衆議院

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第1号 令和7年2月25日(火曜日)

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令和七年二月二十五日(火曜日)

    午前九時六分開議

 出席委員

   委員長 安住  淳君

   理事 井上 信治君 理事 齋藤  健君

   理事 牧島かれん君 理事 山下 貴司君

   理事 岡本あき子君 理事 奥野総一郎君

   理事 山井 和則君 理事 三木 圭恵君

   理事 浅野  哲君

      伊藤 達也君    稲田 朋美君

      今枝宗一郎君    岩田 和親君

      鬼木  誠君    加藤 鮎子君

      国光あやの君    河野 太郎君

      古賀  篤君    國場幸之助君

      後藤 茂之君    小林 茂樹君

      高木  啓君    田所 嘉徳君

      田中 和徳君    谷  公一君

      土屋 品子君    寺田  稔君

      西銘恒三郎君    平沢 勝栄君

      深澤 陽一君    古屋 圭司君

      山田 賢司君    若山 慎司君

      今井 雅人君    大西 健介君

      神谷  裕君    川内 博史君

      黒岩 宇洋君    近藤 和也君

      酒井なつみ君    馬場 雄基君

      藤岡たかお君    本庄 知史君

      松下 玲子君    米山 隆一君

      早稲田ゆき君    池下  卓君

      徳安 淳子君    西田  薫君

      石井 智恵君    仙田 晃宏君

      長友 慎治君    橋本 幹彦君

      赤羽 一嘉君    大森江里子君

      河西 宏一君    櫛渕 万里君

      田村 貴昭君    本村 伸子君

      緒方林太郎君    北神 圭朗君

      吉良 州司君

    …………………………………

   公述人

   (株式会社日本総合研究所調査部主席研究員)    河村小百合君

   公述人

   (東京大学大学院経済学研究科教授)        渡辺  努君

   公述人

   (一般社団法人日本旅館協会理事)         大西 雅之君

   公述人

   (日本原水爆被害者団体協議会代表委員)      田中 熙巳君

   公述人

   (株式会社大和総研常務執行役員)         鈴木  準君

   公述人

   (日本労働組合総連合会事務局長)         清水 秀行君

   公述人

   (日本大学文理学部教授) 末冨  芳君

   公述人

   (全国労働組合総連合議長)            秋山 正臣君

   予算委員会専門員     中村  実君

    ―――――――――――――

本日の公聴会で意見を聞いた案件

 令和七年度一般会計予算

 令和七年度特別会計予算

 令和七年度政府関係機関予算


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     ――――◇―――――

安住委員長 これより会議を開きます。

 令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算、令和七年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和七年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず河村小百合公述人、次に渡辺努公述人、次に大西雅之公述人、次に田中熙巳公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、河村公述人にお願いいたします。

河村公述人 日本総合研究所の河村と申します。

 本日は、こうした機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。

 私からは、令和七年度予算案と我が国の安定的な財政運営継続のための課題ということで意見を申し述べさせていただきたいというふうに思います。お手元に資料がございますでしょうか。それに沿ってお話しさせていただきたいというふうに思います。

 まず、一ページ目。

 今回、政府の方から出されている予算案、七年度の予算案なんですが、今国会ではこの予算委員会において、今までの国会と違いますね、非常にこの予算の中身に関する議論が極めて活発に行われて、民主主義国家として大変いい方向、望ましい方向じゃないかというふうに私は思っております。

 ただ、非常にちょっと気になりますのが、本当にいろいろな議論を新聞報道それからテレビ中継等でいろいろ拝見しておりますけれども、世界最悪の状態にある私たちのこの国の財政運営をどうやったら持続していくことができるのか。取りあえず今までのところは大きな支障は出ていませんけれども、いや、私これからお話ししますけれども、もう崖っ縁に来ていると思います。それをどうやったら回避できるのかという視点がちょっと欠落していたんじゃないのかなというふうに思っております。

 一ページ目に、予算の、いつも財務省が作られる円グラフをおつけしていますけれども、右側の歳入のところ、全体の四分の一が公債金、新規国債の発行ですね。三十兆円を切ったのは十七年ぶりということで、本当にそれはよかったと思います、税収も伸びるようですし。だけれども、本当にそれで大丈夫なのか、二十八兆六千億も新規国債を出し続けていて大丈夫なのか、そういう観点でお話をさせていただきたいというふうに思います。

 次のページです、二ページ目。

 これまでこの国が、これだけ世界最悪と言われながらどうして財政運営を続けられてきたのかというのは、もう先生方御案内のとおり、利払い費が増えずに済んだからなんですね。本当に、ここのグラフにありますように、もう十兆もいかないぐらいで、一般会計の中で利払い費が済んでいたわけでありますね。今回の当初予算政府案でも十・五兆円で済んでいる。これは、日銀の金融政策運営が、日銀にそういう意図があったとは思いたくないですけれども、密接に関係していたのは事実であろうというふうに思います。

 次の三ページ目。

 利払い費をたくさん払わないで済んで助かったなというのがこの国なんですけれども、でも、その代償、フリーランチじゃないんですね。その代償というのは、たくさんの国債を抱え込んだ日銀の財務状況が、これから本当に悪化していくだろうということがあります。

 この委員会では、いろいろ、植田総裁の参考人質疑とかも先月もなさっていますし、これから私がわざわざ申し上げる必要は全くないと思いますけれども、バランスシートが既に七百兆円を超えていて、当座預金の残高が五百五十兆とかを超えているような状態でございますね。そういう中で、今後、利上げが進めば、当座預金への付利コストというのがどんどん日銀の財務運営に重くのしかかっていくことになってまいります。政策金利、付利レート〇・五%で、昨年の年末の当座預金残高で計算すると、年度当たりの日銀にかかってくる付利コストは二・七兆円になりますね。これまでと本当に世界が違ってくる、そういう話じゃないかなというふうに思います。

 二ページ先に行っていただきまして、五ページ目のところですね。

 今日、こういう予算委員会の場ですが、私自身がこの畑の仕事を本当にもう三十何年間やってきておりまして、御覧のとおりの古ダヌキなんですけれども、先進国であっても、無理な財政運営を続けて市場からどういうしっぺ返しを食らったのか、無理な経済政策運営を続けようとして、国際金融市場に束になってかかってこられて、もう本当に対抗できなかった例というのを幾つも見てきました。そういうような経験も踏まえて、重債務国、財政状況が悪い国の財政運営がどうやって行き詰まるのかというところを、今日改めて御確認させていただきたいというふうに思います。

 この五ページのところに順に書いておりますように、この国、財政運営が危ないなという感じになってくると、まず、投資家の方がどういう行動に出るかというと、ちょっと長めの国債は買いにくいなと。国債というのは元本保証じゃないですよね。急に危なくなったときに、ああ、もうこれを売りたいと思ったときに、買ってくれる相手が見つからなかったら、自分がばばを引くことになるんですよ。それは避けたいと思うと、短期国債ならまだ日本は平気かな、さすがに六か月や一年でアウトになるとは国際金融市場も思っていないというか、そういう状況ですよね。

 だけれども、投資家の短期国債志向が強まっているというのはこの国でももうそうでして、財務省の理財局、結構大変そうな感じになってきましたよね。去年の六月ぐらいから、短期国債の比重を上げる、超長期債なんかは落とす。いかに国内で消化ができている国だって、やはりこんなにもう買い切れないということを生保さんとかもおっしゃっているわけですよね。何か昨年末には、変動利付債を発行することを検討するという話まで出てきましたよね。いや、もうここまで来たかと思いましたね。アルゼンチン並みですよ、こんなことをやるのは。ここまで追い込まれてきたんだと本当に思います。

 そして、次の段階。財政破綻が本当に目前に迫っているなということになるとどうなるか。投資家が短期の国債を中心に買っているとしても、市場金利がどうなるか。次のページに、イタリアが欧州債務危機の一番厳しいときにどういうイールドカーブ、長短金利に直面したかのグラフをおつけしていますので、御覧ください。

 これは、三つのイールドカーブの線がありますけれども、スタートライン、真ん中の紫色の線、二〇一一年の十月三日ですね。これはまだドラギ総裁がECBに就任する直前で、ECBがトリシェ総裁時代にちょっと中途半端に国債を買ったりなんかしたものだから、イタリアは調子に乗っちゃって、ベルルスコーニ首相が、まあ、ECBが買ってくれるなら平気だよという感じで放漫財政を続けようとしたんですね。そうしたら、うわっと金利が上がって、御覧ください、一か月後の十一月九日、こんなですよ。イタリアはもう生きた心地がしなかったと思いますよ。

 財政運営を続けていく上で、別に長期国債なんか出せなくたっていいんですよ。短期国債だって、お金をつなげればいいんですよ。だけれども、それを出そうとしたって、八パーとか九パーとかの金利をつけられるんですよ。もうこれはほとんどお手上げ状態に近いですよね。

 この頃、何かIMFと水面下でイタリアは協議していたんじゃないか、そういうような話も出ていたくらいなんです。でも、いろいろ、ドラギ総裁が就任されて、ドラギ総裁はすごいんですね、国債の買入れを止めて、逆に資金供給をすることによって、この危機を止めてみせた立派な方なんですけれども、でも、そういうこともあって、結果的にはこの赤い線になるように下がりましたけれども、こういうイールドカーブに直面するということをお考えになって、御認識いただきたいというふうに思います。

 五ページにお戻りください。

 こうやって、投資家が、ああ、この国は本当に危ないぞというふうになってきて、短期金利も上がってきた。そして、国債を発行する理財局の方が、国債の表面金利、クーポンを引き上げても、入札、出したときに、本当にオファーが満額が入らない、未達ということになると、結局、国債の発行、借換債の発行ができなくても満期はどんどん来るんですよ。満期が来た国債の元本を返さなかったらデフォルトですよ。デフォルトになったときの国債の金額、発行金額、幾らかということを、この国は改めて認識し直した方がいいと思います。

 二ページ先に行っていただいて、七ページのところに、毎年度のカレンダーベースの国債の発行額の一覧をおつけしております。

 一番直近のところ、二五年度、令和七年度の政府案ベースの国債発行額、百七十二兆円です。新規国債だけじゃないんです、借換債、山のようにこの国は出しているんです。本当にデフォルトということになったら、この分、本当に、新規国債を除いたとしたって、満期国債が百四十五兆円来るんですね。これを返せないとデフォルトになっちゃうんです。税収で埋められますか。基幹税の税率の引上げというのは限界がありますよね。だって、一般会計の税収が八十兆円とか言っているのに、百四十五兆、ほかの歳出に一切使わないで埋められるかということを是非お考えいただきたい。

 余り申し上げたくないですけれども、こんなことをやっていたら、本当に、この国が戦後に経験したみたいな預金封鎖と資産課税みたいなこと、すごく手荒なことをやらざるを得なくなるんじゃないかということを危惧いたします。

 八ページのところを御覧ください。

 財政運営を安定的に続けていかれるかどうかというのは、債務残高の規模では決まりません。債務残高の規模、GDP比二五〇とか二六〇%とか、ちょっと下がっていれば安心とかじゃないんですね。現実の問題は企業と国だって一緒ですよ。借金しながら回しているんだから、借金が続けられるかどうかで決まってくるんですね。

 ですから、そういう意味では、毎年必要な新規国債、まあ新規国債を出すかどうかという問題もありますけれども、借換債は来ますね。その借換債を合わせた国債の発行の金額、安定的に出していけるかどうかというのを決める上で、毎年度の利払い費、それから国債発行額がどうなるかということが決定的に重要になってくる。そのことを予算委員会の先生方に、どうか御認識いただきたいというふうに思います。

 次の九ページを御覧ください。

 今回の予算案に合わせて、財務省が例年どおり国債整理基金の仮定計算を出していて、利払い費の見通しというか推計値を出していらっしゃいますね。それをグラフにしたものがここなんですけれども、二〇三四年度には利払い費が二十五・八兆円に達するというふうに財務省は計算されています。前提金利はここに黄色くおつけしているとおりで、別に特段、物すごく高い金利を前提で財務省は置かれているわけじゃ全然ないですよ。二十五・八兆円、今の予算のような形で出せるかどうか、どうかよくお考えいただきたいと思います。

 次の十ページのところを御覧ください。

 財務省はこういうふうに試算されているとして、これから先この国が払わなきゃいけない利払い費がどうなるかというのは、既に昨年度までに発行済みの国債で、固定利付債の国債を出していれば、利払い費は確定していますよね。確定している分と、それから、これから出していかなきゃいけない分、借換債もいっぱい出さなきゃいけないんですけれども、それはあくまでこれから先の長短金利で決まります。ですから、既に決まっている利払い費と、これからの変動し得る利払い費がどうかというのを、私が財務省のデータを基に、これは結構面倒くさいんですけれども、データを細かいのを全部拾って推計したのが十ページのグラフでございます。

 先生方、御覧ください。確定している利払い費というのは、確かに足下は多いんです、割合多いんですけれども、どんどん減っていきますよね。二〇二七年ぐらいから逆転して、これから先の金利水準で決まる部分というのがどんどんどんどん大きくなっていくということは、本当に今後の金融情勢次第だということなんです。

 ですから、いかにして低い金利を達成していくか。日銀に国債を買ってもらって抑えるんじゃなくて、日本の国が健全な財政運営に、しっかり財政再建路線を取っていますということを世の中に、国際金融界に認識していただくことによって、信認を得ることによって、ここが異常に増えないような形にしていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思います。

 ちなみに、この利払い費がどうなるかなんですけれども、次の十一ページのところを御覧ください。財務省が出されている試算というのは一本なんですけれども、前提条件とかをそれぞれ変えてやってみたらどうなるのかということを試算をいたしました。

 ちょっと詳しい御説明は時間がないので控えますけれども、十一ページのところにあるような四つのシナリオ、ただ、四つのシナリオ、デフレ逆戻り、物価低水準、物価目標達成、そして、日銀がああいう金融政策をやっていたら物価を抑えられないんじゃないかなというか、もう抑えられていないですよね、そういうシナリオも置いて、潜在成長率と名目成長率、それから、物価と長短金利の関係というのは、市場主義経済圏としておかしくない、合理的な前提に置いたつもりであります。国債の発行パターンも、一年債、五年債、十年債の、それぞれ組合せをいろいろ三通り考えて試算した結果が、次の十二ページであります。

 ちょっと数字がたくさん出ていて、非常に御覧になりにくいと思いますけれども、財務省が去年の二月の時点で出していた利払い費の試算結果が、一番右の黄色いところです。その左へ二つ目、二・五%成長シナリオで全額十年債で出すのが、たまたまなんですが、大体この財務省の試算と同じようなぐらいの感じになっているんですね。ああ、何だ、大した試算じゃないじゃないかと思われるかもしれませんが、ええ、大した試算じゃないんですけれども、じゃ、それが、金利を例えば短期債、全額一年債で発行したら利払い費がどうなるか、すぐその下のところを御覧ください。

 二〇三三年度で、二十五兆のところが二十一兆ぐらいで済みますよね。三分の一ずつでやれば、そのまた下のところ、その三分の一ぐらいで済む。だけれども、これって、物価が上がって五・五%成長シナリオなんかになると、先ほど御覧いただいた二・五%の十年債のところ、二十五兆ぐらいが、すぐ右のところを御覧ください、利払い費はあっという間に五十兆近くに行っちゃうんですね。非常にやはり危険なところなんじゃないかなというふうに思います。

 次のページ、十三ページ、御覧ください。

 問題は利払い費だけじゃないんですね。長期国債で出すか短期国債で出すかによって、借換債がどれぐらいになるかというのが全然違ってきます。

 だから、今何か日本の国は国債の短期化をしていますけれども、まさか全額一年債にするつもりはないと思いますけれども、極端な前提として全額一年債になったら、利払い費は助かる。だけれども、そのときの国債発行額、すごいことになるんですよね。だって、一千兆ある国債の借金を本当に何年かかけて全部一年債に仮に置き換えていったらということなんですよね。ですから、このグラフで御覧いただいたらお分かりになりますように、本当にもう全額一年債でいくと、毎年の国債発行額が八百十七兆円にも達するというか、まあ、その前にこの国はどうかなっちゃうんじゃないかなと思いますけれども、そういう状況であります。

 次のページ、御覧ください。十四ページのところですね。

 よく世の中で、インフレになってしまえば財政破綻は回避できるというような意見を聞くことがございます。それは本当なのかなということをちょっと計算してみました。

 まず、この十四ページのところは税収ですね。二〇二三年度の実績を基に、それぞれの成長シナリオで伸ばすと、確かに全然違いますよね、一番下の二〇三三年度のところ。こんなに五・五%成長シナリオで税収が伸びるのなら、何か足りそうな気もするんですけれども、どうか先生方、忘れないでいただきたいのは、利払い費も心配ですけれども、一般歳出なんです。

 最初決めたとおりの金額で払えば足りるのって、国債費だけなんですよ。ほかの歳出は、本当に国民の側、公務員のお給料もそうですし、公共事業の発注するお金もそうですし、物価が上がっている中で物価に連動して上げてもらえなかったら、国民はたまらないんですね。

 それも併せて考えると、じゃ、一般歳出はどれだけ必要かというふうに計算したのが十五ページのところです。もし一般歳出、国債費以外を併せて上げるとしたら、これぐらい必要ということですね。これを全部並べてグラフで比較したのが、十六ページのグラフです。

 利払い費が一番節約できる一年債だけで発行して、税収が一番伸びる五・五%成長シナリオでと決めると、水色の棒グラフ、税収が増えても、もう全然足りませんよ。全然足りませんよ。だから、インフレで財政破綻が回避できるなんということには決してならないということを御理解いただきたいと思います。

 次の十七ページのところ。

 あと、もう一つよく聞くのは、国債を幾ら出しても日銀に買わせておけばいいという意見ですよね。だけれども、そうなんですかね。よくそういう方々は統合政府論ということをおっしゃるので、それをつくるときのグラフを、私がちょっと描いてみたものをお載せしました。十七ページのところです。

 ここ、確かに、日銀と国のバランスシートをドッキングさせて考えても、もちろんいいんですよ。でも、それで国債の残高が減るわけじゃないんです。バランスシート、どういうことか。資産と負債でリスクを考える。国として、本当は国債を出して、固定金利でできるだけ長期、できるだけ低く調達すべきところが、全部日銀の、本当に半分ぐらいが日銀の当座預金に置き換わっちゃうわけですよ。十年債の固定金利どころじゃないですよ。日銀の当座預金、オーバーナイトですよ。どうするんですか。

 今後の金融情勢、円安がわあっと進んで、もう日銀、もっと金利を上げなきゃ止められなくなったら、一気にわあっと日銀の赤字が膨らんで、政府が補填しなきゃいけなくなるかもしれませんよね。そういうことなんです。だから、日銀に買わせておけばいいなんということには、この期に及んでそうはなりません。

 それで、最後、十八ページのところなんです。

 じゃ、どうすれば財政運営を安定的に続けていけるのかということなんですけれども、この図のところでお描きしましたように、プライマリーバランスの均衡では足りません。これだけ金利も上がってきています。ちゃんと利払い費も入っている財政収支を均衡させて、それも均衡じゃ足りないんです。黒字化まで持っていって、既に出している国債の元本を返していかないと、とてもじゃないけれども、この国、回りません。

 次の十九ページのところを御覧ください。

 ほかの国はどうやっているのか。欧州債務危機で痛手を被ったヨーロッパの国々、みんな見てくださいよ。本当に、ほとんどみんな財政収支は黒字ですよ。プライマリーバランスじゃないですよ。こうやってやっているんです。こういう国は新規国債なんか出していないんですよ。そうやってやっている。そういうことを日本も合わせなきゃいけないと思います。

 次の二十ページ、御覧ください。

 財政収支均衡ということは、大ざっぱに言えば、新規国債をほとんど皆減に近い形まで減らさないといけないんですね。でも、それって、よくよく考えれば、もう何のことはない、家計と一緒なんじゃないですか。家計だって収入の範囲で生活するということを考えますよね。国だって同じなんじゃないか。本当は、やはり、入ってくる歳入、税収の範囲内で予算を組むのが本当であって、その形に戻していかなきゃいけない。それができたら、非常に利払い費も削減できるし、次の二十一ページのところは、先ほど申し上げた国債発行額も減らすことができるんですね。そこを、どうぞ御確認いただきたいと思います。

 日本にとって怖いのは、次の二十二ページ、やはり円安なんですね。よく日米金利差が原因だというふうに言われますけれども、グラフを御覧いただいたらお分かりのように、金利差だけが原因だったら、もうちょっと円高に行っていてもいいんじゃないですか。これは何を意味するのか。やはり、よく私たちは虚心坦懐に考えた方がいいと思います。

 次の二十三ページ、格付の問題です。

 日本国債の格下げの話が出てきておりますよね。今はもうシングルAなので、次、ワンノッチ、ツーノッチ下がったらB格なんです。B格になったら、国際金融市場で担保として差し入れられなくなって、本当に外貨調達に影響が出るということを、すごく金融機関の関係者から心配している声を聞きます。まさに崖っ縁なんですね。ですから、本当に、格付会社、余り、先見の明があるというよりは、どっちかというと市場後追いのところがあるので、格下げになってから考えればいいという話じゃないと思います。そうならないようにお考えいただきたい。

 最後のところ、二十四ページです。

 日本の国、やはり財政再建の余力がどれぐらいあるのかというところを考えたときに、これは貯蓄・投資バランスなんですけれども、家計部門がずっと長年黒字ですよね。あと企業部門、よその国は企業が上に行ったり下に行ったりするのが、日本は一貫して黒字ですよね。だから、二千二百兆円の家計金融資産があって国民は勤勉でといいますけれども、これは政府に結局借金を押しつけてきた結果なんじゃないか。これまでいろいろ厳しい時代もありましたけれども、本当はもうちょっと負担する余力があった方もいたんじゃないか、その結果なんじゃないか。ですから、正直申し上げて、この国は、金持ち国なのに税負担の合意ができないからこんなに財政が悪くなっちゃっているんじゃないかなというふうに私は思います。

 最後、私が申し上げたいのは、是非是非、今回の予算案、それから先の財政運営を通じて先生方に是非ともお考えいただきたいのは、一つ目、どうすれば経済的な余裕のある家計であるとか企業に負担していただけるか。二つ目、逆に余裕のない方もたくさんいるんです。どうしたらそういう方の負担を軽減できるか。そして三番目、世の中全体として気がついていない不公平とかが随分私は税制とかにあるんじゃないかと思います。その負担の不公平をどう是正すれば財政収支が改善できるか、是非そこをお考えいただきたいというふうに思います。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

 次に、渡辺公述人にお願いいたします。

渡辺公述人 ただいま紹介いただきました渡辺でございます。東京大学の経済学研究科に所属しておりまして、マクロ経済学という分野を専攻しております。特に物価とか、あるいは賃金とか金融政策とか、そういうことを実証的に研究する研究者でございます。

 今回の当初予算の一つの柱は賃上げだというふうに理解しておりますので、今日は、その賃金を中心にして私自身の考え方を少し最初に申し上げさせていただいて、それから先生方からの御質問をいただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 まず、タイトルのところを御覧いただきますと、「賃金・物価・金利の正常化」というふうに書いてございます。賃上げに伴う賃金の上昇というのが起きている。それから、それの前の段階として物価が上昇してきている、ここは先生方、御存じのとおりであります。それから、それに付随して昨年からですかね、日銀が金利を上げ始めているということで、賃金、物価、金利の動きがこの数年間のところで大きく変化してきているわけであります。

 実は、この賃金、物価、金利というのは、長いこと、三十年間ぐらいにわたって異常な状態だったわけでありまして、それが正常化してきているというのが私の基本的な理解の仕方であります。もちろん、物価の上昇が行き過ぎているとか、あるいは物価と賃金の上昇というのが、なかなか賃金の方が追いつかないとか、いろいろな問題が付随的に起きておりますけれども、しかし、それでも私は、賃金、物価、金利の正常化が起きているという意味では、非常に大きな前向きの動きが日本経済に起きているというふうに評価をしてございます。そのことを、もう少し詳しく申し上げます。

 まず、二ページ目のところを御覧いただきたいんですけれども、じゃ、日本はどういうふうに異常だったのかということを簡単に振り返るために描いたものでございます。左側が日本で、右側の方に、比較のためにアメリカの絵を描いてございます。物の値段、サービスの値段、それから名目の賃金、こういうものがどう推移しているのかということを示したものでございます。

 七〇年代、八〇年代、九〇年代の前半までは、日本のこの三本の線が右肩上がりになっている。それから、アメリカも右肩上がりですけれども、両国で傾きの差も余りないというのがお分かりいただけると思います。つまり、九〇年代の半ばぐらいまでは、日本は別に賃金も物価も金利もおかしくはなかったわけであります。

 ところが、九〇年代の半ばぐらいから、九五年と言っていいと思うんですけれども、そこから賃金の方は全然毎年毎年変わらない、据え置かれるということが始まりました。それから、物価も同じタイミングで据え置かれるということが始まりました。ということで、両方が据え置かれるという状況が生まれたわけであります。これがよく言われる日本のデフレ、あるいは、長く続いたので慢性デフレというふうに呼ばれている現象でございます。

 御覧いただいていますように、アメリカはそんなことはありませんし、ここには絵がありませんけれども、欧州の国々もそうではありませんで、日本が据え置かれていた時期に右肩上がりを続けておりましたので、あちらはどんどん上がっていく、こちらは毎年毎年据置きでございますので、一年一年の差というのはそれほどではないかもしれませんけれども、それを九五年以降、ほぼほぼ三十年にわたってやってきたわけですので、結果的に、賃金で見ると、物価で見ても、大きな差が彼我で生まれているということでございます。

 私は、国立大学に勤めておりますけれども、同じような研究をしているアメリカやヨーロッパの国々の先生方との交流も非常に多うございますけれども、そういう人たちと給与の話をしますと、明らかに彼らの方が高い。それは、高いというものを超えて、三倍、四倍というのが平均だという状況になっているわけであります。

 そこまでいきますと、例えば海外の先生方で、日本で教えてみたい、日本の若い子たちに教えてみたいという人たちもなかなか来てもらえませんし、逆に、東大で教えているような先生方が海外に出ていってしまうということも起きているわけでありまして、なかなか大学としても深刻であります。恐らく、多くの企業で同じような問題が起きているんじゃないかというふうに思います。

 つまり、三十年間、価格と賃金をそうやって据え置いてきたこととして、今そういう大きな弊害というのが起きているということでございます。

 ただ、幸いなことに、それが二〇二二年の春ぐらいから、三年前ぐらいから変化が起きているわけでありまして、それが今日申し上げたい正常化でありますし、あるいは予算の中での賃上げ云々というのも、そこに関わる部分だというふうに理解をしております。

 三ページのところを見ていただきますと、大きなくくり、私の理解の仕方として描いている絵でございますが、二つ、ぐるぐる回っている絵がございますが、左側がこの過去三十年間のデフレの時期の日本の経済の様子を表したもの、右側が過去三年間の、二二年春以降の動きを示したものです。

 その三十年間というのは、毎年、価格、給与は据え置きます。そうすると生計費は毎年変わりません。となると、賃上げというのは、そういうことがないということで、賃上げを要求しないということになる。そうなれば、普通の企業として、普通の年であれば、企業は、人件費、労務費が上がって、それを価格に転嫁するということが起こるわけですけれども、そういうことも三十年間は必要なかったわけであります。

 こうして、価格の据置きというところに、もう一回戻っていくわけでありまして、つまり、価格を据え置くということと、それから賃金を据え置くということが、ある意味でペアで起きていて、ペアであったからこそ持続性があって、三十年間も続いたというふうに考えてございます。

 元々のサイクルから、新しいサイクルとしては右側のものですけれども、企業が二%程度価格を上げていく、そうすると生計費もそのぐらい上がっていく。そうなると、労組等とも賃上げを要求していく、二%プラスアルファの賃上げを要求していく。そうなると、人件費、労務費が上がっていきますので、その分を価格に転嫁するということで、今度は価格も賃金も両方が平仄を取りながら上がっていく、こういう健全な循環というのが生まれているわけであります。

 気の早い方は、右側の方のサイクルが始まったし、あるいは予算でも様々な手だてがなされるようになってきたので、もう日本はこういういい循環が定着したんだ、そういうふうにおっしゃる方もいますけれども、私はそこは悲観的であります。多くの方よりも悲観的であります。理由は非常に単純でありまして、日本社会の中に、まだ左側のサイクルへのある種のノスタルジー、郷愁というものが残っているからであります。

 例えばシニアの方であれば年金で生活されている方が多いわけでしょうけれども、予算委員会で様々な工夫もしていただけているとは思いますけれども、しかし、残念ながら、物価の上昇にはやはり年金の受取というのは追いつかないわけであります。今後も、もしこういう二%という緩やかなインフレであったとしても、続くとすれば、彼らの年金というものは目減りしますので、そうであれば、元の左側の方のサイクルに戻したいというふうにお考えになるわけであります。

 それから、企業でも、大企業の方は、多くは右側の方の好循環の方をサポートされているというふうに思いますけれども、一方で、中小企業というのは、なかなかそうはならないということであります。

 つまり、今、賃金が上がり始めているというのはもちろんいいことなわけでありますけれども、それをやろうとすると、やはり中小企業は収益的に余裕ができない、あるいは、今回の予算の中でも議論になっていますけれども、価格転嫁がなかなかできないということで、中小企業の賃上げは厳しい。そうなると、せっかく長い間働いてくれていた労働者の方が一人去り、二人去りということになってしまう、経営が難しくなってしまうじゃないかと。

 これが、かつては、毎年賃金を上げなくても、別に自分だけではなくて、多くの企業も上げなかったわけですので、そうなると、労働者の方も、企業にお勤めの方も御不満を持つことはなかったわけですので、そうなれば余分な苦労はしないで済んだ、そういうふうに考えて、中小企業の経営者の方は、左側のサイクルの方がよかったというふうにおっしゃるわけであります。

 このように、多くの方々が左側のサイクルに対するノスタルジーをまだまだ強くお持ちになっている。人数的には、シニアの方も、それから中小企業の経営者の方もたくさんいらっしゃいますので、私は、人数割りでいうと、まだまだ半数以上の方が実は左側のサイクルに戻したいというお気持ちを強くお持ちなんじゃないかというふうに思っております。

 なので、右側がもう三年間、始まったから安心だというふうには全然思えないわけでありまして、まだまだ様々な手だてが、それは財政的な手当てをもちろん含みますけれども、必要だろうというふうに思っております。その意味で、今年の予算の中で、様々な形で価格転嫁あるいは賃上げに向けた取組が盛り込まれているということは非常に有効なことなのではないかというふうに思っております。

 この動きというのは、大きく言うとデフレからの脱却というふうになるわけですけれども、デフレからの脱却というのは、別に昨日今日スローガンとして掲げたわけではないわけでありまして、アベノミクスのときからそういうことは議論されてきたわけであります。先生方も恐らくそういうことを議論されてきたんじゃないかというふうに思っております。

 しかし、残念ながらといいますか、あれだけの、たくさん、いろんな措置を行ってきましたけれども、しかし、アベノミクスではデフレ脱却は実現できなかったわけですし、あるいは賃金と物価の好循環というものも実現できなかったわけであります。

 今、それが、いろんな留保はありますけれども、曲がりなりにも実現できているんだとすると、一体それはあのときと今とではどう違うのか、二〇一三年、一四年のあの頃と十数年後の今とではどこがどう違うのか、ここを押さえておくことは非常に大事なわけでありまして、そこを理解すると、じゃ、持続性をどうやって持たせるのがいいのかということのヒントも得られるんじゃないかというふうに思います。

 その違いは、私は、二点あるというふうに思います。

 四ページ目ですけれども、まず一つは、消費者のインフレ予想というものであります。

 ちょっと専門用語なので恐縮でございますけれども、平たく言いますと、要は、物価は上がるものだ、どんどん上がっちゃう、今はちょっと上がり過ぎていますので、どんどん上がっちゃって厳しいというのは、そこまで行くのは問題外ですけれども、しかし、ゆるゆると二%ぐらい物価は上がるものだ、それはどこの国でも普通の時期はそういうものなんだということの認識というのが、ようやく生まれてきたということであります。

 実は、三十年間というのは、基本的には日本の消費者のインフレ予想は低い、つまり、価格は据え置かれるものだというふうに強く信じていましたので、あるいは、企業に対しても、価格を上げる企業はけしからぬ企業だというふうに強く思っていましたので、なかなか企業も値上げに踏み切れなかった、こういういびつな構造があったわけであります。

 それが、二二年の春以降、インフレ予想というものが、価格は据え置かれるんじゃなくて、上がっていくのが、うれしくはないけれども仕方のないものだし、それがある種の標準なんだ、こういう当たり前へと人々の発想が切り替わっていったというのが非常に大きいかというふうに思います。

 私ども、毎年、アンケート調査をして、それが今四ページ目に書いてございますけれども、詳しく申し上げませんけれども、一四年、一五年のアベノミクスの初期というのは、多少そういう意味でのインフレ予想の上昇というのがありましたけれども、しかし、今回起きているものと比べると、やはりそこは桁違いと言っていいぐらいにインパクトが違うわけであります。

 今回のインフレ予想の上昇というのは、ちょっとしゃくに障る話ではありますけれども、やはりウクライナの戦争とか、あるいはパンデミックというような、そういう外的な事情に触発されている部分が非常に大きいわけですので、言ってみれば、ここでその話をするのが適当かどうか知りませんけれども、プーチンの方が安倍総理よりもずっと、物価を動かす、賃金を動かす力というのが大きかったということなんだろうというふうに思います。

 いずれにしても、そういう外的な力に支えられて日本の好循環が起きているということでございます。

 二点目の違いは賃金であります。ここは今回の委員会のポイントかと思います。

 五ページ目を御覧ください。これは、緑の棒で描いたのが毎年の春闘の賃上げですけれども、一四年、一五年の辺りのところの棒グラフを見ていただきますと、少し上がってきている。これが実は官製春闘と言われたあの時期であります。少し上がっているので、私もようやく賃金が上がり始めたかと当時思いましたけれども、しかし、今回の二三年、二四年、それから今二五年の春闘をやっていますけれども、そこでの賃上げというのは五%を超えるような賃上げになっているわけですので、官製春闘の時期とはここもやはり桁違いになっているわけであります。

 連合とか組合の方々に、当時、政権側から官製春闘という形で様々なサポートがあったにもかかわらず、なぜ高い賃上げができなかったのかということを伺いますと、答えは非常に明確でありまして、要は、人手不足というものが当時はなかったんだというお答えなわけです。今は当然のことながら人手不足が非常に深刻なわけです。

 当時は、もちろん人口減少という問題はその頃でも起きていたわけでありますけれども、一方で、安倍内閣のアベノミクスのもう一つの柱は、いわゆる女性とかあるいはシニアの方とか、そういう労働市場に余り当時参加していなかった人たちに参加していただこう、制度を変えるなりなんなりして参加していただこう、それによって労働供給を増やそうということを行ったわけであります。その施策はそれなりに機能したというふうに見ておりますので、その結果として、余り労働の需給の逼迫、人手不足というものは、当時は深刻にならなかった。そういう中で、やはり連合等々についても、それほど強気の春闘ということにはならなかったというのが、どうもその当時の事情のようであります。

 それに比べて、今回は、女性それからシニアの方も随分と労働市場への参加率が上がってきておりますので、ある意味でこれ以上上げることができないぐらいまで上がってきております。欧米と比べても、例えば女性なんかについては参加率が十分高いというふうに言っていいと思いますので、そういうふうに、新しい労働者の供給というものがそれほど得られないという中で起きている人手不足でございますので、そこで労働組合としても比較的大胆に賃上げを要求できる、これが今回の賃上げの高さになっているのかなというふうに思います。

 二つ目は、この春闘での賃上げというのがアベノミクスの時期との大きな違いでございます。

 将来を考えますと、賃上げについては、恐らく人手不足というのは、もちろんそれ自体も直さなきゃいけない大きな社会課題でありますので、そこは様々な形で中長期の取組ということを先生方はお考えなんだというふうには理解しておりますけれども、しかし、短期的には、それはそう簡単には解決しないだろうと。となれば、人手不足の中での春闘の高めの賃上げというのが持続するのではないかというふうに私は見ております。なので、この二点目の違いについては、比較的楽観視していいのかなというふうに思います。

 他方で、最初に申し上げた、物価は上がるんだ、あるいはそれに付随して賃金もしっかり上がるんだ、こういう認識についてはまだまだ不十分かなと。物価が上がる方については、随分上がってきていますので、もうこれ以上上げるなという話になっていますけれども、同時に、しかし、賃金も上がらなきゃいけないし、今回のこの予算の中でもその手の取組は起きていますけれども、しかし、自分の賃金はしっかりこれから上がるんだというふうに自信を持って言える方というのは、まだまだ少ないというふうに思います。

 そういう意味では、物価の方の予想は上がっちゃっていますけれども、賃金の方の予想というのが追いついていない状況かというふうに思います。ここを直していかないと、賃金と物価の好循環という意味での、それの持続性というのはやはり厳しいんじゃないかなというふうに思っております。ここも、そういう意味では、この予算、あるいは予算を超えて、様々な先生方の取組というのが必要になる部分かなというふうに思います。

 じゃ、こういう正常化のプロセスの中で政府はどういう役割を果たすのかということを簡単に申し上げますと、実は一つ大事な前例というのがございます。日本で起きてきたこの慢性デフレという現象は非常に珍しくて、ほかの国には余り前例はないんですけれども、幸か不幸か、一つ前例があります。それはアメリカの大恐慌期であります。

 六ページに、英語の資料で非常に恐縮ですけれども、当時は、ちょっと、デフレといっても、アメリカのデフレはもっと激しいデフレでしたので、価格ががんがん落ちるようなデフレでしたので日本と様相は違いますけれども、そこに対処しようとしてルーズベルト大統領が行った施策というのが非常に示唆に富むわけであります。

 彼がやったことというのは、非常に単純に言いますと二つであります。

 一つは、最低賃金というものを、当時アメリカにはそれはなかったんですけれども、導入するということがございました。要は、賃金が底なし沼のように落ちてしまうような状況があったわけですので、それを最低賃金で防ごうということを考えたわけであります。

 もう一つは何かといいますと、独禁法、独占禁止法を、競争を制約するというのが法の趣旨でありますけれども、それを一時的に緩和をするということをしたわけであります。なので、やや語弊がありますけれども、カルテル的な、共謀的なことをある程度は認めるという、それによって価格が野方図に落ちる状況を防ぐ、こういうことをやったわけであります。つまり、独禁法と、それから最賃であります。

 私は、今の政府が、あるいは今回の予算の中でも入っていますけれども、やっていることは、基本的にこのラインに乗っているんじゃないかというふうに思います。最賃については私が申し上げるまでもありませんし、既に上げてきています。それから、岸田政権、それから現在の石破政権の下で、将来の最賃も上げていくということがうたわれておりますので、まさにその最賃の重要性というものを、当時のルーズベルトと同じように認識されているのかなというふうに思います。

 独禁法については、もちろんそんなことを日本でやっていることはありませんけれども、私は、かなり近いなと思うのは下請法であります。これも公正取引委員会がやっているものですので、独禁法に近いわけでありますけれども、ここは、ですので、中小企業、下請企業と親企業との間の取引がアンフェアだったりとか、価格もアンフェアになっている、ここの部分を何とかしてゆがみを直していこう、そうすると中小企業でも賃上げがしやすくなるんじゃないか、こういうことが狙いなわけですけれども、ですので、ここも、ある意味では、独禁法をいじったルーズベルトと似た面があるのかなというふうに思います。

 別に、政権の先生方がこういうルーズベルトの事情を調べてこういうことになったというふうには理解しておりませんけれども、恐らく、いろいろな手だてを尽くす中で、最終的にそこに脈がありそうだということで、独禁法と下請法というところがターゲットになっているのかというふうに思います。私は、ですので、そこは必然性があるというふうに思いますし、今回の予算措置の中でも、そこに力点を置かれているということについては、非常に大事なことかというふうに思います。

 ちょっと時間もなくなってしまいましたので飛ばしますが、九ページのところを御覧ください。

 今日は、賃金、物価、金利の正常化ということをるる申し上げておりますけれども、私は、この正常化には二つのステージがあるというふうに考えてございます。

 第一ステージというのが、二二年春から、三年前から始まって今現在まで、ここが第一ステージかというふうに思います。このステージでは、今申し上げているような賃金という名目の変数とか、あるいは物価、あるいは金利という名目の変数、そういう名目の変数が元々変だったわけですけれども、それが直ってくる、こういうプロセスだということでございます。第一ステージ、完全に終わったわけではありませんけれども、今までのところは、それなりに順調に来ているのかなというふうに思います。

 じゃ、この先何があるのかと。賃金が上がるようになりました、物価も同じように上がっています、何がうれしいのかということなわけです。私は、この第二ステージがそういう意味では大事だというふうに思っていまして、今後、例えば十年程度、あるいはもしかしたら、それ以上の時期にわたって起こる事柄だというふうに思っております。どういうことが言いたいかというと、ここに価格メカニズムという、ちょっと専門用語ですが、を赤く書いてございますけれども、これであります。

 今までの三十年間の日本経済というのは、価格と賃金が動かなかったわけですので、いわゆる価格メカニズムというのが十全に機能してこなかったわけであります。

 例えば、ちょっと立派な社長さんがいて、いい設備を入れたりとかアイデアをつくって、それで生産性を上昇させたということをしたとしましょう。通常であれば、健全な経済であれば、その企業では賃金がしっかり上がって、そうすると、その周囲の余り芳しくない企業から人が移っていってという形で、その社長さんを中心にして生産性の上昇という輪が広がっていく。これが健全なメカニズム、あるいは価格メカニズムの健全な姿であります。

 ところが、日本は、価格が賃金も含めて上がらなかったわけで、据え置かれたわけですので、そういうふうにイノベーションが起きた企業でも賃金は変わらないわけですので、今申し上げたような人の移動ということも起きなかったわけであります。そうなると、経済全体での生産性の上昇というのも、御案内のように振るわなかったわけであります。

 これが、今後は賃金が上がるようになる、それから、特に経営のしっかりしている企業での賃金はよりたくさん上がる、そこに人がシフトしていく、こういうことが起きる、あるいは起き始めているというふうに思いますので、そういう意味では、生産性の上昇というところについても大きな期待が持てるのではないかというふうに思っております。

 海外の方にこういうことをお話しをするときに一番分かりやすいのは、日本は実は旧ソ連と一緒だったんだと。旧ソ連というのは、価格メカニズムというのが、御案内のように価格がそもそもなかったわけですので、そういうものがなかったわけで、それが失敗の大きな要因だったわけであります。あるいは、中国もかつてはそうだったわけであります。

 ところが、日本も、もちろん価格はありましたし、賃金もありますけれども、動かないわけですので、そうすると、価格メカニズムも何もなかったわけであります。それがようやくメカニズムとして機能し始めているというのは、私から見ると非常に大きな期待感を抱かせるものであります。

 ですので、この第二ステージというのは、単に価格や賃金が上がるというだけでなくて、生産性という意味での日本のダイナミズムというのも取り戻せるんじゃないかというふうに期待しているところでございます。

 第二ステージの二点目は、ちょっと時間がないので手短になりますけれども、これは財政であります。ここは予算委員会ですので、財政が一番大事かと思います。

 十四ページのところを御覧いただければというふうに思います。今起きていることは、元々ゼロ%、賃金も物価も上がらないというゼロ%のインフレの状況から、二%の物価の上昇、あるいは二%プラスアルファの賃金の上昇という、そういう経済に移行しようとしているわけであります。二%というのは別に大したインフレじゃないですけれども、それでもインフレが起きるというのは間違いないわけであります。

 じゃ、インフレが起きたときに誰がどうなるのかというのを私も授業とかでいろいろ教えますけれども、古今東西、必ず言えることというのは、債務者が得をして債権者が損をするということでございます。じゃ、日本の中で一番の債務者はどなたですかと聞くと、間違いなく、いわゆる政府であります。なので、実は、インフレが起きるように、ゼロ%から二%になるということは、債務者たる政府にとっても大きなメリットがあるわけであります。先ほど、生産性云々で民間の経済に大きなメリットがあるという話を申し上げましたけれども、政府にとっても、財政の視点でも、実は二%のインフレというのは、単独で見ても意味があるわけであります。

 どういう意味かといいますと、先ほどの河村先生のお話にもありましたけれども、そうやってインフレが起こることによって政府の名目の債務というのが多少減るということになるからであります。私の試算によりますと、政府は今現状で千百兆円、国債を発行しておりますけれども、そのうちの百八十兆円が消える、この二%に移行することによって消えるということでございます。

 ここでその話を申し上げているのは、百八十兆円、どうぞ使ってくださいというふうに申し上げているつもりでは全くありません。百八十兆減るといっても、元々千百兆ありますので、あるいは先ほどの河村先生のお話でも、いろいろなリスクがありますので、そこはそんなふうに喜んでいる場合じゃないわけであります。まだまだ九百兆程度のものは残りますので、そこへの手だてということは着々と行っていかなきゃいけないということでございます。

 ただ、申し上げたいのは、今回のように歳入が増えている、それによって百八十兆の一部が既にもう得られているわけですけれども、なので、非常に財政が厳しい中でも、得られる歳入の増加、あるいは百八十兆円というものが存在するわけですので、それは是非大事に大事に使っていただきたい。例えば、それはやはり国債を返還するのに回した方がいいんだというのであれば、それももちろん一つのアイデアでしょうし、あるいは、防衛とかそういうところが大事なんだからそこに使うべきだというのも一つのアイデアでしょうけれども、そういうふうにお金を大きく動かすチャンスというのが百八十兆円分についてはあるんだというのが、私の申し上げたいポイントでございます。

安住委員長 渡辺公述人、大変恐縮でございますが、時間を四分オーバーしておりますので、まとめてください。

渡辺公述人 はい。ここでまとめますけれども、私は、二%への移行をしっかり確実にするために、今回の予算の中でも多少お金を使ってございますけれども、そういうお金というのは実は無駄ではないということを最後に申し上げたいというふうに思います。なので、百八十兆円の一部をそういうところに使うことによって、より円滑に二%経済に移行できるようにする、それが結果的に百八十兆円をもたらすんだということを申し上げたいと思います。

 大変ありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

 次に、大西公述人にお願いいたします。

大西公述人 本日は、衆議院予算委員会公聴会で発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。

 私は、北海道阿寒湖温泉の地域DMOであります阿寒観光協会まちづくり推進機構の会長を務めております。旅館経営者であります。また、昨年六月までは、一般社団法人日本旅館協会会長を務めておりました。その立場から、本日は、観光をめぐる現在の状況を皆様に御理解をいただき、今後の発展に向けた政策要望を中心に意見を述べさせていただきます。

 私どもの日本旅館協会は、全国の旅館、ホテル、約二千二百の施設を会員として構成しております。会員からは様々な要望が寄せられておりますが、国の予算事項として御支援いただきたい分野について今日は発言をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、これまでの観光立国の動きについて振り返りをさせていただきます。

 今から二十二年ほど前、二〇〇三年一月、当時の小泉内閣総理大臣により、観光立国が国の主要施策として位置づけられました。このことは、私ども観光業界に身を置くものとして、画期的な出来事でありました。ビジット・ジャパン・キャンペーンをスタートさせ、以来、訪日外国人数の年ごとの顕著な増加や、アジアを中心に訪日客の旺盛な消費活動といったものを肌で感じました。また、二〇〇七年には、観光立国推進基本計画が策定され、訪日外国人誘致など具体的数値目標の下、様々な施策が展開されてまいりました。

 私も、二〇一五年には、当時の安倍内閣総理大臣の下で開催されました、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議に委員として参画させていただき、地方空港の活性化や国立公園の商業利用の拡大など、意見を申し述べさせていただきました。二〇三〇年に訪日外国人客を六千万人にする、国の壮大な構想を実感し、思わず背筋が伸びたことが思い出されます。

 これらを受けまして、宿泊業界でも訪日客の増加を見込み、快適な観光をお楽しみいただけるよう、受入れ体制の充実を図ってまいりました。WiFiなど通信環境を整備したり、情報提供面でもホームページの多言語化やキャッシュレス決済の導入など、多くの施設で取組を進めた結果、滞在時の利便性は大きく高まったのではないかと思っております。政府のインバウンド振興策と相まって、地域の魅力の磨き上げも進み、地方の消費拡大にも大いに寄与できたのではないかと実感しています。

 このような取組の中で、この二十年の間、大規模地震や火山噴火、台風や豪雨などの自然災害に加えて、国際関係、経済情勢などの変化により、観光立国の動きにおいては浮き沈みがありましたが、昨年の訪日外国人数は、二〇〇三年当時の五百二十万人から、その七倍に相当する三千六百八十七万人にも達し、往時を知る者としては隔世の感を禁じ得ません。

 一方で、こうした観光立国の流れの中で、私ども宿泊業界は、必ずしも順風満帆であったわけではありません。

 先ほど申し上げた自然災害では、東日本大震災、北海道胆振東部地震、熊本地震、そして、一年を経過した能登半島地震など、幾つもの災害を経験しています。能登半島地震につきましては、この後、改めて申し述べさせていただきます。

 また、何といっても二〇二〇年から三年もの長きにわたる新型コロナウイルスによる人流抑制の影響は、宿泊業の経営に大きな打撃を与えるものとなりました。今に至るまで、その影響を引きずっております。これまでの様々な危機の中でも、特別のダメージを受け、私自身、もう旅館を続けられないのではと覚悟をしたときもあります。実際、経営から撤退した事業者も多く、今年度においても、長い歴史を持った名門の宿泊施設の廃業や譲渡が続いております。

 宿泊施設は装置産業と言われ、定期的なリニューアルのための設備投資が必要であり、過去より一定の負債を有しておりましたが、コロナ禍により、過大な有利子負債を抱えることになりました。二〇一三年の耐震改修促進法の改正により、多額の費用をかけた耐震補強工事を終え、さあこれからというときに発生したコロナ禍により、更なる借入れを余儀なくされました。コロナ禍に苦しんだ令和四年度決算に関して会員にアンケートを取ったところ、約四割の会員が債務超過に陥っておりました。

 コロナ禍の危機状況の中、GoToトラベルなどの旅行支援策を様々な御意見がある中で強力に推し進めていただいたおかげで、人流が完全に途絶えたどん底の状態から短期間で回復してくることができました。この施策がなければ、日本の観光産業は間違いなく沈没していたのではないかと今でも思っております。心より深く感謝を申し上げます。

 昨今の旅行需要の回復によって直近のキャッシュフローは好転してきましたが、ストックとして過大に累積した債務は短期間の好調だけでは正常化できません。大手で構成される日本ホテル協会の発表でも、会員平均、コロナ禍三年で四十三年分の負債を負ったと発表がありました。是非とも、息の長い御支援をお願いしたく存じます。

 コロナ禍の間、私ども業界は、経営維持のための運転資金の確保と旅行需要喚起策の早期実施を重点的に活動してまいりました。

 特に、従業員の雇用継続を図るための雇用調整助成金の充実や、金融面でも、コロナ対策としてのゼロゼロ融資や資本性劣後ローンなどの融資枠の拡大、期限の延長等、生き残るための支援の充実を図っていただきました。大変ありがたいことと感謝をしております。

 しかしながら、先ほど申し上げましたように、いまだにコロナ禍の影響を引きずっている宿泊施設も多く、そうした施設には融資返済に係る負担軽減などの御支援をよろしくお願いしたいと思います。

 また、コロナ期間から実施されてきました既存観光地の高付加価値化事業については、政府において地域の要望を受け止めていただき、様々な改善を行っていただきました。これらの事業で、観光地の中核である旅館は、長らく更新できなかった施設の高付加価値化へのリニューアルを進めることができました。

 しかし、旅館だけがよくなっても温泉地の魅力は高まりません。旅館に加えて、土産店や周辺の観光施設への支援拡充により、地域全体としての魅力を高めることができ、現在のインバウンド復活の備えになりました。

 この高付加価値化補助事業については、単に宿泊施設の改修にとどまらず、地域全体の持続可能な観光地経営に資する非常に有用な施策であると考えます。コロナ禍で出遅れてしまった多くの地域がこの存続を切望しており、引き続き継続的な実施をお願いしたく存じます。

 続きまして、昨年一月に発生しました能登半島地震について申し上げます。

 既に発生から一年以上が経過しましたが、能登地域における復旧復興の状況は遅々として進んでおらず、和倉温泉、輪島地区、その他、能登半島所在の多くの施設が休業を余儀なくされ、いまだ復旧のめども立っておりません。

 私も、昨年、現地を訪れた際に被害の深刻さを目の当たりにしました。今なお、和倉地区二十九宿泊施設で完全営業できているのは四施設のみです。復旧復興には長い道のりが控えておりますが、再びにぎわいを取り戻すまで、これはまさに官民挙げて取組を行っていかなければならないと改めて痛感をいたしております。

 多くの被災した施設は、コロナ融資により過剰債務の問題を抱えています。

 既に返済を開始したところ、あるいは近々に返済開始を迎えますが、コロナ禍に加え、能登半島地震で壊滅的な被害を受け、加えて豪雨災害など度重なる災難が続き、地域の復興までには相当の期間が必要と考えます。是非とも、円滑な借換えや返済条件の緩和など、より一層の御尽力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

 続きまして、インバウンドが過去最高になったことによる弊害、オーバーツーリズムについて申し上げます。

 インバウンド復活の状況は、数字の上でもはっきりと見て取れますが、首都圏や大都市圏以外の地域では、まだその恩恵を享受できていない地域も多々あります。地域間格差や業態間格差がますます広がっていると言わざるを得ません。

 私ども旅館協会では、会員に対する宿泊人数調査のアンケートを県別、エリア別に毎月実施しています。その推移を見ますと、本年一月に入っても、例えば北海道では、ジェット燃料の供給体制の課題もあり、コロナ前と比べて二〇%減といった状況が続いております。

 観光庁におかれましても、地方への誘客分散化に向けた取組が行われているところですが、私どもは、機会があるたびに、ダイレクトインバウンドということを申し上げております。オーバーツーリズム回避のためにも、海外から地方に直接来ていただくこと、これが重要であります。二〇一五年の、明日の日本を支える観光ビジョン構想会議では、地方空港の活性化ということを申し上げましたが、改めて、その必要性を痛感しているところです。

 コロナ禍を経ても、国は、二〇三〇年、インバウンド六千万人、消費額十五兆円の目標を継続して掲げてくれています。

 基幹空港のキャパシティーに限界が見えており、大きな目標を実現していくためには、全国津々浦々にインバウンドの恩恵を広げる必要があります。もちろん、これには、CIQや検疫体制、グランドハンドリングの問題に加え、空港からのアクセスの問題、二次交通などの情報を束ねる観光型MaaSの推進など、様々な解決すべき課題があると承知しております。

 個々の自治体や企業だけではその解決は難しいと考えられ、国として早急な体制整備が必要ではないかと強く要望するところであります。

 続きまして、日本の観光の更なる魅力向上について申し上げます。

 日本には、いまだ日本人の気づいていない観光資源が豊富にあります。こうした他の国では楽しむことのできない日本観光の魅力を更に磨き上げ、伸ばしていく必要があると考えます。この点、日本の豊かな自然環境を生かしたアドベンチャーツーリズムという旅行形態もあります。これは世界でも七十兆円の市場規模があるとされており、SDGsの観点からも推奨されて、今後大きく伸びる可能性を秘めた有望市場だと思っています。

 是非、こうした伸び代のある観光市場の拡大に向けた取組にも御理解を賜りたいと存じます。

 また、宿泊業界も、こうした日本の魅力を提供する重要な役割を担っています。四季折々の季節を感じ、雄大な自然の下、その土地土地で育まれた歴史に思いをはせ、また、祭りや伝統文化、そして温泉文化に触れ、その地域でしか味わえない食を体験することができます。

 こうした日本の魅力を伝える観光拠点である旅館、そして温泉観光地を大切に守っていきたいと思っています。

 特に、温泉文化についてつけ加えさせていただきますと、多くの国会議員の先生にも御協力いただき、現在、観光業界が中心となり、温泉文化を世界ブランドにすること、温泉文化のユネスコ世界無形文化遺産登録に向け、運動を推進しております。二〇二六年の国内候補決定、二〇二八年のユネスコ登録を目指しておりますが、実現の暁には、インバウンド推進に大きな力になると確信しております。

 以上のようなツーリズムの在り方を進めていくためには、私ども業界を取り巻く問題、例えば、人手不足への対応、DX化、ユニバーサルツーリズムへの対応など、課題がいろいろとあるところです。

 人手不足が各産業とも深刻ですが、とりわけ観光産業のうち宿泊業については改善の兆しが見えておりません。再び夢のある観光産業になるためには、各事業者が給与水準を含めた労働環境の改善に全力を尽くすことが重要だと考えております。外国人の雇用制度につきましても、手続の円滑化など制度の改善に御配慮いただけますと、インバウンド対策だけではなく、強力な人手不足対策につながると思っております。

 さらに、宿泊業においては、主に現業部門で人手不足が顕著で、中でも調理部門では調理師の確保が難しく、とりわけ和食の調理人が足りないとされております。旅館における和食の提供という重要な役割が果たせなくなってしまうのではないかと危機感を抱いております。ガストロノミー文化が浸透するフランスや南欧のように、調理師の地位を高め、国立の養成機関の設立や様々な料理人コンペティションを通じて認知を広める必要があると考えております。

 最後になりますが、目標年次である二〇三〇年まで五年を切りました。私ども業界はもちろんのこと、観光産業全体として目標達成に向けた取組を着実に進めてまいる所存でございます。その推進に当たっての観光予算につきまして、引き続き戦略的な確保をお願い申し上げ、私の発言とさせていただきます。

 本日は、御清聴ありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

 次に、田中公述人にお願いいたします。

田中公述人 御紹介いただきました、日本原水爆被害者団体協議会の代表委員をしておる田中熙巳でございます。

 日本被団協の代表委員は、実は三人おります。一人は最初に原爆が投下された広島、それから二発目が投下された長崎、この会から一人ずつ代表委員が出ておりまして、そのほかに、中央で議員さんとか政府とかと折衝をしなくてはいけないことがたくさんありますので、中央に一人の代表委員を置くということになっておりまして、私がその役を負っております。

 日本被団協は、どういう組織かというのは御存じだと思いますけれども、一九四五年の八月六日と九日に広島と長崎で原爆の被災者、それから、その後も、救援に入った人たちも放射線の被害を受けておりますので、そういう人たちも含めまして、各県に所在する被爆者がそれぞれ各県に会をつくっているんですね。その被爆者団体の協議体として今まで仕事をしてきたのが日本被団協でございます。

 この度、二〇二四年度のノーベル平和賞を私どもの会が受賞させていただきまして、たくさんのお祝いをいただきまして、どうもありがとうございました。

 昨年の受賞は、私どもはもうほとんど期待しておりませんでした。それは、もう何回も実は候補になったことがありまして、よく言いますけれども、一九八五年から始まるんですけれども、八五年とか九五年とか二〇〇五年とかという、五がついた年に有力候補に挙がっていたんですね。その三回とも駄目でありました。次はいつになるかというふうに思っておりましたら、一五年が全く関係のない組織だったので、ああ、いよいよもう核兵器関係の団体は何か難しくなったのかなというふうに思っておりました。

 ところが、二〇一七年のノーベル平和賞はICANという組織が受賞しました。ICANというのは、日本語に直すと、核兵器廃絶を目指す国際キャンペーン、国際運動ですかね、という団体でありますけれども、日本被団協よりはるかに遅くできました、二〇〇七年に結成された団体なんですね。しかも、その組織は、各国の、非常にロビー活動の達者なと言ったら悪いかもしれませんけれども、達者な人たちがメンバーになっております。そのICANが、非常に大きな活動をやりまして、二〇一七年に、私たちが長い間運動して望んできた核兵器禁止条約を国連で採択させるわけですね。その功績をノーベル平和委員会は認めて、二〇一七年のノーベル平和賞を受賞させたというふうに私どもは思いました。

 それはいいことだと思ったんですけれども、ICANが受賞する、だとすれば、日本被団協はもっと前からもっと国際的な大きな運動をしてきたのですから、日本被団協も中に入っておかしくはないと思ったところが、入らなかったんですね。

 なぜ入らなかったかと詮索をいたしました。私が到達したのは、ノルウェーは実は、御承知だと思いますけれども、NATOに加盟している、アメリカとの同盟国なわけですね。だから、アメリカの核の抑止力に頼って自国の防衛を支えているということになっている国であります。それでも、ノーベル平和賞を選定することを委ねられている国なんですけれども。二〇一七年に気がつきましたのは、日本被団協というのは、アメリカが投下した原爆の被害を受けた者たちが集まって、核兵器は絶対に使ってはいけない、持ってもいけない、造ってもいけないということをずっと要求してきた運動体なものですから、アメリカに対する気兼ね、忖度が働いてきたんじゃないかというふうに思いました。

 ですから、それ以降も、日本被団協がノーベル平和賞を受賞することはあり得ないというふうに私どもは考えてしまったんですね。それが、昨年の十月十一日の日にいきなり日本原水爆被害者団体協議会が受賞すると発表されたものですから、本当にびっくりいたしました。

 選考したノーベル委員会の選考内容を見ますと、本当に感動いたしました。というのは、これからお話ししますけれども、私どもの会が、八十年間ではないんですね、七十年近くになります、六十八年ぐらいになるんですけれども、その長い間どういう活動をやってきたか、核兵器を使わせないためにどういう活動をやってきたかということをよく調べておりました。それから、よく調べておりますということの中身に、一つは、私どもの会が、被爆後八十年たっているけれども、まだ六十八年、十年の運動がない、十年間運動できなかったということをきちんと押さえておられたんですね。

 それで、私どもが本当につらい思いをしながら、全国あるいは世界中に回って核兵器の非人道性を具体的に訴えるという運動をやってきたんだ、その被爆者たちの本当に血のにじむような運動が核のタブーを築き上げてきたんだというふうに委員長が言ってくれるんですね。核のタブーというのは、申し訳ないんだけれども、核兵器は使ってはならないという規範だ、それを長い間、原爆の被爆者たちはつくり上げてきた、その成果として、戦後八十年間、三回目の核兵器が使われてこなかった、広島、長崎で終わっていたということを高く評価したいと。

 ところが、今日の情勢、特にロシアがウクライナを侵攻したときに、核兵器の使用もあり得るということをプーチン大統領は公言されているわけですね。ということは、それまで核のタブーとして、核兵器はもう使ってはいけないんだ、人道に反する兵器だということが国際的な規範になっていたのに、それが、超核大国の大統領が自ら使うこともあるということを言われる。そういう状況というのは非常に危険な状況だというのをノルウェーの委員会は気がついた、気がついたというのは変ですけれども、深く考えられたんですね。この状況をまた立て直していくには、長い間苦労して運動してきた日本被団協にノーベル平和賞を与えるときではないかというふうに考えたんだというふうに思います。それはそう言っているわけではないので、私がそういうふうに。

 それが二〇二四年なわけですね。二〇二五年でないわけです。先ほど申しましたように、五、五、五とつく年で、二〇二五年というのは今年ですね。

 実は、最後のときに委員の一人から言われたのは、二〇〇五年に授賞しようかというふうに考えた。それは、日本被団協が今まで候補になってきたのは五がつく年だった、ほとんど。来年は二〇二五年だから、来年授賞しようというふうに考えたけれども、今の核の情勢から考えると、来年じゃ遅いかもしれない。だから、今年授賞して、そして、日本はもちろんそうですけれども、世界中の核兵器の廃絶の運動を強めないといけない。そのためには、やはり、高齢化しているけれども、日本の被爆者の証言をもっともっと世界中に広げていく必要があるというふうに考えたんだというふうにおっしゃいました。そこまでノーベル賞の委員会は深い考慮をされて私たちを選んでくれたということを、大変うれしく思いました。

 授賞式に出ることになって、ノーベル賞をもらうわけですけれども、受賞講演を代表がしなくちゃいけないものですから、私が受賞講演をすることになりました。受賞講演は二十分だけしか時間がないものですから、ちょうどこの委員会と同じ、二十分しかないものですから、二十分で世界の人たちに本当に感銘を受けていただいて、そして、やらなくちゃいけないなということで、核兵器を使わないようにする、なくすために考える、運動するということは訴えることができるかという不安があったわけですけれども、頑張って二十分で話すことにいたしました。

 最初に、まず日本被団協というのは何をしたかということを簡単に説明しておかないと、あとの十数分の話がぼやけてしまってはいけないというふうに思いまして、私は、日本被団協というのは、先ほど申しましたように、各県の被爆者の団体の集まりでありますけれども、しかも、被爆後十年間、被爆者たちが声を出すことができなかったというつらい思いを経た後に、一九五六年に結成している団体なわけですね。

 その一九五六年というのは、戦後十一年目なんです。なぜかというのは、その前の七年間は占領下になるわけですね、日本は。その占領下は、原爆の被爆者たちは被害の状況を口外してはいけなかった、それから文書にしてもいけなかったんですね。ですから、大変な被害を受けて経済的にも身体的にも苦しんでいたんですけれども、じっとその七年間は耐えなくてはいけなかった。

 解放されて今度三年は、政府は、被爆者だけの問題じゃない、大変な被害者がいっぱいいるんだということで、被爆者をほとんど放置してしまったということを含めて、十年間、政府からは何もしてもらえなかったという歴史を持っております。

 それがなぜ十年後というのは、もう説明いたしましたように、ビキニの水爆被害があって、そして、日本全国が放射線の恐ろしさ、核兵器の恐ろしさを知って、広島と長崎にかつて十年前に投下された、そしてその被害者がいるということが分かったということであります。

 そこから運動が始まるんですけれども、それから始めてきた運動の基本は何かというのを最初に言っているわけです。それは基本的に二つありますと。

 一つは、戦争は国が起こすものだから、その戦争によって国民、市民に被害が生じた場合には、それは国が責任を負わないといけないんですということを、結成して以来、今日までずっと要求し続けて、叫び続けてきたわけですね。それはまた、もうちょっと後で詳しく。

 それからもう一つは、自分たちの苦しみは、具体的には放射線による被害だとか経済的な苦しみだとかそういうのがありますので、それは日本の政府に要請をして、そして立法してもらって、財政的にもその負担をしてもらって、救援してもらうというような運動であります。その二つの要求を基本要求というふうにして取り組んできましたと。

 もう一つは、核兵器もそうですね。核兵器は非人道的な兵器なので、これは絶対に使ってはいけないし、造ってもいけないし、持ってもいけないというのが体験した被爆者たちの強い願いなわけですね。それを、国内はもちろんのこと、国際的に訴えていかなくちゃいけないという、自分たちの健康上、生活上の被害に対する償いと、それから世界に対する核兵器を使わせない、造らせないという核兵器廃絶の運動の二つが私たちの基本的な運動だということであります。

 その次に、私の体験をやはりしゃべらなくちゃいけないということで、体験を入れました。軍国少年の十三歳だったんですけれども、比較的遠距離だったのでほとんどけがをしないで済んだんですけれども、母子家庭であった私の家庭を支えてくれた伯母たちの所帯が二所帯、爆心地に近いところに住んでいましたので、この五人が亡くなってしまったんですね、一遍に。それで経済的に支える人たちがいなくなったという体験をしておりますけれども、これは話せないほど長くなるので。

 そういう体験の中で、核兵器がいかに残忍かということを本当に十三歳の少年ながら目撃して、たとえ戦争といえども、軍国少年ですから戦争は容認していたわけですけれども、戦争といえども、こういう殺し方をしてはいけない、こういう傷つけ方をしてはいけないとそのときに深く私の心に刻んだ、それが今日までの私の行動になってきているわけであります。

 そういう運動をずっとやってきたわけですけれども、最初に申しました、原爆の被害は国が負わなくてはいけないんだということを要求していく中で、国側の考え方が出されるわけですね。それは、国を挙げての戦争で国民の被害が出ても、それはひとしく受忍しなければいけないんだ、生命、身体、財産のいずれにわたっても、その被害を受忍しないといけないんだということが、公然といいますか、公的な文書として書かれるわけです。そこで私どもが気づいたのは、原爆の被害は我慢しないといけない被害だったのか、これは絶対認めるわけにはいかないということで、それを受忍論と私どもは言うんですけれども、受忍論は間違っているということをずっと唱えて今日まで来ているわけであります。

 そういうことを含めまして、先ほど申しました二つの基本要求というのはどういうものであるかというのを、一九八四年に文書を作るんですが、八五年に確立をいたします。その文書を皆さんのお手元に配っておりますので、お読みいただければありがたいと思っております。

 しかしながら、私たちの健康の問題、生活の問題についてはずっと政府に要求し、議会にも要求をして、法律を作って、特に大きな二つの、原爆被害者の医療に関する法律、それから特別措置法という手当等を含んだ生活に関する法律を作って援護してきたんですけれども、残念ながら、原爆の市民の死没者というのは数十万いるんですね。その数十万人の死没者に対する償いといいますか、国家補償と私どもは言っておりますけれども、国の手だては全く今まで来ていないんですね。だから、そのことをやるべきだということは今日も要求しておりまして、そのことが今もできていないというのを、あらかじめ提出した原稿になかったことを私が半ばで差し込んだというのが、もう一度繰り返しますということで、死者は全く今も償われておりませんということを言いました。

 恨みつらみを言うわけではないんです。これからの戦争は多くの市民の犠牲が必ず出る、もうそういう戦争だ、兵隊さんだけがどこかに行ってやる戦争ではないと思うんです。そういう場合に、市民はそれでもやはり我慢しないといけないというふうに置かれるようでは、本当に国を守ることにはならないと私どもは信じております。

 ですから、核抑止論というのは核兵器を使うということを前提にしておりますから、私どもは、核抑止論は間違っておりますよ、核兵器は使っちゃいけないという考え方でやらなければ、核兵器を使われたときの被害というのは何十万人という死傷者を出すわけですから、そういう被害に対して国が財政的に本当に責任を持てるのかどうかということが大事だと思います。

 ですから、ここ数年、国防予算が増えてきておりますけれども、軍備費の増強は一生懸命考えていらっしゃるようでございますけれども、戦争で出てきた被害、特に市民の被害はどうするのかということはほとんど語られていないんですね、今までの国会の中でも。だから、是非今日は、参考人としてお話しする機会をいただきましたので、戦争は軍備だけで行われるのではなくて、市民も加わってやるんだ、特にこれからの戦争は市民の被害が一番大きいんだ、それに対して我慢をさせるというままの国防というのは、絶対、制度上も法制上も誤っているということを強調させていただきたくて、この機会を与えていただきました。

 時間が参りましたので、これで終わりにいたします。是非、御検討いただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

安住委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。古賀篤君。

古賀委員 自由民主党の古賀篤でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、四人の公述人の皆様方に貴重なお話をいただきましたことを心から感謝申し上げます。ありがとうございます。

 河村様におかれましては、本当に、持続可能な財政について熱く語っていただきました。後ほどまた幾つか伺わせていただきたいと思っております。

 また、渡辺様には、金融、賃上げ、また物価についての御高配を賜ったところでございます。また幾つか伺わせていただきたいと思っているところであります。

 大西様におかれましては、観光、それから宿泊、特に旅館でありますね、貴重なお話をいただいたと思っております。コロナの中で、雇調金を始め様々な支援策があった、その中で、やはり、非常に、まだ続けるべき、支援をさせていただくべきものがあるということを再認識させていただきましたし、能登半島、地震からもう一年たちますけれども、和倉の復興がまだまだだということは十分承知をいたしておりますが、改めて御指摘いただいたところでもあります。インバウンドを始め、観光業が発展していくために必要な政策があるんだということも、またいろいろな機会をいただきまして伺わせていただければと思います。

 我が自民党におきましても、この能登半島地震、決して忘れておりませんので、引き続き、観光を中心に和倉が復活できるように、私も自民党の一員としてしっかり支援させていただきたいと、この場をかりましてお約束させていただきたいと思います。

 そして、田中公述人には、本当に貴重なお話をいただきました。長年にわたって、被団協を始め被爆団体の皆様方、被爆者の皆様方が長年取り組まれた評価が、今回のノーベル平和賞だったんだというふうに再認識したところでありますし、心からお祝いを申し上げたいと思います。戦争はしてはいけないんだ、やはり、国の責任、平和をしっかり守っていく、そのためにやることは何か、国会でも引き続き議論をさせていただきたいという思いでございます。本当にありがとうございます。

 その上で、限られた時間でございますが、まず、河村公述人に一点お伺いしたいと思います。

 今日は資料を用意いただきましたが、利払い費が今後非常に大きな影響があるんだということを、数値を用いて教えていただきました。財政収支の均衡、なかなか簡単ではないな、ここまで財政の状況も悪化していると言われる中、簡単ではないと思いつつ伺っていたわけでありますが、新規国債発行をゼロにすることができれば、かなり状況はよくなってくるということでありますが、それも非常に高いハードルなんだなというふうに思っているところであります。

 最後のページに、財政収支の均衡、黒字化、そして、そのために、今、三つ指摘をいただいておりますが、ちょっと振り返りますと、先ほどの観光の話も重なりますけれども、コロナ禍があっていろいろな財政支出があったわけであります。今、それがようやく収まって、財政当局としてはここでちょっと財政を、局面を変えてというところもあるんだと思いますが、一方で、先ほどお話を伺ったように、観光は、いろいろな深刻な状況になって、ここから先、まだまだ支援をしていく必要がある。当然それは観光に限られた話ではなくて、それぞれの分野が、人手不足もそうですし、状況が悪化している、あるいは、それがより早期に顕在化しているという局面があると思います。

 そうした状況の中で、まだまだ財政に期待される部分があると思うんですけれども、そういった中で、今回、財政収支の均衡という御指摘をいただき、さらに、経済的な余裕のある方への負担、そして余裕のない方の軽減、こういうことも指摘いただいていますが、多分、応能負担というような部分だと思います。当然ながら、負担できるという捉え方としては、所得だけではなくて、ストックとしてどれぐらい財産をお持ちか、こういったことも、いろいろなことを踏まえてお願いしていく必要があるということだと思いますが、そういう今の置かれている経済状況ですとか社会の状況の中での財政収支について、御見解をちょっとお聞かせいただければと思います。

    〔委員長退席、齋藤(健)委員長代理着席〕

河村公述人 古賀先生、御質問くださってありがとうございます。お尋ねくださった点について、お答えさせていただきます。

 先生も御指摘のとおり、確かに、財政収支の均衡、こんなような財政状況から、スタートから始めると大変なんですね。簡単なことじゃない。それは重々承知しております。

 ただ、コロナ禍で、経済情勢、やはり業界によって大きく分かれたというのが、日本に限らず、世界全体としてもあったと思いますね。大変な業界があった。特に、やはり人と人との接触によってお仕事するような業界というのは、距離を置かなきゃいけないということがありましたから大変な打撃があった。観光業界しかり、旅館のお話、先ほど大西様からありましたし、それから飲食業界とか、本当に大変な業界があった。

 だけれども、何かこの国ではそこばかり強調されて、実は陰で、あのコロナ禍のときにも業績絶好調の業界があったということが、なかなか余り世の中全体として認識できていなかったんじゃないのかなというふうに思います。デジタル関連であるとか。その後、ウクライナ侵攻があったりとかしたこともあって資源高になりましたよね。資源関係の企業さん、なかなかすごい、日本だって商社さんとかすごかったんじゃないですか、史上最高益が続出してというようなところがあった。

 そのときに、先生がおっしゃってくださったような応能負担ということで、ほかの国はいろいろ、やはり、コロナでお金もかかる、対策もした、だけれども、その財源だってちゃんと確保しなきゃ駄目だということで、その応能負担を徹底するということで、そういうふうに物すごい、ぼろもうけに近いような感じで稼がれた業界に対して、普通の法人課税だけじゃなくて、上乗せするような、ウィンドフォール課税というふうな言い方をしますけれども、資源関係の企業に対して上乗せ課税するとか、そういうことをやっている国が欧米で結構ありますね。そういうところも考えること、そういう議論がちょっとこの国で出てこなかったのは非常に残念ではありますけれども。

 やはり、日本としても、何もなすすべがないのではなくて、大変な方々、大変な業界には配慮もしながら、財政の大事な機能として、それを誰か負担できる余力のある方というのが、企業とかが日本でもいるはずなんですよね。いるのに、そこに対して、もう少し多めに負担をしていただくというその議論、合意形成をして、実際に負担をいただくという努力が少し足りなかったんじゃないのかなと。

 ですから、これから先を見通していろいろやっていく上では、基本的には、やはり大変でも財政収支均衡を目指してやっていかなきゃいけないというふうに私は思っております。それは決してできない話ではなくて、きちんとやはり大変な方々には配慮しながらも、でも、余力のある方がそれなりにいますので、そういう方々にどういう形だったら負担していただけるか。

 先ほど古賀先生が御指摘くださったように、一つ、やはり金融資産をどれだけ持っているか、そういうところも勘案した、いろいろ社会保障の関係での負担にもきちんと勘案してという議論、既に国の方でも少し始まっていると思いますけれども、そういったところをいろいろ考えながらやっていくということをやっていけば決して無理な話ではない。数年単位での慎重な計画を立てる必要はあると思いますが、決して無理な話ではなくて。

 あと、もう一つ申し上げたいのは、私が最後に三つ目で申し上げたことなんですが、やはり、特に課税ベースのところなんですけれども、不公平が結構残っていると思いますね。今まですごく負担が軽減されているのに、見過ごされてきた方がいろいろいるんじゃないか。何か日の目が当たらないで済んできてしまった方がいるんじゃないか。

 最近、「持続不可能な財政」というのを共著で書かせていただいたんですけれども、それを読んでくださった方から、こんな不公平があったなんて知らなかったというふうに、何人もの方から、いろいろな方、メディアの方とかも言われるときもありますし、そういうところにも是非スポットを当てて、きちんとみんなが公平な形で、納得できる形で、みんなが少しずつ負担を少し増やす、そして、余力のある方にはもう少し多めに負担していただくということで、大変な方々にも十分配慮しながら財政収支の均衡を目指していくことはできるんじゃないかなというふうに思っております。

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

古賀委員 おっしゃられるように、コロナ禍においてもいろいろな方がおられたというのは、そのとおりだと思います。ですから、私自身、コロナでのいろいろな取組、支援というのは検証の必要があるし、それを生かして次にまた備えるべきでもありますし、引き続き、何が求められているかということを丁寧に声を拾いながらやっていく必要があるというのは同感でございます。

 続きまして、渡辺様に伺いたいんですが、済みません、先ほど私もしっかり伺っていたんですが、まだまだ渡辺公述人もお話し足りないような印象も受けたところでございます。

 ちょっと二点お伺いしたいんですが、まず、資料の九ページ目で、第一ステージと第二ステージがある、こういう御説明をいただきました。そして、第二ステージは先行き十年又はそれ以上、こういう期間を御提示されているのですが、価格メカニズムの関係で、この十年、それ以上というのは、どういう意味でこういう期間を指摘されているのかというのを一点伺いたいというところと、十四ページ目ですが、これからインフレ二%ということによって、百八十兆円、これをどう生かすかという話もありました。先ほど、防衛とかいろいろな、少し御提示もいただきましたが、この百八十兆円は、生かし方によって、またその次の展開だったり、次に影響があるのか。どういうふうにこの百八十兆円を捉えたらいいかを、もう少し教えていただければありがたく思います。

渡辺公述人 御質問ありがとうございます。

 一点目ですけれども、第一ステージ、第二ステージと私が勝手に区切りをつけておりますけれども、第一ステージというのは、要は、賃金とか物価とか金利とか、そういうものが、異常だったものが直ってくるプロセス、それはもう三年ぐらい前から始まっていて、現在進行形でほぼほぼ見通しが立ちつつある、そういうものかというふうに思います。それに対して第二ステージは、多くの方はまだ余り意識されていないものかと思うんですけれども、第一ステージに続いてくるものですということです。

 そこでのポイントは、財政の話とそれから生産性の話を今日申し上げましたけれども、特に生産性の話というのはどうしても時間がかかるだろうというふうに思っておりますので、十年という大ざっぱな時間ですけれども、決して一年、二年という意味ではなくて、やはり十年単位でかかるんじゃないかというふうに考えているわけでございます。

 どういうことかといいますと、要は、今、賃金が上がってきていて、それから物価も上がってきていてという世の中の変化が起きている中で、人手不足ももちろん起きています。その中で、先ほどもちらっと申し上げましたように、比較的それでも好調な、生産性がしっかりと上昇しているような立派な社長さんがやっている企業とそうじゃない企業とのめり張りみたいなものがついてきていて、好調な方の賃金は高いし、そうじゃない企業はそうじゃない、こういうことが起きてきて、そこでの人のモビリティーというんでしょうか、それも徐々にではありますけれども、起き始めているわけです。

 今後起きることというのは、ですので、特に、調子の悪い方の企業というのについては人がどんどん抜けていくわけですので、引き続き賃金を上げられませんので抜けていくわけですので、最終的には、もしかしたらオーナーの方しかいらっしゃらないようなことになって、そこでオペレーションを閉じるみたいな、そういうことが起きるというのが一応展望できるのかなというふうに私は思っております。

 それは、ちょっと違う言い方をしますと、元々日本には、なかなか活発じゃない企業、ちょっと言葉は乱暴ですけれども、ゾンビ企業と言われたやつがいたわけですけれども、ゾンビ企業というのを淘汰する、それをなくした方が恐らく日本経済にとってはいいんだけれども、なかなかそうはならない。こういうところで、いろいろ政治家の先生方も御苦労があったかと思うんですけれども、それは取りも直さず、やはり雇用とつながっているので、その企業を潰してしまったら、そこにつながっている若い人とか雇用者の方、特に地方でそういう問題が深刻だということで、なかなかそれが淘汰ができなかったのかと思います。

 今それが、そういうモビリティーが活発になる中で徐々にできつつあるのかなと私は思っておりまして、今までよりも、もう少しゾンビ企業の整理というものがやりやすくなる、そういう環境の変化があるのかなというふうに思います。

 とはいっても、やはり、もしかしたらゾンビ企業というのは、その地域においては非常に不可欠かもしれません。そうすると、その受皿をどうするのかとかという問題が当然出てきますので、そこは一年、二年でちゃかちゃかとやって、市場メカニズムで、価格メカニズムで全部押し切るとかということにはきっとならないんだというふうに思っていますので、そこはある程度の時間という意味で、先ほど十年というふうに申し上げました。

 私は学者ですので、なかなかそんな、ゾンビ企業をどうするか、どう退出してもらうかとかということを一つ一つやる人間では全くございませんけれども、まさに先生方が、それぞれの地域におけるゾンビ企業というものをどうやって淘汰していって、しかし同時に、雇用者には影響がないようにするにはどうしたらいいか、それによって、その地域全体の生産性というものをもっと上げていって活発にするにはどうしたらいいか、こういうことを今まさに前向きに考えるいいチャンスが来ているんじゃないかというふうに思います。

 私の第二ステージは非常にポジティブな意味で申し上げておりますけれども、当然のことながら、そのポジティブをしっかり実現する上では、地道な、ゾンビ企業を淘汰するというような作業というのも必要になるということでございます。

 それから、二番目の、財政の百八十兆と数字を挙げましたので、それに関する御質問かというふうに思います。

 金額が、百八十兆というふうに私が試算した数字をぽっと出しましたので、そこが本当に百八十なのかどうかというところについては、もしかしたら、精緻にやれば二百かもしれないし百七十かもしれない。そこの辺のぶれというのはあるというふうにお考えいただければと思うんですが、それでも、決して十兆ではなくて、あるいは五百兆でもなくて、大体百八十兆程度のものが、ゼロ%から二%に行くことによって財政面でもポジティブな面として起きるんだ、こういうことです。

 先ほどの、河村さんの話がありましたし、質疑でもありましたけれども、大きな流れで見ると、やはり財政というのはいろいろ難しい状況なわけですので、それで百八十兆を勝手に使うとかというのは当然あり得ないので、まずは百八十兆得られるということを前提にして、それをどこにどう使うのか。先ほど、防衛というふうに申し上げましたけれども、私は別に防衛に使うのがいいと言っているわけではなくて、防衛に使うのがいいというふうにおっしゃる御意見もきっとあるでしょうから、それぞれの方々の意見の中で、百八十兆という、この二%に移行することによって得られるある種のボーナスみたいなものですので、それを考えていかれるのがいいのではないかというのが、まず第一に申し上げたかったことです。

 それから、もう一つ申し上げたかったことは、ちょっと最後のところで駆け足になってしまいましたけれども、それは二%に行ったときに初めて得られるものですので、もう一回、仮にゼロ%のデフレのような状態に戻っちゃえば、百八十兆は捕らぬタヌキになってしまうわけですので、それはやはり避けるべきだろうなというふうに私は思います。生産性とかいろいろな意味で、やはり二%経済に行くことのメリットがありますので、財政以外にもありますので、それはしっかりとそこに行くべきだというふうに強く思っています。

 であれば、その二%経済を定着させるために、いろいろなところでやはり財政資金というのも必要になるだろう。そこは、この百八十兆のプールがあるというふうにお考えいただいて、そこから支出するということでいいんじゃないかと。例えば、今回の予算の中でも、最低賃金やら、あるいは転嫁の問題を解決するための予算措置というのが入っています。

齋藤(健)委員長代理 渡辺さん、時間が相当過ぎていますので、お願いします。

渡辺公述人 はい。

 そういうところにこの百八十兆の一部を充当していくというのは、非常にアイデアとしていいんじゃないかというふうに思います。ありがとうございました。

齋藤(健)委員長代理 古賀君、まとめてください。

古賀委員 時間が来たので終わらせていただきます。ありがとうございました。

齋藤(健)委員長代理 次に、早稲田ゆきさん。

早稲田委員 立憲民主党の早稲田ゆきでございます。

 本日は、四人の公述人の皆様に、お忙しい中、こうして出席を賜り、大変ありがとうございます。大変貴重な御意見を伺いました。全員の皆様にお聞きしたいところでございますが、時間の関係上お聞きできない場合は、どうぞ御容赦いただきたいと思います。

 その上で、先ほども河村公述人から、大変民主主義を体現したような、予算案をしっかりとこの国会で議論しているということがよく分かるというお話もいただきました。

 私たち立憲民主党は、この間、予算の修正案も出しております。そのことにつきましては、政権を担い得る責任政党として、財源に責任を持つ立場で、この間、まず党内では歳出削減チームで、それからまた当予算委員会の中では省庁別審査という形で、基金の無駄積みであるとか、それからいろいろな不用額、これを積み上げてほぼ三・八兆円の予算の財源も確保した上で、今の現下の物価高、そして、大変生活が苦しいと感じられている皆様のためにこそ、国民の負担を減らす、それから国民の収入を増やす、その二点を柱にこの修正案を今協議をしている、まさに佳境のところでございます。

 こうした、私たちが財源を提示をして、そしてワンイシューではなく、いろいろな国民の暮らしを底上げしていくということを根底にした修正案の協議というもの、これは非常に私たちとしても力を入れたところでございますが、このことについての、予算修正の在り方について、まず河村公述人、そしてまた渡辺公述人にも伺わせていただきたいと思います。

河村公述人 早稲田先生、御質問ありがとうございます。

 立憲民主党さん、歳出、あれに使え、これに出せというだけでなくて、きちんと財源のことも考えた修正案を出されているということで、やはり責任政党としての立派な一つやり方をなさっているんじゃないかということで、高く評価できるというふうに思っております。

 ただ、それで完全に大丈夫かというと、正直申し上げると、やはりちょっと少しお考えいただきたいなというところもあって、財源もいろいろ、やはり省庁別審査もありましたし、基金もいろいろお調べくださって本当に胸のすく思いで見ていたところもあるんですけれども、大変よかったと思いますが、ただ、基金のところは取り崩してもワンショットなんですよね。ですから、立憲さんとして主張されていた歳出というのは、これからずっと続けていくというおつもりで提案されている歳出のところがあったと思うんですけれども、やはりワンショットだと完全な恒久財源にならないんじゃないかなというところが問題があったかなという気もしますので、それはちょっと指摘させていただきたい。

 あともう一つ申し上げたいのは、歳出の方ばかりじゃなくて財源も考えてということでお考えくださったということなんですけれども、では、もしそういう形で修正が仮にできたとして、でも、予算のでき上がりの姿は変わらないですよね。新規国債二十八兆六千億、出し続ける。それを立憲さんとしてどうお考えになっているかという姿勢を、私たち国民はまだ明確に伺っていないと思うんですよね。是非、そこの辺りもお考えいただきたい。

 今のような進め方、何かプライマリーバランスの均衡の達成も危うくなっちゃっているような状況で、そこのところをどうお考えになっていらっしゃるのかというところは、是非、併せて、今後も含めてお示しいただけるとなおいいんじゃないかなと。この点は、別に立憲さんだけじゃなくて、是非、与党側とかほかの野党の方にもお考えいただきたいんですけれども、どうやって中長期的に財政運営を進めていくべきか、何を目標にすべきかということはお考えいただけたらなというふうに思っております。

渡辺公述人 御質問ありがとうございます。

 今、御質問は立憲民主党さんからいただきましたけれども、全般に私は非常にいい方向に議論が進んでいるなというふうに思うのは、要は、世の中が、価格が、物価が上がり始めてきた、それから賃金も、全部というわけじゃないですけれども上がり始めてきた、こういうふうに移行期に今はあるわけです。そうすると、誰かさんの賃金はしっかり上がっているけれども別の方はそうでもないとか、あるいは、誰かさんの支出のところの価格は結構厳しいんだけれども別の方はそうじゃないとか、どうしても、価格や賃金が動き始めるプロセスの中で、めり張りというか濃淡が出てきてしまっているというのが現状かというふうに思います。

 そこは、学者でいえば、いずれそういうものは直っていくんだというふうに私としては楽観していますけれども、しかし、現実にそこの中で生活されていらっしゃる方はそうではないというふうに思いますので、その一人一人の方々の状況に応じて可処分所得をしっかりと確保していくというようなことをきめ細かくやられるというのは、この過渡期の措置としては非常に大事かというふうに思います。

 もちろん、そこの財源をしっかり手当てするということも大事だと思いますけれども、決して永久にこういうことが続くわけではありませんので、ある程度いけば賃金も価格も安定的に上がっていくという形になりますので、今までは両方ともが動かなかった状況から始めて、今そこに向かっていくその過渡期なので、ややいろいろな形での摩擦が起きているというふうに理解すれば、一時的な措置として財政面でも必要になっている、それをしっかりと手当てされようとしている、予算全体についてそういう印象を持ちましたので、そこはいい方向に議論は向かっているなというふうに私は思っております。

早稲田委員 ありがとうございます。お答えをいただきました。

 法人の、超大企業の応能負担というお話もございましたし、私たちも、そうしたことも踏まえて、貴重な御意見を生かしてまいりたいと思います。

 その上ででありますけれども、今、賃金が上がってきた、そして物価も上がっているわけですけれども、大変物価高で苦しむ所得の低い方々、特にそうした方々に私たちはどうしていこうということを強く考えながら修正案を出しておりますが、その中で、今、連合傘下の大企業におきましては五%以上の賃上げということが言われておりますけれども、やはり非正規雇用で働く皆様の最低賃金というのが大変重要なのではないかと思っています。

 その最低賃金につきまして、石破総理は、目玉の政策の一つとして、二〇二〇年代で千五百円ということの目標は掲げられておりますけれども、これについて、中小企業経営者の方々からは大変厳しいお声もあるわけです。私は、やはり中小企業の経営の方を、支援とそれをセットでやらなければ足りないのではないかと思っていまして、その中小企業の支援策、これはまだまだ不十分だと思いますが、このことについて渡辺公述人に伺いたいと思います。

渡辺公述人 先ほど私の最初の報告では、最賃というのは非常に大事だし、それから、そもそもアメリカの百年前のときにもやはり使われたものですので、決して非常にトリッキーなことをやっているわけではないと思っております。

 とりわけ大事なのは、今も御指摘いただきましたけれども、千五百円というところを目指して、最初は十年間でしたかね、それをもう少し縮めるというふうに議論が進んでいると理解しておりますけれども、将来のパスをしっかりと示すということは、例えば春闘で今年賃上げ交渉する上でも非常に中小企業の労組を後押ししている形になっていると思いますので、私は望ましいものだというふうに思っております。

 その上で、御質問に返りますと、そのようなことですけれども、もちろん経営者の方からすると、特に中小の経営者の方からすると、そこで最賃がぐんぐんぐんぐん上がっていくとすると、自分も上げなきゃいけないわけですので、そこの利益があるのかということで御不満があるというふうに私もよく中小の方からも聞いております。

 ただ、そこはやはりしっかりと価格に転嫁できるような状況を整えていく、それは、先ほどの下請法もそうですし、今回の予算の中でも、価格転嫁について、特に中小企業の価格転嫁についての措置がされているわけでありますので、そういうのがちゃんと実効性を持つ形にしていく、それによって、どの中小企業の方でもしっかりと賃金を上げて、最賃法を守りながら、それを価格に転嫁する、こういうことはできるようにするというのがまずもって大事かというふうに思います。

 なので、最低賃金を急速に上げ過ぎると厳しいので少し勘弁してほしいとか、あるいは、最低賃金が上がっちゃうので、そこの収益面でサポートをするとか、そういうのというのは少し邪道なのかなというふうに私自身は思います。

 例えば、中小企業の方がしっかりとした賃金をお支払いになるために、もっとDX化が必要だというようなことであれば、それはそこの面でのお手伝いというのを政府がやるということは十分あり得ると思うんですけれども、その場しのぎの収益面での、例えば一年間の賃金を払うためのお金を何らかの形で政府が手当てするとかというのは少し本筋と離れているのかなというふうに思います。やはり、中小企業の方々にも積極的に高い賃金を払えるような努力というのを是非この機会にやっていただきたいなというふうに思っております。

早稲田委員 ありがとうございます。

 下請法の改正でありますとか、やはり価格転嫁ができるその土壌をつくるということは私たちも大変重要だと思っております。

 その上で、私たち立憲民主党は、この新年度予算の修正の中で、全産業平均と比べて六、七万円も低い介護、それから障害福祉、保育、この従事者の皆様の処遇改善、これも修正案に入れさせていただき、法律案も出しております。

 こうしたことをやることによって、実際に全産業の国民の皆さんの賃上げの底上げになるのではないかと考えるわけですけれども、このことについて渡辺公述人にお伺いしたいと思います。

渡辺公述人 その点も非常に大事でございまして、政府が関われる部分についての賃金あるいは価格もそうなんですけれども、政府のいろいろな調達に絡む価格ですけれども、ここの正常化、価格と賃金の正常化と今日申し上げていますけれども、民間の方はそこそこ動いていますけれども、やはり政府がどうしても遅れぎみだったわけであります。今回の予算措置の中で、あるいは去年の骨太の方針あたりのところから、政府の中での賃金、政府の中での価格、こういうものもちゃんと正常化するという意図がはっきりと出てきておりますし、先ほどの介護のところについても、そういうことが措置も含めてなされているというのは非常に望ましいことだというふうに思います。

 私は、実は、こういうものを毎回毎回こうやって国会の中で御議論いただくというのは余り効率的じゃないんじゃないかと。今までは、そもそも価格が動いていなかったので、賃金が動いていなかったので、動かないのが前提でしたので、そうすると、介護の方の賃金も上がらなくても別にそれでお困りになることはなかったわけです。

 ただ、今後は、ずっと上がっていくというのが、世の中的に上がっていくのが前提なのであれば、そうすると、政府系の様々な方々の賃金というものもオートマチックに上がっていくような仕組みというのが必要なんじゃないかというふうに思っております。私たちの言葉で言うとインデクセーションとかといいますけれども、物価がこのぐらいの、例えば二%、二・五%上がっていったら、それに連動させる形で政府の様々な雇用者の方々の賃金も上げていく、こういうような仕組みをつくってしまえば、そうすると、毎年毎年どれだけ上げるんだというようなことを悩む必要もなくなるし、働いている方々の先々についての見通しもよりよくつくんじゃないかというふうに思っているところでございます。

早稲田委員 ありがとうございます。

 政府が関わる価格について、賃金について、オートマチックに上がっていくような、そうしたことも考えるべきだという大変重要な御指摘をいただきました。私たちも、財源に責任を持って、この後もまたこうしたことを進めてまいりたいと思います。

 その上で、次の質問に移ります。

 日本原水爆被害者団体協議会、日本被団協の田中熙巳さんにお越しをいただきました。代表委員として、まずは被団協の皆様のノーベル平和賞の御受賞、大変心から敬意と感謝を申し上げる次第でございます。長年の核廃絶の運動が世界に認められた、それなのにもかかわらず、なかなか日本政府の動きが悪いということを、私も、憤りと、それから大変残念な思いで見ております。

 今回、九十四の国、地域が署名をし、七十三の国、地域が批准をしている核兵器禁止条約締約国会議、これにオブザーバー参加を是非してほしいと被団協の皆様からも御要望があったし、公明党の代表質問でもそういうことがございました。にもかかわらず、今回、そうしたことが、オブザーバー参加を見送ると。しかも、自民党、与党の皆さんは議員も出さない、それから外務省の政務三役も参加の予定がないということは大変残念でなりません。

 私は、この八十年という戦後において、そしてまた、被団協の皆様がノーベル平和賞をお取りになったこの節目だからこそ、こうしたことが重要であったと思っております。

 こうした政府のオブザーバー参加見送りということについての田中さんの受け止め、御意見、そしてまた今後の活動について、時間もございませんけれども、お答えいただければと思います。お願いします。

田中公述人 締約国会議は毎年開かれてきていたわけですけれども、私どもからしますと、唯一の戦争被爆国というふうにずっと政府は言ってきたわけでありますので、核兵器はどうやって使われないようにするかとか、それから、今度の禁止条約の中には、広島、長崎の被害者だけでなくて、核兵器を造ってくる、あるいは実験をする段階での被害者もたくさん生まれていたわけですよね。そういう人たちに対しては、それぞれの国、あるいはそれぞれの地域での対応は必ずしも十分でないので、その人たちに対する手当てをしていかなくてはいけないということも重視されておりまして、第六条、第七条というところに書いてあるわけですけれども、それが当面の議論にもなっているわけです。

 そういう国からしますと、日本は原爆の被害者に対する援護の対策を、不十分だけれども、放射線被害に関するだけだけれども、やってきている、そういう経験を出してほしいという要望もあるわけです。そういうことからしても、日本政府は進んで、批准していなければオブザーバーとして出て、重要な意見を言うべきだというふうに私どもは思っておりました。

 ただ、それだけでなくて、私どもは、禁止条約だけではまた使われる危険は非常にありますので、やはり廃絶条約をできるだけ早く作って、地球上からなくすということを求めているわけですね。そのことが一番強く主張できるのは日本政府だというふうに思っておりますので、その役割を十分果たしてほしいというのが私たちの願い。ただ、それが全然通らないというのは本当に、怒りたくなるよりも情けなくなりまして、残念だという私どもの見解にしたんですけれども。

 是非、議員の皆さん、それから政党の皆さん、やはり政府の代表が参加するようにして、今後とも、今回の場合は欠席だと言っていますけれども、頑張っていただきたいというふうに思っております。

齋藤(健)委員長代理 早稲田さん、時間ですので。

早稲田委員 はい。

 これで質問を終わります。

 また核廃絶に向けて取り組んでまいります。ありがとうございました。

    〔齋藤(健)委員長代理退席、委員長着席〕

安住委員長 次に、徳安淳子さん。

徳安委員 日本維新の会、徳安淳子でございます。

 本日は、本当にお忙しい中、このように御出席賜り、また御丁寧に御説明もいただきましたことに、改めて感謝申し上げたく存じます。

 初めに、質問の順番をちょっと変えまして、今まだ質問のございません旅館組合の大西公述人に先にお尋ねしたいと思います。

 実は、令和五年の中央公聴会におきまして、その節に御出席の福岡県旅館ホテル組合の公述人の方からも、政府が予算化を行った、コロナ禍における高付加価値化事業に大変お世話になったという趣旨の御発言がございました。雇用調整助成金、先ほども御説明ありましたGoToキャンペーン、事業再構築補助金などで事業の継続が可能になったということで、本当に大変よかったなというふうには思っておりますが、今は、新型コロナの感染症法上も五類になりまして、また災害も多発して被害も大きいというところで、今回の令和七年度の予算案についてはどのような印象をお持ちでしょうか。既にちらっと御要望もおっしゃっておられましたけれども、改めてお尋ねしたいと思います。

大西公述人 御質問ありがとうございます。

 全体として、本当に様々な我々観光業界の課題について御配慮をいただいた予算案だというふうに思っております。

 ただ、先ほど来申し上げましたように、やはり地域間格差ですとか、それから業態間格差みたいなものも出ておりますので、何か、いつもテレビなんかでは、すごくにぎわって、もう人がいっぱいの浅草ですとか箱根だとかというのが出てきて、もう観光は大丈夫じゃないかというふうに思われるんですけれども、実際は本当にその格差が出ておりますので、その辺を御配慮をいただけるような様々な施策をお願いしたいというふうに思っております。

 以上です。

徳安委員 なぜお尋ねしたかと申しますと、令和三年から六年までの四年間のコロナ禍で、実はこの高付加価値化事業に関しての予算というのがトータルで三千五十億つけられていまして、一年で単純計算しますと約七百六十二億。

 それは、皆様方にとって本当に実のある、また、いろいろな事業を継承する、承継するということで、大事な予算だったなというふうには実感しているところなんですけれども、それが令和六年度で終了しまして、この令和七年度からは、名前も、ユニバーサルツーリズムの促進というような、環境整備に向けた取組という事業名に変わって、その予算額は、観光庁が言いますのは三千万円ということで、余りのこの差の開きにちょっとびっくりしてお尋ねを、心配してお聞きしたんですけれども、それにつきまして、余り影響というか、今後どのような考えで取組というか進め方、どういうふうにしはるのかなと思って、お尋ねしたいと思います。

大西公述人 ありがとうございます。

 本当に、今先生が御指摘いただいたように、私どもはずっと、この高付加価値化補助金は、実際、最初に出てきたときには、コロナ禍ということもあって、皆少し、いつまでコロナが続くのかとか心配もありましたので、出遅れたところがすごくあるんです。ですので、私の実感としては、全体の一割ぐらいが恩恵を被れているのかなと。

 まだまだ、いろいろな地域で、いろいろな施設で、この継続を望んでおります。これをずっと訴えてきているんですけれども、やはり様々な政府のお考えの中で非常に縮小されてきていることは、私どもとしても残念極まりないことでございます。

 やはり、これから、世界との競争ですので、しっかりと高付加価値化の推進をしていかなければ世界との戦いに後れを取っていくということでは、是非とも、改めて、名前は変わっても、もう少し戦略的な予算組みをしていただきたいという願いでございます。

徳安委員 先ほどもおっしゃるとおり、温泉文化というのが、やはり日本はたくさん、深く長年にわたって根づいているところでもありますし、また、この二〇二八年、ユネスコ登録で、更にまたそこから大きく発展していただければなというふうにも私も願っているところです。

 私の地元、兵庫ですが、兵庫で有馬温泉そして城崎温泉と多数、有数の多くの温泉街と旅館がございまして、おかみさん、従業員、皆さんそれぞれ一生懸命頑張っておられて、自分の宿だけじゃなくて、その地元の文化も一生懸命守ってくださっているというところで、敬意を表しているところです。

 私も、引き続き応援してまいりたく思っておりますので、またよろしく御指導を賜りたく思います。

 次の質問は、河村公述人にお聞きしたいと思います。

 先ほどの御説明で、まさに危機がもう目前、崖っ縁というところで、改めてその認識を私は新たにしたところですけれども、そのような認識を財務省がどこまで持っているのかというのは、どのようにお感じでいらっしゃいますか。

河村公述人 私の口からどうのとちょっとなかなか言いにくいところがあって、一応、財政制度等審議会の委員ではありますので、財務省の方々と接触する機会はあるんですけれども、いや、本当に大変な危機感を持っていらっしゃる、ただ、現実に、世の中の理解を得るのがなかなか難しくて、苦慮していらっしゃるんじゃないかなというふうに拝察申し上げます。

 済みません、これぐらいしか申し上げられなくて。

徳安委員 本当に危機感があるのであれば、新規の国債、もうちょっと変わっていくんじゃないのかなというふうにも思うところですが。

 そういう意味では、次に、石破総理がそういうものの中で、楽しい日本ということで所信表明もされておられます。こういった中で、今、そのような危機感の中で、河村公述人にもう一度お尋ねしたいんですけれども、石破総理の楽しい日本という実現に向けて、一体どのように今注力した方がいいのかというアドバイスがあれば、教えていただければと思います。

河村公述人 徳安先生、ありがとうございます。

 総理がああいう目標を掲げていらして、やはり、ともすれば暗くなってしまいがちなこの国ですので、今日私が申し上げたようなお話なんて、もう真っ暗のような話ですよね。そんなことばかりやっていたらみんなもたないですので、やはりそういう思いもあって、ああやって進めていらっしゃろうというふうにされているんじゃないかなというふうに拝察申し上げます。

 やはり、東京とか大都市圏だけがよければいいんじゃなくて地方が大事でというのはもう本当におっしゃるとおりだと思うので、そういう方向を目指していかれる、打ち出していかれる、国民に対して、そうやってみんなで協力してやっていこうと打ち出していかれる姿勢、大変いいと思うんですが、ただ、でも、やはり、さはさりながら、一方で、財政運営が万が一のことになってしまうと、全てが全部オジャンですよね、水の泡になっちゃう。地方も駄目になっちゃうし、防衛とかだってもう本当に心配ですよね、どうなっちゃうのか。

 こんなふうに日本が財政運営が崩れたら全部崩れちゃうのを、果たして近隣の国がどう見ているのかと思いますよね。みんな、人の国のことだから余計な口は出さないけれども、近くにある国も友好国ばかりじゃないですよね。本当にどういう目で見られているのか。あの国、自分たちから自ら崩れていっちゃうようなことになれば、彼らからすれば、変な意味でいいチャンスだみたいに思われちゃうようなところだってあるのかも、つけ入られちゃう隙をみすみす与えちゃうようなことにもなってしまいかねないですし。

 やはりその辺のところは十分にいろいろバランスを取って、楽しくということを打ち出すことも大事なんですが、やはりもう一方では、この厳しい財政の現実はもう逃れられないと思いますので、そこをしっかりと国民に説明いただいて、みんなで意識が共有できるようにという方で進めていっていただけたらありがたいなというふうには思っております。

徳安委員 ありがとうございます。

 楽しいという言葉自体が抽象的な言葉でもあり、数値化するというのは非常に難しいのかなというふうに思うんですけれども、楽しいというと幸せというのにつながったりすると、例えば幸福度のランクというのを、今、世界で何か国かの中で日本は何位かとか、いろいろ取り組まれているところが、開発ソリューション・ネットワークというところが二〇二四年に幸福度のランキングを発表しているんです。

 世界百四十三か国中で、トップはフィンランドで、二位がデンマーク、アメリカが二十三位、ドイツ二十四位、フランス二十七位。その中で、日本は第五十一位なんです。前の年から、四十七位から四ランクダウンしているということを考えますと、先ほどの、いろいろお話もございました、目の前にもそういう楽しいものもないとなかなか生活できないというのもあるんですが、もうちょっと足下を見て、さらに、このランクだけが全てではありませんけれども、もっともっと、そういう意味では、先ほどおっしゃったとおり、世界の周りの国も見ていますので、日本の幸福度というのはどれぐらいかなというところで見ておりますので、またそれを、楽しい日本と、引き続きこの順位でも上がりますようにというふうにも思っているところでございます。

 あと、渡辺公述人にお尋ねしたいんですけれども、先ほどいろいろと、第一ステージ、第二ステージという中で、やはり国の中の制度も変えていかなきゃいけないんじゃないのかなと思っているんです。

 そこで、過日、十四日の、総務委員会の中で村上総務大臣が、今世紀末時点で人口が半減するとの推計を踏まえて、現在千七百以上ある市町村は全国三百から四百市で済む、極端なことを言えば、県庁も全部要らないし、道州制も意味がないと、個人的に見解を述べられました。

 これから人口減少は多分止まらないと思います。そういう中で、減少していく人口に応じた施策の展開も同時にやはり考える必要があると思いますので、そういった中で、この村上大臣の持論に関する御所見とか、今後やはり専門家のお立場で何かもうちょっとこうした方がいいんじゃないかというお考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。

渡辺公述人 その大臣のおっしゃったことの詳細はちょっと存じ上げていないんですけれども、一般論として言うと、人口が減少する社会の中で制度を変えなきゃいけないというのは、まさにそうだというふうに思います。

 私の今日のお話の文脈でいうと、その制度というのは企業の数だろうというふうに思います。人口が減る中で日本はなかなか企業の数が減っていないわけでありまして、先ほど中小企業の話が出ましたけれども、流通なんかでもやはり過剰に数がある、そこでの過当な競争が行われている、だからこそ価格の転嫁も進まない、こういう構図があるわけであります。人口の減少が不可避だとすれば、それに合わせて企業の数、例えば流通企業の数とかというのも減らしていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。

 それは、しかし、大臣がおっしゃったような意味での制度というよりは、むしろ民間が行う活動のサイズということですので、政府がもっと減らせとかというふうに言うのはちょっと難しい面があると思うんですけれども、それでも、先々は、人口が減っていって、こういうふうに企業数も減っていくんだ、流通の企業数も減っていくんだ、それを前提に個々の人たちに経営の計画を立ててもらうというようなことは、政府がやるべき非常に大事な仕事の一つなんじゃないかというふうに思います。

 あるいは、さっきも別の御回答で申し上げましたけれども、減らすプロセスの中で様々なフリクションがやはり起きますので、あるいは場合によっては雇用が損なわれるというようなことも起きますので、そういうことはできるだけセーフティーネット的なところでカバーしていって雇用の喪失によって苦しむ人がないようにする、これも恐らく政治がやるべき仕事の一つだというふうに思います。

 繰り返しますが、やはり、社会が今大きく変わろうとしていますので、人口も含めて変わろうとしていますので、そこでの制度が変わるのも当然だし、それから、そこでの賃金の在り方、物価の在り方も変わるのも当然だと思います。なので、そこをしっかりと手当てをしながら移行期を過ごすというのが非常に大事な発想かというふうに思います。

徳安委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間がないので、最後の質問に移ります。

 再度申し訳ございません、河村公述人にお聞きしたいと思うんですけれども、先ほど、応分の、応能の、公平な税の負担ということもありました。昨年、私ども維新の奥下議員からも触れた質問なんですが、党内でも医療制度の改革について議論中でもあります。これだけ医療費が増大している中では、生活保護の方にもある程度一定の負担のお願いも必要かなという議論を開始する時期かもしれないと考えている中で、現在の生活保護費実績額、令和四年度で見ますと約三兆五千億を超えている、そのうちの半分が医療扶助、一兆七千四百十五億円ということであります。もちろん数字だけで簡単に判断することはできませんけれども、何かこれにつきまして今後の方向性についてお考えがあれば、お聞かせください。

河村公述人 ありがとうございます。

 医療費の件なんですが、本当に的確な問題意識をお持ちでいらして、是非いろいろ御検討いただきたいと思っております。

 この点について私の意見を言わせていただきますと、生活保護の中の医療扶助のところだけじゃなくて、医療費全体の支出の水準、これは公定価格ですよね、公定価格。それがどう使われているのかということをもう一回先生方によく認識いただきたいというふうに思うんですね。

 これは、財政制度等審議会の資料で、二年ぐらい前に出てきたやつなんですけれども、厚労省が二年に一回、医療機関の経済実態調査をやっていると。それで、勤務医の先生と開業医の先生と、随分何か働いている時間とか待遇で違うということは言われていますけれども、私、そのとき数字を見てびっくりしましたのは、開業医の先生方の平均年収が三千万円なんですよ、三千万円。平均ですよ、最高じゃない。それはどこからお金が出るって、私たちが毎回病院に行って払う、あの自己負担とかから出ているわけですよね。医療扶助だって、結局それに必要なお金を国が出しているわけですよね。それを維持するだけの医療費を、私たちはこれから負担しなきゃいけないんですか。

 あと、税制の面でも、開業医の先生方は、何か概算経費の制度があるんでしょう。優遇されているんですよね。どうしてお医者様とか歯科医師の先生だけそんなに優遇するんですか。一般に事業を起こしてやっていらっしゃる方、いっぱいいますよね。いろいろな職種があって、職業にこの国は貴賤があるのかなというふうに私は思います。

 やはり医者の先生方、特に開業医の先生方がすごく優遇されていて、その負担はどこから来ているかといったら、スタートラインはそこなんですね。そこから、じゃ、診療報酬の点数を幾らにするかという議論をしているときに、そういうところから是非是非抜本的に見直していただきたい。医療費の軽減、そういうアプローチもあり得るんじゃないかなということで、意見を言わせていただきました。

安住委員長 もう時間が来ているから、終わってください。二分オーバーしていますから。

徳安委員 はい。

 では、以上で終わります。

 田中公述人、済みません、質問できなくて失礼いたしました。

安住委員長 次に、長友慎治君。

長友(慎)委員 国民民主党の長友慎治でございます。

 今日は、四人の公述人の皆様、貴重な御意見をいただき、ありがとうございます。

 その上で、まず渡辺公述人に御質問をさせていただきたいと思います。

 今日は、資料をお示しいただき、賃金と物価と金利の正常化ということをお話しいただきました。御著書を拝読しまして、「物価を考える」の中でも、この三十年間の中で、値上げを極端に嫌がる日本の消費者の行動のことであったりとか、日本の消費者は物価を据え置くことが当たり前という信念を非常に強く持っていて、それが消費者や経営者にも浸透してしまったこの三十年間のことを書かれておりました。

 これからこのデフレを脱却して、経済を、いい、正常化の方に安定して持っていくために、私たちがこの三十年でとらわれてしまっている値段や賃金は変化しないものだというこの暗黙のルールというか、自粛していたもの、こういうものを払拭していく必要があると思うんですが、物価を上回る賃金の上昇や人々のこの意識の変化を、これからまさに私たち、政府も後押しをしていかないといけないというふうに思いますが、政治の方がですね。

 この三十年間のデフレがもたらした弊害というものをまず明確に御教示いただけないかと思うんですが、いかがでしょうか。

渡辺公述人 先ほど私の最初の報告の中で、三十年間というのは価格も、それから賃金も毎年毎年据え置かれてきたという話をいたしました。ここが実はその弊害というものと非常に密接に関係しているわけであります。

 例えば、企業であれば、何か新しい商品を考えて、それを是非商品化したいというふうにしたとすると、当然そこでは投資が必要になりますし、その投資の分だけしっかり高い価格をつけてがっぽりいただきましょうというのが企業家精神というものだというふうに思います。

 ところが、日本では、価格は基本的には据え置かなきゃいけない、あるいは、価格を上げると消費者にどうしても買ってもらえなくなってしまうというのがありますので、そうなると、新しい商品のアイデアがあったとしても、それを実現するために投資をするとか、そういう積極的な方に話が回らずに、取りあえずその商品は作るのはやめようかというので、逆に、じゃ、どうやって収益を賄うかというと、コストカットをして何とかして、それでその収益をぎりぎり維持できるところまで持っていく、こういうような経営というのが行われる。

 これが実は三十年間の多くの日本の企業で典型的に行われてきた。前向きに物を考えるんじゃなくて、後ろ向きにコストカットで何とかその場をしのぐということをやり続けてきたわけであります。それが、要は当然イノベーションとかあるいは経済のダイナミズムというものを損なってきたわけであります。

 裏を返すと、今後はそういうものが、価格や賃金が動き始めていますので、今後は、一つ知恵がある人は、そういうものを実際に商品化するためにしっかりとした投資をして、それに伴う価格もしっかりとしたものをつけて、それでがっぽりもうける。こういう資本主義の普通の原理にのっとった、価格メカニズムにのっとった、そういう経営というのが展開されるんじゃないか。そうすると、今までのような生産性の停滞とかダイナミズムが活発でないとか、そういうところが直っていくんじゃないかというふうに思っております。

 なので、かなりの弊害があったというのは事実で、それは残念なことだったわけですけれども、逆に言うと、これからは非常に伸び代が大きいというふうに見ていいんじゃないかというふうに思います。

長友(慎)委員 ありがとうございます。

 後ろ向きなコストカット等で今まで何とかしのいできたことを、積極的に投資をして、これから伸び代があるという可能性を御説明いただきました。

 最初の公述の中でも、直近二年ぐらいは賃金と物価の健全な循環が始まってきたんじゃないか、各企業が毎年商品価格を二%上げて、消費者の生計費も二%上昇して、労働者、労組も毎年二%賃上げを要求していくような流れが、この二年ぐらいですか、出てきているということなんですけれども、今この瞬間というか、今の現状なんですけれども、現在の消費者は物やサービスにお金を使う余裕がもうあると言えるのか、ないのかについて、また、その理由について改めて見解を伺いたいと思います。つまりは、デフレ脱却をもう宣言してもいいのかどうかということなんですが、いかがでしょうか。

渡辺公述人 現時点で見えている様々ないわゆるハードデータというんでしょうか、そういうものを見る限りにおいては、特に一番大事なポイントは、今の御質問に関係するポイントは実質の賃金だと思いますけれども、要は物価の上昇に賃金が追いついているかという意味での実質賃金ですけれども、それは、物によっては上がっているというふうにはなっていますけれども、そうでないものもありますので、しっかりと実質賃金が上がっているという状況にはまだなっていないというふうに思います。

 ただ、ここについては、私は、一つには、人手不足がこれだけ深刻になっていますので、そういう中で、中長期的、例えば二、三年とかと展望したときには、実質賃金は平均的には上がっていくんだというふうに思っています。ですので、もう少し名目賃金の上がり方というのが強くなっていって、物価の上昇を上回るというのが今後は期待できるんじゃないかというふうに思います。それは、別に政府が、あるいは皆さんが何かの措置をしなくても、経済のメカニズムとして、人手不足の中で実質賃金が上がるということが起きてくるというふうに思います。

 ただし、全ての人々の実質賃金がしっかり上がるかというと、それは、経済の仕組みはそうはなっていませんので、やはり、平均的にはそうかもしれないけれども、ある方の賃金は物価の上昇ほどには上がらない、生活が苦しいという方が出てくるだろうというふうに思います。

 先ほどから繰り返し申し上げているのは、そういう方々へのケアというのを誰かがしなければいけない。さすがにそれは経済のメカニズムの中ではそういうケアというのは生まれてこないわけでありますので、そこは政治の出番だろうなというふうに思います。

長友(慎)委員 全ての人の賃金が上がるかというと、そううまくいくわけではない、その御指摘なんですけれども、私も地元が九州の宮崎という地方であります。地元の経営者の皆様と話していると、価格転嫁、それから賃金を上げるという大企業のトレンドに関してはよく理解はしているんですが、その賃上げの原資というものがないという御意見を非常に強く賜るわけなんですが、地方の中小企業が価格転嫁をしたくてもまだできないという状況、これに対して中小企業の経営者は価格転嫁をどのように取り組んでいけばいいのか、御意見を伺いたいんですが、いかがでしょうか。

渡辺公述人 繰り返しになりますけれども、大事なことは、下請法とかそういう法律をしっかり変えていく、価格転嫁をしやすいような環境というのを整えていく。今でも公取とかはガイドラインを示して賃上げ分の価格転嫁を推進しようとしていますけれども、そういうものを引き続き徹底していくということが一つ大事なことかと思います。その意味では、政策的な介入というのがここの部分は必要だというふうに思います。

 ただ、それはどちらかというと当面のお話でして、中長期的に見ると、先ほどのどなたかの御質問にも関係がありますけれども、中長期的に見ると、やはり、どの地域であれ、東京も含めてですけれども、どの産業であれ、企業の数が多過ぎるというのが最大の問題なんだというふうに思います。多過ぎるがゆえにある種の過当競争になっていて、多過ぎるがゆえにやはり健全な価格転嫁ができないということが起きてしまっているんだというふうに思います。

 なので、いろいろな産業、いろいろな地域において、やはりどうしても企業の数を減らすようなフェーズというのがこれから始まっていきますので、そこで健全な価格転嫁が生まれてきますけれども、同時に、しかし、企業が数を減らすわけですので、ここも、誰かさんの企業はなくなっちゃっていて、なかなかその方がほかの企業にすっと移るというわけにはいかないというような、そういう事情というのも個々には出てくるだろうというふうに思います。ここもやはり市場メカニズムではカバーし切れない部分ですので、政策的に手当てが必要な部分なんだというふうに思います。

 繰り返しますが、やはり移行期ですので、いろいろなところでなかなかうまく移行に乗っかれない人たちが出てきますので、それをしっかりと見て、政策的な手だてを財政資金なども含めてやっていくということが非常に大事な局面にあるかというふうに思います。

長友(慎)委員 価格転嫁のための政策が必要だということで、大変そのとおりだと思います。

 私たち国民民主党としましては、価格転嫁を後押しするためにも、可処分所得、国民の所得が増えていく、手取りが増えていく、これが一番重要だ、その経済対策をもって、今まさに手当てが必要だということで、例えば百三万円の壁の引上げということを公約に掲げて取り組んでいるところでございます。

 この百三万円を百七十八万円にということで私たちが主張しているんですけれども、その基になっているものが、最低賃金が三十年前から一・七三倍になっているので、百三万円を百七十八万に引き上げる、そういう根拠を持って考えているわけなんですが、この数字の設定の仕方ということについての妥当性は渡辺先生はどのようにお考えかをお聞かせいただけますか。

渡辺公述人 国民民主党、あるいはほかの党の方々でもそこの百三万円云々についての議論があるということは存じ上げていますけれども、一般論として申し上げたいというふうに思います。

 価格や賃金が余り動かなかった日本のような特別な事情であれば、百三万円というのが、要は最低のレベルですね、百三万円というのが動かなくても何の不都合もないわけです。全ての人の賃金、全ての人の価格というのが動かないわけですので、百三万円という金額ですけれども、そこも動かなくても何も別に不自由はないわけであります。

 ところが、価格と賃金が二%プラスアルファで上がっていくというような経済に移行していくんだとすると、やはりその下限の百三万円というのも毎年毎年切り上がっていくというのが自然な姿なわけであります。税制全般に言えることですけれども、やはり物価が上昇する局面では、物価にある種のスライドをさせながら、インデクセーションさせながら、いろいろな制度を運営していく、あるいはそれをビルトインしていくということが非常に大事かというふうに思います。

 百三万円について言えば、国民民主党さんの御意見とは違うかもしれませんけれども、私は、やはり物価にスライドさせるべきなんじゃないかというふうに思いますし、しかも、こうやって毎年毎年幾らにするんだとかというのを先生方に非常にコストと時間をかけて議論をするよりも、こういうルールにしようと、物価が二%上がったら百三万円もこれだけ上げるというようなルールを一遍ばしっと定めて、あとはもうオートマチックに上げていくということが一番賢い方法なんじゃないかというふうに思います。

 今回はゼロのインフレのところから二%に移行するしょっぱなのところですので、そこで様々な議論が交わされているというふうに私は理解をしておりますので、やむを得ない部分もあるのかなというふうに思いますけれども、今年の経験を踏まえて、来年以降については、是非そういうインデクセーションという観点での仕組みづくりということをお考えいただけるとありがたいかなというふうに思います。

長友(慎)委員 物価にスライドさせていく、本来であればそうあるべきだと私たちも思っています。この三十年間、この百三万円のラインが動いていないということ自体が問題だと思っておりますので、今後につきましては是非そのような方向性での議論を詰めていきたいと思っております。

 ありがとうございました。

 次に、大西参考人にお伺いしたいと思っております。

 各旅館やツーリズムの受皿となるホテルが、地方では、部屋はあるんですけれども、人手が足りなくて稼働できないという現状が現実として各地にあるかと思っております。そうなると、これはどちらが先かという話になるんですけれども、従業員を確保できれば受け入れられる、それよりもツーリストの方が先に来てくれればそろえられるという議論があって、そこで膠着しているような現状を目の当たりにしているんですけれども。

 これは、やはりホテル側の方が思い切って投資をして受け入れられる体制を整えることが先だと思うのか、それとも、やはりツーリストの方を増やしていくのを待って、それからじわじわと体制を整えるということが旅館の経営者としては正解なのか。私も相談をよく受けるものですから是非御指導いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

大西公述人 ありがとうございます。

 やはり両面あろうかと思います。

 先ほどから出ております高付加価値化補助金の件がありましたけれども、私どもがずっと訴えていたのが、やはり過剰キャパシティーという問題がありました。

 それで、かつては日本の旅行の在り方も、団体旅行でバスで大量に動いていくというのが主流だったんですけれども、今これだけ旅の成熟化もありまして、そうすると、やはり二部屋を一部屋にしていくような、キャパシティーを減らしていくような高付加価値化、これを進めたいということで、様々陳情もしてまいりましたし、今回の御支援の中でそれも進んでまいりました。まずキャパシティーを減らしていくということが一つあります。

 あともう一つは、やはり我々経営者の責任も大きいんですけれども、宿泊業界の実情を申し上げますと、サービス業に属します。サービス業全体というのは、日本の経済構造の中の業種区分の中で、サービス業は下から二番目なんです。実は、宿泊業の実数を調べましたところ、サービス業が十六業態区分されまして、下から二番目なんです。サービス業全体の平均になるまで約一六%賃金が足りないということが分かりました。

 私も全国を回る中で、何とかサービス業の平均まで持っていこうじゃないか、それを実現できたときに初めて他の要素が出てくるのであって、やはりこれを実現しなければ、決して我々の業界の地位の向上とかは見込めない。ですので、しっかりとこれは社員への還元も含めて進めていく。そういう中で、人手をしっかりさせていく。もちろん、お客様を増やしていくというのはありますけれども、ただお客様が増えても、こういう雇用の実態では満足なサービスができないというふうに考えております。

 以上です。

安住委員長 時間がオーバーしていますので、やめてください。

長友(慎)委員 はい。

 終わります。ありがとうございました。

安住委員長 次に、赤羽一嘉君。

赤羽委員 公明党の赤羽一嘉でございます。

 今日は、四名の公述人の皆様におかれましては、大変お忙しい中、わざわざ国会まで足をお運びいただきまして、また、お一人二十分という限られた時間の中で貴重な御意見をいただきましたことに、まず心から感謝を申し上げたいと思います。

 私どもも一人十五分なので、早速質問に入らさせていただきたいと思います。

 まず、河村公述人にお伺いいたします。

 簡単に言うと、金利が上昇局面の中で、財政危機はより深刻化している。ですから、新規の国債発行額をゼロに近くし、PBを黒字化する。その上で、適切な増税を行う。経済的な余裕のある層から増税をし、経済的な余裕のない層には負担を軽減する。これは言うのは簡単なんですけれども、この最後のところというのは政治家が一番悩むところで、なかなかそれができなくて、今の実態に合わせてしまっている。

 ですから、今、具体的にどの税目で増税を図ることが、財政再建にはもちろんつながりますし、経済的な影響も最小化できるという、何か御意見があれば、御示唆をいただきたいと思います。

河村公述人 御質問ありがとうございます。

 新規国債を、数年かけるとしても発行をゼロに近いところまで近づけていく、それは簡単なことではございません。ただ、何か、この国というのは、そうするとすぐ増税、消費税二〇%とかというふうに短絡的に結びつけるような傾向があると思うんですが、確かに、消費税は一%ポイント上げれば大体二・五兆円増収になるというふうに言われていますからそのとおりなんですけれども、決してそんなことはないと思います。ほかにもいろいろやり方はあるんじゃないかなというふうに思います。

 先ほど、私の資料のところで、ISバランスというか、部門別でこの国はどこがお金が余っているかというのをお見せいたしました。その中で、家計も余っていますけれども、それからあと企業部門も、この国は長年大幅な資金余剰を続けているんですね。そこからどう負担していただくのかといったときに、一つ、累進課税的な考え方を法人税に取り入れるというやり方もできるんじゃないかなというふうに思います。これは結構な、数兆円単位の増収になるんじゃないかなというふうに思います。

 ほかにもいろいろあって、歳出の方だってもちろん工夫できる余地というのは十分にあると思いますので、先ほどの質問のところでちょっと医療費のところの考え方とかお話しさせていただきましたけれども、高齢化だから一方向で増やさなきゃいけないというものでも決してないんじゃないかなというふうに思っております。

 あとそれから、所得税のところでも、もう少し累進などをかけるような形で応能負担を強化してもいいでしょうし、あと、私は公平性の観点からもっとお考えいただきたいのは、課税ベースのところですね。あそこをいじると結構所得税は上がりますよねというか、一番申し上げたいのは配偶者控除のところです。

 私自身が、別に共働きでやってきたからって、自分たちのためだけにということで申し上げるつもりがありません。決してそんなことはなくて、一定のサラリーマンの配偶者の方だけがなぜこんなに認められているのか。この国全体で、配偶者手当をまだ支給している企業さん、結構多くあるそうですね。やはりすごく連動しちゃっているところもあるし、それは社会保険の方とかともやはり密接に連関している、三号保険者の問題とかもありますし、そういう問題ですよね。

 そういうところも解決していけば、結構増収にもなるんじゃないかなというふうに思いますし……(赤羽委員「ありがとうございます。もうそろそろ、済みません」と呼ぶ)そんなような、いろいろ手はあると思います。済みません。

赤羽委員 済みません、時間を遮ってしまいまして。

 次に、渡辺公述人にお伺いしたいと思います。

 まさに、長年続いてきたデフレスパイラルから、賃金、物価、金利を正常化することによって好循環をつくっていこうということで、その中で、私も実感するんですが、この三十年の間に国民に植えつけられたデフレマインド、これをどう脱却するかというのは非常に難しい。先ほど言いましたけれども、賃上げをしても、中小企業はやはり賃上げ圧力になっていて、また元に戻ってしまう。こうしたことの脱却の中で、今、河村先生が言われたような適切な増税をした場合でも、このデフレマインドに悪い影響が出るのか出ないのか、どうお考えかというのが一点。

 もう一つ、二〇二五年からの、これからの生産性を実質向上させるという中で、恐らく、企業が多過ぎる、中小企業が多過ぎる、ゾンビ企業の実態の中で、こうなると大変難しいんですけれども、私は、事業承継の税制をもっと柔軟にするとか、もう少し、今、これは恒久化じゃありませんので、こうしたことを進めていくということが一番うまくいくんじゃないか、価格メカニズムが発揮できるようになるのではないかと考えていますが、この点についても簡潔に御意見をいただければと思います。

渡辺公述人 簡潔に申し上げます。

 まず一点目の、仮に何らかの形で増税をして財政再建をしたときに、デフレ脱却のところにどう影響があるのかという御質問でした。

 振り返ってみると、この三年間、ここで一応、デフレ脱却の動きが生まれているわけですけれども、消費が好調で、だから価格を上げることができたかというと、とてもじゃないけれども、そんなことにはなっていないわけです。

 つまり、三年間、需要は余り活発じゃなかったんですけれども、しかし、価格と賃金の正常化ということは動き出しているわけです。私たちは需要と供給というふうに分けて議論しますけれども、需要よりも恐らく供給の方が決定的に大事な側面を持っていて、そこが変わってきたので、この三年間のところは曲がりなりにも正常化ができているんだというふうに思っております。

 ということを考えると、将来の話ですけれども、財政の事情で増税ということになった場合にも、そこで需要が減るから直ちにデフレマインド、デフレがもう一回戻ってしまうんだというようなことにはきっとならない。もうちょっと上手にやれば、需要の減少を最小限にとどめつつ、しかし、供給面の方の、企業の活発な賃上げとか活発な価格の引上げとかというものの、そのモメンタムを維持するということは可能なんじゃないかというふうに思います。

 二番目の、企業数を減らす、先ほどから私も申し上げていますけれども、そこでの事業承継というのは非常にいいアイデアだというふうに思いますし、私は専門家じゃありませんけれども、同僚に聞いても、今はいろいろなスキームが出てきている、いろいろな知恵もある、あるいはデジタルの役割もそういうところで果たせるんだというふうに聞いておりますので、是非そこは、そういう様々なテクニックを使って、それによって企業数を減らすという方向性で議論が進むといいかなと思っております。

赤羽委員 ありがとうございます。

 渡辺先生、ちょっと御質問できないんですけれども、先ほどの公述の中で、私は、人手不足というのは大変な状況ですけれども、これを逆に契機にして、最低賃金を上げていくとか、また、下請法をしっかりと機能していくということがすごく大事だと思いますので、私たちも政府・与党としてしっかりやっていきたいということをお約束したいと思います。

 次に、大西公述人に質問します。

 私は、観光立国をなぜ国策にしたかというと、全国の地方というのは、少子高齢化、人口減少が進み、過疎化が進む、しかし、眠っている地方の観光資源を磨き上げることによって、実は、地方創生が進み、我が国の経済成長にも寄与し、そして雇用にも大きく、雇用を創出する。私はそういう思いで、私自身も観光担当の国土交通大臣として全力で当たったわけでございますが、ちょうどたまさかコロナが発生し、拡大し、長期化したその二年間余りでございました。

 本当に、その中で、様々な反対、批判はあったんですけれども、GoToトラベルとか高付加価値化事業、これは平時ではある意味じゃ考えられない、プライベートな旅行に何で国が一人一泊二万円出すのか、よく自分もやったなと思うんですけれども、そうしたことを、私は、観光立国を進める上で重要な観光インフラを支えなきゃいけない、それは業界のためだけではなくて、実は国全体のため、地方創生のためという思いで腹をくくってやったわけでございます。

 その点について、高付加価値化事業というのは大変評価もいただいていますし、私自身も今、全国で、公明党の観光立国推進議員懇話会の座長として全国を回っていますけれども、明らかに、面的に整備されている、やはりそういったところはお客さんも増えている、新しいお客さんが増えている、そうした意味では大変よかったなと思うわけでございます。

 加えて、旅館、ホテルというのは、よく分からない人が多いんですけれども、需要を喚起しても、当たり前ですけれども、定員以上のお客さんは取れない。だから、物すごく絶好調みたいな話ですけれども、大変な長い期間の不況に対して短い期間カンフル剤を打っても、やはり、先ほどお話があったとおり、債務超過が続いているところも少なくないというのはそうした実態があると思います。

 だから、私は、まず、やらなければいけないんだけれども、先ほどの地方空港の問題しかり、お金のかかることがたくさんなんですけれども、多分、高付加価値化事業は財務省はもうやりたくないと思っていると思うんですね、聞いたことはありませんけれども。しかし、その中で、私はやはり、国交省が、観光の部門が自己財源を持つということがすごく大事だと思っていまして、実は、国際観光旅客税、出国のときに一人千円取っていますが、もう少しそこを増税しても、これについてはデフレマインドに戻ることはないし、国民の支持も受けられると思います。

 業界を代表してということではなくて、現場に携わられている観光マンとして、大西公述人の御意見、国際観光旅客税を増税するというようなアイデアについては率直に言ってどう思われるか、お伺いしたいと思います。

大西公述人 ありがとうございます。

 まずもって、当時、赤羽大臣が英断いただいたGoToトラベル、先ほども申し上げましたように、協会は本当にあれがなかったら沈没しておりましたので、心から御礼を申し上げます。

 今の様々な観光施策における財源の問題、出国税のお話をいただきました。これは、実は、立場がどこにあるかというので少し意見が変わってくると思うんです。私ども、インバウンドを含めた国内旅行を主体としている人間にとっては、これまでの出国税で観光政策は大きく変わりました。観光庁にしても環境省にしても、やはりしっかりと予算の裏づけがついた施策が出てきて、我々の取組も本当に力強く受け止めています。

 ただ、実は、アウトバウンド、特に旅行業界なんかは、恐らく、この出国税が増えることによって、円安なんかもあって今非常に厳しい状況にありますから、なかなかこれはうんとは言われないのではないかと思っております。

 私は、インバウンドとアウトバウンドは両輪だと思っていて、インバウンドだけ増えればいいと思っていても、しっかりとアウトバウンドを出していかなければ、インバウンドも結局は伸びないんです。そういう意味では、やはり旅行業と利害を一致するところもあります。

 思いますのは、今申し上げましたように、大前提としては、僕は、財源をしっかりと持って国にお願いをしていかなければ、より強い政策は打たれないと思っておりますので、賛成でございます。ただ、今申し上げましたように、立場が違えばまた変わってきますので、例えば日本人が海外に旅行に出るときに後押しになるような、その財源を使って、例えば海外旅行補助金が出るような、そんなような施策も並行すれば理解を得られるんじゃないかというふうに思っております。

 それから、もう一つは、同じ出国税でも、日本国民と海外のお客様が何らかの形で負担度合いが変わる、そういうようなことも考えていただければ、より理解が得やすいんじゃないかというふうに考えます。

 以上です。

赤羽委員 加えて、観光業は人手不足が深刻だ、まさにそのとおりだと思います。そうした意味で、働く場の誇りということが大事だと思いますので、私も、ユネスコの文化遺産登録等々をしっかり頑張っていきたいと思いますが。

 最後に、先ほど、外国人雇用の制度を少し改善してほしいというお話がございました。ちょっと残り少ないんですけれども、簡潔に、どんな点かということだけお聞かせいただきたいと思います。

安住委員長 大西公述人、簡潔にお願いします。

大西公述人 まず、手続が非常に複雑でございます。それから、入国の様々な審査とかも含めて時間がすごくかかります。そういう中で、元々我が国は移民を認めていませんので、移民につながるようなことを避けるということなんだろうというふうに思いますけれども、やはりこれは中小企業にとって大きな負担になっております。

 もう一つ、やはり我々が考えていかなきゃならないのは、来ていただいた外国の方がいかに満足して働いていただけるか。キャリアパスなんかをしっかりしていかなければいけないというふうに考えております。

 以上です。

赤羽委員 どうもありがとうございます。

 時間が来ましたので、終わります。ありがとうございました。

安住委員長 次に、櫛渕万里さん。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里です。

 今日は、公述人の皆様、ありがとうございます。時間の関係上、全ての皆様に御質問できないかもしれません。御無礼を先におわびをいたします。

 まず、渡辺公述人にお伺いをいたします。

 お話の中で、賃金、物価、金利、三十年異常だったというお話がございました。確かに、先進国で唯一、日本だけが経済成長していない、実質賃金が上がらない。一九九〇年以来、G7各国は実質賃金四倍あるいは七倍に上がっているところがありますが、日本は一・一倍という、ずっと低迷が続いています。国民から税金と社会保険料を取るだけで、国民負担率五割に及びました。

 賃金と物価の据置きが三十年続いた異常な事態とおっしゃっていましたが、なぜそのような事態になったのか、御見解をお聞かせください。

渡辺公述人 賃金と物価が上がらなくなったというのは九〇年代の後半のことなわけですけれども、その当時のいろいろな書き物やら、あるいはその当時の方々にお話を聞いてみると、こういうことが起きたんだろうというのがおおよそ分かります。

 それは、当時は、今とはちょっと違って円高の時代でした、それから、バブルが終わった後の、円建ての賃金というのがそこそこ高かったということで、実は、日本人のドル建ての賃金というのがグローバルに見て非常に高い、そういう状況になったわけです。その中で、当時はちょうど中国とかそういう企業が出てくる時期でしたので、このままでは、この高い賃金では、とてもじゃないけれどもそういう中国の企業とかと戦えないというようなことが財界の中で懸念されたわけであります。

 その一つの解決策として、賃金というものを、当時はずっと毎年ベアをして賃金を上げてくるということをやってきたわけですけれども、一旦これはやめようということを財界の方から提案というか案が出てきて、それを組合も了承する、のむということが起きたわけで、そこから、ベアがない、あるいはベアを連合が見送るということが二〇〇〇年代の初頭に始まっていったわけであります。

 なので、ある種、賃上げを自粛するようなことというのが、その自粛の目的は、日本企業の海外での活躍、そこでの雇用の発生ということを持続させるために、そこをサポートするために賃上げの自粛ということが始まったわけでありまして、それが長いこと賃金が上がらないという状態をつくっていったわけです。同時に、賃金が上がらない中で価格だけ上げることは無理ですので、価格の方も上がらないということが起きたというのが私の理解でございます。

櫛渕委員 その要因もあるかと思いますが、やはり大きな原因の一つは消費税ではないか、そのように考えています。

 二〇一九年、消費税一〇%に上げたときの民間最終消費の落ち込みは十八・四兆円規模でありました。百年に一度と言われるリーマン・ショック、このときの落ち込みが四・一兆円ですから、その四・五倍。しかも、消費税八%増税のときは十・六兆円、五%増税のときは七・五兆円。つまり、リーマン・ショック規模の消費の落ち込みが三十年で四回起きているわけですから、これで経済成長するはずがない、この状況を打開するには大胆な経済政策が必要であると、れいわ新選組は消費税廃止を訴えています。

 公述人にもう一度お伺いしたいんですけれども、強い消費を実現するためには、まずは少なくとも消費税減税、これが消費に火をつけると考えますけれども、その必要性について、そして選択肢の一つであるかどうか、御意見をお聞かせください。

渡辺公述人 過去に日本が消費税の引上げを何回かにわたって行ったのは事実ですし、それから、そのたびごとに実質の消費が大きく落ち込んだというのもまた事実かというふうに思います。

 ただ、私は、そのことと、賃金と価格が動かなくなってしまったという現象は一旦切り離してもいいんじゃないかな、タイミング的にも様々なデータからも、そこの明確なリンク、つながっているというような、そういう証左はないんじゃないかというふうに思っております。

 それから、では、先々を見たときに、消費税の引下げを行うことによって消費を喚起して、それによって実質賃金を上げていく、こういうお話かと思いますけれども、先ほども申し上げましたけれども、先々の賃金、物価の好循環を実現するときのポイントは、私は需要ではないというふうに思っております。それは、過去三年間も消費はなかなか振るわなかった中でしっかりと価格も賃金も上がってきましたので、違うメカニズムが実は価格と賃金を動かしているというふうに私は理解しております。

 なので、この先についても、必ずしも需要を思い切り活発しなきゃいけないというふうには思っておりませんで、そのために消費税を引き下げる必要というのも、ほかの用途もあれば別ですけれども、そのためにそれをやる必要はないのではないかというふうに思っております。

櫛渕委員 後半で公述人もおっしゃいましたけれども、その理由だけが、消費税には原因があるだけではないんですよね。社会保障に使われるのかといえば八割は使われていないという実態があったり、あるいは、赤字でも払わなければいけない消費税、これは中小企業にとって大変な負担です。そして、人件費にも課税されますから、このことによって正社員化にブレーキがかかり、また賃上げにブレーキがかかるということが同時に言えると思います。

 是非、この点は、公述人がおっしゃった百八十兆円を有効に使えという、このインフレ率二%上昇の分を、消費税、少なくとも減税、これを選択肢として、これかられいわ新選組は更に勉強を続けていきたいと思っております。

 では、続きまして、田中公述人、今日はお越しくださいましてありがとうございます。

 昨年のノーベル平和賞の受賞は、被爆者の皆様の長年の戦いへの高い評価というだけでなく、核兵器と戦争、これがいかに非人道的な結末をもたらすのかということを人類に想起させ、そして核戦争のリスクが高まるこのリアリティーを世界に訴えるものであったと思います。心から敬意を表します。

 また、先ほど最後におっしゃっていました、今の戦争は市民に大きな犠牲を強いるんだ、財政上、そのことを国は考えているのか、防衛費は増やすけれども、市民の被害に対して国民に我慢を強いるだけの国防政策というのは法制上間違っているのではないか。この訴えは大変胸に響きました。国会議員全てが、このことに耳を傾け、考えなければいけないと思います。

 まず、質問させていただきます。

 先日、政府は、核兵器禁止条約のオブザーバー参加を正式に見送るということを決めました。政府はその理由として、アメリカの核による拡大抑止が不可欠だ、オブザーバー参加は、我が国の核抑止政策について誤ったメッセージを与え、平和と安全に支障を来すおそれがあると言っていますけれども、オブザーバー参加することが日本の平和と安全に支障を来すと思われますか。

田中公述人 私、オブザーバー参加が唯一だと思わないので、とにかく今日本の政府がやれることはまずそこではないかということで、オブザーバーの参加をせよと言ってきたことでありまして、本来はやはり、できるだけ早く署名をして批准をして参加国に入る、参加国の一員として大きな発言をしていくということだと私は思っているんです。だから、残念ではありますけれども、努力はしていただきたいと思いますし、石破総理はひょっとしたら言ってくれるんじゃないかと私は最後まで期待していたんですけれども、残念でありました。

 それから、抑止ですね。抑止政策は、先ほども申しましたけれども、やはり使うことが前提なわけですね。使わないのであれば要らないわけですから、抑止のための核兵器は要らないわけですから、持っているということは使うことが前提で、使ったらどうなるかというのは、今先生もおっしゃいましたように、私どもが体験したそれまでの爆薬、今の爆撃もそうですけれども、爆撃の被害と、核兵器を使った、核反応のエネルギーを使った被害は全く質的に違うということなんです。

 そのことを私たちはずっと証言をしてきたわけでありまして、そのことは全く今もって変わりはないわけですね。例えば、一発で一瞬にして広島の場合には十四万人の人を殺しているわけです、市民を。長崎でも七万人、地形が変わっていましたから。そういう殺し方をできるという兵器だということであります。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 れいわ新選組も、核兵器禁止条約には早期の署名、批准が必要であるという立場で、間もなく三月三日から第三回締約国会議が開かれますけれども、あと数日、最後まで粘っていきたいと思います。粘って政府に求めていきたいと思います。

 続いて、このオブザーバー参加なんですけれども、核の傘に依存した国々も参加をしていますね。

 田中公述人に改めて伺いますが、日本はどんな役割を締約国会議にオブザーバー参加したときに担えるとお考えでしょうか。

田中公述人 私は、ノルウェーにいる間、ノルウェーの総理とお会いしました。ノルウェーの総理が、私のところはNATO国なので署名、批准が非常に難しい、だけれども、今度の締約国会議には私は参加する、そして、できるだけNATO国のような中でも核兵器をなくすための努力をしていかなくてはいけないという話をしていきますというふうに言っておられましたので、そういう役割もある。

 そういう意味でいいますと、日本と同じ条件ですね。それなのに、唯一の被爆国の政府の方が出ないで、ノーベル賞を授賞する国ですから、そのときの政権ということがあると思いますけれども、出るということを言われましたので、残念だなと思いました。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 NATOの加盟国であるノルウェーもそのような発言があり、またドイツも、加盟国でありながらオブザーバー参加、連続して行っており、特に核被害者の健康への支援ということを国際的に呼びかける、こうしたリーダーシップを取っていますね。オーストラリアは、特に核軍縮の検証プロセス、これをオブザーバー参加しながら会議で提言をするといった役割を担っており、特に、国益を阻害するより、むしろ外交的メリットの方が日本にとっては大きいと私も考えます。

 次に、お伺いします。

 田中公述人、オスロのスピーチで、日本政府は原爆で亡くなった死者に対する償いを一切してこなかったということを繰り返し訴えられ、そして最後に、核も戦争もない世界をと呼びかけられました。

 石破総理は、日米韓の拡大核抑止を強化して周辺国に対峙しているとしていますけれども、先ほどの公述の最後にお話しされた予算の関係、もう一つ最後にお伺いしたいと思います。

 核兵器禁止条約の中では、核兵器の維持に対して世界は十四兆円コストを費やしています。一方、その十分の一でも、核に頼らない安全保障、こうしたことの研究や議論、このために予算を使えば、もっとこうした核廃絶へのプロセスが進むのではないか、このような発言がありました。

 日本の予算を見ると、今回、過去最高、防衛費八・七兆円。一方、軍縮・不拡散の経費というのは二億六千八百万円なんですね。これは五年前に比べて減少しているんです。防衛費の方は、伸び率一・五倍、三兆二千億円が増えています。その十分の一でも三千二百億円、百分の一でも三百二十億円、こうしたことをいかに使うか。

 予算を増やして、れいわ新選組は、核の傘から非核の傘へ、このような、北東アジアの非核化へのプロセスで安全保障の協議をする常設の機関を設立してはどうかと考えますが、御意見をお聞かせください。

田中公述人 全く私も異存はございません。

 予算は、やはり本当の安全のために使うべきですね。危機をあおりますと、国民は心配して、その危機は軍備で守らなくてはいけないという錯覚に陥るために、予算の使い方が変になっていきますので。危機をあおるのではなくて、そういう危機をつくらないために、国民と政府が力を合わせて、どういうふうに国交をやっていくかということが求められているんじゃないかと私は思っております。

安住委員長 櫛渕さん、間もなくですから、まとめてください。

櫛渕委員 はい、あと一分、最後に申し上げたいと思います。

 大西公述人、最後に、苦境をおっしゃっていただいて、ゼロゼロ融資についての返済猶予とか低金利での融資を継続するというのは、れいわ新選組も公約に掲げておりますので、是非支援をしたいと思っております。

 また、最後、人手不足ということを言っておられましたけれども、宿泊業の賃金、全産業平均に比べて月十万円ほども低いということがございます。最後にこの点、一言、世界観光機関の持続可能な観光の定義では、安定した雇用、安定した収入、こうした収入の確保ということが定義として入っていますので、政府に対する要望をお聞かせください。

安住委員長 大西公述人、大変申し訳ありませんが、時間が過ぎているので、簡潔にお願いします。

大西公述人 ちょっと質問の内容を理解し切れていないんですけれども、給与が他よりも大きく低いということに対する、どういう手を打っていくかということですね。

 これはもう、私見というより、私、会長時代ずっと言い続けていたのは、欧米のようなサービス料を復活したい、そして、そのサービス料を全額社員の給与、待遇の改善に使っていくということをしっかり開示をして、そういう運動を業界で起こしていきたい、そのように考えております。

 ちょっと、答えになっているかどうか。

安住委員長 終わってください。

櫛渕委員 終わります。ありがとうございました。

安住委員長 次に、本村伸子さん。

本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今日は、四人の皆様、お忙しい中、時間を割いていただき、こうして国会にお越しいただいたこと、心からお礼を申し上げたいと思います。全員に聞けないかもしれませんけれども、御了承いただければと思います。

 まず最初に、日本原水爆被害者団体協議会の代表委員であります田中熙巳さんにお伺いをしたいというふうに思います。

 田中さんを始め、広島、長崎の被爆者の方々が人生を懸けて核兵器の廃絶を、魂の声を上げ続けてくださっていることに、本当に心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。核兵器禁止条約を作る平和のクリエーターとしての役割も果たしてこられたということで、本当に心から敬意を申し上げたいと思います。そして、ノーベル平和賞の受賞にも心からお祝いを申し上げたいと思います。

 私は、私の父も長崎で被爆をいたしました。ですから、私も被爆二世として、核兵器をなくしていく、そういう使命があるというふうに痛感をしております。今日も、田中さんのお言葉をしっかりと胸に刻んで、今後の国会議員としての役割を果たせるようにということで、全力を挙げていきたいと思っております。

 お伺いしたいのは、先ほど来お話がありましたけれども、日本被団協として、核兵器廃絶とともに原爆被害への国家賠償要求を掲げておられます。ノーベル平和賞の授賞式のときも、原爆で亡くなられた方々への国家賠償が一切ないという点について強調されておられました。この国家賠償に関して、戦争を起こしてはならないという思いも込められているというふうに伺っております。

 国家賠償を求めておられることのその中身について、是非もう一度お伺いできればというふうに思っております。

田中公述人 国家賠償と言っておりませんで、国家補償という使い方をしておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 何もなされていないというのは全くそうでありまして、家族を失った人たちはそのまま放り出されちゃったわけですよね。それで八十年間来ているわけです。もうほとんどの遺族は亡くなりましたけれども、やはりその遺族の気持ちを思ったら、私はあそこでもう一回、日本の政府は何もしてくれていないよと言いたかったんですね。

 そのことは、ああいう外国に行って国のマイナスなところを言うとは何事だというふうに非難が事務所の方には来たそうでありますけれども、やはり、先ほども申しましたように、これからの戦争は国民を巻き込まざるを得ない戦争になるんですね。民主主義の国というのは、国と国民との間に対立があったり、従属関係があることはないはずなんですね。だから、国が戦争をやるということを決めたとすれば、その被害についてはやはり国が責任を負うということがなければ民主主義国家と言えないというふうにあの場で私はふと思いついて、つけ足しをしてしまったというのが本音でございます。

 事ほどさように、やはり戦争を考える場合には、国を挙げてというのは変ですけれども、犠牲が伴うということを念頭に置けば、やはり武力を使わないということを徹底して追求していくべきだというふうに思っております。

本村委員 ありがとうございます。

 またもう一問、田中さんにお伺いをしたいと思います。

 田中さんは、世界中の国々の方々、地域の方々と交流をされ、意見交換もされているというふうに思いますけれども、核兵器禁止条約に関する日本政府の態度に関して諸外国の方々から様々言われることもあるというふうに思うんですけれども、どのように言われ、そして田中さんがどのように感じてきたかという点をお伺いをしたいと思います。

田中公述人 私どもが、なぜ日本の政府は参加しないんだと言われるわけですね。一番悔しい、恥ずかしいことなんですよね。日本の政府はあなたたちのことを聞いているでしょう、そうしたら、こういう条約には進んで参加してこなくてはいけないし、国が核兵器というのはどういうものかというのを世界の人々に言うべきじゃないのか、何で言わないのかというふうに言われることは、私は非常に悔しいし、残念なのは、やはり私たちの力が足りないからだと思っているんです。私たちがそういう私たちの願いをちゃんと聞いてくれる政府をつくれていないというところが一番の根源ではないかと私は思っておりますので、そのためにも努力しなくてはいけないと思っております。

本村委員 ありがとうございます。

 そうした政府をつくれていないことを本当に申し訳なく思っております。

 石破総理と面会をされましたけれども、総理が持論を展開して反論する時間がなかったということですけれども、核抑止論を含めて、この場で是非反論をしていただけたらというふうに思っております。

田中公述人 石破総理は、受賞が決まってすぐ、私のところに電話をよこされました。私が、一番最初に申しましたように、全く想定していなかったので、そのときは自宅にもいなかったし、テレビも見ていなくて、結局、十回ぐらい電話をかけてこられて、その日はつながりませんでしたので、翌日の十二日にこちらの方から電話をして総理とお話ししました。

 そのとき、新聞にも報道されておりますけれども、自分は、小学校のときにアメリカから返還された日本の原爆の被害の映画等を見せてもらった、それを見て、原爆の被害というのはすごいのだというふうに子供ながらに感じて、それから、中学生のときに広島の資料館に見学に行った、そして具体的にいろいろなものを見て話も聞いた、核兵器は絶対に使ってはいけない兵器だ、将来なくさなくてはいけない兵器だと固く信じております、しかしという電話だったんですね。しかし、日本の今の置かれている安全保障の状況は厳しいものがある、だから理想論だけではいかないというところまで言いまして、時間がもう、電話をやっているわけですから、後にまたしましょうという、総理も言いましたし、だから、私も、後でまたお話ししましょうという約束をして、この前、改めて官邸で会見をいたしました。

 しかし、私どもの意見を、一分とか、私は一分だとか言われましたけれども、三分だとか聞いていただいて、あとは五、六分、あと、最後に総理が自分の見解をおっしゃいました。防衛が必要だ、最後にはシェルターが必要だとまでおっしゃいました。核兵器にシェルターがいかに滑稽であるかというのはもう知られていることなんですけれども、そこまでおっしゃって、時間が参りましたので私は失礼いたします、もう何も言うことがなかったので、改めてまたお話をしたいと思いますということだけ残して別れました。

 以上です。

本村委員 ありがとうございます。

 核兵器禁止条約にとどまらず、核兵器廃絶条約に言及をされておられますけれども、その点についてももう少し詳しく教えていただければというふうに思っております。

田中公述人 私どもは最初から核兵器禁止と廃絶を一体にした条約を作ってほしいというのを長い間要求してきたんですけれども、一〇年ぐらいから、やはり禁止をまずさせようという国際的な流れができてきて、そして二〇一七年の禁止条約の採択になったんですね。ですけれども、廃絶のことは何にもあの条約の中にはないわけですね。厳しく、使ってはいけないということが内容になっています。

 だから、なくさなくてはいけないというのが現実だと思うんです、あれば使われることは間違いないわけですから。だから、なくすためにはどうするか。新しい条約を作るかということになると、実は、廃絶条約のモデル条約がもう既に国連の中にも提出されているものがあるんです。それを審議するかということかもしれないんですけれども、それもあり得るし、核兵器禁止条約の中に議定書をたくさんつけていって実質的には廃絶と同様のものにするか、それは、これから私たちが検討していくことだと思いますし、皆さん方にも検討していただきたいことだというふうに思います。

本村委員 ありがとうございます。

 先ほど核抑止論に対する反論ということもお伺いしたんですけれども、もう一度、核抑止論に対する反論を是非お聞かせいただければと思います。

田中公述人 私の理解ですと、抑止論というのは、昔、アメリカとソ連、二か国が競争しているときの考え方なんですね。抑止力論は、結局、競争をやりましたので、膨大な核兵器で、七万発になった時代があるんですね。しかも、ヨーロッパだけにそれが使われるみたいな、一部が、というような状況があって、それはまた条約を作って減らしてきておりますけれども。

 今の抑止は、ただ脅しにしかすぎないと思うんですよね。核兵器を持っている国は、持っていない国に、使わせないよということを言っているにすぎないわけで、ですから、持っていない国が何か不都合なことをやったときにそれを使うということは十分あり得るわけですね。今のロシアが、ひょっとしたら、非常に自分が危ない状況になったときに核兵器を使うかもしれないというふうに思います。

 ということは、抑止論は使うことが前提だから、それを使うことが国際法にも違反だというのは国際司法裁判所で決められているわけですね。そういう国際的にも国際法上も違反だというふうにもう明確にされている兵器をもって抑止しようというのは、もう間違っているということ以外ないと私は思っております。

本村委員 貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 核兵器をなくしていくために、私たち日本共産党も全力を挙げていきたいというふうに思っております。

 続きまして、大西参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほどのお話の中で、能登半島の被災をされた宿泊施設、旅館などの宿泊施設二十九のうち、四施設しか営業できていないというお話がありました。

 復旧復興、なりわいの再建支援ということで、私たちは、十分の十、もう支援をするべきだということを最初の段階から申し上げております。また、債務の減免なども主張しておりますけれども、被災をされた宿泊施設、旅館などの宿泊施設が早期に営業できるようにするために必要な支援、具体的に是非教えていただければというふうに思っております。

大西公述人 どうもありがとうございます。

 様々、なりわい補助金とかを今頂戴しております。ただ、規模的に大きな旅館の施設も多いので、やはりその絶対額が足りない、でも、なかなか新しい制度をつくることができないというところで苦慮しております。

 建物だけでなくて、護岸がやられてしまったんですね。やはり、護岸の工事が終わらなければ建物にも着手できない。そうすると、やはり期間が一年とかでは済まなくて、二年、二年半というふうにかかっていく。その間の、今までいた雇用者がなかなか維持できない。弊社なんかも六人ぐらい社員を預かったんですけれども、やはりそういう中でも能登エリアをこれから離れていくという方がかなりおられました。

 そういう意味では、本当に息の長い戦いになっていくので、是非とも皆様に忘れないでいただきたいというか、東日本大震災のときも、実は、大震災が起きて数年間で倒産というのはほとんどなかったんです。一番厳しくなったのは五年後なんです。なので、本当にみんなで支えていかなければいけないというふうに思っております。

安住委員長 本村さん、間もなく時間が参りますので、まとめてください。

本村委員 最後に、河村公述人にお願いをしたいと思います。

 来年度予算、八兆七千億円の軍事費が計上されておりますけれども、軍事費と放漫財政の問題、財政規律の問題について、先生の御意見を是非最後にお伺いしたいと思います。

安住委員長 河村公述人、恐縮でございますが、時間が参っておるので、簡潔にお願いします。

河村公述人 はい。

 御質問ありがとうございます。

 非常に難しい問題なんですね。やはり経費のところは少し精査の余地はあるかなと思いますけれども、ここを全く出さずに乗り切れるかといったら、そういう国際情勢では決してないと思っております。財政健全化と、防衛費を確実に必要な分だけ確保することをいかに両立させるか、工夫のしどころだと思っております。

本村委員 ありがとうございました。

安住委員長 次に、北神圭朗君。

北神委員 有志の会の北神圭朗です。

 先生方、本当に今日は勉強になりました。ありがとうございます。

 また、田中先生におかれましては、ノーベル賞の受賞、心からお祝いを申し上げたいと思います。

 それで、私は主に物価の話をお聞きしたいというふうに思いますので、ほかの先生方は失礼ですけれども、渡辺先生と、場合によってはちょっと河村先生にもお願いしたいというふうに思います。

 まず、デフレとかインフレという言葉がかなり政治の世界あるいは評論家の世界では濫用されていて、実際は、物価の継続的な上昇がインフレであり、継続的な下落がデフレである。必ずしもそれが景気に結びつかないということだというふうに思います。

 先生のおっしゃっていることは、主に、私の理解では、本当に価格メカニズムが機能していない状態は異常だと。確かに私も同感ですけれども、市場経済の最も重要な指標であり、調整弁である賃金と物価が全く動かないというのは異常な状態だということは全くそのとおりだ。ただ、今、最新の数字でいうと、消費者物価指数、総合で四%台に上がっていますし、そういう状況の中で、私は個人的には日本銀行も少しずつやはり金利を引き上げていかざるを得ないというふうに思っています。それはやはり、物価のことももちろん大事ですけれども、経済というのが非常に重要であると。

 まずお聞きしたいのは、今、二〇二三年ぐらいまでは、輸入物価によって主に物価上昇している。残念ながら、日本銀行の大規模緩和というよりは、輸入物価の上昇というのが非常に大きかった。ところが、二三年ぐらいから、GDPデフレーターで見ると、かなり、指数でいうと一〇一から一〇九ぐらい、今までずっと一〇一ぐらいの水準だったのが一〇九ぐらいに上昇している。これは、要するに、国内発の物価上昇になっていて、日本銀行さんの説明によると、サービス業の中でやはり賃上げがかなり利いてきている、そこで価格転嫁が起きて物価上昇になっているというのが今の物価上昇のかなり大きな要因だと理解しております。

 物価上昇が経済に結びつくためには、やはり実質賃金というものが継続的に、二、三か月じゃなくて、継続的に上がらないと意味がない。ところが、今の賃上げによって価格転嫁が行われて物価が上がっているのであれば、これはなかなか継続的な実質賃金というのは難しいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

渡辺公述人 現状の起きていること、特に実質賃金回りのことでいいますと、おっしゃるとおりでございまして、物価が上がる方が先に動いているわけであります。それを追いかけようとして、春闘も含めてですけれども、賃上げをするということが起こっております。

 なかなか、物価の上昇の方は、ここも御指摘のとおりで、最初は輸入物価の上昇でしたので誰の目にも明らかですけれども、もう少し内生的な、日本の国内でのインフレに変わってきておりますので、そうすると、それをしっかりと賃金に織り込むというのがまた難しいということが起きております。

 なので、やはり物価が上がることを何とかして賃金に織り込ませるというこのやり方が今のところまだうまくいっていないので、結果的に実質賃金がしっかりと上がらない、こういうことになっているかと思います。

北神委員 もっと言うと、今のところうまくいっていないという話ですけれども、論理的に考えますと、賃上げ、価格転嫁、物価上昇というこの流れでいくと、なかなか永遠に実質賃金がプラスにならないというのを私は懸念していて、そういう意味では、少なくとも為替の方を動かして、もう少し物価を収めないと、二〇二四年のGDPというのは〇・一%かな、潜在成長率が〇・五%ですから。それで、分析をすると、やはり家計消費というものが一番引き下げている要因になっている。

 だから、消費を盛り上げるためには、やはりもう少し物価を落ち着かせないといけないというふうに思っていますが、いかがでしょうか。

渡辺公述人 ここも非常に大事なところで、是非先生方には御理解いただきたいんですけれども、日本の最大の問題は、物価が高いことではないというふうに私は思っています。賃金が低いことだと思っています。

 なので、やるべきことは、物価を抑えるのではなくて、賃金を上げるということを頑張るべきだというふうに思いますし、例えば、一年前、二年前ですと、なかなかこの意見は皆さんに聞いていただけなかったんですけれども、この予算の資料の中でもしっかりとそこは今回は書かれておりますので、随分と、理解の仕方、賃金がまずいんだ、賃金が伸びないのがまずいんだ、物価が上がり過ぎているんじゃないんだ、ここが多くの方が御理解いただけるようになってきている、そこは非常に喜ばしいことだというふうに思っています。

 それから、もう一度実質賃金の話に戻りますけれども、実質賃金については、確かに、今は物価との間のイタチごっこが続いているというのが表面的に見ては起きていることなんですけれども、私は基本的には人手不足というものが一番大きなファクターだというふうに思っていますので、それが持続性がある以上はどこかで実質賃金が上がり始めるんじゃないか、要は、人の労働の供給というものは、名目賃金でなく実質賃金の関数ですので、もっと働こうかどうかというふうに考える、その意思決定の源にあるのは実質賃金です。

 名目賃金が上がっていても、物価がもっと上がっていたとすれば、実質賃金が下がったとすれば働こうとはならないわけですので、そうすると、人手不足である以上は必ずどこかのタイミングで実質賃金が上がってくるというふうに思いますし、今はそうなっていませんけれども、時間の問題であるというふうに思っております。

北神委員 逆に言うと、この人手不足というのは、何も政策ではなくて、日本の社会経済が置かれている構造的な要因でありますので、政策的には、日本銀行も、いわゆるコストプッシュインフレになっている為替要因というのを少なくとも落ち着かせていくこともあり得るんじゃないかと思うんですが、先生の論文とかを読んでいると余りそれは消極的なお考えのようですけれども、いかがでしょうか。

渡辺公述人 日銀のいろいろなステートメントを見ても、もちろん円安は問題視しているわけですけれども、しかし、円安そのものが問題ではなくて、やはり円安が価格に転嫁されて、それでCPIとかそういうものは上がっていくというところが問題なわけで、現状そういう面がありますので、だからこそ、今も日銀は利上げを続けているんだというのが私の理解でございます。

 なので、必ずしも円安は放置されているとは私は思っておりませんで、円安に伴う物価の上昇というところについてはしっかりと日銀は抑えようとしていますし、結果的にそこで金利が上がれば、多少なりとも円安も抑えられるというふうに思っております。

北神委員 河村先生、ちょっと今日の講演とは違うんですけれども、日本銀行は、しゃべっていると、自分たちは為替なんかそんなものは参考にしないんだということをよくおっしゃるんですよ、要するに金融政策を考えるときに。

 そこを、私は、為替なんかは一番、少なくも二〇〇〇年から見ると、日本の物価上昇率というのはかなり為替に、というか一番大きな要因じゃないか、私の理解では為替要因があると思うんですが、なぜ日本銀行は為替ということを言いたがらないんでしょうか。ちょっと、分かればでいいです。

河村公述人 オープンエコノミー、開放経済の中で、日本経済ぐらい大きな規模がある国が、為替レートを目標にして金融政策をやるというのはうまくいかないんですね。小さい国だったら、スイスみたいな国とか、何かその辺、そういうところの国だったらそれでもうまくいくときがあるんですけれども、決してそうではないからということでやっていないんじゃないかなというふうに思います。

 でも、黒田総裁の時代と植田総裁の時代、ちょっと言い回しは変わってきたんじゃないかなというふうには思います。

北神委員 ありがとうございます。

 確かに、適正な為替レートを目指すというのは私は邪道だと思うんです。邪道というか不可能だと思うんです。

 しかし、日本銀行は物価の番人であるわけで、為替というものが一番影響するのであれば、当然そこを考慮に入れないといけないと思いますし、アベノミクスで一番価格が動いたのは為替と株、債券ですから、むしろ、そっちの方に日本銀行の影響が一番強い、実際の実体経済の方に余り影響がなかったので、そういう御意見だけ申し上げます。

 もし何かありましたら。要するに、為替レートの適正な水準を目指すんじゃなくて、物価に対する影響という意味ではやはり為替を考慮に入れるべきだというふうに思うんですが、いかがでしょうか。

河村公述人 ちょっと、最初の認識のところで先生と私で意見が違うところがあって。

 先生、市場経済の調整弁が賃金と物価だとおっしゃったんですけれども、私は、賃金はどっちかというと結果的についてくるもので、物価だけじゃない、もう一つあると思います、大事なもの。金利です。そこを長年異常な低水準に抑えつけてきた。

 しかも、長期金利というのは、中央銀行は短期金利はコントロールが完全にできるんですけれども、長期は普通はできないというか、いろいろな見方が入って反映された上で長期金利が決まってきて、それが調整弁になって市場メカニズムが働いて、健全な産業が残っていって成長力を牽引してという形で賃上げもついてきてというふうになるのが健全な市場メカニズムの姿。だけれども、そこをちょっと軽視してきたのが大分この国にとって問題だったんじゃないか。

 為替市場も、もうここも究極的には国が抑え切れないところなんですね、冒頭でも申し上げましたけれども。もう市場参加者が違う見通しを持って固まられたらとてもじゃないけれども勝てない、そういう評価がやっぱりある意味出てきているところがあるわけですから。

 ただ、今総裁が替わられて、そんなに全然、為替を無視しますともおっしゃってもいないし、やはりそこはきちんと見ながら、何が、やはり物価へのストレートな影響もありますけれども、それだけじゃないところもあると思いますから、見ながらやっていっていただくのが大事じゃないかと思っております。

北神委員 もう終わりの方になりますけれども、渡辺先生にもう一回お聞きしたいのは、ですから、先生は、今政府が掲げている賃金、物価の好循環というものがいずれは、特に人手不足があるので実質賃金も改善していく、それで、そこで消費が盛り上がっていくだろうというお見立てだというふうに思いますけれども、私はかなり、二三年から国内の賃上げが価格転嫁されて物価が上がっている状況では、なかなか実質賃金というのは、そこだけ見ると難しい。

 これはあくまで理論的な話かもしれません、そこをお聞きしたいんですけれども、本来は、労働生産性の上昇によって賃上げをする、これは言うはやすしだというふうに思います。少なくとも、企業利益の圧縮によって賃上げをすべきではないかというふうに思うんですが、そうすると実質賃金の方がプラスになりやすいと思うんですが、いかがでしょうか。

渡辺公述人 先生が先ほどから御質問の、なぜ実質賃金が上がっていかないのか、賃金の方が物価の後追いになっている理由は何かということだと思いますけれども、私はこうだというふうに思います。

 基本的に賃金は大きな流れは春闘で決まるわけですけれども、全てではないですけれども、やはり春闘が非常に大きな影響力を持つわけです。その春闘はどうやって決めているかというと、過年度CPIと言いますけれども、過去の、一年度前の、例えば今年の春闘であれば二四年度のCPIがどうなっていたか、物価がどうなっていたかというのを踏まえて二五年の、今の三月の春闘というのが闘われている。過ぎ去ったCPIを見て今年のあるいは先々の賃金が決まっているというのが構図であります。ここに先生がおっしゃっているようなことの一つの原因があるかなというふうに思います。

 なので、そうではなくて、先々の物価を見て、例えば二五年度、二六年度は物価がこうなりそうだから、だから賃上げはこうしたいとかというこっちの発想に切り替えていけば、後追い関係というものが消えていくんじゃないかというふうに思います。

 実際に、連合の中では、過年度CPIという考え方を少し見直した方がいいんじゃないかと。かつては物価も賃金も動きませんでしたので、過年度であろうが何だろうが関係なかったんですけれども、今は結構な、そこをどこを見るかによって影響が出てきますので、もう少し丁寧に、どこの物価を見るのか、どこの物価を賃金のベンチマークにするのかということを議論しようというふうに変わってきているかなというふうに思います。

 なので、先生御懸念のようなことはよく分かりますけれども、一つは、そういう過去のしがらみじゃないですけれども、過去のやり方、特にデフレ期のやり方というのが今でも色濃く残ってしまっているので、なかなか後追い的な賃金の上昇というところから抜け出せないんだというふうに思います。

安住委員長 北神君、時間ですのでまとめてください。

北神委員 はい。

 では、終わりにしたいと思います。大変勉強になりました。ありがとうございました。

安住委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時三十分から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四十分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

安住委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 令和七年度総予算についての公聴会を続行いたします。

 この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和七年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。

 御意見を賜る順序といたしましては、まず鈴木準公述人、次に清水秀行公述人、次に末冨芳公述人、次に秋山正臣公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 それでは、鈴木公述人にお願いいたします。

鈴木公述人 大和総研の鈴木準と申します。

 このような機会をいただきまして、大変光栄に存じます。

 令和七年度総予算に関する御審議の参考としていただきたく、意見を述べさせていただきます。

 まず、経済状況について申し上げます。

 配付資料の一ページですが、私どもでちょうど先週金曜日に公表しました経済予測では、実質GDP成長率は暦年ベースで二〇二四年の〇・一%に対し、二五年一・五%、二六年一・一%と予測しております。年度ベースでは、二四年度が〇・七%、二五年度が一・三%、二六年度で同一・一%と見込んでおります。

 二ページが需要項目別の内訳などでございますが、民間消費は、賃上げ継続による所得環境の改善や高水準の家計貯蓄などを背景に、緩やかな増加が続くと見通しています。

 企業設備投資は、海外経済の不透明さの強まりなどに注意は必要ですが、実質金利がマイナスという緩和的な金融環境が当面継続する中で、コロナ禍などで企業が先送りしてきた更新投資や能力増強投資などが発現すると見ています。

 輸出ですが、世界経済の成長などを背景に、財輸出は総じて堅調な推移が続くと見られます。サービス輸出はインバウンド需要の拡大が続くと見込まれます。

 三ページにお移りください。

 個人消費について少し詳しく見たもので、左図は個人消費の長期的な均衡値の推計結果と実績の実質個人消費です。

 均衡値は、コロナ禍の際の給付金で可処分所得が増加した二〇年をピークに二三年まで物価上昇によって低下を続けたのですが、賃上げが加速した二四年に反転しています。二四年十―十二月期の一人当たり実質雇用者報酬は三四半期連続で前年比プラスとなり、二五年一―三月期以降も高水準の賃上げ継続などによってプラス圏で推移する見込みです。

 四ページに御覧いただきますように、二二年から二三年に実質賃金が前年割れした背景には、大幅な円安、資源高に伴う交易条件の悪化や労働分配率の低下がありましたが、こうした影響は既に一巡しています。今後、生産性を向上させれば、それが実質賃金の上昇につながるという状況を今迎えていると見ております。

 そして、五ページが今年の賃上げの予測です。

 人手不足の深刻化などを背景に、春闘では前年に続いて高水準の賃上げ率となる公算が大きく、定昇込みの賃上げ率は予測モデルの推計で四・二%ですが、その他環境を勘案しますと、二四年並みの五%程度、ベースアップ率は三・五%程度と想定しております。

 六ページでございますが、GDP統計から計算される一人当たり実質雇用者報酬は、二四年四―六月期に十四半期ぶりにプラス圏へ浮上しますと、十―十二月期には同前年比二%まで加速しました。一人当たり実質雇用者報酬は、二六年度にかけて労働生産性上昇率並みの一%程度で推移すると見ております。

 七ページでございますが、名目賃金上昇率がインフレ率を上回っていけるかということで、物価です。

 足下でのエネルギー関連の負担軽減策も考慮した上で、CPI総合、緑の線、凡例中の角括弧内でございますが、二四年度、二五年度はいずれも前年比三・一%、二六年度で二%の増加を見込んでいます。

 物価の基調をより的確に把握できる、生鮮食品、エネルギーを除くCPI、これは新コアコアCPIと申しますが、これは赤い折れ線、凡例中の丸括弧内でございますが、二四年度二・二%、二五年度二・三%、二六年度二%の見通しです。足下で一部食料品の価格高騰が続いておりますが、そうした動きは徐々に落ち着くと見ております。

 他方で、人件費の増加分を販売価格に転嫁する動きは継続しておりますので、賃金と物価の循環的な上昇が定着することで、いよいよ基調的な物価が前年比二%程度で推移すると見込んでおります。

 八ページが前半のまとめでございますが、今、長期に続いた賃金と物価が停滞するデフレが、これは人々の社会通念も変わってきたことで、ようやく終わろうとしていると思います。

 それとタイミングを合わせ生じている、構造的な人手不足を奇貨とした賃上げ圧力が強まっています。女性や高年齢者の就業率もかなり上昇しましたので、賃上げ圧力が弱まることはないと思います。転職市場にしろ新卒市場にしろ、賃金を上げないとよい人材を雇用できない、こういう経営状況になっております。

 しかし、生産性が向上しなければ、賃上げは持続的、構造的なものとして定着いたしません。生産性を向上させる一丁目一番地は、投資をして、一人一人が使える資本を増やすことであります。

 この点、日本は、機械や建物といった実物の資本が陳腐化していることに加えまして、ソフトウェア投資や人的な資本の不足に見舞われています。今の時代、生産性を上げる上で、そうした無形の資本が必須かつ有効になっております。

 賃上げは労働の値段が上がるということですから、資本の値段が相対的に下がる。今後は、投資を拡大させられるかどうかが焦点ということになります。

 また、関連して九ページですが、今、賃上げをしても、社会保険料が増えてしまって可処分所得が増えないという問題が大きい状況です。働き手の手取りを増やす必要があるという点では、社会保障給付全体を捉えた社会保障改革も重要です。

 さて、十ページからが財政の話であります。

 左図は、OECD加盟各国について、縦軸に示した直近十年間平均のPB、プライマリーバランス赤字GDP比が大きい国ほど、横軸に見る債務残高GDP比が大きいという当然のことを示しております。日本はそれが最も深刻でありまして、多くの国はPBが循環的に推移していますが、日本は恒常的に赤字、あるいは、その循環の位置が平均的に赤字側にあるということであります。

 債務が大きければ、当然に利払い費も大きいのが通常の姿でありますが、右図で御覧いただけますように、日本の現在は異常な状況です。周知のとおり、日本では一六年秋から二四年春まで、金融政策の一環として長期金利が低位に操作されてきましたので、債務残高の大きさの割に利払い費が非常に小さい。

 利払い費は、過去に計上した赤字を原因とするセカンダリーな赤字です。今後、経済の再生に伴って金利は上昇していきますので、これからはプライマリーの赤字に加えて、セカンダリーな赤字をダブルでマネージしなければならないということになります。

 十一ページは、内閣府から示されている中長期試算の直近版です。

 半年に一度改定されるこの試算に対しましては、PB黒字化がいつなのかという点が注目されがちで、今回も二五年度の黒字化目標は達成できず二六年度になると言われておりますが、以前は二〇年度までに黒字化させると言っておりましたし、更に遡れば、二〇一一年度までにとも政府は言ってきました。

 もちろん、リーマン・ショックやコロナ禍がありましたが、言ったことがずっと実現されませんと、国民はトータルとして政策に全幅の信頼を置くことができない。成長戦略をやるんだと言っても、家計の将来設計や企業経営としてはリスクを取りにくいということが生じます。

 そもそも、求められていることは、どこかで一度PBが黒字にタッチすればよいということではなく、高齢化が厳しくなる二〇三〇年代を乗り越えられるような財政構造をつくることでありますので、ある年の、単年度の収支尻だけが問題ということではありません。

 また、右の図で、成長移行ケースでは公債等残高GDP比の低下が描かれておりますが、これは、現在発行されている国債の金利が低いからにすぎません。三四年度よりも先を描けば、低下を続けるとはほぼ考えられず、恐らく再び上昇に転じると見るのが一般的だろうと思います。

 さらに、十二ページが、これまでと現状に関する私なりの認識であります。

 PB赤字の常態化が債務残高の累増を招いてきたわけですが、それは、産業も、地域も、家計も、仮にそれが可能であっても、自ら工夫して自立せずとも済むような経済社会構造をつくってしまっているのではないか。また、現状を続ければ、財政の余力がなくなって、どこかで政府サービスの大幅な削減や大増税、インフレ、大量失業などを招くのではないかという不安や閉塞感をもたらしている。

 それは企業経営者も同様で、国の政策が全体として信任できない中では、国内での大胆な投資には踏み切れない。その結果、当然に経済が長期にわたって低迷し、新陳代謝が進みません。経済が好転しませんので、金融は長期に緩和せざるを得ず、経済の血液である金融の機能も低下しました。金利が低ければ、その限りにおいて財政は持続可能であるように見えてしまいますので、財政規模はますます膨張する。このような構造が定着してしまったのではないか。

 先行き、この構図が当面は続くかもしれませんが、その間は人々の所得が十分には増えず、しかも深刻なリスクが蓄積し続けます。いずれカタストロフィーが起きれば、想像を絶する負担と混乱を人々にもたらしかねません。

 しかし、私は、まだ間に合うと考えておりまして、そうはならないように、必要な改革を歳出歳入の両面で鋭意に進めていけばよいと考えているところです。

 十三ページが、持続可能な財政構造を確立する条件です。上段にある恒等式が財政の安定性をチェックする上でしばしば示されますが、仮に名目実効金利、これは政府債務の利回りでありますが、これと名目GDP成長率が等しければ、右辺第一項は消え、第二項だけが残りますので、PBを均衡させれば、債務残高GDP比は上昇しません。別な言い方をしますと、名目実効金利が名目成長率より高ければ、PBを均衡させても債務残高GDP比は上昇するということです。

 これはドーマー条件と呼ばれるもので、理論的な議論には踏み込みませんが、左図で実際の関係を見ますと、九〇年代以降のほとんどの時期で、GDP成長率の方が国債の利回りを下回っており、財政安定化のための条件は満たされておりません。もっとも、コロナ禍の時期を除くと、近年は、成長率の方が高い状況になっています。ただ、これは先ほど申し上げたように、今ある国債残高は低金利の下で発行されたものであるということにすぎません。

 また、国、地方の債務残高GDP比の水準に応じて高債務状態と低債務状態という二つのグループに分けた、私の同僚の分析によりますと、現在の日本のような高債務状態の場合には、金利の方が高く、ドーマー条件が満たされにくい。その分、PBの黒字化の維持が必要になります。

 では、PBの黒字化をどうすれば達成できるのかを考えたのが、十四ページです。

 詳細な説明は省略しますが、経済が成長して税収が弾力的に増えるという要素を考慮すると、確かに潜在成長率を引き上げればPBは改善します。ただ、PBは、経済成長率の向上に伴う歳入歳出の変化だけでなく、経済とは直接関係のない高齢化等の要因によっても大きく影響されます。

 結論としては、潜在成長率の引上げは必要ですが、それだけでは不十分で、歳出の効率化が不可避という至極当然の結論であります。

 歳出の効率化を進められるかどうか、先ほどの内閣府の中長期試算を題材に考えたのが、十五ページ、十六ページです。

 十五ページ左上、過去投影ケースでも、社会保障関係費や地方交付税等を名目額ベースである程度増やしていますが、左下、生活水準、これは人口一人当たり名目GDPで、ここでは実質化したベースで見ておりますが、増やしていません。さらに、成長移行ケース、右上、名目額で歳出をかなり増やしますが、右下、生活水準で実質化した社会保障関係費を相当減らすという姿になっています。

 何を申し上げたいのかというと、高齢化が一層進展する中で、実質的な歳出を増やさない、ましてや減らすことができるかは、よほど歳出改革への取組が求められる話だということであります。

 過去投影ケースではPBが余り黒字化しないが、成長移行ケースではPBが黒字化するというのは、何も経済の想定が楽観的だからではなく、積極的な歳出抑制が暗黙に含まれているからだと思います。経済が成長してもしなくても、歳出改革は不可避であります。

 十六ページは、さらに、金利負担を含めてイメージしやすいように名目の実額で整理したものです。

 直近の実績値である二三年度を起点に十年後の三四年度の姿を、右の成長移行ケースで御覧いただきますと、一般会計の利払い費は七・四兆円から二十四・六兆円と、十七・二兆円も増加します。

 下半分にある中央政府のPB赤字が十八・五兆円から〇・四兆円まで縮小しますが、金利負担が増加するため、財政収支は二十二・五兆円の赤字が十八・六兆円の赤字までの縮小にとどまります。

 上半分に戻っていただいて、一般会計の利払い費の増加額十七・二兆円に対し、税収は三十兆円増加します。ここで増税は想定されていませんので、この限りにおいては、経済成長に伴う税収増で利払い費増を賄うことができるように見えます。

 しかし、他方で、利払い費以外の政策的経費であるPB対象経費が九兆円しか増えていません。そのGDP比は一七・二%から一三・七%へとかなり実質的な削減が行われており、実態としては相当の歳出削減が前提されています。実質所得が増加し、物価が上昇し、高齢化がますます進む中で、政府の歳出をここまで抑制するには政策的、政治的努力が必要だと考えます。

 首尾よく歳出削減が行われなければ、結果的に国債発行を拡大させざるを得ません。また、資金には色がついておりませんが、下半分の中央政府ベースで見て、三四年度にはPBがほぼ均衡する中、財政収支の赤字と純利払いが同規模であるということは、利払い費のほぼ全てが公債発行によって賄われている状態です。

 これは、債券市場において何かショックが起きた場合、利払いのための国債発行が更なる利払いを招く、利払いの雪だるまが発生する可能性を高めている状態であることが想像されます。

 無用な財政プレミアムの発生を回避するためにも、着実な歳出改革をどう進めるかがまさに課題だと思います。

 マクロ的なビューをもう一点、十七ページも御覧ください。

 誰かの赤字、借金は誰かの黒字、資産ですので、だから財政赤字は大した問題ではないという議論を時々耳にしますが、二つの意味で賛同できません。

 第一に、民間、特に家計の貯蓄は所得を生み出す主体ではない政府に対する債権ではなく、民間企業に対する債権、民間企業の投資に向かわせなければならないということです。

 第二に、政府債務問題というのは政府の債務残高と民間の資産残高が両建てで膨脹することであって、国債に対するプライシングを考えれば、両建てでの膨張がいずれ問題にならないはずがないということは歴史が証明していると思います。

 ただ、政府の資金不足を節度があるレベルに縮小させるには、企業の設備投資が拡大し、家計の消費が活発化することが同時に実現されなければなりません。企業や家計それぞれに求められることはありますが、政府にも政府として歳出改革に取り組んでいただく必要があります。

 社会保障、社会資本整備、地方財政、文教、科学技術など、あらゆる歳出分野の費用対効果を検証しながら改革を進め、同時に、民間委託や官民連携など、民間に委ねた方がよいことは民間に移していくということも重要だと考えます。

 具体的に何をすればいいのかについて、本日個別には議論できませんが、十八ページから二十一ページにかけましては、各府省庁が相当の時間をかけて検討され、また、多くの議論の蓄積を踏まえて打ち出されているプログラムであります。やるべきことは既に分かっているということであります。

 もちろん、その必要がある事柄については、国会での御議論もいただきながら、自治体や民間の多くの方の御理解をいただきつつ、スピード感を持ってこれらプログラムの事項を進めるということが財政の持続性確保になると考えております。

 最後、二十二ページは結びであります。

 第一に、経済、財政、社会保障を一体として相互に連携させながら改革を進めることが必要だと思います。

 第二に、その改革というのは、教育、学び、就業、結婚、出産、育児など、人々の希望を改革のドライバーとした、ウェルビーイングの高い社会の実現という視点が重要だと考えます。

 第三に、歳出改革におきましては、経常的支出が毎年の税収などで着実に賄われるよう改革に取り組むこと、投資的支出に関しては、企業の投資の呼び水にもなるよう、成果を検証しながら歳出歳入を多年度でバランスさせることを基本にすること、社会保障などの移転的支出に関しては、現役世代の負担増を食い止めるために、公的、公共サービスの提供体制の徹底した効率化と、全世代での負担構造の改革を急ぐことの、以上が重要だと考えます。

 第四に、全ての歳出についてデータに基づくEBPMを強化し、財政支出の効果を高めるサイクルを確立していただきたいと思います。

 以上、私の公述とさせていただきます。御清聴大変ありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

 次に、清水公述人にお願いいたします。

清水公述人 ただいま御指名をいただきました連合の清水でございます。

 本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝を申し上げます。

 連合は、働くことを軸とする安心社会を目指しており、本日は、働く者、生活者の立場から意見を申し述べます。

 それでは、初めに現下の経済、社会の課題認識について申し述べます。

 我が国の経済は、高い水準の賃上げと物価上昇を背景に、デフレからの完全脱却が視野に入ってきましたが、少子高齢化、格差の拡大と貧困の固定化などの構造課題に適切に対処しなければ再びデフレ状態に戻りかねません。ようやく回り始めた経済の好循環を確かなものとしていくには、所得再分配機能の強化と社会保障と税の一体改革による重層的なセーフティーネットの構築など、誰もが安心、安全を実感できる社会の実現とともに、雇用の安定と公正な労働条件の確保の下、適正取引の推進など賃上げを継続できる環境整備と、DX、GXなどへの積極的な投資が必要であります。

 なお、これらの政策への十分な予算措置は必要ですが、一方で、歳出額は拡大をし続けています。持続可能な社会を次世代に引き継ぐためにも、中長期的な財政運営の監視、評価を行う独立財政機関を設置し、財政規律の強化と歳出構造の不断の見直しに着手する必要があることを冒頭申し述べておきたいと思います。

 さて、連合は、二〇二五春季生活闘争において、動き始めた賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に乗せ、新たなステージを定着させていくことを目指していますが、最大の課題は、雇用労働者の七割が働く中小企業と、四割を占めるパート、有期、契約などで働く仲間の賃上げであります。

 資料の三ページを御覧ください。

 二〇二四闘争では三十三年ぶりの五%台となる高水準の賃上げを実現しましたが、中小組合は四%台にとどまり、その差は連合結成以来最大となりました。加えて、物価の高止まりが家計を圧迫しており、一年前と比べてゆとりがなくなってきたとの回答が五割を超えています。

 次に、資料の四ページを御覧ください。

 中小組合の賃上げの実現は、適正取引と適切な価格転嫁が鍵となります。二〇二三年十一月に政府が労務費の転嫁指針を示したことは大きな前進ですが、その実効性には課題があります。

 左の円グラフでは、全く転嫁できずとの回答がいまだに二割を超えております。コスト全般の転嫁率については四九・七%にとどまっております。右のグラフのとおり、価格転嫁ができている割合が高いほど、受注側となる中小企業の賃上げ率も高い傾向が見られます。

 なお、適切な価格転嫁は民間だけではなく公共分野でも課題ですので、政府には、官公需の発注者である地方自治体への労務費の転嫁指針の周知徹底と財源確保、医療、介護や公共交通機関など公共サービス分野への浸透を求めたいと思います。

 また、適正な価格転嫁と取引の適正化を進めるためには、下請法の改正も重要であります。今次国会において、企業取引研究会のまとめに沿って必要な法改正が行われることを求めたいと思います。

 次に、雇用形態間の賃金格差の是正も重要であります。

 連合の加盟組合では、組合員であるか否かにかかわらず、同じ職場で働く仲間の賃金が働きの価値に見合った賃金となるよう、要求、交渉をしております。政府には、労働組合のない職場においても同一労働同一賃金が実現されるよう、企業への指導を強化するとともに、法定最低賃金の大幅な引上げが実現できる環境整備を期待をするところでございます。

 次に、税制改正関連法案について述べます。

 山積する構造課題を解決しつつ安定的な税収基盤を確保するには、税体系全般の抜本的な見直しが必要であり、修正案を三点申し述べます。

 一点目は、所得税の課税最低限の引上げです。

 所得税の課税最低限の引上げは、連合も今年度の税制改正要望として要請してまいりましたので、確実な引上げを求めたいと思います。具体的な引上げ額については、自民、公明、国民の三党協議を見守りたいと思いますが、所得制限を設ける案は賛成できません。物価上昇の影響は低所得者ほど強く受けるものの、基礎控除が憲法二十五条に基づく生存権の担保であることを踏まえれば、所得額で控除額に差を設けるべきではありません。二千四百万円以上は減額する現行法も見直しが必要と考えます。さらに、複雑な制度設計は、税に対する国民の信頼を損なわせる懸念があり、納税者の立場に立った簡素で分かりやすい制度とすることを求めたいと思います。

 二点目は、低所得者の負担軽減策です。資料の五ページを御覧ください。

 継続した物価上昇は、低所得者ほどその影響を強く受けています。連合は、給付金ではなく、マイナンバー制度を活用した正確な所得の捕捉を通じて、給付つき税額控除の仕組みを構築すべきと考えております。特に、所得税の非課税世帯には、食料品などの生活の基礎的消費にかかる消費税の負担分を給付する消費税還付制度、通称税バック制度と呼んでおりますが、それを導入して負担軽減につなげるべきと考えています。

 三点目は、ガソリン価格の高騰対策であります。資料の六ページを御覧ください。

 補助金の縮小、廃止により、ガソリン価格は百八十円台で高止まりし、地方の暮らしや中小企業の経営に大きな打撃を与えています。五十年余にわたって課税をしている当分の間税率は、自民、公明、国民の三党合意において廃止するとされましたが、具体的な実施時期は明確になっていません。

 まずは、立憲民主党が当初予算案に対する修正案で示したガソリン、軽油価格の引下げの実施を求めたいと思います。その上で、ガソリン価格を引き下げる恒久的な措置について、三党合意に基づき、早急に結論を得ることを求めたいと思います。なお、その際、税制全体の見直しの中で、地方財政に影響を及ぼさない代替財源の確保も必要であると考えます。

 次に、災害からの復興再生と防災・減災対策の充実について述べます。

 能登半島を始め、災害からの復旧復興を進める上で重要なのは、被災者が安心して地域に戻り、暮らせる町づくりの推進であり、何より大事なのは、生活や就労の基盤となる住宅の確保であります。空き家の積極活用はもちろんのこと、公営住宅やセーフティーネット住宅の整備により、住宅確保の要配慮者である被災者への住居確保を求めたいと思います。

 また、災害のたびに女性や子供に係る課題が繰り返し指摘をされております。特に、災害時に女性や子供が暴力などの被害に遭うリスクが高まることへの対策として、避難所における安全確保、防災体制や生活環境を整備するための財政支援を求めたいと思います。加えて、政府が第五次男女共同参画基本計画などで示したとおり、防災担当女性職員の増員を始め、地方公共団体が災害対応において男女共同参画の取組が進められるように、国としての支援を求めたいと思います。

 次に、社会保障制度について三点申し上げます。

 一点目は、年金の制度改革についてであります。

 資料の八ページを御覧ください。昨年末の年金部会の取りまとめでは、被用者保険の適用拡大について、企業規模要件の撤廃で意見が一致していたにもかかわらず、撤廃時期を後ろ倒しにする方向であると聞いていますが、個人事業主に関わる業種要件を含め、二〇三〇年までの撤廃を求めたいと思います。

 また、マクロ経済スライドの調整期間の一致については、国民年金の拠出期間の延長を断念したこと、給付水準が低下する厚生年金の受給者への影響といった課題があり、議論が不十分な中での調整期間の一致は行うべきではないと考えます。

 なお、第三号被保険者制度は、年金部会の議論の整理に第三号被保険者制度をめぐる論点についての国民的な議論の場が必要とされており、議論の場の早期の設置を求めたいと思います。

 二点目は、医療法の改正についてであります。

 切れ目のない医療提供体制の確保に向けて、医師の偏在を是正することは重要ですが、医師不足の地域の医師への手当の増額財源を保険者からの拠出で賄うとしています。保険給付との関連性に乏しい施策の財源に保険料を充てることは問題であり、修正を求めたいと思います。

 三点目は、医療、介護、保育など社会保障サービスを担う人材の処遇改善についてであります。

 資料の九ページを御覧ください。厚生労働省の二〇二四年の賃上げの実態調査では、賃上げの改定額、率共に医療・福祉が最も低い結果となっています。令和六年度の補正予算による人材の確保策を着実に進めるとともに、立憲民主党、国民民主党などが上程した処遇改善の法案や立憲民主党の当初予算案に対する修正案などを踏まえ、医療、介護、保育などの分野が魅力ある職場となるよう、更なる処遇の改善策を求めたいと思います。

 次に、雇用、労働条件について二点申し述べます。

 一点目は、今国会に提出予定の労働安全衛生法等の改正案についてでございます。

 個人事業主に対する安全対策や労働者数五十人未満の事業所に対するストレスチェックの義務化など、労働者や曖昧な雇用で働く就業者の保護に資する内容であるとともに、個人事業主に対する労働安全対策が法制化されることで、ILO第百五十五号条約の批准上の課題が解決されることになります。こうした観点も含め、改正法案の早期の成立を求めたいと思います。

 なお、対策の実効性を担保するために、中小企業などへの支援の充実が不可欠であり、労働基準監督署や地方労働局の体制の整備はもとより、産業保健総合支援センターなど関係機関の体制の強化を求めたいと思います。

 二点目は、今国会に提出予定の譲渡担保契約と所有権担保契約に関する民法の改正についてです。

 動産や債権を担保として活用する譲渡担保権等に関するルールの明確化に加え、担保権の実行の際に事業継続が阻害されることがないよう、裁判所による担保権の実行禁止命令等の規定を設けることなど、担保権者に一定の制約を課する内容が盛り込まれたことは、労働者保護に資するものと考えております。

 また、幅広い担保設定がされ得る集合動産や集合債権に対し、担保権者の回収額の一定割合を破産財団に組み入れる義務が課されたことは、労働債権を含めた一般債権の保護の観点から意義があり、制度の実効性を高めるためにも、新たな供託制度による保全対策の強化などに関し、丁寧な審議を求めたいと思います。

 加えて、労働債権は労働者や家族の生活を支える極めて重要なものであり、担保譲渡権に限らず、担保権、質権等、全体に優先される先取特権の創設など、倒産時における労働者保護の強化に向けた検討が必要である点を申し添えたいと思います。

 次に、教育について三点申し述べます。

 一点目は、給特法の改正についてです。

 五十年ぶりに教員の処遇が改善される点を評価し、成立を求めますが、教員の長時間労働の是正に向けた対策は不十分です。労働基準法の第三十七条の適用や労働安全衛生の観点から、在校等時間の位置づけを明確化し、安全配慮義務を課した上で、人事委員会が労働基準監督機関としての職権を行使できる体制を講ずるなど、教員の長時間労働の是正と、教員の福祉と健康の確保に向けた丁寧な審議を求めたいと思います。

 二点目は、大学等の修学支援についてであります。

 今国会に提出された法案は、多子世帯を対象に高等教育の入学金や授業料を減免するとしていますが、全ての子供の教育機会を保障するためには、かかる費用の全面無償化が必要であり、その過程として、まずは中間層を含めた全ての世帯を減免対象とするよう、修正を求めたいと思います。

 三点目は、学校給食の無償化についてであります。

 立憲民主党、国民民主党などが上程した学校給食無償化法案は、連合が求める政策でもあり、成立を求めたいと思います。

 次に、カーボンニュートラルの実現に向けた対応について申し述べます。

 二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、GX二〇四〇ビジョン、第七次エネルギー基本計画、次期地球温暖化対策の計画が閣議決定されましたが、我が国の産業競争力の強化、グリーンで良質な雇用の創出、地域経済の維持向上の観点からも、あらゆる手段を総動員した取組を進めなければなりません。今国会に提出予定のGX推進法及び資源法の改正法案は、日本の脱炭素実現と競争力の強化に資するものであり、成立を求めたいと思います。

 一方で、産業転換に伴う経済、社会、雇用への影響に対しては、公正な移行を実現しなければなりません。政府には、国、地域、産業の各レベルで労働組合を含む関係の当事者が加わる社会対話の場を設置し、課題の深掘りや複数のシナリオによる政策立案プロセスを織り込んだロードマップ作成と十分な予算措置を求めたいと思います。

 次に、持続可能で包摂的な社会の実現について三点申し述べます。

 一点目は、あらゆるハラスメントの防止についてであります。

 今国会提出予定の労働施策総合推進等の改正法案では、ハラスメントを行ってはならないことについて、社会における規範意識の醸成に国が取り組むことが規定されるとともに、カスタマーハラスメントの対策、就職等のセクシュアルハラスメントの対策を雇用管理上の措置義務とするなど、妥当であり、法の成立と実効性の向上を求めたいと思います。特に、実効性の向上に向けては、国によるハラスメント禁止の積極的な啓発活動とともに、消費者庁、警察庁、業所管省庁などと連携した各業界の取組の推進、中小企業の支援などの取組が重要であります。

 あわせて、仕事の世界におけるハラスメント根絶に向けて一定の法整備がなされることから、政府にはILO第百九十号条約の批准のための具体的な検討も求めておきたいと思います。

 二点目は、選択的夫婦別氏制度の導入についてであります。

 一九九六年に法制審議会が法案要綱を答申してから三十年がたとうとしていますが、この間、一向に進捗がありません。自分の氏を名のり続けられるかどうかということは、個人の尊厳や人権に関わる大変重要な問題です。昨年十月には、国連女性差別撤廃委員会より、制度の導入を求める四度目の勧告がありました。旧姓の通称使用の拡大に向けた動きがあることは承知していますが、国際社会で通用しないことはもとより、人権尊重という要請に正面から応えるものではありません。選択的夫婦別氏制度を直ちに導入すべきであります。

 三点目は、国連女性差別撤廃委員会への日本政府の拠出停止についてであります。

 同委員会は、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の履行の確保のための委員会であり、日本からは委員が選出されています。ジェンダーギャップ指数が低位にとどまり続ける日本にとって、根深い固定的性別役割分担の意識や女性差別的な慣行、慣習など、女性に対する差別の撤廃は喫緊の課題であります。

 委員会への拠出停止は、国際社会に対して日本が女性差別撤廃及び人権の尊重に対して後ろ向きであるという姿勢を示すことになります。人権を尊重する国際社会の一員として、政府は国連への通告を直ちに撤回するとともに、条約締結国としての役割と責務を果たすべきと考えます。

 あわせて、差別禁止のスタンダードであるILO第百十一号条約についての早期批准をすべきであります。ILO加盟百八十七か国中、百七十五か国が既に批准している中、日本が未批准であることは大きな問題と考えます。日本が差別を許さない国であることを国内外に示す意味でも、条約の早期の批准を強く求めます。

 以上を申し上げ、私の意見陳述とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

 次に、末冨公述人にお願いします。

末冨公述人 日本大学の末冨でございます。よろしくお願いいたします。

 本日は、このような場にお招きいただき、ありがとうございます。

 私は、来年度予算そして再来年度予算に関わる重要テーマでございます高校無償化制度、高校修学支援制度について意見を申し述べます。お手元の資料を基に進めてまいります。

 全ての高校生への高校修学支援制度拡充の意義と展望。

 私自身は、子供の貧困対策を含む子供政策、そして教育政策を中心に研究を蓄積してまいりました。二〇一〇年に出版しました「教育費の政治経済学」という本以降、特に高校無償化には深く向き合ってきた研究者の一人でございます。

 次のスライドに参ります。本日は、大きく分けまして二つのセクションで意見を述べさせていただきます。

 次のスライドです。全ての高校生への高校修学支援制度の意義。

 スライドの四ページに、その意義を四点にわたってまとめました。

 意義一、所得制限、自治体、設置形態による制限がなく、全ての高校生が支援対象となるという高校修学支援制度の拡充が検討され、実現に移されようとしていることは、大変重要であると思います。

 意義二、同時に、低中間所得層向けの高校生等奨学給付金も同時に拡充されるということも大変意義がございます。なぜならば、全ての高校生と同時に、より支援が必要な高校生への支援拡充が行われることは、我が国の教育政策、子供政策においても誇るべきレガシーとなると判断しているからです。

 意義の三、若者が国から応援されている実感が持てる象徴政策が高校無償化であること。

 意義の四、生徒自身が設置形態にかかわらず行きたい高校に挑戦、選択できる制度改善であること。生徒自身の学ぶ権利の積極的な実現という視点からも評価をしております。

 以降、それぞれの意義について少し詳しく説明をさせていただきます。

 スライドの五枚目。まず意義の一ですが、所得制限、自治体、設置形態による制限がなく、全ての高校生が支援対象となることは、これまでこの国の高校修学支援制度に向き合ってきた研究者たちは歓迎しております。

 まず、現行の制度には、年収五百九十万円を過ぎれば支援額が一気に三十万円弱も減ってしまうという年収五百九十万円の崖、そして、年収九百十万円を過ぎれば受けられる支援がゼロ円になってしまうという年収九百十万円の崖の二つの崖がございました。それが所得制限撤廃によって改善をされるということです。

 あわせまして、大阪府と東京都が先行する形での自治体間格差問題につきましては、私もこの間、都道府県の御関係者の方から大変深い懸念を伺ってまいりました。高校修学支援制度の所得制限撤廃、そして全ての設置形態を包み込む形での無償化ということは大変意義が高いというふうに判断をしております。

 六ページに参ります。

 私自身も従事いたしました文部科学省の平成二十九年度の検証からも、保護者調査からは、相対的な高所得層ですら、七割の方が私立高校の学費に大変負担感を感じておられる。それから、高校や都道府県教委等への調査でも、所得制限というものにつきましては、まず事務が煩雑になる、それ以上に、目の前の高校生たちの間に分断を生んでいるという点から深い懸念が寄せられていたということです。これらの課題が改善されることも大変意義深いことでございます。

 七ページに進みます。

 この間、論点とされてきたことが二つございます。一つが、私立高校を無償化する意義はありますか。そしてもう一つが、高所得層の子供たちを無償化する意義がありますか。

 私自身は、取材等に関しても以下のようにお答えをしてまいりました。まず、全ての高校生を対象とすることは不可欠です。これは、十八歳成年の我が国では、未成年の教育を保障するという意義があると同時に、所得制限のない児童手当、幼児教育の無償化、義務教育の授業料、教科書費等の無償化が既に実現されてきており、さらに、累進課税制度、世代間の負担、受益の公平性の論点から、特に子育て当事者から強い疑問が持たれてきたということです。

 もう一つ、次の論点に参ります。

 公立高校に不合格で私立高校への進学を余儀なくされるケースも常態化してまいりました。日本の高校進学市場の特徴を考えますと、公立高校だけを無償化するという制度は、生徒自身への高校教育機会保障の視点から問題が大きいと判断しております。

 三点目、所得制限という手法には限界があり、資産が考慮されていないということがございます。実は巨額の資産を持つ資産家が、低所得であるために、低所得世帯給付や児童扶養手当、あるいは現行の高校無償化でも手厚い支援を受けている状態であり、所得制限という仕組みが本当によいのかどうかということは、特に未成年の支援に際しては十分に考慮される必要がございます。

 四点目、準義務教育というふうに高校教育は称されますが、進学率が九九%に達する我が国において、親の所得で子供自身の学ぶ権利を差別する所得制限の合理性は極めて低いと判断をしております。

 スライドの八ページ目に参ります。

 意義の二、低中間所得層向けの高校生等奨学金も同時に拡充されることということですが、令和七年度、令和八年度にわたって制度改善がなされた場合、全ての高校生の授業料が無償化されると同時に、低中間所得層向けの授業料以外を支える高校生等奨学給付金も拡充される方針となります。これは、平成二十二年度の高校修学支援制度創設以降初めて、全ての高校生と、より支援が必要な高校生への支援拡充が同時に実現されるという、極めて意義が高いことなのです。日本国憲法、教育基本法における教育の機会均等を、公正原理、エクイティーですね、それぞれの状況に応じた平等を実現するという意味において、我が国の憲政史上においても大変な意義があることであるというふうに考えます。

 ただし、九、十ページに参りますけれども、特に低所得層向けの支援制度の拡充に当たりましては、授業料以外にも、入学時の納付金、あるいは授業料以外の、例えばですけれども、教科書費や学用品、高校のデジタル端末等の負担が年々重くなっています。特に公立高校の方が重くなっているわけです。こうした実態を踏まえて制度改善をしていただきたい。

 十ページに示しましたように、低所得層の一人親の方ですら、高校入学時に三十万円程度は納付しました、払いましたという方がいらっしゃるわけです。このような実態にもアプローチをしていただきたいと存じます。

 十一ページに参ります。

 意義の三番目、若者が国から応援されている実感が持てる象徴政策が高校無償化であること。

 私自身は、昨年度の公聴会におきまして、こども未来戦略というのは、実はこの国にとってとても大事な意味を持つんだということを申し上げました。しかしながら、大学生たちとこのこども未来戦略を学びますと、日大生は大変率直です。応援されている気がしないですと言われました。ではどうしたらいいのと聞くと、高校や大学の授業料を無償化してほしい、これもまた率直に言われました。

 実際に、次のページに参ります、私たちの科研費のチームで行いました調査の結果でも、二十代、三十代の若い世代、特に若い女性の半数程度は、所得制限のない高校無償化を望んでいるというふうに答えておられます。

 さらに、次の十三ページに参りますけれども、同じ傾向は、日本財団が実施されました十から十八歳の子供、若者一万人への調査でも、国や社会が子供たちのために優先して取り組むべきことは何ですかと聞いたところ、高校、大学までの教育を無料で受けられることということになっております。

 子供や若者の願いをどのように実現していくか。厳しい財政状況もございますが、我が国の深刻な少子化、そして、ここからの未来を担う子供、若者への投資こそ最も重要な投資であることを考えると、私たちは、子供、若者のこのような声をどのように尊重し、実現していくかに向き合わねばならないと思います。

 意義の四番目に参ります。

 生徒自身が、設置形態にかかわらず、行きたい高校に挑戦、選択できる制度改善であるということが重要です。特に、所得制限のない全ての高校生への支援拡充ということは、生徒自身の学ぶ権利を積極的に実現できる仕組みの基盤となります。

 下の図を左から順番に説明をいたします。

 まず、所得制限なく全ての高校生を応援するということが法的には何を目的にしているかというと、現行の高校就学支援法では、経済的負担を軽減し、教育の機会均等を実現するということになっております。全ての若者の教育の機会均等を実現するという制度への改善により、一人一人の生徒たちの前向きで主体的なよりよい学校、学びの選択が実現します。

 ただ無償化されるということでは、すぐに制度の意義は見失われます。したがいまして、小さい字で書いておりますが、生徒自身が自らの権利と国の応援を理解できるという仕組みが必要です。例えば、中学校三年生での公民の教科書では、国民の権利、そして社会保障の仕組み等について学びますけれども、私自身は、是非、高校修学支援制度が学ぶ権利を応援するための仕組みであり、国民の負担によって支えられているんだということを全ての中学生に学んでほしいなとも思っております。

 そして、子供の学ぶ権利を保障するに値する、高校教育をよりよくしていくということも重要です。

 例えば、今の高校生というのは、お手元に日経新聞の記事は配付されておりますでしょうか、一月二十七日に寄稿したものなんですけれども、これも私が昨年度実施しました中高生への調査でございます。中高生たちが今学校に何を変革してほしいかということを求めているかというと、実は、よりよく学びたい、もっと自分に合った学びをしてほしい。苦手をなくしたいですとか、あるいは、居場所がもっと増えたらいいな、そして、先生が上から目線じゃないというような、多様なニーズが浮かび上がっております。

 こうした高校生たちは、実は怠けたいんじゃないんです。よりよく学びたい、自分に合った学びをしたいという願いを目の当たりにしたときに、今の高校には一層の進化の余地があるとも考えられます。

 例えばですけれども、職業科、普通科、特別支援学校等の課程にかかわらず、分野横断的に単位互換可能な連携協力体制を実現することにより、一つの高校に在籍しながら、高校生たちがそれぞれの希望、あるいは迷いもあると思います、いろいろ学んで考えたいというような希望にも寄り添える高校教育に進化ができるのではないでしょうか。既に、文部科学省中央教育審議会の高校ワーキングが今月に公表しました中間まとめでも、こうした方針の実現の基盤となる中間まとめが示されております。

 赤枠で囲みました国、都道府県の責務の明確化等については、後半で説明をさせていただきます。

 それでは、ここから後半の内容に入らせていただきます。

 二、持続可能でよりよい高校修学支援制度、高校教育のためにということで、十六ページのスライドに参ります。十六ページですが、見出しが一、二、四、五となっておりますが、そのまま説明をいたします。

 まず、一、持続可能な高校修学支援制度のための安定財源の確保。

 私もこの国の厳しい財政状況は承知をしておりますが、子供、若者への投資こそ最優先であるはずです。この際、責任ある財源を与野党挙げて実現いただき、後戻りしない、この国は子供、若者を応援する国であり、しっかりとした財源をつくったんだということを子供、若者たちに胸を張って説明できる財源の確立をお願いいたします。現在の文部科学省予算を削って高校無償化に回すというようなことをしてしまえば、この国の公教育制度は崩壊します。そのようなことだけは絶対におやめいただきたいと思います。

 二番目、税制、現物、現金のベストミックスを実現しようとする政府の姿勢こそが、少子化改善の基盤であると考えます。

 これまで、この国の高校無償化や十八歳までの児童手当の延長のたびに必ず、高校生は増税されたり、あるいは増税をすべきだという議論が巻き起こってまいりました。高校生から取って別の高校生の支援につけ替える、そのようなやり方では高校生たちは全く納得しませんし、子育て当事者も全く納得しません。つけ替えではなく、まず、民法に定めた親の監護権そして子供の生存権保障の仕組みである税制、扶養控除を基盤とし、子供、若者自身への投資効果が高い現物給付をしっかりと充実させてください。

 その上で、児童手当、全ての子供、若者に応援いただいておりますけれども、この部分につきましても、より厳しい困難な状況にある子供、若者を応援いただきたく存じます。

 四と五につきましては、次のスライドに参ります。

 四、実質的な授業料支援の重要性ということです。

 実は、高校の授業料無償化は四十五・七万円ベースでと語られておりますけれども、四十五・七万円というのは現在の授業料の平均にすぎないんですね。国会議員の皆様に、授業料、私立でどうやって決めているかというと、まず、学校運営に係る経費全体があります。基金の積立て等も含めて毎年予算を組んでおりますが、そこから私学助成、そして寄附金や、あと施設貸出し等の収入を除いた部分を、今、授業料とそして施設設備費と入学金に振り分けているんですね。学校運営に要する経費は、授業料、施設設備費、入学金に振り分けています。

 この振り分け方について、どうやって授業料を決めていますかということを私も学校経営者の皆様や事務局長に聞いてみました。そうすると、周辺校との兼ね合いや強豪校との兼ね合いである、つまり、高校運営サイドのちょっと職人芸的に決まっているんですよね。要するに、数字として必ずしも合理的ではないということです。

 今後の私立高校の授業料無償化の設計に当たりましては、私学財政の実態を捉えた高校修学支援制度の設計が重要であるということです。あわせまして、都道府県間格差の著しい私学助成につきましても、是非とも改善をお願いいたします。

 それ以上に心配なのが、公立学校財政です。公立学校の財政というものは、実は私はそっちを専門としてきた歴史の方が長いんですけれども、とても大変な状況にあります。さらに、都道府県の財務会計ルールの硬直化も改革阻害要因の一つであり、この機会に公立高校を応援し、公立高校の進化も促進するルールを是非整備ください。

 五点目につきまして、賃金、物価上昇への対応とともに、授業料のいたずらな値上げをどう抑制するかという論点に参ります。

 まず、私が比較研究の対象としております英国では、教育政策含め各予算費目の賃金、物価上昇対策が毎会計年度の争点となっております。公立高校の授業料無償化も、十一万八千八百円のままで公立学校は持続可能であるかと言われれば、既にここまでほかの公述人の皆様がお示しいただいたとおり、物価上昇局面に入っている中で、かなり苦しい状況ではないかと思います。

 一方で、高校授業料のいたずらな値上げを抑制することも重要ではございますが、授業料キャップ制度には様々な意見があり、研究者たちからは、例えば、私学助成制度によるガバナンス改善も選択肢ではないだろうかということが指摘されています。

 東京都では、授業料値上げに際し、事前に申請し確認をする、そして私学助成を減らしていくという方式でいたずらな値上げを防いでおり、このようなやり方に学びながら、よりよいいたずらな授業料値上げ抑制の仕組みをつくるべきであると考えます。

 十八ページに参ります。

 持続可能でよりよい高校教育のためにということで、大きく三点申し述べます。

 まず一番目、国、都道府県の責務の明確化。

 通学可能な地域圏内での高校教育機会の確保、地理的な機会均等の確保が、人口減少局面の中で急務となっております。実は学校教育法に明記されていません都道府県の高校教育に対する責務を明記し、例えば、国公私立を含めた高校配置計画の策定の責務や、その際に市町村の意見を聴取することなども含め、どの地域で生まれ育っても高校生たちによい教育機会が保障される戦略が必要です。

 二の分かりやすい学校情報の開示、最低限の教育の質については次以降のスライドで申し述べますので、三に進みます。

 三、高校入試のインクルーシブ化、高校教育の質と多様性の更なる向上。

 (1)、障害を持つ生徒、日本語指導が必要な生徒、欠席日数が多い生徒等も前向きに高校進学に挑戦できる高校進学のインクルーシブ化。これは、公立高校ですらこのような生徒に対してまだまだ門戸を開いていない実態がございますのと、私立高校への手厚い支援も含めて、多様な生徒を受け入れる高校を是非応援いただきたく存じます。

 あわせまして、(2)、専門高校の支援拡充、通級指導と組み合わせたインクルーシブ教育の推進校、学びの多様化高校や遠隔教育を活用した多様な学びの保障など、高校教育の進化を授業料無償化の拡充と併せて是非実現ください。

 最後に、論点の二に関わりまして、十九ページと二十ページの説明をいたします。

 二、分かりやすい学校情報の開示、最低限の教育の質保障ということですが、英国の学校の事例をここに示しました。

 英国では、政府が補助する全ての学校に対し、例えば、学校が余り公表したくない欠席率のデータ、そして貧困層と非貧困層のテストスコア格差や、障害を持つ子供、そして国語の指導が必要な子供、ESL指導が必要な生徒数などを公表しております。そして、指導体制なども公表する義務がございます。さらに、子供たちの人権侵害を防ぐセーフガーディングルールの導入と遵守も義務づけられております。

 これはなぜかと申しますと、生徒の学ぶ権利を積極的に保障する際に、最低限の質保障である生徒の生命、尊厳、人権を守るということが最低条件であり、それを守れない学校は政府の補助に値しないということになります。日本でも英国の例に倣い、校則やいじめ、性暴力、不適切指導の対応、障害を持った生徒や日本語指導が必要な生徒への対応等、情報公開することによって情報の非対称性の改善が行われ、高校とのミスマッチも防ぐこともできると思います。

 あわせまして、いじめ、性暴力、不適切指導等への対応が十分でない学校には、改善命令、最悪の場合、授業料無償化を外すというような措置も可能ではないかというふうには考えております。

 ただし、最後のスライドに参りますが、これは高校側にとっても、そんな大変なことを言われてもということは十分承知しております。全ての高校の最低限の教育の質保障を支える国、都道府県の体制整備、高校も守られる仕組みを整備してはどうかというのが最後の提案になります。

 英国でも、学校だけではなく、基礎自治体とも連携しながら子供、若者の問題を改善していく体制が構築されております。日本でも、例えば、茨城県では私立高校も相談できる県教育委員会のいじめ相談対応部局がございますし、熊本市では、こどもの権利サポートセンターで、県立、私立高校や教員からの相談も受け付けられる、もちろん生徒、保護者からの相談も受け付け、県、高校とも連携した改善の支援ができるということがございます。

 このように、高校生も高校も守られる仕組みの整備も併せて進めることで、よりよい高校教育に進んでいけると存じます。

 よりよい高校修学支援制度、高校教育に向けて、国会議員の皆様の引き続きの応援をお願いしたいと思います。

 以上で終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

 次に、秋山公述人にお願いいたします。

秋山公述人 全国労働組合総連合、全労連議長の秋山であります。

 本日は、二〇二五年度政府予算に関わって発言の機会をいただき、ありがとうございます。

 初めに、提案されている予算案は、八兆円を超える軍事費により、社会保障や教育など国民の命と暮らしに関わる予算の伸びが抑えられ、物価上昇分に届かないことから、生活やなりわいが圧迫されています。困窮する国民の命と暮らしを守るため、予算案を抜本的に組み替えるよう求めます。

 その上で、全労連では二五国民春闘の取組を進めているところですが、現場の声も踏まえ、労働者、労働組合の立場から、大きく五点にわたり意見を述べさせていただきます。

 第一に申し上げたいことは、労働者、国民の所得を引き上げることが必要だということです。

 大多数の国民は、労働者として働いています。その労働者の賃金の状況ですが、厚生労働省の統計によると、昨年の実質賃金はマイナス〇・二%と、三年連続でのマイナスでした。昨年の春闘で三十年ぶりとも言われる賃金引上げがあったにもかかわらず、実質賃金がマイナスとなったのは異常な事態ではないでしょうか。

 とりわけ、ケア労働者の職場は深刻です。昨年末、医療、介護、福祉の分野で働く労働者の一時金が減らされる事業所が相次ぎました。お手元に資料を入れておりますが、一枚目の日本医労連の資料をつけておきましたので、御覧ください。

 労働者の実質賃金を引き上げるためにも、公定価格の引上げが必要であります。労働組合のある職場では賃金引上げなどの交渉などが行われていますが、組織されていない労働者の賃金引上げはなかなか進んでいないと思っています。

 こうした労働組合に組織されない労働者も含め、全ての労働者の賃金を引き上げられるのは、最低賃金の引上げです。だからこそ、多数の労働者の賃金引上げにつなげられるよう、大幅な引上げが必要だと思っています。

 この最低賃金については、石破首相が、二〇二〇年代のうちに加重平均で時給千五百円まで引き上げることを表明されました。引上げへの決意表明は歓迎していますが、資料を御覧ください、二ページのところにありますが、この間、全国四万人余りが参加し、二十五歳単身労働者の生活に必要な額、時給換算で調査をしました。結果は、全国どこでも時給千五百円では生活できないというのが実態であります。また、私どもの調査では、地域による顕著な差異は認められません。都道府県境を越える通勤も多くの地域でなされています。また、インターネットの発達により、全国どこでも仕事ができる状況も生まれています。

 三枚目の資料に入れましたが、資料のように、格差を、都道府県ごとに差異を設ける必要性がどれだけあるというのでしょうか。地方創生の観点からも、地方、地域から働き手が流出し、東京など大都市への人口一極集中、地方経済の衰退に拍車をかける最低賃金の地域間格差をなくし、全国一律制に法改正するよう強く求めます。要望いたします。

 しかしながら、中小零細企業にとっては死活問題にもつながる重大な問題でもあります。特に、昨年、全国最低額となった秋田県を始め、東北地方や九州地方の各県は最低賃金が九百円台であり、千円にも届いていないのが現実であります。こうした県において、五〇%を超えるような最低賃金の引上げを直ちに行うことは、企業努力だけでは難しいことは理解できます。

 全労連は、二〇二二年に、最低賃金引上げに向け、中小企業に対する支援策の拡充を提言しました。その柱は、助成制度の拡充、公正取引の実現、地域循環型経済の実現です。大幅な最低賃金の引上げを実現するためには、中小企業の皆さんに対し、引上げ時における当座資金の給付や、大きな負担となっている社会保険料の減免などが必要です。

 資料の四枚目に入れておきましたが、中小企業家同友会の方も要望されています。社会保険料の使用者負担減免若しくは企業規模に応じた保険料率の設定など、政府として中小企業の負担軽減を図るよう求めたいところです。

 第二に申し上げたいのは、労働時間の短縮についてです。

 日本の労働者の労働時間については、政府統計として、賃金構造統計調査と労働力調査の二種類があります。そのうち労働力調査は、労働者本人による労働時間が申告されていることから、実態に近い数字であると言われております。ここでは労働力調査の数字を基にお話ししたいと思います。

 資料五ページを御覧ください。日本における年間の総労働時間は、二〇二三年で千九百二十九時間となっています。アメリカやヨーロッパよりも長いのが分かります。労働時間は年々減少しているようですが、国際的に見ると、労働時間はまだまだ長いと思います。現に、過労死や過労自殺は減少していません。労働時間だけが原因ではないと思いますが、大きな要因ではないでしょうか。

 労働時間の短縮は、ジェンダー平等の観点からも重要です。

 男性の家事労働時間は世界的にも短くなっています。労働力調査から、専業主婦世帯数と共働き世帯数の推移を示したグラフが厚生労働省で作られていますが、二〇〇〇年代から専業主婦世帯数は減少をし続ける一方で、共働き世帯数は伸び続けています。年齢別に詳しく見ると、若い世代ほど高くなっています。

 共働きの場合、夫婦が協力して家事に当たることも当然であります。今放映されているNHKの連続テレビ小説、朝、私も見ているんですが、「おむすび」でも、男女共に家事をしている風景が普通であります。子供が生まれると、夫婦の一層の協力が必要です。核家族化の進行もあり、親に頼ることも容易ではありません。

 こうしたことからも、労働時間を少しでも短縮し、育児や家事など家庭生活に使える時間を増やすことが必要だと考えます。

 資料七ページに入れましたけれども、女性の方が一日当たりの仕事時間が短く、家事関連が男性の四倍にもなっていることが分かります。労働時間の短縮は、ジェンダー平等を進める上で必要条件です。

 なお、先般まとめられた労働基準関係法制研究会の報告書は、労働現場の実態を反映していません。労働時間の規制を緩和するのではなく、労働時間の規制を強化すべきです。

 労働時間の問題では、教員の働き方についても一言申し上げたいと思います。

 教員の労働時間が長いことは御承知のことと思いますが、全教、全日本教職員組合が行った教職員勤務実態調査二〇二二によると、教諭の平均時間外勤務は月九十六時間十分となっています。過労死ラインである月八十時間を超える働き方をしている教諭は五六・四%にも上ります。

 このような働き方をする教員の皆さんは、子供たちによい教育をしたいとの一心で働いているのだと思います。しかし、これでは長時間労働に歯止めがかかりません。家族との時間などないに等しいものです。

 こうした状況を変えるには、教員の定数を増やすことが必要です。授業準備なども勤務時間内にできるように、授業の持ち時間数を減らすことが必要です。現場には多数の常勤講師と非常勤講師が働いています。教員の定数を増やし、常勤講師と非常勤講師を安定した雇用に転換するなど、政府には時間管理の徹底とともに行うよう求めたいと思います。

 次に、ジェンダー平等実現に向けた政策についてであります。

 御承知のとおり、日本はジェンダー平等で諸外国から大きな後れを取っています。特に経済分野と政治の分野での遅れが目立ちます。

 資料八ページを御覧ください。諸外国の女性役員割合を比較したグラフで、内閣府の男女共同参画局が作成したものです。日本は一五・五%と、ヨーロッパ諸国やアメリカよりもはるかに低くなっています。

 労働組合の役員においても女性の役員を登用することができておらず、悩んでおりますが、全労連の加盟組織で、地方組織のトップに九名が、単産で三名が女性となりました。徐々にではありますが、役員への登用が進んでいます。こうした変化も、全労連が行ったジェンダー平等宣言が影響していると思います。加盟組織でも宣言が進められています。

 昨年末にこの地方組織のトップとなった女性の方々と座談会をしたのですが、皆さん共通していたことの一つは、これは私もそうだったんですが、議長、トップになるとは思っていなかったということでした。それよりも強い思いだったのが、自分が一歩を踏み出さないとという決意でありました。

 悩みや苦労が絶えないことも述べられました。特に子育て世代の方からは、活動への参加の困難さが語られています。先ほども申し上げましたが、労働組合活動だけではありません。社会的な活動に参加する時間を確保するためにも、労働時間の短縮が必要です。

 同時に、取り組む必要性を強く感じているのが、ハラスメントのない職場づくりであります。

 職場の地位によるハラスメントだけでなく、男女間におけるハラスメントをなくさなければなりません。全労連は、あらゆるハラスメントと女性や性的マイノリティー差別の根絶を目指すキャンペーンを取り組んでいます。お手元の資料に国会請願署名というのを入れさせていただきました。この取組をしております。キャンペーンの目標は、ILO百九十号条約の批准であります。委員の皆様におかれましては、是非、請願署名への賛同をお願いしたいと思っております。

 また、職場で混乱することがあるのが、通称としての旧姓使用の問題であります。混乱をなくすためにも、夫婦の話合いによって別姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の導入を今国会で実現させるよう求めます。

 ジェンダー平等の観点から、ILO百九十号条約の批准と選択的夫婦別姓制度の実現を要望しましたが、進めていただきたいこととして、僭越ではありますが、政治の分野に関しても一言申し上げさせていただきます。

 これも皆さん御承知のことですからお分かりのことと思いますが、国会議員に占める女性の割合が極めて低い状態となっています。資料十ページに入れましたが、確認してください。

 女性比率を高めるためにも、クオータ制の導入を検討すべきではないでしょうか。選挙制度とも関わる問題ではありますが、女性の割合を高めるという観点を忘れることなく検討いただき、政策決定に女性の声がより一層反映されるよう要望させていただきます。

 四つ目に申し上げたいのは、社会保障に関する点です。

 厚生労働省は、社会保障について、国民の安心や生活の安定を支えるセーフティーネットと位置づけ、社会保障、社会福祉、公的扶助、保健医療、公衆衛生から成り、子供から子育て世代、お年寄りまで、全ての人々の生活を生涯にわたって支えるものと説明しています。そのため、社会保障制度は多岐にわたり、国のみならず都道府県や市町村など、様々な主体がそれぞれに役割を担い、連携しながら実施していると説明しています。

 多くの公務員が、国民の生活を支えるため、奮闘しています。しかし、公務員だけが奮闘しているわけではありません。その典型が介護保険制度だと思っています。訪問介護事業所を始め介護関係を担っているのは、民間企業です。

 昨今の物価上昇や人員確保の難しさから、昨年は介護関係事業所の倒産、廃業が過去最高となりました。資料十一ページに入れさせていただきましたが、東京商工リサーチの資料を御確認ください。

 加えて、以前から介護現場は老老介護と言われてきました。また、制度導入後に新卒者が多く入職しましたが、子育てしながら働くことは難しいと、介護から離れていく人々が大勢いました。私もそういった声を直接的に伺ってきました。

 最大の問題は、介護職の労働条件が低いことであります。全労連は、介護現場の労働者を対象に一言アンケートを行いました。昨年のアンケートに書かれていた一言と、ケア労働者の賃金に関する資料も入れておきました。

 事業所の倒産も増加していることから、介護労働者の処遇改善も容易ではありません。特に訪問介護事業所は厳しい状況に置かれています。昨年の基本報酬引下げが大きな影響を与えています。介護現場は崩壊していると言っても過言ではありません。直ちに臨時の医療、介護報酬改定を行うよう求めます。

 また、二〇二五年度の年金支給額について、一・九%引き上げられますが、物価上昇率に追いついておらず、お米や灯油を含めた光熱費の高騰もあり、生活は悪化する一方です。

 障害者に対する支援を行う施設でも、厳しい状況が続いています。障害者が働くことができる職場は限られており、働いても収入は低く、社会的な支援がなければ生きていくことができません。

 生活の圧迫は、何よりも社会的弱者に強く作用します。社会保障への公費負担を増やし、社会的弱者に対する支援を強めるよう求めます。

 その点で、医療保険における高額療養費制度の見直しは、少なくとも凍結若しくは中止を明言していただきたいと思います。

 さらに、DX化が進められていますが、社会的弱者ほど使いにくいものはありません。その点で最大の問題と思っていることは、保険証の廃止です。保険証の廃止を撤回するよう強く求めます。

 最後に、公務、公共サービスの拡充について申し上げます。

 政府は、内閣府の防災担当について、二〇二五年度予算で予算、定員を倍増することとしています。昨年元旦の能登半島地震、それに追い打ちをかけた九月の豪雨災害を始め、全国各地で自然災害が相次いでいます。今年も、福島県会津地方を始め、全国各地で豪雪による災害が発生しています。

 まずは、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 そして、二〇二五年度予算において、被災された人々の生活が一日も早く復旧復興できるよう、国としての対応を強化していただきたいと思います。

 しかし、防災担当だけで復旧復興ができるわけではありません。ほぼ全ての省庁が関係します。災害からの復旧復興は、それだけ大きな事業です。

 三十年前の一月十七日、私は西宮市に居住しており、激しい揺れに見舞われました。また、二〇一八年の台風二十一号では、関空に船がぶつかったときですが、尼崎にあった自宅が被害を受けました。私は単身赴任をしておりましたので、台風のすごさを直接経験はしませんでしたが、家族は大変怖い思いをしました。

 地震など避けようがない自然災害は、いつ発生するのか分かりません。備えも必要ですが、発生した後、被災者が一日も早く元の生活に戻れるよう支援することが必要です。そのためにも、被災者生活再建支援法による支援金の増額が必要です。

 また、八潮市での大規模な事故に見られるように、老朽化したインフラの整備も重要な課題となっています。しかし、現場第一線で担当する職員が複数であることがまれな状況となっています。

 資料の最後に入れましたが、非正規の公務員が増える一方で、正規は減少しています。正規職員の責任も重くなる一方です。非正規公務員の雇い止めをなくし、安定した雇用をつくることを含め、公務員を抜本的に増やす政策に転換することが必要です。

 最後に、国連やILOなど国際的な組織において、日本政府が果たすべき役割は大きなものがあります。平和憲法を有する国として、核兵器廃絶など、平和を主導する国であってほしいと思います。

 以上、多くの要望を申し上げましたが、こうした要望の実現には、根本的に予算の使い道を転換することが必要です。そのためにも、防衛費の予算を削減し、憲法を生かして、労働者や国民の命、暮らしを守る二〇二五年度予算を策定していただくよう要望します。

 以上申し上げ、私からの発言を終わらせていただきます。

 本日は、貴重な機会を設けていただき、ありがとうございました。(拍手)

安住委員長 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

安住委員長 これより公述人に対する質疑を行います。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。国光あやのさん。

国光委員 自由民主党の国光あやのでございます。

 本日は、四人の公述人の先生方、大変ありがとうございます。各界で活躍されている先生方ばかりで、大変勉強になりました。心より御礼を申し上げます。

 まず、私からは、鈴木公述人にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 最後のペーパーでありました「おわりに」のところ、一番初めに記載がございます経済、財政、社会保障を一体として相互に連携させていくということ、これはまさに政治の本質であり、そして我々政治家一人一人が胆力と矜持を持って取り組まねばならないことだと思っております。

 私は元々医療現場出身で、今でも現役で医師をしているんですが、社会保障は非常に重要で、それぞれ先生方からも切実なお話がありました。

 ただ、やはり歳出に関して責任を持たねばならぬというのが、やはり財政と経済との関係であるかと思います。

 その点から、まず、経済につきまして、鈴木先生にお尋ねをさせていただきたいと存じます。

 六ページ目の資料の中で、実質賃金が前年比プラス一%の推移を見込むとございました。また、やっとデフレから脱却しつつある、これは本当に、非常に重要な今局面でございます。やはり今、岸田政権、石破政権となり、我が自民党では、賃金と物価の好循環、これをまずまず何よりも要として取り組んでいるところでございます。

 実際、実質賃金が、非常に今まで明るい兆しが見えつつも厳しい状況でありましたのが、この資料でありますとおり、プラス一%に転じている。実際に政府統計でございます毎月勤労統計では、二月五日に発表された資料でも、ちょうど昨年の十一月、十二月はプラスになったということがございました。これは非常に大きなことでございまして、他の公述人の先生からもございましたように、今年の春闘におきまして、やはり昨年の五%と同じように高水準の賃上げを実現していくことが非常に重要かと思います。

 その中で、特に、EBPMやワイズスペンディング、費用対効果の観点からお尋ねをさせていただきたいと思います。

 是非、この賃上げ、そしてその裏打ちとなるような設備投資、生産性、供給力を高めるために、本予算案でもいわゆる成長分野、AIであったりDX、GX、バイオなどに非常に投資を進めるということで入っておりますけれども、先生の目から、長年の御専門の目から御覧になって、より今のデフレ脱却の兆しを現実のものとする、この賃上げを持続的に、持続されるものとする中で、予算案に対しましての御意見。

 特に、私が個人的に関心を持っているのが、一点、やはり事業承継やMアンドA、これもやはりエビデンスベースドですとEBPMの中で非常に重要な視点であろうかと思います。それぞれの事業者において、グローバル企業であっても内需主導型の企業であっても、特に小売やサービス業であっても、やはり事業承継やMアンドAが進んでいるところは、売上、収益そして生産性が明らかに向上しているというエビデンスはあろうかと思います。その点につきましても、是非、鈴木先生の御意見を伺えたらと思います。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 非常に難しい御質問だと思うんですけれども、予算に関しましては、やはり事前に一つ一つの政策について、その政策目的は何なのか、最後のゴール、アウトカムに対して、これを取り組むことによってどういうロジックでそこに到達するのかということを事前にできる限り明確にして、それを政府の中あるいは国会の中で共有をいただいて、事後的にきちんと評価をする。やりっ放し、出しっ放しということではなくて、きちんと評価をして、じゃ、目標どおりになったのかということを評価をして、そうならなかったとしたら、なぜならなかったのかという、それでまた政策を修正する、そういうことをやっていく必要があると思います。

 実質賃金というお話でございましたけれども、やはり実質賃金というのは、二二年、二三年というのは、これは交易条件と我々は言っておりますが、結局、生産性が上がっても資源価格などが高まったり円安で外にパイが逃げてしまったというか、持っていかれてしまったということがあって、その要因が収まってきておりますので、やはり生産性をきちんと上げるということをもって実質賃金というものがきちんと上がっていくということになろうかと思いますので。

 事業承継というのも確かに非常に重要な問題で、MAもそうですが、新陳代謝、今までなかなか資本と労働の再配置みたいなことがうまく進まなかった、これが、今、DX、SXなど、どんどん資本と労働の再配置ということをいかに活力を高める方向で進められるか、これをやっていくことによって実質賃金の持続的な上昇ということが実現しようかと思いますので、そういう観点で予算、政策を進めていただきたいなというふうに思っております。

国光委員 ありがとうございます。大変勇気づけられる御発言をいただきまして、ありがとうございます。

 もう一つ、次に、鈴木参考人に、財政の関係でお尋ねをさせていただきたいと存じます。

 今、長期金利が非常に、資料にもございましたとおり、昨年末時点では一%程度だったのが直近では一・四%まで上昇しているという状況がございます。やはり今後、何より考えねばならない基本のファンダメンタルズは、やはり金利がある世界に突入をしているということであろうかと思います。

 この中で、今回、二〇二五年見通しは、PBですとやはりマイナス四・五兆円程度、そして対GDP比ではマイナス〇・七という数字が一応推計上は出ておりますが、先ほどプレゼンの途中で、余り悲観的になっていないといいますか、まだ間に合うという御発言もありました。

 そこは非常に重要なポイントだと思っておりまして、財政を我が国で語るときに非常に悲観的なお話がよく出るわけですが、やはりそれは、裏表の歳出改革の努力というのは必要であろうかと思いますけれども、まだ間に合うというところの、是非、例えば今年、間もなく骨太の方針等でもPBの議論や財政収支の議論が今後出ようかと思います、その辺りで、もう一度、基本的な御認識を御指導いただければと思います。

鈴木公述人 重ねての御質問ありがとうございます。

 先ほど、私、プライマリーな赤字とセカンダリーな赤字、ダブルでマネージしないといけないということを申し上げました。

 プライマリーな赤字というのは、これは、まずは歳出の改革、歳出の効率化だと思います。それをまずやって、それでも足りなければ歳入改革ということで、場合によっては税制をいじるということがあろうかと思います。いずれにしても、プライマリーな赤字というのは、歳出と歳入を政策的に動かすことによって操作ができます。

 一方で、セカンダリーな赤字、これは利払いでございますので、これは基本的には過去に発行してしまった国債、それから市場で決まっている、決まってきた金利によって規定されますので、プライマリーな赤字と比べて操作性がないわけであります。そのときに、成長率が高まるのと歩調を合わせて、秩序立った金利上昇であれば、これは私は別に問題はない、むしろ、より活力のある社会が実現するということだと思います。

 政策的にできることは何かと考えてみますと、例えば国債管理政策というのは、日本の場合、国際的に見ても相当洗練された状況でございますので、そこはもうしっかりやっていただいている。あとは、やはり歳出改革ですね。これを、歳出改革の旗を降ろしてはいけない。今、市場参加者が日本国債というのは心配のない安全な資産だと見ているのは、これは、財政を破綻させない、絶対に日本の政府や日本の国会は財政を破綻させないということを信用している、信じているからでありまして、それが信じられなくなった瞬間に、例えば想像もできないような円安等が起こるんだと思います。

 そういう意味では、歳出改革の旗を降ろさずに、国債発行のときに変な、無用なプレミアムを求められないという意味で、歳出改革を着実にやっていくということに尽きようかと思います。

 以上でございます。

国光委員 ありがとうございます。

 その歳出改革というところで、恐れ入りますが、鈴木公述人と清水公述人に一言ずつ御意見をいただきたいと存じます。

 立憲民主党さんの予算案、ちょっと言及させていただいて大変恐縮なんですが、歳出改革のチームを七十人規模でおつくりになった、徹底的に調べた、これは本当に敬意を表させていただきたいと存じます。

 ただ、やはり与党にいますと、なかなか言うはやすし行うは難しの部分、非常にある中で、歳出改革は痛みを伴う。ただ、それをどうやって説明し、そして、本当に地に足が、実行力のあるものにしていかねばならない、これがやはり政治の本質だと思います。

 今回、令和七年度当初予算で立憲民主党さんが出している予算フレームが……(発言する者あり)

安住委員長 静粛に。

国光委員 特に基金の一部活用で財源を捻出する。これは全体で約三兆八千億の予算案、政策実現で計上されている。その対案として、歳出改革で、基金を中心に同じ三兆八千億という財源確保をされていらっしゃいます。

 基金というのも、確かに目のつけどころということは私は否定いたしません。ただ、やはり単年度、ワンショットになってしまいがちであるというところが、歳出改革という意味で本当に本物の政治として寄り添うのにサステーナブルなのかということは、令和七年はいいかもしれません、令和八年以降はどうするんでしょうというところを、やはりこれは与野党共に知恵を出し合っていかねばならないということかと思います。

 そこで、是非、その辺りの、持続可能な歳出改革、恒久財源をどう生み出すかというところで、今回の立憲民主党さんの基金を中心とした提案についての何かよろしければコメントを、鈴木先生、そして清水先生からいただければと存じます。

鈴木公述人 お答え申し上げます。

 今年の予算委員会では、省庁別審査なんかもされて、非常にきめ細かく、より効率的な、無駄のない予算を追求されているということは本当に敬意を表するところでございます。

 その上で、予算の修正、組替え等も議論されておるわけですが、やはりペイ・アズ・ユー・ゴーの原則、これは徹底していただく必要があると思います。

 その点、今先生おっしゃった基金の取崩しの類いは、これはかつての霞が関埋蔵金と全く同じでございまして、一回だけの財源でございますので、僅かな時間稼ぎにしかならないと私は思います。恒久的な財源にはなかなかならない。基金の運営とか成果を厳しくモニタリングしていく必要があるというのは、これはまさにそうで、そのことと別な施策の財源に流用できるかどうかということは別な話かなと思います。

 以上です。

清水公述人 先ほど私の意見陳述でも申し上げましたが、やはり政策への十分な予算措置は必要ではありますが、一方で、歳出の拡大し続けているところ、これについてはしっかりと、PB含めてやっていくべきだというふうに思っています。

 立憲さんが出されたことについて、いわゆる基金であるとか、あるいは予備費からというようなことでございますけれども、政府が出された法案に対しての組替えとしては、財源としてそこを求めるのは、一つありようとしてはあるのかなと思います。やはり、抜本的に予算を組むところから是非立憲民主党も参加をしていただくというか、政権を担っていただければというふうに思っております。

国光委員 ありがとうございます。しっかり責任ある姿勢で、熟議の国会で、恒久的な財源を責任を持って生み出していきたいと思います。

 最後に、末冨先生にお伺いをさせていただきたいと存じます。

 先ほど、高等教育の無償化の中で私の地元茨城県の例も出していただいて、大変ありがとうございました。茨城は、まさに私立学校も含めて、教育委員会にいじめの対策部局をつくったおかげで、本当にいじめの数が減ってきたというようなエビデンスも出ており、本当に、しっかり、そういう意味で、誰も取り残さない教育ということを、高等教育、私もちょうど子供が高校生なんですけれども、本当に先生の熱い思いというのを非常に酌み取るところでございます。

 その上で、二つお尋ねがあるんですけれども、先生の一貫した優しいまなざしの中で、先ほど、高等教育無償化で、十七ページや十八ページあたりに共通する点として、やはり高等教育、特に、公立学校や私立もそうなんですけれども、情報開示をすることによって質の確保をする、そしてまた、間にちょっとおっしゃっていた授業料についても、授業料の決め方というのは近所の学校の相場にも関係するというふうに、非常に、確かになというふうな、想像に難くないようなコメントもございました。

 その辺りの、今後、高等教育の無償化を進めるに当たって、キーワードは恐らく透明化や見える化ではないかと思っておるところでありますけれども、学校情報の開示、そしてまた授業料の透明化。

 さらに、もう一つお伺いさせていただきたいのが、今日のちょっと、高等教育じゃないんですけれども、私、ずっと先生と以前から本当にお親しくさせていただいており……

安住委員長 国光君、あと一分ぐらいしか時間がないので、多種多様な質問は分かるんだけれども、簡潔に。

国光委員 一分ぐらいしかない、分かりました。済みません、まとめます。

 では、済みません、その点だけお答えをいただければと存じます。よろしくお願いいたします。

安住委員長 末冨公述人、大変恐縮ですけれども、時間が迫っておるので、簡潔にお願いします。

末冨公述人 ごく簡潔に申し上げますと、情報開示や授業料の透明化、そして、中間所得層や低所得層の悩みは、私立高校は情報開示されているもの以外幾らかかるんだろうみたいな不安が大変強いわけですよね。ですので、実際に保護者が支払わなければならない経費等も含め、在学中は例えば行事や研修等で必ず参加しなければならないものはこれだけあるんだよということについてしっかりと情報共有いただけますと、計画的な貯蓄ですとかお金の使い方につながると思います。

 こども家庭庁でも、一人親の家計管理等の支援も含めて、この間、大変サポートを充実させていただいておりますけれども、そうした仕組みとも併せて、高校修学支援制度を拡充していっていただけますと、どの家族にとっても、ああ、いい高校の選択ができたなということになると存じます。

 御質問、大変ありがとうございました。

国光委員 ありがとうございました。

 以上です。

安住委員長 次に、神谷裕君。

神谷委員 立憲民主党の神谷裕でございます。

 本日は、四公述人の皆様、本当に大変高い見識のお話を頂戴をいたしました。本当にありがとうございました。大変に勉強になる、そういう思いでございました。

 それでは、私の質問、早速させていただきたいと思います。

 今ほど、さきの質問者の方から立憲民主党の予算の修正案についてお触れをいただきました。お触れをいただいたことに改めて感謝を申し上げたいと思いますが、確かに、私どもの提案、この三兆八千億、しっかりと、なぜこの基金というのか、この財源が使えるのかということは、この委員会でもるる説明をさせていただいて、御提案をさせていただいて、多くの皆さんに納得いただけたんじゃないかなと私は思います。

 その上で、例えば防衛財源にしても、政府の歳出を少し抑制をしてなのか、剰余分を充てるというような考え方もこの間取っておられるようでございますが、それに比べれば、同じような話じゃないかなと私には思えますし、せっかくの財源、有効に利用して何ぼかなというふうに思うところでございます。

 早速でございますが、そういった観点から、まず清水公述人にお伺いをしたいのでございますが、先ほどからお話をしておりますように、我々立憲民主党が提案をしているこの修正案、改めてこの御評価についてお伺いができればと思います。いかがでしょうか。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 御提示いただいています立憲民主党の政府予算案の修正案については、国民の負担を減らすという観点から、暫定税率の廃止によるガソリンや軽油の引下げ、あるいは学校給食の無償化、高校無償化の拡充など、あるいは介護それから障害福祉、保育の場での働く者の処遇改善など、連合が求めている政策と合致する内容が多く含まれているということについては、そういった意味では評価しているところでございます。また、現下の物価高騰に苦しむ国民が求めている政策を提案しているという部分も十分ございますので、それは評価をしたいと思います。

 先ほど国光委員からありましたが、予備費と基金の積替えというところについては、抜本的な財源と言えるかどうかについては連合の中でも様々な議論はございます。

 以上です。

神谷委員 ありがとうございます。

 もう一度、清水公述人にお伺いをしたいんですけれども、清水公述人は、御案内のとおり、教育について大変造詣が深いというふうに承知をいたしております。

 本予算委員会でも、高等学校の無償化であったり学校給食の無償化など、多くの議論がなされました。特に、給特法については、先ほどもお触れをいただきましたけれども、給特法は、長時間労働に対するいわゆる残業代相当の一部を増やしましょうみたいな施策に今回なるような状況でございまして、いわゆる超勤、多忙化の解消、この間大変に問題になっていたのはそちらだと思うんですけれども、必ずしもその解決策には到底なり得ないんじゃないかなと私は思っております。また、かえって、こういうふうに上げることによって、たくさんもらっているんだから、残業代が増えたんだからもう少し働いてくれなんというような変な反動があるのじゃないか、そんなことを懸念しているところでございます。

 こういった懸念に対してのお考えと、本来解決すべき超勤、多忙化の解消に向けた考え方、在り方を、参考人に是非お伺いができればと思います。いかがでしょうか。

清水公述人 給特法に関わると、私も学校現場の出身でございますので、いわゆる文科省が昨年八月に取りまとめた中教審の答申に基づいて、今回、教職調整額の一〇%引上げの提言をされたことを踏まえて、まずは一%ということでございます。これが、将来的に平均の時間外在校時間を月二十時間に減らすということも条件の一つに入っていますので、そういったことが実現されれば、このことも大きな意義があるのかなというふうに思っています。ただ、この一%をまず引き上げることが現状の勤務実態に見合っているかというと、現場からは、当然見合っていないという声が強くございます。

 給特法については、長時間労働の是正ということから考えれば、本来の労働基準法三十七条の適用であったり、あるいは、労働安全衛生法の安全衛生の観点から、在校等時間、これについての位置づけを見直すことであったり、あるいは、人事委員会に職安のような職権を持たせてしっかりと時間管理をする、そういった勧告ができるというような、そういった制度に切り替えていく。そういったものが実質的に備わらないと、この一%だけの改善では十分ではない。定数改善についても一点盛られていますが、これも現場からいうと十分ではないという声があります。

 以上でございます。

神谷委員 ありがとうございます。

 我々もしっかりとこの問題に取り組んでいきたいと思います。

 続いて、末冨教授にお伺いをしたいと思います。

 末冨教授からは、先ほど高校修学支援制度の拡充の意義についてお話をいただきました。末冨教授にも御指摘をいただきましたけれども、所得制限のない児童手当や幼児教育の無償化、義務教育の無償化が既に実施されておりますし、教育、子育てを社会で支えていこうという考え方は広く受け入れられているというふうに思います。立憲民主党でも、社会で子供を育てていくんだ、教育を、家庭の中の問題から社会で応援していくべきであるというふうに訴えてまいっているところでございます。

 そういった観点も含めまして、今回この予算委員会でも問題になりました学校給食の無償化、この学校給食の無償化についても我々も取り組んでおるんですけれども、末冨教授からこのお考えの方をお伺いできればと思います。いかがでございましょうか。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 学校給食の無償化につきましても、大変高い意義があると思っております。

 実は、最近、私の元に、自治体、例えば首長さんたちも含みますけれども、からの一番お問合せが多かったのが、学校無償化は実現できますかということです。全国の三割程度の自治体が学校給食を無償化している中で、若い世代にその地域に住み続けてもらう、あるいは住みに来てもらうということも含めて、給食の無償化というのが若い人たちにとって不可欠な政策なんだという認識が広がりつつあるからです。

 しかしながら、我が国では、一九六四年の最高裁判決において、授業料無償説といいまして、授業料が無償ですというのが憲法に定めたことですということで、実は、研究者たちも半ば諦めぎみだったんです。ただ、今回の学校給食の無償化は、一九六四年の最高裁の司法の判断というものを政治の力が子供たちのために変えてくださったんだということで、私自身は大変高い意義があると思っております。

 現実に、ごく一部の低所得層の子供しか、就学援助制度というものによって給食は無償ではないわけです。ただし、親たちの願いは、義務教育で学校に行かせているんでしたら、そこの給食はなぜ親が払うんだろうという疑問はあったんですね。親が就学義務を果たしているということではある。

 このように、親の負担という面もございますが、子供の権利の視点からは、高校と同じで、全ての子供たちの教育上の意義も高い学校給食について無償化していくということは、子供の権利の視点、育つ視点からも大変大事だということでございます。

 あわせまして、学校現場を悩ませている未納問題につきましても、義務教育の全ての学校がそこから解放される、子供たちの間に差別をしなくていいんだという先生たちの精神的な負担感も含めての軽減にもなっていくという意味でいいますと、大変に重要な御判断であるというふうに考えております。

 御質問ありがとうございました。

神谷委員 ありがとうございます。大変重要な観点だと思っておりますし、我々もしっかり無償化を進めていきたい、このように思っておるところでございます。

 それでは、もう一度、清水公述人にお伺いをしたいと思いますが、先ほどの公述におきましても、公平、連帯、納得の税制改正の実現について言及をいただきました。

 この予算審議においては、働く皆さんの手取りをいかに増やしていくかの議論の下に、いわゆる百三万円であるとか百六万円、百三十万円などの様々な壁対策についても議論がされてきたところでございます。

 特に、立憲民主党では、百三十万円の崖対策について、法案も出しつつ、この予算委員会でも説明をさせていただいてまいりました。このほかにも、ガソリンや軽油価格を引き下げるための暫定税率というか、当分の間税率の廃止についても提案をさせていただいております。

 連合の皆さんの御評価あるいは考え方というものを、清水参考人にお聞きしたいと思います。いかがでございましょうか。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 神谷議員からありましたとおりでございますが、まず、様々な部分において、予算案を、修正案を出される中で議論をされているということについて、学校現場や、あるいはそれぞれの労働組合の現場からも非常に大きな期待の声がございます。

 限られた財源でございますので、そういった中でどこまでできるのかということはありますが、まず、物価対策の一つとして、いわゆる暫定税率の部分、これについては是非やってほしいという声がございますので、この部分の展開をお願いしたいと思います。

 それから、やはり社会保障のお金、これが税額でいくのか、それとも保険料でいくのかというところの根本の議論、補正予算でも、昨年の臨時国会でも議論されましたが……(発言する者あり)

安住委員長 ちょっと私語がうるさい。慎んで、そこ。自民党、私語がうるさい。

 どうぞ続けてください。

清水公述人 議論されましたが、その部分について、本通常国会で十分に議論が尽くされているかというと、そういったところが不十分じゃないかなというふうに思っています。

 根本的な社会保障と税の在り方について、やはり様々な壁のこともございましたが、私たちは、壁そのものを引き上げるとか、そういったことを考えているわけではございません。社会保障についても、今申し上げたような、どこのところをどういうふうに取るのかというところ、どこを使うのかということについての議論を十分に行っていただきたいということを思っております。

 以上でございます。

神谷委員 ありがとうございます。

 それでは、もう一度、末冨公述人、よろしいでしょうか。

 今ほど高校修学支援制度の拡充というお話をいただきましたけれども、更に進めるとすれば、大学への修学支援というか、高等教育という意味ではこういった部分も必要なんじゃないかなと私どもは考えているところでございますけれども、学費の高騰だとか教育ローンとやゆされるような奨学金の在り方など、問題、課題と様々ある中で、こういった大学教育の無償化というのか、少し軽減していくというのか、こういったことについても早期に実現をすべきではないかと考えるんですけれども、お考えはいかがでございましょうか。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、大学教育費の問題につきましては、特に貧困層、それから厳しい中間所得層の進学の障壁となっているのが入学金です。とりわけ、入学しない大学にも入学金を払わなければ入学する権利が確保されないという入学金の何重払いも問題というのがございまして、そのために、そもそも受験を諦めなければならないという高校生たちもいます。

 そうした意味でいうと、実は、若者たちのグループが、今、入学金の二重払いをやめてくださいという活動もしておりますけれども、まず、入学金の壁というものを改善していただきたいなというのが、子供、若者の貧困の視点から見た私自身の一番の課題認識であるということです。

 韓国は入学金を払わなくていい形での大学無償化というものに今取り組んでおりまして、こちらは日本でも研究している研究者がおりますので、是非、ほかの先進国の事例、特に私自身は韓国の事例は大変大事だなと思っておりますので、そのような事例にも学びながら、まず、入学金の壁からということは考えております。

 あわせまして、授業料の無償化につきましても、基盤的部分を無償化していくことは大事かと思います。特に、十八歳成年以降の教育機会をどうするかについては、この後、より丁寧な議論が必要ではあります。基盤的な授業料を無償化しながら、一方で戦略的な投資も必要です。

 この間、日本で特に高等教育の研究者たちが注目してきましたのは、オーストラリア型のHECS制度ですね。現在の大学院等でも導入されておりますJ―HECS型ですけれども、在学時は授業料無償にしながら、卒業後に所得に応じて返還していく。さらに、例えばですが、教員や看護師、あるいはSTEAM分野の重要な人材については返還を免除していくという仕組みにすることによって、戦略的投資が可能である。学部段階からの拡充というものが、私自身も国内外での研究に照らし合わせて重要ではないかというふうに考えております。

 以上でございます。

安住委員長 神谷君、時間が参りましたので、まとめてください。

神谷委員 はい。

 ありがとうございました。

 本来であれば、全ての専門家から、公述人の皆さんからお話を伺いたいところでございますけれども、このような時間でございましたので、聞けなかったことをおわびを申し上げさせていただいて、私からの質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

安住委員長 次に、西田薫君。

西田(薫)委員 日本維新の会の西田薫でございます。

 本日は、四名の公述人の皆さん、本当にお忙しい中、ありがとうございました。非常に勉強にもなりました。

 そして、今日は、皆さんに質問させていただきたいというふうに思っておりますが、場合によっては時間の関係で質問できないかもしれませんが、御理解、御了承賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 それでは、質問させていただきたいと思いますが、今日、四名の公述人の皆さんから、賃上げについて三名の公述人の皆さんからお話があったと思います。

 そこで、まずは賃上げについてお伺いをさせていただきたいというふうに思っております。

 先ほど、清水公述人の方も、価格転嫁ができれば賃上げも非常に進むというような、資料を基に御説明がありました。そして、秋山公述人の方なんですが、中小企業家しんぶんの、資料四ページ目ですか、この中には、賃上げには社会保険料の負担軽減、法人税減税よりもこちらの方が経営者の皆さんは望んでおられるということなんですよね。

 なかなか賃上げというのは非常に大事な問題でもありますし、今回、千五百円にするということを、石破総理も、極力期間も短縮しながら実現していくということも言われております。

 そういった中で、今日配付されている資料を拝見させていただくと、もう千五百円でもないということですよね。物価高騰を考えれば千七百円、もう千五百円じゃなくて千七百円、千八百円が希望されている。これはもちろん、賃上げ、時給を上げることによって、経営者の皆さんもなかなか雇用するのが難しくなるという御意見もいっぱい聞いておりまして、そういった中で、社会保険料の負担軽減ということが一番望んでおられる。

 どういう形にすればいいのか、もし、御意見、お考えがあれば御教授いただきたいなと思っています。

秋山公述人 御質問いただきまして、ありがとうございます。

 中小企業家同友会の皆さんとお話をさせていただくと、社会保険料の納付が毎月ということもあって、現金の流動性の関係でかなり苦労されているというお話も伺いました。そういうこともあって、負担が増えている社会保険料の減免をということで話もいただいて、かなり、公正取引の問題というのもありますけれども、価格転嫁の問題を含めて大きな問題だというふうに認識をしております。

 その意味で、是非、社会保険料の軽減を図るような政策が取れないかなというふうに思っておりまして、具体的には、中小企業についてのみ、使用者の部分になるかと思いますが、保険料を減免するであるとか、ただ、社会保険料全体の財政の問題もありますので、減った分をどういうふうにするかということを考えると、公費で賄うのか、それとも企業別に保険料率をちょっと変えて大企業に負担を多くしていただくとかいうような方法を取らざるを得ないかなというふうに思っています。

 それはどういうふうにするのがいいのかというのは非常に議論のあるところだと思いますが、是非、中小零細企業にかなり大きな負担となっているので、何らかの負担軽減を考えていただけないかなというふうに思っております。

西田(薫)委員 本当に、事業主の皆さんも、今、百六万、百三十万の壁の問題がありますが、企業側がどうなっていくのかというのは非常に関心が高い問題になっているかなというふうに思っておりますので、しっかり考えていかないといけないなというふうに感じております。

 それでは、次の質問に移りたいと思いますが、次は末冨先生にお願いしたいなと思っています。

 先ほど高校無償化のお話がありました。全く私、全てにおいて共感、賛同をさせていただいております。本当に高校の無償化というのは大切だなというのを改めて感じたわけであります。

 そういった中、先ほど先生の中で懸念されているという意見の中で、私立高校を無償化するのがいいのかどうか、また、所得制限を撤廃するのがいいかどうかというような御意見がある中で、これは見事に、先生のお話を聞いて、そのとおりだなというふうに感じておりました。

 そういった中でもう一つ言われるのが、私学が人気が高まれば公立がなくなっていくんじゃないかということも確かに言われております。

 実際、大阪が私学無償化したときに、今もそうなんですが、人気のある公立というのはたくさんあるんですね。本当にそういった公立の先生方は頑張っておられますし、これはあくまでも公私間で切磋琢磨していく、公私共にいい学校をつくっていくというふうに考えていったらいいのかなというふうに思っているんですが、そこで先生に、公立がなくなるという御意見がありますが、それに対しての思いがもしございましたら、お聞かせいただきたく思っています。

末冨公述人 私立高校も含めて無償化してしまえば、私立高校が人気になって公立高校がどんどんなくなるのではないかという御懸念については、実は研究に基づく回答は、それは地域の特性によることと、そして公立も応援する仕組みをつくれば、そのような懸念には現実にはなりませんということです。実際には私立も定員割れしている高校はございますし、公立も同様です。

 ただし、先ほどの意見陳述でも述べましたように、既に高校をこれ以上減らせないところまで来ている県も少なくございません。そうした地域においては、やはり都道府県が責任を持ってその地域にある高校を確保し、よりよくしていくという努力は不可欠です。

 一方で、大阪ですとか東京などの都市部においては、確かに高校数は多いように見えますけれども、実は高校というのは既に、高校入試の段階でかなり、それぞれの特色ある学校を高校生が選択する仕組みになっておりますので、単純に私立に流れる、公立に流れるといったような問題ではないんですね。

 一番のポイントは、やはり、公立、私立共に、我が国の人材養成を支え、かつ高校生がよりよく学べる学校であるということを一校一校に実現していくことなんですよね。そのような意味での戦略性を実現できれば、私立か公立かというような問題はそれほど大きな課題にはなってこないはずです。

 しかしながら、減少する子供数の中で、特に公立、私立を含めた定員管理問題というのが、より一層深刻化していくことも考えられます。この部分の調整をどうしていくのかにつきましては、国としても今まで踏み込んだ調査ですとか検証はなかったはずです。大阪や東京の高校無償化の検証も重要ですけれども、その中で、この定員管理の方式、そして、私が先ほど申し上げた私学助成と授業料との関連性といったガバナンスの問題につきましても踏み込んだ検証を行いますことで、一校一校の学校運営や、それぞれの地域の特性に応じて、高校がそれぞれよくなりながら生徒を確保していくという戦略を実現していくことが最も重要かと思います。

 以上になります。

西田(薫)委員 本当におっしゃるとおりだと思います。私学を無償化することによって公立がなくなっていくというような意見というのは、私もちょっと違うんじゃないかなというふうには感じておりました。

 そういった中で、先ほど先生の中で、不適切教員であったり、いじめがあったりとか暴力である、そういった問題と同時に、不適切教員に対してはしっかりと学校側も情報を開示していくべきじゃないかというような御意見があったと思うんです。これも全くそのとおりだなというふうに思っているんですね。茨城県の例を出されて、そういったお話がありました。

 これは大阪でも、ある自治体は教育委員会ではなく市長部局に、そういった学校のいじめ問題であったりとかという窓口を設けているという自治体があるんですね。よく言われるのが、教育委員会だと、そういった例えば不適切な教員がいた場合に、その教員を守ろうとしてしまう。それと同時に、やはり、教員の皆さんというのが、今非常に大変な中、日々、教壇に立たれているということから、教員の皆さんの負担軽減という観点からも、教育委員会じゃなくて知事部局、市長部局にそういった窓口を設置すべきだということで、現に実際やっている自治体が大阪にはあるんですね。

 そういった窓口というのは、先生からすると、教育委員会にある方がいいか、そういった知事なり市長部局にある方がいいのか、御意見をお聞かせいただければなと思います。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 子供たちを、例えば性暴力等から守るということにつきまして、教育委員会や、あるいは首長部局、どちらがいいかということなんですけれども、実はまだ取り組んでいる自治体の方が少ないんです。

 令和八年度に、私立高校も含む高校無償化の所得制限撤廃が実現されるという見込みになっておりますが、令和八年度と申しますのは、子供性暴力防止法が施行され、全ての学校、園に性暴力対策が義務づけられる年でもあります。その令和八年度に向けて何をすべきかと申しますと、一番急がれるのは、教育委員会であれ首長部局であれ、各都道府県、政令市に合った形での子供を守る部局を設置するということです。これは大変財政的な体力も要ることですので、小規模な市区町村にはかなり難しいと判断しております。

 その上で、私自身は、首長部局に対応部局を設けていくということの方が、やはり、保護者や生徒が、何かあったときに、学校や教育委員会が隠蔽しているのではないかという疑惑を持たなくて済むということ、そして学校側も、首長部局の関与により、より公正な立場から、透明性を持った改善指導や、あるいは改善の在り方も含めた提言が受けられるというように、広く国民に開かれた、あるいは住民に開かれた問題解決が行われやすいというふうに現時点では判断しておりますので、将来的には、首長部局で高校生も高校も守る仕組み、これは全学校段階の課題でもありますが、このような仕組みをつくっていくことができれば理想的だと考えております。

 御質問ありがとうございました。

西田(薫)委員 私も、知事部局、市長部局、首長部局の方がいいかなという思いはあったんですね。どうしても、やはり、選挙で選ばれている者というのが代表になっている、その方が保護者の皆さんの意見というのはよりしっかり聞いてもらえるんじゃないかなという思いもありましたので、先生と同じ思いだったなというふうに感じました。

 もう余り時間がないので、最後に鈴木先生にお伺いしたいんですが、先ほど政府歳出改革の中で、社会保障、ここが時間が余りなかったのかなという中で、この資料を拝見させていただいたんですが、この中に、能力に応じた全世代の支え合いという中で、我々も、社会保障改革というのは抜本的な改革をしなければならないということで、近く具体案も提示をさせていただくところなんですが、まさしくこの辺りも我々本当に思っております。

 また、OTC類似薬についても、何か先生のお考え、どうあるべきかというのが、もし御意見いただけるようなのがあれば、是非お願いしたいと思っています。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 医療ということで申し上げますと、例えば、今、地域医療構想、二〇二五年をゴールで、必ずしもうまくいっていない、これはバージョンアップをどういうふうにしていただくのかというのは非常に注目されております。

 それから、外来は、やはり国民とか患者が医療機関を適切に選択できるように、かかりつけ医の制度、これをきちんとセットしていただきたいと思います。

 それから、今先生おっしゃったOTC類似薬、これを自己負担といいますか、今、医療用医薬品としてやっている。これは、やはり同じ薬であれば、同じ効能であれば同じ負担でないとやはり制度としておかしいというふうに思いますので、ここの見直し、薬剤自己負担の見直し、これは必要だと思います。

 そのほか、リフィル処方箋の普及ですとか、国保の改革もございます。医療はたくさん改革がございまして、あと、やはりデジタルですね。データを使って、これだけ医療のデータがございますので、電子カルテ、電子処方箋、データドリブンで個別最適な医療を実現していく、そういう中にOTC医薬品の話も含まれているだろうというふうに思います。

 以上でございます。

安住委員長 西田君、間もなく時間ですので、まとめてください。

西田(薫)委員 はい。

 ありがとうございました。

 本来であれば、清水先生の方にも質問させていただきたかったんですが、もう時間ということでありますので、大変申し訳ありませんが、これで終わらせていただきたいと思います。

安住委員長 次に、橋本幹彦君。

橋本(幹)委員 国民民主党の橋本幹彦でございます。

 我々は、手取りを増やす経済を実現する、そして、人づくりこそ国づくりであると訴えてまいりました。この観点から質問してまいります。

 まず、清水秀行公述人、そして鈴木準公述人に質問いたします。

 特に、清水公述人、令和五年、六年と三年連続にわたってこの予算委員会の公聴会にお越しいただいておりますが、三年連続でいただいた御意見は、人件費を価格転嫁できていない、特にこれは中小企業において進んでいないという点について御意見をいただいておりました。

 下請法の改正についても先ほど御意見いただきましたけれども、今もなおこの人件費の価格転嫁が十分に進んでいない問題について、最大のボトルネックは一体どこにあるとお考えでしょうか。民間の商慣行にあるのか、それとも政府の規制や基準にあるのか、あるいは我が国の経済の展望にあるのか、御意見をお聞かせいただければと思います。

清水公述人 御質問ありがとうございます。

 中小企業が価格転嫁が十分進まない最大の要因は、やはり価格交渉そのものができていないということが一番挙げられると思います。

 中小企業の皆さん方にお聞きすると、やはり発注企業から、いわゆる失注とか転注、注文そのものがなくなってしまう、失うということですね、それから、ほかに注文が行ってしまう、転注ということですが、そういったことを恐れて、やはり価格交渉すらできないという経営者の声が強くございます。

 また、価格交渉を申し入れた場合に、いわゆるテーブルにのせてもらえるんですけれども、コスト、エネルギーに関わる部分だとか、あるいは原材料費、ここはのるようになったんだけれども、人件費、労務費についてなかなかのせられないという声がやはりあります。

 そのためには、労務費にこれだけのお金がかかっているんだとか、労務費をこれだけ上げるというエビデンスが求められるということがあります。ということでいえば、賃金がこれだけ増えてきた、今連合では、特に公務の部分、前、石破首相も、公務の部分にも六%のという御発言が予算委員会でもございましたが、まさに公務のところの発注が各都道府県や千七百を超える自治体に影響しますので、そういったところで、これだけ上げていますよ、そういったエビデンスをしっかりと示す、そういったことに基づいて交渉することが大事ではないかというふうに思っています。

 もう一つは、サプライチェーン全体で、二者だけでやるのではなくて、全体で価格転嫁に労務費が乗せられるような、そういった協議がされることが大事だろうと思っています。

 以上でございます。

橋本(幹)委員 同じく鈴木準公述人もお答えいただければと思います。

鈴木公述人 お答え申し上げます。

 今、統計を見ますと、企業が生産するための投入のコストと消費者物価というのはかなり連関しているんですけれども、その投入コストというのは、二〇二二年、二三年というのは、中間財といいますか、材料、こういったもので上がっておりました。しかし、二四年になりまして、ウェートとしては、やはり労働投入コスト、これが反映されているということが統計で確認されておりまして、まだ十分ではないということはそのとおりで、それが続くかどうか、より一層転嫁が進むかどうかという課題だと思います。

 もし、いろいろな現場で、独占禁止法あるいは下請法の世界で何か課題があるのであれば、それにはきちんと対応していくという必要があろうかと思いますが、一番、根本的には、中小企業といえども、やはり付加価値が高い財やサービスを生産する、それを追求していただく。政策、予算ではそういうものを応援する。支えるだけではなくて、前向きに前進する、そういう中小企業、価格転嫁が当然できる、代替の利かないものを作っている、そういう企業を応援する、そういう政策を強化していただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

橋本(幹)委員 これに関して、更に清水公述人に質問ですけれども、サプライチェーン全体で価格転嫁していくということは確かに大事だと思うんですが、そのためにいろいろな政策を政府はやっております。ただ、これは産業によって偏りが見られるなというふうに思っております。

 政府の施策も、例えば下請法の改正であるだとか、最低運賃であるだとか、そういったものの設定であるだとかというのは非常に重要だとは思いますけれども、そもそも、取引価格を決めていくということは日々の取引の基本でありますから、政府が箸の上げ下げまで指南できないのではないかなというふうに思っております。どういった、今の施策を継続していくのがいいのか、それとももっと更に施策が必要なのか、その辺りの御所感をいただければと思います。

清水公述人 国の政策ということであれば、やはり一つは、中小企業庁あるいは公正取引委員会等が様々なGメンを出したり、そういったことで、適正な取引が行われているかということについて、企業名の公表なども含めて行っている。このことは非常に大きな、価格も含めた、価格交渉あるいは適正な価格設定に貢献をしていますので、是非、そういったことでいえば、予算でいえば、そういったGメンであるとか、そういったところが増えていくということが大事でありますし、もう一つは、よいサービス、よい製品、そしてよい技術、これにはお金がかかるんだという、このことを、私たちは労働者であると同時に生活者でもありますから、そういったことをしっかりと国民全体が認識していくことが大事だと思っています。

 最近、やっとコマーシャルで送料無料というのが減ってきて、送料は無料ではないんです。誰かが負担をしているということがやっと、それをしっかりと労務費に乗せていきましょう、価格転嫁に乗せていきましょう、そういった機運を醸成することも大事だと思っています。是非、政府にもそういった啓発にも力を入れていただきたいと思います。

 以上でございます。

橋本(幹)委員 続いて、末冨公述人に我が国の教育の大枠について質問したいと思います。

 予算規模はいかほどであるべきなのかという質問なんですけれども、高校無償化について先ほどおっしゃっていただきました。私自身、公立高校が無償化になって、その翌年に公立高校に入った世代であるので、大変このときの、民主党のときの施策についてはとても感謝しているところであります。(発言する者あり)

安住委員長 静粛に。

橋本(幹)委員 あるいは、ただ、それだけでもちょっと足りなくて、私の父は公立高校の先生をやっておったんですけれども、非常勤の先生でございまして、大変給料が低かったというところでもあります。そういう中で、公立高校の授業料は免除でありましたけれども、同時に奨学金もいただきながら高校に通ったという者でございます。

 ですので、無償化が若者に対してとても希望を与える政策だというのはそのとおりだというふうに思いますし、あるいは、給特法の改善であるだとか、いろいろな政策が今国会でも進んでいるところでありますが、全体の大枠として、教育予算に対する規模は日本にとって足りているのか、あるいは少な過ぎるのか。そういった大枠について、お考えをお聞かせいただければというふうに思います。

末冨公述人 まず、日本の教育予算につきましては、少ないということが言われがちなんですが、もう一つが、家計が負担する特に高校、大学段階の授業料が多いということがOECDの比較で分かっております。

 義務教育段階につきましては、これまでも、例えば三十五人学級を実現してきている等も含めて、児童生徒一人当たりの予算額でいうとそれほど見劣りしない水準になっておりますが、特に大学についての政府支出教育費水準がまだ足りないのではないかということも言われております。

 そうした視点から、今回検討されております後期中等教育段階、すなわち高校の無償化の拡充とともに、大学に対しての支援をどのように積み増していくかということについては、なお充実していく方向での検討の余地が大いにあろうかと存じます。

 全体像については以上です。

 御質問ありがとうございます。

橋本(幹)委員 教育に関して更に掘り下げて、末冨公述人と清水公述人に質問いたします。

 日本の教育の方向性についての質問ですけれども、教育政策の目的をどこに置くべきかという質問になります。

 子供たちの時間は有限です。先生など、人的資本も有限です。充実させるということは、何か改めて、何かを維持して、あるいは何かを縮小していく、そういうような総合的なビジョンが必要になってくるというふうに考えるんですけれども、ただ、昨今の議論は、ちょっと全体的なビジョンが見えづらいような感覚があります。

 今日の我が国において、どこに教育政策の方向性、政策目的を置くべきなのか、お考えをお聞かせいただければと思います。

 末冨公述人から。

末冨公述人 我が国の教育政策全体の目的につきましては、教育の目的は何であるべきかということについて、ここにいらっしゃる皆様も一人一人お考えがあろうかと思いますけれども、私自身は、まず、教育基本法の第一条に定めております平和で民主的な国家及び社会の形成者を育てる、平和で民主的な国や社会をつくる人を育てるんだという視点が私個人としては大変大事だというふうに思い、私なりにできることを取り組んでおります。

 もう一つが、現在、文部科学省で推進されている、閣議決定もされております第四期教育振興基本計画では、全ての人のウェルビーイング、日本語で幸せと訳されますけれども、全ての人がよりよく生きる、幸せに生きられるウェルビーイングを実現するための教育というのを実現していこうじゃないかと、これも私、第一期から見ておりますが、第四期の教育振興基本計画というものが一番すばらしいし、これも国を挙げて実現していくべきものだというふうに考えているということです。

 そうした意味でも、ただ教育予算を増やせばいいんじゃない、何のために教育予算を私たちの子供や若者たちのために使っていくのかという問いかけは、大変重要なものであるというふうに受け止めました。

 御質問ありがとうございます。

清水公述人 教育をめぐっては様々な課題がございます。先ほどありましたように、日本の教育は、やはり他の先進国と比べて、高等教育に関わる部分、これは先ほど末冨公述人も申し上げていたとおりで、公的財政支出が少ないというふうに思っております。

 いわゆる幼児教育に関わるところ、これも様々な課題がございますし、小中の部分、それから高校の無償化を含めて、様々ございます。

 そういう中で、AIであるとか、これからそういったことを学校でも教えていく機会が多いと思います。教育DXの話もあろうかと思います。

 ただ、AIで授業をやっていく、いろいろなことを取得することはできるんですが、それはやはり過去の様々なデータに基づいた知識は教えることはできますが、それに基づいて未来にどう生きるかということを子供たちに教える、これはまさに人である教員の充実であろうというふうに思っています。

 是非、そういった形で、教員の処遇改善も含めて、先を見越していただくことが必要があるのかなというふうに思っております。

 以上でございます。

橋本(幹)委員 鈴木準公述人にお尋ねします。

 歳出について、政府部門の改革が必要である、そのための方針が見えているはずではないかというようなお話がありました。そのような御意見はかねてより広くあったものと承知していますが、それがなぜ政府部門において改革に取り組めてこなかったのかについてお伺いします。

 もちろん、直接的には国会にあると思うんですけれども、ただ、私も、昨年当選しまして、議論の土台、土壌について、例えばEBPMの浸透についても問題意識を強めた次第であります。政府部門の意思決定の在り方について御意見を頂戴できればというふうに思います。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 私の先ほどの資料の十八、十九、二十、二十一あたりが具体的な改革事項だということを申し上げました。

 これは遡りますと、例えば、小泉内閣のときには、ざっくりと何兆円削減みたいな非常にトップダウン型で改革を進められようとして、しかし、一年目はうまくいくんですが、二年目以降なかなか、改革疲れみたいなことが出てしまった。それに対しまして、今、経済・財政新生計画ということでやっておりますのは、ボトムアップといいますか、個別の事項を、膝詰めで何ができるかということをいろいろ御相談しながらやられていると思います。

 一つ一つ進んできたものも相当ありますけれども、それらを積み上げたときに、全体として成果がまだ見えていない。しかし、着実に成果が見えている。コロナ禍がございましたので、そこでかなり時間を浪費といいますか、改革がストップしてしまいましたけれども、これを、やはり団塊の世代の高齢化を考えると、二〇二〇年代後半、三〇年以降が非常に厳しくなってまいりますので、ボトムアップの積み上げ型の改革をいかにスピーディーに今後数年間で進められるか、そこに懸かっているのではないかと思います。

 以上でございます。

安住委員長 橋本君、間もなく時間ですので、まとめてください。

橋本(幹)委員 質問は以上といたしますが、今いただいたEBPMの話ですとか、あるいは、賃金が上がる、給料が上がり続ける状況、そして人への投資を重視して、国民民主党はこれからも政策を推進していきたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

安住委員長 次に、河西宏一君。

河西委員 公明党の河西宏一でございます。本日はどうぞよろしくお願いをいたします。

 まず、四人の公述人の先生方には、大変お忙しい中、国会までお運びをいただきまして、大変貴重な御意見、また御知見を頂戴をいたしました。時間の関係上、四人皆様には御質問できないこともあろうかと思いますけれども、初めにその点をおわびをさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、鈴木公述人の方にお伺いをいたします。

 先ほど、経済財政、また社会保障の観点から、理論的にも深掘りをし、様々に大変深い御示唆をいただいたというふうに思っております。この国会は、御存じのとおり熟議の国会ということで、我々与党も過半数を持たない中において、場合によっては予算案の修正も視野に入れる中で、所得税の課税最低限でありますとか、あるいは教育の無償化、これは我が党もこれまで重視をしてきた政策でありますけれども、こういった部分の協議を、いわば予算審議と同時並行で、いわゆる三党協議と呼ばれるものを複数走らせてきたわけであります。

 その中で、やはり私も感じますのは、財源の根拠をしっかり明確にしていくということ、とりわけロジック、特に課税最低限のところは今年で終わるものではありませんので、インフレ下においては今後動いていくということでありますので、このロジックを明確にしていくということが非常に大事かというふうに思っております。

 そうした中で、二月七日ですか、IMFの方から、対日経済審査を終えて、なかなか、与党が過半数を持っていないので財政拡張には懸念もあるということも、大変厳しいそういった見方も表明をされたところであります。

 私は、こういった国会審議に身を置く中で、非常に難しいなというふうな、そういった感じる部分があります。というのは、例えば、今日、非常に重視をしておっしゃっていただいた歳出削減、歳出改革は、市場に対してはポジティブに一定程度映るんですけれども、国民の多くの皆様にはどうしてもネガティブに映ってしまう。あるいは、他方で、減税、歳入を削減をしていくということは、逆に、市場にはネガティブに映っていくけれども、国民には歓迎をされていくというようなことがあります。

 こういったミスコミュニケーションを解消して、本来は同じ発射台、土台に立った上で政策の議論をしていく。海外においては財政の前提をルールで決めていっているような国もあるわけでありますけれども、こういうような状況の中で、財政、また経済に対するメッセージ、国会、とりわけこの衆議院予算委員会が発していくメッセージ、どういった点に留意をしながらメッセージを発していくべきというふうにお考えか、御知見をいただきたいというふうに思っております。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 今先生おっしゃったことというのは、やはりパブリックコミュニケーションをいかにうまくやっていくかという問題だと思います。

 財政、国家財政、ございますけれども、かなりの部分、これは地方、地域が関係してまいりますし、それから、医療でいえば保険者が関係してまいります。いろいろな保険者がおります。

 例えば、自治体で、同じサイズの自治体が幾つかあって、同じサービスをうまくやっているところとうまくやっていないところがある。あるいは、隣の町はこういうふうにうまく、費用対効果が高いところと低いところがあるわけですね。ですから、そういう実態をやはり見える化をして、何か上から改革を求めるということではなくて、現場現場が知っていただき、気づいていただき、これはやらないとまずいということで取り組んでいただきと、そういうふうにいかに持っていけるか。ですので、地域、保険者、それから一部民間企業もいろいろな公的、公共サービスを提供しておりますので、そういった方々にきちんと説明をして、こうすればうまくいくと。

 何か痛みを伴うとかそういうことではなくて、よりうまく、一番うまくやっているところとやり方を合わせるというような発想で進めていただくということの改革を、これをやはり工夫をしてやっていくということではないかというふうに思っておるところでございます。

河西委員 ありがとうございます。

 ちなみに、この国会は、大変議論になりましたのが高額療養費制度の件でありました。本日の資料の九ページの方にも、社会保障制度改革の重要性ということであります。

 これをめぐりましては、持続可能な制度でありますとか、あるいは保険料負担の軽減の観点から見直しをしていく。これは従前から議論の俎上にのっかっていたわけでありますが、ただ、やはり、多数回該当を始めといたしまして、がん患者団体の皆様からも我が党も御意見をいただきまして、最終は与党の中でも議論を行った上で、この多数回該当については凍結をしている。

 これも非常に難しい議論だなと、本当にこれ以上ない板挟みに遭うような思いがあったわけでありますけれども、こういった議論は鈴木公述人はどのように見ておられたのか、一言感想をいただきたいと思っております。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 今先生おっしゃったように、多数回該当の適用など、疾病が重い方あるいは長期療養の方にきめ細かく配慮をするということを国会でまさに深い議論をしていただいておるということに、本当に心から敬意を表するところでございます。

 一方で、公的医療保険制度の持続可能性を考えますときに、この高療の給付というのは、非常に大きな、高いスピードで増えております。金額も三兆円になろうとしているということで、やはり、保険料の際限のない増加を少しでも抑えるためには、今、賃上げ経済へ移行したこのタイミングで何らか見直す必要があるのではないかというのが私の意見でございます。

 巷間の議論を拝見しておりますと、保険料負担を減らすために給付率を調整すると、今度は自己負担が増える。どちらにしても負担だということになってしまって、保険料の負担も患者の負担も全部負担だということですと、その議論あるいは目的が何なのかということがちょっと見失われがちでございます。

 この辺り、交通整理していただく必要があると思いますし、それから、疾病が重い方に配慮する高額療養費制度については、そもそもできるだけ高額にならないように、薬剤とか医療技術の費用対効果の仕組みを幅広く導入するですとか、あるいは、二〇一一年当時の政府・与党におかれましては、高額療養費制度を必要としない方々全体を含めて受診時定額負担を導入して、それを高額療養費の方の充実に回そうというような議論もされておられたと思います。

 したがいまして、議論を拝見しておりまして、今回の高額療養費制度そのものだけに集中するのではなくて、もう少し全体を見て、何が最適なのかという御議論を更に深めていただけたらありがたいなというふうに思います。

 以上です。

河西委員 この社会保障制度改革、少子高齢化の中で我々政治家の最大の課題かと思っておりますので、今の御指導を踏まえながらしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っております。

 鈴木公述人にもう一問だけお伺いをしたいと思うんですけれども、もう一つこの国会でよく話題になりましたのがインフレへの対応、またこれをどう捉えていくのかということ、これは活発な議論が行われたかというふうに思っております。

 私自身の捉え方としては、目下の物価高というのは、我が国においてはディマンドプルではなくてコストプッシュである。どちらかというと外発的な、円安でありますとか、資材高でありますとか、最近は労務費の価格転嫁ということが始まってきているということでありますけれども。

 その一方で、じゃ、実際の消費の現場がどうなっているのかということを非常に私、気にしております。CPIの総合を見ても、エネルギーでありますとか、あるいは生鮮食品、最近、米とかキャベツが話題になっておりますけれども、ここは非常に高上がりをしてきている。その一方で、基調的なインフレを比較的反映しやすいと言われているサービス、ここは名目賃金に対しては余り振るっていないのかなというふうに思っているわけであります。

 ですので、物価と賃金の好循環ということとともに、それに応じて消費がどれだけ回っていくのかということが大事になってくるのかなと。有識者の中には、実質賃金が上がったとしても、実質の家計支出、これは余り上がってこないんじゃないか、その弾力性は十年ほど前よりかはそれほど高くないんじゃないか、こういうような示唆をいただく有識者の方もいらっしゃいます。

 先ほどの資料の中でも、消費性向が上昇してくれば回っていくというような、パワーポイントかと思いますけれども、この点に関する何か御知見、また今後の政策の方向性があれば、御指導いただきたいというふうに思っております。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、物価そのものにつきましては、CPIというのは、やや技術的ですが、ラスパイレスといいまして、消費バスケットの上で固定して計算しておりますので、今の局面というのは、かなり実態の物価よりも高く物価上昇率が出ている可能性があると思います。つまり、それはどういうことかというと、高いものはもう売れなくなるわけですね。高いものから安いものにシフトをするとかということが起きますので、高い物が売れなくなるという意味では、一方向に物価がどんどん上がっていくということではないというふうに思います。

 それで、今先生おっしゃったのは、消費性向の問題だと思います。若い世代ほど、貯蓄率が高い、消費性向が低い。賃金が余り増えていないのに消費性向が下がっている、貯蓄率が上がっている。これはやはり、将来不安といいますか、非常に防御的になっているということだと思います。

 これは、今日いろいろ申し上げました財政の将来性ですよね、特に年金、医療、介護、こういったものがどうなっていくのか、そういったところの展望をもう少し明るくしていただく。それから、民間が政府に支えられなくても自律的に回っていくような状況をつくっていく。そうでないと、なかなか、貯蓄率が高いという状況、消費性向が低いという状況は改善をしないというふうに思いますので、そこは一朝一夕に変わるものではございませんが、地道に努力をしていく必要があるのではないかと思います。

 以上でございます。

河西委員 将来不安の払拭ということでいただきました。

 そこで、末冨公述人の方にお伺いをしたいというふうに思っております。

 将来不安、人口減少、少子高齢化に直面する日本にあって、やはり人材を育てていく、一騎当千の人材を育てていくということが唯一の突破口であるというふうにも思っております。

 今、私立高校の無償化をめぐりまして三党で協議をしてきておりますけれども、やはり我が党としても重視をしておりますのが、無償化も大事でありますけれども、教育の質、これが大事である。今後、制度設計も行われていきますけれども、大阪方式なのか東京方式なのかという議論もありました。無償化枠を超えた分を学校法人が負担をするのか、それとも生徒、保護者の側が出していくのか。

 この制度設計で非常に教育の質も左右されていくのかなというふうに私も拝察をしているわけでありますけれども、教育の質をどう向上させていくのか。本当に子供のための投資、本当に我が国の未来のための投資にしていくための教育の無償化、質の維持向上、この点について、末冨公述人から御示唆をいただきたいというふうに思っております。

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 まず、教育の質を上げるためには、投資の総量が増えないとなかなか教育の質は上がりづらいです。私立学校がいいみたいなイメージがありますが、私立学校も、実は非正規に依存して経営を成り立たせざるを得ない学校さんは大変多いです。

 そうした意味でいうと、授業料のいたずらな値上げは抑制しないといけないんですが、例えば、非正規だった先生で、この先生はすごくいいから学校を変えるコアになってほしいみたいな方を正規に変えるときというのは、必ず授業料に転嫁していくんですよね。そうじゃないと、私学経営というのは特に進化しづらいです。公立も本質的には同じことです。

 ですので、その部分を考えると、私自身は、自分の理論で、教育費をどう公私分担するかということについて明確な設計をした上で、何を家計が負担し、何を政府が応援するのか、しっかりルール作りをしてほしいということを申し上げております。家計が負担する部分でも応援した方が原則いい。だから、私は、高校生の扶養控除はちゃんと拡充した方がいい、家計がしっかり払う部分、親が子供のために責任を果たしていくんだ、学校に対してもしっかり応援していくんだという部分を残した方が恐らく高校教育全体にとってもいいと思います。

 あと、お金以外の教育の質で申し上げますと、先ほど申し上げたとおりで、やはり質とは何かということなんですよね。私自身、今日申し上げたのは、最低限の教育の質だけです。

 しかしながら、高校生たちにとってよりよい学び、あるいは社会の人材養成にとってよりよい学びというものについても、やはりもう少し大きな議論が必要かと存じます。特に、この国では、人材を必要な分野に誘導していくための政策というのがもう少し充実してもいいのではないかなというふうにも考えております。

 科学技術立国を支える人材が深刻に不足しているからこそ、石破総理は専門高校も充実するとおっしゃっておられますが、一方で、女性も含めて、STEAM分野で活躍していく、あるいは、障害を持っていたり、今は日本語を学んでいるんだけれども、本来、科学や数学が大好きなんだというような生徒たちに対してもひとしく活躍の機会を与えるような高校教育、大学教育への変化が必要であるというふうにも考えております。

 このように、教育の質といっても一元的ではないんですが、とりわけ御質問の趣旨からは、人材養成にとって、我が国が必要とする人材養成にとっての教育の質といったものも、いかなる視点で捉えるかといったことも含めて、ここからが私は議論の本番だと思っておりますので、是非、全政党を挙げて、あるいは、この国には様々な高校や大学分野でイノベーションを起こしてきた方たちがたくさんいらっしゃいますので、そのような諸賢の知識や経験も集めた上での教育の質向上の方策というものを実現していただきたく存じます。

 御質問ありがとうございました。

安住委員長 時間が来ました。

河西委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。大変にありがとうございました。

安住委員長 次に、櫛渕万里さん。

櫛渕委員 れいわ新選組の櫛渕万里でございます。

 公述人の先生方、ありがとうございます。

 まず、鈴木公述人にお伺いをいたします。

 事前に配付されておりました資料の十三ページ、日本財政の持続可能性の見方を見ると、財政赤字の常態化から債務残高の累増となり、それが将来不安による消費低迷から経済の低迷につながり、金利の低下が財政の緩みとなっている循環構造が示されていらっしゃるんですね。

 しかし、そもそも、債務残高の累増が将来不安による消費低迷をもたらしているというのは本当なのでしょうか。消費が低迷しているのは、直接的には賃金やそして年金が減らされたことではないかと思います。財政が長期的にどうかというよりも、消費の低迷というのは、自分の収入の見通しが不安定なのに、増税や社会保険料の負担増が次々と行われているからではないのか。

 むしろ、逆のベクトルが必要であり、すなわち賃金や年金増で収入が増える見通しを立てるということであるとか、また、消費税の減税や社会保険料の減免を行うことで、低迷する消費を本格的に回復させて経済を立て直すことではないかと考えますが、御意見をお願いいたします。

    〔委員長退席、奥野委員長代理着席〕

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 先生おっしゃるとおり、もちろん、そこは相互に関係すると思います。

 私は、債務残高がどんどん累増するということを見たときに、これは財政の余力がどんどんなくなって、何か困ったこと、典型的には災害が起きて被災するとか、あるいは将来の年金や医療の給付がどうなるのかとか、あるいは金利が上がったら住宅ローンが借りられないとか、あるいは景気が悪くなっても景気対策ができなくて失業するとか、そういう心配を当然するだろう、そういうことをちょっと描かせていただいたということでございます。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 では、続きまして、清水公述人にお伺いをいたします。

 連合さんは、生活必需品の価格が上がっていることから、所得税非課税の人に対し、扶養者数に応じて基礎的消費の消費税負担相当分を定額で還付する税バック制度の導入を求めていらっしゃいます。生活必需品の値上がりで消費税負担が重くのしかかっていることは、れいわ新選組としても共通の認識でありますけれども、なぜ所得税非課税の人だけに消費税負担分をバックする仕組みなのでしょうか、お伺いをいたします。

 連合加盟の組合員の方でも、所得税を納めているけれども生活が苦しい、消費税を何とかしてくれと訴える人は多いと思うんですね。その人たちにはこの制度は及ばず、そもそも、なぜ所得税非課税で区切るのかが分かりにくい。消費税負担分をバックするのではなく、消費税の廃止、少なくとも消費税の減税、これが、所得税の累進強化の組合せと一緒にやる方がよほど合理的ではないかと思いますが、御見解をお聞かせください。

清水公述人 まず、消費税に対する連合の考え方ですけれども、基本的には、今後も増え続ける社会保障費を賄うための重要な財源として消費税は位置づけています。ですから、安易な税率の引下げは実施すべきではないというのが連合の一貫した立場でございます。そういった中で、いわゆる低所得者の部分にどういうふうに厳しい生活をしていることに対して返していくのかということで考えたのは、いわゆるこの税バック方式ということを考えたわけであります。

 それにしても、やはり所得をしっかりと把握することがまず第一であろうというふうに思っています。この間も、様々コロナのときにも給付をどうするのかということでいろいろな調査をしたりとかありましたが、私たちとしては、マイナンバーとしっかりと位置づけた上で、必要に応じた形ができるということが必要だと思っています。

 基本的には、所得税が非課税の方の適用税率あるいは五%の方を対象に、食料品あるいは電気、ガス、水道などの基礎的消費、これにかかる消費税部分を還付する、これが大事だという考えでございます。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 ただ、社会保障費に適正に使われていないという現状があり、次の質問にも関連しますけれども、社会保障サービス、これが重要性を増していくにもかかわらず、介護人材が大変今不足をしていますし、処遇改善が急務であるとか、あるいは保育人材についても、質の高い保育には人材確保が必要だということをおっしゃっていらっしゃると思うんですね。れいわ新選組は、介護、保育の月給十万円アップを公約としておりまして、問題意識はここも共通しているんですけれども、そもそも消費税から取るということによる社会保障というのは、私は逆進性の問題も含めて適切ではないと考えています。

 この点、来年度の予算案についての、次の質問に行きたいと思いますが、介護、保育の人材確保、処遇改善はどのような点で評価ができるでしょうか。そして、立憲民主党さんが介護、保育人材の処遇改善に月一万円のアップということでありますが、実際、全産業平均よりも年収にすると百万円以上も少ないという現状について、月一万円ではとても足りないと思いますが、お考えをお聞かせください。

清水公述人 先生御指摘のとおりであると思います。

 この間、通常国会、そして臨時国会等含めて、医療、介護の部分のいわゆる五千円のアップであるとか、様々なことは行われてきましたけれども、抜本的な部分には十分に足りていないというふうに思っています。

 その大きな原因は、やはり公的な価格によって定められているところがありますから、実際に働いている方の現状、大変な仕事をされていることに対しての、働いている部分に関してのそれが見合っていないということがありますから、そもそも公的な価格によって決められているこの在り方についても、どういったときに伸ばしていくのかということについて、国会でも十分な議論をいただきたいというふうに思っております。

櫛渕委員 とても足りないというお答えであったと思います。

 続きまして、末冨公述人にお伺いをしたいと思います。

 若者が国から応援されているという実感を持てる政策であるとか、行きたい高校に挑戦、選択できる制度、大変私も共感いたします。それを全ての高校生にという点、是非、我々も応援をする立場でありますけれども、さらに、れいわ新選組は、全ての子供たちに幼児教育から大学院までの完全無償化、これを公約に掲げさせていただいています。高校はもちろん、大学、大学院など、高等教育機関まで無償化すべきではないかと考えますが、先生のお考えをお聞かせください。

    〔奥野委員長代理退席、委員長着席〕

末冨公述人 御質問ありがとうございます。

 幼児教育からの大学院の完全無償化というのは、大変重要な理想かと思います。

 この際、恐らくこれは北欧型のリカレント教育が当たり前であるという社会を想定されてのことかと思いますけれども、リカレント教育型を大事にする社会では、教育を受ける権利は万人の権利であるという前提をとても大事にしておられます。すなわち、年齢の制限なく、誰もが学びたいときに働き、かつ働きながら納税の義務を果たしていくということも大事にしておられるわけですよね。

 私、いっときスウェーデンを研究しておりましたけれども、スウェーデンの場合ですと、一定期間就労すると一定期間無償の教育を受けられるという権利があると。そうした中で、様々にステップアップをしていかれて、例えばですが、私が聞いたことがあるのは、タクシーの運転手さんから、自分の働く環境というものに関心を持って、その後、やはり、大学、大学院と働きながら学ばれて、最後は労働経済学の研究者になられた方がいるという事例もありました。

 こうした社会に進化していくということも、超高齢化社会である我が国こそ、実は、生涯活躍できる基盤としてのあらゆる学校段階を万人に開いていくという理想は大変重要なものであろうかと存じます。そのような未来というものも国会での御質問でいただけたということは大変意義深いというふうに感じております。

 御質問ありがとうございました。

櫛渕委員 ありがとうございます。

 是非、そうした社会の方向性を目指していきたいとれいわ新選組は考えております。

 やはり、日本の教育に対する公的支出の割合、たった八%です。OECDに加盟する三十六か国で三番目に低いわけですね。平均は一二%、それよりも四%も低い。そして一方、大学や専門学校などの高等教育にかかる費用のうち、家計で負担しなければいけない、この割合は、比較できる三十か国中で三番目に高いと。ここは平均一九%でありますから、それよりも三〇%余り上回っているという、これは異常事態だと思います。OECDは、日本は若者が減っていくからこそ、教育の質を高め、社会を支える人材を育てる必要があるというふうに勧告もしています。

 先ほど、質の問題をお話しいただきましたけれども、ここでは財源についてどのようにお考えか、先生にお伺いいたします。

 先ほど資料の中で、税制、現物給付、現金給付のベストミックスというお答えがありましたけれども、もちろん安定財源のためには、今のマイナスをプラスに持っていくまで、この状況が可能な形にしなければならないとれいわ新選組は考えています。

 というのは、先進国で唯一、今、日本は経済成長しない、賃金が上がらない、そして所得の中央値が三十年前から百三十一万円も下がっているんですね。そして、非正規雇用が六割となった、そのうち女性が八割です。経済格差、そして賃金が上がらないのをどのように上げていくのかという、このマイナスをプラスにしていくまで、今六人に一人が貧困、一人親世帯は二つに一つが貧困という事態で、親の貧困が子供の貧困につながっていると存じます。こうした状況をまずはなくすためにも、れいわ新選組は、マイナスがプラスに行くまでは、国債を発行してでも、しっかり教育の財源を手当てする必要があるのではないか、そのように考えています。

 よく、将来にツケを回すのか、借金はけしからぬという言説がありますけれども、いじめや自殺、貧困、そして虐待が増える、今の子供たちが置かれている現状を放置する方がよほど日本社会にとって将来のツケが大きいと存じますが、先生のお考えをお聞かせください。

末冨公述人 今おっしゃったお考えは、いわゆる教育国債、子供国債という考え方かと存じます。子供たちが、ここから質のよい、よりよい教育を受けて社会で活躍するようになれば、その分経済成長が続き税収が増えるから元は取れるはずだという理論ですけれども、多分まだ実証されておりませんので、その部分は私個人は慎重に考えております。

 財源につきましては、私は、国会議員の皆様が一体どうお考えなのかということで、昨年度、子供の貧困対策の財源をどう確保すればいいですかという質問を、お忙しい中で国会議員の二割程度の方に御協力いただいて御回答いただきました。その中では、多かったのは、やはり歳出を見直していこうという方向性を見出されている方が多く、今政府を挙げて全世代型の社会保障をどうするか、これは今まで余り顧みられていなかった子供、若者も含んで、世代間で支え合っていく、全ての世代が支え合う仕組みに移行しようとしております。

 やはり、この際に歳出改革というものが不可避となってくるということで申しますと、私自身は、歳出のリバランス、つまり見直し、若い世代を支えるための財源を歳出の見直しの中でつくっていくという考え方が恐らく支持され、実現していくのであろうというふうに考えております。

 以上になります。

櫛渕委員 時間となりましたので、まとめます。

 先生、ありがとうございます。子供への投資は、受益者は社会であり、国でありますから、是非ここの部分は、まずはマイナスをプラスに持っていくまでの国債の発行。れいわ新選組は、教育に限らず、国債をしっかり、国民負担を減らすために、まずは教育の無償化、そして奨学金の返済ゼロ、児童手当は一律三万円給付ということをうたっております。是非、これからも御議論よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

 秋山公述人、失礼いたしました。時間がなくなりました。

安住委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 公述人の皆さん、ありがとうございます。

 四人の公述人の皆さんにそれぞれお伺いいたします。防衛費についてです。

 二〇二五年度予算案の特徴の一つは、防衛予算の突出があります。五年間で四十三兆円の防衛費拡大を決めた二〇二二年度予算と二〇二五年度予算案の主要経費の構成比を比較しますと、防衛費、軍事費だけが四・二ポイント増えているんですね。社会保障、文教科学、暮らしの予算は全てマイナスとなっています。

 もう一つです。二〇二五年度予算案の前年度比較では、社会保障費、昨年度と比較すると一・五%増、文教科学予算は一・四%増、中小企業予算は〇・一%増と、前年物価上昇率二・七%にも及んでいないんです。一方で、防衛費、軍事費だけが九・五%と突出しているんです。

 先ほど、全労連の秋山議長からは、八兆円を超える軍事費が、命と暮らしに関わる予算の伸び率が抑えられているとの指摘がありました。この防衛費、軍事費の突出についての御所見をお聞かせください。秋山議長は、組合員さんの、労働者の要求等の観点で補足事項があれば、また御説明いただきたいと思います。

秋山公述人 御質問いただき、ありがとうございます。

 防衛費の伸びが大きいということによって国民の暮らしが圧迫されているというのは、予算の伸びというところでありまして、先ほど田村委員の方からもありましたとおり、社会保障費の伸びが昨年度比で一・五%増しかないという状況は、物価上昇分にも及んでいないということであります。自然増を含めて、もっと伸びが本来であればあるはずでありますが、抑えられる一方で、防衛費、軍事費だけが突出しているというのについては、非常に、組合員からもなぜなのだという声を伺っています。

 特に、医療であるとか介護、福祉の分野で働いている人からは、処遇改善が進んでいないというところがあって、私たちそれぞれの組合員の賃金、処遇が改善されない原因ではないかというふうにも思っているので、その点でも見直しを図っていただきたいなというふうに思っております。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 私は先ほど、地方や民間の企業の理解を得ながら歳出改革が必要だということを申し上げました。防衛に関しましては、これこそ国でなければ担えないものだと思います。

 それで、日本の経済や生活、命、全ての上で一番最も重要なのは、やはり安全、安全保障ということは切っても切れない話だと思います。それで、今、東アジア地域の安全保障環境を考えます場合に、防衛費については、やはり国会で御議論いただいて、必要なものをきちんと積み上げて計上していただくということは必要だと思います。

 防衛費におきましても、これはしかし、費用対効果といいますか、幾ら使ってどれだけの効果があるのか。今、防衛産業を育成していこうという動きもございますが、装備品のサプライチェーン、これが寸断されるようなリスクを軽減するような形で防衛費がきちんと使われているのかとか、単に金額ありきではなくて、具体的な中身としてきちんと国家としてのリスクに対応しているか、そういうチェックを防衛費においてもやっていただく必要があるのではないかと思っております。

清水公述人 ロシアのウクライナ侵攻、あるいはミャンマーの軍事政権、そういったこと、あるいはガザ、イスラエルの問題、世界の様々な安全保障、あるいはグローバルな状況を考えれば、日本の国家において、どのように防衛していくのか、あるいはそういったものに備えるかということについて予算が組まれることは重要であろうというふうに思っております。ただその中で、昭和世代の私、もう六十五でございますが、から見ると、ああ結構、何か大きな額だなというのを個人的には感じるところが強くございます。

 その中で、いわゆる装備の必要性の問題なのか、あるいは自衛官の皆さんの処遇の問題なのか、あるいはいわゆる実弾の買換えの問題であるのか、あるいは外国からの圧力というか、そういったものによって支出が伸びているのか、そういったことについては様々な御意見があります。これについては、一番今必要なことは、防衛費が、こういった予算を組んでいることについて、政府が、なぜ増えているのか、増やしたのかということについて、まだまだ十分に国民に説明、納得がされていない、納得できる説明がされていないことを一番強く感じて、それを求めたいと思います。

 以上でございます。

末冨公述人 私も、海外出張に行きますと、ほかの国の研究者から、私の国も大変だけれども、あなたの国の状況もとても大変よねという世間話を持ちかけられることがあります。それぐらい日本を取り巻く国家安全保障上の状況というのは、教育政策分野の研究者から見ても、日本も大変よねと思われる状況だということです。

 私自身は、国家安全保障上の観点からは、防衛も、そして子供、若者も、両方が要であるというふうに従来捉えてまいりました。その意味でいうと、防衛費がこれだけ伸びている、大変な伸びを示しているということについては、では、車の両輪であるはずの子供、若者についてもそれぐらいの予算の伸びはあるはずだというふうに強く期待をしている状況でございます。

 以上になります。

 御質問ありがとうございます。

田村(貴)委員 ありがとうございました。

 続いて、これも四人の公述人の皆さんにそれぞれお伺いします。

 この予算委員会の構成を見ても、与野党逆転です。昨年の総選挙で国民は、自民党の裏金事件に厳しい審判を下しました。政治を金でゆがめている最大の根源に企業・団体献金があります。その廃止が、この国会でも熱い焦点となっています。

 ロイター通信社が一月に企業アンケートを行いました。企業献金の廃止に八割の企業が賛成だと回答しています。政治と金、そして企業・団体献金の在り方について、公述人の皆さんの御所見をそれぞれお伺いします。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 企業も様々なステークホルダーを見て行動しております。今、企業はやはり、単純に利潤を追求する、あるいは株主だけを見て行動するということではなくて、社会的責任と言うとちょっと大き過ぎるかもしれませんが、社会的課題にきちんと応えていく、それをビジネスを通じて社会に貢献していく、そういう目標を持っている会社、あるいは、そういう会社でないと投資家も今投資をしない、そういう世界になっておりますので、企業・団体献金、私、専門ではございませんが、それが著しく今何か大きな問題を起こしているというふうには認識しておりません。

清水公述人 企業・団体献金について国会で議論されているところでございますけれども、労働組合の立場でいえば、労働組合の政治活動そのものは、憲法で保障されている労働組合活動の一部であると考えております。その上で、幾つかの労働組合では実際に政治団体が設立されておりますし、労働組合の組合費とそれから政治団体の会費については、それぞれ厳格に徴収、管理をして支出をしているということでございます。

 そもそも、労働組合は、組合員にとって民主的に運営されておりますし、組合員の意思に基づいて設立された政治団体と考えています。加入は社員や職員一人一人の自主性に委ねられていますから、その点では、議員が地域で持っている後援会と同じようなものであろうというふうに考えております。こういった点を十分に踏まえていただくとともに、とりわけ、政治団体を持っている労働組合の意見を丁寧に聞きながら進めていただきたいというふうに思っています。

 いずれにしても、国会での議論について、十分な議論をお願いをしたいというふうに思っておるところでございます。

 以上です。

末冨公述人 企業・団体献金の在り方につきましては、清水公述人もおっしゃいましたけれども、法人ですとか、あるいは団体の政治活動の自由という視点からは、簡単には否定できない問題だと思っております。

 ただ、私自身も、国会議員の皆様にも様々にお願いに参ることがありますけれども、例えばなんですが、私が理事を務めております公益財団法人あすのばや、子ども子育て三団体というネットワークをつくって、やはり、子供、若者を応援してくださいという活動をふだんからしているんですね。そのときに、子供、若者関係の団体というのはお金がないので、私個人としては、子供を応援してくださる政治家さんがいらっしゃる政党に頑張って献金をしたり応援をしたりしていますけれども、どうしてもお金がない団体というのは、それができないわけです。その際に、民主主義のかなえの軽重を問われると思っておりますのが、たとえ資金力がない団体や個人であっても大切な国民の声に向き合っていくという、民主主義を担う政治家としての責任の意識だ、そして行動だというふうに思っております。

 私からは、今の御質問に際してお答えしたいのは、大きな企業や団体さんで、しっかりとした額の献金ができる団体さん以外に、私たちのように、資金力がないけれども、子供、若者のために大切な活動をしている団体の声にも、あるいは個人の声にも、しっかりと耳を傾けていただけるとうれしいなということです。

 以上になります。

 御質問ありがとうございました。(発言する者あり)

安住委員長 御静粛に。

秋山公述人 御質問ありがとうございます。

 基本的な考え方としては、企業・団体献金は廃止すべきだというふうに思います。今のお話にもありましたが、企業、団体の資金力によって、その影響力というのは大きく変わってくるというふうにも考えておりますので、企業・団体献金は廃止をしてやるということが基本ではないかなというふうに考えております。

田村(貴)委員 次に、賃上げについて質問します。秋山公述人にお伺いします。

 二〇二四年度分実質賃金は、前年度比〇・二%減で、三年連続のマイナスとなりました。物価の伸びに賃金が追いついていません。とりわけ中小企業、中小事業者は、賃上げの原資がない、価格転嫁もできないでいます。地方自治体が最賃引上げに独自の支援をやるという動きも出てまいりました。

 私は、物価高騰には消費税の減税が何よりも必要だと思いますし、また、事業者の賃上げの直接支援が、例えば、五百四十兆円にも膨らんだ大企業の内部留保に時限課税するなど、そういう方法によって原資をつくっていくということが求められると思いますけれども、賃上げ、最低賃金の引上げについて、御主張の点にどういう財源方策が考えられるか、教えていただけますか。

秋山公述人 御質問ありがとうございます。

 公述の中で、中小企業に対する社会保障費の使用者負担分の軽減というようなお話もさせていただきました。大企業と中小企業の格差ということを考えると、そういった保険料の負担軽減等を含めてやっていくということが必要だと思っています。

 そういう点で、経済というのはお金がどう循環をしていくかということだと思っておりますので、今、五百兆円を超えると言われている内部留保について、どのように社会的に還元をさせていくかといえば、政府によって時限的な課税を行うというようなことをしていくというのが一つの手法として、十分考えられるというふうに思っております。特に、大企業の方が内部留保が多いわけですので、そこへの課税というのが必要じゃないかなというふうに思っております。

 また、政府の直接支援の関係で、社会保障というのは我々は第二の賃金闘争とも呼んでおりますけれども、社会保障の負担というのが、国民の方に負担感が強くなっているのは、やはり政府への信用が弱いというふうに思います。政府への信用を高めて将来不安をなくすことによって、賃金の分を消費に回していくということがもっと進むんじゃないかなというふうにも思いますので、そうした観点でも、社会保障を重視して取組をしていただきたいな、政策を考えていただきたいなというふうに考えております。

田村(貴)委員 ありがとうございます。

 同じ質問を、連合の清水公述人、ここまで膨らんだ内部留保金の社会還元、あるいは時限的課税とか、そういう点については、いかが御覧になっておられますか。

安住委員長 間もなく時間が参りますので、これを最後の答弁としていただきます。

 では、簡潔に。清水公述人、よろしくお願いします。

清水公述人 賃金の引上げについては、大原則をまず申し上げたいと思いますが、いわゆる労使でしっかりそこは話し合って決めるべきものでございます。その中で、政府は環境づくりのために様々な施策をする、そのための財源をどこからという、それはまさに国会での議論であろうかというふうに思っております。

 そういった意味では、企業が生産性を高めながら、そして組合員も協力をしながら高めて、そしてできたいわゆる内部に留保したものについて、これは設備投資であるとか、私たちとすれば、それを是非、労務費、いわゆる賃金に充ててほしいという思いは十分持っておりますので、そういったことを真摯に労使が話し合って決定をしていく、そういったことが必要であろうと思っています。

田村(貴)委員 ありがとうございました。終わります。

安住委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 有志の会の吉良州司でございます。

 四人の公述人の皆さん、大変勉強になるお話、ありがとうございました。

 私は、ここに立つまでは、高校の無償化を中心とした教育問題と、そして経済的国力の回復、この二つのテーマをお聞きしたいと思っておったんですが、教育問題については、末冨先生の説明を中心に、これまでのやり取りから、十分に私自身は得心がいく、特に、末冨先生の問題意識、それから人材に対する、教育に対する方向性というのはほぼ一〇〇%共感、賛同するものでありますので、そのことを申し上げて、二つ目のテーマである経済的国力の回復という点について、鈴木公述人にお聞きしたいと思っています。

 その中でも、大きく二つのテーマ。

 一つは、国の経済力を測る指標、いろいろありますけれども、GDPとGNIでございますね。このGDPとGNIの関係。そして、今の日本の状況では、GNIからGDPを引いたそのバランスが、ほぼ第一次所得収支に一致しているという状況があります。こういうことを踏まえた上で、経済的国力ということを考える上でのGDPとGNIの関係についてお聞きしたいと思っています。

 そして、二点目は、経済力を測る際に、GDPが何兆円になった、何兆円増えた、それをもって成長率幾らということをやりますけれども、私の問題意識は、先ほど鈴木公述人と国光あやの先生との間の中でも、交易条件というような話も出てまいりましたが、日本経済のある時期までの宿命としては、交易条件が悪化すれば必ず不景気が来るというような日本の経済体質が私はあったと、今も続いているかどうかについてまたお伺いしたいんですけれども、そういう問題意識があります。

 そして、交易条件を悪化させる最大の原因は円安だと私自身は思っていますので、経済力を測る指標としての米国ドルベースでの日本の経済力の評価、この二点についてお聞きしたいと思っています。

 その二つを聞くに当たって、アベノミクスの評価について鈴木公述人に伺いたいと思っております。いろいろな観点があろうかと思いますけれども、できるだけ端的に、まずはアベノミクスの評価、これも国光先生との間で事後評価の必要性ということについて先生はおっしゃられておりましたので、アベノミクスの評価というものをお聞きしたいと思います。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。幾つか御質問をいただきました。

 まず、GDPとGNIの関係でございますが、国力という意味では、やはりGDPというのは重要だと思います。よく最近、ドイツに抜かれたとか、そろそろ今度インドにも抜かれそうだと言われております。しかし、これは市場換算レートで換算しておりまして、実は、いわゆる購買力平価、国内産業の生産性が反映された為替レートでございますが、これで計算すると、とっくに一位は中国なんですね。ですから、元々何か日本が高かったということではなくて、やはり生産性がまだまだ低いところが国内にあって、そこを直していくということが重要だと思います。

 それで、GNIというのはかつてGNPと言われていたものですが、おっしゃったとおり、その差額というのは、日本の場合、出稼ぎで海外に行っている方というのは余りいませんので、労働ではなくて資本を海外に投資して、そこからのインカムゲイン、リターンを足したものがGNI、これは所得でございますので、日本人一人一人の構成水準といいましょうか、幸せ度を見る上では、一人当たりGNI、これを特に人口減少社会の中では重視していくべきだというふうに思っております。

 それから、最後に、アベノミクスの評価ということでございますが、たくさんあろうかと思いますが、私は、女性の雇用がすごく増えた、あるいは学生の就職率がすごくよくなった、この二点においては非常に大きな成果があったのではないかと思っております。

 以上です。

吉良委員 ありがとうございます。

 GDPとGNIの関係については、私、よく主張していることなんですけれども、今、日本の経常収支というのは黒字だと言われていますけれども、貿易収支はずっと赤字続き、それを、おととしは三十五兆円、去年は三十六兆円の第一次所得収支で補って、経常収支が黒字となっているわけですね。

 ところが、それは各企業の連結決算上の帳簿上の利益であって、実際は、現地法人の利益を今言った利益認識しているだけであって、キャッシュフローとしては国内に帰ってきていない。キャッシュフローが赤字だということを考えると、実は、実需ベースでもドルが必要になる、ドルが足りない、それも円安要因になっているというふうに思っている。

 なぜこういうことを申し上げるかというと、さっき言いました、大きなテーマとしては、経済的国力の回復の際に、何とか海外で上げる利益を、今は帳簿上の利益だったり一部しか日本に引っ張ってこれていないんだけれども、三十六兆もある海外利益を何とか国内の成長につなげることはできないんだろうかという問題意識を持っております。

 この点について、もし先生の方で、そこに対する、これは本来、政治家であり官僚が考えなきゃいけないことでありますけれども、先生の方で、今言った海外で稼ぎ出せている利益、これは元々でいえば、安倍総理が言っていた、アベノミクスでトリクルダウンが起こるんだと言っていたけれども、トリクルダウンは起こらなかったわけですね。本来、トリクルダウンが起こるべき付加価値は、実は海外でトリクルダウンが起きていて、日本企業はそこの、海外の上がりの利益だけを引っ張ってきている。だから、国内においてそのトリクルダウン効果がないわけです、現状。ですから、私が今言ったように、海外で稼ぎ出している利益を何とか国内の経済の成長につなげる方策はないものかという問題意識を持っておりますので、その点について、何か先生の方でお考えがあればお聞きしたいと思います。

鈴木公述人 御質問ありがとうございます。

 恐れ入りますが、先ほど、交易条件のことをお答えするのを漏らしてしまいました。交易条件が悪化したとしても、これは損をするために貿易するということはあり得なくて、必ず得をするので貿易をしているということであります。貿易にしろ投資にしろ、これはインバウンド、アウトバウンド、双方向で太くしていく。その収支尻がどうなるかというのは結果でございますので、例えば、米国というのはすごく赤字の国ですけれども、非常に豊かな生活を国民は送っているわけであります。ですから、収支尻が問題というよりは、双方向で貿易も投資も太くしていくということを考えるべきだと思います。

 その上で、今の御質問で、海外で稼いだ所得が国内に還流していないのではないか、それはおっしゃるとおりであります。これは、やはり国内で投資をするためには、今、円安で少し戻ってきたみたいな話はございますけれども、基本的には、例えば国内の、日本のエネルギー政策ですとか、あるいは労働力の質、リカレント教育等も含めた労働の質をもっと高めて、日本の労働者を使って、別に国内資本だけじゃなくて、海外の資本も含めて国内で投資をする。それから、規制があるのであれば、規制を必要に応じて見直すといったことで、国内で投資をするという環境を、元々、対内直投自体が非常に日本は少ないという課題がございますので、還流させるためには、今申し上げたようなことが重要ではないかと思います。

吉良委員 ありがとうございます。

 今回、日米首脳会談がありまして、その中で、日本企業が一兆ドル投資するんだということを、ある種、政治としてはコミットに近いようなことをトランプ大統領に言っているわけですけれども、私自身も、企業行動として、別に日本国内に限らず、世界中で利益を最大化するという行動自体は間違っていないと思っているんですね。

 ただし、先生の最初の説明のときにもありましたように、税制というか、財政貢献という観点からも、海外で稼いだお金は、二重課税防止ということもあって、さっき言った、トリクルダウンで本来日本に滴り落ちてほしかったものが海外に付加価値を落としているということに加えて、海外で納税して、その分、日本での納税が少なくなる。こういうことも、日本の、さっき言った、私の悲願でもある経済的国力の回復というところからすると、残念ながら後退をしている。それを、政府自ら海外への投資をコミットしていくということについても疑問を持っているわけであります。

 そのことを申し上げた上で、先ほど鈴木先生が説明した中には含まれていないんですけれども、先生の執筆された「金融財政ビジネス」一月三十日号の中に、百三万円の壁等々の税制問題をずっと説明をされていて、これは私は全て得心いくものばかりでありました。最後のところに、こういう個別のテーマも重要なんだけれども、むしろこれをチャンスとして、税制全体のグランドデザインを考えるべきである、少子高齢化や人口減少、働き方の顕著な多様化、またグローバル化を踏まえた公平かつ簡素で成長志向の税制とは何かということについて議論をしていくべきだと。全く私もそのとおりだと思っています。

 余りにも個別の事項に偏っている、否定的な意味ではないんですけれども、全体のグランドデザインが大事だと思っていまして、そういう意味で、先生の考える公平かつ簡素で成長志向の税制というものについて、もう時間がないので大枠だけになろうかと思いますけれども、先生のお考えをお聞かせいただければと思います。

鈴木公述人 本当に、お読みいただき、ありがとうございます。

 所得税百三万円の壁がこれだけ話題になって、多くの人が制度の仕組みを理解し、あるいは課題がどこにあるのかということを、いろいろな議論が巻き起こったこと、本当に大きな成果だと思います。

 まず、これでもって、所得税、日本の所得税というのは、全体としては負担が低い方だと思います。課税ベースの拡大ですとか税率構造をどうするのかということを、是非トータルとして御議論を深めていただきたいと思います。

 それから、更にほかの税目も含めてということですと、私の意見としては、やはりこれからの時代というのはどうしても消費税に頼らざるを得ない、ほかの税目というのは非常にいろいろな問題があると思います。消費税というのは、しかも生産市場でかける税で、分配した所得にかける税ではございませんので、しかも投資にかけない、設備投資にかけない税でございますので、成長志向の税であると思いますので、消費税の位置づけというものを改めて重視すべきではないかと思っているところでございます。

安住委員長 吉良君、間もなく時間が参りますので、まとめてください。

吉良委員 はい、分かりました。もう終わります。

 実は私も、議員の中では珍しく、口を開ければ、消費税上げるべしと言い続けている人間でありまして、何か政策をやるとすれば必ず、特に恒久財源が必要、教育なんかも特にそうです。政治家も国民も消費税から逃げてはならないということを常に訴えておりますので、今の先生の答弁というか説明、得心いたしました。ありがとうございました。

 お三方については、先ほど言いました、質問せずに恐縮でありましたけれども、大変勉強になりました。ありがとうございました。

 終わります。

安住委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。

 公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。

 以上をもちまして公聴会は終了いたしました。

 公聴会は、これにて散会いたします。

    午後四時五十二分散会


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