衆議院

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第3号 令和6年2月5日(月曜日)

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令和六年二月五日(月曜日)

    午前九時五十七分開議

 出席委員

   委員長 小野寺五典君

   理事 上野賢一郎君 理事 加藤 勝信君

   理事 島尻安伊子君 理事 橋本  岳君

   理事 牧島かれん君 理事 奥野総一郎君

   理事 山井 和則君 理事 漆間 譲司君

   理事 佐藤 英道君

      青山 周平君    井出 庸生君

      伊東 良孝君    伊藤 達也君

      石破  茂君    今村 雅弘君

      岩屋  毅君    上田 英俊君

      衛藤征士郎君    越智 隆雄君

      奥野 信亮君    勝目  康君

      金子 俊平君    金田 勝年君

      亀岡 偉民君    国光あやの君

      小林 鷹之君    後藤 茂之君

      佐々木 紀君    田中 和徳君

      田畑 裕明君    平  将明君

      塚田 一郎君    中川 郁子君

      長島 昭久君    平沢 勝栄君

      牧原 秀樹君    宮路 拓馬君

      山本 有二君    若林 健太君

      渡辺 博道君    井坂 信彦君

      石川 香織君    梅谷  守君

      大西 健介君    岡田 克也君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      櫻井  周君    階   猛君

      屋良 朝博君    山岸 一生君

      米山 隆一君    早稲田ゆき君

      奥下 剛光君    沢田  良君

      林  佑美君    山本 剛正君

      赤羽 一嘉君    稲津  久君

      金城 泰邦君    高木 陽介君

      角田 秀穂君    宮本  徹君

      田中  健君    緒方林太郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       岸田 文雄君

   総務大臣         松本 剛明君

   法務大臣         小泉 龍司君

   外務大臣         上川 陽子君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   文部科学大臣       盛山 正仁君

   厚生労働大臣       武見 敬三君

   農林水産大臣       坂本 哲志君

   経済産業大臣

   国務大臣

   (原子力損害賠償・廃炉等支援機構担当)      齋藤  健君

   国土交通大臣       斉藤 鉄夫君

   環境大臣

   国務大臣

   (原子力防災担当)    伊藤信太郎君

   防衛大臣         木原  稔君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     林  芳正君

   国務大臣

   (デジタル大臣)

   (規制改革担当)     河野 太郎君

   国務大臣

   (復興大臣)       土屋 品子君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (防災担当)

   (海洋政策担当)     松村 祥史君

   国務大臣

   (こども政策 少子化対策 若者活躍 男女共同参画担当)          加藤 鮎子君

   国務大臣

   (経済財政政策担当)   新藤 義孝君

   国務大臣

   (クールジャパン戦略担当)

   (知的財産戦略担当)

   (科学技術政策担当)

   (宇宙政策担当)

   (経済安全保障担当)   高市 早苗君

   国務大臣

   (沖縄及び北方対策担当)

   (消費者及び食品安全担当)

   (地方創生担当)

   (アイヌ施策担当)    自見はなこ君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    近藤 正春君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  平井 康夫君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  内田 欽也君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  伴子君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   高橋 謙司君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 佐野 朋毅君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           湯本 博信君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  大沢  博君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局長)            今川 拓郎君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    松下 裕子君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 藤本健太郎君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 田中佐智子君

   政府参考人

   (厚生労働省健康・生活衛生局長)         大坪 寛子君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局長)            鈴木英二郎君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           橋本 真吾君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            松浦 哲哉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房技術審議官)         林  正道君

   政府参考人

   (国土交通省不動産・建設経済局長)        塩見 英之君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  丹羽 克彦君

   政府参考人

   (国土交通省住宅局長)  石坂  聡君

   政府参考人

   (国土交通省鉄道局長)  村田 茂樹君

   政府参考人

   (国土交通省物流・自動車局長)          鶴田 浩久君

   政府参考人

   (国土交通省港湾局長)  稲田 雅裕君

   政府参考人

   (観光庁次長)      加藤  進君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  加野 幸司君

   政府参考人

   (防衛装備庁長官)    深澤 雅貴君

   予算委員会専門員     齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月五日

 辞任         補欠選任

  井出 庸生君     国光あやの君

  亀岡 偉民君     青山 周平君

  宮路 拓馬君     金子 俊平君

  山本 有二君     小林 鷹之君

  若林 健太君     上田 英俊君

  梅谷  守君     岡田 克也君

  山岸 一生君     櫻井  周君

  林  佑美君     山本 剛正君

  守島  正君     沢田  良君

  金城 泰邦君     高木 陽介君

  角田 秀穂君     稲津  久君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     田畑 裕明君

  上田 英俊君     長島 昭久君

  金子 俊平君     佐々木 紀君

  国光あやの君     井出 庸生君

  小林 鷹之君     中川 郁子君

  岡田 克也君     梅谷  守君

  櫻井  周君     近藤 和也君

  沢田  良君     守島  正君

  山本 剛正君     林  佑美君

  稲津  久君     角田 秀穂君

  高木 陽介君     金城 泰邦君

同日

 辞任         補欠選任

  佐々木 紀君     勝目  康君

  田畑 裕明君     亀岡 偉民君

  中川 郁子君     山本 有二君

  長島 昭久君     若林 健太君

  近藤 和也君     屋良 朝博君

同日

 辞任         補欠選任

  勝目  康君     宮路 拓馬君

  屋良 朝博君     山岸 一生君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 令和六年度一般会計予算

 令和六年度特別会計予算

 令和六年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

小野寺委員長 これより会議を開きます。

 令和六年度一般会計予算、令和六年度特別会計予算、令和六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、基本的質疑に入ります。

 この際、お諮りいたします。

 三案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官平井康夫君、内閣官房内閣審議官内田欽也君、内閣府政策統括官林伴子君、内閣府政策統括官高橋謙司君、警察庁長官官房審議官佐野朋毅君、総務省大臣官房総括審議官湯本博信君、総務省自治財政局長大沢博君、総務省総合通信基盤局長今川拓郎君、法務省刑事局長松下裕子君、外務省大臣官房参事官藤本健太郎君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官田中佐智子君、厚生労働省健康・生活衛生局長大坪寛子君、厚生労働省労働基準局長鈴木英二郎君、経済産業省大臣官房審議官橋本真吾君、中小企業庁経営支援部長松浦哲哉君、国土交通省大臣官房技術審議官林正道君、国土交通省不動産・建設経済局長塩見英之君、国土交通省道路局長丹羽克彦君、国土交通省住宅局長石坂聡君、国土交通省鉄道局長村田茂樹君、国土交通省物流・自動車局長鶴田浩久君、国土交通省港湾局長稲田雅裕君、観光庁次長加藤進君、防衛省防衛政策局長加野幸司君、防衛装備庁長官深澤雅貴君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小野寺委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小野寺委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。加藤勝信君。

加藤(勝)委員 自由民主党の加藤勝信でございます。

 いよいよ予算委員会の基本的質疑がスタートいたします。トップバッターとして、総理始め各大臣に質問させていただきたいというふうに思います。

 まずは、今年の一月一日、能登半島を襲った地震によって、本当に多くの皆さん方が貴い命をなくされました。心から御冥福、お悔やみを申し上げますとともに、今なお厳しい環境の中で、被災をされ、そして避難生活を送っている皆さんに心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 また、被災直後から、自らも被災されているにもかかわらず、地域のために本当に尽力されている消防団を始めとした多くの地域の皆さん方、そしてさらには、その支援に向かって入っていただいている警察、消防、自衛隊、さらにはDMATを始め医療関係者などなど、本当に多くの皆さん方が、まだ地震が続く、我が身の危険も振り返らず、また、なかなか水道等も電気も通っていない、厳しい環境の中で本当に御尽力をいただいていることに心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 政府においても、一月二十五日に、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ等も出されておられます。そして、その中には、今後とも、必要な措置は、五年、六年度の予備費を活用して、復旧復興の段階に合わせて、数次にわたり機動的、弾力的に手当てをするとされているわけであります。こういった姿勢で是非取り組んでいただきたいというふうに思います。

 今、例えば、インフラの復旧に向けて本当に多くの皆さん方が昼夜を分かたず努力をしておりますが、なかなか、道路あるいは水道の復旧には時間がかかると言われております。そして、既に避難所で生活をされている方々の期間も一か月を超える。避難所の生活というのは、プライバシーも、だんだん今は段ボールベッド等が入ってきて改善されているんだとは思いますけれども、トイレに行く等々、本当に厳しい状況だというふうに思うところであります。

 長期化する避難生活の中で、災害関連死、これは絶対防がなきゃなりません。そうした意味でも、生活環境の向上を図っていく必要があるというふうに思いますけれども、現地は、高齢化が進む等、様々な事情もございますが、それらを踏まえ、今後どう対応していくのか、まず防災大臣からお話を聞きたいと思います。

松村国務大臣 お答え申し上げます。

 今般の地震につきましては、委員御指摘のとおり、厳しい冬の寒さの中、高齢者の方も多く、地理的制約もある半島地域で発生をいたしました。また、大規模な土砂崩れや道路の寸断、水道などの復旧にも一定の時間を要する状況がございます。

 これらの点に留意をいたしまして、何としても災害関連死を防ぐためにあらゆる手だてを講じることが重要である、こういう思いから対応してきたところでございます。

 このため、これまでにも、段ボールベッド、仮設トイレ、暖房器具、マスク、消毒液や、車中泊も予想されましたので弾性ストッキングなど、避難所の良好な生活環境の確保と避難者の健康を守るための機材、物資等をプッシュ型で支援をしてきたところでございます。

 また、災害関連の医療チーム、DMATや、健康危機管理支援チームのDHEAT、保健師の皆さん方、また現地に派遣されている専門家、また、薬剤師会には大変な御協力をいただきましたが、モバイルファーマシー、いわゆる医薬品の供給車両、こういった協力を得まして、避難所の衛生管理や避難所の健康管理にも現在取り組んでいるところでございます。

 さらには、被災者の方々の命と健康を守るために、地域外の環境の整った旅館やホテルへの二次避難の取組も進めておりまして、現在約五千名を超えたところでもございます。

 これから、避難生活も一か月が過ぎ、更に細かいニーズを捉えましてしっかりと対応してまいりたいと考えております。

加藤(勝)委員 是非、これはステージがどんどん変わってまいります。また、その状況によって被災者の方々の思いも変わってくると思います。そういったものもしっかり踏まえながら、的確に対応していただくことをお願いしたいと思います。

 その上で、私も厚労大臣を三回務めさせていただきました。当該地域は、医療資源がこれまでも必ずしも十分とは言えない地域でもあります。そして、高齢化が進んでいるという実情もございます。

 そうした中で、例えば、医療施設あるいは介護施設に入所している、あるいは通っておられる方、一部の方は、今防災担当大臣からお話があったように、二次避難先等に移行されている方もいらっしゃると思いますが、まだ現地、被災地において残っておられる方も多くおられるとお聞きをしております。

 厚労大臣に是非教えていただきたいのは、そうした被災地における医療・介護施設の機能、今申し上げた元々十分ではない中被災をされ、また、そこで働く方々も被災を受けてなかなか仕事を続けるのも難しいという状況などもあると思いますが、その機能をどう維持をしていくのか。また、施設には入っていないけれども、在宅等で過ごされている介護などが必要な方々も多くいらっしゃるというふうに思います。そうした方に対する見守り支援などしっかり強化していく必要があると思いますが、この点について具体的にどのようにお考えになっているのか、お願いいたします。

武見国務大臣 避難生活が長引くことが見込まれている中で、被災者の命と健康を守り、災害関連死を防ぐことは、とにかく最も重要な課題であるという認識であります。

 このため、一・五次避難所、ここにも簡易の診療所を設けさせていただいて診療活動の拠点を確保をし、こうした医療や福祉機能を強化するとともに、高齢者などの要配慮者に県内外の高齢者施設へ避難していただく二次避難の取組も確実に今実施しているところであります。

 また、被災地の医療施設の機能維持のため、DMATなどの医療チームを派遣をして病院などでの治療や搬送等の支援を行っているほか、被災地の高齢者施設について、介護職員などの応援派遣によって、その体制の強化も同時に行っております。

 最後に残ってまいりますのは、在宅で避難されておられる方々、特に、そうした高齢者の場合にどのような対応をするかというのがその次の大きな課題になってまいります。

 在宅などで避難生活を送る高齢者などについては、現在、保健師などにより健康管理に努めております。今後は、被災高齢者等把握事業などを活用いたしまして、関係団体との連携の下、ケアマネジャーなどの派遣を順次進めていくことによって、こうした在宅で避難している方々の健康管理というものを充実強化させていく、こういう体制を整えていこうとしております。

 引き続き、こうした状況の変化が様々将来も起きますので、県や関係団体と緊密に連携をして、被災者の命と健康を守るために、現場のニーズに即して丁寧に対応していきたいと思います。

加藤(勝)委員 是非、そうした被災者、特に高齢の方、医療、介護が必要な方に対する対応をよろしくお願いしたいと思います。

 今、被災をされた皆さん方、避難所あるいはそれぞれの御自宅、中には、一部壊れている中でもお過ごしをされている方もいらっしゃると思います。この生活がどうなっていくのか、特に、どうこれから再建を図っていくのか、やはりこれを、道筋をつけるということが非常に大事だというふうに思います。

 そうした中で、現在、被災者生活支援制度というのがございます。住宅の被害の程度、再建の方法に応じて最大三百万円が支給されるというような制度であります。

 これに対して、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党、三党からは、最高額を六百万円に引き上げ、世帯対象を半壊などに広げる法案が国会に提出をされているところでございます。

 ただ、この制度そのものは、やはり、長年の議論、また、実際の被災者対応によって積み重ねてきた制度であります。また、見舞金的な性格があるとも言われております。

 そして、何といっても、このお金は、半分は、全国知事会、まさに各都道府県の知事が負担をするという構図になっているわけでありますから、知事会始め、そうした皆さんとしっかりと議論を重ねずに進めていけるものでは私はないというふうに思っております。

 そういった中で、総理は、二月一日の令和六年能登半島地震復旧・復興本部において、新たな交付金制度として、高齢者のいる世帯の家財等住宅再建に対する支援のための給付を創設することを表明をされました。

 こうした取組、まさに、これから地域コミュニティーが本当に再生できるのか、また、高齢化が進む中で、なかなか、これからローンを借りてまで、返せないという方が大変多い、こういった事情を踏まえて、これまでにない支援策であると高く評価をするところであります。

 ただ、少し懸念がございます。この中身を見させていただきますと、この中に、これは厚労省のペーパーだと思いますが、高齢者等のいる世帯を対象とする、こういうふうな記述になっておりますので、対象がまさに高齢者のいる世帯に限定されているかのようにも見えるところであります。

 例えば、若い皆さん方も、なかなか資力が十分ではない、あるいは住宅ローンも借りられない、こうした子育て世帯や若者世代も当然おられるわけであります。支援が必要にもかかわらず、同じ被災をされている方々が私は取り残されるようなことがあってはならないというふうに思っております。

 そこで、是非、この中身についてもう少し言及し、今申し上げた点を確認したいと思いますが、その点を総理にお伺いするとともに、また、これから復旧復興には息の長い取組が、状況の変化に応じて行っていく必要がございます。それに対する総理の意気込みを併せて御提示いただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 今般、高齢化が著しく進み、そして、半島という地理的制約からコミュニティーの再生が乗り越えるべき課題となる能登地域六市町を中心に、新たな交付金制度、これを設けることといたしました。具体的には、住宅が半壊以上の被災をした高齢者等のいる世帯を対象として、家財等の再建支援に最大百万円、住宅の再建支援に最大二百万円、合計最大三百万円を目安に、地域の実情に応じた支援が可能となるよう、制度設計を進めてまいります。

 他方、新たな交付金制度の対象とならない世帯についても、若者、子育て世帯を含め、過疎地が多い能登半島からの人口流出を防ぐ観点から、被災地に住み続けていただくことが重要であり、遜色のない対応が必要であると考えます。このため、足下の物価、金利情勢を踏まえた住宅融資の金利負担助成など、地域の実情を踏まえたきめ細かい事業を行うことが可能となるよう、石川県と調整を進めます。

 これらを組み合わせることによって、支援を必要とする、住宅に被害を被った世帯の中で取り残される世帯がないよう、調整を進めてまいります。

 なお、新たな交付金制度については、御指摘のような、資金の借入れや返済が容易でないと見込まれる高齢者等のいない世帯についても、高齢者等のいる世帯と同様に、当該交付金制度の対象としていきたいと考えております。

加藤(勝)委員 多分、今総理がおっしゃったのは、要するに、高齢者等と書いているのは、高齢者はやはりローンの返済期間、自分で返済できる期間が決して長くはない、したがってなかなかローンを受けられない、まさにローンが受けにくいということに着目してこの制度が行われているとすれば、それは、高齢ということだけではなくて、若い、あるいは所得が低い、様々な理由がある、そういった点も含めてこれから具体的な制度設計をされるというふうに受け止めさせていただきました。

 やはり大事なことは、支援の手を求めている被災者の皆さん方が、せっかくいい制度を入れても、この人たちだけは受けられるけれども自分たちは受けられない、こういう状況をつくるのは私は得策ではないというふうに思っております。被災者の皆さん方がそれぞれ納得できる形で具体的な設計を進めていただきますことをお願いしたいというふうに思います。

 その上で、今回の地震で多くの家屋が倒壊をし、それによって亡くなられた方も多くおられる、こうした分析も出てきているところであります。高齢者から見ると、今更家を耐震化しなくても、また、自分の家に他人が入ってきていろいろ直されるのもと、いろいろな懸念があって、特に高齢者の世帯においては耐震化が進んでいないと指摘をされています。

 しかし、今回の経験あるいはこれまでの経験を踏まえても、やはりしっかり耐震化を進めていくということが自分たちそして家族の命を守ることにもつながると思います。政府として、また国交省として、これをしっかり進めていくよう努力をお願いしたいと思いますが、これに対する斉藤国交大臣のお考えをお示しいただきたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 今回の地震では多くの方が建物の倒壊でお亡くなりになりました。耐震化を進めていくというのは、非常に大事な、積極的に進めていかなければならないと思っております。

 国土交通省では、これまで、令和十二年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消するということを目標に頑張っております。平成三十年のデータですが、全国で約八七%の建物が耐震性を持っているというところまで参りました。

 今回の震源に近い地域では、国の補助制度に地方公共団体が上乗せして耐震改修を支援する補助制度がありました。ほとんど住民の負担なしに耐震改修ができるという制度があったんですけれども、実はほとんど、住民の皆さんに余りこの制度が活用されてこなかった、このように認識しております。

 今後は、今回の被災建築物の詳細な分析を進めるとともに、特に高齢者が居住する老朽住宅の耐震化に向けて課題を整理するなど、さらに、こういう制度があるんですよという周知徹底など、実効性の高い施策の推進にしっかり頑張っていきたいと思っております。

加藤(勝)委員 高齢者を含めて、国民の命を守るために、しっかりと取り組んでいただきたいというふうに思います。

 その上で、今回、能登半島地震、これは半島という地形ということもあったと思いますけれども、道路が寸断をされて、なかなかアクセスしづらい、そういった中で、たしか自衛隊の艦船を使って海上からもアクセスをしていたという報道にも触れたところであります。医療を始めとして、船舶を活用した海からの支援で、より多くの命を救っていくということも可能だと考えております。

 超党派により、二〇二一年六月に災害時船舶活用医療整備推進法というものが成立をして、今年の六月から施行されることになっております。この施行に向けて、今どのような取組を、そして、今回のこうした経験も踏まえて対応されようとしているのか、御答弁をお願いします。

松村国務大臣 今後高い確率で発生するとされております南海トラフ地震などの災害に備えまして、発災時に一人でも多くの命を救うため、加藤委員御指摘の法律の施行の準備を今進めているところでございます。

 円滑な施行のために、これまでに、船舶の確保の在り方、発災時の医療資器材の調達方法について調査検討を行ってきたところでもございます。その上で、民間事業者や自衛隊の船舶を実際に活用いたしまして、医療資器材の搭載であるとか運営、患者の搬送、船上での看護や治療などの実動訓練を重ね、その課題の検証などを行ってきたところでございます。

 法の施行後におきましては、総理を本部長といたしまして、全閣僚を構成員とする船舶活用医療推進本部が設置をされまして、整備推進計画を作成することとなり、本取組を総合的かつ集中的に推進する体制が整うこととなります。

 今般の能登半島地震におきましても、船舶による海からの被災者支援のアプローチが大変効果的であったことなども踏まえまして、発災時の具体的なマニュアルの策定を進めるなど、関係府省や有識者等と連携し、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

加藤(勝)委員 今、大変力強い御答弁をいただきました。ただ、これは政府全体で取り組んでいただく必要があります。総理がリーダーシップを発揮していただきますことをお願いしたいと思います。

 また、私自身、厚労大臣としても、また党に戻っても、医療DXを推進させていただいておりますけれども、今回の震災で、被災された多くの方々が避難先の医療機関を受診した際に、オンライン資格確認システムでレセプト情報に基づく薬剤情報や診療情報等の確認をされた、二万件を超える確認があったと聞いております。

 今後は、電子処方箋に加えて電子カルテの情報が全国の医療機関で共有され、平時はもとより、今回のような時点においても活用され、より安全で質の高い医療が享受できるようにしていくことが求められております。

 これを進めていくため、電子カルテなど、情報共有や普及などを進めていくためには、医療機関におけるイニシャルコストあるいはランニングコストの負担をどうするかという問題もございます。それに対する支援が不可欠と考えておりますが、政府においても、そうした点での対応を含め、医療DXをより積極的に推進すること、これは強く要請をさせていただきたいというふうに思います。

 続いて、政治資金の問題について御質問させていただきたいと思います。

 私ども自由民主党の派閥のパーティーに関する会計処理が不適切ということで、今、自民党に対する大変な、信頼が揺らいでいるところでございます。この事態、私も大変深刻な事態として受け止めているところでございます。

 党内においても、総理も出席をされておりましたけれども、全議員がそれぞれ出席をしながら、これからのあるべき姿をかんかんがくがく議論して、先般、中間取りまとめが行われました。これに従いながら対応していくことは当然でありますが、その後、派閥の政治資金パーティーに関連して、八十名を超える自民党の現職議員などに関する政治資金報告書の訂正届が行われたところでございます。今日の理事会でそれに関しても提出をさせていただきました。

 しかし、こうした問題が指摘される中で、なぜこれほど広範に不適切な会計処理が行われているのか、あるいは、このお金は一体どこに使われていっているのか、一般的な国民であれば、通常、税金等を払うわけでありますが、政治資金は非課税ということにもなるわけであります。こうしたことを明らかにしていくことが私たちの責任だと思います。

 まず一義的には、もちろん当事者が説明をしていく必要がありますけれども、しかし、派閥、党、別とはいっても、やはりほとんどの国会議員は自民党所属でもございます。自民党として責任を持って対応していくことが必要であり、そのことはこれまでも総理が御指摘をされてきたところであります。

 そして、今回、具体的に自民党幹部に調査を指示をし、その中で既にヒアリングが行われ、また、これからアンケート調査も実施されるというふうにお聞きをしておりますが、具体的にどのような、例えば、ヒアリング項目についてお聞きになるのか、あるいはアンケート調査ではどういうことを確認をしていくのか、そしてそれをどういうスケジュール感で取りまとめていかれるのか、この点について具体的に総理の御答弁をお願いしたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、現在、関係者において政治資金収支報告書の訂正作業が順次行われているところではありますが、党としても、これらの状況を把握するとともに、先週金曜日から、外部の弁護士も交え、順次、党幹部による関係者への聞き取り、これを開始いたしました。現在、不記載に至った経緯や使途等について確認を行っており、可能な限り今週中をめどに聞き取り作業を終え、その後、外部の第三者による取りまとめを予定しております。

 また、所属全議員を対象として、政策集団の政治資金パーティーに関連した収支報告書の不記載がないかどうかに関するアンケート調査も今週中に行い、来週早々には取りまとめをすることを予定しております。

 聞き取りの進捗状況等を踏まえながら、党としても必要な説明責任を果たしていきたいと考えております。

加藤(勝)委員 まさに今お話しいただいたように、ヒアリング調査そしてアンケート調査、これをしっかり実施し、もちろん私たちもしっかり協力をさせていただいて、できるだけ早期に取りまとめて、そして国民の皆さんに説明をしていただくこと、これを強く総理に要請をしたいというふうに思います。

 その上で、目指すべき日本経済の姿について質問させていただきたいと思います。

 今までも質疑させていただきましたが、ちょっと、私も久しぶりにこの質問席に立って質問させていただいておりまして、やや違和感がありますが、引き続き違和感を感じながらやらせていただいておりますが。

 総理の施政方針演説で、日本経済の最大の戦略課題はデフレ完全脱却だという認識をお示しをされました。ただ、一方で、地元の皆さんといろいろな話をしていると、デフレと言われても、今私たちが困っているのは物価上昇なんだと。何かそこに、また違和感という言葉を使いますが、違和感を感じざるを得ない。

 改めて、デフレ完全脱却とは何なのか、また、それを通じて総理はどのような経済の姿を目指しているのかについて、少し議論をさせていただきたいと思います。

 政府がデフレ宣言したのは二〇〇一年春でありますから、それからもう四半世紀経過をしているところであります。物価も賃金も伸びがマイナスあるいはゼロ近傍でありました。しかしそれは、平均がゼロということだけではなくて、ほとんどの価格がほぼゼロで据え置かれていた。まさに価格機能がフリーズしていた状態だと言えると思います。

 企業にとっては、価格を上げにくい。上げにくいということになるので、様々なコストが上がると、企業はいわゆるコストカット、あるいは賃金を抑制をしていく、そして投資までカットする。総理がおっしゃるコストカット経済に陥っていたというふうに思って、それが日本経済の活力を失っていった背景にあります。

 ですから、デフレ脱却の意義の第一は、日本経済の活力を取り戻すことだということであります。そのためにも、価格が柔軟に設定できれば、企業は、いいものを安くではなくて、いいものはそれにふさわしい価格で売れるんだ、まさに価格戦略を工夫することもできます。また、そうなれば、新しい商品開発あるいはRアンドDに取り組むインセンティブも出てきます。

 また、賃金も一緒だと思います。賃金が全体として伸びがゼロということであれば、誰かに多く払おうとすれば、誰かの賃金を減らさざるを得ないということになります。それは必ずしもできる話ではありません。したがって、全体の賃金を上げる中で、めり張りをつける。そして、めり張りをつけることが、またそれぞれの皆さんの労働意欲を高めていく。従業員の頑張り、あるいは高い技能をつけていく、こういうインセンティブにもなろうと思っております。

 まさに、価格も賃金も動くようになれば、市場経済で本来動くべき価格メカニズムがきちんと機能し、賃金、価格がシグナルとなって、経済の構造がより進化していくということが期待をされるわけであります。所得が毎年上がり、賃上げもできるという本来の市場経済になれば、経済全体の潜在成長率の高まりも期待をされるわけであります。

 デフレ脱却で、価格メカニズムが働く市場経済本来の仕事、姿を取り戻すことで、企業の新陳代謝が進み、ダイナミズムと活力が十分発揮される経済を実現していかなきゃならないと私は考えているところでございます。

 それからもう一つ、デフレ脱却の意義の二番目は、海外への所得の流出を止めるということであります。

 この間、原油価格が高騰して、金額が高止まる。他方、それに対して、輸出がなかなか増えない。あるいは、輸出価格が、国内がデフレでありますからなかなか上がらない。その結果、貿易によって本来利益を得るべきところが、どんどん我が国の富が、所得が流出をし、その結果として私は実質賃金の低下も招いているのではないかと認識をしております。

 したがって、国内の価格を適度に上げていくということは、今申し上げたメカニズムの上でも必要だというふうに思っておりますが、今ちょうどそれが動き出すチャンスであります。デフレから完全脱却し、総理は、熱量あふれる新たな成長型経済という言葉も施政方針演説でお使いになっておりましたけれども、どういう経済の姿を目指すのか、それに向けてどういう具体的な対応を考えていくのか、その決意を是非お示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、一九九〇年代のバブル経済崩壊後、長引くデフレを背景に、企業としては、足下の収益を確保するために、賃金ですとか成長の源泉である投資を抑制し、結果として、消費の停滞、あるいは経済の体温と言えるような物価の低迷、そしてさらには成長の抑制をもたらす、こうした悪循環が続きました。

 こうしたデフレ心理とコストカットの縮み志向経済から完全に脱却し、賃上げが消費を後押しし、その結果によって物価が適度に上昇する、そして、それが新たな投資を呼び込み、企業の成長や更なる賃金上昇にもつながる、こうした好循環を実現することで、明日は今日よりよくなると実感できる経済、これを目指していきたいということを申し上げています。

 その際の鍵となるのが、物価高に負けない賃上げであり、そのために、公的な賃上げを政府が率先して動かしていく、あるいは賃上げ税制の拡大強化、また政労使の意見交換でも昨年を上回る賃上げを呼びかける。

 そして、今は、委員御指摘のように、世界的なエネルギー危機を始めとする外生的な物価高騰で国民が苦しんでいる最中でありますので、今年は六月から所得税、住民税減税等で可処分所得を下支えして、官民が連携して、賃金が上がり、可処分所得が増えるという状況、これを確実なものにする、こういったことで、先ほど申し上げました好循環を確実なものにしていきたいと思っています。

 そして、これを来年に続けていかなければならないということでありますので、持続的な賃上げを可能とするための人への投資、そして賃上げを生み出す企業の稼ぐ力、こうした強化にも取り組んでいる、これが現在の取組であります。

 今申し上げたように、こうした構造的な賃上げを来年につなげていかなければならないわけでありますので、価格や賃上げが動き出すことで市場メカニズムがしっかりと動いていく、そのことによって、委員が御指摘のように、企業の経営資源や労働力のより適切な配分が行われる、こういったことにもつながると考えますし、海外への様々な資金の流出、こうした流れにも歯止めがかかる、こうしたことにつながると考えております。

 こういったことを、熱量あふれる新たな成長型経済という言葉で表し、是非これを実現したい、今年が正念場であるということを申し上げている次第であります。

加藤(勝)委員 まさに今、私も千載一遇のチャンスだと思います。

 賃上げの話をもう少しさせていただきますが、あわせて、今総理おっしゃった、よくお使いになっている、供給力をどう強化していくのか。特に、人手不足の時代でもあります。それに向かって、やはり、この間失われた経済の中で、投資が国内ではなくて海外に向けられていた。やはり、国内でしっかり投資をしてもらっていく。そして、これからの時代に対応するDX、GXなんかも先取りをしていただく。そのための予算また税制の措置も今回盛り込まれておりますので、是非それらを駆使して、今申し上げたこの千載一遇のチャンスをしっかりと物にしていただきたいというふうに思います。

 その上で、賃上げの関係でありますけれども、昨年の春闘でも名目賃金がこれまでになく上がりましたけれども、実質賃金のマイナスは二十か月連続で残念ながら続いております。

 よく、賃上げといった言葉の中に、実は、定昇分とベア、要するにベースアップ分、両方含まれて議論されているわけであります。

 これは経団連の資料なんですけれども、いわゆる定昇というのは、確かに、既に企業で働いている個々の人の給料は、一年長く働くことによって上がります。確かにそういうメリットはあります。しかし、企業全体で見ると、退職された方がいて、新しく入る方がいらっしゃいます。したがって、全体で見ると、人件費の総額というのは、もちろん人員構成にもよりますけれども、変わらないということになります。

 したがって、残念ながら、今回の賃上げが、例えば昨年十一月の実質賃金も前年同月比三%の減となっている。そこにはまさに定昇分が基本的には反映されていないということであります。

 また、今、三位一体の労働市場改革を進める中で、職務給の導入というのを強く主張されています。職務給を導入するということになると、定昇で一律的に賃金を上げるのではなくて、リスキリングなどによる能力向上で職務を上げて賃上げを図るという方向に移行するわけでありますから、だんだん定昇のウェートというのは多分低くなっていくんじゃないかというふうに私は推測をしております。

 さらに、めり張りのある賃金を行うためにもベースアップが必要だと先ほど申し上げていました。私は、やはり、春闘の賃上げそのものもありますけれども、ベースアップ、これをしっかり上げてくれという強いメッセージを出していくことが必要だというふうに思っております。

 もちろん、賃上げ交渉は労使間で行われるものであります。しかし、今年の春闘は、昨年と比べると私は上げやすい環境がそろっている。一つは、企業の収益が昨年以上にいいという見通しが出ております。そして、人手不足も進んでいるわけであります。そして、賃上げ交渉においては、生活を守る、働く人の生活を守るという観点から物価がどうなっているかというのも見られるわけでありますが、今年の春闘で見ている二三年の消費者物価は去年見ていた二二年よりも上がっているわけでありますから、そういったことも含めて私は賃上げしやすい環境になっているというふうに思います。

 先ほどベースアップの話もさせていただきましたが、その点も含めて、改めて賃上げに向けての総理の御決意をお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 今後の日本経済を考えた場合に、何よりも大切なのは、こうした賃上げが一時的なものではなくして、息の長い持続的な賃上げであるということだと思います。その意味で、ベースアップの役割は今後一層重要性を増していくと考えます。

 こうしたベースアップの重要性も鑑みて、公的分野である医療、介護、障害福祉現場では、物価に負けない賃上げを実現するために、昨年末、この加算措置も含めて必要な水準の報酬の改定率を決定し、その中で具体的なベースアップ分の水準をお示しするなどの取組を行った、こういったことでありました。

 他方で、賃上げそのものは、労使の間で個別に交渉し、合意した上で決定されるものであり、そして、現下、先ほども触れましたが、輸入物価上昇を起点とする外生的な物価上昇の状況、この物価高騰の状況を考えますと、まずは、今年、ベースアップのみならず、全体として昨年を上回る水準の賃上げ、これを実現することを目指すことは重要であると思いますし、更に言うと、先ほども触れました所得減税等で可処分所得、これをしっかり下支えすることによって物価高に負けない所得を実現する、こうした取組も重要であると思います。

 そのために、先ほども触れました様々な政策を総動員してこうした流れを維持し、来年につなげるべく全力で取り組んでいきたいと強く考えております。

加藤(勝)委員 もちろん、全体としての水準が上がれば、その分だけベースアップ部分も拡大するということになるんだろうというふうには思います。

 是非それぞれの今回の春闘において、やはり実質賃金が上がっていくということが総理御指摘のように大変大事であり、それにつながるのはやはりベースアップ部分でありますから、そのことにもしっかり注目して対応することをお願いをしたいと思います。

 その上で、やはり、日本で雇用者の約四割が非正規で働いている方々でもあります。そうした方々の賃金には最低賃金の引上げが大変大事となってまいります。非正規で働く人の賃上げ、ひいては雇用者全体の賃上げにも最賃の引上げはつながるわけであります。

 実際、最低賃金を上げると、ぎりぎりの方だけではなくて、相当な範囲まで引上げ効果があるという分析もなされているわけであります。また、非正規雇用と正規雇用の賃金格差の是正ということにもつながるわけであります。

 ただ、他方で、多くの雇用をそうした雇用をされている小規模零細企業の皆さんは、原料費や人件費の高騰に苦しんでいるのも事実であります。

 したがって、最低賃金を引き上げる、これは今年もしっかり私は取り組むべきだと思いますが、そのためにも、そうした中小零細企業を中心に、しっかりとした支援を行っていくことが必要だと思っておりますが、総理のお考えをお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 委員御指摘のように、最低賃金の引上げは、非正規雇用労働者を含め、働く方の処遇改善に重要な役割を果たしていると認識をします。

 非正規雇用労働者の処遇改善のためにも、引き続き、公労使三者構成の最低賃金審議会で毎年の賃上げ額についてしっかり御議論いただき、その積み重ねにより、二〇三〇年代半ばまでに全国加重平均が千五百円となること、これを目指したいと考えております。

 そして、御指摘のように、そのためにも、中小企業、小規模事業者の賃上げ実現に向けて支援をしていかなければなりません。労務費転嫁の指針の活用を含めて、価格転嫁を産業界に働きかける、また賃上げ促進税制を拡充させる、あるいは省力化投資など生産性向上支援を強力に進めていく、こうした形で中小企業、小規模事業者をしっかりと支えていきたいと考えております。

加藤(勝)委員 是非そうした支援を行っていただいて、最低賃金がより多く引き上げられる環境をつくっていただきたいと思います。

 総理は、施政方針演説で、賃上げをするときにやはり政府も自ら対応しなきゃいけないという立場で、公的賃上げにも言及をされました。

 関連して、三問お聞きをしたいと思います。

 まずは、来年度、医療を含めた三報酬の改定が行われます。この改定により、雇用者の約一四%の方が働いておられるという医療・福祉分野における賃上げがどのくらい期待されるのか、また、それに向けて、賃上げが確実に実施されるよう、どのような措置を講じようと考えているのか、厚労大臣からお話をいただきたいと思います。

武見国務大臣 令和六年度の診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス等報酬の同時改定に向けまして、これらの分野における賃上げを後押しすべく、賃上げに必要な改定率として、医療ではプラス〇・八八%、介護ではプラス一・五九%、障害福祉ではプラス一・一二%を確保しております。

 これを踏まえて、医療機関や介護事業所等におきましては、過去の賃上げ実績をベースとしつつ、今般の報酬改定による加算措置などの活用や賃上げ促進税制を組み合わせることにより、令和六年度にプラス二・五%、令和七年度にプラス二・〇%のベースアップの実現を図っていただきたいと考えております。

 こうした賃上げ対応につきましては、実効性を確保する観点から、加算措置部分の報告を含めてフォローアップの仕組みをしっかり整備をしていくことにより、この賃上げをより確実なものにしていきたい、このように考えております。

 今回の改定による賃上げの状況等の実態を適切に把握していきたいと考えているところであります。

加藤(勝)委員 特に、福祉分野、介護分野で働く方の数が、一昨年の統計でしたが、減少するということでもありました。これからそうしたニーズが増える中で、医療・福祉分野で働く人を確保していくためにも、少なくとも他の民間分野に負けない賃金水準が一層求められているというふうに思います。

 これから春闘もございます。その春闘の水準もよく見極めながら、例えば、医療の診療報酬改定は二年で一回だということにこだわることなく、必要があれば、賃上げがそれぞれの分野で図れるような対応も考えていくべきでありますし、また、そのためにも、刻々と変わる状況をリアルタイムで把握する、こういう努力も併せてお願いをしたいというふうに思います。

 また、飼料や肥料価格の高騰、需要の低迷、さらには気候変動など、我が国の農林水産業は大変厳しい状況にあります。私の地元でも、それぞれ、畜産をされている方々、あるいは農業を営んでいる方々、あるいは水産業を営んでいる方々から、本当にその厳しさを切々と訴えられるところであります。また、食料安全保障という見地もあります。また、今申し上げた農林水産業というのは、本当に地域を支える産業であることも言うまでもないところであります。

 こうした農林水産業で従事されている皆さん方の所得、これをしっかり上げていく必要があるというふうに思いますが、それに向けてどのような取組を考えておられるのか、農水大臣の御見解をお示しいただきたいと思います。

坂本国務大臣 世界人口の増大や気候変動などで世界の食料需給が変動いたしております。輸入食料や飼料、肥料などの価格は長期的に上昇をしております。この中で、後継者を育成しつつ農林水産業が持続的に営まれるためには、農林水産業者の所得を向上させることがまず肝要であるということは、委員御指摘のとおりでございます。

 このため、需要に応じた生産を推進し、まず、農業経営の経営管理能力を向上させること、それから、農林水産物のブランド化によりまして付加価値を向上させ、また、拡大する海外市場の需要を取り込んだ輸出の取組による販路拡大を通じて収入の拡大をさせる。その一方で、農地の集積、集約化や、スマート技術の開発、実用化の加速化等によりまして、生産性の向上を通じてコストの削減等を図ってまいる。

 これらによりまして農林水産業者の所得の向上を図ってまいりたいというふうに思っております。

加藤(勝)委員 高齢の皆さん方がだんだん農林水産業から引退される中で、若い皆さん方等々が志を持って取り組んでいただいているわけであります。そういった皆さんがこれから将来に向けて展望が持てる、こうした農政、農林水産行政を是非推進をしていただきたいと思います。

 また、我が国の社会経済活動を支える運輸、建設分野でも、燃料費や資材の高騰、人手不足、さらには、本年四月から時間外労働の上限規制が適用されるなど、なかなか難しい状況にあります。また、働く人からも、なかなか賃金が上がらなくて大変苦しいという声も聞くところでもございます。これらの分野では、雇用者全体の一割以上が従事をされておりまして、また、処遇の改善も強く求められております。

 こうした分野で働く人々の賃上げなど、処遇改善に向けてどのような方策をお考えになっているのか、国交大臣、お願いいたします。

斉藤(鉄)国務大臣 運輸業それから建設業の方々は、二〇二四年問題も踏まえ、処遇改善による担い手確保は喫緊の課題です。

 まず、トラック運送業につきましては、標準的運賃の引上げやトラックGメンによる是正指導の強化に取り組むとともに、元請事業者に対して多重下請構造の是正に向けた取組を義務づけるなど、適正な運賃導入を進める法律案を今国会に提出し、ドライバーの賃上げを実現してまいりたいと思います。

 次に、乗り合いバス事業及びタクシー事業につきましては、多くの事業者において運賃改定が進んでおり、また、貸切りバス事業については、新運賃制度が昨年十月から適用を開始されたところです。今後も、運賃改定を原資としたバス、タクシードライバーの早期の賃上げを実現してまいりたいと思っております。

 建設業につきましては、建設業法等を改正する法律案を今国会に提出いたしまして、国が適正な労務費の基準をあらかじめ示した上で、個々の工事においてこれを著しく下回る積算見積りや請負契約を下請取引も含めて禁止する新たなルールを導入することによりまして賃金原資の確保を図ってまいる、この法律案を国会に提出いたします。

 全力を挙げて、運輸業、建設業、賃上げが実現するように頑張っていきたいと思います。

加藤(勝)委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、年金の話を少しさせていただきたいと思います。

 今年は五年に一回の公的年金の財政検証の年であります。そして、その財政検証を踏まえて年金制度改正が行われることになります。例えば、被用者保険の適用拡大、あるいは年収の壁に対する制度への対応などもありますが、国民にとって最も大切な基礎年金の給付水準の低下への対応、これはマクロ経済スライドの調整期間の一致と言っておりますが、私はこれが大事だというふうに思っております。

 ちょっと見ていただきますと、二〇〇四年、このとき本当に大きな改革をして、将来にわたる持続可能な仕組みにいたしました。そのときの数字がここに書いてある数字でありますけれども、その後、デフレ等が起きることによって、一階の基礎年金と二階の報酬比例部分である厚生年金、この調整期間がだんだんずれていきました。前回の検証のときにおきますと、何と、厚生年金は六年間、その時点からでありますが、調整が終わるのに対して、基礎年金は二十七年間と長期にわたる。

 マクロ経済スライドの調整が長期にわたればなるほど、年金の水準は相対的に下がってまいります。したがって、当初二八・四であったものが二六・五ということになります。この二八・五というのは、いわゆるそこで働いている現役の男性の平均手取り収入に対する、夫婦二人の基礎年金と夫の厚生年金を割った、いわゆる所得代替率という物差しで見た数字を申し上げているわけであります。このずれを、ちょっと申し上げると時間がかかりますが、まさにデフレ下で進んできた。これはもう、これ以上は拡大しないという措置は取りました。しかし、この格差は残されたままであります。

 そして、特に基礎年金は、やはり基礎年金だけでお過ごしの方もおられます。あるいは、厚生年金を持っておられるけれども年金が少ない方においても、大変この基礎年金は重要であります。そして、何といっても、これは定額でありますから、所得再配分という意味においても大変重要な機能を持っているというふうに思うわけであります。

 これを見てお分かりのように、二〇一九年で六年で終わるということは、二〇二五年に上の二階は終わってしまう。これを考えると、今回の制度改正というものが、これを調整する私は最後のチャンスだというふうに思っております。

 この問題は、実は前回、令和二年の年金制度改正の中、これは私、厚労大臣だったんですけれども、そのときには、与野党からもこの問題が指摘をされて、改正法の附則に検討規定が設けられ、衆議院、参議院では附帯決議も付されたということでありますから、問題意識は党派を超えて私は共有されているというふうに思うところでございます。

 これを進めることによって、特に、こうして一致を図ることによって何が起きるかといえば、一階の部分が大きく水準が改善をされるということになります。この数字を見ていただきますと、二割程度基礎年金が改善するということになります。これは今年の財政検証を待たなければ具体的な数字は分かりません。そして、これをやった結果としても、厚生年金をもらっている方もほとんどが、全体としての年金水準は上がるということになります。

 しかし問題は、これをしようとすると、結果的に、基礎年金というのは半分が国庫負担でありますから、基礎年金水準が上がるということは国庫負担が増える、その財源をどうするかという問題、これはもちろんございます。すぐにその問題が生じるわけではなくて、二〇三〇年の多分前半頃からこうしたものが表れてくるのではないかというふうに思います。しかし、だからといって避ける話ではないと思います。まさに国民の理解を得ながら、政治的に私は判断していく必要があると思っております。

 是非、今回の財政検証、そしてそれを受けて行う次の制度改正について、この問題についてどう考えていかれるのか、総理の御見解をお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 マクロ経済スライドの調整期間ですが、これの経緯についてはまさに委員から御説明がありました。

 二〇〇四年に導入した当初、基礎年金部分と厚生年金部分、共に二〇二三年度に同時に終了する見通しであったわけですが、その後、デフレ経済の長期化、さらには女性や高齢者の労働参加といった社会経済の変化によって、二〇一九年財政検証では、基礎年金の調整期間が厚生年金の調整期間より長期化し、基礎年金の将来の給付水準の低下が見込まれる、こうしたことでありますが、これにつきまして、マクロ経済スライドの調整期間を含む次期年金制度改正における対応については、今年行われる財政検証も踏まえつつ、厚生労働省の審議会において、関係者とも十分議論しながら検討を進めていくこととなります。

 そして、その際に、委員から御指摘ありましたように、マクロ経済スライドの調整期間、これを一致させた場合、基礎年金の給付水準、これは現行の見通しより改善します。厚生年金の受給者についても、一部を除き年金額は上昇することになります。その一方で、国庫負担が増加するという課題がある。この中で今申し上げました議論を進めていくことになると認識をしております。

加藤(勝)委員 是非、先ほど申し上げたこの課題に真正面から取り組むこと、これはやはり国民の信頼を得ていく上でも極めて重要だというふうに思っておりますので、積極的な対応をお願いしたいと思います。

 あと、子育て等、少し質問したかったんですが、時間がなくなりました。

 まず、拉致問題のことを。

 私も、何度も拉致問題担当大臣をさせていただきました。昨年二月、横田早紀江さん、めぐみさんのお母さんが自宅で倒れられたときに、神様、どうかお願いします、もう二年だけでも頑張る力を下さいと思わず声が出たという、そうした報道もありました。この話を聞かせていただいて、私も、これまで担当にありながら拉致問題の解消が一向に進まなかった、本当にじくじたる思いを更に深めさせていただきました。もう一刻もない、猶予もない状況であります。

 今回の能登半島地震の被害を受けて、金正恩総書記から岸田総理宛てに見舞いの電報が送られたと朝鮮労働党機関紙で発表されました。災害においてもこうした対応は初めてと聞きました。これに対して林官房長官から感謝の意が記者会見で表されたとも聞きます。

 総理は、金正恩委員長との首脳会談を実現すべく直轄のハイレベルでの協議を進めるとされておりますが、やはり相手側の真意、これは慎重に分析しなければなりませんが、事態の展開の兆し、これは見過ごすことがなく的確に対応することが求められると思います。

 もう本当に、時間がないという言葉は使い尽くされてきた感もするぐらい、時間がありません。拉致問題の解決に向けた総理の御熱意をお示しいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 私自身、北朝鮮との間の諸懸案の解決に向け、金正恩委員長との首脳会談、これを実現するべく、私直轄のハイレベルでの協議を進めていく、こうした考えを申し上げ、取組を進めているところでありますが、もちろん、今委員の方から御指摘がありましたように、相手側の対応を分析しつつ的確な対応を行っていく必要がある、そのとおりであると考えております。このメッセージに対してどう考えるかということについても的確な対応が求められる、こういったことであると認識をいたします。

 そして、もうこの問題について時間がないという御指摘、全くそのとおりであります。私自身、横田早紀江さんを始めとする御家族から、何としても肉親と対面したい、こうした切々とした思いをもう何度となくお聞かせいただきました。本当に胸にかみしめ、差し迫った思いを強く感じているところであります。

 是非、この思いを受け、時間がない中、一日も早い全ての拉致被害者の御帰国に向けて、総理として全身全霊を傾けて取り組まなければならない強い覚悟を決めているところであり、その思いを胸に全力を尽くしたいと強く感じております。

加藤(勝)委員 是非、覚悟を持って当たっていただきたいと思います。

 それでは、時間がなくなりましたので、最後に、やはり憲法改正について一言お願いをしたいと思います。

 これだけ国際情勢が変わり、今年はアメリカの選挙もあると言われております。その中で、外交をどうするかということもありますが、やはり我が国の憲法をどうするのか。総理はさんざん触れておられますけれども、その憲法改正に対する思いを是非お示しをいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 もちろん、内閣総理大臣の立場から憲法改正に向けて、具体的な日程ですとか具体的な内容について直接触れることは控えなければならないと承知はしておりますが、その上で、御質問ですので、私の思いを申し上げさせていただきたいと思います。

 憲法というもの、あるべき国の姿を示す国の基本法であり、社会が大きく変化する中にあって、現行憲法が今の時代にふさわしいかどうか、こういったことを絶えず考えていく、このことは重要であると思っています。

 例えば、災害の時代と言われる中にあって、緊急事態の発生時、混乱の中にあっても国会の権能を維持することができるだろうかということを考えるですとか、少子化、あるいは東京への一極集中、さらには人口減少、こうした社会現象が進む中にあって、地域の民意の適切な反映と、そして投票価値の平等、この調和を図るということ、これについて基本法である憲法の観点からも考えるということは意義があることではないか、このように考えております。

 その中で、憲法というのは、日本の法典の中で唯一国民投票が定められている法典であります。最後は国民の皆様に判断をしていただかなければならないものであります。よって、そのためにも条文の具体化に向けて努力することは重要なことではないかという思いを申し上げさせていただいています。

 昨年十二月に、国民に幅広く理解をいただける改正項目、党派を超えた連携を目指す改正項目について我が党としての考え方を取りまとめるということを、私も総裁として指示をさせていただきました。

 こうした、憲法について国民の皆様に御判断いただくために努力をしていくことは大事だと考えておりますが、いずれにせよ、これは国会において是非十分な議論をしていただくことが重要であり、そのことを強く期待するところであります。

加藤(勝)委員 ありがとうございました。

 私も、憲法審査会における議論を深めながら、国民の皆さんの理解を得られるように努力をしていきたいというふうに思っております。

 ありがとうございました。

小野寺委員長 この際、長島昭久君から関連質疑の申出があります。加藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。長島昭久君。

長島委員 おはようございます。自由民主党の長島昭久です。

 質問の機会をいただきまして、委員長並びに与野党理事の皆様方には心より感謝を申し上げます。

 まず冒頭、元旦の能登半島地震で亡くなられた皆様方に心より御冥福をお祈り申し上げます。同時に、被災された全ての皆様方にお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 そして、まさにその被災地に救援に向かおうとした海上保安庁の航空機と日航機の衝突事故がございました。殉職された海上保安官の皆様方の御冥福を心よりお祈り申し上げ、また、御遺族の皆様方にお悔やみを申し上げたいと思います。

 また、今なお被災地で懸命の復旧作業に当たっている自衛官、自衛隊の皆さん、警察、消防始め自治体関係者の皆様方に心より敬意を表し、感謝を申し上げたい、このように思います。

 私は、外交、安全保障の課題に絞って質問させていただきたいというふうに思いますが、本題に入る前に、政治と金の問題について、一点、総理にお伺いをしたいと思います。

 もちろん、自由民主党の現職議員による不祥事ですから、深く反省をし、解党的出直しを図っていかなければならない、このように考えております。

 その中でも、いわゆる政策活動費、この問題、最近非常にクローズアップされておるわけでありますが、この政策活動費につきましては、党によって組織活動費あるいは業務委託費など様々呼ばれておりますけれども、政策活動費は、政党などの政治活動のために、自民党だけではなくて、立憲民主党、社会民主党、国民民主党及び日本維新の会の国会議員団などで支出をされていると承知をしております。

 そうした中で、現在、政治資金の透明化をめぐって国民の皆さんから厳しい目が向けられているこの政策活動費につきましても使途を公開すべきではないか、こういう議論がなされておりますが、改めて総理に、政策活動費についての御見解を承りたいと思います。

岸田内閣総理大臣 政策活動費については、まさに委員から御指摘がありましたように、各党によってその呼称は様々でありますが、これは政党などの政治活動のために用いられているものであると承知をしており、その在り方、これは政治活動の自由とも密接に関わる問題であると申し上げております。

 したがって、その廃止あるいは使途の公開、これを行う場合には、各党各派の真摯な議論を経て、各政治団体共通のルールに基づいて行うべきものであると考えます。

 我が党としても、そうした議論に真摯に対応したいと考えます。

長島委員 その上で、政策活動費の支出の現状について改めて確認しておかなければなりません。

 つまり、政策活動費というのが何を原資に支出されているのか、また、その支出先の範囲はどこなのか、こういうことは改革論議の前に少なくとも与党、野党の間で確認をしていく必要があると思います。

 その点、自由民主党におきましては、国民の税金が原資となっている政党助成金から政策活動費は支出しておらず、その原資は、政党独自の努力によって浄財を集めて、それを原資に充てているということでございます。また、政策活動費の支出範囲につきましても、限られた党役職者に対して、その職責に応じて支出しているものであります。

 他方、政党によっては、政党助成金を原資として政策活動費を支出しているところもあるようであります。

 したがいまして、政策活動費の廃止や使途の公開などを議論するのであれば、そもそも、国民の税金を原資とする政党助成金の使い方についても、何が適切なのか、あるべき姿についての議論も併せて行うべきではないか、このように考えます。

 いずれにいたしましても、政治と金をめぐる国民の皆さんの不信感を払拭するためには、各党各会派の皆さんと真摯に議論を行ってまいりたい、このように思っております。

 それでは、本題に入りたいと思いますけれども……(発言する者あり)

小野寺委員長 御静粛にお願いいたします。

長島委員 さて、年明け、党の国際局の派遣で、伊藤国際局長と一緒にワシントンに行ってまいりました。政府高官、上下両院、超党派の議員、あるいはシンクタンクの研究員など、意見交換を重ねてまいりましたが、そこで、安全保障に対して、日本に対する期待値の高まりというのをひしひしと感じました。

 私も九〇年代の後半にワシントンにおりましたが、そのときにはそういう安全保障で日本に期待するなんという声はほとんどなかったし、十年ほど前に外交、安全保障担当の総理補佐官を務めていた二〇一〇年代の初頭に比べても、劇的な変化だということが言えるのではないか、このように思います。

 これは、紛れもなく、二〇一三年から始まりました安倍政権、菅政権、岸田政権と引き継がれてきた安全保障政策のいわば構造改革の成果であるというふうに私は考えます。それによって、今日、我が国の安全保障政策はようやく国際標準に達しつつある、そして、それを背景にして積極的な外交が展開できるようになり、そのことが、アメリカを始め、同盟国あるいは同志国の期待値を高める結果になっている、このように考えています。

 とりわけ、二〇一四年の政府解釈の変更によって容認された集団的自衛権の行使、これは、安倍総理による戦後政治の総決算ともいうべき大きな決断だったというふうに思います。

 また、岸田総理が御決断された防衛費の倍増、これも非常にワシントンからの評価が高かった。特に一昨年末に策定された国家安全保障戦略の内容、これは、私も一九八〇年代からこの安全保障問題に関心を持ってきたわけですけれども、隔世の感があるというふうに思います。中でも、反撃能力の保有というのは、これは画期的な決断だというふうに思っています。

 その意味で、木原防衛大臣の巡航ミサイル・トマホーク購入の前倒しの決断、これは私は本当に見事だったというふうに思います。国産の開発をベースにしながらも、同盟の力を活用して抑止力のギャップを埋めていくというこの決断をしていただいた木原大臣、非常に、本当に頼もしいと感じました。

 ただし、残念ながら、停滞している分野もございます。大きく三つです。一つは、セキュリティークリアランス制度の導入。もう一点は、防衛装備品の海外移転をめぐる規制緩和。そしてさらには、三点目、能動的サイバー防御、アクティブサイバーディフェンスを実施するための法整備と体制の整備。

 私は、最低この三つ、総理、この三つぐらいは実現をして初めて真の意味で我が国が同盟国や同志国との連携の中でリーダーシップを発揮する国になれるんだ、このように思っております。

 その中で、ようやく、第一の課題であるセキュリティークリアランス法案が今国会に提出されることになりました。これは、高市大臣は、本当に大きな御功績だというふうに思います、昨年の九月の就任以来、本当に粘り強くこの問題に取り組んでこられました。当初は身構えていた経済界も、今や歓迎に転じるまでになりました。そして、この国会に法案を提出する、そこまでこぎ着けられた御努力に敬意を表したい、このように思います。

 しかし、あとの二つは決定的に遅れています、総理。

 まず、防衛装備品の海外移転について伺いたいと思います。

 これも一昨年から、まさに小野寺委員長が与党協議の先頭に立って尽力していただいて、幾つかのブレークスルーはありました。例えば、ライセンスバックといって、ライセンス生産した装備品をライセンス元の国に売り戻す、こういうことができるようになりました。売り返すことができるようになった。最近も、これによって、ペトリオット防空システムの対米輸出が決まりました。

 そしてもう一つは、従来から海外移転が可能とされていた五分野、これは救難、輸送、警戒、監視、そして掃海、この五分野の装備品なんですけれども、これまでは、輸送艦から自分たちを防護するための二十ミリ機関砲まで降ろして、それで輸出せざるを得なかったわけですが、これもしなくてよくなった。これはある意味で一つ大きな前進だと思います。

 しかし、最も重要で喫緊の課題が残されることになりました。

 それは、国際共同開発、生産をした完成品を我が国から第三国へ直接移転する問題であります。

 具体的に申しますと、二〇三五年に退役が見込まれるF2戦闘機の後継機となる次期戦闘機、これを、アメリカでもない、自主開発でもない、イギリスとイタリアとの共同開発をすることを選択したわけです。

 我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しくなる中で、この次期戦闘機が我が国にとって代替手段のない極めて重要な装備品であることは言うまでもありません。この共同開発を通じて我が国の防衛上必要な性能を満たす戦闘機を開発できるか否かは、これはまさしく我が国の国益の根幹に関わる問題です。

 そして、製品というものは何でもそうですけれども、研究して、開発して、そして生産して終わりではありません。その後、広く製品が売れなければ意味がない。スケールメリットを念頭に置いて、当然のことながら、イギリスもイタリアも、調達価格を低減するために完成品の輸出が必要だ、こういうふうに考えているわけですね。

 したがって、完成品の第三国への移転は、この三か国共同プログラムの成否を握る核心だと言っても過言ではないと思います。こうした中で、我が国だけが完成品の第三国への移転を拒めばどうなるか。この場合は、日本がこの共同プロジェクトにおける主導権を失うばかりでなく、パートナー国に対しても制約を課すことになり、プログラムそのものが台なしになる。しかも、このプログラムは国際的に極めて注目をされております。

 したがって、我が国の対応次第では、国際的な信用を失い、ひいては国際共同開発、生産という世界的な潮流から外れてしまう、孤立してしまうおそれがあると私は考えています。

 総理、この次期戦闘機をめぐる国際共同開発プログラムの核心である完成品の第三国移転について、その必要性について総理のお考えを伺いたい、これが一点。

 そしてもう一つ、大事なことは、この三か国共同プログラムというのは、三月にも作業分担の協議が日本、イギリス、イタリアとの間で本格化するんですね。早急な対応が必要なんです。必要性と同時に、今後の議論の進め方、スケジュール感についても、総理の方針を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、昨年末の装備品移転に係る制度の見直しについて与党内で精力的に御議論いただきましたこと、このことについては感謝を申し上げます。

 その上で、防衛装備品が高性能化する、あるいは高額化する中にあって、防衛上必要な優れた装備品を効率的に取得するためには、技術や資金、これをパートナー国と分担し合う国際共同開発、そして生産、これに参画することが極めて有効であるという考え方に基づいて具体的な取組が進められています。特に航空機などの分野においては、まさにこういった考え方が主流になっているというのが現状であります。

 一般的に、国際共同生産の規模が大きくなるほど調達価格の低下につながるため、自国やパートナー国での完成品の調達に加えて第三国移転を推進することが、共同開発を主導し、円滑かつ効率的に進めていく上で重要であると考えております。

 政府としては、先ほども御指摘がありました、国家安全保障戦略に示した装備移転の意義、すなわち、力による一方的な現状変更は許さない、また、望ましい安全保障環境の創出等のために装備品移転が重要な政策手段になるという意義に照らして、完成品の第三国移転を含め、国際共同開発、生産に幅広く円滑に取り組むことが国益にかなうと考えております。

 その上で、最後、今後のスケジュール感ということでありますが、現在、具体的な共同開発案件として、日英伊で共同開発しているGCAPがありますが、これについては、三月以降、開発企業間で作業分担に係る協議の本格化が見込まれます。このため、二月末を本件に係る与党間の結論を得る時期としてお示しをしているところであり、政府としても、これまで同様、与党の合意を得るべく丁寧な説明を尽くしていかなければならないと考えております。

長島委員 二月末までにしっかりやっていただきたい、こう思います。

 他方で、これは戦後初となる戦闘機の海外移転ということになりますから、国民の一部に懸念があることも事実なんです。特に、我が国の平和国家の基本理念や戦後の歩みに反するのではないかという慎重論があることも事実であります。

 総理、こうした懸念、今、総理が必要性について説明していただきました、我が国が参画する国際共同プロジェクトで生産される戦闘機の海外移転、これは我が国の安全保障にとって大事であるということ、それと我が国の平和国家としての基本理念との整合性について、総理から国民に分かりやすく御説明をいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 我が国は、平和憲法の精神にのっとった専守防衛の方針の下、自衛隊発足以来七十年にわたり、戦闘機を整備し、そして運用してまいりました。

 戦闘機の主たる任務ですが、これは侵攻してくる航空機やミサイルを迎撃し、領空侵犯を防ぐことにあり、侵略を抑止し、我が国を守る重要な防衛装備であると考えています。こうした戦闘機の有する抑止力、これは移転三原則に示された、地域における抑止力の向上に資するものであると考えます。

 その上で、移転についてでありますが、移転に当たっては、個別の案件ごとに移転先を厳格に審査し、かつ、移転後の適正管理も確保することとしており、平和国家としての基本理念に反するものではないと考えます。

 いずれにせよ、この国際共同開発、生産の完成品の第三国移転については、先ほども申し上げましたように、与党との合意を得て進めていきたいと考えております。御協力をお願いいたします。

長島委員 大事な点なのであえて申し上げますけれども、先週金曜日に自民党で部会がありまして、報道によると、与党協議のカウンターパートである公明党への批判が続出した、こういう報道がありますけれども、私もその場におりましたが、正確に申し上げますと、部会での結論というのは、総理自らが、友党である公明党、しっかり皆さんと直接話し合って、説得、説明をしていただきたい、こういうことでありました。

 勘違いしてはいけないのは、公明党さんの背後にも国民がおられるわけです。そして、野党の皆さんの背後にも多くの国民がいらっしゃるわけです。そういう方々の不安や疑問にもきちっと向き合って、そして政府が説明責任を果たしていく必要がある、こういうふうに思っています。

 私自身は、平和国家の基本理念、これは大事だと思います。しかし、五十年前のときと国際環境が大きく変わっているということは念頭に置く必要があるんだろうと思います。

 例えば、戦前、戦中の反省に基づいて日本が何もしなければ、日本がじっとしていれば国際平和が保たれるといった、そんな考え方があった時代の平和国家という言い方と、例えばウクライナ戦争しかりですけれども、日本が積極的に行動しなければ国際平和が維持できない、そういう厳しい時代に今置かれている、そういう中で、日本がどうしていくかということが問われていくんだろうと思っています。

 そういう意味で、安倍政権時代に積極的平和主義、これは、自分さえよければいいという一国平和主義ではなくて、積極的に行動することによって国際平和に貢献していく日本にしようということで、積極的平和主義というものを打ち出したわけです。恐らく、総理もそれは継承されているというふうに思います。

 是非、この積極的平和主義の理念に基づいて、国民あるいは友党の説明に全力を尽くしていただきたい、このように思います。

 さて、もう一つ。これも総理のリーダーシップが最も求められているんですが、アクティブサイバーディフェンス、能動的サイバー防御のための法整備。皆さんのお手元に新聞記事を一部配らせていただきました。実は、今朝の読売新聞で、外務省もやられているという報道がございました。「能動的サイバー防御 急務」「通常国会 法案提出見送り」「政府・与党の対応後手 経済損失拡大の恐れ」、こういう、今見出しだけを読ませていただきましたが、総理、今国会法案見送り、もう諦めてしまったんですか。

岸田内閣総理大臣 我が国のサイバー対応能力を向上させること、これは、現在の安全保障環境を鑑みますと、ますます急を要する課題であります。

 この問題につきましては、お尋ねのような先送りではなくして、可能な限り早期に法案をお示しできるよう検討を加速しているところであります。令和四年十二月に閣議決定した国家安全保障戦略に掲げた、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる、こうした目標に向けて努力をしてまいります。

長島委員 一刻も猶予はないんですね。

 このパネルを是非見ていただきたいと思うんですけれども、先月の二十日に、JAXA、月探査衛星が月面着陸に成功して大きな話題になりました。世界で四番目となる快挙、我が国の技術力の高さを世界に証明をしたということなんですが、このJAXAの高い技術を狙って、昨年の夏頃からサイバー攻撃が行われ、ネットワーク機器の脆弱性が悪用され、内部情報の漏えいが確認された。

 また、七月には、これは二行目ですけれども、日本第四位の取扱高を誇る名古屋港コンテナターミナルのシステムに、これもランサムウェアのサイバー攻撃が発生をして、システム障害が起こって、コンテナの積卸しが二日間にわたり停止をし、一万五千のコンテナ搬出入に影響が出て、物流に大きな混乱が生じた、これは記憶に新しいと思います。

 八月には、サイバーセキュリティーをつかさどるNISCでも、そして気象庁でも電子メールシステムの機器の脆弱性を悪用したサイバー攻撃が行われ、情報漏えいが発生している、こういうことであります。さらに、防衛省も、それから外務省も、こういう報道がなされているわけです。

 河野NISC担当、サイバーセキュリティー担当大臣にお伺いをしたいんですが、このような先端技術を有する独立行政法人あるいは民間企業へのサイバー攻撃について昨年何件あったか、それから、名古屋港のような重要インフラや政府機関へのサイバー攻撃はそれぞれ何件認知しているんでしょうか。

河野国務大臣 政府機関及び独立行政法人は、GSOCにおいて不審な通信を検知すると、その機関に対して通報をいたします。その件数で申し上げると、昨年の四月から九月までの半年間、政府機関は百二十五件、独立行政法人は百三十二件、そうした不審な通信の検知がございました。

 また、重要インフラにつきましては、それぞれ行動計画に基づいて、インシデントを検知したときに、所管官庁を経由してNISCに報告がございます。これは、昨年一年間で合計して百三十四件を検知したことになります。

長島委員 これは国家公安委員長でしょうか。それぞれのサイバー攻撃に対する攻撃者の特定、これはアトリビューションと呼んでいますけれども、これはできているんでしょうか。

松村国務大臣 警察におきましては、サイバー攻撃を受けましたコンピューター、また、攻撃に使用された不正プログラムを解析をいたしまして、その結果や犯罪捜査の過程で得た情報などを総合的に分析、そのことによって攻撃者及び手口に関する実態解明や特定を進めているところでございます。

 具体的には、例えば、令和五年九月に、我が国や米国などの政府機関、通信業界等から秘密情報を盗み出していた、中国を背景とするブラックテックと呼ばれるグループを特定をいたしまして、警察庁、NISC及び米国の関係機関と合同で注意喚起を行ったところでもございます。

 引き続き、関係機関と連携をいたしまして、被害拡大の防止や未然防止を図るよう警察を指導してまいりたいと考えております。

長島委員 努力されているのは分かるんですけれども、先ほど河野大臣が言われたように、百二十五件、百三十二件、これは全てについてきちっと攻撃者は特定できているんでしょうか。

松村国務大臣 全てについては把握ができておりませんが、その捜査は進めておるところでもございます。

長島委員 本当に心もとない答弁なんですけれども、攻撃者の特定ができなければ脅威を除去することはできないんですね。

 能動的サイバー防御というのは、国際法上の対抗措置を根拠として行われるわけです。そのためには、攻撃が国家に帰属していることをきちっと示した上で行わなければならないんです。したがって、アトリビューションができないと、対抗措置が取れない、やられっ放しになるということなんですね。

 サイバー攻撃に対処するには、一般論として二つのことがどうしても必要になります。一つは、平素から攻撃に関する通信を監視しておかなければならないということなんですね。そうでなければ、攻撃を直ちに把握して、そして攻撃に関する通信データの蓄積がなければ、アトリビューション、攻撃者の特定はできません。これが一点。もう一つは、サイバー攻撃の脅威を除去するためには、特定された攻撃者のサーバーや発信元までアクセスできなければならないんですね。

 河野大臣、このようなことは現行法では難しい、つまりは、アトリビューションについては、電気通信事業法で通信の秘密の保障の壁に阻まれて難しい、そして発信元までアクセスすることは不正アクセス禁止法でできない、こういう今現行法の壁がある、このように理解してよろしいですか。

河野国務大臣 検閲及び通信の秘密を守るということは、これはもう憲法にも規定をされていることでございます。そういう中で、いかにアクティブサイバーディフェンスを行っていくか、これは憲法上の、あるいは法律上の問題点をしっかりクリアしてやっていかなければならぬと思っております。

長島委員 まさにそのとおりで、ちょっと憲法論をここでやりたいと思います。

 ここが、能動的サイバー防御を可能にする法改正の肝の肝です。今、河野大臣がまさに言われたように、いや、これは憲法二十一条、通信の秘密の保障があるから、能動的サイバー防御の法制化、つまりは電気通信事業法や不正アクセス禁止法の改正はなかなか難しいんだ、こういう声が政府内からも実は聞こえてくるんですね。

 では、ここで、そもそも通信の秘密の保障とは何ぞやということで、内閣法制局長官に今日は来ていただいていると思いますので答弁をお願いしたいと思いますが、私から、一応、憲法学界多数説じゃなくて通説を御紹介申し上げますが、二十一条の一項はもちろん表現の自由ですけれども、二項は「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」。非常に端的な文章でありますけれども、「検閲は、これをしてはならない。」というのは、これは絶対的禁止。どんな理由があろうとも検閲は駄目だと。しかし、通信の秘密につきましては、憲法十二条、十三条に明記された公共の福祉による必要最少限度の制約を受ける、この解釈でよろしいですね、政府も。

近藤政府特別補佐人 今お尋ねは、憲法第二十一条二項に規定する通信の秘密ということが中心かと思いますけれども、通信の秘密はいわゆる自由権的、自然的権利に属するものであるということから最大限に尊重されなければならないものであるということでございますけれども、その上で、通信の秘密につきましても、憲法第十二条、第十三条の規定からして、公共の福祉の観点から必要やむを得ない限度において一定の制約に服すべき場合があるというふうに考えております。

長島委員 これは非常に大事な答弁だというふうに思います。通信の秘密は絶対無制限なものではないと。したがって、憲法に規定された公共の福祉による必要最少限度の制約を受けるということであります。

 実際、これはまさに常識でありまして、ほかの先進国、先進立憲民主主義国家でも、成文憲法があるなしにかかわらず、我が国と同様、通信の秘密あるいはプライバシーというのは憲法で保障されているわけです。それでも、ほかの国は、国家の安全と重要インフラを守るという公益の観点から、パブリックインタレストの観点から、つまり公共の福祉の観点から一定の制約を認めて、アクティブサイバーディフェンス、能動的サイバー防御が行われている、こういうことなんですね。

 私は今日二十一条を見せましたけれども、この二十一条は、特に日本に特有の条文でも何でもないんですね。日本国憲法の中で比較憲法学上特別な条文があるとしたら、憲法九条二項ぐらいですよ。しかし、憲法九条二項でも「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」と書いてありながら、陸海空自衛隊の存在を合憲としているわけですね。したがって、解釈の余地はあるということなんです。もっと柔軟に解釈してほしいというのが私の要望です。

 つまりは、これは現実の要請によってそういう柔軟な解釈を施しているわけです。したがって、手紙から始まって、電話、そして今のインターネットを中心とする通信手段が飛躍的に進化して複雑化する現代高度情報社会の現実に照らして、私は、二十一条の解釈も柔軟であってしかるべきだと。是非、長官、よろしくお願いいたします。そうでなかったら、国家の安全や重要なインフラを、そして国民の命や平和な暮らしを守ることはできないということであります。

 ここから先は立法技術論になるんです。現代の高度情報化社会にあって、通信の秘密という基本的人権と公共の福祉、公益、パブリックインタレストとのバランスをしっかり考えてこの立法府の中できちっと法制化すればいい、こういうことになるわけです。

 ここで政府の公約をおさらいしたいんですけれども、皆様のお手元に、国家安全保障戦略、能動的サイバー防御のところを抜粋してあります。

 大事なところをちょっと読みますけれども、サイバー安全保障分野での対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる。その意気やよしですね。そして、最後の二つの星を見ていただきたいんですが、これは結構具体的に書かれています。国内の通信事業者が役務提供する通信に係る情報を活用し、攻撃者による悪用が疑われるサーバー等を検知するために、所要の取組を進める。そして最後、国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃について、可能な限り未然に攻撃者のサーバー等への侵入、無害化ができるよう、政府に対し必要な権限が付与されるようにすると。

 ここに書かれていることを、総理、全部法制化していただきたいんです。一刻の猶予もありません。先ほど表でお見せいたしました。

 我が国の現状というのは、攻撃する側に圧倒的に有利なんですね。考えていただきたいのは、残念ながら、サイバー攻撃の意図を持った国が存在するということなんです。それからもう一つは、AIなどの発達によってサイバー技術というのは飛躍的にアップして、もう日進月歩だということなんですね。

 総理、我が国の安全と重要インフラを守るために、能動的サイバー防御を可能にする法改正案を今国会に提出していただきたいと思います。国民の命と財産、平和な暮らしを守るために、総理の明確な御答弁を、御決意を承りたいと思います。

岸田内閣総理大臣 委員の御指摘のとおり、サイバー対応能力を向上させること、現代の安全保障環境を考えますと、これはますます急を要する課題であると強く感じております。

 この課題について、可能な限り早期に法案を提出できるよう検討を加速しているところであります。

 先ほど国家安全保障戦略の引用もされましたが、そこでうたっている取組、これを実現するべく、検討を加速してまいります。

長島委員 総理、もう一言いただきたいんですよね。

 今、可能な限り早期に法案をお示しできるようというふうにおっしゃったのは、これは本会議でも、総理、こういう御答弁だったんです。

 今、私がるる、緊迫した情勢について、できる限り分かりやすく、エビデンスに基づいてお話、御説明をさせていただきましたので、総理、この加速という意味は、今国会中何が何でもやる、是非お答えいただきたいと思います。

 というのは、これは法案が提出されて法整備ができても、それから体制を整備して、そして権限と体制がそろって初めて能動的サイバー防御ができるようになるんですね。今この瞬間でも、我々はサイバー攻撃を受けているかもしれないんです。そういうやはり切迫感を持って総理には御答弁いただきたいと思います。よろしくお願いします。

岸田内閣総理大臣 能動的サイバー防御の重要性、先ほど申し上げたとおりであります。それへの取組として、サイバーセキュリティセンターの大幅な増員、あるいは予算の増額などを行っていきたいと考えているところですが、その中で乗り越えなければならない、整理しなければならない課題があると承知をしております。

 現状においては、可能な限り早期に法案をお示しできるよう検討を加速してまいりますということを申し上げさせていただいております。

長島委員 今、総理、様々な課題とおっしゃった。その一番の中核的な課題は、憲法二十一条、通信の秘密の保障だと思います。でも、先ほど法制局長官がおっしゃったように、公共の福祉、公益、パブリックインタレスト、これは、国の安全、重要インフラの防護というのは、もう正真正銘、最大の公共の福祉と言って過言ではないと思うんですね。そのことによって制約を受ける可能性があるんだということを、はっきり先ほど法制局長官がおっしゃっていただきました。

 したがって、通信の秘密は聖域ではありません。これをしっかり乗り越える法案提出を今国会に行っていただくことを強く求めて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

小野寺委員長 この際、佐々木紀君から関連質疑の申出があります。加藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。佐々木紀君。

佐々木委員 自由民主党の佐々木紀です。

 被災県選出議員として、能登半島地震についてお伺いをいたします。

 発災から五週間がたちました。亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げ、被災された皆様にお見舞いを申し上げます。また、人命救助、インフラ復旧、被災者支援に御尽力をいただいている全ての皆様に感謝申し上げます。

 同時に、台湾から二十五億円超の義援金をいただくなど、世界からの御支援にも御礼を申し上げたいと思います。

 未曽有の大惨事となりました。総理始め閣僚の皆様も現地を視察され、被災地の惨状を目の当たりにされ、直接被災者の声を聞いていただきました。

 私も、先週二日に被災地を訪れ、見聞きしてまいりました。そのときに是非政府に届けてほしいと言われた内容について、本日は質問をさせていただきたいと思います。被災者の皆様も聞いておいでます。前向きな答弁をお願いいたします。

 総理は、施政方針演説の中で、今回の震災では厳しい状況が幾重にも重なりましたと述べられ、震災と表現されました。

 大地震、大津波、大規模火災、液状化、そして半島特有の地理的ハンデ、コロナ禍、物価高、人手不足、高齢化、過疎など社会的事情なども相まって、幾重にも重なって、これまでにない大惨事となっております。支援活動も困難を極めています。輪島の市街地では、発災から一か月たっても、時間が止まったかのように、いまだ手つかずの状況でした。

 総理がおっしゃるように、できることは全てやる、過去の例にとらわれない支援が必要です。是非、能登半島大震災と命名して、更なる支援や今後の教訓にするなど、復興に向けた総理の決意をお聞かせいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣 今回の能登半島地震ですが、半島特有の地理的な制約ですとか、高い高齢化率等の社会的背景も相まって、厳しい状況が幾重にも重なり、甚大な被害が生じました。

 一日も早い復興復旧に向けて、既に支援パッケージを決定したところですし、また、それに加えて、今後、息の長い取組になること、これも踏まえて、今回新たに能登半島地震復旧・復興支援本部、これを創設したところであります。

 おっしゃるように、できることは全てやる、その思いで、被災者の帰還と被災地の再生まで、責任を持って取り組んでまいります。

 その上で、名称について御指摘がありました。

 大震災という名称については、法令に大震災という用語が使われているのは、東日本と阪神・淡路、この二つであると承知をしています。死者・行方不明者が複数県に及び、被害規模が特に大きい等の理由から大震災と位置づけられた、こうした過去の例を参考にする必要があると思いますが、いずれにしろ、今回の被害規模については、まだ公共土木等の被害規模、これは査定が終わっておりません。まずは、震災の実態に最大限取り組みながら、被害規模等の査定をしっかり進めていきたいと考えております。

佐々木委員 ありがとうございます。

 全体の被害はこれからということですけれども、一人の方が負った被害というのはどの地震もやはり変わらない、被災はもう変わらないわけでございますので、是非最大限の御支援をいただければと思います。

 少し質疑の順番を入れ替えさせていただきまして、四番、五番、六番、十二番、十三番を先に質問させていただきたいと思います。

 政府は、被災者の生活となりわい支援のためのパッケージを発表していただきまして、一千五百五十三億円の予備費の拠出を速やかに決めていただきました。復興への光が見えてきたかなと思います。

 先の見通しをつけるということが大変大事なわけでございまして、支援パッケージの中身についてお伺いします。

 まずは、農業、漁業の再開についてお伺いしたいと思います。

 能登は世界農業遺産に認定をされておりますが、今回の地震で、その基盤である農地等が甚大な被害が出ております。漁業も同様に悲惨な状況になっております。

 坂本大臣は、昨日、輪島を視察されました。輪島は石川県一の漁獲高があり、若い後継者が育つなどの持続可能な漁業、もうかる漁業を実現してきた地域です。海女さんも二百人ほどいます。早く漁に出たいんだけれども、地盤の隆起や護岸の損傷がそれを阻んでいます。

 今日お手元にも資料を配付してございますけれども、ぱっと見ると普通の状況なんですよ。普通に漁船も並んでいて、普通なんだけれども、よく見ると、海底が隆起をしていて、船の船底が擦っているんですね。だから、出られないんです。また、岸壁も上がっていますから、荷物の揚げ降ろしもできない。給油する施設も破損しているので、給油もできない。だから、出たくても出られないというのが、そういうことなんですね。

 是非、こういったことも含めて、今後、農業、漁業の再開にどのように支援をしていくのか、坂本農水大臣にお伺いします。

坂本国務大臣 私も、一月二十一日、ヘリで、空からですけれども、農地、海岸線、それから山林、それぞれ視察をいたしました。昨日は、陸路が開通しましたので、行けるようになりましたので、金沢から輪島の方に向かって、穴水も含めて、輪島漁港、あるいはJAのと、内浦、そういった漁業関係者、そして農業関係者の皆様方と意見交換をしてまいりました。

 委員言われましたように、やはり海岸の隆起、これは大変な状況でございます。漁港も、隆起と陥没が一緒になって、一・五メートルから二メートルの段差ができる、そういう状況でございました。農地の方も、世界農業遺産の能登の里山里海、これが大きく崩壊しているという状況でございました。

 こういうものに対応するためには、委員今おっしゃいましたように、先月の二十五日に政府として策定いたしました被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ、これに基づいて様々な対策を実行していきたいというふうに思います。

 まずは、農地、用排水施設、それから林地、林道、漁港などのやはり生産インフラ、これをまず復旧、そして復興させなければなりません。それと同時に、農業機械、畜舎、それから漁船等、個人の所有物であるものに対しても支援をしていかなければなりません。再建のための準備をいたします。そして、さらに、金融支援や農業共済の早期支払い、こういった金融面での、あるいは共済面での支援活動もやっていく。そういう重層的な支援によって、一日も早いなりわいの再生というものを果たしてまいりたいというふうに思います。

 石川県の馳知事からは、農林水産業の復旧なくして能登の創造的復興はなしというふうに言われております。この考え方をしっかり受け止めて、そして、早期のなりわいの再生、それに全力を尽くしてまいりたいと思っております。

佐々木委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 続きまして、災害廃棄物の処理についてお伺いします。

 今日は珠洲市の津波の状況の写真もつけておりますけれども、大変な量の災害廃棄物、家屋の倒壊が発生しております。珠洲市長は、瓦れき処理に十二年ほどかかる量だということもおっしゃっているわけでございまして、被災自治体の財政負担をいかに減らしていくかということが大変大事だと思います。

 支援パッケージでは、自治体の負担割合を二・五%にまで軽減していただいておるわけでありますけれども、この負担割合も、数%であっても、小さな自治体にとっては大変大きな財政負担になるわけでございます。更なる負担軽減が必要だと思いますが、伊藤環境大臣の見解をお願いいたします。

伊藤国務大臣 お答え申し上げます。

 被災者が一日も早く安心できる暮らし、それを取り戻すためには、災害によって生じた大量の災害廃棄物の処理を迅速に行う必要があると思います。

 今回の地震による災害が特定非常災害に指定されたことを踏まえ、被災市町村の災害廃棄物処理を支援する災害等廃棄物処理事業補助金について、地方財政措置と合わせて国の負担率を九七・五%としたところでございます。

 私も、県の災害対策本部に出たときに、珠洲の市長から直接要請を受けました。

 このように、被災市町村に対してしっかり財政支援を行っているところでございますけれども、珠洲市のように、二・五%も現状ではなかなか負担できないという市町村はたくさんあると思います。各市町村の具体的な被害状況を踏まえて、それぞれの財政力に鑑み、追加的な支援が必要となる自治体に対しては更なる負担軽減を行うということで検討しているところでございます。

 環境省としては、今般取り組まれた被災者の支援となりわいの支援のためのパッケージに基づき、被災地における倒壊家屋の解体撤去や災害廃棄物の迅速な処理などに対して支援を加速化してまいります。

佐々木委員 ありがとうございます。更なる負担軽減策を検討していただけるということで、大変心強い限りでございます。よろしくお願いいたします。

 続きまして、復興基金の創設についてお伺いします。

 石川県は、創造的復興を掲げて、先般、復旧・復興本部会議を立ち上げました。政府と連携して復興を推進していくとしております。可能な限り各省庁の補助メニューを使って復旧復興を進めていきますけれども、どうしても国庫負担の対象外となる自治体の単独事業も存在いたします。

 復興には相当の時間を要する、期間を要するため、国として長期の支援を行う観点から、熊本地震のときのような地方自治体の判断で活用できる復興基金を創設すべきと考えますが、松本総務大臣の見解をお願いいたします。

松本国務大臣 今、佐々木委員からお話がございましたように、復興基金は、災害が極めて大きくて復興に相当の期間を要する場合に毎年度の措置で対応が難しい場合、例外的な措置として実施されたと承知をしておりますし、これもお話がありましたとおり、この基金は、個別の国庫補助を補って、国の制度の隙間の事業について対応するものでございます。

 この度の地震による対応につきまして、復興基金につきましては、被害の状況や今後実施される各府省庁による支援の全体像を把握した上で、被災者のきめ細かなニーズに対応しつつ、これも今お触れになったかと思いますが、石川県から示されるビジョンに沿った復旧復興に取り組めるよう、その必要性を含め適切に判断をしてまいりたいと考えております。

佐々木委員 是非お願いをしたいと思います。もう今でも相当な自治体負担が生じております。

 もう一つ申し上げると、今、いわゆる被災地と言われている六市町、奥能登の地域以外にも、私の選挙区である小松や加賀も被災者を受け入れている。被災地ではないんだけれども多くの被災者を受け入れて、そのために多くの支出もあるわけでございまして、そういったところに対する目配りもしていただく必要性もありますものですから、是非、この復興基金、創設をいただきたいと思います。

 次に、輪島塗の復興についてお伺いします。

 世界唯一の漆芸専門美術館というのが輪島にございます。石川県輪島漆芸美術館を先日訪問いたしました。輪島塗の地球儀が無傷で残っておりました。輪島塗の技術の粋を集めた大変すばらしい作品でした。輪島塗は間違いなく世界一の工芸品です。近年は若手職人も育ってきておりまして、途絶えさせてはならないと力強い声も聞こえております。

 経済産業省としてどのように輪島塗を復興支援していくのか、お考えをお聞かせください。

齋藤(健)国務大臣 先月、私自身も七尾市や輪島市等を訪問して、今回の地震による被害の甚大さ、これを改めて認識をいたしました。

 現地では、輪島塗を始め、石川県内の伝統産業に携わる職人の皆様から直接お話を伺いまして、伝統工芸を途絶えさせることなく未来につなげていく、そういう強い思いに触れました。経済産業省として、こうした現場で頑張っている事業を守っていくという使命、これを改めて自覚をいたしました。この方々をしっかり支えていかなければならない、そういう気持ちを新たにいたしました。

 復旧復興に向けましては、先月二十六日に閣議決定した予備費等を活用して、建物や設備を復旧するためのなりわい補助金や、事業再開に必要となる道具ですとか原材料ですとかそういったものの確保を支援する伝統的工芸品産業支援補助金、こういったものに加えまして、仮設工房の整備のための仮設施設整備事業などを、手厚い支援、こうしたものを講じていきたいと考えています。

 また、百貨店等の催事や展示会への出展支援を行うとともに、外務省を通じまして、在外公館等での海外へのPR、こういったものなども行いまして、伝統工芸のすばらしさを国内外に発信すべく取り組んでまいりたいと考えています。

佐々木委員 ありがとうございます。

 伝統工芸というのは、本当に工程が幾つもあって、専門的な職人が何人も集まって、分業で一つの作品を作っていくというものですから、今ほども、工房を造っていく支援をしていただけるということで、早くそういった皆さんを、集まっていただいて仕事ができるように、そして、外務省で海外のお土産にも使っていただくというようなお話もありました。とにかく、買っていただいて、仕事をつくっていただくということも大変大事なんだろうと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 次に、復興割についてお伺いします。

 今日は資料をつけておりますけれども、石川県というのは縦に長いわけでして、金沢や南加賀は地震の影響は少なかったんです。むしろ、今は風評被害に苦しんでいます。奥能登から南加賀は百キロほど離れておりまして、余り金沢、南加賀は被災をしていないにもかかわらず、皆さん敬遠して、観光客も商品の注文も来ないような状況です。石川を観光して応援する、石川のものを買って応援するという機運を高めていただきたいと思います。

 そういった意味で、北陸応援割は大変ありがたい施策です。しかし、実施時期について、三月、四月を念頭とのことですが、地元からは、二次避難先として利用されている宿泊施設はどうなるんだという声とか、需要が落ち込むゴールデンウィーク以降も実施してほしいといった声もございます。実施時期については柔軟な対応をしていただきたいと思います。一方、能登半島については、復興の進捗を見ながら、別途手厚い支援をお願いします。

 そして、あわせて、北陸割を発表した途端に、割引の基となる宿泊料金自体を引き上げてしまう、悪いことを考える業者もいると聞きます。この辺の対応や政府の見解についてお伺いしたいと思います。

加藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の能登半島地震により、北陸地方においては、通常どおりの営業が可能な地域でも予約のキャンセルが相次ぐ宿泊施設が多数存在しているなど、観光業界が大きな打撃を受けているものと承知しております。

 このため、本年三月の北陸新幹線金沢―敦賀間開業の機会も捉え、ゴールデンウィークまでの三月、四月を念頭に、北陸四県を対象として、旅行代金を割り引く北陸応援割を実施することとしております。

 一方、御指摘のように、二次避難先として利用されている宿泊施設があるなど、地域には様々な事情がございます。こうした地域の様々な事情を踏まえ、具体的な時期については柔軟に対応してまいります。

 また、北陸応援割の実施に合わせて、助成分をあらかじめ上乗せするなどの不当な価格設定が行われないよう、宿泊事業者に対して周知すること、さらに、合理的な範囲を上回るような高額な価格設定をしていることが明らかである場合は、国へ報告を行うとともに、事業者の登録抹消などの措置を含め厳正に対処すること、こうしたことを各県に対する補助金の交付要綱において明記し、適切な対応を求めているところでございます。

佐々木委員 ありがとうございます。

 三月十六日は、新幹線も敦賀まで開業ということでございます。地元はもう随分前から準備をして期待をしてきたわけでございますが、今回の震災ということになって、風評被害ということも併せてあるわけでございますので、是非、そういった観点からも、この応援割、しっかり進めていただければと思います。

 続きまして、北陸新幹線についてお伺いします。

 今ほど御案内したとおり、三月十六日、北陸新幹線、敦賀開業を迎えます。北陸新幹線は、災害に強い、国土強靱化の観点からも大変重要だと思っています。この度も、震災が起こりましたけれども、速やかに運行再開をしていただいておりますし、これまでも、大雪のたびでも、速やかな運行再開、若しくは運行を止めないで都市間輸送をやっていただいているなど、本当に北陸新幹線は災害に強いわけでございます。

 是非、この北陸新幹線、敦賀開業、これは確実にやっていただきたいということと、敦賀以西についても、全線開業に向けてしっかりと取り組んでいきたいと思います。

 今日は、国交大臣にも通告はしておりますけれども、ちょっと時間の都合上、代表して総理にお伺いをさせていただければと思います。よろしくお願いします。

岸田内閣総理大臣 北陸新幹線ですが、観光やビジネスなど地域の活性化、また、災害に対するリダンダンシーの確保に重要な役割を果たすものであります。そして、今回の震災からの復興への希望にもつながるものであると認識をしています。

 まず、三月十六日の金沢―敦賀間の開業、予定どおり進めてまいります。その上で、整備計画上、東京と大阪を結ぶ北陸新幹線の全線開業に向けた取組、これも重要であると考えており、敦賀―新大阪間についても、着工に向けた諸条件についての検討を深め、一日も早い全線開業を実現していきたいと考えております。

佐々木委員 北陸新幹線は復興への希望だというようなお話もいただきました。総理には、是非、この新幹線に乗って南加賀に来ていただいて、二次避難をしている皆さんとかを激励をしていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 新幹線、開業されたならば、是非私も大いに活用させていただきたいと思います。そして、大変な災害に苦しんでいる皆さんに対し、国としての取組をしっかりと説明しながら、元気を出していただくよう激励することができればと思っております。

佐々木委員 ありがとうございます。

 被災者の皆さんにとっては大変勇気づけられると思いますし、今風評被害で苦しんでいる北陸の皆さんにも力をつけていただけるものと思います。是非よろしくお願いします。

 なお、新幹線の開業に関して、新幹線からの二次交通というのも重要になってきます。折しもライドシェアの議論が出ておりますけれども、公共交通機関は、運送責任の主体が明確で、安全、安心が確保されているということが大前提であるということを特に指摘をしておきたいと思います。

 次に、復興を支える作業員の働き方改革についてお伺いします。

 復旧復興に携わる作業員は、寝泊まりができない状況、被災地は宿泊施設も被災をしているわけでございますから、多くは金沢から皆さん通っています。片道四時間以上かけて現地にたどり着く状況ですけれども、働き方改革が始まって通常どおり適用されると、現地に来ただけで何も作業せずに帰らなきゃいけないというような状況もあるわけでございます。

 災害復旧に携わる事業者は、長時間移動に加えて復旧工事を行うと、時間外労働の上限規制に違反してしまうのではないかと不安を抱えて困っております。災害復旧事業は時間外労働の上限規制の対象外にすべきと考えますが、厚労省の見解をお伺いします。

鈴木政府参考人 労働基準法第三十三条第一項におきましては、災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合には、使用者は、事前の許可又は事後の届出により時間外・休日労働をさせることができるとされております。今回の能登半島地震につきましての復興工事につきましては、この条文が適用されることと考えてございまして、その場合には、いわゆる時間外労働の上限規制は適用されないことになります。

 こうした考えにつきまして、QアンドA等を取りまとめまして、労働局を通じて周知を行っているところでございます。

佐々木委員 ありがとうございます。各地の労働基準監督署にも是非その辺を徹底していただきたいというふうに思います。

 続きまして、和倉温泉の復興についてお伺いします。

 和倉温泉の営業再開、これは復興のシンボルとなります。しかし、今日お手元に資料をつけておりますけれども、現地はもう悲惨な状況でございまして、岸壁が破損して、建物も相当な修理が必要な状況で、時間がかかりそうです。中には私有地の岸壁もあって、岸壁も建屋も事業者負担ということになりそうで、そういうことになると先に進みません。また、補助上限も一者十五億円ということになっておりますけれども、これも引き上げてほしいという要望もございますし、一者で複数の建物を所有している者もあるわけでして、棟ごとの補助上限を設定してほしいという要望もございます。

 なりわい補助金等による民間資金と公共事業とを組み合わせて、官民協働の町並みの再生を実現する必要がありますが、政府の見解をお伺いします。

松浦政府参考人 お答え申し上げます。

 先月取りまとめられた被災者の生活となりわい支援のためのパッケージ、これにおきましては、復興に取り組む被災中小企業、小規模事業者の施設設備の復旧に御活用いただける支援策として、なりわい補助金を措置したところであります。

 その上で、本格的な復興を実現するためには、こうした補助金だけではなくて、金融支援や観光の需要喚起策などを含む将来の町づくりも視野に入れた総合的な対策が必要と考えております。

 経済産業省からも現地に職員を派遣しているところでございますが、引き続き、現場の声に耳を傾けながら、関係省庁、関係機関と一体となって検討を進めてまいりたいと思います。

稲田政府参考人 和倉温泉前面の護岸に関しましては、民有所有のほかに、公共の港湾施設や海岸保全施設、そして一般公共海岸など、所管部局も多岐にわたってございます。

 民間所有の護岸復旧は所有者にて実施していただくことが原則となりますが、地元の自治体や護岸の所有者の御意見をよく伺った上で、技術的な支援を含め、どういった対応が可能か、関係部局で緊密に連携しながら検討をしてまいりたいと考えております。

佐々木委員 是非お願いします。これは、民有地だから民間でと言っていたらいつまでたっても進まないわけですので、是非お願いいたします。検討をいただいていると思いますけれども、お願いをいたします。

 次に、雇用調整助成金について、お伺いというか御意見を申し上げておきたいと思います。

 支援パッケージの中では、雇調金の助成率の引上げを特例措置としてやっていただきましたけれども、是非、助成額、そして助成対象についても拡充をお願いしたいと思います。

 コロナ禍では、特例措置として、助成率十分の十、助成上限額一万五千円、雇用保険適用外の方にも適用していただいておりましたので、できることは全てやるということであれば、過去にできたことでございますので、是非今回も御検討いただきたいと思います。

 続きまして、復旧復興を支える作業員の宿舎等の確保についてお伺いします。

 被災者の生活再建にはインフラの復旧復興と仮設住宅の建設、これは必要不可欠です。しかし、これらに従事する皆さんは、ホテル、宿泊先もない中、金沢から通っているケースが多いわけで、中には車中泊をしている、過酷な環境での作業を余儀なくされているわけです。

 被災者支援のためにも、こういった作業員の宿泊環境を改善することというのは大変重要だと思います。中には、能登空港を作業員のベースキャンプにしてはどうかという御提案もあるわけでございます。事業者任せにしていないで、国交省の積極的な取組を期待したいと思いますが、いかがでしょうか。

林(正)政府参考人 被災地では、水道や電気などのライフラインが被災し、利用可能な宿泊施設が限定されていることから、工事従事者の中には、キャンピングカーなどでの宿泊や、金沢市内など遠方の宿泊地から長時間かけて移動し、復旧作業に当たっている方も多くいらっしゃると認識しております。また、今後の本格的な復旧に向けては、更に多くの工事従事者の現地入りが見込まれています。

 こうした宿泊環境の改善に向け、国土交通省では、関係省庁や地元自治体と連携し、キャンピングカーなどが停泊可能な場所や、コンテナなど簡易な宿泊設備が設置可能な場所に関する情報を二月一日に関係業界団体などに周知したところでございます。

 ライフラインの復旧状況等を踏まえつつ、引き続き、関係省庁や関連業界団体、地元自治体とも緊密に連携し、工事従事者の宿泊環境の改善に取り組んでまいります。

佐々木委員 情報提供をしていただいている、宿泊、泊まれる場所のですね、ということですけれども、これも民間に任せておくと、大きい事業者がごそっと何か持っていったりとか、そういうことも起こるわけですから、やはり誰かが調整しないとこれはいけないんだと思うんです。是非、国交省が先頭に立って、その辺の調整もしていただきたいというふうに思います。

 次に、のと里山海道や能越自動車道の管理についてお伺いします。

 金沢と能登半島を結ぶ大動脈、のと里山海道、これは県道なんですけれども、能越自動車道石川県管理区間、こういったものについては、国が代行して本格復旧をしていただけるということになりました、権限代行していただけるということになりました。しかし、本格復旧の後、引き続き国が管理すべきだと考えますけれども、国交省の見解をお伺いします。

斉藤(鉄)国務大臣 のと里山海道との共用区間を含む能越自動車道は、能登半島を南北に結ぶ高規格道路であり、震災からの復旧復興の基幹となる大変重要な道路でございます。これまで国、石川県により整備、管理を進めてまいりましたけれども、先月二十三日より、石川県が管理する区間のうち被害が甚大な七尾市から穴水町までの区間については、権限代行により、国が管理する区間の復旧と併せて、国が責任を持って災害復旧工事を進めているところでございます。

 今回の地震により道路網が寸断されたことや半島部の特殊性を踏まえますと、道路ネットワーク全体の在り方については検討すべき課題があると認識しております。管理区間が国と県でばらばらになっているというところでございます。

 お尋ねの能越自動車道の今後の管理の在り方につきましては、こうした課題に対する議論、検討を行った上で、国の管理区間の間に県管理区間が存在する現状や、国と地方の役割分担を踏まえ、本格復旧を進める中で、石川県などの関係機関と調整し、しっかりと前向きに検討していきたい、このように思っております。

佐々木委員 大臣に御答弁いただきまして、ありがとうございます。大変心強い限りでございますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、水道の復旧についてお伺いします。

 やはり、復旧復興の一番大きな課題は水です。水がないとトイレも使えないということで、大変心身共に疲弊をしていきます。

 ただ、水道事業は、市町村が行う事業ということで、国による権限代行の仕組みがございません。被災自治体の体力では、復旧に向けてのスピードがなかなか上がっていかないわけです。

 水道整備、管理行政については、四月から国交省に移管予定のところですけれども、現在、前倒しをして、連携して対応していただいていると承知をしております。是非とも、国が前面に立って、早期の断水解消に向けてスピードアップを図るとともに、国による財政面での支援もお願いします。

 よく石川県からは、上下水道一体でというような要望もあるわけでございます。上水道だけ復旧しても、排水を整備しないと水は使えないわけでございます。したがって、上水道一体での早期の復旧が必要ということになります。

 是非、国が先頭に立って、上下水道の早期復旧に向けて支援を強化していただきたいと思いますが、政府の見解をお聞かせください。

大坪政府参考人 お答え申し上げます。

 水道施設の復旧に当たりましては、震災の初日から、日本水道協会の中部支部、名古屋でありますけれども、水道技術者が被災地に入りまして状況を確認をいたしまして、五日には、被害の大きい能登半島北部について、日本水道協会における相互連携の枠組みを活用し、全国の自治体から水道技術者の応援が入りまして、復旧に全力を挙げているところでございます。

 また、今般、国におきましても、震災の翌日から速やかに被災地に国交省、厚労省職員を派遣をいたしまして、現地において直接関係機関との調整を行うなど、被災自治体に代わり、復旧支援を行っております。

 また、先生おっしゃいました財政面につきましても、熊本地震の際に国の補助率を十分の八に引き上げたことなどを参考にしておりまして、また、加えて、四月以降の水道施設の補助率の更なるかさ上げ、ここも前倒しで適用する措置を講じることとしております。

 引き続き、水道施設の一日も早い復旧に向けて全力で支援をしてまいりたいと思います。

佐々木委員 ありがとうございます。

 もう既に国が主導して、事実上の権限代行のような形で取り組んでいただいているということでございます。大変ありがたいわけでございます。

 今日の質問は以上となりますけれども、是非、被災者や被災地に寄り添った形の支援、そしてスピード感を持った支援を心からお願い申し上げて、質問としたいと思います。

 ありがとうございました。

小野寺委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

小野寺委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。

 この際、国光あやのさんから関連質疑の申出があります。加藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。国光あやのさん。

国光委員 自民党の国光あやのでございます。

 本日は、若輩にもかかわらず、御質問の機会をいただきまして、皆様本当にありがとうございます。

 まず冒頭に、能登半島地震で被災されました皆様に心からのお見舞いを申し上げたいと思います。

 私からは、能登半島地震の被災者の皆様の生活に身近な課題、さらには、地元の茨城でもお伺いする身近な課題、そして、ここにいらっしゃる全ての方の御地元でも共通する課題について御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、総理、賃上げでございます。

 賃上げは、総理の施政方針演説においても強い決意を述べられたとおり、最重要課題の一つでございます。昨年は、総理のリーダーシップで春闘でも三・五八%の賃上げを実現され、そしてさらに、今年はそれを継続的、持続的に更なる賃上げにつなげていかねばならないと思います。

 賃上げが特に必要な分野にきめ細やかに対応することが必要です。その中の分野、特に、非常に対象者が多い分野の一つが、能登半島にもどこにもたくさんいらっしゃいます医療、介護、障害福祉の分野の方々です。

 このフリップを御覧いただければと思います。何と、全雇用者の一四%。能登でもこれぐらいいらっしゃる。どこでも、都会では更に多い状況でございます。しかし、この数字のとおり、全産業平均よりその賃金は非常に低い状況であります。昨年の賃上げの率で見ましても、医療関係職種、特に、例えばリハビリテーション、理学療法士さんなどですね、そしてまた介護職員、看護補助者の賃上げ率は、三・五八にはとても届かない、半分以下の一%でございました。これはなぜかというと、それが基本的には公定価格で結ばれているものであるからであります。現下のコスト高で各事業者さんは非常に厳しい状況、その中でなかなか賃上げに結びつける経営体力がない。切実なお話をいただいておりました。

 しかし、昨年末、総理の強いリーダーシップで、その原資となる報酬改定。たまたま六年に一度、診療報酬改定、介護報酬改定、障害福祉サービス等改定が六年に一度全てそろう、それが昨年末の改定でございました。この図のとおり、この十年間でも最大の改定率の上昇。総理のリーダーシップで、今日は武見厚労大臣、鈴木財務大臣もいらっしゃいます、厳しい財政状況の折に御英断いただいたことを深く感謝申し上げます。

 一方で、総理、ここからが実は重要です。

 この改定率、財源は、具体的には、例えば診療報酬ですと三千億円です。この医療費プラス三千億を、国民の皆さんに負担していただくこの財源を、最重要課題である賃上げにしっかり結びつけねばなりません。

 これの仕組みは報酬改定で、今ちょうど厚労省で必死に各担当の役人の方々がやっていらっしゃる。ただ、私ごとですが、実は私は前職は厚生労働省職員でございまして、診療報酬、介護報酬を担当したことがございます。年が明けると、不思議なことに、総論の財源、改定率でせっかく確保した財源をどこに配分するのか、改定率の個別項目にどうつけるのかというチェックが非常に弱くなる。なので、せっかく賃上げのために確保した財源があったとしたらば、それが確実にきちんと行き渡っているのかということは、政治のリーダーシップできちんと丁寧に見る必要があります。

 恐らく、委員の先生方は御地元でもたくさん声をいただいていると思います。ここは総理のリーダーシップで、確実な賃上げにつながる仕組み、そして、それが必ず賃上げにつながっているかということを確認する仕組みを是非お願いしたいと思います。

 そして、もう一つです。

 更なる賃上げを目指すためには、この厳しい財政状況の中の社会保険制度だけでは私自身は限界だと思います。

 私自身も現場におります。私自身は元々医師で、今でも地元で診療しておりますが、社会保険制度の皆さんからの保険料や税で運営する、それだけで高い賃上げを確立することは本当にできるでしょうか。私は、もう難しい、新しい社会保障の時代を築いていかねばならないと思います。

 そこで、御提案です。

 例えば、今、介護の事業所などで増えておりますけれども、社会保険で、例えばデイサービス、通所介護の事業所はたくさんございます。能登にもあります。茨城にもあります。例えば、そこで通所介護のサービスをやっていらっしゃる、それとともに、空いたスペースなどで自費で保険外のサービスも両立して行う。一つの事業所でできます。それによって、中には、東京などでも増えておりますけれども、高い賃上げを更に実現するという事業所も出てまいりました。

 総理、新しい社会保障の時代は、令和の時代に即した新しい社会保険制度や、それ以外の仕組みを考えなければならないときに来ていると私は思います。総理、更なる賃上げに向けて、確実な賃上げの仕組み、そして、更なる高みを目指した新しい提供体制の在り方、是非御意見をお伺いできればと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、令和六年度の診療報酬、介護報酬、そして障害福祉サービス等報酬の同時改定においては、令和六年度のベースアップ分として二・五%の賃上げ、さらには、令和七年度分の前倒しによりそれを上回る賃上げも可能となるよう、医療、介護等の現場で働く幅広い職種に目配りした上で、物価高に負けない賃上げの実現に必要な水準の報酬の改定率を昨年末に決定いたしました。

 委員の方から、これをしっかりと賃上げに結びつける確かな取組が重要だという御指摘があったわけですが、積極的に賃上げに取り組んでいただくよう、先日、関係二十四団体に対し、私から直接要請を行わせていただきました。そして、加算措置部分の報告を含めたフォローアップの仕組みをしっかりと整備するなど、実効性を高め、そして、そのことによって確実な賃上げを実現してまいりたいと思います。

 そして、もう一つの保険外サービスについての御指摘ですが、高齢者の多様なサービスに応じた保険外サービスについては、これまでも自治体による好事例、取組の事例の収集に取り組んできたところであり、先進的な取組が幅広く活用されるように周知等に取り組んでいく、こういった取組を進めていくことによって幅広い活用につなげていきたいと考えております。

国光委員 ありがとうございます。強い決意をいただきました。

 総理、後段のところの保険外については、実は、たくさんの事業者様から、やりたいと思っても、いろいろなルールや自治体の対応でなかなか難しい、基準を認定いただくときに非常に時間がかかったり、あるいは、法的に、収益事業を二〇%しか、上限を止めてしまっているので、更に収益事業を行うときに難しいというふうな課題もございます。その辺りも是非きめ細やかに現場の意見を聞いていただければと思います。

 そして、もう一つ総理に要望だけさせていただきたいことがございます。年金でございます。

 これは本当にごくシンプルな話なんですが、今、デフレ脱却の効果で、年金は御覧になっている方も関心が非常に高くあろうと思います、午前中も加藤先生が御質問されておられましたけれども、何と、年金が、デフレ脱却の効果で、バブル期以降過去最大の伸び率になっております。もちろん、マクロ経済スライドで野党の皆さんもおっしゃるとおり目減りはしますが、これを御覧ください、実額として、この四月から国民年金で一人分千七百五十円のプラス、そして厚生年金でもプラス六千円上がります。

 今、国民は、卵を買うときも、いろいろな野菜を買うときも、一円でも十円でも安いところを探して、本当に生活が厳しい中で頑張っていらっしゃる。その中で、例えば、千七百五十円アップしたら卵が六パック買えます。ビールだって、発泡酒で我慢している方が少し上げられると思います。是非そこは、年金が上がっているという事実自体は各国民の皆様にも分かりやすくお伝えする必要があるのではないかと思います。

 そして、もう一つ御要望です。

 可処分所得の向上が非常に重要な中、社会保険の負担軽減も非常に重要です。保険料で三〇%の負担が上っている中、これ以上の負担はなかなか厳しいという声にしっかりと寄り添って、社会保障給付の改革も併せて必要だと思います。

 昨年末に政府が決定された、例えば薬局でも買えるOTC類似薬の保険給付の在り方の見直しなど、改革に工程が刻まれておりますので、新藤大臣もいらっしゃいますけれども、是非そこは政治の胆力でしっかり進めていただく、保険料負担が少しでも減るようにということは併せて進めていただきたいと思います。

 では、次の質問に参らせていただきます。

 続けて総理に、独居高齢者や身寄りのない方への御支援についてお尋ねをしたいと思います。

 各御地元でも能登でも、どこでも本当に増えていらっしゃるかと思いますが、過去二十年間で独居高齢者の方は約倍増しており、現在、高齢者世帯の中で三〇%、六百七十万世帯に上ります。

 独居の方の中で何が大変かというと、頼れる親族や家族がいらっしゃればいいんですが、今、御地元でいただく声は、頼れる親族がいない。元々若い頃から独身だ。あるいは、離婚された。そしてまた、親族はいるんですけれども、遠方です。あるいは、近くにいても頼れるでしょうか。疎遠であったり、迷惑をかけたくない。そのようなことで非常に御相談を多くいただいております。

 その中で困るのが、例えば、入院されるとき、介護施設に入所されるとき。そして、亡くなった後は誰がお世話をしてくださるんでしょうか。いません。実際に、そのような方は、本当はあってはいけないんですけれども、入院や入所を断られてしまう。これはデータでは約二割ぐらいいらっしゃると伺っております。

 そのために、家族の代わりの対応などを行う身元保証事業者が非常に急増しています。ここは一つの力になっているんですが、課題があります。

 それは、契約に基づいてちゃんとサービスをしてくださればいいんですが、例えば、入院されたときに、ちゃんと身の回りの世話をしてくださる、いろいろな衣類とかを持ってきてくれたり金銭管理も手伝ってくださる。契約に基づいてやってくださればいいんですが、実際にそれをやってくれない。ひどい場合は、なかなかきつい話ですけれども、御遺産を契約なしに持っていかれてしまった。そのような事例も増えています。

 また、困ったときの相談窓口がない。非常に多くの相談をいただきます。

 また、現場の職員の皆様方や民生委員の方はお困りです。そのような方はほっておけない。だから、本当は法的にやる必要もないし、金銭も一切もらわないんだけれども、泣く泣くその人たちが肩代わりして金銭管理やいろいろな身の回りのお世話をしている。これはシャドーワークと言われ、非常に大変な状況になっております。

 この課題に対応するために、昨年から、いらっしゃる上川大臣や、現在、党で加藤先生始め皆さんと勉強会を重ね、そして総理に御要望させていただきまして、総理が、先進自治体の豊島区の視察であるとか、官邸で会議体を設置いただいたりして積極的に取り組んでいただいていることを深く感謝申し上げます。

 旧来の家族を前提としない、家族以外の第三者が支える新しい社会保障やセーフティーネットの在り方が今こそ必要な時代ではないでしょうか。

 独居であっても、たとえ身寄りがなくても、誰もが安心して年を重ねることができる社会。恐らく能登の方でもどこの方でも、本当に切実な課題になっている場所が増えておられます。是非、総理のリーダーシップで、身元保証事業者の質の確保であるとか、相談窓口の自治体への設置であるとか、さらに、現場の職員さんのシャドーワーク、負担の軽減だとか、この辺りの切実な課題や御不安にしっかり寄り添って解決に向けて進んでいただきたいと思います。総理の御見解をお聞かせください。

岸田内閣総理大臣 独居高齢者の方々は今後ますます増加することが見込まれます。そうした方々が安心して身元保証等を行う事業者のサービスを利用できるようにしていくこと、これが重要であると考えます。

 このため、私自身が議長を務め、認知症と向き合う「幸齢社会」実現会議を開催して、こうした方々の身元保証あるいは意思決定支援等の生活上の課題について議論を重ね、昨年末に取りまとめを行いました。これを踏まえて、利用者の適切な事業者の選択に資するガイドラインを策定し、それ以外にも、地方自治体の相談体制の整備、ケアマネジャー等の業務状況の把握、あるいは入院、入所時の対応など、高齢者の方々の生活上の課題への対処方法あるいは各種論点について、省庁横断で今早急に検討を進めているところです。

 委員と問題意識を共有しながらこうした取組を進めていき、独居高齢者の方々の安心につなげていきたいと考えています。

国光委員 ありがとうございます。是非お願いいたします。

 そして、子供政策についてもお伺いさせていただければと思います。出産するときの費用の負担軽減でございます。

 この課題については、総理が議員連盟の代表をかつてお務めいただき、様々なリーダーシップで改革に取り組んでいただいていることを深く感謝申し上げます。

 改めてその課題を見てまいりますと、やはり言うまでもなく、理想の子供数を持たない最大の理由は、八割が経済的な負担です。私も子供が中学生ですが、本当にそれは切実に思います。

 それで、何が負担なのかという別の調査で見ますと、一番はやはり教育費です。これは後ほど盛山大臣にお伺いしたいと思います。二つ目に妊娠、出産に伴う医療費。三番目に幼稚園や保育所などの費用です。

 この二番目の妊娠、出産の費用、こちらは工夫で改善できる余地がたくさんあると私は思います。

 これまでの課題では、都市部を中心に、出産費用が自由診療ですので年々上昇し、一時金では不足している。あるいは、妊婦さんにとって費用の内訳が分からない。例えば、ここ東京でも多くの医療機関は、今、図では平均六十二万になっていますが、恐らくもっと高い。八十万だったり九十万とか百万。高くて産めないよという声も聞こえておりました。

 そしてまた、その価格帯が、なぜこんなにかかるのか分からない、明細がないという課題もありました。そして、地域差が大きい。一・五倍近い差、こちらもしっかり分析していって対応する必要がございます。

 その中で改革を進め、ホップ、ステップ、ジャンプで進んでおります。

 まず、総理のリーダーシップで、昨年の四月から、出産育児一時金四十二万円を引き上げていただき、平均的な標準費用までしっかりと引き上げる、リーダーシップで五十万円にしていただきました。本当にありがとうございます。

 さらに、今年の四月、つまり令和六年度から、費用の内訳が分からないという課題に対して、妊婦さんが安心して、この図であるような医療機関を選択できるような、例えば、経済的な負担能力や価値観などで、安全に安く産めればそれでいいというお母さんもいらっしゃる。ただ、お祝い事、記念なのでゴージャスに産みたいという方もいらっしゃいますよね。そういう方に選べる環境というのを整えていく。各自各自で選べる、費用の負担能力等に合わせて選べるという仕組みをつくっていくべきだと思います。これは、四月から、費用の見える化などでしっかり妊婦さんにとって分かりやすい制度を進めていただく、そういう改革が進んでおります。

 そして最後に、地域差が大きいことの課題に対して、その要素を分析しながら、令和八年、つまり二年後に、出産費用の保険適用を総理の御英断で昨年のこども未来戦略などにも位置づけていただきました。

 ここで総理に改めてお伺いしたいことがございます。この出産の保険適用に伴って、自己負担の在り方です。

 総理は、昨年四月の厚生労働委員会で、出産費用の自己負担については、一時金を引き上げることにより平均的な費用を全て賄うとしたため、保険適用に当たってもこうした基本的な考え方は踏襲していきたいと御答弁をされておられます。

 非常に費用がかかる、できたら本当に十円でも百円でも千円でも安くしてほしいというのが子育て世代の切実な希望です。保険適用になったら三割は自己負担、それはどうなっちゃうのかというお声もいただきます。是非ここはリーダーシップで、お財布が要らない出産、全てとは言いません。平均的で標準的な、つまり、必要な例えば入院代や薬剤費の分については無償化していただきたいことを切にお願いしたいと思います。改めて意気込みをお伺いさせてください。

岸田内閣総理大臣 出産費用につきましては、今委員から紹介していただきましたように、経済的負担の軽減のために、昨年四月から出産育児一時金を大幅に増額いたしました。

 そして、妊婦の方々が選ぶことができる出産に向けて見える化を進めようとしている、こうしたことでありますが、御質問の出産費用の保険適用については、サービスの質が確保されるというメリットがある一方、全国一律の診療報酬で評価されることでかえって妊婦の選択の幅を狭める、こんなことがあってはならない、こうした課題もあります。この双方の考え方を踏まえて検討したいと思います。

 その上で、負担の話でありますが、今回の出産育児一時金の引上げは、平均的な標準費用について妊婦に自己負担が生じないようにいたしました。保険適用の検討に当たっても、こうした基本的な考え方は踏襲したいと思います。負担につきましても、こうした自己負担が生じない、こういった出産育児一時金の基本的な考え方は踏襲してまいります。

国光委員 ありがとうございます。是非よろしくお願いできればと思います。

 重ねて、私も医療現場にいる人間ですので、産婦人科の先生方のお気持ちもよく分かります。産科医療機関にとって、少子化で非常に経営が厳しい。そこに一方で寄り添っていく必要もございます。総理にお願いですが、保険適用されるときには、産科医療機関が立ち行かなくなってしまってお産難民が出てしまうということでは本末転倒でありますので、別途、例えば保険以外の補助などで産婦人科医療機関の支援になることを是非しっかりお進めいただきたいと思います。

 では、続きまして、妊婦健診についてお伺いいたします。

 加藤こども政策担当大臣にお伺いいたします。

 実は、出産費用の負担軽減に取り組んでいる中で、国光さん、出産だけじゃないよ、妊婦健診も本当に高くて困っているよというお声をたくさんいただきました。そんなに高くなっているのかと思って調べてみましたら、実際、問題の根源は、自治体間で格差が非常に大きいということであります。

 何が問題なのか、論点を整理しました。

 一つは、公費負担する額が、平均的には全国で十万七千円。一番少ない公費助成が神奈川県で七万五千円。一方で、一番頑張ってよく出してくださる自治体が石川県。災害の中で本当に御尽力いただいております。約十四万円近い。二倍の格差があります。

 これは一体どれぐらい必要なのかといいますと、ここの図にあるように、昔、平成二十五年までは国庫補助事業でこの妊婦健診の補助制度を運用していました。その頃は一人当たりの単価は十二万円です。つまり、十二万円ぐらいが相場ですねということで補助事業をしていました。

 これが一般財源化され、今はその財源がそのまま一般財源として地方交付税措置されて、それで各市区町村が、津々浦々、それぞれ妊婦健診に充てるというふうな仕組みになっておりますが、蓋を開けてみると二倍近い格差がある。これは、例えば神奈川県や東京都は非常に低い水準になっておりますが、妊婦さんから負担が大きいという声は非常にいただきます。

 また、もう一つ、公費負担する検査の項目の数です。

 妊婦健診は、十四回の健診、診察や、そしてまた血液検査や超音波検査などが国の基準で全て決められています。今まで補助事業のときは、この全てのメニューが公費助成されていました。ただ、今、一般財源化されてどうなったかというと、約一四%の市区町村は全てを公費負担の対象にしておりません。ひどいところでは、大変恐縮ですけれども、一〇%とか、そのような数字のところもあります。

 この課題は、加藤こども担当大臣、一緒に以前から出産や妊娠の費用負担軽減を議員連盟で取り組んでまいりました。財源はあるんです。ただ、それをどう分配するかを更に工夫していただければ解決する話であると思います。是非大臣のリーダーシップをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

加藤国務大臣 国光委員の御質問にお答え申し上げます。

 妊婦健診につきましては、国から健診回数や検査項目の基準をお示しするとともに、検査費用について地方交付税措置を講じておりますが、今まさに御指摘をいただいたとおり、自治体別に見ますと、公費負担の金額や検査項目にはばらつきが見られる状況と承知をしております。

 このため、国から示している全ての検査項目につきまして妊婦の皆様に自己負担が発生しないよう、昨年三月に自治体に対して公費負担での実施を改めて依頼したところでございます。

 また、現在、直近の令和五年度の妊婦健診の公費負担について自治体に調査を行っておりまして、年度末までの取りまとめを予定しているところでございます。この調査の結果を踏まえさせていただき、確認をした上で、国が示す健診の費用の全てが交付税措置されていることをしっかり踏まえて、自治体に対し、妊婦健診の公費負担の取組を改めてしっかりと働きかけてまいります。

国光委員 ありがとうございます。是非リーダーシップを振るっていただければと思います。

 また、松本総務大臣にも、お立場もあろうかと思いますので、是非丁寧な目くばせをいただければと思います。御地元の兵庫県も少し低い水準になっておりますので、姫路は比較的高いそうでございますが、是非よろしくお願いできればと思います。

 続きまして、盛山文科大臣に大学等の奨学金のお話をお伺いさせていただきたいと思います。

 時間の関係で、是非お伺いをさせていただきたいのが、奨学金は、この資料のとおり、総理や盛山大臣のリーダーシップで拡充がどんどん進んでいる状況がございますが、一方で、当事者の方、例えば高校生や親御さんは、奨学金の制度を何か拡充するらしいけれども、自分は該当するのか、幾ら増えるのか、自分は要件に当たるのかが分かりにくいというお話をいただきます。確かに変数が非常に多いです。文科省に伺ったら、分かりやすい資料がないということで、慌てて私が一夜漬けで作らせていただいたんですけれども、確かになかなか難しいです。

 実は、奨学金は非常にもったいない状況がありまして、今まで、該当する方の中の何と四分の一がもらっていないんです。年収要件に該当しますよねという方が四分の一がもらっていない。なぜですかというと、よく分からなかった、知らなかった、複雑だった、諦めちゃったという方が非常に多いという状況がございます。

 拡充するのであれば、きちんと対象者に支援が届くこと、認知がいって行動に移せることがポイントだと思います。是非ここは分かりやすい広報を日本学生支援機構などにも命じていただいて取り組んでいただきたいと思います。

 そしてもう一つ、拡充する中で、授業料の後払い制度が来年度から始まります。まず修士課程で秋から始まります。私は、この授業料後払い制度は非常に意義深いものではないかと思っております。もちろん、給付型で全部の方にお配りできればいいんですけれども、二兆一千億かかります。

 ただ、こちらの制度でしたら、貸与型の奨学金の中の一部、貸倒れが起こらないように、なるべく返済ができるように、一定の年収以上、具体的には三百万円以上の年収になったら返してねという制度であり、安心して大学に通うことができる、少ない財源で安心して通う環境を整えることができる非常に効果的な制度ではないかと思います。オーストラリアなどでは、HECSという制度で先んじて導入を何十年前からされておられます。

 是非ここでお願いがあります。修士課程だけではなくて、学部生の皆さんも、あったら使いたいよね、こんなすてきな制度があるんだ、使いたいという方は結構言われます。単純に余り知らないだけです。ここを是非学部に広げていただきたいと思います。

 そしてもう一つは、年収要件。出世払いと聞いたら、出世する額とは三百万円なんでしょうかという額があると思います。学部に拡充されるときは、苦笑いされていらっしゃいますけれども、検討状況をしっかり見ていただいて、喜んで使いたいと思うような、元々あった出世払いの名前にふさわしい額に基準を上げていただけないかと思うところでありますが、是非大臣から御意見をいただければと思います。

盛山国務大臣 高等教育費の負担軽減策につきましては、必要な方に支援を届け、御活用いただくために、積極的な情報発信が重要と認識しておりますが、それがなかなかできていないという厳しい御指摘を今いただいたところでございます。

 文部科学省としては、これまでも、大学及び高等学校等に対し経済的支援策について適切な情報提供等をお願いするとともに、都道府県教育委員会の進路指導担当者等に対して積極的に支援策を案内してまいりました。また、高校等では、日本学生支援機構の奨学金の進学前の募集について御協力をいただいているところです。

 加えて、政府広報を活用したテレビ番組、ホームページでの広報活動にも取り組んできたところでありますが、先ほど来御指摘いただいているように、御存じない方、あるいはなかなか理解ができないとおっしゃる方が多いわけでございますので、今後とも、学生生徒やその保護者に必要な情報が届けられるよう取り組んでまいりたいと考えております。

 また、授業料の後払い制度につきましては、まずは、令和六年度から大学院の修士段階に導入することといたしました。

 学部段階への本格導入に向けましては、その活用状況のほか、教育費の負担の在り方、年収要件などの制度の国民的な理解、受入れ可能性を考慮した上で更なる検討を進め、今後の各般の議論を踏まえて速やかに結論を得てまいりたいと考えております。

国光委員 ありがとうございます。

 子育て世代の皆さん方は教育費が一番大変です。是非リーダーシップを期待を申し上げたいと思います。

 続きまして、上川外務大臣に、WPS、中東、ウクライナ情勢等に交えてお伺いをしたいと思います。

 上川外務大臣は、外交演説で、WPS、ウィメン・ピース・セキュリティー、女性・平和・安全保障を力強く進めていく、是非WPSの主流化に努めていくとお話がありました。

 私は、これは今こそ本当に必要とされている概念だと思います。これほど気候変動や、あるいは紛争、ウクライナやパレスチナ、イスラエル、あるいはスーダンの内戦、さらに災害、能登半島地震でも、例えばアフガンの震災でも、本当に多くの複合的な危機に直面する中、やはり一番脆弱な女性や子供に被害が寄りやすい。パレスチナ、イスラエルでも亡くなった方の七割が女性や子供です。

 国連が提唱する女性の権利、性暴力などからの保護、そして健康の確保、リーダーシップの促進は非常に重要だと思います。是非、改めて上川外務大臣から、国民の皆様に対しての発信という意味も込めて、WPSの意義、取り組んでいかれる方向性をお伺いしたいと思います。

上川国務大臣 国光委員にお答えを申し上げます。

 国際社会は、まさに対立と分断が進んでおります。そういう中にありまして、世界の平和と安定、また繁栄を推し進めるためには、我が国は、人間の安全保障など、人間中心の外交を推し進めているところでございます。

 女性・平和・安全保障、WPSは、女性や女児の保護や救済に取り組みつつ、女性自身が積極的な立場に立って、また指導的な立場に立って紛争の予防や復興、平和構築に参画することによって、より持続可能な平和に近づくことができる、そうした考え方に基づくものであり、また、そうした考え方に基づいて様々な国際的な研究も行われ、その成果につきましても実証されているところでもございます。

 まさに御指摘のとおり、紛争下におきまして特に影響を受けるのは、女性や子供たちなど、脆弱な立場にある人々であります。国際情勢が不透明さを増す中にありまして、このWPSの考え方はますます重要になっていると考えております。

 委員御指摘のとおり、WPSは様々なステークホルダーの皆様と力を合わせていくということが必要でありまして、その意味で、まずは外務省の中に、分野横断的な連携を目的として、一月二十九日に省内にWPSのタスクフォースを立ち上げたところであります。

 日本政府は、これまでも、国際機関等を通じまして、中東やアフリカ、またアジア等の紛争影響国におきまして、性的暴力の被害者の保護や女性のエンパワーメントに資する支援を実施してまいりました。今後は、このタスクフォースを活用しつつ、緊急支援から復興に至る全てのフェーズにおきましてWPSの考え方を積極的に取り入れるべく、外交活動及び支援を強化してまいりたいと考えております。

 その際には、もちろん、我が国におきましては、防災、災害対応におきましてまさにWPSの視点がしっかりと盛り込まれているということ、そのものが大きな教訓となって海外にも応用ができると期待されているところでございますので、こうした方向も含めましてしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えております。

国光委員 ありがとうございます。上川外務大臣には是非お願いします。

 続きまして、林官房長官にインパクト投資の関係をお伺いしたいと思います。

 近年、若者がタイパ、タイムパフォーマンス、今はコストパフォーマンスじゃないんですね、タイムパフォーマンスを重視するように、いわゆる経済成長だけではない、GDPだけではない価値、例えば、健康や豊かさ、満足度や幸福感、さらには社会課題の解決を重視する傾向が非常に高まっています。実際に、多くの企業、それはスタートアップ、あるいは地域の中小企業、あるいはNPO、様々なイノベーションや新たな起業なども生まれておられます。

 社会課題の解決を成長の原動力に転換していく、新たな市場の創出を官民連携により推進していくことは、新しい資本主義のど真ん中でもございます。鍵となる政策として、インパクト投資、これはつまり、その事業自体の経済性や成長性とともに、いわゆる社会課題をどう解決、改善しているのかというインパクトを測って、それに基づいて投資、そして更にそれを促進する投資を行うというものであります。

 これは各省庁が取り組んでいらっしゃいますけれども、世界でもインパクト投資の伸びはESG投資に続いて目覚ましく、様々なルールメイキングなどで日本がリードしていく必要もあろうかと思います。例えば、インパクト評価指標の確立や資金調達、ここがまた要でございますが、その支援や、官民インパクトファンドの創設、そしてまた、インパクト投資や取り組む企業自体への理解促進と育成、これらを具体的に進めていく必要が更にあろうかと思います。

 是非、林官房長官、そこにユース、若者の視点も取り入れるというところも含めて御答弁をいただければと思います。

林国務大臣 経済成長よりも健康や豊かさを重視する若者が増えているという今の国光委員の御指摘については、私も同じ思いを持っております。

 先日、国光委員に御紹介いただいた若者との意見交換におきましても、今御紹介いただいたタイパ、タイムパフォーマンスという言葉は大変印象的でございました。こうしたこれまでの経済的な指標にとどまらない考え方は、官民連携した社会課題の解決と事業の革新を促すインパクト投資に通じるものであると思っております。

 政府といたしまして、昨年十一月に産官学金の幅広い関係者が参画しますインパクトコンソーシアムを立ち上げました。幅広い関係者によってネットワークを構築し、ノウハウや具体的な事例の共有を進めていくことにしております。

 今後、このコンソーシアムにおける議論も踏まえて、グリーンファイナンスにおける支援、民間資金を活用するソーシャル・インパクト・ボンドの拡大、資金調達の更なる支援に取り組んでいきたいと思います。また、社会的な機運の醸成という観点からも、インパクトスタートアップに対する公共調達の参入促進等に向けた支援を検討してまいります。

 先ほど申し上げましたように、社会課題の解決を重視する若い世代の御意見を取り入れることは重要でありまして、今後、コンソーシアムの議論の場にそうした若い方の意見が届くように金融庁に取り組ませたいと思っております。

 政府横断的に、総合的に施策に取り組んで、このインパクト創出の取組をグローバルにリードしてまいりたいと考えております。

国光委員 官房長官、ありがとうございます。

 いらっしゃる伊藤達也中小企業調査会長を始め、本当に多くの議員も関心を持つテーマでございます。是非積極的な取組をお願いいたします。

 済みません、本当は松本総務大臣に偽情報、誤情報、誹謗中傷をお尋ねする予定だったんですが、時間が終了したということで、撤退せよということで、大変失礼いたしました。また改めて総務委員会等でもお伺いしたいと思います。

 皆様、ありがとうございました。

小野寺委員長 これにて加藤君、長島君、佐々木君、国光さんの質疑は終了いたしました。

 次に、高木陽介君。

高木(陽)委員 公明党の高木陽介でございます。

 まず冒頭、能登半島地震におきましてお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げるとともに、被災された皆様方に心からお見舞いを申し上げたいと思います。

 発災以来一か月が過ぎた今も、一万人以上の方々が避難所での生活を余儀なくされております。また、避難所には入らないけれども、壊れかけた自宅で過ごされている方々もたくさんいらっしゃいます。政府は、一刻も早く復旧復興を成し遂げるべく、また、一人一人の被災者に寄り添って、生活、なりわいの再建に全力を挙げていただきたいと思います。

 政府は、先月二十五日、被災者支援パッケージを取りまとめました。生活再建、なりわい再生、インフラ復旧の三本柱ですが、大切なことは、被災者一人一人がその支援を実感して、復興への希望を持てることだと思います。ペーパー上の支援ではなくて、またマクロの支援ではなくて、一人一人に光が当たることだと思います。

 まず、避難所における環境改善について質問したいと思います。

 石川県では、二日金曜日現在、一・五次、二次避難所も含めまして五百四十九の避難所に一万四千四百三十一人が避難しております。今回は、半島での地震で、道路啓開が思うように進まず、孤立集落がなかなか解消しないなど、これまでの大規模災害とは違う要素がございました。

 五百四十九の避難所、一万四千四百三十一人の避難者には、それぞれ五百四十九のパターン、また一万四千四百三十一人それぞれ状況が違うと思います。しかも、仮設住宅の建設、供給、また水道復旧の状況を考えると、この避難所生活が長期になることが予想されます。物資の調達、入浴の支援、また洗濯などの生活衛生の問題、また、高齢者や障害者、子供や女性など災害弱者も多くいる中で、一人一人の事情が違います。

 避難所の開設は自治体が行いますが、被災自治体の職員も被災しております。被災地以外から応援に入っている医療、介護、福祉の体制と、それぞれの避難所の現場と、さらに自治体の対策本部をどうつなげていくのか。これまでも各分野ごとに全力を挙げて取り組んできたと思いますが、各避難所の情報が各自治体の対策本部に集まる体制もようやく整ってまいりました。

 これからも長期化するからこそ、集まった情報を、避難所ごとや一人一人に対応できること、特に高齢者に対する医療、介護や子供への心のケアなどに対応ができる支援チーム、こういったものが必要だと思います。

 一人一人の被災者の人間の尊厳をどう守るのか、これから災害関連死を絶対に出さない、こういった思いが大切だと思います。総理の見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、委員おっしゃるように、被災者の方々の事情は様々です。そのお一人お一人に寄り添った支援を心がけるということは大変重要だと認識をしています。

 発災直後は、まずは被災者の方々、被災所における状況に対して国がプッシュ型で対応しなければならないということで、簡易洗濯キットなど様々な物資をプッシュ型で届ける、自衛隊による入浴支援、保健師、DMAT等の巡回による健康管理、DWATによる要配慮者に対する福祉的支援など、個々の被災者の状況、これをできるだけ幅広く想定して支援を行った。こういったことでありますが、あわせて、現地対策本部や被災市町に対して、指定職級、副市長級を含む多数の職員を応援派遣し、国と被災市町、避難所との間の連絡調整体制を強化して、避難所を巡回する自衛隊、警察等が把握した被災所のニーズ等についても吸い上げる。実際にニーズを吸い上げて、それに対応する、こうした対応も行っていかなければならない。こうした取組を行いました。

 そして、引き続き、こうした被災者一人一人の様々なニーズに寄り添って、吸い上げたニーズをしっかりと踏まえて対応する、こういった考え方を、全ての職員、団体等の緊密な連携の下に進めていきたいと考えております。

高木(陽)委員 何でこんな質問をするかというと、情報が集まってくる、でも、最終的には一人一人に届かなきゃ意味がないということで、特に、被災自治体は職員が被災していて、本来は被災自治体が責任を持って一人一人の被災者に対応しなきゃいけないんですけれども、それがなかなかできない。じゃ、県がやるのか、国がやるのか、ここら辺が曖昧なところだと最終的に一人一人に届かないということでこの質問をさせていただきましたので、是非とも政府が先頭に立ってやっていただきたいと思います。

 続いて、発災以来、各省庁、また全国の自治体から職員が、また、医療、介護を始め各種NPOなど応援部隊が現地に入っております。また、二十八日からボランティアが入り始めましたが、道路事情等でまだまだ少数です。

 しかし、復旧復興のためにはマンパワーが必要だと誰もが思っています。これまでの被災者支援の場合、宿泊などは自己完結で行ってまいりました。今回の奥能登では、そもそも宿泊施設が全壊、半壊などで利用できない状況。復旧復興活動が長期にわたるからこそ、仮設住宅の用地、もちろんこれが重要なんですけれども、例えばプレハブを造るなど宿泊体制の整備、支援に入ってくる人々への支援も、国と県の連携の中で対応するべきだと思います。

 本来であれば、先ほど申し上げた自己完結、若しくは市町村が対応するところなんですけれども、それができない現状の中で、総理のお考えを伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、能登半島地震の支援活動に従事されている全ての方々の御努力に改めて感謝を申し上げます。

 そして、全国の自治体職員、医療、介護、さらには福祉関係者、そしてボランティアの方々、こういった支援者の方々を取り巻く厳しい活動環境についても配慮しなければなりません。

 とりわけ喫緊の課題が宿泊場所の確保であると認識をしています。石川県では、全国からの支援者やインフラ事業者等の方々に向けて、宿泊施設だけではなくして、キャンピングカー、トレーラーハウス、公共施設の空きスペース等を調達して、宿泊場所として提供していると承知していますが、政府におきましても、これらの宿泊場所の確保のための経費の八割について特別交付税によって措置することとし、こうした県の取組を応援しております。

 様々な支援者による継続的な支援が可能となるよう、引き続き、石川県等ともしっかりと連携をしながら、地域の実情を踏まえながら、必要な支援、国としても用意をしていきたいと考えます。

高木(陽)委員 インフラの復旧も大変重要です。道路、河川、漁港は国が代行して行うことになりました。また、上下水道も、全国から技術者の増員派遣を進めて、国が主導して断水解消への迅速化を推進しております。

 ここでも、課題となるのはマンパワーの問題。道路などは国が代行しますが、現場で作業するのは建設会社の人なんですね。上下水道も、自治体の職員とともに管工事会社の方々に作業を行っていただく。東日本大震災や熊本地震では、建設関係の会社が独自でプレハブなどを建てたり対応いたしました。

 先ほどの質問とも関連しますけれども、この作業メンバーの拠点というのがなければインフラ復旧は進まないということで、どうするのかを伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 被災地での宿泊施設は限られています。その中で、多くの工事事業者が日々、金沢市内など遠方の宿泊地から長時間移動して作業を行っている、こうした現状にあります。今後、復旧工事を加速化させていくためにも、活動拠点の確保等、後方支援を行うことは重要であると認識をいたします。

 このため、政府において、工事業者に向けて、宿泊可能な車両、コンテナ等の手配やこれらの駐車、設置場所の相談窓口のほか、宿泊可能な民間宿泊施設の情報を提供する、こうした枠組みを構築して、二月一日に各省から関係業界団体に対して周知を行ったところです。

 この枠組みを活用する形で、官民連携して復旧復興工事の加速化に取り組んでいきたいと考えます。

高木(陽)委員 よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、住まいの確保も、復旧復興、さらには一人一人の生活にとって大変重要になります。

 昨日もニュースで、仮設住宅の入居が始まったと報道がありましたけれども、石川県は、応急仮設、みなし仮設、公営住宅を三月までに一万五千戸、提供できるのは一万三千戸と発表しておりますけれども、被災者は、ふるさとから離れたくない、そういう方々がたくさんいらっしゃいます。

 それぞれの自治体の被災者がそれぞれの自治体で住める仮設を供給していただきたいと思うんですが、しかし、用地の問題がある。被災自治体の中でどれぐらいの人が入居できるかを早く明らかにしてあげること、これが被災者の生活、なりわい再建の希望を与えることになると思います。

 ここの状況について総理の御見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 被災された方々の住まいの確保、大変重要な課題ですが、このため、まずは、被災者の応急的な住まいとして、被災地外でも、すぐに入居できる公営住宅等や民間賃貸住宅の空き室を提供をしたところです。

 しかし、それとあわせて、被災地内に入居を希望する方に向けて、プレハブ型仮設住宅を迅速に建設することに加えて、仮設後の活用も見据えた木造仮設住宅の建設も選択肢として、被災者ニーズにきめ細かく応えながら的確に提供してまいります。

 被災された方々が再び住み慣れた土地に戻ってこられるよう、引き続き、被災自治体とも連携の上で、こうした住まいにつきましても取り組んでいきたいと考えます。

高木(陽)委員 続いて、体育館の空調について質問したいと思うんですが、石川県において避難所になっている小中学校は三十六校、石川県内で避難所として指定されている、今回は使わなかったんですけれども、公立の小中学校は二百七十九校で、これらは全て耐震化がなされておりました。

 学校の耐震化は、二〇〇一年、公明党の女性委員会が学校耐震化改善対策プロジェクトチーム、二〇〇二年に党の文科部会で学校耐震化推進小委員会、これを設置して推進してまいりました。さらに、二〇〇八年五月、中国四川大地震が発生し、多くの子供たちが学校の倒壊により命を落としたことが、その後の耐震化を加速させる大きな契機となりました。

 その後、公明党は、政府に対し、学校耐震化の重要性を訴えて国庫補助の拡大を提案し、地震防災対策特別措置法を改正いたしまして、学校耐震化が進みました。さらに、東日本大震災で体育館の天井が落下するケースがあり、非構造部材、この耐震化も進めてまいりました。

 一方、二〇一八年の西日本豪雨で、真夏の中、避難所となった体育館でエアコンがなく、高齢者、持病を持っている被災者の健康に大変大きな影響を与えました。

 その後、東京都では、都議会公明党の提言を踏まえて、小中学校の体育館の空調設置率、実はこれは八二・一%にもなっています。一方、全国で見ると、まだ一五・三%。今回の地震でも、厳寒の中、避難所となっている体育館で、毛布にくるまって寒さに耐えている被災者の方々が数多くおります。

 今後、地震のほか、豪雨災害などどこでも起こり得る自然災害のことを考えると、避難所となる体育館の空調設置が重要であると考えますが、国の財政支援も含めて総理の御見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 学校施設というものは、平時においては子供たちの学習、生活の場であるとともに、災害時においては地域の避難所としての役割も果たす、こういったことから、まず耐震化については御党の御尽力もあり格段に取組が進んできたと承知しておりますが、その中で、今後は、体育館の空調設備の設置、これを進めていくことが重要であると考えます。

 このために、公立小中学校等の体育館への空調設備の新設については、今年度から令和七年度までの間、国庫補助の割合を引き上げて自治体の取組を後押ししてまいります。

 今後とも、こうした必要な予算措置等も進め、引き続き、自治体による学校体育館への空調施設が速やかに進むよう支援をしてまいります。

高木(陽)委員 そのほか、能登地震の問題、まだまだ数多くありますので、今後しっかりと、質疑を通じながら、政府を挙げての支援をよろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、政治と金の問題について質問したいと思います。

 政治と金の問題を解決しなければ、国民の政治に対する信頼、これを取り戻すことはできません。政治の信頼を取り戻さなければ、今の能登半島地震の復興復旧を始め、この後に質問をいたしますデフレ脱却の課題、少子化対策など、政治課題を前に進めることはできません。

 政治と金の問題については、二度とこのような問題を起こさないため、公明党としても、政治改革ビジョンを各党に先駆けて発表させていただきました。先週の二十九日の集中審議でも我が党の中川康洋議員が質問いたしましたが、政治資金規正法を改正して、再発防止を確かなものとしなければなりません。

 柱としては、政治資金の透明性の確保と罰則の強化です。特に、国民の皆様方の思いとしては、今回の政治と金の問題で、会計責任者だけが責任を取って、政治家は責任がないのかということであります。今の法律ではそうなってしまうんですけれども、いわゆる連座制の強化、この法改正が必要だと思います。

 民間企業でも、いわゆる不祥事が起きた場合には、社長が直接やっていなくても責任を取るわけですね。やはり政治家も、会計責任者、自分の政治団体であれば、これは責任を取るべきであろうと思いますし、この点について、自民党総裁としての決断を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、我が党の政治と金をめぐる問題によって国民の皆さんから強い疑念の目を向けられていることについて、重く受け止め、そしておわびを申し上げます。

 その上で、我が党としても、強い覚悟を持って改革に取り組まなければならないということで政治刷新本部の中間取りまとめをまとめたところであり、その中で、政策集団の政治資金パーティーの禁止を始め、運営面で我が党独自でできることはすぐ改革に取り組むとした上で、制度面、政治資金規正法を始めとする法改正を伴う制度改革についても各党各会派と真摯に協議を進めるとしたところであります。

 そして、政治資金規正法の改正などの制度面においては、政治資金の透明化、そして公開性の向上、そして御指摘のより厳格な責任体制の確立そして厳格化、この点について特に重視して協議を行う、こうした考え方を取りまとめたところであります。より厳格な責任体制の厳格化ということについて、各政治団体共通のルールを考えていく、これは大変重要なことであると思います。

 そして、その厳格化に向けて様々な議論があります。例えば連座制という御指摘もあるわけですが、その連座制の中身を、例えば公職選挙法のような形での連座制の導入ということになりますと、対象とする政治団体の範囲ですとか、対象とする違反の種類ですとか、こういった点について丁寧な議論が必要なのではないか。これは自民党だけではなくして各党各会派が縛られる共通のルールですから、そういった点も念頭に置きながら協議を行いたいと考えています。

高木(陽)委員 協議を行いたいということですので。中間取りまとめを自民党は行いました。問題は、自民党はこういうふうな案なんだよということを具体的に出していただくことが協議のスタートとなると思うんですね。他の政党会派もそれぞれの案を出しました。どれが一番いいのか、ベストなのか。なかなか、いろいろとこの問題というのはあるかもしれません。しかし、協議をする土俵はあると思うんですね。だから、そこをしっかりと自民党としての案を出していただいて、協議を迅速に進めていただきたい、このように申し上げておきます。

 続きまして、デフレからの脱却について質問したいと思います。

 デフレからの脱却は持続的な賃上げが欠かせないということ、誰もが認めています。総理は、施政方針演説で、経済、とりわけ賃上げが今まさに喫緊の課題として求められていますと述べられました。昨年の春闘で三十年ぶりの賃上げとなり、今年の春闘も昨年以上の賃上げが期待されております。その賃上げの中で、雇用の七〇%を占める中小企業の賃上げが重要なことは言うまでもありません。一昨年から続く物価高、中小企業にとっては、物品費、また人件費の増加のために価格転嫁できる構造をつくることが大切であろう。

 経済産業省は、昨年十月から十二月に下請の中小企業にアンケート調査を実施しまして、下請企業との取引で価格交渉や価格転嫁に後ろ向きな企業、これを実名で公表いたしました。実名で公表されるとかなり企業にとってはイメージが悪くなるということで、このように、価格交渉、転嫁についても、評価が芳しくない事業者に対して所管大臣から経営トップへ指導助言を行うことで効果があると思います。

 今後、更に調査、公表を強化すべきと思いますが、見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 中小企業の賃上げについては適切な価格転嫁が重要であるということ、これは言うまでもありません。これまで三回にわたり、発注企業ごとに価格交渉、転嫁の取組状況に関する下請企業からの評価を、アンケート調査を行いました。そして、一定以上の回答が集まった発注企業について、実名入りのリストとして公表してきました。リストに掲載されたことのある企業の方が、今回初めて掲載された企業よりも、価格転嫁の状況が優れている傾向が見られるなど、企業リストの公表が自発的な取組方針の改善につながっている、こうした評価があります。

 今後とも、積極的な回答の呼びかけや設問の工夫などによって、より多くの中小企業にアンケートにお答えいただき、リスト掲載企業数が増えるよう、不断の見直しを行うなど、調査、公表を強化してまいります。

 また、昨年新たに策定した労務費転嫁の指針については、先月の政労使の意見交換でも、私から指針に沿った行動の徹底を要請したところですが、その上で、各産業等を所管する省庁から、千八百七十三の業界団体を通じて海外企業も含む会員企業に対して幅広くこの指針の周知徹底とフォローアップを行うこと、また、特に対応が必要な二十二業種については自主行動計画の策定や転嫁状況の調査、改善を行うこと、こういったことを要請し、官房副長官の下で、関係省庁連絡会議を設け、フォローアップをしていく、こういったことで指針の実効性を高めてまいりたいと考えます。

高木(陽)委員 中小企業の価格交渉、価格転嫁の調査によりますと、価格交渉、価格転嫁共に下から二番目の評価を受けた会社が三十三社あった。四分の一の八社は物流関連の会社が占めております。また、業種別の価格転嫁率の調査、これによりますと、トラック運送業が二十七業種中最も低いという結果でした。トラック運送業は、特に荷主との関係で価格転嫁が厳しい状況であります。同様に、建設業界も下請会社が厳しい環境だと。

 労務費の割合が高くて、多重下請構造になっていて下請、現場の賃金が上がりにくい建設業、トラック運送業に関しては、労務費を含めた価格転嫁が進むような環境づくりを政府主導で行うことが急務であると考えますが、どのように対応されるか、国交大臣に伺いたいと思います。

斉藤(鉄)国務大臣 高木委員おっしゃるように、建設業、トラック運送業、いずれも多重下請構造となっております。現場で働く方々の賃上げのためには、労務費を適切に確保した上で、これを行き渡らせる仕組みをつくらなければなりません。

 まず、建設業につきましては、建設業法等を改正する法律案を今国会に提出し、国が適正な労務費の基準をあらかじめ示した上で、個々の工事においてこれを著しく下回る積算見積りや請負契約を下請取引も含めて禁止する、新たなルールを導入します。これにより、多くの技能者を雇用する下請事業者まで適正な労務費の行き渡りを確保するとともに、資材高騰分の転嫁対策を強化することで労務費へのしわ寄せを防止し、賃金原資の確保を図ってまいります。

 トラック運送業につきましては、標準的運賃の引上げや、荷待ち、荷役の対価、そして下請手数料など、適正な運賃収受を促すための新たな運賃項目の設定、トラックGメンによる是正指導の強化に取り組んでいるところです。その上で、元請事業者に対して多重下請構造の是正に向けた取組を義務づけるなど、適正な運賃導入を進める法律案を今国会に提出いたします。

 国土交通省としても、賃金引上げに全力で取り組んでまいります。

高木(陽)委員 法改正を含めて、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。

 あと、中小企業の持続的な賃上げをするために、価格転嫁とともに、中小企業各社の稼ぐ力を向上することも重要であると思います。多くの中小企業は人手不足で苦しんでおります。そのため、生産性向上とともに、省力化、少ない人でも効率的に仕事が進むようにIT化、ロボットの活用も導入していくことが必要となっております。

 政府はこれらの支援のために各種補助制度をつくっておりますが、当事者の中小企業の経営者は、どの補助金が自分の会社で使えるのか、なかなか分かっていません。いや、それらの補助金があることさえ知られていないのが実情ではないでしょうか。せっかくいい制度をつくっても、使われてこそ意味があります。これらの補助金をどのように周知、活用してもらうのかを伺いたいと思います。

 さらに、深刻な人手不足に悩む中小企業の省人化投資を促すために、新たな支援制度として中小企業省力化投資補助事業を導入することとなりました。これは、省力化に効果のある汎用製品をカタログ形式で簡易に選択するという、先ほど、よく分からないという、そういった中で工夫したと思うんですけれども、中小企業の経営者にとって使いやすくする制度。

 しかし、この制度の申請開始も四月から五月と言われております。中小企業の賃上げの原資確保のために生産性向上を推進する重要なものですが、対応が遅過ぎて、効果が出るまでに時間がかかって、今年の春闘、これはもっと中小企業に頑張っていただこうと思っているんですが、賃上げには間に合わないのではないでしょうか。今後の見通しと展望について、併せて伺いたいと思います。

齋藤(健)国務大臣 まず、中小企業、小規模事業者が人手不足を乗り越えるためには、省力化投資等による生産性向上が重要な鍵になります。

 このため、革新的な製品、サービスの開発に必要な設備投資やITツール導入などの生産性向上支援、これを切れ目なく行ってきたところでありますが、令和五年度補正予算におきましても、ものづくり補助金やIT導入補助金を措置し、既にこちらの方は公募を開始をしています。

 また、委員御指摘の中小企業省力化投資補助事業につきましては、これは、事業者がカタログから選ぶことで簡易に機器を導入できるようにするということで、私は画期的な制度だと思っているんですが、規模の小さな事業者の中には、省力化にどこから手をつけていいか分からないといった声がありますので、省力化効果及びサービス体制がもう担保された機器をあらかじめカタログで掲載をいたしまして、安心して選んでいただけるというように、そういう制度なわけですが、まずは、今月中にその掲載する製品を選ぶという作業がありますので、この公募を開始をし、その上で、できる限り早く事業者向けの公募を開始したいと思っています。

 御指摘のように、使われなければ意味がないので、これらの施策を周知すべく、地方の経済産業局を通じた説明会や、全国の商工会、商工会議所、よろず支援拠点などの支援機関を通じた周知を進めてきたところであります。

 加えて、小規模な事業者の方にも支援策を御活用いただけるように、チラシの作成、配布を始めまして、地方紙やラジオ広告、ウェブ広告、SNSなどの様々な媒体を通じた全国への情報発信にしっかり取り組んでいきたいと思っています。

 引き続き、生産性向上、設備投資など、中小企業の意欲的な挑戦を後押しし、持続的な賃上げにつなげていきたいと考えています。

高木(陽)委員 周知広報をしっかりやっていただきたいんですが、これは前々回かな、予算委員会で私指摘をさせていただいたんですけれども、実は、齋藤経産大臣も御存じだと思うんですけれども、福島の復興で、今、官民合同チームというのがずっと行っております。私が副大臣のときにスタートを切りました。十二の市町村、被災十二市町村が、六千社が避難しました。ここに戻らなきゃいけない、どう戻ったらいいんだろう、何から手をつけていいのかということで、官民合同チームというのをつくりまして、この六千社に個別訪問をかけた。個別訪問どころか、何度も足を運んで、家族会議にも参加をして、私はこうやってやりたい、ではこういう補助金がありますねというのを具体的にやりながら、今どんどん福島に、被災地に戻っているというのがありますので、これを参考にして、中企庁も、今の長官もずっと福島を担当しておりましたので、よろしくお願いしたいと思います。

 次に、ライドシェアについて伺いたいと思います。

 昨年秋以降、地域の足としてのタクシー不足が議論される中、ライドシェアを含むタクシーサービスの在り方について議論がなされております。

 このタクシー不足について、全国全ての地域で足りないということではありません。特に足りないのは、まず地方の特に過疎化の進む地域、次に一部の観光地、そして一部時間帯の都市部だと思うんですね。

 そこで、地方では、市町村やNPOが行う自家用有償旅客運送を拡大して担っている。また、インバウンドの急激な回復によるタクシー不足に対応するため、他の営業エリアからタクシーが応援に行く。いわゆる今までの規制をちょっと外しましょうという中で、北海道のニセコモデルのような対応があります。また、東京など都市部は、運賃改定を機にドライバーの賃金も上がり、コロナで減ったタクシードライバーが戻りつつある。

 そのような中で、四月から、タクシー会社の管理の下で自家用車、一般ドライバーを活用する日本型のライドシェアがスタートするとのことです。

 ここで、ライドシェアの問題点を指摘したいと思うんですが、一点目は、安全管理の問題です。

 タクシーは物を運ぶのではありません。命を運ぶ業種です。鉄道、バス、航空などの公共交通と同様、運行管理を始め、安全に対する法制度をつくってきました。一方、海外でのライドシェアでは、事故が発生した場合に、ドライバーが責任を負う、運営会社は関係がないというケースもあります。四月からの日本型のライドシェアは、タクシー会社が管理責任を負うことにしております。

 二点目の問題は、雇用の問題。

 総理、政府はデフレ脱却のために賃上げの重要性を訴えている。しかし、昨年の規制改革会議ワーキンググループにおいて、一部委員から、雇用契約ではドライバーが十分に集まらないので、四月から開始予定の日本型ライドシェアでは、雇用契約に限定せず、業務委託も認めるべきだという意見が出されたと伺いました。働く者の権利の軽視につながりかねない、非常に残念な意見だと思います。

 今後、デジタル行政改革会議や規制改革推進会議において、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置づける法律制度について議論される予定と聞いておりますが、今回の議論、これは、タクシー不足という喫緊の課題を踏まえてどのように移動の足を確保するかという問題でスタートしました。新しいビジネスのライドシェアを解禁すべきかどうかという話ではなかったはずです。

 新しいビジネスとしてのライドシェアの解禁、公共交通の一翼を担うタクシー事業に重大な影響を及ぼします。特に、全国で二十万人のタクシードライバー、この働き方にも大きな影響を及ぼすことになります。

 利用者目線ももちろん重要です。同時に、政府の賃上げのための諸施策を、矛盾することがないよう、働く者の立場にも十分配慮した、バランスの取れた議論を慎重かつ丁寧に行うことが欠かせないと思います。

 そこで、総理に伺いたいと思います。

 新しい法制度の必要性を議論する場合には、私が指摘してきた点が前提になると考えますし、その議論の前に、まず、四月に開始する日本型ライドシェア、自家用有償制度の規制緩和などの施策の効果、さらには運賃改定、地理試験の廃止、タクシー運転手の増加策、これらの効果をしっかりと検証して、時間をかけてその効果を見極めることが必要であると考えますが、総理の見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 御指摘のライドシェアの課題については、地域の自家用車や一般ドライバーを活用した新たな運送サービスが四月から実装されるよう、御指摘の安全確保や労働条件に係る課題を含め制度の具体化を図るとともに、導入支援を実施することとしておりますが、あわせて、これらの施策の実施効果を検証しつつ、ライドシェア事業に係る法制度について六月に向けて議論を進めていきますが、その場合にも、ユーザーの利便性のみならず、安全確保や労働条件に係る課題についてもしっかり議論する必要があると考えます。

高木(陽)委員 今総理からの答弁がありましたように、様々な課題、これをしっかりと議論しないと、やはりライドシェア、いろいろな種類があるんですね、世界各国。ライドシェアがいいんだということではなくて、いわゆる、メリットは何、デメリットは何、そういうのを冷静に判断をしないと、実は、規制緩和というのは、規制緩和すれば全てがいいという話じゃなくて、例えば、自動車関連、まさに命を運ぶと言いましたけれども、バスがずっと、規制緩和をされました。それで、軽井沢の事故が起きた、それによって逆にまた規制を強化したという。でも、これは命が関わるんです。物で何か壊れちゃっただとか、そういう話ではなくて、命が失われてから規制を強化しよう、そういう話ではないということをどうか認識をしていただきたいと思います。

 もう時間も限られておりまして、最後に子供政策について伺いたいと思います。

 昨年末、政府は、こども未来戦略に基づいて、今後三年間で子供関連支援を集中させる加速化プランを決定いたしました。これは、一昨年十一月、公明党が発表した子育て応援トータルプラン、これがベースとなっていると思います。予算規模は三・六兆円、実現すればOECDトップのスウェーデンの水準をしのぐレベルと言われておりますが、ただし、マクロの視点の予算規模の大きさではなくて、子育て世帯、またこれから子供を産み育てていく若い世代が実感できることが何よりも重要です。

 ゼロ歳から二歳児の幼児教育、保育の無償化、又は大学等の高等教育の無償化、公明党の子育て応援トータルプランに掲げた問題、加速化プランには反映されていない施策がある。残された施策についても、実現に向けて引き続き公明党としても取り組みたいと思いますが、まず、今回の政府の加速化プランの内容について正確に国民に伝わっていないと思われるんです。

 例えば、保育の誰でも通園制度、専業主婦の方も利用できる。でも、これがいつから始まるのかなど、これは自治体ごとで最初は実証で始めますから、特に若者や子育て世帯などの当事者がいつから利用できるかが分からない。

 この当事者への伝え方に工夫が必要だと思いますが、政府としての方策を伺いたいと思います。

加藤国務大臣 委員の御質問にお答え申し上げます。

 加速化プランの推進に当たっては、各施策の意義や目指す姿、その具体的内容や実施時期などが国民の皆様一人一人に分かりやすく伝わり、施策が社会や職場で活用され、子供、子育て世帯にしっかりと届くことが何よりも重要でございます。

 このため、こども家庭庁では、インフォグラフィックを活用した広報資料の作成、若年世代の利用の多いSNSの活用や、自治体との連携による情報発信の強化などに取り組んでいるところでございます。

 社会全体で子供、子育て世帯を応援する機運を高めるべく、社会の意識改革に取り組みつつ、子供、子育て世帯にしっかりとメリットが伝わるよう引き続き丁寧に説明してまいります。

高木(陽)委員 今回の加速化プランで、高等教育の無償化へ一歩踏み込みました。二五年度から、所得制限を設けず、扶養する子供が三人以上いる多子世帯を対象に授業料などを無償化することになりました。

 一方、子供が一人の場合はどうなっているんだ、二人の世帯は恩恵がないじゃないかといった批判があるのも事実です。この多子世帯の無償化は第一歩なんだということだと思うんですね。

 今回、児童手当も拡充されます。この児童手当、国の制度としてスタートしたのは一九七二年なんです。しかも、このときは第三子以降の子供が対象でした。第二子になったのは一九八六年、第一子から児童手当が給付されたのは一九九二年と、何と二十年もかかったんですね。

 大学の無償化も、この多子世帯、第三子以降で第一歩としてスタートするんですが、しかし、今申し上げた児童手当のように、二十年後では意味がないんですね。もちろん、財源の問題もあります。加速化三年の、三年やります、次のステップで第二子そして第一子の大学無償化を目指すべきだと思うんですが、総理の見解を伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 まず、加速化プランに基づいて、令和六年度から、給付型奨学金等の多子世帯及び理工農系の中間層への拡大を行うとともに、令和七年度からは、子供三人以上を扶養している場合、国が定めた一定の額まで、大学等の授業料、入学料、これを無償といたします。

 まずは、これらのこども未来戦略の加速化プランに基づく施策、これを着実に進めてまいりたいと思います。そして、その実施状況や効果等を検証しつつ、引き続き、高等教育費の負担軽減を中心に、ライフステージを通じた経済的支援の更なる強化、あるいは若い世代の所得向上に向けた取組、これを適切に見直しし、進めてまいりたいと考えます。

高木(陽)委員 三か年プランというのはすごい大きな前進だと思うんです、総理が昨年、異次元の、そういう言葉を使われまして。ただ、子育て世帯にとってみれば、まだまだ厳しいな、そう思われている中で、公明党は、二〇三〇年代に大学無償化しましょうよ、こういうふうに主張しているんですね。

 やはり、将来のビジョン、今二四年ですから、六年後となりますと、今の小学校六年生が大学へ行くときには大丈夫だね、こういうような安心感を与えられるね、また、今の子供たち、小さな子供たち、これから生まれる子供たちも、ああ、そうなっていくんだねというのが見えれば、安心感、少子化対策、こういう異次元のという流れに更に加速化されるのではないかなということで提案をいたします。

 さて、昨年末の税制改正の議論で、高校生の扶養控除が議論されました。与党税制大綱では、扶養控除の見直しによって影響を受ける様々な制度等についてしっかり全体を把握すること、もう一つは、課税総所得金額や税額等が変化することによる各制度に不利益が生じないよう適切な対応を行うこと、これは各地方自治体が持っている独自事業でも同様に対応を行うとしています。これらを前提にして、今年の年末に改めて議論し、結論を得ることになりました。

 今回、児童手当の高校生までの拡充が行われますが、子育て世帯の状況から見ると、児童手当の拡充だけで安心して子育てができるかというと、そんな甘いものではありません。高校、大学と、教育費の負担を始め、通学のための交通費など様々な支出がある中、やりくりをしているのが現状です。私立高校の無償化も、東京都は所得制限を撤廃しますが、多くの道府県ではそこまでいっていません。子育て世帯にとって、教育費の負担が重荷になっていることは間違いありません。だからこそ、扶養控除が存在しているはずです。

 先ほど申し上げました、大学等の高等教育の無償化をやりましょうと。こどもまんなか社会を実現するというなら、子育て世帯の実情を踏まえて扶養控除問題を考えるべきであると思います。教育の無償化がまだ実現し切っていない中で扶養控除をなくすのはいかがなものか。総理に伺いたいと思います。

岸田内閣総理大臣 高校生の扶養控除について、要するに、実態をよく踏まえて考えろという委員の御指摘でありますが、これは、年末の与党税制調査会において、高校生を持つ世帯では、中学生までの子供を持つ世帯と比べて教育費等の負担が重い状況がある、こうしたことがある一方で、例えば、習い事や塾のように義務教育に加えて行われる補助教育については、高所得者ほど多くの金額を費やしており、特にコロナ禍の前後では、低中所得者層では補助教育の支出は減らしている一方、高所得者層では大きく増やしている、こういった状況が見られる、こういった議論が行われました。

 こうした議論を踏まえて、高校生の扶養控除について、高校生年代に支給される児童手当と合わせて、全ての子育て世帯に対する実質的な支援は拡充する、しかし、所得階層間の支援の平準化、これを図るよう見直す方針を税制改正大綱において示していると承知をしています。

 高校生の扶養控除については、昨年の臨時国会において、私からも、見直しによってかえって負担が増えることがないようにとの懸念を踏まえて整理を進めると申し上げたところであります。

 今後、税制改正大綱でお示しした方針の下に、現行の扶養控除の金額を前提として所得水準の判定を行っている社会保障や教育といった分野の他の制度において、扶養控除の見直しによって、給付や負担の水準によって不利益が生じないようにしなければならない、そういった考え方に基づいて、令和七年度税制改正において最終的な結論を得てまいります。

高木(陽)委員 時間が参りましたので、最後に一言だけ申し上げます。

 いわゆる負担が増えなければいいという話じゃないんですね。今でも負担が多いんです。だから、ここのところを、子育て世帯、一体どういう状況なのか。私たちはもう子育てが終わってしまいまして、余り実感がしないということを前回申し上げました。今の子供たちがどうなっているのか、これをしっかり考えて、与党としても、年末の税制改正、しっかり議論していきたいと思います。

 以上で終わります。

小野寺委員長 この際、稲津久君から関連質疑の申出があります。高木君の持ち時間の範囲内でこれを許します。稲津久君。

稲津委員 公明党の稲津久です。

 通告に従って、順次質問してまいります。

 質問に先立って、令和六年能登半島地震の犠牲になられた方々、御家族の皆様に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、負傷された方々、被害に遭われた方々に心からのお見舞いを申し上げる次第でございます。

 初めに、能登半島被災地支援について、まず、学校の教育環境に関して伺ってまいります。

 被災を受けた子供たちが学校で元気で学んでいる姿を報道等で見るにつけ、改めて学校の存在、学ぶことの大切さ、こうしたことを痛感をしております。石川県内では、まだ小中学校七校の再開ができていません。オンライン授業等を進めていますが、一日も早い学校の再開を望みます。

 教職員も、自ら被災を受けながらも、授業に学習指導にと、大変な中、働いています。石川県の被災地からは、教職員を支援してほしいという声が上がっています。輪島市、珠洲市、能登町の中学生が先生方と集団避難をしていることを踏まえて、一月の二十二日に、石川県教育委員会から、三十八名の教職員を派遣をしていただきたいという要請が文部科学省にあったところです。

 実際に派遣ができた教職員の数は、一月二十六日に九名でありましたけれども、今日、二月五日現在では全三十八名の派遣ができていると承知をしておりまして、ここは関係者の皆様の御努力に敬意を申し上げたいと思います。しかし、教職員の全数派遣は、要請から二週間が経過をしていることを考えますと、いささか迅速化に欠けていると言わざるを得ません。

 集団疎開先の教職員派遣支援にとどまらず、被災を受けた地域の学校の教職員の支援も必要と考えます。対応をお願いしますとともに、この際、相次ぐ災害に対応する教職員の派遣システムを平時から備えておく必要性を私は強く感じています。これは、党としても既に文部科学大臣に要請をしております。

 被災者である子供と学校の緊急支援を目的とし、被災地の教職員派遣、十分な心のケアのために、教員や心理学の専門家、大学、NPO等官民連携による支援チーム、教育版DMATを創設すべきと考えますが、総理にお伺いします。

岸田内閣総理大臣 能登半島地震の被災地への教員派遣については、国は全国の教育委員会と協力して、輪島市等への、中学生の集団避難先に順次教職員の派遣を行ってきたところですが、この教職員派遣以前から、兵庫県を始めとする自治体による学校への支援として、防災に関する専門的な知識や能力を有する教職員のチームが被災地の要請に応じて現地入りし支援活動を行ってきた、こういった取組があったと承知をしています。

 ただ、委員の方からは、平時から対応体制を整えつつ、災害時には、専門的な知識や経験を有する教職員を始めとする学校関係者が、被災地からの要望を速やかに受けて被災地の学校へ支援を行うこと、こういった仕組みをつくれという御指摘かと思いますが、そういった考え方はまず重要だと思います。

 今後、文部科学省において、自治体の支援活動、今申し上げたような活動も参考にしつつ、国としてどのようなことができるか、これを考えてまいりたいと思います。

稲津委員 是非よろしくお願いしたいと思います。

 医療のDMATについては、救急医療だけじゃなくて、現地での診察あるいは様々な処置等を幅広く行っておりまして、その成果たるや大変大きなものがあって、もう今や被災地域ではDMATについては必ず欠かせないものになっているということで、是非検討を進めていただきたいと思います。

 公明党は、発災直後から国会議員や地方議員が地元議員と一緒になりまして被災地入りをして、被災者の方々から御相談をいただき行政につなげるなど、支援を展開してまいりました。その中から、要介護者への支援の対応について伺っていきたいと思います。

 被災地では、介護従事者自らが被災に遭う中でも、介護に献身的に取り組んでおられます。被災地ではマンパワー不足が顕著で、介護に従事する人材の応援体制の強化が喫緊の課題であると考えます。介護従事者等の県内外からの派遣が進められつつありますが、災害関連死を防ぐためにも応援の派遣人材を増員することが急務です。

 お聞きしますと、現在、特別養護老人ホームなどの施設や避難所等での応援体制は整備されている、このように承知をしておりますが、問題は在宅のところ、ここの訪問介護等で応援体制を早く整備する必要があります。地域からの情報も整理した上で、介護従事者、ケアマネジャー、また理学療法士等も含めて応援の体制を構築すべき、このように考えていますが、厚生労働大臣の所見を伺います。

武見国務大臣 避難所等において介護を担う職員の不足に対する対応、各関係団体とも連携をして、被災による従業員不足や、施設や一・五次避難所等への介護職員などの応援派遣を進めているのは御存じのとおりであります。

 御指摘のとおり、やはり在宅の要高齢者の方々をどういうふうに把握するのか、そしてそれにどう対応するのかというのはまさに喫緊の課題であります。地理的にも、在宅になりますと、こうした高齢者の方々が分布を広げていってしまいますから、それをいかに把握するのかという仕組みをつくることは極めて重要になってまいります。

 現状では、在宅などで避難生活を送る高齢者などについては、保健師などにより健康管理に努めておりますけれども、今申し上げたような事情もあります。被災高齢者等把握事業などを活用いたしまして、関連団体との連携の下でケアマネジャーなどの派遣を順次進めることになっております。

 既に具体的に、先日、二月の一日、珠洲市にケアマネジャーが現地入りをいたしまして、まずは在宅要介護者等のニーズの把握に取り組み始めました。避難所や在宅を問わず、やはり被災地の要介護者等に適切にきめ細かく支援が行き届くように、関係者とも連携をしながらこうした取組を進めていきたいと思います。

稲津委員 能登半島地震の支援体制等について順次伺いました。

 総理は、施政方針演説の中でも、復旧・復興支援本部を設置をして、被災地の再生まで責任を持って取り組んでいく、このように決意を述べました。是非お願いしたいと思います。

 私ども公明党も、これまでも取り組んでまいりましたが、これからも被災者の皆様に寄り添って、そして一日も早い復旧復興のために全力で取り組んでまいる決意を申し上げまして、次の質問に入ります。

 次に、当面する諸課題の中でも、持続的な賃上げについて質問をさせていただきます。

 まず、介護従事者の賃上げです。この問題については、我が党として、昨年、岸田総理に提言を出させていただいて、介護分野の賃上げを確実に実施するよう強く要請をさせていただきました。

 今、多くの産業において賃上げの流れができつつありますが、介護分野と他の産業分野との賃金格差が広がれば、介護分野の人材流出が懸念されます。

 パネルの一を御覧ください。これは賞与込みの月額給与を示しておりますが、全産業平均と介護職員の差は縮まってきてはいるものの、令和四年度でも六・八万円の差があります。

 パネルの二番目を御覧いただきたいと思います。介護分野は、二〇二二年にマイナス一・六%と初めて離職超過、このようになりました。大変大きな問題です。

 介護従事者の賃金アップとして、政府は昨年末、二〇二四年度にベースアップ二・五%、二五年度に二%の措置を決めましたが、それで果たして十分と言えるのかという問題です。高齢者やその家族の生活を守るために献身的に働く介護従事者の存在は大きい一方で、その仕事に見合った賃金になっているのか、そういう疑問があります。今回の改定は一つのステップであり、更にほかの産業との賃金格差を縮める必要があるというふうに考えます。

 そこで伺いますが、介護従事者の仕事にふさわしい賃金とはどのくらいと考えるのか。また、少なくとも全産業に追いつくことが必要と思いますが、どう考えるのか。総理のお考えを伺います。

 そして、賃金アップのためには介護報酬の引上げが必要ですが、今般の改定では、訪問介護の基礎報酬は下がるんですけれども、しかし、一方で、処遇改善加算は上がります。問題は、現行の加算措置は、給与規程の整備など、そうした適用条件をクリアしなければならなくて、ある意味煩雑でハードルが高い、このように感じるとの意見もあります。

 思い切って簡素な制度設計にして、できるだけ早期に加算を受けられるようにする、このようにしていくべきと考えます。人員が特に不足しているのは訪問介護の分野でありまして、併せてお伺いさせていただきます。

岸田内閣総理大臣 まず、介護分野にふさわしい賃上げ、賃金水準ということについて一概に申し上げることは難しいですが、ただ、介護現場で必要な人材を確保するためにも、物価高に負けない賃上げを実現していくことは重要であると認識をいたします。

 このため、今般の介護報酬改定では、政府経済見通しで、令和六年度の全産業の一人当たり雇用者報酬の伸びが二・五%と、物価上昇と同水準と見込まれることから、こうした見込みと整合的なベースアップを求めているところです。

 そして、御指摘の訪問介護ですが、基本報酬の見直しを行う一方、全職員に占める介護職員の割合が高いことから、処遇改善関係加算について、他の介護サービスと比べて高い加算率をまず設定しています。

 そして、事務の煩雑さ等が御指摘ありましたが、こうした加算措置を活用しながら、二・五%のベースアップを確実に実現するためにも、事務の簡素化等の観点から処遇改善加算を一本化することとしており、現場で最大限に活用していただくよう取得を強力に推進すべく、相談体制の整備などについても進めていくことを考えております。

稲津委員 よろしくお願いします。

 それで、次に、介護従事者の定着についてということで、これは厚生労働大臣に質問の通告をさせていただいておったんですけれども、大変申し訳ありません、ちょっと全体の時間が少し足りなくなってまいりまして、次の質問に移らさせていただきたいと思います。

 次は、介護人材の将来見通しについて総理に見解を伺いたいと思います。

 都道府県が推計した介護人材の必要数は、二〇一九年と比較して、二〇四〇年には六十九万人の介護人材が追加で必要という試算があります。これに対して、政府は、多様な人材の確保、育成など五本の柱をもって対策を掲げました。確かに、賃金格差は、少しずつですけれども縮まってきております。それから、介護人材も増えてきております。ただ、この賃金格差、十分と言うにはまだ余りにもほど遠いというふうに私は思います。問われているのは、実効性と施策の具体化。

 そこで伺いますが、例えば、外国人材を何万人増やします、未経験者や高齢者も参入しやすいように業務の切り分けを進めて、介護助手を何万人増やしますとか、テクノロジーの活用を強力に進めて、六十九万人とされる介護人材の必要数を数万人規模で少なくするなど、例えば、仮称、介護人材確保トータルプラン、こうした計画を策定して、戦略的に取り組むべきと考えますが、総理の見解をお伺いします。

岸田内閣総理大臣 高齢者の人口増加あるいは生産年齢人口の減少、こうした中にあって、将来にわたって必要な介護サービスを安心して受けられるようにするためにも、担い手を確保することは重要である、これは強く認識をいたします。

 そして、委員の方から、計画を立てるべきである、こういった御指摘がありましたが、介護人材の確保に向けては、三年ごとに自治体が策定する介護保険事業計画等に基づいて、国において将来の必要数の見通しを示しています。

 これまで以上に計画的な取組の推進が重要であると認識しており、二〇二四年度から開始する第九期の計画に向けて、処遇改善、人材育成への支援、またテクノロジーを活用した職場環境の改善、そして外国人介護人材の受入れ環境整備、こうした総合的な対策を強化してまいりたいと考えます。

稲津委員 ほかの産業とのギャップを改善していくという視点、そして、何よりも、介護で働く方々に、しっかり守りますよというメッセージ、それから安心して介護業界に入ってください、こういう強いメッセージを送っていく。そういう考え方に基づいて、これから施策を進めていただきたいというふうに思います。

 次は、保育士ですけれども、まず、こども誰でも通園制度について伺います。

 この制度は、周りの協力が得られずに不安や悩みを抱えるお母さんたちの孤立した育児の負担を軽減する支援策として、公明党としても、地方議員と連携して進めてきた制度でございます。利用対象は保育所に通っていないゼロ歳六か月から満三歳未満を想定した、令和五年度そして六年度の試行的事業ですけれども、是非法定化し、全国の自治体で実施できることを強く望みます。

 一方で、課題も多い。一番の課題は、やっぱり人材の確保。人口減少社会にある今、具体的な対策が必要です。

 そこで、提案します。それは、家庭的保育者や保育補助者を本格導入することです。いわゆる潜在保育士に対し自治体等が研修を行う。また、資格がない場合には認定研修を受講していただき、保育士等の知識と技術があると自治体に認められた人を採用する。こうした方々を採用することで、保育所の人員を全体として確保していく。

 この家庭的保育者や保育補助者等の制度と、こども誰でも通園制度の本格実施を進めるべきと考えますが、これも総理に決意を含めてお伺いします。

岸田内閣総理大臣 こども誰でも通園制度については、令和七年度から法律上の制度として位置づけ、実施自治体を拡充した上で、令和八年度からは法律に基づく新たな給付制度として全自治体で実施することとしており、このための法案を今国会に提出することとしております。

 そして、こども誰でも通園制度の本格導入に当たっては、委員おっしゃるように、保育人材の確保が重要であると考えます。

 保育士資格の取得支援ですとか、保育所等におけるICT化の推進等による負担軽減、潜在保育士のマッチング支援等の取組を進めていきたいと考えますが、あわせて、同制度の職員配置の基準について、現在行っているモデル事業や試行的事業の実施状況なども踏まえながら更に検討を行うこととしており、御指摘の家庭的保育者あるいは保育補助者などの活用も含めて検討を深めていきたいと考えます。

稲津委員 関連して、これで最後の質問にさせていただきますけれども、時間の関係もありますので、御答弁も簡潔にお願いしたいと思いますが、保育士の処遇改善、賃金アップです。

 保育士の賃金水準は全産業水準の平均以下で、キャリアアップを重ねても賃金上昇が望めない現実があります。私どもの訴えもありまして、過去十年間で二三%の賃金改善、これは評価をしますが、実際に保育士の元に届いているのかどうか、問題意識はそこにあります。

 施設に支給された処遇改善費が賃上げに充当されているのか確認する仕組みが必要と思われます。あわせて、将来のために資金の積立てが必要な経営支援も、是非これは担当大臣にお答えいただきたいと思います。

加藤国務大臣 委員御指摘のとおり、現場の保育士等に処遇改善が広く行き渡っているかを検証することは重要と認識をしております。

 処遇改善等加算においては、自治体が賃金改善の実績報告を確認することで、加算額が賃金改善に確実に充てられるようにしております。

 さらに、昨年十二月に閣議決定をしたこども未来戦略におきましては、費用の使途の見える化に関する法定化を盛り込んでおり、保育所等からの報告内容を分析することにより職種別の賃金改善の状況等を明らかにする等、透明性の向上を図ることとしております。

 あわせて、保育所等が将来に備えた資金の積立ても確保しつつ、安定的に経営を行えるよう支援することも重要と認識しております。費用の使途の見える化による経営情報の分析結果等については、保育所等における経営判断の参考としていただくほか、今後の施策の企画立案等にも活用していきたいと考えております。

稲津委員 終わります。ありがとうございました。

小野寺委員長 これにて高木君、稲津君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 立憲民主党の岡田克也です。

 今日は、総理といろいろ議論したいことが実はあります。外交、安全保障、そして子育て政策、地震。しかし、今日は、党の政治改革実行本部長として、政治改革に絞ってやり取りをしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 まず、今日、朝、示されたリスト、裏金に関与した議員のリストですが、私は極めて不十分だと思うんですね。まず、どうして三年なんですか。立件の範囲というのは五年でしょう。三年に絞られている。それから、どういう形でその裏金が発生したのか、中抜きかキックバックかという議論がありますね。何よりも、何に使ったのかときちんと書かれていないです、証拠をそろえて。

 そういう極めていいかげんなものをこのタイミングで出されたことについては、総理はどう考えておられますか。

岸田内閣総理大臣 まず、今、関係者によって政治資金収支報告書の修正作業が行われています。その中で明らかになってきた資料について提出させていただくとともに、これは、まずは関係者の説明責任を果たすべく、促していくことが重要であると認識をしています。

 そして、何に使ったかとか、そういった内容について、不十分だという御指摘がありました。だからこそ、これは関係者自らの説明責任だけではなくして、党としても実態を把握しなければならないということで、先週金曜日から、外部の弁護士も交えて、順次、党幹部による関係者の聞き取りを開始したということであります。

 そして、併せて、党としても全所属議員に対してアンケート調査を行う。こうしたことを通じて、党としても、実態把握、経緯ですとか、あるいは使途等についてもできる限り把握をしたいと考えております。

岡田委員 今私が指摘した件、例えば五年というのは非常に重要なんですね、参議院選挙がそこに入っていますから。三年だと前々回の参議院選挙が抜け落ちてしまう、そこで大きく額が変わる、そういう話があるわけですね。

 ですから、今、アンケート調査をしておられる、それから関係者にヒアリングもしておられるということですが、その結果は今週中に、どんなに遅くとも来週早々には結果が発表されると考えていいですね。

岸田内閣総理大臣 これは午前中もお答えさせていただきましたが、まず、聞き取り調査の方につきましては、可能な限り今週中をめどに聞き取り作業を終えて、その後、外部の第三者による取りまとめ、これを予定しております。

 そして、アンケートの方ですが、所属全議員を対象とするアンケート、これは今週中に行い、来週早々にも取りまとめることを予定しております。

岡田委員 本当は、全議員を対象にしたアンケート調査などは、もう既に、大分前にやっていなきゃいけない話ですよね。ですから、早々にと言われましたが、それは、取りまとめるのが来週早々ではなくて、きちんと発表していただかないとこの場での議論も進みませんから、そのことを強く要望しておきたいと思います。

 それから、政倫審、自民党の国対委員長はかなり前向きなことも言われました。二階派やあるいは安倍派の幹部について、やはり自らきちんと述べてもらわないといけないというふうに思うんですね。

 総理は、御党の国対委員長が言われた政倫審に前向きな発言、そのことを是認されますね。

岸田内閣総理大臣 関係者において説明責任を果たすこと、これは大変重要であると考えます。

 そして、説明責任を果たす果たし方については、様々な手段が考えられます。その中で、国会においてどのような説明責任を果たすのか、委員会の場で行うなど具体的な取組については、これは当然国会において御判断いただかなければなりません。できる限りの説明責任を果たす中で、どのような手段を使うのか、党としても、国会関係者を中心に判断をしていきたいと思います。

岡田委員 国対委員長はこう言われているんですね。議員の責任として説明していくのは当たり前の話だ、政倫審に関してそういうふうに言われているんですよ。ですから、政倫審で関係者が発言することは、私は自民党として前提にしておられるというふうに理解しているんですね。

 総理、その認識でよろしいですね。

岸田内閣総理大臣 今申し上げました、関係者として説明責任を果たす、これは極めて重要であります。

 そして、その手段としてはどうあるべきなのか、国会における説明につきましては、国会の関係者が判断しなければなりません。

岡田委員 国会でと言われて、御党の国対委員長も言っておられるんだから、それを是認されたというふうに私は理解をいたします。

 予算委員会での参考人とか証人というやり方もありますが、やはり自主的に出てきていただいて、そしてきちんと説明していただくというのが基本だと思うんですね。そのことを求めておきたいと思います。

 さて、今回のこの裏金問題、結局、長く幹事長をやられた幹事長派閥と、そして総裁派閥で起きているわけですね。

 私は、自民党が裏金で回ってきた、非常に深刻な事態だと思うんです。法治国家としての一番の基本のところが崩れている。国民が政治に対して信頼できないと言っている。そのことは総理も肌身で感じておられることだと思います。

 そういった現状について、総理はどう考えておられますか。

岸田内閣総理大臣 政治と金の問題をめぐって、自民党に対して国民の厳しい目が注がれているということ、これは大変深刻な事態であり、重く受け止め、そして党としてもおわびを申し上げなければならないことであると認識をいたします。

岡田委員 私は、一九九〇年二月の初当選です。当時、自民党公認で当選をいたしました。三年四か月ほど自民党に在籍をいたしました。

 行ってみて驚いたのは、政治改革の議論が、本当に火花を散らせるような議論が党の中で行われていたことです。中心になっておられたのは、伊東正義先生、政治改革本部長、後藤田正晴先生、政治改革委員長。このお二人に接して私が感じたのは、これは自民党のためにやっている改革じゃないんだ、このままいったら日本の政治が本当におかしくなってしまう、だから、これは日本国民のために、国のためにやらなきゃいけない改革なんだ、それが自民党にとって不利になってもやらなきゃいけない。

 確かに、不十分とはいえ、政治と金の問題についても、いろいろな改革は少しは前に進みましたよね。それから、選挙制度の改革で、小選挙区を入れるということは政権交代を起こりやすくするということ、当時はそう理解をされていましたから、自民党の長期政権を場合によっては捨てるという覚悟で議論しておられたと思うんですね。そのぐらいの覚悟というのは総理にありますか。

 総理は、やはり事実関係を明らかにすること、そして政治責任を取るべき人が取ること、そして制度改革をすること、そういったことを言っておられるわけですが、そういったことができなかったときに、どういう責任を取られますか。

岸田内閣総理大臣 まず、委員から紹介がありましたかつての自民党の議論、平成元年の政治改革大綱をめぐる議論であると承知をしております。当時の議論が激しかったということ、私はまだ当選前でありましたが、私も記憶をしております。

 そして、その改革においては、まずは、当時大きな課題とされた中選挙区制度をめぐる様々な弊害について議論が行われ、そして、小選挙区の導入等の改革も行われましたが、派閥をめぐる弊害については、残念ながら、今日まで厳しい指摘を受けるような状況が残っていたことについては、自民党として改めて反省をし、そして、政治刷新本部において、中間取りまとめ等を通じて、改革に向けた覚悟を示したところであります。

 政治刷新本部の本部長として、責任ということであるならば、まずは、自らまとめた中間取りまとめ、これを実行することが何よりも大きな責任であると思います。制度面においても、そして運営面においても、中身を実行いたします。

 それができなかった場合ということで、仮定の御質問をされましたが、これを何としても強い覚悟でやるというのが私の立場の責任であると思います。何としても、本部長として、自民党が変わらなければならないという思いを持って、この中間取りまとめを実行してまいります。

岡田委員 総理のその思いというのがなかなか伝わってこないんですよ。火の玉になってやるとか先頭に立ってやるとか、いろいろ表現を使われますけれども、やはり政治は結果責任ですから。

 自ら推進本部長、その職を引き受けられて、これは異例だと思いますよ、総裁がやることは。そして、実行することが自分の責任だというふうにおっしゃっているわけですから、是非、この国会でそれをやり遂げるという決意が必要なんです。できなければ責任を取るぐらいのことをどうして言えないんですか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げました中間取りまとめにおいて、法改正を伴う制度面の改革について、自民党としても各党各会派と真摯な協議を行う、これは明記しております。

 今国会において、政治資金規正法を始めとする法改正、実現をしてまいります。

岡田委員 非常にさめた感じですが。

 岸田派の不記載についてちょっとお聞きします。

 参議院の予算委員会の集中審議の中で、総理はこう答えておられるんですね。紹介議員が明らかでない部分を別に置いておいたというふうに言われています。これはどういう意味ですか。パーティー用の宏池会の口座の中に三千万円がたまっていたということなのか、別にと言われますから、別の口座にそれを移されていたということなんですか。どっちでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の発言につきましては、宏池会においては、どの議員の紹介か不明な分について、それが判明するまで収支報告書に不記載にするという会計上誤った取扱いをしていたことや、収支報告書への銀行入金記録の転記ミスなどの事務的ミスが積み重なった一方で、どの議員の紹介か不明な分も含めて、全てのパーティー関連収入は決められた銀行口座に入金されていたものであり、意図的に隠したという指摘は当たらないという趣旨で申し上げた次第であります。

岡田委員 よく分からないんですが、その事務的ミスというのは、何が事務的ミスなんですか。

岸田内閣総理大臣 今申し上げました、どの議員の紹介か不明な分について、それが判明するまで不記載にする、これは当然、会計上の誤った取扱いであります。それと併せて、今回、収支報告書の修正に当たっては、転記ミスなどの事務的なミスも指摘をされ、判明した、こういったことであります。これらを指摘して事務的ミスと申し上げております。

岡田委員 三千万円の事務的ミスというのは、よく理解できないんですね。

 そして、総理、お聞きしますけれども、これは三年間で三千万、その後、会計責任者が替わられたということですが、では、その前はどうなんですか。この会計責任者の方は随分長くやっておられて、この三年間だけそういう不記載ということをやったんですか。その前はなかったんですか。確認されましたか。

岸田内閣総理大臣 その前については、確認ができておりません。

岡田委員 それは確認すればいいじゃないですか。通帳ぐらい残っているでしょう。だから、きちんとそれをやはり調べて、そして報告する必要があるんじゃないですか。

 総理は、安倍派や二階派に対してちゃんと説明しろというふうに言われているけれども、まずきちんと説明しなきゃならないのは自分のところじゃないですか。そして、あなたはその代表だったんですよ。きちんと紙で報告して、記者会見を開いて説明してくださいよ。

岸田内閣総理大臣 既に、記者も交えて、派閥の当時の事務総長が内容について説明を行っております。私自身もこれまで、会見の場等について、説明を行ってまいりましたし、これからも国会等を通じて説明を行ってまいります。

岡田委員 三年間以前のものは分かりません、それでちゃんと説明したことになるんですか。

 そして、こんないいかげんな説明をしていたら、安倍派や二階派もちゃんと説明しなくなりますよ。やはり自ら範を示して、きちんと説明するということが必要なんじゃないですか。考え直してもらえませんか。

岸田内閣総理大臣 これまでも様々な公の場において説明を行っております。これからも行います。

岡田委員 国会で聞かれて答えていることをもって説明と言っているんですが、もっときちんと、記者会見、総理、あるいは事務総長でもいいですよ、林さんも後ろにおられますけれども、ちゃんと記者会見を開いて説明されたらどうですか。

岸田内閣総理大臣 それについては、既に、記者を交えた公の場において、派閥の事務総長から丁寧に説明を行っております。事務処理上の疎漏によるものであると聞いております。

岡田委員 聞いておりますじゃなくて、やはり自ら、派閥のトップだったんですから、総理のときも派閥のトップを辞めなかったような人なんですから、きちんと自ら確認して、通帳も見て、そして説明されたらどうですか。三年以上前のものは知りませんなんて、そんな説明は通用しませんよ。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 確認できる範囲内で、最大限努力をいたします。

 引き続き、説明責任を果たしてまいります。

岡田委員 総理がそういう姿勢だと、安倍派や二階派も右に倣えになってしまうんじゃないかというふうに思います。

 さて、その安倍派幹部の責任についてちょっと確認したいと思います。

 今日は刑事局長もおいでいただいていると思いますが、まずその前に、安倍派の裏金の問題はいつから始まったのか。諸説ありますよね。しかし、もう二十年以上やっているという話もあります、森さんの時代からだと。

 総理、森さんを、森元総理を自民党に呼んできちっと話を聞かれませんか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 今、先ほど申し上げたように、関係者の聞き取りを行っております。

 その中で、範囲につきましては、その聞き取りを進める中で判断していくことになります。

岡田委員 いつからやっていたか分からないわけで、非常に長いとも言われているわけですね。やはり実態をしっかりと明らかにすること、これは、この三年間を適当に説明したらいいということじゃないんですよ。

 やはり、いつから始まって、どういう理由で始まった、累積してどのぐらいの裏金が発生していたか、そういったことをきちんと明らかにして、そして国民に説明するのが、私は自民党の役割だと思うんです。そのためには、森さんの時代から始まっていたという話もあります、きちんと確認されたらどうですか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げました、今聞き取りを続けております。

 その中で、実態把握のためにどの範囲で聞き取りを行うのか、聞き取りを行いながら判断をいたします。

岡田委員 是非国民が納得するような説明をしていただきたいというふうに思います。

 令和四年の四月頃に安倍派の幹部が集まって、安倍さんもおられて、還付をやめようという話が出た。幹部間で還付を行わない方向で決定もされたけれども、安倍さんがお亡くなりになって、その後、還付が行われた。そういうふうに、例えば西村議員が会見で説明されていますね。

 私、これを聞いて、おやと思うんですよ。還付そのものが議論の核心だったんですか。だって、還付そのものは、ちゃんと届出がされている限り、違法でも何でもないわけですから。そんなことのために派閥の幹部が、複数回集まったとも言われていますが、集まって議論する必要があるんですか。やはりそこに不記載という問題があって、この不記載を何とかしなきゃいけないというのが、派閥の幹部が集まって、安倍さんも含めて協議したその中身だったんじゃないですか。

 不記載をやめようとしたら、道は二つしかないです。一つは、記載する。だけれども、これは突然記載したら、前年までと、そういう記載はないわけですから、やはり非常にリスクがある。とすると、やはりキックバックそのものをやめるという選択肢しかない。キックバックをやめること自身が目的ではなくて、不記載をやめるということが目的で協議してきたんじゃないんですか。

 そのことは、例えば安倍さんに非常に近いと言われたNHKの元記者の岩田さんの番組における発言でも裏づけられていると思うんですね。安倍元総理は会計責任者に、このような方法は問題だ、直ちに直せと言った。事務総長らにも、あの件はやめたんだろうなとくぎを刺したと。

 単にキックバックをやめるだけなら、こんな表現にならないでしょう。やはりそこに不記載という問題があって、安倍さんが危機感を持って、それを何とかやめなきゃいけないということで、派閥の幹部を集めて議論した。だから、その段階でみんな不記載のことは分かっていたというふうに、もうそれしか考えようがないと思うんですが、刑事局はどういう判断をされたんですか。

松下政府参考人 お尋ねは個別事件における証拠の内容や評価に関わる事柄についてでございまして、具体的なお答えは差し控えたいと存じますけれども、あくまでも一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、当該事案の真相を明らかにするために、必要な事項について捜査を尽くした上で、その結果収集された証拠に基づきまして、また法律に照らしまして、刑事事件として取り上げるべきものを取り上げて対処しているものと承知をしております。

 そして、今のお尋ねの件に関してでございますけれども、具体的なことそのものをお答えすることは差し控えたいと存じますが、検察当局は、御指摘の事案に関しては、証拠上、各会派の収支報告書の作成は代表者兼会計責任者を含む会派事務局が専ら行っており、派閥の幹部において、収支報告書の作成自体への関与はもとより、記載内容、どのように記載していたかまで把握していたとも認められず、虚偽記入の共謀があったと認めるのは困難であると判断したこと、また、現時点で処理すべきものは処理したことなどを表明したと承知しております。

岡田委員 ちょっと私は納得できないんですね。

 ですから、こういう発言もあるんですね。これは終わった後の発言なんですけれども、下村さんが一月三十一日に記者会見でこういうふうに言っています。八月の幹部協議、つまり、このときはもう安倍さんはおられません、亡くなった後ですね、幹部でこれをどうするかという協議をした。その幹部協議で、還付について、個々のパーティーに上乗せして収支報告で合法的に出すという案も出たと。つまり、個々の議員がやっているパーティーにその還付分を乗っけて収支報告に載せればいいじゃないかと。

 これはどういうことかというと、やはりそこに不記載の塊があるということが前提の議論じゃないですか。そうとしかこれは理解できないですよね。下村さん自身が記者会見でそういうふうに言っておられるんですよ。

 これは検察が判断をした後の会見ですけれども、もう一回捜査する必要があるんじゃないですか。

松下政府参考人 お尋ねは捜査機関の活動内容に関わる事柄でございまして、法務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

岡田委員 要するに、収支報告書の記載については、それは会計責任者が一義的にやっていたかもしれない。ただ、この不記載部分をどうするか、載せるか載せないかという判断は、それは会計責任者の判断することではなくて、やはり大きな方針の問題ですから、だからこそ幹部が集まって協議して、問題を共有して、そして最終的にはこれは見送られた。そういうことであれば、これはやはり幹部が主導して不記載の事態を招いたということじゃないんですか。

 総理、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 様々な報道や発言があることは承知しておりますが、実態を把握するに当たって、まずは当事者の説明責任が大事だとは思いますが、併せて、先ほど申し上げました、党としても実態把握に努めなければならないということで、聞き取り調査等を行っております。外部の弁護士等も関与してもらいながら、実態把握に努めたいと思います。

 その上で、党としてこの事態についてどう判断するのか、適切な説明責任を果たしたいと思います。

岡田委員 そうすると、今の私の疑問、多くの人が同じような疑問を持つと思うんですが、その点も党のヒアリングの中できちんと確認していただけるということですね。

岸田内閣総理大臣 今の点について、様々な指摘や発言があるのは承知していますが、党としては、実態がどうだったかということを、党の立場からも、関係者の聞き取りを通じて把握したいと考えております。

岡田委員 多くの人が疑問に思っている、なぜ幹部の皆さんが全く立件されずに逃れているのかということについても、党としてきちっと説明責任を果たしていただきたいというふうに思います。

 もう一つ、ちょっと刑事局長にお聞きしたいんですが、不記載があった議員三名が立件されました。残りの方は立件されなかった。それは、共謀の事実がないとかそういうこともあると思いますが、私が不思議なのは、会計責任者というのは、この不記載、事実上の事実行為に近いその不記載について、どうして一定金額以上の、つまり三人に関係する会計責任者のみが立件されて、それ以外の会計責任者は立件されなかったんですか。

 例えば、窃盗で、二十万円盗んだ人はセーフで四十万円盗んだ人はアウト、そういう取扱いというのはあるんでしょうか。金額で切るというのは、少なくとも会計責任者についてはあり得ないことだと私は思うんですが、どういう整理をされたんですか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねは、検察当局の個別事件における事件処理に関する事柄についてでございまして、お答えは差し控えるべきかとは存じますけれども、一般論として申し上げますと、検察当局においては、お尋ねのような政治資金規正法の虚偽記入の事件の処理に当たりましては、動機、犯行態様、虚偽記入の額、被疑者の供述内容、ほかの事案との比較、その他もろもろの事情を総合的に考慮して事件処理の判断をしているものと承知をしておりまして、虚偽記入の金額のみによって機械的に事件処理の判断をしているものではないと承知をしております。

岡田委員 一般論で説明されても、なかなか国民は納得しないと思うんですよね。

 例えば、地方選挙では、東大阪市長選挙では二千五百万で会計責任者が立件されています。山形市長選挙に至っては三百万円で会計責任者が立件されている。

 どうして地方選挙では三百万で立件されて、国会議員に関わる不記載については、一千万、二千万の不記載の会計責任者が立件されなかったんですか。合理的にちゃんと説明していただけませんか。

松下政府参考人 お答えいたします。

 恐縮ですけれども、具体的な事件においての事件処理について、どういう事情であったかということについてのお答えは差し控えるべきかと存じます。

 あくまで一般論として申し上げますと、検察当局におきましては、個別の事案ごとに、法と証拠に基づきまして、まず、有罪を立証するだけの十分な証拠があるかどうかということを判断した上で、犯罪の軽重ですとか犯行後の状況などといった様々な事情を総合考慮して事件処理の判断をしているものでございまして、その金額のみで比較をするということはしておりません。

岡田委員 私は、会計責任者をたくさん立件しろというつもりで言っているんじゃないんですね。でも、会計責任者を立件しないと政治家は絶対立件されないんです。ですから、政治家を守るために会計責任者の立件の範囲を絞ったんじゃないか、そういう見方も成り立つわけですね。それは非常に不公正なことだ。

 だから、私は、検察が国民から信頼されるためには、今の説明では不十分だと思います。もっときちんと説明する、その必要があるということは指摘しておきたいと思います。

 さて、次に、政策活動費について。

 総理は、共謀罪とかいろいろなことについて、一応、案を党の中で検討するということを答弁されていますが、政策活動費については全く触れないんですよね、各党各会派で議論してくださいと。

 私たちが聞いているのは、自民党はどうなんですかということを聞いているわけです。そうすると、何か政治活動の自由と、そして知る権利のバランスの問題だと言われます。そこで総理が言われる政治活動の自由というのは何ですか。

岸田内閣総理大臣 各党によって様々な呼称で呼ばれておりますが、この政策活動費、自民党における政策活動費を、党に代わって党勢拡大や政策立案、調査研究を行うために、党役職者の職責に応じて支出しているところですが、この使途を広く公開すれば、我が党の活動と関わりのある個人のプライバシー、あるいは企業、団体の営業秘密を侵害するということ、あるいは党の戦略的な運営方針が他の政治勢力や諸外国に明らかになったりする、こうしたことで不都合が生じるということを申し上げております。

岡田委員 政策活動費というのは領収書の要らないお金ですよね。ですから、それを受け取った企業も、これをきちんと、いや、自由民主党何々幹事長からいただきましたということを表に出せないということじゃないですか。それから個人も、いや、これは幹事長からもらったお金だということを出せない。つまり、裏金なんですよ、これは。だから、五年間で五十億近い、そういう巨大な裏金が存在しているということなんですね。

 政治資金収支報告書というのは、やはり国民の不断の監視、透明にすることで監視ができるようにする、そういう考え方でできている法律ですから、そこに、領収書も要らないような巨額の、合法的な裏金と私は申し上げておきたいと思いますが、一応法律上は可能ですから。そういうものをつくることが政治資金規正法の基本的な考え方に私は反していると思うんですが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 まず、先ほど申し上げたような形で政策活動費を明らかにすること、使途等を明らかにすること、これについては政治活動に影響が出るということを申し上げました。それと一方で、政治活動の公明と公正を確保するために、国民の知る権利に応えていく、こうした課題があります。この二つの課題の両立の中で長年この問題について議論を行ってきた、これが政策活動費を始めとする政治資金をめぐる法律のありようであると認識をしております。

 この二つの課題の両立の中で今日の法律があるということを考えますときに、これを変えるとか内容を明らかにするということになるならば、これは各政治団体共通のルールとして行うべきであると我々は考えております。

岡田委員 ですから、共通のルールはいいんですよ。恐らく、公明党さんも含めて、こういうものはやはりやめようというか、あるいは使途を明らかにしようというのはみんな共通しているんですから。自民党さんだけですから、そうじゃないのは。だから、自民党の考えを示してもらいたいんですよ。

 私、もう実は政党、民主党の幹事長を三回、そして今、立憲民主党の幹事長をやっています。だけれども、政策活動費がなければ党が回らないというふうに考えていないんですね。現に、私が幹事長になってから、立憲民主党で政策活動費なるものは認めていません。決裁しません。

 ですから、では、どういう場合に、政治活動に支障が出ると言われますが、ちょっと具体例を挙げていただけませんか。どういう政治活動に支障が出るんですか。それはどうして表に出せないんですか。全ての政治活動は領収書を切る、ガラス張りにする、これは全ての前提だと私は思いますが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 だからこそ、先ほど申し上げた点において政治活動に影響が出るということを申し上げたわけであります。

 個人のプライバシー、あるいは企業、団体の営業秘密を侵害すると申し上げましたが、党の関係において調査研究を請け負うということについて、それぞれの企業ですとか個人のプライバシー、営業秘密、これを守るという観点は重要であると思います。

 政治における様々な党の運営方針について、他の政治勢力や外国からも明らかになったりする、こういった点でも政治活動に影響が出てくる、こうしたものである、こういったことから、長年の議論の結果として今日の法律ができていると承知をしております。

 この共通のルールについてどう議論をするのか、こうしたことについて今様々な指摘がなされていると承知をしています。

岡田委員 総理の今の答弁は、状況を説明しているだけで、自由民主党としてどうするかは全く語っておられないんですよ。まず全面拒否に近いんですよね、ほかの問題と比べても。

 しかし、それで本当にいいんですか。今回の裏金問題、大変深刻ですよ。だけれども、五年で五十億近いお金が、領収書もなくて、どうやって使われたか分からないということ、これもすごく深刻な問題じゃないですか。そういうことを放置していいんですか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げました、政治活動の自由と、そして政治資金に対する国民の知る権利のバランスの中で今日まで議論が行われてきました。その結果が今の法律の現状であると認識をしています。

 これについて、引き続き、今言ったバランスの中でどう考えるのか、これを議論するということについて、我々自民党においても決してその議論を避けるものではありませんが、こういった二つの大きな課題についてのバランス、これを考えた上で、共通のルールを考えることが重要だと申し上げております。

岡田委員 それでは、具体的にちょっと一つお聞きしたいんですが、党の幹事長、あるいはほかの役職者を通じて、政策活動費が派閥に行っているということはないですね。断言していただきたいんですが、どうですか。

岸田内閣総理大臣 党勢拡大、政策立案あるいは調査研究のためにこうした政策活動費を使うと申し上げております。

 それ以上については、法律に従って明らかにすべきものであると思っています。

岡田委員 否定されなかったわけですので、そうすると、役職者を通じて派閥に金が行って、その先は全く公開する必要もない。これはやはり立派な裏金じゃないですか。そういうことをやっていて、国民の理解を得られると思っているんですか。

 この前、自民党愛知県連がこういう発表をされたんですね。愛知県連でやっているパーティーの、一億五千万というパーティー、なかなか立派なものだと思いますけれども、県連ですからね、そのうちの三千二百万円を議員個人に活動費の名目で出していましたと。だから、政党本部だけじゃなくて県連ベースでもこういう政策活動費的なものがある、そこから個人に行っている。これはやはり余り透明性が高くないので、これからやめますという記者会見をされたんですね。でも、前進されたことは評価しますが、今までそういうふうにしてやってきた。

 だから、本部だけじゃなくて県連ベースでも、場合によっては政党支部だってできることになっちゃうんですよ。個人に渡したら、その先、何に使ったか分からない、そんな不健全なことを、総理、認めていいと思っているんですか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 愛知県連のケースにつきましては、自ら説明等、対応していると承知をしております。

 政治資金の取扱いに疑義が生じた場合、国民に対して丁寧な説明を行う、当然のことだと思います。

岡田委員 ですから、県連から議員個人にお金が行って、その先は何に使ったか分からない、そういう話なんですよ。それが健全だとは私はとても思えませんね。

 ほかの県連でも同じようなことがないのかどうか、あるいは総支部で同じようなことがないのかというのは、きちっと党として調査された方がいいと思いますよ。

 政策活動費以外に、旧文通費の話もあります。

 これも、我々、月間百万、年間一千二百万受け取って、そしてその使途は、一定のルールはありますけれども、それに沿って使われているかどうかを発表しなくてもいいという仕組み、やはりどう考えてもおかしいですよ。だから、私たちは維新の皆さんや国民民主党の皆さんと一緒になって法案を出しましたけれども、あなたたちはずっとそれを無視しているじゃないですか。このぐらいのことを、どうしてできないんですか。

 県会レベルでは、いろいろな政策費などについて、出たお金は全部領収書を添付して、そして、一般の批判といいますか、それにさらされるようになっているんですよ。国だけじゃないですか、こんなことをやっているのは。いいかげんにやめませんか。

岸田内閣総理大臣 調査研究広報滞在費、旧文通費につきましては、今日まで各党の中で議論が行われ、そして改善も行われてきた、こういった経緯があると承知をしております。

 先ほど申し上げました自民党の中間取りまとめにおいて、運用面で自民党単独で対応可能なものについては速やかに実行する、こういった決定を行いました。そして、各党各会派で議論が必要な制度対応については真摯に取り組む、この決定をいたしました。

 調査研究広報滞在費、これはまさに議員活動の在り方に関わる重要な議論であります。これは各党各会派の議論が必要であると認識しており、自民党もその議論に真摯に参加をしてまいります。

岡田委員 議論に参加するんじゃなくて、やはりこういうものはきちんと公開するんだという方針を自民党として出してもらいたいんです。もう私たちの考え方はみんなまとまっていますから、自民党さえ賛成してくれれば、すぐにでもできますよ。阻んでいるのは自民党なんですよ。

 そこをしっかりやってもらえませんか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 旧文通費については、各党様々な意見があると承知をしております。これは是非、この議論を真摯に行うことで、全党共通のルールとしてどうあるべきなのか、議論をしたいと思います。

岡田委員 もう時間もなくなってしまいましたが、最後に一言だけ。

 政治資金の透明性の確保。これは全てデジタル化して、誰もがアクセスできるようにすれば、透明性は一挙に高まりますよね。そういうことを私たちは提案しています。「日曜討論」で茂木さんの発言を聞いていると、必ずしも否定的ではなかった。是非これはやろうじゃないですか。

 それから、監査。登録政治資金監査人制度というのができました。もう大分こなれてきたとは思います。だけれども、これは大きな問題があるんですよ。党本部にはかかっていないんですよ。我が党は独自にやっています。相当なお金を使って監査法人の監査を受けていますけれども、やはりこれを政党にも義務づけませんか。

 そしてもう一つは、その監査の対象が支出だけなんですよ。やはり収入も含めて、収支報告書なんですから、収入、支出いずれもきちっと監査の対象にするということをまずやりませんか。いかがですか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申しました我が党の中間取りまとめにおいても、党所属議員の政治資金の透明性向上を図るため、収支報告書についてオンライン提出をするということを通じて政治資金の見える化を図る、政策集団の収支報告書の提出に当たり外部監査を義務づける、これは我が党独自の運用として、まずすぐに改革に取り組む、こういったことを確認しております。

 これを各政治団体共通のルールとして決める、こういった議論につきましては大変重要だと認識をいたします。真摯に各党各会派と議論を行います。

岡田委員 終わります。

小野寺委員長 この際、井坂信彦君から関連質疑の申出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。井坂信彦君。

井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。

 能登半島の質問は次の梅谷議員にお願いしまして、本日は大きく二点、裏金は脱税ではないかという問題と、国民の賃金アップの問題を質問します。

 まず、先ほど曖昧な答弁でしたが、岸田派の五年前までの不記載、総理、ちゃんと調べて、明日答弁をすると約束していただけますね。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、私自身は承知しておりませんが、可能な範囲で確認をいたします。実際どこまで可能なのか、ちょっと確認してみないと、今この段階でははっきり申し上げられません。

井坂委員 どこまで可能だったかも含めて、明日、まず答弁はいただけますね。

岸田内閣総理大臣 確認はしたいと思います。

井坂委員 確認の上、明日答弁いただけますね。

岸田内閣総理大臣 確認できたものを答弁いたします。

井坂委員 質問に移ります。

 今朝ようやく自民党から出された裏金議員リスト、名前と金額しか書いてありませんので、次は当然その使い道が問題となります。

 質問通告の一と二は飛ばして、三から始めます。

 裏金の使い道について、こちら側で、報道されたものをリストにいたしました。配付資料の四から六は、その根拠となる膨大なテレビ、新聞報道のリストです。

 中を見ますと、萩生田前政調会長は、外遊先での贈答品購入や有識者との会合費用に使った。世耕前参議院幹事長は、政治活動に使った。松野前官房長官は、これも政治活動費に使った。高木前国対委員長も政治活動費。その他、事務所経費、金庫に保管していた、口座で保管していた、事務所の維持費や支援者との交際費、秘書の交通費や会合の出席費用。丸川元オリンピック担当大臣は、自分の口座で管理をしていた。

 ちなみに、空欄は、金曜の段階で使い道を説明したという報道が見当たらなかった議員で、五十名以上いらっしゃいます。

 マスコミ各社も、裏金の使い道はと繰り返し報道しています。大きく分類して、保管や未使用、それから政治活動費、事務所経費や会合費、そして使途不明や答えないという、四つのパターンがあります。

 国税庁に伺いますが、保管や未使用のパターン一は、収支報告書に書かずにお金を保管していたら、これは個人の収入とみなされて課税対象と判断される可能性はありませんか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 政治活動のための支出として必要経費に当たるかについてのお尋ねでございますが、国税当局といたしましては、個々の事実関係に基づき課税上の取扱いを判断することとしております。

 お尋ねの、事務所で保管、未使用についてでございますが、一般論として申し上げますと、事務所で保管されている政治資金であれば政治家の関連政治団体に帰属する場合も多いと考えられますが、仮に、政治家個人に帰属し、それを使用せず、長年保管してきた場合には、政治活動のための支出はなく、必要経費として収入から差し引く金額はないということでございます。

井坂委員 ちょっと総理に伺いたいんですが、例えば、丸川元オリンピック担当大臣はパーティー券の売上げを中抜きして自分の口座に入れていたと報道をされています。これは、お金を自分の口座に入れると、いわば着服のような形になって、個人の収入と認定されれば課税対象です。

 総理、こんなものまで実は政治団体への寄附でしたと非課税にしてよいと思いますか。

岸田内閣総理大臣 まず、様々な報道がなされていますが、検察は所要の捜査を遂げ、そして、法と証拠に基づいて処理すべきものは厳正に処理を行っているものと認識をしております。

 そして、その上で、党としても実態把握のために今関係者の聞き取りを行っているということであります。党としても実態把握に努めたいと考えます。

井坂委員 その実態を把握された上で、本当に個人の口座に入れていたということであれば、それはさすがに政治団体への寄附でしたと非課税にすることはないということでよろしいですね。

岸田内閣総理大臣 党として今聞き取りを行っています。仮定の話にはお答えできません。(発言する者あり)

小野寺委員長 井坂さん、もう一度質問をお願いいたします。

井坂委員 これは御本人が個人の口座で管理をしていたとおっしゃっているので、聞き取りをするまでもなく、そうおっしゃっているんですね。これはさすがに、政治団体への寄附だった、非課税だということにはならないのではないですか。

岸田内閣総理大臣 今の御指摘の判断は、検察なり国税において判断すべきことであります。

 党としては、聞き取りを行い、実態を把握いたします。

井坂委員 これは国税の調査も必要だと思います。

 次に、政治活動のパターン二について伺います。

 配付資料の八番、お配りしておりますが、国税庁が先月出した文書には、どのようなものが政治活動の費用として認められるのか、具体的に書いてあります。

 国税庁に伺いますが、ここに書いていないような使い方をした場合、政治活動費として認定されない、すなわち、非課税ではなく、税金を払う必要があるということでよろしいですね。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの政治活動費でございますが、個々の事実関係を精査する必要がございまして、御指摘のリーフレットでございますが、これは例えばということで、あくまで政治活動に該当するものの例でございまして、これに当たらないものであっても個々の事実関係に基づきまして判断していくということでございます。

井坂委員 これも、実際、中身の精査が必要だということだと思います。

 次に、事務所経費や会合費というパターン三です。

 先ほどの国税庁の書類には、プライベートな交際費や接待費を政治資金から支払っても、控除、つまり非課税にはできませんと書いてあります。

 これはちょっと国税庁を飛ばして、総理の納税者感覚を伺いたいと思いますが、高木前国対委員長は会見で、飲食費に使ったが領収書がないと答えておられます。領収書もない飲食費まで政治活動費と認めて、非課税にしてよいと思われますか。

岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げましたが、課税か非課税か等については、これは国税なりあるいは検察において判断すべきことであると認識をいたします。

 いずれにせよ、党としては、説明責任あるいは政治責任を果たすために、実態把握のため、聞き取り調査を行ってまいります。

井坂委員 総理の納税感覚として、領収書のない飲食費、飲食に使った、でも領収書がありません、要は、どこに行ったか誰と何を話したかも分からない状態で、これが経費あるいは政治活動費として認定されることって普通はないと思うんですけれども、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 政治活動に使ったかどうか、課税されるかどうか、これについては国税なり検察において判断されることであると考えております。

井坂委員 最後に、使途不明とか未回答というパターン四についてです。

 何に使ったか分からない、答えない。これは国税に伺いますが、この分からないとか答えないという政治家の何百万円もの支出、これは税務調査にでも入らない限り、到底、政治活動費としては認定できないということで、国税庁、よろしいですか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 不明、未回答についてでございますが、これにつきましても個々の事実関係を精査する必要があるということでございまして、一般論として申し上げますと、支出の事実が全く確認できない場合には必要経費に該当しないものとして取り扱うこととしております。

井坂委員 ありがとうございます。

 今、国税ともやり取りしたように、やはりパターン一からパターン四まで、それぞれ政治活動として認定されず、課税対象となる可能性があるということであります。もちろん全て黒とは申し上げませんが、しかし、このままでは脱税となってしまう可能性のあるグレーの議員が何十人もいると考えられます。

 総理に伺います。全て政治団体への寄附でした、だから非課税です、それだけで済ませるのではなく、本当に何に使っていたのか、領収書や証拠はあるのか、非課税にするなら、これを全て調べる必要が当然あるのではないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、今回の事態、事件に関しては、検察は所要の捜査を遂げて、法と証拠に基づいて処理すべきものは厳正に処理を行っているものと認識しております。

 そして、課税されるかどうかということについては、まさに国税なりさらには検察が判断すべきことであると承知をしております。

 そして、党としては、政治責任等を考える上で聞き取り調査を行ってまいります。その上で、説明責任を果たしてまいりたいと思います。

井坂委員 皆さん、今は、政治団体への寄附でしたということで修正をされているんです。

 ところが、当初は、会見で正直に話しておられる議員さんもたくさんいらっしゃいます。ここにありますように、政策活動費として認識をしていたとか、政策活動費として戻すと派閥に言われたとか、政策活動費としてもらっていた。当初こういうふうに、皆さん正直に答えておられるわけであります。

 ちなみに、この政策活動費、さっきから議論になっておりますが、これは政党から個人に支払われるお金であります。

 総理に伺いますが、お金を渡した派閥の側も、受け取った議員の側も、政治団体への寄附ではなくて、個人が領収書なしで使えるお金だと認識をしていたのではないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 政策活動費については、先ほど申し上げたように、党勢拡大や政策立案、調査研究を行うための支出であります。

 個人に渡したなど、その使い道等については、法律に基づいて明らかにすべきものであると考えています。

井坂委員 総理、そういうことではないんです。

 これは実は政策活動費ではないんです。ただ、受け取った方、皆さん口をそろえて、政策活動費だと思っていましたと。要は、個人が領収書なしで使っていいお金だと思っていましたと、個人で受け取っている認識なんですよ、皆さん。渡している方も、これは政策活動費みたいなものだからといって、どうも渡しておられた節があります。

 渡した側も受け取った側も、政治団体への寄附ではなくて、個人に対するお金の受渡しだ、そういう認識でやっていたのではないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 それぞれどう認識したか、どう受け止めていたか、様々な発言があるということでありますが、いずれにせよ、検察は捜査を行いました。捜査を行った上で、法と証拠に基づいて処理すべきものを厳正に処理したと認識しております。その結果として処分が明らかになったと認識をしております。

井坂委員 要は、裏金がばれたら、いや、政治団体のお金でしたと修正して全て非課税になるなら、これは政治家は脱税し放題だと思いますよ。

 本人の言い分をうのみにせずに、本当に政治団体のお金として受け取り、そして使ってきたのか、実態を調査するのは、これは一般論として当然だと思いますが、総理、課税対象となるかどうか、調査していただけますね。

岸田内閣総理大臣 まさに、おっしゃるように、関係者本人の言い分をうのみにしてはならないということで捜査が行われたんだと承知をしております。検察は捜査を行い、法と証拠に基づいて処理すべきものを厳正に処理したと認識をしております。その判断に基づいて処分が出されたものだと認識しております。

 そして、課税については国税等が判断すべき課題であると認識をいたします。

井坂委員 総理がおっしゃるのは、要は、検察が捜査して、今起訴されていないような方はもう別に問題ないんだ、そういう認識だということなんでしょうか。

岸田内閣総理大臣 検察の捜査が行われ、法的な責任は判断され、処分がされたと思います。

 しかしながら、政治家としての説明責任、そして政治的な責任については党としても明らかにしなければならないということで、聞き取り調査を今行っている次第であります。

井坂委員 今日、何で四つのケースに分けて国税庁にも細かく答弁を求めたかといいますと、やはり、具体的な、実際報道ベースでいろいろな、こういう使い方をしたとか、使わなかったとか、皆さんおっしゃっているんです。それを一つ一つ国税の意見も聞きながら考えると、やはりこれは、そのまま何も調べずに非課税でオーケーというのはおかしいなと私は思うんですよ。総理は思われないですか。自分の口座に入れて置いておきましたとか、領収書はないけれども飲食に使ったと思いますとか、それで正しい使い方で非課税だと思われますか。

岸田内閣総理大臣 様々な報道の中で、それぞれの関係者が、自分はこう思った等の様々な発言が報じられていることは承知しておりますが、そうした本人の考え方にかかわらず、捜査が行われ、そして法的な責任が追及され、処理が行われた、処分が行われた、こういったことであると思います。

 そして、課税についても国税等について判断すべきものであると考えております。

 党としては、説明責任あるいは政治的な責任についてしっかりと判断をしてまいります。

井坂委員 後から書類を書き直せば、日付不明、領収書なしでも、税務調査もされず、税金も罰則も免れる。そんな脱税特権階級みたいなことを、総理、テレビを御覧になっている国民が許すと思われますか。

岸田内閣総理大臣 法的な責任については、検察において捜査が行われ、そして法と証拠に基づいて判断された、処分がされたと認識をしています。

 そして、税金についても国税が判断すべきことであると思います。

 党としては、そうした国税や検察の判断もしっかりと尊重いたしますが、説明責任と政治責任についてしっかり判断をしていかなければならないと思います。それぞれの責任を明らかにしていきたいと考えます。

井坂委員 パネルの十を御覧いただきたいと思います。

 立憲民主党は、裏金を不記載ではなく正面から処罰する政治資金隠匿罪を創設し、あわせて、秘書との連座制や収支報告書のデジタル化なども提案をしています。また、先ほどの政策活動費も禁止すべきだと主張をしております。

 先週の階議員の質疑で国税庁が答弁しましたが、政策活動費は個人の雑所得で、年末に余っていれば納税の義務があり、もし納税していなければ脱税になります。この政策活動費を五年で五十億円も受け取っていたのが二階元幹事長であります。

 総理には先週こういうふうに通告をいたしました。月曜までに、二階さんに政策活動費を毎年年末までに全て使い切っていたのかどうか確認をして、答弁をしていただきたい、このように質問通告をさせていただきました。

 伺いますが、二階元幹事長は、政策活動費、大体年間十億円ぐらいになると思いますが、この政策活動費を毎年使い切っておられましたか。

岸田内閣総理大臣 二階元幹事長については、党勢拡大、政策立案、調査研究、こうした政策活動費の目的に沿って、全て政治活動に必要な経費として適切に使用されているものと認識をしております。

井坂委員 まず、二階元幹事長には使い切ったかどうかというのを聞かれましたか。

岸田内閣総理大臣 政治活動費については、確認するまでもなく、適切に使用されているものだと認識をしております。

井坂委員 総理と二階元幹事長の間柄でしょうから、電話一本でもいいと思うんですよ。本当に毎年使い切っていたんですか、大丈夫ですかと、なぜ確認をしないんですか。

岸田内閣総理大臣 確認するまでもなく、そういった使用をしていると認識をしています。これは過去の党役員について全部確認するということになるんでしょうか。これは、当然のことながら、このように政策活動費については使われていると認識をしております。

井坂委員 総理、確認するまでもなくとおっしゃったのは、なぜそういう答弁になるんですか。何で確認するまでもないと思ったんですか。

岸田内閣総理大臣 政策活動費というのは、政治活動に使われるべきものであります。それ以外に使われるということはあってはなりません。

井坂委員 その性善説みたいな発想で野放しにしてきたから、今、国政を揺るがすこういう問題が起こっているんじゃないですか。使われるべきだから当然使っているだろうじゃ済まないですよ。確認してください。

岸田内閣総理大臣 今、大きな問題になっているのは政治資金パーティーをめぐるお金であります。政策活動費については、当然、法律に基づいて使われるべきものであり、そうでなければならないと考えております。

井坂委員 金輪際確認するつもりはないとおっしゃっているんですか。

岸田内閣総理大臣 本人に電話をかけて確認しろということでありますが、これは当然政治活動に使われているものであると思いますし、その他過去の党の役員全てが政策活動費については本来の目的どおりお金を使っていると私は確信しております。

井坂委員 話にならない答弁だと思います。

 国税庁に伺いますが、ある議員に政党から何十億円の政策活動費が実際支払われたにもかかわらず、受け取った議員の確定申告に雑所得の記載がない場合、これは、政策活動費を使っていなければ脱税の可能性があるとして、税務調査に入る理由になりますか。通告どおりです。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 個別の納税者に関する対応についてはお答えを差し控えたいと思いますが、国税当局におきましては、様々な機会を捉えまして各種資料情報の収集に努めておりまして、政治資金収支報告書の記載状況等についても承知しているところでございます。

 一般論として申し上げますと、こうして収集した情報と提出された申告書とを精査した上で、仮に、政治家個人に帰属する政治資金について適切な申告が行われておらず、課税上問題があると認められる場合につきましては的確に税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めているところでございます。

井坂委員 この週末、地元に戻りましたら、自民党支持者の方まで、脱税じゃないかと怒っておられましたよ。

 裏金議員や巨額の政策活動費をもらった議員の税務調査をして課税すべきだ、こういう国民の声に総理はどうお答えになられますか。

岸田内閣総理大臣 今回の派閥の政治資金パーティーをめぐる政治と金の問題については、反省し、そして謝罪した上で実態把握に努めなければならないということ、これは再三申し上げております。政治改革に向けて、自民党としても真摯に取り組んでまいります。

 そして、今御指摘なのは政策活動費についてであります。政策活動費については、従来から政治活動の自由と国民の知る権利のバランスの中で議論が行われ、現在の法律に至っています。この法律に基づいて使用が行われていると認識しております。

 そして、その実態を変えろ、明らかにしろというのであるならば、各党共通のルールを議論し、ルールを変えるという中で判断すべきことであると考えています。

井坂委員 総理、先ほどから、政策活動費について各党共通ルールということをおっしゃっています。私の知る限り、自民党以外はみんな、政策活動費は廃止すべきだ、あるいは全て使い道を公開すべきだと言っていて、それを非公開のままにしておくべきだと言っているのは自民党だけですよ。(岸田内閣総理大臣「それは是非議論しましょう」と呼ぶ)議論しましょうじゃなくて、自民党も公開すべきだとか廃止すべきだと言ってくださったら、各党各会派で即決できるんですよ。

 どういうお考えなんですか。本音で答えてください。どういうお考えなんですか、政策活動費について。

岸田内閣総理大臣 政策活動費を含めた政治資金については、先ほど申し上げました長年の政治活動の自由と国民の知る権利のバランスの中で今の法律があると認識をしています。これを変えるという議論、これは決して避けているわけではありません。この議論を行った上で共通のルールを定めて、そして内容を明らかにしていく、これが重要であると申し上げております。

井坂委員 廃止すべきだと思っておられるのか、今のまま堅持すべきだと思っておられるのか、どちらですか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げました政治活動の自由というのは、政党等の政治活動の自由と、そして、加えて先ほどの答弁の中で申し上げた国民の政治活動の自由、さらに、そして知る権利、更に言うと、今の三つのバランスの中で長年議論が行われてきた課題だと承知をしております。この中で法律ができてきているわけですから、実態を変えるというのであるならば、法律を変える議論を行うことが重要だと申し上げております。

井坂委員 法律を変える議論は自民党も前向きに参加をしていただけるという答弁ですか。

岸田内閣総理大臣 議論については、先ほど申し上げました政党等の政治活動の自由と国民の政治活動の自由と、そして国民の知る権利、この三つのバランスの中で法律を考えていくことが大事だと思います。その議論に自民党としても真摯に向き合います。

井坂委員 そんな脱税天国みたいな答弁で、国民が十五日から確定申告で納税してくれるかと思いますよ。

 かつて金丸自民党副総裁は、巨額の裏金を受け取りながら、政治資金規正法違反の罰金二十万円だけで幕引きがされました。これに国民の怒りが爆発して、国税が調査に入り、金丸副総裁は脱税で逮捕されることになったわけであります。

 今回の裏金について、使い道の確認もしない、調査もしない、それなのに百人の議員も五十億円の二階さんも全員非課税。もしこんな議員特権を認めたら、今日から裏金国会が脱税国会になりますよ。

岸田内閣総理大臣 先ほどから申し上げているように、法的な責任については、検察が法と証拠に基づいて判断をし、処分を明らかにしました。課税については国税が判断すべきものであります。これは、政治資金パーティーをめぐっての一連の動きについて、検察や国税が判断すべきことであります。

 そして一方で、政策活動費については、長年の議論の中で現在の法律ができ上がっているということを申し上げました。

 この法律をどうするかという議論、これについて自民党は決して逃げるものではありませんが、政策活動費については、先ほど申し上げました二つあるいは三つの要請の中で、このバランスの中で結論が出ている、こういった議論の歴史もしっかり踏まえて判断すべきだということを申し上げております。

井坂委員 ちょっと、時間が大分押しましたので、経済の質問に移ります。

 国民の賃金アップは震災復興と並んで今国会の最重要テーマであります。

 この左のグラフで、世界の賃金は物価を上回るペースで増え続けているのに、日本の賃金は二十年間横ばいであります。最近は、給料が少し増えても、物価はそれ以上に高くなっていますから、買えるものが減って、国民生活は貧しくなっています。一方、右のグラフで、岸田政権になってからは何と二十か月連続で賃金が物価を下回る、実質賃金マイナスの状態が続いています。

 総理は先週の施政方針演説で、今年、物価高を上回る所得を実現しますと宣言されました。今年六月に一回限りの四万円減税が予定をされており、その瞬間は賃金と減税を合計すれば物価を上回るのは当たり前であります。そんな簡単な目標に逃げるのではなく、本来の実質賃金プラス、賃金だけで物価を上回る状況を今年こそ実現すべきではないですか。総理に伺います。

岸田内閣総理大臣 物価に負けない賃上げを実現することが重要だと申し上げております。

 ただ、今現在、我が国は、世界的なエネルギー危機等を通じて外生的な物価高に見舞われています。国民生活の現状を考えますときに、賃上げと併せて所得減税等の可処分所得の底上げ、これを今年はしっかり実施することによって、消費や投資が再び逆戻りしないように、後戻りしないように、しっかりと対策を講じていくことが重要だと考えています。

 そして、おっしゃるように、構造的な、持続的な賃上げに来年以降しっかりつなげていかなければならないと考えています。民間のエコノミストも多くは二〇二四年度中には物価高に負けない賃上げ、これが実現するのではないか、政府の見通しにおいてもそういった見通しがある、こういった中でありますので、なおさら、今年、外生的な物価高に負けない体制を政策として用意することが重要だと申し上げております。

 目標は、持続的、構造的な賃上げ、好循環を実現するということであります。

井坂委員 この賃金アップの課題となるのが中小企業であります。材料費や燃料費が上がっているのに、製品の値上げを大企業に認めてもらう価格転嫁ができず、人件費を削減するしかない中小企業がたくさんあります。政府は昨年十一月に価格転嫁のガイドラインを作りましたが、それだけで十分な価格転嫁が進むとは思えません。

 総理、伺いますが、価格転嫁を拒否した大企業への罰則強化や、材料価格の変動に合わせて値上げができるスライド制など、法改正も検討すべきと考えます。いかがでしょうか。

自見国務大臣 お答えいたします。

 物価上昇を上回る持続的で構造的な賃上げの実現に向けまして、中小企業の労務費の価格転嫁を進めることは極めて重要でございます。

 公正取引委員会におきましては、優越的地位の濫用を規制する独占禁止法と簡易迅速かつ効果的に下請事業者の利益保護等を図る下請法とを積極的に運用することで、これらの法律に違反する事案に対して厳正に対処しており、現行の枠組みにおいても制度の実効性は確保されていると認識をしております。

 その上で、政府といたしましては、労務費の適切な転嫁に向けまして、昨年十一月、発注者そして受注者の双方の立場からの行動指針を定めるとともに、先月一月二十二日に開催した政労使の意見交換の場において、岸田総理から、指針に沿った行動の徹底を経済界に、産業界に強く要望したところでございます。

 引き続き、現行の取組の下、指針の周知徹底を進めながら、中小企業の価格転嫁を更に後押ししてまいりたいと存じます。

井坂委員 総理、是非お答えいただきたいんですけれども、これまで当局は法改正の検討をしたことはないというふうに聞いています。どのような法改正があり得るか、やはり今後検討ぐらいしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今、自見大臣からお答えさせていただいたように、現行、独占禁止法と下請法、この組合せによって対応している、現行の枠組みで対応できるという答弁をさせていただきました。

 下請法、これは独禁法を補完する法律であり、注文書の交付義務等に違反した従業者に対する最大五十万円の罰金、そして、買いたたきや下請代金の減額を行った親事業者に対する下請代金の減額分の返還等の勧告、こうした規定があり、そして、これに従わなかった場合には、独禁法に基づいて、より厳格な措置である排除措置命令や課徴金納付命令、これを講ずることができる、こうした体制であります。これを有効に使うことで現状対応できるということを今、自見大臣から答弁をさせていただいた、こうしたことであります。

 昨年十一月、独禁法や下請法に基づく厳正な対処の実効を高めつつ、労務費転嫁の指針の周知徹底、これを確認したわけでありますが、絶えずこの法律の実効性については検証しながら、今の体制を追求していきたいと考えています。

井坂委員 もう一つの課題が非正規雇用の賃金アップです。

 相変わらず非正規の賃金は正社員に比べて低いのですが、政府は、不本意ながら非正規を続けている人は全体の一〇%しかいないと説明をしてきました。

 しかし、資料の十二番にあるように、二十代男性の非正規社員の実に六割から七割、また、三十代、四十代男性の非正規社員でも三割、四割が正社員になりたいと希望をしています。

 そして、パネル十三の左下のグラフですけれども、正社員の三十代男性は六割が結婚しているのに、非正規の三十代男性は二割しか結婚をしていない。

 望んで非正規で働いている方は何も問題がありませんが、望まないのに増え過ぎた非正規雇用は、賃上げにも、それから少子化にも悪影響を与えています。

 総理に伺いますが、労働者の四割に達した非正規を減らし、正社員を増やすという政策に転換すべきではないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、希望する方の正社員への転換を促進する、これは私も大変重要であると認識をいたします。正社員への転換に取り組む事業主を支援するですとか、在職中の非正規雇用労働者に対するリスキリングを支援するですとか、ハローワークにおける担当者制によるきめ細かな就職支援を行う、こういったことで正社員への転換、これは促進していきたいと思います。

 また一方で、自らのライフスタイルに合わせてパートタイムや有期雇用で働く方についても、最低賃金の引上げ、そして同一労働同一賃金の遵守の徹底、こうしたことで処遇改善を進めていくことも重要であると認識をいたします。

井坂委員 終わります。ありがとうございました。

小野寺委員長 この際、梅谷守君から関連質疑の申出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。梅谷守君。

梅谷委員 立憲民主党の梅谷守です。

 まずは、さきの能登半島地震でお亡くなりになられた方々に対し御冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された全ての方々に心からお見舞いを申し上げさせていただきます。

 今日は、政府の震災対応について質問をいたします。総理に全部質問をさせていただきますので、総理御自身から御答弁をしていただきますようお願いを申し上げ、質問に移らせていただきます。

 まずは、被災者生活再建支援金の倍増について議論させていただきたいと思います。

 パネルを御覧ください。

 私たちは、今日パネルを担当していただいています近藤和也衆議院議員を中心に検討を重ね、日本維新の会の音喜多駿政調会長と国民民主党の大塚耕平政調会長とも協力をさせていただき、国会初日に三党で被災者生活再建支援金の倍増法案を提出をいたしました。とにかく早い対応、スピード感を持つべきということで、端的に支援金倍増、これが我々の提出した内容です。倍増でございます。

 これを受けて、先週、総理は、支援金最大六百万の新たな制度に言及をされた。報道で見れば、どちらも一見同じ倍増です。

 しかし、パネルを見てください。これが新しい制度の概要なんですが、赤線の部分、高齢者等がいる世帯に限定すると書いてあります。ここが午前中の質疑でも変更されました。総理の御答弁によれば、高齢者のいない世帯でも、資金の借入れや返済が容易でないと見込まれる場合は対象にすると。

 そこでお尋ねしたいんですが、お金を借りることができないとか返済できないとか、どうやって判断するんでしょうか。いわゆる所得制限をかけるということなのか。総理は一体どのような線引きをお考えなのか、御答弁ください。

岸田内閣総理大臣 まず、被災者生活再建支援金の改正法案を野党の皆様方が提出された、こういったことは承知しておりますが、政府としては、現状の被災者生活支援金、これは迅速にもう支給を行うということを行った上で、新たな交付金の制度を上乗せする、追加する、こういったことを申し上げております。

 どこで線を引くかということでありますが、これは高齢者等という表現をしておりますが、資金の借入れや返済が容易でないと見込まれる点、高齢者においては、長期の借入れを返済するということはそもそも無理であります。こうした高齢者の事情等と比較して同様の事情を有する方々に対しても対象としていきたい、このように申し上げております。

梅谷委員 高齢者等と同様の対応を考えていくということだというふうにおっしゃるんですが、全く分かりません。

 このことについては、私はこれから検討されるのかなと思いますが、これは、所得制限でないとするならばどうやって本当に判別するのか。しかも、絶望感いっぱいの中のときに、加えて、自治体の事務的な負担というものも、相当な負担がかかるんじゃないんでしょうか。どこが窓口など、どういう手続で、申請はいつ頃を見込んでいるかなど、被災者の方々に具体的な見通しをお示しいただけますか。

岸田内閣総理大臣 まず、対象については、能登地域六市町において、一般世帯の総数に占める六十五歳以上の世帯員がいる世帯の数の割合、六六・三%であります。これに加えて、実質的に同様の事情を有する高齢者等のいない世帯も対象としていきたいということでありますが、これ以上の割合に対して支給をすることになりますし、そして、こうした新しい制度の対象とならない方についても遜色のない対応が必要であるということで、住宅融資の金利負担助成、こういったものを用意する、こうしたことであります。

 こうした基本的な考え方に基づいて、制度設計、県とも調整をしているところであります。

梅谷委員 今ほど基本的な考え方とおっしゃいましたが、これは運用の仕方によっては対象がまた絞られる可能性がありますよね。この点について是非お伺いをしたいところですが、たとえ制度が固まったとしても、何らかの要件で判定されるのは間違いないわけですよね。結果、被災者の方々が受け止める対象の範囲、被災者の方々がお考えになられる対象の範囲に及ばないという事態になりかねないんじゃないんですか。そこは、総理、そんなことにはならないということを明確に示してください。お願いします。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、少なくとも六六%以上の方、それ以上の割合の方に交付金を支給いたします。あわせて、その対象とならない方にも制度を用意いたします。これらを組み合わせることによって取り残される世帯がないようにすることが重要である、このように申し上げております。

 この制度、組合せによって、必要とされる方に必要な支援を行ってまいります。

梅谷委員 総理、取り残される方が生まれないとおっしゃいますが、生まれるじゃないですか。六六%といいながら、じゃ、それを裏っ返せば、その三四%、そこを少し縮めることができるかもしれないというお話ですけれども、でも、取り残されるじゃないですか。そして、そのときの手続が煩雑になる、そして負担も更に自治体の方々におかれても増えるんじゃないか、そういう危惧をしているわけでして、そのことに対して真正面からお答えをいただきたいですが、残念でなりません。

 ここで、被災地で伺わせていただいた声を二つ紹介します。

 私も先日、近藤和也衆議院議員の案内の下で、同僚の、同期の米山隆一議員とともに被災地に行ってまいりました。そのとき、こういう声をいただきました。水が出ても住める家がない、収入がない、仕事がない。そうなると若い人は移住するのではないか。息子がやめると言えば従業員を雇わなければならない。もう一つ。家を建ててもう一度という世帯はいなくなる。若者は地元を離れて仕事のある地域に移ろうと気持ちを切り替えたら動けるし、どんどん人口減少が進むのは目に見える。こういう声をいただきました。

 貸付けや返済が可能と認定される子育て世帯や若年世帯は、これは貸付け、すなわち借金という政府の方針で間違いありませんよね。

岸田内閣総理大臣 新たな交付金制度の対象とならない世帯についても遜色のない対応が必要であるということで、住宅融資の金利負担助成、こういった形で支援を行ってまいります。

 そもそも、この新しい交付金制度、これは、貸付金制度の特例という形でこの制度を用意しました。しかし、その中で、高齢者の方々には交付をする、そして、同等の事情を有する方にも交付を行う、こういった対応を行ったわけであります。それ以外の方にも住宅融資の金利負担の助成などしっかりと支援を行い、全体として取り残される方がない、こういった対応をすることが重要である、このような思いで石川県と今調整をしているところであります。

梅谷委員 総理、私には詭弁にしか聞こえませんよ。遜色のない対応とおっしゃいますけれども、たとえ無利子だったとしても、借りるともらうは雲泥の差じゃないですか。どんなに条件がよかろうとも、借金の支援がお金をもらうことと同等の遜色のない対応になると本当に総理は思われているんですか。先の見えない方々にとって借金がどれほど重いことか、失礼ですが、総理、全く分かっていらっしゃらないというふうに私は受け止めざるを得ません。

 現役世代からもこんな声がありました。うちは自営だが、過疎化が進む地域でこれからどこまで続けられるか。仕事がいつもどおりできれば返せるかもしれないが、コロナ債務の返済が始まったこともあり、貸付けは考えられない。一月は従業員に給料も支払えていない。保険を解約して、そのお金で給料を払おうかと考えている。

 政府は、コロナ債務の負担軽減も打ち出していますけれども、基本的に、その借金はなくなるわけじゃないですよね。総理、頑張っている方ほど目いっぱいの借金を既に抱えています。借金できる、できない以前の問題で、そういう中で、あなたは線引きの結果、対象から外れていますので借金してくださいと、これは余りにも酷ではないですか。

 総理、もう一度問います。対象をじりじり広げるんじゃなくて、線引きのない制度にしていただけませんか。総理、明確な答弁をお願いします。

岸田内閣総理大臣 どういった制度をつくるのか。従来の支援金制度、これは、半分は地方が負担する形で制度が維持されている。その中にあって、今回、新たな制度を設けて、そして、返済や借入れ、容易でないと見込まれる方に対してはこの交付金を交付していく、こういったことを申し上げております。

 これをできるだけ広げるべきである、これはもうおっしゃるとおりであります。それぞれの事情に応じて、特に、資金の借入れや返済が容易でない方にはしっかりとこうした交付金を用意することが重要であると考えております。限られた財源の中で、有効にこの資金を活用して、組合せによって、取り残される世帯がないようにしていく、こういった取組は重要だと申し上げております。

梅谷委員 だから、総理、その制度設計が、ややもすれば、若者流出促進政策、そういうふうにもなりかねないし、また、ややもすれば、中小企業衰退促進政策、こういうふうにもなりかねない、そういう懸念を、少なくとも私がいただいた限り、声としてもいただいているし、取り残すことはないとおっしゃいながら、実際、取り残しているじゃないですか。数字上もそのことをお話しし、だから、運用でそれが絞られるかもしれないわけでしょう。(発言する者あり)委員長、注意してください。

小野寺委員長 御静粛に。御静粛にお願いいたします。

梅谷委員 被災者に近い自治体や地元の団体が実際どう考えているのか。パネルを御覧ください。

 こちらは、地元の石川県を始め、地方六団体、北海道東北地方の知事会、そろって求めていることは、支援対象の拡大です。しかし、新たな制度は、拡大どころか、従来の支援金よりも更に支給対象を絞っていますよね。これら要望、この要望は総理室に届いていることも事務方から確認済みです。総理の聞く力はどこに行ったんでしょうか。

 今最前線に立っている地元の声、地方の声を、先ほど調整中ともおっしゃっていましたが、どう受け止めたら支給対象をこのような形で絞ることになるのか、お答えいただけますか。

岸田内閣総理大臣 要望、提言、これはいただいております。そして、その上で、知事会等とも丁寧に議論をした上で、今回、新たなこの交付金制度について用意をし、そして制度設計を行っているということであります。この知事会等の提言もしっかり踏まえた上で、知事会とも対話を行いながら、新しい交付金制度、これを調整している、これが政府の取組であります。

梅谷委員 総理、改めて御答弁いただきたいんです。これは子育て世帯が除外されていますよね。これは明確にお答えください。

岸田内閣総理大臣 この制度設計につきまして、対策本部において、地域の実情に合わせた福祉ニーズの高い支援者の支援という方針を確認しております。

 先ほど申し上げました資金の借入れや返済が容易でないと見込まれる方には新たな交付金、これを交付いたします。そして、それ以外の、若者、子育て世帯も含めて遜色のない対応、住宅融資の金利負担助成など、こういった支援を用意した。こういった組合せによって、取り残されないよう対応を考えてまいる次第であります。

梅谷委員 じゃ、今、取り残されないよう対応を考えてまいりますということなんですね。子育て世帯、これもきちんと含んで交付金支給、これを検討していただくという理解でよろしいですね。

岸田内閣総理大臣 事情は様々でありますが、資金の借入れや返済が容易でないと見込まれる方については交付金、これを給付いたします。そして、対象とならない世帯についても、若者、子育て世帯を含めて、住宅融資の金利負担助成など、制度を用意いたします。こうした制度を用意することによって、組み合わせることによって、取り残される世帯がないように対応を考えてまいります。

梅谷委員 先ほど六六・三%という数字を度々お話しされていますが、配付資料を是非御覧いただきたいと思います。

 こちらは、私の方で、うちの事務所で、極めて粗い、機械的なものですが……

小野寺委員長 どの配付資料かをお示しいただけますか。

梅谷委員 新たな交付金制度で幾らぐらい予算がかかるのかという概算の資料でございます。これは試算してみました。どのような前提を置いたかは、配付資料を御覧いただきたいと思います。

 基本的に、二月二日時点での石川県公表の住宅被害数を基に、ここに対して、また平均支給額を二百万円と仮定しています。六市町で、世帯に高齢者が含まれる世帯割合が、先ほど来おっしゃっている六六・三%。これを前提とすると、トータル、所要額は約五百四億円。でも、ここに、高齢者や障害者だけでなく子育て世帯を入れる。さらには、特に限定をしていなくても、追加の所要額は二百五十六億円にとどまるんです。

 総理が復旧復興に充てるとする予備費の今年度の残高、三千億円以上です。総理、これならば、先ほど来おっしゃっている限定は必要ないんじゃないですか。この緊急時にそこまで予算をけちりたいんですか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の試算の根拠はちょっと、今すぐ見せられて判断はしかねますが、いずれにせよ、これは、石川県を始め、地方の多くの知事の皆さん等ともしっかりと議論した上でこの制度を用意したということであります。

 能登地域六市町、大変な高齢化の中にある市町において住宅を確保することの重要性、これに鑑みて、こうした特別な新たな交付金制度を用意いたしました。これは、地元の事情等を考えますときに大きな役割を果たしてくれると認識をしております。

 いずれにせよ、石川県ともしっかりと調整をした上で、この制度を進めていきたいと考えます。

梅谷委員 いきなり見せられたとおっしゃっていましたが、事前に通告も細かくさせていただき、そして、資料も配付済みでございます。しっかりとお答えをしていただきたいと思います。

 そして、六六%がもらえる、先ほども申し上げましたが、逆に言えば三四%はもらえない。高齢者等がいる、いないで地域が割れかねないと私は危惧しております。原則、子育て世帯、若年世帯は、地元に残りたければ借金せよと、先ほど来、そういうふうに私は受け止めました。

 総理、本当に残念です。異次元の少子化対策は岸田内閣の看板政策じゃなかったんですか。社会で子育て世帯を支える方向にかじを切ったんじゃないんですか。これはいわば地域分断促進制度、あるいは、同居のきっかけになるのはもちろんよいことですけれども、家庭の多様性を認めない無差別同居強要制度、あるいは、子育て、若者世帯流出制度になりはしませんか。総理の御見解をお伺いします。

岸田内閣総理大臣 これは地域を分断するのではないか、こういった御指摘がありますが、こうした交付金を支給する方、これは借入れや返済が容易でないと見込まれる方であります。そして、それ以外の方、これは借入れ等についても金利負担助成などを行います。結果としてそうしたお金が届くという意味において、地域に分断を生じる、こういった指摘は当たらないと考えております。是非、こうした制度が理解されるように、石川県とも調整をしていきたいと考えています。

梅谷委員 先ほど来、同じことを何度も言っていますが、金利をどうこうの話ではなくて、やはり、借りるともらう、いただくでは全然違うじゃないですか。そこに大きな差があると、なぜ総理は分からないんですか、分かっていただけないんですか。

 先ほども数字を出させていただきましたが、あくまでも私の概算ですけれども、全ての世帯を対象にしたとしても、約二百五十六億円にとどまります。

 総理、ここをよく聞いてください。お願いします。昭和三十九年の新潟地震のとき、当時大蔵大臣を務めていた田中角栄先生は、いち早く新潟に現地視察に入り、金のことは心配するなとハッパをかけ、それが復旧復興の大きな力になったと、昔を、当時を知る方から伺いました。東京へ戻るなり、そして首相の下に訪れ、財布のひもを締める立場の大蔵大臣自らが、復興に金を出してくれと直談判したとの話も伝わっています。

 総理、財源について改めて、首相の方針演説でもおっしゃっていますが、金の心配がないとここではっきり断言していただきたい。田中角栄先生のごとく、財務大臣に、子育て世帯にも区別なく、全世帯に金を出してくれと御指示いただけないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 予算については、従来から申し上げておりますように、令和五年度の予備費、令和六年度の予備費、これを活用する形で機動的に、柔軟に対応してまいります。この予算によって対応をちゅうちょすることがあってはならない、これは申し上げたとおりであります。

 この制度以外にも全体としてどれだけの資金が必要なのか、これは様々な対策を組み合わせることで全体を考えていかなければなりません。その際においてちゅうちょすることはあってはならない、当然のことであります。

 そして、御指摘の点についても、それぞれの事情に合わせて交付金を支給いたしますと申し上げているわけであります。返済ができないような方については、この新しい交付金制度を活用しますと申し上げております。そして、具体的な制度をつくることによって、現実的に地域が分断されないような制度を石川県ともしっかりと調整して実現してまいります。

梅谷委員 総理、私は明らかに予算でちゅうちょしているようにしか見えないですよ。

 いろいろおっしゃっていますけれども、できることを全てやるという考え方で全力で取り組んでいるということは、述べていらっしゃるのは私も分かっています。でも、そこには、額面どおり受け取りたいところですけれども、一方で、総理、このようにも申しているじゃないですか。現下の経済情勢を踏まえてという一言がわざわざ挟まれているんですが、私は、今踏まえるべきは現下の経済情勢以上に、現下の被災状況だと総理に是非申し上げます。

 その意味で、条件をつけずに、きちんと全世帯に対して交付金が支給される、その仕組みを、是非修正をしていただきたい、お願いします。

岸田内閣総理大臣 現下の経済情勢を踏まえてと申し上げているのは、現下の経済情勢の中で決して被災者の方々が後れを取ることがないように、しっかりと支援制度を用意するということを申し上げているわけであります。全体として支援を組み合わせることによって、支援を充実してまいります。

梅谷委員 なかなかかみ合わない感じがするので、是非、総理、被災地に行かれて、被災者の方々の声、生の声を聞いてください。本当にどこを向いて政治を振るっているのか、私、分からなくなります。是非、被災者の方々の生の声にそれこそ聞く力を発揮していただいて、私は、ここに、区別をするべきでない、差をつけるべきではないということを強く申し上げたい。是非、子育て世帯も含む制度にしていただきたい。もう一度お願いします。

岸田内閣総理大臣 石川県を始め、地元六市町の方々としっかり調整を行った上で、納得いく制度をつくってまいります。

梅谷委員 じゃ、地元の自治体などと協議をしながら検討するという理解でよろしいでしょうか。

岸田内閣総理大臣 地元としっかり調整をしながら、新しい交付金制度、今申し上げた制度を制度設計してまいります。

梅谷委員 全世帯に是非含んで、検討をお願いしたいと思います。

 もう一つ、声を紹介します。この新しい給付金制度について、ひどい液状化被害の出ている新潟市西区の方からのお声です。

 見た瞬間、見たというのは、この制度を報道で知ったということですね、見た瞬間、これは何だ、これはあり得ない、一つの地震で、たまたま住んでいるところで支援があったりなかったり、国民を分断するなんてあり得ない、その理由がコミュニティーというが、そんなのはどこも同じ、理由になっていないというお声をいただきました。

 この制度、対象が、これも御案内のとおり、六市町に限定されています。新潟県、二月二日時点で、全壊、半壊が二千軒以上確認されています。富山県も、同じく三百軒以上ですよ。いずれも対象外ですか。内灘町でも、ひどい液状化現象が出ております。同じ石川県内なのに、これも対象外ですか。

 同じように被害を受け、住宅の再建、生活の再建が懸かっているのに、住んでいる地域で差をつける理由を教えてください、総理から。なぜ地域で差をつけるのか、理由を教えてください。

岸田内閣総理大臣 そもそも、生活福祉資金貸付けの特例措置としてこの制度を用意いたしました。

 これは、大規模な災害時に発動されるものですが、今般の災害を受けて、石川県の能登地域六市町については、高齢化率が著しく高いこと、半島という地理的な制約があって、住み慣れた地を離れて避難を余儀なくされている方も多いなど、地域コミュニティーの再生に向けて乗り越えるべき大きな課題がある地域であると認識をしています。

 今般、こうした能登地域の実情、特徴に鑑み、地域福祉の向上に資する新たな交付金制度を御指摘の地域に設けることとした、このような判断をした次第であります。

梅谷委員 本当に意味が分からないですね。

 百歩譲っても、高齢者にはローンがなじまない、だから高齢者だけ支援する、それが今のお話しされた制度の考え方ですよね。高齢者は借金できないという前提を置いたのに、なぜ対象が六市町の住民に限定され、他の地域の御高齢の方々は借金しろという制度ができるんですか。総理、これは完全に地域差別じゃないですか。矛盾しているようにしか思えませんが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げました、能登地域の実情、特徴に鑑みて、地域福祉の向上を考え、そして新たな交付金制度を設けることにしました。

 こういった特徴に着目して支援を行うということは重要であると認識をしております。こういった判断に基づいて、今回の交付金制度、これを用意した次第であります。

梅谷委員 総理、石川県内のほかの市町村、市町も被災地じゃないんですか。被災地ですよね。ありますよね。新潟も富山も福井も、被災地、あります。この被災地が心を合わせて乗り越えようとしているときに、地域で分断、こちらも分断ですか。分断することはやめていただきたいと思います。

 被害の大きさなど個人の置かれた状況ではなくて、地域というどうにもならない条件で差をつけるのはやめていただきたいんですが、いかがですか。

岸田内閣総理大臣 新潟県、富山県に対する支援、これも重要なことであります。だからこそ、応急仮設住宅や災害公営住宅の整備、被災者生活再建支援金の支給、そして社会福祉協議会による生活福祉資金貸付けの特例措置、こういった必要な支援を行っております。

 それと併せて、先ほど申し上げました能登地域六市町については、実情、特徴、これはほかの地域と違うものが存在いたします。これに対する新たな交付金を設けるという考え方で用意した次第であります。

梅谷委員 総理、長々と、分かりづらい、関係のないことをおっしゃっていただくということは、都合の悪いことなのかなというふうに私は受け止めざるを得ません。

 是非、これは分断しないように、総理、いま一度見直すように指示してもらえませんか。もう一度お願いします。端的にお願いします。

岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げたように、地域の実情、特徴に鑑みて、新しい交付金制度について制度設計を進めてまいります。石川県等、地元ともしっかり調整を行ってまいります。

梅谷委員 是非、富山、新潟、そして福井とも調整をしていただいて、進めていただきたいと思います。

 今回、新潟市西区を始め、北陸四県の広範囲で液状化による被害が起きています。

 液状化被害は、家の修理と土地の修復、ダブルでお金がかかります。ごく普通の戸建てでも、建物修理費以外に二百万円から一千万円も余分に費用がかかります。この多額の修復、復旧費用もあって、被災から一か月がたちますが、ある意味、通常の家屋損壊以上に生活再建のめどが立たない現状があります。ここに何らかの支援が必要であるということは言うまでもないと思いますが、まずは具体論はおいておいて、この液状化に対する支援が必要か否か、総理、イエスかノーでお答えください。

岸田内閣総理大臣 液状化対策に対する支援は、必要であります。

 だからこそ、生活となりわい支援パッケージにおいて、宅地等の復旧が行われた後、再度災害を防止するため、道路等の公共施設と隣地宅地等の一体的な液状化対策を行う自治体を支援すること、これを盛り込んだところであります。

梅谷委員 そうですね、必要ですよね。当然です。

 そして、この液状化への支援に非常に重要なのが復興基金。これは午前中の質疑でもございました。熊本県では、これも御案内のとおり、国の支援がない民間宅地の復旧を、国の拠出で、県に設置される復興基金で支援をしてきました。

 復興基金は、過去四度の震災で設置をされてきました。午前中の復興大臣の御答弁では、その必要性を含め適切に判断してまいりたいと考えていますと、設置するのかしないのか、明確にしておられませんでした。

 そこで、総理にお尋ねをします。

 被害の状況や今後実施される各府省庁による支援の全体像を把握した上でとか、被災者のきめ細かなニーズに対応しつつとか、石川県が示されるビジョンに沿った復旧復興に取り組めるようとか、そういうことではなくて、石川県、富山県、新潟県と、各県と協力をしていただいて、早期に復興基金の設置を決めていただきたいと思います。

 そして、液状化に対して支援があることを明確にしていただきました。こういうふうに見通しを示すことが被災者の方々の安心につながることは間違いありません。

 私も、被災地に入らせていただいていろいろな声を伺う中で、やはり水の心配、そして住まいの心配、そして経済的な御不安、総じて言えば、やはり生活の、暮らしの見通しがなかなか立たない、そこが本当に、不安こそが一番の課題だなというふうに、本質的な課題なのではないかなと私なりに受け止めました。

 是非総理、ここで早期に復興基金は設置をするんだというふうに明言していただくことが大事なので、是非明確な御答弁をお願いします。

岸田内閣総理大臣 これについては、総務大臣からお答えしたように、地元のニーズあるいは課題に被災自治体がしっかり取り組めるように国として支援をしていく考えですが、復興資金については、各県の被災状況を踏まえて必要性を適切に判断していく、政府の方針は申し上げたとおりであります。

梅谷委員 是非、被災者の方々に本当に安心を届けていただきたいというふうに私は強く願うばかりです。早期の復興基金を設置するんだということをできるだけ早く表明をしていただきますようお願いをいたします。

 今回、液状化以外にも、隆起、陥没だったり、崖崩れ、擁壁崩壊など多様な宅地被害が起きています。しかし、各自治体が使える施策は限られ、被災者は先の見えない不安を抱いています。これは先ほど申し上げたとおりです。必要なのは、何らかの枠組みで支援が受けられるという見通しを被災者に与えることです。

 パネルを見ていただきましたが、ここでパッケージも用意されたんですね、政策パッケージ。これも一日も早く用意していただいて、被災者に復旧の見通しを与えていただきたいと思います。

 そして、液状化では罹災証明での判定が難しいという問題もございます。

 例えば、住宅地全体が傾きもせず沈んだような場合、水が流れ込んで浸水するし、道路にも出られず、当然住むこともできない。でも、家が傾いていないと被災にならない、それが今の制度です。また、液状化は大抵エリアで発生します。しかし、家の傾きで判定する今の仕組みでは、各住宅ごとの被害認定にばらつきが出ることが避けられません。この家は全壊判定、この家は半壊、この家は被災なしと支援にばらつきがあると、エリアでの復旧は困難なんです、総理。

 そこでお尋ねしますが、大火災などの場合、エリアで一律全壊と判定することが現実として行われています、大火災のとき。液状化でもこうしたエリアでの判定を積極的に適用すべきと考えますが、総理の見解を伺います。

岸田内閣総理大臣 今、液状化に対して御指摘のような制度というものは存在しませんが、おっしゃるように、現状に応じて柔軟に対応するという姿勢は大事だと思います。

 どこまでできるのか、柔軟な対応がどこまでできるのか、確認をいたします。

梅谷委員 是非、柔軟な対応を確認していただいて、エリアによる一律全壊、これも視野に入れて御検討いただきたいと思います。

 そして、時間も本当になくなってまいりました。自粛について、この際、総理からお考えをお伺いしたいと思います。

 私の地元の話で僭越ですけれども、上越市では、一月四日に、震災を受けて新年会をキャンセルし、自粛をしました。これを受けて、町内会や団体でも、ところどころでキャンセル、自粛が相次ぎました。これ自体は、被災者や被災地の方々と痛みを共有をしようというすばらしい行動だと私は思っております。

 ただ、同時に、こうした自粛によるキャンセルが相次いだことで、お弁当が売れなくなったりとかお酒も売れなくなったり、いろいろな飲食店などを含めてお店などが痛手を受けて、また、これ以外にも、午前中の質疑でもございました、風評被害も相まって、スキー場や観光客も激減するなど、地域経済に少なからずダメージが出ました。

 復旧復興のためには経済活動が元気になることが、取り戻すことが不可欠です。しかし、各店舗や各事業者の方々は、周りをどうしても気になさりながらの営業となっているのが実態です。

 そこで、総理、お尋ねします。

 この際、こうした自粛について、今後のことも考えて、自粛についてどういうふうに考えるべきなのか、考え方を総理からお示しいただけないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 今回の地震によってお亡くなりになられた方、また御遺族、そして被災された方々に思いを致し、そして思いに寄り添う、そして復興を願う、こういった思いは貴重なことであると思います。しかしながら、自粛ムードが続くことで経済的損失が拡大するということは、地元にとっても残念なことにつながってしまいます。

 政府としては、既に発表している北陸応援割、こうした支援を行うことを考えていますが、それ以外にも、ふるさと納税を活用した特産品販売、旅行等の促進、こういったことにより風評対策にも力を入れていく、こうした考え方であります。

 被災地の知事の皆さんも発信されておられますが、被災地の地元産品の消費あるいは観光、これを盛り上げ、そして経済を活性化する、復興復旧を応援する、こうしたことにつながる取組は政府としても後押しをしていきたいと考えます。

梅谷委員 是非全面的な後押しをお願いを申し上げます。

 質問の時間が終わりましたので、私の質問は以上とさせていただきます。ありがとうございました。

小野寺委員長 この際、石川香織さんから関連質疑の申出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。石川香織さん。

石川(香)委員 立憲民主党の石川香織です。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私は、主に一次産業の課題、地方の課題について総理にお伺いをさせていただきたいと思います。

 先日、総理の施政方針演説がありました。それを受けまして各党が代表質問を行いましたが、自民党の議員からは、この一次産業の課題、質問が一問もありませんでした。今、これだけ食料安全保障の重要性が認識をされ、生産現場も非常に正念場であるという状況でありますが、自民党は一次産業を忘れてしまったのではないかと、全国の生産者の方が非常にがっかりされたのではないかなというふうに思っております。

 今国会では、農業の憲法と言われております食料・農業・農村基本法が二十五年ぶりに改正をする見込みです。一年半にわたって議論がなされてきまして、多くの農業関係者が注目をしております。

 食料危機のような万一の場合は、岸田総理、総理大臣が先頭に立ってリーダーシップを取ることになっています。まさに日本国民の胃袋は総理に懸かっているという決意で今日は御答弁いただければと思っております。

 現在、食料自給率、日本は三八%ということで、輸入に依存をしております。どんなときも食料をきちんと供給することができるのかということは、今回の基本法の改正の中でも大きなポイントになっております。

 まず、不測時の食料確保について伺います。

 この不測時とは、大規模災害、異常気象、そして新型コロナのような感染症の流行、そして家畜などの病気の流行、近年は鳥インフルエンザですとか豚熱といったものも世界中で警戒をされておりますが、こうしたことによって食料の供給に影響を及ぼす事態のことを示します。

 このフリップのように、深刻度に合わせて四つの段階に分けられておりまして、政府のやるべき対応が書かれております。今は平時という状況でありますが、食料の供給の減少の兆候が出た時点で総理大臣を長とする対策本部が立ち上がります。黄色の部分です。

 そして、その次に深刻な事態として、供給減少で大きな影響が出るとき、具体的には米などの重要品目が二割以上減少するような場合、輸入や生産を増やす計画を作ってもらうように事業者であったり農家の人に指示をするということになります。

 そして、最も深刻な事態が、最低限必要な食料が不足するおそれということで、一人当たり供給熱量が千九百キロカロリーを下回ると予測される場合です。このときの対策として、熱量、エネルギーが高い作物への生産の転換であったり、今ある農地以外の土地の利用、そして食料の割当て、配給及び物価統制ということになると示されております。

 つまり、万一の場合は、例えば果物やお花を作っている農家が、お米を作ってください、芋を作ってくださいと言われて芋や米を作る、又は公園やゴルフ場を畑にするといったことが想定されるわけですが、果たしてこれは実現可能なアイデアでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、現状、我が国の安全保障上のリスクが高まっています。その中で、食料供給が減少し、国民生活、国民経済に影響が生じる事態に備えて早期から必要な措置を実施するための法案を今国会、提出することにしているわけですが、具体的には、生産者の自主的な取組を尊重しつつ、事態が深刻した際には作物の増産や生産転換の要請又は指示を発することを想定しております。

 これは実現可能なのかという御質問でありますが、こうした事態に的確に対応するためにも、平時から、担い手の育成、確保、そして農地の確保と適正な有効利用、こうした生産基盤の確立、強化を図っていくことが重要であると思います。いざというときに対応が可能となるためにも、平時からの対応をしっかり充実させていく、こうしたことが重要であると認識をしております。

石川(香)委員 生産基盤を確立する、これは当然だと思います。ただ、いざというときは、作る作物を変更させたり、増産を指示したりして、最終的に農家に何とかしてもらおうという発想であります。

 ただ、農家というだけで何でも作れるわけではありません。農家の方に言わせれば、これぞまさしく完全に畑違いの話であって、こんなことはできないと口をそろえて皆さん言っております。

 それに、例えば芋であれば、種芋という元の芋がないとできないわけですが、この種芋は全国的に不足をしておりますので、すぐに増やすことはできません。

 最悪の想定とはいえ、長年の土づくりや技術を甘く見た、非常に現実性の低いアイデアだと思います。

 そもそも、この対応は国内に農家が十分にいればの話です。

 現状、今、黄色の線で描かれた農家戸数は減少の一途です。農林水産省の統計によりますと、令和四年、九十七万五千経営体ということでありましたが、最新の数字では九十二万九千四百経営体となっておりまして、この一年間でおよそ五%も農家が減ったことになります。

 と同時に、所得も落ち込んでいます。下の赤い線です。令和四年は、前年度から二割以上所得が減ってしまいました。作っている農畜産物や規模によってはもっと減収になったところもありますが、肥料や飼料、それから光熱費などの物価高騰、この影響を受ける一方で、価格転嫁が進んでいかないということが大きな課題だと思います。

 安全保障の確立のためには、農家が経営を継続できているということが必須であるということで、一にも二にも所得対策だと思っております。

 午前中の質疑で、農家の所得向上についてという質問で坂本大臣が、産地のブランド化や輸出の販路拡大、農地の集約、スマート農業などと言っておりましたが、何年かかる話なんでしょうか。五年後、十年後の話ではなく、今まさに正念場だということなんですね。

 直接的に農家の所得を上げるために、政府はどんな政策をしているでしょうか。

坂本国務大臣 まず、農地の集積、集約、これを進めてまいります。法改正によりまして進めてまいります。

 それから、スマート技術の開発、実用化、こういったものを進めてまいります。一方の方で、省力化によるコストダウン、そして生産基盤の整備、こういったものを整備をしてまいります。

 それに加えて、付加価値向上のために新品種開発の普及。

 そして、海外では、非常に日本の食品は安全で、おいしくてというような高評価でありますので、輸出に取り組みます。

 さらには、知的財産の保護、活用。

 さらには、六次産業化を進めて、他産業との連携を進めていきます。

 そして、有機農業によりまして、これからの農業のやはり付加価値を高めるというような方向で所得を高めてまいりたいというふうに思っております。

石川(香)委員 先ほどとほぼ同じ答弁でしたけれども、そんな答弁をしたら生産者の人は怒ると思います。

 今、農地集約だとかいろいろおっしゃっておりました。減収に対しての補填する仕組みというものはあります。ただ、これはあくまでマイナスを埋めるものであって、プラスアルファを生むものではありません。

 これまで、機械や施設の補助金によって生産量を上げて所得を上げるという政策は、確かに一定の程度はあったと思いますが、今、機械も倍近い値段になっておりますので、簡単に投資することはできません。

 例えば、畜産クラスターという制度は、酪農、畜産農家に向けて、規模を大きくしたり頭数を増やすということを補助金の条件にしました。しかし、十年をたたぬうちに抑制や減産となって、思い切って投資した農家たちははしごを外されてしまっています。特に円安の影響を大きく受ける配合飼料の特例措置も、自民党は、昨年、早々と打ち切ってしまいました。

 この状況について、非常に、今の所得対策が求められているわけですけれども、総理、改めて、いかがでしょうか。

小野寺委員長 農林水産大臣坂本哲志君。(発言する者あり)所掌の話ですから、まず坂本大臣から答弁をいただきまして、その後、総理から。

 坂本大臣、短く答弁をお願いいたします。その後、総理にお願いをいたします。

坂本国務大臣 非常に、機械等、スマート化、厳しいのは、実情、厳しい状況は十分理解できます。

 しかし、現実的に、やはり農家の所得というのは、これまでやってきた政策の中で引き上がっております。例えば、平成二十五年、五百五万円だったのが、三十年は六百六十二万円。さらには、令和元年、四百十九万であったのが、四百三十四万円というふうに、所得そのものは確実に今上がっている。それを更に上げるためのいわゆる法改正をやってまいるということでございます。

石川(香)委員 前の数字を出されておりましたけれども。

 もう一つ、岸田総理は、施政方針演説の中で、輸出の強化をお話しされたと思います。昨年一月から十二月までの農林水産物、食品の輸出額は一兆四千五百四十七億円となっておりまして、十一年連続で過去最高を更新しております。

 問題は、この内訳ですが、約四割が加工食品で、清涼飲料水であったり、あられやお煎餅などの米菓が占めており、これらは、原材料は輸入に頼っているものが多く、純粋な国産、一次産品とは言えません。

 輸出は重要だと思いますが、輸出は果たして本当に農家の所得向上につながっているんでしょうか。総理、お願いいたします。

岸田内閣総理大臣 輸出については、海外富裕層をターゲットとするなどによる販売単価の向上、そして国内需給の適正化にもつながっています。結果として、農業所得の向上には貢献していると認識をしております。

石川(香)委員 かなり一部の農家、大きなところに限られていると思います。ほとんどの、多くの農家が所得につながっていないのが実態です。

 それよりも力を入れるべきは、やはり直接所得に反映されるような、戸別所得補償制度のような、これも自民党によって廃止されてしまいましたが、そういった仕組みの復活が今求められていると思います。

 では、基本法に戻ります。

 供給が二割減るという段階は、四段階のうち三番目に深刻な状況でありますけれども、これは、実は国内で経験済みでありまして、平成五年の米不足がこのときに当たります。あのときは輸入などを通じて総量は確保しておりましたが、国産の米が二割減るとあれだけの混乱に陥ったということで、何とか最悪の状況を食い止めなければいけません。

 想定される四段階のうち、最悪の場合、配給、割当てということになります。まさかと今思われる方もいらっしゃるかもしれませんけれども、最悪の想定として、危機管理上、非常に重要だと思いますが、どのくらい先の未来にあり得ることだと自覚しておくことが必要でしょうか。

岸田内閣総理大臣 将来、食料の供給が不足するような事態がいつ発生して、どの程度深刻化するか、これは予断を持ってお答えすることは困難ですが、我が国の食料安全保障上のリスク、これは間違いなく高まっています。こうしたリスクの高まりの中で、平時からの不測時への備え、これが従来にも増している、こうした認識に立っています。

 こうした認識に立って、平時からの対応を用意していきたいと考えています。

石川(香)委員 二十年後には国内の農業者が四分の一になり、そして、二〇五〇年には世界の人口が九十七億人になるということも予想をされておりますと、確かにリスクは高まっているということは国民全体で共有しなければならない。

 となりますと、備蓄の重要性も増してきます。国では、米、麦、飼料、餌ですね、に関しては、民間の倉庫などを借りて備蓄をしております。その備蓄の目安も、国によって違いますが、日本では政府備蓄米がおよそ一・七か月分、麦は二・三か月分、飼料が百万トンとなっております。

 そのほか、民間の会社の備蓄というものがあります。ただ、会社の、民間の備蓄というのは、在庫の量が会社の評価に当たったり、経営に直結する情報だということで、企業秘密とされることが多く、日本に今備蓄がどれぐらいあるのかということは実は誰も知らないのが現状です。ただ、いざというときに、やはり国にどれぐらいの備蓄があるのかということを国が把握していないのは、国民も非常に不安に感じるのではないでしょうか。

 そこで、民間の備蓄も含めて、日本がどのぐらい備蓄があるのか、一般に公表せずとも、きちんと把握しておく必要はあるんじゃないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 備蓄については、不測時の初期段階における重要な対応策の一つであり、米、小麦については、備蓄水準を定めた上で、政府による備蓄又は民間備蓄の支援を行っているほか、植物油脂原料のように統計調査で民間備蓄を調査している、こういったものもあります。また、これら以外の主な食料についても、民間分を含めた国内における備蓄量を平時から把握していくこと、これは重要であり、そのために、今国会に提出予定である不測時の食料安全保障の強化のための法律、この法律において、必要な措置、これを講じていくこととしております。

 詳細については、農水大臣にお聞きいただきたいと思います。

石川(香)委員 十分な御説明、ありがとうございます。

 情報管理はしっかりしながら、平時から把握できるようにする、これは非常に重要だと思います。

 さて、種を植えないと食料はできないということを考えますと、食料安全保障は種から始まると考えることができると思います。

 種を制する者は世界を制すという言葉もありましたが、現に世界の種苗貿易の産業規模を見ますと、二〇〇〇年頃から二〇二〇年代にかけて急速に拡大をしております。今後も種苗の国際競争は激化すると予想されるということです。

 世界が種を重視する中で、国内ではどんなことが起こったかといいますと、平成三十年、米、麦、大豆の種の安定供給、品質確保を国や都道府県に義務づけた種子法、廃止になってしまいました。生産現場から多くの反対があったにもかかわらず、民間の参入を促すという理由で政府・与党が廃止にしてしまったわけなんですけれども、しかし、その後、懸念が広がりまして、全国で種子法の内容をカバーできるように条例を制定する都道府県が相次ぎまして、今や九割近くの都道府県が種子法の条例を制定をしております。

 総理、種が入らなくなったら、食料安全保障、根本から成り立ちません。種子法の復活、もう一度考えていただけないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の主要農作物種子法については、戦後の食料増産を背景に、全都道府県に稲等の原種の生産を一律に義務づけていたところですが、民間事業者の力を生かしやすい環境をつくり、官民の総力を挙げた種子の供給体制に転換していくため、平成三十年に廃止したものであると承知をしております。

 法の廃止以降、原種生産における民間事業者との連携など、各地域の実情に応じた取組がなされており、現行の枠組みの下、円滑な種子の供給を後押ししてまいりたいと考えています。

 廃止した法律を復活させること、これは考えておりません。

石川(香)委員 当時の状況と今の状況、この食料安全保障の重要性、全然違うと思いますので、これは本当に皆さん心配されて条例を制定しております。是非、強くお願いをしたいと思います。

 そしてもう一点、気候変動の影響を大きく受けている水産業についてもお伺いをさせていただきます。

 総理の施政方針演説の中で、水産業について、養殖業への転換と一言だけ触れられておりました。これは、天然魚を扱う漁業が養殖業に転換を推し進めるということなんでしょうか。漁師の方からは、そんな簡単なものじゃない、国は安定供給のことしか考えていないのかという怒りの声が上がっております。こういった声をどうお感じになるでしょうか。

岸田内閣総理大臣 さきの施政方針演説においては、我が国の農業が直面する食料等の世界的な需給変動、環境問題、国内の急激な人口減少と担い手不足といった国内外の社会課題を正面から捉え、環境に配慮した持続可能な農林水産業への転換を促進する中で、養殖業への転換を施策の一つとして挙げたものであります。

 水産資源なくして水産業は成り立たず、持続可能な水産業の実現に必要な取組を積極的に後押しをし、天然資源や漁場環境に負荷をかけない持続的な養殖生産体制を強化してまいります。

 同時に、漁船漁業も食料安全保障や地域経済の観点から重要な産業であり、資源管理の強化を始め、デジタル化、スマート化の推進、また国内外の市場開拓、こうしたことを通じて、持続的な漁船漁業の発展も図ってまいります。

石川(香)委員 養殖業は確かに重要だと思いますが、そうしますと、天然魚で勝負をしている多くの漁師たち、水産関係の方々への言及は一言もなかったということになります。

 そもそも、養殖業は餌代もかかります。簡単なことじゃないということです。日本全国どこでもできるわけではありません。例えば、太平洋の海が荒いところで、養殖なんてとても環境的にできません。簡単に増やしたり、減らしたり、新しいものを作ることができないのが一次産業なんです。

 今回、質問するに当たりまして、多くの生産者の方から聞かれましたのは、水産業の養殖への転換だとか、先ほどの基本法の、米や芋を万一のときは作ってくれというのもそうですけれども、何でも簡単に言わないでほしいという声と、そこじゃないという声が多く聞かれました。

 全国の生産現場は、この気候変動、物価高に負けずに根気強く、粘り強く、もう絶対乗り越えてやろうという思いで汗を流す生産者の方が大勢いらっしゃいます。時間とお金がかかる産業だからこそ、今、所得対策が求められているんです。

 その緊急性、現場の危機感をもっと自覚をしていただきたいと思いますが、何か一言ありましたら、総理、お願いいたします。

岸田内閣総理大臣 今、全体としても、我が国の食料安全保障に対するリスクが高まっている、こういった危機感がありますが、おっしゃるように、現場において汗をかいておられる方々にとっての危機感、これは、また違った意味で強い、そして切実な危機感があるということを承知をしております。

 是非、現場のこういった危機感、そして思いにもしっかり応えながら、全体の食料安全保障に対するリスクにも対応していく、そのことによって我が国全体の農林水産業を支援していく、こういった考え方は、これからも大事にしていきたいと考えます。

石川(香)委員 是非よろしくお願いを申し上げます。

 そしてもう一つ、この一次産業の現場を支えていらっしゃるのが多くの女性です。家族や仲間と一緒に土にまみれて、汗にまみれて一生懸命働く女性の姿が現場には必ずあります。一次産業の現場だけではなく、あらゆる職場で女性がいないと成り立たないというところはたくさんあります。

 その上で申し上げますが、先日、まさに頑張る女性のお一人である上川大臣に対する麻生副総裁の発言について、麻生副総裁が撤回をされました。しかし、総理は今日の時点で、この発言に対して、あくまで一般論という答弁しかされておりません。

 一般論だけではなくて、総理自身がきちんと自分の言葉で今回のことについて発言されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 御指摘の麻生副総裁の発言については、今おっしゃったように、先週発言を撤回されたものと承知をしております。

 そして、性別や年齢を問わず、年齢や容姿をやゆし、相手を不快にさせるようなこと、これは慎むべきである、これは当然であると私も考えます。

石川(香)委員 それは一般論ですか。それとも、総理個人のお言葉として受け止めればいいでしょうか。

岸田内閣総理大臣 発言は撤回されました。

 その上で、私自身の思いを申し上げました。

石川(香)委員 これは撤回をされましたけれども、イギリスの有力紙のガーディアンを始め、世界のメディアも複数批判をされております。

 今回の発言は、残念ながら、国益を害する行為だったと思います。今、御自分の思いという表現をされたと思いますけれども、はっきり、やはり不適切だったというふうに言って世界にメッセージを発することが大事だと思いますが、この点、いかがでしょうか。

岸田内閣総理大臣 発言は撤回されました。

 その上で、先ほど申し上げたように、性別や、さらには立場を問わず、年齢や容姿についてやゆをする、相手を不快にさせる、こうしたことはあってはならない、慎むべきであると私は考えます。

石川(香)委員 その発言が不適切かどうかというのは、相手によって変わるようなことがあってはいけないと思います。しっかり、不適切だったと言うべきだと思いますが、もう一度、よろしくお願いします。

岸田内閣総理大臣 発言は撤回されました。

 その上で、先ほど申し上げたように、立場や年齢を問わず、容姿や年齢についてやゆをする、こうした発言は慎まなければなりません。私の思いを申し上げております。

石川(香)委員 残念ながら、しっかりと、不適切だったという言葉が出てきません。世界中が、日本中が今回の発言も含めて注目をしています。

 総理がトップなわけですから、トップがどう考えているかと態度をしっかり臆することなく表明することは大事だと思います。もう無理ですか。(岸田内閣総理大臣「申し上げているとおり」と呼ぶ)申し上げているとおり。

 ということで、残念ながら、不適切だったと……

小野寺委員長 いやいや、質問されますか。

石川(香)委員 じゃ、質問を、最後にします。

岸田内閣総理大臣 だから、立場や年齢を問わず、年齢や容姿についてやゆをする、こういったことはあってはならない、慎まなければならない、こういった思いを申し上げております。

石川(香)委員 自分の意見をしっかり語れない総理の姿、ちょっぴり残念でした。不適切だったとまでは踏み込まない。ただ、もう私もこのことは言いませんけれども、とにかく、しっかりと自分の意見を世界に発信するということは重要だということを申し上げさせていただきたいと思います。

 その上で、次の質問に参りますけれども、子供が三人以上いる世帯に向けた大学授業料の無償化ということについて伺いたいと思います。

 二〇二五年四月から、三人以上扶養に入っている子供がいる世帯への大学の授業料無償化が始まる予定です。ただし、無償化といっても、公立、私立共に、支援される金額の上限があり、全額が支援されるわけではありません。

 問題は、この制度のややこしさ、制度設計です。例えば、三人兄弟だとして、一人が大学を卒業して扶養から外れたら、あとの二人に関しては対象外になるということで、つまり、子供が三人以上いる世帯で子供全員が対象になるためには、三つ子や年子で三人ということでないと対象にならないということになります。

 一人でも二人でも学費は負担でありますし、もしも三人産むということになりますと、早く結婚して早く出産をするということも必要になりますので、キャリア形成の点からもハードルが高いと思いますけれども、この制度が少子化対策なのか、経済的負担を減らす取組なのか、目的がはっきりしませんが、この政策の評価を総理にお伺いします。

岸田内閣総理大臣 それぞれの夫婦にとって、理想の子供の数というものがあります。そして、子育てあるいは教育費によって理想の子供の数を持てない状況、これは三人以上を理想とする夫婦で最も顕著である、こういった指摘があります。これにしっかり応えなければならない。こういった考え方に基づいて、令和六年度そして令和七年度、それぞれ高等教育の負担軽減の取組を進めております。

 そして、七年度の大学等の授業料、入学料の無償化の条件について御指摘があったわけでありますが、これについては、三人の子供を持つ家庭にとって最も経済的に厳しい状況にあるのが、三人同時に扶養している、この時期であるという指摘、これに、思いにしっかり応えなければならない、なおかつ、財源に限りがある中で、こうした要請にしっかり応えなければならない、こういったことで内容を確定した、こういったことであります。

 そして、今後とも、高等教育費の負担軽減については、着実に負担軽減を進めていかなければならないと思います。

 是非、こうした大きな流れの中で、今回、一つの前進としてこれは評価できると我々は考えております。

石川(香)委員 いろいろな根拠のお話をされておりましたが、ただ、世間の受け止めはなかなかそういうわけではないようで、いろいろな方に話を聞きましたが、何のための線引きか、不平等に拍車をかけるという意見や、子供が三人以上いても結局全員当たらないのであれば、初めから一人目は無償と言ってくれた方がよっぽどありがたいといったような声も聞かれました。また、今、子供、お子さんがまだ小さい親御さんからも、二十年後もこの制度が続いているとは言えない制度なので、それよりも、働きながら子供を産んで育てていけるように、企業を後押しするような取組も例えばしてほしいというような意見もいただきました。

 先ほどの梅谷議員が質問されていた被災地の交付金の仕組みもそうでありますけれども、いつまで続くか分からない制度で、たまたまこの家が当たった、当たらなかったというような制度では、やはり分断を招くと思います。分断を招く制度では、やはり頑張れないと思います。

 この点についても、もう一度、ありましたら、よろしくお願いします。

岸田内閣総理大臣 今回の子供、子育て政策、加速化プランにおいては、三つの理念、一つは、子育て世帯、若い層の所得を増やすということ、もう一つは、社会の意識を変えていくということ、そして三つ目として、切れ目のない政策を用意するということ、この三つの理念に基づいて政策を用意いたしました。

 一つ一つの政策については様々な評価、批判はあると思いますが、切れ目ない支援を行っていくということで、様々な政策を用意しました。立場が違ったり、また、置かれている状況が様々であっても、それぞれに支援の手を差し伸べられるような政策を重層的に用意することによって、全体として切れ目のない支援が行われる、こういった考え方が重要だと思います。

 一つ一つの政策についての批判についても謙虚に受け止めますが、一つの政策で全ての人に満足してもらうということを現実に考えるのは無理があると思います。だからこそ、重層的な政策を用意して、全体として、それぞれの立場、状況に応じてそれぞれの政策を利用してもらうことによって、子供、子育てにおける支援を受け取っていただく、こういった考え方が重要であると認識をいたします。

石川(香)委員 今、子育て世代も、非常に物価高で厳しい中、非常に鋭く政府の政策の本質というのを見抜いていらっしゃると思いますので、本気度の伝わる少子化対策をお願いをしたいと思います。

 次は、物流の二〇二四年問題について伺います。

 もう二四年になりましたので、四月一日から残業時間を年間九百六十時間に収めるルールが始まります。建設業や運輸業などは周知や準備に五年の猶予がありましたが、これらの業種も四月一日から新ルールが適用になるということです。

 これによって、ドライバーの働く時間が減ることから物流に影響が出るということの解決策の一つとして、政府は、高速道路において大型トラックの制限速度を上げるという方向性を決めておりました。

 そして、昨年十二月、有識者会議の中で、大型トラックについては、現行の八十キロから九十キロに引き上げても交通の安全に支障がないという提言が出されました。四月一日から法定速度が引き上げられるということですが、しかも、状況変化が生じた場合は将来的に引上げを検討する可能性は排除されないと、更なる引上げに言及をされております。

 果たしてこの方向性でいいのかということ。そうではなくて、やはり速度よりも賃金を上げるのが先ではないでしょうか。

岸田内閣総理大臣 まず、高速道路のトラックの速度規制の見直しについては、物流革新に向けた政策のパッケージの検討課題の一つとされ、警察庁において道路交通の安全の確保の観点から検討が行われてきたところですが、交通事故の発生状況や車両の安全に係る新技術の状況等を踏まえつつ、有識者の意見も伺いながら検討を行った結果、大型トラックの法定速度を九十キロメートル毎時に引き上げることが可能と判断されたと承知しておりますが、ただ、その有識者の意見も、法定速度の更なる引上げの検討については、更なる社会的要請の有無や新たな車両開発の状況を踏まえる必要がある、これは慎重に考えるべきであるという御指摘があったと承知をしております。

 道路交通の安全、これは重要な課題です。この点にも配慮しつつ、商慣行の見直しや荷主の行動変容等、物流革新に向けた制度パッケージの諸課題に取り組んでいきたいと思いますが、これと並行して、御指摘のように、トラックドライバーの賃上げ、これは全体の雇用者の賃上げを考える上からも重要な課題であると認識をいたします。

 是非、トラックドライバーも含めて、我が国の全体の賃上げ、構造的でそして持続的な賃上げ実現に向けて努力をしていきたいと考えます。

石川(香)委員 十キロ上げる時点で、トラックドライバーの方々から、十キロ上げたところで根本解決にならない、速度が上がると、燃費が悪くなってタイヤがすり減るのでコストが増える、タイヤバーストのリスクが増える、死亡事故は間違いなく増えるといった声も上がっています。賃金も、結局は現場任せだということだと思います。

 そして、もう一つですけれども、働き方改革と一言で言っても、全国それぞれ、地域、地形、気候も違うわけですので、全国一律では無理があるのではないかという指摘をさせていただきます。

 例えば、農村部では、農業の繁忙期というものがあります。例えば、牛の餌である牧草の収穫では、栄養価の高い、よりよい牧草を収穫するために、天気などの条件を見極めて、ここぞのときに一気に収穫をします。牛にとってよい栄養状態の牧草を収穫するということは、乳量に影響して、農家の収入に直結をします。

 そして、農家の多くの方が、コントラクターと言われる民間の会社に農作業の委託をしていただいているという方が多いということで、これらの会社の方々は今回の上限規制に当てはまる可能性があります。

 そこで、現場から、地域や業種に考慮した特例やルールを作ってほしいと声が上がっておりますが、この検討について伺います。

岸田内閣総理大臣 まず、先ほど委員の方から、賃上げについては民間任せじゃないかという御指摘がありましたが、それについて申し上げるならば、これは政府としても、二〇一八年、標準化運賃の制度を創設し、荷主への要請等、継続的に取り組んでまいりました。

 その上で、時間外労働規制が全面適用される二〇二四年度を控え、今年三月中に、標準的運賃、八%引き上げます。荷役の対価等を新たに加算する措置を講じます。また、トラックGメンによる是正指導、これを大幅強化いたします。ドライバーの賃上げ実現に向け、働き方改革との両立に向けて、この取組をしっかり進めてまいります。

 その上で、今の御質問のルール作り等についてでありますが、地域や業種ごとに規制を設定することについては、時間外労働の上限規制が労働者の健康と安全を守るための制度であること、また、企業間の公正な競争条件を確保する観点から、これは慎重に検討する必要がある、このように思います。

 年間を通じて業務に繁閑がある場合には、一年単位の変形労働時間制などの弾力的な労働時間制度も用意されていることから、様々な事情について、それぞれの企業においてこうした制度の活用も検討していただき、上限規制を遵守していただけるよう、労働基準監督署において丁寧に相談援助を行っていくことが重要であると認識をいたします。

石川(香)委員 その変形労働制を使うと、結局のところ、突出して働く時間があるということは変わりはありませんので、働き過ぎの是正にはつながらないのではないかということ。それから、生産量や収入が落ちる改革は求めていないと思います。

 是非、地域ルールを重要視していただきたいという観点で、最後に一問伺います。

 有害鳥獣の駆除に使われますハーフライフル銃という猟銃の規制について、主に北海道でヒグマやエゾシカの駆除に使われておりますが、この所持免許が近年の銃を使用した事件などを受けて厳格化される見込みです。ただ、全国一律で規制をされると、非常に北海道のハンターの減少につながるのではないかと懸念をされておりますが、最後に伺います。

小野寺委員長 国務大臣松村祥史君、申合せの時間が過ぎておりますので、端的に答弁をお願いいたします。

松村国務大臣 お答え申し上げます。

 現在、警察庁におきましては、ハーフライフル銃を所持するための許可基準の厳格化を含め、銃刀法の改正を御指摘のとおり検討いたしております。

 他方で、先生御指摘のように、ハーフライフル銃はハンターの方々も使用するものであり、制度の見直しに当たっては、獣類による被害の防止に支障が生じることがないよう十分に配慮する必要があるものと認識をいたしております。

 その上で、関係団体や、御意見を丁寧にお伺いした上で、必要性の高い方までが銃砲の所持が困難となることがないように、必要な検討、また、私からもいろいろと団体の方々にヒアリングをしっかりやるようにという指示を出しておりますので、しっかりと対応してまいりたいと思っております。

石川(香)委員 地域性を加味したルール作り、お願いいたします。

 ありがとうございました。

小野寺委員長 これにて本日の質疑は終了いたします。

 次回は、明六日午前八時五十五分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四十一分散会


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