衆議院

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第1号 平成31年2月26日(火曜日)

会議録本文へ
平成三十一年二月二十六日(火曜日)

    午前九時三分開議

 出席委員

   委員長 野田 聖子君

   理事 井野 俊郎君 理事 後藤 茂之君

   理事 坂本 哲志君 理事 田中 和徳君

   理事 堀内 詔子君 理事 宮下 一郎君

   理事 逢坂 誠二君 理事 渡辺  周君

   理事 伊藤  渉君

      秋本 真利君    伊藤 達也君

      石崎  徹君    石破  茂君

      今村 雅弘君    衛藤征士郎君

      小田原 潔君    小野寺五典君

      大岡 敏孝君    奥野 信亮君

      神山 佐市君    河村 建夫君

      佐々木 紀君    笹川 博義君

      鈴木 俊一君    田野瀬太道君

      竹本 直一君    武田 良太君

      中谷 真一君    中山 泰秀君

      野田  毅君    平沢 勝栄君

      古屋 圭司君    星野 剛士君

      宮澤 博行君    村上誠一郎君

      盛山 正仁君    山口  壯君

      山本 幸三君    山本 有二君

      吉野 正芳君    小川 淳也君

      大串 博志君    本多 平直君

      矢上 雅義君    早稲田夕季君

      後藤 祐一君    階   猛君

      白石 洋一君    西岡 秀子君

      山井 和則君    太田 昌孝君

      岡本 三成君    藤野 保史君

      宮本 岳志君    浦野 靖人君

      松原  仁君

    …………………………………

   公述人

   (株式会社大和総研政策調査部長)         鈴木  準君

   公述人

   (弁護士)        明石 順平君

   公述人

   (富士市産業支援センターf―Bizセンター長)  小出 宗昭君

   公述人

   (国際政治学者)

   (東京大学政策ビジョン研究センター講師)     三浦 瑠麗君

   公述人

   (SMBC日興証券株式会社金融経済調査部部長)

   (金融財政アナリスト)  末澤 豪謙君

   公述人

   (法政大学キャリアデザイン学部教授)       上西 充子君

   公述人

   (大阪府中央子ども家庭センター所長)       江口  晋君

   公述人

   (立正大学法学部客員教授・税理士)        浦野 広明君

   予算委員会専門員     鈴木 宏幸君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  秋本 真利君     星野 剛士君

  石崎  徹君     神山 佐市君

  石破  茂君     中谷 真一君

  河村 建夫君     武田 良太君

  中山 泰秀君     佐々木 紀君

  吉野 正芳君     宮澤 博行君

  川内 博史君     矢上 雅義君

  奥野総一郎君     山井 和則君

  宮本  徹君     宮本 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  神山 佐市君     石崎  徹君

  佐々木 紀君     中山 泰秀君

  武田 良太君     大岡 敏孝君

  中谷 真一君     石破  茂君

  星野 剛士君     秋本 真利君

  宮澤 博行君     吉野 正芳君

  矢上 雅義君     川内 博史君

  山井 和則君     白石 洋一君

  宮本 岳志君     宮本  徹君

同日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     河村 建夫君

  白石 洋一君     奥野総一郎君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 平成三十一年度一般会計予算

 平成三十一年度特別会計予算

 平成三十一年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

野田委員長 これより会議を開きます。

 平成三十一年度一般会計予算、平成三十一年度特別会計予算、平成三十一年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成三十一年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず鈴木準公述人、次に明石順平公述人、次に小出宗昭公述人、次に三浦瑠麗公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、鈴木公述人にお願いいたします。

鈴木公述人 おはようございます。

 大和総研で経済政策などの調査をしております鈴木準と申します。

 本日は、このような機会をいただきまして、大変光栄に存じます。

 平成三十一年度総予算の御審議に御参考としていただきたく、当該予算に賛成の立場から意見を述べさせていただきます。

 まず、経済状況について簡潔に申し上げます。私の資料の一ページ目をごらんくださいませ。

 二〇一二年十二月から始まりました景気回復、現在もそうですけれども、時折踊り場的な様相を見せつつも、戦後最長になった可能性があると言われております。

 二〇一三年第一・四半期からの六年、二十四四半期の経済成長率は、年率で実質一・二%、名目で一・八%でございまして、長期的に目指すべきと考えられます実質二%、名目三%以上には届いていないわけでありますけれども、以前と比べて相当な明るさと活力が感じられる状況であると認識しております。

 それは、失業率ですとか有効求人倍率に見る雇用情勢で顕著でありますし、企業の設備投資や業況判断、生産動向、株価、中小企業や地方への波及状況など、総合的、客観的に見てそう言えると考えております。

 消費も言われているほど悪いとは見ておりませんで、この姿というのは、二〇一四年四月に消費税率を三%ポイント引き上げることをこなしながらの実績でございまして、国民生活基礎調査によりますと、暮らしぶりが苦しいとする人の割合はここ数年連続して低下をしているということは、正当に評価されるべきではないかと思っております。

 今後については、特に海外リスク要因、これに目配りが必要でございますけれども、二〇一九年度、二〇年度、ならしますと、実質一%弱、名目一%強ぐらいの成長は見込めるのではないかと思っております。

 もちろん、楽観しているわけではございませんで、二ページにお進みいただきたいと思いますが、二〇一三年以降の経済の展開が、果たして、循環的なものではなくて構造的なものなのかどうか。あるいは、経済のメカニズムとして民間の新陳代謝が活発になっているのか、それとも海外経済要因とかあるいは一時的な政策の下支え、これの寄与が大きいのかどうか。さらには、名目ベースでよくなっているのか、それとも生産性の向上を伴った実質ベースでよくなっているのか。

 ここは、私は、構造的なもの、内生的なもの、実質的なものに向かっているというふうに思っておりますけれども、その度合いはどのぐらいなのかというのは、まだ見きわめられておりません。

 といいますのも、内閣府さんから示されている中長期の経済財政に関する試算を見ますと、潜在成長率の上昇は想定よりも後ずれをしております。これは、だから問題と言いたいわけではありませんで、今何か官民が取組をすれば来年から潜在成長率がいきなり上がるというものでは本来ないわけでありまして、潜在成長率というのは、労働と資本の量、それから労働と資本の質、それから労働と資本の組合せ方の巧拙、うまい下手、これによって決まるものでありまして、その引上げには時間がかかりますし、上がったかどうか見きわめられるのは五年や十年かかる、そういうことであります。

 その意味では、人づくり革命だとか生産性革命と言われている政策を絶え間なく続けることが必要でございまして、三十一年度予算というのはそれに即した予算であろうと思います。

 構造的によい方向に向かっている度合いが十分わからないという点では、財政も同じでございます。

 国と地方を合わせた基礎的財政収支、PBは、一三年度、一四年度、一五年度とかなり改善を見せましたが、一六年度から一八年度にかけましては改善ペースが鈍りました。

 もっとも、一六年度から一八年度というのは、経済財政諮問会議を中心に、経済成長と財政健全化を両立させるための集中改革期間ということで、各府省がさまざまな改革の種まきと水やりを相当にやってきております。

 新しい経済政策パッケージの策定もあって、PBの黒字化目標は二〇年度から二五年度へ先送りされましたけれども、今後は、その種まきと水やりをしている改革の進捗ですとか、あるいはその効果のあらわれ方を見定めつつ、一九年度から二一年度の基盤強化期間で改革の深掘りをしていく必要があると思っております。

 一九年度予算というのは基盤強化期間の初年度予算ということで、歳出改革の取組が継続されている予算であると一定の評価ができると思っております。

 さて、改めて、三ページでございます、我が国の財政状況でありますが、九二年以降、国、地方を合わせたPBが黒字になったことはありません。政府債務の残高が小さい状況でPBが黒字と赤字が循環的であれば問題はないわけでありますが、長期的、構造的にPBが赤字ですので、債務残高はGDP比で見て積み上がる一方であります。

 仮にPBが均衡しているとすると、財政赤字は金利分だけになりますので、金利と成長率の関係を考えながらPBをコントロールすれば債務残高GDP比をマネージすることができるわけでありますが、日本の場合は、バランスシート調整下で資金需要が非常に停滞した、あるいは国債管理政策が浸透するプロセスだった、あるいはデフレ脱却のための金融政策がずっと行われているということで、債務残高の巨額さの割に金利負担が小さい状況が続いているために、金利負担のことは余り考えずに済んできたということもございます。

 しかし、今後は、デフレ脱却が進めば進むほど、成功すればするほど、それから民間経済に活力が戻れば戻るほど、債務残高が巨額であるだけに金利負担が大きなものになるおそれがございます。

 つまり、PBを均衡、黒字化させたとしても、金利負担で財政収支赤字が思ったほど小さくならないという心配がありますので、経済の実力以上の金利上昇なんかが起きないように、財政の構造を持続可能なものにしていく必要が非常に高いというふうに考えております。

 この点、よく経済がよくなれば税収がふえて自動的に収支が改善するということを期待する向きもあるわけでありますが、例えば、物価が上がれば、これは年金のマクロ経済スライドを除けば、政府支出も物価分ふやさざるを得ません。それから、物価でなくて実質所得がふえた場合も、例えば、公務員賃金ですとか、医療や介護に従事される方の賃金も上げていかないといけないということでありますから、実質成長で財政問題が解決するというものではないと思います。

 もちろん、経済成長がないと、必要な歳出改革ですとか、場合によっては必要な国民負担増ということも行うことができませんので、その意味では経済成長は絶対に必要ですけれども、成長してもしなくても財政改革は必要だということだと思います。

 四ページにお進みくださいませ。

 債務残高GDP比が上昇し続けると、なぜ問題なのか。

 一つは、上昇し続ければ、これはどこかで破綻するということであります。ただ、破綻しなくても、高水準の債務というのは家計も企業も持続可能ではないと疑いますので、問題であると思います。

 どういうことかといいますと、その必要があるのに債務残高GDP比の上昇を政府が本気で食いとめようとはしていないというふうに人々が考えるときには、それ以外の政策もどこまで本気なのか疑われるということでありまして、成長戦略にしろ、規制緩和にしろ、FTAの拡大にしろ、それは一時的に今の政権が言っているだけだというふうに企業経営者が考えたとすれば、これはリスクをとった投資が起きません。

 投資が起きなければ生産性が上がりませんので、潜在成長率も上がりません。低い潜在成長率に見合う金利も当然に低いままでありますので、生産性を上げる主体ではない政府だけがお金を使って債務残高がふえ続けるけれども、金利は一向に上がらない、こういう非常に陰うつとした状況が続きかねないということであります。

 五ページにお進みください。

 なぜ日本の財政が悪化が続いているのかということですが、最大の要因は社会保障費の増大であろうと思います。

 五ページで、税の会計から社会保障の会計へ大規模な資金の繰り出しが制度的に行われていて、いわば、何か投資しているわけではなくて、その日その日の支払いで税の会計が経常的な赤字に陥っている状況であります。

 六ページでございます。そのことを示しております。右の図は、国と地方の財政収支のこれまでの改善と悪化の要因をGDP比で分解したものでございまして、格子柄になっているところが社会保障への公費負担であります。九〇年代以降、常に収支悪化要因となっております。

 社会保障は必要なことを行っているのだということではありますけれども、社会保障というのは、資金的には財政制度を通じて運営されている以上は、財政が破綻すれば社会保障も破綻することになります。今の時代、やった方がいいということはもう無限にあるわけでありますから、人々が求める社会保障の水準と、その財源、国民負担と組み合わせて検討しませんと、超高齢社会は乗り切れないだろうというふうに思います。

 七ページでございます。

 これはまさに過去の財政改革では社会保障費の取扱いが難しかったということでありまして、財政構造改革法のときには社会保障関係費の歳出上限を緩めたり、あるいは、骨太方針〇六のときは国費の二千二百億円カットというのが行き詰まりを見せたりしました。社会保障費をいかに合理的に、また多くの納得を得ながら改革を進められるかどうかが鍵だと思います。

 八ページにお進みいただきたいと思いますが、社会保障費は今後もふえ続けると見込まれております。

 ここに幾つかの長期試算を載せておりますけれども、上から二段目、昨年五月に四府省合同で出された成長実現ケースの試算を見ますと、年金、医療、介護の名目給付が、現在の百兆円前後から二〇四〇年度には百九十兆円近くになる。ここに子供、子育てなども含めますと、現在、GDP比で二一・五%の給付が最大二四%ぐらいまで増加するということでありますので、現在のGDPでイメージすると、毎年十三兆円くらいの給付増が恒常的に、毎年生じる見通しになっているということであります。

 団塊世代の後期高齢者入り、それから団塊ジュニアの高齢化、こういったものが大きな要因ですが、医療の高度化なんかが更に進めば、給付増の幅はこれよりも大きくなる可能性があると思います。

 そこで、九ページでありますが、さまざまな改革が社会保障の各分野で必要ということなのですけれども、九ページで、経済が成長してもしなくても必要ということをちょっと御説明させていただきます。

 これは直近の内閣府の中長期の経済財政に関する試算でありますが、二〇二五年度のPB赤字が、成長実現ケースで一・一兆円、GDP比〇・二%、ベースラインケースで六・八兆円、GDP比一・一%というふうに試算されています。

 これについて、成長実現ケースは楽観的だという評価があちこちで聞かれるわけでありますが、この六つのグラフのうち、上段の左と下段の、下の段の左、上下で見ていただくと、成長実現ケースでは物価や賃金がより上昇しますので、社会保障関係費が名目でかなりふえているように見えます。

 しかし、それぞれ真ん中の、今度、上下の真ん中をごらんいただきますと、このふえ方というのは、消費者物価で実質化しますと、成長実現ケースでは二〇年度以降はほぼ横ばい、逆にベースラインケースでは少しずつふえています。

 ここで、成長実現ケースで実質の社会保障給付を長期にこうやってふやさずにいられるものだろうかというふうに疑問が湧きますし、それから、ベースラインケースでは実質でふやしていることが収支が改善しない一因であろうというふうに思います。

 さらに、上下の右側でございますけれども、これは生活水準で実質化したもので、国民一人当たりのGDPでデフレートしています。考え方として、物価プラス生産性上昇分ですから、賃金で実質化していると言いかえてもよいと思います。

 実は、成長実現ケースでは、賃金で実質化しますと、社会保障関係費を長期に削減しているという結果になっています。高齢者数がふえる中で総額を減らしているわけですから、いわば年金、医療、介護全体の所得代替率を下げている、そういうことでありまして、ここまでサービスの抑制を行うというのはかなり厳しいものであるようにも思うわけであります。

 つまり、地方交付税もその他の歳出も全部そうですけれども、物価ベースにしろ賃金ベースにしろ、成長してもしていなくても、一定の実質的な給付抑制となるような改革を進めませんと財政の持続性は確保できないだろうということであります。先ほど申し上げたように、経済成長は絶対に必要ですけれども、成長すれば改革をしなくてよいというのは幻想に近いのではないかと思います。

 そこで、十ページでございますが、二〇一五年夏ごろから進められているのが、経済成長と財政健全化の二兎を追う経済財政一体改革であります。

 政府は毎年借金を重ねているわけですが、それは、誰かが貯金をしているか、誰かが借金返済をしていることと両建ての関係になっているはずであります。

 ことしの借金を小さくするために歳出を単純にカットしますと、これは国民の受益水準が下がるばかりか、需要が減って誰かの消費や投資を減らしかねない。結局は、輸入が減って経常黒字がふえてしまうとか、あるいは税収が減って政府の赤字がふえるかということに帰着する可能性が高いと思います。

 政府が財政収支の赤字を小さくしようとするならば、したがって、政府が支出を減らす分、企業の投資や家計の消費をふやす必要がある。

 これは、社会資本整備の分野で申し上げれば、PPP、PFIを強力に推進するですとか、メンテナンス産業を育成していくとか、あるいは、地方行政でいえば、住民サービスのアウトソーシング、これは民間にいろいろなことを委託していくとか、これはわかりやすい例だと思います。社会保障の分野でも、医療や介護の供給サイドの改革というのはもっともっと進める余地があると思いますし、予防、健康ビジネスを拡大させる、年金分野では民間の金融機関の役割を拡大させるなどなど、さまざまなアイデアがあり得ます。

 一言で申し上げれば、公共、公的サービスの産業化でありまして、歳出の抑制は必要なんですけれども、単純な歳出カットではなくて、公共、公的サービスを成長の一つのエンジンにするという発想であります。

 もちろん、そこでは政府自身の、あるいは自治体自身の生産性向上も大きな課題ですので、自治体や保険者などの現場が、ほかの自治体や保険者とどう違うのかという課題を認識できるように状況を見える化して、改革に頑張った現場が報われる、そういう制度設計、インセンティブの設計が改革の鍵の一つであります。

 十一ページをごらんいただきたいと思いますが、サービスの改革だけではなくて、社会保障改革というのは、保険料抑制というチャネルで成長戦略としての性格を有しているとも考えております。

 この十一ページの左側の図表で示しましたように、最近ようやく額面の収入がふえたり、減り方がモデレートになったとしても、保険料がふえてしまって、可処分所得はその分ふえない。せっかく賃上げしても、それでは消費が活性化しないということであります。

 後ろの方に参考資料を載せておりますが、今、家計の負担額とか負担感が強い、大きいのは、消費税ではなくて社会保険料であります。年金保険料は一応法律上の上限に達しましたので、今後は医療や介護の保険料をどうしていくかが大きな課題であります。

 というわけで、十二ページから十五ページには昨年十二月にまとめられた新経済・財政再生計画の改革工程表の概要を載せさせていただいております。

 十二ページでございますが、この改革工程表というのは、ざっと百二十以上の個別具体的な改革事項の方向性ですとか進め方、あるいは検討の期限などについて、百八十ページにわたって、ちょっと厚過ぎると思うんですけれども、記述されております。この私の資料の十二ページでは、それらの取組がどのようなロジックで政策目標につながっていくのかを定量的に把握するKPIの見直しを行ったということなどが書かれております。

 十三ページは非常に重要な見取り図でございまして、下半分の、主な取組というところをごらんいただきますと、まず最初の一年、つまり、ことしは雇用改革を行いつつ、それから、ことしを含む今後三年間で全世代が安心できる社会保障制度への改革を行うとありまして、その下に、具体的に、二〇二〇年度にそれまでの改革のレビューを行った上で政策をまとめて、それを基盤強化期間内、つまり、どれだけ遅くとも二〇二一年度から順次実行に移すということが明確にされております。

 もちろんこれは政府の方針であって、必要な法律改正事項があれば、これは立法府でもちろん御議論をいただくということになるわけでありますが、団塊世代の後期高齢者入りのタイミングなどを考慮しながら、各府省の皆さんが利害関係者とさまざまに御調整されながら頑張っておられる、そういう状況だと思います。

 予算は単年度主義であるわけですが、平成三十一年度予算というのは、こうした数年先までの構想の中で、一つの哲学も持たせた予算であるというふうに思っております。

 十四ページと十五ページは、主要分野ごとの改革の主な取組でございますので省略をさせていただいて、最後、ちょっと結びにかえて、来年度予算で裏打ちされた政策を進めていただくためにも、留意点を数点申し添えたいと存じます。

 第一に、政府経済見通しの二〇一九年度は名目成長率二・四%と民間の予測と比べて高目でございますので、税収が予想どおりになるか、注視する必要があると思います。

 第二に、一九年度予算では、恐らく一時的と見られる税外収入が比較的大きいように見えます。二〇年度以降は、ですから、それはなくなるということを考慮した予算編成が次の年は求められるというふうに思います。

 それから第三に、消費税増税に伴う臨時特別の措置、これについてはやはりテンポラリーなものとするということが条件だろうと思います。

 それから第四に、来年度予算を拝見しますと、社会保障費の自然増からの抑制、これは、薬価引下げですとか、あるいは既に決まっていた介護納付金の総報酬割の導入、これなどで捻出されておりまして、今後は、より広範な給付と負担の見直しについて、今後、着実に御検討を進めていただく必要があると思います。

 それから最後、第五に、EBPMを推進する観点からも、今揺らいでおります統計の信頼性回復、これに努めていただきたいというふうに思います。

 以上、私の公述とさせていただきます。御清聴大変ありがとうございました。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

 次に、明石公述人にお願いいたします。

明石公述人 皆さん、おはようございます。弁護士の明石と申します。

 それでは、私からは、賃金とGDPについてお話をさせていただきます。

 この資料をごらんください。

 まず賃金についてですが、二〇一八年一月に毎月勤労統計調査における賃金の算出方法が変更されまして、賃金が大きくかさ上げされました。要因は下記の三つです。ここにあるパネルは、長妻先生が国会で使用されたものをそのまま引用させていただいております。

 一番目がサンプルの一部入れかえ。二番目がベンチマーク。ベンチマークというのは、これはちょっと難しい概念なんですけれども、賃金を算出する際に使う係数のようなものだと思ってください。それから三番目、復元処理。これは、東京都における五百人以上の事業所について三分の一しか抽出していなかったため、それを三倍して復元した、そういうものです。

 例えて言いますと、一番目のサンプル一部入れかえというのはちょっと背の高い別人に入れかえて、二番目のベンチマーク更新がシークレットブーツを履かせて、三番目が頭にシリコンを入れた、これで身長を伸ばしたということですね。

 しかし、三は、残念ながらばれましたので、さかのぼって修正したんですね。

 しかし、ここが重要なんです。一と二については、さかのぼって修正せず、そのまま二〇一七年と比較しています。つまり、ちょっと背の高い別人に入れかえて、シークレットブーツを履かせたままなんですね。普通はさかのぼって改定するんですが、それをなぜかしていません。そのため、賃金が異常に伸びる結果になってしまいました。

 三ページ目、ごらんください。

 これは、毎勤の公表値における前年比伸び率ですね。二〇一三年から二〇一七年までの五年間で一・四%しか伸びなかった名目賃金が、二〇一八年のわずか一年間で一・四%伸びるという異常な結果になっています。なお、実質賃金については前年比〇・二%のプラスになっています、二〇一八年が。

 算出方法の異なるものを比較した伸び率は、これは端的に言って、うその数字であると思います。

 統計法六十条二号は、「基幹統計の作成に従事する者で基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為をした者」を「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」としています。公表値は真実に反するんですから、これに該当して、統計法違反になるのではないかと私は思っています。

 次、四ページ、ごらんください。

 こんなにかさ上げしたんですけれども、それでもしょぼい結果になっているんですね。アベノミクス前との比較がしやすいように、二〇一二年を一〇〇とした賃金と物価の推移を見てみます。左側のグラフですね。

 別人の身長を比較するような手段を講じても、二〇一八年に消費者物価指数が一・三ポイント伸びていますので、結局、実質賃金は〇・一ポイントしか伸びていないんです。ほぼ横ばいです。

 アベノミクス以降、二〇一四年の消費税増税に加えまして、無理やり円安にして円安インフレを起こしたため、物価は急上昇しています。それが名目賃金の伸びを大きく上回った結果、実質賃金が大きく落ちているんです。二〇一八年はアベノミクス前より三・六ポイントも低いです。

 なお、以前は原油価格の下落により、ある程度円安インフレが相殺されていたんですが、二〇一七年ごろから原油価格が上がってきましたので、物価が再び上昇傾向になっています。

 ところで、新規労働者がふえて平均値が下がったから実質賃金が下がったというよくある反論はデマです。平均値の問題なら、名目賃金も下がらなければいけませんが、ごらんのとおり、名目賃金は下がっていません。ただ単に、名目賃金の上昇を物価上昇が上回ったから、実質賃金が落ちているんです。

 こんなに悲惨なので、実質賃金マイナスという結果を出したくないのかなというふうに思ってしまいます。

 五ページをごらんください。

 統計委員会は、賃金の伸び率については共通事業所同士を比較した参考値を重視せよと言っています。しかし、厚労省は、なぜか参考値の名目賃金伸び率のみ公表し、実質賃金伸び率についてはかたくなに公表しません。ちなみに、年平均についても公表していません、名目値について。

 ところが、実質賃金の伸び率というのは、名目賃金の伸び率と物価の伸び率がわかれば簡単に出せます。

 実質賃金指数というのは、名目賃金指数を消費者物価指数で割って、百を掛けます。これで算出しています。ここで言う指数というのは、ある時点の数値を一〇〇とした数です。なので、前年同月からの伸び率に単純に百を足すと、前年同月を一〇〇とする指数になります。

 そして、名目賃金指数と消費者物価指数の前年同月からの伸び率は公表されていますので、それぞれの前年同月を一〇〇とする指数を算出できます。

 二つの指数がこれでそろいますから、前年同月を一〇〇とする実質賃金指数も算定可能になるんです。

 このように、前年同月を一〇〇とする実質賃金指数を計算することにより、実質賃金伸び率、参考値の実質賃金伸び率を算定したのが次のページの表です。六ページです。

 この計算表については、野党合同ヒアリングでも出したことがありまして、計算すれば同じような結果になるであろうと厚労省の官僚も認めています。

 これを見ますと、参考値の実質賃金伸び率の年平均は、右下をごらんください、マイナス〇・三です。これが実態です。

 七ページ、ごらんください。

 グラフにするとよりわかりやすいんですけれども、参考値の実質賃金伸び率がプラスになったのは、去年、たったの二回しかないんです。あとは、ゼロが一回、マイナスが九回です。プラスになったのは六月と十二月で、これはボーナス月だからです。

 このように、非常に悲惨な状況なので、公表したくないだけだと思われます。名目は参考になるが実質は参考にすべきではないなど、あり得ません。参考値の実質賃金伸び率も早急に公表すべきです。

 そして、公表値の伸び率は、先ほど申し上げたとおり、異常にかさ上げされたうその数字なんですから、公表をやめるべきだと思います。

 では次に、実質賃金の下落が何を招いたかについて説明します。

 これは実質民間最終消費支出といいまして、我が国の実質GDPの約六割を占める数字なんですけれども、実質民間最終消費支出は、二〇一四年から二〇一六年にかけて、三年連続で減少しました。これは戦後初の現象です。

 二〇一七年はプラスに転じたんですが、四年も前の二〇一三年を下回っています。この四年前を下回るという現象も戦後初です。

 実質賃金の大きな下落は、戦後最悪の消費停滞を引き起こしています。これは、国民の生活が全然向上していないことを意味します。景気回復の実感がないのは当たり前です。

 しかし、GDP改定のどさくさに紛れて行われた異常な数字の調整がなければ、もっとひどい数字になっていました。これは、物すごくかさ上げされた後の数字なんですね。

 次はそれについて述べます。次のページをごらんください。

 次は、GDPの改定についてお話しします。

 二〇一六年十二月八日、内閣府はGDPの算出方法を変更し、それに伴い、一九九四年以降のGDPを全て改定して公表しました。

 要点は下記の四つです。一、実質GDPの基準年を平成十七年から平成二十三年に変更。二、算出基準を一九九三SNAから二〇〇八SNAに変更。これは国際的な算出基準でして、これに変更することによって、研究開発費などが上乗せされますので、大体二十兆円ぐらい上乗せされます。三番目、ここが最も重要です。その他もろもろ変更しているんです。これは、国際的な算出基準とは全く関係ありません。そして四番目、一九九四年までさかのぼって全部改定しました。

 次のページをごらんください。十ページです。

 左側のグラフ。改定前、二〇一五年度の名目GDPは、ピークだった一九九七年度と二十兆円以上も差がありました。

 しかし、右側を見てください。改定後の差は、わずか〇・九兆円になっているんです。二十兆円あった差が、ほとんど消えているんですね。

 次のページをごらんください。これは改定前後の差額を抽出したグラフです。

 ごらんになるとわかるんですけれども、かさ上げ幅は、アベノミクス以降が突出しています。ウナギ登りですね。金額でいうと、二〇一五年度は、アベノミクス直前、二〇一二年度の一・五倍もかさ上げされています。

 そして、九〇年代との差が異常ですね。二〇一五年度、三十一・六兆円かさ上げですけれども、例えば一九九四年度を見てください、六・八兆円しかかさ上げされていません。異常な差なんですね。

 次、十二ページをごらんください。これは名目GDPの改定前後の差額の内訳です。

 注目していただきたいのは、この表の一番下にある「その他」ですね。改定要因は、大きく分けると、一番目、「二〇〇八SNA対応」によるものと、二番目、「その他」の二つなんです。

 「その他」については、この一行がぴいっと書いてあるだけで、「その他」の更に詳細な内訳というのは、この資料ではないんですね。これは改定当時に内閣府から公表されていた資料なんですけれども。

 次、十三ページをごらんください。

 まず、二〇〇八SNA対応部分のかさ上げ額と率を示したグラフです。かさ上げ率を見ますと、一位から三位までを全てアベノミクス以降が占めているんですね。これもちょっと怪しいんですけれども。

 ただ、次のページをごらんください。

 「その他」については、もう比較になりません。すごいことが起きています。「その他」のかさ上げ額を見ますと、アベノミクス以降だけが急激にかさ上げされています。アベノミクス以降のかさ上げ平均値は五・六兆円です。

 他方、九〇年代は全部マイナスなんです。平均値を出すと、マイナス三・八兆円もかさ上げされています。

 つまり、この「その他」の部分だけで、九〇年代とアベノミクス以降で約十兆円も差がついているということになります。

 次、十五ページをごらんください。では、一体この改定値から「その他」を引くとどうなるのか。これを示したのが、このグラフです。

 平成二十三年基準から「その他」を引きますと、右の図ですね、二〇一五年度は一九九七年度に遠く及ばない結果になります。その差は十三・四兆円。「その他」で数値が大きく調整されたことで、二〇一五年度が一九九七年度にほぼ追いついたということがわかります。

 この「その他」によってアベノミクス以降のみ異常にかさ上げされて、九〇年代は逆に大きくかさ下げされる現象を、私はソノタノミクスと言っています。このソノタノミクスによって歴史の書きかえが行われているというふうに思っています。

 では、十六ページですね、次。

 「その他」は一体どこに充てられたのかなんですけれども、改定前後の名目民間最終消費支出の差額と「その他」のかさ上げ額を比較しますと、アベノミクス以降のみ、三年度連続でほぼ一致します。「その他」で異常にかさ上げされた数値が、アベノミクスで最も失敗した民間消費に充てられたように見えるわけです。

 ですから、先ほど見た実質民間最終消費支出というのは、こういうふうに思いっ切りかさ上げされた後の数字なんですね。思いっ切りかさ上げしても、あんな悲惨な結果になっているということです。

 次、十七ページをごらんください。

 ここで引用しているのは、さきの総選挙の際に自民党広報のアカウントがツイートしていたツイートですね。ソノタノミクスによって二〇一六年度の名目GDPはめでたく史上最高を更新し、二〇一七年度はそれを更に更新しました。自民党広報のツイートは、これを「過去最高の水準です。」と自慢しております。まさに大本営発表と言っていいのではないかと思います。

 では、最後に、これは私の著書の画像なんですけれども、アベノミクス全般の失敗については、私の「アベノミクスによろしく」という本で詳細に書いてありますので、ぜひお読みになってください。そして、最近発売した「データが語る日本財政の未来」では、このソノタノミクス現象についてより深い分析をしております。

 ソノタノミクス問題は、この一連のアベノミクス偽装の本丸ですから、今後も国会で追及を続けていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございます。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

 次に、小出公述人にお願いいたします。

小出公述人 富士市産業支援センターのセンター長の小出でございます。

 本日は、このような場にお招きいただいて、非常にありがたく思っております。

 私は、この二十年近くにわたって、公がつくりました中小企業支援あるいは創業支援の世界に身を置いておりまして、その最前線で、日本の九九・七%たる中小企業や小規模事業者の皆様方のサポートを行っている立場でございます。

 今回は、その立場において、我々自身がどんな考え方でどんな取組をしているかにおいて皆様方に聞いていただく中で、国の予算における経済産業の支援のあり方あるいは中小企業庁の支援や予算のあり方について御検討していただければなという思いでお話しさせていただきます。

 私ども富士市産業支援センター、エフビズは、二〇〇八年の八月に、静岡県富士市が施設設置をした公の支援センターなんですね。それを民間の我々が担って運営するという公設民営スタイルの、極めて珍しいスタイルの支援センターとして始まりました。

 最近は、この二ページに見ていただくとおり、ちょうどこれはついせんだって、二週間ぐらい前でしょうか、NHKのBS1スペシャルでその特集が報道されたり、あるいは、昨年におきましてもクローズアップ現代でその取組が報道されるなど、あるいは、日経新聞においてもその手の報道がされたり、あるいは、その次のページ、五、六ページを見ていただきますと、朝日や毎日の夕刊の一面トップで報道されるような取組になっております。

 これはどういう背景かと申しますと、二〇〇八年の八月にスタートした富士市産業支援センター、エフビズのモデルが、全国、現在、今二十一都市で展開されている。同じモデルを全国に展開されるような流れというのは恐らくこれまでになかったというふうに言われていまして、恐らく地方創生という切り口の中においても最も注目されているような取組ではないかというふうに言われておる次第でございます。

 では、私自身はどういうキャリアかと申しますと、もともと、一九八三年に株式会社静岡銀行に入行しまして、銀行には二十六年在籍しておりました。銀行の中において行っていた一番主な業務は、MアンドAのアドバイザー業務を十年近くやっておったんですけれども、四十一歳のときに銀行のトップから出向の命が下って、静岡県がつくった創業支援施設の立ち上げと運営をやれというような指示がありまして、当初二年間の約束だったんですけれども、たまたま物すごくうまくいった背景もございまして、現役の行員としては、七年半出向するという極めて異例的な取組を静岡銀行はやっておるということなんです。

 その間、静岡県の施設のほか、静岡市がつくった大きな中小企業支援センターの立ち上げと運営、それから浜松市の支援センターの立ち上げと運営と、都合三つの公の、全然性格の違うものを立ち上げて運営してきたわけなんです。

 ちょうど二〇〇八年になりまして、私の生まれ故郷富士市、故郷を離れて三十年もたっておったんですけれども、御多分に漏れず地方都市は非常に厳しい状況でございまして、経済の状況がどんどんどんどん悪化する中で、考えてみると、地域の企業の雇用や経済というのは、結局九九・七%が中小企業、小規模事業者なわけですから、実際、経済を担って、雇用を担っているのは中小企業、小規模事業者であろう、そこをもう一度活性化させることによって町の経済を再浮上させることができないかという考え方のもと、新たな支援センターをつくる計画を立てました。

 ただし、そのときに、これまでのあり方だけではだめであろうということで全国調査したときに、ハードが立派でもだめであろう、結局ソフトが重要であろう、ソフトは何かということは、恐らく人だろうということに気がついたのは、富士市は大変賢明だったと思います。そんな中、たまたま私が富士市生まれであることに気がついて、静岡銀行からの出向の立場でやっている私をスカウトして、銀行をやめて支援センターの立ち上げと運営をやってくれということで、二〇〇八年の八月、スタートしたわけでございます。

 その間、実は中小企業庁の皆様方も私の動きに対してすごく関心を持っていただいて、二〇〇五年ぐらいからさまざまな政策づくりにかかわらせていただきました。現在は、中小企業政策審議会の委員としていろいろなお手伝いもさせていただいているわけなんです。

 そんなエフビズの取組を国はどういうふうに注目していたかというと、九ページの資料を見ていただきますと、これはちょうど二〇一三年の八月三十日に経産省が発表した二〇一四年度の概算要求の資料なんでございますけれども、当然、アベノミクスの中でもど真ん中でやらなきゃならないのは、九九・七%たる中小企業、小規模事業者の活性化だろうと。そういう中で、経営支援を強化するという名目のもと、新たによろず支援拠点というようなプロジェクトを立ち上げるに当たって、明確に富士市産業支援センターがモデルと銘打って展開したわけでございます。こんな形で、私も現在よろずの方にもお手伝いさせていただいているんです。

 金融庁や財務省の方はどうかというと、当然ながら、地域においては、中小企業の活性化においてその任に当たらなきゃならないのは私が在籍しておったような地域金融機関なわけですけれども、残念ながら、さまざまな取組をやっている中で、効果的な中小企業支援のあり方というのが提示できないというふうに見られております。そんな中、金融庁幹部からたびたび御要請があって、地域金融機関の中小企業支援のあり方そのものについていろいろな御提言をさせていただいているわけでございます。

 十一ページの資料を見ていただきますと、これはちょうど十年前の経産大臣室の写真をちょっと載せさせていただいておりますけれども、実は、私、ずっと経産省、中小企業庁の皆様方とお手伝いをさせていただく中で、やはり彼らの取組というのは非常に的を得ていて、問題点であるとか課題については明確に抽出ができているんだろうというふうに考えております。さまざまな取組を一緒にやらせていただいたり見せていただいておりますけれども、国がつくっている制度やハードに大きな問題はないんだろうというふうに思っているんですね。問題は恐らくその運用であろう、そこにかなりの課題があって、期待されているような成果が出ていないんではないかということが、実はこの写真の会議の席でも、物すごく強い危機感のもと発言されておられました。私もその席におったわけなんですけれども。

 それを下の表で見ていただきますと、失敗の三法則、これまでの公の産業支援が何でうまくいかないのかについて、三つでキーファクターをまとめてみますと、まずは目標を立てていたにしてもその管理が甘かったり、あるいは危機感が欠如してしまったり、いわば予算を四月に受け持つと、中身がどうであれ、三月に報告書を出すとちゃりんとお金が支払われるような仕組みそのものにも大きな問題があるだろう、こんなふうに考えておるんです。

 では、民間の僕はどういうふうに考えたか、今がうまくいっていない状況をどういうふうに判断したかなんですけれども、これは、当然ながら、経産省や中小企業庁の皆様方の見立てとは全然別の見立てで現在も考えておるんです。

 およそ全国あまたの企業、大企業も含めていいと思うんですけれども、経営上の課題や悩みや問題点を抱えている企業というのは一〇〇%なわけですよ。全ての企業が課題や悩みや問題点を抱えているだろうと。同じ一〇〇%が今よりもよくありたいと思っているに違いない、そう思っていなきゃやめちゃいますから。

 とすれば、そこの相談窓口に行けば、自分たちの経営がよくなるというところがあるとすれば当然行列ができるだろう、結果が出ているところがあるとすれば当然行列ができるだろう、一体そういうものがあるかないかということで考えたときに、残念ながら二十年前に僕が公の産業支援の世界に身を投じたときにそんなものは見当たらなかった中で、では、我々とすると、民間として任されたわけだから、民間の考え方でやれば具体的にこんなことができるということを提示しようというふうに考えたのがエフビズの取組だったんですね。

 それが十三ページなんですけれども、支援という言葉は余りにも曖昧だからはっきりさせてしまおうと。課題や悩み、問題点を抱えていて、みんながよくありたいと思っているんだから、我々がなすべきことなんて単純明快で、課題や悩み、問題点を受け入れてよくする。課題を解決してよくするのはビジネスコンサルに決まっているだろうと。ビジネスコンサルである以上、求められているのは結果だけだ。結果が出ていれば、来る相談件数が活性化のバロメーターだ。こんなふうに考えたんですが、実は、これまで、例えば国の会議に出ても、結果というとどういうふうに言われちゃうかというと、結果の基準が曖昧だというふうに逃げられたりもしていた。だから、そこを明確に、いや、そうじゃない、相手が望んでいることが具現化できたら結果に決まっているだろうというふうに考えました。

 来る相談件数が活性化のバロメーターだということに関しては、これまでの会議の議論ですと、自分たちはこれだけ立派な支援メニューをそろえているんだけれども、うちの町にはそれを積極的に使いに来るようなやる気のある経営者が少ないから来ないんだというふうに片づけられていた節があった。僕は、そうじゃないと思っているんですね。

 我々は括弧公とつくけれどもサービス業ですから、サービス業でいえば、今の議論というのは、例えば、レストランのオーナーがこう言っているわけですよ。うちはこれだけ魅力的なメニューをそろえているんだけれども、うちの町には味のわかるやつがいないから来ないんだよねと言っているのと一緒じゃないですか。これは、何で来ないかというと、多分、おいしくないからだろうと。

 つまり、これまでの産業支援において、そこに相談者が来ないというのは、そこに行っても自分たちの経営が具体的によくなるというふうなイメージが抱かれないから余り来なかったのではないかというふうに考えました。

 ですから、エフビズにおいては、十四ページの写真、ちょっとモノクロで恐縮なんですが、これは全て、我々の知恵やアイデアで生まれた新商品や新サービスなんですね。これはこの直近の五年間ぐらいで生まれたものなんです。豆腐屋さんの新商品だったり、あるいは製紙会社の新商品だったり、六次産業化のスーパーヒット商品だったり、さまざまなものを生み出しているから、地域の人たちは、エフビズに来るとこうなるというイメージがつくから来るだろう、こういう話なんですね。

 その次のページにあるのはお菓子屋さんなんですけれども、これもまた、それぞれのお菓子屋さんにおいて看板商品として位置づけられるような商品を我々自身のアイデアで生み出した、こんな感じなんですね。それを結局、これも、具体的にはお金をかけないで結果を生もう、知恵やアイデアで流れを変えていこうというようなコンサルティングを目指したわけでございます。

 その出た結果を具体的に見える化することが必要だろうということで、SNSを使って、私どもの場合はブログが実は四本もあって、日々のエフビズの姿が四本のブログで発信されているとともに、フェイスブックを通じて、やはりフェイスブックも五本ぐらいありまして、地域の人たちに知らしめることによって呼び込もうと。もう一つは、パブリシティーも意識しておりまして、結局、いろいろな成果が出るものですから、我々の活動そのものがメディアを通じて発信されるから、地域の人たちはイメージする、こういう話だと思います。

 こんなふうになると、十九ページを見ていただきますと、これが私どもの相談者の推移なのでございますけれども、今現在、二十五万人の町の富士市の支援センター、エフビズには、月間三百七十件の相談者が来ております。八割が既存の中小企業者、残りの二割が創業者というような割合ですね。九割の方々が口コミで来るような現象なんです。

 こんなような現象が出るとどうなるかというと、全国の地方自治体が、うちの町でもそれができるんじゃないかというように考えたわけなんですね。私どもの考え方というのは、こういうことなんです。我々のようなちっぽけな支援センターでは、一社で百人の雇用を生むようなイノベーションは起こせないんです。これは無理なんです。でも、一方で、一社に対してきちんとしたサポートをすることによって、一社で一人の雇用を生むことは現実的に可能、それが百社になれば百人の雇用を生みますよという考え方なものですから、これはどんな地域でもそれが自分たちで引き込むことができるだろうというふうに考えていただきました。

 それが、この日本地図に置きますと、北は北海道から南は熊本まで、全国、今二十一の市町村が、みずからの予算を出して、同じようなエフビズモデルというものをつくっております。

 これまで、この手のことをやると、必ず地域性ということを盾に、なかなか、そんな一つの町で、例えば富士市でうまくいったものが、ほかの町でうまくいくのかというふうにおっしゃられましたけれども、そんなことは全くなくて、先ほど申し上げましたとおり、全ての事業者が今よりもよくありたいと思っている、あるいは、一社で一人の雇用を生むことで、百社であれば百人の雇用を生むというのは、どこの地域でも反応するわけでございます。一番大きな都市でいうと、福山のような五十万の都市でもあれば、極端なところでいえば、壱岐の島、壱岐市ですね、二万七千人の離島であっても同じような現象が起きている、こんなようなことがエフビズの生む現象です。

 ただし、問題なのは人なんです。今回の予算の中でもプロフェッショナルな人材という言葉がありますけれども、本当のプロ、この手のことができるのは、知恵やアイデアを生み出すことができるような非常に高いコンサルティング能力を持っている人、高いコミュニケーション能力を持っている人、情熱を持っている人を引っ張り出さなきゃいけない。これは、恐らくは、これまでのような資格や経験をベースに人を引っ張るんじゃだめだと思ったんですね。

 ビジネスエリアの最前線で大活躍している人を引っ張り出してこようということで、募集と選定に三百万ぐらいの予算を出してもらって、民間の転職会社と組みながら応募すると今どうなるかというと、一回の都市の応募に対して、少ないときでも百五十人、多いときになると四百人からのビジネスエリアのトップエリアの人たちが応募してくるんですね。その中からぴかぴかの一人を選び出すというような流れをとっているのがこれなんです。

 例えば、この写真にある方ですと、写真の上の真ん中にいる福山のプロジェクトマネジャーの池内さんの前職は、あの世界の名門ブランド、バリーの日本法人の社長さんなんですね。年収は相当高かったはずなんですけれども、これ、全て年収千二百万のポジションなんですが、年収大幅ダウンでもおりてくる。どうせ働くんだったらば、自分のためとか会社のためというよりも、人のため、地域のために汗を流したいというような考え方の人がふえているんだという現象だと思います。

 左の下にある、壱岐のセンター長の森君というのは、渋谷の物すごく有名なベンチャーで、森の図書室というプロジェクトで、もういろいろなメディアにも取り上げられていたようなベンチャーだったんですが、渋谷の町から壱岐の島に移住して、彼がセンター長をやっている。釧路のセンター長の澄川君というのは、リクルートのエースです。大垣のセンター長の正田君というのは、エイチ・アイ・エスのエースなんですね。こういう人たちを選び抜いて、選び抜いた上で三カ月間うちで研修させて、その上で現場に突っ込む、こんなようなやり方をやっております。

 その次のページを見ていただきますと、各地の新聞においても、行列、行列、利用向上というような記事が出ているのは、彼らのパフォーマンスがいかに高いかということがわかっていただけるんじゃないかと思います。

 こんなエフビズなんですけれども、生まれた当初から、二〇〇八年の段階から、どうせ始めるなら全国各地の産業支援のロールモデルになっていこう、地域創生、地域活性化のフロントランナーになろうという形で今まで走ってまいりました。

 創業支援については、その次の表を見ていただきますと、この五年間で二百四組の創業者を生みました。その中で生まれた雇用は四百三十四人なものですから、確かに、起業家が生まれれば雇用は生まれるだろうということがこのあたりからわかると思います。

 こんなことをやりながら、地域の中で根を張りながら十年間やってきたわけですけれども、具体的にどんなことをやっているかについて、その後のページ、三十一、三十二ページあたりからお話ししてみたいと思うんですけれども、とにかく、先ほど申し上げましたとおり、私どもは、具体的な知恵やアイデアを出しながら、新たな小さなイノベーションを起こしていこう、それによって活性化させようというふうに考えております。具体的に、売上げを上げ、利益幅を上昇させるような取組をしていこうというところなんですね。

 一番代表的で有名になったのが━━━というケースで、これを最後に御紹介させていただきたいと思うんですけれども、これは、三十三ページから、以下、ちょっと見ていただきます。

 ━━━さんというのは、一九八九年に創業された自動車部品の下請企業なんですね。切削加工を主にやっておりました。従業員十三名で頑張っておったんですけれども、私どものところに相談に来た段階においてはどういう状況だったかというと、売上げが激減していたんですね。バブル破綻以降、売上げがどんどん減少していて、もう全く先行きの見通しが立たないというような状況で━━━━━━━社長さんが相談に来られました。

 私どもが最初のミーティングの中で指摘しましたのは、今までの産業支援というと、問題点の指摘をしたり、あるいは分析をするという手法をとるんですけれども、まあ、病院で例えてみるとわかると思うんですけれども、来た患者さんに対して、CTスキャンをかけて、血液検査をやって、患者さん、ここが問題ですね、悪いようですよと指摘したところで患者が治るわけもなく、具体的な治療あるいはオペをしない限りにおいては健康体になるはずもないわけでございまして、私どもは、とにかくヒアリングする中で、光るところは何かということを見つけていくんですね。

 本人たちはなかなかセールスポイントがないと言う中で、私どもが見出したのが、この会社は売上げの九五%が自動車部品の切削加工で、そこが売上げが激減しておったんですが、残りの五%のところで試作部品をつくっていることを聞き出しました。それを更に聞いてみますと、実は物すごい短納期でやっているんだ、三日で納品をしているんだということをおっしゃっていました。それを普通にやっていることだとおっしゃるものですから、いや、普通じゃないはずだろうと。およそ、試作部品だったらば一日でも早い方がいいに決まっているということで、初回のミーティングで、具体的なサービス名、試作特急サービススリーデーというような新サービスを始めることを提案したわけです。

 それによって何が起きたかというと、直後の三カ月で新規の取引先が五十先とれたと。実はここまでは想定内だったんですけれども、更に驚いたのは、彼らのウエブサイトを見て、これまでは全く取引のなかったある自動車メーカーから直接電話が来て、来た仕事というのは何かというと、電気自動車の部品の試作なんですね。もう利益率は数倍以上ですよ。今や、━━━の売上げ全体の三分の一はそのメーカーと直にやっている電気自動車の試作の仕事なんですね。

 その話を聞いて更に我々も驚きまして、まさかそんなに高い技術力だと思っていなかったものですから、その上で具体的な提案を私どもの方からまたしまして、であるならばということで、実は、全国あまた、クラシックカーのマニアというのはたくさんいることはわかって、皆さんも御存じかもしれませんけれども、そのメンテナンスパーツを供給するというサービスがないことに気がつきまして、それを提案いたしました。部品再生一一〇番というサービスなんです。

 これで展開したところ、全国のマニアから来ただけではなくて、今度はまた別の自動車メーカーから直接それにアクセスしてまいりまして、━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━今やそれが、売上げ全体の五〇%以上がその━━━━━━━の仕事をやっているという形で━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 最後の写真、三十六ページにある写真というのは、昨年の四月、新たな工場用地を取得して、新社屋をぶっ建てたというところなんですね。

 こういう会社におきましては、人材不足の会社であっても、どんどんどんどんいろいろなエントリーがあるというふうに聞いています。━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━もう本当に行き詰まっていた会社がこれだけもうかるようになるような支援をするのが我々の仕事だと思うんですね。

 さらに、最後に加えさせていただきますと、実は、この会社、事業承継問題を抱えておりました。後継者がいなかったんです。

 そんな中で、後継者問題の解決のすべとして考えなきゃいけないのは、結局、私、かつてMアンドAをやっていた立場から最後に申し上げさせていただくと、実は事業承継問題が顕在化するタイミングというのがありまして、これは何かというと、後継者がいないという問題と業績不振がクロスすると一挙に問題が大きくなっちゃうんですね。逆に言うと、後継者が当面見当たらなくても、もうかっていれば誰かがやるだろうということだと思うんですね。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ですから、恐らく求められているのは、今申し上げたような具体的な結果を生むような支援だと思っています。国のつくっている政策、とてもいいと思うんです。それを、更に運用のところに踏み込んでいただいて、我々のような支援がもっともっと進んだらうれしいかなと思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

 次に、三浦公述人にお願いいたします。

三浦公述人 おはようございます。国際政治学者の三浦と申します。

 意見陳述の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 お手元に資料がございまして、今、米中間における日本がとるべき外交の方向についてということで、予算そのものというよりも、その基礎にあります国際情勢認識について、我が国とのかかわりも考えながら意見を述べさせていただきます。

 ページをめくっていただきまして、米中貿易戦争はどこまで激化するのかということについてですが、まず、民間の報道等あるいは国会の議論を拝見しましても、米中貿易戦争というもの、このワーディング自体、非常に刺激的な、戦争という言葉が入っているわけですが、それに加えまして、新冷戦である、その時代に突入したという認識が多く見られます。

 ただ、新冷戦にもし突入したとするならば、日本の経済が受けるダメージというのは非常に甚大なものになるばかりか、安全保障に関しても、このままの体制では先行きが不安になる、そのような状況だということをまず踏まえて、どのぐらい深刻になり得るのか考えてみたいと思います。

 中国の内政についてですが、現在、ポスト習近平と目される人物は存在しません。そして、中国は権威主義体制でありますが、ただ、やはり万全の体制というものは存在しないのでありまして、習近平体制を支えるのは両輪ですね。一つの車輪はまず、安定的な経済成長、そしてもう一つの車輪が、政治的なライバルを蹴落とす、反腐敗の政治闘争ということだと思います。

 そのどちらが欠けても危ういという観点からすると、中国経済に今あるリスク要因を考えますと、今、米中が本気で対決する状況になると習近平政権の権力基盤にも影響が出てくるということで、そもそも妥協のインセンティブが存在するということです。

 その妥協のインセンティブですが、権威主義体制といえども、やはり民意というのは重要になってきます。その民意を、私、この五年ほど、日中韓それぞれ二千サンプルの、詳細は三ページ目に示されておりますとおり、インターネットパネルでの調査を行ってまいりました。そこで、中国の対米認識というものを、次の、めくっていただきまして、四ページ目のグラフからごらんいただきたいのですが、このデータ自体は二〇一八年の年末からことしのお正月ぐらいにかけて集めたサンプルでございます。

 これを、結果をごらんになりますとわかりますように、アメリカに対する好感度はまだまだ、これはティア1からティア3までの三十都市ほどの都市圏に限られますが、好感度は六二%と高い状況を保っています。前年に比べますと四ポイント低下してはいますが、やはり、中国の調査はできていませんが、先進国の調査を主に幅広くやっておりますピューリサーチセンターの数字などを考えると、軒並みアメリカの同盟国における対米好感度が半減というような状況である。それを考えますと、異様に高いほどの数字であるということが言えます。

 また、特に日本において中国の国民感情というのはなかなかわからない状況かと思いますが、数字が示しますとおり、日本や韓国に対する好感度が上昇しています。

 中国の国民の対外認識というのは、これは中国に限らずなんですが、主に左右される要素というのは、その人個人の経済状況、これから上向くかどうかという、将来に対する楽観が一番影響してきます。あるいは、その人が働いているビジネス、会社における海外との取引のこれからの伸びに対する期待とか、そういった経済的な状況によって実は日韓に対する好感度が上がっていった、米国に対してもそれほど悪化はしていないということなんですね。

 ただ、やはりリスクとして考えられるのが、五ページ目のグラフです。これは、昨年と比較してみました、中国人の米国産品、サービスの不買運動ですが、特に何も行動を起こさなかったという人がやはり一五ポイントほど減っている。そして、その国の産品、サービスの消費を減らしたと訴える人が四割超えをするなど、やはり、多少ではありますが、米国に対する不買運動の認識が中国で広がってはきている。

 ただ、ここであくまでもお気をつけいただきたいのは、やはり、米国に対する不買運動はかつてはほとんど存在しないような微々たるものであったのに対して、日本や韓国に対しては中国国民は頻繁に不買行動を行ってきたという点です。

 つまり、その国のサービス、産品は買わないようにしたという人がまだまだ二割超え程度であることを鑑みると、日本に対する悪感情による不買行動の方がまだ水準としては高いということなんですね。それが今の、都市部に限った点ではありますが、中国人の対米認識ですね。

 めくっていただきまして、六ページ目、これも実は重要なグラフなんですね。これは私がずっと設問設計しておりますので、非常に多様なプラスのイメージが示されています。これを、例えば中国人であれば、米国や日本、韓国あるいはロシア、インドといった多様な国について同時に聞いているのですが、やはり平均値が非常に高いのが米国に対するこういうプラスのイメージですね。

 どういうふうにこのグラフを読み解くかといいますと、ちょっと色が白黒なので見にくいんですが、上の方の、二つの線がまるでかぶっているように推移しているグラフの方は、プラスの、イエスと答えたような人たちの割合ですね。ごらんいただきますと、ほとんどの指標が五割を超えている。つまり、過半数以上の人が対米イメージについてこのような多様なプラスのイメージを持ち続けており、この一年間でほとんど何も変わっていないということですね。

 このプラスの要素は、好感度に最もきくものというのは、例えば信用できるとか、あるいは友好的である、平和的であるというものであることは、これは各国比較で明らかなんです。つまり、中国人と米国人の関係であろうとあるいは日中関係であろうと、人々の対外意識の好感度にきく要素というのはグローバルに普遍であるということになります。

 そうすると、どこをいじれば好感度が上がるのかということは、これは日本の外交もこういった要素分析を通じてパブリックディプロマシーをしていただきたいものなんですが、ただ、ここからあらわれてくるのは、もうひとえにアメリカのソフトパワーの強さでございます。

 この中でも、イノベーティブであるとか、自由であるとか、公平であるとか、豊かであるとか、こういった要素が、中国人がなぜアメリカに対して高い点数を比較的つけるのかということは、自分たちもそのような国になりたいな、ああ、いいなという感情なんですね。つまり、アメリカに対してうらやましいという気持ちが果たして憎しみに変わるのか、あるいは自分たちも努力してそのような国になりたいと思うのかということは、実はこれは、過去、ツキディデスにさかのぼっても、戦争や対立を構成する重要な要素である嫉妬や恐怖、憎しみといった要素にどれだけつながっているのかというのは、やはり注意して見る必要があります。

 そこで、二ページ目に戻っていただきたいんですが、中国は、やはり中国人全体の、特に都市部ですが、対米感情は決して悪くない。しかも、合理的な国益の観点からいいますと、熟した柿がぽとりと落ちるように、レジデンシャルパワーではないアメリカが自動的に自分で嫌気が差して太平洋の向こうにお帰りいただくのを待つというふうな戦略が最も合理的である。つまり、客観的な国益とそれから民意の両方の観点から、中国には今、米国との本気での新冷戦をするだけの理由がないということになります。

 そして、米国についてごらんいただきたいんですが、米国の状況は多少違ってまいります。

 というのも、中国は、人口の観点からいっても、あるいはこれからの技術革新やそういったポテンシャルについても、アメリカよりもよい要素がたくさんあります。そうすると、アメリカはどうやったら技術覇権や経済覇権をめぐる争いで中国に対して有利な立場に立てるのかといいますと、実は、最大の武器は、世界じゅうに張りめぐらした同盟国ネットワークということになります。

 どうして同盟国ネットワークが意味があるのかというと、それは、成熟した大きな市場であるアメリカに加えて、その他同盟国の成熟市場を自分たちのリーダーシップのもとにまとめ上げることができるからです。言葉をかえて言えば、中国を排除するに当たって、同盟国のネットワークはアメリカにとって最大の武器となるということです。それは我々日本にとっても大きなインプリケーションを生むわけです。

 ただ、先ほど中国人の対米感情について申し上げましたように、アメリカ人の人々の中に潜む対中恐怖症というものが本当に存在するのかということについては、よくよく考えておかなければいけません。つまり、現在、ハリウッド映画なども中国市場に大幅に依存する中で、中国に対する憎しみなどというものはおよそ存在し得ないレベルにまで経済的相互依存が深まっているからです。

 ただ、アメリカは、やはり商業や工業を中心とした国家でございまして、非常にビジネスマンの地位が高く、政治に対する影響も大きい。そのような中で、技術覇権をとらないといけない、譲らないぞというかたい決意を持っている人が多いことは確かです。そのような経済ナショナリストとそれから安保重視派の人たちがたまたま連合を組むことができたことによって、今、アメリカは対中強硬論が盛んになってきています。

 ただし、ペンス副大統領の演説の落としどころも最終的には中国の長年言われてきた構造改革であることからわかりますように、最終的な要求というものは決して完全なる新冷戦の復活ではないというふうに私は見ております。

 ただし、このような、そこまで新冷戦に拡大しないという見解を述べさせていただいたところで、一つ注意点を喚起したいと思います。既に、米国が始めた米中貿易戦争の余波は民間のさまざまな分野に及んでいるからです。

 実業の方々はおわかりと思いますが、既に、融資のつき方、あるいはどのような技術を選ぶのかについてのそんたくなど、今後ビジネスに欠かせない、不確実性をなるべく低める、リスクを低めるという観点において影響が出始めているからですね。とりわけ金融機関のリスクを織り込む判断の中にこうした米中貿易戦争の要素が入ってきているということについては、政治が思っている範囲よりも更に更に拡大してこういった経済的なダメージが行われるかもしれないということです。

 ちょっと飛んでいただきまして、七ページをごらんください。七ページは、今の米国政治の状況を俯瞰したものでございます。

 今、大統領選に既に突入したとも言える米国政治の中では不毛な対立が多くなってきていますが、そのような不毛な対立は、トランプ大統領にとってはむしろ政治的にプラスに働く可能性があります。それは、二〇一六年の大統領選で既に、トランプさんが失言をすればするほどトランプさんが登場するエアタイムがふえるという状況、あるいは、人々の中でもトランプ支持者の熱狂的な層が動員されるということを通じてプラスに働くということです。

 ただ、問題は、共和党のトランプさん化によって、民主党もミニトランプ化が起きているということです。とりわけ、現在、大統領選に対して出馬を表明している民主党系の議員の中からは、実現不可能なポピュリズム的な税制改革案やあるいは分配をめぐる論点というのが出てきています。そういった実現不可能な案によって、国民の期待を必要以上に拡大させるとともに、経済に大きなダメージを与えかねないというふうな懸念があります。

 そうすると、これは共和、民主問わずなのですが、財政が今逼迫している状況ですので、しかも、今後、軍事技術に対する投資なども減らせない支出が織り込まれているので、同盟国に対する要求はどんどん、どっちの党を選んだとしてもエスカレートしていくだろうということです。

 とりわけ、トランプ外交独自のリスクということでいいますと、これはいいのか悪いのか、リスクなのかそうでないのか、ちょっと不明なところがありますが、今までネオコンなどと呼ばれる人たちが推進してきた、民主化をする、世界に民主主義を広めるという発想を、トランプ大統領の登場によってアメリカは捨ててしまったかのように見えるからです。それ自体は戦争を減らすことは確かです。しかも、学術的に言っても、民主的平和論よりも商業を通じて平和を導こうという方が多少平和にきくというふうな結果も出ています。

 ただ、この商業的平和論をとりますと、平和の代償として価値相対主義がとられるようになり、同時に、自由主義などの価値観を共有してきた同盟国に対する特別扱いが減り、さらに、踏み絵を迫るかのような利用、同盟国に対する利用もふえていくんだろうということになります。そうすると、我々は、米国以外のネットワークを選ぶことができないので、アメリカに対する脆弱性にさらされるということになります。

 今後、しかし、民主党が選ばれたらどうだろうかということを多少シミュレーションしておきますと、民主党は今、急進派と主流派に分裂していますが、支持者に圧倒的に支持が多いのが急進派です。ただ、この急進派は資本主義を害しかねないような極端な改革案をぶち上げているほか、あるいは、実際に、フェークニュースと呼ばれるものは、実は右派だけではなく左派に多く浸透していることが見られます。

 例を挙げますと、上院の情報委員会で資料が提出されたことから明らかなように、ロシア発の選挙に対する介入工作は主に黒人をターゲットに行われていた。そして、黒人は伝統的に民主党支持者であったわけでございます。そうしますと、フェークニュースが左右両極で展開され、結果的に非常に醜い政治が行われるだけでなく、現実的に同盟国にとって、あるいは世界の経済や平和にとってよい選択肢がどちらの党ならとられるというふうな確信が持てない状況でございます。

 また、国際平和の観点からいいますと、トランプの岩盤支持層が孤立主義なのはわかっていることですが、エコノミックナショナリズムというふうな形で多少なりとも関与をしようとしているのに比べると、民主党はもう少し内向きということが言えますし、シリアなどからの撤退に関しては、急進派はトランプさんと実はいささかも変わるところがございません。

 さらに、中国のリスクについてお話を進めてまいりたいと思います。

 詳しくはレジュメに書いてございますので、言葉は尽くしませんが、やはり中台情勢がちょっと緊迫しているというのが気になるというのに加えて、中国に対してようやく先進国が見方を修正して、日本が感じてきたリスクを認識しつつあるということが言えます。

 ただ、これは、単に軍事的な競争とかだけではなくて、民間企業として中国に進出していった企業がこうむるリスク、あるいは東南アジアなどにおいて中国と競合する企業が受けるリスクなどについても目配りが必要でございます。

 九ページをごらんいただきまして、日本の脆弱性についてお話を申し上げます。

 日本は、先進国で最も安全保障を米国に依存している国です。そして、対GDP比の防衛費は約一%水準ということで、これは、お隣の韓国が二・六%であり急激に防衛費をふやしていることから考えると、数年以内に韓国が日本の防衛費を上回るだろうということが予想されます。

 また、NATOなどが四%水準を要求されたりして、二%水準までには近づけている国が多いのに対して、あるいは豪州が二%水準を早々と達成したのに対して、日本は、米国に、やはり同盟国として応分の負担をしていない、あるいはフリーライダーであるというふうに批判される材料をたくさん抱えております。しかし、我々はニュージーランドではないのでありまして、見逃してもらえる規模の経済ではなく、我々が持っている貿易黒字はやはりインパクトがあるということです。

 しかし、自主性を高めようとすれば、それに反対する人々が日本国内には多く存在します。また、前線に位置する国家ではないために、同盟に対する期待も基本低いということで、実は、見捨てられる懸念は余り強く認識されないのに対して、巻き込まれ懸念が強く認識されています。

 では、日本は、勃興する大国、中国と組めるのかということを十ページ目でお示ししたいと思います。

 日本は、不健全な反中意識を抱える国です。およそ、前年の水準でいうと、対中好感度は一一%。そのような国の状況で中国と組めるわけがありませんが、なぜ不健全な反中意識と申し上げるかというと、これは、日本人の強い反中感情が、主にその人の経済的な世帯収入の増加見込みあるいは減少見込みによって左右されるからでございます。

 ここまで現状を振り返ったところで、簡単に、まとめの十一ページと十二ページをごらんいただければと思います。

 まず、日本は、冷戦後、非常に変化が遅く到来した、あるいは失われた二十年に対処することを優先してきた国ですが、そろそろ、東アジアの外部環境が厳しさを増しており、建前を排して現実を受け入れるところに来ているのではないか。

 そして、これは安保法制のときにもさまざまに議論がありましたが、北朝鮮は事実上、核保有国化しました。中国は超大国化しています。ここまでは皆さん御同意のことだろうと思います。

 ただ、三番目の、米国の撤退傾向あるいは内向き傾向というものが冷戦期とはまるで異なる情勢の変化をもたらしているということは、余り議論されたことを聞いたことがございません。

 これから、核保有国が一カ国事実上ふえてしまったわけですから、新たな均衡点を模索しなければいけませんが、その中で、自主的、主体的努力を通じた同盟強化の方向性をとるべきであると考えます。

 また、日本が韓国に対してもろもろ言いたいことがあるのは承知していますが、米韓同盟が弱められるかどうかの方が大きなリスクであって、あるいは、日本が、韓国の北朝鮮に対する経済開発の期待などに誤った認識を持たないで、しっかり現実を見据えることも大事かと思います。

 最後のページですが、これからやはり米中のはざまで生きていく我々としては、中国の経済成長の果実を取り込まずに成長するなどということは不可能なのでありまして、いかに新冷戦といっても、中国との関係が断ち切られると、我々は経済的には死に直面するわけでございます。そこで、政治的な緊張はあれども、やはり経済的な交流をしっかり活発にしていくこと。

 そして、国会でよく議論がありますが、中国企業の対内投資や中国人による土地購入を疑問視する声がありますけれども、これはやはり中国の体制がわかっていない意見と言わざるを得ません。中国人は自国政府を信用しておらず、海外に対して投資をするチャンスを探っているというのが実情ですから、そういった中国排除ではなくて相互に依存する関係を構築していく必要があるかと思います。

 ありがとうございました。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

野田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。秋本真利さん。

秋本委員 自由民主党の秋本真利です。

 公述人の皆様におかれましては、お忙しい中、国会に来ていただきまして、そして大変貴重な意見を述べていただきまして、本当に心から感謝を申し上げます。大変参考になりましたし、勉強になりました。

 早速、その公述人の意見に対して質問させていただきたいと思いますけれども、明石公述人の方から、今回の統計に対する問題、あるいは安倍政権の経済に対する見方に対して、大変厳しい意見を頂戴いたしました。

 GDPというのは非常に、大変重要な統計でありまして、国民はこれをしっかりと見てさまざまな活動をしていくという中で、このGDPに対する信頼というものはしっかり確保されるべきであろうと私自身は思うわけであります。

 その中で、先ほど、かさ上げというような話もあったわけでありますけれども、鈴木さんもエコノミストとして専門家でありますので、ぜひ鈴木公述人の意見を、かさ上げしているんじゃないかということについて鈴木さんはどのような意見を持っているのかということについてお伺いをしたいというふうに思います。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。お答え申し上げます。

 GDP統計というのは、先生おっしゃるとおり、非常に重要な統計で、人々の生活水準、厚生水準、それから景気の動向、いろいろなものに使われているものであります。私も若いときからずっと使っているものであります。

 これは、生産、支出、所得分配、三面等価ですし、それから、部門間のさまざまなやりとりがフローとストック、これは非常に整合的につくられている、まさにシステム・オブ・ナショナル・アカウントでありまして、体系的な統計であります。

 これが、二〇一六年のあれは末ごろでしたでしょうか、最新の国際基準である〇八SNAに準拠されて推計方法の大きな改定が行われたということは、もちろん存じ上げております。

 GDP統計というのは、これは、経済活動がどんどん変わっております、デジタルエコノミーでありますとかあるいは知識経済ですとか、さまざま経済の活動が進展しておりますので、それに合わせて、経済構造の変化に合わせてやはり改定をきちんとやっていく必要がある統計だというふうに思っております。そういう意味では、日本は〇八SNAの適用というのは、実は国際的に見ると非常におくれたといいますか、むしろ遅かったというふうに思います。

 それで、今御質問のありました一六年の改定の中身について若干申し上げますと、国際基準対応でRアンドDが、これは設備投資である、資本化されたということでふえた部分はあるわけでありますが、それ以外で、統計のやり方が変わって、一三年、一四年、一五年あたりで国際基準対応以外で影響が出た部分というのは確かにありまして、私は、その内訳を見ますと、三分の一から二分の一ぐらいは、これは建設部門の産出額の見直しが行われたんだと。

 それまでは、建設資材ですとか建設の労務費ですとか、そういう動きで推計をされていまして、これはいわば建設業のマージン率を一定で推計していた。そうしますと、五年ごとの基準改定で非常に、産業連関表との関係で物すごい段差が生じてしまうということで、二〇一六年のときには、産業連関表と同様のやり方で生産額を推計する、これで五年ごとの改定幅を小さくしようとした。

 これは統計の精度の向上であると同時に、実際に今、建設業というのはマージン率を上げているんですね。マージン率を上げているので、そういう事実をまさに統計に反映させたものだということで、私の知る限りユーザーは、この統計を使うユーザーとしてはこの変更を歓迎しておりますし、かさ上げというふうには思いませんし、それから、これはあくまでも名目の世界でありますので、実質というのは全く、実質は投入デフレーターと産出デフレーターの差でまたいろいろ決まってきますので、今のは名目の話でありまして、実質はまた別の話。実質の消費との関係とか、これは全く別の話であります。

 以上でございます。

秋本委員 ありがとうございます。大変わかりやすい説明だったというふうに思います。

 統計というのは、国民に対してやはり信頼あるものでなくてはならないわけでありますので、今、公述人の意見も参考にして、国民の信頼を今後しっかりと、今まで以上にかち得るような政策展開をしてまいりたいというふうに思っているところでございます。

 来年度の予算で、来年度は大きな一つのトピックとして、消費税が上がりますよね。消費税が上がるという中で、当然それに対して、安倍政権、今回の予算委員会でも、例えば駆け込み需要に対する対策であるとか反動減に対する対策、あるいは軽減税率も含めて、こういった形でしっかりと対策を練って、しっかりとやるぞという姿勢を示しているわけですね。

 これは、決して、やはり上げたときに失敗してはならないという覚悟のあらわれだろうと思うわけでありますけれども、今回の二〇一九年の予算で安倍政権がとろうとしているこの消費税に対する対策については鈴木公述人はどのようにお考えになっているか、考えを聞かせてください。

鈴木公述人 今、臨時特別の措置も含めて、消費税を上げるに際しまして需要変動対策をとられるということであります。これは、一部には、やり過ぎではないかとか、それをやめたときまたどうなるのかという御議論があろうかと思います。

 ことしの十月に予定されます消費税率一〇%というのは、これは幼児教育の無償化ですとか社会保障の充実、それから軽減税率等を行うことで二兆円程度に抑えられる。一方で、臨時特別の予算措置、税制措置、合わせて二・三兆円の対策を講じるというふうに認識しております。

 このように、先生おっしゃるとおり、今回、失敗はできないということで、経済の影響を十分に乗り越えられるような措置を講じた。これは前回八%のときの状況を踏まえてのことだというふうに私は理解をしております。

 結果として、前回は景気の回復力が確かに、これは当然、実質所得を家計から政府に移すというのが消費税増税でございますので、景気が全く悪くならないということはそもそもないわけでありますけれども、その後の回復力が前回は非常に弱まったのではないかということで、今回、平準化に万全を期すということで総動員したというふうに思います。

 ただ、先ほど申し上げましたように、これはまさに平準化措置でありますので、そこで変に政策的に動きをつくってしまうと、またこれはある種のゆがみをもたらすということになりますので、必要な分だけを必要なだけやって、きちんとテンポラリーに終わらせるということは重要ではないかと思います。

秋本委員 景気が落ち込むというようなことが心配されているわけでありますけれども、景気という意味では、安倍政権は景気回復しているよね、かなり長い間景気回復がしていて、賃金の上昇もあるんだというような話を当然しているわけでありますけれども、一方で、国民の中には、その景気回復の実感がちょっと乏しいんじゃないかというような意見もあるわけであります。

 そのことについてどのように説明するべきか、鈴木さんはどのように考えていらっしゃるかということについて見解を聞きたいというふうに思います。

鈴木公述人 私は、経済の環境に関しては、もちろん注意すべき点は多々ございますが、基本的にすごく悪いという状況ではもちろんないというのは申し上げたとおりでありまして、この判断というのは、何か単一の統計ではなくて、さまざまな統計に基づく総合判断でございます。

 私は、仮に今の現状の例えば雇用の状況などを考えたときに、現状で負担増ができないとしたら、これは、全世代型社会保障、あるいは、二〇一二年の三党合意に基づいて、今回は介護一号保険料の軽減でありますとか年金生活者支援給付金というものをやるということのために消費税を上げるわけでありますので、そういう流れの中で、これまでの経緯の中で、今回負担増ができないとしたら、私は、日本の社会の先行きというのはやはり暗いと考えざるを得ない。

 今回、そもそも、五から八と八から一〇とでは経済に対するインパクトというのもかなり違う、前回ほど大きくはありません。軽減税率も入りますし、税収使途の変更もありますし、更に需要変動対策もありますので、これはこなせないということは私はないのではないかなと。

 もちろん、景気回復の実感がないという声に対してはきちんと応えていく必要があるわけでありますが、まさに消費税を上げる目的というのは、そういう社会保障の非常に目配りすべきところにそれを充てていくんだという、そのそもそもの増税の目的というところに立ち返ってこれは考えるべき問題ではないかと存じます。

秋本委員 ありがとうございます。

 次に、三浦公述人にお伺いをいたしますけれども、今、中国、対中との関係、あるいは韓国を含むこの極東のアジアの周辺のことについていろいろとお話を聞かせていただきましたけれども、残念ながら、今、韓国とは大変外交上厳しい状況にあるわけでありますが、一連のこの今韓国との間で起きている外交上の摩擦についてどのようにお考えになっているのかということについてお伺いをしたい。

 あと、今回、先週ですかね、安倍政権の方で経協インフラ会議というものを持ちまして、海外に出ていく日本企業をどういうふうにしていこうかということを決めていくような会議でありますけれども、そこで、今まで、原発を輸出していこうぜということが書いてあったものが初めて落ちて、再エネ、しっかり海外に売っていかなきゃいけないよね、特に風力、やらなきゃいかぬというようなことが記載をされたということが、先週大きくニュースで報じられました。

 ある番組で再エネに関する見解を述べていらっしゃるのを見て、今回、安倍政権が今とっているこの再生可能エネルギー、地球温暖化、COPとかもいろいろ関係があるわけですけれども、今後日本がとっていくエネルギー政策について、どういうふうにしていったらいいのかということについてどんな見解をお持ちになられているのかなということを聞きたいので、お願いをしたいと思います。

 それと、小出さんに、中小企業、九九・七%というのは大変もうそのとおりでありまして、やはりこの中小零細企業が元気にならなければ、地域の活力というのは生まれてこないんだろうと思います。

 九九・七%の中小企業で働く人は全就業者数の七割を超えるんじゃないかというようなことも言われておりまして、やはり地域にとってはこの中小零細企業に対する対策というのは非常に重要なわけであります。

 そうした中で、中小零細企業が、今、日本では大変残念なことに災害が多いですよね、多くなってきてしまっているという中で、やはりBCPというのは非常に重要なんだろうと思います。

 大企業は、BCPというのは非常に積極的に定めていますし、そういうBCPをつくっていくという能力にもたけているわけですから、ここは一定程度任せていてもいいのかなと、自助努力で。

 ただ、中小零細企業については、このBCPについては一定程度の、公的なセクター、あるいは何かしら手を差し伸べて、BCP、しっかりつくってね、あなたたちがもし万が一何かあっていなくなっちゃったら、やはり日本そして地域にとって困るよねというふうに私は思うわけであります。

 この中小零細企業に対するBCPの作成に対する支援というのはどうあるべきかということについてお考えを聞きたいというふうに思います。

三浦公述人 御質問ありがとうございます。

 韓国との外交関係についてですが、戦後、日本と韓国が和解をして国交を正常化させ、そして我が国が経済的な援助を提供してきたということが韓国の今の民主化の流れの中で必ずしもプラスに評価されていないという実情は、やはりしっかりと踏まえておくべきかと思います。

 それはどういうことかといいますと、まず、韓国のみならず各国、特に、例えば欧州ですと、ドイツの経済的な覇権、地域覇権に対して不満を覚えるような国々が、戦後の和解の問題を若干蒸し返したり、あるいは、個人の権利が拡大していく過程で今までになかったような論点が浮上しているということで、これは恐らく、韓国独自の問題点もありますが、グローバルな問題の中で、日本が決してほかの国々から不誠実に思われないような行動あるいは戦略が必要かと思います。

 ただ、レーダー照射問題については、レーダー照射をめぐる事実関係というのは既に明らかになってきていると思いますが、ただ、その事実関係を認めない韓国というものが一体どういうメカニズムによって生じてしまっているんだろうかということについて、やはり認識を持っておかなければいけない。

 つまり、日本においては、よく官僚のそんたくがある、ないということが言われますけれども、韓国も非常に官僚にそんたくが蔓延している。更に言えば、日本よりもより赤裸々な人事をめぐる権力闘争というものが存在する結果として、例えば今の韓国国防省がいかに韓国の政権に対して震え上がっているかという点についてもやはり、先方からちょっと承服しがたいような動画が出てきた際には、その分析をしなければいけないということで、恐らく、怒るのは国民の役割かもしれませんが、代議士の皆さんの役割としては、韓国の中がどうなっていくのか、今後の見通しも含めた分析が必要だと思うんですね。

 韓国に関しては、今後、進歩派に社会的な正義が存在するという状況は恐らく変わらないために、日本に対して親日的な政権がある日登場するという期待は抱かない方がいいと思います。

 そうすると、我々は、私もかかわって助言をさせていただいた防衛大綱でも、韓国の優先順位というのは著しく下げられているわけですが、韓国の側としても日本の優先順位を下げている。その中で、期待できないのであれば政府が最低限の外交をすべきと思いますが、民間の経済交流を毀損されてしまうと、これは、数少ない親日の人がより少なくなってしまうばかりか、自治体の観光、さまざまなインバウンドによる需要、そういうものがダメージを受けてしまう可能性があるということで、これは代議士の皆さんよりも地方の首長の皆さんの方が切実な思いを抱えているかもしれないので、そこら辺の御意見をしっかり踏まえていくことが必要かと思います。

 再生可能エネルギーに関しての御質問なんですけれども、再生可能エネルギーに関しては、日本は今、現在輸出はしておりますが、しかし、単独で日本が強みを持っている分野とはやはり言えません。

 というのは、日本国内で再生可能エネルギーというものが、例えば、開発が非常に難しい状況、あるいは、かつてのかなり高いFIT価格というものが非常に土地取引に投機性を与えてしまって、なかなか再生可能エネルギー、例えばメガソーラーなどがつくられないまま、土地ばかりが転売されるというふうな状況が多々ございました。

 これを経済産業省が整理をして、過去に遡及適用してまでFIT価格を見直すということをしているのですが、そこにおいて、やはり、事業者の数が減っている、あるいは海外系の金融機関が再生可能エネルギー事業から撤退するなどというような状況が今、昨年秋からことしにかけてございました。

 そういった輸出振興とともに、やはり国内でどうやってシェアを伸ばしていくのかということについて、場当たり的ではない、かつての高いFIT価格を再導入すべきとは思いませんが、しかし、現実的にどうやってシェアを伸ばしていくのかというふうなプランをぜひいただきたいなと思っております。

 ありがとうございます。

野田委員長 秋本さんの質問時間は終了しておりますので、小出公述人、申しわけございませんが、簡潔にお願いします。

小出公述人 中小企業のBCP対策なんですけれども、私どもは、静岡県におきましては、防災先進県ということもございまして、押しなべて相当数の中小企業者はBCPをつくっていると思うんですよ。しかし、問題になるのは、その見直しが行われているかということに対しますと、やはりつくりっ放しのところがかなり多いんじゃないかというふうに思っています。

 やはり、支援する立場からしてみますと、いわゆるBCPの専門家みたいな者をもっとたくさん輩出して、よりたくさんの中小企業者に対してそういったサポートが行われたらいいんじゃないかな、見直しあるいは再構築のサポートが強化されたらいいんじゃないかな、かように思っております。

 以上です。

秋本委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

野田委員長 次に、岡本三成さん。

岡本(三)委員 公明党の岡本三成です。

 公述人の皆様、きょうは、お忙しい中、大変貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございました。

 初めに、エフビズの小出さんにお伺いいたします。

 私、自他ともに認めます小出大ファンでして、二〇一三年、六年前にエフビズを訪問させていただいて以来、小出さんの本、熟読をしておりますし、さまざまなメディアでの報道も拝見をしております。小出さんが中小企業庁長官になっていただける日が来るのを私は本当に楽しみにしておりまして、日本全体をぜひ率いていただきたいと思っています。

 私、埼玉に住んでいるんですけれども、狭山市にもサヤビズをこの四月から開設いただけることになりまして、市長以下、市民も大変楽しみにしています。

 小出さんのこれまでの御経験の中で、私、本当にすごいなと思っているのは、全ての企業に必ずオンリーワンの強みがあると信じ切っていらっしゃるんですね。なので、ここ最近の本のタイトルは、「御社の「売り」を見つけなさい!」で、御社の売りをつくりなさいじゃないんですよ。どんな小さな事業者にも必ず売れるいいものがあって、それを見つけ出していこうとされているのが本当にすばらしいと思うんです。

 加えまして、日本の企業の物やサービスはもう既にクオリティーがすごく高い、クオリティーが低ければそれを高くするのは難しいんだけれども、もうすごく高いので、どうやって売っていくか、その販売先のマーケティングの気づきさえ与えれば、もういいものを持っているんだという、すごくポジティブな、前向きな姿勢というのが、企業の経営者そして従業員の方々にもすごくいいインパクトを与えると思うんです。

 エフビズを訪問させていただいて皆さんのお話を伺って、その支援されている企業にも訪問させていただいたんですが、その手法にびっくりしたんです、皆さんのビジネスコンサルティングの。

 どうしてかというと、普通のコンサルタントは、過去の財務諸表を見て、皆さんのBSがこうです、PLがこうです、ですからこうしなさいというのが普通なんですが、小出さんがあのときおっしゃったのは、いや、過去の財務諸表をどんなに見ても、それはどうして失敗したかということを物語っているだけで、どうやったら成功できるかというのはそこにはありませんと。小出さんは、ただひたすらその方のお話を聞くだけなんですね。ひたすら話を聞いて、過去の財務諸表等は一切ごらんにならずに、じゃ、こういうものはどうでしょうかと。

 そのコンサルティングの手法に大変驚いて感激をしたんですが、一方で、どうやったらそんな目ききのできる、いいアドバイスのできるコンサルタントを発掘していけるかということはもう大変高いハードルでして、小出さんみたいな方が全部やってくださればいいですし、小出さんの資料の中にありましたコンサルタントの方も、御自分で選別をして、各自治体に送る前に小出さんのもとで数カ月間、皆さんOJTをやっていらっしゃいますよね。

 こんなことが全ての自治体ではできないわけで、どうやれば、本当に、中小企業の方、小規模事業所の方々に、同じ目線で立って、結果にコミットして、いい気づきを与えられるようなコンサルタントを発掘できるかということについて、ぜひ御意見を伺いたいと思います。

小出公述人 ありがとうございます。

 先ほど御紹介しました二十一の自治体のケースというのは、全ての自治体がまず強い危機感を持っているわけですね。厳しい予算の中で、この新しいビズモデルをつくるに当たって予算を捻出して立ち上げていくわけなんですけれども、キーファクターは、今おっしゃられたとおり、人にあるわけです。

 これまで、なかなかそういう人というのは見つけ出せないだろうというふうに言われていましたが、しかし、私が考えておりましたのは、本当のビジネスエリアの最前線で結果を出している人たちというのは、我々が求めているところのビジネスセンスの高さ、コミュニケーション能力の高さ、情熱を持っている人がいるに決まっているとわかっておりました。その人たちをいかに引っ張り出すかだったんですね。

 これまで、プロフェッショナルな立場のこのような地域おこしの仕事あるいは中小企業支援の仕事というのは存在していなかったものですから、それをつくってしまおうと。それで、民間の転職支援会社と協力しまして、お金を出してもらって、公募しますと、大体一カ所には百五十人から四百人ぐらいの応募があるんですね。大体、首都圏から来るのが七割強だと思います。上場企業の役職員なんというのはもう半分ぐらいいるんでしょうか。その中からぴかぴかの一人を選び抜く。書類審査をやって、面接をしたい人を、それぞれ、私どもと私の弟子、それから行政サイドが二十人ずつ選びまして、それを最終的に五、六人に絞りまして、徹底的に面接するんですが、面接のやり方も全く違うんですよ。

 これまでですと、有識者の皆様方がいて選ぶんですが、我々の場合はそうではなくて、地元の中小企業の経営者の皆様方四、五人に来ていただいて、あと我々がいて、それぞれの企業はまさにその瞬間、具体的な経営上の課題や悩みや問題点を抱えているわけで、その場でぶつけるんですね、次から次に。それで、どう答えるか見ているわけです。その中で、最終的に、地域の中小企業の経営者が一体誰に相談したいかで選び抜く。

 だから、プロ野球でいうとトライアウトみたいな世界なんですね。それを繰り返しながらやっていると、実は応募者数というのは毎回毎回ふえているんです。直近ですと、今週末、大垣の副センター長の審査をやるんですが、何と応募が二百五十五人もございました。その中からぴかぴかの一人を選ぶというやり方をとっておりまして、ただしかし、これも、税金を使っているものですから厳しくいこうということで、契約期間は一年、結果が出なかったら去ってもらう、こんなやり方をしています。

 以上です。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 キーは、その企業にはいいものがあるわけですから、そのサービスや物をどういうふうに、そのサービスや物を本当に必要としていらっしゃる方々に適切な価格で、できれば若干高いぐらいの価格で売れるかなんだと思うんですけれども、その販売先を拡大していくようなコンサルティングをするに当たって、多分御経験では、何となく満遍と、売れば、デマンドが出てくるのではなくて、このターゲットマーケットに売るんだと決めて営業をかけていらっしゃると思うんですね。

 その知恵はどこから来るのかということと、加えて、輸出をどう考えるか。日本の中小企業は、残念ながら、全数の三・五%の企業しか輸出していません。ただ、OECDの統計では、生産性や給料の高い企業に共通していることの一つは輸出していることなんですね。

 販路を拡大するための知恵と、販路を拡大する中で、中小企業や零細企業にとっての輸出の意味、もし意味があるんだったら、ジェトロを更にどのように活用する意義があるのかないのか、ぜひコメントをいただければと思います。

小出公述人 まず、販路拡大についてなんでございますけれども、私どもが使っている切り口というのは三つございまして、先ほどおっしゃられていたとおり、本当のセールスポイント、真のセールスポイントを生かすというところと、ターゲットを絞るというところと、連携をする、コラボレーションするというやつですね。

 特に、今おっしゃっていただいたターゲットを絞るというところ、すごく重要だと思うんです。どういった層に対して売っていくのか、あるいはどういうシーンで使うのかについて、実は、大企業だったって全ての消費者層にぶつけてもなかなか物が売れない中で、中小企業や小規模事業者だったら、余計その辺のターゲティングというのは重要だと思うんですね。

 そこに当たっては、実は、似たような別の業種を徹底的にリサーチすると、必ずその傾向というのは出てくるわけです。だから、我々が求めているようなビジネスセンスが高い人たちというのは、そういうことがきちんとできるんだと思うんですね、まさに企業の中でやっていましたから。その手法を使ってもらう、それを我々のところで研修しながら身につけてもらう、こんなふうに考えております。

 輸出については、おっしゃるとおり、これからの中小企業にとりましても、海外に対してそのマーケットを広げていく、大変重要でございます。

 本当に、実は小さな企業でもいとも簡単に海外にまで物を持っていけるような、ECを使えば簡単にできてしまいますものですから、ますますそれはふえてくるだろうという中において、実はジェトロは相当機能していると思います。私も二十年近くこの世界におりますけれども、従前に比べると、よっぽどビジネス的に即した形でのサポートができているように思います。

 一方で、私どもは、それだけでは飽き足らない部分がありますものですから、当然ながら、海外にネットワークを持っている、例えば静岡県で多いというと、特に東南アジアにおいては静岡銀行が幅広くネットワークを持っているものですから、静岡銀行に相談したり。

 あるいは、私どもですと、海外で仕事をした経験、実際問題、バリーの日本法人の社長さんですとか、あるいはエイチ・アイ・エスのパリの支店長だとか、そんな人間がおったりするものですから、あるいは輸出の経験を持っている人もおりますものですから、私どものビズネットワークの中では、そういった人間の助言も得ながら、より活性化させていくというふうにやっております。

岡本(三)委員 ありがとうございます。

 ジェトロの役割はより重要だという大変重要なコメントをいただきましたが、実は、ジェトロは日本国内に中小企業の方々の相談窓口をつくっていて、都道府県で唯一ジェトロオフィスがない県が我が埼玉県でして、これは、知事に、何とかマインドを変えてくれということで、うちの公明党の県会議員が議会でどんどん追及しまして、やっと来年度の予算に組んでいただけそうなので、埼玉からもぜひどんどん輸出をしていきたいと思います。

 もう一つだけ小出さんにお伺いしたいんですが、結局、どんなに中小企業が潤って社長がもうかっても、従業員の給料が上がらなければ、中小企業政策としては何の意味もないんですね。

 まず、給料を払っていただけるようになるためにはもうからなければいけないので、小出さんのような方々にどんどんサービスを提供していただいて、もうかる体質をつくる。

 ただ一方で、もうかっても給料を上げない企業もあるんです。よく、今、内部留保が問題になっていますけれども、自公政権、二〇一二年以降、四年とると、大企業の内部留保は三三%ふえているんですよ。中小企業も三五%ぐらいふえています。資本金一千万円以下の小規模事業者、内部留保は七〇%以上ふえています。要は、もうかっても払わないようなマインドセットになっちゃっているんですね。

 企業経営者の方々にもうかって給料を払うんだと思っていただけるような施策であったり、私たちからのメッセージであったり支援というのは、どういうふうにすべきでしょうか。

小出公述人 先ほどの━━━━ケースは、経営者よりも従業員さんの方の年収が高いというような立派な会社だと思うんですね。だから、そういった経営者としてのあるべき姿みたいなものをさまざまな機会で、実は、講演会ですとかセミナーで、商工団体だったり、あるいは我々も提示しているつもりでいるんですね。ですから、中小企業の経営者の皆様方も、決して勉強不足なんということはなくて、非常に経営者としてのあるべき姿というのを常に常に探っているように思います。

 しかし、今御指摘のような問題というのは当然あるわけでございますから、より一層経営者としての、経営者教育と申しますか、あるべき姿を、さまざまな機関、地域金融機関も含めて提供しながら、勉強してもらったらいいんじゃないかな、かように思っております。

岡本(三)委員 ありがとうございました。

 最後に一つ、鈴木さんにお伺いをいたしたいんですけれども、この予算委員会に私参加をしておりまして、生産性が低いなと思う議論が一部ありまして、ちょっと残念に思っていることがありまして、それは何かというと、ある一部の方々は実質賃金が低いことを物すごい問題にされるんですね。

 ただ、実質賃金は、労働参加率が上がれば上がるほど下押しのバイアスがかかります。当然、インフレが起きていれば更にバイアスがかかるわけですから、一つ一つに関しては結構バイアスのある数字なんだと思うんです。ただ、それに対して、別の方は、総雇用者所得はふえるとか言うんですよ。ただ、総雇用者所得は、勢いは示すことができますけれども、一人一人の豊かさはあらわさないんですね。

 つまり、たった一つの指標で全体を見渡すことなんかできないのに、物すごい一つの指標にこだわったような議論が生産性が低いなと思うんですが、こういう議論、どう思われますか。

鈴木公述人 お答え申し上げます。

 実質賃金ですが、みんなこれを上げるために頑張って働いているんだと私は思っています。実質賃金に物価を乗せたものが名目賃金であって、エコノミスト的には、実質を最初に予想するんです。名目というのは物価を予想しないといけないので、とても難しい。実質が先にあります。

 ただ、実質は見えないので、計算上、名目の伸びから物価の伸びを引いているといった、仕方がないのでそれで見ているというだけでありまして、事実は一つ、実質賃金がどうかということですから、統計上の何かふぐあいで名目賃金が上がった下がったということによって、だから実質賃金が上がった下がったというのは、私はかなり違和感が正直申し上げてございます。

 実質賃金が伸び悩んでいるのは事実だと思います。私、潜在成長率の引上げは後ずれしているというふうに先ほど申し上げました。実質が上がるのは時間がかかるんですね。これはしかし、時間がかかるけれども粘り強くやらなきゃいけない。一年、二年で数字を見るのではなくて、本当に上がったのであれば、これはもうゴールですから、終わりということで、それでもうめでたしめでたしでありますので。

 今、それで、実質賃金が高過ぎないことで雇用がふえている。ですから、雇用と賃金の掛け算で全体はふえているけれども、一人当たりではなかなか実感ができない。両方ふえるのがもちろんいいわけでありますので、そのプロセスに今あるんだというふうに思います。

岡本(三)委員 大変勉強になりました。

 ありがとうございました。終わります。

野田委員長 次に、本多平直さん。

本多委員 立憲民主党の本多平直です。

 きょうは、公述人の先生方、大変お忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございました。

 今、与党の先生の議論の中で、一つの数字にこだわるべきではないという大変示唆に富むお話をいただきました。我々も別に実質賃金だけにこだわっているわけじゃないですが、内閣総理大臣も、総雇用者所得にばかりこだわって論じるのは、しっかりと与党の先生からも指摘をしていただきたいなという、いい議論を聞かせていただきました。

 私、明石先生を中心にちょっとお話をお伺いしたいと思っています。

 先生の非常にわかりやすい御説明の中で、今、我々がこの予算委員会でずっと粘り強く追及してきました毎月勤労統計の問題、ちょっと背の高い別人にかえて、シークレットブーツを履かせて、頭にシリコンを載っけて、ばれたところは修正をした。このばれたところを修正した数字の、昨年、二〇一八年の実質賃金の伸び率さえ、我々、今、予算の審議をしている最中に出していただいていない、こういう状況にあります。

 先生から見ると、この数字すらおかしいという指摘をきょうはいただいていると思うんですけれども、その数字すら出てこない中で来年度の予算審議を強いられているこの状況ということについて、ちょっと御意見をお聞かせいただければと思います。

明石公述人 今、その数字すらというのは、参考値の実質賃金の方ですかね。

 総務省の統計委員会の方も、参考値の方が伸び率については実態をあらわしているのでこちらを重視しなさいと言っている中で、名目だけ重視して実質は見ないなどということはあり得ないわけですから、これが出てこないうちに議論を進めるというのは、これは適切ではないと断言できます。

 以上です。

本多委員 ありがとうございました。

 それで、実は、毎月勤労統計の件についてはまた他の委員からも質問があると思うんですけれども、私、先生と実は別な勉強会でお会いをして、ぜひこの本を読んだ方がいいよということで、先生がお書きになられた「アベノミクスによろしく」という本を読ませていただきました。また、最新、同じシリーズで著書も出されて、そちらも読ませていただきまして、これは大変ショックを受けました。

 ちょっとその「まえがき」を簡単に繰り返させていただきたいと思うんですけれども、

  アベノミクスについては、疑問を呈する意見もありますが、概ね結果を出しているという論調が世の多数を占めているでしょう。

と。これと私たちも闘って大変な思いをしてきているわけですが、

 しかし、客観的なデータを基に分析してみると、それが大きな誤りであることがわかります。この本を読めば、良い結果を出すどころか、アベノミクスが空前絶後の大失敗に終わっており、さらに出口も見えないという深刻な状況に陥っていることがよくわかるでしょう。しかも、その失敗を覆い隠すために、GDPが、算出基準変更に伴う改定のどさくさに紛れて大幅にかさ上げされた疑いもあるのです。これはほとんどの人が気づいていないことです。

という、ここにこの本のエッセンスが込められているわけですけれども、私もこれを読んで大変衝撃を受けました。

 今回、我々が追及をしている毎月勤労統計の問題に加えて、そもそもGDP自体に大きな偽装があるということを、先生のきょうのお話の中でも指摘をしていただきました。

 ちょっとこのお話も、すごくわかりにくい話なんですけれども、大きな国際基準に合わせて変えた部分と、どうもここが先生は怪しいと指摘された「その他」と言いながらいろいろ変えている部分。ここも、実は、普通、「その他」というのは、我々統計を見るときでもいろいろな表を見るときでも見過ごすんだけれども、ここで随分盛られているんじゃないかというお話があります。

 ちょっとその前提としてお話を伺いたいんですけれども、国際基準として変えた方はどう見たらいいのか。これは大体、おおむね、これでも上がる部分があるんだけれども、これは許容するべき上振れなのか、このことについてちょっとお聞かせをいただければと思います。

明石公述人 二〇〇八SNA対応部分についても、かさ上げ率を見ますとアベノミクス以降が一、二、三位を占めていますから、こちらについてもこれは本当に正しい数字なのかというのはちゃんと詰めて考える必要はあると思うんですけれども、まあ「その他」と比べればそんなに突出はしていませんので、その限りでは、ただ、問題ないとは思いません、高くなっているという部分がございますので。

 以上です。

本多委員 この統計、GDPのとり方を変えたというのは、私も説明を聞いて、それは国際基準に合わせたといって、信じていたわけですけれども、そこにも問題があると先生は指摘をされているわけです。

 ただ、先生がもっと指摘をされているのは、何げなく我々がふっと見逃してしまう「その他」と書いてあるところで、随分無理やりのかさ上げが行われているんじゃないかというのが先生の御指摘であります。

 これに対して、先ほど、ちょっと自民党の議員から鈴木先生に御意見を求められて、鈴木先生は若干のコメントをされました。平等を期すためにも、ちょっとその反論も含めて、この「その他」のところをもう少し、どういうふうに内閣府が盛っていったのかという先生の、これはまだまだ証拠がなかなかつかめていないんですが、先生の推論をもうちょっと詳しく、わかりやすく教えていただければと思います。

明石公述人 先ほど、鈴木公述人のお話の中で建設推計の話が出てきましたが、それは、「その他」の中のあまたある要素の一つにすぎません。

 この「その他」の内訳につきましては、まあ私がぎゃあぎゃあ騒いだせいだと思うんですけれども、改定から一年経過した後になって、内閣府から内訳に近い表というのが出てきました。あくまで内訳に近いだけなんですね。

 なぜなら、その内訳表の数字を合計しても「その他」と一致しないからです。その中で、建設推計の変更というのは要素の一つです。

 ここにも怪しい部分があります。例えば、アベノミクス直前の六年間だけ、なぜか改定後マイナスになっているんですね。大きく下げられているという部分がある。

 一番注目していただきたいのは、やはり消費なんですね。民間最終消費支出の九八%を占める家計最終消費支出というのがあるんですけれども、これと、総務省の家計調査の家計消費支出、この傾向がどうも一致していない。二〇一四年までは、家計最終消費支出に世帯数を掛けた数字と、あと、GDPの家計最終消費支出、これが同じような推移を示しているんですが、二〇一五年以降、急にワニの口があいたかのように乖離が大きくなっているんですね。GDPの家計最終消費支出の方が物すごく上振れしているんです。

 それについては、私の近著である「データが語る日本財政の未来」の中で詳しく書いてありますので、参考にしていただければと思います。

 以上です。

本多委員 ここで、ちょっと先生に難しい問いをすることになるかもしれないんですけれども、先生が指摘をした以降、一年かけて、茂木大臣を筆頭なのか何だかよくわかりませんけれども、理論武装をし始めているんですね。我々も、これはいろんな委員会でこの「その他」問題、先生はソノタノミクスと。「その他」で、こんなにGDPが上がっていいのかと。でも、先生は逆の言い方もされて、かさ上げしている割にもしょぼい、こういうダブルの言い方をされていますけれども、そこまで無理しているという疑惑があります。

 これは、先生の指摘も受けて、一年かけてプロフェッショナルな内閣府が理論武装してきたものを我々どうついていったらいいのかというところ、一つ御示唆をいただければありがたいなと思うんですけれども。

明石公述人 一つは、先ほど申し上げた家計最終消費支出の部分ですね。ここは、ほかの省庁が出している統計と一致していないというところですから、何でこんなにずれるのか。恐らく、二〇一五年以降に何か変化を加えたのだと思うんですけれども、そこをついていく必要がある。

 それから、かさ上げ部分だけに注目していてはだめなんですね。九〇年代が何でこんなに下がるのか、マイナスになっている。内閣府が公表している資料を見てもその点に関する分析がないものですから、原因がわからないんですね。この点を追及した方がいいと思います。

 以上です。

本多委員 ありがとうございます。しっかりと、これはまた先生からも御示唆をいただきながら、まだまだこれは、残念ながらアベノミクス偽装疑惑なんですが、非常に私は重要な指摘を先生はしていただいていると思いますので、引き続きしっかりと追及していきたいと思うんですね。

 ただ、ちょっとそれに合わせてなんですけれども、安倍政権は今も六百兆円のGDP目標をおろしていないはずなんですが、このかさ上げを行ったら、当然この目標をアップをすべきだと私は思うんですけれども、先生はいかがですか。

明石公述人 おっしゃるとおりです。六百兆円というのはGDP改定前の目標値ですから、GDPを改定した後は、二〇〇八SNA対応部分だけでもあれだけ上がるわけですから、六百兆円じゃなくて、もっと目標を上にすべきだと思います、改定に合わせて。

 以上です。

本多委員 ぜひ、与党の皆さんも、GDPの計算方法を変えたわけですから、いい悪いは別として変えたわけですから、目標もしっかりと上げていただくのが筋だということを指摘をしたいと思います。

 それともう一点、僕は先生にちょっと確認をしたい。

 この本を読んで、私もなかなかきちんと認識をしていなかったんですが、アベノミクス以降の経済の特徴の一つとして、物価が大変上がっているということを先生は御指摘をされています。私は、約束されたインフレ目標率が達成できていないので、そっちの方にばかりどうも注目をして、余りその実感を持たないできたんですが、先生のこの御指摘は私はすごく重くて、アベノミクスが実は物価を上げる方に影響を及ぼし、国民の生活を苦しくしている、こういう先生の説があるんですけれども、ここもちょっと詳しく説明をいただければと思います。

明石公述人 おっしゃるとおりで、物価については国民もすごく勘違いをしていると思います。

 日銀が物価目標を達成できないので、物価が上がっていないというふうにみんな錯覚しているかもしれないんですけれども、日銀の目標というのは、前年比二%で、かつ消費税の影響を除いているんですね。アベノミクス開始から二%ではないんです。アベノミクス開始から、二〇一八年と二〇一二年を比較しますと、増税の影響も含めますと、物価は六・六%も上がっているんです。

 ですから、賃金も六・六%上がっていないと実質賃金は下がっちゃうんですね。年収四百万の人でいうと、二十六万四千円賃金が上がっていないと実質賃金が下がってしまうということになっています。ですから、物価がすごく上がっているということは重要ですね。

 以上です。

本多委員 円安などを引き起こして物価高を引き起こし、そしてそこに賃金が上がっていないという状況で、国民の生活が苦しくなっているということ、先生の説明を聞かせていただいて、私はすごく実感と合っているなという認識をいたしました。

 最後に、先生、実は、この統計偽装、アベノミクス偽装とは直接関係ないんですが、金融緩和に関して、異次元の金融緩和に対しても大変危険視をされています。アベノミクスの総括等を含めて、この危険な金融緩和についての御所見をお聞かせいただきたいと思います。

明石公述人 金融緩和につきましては、まさにそこが一番の問題で、どうやって出口を見つけ出すのか。私は、はっきり言いまして、出口は見つけられておりません。出口を見つけている人はいるんでしょうかと逆に聞きたいぐらいですね。ここが一番の問題です。

 今でさえ物価ばかり上がってしまって国民の生活は苦しいんですが、一番問題なのは異次元の金融緩和の副作用の方です。

 以上です。

本多委員 この問題は本当に深刻だと思います。もう進めちゃって、これだけ金融緩和が進んでいるものを、どうやめていくのか、やめられるのか、その議論はしっかりと国会でもしていかなければいけないと思っています。ありがとうございます。

 ちょっと三浦先生にも一問質問させていただきたいと思います。

 きのう委員部から、先生の、最近、これは月刊誌に書かれた資料を読ませていただきました。

 きょうの説明とはちょっとだけ離れるんですけれども、私にとっては非常に関心のある安全保障に関するポイントなので、質問させていただきます。

 先生は、「およそ国家で抑止を考えない国はありません。しかし、これに対して「巻き込まれ」の懸念で反論しようとする人びとがいます。「巻き込まれ」の懸念とは、同盟国の戦争や武力行使に巻き込まれてしまう懸念のことで、現在でいえば、米国が北朝鮮の核施設を先制攻撃した場合、日本にある米軍基地や日本の国土・国民そのものが北朝鮮の反撃ターゲットとなってしまうリスクを指します。あるいは、」ここまでのところは、昨年までの状況ではあり得たんだけれども、最近ちょっと低まっているかなと。

 ここからはまだあると思っているんですが、「あるいは、米国が台湾海峡において中国と武力衝突し、それがエスカレートしていって米軍基地を置く日本も攻撃されるというリスクです。」と。この巻き込まれの懸念。割と私は巻き込まれの懸念を強く感じる方なので、ここ、ぴくっとひっかかったんですね。

 先生、その後に、「しかし、考えていただければすぐに分かるように、現状のリスクはむしろ拡張主義をとる中国や、核武装に加えて挑発を繰り返してきた北朝鮮から万が一攻撃を受けたときに、日本や韓国が見捨てられる懸念の方です。」と。

 もうこれ、二つのリスクを比較して、巻き込まれよりも、何らかのことを北朝鮮や中国がしかけてくる危険が高いと。そのときに、アメリカに見捨てられる危険をちゃんと見ろよという、いい御指摘をいただいていると思うんですが、実はここで先生に質問したいのは……

野田委員長 本多さん、質問時間が終了しているので、簡潔にお願いします。

本多委員 両方リスクだと思っているんですよ。先生、後者の方が高いと言っているところ、この理由だけ説明してください。

 私は両方のリスクがあると思っているんです。だから、両方のリスクに備えなきゃいけないんだけれども、後者の方が高いと先生が考える理由を教えてください。

野田委員長 三浦公述人、申しわけありませんが、簡潔にお願いいたします。

三浦公述人 御質問ありがとうございます。

 日本で尖閣諸島をめぐる有事を想定したときに、米国が実力で助けに来てくれると考える人の調査もしているんですね。それは、実は一五%に満たないんです。それが年々下がってきているということは、日本国民の民意を見ても、恐らく、核抑止、核の傘は提供してくれているけれども、実際に辺境における、彼らからすると辺境で、我々にとっては辺境ではないんですが、限定的な武力衝突の場合には来てくれないと考える人が非常に多いということですね。これは、韓国でいうと、五五%から六割の人が、年によってぶれるんですが、朝鮮半島有事で米軍が駆けつけてくれると思っているのと好対照をなしています。

 それで、どうして巻き込まれの懸念よりも見捨てられる懸念が大きいかといいますと、やはり、我々は利害の同盟を組んでいるわけです。そうすると、米国としては、どうしても日本を助けなければいけないというような、例えばメキシコやカナダにおいて紛争が起こるのとはちょっと違った民意というもの、さめた民意というものが存在します。それを戦略的な判断として上回る、米国の国益のために日本を助けるという判断ができるかどうかというところで、やはり我々は民主的な国と同盟を組んでいる、その中で、日本は、実は、見捨てられ、巻き込まれだけじゃなくて、フリーライダーという懸念が同盟には存在するんですが、それは、米国がフリーライダーだと我々を見ているというところの形で具象化されているんですね。

 そうすると、やはり民意上は、それに立脚する政治家としては、ますます日本を助けてあげるという気がなくなるということで、自主的、主体的な努力をしなければ、恐らくその傾向はどんどん高まるんではないかなと思っておりますし、北朝鮮と劇的に融和したトランプ政権の態度を鑑みるに、巻き込まれるというのが米国主導で起きる懸念が非常に低まったということがやはり近年の変化だと思います。

 ありがとうございます。

本多委員 終わります。ありがとうございました。

野田委員長 次に、山井和則さん。

山井委員 四人の公述人の先生方、まことに重要な御指導ありがとうございます。

 限られた十五分の時間で、明石順平先生を中心に御質問をさせていただきたいと思います。

 きょうの明石先生、特に明石先生の話は非常に衝撃的でありました。今までから本も読ませていただいておりましたけれども、やはり非常に日本の国は今危機的な状況にある。与野党を超えて、この統計偽装、アベノミクス偽装ということについて解消をせねば、歴史的に大変な責めを今の国会議員そして政府は負うことになるんではないかと感じました。

 特に、明石先生の三ページ目の配付資料ですね。公表値における前年比の伸び率ですね、これは非常にショッキングであります。つまり、過去五年間のトータルの伸びよりも、昨年一年で大幅に伸びている。しかし、実際、これは残念ながら虚偽である。総務省の統計委員会も言っているように、違う事業所を比べているから、この賃金上昇率は参考にはならない。

 共通事業所の参考値を重視すべきであるということを統計委員会も言っている。にもかかわらず、年平均においては共通事業所の伸び率を発表しないから、明石先生がおっしゃるように、実態とは合っていない、事実上虚偽の一・四%というものが今も公表をし続けられており、明石先生はそれを統計法違反ではないかとまで言い切っておられます。私はこれは非常に深刻だと思います。

 十年後、二十年後、この統計を振り返ったときに、この二〇一八年だけなぜこんなに伸びているの、いや、実はこれは偽装されていたんだよと。でも、それで済まないと思います。なぜならば、では、そのときの国会や政府は何していたの、後進国でもないのに、こんな明らかな賃金偽装を何で国会で放置していたのと。必ずこれは、与党、野党関係なく、世界じゅうから、日本という国が後進国に転落した大きなきっかけがこのアベノミクス偽装、賃金偽装であると批判されるんではないかと私は非常に危機感を持っております。

 そこで、明石先生にお伺いしたいんですが、もう誰が見ても、違う事業所を比べているから、この一・四%は事実上の景気指標としての伸び率としては実態をあらわしていない、虚偽であるということは明らかなのに、なぜそれを性懲りもなく今の政府は公表し続けて、それを撤回しないんだと思われますか。

明石公述人 おっしゃるとおり、これは、二〇一八年の数字はうその数字なんですが、なぜこれを下げないかというと、まあ、ばれたくないからでしょうね。悲惨な結果であるということがばれたくないから、そして、大きな声でうそをつき続ければ、国民もそのうち諦めるということに味をしめているというふうに思います。

 賃金というのは一番国民が興味を持つところですから、それについて、完全にわざとうそをついている。

 ちょっと一点強調したいんですけれども、去年、賃金が二十一年五カ月ぶりの伸び率というふうに大々的に報道されました。こうやってうその数字をつくっているということをわかっていながら、あえてやっているんです。二十一年五カ月ぶりなんていうのは、厚労省側から言わないとあんな数字は出てきませんから、記者も、厚労省側から言われたことをそのまま報道したものと思われます。

 つまり、完全にわざと国民をだまそうとしている。これは断じて許されない行為であって、このうその伸び率というのは絶対に撤回していただきたいというふうに私としては考えております。撤回したくないのであれば、さかのぼって改定するか、あるいは参考値の伸び率の方を出しなさい、そういうふうに思っています。

 以上です。

山井委員 これは非常に深刻な問題です。ほとんどのマスコミが、昨年六月の名目賃金の伸び率は二十一年ぶりということを報道した。しかし、九月の総務省の、そして厚生労働省、統計委員会の見解では、その伸び率は実態には即していなくて、実際は共通事業所の参考値のその半分以下の数値であるということを統計委員会が九月に言ったにもかかわらず、まだ修正せず、二十一日には、逆に、その高い方の、間違った数字を確定だということになっているんですね。

 これは、鈴木先生、お聞きしづらいんですが、私は、本当、統計を誤るということは、これは国際的な信用も失いますし、景気対策、経済対策をとる前提が崩れてくると思うんですが、ちょっと答えにくい質問かもしれないんですが、去年六月、三・三%、二十一年ぶりの名目賃金の伸び率というふうに報道されましたけれども、あの伸び率は本当に正しかったと思っておられますか。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 正しかったと思っているかと聞かれれば、私は、今回、新旧指数をそのまま接続したということについては、これはユーザーとして非常に困るという認識でございます。

 例えば、五百人以上企業、悉皆調査をしていなかったというのは、これはルール違反ですね。それから、ちゃんと抽出率調整していなくて、復元していなかった、これは統計技術的な単純ミスですね。ここまで大問題ですね。

 それで、もともと毎勤は、しかし、三年ごとのサンプル入れかえで非常に段差が生じるとか、ベンチマーク更新で段差が生じるという非常に使いにくい統計だというのは昔から実感していることでありまして、そこはきちんと段差調整をしていた。

 そういう意味では、ローテーションサンプリングを導入されたということは大歓迎なんですけれども、今回、新旧指数をそのまま接続したということについては、ユーザーとして、伸び率としては一年で消える話ではありますが、非常に困る。

 これは、何というんでしょう、そういうものだということをきちんとやはり明らかに、透明にしていただいて、統計というのはブレークがあるということはよくある話でありまして、これは明らかにここにブレークがあったということでありますので、本系列の伸び率というのは相当割り引いて見ないといけないという認識でもともとおります。

 かといって、共通事業所というのも、これも単にずっと調べている事業所の伸びですので、これも世の中の真実とは違うというふうに私は思います。

 そういう意味では、どこにも真実がないという状況は非常にまずいと思うんですけれども、ここは、一統計利用者として、仕事で統計を利用している者としては、まさにそこをどういうふうに解釈し、あるいはどういうふうに数字を読むのかという、これは統計利用者側の統計リテラシーが問われている、そういう状況かなというふうに思っております。

山井委員 結局これは、鈴木先生のような専門家の方も、昨年の伸び率は割り引いて考えていると。こんなことというのは、日本の歴史上今まであったんでしょうか。国内外のエコノミストの人たちが、日本の賃金統計はそもそも信用できず、割り引いて考えていると。歴史的に非常に深刻な問題だと思います。

 明石先生にお伺いしますが、実質賃金についてもプラスと発表しておりますけれども、統計委員会が重視すべきと言っている共通事業所系列、これで計算をするとどれぐらいになりそうなのか、改めて、その実質賃金の実態に近い数値について御説明をお願いしたいと思います。

明石公述人 これは、お配りした私の資料の六ページ目の一番右下にあるとおり、私の計算では、年平均でマイナス〇・三、マイナスということになっております。

 ここで一つつけ加えたいんですけれども、実質賃金、この実質賃金からスタートしてアベノミクスの分析を始めると、全て謎が解けるんですね。

 まず、なぜこんなに下がったのか。それは、先ほど来言っているとおり、物価を急に上げ過ぎたからなんですね。増税も円安も、物価が上がるという効果は全く同じなんです。それを同時にやってしまった。だから、実質賃金が急に落ちたんです。実質賃金が落ちるということは購買力が落ちるということですから、我が国のGDPの六割を占める国内消費が伸びないということです。国内消費が伸びなければ国内企業がもうからないということですから、当然賃金は上がりません。だから、賃金が全然伸びないという状態が続いているんですね。それで、実質賃金が下がった結果、そうやって消費が落ちて、先ほど言ったとおり、戦後最悪と言っていい消費の停滞を引き起こしている、そういうことなんです。

 ですから、実質賃金、これを見るときには、なぜ下がったのか、そして下がった結果どうなったのか、ここに着目していただきたいというふうに思っています。

 以上です。

山井委員 これは、明石先生のみならず、日経新聞、ロイター通信、あるいはさまざまなエコノミストの方々が計算をしても、ほぼ〇・三%程度実質賃金マイナスというふうな数字が同じく出てきているんですね。政府はかたくなに、検討会をつくって、引き延ばし、時間延ばしをして、来年度の予算審議をしている真っ最中なのに、この数値を出さないんですね。

 消費税増税を議論する重要な予算委員会で、政府は〇・二%実質賃金プラスと言っているけれども、実質はマイナスではないかということになれば、おととしに続いて二年連続実質賃金マイナス、そういう状況で、消費税増税できないんじゃないかという話に当然なりますし、三年前、安倍総理が消費税増税を延期したときの実質賃金はプラス〇・六%だったんです。プラス〇・六%のときに延期して、二年連続マイナス実質賃金で増税を強行するなんということはあり得ないことではないかと思います。

 そこで、改めてお聞きしたいんですけれども、共通事業所の数字をなかなか政府は隠して出さないんですが、計算方法とかは、そんな大変な検討会をつくって議論しないとだめなようなことなんでしょうか、それについてもお聞かせください。

明石公述人 これを算出するのは全然大変ではありません。この表をつくるのにも二分もかかっていませんし、これを厳密にやるとこうなるんですけれども、単純に引き算でも出ますから、名目賃金の上昇率から物価の上昇率を引けばいいだけです。一瞬で出ます。だから、検討委員会なんてつくっている間にできちゃいますね、これ。というか、もう出ていますから、これを使えばいいだけなんですね。

 ですから、先ほど消費税増税の話もありましたけれども、まさに国民をだまして消費税増税をしようとしていると評価されてもこれは仕方ないと思います。

 以上です。

山井委員 私、この問題は本当に与党も野党も関係ないと思うんです。正しい統計がなければ正しい政策がつくれません。

 私も、大学では、大学院まで行って酵母菌の研究をやっていまして、そのとき一番重要なのは、同じ調査サンプルを比較しないと研究は成り立たないんですよ。今回のように、違う企業を比べて、賃金伸びましたと言っても、それはもうデータとは言えないんですね。かつ、一回そういうデータを偽装した研究者というのは永遠に信用されません。

 今回も、この賃金統計、偽装したということになれば、日本という国は賃金統計を偽装する、そんな国だと見られたら、永遠に国際的な信用を失うと私は危惧しております。だから、私は、この問題は非常に大きいと思っているんですね。

 それで、明石先生、一・四%と名目賃金を出していて、共通事業所では私たちの計算では平均〇・八%となると思うんですが、この共通事業所も、一カ月ごとは出しておいて、最後の年平均は出していないんですね。この一・四%というものが歴史的にずっと残ってしまうということになれば、国際的な問題、後世の問題、どういう日本の問題になると思われますか。

明石公述人 そうですね。おっしゃるとおり、参考値の年平均をなぜか出さない。そのおかげで、年平均については公表値の一・四しか出てこないですから、これがずっと残ってしまう。これは国際的にも我が国の統計の信用を失わせる結果になる、そういうふうに思います。

 以上です。

山井委員 鈴木先生にお伺いしたいと思います。

 先ほどユーザーとして困るという話でしたが、国会議員としても、国民としても困るんですね。昨年の実質賃金は本当のところプラスだったのかマイナスだったのか、わからないという状況になっているんです、景気指標としての実質賃金の伸び率がプラスだったのかマイナスだったのか。

 これも、鈴木先生、本当に失礼な質問かもしれないんですけれども、鈴木先生としては、去年の実質賃金というのはプラスだったと思われますか、マイナスだったと思われますか。景気指標としての、賃金上昇率としての実質賃金はどうだったと思われますか。

鈴木公述人 一・四%について、先ほど割り引く必要があると申し上げたのは、本系列で一・四というふうに示されていて、しかし、そこには新旧指数をそのまま接続したという情報をあわせて考えないといけないということを申し上げました。

 それで、今の御質問の実質賃金については、確かに、共通事業所ベースについて、何らかの物価を持ってきて機械的に計算すれば、プラス、マイナスということはいろいろなことが言えると思いますけれども、共通事業所についても、これは単に、ずっと継続的に調査しているサンプルの伸び率でしかございませんから、そうすると世の中全体の賃金ではないということで、お答えとしては、わからないということだと思います。

 ただし、傾向として伸び悩んでいるということは間違いないと思いますし、これだけ雇用がふえているというのは、実質賃金が高過ぎないからこそこれだけ雇用がふえているということもあわせて考えるべきことではないかというふうに思います。

 以上でございます。

山井委員 本当に、鈴木先生も重要な答弁をしていただいて、ありがとうございました。

 これは、日本の歴史上で昨年だけ、実質賃金がプラスかマイナスか、このままいくと永遠にわからないんです。永遠に隠蔽されているんです。理由は簡単です。安倍総理がマイナスの実質賃金のデータだけは発表したくないからなんです。

野田委員長 山井さん、質問時間が終了しています。

山井委員 こんなことが許されていいんですか。日本は独裁国家ですか。

 そういう意味では、与野党を超えて、的確な景気対策、経済対策を議論して考える上でも、一刻も早く共通事業所の名目賃金、実質賃金の年平均を出すべきだと思います。

 時間がなくなってしまいました。ほかの先生方に質問できなかったことを心よりおわび申し上げます。

 ありがとうございました。

野田委員長 次に、宮本岳志さん。

宮本(岳)委員 四人の公述人の方々、本当に本日はありがとうございます。

 日本共産党の宮本岳志です。

 まず、鈴木先生にお伺いしたいんです。

 鈴木先生は、日経新聞の十字路というのを事前に資料で読ませていただいていますが、「政策が効果をもつためには、人々が政府を信用する必要があるが、国の統計に対する信頼はその基盤である。」こうお書きになっています。きょうも、先ほど、統計の信頼性の回復は極めて重要だとおっしゃられました。私どもももちろん、ここが土台だと思うんですね。

 それで、御承知のとおり、本委員会で議論している予算でありますけれども、予算は、当然、基幹統計の上に立って、政府の経済認識、景気判断、税、社会保障、増税にかかわる政策判断などの重要な基礎になっているわけでありますけれども、まず、これは科学的態度の問題として、これが明らかにならないまま当予算を決定していくというのはいかがなものかと。やはり、しっかり、ここのところの不正だとか、いいかげんなところを洗いざらい明らかにした上でないと、わからないままでは判断できないと私は思うんですが、先生はどうお考えですか。

鈴木公述人 お答え申し上げます。

 私、お話をいろいろ伺っておりまして、問題は唯一、東京都の五百人以上を全数調査していないにもかかわらず、そこをきちんと復元していなかったという、事実を知りたいという意味ではそこが唯一の問題でありまして、そこはきちんと、それを見直した数字が発表されておりますので。

 その他のことについては、いろいろな情報が出ていて、それを考慮して判断しなければいけないという状況はいろいろなところにありますけれども、完璧な統計というのはないわけでありますので、そういう意味では、現状で何か、これで予算を認めることができないということは、私はちょっと、そういう立場ではございません。

宮本(岳)委員 東京都の五百人以上のところの調査の仕方がおかしかったということは思うけれども、これで予算の評価が変わるというふうには思わないというお話でありました。

 同じ質問を明石先生にしたいと思うんですが、まさに、予算も公聴会ということになりますと、大詰めということになるわけでありますけれども、私たちは、このままこの予算を判断するというのは科学的な立場に欠けると思うんですが、いかがでしょう。

明石公述人 おっしゃるとおりで、統計が信頼できないということは、地面が壊れていくような感じになりますから、これはもう無理だと思いますね。

 それで、先ほど、三分の一しか抽出しなかった問題というのが出てきましたけれども、私の資料の二ページをごらんいただければわかるとおり、再度御説明いたしますが、三分の一しか抽出していなかった、そしてそれをこっそり復元していたというのは問題の一部にすぎないわけですね。最も重要なのは、サンプルを一部入れかえて、そして、ベンチマークですね、一番影響が大きいのはベンチマークなんです。二千八十六円賃金が高くなっているんですが、そのうちの九百六十七円、〇・三七%、これがベンチマーク入れかえ、一番影響が大きいんですね。ここなんです。算出方法が違うものをそのまま比較しているという問題、これは全く別次元なんですね。

 よく三分の一抽出問題というところばかり目が行ってしまって、国民の方々はみんな混同していると思うんですけれども、違います。サンプルを入れかえて、ベンチマークも新しいものにかえた、つまり賃金が高く出るベンチマークにかえたんですね。それをそのまま、さかのぼらずに前年と比較している、ここが一番の問題なんです。だから実態が見えない。

 おっしゃるとおり、実態がわからないのに予算を組めるかといったら、私は普通に考えて無理だと思います。

 以上です。

宮本(岳)委員 先ほど来、統計がこういう形で不正な形になっていたことを誰も気づかなかったという話もありましたけれども、私は逆に、二十一年五カ月ぶりの賃金の上昇と言われたときに、国民や働く人たちの間では、それは一体どこにそんなものがあるのかと随分首をかしげて、それほどアベノミクスがうまくいっているんだろうかと思ってきましたけれども、改めて今日の実態が明らかになれば、その国民の実感の方がやはり近かったんじゃないかというふうに思うんですね。

 これも、次に鈴木先生にお伺いするんですけれども、鈴木先生は、どうも、実質可処分所得を引き上げる必要があるということをおっしゃって、可処分所得が減って、消費を通じた経済の好循環が回りづらくなっているという経済認識を、これも日経新聞で、二〇一八年の四月の二十二日付であらわされています。

 じゃ、一体なぜ実質可処分所得が引き上がらないのか、可処分所得が減って、消費を通じた経済の好循環がなぜ回りづらくなっているのか、これは先生、どうお考えになりますか。

鈴木公述人 その記事がどういう文脈で私が申し上げたかあれですけれども、可処分所得が伸び悩んでいるということは、きょうも公述で申し上げましたように、一番の問題は、私は社会保険料がふえ続けていることだと思います。

 医療保険、介護保険、これはある意味際限なく今保険料率は上がってきておりますので、これはきちんと、どこまで一体負担できるのかというところまで給付の水準を見きわめながら、もちろん上がっていかざるを得ないと思います、超高齢化ですから。しかし、年金は上限をきちんと法律で決めていただいたりしているわけでありますので、医療や介護についても、保険料負担をどこまで一体上げられるのかということについて国民的な議論をして、そうでないと、幾ら額面の賃金を上げても可処分所得はふえにくい、消費に回らないということではないかと思います。

宮本(岳)委員 じゃ、これもまた同じような質問を明石公述人にお伺いするわけですけれども、今度の予算案は、ことし十月の消費税率一〇%の増税を前提に編成をされております。消費税に対する考え方はさまざまあるだろうと思うんですね。ただ、増税に賛成の人でも、この十月の引上げはやはりやめるべきだという声も随分多いと思うんですよ。

 そこでお聞きしたいのは、消費税を増税できる経済情勢に本当にあるのか。まあ、そもそも統計の前提を欠くという話もあるんですけれども、ただ、現状が本当にそういう状況にあるのかどうか。

 先生の方からも、実質民間最終消費がGDPの六割を占めるというお話があって、これがずっと下がり続けているわけですね。そのもとで一〇%の増税ということをやれば、とんでもない日本経済に悪影響があると私たちは思うんですが、先生の御所見をお伺いしたいと思います。

明石公述人 おっしゃるとおりで、消費税を増税すれば、その分物価に上乗せされますから、実質賃金がまた落ちます。

 加えますと、実質可処分所得が低迷している原因も、これは物価が上がっているから。社会保険料も影響していると思いますが、社会保険料などを含めた実収入で見ても、やはり下がっているんですね。下がっているというのは、アベノミクス前より下なんです。

 これは、先ほど来強調させていただいているとおり、物価が急に上がったからですね。増税に円安をかぶせたから。それが、六年たっても全然賃金は追いついていないんです、そこに。だから、消費が低迷しているということですね。だから、増税したらそこに追い打ちをかける結果になるのは、これは間違いないです。

 以上です。

宮本(岳)委員 増税すれば今の景気に追い打ちをかけることは間違いない、こういう御判断だと思います。

 きょうは、小出公述人にもおいでいただいていて、日々、中小企業、現場の経済をごらんになっていると思うんですけれども、先ほど、国民の感覚はさほど外れていなかった、数字は随分、二十一年ぶりと聞かされても、どうかなという感じがやはりあったということを私は申し上げたんですが、この十月から消費税を上げて、あなたが日ごろごらんになっているような中小企業、地場の産業にとって、私は非常に大きな影響があると思うんですが、実感としてはいかがですか。

小出公述人 先ほど申し上げましたとおり、私、二十年近く現場の最前線で中小企業や小規模事業者の相談に当たっているわけです。恐らく、相談した企業の数からいうと、日本で一番その手の相談を受けている人間だというふうに自負しておるんですけれども、この数年の中で、明らかに相談の質が変わってきたというふうに考えております。

 と申しますのは、リーマン・ショック以降の非常に厳しい状況の中で、資金繰りも本当にどん詰まったような状態の相談が多く見られた中で、最近はこれが極めて減っております。非常に前向きな相談がふえてきたというのが実感でございます。

 ですから、明らかに、我々、現場感で見てみると、中小企業や小規模事業者の経営実態というのは以前よりも改善されているのではないかというのは最前線で感じておるところでございます。

 消費税の増税につきましても、実は、前回のときにはかなりその件に関して危惧する意見というのが多かったように思いますけれども、最近の相談の中には、その辺のところをあらかじめ受け入れて、それがある前提でどうするかというような相談が多いような感じがしております。

 以上です。

宮本(岳)委員 随分改善してきたという実感が語られたわけですね。

 小出さんはもともと静岡銀行におられたというお話でございましたが、私、この間、実はサブリースという業態について研究もし、予算委員会でも取り上げてきたんです。

 同じく静岡県に本社を置く銀行で、スルガ銀行という銀行がありまして、この銀行が随分、サブリースという不動産の貸付けにのめり込んで、悪質なことをやったという事件がこの間ございました。

 ただ、これ、一時期はもうとにかく、金融庁長官を先頭に、ここがやっているのはすばらしいことなんだ、リスクをとって目ききでいけ、こういうことを言うたことがありまして、ただ、そういう結果が、非常に裏腹なことにこの場合はなったわけですね。

 そういう点で、私、少しお伺いしたいんですけれども、そのようなものにならないための保証というのはどこにあるとお考えか。つまり、本当に実態として目ききだというのと、あるいは、そういうものばかりじゃない、いろんな悪質なものが、後で化けの皮が剥がれてみたら全然違っていたということがあるじゃないですか、それは一体、どこでどう見分けるのか。それはどうお感じになっていますか。

小出公述人 元金融マンの立場からしてみますと、今回のスルガ銀行の問題というのは、あるはずもないような事件だったと思うんですね。

 つまり、書類の改ざんを承知した上で融資をするというのは、もうあるはずもないようなことが起きてしまったということだったと思うんです。だから、基本的な金融機関としてのあるべき姿というのを極めて逸脱した行為ではなかったのかなというふうに感じております。ですから、あるべき姿を普通にやっておれば、こんな問題というのは多分起きなかったんだろうと思っています。

 サブリースの問題についても、要は、度を越したような融資でなければ、あれは手法としてはありだったと思うんですね。ですから、そこのところを、やはりルールを踏み越したような形にならないような管理監督を強めていくということが金融監督当局も求められているのかもしれません。

宮本(岳)委員 私も、サブリースというものをちゃんとやはり法的に規制してルールをつくるべきだということを、繰り返し申し上げてきたわけなんです。

 この予算委員会、中央公聴会ということになれば、この後いよいよ議論は大詰めということになりますけれども、きょうお伺いした中でも、また御意見をお伺いした中でも、統計そのものがどうであったかということはまだまだ解明がされていない、こういうことも出されました。

 もう一度、お二人の参考人、鈴木先生と、そして明石先生にお伺いしたいんですが、やはり予算はきちっと議論を尽くして採決をするというのが当たり前のことだと思うんですけれども、ぜひその点についてどうお考えか順々にお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。

鈴木公述人 繰り返しになりますけれども、今出されている情報というのは、統計を使う側がきちんとそしゃくをして、どういう判断をするかという、情報は出されているというふうに思いますので、ぜひ国会で議論を尽くしていただいて、採決をとっていただきたいというふうに思います。

明石公述人 私は、議論の大前提として、出すべきものを出して、それで議論が尽くされるべきだと思っております。

 先ほど申し上げましたが、参考値の実質賃金伸び率、簡単に出せるものがなぜか出てこない。そういう状態で、前提を欠いていますから、議論を尽くすということもできないのではないか、そういうふうに思っています。

 以上です。

宮本(岳)委員 ありがとうございました。

 これで終わらせていただきます。

野田委員長 次に、浦野靖人さん。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。

 本日は、大変お忙しい中、公述人として来ていただきまして、ありがとうございます。

 それでは、早速質問に入りたいと思います。

 一点目。先ほど米中間のいろいろなお話をしていただきました三浦参考人に、一つ聞きたいと思います。

 我々、今、中国の状況について、ついこの間も、中国国内の、中国の負債が九千七百兆円に達している、非常に大きな額になっているということで、経済がもうそろそろやばいんじゃないかという記事は見ました。私は、チャイナリスクというものは本当にしっかりと考えるべきだというふうに思っています。

 先ほどのお話の中で、中国に対する先進国の見方の修正という部分が、ちょっと時間の関係で割愛をされた部分がありましたので、そういった部分を含めて、もう少し詳しくお聞かせいただけたらと思います。

三浦公述人 御質問ありがとうございます。

 中国リスクは、八ページに示されたように、幾つか列挙してありますけれども、まず、安全保障に関しては中台の衝突が懸念されるということでしたけれども、先進国の見方の修正に関しては、まず、そもそも、安全保障リスクに対する認識がやはり強まったということです。

 それはもちろん、中台の衝突の懸念について彼らが認識したということでもありますし、あるいは、中国が開発していると考えられる人工衛星を破壊する兵器などの技術進歩のレベルについてもやはり認識が広まってきたということで、やはり、米国はいまだに最大の軍事大国ではございますけれども、中国の今の、例えば対GDP比での軍事費ということでいいますと、まだ二%レベルなんですね。

 したがって、我々からすると、まあ、我々の防衛費と比べるような規模ではございませんけれども、中国と日本の差がどんどん開いていく。しかし、もしアメリカと同じ四%水準になるとすれば、今の中国の軍事費は倍でもおかしくない。覇権争いをするというのはそういうことでございますので、そういったリスクに関しては、将来にわたって中長期的に持続するんだよというふうな認識がまず先進国に広がったということ。

 それから、中国は、構造改革をするというふうな姿勢は示してはおりますけれども、やはり現実に、例えば特区などを設けたときにも、外資系企業と内国の企業との取扱い格差であるとか、あるいは国有企業と民間企業の待遇格差などが依然として現存しております。

 そういった場において、例えば、進出をしていった企業が口々に自国政府に対して、こういったリスクは織り込んで行動できない、しかし、中国マーケットの存在感を考えるとそれをみすみす避けて通るわけにもいかないということで、やはり中国の構造改革が急務であるという発想は広まっていると思います。

 ただ、問題は、中国政府が主導するべき改革だけではなくて、ここにドルチェ&ガッバーナの企業の話を書いてございますけれども、ドルチェ&ガッバーナ、実は、これは余り大きなブランド傘下にあるところではなくて、独自ブランドなんですけれども、このデザイナーがインスタグラムにちょっと中国に対してネガティブなことをつぶやいただけで、中国で大きな不買運動と、あとはファッションショーのボイコットが起きまして、実際、今本当に、中国の成長を見込んで各企業が中国に対して販促活動をしている中で、一つ間違えただけでどれだけ、愛国無罪みたいな形で、契約が覆されたり、あるいは不買運動が起こるかということのリスクが目に見える形でわかったのが、やはり前年の状況であるということかと思います。

 そして、一帯一路構想等の話についてもちょっと省いてしまったんですけれども、一帯一路の、投資自体はこれは喜ぶべきことだとは思いますけれども、実際に、途上国の政府に返済不可能な額を貸し付けた上で、返済不可能に陥った場合に、港湾などの重要なインフラ施設をある意味植民地時代のように租借するというふうな戦略的な行動に出ているということで、そういった中国の国際政治学上の帝国建設に対する野望というものはやはり各国に対して明らかになってきたところかと思います。

 ありがとうございます。

浦野委員 ありがとうございます。

 小出参考人にお聞きしたいんですけれども、いろいろな企業の相談の中で、海外進出とかそういう相談とかもやはりあるかなと思うんですけれども、その中で、中国以外の選択肢、今でいえば東南アジアですね、そういった選択肢というのもやはり今は相談としてあったりするんでしょうか。

小出公述人 中国の問題が顕在化したからというわけではないと思うんですけれども、もう、どうでしょう、ここ七、八年前から、積極的に東南アジアを中心とした海外に出たいというような中小企業、小規模事業者はかなり数がふえてきているというふうに認識しています。

浦野委員 私も、私の世代は四十代の世代ですけれども、起業している人たちもたくさんいます。実は、中国は、技術は日本だと今までは言われていたけれども、もう今は中国のシンセンに行った方がいろいろなものが、品質もよくて、安くつくれて、大量に生産できると。今、既にもう中国に負けているという、大阪のそういう中小企業の技術をいっぱい持っているところでいろいろな仕事をしている人間ですらそういうふうに言っている事態になっている。

 その中で、やはり日本の経済を発展させるために、三浦参考人がおっしゃったように、中国のリスクはもちろんあるけれども、そういった中でもどういうふうに、中国と完全に切れるということはもうできないわけだから、そこはしっかりと考えていかないといけないんだなというふうに改めてきょうは感じました。

 次に、明石参考人に少し意見を聞きたいなと思っているんですけれども、我々、ずっと人事院勧告について、非常におかしいんじゃないかというふうに言っています。これは、公務員の皆さんが民間の給与より低いということで人事院勧告がされて、給与が安倍政権になってからは五年連続で上がっています。人事院勧告は、実は背の高い人を抽出して、それと比べて公務員の給料が低い、公務員の人たちが低いんだと言って給料を上げていると私たちは言っています。

 その点について、明石参考人、何か知見があればお聞かせいただけたらと思います。

明石公述人 申しわけございません。人事院勧告とか、そういったことの分析についてはちょっと詳しくしたことがないので、ちょっと申し上げられないです。済みません。

浦野委員 意図的にそういった都合のいい数字を使って比較しているという意味では、私は、今問題になっている統計の不正についても一緒じゃないかと我々は考えています。

 この点はこの予算委員会の中でもずっと議論がなされていることなんですけれども、明石参考人と鈴木参考人にお聞かせいただきたいのは、では、現在も統計はずっととって、それをもとにこれから政策もつくられていく、我々はそれをもとに議論をしていくわけですけれども。不正が行われないようにというか、不正が行われてもすぐにわかるように、そして政府の介入余地がないようにするために、我々は第三者機関というものをしっかりとつくって、政府から独立させるべきだというふうに言っているんですけれども、不正が起こらないために、しっかりとした統計をつくるために、両参考人はどういう仕組みが必要かと思っているのか、お聞かせいただけたらと思います。

鈴木公述人 確かに、現状、各府省に統計部局がそれぞれにあるという状況がありますので、それはそれで政策の現場で役に立っている部分もあるんだろうと思います。ですから、そこは、どういうメリット、デメリットがあるのかをきちんと検証、見きわめつつ、全体的に先生がおっしゃるように、第三者の目がきちんと入るような体制、それがどこか一つに集約するのがいいのか、あるいはもう少し分散型でガバナンスするのがいいのか、そこは仕組み方の問題で、それはやはり現状、どういうメリット、デメリットがあるのかということをきちんと調査した上で、あるいは検証した上でお決めいただくのがよろしいのではないかと思います。

明石公述人 具体的な制度設計になりますと、私も特に具体的に何か意見を持っているわけではないんですが、ただ、おっしゃったとおり、政府からの独立性を何らかの形で確保する、これは物すごく重要なことだと思います。要は、採点される側が採点基準を変更できるようなことを許すとこれは話になりませんから、それを防がないといけない、そういう体制をつくらないといけないとは思っています。

 後は、ちゃんと議論の結果を公表するということですね。おおむねできているんですけれども、毎月勤労統計に関しては、つい最近になって、出てこなかった議事録が出てきたり、そういう問題がありましたので、そういう問題が起きないように議論の透明性を確保するということが重要であると思います。

 以上です。

浦野委員 ありがとうございます。

 我々日本維新の会は、イギリス型の統計の仕組みをとるべきだというふうに言っています。今の統計のやり方だと、今までかかわっていた人が今もその統計をやっているわけですね。では、私たちはその人たちをどういう根拠をもとに信頼をしていいのかというのが全くわからないですので、私は、しっかりとこれはクリアにしていくべき責任が政府にあると私たちも思っていますので、まだこれからも予算委員会で議論をしていきたいと思っています。

 最後にですけれども、三浦参考人、私も今、中国のみならず、東南アジア、アジア地域のいろいろな関係をこれからもっと重要視していかなあかんのちゃうかと思っているんですけれども、レジュメの最後にありますね、関心低下が著しいアジアの地域、この部分に関して少しお話をいただけたらと思います。

三浦公述人 御質問ありがとうございます。

 中国の一帯一路構想に我々は比肩し得るような投資はもちろんできません。できないということは踏まえた上で、やはり、日本の今後の努力の方向性について意見を申し述べたいと思います。

 まず、安倍外交が行ってきたインド太平洋構想という考え方は、基本的にはシーレーンの防衛の負担をアメリカの同盟国がみんなで共有していくという形でございました。

 それは実際には海軍間の協力という形で実現したわけで、その努力に対しては敬意を表しますが、ただ、シーレーンというのは、もちろん中東からの例えば石油を持ってくる重要な航路であるということはそうなんですけれども、シーレーンが位置している地域、例えば東南アジア地域における、我々が商用利権なるものをちゃんと持っているのかどうか。つまり、我々は帝国ではないわけでございまして、シーレーンを守るというのは、本来米国が一手に担ってきた役割でございますが、それは、自由主義諸国が、東南アジアを始めとするシーレーンが通っていくような地域において、さまざまなルールに基づいた経済活動を行っており、それによって人々が潤っている。それは開発された地域もそうですし、出ていった先進諸国もそうであるわけですが、そこの秩序やルールを守っていく、安全を守っていくということの意味でもシーレーンは重要なわけでございます。決して、炭化水素資源を中東から輸入するためだけではないわけでございます。

 そうしますと、日本としてとるべき考え方は、一帯一路構想ほどではないにしても、我々独自のやはり開発協力、プロジェクトベースといいますけれども、そういった協力を推進していく必要があります。

 これは、いろいろなところで、例えば外務省出身の政治家の方々などはその不足を自認しておられるところですので、政府もそういった認識は持っておられることと思いますが、ただ、例えば、首脳間の外交で東南アジア諸国と契約を結ぶ、それによって具体的な開発計画が立ち上がっても、現実にはそれをやり切る事業者というものが日本に欠けているわけでございます。現にそういった新しい大きな開発事業というのは汚職が付随したりすることも、もちろん日本国内でもそうなんですが、当然東南アジア諸国でもそういったリスクもあります。

 そういったところで、中国のような、ルールに基づかない、あるいは資本主義の重要な原則であるところの私有財産の保護や、契約自由の原則というものがある程度ゆがめられた資本主義が進出するのを防ぐためにも、我々やあるいはアメリカのような、ルールに基づくビジネス、取引、そして開発というものを協力の形で行っていく必要があるかと思いますが、多分、今、日本外交に一番欠けているものの一つではないかと思いますが、それは単に政府だけの問題ではなくて、日本全体にやはり内向きな感情が漂っている。

 その内向きな感情はどうして生じるかというと、やはり、グラフでお示ししたような、人々の中に将来に対する期待が欠けている。その欠けている期待を補うためにはどうしたらいいかというと、やはり、ある程度は外に出ていくしかない、あるいは外の人たちを日本国内に活力としてあるいは資金として受け入れていくというふうな発想の転換も必要になってきます。

 やはり近隣諸国と比べたときに、上向きの中国、あるいは内需が非常に乏しくて非常にナショナリズムに走りがちな韓国や、あるいは日本のような自信喪失、失われた二十年が三十年になったりというふうな状況は国全体の外交にとってもやはり望ましくないということなので、これは政府に限らずですが、日本人全体がそういった認識を持っていくべきかなと思っております。

 ありがとうございます。

浦野委員 これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

野田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    正午休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 平成三十一年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成三十一年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず末澤豪謙公述人、次に上西充子公述人、次に江口晋公述人、次に浦野広明公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、末澤公述人にお願いいたします。

末澤公述人 どうも、SMBC日興証券の末澤でございます。よろしくお願いします。

 私の方からは、「二〇一九年の経済・金融市場の動向 当面のリスクと我が国の中長期的課題」、こちらの資料を使いまして、まず前段で足元の経済金融市場をめぐる状況、中段で当面のリスク、後段で我が国の中長期的課題ということで御説明をさせていただきます。何分、お時間二十分と限られておりますので、少し早口で、多分省略しながらとなりますが、ぜひ御容赦いただきたいと思います。

 それでは、一ページをあけていただきまして、足元の世界経済はどうなんだということなんですが、私自身は、やはり、米国をエンジンとした、リーマン・ショック後、二〇〇九年六月が大底でございますが、そこからの景気拡張局面、これは続くと。ただ、ことしの六月で丸十年。これは、アメリカの一九九〇年代の戦後最長の十年間と並びます。ことしの七月では過去最長更新ということでございまして、相当景気が成熟してきている、これは事実だと思いますし、米国の利上げも昨年十二月までずっと四半期ごとに続いておりました。

 そういう面では、景気の成熟が、むしろ、米国の金利の引上げ等で新興国の経済に相当影響が及び、また、トランプ大統領の政策がいろいろな足元の不安定要因になっている、これは事実だと思います。

 また、私は、足元の世界経済においてもう一つのリスクは、政治の不安定化だと思います。

 実は、過去三年半で、G7の諸国五カ国で首脳が交代しております。まず初めにカナダ、イギリス、イタリア、アメリカ、フランスですね。また、ドイツのメルケル首相も昨年末に党首を辞任されているということで、実は、三年半ずっと党首、トップを続けられているのは安倍首相のみということでございます。なぜそうなっているかというと、私は、所得及び富の格差拡大と移民、難民問題、これがやはり相当海外の不安定要因になっているということでございます。

 二ページでございますが、これは、一番右側がことしのスケジュールでございまして、青色が米国、赤色が欧州なんですけれども、実は、この春先にかけて相当欧米でイベントが続きます。イギリスのブレグジットの問題、また米国の財政問題、米中貿易協議の問題、こういった問題はまだどうなるか決着がついておりません。夏まで、相当かかる問題もあろうかと思います。

 四ページでございますが、足元の景気、これはいいのかということなんですが、IMF、国際通貨基金の見通しでは、ことしの成長率はプラス三・五。まあ、三・五という水準は私はそこそこ高いと思いますけれども、これは昨年十月に続いて二期連続で下方修正、〇・二ポイント下方修正をやっています。

 実は、IMFという機関は、どちらかというと景気に弱気な機関で知られておりまして、その機関が昨年の十月、ことしの一月と二期連続で下方修正しているということは、ちょっと世界的にはピークアウト感、景気減速感が相当広がっている。青色が下方修正された国、赤色が上方修正された国で、やはり新興国、欧州等で下方修正が続いております。

 五ページ目でございますが、これは、OECD、経済協力開発機構の景気の先行指数、景気に半年から九カ月ないし一年程度先行していると思われる指標でございますけれども、実はこちらは大体二〇一七年末にピークをつけておりまして、右のグラフ、これは一七年以降を大きくしたものですが、特に中国の減速が一七年以降相当強かった。ですから、実体経済も、昨年の後半は相当、景気にやや減速感の広がった指標が続いている。

 そうした中でもやはり堅調な経済を保っているのは米国でございます。

 六ページの左上でございますが、これは名目国内総生産の比率を出したものでございまして、米国、日本、中国を比べますと、実は、米国の個人消費のウエートは六八%、日本は五六%、中国は三九ですから、やはり米国の場合は、世界の経済がどうあっても米国自身がよければいいということがあるんですね。

 アメリカの昨年九月の個人の純資産、上に書いていますが、百九兆ドル、これは日本円で一京二千兆円という天文学的な数字になっていまして、ですから、株価、不動産価格が堅調な間は問題ないんですけれども、やはり昨年の後半以降、相当これは調整しておりますから、ことしの米国経済もちょっとややそこのあたりは陰りが見えてきている。

 七ページでございますが、これは住宅関連指標、ちょっと時間の関係で簡単に申し上げますが、左上をごらんいただくと、少しやはりピークアウトが昨年出ておりまして、この背景には、住宅価格の上昇、これはリーマン前の水準に戻ってきたということと、やはり、アメリカの住宅ローンの金利が長期金利の上昇を受けて昨年後半から五パーを一時超えたといったことがある。

 では、日本はどうなんだということなんですが、日本の成長率、十―十二月は、夏場の自然災害の反動を受けて、二四半期ぶりにプラス成長になりました。左をごらんいただくと、プラスの期間が多いんですけれども、やはり、以前に比べるとプラスの水準が低いということと、雇用者報酬、これは現時点でプラスでございますけれども、こちらも高度成長期に比べるとやはり相当低いということもありまして、なかなか景気回復の実感が乏しいのも事実だと思います。

 九ページでございます。

 そうすると、何で賃金を上げないんだということになるんですが、九ページの左上でございますけれども、ことしはこれはよく使っている資料なんですが、輸出と鉱工業生産の関係を示したのが九ページの左上です。

 これは八〇年代からお出ししていますが、ごらんいただくと、赤い生産の方が、八〇年代、九〇年代が上にある。それが今は輸出の方が上に来ておりまして、つまり、リーマン・ショック、あと東日本大震災以降、日本の企業さんも相当、海外生産比率が上がっている。そういう面では、やはり、グローバル化、少子高齢化の影響が企業の経営者にも相当慎重なマインドを植え付けているということだと思います。特に、左をごらんいただくと、輸出が今足元が鈍っておりまして、昨年後半以降は日本の経済指標もいろいろ、やや減速感の強い指標が出ております。

 あと、二十ページですが、消費が弱い要因として、一つは年金の問題がある。

 右下のグラフは、公的年金の本来の水準、青い折れ線が本来の水準、赤いのが実績なんですが、実は、二〇一三年以降、過去の特例分の解消だとかマクロ経済スライドの導入等もありまして、年金の受取が落ちて、それが消費を相当低迷させている背景になっている。

 十一ページ、十二ページでございますけれども、これは、二〇一三年以降の為替、通貨と株価の動向を見ています。

 これはざっくりごらんいただくと、十一ページ、十二ページ、両方ごらんいただくと、一五年ごろまでは、どちらかというと、世界的な金融緩和を受けて、通貨高、円安また株高だったんですが、アメリカの金融引締めを受けて円高、株安に変わる。それがトランプ氏の大統領選の勝利以降、再度、円安、株高になるんですが、昨年から、為替の方もやや円高気味、株価の方も世界的に調整局面が続いている。

 特に、米国の株が下がった要因としましては、十三ページ、十四ページでございますけれども、やはりアメリカの株価というのは、アメリカの長期金利の上昇に相当弱い体質を持っております。昨年二月と十月に米金利が相当上がりました。これは十三ページでございますが、この二回、相当落ちた。この背景には、十四ページの右側なんですけれども、やはり、今のトランプ政権が進めるさまざまな政策、特に大型減税の影響があって、好景気にもかかわらず、米国債の発行が相当ふえている、こういう要因もあるということでございます。

 十五ページ、十六ページ。

 では、日本はどういうことなんですかということなんですが、十五ページのグラフは、青い折れ線が株価、赤い折れ線が長期金利でございますが、ほとんど長期金利は最近動いていないということでございます。特に株価の方も、十六ページをごらんいただくと、右上ですが、近年は、二〇一三年は相当海外投資家が買いましたが、最近は海外投資家の株買いも相当収束しておりまして、足元では日本銀行の買いが相当主要なセクターになっているということでございます。

 十七ページからはリスク要因ということで、こちらもちょっと手短に御説明させていただきます。

 十八ページですね。

 やはり、金融政策の方向性が、ちょっと足元が変化しつつある。赤色が金融緩和、青色が金融引締めをあらわしているんですけれども、最も景気の強い米国が、二〇一五年以降利上げを開始しておりまして、昨年は四回の利上げを実施したわけでございますが、ことしに入りまして、これはまだ三月はどうなるかわかりませんけれども、追加の利上げがストップしそうな状況になってきておるということでございます。

 あと、十九ページ、また右上ですね。

 米国の場合ですと国債の保有を相当減らしているわけでございますが、こちらも、場合によっては年内にとまる可能性もあるということであります。アメリカの金融政策が、ことし相当方向を、一旦停止、場合によっては方向転換になるかもしれないということでございます。

 二十ページ。一方、これは原油の話ですね。原油は動くのか動かないのか。きょうは余りメーンの話ではないので、二十一ページの左上だけごらんいただきたいんですが。

 これは、アメリカの原油の生産、赤色が生産、青色が輸入をあらわしておりますけれども、ごらんいただくと、輸入がピークに比べて三分の二に減る一方、生産がこの数年で倍になっている。つまり、シェール革命が本格化しているということでございます。

 二十二ページ。一方、これは中国ですね。

 中国の統計、これはいいのか悪いのか、なかなか私もはっきり判断できないところがございますが、ただ、中国の景気が今減速感が強まっているというのは、米中貿易摩擦に加えて、やはり中国自身の構造改革要因がある。右上のグラフをごらんいただくと、これは反腐敗運動の一つでございますが、中央八項規定精神闘争違反で摘発された公務員の数が昨年は九万人を超える、過去ピークを更新しておりまして、やはり、昨年から相当中国の景気減速感が強まっている背景には、この反腐敗運動、構造改革もあるんだろうと考えられます。

 あと、二十三、二十四ですね。

 これは、ダボス会議を主催しておりますWEFがことしの一月に発表しました向こう十年間のグローバルリスクをあらわしております。世界経済にとって最も重要なリスクは何か。

 実は、発生可能性の高い一位が異常気象、影響が大きいリスクの一位が大量破壊兵器。これは実は三年間一緒です。一七、一八、一九と一緒。しかも、緑色の気候変動関連のリスクは今ほとんど半分以上になっているということが、世界の経営者、エコノミストは認識しているということでございまして、二十四ページ、実は、昨年の世界の年平均気温は、統計開始以来、過去四番目の高水準。二〇一四、一五、一六、一七、一八、一九、この五年間が過去の上位五年を占めている、こういう状況になっておるわけでございます。

 二十五ページからは、続いて、トランプ政策を若干御説明させていただきます。

 トランプさんの公約の一番がペイ・フォー・ザ・ウオール、壁の建設代金を支払わせる、二番がヘルスケアリフォーム、医療保険制度改革、三番がUS・チャイナ・トレード・リフォーム、米中貿易改革ということで、やはりここを相当、来年の大統領再選を意識して頑張っていらっしゃるということでございます。

 ただ、二十六ページ、昨年の中間選挙では、上院は共和党が多数を維持しましたが、下院は民主党が多数になったということで、ねじれ議会がことしの一月三日、第百十六回でスタートしております。

 二十七ページ。

 そうすると、なかなか議会運営がうまくいかない。これは二十七ページの右上でございますが、トランプ大統領の支持率をお出ししておりますが、右側の方に青い線が二本入っています。ちょうどこの期間が、アメリカの政府機関が閉鎖された、過去最長となった三十五日間をあらわしておりまして、政府機関の閉鎖はやはり政権支持率の低迷に結びつくということで、ちょっとその後は政策が変更して、最近はいろいろ米中貿易協議についても少しディールをしようという動きになっています。

 二十八ページ。

 これはちょうどこれから佳境に入っていきます。今、トランプ大統領は間もなくハノイに、きょう夜着きますけれども、あわせて、米中の貿易協議も並行してやっている。一旦、多分、三月の下旬の米中首脳会談で、アメリカからの輸入拡大、これについては合意すると思いますが、やはり、中国製造二〇二五等、構造問題につきましては、これは相当長い、一種の覇権争いということになろうかと思います。

 二十九ページ、三十ページでございますが、冒頭、ちょっと欧州の政治不安のことを申し上げましたが、二十九ページでは、ドイツの二大政党でありますCDU、CSUとSPD、こちらの支持率が、右側の黒と赤ですね、黒がCDU、CSU、赤がSPD、社会民主党でございますが、こちらはいずれも低迷している。

 三十ページ。

 フランスのマクロン大統領の支持率は、右下をごらんいただくと、昨年の後半から相当落ちておりまして、二〇%台。これはデモの過激化で少し最近戻ってきておりますけれども、二〇%台に低迷。

 あと、三十一ページでございますけれども、イタリアは一方で、三十一ページの左下ですね、昨年三月の総選挙の結果、上下両院で、五つ星運動、こちらはポピュリスト、同盟、こちらは極右の政党でございまして、この二大の政党による連立政権が発足したんですが、実はこちらは合わせると支持率が六割前後をずっと維持しておりまして、足元、経済はリセッションの兆しがあるんですけれども、六割近く。これはなぜかというと、右上のグラフなんですが、実は、二〇一四年以降この五年間で、イタリアに地中海経由で六十五万人の難民が押し寄せている、この影響は相当大きいということでございます。

 三十二ページ。

 一方で、EUの問題、英国が出ていく、いわゆるブレグジットでございますが、当時は、昨年十二月に、これはミーニングフルボートという、法的根拠のある離脱法案の可決が必要だったんですけれども、実はこれは一月に大差で否決されまして、三月十二日までやるということでございまして、これは残すところもう一カ月足らずでございますが、これは最後、ノーディール、合意なき離脱にはならないと思いますけれども、ちょっと懸念される状況でございます。

 最後、五分間いただいて、三十三ページから我が国の中長期的課題でございます。

 三十四ページ、我が国の財政状況、右側をごらんいただくと、債務残高は突出して悪い。実は、悪かったのはギリシャと並んでいたんですが、ギリシャは実はここ近年、左側でございますが、プラスになっています、財政収支。

 一方、三十五ページでございますけれども、日本の場合、いわゆる低負担・中福祉、つまり、負担の水準はOECD加盟国の中の下の方だけれども、一般政府の社会保障支出のウエートは中ぐらいということでございます。ただ、これはなかなか、多分、持続可能性が乏しい。やはり中長期的には、ほっておくと高負担・中福祉か中負担・低福祉にまたも移行せざるを得なくなる局面が来るんだろうと思います。

 三十六ページ。

 ただ、我が国自身は今、主要国の対外純資産で見るとトップということで、極めてそういう意味では富裕国でもあるんですけれども、右下は、家計貯蓄率だとか一人当たりGDPはだんだん順位が落ちておりまして、私はこちらはやはり相当成熟化ないしは高齢化と言ってもいいと思いますが、国自身が高齢化してきている。

 三十七ページ。

 特に私が懸念しておりますのは、日本の人口ピラミッドですね。よく右側のグラフはごらんいただくと思うんですが、左側、男女合わせますと、実は最大の問題は、団塊世代のこぶ、団塊ジュニア世代のこぶに対して、団塊ジュニアのジュニアの世代のこぶが発現していない。これが多分、今後二十年、三十年タームでは相当大きなリスクとなるだろう。

 もう一つが三十八ページですね。

 やはり、日本の人口は東京にどんどん集中してきている。今、四十万人ほど人は減っていますが、十五万ほど海外から来て、ネット二十五万、その中で東京に大体年間八万ぐらい、東京圏に十二万集まっておりますから、相当いびつな人口動態になっている。

 三十九でございますけれども、一方で、日本の個人金融資産は相当安定的、ホームカントリーバイアスの強い状況でございまして、これが日本の国債市場を相当支えておるわけでございます。

 四十ページをごらんいただくと、これは左下のグラフだけなんですが、実は、実質実効為替レートのピークは九五年四月、名目実効為替レートのピークは二〇一二年一月と、これはいずれも震災の直後になっていました。震災というリスク要因に加えて、やはり人口動態が、九五年ごろが一番生産年齢人口のピーク、あと、総人口のピークは二〇〇八年から一〇年だ、こういう要因があるんだろう。

 そういうことで、最後、四十一、四十二でございます。どうにか終わりそうなんですけれども。

 四十一ページの時価総額のグラフは日本と世界を比べたものでございまして、右側が日本、左側が海外でございますが、海外をぱっとごらんいただくと青色が多い。青色はITですね。右側の日本の場合、赤色、これは製造業、メーカーが多い。実は、以前はもっと多かった、今はちょっとだんだん少なくなっていますけれども。やはり、世界ではITの動きが中心になってきておりまして、日本も今後は絶対的優位性の産業の振興及び国際分業をやっていかないと、相当いろいろな新興国に追い上げられることになるんだろう。

 そういう意味では、四十二ページ。

 私は、財政の持続可能性を高めるには、国力の充実、特にこれはアンチエージングと言っています。これは美容の世界でも使われていますが、私は、日本国また日本経済のアンチエージング、抗老化、若返りが必要だろうということで、次元の異なる成長戦略、これら、我が国が相当強みあるものをやはり頑張っていく。

 あと、異次元の、二番として、次元の異なる人口政策、少子化対策ですね。また、対外投資の運用利回りの向上、あと、中長期的な財政再建プランの策定ということで、消費増税につきましても、世界的には相当ピークアウト感が強まりますけれども、私は、これは景気を見ながら決めるというよりは、日本の財政の持続可能性、特に現役世代、若い方の将来不安を、取り戻すためにも、これはやはり予定どおり引き上げるということは必要だろう、それのいろいろな副作用につきましては別途財政対応すべきだということで、そういう意味では、今回の政府が提出しました二〇一九年度一般会計予算案につきましては、基本的には私自身は前向きに評価しております。

 ということで、間もなく二十分のようでございまして、ちょっと早くなりましたが、以上でございます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

 次に、上西公述人にお願いいたします。

上西公述人 法政大学の上西充子です。

 本日は、このような機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 私は、統計不正の問題と、統計手法への政治介入の問題、そして、これらの問題に率直に向き合おうとしない政府・与党の国会に臨む姿勢の問題を取り上げます。

 昨年も私はこの場に立ちました。働き方改革関連法案に含まれていた裁量労働制の拡大をめぐって、安倍首相が比較できないデータをあたかも比較できるかのように答弁をした、そのことに端を発する問題を取り上げました。

 答弁撤回に至った安倍首相の昨年一月二十九日の答弁は、厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、一般労働者よりも短いというものでした。政府に都合のよい方向にデータがねじ曲げられていました。この問題の出発点は、二〇一五年の三月でした。

 さて、毎月勤労統計の不正が昨年十二月に発覚して以降、問題は広がりを見せています。不正な統計操作があったことは、二〇一八年一月分から賃金水準が上振れし、その要因が探られる中で発覚したものでしたが、二〇一八年一月分から実施された毎月勤労統計の手法の変更についても、適切な意思決定プロセスを経ておらず、官邸の不当な介入があった疑いが濃くなっています。

 二月四日の衆議院予算委員会で、安倍首相は、小川淳也議員の質疑に対してこう答弁しました。「まるで私たちが統計をいじってアベノミクスをよくしようとしている、そんなことできるはずがないじゃないですか。」

 しかし、今問題になっているのは、アベノミクスにとって不都合な事実を隠すために、毎月勤労統計の調査手法が、官邸の介入によって本来の意思決定プロセスを曲げた形で変えられたのではないかという疑惑です。

 昨年三月には、財務省による公文書の改ざんが明らかになりました。昨年十二月には、厚生労働省による毎月勤労統計のデータ不正が明らかになりました。そして今、毎月勤労統計の調査手法の変更への官邸の介入が疑われています。公的な文書もデータも恣意的に改ざんされて信用ができないならば、これは国家的な危機です。国際的な信用の失墜にもつながります。

 逢坂誠二議員は、現在の状況を、健康診断の結果が改ざんされているようなものだと例えました。血液検査の結果に問題があっても、問題がないかのように結果が改ざんされていれば、体の異常に気づくのがおくれ、対処がおくれます。経済統計のデータが信用ならない状況であれば、一国の経済のかじ取りの判断を誤ることにもつながります。現状では、消費税増税の是非も判断できず、予算案の審議の前提が崩れています。

 このような現状において何よりもまず必要なのは、徹底した事実の解明です。再発防止は徹底した事実の解明に立脚しなければなりません。にもかかわらず、その事実解明を政府・与党が阻んでいるというのが現状です。それがいかに異常な事態であるか、この機会に皆さんに考えていただきたいと思います。

 さて、昨年十二月から表面化した統計問題は、大きく四つに分けられます。

 一つ目の問題は、基幹統計である毎月勤労統計において、東京都の五百人以上の事業所について、断りなく不適切な処理を行ってきた問題です。

 具体的には、全数調査すべきところを、二〇〇四年から二〇一七年まで、およそ三分の一の事業所の抽出調査へとこっそり切りかえた上に復元処理も行わなかった結果、賃金水準が下振れする結果となりました。これが雇用保険給付などの過少給付につながり、当初予算案の閣議決定のやり直しが必要な事態となりました。さらに、二〇一八年一月分の調査からは、復元処理を始めた結果、前年比の賃金の伸び率が過大となりました。

 そして、厚生労働省は、いずれの不正についても、公表せずに隠し続けました。総務省の統計委員会がデータの上振れに疑義を呈し、厚生労働省に説明を求めていたにもかかわらず、昨年十二月まで、全数調査を行っていると偽り続けていました。

 この問題について、厚生労働省が設置した特別監察委員会が調査を行いましたが、問題の早期収束を図るためのお手盛りの調査であったことが、一月二十四日の閉会中審査以降明らかになり、改めて調査のやり直しが必要な事態となっています。また、この統計不正への官邸の関与の有無については、そもそも調査対象とされていません。

 統計をめぐる二つ目の問題は、二〇一八年一月分からの毎月勤労統計の統計手法の変更に、官邸の不当な介入があった疑いが濃いことです。

 二〇一八年一月分からの統計手法の変更は一気に行われ、賃金水準が大きく上振れする結果となりました。

 変更点は以下のとおりです。

 三十から四百九十九人規模の事業所については、従来は総入れかえ方式であったものが、ローテーションサンプリングと呼ばれる部分入れかえ方式に切りかえられました。それに合わせて、入れかえ時に過去にさかのぼってデータを補正する遡及改定も行われないこととなりました。

 さらに同時に、二〇一四年の経済センサスのデータに基づいた母集団復元を行うためのウエート変更であるベンチマーク更新が行われたのですが、従来、ベンチマーク更新時に行っていた賃金指数の過去にさかのぼっての補正も行わないことになりました。

 また、毎月勤労統計の調査対象は常用労働者ですが、その常用労働者の定義も変更され、前二カ月に十八日以上勤務した日雇労働者を対象から除外するとともに、有期雇用労働者の定義も変更されました。

 前述の東京都五百人以上の事業所の抽出結果の復元も、それらの統計手法の変更に合わせてこっそり行われました。

 不正な抽出と復元の問題を除き、その他の統計手法の変更は、専門家による適正な検討プロセスを経て行われたものであるならば、何も隠し立てをする必要はないはずです。

 しかしながら、部分入れかえ方式を検討した厚生労働省の毎月勤労統計の改善に関する検討会は、二〇一五年の六月三日から九月十六日まで六回にわたり開催されていますが、三年以上前の検討会であるにもかかわらず、第四回から六回の議事録が公開されていませんでした。野党が議事録の公開を求め続けた中で、ようやく公開されたのは先日の二月十五日です。議事録を公開してこなかった経緯からは、不都合な事実が露呈するのを防ぎたいという意図がうかがわれます。

 そして、後述するように、厚生労働省が阿部正浩座長に二〇一五年九月に送っていた一連のメールが先週二十二日に公開されたことにより、全数入れかえを維持する方針から部分入れかえの検討へと、恐らくは官邸の介入によって結論が大きく変わった経緯が明らかになってきました。

 毎月勤労統計をめぐるその他の統計手法の変更をめぐっても、不透明な部分が多く残されています。

 統計をめぐる三つ目の問題は、GDP六百兆円の目標達成に向けた恣意的な数値のかさ上げの疑惑です。

 二〇一五年九月二十四日に、安倍首相は、アベノミクスは第二ステージに移ると宣言し、アベノミクスの新たな三本の矢を発表し、その中で、希望を生み出す強い経済として、GDP六百兆円の目標を掲げました。その目標に向けて、実際にGDPは大幅な上昇を示しました。

 しかし、その中で、その他項目の急激な上昇が、恣意的なかさ上げによるものだったのではないかとの疑いが生じています。二〇一六年の十二月に、国際基準に合わせるためとして、GDPの計算方法が大幅に見直されましたが、国際基準への適合とは異なるその他の要因で大幅な上昇が生じているのです。

 また、GDPの算出にかかわる基幹統計についても、統計委員会への申請がないものについても、未諮問審査事項として二〇一四年以降十項目の見直しが行われており、これらもGDPのかさ上げにつながった可能性が指摘されています。

 統計をめぐる四つ目の問題は、毎月勤労統計の不正の発覚を受けて行われた自主点検によって、五十六の基幹統計のうち二十四に不正が見つかったという問題です。これを受けて、調査員を含めた調査体制のあり方、統計部局の予算、人員、専門性のあり方、統計部局の一元化の是非などが問われています。

 このように問題は拡大してきていますが、毎月勤労統計の不正問題を審議すべく一月二十四日に行われた厚生労働委員会の閉会中審査では、与野党双方から、徹底した原因の究明、不正の全容解明によりうみを出し切ることが再発防止のために必要であることの指摘が行われていました。

 にもかかわらず、その後の国会審議では、政府は、基本的な事実関係さえ明らかにしない答弁を続けています。野党が求める基本的な資料の提出も出し渋りが続いており、参考人招致もなかなか認められない状況が続いています。これらは、事実解明に向けた政府と与党の消極姿勢を示すものです。

 一例を紹介しましょう。

 一月二十四日の閉会中審査では、大串博志議員が、毎月勤労統計の不正な抽出と不正な復元をめぐる問題について、厚生労働省が設置した監察チームと特別監察委員会によるヒアリングの実施概要について情報開示を求めました。しかし、対象者の実人員数という基本的な情報でさえ、答弁を得るまでに何度も速記がとまり、混迷した答弁状況が続きました。

 さらに、いつ、誰が、誰にヒアリングを行ったのかの情報開示を求めた大串議員に対し、定塚官房長は、処分につながるヒアリングであるため、一切出せないのが私どものルールであると答弁しました。

 しかし、これは言いわけでしかありません。そのことは、冒頭に紹介した裁量労働制をめぐる不適切なデータの比較について、昨年、厚生労働省の監察チームが行った調査結果の報道と照らし合わせても明らかです。

 これも処分につながるヒアリングでしたが、昨年七月十九日の報道発表資料には、ヒアリング対象者の役職や人員、ヒアリング実施者、ヒアリング実施日時が明記されています。処分につながるヒアリングだから詳細は開示できないという定塚官房長の答弁は、この前例と整合せず、情報を出さないための方便でしかないことが明らかです。

 後に野党の追及により判明したところによれば、毎月勤労統計をめぐる調査は、事務方である厚生労働省だけがヒアリングを行っていたケースが多く、報告書の原案も事務方が作成していました。さらに、その報告書の原案を外部委員に示したのは、報告書が取りまとめられた一月二十二日当日であったようです。

 労働政策研究・研修機構の樋口美雄理事長を委員長に迎えた特別監察委員会は、一月十七日と一月二十二日の二回しか開かれておりません。二〇〇四年までさかのぼり、経緯が複雑な毎月勤労統計の不正に対し、余りにも短期間の調査しか行わず、組織的な隠蔽は認められなかったと結論づけたのです。

 お手盛りの内部的な調査によって問題の収束が図られたことは明らかでした。その実態を隠すために、野党の事実確認に政府側が誠実に答えないことが国会審議で繰り返されたのです。

 しかし、与党は、事実解明に消極的な政府の姿勢をただしませんでした。野党が求める樋口委員長の参考人招致についても、労働政策研究・研修機構の理事長としての出席しか認めません。特別監察委員会がどのような問題意識でどこまで事実解明を行ったのかも明らかにされないままとなっています。

 次に、直近で問題となっている毎月勤労統計の部分入れかえ方式への変更過程の問題を取り上げます。

 現在、二〇一五年三月と二〇一五年九月に、毎月勤労統計への官邸の介入があったと疑われる状況になっています。

 二〇一五年三月三十一日には、中江首相秘書官が姉崎統計情報部長らに問題意識を伝えています。同日に公表する予定だった毎月勤労統計の一月分の確報は、当日になって急遽公表が延期され、四日後の四月三日に公表されました。この年の一月分からサンプルの入れかえによって過去にさかのぼって補正が行われたことにより、二〇一四年の十月と十一月の名目賃金の前年比がプラスからマイナスに転じることとなりました。それに対し、過去にさかのぼって大幅に数値が変わるようでは、経済の実態がタイムリーにあらわせないとの問題意識を中江秘書官が伝えたのです。

 その問題意識を受ける形で、厚生労働省では、二〇一五年六月三日に、毎月勤労統計の改善に関する検討会が立ち上げられています。冒頭に姉崎部長が語った問題意識は、アベノミクスの成果としての賃金の動きが注目されている中で、サンプルの入れかえによる遡及改定によって過去の数値が変わることについて、人騒がせな統計だといった意見があるというものでした。

 ただし、この検討会は、二〇一五年八月七日の第五回の時点では、従来どおり、三十から四百四十九人規模について、総入れかえを維持し、遡及改定を維持することが適当と阿部座長がまとめていました。中江秘書官の問題意識には沿わない方向性でした。

 にもかかわらず、続く九月十四日の第六回検討会では、阿部座長の欠席のもとで、サンプル入れかえ方法については、引き続き検討することとするという中間的整理案に変更され、そのまま不自然な形で立ち消えとなりました。

 その間に何があったか。厚生労働省が阿部座長に送っていた複数のメールが阿部座長から厚生労働省へと転送されたことによって、先週二十二日に公開され、経緯が明らかになってきました。

 二〇一五年九月四日のメールには、検討会での検討結果については官邸関係者に説明をしている段階との記述が見られます。そして、第六回検討会の二日前の九月十四日のメールには、委員以外の関係者と調整をしている中で、サンプルの入れかえ方法について、部分入れかえ方式で行うべきとの意見が出てきましたという記述や、検討会開催前の突然の方針変更で御迷惑をおかけしますが、よろしくお願いしますとの記述が見られます。

 これまでの答弁で、九月十四日に姉崎部長は、中江秘書官と会ってコメントを受けたことを認めています。また、取りまとめの文書のまとめ部分の記載が、総入れかえ方式が適当から引き続き検討するへと変更されたのは、九月十四日の十四時一分から同日二十二時三十三分までの間であることがわかっています。委員以外の関係者とは中江秘書官のことと思われるとの根本厚生労働大臣の答弁もあります。

 中江秘書官は、九月十四日に姉崎部長と会った記憶がないと答弁しており、姉崎部長は、中江秘書官とは会ったものの、文言の修正の指示はそれ以前に行ったと答弁しています。いずれの答弁も、官邸の不当な介入を否定するための苦しい答弁と思われます。

 また、二〇一五年九月三日には、参議院厚生労働委員会における小池晃議員の質疑に備えたレクを中江秘書官が安倍首相に行っており、安倍首相は、一人当たりの賃金が伸びないとの小池議員の指摘に対して、毎月勤労統計の名目賃金と実質賃金に言及しながら答弁を行っています。「しっかりと実質賃金にも反映されるように我々もこの現在の経済の好循環を回していきたい」と首相は答弁していますが、二〇一五年の四月と五月は実質賃金でゼロ近傍まで改善とはいうもののマイナス、そして、六月は名目賃金、実質賃金ともにマイナスとなっており、実質賃金が伸び悩んでいることが、成長と分配の好循環をうたったアベノミクスにおける不都合な事実であったことは疑いようがありません。

 以上の事実関係を率直に見れば、賃金水準の遡及改定による下振れを防ぐために統計手法の変更が官邸主導で進められ、専門家の検討結果を尊重しようとする厚生労働省の意向に反して、強引に検討会の結論が曲げられたと見るのが一番自然です。

 以上、この間、何が問題になっているか、主要な論点に限って振り返ってきました。

 毎月勤労統計の不正の発覚に端を発し、徹底した事実解明をとの姿勢で、少なくとも見かけ上は与野党一致していた国会は、現在、統計手法の変更への官邸の介入を追及する野党と、その追及を阻むために国会への資料の提出や参考人招致を認めない与党との対立関係にあるように見えます。

 しかし、統計の信頼性の回復は、政府と国会が、そして与党と野党が、ともに一致して追及しなければならない課題です。そのためには、たとえ安倍政権にとって不都合な事実であろうと、また厚生労働省にとって不都合な事実であろうと、それらの事実を全て明らかにして、何が起こったのか、なぜ起こったのかを究明しなければなりません。そこからしか再発防止は図れません。

 不都合な事実はあくまで隠蔽して、事実を曲げてでも組織や安倍政権を守ろうとする、そのような姿勢は間違っています。過ちは過ちと認め、とるべき責任はとり、事実に即して再発防止を図る、その姿勢がなければ、統計の信頼性は回復できません。

 また、政府・与党には、統計が示す現実を謙虚に受けとめ、アベノミクスがなぜ実質賃金の上昇につながっていないのか、なぜ国民は景気回復の実感を持てずにいるのか、どのような政策が今必要なのかを問い直すことが求められます。

 最後になりますが、私は、昨年六月から、国会の審議を、切り取られて編集されたニュース映像ではなく、実際のやりとりをそのまま三分ごとに切り取って解説つきで街頭上映する国会パブリックビューイングという取組を、団体を結成して続けています。

 国会では、質疑とかみ合わない論点ずらしの答弁や、意味なく冗長な背景説明の答弁などで、野党の質疑時間が奪われ続けています。野党の指摘が不当なものであるかのように印象づけるような答弁も横行しています。

 私たちが主権者として国会を監視しなければ、そのような国会の機能不全は続きます。そして、不都合な事実も隠され続けます。その影響は、私たちの暮らしにはね返ってきます。

 よりよい社会の構築に向けて、国会が本来の機能を果たし得るために、私たちは主権者として不断の努力を重ねていきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

 次に、江口公述人にお願いいたします。

江口公述人 大阪府の中央子ども家庭センターの所長の江口でございます。現場の児童相談所の所長でございます。

 このような場に呼んでいただきまして、意見陳述、ありがとうございます。

 また、児童相談所長の立場としましては、あの千葉の事件を受けまして、大変衝撃を受けておりますし、いま一度児童虐待防止に全力で取り組まなければならないと大変身を引き締めているところでございます。

 それでは、資料に沿って説明させていただきたいと存じます。

 大阪府の児童相談所でございますが、二ページでございます、約五百三十万人の人口、児童人口が八十四万人ほどでございます。下の方に職員体制、総勢このような体制で現在取組を進めております。大阪府は平成十四年度に、配偶者暴力相談支援センター、いわゆるDVセンターを併設をいたしました。それで連携をとりながら取組を進めておるところでございます。

 三ページでございますけれども、児童相談所の職員、この間、大阪府の人事当局の御協力の中、人員がふえてまいりました。結果的に申しますと、五年未満が六二%という状況でございます。この職員を育てていくのがこれからの急務でございますし、これから増員をいただくわけでございますけれども、この職員を本当に一人前にしていく努力が現場でまさしく求められているところでございます。

 先輩方から私は、一人前のケースワーカーになるには十年かかると言われて育てられました。一年、二年でなかなか一人前になるのは難しゅうございます。家庭の問題に支援していくというのはなかなか難しく、なかなか複雑な要因が絡み合っております。経済的な問題、保護者の問題、地域の問題、さまざまな問題をひもといていき、そして一番最適解を見つけるというのはなかなか難しゅうございます。この人材育成に全力で取り組んでまいりたいと思っているところでございます。

 四ページ、五ページをお開きいただきながら、この間の取組を大阪府では一期、二期、三期という形で分析をし、それぞれ整理しながら取組を整理してまいりました。

 第一期が、平成十二年、いわゆる虐待防止法が成立した時期でございます。この時期から平成十五年までの時期でございます。この時期は、相談支援的なアプローチが児童相談所の旧来の基本的なスタイルでございました。虐待防止法ができた背景も踏まえて、介入指導的なアプローチをしっかりとれるような体制に変えなければならないというのがこの時期の私たちの意識でございました。

 平成十三年に虐待対応課という形で分離をして新しい組織をつくりました。近年のいろいろな調査研究を見ておりますと、虐待対応件数が一児童相談所四百件を超えますと機能分化を進めていく傾向があるという調査報告も多数出ているところでございます。それから、危機介入援助チームの設置をいたしまして、約百名近くの弁護士、お医者さんに就任いただきまして、支援の頂戴を始めたところでございます。それから、保健師の配置。それから、先ほど申しました配暴センターの機能を付加したところでございます。

 五ページの表を見ていただきましたら、非常にわかりやすく数字が変化しております。第一期、平成十五年が二千七百件でございましたのが、平成十六年に四千件を超えるという急激な変化を起こしております。それから、第三期、見ていただきましたら、平成二十七年、一万件を超えると。明らかに、数字の変化だけ見ましても、大きくステージが変わったなというのが現場の印象でございます。それにあわせて一時保護件数も見ていただきましたらわかりやすいかなと思いますが、真ん中の欄にございますように、平成十五年、四百件台だったのが、いきなり九百八十件、倍にふえまして、現在は二千件を超えております。

 今年度の推計値を見ておりますと、間違いなく三千件は超えるなというのが大阪府の現状でございます。一時保護が三千件を超えるという現場の実情というのは大変厳しゅうございまして、現場の職員にはちゅうちょなく保護しろと言うわけでございますけれども、三千件を超える子供たちを保護して支援をしていくというのは並大抵のことではございません。しかしながら、児童相談所という児童福祉の専門機関としては、何が何でも歯を食いしばって頑張ろうというふうに声をかけておるところでございます。

 それから、第二期でございますが、平成十六年から平成二十五年の時期でございます。介入保護と法的対応の蓄積の時期というふうに考えております。平成十六年に児福法が改正されまして、市町村に要保護児童対策地域協議会、いわゆる要対協の設置、それから市町村で児童相談を進めていくという体制がこのときからとられておるところでございます。

 伴いまして、さまざまな児童福祉法の改正で何が児童相談所に起こったかと申しますと、法的な権限を集中していく機関としての役割が強く求められてきたところでございます。

 その第一点として、まず、組織的な対応を進めましょうということで、虐待対応課の職員は必ず複数でしか対応させないというのを現場で徹底いたしました。一人で対応するのではなく、必ず複数で対応しようと。

 それから、積極的に法的な、家庭裁判所への申立てをしましょうということでございます。現在、大阪府では約五十件余り毎年申立てをしております。親権喪失、親権停止、あるいは保護者の同意なく入所を進める、法二十八条の申立てでございます。

 五十件申し立てるということは、臨床家としての感覚ですけれども、約二倍から三倍はその検討に入っております。ということは、年間百五十件ぐらい法的対応、弁護士さんと一緒に検討に入っているということでございます。毎月検討しているということで、昨日も、三件申し立てたいけれども、どうですか、所長というふうに来ましたので、しっかりみんなで議論したところでございます。

 それから、児童相談所の危機介入援助チームの強化をいたしました。というのが、皆さん御存じのように、先生方も御存じのように、頭部外傷であるとか、AHTであるとかSBSという問題がさまざま語られた時期でございまして、鑑定医の先生方にきちっと鑑定していただいて、医学的な知見もしっかり整えながら取組を進めていく必要がございました。その意味で充実させたところでございます。

 あわせて、市町村との連携というのがキーでございますので、市町村に職員を派遣する、あるいは、弁護士であるとかお医者さんをチームを組みまして、その市町村がどのような職員を派遣してほしいのかというニーズに合わせて、チームの中から委員を派遣するなどの取組もやってまいりました。

 それから、警察官OBの配置を平成二十三年度からスタートさせております。

 そして、保護した子供たちの心のケア、しっかり取り組まなければなりません。その意味で、診療所を設置いたしまして、児童精神科医と小児科医を配置したところでございます。

 いずれにしても、複合的に、さまざまな角度から、子供たちを守るためにしっかり取り組んでいかなければならないと考えたところでございまして、この間、児童相談所の職員が増員されて、頂戴したわけでございますけれども、若い職員が何年か経験して虐待対応になれてきまして、結婚をして、そして家庭を持ち、そしてさまざまな、その後また復帰をしてくるという職員もふえてまいります。このころ、ワーク・ライフ・バランスを考えた組織に変えなければならないというのが、現場の切実な課題でございました。

 そのために、組織を大幅に変えて、いろいろな職員、例えば晩は働けないけれども昼間はしっかり働く職員もおりますし、さまざまなワーク・ライフ・バランスを考えた組織体制に変えようということで議論を続けたところでございます。

 平成二十六年度からが、今度は、初期対応から切れ目ない支援の構築の時期でございました。

 まず一つは、二十四時間三百六十五日の対応をきちっとできる組織にしたいということでございます。

 全ての通告、相談を一括して受理して、そこでベテランの職員がきちっとアセスメントできるように、一年目、二年目の職員がアセスメントじゃなくて、きちっと、ある程度のレベルでアセスメントできる職員を集中化させて、そこで一旦全部アセスメントしましょうという組織につくり直したところでございます。インテーク担当というふうに現場では呼んでおります。

 それから、夜間休日の当直チームを設置いたしました。平成二十二年ぐらいから晩の九時半までは体制をとっておったんですけれども、夜間の通告が激増しましたので、これでは対応できないということで、二十四時間三百六十五日、常勤職員を輪番で、全センターで交代で入りまして、対応を進めました。大体、職員に聞きますと、月一回は最低回ってきますというふうに言っております。

 統計を見てみますと、平成二十二年に現実に出動して子供の安全確認、若しくは場合によって一時保護した件数を見ますと百四人でございましたが、平成二十九年を見ますと四百四十七人でございます。夜間、休日にこれだけの時間、子供たちに出会って、場合によっては保護してくるということでございます。

 時には、若い職員が二名で夜間に行かなければならないということもございます。そうしますと、夜、若い職員が家庭を訪問して安全確認するのは大変厳しい状況でございますので、今年度からは警察官OBの方に入っていただきまして、夜間は警察官OBも同行して安全確認ができる体制で強化したところでございます。

 それから、全センターに市町村支援のコーディネーターを設置いたしました。市町村との連携が必須でございますので、これをきっちりやっていくために、専任の職員を一名ずつ配置したところでございます。

 このような取組を進めながら、あとは、社会的養護に入った子供たち、要するに、保護した後、施設や里親さんの方にお願いしている子供たちでございます。この子供たちもしっかり支援しなければなりません。

 今まででしたら、虐待対応は、緊急ケースが入りますと緊急ケースが優先してしまいます。そうすると、施設に入っている子供たちの支援というのが、あ、ごめん、ちょっときょう行かれへんから来週頼むわ、こういう世界になるわけでございますけれども、子供たちの方は、自分の担当ケースワーカーが来てくれると思って待っておりますので、それを飛ばすわけにもまいりません。

 ですので、このときは、施設に入っている子供はきちっと対応できるように課を分けまして、ここは支援をしっかりしたいということで課を分けたところでございます。

 あと、警察、検察との連携についても、御存じのように、大阪府は大阪府警本部と協定を結びまして、全件、今、情報共有を進めております。大阪府の場合は、ダブルチェックによる、いわゆる見落としを防止したいということに加えて、警察の方から、例えばDVであるとかストーカーの情報であるとか、生活安全情報を頂戴をして支援の充実にも生かすという、双方向の情報共有を進めております。二重三重にこの情報が含まれながら、支援の充実につながってほしいなと思っているところでございます。

 五ページは統計資料でございます。

 六ページでございます。二十八年四月に設置しました新しい組織でございます。

 従来は、虐待対応課、地域相談課という形で、虐待相談かそれ以外かということで分けておりました。虐待対応課の職員は、ほとんど三百六十五日二十四時間スタンバイ状態になりますので、自分のケースが何か大変な状態になりますと、休日でも出てきてよということを現場の所長としては言わざるを得ない場面もございました。子供の命を守るためには、時々そういう指示をしなければならない場面もあったのも事実でございます。

 一方、例えば非行の相談で参りましても、不登校の相談で参りましても、その背景に虐待が隠されている場合というのは多数ございます。虐待か虐待でないのかではなく、子供の安全を守ることが優先するのかしないのかという観点で、相談をきちっと全件、とにかくアセスメントしましょう、同じ水準でしましょうという形で、ワンストップで入る相談対応課をつくったところでございます。ここに、先ほど申しましたように、児童心理司も含めて、ケースワーカーと一緒になってインテークをやっております。

 といいますのも、心理的虐待が増加しておるのは、先生方もよく御存じのとおりでございます。心理的虐待についてきちっとアセスメントできる心理司を最初のときから配置して、これはかなり子供に影響大きいよ、けがはないけど、この子保護せなあかんやんかという場合には、きっちり保護できるためには心理司に最初からアセスメントに入っていただく必要があると考えたからでございます。

 そういう形で、育成支援課というところは、施設に入所した後の支援をしっかりするところでございます。

 七ページでございます。相談対応の状況でございます。

 現在、一万一千件を超えておるというところでございます。この統計は、大体全国の一割弱というのが大阪府の数字として出ておるところでございます。

 千葉県の野田市の事件後の一時保護件数を、緊急でこの土日に職員に拾わせました。見ていただいたらわかりますように、前年同期、同月比の一・七倍の一時保護件数でございます。一カ月未満の期間に、二百十二人の子供たちを緊急で保護しておるところでございます。

 現場は大変厳しい状況に置かれていまして、夜間は出なあきませんし、一・七倍の子供をしっかり保護せなあきません。所長、どないかしてくれよという声は部下から聞くところでございます。どうか、児童相談所の職員の処遇改善に向けて、ぜひ御協力賜りたいというふうに思っているところでございます。

 あわせて、一時保護がこれだけふえますと、一時保護所のいわゆる環境改善でございますとか、それとか体制強化が必須でございます。受皿の確保も必要でございます。そのために必要な所要の支援をお願いしたいというふうに思っております。

 また、児童養護施設とか乳児院の方が、今、機能転換あるいは多機能化に進んでおる中で、一時保護委託を受ける施設としての運用をする施設も出てまいりました。この部分についてもぜひ御協力賜りたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。

 八ページ、九ページでございます。

 八ページは、現在の通告の体制がどうなっているのか、俯瞰的に書いておるものでございます。

 現在、市町村には、学校であるとか保育所であるとか幼稚園であるとかの情報がかなり集まり出しているというのが私たちの現場の感覚でございます。一方、一八九は基本的に児童相談所に入るシステムとなっておりますので、近隣であるとか、あと、警察からの通告が児童相談所にも入ってきておるところでございます。

 これを、重症度により速やかに、どちらがやる方がうまくいくのかということをきっちり整理をして、双方向にケースを受渡ししていくために、ここに市町村コーディネーターを入れたところでございます。

 市町村によりましても、職員体制も違います、対応件数も違います、人口規模も違います、地域資源も違います。できるだけ、各市町村の実情に合ったオーダーメード型のきちっとした、相手のニーズもつかんだ上での、生きたケースの受渡しができるように、専任の職員を配置して、各市町村を回れというふうに所長からは言っているところでございます。このような形で、市町村コーディネーター等も設置しながら取り組んでおるところでございます。

 最後のページになります。十ページでございますが、弁護士配置でございます。

 現在、大阪府は、先ほど言いましたように、危機介入援助チームという形で百名近くの先生方にお願いしているところでございますけれども、先生方には、例えば、外国籍の児童の権利擁護に非常にお詳しい先生がおられたり、あるいは、少年事件、いわゆる非行の少年事件なんかで付添人などで頑張っておられる先生もおられます。あるいは、性的虐待なんかの子供にきちっと寄り添う弁護士さんのチームもございます。それから、医療関係の事故、私たちの分野でよく使う医療ネグレクト、いわゆる、子供さんに何らかの医療行為を受けさせないがために子供の命にかかわるような事件もございます。

 それぞれ専門分野がございますので、その先生方に、大体三名から四名のチームを組んでいただいて、最新の知見を踏まえながら、チームを組んだ支援をお願いしておるところでございます。ですので、大阪府の場合は、このチームで、年間千件から千五百件相談しておりますし、年間九千五百時間ぐらいの時間を、毎日のように、メール、電話、来ていただいたり、一緒に面接に入っていただいたり、ケースに応じて、融通無碍と申しますか、そのケースに合った一番最適な取組が進んでおるところでございます。

 これが大阪方式というふうに私たちは呼んでおりますけれども、このような形で、複雑多岐になっている児童相談所、取り組んでまいりたいと思います。

 どうぞこれからも御支援賜りますようにお願い申し上げまして、私からの陳述といたします。

 ありがとうございました。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

 次に、浦野公述人にお願いいたします。

浦野公述人 発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、予算の審議に当たって、日本国憲法の理念と国民生活の安定という立場で公述させていただきたいと思います。

 まず、国民に役立つ税制の問題を最初に申し上げたいと思いますけれども、納税者の権利ということがよく言われますけれども、これは、広く捉えた場合、広義に捉えた場合は、税金を払うときの権利と、その税金がいかに使われるか、税金の使途に関する権利に分けられるかと思います。

 最初に、税金の支払い方、国からすれば取り方の問題ですけれども、これは、日常的には応能負担原則というふうに言われておりまして、別名能力税とも言えるかと思いますけれども、やはり負担能力に応じて税金は払うものだ、こういう考え方になるわけです。

 負担能力に応じた税金、では、何が税目として適切なのかと申しますと、所得課税、所得を課税の対象にする、国税でいえば所得税だとか法人税が中心に来るということが重要になるかと思います。この応能負担原則は、国税、地方税、あるいは、税とは呼んでいない社会保険料と言われる目的税、全てに対応しなければならない原則かと思います。

 具体的には次の点を重視するということで、一ページの上の方に(1)から(4)まで掲げておりますけれども、まず、先ほど申し上げましたように、直接税、所得課税を中心に据えるということですね。それから、所得を分離するようなことなく、あらゆる所得を原則的に一つに集めて、その集まった所得について累進課税構造、具体的には超過累進課税構造になるかと思いますけれども、これを採用していく。総合累進課税と言われているものです。それから、生計費には課税しない。そして、同じ所得でも、所得の質的な面を考慮して、勤労所得については軽く、不労所得については重くというような、こういうことが、簡単に言えば、応能負担原則になるかと思います。

 次に、税金の使い方、使途の問題になりますけれども、これも、やはり日本国憲法のもとで税金はどのように使われるかということを考えなければいけないかと思います。

 憲法前文は平和的生存権がうたわれており、一条では国民主権、そして九条では戦争放棄の規定があり、その後、数々の人権規定が置かれており、二十五条に至り、生存権、これは、国民の側と国の側からの生存権についてうたわれているわけですけれども、国民の側からは、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利がある、一方、国側は、その権利を保障しなければならない、義務がある、こういうことになるわけです。そうしますと、税金の使途は、あらゆる税金が、日本国憲法のもとでは福祉、社会保障のために使われなければならないということになります。

 所得再分配ということが言われますけれども、これは生存権の思想になるかと思いますけれども、今の社会は資本主義社会ですから、市場で勝利した者がたくさんの富を得る、その一方では貧困者が生まれる、こういう状況になるわけです。そこで、この事態を改革するということで、所得再分配、つまり、社会の中の富を個人に対して分ける、こういうことが必要になるかと思います。

 社会保障が充実している国についていろいろ説明されます。特に、私はスウェーデンのことについてちょっと申し上げたいと思いますけれども、東京新聞に元駐スウェーデン日本国特命全権大使の渡辺さんという方が書いている文章によれば、スウェーデンにおいては、政府とか政治というのは国民の負託を得て、国の安定、繁栄をくれるということで大変肯定的に捉えられています、だから、総選挙の投票率は常に八〇%台です、こういうふうに言われておるわけです。

 具体的にスウェーデンの福祉の面を見ますと、二ページの上に書いてありますように、学費は無料、あるいは、医療費についても無料というような形になっているわけです。

 実際に、病院の窓口負担というものを見てみましても、窓口負担がゼロの国というのは少なからずあるわけです。スウェーデンでも、一日一千百円の低額負担、年間九千九百円が上限であるという実態になっております。

 しかし、日本では、義務教育就学前は二割負担、六歳から六十九歳は三割、七十歳以上は一から三割というような状況になっているわけです。もっとも、義務教育就学前等については助成している自治体も日本ではあります。

 消費税の問題について移りたいと思いますけれども、消費税と国民主権という問題を見た場合にどういうことが考えられるかといいますと、憲法では、市民の自己決定権、あるいは消費者権、商品選択権、納税者の権利という三位一体の人権があるわけですけれども、消費税はこれらを全て侵害するような状況になるわけです。

 買物をするにしても、今の消費税は選択の余地がないわけです。かつて、消費税が導入される前日まで、日本でも物品税という個別消費税がありましたけれども、この場合には、例えば料理飲食税などについても、一万円以上の食事をすれば一〇%の料理飲食税を払うだとか、それが嫌だったら安い食事で済ませるというような選択が可能だったわけですけれども、今の消費税は選択の余地はないということが言えるわけです。

 そして、この消費税推進の理論で言われるものの大きなものは、一つは、国の財政が悪化しているので消費税はやはりやむを得ないんじゃないか、もう一つは、社会保障の財源として消費税は重要なんだということが言われます。しかし、私は、この消費税というのは、国の財政状態をより悪化し、更に社会保障を削減するものであるということを申し上げたいわけです。

 それは、三ページに、今年度の一般会計予算案を示しております。この予算、総額百一兆円ですけれども、税収を見ると六一・五%で、足りない部分を国債三十二兆円、三二・一%の国債で賄うような状況になっております。これは、先ほど申し上げました応能負担の中心に位置すべき所得税、法人税が非常に減収されており、その一方で、消費税が税目では一番になるような状況になっているわけです。

 この結果、どうなるかと申しますと、国債の返還とその利息の支払いというものが歳出に大きな部分を占めることになります。予算案でも、二十三兆五千億円というものが国債の償還と利払いになっているわけです。つまり、税収でいえば、税収のほぼ四割ぐらいが国債費の元金と利息の返済に充てられる。こうなりますと、社会保障に回る余裕が出てこないということになるわけです。

 こういう問題点があり、そして、法人税について言えば、この三ページの下に、法人税の、所得が出た場合に、国税の法人税、地方税の法人住民税、それから法人事業税という三税の負担があるわけですけれども、これらが、二〇一七年度ではほぼ三〇%強という状況になっておりました。

 しかし、実際の当期純利益に対しての負担率を見ますと、この三角があるのは、納税しないで還付されているということで、大体、商社は、世界じゅうに支店などを置いて、いろいろな税制を使い、税負担をしていないという現状がありますし、三〇%以上、本来であれば払っているのが、巨大企業では軒並みそういう負担をしていないということがこの表でわかるわけです。

 したがって、タックスヘイブンということが問題になりますが、日本自体が大企業にとってはタックスヘイブンになっているというのが現状かと思います。

 四ページに、所得税の税率構造を掲げておきました。一番下が現在採用されているもので、五%から四五の七段階の超過累進課税構造になっています。しかし、一九七四年を見ますと、所得税が十九段階の超過累進税率を採用しておりました。しかも、住民税は、現在、お金持ちも貧しい人もみんな一律一〇%となっておりますけれども、この七四年当時は、脚注に書いてありますように、十三の刻みがあったんですね、二、三、四、五、六というような形で。

 こういうものが、だんだん累進課税構造が破壊されているわけですけれども、この中心に来るべき法人税それから所得税の累進課税構造で計算した場合にどうなるのかということを、菅さんという法人税に詳しい税理士さんが計算しておりますけれども、これが、現在の法人税収は十兆円ばかりなんですけれども、所得税程度の緩やかな累進課税構造にした場合に、二十九兆円の税収が上がるということがわかりました。

 一方、所得税についても、申告所得税、それ以外に源泉所得税がありますが、申告所得税は二兆数千億円の税収になっているわけですけれども、これが、七四年当時のものに二〇一六年の所得を当てはめて計算すると、十二兆七千億というものが出てくるのが、私が計算した結果、わかりました。

 つまり、中心に来るべき所得課税、所得税十兆円の税収と、法人税十九兆円の税収が見込めるわけです。その分、歳入欠陥になっているということになるかと思います。

 消費税の問題点については、軽減税率と言われますけれども、食料品に八%の税率を適用している国は、先進資本主義国ではほとんどないわけで、イギリスではゼロ%というようなことになっているわけです。ですから、軽減税率という言葉自体が誤りで、過重税率と言った方が正しいかと思います。

 それから、二〇一五年の税制改定で、今まで消費税は景気の状況を見て税率を変動させるという規定があったんですけれども、それを削除してしまったわけです。三党合意で消費税を上げるのが決まったときにはこの景気条項があったわけですけれども、結局、二〇一五年にはその景気条項を削除してしまった、こういうことになっています。

 それから、消費税は、輸出製造業に対してゼロ%の税率を適用した結果、例えば、六ページに、トヨタ自動車の昨年の三月期の決算で私が推算したところによると、一円も払わないで四千五百億円余りの還付を受けている。こういう、輸出製造業全体では五兆円にもなるのではないかと言われる還付の問題があります。

 それから、消費税の控除されないものの中心にあるのは正規雇用者に対する給与ですけれども、消費税を払わないために、どんどん外注、派遣に切りかえていくということで、賃下げ、リストラが激しくなっているという問題があります。

 それから、七ページでは、今年度の税制改正法案の中では、国民監視というものが非常に強化されるような形で書かれていて、既にこれも国税通則法の改定などによって扇動罪だとか共謀罪の適用という問題も起きてくるので、この点も注視しなければいけないかと思います。

 それから、九ページには、七十二国会請願の教訓ということで、このときの衆議院大蔵委員会の委員長は、安倍首相のお父さんである安倍晋太郎委員長だったわけですけれども、この七十二国会で、一の(2)を見ますと、「大資本に対する特権的な租税特別措置を無くし、法人税を累進制とし、小法人の税率を大幅に引き下げること、」こういうことが決まっているわけです。

 ですから、この教訓をやはり生かすべきだと思いますし、韓国では、七七年に軍政下で消費税が入れられましたけれども、一度も上げていない。そして、昨年は、韓国は既に法人税が累進課税構造ですけれども、その一〇%、二〇%、二二%だった累進税率に、更に二五というものを加えて、大企業の負担を多くしているという問題があります。

 それから、マレーシアですけれども、これは、昨年、マレーシアの総選挙でマハティール元首相が率いる野党連合が勝利し、公約に消費税廃止ということをうたっておりました。野党連合が勝利し、消費税を廃止いたしまして、それによって景気が回復して、非常に明るい前途があるということが現地の新聞でも報道されております。

 最後に、日本でも、やはり負担能力に応じた税制、そして税金の使い方、全ての税金が福祉社会保障目的税である、こういう原理をぜひ今後の予算に生かしていただきたいと思いまして、私の公述を終わります。

 どうもありがとうございました。(拍手)

野田委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

野田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。奥野信亮さん。

奥野(信)委員 自民党の奥野信亮でございます。

 今聞いていて、俺も自民党の左派かなと思いましたけれども、少し、そういう話が大分入ってきますから、いろいろと教えていただきたいと思います。

 ことしの予算については、基本的には、もうあれで早く執行しようよというのが私の考え方でありまして、それよりも、やはりもっと長い目で見て、日本の財政というものをどういうふうにいじらなきゃいけないのかということを考えているんですが、ぜひ、皆さん方の中で、知見を持っている方の御意見をお伺いしたいと思います。

 私は、十五年ぐらい前まで企業の社長をしておりまして、民間企業で働いておりました。そういう意味で、いろいろと財政の話というのはよく知っているつもりなんですけれども、間違えているかもしれませんが、いろいろと教えていただきたいと思います。

 まず、日本の財政、先ほどちょっとお話がありましたけれども、とにかく借金が一千兆円を超えている、一年の予算は百兆円である。

 もっとわかりやすく言えば、六十兆円の税収にかかわらず、百兆円の歳出をやっているわけですよ。そうすると、庶民の感覚でいうと、六百万円の収入でありながら一億二、三千万の借金をしているということですから、やはりこれは余りにもアンバランスである、これはメスを入れる必要があるんじゃないかなというふうに考えます。

 そうしたときに、税だけでなくて、いろいろな、今までの集めた税金の分配とか、いろいろなところに問題があるのではないかなと思っているんですが、特に、税の使い方について言うならば、消費税は、できるだけ多くの人から幅広く集めるわけですから、多くの人に分配できるように、それは社会保障だろうというふうに私は思います。それから、法人税というのは、企業が拠出している金ですから、それは企業の投資を促すような、あるいは企業の労働者の賃金を上げるような政策につないでいけばいいんだろう、こんなふうに思います。

 しかしながら、どうも、今見ていると、負担をしている、税の負担をしている構造を見ると、全部一律にお金をもらうと言ったら言い方は悪いかもしれませんが、割に凹凸つけずに幅広く集めるという意識が強くて、余裕者も同じ負担、余裕のない人と余裕のある人が余り変わらない負担をしているじゃないか、こんなように感じるんです。

 例えばの例で言うと、先ほど先生が言われた、四千万円の所得がある人は税率が四五%です、それ以上の人はみんな四五%です。もっと払ってもらってもいいじゃないのというような感じがします。ということは何かというと、もっと、お金のある人というのは金融資産を持っているはずですから、金融所得があるはずですから、それを、今言っている二〇%の、別のやり方でやるということは果たして妥当なんだろうかというような考え方もあると思います。

 あるいは、分配でいっても、年齢で切ってしまったりすると、高齢者であっても裕福な人のところにもお金が行っちゃう、これもやはり考え方を変えなきゃいけないんだろう。

 そういうようなことを考えていくと、やはり先ほど末澤さんがおっしゃったように、財政の改革というのは必要なんだというふうに言っておられますが、もう少しポイントをついて、こんな改革をしたらどうよというのがあったら、教えていただきたいと思います。

末澤公述人 先ほど資料でも御説明させていただきましたが、私の資料でございますと三十四ページでございますが、やはり我が国の財政状況、これは、先進国のみならず、新興国と比べても相当悪い。

 ただ、私は、借金が全て悪いというふうに申し上げるわけではございません。例えば、私ももともと銀行員でございましたが、三十代、四十代で住宅ローンを借りて家を建てる。審査して、私も担当したことがございますが。ただ、住宅ローンというのは、八十歳を超えると普通貸せません。これは、団信保険というのが使えなくなるんですね。

 つまり、我が国が、若くて、これからどんどん成長していく、人口がふえていく状況だったら、むしろ、投資の意味でも、借金をしてインフラ投資をやるということがあると思うんですが、やはり今の状況だと、ここまでどんどんストックベースの借金が膨らんだままだと、やはり将来的な、相当、財政の持続性どころか、今の現役世代、若い方がなかなかむしろお金を使わない、自己防衛に走る、これがむしろ景気にとってはマイナスになっている面があるんじゃないかと思います。

 そういう意味では、やはりある程度増税と、一方で歳出改革、両方やって、あわせて成長戦略を加えて、自然増収とあわせて、やはり歳入歳出の一体改革をやっていくことが必要だろうと考えております。

奥野(信)委員 企業家の立場で考えると、やはり、会社の財政をよくしようと思ったら、入りをふやして出るを制すなんですよね。だから、これを国にもやはりやっていかなくちゃいけないんだろうと思いますが。

 先ほど浦野先生はいろいろなことをおっしゃったので、個別に見るとちょっと違うところがあるものですから、大体わかりましたので、浦野先生の御意見はもう聞いたというふうに判断させてもらいます。

 それから、例の毎勤統計の話ですけれども、これは、統計だけじゃなくて、実は、この行政の組織というのは、一九九八年に橋本内閣で大きくかじを切って、実際に実行されたのが二〇〇一年の森内閣であります。もう既に、それでやり始めて二十年近くたっているわけです。こうした中で、いろいろゆがみ、ひずみが出てきているというのも事実だろうと思います。

 そうしたときに、今までのやり方、昔のやり方と違ってどういうふうに変えたかというと、官庁の中の、実際に実行官庁は、できるだけ省内で答えの出るような課題をやっている、ただし、いろいろな省庁のいろいろな意見を聞きながら決めなきゃならない大きな課題は、内閣府、内閣官房でやらなきゃならないという理屈に変わったわけであります。それで、内閣府とか内閣官房の人たちは、どんどん新しいことを提案して、新しいことにチャレンジしていくという行政に変わっております。

 これをまず一つ踏まえて考えなくてはいけないと思うんですが、そうしたときに、今まで二十年間、二十年近くですね、新しいやり方でやってきていろいろなところにゆがみ、ひずみが出てきたけれども、どこをどうしなくちゃいけないかというようなこともそろそろ考えなくてはいけないんじゃないか。

 民間企業でいうと、一旦やったことは、新しくやったことはレビューしろというのが一つの考え方なんです。そうすると、そのレビューの時期に来ているんじゃないかと思うんですけれども、それもこれからの大きなテーマになるべきだなと思うんですが、そういうようなことに対して末澤さんはどう考えられているか、教えてください。

末澤公述人 統計問題ということでございますが、私、統計というのは、これは総務省の、たしかホームページにも出ていたと思いますが、これは経済社会を映す鏡であり、この先の行く末を示す羅針盤と。そういう意味では、社会の重要な情報インフラだというふうに私自身考えておりまして、今回の問題がいろいろ、ちょっと私も細かい統計は承知しておりませんけれども、やはり統計の信頼性に傷がつくというのは相当大問題だと。

 もしも、仮に現状の統計の調査分析にいろいろ人、物、金が足りないのであれば、これは、私はむしろ、ここは、本当はどこかの歳出をカットしてでも増員して、幾ら優秀な仮にコンピューターがあったとしても、データが間違っていたら、これは結論を間違うわけですから、ここはきっちり正確な統計がより迅速に発表されて、私どもマーケット関係者もこれを有意義に使えるよう、政府の今後の政策にも役立てていけるようにぜひ変更していただきたいと思っております。

 以上でございます。

奥野(信)委員 私も、政治の世界でいろいろな意見を聞いている中で最近話題になってくるのが、統計をまとめるところを一つにまとめたらどうだ、組織として一つにしたらどうだというような話も一つあります。それから、厚生労働省はでか過ぎるんじゃないの、こんなのもあります。あるいは、システムをやるところがあちこちに分散しているけれども、これもまとめて情報システム省みたいなものをつくったらどうだ、こんなのがありますから、こういったものを含めて、やはり二十年のあかをそろそろ落としていく必要があるのではないかなと私は思っておりまして、そんなことで今取り上げさせていただきました。

 最後に、消費税の問題があるんですが、消費税というのは、ことしは、今回のケースは、十月にとにかく消費税を上げようということで今は動いています。ただ、いろいろな事件が起きた場合には変えるかもしれないよと言っていますが、一〇%に十月に上げるよという前提でいろいろな予算が組まれております。

 ただ、今度の場合に、駆け込み需要、買い控えがどれだけ出るかということについては、私はちょっと政府と違うような考え方を持っているんですが、前回は、五%であったものが八%、その一年後に一〇%、五%一気に、二年かけて五%上げるよという状況だったんです。ことしは、八を一〇にするだけなんです。だから、余り駆け込みはないだろうというふうに感じるんですけれども、それでも、それなりに、経済産業省とかいろいろなところで対策を考えていますから、何かあったら、いろいろ手をスピーディーに打てると思いますけれども、一番心配しているのが軽減税率であります。

 軽減税率を、やはり中小のお店にいろいろな機械を入れさせて展開するということについて、かなり難しい要素があるんだろうなと思いますけれども、これも、やはり、万一いろいろな混乱が起きたら即座に対応できるような体制をつくっていくということで対応するのが一番いいのではないかと思っているんですが、末澤さんから見た、何か御意見があったら、教えてください。

末澤公述人 まず、消費増税につきましては、私は、基本的には、今回、予定どおり、スケジュールどおり上げるべきだと思っております。

 やはり、もともと消費増税というのは社会保障の財源として確保するものでございますので、もちろん、先ほどスウェーデンの話が出ましたが、私の理解では、スウェーデンの消費税率はたしか二五%、軽減税率が一二・五だと思います。相当高い。

 一方で、私は、韓国の税制については、相当、むしろ参考にするところがあると思っておりまして、いわゆるキャッシュレスの比率というのは、韓国が世界で最もトップクラスだと思うんですね、九割以上と。

 この背景には、やはり、いろいろな電子申告、またクレジットカード決済を使うことで、これは消費者にも年末調整等で恩恵を与える。一方で、法人、中小、大企業も含めて、電子申告をさせることで税の漏れを防ぐというメリットもありましたので、私は、ぜひ、今回、ポイント制度なんかを、これは恒常的な、恒久的な制度として日本のキャッシュレスの振興に役立てるべきではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

奥野(信)委員 あと、大きなテーマで残っているのがマイナンバーカードなんですけれども、私は、カリフォルニアで生活していたときに、ソーシャル・セキュリティー・ナンバーという、本人確認は全部それでやっていたわけでありますけれども、マイナンバーカードというのは、ほぼそれに準じたものだと思っていますけれども。

 できるだけ幅広いところでマイナンバーカードが使えるようにしっかり展開してくれと役所には言ってあるんですが、まだまだ、いろいろなところで展開していく、特に、健康保険証の代替にもしようじゃないかという声も上がっていますし、私がこの間から言っているのは、外国人登録カードというのをなくして、それもマイナンバーに置きかえろと言っているんですが、あっちの役所では賛成だけれども、あっちの役所では反対だというようなことで、いろいろと議論は持ち上がっています。

 いずれにしても、そういうふうに新しいことにチャレンジしていく日本でありたい、そういうことを通じて財政をよくしていけるように考えていきたいというふうに考えておりまして、ぜひ皆さん方もそういう立場でいろいろとやっていただければな、こう思う次第であります。

 ありがとうございました。

野田委員長 次に、太田昌孝さん。

太田(昌)委員 公明党の太田昌孝でございます。

 中央公聴会で質疑の時間をいただき、まことにありがとうございます。

 また、公聴人の皆様方、お忙しいところおいでいただき、貴重な御意見を賜っておりますこと、心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございます。

 さて、一月の二十四日に、千葉県の野田市の小学校四年生の女の子、栗原心愛さんが父親の虐待によって亡くなりました。学校を始め周りの大人たちに懸命にSOSを出していたにもかかわらず、またとうとい小さな命が犠牲となったことはまことに残念でなりません。

 今般の痛ましい事件後、我が党公明党としましても、再発防止策を検討し、先ごろ、安倍総理宛て緊急提言を行ったところでありますが、そのような中で、長く現場にかかわってこられました江口晋大阪府中央子ども家庭センター所長に何点か教えていただければというふうに思います。

 目黒の五歳の女の子、船戸結愛ちゃんが虐待死してから一年、また今回の心愛ちゃんの事件、両方の事件とも共通しておりますのは、父親が、しつけであったとコメントしていることであります。しつけのためにたたく、体罰を加えることが日本では容認をされている、だからこそ、それがエスカレートをして子供の命を奪ってしまうというケースが後を絶たないというわけでございます。

 先般、公益財団法人が発表した実態調査、二万人に調査したところ、体罰はいかにあってもいけないんだという人は四割しかいなかった。積極的に、あるいは必要に応じて、あるいはほかに手段がなければ体罰を容認する、これが六割。これが今の日本の空気感なんだろう。

 しつけの中で体罰は必要という、こうした誤った認識というのは社会の中で一掃していかなければならないと思います。海外では、既に、体罰等を法律で禁止することが行われておりますし、法整備とともに、さらに啓発活動を行っています。

 今回、民法の八百二十二条、懲戒権の見直しも含めて、児童虐待防止法に体罰を禁止することを新たに明示的に規定をして、しつけに体罰は必要という、誤ったそうした認識を一掃するために、これは政府を挙げて広報啓発、周知徹底に取り組むことを私ども求めているわけでございますけれども、こうした法整備、さらに啓発活動について、江口先生の御所見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。

江口公述人 まず、しつけで子供をたたくというふうに述べる保護者は多うございます。

 しかし、私がいつも言っておりますのは、体罰は、保護者の意図においてではなくて、権利の主体である子供の側がその権利を脅かされているというふうに見るべきでございまして、子供の安全、健全育成を阻害する行為だというふうに認識しておるところでございます。

 もちろん、保護者の中に、子供たちにどうかかわっていいのかというようなものを申す保護者もございますので、大阪では、もちろん、早い段階からワークブックを使いまして、たたくときにお父さんはどう思っていたのというようなことを、ワークブックを使いながら、かなり丁寧に取り組んでまいりました。

 例えば、親の怒りをぶつけているだけじゃないのですか、あるいは、感情的になっていないですか、たたこうと思ったときどんな感情を持ちましたかと、行動の裏には必ず感情が随伴するものでございまして、その行動した裏側にある感情をしっかり親御さんが見詰めていくという作業を一緒に取り組むべきだと感じておるところでございます。

 あわせて、恐怖で子供をコントロールしようとしますと、必ずそれ以上の強い恐怖を与えなければコントロールできなくなります。ひいては、結局暴力をエスカレートしてしまうということが、現実の臨床現場でたくさん見てまいりました。早い段階からこれを保護者と一緒に取り組んでいく必要があると認識しているところでございます。

 福井大学の友田先生がよくおっしゃいますが、体罰は子供の脳の発達に深刻な影響を及ぼすんだというようなことを申しておられます。「愛の鞭ゼロ作戦」という形でホームページにもさまざま載っております。そういう意味で、いろいろな広報啓発もしっかりしていく必要がございます。

 まずもって、しつけで体罰はいけないということを社会の中でしっかり定着させることは非常に重要だというように思っております。あわせて、先ほど申しましたように、保護者に対するさまざまな支援のプログラムも早期に地域で取り組めるようなことが望まれるのではないかと考えております。

 以上でございます。

太田(昌)委員 ありがとうございました。大変に重要な示唆であったというふうに思います。

 海外でも、法整備と同時に啓発を行う、法整備だけでもだめ、啓発だけでもだめ、双方相まって大変に進むというような話もございましたし、今の先生のお話の中でも、当然、子供のケアも当然のことながら、家庭に対してのしっかりとしたかかわり、こんなことも必要だということも教えていただきました。

 今回のケースでは、学校、教育委員会、あるいは児童相談所、警察などの関係機関の連携が大変に大きな課題であったというふうに思います。子供を守るという観点からも、関係機関の連携を実効あるものにするために、そうした方策について、これも江口先生にお伺いをしたいと思います。

江口公述人 地域の連携でございますけれども、まずもって、要保護児童地域対策協議会が実効あるものとして、地域に根差した形で連携強化が必要なことはもちろんのことでございます。

 先ほど申しましたように、市町村コーディネーターを今年度から配置いたしましたのも、本当に市町村一つ一つの状況を踏まえながら、きっちり、理論ではなくて、現場で一つ一つ丁寧につなぎ合わせていく作業を丁寧にしなければならないというふうに認識しているところでございます。

 警察との連携につきましても先ほど申し述べたところでございますし、現在、警察官OBを大阪府の子ども家庭センターに十七名配置しております。さまざまな形で警察官の御協力もいただいておるところでございます。

 地域ごとの包括的な支援が必要だというふうに言われるわけでございますけれども、地域の実情に合わせてつくり上げていくためには、市町村が核になるところとして、総合支援拠点というのがございます。この総合支援拠点の整備が非常に求められるというふうに考えておるところでございます。

 その際に、市町村の規模及び対応件数に応じた人員配置基準が示されているところでございますけれども、配置基準を充足するまでの経過措置もあわせて設けるとともに、支援策を進めていただきたいと存じております。

 以上でございます。

太田(昌)委員 ありがとうございます。

 先ほども先生の公述の中にもありましたとおり、大変に件数も伸びていて、また、御意見の中でも、どうやって逆に支援員を育てるかということに随分と御苦労をなさり、意を配っておられるということもお伺いをいたしました。

 そんな中で、今の、それぞれ地域ごとの包括的な支援拠点、また、そうしたことを、市の方にもコーディネーターを配置をしながら育てておられる、そんなこともちょっと承りました。必要なことであるというふうに強く認識をさせていただきます。

 三十一年度の、新年度の予算案には、虐待防止のために、これは情報共有システム構築事業というのが計上をされております。全ての都道府県、市町村で来年度中に確実に構築できるよう、これは速やかな対応を私どもも求めてまいりたいというふうに思っております。

 その上で、そうしたいわゆる情報共有システム、効果を生かすための取組として、これを全国共通のプラットフォームとして、どうした情報共有、あるいは、どの程度の情報レベルが必要なものか、江口先生の御所見の中でお伺いできればと思います。

江口公述人 情報共有については、三つファクターがあると考えております。

 一点は、都道府県内の市町村とのネットワークでございます。二点目が、都道府県間の児童相談所のネットワークでございます。これは、いろいろな、さまざまな事件が都道府県間を越えて移動いたしますので、このネットワークでございます。三点目が、警察とのネットワークでございます。このネットワークをどのような形で構築していくのかを丁寧に検討する必要があると考えております。

 転居いたしますと、転居先でなかなか、保護者自身が、実は大阪の児童相談所で相談していたんだということを、例えば転居先の都道府県の児相に言うということはなかなか少のうございます。そうしますと、支援経過がわからないということも多うございます。

 そうしますと、例えば、受け付け履歴であるとか、氏名、生年月日等、基本的な情報だけでも、共通のプラットフォームと申しますか、仕様を用意していただいて、あるいは、アクセス権限であるとかセキュリティーレベルの問題もございます、保存期限の問題もございます、そのような共通の仕様を示していただく中で、東京で相談履歴があったとなったら、すぐに東京にお聞きすることができるというような、何らかのデータベースのアクセスが必要ではないかと考えております。

 このような形で、実は、きょうも夜中に、関東圏のある子供を保護しなければならない、相談履歴はあるんだろうかといいましても、ちょっとどうして調べたらいいのかが、もう瞬時に判断しなければなりませんので、とにかく保護しなさいということで保護して、その後、関東圏の某県の子供だとわかりましたので、朝一番で連絡をとって、そこに、多分、今ごろ子供を連れて移動しているところかと思います。

 このようなシステムを実態的に組み上げていく必要があると認識しております。

 以上でございます。

太田(昌)委員 今おっしゃっていただいたとおり、今回のケースでもそうですが、虐待をする方、どうしても転居を繰り返すという傾向があるようでございまして、本来であれば、その情報を対面してきちんと引継ぎをできればいいわけでございますが、なかなかそれも実際的なところでは難しかろうというふうに思っております。例えば、テレビ電話などを使いながら情報共有ができればというようなことも、私ども、提言をさせていただいているところでもございます。

 さて、そういう意味では、引き継がれなかったケースといえば、今回の野田市のケースでも、妻に対するDVが報告されています。これも、沖縄から野田市に伝わっていたやには聞いておりますが、きちんと引き継がれていなかった。

 DVと児童虐待は、同時に発生しているケースも多く見られるとの報告もあります。児童相談所と配偶者暴力相談支援センター、婦人相談所が相互に連携すること、そのことで、母子ともに守る対策の強化につながると考えます。

 大阪では既に実施をされておられるというふうにも伺っておりますが、こうした連携の有効性についてお伺いをいたします。

江口公述人 冒頭申し上げましたように、大阪府の場合は、六つの児童相談所に全てDVセンターを併設しております。ですので、その中で、当然子供を守る必要があるという場合は、DVセンターの方から児童通告を、いわゆる虐待通告を頂戴して、児童相談部門一体となって動き、保護が必要な場合は保護するということを続けておるところでございます。

 また、警察等から面前でのDVの通告がふえておるというのは、社会の中でも随分多くなっているという状況でございます。

 そのときに、家庭訪問したときに必ずワーカーの方に伝えておりますのが、面前でDVがあることが子供にどんな影響があるのかをお母さんにもお父さんにもわかるようなリーフレットをつくりまして、お渡ししております。それで、中には、DVセンターがあるよというような情報提供もしながら、かかわりを進めておるところでございます。

 中には、お母さんの方から、どんな影響があるんでしょうか、相談に行きたいんですというお母さんも、そのパンフレットを見て来られます。そうしましたら、うちの心理司が一緒になりながら、子供さんへの影響を一緒に考えながら、支援を続けておるところでございます。

 いずれにいたしましても、DVが疑われるケースについては、DVセンターも含め、あるいは、場合によっては警察も含めて、必要な対応を進めたいと存じております。

 以上でございます。

太田(昌)委員 いずれにせよ、DVも児童虐待も、ある意味、高度にプライバシー保護を考えなければならない事例である反面、そこでの連携がなかなかとりづらい場面があって、それで結果として対応が後手に回ってしまうというような状況がこれまでもあったかと思います。

 そういう意味では、併設をされながら、ある意味、しっかりと情報は管理をされながら、しかし、そこで協力体制がとられているということはすばらしいことだなというふうに思います。

 先ほど、もう既にさまざま意見もいただいておるところでございますが、今回、保護者等の威圧的な要求、暴力の行使等によって毅然とした対応がとれなかった、そんな中で、大阪府では、スクールローヤー、あるいは児相の方でも弁護士が配置をされている、あるいは警察OBも配置されている、そうした協力を得ていると伺っております。

 事例や有用性などについて、お伺いをしたいと思います。

江口公述人 現場は非常に厳しゅうございまして、幾つかございます。

 まず、スクールローヤーのことを先生おっしゃっていただきましたが、教育委員会、聞いておりますと、九名ほどの司法関係者に就任いただいておると聞いております。学校でのさまざまな問題、保護者への対応も含めて法的な立場から助言をいただき、大変有効だというふうにお聞きしておるところでございます。

 警察官OBを十七名配置しておりますが、実は、防犯カメラを児童相談所に設置しておりまして、実は私も保護者から暴力を受けたことがございます。

 もちろん、そういう場面ばかりではございませんけれども、職員の安全確保というのも児童相談所長としては非常に重要でございまして、さすまたも用意しておりますし、防刃チョッキも実は全センターに配備しております。そういう場面に遭遇する場合もあり、そういう場面には必ず警察官OBの人が同席して面接をする、場合によっては警察に援助要請するというのも徹底しておりますし、さすまた研修をしようかということで、先般もしたところでございます。

 現場は非常に厳しい状況になっております。そういう意味で、そういう保護者ばかりではございませんけれども、きっちり対応してまいりたいと考えておるところです。

 いずれにしましても、司法的な対応を強化することがどの分野でも必要だと考えております。

 以上でございます。

太田(昌)委員 大変に厳しい現場の御意見を頂戴しました。真摯に受けとめたいと思います。

 どうもありがとうございました。

野田委員長 次に、逢坂誠二さん。

逢坂委員 立憲民主党の逢坂誠二でございます。

 きょうは、それぞれの公述人の皆さんから大変貴重な話をいただきまして、ありがとうございます。

 特に、江口所長から、現場の実態、現状に基づく非常に貴重な御意見をいただきました。さまざまな思いをめぐらさせていただきました。本当にありがとうございます。

 それでは、何点か質問させていただきます。

 まず、上西公述人にお願いをしたいんですけれども、今回、毎月勤労統計、これは部分入れかえ方式に変わったということ、ただし、それは遡及して影響を及ぼさないということにしたわけですが、このことによって、どんな影響といいましょうか、課題、問題が考えられるか、教えていただけますか。

上西公述人 まず、配付資料の十一ページをごらんいただきたいんですけれども、この十一ページは、二〇一五年十月十六日、第十六回の経済財政諮問会議、こちらの方に麻生大臣が提出した資料で、真ん中のところに毎月勤労統計のグラフがありますけれども、サンプルを入れかえると、その前のところですね、「遡及改訂により既発表値から下方修正」と書いてあります。

 サンプルを入れかえると、入れかえの後についても賃金が下振れ傾向になるんですけれども、それ以上に大きい問題が、過去にさかのぼって遡及改定をすることによって、賃金が下振れをする。このことが、二〇一五年の三月と二〇一五年の九月に、官邸の介入があったのではないかというときの一番大きな問題意識だったと思うんですね。

 今、国会の審議、やりとりを見ていますと、阿部座長が日経新聞の取材に対して、記事になっていて、いや、サンプルを入れかえても賃金が別に上がるとは限らないんだというような発言をされていて、それを引いて、安倍首相が、いや、サンプル入れかえで、そんな、アベノミクスのために賃金を上振れさせるような意図はないんですよみたいなことを答弁されているんですけれども、問題はそこにあるのではなくて、むしろそれは何か問題を攪乱させるような答弁だなというふうに思うんですけれども、過去の賃金が遡及改定によって実績として下がってしまう、値が下がってしまう。

 先ほども申し上げましたけれども、二〇一五年の一月時点からサンプル入れかえによって、二〇一四年の十月、十一月の名目賃金の伸びがプラスからマイナスに変わった、これが非常に大きな問題意識だったんだと思うんですね。そういうことがないようにしたい、過去のせっかくあった実績が無になってしまうような、そういうことがないようにしたいというのが、サンプルの全入れかえによる遡及改定をやめたいということだったと思うんですね。

 二月の四日の小川淳也議員と麻生大臣のやりとりというのは非常に重要だと思っていまして、今御紹介した経済財政諮問会議のここでの麻生大臣の発言というのは、いや、段差が起きるのが問題なんだ、だからこの段差を何とかしろという発言だというふうなことを答弁されたわけですけれども、でも、そのときに、段差があって、サンプル入れかえで上がったり下がったりするんだとおっしゃいましたね、麻生大臣が。それに対して、小川淳也議員が、いやいや、下がるんです、上がったり下がったりではなくて、必ず下がるんです、これまでの、景気のいいときも悪いときも、過去の実績を見たら全て下がっているんですというふうにおっしゃった。

 それは非常に重要な指摘で、要するに、上がったり下がったりするからより正確なではなくて、下がることに対する問題意識があったんですね。下がるということは、過去の実績がふいになってしまうということ。

 だから、段差を単に滑らかにするだけだったら、別に過去を修正すればいいんですよ、補正をすればいい。だけれども、過去のさかのぼりの補正によって過去の実績が無になってしまわないためには、補正をしなくていい方式にしたい。そのためには全入れかえではなくて部分入れかえにして、より滑らかにしたいというようなことが二〇一五年三月、二〇一五年九月の問題意識だったと思うんですね。

 これは、中江秘書官も姉崎部長も、同じようにそういう、プラスからマイナスにひっくり返ってしまうということに対する問題意識を語っていますし、安倍首相も、きのうまでの数字がいきなり変わるというようなことに問題意識を答弁されている。それは、要するに、過去の数字が変わるということなんですよ。だから、これからの数字をよくしたいではなくて、過去の数字が悪くならないようにしたい。

 ただし、そのときに重要なのは、厚生労働省の毎月勤労統計の検討会の議事録。私も全部理解したわけではないんですけれども、あれを見ていると、第五回の議論では部分入れかえの方式も議論されているんだけれども、じゃ、部分入れかえしたときのギャップ修正はどうするんだ、要するに、補正はどうするんだという議論もしているんですね。部分入れかえだから補正はしなくていいという議論ではないんですよ。それで、結論のところでは、何か、第六回でいきなり変わって、部分入れかえも検討するになっていますけれども、でも、だからといって補正をしなくていいという議論でもない。そういう結論も出ていないんですね。

 だから、部分入れかえという選択肢が無理やり入れられて、結局のところ、二〇一八年の一月から部分入れかえにして、かつ、過去の補正をしないということになったんですけれども、これはどこかの過程でそういうふうに、専門家の検討なしに曲げられている可能性もあるんじゃないかなと思うんですね。私、統計委員会の方の議論をちょっと十分に追えていないので、そこはぜひ追及していただきたいと思うんですけれども。

 要は、今、安倍首相は、二〇一五年のときの、そんなサンプルの入れかえとかどうとか、そんな一々細かいことは気にするわけないだろうみたいな答弁をされているんですけれども、でも、過去の実績がプラスからマイナスに変わるということには物すごく問題意識があったはずで、これはアベノミクスのまさに弱点なわけですよね。

 この配付資料の中で十三ページに、三本の矢の話を出してありますけれども、企業の業績の改善が賃金の増加につながる、そういう想定のもとに、まずは企業の業績のためにということでいろいろな施策がとられてきたわけですけれども、企業がいかに利益を積み足していっても、それが賃金の方に回っていかない、内部留保ばかりが積み増していく。そういう状況に今実際になっているわけで、そこをこれまで野党はずっと追及をしてきて、きちんと実績をもって答えられない状況になっている。実績をもって答えられなくなっているから、その数字を曲げてしまおうというのが今の状況だと思うんですよ。

 この十三ページの上の方に、「成果、続々開花中!」というところも、実はちょっとだましがあって、上の方に実質GDPと書いてあって、右の方に実質民間最終消費支出と書いてあるんだけれども、賃金だけ実質と書いていないですね。賃金引上げと書いてあって、これは午前中に明石弁護士が、名目の賃金が上がっても、物価上昇率がどんどん上がっているから、高いから、結局、実質賃金が下がっちゃっているんだということを指摘していましたけれども、そこの不都合な事実が巧妙に隠されているわけですよね。

 もう一つだけ。

 今、二〇一五年にそういうことが変わったとしても、それが変わるのは二〇一八年からだから、そんなものはもう安倍政権の時代じゃないから、まあ、三選という制度がなかったから、だからそんなことをするわけないだろうみたいな話だったんですけれども、でも、仮に三選がなくても、二〇一八年にこのまま全取っかえが継続していれば、二〇一八年にもまた遡及改定というのがあって、過去の三年間の数字は下がっちゃうんですよ。だから、安倍政権の時代には実質賃金は上がらなかったねという歴史が残ってしまう。そういうことは避けたかったんだと思うんですよね。

 だから、二〇一八年のサンプル入れかえに向けて、何とかそういうことが起きないようにというのが問題意識としてあって、だからこそ、そこに大きな介入があったのではないかと思います。

逢坂委員 どうもありがとうございます。

 私は、今、日本の民主主義が非常に大きな危機を迎えていると思っています。それは、数年前から、公文書の改ざん、廃棄、隠蔽、捏造、こうしたことが、本当に信じられないことなんですけれども、行われているということ。

 それからもう一つ。

 国民の皆さんは、国会で、特に野党が何で繰り返し同じ質問をしているんだといらいらしていると思っているんですよ。でも、その背景にあるのは、実は国会の議論に必要な資料が出てこない、それからもう一つは、参考人、事実を知っている人がたくさんいるのにその人を国会に出さない、こういうことが国会の議論を非常にわかりにくく、しかも、同じことを繰り返し繰り返しやらなければならないような現実を招いているんだと思うんです。こうした、国会で資料も出ないし参考人も出ないというようなことは、多分、多くの国民の皆様はわからないことだと私は思うんです。

 上西公述人からそのことを御指摘いただきましたけれども、残りのお三方から、こうした国会の現状についての認識、全然これは皆さんは、多分、もしかすると認識がないかもしれない、いや、そんなこと知りませんよという方もいるかもしれないし、ああ、そうだったんですかと思うかもしれないし、それほどひどいんですかというか、こうしたことに対する御自身のそれぞれの御認識というのを教えていただけますか。

末澤公述人 今、世界的に与野党の対立が厳しくなっているのは事実でございまして、ただ、ぜひ、我が国の国会は、事実、ファクトに基づいて冷静な議論を今後とも続けていただきたいと思います。

江口公述人 きょうは、児童相談所の現場のお話を聞いていただいて本当にありがとうございました。このような現場の声をどうかお酌み取りいただきまして、前向きな御検討をいただきたいと存じます。

 以上でございます。

浦野公述人 論議というのは政治のプロの皆さんが話をするわけですから、やはり国民の側から見てわくわくどきどきするような話、それには本当のことを言ってもらわないとそういうふうにならないと思いますので、ぜひ真実を追求する中で論議が進むことを望んでおります。

逢坂委員 多分、今の三人の方、まあ、上西先生はこの問題を指摘されたわけですけれども、の感覚が、私はある種、国民の感覚として正しいのかもしれないと思うんですね。そんなに公文書が改ざん、廃棄、隠蔽されるような、そういう国なのかどうか、そんなに深刻に思っていないかもしれない。国会で参考人が来ないとか資料が出ないということがこれほど深刻な状況になっているということは、多くの皆さんに伝わっていないのかもしれない。でも、私はこれは本当の意味で危機だと思っているんですね。

 だから、きょうの三人のお話を聞いて、もっともっとこの問題をきちんと広げて、広げてというのは本当のことを国民の皆さんに知ってもらわなきゃいけないということを改めて感じた次第であります。

 それで、実は、今回の予算審議の中での論点の一つが十月からの消費税増税であります。

 この時期に消費税を増税、本当にできるのかどうか。財源として重要なことは多くの人は理解しているかもしれないけれども、この時期で適切かどうか。それから、軽減税率やポイント還元といったものが本当に弱い方の対策になっているのかどうか。あるいは、逆に逆進性を助長しているのではないか。あるいは、キャッシュレスも、使える人にとっては都合がいいけれども、多くの人が機会均等で使えるという状況にはない。それは、購買者だけではなくて、物を売る側の方もみんなが同じようにキャッシュレスの環境になれるわけではない。

 こうしたことを考えてみると、ことし十月の消費増税と軽減税率、ポイント還元その他についてはさまざま問題があるのではないかという指摘が今国会で随分続いたわけですが、これに対する御認識をそれぞれ簡単に一言ずつお知らせいただけますでしょうか。

末澤公述人 私は、消費増税はスケジュールどおりにやるべきだと思っております。

 やはりこちらは足元の景気を意識するよりも、むしろ、財政の持続可能性、また特に現役世代、若年層の将来不安を取り除くためにも必要。その財源というのは当然重要でございますし、これは先ほどのキャッシュレス化とも結びつくんですけれども、むしろ、データがきちっととれれば、本当の意味の弱者、例えば低所得者、中小企業、地方に必要な御資金をお配りできると思います。むしろ、今の日本の税制等がややそこの点はまだインフラが陳腐なこともございますので、私は、むしろ軽減税率、インボイス制度の導入も含めて、そういう面で役立てていただきたいと考えております。

野田委員長 逢坂委員の質問時間が終了しておりますので、公述人の皆さん、簡潔な御答弁をお願いいたします。

上西公述人 私は、十月の消費税増税は見送るべきだと考えておりまして、ポイント還元は非常に何か混乱を招きそうですし、仮に導入されても、低所得者、中所得者の方へ還元される部分が少ないですね。なので、ポイント還元の問題も含めて、見送って慎重に考えるべきだと思います。

江口公述人 児童福祉の現場を担う者といたしましては、児童福祉の増進にぜひ努めていただきたい、そう感じているところでございます。

 以上です。

浦野公述人 やはり、私は、今の国民所得だとか、それから、既に食料品が非常に上がっておりまして、例えばマルちゃんの即席麺なんかも五%から一〇%上がるようになっていますので、私の計算では、大体五百万の所得の人で二十一万円ぐらい物価値上げの影響を受けるということですので、消費税増税は中止していただきたいというのが私の考えです。

逢坂委員 終わります。

野田委員長 次に、西岡秀子さん。

西岡委員 国民民主党、西岡秀子でございます。

 本日は、公述人の皆様には、大変御多忙の中をお越しいただきまして、まことにありがとうございます。きょういただきました貴重な御意見を予算審議、またこれからの政策に反映をしてまいりたいと思っております。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、江口公述人様、先ほどから大変いろいろ貴重なお話を伺いました。大変厳しい中で、子供たちの命を守るために、本当に地道なお取組をいただいておりますことに、心から敬意と感謝を申し上げたいと思っております。

 先ほど、公述人様からお話がございました、二つ、国に対して要望いただきましたけれども、ほかにもさまざまたくさん課題があると思っております。連携システムの中でも、専門の医師の存在の重要性というのを認識をいたしておりますけれども、その専門の医師の役割、またその重要性について、一言お話を伺えればと思います。

江口公述人 先生の御質問の一つは、児童相談所に今いる医者との連携という御趣旨でございますでしょうか。(西岡委員「はい」と呼ぶ)その部分につきまして、今、児童精神科医が一名と小児科医が一名配属されております。

 子供たちは、さまざまな虐待等によって当然心身に大きなダメージを受けております。それをきちっと継続的にケアするためには、お医者さんのスーパーバイズも必要ですし、診療も必要でございます。中には、十八歳を超えて、あるいは二十を超えて社会に参加した後も、地域の医療機関で継続的な支援が必要なケースも多々ございます。

 そういう意味で、うちのドクターから地域の医療機関に、この後この先生方の支援を受けながら頑張っていこうねということで社会に送り出していく子供も多数ございます。特に性的を受けた子供たちにとって、その後のケアはかなり長くかかると認識しております。そういう意味で、地域の医療機関と連携した形で、医療機関との連携そして医者との連携が進むことが望まれると感じておるところでございます。

西岡委員 ありがとうございます。

 本当に先進的なお取組の数々を行っていただいていると思いますので、これからも全国でも大変参考になるというふうに思いますし、先生からの国への要望についても、しっかり対応していきたいと思っております。

 それでは、上西先生にお尋ねをさせていただきます。

 先ほど先生のお話の中でもございましたけれども、昨年、先生の御指摘を受けまして、働き方改革法案の審議の中で裁量労働制の拡大について不適切なデータ使用があったということで、法案から裁量労働制の拡大が削除をされました。今回の不正統計の経緯を見ていたときに、私は、厚労省の対応また国会での政府の対応を含め、大変重なって見える部分がございます。

 今回の不正統計に至る、また、昨年から、森友、加計問題、公文書改ざん、大変、根底に同じ基本的な問題があるのではないかということを私は思っております。一つとして検証が十分に行われていなかったのではないか、また、去年いろいろ起こったことについての問題が教訓として生かされていない面もあったのではないかというふうに思いますけれども、先生、さまざまな問題の根本的なところにどういう問題があるとお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

上西公述人 配付資料の一ページ目から見ていただきたいんですけれども、昨年の裁量労働制の問題も、ここにタイトルに書きましたけれども、不都合な事実に向き合いたくない、政府にとって都合のいいデータを使いたい、そういう問題として、裁量労働制の問題、それから、今の統計の問題も共通する部分があるというふうに感じています。

 このときは、裁量労働制を拡大したかったんですね。拡大したいんだけれども、裁量労働制を拡大すると長時間労働がふえてしまうだろう、過労死がふえてしまうだろうという野党の指摘があって、その野党の指摘を覆すために、反論するために、いや、裁量労働制の方が実は労働時間は短いんだよというデータが都合よく用意された。でも、この都合よく用意されたものは、全く比較してはいけないものを比較していたものだったんですね。

 一般労働者については、最長の一日の、一番残業が長い日の法定時間外労働をとっていた、そのデータと八時間を足した。裁量労働制の方は、別にそういう限定なしに、普通に平均的な者の労働時間をとってきた。それを比べたら、当然、その一般労働者の方が労働時間が長くなるのは当たり前なんですよ。そんな比べてはいけないものを比べていた。

 この問題について、昨年、ちょうど今ごろですね、二月にずっと野党の追及が続いて、けれども、政府側はデータは精査中だということで、ずっと膠着した状況が続きました。けれども、首相の答弁が一月二十九日で、二月の四日には、もう課長は調査票を見ているので、最長の一日についてとっているデータだということはもう既にその時点でわかっていたはずなのに、それが開示されたのが二月の十九日になってからなんですね。

 だから、あのときも、逢坂議員がここまでの私たちの野党の審議時間を返してくれとおっしゃっていたのは、もうまさにそのとおりで、きちんとしたデータに基づいて、では、裁量労働制を拡大したいと言っているんだったらどういうふうに健康確保が図れるのか、これまでの裁量労働制の働き方はどうなっているのか、そういう事実に基づいてきちんとした審議をすべきなのに、都合よくつくってしまったデータを、何とか政府側あるいは官邸側の責任を問われないために精査中ですというような言いわけで続けた。これは今と全く同じような構図です。

 昨年のこの問題については、検証委員会が立ち上がって、監察チームが報告していますけれども、四ページ目のところですけれども、「残された課題」として書いていまして、下線を引いていますが、今国会になってから、この問題が発覚してからの一連の過程は検証の対象外だったんですね。なので、ここを全く検証されていないままなんですよ。

 昨年、長妻議員が、第三者の目で検証してくれということを予算委員会で求めていたんですけれども、加藤厚生労働大臣は、いや、経緯を聞いても何も不自然なことは思わないみたいな答弁をして、結局、問題にふたをしてしまったんですね。そういうふうに問題にふたをし続けることが森友問題でもいろいろと続いていまして、加計問題でも。何か、いつまでモリカケをやっているんだみたいなことを言われますけれども、まさにそこをきちんとしない限りは、専門的な審議、まともな審議は成り立たない、それが現状だと思います。

 昨日でしたか、小川淳也議員が、不都合な事実が出てきても、それによって組織は揺らぐかもしれないけれども、きちんとそれを見詰めることによって社会は揺るぎないものになるんだというふうに指摘をされた。これは非常に重要な指摘だと思っていて、今は組織を守るために、あるいは政権を守るために都合の悪い事実を何とか言を曲げて取り繕ってやろうとしている。だから、こういう硬直状態を招いているというふうに考えています。

西岡委員 ありがとうございます。

 今回の問題についても、昨年からの問題もそうですけれども、与野党の政局の問題ではなくて、やはり、こういうことが行われているということについてしっかりと解明をして、そして、このようなことが二度と起こらない体制を構築していくというのが私たちの役割だというふうに思います。

 その中で、その解明の経緯というものをやはり国民の皆様に明らかにしていくということも大変私たちの重要な役目ではないかと思いますけれども、なかなか、その解明の経緯というものを国民の皆様に知っていただく機会というのは、大変残念ですけれども、少ないと思っております。

 我が党としても、野党合同ヒアリング、また、各議員が委員会質問の前に質問通告をネットで公開をしたり、使うパネルですとか資料を公開をしたり、また、国対委員長が予算委員会をライブネットで解説をしたり、さまざまな取組をしておりますけれども、なかなか難しい現状がございます。

 そういう中で、先ほど先生のお話の中で、国会パブリックビューイングというのを先生が昨年の六月から新宿や新橋で行われているというふうにお聞きをいたしておりますけれども、これも先生が、その経緯について国民の皆さんに広く知っていただきたいという思いの中で活動されているというふうに思いますが、この国会パブリックビューイングについて詳しくお尋ねをさせていただきます。

上西公述人 国会パブリックビューイングというんですけれども、要するに、私たちがみんなでちゃんと国会を見ようね、監視をしようねということなんですけれども、昨年の働き方改革の審議が非常に私はもどかしかったんですね。野党が、高度プロフェッショナル制度であるとか裁量労働制について、これは過労死をふやしてしまう、長時間労働をふやしてしまうという指摘をすると、決まって政府側は、加藤厚生労働大臣あるいは安倍首相は、時間外労働の上限規制を設けることによって過労死防止に役立てるんだみたいな、そういうような全くすれ違った答弁をしていた。

 時間外労働の上限規制はもちろん結構ですよ。けれども、抱き合わせでそういうような時間外労働を助長するようなものを入れてしまう、それについての質疑がすれ違う、そのすれ違いが全く理解されていない、広く認識されていないというところで、国会の実情を見てもらおうという取組を始めたんですね。

 今、統計問題についても、国会質疑を切り取って、これまで五回ですかね、新宿、有楽町でやっています。この寒い中ですけれども、屋外、地下でやったりしているんですけれども、非常に寒い中でも、八十分ぐらいやるんですけれども、集まって見ていただけるんですね。

 それだけ、実際の国会の映像を見ていただくと、そこからわかること、非常に情報量が多いんです。質疑がとまるとか、何でこんなことで質疑がとまるんだろうとか、そういうところが見えてくることによって、不都合な事実が隠されたまま、何か国会が、時間だけ潰して採決まで持っていけばいいような国会運営がされている、そんなことでいいんだろうかという問題意識を見てくださる方が自分自身で感じ取っていただける、そういうような取組になっているかなと思います。

 逆に、ニュースだと、何か、かみ合った討議、質問と答弁のように見えてしまいますし、それから、新聞だと明らかになった事実だけが報じられるんですね。だけれども、その事実を掘り起こすのにどれだけ野党が苦労しているんだ、どれだけ政府側が不誠実な答弁をしているんだということをやはりより可視化をしていかないと、国会は正常化しないと思っています。

西岡委員 大変貴重な先生のお取組であるというふうに思います。私たちも、野党としても、国会で、国民の皆様にさまざまな情報をできるだけお知らせをするということにこれからも取り組んでまいりたいというふうに思っております。

 一点、上西先生にお尋ねでございますけれども、今回のデータの中で、日雇を外したという問題があったというふうに思いますけれども、このことについてちょっと御所見をいただければと思います。

上西公述人 常用労働者の定義から日雇を外したということで、これは、常用労働者から、定義から外したというのは、要するに、毎月勤労統計の調査対象から外したということなんですね。

 その方々を外すと賃金は上振れすると思うんですけれども、これまで厚生労働省が出している、段差が何で生じたんだということの試算の中に、日雇を除外したことの影響というのは出ていないんですよ。これは、本当はちゃんと推計をしなきゃいけない問題で、その推計は今野党が求めているのに、推計しますという答弁もはっきり得られていない。これは、統計の精度を高めるのが大切だと言っている以上は、やはりやるべきことだと思います。

西岡委員 ありがとうございます。

 末澤公述人、浦野公述人には、お尋ねをさせていただく時間が十分にございませんでしたけれども、私もちょっと、先ほどお話があって、質問があっておりましたけれども、今回の消費税増税に係る軽減税率プラス、ポイント制ですとか、プレミアム商品券ですとか、さまざまな景気の平準策がとられておりますけれども、大変、消費者の皆さんにとってもわかりにくいという面と、事業者にも大変負担になるという面を大変懸念をいたしておりますけれども、このことについて一言ずつ、もし御意見ありましたら、お願いいたします。

野田委員長 質問時間が終了しておりますので、簡潔にお願いいたします。

末澤公述人 私は、ぜひ恒久化になるような、ですから、一時的なものではなくて、より長い、中長期的な日本経済の成長に資するようなものに、ぜひしていただきたいと思っております。

 以上でございます。

野田委員長 上西公述人。(上西公述人「先ほど答えましたので」と呼ぶ)

 それでは、江口公述人。

江口公述人 繰り返しますけれども、児童相談所、引き続き、応援をよろしくお願いいたします。

浦野公述人 いろいろ、事業者にとっては大変な手間と負担がかかるもので、対策にはなっていないので、上げないのが一番の対策だというふうに思います。

西岡委員 終わります。ありがとうございます。

野田委員長 次に、藤野保史さん。

藤野委員 日本共産党の藤野保史です。

 公述人の皆様には、御多忙のところ、大変ありがとうございます。いただいた御意見を今後の予算審議にしっかり生かしていきたいと思っております。

 まず、末澤公述人にお聞きしますが、本日お配りいただいた資料の十六ページで、我が国の株式保有構造というものを指摘していただいております。これを見ますと、一九八九年三月末には外国法人の比率が四・三%、これが三〇・二%、二〇一八年三月末に。同じく投資信託が三・一%から七・二%にふえている。一方で、金融機関や事業法人や個人が保有を減らしているという御指摘をいただいております。

 貯蓄から投資へという形で、この間、政府は政策を打ってきたわけですけれども、実際どうなのか。同じ資料の三十六ページには、家計の貯蓄率が、九四年の一三%から二〇一六年に二%に減っているという指摘もいただいております。ほかの統計では、貯蓄ゼロ世帯が三割を超えたというデータもあるわけですが、公述人からごらんになって、この保有構造ですね。とりわけ、十六ページの方では、大きくふえている、倍以上ふえている投資信託の保有が、日銀が六兆四千三百九十五億円のうち六兆九百三十四億円に上っている。

 ここら辺の構造をどのようにお感じか、お答えいただきたい。

末澤公述人 これは、資料は、基本的に東京証券取引所か日本銀行の資料に基づいておりますので、この事実のまま記させていただいておりますけれども、個人の、家計の株式保有が減っている最大の要因は、私は少子高齢化だと思っております。やはり、株式の保有は高齢層の保有が多いんですね。このセクターは当然、だんだんと相続が起きます。相続が起きたときに、やはり分割しやすい現預金と違いまして、株式の場合は一旦売却するという傾向がございまして、この影響がある。

 あと、かつては機関化現象でございましたが、今はやはり海外投資家がリスクをとるということでございまして、数年前までは海外投資家が最大の保有率だった。足元は、やはり日本銀行の異次元緩和の中で、今、ETFの購入が年間六兆円規模に達しておりまして、ここが最大の買いセクターになっているということでございます。

藤野委員 ありがとうございます。

 続いて、上西公述人にお伺いしたいんですが、先ほど逢坂委員との質疑のところで、要は、企業の収益がふえて、雇用が拡大して、賃金が上昇して、消費が拡大して、景気が回復する、こうした描いている好循環というものが実現できていないからこういうことをしたんじゃないかという御指摘だったと思うんですが、この点についてもう少し詳しくお話しいただければと思います。

上西公述人 先ほどの配付資料の十三ページですけれども、企業の業績が改善したら賃金が増加するかというので、いろいろな政府の資料を見てみたんですけれども、なぜ賃金が増加するのか、ほとんど書いていないんですね。だから、成長と分配の好循環とか経済の好循環と書いてあるんだけれども、では、賃金を上昇させるために何をするのか、そこが明らかでない。

 要は、会社の経営状況がよくなれば、賃金を上昇させるための余地はふえる。だから、可能性はあるんだけれども、でもそれは、内部留保に回るかもしれないし、賃金を高める方向に行くかもしれない。でも、そこはわからないんですよね。なので、そこが結局アベノミクスの中で問題があるので、実質賃金が上がらないという方向になっているんだと思うんです。

 企業の業績をよくするためのアベノミクスの中の方策というのが、要は、規制緩和とかが大きな柱としてありますけれども、昨年の働き方改革を見ていても、もともと働き方改革というふうに言われていたものは、高度プロフェッショナル制度の導入のようなものだったんですよね、時間外労働の上限規制ではなくて。そうすると、それは、経営者にとっては、残業代を払わずに働かせることができる。けれども、働く人にとっては、たくさん仕事が降ってきて、一生懸命その仕事をこなしているうちに時間がたくさんたって、でも、それが残業代という形で反映されない。全く、定額働かせ放題というふうに言われましたけれども、賃金もふえない中で仕事がふえていく、労働時間がふえていくというような状況なわけですよね。

 だから、アベノミクスによって賃金がふえて、それが消費の増加につながるんだという、その道筋自体がもともとちゃんと描かれていなかったんじゃないかなという気がしています。

藤野委員 貴重な御指摘、ありがとうございます。

 私も、要するに、企業の収益がふえるというのが当然の前提のように言われるんですが、やはりそれをどうやってふやすのか。今、上西公述人がおっしゃった、例えば高プロでいえば、労働者から見れば、残業してもそれが出ない、しかしそれは収益に反映していく、こういう経過をたどるわけで、やはり、その企業の収益がふえるというのも、雇用との関係で、雇用を犠牲にしてふえているのではないか、あるいは賃金を犠牲にしてふえているのではないか。こういうところもしっかり検証せずに、収益がふえれば雇用がふえ、賃金が上昇しという、ここのロジックそのものがやはりこの間大きく破綻してきているんだというふうに思います。

 やはり、そこを犠牲にして、雇用を犠牲にし、賃金を犠牲にして、幾ら企業の収益がふえても、それは、政権が言っているような消費の拡大には実際に結びついていないし、ましてや日本経済全体の回復にも結びついていないということになっているんだと先生のお話を聞きながら感じました。

 もう一点、上西公述人にお聞きしたいんですが、公述人が流行語大賞をとられました御飯論法ですけれども、これは紙屋高雪氏と一緒に受賞されているわけですが、実は紙屋氏は私の大学の同級生でありまして、親しくさせてもらっているんですが、政府の答弁というのは、多かれ少なかれこういう面は今までの政権でもあったのであろうというふうに思うわけです。しかし、やはりこの間、非常にこれは多くなっている。それが、やはり流行語大賞をとったということにも私は反映しているんだと思うんです。

 その裁量労働制や外国人技能実習生の問題、今回の統計の問題、なぜ今政権はこうした論法が多いのか、あるいはこの論法に頼らざるを得ないのか。公述人はどのようにお感じでしょうか。

上西公述人 例えば、裁量労働制の問題にしても、外国人労働者の受入れの問題にしても、野党が指摘している問題に、いや、これについてはこういう対策をとりますよということをきちんと答えればいい話で、けれども、その対策がとれないからこそ、その不都合な事実に目をつぶろうとしている。それについてきちんと答えない。答えないけれども、何らか答弁はしなければいけない。だから、論点ずらしの御飯論法と言われたような答弁が続いていたんだと思います。

藤野委員 ありがとうございます。

 続いて、先に浦野公述人にお聞きしたいと思います。

 先ほど食料品の値上げのお話もいただきました。いただいた資料の中には、イギリスの場合、食料品の税率がゼロ%、ドイツは七%、フランスが五・五%という指摘もいただいております。この食料品について見た消費税を見ますと、やはり日本の八%というのは逆に重いんだ、過重だという指摘もいただきました。

 このもともとの食料品にかかる税率の問題と、先ほどいただいた足元での値上げ、物価の上昇、食料品の上昇の問題、これについての御指摘をもう一度詳しくお願いしたいと思うんですが。

浦野公述人 食料品に対して八%という高税率をかけているのは、ほとんどヨーロッパではないわけです。

 韓国のお話もしましたけれども、韓国も七七年に一〇%で消費税を入れて、一度も上げていなくて、食料品は非課税という形なんですね。イギリスは、食料品ゼロ税率で、その結果、国税収入に占める消費税の割合が、日本の方がイギリスを抜いているというのが二〇一七年度の数字なんです。

 やはり、貧困化が進む中で、食料というのは毎日の生活で欠かせないし、エンゲル係数もふえているような状況ですから、これで物価が、食料品が上がって、消費税増税を理由にどんどんそういうことが進めば、国民生活は本当に破綻するような状況になると思いますので、増税は絶対にやるべきではないというふうに考えております。

藤野委員 重ねて浦野公述人にお願いしたいんですが、先ほど、生計費非課税が大原則であるというお話をいただきました。本当にそう思うんですが、それとの関係で、今のお話ともかかわるんですけれども、今回政府は、一〇%増税しても大丈夫だよという、大丈夫といいますか、対策としまして、低所得者対策としてプレミアム商品券とかいろいろ言っているんですが、その中に住民税非課税世帯、これは住民税非課税の高齢者世帯への軽減の拡充とか、あるいは住民税非課税世帯を対象としたゼロ歳児から二歳児までの幼児教育の無償化等々言っているんですが、そもそも生計費非課税というのだと思いますし、ましてや、今回住民税の非課税世帯についてもこういうことをやると言っているんですが、逆に言えば、住民税を非課税にするような世帯にまで消費税の一〇%をかけるということになると思うんですね。

 この点については、その税制の原則から見て、あるいは現状から見て、どのようにお感じでしょうか。

浦野公述人 もともと生計費非課税の原則というのは、消費税制がないときには、所得税でいえば現行三十八万円で年間生活できるだろうということだったわけですけれども、もちろん三十八万円で生活はできませんけれども、それは消費税がない時代で、しかし消費税は、今御質問にありましたように、低所得者であろうと全くもう生活するとすぐにかかっているわけで、もう生計費非課税の原則なんというのは消費税の前ではなくなってしまっているというのが現実だと思います。

藤野委員 済みません、もう一点お伺いしたいんですが、インボイスの関係で浦野公述人にお伺いしたいんですが、公述人は、いただいた資料によりますと、韓国に調査に行かれてこのインボイスのことも調査されたということなんですが、その点でお気づきになった点についてちょっと教えていただければと思います。

浦野公述人 昨年の十月に韓国に行って、韓国の有数の税務署長と、それから、韓国税務士会、日本の税理士に当たる税務士と申しますけれども、税務士会の会長、そして有数な税務士事務所に視察をしてまいりました。

 韓国は、完全に番号制が軍政下のもとで入れられて、買物をするときには、自分の番号が何番であるかというものをお店に知らせて、そして、店は、それを入力して、誰に何を売ったかというのを入力するわけですけれども、その入力されたものが国税庁のコンピューターに連動しているんです。ですから、全ての取引を国が把握しているというのが韓国の実情なんですね。

 ですから、このナンバーの問題も、先ほど出ましたけれども、ナンバーについて、今ついているナンバーというのは、個別の目的についていろいろな、例えば銀行預金のナンバーとか、ついておりますけれども、これは今の世界で否定することはできない。しかし、国が考えているナンバーというのは、全ての個人情報を一つの番号で把握する、買物したものもそうですけれども、そういうことになりますので、プライバシー、それから、職業によっては、医師だとか、弁護士、税理士などは守秘義務を負わされているわけですけれども、これも、消費税の番号制のもとでは全く無意味なものになってしまう。

 こういうことで、しかも、韓国では、中小業者には一切、税務調査はやりませんと言っていまして、零細業者はどうしているかと申しますと、税務署が全部把握しているので、所得税も消費税もこういうふうに申告してくれればいいですよということで、事実上、申告納税制度というのが採用されていないような状況になっています。これは、プライバシーの点からは全く認められないようなことかと思います。

 以上です。

藤野委員 本日は、大変貴重な御意見、ありがとうございました。

 江口公述人にはちょっと時間の関係でお聞きできませんでしたけれども、大変貴重な御意見を今後の審議に生かしたいと思っております。

 どうもありがとうございました。

野田委員長 次に、浦野靖人さん。

浦野委員 日本維新の会の浦野靖人です。よろしくお願いいたします。

 本日は、お忙しい中、公述人の皆様、ありがとうございます。

 早速ですが、質問をしていきたいと思います。

 江口公述人は私と同じ大阪で、私は富田林の児童相談所が管轄になっている地域ですけれども、保育園もやっている関係で、児童相談所の皆さんとはいろいろと情報交換したりとか、実際にお世話になることももちろんありますし、いろいろと現場のお話も聞かせていただいたりとかしています。

 私自身も里親をやっていますので、里親で受け入れたこともありますし、きょうのお話の中にも、里親などの活用をもっとやっていかないといけないというようなことも書いてありますけれども、きょうの江口さんの資料で私が一番ちょっとおっと思ったのは、最後の方に、きょうはちょっとお話には、残念ながら時間の関係で触れませんでしたけれども、弁護士の常勤配置を義務づけることには反対だということが書かれてありますね。

 今、国会では、真逆、義務づけるべきだという議論が主流で、私もこの資料を見るまではそういうふうに思っていました。

 常勤配置を義務づけるべきではないという、これはもう現場の経験値から、もちろん江口さんがおっしゃっていることですので、かなり重要なお話だと思いますので、ぜひ、ちょっとこの点を御披露いろいろいただけたらなと思うんですけれども。

江口公述人 まず、常勤配置をしたいという自治体にするなということを、私、申し上げているものではございません。

 ただ、大阪の場合、先ほどるる説明させていただきましたように、さまざまな長年の、十八年にわたる取組をする中で、今の体制をやっとつくり上げたところでございます。

 一つは、持続性が可能だということでございます。

 例えば、一名常勤で配属しますと、何年か任期つき採用で終わりますと、次の新しい方が来られるという形になります。大阪の場合は、ベテランの弁護士の先生と若手の弁護士の先生とでチームを組んでいただいていますので、次の世代に確実にこの児童福祉分野の知見が伝わっていくという形を組み立てたところでございます。

 これは、弁護士会とも随分議論いたしまして、九十名近くの弁護士さんたちを、先ほど言いましたように、お得意分野がたくさんございますので、かなり専門性の高いことでございます。

 弁護士さんのお話を聞きますと、例えば、五年間だけ弁護士事務所を閉めて、その間、任期つきで来ていただいて、また弁護士事務所を開くというのは非常に難しゅうございますと。非常に能力の高い、非常に児童福祉の分野に精通された先生を、五年間、弁護士事務所を閉めて来てくださいというのが非常に難しい現場のお声もお聞きしておりましたので、大阪府では、この九十名の方たちを非常勤という形で組み合わせてやっております。

 担当の弁護士は、全部、一子ども家庭センターに三人必ずついておりますので、日常的な法的な相談はできるという形を整えたので、この方式も認めていただきたいという趣旨でございます。

浦野委員 ありがとうございます。

 ちょっと冒頭にも言いましたけれども、これは必置すべきだという議論の方が主流に、今、国会ではなっていますので、ぜひこの御意見をしっかりと、私もこれからもう少し勉強して、こういう大阪方式も取り入れるように、ちょっといろいろとやっていきたいなときょうは思いました。

 もう一つ、江口さんにお聞きしたいんですけれども、今、共同親権の話があります。国会でも長年議論がされていますけれども、私は、児童虐待の中で、この共同親権が片方にしかなくなるという、離婚された場合ですね、それが原因で起こる虐待も実は少なからずあるというふうに思っています。

 というのは、共同親権であれば別れた両親が子供に会うこともありますけれども、重篤な虐待のパターンに多いのは、連れ子で、新しいお父さんが、連れてきた子供を虐待するとか、そういったことが多々ケースとして出てきます。

 私、それはやはり、共同親権にして、もちろん、両方の親権制度に一長一短があって、どっちがベストだというのは私もなかなか言いづらいですけれども、少なくとも、片方の親が会えなくなることによって子供の変化に気づかない、そういったことも、共同親権であればある程度、一定、防げるんじゃないかという思いがあります。

 共同親権について、江口さんはどういうふうにお考えでしょうか。

江口公述人 共同親権そのものについて、私、今この場で確かな見識を持っているわけではございません。

 ただ、私、常々申し上げておりますのが、保護者、親権者は、第一義的に子供の生命を守る、それから健全育成に努める第一義的な義務があるというのは児童福祉法に明記されておりますので、親権者であれ、養育者であれ、保護者でございますので、その保護者が、子供の命を守る、健全育成を守る第一義的な責任を果たすことができるのかどうかがまさしく生命線でございまして、私はいつも保護者に、あなたはあなたの子供の命を守る気があるんですかと。それがあるかないかが非常に重要なポイントではないかというふうに現場では感じておるところでございます。

浦野委員 ありがとうございます。

 もう一つ、今、国会、児童虐待について超党派議連があるわけですけれども、その中で、今、一つ、児童福祉司の専門性強化のために、業務に従事している人の、子ども家庭福祉士、これは名前は仮称ですけれども、という国家資格をつくるべきだという議論があるんですね。

 私は、個人的には正直に、そんな、新たに国家資格をつくったからといって、児童相談所、児童虐待にどれだけ資することができるのかというのは、実は、実際、私は思っています。それよりも、やはり、私は、現場の力がもっとしっかりしないと、子供に対応できないだろう、児童虐待に対応できないだろうと思っているので、その国家資格を新たにつくるというのも、もしかしたらその一つとはなるかもしれないですけれども、私は何か、そんなことよりも、まずもっとやることがあるやろうというふうにちょっと感じてしまうんですね。

 この点についても、江口さん、どう思われますか。

江口公述人 大阪府では、昭和三十年代でございますけれども、専門職採用をしてまいりました。全員専門職でございます。とりあえず、現在、五百数十名が専門職採用されております。

 例えば、法上は婦人相談所、大阪では女性相談センターと申しますが、DVについて、配属されて、そこでDV相談をきっちり受けていた職員が児童相談所にローテーションで回ってきます。これは、児童相談所の職員にとっても非常に有益でございまして、顔の見える関係の中で、ジョブローテーションという形で、現場をある程度の期間で回る。その後で、その人が一番適性があるところに長く勤めるというか、いわゆるT字型人材育成というふうに申しますけれども、これを割とずっと続けてまいりました。

 現在、本庁の中の福祉関係のセクションで、三名の課長が専門職でございます。そうすると、現場で起こったことを本庁に申し上げて、政策に結びつけるのが早くなっていくということもございます。ですので、大阪ではジョブローテーションという形で、現場、施設、一時保護所、女性の関係の相談機関を回りながら、その人が一番得意とする分野を適性を判断して、配属をその後長くするということを続けてまいりました。私は、これが非常に有効だと考えておるところでございます。

 現在、大阪府は百名以上の職員をふやさなければならないというところでございまして、今年度も五十五名、前年度は六十名採用してまいりました。当然、退職者の補充もございます、中途の退職者の補充もございます。大体、採用人数の三倍から四倍の受験者を集める必要がございます。その中で、やはり本人の資質であるとか本人の意欲であるとかを見ながら、現場に採用していきたいという強い思いがございます。

 そうすると、三百名、四百名受験させるために、私もそうですけれども、専門職、全力で各大学、自分の出身大学、全部回れというふうにして回って、やっと三百名ぐらいの受験者をかき集められるという状況でございます。

 この時期でございますので、人材の確保はもちろん必要でございます。ただ、その質の担保もあわせてしていかなければ現場は守れませんので、現在は、まず専門職をきちっと配属する時期ではないのかな。足腰がきちっとこういう形で整った中で、次のステップとしてそういう議論もあってよかろうかというのが私の見解でございます。

 以上でございます。

浦野委員 ありがとうございます。非常に参考になるお答えをいただいたと思います。

 ところで、大阪府は、しっかり応えてくれていますか、声に。

江口公述人 大阪府の人事当局とは、日ごろからよく話をしております。新しい組織をつくるときにも、部長を始め幹部の方々、全力で応援していただいておりますので、計画的な人員増をお願いしているところでございます。

 以上でございます。

浦野委員 ちょっとほっとしました。よかったです。

 時間もなくなってしまいました。本当は皆さんにも詳しくいろいろお聞きしたいんですけれども、一つだけ皆さんにお聞きしたいことがあります。

 四名の皆さんにお答えいただけたらと思うんですけれども、軽減税率の議論は国会でもずっとなされています。特に、新聞だけがなぜ八%なのかということを、やはり議論になります。それなら、水道、電気、ガス。新聞はなくても死なないので、僕は八%というのはおかしいと思っているんですけれども、水、電気、ガス、これこそが軽減税率の対象になるべきだと思っています。

 皆さんは、その点についてどう思われるか。一人ずつお答えをいただけたらと思います。

末澤公述人 実は、軽減税率につきましては、先行しています欧州でも、毎年、どの品目にどういう税率をつけるかというのは政治イシューとなっておりまして、まあ多分、新聞の場合は、我が国のそういう、ちょっと特殊な状況なんだろうなというふうに個人的に考えております。

 以上でございます。

上西公述人 この点については、知見がございませんので、コメントを控えさせていただきます。

江口公述人 児童相談所を守る者といたしましては、社会的養護に入っている子供たち、この子供たちが将来日本を支えていくためにしっかり生活できる、そんな社会にぜひ取り組んでいただきたいと存じております。

 よろしくお願いいたします。

浦野公述人 やはり新聞は文化的生存権としては非常に重要なものですので、新聞だけでも増税しないというのは、妥当なことだろうと思います。

浦野委員 ただ、新聞は、材料費が一〇%に上がるので値上げをするということで、結局、値上げをされて、八%に消費税がなるということは、国民の負担だけがふえるという話に、何かちょっとよくわからないことになるんじゃないかなと思っています。

 水道、電気、ガスこそがやはりそういう対象に、皆さんの立場の中での知見というのももちろんありますけれども、一国民として、それでええのかというのも本当は聞きたかったんですけれども、もう時間が来ましたので、これで質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

野田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 公聴会は、これにて散会いたします。

    午後三時五十一分散会


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