第2号 令和7年2月28日(金曜日)
令和七年二月二十八日(金曜日)午前八時開議
出席分科員
主査 山下 貴司君
稲田 朋美君 井上 信治君
岡本あき子君 柴田 勝之君
鈴木 庸介君 米山 隆一君
橋本 幹彦君
兼務 井出 庸生君 兼務 鈴木 貴子君
兼務 中野 英幸君 兼務 村上 智信君
兼務 沼崎 満子君 兼務 吉良 州司君
…………………………………
法務大臣 鈴木 馨祐君
外務大臣 岩屋 毅君
最高裁判所事務総局総務局長 小野寺真也君
政府参考人
(法務省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官) 中村 功一君
政府参考人
(法務省民事局長) 竹内 努君
政府参考人
(法務省刑事局長) 森本 宏君
政府参考人
(法務省矯正局長) 小山 定明君
政府参考人
(法務省保護局長) 押切 久遠君
政府参考人
(出入国在留管理庁次長) 杉山 徳明君
政府参考人
(出入国在留管理庁在留管理支援部長) 福原 申子君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 熊谷 直樹君
政府参考人
(外務省大臣官房審議官) 小林 出君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 門脇 仁一君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 石川 誠己君
政府参考人
(外務省大臣官房参事官) 今西 靖治君
政府参考人
(外務省中東アフリカ局アフリカ部長) 堀内 俊彦君
政府参考人
(外務省領事局長) 岩本 桂一君
政府参考人
(文部科学省大臣官房審議官) 今井 裕一君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 小見山康二君
法務委員会専門員 三橋善一郎君
外務委員会専門員 山本 浩慎君
予算委員会専門員 中村 実君
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分科員の異動
二月二十八日
辞任 補欠選任
米山 隆一君 柴田 勝之君
橋本 幹彦君 石井 智恵君
同日
辞任 補欠選任
柴田 勝之君 鈴木 庸介君
石井 智恵君 許斐亮太郎君
同日
辞任 補欠選任
鈴木 庸介君 米山 隆一君
許斐亮太郎君 橋本 幹彦君
同日
第一分科員鈴木貴子君、中野英幸君、第二分科員井出庸生君、第四分科員吉良州司君、第六分科員沼崎満子君及び第七分科員村上智信君が本分科兼務となった。
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本日の会議に付した案件
令和七年度一般会計予算
令和七年度特別会計予算
令和七年度政府関係機関予算
(法務省及び外務省所管)
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○山下主査 これより予算委員会第三分科会を開会いたします。
令和七年度一般会計予算、令和七年度特別会計予算及び令和七年度政府関係機関予算中法務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。
この際、分科員各位に申し上げます。
質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。
なお、政府当局におかれましても、質疑時間が限られておりますので、答弁は簡潔明瞭にお願いいたします。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。中野英幸君。
○中野(英)分科員 おはようございます。自由民主党の中野英幸でございます。
本日は、予算委員会分科会におきまして質問の機会をいただいたことに、心から感謝と御礼を申し上げさせていただきたいと存じます。
質問に立つのも、ちょうど政務官等があった関係で二年ぶりに質問させていただく機会をいただいたことでございますので、一生懸命と質問させていただければと思っています。
本日は、まず、外国人との共生ということについて、出入国管理庁に質問をさせていただきたいと存じます。
少子高齢化社会における労働力の不足や、また国際社会の中での人道的見地などに立った事情から、日本においても外国人との共生ということが大変に必要性が高まっているとともに、それに伴ういろいろな課題も山積されているというような状況になっていると思います。
まずは、根本的なことでございますけれども、外国人との共生政策の重要性、またその要諦に関する政府の認識について、法務当局に御見解をお聞きしたいと存じます。
○杉山政府参考人 我が国の在留外国人数は、令和六年六月末に約三百五十九万人と過去最高を更新しており、在留外国人を社会を構成する一員として受け入れていく必要がございます。
このような観点から、日本人と外国人とが互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現することが極めて重要となっております。このような共生社会を実現するためには、外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人を受け入れ、適切な支援等を行っていくとともに、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことが重要であると考えております。
○中野(英)分科員 ありがとうございました。
過去最高の外国人の皆様方がお越しをいただいている、その中で、安心、安全の社会の中での共生をする社会をつくっていく、そして、その中でルールを違反した人たちに対しては厳罰を通じて進めていくというようなことであります。
そういった中でありますけれども、今、外国人が日本に在留するに当たりまして、ルールを守らない者に対して厳格に対応すると言われておりましたけれども、退去強制令書が発付された外国人が日本にとどまり続けることは、まさにルールを守っていないと言わざるを得ないというふうに考えております。こうした外国人は強制退去にすべきではないでしょうか。御答弁お願いします。
○杉山政府参考人 法令に従い手続を進めた結果として、退去強制が確定した外国人は速やかに我が国から退去することが原則でございます。
令和六年六月十日に施行された改正入管法では、難民等認定申請を繰り返して送還を忌避する者について、三回目以降の難民等認定申請を行った者は、難民等として認定を行うべき相当の理由がある資料の提出があった場合を除き、我が国からの送還が可能となっているところでございます。
引き続き、保護すべき者を迅速かつ確実に保護した上で、退去強制が確定した者につきましては、改正入管法の規定を運用して迅速に送還を実施してまいりたいと考えております。
○中野(英)分科員 ありがとうございます。
一昨年の令和五年に入管法が改正施行後は、改正前に送還ができなかった者も送還可能となったとのことでありますが、改正法施行後の実務運用がどのように行われているのか、御説明をしていただきたいと存じます。
○杉山政府参考人 送還の実施に当たりましては、被退去強制者ごとに退去のための計画を策定することとなっております。この計画の策定の際に、送還することができない事情がある場合にはその状況を把握するとともに、その事情が解消した後、あるいはそのような事情がない者については旅券の有無や健康状態の把握、送還便の確保や関係機関との調整など実務的な準備を行い、順次送還を実施しております。
また、令和六年六月十日の改正入管法の施行により、難民等認定申請を繰り返して送還を忌避する者について、送還停止効の例外として送還を行うことが可能となっております。実際に同規定を適用して送還した実績はあり、現在、公表に向けて準備を進めているところでございます。
引き続き、改正法の規定を適切に運用して、迅速な送還を実施してまいりたいと考えております。
○中野(英)分科員 強制送還等については、やはり我が国のルールを守らない、またそういった方々がいらっしゃったときには、適切な対応ですとか、こういったことを進めていただくことが入管庁の一番の役割だと思いますし、やはり外国人にとって入管庁は外国人の法の番人であるというふうに私は思いますので、是非その点を含めて厳正な対応をお願いができればと思っています。
また、そういった中で、仮放免制度は、不法就労が横行したり、逃亡事案が発生するなど問題があるとお伺いをいたしております。監理制度や厳罰を厳しくするなど、施策が必要ではないかと思う一方で、仮放免されても、保険には入れないとか、また就労はできないとか、そもそも社会生活が送れないような制度では、犯罪や違法行為を助長することになっているのではないでしょうか。是非、そういった意味での法務当局の御見解をお示しをいただければと思います。
○杉山政府参考人 退去強制令書が発付されている仮放免中の者は、速やかに日本から退去することが原則であります。まずは、改正入管法の規定を適切に運用して、迅速に送還を実施することが重要であると考えております。
その上で、仮放免制度について申し上げますと、改正前の旧法下の仮放免は、本来は一時的に収容を解除する制度であり、逃亡等を防止する手段が十分ではなく、相当数の逃亡事案等が発生しているという問題が生じておりました。
そこで、改正された入管法によりまして、監理人による監理に付することで逃亡等を防止しつつ、相当期間にわたり収容することなく社会内で生活することを認める措置として監理措置を創設いたしまして、仮放免は、健康上の理由等により一時的に収容を解除する必要が生じた場合の措置として位置づけられたところであります。
そのため、迅速な送還が困難な場合には、改正入管法の趣旨を踏まえ、監理措置制度を適切に活用してまいりたいと考えております。
○中野(英)分科員 ありがとうございます。
そういった意味では、改正法によって大分対応が変わってきたということについては十分に御理解ができるところだと思います。まだまだ施行して日が浅いところでありますけれども、やはりこれは、何といいましてもトライ・アンド・エラーでどんどんと進めていきませんと、外国人不法就労者ですとか、そういった方々の対応というものは、情報とネットワークがすごく発達しているものですから、どうしても我々が想定をする以上のことがいろいろと起こってまいります。
そういった意味では、我々の想定を超えていく、こういった対応に対して、やはり入管庁の方でもスムーズに、そしてスピーディーな対応をお願いをさせていただければありがたいと思いますので、是非お願いをしたいと思います。
また、そういった一方、ルールにのっとった形での外国人人材の受入れに関しましては、必要性もあると思われますけれども、日本としてどのような方針で受け入れていくつもりなのか、法務当局の御見解をお伺いしたいと存じます。
○杉山政府参考人 先ほども申し上げましたとおり、日本人と外国人がお互いを尊重し、安全、安心に暮らせる共生社会を実現していくためには、外国人の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人材を受け入れ、適切な支援等を行っていくこと、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことが重要であります。
その上で、政府における外国人材の受入れの方針は、専門的、技術的分野の外国人材は積極的に受け入れていくこと、それ以外の分野については国民的コンセンサスを踏まえつつ検討していくことを基本としております。
一般論として、我が国への外国人材の受入れの拡大によりまして、深刻化する我が国における労働力不足が解消され、経済や産業が活性化するのみならず、多様な価値観や経験を持った方々を我が国社会に受け入れることで、受入れ企業や地域社会の国際化や活性化にもつながるといったメリットがあり得ると考えております。
他方で、外国人材の受入れを拡大した場合には、本人や家族の社会保障等に係るコストの増大、治安の悪化といった点に関する懸念もあり得ることから、これらについてバランスを取りつつ、多様な御意見、御議論にも耳を傾けながら、今後の外国人材の受入れについて政府全体で幅広い検討を行っていく必要があると考えております。
引き続き、外国人材の受入れ及びその環境整備に向けましてしっかりと取り組んでいくとともに、ルールに違反する者に対しては厳正に対応していく所存でございます。
○中野(英)分科員 御答弁ありがとうございます。
言われたとおり、日本としての、我が国としての受入れの方針というのはやはり専門的な人材を中心に、また能力の高い方々も含めた人材にお越しをいただくような体制づくりをこれからも一生懸命と進めていくことだと思いますので、是非これからもそういった方向で進めていただければと思っています。
また、それ以外といいますか、また、皆さん、多くの方々がお越しになられて、在留をして、我が国で働いていただける、こんな環境をつくっていくためにも、やはり、まずは我が国が選ばれる国として、位置づけをしっかりとつくっていかなくちゃならない。それとともに、これから私たちは選ばれた中で、さらには、我が国にお越しになって、各国のコミュニティーをつくるのではなくて、我が国のコミュニティーに入っていっていただく。
そして、その中で、郷に入ったら郷に従えという中で、我が国の歴史、伝統、文化、こういったものを十二分に理解をいただきながら、その上で、日本人とともに共生をしていく。これが多分我が国が求める外国人との共生社会であるというふうに私は確信をいたしております。
そんな形になるような体制づくりをさせていただいて、妙な各国のコミュニティーですとか、そんなものができるようなことのないような体制づくりの中で、共に働き、共に学び、共に生きていくという外国人との共生社会をしっかりとこれからつくっていくべきだというふうに私は思っておりますので、どうぞこれからも、そういった対応の中で、外国人の皆様方と一緒に、ルールにのっとって入ってこられた、その方々を大切にしながら進めていければありがたいと思いますので、是非お願いをしたいと存じます。
また、そういった中で、外国人材の受入れの方針に従って受入れを進めるとのことでありますけれども、これに基づいた受入れである育成就労制度の運用等に向けた現在の準備状況について、どのような状況になっているのか教えていただければと思いますので、よろしくお願いしたいと存じます。
○杉山政府参考人 育成就労制度につきましては、令和九年の四月から六月までに運用を開始することを予定しております。
施行までの間に、制度全般にわたる基本的な事項を定めるための基本方針の策定、各分野の受入れ見込み数その他の方針等を定めるための分野別運用方針の策定、政令及び主務省令、運用要領等の整備などが必要と認識しております。
現在は、育成就労制度の基本方針等の政府案につきまして、今月開催しました特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議での御意見等を踏まえ、本年三月中に関係閣僚会議決定、閣議決定を得ることを目指して取り組んでいるところでございます。
また、主務省令については本年夏頃に公布、育成就労制度に係る分野別運用方針については本年十二月に関係閣僚会議決定、閣議決定を得ることを目指すなど、所要の準備を進めているところでございます。
○中野(英)分科員 ありがとうございます。
そういった意味では、今受入れの準備等がどんどんと進んでいるところだと思います。特に、技能研修制度から育成就労制度に変わっていくということの中で、この制度が変わっていくということの中で、多くの関係の皆様方、特に民間企業の皆様方が御理解をいただかなければならない点が多々あるわけでありますし、また、そういったことについての体制の整備をしましたら、どうしても法務省はPRが比較的、余り上手でない役所でありますから、できる限りこういったことでのPR等を十二分にしていただいて、各企業の皆さん方にいわゆる育成就労制度というものを活用していただく。
そして、多くの皆様方に利用いただきながら、今のこの人手不足やまた人材難ということの中での対応を更に進めていくことが肝要であるというふうに思いますので、是非、入管庁、これからもバックアップしてまいりますので、どうぞ一生懸命とその対応を進めていただければと思います。
まだまだ机上の論理の中で、本来、これから進めていかなくちゃならないことが多々あるかと思いますが、是非、そういったことを通じて、皆様方と一緒に、力強い体制づくりをつくっていただくようにお願いをさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いをさせていただきたいと存じます。
また、その上で質問させていただきたいと存じます。
被退去強制者の送還促進のため、また、在留外国人が増加する中にあっては、入国警備官などの人員や予算の確保が必要と私は考えております。また、私も昨年まで法務大臣政務官を担わせていただいたものでありますから、入管の施設も視察をさせていただきましたが、老朽化や時代錯誤と言わざるを得ない施設も少なからずありました。
こういった状況の中で、是非、昭和の入管施設から令和の入管施設とでもいうような刷新やまた更新が必要であると痛感をさせていただいております。このことは職員の皆様方の労働環境という意味でも必要だと思いますが、その点の認識について、法務当局の皆様方の御意見をお伺いしたいと思います。
○杉山政府参考人 委員御指摘いただきましたとおり、今日の出入国在留管理行政を取り巻く環境は大きく変化し、求められる役割も多岐にわたっているところでございます。
入管庁といたしましては、こうした役割を適切に遂行し、適正な出入国在留管理行政を実現する上で、人員及び予算を含めた体制整備を図ることが重要と認識しております。
また、御指摘いただきましたとおり、職員の労働環境を確保するという観点も重要でございます。施設の老朽化等につきましては、改修の必要性等を踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えております。
○中野(英)分科員 ありがとうございます。
入国警備官ですとか、こういった方々の人材をこれからどんどん増やしていきませんと、今でさえ史上最高の方々が我が国を訪れている。また、これは、いわゆる在留許可を得て来る方々だけではなくて、いわゆる観光も含めて多くの方々が我が国にお越しになっているわけでありますから、その最初の入口のところで、犯罪や事件や、またそういったことを起こさないようにするためにも、入管の役割というものは大変に重要な役割があると私は思っております。
そういった中で、私も幾つか見させていただきましたけれども、老朽化をした施設の中で余り我慢し過ぎて活動していくというのは、やはり労働環境だけじゃなくて、仕事の、労働の効率化も失っていくということにつながっていくんじゃないのかということを私は一番懸念をしておりますので、是非、そういった意味では、そういった対応を進めていただく。
また、今の施設だけで、いわゆる強制送還ですとか、そういった方々の、施設の中での保護をしていくということの中での対応としてはまだまだ、昭和の時代は、施設が五つや六つ、十個ぐらいでも十分対応ができたというようなことだと思いますが、今、何百人単位で出てきますから、どうしてもそれが今度は逆に仮放免ですとか、そういったことにつながっていっちゃう。
この仮放免も、実を言いますと、今回法の改正をしていただいた、そのことによって、これからうまく使っていただけるような環境ができればいいと思いますけれども、どうしても責任がどこにあるのかが、所在がはっきりしない。そして、そのために、社会で問題を起こした場合でも、誰が責任を取っていくのかということがなかなか明確にならない。それが全て、やはり、我が国の法務省の法案やまた施策によって、全国のいわゆる各市町村の皆様方に御負担をかけてしまっているというのが今の現状だというふうに私は認識をしております。
そういったところで、よく川口なんかでも、そういった中で国が負担をしてほしいという声が出てくる。実は、法的に、また施行の事実がしっかりさえしていれば、こういったことが起きなければ、我が国の法務省に対して、国が支払うべきだなんて話がなくなるわけだと思いますので、そういったことを含めてお力添えをいただければありがたいと思いますので、是非これからもそういった意味でのお力添えをいただければと思います。
私は、そういった意味で、入管庁が、四十七都道府県にある入管庁の施設が、本当にいい施設にさせていただいて、そして、役割が十二分に果たせるような施設にすべきだというふうに思っておりますので、是非これからもそういった中で対応を進めていただければありがたいと存じますので、よろしくお願いをさせていただきたいと存じます。
入管庁については以上とさせていただきたいと思います。これからもそういった意味でバックアップをしてまいりますし、また、外国人との、我々が共生する社会の上での役割というものをこれからも十二分に発揮をいただきますようにお願いをさせていただきたいと存じます。
それでは次に、法務省のDXの推進についてお伺いをさせていただきたいと思います。
DXの推進は、我が国においても、多くの組織や産業分野において必要不可欠なものになってきたわけでありますけれども、今国会への提出が予定されている刑事デジタル法について、法務省にお伺いをさせていただきたいと存じます。
刑事デジタル法が成立することにより、捜査機関側、また、被疑者、弁護人側のそれぞれにとって、例えばどのようなメリットがあるとお考えでしょうか。お伺いさせていただきたいと存じます。
○森本政府参考人 お答えいたします。
まず、本日、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案、刑事デジタル法が閣議決定されました。
本法律案が成立した場合、例えば、電子データによる令状の発付、執行等により、捜査機関側の活動が大幅に合理化、効率化されることがまず期待されます。すなわち、現在は、警察官等が令状の発付を受ける場合には、書類を裁判所に持参して令状を請求し、紙で発付された令状を受領する必要がございますが、改正後は、令状をオンラインで請求し、電子データにより令状の発付を受け、これをタブレット端末等に表示させて、提示して執行することなどが可能となります。
また、例えば、証拠書類の電子データ化等によりまして、被疑者、被告人、弁護人側の防御の準備が大幅に合理化、効率化されることが期待されます。すなわち、現在は、弁護人が証拠書類を閲覧、謄写するには、裁判所や検察庁に赴き、紙媒体の証拠書類を閲覧したりコピーする必要がございますが、改正後は、電子データである証拠書類について、裁判所や検察庁においてコピーの手間なく電子データのまま謄写することが可能となるほか、オンラインにより閲覧、謄写することも可能となるなどのメリットがあると考えております。
○中野(英)分科員 ありがとうございました。
刑事デジタル法が成立をすれば、いわゆる捜査機関によるタイムリーな執行といいますか、そういったことがこれから進んでいくわけでありますので、早期の事件の解決に向けて対応ができるというメリットについては十二分に御理解をさせていただきました。
また、裁判における、皆様方のお力をいただきながら、弁護士の方々が、今まで、コピーを取って、一枚ずつコピーを取りながら、経費と時間をかけながら進めてきたということにつきましても、これから、電子データとして対応ができるということによってよりスピーディーな裁判につながっていくということについては理解しました。
また、被害者の方々が裁判の中で被疑者に質問したいということにつきましても、同じ部屋でというわけでは、なかなかやりづらいというものを、ちゃんとしっかりと別室で対応ができるような体制づくりをしながら、多くの皆様方の権利を守りながら、そして公正公平な裁判につなげていく、こういった対応を今進めているわけでありますので、是非そういった意味でのお力添えをいただければありがたいと思います。
これからも引き続き、まだ決まっておりませんけれども、決まるように、一生懸命とこれから頑張っていただければありがたいと思いますので、是非よろしくお願いをさせていただきたいと存じます。
それでは、最後になりますけれども、大臣にお伺いをさせていただきたいと存じます。
今お話がありましたとおり、この刑事デジタル法、司法行政の合理化やまた効率化、そして、何より国民にとって有益な法整備であると私は思っております。ここで是非、刑事デジタル法成立に向けた大臣の意気込みをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○鈴木国務大臣 中野先生におかれましては、法務大臣政務官として、大変様々な法務行政においての御尽力を拝聴もしておりますし、今日は、そうした観点から、入管であったり、あるいは刑事デジタルということで、的確な御質問をいただきましたこと、改めて感謝を申し上げたいと思います。
そうした中で、今、今回のDXということで御質問をいただいております。
今朝ほど、先ほど局長からも答弁をさせていただきましたとおり、情報通信技術の進展等に対応するための刑事訴訟法の一部を改正する法律案、閣議決定をされたところであります。
電子データによる令状の発付、執行、あるいは証拠書類の電子データ化等々の話もさせていただきましたけれども、まさにこうした中で、捜査機関、あるいは被疑者、そして被告人、弁護人のほか、裁判所、あるいは犯罪被害者の方、そして証人の方々など、刑事手続に関わる様々な立場の方々にメリットがあるものと我々としては考えております。刑事手続の円滑化、そして迅速化、さらには刑事手続に関与する国民の皆様の負担の軽減を図る上で、極めて重要な意義を有しているものと考えております。
そして、今回の法律案による法整備については、現下の犯罪情勢を考えましたときに、情報通信技術を悪用した新たな犯罪事象が目立ってきておりますので、そこに刑事法として適切に対処していく、そういった観点からも欠かせないものと承知をしております。
そういった中で、今後、この国会におきまして御審議をいただき、速やかに成立をいただきますよう、私としても力を尽くしてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○中野(英)分科員 鈴木大臣、ありがとうございました。力強い、また、この法案にかける大臣の思いというものを十二分に理解をさせていただきました。
できる限り、そういった中で、これから我が国が、この司法行政の中では、何といいましても、難しい状況がたくさんと生まれているのも事実であります。そして、効率化を進めることによってスピーディーな判決を出していく、こういった対応が一生懸命できるよう、これからも進めてまいりたいと存じますので、是非、大臣、これからも力強く、このDXについてはお進めをいただければと思いますので、よろしくお願いをさせていただきたいと存じます。
今日は、その点につきまして進めさせていただきました。また、私も微力でありますけれども、昨年まで法務行政の一端を担わせていただいた立場として、我が国の法務行政が更に国民の幸せに資するものとなるよう、立法府の立場から尽力をさせていただきますことをお誓いを申し上げさせていただきまして、質問を終わらせていただきたいと存じます。
ありがとうございました。
○山下主査 これにて中野英幸君の質疑は終了いたしました。
次に、井出庸生君。
○井出分科員 おはようございます。井出庸生です。
私は大臣には答弁を求めませんので、少し何かほかの公務をされて、御退席いただいて結構でございます。
○山下主査 大臣は御退室になって結構です。
○井出分科員 早速質問に入ってまいりたいと思います。
まず、地方の裁判所施設と、その人員の整備について聞いてまいります。
私の地元、長野県佐久市というところは、平成の三十年ぐらいから、そうした施設要望を近隣の市町村と続けてまいりました。主に、人口の社会増が見られる中で、大きく要望していることは三つ。長野家庭裁判所の佐久支部に家裁の調査官を常駐させてほしい、裁判所佐久支部において少年審判の取扱いを開始してほしい、それから、支部の庁舎にエレベーターがないというようなことを要望を申し上げてまいりました。
私、法務委員会に勤続十年、十年以上いる方はいると思うんですけれども、ぶっ通しで十年いる人は私だけかなと思っておりますが、なかなか珍しい要望を地元はやっているなと思っておりました。
しかし、ちょっと調べてみたところ、例えば、神奈川県の藤沢市には、藤沢簡易裁判所に家庭裁判所出張所の併設を求める協議会、藤沢管内五市一町が、この管内五市一町の人口が百二十万人を超えているにもかかわらず、管内に家庭裁判所がない、六十分以上かけて横浜に行かなければいけないという話があったりですとか、それからもう一つ、新潟県では、これは村上市中心に要望をこれからされるのかな、新潟県内には五つの家裁の出張所があるけれども、四つは、いわゆる受付出張所であり、調停や審判が行われていないですとか、幾つかあるんだなと。
幾つか調べたところ、私の問題意識としては、そういう人口動態の変化ですとか社会増で裁判所の人員、施設が追いつかない、それから、元々地方で人口が少なくて、その割当てが少ない、そうしたところから幾つか要望が上がってきているのかなと。
私も、最初はうちの地元だけの話かなと思っておったんですが、やはりこれは少し全国的な課題じゃないかなというように思いまして、まず、その辺りの見解を裁判所に伺いたいと思います。
○小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
ただいま委員の方から、全国でいろいろな要望があるのではないかというような御指摘をいただいたところでございます。
一般論として申し上げますが、全国各地におきまして、人口が増加している地域がありますとか、あるいは、その逆に減少している地域があるというようなことで、各地の状況等が様々であるということにつきましては、裁判所としても承知をしているところでございます。
裁判所といたしましては、限られた人的、物的資源を有効に活用しつつ、利用者の利便性を確保し、司法サービスを充実させていくことが重要であるというふうに考えており、今後とも、人口動態、交通事情の変化、裁判所で取り扱う事件数の動向等の様々な要因を注視しつつ、全国的な観点から検討してまいりたいと考えております。
○井出分科員 私も、政治活動を長野を中心にやっておりますと、どうしても地域の要望というと、まず行くのは国土交通省、財務省、あと、学校関係で文科省に要望に行ったこともございますが、裁判所も、我々からすれば、すごく何か敷居の高いところ、しかし、いざ何かあったときに、全ての、何人も裁判所にお世話になることもあるし、その環境というものはしっかりと整って、あってしかるべきだろうと思います。
先ほどちょっと御紹介した自治体を中心に、これは資料を配付しておりますが、資料の四枚目、令和七年三月四日設立予定なんですけれども、私の地元佐久市、藤沢市、新潟村上市、それから長野県の大町の市長が発起人となって、一枚目の、地域司法充実のための協議会連合会というのを立ち上げると。二枚目の数字の三のところを読んでいただければ分かるんですが、エレベーターがないとか、いろいろなことが書かれております。
いろいろな自治体が一緒になって要望していくというのは、特に、本当に顕著に見られるのはやはり国土交通関係だと思うんですね。県を挙げて、全国を挙げて大会をやったりとかしておりますが、裁判関係でもそうした動きが、裁判所の施設、人員整備でもそういう動きが出てきている。
それはやはり全国的にいろいろな基準があると思いますけれども、その基準が今の人口動態等に合っているのか、事件数に合っているのか、そういうことも含めて、全国的にこれは大きな課題になってきていると思いますので、その施設整備、人員の充実について、裁判所の今後の取組を聞いておきたいと思います。
○小野寺最高裁判所長官代理者 お答えいたします。
裁判所といたしましては、これも一般論になってしまいますけれども、裁判の利用者など広く国民の意見や要望等を伺う機会を得ることというのは重要であるというふうに考えておりまして、関係する方々から具体的な実情や要望について書面をいただくなどしているところでございます。
裁判所といたしましては、今後とも、限られた人的、物的資源を有効に活用しつつ、全国的な観点からの体制整備、司法サービスの充実を検討し、国民の信頼に応えることができるように努めてまいりたいというふうに考えております。
○井出分科員 何か一問目と、コピペのような答弁でございましたが、それは裁判所のためでもあると思いますので、頑張っていただきたいと思います。
次のテーマに入ってまいります。
次は、法務省、法制審と、それから国会、議員立法との関係を聞いていきたいなと。これは、法務委員会に長くおりまして、私なりの問題意識があっての問いでございます。
先日二月十九日の読売新聞に再審法改正の記事が出まして、私は今、再審法改正の超党派の議員連盟の事務局長をしております。超党派で三百七十二名、自民党が百四十五名ぐらい。山下先生にも、是非御入会いただきたいなと思いますが。
そのときの記事が、その再審法改正について、議連が先行している、法務省は慎重姿勢である、これは見出しですね。それから、異例の展開だ、まず動いたのは議連だった、二月七日に法務大臣が法制審への諮問を表明したというような、異例の展開というような表現もございました。
まず、法務省、法制審のやる刑事関係の立法と、それから国会、議員立法でやる刑事関係の立法というものは、何か対立するようなものであるかどうかというところを、認識を伺いたいと思います。
○森本政府参考人 お答えいたします。
憲法の規定によりまして、国会は唯一の立法機関であり、法律案は両議院で可決したときに法律となるというものと承知しております。
その上で、法律案には、内閣提出により、いわゆる閣法と、議員発議又は委員会提出による、いわゆる議員立法とがあるものと承知しておりますけれども、これらはあくまで提出や発議の主体に着目した区別であって、一般論として、互いに対立するような関係にはないものと考えております。
○井出分科員 今、少し整理をしていただきまして、ただ、いろいろなものが閣法中心でなされているというのが国会の実態だろうと思いますし、特に、刑事関係の法律は、昨日、ちょっと、今回の質問に向けて本を読んできたんですけれども、「立法実践の変革 立法学のフロンティア」という、刑法学者の井田良先生と松原芳博先生が書いている本、二〇一四年ですね、書かれているものがありまして、その中で、議員立法になじまないと考えられてきた刑事法の領域でも、近年、議員立法が増えてきていると。あと、そもそも戦後の変革期を過ぎると、ほぼ刑事立法というものはピラミッドのように沈黙すると評されるほどの静止状態を保っていたというような表現もありまして、そこは時代を経ていろいろ変わってきているのかなと思いますし、議員立法で刑事関係の法律をやるということも一つの意義があると思います。
その中で、近年、九〇年代以降に刑事立法が議員立法で行われた事例、また、法制審議会の答申を経て国会に提出をされたが、国会によって改めて立法されたり修正をされた事例があるかを聞いておきたいと思います。
○森本政府参考人 若干長くなりますが、一九九〇年以降のものを中心にお答えいたします。
まず、一九九〇年以降に議員立法によって成立した法律のうち法務省刑事局が所管するものといたしましては、例えば、児童買春、児童ポルノに係る行為の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律、平成十一年法律第五十二号でございます。それから、私事性的画像の提供等による被害の防止に関する法律、平成二十六年法律第百二十六号がございます。
次に、法制審議会における調査審議を経た事項について議員提案により成立した法律といたしましては、少年法等の一部を改正する法律、平成十二年法律第百四十二号がございます。これにつきましては、法務省において、法制審議会の答申に基づき少年法等の一部を改正する法律案を立案し、閣議決定の上、平成十一年三月、内閣提出法案として国会に提出したものが廃案となり、その後、平成十二年九月、同法案の内容にいわゆる原則逆送の仕組み等を加えるなどした少年法等の一部を改正する法律案が議員提案により国会に提出され、同年十一月に可決、成立したものでございます。
続きまして、法制審議会の答申に基づき立案された政府原案が国会審議において修正された法律といたしましては、例えば、刑事訴訟法等の一部を改正する法律、平成二十八年法律第五十四号がございます。これは、内閣提出法案として平成二十七年三月に国会提出された刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきまして、国会審議の過程で、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度に関しまして、検察官が合意するか否かを判断するに当たって考慮すべき事項を追加することなどの修正がされた上で、平成二十八年五月に可決、成立したものでございます。
以上でございます。
○井出分科員 ありがとうございます。
今の御答弁ですとか、私もいろいろ調べてみますと、刑事関係の法律でも、議員立法ですとか、法制審を経たものを改めて国会で提出をし直したりですとか、修正をしたりとか、いろいろあるなというのが私の実感です。
ただ、刑事関係の法律は法務省や法制審がというのは、残念ながら、我々議員の中でもそういう認識が若干あるのではないかと。
それは、ちょっと古い答弁なんですけれども、平成十三年に、これは総務委員会でやっていたやり取りなんですけれども、先生のお名前は出さないんですが、これは商法なんですね、商法について、法制審議会にかけられずに提出をされているということについての整合性を問いたいという質問があったり、言い過ぎかもしれないが、何かややおかしいというような印象も受けるというような話をしていたり。
それからもう一つ、これはちょっと古い文献なんですけれども、「法務行政の三十年」という、これは昭和五十五年に法務省が出しているものなんですが、そこで法制審について、基本法の制定は、法理論上、学問上非常に重要な意義を有する、一般国民の基本的秩序に重大な影響を及ぼす、それぞれの専門分野における最高級の権威を集めて、慎重かつ綿密な検討を行うことが必要であると。山下先生に感想を伺いたいところでございますが、今日は仕切り役でございますので。そんなような話があります。
近年、そうはいっても、刑事法の立法は増えている。近年の流れというものは、近年の刑事法関係というものは、やはり総じて見ると、罪の重罰化であったり、それからデジタル関係を受けた処罰の早期化であったり、早い段階で処罰する、そういうものが中心を成してきている。それは当然、国民の御要請というものもあろうかと思います。
その中で、法制審中心にはされているものの議員立法も出てきているという中で、刑事立法を議員立法でやっちゃいかぬという話はないですよね。
○森本政府参考人 まず、議員立法がどうかということにつきまして、法務当局として所感を述べるのは差し控えたいと思いますけれども、先ほど答弁申し上げましたが、何か、法制審議会を経て出される閣法と議員立法とが対立するような関係にあるとは考えておりません。
○井出分科員 そうした九〇年代以降の処罰の厳罰化、それから処罰の早期化、そうしたトレンドに国会側も応えてきたと思いますし、法制審、法務省も進めてきてくれたと思っています。
ただ、今回、我々が予定している再審法の改正は、何としても今国会でというような思いでおりますが、それはちょっと九〇年代以降のトレンドと一線を画して、一度有罪となった人が冤罪の可能性が高まった、それを晴らすのにウン十年という時間がかかる、そこに対する法律的な条文がほとんどなくて、裁判所の裁量に任されているという実態の中で、それは最後の救済手段として、最近のトレンドとは全く違いますし、さらに、これは言葉が正確かどうかは分かりませんが、刑法には謙抑主義というものがあって、その謙抑主義が行われる中で、それでもなお冤罪があったときの最後の救済手段が再審法の改正である。これは、改正の必要性というものは長年言われてきて、法制審でなかなかそうもいかなかったし、国会の方も、やはり法務省が腰を上げなければというような思いもあったんだろう、私も過去にそう思っていた時期もございます。
しかし、長年改正に手をつけてこなかったということは、法務省、法制審も、それからまた、国会、立法府の側も、それはお互い反省の上に立って、その上でこの法改正に取り組んでいく。これまでのトレンドと一線を画して近年では珍しい、非常に謙抑的な、象徴的な事例であるその再審法に、今、超党派の議員連盟の議員立法と、それからもうすぐ法制審が始まる。
私は、この動きというものは非常に意義があると考えておりますが、このことについてコメントをいただきたいと思います。
○森本政府参考人 まず、先生がトレンドとおっしゃったところにつきましては、ぴったりくるかどうかは分かりませんけれども、法務省において立案してきた法律の中にも、特に手続に関係するものでございますが、今先生が御指摘の期間内にも、例えば証拠開示の制度につきまして、ルールを設けてより開示するというものを設けたり、あるいは被疑者国選弁護制度であるとか、それから、一部と言われてはおりますけれども録音、録画であるとか、そういった被疑者、被告人側の権利に着目したものも、時代の趨勢に合わせて法務省としては立案をしてきたというふうに考えております。
その上で、再審に関するものにつきましては、繰り返しになって恐縮ですが、議員立法につきましてなかなか所感を述べることは差し控えたいと思いますけれども、再審制度についての在り方を検討することについては意義があるものというのは、私どもも思っております。
確定判決による法的安定性の要請と個々の事件における是正の必要性、その双方を考慮しつつ、様々な観点から慎重かつ丁寧に検討する必要がありまして、その上で、再審制度の在り方について、国会議員の先生方によるものも含めて様々な御議論があるものと承知しておりまして、法務省でも、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会においても複数回御議論いただいたというところでございます。
今般、こうした議論の動向を踏まえて、法務大臣から再審制度に関し法制審議会に諮問し、法整備について検討していただくことといたした次第でございます。
再審制度の改正につきまして、先ほど先生の方からも若干言及がありました法制審との関係において言いますと、基本法でもあります刑事訴訟法の改正に関わるものであり、刑事裁判実務に非常に大きな影響を及ぼすものと考えております。
そのため、法務省といたしましては、まず、法制審議会において、様々な立場の専門家の皆様方に再審請求事件の実情も踏まえつつ、幅広い観点から御審議いただきたいというふうに考えておりまして、法制審議会において充実した御議論がいただけるようにしたいと考えておりますが、その反面、スピード感を持ちながらしっかりと取り組んでいきたいというふうに大臣も申されておりますので、そのように進んでいきたいというふうに思っております。
○井出分科員 議員立法についてコメントはちょっとなかなか難しいというのは分かりました。それから、法制審でやりたいという御答弁もありました。
あと、冒頭の方に、聞き間違いかどうか確認したいんですが、再審法改正には意義があるとおっしゃったように聞こえたんですけれども、それはそのとおりでいいですか。
○森本政府参考人 現在、様々な御議論がなされていますので、どこが改正するのかしないのか、要否も含めてということにはなりますけれども、そういった御議論を法制審において議論していただき、法整備について御検討いただくことについては意義があるというふうに考えております。
○井出分科員 聞き直さなきゃよかったな。
じゃ、その法制審の専門家という話が今ありまして、私、性犯罪の刑法改正を、かれこれ六年かけて一回目と二回目をずっと見てきました。私、そのとき、今だから言うんですけれども、法制審に入りそうな方々のところを、全国各地を回りました。被害当事者にも会いました。
私がそのとき感じたのは、刑法学者の方はもう率直におっしゃったんですけれども、我々は日々の裁判を見ているわけではない、代表的な判例はもちろん読んでいますというようなお話があった。それから、被害当事者の皆さんも、やはり遭われた被害からしたら本当に不条理だ。それは御自身の体験であったりとか、周りの方の体験であったり、そういうものの裁判ですとか、そういうことの事例について物すごくお詳しい。ただ、大多数が有罪判決が出ているというものについてのその分析というものは、余りなかったのかなというふうに思います。
もちろん、検察官、裁判官の立場からも入られておりますけれども、あのとき感じたのは、恐らく、データを取れるのは法務省、最高裁だろう、しかし、それはデータにすぎない、その裁判をつぶさに見ているわけでもない。仮に性犯罪専門の刑事弁護の方がいたら、多少全体観はあるのかもしれないんですが、専門家とはいっても、やはりそれぞれのお仕事がありますから完璧ではございませんし、法制審、専門家集団というものが、私も完璧だと思いたいんですけれども、そうはいっても、法制審も人のやることである。もちろん、議員立法、国会でやることも人のやることではあるんですが。
私、ここではっきり申し上げるまでもなく、御理解はいただいていると思うんですけれども、私も、この再審法改正の議論を始めてから、法務省の皆さんと最高裁の皆さんと、陰に陽にその実務の把握に努めてきた。再審法の改正に関して言えば、現役で再審法のその手続に関わったという検察官は、特に若手は皆無ですね。公判部があればそこに行くし、省庁、まあ、大体三席ぐらいのところに行くというようなお話もいただきました。裁判官は、すぐ戻すような者も含めて、多少なりとも経験があるというようなことも分かってきて、私なりに、私も国会議員じゃなかったら、この件で法制審に入れていただきたいなぐらいの思いはあるんです。
ただ、我々議員連盟は要望している。法制審のメンバーについても、例えば性犯罪でいえば、刑事弁護をずっと専門にやってきた人は割と幅広い知見がある。だから、再審の支援をしてきた長くやっている弁護士さんを入れてほしいですとか。それと、やはり被害当事者ですね。被害当事者御家族の思いというものは、恐らく、これはどんな専門家をもってしても代え難いと思うんです。
今日、本当はここまで話すつもりはなかったんですが、専門家というお話がございましたので、再審法の件に限らないんですが、やはり法制審とて、メンバーを含めて、虚心坦懐に真摯にやっていただきたいなと思います。そのことについて、一言いただきたいと思います。
○森本政府参考人 まず、法制審の部会に属する委員等につきましては、審議会の承認を経て、法制審議会の会長が指名することとされております。
その上で、法務省といたしましても、再審請求事件の実情を踏まえつつ、再審制度について幅広い観点から検討を行っていただくということでございますので、それに適した方々が委員に指名されることが重要であるというふうには考えております。
○井出分科員 法務省、法制審議会と、国会議員、政党であったり超党派の議員連盟もありますが、そこが何か、冒頭しっかりと否定をしておきましたけれども、対立関係になりがちというのは過去にもあったと思うんです。
例えば、近年でいえば共同親権の関係ですね。あれも、超党派の議員連盟が長年活動されている中で法制審が始まって、いろいろ御意見があって、新聞報道で私が記憶に残っているのは、法制審の皆さんから、法制審に対する介入ではないかという記事が出たことがありますし、法制審に入られている先生方の本を見ていると、やはり専門家でじっくりと議論をするのが法制審なんだと。何か議員立法になじまないというその著書も紹介しましたけれども、そういう相場観があって、それは確かに、国会側もそういう法務省の専門家にという意識があったことは私も否定できないと思うし、私は、そこも反省しなければいけない。
しかし、我々もそれを乗り越えて、法制審で議論を深めていただく、それもしっかりとした体制を取っていただく。我々も我々で、じゃ、新聞、テレビとか、どなたか一方だけの主張とかを聞くのではなくて、やはり、それは立法府にふさわしく、皆さん、実務家の話も聞かなきゃいけない、実態、運用を聞かなきゃいけない。我々も虚心坦懐に立法していって。
最後は、今までの再審の事件を見ていて、やはり冤罪の方を長い間、法的不安定な地位に置いていたという反省が一つ。反省を挙げれば切りがありませんけれども、いろいろな制度面の改善も、先日、最高検の袴田事件の検証の中であったと思います。そういう反省材料を解消しようという思いは、共に一緒だろうと。そこは一致していると思うんですね。
是非、我々の活動も、コメントはできないと思うんですけれども、よく見ていただきたい。そこは対立するものではない、切磋琢磨するということは、やはりしっかりとお互いがお互いの活動を意識していく、中身も注視していく、そういうことだろうと思いますけれども、その辺の、意気込みか了解なのか分かりませんが、お気持ちをいただいておきたいと思います。
○森本政府参考人 先生方の御指摘も踏まえつつ、それから、議員連盟の動きにつきましても逐次大臣にも御報告申し上げておりますので、大臣に御相談し、大臣の御指示を賜りながら進めてまいりたいというふうに考えております。
○井出分科員 切磋琢磨して、よろしくお願いいたします。
終わります。
○山下主査 これにて井出庸生君の質疑は終了いたしました。
次に、鈴木貴子君。
○鈴木(貴)分科員 改めまして、皆さん、おはようございます。
予算の分科会ということで、法務に手を挙げさせていただきまして、今日は、主に更生保護関係、そして少年院における教育の重要性と施策の展望ということで質問をさせていただきたいと思っております。
まず、更生保護関係からスタートさせていただきたいと思います。
令和七年度予算におきまして、更生保護のいわゆるサポートセンターのサテライト設置を進めるということを承知をしております。
私の地元の釧路も、保護観察所が所管をしているというか、釧路地方裁判所所管のエリアというのは、実にこれは北海道の面積にして四割を占めまして、北海道自体が国土の二二%を占める中の、北海道の実に四割。これは大変に広大な地域であります。もちろんでありますが、いわゆる積雪寒冷地でもありますので、冬場というのは、まさに地理的条件というものは大変に厳しい地域の中で、それぞれに御活動をいただいております。
そういったことを考えると、もちろん、サテライト設置を進めていく、大賛成でありますし、しっかりと応援をさせていただきたいという思いで、まず一点。
ただ、道内のサテライトの設置、やはり今申し上げたように、それぞれの地域特性というものをしっかりと反映をしていただかなくてはいけない。保護観察所の所管エリアに、例えば、まず一個ずつ配置しますよというような紋切りの設置の基準等では、これは心もとないなと思っております。
サテライトの設置、これは地域特性を反映してしっかりと設置をしていくということが重要だと思っておりますが、その点についていかがでしょうか。
○押切政府参考人 お答えいたします。
昨年十月に取りまとめられた、持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会報告書において、保護司が自宅以外の場所で面接を行うことができるよう、更生保護サポートセンターの保護区内での複数設置など、保護司や保護観察対象者等にとって利便性の高い面接場所を拡充することが盛り込まれました。
令和七年度予算政府案においては、先生御指摘のとおり、サテライト型更生保護サポートセンターを四十三か所設置するための経費を計上しているところです。
引き続き、保護司の皆様の御意向や、保護区が複数の地方公共団体にまたがっているなどの地域の実情を十分に踏まえつつ、地方公共団体の御理解と御協力を得ながら、更生保護サポートセンターの利便性の向上に努めてまいりたいと存じます。
○鈴木(貴)分科員 ありがとうございます。
しっかりと進めていただきたいと思いますが、今も答弁を伺っていると、全国で四十三。四十七都道府県あるわけでありますし、その中でも、例えば北海道は今申し上げたように、すごく、北海道単体で見ても広大な面積を有している。そして、その中でも、地域的な、そしてまた気候的に非常に厳しいということもありますので、そこはしっかりと地域特性を反映をしていただきたいということは念を押させていただきたいと思います。
あわせて、今、答弁の中にもあったように、保護司の皆さん方が観察対象者と面接をしていく、利便性もそうですが、やはり私たちとしては忘れてはならないのは、あの大津での、あってはならない痛ましい事件であると思っております。まさに保護司の方が、保護観察中、しかも何年にもわたって継続的に立ち直りのサポートをされていた方が、御自宅で面接をされている中で、結果としては亡くなられてしまった。あってはならないことが起こってしまったと思っております。
保護司を支える議員連盟に属する一人としても、保護司の皆さん方への感謝というものは、安心、安全の確保、ただただ利便性ということではなくて、安心、安全、そしてまた、その保護司の活動を支えているのは、保護司、その方の周りの方、御家族の方であるとか、近所の方であるとか、そういったまさに陰ひなたの皆さんに対しても、しっかりとメッセージというんでしょうか、安心、安全を我々としてはでき得るだけしっかりと確保をしていく、だからこそ、地域全体で、社会全体でこの立ち直りというものをしっかりサポートしていきましょうということがパッケージで必要なんだと思っております。
そういった意味で、必要な安心、安全の施策、この点については抜かりなく措置をしていかなくてはいけないと思いますが、この点についていかがでしょうか。
○押切政府参考人 お答えいたします。
滋賀県大津市の事案を受けて、保護司やその家族の皆様の不安なお気持ちにしっかり寄り添って対応すること、保護司の皆様が安全に、安心して活動できる環境を整備することが重要だと考えております。
全国の保護観察所においては、事案発生直後から全ての保護司に連絡を取り、その不安等を聴取するとともに、保護司の御意向に応じ、保護観察官の関与を強化するなどの対応を取ってまいりました。また、昨年七月からは、聴取した不安等や保護司の活動環境に関する調査結果等を踏まえ、保護司の複数指名制の積極活用や、保護観察官の直接処遇等の直接関与の強化、自宅以外の面接場所の確保等の対策を講じたところです。
保護司の安全確保に向けた対策については、昨年十月に取りまとめられた、持続可能な保護司制度の確立に向けた検討会の報告書においても、今後講じていく施策等として、面接場所や面接方法の選択肢を拡充することなど、既に講じている対策を含めた更なる取組が盛り込まれているところでございます。
引き続き、保護司の皆様の御意見等に耳を傾けながら、保護司の安全確保に必要な施策の検討を着実に進めてまいります。
○鈴木(貴)分科員 ありがとうございます。
まさに、不安軽減、そして安全確保に関する対策、るる講じていただいているということであります。
その中で、ちょっと何点か絞って質問をさせていただきたいと思います。まずは、担当保護司の複数指名制度であります。この対策の中にも積極的活用というところが進められておりますが、複数指名制度そのものの運用状況はいかがでしょうか。
○押切政府参考人 お答えいたします。
担当保護司の複数指名制については、滋賀県大津市の事案を踏まえた保護司の不安軽減や安全確保策の一環として、その積極的な運用を図っているところです。
具体的には、保護観察事件等の担当保護司を指名しようとするときは、保護司に対し複数指名の希望を聴取し、当該保護司が希望するときは、原則として複数の担当保護司を指名することとしております。
複数指名制の運用に当たっては、担当保護司間の役割分担や面接を行う場所等に関する希望を聴取し、双方の保護司との間で必要な調整を行うこと、また、それぞれの保護司に対し複数指名をした理由やそれぞれの役割等について説明をすること、さらに、対象者やその関係人に対しても、保護観察官等からそれぞれの担当保護司の役割等について説明することなどにより、その円滑な運用を図ることとしております。
令和五年度の保護観察事件における担当保護司の複数指名の件数は千二百十一件であり、これは、令和五年の保護観察開始事件数との比率で約五・七%となります。令和六年度の上半期では、速報値ですが、複数指名の件数は八百五十六件となっており、令和五年度の半期分の約一・四倍となっています。
引き続き、保護司や保護観察対象者に対する説明を丁寧に行い、保護司の皆様に安心して活動いただけるよう、適切な運用に努めてまいります。
○鈴木(貴)分科員 ありがとうございます。
今、まだ速報値ということでありましたが、単純計算するとこれまで以上の活用が進んでいるということではありますが、とはいえ、まだまだ運用の数自体はそんなにボリュームは大きくないんだなということも確認をしたところであります。
あくまでも保護司の皆さんの希望、それぞれの経験に基づいたりとか、観察対象者との相性じゃないですけれども、関係性の中で決められることですから、複数制が絶対いいというわけではないというか、あくまで選択肢の一つであるということは認識をしております。
ただ一方で、私自身も、保護司の皆さん方とお話をさせていただいたり、様々に文献を読ませていただくと、経験がある保護司の方だからこそというんですか、例えばなんですが、複数担当だと対象者が混乱をするのではないかであるとか、経験があるからこそ新しい取組をちゅうちょされているというようなことも聞こえてくるところがあります。
一方で、今、保護司の一つの課題、顕著なものとしてやはり高齢化もあると思います。ただ、観察対象者自体は、例えば若い人とかも、様々な世代もいる。だからこそ、この複数指名制度というのは、ジュニアとシニアみたいな。それこそ、山下先生も大臣時代SPさんがついていらっしゃったと思いますが、SPさんも、今、鈴木法務大臣についていらっしゃいますけれども、ジュニアとシニアのSPがついているみたいな感じで、それぞれの役回りがあったりだとか、時には保護観察対象者と年齢が近い人とベテランさんがいるということで、兄貴的な人、お姉さん的な人、母親的な人みたいなのがあると、なお一層、また円滑な関係、新しいものを築いてくるんじゃないのかなというふうにも思ったりもするところです。
なので、是非、複数運用制を既に試みた皆さん方が感じた生の声、メリット、デメリット、デメリットと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、感想みたいなところですよね、所感というか。そういったものは広く全国の保護司の皆さん方と共有をするということも、これまた一つなのではないのかなと思っております。
複数制で始めたからといって最初から最後までというわけではなくて、例えば最初の二回、最初の三回とかでもいいんだと思いますし、是非そういったグッドプラクティス、取組の特に新しく推し進めていることに関しては、情報の、事例の共有というものを積極的に進めていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○押切政府参考人 お答えいたします。
今委員御指摘のとおり、保護司の方々からは、複数指名制につきましては、例えば、ベテラン保護司が新任保護司をサポートできるといった肯定的な意見、一方で、保護司の複数指名制は日程調整が難しいので避けてほしいといった否定的な意見など、様々な御意見があるところでございます。
いずれにしましても、個々の保護司の方々とよくお話合いをして、そして寄り添って、この複数指名制が円滑に運用されるように今後も努めてまいりたいと存じます。
○鈴木(貴)分科員 引き続きよろしくお願いいたします。
あわせて、安全確保に対する対策の中では、先ほどのまさに大津の事案は自宅の面接だったわけでありますけれども、自宅以外の面接場所の確保の推進なども入れられております。
もちろん、国としても、これまでもサポートセンターというものを設置をしながら、自宅でももちろん結構です、当事者間で決めた場所でも結構です、サポートセンターも御活用くださいということで進めてきたと思うんですが、サポートセンターでの面接が行われている運用状況、実績というんでしょうか、というと、とあるアンケートによると、令和五年のものだと、よく使っていると答えられた方が二万件、全体の約一割にしかいっていないということを伺いました。
ちょっと私はこの数、一割と聞いてすごく少ないなというのが率直な感想でして、ただ一方で、実際に私の地元もそうですが、サポートセンターは基本的に平日で、夕方大体四時ぐらいまで。社会復帰をしようだとか、様々、社会活動、経済活動をしていると、四時までというのはなかなか限定的な時間なんだな、そういったことも相まってサポートセンターの利用というものが進んでいないのではないのかなと思うんですけれども。
この運用の実態、今の私が申し上げたことが正しいのか否かも含めて、そしてまた、そういった運用が一割にとどまっているということをどう見ていらっしゃるのかを教えていただければ幸いです。
○押切政府参考人 お答えいたします。
更生保護サポートセンターでは、令和五年度において、保護観察対象者等との面接が全国で年間二万回以上実施されているところではありますが、地方公共団体の御協力を得て公的施設内に設置していることが多く、例えば、保護司が仕事を終えた保護観察対象者等と夕方から夜間にかけて面接を行おうとしても、更生保護サポートセンターが開所しておらず利用できない場合もあるなど、結果として委員御指摘のような状況が生じているものと考えております。
こうした状況を踏まえ、各都道府県及び市区町村に対して、総務省及び法務省の連名により、保護司がコミュニティーセンターや公民館等の身近な公共施設を面接場所として利用できるようにすることなどについて協力依頼文書を発出したほか、各保護観察所においても、管内の市区町村に対して協力要請をするなどの取組を行い、土日祝日や夜間も利用可能な面接場所の確保に努めているところでございます。
令和七年度予算政府案においては、更生保護サポートセンターの運営の充実、サテライト型更生保護サポートセンターの設置、自宅以外の面接場所の確保に係る経費が盛り込まれており、引き続き、地方公共団体の御協力も得ながら、更生保護サポートセンターの利便性の向上や保護司の自宅以外の面接場所の確保に取り組んでまいりたいと存じます。
○鈴木(貴)分科員 是非進めていただきたいと思いますし、今もおっしゃっていただいたように、この面接場所の借料のサポートであるとかというのは、昨年度と比べると約一・五倍増で予算づけ、今出していただいているということでありますので、しっかりとこの部分、進めていただきたいと思いますし、あわせて、やはりこの周知の部分、引き続き御尽力をいただきたいと思います。
続いて、保護観察官について質問をさせていただきたいと思います。
保護司、そしてまた保護観察官ということでありますが、そもそも、先ほどから出ている、持続的な保護司活動のためとかと、いろいろ取組は進んでいますが、間違っちゃならないのは、保護司のための保護司ではない、あくまでも一度過ちを犯した者の立ち直りを支援をする、その支援をしてくださる保護司さん。つまり、保護司活動の目的というのは、あくまでもその人の、保護観察対象者の、一度過ちを犯した人の立ち直りであり、そしてまた社会復帰ということなんだと思います。
そういう意味でいったときに、再犯率が高く、対応するのがなかなか困難、若しくは専門的な知見が必要な例えば性犯罪、これが一つの例だと思いますけれども。こういった場合は、こういういわゆる指導が難しいケースについては、保護司ではなくて、私は保護観察官が直接関与をしていく。
なぜならば、確かに保護司の皆さん方も御協力をいただいて、それを否定するものではありませんが、既にデータとして、これは事実関係として、再犯率が高い、そしてまた、その性犯罪を犯した人自体が、自身もある種どう立ち直っていくべきか非常にもがきながら苦しんでいるということもよく聞かれるところであります。
そういった中で、保護観察官、そして保護司、この面接というものは往々にして保護司の皆さんに委ねられている。ここをもっと保護観察官が、こういった困難な事例といいますかにおいては、保護観察官がもっと前に出ていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○押切政府参考人 お答えいたします。
性犯罪者、性犯罪対象者など、処遇に専門的な知見が求められる保護観察対象者については、保護観察官が専門的処遇プログラムを実施し、その内面や行動に働きかけて犯罪的傾向の改善を図るなどの処遇を実施しております。
他方、保護司の方々には、保護観察対象者が地域において孤独、孤立に陥ることのないよう日常生活上の支援や見守り等を行っていただいており、こうした保護司による処遇は、性犯罪者を含めた保護観察対象者全般の再犯防止や社会復帰を促進する上で大変重要なものでございます。
委員御指摘のような、処遇に専門的な知見が求められるなど指導の難しいケースについては、保護観察官が直接担当することを含め関与を強化しつつ処遇を実施しているところであり、引き続き、保護司との適切な役割分担に十分留意しつつ、再犯防止の実効性を高めるよう配慮してまいります。
○鈴木(貴)分科員 ありがとうございます。
更生保護法でも、更生保護法第三十二条で、「保護司は、保護観察官で十分でないところを補い」というのが保護司の役割であるということが書かれている。
ただ一方、現状は、こういった性犯罪者、性犯罪を犯した方等々、指導が難しい、立ち直りが難しい、往々にして再犯率が高いと言われているところも、やはり保護司が圧倒的に直接的な関わりの時間が長い、負担というかがどうしてもちょっと偏重しているんじゃないのかなというのが私の方の問題意識であります。
確かに、特別遵守事項等々で専門的な処遇プログラムを受けるべしということがあっての保護観察プログラムに入るということではありますが、是非ここは役割分担というか、保護司の皆さんに何を期待するかの部分。あくまでも、しっかり皆さんの方で書いているわけです、「保護司は、保護観察官で十分でないところを補い」。そこは過度な負担につながらないように、役割分担というのは、いい意味ですみ分けをしていく、このことが円滑な保護観察にもつながる。つまり、一番の目的たるその者の社会の立ち直りに資するものであると思っておりますので、この観点を是非ともお酌み取りをいただきたいと思います。
こういったこともありまして、保護観察官、冒頭申し上げました地理的特性もあって、移動の負担も大変にある。そしてまた、今後なお一層地域との取組なども増えていく。保護観察官の皆さんの業務量の負担というんですか、業務の多さ。
私の地元の更生保護女性会の穂積会長という、本当に熱心に取り組んでいただいている会長がいるんですけれども、保護観察官の皆さんが仕事が多そうで大変だわと、毎日この更生保護女性会の活動をして、会長こそ大丈夫ですかと心配するぐらいの方が、いつも地元の保護観察官のことを心配をしてくださっております。
ここはしっかりと増員が必要だと考えておりますが、ここは是非大臣に伺わせていただきたいと思いますが、是非ともこの点について、大臣、力強い前向きな答弁のみよろしくお願いいたします。
○鈴木国務大臣 保護観察官の皆様方の、極めて大きな責任を果たしておられる、まさにそのとおりであります。社会内処遇の専門家としての高い専門性を生かして、保護観察対象者の処遇や関係機関と連携した支援に当たっているほか、先ほどおっしゃっていましたけれども、保護司活動の安全、安心、こういったところにも大きな役割を果たしております。
そういった中で、やはり、こうした重要な役割、これをきちんと果たしていくためにも、そしてさらに、先ほど大津の事件のこともありましたけれども、やはり保護司の皆様方の安全確保、これも大事であります。そういった中で、保護観察官の体制強化、これが必要、まさにそのとおりであります。
そういった中で、令和七年度政府予算案においては、保護観察所の保護観察官として五十二名の増員、これを計上させていただいているところであります。
先生の御指摘を踏まえまして、さらに、再犯防止に向けた社会内処遇の充実、あるいは保護司の安全の確保、こういったことをしっかりと図っていくためにも、引き続き、人員体制の整備、これをしっかりと図っていきたいと思っております。
○鈴木(貴)分科員 是非、大臣、イニシアチブを発揮していただいて、この再犯防止、私もしっかり取り組んでまいりますので、引き続きの後押しをお願いしたいと思います。
次に、少年院における教育課題の方に移らせていただきたいと思います。
私のまず問題意識なんですけれども、少年院出院後の進路として多いのが、土木であったりとか建設、建築系の職種が多いとされていますが、今これだけ世の中も多様になって、私たちの時代にはなかった、例えば将来の夢はユーチューバーみたいな、新しい職種も広がってきている中で、少年院を出院すると土木が多い、建築が多い、何かこうカテゴライズされてしまっているというか、狭められている。このことはよくないんじゃないのかなと思っておりまして、それを克服というか、それぞれの人がそれぞれの持分で、若しくは特徴であるとか長所を生かして社会でしっかりと活躍をしていただくためには何が必要かと考えたら、やはり教育なんだなと思っております。
また、世の中、今は高校進学はある種当たり前、大学に行くのもこれまた多いか一般的となってきた時代において、現状としてはやはり、多くの少年院在院者、統計を取っても、高校を卒業されていない、できていない、若しくは中退、退学、こういった学歴になってしまっている人がどうしても多いというのも現実であります。
そこで、実際に今、法務省においても少年院における教育課題にしっかりと取り組んでいただいているということはもちろん認識をした上で、そしてまた評価をした上で、今後のことを是非伺いたいと思っております。
今申し上げたように、少年院出院時、出るときに、進学若しくは復学を希望している者のうち、希望していても実態は七割が復学が決定していないで出てしまっている。私は、ここのギャップをもう少し埋めてあげるということが大事なんじゃないのかなと。
特に、アンケート調査によると、在院中の彼らの就学の不安要素の一番が学力、二番がお金、三番が友人。一方で、再入院少年、戻ってきてしまった少年のうち未就学の者の回答のその理由一位は、学力でもお金でも友人でもなくて、意欲、気持ちに関することという結果が出ています。
在院中にもしっかり、できることを今やっていただいていると思うんですけれども、再入院少年で、就学したいと思ったけれども結果としてできていない、ここが意欲である。私は、ここにもうちょっとフォーカスを置いて、もう少し伴走型支援、なぜ気力が低下してしまったのか、検証しながら、支援体制というのを講じていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○小山政府参考人 少年院の在院者の現状につきましては、まさに委員が御指摘のとおりでございまして、私どももそのような問題意識を持っております。
教育が必要だという点につきましては、法務省といたしましては、文部科学省と連携いたしまして、令和三年度から、一部の少年院において、希望する在院者に対して少年院在院中の通信制高校への入学及び出院後の学びの継続に向けた調整を行うモデル事業を開始しております。
御指摘のとおり、まさに少年院の中での意欲と、それから、少年院の中で高校生という資格を取ったまま出院をして、それを継続できるような形を図っていきたいというものを制度化したものでございます。
これにつきましては、六年度から、全国の少年院にこの取組を展開しているところでございます。
ただ、この取組にも課題がございまして、その課題につきましては、現在、在院者に対する進路指導を強化すること、それから、保護者の理解をしっかりと得ること、またその協力を得ること、それから、通信制高校への周知、それから連携強化などに努めているところでございます。
○鈴木(貴)分科員 時間も限られていますので、これは是非、最後の質問はお願いと提案ということをさせていただきたいんですけれども。
まさに、せっかく就学への意欲がある、しかしながら実態はそうなっていないということにおいて、一つの理由として、さっき申し上げました、出院のタイミングが必ずしも進学のタイミングじゃない。つまり、十二月とかに仮に出院して、そうしたら受験ができて、そして合否が決まって、そして春の入学という形でうまくいけばいいんですが、決してそういうタイミングでみんながみんな出院をするわけじゃないという、このタイミングのことを、少年たちをサポートしている皆さん方からもよく言われます。その皆さん方からも、その中で、だからこそ通信制の学校への推奨であるとか、今、令和三年からモデル事業だったものが全国展開をされたということをすごく期待をしていただいています。
ただ一方で、だからこそ情報をしっかりと共有をしていただきたい。いつでも入学できる通信制高校の推奨。例えば、普通のというか、これまで行っていた高校に通いたい、自分の地元の高校に通いたい。だけれども、下手にタイミングが空いてしまうと、まさにさっきの、気力の問題で、何となくモチベーションが下がっちゃった、結果として就学しなかった。であるならば、最初は通信に行って、通信に行きながら同時並行で、最終目的地というか、希望する高校を目指すというようなやり方もあるんだと思っています。
ですから、通信制高校の推奨、転入であるとか編入時期の柔軟な対応を学校側にも、是非とも応援してください、協力をしてください。若しくは、編入であるか転入の情報というものをしっかりと、なお一層目に見える形で出してくださいというようなことをすべきではないかと思っております。
是非、これは法務省、文科省、連名が私はいいと個人的には思っているんですけれども、各都道府県であるとか教育委員会などに、各種場面を使って、柔軟な転入、編入の対応についての御協力願みたいな通知というものを出していただけないでしょうか。
○今井政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、少年院出院後の生徒が再び学校に戻って居場所を得ること、進学等で学びを継続していくことは、その後の進路の選択が増えるなど、改善更生や生活の安定において極めて重要であると認識をさせていただいております。
このことにつきましては、法務省でおまとめになられました少年院在院者に対する高等学校教育機会の提供に係る手引の中には、少年院と通信制高校との連携による出院後に向けた具体的な支援体制の構築が示されております。
文部科学省といたしましては、法務省とも御相談の上、昨年五月に、各都道府県教育委員会等に対しまして、本手引の周知とともに、通信制高校と少年院との更なる連携強化について配慮をお願いをさせていただいたところでございます。
高等学校における転学、編入学の実施方法については、設置者でございます……
○山下主査 申合せの時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
○今井政府参考人 はい。恐縮です。
各教育委員会、学校が適切に判断していただくものでありますが、今後も、法務省と緊密に連携をさせていただきながら、文部科学省主催の全国の高校教育担当者が集まる会議などの場におきまして、出院後の生徒の転学、編入学に向けた取組についてしっかりと周知等に努めてまいりたいと考えております。
○鈴木(貴)分科員 ありがとうございました。
○山下主査 これにて鈴木貴子君の質疑は終了いたしました。
次に、村上智信君。
○村上(智)分科員 日本維新の会の村上智信でございます。
私は、国会議員になる前は公務員として働いておりまして、二十一年間、経済産業省でお世話になりました。その後、八年半の浪人生活を経まして、昨年の秋、初めて当選をさせていただきました。法務大臣、法務省に対しては初めての質問になりますので、どうぞよろしくお願いします。
それでは、質問させていただきます。最初は、氏名の振り仮名を戸籍に記載する件についてであります。
多くの国民の方にとりましては非常に驚く話かとは思いますけれども、振り仮名というのは戸籍上にはなくて、公的には証明することがなかったということで、私自身はムラカミトモノブというふうに名のっておりますけれども、戸籍上には漢字で村上智信というふうにあるだけ。そして、それを、私がムラカミトモノブと名のっておりますけれども、そういうふうな話を受け付ける方、例えば銀行とかは、私がムラカミトモノブと名のって、その漢字が読めなくはないな、例えば免許証とかを見せて、住民票を見せて、書いている漢字と読み方と合っているなと思ったら、それを認めてもらって、銀行で登録ができるというふうなことだったんです。
こういうふうな、振り仮名が公的に認められていないということで問題が起こったのが、通帳を余計に作れるというふうな問題があったというふうに聞いておりまして、御承知のことだと思いますけれども、通帳を多く作ってマネーロンダリングに使うような、そんなことが問題とされておりました。
そのときに、例えば私の名前、村上智信ですけれども、しかし、銀行に行ったときに、免許証を見せながら、訓読みで、ムラカミチシンですというふうに言うと、銀行は受け付けてもらえるかもしれない。こんなふうなことがあると、多く通帳を作られてマネーロンダリングに使われる、こういうふうなことが非常に問題になるんじゃないかということで、この度の戸籍に振り仮名をつけるという話につながっていったのではないかというふうに私は理解をしております。
さて、氏名に振り仮名をつける、この作業というのは大変な作業になるんじゃないかというふうに思います。全国民に対して、あなたの名前はこういう振り仮名ですよねということを確認していかなければならないんですけれども、膨大な作業になりそうですけれども、そこで質問しますが、全国民の氏名の振り仮名を戸籍に記載するためにどのような手続になるのか、教えてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本年五月二十六日の改正戸籍法の施行日以降、本籍地の市区町村から国民の皆様に宛てて、戸籍に記載される予定の氏名の振り仮名を郵便で通知することとなります。通知された振り仮名に誤りがあれば、令和八年五月二十五日までに振り仮名の届出をしていただくことで、その振り仮名が戸籍に記載されます。他方で、通知された振り仮名に誤りがなければ、届出をしなくても、令和八年五月二十六日以降、通知された振り仮名が戸籍に記載されることになります。
○村上(智)分科員 ありがとうございました。
あなたの名前は何でしょうかというのを全国民に対して仮に質問をして、その答えをもらうということだったら、これはさすがに作業的に膨大になるというふうに思っておりましたので、そのように、役所の側からこういう名前ですねというふうに確認が届く、そういうふうなやり方だということを聞いて安心をしました。
そして、その名前も、どういう名前なのかというのを今更地方自治体が一人一人考え出してつけていくと非常に膨大な作業になるというふうに思うんですけれども、しかし実際的には、既に市町村の方で、その方の名前というのは振り仮名はこうだよなというのを仮に置いているという話をお聞きしました。そうであるならば市役所の方でも急にどたばたと膨大な作業をしなくてもいいわけですから、そういう点についても、私は説明を聞いて安心をいたしました。
この作業の中で、そうやって郵便を送って、多くの方は普通の読み方でしょうから、大体、その名前が来たときに、確かにこのとおりですと、そしてその後は、大丈夫だったら何も対応しなくていいということで対応しないんでしょうけれども。しかし、一部の方についてはこれは違いますというふうな話を言いに行くんでしょうけれども、特に最近は、きらきらネームというふうに言っているようですけれども、一般的な読み方とは異なる漢字を人名に使うということもあるようです。
そこで質問をいたします。振り仮名を届出する際に、読みにくい振り仮名も増えているようですけれども、市町村はどのような基準で審査をするのでしょうか。教えてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
本年五月二十六日以降に提出をされます出生届やあるいは通知された振り仮名の変更届などに記載される振り仮名には、氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められるものでなければならないという規律が設けられることとなります。
市区町村における振り仮名の審査に当たりましては、漢和辞典など一般の辞典に掲載されているものは広く認め、それ以外でも、届出書に記載された読み方が漢字の意味や読み方との関連性をおよそ認めることができない読み方、漢字の持つ意味とは反対の意味による読み方など社会を混乱させるものである場合や、子の利益に反するなど社会通念上相当とは言えないものである場合を除き、氏名の振り仮名として認められることとなります。
市区町村の審査におきまして、氏名の振り仮名として認められるか判断に迷うものについては、届出人の方に対して、氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められるものであることの説明を求める場合もございます。届出人からの説明によっても市区町村において疑義が解消しないという場合には、管轄の法務局に照会をされることとなります。
○村上(智)分科員 ありがとうございました。
確かに、きらきらネームを住民の方が持ってこられると判断に迷うこともあると思いますので、個別個別の対応になると思いますけれども、大変な作業になりますが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
しかし、その作業の中で私が心配しておりますのは、あえて自分が名のっていた名前を変えようとする人が出てくるんじゃないかということを心配しておりまして、一番端的に心配されるのは、未解決事件の犯罪者ですね。そういう方が自分の素性を隠そうとして、これまでの人間関係の人たちから自分のことを見つからないようにするために、あえて別の名前を登録してくるんじゃないかということを心配しております。
このようなことにならないように、先ほど法務局に相談するようなことがあるという話をされていましたけれども、また、多分銀行通帳とかはそれまでも作っているでしょうから、そういうふうな、銀行通帳とかと見比べながら、しっかりと犯罪に使われないように対応をしていただきたいなというふうに思います。
あと、もう一つ思うのが、犯罪とかではなくて、いじめに遭ったような方、このような方が、自分の昔の人間関係と縁を切りたくて、いじめに遭ったことを隠したくて、そして名前を変えようという方もいらっしゃるんじゃないかというふうに思いますけれども、これは御説明いただいたところによると、家庭裁判所などでこれまでも対応していたということだというふうに伺っておりますが、今回対応するのは基本的には行政職員でしょうから、このタイミングで変えるべきものじゃないでしょうから、それはまた家庭裁判所に申し出る話なんだろうなとは思っております。
さて、次の質問に移ります。
戸籍に振り仮名をつける作業、全国民に関係する大変な作業になるわけですけれども、よく分からない方が不安に思って、そしてつい自治体に電話をかけたりして自治体が多忙になってしまうということも想定されますし、また、こういうふうなことをやると、これに便乗してといいますか、これを利用して詐欺を働こうとする方もいるかもしれません。周知、広報が非常に大切になると思いますけれども、そこで質問をいたします。周知、広報を十分に行わないと混乱する方が出てくるかもしれませんけれども、周知、広報に向けての大臣の意気込みをお聞かせください。
○鈴木国務大臣 戸籍において氏名の振り仮名を公証する、これを官民の手続で利用可能とするということ、これは各種情報システムにおける検索や管理、この効率化に資するものであります。まさにデジタル社会における重要なインフラを構築するものでありますので、その周知、広報をまさにしっかりとやっていく必要があると思っております。
そうした中で、私どもとしても、これまで、ポスターやリーフレット、あるいはインターネット広告を活用した周知、広報のほか、政府広報室とも連携をして、テレビCMやあるいは雑誌への掲載等々によって、戸籍の振り仮名制度の周知、広報を行ってきたところであります。
今後とも、まさにおっしゃったような趣旨も含めて、あるいは様々なこういった問題、課題についてもしっかり、あるいは、媒体を活用して国民の皆様方への周知、広報に私どもとしてもしっかりと努めて、この新制度の運用開始に万全を期してまいりたいと考えております。
○村上(智)分科員 ありがとうございました。
周知、広報においては、キャラクターがあるんですね。キツネのキャラクターで、コセキツネというんですか、インターネットで見ると、かなり好意的な評価を受けておりました。
どうして私がこの戸籍の話に興味を持ったかといいますと、私は、経済産業省で働いていたときに、政府の電子化を進める、そういう部署にいたんです、情報関係の部署にですね。そのときにいろいろな課題があるという話を学びまして、そのときにあった課題の一つがこの話だったんです。振り仮名の話でした。
名前に振り仮名を振っておかないと、様々なデータシステムで検索をするときに、振り仮名は分かっている、読み方は分かっているんだけれども名前が分からない、こういうふうな方を検索するのがやりにくいということで、振り仮名をつけるのは大事。まさに、経済産業省にいながら、法務省さんに何とかしてほしいという話をそのときもちらちら言っていた話でありました。
そして、もう一つ課題としてそのときに勉強させていただいたのが、新しい漢字ですね。出生した方、生まれてきた方、これを、出生届をするときに手書きで漢字を書いて、そして出す、そうすると、役所の方はそれを手書きでまた戸籍の帳面につけるというふうなことをしたときに、この漢字が間違っている場合があった、過去にですね。そして、その漢字が戸籍に残っていて、それじゃ、電子化するときにどうするか。電子化しようとすると、その漢字というのは世の中に存在しない。そうすると、パソコンで打つときに、JISコードが対応しないものですから表示できないという問題がありまして、それについて、今、法務省さん、どんどん電子化しようとしているときに、多分そこが問題になっているとも聞いているんですけれども。
じゃ、せめて新しく生まれる方はそういうことが起きないように、ちゃんとJISコードに対応した漢字を登録してもらわないといけないという話が当時課題だったんですけれども、そのことに関連しては、もう既に自治体の方においては、一回手書きのものを電子化して保存するので、そのときに漢字がなかったら、それはちゃんと親御さんにお伝えして、ちゃんとした漢字で登録してもらえるようになったから、これは大丈夫ですというふうな説明を受けまして、これもデジタル化が進んでいるということで非常に安心をいたしました。
さて、次の質問に移りますけれども、テーマをがらっと変えまして、次は所有者が不明の土地建物の問題についてです。
所有者が不明の土地、所有者不明土地というふうに言っているそうですけれども、この所有者不明土地、相続されなかったことなどをきっかけにして、そして土地の所有者が分からなくなるということでありますけれども、早速質問をいたします。所有者不明土地は今どれくらいあるんでしょうか。そして、所有者不明土地の定義と併せて教えてください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
まず、定義の方ですが、所有者不明土地とは、不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、所有者が判明いたしましてもその所在が不明で連絡がつかないという土地をいっております。
全国に存在する所有者不明土地の正確な数値を把握することはなかなか困難ではございますが、国土交通省による令和五年度地籍調査における土地所有者等に関する調査の結果によりますれば、調査対象となった土地の約二六%の土地が所有者不明土地に該当するとされたところでございます。
○村上(智)分科員 ありがとうございました。
所有者不明土地が二六%もあるということで、九州ほどもあるというふうにお聞きしております。大変広い土地ですね。国土交通省が主導して市町村がやっている地籍調査によって境界線を確定させよう、そういうふうな作業のときに、所有者の確認をする、そのときに所有者が直ちに判明しない場合が所有者不明土地になるということですけれども、所有者が直ちに判明しないというのは、所有者が亡くなっているというふうなことが想定されますし、また、住所が違っていて連絡がつかないという場合は、引っ越しをされたということなどが想定されるというふうに思います。
これに対しまして既に対策を取られているというふうにお聞きをしております。相続されない土地、そういうのが発生しないように、相続登記をすることを義務を課した、そしてまた、住所が変わった場合、これについてもちゃんと登記をするようにということで、これも法的な規制をかけたというふうにお聞きしております。
これも、周知がしっかり働かなければなりません。それでなければやはり実行はされませんので、周知は非常に大事だなというふうに思います。
そして、そういうふうに規制をかけたにしても、そもそも相続人がいない土地というのが発生しますので、それをどうするかという問題があります。
これに対しても、既に対策を取られている話はお聞きしております。所有者不明土地・建物の管理制度ができましたということで、所有者が不明と思われる土地に対して申立てを立てれば、裁判所が判断をしまして、管理人を置く、そして適正な管理をする、あるいは売却をする、そういうことにつながっていくというふうな説明をお聞きしました。
そして、この管理者については、幅広く、弁護士が選ばれることが多いようですけれども、いろいろな方が選ばれておりますし、あるいは申出をする方においても、草木が伸びて迷惑を受けるという近所の方だけではなくて、その土地を買ってみたい、買って自分で使いたいという方も手を挙げられるということなので、そういうことでは非常に開かれた制度で、所有者不明土地がなくなっていくのに効果があるなというふうに思います。
しかし、それでもまだなお誰も手を挙げない土地というのがやはり出てくるんじゃないかと思うんですね。そこで質問しますけれども、所有者不明土地建物のうち、何も手をつけられていない土地建物は放っていくのでしょうか、お答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の所有者不明土地管理制度あるいは所有者不明建物管理制度におきましては、自治体は、個別の利害関係がなくとも、対象の所有者不明土地や空き家状態にある建物の適切な管理のため特に必要があると認めるときは、所有者不明土地管理命令あるいは所有者不明建物管理命令を申し立てることが可能となってございます。
そのため、価値が乏しいなどの理由によって私人による所有者不明土地あるいは所有者不明建物管理人の選任の申立てがされていないというような所有者不明土地であったりあるいは空き家でありましても、防災上必要であるなどその適切な管理のために特に必要であるという場合には、自治体により個別に対応がされ得るものと承知をしております。
○村上(智)分科員 ありがとうございます。
自治体が、そうして積極的に、是非、所有者不明土地、それを管理しようというふうに思っていただけたらいいと思いますし、できれば、それを売却してまた利用につながるようにしていただきたいなというふうに思います。
この問題を見ていて思いますのは、そこに土地があって、木が生えてきて、周りが迷惑で、だから何とかしようというふうな、困っているから何とかしよう、これも大事な発想で、大切なことなんですけれども、しかし、日本の土地は限られております。せっかく造った建物も有効に利用しなければ地域の活性化につながらないとも思うんです。
私の選挙区は田舎なものですから、田舎の方で、田園都市、何もないようなところ、そういうところに、集落があっても、誰も住んでいなくて、空き家ばかりで、ようやく、集落、十軒、二十軒あって一家庭あるかどうかみたいな、そんなところで、その土地建物はどうなるんだろうか、そういう目でこの問題を見ております。
そのような土地建物、所有者不明にならないように、そして地域の活性化に使われていくように、自治体がちゃんと思い立ってくれればいいんですが、単に管理しようというだけじゃなくて、売却する方向で、そして有効に使われる方向で是非考えていただきたい。そのために、法務省さんとしても、自治体の方にそういうふうに通達を出すなり連絡するなりしていただきたいなというふうに考えております。
さて、次の質問に移ります。
土地の所有者が亡くなったときに所有者不明土地建物になる、そういう傾向があるということですけれども、法人が所有する土地建物については事情が違うように思います。そこで質問をいたしますけれども、法人が所有する土地建物については所有者不明土地建物にならないのでしょうか。お答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法人が所有する土地あるいは建物でありましても、例えば所有者である法人の所在を知ることができないという場合には、やはり所有者不明土地あるいは所有者不明建物に当たり得る場合がございます。そのため、一般論といたしまして、やはり所有者不明土地管理命令あるいは所有者不明建物管理命令を申し立てることが可能となっております。
どういう場合であれば所有者の所在等を知ることができない土地や建物と言えるかということにつきましては、個別具体的な事案の下で裁判所により判断されることにはなるのですが、一般論といたしましては、法人登記簿上の主たる事務所及び代表者の法人登記簿や代表者の住民票上の住所などを調査いたしましても、実態としてはその法人の事務所がなかったり、あるいは代表者が居住していなかったりして、その法人の事務所及び代表者の所在等が明らかでないということが必要になってくるかと考えられます。
○村上(智)分科員 ありがとうございました。
法人の住所を調べていったり、役員の方の住所やその生死、そういうことを確認するということが必要かというふうに思います。そういうふうに、役員の情報を含む法人の情報、こういうことをきっちり確認していくことによって、法人における所有者不明土地、こういうことが発生しなくなるようにする、これが非常に大切だというふうに思いますけれども。
そういうふうに考えていくと、法人情報と不動産の情報、これを連携できれば、法人に関係する所有者不明土地建物が見つけやすくなるという話だというふうに思います。
このためだと思いますけれども、本年四月から、新しく仕組みを施行されるということで、法人については、商業・法人登記システムから不動産登記システムに住所変更などの情報を提供しようとしています。この際に、そういう情報を提供するのに使えるようにということで、会社法人等番号を不動産を持っている会社には登記をするようにという、そういうふうな義務をかけられるというふうにお聞きしております。
これも全ての法人企業が対象ということで、幅広い周知が必要になりますので、ちなみに私も会社の一応代表取締役ですけれども、この話は知らなかったものですから、いい勉強になりまして、早速手続をしたいというふうに思っております。是非、この周知もお願いしたいと思います。
そして、もう一つお話をしたいのは、法人においてそういった会社法人等番号、これを登録させるように、個人についてはマイナンバーで連携させるとより便利になるんじゃないかというふうに思います。そこで質問いたしますけれども、土地の登記情報と所有者のマイナンバーを関係させたシステムを構築すれば、所有者の転居や死亡の場合にも把握できるなど便利になると考えるんですけれども、大臣に御質問いたします。よろしくお願いします。
○鈴木国務大臣 今、村上先生御指摘の所有者不明土地の問題でありますけれども、まさに主要な発生原因ということで申し上げれば、相続登記やあるいは住所等変更登記の未了ということかと思います。そういったことに対応するためには、登記名義人の法定相続人やあるいは住所変更等の情報をどう法務局が把握をするのか、こういったことが極めて大事になってくると思っています。
現在のところでは、こうしたマイナンバーの活用ということが行われてはいませんけれども、様々な活用について、今後の検討課題ということで私どもとしても考えているところであります。特に、マイナンバーの積極的な活用ということで政府全体でも様々な取組がされておりますので、そうした取組状況、これをしっかりと把握をしながら、引き続きマイナンバーの活用に向けた検討を進めてまいりたいと思っております。
○村上(智)分科員 前向きな御答弁、ありがとうございました。
個人も法人の話もデジタル化によって更に便利になると思います。所有者不明土地建物の問題の解決に向かうというふうに思います。
これはこの委員会で話すことでないですけれども、e―Taxについても、私はデジタル化を推進するべきだという話をさせていただきまして、まさにこれから人手不足の社会になっていきますので、それを解決するためにこの分野でも是非デジタル化を推進していただいて、所有者不明土地の問題、解決に向かわせてほしいなというふうに思います。
さて、最後の質問になります。
様々な取組をされていることはよく分かりました。様々な取組を見させていただくと、ここ数年で取り組んだ、施行したという制度が非常に多くあります。それだけこの問題に対して力強く取り組もうとしている意思が伝わるんですけれども、そこで質問ですけれども、しかし、そうとはいっても、所有者不明土地を減らしていっているのかどうなのか、今後減っていくのかどうなのか、どういうふうにお考えになっているでしょうか。そしてまた、これに取り組んでいる大臣の意気込みを教えてください。お願いします。
○鈴木国務大臣 所有者不明土地の主な発生原因ということで申し上げれば、先ほど申し上げましたけれども、やはり相続登記の未了ということがあります。その対策として、令和三年の不動産登記法の改正によりまして、令和六年の四月から相続登記が義務化されております。
そうした中で、相続登記の件数、令和二年度においては約百十四万件であったものが、法改正以降、順調に増加しておりまして、令和五年度には百五十万件を超えたところであります。そして、本年度でありますけれども、昨年十一月までで百六万件を超えておりまして、前年度比で一一%増加をしているという状況であります。
そのほかにも、例えば所有者不明土地管理制度の創設なども行っておりまして、そうした効果は着実に上がっていると思いますし、また、令和八年の四月には住所等変更登記が義務化をされるということで、今後も更にしっかりとした様々な対策、これを我々としても進めていきたいと考えております。
○村上(智)分科員 ありがとうございました。
非常に前向きに取り組んでいただいて、私の選挙区の田園風景にある集落も人が戻ってくればいいなというふうに思いますので、是非よろしくお願いしたいんですけれども、特にお願いしたいのは、自治体が売却をするように仕向けていただきたいという話。どうしても、買いたいという人が見つからない場合でも、是非、そういうふうに自治体から売るように働きかけてほしいな、買うように働きかけてほしい、その話は是非お願いしたいというふうに思います。
そして、もしかしたら、建物があるとなかなか買ってくれない、更地にしないといけない、でないと買ってもらえない、そういう土地もあるかもしれませんけれども、それはまた今後の課題かもしれませんけれども、是非、そういうふうな状況を把握した上で、また次のステップを考えていただけたらなというふうに思います。
以上をもちまして私からの質問を終わりにいたします。誠にありがとうございました。
○山下主査 これにて村上智信君の質疑は終了いたしました。
次に、柴田勝之君。
○柴田分科員 立憲民主党・無所属の柴田勝之でございます。
私からは、法務省から外部に対する業務委託の費用について御質問させていただきます。
私は三十年ほど弁護士をやっておりまして、私、弁護士の経験からも、法務省の予算はもっと増やすべきというのが持論でございます。今回の質問も、減らすことができる支払いは減らすことによって、限られた予算をより有効に使えるようにという思いからであることを最初に申し上げておきたいと思います。
その上で、まず、登記事項証明書の交付事務等の委託についてお伺いいたします。
そもそも登記事項証明書の交付事務等というのはどういうもので、何のためにこれを委託しているのか、分かりやすく御説明お願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
登記事項証明書の交付事務等は、元々国家公務員である法務局の職員が行っていた業務でありますが、民間事業者の創意工夫を活用することにより、より良質かつ低廉なサービスを実現するということのため、平成十九年にいわゆる公共サービス改革法が改正をされまして、民間事業者に委託をして実施しているものでございます。
委託業務の内容については、登記所における登記事項証明書等の交付、登記簿の閲覧に係る業務に加えまして、窓口及び電話による問合せ等への対応及び管理に係る業務などでございます。
○柴田分科員 この委託の契約は、四年ごとに一般競争入札をして契約していると伺っておりますけれども、令和元年度の入札分と令和五年度の入札分について、それぞれの委託期間、そして一年当たりの委託費の金額、消費税込みをお答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
令和元年度入札分の委託期間につきましては、おおむね令和二年十月一日から令和六年九月三十日までの期間でありまして、一年当たりの委託金額は税込みで約七十八・五億円でございます。
令和五年度入札分の委託期間は、令和六年十月から令和十年九月までの期間でありまして、一年当たりの委託金額は税込みで約七十四・六億円でございます。
○柴田分科員 それで、委託している業務について具体的にどういうことをされているのか、御説明いただくとどういうものになりますでしょうか。また、業務に必要な設備とか備品といった物的なものは法務省側で用意されていて、委託費の主な内容としては受託者側の人件費相当額という認識でよろしいでしょうか。お答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委託業務のうち、登記事項証明書の交付に係る具体的な業務の中身、内容といたしましては、請求書の受付、端末入力及び印刷指示等の証明書作成、請求書と証明書の内容の確認、それから証明書の交付となっております。
委託費の主な内容でございますが、委員御指摘のとおり、受託者側の人件費が主でございます。
○柴田分科員 今のお話は法務局で登記事項証明書を交付するという業務についてのことなんですが、現在はインターネットの登記情報提供サービスというものもありまして、ネットでも登記情報を取得できるようになっております。
ついては、法務局での登記事項証明書等の交付件数、そしてもう一つ、インターネットの登記情報提供サービスの利用件数、それぞれについて、令和元年と令和五年について何件かお答えください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
まず、法務局窓口、法務局における登記事項証明書等の令和元年度及び令和五年度における発行件数でございますが、令和元年度が九千六百六十八万八千八百六十四件、令和五年度が八千六百七万八百八十七件でございます。
他方で、登記情報提供サービス、インターネット上でございますが、これの令和元年度及び令和五年度における利用件数は、令和元年度が一億三千九百六十六万七千九百八十三件、令和五年度が一億六千三百九十二万六千七百九十三件となっております。
○柴田分科員 今お答えいただいたように、インターネットの登記情報提供サービスの利用件数の増加に伴って、登記事項証明書、法務局での交付件数ですね、それは減少しております。これからも減少していくことが予想されるところです。
そこで、まず一点目としては、入札の際に想定される証明書の交付件数のようなものはお示しされているかという点。それから二点目に、実際の交付件数が想定していた交付件数より減少した場合、それに応じて受託者側で必要となる人手も減るはずですので、それに応じて委託費も減額するということが適切だと思うんですけれども、その減額の仕組みについて御説明をお願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
法務局と受託事業者との間で締結をしております登記事項証明書の交付事務等の委託に係る契約におきましては、前年度における事件数とその前々年度の事件数を比べて一〇%以上の乖離が生じたという場合には、必要に応じて契約金額及び支払い限度額について協議を可能とする条項がございます。
したがいまして、同条項に基づき、登記事項証明書の発行件数が前年度比で一〇%以上減少したという場合には、当該条項に基づいて、受託事業者と契約金額の減少について協議を実施することとなります。
また、一〇%以内の減少でありましても、登記事項証明書の発行件数と比較して受託事業者の配置人数が過剰と考えられる場合には、先ほどの契約に基づきまして、配置人数の見直しによる契約金額の減額を協議することも可能となってございます。
いずれにいたしましても、委員御指摘のとおり、登記事項証明書の発行件数が減少したという場合には、契約条項を踏まえて、適切に委託費の減額について検討するよう努めてまいりたいと考えております。
○柴田分科員 済みません、今、さっき一点目にお尋ねした点について、入札の際には過去の何年間かの交付件数の実績を入札の際にお示しになっていて、それを見て業者が入札してくるというふうにお伺いしたと思うんですけれども、そこはいかがでしょうか。
○竹内政府参考人 失礼いたしました。お答えします。
入札の際には過去数年間の発行件数についてお示しした上で、実施しているということになります。
○柴田分科員 それで、さっきの説明で、交付件数が前の年より一〇%以上減少した場合、減額の協議をされるという御説明だったと思います。
私がちょっと気になるのは、前の年の比較しかしていないという点です。交付件数というのは年々減っているはずなので、例えば、令和六年であれば、令和五年と比べれば一〇%足らずしか減っていないけれども、令和四年と比べると一〇%以上減っているということも考えられると思うんですね。
したがって、前の年の交付件数ではなくて、入札の際に示していた過去の交付件数、すなわち令和三年とか四年といった時点との交付件数との比較で減額すべきかどうか判断するのが適切ではないかと。この点は、今後の検討を法務大臣にお願いした上で、次の質問に移らせていただきたいと思います。
次に、PFI手法と公共サービス改革法を活用した刑事施設の民間委託運営についてお伺いいたします。
まず、刑事施設の民間委託運営というのがどういうものか、分かりやすく御説明いただければと思います。
○小山政府参考人 刑事施設のうち、美祢社会復帰促進センター、島根あさひ社会復帰促進センター、喜連川社会復帰促進センター及び播磨社会復帰促進センターにおきましては、PFI手法を活用、又は、いわゆる公共サービス改革法に基づきまして、主に施設維持管理業務、職業訓練業務、教育業務、分類業務などを民間委託いたしまして、刑事施設で実施します職業訓練や生活関連業務等に民間のノウハウやアイデアを導入しているものでございます。
○柴田分科員 今、対象施設は四つあるというふうに伺いましたけれども、それぞれの施設について、令和元年と令和五年の収容定員、それから実際の収容人数、そして支払った委託費、消費税込みの金額をお答えください。社会復帰促進センターというのは長いので、前の地名だけで言っていただいて結構でございます。
○小山政府参考人 これら四施設の現在の収容定員及び令和元年と令和五年の被収容者の年末収容人員につきまして、お答え申し上げます。
美祢については、収容定員は千二百九十六人、令和元年末の収容人員は六百五十六人、令和五年末の収容人員は四百五十九人でございます。
島根につきましては、収容定員は二千人、令和元年末の収容人員は千百八人、令和五年末の収容人員は八百五十人。
喜連川につきましては、収容人員は千九百五十六人、令和元年末の収容人員は千三百四十人、令和五年末の収容人員は千二百十七人。
播磨につきましては、収容定員は千人、令和元年末の収容人員は四百七十一人、令和五年末の収容人員は四百五十七人となってございます。
また、委託に係る支出額でございますけれども、美祢につきましては、令和元年度が約二十九・三億円、令和五年度が約三十・二億円。島根あさひにつきましては、令和元年度が約三十九・九億円、令和五年度が約四十・九億円となってございます。
喜連川及び播磨につきましては、令和元年度と令和五年度とで契約の枠組みが異なっておりまして単純に比較できるものではございませんが、まず、令和元年度の委託に係ります支出額は、それぞれ約二十七・一億円及び約十九・三億円となってございます。その後、令和四年度から第二期目の事業といたしまして、両センターの運営を一体のものとし、運営期間八年間、総額約百五十一・一億円の契約を締結しておりまして、令和五年度における契約額は両センター一体で約十八・九億円となっております。
○柴田分科員 今の御説明で、喜連川と播磨の委託費の金額がかなり減っているようなんですけれども、その主な理由を簡単に御説明いただければと思います。
○小山政府参考人 喜連川と播磨につきましては、契約を変えます際に、一部の業務につきまして対象から外すこととしております。
具体的には、警備業務、作業業務等を第一期事業では委託していたものでございますが、これを委託業務から外したということでございます。
○柴田分科員 今お答えいただいたように、どの施設においても収容人員は減少しております。これはそもそも刑務所に入るような犯罪の件数が減っているということの結果でありますので、検察、警察など関係の皆様の御尽力に心より敬意を表したいと思います。
その上で、さっきのお答えでも、美祢と島根については、令和元年と五年を比較して、収容人員はかなり減っているんですけれども、委託費については増えているというのが見て取れると思います。
収容人員が減少しているということは受託者側で業務に要する費用も減少しているのではないかと考えられると思いますが、まず一点目に、入札ないし契約の際に想定されている収容人員は定員の何割かという点。それから二点目に、実際の収容人員が想定していた収容人員より減少した場合、それに応じた減額の仕組みがどうなっているか。そして三点目に、実際に減額した実績があれば御説明をお願いいたします。
○小山政府参考人 失礼いたします。
一点目の御質問でございますが、想定の収容定員については、七割から八割でございます。
それから、委託業務に関しまして、現在の委託事業契約におきましては、収容人員の変動に応じた食料費の実績払い、収容人員の変動に応じた委託費の改定による減額などの仕組みがございます。
収容人員の変動に応じた委託費の改定につきましては、例えば島根の第二期事業の基準でございますれば、収容定員の七割を上回った場合には増額、五割を下回った場合は減額というように、各委託契約で定められた基準によりまして、収容人員が当該基準を上回った場合には増額をいたしまして、下回った場合には減額をするといった仕組みになってございます。
この収容人員の変動と申しますのは、民間事業者にとりましてコントロールできない他律的なものとなりますところ、民間事業者の参入障壁とならないように配慮する必要性、民間事業者の努力及び創意工夫が最大限発揮されることにより適正な利益を得られる環境を構築する必要性、そして、何よりも良質かつ安定的な施設運営を促す必要性などを踏まえまして、このような幅を持たせた基準となってございます。
それから、最後のお尋ねでございますけれども、これまでに委託費を減額した実績というのがございまして、令和六年度におきまして約二億七百万円を補正予算において減額をしております。
○柴田分科員 今のお答えをまとめますと、例えば定員の七割を想定して契約している施設においては、実際の収容定員が七割より増えると増額、五割より減ると減額。食料費以外はですね、食料費は実費精算みたいなものですけれども。食料費以外については七割と五割で増額、減額を判断しているというふうに理解いたしました。
ただ、今の御説明を踏まえても、元々定員の七割を想定して契約しているところを、七割より増えたらそれをすぐ増額する一方で、定員の五割を下回らないと減額しないというのは、幅が大き過ぎるというふうに私は思います。
先ほどの登記情報サービスの契約では一〇%という数字も出ておりましたけれども、やはり、受託者側の業務の実態、実際どれぐらいの人数の減少がどれぐらいの業務にどう影響するのかというところをもっと細かく分析いただいた上で、さらにそういう減額の要否について御検討いただきたい。これも法務大臣にお願いした上で、次の質問に移りたいと思います。
次に、システム開発の費用についてお伺いいたします。
令和七年度予算案における法務省の主要施策として、刑事手続DXの推進というのが挙げられていますが、その内容を分かりやすく御説明をお願いいたします。
○森本政府参考人 お答えいたします。
刑事DXの推進につきましては、まず、刑事手続におきまして、書類の電子化、発受のオンライン化、捜査、公判手続の非対面化、遠隔化など、情報通信技術を活用し、手続に関与する国民の負担軽減、それから円滑、迅速な手続の実現を図るものでございます。
また、それとともに、オンラインによる外部交通というものも進めておりまして、実務的な運用の措置として、従来から、一部の地域において、検察庁や法テラスと拘置所等との間のオンラインによる外部交通を実施してきたところでございますが、現在、それを弾力的に実施を拡大していくべく、関係機関及び日本弁護士連合会との間で協議を実施しておりまして、なおその一層の取組を進めていきたいと思っておりますが、そういったものがDXの推進の業務内容でございます。
○柴田分科員 私、刑事事件を専門とする弁護士でございますので、今、オンライン接見もできるし、あとは証拠開示とかそういうのもデータでもできるようになるということで、大変期待しております。
次に、令和六年度から八年度の三年間で刑事手続DXに関するシステムを構築して運用開始を目指すというふうに伺っていますが、この三年間で刑事手続のために必要になる費用の見込みを教えていただきたいと思います。
○森本政府参考人 刑事DX化のための新システムの構築経費に関しましては、令和五年度の補正予算以降、予算を計上しております。ですので、それ以降ということで申しますと、予算額はこれまでの合計で約九十九億六千二百万円でございます。また、令和七年度予算案につきましても引き続き新システム構築経費などの刑事手続DX化に向けた予算を計上しており、その金額は約三億九千九百万円となっております。
令和八年度には、先生御指摘のとおり、刑事手続DX化の一部運用開始が予定されており、そのための予算額につきましては現時点では申し上げられる状況にございませんけれども、今後も必要な予算を確保すべく適切に予算要求してまいりたいと考えております。
○柴田分科員 三年目には大きな金額の支出は多分現時点では想定されていないだろうという理解の上で、次の御質問に進みたいと思います。
刑事手続DXに関して、令和六年に日本電気株式会社と六十九億三千七百七十万円の契約、そして富士通株式会社と九億六千八百万円の契約をそれぞれ締結されていますが、それぞれの業務内容と、一般競争入札における応札者数を教えてください。
○森本政府参考人 まず、令和六年に日本電気株式会社との間で締結した契約につきましては、先ほど述べました刑事手続における書類の電子データ化、発受のオンライン化等を可能とするためのシステムにつきまして、その基幹部分の設計、開発を行うことを業務内容としております。本契約に係る一般競争入札には二者が応札いたしました。
続きまして、令和六年度に締結した富士通株式会社との契約につきましては、検察庁において使用するグループウェアに関する各種サーバー及びソフトウェア等を設計、構築することなどを業務内容としており、本契約に係る一般競争入札には一者が応札いたしました。
○柴田分科員 富士通との契約については一者しか応札がなかったということで、一者応札の問題点についてはちょっと後で御指摘させていただくことにして、次の質問に移ります。
次に、法務省では戸籍情報連携システムも運用されていますが、このシステムの内容を分かりやすく御説明をお願いいたします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
戸籍情報連携システムでございますが、令和六年三月から法務省で運用を開始したシステムでございまして、戸籍の事務に関して全国の各市区町村の事務処理システムとの連携を行うことを目的としております。
このシステムの導入によりまして、戸籍証明書の広域的な交付など、市区町村を横断した戸籍事務の処理が可能となっておるところでございます。
○柴田分科員 ありがとうございます。
このシステムに関して、令和五年度に株式会社日立製作所との間で、戸籍情報連携システムに係る運用支援業務などについて合計八十三億五千二百二十六万円の契約を締結されていますが、この契約に当たっての一般競争入札、一者しか応札がなかったと伺っています。
これが一者応札となった理由について、法務省の御認識を御説明ください。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の調達に関しましては、入札を実施するに当たり、事前に複数者の見積書を取得するなどして競争を促したところではありますが、結果として一者の応札となっております。
複数者からの参入がなかった理由といたしましては、想定される利用者数ですとか処理件数に基づいて必要な作業量を算出し、それに見合う人員の確保を含めた体制を検討した結果、応札を見送る事業者があったものと推測をされるところでございます。
○柴田分科員 次に、法務省では登記情報システムというのもありますが、このシステムの内容はどういうものでしょうか。御説明お願いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
登記情報システムでございますが、土地や建物等に係る登記情報を適正に管理、保全するために法務省で運用しております大規模な基盤システムでございまして、不動産登記申請、商業・法人登記申請、それから登記事項証明書等の交付等の登記事務をコンピューターで処理しているところでございます。
○柴田分科員 このシステムに関して、令和三年度に富士通株式会社との間で、登記情報システムの更改に係るアプリケーション設計、開発業務などで合計七十九億二千四百万円の契約を締結されたと伺っています。
この契約に当たっての一般競争入札における応札者数、一者応札となっている場合にはその理由についての御認識を御説明お願いします。
○竹内政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘の契約は、登記情報システムを更改するための設計、開発に係る業務でございまして、この設計、開発業務に係る契約については、結果的には一者応札となっております。
事前に複数者から見積書を取得するなどして競争を促したところではありますが、結果的にそうなっておりまして、なぜ複数者からの一般競争入札への参入がなかったかということについて一概にお答えすることはなかなか難しいところではございますが、設計、開発業務における新たな人員の確保を含めました体制ですとか、あるいは経費等を考慮した結果、応札を見送る事業者があったものと推測をされるところでございます。
○柴田分科員 今まで挙げたような大きくて複雑なシステムの場合、最初にシステムを開発した業者しか細かい内容が分からない、そのために、その後のシステムの運用とか更新とかも事実上その同じ一つの業者しかできない、あるいは他の業者がやろうとしてもすごく大変になってしまう、そういうことで一般競争入札をかけても結局は一者しか応札できない、そして、その結果、競争が働かなくなってしまって高い金額の委託をせざるを得ない、いわゆるベンダーロックインという現象が一般的に知られております。
先ほどお答えのあった戸籍情報連携システムの運用支援、あるいは登記情報システムの更改、これで一者しか応札がなかったというのは、この現象がまさに起きていると私は思っております。
法務省におかれては、ベンダーロックインの危険性というのをどの程度認識されているのか、そしてベンダーロックイン防止のためにはどのような具体的な対策を講じているか、また今後講じる予定であるかについて、御説明をお願いいたします。
○中村政府参考人 ベンダーロックインにつきましては、システムの開発などを行う際に、特定のベンダー、すなわち特定の事業者の製品、サービス又はシステムに囲い込まれてしまい、他社の参入が困難である状況をいうものと理解しております。
このような状況になりますと、どの事業者でも本来実施可能な作業が特定の事業者にしかできなくなってしまい、システム開発等において当該特定の事業者から過度な費用を請求される事態に陥るなどのおそれがあるものと認識しております。
法務省におきましては、ベンダーロックインを防止するため、システムの専門家であるデジタル統括アドバイザーの支援、助言なども得ながら、調達仕様書の作成段階で、事業者に依頼する作業内容についてどの事業者でも理解できるよう明確に記載するとか、システムが求める要件について特定の事業者の製品を指定することにならないよう具体的に記載するなどの対応を講じているところでありまして、今後もベンダーロックインの防止に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
○鈴木国務大臣 先生おっしゃったベンダーロックイン、私も行革をずっと長くやっていましたので、これは実は非常に大事な問題です。まさに長期的なシステム開発であればあるほど、それは大問題になってきますので、そこはしっかりとした対応が必要だと思っています。
今、事務方からも言いましたが、デジタル統括アドバイザーの支援、助言をいただきながら、例えば、刑事DXのシステムでいえば、今回の場合は、調達仕様書の中で、機器が広く一般に普及しているものであったりとか、あるいはメンテナンス作業に要する技術者が限られていないオープンなものであることなどを要件としておりますし、あるいは、システムの設計、構築段階を通じて、事業者独自のプロトコルを使用したり、製品を一社で統一したりするようなこともなかった、そういったこと、しっかりこういった判断をしながら、こうしたベンダーロックインがないように、まさに、その後のメンテナンスも含めて、あるいはその後、事業者を変えることができる余地がしっかりできるように、そういった観点からきちんと取組を進めてまいりたいと思っております。
○柴田分科員 最初に申し上げましたとおり、私は、法務省の予算はもっと増やすべきと考えておりますし、法務省の皆さんも本当はもっと予算が取れればやりたいことがいろいろあるのではないかというふうに思っております。でも、実際には予算の総枠はそう簡単には増やせない。
そういう中で、委託先に対して業務委託費を値切るようなことはやりにくいというのも分かりますけれども、さっき申し上げた登記事項証明書の交付件数とか刑事施設の収容人数とか、そういうのが契約時の想定よりも少なくなった場合には委託料を減額してもらう、あるいは大きなシステムでベンダーロックインが起きないようにするということを委託先に求めていくということは決しておかしなことではないし、必要なことだと私は思っております。
こういった点について法務省におかれても一定の努力をされているということは今日の質疑でお答えいただきましたけれども、元々国民からお預かりした税金ですので、この点について更に検討、努力していただいて、減額できた委託料はもっと本当にやりたいことに使っていただきたいというのが私の願いであります。
最後に、この点について法務大臣のお考えを伺って、終わりにしたいと思います。
○山下主査 申合せの時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
○鈴木国務大臣 先生の御指摘の趣旨をしっかりと受け止めまして、引き続きしっかりと努力をしてまいりたいと思います。
○柴田分科員 終わります。ありがとうございました。
○山下主査 これにて柴田勝之君の質疑は終了いたしました。
以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。
―――――――――――――
○山下主査 次に、外務省所管について、昨日に引き続き質疑を行います。
質疑の申出がありますので、順次これを許します。沼崎満子君。
○沼崎分科員 公明党の沼崎満子です。
本日は、質問の機会をいただきまして、大変にありがとうございます。
私、昨年の衆議院選挙で初当選をさせていただきまして、以前は麻酔科の医師を二十六年させていただいておりました。その観点から、医師として、国際保健に関する御質問を最初にさせていただきたいと思います。
まず最初にですが、トランプ大統領がWHOの脱退を表明しました。また、USAIDの支援に関しても打切りを表明しております。
こういった状況を受けまして、今、国際的な健康保健や感染症対策の重要性が一層高まっていると思います。また、危機感も私自身非常に感じております。日本は、国際社会の中で存在感を高めるためにも、国際保健の枠組みにおいて積極的に国際貢献を行う必要性があると感じています。
そこで、政府として、今後どのような形で国際的な健康問題に関してリーダーシップを取り、国際貢献を強化していくのか、その点についてお伺いをいたします。
〔主査退席、稲田主査代理着席〕
○岩屋国務大臣 私ども、国際保健を外交の柱の一つと位置づけております。医師でもいらっしゃる議員からもいろいろ御教授をいただきたいというふうに思っております。
国際保健は、人々の健康に直接関わるのみならず、日本を含む国際社会にとって、経済、社会、安全保障上の大きなリスクにも関わる重要な課題だと考えております。
この認識の下で、我が国は、先ほど申し上げたように国際保健を外交の柱の一つと位置づけ、人間の安全保障の考えに基づいて、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCの達成に向けて取り組んできております。
特に、感染症対策はそれぞれの国や地域の取組だけでは不十分でありまして、国際社会と連携して行うことが不可欠です。二〇二二年五月に策定したグローバルヘルス戦略も踏まえまして、我が国は国際保健に係る議論を主導してまいりました。
引き続いて、将来の健康危機への予防、備え、そして対応を強化するための国際保健の体制、すなわちグローバルヘルス・アーキテクチャーの発展、強化に向けて議論を主導していく考えでございます。
○沼崎分科員 柱とするという力強い御意見もいただきましたし、今、アメリカがこういう状況であるからこそ、逆に日本の存在感を示すチャンスというふうに私自身は感じておりますので、非常に心強い御意見でありがたいと思います。
今、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジという言葉も出ましたけれども、このユニバーサル・ヘルス・カバレッジは、全ての人が必要な医療を受けられるようにするための非常に重要な理念です。日本は、その点においては、国民皆保険という優れた医療制度を持っています。UHCの実現に向けて、その知見をどのように生かし、支援を行っていくのか、具体的な取組や方針についてお聞かせください。
○今西政府参考人 お答え申し上げます。
政府といたしましては、これまでも国際保健や医療、介護産業の成長について、政府の成長戦略等の方針の中に位置づけて関連する取組を進めてきたところでございます。
先生御指摘のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCにつきましては、その達成を我が国のグローバルヘルス戦略の中心に位置づけており、国際社会においてUHCを主導してきた日本の強みを生かしつつ対応してきているところでございます。
外務省といたしましては、こうした位置づけを踏まえながら、例えば二〇二三年の日本のG7議長国の下で、UHCに関するファイナンス、知見の管理、それから人材に関する世界的なハブ機能の重要性にG7として合意したことも踏まえまして、いわゆるUHCナレッジハブというものを、厚生労働省それから財務省が、WHOそれから世界銀行と連携しながら今、日本に設置することで準備を進めておりますので、外務省といたしましても、こうした準備に協力しつつ、必要な取組を着実に進めてまいりたいと考えております。
○沼崎分科員 UHCの実現に向けては、予防接種による感染症の予防というのが非常に重要な戦略になっていると思います。そういった意味で、Gaviのワクチンアライアンスが、二〇〇〇年の設立以来、特に低中所得において予防接種の普及とアクセス向上において非常に重要な役割を果たしています。これまでに十九億回以上のワクチン接種を実施し、千八百八十万人の子供たちの命を救ったという実績があります。
日本はこれまで、Gaviの主要な出資国として、国際保健課題への対応を強化するために重要な役割を果たしてきました。また、Gaviの理事会においては、理事国として重要な意思決定に関与し、国際的な健康問題へ対応を強化するための戦略というのも構築しています。
公明党はこれまで、この取組に関与してきまして、日本の国際協力や健康保障への貢献を積極的に推進してきました。具体的には、近年の新型コロナウイルスワクチンの配付において、Gaviを通じたCOVAXファシリティーに対して支援を行いまして、世界中の国が公平にワクチンを受け取れるように尽力をしてまいりました。
また、この流れで、先日、二月の二十六日には、厚生労働副大臣に対しまして、公明党の国際推進委員会として、国際保健課題に向けたGaviのワクチンアライアンスへの資金拠出に対する緊急提言を行っております。また、これは三月五日にも外務副大臣宛てにも予定をしております。その中で、Gaviの理事会でポジションを維持するために、そのために必要な新規拠出の表明というのをこの提言の中では要望させていただいております。
そこで、お伺いしますが、今後、日本政府は、Gaviのワクチンアライアンスの理事会におけるポジションをどのように維持して強化していく、そういうお考えをお持ちかということと、公明党としては、実績を踏まえた上で政府の取組を明確にしていただけることを期待しております。お願いいたします。
○岩屋国務大臣 この課題に対する御党のお取組に敬意を表したいと思います。
議員御指摘のように、Gaviワクチンアライアンスというのは、途上国における予防接種率を向上させて多くの人々の命と健康を守る活動を行っておりまして、我が国としては、こうした活動ともしっかり協力をしていきたいというふうに考えております。
Gaviの次の戦略期間における我が国からの貢献、要は拠出をどうするかということは今検討中でございまして、コロナのときは、やはり緊急で、相当たくさん出して、たくさん出せばやはり理事というお役もいただいてということになるんですが、コロナ収束後、目下、財政状況も非常に厳しい中にあって、どうするかということについては、厚労省や関係省庁と連携しながら、これから慎重に検討を行っていきたいと考えております。
○沼崎分科員 理事国であるということの意味合いというのが非常に強い点もございますので、是非前向きに御検討をいただければと思います。
また、次に、引き続きGaviに関する質問になりますけれども、これまでGaviに対しては日本企業が貢献してきた、そういった実績がございますので、その点についてお聞かせいただきたいのと、これから重要なステップとして、今までは日本から貢献をしてきたということがございますけれども、次は、日本企業がGaviを通じてワクチンの供給面に積極的に関与していくこと、また海外進出のきっかけとしてそういったGaviをしっかり使っていくということ、そういったことがこれからは日本にとっては非常に重要なステップになってくると考えております。国際的な医療支援に貢献しながら、同時にビジネスチャンスを拡大するというふうに考えております。また、国内のワクチン供給システムを維持していく上でも、海外へワクチンを供給していくということは必要というふうに考えます。
政府は、国際貢献と国益の両立のためにどのように取組を進め、具体的に日本企業の国際展開を支える考えなのか、是非お聞かせいただければと思います。
○岩屋国務大臣 Gaviのワクチンアライアンスでは、供給されたワクチンを途上国の隅々まで運んで一人一人に届ける支援、いわゆるラストワンマイルデリバリーの分野において、要は運搬をする、届けるというところにおいて日本の企業あるいは製品が貢献してきたと承知をしております。
その一方で、ちょっと残念なんですが、今のところ、日本製のワクチンは、Gaviによる支援ワクチンリストには含まれていないと承知しています。もちろん優秀なワクチンはあるんですけれども、価格がちょっと高いということがあるみたいです。
日本国内のワクチン市場が少子化による定期接種の減少等の影響を受ける中で、将来的には、日本のワクチン製造会社のワクチンがGaviの支援ワクチンリストに追加されて、日本産のワクチンが海外に展開する、日本国内の研究開発や製造のキャパシティーの維持拡大にも寄与するということを期待しているところでございます。
○沼崎分科員 是非、日本の優れたワクチンというのをしっかり海外にも広げていただく、そういうことでビジネスチャンスにもつながると思いますので、そこの手助けというのも政府として後押しをしていただきたいというふうに思います。
次の質問に移らせていただきます。
本年八月に横浜で開催されるTICAD9について、日本は開催国として、また、一九九三年からずっと日本政府が主導して、アフリカの開発ということに対して後押しをしてきました。非常に重要な役割を果たしてまいりました。
私自身、神奈川在住の議員でもございますので、地域での国際的なイベントに対して非常に高い関心を持っております。この機会を通じて、日本がアフリカ諸国の協力や、また健康問題に対するリーダーシップをどのように発揮していくのか、政府としての意気込み、また期待についてお聞かせいただきたいと思います。
○岩屋国務大臣 御指摘のように、これまで三十年以上にわたって、アフリカ自らが主導する開発を支援していくという精神の下でTICADを開催してまいりました。この八月にもTICAD9を横浜で開催いたしますので、まずはお地元からも応援をいただければありがたいと思っております。
この準備に向けて、昨年の八月に東京でTICADの閣僚会合を開催しております。この会合では、革新的課題解決の共創、アフリカとともにというテーマの下に、成果の方向性を議論して、共同コミュニケを発表することができたところでございます。
外務省としては、この成果も踏まえまして、今度のTICAD9が保健などを含む社会課題についての解決策を首脳間で議論する場にしたいと考えておりまして、アフリカ諸国や日本国内の様々な関係者の声を聞きながら今検討を進めているところでございます。
今後とも、アフリカ諸国を含む様々なステークホルダーと協力しながら、TICAD9の成功に向けてしっかり準備を進めていきたいと思っております。
○沼崎分科員 今、気候変動の問題で、非常にアフリカ諸国の感染症の問題は重要になってくると思いますし、今までの国際保健の質問の流れにもありますけれども、是非アフリカに対する健康支援というところもTICAD9の中では触れていただければというふうに思います。
また少し話題が変わりまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。
今、非常に少子高齢化で、労働力不足が盛んに叫ばれている中で、外国人材の雇用というのは非常に重要なテーマとなっています。日本の労働市場において、外国人材の雇用は非常に重要なテーマとなっております。
特にこれからは、国際的に人材獲得が非常に厳しくなっている、こういった状況の中で、日本が選ばれる国になっていかなくてはならないと思います。長期就労を目指した働き方やキャリアアップの道筋が見えるということは、選ばれる国になるという意味でも非常に重要であり、新たに創設される育成就労や特定技能制度は、こういった道筋が見えるという点でも外国人確保の上で非常に有用と考えます。
その上で、文化や宗教、生活環境に関する課題が存在していると思います。
以前、私が、山梨で、二十七年間で四十回もネパールを訪問されて、日本とネパールの友好に尽力されているネパール・日本友好協会の会長の方と懇談をさせていただいた機会がありました。その方から、ネパールにはヒンズー教の影響を受けたカースト制度がございまして、今はカーストに基づいた差別というのは禁止はされているんですけれども、社会構造や文化の中に非常に根強く残っている、ネパールから日本に働く目的でいらした方がカーストに合わない職業を日本で選択することで非常に不都合が生じているということをお伺いしました。
このような背景を考慮し、育成就労や特定技能制度での受入れや、あるいは職業の選択においては文化、宗教、生活環境への配慮が非常に重要であると感じました。現在、受入れに関して何らかの配慮が行われているのか、また、新たにこれから育成就労制度、またそこにつながる特定技能制度を始めるに当たっては、彼らの文化的、宗教的、生活環境への配慮というものに対する見解があるか、お聞かせいただきたいと思います。
○福原政府参考人 お答え申し上げます。
外国人労働者を受け入れる際の異なる文化等に対する配慮に関しましては、厚生労働省が定めた外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針により、事業主は、外国人労働者を受け入れるに当たっては、日本人労働者と外国人労働者とが、文化、慣習等の多様性を理解しつつ共に就労できるように努めることとされております。
その上で、外国人を雇用する事業所に対しては、厚生労働省におきまして、この指針に基づき、必要な助言、指導等を行っているというふうに承知をしております。
また、出入国在留管理庁におきましては、毎年六月を共生社会の実現に向けた適正な外国人雇用推進月間と定め、外国人を雇用する事業主に対して、異文化への理解を深め、お互いを尊重するなどの注意点を取りまとめたリーフレットを活用し、啓発活動を行っているところでございます。
文化的あるいは宗教的な理由等で従事することが難しい業務があるという問題でございますけれども、特定技能制度また技能実習制度におきましては、受入れ機関には、外国人に対し、受入れ前に雇用契約や従事する業務の内容等を、母国語を含む外国人本人が十分に理解することができる言語で丁寧に説明することを求めており、このような問題が生じないように努めているところでございます。
また、育成就労制度におきましても、現行の技能実習制度における取組も踏まえ、従事する業務の内容等について、来日前に外国人本人が十分に理解することができるような仕組みとすることを予定しております。
出入国在留管理庁といたしましては、引き続き、厚生労働省等の関係機関と連携し、外国人の文化、宗教、及び生活習慣に対する配慮に努めてまいります。
○沼崎分科員 実際、現場ではまだちょっとそこが不十分という御意見もお伺いしましたので、更に広く現場にも浸透するように取組を進めていただければというふうに思います。
また、次の関連した質問になりますけれども、日本で暮らす外国人の方にとっては、生活環境を整えていくということが非常に重要です。また、そこは就労に来る方にとっての安心材料にもなると思います。特に、住居の確保や文化的配慮が必要となりますが、これらの課題に対して政府はどのような取組を行っているのでしょうか。外国人の方が安心して生活できる環境を提供するための具体的な支援策や方針について、お聞かせいただきたいと思います。
○福原政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、外国人が安心して生活できるよう、受入れ環境の整備を図ることは重要であると考えております。
このため、政府におきましては、外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ等において、外国人に対する情報発信、外国人向けの相談体制の強化、ライフステージ、ライフサイクルに応じた支援等を重点事項とし、外国人の受入れ環境整備のための取組を進めているところでございます。
具体的な例を一つ挙げさせていただきますと、例えば、住居の確保でございますけれども、国土交通省におきまして、外国人向けに部屋探しのガイドブックを多言語で作成、公表するとともに、賃貸人、仲介業者及び管理会社向けには外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドラインを作成、公表等しているところでございます。
また、特定技能制度においてでございますけれども、受入れに当たりましては、支援計画を作成し、きちんと支援をするということが義務づけられているところでございます。
文化的配慮についてでございますが、外国人との共生社会に関する啓発月間の創設、各種啓発イベントの実施など、異なる文化への理解を含む共生社会の実現に向けた意識の醸成に取り組んでいるところでございます。
このほか、外国人労働者を含めた全ての人が安心して生活することができるよう、外国人在留支援センターにおける相談対応や地方公共団体が運営する外国人相談窓口への財政的支援、生活上のルールや基礎的情報を取りまとめた生活・就労ガイドブックや生活オリエンテーション動画の多言語での作成、公表など、各種の取組を進めているところでございます。
出入国在留管理庁におきましては、引き続き、関係省庁及び地方公共団体と連携し、ロードマップ等に基づいて、外国人との共生社会の実現に向けた取組を着実に進めていくこととしております。
〔稲田主査代理退席、主査着席〕
○沼崎分科員 特に住居の点では、ごめんなさい、これは通告には入れていないんですけれども、保証人の問題が非常に大きいというふうにお伺いしているんですけれども、この点に関する御回答があればお聞かせいただきたいと思います。
○福原政府参考人 お答え申し上げます。
先ほどお答えさせていただきました、国土交通省において作成をしております賃貸人、仲介業者及び管理会社向けの外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドラインにおきまして、そのような案内が含まれているものと承知をしております。
○沼崎分科員 ありがとうございました。
最後の質問をさせていただきます。
国際労働機関、ILOに関する御質問です。私も女性医師としてずっと働いてきたということで、女性の雇用問題に関しての御質問をさせていただきます。
ILOは、女性の雇用や労働環境に対する取組を強化しています。公明党は、このようなILOの取組を支持してまいりました。この重要な課題に対して、日本政府がどのようにサポートし、協力をしているのか、お伺いしたいです。特に、女性労働者が安心して働ける環境を整えるための具体的な施策や方針について、政府の考えや何か具体的な取組があれば、お聞かせいただければ幸いです。
○岩屋国務大臣 これまで外務省では、アフリカや中東、アジア地域において、ILOの実施する若者や女性の雇用機会の創出に資する事業を支援してきております。
例えば、令和四年度補正予算で、パレスチナにおける農業分野のプロジェクト一件に八千万円を拠出し、三百人以上の女性を対象に事業支援を行いました。また、令和六年度補正予算におきましては、中東、アフリカ地域、国でいいますとシリア、マリ、南アフリカといったところになりますが、この三件のプロジェクトに約三・八億円を拠出いたしております。これによって多数の若者や女性の雇用機会の創出が期待されるところでございます。
今後とも、ILOと密接に連携を取って、女性に対する支援を含め、現場のニーズを踏まえて引き続き必要な支援を行ってまいりたいと思います。
○沼崎分科員 今、日本でも女性活躍で女性の雇用というところが推進もされていますけれども、広く、日本国内で進めている施策なども通じて、世界にそういった国内のよい取組を広げていただく、そういったことも是非私からは御提案をさせていただいて、少し早めではございますが、本日の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○山下主査 御協力ありがとうございます。
これにて沼崎満子君の質疑は終了いたしました。
次に、鈴木庸介君。
○鈴木(庸)分科員 立憲民主党・無所属、鈴木庸介です。よろしくお願い申し上げます。
ハンガリーの邦人殺害について伺います。
繰り返して政府の方は、対応は必ずしも不適切ではなかったということでお話を伺っていますが、今日は、もう届いているかと思いますけれども、友人からのお手紙を紹介するところから始めたいと思います。岩屋外務大臣、岩本領事局長、小野日子駐ハンガリー日本大使宛てのお手紙です。
まさに今日、二月二十八日は、亡くなった私たちの大事な友人、Aさんの誕生日です。本当だったら、私たちはこの日、彼女のアパートに集まり、ささやかに彼女の四十四歳の誕生日を祝っていたはずです。
彼女は離婚後、子供たち二人をシングルマザーとして一生懸命育ててきました。元夫からの仕送りもなく、実家からの援助に頼りながらも、母親として強く生きてきました。彼女は元夫からの暴力におびえながら、子供たちと私たちの前ではいつも笑顔を絶やさず、頑張っていました。彼女は、いつか子供たちと一緒に、元夫からの危害の及ばない日本で暮らすことを一年以上も希望していました。
その彼女が余りにも悲しい最期を迎えたこと、その人生の最期の瞬間にもきっと子供たちのことを思っていただろうことを思うと、私たちの胸は張り裂けそうです。元夫からの暴力に何年も耐えながら、それでも子供たちを守ろうとしたこと、どれだけつらかったろうと私たちは思います。彼女は母親として強く、私たちが誇りにしている友人です。
私たちは、子供と一緒に帰国したいことを、彼女が何度も大使館に伝えていたことを知っています。彼女は、元夫に取り上げられた子供たちのパスポートを再発行してほしいと何回も大使館に懇願していました。大使館に連絡するたび、元夫からの度重なる暴力や家庭の状況を訴え、助けてほしいとお願いしていたのに、子供のパスポートは出せない、元夫と話すように何度も言われ、落ち込んだ彼女を私たちは何回励ましたことでしょう。大使館との相談ごとに、また駄目だったと私たちに結果を伝える彼女の悲しい目をどうして忘れることができるでしょうか。
外務大臣と領事局長は、二月十四日と十七日の国会で、彼女からはDV被害等の具体的な相談がなかったため対応できなかった、子のパスポートの手続を丁寧に説明したが、その申請がなかった、よって大使館の対応に問題はなかったと話しています。どうして彼女から具体的な相談がなかったなどと国会でうそをつくのですか。亡くなった彼女が反論できないので、うそをついて責任を免れてもよいと思っているのですか。
これでは、事情を知らない人は、どうして彼女は大使館にちゃんと相談をしなかったのだろう、大使館は助けることができたと言っているんだから、助けを求めればよかったのにと思うことでしょう。どうして彼女は、大使館の人に丁寧に教えてもらったのに、子供のパスポートの申請書すら書けなかったのかと誤解してしまいます。
あなたたちは、彼女の助けを求める声を無視したばかりではなく、国会で事実をねじ曲げ、亡くなった彼女が相談しなかったので助けようがなかった、子のパスポートを申請しなかったのは本人の責任だと、あたかも彼女に非があったように話しています。国会の場で、死後なお彼女の尊厳と名誉が傷つけられたことに強い憤りを感じます。
彼女の名誉と尊厳を国会の場で回復してください。彼女に非はありません。彼女はDV被害のことも大使館に何度も伝えています。彼女が子供のパスポートを申請できなかったのは、何度も大使館に断られ、元夫から同意を得るように言われたからです。彼女は元夫の暴力におびえていました。元夫の目を見るのも怖いと、生前私たちに話していました。そんな彼女が子のパスポートの申請を諦めてしまったのは、大使館に夫と話すように何度も言われたからです。
彼女のDV被害を知っていたのに、どうして加害者である元夫と話すように促したのですか。DV被害者のトラウマや精神的苦痛を知らなかったのですか。それとも、ハーグ条約を守り、子の連れ去りを防止することの方が、彼女の命よりも、母親を失うことになってしまった子供たちの癒やせない悲しみよりも大事だったからですか。
彼女のような犠牲者が今後出ないようにすることを誓ってください。大使館や領事館で、助けを求める日本人女性の声にちゃんと耳を傾け、真摯に対応してください。子の親権を争っていて子の出国がかなわない状況下で、暴力の被害を受けている人たちがいることを知ってください。こうした海外在住のDV被害者の中には、命が危険にさらされている人たちもいます。海外でDVや虐待の被害に遭っている人たちがどのような状況に置かれるのか、理解してください。ハーグ条約を守ることよりも女性の命を守ることを優先するよう、世界の在外公館に指示してください。お願いします。
二〇二五年二月二十五日、ハンガリー・ブダペストにて、故Aさんの友人として、友人一、友人二。
ちょっと長かったんですが、御紹介させていただきました。この時点で、先日の予算委員会でお二人のおっしゃったことと現地で取る情報が全く違うんですね。
これをちょっと配ってもよかったんですけれども、こちらは、元夫がハーグ条約に基づく援助決定を外務省から出されていたその証拠の紙になります。これは夫のインスタグラムにも出ています、もう消されてしまいましたけれども。
これは集英社オンラインの記事でも紹介されていますけれども、Aさんは元夫に銃を突きつけられているわけですよ、頭に。頭に銃を突きつけられて、命の危険を感じて、二人いる子供のうちの一人を日本に連れ帰っているわけです。そこで夫が連れ去りだと騒いで、日本大使館に訴えて、この援助決定が出ていますよね。
私も、何人ものAさんの友人や弁護士の方に取材させていただきましたけれども、この援助決定に大使館側がとらわれ過ぎて、結果的にAさんに必要な保護を与えることができなかったのではないかという疑念を持っています。在外邦人の保護という極めて重要で本質的な問題である、まあ、話せることと話せないことがある、当然承知しておりますが、ただ、この今日の質疑の最後に、責任の所在と再発防止への対策についてだけは具体的にしっかりとお伝えをいただきたいと思います。
また、この質疑はちょうど、今日、Aさんの誕生日と重なったということに不思議な縁を感じています。世界中の在外公館で働く職員の皆さんの意識改革につながって、このようなむごい結末を繰り返さないことをもって、亡くなったことへの、誕生日プレゼントにしたい、そういう覚悟で今日は質問をさせていただきます。
まず、切迫感がないとした理由について大臣に伺います。
二月十四日の衆議院予算委員会で、井坂委員から、DV被害者への大使館の対応についての質問に対し、大臣は、切迫度にもよるとおっしゃっています。また、同質疑において領事局長は、差し迫った状況があれば、当然、それを総合的に判断して、日本側の対応を判断しますと答弁しています。しかしながら、このハンガリーの事件では、元夫に首を絞められて殺されそうになったと言っても、切迫度が低いと大使館に判断されてしまい、結果として邦人女性の命を救えなかったわけです。
では、まず一般論として聞きます。在外公館では、大臣のおっしゃる切迫度と、そして領事局長のおっしゃる差し迫った状況、これは一体誰がどのような基準で判断しているんでしょうか。領事局長のおっしゃる総合的な判断というのは、一体どのような要素を考慮して、どういった観点から判断しているんでしょうか。
○岩本政府参考人 御質問ありがとうございます。
まずは、私からも、今回亡くなられた日本の女性の御冥福をお祈りしますとともに、御遺族に対しましても、心からお悔やみを申し上げたいと思います。
また、今回の事件を受けまして、現地の日本大使館は、御遺族様のサポート、これをできる限りさせてきていただいております。今も、残されたお子様のことも含めて、大使館の方で御遺族様と緊密に連絡を取らせていただいて、サポートさせていただいております。
その過程で、御遺族の方からは、やはりこの案件についてのプライバシーの保護、これはしっかり守ってくださいということを私ども強く言われております。そして、お子様のこともありますので、できるだけ静かな環境で、この後のプロセスも進めてほしいということも申しつかっております。
したがいまして、個別の案件の詳細について、どうしても公の場で申し上げられないところも多々あるとは思いますけれども、この点は委員にも御了解をいただければと思っております。その上で、一般論として、いろいろな制度については、当然ながら私どもも丁寧に御説明をさせていただきたいと思っております。
済みません、前置きが長くなりましたけれども、御質問のその切迫度、また、危険が差し迫っている、それをどう判断するかということでございますけれども、これはやはり、それぞれ個別のケースに応じて、御相談の内容、これはいろいろなケースがございます、世界中で様々、いろいろな御相談を日々受けておりますが、そこでどれぐらい身の危険が迫っているのか、そういったことをお聞きした上で、それを現場でもしっかりと判断をして、その後、取るべき対応、これを一つ一つのケースに応じて判断させていただいております。
○岩屋国務大臣 先刻委員がお読みになった手紙、届いておりましたので、私も読ませていただいております。
この邦人が御逝去されたことについては、大変痛ましい事案でありまして、私も改めて心よりお悔やみを申し上げたいと思います。
二〇二二年六月に、当該の邦人から、元夫との関係などについて在ハンガリー日本国大使館が相談を受けた際においては、DVについての具体的な状況についての相談はなされなかったと承知をしております。また、二〇二四年の八月に、当該邦人から、お子様の旅券申請について大使館が照会を受けた際においても、具体的なDVについての状況についての御相談はなかったと承知をしております。こうした事実関係を踏まえて、先般、私は、切迫度にもよると思うというふうに申し上げたところでございます。
ただ、今般の事案を受けて、これまでも在外公館はしっかり対応してきていると思いますけれども、改めて私の方から、領事局長を通じまして、個別の事情を十分に踏まえながら丁寧に対応していくことが重要である、そのようにせよという指示を全ての在外公館に向けて出したところでございます。
○鈴木(庸)分科員 そうなんです。要は、基準がないんですよ。お二人のおっしゃっていること、今申し上げていただいたことについて、基準がないんです。
邦人の生命を左右するような重大な判断が基準もなく、今回のハンガリーの事件では、大使館が切迫度及び総合的な判断を誤ったということになるかと思うんですけれども、そもそも、行政官の裁量に邦人の保護の判断が委ねられているところが恐ろしいところなんです。憲法二十五条の国民の生存権という話にもつながりかねないとも思うんですけれども、これは本当に改善していただかないといけない事態だと思います。
先ほど申し上げたように、首を絞められているという話は大使館の方に話しているということは複数の友人が証言していて、では、ここでもう一つ紹介させていただきます。友人がAさんとの会話を残していたものです。
二〇二四年八月八日、被害者女性Aさんは、パソコンを元夫に盗まれました。この後にいろいろなところにメールを送られたりしているんですけれども、子供を友人A宅に預け、警察に行き、被害を申告。その日の夕方の会話です。
友人A、もう危ないよ、日本に帰らないと。被害者女性、子供のパスポートがないから無理。友人A、子供のパスポートをなくしたことにしたら、パスポートを出してもらえるはずだよ。被害者女性、もうそれはできないよ、大使館はみんな知っているから、今更うそをつけないよ。元夫からの首絞めのことも知っているし、これ以上方法はない。
二〇二四年八月二十日、友人A、Bと被害者女性が長距離電車の中でした会話です。
A、その後パスポートはどうなったの。被害者女性、大使館に再発行できないかと問い合わせたの、でも、それは盗難ではないので再発行できないって言われたの。A、B、パスポートがない理由とかちゃんと伝えたの、どんな言い方で伝えたの、ちゃんとDVのことを大使館に言った。被害者女性、もう言っている。元夫のことも知っているし、パスポートをなくしたと言っても通らないと思う。そして、首を絞めるしぐさをして、これも言った。友人A、大使館にもう一回お願いしてみたら。被害者女性、でも、大使館は、元夫の同意があればパスポートを出せますと言うし、無理ですと言ったら、元夫と話し合ってくださいって。だって、元夫と目を合わせるだけでも恐怖だよ。友人B、それは信じられない。言い方を変えてみるなり、ほかの理由でパスポートをお願いしてみたら。被害者女性、うーん。Aちゃんの代わりに大使館に電話しようか、私が大使館に行こうか。被害者女性、もう向こうは私の顔も分かっているし、全部分かっているから、すぐばれるからできないよ。
その後、友人Aが二〇二四年八月二十二日に、領事館の予約を取ったと被害女性にメールを送っていますが、そのときには、取っていないと諦めちゃっています。
ここで伺いたいんですけれども、大臣、先ほどおっしゃっていたんですけれども、衆議院の予算委員会の段階で、首絞めの話は大臣に入っていますか。入っていないんですよね。(岩屋国務大臣「はい」と呼ぶ)
そうなんですよ。だから、この話が大臣のところに、首絞めの話がもし入っていないとなると、ハンガリー大使館から外務省の本省領事局に行った状況なのか、それとも領事局から大臣に情報が上がっていなかったのか、いずれにしても、外務省のどこかの段階でこの情報が隠されているわけですよね。
もう一つ申し上げるとするならば、切迫感の、首絞めの話とか、もう本当にいろいろな話が出ているんですけれども、電話を何度もしているとおっしゃっているわけですよね。
一般論としてでも結構です。電話対応の記録というのは、相談、接触の記録として残しているんでしょうか、領事局長。
○岩本政府参考人 電話で御相談、これはハンガリーに限らず、世界のいろいろな大使館、総領事館でも、電話での御相談というのはたくさん受け付けております。
その電話の記録を取るかどうか、これはそれぞれの国の制度がございますので、勝手にそういう電話の録音をしてはいけないとか、国によってはそういうところもありますので、国によりますけれども、それはまちまちな形になると思っております。
○鈴木(庸)分科員 大使館の中にハンガリーの法律が適用されているということになりますね、そうなると。
○岩本政府参考人 済みません、今私が申し上げたのは、ハンガリーが、特定の国がどうということではございませんけれども、一般論で申し上げれば、その国の法律については、当然、大使館員を含めて遵守する義務がございますので、それはそういうことになっております。
○鈴木(庸)分科員 ちょっと意味不明な答弁なんですけれども。邦人保護最優先以前の問題で、大使館の中のことも、まあ、分かりました、おっしゃっていることは分かるんですけれども。
要は、イエスかノーかで答えてください。二回相談があったと言っています。電話で何回も相談している、何度も電話して駄目だった、諦めたという現地の皆さんの話と極めて乖離があるわけですね。電話の相談はカウントしていないということなんですか。そうじゃなかったら、二回という話は出てきませんよね。
○岩本政府参考人 今回の事案につきまして、私、以前もいろいろな形で御相談があったと申し上げました。そして、そういう意味では、今回のケースについて御相談は二回だけという趣旨ではございません。
○鈴木(庸)分科員 ごめんなさい、そうすると、どこで情報が止まっていたんですか。領事局から大臣のところには行っていなかった。ある意味、安心しました。拳銃を突きつけられた、首を絞められた、それでも大臣が問題ないとおっしゃっているんだったら、ちょっと外務省、大丈夫かなという感じなんですけれども、ここで、まず情報が行っていないということが分かったのは一つ安心しました。
じゃ、領事局と大使館の間、領事局長はこの報告を受けていますか。
○岩本政府参考人 先ほど来、委員から、いろいろな当該邦人とお友達とのやり取り、御紹介がありましたけれども、従来から申し上げましているとおり、私どもの方も大使館にはしっかりと確認をいたしましたけれども、いわゆるDVについての具体的なやり取りについて御相談がなかったということですので、そういう意味では、今おっしゃった内容については確認は取れておりません。
○鈴木(庸)分科員 となると、大使館が隠していたよということになりますよね、領事局長のところに来ていないということは。
これも当然のことながら、大使館の責任は、別に人が死んだことについて直接的な責任があるとまでは言わないですよ。でも、守れるところで邦人を守らなかったのは、これは明確にハンガリー大使館の責任と言えるのではないでしょうか。
元夫はガンマニアで銃を持っていたわけですよね、頭に突きつけられて。ただ、そのときに彼女は身の危険を感じて、日本に子供を一人連れて逃げ帰っている。その逃げ帰られたことによって旦那は騒ぎ始めて、ハーグ条約の援助決定が出ちゃっているわけですよ。
○山下主査 鈴木君、物を示すには主査の許可を得てからにしてください。
○鈴木(庸)分科員 失礼しました、申し訳ありません。
決定許可が出ているわけです。その場合、援助決定となったときに、具体的にこの旦那にどんな援助を外務省はしたんでしょうか。
○岩本政府参考人 済みません、あくまで一般論としてハーグ条約の制度を御説明させていただきたいと思いますが、ハーグ条約で言うところの援助決定というのは、ハーグ条約に基づいて、ある親御さんが、自分の子供が連れ去られたということをそれぞれの国の中央当局に申し出ることができるようになっております。
その国から、例えば日本に子供を連れ去ったということであれば、日本の中央当局にその情報が入ってきます。日本の中央当局は外務省でございます。外務省の方でいただいた情報を精査しまして、ハーグ条約、幾つか条件がございます、ハーグ条約のプロセスを始めるかどうか。その条件に合致していると判断すると、援助決定というものがなされます。
ただ、その上で、最終的にそのお子さんを元いた国に戻すかどうか、ここの判断は司法のプロセスに入っていきますので、これ自体を外務省が決定するということはございません。
○鈴木(庸)分科員 要は、彼女のDV被害は承知していたけれども、なぜ、その上でも、夫と繰り返し話すように外務省の職員の方はそのときに伝えていたのかということを客観的に考えると、ハーグ条約で援助決定が出ていたので、基本的に夫側の立場に立ってしまったんじゃないかなという疑念が湧いてくるわけです。
今日、領事局長がおっしゃった、この手続自体は、書類がそろっていれば多分受けますよ。ただ、書類がそろって受けたとしても、少なくとも彼女にどれだけのヒアリングをした上でこの援助決定が出たのかということ。例えば、その時点で彼女が、拳銃を突きつけられました、首を絞められましたという話を改めて言っていたとするならば、この決定は出ていたのか。この決定に、ちょっと外務省としてとらわれてしまったんじゃないのかなと。
それならば、その運用は変えていただかないと、今後、世界中で同じようなことがあったときに、もう言った者勝ちで、取りあえずハーグで援助決定が出ているんだから、この人のサイドに立たないといけないみたいなことにならないでいただきたいなというのが、私の今日の趣旨の一つでございます。
時間もなくなってきたので、ちょっと飛ばさせていただきたい、申し訳ないんですけれども。
とにかく、断定はできませんけれども、現地の大使館から本省に、ここのどこかで出されるべき情報が出されなかったんじゃないかなという推測を今しているんですけれども。
政府参考人は予算委員会で、旅券の発給の手続自体について当該女性からは、今もそうですが、御相談はありましたけれども具体的な状況について相談があったわけではない、また、去年夏の時点では具体的な状況について私たちの方になくてと。具体的、具体的という言葉を極めて使っているんですけれども、今の状況から考えるとかなり具体的だと僕は思います。
じゃ、一般論で結構です。具体的というのは、どういうことを具体的に被害を受けている女性は現地の大使館に伝えれば、まともな対応をしていただけるんでしょうか。
○岩本政府参考人 一般論で申し上げますけれども、恐らく様々なケースがございますが、例えばですけれども、もう今にも相手の、配偶者から殺されそうになっているとか、殺されないにしても危害を加えられる状況にあるとか、そういうことになれば、当然、切迫度もございますし、具体的な御相談ということになろうかと思います。
○鈴木(庸)分科員 今の御答弁でもそうだったんですけれども、理由はともあれ、援助決定がされてからどういう運用をしているのか、極めて不透明なところがあると思っています。ですから、対応を打ちようがないわけですね。
今回も、この女性は、恐らく外務省さんに、現地の大使館に、元夫から旅券の不同意書が出ていたということを知らされていなかったんじゃないかと思っています。知らされていたら、こんな対応になりませんから。じゃ、その不同意書が出ていることを仮に知らせていないとするならば、なぜ知らせなかったのかというところのパズルを埋めてくれるのが、僕はハーグ条約の援助決定だと思っているんです。
要は、そこを明確に基準を出していただきたいんです。援助決定が出ていても、こうこうこういうプロセスをする。結果的に人が殺されて亡くなってしまっているわけですから、そこのハーグ条約についての決定プロセスというのをしっかりと明確に出していただく。そして、今後、DV被害を受けていらっしゃる方に同じような、繰り返さないということが彼女への最大の供養かなと思っております。
じゃ、済みません、もっとばっと五、六問飛ばしてしまうんですけれども、最後に領事局長に、これは大臣でも領事局長のどちらでもお答えいただければと思うんですけれども、端的に、なぜ守れなかったんでしょうか、これは。
○岩本政府参考人 繰り返しになって申し訳ございませんけれども、今回の事案につきましては、これまで累次御説明させていただいたとおり、当該邦人からは様々な形で御相談がございました。ただ、残念ながら、その具体的なやり取りについて御相談がなかったということもありまして、旅券の発給の手続にも最終的には至らなかったということだとは思います。
ですので、いずれにしましても、先ほど大臣からも御答弁がありましたけれども、今、全在外公館におきまして、こういったDVの問題も含めて、窓口での対応、これについて遺漏がないかどうかということを改めて点検、そして再確認をしているところでございますので、その状況も見ながら、今後もしっかりとした対応ができるように努力をしていきたいという具合に思っております。
○鈴木(庸)分科員 引き続き不適切ではなかったという理解でよろしいんでしょうか、御認識は。
○岩本政府参考人 もうこれも累次御説明申し上げているとおりで、大使館としましては、御相談に応じて、その都度適切に対応させてきていただいたという具合に考えております。
○鈴木(庸)分科員 ちょっとこれ以上、堂々巡りになっちゃうんですけれども、もし問題なしとするならば、今後、検証するということも言ったんですけれども、本当は、これは外部の機関とかを入れてやっていただきたいと思うんですよ。
僕は、これはハンガリー大使館自身に物すごい責任があると感じております。大使館というのは、御案内のように、邦人が最後に頼れるところなので、そこがこんな感じだときついなというのがあるんですが。
大臣、この責任を誰かがやはり、このまま何か、こういう質疑もあってマスコミでもかなり騒がれている中で、今の領事局長の御答弁だと、責任はない、このままスルーしている感じになっていくんですけれども、何らかの責任を誰かが取る、又は、責任を取らないとしても、徹底した調査、徹底した体制の変革等々をお願いしたいんですが、いかがでしょうか、大臣。
○岩屋国務大臣 これまでも繰り返し申し上げてまいりましたが、我が方の大使館は当該邦人の相談に対してできる限りの対応を行ってきたと考えております。
その上で、今般の事案も踏まえつつ、私から、先ほど申し上げたように、全在外公館の対応について点検、再確認をするように指示をいたしました。
これからも、邦人保護の観点から、個別の事情を踏まえながら、丁寧な対応及び必要な支援を行ってまいりたいと考えております。
○鈴木(庸)分科員 今日の質疑で一つ明らかになったのは、あの予算委員会の段階で本省の方から大臣の方にその情報が伝わっていなかったということだ、それは大変大きいことだと私は思っております。
外務省の職員の方にも御家族がいらっしゃると思うんですけれども、今日、四十四歳の誕生日をささやかながらもお子さんとお友達と迎えるはずだったこのAさん、本当に自分事と捉えていただいて、本当に、皆さんの領事業務が人の命を左右するようなこともありますので、この女性の無念を何か領事業務をするたびに思い出していただいて、皆さんの対応が在外邦人の最後の頼りだということを肝に銘じていただくことをお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
ありがとうございました。
○山下主査 これにて鈴木庸介君の質疑は終了いたしました。
次に、吉良州司君。
○吉良分科員 有志の会の吉良州司です。
岩屋大臣とは日常的にコミュニケーションを密にさせてもらってはいるんですけれども、特にこういう形で、公の場で一対一で議論させてもらうのは初めてなので、敬愛する岩屋大臣のまさに胸をかりるつもりで議論させていただきたいと思っています。
まず最初に取り上げたいのは、先日、日米首脳会談、お疲れさまでした。なかなか、総理と外務大臣が同席するということはめったにないんですけれども、今回は、それだけトランプ大統領との初回の首脳会談が重要だということでお二人で交渉されたんだというふうに思います。
その中で、会見もされているし、声明も出しておられるし、私は外務省の事務方からもその内容については伺っております。本当は、時間があれば、防衛問題と、後でちょっと日米同盟については触れたいと思っていますけれども、まず最初に、私が問題意識を持ったのは、ある意味、民間領域に関わることについてのコミットめいた発言をしているということなんですね。
一つは、USスチール買収ということについて、バイデン政権以来、買収ということについては許さないという、ある意味ではトップとしての意向、また国家としての意向が出ていたということで、買収と持ち出したらそこで却下されて、相手から拒否されて、その先に続かない。そういう意味で、投資ということであれば、ディール、ビジネスを得意とするトランプ大統領は食いつくだろう、又は、少なくともその次につながるだろうということで、投資という言葉を出したのではないかと思っています。
もちろん、会談に臨むに当たって、前もって例えば日本製鉄の方々との意思疎通を図っていたことは容易に想像できるわけですけれども、ただ、一〇〇%子会社を目指していた日本製鉄の意向。それから、投資というのは一〇〇%から一%まで幅広い投資があって、その中でも特に一番いいのは一〇〇%、完全子会社化することがベスト。最低でも、今度、相手にビートーライトというか拒否権を与えない、六六・七%を取得する。次は、五〇%強を取って意思決定権を持つ。
ただ、私が思うに、日本製鉄としては、意思決定権、つまり五〇%以下の投資とか、ましてや、さっき言った拒否権を相手に持たせるという形であれば、技術供与等も難しいし、そこには本来の日本製鉄の意向に沿わない投資という形があったのではないか。
そういう意味で、この投資という言葉を使ったことについて、私は正直言って疑問を持っています。さっき言った、目的は分かります。
あと、一兆ドルの投資をするんだ、こういう話もしています。このことについても、トランプ大統領の方は、日本は一兆ドル、本格的に米国に投資するんだと。その前段として、これまでも日本は直接投資をしてきていて、そこで雇用を創出しているということも当然PRしたでしょうけれども、プラス、今言った、更になのか、詳細をどこまで詰めた話か分かりませんけれども、トランプ大統領は、一兆ドル投資をしてくれる、こういうふうに思っている。
私、常々、自分自身も民間出身なので、かつては、例えば鉄鋼摩擦だ自動車摩擦だ、いろいろなことがありました。けれども、実は、個々の輸出する企業というのは、売上げが増えて、利益が多いにこしたことはないとは思っているけれども、数量的に幾らなんということを前もって決められるわけではないわけですよ、目標はあっても。
それというのは、トヨタであれホンダであれ、米国人の店長、ディーラーの店長がいて、アメリカ人のお客が来たときに、一人一人対応して、店長に三千ドルの、又は五千ドルの値引き権限があって、興味を持っていたら、最後、五千ドルまけるからどうだと言って、ああ、いいですねと言って握手して契約する。それが全米中あちらこちらで起こって、その積み重ねの結果、米国でどれだけのトヨタ車が、どれだけのホンダ車が出ていくということであって、最初から数字があるわけじゃないわけですよね。
けれども、どうしても国家としての政策ということになると、何か、今言ったように、相手にとって受け入れられやすいというか、又は魅力的な数字を出して、そして興味を引く、それで会談が成功裏に終わっていく。
ただ、心配するのは、期間をどれだけ、何年間で一兆ドルとかいうことについては言及がなかったと理解していますけれども、向こうは勝手に一年以内と思っているかもしれない、三年以内と思っているかもしれない。だから、そのときまでに一兆ドルに達していなかったとしたならば、僕は怖いのは、経産省の人も来ていると思いますけれども、いや、一兆ドルと総理がコミットしたけれども、あと三千億ドル足りないんだ、どこか日本の企業、おまえ、投資しろと、逆に役所が指導して回る、本末転倒が起こるんじゃないかということを危惧しています。
三つ目は、天然ガス。
天然ガスについては、私は、地球温暖化対策というのがあったとしても、また将来的に再エネが拡大したとしても、移行期には必ず天然ガスだきの発電が必要になる。もちろんガスも必要になる。ましてや、今のベストミックスの長期目標がある程度達成されたとしても、天然ガスだきの火力発電については、未来永劫、必要性はほぼなくならないですから。そういう意味では、世界の中で供給元を多様化しておくという必要性は私は十分分かっています。
ただ、既存のフリーポートだとかキャメロンというメキシコ湾岸にあるLNGプロジェクトはともかく、アラスカのプロジェクトとなると、凍土地帯から出るガスを千三百キロのパイプラインで引っ張ってきてという壮大なプロジェクトになります。
ここは、私が民間でプロジェクトに携わっていたところの、ちょっと手前みそ的な披露になりますけれども、天然ガスプロジェクトというのは巨額投資が必要で、巨額投資を誰も全面的にリスクを取りたくないので、その資金調達の方法というのは、ほとんどの場合が、プロジェクトファイナンスという、又はノンリコースファイナンスという専門用語があるんですけれども、形を取ります。
これは、例えば、プロジェクトの出資者、スペシャル・パーパス・カンパニー、SPCをつくったとしても、そこに投資した親会社は債務保証しない、支払い保証しない。あくまでも、プロジェクトが生み出すキャッシュフロー、それと、プロジェクトを構成する売電契約だったり、長期供給契約だったり、プラント建設契約だったり、そういうプロジェクトに関わるあらゆる契約、権利を担保として、融資者が責任を取りながら融資するという形なんですね。
実は、その際に、例えばそのLNGを日本に持ってくるとしましたら、一番大事になるのは日本側にとって何かというと、オフテイカーと言われる引取り手ですね。二十年の長期契約であれば、二十年間絶対潰れずにずっと引き取り続けて、支払い続ける。その保証があって初めて建設も始まるし、さっき言った資金が集まる。
そのときに、今の日本の状態は、二〇二〇年の三月に、供給力不足で電力供給、需給が逼迫するということもありました。首都圏、関東圏の主なサプライヤーというか電気供給者である東京電力がいろいろな意味で十分な体力ではない。私は、すぐに柏崎を動かすべきだと思っていますし、福島も抱えながらというのは非常に大変。だけれども、新たにLNGを持ってこようとすれば、実はそうやって、引取り手の体力はどこまであるんだ、又は、今ないとすれば、日本全体の国益としては必要なので、その体力をどう取り戻させるのか、こういうところまで、このアラスカ・プロジェクトに投資するしないというのは関わってくるわけなんです。
だから、そういう民間の経営上の意思決定、これをするに当たって、申し訳ないけれども、今回首脳会談をするに当たって、どこまでそういう民間の事情、そして、今言った、特に天然ガス開発、アラスカのプロジェクトでいえば、オフテイカーの安全性、安定性が重要だ。
どこまでそういうことを考慮しながら、最初については投資ということのコミット、そして一兆ドルというコミット、そして、アラスカ天然ガス、これはどこまで言ったか分かりませんけれども、トランプ大統領の会見を見ると、トランプ大統領は、もうインハンド、日本がアラスカ・プロジェクトに投資してくれるものだと勝手に、少なくとも彼は解釈しているように読めます。
そういう意味で、まず最初の質問は、日米首脳会談を成功裏に終わらせようというその目的はよしだし、結果的にはその目的は達成されたと思います。その意味で、労をねぎらいたいと思っていますけれども、民間との関わりの部分についてどこまで考慮して、そして、さっき言った、将来的に民間に経営判断以上の圧力がかかるということがないか、その辺についてどこまで考慮して臨んだのか、また結果はどう思っておられるのか。その辺についてお聞きできればと思っています。
○岩屋国務大臣 日頃から敬愛してやまない吉良議員から、また、国際政治、また国際経済の現場に詳しい吉良議員から御教授をいただきたいと思っておりますが、お手柔らかにお願いしたいとも思います。
できるだけ率直に申し上げたいと思いますが、私はずっと首脳会談、同行させていただいておりまして、同席をしておりましたので、うそ偽りは一切ございません。初めての首脳会談ですから、やはり大枠の話だけをさせていただいたというのが実態でございまして、その意味でいうと、後で出た共同声明に書かれていることが全てでございまして、石破総理も、民間の領域に踏み込んで物を言うというようなことは一切なかったというふうに私は認識をしております。
例えば投資の話ですけれども、過去五年間、我が国が米国にとっては最大の投資国であったということは事実でありまして、それは総理もおっしゃっておられましたが、段階的に増えてきていて、二〇二三年は七千八百億ドルぐらいに伸びてきているので、そこに例のソフトバンクのスターゲートの話もあり、又はトヨタ自動車の話もあり、スズキさんのお話などもあり、そういうものを総合していくと、やがて一兆ドルぐらいにはなるだろうという想定の下に、日本はこれからも米国にとって大事な投資国であり続けますよという話をさせていただいたということだと思います。
それから、USスチールについても、これも、例えば今お話に出た出資割合だとか何だとか、そういう細かい話をしたわけではなくて、総理がおっしゃったのは、事前の民間企業の御発言等のことも参考にしながら、本件はどちらかが一方的な利益を得るというような単なる買収ではなくて、日本の技術と資金を活用して米国に大胆な投資を行うことで、米国や世界が求める優れた製品を共に生み出すものである、したがって、日米が共に利益を得られるようなウィン・ウィンの関係になるものにいたしましょうという話をして、大統領の方も、そうだなという話になったということであって、それ以上の踏み込んだ発言をしているわけではございません。
それからエネルギーの方も、米国はエネルギーの供給をもっともっと進めたいという意向は承知をしておりましたので、我が方も、供給元を、やはりリスクを分散するためにも多角化した方がいいという考え方でございましたので、そういう大きな話をした上で、双方に利益のある形で、我が国へのLNGの輸出増加も含めて、エネルギー安全保障の強化に向けて協力していこうということを確認したのであって、アラスカの事業をどうするとか、パイプラインをどうするとか、そういう話をしたわけではないということは是非御理解をいただきたいと思います。
一点訂正していいですか、ごめんなさい。さっきスズキと私申し上げましたが、いすゞの誤りでございました。済みません。
○吉良分科員 ありがとうございます。本当に率直にお話をいただきました。
恐らく今大臣がおっしゃったようなやり取りだったんだと思います。それもさっき何回も、私も理解していますけれども、最初の取っかかりの会談をとにかく成功裏にと、お互い信頼関係を高める、そこは十分理解できるんですけれども、さっき私が言ったように、自分の都合のいいように解釈して、勝手にそれが既得権だと思うような相手だと思っていますので、そこはリスクがあったのではないか。
繰り返しますけれども、投資という言葉、さっき言ったお互いウィン・ウィンになる、それはもちろんだけれども、日本製鉄さんからしてみると、一〇〇%子会社化することで何のためらいもなく技術供与もできてという思いがあった。ここから先は経済産業の話になりますので、ちょっとここのところはそれぐらいにして。
今後の交渉時に、私はずっと民間で仕事をしていたところからいうと、勝手に政府の、国と国とのコミットメントがあって、そのツケを最後民間が払わされるということについては、是非御考慮いただきたいということであります。
次に、日米同盟を高みに持っていくという話をされたと思うんですけれども、今から申し上げる質問は、正直言って私の問題意識の披露であって、大臣が、また外務当局がまともに答えられることではないと思っていますので、問題提起に対して感想等あればお聞きしたいと思っています。
それは、今回も、日米同盟は大事だよねと確認した。台湾問題も大事だよね、協力して対処していこうとか、いろいろなこと、あと安保第五条が尖閣に適用されますよね、そうだよと。けれども、これもうんとは言えないと思いますけれども、今の関係者の中で、トランプ大統領が現時点でこう言ったからといって、一〇〇%将来的な行動が伴うということまで信頼できるか。多分、恐らく誰もそんなことを思っていないと思います。私は少なくとも思っていません。
よく防衛問題を論ずるときに枕言葉として出てくるのは、日本を取り巻く、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境に鑑み、で、次からと、こう必ず枕言葉が出てくるんですけれども、外交上そういう枕言葉を使わざるを得ないですけれども。では、具体的に言えば、宇宙、サイバーを除けば、中国であり北朝鮮でありロシアです。
私がいつも言うことは、実務担当者というか、関わっている人たちはもちろんそのことを意識した上で対応を考えているわけですけれども、その中で私が心配しているのは、核の拡大抑止、核抑止力。米国の核の傘の下にあるということで、核禁条約に例えばオブザーバー参加もしないとか与党議員を送らないとか、いろいろな判断をしていますけれども、まず、私の問題意識として、よく価値観を共にする諸国、また同盟国というときに、人権、民主主義、必ず出てきます。人権を重視する、民主主義の大切さというのを訴えていく。この国々がいかに第一撃を受けたとしても、反撃として核を使用できるとは私は思っていません。もちろん、いや、そんなことはない、それを言っちまったら虎は張り子だったねということになるので、口が裂けても言えないことは分かっていますけれども、私はそう思っています。仮に、ウクライナ戦争関係でロシアが例えば戦術核を使用したとして、NATOというか、今はNATOに加盟していないのでその反撃義務はないですけれども、では、西側が核でもって反撃できるか。私は全くそう思っていません。
なので、私は、核の抑止力というのは非対称だと。よく言われる強権国家、独裁国家、そういうところはもしかしたら使うかもしれない。けれども、今言った、人権を重んじ、民主主義を重視する、まあ西側と言っていいと思いますけれども、ここは反撃といえども使えない。この核の非対称。ということになると、拡大抑止というものが本来意味を成さないと私は思っているんですね。ロシアも中国も、そのことについてはもしかしたらもう読んでいるかもしれない。
ウクライナ戦争で動かない米国。お金と武器は供与するけれども、アメリカ自身は関与したくないと、ある意味、直接対決から逃げまくっている。特に、米国本土に核弾頭を撃ち込む能力を持っている相手国との今言った核使用はあり得ない。日本が何らかの形で侵略を受けた、核を使用されたといってアメリカが核を使用すれば、それはニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコに撃ち返されるリスクがある。それをやりますかと思っているわけなんです。
なので、私が言いたいことは何かというと、岩屋大臣の中国人ビザの緩和について、いろいろ批判を受けていますけれども、私は、個人的にも申し上げたように、非常に高く評価しています。
さっき言った具体的な厳しい安全保障環境といったら何だといったら、中国、北朝鮮、ロシアです。こことの緊張関係をできるだけ緩和して、そして、一定程度そこの脅威に備えていく必要は当然ありますけれども、必要以上に日本が、そして同盟国であるアメリカに同調して緊張感を高めて、厳しさを増す安全保障環境の厳しさをどんどん増していく。それに対処して、本来なら子育てのために、いろいろな社会保障の充実のために使わなきゃいけないお金を、緊張を高めた結果、そういうところに使わないといけなくなる。これは本末転倒だと私は思っています。
そういう意味では、岩屋大臣の、中国に対しては一定の、ある意味ではリスク対象だと思っているとまだ言っちゃ外交上はいけないんでしょうけれども、そことの友好関係を大事にしていくということが大事だと思っていますし、私は、批判は受けるんだけれども、ロシアとの関係修復をしていかなければいけないと思っていまして、そのためには、ウクライナの一刻も早い停戦、これに日本が積極的に関与していく、ある意味で主導していってもらいたいと思っているんですね。
時間がなくなったので、停戦合意について各論まで行かないかもしれませんけれども、もし、今言った厳しい安全保障環境ということについての私の問題意識、感想なりコメントがあれば。なければ、さっき言ったように、まともに答えられないと思っているので、もう言いっ放しにしますけれども。言いっ放しの方がいいですか。
○岩屋国務大臣 大変興味深く吉良議員のお考えを聞かせていただきました。
拡大抑止というのは、それは実は余り効果がないのではないかというお話でしたが、しかし、現在、核保有国に取り囲まれ、それらの国々が残念ながら核軍拡を進めているさなかにあって、やはり拡大抑止というものはしっかり担保しておかなければいけないと私は思っています。
それから、日米関係はもちろん我が国外交、安全保障の基軸ではあるんですけれども、やはり隣国との関係もしっかりしたものにしていかなきゃいけないと思っておりまして、中国とはいろいろな問題がありますが、対話によって建設的、安定的な関係をつくっていきたいと思っておりますし、まずはウクライナを公正な形で平和を実現しなければいけませんが、その後は、いずれかの時期においては、やはりロシアともしっかり関係を修復して話をしなきゃいけないときもやってくると思います。
そういうこともしっかり念頭に置きながら、あくまでも対話によって緊張関係をできるだけ減じていくような、そういう外交をこれからも進めていきたいというふうに考えております。
○吉良分科員 その方針は大賛成なので、応援をさせていただきたいと思っています。
もう時間がなくなったので、ウクライナ戦争について、いつも言うんですけれども、私は、侵攻前から、実際、三回ぐらい、このウクライナ問題、どうやったらロシアの侵攻を防ぐことができるのかということを、予算委員会だ、また予算の分科会等で言い続けてきたんですね。いつもこれもやり取りの中で確認していますけれども、国際法を破って、国連の常任理事国であるロシアが武力を使って侵略してしまった、このことについては絶対悪なので、これを認めるつもりは私は毛頭ないです。
ただ、いつも言うんですけれども、東西ドイツ統一の際に、ベーカー国務長官が当時のゴルバチョフ大統領から了解を得る、そのために、東西ドイツ統一を認めてくれたら、一インチたりともNATOを拡大しない、東方に。そこまでコミットし、そして、コール西ドイツ首相も、翌日モスクワに行って同じことを言っている。けれども、ある意味、当時のソ連の権利義務、全部今のロシア共和国が継承しているわけですけれども、ロシアからしてみたら、その約束をほごにされて、そして一番許せないだろう。
私は、交渉事というのは必ず相手の言い分もあると思っている人間ですから、繰り返しますけれども、侵攻前の話をちょっとしていますが、ロシアは、九一年にソ連崩壊と構成共和国が全部独立したとき、知ってのとおり、経済的にどん底中のどん底でした。なので、本来なら領土についてきちっと確認しようということもできない中で、ありのままの、そのままの構成共和国が独立してしまった。
だから、例えば、いろいろ言っていますけれども、クリミア、ドンバス、もし当時ロシアが今のような国力があったならば、必ず、独立する際に、今のウクライナ、西ウクライナを中心とした政権ですけれども、そこと交渉して、クリミアはロシア領だよな、ドンバスはロシア領だよなということを交渉していたと思っていますし、恐らく、今言ったように、ロシアにそれなりの力が当時あればそうなったと思っています。
○山下主査 吉良君、申合せのお時間が経過しておりますので、おまとめいただきたいと思います。
○吉良分科員 分かりました。そうですね、終わらなきゃいけないですね。
繰り返しますが、侵略してしまったという絶対悪は許されないんだけれども、その原因をつくったのは西側にもある。そのことを踏まえれば、相手の言い分も一定程度聞いて、そこで妥協しない限り停戦があり得ませんので、全て、悪いけれども、表面的な正義を掲げ、表面的な論理だけで停戦しようと思っても無理なので、そこのところは是非、相手にも言い分があるという中で、一刻も早く停戦を急ぐ。それが巡り巡って、安全保障上、そしてエネルギーの供給元である対ロシア、日本の国益にもなりますので、そのことをお願いをして、質問を終わります。
○山下主査 これにて吉良州司君の質疑は終了いたしました。
以上をもちまして外務省所管についての質疑は終了いたしました。
これにて本分科会所管の審査は全て終了いたしました。
この際、一言御挨拶申し上げます。
分科員各位の御協力によりまして、本分科会の議事を終了することができました。ここに厚く御礼を申し上げます。
これにて散会いたします。
午前十一時五十九分散会