、そして、食料・農業・農村基本法の改正に向けて大きく動いているときでもあります。そして、今回の補正予算案にもそのための予算というものが、特に食料安全保障の強化について計上されているわけです。

 国連食糧農業機関は、食料安全保障、フードセキュリティーについて、全ての人が、いかなるときにも、活動的で健康的な生活に必要な食生活上のニーズと嗜好を満たすために、十分で安全かつ栄養ある食料を、物理的にも社会的にも経済的にも入手可能であるときに達成されるとしています。

 つまり、食料の安定供給は、全ての人の生命と生活の基礎として欠かせないものであります。食料の生産者にとって重要であるということはもちろんでありますけれども、それ以上に、食料を必要とする消費者の皆さんにとって必要不可欠だということです。

 補正予算の項目となっています、過度な輸入依存からの脱却に向けた構造転換、そして、生産者の急減に備えた生産基盤の構造転換なども、農林水産の関係者だけではなくて、消費者である国民の皆様全体の問題として捉える必要があるということであります。農林水産業の持続可能な発展や農山漁村の振興について、国民の皆さん一人一人が当事者意識を持つことはとても重要だというふうに思っています。

 そこで、パネルをちょっと見ていただきたいというふうに思います。

 今回の補正予算の中では、単に農林水産施策を講じるだけではなくて、当施策とその背景にある課題について国民の皆様の理解と関心を深めることというのが求められていると感じます。農林水産省や財務省はこのような認識をきちっと持って予算編成をしていただいたのだろうかということですが、特に農林水産省は、今回の補正予算案で、適正な価格形成と国民理解の醸成に五億円を計上しています。

 この事業イメージについて、農林水産省の説明資料から抜粋してパネルにいたしました。

 ここにありますように、適正取引に向けた調査、そして、広報動画等の各種媒体の活用、メディア、SNS等での情報発信、シンポジウム、フェアなどを行うとされています。消費者等に対する理解醸成は、Z世代を重点ターゲットとして、国民全体の理解醸成、行動変容を目指すとしております。農水省が提唱しているニッポンフードシフトのロゴマークもあります。これは公式なウェブサイトもありまして、動画を見ることもできます。

 このような事業がありますけれども、もちろん農業者の方々の現場からは、適正な価格で何とか、今の生産資材等の価格高騰というものがあり、そこからしっかりと価格転嫁をしてほしいという要望があります。

 しかし一方で、今、物価高騰で国民の皆さん全てが苦しんでいる状況です。簡単に価格転嫁、もし価格が上がった場合、それを理解していただけるかというと、そうではない状況もあります。

 本当にここは、食の安全保障をいかに担保していくかという点において、国民の皆様がしっかりと関心を持って議論をしていかなくてはいけないというふうに思いますし、食料・農業・農村基本法の改正ということであれば、国民的な議論をしっかりとやった上で、そして、制定されました一九九九年以来の改正ということになりますので、ある意味、よい方向での改正をしていかなくてはいけないというふうにも思っているところでございます。

 そこで、このような取組が本当に生かされるのかどうかということ、この取組が本当に効果を生んで国民的議論につながっていくのかどうかということを総理に伺いたいと思います。お願いします。

岸田内閣総理大臣 まず、御指摘のように、食料・農業・農村基本法の見直し、こういった議論を進めるに当たって国民的な議論が必要である、この御指摘はそのとおりだと思います。

 そして、御指摘の農産物の適正な価格形成、これに向けては、農林水産省において、生産、流通、加工、小売等の各段階の関係者による協議会を設けて議論が行われているところです。

 そして、それらをしっかりと後押ししていくためにも、今回の補正予算において、適正取引の推進に向けたコストデータの収集等の調査、また、農産物の生産コスト上昇の背景や食品の価格転嫁の必要性に関する消費者理解醸成のための広報に関する予算、こういったものを設置するとともに、農業、農村への理解醸成を図るための官民協働による情報発信等を行っていく、こうした取組を補正予算の中にも盛り込んだところであります。

 是非、こうした取組を進めて、適正な価格形成に向けた取組を後押ししていきたいと考えています。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 消費者等に対する理解醸成の部分ですね。特に、先ほど申し上げましたように、Z世代を重点ターゲットとしてということなんですけれども、国民全体の理解醸成、行動変容を目指す。特に、自分で食を選択し始める大学生前後の層がターゲットだという意味なんです。

 ただし、ここの、今パネルの中にはないんですけれども、消費者理解醸成・行動変容促進事業についての農水省の説明の部分を見ますと、「食と環境を支える農林水産業・農山漁村の魅力等について、国民理解の醸成をより一層図るため、官民協働により、メディア・SNS等で情報発信するとともに、シンポジウム・フェアを開催」するということで、魅力という言葉が入っているんですね。

 もちろん、魅力を感じてほしいと思いますし、厳しいだけじゃないよということも知っていただきたいというふうに思うのですが。でも、今、実は、現場の状況や、そして食料の安定供給の難しさということを考えたときに、もう魅力というレベルではない。命をつなぐため、なくてはいけないもの、そういう理解が必要なのではないかというふうに思うんです。

 その部分を私はもっと前面に出した上での、本当の意味での国民の皆様の理解の醸成というのをしていかなくてはいけないと思うのですけれども、この取組を全否定するわけではありません。明るい状況で農業者の方々をバックアップする、そういうこともあると思います。でも、現場はやはり厳しいですよ。

 ですから、それをどのように伝え、そして、本当に、先ほど申し上げました、農政の憲法とも言える基本法の改正に向けて国民的なコンセンサスをいかに形成するかということ、これはどのようにお考えになられますでしょうか、総理。

宮下国務大臣 ニッポンフードシフトについても御紹介いただきまして、ありがとうございました。

 ただ、この説明書きについてですけれども、日本の食の課題が山積している。食について考えることは、これからの社会を考えること、人の生き方を考えること。変えるべきは変え、守るべきは守り、今の時代にふさわしい日本の食の在り方を考える機会にしたい。消費者、生産者、食品関連事業者、日本の食を考えるあらゆる人々と行政が一体となって、考え、議論し、行動する国民運動として、ニッポンフードシフトを進行させたい。こういう説明もございますので、こうした意図に基づいて、先生おっしゃる趣旨を踏まえて、しっかり運動を展開していきたいと思っています。

金子(恵)委員 総理に御答弁いただきたかったんですけれども、危機感を持っていただきたいということを私は申し上げさせていただいたつもりであります。基幹的農業従事者は減っている、そして高齢化が進む、また耕作放棄地がどんどん増えている、そういう状況の中で食の安全保障というのは本当に担保できますかということです。

 その上で、食品アクセス、そして子供食堂支援ということで農水省も立ち上がってくれたわけなんですが、私も子供食堂を運営している方々と意見交換を地元でさせていただきましたときには、物価高で食材も高くなっていて運営が大変だ、そういうお声がありました。

 もちろん、農水省の、今回、フードバンク等を通した食品ロス削減等への支援なども含めて、また、食料提供を円滑にする地域の体制づくり、つまりは、買物弱者や経済的な弱者に対する食料提供をしっかりやるということで、五億円を上げているわけなんですけれども。

 でも、私、現場に行きました。やはり子供食堂は困窮者だけのものではない、社会的問題を抱えている全ての人たちの居場所でもあるということを考えたときに、農林水産省の施策だけでカバーできるものではありません。

 そうしますと、やはり、例えば、こども家庭庁であったり厚生労働省の様々な施策と一緒に支援をしていかなくてはいけない、支援策をつくり上げていかなくてはいけないというふうに思いますけれども、関係省庁との連携をどのように考えて、今回の食品アクセス、子供食堂支援というメニューをつくられているのか、お伺いしたいと思います。総理、お願いします。

岸田内閣総理大臣 食料安全保障の一環として、平時から、国民一人一人が食料にアクセスでき、健康な食生活を享受できるようにする、こうした基本的な考え方が重要であると思っています。

 そして、御指摘のように、今般の補正予算において、フードバンク、子供食堂に対して未利用食品の供給に向けた支援を措置しているほか、政府備蓄米についても全国的な提供体制を整備していく、こうした取組も盛り込んだところであります。

 そして、その際に、この体制について御指摘がありましたが、農林水産省はもちろんでありますが、こども家庭庁、さらには厚生労働省を始め、政府を挙げて食品アクセスの困難解消に取り組んでいく、こういった体制や姿勢を大事にしていくことが求められていると感じております。

金子(恵)委員 ありがとうございます。

 とにかく政府が一体となっての取組をしていただきたいというふうに思います。全ての人たちにしっかりと、食品アクセスということで、食料を入手できるような体制づくりをしていただきたいと思います。

 時間が来ますが、最後の質問をさせていただきたいというふうに思いますが、ALPS処理水の対応です。

 これは、総理、外交の問題でしょうか。

岸田内閣総理大臣 ALPS処理水については様々な課題があります。外交としてもこの問題について真剣に取り組まなければならないと思いますし、当然のことながら、まずは福島の復興にとって大切な課題でありますし、国内の様々な関係者のなりわいをしっかり支えなければいけないなど、全国的な、経済を始め様々な課題に関わる重大な課題であると認識をいたします。

金子(恵)委員 日中首脳会談の成果を伺おうとは思ったんですが、泉代表からもありました、余り成果を上げたとは言えない状況でもあります。これは今後もしっかりと協議、交渉していかなくてはいけないと思いますけれども。

 これは本質を忘れないでいただきたいと思います。今、復興とおっしゃっていただいた。実際には、漁業者を始めとする関係者の理解なしでどうしても海洋放出をしなければならなかったのは、原発の廃炉を推し進めるためだったわけであります。

 しかしながら、残念なことに、総理大臣の所信表明演説で、岸田外交の積極的展開という部分の中で、ALPS処理水の問題について二、三行取り上げただけだったんです。私、ここは問題だと思います。

 最後になりますけれども、本当に、全責任を持って、長期にわたるこの問題についてしっかりと対応していくのかどうか、お伺いします。

小野寺委員長 内閣総理大臣岸田文雄君、申合せの時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

岸田内閣総理大臣 ALPS処理水、御指摘のように、福島第一原発の廃炉に向けて、これは避けて通れない取組であると認識をいたします。長期にわたる、世界にも前例のない取組ですが、福島の復興、これを必ず成し遂げる、こうした強い決意の下、引き続き、政府一丸となって、そして政府が前面に立って、安全かつ着実にこの課題の取組を進めてまいります。

金子(恵)委員 終わります。

小野寺委員長 この際、本庄知史君から関連質疑の申出があります。泉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。本庄知史君。

本庄委員 立憲民主党の本庄知史です。

 岸田総理とは三度目の質疑となります。どうぞよろしくお願いいたします。

 質問に入る前に、通告しておりませんが、先ほどの我が党の大西議員の質問の中で、政治と金、派閥の政治資金にまつわる質問がありました。

 平成研事務総長の新藤大臣、閣僚だからということで答弁を差し控えるということでありますが、やはり政治家たるもの、閣僚であると同時に、議員でもあります、そして政治家です。私は、国会の場できちっと御説明をされるべきだというふうに思います。もう一度御答弁をお願いします。

 そして、もしこの場で、閣僚なので答弁ができないということであれば、是非、別の場で、派閥の事務総長として御説明をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 私どもの政治団体のことで何かのお尋ねがあれば、それは政治団体として責任を持って適切に対応がなされるもの、このように承知しています。

 そして、私が事務総長ではありますが、今、閣僚中であるために、その事務総長の活動というのは制限をしております。そして、私ども平成研究会の中では、それぞれ、つかさつかさの人たちがきちんと対応しているということでございまして、私は、今この立場でそのことをお話しすることは、これは差し控えたい、このように申し上げているわけであります。(発言する者あり)

小野寺委員長 もう一度御質問をお願いいたします。

本庄委員 閣僚だから差し控えるというお言葉ですが、事務総長であることは間違いありませんよね。閣僚だから兼任をやめたということであれば別ですが、政治家としてきちっと説明責任を果たされるべきではありませんか。いかがですか。

新藤国務大臣 私どものグループだけではなくて、ほかのグループでも、我々は与党ですから、閣僚になることはございます。ですから、その際に、政治団体の中で一つ一つ役職を替わるとかそういうことはなくて、あくまで役職としては置いてあるが、でも、活動は、これは当然制約があって、私は、できる範囲でのことでしかやっていない。

 現状において、事務総長が活動が制限されている分、他の仲間の皆さんがきちんとそれを対応している。そして、平成研とすれば、説明責任は、政治団体として責任を果たしている、こういうことでございます。それはほかの方と一緒でございます。

本庄委員 総理も答弁をされています。

 中身によってはそもそも適法だということですが、適正に処理をされなかったから、今こういう状況、問題になっているわけですね。そのことについてきちっと説明責任を果たしてくださいというふうに申し上げております。いかがですか。

新藤国務大臣 この問題に、政治団体として責任を持って説明をするのは、団体としての説明が求められているわけであります。その団体として、責任を持って適切な対応がなされていると私は承知しているわけで、この場で私が閣僚として申し上げることではない、このように言っているわけです。(発言する者あり)

小野寺委員長 国務大臣新藤義孝君、もう一度答弁をお願いいたします。

新藤国務大臣 何度も申し上げますけれども、平成研究会としての説明責任は適切になされている、このように承知をしております。

 それは、その団体の方できちんとお問い合わせをいただきたい、政治団体にお問い合わせをいただきたいと言っているわけでありまして、私がこの場所で、閣僚としての、この場で発言することは、これは控えている、このように申し上げているわけです。

本庄委員 それでは、今この場で閣僚として御説明をできないということであれば、別の場で事務総長として御説明いただけるということでよろしいですか。

新藤国務大臣 私は、閣僚として、この場にいるだけが閣僚ではございません。ですから、我々の団体はきちんと説明責任を果たしている、このように申し上げているわけであります。

本庄委員 いつ、どこで、どのように果たされたんでしょうか。

新藤国務大臣 それは政治団体の方にお問い合わせをいただきたい、このように申し上げています。(発言する者あり)

小野寺委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

小野寺委員長 速記を起こしてください。

 本庄知史君。

本庄委員 それでは、改めて質問いたします。

 今回の平成研、新藤大臣が事務総長を務める平成研の政治資金の問題について、事務総長としてきちんと御答弁をしていただきたいと思います。

新藤国務大臣 今私が、閣僚の立場で、そのことに対するコメントは差し控えさせていただく、このように何度も申し上げました。

 その上で、この説明責任は政治団体において適切に果たされていると思います。

 そして、その上で、委員の御指摘を踏まえて、私どもでこの団体の方にそういった趣旨はお伝えしたい、このように思います。

本庄委員 十分に説明責任を果たされているとは思えませんし、テレビを見ている方も全く理解できなかったと思います。

 この政治資金の問題について、しかるべき御説明、資料を委員会の方に提出していただきますよう、委員長の方でお取り計らいをお願いいたします。

小野寺委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

本庄委員 それでは、本題の方に少し入っていきたいと思いますが、順番を変えまして、統一教会の問題からいきたいと思います。

 まず、昨日の代表質問、岸田総理は、我が党の鎌田さゆり議員の質問に対しまして、旧統一教会の財産が散逸するおそれがあるという声があることは十分承知しているとしながらも、真に実効的な被害者救済となる方策について、国会において御議論いただきたいと。まるで他人事のような御答弁で、非常に残念でした。

 そこで、基本を確認させていただきたいんですが、被害者の皆さんの救済のために、この国会中に財産保全法の整備が必要だということについて、総理は同意いただけませんか。

岸田内閣総理大臣 御指摘のように、昨日、旧統一教会の解散命令請求を行った後、裁判所が解散命令を行うまでの間に、当該宗教法人の財産が散逸するおそれがあるのではないかという声がある、これを承知していると申し上げました。

 そして、現在、自民党も含めて与野党で、この被害者救済の方策について法案の検討を行い、既に野党側からは、議員立法案、これは提出されていると承知をしております。これは、議員立法が提出されているわけですから、それに関わることについては、今は政府の立場から、国会において御議論いただきたいと申し上げた次第であります。

 議員立法を提出されているわけですし、これから与党側からも、こうした課題に対する法案、提出される動きがあると承知をしております。

 是非、被害者救済に向けての議論を行っていただきたいと思っています。

本庄委員 総理のリーダーシップのある答弁を期待しましたが、大変残念です。まるで傍観者のような御答弁だというふうに思いました。

 今、与野党それぞれが、国会にはまだ提出はされていませんが、その案というものが出てきておりますが、パネルの三ということで、資料も配付をしております。

 これは、全国弁連、つまり全国霊感商法対策弁護士連絡会、これが十一月十七日に出した声明ですけれども、自民党、公明党の与党案についての評価ということで、一、法テラスによる民事法律扶助業務の拡充、二、宗教法人法上の公告や財産目録等の提出義務の特例、こういった与党案の中身について、不十分だ、全く不十分だ、こういう評価を下しています。

 そして、包括的な財産保全を可能とする特措法、これは私ども立憲民主党が主張しているものですけれども、これは必要であり、そして合憲である、こういう声明を出していますが、この与党案の問題ということで少し申し上げていきたいと思います。

 まず、法テラス、つまり、経済的に困難な人などを、経済的な支援、そういった裁判、訴訟をしやすいようにしていくということ自体はマイナスではありません。しかし、そもそも、個人で統一教会のような宗教団体相手に何年も何年も裁判、訴訟を続けていくということが極めて負担で、そしてリスクがあるということで、実は、交渉や示談があっても、なかなか訴訟の件数が増えていないというのが実情なんですね。お金だけの問題ではないんです。

 総理、ちょっと想像していただきたいんですが、もし総理が被害者のお立場で、救済を求めている。反社会的カルト教団相手に何年も裁判できますか。いかがですか、総理。

岸田内閣総理大臣 旧統一教会については、長期間にわたり多数の方々、そしてその御家族に深刻な影響をもたらしたことが明らかになっており、被害者の救済は極めて重要だと認識をしています。

 そして、御質問は、私自身がそういった立場に立った場合にそうした裁判を行い続けられるかという御質問でありますが、これは当然のことながら、仮定の問題にお答えするのは、一概に申し上げることは難しいと思いますが、そういった中で、まず、政府としては、適切に被害者救済が図られるよう、御指摘の法テラスの相談体制あるいは経済的な支援をしっかり用意しなければいけない。あらゆる現行法上の制度、これを動員して、被害者救済のために最大限取り組んでいく所存です。

 その上で、先ほど来御指摘のありました議員立法の動きについても、国会で充実した議論が行われ、そして、その状況も見ながら、政府としての対応を真剣に考えていきたいと思っております。

本庄委員 個人の裁判というのは時間も労力も膨大で、最低でも五年、長ければ十年以上続く。そして、その証拠資料、これは数千ページに及ぶ。こういったものを個人で用意をして、そして訴訟へ臨んでいかなければいけない、何年間も。これは想像を絶する負担だというふうに思います。私、このぐらいの想像力を是非総理にも持っていただきたいというふうに思います。したがって、ないよりはあった方がいいですが、決定的な救済の道具にはならないということです。

 そして、より深刻な問題、これは、救済の原資となるはずの財産が保全できていない、できないということなんですね。

 それで、総理、与党案についてはお答えしないのは分かっていますので、今の法令に基づいてお尋ねしますが、これは今の宗教法人法でも、旧統一教会は年に一回、財産目録を提出していますね、法令に基づいて。それから、財産を処分する際には、遅くとも一か月前までに利害関係人に公告、つまり伝えなきゃいけないということですが、こういう法令にさえ従っていれば、解散命令請求が出た今でも自由に財産の処分ができるんじゃないですか。いかがですか。

盛山国務大臣 お答えいたします。

 一般に、宗教法人において、一定の手続に基づき、所有する財産を処分することは可能ですが、宗教法人に対して債権を有する者は、いつでも民事保全法上の保全命令を申し立てることが可能となっております。

 また、宗教法人法における過料は、秩序罰として、行政上の秩序の維持のために、違反者に制裁として金銭的負担を科すものとなっております。

本庄委員 ですから、個人での訴訟の継続というのが負担だから、民事の保全では難しい、包括的な財産保全が必要だ、こういう議論じゃないんですか、大臣。

 今、過料のお話がありましたね、ペナルティー。幾らですか。御答弁ください。

盛山国務大臣 過料は十万円でございます。

本庄委員 聞かれましたよね。十万円ですよ。交通違反に毛が生えた程度じゃないですか。

 一千億円を超えるとも言われる財産を出すか隠すかという議論のときに、この十万円のペナルティーが何か意味を成すと思いますか、総理。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 現行法において、被害者救済のために様々な手段、あらゆる手段を動員しなければならないと申し上げています。

 その中で、財産の保全の部分について、委員御指摘のように、保全が十分できるのかという指摘がある、懸念の声がある、これを私も承知しておりますと昨日も申し上げたところであります。

 だからこそ、与野党でこの問題に関して議員立法の動きがあると承知をしております。是非、御指摘の点も含めて、この国会において、議員立法を通じて議論が行われ、そして結論が出されることを期待いたします。

本庄委員 その議員立法、与党案が穴だらけだから、私ども、大変心配をしております。

 今の財産目録の届出、これも一年ごとのものを三か月に一回に短縮しましょう、そして財産の処分、これもお役所に、大臣に届けましょう、それだけなんですね。それさえやっていれば財産を動かせちゃうんですよ、今この状況でも。どんどんどんどん、日々財産が流出していっている、そういう可能性は私は極めて高いというふうに思います。

 オウム真理教の際も、多数の資産隠しが当時指摘をされました。旧統一教会も十分これは予見できると思います。

 今日の一部報道でも、渋谷の一等地に推定五億円超の未公開ビルを所有しているという報道がなされていました。こういうのは全国幾らでもあるのではないか。そしてさらに、それを移転していくということも、今であれば自由に可能だということです。

 これは、このまま漫然と国が立法措置を取らなければ、私は国の不作為でいずれ国家賠償請求を起こされる可能性もあると思いますが、総理、そのときは責任を取っていただけるんですか。いかがですか。

盛山国務大臣 先生が今御発言いただいておりますように、宗教法人の財産を保全しなければ、財産散逸のおそれが生じ、実効的な被害者救済が図られないのではないかとの懸念の声があることは、我々承知しております。

 お尋ねの国家賠償に関する仮定の質問にお答えすることは困難でございますが、政府としては、旧統一教会の資産状況を注視しつつ、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済のために最大限取り組んでまいります。

 また、国会での議論、我々としても承知をして、そして、真に実効的な被害者救済となる方向で御議論がまとまることを期待しているところです。

本庄委員 何もしない、傍観しています、そういう御答弁だというふうに理解しました。

 立憲民主党は、国会召集日の十月の二十日に旧統一教会財産保全法を提出しておりました。その内容は、文科大臣や被害者の請求があれば、裁判所の判断で財産の保全処分をするというものです。

 これは個人の裁判であっても、解散命令であっても、財産保全というのは被害者救済の大前提であります。したがって、そのための措置ということを今回の法整備では最も重視して取り組まなければいけないと思います。

 維新の会も同趣旨の議員立法を提出していましたが、両党協議の結果、それぞれ取り下げまして、今日、後ほど、ほぼ同内容ですけれども、両党の共同提出ということで国会に提出をさせていただきますので、是非、与野党で議論していきたいと思います。

 ただ、その際に、与党側のまさにバケツの底の抜けたような御提案、これもないよりはあった方がいいですけれども、私は、自民党の総裁として、岸田総理には、是非リーダーシップを発揮して、私ども野党の提案についても御賛同いただけるように御指導いただきたいと思いますが、その点、いかがでしょう、総理。

岸田内閣総理大臣 今委員の方から、野党側の議員立法提出に向けての動き、御紹介がありました。

 また、自民党を含め与党側においても、議員立法の準備を進めていると承知をしております。是非、与野党から提出される議員立法をめぐって、この国会において充実した議論が行われることを政府としてしっかり見守った上で、政府としての対応を考えていきたいと思います。

 政府としては、外為法を始め今の現行法令の中で最大限、政府として対応するべきこと、これをしっかり対応してまいります。その上で、議員立法の議論、見守りたいと思っております。

本庄委員 そうやって教団から財産が流出していくことも見守っていかれるんですか。

 今の法制では何もできませんよ、総理。できないんですよ。届出のとおりきちっとやっておれば財産処分ができるんですね。いかがですか、総理。

岸田内閣総理大臣 先ほど御指摘があった報告だけではなくして、外為法を始め様々な法律で、様々な資産の移動について把握する手だてはあります。政府として、現状の法律を最大限駆使して、資産について実態把握を行ってまいります。

本庄委員 では、文科大臣、通告していませんが、先ほど申し上げた渋谷の五億円超のビル、把握されていたんですか、文科省。

盛山国務大臣 それについては、個別の内容について我々の方で明確にすることはできないことになっておりますので、御理解賜りたいと思います。

本庄委員 把握していないんですね。ちゃんと答えてもらえますか。

盛山国務大臣 報告を受けております。

 その報告内容については、この場ではお答えできないことになっております。

本庄委員 財産目録に記載をされ、そして文科省として把握をしている、こういうことでよろしいですか。

盛山国務大臣 それについても、この場で御答弁はできません。

本庄委員 これでは把握できているかどうか誰も分からないですよね。全く歯止めにもなっていないし、説明責任も果たせていないというふうに思います。

 総理とのやり取りをしていましても、去年、統一教会の問題が明らかになり、被害者救済法ができ、そして、今年、解散命令請求ということになりましたが、これまでの自民党と旧統一教会の関係をきちっと振り返った中で、私、一定の思いを持って総理が取り組まれてきたというふうに思っておりましたが、今日の答弁を聞く限り、全くやる気が伝わってこないんです。

 最初に申し上げました、今国会中に財産保全についてしっかりと法整備をし、そして被害者の皆さんを救済する原資を守るということについて、自民党の総裁として、総理として、その決意を是非お示しいただきたいと思いますが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 政府としては、現行法を最大限活用して、教団の資産の把握、移動の把握、努めてまいりますと申し上げております。

 外為法の規制の履行状況について、情報収集、分析に努める、また、マネーロンダリング防止の観点から、金融機関に対して適切な対応を求める、こうした対応をしっかり進めてまいります。

 その上で、議員立法の議論をお願いしている、こういったことであります。是非、政府として、こうした議員立法の動きもしっかり踏まえた上で、責任をしっかり果たしていきたいと思っております。

本庄委員 決意も、そして目標も全く示されなくて、本当に残念です。

 時間がありませんので、補正予算の中身の話は同僚議員に委ねます。最後に、官房機密費に関わる馳知事の御発言についてお尋ねしたいと思います。これは官房長官に伺います。

 石川県の馳浩知事の発言が物議を醸しております。知事は衆議院時代、自民党のオリンピック招致推進本部長ということですが、当時、安倍総理から、オリンピック招致は必ずかち取れ、金は幾らでも出す、官房機密費もあるからと言われたということを、十一月十七日、講演で明らかにされたということです。

 まず、官房長官、知事の発言は、つまり、機密費をオリンピック招致に使ったということは事実ですか。

松野国務大臣 本庄先生にお答えをさせていただきます。

 お尋ねの馳知事の発言につきましては、誤解を与えかねない不適切な発言であり、全面的に撤回するとして、知事が発言そのものを撤回されているものと承知をしています。

 いずれにせよ、内閣官房報償費は、国の機密保持上、その使途等を明らかにすることが適当でない性格の経費として使用されてきており、その個別具体的な使途に関するお尋ねについては、お答えを差し控えさせていただいております。

本庄委員 機密費が国の機密保持上、その使途を明らかにできないということは、一般論としては理解します。

 ただ、今回、馳知事もおっしゃっていますけれども、百五名のIOC委員全員のアルバムを作ってお土産にした、一人一冊二十万円だ、ここまで具体的におっしゃった。かつ、これが事実であれば、贈答を禁じているIOCの倫理規程違反の可能性すらあるんですね。

 機密費が幾ら国の秘密だといっても、違法、不法行為のために機密費を使うということまでは私は許容されていないと思うんですね。これはしっかりと事実関係を確認して御説明をされなければ、使ったのが本当だというふうに思われてしまいますよ。写真集がどこかから一冊でも出てきたら大変なことになると思いますが、官房長官、御答弁、いいんでしょうか。もう一度お願いします。

松野国務大臣 お答えをさせていただきます。

 IOC倫理規程に基づく個別事例に関する取扱いは、IOCの権限と責任において判断されるものと承知をしております。

本庄委員 これは、場合によっては本当に刑事事件にもなりかねない大変な問題なんですが、馳知事は、先ほども長官は少しおっしゃいました、全面的に撤回する、事実誤認に基づく発言等々とおっしゃっていますが、何をどう撤回するのか、どこが事実誤認なのか、一切説明がありません。

 馳知事はオリンピック招致時代は議員であり、そして今も知事です、公人です。説明責任が知事にもあると思います。そして、年間十四億円の機密費の使途の適法性にも関わる非常に重要な問題だと思います。

 それで、委員長、この馳知事を参考人としてこの委員会に是非御招致いただいて。お願いを申し上げたいと思います。理事会で御協議ください。

小野寺委員長 後刻、理事会で協議をいたします。

本庄委員 派閥のお金の問題で、大事な補正予算の中身がちゃんと議論できず残念でしたけれども、ここで終わります。

 ありがとうございました。

小野寺委員長 この際、近藤和也君から関連質疑の申出があります。泉君の持ち時間の範囲内でこれを許します。近藤和也君。

近藤(和)委員 立憲民主党の近藤和也でございます。

 今日は、食料安全保障、水産業の観点から、安全保障、農林水産予算そのものの議論をし、最後は、政治と金、公職選挙法について話を進めていきたいと思います。よろしくお願いします。

 ここ数年は特に、食料安全保障を平時と有事に分けた対応も必要だという議論が盛んになってきています。先ほど総理も、金子委員からの質疑の中で、平時からアクセスできるようにという答弁もされました。

 そこで、総理に伺います。食料安全保障を考える上で、今は平時でしょうか、有事でしょうか。総理にお願いします。

岸田内閣総理大臣 平時、有事の線引きというのは、これは、一定の数字や線で引けるものではないと認識をしています。平時、有事を問わず、食料安全保障についてしっかり考えていかなければならない。平時であろうが有事であろうが、食料安全保障について政府として体制をしっかり取っていく、こういった姿勢が重要であると認識をしております。

近藤(和)委員 農林水産省の方でも、有事という言い方でなくて、不測時ということで、カロリーが一定程度、日本人が食べることができるのか、それで平時と不測時ということでも言っているんですが、私は、一次産業に関わる方にとってみれば、今、有事である、そういう認識を持っていただきたいんです。

 例えば、今、漁獲高がもう減ってきています。漁業者も減ってきています。日本海の排他的経済水域にある好漁場、大和堆で、違法操業が八年前から起きてきています。この一年、二年は、違法操業は減ってきていますが、北朝鮮などの公船、公の船が入ってきています。結果として、この公の船、公船は、EEZでは出ていけというふうにはできないですよね。そうなので、今、水産庁から、漁業者の方々には、その水域は危ないから出ていってくれ、避難してくれというような形で、漁ができない状態になっています。私は、これはもう有事だというふうに思うんですね。

 それで、自然相手ではどうしようもできないですが、やはり人間や組織、国相手こそは、日本国がしっかりしてくれないと困ります。

 そこで、総理、今回の所信表明演説の中でも、日本海、海、排他的経済水域、安全操業という言葉が入っていませんでした。本当に残念です。総理はこのことについてどう思われるでしょうか。

岸田内閣総理大臣 安全操業の重要性については、委員御指摘のとおりだと思います。今回の所信にその言葉がなかったのではないかということでありますが、食料安全保障を支える大変重要な要素が、水産業を始めとする国民の食の確保であると認識をしております。食料安全保障の観点からも、安全な水産業の操業、これは重要な課題だと認識をしております。

 そして、大和堆における、我が国の排他的経済水域における外国漁船における違法操業、これが安全操業の妨げになっている、これは深刻な課題であると認識をしております。

 そのため、この外国漁船による違法操業に対しては、水産庁、海上保安庁は放水等を含む厳しい対応で退去させるなど、毅然と対応しておりますが、その中にあって、御指摘の北朝鮮公船、この公船の場合においては、乗組員の武器所有の可能性が排除されない、こうした認識であります。ですから、我が国の漁船に対して一時的な移動を要請することがある、これは御指摘のとおりだと思います。

 こうした北朝鮮公船に対応する際には、やはり安全確保、これを最優先にしながら、現場の具体的な状況において、水産庁あるいは海上保安庁が適切に対応を判断しなければならない課題だと思います。毅然と対応しなければいけない、それはそのとおりでありますが、乗組員の、漁業者の安全という観点から、現実的な対応が求められる課題でもあると考えております。

近藤(和)委員 漁場を追い出される方々にとっては、もう有事なんですよ、総理。

 そして、今、私も地元を歩いていますと、田舎ですから、働く場所がないから若い人がいない、そして、働いてくれる人がいないから事業が継続できない、このような悪循環が続いています。地方は、この点からも、もはや平時とは言えません。漁業、農業はまさしくその最先端です。漁村の人口減少は、すなわち、海岸線の見守りが減ることを意味しています。そして、これは、国土を誰が守るのか、安全保障そのものの話につながります。総理の認識は甘いと言わざるを得ません。

 以前に、違法操業が大変な数に上っていたときに、立入検査、拿捕、これを何とかしてくれという要望を、漁業関係者からの声を、総理も違う立場で今まで何度も聞かれてきたと思います。

 しかし、日本海においては、ほとんど、北朝鮮そして中国の船に対して、立入検査、拿捕していないですよね。だから、なめられるんですよ。いたずらに私は好戦的になれというのではなくて、権益はしっかりと主張しなければいけません。少なくとも日本海においては、中国は排他的経済水域はありません。ここに毅然たる姿勢を示さないから、それが今、尖閣周辺での中国の大型ブイの問題につながるんだと私は思っています。

 そして、先ほど泉代表からの質問の中にもありました、いやいや、トップと話し合って、これから事務方に任せるんだよということで、結果的に情報が取られるかもしれない。あと、更に申し上げれば、じゃ、二個目、三個目が置かれたらどうするんですかということもあります。

 ですから、私はむしろ、自民党さんの中からも、そして林前外務大臣も、撤去すべきじゃないかということも言われております。この撤去することのリスクと、二個目、三個目を置かれる、若しくは尖閣周辺で更なる一歩を踏み出されるリスクを考えると、私は撤去すべきだと思いますが、総理、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 国際法上、このブイの撤去について、これを許容する規定は明文として存在しないと承知をしております。だからこそ、こうした問題が、第二、第三のブイの設置につながるおそれがあると委員御指摘ありましたが、そうならないように、これをコントロールしなければならない課題だと思っています。だからこそ、日中において、そして中国のトップと直接この問題について意見交換を行い、そして対話や協議を続けていくということで合意をした、このことは、この問題に取り組むに当たって大変重要な対話であったと認識をしております。

 おっしゃるように、これが第二、第三という形で続かないためにも、対話を通じてこの問題をコントロールしていきたいと思っています。

近藤(和)委員 対話は大切なんですけれども、結果として、対話の状態がずっと続いて国益を損ないかねない、そして、第二、第三が起きたときに、私は、総理、責任が取れないと思うんですよ。そこを大きな懸念として持っています。

 次に、北朝鮮の話に移します。

 拉致問題、時間がありません。本当につらいです。二〇一九年の五月に、当時の安倍総理が、条件をつけずに金正恩委員長と会う用意があると百八十度方針転換をしました。総理も所信表明などでも、度々同じ文言を使われています。しかし、残念ながら、拉致問題は解決へ向けての進展が見られません。そして、二〇一四年には、この制裁措置を一度緩めましたよね。そこから、二〇一七年には、安保理決議も含めて制裁を強めましたが、もうこれ以上強くできないぐらいの状態だと思います。逆に、対話をするためには制裁を緩めるのかということを言えば、それもまた大きな議論を呼ぶと思います。

 そこで、総理、過去、日本と北朝鮮で漁業に関しての民間協定がありました。拉致問題とも、核、弾道ミサイルとも切り離して、対話、交流を促すことができないかということで、漁業を通じての対話、日本の漁業関係者にとっても、安全と漁が確保されれば、私はこれは望ましいことだと思います。拉致問題も含めて、北朝鮮とのチャンネルづくりになるかもしれません。

 日本は台湾とは国交はありませんが、民間同士という形で漁業協定がございます。総理、先人の知恵を生かして、直接、間接的でも、何らかの動きを取られた方がいいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 私自身、条件をつけずに、いつでも金正恩委員長と直接向き合う決意、これを述べてきております。日朝間の懸案を解決し、両者が共に新しい時代を切り開いていく観点からの決意、これは、あらゆる機会を逃さず伝え続けてきております。首脳会談実現に向けて、様々な働きかけを続けてきております。

 具体的な御提案をいただきました。様々な御提案はいろいろ参考にさせていただきたいと思いますが、引き続き、政府としては、こうした働きかけを続けていきたいと思います。ただ、内容について、具体的にこういった場で申し上げることは当然控えなければならないと思っております。

近藤(和)委員 私は、総理が中国のトップの方、習さんと、もうトップと話し合ったんだということを誇らしげに言われていたので、余計に、北朝鮮とはその段階さえもまだ行っていないという状況が、結果としてこの日本海の不安定化をずっと続けるんじゃないかということを心配をしています。何となくのんびりとした答えなので、本当に残念に思います。

 それでは、農林水産省予算全般について伺います。

 先ほど同僚の金子委員からも、本来であれば補正ではなくて本予算にのせるべきではないかということの質疑がございました。私も、本予算に堂々と計上すべきだと思うんです。

 パネルの方を御覧ください。

 一九八九年、日本が最も元気だったときからのチャートですが、農林水産省予算、そして食料の自給率、農業、漁業者の人口、農地面積、漁獲高、もう悲しいくらいまでのこの右下下がりのグラフでございます。予算が減ったから一次産業が弱くなったのか、一次産業が弱くなったから予算が減ったのか、私はここを手をつけていかなければいけないと思うんですね。

 そして、総理は、子育て予算の倍増、防衛予算の倍増、大変大事な議論だと私も思います。その中で、今、農林水産予算が削られてきている、その一例を挙げます。

 先日、つくば市の農研機構など、農林水産省所管の独立行政法人を視察に伺いました。これらの研究施設は日本の農林水産業の大本です。予算が削られ、夏は冷房を切り、冬は暖房を切る、時には水道管が破裂をしたり、雨漏りをしたりする、私もそのような現場を拝見をいたしました。

 一九九六年橋本行革、そして二〇〇一年独法化、そして小泉、竹中改革路線の延長線上で、運営費交付金などが効率化の名の下で削られ続けて今があります。研究力が弱っていく中で、本当に食料自給率を上げる、食料安全保障をつくり上げることができるんでしょうか。

 総理、農林水産関連予算の減少傾向から、右肩上がりにしませんか。いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げたように、農林水産予算につきましては、基本的に当初予算を用意した上で、その時々の様々なリスク、今であれば食料安全保障のリスク、こういったものに機動的に対応するために補正予算を用意する、こういったことで、全体として農林水産予算を支えてきました。時代の変化の中でこの予算を最大限有効に活用していく、こういった観点は重要だと思います。

 そして、額の推移について御指摘がありました。この予算の内容、詳細については、農林水産大臣からお答えをさせていただきます。

宮下国務大臣 御指摘のように、このグラフを見ましても、農林水産関係予算は中長期的なトレンドでは右肩下がりですが、踏みとどまっているといえば、最近頑張っているということかと思います。

 基幹的農業従事者の激減という背景もありますし、その中で構造改革を図っていくという、今、大転換期でありますので、まさに食料安全保障のための予算、これをしっかり確保するという意味で、まずは本予算において生産基盤を強化すること、経営所得安定対策等をやること等々をしっかりやった上で、この補正でも緊急に必要なことはがんと盛って、その危機に対応すべく頑張っている。

 今後、年末に向けて当初予算の策定になりますので、しっかりそこでも予算の確保に頑張っていきたいと思っております。

近藤(和)委員 踏みとどまっていないから、このようにやっているんですよ。本当に、今、漁業者も農業者も林業関係者も、皆さん悲鳴を上げているのは分かるじゃないですか。そして、地方は、本当に人がいなくなって、集落の維持も厳しくなってきているんですよ。ですから、私は、農林水産大臣の味方だと思っていますけれども、今の答弁だったら、ちょっとまずいなと思いますよ。

 総理、改めて、私は、この一次産業がどんどんどんどん弱くなっていくことが、食料の安全保障、そして安全保障そのものにつながる話ですから、しっかりと危機感を一緒に持っていただきたいと思います。

 そして、もう一枚のパネルですが、この食料の安全保障の観点からいけば、円安ですね。このグラフを見ていただいても分かるように、これは金額ベースでの輸入と国産ですが、上位の食料品の六か国の為替チャートをつけました。二〇二〇年から見ても、二割から三割強、円安になってきています。

 食料の安全保障という観点からも、アベノミクスの見直し、日銀との共同声明の見直し、私自身も、立憲民主党の新しい金融政策のワーキングチームの座長として、この日銀との共同声明を、物価上昇の目標にしなければいけないんじゃないかと、様々な形で提案をしてきていますので、食料の安全保障という観点からこの金融政策を見直すべきだということをこれは申し上げて、最後の質問に移りたいと思います。

 残念なことに、先ほどからも、今日は三分の一ぐらいでしょうか、政治と金の問題、私たちも取り上げざるを得ない、本当に残念な状況です。

 最近では、自民党の柿沢議員、八月に逮捕された秋本議員、薗浦元議員の話もありました。昨年の冬も四大臣の辞任ドミノがありましたが、そのうちの二人は政治と金です。河井夫妻の問題もそれほど過去の話ではありません。

 四月に行われた東京都の江東区長選挙をめぐって、自民党の柿沢議員がネットでの有料広告を勧めたということで法務副大臣を辞め、木村江東区長も辞め、来月、江東区長選挙が行われます。

 ネットでの有料広告は、選挙期間中は候補者の広告は禁止、しかしながら、政党や確認団体は上限がありません。そして、さらには、選挙に入る前は、事前運動にならないのであれば、ある程度は大丈夫なんですね。要は、お金がどれだけあっても足らない、どれだけでもかけられるということになってしまいます。

 今回は、自民党の柿沢議員は、陣中見舞いか買収かは分かりませんが、お金をばらまいています。政治にお金がかかる、政治と金の問題がなくならない、だからこその公職選挙法であり、政治資金規正法でもあります。

 もう一例挙げます。

 総理も、この場にいらっしゃる議員の皆様も、選挙のときにはチラシ、そして大きなポスター、証紙を支援者の皆様に貼っていただくと思います。なぜ証紙を貼るのかといえば、枚数を制限をして、お金がある人がどれだけでも使用することができることを防ぐためでございます。公平な選挙をするためですよね。

 ところが、ここ数年、二連ののぼり旗というものが現れました。御存じない方もいらっしゃると思いますので簡単に説明いたしますと、二連のポスターがありますよね。例えば、自民党の方であれば岸田総理と候補者、立憲民主党であれば泉代表と私という形で、二連のポスターであれば、これは選挙期間に入れば剥がします。

 一方で、のぼり旗であれば、下が例えば泉代表、上が私、近藤和也であれば、こののぼり旗は、駄目よという都道府県もあれば、そのまま放置している都道府県もあるんですね。本当におかしな話なんです。

 これは住んでいるところによって、法律はいいよ、法律は駄目だと言っていないよ、駄目ですよという、それぞれの地域があるということそのものを正していかなくてはいけないですし、こののぼり旗に関しては、制限がない自治体であれば何百本でも何千本でも立てられるんです。お金がどれだけあっても足りません。とてもではないですが、公平な選挙を行えると思えません。

 自民党の柿沢議員の例も氷山の一角かもしれません。選挙の直前になってそれぞれの支部にお金を配っている、そういったような団体もあると思います。そして、江東区長選挙も行われ、お金がかかります。二連ののぼり旗も一例なんですけれども。

 ここで総理に伺います。政治と金の問題を卒業するために、お金のかからない選挙、公平な選挙、公職選挙法、政治資金規正法のしっかりとした運用が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の政治資金の扱い、また選挙についても、法令に従って適切に行わなければならない、これは当然のことだと思います。法律に従うべきだという御指摘、そのとおりでありますし、適切に対応しているんだということを、政治の立場にある者、選挙においても、資金の報告においても、しっかりと示していくことを信頼回復に向けて行わなければならない、このように強く感じております。

 疑念を生じさせることがないよう、襟を正して対応をしていかなければなりません。内閣としても、一層緊張感を持って対応していきたいと考えます。

近藤(和)委員 疑念を晴らすように襟を正していかなくてはいけないというのは、まさしく今なんですよ。派閥の問題、ありますよね。先ほども様々な方々が、総理の立場、閣僚の立場だ、いろいろな言い逃れをされてきましたが、ここできれいにするチャンスだというふうに私は思います。洗いざらい述べたらどうですか。

岸田内閣総理大臣 法律に従って対応することは大切なことであります。そして、どのように説明するのか、これについては、先ほど来、委員会の中で、各大臣等説明させていただいているとおりであります。

近藤(和)委員 新藤大臣、今ほどの総理の答弁を聞かれて、いかがでしょうか。

新藤国務大臣 何度もお答えをさせていただいておりますけれども、私が所属する政治団体において、きちんとした対処、適切な対応がなされている、このように思っているわけであります。

近藤(和)委員 本当に、説明していなくて大丈夫ですかね。

 改めて、今、岸田総理、内閣の一員です、新藤さんは。そして、自由民主党の総裁でもあります。ですから、襟を正すべきだというこの委員会での発言というのは本当に貴重なことで、重いものでございますから、しっかりと実行していただきますことをお願いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

小野寺委員長 次回は、明二十二日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三分散会


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