衆議院

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第3号 平成28年10月21日(金曜日)

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平成二十八年十月二十一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 井上 信治君 理事 土井  亨君

   理事 藤丸  敏君 理事 宮下 一郎君

   理事 山田 賢司君 理事 木内 孝胤君

   理事 伴野  豊君 理事 伊藤  渉君

      石崎  徹君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    大見  正君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      神田 憲次君    斎藤 洋明君

      坂井  学君    助田 重義君

      鈴木 隼人君    竹本 直一君

      津島  淳君    中山 展宏君

      福田 達夫君    堀井  学君

      宗清 皇一君    山田 美樹君

      今井 雅人君    重徳 和彦君

      古川 元久君    古本伸一郎君

      前原 誠司君    鷲尾英一郎君

      上田  勇君    浜地 雅一君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        木原  稔君

   防衛副大臣        若宮 健嗣君

   厚生労働大臣政務官    馬場 成志君

   国土交通大臣政務官    根本 幸典君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房審議官) 土本 英樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 岡  真臣君

   政府参考人

   (防衛装備庁プロジェクト管理部長)        田中  聡君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月二十一日

 辞任         補欠選任

  大見  正君     堀井  学君

同日

 辞任         補欠選任

  堀井  学君     大見  正君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として防衛省大臣官房審議官土本英樹君、防衛政策局次長岡真臣君、防衛装備庁プロジェクト管理部長田中聡君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伴野豊君。

伴野委員 おはようございます。麻生副総理・財務大臣、おはようございます。

 実は、麻生副総理・大臣に質問を、公式の場というのも変ですけれども、委員会等で質問をさせていただくのは、これは十年ぶりなんですね。いろいろなところでお話しさせていただいているものですから、ついついそんなふうには思っていないんですけれども、当時は、テロ特、イラクのあれで外務大臣のときにいろいろ質問をさせていただきまして、その都度、政治家としての本音を交えたお話をさせていただいたように記憶しております。

 当時も今も、南スーダン、自衛隊の現場における駆けつけ警護のあり方等々、国を背負って命がけで頑張っている自衛隊員の皆様方、政治の不足等々が現場に危険をもたらしてはいけないというそんな共通の認識で真摯な議論をさせていただき、私は実は勝手に好印象を持っている一人でございますので、きょうも政治家としての本音トークができるように期待しておりますので、引き続き、好印象の大臣であっていただければな、そんなふうに思うわけでございます。

 そうした中で、まずは、連続在任戦後最長ということで、おめでとうございます、財務大臣としてということで。九月十日付の新聞で、池田勇人さんを抜かれて千三百五十四日になられたということで、それから四十二日たちますので、数え間違えでなければ、きょうで千三百九十六日ということで、長ければいいというものじゃないというコメントを出されたそうで、これも麻生大臣らしいなというふうにも思うわけでございますけれども、しかしながら、派閥会長の、あるいは領袖ということで三十六名の方を率いて御尽力いただいております。ここは一人の政治家として真摯に、長期にわたり財務大臣をお務めいただき、本当にお世話さまですと申し上げたいところでございます。

 一方で、長きにわたりお務めいただいているということは、それだけ我が国の財政において責任も大きく、重たくお持ちであるんだろう、そんな思いの中でさまざまお聞きしたいと思っております。

 そうした中で、正直言いまして、興味をそそられる政治家のお一人でもあることは間違いないわけで、私もちょっと経歴を改めて調べさせていただきました。

 もし失礼だったらお許しいただきたいんですが、その中で、私、今回改めて知ったのですが、大臣は、第三十七回総選挙、一九八三年の十二月の選挙で落選されているんですね。びっくりしました、そんなことがあるとは思っていなかったものですから。実は私もあの二〇一二年のとんでもない選挙において落選しておりますので、私も二年間浪人していますので、よりそういう意味では、随分後輩でございますけれども、親しみを持ってその点も見させていただいているわけでございまして、そのときのお話を、二十五周年の在職の記念のときにも、田中先生ですか、から温かい言葉をかけていただいたのが次の当選につながっているようなコメントもされているということでございます。

 一方で、麻生太郎さんというお名前も、もともと政治家っぽいですよね。全国比例だったら、「あ」ですから一番に来ますから、これはかなり当選確率が高いわけでございまして、私は、そういう面では名前もちょっとずるいななんというふうに勝手に思っているんです。

 そうした中で、これは正式に通告しておりませんが、お許しいただきたいんですけれども、大臣も宰相という言葉をよく使われると思いますが、改めて、内閣総理大臣という言葉を使わずに、あえて宰相という言葉をお使いになるときの意味も込めて、宰相にはどういう条件があるのか、必要なのか、あるいは、どういう内閣総理大臣が名宰相とか大宰相とか言われるのか、ちょっとそんなところを、お持ちの感想で結構でございますので、お聞かせいただければと。

麻生国務大臣 もともと中国語だと思いますので、三国志とか司馬遷の史記とか、春秋、戦国策という本を読みますと、あの時代にそれぞれ宰相と言われる人たちと、丞相とか、いろいろな表現が中国語でもありますけれども、やはり、なまじの総理大臣じゃなくて、後世、しかとした歴史を残したような人が宰相ということになるので。

 ドイツでも、一八七〇年の普仏戦争に勝ったドイツの鉄血宰相ビスマルクあたりが我々の印象に一番強いところ、私の世代は戦前の世代ですから、あの世代にとりましては、鉄血宰相ビスマルクなんて名前が一番印象に残っている名前かと思います。なまじの総理大臣ではなくて、フランスとの戦争にあの時代に勝ち残って、ワイマール前のドイツ帝国をつくり上げたもとのもとはあそこらあたりにスタートすると思いますので、それまでもあったとはいえ、少なくとも、領土を拡張し、確実にドイツという国を、プロシアという国をあれだけにしていったという意味では、やはり、宰相というとこの人の名前が最初に私の印象としては出てくる人物ですけれども、なかなかこういった人というのは、戦争とかそういうときでないとなかなか英雄というのは出る状況にはないんですけれども、このビスマルクなんて名前は、大きな意味での、私の印象の中では、宰相としては印象が強いところでしょうか。

伴野委員 戦争というのは人類にとって絶対避けなければならないものであると思いますが、言いかえれば、国民なり、世界的に人類が追い込まれたときに、私は、大義に生きる人というふうに今の大臣のお言葉を頂戴したわけですけれども、日本だとやはりどうしても浜口雄幸さんの名前が私はぱっと出てきまして、「男子の本懐」というのも読むところでございます。

 やはり、大義に生きる、そして、これからのリーダーというのは、それだけではなく、明るさとか期待感というのは、これは絶対必要な要素だろうと。特に、国民の皆さん方が下を向くようなことがあれば、上を向こうじゃないか、明るくいこうじゃないかという、まさに大臣のような御性格の方というのは、非常に政治家として、あるいは宰相向きの御性格かなとは勝手に思う次第でございます。

 きょうはそうした政治家麻生太郎さんに、だから聞きたいということをしっかり聞かせていただきたいと思いますので、できるだけ本音をお聞かせいただければ、そんなふうに思う次第でございます。

 さて、まず一点目、私が強く政治家麻生太郎というのを意識したのは、実は、麻生内閣時に、当時、おなりになられてすぐ解散すれば、場合によっては政権維持できたかもしれない。これは結果論ですからいろいろあるのかもしれませんが、そういう中で、日本の経済状況、世界的なリーマン・ショックの後ということで、やるべきことをやらなければならない、本音はどうだったか知りませんが、そういう道に進まれた政治家麻生太郎という方はそういう意味では信頼をさせていただいているんですが、本当に実のところどうだったのか、ちょっと、今だからお話しできるということもあれば教えていただきたい。

麻生国務大臣 衆議院の任期は残り一年ということで、当時、福田康夫内閣で、私はそれまで、二〇〇一年からおまわりさんがついているという保護観察みたいな生活をずっとやらされておりましたのですが、福田内閣のときはちょっと趣旨が合いませんでしたので、いろいろな御要請をいただきましたけれども、お断りを申し上げますと言って無役でいた一年間だったと記憶をするんですが、最後に幹事長というお話をいただいたときには、解散をなさるおつもりなら、私を幹事長にされるよりは別の方をなさった方がよろしいんじゃないですかと言ってお断りしたんですけれども、解散はしないというお話だったのでそのままやられるのかと思ったら、まさか御本人が辞職をされるという予定は全く私の頭になかったものですから、政治判断を間違えた一つの例だと思いますが、ちょうど一月で辞任をされました。

 その前、安倍内閣も、安倍内閣が参議院で負けた後、うまくいかなくなって、外務大臣から幹事長ですか、あのときも一月。私は二回幹事長をやらせていただきましたけれども、両方とも一月ずつという、最短記録の保持者なんです。

 そういう時代だったんだと思いますが、リーマン・ブラザーズの破綻というのが起きましたのが二〇〇八年の九月なんですが、これが、私らが総裁選挙が終わって、なります直前に起きまして、正直申し上げて、これは世界じゅうで大金融収縮が起きるなというのだけは予想がつきました。金融収縮が起きるということは、市場にドルがなくなるということを意味しますので、非常に世界経済に与える影響がでかいという感じがしました。

 当時、最初に国連総会に行っていろいろな人とばたばた、外務大臣をしていましたので知り合いがべたべたおりましたので、続いてG7だか何かの会合に行ったら、みんなが解散するのかと言うから、あんたらに差し込まれる覚えはない、自国の解散を一々他国に差し挟まれるつもりはないという話をしていたんですけれども、深刻な話で、このまま日本に解散されると金融収縮は、アメリカの場合はもう既に大統領がかわることに決まっていましたので、十一月になるともうアメリカは事実上動かなくなるというのが通常ですので、半年間ぐらい動かなくなると世界じゅうえらいことになるというお話でしたので、それは確かだという感じはしました。

 そのまま、G7でその話をした後、私どもで考えて、一九九七年に日本では、アジア通貨危機というのが起きまして、韓国、台湾、インドネシア等々が財政破綻に突っ込むという騒ぎになったときに、最終的にIMFが金を貸すということをしながらも、現実問題、あれは日本政府が救済をしたという例がありました。あれをもう一回やるのが日本の役としてはしんどいという気がありましたので、当時、IMFに一千億ドル、約十兆円の資金を貸与します、貸しますという話をして、アジアのいわゆる中小新興国を金融的に助ける仕事をIMFでという話を、ストロスカーンという当時余り評判のよくない専務理事がいたんですけれども、この人に頼んでやってもらって、時の中川昭一財務大臣と二人で当時いろいろやらせていただいたのですけれども、そのすぐ後に中国でアジア欧州会議が開かれて、時の胡錦濤という主席が、中国との交渉というのは、御存じのように、朗読の時間みたいに決められたことを言わされることになっておるので、それが終わった後いきなり、これから世界経済がどうなるという質問が来ました。全然紙に書いていなかったので、みんなを見たらざわざわしているから、ああこれは全然紙に書いていないものが来たんだなと思ったので、それは世界経済は悪くなる。なかんずく中国が悪くなる。なぜなら、中国はアメリカに対する対米輸出比率が高い。日本の場合は対米輸出比率はそんなに高くないから、世界経済の中で最もひどい目に遭う確率が高いのは中国だろうと、誰が見てもはっきりしているんじゃないかという話をしたら、次に、どうすればいい。

 どうすればいいって、中国の経済政策を俺に聞いているのかと言ったらそうだと言うから、それは少なくともおたくは内需が極端に不足しているんだから、外貨準備高はあるんだから、その金を使って、内部のいわゆるインフラ等々整備がかなりおくれているんだから、それに金を回していく以外に中国の経済はもたなくなる、はっきりしているんじゃないですかということで、四兆元だか何かやることになられたと記憶します。

 そういった形で、少なくともあの時代の急場をしのぐということをやらせていただいたんですけれども、とにかく日本の場合は、全くそういう状況で周りの状況は最悪ですから、そのときに日本は、解散してこちらも政治情勢が不安定になるというのはこれはとてもじゃないと思いましたので、私は正直、トタで解散するつもりにしていましたから、そういう選挙に落ちない方だけ閣僚にしようと思っていましたので、事実、私の選挙で、あれだけ厳しい選挙でしたけれども、落選された大臣はおられなかったと記憶します。

 それをやらせていただいて、結果として私どもの場合、ぼろ負けしましたのでああいう形になりましたけれども、補正予算を三回組むとか、余りやったことのないようなことを大幅にやったおかげで、そこそこのものでやりましたし、経済対策としては当たったものが随分多かったと今でもそう思っていますけれども、やはり選挙は結果という面でいきますと、百十九まで落としましたので、私どもとしては残念ながら政権を去らざるを得ないということになりました。

 その点に関しましては、私の決断がお国のためにはなったかもしれませんけれども、落選された方々にとりましては、あの段階で解散をしてくれたら俺は落ちずに済んだと思っておられる方は三十数名いらっしゃる、私の計算ではそれぐらいいらっしゃるはずですから、少々申しわけなかったなという感じが正直ないわけではありません。

 いずれにしても、世界経済のためには、あのリーマン・ブラザーズの金融収縮が極端に行くところを防いだという点においては、まあそれなりの仕事はできたかなとは思ってはいますけれども、さあ、それが自由民主党にとってよかったかどうかといえば、これはまた全然別の話であって、残念ながら、その後三年半政権を離れざるを得ませんでしたので、その点に関しましては、功罪相半ばしているかなという感じはします。

伴野委員 本音も交えたお話をありがとうございます。

 今お聞きしていて、非常にクールな分析と、そして政治判断をされたんだなと。それであるがゆえに、やはり大義に生きられた、先ほど、それによって涙を流された候補者の方もいらっしゃるということもおっしゃられました。私は人間万事塞翁が馬と思っておりまして、そういう御判断をそのときされたということが、先ほど申し上げた、連続在任戦後最長というような中で財務大臣をお務めになっている、それが御縁として遠くにあるのかな、そんなふうにも思って聞かせていただきました。

 やはり政治家たるもの、大義に生きる、信義に生きる、選挙の期日はうそをついてもいいということだそうでございますけれども、約束をとことん守る、とりわけ、国民との約束は守るというところが宰相の条件の一つでもあるのではないかな、私はそんなふうにも思っております。

 そうした中で、ここでまた社会保障と税の一体改革に関する三党合意に対する大臣の今の御認識も伺いたいと思います。

 当時、これは逆の状況になって、我々の仲間もその後の解散においては相当数、数を減らしました。数え方によっては四分の三減ったと言っても過言ではないわけでございますが、しかしながら、国家、国民の皆さん方の将来のために社会保障と税の一体改革をし、そして、そういうことを国民の皆さん方にお願いをする。これは増税ということになるわけでございますから、定数削減を含む衆議院の選挙制度の抜本的な見直しということも含めて、その当時の与党と野党第一党、第二党さんで文書を交わして決めたということでございますが、これに関して、今、現状と合わせて、副総理の御感想並びにお考えをお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 社会保障と税の一体改革に関します、あのときは民主党の提案によります三党合意というのは、これはやはり伴野先生、先進国の中では世界に誇れる、民主主義の成熟度合いを示したものとしては極めて高い評価を後世得られるものだと確信しています。ほかの国じゃこれはできないわけですから。

 日本においては、少なくとも、当時、野田総理大臣のもとで、うちの方は谷垣がやらせていただいたんだと思いますが、あの時代にこの三党合意ができたというのは、これは極めて日本のためにはよかったと思っていますし、あれができたということは、やはり、税金を上げるという話を喜ぶ人はなかなかおられないのであって、その話を三党でやる、与野党でやるということを決めて選挙をするというのは、これはなかなか見識のある話なんだと思っておりましたので、私は、これができたときに、ああ大したものだなと。正直、あのときはほかの国に対して、おまえらの国なんかじゃできないじゃないか、イギリスやらに友達がいっぱいおりますので、おまえらができないことを俺たちはできておる、俺たちは民主主義をあんたらから習ったけれども、成熟させたのは俺たちの方がよっぽど成熟させておるというようなことを言って、よくおちょくって話をしていた時代がありますので、そういった意味では、重要な意義を有するんだと思っております。

 少なくとも、これを引き上げたことについて、低所得者対策などいろいろなことができるようになったことは確かなんですけれども、今後ともこういったものの必要性というのは、やはり、コンピューターが発達したりITが発達したり、ああいったようなことが発達すると、アメリカに限らず、それについていける人たちとついていけない人との間に格差が広がってくるというのは、これは避けて通れないところだと思っておりますので、その分をどうやって補填するかとか、いろいろなことは別の話として考えないかぬということは、もうこれからの時代、避けて通れぬかなと思っておりますので、ぜひそういった意味では、私どもとしては、着実にこれを進めていくという補填やら差額やら何やらをきちんと格差是正というのを、まあアメリカほど極端にひどくなっていないにしても、それにしてもきちんとそういった対策に配慮をするというのは、例の、学生に対する貸し付けの話を無償でしてみたり金利をゼロにしてみたり、いろいろな話が今出ていますけれども、そういったのを含めまして、きちんとした対策をしておく必要があるんだと思います。

 もう一点は国会議員の定数の話、これはちょっと私ども自民党だけでという話もいかぬので、各党いろいろ御意見が違いますので、ここらのところはちょっと自由民主党一党でできる話じゃありませんので、ここのところは議会でいろいろお話をしていただかないかぬところかと思っております。

伴野委員 きょうも資料につけさせていただいたところではございますが、まずは平成二十四年六月十五日に三党で合意していただいて、それから、平成二十四年の十一月十四日、これは国民注視の中で党首討論が、当時、野田首相と安倍総裁、今の安倍総理でございますが、そのお話があった中で私が記憶しているのは、やはり三点あったと思うんです。

 一つは、先ほど申し上げた社会保障と税の一体改革に関する事柄。それから、これは法律が通りましたので済んでおりますけれども、赤字国債のお話。それから、今大臣がおっしゃった、身を切る、つまり、国会議員が国民の皆さん方にお願いする中で、定数削減も含めた選挙制度の抜本的な見直し。

 そうした中で客観的に見て、この後ちょっと消費税の延期のお話もさせていただきますが、消費税一〇%を延期をさせたということと、それから、十分な定数削減と衆議院の選挙制度の抜本的な見直しができていないのが事実だと私は思うんです。これは、当時のことといえ、やはり政治家として、今後どの党だけというわけではなく、実現に向けていかなければいけないな、そんなふうに思っている一人でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 ちょっとここからはとんとんとんと行きたいと思いますので、分けて考えていた質問をまとめていきたいと思います。お手元に資料で、「アベノミクスに対する評価」、それからこれは、自民党さんと公明党さんの「平成二十七年度税制改正の基本的考え方」というものと「日銀の金融政策に対する評価」ということで三つつけさせていただきましたが、これをそれぞれ見ながらお話しさせていただければと思います。

 アベノミクスの評価、これは、主要な新聞記事あるいは有識者の方が語っていらっしゃるということを私なりにまとめたものでございます。私の拙い知識の中で、評価それから批判も含めて、正直言いまして私は、どちらもそれぞれなのだろうなと。

 ですから、アベノミクスを全面否定するつもりはありません。株価も上がったところもありますし、円高も安く誘導されたところもあります。大企業の中で内部留保を最高にしたところもあります。大企業を中心にして、雇用は、その中身は別として、ふえてきているのも事実だと思います。そういう点については認める一方で、この右側に書いてある批判の部分もかなり事実なのではないかなと私は一方では思っているんです。

 ですからやはり、評価は評価として認めるものの、宰相たる者、真摯な批判に対しても、そのリスクヘッジとして、きちっと小さな声にも耳をかして、それに対して対応していくということが肝要ではないかと思うんです。私は、そうしたアベノミクスのある部分の効果については認めさせていただきたい一方で、こうした批判もちゃんと逆に認めるべきではないかな、そんなふうに思います。

 そしてさらに、後ほどその経緯も聞かせていただきたいと思いますが、これは結果論ですが、結果論ですが、消費税の一〇%引き上げを延期しなきゃいけない経済環境であることは間違いないわけでございまして、これはたしか二〇一四年の選挙に出られるときに、安倍総理が記者会見で明確に、今度延ばした期日には確実に、これは経済条項というものを考えずに確実にやるとおっしゃっていた。

 それに対して引き上げすることはできなかったという結果論として、アベノミクスが十分でなかったことは、これは認めざるを得ないのではないかと私は思いますが、このあたりはいかがですか。

麻生国務大臣 この資料の右側のところの部分というのは、伴野先生、これは間違いなく一見に値する大事なところなので、こういうのがないと民主主義とかいうものは成り立ちませんで、ここは、共産主義でもなきゃ全体主義でもない、こういうのが自由に出せるところがいいところだと思いますので、私どもとしてはこれは真摯に受けとめて伺わないかぬところだと、私どももそう思っております。

 やはり、経済政策としてアベノミクスの評価をいただいておりますけれども、確かに、経済で言えば、景気対策としては、企業の収益は上がっておりますし、賃金も上がっておりますし、失業率も下がっておりますから、そういった意味では大きく貢献したことは確かですが、その割に、可処分所得というか、いわゆる給料の使い方としては減っているんじゃないか。実入りというか使い前が減っておる、可処分所得は減っておるということではないかという御意見は、私は正しいと思います。

 私どもから見ますと、この分、少なくとも貯金は減っておりますから、ふえておりませんから、昔は六%ぐらいの貯金がありましたけれども、今はなかなかそういったわけにはいかないということになっておりますから、そういった意味では、家族の数がふえていますので、昔と違って、一概に単純に平均はできないんですけれども、そういった点も含めて考えないかぬところだとは思っておりますけれども、いずれにしても、そういったものを考えますと、やはり考えないかぬところとして、消費というものが、個人消費が意外と伸びなかったという点は、これは間違いない事実なんだと思うんです。

 そこのところを見ましたときに、給料は確かに上がっていますが、その他の部分はどうでしょうかといえば、例えば、円が安くなったという話はやたらよかったと新聞に書いてありますけれども、本当ですかという話は新聞にはどういうわけだか出ないんです。仮に、七十円だった一ドルが百五円とかなんとかになれば、それは一五〇%ということになりますから、一・五倍ということになれば、それは輸入物価がそれだけ一・五倍高くなるということですから、もちろんのこととして、石油が安くなったおかげで助かりましたけれども、あれがなかったら日本の経済というのはもっとしんどいものになっていたということは十分に予想できる話なのであって、やはり、円安だからよかったとか円安で株がどうたらとかいう話ばかりは、もういかにも一面しか見ていない、新聞の経済部のレベルはこの程度かといつもそう思って見るところです。

 両方必ずある話ですから、そういった意味では、輸入物価は間違いなく上がった。それが結果として、日本の場合は、原料等々輸入に関して多いところは、当然それが全部に影響しますので、そこのところはみんな波及効果が出てきて、消費者物価というか、そういったもののコストが上がるということになりました分だけはやはり大きな問題なのであって、これをどの程度にするかというのは、極めてこれは永遠の課題ですけれども、私どもとしてはこれは慎重に配慮していかないと、円が安ければいいなんという話はとてものめる話ではありませんので、しかるべきところがどこかというところが、最も注意しておかねばならぬ、今後の問題として一番大きなところかと思っております。

伴野委員 アベノミクスの功罪ということでさすがによく分析をされて、功のところは功のところとして、罪のところにしっかりと今後手を打っていただくようにお願いしたいと思います。

 そうした中で、ここもまた本音のお話をお聞かせいただきたいんですが、ここも本当に政治家麻生太郎と思わせていただいたところでございますが、ことしの夏、衆参同日かと言われたときに、その前に総理が一〇%引き上げを延期するという事柄が流れ出したときに、麻生副総理・大臣が、衆議院を解散すべきである、前回延期を決めたとき、一七年四月に引き上げると約束しましたよね、宰相になるかポピュリストになるかですよ、これは報道ベースですから、お二人のお話ですから私は知り得ませんが、このあたりは実際どんなお話がされて、どうだったのか、教えていただけませんか。

麻生国務大臣 これは伴野さん、もうちょっと時間がたって、私が死んだかくたばったぐらいのところでないとなかなか出てこないところだと思っておりますけれども、基本的には党内でいろいろ意見が分かれたんだと思っております。私は消費税を上げるべきと思っておりましたし、国際社会とかマーケットに対する責任もありましたし、いわゆる社会保障関係のもので、一〇%上げる前提でいろいろなものをやっておりましたので、予算関係から見ても、これを全部やろうと思ったら一〇%以外手がないと思っておりました。これをやるためには一〇%というのが非常に大きな要素だと思っておりました。私は上げる説でしたので、これをやらないということになった場合、それは景気にいい面と悪い面と両方出ますから、そういった意味では、少なくとも大きな決断ですから、これをなさると言うのであれば、やはり解散で信を問うということをされないといかがなものかというのが私の意見だったんですが、意見が分かれました。

 少なくともそういったことはない方向で事は進んでいて、今はここまで来ておりますけれども、これがよかったか悪かったか、これはちょっと今の段階ではなかなか言えないところで、これは歴史が判断されるところになるんだと思いますけれども、今の段階ではちょっと一概にこれがよかったか悪かったかというのは、これはさっきの紙と同じで、右と左と両方意見が分かれるところかなという気がしないでもありません。

 いずれにしても、今は景気が少なくとも上向いてきておりますので、この状況を維持していくということによって、二年半後に確実に一〇%に引き上げても大丈夫だという景気状況、経済情勢というものをつくり上げないかぬというのが私どもの気持ちなんですが、何となくお隣中国の数字なんかを見ていますと、いきなり六・七なんという話になっていますけれども、あの国の出す政府関係の資料ぐらい当てにならないものはない。これは国際社会の常識なんですけれども、それに基づいて私どももすんなりのむわけにはいかないんですが、なかなか数字の情勢としては難しいものがありますので、これがどう転んでくるのかが正直言ってさっぱり見えていない。まあ日本だけじゃない、世界じゅうが見えていないんですけれども、これが、いま一つ来年の全人代ぐらいまでのところでいろいろなことが起きるだろうと予想されますので、そういったものも考えながらこれは注意深く対応して、いかなることが起きても、少なくとも日本の場合は、金融機関の自己資本比率等々、安全性は極めて高い金融というものがつくり上げられておりますので、日本の場合はほかの国に比べれば影響は少ない、そう思っておりますけれども、それでも影響が出てくることは確かだと思いますので、いろいろなことを考えながらこれは対応していかないかぬところかなと思って、ブレグジットの話が出てきてみたり中国の話が出てきてみたり、先行きの見えないものがいっぱい出てきていますし、イギリスもアメリカも、不動産屋のおじさんがなるのかならないのかとえらい騒ぎになっていますけれども、なった場合の与える影響というのは、私どもにとってどっちの方がどうなるかという計算がわかるような人じゃないし、この人とのつき合いのある政治家は世界じゅうゼロですから、だから全くわからぬということは、イギリスへ行ってもアメリカへ行っても言うぐらいですから、やはり、どちらがどうなるかがわからぬ段階でうかつなことは言えません。

 私どもとしては、何になってもできるような対応をやろうとするとどうしても慎重に対応ができるように身構えておかないかぬということになっているところが、積極的にいったら違った場合のことを考えますので、そこのところをちょっと慎重に考えないかぬところかなというのが今一番頭の痛いところであります。

伴野委員 またまた本音も含めてお話しいただきました。ありがとうございます。

 ですから、今麻生副総理・大臣がおっしゃった本音は、多分官邸に乗り込まれたときと余り変わっていないのかな、そんなふうに思う次第でございまして、といいますのは、見通しがこれからわからないということだと思いますが、安倍総理が必ず一七年四月に引き上げるとおっしゃったときも、見通しという点においては不透明であったのではないかと思うんです。それは、三年後、五年後をなかなか見通せない世の中になってまいりましたので。

 そうすると、今のお話も総合的に考えると、麻生財務大臣も財務官僚の方も、この後控えている延期法案は本音の部分では余り通したくないのかななんというふうに勝手に推測したりなんかもしているわけでございますが、一つ言えることは、残念ですけれども、安倍総理が二〇一四年に選挙に打って出られるときにお約束されたことは、残念ながらその点において守られていないということは、これも事実ではないかな、そんなふうに思う次第でございます。

 これで、今後、消費税引き上げ再延期というお話が委員会等々で、これはあくまでもほかの委員会も含めて波静かであればということなのかもしれませんが、そうした中で、麻生財務大臣が一つこだわられたこともやはりあるのではないかな。

 一つは軽減税率の話、私は、やはり現場が大変だと思うんです、率直に。麻生大臣もおっしゃるのは、まず一つは財源の話、二つ目は分類の話。よく大臣は、イクラやキャビアのお話をされたり、クリームパンのお話をされたやに記憶していますけれども、まさにそうだと思います。なかなか線引きというのは難しい。それから、現場においての手間、インボイスということで、これはかなりの手間だと思います。だから、そういう現場を考えた上の中でも、麻生大臣もいろいろなお考えがあるのではないかと思います。

 一方で、財務官僚の方にお聞きしたら、やはりなかなかこの点が進んでいないという本音をおっしゃっていただいた官僚もいらっしゃいました。これは誰かというふうに突き詰めないでくださいね。そういうのが多分今の感覚だと私は思います。

 この軽減税率について、今、大臣のお考えをお聞かせいただけませんか。

麻生国務大臣 最初にこの話が出たときに、これはえらい面倒くさいよと言ったおかげで、その面倒くさいという言い方がけしからぬといって、前原さんじゃなかったけれども、いろいろな人にえらいその言葉尻をつかまえて言われたんだけれども、後でその方から、いやあ、あれは本当に面倒くさいんですねと言われたんですけれども、どうもその言葉だけが躍ったんです。

 これはインボイス含めて極めて手間暇かかる話なので、今、消費税を払っておられない方は、売上額でいけばどれくらいかというところの低いところも全部やっていただかないかぬことになるんですよというところが面倒くさいですよという話をやたら申し上げていたんですけれども、当時、公明党はやれやれやれやれというお話だったんですが、途中からこれは本当に面倒くさいという話になって、いろいろ紆余曲折ありました。これは正直なところありますけれども。

 私どもの一番大事なのは、さまざまな御意見に耳を傾けないかぬところなんですが、やはり一番肝心なことは、税制をゆがめるものがだめなんです。税制をゆがめることだけは絶対あってはならぬと思っていますので、ここの認識は伴野先生と一致しているんだと思っているんですが、とにかく、日々の生活の中で消費とか利活用の状況を見るとか、消費税の逆進性をきちんと緩和させておくとか、また、社会保障の財源である消費税への影響というような点などを含めて、これはどこで線引きするかというのが物すごく大事なところなんだと思って、今後、これは十分に詰めていかないかぬところだと思っております。

 加えて、もう一点が財源です。どこで引くかによって財源の額が違いますので。

 そういった意味では、私どもとしては、今後いろいろ詰めないかぬところがいっぱいあろうと思いますので、ぜひ御意見もいただきながら、私どもとしては、この点をどうやって詰めていくか、どうやって財源を獲得するかという点に関しましては、きっちり今後やらせていただきたいと思っております。

伴野委員 現場が混乱しないように、そしてまた、そこにいろいろな裁量がまた入っていかないように、先ほど、税制をゆがめないというそういうお話がございましたので、ぜひその方向でお願いをしたいかと思います。

 時間がだんだんやってまいりました。日銀のお話もアベノミクスとあわせてやりたかったんですが、こういう事柄も、やはり、評価されることと批判並びにリスクを指摘される方がいますので、このあたりはこの後前原先輩がしっかりとやっていただけると思いますので、この点はちょっと飛ばしていきたいと思います。

 最後に、所信の中で、大臣、金融行政のあり方についてこうおっしゃっています。「家計の、貯蓄から資産形成へ」とおっしゃっているわけでございますが、正直言って、私が地元やさまざまなところを回らせていただいているところでは、そうした実感は残念ながらありません。

 これは、統計的に調べてみても、家計貯蓄率も家計黒字率も決して上がっていない。どちらかというと下がっていく、右下がりの傾向があります。つまり、貯蓄率も、一カ月に、もらわれて必然的に使われて余る部分というのが残念ながらふえてはいないこの中で、さらに、金融商品に対して保有をしようとする、そういう希望を持っている国民の方が何と三割あるかないか。この現状について、どうやって貯蓄から資産形成へしていくのか。

 一つのヒントとして、これは今保険の世界で、子育てにきちっと使っていただけるなら保険料を半額にしようなんということを商品化しているところがあるというふうに聞いております。

 こういった大胆な工夫もこれからしていく中で、この貯蓄から資産形成へというのは、やるならそういう政策を打っていかなければいけないと思いますが、今の段階でどういう具体的な構想をお持ちか、教えてください。

麻生国務大臣 おっしゃるように、冒頭に申し上げましたように、昔、十万円あったら六千円貯金する、大体六%ぐらいの貯金というのがよく言われたときがありました。

 現実問題、今、一般の家計は、生活費を賄うということで、一般という切り方が難しいんですけれども、よく言われる一般という言葉を使わせていただければ、家計を賄うのに精いっぱいで、預金、貯金に金が回っていくだけの余裕がないということを前提にして金融行政をどうやって進めていくかということがあろうと思います。

 傍ら、私どもとして頭に入れておかないかぬのは、個人金融資産一千七百兆円という膨大な個人金融資産というのがあるんですが、そのうちの五〇%、六〇%が現預金だというわけです。八百七十兆を超える現預金と言うけれども、現預金って、今はもう、伴野さんも御存じのように、金利はもうなしだから。お金というのは、見るものじゃなくて、さわるものでもなくて、あれは使うものですから、眺めておいてもどうしようもないでしょうが、だからこれは使わにゃと言うんですけれども、使うものがないか、使いたくてもだまされるかもしらぬとか、証券にとか言ってやられたとか、皆さんどなたに聞いても同じようなことを言われますので、多分そうなので、私どもとしては、確実にこういったようなものが回っていくようなことをしないと、例えば郵便局で、今、郵便貯金の預貯金の枠をさらにふやせという話は、地方の多分特定郵便局長か何かに聞かれておられると思いますけれども、よくあるんですよ。しかし、現実問題、集めた金を何に使うんですと言うと、使う道がないから国債というようなことになる。

 そういった意味では、個人金融資産のいわゆる一千七百兆円という金が何の意味もなくじっとしているという状況は、これはいかがなものかということでありますので、その金が投資に回っていく、そういったようなことに回っていく方法を考えないかぬと思って、意識を持っていただかぬとどうにもなりません。

 株をやっていた、怪しいとか、もうとにかく投資といったら危険だとか、投機と投資の区別が全然つかないので、もうかったら投資で、損したら投機だとか、もう物すごくいいかげんな話ばかりが世の中に出回っています。

 そういった意味では、きちんとした話をさせていただかないといかぬなという感じがあるんですが、これは伴野さん、多分時間がかかりますよ。今まで貯金というものは絶対の善ですから。それに対して投資というのは、何となく眉に唾つけてみないかぬような話ばかりが多かったので、そこらのところの意識が変わっていくのは随分時間がかかるんだと思います。

 少なくとも私どもとしては、少額ながらというのでNISAとかいろいろなものをやらせていただいておりますけれども、少しずつそういったようなもので意識がそちらの方に回っていくということをしないと、やはり今の場合は、マネーサプライという部分が全くふえませんで、マネタリーベースだけがわあっとふえて、マネーサプライはずっと二%とか三%という額になっていますので、これを何とかしないと、日本の場合のいわゆる生産性の設備のためとか、今後とも経済成長に資することがないと思いますので、ぜひこういったお金が地方のいろいろな企業に、いっぱい実は芽があるんだと思いますけれども、そういった芽のところに全然回っていっていないんです、実際問題として。

 そこのところが、今度、私ども金融庁をしてそういったところへ金を回すような指導をやるべきというので、とにかく問題を起こしたところを処分ばかりやっているんじゃなくて、育成する方向で考えないとどうにもだめという話をこの四年間申し上げているんですけれども、ぜひそういった方向でやっていかせていただきたいというのが正直な実感です。

伴野委員 有意義な議論をさせていただきました。ありがとうございました。

 時間となりました。失礼します。

御法川委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。

 まず、金融政策につきまして、黒田日銀総裁に主にお話をお伺いしたいというふうに思います。

 まず、黒田総裁、先般の予算委員会では、質問通告してお越しをいただきながら質問をすることがありませんで、申しわけありませんでした。きょうはたっぷりお答えをいただこうというふうに思っております。

 九月二十一日から日銀が導入されました長短金利操作つき量的・質的金融緩和、きょうが十月二十一日ですからちょうど一カ月たちまして、わかりにくいという意見がかなり多いわけでありまして、ぜひこの場を説明の場に使っていただきたいというふうに思いますので、まず、ちょっと技術的なところから幾つかお話を伺いたいというふうに思います。

 この長期金利操作、イールドカーブ・コントロールというのは、経済、物価、金融情勢を踏まえて二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するために最も適切と考えられるイールドカーブ形成を促す、こうされているわけでありますが、まず一点ですけれども、最も適切と考えられるイールドカーブというのは絶対的なものなのか、それとも状況によって変わるものなのか、どちらですか。

黒田参考人 これはまさに、経済、物価、金融情勢に応じて変わっていくものであるというふうに考えております。

 したがいまして、年に八回ございます金融政策決定会合におきまして、毎回、経済、物価、そして金融情勢を詳しく検討いたしまして、次回の金融政策決定会合までの間、そのときのイールドカーブのままでいいのか、さらに下げるべきか、あるいは上げるべきかということも含めて議論していくということだろうと思います。

 ただ、現時点で、九月に決定した時点と経済、物価、金融情勢が大きく変わってはおりませんので、すぐに何か変更があるというふうに考えることは難しいと思いますけれども、いずれにせよ、委員御指摘のとおり、経済、物価、金融情勢に応じて適切なイールドカーブというのが変わっていくということだと思います。

前原委員 総裁、私が用意させていただいた資料をごらんいただきたいんですが、一番ですね。

 色で区分けをしてあるのでありますが、黒田総裁が着任をされて、いわゆるバズーカと言われるものをされる前が赤でありまして、それ以降、累次追加緩和というものをされてきているわけでありまして、直近がピンクなんですね。このピンクの今のイールドカーブというのは、簡潔にお願いしたいんですが、これは最も適切と考えられるイールドカーブになっているかどうか、この点についてお答えいただけますか。

黒田参考人 前回の決定会合の際、適切なイールドカーブはどんなものかということについて議論いたしましたが、現状、このような形でおおむね適正だろうということでありました。

 ただ、委員の中にはいろいろな御意見がありましたので、もう少しイールドカーブは立ってもいいとかいろいろな議論があったことは事実ですけれども、前回決定の際にはそのときのイールドカーブでおおむね適切であろうということで、短期の政策金利マイナス〇・一%、十年債の操作目標をゼロ%程度というふうに決めたわけでございます。

前原委員 あと、金融関係者の中で幾つか意見がある中で確認をさせていただきたいのは、今回の金融市場調節の方針として、従来のマネタリーベース増加目標にかえて、短期政策金利と長期金利操作目標を決定する、こういうこととされていて、短期政策金利はマイナス〇・一%、これは据え置きですね。それから、いわゆる量から金利へということで、長期金利操作目標が、十年物国債金利でおおむね現状程度、ゼロ程度ということ、それから、加えて、買い入れ額は金利操作方針を実現するように運営、おおむね現状程度の買いオペレーション、保有残高の増加額年間約八十兆円をめど、そして、指し値オペなど新型オペレーションを導入するということとされています。

 事務方からもう私は伺っているんですが、改めて、議事録に残すためにお伺いしたいんですけれども、この長期金利操作目標というのはレンジは設けないんですか。

 つまり、今だったらおおむね現状程度、ゼロ程度から上下どの程度外れれば調整するという目安というのが私の申し上げるレンジなんですけれども、そういうものは設けないのか。設けないと聞いているんですけれども、なぜ設けないのか。そして、調整するときに、では、何を目安にされるのか。その点をお答えいただけますか。

黒田参考人 この点も、十分議論の余地のあるところだと思います。

 ただ、短期金利の場合は、銀行の、日銀における当座預金の一部にマイナス〇・一%をつけるということですが、これはもう完璧に日本銀行としてコントロールできるわけですけれども、十年国債の金利をゼロ%程度という操作目標を決めた場合でも、完璧にぴったりとゼロ%にするということはなかなか難しいわけです。

 ただ、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の経験から、マイナス金利と大量の国債買い入れという組み合わせによって相当程度コントロールできるということはわかっていますので、それを踏まえてやるということですが、具体的に何ベーシスポイント上下に幅を持たせるとかそういうことは、為替レートの類推でいいますと、一種の固定相場制で、その上下にかつてはプラスマイナス一%の幅を設けるということになっていましたけれども、そういうふうに、十年債の金利についてきちっとした幅をつくるということは、やはり日々金融情勢が動きますので、必ずしも適切でないし、また、経済全体にとって一番好ましいイールドカーブを考えるときに、そう細かく特定するということは現実的でないだろうということで、具体的なレンジのようなことは設けておりません。

 ただ、当然のことながら、毎回の金融政策決定会合において、それまでの十年債の金利の動きを勘案して、さらにどのような長短金利操作つき量的・質的金融緩和が適当かということで議論するということはあり得ると思いますけれども、レンジを設けるということは恐らく必要でないし、必ずしも適切でないだろうというふうに考えております。

前原委員 再度確認ですけれども、ということは、政策決定会合において、今のいわゆる目安と言われるものが適切かどうかということをその都度判断していく、こういう御答弁だったという理解でよろしいですか。

黒田参考人 そのとおりであります。

 実は、これまでの量的・質的金融緩和の際に、八十兆円国債を毎年買い入れるということを述べておりますけれども、これも、八十兆円ぴったしと買い入れるということではなくて、やはり一定の幅を持って、八十兆円程度ということでありまして、そこはレンジを特定することなく八十兆円程度ということでやっていたわけですけれども、今回はイールドカーブ・コントロールにいたしましたので、金利について、十年債について現状ゼロ%程度ということにしたわけでございます。

前原委員 後で物価の話をさせていただきたいと思いますけれども、物価上昇が思いどおりにいっていないわけですよね、正直申し上げて。そうなれば、言ってみれば、何らかの追加緩和というのをやらなきゃいけないということになろうかと思います。

 二つですよね、いわゆる短期政策金利、そして長期金利操作目標、こういうものを組み合わせる中で、先ほどおっしゃった最も適切なイールドカーブにしていく、こういうことで、それで物価上昇というものを、後でその道筋についてはお伺いしますけれども、そういうものをやっていくということなんですけれども、今、思いどおりになっていないわけです。そうなれば、追加緩和として長期金利操作目標を下げることもあるという理解でよろしいですか。

黒田参考人 そのとおりであります。

前原委員 けさ、パソコンで十年物の国債、長期金利の金利を見ますとマイナス〇・〇六三でございまして、九月の二十一日にばっと上がって、それからずっとまたゼロ、沈み込んでいる、こういう状況でありますし、物価の基調は非常に弱い基調になってきているんですね、これは後で申し上げますが。

 ということになると、先ほども言われたように、長期金利操作目標を下げることも追加緩和としてあるということなんですが、プラス、要は、国債購入の減額をしていかなければもっともっと金利が下がってしまうということになると思うんですけれども、現状のトレンドの中では、国債購入、つまりは八十兆円のベースを拡大するということについての、減額傾向にあると私は思うんですけれども、そういう認識でよろしいですか。

黒田参考人 ここは、マネタリーベース・コントロールから長短金利操作つきの量的・質的金融緩和の中でいわゆるイールドカーブ・コントロールにいたしましたので、当然のことながら、八十兆円の国債買い入れ額というのはめどにすぎないわけでして、それを上回ることもありますし、下回ることもあるということでありまして、仮に、政策委員会が決めております十年債の操作目標ゼロ%程度をかなり下回るということになれば、当然、国債の買い入れ額を減らすということもあり得ると思います。

 ただ、今のところは、比較的予想したとおりのペースで進んでおりますので、直ちに八十兆円から大きく下がるということは予期しておりませんけれども、委員御指摘のような場合があれば、当然、実際の国債買い入れ額というのは年間八十兆円よりも下がるという可能性はあります。

前原委員 総裁、可能性の議論をしているんじゃないんですね。つまり、今のトレンドの話をしているわけです。それは、総裁としては慎重に慎重に、市場との関係で上回ることもあれば下回ることもあるというような御答弁をされるのはわかりますけれども、先ほど申し上げたように、ゼロ近辺でいわゆる長期金利操作目標を置く、しかし、これは今ゼロを下回る状況ですね。そして、量的により多く買うともっと下回りますよね。そうすると政策目標と真逆になるので、今のトレンドは減額の方向じゃないですか。だから、それを私は今申し上げたわけです。

 ここは、大事なのは、私は実は今回の九月二十一日の政策変更は一方で評価して、一方で、評価をしていないと言うと言い過ぎかもしれませんが、リップサービスのところだけあるなというのが私の評価なんです。

 前半の方はうまくやられたなと思っているわけです。つまり、量的緩和から金利目標に変えたということは、これはIMFでも、八十兆円のマネタリーベースを拡大するということを続けていたら二〇一七年―二〇一八年には限界に来ると言われていたわけです。それを、いわゆる短期集中型から長期戦に切りかえるという形の中で、マネタリーベースというものに拘泥されない形にうまくシフトしたと私は思っているわけです。そして、そういうふうに見立てている方々も多いわけです。それを批判的に見る人も肯定的に見る人もいますけれども、私は、持続可能性を高めたと思っているんですけれども、その理解でよろしいですか。

黒田参考人 毎年八十兆円のペースで国債の買い入れを行ってきておりますので、既に国債発行残高の三分の一程度を日本銀行が所有しております。市場にはまだ三分の二残っているわけでありますので、八十兆円の買い入れ自体がすぐに限界に達するということはないと思っておりますが、他方で、どんどん買い入れていきますと、確かに、市場の国債残高が減ってまいりますので、ある意味でいうと、一単位当たりの国債買い入れによる金利の下押し圧力というのは、むしろ強まっていく可能性はあるわけですね。

 ですから、そういう意味で、八十兆円をずっと買い続けることは、物理的にはできるんですけれども、必ずしもそういうことをしなくてもよい、十分低い金利を、まさに経済に最も適切なイールドカーブを実現できるということはあり得るとは思うんです。

 だから、その意味では、将来的に、八十兆円も買わなくてもよいということになる可能性が高いと思うんですが、ただ、今の時点ですぐにそういうふうになるかと言われると、実際問題として、新しい政策を打ち出して以来、十年債の国債はほぼゼロ近辺で動いておりまして、その一方で、日本銀行は八十兆円ペースで国債を買い入れておりますので、何か、直ちに八十兆円の買い入れが縮小するというか、どんどん縮小していかないと、ゼロ%を保てなくて、どんどん大きくマイナスになるという見通しは、今のところ持っておりません。

前原委員 私の質問は、長期戦に備えるという、つまりは、シフトをしたんだという私の理解は、総裁から見て正しいですか、どうですか。

黒田参考人 今申し上げた意味で、経済、物価、さらには金融情勢に応じて最も適切な金融緩和をするということで、金融政策の柔軟性が高まるとともに、持続可能性も高まったというふうに考えております。

前原委員 私は、その意味においては、僣越ながら評価をしているわけです。

 ただ、わかりにくいのは、このオーバーシュート型コミットメントに代表されるように、今また総裁がお答えをされたように、八十兆円というものにこだわるような発信をし続けないといけないというところが残っている。

 オーバーシュート型コミットメントというのは、二%を安定的に超えるまではマネタリーベースの拡大方針を継続すると。二年で二%をするとおっしゃっていたのに、これは今マイナスですよ、三年半たって、コアCPIは。ですよね。こんなこと書いたって、誰がこんなの実現するんだろう、逆に、何でこんなことを書いてあるんだろう、まさにリップサービス以外の何物でもないんじゃないかというわかりにくさが出てきているというふうに思いますし、そうしないと納得しない方々が政策決定会合のメンバーの中にもおられるのかもしれません。

 そういうことかもしれませんが、ただ、先ほどから申し上げているように、二%は達成していない、そして、今は自然利子率も低いし潜在成長率も低い中で、また、先ほど総裁がおっしゃったように、発行している国債の三分の一程度、四百兆ぐらいをもう日銀が買っているということの中で極めて金利は安定しているわけですね。安定しているということの中で、なかなかこれが上がるということはないだろうということなんですけれども。

 このオーバーシュート型コミットメントに書いてある、安定的に二%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するということと、今申し上げたように、私は、これから八十兆円というものにはこだわらない方がいいと思うんです。

 先ほどおっしゃったように、持続可能性を高めるわけですから、ここについては余りむしろ注目しないでね、注目してもらいたいのはむしろ金利なんですよという転換を図るのがこの政策の目玉だと私は思っていて、そういう意味では、うまい変更をされたと私は思っているんです。

 このわかりにくさというのは、達成もしないようなことについてコミットメントをしているために、ずっと拡大方針を継続すると書いてあるんですけれども、しかし他方で、先ほど申し上げたように、これから国債購入が減額されていく可能性は今のトレンドでは大きいわけですよ。その場合に、日銀が持っている国債の満期自然償還も含めて、マネタリーベースそのものが減少し始めるということはないのかどうなのか。

 つまりは、金利をちゃんと安定させて、安定させながら実はマネタリーベースが減少するということも可能性としてはあるのに、このオーバーシュート型コミットメントというところには「マネタリーベースの拡大方針を継続する」と書いてあれば、まさに日銀の考え方の中で相反するようなところが来るのではないかというふうに私は思うんですが、いかがですか。

黒田参考人 今回の新しい金融緩和の枠組みの要素としては二つありまして、一つはイールドカーブ・コントロールという長短金利操作でありまして、もう一つはインフレーションオーバーシュート型のコミットメントであります。

 このインフレターゲットというか物価安定目標に対するコミットメントの仕方につきましては、国際的にもいろいろ議論があるところであります。現在、かなり多くの学者、それから一部の中央銀行の方が言っておられるのは、実は欧米もみんな二%に達していないんですけれども、むしろインフレ目標を三%とか四%に引き上げるべきだということを言っているわけですね。

 私どもは、二%の物価安定目標というのはしっかり堅持して、それをできるだけ早く実現するということも堅持しつつ、ただ、これまで予想物価上昇率がどうしても過去の物価上昇率に引きずられるという、いわゆるアダプティブというか、適合的な期待形成が強いものですから、それを少しでも和らげて、フォワードルッキングな形で予想物価上昇率が緩やかに上昇していくということを期待して今回のようなオーバーシュート型のコミットメントをしたわけであります。

 これについては、委員御指摘のとおり、その過程で当然マネタリーベースが拡大していくという方針を堅持するということは言っているわけですけれども、八十兆円というのは御承知のようにネットの話でありますので、もともと、仮に二十兆円償還があればグロスで百兆円買うという話ですので、八十兆円のネットが仮に七十兆円になっても六十兆円になっても、それは依然としてマネタリーベースが七十兆円、六十兆円ふえていくということですので、私どもの予想では、二%の物価安定目標を一旦超えて、上から二%の目標にソフトランドしていくという過程を想定しても、恐らくマネタリーベースは拡大し続けるであろうと。

 ただ、そのペースは年間八十兆円よりもだんだん低下していく可能性はあると思いますけれども、委員御指摘の点も含めていろいろ議論した上で、今回のようなオーバーシュート型コミットメントという形で新しい枠組みを構築したわけでございます。

前原委員 七ページ、七のグラフをごらんいただきたいんです。

 これが今おっしゃった、つまり、ずっとおっしゃっているのは期待に働きかけるということで、マネタリーベースを拡大していくということが期待に働きかけるんだということをずっとおっしゃっていて、確かに、前半については、サプライズ、それからアメリカの景気の好転、円安、こういうものの中で輸入物価も上がっていくだろうということの中で、緑の、インフレ予想は上がっていった、こういうことでありますけれども、それ以降、だんだんだんだん下がっていっているわけですね。インフレ予想というのは下がっていっている。ただ、実質金利を下げると一貫して黒田総裁はおっしゃっておりますので、名目金利、イールドカーブで下げる、そしてインフレ予想率は下がっているけれども、名目金利も下がっているので実質金利は横ばいで、ある程度下支えをしているということについては変わっていないわけでありますけれども。

 では、そのオーバーシュート型コミットメントということを言っていく中で、インフレ予想、あるいは八ページのグラフで見ているようなBEI、ブレーク・イーブン・インフレ率というものが本当にこれだけで上がっていくのかというと、そんなに甘いものではないというふうに思っています。

 ただ、今の御答弁では、今の日銀総裁、あるいは政策決定会合の中での議論としては、今からちょっとお話ししますけれども、二%の物価上昇というものを安定的に超えるまではマネタリーベースの拡大というものは続くだろう、縮小することはないだろう、こういう見立てをされているということだったというふうに思います。

 では、その大事なポイントですけれども、ちょっと意地悪な質問をします。

 ことしの二月三日に都内で講演をされて、一月二十九日にマイナス金利つき量的・質的緩和を導入されて、このことについて、中央銀行の歴史の中で恐らく最も強力な枠組みであるということをおっしゃっているんですね。

 では、今回の政策決定で最も強力なのがどうなったのか、その点について御答弁いただけますか。

黒田参考人 委員が配付されたイールドカーブの推移をごらんになっていただきますとわかりますとおり、QQE、いわゆる量的・質的金融緩和を導入した後、名目金利、イールドカーブは下がったわけですけれども、さらにはそれを拡大した後も下がったわけですが、このマイナス金利を導入したところ、マイナス金利のところというのは、御承知のように、日本銀行における当座預金に従来プラス〇・一%の金利をつけていたのを、ごく一部ですけれども、マイナス〇・一%、二〇ベーシス下げたわけですね。ですから、一つのあり得る予想としては、平行移動的に二〇ベーシス下がるというふうに考えられたかもしれませんが、実際は、このグラフにありますとおり、長期、超長期のところがむしろ大きく下がったわけであります。

 そういう意味で、マイナス金利つき量的・質的金融緩和、マイナス金利と量的・質的金融緩和の組み合わせというのは、相当強力な名目金利の引き下げ効果があるということはわかったわけであります。その意味では、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和というのは極めて金融政策として強力であるということは立証されたと思うんですが、他方で、この超長期のところがこれほど下がってフラット化するということが実体経済にそれほど大きなプラスがあるかと。

 他方で、保険会社や年金等にかなりマイナスの影響が出るということになってきますと、極めて強力な枠組みであることは事実なんですけれども、他方で、イールドカーブを見るとややフラット化し過ぎたということも事実だったものですから、それを考慮して、まさに総括的検証の中で、量的・質的金融緩和の効果、影響とそれからマイナス金利の効果、影響を十分検討した上で、今回新たにイールドカーブ・コントロールとオーバーシュート型コミットメントの組み合わせの新しい金融緩和の枠組みを決定したということでございます。

前原委員 私が伺いたかったのは、私も、このマイナス金利つき量的・質的緩和というものについては、そのときは強力だと思ったわけです。つまりどういう意味かというと、八十兆円、マネタリーベースを、まさに先ほど総裁がおっしゃったように、ネットで拡大し続けるということのコミットメントはやり続けながら、マイナス金利も一部導入すると。そして、マイナス金利については、そのときはかなり下げるということも含めて、幾らでも、幾らでもとは言いませんけれども下げられますよということの中で、最強の枠組みであるということについてはある程度説得力はあったかなというふうに思うわけであります。

 しかし、マイナス金利を一部導入したことによって、金融機関の経営が悪くなった、株価が下がった、あるいは非常にそのことについて批判も出ている。そしてそれが、まさに金融機関の与信能力というものにもかかわってきて、経済に悪影響を及ぼすんじゃないかというふうに言われてきているということの前提もありますし、そして同時に、今回の政策決定変更で八十兆円にはこだわらないということになったわけですから、そういうふうにおいては、短期集中でぎゅっとやるような最強の仕組みではなくなったと私は思っているわけですね。

 これが最強の仕組みでなくなったことの答弁を引き出すことが、何か、私は質問の勝利だと全く思わないんですが、ただ、最強とおっしゃったので、最強ではなくなったという意識は持っておられる。だから、先ほど私が申し上げた短期決戦から持続可能性に変えた、その意味において、この最強の意味も質的に変わったんだというふうに言われた方がいいと私は思うんですが、いかがですか。

黒田参考人 私自身、委員の考え方はよく理解できるわけであります。ただ、一月に導入いたしましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和が極めて強力な緩和の枠組みであったということはやはり事実であろうと思っております。

 そのもとで、名目金利、イールドカーブは大幅に低下し、フラット化したわけですが、御指摘のような金融システムに対する影響というものもわかってきたわけでありまして、総括的な検証を踏まえて新しい枠組みにした。その新しい枠組みは、より柔軟であり、持続性があるということであろうと思っております。

前原委員 もう一度図六を見ていただきたいんですけれども、二年で二%というものがだんだん、何回か先送りされてきて、国会においては二〇一七年中に消費者物価上昇率を二%にとおっしゃっていたと思うんですが、ブルームバーグのインタビューで二〇一八年にずれ込むことを示唆されたようでありますけれども、されていませんか、読みましたけれどもね、記事を。

 これは、真意はどうなんですか。二〇一七年中にちゃんと二%を実現するんですか、それともブルームバーグだけの特別な発言だったんですか。どちらですか。

黒田参考人 御案内のとおり、毎回、展望レポートにおいて見通しを、実質GDPの伸び率とそれからコアの物価上昇率の見通しを示しております。

 最新の展望レポートでは一七年度中というふうになっておりますので、それが現時点での政策委員会としての見解であり、実は、今月末の金融政策決定会合において新しい展望レポートを議論することになっております。これは、従来は年二回でしたけれども、年四回展望レポートを出すということになっておりますので、これから政策委員の方々といろいろ議論していくということであります。

 ただ、IMFの見通しであるとかOECDの見通しであるとか、それから政府の方々のお話とか、それらを見ておりまして、私自身として、来年度の成長率は恐らくことしよりも上昇するだろうと。新興国を中心に世界経済の見通しも少し上向いております。それから、政府がかなり大規模な財政刺激策を打ち出して、補正予算も国会で承認をされたということでありますので、来年の成長率はことしよりも加速するということは確かであります。

 そういった面では、物価の方にはプラスにきくわけですけれども、足元で、今年度の半分は既に過ぎているわけですけれども、コアの物価上昇率が小幅ですけれどもマイナスに陥っているということを考えますと、二〇一七年度中というような見通しになるかどうかということについては、修正もあり得るというふうに思っております。

 ただ、これはあくまでも、いろいろな方々の見通しを踏まえて私が現時点で個人的に考えていることでありまして、あくまでも日本銀行の政策委員会としては、最新の展望レポートでは二〇一七年度中、それがどういうふうに、成長率も物価見通しもどうなるかというのは、月末から来月初にかけての金融政策決定会合で十分議論して決められるということであります。

前原委員 展望レポートを出されるということで、今までちょっと口汚く願望レポートだというふうに言ってましたけれども、今度の展望レポートはまた先送りを示唆されたような、願望よりも何か悲観レポートのような感じになるような、ちょっと弱気の答弁だったなというふうに私は思っております。

 私は、先ほど、持続可能性を高められたということでよかったということを申し上げて、と同時に、やはり金融政策が前面に出過ぎるのはよくない、別に前面に出ておられるつもりはないのかもしれませんが、やはり、金融一本足打法という形で金融政策に過度に頼り過ぎているというのは、これは間違いないと思うんですね。

 それで、ちょっと時間がなくなってきたのであと一問だけにしますけれども、私はやはり、例えばこれを見ていただいて、二ページをごらんください。金利が下がったら、貸し出しがふえるだろう、設備投資がふえるだろう、そして耐久消費財の消費がふえるだろうといって、ですけれども、法人向け貸出残高というのは、三年半たってこれだけしかふえていないわけですよ。伸びていないわけですよ。

 そして、三ページに行っていただくと、輸出ですよ、左上は金額、右下は数量ですけれども、これだけ円安になって、今また円高に振れてきていますけれども、輸出が伸びていない、こういうようなこと。

 それから、四ページを見ていただくと、やはり人件費なんですよ。つまりは、株価も高くなったし、企業はもうけたんです、確実に。経常利益はふえた。円高で若干また経常利益は下がり部分はありますけれども、しかし内部留保はどんどん積み上がっていって、その割には設備投資はふえていない。人件費はふえてきていない。

 だからこそ、例えば五ページを見ていただくと、名目賃金、実質賃金というものが低迷している、GDPの六割が消費ですから。

 だから、こういったところがあるわけでして、金融政策だけで何か全てを魔法のつえのように解決するというのは無理なんですよね。

 それで、一つ、最後、黒田総裁に伺っておきたいのは、これだけ金利を下げて経済をよくしようとしている中で、事もあろうに、財政規律を緩めるようなことが起き始めているというふうに私は思うわけです。

 例えば、この第二次安倍政権の中で補正予算、初めて建設国債の発行ですよ。そして、後で質問しますけれども、リニアの問題だって、それは大阪まで全部延伸するということはあるかもしれないけれども、三兆円の財投を発行するということで、これは黒田総裁のまさに求めたことですか。低金利だからといって建設国債を発行する、あるいは、財投債を発行してインフラをやるというのは黒田総裁が求めたことですか。違うでしょう。実体経済をよくするということが日銀としての大きな目的だったんじゃないですか。一言お願いします。

黒田参考人 私どもの金融緩和政策は、もとより、経済を回復して、そして二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するということであります。

 そのために、累次の金融緩和政策によって名目金利を引き下げ、また、予想物価上昇率を引き上げることによって実質金利を引き下げて、それが経済に対してプラスの影響をもたらすということを期待していたわけで、私どもも、それがかなりの効果を持ったということは自信を持って言えると思いますが、これは総括的検証でもそう言っていますけれども、ただ、御指摘のように、例えば企業収益が大幅に増加し、失業率が三%、足元で三・一%ですけれども、ほとんど完全雇用と言われるもとで賃金が上昇はしているわけですけれども、それらから予想されるものに比べますと賃金の上昇がやや鈍いということは事実でありまして、その背景に労働市場の特殊性があるのかということも十分考えていかないといけないと思います。

 財政につきましては、これは委員に申し上げるまでもなく、あくまでも政府と国会によって決定されるものでありまして、日本銀行としては、常日ごろから申し上げているのは、二〇二〇年にプライマリーバランスを回復するという政府の財政健全化目標というのはしっかり達成してくださいねということは申し上げていますが、具体的な財政政策につきましては、あくまでも、これは政府及び国会で決定されるものというふうに理解をしております。

前原委員 ただ、日銀と政府の間で協定を結んでいるわけですから、そこはしっかり守ってくれということはもっと強く言わないといけないということは私は申し上げておきたいと思います。

 根本国土交通大臣政務官、お越しをいただいておりまして、ちょっと時間もなくて恐縮なんですが、一点だけ、では質問させていただきたいと思うんです。

 来年、国鉄民営化、分割・民営化三十年です。それで、きょうの話にもかかわるんですけれども、いわゆる分割をして、三島、それから東、東海、西、それから貨物という形で七つの会社に分割をして、そして三島についてはなかなか鉄道事業だけでは経営は難しいだろうということで経営安定化基金というのをつくって、そのときの予想利回りというのは七・三%だったわけです。それが今、こういう状況で非常に低い状況になっているということと、まあ、人口減少も含めてなんですけれども。

 端的に一つだけお伺いしたいのは、特に今私が心配しているのはJR北海道なんです。ここについては、今回、台風の被害にも何度も見舞われて、そしてまた、不通になっている日高本線とかございますよね。しかし、地元の方の、特に御高齢者あるいは通学の方々の貴重な足であることに変わりないわけでありまして、やはりこういったものはしっかりと維持をしていかなくてはいけないというふうに思っているわけであります。

 国土交通省として、運用利回りが下がったということもありますけれども、やはり、ほかの企業努力、例えば東なんかにしても、上場しているところにしても、駅ナカビジネスということで鉄道事業以外でしっかりともうけて、そして全体で内部補助という形をしっかりやっているという形で、何とかトータルで経営努力をしているというのがあって、やはり、北海道は鉄道事業だけでは絶対無理だと思うんですね。

 そういう意味では、政務官に御答弁いただきたいのは、JR北海道はこういう鉄道外事業においてもうかることについてはしっかりやる、それについては国土交通省を含めて政府でしっかり応援をするという形をとるべきだと私は思うんですけれども、いかがですか。

根本大臣政務官 今委員からありましたように、国鉄改革から約三十年が経過する中で、平成十八年までにJR本州三社が完全民営化して、来週二十五日にはJR九州が上場を予定するなど、国鉄改革の所期の目的を果たしつつある一方で、今ありましたJR北海道、さらにはJR四国及びJR貨物については、いまだ完全民営化のめどが立っていない状況であります。

 特にJR北海道については、厳しい経営状況にあることから、国としても、経営安定基金の実質的な積み増しや設備投資に対する助成や無利子貸し付けなどの支援措置を講じてきているところであります。

 JR北海道においても、これまで、駅ビル、ホテル、キヨスクなど関連事業による営業収入の拡大を初めとしてさまざまな経営努力に努めているものと承知をしていますが、完全民営化の前提となる安定的な経営基盤の確立が図られるよう、引き続きこうした経営努力に努めていただきたいと考えているところであります。

前原委員 ありがとうございました。終わります。

御法川委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 久しぶりに国会の質問に立たせていただきます。また、今国会も財務金融委員としてお世話になりますので、委員長を初め皆様方、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問をさせていただきたいというふうに思いますが、ちょっと風邪ぎみでございまして、鼻水等、若干お聞き苦しい点は御容赦をいただきたいというふうに思います。

 また、昨日ちょっと質問通告させていただいたんですが、国会の情勢もこれありで、追加でちょっと質問したいことも出てきたので、それは質疑通告なしになってしまいますけれども、できる範囲でお答えいただけたら幸いでございます。

 それでは、まず大臣の所信につきましての質問になりますけれども、あわせて、きょうは日銀総裁にもお越しをいただいておりますので、質問させていただきたいというふうに思いますが、先ほどの委員とのやりとりでも、総裁から、来年の世界情勢につきましては、少し強い観測をお持ちなのかなということをニュアンスとして感じた次第であります。

 そこで、内外の情勢というところから私入りたいなというふうに思っておりますけれども、まずは、アメリカの経済につきましてちょっとどういう認識をお持ちなのか。もちろん、政策決定会合等で議論されているというふうに思います。その後の状況も踏まえてこの国会では御答弁いただきたいというふうに思いますし、あわせて、ちょっと大臣にも、総裁から御答弁いただいた際に気になった点は聞かせていただきたいというふうに思っております。

 まずアメリカの経済でありますけれども、これは、いろいろな資料がありますし、いろいろな角度から分析されているというふうに思うんですけれども、例えば最近の状況でいきますと、法人税収は、これは日本の方はふえていますけれども、アメリカの方は前年比マイナスにがくっと落ち込んできているわけであります。賃金はその割に安定的に推移をしておりまして、労働分配率が高まってきているという側面も出ておりまして、これは、企業収益に対する圧迫という見方が成り立つというふうに思うんです。

 そんな中で利上げがどうなるかという観測が出ているわけですけれども、まずは総裁にお聞きしたいと思いますけれども、今の現下のアメリカの経済の状況をどう評価されているのか、そして、利上げについての観測も含めて、総裁としてどうお考えなのかということをお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 米国経済につきましては、雇用が拡大するもとで家計支出に支えられて回復傾向にあるというのが、端的に言って米国経済の現状であると思います。

 例えば、非農業部門の雇用者数が直近の三カ月平均で十九万人以上増加しておりますし、失業率が五%まで低下しておるということで、御指摘のように、雇用・所得環境は着実に改善して、家計の所得もふえ、家計の支出もふえているということであります。

 他方で、これも御指摘のことかと思いますけれども、鉱工業部門とか外需の面では力強さを欠いておりまして、企業収益自体は非常に高いレベルにありますけれども、やはり、鉱工業部門とか外需の面で力強さを欠くということからか、設備投資がそれほど強くないということであります。

 今後の見通しとしましては、現在のような緩和的な金融環境のもとで、堅調な家計支出を起点として、民需を中心に成長が続くというふうに考えられております。これはFRBもそう言っておりますし、国際機関であるIMFやOECDも同様な見方をしております。

 なお、FRBの金融政策運営自体につきましては、私から具体的にコメントするということは差し控えたいと思いますが、FRBは、米国の経済、物価動向、あるいは世界経済金融情勢を見きわめながら適切に運営されていくものというふうに考えております。

鷲尾委員 日本と大分経済の構造が異なってきているなと思いますが、きょうはちょっと資料も準備させていただいたんですけれども、私にしては珍しく、しかもカラーの資料を準備させていただきましたので、ごらんになっていただきたいと思います。

 これはスライドの一ページ目と言うんですか、表紙の次のページなんですけれども、ちょっと表題を削ってしまったので、皆さん、これは何の資料か全然わからないと思うんです。大変失礼しました。

 これは二〇一三年からこれまでの主要国の実質成長率でございまして、ごらんになっていただいていると、大分構造が違うなと。カラーでごらんになっていただくとこの色分けでさらによくわかると思うんですが、GDPの増加率、それに対して消費がどのように動いているかというところでございますけれども、日本、突出して消費が厳しいなと。これはもう大臣も御存じだと思います。アメリカ、突出して消費がかなり伸びているなと。この二〇一三年から二〇一六年まででございますが。

 その消費という部分でいきますと、ちょっと質問を続けさせていただきたいというふうに思いますけれども、アメリカというのは、かなり消費主導型経済だというのはこのスライドでもわかると思います。

 一方で、これは分析されていると思いますが、一応申し上げておきますと、家計の債務の残高というのはもう全然減ってないよということであります。また、アメリカの消費を牽引しているものの大きな一つに自動車販売というのがあるんですけれども、この自動車販売も、日本とはまた違っていまして、ローン販売が一般的だということでありまして、自動車購入に際しての自動車ローンに依存する割合というのが著しく高いわけでございます。

 そういうところから、もちろんいろいろな見方ができると思いますけれども、先般、リーマン・ショックの前に、それこそ住宅のサブプライムローン問題があった。今般は、自動車のサブプライムローンだって考え得るという状況が発生しているのではないかというふうに思います。

 こういった観点、消費主導型であるがゆえに、そしてまた、アメリカの社会構造が日本と違う形で、ローンを組んで消費が過度に牽引されているという側面もあわせますと、余り楽観視するような状況じゃないというふうに思っていますが、この点の御見解を、総裁、どういうふうにお考えになっていますか。

黒田参考人 米国の自動車販売の増加というのは、大変顕著であることは事実であります。

 この背後には、リーマン・ショック後、自動車の購入がかなり低迷していたために、一種のペントアップディマンドがあって、ここに来て自動車が非常に大きく売れているということだと思いますが、自動車だけをとりますと史上最高の売り上げをしたばかりですけれども、それがどんどんいくということは恐らくないと思います。そういう前提のもとで、確かに自動車ローンの残高が増加傾向にあることは事実であります。

 その中で、いわゆる貸し出しの延滞率というのはおおむね横ばいで推移しておりまして、ローンが焦げついてどうこうするというような状況がふえているということはありませんで、むしろ、リーマン・ショック当時非常に上がっていたのが下がって、低いところで推移しております。

 したがいまして、いわゆる住宅のサブプライムローンのような状況が今すぐ起こるというような状況にはないのではないかと思っております。

 その背後には、やはり何といいましても、先ほど申し上げたように、雇用が拡大して、賃金も上昇し、家計所得がふえている。そこで、家計支出がそのもとでふえている。確かに、自動車購入についてローンを使っているケースが多いことは事実でありますけれども、その背後に、実際に家計の所得がふえ、家計の支出全体がふえているという中での状況であるということで、こういった基礎的な状況、雇用が拡大し、賃金が上がり、家計支出が伸びていくということで米国経済が回復傾向をたどるという、基本的な姿は変わらないのではないかというふうに思っております。

鷲尾委員 大臣、済みません、ちょっと通告していませんけれども、これまでのやりとりをお聞きになっていただいて、大臣もあのリーマン・ショックのときは総理として非常に危機に対処されたと認識しておりますけれども、この間は、アメリカは結局消費主導型なんですけれども、例えば、製造業の労働者の時給というのはほとんど変わらずに来ているんですね。しかしローンが組み上がっている、こういう状況なんです。

 大臣の印象をちょっとお聞かせいただきたいというふうに思うんですが。

麻生国務大臣 鷲尾先生、これはアメリカ人と日本人との考え方の違いもあるんだと思いますけれども、まず、基本的に日本は貯蓄型、もうはっきりしていると思います。昔から貯蓄。貯蓄は美徳ということになっていますから。昔は、まずは、十万円稼いだら六千円から七千円は貯金、大体そういう傾向になってきておりますので、それが今は金融資産として千七百七十兆ですから、とにかく薄気味悪い個人金融資産というものを持って、そのうち八百何十兆が現預金というような状態。これは、アメリカを見てもわかりますように、現預金の比率と株の比率と土地の比率、皆いろいろ均等、均等とは言いませんけれども、いろいろ割っているんですが、日本の場合はかなり現預金に偏っているという日本の貯蓄性向というのが一つ。

 加えて、車をまず買ってというのが、広い国土ということもあるんだとは思いますけれども、何となく、給料が上がったらまず車というような意識というのは、今でも、アメリカの若い人に限らず、結構強いと思っております。

 傍ら、日本の方は、東京の場合は、いわゆる公共機関、中でも鉄道、地下鉄、そういったような公共機関の発達は七八%いっておりますので、日本以外でこれだけ公共機関が発達している国は、ロンドンで八%とか九%とか言っていますから、べらぼうに公共機関の比率は高い。したがって、結果として公害が少ないとか、トラフィックジャム、交通の渋滞が少なくて済んでいるという比率になっている結果を招いているんだとは思いますけれども、やはり、金を稼いだら消費というより、まず貯蓄と考えるところから大分違ってきているのかなと思わないでもありません。

 いずれにしても、これだけみんなで千七百兆の個人金融資産を持つまでに至って世界一、二を争っているわけですから、こういったものがもう少し消費に回っていってもおかしくないんだと思いますが、何となく、デフレの時代、非常に銀行から貸し剥がしを食らったとか貸し渋りを食らったとかいう思い出というのは、みんながまだ記憶のどこかに残っているところだと思いますので、なかなかここらのところが伸びてこないところが、今私どもがやっていて、しつこいデフレ影響という言葉が適切かと思いますけれども、非常にそういったものが残っているところが、我々として民間にいろいろなものをという話を申し上げても、なかなかいま一つ出てこられないという大きな理由はそこにあるかなと思っております。

鷲尾委員 そうなりますと、資料で見ていただいた日本のこのマイナス一・一%というのがなかなか難しいような聞こえ方でございますね、大臣。

 ちょっと次の質問に移らせていただきたいというふうに思います。

 続いてヨーロッパの方の金融情勢についてでございますけれども、二枚目のスライドといいましょうか、ページ数でいきますと二ページ目になります。これもちょっと表題が抜けちゃっていて申しわけないんですけれども、ヨーロッパの、リーマン危機後の安値を下回った主な銀行株ということです。リーマン危機後の安値をさらに今下回っているという、そういうグラフになっているんです。

 かなりヨーロッパでいろいろな動きがあるんだろうなと。どうしてここまで、リーマンの危機のときよりもさらに主要な銀行でがっと安値を下回っているわけですから、ヨーロッパのこの金融機関の情勢が世界の資金の動きでありますとかにどういう影響を与えるというふうに思われているのか、今のこの状況自体、どう分析されているのかということをお答えをいただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 住専というのを覚えておられますか。あの住専に始まったぐらいだったと思うんですが、多分バブルは、一九八九年十二月二十九日でしたか、三万八千九百十五円つけたのが株の最高だったんですが、九〇年、九一年とまだ土地の方は上がっておりまして、九二年からぼんと下がってきて、土地のバブルとかいろいろなものが全て吹っ飛んでいくのが九二年からなんだと思うんですが、この辺のところからざあっと下がっていって、御存じのように、デフレーションというものが現実のものになります。

 多くの企業で、インフレの不況しか知らない経営者の方々は、そごうにしてもダイエーにしても、昔どおりの経営で、不況だからばっとやったんだけれども、これは全部当たりというわけにはいかなくて、これは全部がそういった急な売り上げなんかを伸ばしたところは、資金繰りが追いつかなくなって倒れた。

 そこを見ていた経営者の方々は、まずは資金はとにかく使わない、したがって、利益は全て借入金の返済を優先するという経営方針をとられた結果、銀行に対しての返済金が年間四十兆、五十兆という金でどんどん銀行に金が返り始めた。したがって、銀行というのは金貸しですから、金を借りてくれる人がいないと商売になりませんので、結果的に銀行はばたばたいかれた。

 その前の住専、九七年に最初がたしか北海道拓殖銀行、その後、三洋証券、山一証券が倒産し、翌年、長銀が潰れて、その後、日債銀もたしか倒産していくというような事態になって、アジア通貨危機とリャンファン来てむちゃくちゃなことになって、国会もあのころは与野党がねじれたときでもありましたので、すさまじい勢いで金融国会というのがえらくあの秋もめたのは御存じのとおりなんですが、そういった状況から比べた段階で、日本の場合は、銀行に限らず、企業も不良資産の整理というのを積極的にやったんですね。それは痛い思いをしましたし、多くの銀行は潰れましたし、都市銀行なんていうのは、今はもう昔の名前で出ています銀行なんて二つぐらいしかありませんから、あとはみんな、東海銀行と言えば何ていうのと知っている人の方が珍しいぐらいですから、わんわんみんな東海も興銀も全部合併しておりますので、そういったことをやって、日本の場合は内容をかなり厳しくよくした。そこにいきなりリーマンが来たものですから、もう一個やったということになりまして、かなりな勢いで日本の場合は不良資産をきれいにしたのに対して、ヨーロッパではしなかった。

 ドイチェ・バンクの話がよく出ますけれども、それに限らず、ヨーロッパの場合は、中国の場合は、そういった不良資産の整理というのをしなかった。アメリカの場合はリーマンのおかげでやらざるを得なかったということだったので、やはりヨーロッパのこの資料の場合は、間違いなく今の状況というのは、それがずっと尾を引いて今に至るも、いま一つ元気が出てこられない一番大きな理由は、中に抱えている不良資産のおかげだ、私らから見ているとそう見えます。

鷲尾委員 不良資産というか不良債権といいましょうか、その処理をしつつ、それがどううまくいっているかどうかというのは、私も現場を見ていませんのでわかりませんけれども、一つ言えるのは、当然、金融機関ですから、規制当局もこれあり、その指導に基づいて、不良資産の処理でありますとか、自己資本規制もありますから、それにのっとって、当時、それこそ日本でも行われていたような貸し剥がしとか、そういうものがある。そうすると、どんどん資金の引き揚げというのが、ギリシャを初めとする南ヨーロッパですね、主にその南欧からどんどん資金を引き揚げていっているというのが今の状況なのかなというふうに思っております。

 その上でなんですけれども、当然、彼らは彼らで事業者としては資金をどこかに求めなきゃいけませんから、その貸し出し主体として、日本の金融機関は体力がある中で、そういうところにお金を貸していくという動き、国境を越えて貸していくという動きは、当然、マネーは世界を動きますから、あると思います。

 その中でなんですけれども、今、日本のこの金融機関を取り巻く収益環境というのは非常に悪い状況ですね。つまり、先ほど前原先生もおっしゃっていたと思いますけれども、当座預金を超えるお金を市中銀行が、貸し出しではなくてブタ積みする、だからマイナス金利でもっと流そうと。しかし、なかなかお金が流れていかないというのがこういう今の状況ですから、そういう状況で何か運用先を求めようとしたときに、やはり国境を越えて貸し付けていく。

 それは、ある意味、欧米の金融機関が資金を引き揚げた先に今度はこっちが貸し込んでいく、そういう動きにもとれるわけでありまして、そうなったときに、我が国の金融機関としても、それが不良債権化するとか、そういうリスクもあるんじゃないかなというふうに私は思っていますが、その点の見解をぜひお示しをいただけたらなというふうに思うんですが、総裁、お願いします。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

黒田参考人 確かに、邦銀がリーマン・ショック以降、海外での貸し出しを増加させているということは事実でありますし、また、海外の銀行等に対する買収あるいは出資などを通じて、海外ネットワークの拡充にも取り組んでいるわけであります。

 ただ、例えば海外貸し出しで増加しているところを見ますと、北米とアジアが多いわけでして、世界経済の中で比較的順調に経済が回復し、成長率が加速している場所というのは、北米とアジアであります。したがいまして、邦銀が、欧州の銀行が貸し出しを減らしたところを補っているという面があるかもしれませんが、欧州にたくさん貸し出しているというわけではありません。

 そうした中で、こういう動き、貸し出しが増加し、あるいは海外の銀行の買収等が進んでいるということ自体は、本邦企業あるいは日本経済のグローバル化に資するものであるというふうに考えておりますし、金融機関の収益力の向上にも役立つというふうに思っております。

 ただ、その上で、海外エクスポージャーを拡大するに当たっては、やはり二つのことが重要だと思っておりまして、一つは、外貨流動性のリスクを十分考慮する必要があるということであります。もう一つは、海外の企業への貸し出しや買収、出資ということですので、信用リスク管理の充実が必要になる。この二つでございます。

 この点、邦銀の状況を見ますと、安定的な外貨調達基盤の確保に努めておりまして、いわゆる安定性ギャップといいますか、貸し出しに対してどれだけ安定的な資金調達をしているか、そのギャップがどのくらいあるかというのを私どもずっと見ておりますけれども、そのギャップはむしろ最近縮小しておりまして、外貨流動性のリスクについては、十分な対応がなされていると思っております。

 また、信用リスク管理の面でも、特に海外での貸し出し、出資等をふやしている邦銀は、この融資等の審査をかなり厳格に行っているようでございます。

 日本銀行といたしましては、邦銀の海外活動については、引き続き、適切なリスク管理を促していきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 今ほど総裁から、北米とアジアの方が中心だというお話がありました。一面、そうだともちろん私も思っておりますが、そのアジアの方でいきますと、ちょっと今度は中国経済の話に入りたいというふうに思いますけれども、入りたいというか、そんなに時間もありませんので、一問質問させていただきたいと思います。

 このところ、中国経済も今後どうなっていくんだろうということが盛んに言われるようになってきておりますけれども、現実の問題としては、日本とは全く比べものにならないというふうに思いますけれども、消費の伸び悩みでありますとか、あるいは、貿易額が輸出入ともに中国では縮小していっているということでございますので、これは当然、日本も輸出先であり輸入先でありますので、そういう国が中国ですからたくさんあるということでいくと、この輸出入などが縮小してくる、貿易が縮小してくるというのは、世界経済に与える影響も少なからずあろうかというふうに思います。

 また、ちょっと注目をしておるのは、投資型の、開発経済型の、新興国型の開発経済から、消費主導型の経済に中国もなっていくべき方向性としてはそれを見据えながら、しかし、足元がおぼつかないということで、公的な部門の支出が、政府のかけ声とは裏腹にどんどん多くなってきてしまっているのが今の現状だと思うんです。

 一方で気になっておりますのが、民間の債務比率という数字でありまして、GDP比二〇〇%以上になるとちょっとこれは不良債権危ないぞと言われている比率でございます。

 これを見ますと、実は二〇〇%を超えているのは、ちょっときょうは資料を準備していなくて申しわけないんですが、二〇〇%を超えている国というのは、最近特にその比率を上げてきているのが中国でありまして、逆にスペインが下がってきていて、ちょっときょうは資料をお見せできなくて申しわけないんですけれども、という状況でございます。

 ですから、かなり潜在的に不良債権の額が多くなってきてしまっているんじゃないかなというふうに見ておりますし、その限界もだんだんと近づいてきているんだなというこういう観測も成り立つと思いますが、大臣、どうごらんになっておられますか。そして、これは総裁にもお聞きしたいと思いますが、大臣と総裁と、両方お答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 鷲尾先生、この国で一番難しいのは、発表する数字がなかなかリライアブルか、信用できるかというのが、IMF、世界銀行、どこでも皆同じ話で、ここの発表する数字が、実際、六・七とか七・五とか八・〇とかいろいろ言っているこの数字は本当かと。大体、十三億の民のGDPを翌月発表するんですから、こちらは一億三千万で二カ月ちょいかかりますからね、これだけ優秀なのがやって。それが翌月ぽいと出てきちゃうというのは、ちょっとこれは、そんなに大丈夫かよという数字、もう最初から書き込んじゃっているものに後から当てはめているだけじゃないかとか、これはもう世界じゅう皆同じ思いですので、ちょっと正直わからぬ。これはもう間違いありません。

 ただ、経済がぐあいが悪くなってくると何が起きるかというと、失業です。今まで、社会主義ですから失業はなかったんです。ところが、トウショウヘイ以来、自由主義経済のまねごとというか、いわゆる社会主義経済下の自由主義とか、何かよくわけのわからぬ話をされておりますから、そういった形になっていますので、少なくとも、自由主義でやって、それが極めて経済として当たったことは確かだと思うんですが、同時に、効率というのを当然のごとく考えられますので、そうすると失業が起きる。失業を起こさない程度に経済を成長させるというためには七%、八%は絶対というのがこれまでの置かれてきた現状で、それなりにこなしてきたんだと思いますが、ここに来てそれがというので、かつての日本も高度経済成長がとまったと同じようなことになっておられるんだと思います。

 それが急激に下がってくると、ハードランディングということになりますと、これは他国に与える影響は極めて大きいので、ソフトにしてもらわないと、どうせだめになるのはわかっていますけれども、ソフトになるにしても、ちゃんと落ち方をなだらかに落ちていってもらわないとということを、我々なりアメリカなりヨーロッパは皆そう思って見ていますので、そこらのところが今は少なくとも、先月ぐらいから財政が再び出動してきたりなんかしていますので、そういったソフトにしようとしている努力は見られますので、そういった意味では、私どもとしては、どう出てこられるのか、ちょいといま一つ見えてこないというところであります。

 かつて三年ほど前のこういう態度からは、ここのところは随分と控え目な話を公の場ではされるようになりつつあるかなという感じはしておりますので、もう少しちょっと内容がよく見えてきませんので、何とも今の段階で申し上げる段階にはございません。

黒田参考人 御指摘のように、中国経済は今、いわば構造転換の過程にありまして、従来のような輸出、製造業、投資主導の経済から、内需、非製造業、そして消費主導型の経済へ転換をしているわけです。

 そのもとではどうしても、従来のように、大量に原材料であるとか中間財であるとか資本財を輸入し、加工して外国に大量に輸出するというビジネスモデルと違いますので、輸出も輸入も、従来のような大幅な伸びというのは期待できなくなっていると思います。

 ただ、他方で、消費が既にGDPの半分を上回っておりますし、消費自体は極めて堅調に伸びております。

 したがいまして、中国経済は今後とも少しずつ減速していくとは思いますけれども、そういう構造転換の中で比較的安定した成長を続けるであろうと。それをいわばサポートするために、政府も、総需要について、急激な減少によって今麻生大臣が指摘されたようなハードランディングのないように、緩やかに経済構造が転換していくということを狙ってやっているということではないかと思います。

 御指摘の、民間債務の比率がGDP比二〇〇%以上になっているという点は、いろいろな国際的な場で議論になるわけですが、御案内のとおり、中国側は、要するに中国はまださっき申し上げたような構造転換をしている最中ですので、まだ実は貯蓄率というのが極めて高いんですね。その高い貯蓄を当然投資に転換していくわけですので、それを行う部門としては当然のことながら民間部門が主として行うわけですので、どうしてもその民間部門の債務比率、GDPに対する比率が高目に出てくるというのがある意味で自然であるということを言っておりまして、これは私もそのとおりだと思います。

 ただ、御指摘のように、かなり急速に民間の債務が膨張しているということについては、過剰になっているものがあれば調整が必要になりますし、不良債権化しているものがあれば当然その処理が必要になるという意味で十分その動向は注視していく必要があると思いますが、レベル自体が他の先進国や新興国と比べて高いということ自体は、ある意味で自然な面もあるということは理解してよいのではないかと思っております。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

鷲尾委員 ちょっと時間がなくなってまいりましたので質問をさせていただきたい項目を若干はしょりまして、せっかく資料をつくってまいりましたので、資料をちょっと、最終ページでございますけれども、日本の公的部門がいかに拡大しており、民間部門が縮小しているかということでございます。

 ちょっとこの右側の箱の中の数字をごらんになっていただくと、二〇〇九年から二〇一二年の数字あるいは二〇一二年から二〇一五年の数字が書いてありますけれども、ごらんになっていただくとおり、例えば下だとすごくわかりやすいですけれども、国内最終需要の中に占める増減額の構成比ということで出させていただいております。いかに公的部門がふえているかということがわかっていただけるかというふうに思います。やはり市場のダイナミズムというのを機能させないと、これはなかなか経済の活性化とか市場の正常化というのにつながらないというふうに思っております。

 例えば、先ほど来、総裁と質問者とのやりとりの中でもありましたけれども、金融政策だけに頼るのはなかなか難しい。当然でありまして、市場の機能が回復してきませんとやはり新陳代謝は起こらない、自然利子率も上がってこない。こういう状況でいかに期待に働きかけるといっても、なかなか働きかけにくいと思っております。ですから、黒田総裁もなかなか厳しい状況だと思っております。サプライズをしなければ期待が動かない。しかし、予見可能性がなければまともな金融政策と言われない。これはなかなか難しい状況だと思います。

 ちょっと時間がないので、これについてはまたこの国会中でも質問の機会があると思いますので、もう少し深く突っ込んだ議論はその際にさせていただきたいと思いますが、最後に一問、これから税制改正の議論があります。大臣にビールの問題だけちょっと質問させていただきたいと思うんです。

 これからいろいろ政府・与党でもまれることと思いますけれども、ビールの税制は私も与党時代に随分かかわってまいりまして、類似する酒類間において大分税率が違うというのが、いろいろな税制のゆがみがあって、これがある意味民間にも色濃く影響を与えているところでございます。ここ数十年間で、メーカー各社の間に強い分野と弱い分野、メーカー各社にそれぞれの強み、弱みというのが出てきていますので、税制がある意味ゆがみを与えている、このゆがみは是正すべきだ、私はこういうふうに思っているところでございます。

 ビールメーカーもいろいろロビー活動をやっておられると聞いておりまして、最近でも、そのロビー活動が激しくなりつつあるんじゃないかという情報も仄聞をいたしておりますので。やはり今回は、消費税先送りの中でどういうところで財源をとっていくか、これは財務省の皆さんも苦心惨たんしておられると思いますので、政府の責任者としての大臣に、ビール税制改正、これに向けたお考え並びに決意を最後に聞かせていただきたい、こう思います。

麻生国務大臣 ビールというのは、御存じのように、輸入した最初から外国の酒として入ってきていることもこれありで、税金が高いんですよ。これを外税なんかでやったらまず飲む人はいないと思うね。これは内税だからみんな黙って飲んでいるんだ。外税なんかだったら、あほらしくて飲んでいられるかというぐらい税金が高いという実態がありますでしょう、御存じのように。

 したがって、与党の税制調査会等々において、同一の分類に属する酒類間の税率格差、いわゆる新ジャンルとか発泡酒とかいろいろありましたでしょう、そういった税率格差が商品開発とか販売の数量に非常に大きな影響を与えておる。企業によって違いますから、内容によって、ビールの強いところ、発泡酒に強いところ、新ジャンルに強いところ、いろいろ違いますので、いろいろそういったものがありますので、それらの税率格差というのを縮小して、少なくとも解消する方向で見直しを行うべきではないかということで、これは急に、ではあしたからなんていうそんな簡単にいくわけではありませんので、これはもう速やかに結論を得るべきという話をしてあります。

 したがいまして、こうした与党の方針や御議論をいろいろいただいておりますので、そういったものを踏まえつつ、きちんとした形でこれは修正をさせていただきたいと思っております。

鷲尾委員 ちょっと大臣にしては、最後何か物が挟まったような気持ちがいたしますが、こういうときにずばっと言っていただけるのが大臣じゃないかなと。

 各社、いろいろな強みを持つ会社、弱みを持つ会社ごとですから、業界がまとまるのもなかなか大変な中でロビー活動が盛んになっているとも聞いておりますので、ぜひ、財務省一丸となって、大臣はその先頭に立って、このゆがみを是正するということで頑張っていただきたいと思います。これを申し述べまして私からの質問にさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 所信表明について質問します。

 大臣は、所信表明で、「改革工程表を十分踏まえた歳出歳入改革を着実に推進してまいります。」と述べられました。

 きょうは、まず改革工程表と介護保険について議論させていただきたいと思います。

 先日、東京都内の介護の事業者団体、職能団体、利用者団体でつくっている東京在宅福祉・介護フォーラム実行委員会の要望書が麻生大臣宛てに出されました。大臣はお読みになったんでしょうか。なぜ、厚労大臣や総理宛てだけではなく麻生大臣宛てにも出されたと思われているでしょうか。

麻生国務大臣 東京在宅福祉・介護フォーラム実行委員会というのは、これは都内にあります介護保険業者とか在宅福祉サービスの団体等の関係者で構成されておりますいわゆるフォーラムの実施主体なんですが、その御指摘の東京在宅福祉・介護フォーラム実行委員会からは、要介護一、二の方に対する給付の削減や利用者負担の拡大を行わないようにしてもらいたいとの御要望があったというように承知をいたしております。

 御存じのように、介護保険の給付や負担のあり方につきましては、これは現在、改革工程表に沿って、厚生労働省の社会保障審議会において議論が進められているんだと考えております。

 したがいまして、財政制度審議会におきましても、財政当局としての立場から提案を行っておりますことから、私宛てにもこうした要望書の提出があったものだ、さように認識をいたしております。

宮本(徹)委員 つまり、今、社会保障審議会で議論されていますけれども、財政当局からの提案がどんどん出されてきているわけですよ。私も事業者の皆さんだとか自治体で働いている現場の皆さんからよくお話を伺いますけれども、今の介護保険、どんどん悪くしているのは財務省だ、こういうお話をよく伺います。財務省がやはり介護保険の改悪を先導しているというふうに見ているから、こういう要望書が麻生大臣宛てにも出されたということだと思います。社会保障審議会の中でも、財務省が財政審で出したような論点に対しては厳しい批判が毎回出ている状況です。

 きょう、資料を持ってまいりましたけれども、十月四日の財政審で財務省が出した資料、「介護保険における利用者負担の在り方」、下を見ますと、「改革の方向性」、こう書いているわけですね、「軽度者が支払う利用者負担額が、中重度者が支払う利用者負担額と均衡する程度まで、要介護区分ごとに、軽度者の利用者負担割合を引き上げるべき。」というふうに書いてあります。

 私、これを見ましてまずわからないのが、均衡という言葉がここで出てくるのがさっぱりわからないんですよね。均衡するところまで上げるということは、逆に今は均衡がとれていないということになると思うんですが、一体この均衡というものは、何を基準にして均衡がとれている、とれていないということをこの文書は言っているんでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘の資料というのは、改革工程表の中において本年度末までに検討事項とされております介護保険の利用者負担のあり方に関する財政制度審議会におけます議論の土台として、財政当局の立場からの提案を行ったものであります。

 介護保険につきましては、今後も高齢化に伴います給付の伸びが大きく見込まれております。制度の持続可能性の確保というのが大きな問題となっております。したがいまして、近年では、特に軽度者、いわゆる要介護二以下に対する介護の伸びが極めて高くなっておりますので、全体の二九に対して軽度者の場合は四一%までになってきております。

 そういった意味で、軽度者は高度なサービスの利用が相対的に少ないということから、軽度者の自己負担額は中重度者と比較して相当程度低くなっているのではないかという点であります。

 こうした中で、財政当局の立場からの提案として、共助の必要性がより高い中重度の方々への給付を安定的に続けていく必要性というものを考えた場合に、一人当たりの自己負担額が逆転しないように配慮しつつ、要介護区分ごとに軽度者の負担割合を引き上げることなどを提案させていただいております。

 したがって、直ちに、要介護者の改善をしようというようないわゆるインセンティブが働かなくなるというようなことは考えておりません。

 いずれにいたしましても、介護保険の利用者負担のあり方につきましては、現在、改革工程表に沿って、厚生労働省の社会保障審議会におきまして議論が進められているものだと承知をいたしております。したがいまして、財政当局といたしましても、引き続き、年末に向けて厚生労働省ともよく議論をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 今の説明を聞いても、均衡というのは何なのかさっぱりわからなかったんですけれども、このグラフにあります一人当たりの利用者負担額というのは、基本的にはサービスの量に応じて負担額が決まっているわけですから、負担額というのはサービスの量と中身で決まっているだけの話ということになります。

 そして、麻生大臣が今言われたのは、軽度者は伸び率が高いと。均衡していないという話で出てくるのは、伸び率が高いという話しか出てこないわけですね。伸び率が高いのはなぜかというと、サービスを必要としている方が多いから伸び率が高いわけですよ。これをもって均衡がとれていないという話になったら、利用ができなくなるところまで負担をふやしなさいという、まさに暴論にしかならないというふうに思います。

 先ほど、軽度者の負担を引き上げても、重度の方が軽度に改善しようというインセンティブが働かなくなるとは思えないというふうに麻生さんはおっしゃいましたけれども、そんなことはないと思いますが、麻生さんの言い分に対して、厚労政務官、きょう来ていただいていますけれども、どうですか。

馬場大臣政務官 軽度者の利用者負担割合のあり方につきましては、一昨日の社会保障審議会介護保険部会において論点として提示し、委員からは、軽度者に対する給付の適正化が重要であるとの御意見や、軽度者の利用者負担の割合の引き上げは自立支援や重度化防止の意欲をそぐのではないかといった御意見が出たものと承知しております。

 しかし、いずれにしましても、厚生労働省といたしましては、専門家などで構成される社会保障審議会介護保険部会において、制度の持続可能性を確保しつつ、高齢者の自立を支援し介護の重度化を防ぐ観点からしっかりと検討を行ってまいりたいと存じます。

 以上です。

宮本(徹)委員 ですから、要介護三の人が負担は一割だ、要介護二になれば利用料が二割になるということになったら、一生懸命努力して要介護二の状態に戻ろうという意欲をそぐことはやはり明確だと思うんです。そういう意見が社会保障審議会の中でもたくさん出されたというふうに伺っております。

 先ほど厚労政務官もおっしゃいましたけれども、介護保険の理念というのは、自立支援を進めて介護の重度化を防ごう、これが大きな理念としてあるわけです。そしてもう一つは、家族で支えてきた介護を社会で支えよう、これが理念としてあるわけです。私は、こういう介護保険の理念に反するような提案というのを財務省がやるというのはやはりやめるべきだと思いますが、いかがですか。

麻生国務大臣 繰り返しになりますけれども、御指摘の提案というのは、財政制度審議会における議論の土台として、財政当局の立場からの提案を行ったものであります。

 軽度者の負担割合の引き上げに関する提案というのは、大きなリスクは共助、公助、小さなリスクは自助という基本的な考え方に基づくものでありまして、自助、共助、公助の適切な組み合わせによる持続可能な社会保障制度の構築につながるものと私どもは基本的に考えております。

 いずれにいたしましても、介護保険の利用者負担のあり方につきましては、今後、改革工程表に沿って、厚生労働省の社会保障審議会におきまして議論が進められていくと承知をいたしております。

 財政当局といたしましても、引き続き、年末に向けて厚生労働省ともよく議論をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 制度の持続、持続ということをおっしゃるわけですけれども、幾ら制度が持続しても、その中身が必要な介護を受けられない制度になったら、介護する側もされる側も、暮らしが続かないということになります。

 そして、本当に財政ということから考えても、必要なサービスが受けられないことによってより重度化が進むということになったら、これは支出もさらにふえるということにもなるわけですよ。

 そして、お伺いしたいんですけれども、社会保障審議会では、財務省の改革工程表に基づいてほかにもいろいろな提案がされております。利用者の負担の上限を月七千二百円引き上げようだとか、いろいろなことがされてきました。要介護一、二の生活援助を介護給付費から外すということについては猛反発があって、これは見送りということになったわけです。

 ちょっとお伺いしたいんですけれども、この間、財務省が提案している給付のカットだとかあるいは利用者の負担の引き上げについて、社会保障審議会で受け入れられたものというのはありますか。

馬場大臣政務官 利用者負担割合の見直しによって経済的負担の増加から介護サービスの利用を控える人がふえているのではないかとのお尋ねかと……(宮本(徹)委員「いや、そうじゃないです、受け入れられたものがあるか」と呼ぶ)

 平成二十六年の介護保険法改正により、保険料の上昇を可能な限り抑えつつ制度の持続可能性を高めるため、世代内の負担の公平化を図る観点から、一定以上所得のある方の利用者負担割合を二割に引き上げたところでありますが、その上で、平成二十七年八月の施行前後において、サービスの分類ごとの受給者数の伸び率を見ると、これまでの傾向と比較しては顕著な差は見られないというのが現状のところであります。

 また、制度改正の影響については、社会保障審議会介護保険部会において委員の方々から状況に関する意見が出されていることに加え、施行状況について自治体等からさまざまな場面を通じ実態を伺っているところであります。

 今後とも、引き続き、制度改正の影響を把握してまいりたいと存じます。

宮本(徹)委員 私の聞いたその先に質問通告していることを先に答えられて困っちゃったんですけれども、財務省が提案してきた給付カットや利用者負担増について、この間、社会保障審議会で受け入れられたものがありますかというのを、麻生大臣。

馬場大臣政務官 ただいまの件につきましては、年末に向けて社会保障審議会のところで議論をしておるところであります。

 以上です。

宮本(徹)委員 それは、今、受け入れられたものはないということでいいわけですよね。

馬場大臣政務官 ただいま議論中でございます。

宮本(徹)委員 ですから、猛反発があって、財務省が改革工程表の中で言ってきていることというのは、今の社会保障審議会でもおよそ受け入れられるような状況ではない、猛反対の意見が出ているわけですよ。

 私の次の質問に対して馬場政務官は先回りして御答弁いただきましたけれども、前回の介護保険見直しで、単身で年収二百八十万円以上の世帯などの利用料二割負担が始まりました。あちこち私が回って聞いていましても、デイサービス、日数を減らした、回数を減らした、ヘルパーを減らした、こういう話をたくさん聞きます。それから、特養だとか施設入所者の補足給付も大きく削減をされました。自己負担が急激にふえた方も少なくありません。そういう中で、高くて使えないので特養から在宅介護に戻ったという話もあります。そして、世帯分離によって補足給付を受けるという方法もできなくなったために、特養の費用を払うために離婚した、こういう話まで起きているというのが今の状況なわけですよね。

 先ほどの話では、顕著な変化は二割負担が始まってから生まれていないということを馬場政務官はおっしゃいましたけれども、そんなことはないわけですよ。

 これは厚労省が出している資料ですけれども、二割負担導入前、導入後、受給者数の変化を見ますと、居宅サービスでいえば伸び率が四・二%だったのが三・七%に低下、地域密着型サービスは伸び率が七・二%だったのが六・三%に低下ということで、私は、顕著な差が出ているというふうに思います。

 しかも、これは受給者数なんですよ。私がよく回って聞く、デイサービスの回数を減らしました、ヘルパーの回数を減らしましたというのは、受給者数の統計には出ない数なわけですよ。特養は待機者が多いですから、特養から在宅に戻らざるを得なくなった人が出ても、その分、特養の利用者は別の方が入るだけですから、ここには変化は出ないわけですよ。ですから、こういう統計だけをもってそういう答弁をされるというのはまずいと思うんですよ。

 恐らく皆さんも町を歩いて、前回の介護保険の利用者負担増以降サービスを受けられなくなった、こういう声を聞いているんじゃないですか。もう一度、政務官、お願いします。

馬場大臣政務官 今先生御指摘のように、さまざまな御意見はあるものの、全体的には、サービスの受給につきましても、回数につきましても、ここ数年の動きは大体減少傾向にあるというようなことで、先ほど申し上げましたような答弁でございます。

 以上です。

宮本(徹)委員 さまざまな御意見をいただいているわけですよね。ですから、皆さんのところにもそういう実態というのは届いているわけですよ。

 この上、さらに負担を拡大するということになれば、さらに利用制限が出るのは確実です。デイサービスの利用を減らしたら、その間、誰が介護をするのか、ヘルパーを減らしたら、その分、誰が介護するのかということになるわけですよ。介護離職ゼロに逆行する、明らかじゃないですか、麻生大臣。

麻生国務大臣 先ほども答弁しましたけれども、いわゆる財政制度審議会において、議論の土台として、財政当局の立場からの提案というのを記載したものなんですが、この介護保険については、今後、超高齢化社会というのを日本は迎えていくんですが、給付費の大幅な伸びが見込まれる中でいかにこの制度を維持していくかという構造的な問題に我々は直面しているんだと考えております。

 したがって、将来にわたって必要な給付というものを確保しつつ、かつ、保険料の過度な上昇というのを招かないように、介護保険の利用者負担のあり方というものを含めて、負担の公平性の確保とか給付の適正化などに不断に取り組んでいく必要があるんだと考えております。

 こうした検討は、介護保険制度の持続可能性等を確保しつつ、高齢者の自立を支援し、真に必要なサービスが提供されるようにするためのものであって、介護離職ゼロに反するといった指摘は当たらぬと思っております。

 いずれにしても、介護保険の利用者負担のあり方については、現在、改革工程表に沿いまして、先ほど申し上げましたように、厚生労働省の社会保障審議会において議論が進められているんだと存じておりますので、財政当局としては、引き続き、年末へ向けて、厚生労働省ともよく議論をしてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 ですから、現場の皆さんはもう必要な給付が確保できる状況になっていないとということを言っているわけですよ。そこを真剣に受けとめないと、安倍政権が幾ら介護離職ゼロと言ったって、現場では介護離職は進まざるを得ないような方向に進んでしまうわけですよ。

 本気で介護離職ゼロということをやっていく、そして、必要な人に必要な給付がなされる介護保険制度にするということを考えたら、私は介護保険への公費負担をふやすしかないと思います。どうですか、麻生大臣。

麻生国務大臣 介護保険の公費負担というものにつきましては、これは平成二十四年度の総選挙において、自民党の政権公約も踏まえて、安定財源である消費税率引き上げ、五から八%による増収分を活用した社会保障の充実の一環として、介護給付の五〇%の公費負担とは別枠で、平成二十七年四月から低所得の高齢者の保険料の軽減を実施しておりますのはもう御存じのとおりだと思っております。公費負担割合五六%になっておると思いますが。

 こうした社会保障の充実を図る一方で、将来にわたって必要な給付というものを確保しつつ、保険料の過度な上昇を招かないようにしていくというためには、負担の公平性の確保とか給付の適正化にも不断に取り組んでいく必要がある、さように考えております。

 そのためにも、改革工程表に沿って介護保険制度改革を着実に実行していくことが重要でして、具体的な改革の方向性につきましては、引き続き、厚生労働省とよく議論してまいらねばならぬと考えております。

宮本(徹)委員 与党は政権をとる前には、公費負担はまずは六〇%に引き上げる、一〇%引き上げるんだという話を言っていたわけですよ。皆さんが言って、政権を奪還されたわけです。今の話では、処遇改善で別枠で入れたのを入れても五六%ということで、公約したことすらもまだできていないというのが今の段階なわけですよね。

 ですから、どうすれば本当に必要な給付が必要な人に届いて、介護離職が起きないような介護保険制度にできるのかということを真剣に考えなきゃいけないですし、そのためにはやはり、税金の使い方を変えなきゃいけない、優先順位を変えるべきだというふうに私は思います。

 今度の補正予算でも、公共事業のためには建設国債まで発行して、借金をしてまで予算を確保しながら、介護保険の話になると、先ほどから財源の問題を持ち出して、給付カット、利用者負担増のことばかり持ち出す。これでは国民は納得できないと言わざるを得ないと思います。

 社会保障の自然増のカット、今度一千四百億円やるというお話でしたけれども、私は、本会議でも言いましたけれども、今年度で切れる租税特別措置、研究開発減税分だけで一千九十億円あるわけですよ。こういうものを社会保障に回せば、無理な介護保険の給付減、負担増というのはやらなくて済むじゃないですか。そういうところに踏み切ることを求めておきたいと思います。

 そして、もう一つきょう取り上げたいのが、軍事費、防衛省予算の問題です。

 社会保障は自然増まで厳しくカットする一方で、防衛省の予算は、閣議決定した中期防衛力整備計画の二十三兆九千七百億円、これも上回る勢いになっております。

 今週、産経新聞で、「防衛省、三次補正要求へ」、ミサイル防衛装備二千億から三千億というのが一面で報じられましたが、これは、若宮副大臣、事実でしょうか。

若宮副大臣 今、宮本委員が御指摘になられました、ことしの十月十七日付の産経新聞でございますが、そういった記事が出たことは承知をいたしております。

 私どもといたしましては、北朝鮮が弾道ミサイルの開発活動、これを継続中であるというふうに考えてございます。ことしに入ってから、もう委員も御承知のとおり、二十発以上という、これまた過去に例を見ない頻度で弾道ミサイルの発射を行ってございます。潜水艦からの発射ですとか、あるいは三発の弾道ミサイルを同時に発射するなど、かなりの技術的な向上が図られているのではないかなというふうに見込んでいるところでございます。また、運用能力の向上も追求しているというふうにも考えられておりまして、これに対処することというのは、我が国にとっては喫緊の課題であるというふうな認識を持っております。

 そのために、私どもといたしましては、平成二十九年度の概算要求におきまして、弾道ミサイルの防衛体制の強化のために、SM3ブロック2Aの取得、それからまた、能力向上型のペトリオットミサイルのPAC3MSE、この導入などの経費を計上いたしているところでございます。

 二次補正につきましては、速やかに執行されることが重要であるというふうな認識を持ってございますが、先ほどの産経新聞、委員が御指摘になりました記事にあるような、三次ということに関しましては、私どもといたしましては今のところ全く何ら承知をいたしていないというのが現状でございます。

宮本(徹)委員 承知していないということですけれども、火のないところには煙は立たないわけであります。

 私自身、安倍政権のもとで防衛省の予算が急増している問題を何度も取り上げてまいりました。補正予算第三次というのは真偽が定かじゃないですけれども、来年度の概算要求も大きく積み増して、五兆一千六百八十五億円ということになっております。この間、国会の審議の中では、中期防の額があるから防衛費が大きく伸びることはないんだということを総理もおっしゃってきました。

 そこで、春の予算委員会で使ったグラフに、新しく通った第二次補正だとか概算要求を盛り込んだ資料をつくってまいりました。中期防を大きく超える勢いで予算の支出が進んでおります。そして、今度こういう概算要求。これはSACO関係費だとか米軍再編経費だとかの地元負担軽減を除いていますから、さっき言った数字とはちょっと異なっていますが、いわゆる中期防対象経費をまとめたものです。

 こういう概算要求あるいは第三次補正みたいな話というのは、およそ中期防との関係では認められないと思いますが、麻生大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 防衛関係予算については、御存じのように、中期防衛力整備計画におきまして、五年間の予算の総額が二十三兆九千七百億円と想定をされておりますのは御存じのとおりでありまして、この予算に沿って予算編成を行ってきております。

 なお、その際、中期防衛力整備計画で定める予算の総枠は二十五年度価格とされておりますことから、その後の賃金、物価や為替等の変化について必要最低限の考慮を行う必要はあろうと考えておりますが、御指摘の補正予算で手当てする経費も含めまして、総額の枠内におさまるように予算編成を行う必要があろうと考えております。

宮本(徹)委員 総額の枠内と言うんだったら、抜本的に査定を厳しくして削っていただきたいというふうに思います。

 先ほど補正予算も含めてカウントするんだというのは、これは一年前も麻生大臣からそう答弁をいただいているわけですが、きのうですか、財政審で、公共事業については補正予算でどんどん積み増しているという問題に対して厳しい意見がたくさん出たようですが、防衛費についても補正予算でどんどん、これは中期防とは別腹だみたいな形でふやすことは断じて認められないということを言っておきたいと思います。

 あと、ここにはあらわれない後年度負担の問題があるわけですね。

 きのうの財政審で財務省自身も、後年度負担の伸びについては今出ているものを大きく抑えなきゃいけないという指摘をされたわけですが、これも、後年度負担、民主党政権の最後のときが総額で三兆一千五百八十三億だったのが、今年度までで四兆六千五百三十七億。今度の概算要求がこのままいけば五兆六百九十五億というところまでなるわけですよ。そうすると、もし政権がかわったとしても、防衛費を削ろうと思っても削れない状況になるわけですよ。

 ですから、これはもう、財政民主主義、予算単年度主義から考えても、後年度負担を大きく膨らませるというやり方は断じて認められないということを申し上げておきたいというふうに思います。

 済みません、馬場政務官、介護のところは終わりましたので、退席していただいて結構です。言っておかなきゃいけないのを忘れていました。

 それで、ミサイル防衛の話に戻りますけれども、先ほども、北朝鮮が核開発、弾道ミサイルの発射実験を繰り返しているというお話がありました。これは大変許されない事態だというふうに私たちも考えております。

 同時に、安全保障のジレンマという言葉があります。他国の脅威に対して軍備拡大を進めると、相手国はその軍備拡大を脅威に感じて軍備をさらに拡大していく、軍拡競争の負の連鎖をもたらすというのが安全保障のジレンマです。ここに陥っているのではないかというふうに思います。

 二〇〇三年、ミサイル防衛を始めるときに、費用は総額で八千億から一兆円だと言っておりましたが、今年度までの支出で一兆五千八百億円。さらに、今後三千億程度をこの中期防で出す。そして、今度の概算要求を見ますと、さらにTHAADだとか新しいいろいろな、今予定しているもの以外のミサイル防衛のシステムも検討していかなきゃいけないというふうになっております。こうなってくると、本当に安全保障のジレンマの典型になっているのではないかと思います。

 そこでお伺いしますけれども、改めて確認しますが、北朝鮮の挑発的な核開発の目的、防衛白書でも書いていますけれども、これは何でしょうか。

若宮副大臣 北朝鮮の核あるいはミサイル開発に関します目的というのは、これはもちろん本当のところはわからないところではありますけれども、まず、私どもがやはり想定し得る考え方といたしましては、核兵器開発につきましては、北朝鮮は、アメリカの核の脅威に対抗するための独自の核の抑止力が必要であるというふうに考えておるのではないかなというふうに考えております。

 なおかつ、さらに北朝鮮がアメリカ及び韓国に対します通常戦力におけます劣勢を覆すということが、これは短期的には極めて難しいという状況にあるのではないかなというふうにも考えておりまして、北朝鮮は、現体制を維持する上での不可欠な抑止力として核兵器の開発を推進しているものというふうに考えているところでございます。

 また、さらに核の抑止力ということで、国防費をふやさずに戦争の抑止力と防衛力の効果を高めるということから、安心して経済建設とあちらの国の人民生活向上に集中できるとして、経済建設と核武力の建設、この二つを同時並行で進めていこうという、いわゆる並進路線を決定して進めているのではないかなというふうに考えております。

 また、ことしの五月になりますが、党大会でも示されてございますけれども、核とミサイル開発につきましては今後も進めていくという姿勢を明らかにいたしてございます。こうした形での核・ミサイル開発のための活動というのはさらに継続していくんだろうというふうに考えているところでございます。

 北朝鮮の核・ミサイル開発というのは、私どものこの日本を含みますアジア地域、あるいは国際社会の安全に対します重大かつ差し迫った脅威であるというふうに認識をいたしてございまして、私ども防衛省といたしましては、いかなる事態にも対応ができるように、緊張感を持って引き続き情報収集、警戒監視に万全を期してまいらなきゃいけないな、そういった気持ちを持っているところでございます。

宮本(徹)委員 つまり、北朝鮮の核開発の目的というのは、体制の存続のための抑止力を手に入れようということです。

 防衛白書を見ますと、さらにこういうことを書いていますよ。リビアのカダフィ政権だとかイラクだとかは核抑止力を保有しなかったから引き起こされた、だから北朝鮮はそれを手に入れようとしているんだということも書いてあります。ですから、もしアメリカが攻撃すれば報復を受けますよというのを示そうとしているのが北朝鮮ということになります。逆に言えば、先に北朝鮮から撃つということは防衛省は分析していない。つまり、北朝鮮から在日米軍基地だとかにミサイルが飛んでくるとしたら、アメリカなどが先に北朝鮮を攻撃する場合というのが防衛省の分析からも言えることだというふうに思います。

 これに対して、アメリカのミサイル防衛の目的は何ですか。

若宮副大臣 現在からちょっと過去を振り返ってみますと、委員も御承知のところだと思いますけれども、冷戦当時におきまして、アメリカは旧ソ連からの大規模な戦略核のミサイル攻撃からアメリカ自体を防衛しよう、そうした目的でミサイルの防衛システムというのを進めてきたというふうに理解をいたしております。

 その後、やはり昨今の状況はもちろんでございますけれども、その後の安全保障環境は国際的に大きな変化をしてきているのが現状でございます。アメリカとしては、最大の脅威というのはやはり、もちろん旧ソ連の動きというのもございますけれども、テロですとか、あるいは恫喝などを手段といたします国の少数のミサイル、また、冷戦時代の核抑止力では不十分であろう、攻撃的戦力と防御的戦力の双方に基づく新たな抑止の概念が必要となってきたというふうに考えているところじゃないかなというふうに思っております。

 これに対しまして、やはり、対弾道ミサイルシステムの制限条約では現代の脅威に対応できないとの認識に基づいた上で、大量破壊兵器ですとか弾道ミサイルが拡散する中で、アメリカ及び海外に展開をいたしておりますアメリカ軍、また、私ども日本のような同盟国、友好国を弾道ミサイル攻撃から防衛しよう、こういうことを目的といたしまして、二〇〇一年以降、現在のミサイル防衛システムの導入を進めてきたというふうに承知をいたしているところでございます。

宮本(徹)委員 ミサイル防衛のそもそもというのをもうちょっとお勉強された方がいいんじゃないかと思いますけれども、相手のミサイル攻撃を無力化して対米核抑止力を消滅させようというのがミサイル防衛の根本的な目的ですよね。

 防衛省の防衛研究所、東アジア戦略概観二〇〇一というものにもアメリカの分析を書いています。ミサイル防衛が配備されれば、アメリカはみずからの本土に対する報復の危険を恐れることなく軍事作戦を遂行することができると。

 相手の抑止力というのを無力化する、そしていつでも自分は安全な立場から攻撃できる立場を確保しようというのがアメリカのミサイル防衛の根本的な目的なわけですね。ここにいよいよ日本を深く組み入れようとしているというのが、先ほど御紹介があった今度の概算要求ではないかと思います。

 概算要求に盛り込まれましたSM3ブロック2Aは、かなり高い高度で飛ぶミサイルについても迎撃が可能になる、グアムなどに向かうミサイルを撃ち落とす能力もあるというふうに言われております。

 お伺いしますけれども、存立危機事態というふうに認定すれば、グアムなどに向かうミサイルというのも撃ち落とすことというのはあり得るんですか。

若宮副大臣 今委員がおっしゃいました、アメリカ軍の基地がございますグアムに向かう弾道ミサイルにつきましては、これは我が国の上空を横切るという可能性もあるわけでございまして、ただ、これだけをもって新たな三要件を満たすということには当たらないかと思いますが、その時点におきます状況と全体的な評価というのが必要になってこようかと思いますので、そうした結果、これが新たな三要件を満たす場合には、これはあくまでも、我が国の存立を全うし、それから国民を守るための自衛の措置として、我が国が当該弾道ミサイルを迎撃することも可能であろうかというふうに考えております。

 このような場合に、SM3ブロック2Aであれば能力的に迎撃できるかということにつきましては、この内容的なものはちょっと申し上げられないところがございますので、お答えは差し控えさせていただければと思っております。

宮本(徹)委員 つまり、グアムに飛ぶミサイルを撃ち落とす、集団的自衛権を行使することも可能なものを購入するということになっているわけです。我が国防衛を飛び出した、アメリカ防衛のための兵器購入というふうになっているわけであります。

 それで、日本とアメリカがミサイル防衛を強化する、そうすると、北朝鮮は抑止力を手にしたいという考えですから、この強化された日米のミサイル防衛を打ち破るために、核開発、ミサイル開発を一層進めよう、こういうインセンティブが働くんじゃないですか。

若宮副大臣 北朝鮮によります核それからミサイル開発というのは、やはり、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私ども日本を含みますアジア地域あるいは国際社会の平和と安全を損なう、安全保障上の挑発行為であるというふうに思っております。

 これはまた、安保理決議でも、第二二七〇号を初めといたします一連の決議等に違反するものでありまして、これはもう断じて容認できるものではないというふうに考えております。

 こうした形で、北朝鮮が核・ミサイル開発を進める中、やはり私どもとしては、BMDシステムを整備してきておるところでございますけれども、これはもうまさに、弾道ミサイル攻撃に対して、日本の、我が国の国民の生命と財産を守るために必要な、純粋な防御的なシステムでございます。周辺国に脅威を与えるものでは全くないというふうに考えております。

 したがいまして、私どもの今取り組んでおりますBMDシステムの能力を強化することをもって、北朝鮮が核・ミサイル開発を正当化するという理由にはならないのではないかなというふうに考えているところでございます。

宮本(徹)委員 北朝鮮の核開発は許されないわけですけれども、それを一層加速することになりかねないのがやはりこのアメリカを中心としたミサイル防衛のシステムの強化だというのは、もともと防衛省自身が懸念をしていたことなんですよ。

 先ほど紹介しました、防衛省防衛研究所、東アジア戦略概観二〇〇一、何と言っているか。このミサイル防衛は、懸念国の弾道ミサイルや大量破壊兵器の増強の呼び水になる危険もはらんでいる、弾道ミサイルが依然としてミサイル防衛を凌駕すると考える懸念国に対しては、ミサイル防衛の配備が弾道ミサイル増強へのインセンティブとなりかねないというふうに書いているわけですよ。

 やはり、ミサイル防衛というのは盾と矛の関係ですから、盾を強化したら、矛はそれを突き破るために一層強化されていく、果てしのない悪循環になるだけじゃないかというふうに思います。

 そして、今度の概算要求では、SM3ブロック2AやPAC3の導入、さらにその先に、THAADや陸上配備型のイージスシステムなどの検討を進めるというふうになっています。

 ちょっとお伺いしたいんですけれども、THAADだとか陸上配備型イージスシステムというのはワンセット幾らで、全体としては一体どれぐらいかかるというふうに見ているのか、さらには、今後ミサイル防衛にどれぐらい予算を注ぎ込もうとしているのか、お答えください。

若宮副大臣 昨今の一連の北朝鮮の弾道ミサイルの発射、あるいは弾道ミサイル開発のさらなる進展等を踏まえまして、私ども、日本全域を常時防護し得る能力を強化するために、新規の装備品も含めました将来の弾道ミサイル体制の調査研究は確かに行っているところでございます。

 現時点では、私ども防衛省といたしましては、今委員が御指摘になりましたTHAADですとか、あるいは地上型のイージスシステム等の新規の装備品を導入する具体的な計画というのは持っておりません。

 また、お尋ねの件でございますけれども、システムの構成によってその価格は相当程度変動する要素が強いものになってまいりますので、一セット当たりの備えが、これは幾らだという形での価格というのはなかなか一概に申し上げることが難しいのが現状でございまして、全体として必要となる経費につきましても、全体がどういう組み合わせになるかにもよりますので、現在では想定していないところでございますので、現時点でお答えするというのがちょっと難しいのは御理解いただければと思っております。

宮本(徹)委員 何ぼかかるかわからないというところに突き進もうとしているわけですよ。逆に言えば、THAADだとか陸上配備型イージスシステムの導入まで検討するというのは、今まで一兆五千八百億円かけてきたけれども、それで飛んできたものを全部撃ち落とせるわけではないということの裏返しでもあるわけですよ。そういう点では、ミサイル防衛の今までやってきた効果がないことの裏返しでもあるというふうに思います。

 ですから、私は、軍備増強の悪循環、安全保障のジレンマに陥るのではなくて、これを断ち切る外交努力こそが必要だというふうに思いますが、どうですか、その点は。

若宮副大臣 今までのミサイル防衛が余り意味がなかったのではないかという御指摘でございますが、日に日にやはりあちらの方も技術を向上しておりまして、能力向上というのが明らかでございます。

 先ほども申し上げましたけれども、ことしに入りまして、ほぼ同時に三発を発射いたしまして、約千キロぐらい飛翔しましてほぼ同じような場所に落下したのも、昔はできなかったけれどもことしに入ってできるようになってきた、こういった能力の向上というのもなされてきている状況でございます。

 ですから、確かに、そういったことが全くないのであればミサイル防衛にかける経費というのも必要ないんでしょうけれども、現実に飛んできているというのも事実でございますので、やはり、そういったものが万々が一私どもの日本の国内に、領土、領空、領海に飛翔してこないということは、どういうことになるかわかりませんので、それに対する守りをきちっと固めておくということは、国民の生命財産を守るためには欠くべからざる、必要なものではないかなと思っております。

 その上で、今委員が御指摘になりました、外交の努力が必要ではないか、これはごもっともな御指摘だと思っております。

 核弾頭、あるいは爆発実験を実施したとも発表しておりますし、また、潜水艦からもSLBMを発射して、これがあちらでは成功という形で見ておりますので、さまざまな形でいろいろな形態での発射を試みているところでございます。

 ただ、そうは申しましても、やはり、アメリカや韓国、関係諸国と緊密に連携をしながら、我が国の安全と平和の確保、そしてまた国民の安全と生命財産の確保、それからまた近隣諸国の安定等々を踏まえますと、もちろん、対話が必要であろうと思っております。

 ただ、今、北朝鮮とは、対話のための対話では意味がないというふうにも考えております。北朝鮮が真剣に対話に応じますように厳しい圧力をかけていく必要もあろうかというふうに考えておりまして、政府といたしましても、対話と圧力、それから行動対行動のこの原則のもと臨んでまいる所存でございます。

宮本(徹)委員 時間になりましたので終わりますけれども、北朝鮮の核開発をやめさせるために対話と圧力で臨むというのは当然のことですけれども、北朝鮮の核開発をやめさせる上で一番強い立場というのは、論としては、核兵器廃絶の立場に日本政府自身が立つということだと思うんですよ。そして、核保有国自身にもその立場に立たせていくということだと思います。

 自分は持っているけれどもおまえはやめろという論というのは、やはりそれは反発する論でもあると思うんです。私たちもやめるからおまえもやめなさい、こういう論で国際社会が働きかけてこそ、北朝鮮に対して核開発の放棄を迫る上で一番強い力を発揮するというふうに思います。そういう点でいえば、日本政府自身が、核兵器禁止条約に棄権するような姿勢は変えなきゃいけないということを強く申し上げておきたいと思います。

 最後、もう質問できませんので、麻生大臣には、ミサイル防衛は際限のない費用負担の拡大を招きますので、厳しい査定を求めて、質問を終わります。

御法川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 十二時を回りましたが、もうしばし、あと三十分間おつき合いいただければと思います。

 最初に大臣にお伺いしようということで通告していたんですが、ちょっと順番を逆にさせていただいて、総裁に先にお伺いする形でもよろしいでしょうか。大臣、よろしいですか。よろしいということで、先に総裁の方にお話を聞かせていただきたいと思います。

 総裁、先ほど午前中のやりとりで物価目標の達成時期の御発言をされていて、非常に私はびっくりしたんですけれども、いわゆるインフレターゲット二%を達成していくというのが、非常にこの間ずっと延びているわけです。最初は二年で達成されるという話が三年になって、たしか、一七年度前半ごろというのが一七年度中になっちゃいまして、きょう、総裁はついに、二〇一七年度中に二%達成というのも修正があり得るという御発言をされているんですけれども、この委員会でさんざんお伺いしていて、これまでの日銀のロジックでは、世界経済が後半から上向いてくるんじゃないか、そして油価も上がってくるだろう、そういう背景があったので、それを考えたら、その背景がクリアされれば、恐らく二〇一七年度中というのは達成できるだろうというのが総裁の御発言でした。

 一方で、きょう、修正もあり得る。一方で油価はどうなっていくのか。世界経済は上昇基調にあるという、先ほど総裁は御発言されたばかりなので、この理由、どうして修正があり得るのか、このあたりを詳しく御説明いただけますでしょうか。

黒田参考人 まず、世界経済につきましては、IMFの最新の見通しによりますと、ことしが三・一%、来年が三・四%という成長見通しであります。これは、過去数年にわたって、毎回、世界経済見通しを発表するたびにずっと下方修正してきたんですけれども、今回は下方修正しておりません。

 中身を見ますと、米国について、御承知のように、ことしの前半の成長率が低かったですから、その足元調整をしているということの一方で、中国については成長見通しを維持しておりますし、インド、ロシア等については上方修正しております。また、先進国の中では、日本とヨーロッパについてやはり上方修正をしております。

 そういう意味で、世界経済の回復がかなりしっかりしたものになってきている。特に、全体としては、新興国については上方修正になっていますので、方向としてはしっかりしてきていることは事実だと思います。

 それから、石油価格につきましても、一時かなり下がっていましたけれども、最近は五十ドル台ということで、それが続いていけば、石油価格の下落による下押し圧力もなくなっていく。これは事実でございまして、我々も、今後、今足元でマイナスになっているコアの物価上昇率は次第にプラスになり、二%に向けて上昇していくというふうに見ております。

 ただ、先ほど申し上げましたのは、まだあくまでも金融政策決定会合において新しい展望レポートをこれから議論するところですので、どういう結論になるかは何とも申し上げられませんけれども、今年度について、既にかなり低いところでコアの物価上昇率が来ておりまして、足元でマイナスになっているということでありますので、今後回復していくという姿は変わらないと思いますけれども、一種の足元調整みたいなものが必要になる可能性はあるということでございます。

丸山委員 御自身で世界経済は上向いてきていると。十月にIMFのレポートが出まして、私も読みましたけれども、現に数字も上向いています。油価もおっしゃったとおりだと思うんですが、総裁が修正もあり得ると先ほどおっしゃったわけで、その理由について今のだと答えられていないと思うんですけれども、つまり、そういう形で世界経済と油価に対して、回復してくればおのずと物価の方もという御回答をずっとされてきた。その原因については、おっしゃっているとおり改善しているわけですよ。しかし、物価については、改善しているにもかかわらず先送りしなきゃいけない、修正もあり得るとおっしゃったんです。その理由が飛んでいると思うんですけれども、その修正があり得ると総裁が思われた理由というのは何なんですか。数字だけですか。

黒田参考人 今申し上げたように、今年度の前半において、三カ月ほど前に出した最新の展望レポートのときに予想しておりました数字よりも下がっているわけですね。それはどうしてそうなっているかといえば、石油価格は、今はまた回復してきていますけれども、一時かなり、再度下がっていましたですね。それから、円高がことしの前半進んでいましたですね。そういったこともあって、コアの物価上昇率が想定していたよりも下がってきている。それは、当然のことながら、今年度の物価上昇率に足元調整として一定の下方修正の可能性は出てきているということでございます。

丸山委員 その足元調整も踏まえた上で、さきの通常国会、六月ぐらいまでありましたけれども、その話をさせていただいて、一七年度中というお話だったというふうに思うんです。十月末、今月末ある決定会合でどういう御議論をされるのかというのは注視しておりますけれども、いずれにしろ、この一七年度中というのは非常に大きな点で、それを修正されるというのは非常に気になるところなんです。

 というのは、総裁の任期、ちょうど一七年度で切れるわけで、正確には一八年の四月八日まででございますけれども、つまり、総裁の任期中にはできない可能性が出てきた、お認めになったということなんですけれども、総裁、任期中にやり切るということじゃないんでしょうか。それはできない可能性もあるということでよろしいんですね。

黒田参考人 私の任期が御指摘のような時期になっているということはよく存じておりますけれども、そのことと、日本経済、成長率あるいは物価上昇率がどうなっていくかということとは特別な関係はございませんので、あくまでも、二〇一三年の一月に政府との共同声明で日本銀行がはっきりとコミットいたしました、できるだけ早期に二%の物価安定目標を達成するということに向けて、引き続き政策委員会において努力していくということに尽きると思います。

丸山委員 それは総裁の任期後もやられるということなんですか。総裁がそれをおっしゃってよろしいんですか。

黒田参考人 私の任期は存じておりますし、その先がどうなるかというのは私が決めることでは全くございません。

 ただ、日本銀行として二〇一三年一月に、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということを決め、政府との共同声明でもはっきりそれをうたっているということの点については、私は変更があるとは思っておりませんし、どういう政策委員会のメンバーになろうと、日本銀行として、物価安定を達成しなければならないという使命というか、責務は引き続きあるというふうに思っております。

丸山委員 総裁に重ねてお伺いしたいんですけれども、年明けからいわゆる物価の伸び率の縮小が続いていまして、ついにマイナス〇・五まで行っているというふうに認識しているんですけれども、現状の物価、最新の数字もごらんになって、これはデフレ状況と言えるのかどうかという点を総裁にお伺いしておきたいんです。

 重ねて、今回、九月の決定は、日銀としては大きな転換だという認識でいらっしゃるんだというふうに思うんですけれども、量の方に限界が出てきているんじゃないかと市場関係の方はおっしゃる方も出てきています。ETFの購入拡大だとか、外債の購入も含めて御検討をもっともっとできるんじゃないかなというふうに考えるんですけれども、現行の、デフレにあるかどうかという御判断、最新の数字をごらんになってどういうふうに思っていらっしゃるか。そして、量的緩和の方、もっとできるんじゃないですかと、そういった面は検討されないんでしょうかという点、重ねてお伺いできますでしょうか。

黒田参考人 御指摘のとおり、生鮮食品を除く消費者物価の前年比、これは、エネルギー価格下落などの影響から直近の八月がマイナス〇・五%と、小幅のマイナスになっております。

 もっとも、物価の基調については、生鮮食品、エネルギーを除く消費者物価の前年比を見ますと、二〇一三年十月にプラスに転じた後、直近まで二年十一カ月連続でプラスとなっておりまして、物価の持続的な下落という意味でのデフレではなくなっていると思います。

 先行きにつきましては、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、当面小幅のマイナスないしゼロ%程度で推移すると見られますけれども、先般導入いたしました長短金利操作つき量的・質的金融緩和のもとで、さまざまな要因は先ほど申し上げたとおりでありますけれども、物価の基調は着実に高まって、物価安定の目標である二%に向けて上昇率を高めていくというふうに考えております。

 そこで、この長短金利操作つき量的・質的金融緩和でありますけれども、この内容は、いわゆる総括的検証で述べましたとおり、何よりも、二%の物価安定の目標が実現できていない理由の一つとして、デフレが長く続いてきたために、量的・質的金融緩和導入以降の強力な金融緩和政策にもかかわらず、依然として人々の予想物価上昇率が過去の物価上昇率に強く引きずられる傾向がある。いわゆるアダプティブといいますか、そういったものであることを踏まえまして、今回、消費者物価上昇率の実績値が安定的に二%の物価安定目標を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するという強いコミットメントを導入したわけであります。こうしたことによって、二%の実現に対する人々の信認を高めて、予想物価上昇率をより強力に引き上げていくことを狙いとしております。

 また、総括的検証ではマイナス金利の効果と影響についても検証を行いまして、マイナス金利が国債金利の押し下げを通じて、貸出金利や、あるいは社債金利などの低下にしっかりと効果を発揮する一方で、金融機関の収益に影響を及ぼしたということ、あるいは、イールドカーブの過度なフラット化というものが広い意味での金融機能の持続性に対する不安感をもたらして、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるということが総括的検証で指摘されまして、そうしたことを踏まえまして、新たな枠組みのもとで長短金利の操作を中心に据えまして、経済、物価、金融情勢を踏まえて、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、最も適切なイールドカーブの形成を促していくということにしたわけでございます。

 そこで、今後、それではさらに必要になったらどういうことがあり得るかということでございますが、これは公表文でも書いてございますけれども、イールドカーブ・コントロールの枠組みの二つの要素である、短期政策金利の引き下げ、あるいは長期金利操作目標の引き下げを行うこと、あるいは資産買い入れの拡大が考えられるほか、状況に応じて、マネタリーベース拡大のペースの加速を行うことも考えられるということを指摘しております。あくまでも、必要があれば今申し上げたようなことは実施できるし、実施するということであります。

 なお、御指摘の外債の購入につきましては、御案内のとおり、日本銀行法上、外国為替相場の安定を目的とする外国為替の売買は、国の事務の取り扱いをする者として行うというふうにされております。したがいまして、そうした外国為替の売買については、法律上、財務大臣が一元的に所管されているというふうに理解をしております。

丸山委員 非常にあらゆる手段をとるということはずっとおっしゃっていますし、一方で今回の御発言も踏まえると、市場の感覚も、正直、持久戦、長期戦に入られているなというのがみんな思っているところだと思います。

 総裁がおっしゃったように、今回の日銀の量的・質的金融緩和で私は成果も出ていると思っていまして、一つは、為替の円安誘導から株高にもなりましたし、それがある程度景気を好転させるのにつながったと思います。

 でも、問題は、ここに来て、それは短期的な部分であって、では、中長期的にそれを金融政策として中央銀行がこの部分もずっとコミットメントし続けられるのかどうかというところに限界が来ていて、だからこそ今の現状があるんだと私は思うんです。

 もっと端的に言えば、総裁がおっしゃったように、結局、金融緩和をどんどんやって異次元のことをやったとしても、人々の期待のインフレにはつながっていないし、期待の成長率につながっていないんじゃないかなと。潜在成長率も、期待成長率も低いままで、国際競争力も高まっていないままで、幾ら総裁が必死に頑張って金融緩和にコミットメントを強化していっても、残念ながら物価上昇率の引き上げにはつながらないんじゃないかなというのが、正直、この間、二年から三年になって、次四年になろうとしているこの現状を見たときに素直に考えるところなんです。

 むしろ、なぜ期待の成長率が上がらないのか、期待物価指数が上がらないのかというと、結局のところは、日本社会が抱える構造的な問題の、アベノミクスで言ういわゆる三本目の矢の改革が進んでいない。人口減少とか高齢化が同時進行しているとか、グローバル経済の中での競争の激化に対応できていない、日本の産業競争力がないとか、そういった部分の改革がおくれているからであって、きょう、失礼ながらも少し厳し目に総裁にお話しさせていただいていますけれども、金融政策は実は限界が来ているのに、麻生大臣も含めて安倍内閣の中でここの構造改革、規制改革、税制改革、こういった部分をもっと加速させていかないと、結局、総裁の任期の中でも間に合わないし、延期されたとしても、それ以上でも、結局やりたい部分に届かないんじゃないかなというのは、正直、今、総裁の話を聞いていて思ったところなんです。

 そのあたり、総裁と議論しても、総裁は総裁のできる中で金融政策をしっかりおやりいただけると思いますので、それはそれでお願いしたいところでございますけれども、この点、引き続きまして消費税の議論もありますので、この後は麻生大臣と議論をしながら深めていきたいというふうに考えます。

 総裁、お時間もあると思いますので、ここで退席いただければと思います。また委員会はありますので、その中で議論をさせていただければと思います。ありがとうございます。どうぞ御退席ください。

 それでは麻生大臣、失礼いたしました、先に総裁とさせていただきましたが、最初のお話でいろいろなお話があって、麻生大臣が落選されたころのお話をされていて、八三年のお話をされていたので、私は八四年生まれでございまして、生まれていないときのお話で、田中角栄先生から激励があったという話を聞いて、我々の世代からするともう歴史の人物なんですが、その方からの薫陶を受けられたということで、私は大臣のことをすごく敬愛しておりますし、御指導もいただきたいんですが、一方で、今般の消費税の引き上げの延期の御判断については、どうなのかな、どうなっているんだという部分を少し感じているところがありますので、政策面については議論をさせていただきたいですし、聞いていきたいというふうに考えております。

 まず、今回、延期された中で、会見で総理自身が幾つかの経済の指標を挙げられて、それによって、世界経済に危機があるから、新しい判断で延期するんだという御発言をされています。具体的な数字としては、国際商品価格、あと、新興国、途上国の経済指標、投資の話をされています、伸び率が下がっていると。そして、新興国への資金の流入が減っている、各国の成長率の予測の推移が、そして世界経済の貿易額、五つぐらい挙げられて、総理は会見で、このままじゃまずいので増税はしませんとお話しされているんですけれども、その後のデータについて今政府が、あのときはまずいとお感じになっていて、今どう考えられているのかということをお伺いしたいんです。

 先ほど、日銀総裁との議論でもIMFのレポートの話が出ました。これは最新の十月に出たレポートですけれども、今挙げたもの、一つ、成長率以外の部分はかなり持ち直しの傾向でIMFも出ておりまして、正直、総理がおっしゃるほどの危機だったかというと、疑問を感じるところなんです。

 そこでお伺いしたいんです。政府のこの辺の理解はどうなっているのか、その後、世界経済は危機に陥ったという認識か、それとも危機は継続中なのか、陥っていないのか、陥っていないなら何が変化の理由なのかというそのあたりについて、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは六月でしたかね、六月の会見において総理が言われたように、現時点でリーマン・ショック級の事態や大震災は発生しておりませんので、新たな危機という事態が起こりつつあるということではないということははっきりしていると思っております。

 今回、消費税の引き上げの延期というのは、これは御存じのように、世界経済というのはさまざまなリスク、まあさまざまなリスクというのは、イギリスのブレグジットなんて話はあのころはそんなに騒ぎでもなかったし、また、中国の上海の株の暴落なんて話もそんな話題としては、一過性のものとかいろいろな表現もあったんですが、いずれにしても、さまざまなリスクの中で日本の場合を特にいくと、経済指標が軒並みいい中にあって、唯一、個人の消費というものが力強さを欠くというところが一番大きな問題だったと私は理解をしております。

 個人消費が今GDPに占める比率は七〇%、消費とかいろいろな表現があるんですけれども、そういった中では、やはりデフレの脱却とよく言いますけれども、私に言わせればデフレ不況の脱却であって、デフレでも好況はありますし、インフレでも不況があるのと同じことであって、デフレ不況からの脱却に向けてやはりきちんとやっていくといった意味においては、デフレ不況の脱却はこの三年でしたけれども、もう一回デフレに戻らないという保証は、これはほかの国を見ていると、今からヨーロッパやら何やら、ディスインフレとか言っているけれども、現実はデフレに陥っていくんじゃないのという懸念はみんな各国あるわけで、そういったことを考えますと、きちんとした形で完全なデフレ不況の脱却というものに対しては万全を期しておかねばならぬという観点からは、消費に関しては、消費の伸びというのはGDPの中で占める比率が高いこともこれあり、私どもとしては、この点を考えてもう一回ここはきちっと対応をしておかないと、伊勢志摩サミットでありとあらゆる手段を使ってやるということを宣言しておりますので、そういった観点からも、私どもとしては、その点が一番大きな理由に今日なっていると思っております。

丸山委員 今は大臣、デフレのお話をされまして、先ほども少し総裁とその議論をさせていただきましたけれども、一部少し物価が上がりつつあった、ちょっと最新のデータは少し下がり始めていますが、そこの理由を見てみますと、いろいろな数字を見ますと、日本の潜在成長率というのは余り変わっていないんです。でも、一方で賃金が少し上向き始めたというのがあって、デフレを少し脱却できたかもしれないぐらいの数字になりつつあったんです。

 一方で、大臣、ここの委員会での議論、ずっと御認識を話されているのは、とはいえ賃金がこれ以上上がらないよねというお話をされていて、なぜかというのに、企業が内部留保をため込んでいますよ、やはりこれが出てこない限りだめなんだというお話をされていて、そのためにデフレ脱却できなくて、今のお話だと、デフレ脱却できないから経済に不安を与えていて、消費税も延期せざるを得ないというロジックだというふうに思うんです。

 ではどこに問題があるのかというと、結局、この内部留保を出してもらわなきゃいけないんですけれども、無理くり出させるわけにはいかないというのがいつも総理がおっしゃっている中で、では何なのかというと、結局最後、総裁とお話させていただいた話なんですけれども、金融政策はもう最大限やっている状態です。でも、人々の中に、なぜ企業の方に賃金を上げようと思わせるようにならないのか、消費者の方が物価が上がるように物を買おうと思うようになるのか。貯蓄の率が高いというお話もされましたけれども、でも、日本人もかつては消費していたときもあったわけですよ。

 なので、期待のインフレ率を高めていくためには、将来見通しをよくしないと、結局のところは一緒だ、変わらないんだと思うんです。そうすると、消費税もいつまでも延期しなきゃいけないし、日銀も、じゃぶじゃぶ入れてリスクが高まっていくと思うんです。

 この点、最後の一点は、三本目の矢だと思うんですよ。日本の世の中に、今も年金が委員会で荒れていますけれども、ああいう議論を見ていたら国民の皆さんはますます不安になってしまう。本当にこの国の年金がきちんと十年後、二十年後、五十年後ももつのかどうか、財政がもつのかどうか、国際的なグローバル競争の中でこの国が勝ち残っていけるのか、雇用が維持できるのか、ふえていくのか、未来が明るいのかというところに非常に不安があるからこそ、今の悪いスパイラルが起きていて、企業の内部留保も起きているんだと私は思うんです。

 だからこそ、副総理でもいらっしゃいます麻生財務大臣としてこの点をしっかり改革をやっていただきたいんですよ。その点についてどのように思われますか。

麻生国務大臣 この四年弱の間で、間違いなく、企業というものを見た場合においては、数字において経常利益では最高ということになりましたし、また、よく言われる、就職で言わせていただくと、学生が百人出れば、前の内閣のときは八十一社ぐらいしか求人広告が来なかったけれども、今は百三十七社から来るようになった。だから、最近では極めて就職率が高くなった。これはもう非常に大きい。当然のこととして、とり合いになるから給料も上がったというようなことになっているんですが、それを上回って企業の内部留保はふえておる。

 というのは、少なくとも、二十五兆、二十四兆、二十三兆四千五百億と、この三年間で約七十五兆円ぐらいふえていますので、では、その分で給料は幾ら上がったかといえば、三兆です。企業の設備投資が幾らふえたかといえば、約八兆から九兆ということになりますので、これは何だかんだ言ったって、企業の内部留保がたまっておるということなのであれば、我々のところに給料を下げてくれとか電気を下げてくれとか法人税が高いとか言うけれども、下げた法人税で純利益はふえるはずですが、その純利益は何に使っているんですかと言ったら、内部留保ですからと。あほらしゅうて聞いていられませんよ、そんな話ということで、私どもとしては、給料をもう少しやらないと、今は労働分配率が六七、八までおっこちているんだと思いますが、昔は七七、八あったと思いますし、そういった意味では逆に下がっているんですから、これはどう考えたって、企業の方のいわゆる経営者のマインドの中にデフレがしつこく残っているということは確かです。

 したがって、企業が銀行から金を借りて設備投資をしようとはしない、結果として、マネタリーベースはふえたけれどもマネーサプライは全然ふえない、全然とは言いませんけれども、二%ぐらいしかふえぬということになってくると、これはどう考えても、企業に対しては、金を借りて設備投資をという話をしてみせるという話をするために、いろいろインセンティブを出して、今借りたらこうですよ、ああですよと言っても借りないわけですから、意識を変えるというのは、これは一九三〇年代の後半も同じだったそうだというのは歴史に書いてありますので、どこの時代でもそういった大きなデフレの後にはそういう状態になるんだという話なので、日本も例外ではなかったということなんだと思いますが、我々としてはその点は、今からそこのところはさらに企業にいろいろ言わないかぬということなんだと思って、私ども、労働組合のかわりを政府がやって経団連に賃金を上げろと言っているのはおかしいとあなたらは思わぬのですかとよく言うんですけれども、そういった形をせざるを得ないほど今形としては、だけれども、企業としては先は大丈夫かなとまだ思っているんですよ。僕はそういう気がするんですね。

 だから、政治というものがこれだけやっているけれども、本当かよ、民主党に負けて、またぞろあの時代になるんじゃないのと言われたら、それはこっちも選挙をやっていますから、それは選挙のたびごとにいろいろやりますので、私どもとしてはきっちりしたものをやらないかぬなとは思いますけれども、少なくともそういう意識に経営者の方が変わってくるには時間がかかるかなと思わないでもありませんけれども、ただ、海外に結構いろいろな形で設備投資をして、海外に企業をMアンドAで買ったりする企業がどんどんふえてきて、まあ、日本の人口が減っているのなら海外でやろう、当たり前の話ですけれども、やって、GDPにかわってグロス・ナショナル・インカムというようなことをして、GNIがどんどんふえてきて、特許料がふえ、金利がふえ、配当収入がふえという形で、今までと日本の稼ぎ方が随分変わってきている方向にあるとは思いますけれども、それにしても、国内消費がいま少し伸びないのはいかがなものかという感じが率直な実感です。

 ではどうするんだというそこのところ、いま少し時間がかかるのかなとしか申し上げられないのが残念ですけれども、今は、この三年、四年やった実感ではそういうところです。

丸山委員 時間が来ましたので終わりますけれども、ではどうするんだというところが、結局、不安があるから企業側も先の見通しが見えない。それを打ち消すしかないと思います。そのためにやはり改革が政治の側で大胆に必要だということを申し上げまして、また議論をさせていただきたいということを申し上げまして、私、丸山穂高の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十七分散会


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