衆議院

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第21号 令和7年4月14日(月曜日)

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令和七年四月十四日(月曜日)

    午前八時五十九分開議

 出席委員

   委員長 安住  淳君

   理事 井上 信治君 理事 齋藤  健君

   理事 牧島かれん君 理事 山下 貴司君

   理事 岡本あき子君 理事 奥野総一郎君

   理事 山井 和則君 理事 三木 圭恵君

   理事 浅野  哲君

      伊藤 達也君    井野 俊郎君

      国光あやの君    河野 太郎君

      後藤 茂之君    小林 茂樹君

      高木  啓君    田所 嘉徳君

      田中 和徳君    谷  公一君

      土屋 品子君    寺田  稔君

      西銘恒三郎君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    古川 直季君

      古屋 圭司君    松本  尚君

      山田 賢司君    五十嵐えり君

      今井 雅人君    大西 健介君

      神谷  裕君    川内 博史君

      黒岩 宇洋君    後藤 祐一君

      小山 千帆君    酒井なつみ君

      野田 佳彦君    福田 淳太君

      藤岡たかお君    本庄 知史君

      米山 隆一君    早稲田ゆき君

      池下  卓君    猪口 幸子君

      岩谷 良平君    徳安 淳子君

      西田  薫君    臼木 秀剛君

      長友 慎治君    橋本 幹彦君

      赤羽 一嘉君    大森江里子君

      岡本 三成君    河西 宏一君

      大石あきこ君    櫛渕 万里君

      田村 貴昭君    田村 智子君

      緒方林太郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       石破  茂君

   外務大臣         岩屋  毅君

   財務大臣         加藤 勝信君

   文部科学大臣       あべ 俊子君

   経済産業大臣       武藤 容治君

   防衛大臣         中谷  元君

   国務大臣

   (経済再生担当)     赤澤 亮正君

   財務副大臣        斎藤 洋明君

   政府参考人

   (内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長)     西海 重和君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局アフリカ部長)       堀内 俊彦君

   政府参考人

   (外務省経済局長)    片平  聡君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    高村 泰夫君

   政府参考人

   (厚生労働省保険局長)  鹿沼  均君

   政府参考人

   (農林水産省農産局長)  松尾 浩則君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           浦田 秀行君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            山本 和徳君

   参考人

   (日本銀行総裁)     植田 和男君

   予算委員会専門員     中村  実君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  柴山 昌彦君     寺田  稔君

  田村 憲久君     国光あやの君

  松本 洋平君     山田 賢司君

同月十四日

 辞任         補欠選任

  稲田 朋美君     古川 直季君

  深澤 陽一君     井野 俊郎君

  近藤 和也君     福田 淳太君

  酒井なつみ君     野田 佳彦君

  階   猛君     小山 千帆君

  藤岡たかお君     後藤 祐一君

  徳安 淳子君     猪口 幸子君

  西田  薫君     岩谷 良平君

  長友 慎治君     臼木 秀剛君

  赤羽 一嘉君     岡本 三成君

  櫛渕 万里君     大石あきこ君

  田村 貴昭君     田村 智子君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     深澤 陽一君

  古川 直季君     松本  尚君

  後藤 祐一君     藤岡たかお君

  小山 千帆君     階   猛君

  野田 佳彦君     五十嵐えり君

  福田 淳太君     近藤 和也君

  猪口 幸子君     徳安 淳子君

  岩谷 良平君     西田  薫君

  臼木 秀剛君     長友 慎治君

  岡本 三成君     斉藤 鉄夫君

  大石あきこ君     櫛渕 万里君

  田村 智子君     田村 貴昭君

同日

 辞任         補欠選任

  松本  尚君     稲田 朋美君

  五十嵐えり君     酒井なつみ君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 予算の実施状況に関する件(米国の関税措置等内外の諸課題)


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     ――――◇―――――

安住委員長 これより会議を開きます。

 予算の実施状況に関する件について調査を進めます。

 本日は、米国の関税措置等内外の諸課題についての集中審議を行います。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君の出席を求め、意見を聴取し、また、政府参考人として、お手元に配付いたしておりますとおり、内閣官房国際博覧会推進本部事務局次長西海重和君外七名の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

安住委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

安住委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。齋藤健君。

齋藤(健)委員 おはようございます。自由民主党の齋藤健です。

 まず、理事始め御関係の皆さんに、質問の機会を与えていただきましたことを感謝申し上げたいと思います。

 早速、いわゆるトランプ関税について御質問をさせていただきたいと思います。

 御案内のように、九十日間の交渉期間ということでありますけれども、もう既に自動車、そして鉄鋼、アルミニウムには、二五%プラスで関税がかかっています。また、あらゆる製品について、一〇%の関税が既にかかっている状況であります。交渉に全力を尽くしていただき、国内対策にまず万全を期していただくことをお願い申し上げたいと思っています。

 私が申し上げたいのは、そもそも、本件は本当に日米の深刻な経済問題なんだろうかということであります。

 私が日米交渉を担当していた一九九〇年代前半、例えば一九九一年を取ってみますと、日本の赤字というのは、アメリカの赤字全体の六割以上を占めていました、一国で。したがって、当時の日米交渉というのは大変深刻なものがありました。今、日本は、アメリカの全世界の赤字の中で約六%しか占めていません。中国が二六%、EUが二〇%を占めております。そういう意味では、日米の貿易問題というのは劇的に関係がまず変わってきています。

 そして、日本がアメリカとの関係で黒字になっているその金額は、年間八・六兆円ぐらいであります。物の貿易において八・六兆円ぐらいの日本は黒字になっているわけでありますが、御案内のように、サービスの分野、デジタルの分野では、日本は六・六兆円の赤字になっています。物で八・六兆円の黒字を稼いではいますが、一方で、デジタル分野では六・六兆円の赤字になっているんです。日米間の経済のインバランスという意味では、劇的に当時とは変わっております。

 更に申し上げると、日本からアメリカに進出している日本企業がアメリカの製造業の活性化に大いに貢献をしています。五年連続、日本からアメリカへの投資が世界一であるということはもう御案内のとおりかもしれません。そして、百万人のアメリカ人を日系の企業が雇用しているという現実もございます。

 私がここで申し上げたいのは、現地で生産をしている日本企業は輸出をしています。その輸出額は十兆円を超えています。日本は物の貿易で確かに八・六兆円の黒字ですが、日本からアメリカに進出した日本の企業が、十兆円以上アメリカの黒字に貢献をしているんです。私は、もう支払いは終わっているんじゃないかなというふうに思っています。

 一方で、懸案になっている自動車であります。二五%、関税がプラスでかかっております。アメリカで自動車は年間一千七十万台生産をされていますが、現地に進出をした日系企業がそのうち三百三十万台を造っています。千七十万台のうち三百三十万台は日系の企業が造っているんです。そして、これは企業秘密だというので数字は言えないみたいですが、アメリカ国内で自動車を生産するに当たりまして、アメリカの部品を相当高い比率で購入をしています。

 また、記事によりますと、アメリカのビッグスリーの一つでありますGMは、韓国に工場を持っておりまして、韓国で生産した車をアメリカに四十万台以上輸出をしております。

 一体、日本の自動車メーカーとアメリカのメーカーと、どちらがアメリカの製造業、雇用、インバランスに貢献をしているのかということを私は強く訴えたい思いであります。

 また、農産物を見てみましても、日本は、アメリカから年間二兆円、農産物を輸入しています。残念ながら、輸出は、二千五百億円ぐらいアメリカに輸出できているにとどまっていますけれども、二兆円ぐらい輸入をしているわけであります。そして、牛肉、豚肉、小麦、トウモロコシ、大豆、この五品目は、日本がアメリカから輸入しているのがトップになっています。

 私は、そういうふうに考えてみますと、これは日米間の純粋な経済問題なんだろうかという気が、どうしても拭えないものがあります。むしろ、これは政治問題なのではないか。

 例えば、一〇%関税を黒字の国にまで全部、全世界にかけるというふうにトランプ大統領は表明しましたが、実は、ロシアにはかかっていません。ベラルーシにもかかっていません。ウクライナには一〇%かかっています。

 そういうことを考えますと、この問題は、経済問題であるのと同時に、より深刻な政治問題なのではないかと思えてならないわけでありますし、もっと突き詰めれば、トランプ大統領問題だというふうに申し上げても過言ではないんだろうと思っています。

 昔はともかく、今は、この問題は最も大事な大事な隣人とのおつき合いの問題なのではないかというふうに私は感じざるを得ないわけであります。このおつき合いに、経済面でどのようにおつき合いをするかというのが現在における日米の関税問題の私は本質なのではないかなというふうに思っています。

 したがいまして、トランプ大統領とこれから厳しい交渉になると思いますけれども、そこで大事になるのは、ロジックの組立てではないかなと思っています。

 もちろん、日本は自由貿易の下で発展をしてきた国でありますし、今後も自由貿易の重要性はどの国よりも日本は真剣に考えていかなくてはいけないわけでありますが、しかしながら、この話をトランプ大統領に強調をしても、私は余り効果がないんだろうと思っています。問題の本質が、大切な大切な隣人とのおつき合いの問題であるということであるならば、トランプ大統領の頭に入るロジック、話の組立てで交渉していくということが極めて重要になるんだろうというふうに思っています。

 今まで私は、どちらかといえば、トランプ大統領は、インバランスを解消するために、あるいはディールのために関税をツールとして使っているんだな、欲しいものを取るためにディールとして関税をツールとして使っていたのかなと思っていましたが、最近は、むしろ本気でアメリカの製造業を復権するためのツールとして関税を使い始めてきているのではないかなという気がしています、そのウェートが大きくなってきているように思いますので。だとすると、そのトランプ大統領の頭に入るようなロジック、話の組立てで交渉に臨むことが極めて重要だろうと思っています。

 つまり、いろいろなアイデアはあるでしょうけれども、アメリカの製造業を復権させるための日米協力をしようじゃないかというようなロジックというのは恐らく入りやすいのではないかと思いますし、さらには、中国に対するいろいろな問題がありますので、経済安全保障上、日米協力は重要ではないかというロジック、そういった今の重要な隣人の頭に入る、そういう話の組立てを前提にして私は議論に入っていくべきなんだろうというふうに思っています。

 ですから、まず、これからいろいろ交渉に入る入口におきましては、アメリカの製造業の復権のために一体何をしてほしいんだというふうにこちらから持ちかけるというのも一つの手でしょうし、経済安全保障上、いかに日米の協力が重要かというお話をしっかりと刷り込むということも重要なんだろうと思っています。

 そういう意味では、日本が四十年にわたって様々努力した結果が先ほど私が申し上げた数字でありますので、トランプ大統領に私が申し上げたいのは、中国やヨーロッパやその他の国と日本を一緒にしないでくれというのを申し上げたいと思っています。

 今私が申し上げたように、これからはロジックの組立てが大事だと思います。この辺につきまして、総理のお考えをお聞かせいただけたらと思います。

石破内閣総理大臣 全て齋藤委員御賢察のとおりだと思っております。まさしくそういうことなのです。

 ロジックもあります。後段で委員がお触れになったように、日本をヨーロッパあるいはその他の国々と一緒にしないでくれというのは、五年間にわたって最大の投資をしてきた、多くの雇用を生み出してきたという事実であります。投資もしていない、あるいは雇用も生み出していない、それはいろいろな事情はあるでしょう、しかし、それと同列に扱うということは極めて不当なことであるということは、論理の世界でいえばそのとおりだと思っております。

 論理はきちんと論理として詰めていくと同時に、エモーショナルな部分といいますか、なぜ大統領はあのような主張をするに至ったのかということは、再び大統領に就任するまでの四年間、どこでどんな演説をしてきたのかということ、そして就任演説で何を述べ、あの大統領令の中で何を述べているかということをきちんと理解をすることも必要なことだと思っております。

 大統領が強調したのは、忘れ去られた人々に対してどうするのだということであります。雇用を奪われてきた人に対してどのようにして雇用を与えるのかということ、それが大事であると。

 そして、大統領と先般電話会談をしたときに、日本でアメリカの車は一台も走っていないじゃないかと。一台も走っていないわけではないのだが、恐らく彼の目には留まらなかったのだと思いますね。そして、米に対しては七〇〇%の関税ではないかということをかなり強く言っていた。そして、アメリカは長い間ひどい扱いを受けてきたということを、なぜそのような主張をされるに至ったのかということをきちんと理解をしないままに、あなたの言うことは間違いであると言うことは、同盟国としての振る舞いだと私は思っておりません。

 ですから、委員がおっしゃるように、ロジックの部分と、そしてまた思いの部分、その両方をよく理解をしながら、本当に分かるように説明することも大事でしょう、と同時に、感情についてきちんと理解をするということでなければ、信頼し合う同盟国たり得ないと私は思っております。

 ロジックの面、そして感情的な面、そして、日米がこれから共に何を世界に実現しようとしているのかということについて思いを共有する。自動車だけではない、電気製品もあるでしょう、あるいは二輪車もあるでしょう、そして地域によって違いはあるでしょう、そういうことについて、これ以上ないほどの精緻な分析をして臨んでまいりたいと考えておるところでございます。

齋藤(健)委員 日本が四十年間にわたってアメリカに対して努力をしてきたこと、これは私は重いと思っていますので、是非、ほかの国と一緒にしないでくれという議論は堂々とやっていただきたいなと思います。

 交渉は、既に関税がかけられておりますので、それは早期妥結が望ましいにこしたことはありませんが、一方で、交渉は焦った方が負けという局面もあります。

 これから恐らくアメリカ経済には様々な影響が出てくるんだろうと思っています。アメリカにはワンダラーショップという日本の百円ショップみたいなものがありますが、ほとんど中国からの輸入品だと思いますので、一〇〇%以上の関税がかかってもし中国から入ってくれば、これがツーダラーショップになってしまうわけですね。それから、日本の自動車メーカーはできるだけ現地の価格を上げないように頑張って輸出をしようとしておりますけれども、もし二五%がそのまま乗るのであれば、今まで六百万円だった車が七百五十万円になるわけでありますので、アメリカ経済に大きな影響が出てきます。

 関税というのは逆進性のある税でありますので、恐らく、総理がおっしゃった、生活に苦しい人たちによりダメージが大きい、そういう税でありますので、時間がかかればかかるほど、アメリカの中でもいろいろな動きが出てくるんだろうと思っています。

 ですので、早期妥結が望ましいわけではありますけれども、一方で、無理をして大きなカードを切って、高くついてしまうということもありますので、アメリカの様子も見ながら、短期、長期、両にらみで、二枚腰で交渉に臨むべきではないかなというふうに思っていますが、その辺についての総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

石破内閣総理大臣 それは、せいては事をし損じるということだと思っております。

 委員御指摘のように、どんどんどんどん妥協する、とにかく交渉さえまとまればいいというふうな交渉方針が望ましいと私は考えておりません。きちんきちんと一つずつ、各産業においてどのような影響が出るのか、日本国内の場合です、そして、本当にそれがアメリカにおいて製造業の復活、雇用の復活に結びつくのかどうか、そこは論理の世界でございますので、そこはきちんきちんと、赤澤大臣も、そして政府を挙げて交渉してまいりたいと思っております。

 あわせまして、安全保障の面の議論が余りございませんが、その面においてはどうなのだろうかという議論もこれから必要だと思っております。

 要は、どうして両国とも国益を得るか、そして両国が共にこれから先、世界のために何ができるかということを、同盟国ならではの関係というものを新たに築いていくということが重要なことだと思っておりまして、とにもかくにも早く交渉をまとめればいい、そういう考え方には立っておりません。委員御指摘のとおりでございます。

齋藤(健)委員 もう一方で、私は思いますのは、今回の関税は全世界に向けてかけられております。とりわけ、ASEAN諸国にも高額の関税がかけられています。例えば、ベトナムには四六%、タイには三六%をかけるということになっております。日本の企業はASEANに進出をしておりまして、そこで生産をして輸出をしている活動というのも相当多くやっているわけでありますので、実は人ごとではないんだろうというふうに思っています。

 トランプ大統領は、個別に各国とバイで、二国間の協議をするのが大好きな人ではありますけれども、日本としては、ASEANと実は運命共同体、利益共同体なんだろうと本件については思っております。

 したがいまして、ASEAN諸国との連携、もちろん、ヨーロッパとの連携も必要で、総理がイギリスの首相と電話をされたのは非常によかったと思っていますが、とりわけASEANは、日本と本件に関しては運命共同体だと思いますので、このASEAN諸国と関税問題をどういう連携をしていくかという具体的に何か考えていることがあれば、御教示いただきたいと思います。

 習近平氏は、たしかベトナムとカンボジアを訪問するというやに聞いておりますので、恐らく同じような問題意識を持っているんだろうと思います。日本としてはどうされるのかという点について、お聞かせいただきたいと思います。

石破内閣総理大臣 おっしゃるとおり、ASEANとの関係というのは極めて重要であります。できれば、本日の午後、シンガポールの首相とも電話会談をするということで現在調整中でございます。

 あるいは、本年に入りまして、マレーシア、インドネシアと訪問し、首相あるいは大統領とかなり長い時間、会談をいたしてまいりました。これは、ASEANというのを考えたときに、委員が今運命共同体という言葉をお使いになりましたが、そういう面が多々あると思います。そして、中国の習近平主席がアジアを訪問するということも報道されているとおりでございます。

 先ほどの答弁で申し上げましたように、日本とアメリカが同盟国としてこれから先何ができるかと考えるときに、中国の存在というのを抜きに考えることはできません。そして、ASEANは、特にイスラムの国もございます、安全保障の面もございます、そして中国との結びつきもございます。そうすると、日本が果たしていかねばならない役割というのは非常に大きいのだというふうに認識をいたしておりまして、フィリピンもそうですが、経済の面においてのみならず、安全保障の面も含めて、日本とアメリカが共に何ができるのかということを論じるときに、ASEANとの関係というものを抜きに語ることはできないと思っております。

 経済、安全保障の両面において、意思疎通を図り、共に世界のためにということは、ASEANの国々とも共有してまいりたいと考えておるところでございます。

齋藤(健)委員 まず、ASEANの国々と連帯意識を強く持つということと、もし本当に関税がかかってきた場合、日本としてどういう協力ができるかということも含めて様々考えておく必要があるんだろうというふうに思っています。

 それから、既に二五%、一〇%の関税がかかっているわけでありますので、日本の国内に影響が出るということはもう不可避であります。総理は国難という言葉をお使いになっていますが、私は、もし本当に全て関税が課されるということになりますと、これは世界経済に大きな影響が出るというのは間違いないと思っています。

 国内においても、産業界あるいは農業界と緊密な連携を取っていくことが不可避だと思っております。既にやられているとは思いますけれども、その産業界との団結をする、そういう機運づくりというものが非常に重要だと思います。

 情報共有を常に緊密にし、そして意見交換をし、もし何か新しい支援要請があれば直ちに対応する、そういう体制づくり、できれば定期的にそういう産業界と話合いをする機会を設ければいいのではないかなと思いますが、経産大臣の見解を伺いたいと思います。

武藤国務大臣 御指摘のとおり、今般の関税措置は、国内のあらゆる産業、サプライチェーンの広範囲に大きな影響を及ぼすということはもう必然であると私は思っています。

 そういうことの中で、委員がおっしゃられるとおり、二月に鉄鋼、アルミの業界団体の方々、そして自動車業界のトップの方々とはこれまで二回、もう既に意見交換をさせていただいています。

 本来、今年は何としてでも物価上昇を上回る賃金をとにかく達成しなきゃいけないという背景もございますので、こういう関税の影響というものを極力、官民挙げて、トップ同士が連携を取りながら対策を打ち、そして下の段階までしっかり価格転嫁が進むように、この関税対策にも万全の措置をしていかなきゃいけないということで、総理からも御指示をいただいているところであります。

齋藤(健)委員 是非、産業界との間で溝が生じないように取り組んでいただけたらと思います。

 トランプ大統領が最初に当選をした二〇一六年ですが、そのとき、私は農林副大臣をやっていまして、トランプ氏が当選するとは思っていなかったものですから衝撃を受けまして、これから農産物で一体どういうことが起こるんだろうかということを大変危惧をいたしましたので、トランプさんに関する本を読みあさりました。

 その中に「トランプ自伝」というのがありまして、これは彼が四十歳のときに生い立ちから何から書いた本なんですけれども、その中で日本のことも言及されています。

 何と言っているかといいますと、日本は、何十年もの間、主として利己的な貿易政策でアメリカを圧迫することによって富を蓄えてきた、アメリカの指導者は、日本のこのやり方を十分理解することも、それにうまく対処することもできずにいるというのを四十歳のときに書いていて、私は、この頭の構造は今も変わっていないのではないかなと、日米の経済関係が劇的に変わっているにもかかわらず。

 今、彼は、そういう意味では、アメリカのこれまでの指導者ができなかったこの日本への対処というものをやろうとしているのかもしれない。したがって、根が深いなというふうに思います。

 しかも、トランプ大統領は、ベッセント財務長官とグリア通商代表を日本の交渉の担当閣僚として指名をいたしました。最強のメンバーを二枚看板で当ててきたということでありますので、アメリカの本気度は極めて高いなというふうに思っています。

 私も、自分で、自ら交渉に巻き込まれていた頃に感じていたことでありますけれども、日本の大臣とアメリカの大臣はちょっと性格が違うなと強く思っています。

 アメリカの大臣というのは、いわば大統領が依頼者で、大臣はその依頼に応える弁護士みたいな存在だなと思いました。つまり、依頼者が黒であっても白の判決を得るのが優秀な弁護士だということでありますので、大臣は、大統領の言うことをそのまま実現するというのが大臣の仕事みたいに感じてきました。

 日本の大臣は、むしろ、日米間で、なぜアメリカの車が日本で売れないのかというのを真面目に考えて対応しようとするんですけれども、向こうは、とにかく大統領の言うことを実現するんだというその一本やりで来ますので、そういう意味では、この交渉というのはタフなものになるんだろうなと思っています。

 しかも、トランプ政権の場合は、閣僚にどこまでマンデート、権限が下りているか非常に不明なところがありますので、私は、最後は総理の出番ということに、残念ながら、御苦労をかけるわけですけれども、ならざるを得ないなと思っています。そういう意味では、四月七日の総理とトランプ大統領の電話会談は私は非常によかったなというふうに思っていますので、今後も、例えば、今回、赤澤を行かせるからよろしく頼むねとかいうふうに細かくコミュニケーションを総理と大統領の間で電話で取るようにすることが、トランプ政権の性格を考えると極めて重要なんじゃないかなと思っています。

 これから米中の対立が激化する中で、いろいろな影響が出てくるでしょう。アメリカの農産物がどこに行ってしまうのかという問題も出てくるでしょう。それから、米国債の市場にもいろいろな影響が出てくるでしょう。恐らく交渉の過程においてもいろいろな新しい変化が起こってくるんだろうと思っていますので、その都度、そのチャンスをつかんで日本側のカードに繰り入れていく、そういう柔軟な目配りも大切だろうと思っていますので、様々な選択肢を用意しながら、是非、交渉に御関係の皆様には、日の丸を背負っているという意識を片時も忘れることなく、取り組んでいただきたいなというふうに思っております。

 関税絡みの質問はこれだけにさせていただいて、最後に、書店問題について一問だけ質問をしたいなと思います。

 私は、日本の本屋さんがどんどんなくなっていくということに大変危機感を感じています。過去二十年間で、書店は半減しました。そして、一軒も本屋さんがないという自治体が何と四分の一になりました。我々は本屋のすばらしさを知っています。本屋がいかに我々の視野を広げてくれたか、これがなくなったら大変だなという意識を持っていますけれども、本屋が一軒も存在していない市町村で生まれた子供は、本屋のすばらしさを知らないどころか、本屋の存在すら知らないということで育っていくことになるわけでありまして、これは、私は文化の危機どころか国力の劣化にもつながるのではないかというふうに危機感を持っているので、経産大臣のときにプロジェクトチームをつくって、盛り上げようと思っています。

 これは、基本はやはり文化の問題であろうかと思っていますので、書店問題に対する文部科学大臣の決意みたいなものをお聞かせいただければありがたいなと思います。

あべ国務大臣 齋藤委員におかれましては、自民党の「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」の幹事長として活動はもちろんのこと、経産大臣在任のときには、大臣直轄で書店の振興プロジェクトチームを立ち上げていただき、書店活性化に向けた活動を精力的に行ってくださいましたこと、心から感謝と敬意を表します。

 文科省といたしましては、書店は地域における文字、活字文化の発信拠点でございまして、書店数の減少は文字、活字の文化の振興を図る上で大変大きな影響があると私どもも考えておりまして、重要な課題だと思っておりまして、特に、文芸作品を題材にしました読書活動を行うなど、地域における文字、活字の文化の振興モデルを構築する取組を今年度より新たに行うことと文科省としてもしているところでございます。

 また、令和六年度の補正予算におきましては、書店を含む地域の様々な関係機関の連携、協働による読書を通じた町づくりを推進する取組を実施することとしておりまして、経済産業省など関係省庁としっかり連携しながら、重要な課題である書店の活性化を含む文字、活字文化の振興に向けて全力で施策を推進してまいります。

 以上でございます。

安住委員長 齋藤君、間もなく時間ですので、まとめてください。

齋藤(健)委員 少し早いですが、終わります。ありがとうございました。

安住委員長 これにて齋藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 おはようございます。立憲民主党の野田佳彦でございます。

 今日は、総理、よろしくお願いをいたします。

 私は、第二次トランプ政権の関税政策に対する日本の対応に絞って質問をさせていただきたいというふうに思います。

 九〇年代と違った日米の経済関係については、今、齋藤委員の御指摘のとおりだというふうには思いますけれども、私は物すごく今回は危機を感じています。

 というのは、ちょうど今、春闘をやっていますよね。春闘で、物価高を超える賃上げ、これは官民挙げて実現しようとしている。日本にとっては至上命題でありますけれども、トランプ関税による先行き不透明感と、そして実体へのいろいろな様々な影響ということは、この賃上げの原資を削り取りかねないというふうに思っています。

 ましてや、後半は、これから中小にどうやって賃上げの波及をさせていくかという大事な局面でありますけれども、残念ながら、経営者のマインドとしては、冷たい水を浴びて、経営者の気持ちとしてはかなり冷え込んできているというふうに思います。とすると、物価高を超えた賃上げという、日本の経済の好循環のシナリオが根底から覆ってしまうという強い危機感を私は感じているんです。

 そのときに、先般、四月四日に、総理から与野党党首会談の呼びかけがございました。このときに、総理は国難という言葉を使われたんですよね、国難。私は、この国難という言葉を使った背景は、単なる経済の問題のみならず、安全保障なども含めて、戦後の国際秩序なども含めての強い危機感の表れだと受け止めさせていただきましたけれども、国難という言葉を使った総理の危機感についての背景をまずは御説明いただきたいというふうに思います。

石破内閣総理大臣 冷戦が終わった後、我々資本主義の陣営は、共産主義に勝利をしたということで、ある意味、そういう勝利感に浸っておったところがあったのではないかと思っております。それが今は大きく変わってきたということではないのでしょうか。

 そしてまた、中国の台頭ということは、当時、ここまでのことになるとは予測もつかなかった。経済においても、安全保障においても、大きく状況が根本から変わったということだと思っております。

 今までは、アメリカの認識としては、冷戦は終わった、しかしながら、その後もアメリカが日本というものに対して、彼らの意識からすれば庇護のようなものを行い、そしてまたその利益を享受してきたという認識がなければ、あのような対応、トランプ大統領の発言にはなってこないと思っております。

 それが根底から変わるということは、経済の面において、あるいは安全保障の面において、中国というものを念頭に置きながら、日本は、同盟関係を基本として、アメリカに何をもたらすことができるか、そしてまた、アメリカとともに世界にどのような役割を果たしていくかということ、今まで問われなかったことが問われているということだと思っております。

 そういう意味で、今まで経験したことがない状況、日本はアメリカとともに何ができるかということを自ら考えていかねばならない。それを国難という言葉で、いわゆるネガティブなイメージだけで捉えてはいかぬのであって、これから先、何を共にやっていくか、そして経営者の方々、労働者の方々の負担をどうやって軽減していくかということを併せて考えていかねばならない、そういう状況だと認識をいたしておるところでございます。

野田(佳)委員 国難という御認識については、私も共有したいと思います。国難を突破するためには、私は、野党第一党としても、政府を後押しをする、協力をする用意があるということは、ここに、委員会で言明をしておきたいと思います。

 仮に、総理が訪米をしなければいけない、担当閣僚が訪米する、これは柔軟にもちろん我々も対応しようと思いますし、加えて、政策的にも、十七日には、中小企業の資金繰り支援の問題とか、あるいは雇用調整助成金の要件緩和など、具体的な政策提言もまとめて、そしてお示しをしたいと思っています。様々な協力をする用意があるということをここに改めて言明をしておきたいというふうに思います。

 その上で、先ほど、与野党党首会談について触れさせていただきました。すぐ実現していただいたことがあるんですね。それは、電話会談をすぐやるということ、これはやっていただきました。よかったと思います。もう一つは、強力な大臣の下に、鉱工業製品や、あるいは農産品を含めて、様々な分野を網羅する省庁横断的な精鋭を集めろ、そういう交渉体制をつくるべきである、結集すべきであるということを提言させていただきました。

 今般、タスクフォースを発足させました。どういう観点でこのタスクフォースを編成したのか。そして、大臣には、赤澤大臣が担当をすることになりましたけれども、赤澤大臣におかれましては、間もなく訪米をするということでございますけれども、どういう決意と戦略でアメリカと交渉をするのか、これについて御見解をお伺いできればと思います。

石破内閣総理大臣 先般の党首会談、そこにおいていろいろな御意見が披瀝をされました。今、野田代表が御指摘のように、電話会談をやる、そしてチームを立ち上げるということ、そういうことも、いろいろな御示唆をいただきながら実現してきたものでございます。

 今後とも、いろいろな御指摘を賜りながら、国難という事態に遭遇しておるわけでございますから、どうやって、これを政争の具にしないで、与野党共にこれに立ち向かっていくかという体制をつくってまいりたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いを申し上げます。

 そして、タスクフォースにつきましては、これもオール・ジャパンで臨んでいかねばならない。経産省であり、外務省であり、財務省であり、農林水産省であり。私は、全閣僚をメンバーといたしておりますが、それぞれの官庁で、所掌分野で何もやることはありませんなどということはないはずなのであって、それぞれの省庁において何ができるかということを徹底的に考えて、対応を構築してまいりたいというふうに考えておるところでございます。

 そしてまた、後ほどまた答弁申し上げるかと思いますが、昨日、私は、神戸で川崎重工に行ってまいりました。あるいは、今自動車ばかり注目されますが、では二輪車はどうなのだということで、メーカーの方、あるいは下請の方、孫請の方、そういう方々とお話をいたしてまいりました。

 やはり民間でどこがどのように影響を受けておるのか、どのようなことを望んでいるのか。これは経済産業省を中心として、千か所の相談窓口をつくっております。そういうところにおいて常に常にリアルタイムで状況を把握し、要は、政府と民間、これがどうやって一体感を持って立ち向かっていくかという体制も現在構築をいたしておるところでございますが、足らざるところは多々あるかもしれません。また御指摘を賜れれば幸いでございます。

赤澤国務大臣 まず、体制についてお尋ねがありました。

 四月八日に米国の関税措置に関する総合対策本部が設置されたことに続き、先週十一日にはタスクフォースが設置をされました。その目的ということですけれども、第二回総合対策本部において総理から発言があったように、タスクフォースは、米国との協議や、それから国内産業への支援策について集中的に検討するという観点から立ち上げたものでございまして、内閣官房長官とともに共同議長として検討を進めていくこととしており、早速、先週の十一日に第一回を開催したところです。

 そして、決意についてお尋ねがありました。

 先ほど齋藤委員からも御議論があったように、これはもう既に関税がかかっておりますので、日一日一日と我が国の企業の利益が削られていっているということで、早いにこしたことはない。一方で、いろいろな事情が、本当に、ある意味ころころ変わるところがあって、その時々で有効なカードとかいろいろなものが変わってまいります。時間の利益というものもあるかもしれません。

 そういうことも念頭に置きながら、我が国の国益にとって何が最もふさわしいのか、あるいは何が最も効果的か、そういうことを考え抜いて、最優先かつ全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

野田(佳)委員 赤澤大臣の一回目の交渉が大きく前進することを期待したいというふうに思いますけれども、私は、第一次トランプ政権以上に、第二次トランプ政権というのは、閣僚以下、イエスマンがそろっているというふうに思います。幾らお膳立てしてくれるのを待っていても、これは時間ばかりかかる可能性があります。むしろ、局面打開をするためには、やはりトップ同士の直談判が必要な場面が間違いなく来ると思いますので、総理におかれましても、これは是非、果敢にアメリカと交渉していただきますように要請をしておきたいというふうに思います。

 それででありますけれども、個別の、ちょっと幾つかの基本認識を問いたいと思うんです。

 アルミ、鉄鋼に対する追加関税、そして車に対する追加関税、加えて、いわゆる相互関税という、全品目を対象にという非常に乱暴な関税がありますよね。今は一律一〇パーですけれども、九十日以内には、交渉がうまくいかないと二四パーになるという、甚大な影響があるというふうに思います。

 でも、関税というのは、お互いの国同士が合意をして率を決めてきた経緯があって、勝手に一方的に変えるということは国際通商上のルール違反ではないかと私は思うんです。ルールに違反しているんじゃないかということはきちっと言わなきゃいけないんじゃないでしょうか。WTO違反じゃないか。

 毅然たる交渉の前提としては、まず、ルール違反をアメリカはやっていないですかというところから始めるのが基本ではないかと思いますけれども、御認識をお伺いしたいと思います。

岩屋国務大臣 今般の合衆国の関税措置は、例えば、合衆国がWTO協定上約束している譲許税率を超える税率の関税を賦課するものであって、関税及び貿易に関する一般協定、ガット第二条などとの整合性に深刻な懸念があると考えております。

 その上で、これがWTO協定違反かどうかにつきましては、WTOの紛争解決手続を経て最終的に判断されるものでありますが、我が国としては、WTO協定との整合性に深刻な懸念を有しているところでございます。

野田(佳)委員 深刻な懸念があるということを表明されましたね。では、深刻な懸念は必ず伝えなきゃいけないと思うんです、相手に。それを言わなかったら、私は違反をしている可能性が高いと思っているんですけれども、ルールを守らない国にルールを守っていませんねと言わなかったら、同罪だと思いますよ。そうならないように。

 特に、相互関税というのは私はむちゃくちゃだと思っていまして、それはもう赤信号で勝手に道路を渡るようなルール違反だと思います。ひどいルール違反だと思いますよ。それはおかしいんじゃないですかというところから始まるのが、私は交渉の基本中のキであるということをまず申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 ルールを守ろうよという意味においては、これは車に関わることでありますけれども、二〇一九年の日米貿易協定、そして、その後の共同声明について触れたいというふうに思います。

 これは、要は、平たく言うと、自動車に対して第一次トランプ政権も高い関税を課そうとしていたときに、そうではなくて、例えば牛肉とか豚肉とか乳製品を含めて、TPPの加盟国並みに、アメリカは離脱しておりましたけれども、低い関税でいいですよということで合意をしたというのが、私は、ざくっと言うと、日米貿易協定だったと思うんですね。

 これについて、この後、同僚の後藤さんが突っ込んで質問していただくと思いますけれども、当時、安倍総理が参議院の本会議で、協定が確実に履行されている間、日本の自動車・自動車部品に対して追加関税を課さないことをトランプ大統領と確認していますというふうに明確に答弁をされているんです。そういうことだとするならば、日米貿易協定違反ではないかということも相手に問うべきではないんでしょうか。

 もし違反をしているならば、簡単に報復関税とかという言葉は使いたくありませんけれども、あるいは反抗措置とも言いたくはありませんけれども、でも、協定に相手が違反をするならば、日米貿易協定十条には、いずれかの当事者の申立てにより協定を停止することができる、要はリセットできると書いてあるんです。

 権利義務関係をリセットする構えというものも示しながら、自動車の問題については毅然とした交渉をするということはお考えがあるんでしょうか。お尋ねをしたいと思います。

石破内閣総理大臣 いろいろな考え方があります。それは、委員が今、注意して言葉をお使いになりました。報復関税ということは言いたくないんだけれどもということに、委員のいろいろな含意がある。総理大臣として一国を担われた野田委員ならではの御見識だと私は思っております。

 要は、何が最も国益なのかということを考えていかねばなりませんし、私はホワイトハウスには何度か行ったことがありますが、実際にオーバルルーム、あるいは閣議の席で、大統領、そして副大統領、閣僚たちと話をした経験は初めてでございました。大統領制の国というのはこういうものなんだということをまざまざと見た思いがいたします。

 そこにおいて、直接選ばれた大統領の持っている強大な権限、そして、何もアンフェアな選ばれ方をしたわけではない、民主主義によって選ばれたという強烈な自負というものに対して、いかにして我が国の国益を守るか、そのときにどのような主張をどのように行うことが最も我が国の国益に資するものなのかということは、あらゆる観点から考えてまいりたいと思っております。

 先ほどおっしゃいますように、我が国として、日米貿易協定にこれがどういうふうな抵触をするのかしないのか等々、外務大臣が申し上げましたように、深刻な懸念は有しております。と同時に、何が最も国益に資するかということ、それは迎合するとかそういうことではなくて、何が最も、これから先、日米が共に手を携え、世界に対していろいろな役割を果たすことができるか。そして、中国、ロシアの存在というものも念頭に置きながら、何が一番効果的なのか、そして何が一番世界の利益に資するのかということを考えて対応いたしてまいります。

野田(佳)委員 報復関税をしろとは私は決して言いません。対抗措置、うかつなことは言えないと思います。ですけれども、権利義務関係のリセット、協定とは何だったのか、それをあなたたちは守っているのかということは、これはきちっと物を言っていかなければいけない。そこから始まるのではないかなというふうに思うんですね。そこは改めて強調しておきたいというふうに思います。

 ですけれども、今、車に関しては、単なる関税だけではなくて、非関税障壁という捉え方をしている可能性もありますよね。電話会談が終わった後、トランプ大統領がXに投稿をしていて、日本は車を全然買ってくれないみたいなことを、不平不満を書いていたじゃないですか。何でまたこんなことを言っているのかなと実は思いますよ。まだこの感覚なのかと。

 アメリカの車を含めて、あるいは欧州の車を含めて、日本に入ってくる車に関しては関税はゼロじゃないですか。それでもアメリカの車が一・数万台しか売れない、それに比べて欧州車はその十二倍売れている。なぜかというと、日本の仕様に対応しようとしているのが欧州の車であって、アメリカは、でかい上に、燃費が悪い上に、しかも、そういう努力もしていないからだと私は思うんですね。

 これを非関税障壁扱いされて、これに合わせて我々がルールを変える必要なんか全くないと思うんですよ。道路交通法を変えて、左側通行をやめて右側にする、そこまでやらないといけないのかという話になりますので。理不尽な非関税障壁という指摘についてはきっぱりと、それは変でしょうということも言ってほしいというふうに思います。

 同じように、今、米の問題でも、全然根拠のない、むちゃくちゃなことを言っているじゃないですか。例えば、トランプ大統領は、米について、日本の関税が七〇〇%と。誤解どころじゃないでしょう。ミニマムアクセスという無関税の枠が年間七十七万トンもあるわけじゃないですか。そういう事実を無視した話は、これはファクトじゃないということはその都度に言っていかなければ、私は交渉の前提は成り立たないと思うんです。

 そこでお尋ねしたいんですけれども、今の米の実際の関税率は一体どれぐらいですか。そういうことも含めてきちっと米側に伝えるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

赤澤国務大臣 米については、国家貿易で輸入するミニマムアクセス米七十七万トン、今委員御指摘のとおりです。輸入差益のみで輸入し、関税は無税とするとともに、それ以外の輸入には一キログラム当たり三百四十一円の関税が課されているところでございます。

 米について、正確な事実関係を様々なレベルで米国政府にこれまで説明をしてきておりますが、委員の御指摘のような状況ということであります。

 我が国としては、トランプ大統領の発表を含め、米国における関税措置の内容を精査するとともに、我が国への影響を十分に分析しつつ、引き続き、米国に対して、措置の見直しを強く求めてまいります。

野田(佳)委員 根拠のない数字などが出てきた場合には直ちにその修正をしていく、訂正をしていくということを反復練習のようにやっていただきたいというふうに思います。

 もう一つは、これはちょっと、私は、やはり今回ベッセント長官と赤澤大臣がお会いする際には、場合によっては、為替の問題も交渉の材料で出てくる可能性があると思うんですね。

 かつて、一九八五年、プラザ合意で、双子の赤字に悩む、貿易赤字と財政赤字に悩むアメリカを助けよう、いわゆるドル高を是正しようということがプラザ合意だったと思いますけれども、今の米国は、第二プラザ合意のようなものを考えているのではないのか、ドル安にしていきたいなという思いが強いんじゃないか。日米の為替の問題でも、この種の言動を盛んにトランプ大統領はおっしゃっていますよね。

 ベッセント長官も、これはXへの投稿で、日本は引き続き緊密な同盟国であり、関税、非関税障壁、通貨問題、政府補助金をめぐる生産的な取組を楽しみにしているという言い方をしていますので、やはり為替の問題については触れてくる可能性があると思うんです。

 為替条項は、いわゆるアメリカとカナダ、メキシコの結んだUSMCA、新しいNAFTAのところでも為替条項のようなものが規定をされていますよね。あの日米の貿易協定のときにも、為替条項の議論もあったと思います。

 今回は間違いなく交渉の材料、取引の材料で出てくると思いますけれども、どういう構えでこの為替の問題については臨んでいくのか、御見解をお伺いしたいと思います。

赤澤国務大臣 ベッセント財務長官のSNSへの投稿など、委員の御指摘した事実関係は承知はしておりますが、個別の事案について逐一コメントすることは差し控えたいと思います。

 その上で、為替については、第一次トランプ政権時と同様に、専門家である日米の財務大臣の間で緊密な連携を継続させていく旨、総理から二月の日米首脳会談後のトランプ大統領との共同記者会見において発言するとともに、その後のベッセント財務長官の総理表敬の際に、総理から同長官に同様の趣旨を伝えているところでございます。

 ということで、こうした事情を踏まえ、為替については、加藤大臣とベッセント財務長官との間で引き続き緊密に議論していくことになるというふうに考えております。

加藤国務大臣 まず、今、赤澤大臣の方から日米交渉全体の中についての話はあったと思います。

 為替については、これまでも米国との間で、為替レートは市場において決定されること、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与えるということについて認識を共有しているところでありますし、私との間でも、一月二十九日のビデオ会談で、為替についてはそれぞれの財務大臣の間で緊密に協議していくことを確認したところでございますので、今後とも、先ほど申し上げた共通認識に基づいて、日米間での意思疎通を積極的に図っていきたいと考えております。

野田(佳)委員 財務大臣の御答弁としてはそういうことだと思うんですよね。日本は別に通貨安政策を取ってきたわけじゃないし、むしろ円買い介入が最近多かったという。紋切り型な物の言い方は、それはそうだと思います。

 ただ、やはり取引をする、交渉の中で為替を扱うこと自体は、もしかすると、私は、決して日本のマイナスではなくなる可能性もある。行き過ぎた円安が物価高の要因だとするならば、一定程度、為替の条項をどうするかということを、考えを巡らすことも一考の余地があるというふうに私は思っていますので、余り手のうちは、まだ示すことはないことはよく分かっていますけれども、そういう思いもあるということだけはお伝えをしておきたいというふうに思います。

 これは、日本とアメリカの経済問題のみならず、今回のトランプ政権における関税政策というのは世界中に大きな影響が出てくるわけでありまして、インフレと景気後退が同時並行のスタグフレーションになりかねない、なだらかな成長を世界経済がしてきたときにストップがかかって、長期の停滞にもなりかねないという大きな危機をやはり持っているんです。

 日米だけの交渉として、日本の国益だけの問題ではなくて、世界全体を考えた中で日本はどうするかということについても考えを巡らせていかなければ私はいけないだろうというふうに思いますけれども、まさに世界経済にとっても今瀬戸際になってきていると思いますが、これは総理の御認識をまずお伺いしたいと思います。

石破内閣総理大臣 御指摘のとおりでございます。

 今までの世界経済の秩序というものを根底から変えるというような、そういう可能性というのか危険性というのか、そういうものを含んでいるということはよく認識をいたしておるところでございます。

 そのときに、では、どういう対応が我が国の国益であり、世界全体の世界益というのか地球益というのか、そういうものであるかというものを併せて考えていかなければなりません。

 先ほどASEANの国の御指摘もありました、齋藤委員から。と同時に、先般もイギリスのスターマー総理と話をしたところでございますが、アメリカに対してそういう信頼関係を持っている、同盟関係を持っている、しかしながら、今回のトランプ大統領の措置についてまた考え方が近似をしている、そういう国とよく連携を取っていくということは非常に大事なことだというふうに考えております。あわせまして、ASEAN諸国との連携も極めて重要であります。

 これが世界の経済をどのように変えようとしているのか、ある意味、新自由主義というものが変わろうとしているというならば、それに代わる新たなルールとは何であるのかということについても我々は認識を持っていかねばならないと思っておるところでございます。

 新しい世界の秩序というのは何であるか、冷戦が終わり、新自由主義というのが台頭した、では、それに代わる新しい体制というものは何であるかということについて認識の共有を図るということも極めて重要なことだと思っておるところでございます。

野田(佳)委員 自由貿易体制で、ある意味最も恩恵を受けてきた国が、私はアメリカだと思うんですね。やはり今も世界の最たる経済大国ですし、最近まで世界で一番元気な経済だったじゃないですか。大富豪もいっぱい生まれている国じゃありませんか。それが、トランプ大統領の認識は、ひどい扱いをずっと受けてきた、そういうある種被害妄想のような、一国のリーダーに対してそういう言い方をしては失礼かもしれませんが、そんな意識を持っていらっしゃって、だから今回のなりふり構わぬ関税政策に入ってきているというふうに思うんですね。

 これだけ経済的に豊かで、自由貿易の恩恵を一番受けてきた国。もちろん、一部の、地域によって、困難な人たちがいることもそのとおりだと思います。その人たちのために製造業を復活させようと必死であるということもよく分かります。でも、それは、あえて言えば、アメリカの再分配政策、国内政策の失敗じゃないですか。それをほかの国にかぶせて解決しようというやり方はやはりおかしいんですよ。

 おかしいことはおかしいと私はやはり言っていかなければ、逆に、同盟国だからこそ、きちっと物を言っていかなければいけないのではないか。面と向かってそう言うと怒ってしまうかもしれませんから、だから、みんなでやっていった方がいいんですよ、みんなで。直接言ったら機嫌を損ねちゃったら、カナダみたいになってしまうかもしれません。そうならないようにするためにも、例えば、G7には必ず出るようにとか、G20には必ず出てくるようにというように、アメリカに冷静に再考を求めていくような包囲網を、むしろ日本が主導してつくっていくべきではないんでしょうか。

 特に、G7はカーニー議長でしょう。なかなかトランプ大統領は出ていこうと思いませんよ。でも、先進国クラブのほかの全て、日本と今同じ思いじゃないですか。そこに出てきてもらって率直な意見交換を促すために、六月のG7サミットには必ずアメリカが出るように言うこととか、G20も大事じゃないですか。先進国だけではなくて新興国やグローバルサウスの代表国も入っている、最も今重要な国際会議だと思います。

 でも、二月に、アメリカはG20の外務大臣会議にルビオ国務長官を出していませんよね。二月の財務大臣・中央銀行総裁会議にベッセント長官は出ていませんよね。四月二十三日は、アメリカで財務大臣・中央銀行総裁会議が開かれるんです。是非、こういう場にはちゃんと閣僚を出すべきであるということなどを含めて、やはりアメリカ・ファーストといって今アメリカ・アローンになっているので、アローンにならないように日本がもっと引っ張り込んでいく努力というのが必要じゃないでしょうか。いかがでしょうか。

石破内閣総理大臣 そのとおりです。

 ただ、私どもは、トランプ大統領が、日本の言うことなら聞こう、そういうような考えになるようにする努力はしていかねばなりません。それは、すり寄るとかこびるとかいう話ではなくて、先ほど野田委員が非関税障壁のお話をなさいました。では、それは一体何なんだと。

 例えば、電気自動車をトランプ大統領が好きか嫌いかは別として、では、日本で電気自動車なるものの急速充電をしようとしたときに、アメリカ製の車だとどうなるのとか安全基準はどうなるのとか、そういう彼らが非関税障壁と思っているものに対して我が国はこう対応するというのは、早急にきちんと出していかねばならない。

 そういうことにエクスキューズを求めていくとするならば、我が国はどのような対応をするのかということについて、答えを引き延ばすのではなくて、我が国はこのように考えるということを的確に示す必要もあるのだと思っております。

 そして、アメリカ・アローンというお話をなさいました。委員と私と同年代なので、それでは、七〇年代の日米の繊維交渉というのは何だったんだろうかということを想起するのでありますけれども、そのときのアメリカと今のアメリカと、全く違うアメリカがそこにある。そこにおいて考えねばならないキーワードは、やはり忘れ去られた人々がいるということだと思っています。そういう忘れ去られた人々に、いかにして製造業を復活して職を与えるかということについて、何ができるか。

 そんな簡単な話ではないことは百も万も承知をしておりますが、その問題意識にどう対応するかということについても、我が国として誠実に向き合っていかねばならないと考えておるところでございます。

野田(佳)委員 G7、G20、これの活用についてお話ししましたけれども、もう一つは、いろいろ申し上げても、そう簡単にタリフマンが基本的な姿勢を変えるとは、そう簡単ではないと思うんです。

 だとすると、この間にどんどん保護主義が台頭して、そして経済がブロック化していくということは、世界経済にとっても大きなマイナスでありますけれども、プラスして、この道というのは、かつては戦争に入っていったように、極めて危険な今の状況だと思うんです。

 だとすると、保護主義の台頭に警鐘を鳴らし、自由貿易の旗を日本が先頭に立って振っていく、アメリカがその旗を降ろしたならば、日本がその旗を持って逆に補っていくというような、大きな経済、外交戦略を私は持つべきではないかと思います。

 その一つが、まずはTPPですよね、TPP。

 野田政権のときには、TPP交渉参加に向けて協議に入るというところまで行きました。その後、自民党は反対していましたけれども、入りました。そして、日本は逆に主導して今日のTPPをつくった。アメリカは離脱しましたけれども、アメリカ離脱後も、昨年はイギリスが入ってきた、これは大きいですね。そのほか、中国も台湾もウクライナも、いろいろな国が加盟申請をしています。私は、日本が司令塔となってTPPを拡充すべきだと思うんです。

 加えて、RCEPも、東アジアの経済連携協定、ASEANプラス6、ここにインドなども加えるような動きをして、そしてTPPとRCEPも結びつけていくようなことを日本がやっていく。日・EUもありますよね。WTOの機能不全を、日本が自由貿易の旗を振り上げて、そしてその広がりをつくっていくようなことをやったらどうでしょうか。そういう経済、外交戦略を持つべきじゃないでしょうか。

 日本だけ取りあえず交渉して例外扱いにしてくださいというような小さなゴールじゃなくて、大きなゴールで、やはり自由貿易体制を堅持して、先頭に立つような構えというのが大事じゃないでしょうか。いかがでしょうか。

石破内閣総理大臣 CPTPPあるいはRCEP、その重要性というものは、私ども、よく認識をいたしております。自由貿易のシステムというものをいかにして透明性を持って機能するようにするか、そして多くの国の参加を得るかということについて、我が国として最大限の努力をしていかねばならないということは委員御指摘のとおりです。

 十分お分かりの上で御質問しておられると思いますが、我が国だけよければいいと思っているわけではありません。しかしながら、どうやって日本の国益を守っていくかということと、世界中の貿易のルールの確立というものをどうやって両立をさせていくかということでございます。

 そこに向けて、私どもはその両立が図れるようにしていかねばなりませんし、先ほどG7へのアメリカの参加のお話もなさいました。やはり日本の言うことなら聞いてみようというふうな心境にどうすればなるかということは、頼みます、拝みますばかり言っておっても仕方がないのであって、では、非関税障壁についてはどうなんだ、農産物についてはどうなんだということを、ロジカルに、しかしながら、同時に感情にも訴えて、私どもは全力を挙げて対応しておるということでございます。

 両者の重要性の両立についてどうやって実現をするかということについて、我が政府として全力を尽くしてまいります。

野田(佳)委員 ちょっとこれは通告していませんけれども、TPPについて、もうちょっと突っ込んで具体的に提案したいと思うんです。

 TPP、議長国が事務局をやっていたじゃないですか。日本が事務局を持ったらどうですか。まさに日本が司令塔になったらどうでしょうか。日本に事務局を置きましょうよ。あるいは、今こそTPP総会をやって、自由貿易を守っていこうということを各国、加盟国で確認したらどうでしょうか。

 そういう具体的なアクションをする気があるかどうか、お尋ねしたいと思います。

石破内閣総理大臣 これも野田委員よく御案内のとおりですが、TPPにおける事務局設置というのは、毎年の議長国の事務負担を軽減するという点に焦点を当てて、締約国間で議論が行われているものでございます。

 現時点におきまして、常設の事務局を設置するかどうかは決まっておるところではございませんが、どうすればこのTPPというものがより有効に機能するか、どこに常設の事務局を置くか、それはどの国が担うのが一番よろしいのかということについて、今まで我が国は議論をリードしてきた国でございますから、その経験あるいはその実績というものを踏まえて、真剣に考えてまいりたいと思っておるところでございます。

 現時点において、どこということを今断定するつもりもございませんが、それは関係国と緊密に連携をしながら、TPPの体制がより有効に機能するというために、我が国として努力を続けてまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 能動的な動きを強く求めたいというふうに思います。

 最後の質問は、日本製鉄のUSスチール買収計画について、トランプ大統領が再審査を命じました。これをどう評価するかなんですよね。

 ちょうど今、関税交渉をやっているときの取引の材料として使おうとしているのか。これは、ある種、一年も前から日本製鉄が丁寧にやってきた議論を取引材料にするということは私は好ましいとは思いませんけれども、それをどう受け止めているのか。それとも、いよいよやはりマーケットの反応も厳しいので、一つの手柄として、買収じゃなくて投資という扱いの中で、アメリカの投資が出てきた、増えてきたという扱いで考えているのか。

 この解釈をどう考えていらっしゃるか、最後にお尋ねしたいと思います。

石破内閣総理大臣 二月にホワイトハウスで会談を行うときに、これが議論になりました。そこにおいて、いや、買収ではない、投資だということを申し上げたときに、トランプ大統領は非常に積極的な反応を示したことをよく承知をいたしております。

 そして、日本製鉄がそうであるように、USスチールというものもアメリカを一種体現するような存在であるということで、日本に買われるということに対して、非常に複雑なというか、否定的な思いがある。

 そこにおいて、いかにして、買収と投資というものの差は合衆国の法律に照らしてよく精査をしていかねばなりませんが、それがアメリカの企業として残っていく、そしてそこにおいて日本の利益も実現されるということの接点が必ずあるはずでございます。言葉の遊びをするのではなくて、それがアメリカの製造業にいかなるプラスをもたらすか、そして、日本の優れた技術とアメリカの労働力というものがマッチングして、いかにこれから先よい製品を世界に提供するかという観点から、議論を詰めてまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 ありがとうございました。

 冒頭申し上げたとおり、国難という状況ですから、我々は足を引っ張るつもりは全くありません。ただ、動きが悪い場合にはお尻をたたくことはあると思います。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

安住委員長 この際、後藤祐一君から関連質疑の申出があります。野田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。後藤祐一君。

後藤(祐)委員 立憲民主党の後藤祐一でございます。

 私も、日本の国益は当然大前提ですが、日本さえよければということではなく、石破総理の言う世界益を達成するという観点から、交渉するのは政府ですが、今日の議論も含めて、国会からここで折れちゃ駄目だぞというようなくぎを刺すことで、いわば突っかい棒を後ろからして、後ろに倒れないように、いや、それは国会との関係でもちませんというようなことを交渉に使えるような、そんな議論を今日してまいりたいと思います。

 まずは過去の日米貿易協定あるいはWTO協定との関係を聞いて、その後、交渉の選択肢、どういったものがあるのか、そして最後に国内対策について聞きたいと思います。

 まず、今、野田代表との質疑の中でありましたWTO協定との関係ですけれども、アメリカの課してきた関税については、先ほど外務大臣から、WTO協定との整合性に深刻な懸念がある、ただ、実際にこれが違反かどうかはWTOの紛争解決パネルで決まるというお話がありましたが、今すぐするかどうかは別として、もし交渉がうまくいかないというような状況になってきた場合には、WTOに提訴するということも、これは他国とも連携しながらカードとしては持つという可能性を考えるべきだと思いますが、これについては、総理、いかがお考えでしょうか。

石破内閣総理大臣 国益を実現するために必要な手段というものは、あらゆる観点から考えておかなければなりません。ただ、委員が御指摘になりましたように、交渉がうまくいかなかった場合ということでございまして、我が政府といたしましては、いかにして交渉を成功裏に導くかということでございます。

 今、WTOに提訴するとかそういうことについて、それは可能性として決して否定はいたしませんが、いかにしてこの二国間の交渉というもの、これは財務長官が言ったように、日本は列の先頭にいる、最優先で扱うというふうに財務長官が言っておるところでございます。そういうようなポジションにあります我が国は、この二国間の交渉というものをいかにして成功裏に導くかということに重点を置いて対応してまいりたいと考えております。

後藤(祐)委員 既に報復関税をかけているカナダや中国は、もう提訴しています。EUも考えているということで、ほかの、交渉をこれからしたいという国々はさすがに提訴しておりませんが、是非日本は、交渉するほかの国々と手を携えて、どうも我々の言っていることを聞いてくれないらしいという場合には、今の答弁は必ずしも提訴を否定していない答弁だと伺いました、是非手を携えて考えていただければと思います。

 次に、日米貿易協定との関係について伺いたいと思います。

 先ほどの野田代表との質疑でもありました、お配りの資料にもあります、このパネルですが、これは、日米貿易協定の締結直後、安倍元総理の答弁で、日本の自動車・自動車部品に対して追加関税が課されないことは、日米首脳会談において私から直接トランプ大統領に確認していますという答弁がありました。ということであれば、先ほど石破総理の答弁は、何が国益かといったちょっと抽象論に行ってしまったんですけれども、今回の自動車・自動車部品に対する二五%の関税引上げは、この日米貿易協定のときの日米の約束違反じゃありませんか、総理。

岩屋国務大臣 協定をめぐるやり取りのことなので、事実関係の方を答えさせていただきます。

 今委員が御紹介あったとおりのやり取りもあったわけでございまして、また、二〇一九年九月の日米共同声明においては、誠実にこの協定が履行されている間は、その共同声明の精神に反する行動を取らないということも明記されておりますので、これまでの様々な経過を踏まえますと、今般の措置がこの協定と整合しているかどうかということについては、WTO協定と同じですが、深刻な懸念を有しているところでございます。

後藤(祐)委員 これはもう確認しているわけですよ。深刻な懸念という段階じゃないんじゃないですか。明確にこれは約束違反でしょう。

 赤澤大臣に伺います。今週訪米されるということですけれども、このときの安倍総理とトランプ大統領との約束違反ではないかということは確認してきていただけますか。

赤澤国務大臣 まず、委員御指摘のような事実関係がありますので、この点を踏まえ、米国政府に対して我が国からこれまで様々なレベルで懸念を説明してきております。一方的な関税措置を取るべきではない、また、それ以外の点でも、協定との整合性について深刻な懸念を我々は持っているということも伝えてあります。

 そういったこと、事実関係がありながら、米国政府が自動車・自動車部品に対して追加関税を課す決定を行ったことは、これまでの経緯に照らし極めて遺憾であって、この旨を米国政府に対して伝えるとともに、措置の見直しを強く申し入れております。

 我が国としては、引き続き措置の見直しを求めてまいりますし、同時に、米国と緊密に協議を進めるなど必要な対応を取っていこうと思っていまして、今後とも、国益に何が資するか、あらゆる選択肢の中で何が効果的か考えながら対応していきたいというふうに考えております。

後藤(祐)委員 総理に伺いますが、遺憾であってじゃないんですよ。これは約束違反じゃないですか、明確に。しかも、これは一番大事なところだったんですよ。

 総理に伺いますけれども、本当に安倍総理とトランプ大統領の間で、首脳会談でこの確認がされたんですかということが疑わしいんですよ。というのは、自動車関税も含めて、実質全ての貿易について関税をゼロにしないとFTAとして認められないから、日米貿易協定がWTO違反になる可能性があるから、これをやったことにしておきましょうみたいなことで、本当はこの確認ができていない可能性があるんじゃないんですか。岡田克也議員がこれについては以前も、今年になってからもこの議論をしておりますけれども。

 総理に伺います。

 本当に、日米貿易協定のときに、安倍総理とトランプ大統領との間にこの確認がされているのかどうか。これは首脳会談ですから、議事録があるはずですよ。この議事録を、もし国家秘密だから出せないということであれば、国会法の百四条に基づいて、秘密であることを前提とした漏れないようなやり方もありますから、提出いただけませんか。約束いただけますか、総理。

石破内閣総理大臣 先ほど赤澤大臣がお答えをしたとおりでございますが、二〇一九年、令和元年九月の日米共同声明において、日本、アメリカ両国は、協定が誠実に履行されている間、両協定及び本共同声明の精神に反する行動を取らない旨を明記しておるところでございます。

 このように明記をしておりますが、これが日本の自動車・自動車部品に対してアメリカが追加関税を課さないという趣旨であるということは、当時の首脳会談において、安倍内閣総理大臣からトランプ大統領に明確に確認をしたということであると承知をいたしております。その点は、一国の総理大臣がそのようにお答えをしておるところでございまして、その点について疑いはございません。(発言する者あり)

安住委員長 静粛に。

後藤(祐)委員 議事録を出していただきたいという質問なんですが、多分、これはやり取りをしても、もう変わらないでしょうから。

 委員長、これは、今度、野党が過半数ですから、理事会で協議いただけるようお願いします。

安住委員長 まず、石破内閣総理大臣に。

石破内閣総理大臣 外交上のやり取りというものを全て明らかにするということについて、私どもとして、それは肯定し得ないところでございます。

 そこにおきまして、明確に合衆国大統領と日本国総理大臣の間で確認をしたということ、そのような認識に私どもは立っておるところでございます。

安住委員長 後藤君の先ほどの要求に関しては、理事会で協議します。

後藤(祐)委員 国会法百四条で、秘密の場合の手続、外に漏らさないで出すという手続がありますから、情報監視審査会などもありますから、是非これは協議をいただきたいと思います。

 この日米貿易協定の中では、結局、自動車については関税ゼロにするという約束だったのに、それがほったらかしになって、一方で、牛肉、豚肉、乳製品といったものの関税引下げは決まったわけであります。これについては、毎年少しずつですが関税が下がってきているんですが、これは事実関係として財務省関税局長に伺いますが、今年の四月一日にこれら牛肉、豚肉、乳製品などの日米貿易協定で決まった関税引下げは実施されているんでしょうか。

高村政府参考人 お答えいたします。

 日米貿易協定においては、附属書において、日本側の譲許税率がその引下げのスケジュールとともに定められており、本年四月から当該スケジュールに従った関税率が適用されています。

 これによれば、本年四月一日より、例えば牛肉については税率が二二・五%から二一・六%へ引き下げられているところであります。

後藤(祐)委員 三月二十六日に自動車関税二五%引上げがもう発表されていて、四月二日に実施されているんですね。自動車関税を二五%上げると決めている国と過去した約束に基づいて四月一日に関税を下げる、これはちょっと総理、お人よし過ぎるんじゃないんですか。これは報復関税じゃないですから。過去約束したことを向こうが守っていないんだから、過去の約束はちょっとできませんよというのは決して報復じゃない。約束を破ったのは向こうですから。

 何で、四月一日に牛肉などの関税、総理、下げちゃったんですか。せめてこれから先の約束は保留させていただくということで、これも交渉のカードにすべきじゃないですか、総理。

石破内閣総理大臣 何が国益なのかということを考えて、適切に判断をいたしてまいります。

 向こうがそれを破ったのだからこちらもというような、そういう対応のみが正しいと私は思っておりません。私どもとして、約束はきちんと日本は守るということは示しておく、それが国家の矜持だと私は思っております。

後藤(祐)委員 こういったものをカードにしていただければいいんです。これは、国民の皆さんに今の事実は余り知られていないので、是非交渉のカードにしていただければと思います。

 ただ、ちょっと、四月一日に何の断りもなく下げているのはいかがなものかとは思いますけれどもね。一回下げちゃうと、上げるのはちょっとやりにくくなるわけですよ。ということはよく考えて、これから、決まったものを本当に実施するのかどうかもよく考えてやっていただきたいなと思います。

 あと、これはちょっと通告していませんが、外務省経済局長に来ていただいているのでお伺いしたいと思います。

 これは、金曜の立憲民主党の会議で御説明ありました、メキシコがどうしているかでありますけれども。アメリカとメキシコとカナダというのは、昔NAFTAと言っていたものがUSMCAという形の自由貿易協定が結ばれております。このUSMCAの対象となる製品というのは、鉄鋼、アルミと自動車の完成車はちょっと別らしいですけれども、自動車部品も含めてアメリカの関税は免除、更に言うと、一〇%の相互関税もメキシコは免除されているという説明がありましたが、これは事実でしょうか。

片平政府参考人 お答え申し上げます。

 済みません、ちょっと通告がなかったので、もし私の答弁が不適切だったら恐縮でございます。

 今御指摘のとおり、メキシコにつきましては、現在アメリカが課している関税措置の中で一定の例外といいますか、USMCAを根拠とした一定の例外のところが認められていると承知しております。

後藤(祐)委員 金曜日の会議で説明いただいたんですけれどもね、自動車部品を含めて、米国関税、メキシコは無税になっていると。

 これは、ある意味、メキシコは上手にやっているということだと思うんです。というのは、アメリカとメキシコの間というのは、自動車を造る上で部品がかなり濃密に動きますから。

 でも、日本だって同じなんですよね。アメリカのビッグスリーなんかは、日本のトランスミッションですとか自動車部品を買わないと完成車は造れないんですよ。つまり、自動車部品の関税というのは、これをかけるのは、アメリカの自動車メーカーにとっても、アメリカの消費者にとっても、日本の自動車部品メーカーにとっても、誰にとってもいいことはないんですよ。

 赤澤大臣、今週行かれると思いますけれども、メキシコは上手にやっているんですよ。自動車部品はせめてやめるべきじゃないですか。これは早く求めるべきだと思いますが、いかがですか。

赤澤国務大臣 自動車も自動車部品も、いずれについても関税が適切ではないということを我々は強く申し入れています。

 その上で、今委員が御指摘のような経済の実態、実際、関税をかけたことでどこにどういう影響が出てというようなことについて、国内外とも含めて、現在、我々精査中でございますので、そういうことを精査をしっかりやった上で、分析をし、何が一番有効な主張かよく考えた上で対応してまいりたいというふうに思います。

後藤(祐)委員 紋切り型はそうなってしまうわけですが、私、宿題を課しましたから、是非これはまず求めてきていただきたいというふうに思います。

 ここからは、そのほか、交渉する上でいろいろな手段、カードがあると思いますので、一つ一つ精査してまいりたいと思います。

 まずは総理に伺います。

 報復関税、これはいかがなものかと思うんですね。特に、日本はアメリカから何を輸入しているかというと、小麦だとかトウモロコシだとか大豆だとか、あるいは先ほどの牛肉、豚肉ですとか、こういった人や家畜が食べる食べ物、あるいはLNGといったエネルギー、こういったものはどれも今物価高で困っている話ばかりですよね。なので、アメリカからの輸入品に対して日本が報復関税をかけるという選択肢はなかなか難しいと思いますが、総理の見解を伺います。

石破内閣総理大臣 委員御指摘のとおりでございます。

 私どもとして、報復関税を課しませんということを断言をするつもりはございませんが、それがこれから先の交渉にとって有益であるかどうかという点と、私ども、エネルギー自給率そして食料自給率、これが極めて低い状況にあって、そしてまた食料品、エネルギーの価格が高騰している状況において、そこにおいて報復関税という手段を取ることが日本国そしてまた国民の利益に結びつくというふうに現在考えておらないところでございます。

 全否定はいたしませんが、何が国民の利益かということを考えたときに、それは今のところ考えておるものではございません。

後藤(祐)委員 そうしますと、日本からアメリカへの輸出を減らすかあるいはアメリカから日本への輸入を増やすかしないと貿易赤字は減らないわけですけれども、まず、日本からアメリカへの輸出を減らす選択肢はあるかどうかについて考えたいと思います。

 これは過去、悪い歴史がありまして、例えば、一九八〇年代には、日本からアメリカへの自動車の輸出の台数を何万台と制限する輸出自主規制という非常に悪い前例があります。更に言うと、一九九〇年代には、自動車部品を日本が何億ドル以上輸入せよというような、これも非常に悪い前例がございます。そもそも、こういった数量規制はWTO違反です。

 これについては、二つ目のパネルですが、前回の日米貿易協定のときの協議で、当時の茂木大臣がライトハイザー通商代表との間でこう確認しています。数量規制、輸出自主規制等の措置を課すことはない、アメリカとして。こういう旨をライトハイザー代表に対して確認させていただいて、対外的に発表することを確認したというふうに答弁をしております。

 これは総理に伺います。通告しておりますから。

 アメリカは、ここにあるように、数量規制、輸出自主規制等の措置を課すことはないと約束した状態に現在もあるということでよろしいですか。

石破内閣総理大臣 当時の茂木大臣とライトハイザー代表との間で、令和元年九月、日本からの自動車・自動車部品の輸出について、数量制限、輸出自主規制などの措置を課すことはない、この旨を明確に確認したというふうに承知をいたしております。この点について、変わりは全くございません。

後藤(祐)委員 それが事実であれば、この数量規制はアメリカからは言ってこないはずでありますが、これもさっきの交渉のときと同じように、本当にこの約束、取れているんですかということがちょっと疑わしいんですよね。

 茂木大臣とライトハイザーUSTR代表との交渉のこの部分について、交渉の議事録、同じように、秘密処理をしてでも結構ですから、出していただけませんか、総理。

石破内閣総理大臣 外交のそれぞれのやり取りについて公開をするということについて、私どもとして現在考えておるところではございません。

後藤(祐)委員 委員長、先ほどと同じように、ライトハイザー通商代表と茂木大臣の間のこの数量規制をめぐる交渉のやり取りについて、議事録を提出いただくよう理事会での協議をお願いします。

安住委員長 外交案件ではありますけれども、理事会で協議します。

後藤(祐)委員 このように、日本からアメリカに輸出を減らす方法というのはすごく難しいというか、事実上かなりないんですね。

 そうしますと、アメリカから日本に輸入をどうやって増やすかという話になってくるわけでございますけれども、ここで出てくるのは日本の関税を下げてくれという話、特に、米を含めた農産品の関税を下げてくれという話が当然これは出てくる可能性があるわけですけれども、総理、これをカードとして考えておられるんですか。

石破内閣総理大臣 これから交渉いたしますので、具体的なことについてのお答えは差し控えます。

後藤(祐)委員 ここはなかなか言いにくいのは理解はします。

 ですが、例えば、ベトナムはアメリカに対してのみ関税ゼロに全部する、カンボジアは五%に、アメリカに対してだけですよ、五%まで引き下げる、あるいは、EUは工業製品についてはお互いにゼロにしようというように、もう既に自分の関税を下げますというカードを切っている国が出てきているんですね。

 だけれども、例えば、ベトナムがゼロにするといって、アメリカが本当にベトナムに対する関税を下げてくれるかどうか分からないですよね。つまり、カードを切ったはいいけれども、例えば、農産品の日本の関税を下げるというカードを切ったはいいけれども、結局、ごっつあんですといって向こうが何もやってくれない、あるいは微々たることしかやってくれない、こうなったら、総理、目も当てられないですよね。

 ベッセント財務長官が日本は列の先頭にいるというふうにおっしゃいましたし、赤澤大臣は、今日の読売の一面トップで、最速での見直し合意を目指す決意を示した、これはちょっと記事の方が書いているだけかもしれませんが、少なくとも決意を示したらしいんですけれども、これは先ほど齋藤健、私の経産省の元上司ですけれども、無理な早期妥結は望ましくないと。そのとおりなんですよ。こんなカードを切ったけれども、向こうが何にもカードを切ってくれなかったら大変なことになると思うんです。先ほど、後ろに倒れないように突っかい棒をすると言いましたが、つんのめって前に転んでもらっても困るんですよね。

 赤澤大臣、これは本当に最速での見直し合意を目指す決意を示しているんですか。ほかの国が切ったカードが本当に利くかどうか見極めてからの方がいいんじゃないですか、赤澤大臣。

赤澤国務大臣 交渉事はバイの交渉ですので、特にその国同士だけの問題ですので、他国の問題というよりは、我が国がアメリカとバイで交渉していくに当たって、我が国がこうしたらあなたの国は何をしてくれるのかということは、しっかり必要なものをピン留めをしていく。交渉事ですので、途中で何かお互いこういうことを検討したとしても、全ての合意がきちっと成立をして、パッケージとして、我が国の国益に反しないというもの以外については合意ができないという考え方で臨んでまいりたいと思っています。

 委員の御指摘も全くよく理解できるところでございますので、国益を損なわないようにしっかり努めてまいります。

後藤(祐)委員 とすると、今朝の報道は誤報だと信じたいですけれども、前につんのめって最速合意なんか目指さないでください。いや、中身が出てくれば別ですよ、日本が納得できる内容が。そう簡単に出てこないのであれば、じっくり見据えていただきたいなというふうに思います。

 ほかの選択肢として、日本の輸入の額を増やす方法としてあるのは、安倍総理のときの交渉ではF35を含めた防衛装備品の爆買いというのがございました。これについては石破総理に伺いたいと思いますが、これまで日本というのは、アメリカと組むということが外交でも安全保障でもあるいは経済安全保障でもある意味前提になってきたところがあると思うんですけれども、今回のトランプ関税というのは、アメリカをそこまで信用できるのかどうかということを少し考え直さなきゃいけない事態だと思うんですね。もちろん、日米関係というのが最重要の関係であることは変わりませんよ。ですが、ここでまた防衛装備品の爆買いなんかしちゃったら、それこそアメリカ依存を深めることになるじゃないですか。

 防衛装備品の爆買いというカード、これは軽々には切らないということでよろしいですね。

石破内閣総理大臣 もちろん、軽々に切るものではございません。

 ただ、装備品というのは、おもちゃを買ってくるわけではございませんので、どのようなものが現下の安全保障環境に照らして最も適切であるのかという観点から論じられなければなりません。高くてアメリカ製のものならそれでいいですというお話にはなりませんが、現下の安全保障環境を考えたときに、海でいえばどうなのか、水上艦、水中艦においてどうなのか、航空機であれば、戦闘機だけではございません、いろいろなものがございます。

 貿易摩擦解消、貿易赤字解消という観点もございますが、この点については、何が日本の安全保障の体制を強化するのにふさわしいかということがまず第一に考えられるべきものであって、軽々にカードを切るものだとは思っておりません。

後藤(祐)委員 トマホークも爆買いしましたよね。日本でほぼ同じ性能のものがもう開発されて使える状態になっているんですよ。私、この場でも、二つは要らないんじゃないのという話をさせていただきましたが、日本に必要なものはいいですよ、しかし、買わされるというのはやめていただきたい。そのことはくぎを刺しておきたいと思います。

 それと、もう一つのカードとして、直接的な輸入も増やせない、直接的な輸出も減らせないけれども、アメリカの貿易赤字を減らす方法として最後に残るのは、為替を円高・ドル安に振るというのがあります。先ほど、野田代表からもその議論がありました。野田代表も、決してマイナスではないと。実際、今、日本は物価高で困っていますので、円高はこの物価高に対しては最大の対策になるという面も、今この時点ではあると思うんですね。

 という意味では、これについては財務大臣が議論するからということでありましたが、財務省は徹底してこれをカードにしないように羽交い締めにしてくると思うので、総理の答弁を伺いたいと思います。

 軽々に言えないのは分かっておりますけれども、やはり、為替を円高・ドル安の方に振るというのは、やり方はいろいろあると思いますが、これは選択肢として考えるべきじゃありませんか。場合によっては、米国債を売るということも含めて、いろいろなやり方があると思います。これは、実際発動するかどうかは別として、カードとして手元に持っていくべきものだと思いますが、いかがお考えですか。

石破内閣総理大臣 為替について発言をいたしますことは、市場の臆測を招きます。そして、為替市場に不測の影響を及ぼすことがございます。委員は行政官の経験も長くていらっしゃいますから、それは百も万も御存じのとおりでございまして、不測の事態というもの、あるいは市場の臆測というものを招くような発言は、私はいたしません。

後藤(祐)委員 今の時点ではしようがないと思いますが、懐に持っているというだけで、交渉の力が変わってくると思うんです。トランプ大統領は、全て計画的に進めましたが、マーケットの、ドル安に振れたのは、これは少し参ったというところがあったわけですよ。ということは、これはカードとしては物すごく利くということなんですよ。実際にやるかどうかは別として、是非、そこはいろいろなやり方があると思いますので、お考えいただければと思います。

 一点だけちょっと警告をしておきたいのは、先ほど野田代表の議論の中でも、一九八五年のプラザ合意2みたいなものを目指す動き、通称マールアラーゴ合意を目指すという言い方をしますが、このマールアラーゴ合意論文を書いたスティーブン・ミラン、経済諮問委員会の委員長になっておりますけれども、この論文には、こういうことが書いてあるんですね。今各国が保有している、準備高として持っている米国債、これを百年後に償還するという米国債に強制的に交換する、これに応じない場合は安全保障の傘は提供しないというようなことも書かれているんですね。

 これに応じたら、大変なことになると思いますよ。百年後のアメリカの力なんて分からないんですから。これにだけは応じないということを約束してください。

石破内閣総理大臣 その論文の存在については承知をいたしております。

 以上です。

後藤(祐)委員 これは本当にやめてくださいね。国を誤りますから。

 それでは、最後に国内対策、幾つか行きたいと思いますけれども、これは総理に伺いたいと思います。

 今、与党内でも、このトランプ関税を受けて不景気になるんじゃないか、あるいは現下の物価高対策として一人三万円とか五万円とか現金を配ってはどうかというような議論も出てきているようでございますけれども、これについては、我々立憲民主党は、本予算の審議の中で、きちんと三・八兆円の財源を示した上で修正案を提案しました。こういった、ただ歳出を増やすじゃなくて、ちゃんと財源についても、何か報道では自然増収を使えばいいみたいなことを言っていますけれども、そうじゃなくて、やはり無駄な歳出、例えば無駄な基金をやめろというのを我々は具体的に示しているわけです。こういった無駄な歳出をカットしたものを財源に景気対策を講じていくべきだと思うんですね。

 あと、聞かれているのは、この通常国会のうちに補正予算を編成して成立させると。そのつもりが、総理、あるんですか。そして、財源は、既存の無駄なお金をなくして財源に充てるというお考えはありますか。お答えください。

石破内閣総理大臣 御党の主張につきましては、令和七年度予算を審議する予算委員会において、あるいは参議院の予算委員会において重々承ったところでございます。また、新たな経済対策を出される、財源もお示しになるということでございますから、それは、無駄な基金というものを削れというような御主張もよく承知をいたしておるところでございますが、よく御見解を承りたいというふうに考えておるところでございます。

 また、補正予算についてでございますが、何せまだ今日が四月十四日でございます。令和七年度予算が成立をしたばかりでございますし、政府といたしまして新たな給付金といった補正予算、経済対策について検討している事実はございません。

 いずれにいたしましても……(発言する者あり)政府としてと申し上げております。私どもとして、現在そのような事実はございませんが、適切な対応を取っていくということに変わりはございません。

後藤(祐)委員 林官房長官は政調会長に指示したようなことが報道されていますけれども、それはこれ以上聞きませんが。

 立憲民主党も、これについては、例えば食料品の消費税非課税、あるいは消費税を五%に一律下げる、あるいは所得税減税と給付を組み合わせる給付つき税額控除、いろいろ選択肢があるということで、党内の議論を今させていただいているところでございますけれども、こういったものというのは制度を変える必要があるので、若干時間がかかるので、それまでのつなぎを何らか給付で暫定的にやる、これはあり得なくはないと思うんですが、こういった消費税ですとか制度改正を、先にあるものではなくて、全くそういうのなしで、ただワンショットで一回こっきり、この六月までの国会の中で一人三万円とか一人五万円だとか配るというのは、これは夏の参院選を念頭に置いた選挙目当てのばらまきだと思うんですけれども、総理、いかがですか。

石破内閣総理大臣 選挙目当てのばらまきを行うということは考えておりません。

 実際に何をやるかということは、先ほどお答えいたしましたように、令和七年度予算が成立をしたばかりでございます。令和七年度予算は、御党からもいろいろな御指摘を頂戴をいたしましたが、物価高対策というものも盛り込んで成立をさせていただいたものでございます。それを今執行を始めておるところでございまして、その執行状況というものをよく考えていかねばなりません。

 これは、かぎ括弧をつけますが、選挙目当てのばらまきというようなことを政府として考えているものではございません。

後藤(祐)委員 じゃ、ワンショットのばらまきはないということでよろしいですね、総理。

石破内閣総理大臣 先ほど、かぎ括弧つきというふうに申し上げました。それは、効果があるのかないのか、そして、どういう方が裨益をするのか、財源は一体何であるのかということをきちんと考えてやっていかなければ、国民の税金あるいは次の時代の国民の御負担ということを等閑視をすることがあってはならないと思っております。

 現時点において、そういうようなことを考えておるものではございません。

後藤(祐)委員 現時点において、ここがポイントですね。

 今日の読売新聞の世論調査によると、政府が国民一律に現金を給付することは効果的だと思いますかという質問に対して、思わない、七六%ですよ。毎日の同様の調査で、反対の理由として、選挙目的のばらまきにしか感じられない、給付より減税といった意見が多く見られたというふうに報道されています。

 今や、総理、税金を集めてそれを給付するということは、非常に評判が悪いんです。それぐらいだったら、最初から減税して取らないでほしいという声が大きいことについて、総理、どうお考えですか。

石破内閣総理大臣 先ほど来お答えをいたしておるとおりでございます。令和七年度予算は、物価高対策というものもいろいろな方々の御主張を承りながら盛り込んで、成立をさせていただいたものでございます。その執行というものを今始めたところでございまして、その状況というものもよく確認をしなければなりません。

 先ほどかぎ括弧つきというふうに申し上げましたが、選挙目当てのとか、ばらまきのとか、そういうようなことをやるつもりはございません。現時点において考えているものではございません。

 私どもは、政策というものは、御党の御意見も承りながら、本当に真摯に真面目に考えていかねばならないと考えておりまして、そのようなことを仮に、先ほどかぎ括弧つきで申し上げたようなことをやれば、国民の皆様方の大変な不信を招くということも、世論調査の数字も挙げられましたが、よく承知をいたしておるところでございます。

安住委員長 後藤君、間もなく時間ですから、まとめてください。

後藤(祐)委員 トランプ関税は、局所的に地域だとか企業の関連で発生します。それに、物価高の話は、給料が上がるほどにもっと物価が上がっちゃっているという実質賃金の問題ですから、そうすぐ簡単には解決しません。これらを踏まえて、選挙目当てのばらまきにならないよう求めて、質疑を終わります。

 ありがとうございました。

安住委員長 これにて野田君、後藤君の質疑は終了いたしました。

 次に、岩谷良平君。

岩谷委員 日本維新の会幹事長の岩谷良平です。よろしくお願いします。

 おととい、いよいよ大阪・関西万博が開会式を迎え、そして昨日からスタートをいたしました。私もおとといと昨日と行ってまいりましたが、大変多くの方でにぎわっておりまして、世界中の方々に大阪そして万博にお越しいただき、また、世界中の子供たちに万博を訪れ、一生忘れられない経験をしていただきたい、そんなふうに願っております。

 同時に、経済効果は約三兆円であります。後世になって、この万博によって日本が、失われた三十年から成長の三十年あるいは五十年になった、そんな評価をいただけるような万博にしていきたいと、今日お越しの、お集まりの皆さん、そして万博の成功を願う国民の皆さんとともに、その実現をしていきたいというふうに思っております。

 また、今、アメリカあるいは隣国韓国、またロシア、ウクライナ、イスラエル、パレスチナ、世界は本当に混乱に陥っていると思います。是非、総理には、この万博の場を外交の舞台としても御活用をいただきたいというふうに思います。

 そして、残念ながら、その国民の願いに水を差す大きな出来事が二つ、一つはいわゆるトランプ関税、そして現下の物価高であります。今日はこの二つについて総理に質問をさせていただきます。

 まず、トランプ関税に関して質問をさせていただきます。

 相互関税は九十日間一〇%に据え置かれるということでありますが、自動車など個別の品目に対する関税は既に発効をしております。言うまでもなく、日本の経済に甚大な影響を与えることは免れません。

 この点、インドやベトナムは、相互関税が発表された直後から直ちに首脳が動き始め、トランプ大統領と直接交渉を行い、米国の輸入関税引下げ等、話をされていると伺っております。

 このトランプ関税、これに関しまして赤澤大臣が担当で指名をされておられますが、関税対策は一にも二にも交渉、そして、その交渉の中で当然一番重要なのがトランプ大統領と石破総理御自身とのトップ交渉であることは言うまでもありません。

 総理は、最も適切な時期に訪米し、トランプ氏と直接会談することは当然考えているとおっしゃっておりますが、最も適切な時期じゃなくて、直ちにアメリカに行ってトランプ大統領と直接交渉をしていただきたいというふうに思います。

 この問題、総理自身がリーダーシップを発揮して、直接、主導すべきだと思いますが、いかがですか。

石破内閣総理大臣 それは、アメリカ大統領が財務長官というものを指名をいたしました。そしてまた、その財務長官が会見等で申しておられますように、日本が列の先頭にいるということです。最優先で交渉するということでございます。そういうような財務長官というものを指名してきた、あるいはグリアという人を指名してきた。我々として、赤澤大臣を担当大臣と指名をした。今週中にも訪米というふうに聞いておりますが、そういうような方向でございますが、そこにおいてきちんと詰めていくということが大事だと思っております。

 幾つも論点は、先ほど後藤委員が指摘されましたが、問題点、論点は幾つもあって、それを一つ一つ実務的に解決をしていく、解を見出すという努力、これも必要なことでございます。ですから、最も適切な時期にということを申しました。

 実際に、直接トランプ大統領と対面で会談をしたのはイスラエルのネタニヤフ首相の次でございましたし、イスラエルはガザ問題等々いろいろな問題がございます。G7の中で一番最初に会談をしたのは日本でございます。電話会談もベトナムの次ということでございまして、それは、私どもが後れを取っておるというようなことは全くない、だからこそ財務長官が列の先頭にいるということを言っているわけでございます。

 しかしながら、そこにおいて、結果を求める余りに、拙速なという言い方は正しくないかもしれませんが、早ければいい、まとめられさえすればそれでいいというものではございません。いろいろな論点について、政府を挙げて、赤澤大臣を担当大臣として、綿密にきちんとやってまいります。

 ですから、これはもう先ほど来野党の方々も御指摘になっておるところでございますが、かけるべき時間はきちんとかける、最もいい結論を得るために最善の努力をする、当たり前のことでございます。

岩谷委員 先方が担当を指名したから、こちらも指名したというお話でありました。

 しかし、受け身な形で、相手のペースでやっていては交渉にならないと思います。私は、やはり総理は二度でも三度でもアメリカに飛んで直接交渉に臨むべきだと思いますし、そのために、我々維新の会としては、国会の審議等、最大限の御協力をさせていただきたいと思いますので、是非ともよろしくお願いをいたします。

 では、資料の一を御覧ください。

 先日、金曜日に官邸にお邪魔いたしまして、林官房長官に面会をし、我々日本維新の会の、物価高騰、米国関税対策、我々の政策についてお話を、御提案をさせていただきました。

 まず一つは、現役世代の社会保険料の引下げ、年間六万円の減免。二つ目は、食品消費税のゼロ、撤廃ですね、これは時限的なものです、二年間。三つ目は、お米の価格の値下げ。四つ目は、ガソリン減税、リッター当たり約二十五円の値下げ、いわゆる暫定税率、当分の間税率の廃止。中小企業の事業主負担分の社会保険料の引下げ。この五つを御提案をさせていただきましたので、順次質問をさせていただきます。

 資料の二を御覧ください。

 いつも申し上げるんですが、現役世代の皆さんの重い負担になっているのは社会保険料です。例といたしまして、年収三百五十万円の単身世帯の方の場合、所得税は年間七万円、しかし、社会保険料は年間約五十万円と大変大きな金額になっています。そしてまた、同時に、雇用している企業の側もほぼ同等の額、約五十万円を年間負担しているということですから、三百五十万円の収入の方、その社会保険料は、企業と個人合わせて約百万円も負担をさせられているのが日本の社会保険料。

 これは、実質、社会保険料じゃなくて社会保険税なわけなんですね。そして、税金を上げると国民の皆さんに怒られるから、政府・与党の皆さんは、これまで社会保険料をずっと上げてきた。いわばステルス増税をやってきたというのがこの社会保険料の問題なわけなんです。これが現役世代の皆さんの生活を圧迫し、家計を圧迫し、そして日本の経済成長を阻んでいる、このように我々は考えております。

 そして、我々日本維新の会では、しがらみのない改革によって社会保障にメスを入れて改革を行い、年間四兆円、社会保障費を削減し、そして、一人年間六万円、社会保険料を下げるという我々のお約束を実現すべく、今、自民党、公明党の皆さんと三党で協議をさせていただいております。

 資料の三を御覧ください。

 現役世代の社会保険料の引下げ、年間六万円の減免。今の物価高の対策として、これは今、我々は与党と交渉しておりますけれども、明日、あさってにできる話ではありませんから、まずは物価高対策として、先行実施として、年間六万円の社会保険料引下げを今緊急的に実施すべきではないかと考えております。そして、一年間の期間限定で実施しているその間に徹底的な社会保障改革を進めて、一年後には恒久措置としてこの年間六万円の社会保険料引下げを実現したい、このように考えております。

 一年間の、まず、時限措置での社会保険料六万円の引下げについて、総理の見解をお伺いしたいと思います。

鹿沼政府参考人 お答えいたします。

 社会保険料のお話、非常に大切な御指摘だと思っております。

 まず、状況だけお話しさせていただきますと、近年、中小企業の被用者が加入する協会けんぽ、また厚生年金の保険料は、いろいろな改革を行う中で据え置かれておりまして、また、現役世代の介護保険料についても横ばいという状況でございます。

 令和七年度の国民所得に対する社会保険料全体の割合を申しますと、コロナ禍以前の平成三十年度以下の水準に低下をしている状況でございます。

 他方、先生御指摘のように、社会保険制度を持続可能なものとしていくためには、能力に応じた全世代の支え合いをより強化するということと、給付の重点化や効率化、こういったことに一層取り組んでいくことで、現役世代の負担軽減を図りながら、必要な保障をバランスよく確保していくことが重要だと思っております。

 その上で、今先生おっしゃったような、一時的であっても、可処分所得向上のために幅広く本人等の社会保険料の時限的な減免とか、中小企業への社会保険料の事業主負担の時限的な軽減ということ、要するに、給付の重点化とか効率化ということを伴わないで負担だけを一時的に下げることについては、給付と負担の関係が不明確となり、不足する財源をどうするのか、また、事業主負担は、医療や年金の給付に充てられ、労働者を支えるための事業主の責任であることが求められているものであることなどを踏まえれば、慎重な検討が必要だというふうに考えております。

 いずれにしましても、政府といたしましては、改革工程に沿って取組を進める中で保険料負担の抑制につなげていきたいというふうに考えております。

石破内閣総理大臣 今、政府参考人からるるお答えを申し上げたところでございますが、今、三党間で真摯な議論が行われていると承知をいたしております。政府といたしましては、その三党間のお話というものもよく注視をしながら、今後の対応を考えてまいりたいと思っております。

 それから、御党がそういうことを考えておられるとは私はゆめさら思いませんが、いかにして持続可能性を確保するかということ。そして、ステルス増税という言葉をお使いになりましたが、それは税と保険料の違いというものをよくよく御存じの上で御発言になっておられることだと思っております。そういたしますと、どのようにしてこの制度の持続可能性を維持するかということをよく念頭に置きながら、三党のお話合いというものをよく見てまいりたいと思っております。

 無駄なものというものがあるとするならば、それは変えていかねばならぬのでしょう。だけれども、それが本当に無駄なのか、あるいは公平を失するものなのか。次の時代への負担をどう考えるべきかということについて真摯なお話合いがなされておることと承知をいたしております。

岩谷委員 まさに為政者側に立った御発言だと思いますね。国民の側から立ったら、強制的に取られるのですから、それは税と一緒ですよ、社会保険料は。そのことを申し上げているんです。だから、下げましょうと。

 それから、今のお答えだと質問しても無駄かもしれませんが、中小企業に向けての事業主負担分の社会保険料の引下げ、これも、緊急的に、時限的にやるつもりはありませんね。

石破内閣総理大臣 それは、事業主の負担というものをよく考えてまいりたいと思っております。制度はそういうふうな仕組みになっておりまして、その持続可能性をいかにして担保すべきか、そこに公費を入れるということが、その制度の本質に関わるものでございますので、その点をよく考えてまいらねばならぬと思っております。

 為政者の立場というふうにおっしゃいました。私どもは政府でございますので、当然その立場で考えねばなりません。

 しかしながら、それが過度な御負担になったり、あるいは、今の世代さえよければいいということで次の世代の負担になったりということは厳に戒めていかねばならないものだと思っております。その点は御党と考え方を一にするものだと思っております。

岩谷委員 そうであるならば、是非とも三党協議におきまして抜本的な聖域なき社会保障の改革をやって、年間四兆円の社会保障費削減、是非実現を共にさせていただきたいと思いますので、真摯に向き合っていただきたいというふうに思います。

 次に、食品消費税のゼロについてお伺いをいたします。

 今、政府では、国民全員に対する約五万円の現金給付を行う案が検討されていると仄聞をしております。

 昨日の共同通信の世論調査では、関税対策や物価高対策として、所得制限を設けずに国民に現金を給付することに対して、賛成三七%、一方、反対は五五%。また、読売新聞では反対七六%となっております。

 これは、国民の皆さんが、また選挙が近くなってきたら性懲りもなく金のばらまきをやっているよと、国民の皆さんに見透かされて、あきれられているというのがこの数字じゃないでしょうか。

 現金のばらまきというのは本当に筋の悪い政策だと思います。事務手数料だけで千億単位のお金がかかります。そして、現場でその事務に当たる地方自治体の皆さんは大きな負担をこれで毎回背負わされているわけなんですね。

 そして、資料五を御覧いただきたいと思いますけれども、我々は対案といたしまして、二年間の食品消費税のゼロ、撤廃を御提案をさせていただきます。配るなら最初から取らない方がいいわけなんですね。配るなら最初から取らない方がいい。また、漫然とばらまくんじゃなくて、やはりめり張りを利かせた対策が必要であります。その点、生きていくために必要なものがこの食品なわけです。ですから、食品の消費税を時限的に二年間ゼロ%にして、国民の皆さんの暮らしを守ろうという御提案です。

 これは、世界では、イギリスやカナダ、オーストラリア、韓国、メキシコ、タイなどで食品消費税ゼロとか非課税ということが実際実施されている大変有効な政策であります。

 二年間の物価高対策として、そして、それにとどまらず、この二年間を集中的な個人消費の喚起の集中期間としまして、経済成長に資する対策とも兼ねまして、時限的な食品消費税ゼロ、是非やっていただきたいと思いますが、総理、いかがですか。

    〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕

石破内閣総理大臣 それは各党において何が最も物価高に対応するのにふさわしいかということで真摯な議論がなされ、そしてまた御提案になっているものと承知をいたしております。今、政府の中でこうだという確たる考えがあるわけではございませんが、それぞれの御意見というものはよく検討してまいりたいと思っております。

 何が本当に効果的であるのか。今、物価高を上回る賃金上昇ということで、私ども政労使でこのことに向けて努力もし、それぞれの皆様方にも御協力をいただいておるところでございます。

 それに裨益しない人々というものがおられるとするならば、それをどう考えるべきなのか。最もお困りの方々に何をすることがいいのかということなのであって、かぎ括弧で選挙目当てのばらまきなぞということをゆめさら考えるべきものではないと思っております。

 いずれにいたしましても、政府として、そういうことについて現在検討しておるということはございません。

岩谷委員 物価高に負けない賃上げ、大変重要です。だけれども、それが追いついていないから緊急的にやりましょうという御提案なんですね。

 ちょっと時間がありませんから次に行きますけれども、同じく国民の生活に大きな負担を今及ぼしているのがガソリンです。

 ガソリンの暫定税率、当分の間税率の廃止に向けまして、これも与党の皆さんと今我々協議させていただきますが、遅々として進んでおりません。ガソリン暫定税率を廃止して、リッター当たり約二十五円のガソリンの値下げ、これも夏までにやりましょう。そのために、総理、今すぐ総理の、トップの決断をお願いしたいと思います。

    〔奥野委員長代理退席、委員長着席〕

石破内閣総理大臣 先般の自公国三党の幹事長会談を受けまして、四月十一日、この間の金曜日でございます、三党の政調会長間におきまして、ガソリン補助金の基金残高を活用してガソリン価格を引き下げていくという共通認識が得られたというふうに聞いております。

 いずれにいたしましても、こういうような合意というものを一つ一つ大事にしながら実行いたしてまいります。

岩谷委員 十円、それで十分だとお考えなんでしょうか。

 この暫定税率、当分の間税率というのは、もう五十年ぐらい続いているんですよね。いつまで暫定なんですか。いつまで当分の間なんですか。それが国民の皆さんが納得しない理由じゃないですか。まずは、すぱっと廃止していただきたいということを改めて申し上げたいと思います。

 ちょっと時間がありませんので次に行きます。パネル、資料を御覧ください。米価格の引下げです。

 いろいろな提案をさせていただいていますが、まずお伺いしたいことは、アメリカも、米は日本が関税を課している、七〇〇パーというのは言い過ぎですけれども、しかし問題意識は向こうも持っている。そのアメリカとの交渉材料としつつ、日本の米価格を引き下げる一石二鳥の策として、臨時的にアメリカからの米の輸入の拡大、検討する余地はありませんか。

松尾政府参考人 お答えいたします。

 米の輸入につきましては、WTO協定に基づき国家貿易での輸入、あるいは民間貿易というものがありまして、一定量の輸入がされているところでございます。

 米の問題につきまして、現在、米の流通の円滑を図るため、政府備蓄米の売渡しを行っているところでございます。既に二十一万トンの入札を終えて、引渡しを開始し、今月二十一日の週に第三回の十万トンを入札することとしております。その上で、この夏の端境期まで毎月やっていくということとしておりまして、これらの措置によりまして、消費者の方々に米を安定的に供給し、上昇した価格が落ち着くことを期待しております。

岩谷委員 ちょっと質問を飛ばしますけれども、今、備蓄米の放出、七月ぐらいまで毎月やるというお話になっていますけれども、やはり消費者側、国民の皆さんのマインドの問題でもあると思います。この買占め状況を解消しなきゃいけない。そのためには、七月というような期限を区切るんじゃなくて、私は、引き下がるまで毎月放出すると言うべきだというのが我々維新の会の提案ですから、提案としてお伝えをしておきたいと思います。

 そして、そもそも、場当たり的な対応じゃなくて、日本の米の問題は構造的な改革を行わなきゃいけないと思っています。これだけ米不足と言われている、だけれども日本は米大国のはずじゃないですか。何でこうなっているか。いわゆる減反政策を実質続けてきて、どんどんどんどん米の量を減らして、その結果、今こういうことになっているんじゃないでしょうか。

 我々は、事実上の減反政策を廃止するなど、いわゆる既得権に切り込んで、例えば株式会社の農地保有を全面的に認めるとか、そういった、当然、農家の皆さんには戸別補償しながらですよ、直接補償しながら、農業に関する規制改革を断行し、我が国の農業の抜本的な改革をすべきだと思いますが、いかがですか。

石破内閣総理大臣 それは、米政策というものにつきましては、私自身、農林水産大臣を務めておったときから強い問題意識を持っております。

 問題は、農地が減り続けるということもそうなのですが、基幹的農業従事者の高齢化、減少というものにここで歯止めをかけないと、農地はなくなる、農業者はいなくなるという、どうにもならない状況が生まれてまいります。そこにおいて、いかにして米生産というものを確保するか。

 そして、多くの国の中で、農地を減らし、食料生産を減らしてきたというのは我が国ぐらいのものでございまして、それでは、米の値段が下がるというときに、どういう方々の再生産を可能にするのかということもきちんと議論をしていかなければなりません。

 それは、御党がそういうような所得補償ということを御主張になっておられることはよく承知をいたしておりますが、再生産可能という場合、どなたの再生産を可能とするのかということも併せて考えていきませんと、政策として整合の取れたものにはならないと考えております。

 いずれにいたしましても、米政策というものを大きく変えていくということは必要でございますし、先ほど委員が買占めという言葉をお使いになりましたが、誰がどのようにして買い占めているのかということの事実が把握できないままに議論してもしようがありませんので、これは本日の午後と聞いておりますが、農林水産大臣、農林水産省として、卸の方、あるいは小売の方、あるいはJA関係の方、そういう方々の御意見を聴取をしながら、なぜこういうことが起こっているのかということの実態をよく把握をしていかなければ、対応として適切なものは取れないというふうに承知をいたしております。

安住委員長 総理、簡潔に。大幅に時間が過ぎております。

石破内閣総理大臣 いずれにいたしましても、米の値段が下がるというために、私どもとして全力を尽くしてまいります。

安住委員長 岩谷君も、一分以上過ぎていますから、やめてください。

岩谷委員 我々は、構造改革をこれからも邁進することをお約束し、質問を終わります。

 ありがとうございました。

安住委員長 これにて岩谷君の質疑は終了いたしました。

 次に、浅野哲君。

浅野委員 国民民主党の浅野哲でございます。

 まず冒頭、本日は四月十四日であります。今から九年前の二〇一六年の本日、熊本で大きな地震が発生をいたしました。今日は、私も熊本県のキャラクターのバッジをつけさせていただいておりますけれども。

 やはり、今、トランプ関税の問題、いろいろありますが、その一方で国内に目を戻すと、能登半島の被災地の復旧復興、そして熊本においても、私、先週土曜日、熊本に行ってきましたけれども、復旧作業も大分進んでおりましたが、熊本城の修繕作業も進んでおりましたが、やはり、災害はいつ起こるか分かりませんので、引き続き、国内の災害対応、緊急時対応、常に心の中にとどめながら今日は質疑をさせていただきたいと思います。

 今日はトランプ関税のテーマでありますが、これまでるる外交、貿易交渉の話が取り上げられてきましたが、私は、この問題、公正な貿易の問題であると同時に、国家としてのレジリエンスの問題であるとも考えております。関税による影響が出るのは不可避であると先ほど齋藤委員と武藤経産大臣のやり取りの中でもありましたけれども、だからこそ、関税交渉を正面からしっかり取り組むこと、これは大事なんですが、それと同時に、やはり、国内の景気対策、この国の経済がこの状況でもそう簡単に崩れない、そんな足腰の強さをいかに確保するか、これが大事だと思っておりまして、その視点でこれから約十六分弱、質疑をさせていただきます。

 時間の関係で冒頭の質問は少し省略をさせていただきますが、我々国民民主党は、先月、三月二十六日、物価高やトランプ関税の影響を織り込んだ経済対策を発表させていただきました。十日には林官房長官にも内容説明し、要請をさせていただきました。もう既に総理にも報告は上がっているという前提で、この後の質問に入ります。

 通告二問目になりますが、先ほどもやり取りがありました補正予算の早期編成の必要性について、まず伺いたいと思います。

 現在、与党内では全国民に三万円から五万円程度の現金給付を行うという案も浮上しているというふうに聞いています。ただ、これをもし実行するのであれば現在の予備費ではとても足りませんので補正予算を組む必要があると思いますが、総理自身、今国会中に補正予算を組む意思があるかどうか。

 先ほどもやり取りがありましたけれども、改めて我々は、財政出動をする意思表示というのは、国民の不安の軽減と、そして市場の萎縮の緩和につながるとも思っておりまして、この意思表示は極めて大事だと思います。補正予算の編成に一日も早く着手し、この国会中に成立させるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

石破内閣総理大臣 補正予算は令和七年度予算の補正でございます。そして、財政法の規定によって、予算編成時には予期し得なかった、そういう事態が生ずるということが法律上決まっておるわけでございます。

 今日は四月の十四日、まさしく熊本震災の当日ではございますが、そこにおいて、物価高対策あるいは経済対策として、世帯当たり三万円の低所得者世帯向けの給付金、重点支援交付金、一・二兆円の所得減税、高校無償化の先行措置等々、今始まったところでございます。これがどのように現場にきちんと届くかということも見ていかなければなりません。そして、財政法の規定というものもよく認識をしておかねばなりません。

 現時点で、政府において補正予算というものを検討しておるということはございません。それがどういうような状況になり、どういうような規模でありということは、またそのときそのときによって適時適切に判断をすべきものでございますが、現時点においては、成立させていただいた令和七年度予算、これの早期執行の効果的な実現に努めてまいりたいと考えております。

浅野委員 今総理から答弁がありました、重点交付金や高校の無償化、様々な対策をこの予算には織り込んで、これからその効果が発現していくということで、その推移を見守るというのは、それは我々も同意をいたします。

 ただ、やはり、トランプ関税のこれだけ大きな動き、そして不確実性の高い動きが連日報道されておりまして、これは当初の予算案の中には当然織り込むことができなかった要素であります。

 総理は既にもう十分御承知だと思いますけれども、危機管理の要諦というのは六段階あるそうであります。まずは予防する、そして事態を把握し、それを評価し、対策を検討する、そしてそれを実行し、再評価をする。いわゆるPDCAですね、これをやっていくことが危機管理の要諦であるんですが。それ以前に、最も大事なのは指揮官の覚悟だというふうな言われ方もしております。

 是非、改めて総理に聞きたいのは、推移を見守る、いざとなれば更なる追加の補正予算も組むのを辞さない、そのくらいの覚悟は、当然ながら我々も持たねばなりませんし、総理自身も持っていただきたい、持っていると思いますが、そのことを確認させてください。

石破内閣総理大臣 現時点において検討しておらないというのは先ほど申し上げたとおりです。ただ、それはもう本当にタイムリーに対応していかなければなりません。

 そして、昨日も神戸で二輪車製造の方々と随分いろんなお話をいたしました。全国千か所に相談窓口をつくっているのであります。日立なら日立、大洗なら大洗、水戸なら水戸、そこに相談窓口がございます。それが本当に有効に機能していかなければなりませんし、そこにおいて、融資の要件を緩和する等々、本当に、特に中小零細の皆様方、そういう方々に最も適切な政策を打ってまいります。

 その上で、先ほど来委員が御指摘の、この事態に対応するために補正予算が必要であるのかどうなのかというのは、御党との議論も含めまして、私ども適切に判断をしてまいりたいと考えております。

浅野委員 明確な御答弁ではなかったような気もいたしますが、補正予算の必要性、もう既に多くの国会議員が指摘をして、感じておりますし、いついかなるときも機敏な対応ができるように、まずは、政府内においても検討の事実はないとおっしゃっておりましたが、覚悟を決めて、常に情報収集、いざというときには機敏に対応できるような準備はしていただきたいですし、我々としては、引き続き、この国会中でも補正予算編成は否定されるべきではないと思いますので、是非よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、ちょっと質問を一問飛ばしまして、先ほどガソリンの暫定税率廃止の話がありましたので、これについて一問質問したいと思います。

 先ほど総理の方からも自公国の三党協議の中でこのようなやり取りがありましたというようなことを御紹介いただきましたが、一部ちょっと我々の認識と相違しているかもしれない部分がありますので、まずそのことについて触れさせていただきます。

 我々も、先週の政調会長同士による三党協議の後、党内で様々情報共有させていただきました。与党側からは、十円程度の引下げ、補助金でやることも含めて考えていきたいというような話があったそうでありますが、我々としては、あくまでもガソリンは暫定税率廃止、減税による負担軽減を主張をし続けております。

 この点においては我々はその時点で合意をしたつもりはありませんし、引き続きこれを求めていきますので、まずその点を申し上げた上で、やはり、政府内でもしっかりこの問題に向き合っていただきたいと思います。

 さらに、ガソリンの暫定税率と併せて今日は電気代についても議論をしたいんですが、三月末で電気代に対する支援が終わり、そして四月からは再エネ賦課金の単価が上がりました。これによって、年間の標準家庭の負担額というのが、およそ一・四万円から一・五、六万円程度、年間での負担が増えるというような見通しもあります。

 今、これだけ物価高、そしてトランプ関税によって経済の先行きが不透明な中でこの国民の負担増というのを放置するのは、やはり責任放棄と言われても仕方がないのではないかと思います。

 改めて、国民の生活を支え、家計を支え、そして個人消費をこれ以上冷やさずに、冷え込ませずに、国内経済を支えるためにも、ガソリンの暫定税率廃止と再エネ賦課金の徴収停止も含めた電気代の負担軽減策を政府に求めます。答弁お願いします。

武藤国務大臣 ありがとうございます。

 ガソリンの暫定税率廃止につきましては、先ほど来総理が申し上げられているように、政党間の協議の中で進行されているものと承知をしています。

 そして、再エネ賦課金の話でございますけれども、これは委員会でも私もいろいろと御答弁させていただいておりますけれども、問題は、徴収を停止したとしても、再エネの導入拡大に必要な費用として賦課金でいただいている三兆円規模、これを何らかの形で御負担いただかなきゃいけない、こういう背景がありますので、委員の御指摘もよく分かるところですけれども、この問題を御指摘をさせていただく中で、この辺もまた今後、三党協議等々、いろいろな形の中で御協議がいただけるものと思っております。

浅野委員 特にこの再エネ賦課金は、創設された当初よりも現在の単価が非常に上昇しております。当初想定されていた、これが上限だろうという単価を既に超えて、更にこれからもしばらくは上昇を続ける見込みだということで、国民側からすると、再エネ政策というのは国の国策として進められてきて、その中で国民全員で薄く広く負担しましょうということで始まった再エネ賦課金なんですが、実は広く厚い負担になってき始めている。

 これが当初のもくろみと少しずつずれてきていますので、これは是非これからも委員会等で議論していきたいと思いますが、我々としては、GXに関わる新たな負担金、賦課金がこれから創設をされますし、この再エネ賦課金も含めた全体でのやはり再設計、在り方の見直しというのは必要だと思いますので、今後とも議論を深めさせてください。

 残り時間があと僅かとなりましたので、最後、日銀総裁にお伺いをさせていただきたいと思います。

 これまで日本国内では、物価高を超える賃上げ水準、この獲得に向けて、数年間にわたって、政界、そして産業界、労使共に努力が重ねられてきました。賃上げ定着の兆しがあった中で、今回のこのトランプ関税の発動で、経済は不安定化、そして御承知のとおり、株価は日々乱高下し、為替の急変も起きています。デフレ圧力、そしてドル安というのは企業の賃上げ意欲をどんどん減退させ、また市場全体を萎縮させる可能性が十分に考えられます。日銀は、状況次第では柔軟にまた金融緩和を実施し、国内経済を下支えする覚悟が必要ではないかと我々は思います。

 植田総裁に伺いたいのですが、現下の状況をどう分析されているか、そして、日銀はこれからどのような役割を果たしていくべきなのか、再度の金融緩和に向けた構えについて伺いたいと思います。

植田参考人 私ども、申し上げるまでもないかもしれませんが、一連の米国の関税政策によって、内外の経済、物価をめぐる不確実性は大きく高まったというふうに考えております。これらの政策が、様々な経路を介しまして世界経済及び我が国経済を下押しする方向に働く要因になると考えられます。また、物価への影響については、上下双方向の様々な要因が考えられ、現時点では一概には評価できないと認識しております。また、こうした影響は、今後の関税政策をめぐる展開にも大きく左右される、当たり前のことではございますが。

 そういう中で、私ども、経済、物価、金融情勢を今後予断を持たずに点検し、二%の物価安定の目標の持続的、安定的な実現という観点から、適切に政策を運営してまいりたいと思っております。

浅野委員 改めてもう一度、済みません、更問いをさせてください。

 先ほど総理とのやり取りの中でも申し上げました、危機管理の要諦の、まず大前提は、指揮官がその危機を乗り越えるという覚悟を示すことだと私は思っています。

 今総裁からも、予断を許さずにしっかり今後の推移を見守って適切に対応したい、そういう答弁がありましたけれども、もう少し言い方を変えまして、我々としては、やはり、金融緩和も排除せず、あらゆる選択肢を今後状況次第で機敏に取っていく、その覚悟を総裁がお持ちだということを今日この場で確認させていただきたいと思いますが、最後、総裁にもう一回お伺いしたいと思います。

植田参考人 経済、物価、金融情勢を適切に点検した上で、二%の目標達成という観点から、適切に政策を判断してまいります。

浅野委員 覚悟を持って、今後の動向を見守って、そして対応していただくことを願いまして、時間が来ましたので質問を終わります。

安住委員長 これにて浅野君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本三成君。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 日本は貿易立国でありまして、自由貿易の拡大は日本の生命線であります。その意味で、今回のトランプ関税が日本経済に与える影響は大変大きいと理解をしております。

 私が最も恐れていることは、この関税の結果、アメリカ自身で、アメリカの中で高インフレが起こり、そして経済が後退する、いわゆるスタグフレーションが起きて、そして、それが日本を含めた全世界に拡大をする。アメリカの大手金融機関は、この世界恐慌的な景気後退の可能性は六〇%だというふうに分析をしています。仮にそうなれば、日本は再びデフレの時代に逆戻りをして、やっとの思いで賃金の上昇が付加価値的な経済の状況をつくってきたのに、また賃金カット、そしてコストカット型の経済に移っていく、そういうことは絶対に避けなければならないという思いで質問をさせていただきます。

 この週末、地元荒川区、足立区で多くの企業経営者の方にお目にかかり、今回の関税に対する不安のお声を聞いてまいりました。

 そこで、まず初めに、武藤経産大臣に国内の中小企業支援についてお伺いをしたいと思います。

 政府は、特別相談窓口を既に千か所設定をしていただいておりまして、素早い対応は評価をいたします。中小企業庁のホームページを拝見しますと、それぞれの都道府県別に、どの機関のどの支店、電話番号がどこかと書いてありますけれども、是非、温かい寄り添った対応をしていただきたいんですね。事務的な対応を行っていただきたくないんです。

 毎日毎日状況は変わっています。経営者の方が相談に行かれます。その時点での情報を共有していただけると思います。ただ、もし状況が変わったらまた聞きに来てくださいとかじゃなくて、窓口担当者の方がちゃんとその経営者の状況、企業の状況を聞いて、その企業にクリティカルな新たな状況になれば、例えば、その窓口担当者の方から企業担当者の方に連携を取って、新たな情報を提供し、新たな政策を常に考えるであったり、事務的な対応ではなくて、寄り添った対応をしていただきたいというのが一つのお願い。

 もう一つは、資金繰りが大切なんです。この資金繰り支援も、日本政策金融公庫にセーフティーネットの融資を拡大をすることを決めていただきましたが、リーマン・ショックのときに、残念ながら倒産した多くの会社、これは約半分は黒字倒産なんですね。業績はめちゃくちゃよかったんです。ただ、資金繰りができなくて、キャッシュフローがショートして、不渡りを出して、その瞬間に倒産です。同じことが起こり得ます。

 したがって、このセーフティーネット融資も、資金実行、融資の送金までの時間を短くしていただいてやっていただきたいというのが一つの要請です。

 加えて、日本の自動車会社やメーカーは、カナダやメキシコで生産している会社もたくさんあります。この会社が資金ショートに陥らないためには、必要な通貨は円ではなくてドルなんですね。JBIC等も活用しながら、とにかく、この関税のあおりを食って、業績はいいのに資金ショートで倒産することがないように最大の支援をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

武藤国務大臣 いつも温かい岡本委員からの御指摘でございます。

 正直申し上げて、この千百五十三件、今委員から御紹介いただきましたけれども、ジェトロが中心になって、約八割ぐらいの数字は、関税はこれからどうなるんですか等々のお話だと思います。

 今、問題は、要するに、先ほど野田委員からも御指摘がありましたけれども、物価を上回る賃金というものをどう確保するか、大変大事な年だというのも承知をしている中で、何とか中小企業のサプライチェーンを維持させていかなきゃいけないという中では、今委員がおっしゃっていただいたような資金繰り、この対策も大変大事だと思っています。

 私どもは、もう報告しておるとおり、千か所に窓口を置き、そして今委員がおっしゃられたように、一方的ではなくて、やはり行って来いという形の中でのきめ細かさというものが、多分、対応が必要になってくるんだと思います。

 一方で、今、円建てでやっているものを、ドル建てのことも考えられないのかということも含めて今ちょっと調査をしておりますので、そのニーズに応じて必要なものをまとめていきたい、そしてまた御報告を申し上げていきたいというふうに思っております。

岡本(三)委員 続きまして、総理に、今後の交渉の戦略についてお伺いいたします。具体的な手のうちを見せてくださいということではありません。

 この協議において、米国側から幾つかの分野が指定されています。例えば、自動車、お米、為替、大切だと思いますけれども、相手の土俵だけで勝負をしていただきたくないんですね。日本から新たな土俵又は交渉のルールを作るような、そういう提案をしていただきたいと思っています。

 例えば、限られた分野だと、相手が損をするとこっちがもうかるとか、その反対とか、そういうことではなくて、米国が利益が出るときには日本も利益が出る、日本が損をしてしまうと米国にも損が起こってしまうような、そういうウィン・ウィンの共同のプロジェクトを是非複数提案していただきたいと思っているんです。

 例えば、トランプ大統領は、二月三日に新たな大統領令を出していまして、ソブリン・ウェルス・ファンド、政府系ファンド、これを一年以内に設置するというふうに言われています。国家が自分のお金を投資をして、そして、そのお金で新たな財源をつくり、国民生活を向上させる。北欧では主要な政策、中東もシンガポールもやっています。

 今回、トランプ大統領がソブリン・ウェルス・ファンド設置のために指名した責任者は、日本の交渉相手のベッセント財務長官です。

 私は、このアメリカのソブリン・ウェルス・ファンド、政府系ファンド、例えば日本が一緒に共同出資をして、日米共同政府系ファンドにするような提案もしたらどうかと思うんですね。大きな土俵をつくることによって、日本とアメリカが同じ利益を共有する経済的な同盟国だということも確認をしながら、新たなフィールドで、その交渉が、その利益が、今回の具体的な、例えば自動車等の関税の問題を緩和するような施策として、是非チャレンジをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

石破内閣総理大臣 あらゆる国会議員の中で、岡本委員がこの問題に一番お詳しいのだと思っております。いつも御主張を、本当に敬意を持って拝聴しておるところでございます。

 御指摘のように、関税だけで切った張ったをやっていても、本当にお互いにウィン・ウィンになるか、もちろん、それを目指して私どもは努力をしてまいりますし、その解は必ず見出せるものと思っておりますが、それとは別のフィールドというものを設けるという御提案は、よく私どもとして検討し、実現に向けて努力をいたしてまいりたいと思っております。

 要は、投資の拡大を含めて、お互いの利益になるというのはどういうことなんだ、一方が得をしたら一方が損をするみたいなことをずっと続けておるだけが交渉ではございませんので、御提案の趣旨をよく踏まえまして、政府の中で考えさせていただきます。

 ありがとうございます。

岡本(三)委員 二月七日のホワイトハウスでの首脳会談のときに、記者からの質問で、総理はバイオ燃料のことにも言及をされています。バイオ燃料は、カーボンニュートラル燃料ですから、これから日本で大きく必要になってきますけれども、日本は自給率ゼロ、アメリカは最大の生産国です。それを共同でやっていく等々、様々な、別のウィン・ウィンのプロジェクトを是非立ち上げていただきたいと思います。

 最後に、総理にです。

 日本は、アメリカとともに世界の経済発展をリードしてきました。アメリカは世界の中での最大の経済大国でありますけれども、日本にとって唯一の経済的パートナーであってはいけません。そこで、今こそTPP、環太平洋パートナーシップを進化させて、日本の国益へとつながる自由貿易のフィールドを広げていただきたいと思っているんですね。二〇一八年に発効しています、昨年イギリスが加盟して十二か国。この間、日本と加盟国の貿易量は物すごく拡大しています、価値があるんですね。

 私は、先月、英国で行われました日英二十一世紀委員会に参加をいたしました。これは、日本とイギリスの国会議員、あと各国大使、さらには学術界、経済界の代表が集いまして、日本とイギリスの今後の戦略を一緒に考えるものでありまして、この考えたものを先週総理にも提案させていただきましたし、今週はイギリス側がスターマー首相にも同じものを提案いたします。その一つの核が、TPPを大きく拡大するということです。EUにも加盟していただき、アジア諸国、南米諸国も加盟をして、自由貿易の価値を大きくしていきたいんですね。

 そこで、二つ、総理に御提案があります。

 一つは、TPP加盟国首脳会議を、日本提案で、今年日本で行うということです。日本がリーダーシップを持って、各国の首脳が集まって、自由貿易の価値を世界にアピールすることによって、より大きな舞台をつくっていくというのが一つ目の提案。

 そして、二つ目には、今、事務局の設置が話題になっておりまして、これは議長国のオペレーションが大変なんですね。是非日本に事務局を誘致したいんですが、問題は、事務局のオペレーションが大変過ぎて、めどがついていないんです。

 私は、日英二十一世紀委員会で、日本を代表する世界的なAI企業の社長がいらっしゃいまして、事務局のオペレーションをAIでできますかと聞いたんですね。いろいろ検討していただいて、AIエージェントを立ち上げれば、事務局の仕事量を最小化することによって、TPP事務局の効率化を最大化できると思いますというふうにおっしゃっていました。

 その会社を使うかどうかは別にして、別の会社でもいいです、そのように事務局を日本で、しかも最新のAIを持ちながら、自由貿易体制を更に大きく拡大する、是非日本がリーダーシップを取って行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

石破内閣総理大臣 TPPとCPTPPは違うものでございますが、これの加盟国を増やす、ここにおいてアメリカがどういう判断をするかというのは極めて難しいところでございますが、やはり私どもとして、自由貿易というものがこれから先の世界経済にとって非常に重要なのだが、今その分岐点にひょっとしたらあるのかもしれないという強い問題意識を持ちながら、TPPの拡大、CPTPPの拡大も併せて、今後とも努力をいたしてまいります。

 済みません、後段の御質問は、私も余りにびっくりしたもので、なかなかすぐお返事ができませんが、AIがどこまでできるかというのは、この問題に限らず、あらゆる分野において検討されてしかるべきものだと思っております。

 常設の事務局がなかなかできないのは、おっしゃるとおり、負担がやたらめったら重いので、頼むから勘弁してねみたいなことで持ち回りになっておるわけですが、それが本当にTPP体制にとっていいことかといえば、決してそうでもない。そこにおいてAIが何ができるのかということ、不公平、不公正が生じないのかということ、その負担を誰がどのようにして行うべきかということも含めまして、委員の御提言も含めて、政府内で検討もさせていただきます。

 今後とも、よろしく御示唆を賜りますよう、お願い申し上げます。

岡本(三)委員 失礼しました。私は言葉を短くしようと思って、CPTPPのことを略してTPPというふうに申し上げたつもりでありまして、CPTPPを拡大していきたいという趣旨であります。

 ちなみに、このCPTPPのフィールドを大きくしていくことによって、いずれアメリカもここに加盟をしてくるという選択肢を常に示しながら、もったいないので是非加入したいとアメリカに思わせるような価値あるフィールドをつくっていくことが大切だというふうに思っています。

 今回の関税交渉は大変に厳しいものだというふうに思いますけれども、やはり最大の経済大国であるアメリカを、うまく日本の国益につなげるためにやっていただきたいという気持ちが多くありますけれども、それ以外の国々との交渉を前に進めるいい機会でもあります。

 特に、例えば何か決まったパイがあって、アメリカが五一を取ったら日本は四九とか、日本が五三を取ったらアメリカは四七とかということでは余りにも先細りの交渉になってしまいますので、どうやったら、アメリカと日本の経済関係において、ポテンシャルとして確保できる経済のパイを大きくできるか。

 そして、その結果、他国との関係もより強くすることによって、いずれは貿易立国日本がその利益を最大化できるようなフィールドを日本がリーダーシップを取ってつくっていただくことを要請を申し上げまして、また、その具体的な交渉の中に公明党も全力でサポートさせていただくことをお約束をいたしまして、質問を終了させていただきます。

 ありがとうございました。

安住委員長 これにて岡本君の質疑は終了いたしました。

 次に、大石あきこさん。

大石委員 れいわ新選組、大石あきこです。

 四月十日に経済財政諮問会議がありました。これは議長が総理で、内閣が、民間議員という財界代表、資本家代表の指示を聞く場です。

 財界がその会議で、トランプの関税措置に対してこう言っているんですよ。自由貿易を守れ、内需主導の経済基盤を、中小企業の支援をということと、同時に、財政健全化、歳出改革の継続を要求しているんですね。

 この要求を踏まえて、この会議を踏まえて石破総理は政府方針、骨太方針を作ろうとしていて、そういうことはやっちゃいけないんです。

 その会議の中身で、赤澤大臣という方が訪米する、先遣隊で行って。結局、それはアメリカと日本の資本家の利害調整をしに行く、ただのそういう場でしょう。やっちゃいけないんです。そうやってアメリカと日本の資本家の利害を調整する、そういう枠組みを離れなければ、国民生活は今や守れないんですよ。というか、そういう枠組みが日本の国民生活をぶっ壊してきたんですから。

 だから、この貿易という分野においても、一番目にはアメリカの言うことを聞いてきた、二番目には国内の財界、資本家の言うことを聞いてきて、それで、農業を始めとする全ての産業とか労働者を保護するということをぶっ壊してきたんじゃないですか。それをまだ続けるのか。それが国難なんですよ。

 前の安倍総理、前のトランプ大統領のときに、安倍総理も無駄なトウモロコシを買わされていたじゃないですか。日本の農業が売り渡され続けてきたじゃないですか。それ以外にも、国内の産業がぶっ壊されてきましたよね。今こそそれを変えなきゃいけないんじゃないんですか。なのに、四月十日に経済財政諮問会議の言うことをまた聞いて、また財政再建に力を入れますと引き締められている場合じゃないんですよ。

 その経済財政諮問会議で、民間議員という方が重大な問題発言をされています。財政健全化やとして、こう言っているんですよ。社会保障制度の財源論が重要だ。増え続ける社会保障給付に対して、現役世代の社会保険料負担に依存することは限界に達している。その部分を財政赤字で賄っている状況であるが、これは持続可能とは言えない。総理主導の下、税と社会保障の一体改革を総合的に検討する組織を早急に設置をし、議論をしていくべきだ。そのように言っているんですね。

 石破総理は、そのような経済財政諮問会議の結果を受けて、このように言っているんですよ。本年六月頃に策定する予定の骨太方針において、早期のプライマリーバランス黒字化実現を含め、今後の財政健全化に向けた取組をするべく、更に検討を進めることと言っていて、これでどうやって内需を回復させるんですか。

 伺いますね。

 社会保険料の引下げというのはやらなきゃいけないんですよ。だけれども、医療費を減らすとか、やっちゃいけないんですよね。医療費を守る、その上で、国費を投入して社会保険料を引き下げる、これしかないんですよ。そうしなければ、生活を守り、内需主導の経済基盤というのはつくれないんですよ。これを、国費を投入して社会保険料を引き下げるということをれいわは提案しています。

 国難ならば、腹をくくって、社会保険料の負担軽減を自公維の医療費四兆円削減でやるとか、さっきも何か、そういうのをやりますね、うんとかうなずいてはったけれども、そうじゃなくて、腹をくくって国がお金を出すべきです。どう考えているんですか。総理に伺います。

 質問しますねと言いましたよ。さっき、質問しますよと聞きました。

 社会保険料の引下げは……

安住委員長 ちょっと待ってください。

 総理に今質問しているわけじゃないの。

大石委員 総理に今質問したんですよ。

安住委員長 答弁を求めているんですか。

大石委員 答弁を求めているんですよ。

 腹をくくって、社会保険料、足らない分を国費で出すべきだ。どう考えていますか。

石破内閣総理大臣 世の中にはいろいろなお考えがあって、私どもは、委員がおっしゃいますように、資本家の走狗とか手先となってアメリカと交渉するとか、そのようなことを考えておるものではゆめさらございません。どうやって国民一人一人の雇用というものを安定するかということについて、アメリカとこれから先交渉を行ってまいるものでございます。

 その中において、社会保険制度をどうやって持続可能なものにするかということについて、いろいろなお考え方がございますが、これの持続可能性を維持するという面において、それでは公費を投入するということにストレートに結びつくものではございません。いかにして次の世代に大きな負担を残すことなく、そして過度な社会保険料の負担を強いることなく、この制度を持続可能なものにするかということについて、今真剣な議論をしておるところでございます。

大石委員 そういう真剣な議論といって、この国会で、予算案の中で、医療費削減やと、高額療養費制度の見直しやといって、それでがん患者に迷惑をかけたわけじゃないですか。それで、今まで前代未聞の、やはりがん患者の顔と名前を前にして、私たちを殺すのか、そういう訴えを前にして、一歩引いて、やはり駄目だったといって、前代未聞の再修正をやっているじゃないですか。それを繰り返さないでくださいねと言っているんですよ。

 なのに、自民、公明、維新の、経済財政諮問会議の言うような、社会保障の改革をやれ、国民から取れ、そういう話の中で医療費を削減しろ、国民負担を上げろという話を続けていては、これは国民を殺すことにしかやはりならないんです。

 一歩引き下がったのはよかったんですよ。繰り返さないでください。なのに、経済財政諮問会議で、総理が、言うとおりやりますと言っていたら繰り返すんです。だから、絶対駄目なんですよ。

 その枠組みを離れて、国費を投入して国民負担を下げなきゃいけないんですね。消費税廃止です。内需拡大がとか言っているんだったら、これは論理的に消費税を廃止するしかないじゃないですか。各党も言い出しているじゃないですか。でも、資本家の方でそういうのは駄目だという話の中で、もう選挙に耐えられへんから、各議員は減税を言えとか言い出して、それで幹部が引き締めているみたいな話でしょう。

 もう腹をくくってやらなきゃいけないんですよ。消費税廃止、やりますか。伺います。

石破内閣総理大臣 国費も国民の負担でございますので、そこは決して忘れてはならないものでございます。天から降ってくるものでも地から湧いてくるものでもございません。国費は国民の負担だということを忘れてはなりません。

 同時に、私どもは、どうやってこの制度というものが持続可能なものになるかということを、国費を入れさえすればいいというものではございません。これがどうやって、次の世代の負担というものが過度にならないように、そういう点をよく認識しながら、社会保障制度の改革に努めてまいりたいと思っております。

 いろいろな御意見がございますが、私どもは、誰の負担なのかということから目をそらしてはならないということでございます。

大石委員 国費はどう投入するかというのは、やはり主権者が決めなければいけないんですよね。主権者は国民なんですよ。圧倒的多数の人が生きていけなくなる中で、まずは国費を投入しなきゃいけないんです。

 いつまでたっても国債発行を無限にできるとは、れいわ新選組も申しておりません。だけれども、ふだんから国債を発行しているでしょう。ほかのことでもやっているじゃないですか。なぜ主権者である生活者が困っているときに国債発行というのはなしになるんですか。それはほかの党でも、野党でもそうですよ。また今日も、無駄なお金をなくして何か補正予算を組みましょうとか立憲民主党が言っていて、いつまでそれをやるんですか。国費を、国債を投入しなければ、もう国難とおっしゃっているのを乗り切れないんです。

 心ある総理にアイデアなんですけれども、この状態でアメリカに行かないでください。それで、消費税廃止を決めて、内閣総辞職して、もう今内政が荒れているからといって、アメリカに行かれへんといってやってください。このまま行ったら、全部差し出されるじゃないですか。総理、どうお考えですか。

安住委員長 石破総理大臣、間もなく時間が近づいていますので、手短にお願いいたします。

石破内閣総理大臣 斬新なアイデアでございますので、なかなかすぐそしゃくいたしかねるところがございます。

 世の中にはいろいろなお考えがございまして、いろいろな党がいろいろな御主張になるということは、それは私ども政府として、本当に謙虚にこれから先も承ってまいります。ただし、それについての意見というものを私どもも持っておりますので、それは答弁の中でこれから先も適宜申し上げてまいるものでございます。

安住委員長 大石さん、間もなく時間なので、まとめてください。

大石委員 まとめますね。

 本当にアメリカに行かない方がいいですよ。国民のためにも、やめてください。

 終わります。

安住委員長 これにて大石さんの質疑は終了いたしました。

 次に、田村智子さん。

田村(智)委員 日本共産党の田村智子です。

 四日、総理と六党党首の会談がありまして、私はその場で、トランプ大統領による一方的な関税措置は各国の経済主権を侵害するもので、これは撤回を求めるべきだというふうに総理に伝えました。その後、七日、参議院の決算委員会で総理も、撤回を求めると我が党議員の質問に答弁されています。

 それでは、トランプ大統領との電話会談で撤回を求めたのかどうか、お答えください。

石破内閣総理大臣 それは、今回のトランプ大統領の措置というものに対して、私どもとして、これは英語に訳すとどうなるかというのはいろいろな議論はあるんでしょうけれども、見直しを求めるということでございます。

 私どもとして、このような大統領の措置というものは容認し得ないということは申し上げたところでございます。

田村(智)委員 容認し得ないので撤回をというふうに求めたということでよろしいんですか。

石破内閣総理大臣 容認し得ないので見直しを求めるということでございますし、それは撤回という含意を持つというもので御理解をいただいても構いません。

田村(智)委員 もう一点確認したいんですけれども、日本との関係では、二〇一九年にトランプ大統領と安倍首相が合意をした日米貿易協定があり、これに違反するということが先ほどの議論の中でもありました。自動車、自動車関税について、追加関税を課さないとトランプ大統領自身が日米首脳会談で合意したはずなんです。

 一方的な関税は日米協定違反である、この認識を明確にトランプ大統領に伝えて撤回を求めたのか。総理、電話会談の後の会見では、撤回を求めたと言っておられないんですよ、懸念を伝えたというふうに言っておられるだけなんですね。日米協定違反であるという認識を伝え、そして明確に撤回を求めたのかどうか、もう一度御答弁ください。

石破内閣総理大臣 それは、WTOとの整合性、貿易協定との整合性について、私どもとして深刻な懸念を有しているということは事実として申し上げました。そして、最初にトランプ大統領と実際に対面でお話をしたときから、仮に、まだそのときには発表されておらなかったところでございますが、日本が、過去五年間、最大の投資国であり、そしてまた最大の雇用創出国であるということ、その日本の今までのいろいろな取組に対して正当にその点が認識されなければならないということを申し上げましたし、措置の発表があった後も、私どもとしてその見直しを強く求めるということであって、その二つを申し上げたところでございます。

田村(智)委員 これは、今後の交渉の本当に基本的な姿勢がどこにあるのかが問われていると思うんです。トランプ大統領自ら合意した協定を一方的に破棄する、これでは米国の信頼は地に落ちます。

 四月十一日、日経新聞の社説も、「理不尽なトランプ関税は全面撤回が筋だ」と掲げています。そのとおりだと思うんですよ。全面撤回を求めるという確固とした立場が必要だと思います。余りにも乱暴な協定違反をそのままにしたら、今後、どういう交渉をしても、合意が誠実に履行される保証がなくなってしまう。

 交渉の目的は関税措置の全面撤回にある、ここをはっきりさせるべきだと思いますが、いかがですか。

石破内閣総理大臣 先ほど来答弁を申し上げているとおりでございますが、ではどうやってそれを実行に移すのかということについて、トランプ大統領が、先ほども答弁申し上げましたが、選挙中に言ってきたこと、就任演説で言ったこと、その後の大統領令、それを全部精査をしながら、どうすれば見直しというものをかち取ることができるのか。そして、アメリカが指摘していることについて我が国がどう応えるかということを、それはパッケージとして示すということが必要でございます。

 それは貿易協定違反である、WTO協定違反である、であるから見直せ、撤回だということで事が済むなら、誰も苦労しないということです。

田村(智)委員 それを一方的に繰り返せと言っているんじゃないんですよ。目的は全面撤回にあるというところを据えなければ駄目だということだと思うんです。何か交渉して、何かのカードを示して、そんなんじゃないと思うんですよね。

 今、アメリカの銀行最大手、JPモルガンのCEOも今回のトランプ関税に警鐘を発していますよ。また、米国自動車メーカー、ビッグスリーも見直しをトランプ政権に要請しているわけですよ。世界経済が不安定になって、米国内にも既に深刻な影響が出ていて、世界でも米国内でも批判、見直しを求める声が次々と起きている。その結果、トランプ関税、今、毎日毎日、対応がころころと変わるという事態じゃないですか。

 これは、既にトランプ関税の綻び、破綻が始まっているということを示しているというふうに思うんですけれども、その点、いかがですか。

石破内閣総理大臣 それは、アメリカの中でいろいろな反応があり、金融界あるいはジャーナリズムの世界からいろいろな指摘があり、それと連関しているかどうかは存じませんが、アメリカの政策というものも変わってくるものでございます。

 それらは、もちろん我が国の主張というものを助けることになります。ですから、私どもとして、アメリカの世論、昨日、神戸でもお話をしてきたことでございますが、日本の企業というのは、全米五十州のあちらこちらで実際に雇用を創出しておるところでございます。そこの知事あるいは議会、経済界とも連携を取っていかねばならないことなのであって、アメリカの世論の醸成というものに向けても、我が政府として、与党の皆様方あるいは多くの皆様方の御協力もいただきながら実現を図っていきたいというふうに考えております。

 いろいろな材料はプラスに使ってまいりますが、我が国として、撤回、それは見直しという言葉に置き換えてもいいのかもしれません、それを求めることも重要ですが、アメリカの指摘というものに対してどう応えていくのかということもきちんと用意をしていかなければ、それは交渉が成り立たないということでございます。

田村(智)委員 今起きていることは、そうやってアメリカが何を求めているのかということを知って、それで何かの合意をしても、またその合意が一方的に破棄される、そういう危険性さえあるという状況なんですよ。トランプ大統領自ら合意したことを破棄しているんですから。前の政権が合意したことじゃないんですよ。トランプ大統領が合意したことを破棄しているわけですから、日本との関係でいうと。

 だからこそ、何かの交渉カードじゃないですよ。全面撤回をするために、これはアメリカのためにもならないんだということをやはり伝えていかなきゃならないと思います。

 このときに、日本だけ除外してほしいという交渉、これをすべきではないと思います。世界各国がこういう協定違反、一方的な破棄をやられているわけですから。同時に、貢ぎ物外交、これは絶対にやってはならないと思います。

 アメリカが何を求めているか。今、USTR、アメリカ通商代表部からは、農産物の更なる市場開放、コルビー国防次官からは、防衛費GDP比三%などの声が既に起きています。こうした要求に応える、これでは国民に対して大変な犠牲が強いられることになっていく。

 ですから、こういう要求に応えることはない、今回のトランプ関税の交渉で、このことを明確にしていただきたいと思いますが、いかがですか。

石破内閣総理大臣 私は、日本だけよければいいなぞという不見識なことを言った覚えは一度もございません。

 しかしながら、日本は、るる申し上げておりますように、最大の投資国であり、最大の雇用創出国であり、そして、唯一という言い方にはいろいろな含みがございますが、同盟国でございます。その日本とほかの国を同じ扱いにしていいわけがないということと、日本さえよければいいということは全く違う議論でございますので、その点はお間違いのないようにお願いをいたしたいと思っております。

 安全保障の面におきましても、あるいは農産物を始めとする貿易の面におきましても、日本の国益を害して交渉を行うつもりは全くございません。

田村(智)委員 日本は最大の投資国だからと、ここを強調すれば、だから日本は除外してくれという交渉になり得ちゃうんですよ。これをやったら、今、トランプ関税というのは世界からの批判に遭って、まさにこのままでは通用しないという状況の下で、日本がどういう交渉をするのか。日本は最大の投資国ですよということばかり強調していたら、私は日本もアメリカと一緒に孤立しかねないと思います。

 最後に一点だけ要請させてください。国内対策。

 今、自動車メーカーは、まずは調達や生産コストの削減で経営への影響を抑えようとしています。トヨタ自動車幹部、まずは原価をどう低減できるか考える、こういうふうにNHKの取材にも答えています。これでは、取引先企業へのコストカットの圧力、非正規切り、賃金抑制、こういうことが大規模に起きかねません。

 コストカット型経済そのものになりますので、是非、トヨタ自動車などへの聞き取りを行って、労働者や取引先企業への犠牲、転嫁しないよう、経済界に要請を行ってほしい、このことを求めて質問を終わります。

安住委員長 これにて田村さんの質疑は終了いたしました。

 以上をもちまして本日の集中審議は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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