衆議院

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第5号 平成29年2月22日(水曜日)

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平成二十九年二月二十二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 御法川信英君

   理事 井上 信治君 理事 土井  亨君

   理事 藤丸  敏君 理事 山田 賢司君

   理事 木内 孝胤君 理事 伴野  豊君

   理事 上田  勇君

      青山 周平君    石崎  徹君

      大岡 敏孝君    大野敬太郎君

      大見  正君    鬼木  誠君

      勝俣 孝明君    神田 憲次君

      斎藤 洋明君    坂井  学君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    竹本 直一君

      津島  淳君    中山 展宏君

      福田 達夫君    宮内 秀樹君

      宗清 皇一君    村井 英樹君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      若狭  勝君    今井 雅人君

      階   猛君    高井 崇志君

      福田 昭夫君    古川 元久君

      古本伸一郎君    前原 誠司君

      伊藤  渉君    浜地 雅一君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       越智 隆雄君

   財務副大臣        木原  稔君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 嶋田 裕光君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        青柳 一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  池田 唯一君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    三井 秀範君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      佐々木清隆君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 開出 英之君

   政府参考人

   (総務省統計局統計調査部長)           千野 雅人君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 加藤 俊治君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐川 宣寿君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    武内 良樹君

   政府参考人

   (国税庁次長)      飯塚  厚君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房総合政策・政策評価審議官)  酒光 一章君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官)  平井 裕秀君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           中石 斉孝君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小林 一久君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           小瀬 達之君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房参事官)           吉本  豊君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局貿易管理部長)     飯田 陽一君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            高島 竜祐君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           石田  優君

   政府参考人

   (国土交通省航空局次長) 平垣内久隆君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十二日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     宮内 秀樹君

  斎藤 洋明君     瀬戸 隆一君

  福田 達夫君     青山 周平君

  宗清 皇一君     若狭  勝君

  重徳 和彦君     階   猛君

  古本伸一郎君     高井 崇志君

  鷲尾英一郎君     福田 昭夫君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     八木 哲也君

  瀬戸 隆一君     斎藤 洋明君

  宮内 秀樹君     鬼木  誠君

  若狭  勝君     宗清 皇一君

  階   猛君     重徳 和彦君

  高井 崇志君     古本伸一郎君

  福田 昭夫君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  八木 哲也君     福田 達夫君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出第六号)


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     ――――◇―――――

御法川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する等の法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官嶋田裕光君、金融庁総務企画局長池田唯一君、検査局長三井秀範君、証券取引等監視委員会事務局長佐々木清隆君、総務省大臣官房審議官開出英之君、統計局統計調査部長千野雅人君、法務省大臣官房審議官加藤俊治君、財務省主税局長星野次彦君、理財局長佐川宣寿君、国際局長武内良樹君、国税庁次長飯塚厚君、厚生労働省大臣官房総合政策・政策評価審議官酒光一章君、経済産業省大臣官房原子力事故災害対処審議官平井裕秀君、大臣官房審議官中石斉孝君、大臣官房審議官小林一久君、大臣官房審議官小瀬達之君、大臣官房参事官吉本豊君、貿易経済協力局貿易管理部長飯田陽一君、中小企業庁経営支援部長高島竜祐君、国土交通省航空局次長平垣内久隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伴野豊君。

伴野委員 大臣、改めて、おはようございます。

 きょうも七時間、そして全て野党からということで、きのう七時間、きょう七時間、予算委員会の間を縫っての当委員会ということで、なかなか大変な時間割りになっておりますが、どうぞ御自愛いただきながらおつき合いいただければと思います。

 大臣はやはりタフですよね。そしてまたその笑顔が、なかなか厳しい追及があるときにその笑顔をされますと、別に手を緩めるつもりはありませんが、ついついというのがあるわけですけれども、大臣におかれましては、例えばテニスに例えるなら、連続で来るサーブに対しても真摯に打ち返していただいて、きちんとお答えいただいているんじゃないかな。私はある面、大物政治家としての振る舞いというようなことは日々学ばせていただいております。

 麻生大臣流に言うならビヘービアということなのかもしれませんが、最近、ともすれば、そういうビヘービアに欠ける、これは私自身の戒めともしなければいけませんが、やはり国民の皆さん方に選んでいただいている、そして国会に行かせていただいている立場の者としては、やはり政治家としての品格、振る舞い、これは本当にしっかりしていかなければいけないな、そのように思うわけでございます。

 きょうもしっかり受け答えをしていただけるものと確信をしておりますが、お役人の方は、皆さん方、はらはらしていらっしゃる部分もあるかもしれませんが、その中で、ついつい本音をぽろりと言っていただいて、質疑に資する委員会にさせていただければ、そんなふうに思っております。

 きょうは、所得税法の閣法、一部を改正する等の法律案ということでございますが、その前に、ちょっと最近の世界情勢について、二、三お聞きしてからじゃないとなかなか本題に入っていけないということもありまして、昨日の夕刊なんかにも、トランプ相場というんですか、アルミや穀物が上昇してきているというようなこともあり、そして私は、ちょっとびっくりしたのが中東政策に対する発言、かなり過激な御発言にはなれてきたつもりでございますけれども、この中東政策についての発言はちょっと看過できない御発言ではないかな、そんなふうに思います。

 御案内のように、パレスチナ国家を樹立してイスラエルと平和裏に共存するというのがこれまでのアメリカの支持してきた二国家共存というものであったと思います。トランプ大統領はこう発言されているんですね。双方が望むなら二国家共存でも一国家でも構わないという、大方針の転換という発言にもとれるわけなんです。

 御案内のように、我が国の経済というのは、原油価格等々、まさに中東の情勢の動向をもろにかぶる。これは新経済対話というのもあるようでございますので、きっちりペンスさんにも言っていただいて、日本の立場、そして余り刺激的なお話をされると、これは本当に世界全体の平和にもかかわることだというようなことで、きちっと御示唆をいただく方がいいのではないかと思うんですが、このあたり、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 この中東を含めまして、新しい大統領の外交政策といっても、まだその方向性がよく見えてきておりません。

 加えて、防衛関係は特によく見えないんだと思っておりますが、フリンという方が辞任をしておられて、きのうマクマスターという方が後任ということに決まっておられますが、この方は少なくとも、陸軍兵学校を出て、大学で、歴史学で博士号を持ったりするような、軍人さんにしては、かなりいろいろ、そういった歴史観みたいなものをお持ちの方なんだと思っているんですけれども、こういう方が改めて大統領の防衛関係、いわゆる国防関係の特別補佐官になっておられますので、その方が今からどんな発言をしてこられるのかというのは大きいんだと思いますが。

 いずれにしても、日本の場合は、中東でいいますと、今日本の石油の原油、これは伴野先生、八二、三%いっていると思いますが、それを、中東からの原油の輸入をあそこに頼っておるところがありますので、これは極めて密接な関係にありますので、これが混乱しますと、かつてのように、第一次中東戦争のときのように、一挙に石油がどんと上がって、今は五十二、三ドルのところが、ついこの間まで百ドルを超えていたわけですから、そういった意味では非常に大きな影響を与えますので。

 我々としては、この地域の安定というものは、これは日本の経済にとりましても非常に大きな影響を与えますので、日本の立場としては、米・中東関係というものの安定というか、そういったものの安定、政治の安定というのは我々の原油政策の意味において非常に大きな影響を与えることはもう間違いない事実だと思いますので、すぐ影響するのはこれが一番だと思いますので、この点につきましては、アメリカの中東政策というのがどうやって動いていくかというのは非常に関心を高く見守っておかないかぬところだと思っております。

伴野委員 先般の日米の首脳会談、御関係としては、まだあちらが体制ができていないということもあるのかもしれませんが、政財界において比較的好意的に受けとめられたと思います。

 そうした中で、やはり本当の親しい友人、親友というのは、あるとき、やはり行き過ぎたときには、本音でしっかり、場合によっては注意喚起をしていただくというのも、これは親しい友人関係であればあるほどやらなければいけない事柄かなと思いますので、その点きっちりと注目していただいて、場合によっては即ペンスさんに電話を入れていただくとか、これからあっていいのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

 電話会談といいますと、昨日もたしかうちの重徳委員からお話があったかもしれませんが、これはムニューチンさんが正確なんですかね、ムニューシン財務長官と電話会談をされたということで、その電話会談、まあ、最初ですから短かったのかもしれませんが、どれぐらい会談をされたのかということと、なかなか電話では、直接会ったわけじゃないという場合ですと、人となりというのはわかりにくいかもしれませんが、電話を通じた向こうから何となく見える人となりといいますか、さらには、為替についてはもう全く触れていなかったという解釈でよろしいですかね。そのあたり、確認も含めてお願いいたします。

麻生国務大臣 過日、総理のお供でアメリカに行きましたときは、このスティーブ・ムニューシンという人はまだ上院の承認が終わっておられない段階でしたので、帰った後、信任をされておられますので、電話で話をさせていただきました。

 電話で話をした感じだけなので、どうだったと言われても、なかなか言いようがないんですが、少なくとも、今度、G20がドイツのバーデンバーデンというところで三月に行われますので、そのときに初めてこの人に会う機会になるんだと思いますので、そのときはよろしくねという話をしたんですけれども。

 この方の経歴を見ていますと、GS、ゴールドマン・サックスにいて、最初の赴任地日本に半年ぐらいおられた計算になるんですけれども、その種の話も自分でしておられましたし、そういった意味では、日本に行くチャンスがふえるんだという話をしておられたので、日本に対抗するとかなんとか、そういったような感じの話のスタートではなかったように思いますが。

 前のジャック・ルーという方は、金融関係の方ではなくて、アメリカの予算局をずっとやっておられた方だったので、アメリカの、政治力というのじゃなくて、金融とかそういうものに詳しいということはありませんでしたけれども、この方の場合は明らかにゴールドマン・サックスにおられて、おやじが、とにかく伝説的なゴールドマン・サックスのトレーダーとして有名な人だったそうですけれども、知っているやつに言わせると、いや、あれはおやじほど有能じゃないけれども、人はこっちの方がよっぽどいいぜといって、私の友達はそう教えてくれたので、その程度のいいかげんな情報しか今持っておりませんので。

 私どもとしては、今からゆっくりこの方と話を詰めていかないかぬところだと思いますが、ここは次官も局長もまだほとんどというところなので、そこらあたりがどんなのが入ってくるのかよく見た上で、こちらの準備はほとんどでき上がっていると思っておりますけれども、ここらとの接点を今から猛烈にふやしていかないかぬところだと思っております。

伴野委員 しっかりと周辺情報も集めていただいて、我々も非常にこのムニューシンさん、関心を持っている一人でございますので、またいろいろおわかりになりましたら、その都度教えていただければ、そういう機会を持たせていただければと思います。ぜひ、我が国の戦後の為替政策について、しっかり最初に打ち込んでいただける、それは本当に麻生大臣が適任者だと思いますので、ぜひそこは戦後の日本の為替政策についてしっかりと打ち込んでいただいた上でのお話にしていただければ、そのように思っております。

 さらに、もう一つ。

 最近、我が国の学者の方も随分心配をされているアメリカの法人税改革についてですが、きのうもこれはちょっと触れられた方はいますけれども、この部分の引き下げ競争みたいなのがアメリカを先頭にして起こされると、これはまた世界経済が混乱することにもなりかねないものですから、ここについてもそろそろ一矢入れていただいてもいいのではないかと思いますが、このあたりはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 今も申し上げましたように、まだ発足したばかりなので、新政権の具体的な、例えば法人税を、多分、法人税ならアメリカが今G7の中では一番高いんだと思いますけれども、その高いのを一挙に、イギリスが今二〇ぐらいですけれども、それをさらに下回って一五にするというんですから、半分以下にしちゃおうという話ですから、それは株がえらくにぎわって、本当かというので、株が二万ドルつけたりなんかしているのは事実ですけれども、本当にそうなるかというのはようまだわからぬというのがなかなか正直なところだと思っておりますが、いずれにしても、米国の法人税がどうなるか、ちょっと今の段階でコメントする段階にないのは確かです。

 その上で申し上げますと、日本の場合は、御存じのように、今年度も課税ベースを拡大させつつ、税率を引き下げるというのをやらせていただいたので、稼ぐ力のある企業というものの税負担を軽減します、そのかわり、企業の積極的な投資とか、そういったものをやってください、賃上げもお願いします、配当もということで、そういった方向に随分変わりつつあるので、体質をかなり転換していただかないかぬ、企業の。この二十年間の状況とは全く違ったものに今この数年で変わりつつありますので、企業の体質も変えていただかないかぬということをお願いしておりますので、法人税改革というのもその方向で考えているんですけれども。

 いずれにしても、企業の取り組みというのをよく見きわめた上で、我々としても、世界じゅうちょっと、随分我々もこう下げてきて、今二九のところまで来ておりますので、そういったところまで、そこそこのところまで我々は、今の段階では国際的に見てもおかしくないところで、それほど企業に大打撃を与えているというような感じでもありませんし、そういったところまで下げてきたんだとは思っておりますけれども、法人税の下げ競争みたいな話は、とにかく、決して先進国の財政状況に資するとはとても思えませんので、私どもとしては、その点はきっちり向こうと話をしていかないかぬところだと思っております。

伴野委員 くれぐれも行き過ぎたアメリカン・ファーストが、最終的には天唾になる可能性が大だと思うんですね。そうしたところもやはり親しい友人としてしっかりとアドバイスをしていただければ、そう思うわけでございます。

 国際情勢といいますと、最近、やはり北朝鮮の話も本当はしたいところでございますが、ここは財務委員会でございますし、きょうは閣法の審議ということでございますので、後で時間が許せば、ちょっとここもぜひ本当はお聞きしておきたいところかなとは思いますが、本日の本題である所得税法の一部を改正する法律案の方に質問を移させていただきたいと思います。

 お手元にちょっと資料を、私なりにつくらせていただきました。民進党として昨年の暮れに政府の方にいろいろ要望事項を、大きく分けて八項目、資料で裏表になっておりますが、左側に民進党の要望ということで、要請をさせていただきました。そして、右側に政府・与党の方針ということで、与党大綱等々、今回の法案に入っているものもございますけれども。その中で、幾つか、昨日の質疑を受けつつ、ちょっと質問を続けさせていただきたいと思います。

 昨日、同僚の古本委員から自動車関連諸税の話がございました。私は、ここはもう本当に抜本的に改革していただく。これは民進党もノーと言うわけがない、どちらかというとそれを推進してきた。三年三カ月、もう忘れられてしまったかもしれませんけれども、抜本的改革に向けて推進をしてきた。現在の政府・与党は、もう本当に一強と言われるぐらいの勢力でございますので、やるということになれば、反対されるものではないと思います。

 きのうの議論を聞いておりましても、今後、この課税がまだまだ生き続けるということになってしまいますと、やはり地方がどんどん疲弊していくんだろうと思うんですね。きのうも大臣は都会の鉄道のお話もされていましたが、やはり鉄道というのは一つの交通量があってこそビジネスモデルが構築できる。現在のJRの状況を全国的に見ていただいてもわかるように、やはり地方がだんだんだんだんこれは今のままでいくと疲弊してくる。そうすると、極端な話、地方の方が頼れるのは車だけになっていくかもしれない。そうしたときに、車に対してさまざまな税がかかっている、しかも、それが二重にかかっているような場合もあるわけでございます。

 ここは地方対策というか、地方への、まさに地方創生というのは安倍政権の一つの大きな課題であるとすれば、地方に元気を与えていただくというのと、昨今、トランプさんの発言というのは日本の自動車にかなり厳しいことをおっしゃっている。だから、これは先んじて日本のいわゆる自動車産業の競争力も高めることにもなると思いますし、ひいては、我が国の地方の、つまり足がなかなか確保できない地域における足をより確保しやすくなるという意味で、消費税を一〇%に上げるのを待たずして、ぜひ御決断としてやっていただく時期にあるのではないかと思いますが、御所見をいただければ。

麻生国務大臣 昨日も少し申し上げましたけれども、一般論として申し上げさせていただければ、地方の方が都市部に比べて公共交通機関が発達していない分だけ、東京でいえば七五%を超える人が電車もしくは地下鉄で通勤できるという、世界の大都市の中で圧倒的に公共交通機関が発達しているのがこの東京なんですけれども。地方に行きましたら、これはとてもじゃない、バス路線ですら危ないという話で、私どものおりました筑豊なんというのは鉄道は軒並み廃止になりましたので。

 そういった意味では、比較的税率も低い等々の話で、簡単に運転できるいわゆる軽、軽自動車というものが非常に多いというので、特にリーマン・ショックが終わった後、エコカーで減税をさせていただきましたけれども、車体課税全体でも税収が約八千億ぐらい減少したと記憶をしております。したがいまして、ユーザーの負担の軽減を図ってきたところなどは確かなんですが。

 いずれにしても、税金のことに関しましては、消費税を上げるときには、この点に関しては、いろいろ、時の状況がどうなっているか、まだ判断が難しいところではありますけれども、税金のことに関しましては、自動車税というのは昔はぜいたく品という前提に立っておりましたので、重量税だ、車体課税だ、いろいろやったんですけれども。

 今の時代は、基本的なところは少しまた全然別のことを考えないかぬとか、いろいろな御意見が今出されておりますので、そういったものも十分に検討していかないかぬところだろうなとは思っております。

伴野委員 いずれにしましても、ユーザー目線、国民目線で、しかも、こういうトランプ政権誕生ということで、我が国の基幹産業である自動車産業の競争力を高めるという意味と同時に、やはり地方の車という、もう本当に最後のとりでとも言える足を守るという意味で、ここは前倒しの英断をしていただくことを希望させていただきたいと思います。

 あと幾つか、よくやっていただいている災害時に関する税制上の措置なんというのは、我々は恒久法というものを望みましたけれども、ほぼ同じような形で取り入れていただいておりますし、若干、大規模災害という判断のところが過去の例とどうだというところはあるのかもしれませんが、ここはよくやっていただいている一つではないかと思います。

 さらに、ちょっと質問をさせていただきたいのは、法人税の中で、きのうも研究助成のお話が出ました。そうした中で、きのうもサービス産業についてもいろいろ御質問があったかもしれませんが、一つは、研究開発税制におけるサービス開発の適用対象の拡大や、あるいは、サービス産業全体において、これはやはり我が国において非常に重要な産業でございますので、とりわけ中小企業においての生産性向上、こうした中で、人材投資促進税制というのも今後しっかりと創設していただくことを考えていただきたいなと思いますが、このあたりはいかがですか、副大臣でも、お答えできる方で結構ですけれども。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から法人税関係、研究開発税制等に含めまして人材投資減税のお話がございました。

 今回、研究開発税制につきましては、御案内のとおり、めり張りをつけるということ、それからサービス開発も含めて対象にするといったようなことで、最近における民間の研究開発投資を促進するための、ある意味、強力な後押しになるための改正を盛り込んでいるわけでございます。

 人材投資の面につきましてもいろいろと考えていく必要があると思いますけれども、今回の法人関係では、ある意味、サービス産業に着目をした、サービス産業が利用しやすいようなところにかなりウエートを置いた改正を行っているところでございまして、そういう意味では、従来の製造ということにウエートを置いたものからかなりシフトした形になっておりますので、そういったことを通じて、ある意味、企業の足腰を強くしていただければというふうに考えているところでございます。

伴野委員 やはり、人に優しい税制といいますか、人材育成というのは、資源のない我が国としてはもう本当に唯一の方法といっても過言ではないかと思いますので、ぜひ、そうした創設も含めてお考えいただきたいと思います。

 それから、事業承継税制とかというのも頑張っていただいている。それから、租税回避への対応、これなんかは、パナマ文書というのがありまして、その分析もしっかりおやりいただけるんだろう、そういうふうに解釈しております。

 そのほか、大臣は総務大臣もおやりになっていたので多分中身的には十分御存じだと思いますが、郵貯さんの関係で、これはユニバーサルサービスの提供が義務づけられているということもあり、特に過疎地域における、いわゆるゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が日本郵便に支払う業務委託手数料に係る消費税について、非課税措置の創設をぜひというお話はもう十分お聞きになっていらっしゃるんじゃないかと思いますが、そうしたことを認めると、公共性が強くなり過ぎるとかいろいろ考え方があるようですが、ユニバーサルサービスを求めていくということは、公共性が高くなるのは当たり前ではないかなというふうに思いますし、過疎地域における郵貯関係の窓口というのは、まさにこれも地方への優しい対応ではないかと思いますので、このあたりは、大臣、どういうふうにお考えになっていらっしゃるか。

麻生国務大臣 この話は、もう伴野先生、民営化するときに、最初にこれがスタートしたときから話題というか問題になっていたところなので。

 御存じのように、消費税を非課税とする取引につきましては、これは消費一般に対して広く負担を求める税であることなどを踏まえますと、いわゆる土地取引とか金融取引とか、それから税の性格上から見て課税することがなじまない取引というのを除きますと、医療、福祉、教育とか、消費者の負担を軽くするべき、いわゆる政策的配慮が特に必要な取引というものに限定をされておりますので、その点からいきますと、郵便のやっている事業者間の事務委託手数料はこの非課税化にはなじまぬのではないかというのが基本的で、そのときからそう言われてきました。

 また、銀行や保険会社が他社に業務を委託することというのは広く行われておるんですが、日本郵政グループのみにその特例を認めるということになると、競合他社との間との、いわゆるイコールフッティングの観点からもこれは問題があるんだと思っております。

 ただ、いずれにしても、今伴野先生がおっしゃるように、これはユニバーサルサービスというものを抱えておりますので、その確保のあり方という問題は私ども認識しております。したがいまして、昨年の与党の税制改正大綱におきましても、これは、郵便事業のユニバーサルサービスの安定的確保の観点から、経営基盤の強化のために必要な措置の実現に向けた検討とともに、引き続き所要の検討を行うということにされております。

 したがいまして、所管は主に総務省になりますので、その検討を進めるべき課題なんだと考えておりますが、その上で、財務省としても、総務省とこの問題について検討させていただかにゃならぬことになるだろうかと思っております。

伴野委員 ぜひ、そのあたりの御検討を続けていただければありがたいかと思います。

 関連して、毎年、税制改正に伴って、国税職員さんの定数確保や機構の充実についていろいろ御議論があり、附帯決議ということで決議されている、ですから、十分重要であるということは御認識されていると思います。

 御案内のように、今ちょうど確定申告の準備ということもあり、私自身もその準備をさせていただく中で現場を見させていただくと、本当に限られた人員で一生懸命やっていらっしゃる。最近は、国民の皆様方からいただく税金だという意識も少しずつ高まってきているのではないか。さらには、マイナンバー等々が導入されるというようなことで、いろいろ環境も変化してくる。さらには、昨今の、権利を主張される、非常に権利ばかり主張される方、いわゆるヘビーなクレーマーの方もいらっしゃる等々を考えると、やはりここはひとつ、きっちりと公平公正に税をいただくという観点からも、職員さんを、しっかりと定数を確保していただきながら、さらには、国際的な見地の対応ということもこれありということでございまして、機構の充実というのもこれからさらに必要になってくるかと思います。

 今、議員間でも附帯決議等々のやりとりがなされているところでございますが、財務省としてはどういうお考えでいらっしゃるか。

麻生国務大臣 これも伴野先生よく御存じのとおりなので、申告件数がえらい増加しておりますし、いわゆる経済活動が、BEPSだ何だかんだで、えらい勢いで国際化しておりますし、また、コンピューターというものが入ってきて、いわゆる徴収とかそういった事務がえらい複雑化しているし国際化しているしというものの結果、実地調査率は減ってきて、今一・一%ぐらいまで下がってきているというのが実態だと思っておりますので、そういった意味では、私どもは人数というものをある程度確保しておかないととてもできません。

 一番わかりやすいものでは、税務署の前にいわゆる税関というのがございまして、税関は、少なくとも、これまで八百万人ぐらいしか一年間入ってこなかった外国人がいきなり三千四百万人ということになりますと、とてもではないけれども、三倍に膨れ上がっております。

 したがって、この税関職員というのは、きのう、きょう入ってきた人がいきなり税関の対応ができるわけがありませんので、訓練するのに時間がかかります。そういった意味では、急遽途中で増員をしたり、退職した人をもう一回臨時にとか、いろいろな形で、今、地方空港に国際線が着いちゃったときの対応やら何やらのために臨時に雇ったりなんかしているんですけれども、いずれにいたしましても、これは戦略的に取り組まないととてもじゃないという感じがいたしております。

 しかし、今までずっと減ってきておったのがやっと六年ぶりにプラスにはなった、去年の話ですけれども。プラスになったからといって、おお、やっとプラスになったかと言ったら、一名ですから。おまえ、ふざけるな、一名なんかだったら純増とは言わねえ、そんなものと言ったんですが、今まではずっと減っていったのに比べればまだよかったという話なんですけれども。

 いずれにしても、いよいよ我慢に我慢して頑張りますから、頑張っちゃうと、その頑張った分だけ、それこそブラック企業とは言わぬけれども、いわゆる過剰労働というような話になって、とてもじゃないということになりかねませんので、ここらのところはきちんと対応できるようにする、かつ機械化する、いろいろなルールはやっていかにゃいかぬのだと思いますけれども、いずれにしても、この点は十分に私どもの方が配慮をしておかなきゃいかぬな、私どもそう思っております。

伴野委員 昨日だったか、大臣の後ろにいらっしゃる秘書官さんを初め霞が関の方の話題もあったかと思いますし、今、プレミアムフライデーというようなこともあって、今度の金曜日がどうなるのかどうか。これは民間が中心になったお話というふうに割り切ることもあるのかもしれませんが、だからといって公務員の方は気力で頑張れというわけにもいかない、やはり同じ人間でございますので。

 きっちりと公平、公正、簡素な税を求めていくには、やはりそれなりの定員確保と機構改革というのが必要ではないかと思いますので、なかなか厳しい折ではありますが、そのあたりもぜひ御理解をいただいて、前へ進めていただければと思います。

 閣法についていろいろ質問させていただく中で、言わずもがなでございますけれども、税の原則といえば、公平、中立、簡素ということだと思います。

 そうした中で、我が党は、先ほどちょっと一覧でもごらんいただいたように、そこにやはり、できたら格差を是正する、そういう税制であってもらいたい。これを、税の恣意的な扱いというのをいかがなものかと言う方も学者さんの中にはいらっしゃるようでございますが、また、格差とは何ぞやという定義的なこともあるのかもしれませんが、OECDなんかでいただくそういう定義なんかから考えますと、つまり平均所得の半分、私は余り好きな言葉ではありませんが、いわゆる貧困層の方々、これが問題になるのは、やはり層ごとの流動性がなくなる、つまり、貧困層になられたら、生涯、もうずっと貧困層である。これが少しでも自分の努力で目指していける方向へ行ければいいんですが、その流動性がなくなる。さらには、それが御自身の一代だけじゃなくて、お父さん、お母さん、あるいはもっと言うならおじいちゃん、おばあちゃんたちの時代からのものがずっと固定化して継承されてしまう、これが多分問題なんだろうと思います。

 我が党は、この格差是正という哲学をやはり税制にもきっちり入れたいということで、古川税調会長を中心に、我々の税制のあり方というのも、先般もちょっと御紹介したかもしれませんが、二月十七日の日に提出をしております。

 内容については、それは議員立法ですし、また取り扱いについては国会の、委員会のというふうにお話しになるのかもしれませんが、そういう、税制の中に格差是正という考え方、少なくとも格差を広げていかない税制にするという考え方については、大臣、どういうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 御提言の中にもありますように、貧富の格差が固定化しない、許容し得ないような格差が生じるというようなことは避けねばならぬ、これはもう極めて明快で、重要な課題なんだと思っております。

 政府としても、この点は税の再分配機能というものを適切に確保するという観点から、所得税とか相続税とかいうものに関しまして、今回、四〇%だった所得税を四五%、相続税を五〇%から五五%でしたか、それから金融所得課税を一〇%から二〇%というような形で行ってきたところですが、見直しの影響を少々見きわめておく必要があるだろうとは思っております。

 いろいろ多岐にわたって御提案が出ておりましたので、それを全部説明するわけにいきませんけれども、基本的に、我々も固定化されるというものは断固避けにゃいかぬところだと思っております。

伴野委員 我が党も今少数でございますので、なかなかその全てを実現するというのは難しいんですけれども、今大臣も御理解いただいているということであれば、ぜひ政府・与党の皆さん方も取り入れていただけるところは取り入れていただいて、特に、我々は今、所得控除から税額控除、さらに税額控除から給付つき税額控除の流れをつくっていきたいと思っておりますので、ぜひ御理解いただければありがたいかと思います。

 いろいろお聞きしたいところでございますが、あと本当に一、二分になってまいりました。

 今回の閣法とは直接関係しませんが、やはりいろいろな御経験をされて、特に、外務大臣もされてきて、総理もされた大臣に、昨今の北朝鮮の動向についてだけは、どういうお考えを持ってみえるのかだけは、御案内のように、今いろいろな制裁措置を厳しくとっていますので、直接何か日本の経済にどんというようなことはないのかもしれませんが、韓国が御案内のとおりの状況である中で、やはりいろいろこれ以上起こると、日本経済にだっていろいろ起きてくるのではないか。だから、それを予測して手を打っておけというところまでは申し上げませんが、どういう対応を少しお考えになっているかぐらいは、ちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。

麻生国務大臣 財務大臣の立場でもありますので、いわゆる北朝鮮の具体的な情勢についてのコメントというのはちょっと差し控えたいと思いますが、その上で、経済関係で言わせていただければ、日本は北朝鮮に対して、人、物、金等々の移動、万景峰、いろいろありましたけれども、そういったものに規制をかけておりますので、貿易を通じた直接的な経済的影響というものは、今、数字の上にはなかなか出てこないんだと思いますが、今のような状況というのが続いて、もし仮にあそこで暴動が起きるの何が起きるのという話になると、あそこからいきなり人がどっと出てくる。数千万、二千七百万だか三千万ぐらいに近い人が出てくる。これは間違いなく、それが南朝鮮、韓国の方に入ってくるのか、船を渡ってこっちへ来るのか、それによって影響が出ることははっきりしておりますので、そういった意味では、中国側もこれを最も恐れているところのように思いますので。

 いずれにしても、これは間接的な影響を含めていろいろありますので、この問題に関しては、既にNSC、安全保障委員会の中でこの問題に関してのあれを立ち上げて、今きちんと対応せないかぬ。これは中国も含めて、これはアメリカも、北朝鮮の問題が短期的には一番問題というのはアメリカ側も非常にはっきりしておりますので、この点については一番注視をしておかないかぬ、大事なところだと思っております。

伴野委員 時間が来ましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 おはようございます。民進党の前原です。

 質問通告をしている順序を少し変えさせていただきまして、まず非課税国債についてお話をさせていただきたいというふうに思います。

 現在、家計の現金資産というのが二〇一六年第三・四半期時点で七十八兆百五十六億円ということで、前期比四・八%増、十九四半期連続で増加している。これは、金融機関の低金利、マイナス金利のことは後で黒田総裁と議論させていただきたいと思いますけれども、そういった状況の中で、どんどんどんどんたんす預金というものがふえてきているわけであります。

 ある全国紙が、まあ読売さんでありますけれども、先般、政策提言をされまして、無利子あるいはマイナス利子の相続税非課税国債というものを日本は導入すべきではないか、こういうお話がございましたが、まず、その導入の是非を議論する前に、どんなメリット、デメリットがあるのかということについて、財務大臣からお答えをいただきたいというふうに思います。

    〔委員長退席、藤丸委員長代理着席〕

麻生国務大臣 御指摘の相続税非課税国債というのは、その利子をゼロとかマイナスとかいうのにする一方で、その相続税に関しては非課税財産として取り扱う国債という、定義からいえば、ちょっと長ったらしい定義で恐縮ですけれども、そんなことになるんだと思います。

 非課税で軽減される相続税額が失われますので、その分だけ、利子収入よりも多いと考える者しか買いませんから、結果としては国の財政収支は悪化するのではないかというのと、一部の富裕層の優遇につながるのではないかといった論点があるということはもう前々からよく言われていることなんです。

 一方で、非課税国債というのは、今御指摘になりましたたんす預金、よくこれは何十兆と言われているんですが、本当にどれくらいあるのかよくわかりませんけれども、たんす預金を引き出すというメリットがあるという主張をされる方が多いということもこれは確かです。

 ただし、国債の発行に当たっては、いわゆるマネーロンダリングというものの対策上、金融機関が本人確認をした上で、本人名義の口座で管理されることとなりますので、このような中でたんす預金を引き出す効果が本当にあるのかといった指摘もあるといったことで、今、相続税非課税国債についてはいろいろ慎重に対処すべきではないかというのが、いわゆるメリット、デメリット、いろいろあるんだと思いますけれども、ちょっとまだそこまで全部詰めたわけではありませんけれども、大体そういうところだと思っております。

前原委員 無利子とマイナス利子では、また全然見え方が違ってくるというふうに思うんですね。

 マイナス利子にいたしますと、つまりは国の収入がふえるということになるわけですね。つまりは売れた段階で国の収入になるということでありまして、例えば、二〇一七年度の個人向けの国債というのは、これは前年度を上回る二兆九千五百億円の発行ということで、年率〇・〇五%を最低保証するということで発行される、こういうことでありますけれども、逆に、マイナス〇・〇五にしたらどうなるかというと、同じだけ売れるとすると、大体千四百七十五億円国の収入になる、こういうことになります。

 先ほど麻生大臣が、合理的に考えれば、相続税で払うのがいいのかあるいは非課税国債にするのが得なのか、どちらかを選ぶはずだ、こういうことをおっしゃった。それについてはそのとおりだろうというふうに思うんですけれども、先ほどマネーロンダリングの話をされましたけれども、違う形で物事を考える方々もたくさんおられるというふうに私は思うんですね。

 そういう意味では、無利子国債ではなくてマイナス利子にすると国の収入にもなり得るということで、あとは先ほど財務大臣がおっしゃった相続税の減免分との見合いをどう考えていくのかということになろうかと思いますが、マイナス利子の非課税国債ならどうお考えですか。

麻生国務大臣 これは結構長い話でして、前原先生、これは多分、読売の渡辺恒雄という、まあ、偉い方がいらっしゃるんですけれども、この方が前々からこの話を、まだ金利がこんなに下がる前のころ、民主党政権の前の時代ですから、もう十年以上前から非常に言っておられた話なんです。

 極端なことを言いますよ。これは私の話じゃない、極端な話なんですけれども、今、幾ら相続税が入っているんだといったら、二兆何千億ですという話を知っていましたのでそう申し上げたら、早い話が一割マイナス、だから、一億買ったら十年したら九千万円しか返ってこねえという国債をやる。そうすると、一割減だけれども、少なくとも、当時はまだ物が下がっている時代でしたが、大した損はないじゃないかと。そうすると、国としては、二兆五千億分だけやれば、一割だから二十五兆毎年発行しても、全然金利は痛まねえだろうがと。財政的に極端な言い方をすれば、大体そういう話です。

 そういうのをやって売れるかという話になって、ナベさん、それ、売れますか、そんなものがということを申し上げたことがあるんですが、相続税の五〇%を払うよりはそっちの方が安い、そういう計算だって成り立つじゃないかと言うから、はあ、なるほどと。それで国が助かるんだからと。それに、金持ちから全部捕捉できてねえだろうが、それはみんなたんす預金なんじゃねえか、だから、捕捉されてねえんだったら、そっちの方がよっぽど現実的じゃないかというお話をいただいたことはあります。

 事実、そういった面は否定できないとは思いますけれども、これはマネロンの関係からいくとなかなか難しい問題もいろいろありますので、今おっしゃっている数字というのはいろいろなことが考えられることは確かだと思っております。

前原委員 長々この話をするつもりはないんですが、現時点において、こういう無利子非課税国債、あるいはマイナス利子非課税国債を財務省として考えるおつもりはないということでよろしいですか。

麻生国務大臣 今この段階で、将来はわかりませんよ、今この段階でマイナス金利国債を直ちに発行しようと思っているわけではありません。

前原委員 私も、この問題について一番大きなポイントというのは、たんす預金を出すということはいいんですけれども、結局、それがいわゆるどういうお金なのかということですよね。それがまさに資金洗浄として使われるということであってはいけないという観点から、傾聴に値する意見ではあるけれども、もしやるのであれば、そういったところはしっかりやらないと国民の理解はなかなか得られないのではないかということは申し上げておきたいと思っております。

 さて、次に、PBの話に移りたいというふうに思います。

 二〇二〇年、これは麻生政権のときも恐らくこういう考え方を持っておられたし、我々の政権のときも二〇二〇年PB黒字化というものを掲げていたわけであります。

 グラフの二をごらんいただけますか。

 国、地方の基礎的財政収支、対GDP比ということで、上の方が経済再生ケースというもので進んでいった場合、つまりは名目成長率三%台、実質成長率二%台ということで行った場合に、言ってみればどういう道筋が見えてくるか。それから、下の方はベースラインケースということで、もう少し名目も実質も成長率が落ちる場合でありますけれども、この経済再生ケースで行ったとしても、国、地方で二〇二〇年には八・三兆円足りないということでありますが、この二〇二〇年PB黒字化目標というのは堅持されているということで、まずお聞きしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 今おっしゃいましたように、将来にわたって、これは金利水準とか経済成長率について、ちょっと確たることを申し上げることは難しいんですけれども、債務残高対GDP比というものを安定的に引き下げるためには、これはプライマリーバランスというものの黒字額というのを一定程度確保する必要があるというのは、もうこれは間違いなく御指摘のとおりなんだと思います。

 足元においてプライマリーバランスは赤字状態にあるので、まずは二〇二〇年度までのプライマリーバランスの黒字化を達成せよというのを目指してやっておるんですけれども、そのために、まずは経済成長を軌道に乗せて税収をふやす。税収をふやして、そして財政健全化につなげる。縮小均衡でやるんじゃなくて、税制を伸ばしてやっていくというやり方で。現に、税収はおかげさまで十五兆円ほど増加しましたし、消費税がそのうち六兆三千億ぐらい入っていると思いますが、そういった形になっております。

 また、二十九年度予算でいいますと、かつて社会保障費というのはぶわっと一兆円ずつぐらい伸びていたものを、少なくともこの四年間ぐらいの間は大体五千億ぐらいのところに、半分ぐらいに引き下げてきております。

 また、この経済再生計画をやっていくに当たって、一般歳出の伸びというのを大体五兆三千億ぐらいというのを目指しているんですけれども、それも一応達成をさせていただいた上でやらせていただいておるんですが。いわゆるあらゆるものを動員してこれをやっていこうとしておりますので、まだこの中で、前提条件というのは、この総務省が出しているような前提条件と違って、いわゆる一兆円のところが五千億になったり、いろいろなことをしていきますし、さらに我々としては努力をしていかねばならぬところだと思っております。

 やはり財政健全化というのを目指してやるということを、きちっと政府としてこれを出し続けておくということは大事なことで、最近、クリストファー・シムズみたいな人が出てくると、何となく、あれいいじゃんとかいうようないいかげんなことを言うのがいろいろ出てくるのは世の中確かですから、そういった意味では、我々としては、健全化と財政バランスというのを両方目指してきちんとやっていかないかぬところだと思って、厳しいところだとは思っておりますけれども、その方向で進めようと思っております。

    〔藤丸委員長代理退席、委員長着席〕

前原委員 実績、御努力のことについては、その前提でいろいろとお話をされたんですけれども、私が伺っているのは、二〇二〇年のPB黒字化というものについては、達成するという政府の目標は変わりませんねということを伺っているわけです。端的にお答えをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 達成を目指して頑張ります。

前原委員 では、八・三兆円それでも足りないわけです。今おっしゃったようなさまざまな取り組みをされている、そして、経済再生ケースというのは今以上の経済再生ですよ。

 つまりは、今の経済成長というものは、恐らくこの経済再生ケースとベースラインケースのちょうど中間ぐらいだと思うんです。そうなると、八・三兆円と十一・三兆円の間ぐらいに入ってくるわけですね、今のままの経済成長でいくと。だから、税収増になっているというのはそのとおりなんですよ。でも、一番いいケースでも、今の政権の税収増、これは後で金融政策が大きいんだということを話をしますけれども、それでも八・三兆円足りないわけです。それで、実現するということであれば、この八・三兆円は何で埋めますか。

麻生国務大臣 これは、二〇一八年の中間の目安というのが出た段階でもう一回考え直さないかぬというのはまず基本です。

 その上で、我々としては、まず、先ほど申し上げたように、一兆円のところは五千億を足したり、いろいろな形でやらせていただいておりますのが一つ。

 それから、やはり物価やら何やらというものが、給与やら何やらいろいろ上がってきますので、そういったものを見ますと、消費税やら何やら、消費の分も上がってきたり何かするので、いろいろな意味で、過度に期待を寄せるというのは甚だ危険ではありますけれども、いろいろな不安定要素もありますので、そういったものをきちんとした対応をして、私どもとしては、財政削減を図りながら、やはり経済成長でいわゆる設備投資やら給与やらそういったようなものをどんどんやってもらうという、民間の企業は幸いにしてこの三年か四年間ぐらいで七十五兆円ぐらい内部留保がふえておりますので、そういったものを含めましてきっちりやってもらわないかぬと思っております。

 まだまだ、確定された、これが答えだというものを持っているわけではありませんけれども、その八・三をできるだけ埋めるというつもりでやっていかないかぬところだと思っております。

前原委員 そんな漠とした話では、失礼ながら八・三兆円なんか埋まらないわけですね。

 では、先ほど歳出カットということをおっしゃった。では、歳出カットということであれば、何をどのぐらい減らすかということを明確に言わないと埋まりませんよね。それから、物価上昇になって、そして景気がよくなったら消費増税が上がるということになると、さらに今の経済成長よりも上を目指すというようなことになってくるわけでありまして、それは恐らく難しいと思うんですよ。

 今でも、先ほど申し上げたように、経済再生ケースとベースラインケースの間ぐらいを行っていますので、この経済再生ケースをさらに上回らないと、今おっしゃるような税収増にはつながりませんから。

 では、どうやってその経済成長をやられるのか。それから、内部留保ということをおっしゃいました。確かに三百七十兆ぐらい内部留保がありますが、では、それをどう使ってこの八・三兆円を埋めるのかということはもっと具体的に言ってもらわないと、気合いだけでは全然話になりませんので、少しこの八・三兆円を埋める具体的な話をしていただけませんか。

麻生国務大臣 全くおっしゃるとおりだと思いますけれども、我々としては、今言われましたとおりに、二〇一八年の時点で、大体目標達成に向けた目安は二〇一八年ととにかく我々出したけれども、二〇一五年で大体半分になると言って、これも最初やり始めたときにはいきっこねえと言われて、これは達成できましたから。だから、今回も、二〇二〇年でまたチャラにしますというところまで目指しているんですけれども、少なくとも二〇一八年でどれぐらいいくかよく見た上でやらないと、計画を立てたって、そんなものはうまくいくという保証はありませんから。

 そういった意味ではおっしゃるとおりなので、進捗状態を評価しながら、その上で、二〇一八年の予算の姿とか、また、いわゆる二〇一八年における経済状況とかいうのを踏まえた上で、おっしゃるように計画を、再計画を練るなり何なり、その段階でお示しできるようなものにつくり上げないかぬと思っております。

前原委員 端的に財務大臣にお伺いしますが、来年見直しをする、これは一貫して予算委員会でも御答弁をされている、財務大臣も総理も答弁されているとおりだというふうに思います。

 来年その見直しをするということでありますけれども、先ほどおっしゃったように、歳出カット、それから経済成長による税収増というようなものだけでこの八・三兆円というのは絶対無理ですよね、来年見直すとしても。いけますか。歳出カットと、あるいはこの経済再生ケースを上回る経済成長というのはできますか。できないでしょう。これは来年にならなくたって、今考えたってわかる話ですよ。二〇二〇年というのはあと四年しかないんですから。

 そういう意味においては、来年を待たなくても、この八・三兆円、経済再生ケース、つまり、今そこまで経済成長率がいっていないのに、それでもなかなかいかないものについて、では、来年は見直してこの八・三兆円が埋まるというふうに思っておられますか。

麻生国務大臣 これは今の段階で確たるものをしかとして持っているわけではありません。少なくとも、今度のトランプさんなんという人が出てくると、何を言ってくるかわからぬという部分も正直なところありますので、それが全ての、経済を振り回されるわけではありませんけれども、私どもとしてはそういうものを考えております。

 今、一〇〇%自信があるかと。私どもとしては、立てた目標に向かって頑張っていくということを申し上げる、今の段階ではそれ以上はちょっと、これをやってこうしてこうなるという数字を、確たることをお示しできる段階にはございません。

前原委員 いや、何度も予算を編成されてきて、経済成長含めて、そして歳出の見直しの努力もされていると思いますよ。

 では、歳出カット、今よりの経済成長というのはできますか。今よりさらに歳出カット、そして、今よりの経済成長で税収増というのは本当にできますか。

麻生国務大臣 もう前原先生御存じのように経済は生き物ですから、どういうふうに出てくるかは、これはもう正直わからぬです。わからぬですけれども、少なくとも、社会保障関係費が一兆が五千億になるというのを予想した人は一人もいませんから。

 昔、小泉内閣のときに、しゃにむにやれと言われて、何もかもむちゃくちゃにやって、全部で二千億、続けて二年やった、あれで終わりです。今回は少なくとも五千億で四年来ましたので、そういった形では一応のものができ上がりつつあるんだとは思ってはいるんですけれども、さらに、ジェネリックだ何だといろいろなものができますと、またその中が変わってきますし、いろいろなものが変われるだろうとは思っておりますけれども、今おっしゃるように、おまえそれで、税収もふえるから歳出も全部できて、ちゃんと八兆何千億埋まるかと言われれば、我々としては、立てた目標に向かって努力をすると言う以上に、今の段階で申し上げる段階ではございません。

前原委員 時間の無駄のようですので。

 越智副大臣にきょうは来ていただいていますけれども、先般の予算委員会で石原大臣にお越しをいただいて、三枚目のグラフをごらんいただいて、そして、こういう質問をさせていただきました。

 この三ページは、これは内閣府が出されているものでありますけれども、中長期の経済試算と言われるものでありまして、一番上の表を見ていただきますと、経済再生ケースが上で、下にベースラインケースというのがあります。これをベースに、そして、下の折れ線グラフは、対GDP比で債務残高がどう推移していくのかということが書かれているものであります。

 ベースラインケースだと発散していきますねということが書かれているわけですね。つまり、減りませんと。債務残高、GDP比は減りませんということですけれども。経済再生ケースだと、これだと何かずっと減るように見えていくんですが、そうではないんじゃないですかと。つまりは、その下の債務残高対GDP比が減少する条件というのは、この数式なんですね。

 そして、上の表に戻っていただいて、経済再生ケースの二〇二三年、二〇二四年、二〇二五年、ごらんいただけますか。名目GDP成長率と名目長期金利というのが逆転するんですね。経済再生ケースですから、経済成長をするということになると、金利が上昇する、こういうことになるわけですね。

 そうすると、二〇二二年までは名目GDP成長率というのが高いわけですけれども、二〇二三年以降は逆転していくんですね。逆転していくということになるわけですが、そうすると、もちろん、この条件の式の中の金利というものを名目長期金利で当てはめるというのは、これは少し違うんです。

 つまり、このものではなくて、今まで、例えば国だったら九百兆円ぐらいの借金があって、百兆ずつぐらい借りかえをしますね。そうすると、だんだんだんだん、言ってみれば、安いときに仕入れた金利が、百兆ずつ借りかえていくということになると、景気が回復していくという経済再生ケースにのっとっていくと、だんだんだんだん金利が上がっていくわけですね。

 だから、この名目金利、長期金利というのはある意味で上限であって、数式に入れる金利というのはもう少し低くはなるのでありますけれども、ただ、計算ができないので、ある意味その上限である金利というものを、この名目金利でこの数式に入れると、二〇二三年には二・三七兆円、二〇二四年には七・三一兆円、二〇二五年には七・五三兆円の、言ってみればアッパーのPB黒字をやらなきゃいけない、こういうことになるわけですね。

 しかし、この図を見ていきますと、二〇二六年以降が本当に下がり続けるのかという心配があるわけです。これは発散するんじゃないか。つまりは、後で黒田総裁と議論させていただくところもそこにあるわけでありますけれども、日本の借金は莫大ですから、発散するんじゃないかというところで、石原大臣に二〇二六年以降のいわゆる試算を早く出してほしい、こういうお願いをしたわけですね。ちゃんと収束するのか発散するのか、この辺をしっかり調べてほしいということを申し上げたわけですが、これについては、いつ内閣府としては出していただけますか。

越智副大臣 まず、政府としましては、二〇二〇年度のプライマリーバランス黒字化と債務残高対GDP比の着実な引き下げという財政健全化目標の実現に向けまして、取り組んでいるところでございます。

 そして、中長期試算でございますけれども、これらの目標に向けた改革の進捗状況を点検するということを目的としておりまして、この目的に沿った範囲で試算をお示ししているということでございます。

 そして、先ほどの御議論の件でございますけれども、二〇二六年度以降の試算ということでございますが、この機械的な試算につきましては、先日、二月十四日の予算委員会で大臣からお答えさせていただいたとおりでございますけれども、現在検討させていただいているところということでございます。

前原委員 これは副大臣、そんなに難しい計算ではないと思いますよ。私も、三カ月ですけれども経済財政担当大臣をやらせていただいて、内閣府におりましたのでわかりますけれども、そんなに難しい話ではありませんよ。そんな、数十日、数カ月かかるような話ではないですね。

 これについては、例えばある程度区切りを区切って出していただけませんか。そうじゃないと、財政に関する議論とか金融政策に関する議論とかできないんですよ。いかがですか。

越智副大臣 中長期試算の試算期間を二〇二六年度以降に延長するということにつきまして、委員も大臣としての御経験があるのでよく御存じのところだというふうに思いますけれども、十年程度の推計期間を今のところ念頭に置いて作成しているものでございますけれども、推計に必要な前提条件の置き方とかあるいは推計値について、それを延ばすと不確実性が非常に大きくなるということで、まずはここは慎重な検討が必要だということは申し上げさせていただきたいというふうに思います。

 その上で、繰り返しになりますけれども、ちょうど一週間前でございますけれども、大臣からお答えさせていただきましたが、今、その慎重な検討が必要だということも踏まえて検討させていただいているところでございます。

前原委員 委員長、どの程度でいわゆる二〇二六年以降の推計値を出していただけるかということについて、理事会で諮っていただいて、そして、その年限を決めていただけませんか。ある時期を決めて、繰り返し申し上げますが、そんなに時間のかかる話ではありません、したがって、財務金融委員会として、資料をこの日までに提出しろということを決めていただけませんか。

御法川委員長 いつまでに決めるかも含めまして、理事会で協議をしたいと思います。

前原委員 これはできるだけ早く出していただきたいと思います。

 つまりは、来年見直しを、先ほど麻生財務大臣もされるということでありましたけれども、絶対無理だと思うんですよ、二〇二〇年のPB黒字化というのは。これは無理ですよ。努力するとしか今は答弁できないと思います。それはそうでしょう、私がそちらに座っていたらそういう答弁しか恐らくしないと思いますけれども、無理ですよ。そのときにどういうような、言ってみれば財政再建計画を立てるかということと今から議論をする金融政策とはかなりリンクしますので、そういう意味では、しっかりとやはりこういったものは早期に出していただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。

 出されるということは、石原大臣、答弁されたんですから、しっかりと期限を区切って、早く出すということを越智副大臣からも事務方に指示していただきたいというふうに思います。

 さて、黒田総裁、お待たせをいたしました。

 まず、議論の前提に当たって、いわゆるCPIについて若干楽観的な見通し、今は低いですけれども、原油価格の上昇ということもあり、CPIは上がるんじゃないかという話がありますけれども、ただ、今までの四年間のCPI、物価上昇を見ていると、円安になってそして物価が上がるということと原油価格、この二つが大きな要因だったというふうに私は思います。

 しかし、トランプ政権になったということもありますけれども、あるいは、マイナス金利つき異次元の金融緩和ということをやられたときから、なかなか為替が動かなくなりましたね。もちろん、為替を円安に誘導するということが目的ではないと思いますけれども、ただ、経済に好循環を与えるという意味においては、円安、結果としての円安というのは非常にプラスに、特に株価などについてはなっていたというふうに思います。個人については、私はマイナスだと思いますよ。

 つまりは、物価上昇と実質賃金というのは完全に、言ってみれば対比になっていましたので、個人の可処分所得においては、むしろ、無理やり物価を上げて、名目賃金がそれほど上がっていない中で可処分所得は減っていたということについて言うと、だから、私は、六割を占める個人消費が伸びないんだということの一つの大きな要因になっているというふうに思います。

 為替が円安に振れるということが物価上昇の大きな作用、働きをしていたというふうに思うわけでありますが、これはなかなか、これからトランプさんになって、そして金融政策についてもやりにくいということと、あるいは、もう去年からは金融緩和をしてもなかなか為替にはきかなくなってきた。

 そして、原油価格にしても、今一バレルが五十数ドルですね、私は、これ以上なかなか上がりにくいと思いますよ。つまりは、これ以上上がっていくということになると、またシェールオイルがいわゆる採算が合うということになってくると、なかなかそこでまた供給が出てくるということになるわけでありまして、よほど中東で何か大きなことが起きない限りは、私は、原油価格もなかなか上がらないということになってくると思うんですね。

 そうすると、この一年ぐらいは原油価格が上がったことに対するプラス要因が働くということになると思いますけれども、では、その先の一年については、原油価格の上昇というのは横ばいになったらもう織り込み済みになっちゃいますから、CPIに働きかけられないということになりますね。そして、円安になりにくいということになると、どうやって二%の物価を本当に実現させるのか、どういう経路で実現させるのか、そのことについてお答えいただけますか。

黒田参考人 まず、為替レートの動きが経済あるいは物価に影響を与えるということは、そのとおりであります。

 ただ、為替レートの先行きというのは非常にいろいろな要素で決まってきますので、IMFの経済の見通しの場合でも、私どもの展望レポートの見通しの場合でも、為替レートの先行きについて特定の予想をするということは基本的にしておりませんで、過去の一定の期間のレートがそのまま続くということを経済見通しをつくる場合の前提にせざるを得ないわけでございます。

 そうした上で、最近の一番新しい展望レポートを踏まえて申し上げますと、今後、三つの要素があって物価上昇率が次第に上がっていくというふうに見ております。

 第一は、経済成長率が今年度、来年度と一%を上回るような実質経済成長をする、今年度については一・五%程度ということだと思いますが、これは、日本経済の潜在成長率が、内閣府の推計ですと〇・八ぐらい、私どもはまだ新しいGDP統計できちっとした推計のデータがありませんのでやっておりませんが、恐らくゼロ%台半ばぐらいというふうに見ておりますので、いずれにしても、一%ないし一%台半ばといった成長が続く限り、GDPギャップは減っていく、それから失業率もさらに下がっていく可能性がある、こういったことを通じて、物価や賃金を押し上げていくという効果があるということが第一でございます。

 第二に、おっしゃるとおりに、原油価格は今五十ドル台半ばでありまして、昨年の初めごろから三十ドルを一時割るというようなところからここまで来たわけですので、石油価格が物価を押し下げる効果はことしの初めごろにほぼゼロになり、当面若干プラスになってくるということは事実である。

 その先は、これはまた、石油価格については、石油価格の先物市場の数字をそのまま借用するという形、IMFもそうですし私どももそうなんですけれども、そういうふうになっておりますので、その先、どんどん上がっていくという市場の見通しになっておりませんので、おっしゃるように、石油価格の上昇が物価上昇率を押し上げていくという効果がずっとプラスで続くとは言えませんけれども、先物市場の動向を見ても、下がっていくという見通しではないので、マイナスになってくるという可能性は今のところないということでございます。

 したがいまして、石油価格が、これまでマイナスの影響を持ったものがなくなり、当面若干のプラスの効果を持ち、その先はマイナスになることはないということ、これが第二点でございます。

 第三点は、そうしたことで実際の物価上昇率がプラスになって、だんだん上がっていくと、日本の場合は、物価上昇予想というものが過去の物価上昇率に引きずられるという形になっておりますので、物価上昇の期待というか予想自身も上がっていくだろうということで、この三つの要素から、物価上昇率は次第に上がっていって、今の展望レポートの見通しでは、前回と同様に、二〇一八年度ころに二%程度に達するであろうという見通しになっております。

 したがいまして、この見通しには、何か円安に進むとか、あるいは反対に円高になるとか、そういう為替の予想は入っておりませんで、そういったもとでも物価は着実に上昇率を高めていくだろうという見通し。ただ、念のため申し上げますと、この展望レポートの中でも、経済見通しについても物価の見通しについてもやはり下方リスクの方が大きいだろうというのが委員の大方の見方でございます。

前原委員 いつも総裁には申し上げているように、私は、無理やり二%にする必要はないと思っているんですね。つまりは、先ほど申し上げた、私が経済財政担当大臣をしたときは、二%は中長期の目標にして、一%以下のプラスの領域、とにかくデフレに戻らないことが大事であって、二%を何が何でも実現するということについては、そろそろ私は見直された方がいいというふうに思います。

 最後の質問になりますけれども、マイナス金利を導入されて一年になりますね。これについては、プラス面、マイナス面があると思いますけれども、私は、マイナス面の方が多かったのではないかというふうに思います。

 金融機関の、言ってみれば収益低下、それが貸し渋りになって、実質的な金融引き締めにもなっている。あるいは、プラスの面で見られている住宅投資も、結局、不動産バブル的な、これから人口が減っていって空き家が多くなるようなものを、無理やりそういったものをつくらせているというようなところでのいわゆるアパートの件数が高くなっているというようなことで、私は、マイナスの方が大きいというふうに思います。

 一年たって、これは検証をしっかりすべきだと思うんです。そして、これについては、デメリット、メリットがどうあって、どう検証したのかということが問われるべきだと思いますが、この点についてどう検証されていますか。

黒田参考人 まず第一に、マイナス金利を昨年の一月に導入いたしまして以降、金利が大幅に下がりまして、それが、昨年の前半の世界経済の減速とかさまざまなリスクが顕在化するもとでも、企業や家計の経済活動をサポートしてきたという一定のプラスの効果があったというふうに見ております。

 他方で、御指摘のように金融機関の利ざやが縮小しておりまして、特に預貸業務への依存度が高い地域金融機関にとっては収益面の影響が相対的に大きくなっていることは確かであります。

 ただ、短観その他のさまざまな調査によりましても、金融機関の貸し出し態度は引き続き積極的でありまして、貸し渋りというようなことは今のところ起こっておりません。むしろ、二%台後半の貸し出しの伸びでございまして、このところ少し貸し出しの伸びが高まってきているということであります。

 ただ、昨年の九月に総括的検証というものを行いまして、これは二〇一三年の四月以来の量的・質的金融緩和と昨年一月に導入したマイナス金利の効果を総括的に検証したものでございまして、その中でも、確かに長期、特に超長期の金利が物すごく下がってフラット化したということが、保険や年金の運用などに影響して、マインド面などを通じて経済活動に悪影響を及ぼす可能性があるということも指摘しております。

 そうしたことを踏まえまして、昨年の九月に長短金利操作つき量的・質的金融緩和というのを導入いたしまして、経済、物価、金融情勢を踏まえて最も適切と考えられるイールドカーブの形成を促していくということにいたしたわけでございます。

 したがいまして、御指摘の点は私ども十分認識しておりまして、今後とも、現在のイールドカーブ・コントロールがどのような影響を及ぼすかということは毎回の金融政策決定会合で議論してまいりたいと思いますが、御指摘の貸し家業に対する貸し出しがふえていることは事実であります。

 ただ、これまでのところ、それがいわゆるバブルのようなことになっているとか、あるいは金融機関の貸し出し態度が非常に甘くなっているということではなくて、金融機関に対しては、不動産業向け貸し付け、あるいは、おっしゃるようなアパート、マンション建設向けの貸し出しについてはリスク管理をきっちりしていただきたいということは常に申し上げていますし、もちろん金融庁も含めて、こういった点は金融機関とは引き続き十分対話していきたいというふうに思っております。

前原委員 時間が来たので終わります。

御法川委員長 次に、階猛君。

階委員 民進党の階猛です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

 私も、もともと財務金融委員会におったんですが、最近は法務委員会の方がいろいろと忙しくて、そちらの方の関係の質問ばかりしていたので、久々にきょうは財務金融関係の質問をしたいなと思っておったんですが、たまたま税法を見ておりましたら、何と共謀罪にかかわるようなものを今回の改正の中で見つけてしまいましたので、これを避けて通るわけにはいきません。まず、その点から質問させていただきたいと思います。

 資料をお配りしておりますが、一ページ目をごらんになってください。電磁的記録の証拠収集手続の整備というものが今回の税法改正の中に含まれております。

 これは、私どもの政権、平成二十三年の改正で刑事訴訟法に措置された証拠収集の手続を、今度は国税犯則調査の手続にも導入しよう、こういう趣旨です。五つぐらい丸がついておりますけれども、特に平成二十三年改正当時議論になったのは、三つ目の記録命令つき差し押さえ、そしてその下の通信履歴の電磁的記録の保全要請、このあたりにあったのかなと認識しております。

 記録命令つき差し押さえは、本人とかかわらず、サーバーの管理者に命じて電磁的記録を記録媒体に記録、印刷させて差し押さえることが可能になる。あるいは、保全要請の方で見ますと、プロバイダー等に対して、三十日もしくは六十日を超えない期間を定めて保全要請できる規定を設けるということで、当時はサイバー監視法案などとも言われておりました。

 ただし、これは我が党が与党だったときに通した法案ですけれども、私も当時、法務委員会とかで質問しました。私もかなりこれについては反対の立場だったんですけれども、最終的には、サイバー犯罪条約を我が国は既に承認している、締結のためにはこの法案が必要なんだというところで、やむなく私も賛成をしたといったことがございました。

 こうしたことを踏まえてまず質問させていただきたいんですが、本件、この証拠収集手続の整備が、今まさに共謀罪、我が方では共謀罪と呼んでいますけれども、共謀罪法案の提出直前に税法改正に盛り込まれた理由について、財務大臣から御説明をいただけますか。

麻生国務大臣 今般のいわゆる国税犯則の調査手続の見直しですけれども、これは、経済活動のIT化とかICT化がえらい勢いで進歩している結果、電磁的な記録の証拠収集手続を整備するということなどが本来の目的ということであります。

 その上で、テロ等の準備罪の創設を含む組織的犯罪の処罰法の改正というものにつきましては、これは法務省において検討しておられる最中なので、私どもがコメントする立場にないんですが、いずれにせよ、今般のいわゆる国税犯則調査の手続の見直しは、我々のテロ等の準備罪の法案とは全く関係がないということだと存じます。

階委員 予期された答弁ですけれども、なぜ私がそういうことを伺ったのかというと、過去三度、共謀罪法案は廃案になっていますが、その当時は、我々の政権の前でしたけれども、まさに共謀罪とこの証拠収集手続の整備に関する法案がセットで出されて、それが廃案になっているんですね。つまり、今大臣は無関係だとおっしゃいましたけれども、もともとは一緒で議論されてきた、こういう経緯があるので、あたかも今回も一緒に出してきたのかなということでお尋ねした次第です。

 そこで、さらに伺いますけれども、先ほど言ったように、サイバー犯罪条約を締結する上で必要だからということで、平成二十三年に刑事訴訟手続にこうした証拠収集の手続の整備に関する条文は盛り込まれたわけですが、結果的に、その後この条約を締結し、そして我が国にも効力が発生しているということであります。

 ですから、当時の議論を踏まえれば、もはや条約との関係ではこうした手続は盛り込む必要がないということで、私どもは、これはもう終わった話で、もし本当にこの手続が国税犯則調査にも必要であれば、平成二十三年の当時それをやっておくべきではなかったかと思っています。今になってこうしたものをやるということは、やはり共謀罪とセットというふうに私どもとしては推測せざるを得ないと思っております。

 二ページ目をごらんになっていただきたいんですが、大臣の答弁にもかかわっているようなことが書かれてあると思うんです。

 先ほど大臣は無関係だとおっしゃられましたけれども、二十三年に刑訴法において措置された電磁的記録の証拠収集手続を参考として整備すべきと考えられる事項ということで、今回の証拠収集手続を国税犯則調査にも盛り込むべき理由が書いてあります。

 その中で、後半の方に書いていますけれども、これらの手続は、財政経済事犯等の捜査の実務においても頻繁に用いられ、有効に機能しているであるとか、あるいは、刑訴法に基づく犯罪捜査と完全に同質なものではないが、電磁的記録の証拠収集手続に関する限りは、犯罪捜査との間に差を設けるべき理由は見出しがたいというようなことが書かれておりまして、これが理由とされているようでございます。

 これは財務省にお聞きすべきことか、それとも、きょうは法務省も来ておりますので、法務省にお聞きすべきところかちょっと定かではありませんが、まずこの中で、財政経済事犯等の捜査の実務において頻繁に用いられ、有効に機能というくだりがあります。これは本当にそうなんでしょうか。この点について、この文書の根拠をお尋ねしたいと思いますけれども、これは通告していませんので、刑事局長、よければ答えてもらえませんか。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいまの御質問は、資料二の国税犯則調査手続の見直しについてという文書についてのものであろうかと存じますが、この文書は、申しわけございませんが、法務省が関与して作成されたものではございませんので、この内容について御説明申し上げるのは控えたいと存じます。

階委員 つまり、財務省がかかわったということなんですが、通告しておりませんが、捜査の実務においても頻繁に用いられ、有効に機能というところについて、その根拠がもしおわかりになればお答えいただきたいんですけれども……(麻生国務大臣「あらかじめ聞いていなかったので」と呼ぶ)

 いや、このくだり、ちょっと気になるので、後ででも結構なので、この根拠について委員会に提出していただければ、あるいは直接でも結構ですので、御提示いただければと思います。

 そこで、脱税の罪についてこうした証拠収集手続を設けるということなんですが、脱税の罪というのは懲役が最高十年ということで、まさに今問題になっている共謀罪の根拠となる条約、TOC条約の重大な罪に当たるんですね。こちらは四年以上の自由刑ということです。

 刑事局長に聞きたいんですが、脱税の罪というのは、今申し上げましたような重大な犯罪ということで、共謀罪の対象犯罪になるのではないかというふうに思うんですが、この点、いかがでしょうか。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 お尋ねのTOC条約上の重大な犯罪というのは、長期四年以上の自由を剥奪する刑、またはこれより重い刑を科すことができる犯罪を構成する行為とされております。これを我が国の国内法に引き直しますと、長期四年以上の懲役あるいは禁錮に当たる罪が該当することになります。

 所得税法、法人税法等に規定されております一部の罪は、御指摘のとおり、法定刑の上からはこれに当たることとなります。

 ただ、もっとも、TOC条約の担保法案は現在提出に向けて検討中でございますが、条約との整合を図りつつ、対象犯罪のあり方についても検討中でございます。そのため、御指摘の犯罪、税法違反の犯罪がこの法案の対象犯罪に含まれるか否かについても、現時点ではお答えすることが困難でございます。

階委員 もし対象犯罪にこれが含まれないとなると、条約の文言からかなり外れたことだと思うんですね。別にそれを含めろと言っているわけではないですよ。条約の担保法だと言っているからには、条約締結に必要十分な内容でないと、この共謀罪をやる意味がないと思うんですね。

 条約の中では、今申し上げました長期四年以上という条件もありますし、そして共謀罪については、金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接または間接に関連する目的のためというくだりもあります。この目的条件にも脱税の罪というのはぴったり合うわけでございまして、むしろ、脱税の罪というのは共謀罪に入るのが当然かと。別に入れてほしいと言っているわけじゃないんですけれども、条約の解釈からすれば当然そうなるのではないかと思うんですが、これは入らない可能性もあるという理解でよろしいんですか。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほども申し上げましたが、TOC条約の国内担保法につきましては、その内容について、条約との関係を含めて、その条約を所管します外務省との協議も含め、現在検討中でございます。対象犯罪のあり方についても検討中でございますので、現時点で、特定の罪が対象となる、ならないということを申し上げることは困難でございます。

階委員 これ以上ここで議論しても水かけ論になりますので先に進みますけれども、入る可能性も否定していないので、入るという前提でお尋ねします。

 テロ等準備罪と政府が言われている、我々が言うところの共謀罪、犯罪主体を組織的犯罪集団に限るということで、首相も、あるいは法務大臣も、一般市民は入らないというようなことはよく言っておるわけです。

 ところが、きょう用意した資料の中で、四ページ目をごらんになってください。これは我が党の山尾さんの要求に係る法務省の回答の紙でございます、二月十六日ですけれども。もともと正当な活動を行っていた団体についても、団体の結合の目的が犯罪を実行することにある団体に一変したと認められる場合には、組織的犯罪集団に当たり得るということが書かれております。

 この組織的犯罪集団に当たるかというところで、まさに、先ほど脱税を、この対象犯罪になるかどうか、入る可能性も否定しなかったわけですが、入るという前提に立った場合、脱税を企図して毎年粉飾決算を行っているような会社、これは組織的犯罪集団に当たるのではないかと思うんですが、当たり得るかどうか、可能性があるかどうか、刑事局長にお尋ねします。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 テロ等準備罪におけます組織的犯罪集団につきましては、結合の目的が犯罪を実行することにある団体をいうとの趣旨で用いることを検討しているところでございます。

 お尋ねの点につきましては、成案を得た後に、具体的な罰則の内容に基づいて詳細は御説明すべきものと考えておりますが、基本的な考え方を申し上げますと、結合の目的が犯罪を実行することにある団体というのは、例えばテロ組織、暴力団、薬物密売組織などを想定しているものでございます。

 仮定の事案に基づいて、ある団体が組織的犯罪集団に当たるかどうかということを申し上げるのは事の性質上困難ではございますが、あくまでも一般論として申し上げれば、お尋ねのような団体が、一般の会社であって、通常の営業活動を継続的に行っているものだとすれば、犯罪を実行することを目的とするものとは認められず、通常は組織的犯罪集団に当たらないと考えられます。

階委員 通常はと言ったので、例外的には当たるというふうにも聞こえるわけです。

 先ほど申し上げた資料四のペーパーで、目的が、当初は全く犯罪とは関係なくても、会社でも、経営が悪化してくるなりすれば粉飾決算というのもあり得るわけだし、あるいは隠し金をつくるために粉飾決算ということもあるわけですね。そして脱税ということもあるわけで、こういうことを頻繁にやるようになった場合でも、団体に一変したと認められるというふうには言えないということでいいんですか。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 ただいまの御質問は、粉飾決算あるいは脱税といった行為を頻繁に普通の会社が繰り返すようになった場合に組織的犯罪集団に当たるかというお尋ねであったと思われますが、通常、脱税でありますとか粉飾決算というものはその会社の目的そのものではないというふうに考えられます。通常の事業活動を行っている会社が組織的犯罪集団に当たるということは想定されないと考えております。

階委員 ということは、幾ら会社の中で、脱税に限らず、振り込め詐欺でも何でもいいですけれども、全体じゃなくてもいいですよ、一部の人たちがそういうことを企図してやっているような場合、そういう場合であっても、会社という団体自体は、目的はそこにあるわけではないから、これは全くその構成員はセーフ、共謀罪には問われないということで間違いないですか。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 組織的犯罪集団の概念を含む組織的犯罪処罰法の改正案につきましては検討中でございますので、詳細は成案を得た後に御説明するべきものと考えておりますが、お尋ねの事案におきましては、会社は、通常の事業を行う会社として存続しており、団体としての結合目的が犯罪を行うことになっているというふうに認められない限りは組織的犯罪集団には当たらないこととする形で立案を検討中でございます。

階委員 一変したかどうかというところが多分ポイントになると思うんですけれども、この文書で言う一変したかどうかの判断基準というのは、今の答弁は具体的に説明されましたけれども、一変したかどうかという基準については、何か今考えていらっしゃることはあるんでしょうか。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の文書における一変というのは、もともと正当な活動を行っていた団体が、その性格を全く変えて、団体の結合の目的が犯罪を実行することにあるという団体に変化したと認められることを指すものとして用いております。

 その上で申し上げますと、もともと正当な活動を行っていた団体については、団体の意思決定に基づいて犯罪行為を反復継続するようになるなどの状況に至らない限り、そのように認められることは想定しがたいと考えております。

階委員 この一変したかどうかというところは、最終的には訴追側といいますか捜査側の判断になると思うんですね。

 今、一変したということをなるべく限定的に解そうというようなことで御説明されたと思うんですけれども、やはりそこが明確にならないと、普通の会社の人も、例えば、さっき言ったように、粉飾決算で脱税を繰り返していたような場合でもなるんじゃないかとか、いろいろな危惧があるわけです。振り込め詐欺で、会社の一部がかかわっていたらなるんじゃないかとか。だから、そこを明確にしていただかなくちゃいけないということが一つ。

 それで、今回、もしこうした証拠収集手続が導入された場合に、先ほど言ったように、もし脱税の罪が共謀罪の対象になるとすれば、この証拠収集手続で集まった証拠というものが共謀罪の立証にも使われるのではないか、こういう懸念もあると思います。もちろん、団体の性質が一変したという条件も満たさなくちゃいけないわけですけれども、こうした証拠の流用みたいなことはないと言えるのかどうか。刑事局長、お願いします。

加藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 テロ等準備罪そのものが現在立案中、検討中のものであります上に、個別事件におけます証拠の収集方法というものはさまざまでございまして、一概に申し上げられるものではございません。

 ただ、あくまで一般論として申し上げれば、適法、適正な収集手続により得られた証拠を他の事件においてさらに正当な捜査、公判活動に用いるということは許されていると理解しております。このことは、国税犯則取締法に基づいて収税官吏が収集した証拠についても、当該事件が告発されて、検察官に証拠が引き継がれた後には同様であると考えておりますが、このことは、テロ等準備罪に特化した特別なことではないというふうに考えております。

階委員 大事なことは、国税犯則調査でこういう証拠収集手続が設けられることによって、共謀罪の証拠の収集手段も広がるということなんですね。これは、ほかの件についてもそうだとおっしゃいましたけれども、間違いなく共謀罪の証拠の収集手段が広がるということできょう答弁いただいたと思います。

 かように、この問題というのは、そんな日切れの税法の中で潜り込ませるような形で通すような話ではないと思っています。

 財務大臣にまとめとしてお聞きしますけれども、本件は、本来は国税犯則取締法の改正として単独で議論されるべきものだということを私は申し上げました。国税通則法に潜り込ませるような形で議論するのはおかしいと思っています。撤回して、別途、国税犯則取締法の改正案として提出し直して、慎重に議論するべきではないかというふうに考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 平成二十九年度の税制改正において、今言われた国税犯則調査の見直しを初め、各種の納税環境整備のために改正を行うことといたしておりますのは御存じのとおりです。

 これらの改正というのは、御存じのように、納税者の利便性の向上とか租税回避などの防止という共通の目的に沿って改正を行うものであるということと、また、他の税制改正とあわせて、一体的に、一覧的に示すことによって納税者にとって改正内容の全体がわかりやすいものになるということから、一体のものとして議論をさせていただく必要があるんだと考えております。

 その上で、今般の改正で国税犯則取締法を廃止して国税犯則調査に係る規定を国税通則法に編入することとしておりますのは、この改正につきましては、国税犯則調査も、国税通則法に定めます課税調査と同じように、納税義務のありなしに関する事実の確認を行うというものでありますので、国税に関する共通的な手続というものを定めます国税通則法での規定になじむのではないか。また、課税調査と犯則調査を同一の法律に規定することによって一覧性が高まり、そして納税者から見てわかりやすい法体系となるのではないかと考えられること等を踏まえれば、これは適当ではないかというように考えておるのがその背景であります。

階委員 お言葉ですけれども、五ページを見ていただきたいんですが、国税犯則取締法というのは、通常の行政とは違って、捜査の一部を担うようなものなんですね。いわば刑事法に近いようなものですよ。ですから今まで別建ての法律にしてきたものを、何か国税通則法に一体化するというのは私は趣旨が違うと思っています。

 国税犯則取締法というのは、この図に示したように、強制調査権があるということです。裁判所の令状をとれば、強制調査で、先ほど言ったようなプロバイダー等に差し押さえもできるといったようなことで、これは大変重い話ですよ。重い話だからこそ、やはり切り分けて議論しなければいけないというふうに思いますし、冒頭申し上げましたとおり、もともとはサイバー犯罪条約締結のために刑訴法に入れられたものでございます。その時点では、これを国税犯則調査に入れようという議論はなかったわけでありまして、ここに来て、共謀罪とセットのような形で入れるというのは、まさに共謀罪の捜査をより簡単に円滑に進めようという思惑も感じられるわけです。

 だからこそ、私たちは、こうしたやり方で通すのではなくて、国税犯則調査のあり方としてどうなのかということをもっと慎重に議論すべきだと考えております。

 もう一度、大臣、お願いします。

麻生国務大臣 お言葉ですけれども、これは犯則調査手続というものに定めております。例えば関税法とか、それから金融商品取引法とか、ほかにも独占禁止法もそうですかね。そういったものにおいては、そもそも犯則調査手続というのは、これは行政調査と合わせて一体化して、今言ったように、合わせて一つの法律において規定されておりますのは御存じのとおりなんでして、そういった意味では、私どもとしては、これだけは特に過度にというような感じを持っているわけではありません。

階委員 ただ、今問題になっている証拠収集手続を他の犯則調査手続に導入するということは聞いておりません。なぜこれだけには導入しようとするのか、しかもこのタイミングで、時限性のある中で導入しようとするのか、ここが、やはり我々としては、テロ等準備罪、共謀罪との関係性を疑わざるを得ないわけです。

 だから、この点については、犯則調査手続はほかにもありますでしょう。それらも含めて、もっと慎重に議論しなくてはいけないと思います。この時点で、税法、通常の年次改正と一緒に議論するのは、私はちょっと筋が違うのではないかと思います。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今答弁を申し上げたとおりなんですが、あのほかにも、関税法とか地方税法とか、皆同じになっておりますので、そういった意味では、我々の意図しているところは、この前の答弁で申し上げたとおりであります。

階委員 最後に一点だけ申し上げますと、今回の改正というのは、もう刑訴法で同じ手続があるんだから、それと似たような手続である国税犯則調査にも横並びで入れていいだろうというような趣旨が、先ほどの資料の二枚目あたりに書いておるんですね。でも、一方で、今回、国税通則法に盛り込ませていいという理由を今大臣はお話になりましたけれども、ほかの行政的な犯則調査手続にも入っているということで、ここでは行政的な側面を強調されるわけですよ。

 だから、ちょっとそこはダブルスタンダードじゃないかと思います。ダブルスタンダードじゃなくて、本当にこれが必要だというのであれば、正々堂々と言うのが適切かどうかはあれですけれども、正々堂々とこれだけ取り出してやるべき話だと私は思います。

 その上で、ちょっと話題をかえますね、時間もあれなので。

 配偶者控除について、多分この委員会でも議論がされてきたのだと思っています。

 私はちょっと本質的なところをお尋ねしたいんですけれども、資料の六ページ目をごらんになってください。

 主要国においても配偶者の存在を考慮した税制上の仕組みがあるんだということで、配偶者控除を存置する理由を政府としてそこに求めているわけですが、よく見ますと、日本以外の国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、挙がっておりますけれども、これは配偶者もいわば共同で働いているという理念のもとに設けられている規定ではないかというふうに私は見てとりました。

 この中で、夫婦単位課税で二分二乗方式というのがございますね、アメリカ、ドイツ。この二分二乗方式というのは、例えば、御主人だけが働いて奥さんが専業主婦だった、こういう家庭があった場合に、その御主人の収入を夫婦二人でそれぞれ稼いだということを想定して、二つに分けて一人ずつ税額を計算してそれを合算して払うというようなものですね。二分して二乗するということなんだと思うんですね。

 実態に即して見ても、私も妻は専業主婦です。でも、私がいただいた報酬というのは、二分どころか八分ぐらい妻が手にするわけですね。何を言いたいかというと、別に、旦那さんが働いて奥さんが専業主婦だからといって、日本の制度のように、奥さんは被扶養者だ、要するに稼いでいるのは旦那さんだけだという考え方に立っているのが日本の制度。他方、各国は、仮に名目的な収入は旦那さんだけであっても、奥さんも内助の功ではないですけれども物すごく貢献している、だから収入も二人で分けて考えましょう、こういうことだと思うんですね。

 翻って、やはり、こういう配偶者控除という制度の根本にある理念というのは、今、女性にもどんどん活躍してもらおうという考え方を政府としても進めていらっしゃる中で、ちょっと各国と比べてみてもおくれているのではないかと思うんですが、この点について、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 ああ、階さんの家でもそうかと思って安心しました。いや、二分八乗方式ね。

 日本においては、今言われましたように、一定の収入以下の配偶者のいる方というか、税負担能力を配慮するという観点から、配偶者控除が設けられているところなんだと理解しておりますが。

 今おっしゃいましたように、諸外国においてもこの配偶者の存在を考慮して所得税負担を調整する仕組みが設けられているんですが、これは国ごとに歴史的とか社会的とかいろいろな背景が異なっているので、その仕組みの趣旨も異なるものになっておりますが、ここに書かれているとおりなんだと思っております。

 特にフランスでは、一定の財産を夫婦の共通の財産とする法定共通制を採用していますし、ドイツでは、これは夫婦で別の産制というのをとってきておりますので、ともに世帯単位の課税ということになっているのだと思うんですが、世帯内に所得の低い配偶者が存在する場合、そうでない場合に比べて税負担が軽減される仕組みになっているということなんだと思っております。アメリカなんかの場合で、これは二分二乗方式を採用しているんですが。

 各国の制度の趣旨というのはさまざまなので、これは、いずれの国においても配偶者の存在を考えて、共稼ぎとかいうのもありますでしょうし、専業主婦もあるだろうけれども、とにかく、専業主婦であっても、その奥さんが、旦那のために、家族のために、いろいろやっているということに対する労働とかいう表現もあるでしょうけれども、そういったものに対して所得税の負担というのは当然軽減するんだ、その分だけ軽減するんだというのを持つ仕組みになっているんだと思っておりますので。

 私どもとしては、今回、実にいろいろな御意見がここに至るまでにあったんですけれども、それまでの間、今回はこういった形にさせていただいておりますが、昔は、稼ぎ手が一人で奥さんがいて、子供は二人いて、一対三ぐらいの形だったのが、今は一人が働いて、もう一人も働いて、家族は一・何人になっていて、家族の構成自体も随分変わってきておりますので。

 そういった意味では、この税源のあり方というものについても全然別に考えないと、これからの若い世代というのは、私らの世代は兄弟が五人も六人もいて当たり前の世代に育ったの。私は七十六ですから、私らの世代は五、六人は当たり前の世代に育ちましたので、今の時代とは全然違っていますので、階先生がおっしゃるように、この考え方の根本というところをちょっと考えないといかぬことになっておるかなとは思っております。

階委員 我が党でも世帯控除という考え方を打ち出しておるわけですけれども、それとともに、この配偶者控除、きょうは時間の関係で説明しませんけれども、今まで百三万円の壁と、壁というのはちょっと錯覚なんですけれども、壁があると言われていて、これを百五十万円にずらしましたと言っても、百六万円の壁とか百三十万の壁というのも別途あって、就労促進効果は余り望めないというのが一つ。

 それから、私どもとしては、この配偶者控除はやはり理念としてもちょっとおくれているので廃止しましょう。そうすると、大体国、地方を合わせて一・一兆円ぐらい税収増になるというふうに見積もっております。それを仮に高等教育への公的支援に充てたらどうなんだろうかということも提言させていただいております。

 日経新聞に出た、ある大学教授の論文が資料の八ページに上がっておりますけれども、労働生産性と高等教育機関への支出というのがきれいな相関関係になっているということであります。日本はまさにこの左下の方に属するわけでございまして、先進国で最低の高等教育機関への支出水準であるがゆえに、労働生産性も低くとどまっている。だから、この一・一兆円という使い方を、配偶者控除ということにとらわれるのではなくて、根本的に見直すということであれば、まさに高等教育機関への支出というところで考えてみてはどうかと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 初めて、これは村田先生ですか、読ませていただきましたけれども、これは、特別控除を廃止した場合は、今おっしゃいましたように、国税で〇・六兆円、六千億、それから地方税で五千億ですから、約一兆一千億ということが見込まれますので、そういったものがありますのはもう間違いありませんので、この配偶者控除を扶養控除と一緒に、一定にして、一定の収入以下の配偶者がいる方の税負担能力に配慮する仕組みになってはいるんですけれども、今言われましたように、諸外国において配偶者の存在というものを考慮した仕組みが設けられていることなんというのはどこでもやっておられるので、そういったものを考えると、廃止して何も配慮を行わないで、その分だけ全部高等教育に回しちゃえという話なんですけれども、これはちょっとどうかなというので、ちょっと今この段階で、では、子供がない世代はといえば、産まないのが悪いとかいうような話になってみたり、いや、身体的に産めない方はどうなんだとかいろいろな話が出てきますので、この、直ちに公的支援に回しちゃうということはちょっといかがなものかとは思いますけれども。

 高等教育に対してしかるべきものであって、何となく、教育国債とかいって、将来当てにならないような、赤字公債のかえたようなものが出てくるような話はよく与党の中でも出されていますけれども、私どもとしては、一つの考え方としては参考になるんだと思います。

階委員 確かに、お子さんのいない家庭、子育てが終わった家庭がこの配偶者控除廃止をどう受けとめられるのかというのは一つの大きな問題です。

 ただ、思うのは、むしろ、お子さんがいない場合というのは、老後の社会保障というのは誰が面倒を見てくれるかというとほかの家庭のお子さんなわけですね。そのお子さんたちが高等教育を受けて、労働生産性を高めて、たくさん税金とか保険料を納めれば、お子さんのいない家庭も老後の安心が確保される、こういうことも言えると思うんですね。

 だから、ここは、先ほど理念的なことでは、多分共通認識として、配偶者控除という考え方は見直していく必要があるんじゃないかということもおっしゃっていただいたので、ここは根本的に、今の日本にとってどういう仕組みがいいのかというのをぜひ考えていただきたいと思います。

 時間も限られていますので、次に行きます。

 先ほど前原委員からも中長期財政試算についていろいろと、今後プライマリーバランスがどう推移するのかという説明がありました。参考人にも来ていただいているんですが、ちょっと時間の関係で割愛させていただきます。

 ここは結論だけ、大臣に伺いたいんですが、資料の九ページをごらんになってください。資料の九ページ、下の方に、国の一般会計の姿ということで、歳出の一番下に国債費ということで、二〇一五年から二〇二五年まで国債費がずらっと並んでいます。二十二・五兆円から始まって、最後には四十六・九兆円になるという絵姿が、これは経済再生ケースの場合で示されております。

 ただ、私は、この情報だけでは、財政再建をこれから進めていく上で、いま一つ不十分なのではないかと。と申しますのも、国債費の中には、元本を返す分と利払い費、二種類あるわけですね。多分、内閣府ではその二種類をちゃんと算定しているんだと思います。情報を開示して、これが今後の利払い費急増によって財政悪化ということが十分、前原委員も指摘されたとおり、あり得るわけですね。

 私は、この情報開示についても、先ほど前原委員からは、二〇二五年より先についてもちゃんと試算を示すべきだというお話がありましたけれども、私は、この国債費の情報開示、利払い費と元本償還費、これは両方、内訳として表示すべきではないかと。ここはぜひ改めていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 これは先ほどのお話にも出ておりましたけれども、内閣府の中長期試算におきまして、国債費の内訳、いわゆる償還費と利払い費ということになるんだと思いますが、これを示すかどうかについては、これは内閣府の判断事項なので、ちょっとこちらとしてコメントを差し控えますが。

 その上で、国債残高が累増していくという中で、金利が上昇した場合は利払い費が急増する可能性があるということを言っておられるんだと思いますが、それはもう全く委員の御指摘のとおりなので、財政運営というのを考えるに当たっては、利払い費を含めた財政収支というのはこれはもう当然のことで、注意していかねばならぬのははっきりいたしております。

 その上で、私どもとしては、国、地方の財政の姿を示している内閣府の中長期試算、異なるものではありますけれども、財務省の後年度影響試算というものにおいて国債費の内訳として利払い費の試算もお示しをさせていただいておりますので、御参考いただければと思いますが、確かにいろいろな意味で、大きな利払い費の額が出てまいります。我々の試算なりのものはお示しはいたしております。

階委員 ぜひ、ここはお願いします。

 時間が来ましたので終わりますが、一点積み残した問題が、財政再建のためには、政策投資銀行など政府保有株で売却可能性があるものについては早期に売却を進めてほしいということをきょうはお願いしたいと思っていました。ぜひこのこともお願いしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 民進党の今井雅人でございます。

 まず最初に、ちょっと積み残しもございますので、きのうの連続ということで、森友学園への国有地売却の問題について、三点ほど確認をさせていただきたいと思います。

 まず、財務省さんにお伺いしたいんですけれども、以前ペーパーもいただいていますし、御答弁もいただいているんですが、改めて確認をしたいんですが、一番最初にこの処分をしたときに、非公表として、金額について公表していなかった、この理由について、もう一度御説明ください。

佐川政府参考人 お答えいたします。

 国有地を学校用地などの公的用等のために売却した場合、原則公表としてございますが、不開示情報に当たる場合については、相手方が公表に同意しない場合は公表しないことが適当であると考えてございます。

 本件でございますが、当初、相手方より、契約金額を公表することで地下埋設物について広く周知され、風評リスクが生じかねないということから、契約金額を公表しないようにという要請があったことから、非公表としていたものでございますが、その後、報道を受けまして、国有地を不当に安く取得した等の誤解を受けるおそれがあると考え、契約金額の公表に同意すると先方が合意したものですから、公表したことでございます。

今井委員 もう一点お伺いをしたいと思います。

 最初に買い受けつきの定期借地契約を結んだときの経緯をちょっとお伺いしたいんですけれども、お話を伺っている限り、最初に相談があって、この金額ではちょっと手が出ないというか購入資金が賄えないので、定期借地契約という貸し付けにしてほしいというような経緯があったというふうに伺っておりますが、その点についてもう一度確認をしたいと思いますので、よろしくお願いします。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 未利用国有地処分に当たりましては、売却が基本でございますが、公用、公共用で、貸し付け財産の買い受けが確実と見込まれ、それまでの間、賃貸借をすることがやむを得ないと認められる場合は、売り払いを前提とした貸し付けを行うことも可能でございます。

 本件に当たりましては、森友学園より、小学校建設等に一時的に多額の資金を必要とするため、学校経営が安定するまでの間は貸し付けにより利用したい旨の要望がございましたので、本件定期借地契約を締結したところでございます。

今井委員 この話をするときには既にこの土地の不動産鑑定評価額というのは鑑定されていたと思うんですけれども、それが幾らぐらいであるかということは先方にはお伝えになりましたか。

佐川政府参考人 伝えてございません。

今井委員 それは伝えていないんですね。

 伝えていないのに、なぜ購入には難しそうで賃貸にしたいということになったんですか。その判断は金額がわからなかったらできないんじゃないんですか。

佐川政府参考人 お答えします。

 私どもそこの点、子細には存じませんが、それは、それぞれ公表ベースで、路線価等いろいろな価格は、土地の価格は出ていると思われますので、先方において、手元の資金繰りを見ながらそういう判断をされたものだと考えております。

今井委員 今、余り承知しておられないということですので、ちょっと財務局にこの辺のところをもう一度確認していただけないですか。

佐川政府参考人 今申したとおりだと思いますが、念のため、確認させていただきます。

今井委員 昨日、この森友学園の籠池理事長がラジオ番組に出ておられます。そこでいろいろなことをお話をなさっているんですけれども、番組のホームページに起こした記事がありましたので、それを持ってきて御紹介しますけれども、この非公表とした理由、理事長はこうおっしゃっています。

 お国の方から、公表をどうされますかというふうに聞かれたので、それはできるんですかということで、それだったら言わんといてくださいと、それだけ申し上げた。私は、制度を余り知らなかったから、公表をどうされますかということ、それだったら非公開にしてくださいということ、その程度でお話をしたというふうにおっしゃっています。

 先ほどの御説明では、先方から、学校教育にいろいろ影響があるといけないので非公表にしてほしいというふうに言われたと言っていますが、理事長と言っていることが食い違っているんですよ。どちらが正しいんですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員がお示しになったインタビューの記事でございますが、インタビューにおいて学園の理事長が、買った価格というのは人に言わないという感覚というような発言もされてございます。

 そういうことで、学園側に聞きましたところ、そういう学園の理事長の感覚に加えまして、学園の理事長としては、公表することによる風評被害のリスクについても認識された上で非公表とされたというふうに学園側の弁護士から聞いてございます。

今井委員 いやいや、弁護士はどうか知りませんが、理事長本人はそうおっしゃっていますよ。こんなことは、こんな詳細な理由についてはおっしゃっていないんです。財務省さんの方から、どうされますかと言われたので、非公開にできるのならそれで結構です、そういうふうに申し上げた、それだけしかおっしゃっていませんよ。

佐川政府参考人 そのインタビュー記事の、どういうやりとりがそこに載っているのか、私ども子細に存じませんが、いずれにしても、先方に確認したところ、価格は人に言わないという感覚に加えて、風評のリスクもあるということについて認識された上で非公表というふうに要請したというふうに先方から聞いてございます。

今井委員 では、ぜひ、このラジオの起こしを見てください。これは誰が読んでも、財務省さんから、こういう制度がありますからどうされますかと言われて、それでしたら非公表にしてくださいという程度の話しかしていないとおっしゃっていますよ。わざわざ、風評リスクがあるとか、地下埋蔵物の存在が周知されることによってとか、こんなことは後づけじゃないですか。

 何か御答弁があるなら結構ですけれども、よろしいですか。

佐川政府参考人 推測で物を言うのはあれなんですけれども、インタビュー記事だけで、どこまでお話しされたかわかりませんが、学園の中で、理事長あるいは顧問弁護士との間でお話をされて、風評被害のリスクも十分認識された上で、公表しないということの要請があったということでございます。

今井委員 水かけ論になりますけれども、理事長本人がこうおっしゃっていますからね。それは弁護士は、後で聞かれたときに何か理屈をつくらなきゃいけないんでしょうけれども、本人がそうやって言っていますから。だから、ここは食い違っているということを申し上げたいと思います。

 それで、もう一個、こちらの方がとても問題だと思っているんですけれども、理事長は、ごみは撤去したんですかというふうに聞かれて、こう答えていらっしゃいます。ごみは、建物が建っているところについては撤去もしておりますね、ほかのグラウンドなんかはどうですか、グラウンドはね、記者の方も御存じのとおり、運動場ですから、運動場はずっと昔から土の下というんですかね、何も動かしてないんですよ、そのままでいいんですとおっしゃっています。

 では、お幾らかかるんですか、八億いきますかというふうに聞かれたら、いや、だって、運動場の下のところは取り出さなくていいんですから、さわっていないんだから、そうですよね、運動場で使うところは何もさわらなくていいので、そこにお金がかかることはありませんと。

 八億円使っていないとはっきり言っています。はっきり言っています。皆さんが見積もられた金額を使っていないとはっきりおっしゃっているんですよ。これは調査しなきゃおかしいでしょう。

佐川政府参考人 そのインタビュー記事について逐一コメントは差し控えますが、何度も申し上げていますように、我々時価で売るということが契約上のお話でございまして、そういう意味では、不動産鑑定評価額を見て、それから国土交通省が撤去費用を見積もって、それを控除したものがまさに時価で、適正な価格でございますので、そこで売却したということでございます。

今井委員 その適正かどうかというのも、きのう視察に行ってきた人たちから、きょうずっとミーティングしていました。航空局さんは、この積算の根拠をきのう答えられなかったそうですよ。どうしてそういうふうになっているのかと質問しても、もう途中でどもっちゃって何も言えなかったんです、口ごもって。どうして五千何百平米なんですかという根拠も説明できないんです。だから、正しい積算で時価を計算したとおっしゃっていますが、その根拠すら危うい。

 しかも、時価といっても、もともとあるものからそれぐらいお金がかかるだろうということで引いた、それが時価なんでしょう。では、その引いた分本当に使っていなかったら、時価が間違っているということじゃないですか。それを調べないんですか、財務省さんは。

 本人がこうおっしゃっているんです。メディアで本人がおっしゃっているんですよ。どこかで私が聞いてきた話じゃなくて、公のメディアでちゃんと本人がおっしゃっているんですよ。そうしたら、調べなきゃいけないんじゃないんですか。

佐川政府参考人 経緯は何度も申し上げているところでございますが、新たな地下埋設物が発見されて、このままでは工事に支障が生じて、まさに学校でございますので、学校建設が進められなくなるということで購入希望が出てきたということでございます。

 その点で、私ども近畿財務局と大阪の航空局との間できちんと連携をして協議をいたしまして、その撤去費用につきまして、まさにこの本件土地に小学校が建設されるということが大前提でございますが、さらに新しい埋設物が出てきまして、今後さらにどのようなものが出てくるかもまさにその時点でわからない中で、本件、隠れた瑕疵も含めて一切の瑕疵について我々売り主の、国の責任を免除する特約というのも頭に入れながら、まさに必要となる埋設物の撤去費用を見積もったということでございまして、その撤去費用につきましては、国土交通省の方で工事算定基準に基づきまして適正に算定したということでございます。

今井委員 きょうはちょっと時間が足らないので契約の内容についてまでは入りませんが、おっしゃるとおり、契約にはそう書いてありますけれども、契約の内容そのものが私はおかしいと思っているんです。国がつくった契約書自体がなぜあんなに向こうに有利な内容になっているのか非常に疑問です。そのことは、またあした以降、おいおいやりますけれども。

 お伺いします。

 仮に、仮にというか、ほぼ間違いないんですけれども、見積もった八億、そんな金額を使っていないとなれば、本来もっと高く売れたかもしれないんですけれども、しかし、契約上そういうふうに一億何千万で売るとしちゃったから、その分は国に返ってこなくても財務省としてはもう仕方ない、そういうことですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 何度も申し上げますが、時価で売却するということで時価で売却したわけでございまして、売却価格で既に売却済みのものでございますので、したがって、その撤去費用については把握していないところでございます。

今井委員 時価を計算するのにその撤去費用を差っ引いてというやり方をしているんですから、契約がどうこうというよりは、現実じゃそれぐらいお金がかかるから引きましょうと言ったのに、やっていなかったらそれはおかしいじゃないですか。それをもう仕方ないと言うのは、私はちょっと無責任だと思いますよ。

 麻生大臣、これはこういうことでよろしいんですか。今の財務省の答弁で、それでよろしいんですか。

麻生国務大臣 御存じだと思うんですけれども、国有財産については、いずれの場合においても適正な価格によって処分をするということになっているわけでしょう。そうですよね。それが定められているのは、時価により処分されているとなっているわけでしょう。今井さん、知らないわけじゃないでしょうや。

 本件については、土地の所有者というのは大阪航空局でしょう。大阪航空局から委任を受けて、そして、近畿財務局において大阪航空局と協力して、そして適正な手続によって処分を行っているんだというふうに承知をしておりますから、私どもとしてはこれ以上のお答えのしようがないんだというのが理財局長の言い分なんだと思いますけれどもね。今聞いていてそう思いましたけれども。

今井委員 適正であるかどうかというのがまず一番の問題です。先ほど申したとおり、航空局さんが出した積算の根拠がちゃんと説明できない、この時点でもって適正かどうかは非常に疑問ですね。だから、そこからしっかりチェックしなきゃいけませんので、今後、この委員会あるいは予算委員会でしっかりチェックをしてまいりたいというふうに思います。

 それで、国交省さん、確認したいんですけれども、このごみは多分産業廃棄物だと思うんですけれども、であれば、業者さんはマニフェストを義務づけられているはずですから、それは存在しますよね。どうですか。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 今回出たごみは、廃材でありますとかプラスチックでありますとか、生活ごみであると承知しております。そのごみをどのような方が処分されたかというのは、私の方では承知しておりません。

今井委員 では、済みません、ちょっとこれは通告はしていなかったので、調べていただけますか、このごみがどういう区分だったか。つまり、産廃か一般廃棄物か。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 調査の上、また御報告させていただきます。

今井委員 では、またよろしくお願いします。

 今申し上げたとおり、籠池理事長と政府側の皆さんの話が余りに食い違っておりますので、委員長にぜひお願いしたいんですけれども、この委員会に籠池理事長を参考人としてお呼びしていただきたいということをお願いしたいと思います。

御法川委員長 理事会で協議いたします。

今井委員 では、ぜひよろしくお願いします。

 きょうは日銀総裁にも来ていただいておりますので、少しお話をしてまいりたいというふうに思います。

 一枚目の資料にありますけれども、マイナス金利を採用してから一年ぐらいがたつんだと思うんですが、マイナス金利にはやはり功罪があると思っています。もちろんプラスの面もあるとは思いますけれども、マイナスの面も一面あって、一番大きなところはやはり金融機関への影響ということだと思います。

 もちろん、最近、生命保険会社とか運用会社が運用難で保険料を上げたりとかいろいろな動きが出ています。運用側にも出ていますけれども、私が一番心配しているのは銀行、特に地方銀行ですね。割と規模のそれほど大きくない金融機関が本当にこの先マイナス金利のもとでやっていけるかということに対して、とても心配をしております。

 お手元の資料のところにありますように、地域銀行の預貸の利ざやというのはだんだん縮んできております。これは大手銀行よりも縮み方が激しいということでありまして、きょうは資料を持ってきていませんが、メガバンクの場合は、資金収支以外に、いわゆる金利収支じゃないほかの収益がいろいろありますからそちらでカバーすることはできますけれども、地方銀行のように預貸に非常に大きく依存しているところは、マイナス金利によって相当大きなダメージを受けているというふうに思うんですね。

 その点について、まず、では御担当の麻生金融担当大臣、その辺について御認識をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 金融機関の財務ということになるんだと思うんですが、金融政策だけではなくて、マクロ経済とか金融市場の動向というのもありますし、それから顧客のいわゆる資金需要、それに伴いますマネーサプライの話になりますけれども、また、地域のあります、その地域の経済の動向など、さまざまな要因を受けるというのは当然のことなんだと認識をしております。

 また、日銀の金融政策も、昨年の九月には長短金利の操作を行う枠組みを導入するなど、極めて高度化してきているというのも確かですし、各金融機関の保有資産というものの構成とか資金のいわゆる調達状況とか、銀行の持っております、金融機関の持っておりますビジネスモデルに応じてその影響もさまざまなんだと思っておりますが、したがって、マイナス金利政策のみを取り上げて、金融機関全般にわたって影響があるというのを一概に論ずることは、これは困難だろうと思っております。

 その上で、超低金利の環境の継続とか、また地域によって人口減少が著しいところもありますし、金融機関の経営の厳しさが増しておりますという状況は我々もよく認識しておりますので、平成二十八年の十二月期でしたか、四月から十二月までの地域銀行の決算というものを見ますと、当期の純利益が前年同期に比べて約一三%減少しておるというのが実態です。したがって、これは国債などの債券の売却利益が増加はしているんですが、貸出金の利回りとか有価証券利回りが低下したということによって資金利益が減少したということによるものだと理解ができます。

 いずれにせよ、金融庁としては、日銀の金融政策の局所的な影響というのに限らず、さまざまな要因を考えた上で、金融機関のいわゆるビジネスモデルとしての持続可能性というものを検証していくということが極めて大事なんだと思っております。

 特に、地域銀行においては経営環境が、先ほど申し上げましたように人口減少等々、地域によって厳しさが違うところもありますが、そういったところを踏まえて、将来にわたっていわゆる地域との間の金融仲介機能というものを円滑に発揮していくためにも、中長期的にいわゆる持続可能な経営戦略を策定して実行していくことが大事だということは常々申し上げておりますので、引き続き、これはモニタリング等々を通じて、地域銀行の取り組みを一層積極的なものに促してまいりたいと考えております。

今井委員 私は森長官の考え方に非常に賛同しておりまして、ぜひ頑張っていただきたいと思いますから、金融改革、銀行改革はぜひやっていただきたい。

 私も、もともと銀行員ですけれども、銀行員の貸し出しの姿勢は非常にコンサーバティブ過ぎるということをずっとこの委員会でも申し上げてきているので、今の金融庁のやっていることは大変評価したいと思いますが、これはまた別の機会にやりたいと思いますけれども、残念ながら、まだ地方銀行自身がそこまで至っていないという、金融庁が旗だけ振っているけれども、みんなが踊っていないという状態ですので、それはまた別に議論したいと思います。

 日銀総裁は、このマイナス金利が及ぼす金融機関への影響というのをどう考えておられますか。

黒田参考人 委員御指摘のとおり、マイナス金利政策のプラス面、マイナス面というのは、両面あるというふうに考えております。

 ただ、昨年の一月にマイナス金利を導入したもとで、国債金利が大幅に下がり、これが貸出金利や社債金利を大幅に下げたことが企業や家計の経済活動をサポートしたというプラスの面ははっきりあったと思っております。

 他方で、御指摘のように、金融機関の利ざやが、これはただいま麻生大臣からお話がありましたような、長期的なトレンドとして下がってきているという面もありますが、確かに、貸出金利の低下幅に比べて預金金利の低下幅が小さいことから、このところ、さらに金融機関の貸し出し利ざやが縮小しておりまして、預貸業務への依存度が高い地域金融機関において、収益面の影響がいわゆるメガバンクなどに比べますと相対的に大きいということは御指摘のとおりであります。

 ただ、現時点で、金融機関の貸し出し態度が非常に消極化したとか貸し渋りをしているということはないようでありまして、地域金融機関の貸し出しは引き続き三%近く伸びておりますし、中小企業に対する貸し出しもふえております。

 そういった意味で、現時点で、貸し出し利ざやの縮小あるいは利益の縮小が金融仲介機能を阻害するということにはなっておりませんが、ただ、こういった状況が非常に長く続きますと、いろいろなことがあったときの対応力は弱くなるということは懸念されますので、今後とも、金融機関、特に地域金融機関の動向、収益状況については十分モニターしてまいるつもりでありまして、また、金融庁とも協力しながら、新しいビジネスモデルに向かって進んでいく地域金融機関のサポートをしてまいりたいと思っております。

 なお、マイナス金利政策そのものにつきましては、昨年九月に総括的な検証を行いまして、それまでの政策枠組みを強化する形で長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入して、いわゆるイールドカーブ・コントロールになっておりまして、イールドカーブが非常にフラット化して、長期、超長期がある意味で予想以上に金利が下がるということは、かなり戻っておりまして、そういう意味では、特に年金や保険の運用に対するマイナスの影響などはかなり削減されたのではないかと思っておりますが、依然として、御指摘のように、地域金融機関の収益状況は厳しいものがございますので、その点、十分配慮してまいりたいと思っております。

今井委員 私が申し上げたいのは、これからマイナス金利の対象の幅を拡大するとか、あるいはマイナス金利そのものの水準をまた下げるとか、こういうことには極めて慎重であっていただきたい、そういう思いで今御質問させていただいたので、そのことについて、もう一度お答えください。

黒田参考人 もとより、現在のイールドカーブ・コントロールと申しますか、長短金利操作つき量的・質的金融緩和は、毎回の金融政策決定会合において、経済動向、物価動向、金融情勢を踏まえて議論するわけでございますので、もちろん、二%の物価安定目標の達成のために、必要があればさらなる緩和ということもあり得ますけれども、現時点では、展望レポートで示されておりますとおり、物価は徐々に上昇していき、二〇一八年度ころに二%程度に達する可能性が高いということで、実体経済自身も、昨年の十月に見たときよりもさらに成長が加速しておりますので、そういった意味で、マイナス金利をさらに深掘りするという可能性は余りないと思いますけれども、いずれにいたしましても、十分、金融政策を決める際には、そういったことも含めて、慎重に検討してまいりたいと思っております。

今井委員 ぜひ慎重な判断をよろしくお願いしたいと思います。

 次に、実は昨日、予算委員会の中央公聴会がありまして、参考人の一人の方からも、最近、国債に占める日銀の保有率が余りに高くなり過ぎて、市場の流動化も妨げているし、その後のリスクも非常に高まっているという警鐘を鳴らしておられました。

 今、日銀の国債の保有率は全体の四割近くになっていると思うんですけれども、私もマーケットにおりましたから、どこまで行けば流動性が非常に乏しくなるかというのはなかなか難しいことは承知しておりますが、限界というのもあると思うんですね。

 ですから、毎年八十兆ふやしていって、一体どこまでなら許容されるのか。もちろん、財政ファイナンスだ、そういう観点の指摘もありますが、私が申し上げているのは、市場の健全性と日銀のバランスシートの健全性という観点で考えて、今後この比率が上がっていくということに関して、総裁、どういう御認識でおられますか。

黒田参考人 御案内のとおり、これまでのところ、日本銀行の国債買い入れは円滑に行われておりまして、先行きについても、買い入れに支障を来すような事情があるとは考えておりません。

 その上で申し上げますと、御案内のとおり、昨年の九月に、それまでの政策枠組みを強化する形で長短金利操作つき量的・質的金融緩和を導入いたしました。具体的には、金融市場調節方針において、短期政策金利と十年物国債利回りの操作目標を示した上で、これを実現するように国債買い入れを行うということにしておりまして、新たな枠組みでは、マネタリーベースの増加額あるいは国債買い入れ額を操作目標としていた従来の枠組みに比べますと、経済、物価、金融情勢に応じたより柔軟な対応が可能となりまして、政策の持続性も高まっているというふうに考えております。

 御指摘の八十兆円というものも、金融市場調節方針ではなくて、さっき申し上げたような、適正なイールドカーブを実現するために国債買い入れを行う、その際、八十兆円というのが一応のめどになっているということでありまして、この国債買い入れ自体は、適切なイールドカーブの形成に必要な買い入れを行うということですので、減少していくこともあろうし、あるいはふえることもあるかもしれませんが、御指摘の四割に達したということ自体で、市場の流動性が最近低下したとか、あるいは、将来、国債の買い入れ、具体的にはイールドカーブ・コントロールがより難しくなるということは、今のところないというふうに考えております。

今井委員 金融機関の債権担当者は、最近もうからないので本当に困っていると言って、ボーナスも減ってしまったと皆さん嘆いておられますので、ある意味、安定し過ぎているということなんだと思うんですけれども。

 そこで、私が実は一番心配していることは、今まさにおっしゃった、昨年の九月の政策変更なんですね。今、長期金利を大体ゼロ近辺に維持するということで、今のところ、それは大体維持されていると思います。

 今後の話なんですけれども、直近のアメリカのCPIはかなり強かったですから、そういう意味において、目標の二%も超えてきていますし、今、一般的に言われているのは、アメリカはことし三回は利上げすると、きのうでしたかおとといでしたか、フィラデルフィアの連銀総裁もそうおっしゃっていましたけれども、そうなると、当然、アメリカの長期金利も上昇圧力がかかってくると思います。今、二・五いくかいかないかというところでうろうろしていますが、少し前までは三%というときもありましたから、それぐらいまで上がってくれば、当然、日本の長期金利にも上昇圧力がかかるというのは常識だと思います。

 現在は指し値オペを入れて、指し値オペもちょっと価格が離れたところに置いていますから、制約しないということで何とかなっていますが、仮に、本当に上昇圧力がかかってゼロをずっと上回ってしまうというような状況が来たら、実際に実弾を入れて国債を買っていく、いわゆる為替介入のようなことを実弾でやっていかなきゃいけない局面が来るんじゃないかと思うんです。

 そうすると、一度これが始まってしまうと、もうこれは際限なくやらなきゃいけなくなってしまうので、量のめどがないんですよね。金利のめどはありますが量のめどはないので、ゼロで保つために延々と買い続けなきゃいけないということに陥ってしまうんじゃないだろうか。これを一番心配しているんですね。

 その結果、先ほどの話じゃありませんが、日銀の国債の保有比率がどんどん上がっていって、市場も健全じゃなくなっていくという事態に陥る、こういうことは十分考え得るシナリオだと私は思っているんですね。今の経済、マクロ環境を考えると、いずれ、近い将来起きてもおかしくない。それをどうやって乗り切るのかなというのが私の今の一番のテーマというか疑問なんですけれども、この辺については、総裁はどういうふうにお考えですか。

黒田参考人 確かに、米国では既に経済物価情勢の改善を踏まえて、FRBが利上げプロセスを開始しております。また、新政権による減税やインフラ投資などの積極的な財政運営によって、経済成長率や物価上昇率が高まるとの期待から、長期金利も上昇しております。

 一方、我が国では、先ほど来御説明しておりますとおり、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために、長短金利操作つき量的・質的金融緩和を推進しておりまして、現状では二%の物価安定の目標までなお距離がありますので、これをできるだけ早期に実現するためには、強力な金融緩和を推進していくことが適切であると考えております。

 御指摘のように、米国と限らず、国際的な金融市場で金利が上がっていくときに、それが我が国のマーケットにどのような影響を与えるかというのは、御承知のように、為替に影響を与えるのか、あるいは金利に影響を与えるのか、あるいはまた違った面に影響を与えるのか、いろいろな要素がありますので、まず一概に、例えば米国の長期金利が上がったから日本の長期金利も上昇圧力が全て来るというわけでもないわけです。

 そもそも、イールドカーブ・コントロールの考え方は、物価安定目標をできるだけ早期に実現するために最も適切なイールドカーブを実現するということですので、海外の金利が上がったから日本の金利も上げなくちゃいけないということにはならないと思います。

 ただ、その上で、御指摘のように、その場合のイールドカーブ・コントロールがどうなるのかということでありますが、一方で、確かに四割の国債を日銀が保有しております。マーケットにはまだ六割あるということですが。投資家によっては売りたがらないというか、より持っていようという人がだんだんふえてくるかもしれません。そうなりますと、むしろ、より少ない国債買い入れで金利を押し下げられるということにもなるわけでありまして、このあたり、委員よく御承知のとおり、マーケットはなかなか一筋縄でいきませんので、いろいろな状況を見ながら、適切なイールドカーブを実現するために、さまざまな手法を通じて金融緩和を続けてまいりたいというふうに思っております。

今井委員 確かに、長期金利が与える影響が為替に行くこともありますけれども、多くは金利同士で相関することが多いというのはもう御存じだと思いますけれども、ですから、もうここでこれ以上議論はしませんけれども、そういう事態が来たときに、目標値をこうやってずらさなきゃいけないとかいろいろなことが起きるかもしれないので、ちょっとそのあたりのところはよく注視をしておかなきゃいけないなということでお話をさせていただきました。

 あと二分しかありませんので、大臣、最後に一つだけ。

 資料に、租特の適用件数と減収額というのがありまして、置いてありますが、今、租特で減収額というのは全体で大体二兆円ぐらいあります。たくさん租特がありますけれども、全体どれだけ使っているかというと、大法人で一兆三千億、中小法人で七千億ぐらいですから、大法人の方が企業が少ないので、一企業当たりのメリットは大企業に行っているということになると思うんですが、項目によって実はばらけていまして、私が一番問題だと思っているのは、減収額が一番大きいのは試験研究費の総額に係る税額控除という、この租特です。研究開発ですね、試験控除。これは、減収額は全部で四千八百四十八億円ありますが、大法人が四千七百九十四億円メリットを受けています。そして、中小法人は何と五十四億円しかありません。ほぼ九五%以上が、この租特は大法人しか適用していないんです。ですから、こういうところをやはり見直していかないと、結局、税の不公平が起きる。そういうことだと思いますよ。

 ですから、それぞれの租特でどういう企業が使っているかというのをもう少ししっかり精査をして、大企業に偏らないような租特を考えるか、あるいは租特そのものをなくすか、何かそういう是正をする必要があると思いますので、ぜひそれをしていただきたいと思います。いかがですか。

麻生国務大臣 この租税特別措置の適用については、確かにおっしゃるとおり、法人関係で減収規模の最大の研究開発税制につきましては、これは金額ベースでは大企業の利用が多くなっているのは確かです。他方、件数ベースでは中小企業の方が八千件ぐらい、全体で一万二千件の八千件が中小企業ですよ、たしか。そういった意味で、大企業というのは四千件程度になっているんだと思いますので、事業者の規模にかかわらず幅広く利用されているということも、これは見逃しちゃいかぬ大事なところなんだと思っております。

 そういった意味では、租税特別措置というのは、全体で見ても、特に大企業に偏っている、今のその数字だけ見るとそうなりますけれども、いわゆる件数という点も我々としては考えなければいかぬところだと思っております。

 いずれにしても、ことしの税制改正では、この研究開発税制とか所得拡大促進税制については、大企業については、研究開発投資や賃金引き上げに積極的な企業により支援というのを重点化するというような形でさわらせていただいております。

今井委員 これで終わりますけれども、中小企業の数と大企業の数は全然違うんですから、それが八千と四千だからいいんだというのは、それは比率で考えてください。分母との比率で考えないと、それはフェアじゃないと思いますよ。

 そのことを申し上げまして、もう時間が来ましたので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。

御法川委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民進党、木内孝胤でございます。

 昨日来、質問時間が十時間、そして私が十五人目の質問者となります。

 今週はプレミアムフライデーということもこれあり、充実した審議をするために、私は質問通告をおととい、月曜日にさせていただきました。結果、私のような凡人が聞くことはほぼほかの方も事前に聞かれてしまい、少々脱線する可能性もございますけれども、よろしくお願いいたします。

 ちょっと最初の質問から脱線ですが、これは答えられなければ結構ですが、日米経済対話について一つお伺いしたいんです。

 ドッド・フランク法という法律、ウォールストリート改革法、消費者保護法というのがございます。ムニューチン財務長官、ゴールドマン・サックス出身で、彼と机を並べた日本人は複数名いまして、私もいろいろヒアリングをしておるんですが、恐らく最初に持ち出してくるのは、この銀行経営の足かせとなっているドッド・フランク法、これを見直すべきではないかと。

 一方で、ヨーロッパ等ではまだまだ厳しい意見もございますし、これを持ち出されたときに、日本としてどういうような対応をとるのか。麻生大臣としては、当時リーマン・ショックを一番身近に経験した方でございますので、リーマン・ショック後の銀行経営について、非常にいろいろ御見識があるんだろうと思います。

 私の勤めていたメリルリンチ証券という会社も、五兆円以上損を出しましたけれども、当時の社長は退職した際に百八十億円の退職金をもらって、五兆円の損を出し、仲間を大勢死なせ、その結果、百八十億円の退職金というのは、資本主義というのは一体何なんだろうかと悩んで、私はその一カ月前にたまたま選挙に出たためにやめておりましたけれども。

 このドッド・フランク法につきまして、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 この種の話は、知っている話でも、あらかじめの質問通告がないときはお答えしないというルールになっているというので、よくよく理事から言われていますので、お答えいたしかねるというところですけれども。

 今の話はやりますけれども、今後また、この種の質問をされたいんだったら、少なくとも、向こうのメンツがある程度そろわないで、やっとムニューシンが決まった段階で、局長、次官、まだ一人もいないんですよ。その段階で、何を言ってくるかなんという予想みたいなことをやったって何の意味もありませんから。

 ドッド・フランク法というのは、言ってくる可能性はそれは十分にあるとは思いますよ。あるとは思いますけれども、あそこに、下に来る人のメンツによってはごろっと変わっちゃうものになるだろうと思いますので、ちょっと今の段階でこれに対して、いろいろな可能性というのは十分にあるとは思って、金融庁なり財務官室でいろいろやっておることは認めますけれども、まだ内容が全くわからぬという段階で。

 金融に関してはえらい詳しい人ですから、前のジャック・ルー長官よりははるかに金融に関してはわかっている人だという感じはこの間の電話でしましたので、話の内容としては、お役人さんに話をするよりは話がすんなりいける、いろいろ話し合えるところがあるのではないかなという感じが今しているということ以上、ちょっと申し上げるネタを持ち合わせておりません。

木内(孝)委員 通告なしの御回答、御答弁をありがとうございます。

 これは、来月G20で会うときに、想定問答の第一になるかと思いますので、ぜひ事務方も用意周到にお願いできればと思います。

 配偶者控除についてお伺いをしたいと思います。

 資料を用意させていただいております。見なれた資料だと思いますけれども、GDPの成長率、実質、名目とございますけれども、経済再生ケースとベースラインケース、これは皆さんよくごらんになっている資料かと思います。

 この経済再生ケースは、数字がややアグレッシブといいますか、人によっては荒唐無稽という捉え方もございますけれども、一つの前提となっている数字が資料の下の方に書いてございまして、一つは全要素生産性、TFPの数字が〇・八%程度から二・二%に上昇するという前提がございます。

 それと、もう一つの数字としては、女性の労働参加率が、三十―三十四歳の場合、七一%程度から十年後には八一%程度に上がるという数字となっております。同様に、六十五から六十九の女性の労働参加率は、三二から三七%程度に上がるという数字となっております。

 もう一枚おめくりいただきたいんですが、日本の生産性は、先進国二十八カ国の中で、一人当たりのGDPはビリから二番目という、二十七位となっております。いろいろ要因はあると思うわけですが、一つの大きな要因は、非常に残念なことではございますけれども、男女の給与格差、生産性の格差が非常に大きいという数字がございます。

 この数字をごらんいただきますとわかるのが、日本では、二十代の男性の給料を一〇〇とした場合、大体八〇ぐらいが女性の給料となっております。それが四十五以上になりますと、大体四〇%台まで、男性が一〇〇とすると、四四とか四二という数字になります。

 これは、アメリカとかイギリスの数字を見てみますと、二十代のときは大体一〇〇に対して九〇ぐらいですが、四十五歳以上になっても七〇程度にしか下がらない。もちろん、出産、結婚等があって、職場復帰して、日本の場合は大きく下がっていますが、欧米の場合、イギリスとアメリカのケースですけれども、八〇%程度、七〇%程度にしか下がっていない。

 今、女性の働き方次第で生産性を大きく上げられる。その中で、今の配偶者控除の議論があった中で、本来であれば、女性の生産性というのは、こんな四〇とか賃金格差があってはおかしい話ですし、あるべきではないと思っております。

 これの一つの大きな原因が配偶者控除だと考えております。百三万円の壁、百六万円、百三十万円の壁、いろいろございます。私は、あれは壁というよりも貧困のかごという捉え方をしておりまして、壁を低くしたのではなくて、百五十万円までしか働かせない社会システムのあり方をより強固にしたという捉え方をしております。

 今回、非常に、配偶者控除見直しということで期待をしておったんですが、多くの人が公平、中立、簡素という観点からも問題ありと指摘しておりますけれども、今の配偶者控除ですと、四〇%台の賃金格差が五〇、六〇に上がるという期待感が私は全くないと思っています。

 大臣、この数字を見てどう捉えているでしょうか。御意見をお願いします。

麻生国務大臣 これは、ちょっと正直、数名しか聞いていないんですけれども、これで十一月も十二月も働けるようになりましたとゴルフ場のキャディーさんが言い、スーパーのレジに勤めている人もそう言い、としているのも確かです。

 傍ら、今言われたような話もありますので、ちょっとこれはしばらくやってみた結果を見て、その上でないと、傾向をちょっと見ないと、うかつに法律なんてつくっても、それが実際どう施行されて、それがどう反応が出てくるか見た上でまた考えなきゃいかぬところだと思っておりますので、今の段階でまだ、もう少し状況を見た上で話をさせていただければと思います。

木内(孝)委員 この格差、十一月、十二月になってやめていた人が働き始めるというのは、百五十万に枠が上がったから、そうだと思います。

 ただ、その結果何が起こるかというと、九百五十円の時給の方の層がふえるということであって、いわゆる男女の賃金格差は、働き方が全然違うから、これぐらい格差が起きているんです。十一月、十二月になると私は休みますわという働き方をしている方は、賃金がずっと九百五十円に抑えられたままになっている。本来であれば、同じ能力を持っているのであれば、働き方、管理職であったり、高付加価値の仕事であったり、そういう仕事につけば、男女の賃金格差が変わります。

 だから、その視点を持って、ぜひこの配偶者控除、しばらく様子を見なきゃいけないということは十分承知の上、賃金格差がこれだけあるために、それを見直すために配偶者控除をやった、そういう問題意識を持っていただきたいという最後の質問で、これで質問を終わりにしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、木内先生、人手がもっと減れば、嫌でも時給は上がるんですよね、人がいないんだから。店を閉めるか、嫌でも給料を上げて雇うかしかありませんから。労働力というのは、タイトにならない限りは人件費が上がるということはありません。

 そういった意味で、私どもは、今回の場合、これによってある程度楽になったところはあるとは思いますけれども、しかし、九百五十円の話をされましたけれども、それが千円になり、千五十円になっていくというためには、もっとタイトになっていかない限りは上がってこないものなんだ、私はそう思いますので。

 労働時間の短縮とかなんとかいうものの方で、給料を上げて、時間も短縮して、結果として生産性も上げるという方向にしないと企業はもたぬと思ってはおります。

木内(孝)委員 ありがとうございます。

御法川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府地方創生推進事務局審議官青柳一郎君、国土交通省大臣官房審議官石田優君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

御法川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

御法川委員長 質疑を続行いたします。木内孝胤君。

木内(孝)委員 民進党、木内孝胤でございます。午前に引き続き、よろしくお願いいたします。

 配偶者控除につきましては、もう質問は終わりましたが、いろいろ課題があるということは御認識いただきまして今後も取り組んでいただければと思います。

 次の質問ですけれども、昨日もきょうも質問に出ておりましたが、パナマ文書、BEPSプロジェクトの進捗と課題ということで、いろいろ強い姿勢で取り組んでいただいていることはもう既に御説明をいただきました。

 ただ、一つその中で気になりましたのが、その決意とか覚悟、姿勢は強く感じたものですが、例えば、具体的に、国際税務専門官、特別国税調査官、特別国税徴収官ですか、こういう専門の御担当の方が、先ほども何か一名ふえたとか四名ふえたというような話がございましたけれども、普通、こういう委員会での質問は、何か、人が多くて、行政改革して人を減らせというようなことが多いかと思いますが、珍しく、ここは資源の集中投下ということで、増員を促すような質問をさせていただいておりますけれども、改めて、体制の部分、どういうような体制になっているのか等々、体制強化の人員のところを御説明いただければと思います。

木原副大臣 委員の御指摘のとおり、近年、経済取引といいますものは、複雑化、また国際化、加えてICT化ということによって大変税務行政自体が困難化している状況にありまして、とりわけ、国際課税の分野への対応や大口でかつ悪質な事案への組織的な対応等が税務行政における重要な課題となっていることは認識をしております。

 そのために、国税庁といたしましては、国際課税に係る調査等を専門的に担当する国際税務専門官、大口事案や複雑な処理困難事案に係る調査、滞納整理等を担当する特別国税調査官の設置を積極的に進めておりまして、平成二十四年度からの五年間で、海外取引を有する納税者や大口納税者が多く所在する国税局を中心に、これらを合わせて百五十五人増員いたしまして、必要な体制整備を進めているところであります。

 今後とも、こうした取り組みを進めていく必要があり、必要な人員を確保し、国税庁の執行体制の強化を進めていくことが重要であると考えております。

木内(孝)委員 引き続き御努力をお願いしたいと思います。

 次の質問に移りたいと思います。

 先週も質問させていただいたんですが、東芝の件について質問いたします。

 これは市場で取引もされておりますし、いろいろなニュースが出ている中で、私も再度質問するかどうかを迷ったところでございますが、やはりいろいろな問題があるということで、お答えいただけない部分があるのは承知の上で、あえて質問させていただきたいと思います。

 問題意識としてありますのは、アベノミクスの中でも、その構造改革の柱の一つでもありますコーポレートガバナンス、スチュワードシップ・コード、あるいはフィデューシャリーデューティーとか、非常にここはいい取り組みをしているというふうに私は認識をしている中で、こうした事件が起こったことが大変、事件と現段階では言いませんけれども、こういう事象が起きていることを非常に残念に思っている次第でございます。

 まず、東芝という特定の会社に限らずという、一般的な質問ということにさせていただきますが、まあ、私は東芝という会社を想定して質問しているわけですが、今一つの争点になっていることは、東芝が上場維持をするのか、あるいは三月末、債務超過であれば、二部に指定がえということになりますし、それが一年続けば上場廃止ということもあろうかと思います。現時点で特設注意市場銘柄に指定されている中で、東芝が今後特設注意市場銘柄にあるかどうかということではなくて、言ってみたら、ちょっと言葉がきついかもしれませんけれども、詐欺事件に遭って、それが執行猶予中にまた大型詐欺を起こしたというのが今の会社の状況だと思っております。

 私は相当厳正な判断をするべきだと思っておりますけれども、東京証券取引所の上場基準、とりわけこの特設注意市場銘柄につきまして、どういう基準があるのかということをお伺いしたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘がございましたように、東京証券取引所は、平成二十七年九月十五日に東芝株式を特設注意市場銘柄に指定し、昨年十二月十九日に指定を継続しているところでございます。

 東京証券取引所の上場廃止基準によりますと、指定から一年六カ月経過後、したがいまして、三月十五日ということになろうかと思いますが、その段階で内部管理体制確認書の再提出を受ける。それで、受けました後、東京証券取引所はその審査を行い、問題がない場合には指定の解除、改善が見られない場合には上場廃止を決定するということが上場廃止基準では書かれているところでございます。

木内(孝)委員 この特設注意市場銘柄に指定されている中で今回の追加の減損を出したわけで、出したというか出す予定ということでございますので、上場基準の審査につきましては東証が一義的に判断されることだと思いますけれども、これは世界の市場がどういう判断をするのかということを静かに見守っているところでございます。この事象は、起こったことは起こったこととして、誤った判断をすると、それがある種の二次災害にもなりますので、ここはぜひ厳正な審査基準で御対応いただければというふうに思います。

 今の上場基準も添付資料で書いてありますけれども、その前のページに、資料七として、銀行の債務者区分の定義が書いてあるものをおつけしております。

 報道によりますと、東芝は三月末に現時点では債務超過になるのではないかというふうに見込まれております。この基準をそのまま何となく読むと、私も銀行におりましたので、よく当時の金融庁の検査にも、直接面談等もさせていただきましたけれども、当時の感覚でいうと、破綻懸念先なのかなと。現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後経営破綻に陥る可能性が認められる債務者。一方で、含み益があると言われている半導体事業等もありますので、場合によっては要注意あるいは正常先にとどまるという可能性もあると思いますけれども。

 債務者区分につきまして、東芝といいますか、一般論として債務超過にある会社がどういう債務者区分をされる可能性があるのかという、ここの定義がございますけれども、御説明いただければと思います。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げさせていただきたいと存じます。

 金融機関による資産査定というのは、まずは金融機関におきまして、自己責任原則に基づきまして金融機関みずから実施するということになってございます。

 その際の債務者区分の検討でございますけれども、先生のお配りになりました資料ないしお話しのありました債務者区分にのっとりまして、その上で、例えばでございますけれども、業種などの特性を踏まえまして、事業の継続性と収益性の見通し、キャッシュフローによる償還能力、あるいは経営改善計画の妥当性や金融機関等の支援状況などを含めまして、総合的に勘案して判断する、こういうことにされているところでございます。

木内(孝)委員 その書いてある文言と、最後、総合的な判断ということもございますし、この区分の区分けというのは、やはり当局との折衝とか、ある意味、政治判断的なものも一定程度入るのかなというふうに認識しております。

 もう一つ論点があると思っていまして、論点といいますのは、今どういうふうに東芝という会社を再生させるのか。その中で、市場関係者が非常に気にしております点がありまして、東芝は原発事業という事業を保有しております。これは国策事業とも言えます。こういった場合、例えば米国ですと、私も、ある日本の電機メーカーに頼まれて、米国のソフトウエア会社を買収してほしいということで交渉していたことはありますけれども、当時、そのソフトウエア会社が、一部、ペンタゴンにかかわる、国防省にかかわる事業を請け負っていたということで、米国でいうと、エクソン・フロリオという法律がありまして、安全保障にかかわるものについては否認することができるという法律がございます。

 日本はそれに相当する法律はございませんが、ある意味、類似性のある法律としましては、外為法の第二十七条で、「国の安全を損ない、公の秩序の維持を妨げ、又は公衆の安全の保護に支障を来すことになる」という文書がございまして、場合によっては、安全保障あるいはこうした原発にかかわる事業というのは否決される可能性があるというふうに解釈できるわけですけれども、東芝、あるいはほかの原発会社も含めまして、こうした原発事業を抱える会社というのはこの第二十七条の条項が適用されるのかされないのか、お答えいただければと思います。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御指摘ございましたとおり、現在、我が国におきましては、外国為替及び外国貿易法に基づきまして、外国投資家が、武器、原子力、あるいは軍事転用が可能な品目を製造する企業に対して投資を行う場合につきましては、事前届け出の対象としております。また、今御指摘ございましたように、国の安全等の観点から、厳格に事前審査を行うこととしております。

 その上で、必要な場合には、財務大臣及び事業所管大臣が、その投資の内容の変更あるいは中止について、勧告あるいは命令ができるということになっております。これは一般論でございます。

木内(孝)委員 この手続は、いわゆる事前相談的なことというのは可能なのか、あるいは、正式に届け出をして審査をしなきゃいけないのか。内々の事前相談的な実務というのは存在するんでしょうか。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 法令の運用について、外国人投資家の方を含めまして、お問い合わせがあれば、その内容について御説明をするということで、実際に、その届け出が行われる前に投資家の方とやりとりをすることもございます。

木内(孝)委員 きょうは経産省の方も来ていただいているかと思いますが、原発事業というのは、いわゆる国策事業で、日本にとって、日本の国内にとどめておかなければいけない事業だというふうに認識をされているか、お伺いをいたします。

飯田政府参考人 私は直接の担当ではございませんけれども、原子力発電は非常に重要な事業だというふうに認識をしております。

木内(孝)委員 もう一つ同様の質問で、半導体というのは、ある意味、産業の米とも言われておりますし、半導体でもいろいろな幅がございますけれども、半導体については、昔から日の丸半導体とか、かつては世界のシェア五〇%を誇っていたものが、今は相当減っています。

 その中で、東芝は、売り上げベースでいうと、世界で八位ぐらいとまだ比較的健闘している会社だと思いますが、こうした半導体事業というのは、先ほど申し上げたような国策というか原子力事業、重要事業等に該当するのか否か、お伺いをいたします。

吉本政府参考人 お答え申し上げます。

 東芝の再生に関しましての取り組みにつきまして、個別企業の経営に関する事案でございまして、コメントは差し控えたいというふうに存じますが、一般論といたしまして、我が国経済活性化のためには、我が国において、国際競争力を有します付加価値の高い事業、これが営まれまして、そうした事業によって雇用が維持されていく、こういったことが大変大事だと考えております。

 そうした観点から、今後の対応については、しっかりと注視をしてまいりたい、こういうふうに考えてございます。

木内(孝)委員 半導体と原子力という非常に日本にとっても大切な事業がある中で、日本を代表する、過去に財界総理と言われる経団連の会長を二名輩出し、歴代の社長も、最近、ほとんどみんな経団連の副会長を務めている超名門企業でございますけれども、しばらくの間、証券取引等監視委員会は東芝さんの調査というか検査を続けてきたと認識しておりますが、これもなかなか個別のことについてはお答えできないということは承知しておりますけれども、これだけ監視が強化されている中で、七千億円の追加損失というのが見抜けなかったのか、非常に不可解でございます。

 悪意を持って数字を操作すると、幾らデューデリジェンス等をやってもなかなか見抜けないということは承知をしております。ただ、東芝の不良債権というか減損している部分がどこかというのはかなり特定できていた中で、海外であるからなかなか難しいというのはわかるんですけれども、なぜここまで全く見抜けなかったのか。体制がまずかったのか。何か問題点があったのか。そこら辺、教えていただければと思います。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねの件は、個別の調査に関する事項でございますので、コメントは差し控えたいと存じますけれども、事実関係を申し上げますと、東芝に対しましては、証券取引等監視委員会は、平成二十三年三月期から平成二十七年三月期決算に係る開示書類を対象として検証を行いました。

 その結果、平成二十四年三月期及び平成二十五年三月期の有価証券報告書等について、重要な事項に関する虚偽記載が認められたということから、平成二十七年十二月に、金融庁に対して課徴金納付命令勧告を行い、同月、金融庁が課徴金を課したものでございます。

 今御指摘の巨額の減損処理の詳細については、東芝が、平成二十九年、本年の三月十四日までに公表すると発表していると承知しております。

 いずれにいたしましても、一般論として、監視委員会におきましては、金融商品取引法上の法令違反に該当する事実が疑われる場合には、適切に対応することとなると考えております。

木内(孝)委員 冒頭にも申し上げましたが、東芝の取引に関しては、特設注意市場銘柄という、相当な事件性のあるような状態の中で、本当に執行猶予的な立場であった中で、追加で、ちょっと信じがたい金額を減損しております。

 今まで、過去にも、カネボウ、西武鉄道、いろいろな案件があったと思います。ライブドアもそうです。ライブドア、堀江貴文氏が逮捕されましたけれども、そのときの東京証券取引所の社長を務めていたのは、東芝の元社長でありました。

 こういうことから見ても、上場廃止にならなかった日興のケースとか、あるいはオリンパスのケースのときもそうですが、私はあのオリンパスのケースのときも財務金融委員会等にいたものですから、私はあのときも、本当は上場廃止をして厳正な処分をするべきというふうに、実は内々に、マーケットに影響が出ないようにということで、東京証券取引所の関係者には、個人的な立場ではなく、若干公的な立場で内々に伝えたわけであります。

 しかしながら、そのときは、やはり二次災害、要するに既存の株主が損をする可能性があるということもあったものですから、当時の社長がちゅうちょしたという理解であるんですが、過去の事例とも照らし合わせながら、今後、どのような体制でどのようにこういう個別銘柄を見ていく御覚悟があるのかということを最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども申し上げましたけれども、個別の上場会社への対応については、これは東京証券取引所において審査、判断されることとなっておりまして、私どもといたしましては、コメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにしても、東京証券取引所において、ルールにのっとり適正な審査が行われるものというふうに理解をしているところでございます。

木内(孝)委員 以上で終わります。ありがとうございます。

御法川委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 民進党の福田昭夫でございます。久しぶりに財金での質問の時間をいただきまして、ありがとうございました。

 本日は、所得税法等の一部を改正する等の法律案及び平成二十九年度予算案、アベノミクスの評価などについてお伺いをしたいと思います。麻生大臣初め政府答弁者には、ぜひ簡潔な答弁をお願いしたいと思っています。

 遠慮して三十分と言って、しまったな、四十五分ぐらい欲しかったなと実は思っているところでありますが、まずは、本法案の問題点等についてであります。時間の関係でまとめて話しますので、お答えをいただければと思います。

 一つ目は、個人所得課税についてであります。

 今回、配偶者控除の所得上限を百三万から百五十万へ上げたんですが、既に議論になっていると思いますけれども、これは完全に判断ミスだったんじゃないかなと。社会保険料の壁百三十万と税金の壁、これを同時に検討しないと効果は大変薄いと思っていますが、それをどう考えているのかというのが一つです。

 それから二つ目は、資産課税についてでありますが、今回の見直しも私は評価をするところでありますけれども、しかし、平成二十五年度の税制改正でスタートした、赤の他人でも中小企業の事業承継税制の優遇税制が受けられるという話が意外と中小企業者に伝わっていないということがありますので、これは国税庁と中小企業庁とよく連携をして、しっかりPRをして、中小企業が廃業に追い込まれない、後継者がいないからといって廃業に追い込まれずにきちっと企業が継続していける、存続していける、そういう御努力を一層、ぜひやってほしいと思っています。

 特に、やはり商工会議所や商工会などのPRも足りない。そこまでは資料が届いているんですよ。でも、そこから先がなかなかうまいこと届いていないということで、そこの御努力をお願いしたいというのが二点目であります。

 それから三点目、法人課税についてでありますが、法人課税については、何かの機会にも申し上げましたけれども、やはり法人課税については抜本的な改革が必要だと考えています。特に大企業については、租特などの優遇税制を全て廃止して一律二五%の税率に簡素化する、そういうやり方がやはり必要だと思っています。

 中央大学の名誉教授の富岡先生によれば、元国税庁の役人でありましたけれども、彼によれば、こうしたことをしても、国税と地方の法人二税を合わせても法人税が大幅にふえる、そんな試算もしておりますので、ぜひ、来年度とは申し上げませんけれども二、三年のうちには、しっかり研究をしてそうした改革をすべきだというふうに思います。そうしたことで、やはり財政健全化のためにも十分役立つと思いますので、もうかっている企業から税金をもらわない、赤字法人から外形標準課税を拡大して税金をもらう、そんなことはやらないように、ぜひ抜本的な改革を法人課税についてはするべきだということでお伺いをしたいと思います。

 それから四つ目の、災害に関する特例の整備についてでありますが、私も、一昨年の台風十八号の被害があったときに、衆議院の災害対策特別委員会で、このところ、それこそ台風や竜巻、大雪、地震など、毎年のように大きな災害が起きておりますので、災害に関する特例はやはり早急にあらゆる面で整備したらどうかと提案をしておりましたので、今回、この特例が整備されるということはよかったと思っておりますが、今回の特例はどのようなものなのかを具体的にちょっと教えていただければと思います。

 以上、四点、お答えをいただければと思います。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

木原副大臣 福田委員に四つ伺いましたので、順次お答えをさせていただきます。

 まずは、配偶者控除の見直しの部分でございますけれども、もともと、過去には百三万円の壁というのがありましたけれども、これはもう委員も御承知のとおり、税制上の百三万円の壁というのは既に解消しているところでございました。ところが、この百三万円という水準が企業の配偶者手当の支給基準として援用されていたことや、そういったことが心理的な壁になっていることがいわゆる就業調整の一因となっていたのではないかという指摘を踏まえた上で今般の見直しを行ったというところでございまして、しかし、委員の御指摘のとおり、こういった就業調整の問題については税制のみで解決できるものではなくて、関連する社会保障制度、百三十万円の壁であるとか、または民間企業の配偶者手当など、そういった複合的な要因を一つ一つ丁寧に解きほぐしていくことが重要だというふうにも思っております。

 この点、厚生労働省においては、百六万円や百三十万円で就業調整が行われてしまうといった状況にならないように努めているところというふうに承知をしているところでございますが、引き続き連携をとりながら、働きたい方が働きやすい環境の整備を進めていくことが重要だ、そういう認識に立って政府として考えてまいりたいと思います。

 続けて、事業承継税制は参考人の方から申し上げますが、次に、いわゆる租特の問題でございます。

 法人税において、租特や受取配当金の益金不算入制度といった制度、こういったことを例えば全て廃止した、それを財源として法人税率を引き下げる、そのようなお考えもあろうかと思いますけれども、しかし、例えば受取配当金の益金不算入制度につきましては、子会社に課税される法人税との二重課税を避けるための制度であって、こういったことは諸外国でも一般的に導入されておりまして、こういったことをやはり一つ一つ丁寧に検証していかなければ現実的ではないなというふうにも考えているところでございます。

 他方で、財務省としては、特定の企業に利用される各種の制度の影響によって法人税の課税ベースが狭くなっていたという面があることを十分認識した上で、こういったことを踏まえて、平成二十七年度、二十八年度において取り組んだ法人税改革というものは、欠損金の繰越控除制度の見直しや、また、生産性向上設備投資促進税制の縮減や廃止といった租特の見直しを、課税ベースの拡大に取り組みまして、これによりしっかりと財源を確保しつつ全体の税率を引き下げたものでありまして、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革したものでございます。

 そして、四つ目でございますが、災害に関する税制上の対応ということで御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 私自身、熊本の出身でございましたので、今回は取り組ませていただいた次第ですが、委員も問題意識をずっと持っていらっしゃったということは承知しておりまして、こういった、現行税制上、災害を受けられた方に対しては、申告、納付期限の延長や所得税の減免など、一般的に適用されるさまざまな特例措置が講じられておりましたが、それに加えて新たな措置を講じるかどうかというのは、これまでは災害の種類であるとか規模であるとかそれぞれの地域の被害状況などを踏まえてその都度検討を行って、できたりできなかったり、特別な立法措置によって対応してきたところでありますが、今回、今年度の改正においては、近年非常に災害が頻発していることも踏まえて、被災者の不安を早期に解消するとともに、税制上の対応が復旧や復興の動きにおくれをとることのないように、これまで特別立法によって措置された災害税制のうちに被害の状況や規模などによらず災害一般に適用することが適当なもの、被災者生活再建支援法などのもとで他の支援施策が講じられている場合に適用することが適当なものについて、あらかじめ規定を整備しておく災害関連税制の常設化というものを行うこととした次第でございます。

 具体的にとおっしゃったので、一例だけ申し上げますと、例えば住宅ローン控除につきましては、現行制度上は対象となる住宅に現に居住していることが適用要件とされておりました。居住要件がありましたが、災害によって住宅が滅失等をしても引き続き住宅ローン控除を受けられるよう見直すとともに、被災者生活再建支援法が適用される災害においては、再取得した住宅に係る住宅ローン控除を重複して適用できるような措置を講じているところでございます。一つの例でございますが。

 そのような形で、今般常設化する災害関連税制につきまして、委員の御理解を引き続きお願いいたします。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

飯塚政府参考人 私から、二点目の、事業承継税制のPRについてお答えをさせていただきます。

 いわゆる事業承継税制につきましては、平成二十一年度の税制改正で制度が創設されたわけでございますけれども、その後も、御指摘の後継者の親族間承継要件の廃止など、さまざまな要件緩和等が行われてきているところでございます。

 国税庁におきましては、制度導入当初から、また制度改正がある都度、この制度の周知広報に取り組んでいるところでございまして、具体的には、国税庁ホームページへの情報掲載でございますとか、各種リーフレットの税務署窓口への設置、あるいは関係省庁等々のホームページと相互リンクを張る、こういったことなどを実施してきているところでございます。

 今後でございますけれども、御指摘も踏まえまして、制度の理解や普及が進みますように、中小企業庁のほか税理士会を初めとする関係団体とも連携、協調を図りながら、積極的な周知広報に努めてまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 ありがとうございます。

 なぜそんなことを申し上げるかというと、昨年の十二月、私、地元の宇都宮の中小企業二社から、銀行からいじめられていてどうも困るんだということで相談を受けました。信用保証協会に行って相談をしたら、この中小企業二社は経営改善計画をつくってぜひ再生させたい、こういう話でしたが、あとは銀行です、こういう話で、銀行に行ってもお願いしてきましたけれども。そうしたやりとりの中で中小企業に聞いてみたら、二社あって、一社は息子さんが承継した、もう一つは従業員が承継した、そうした中で事業承継税制が受けられる、優遇税制が受けられるという話を知らない、税理士に相談していても、税理士からもそういう話はなかった、こんな話を聞いたものですから、商工会議所に行って、相談センターなどのチラシを持って中小企業者にお渡しをして、ここで相談しなという話をしたことが実はありまして。そんなことで、ぜひ、もしかすると後のアベノミクスの話にも入ってくるかもしれませんが、銀行の貸し渋り、貸し剥がしもどうも始まってきているということの一例として申し上げておきたいと思います。

 それから、もう一つは法人課税ですけれども、法人課税は、御案内のとおり、二十七年度、二十八年度は税率を下げましたけれども、法人税額総額そのものは同額でやっているんですよね。こういう小手先の改革では、この次、今度はどうするのか、さらに法人税率を下げるときにどうするんだ、こういう話が必ず出てくるわけであります。二十九年度はそんなにやらなかったけれども、三十年からずっとさらにいくときに、税額を同額にするのにどういう方法がこれから可能になってくるのかということをやはりしっかり考えて、法人税のあり方というものを少し時間をかけても研究して見直すべきだと私は思っております。

 それでは次に、平成二十九年度予算案の問題点についてであります。

 多分これも既に議論されているんだと思いますけれども、一つ目は、税収増の理由についてであります。前年度に比べて千八十億円増となっておりますが、その理由について教えてほしいと思っています。これもまとめてちょっと質問を言ってしまいます。平成二十八年度の第三次補正で税収が一兆八千億弱マイナスとなって赤字国債の発行を余儀なくされていたのに、ふえる理由はないのではないか、こう思っておりますが、それが税収増の理由を聞く話であります。

 二つ目、税外収入増の理由についてでありますが、税外収入は前年度に比べて六千八百七十億円増となっておりますが、その理由をお聞きしたいと思います。多分、外為特会から原則を破って二・五兆円全額を繰り入れたことによって大幅な増額となったとのことでありますが、それは何のためにそうしたのかということでありまして、その二点、お答えをいただきたいと思います。

木原副大臣 二点御質問をいただきまして。

 まずは税収の部分から申し上げますと、二十九年度の税収でございますけれども、政府経済見通しにおけます雇用・所得環境の改善、消費や生産の増加等、こういったものを反映して見積もりを行いまして、二十八年度補正後税収から一・九兆円増の五十七・七兆円と見込んでいるところでございます。政府としては、二十九年度には、雇用・所得環境の改善が引き続き続く中で、民需を中心とした景気回復を見込んでいるところであり、経済対策の円滑かつ着実な実施などによってこれを実現してまいりたいと考えております。

 続けて、税外収入の御質問に関してでございますが、二十九年度予算におけます税外収入は五・三兆円でありまして、対前年度で〇・七兆円の増加となっております。その主な要因は、今委員御指摘のとおり、外為特会からの受入金について、外為特会の剰余金見込み額の全額を一般会計に繰り入れているところによって、対前年度で〇・九兆円増加していること等によるものであります。

 外為特会からの繰り入れにつきましてはルール無視ではないかというような御指摘だったかと思いますけれども、これにつきましては……(福田(昭)委員「簡潔でいいですよ」と呼ぶ)ええ。二十二年に公表した一般会計繰り入れルールにおきまして、外為特会の剰余金について、毎年度の剰余金の三〇%以上を外為特会に留保することを基本としつつ、外為特会及び一般会計の状況を踏まえ、一般会計への具体的な繰入額を決定することとしております。

 二十九年度予算では、この一般会計繰り入れルールに沿って、一般会計における歳出の伸びとこれに必要な財源確保の状況や、外為特会には近年三〇%を超えて剰余金を留保してきており、二十九年度に全額を繰り入れても過去四年間を通じれば三〇%以上を留保していることになるという事情を勘案して、二十八年度の外為特会の剰余金見込み額の全額である二・五兆円を一般会計に繰り入れることとしたものでございまして……(福田(昭)委員「短く答弁してください、時間がないから」と呼ぶ)はい、失礼しました。ルールを無視して無理やりやったものではないということだけ御報告させていただきます。

福田(昭)委員 安倍政権になって四年連続で新たに発行する赤字国債を減らしてきたんですよ。ところが、今回、残念ながらそうした外為特会の全額だのを繰り入れないと、あるいは税収を伸ばさないと、公債依存度が実はふえるんですよ、逆に。この資料を見てもわかるように、わずか〇・三%ですけれども、二十八年度当初で三五・六%だったのが今度の二十九年度当初予算では三五・三%と、わずか〇・三%公債依存度を減らしたんですよ。こんな小手先のことをやってもだめじゃないかなというふうに思います。答えは要りません。

 三つ目、平成二十九年度都道府県税の税収見込みについてでありますけれども、アベノミクスが失敗しているのがよくわかるのが、地方、特に都道府県の税収です。平成二十八年度も減収の見込みですけれども、平成二十九年度の当初予算額を見ると、平成二十八年度当初予算に比べて、きのう現在、まだ山口県だけ出ていないんですけれども、四十六都道府県の集計をしますと、三千五百八十九億円の減収です。税収減です。特に、大きな法人があるところ、それから工業県、ここがみんな大幅な減収です。

 ですから、アベノミクスがうまくいっているんだったら、地方の税金はふえていいはずですね。ところがふえません、残念ながら。ですから、まさに、こういうふうに国の予算もわざわざアベノミクスがうまくいっていないということを隠すような予算を組むから、きのう参考人質疑でみんな、それこそ、財政健全化心配だ、そういう話がたくさん出てきたんじゃないですか。ですから、そういう意味からいうと、本当に心配な予算だというふうになってきていると思います。それで地方自治体の方からは話を聞かないで。時間がないので先へ進みますけれども。

 四番目の、平成二十九年度予算案の評価についてでありますが、麻生財務大臣は財政演説の中で、平成二十九年度予算は、経済・財政再生計画の二年目に当たる予算であり、現下の重要な課題に的確に対応しつつ、経済再生と財政健全化の両立を実現するものとしていますと述べていますが、本当にこれで両立できるんですか。大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 質問の予告には、地方税の方だけで、国税の話はなかったと思っていますので。(福田(昭)委員「いや、もう地方税は終わりましたから。予算の評価に入りました」と呼ぶ)地方税の方の質問だけで、国税の方はいただいてなかったと思いますので。

 国税につきましては、この四年間で見まして、いわゆる税収は伸びております。地方税も同じように伸びております。国税も十五兆円も、地方税も地方税収は伸びておりますので、それは少し持っておられる数字が違うんじゃないかと思いますが、そこの数字は、この四年間で見ていただくときちんと伸びていると思いますが。

福田(昭)委員 大臣、今申し上げたのは、二十八年度と二十九年度を比べて、二十九年度が減るという話です、地方税が。それは、各都道府県、四十七都道府県のうち四十六都道府県の来年度当初予算、それを集計したものです。これは総務省に集計してもらいました。ですから、それが三千五百億円以上減るんですよ。多分聞いてなかったと思いますけれども、減る。

 それは、都道府県は、やはり国と違って、勝手に地方債は出せませんから、厳密に見積もらなかったら後で大変だから、きちっと、税収がどれぐらい入るか見積もって予算を組んでいるんですよ。国は、いざとなったら、それこそ赤字国債だって発行できるんだから。地方はそれはできないんですよ。ですから、地方の方がより厳密な税収を実は積算している、見積もっているということなんですよ。ですから、アベノミクスがうまくいっていれば、来年度も税収を伸ばしたっていいんですよ、地方も。それがないからみんな厳しく見積もっているんですよ。

 そういうことで、しようがないので、ここはここでまとめて、それでは次に行きたいと思います。

 来年度の予算案は、そういう意味では、外為特会というお金を使って一般会計の借金増を回避した、アベノミクス失敗隠し予算と言われても仕方がないのではないかと私は思っております。

 大臣、よく聞いていてください。大変不思議なことがあるんですが、財務省が発表した平成二十八年度の経常収支の速報値、これを見ると六年ぶりに貿易収支も黒字になったんですよ、二〇一六年。そして、経常収支は何と二十兆六千億円を超えているんですよ。これだけ外国でもうけさせてもらったのに、日本の経済の再生と財政の健全化に全く役立っていないんですよ。どうしてですかね。

麻生国務大臣 今、日本の稼ぎ方というのは、もうよく御存じだと思うんですが、いわゆる貿易収支とか、所得収支とか特許収支とかいろいろありますけれども、そういったものが間違いなく伸びておりますでしょうが、そこのところは。

 外国で伸びているって、日本の技術を海外に売って、こっちは収入を得るわけですから、それに伴いまして、当然のこととして、そこで税収が発生いたしますので、外国に物を売って、物を売るだけではなくて、特許を売り、金を貸して金利を稼ぎ、いわゆるGDPにかわるGNIが伸びておりますから、グロス・ナショナル・インカムというものは伸びておりますから、そういった意味では、国全体として、税収は間違いなくふえているという形になるんだと思いますが。

福田(昭)委員 ですから、私がお聞きしているのは、経常収支の三十年分を私もいただきましたけれども、一九八七年からずっと経常収支は黒字なんですよ、これは御存じだと思いますが。一時、大震災、原発事故があったときに貿易収支が赤字になりました。この貿易収支もしかし、昨年は速報値では黒字になった。五兆円からの黒字になった。そして、経常収支の方も、所得収支などが大幅黒字ですから、合わせて二十兆円を超えるような大幅な黒字になった。ただし、ドルベースで考えるとそれほどふえていないと思いますけれども、円に換算すると二十兆円もの大幅な、経常収支がふえてきたということだと思いますが。わかりました。とにかく、もう時間がなくなりましたから、最後の質問の方に行きたいと思います。

 三番目、アベノミクスの評価についてでありますけれども、これも質問を用意してきましたけれども、なかなか全部はやっていられませんので、ポイントでいきたいと思っています。

 私は、第一ステージの三本の矢の基本的な考え方が、まず間違っていたと思っております。第一の矢は大胆な金融緩和、第二の矢は機動的な財政出動ですが、これは全く反対でした。大胆にやるのが財政出動で、機動的にやるのが金融緩和でありました。これは、まず基本的に間違っておりました。

 これについては、内閣官房参与の浜田宏一氏が、金融緩和だけではデフレから脱却できないとわかったと反省しておりますけれども、今さら遅いと思いますけれども、まさにそれが大失敗の原因でありました。

 第三の矢は、民需を引き出す成長戦略でしたけれども、いつの間にか、民需を引き出す成長戦略が規制緩和とか構造改革になっちゃったんですね。これが一丁目一番地だということで。これでは残念ながら経済は成長しないと私は思っております。

 なぜかというと、やはり日本は、ノーベル受賞者がたくさん出ていることからもわかるように、我が国の科学技術水準は相当高いものがあると思っています。したがって、たくさんの私はシーズがあると思っておりますが、問題は、時間と資金をやはりかけることだというふうに思っております。そうすれば、いろいろなものが生まれてくると思っております。

 例えば、山中教授のiPS細胞も青色ダイオードも実用化するまでに十年かかっておりますから、ですから、少なくとも五年から十年の平成のニューディール政策をしっかり策定して、財政出動で取り組むべきだったと私は考えております。

 これは実は、三年前に甘利大臣と議論しました。しかし、甘利大臣は、当時のですね、いや、財政規律があるからできない、こう言って断りましたけれども。しかし、ずっと、安倍内閣になって見てみると、ちょぼちょぼの補正予算を組んでやってきたんですよ。それで全くうまくいかなかった、残念ながら。財政出動が本当に中途半端。

 金融緩和をしたら、日銀が何と四百三十兆も金融緩和をしたんですが、その四分の三は日銀の当座預金に眠っている。お金が百兆円ぐらい動いていることになっていますが、残念ながら、金融緩和をしただけの効果は全く出ていない。むしろ、銀行が経営が悪化して困っている、そういう状況の方が大きいと思います。そうした中で、私は一日も早く出口戦略をやはりちゃんとつくってやっていかなくちゃならないと思っているんですね。

 今年度、日銀がまた八十兆円国債を買うと、今年中に日銀が持つ国債は五百兆円を超えるんですね。一年間の日本のGDPを超えるだけの国債を日銀が持つことになるんですよ。専門家に言わせると、日銀のバランスシートが極端なアンバランスシートになっているというんですね。

 ですから、このまま突っ走ると、アベノミクスをさらにエンジンを吹かすと、もしかすると日銀破綻というXデーが来るかもしれない。そうなったら国家財政だって破綻してしまう。そんなことにならないように、アベノミクスの異次元の金融緩和はすぐやめて、出口戦略を行くということが必要だと思います。

 アメリカの中央銀行もヨーロッパの中央銀行も、出口戦略を考えた上で金融緩和をやってきた。日銀だけは出口戦略を考えずに金融緩和をやっちゃっている。うまくいかずにマイナス金利を入れたり、あるいは長期金利までコントロールする。こんなことも入れても全く成果が出てきていないということでありますから、麻生大臣、ぜひ出口戦略をやるようにしっかり、これが安倍総理に言えるのは麻生財務大臣しかいませんから、ぜひどうですか、そういう提言をするつもりはありませんか。

麻生国務大臣 御質問を長々しゃべっておられましたけれども、出口戦略についてのお話のようなので。

 御存じかと思いますけれども、金融の出口戦略というものは日銀の仕事であって、これは我々がやる仕事ではありません。安倍さんがやる仕事でもありません。間違えないでくださいね、これは。そういった意味では、出口に関して言及することはできない。これは世界じゅうみんなやっておりませんから。

 そういった意味では、ぜひ、具体的な金融政策というのは日銀に委ねるべきものだと考えておりますので、日銀において市場とかマーケットとか経済とかいろいろなことに配慮しながら適切な形で行われるものだ、私どもはそう思っておりまして、我々としては、引き続き、日銀が経済とか物価情勢を踏まえつつ物価安定というものの目標実現に向けて一層努力されていかれることを期待いたしております。

福田(昭)委員 おっしゃるとおり日銀がやることですけれども、トランプ大統領から言われてやめるなんという話になったら、それこそ目も当てられませんよ。それはいろいろ水面下でやれることもありますから、しっかり考えるべきだということを提言しておきたいと思います。

 以上で終わります。

御法川委員長 次に、高井崇志君。

高井委員 岡山から参りました高井崇志でございます。きょうは質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思いますが、まずは、今回のこの法律改正案の中には残念ながら入らなかった項目からひとつ聞きたいと思います。これは、日本郵政の消費税の問題です。

 去年の十一月二日の日にも、この委員会にお邪魔してこの質問をさせていただきました。日本郵便というのは、もともと一社だったものが今三社、日本郵便と、それからゆうちょ銀行とかんぽ生命という三社でやっている。この三社でやることによって、実は、今まで払っていなかった窓口手数料というのを、ゆうちょ銀行とかんぽ生命がそれぞれ、日本郵便、全国二万四千幾つある郵便局を利用するということで、手数料を払っているんですね。

 これが総額約一兆円ということで、この一兆円はグループの中でやりとりしているからいいんですけれども、実はそこに消費税が発生をして、約八百億円の消費税がかかっている。これはおかしいんじゃないか。そもそも一社でやっていたときにはなかったし、分社化して、しかもこれは法律で日本郵政全体にユニバーサルサービスというのが義務づけられていて、ある意味もう委託せざるを得ないゆうちょ銀行、かんぽ生命は、それぞれ、日本郵便、郵便局に委託せざるを得なくて払っているのに、そこに消費税がかかる。

 それが八百億ということで、これは何とか減免の対象にならないかということで、ずっとかねてから、総務省からも強く要望があって、去年、総務大臣にも私、総務委員会でお聞きをしたら、もうこれは何としても実現したい、ぜひ実現したいということで、去年、まだ税制改正大綱が決まる前に麻生大臣にもお聞きしましたが、なかなか厳しい御回答で、結局、そのとおり、今回はこの大綱には入らなかったということでありますが、改めて私は、この件はやはりいろいろな問題が大きいと。

 特に麻生大臣は、ユニバーサルサービスの確保とセットの問題だという御答弁を去年されましたけれども、まさにそうで、このユニバーサルサービス、私はですから、この麻生大臣の答弁を聞いて、郵便局の皆さん、ではユニバーサルサービスはもうやめたらどうですか、こんな払わなくてもいい消費税を払わされるならもうユニバーサルサービスをやりませんと言ったらいいんじゃないですかと言って、苦笑いされておりましたけれども、やはり彼らはユニバーサルサービスも自分たちの使命だと思ってやっているわけですが、そこにまで消費税がかかるというのは、私はちょっと問題が大きいと思っています。

 もう今回の改正には今さら入りませんから、ぜひ来年に向けて、財務省としてのお考えをお聞きしたいと思います。

    〔委員長退席、土井委員長代理着席〕

木原副大臣 委員御指摘の日本郵政グループ内の取引に係る消費税については、今回も総務省の方から、金融二社が日本郵便に支払う業務委託手数料に係る消費税について仕入れ額控除を可能にしてほしいとの税制改正要望が提出されたことは確かでございます。

 しかしながら、消費税は、課税の累積が生じないようにするため、売り上げにかかる消費税額から仕入れにかかる消費税額を控除した額を納税する仕組みでございまして、銀行や保険会社のように売り上げが消費税非課税である場合には、仕入れ額にかかる消費税額を控除することは認めていないわけでございます。

 また、銀行や保険会社が他者に業務を委託することは広く行われていることでございまして、日本郵政グループのみに特例として認めることは競合他社とのイコールフッティングの観点からも問題があるということは前回も御説明させていただいたところでございまして、来年度の改正でも御指摘の要望は実現しなかったものでございます。

 しかしながら、本件は、ユニバーサルサービスの確保のあり方の問題ということで、十分その部分では認識をさせていただいておりまして、与党税制改正大綱においても、文言として、「郵政事業のユニバーサルサービスの安定的確保の観点から、経営基盤の強化のために必要な措置の実現に向けた検討とともに、引き続き所要の検討を行う。」とされていることを配慮しながら、所管の総務省において検討を深めていただきつつ、その上で財務省としても引き続き必要な検討を行ってまいりたいと思っています。

高井委員 総務省は、もう八百億は難しいので、せめて過疎地の郵便局に払っている分の百七十億にかなり絞って今回要求したにもかかわらず、ゼロ回答だったということです。

 今、副大臣の御説明にもあったとおり、与党の皆さんからもかなり同じ声があって、これをまさに選挙公約にして戦ってきた議員もたくさんいらっしゃるということでありますから、これは今、イコールフッティング、競合他社との関係とおっしゃいましたけれども、競合他社の銀行や保険会社は外部委託していますけれども、それは別に自分たちの判断でやっているわけで、法律で義務づけられてやっているわけでも何でもないわけでありますから、やはり、日本郵政が法律でユニバーサルサービスのためにやっているものとは、これはもう全く異質なものだと思いますから、今、ユニバーサルサービスの確保の観点からという御答弁をいただきましたので、これはもう総務省ともよくよく調整、検討していただいて、来年こそはぜひ実現するようにお願いをしておきたいと思います。

 関連して、前回は郵貯の限度額のこともお聞きしたんですが、きょうはテーマではないので、ちょっとこの話は、ほかの質問もたくさん用意してしまったので飛ばしたいと思います。

 次に、今回の税制改正大綱の中に入った項目として国税犯則取締法改正というのが、国犯法と通常呼んでいるそうですが、これは六十八年ぶりの改正ということで、どういう法律かというと、簡単に言えば、マル査による強制調査の根拠法になっているもので、明治三十三年にできた大変古い法律だそうですが、この法律が実はIT化に対応していない、これだけITが普及した時代の中でITに対応した条文になっていないということで、これを直す。

 これは大変いいことだと思うんですが、ちょっと心配事項がありまして、今、クラウド化といって、パソコンに入っているものまでならまだいいんですけれども、パソコンからインターネットにつながって、クラウド事業者という別の事業者がメールであったり会計帳簿なんかを管理できる、そういうサービスがたくさん普及していますが、そういったクラウド事業者のところにまでマル査の調査が及ぶということになりますと、これはなかなか、一般利用者からすると、クラウドサービスに預けるのをちょっとためらってしまうな、そういう萎縮効果が生じて、今せっかくITの世界でどんどんクラウド化というのが進んでいるんですけれども、そういったサービスに水を差すことになるのではないかという懸念があります。

 ぜひこの点、こういった懸念に対してどのような措置を考えておられるか、お聞かせください。

    〔土井委員長代理退席、委員長着席〕

木原副大臣 今般の改正によりまして国税犯則調査に措置される証拠収集手続といいますのは、平成二十三年の刑事訴訟法の改正において措置されたものと同内容でございます。

 これらの手続は、犯罪捜査の実務において用いられておりますが、平時から特別な管理を求めるというものではなくて、それによってクラウド事業者に過度の負担をかけるなど特段の問題は生じていないものだというふうに私どもは現時点では認識をしているところです。

 また、国税犯則調査の件数や対象者の数というものは、犯罪捜査の件数やクラウドサービスの利用者数等に比べるとまだまだはるかに少ないという実態を踏まえますと、刑事訴訟法と同様の手続を国税犯則調査手続に導入することによって、クラウド事業者等にそういった大きな負担がかかるものとは現時点では考えていないというところでございます。

高井委員 これは非常にIT業界から不安の声が出ていますので、ぜひ、実際に法改正するときには、IT業界の方とも意見交換というかよく話をして、心配がないような形で行われますように希望したいと思います。

 それでは次は、フィンテック、私はもう財務金融委員会は今回三回目なんですけれども、フィンテックの話題についてずっとこれまでも質問してまいりました。今回の法改正と絡む部分、絡まない部分はありますけれども、フィンテックのことをちょっと幾つかお聞きしたいと思っております。

 まず最初に、去年も銀行法等の改正があり、またことしも予定をしていると聞いています。これはいいことで、これだけ時代の流れが速い分野、そして世界的にも注目されている分野で、年に一回と言わず年二回ぐらい法改正したらいいんじゃないかとすら思いますけれども、この銀行法改正はぜひすべきだと思うんです。

 ただ、今、金融審議会の金融制度ワーキング・グループというところで議論をしていて、その報告書も年末にまとまりました。それに基づいて法改正の準備中だと思うんですが、きょうここで議論することは、業界の皆さんから、私、特にフィンテックのベンチャー企業ですね、銀行側というよりはベンチャー企業側からいろいろな心配を聞いています。

 いやいや、法律がまだできていませんから答えられませんという答弁も予想されるんですけれども、私も役人をやっておりましたけれども、法律をつくって、法制局で全部審査して出してしまってから幾らいろいろ指摘しても、なかなかそれを変えるというのは難しくて、もちろん変えられるものも大きな点でありますけれども、きょう議論するような細かい点というか、結構皆さんが心配しているような点は、法律をつくる段階から指摘をしておきたいし、また、今の政府の考えというのもぜひ聞いておきたいということでありますので、ぜひここは誠実に御答弁いただきたいし、また、私から提案したことは真摯に受けとめていただきたい。私個人の意見ではなくて、多くのフィンテックベンチャーの声だということを前提にぜひ質問を聞いて、また答えてほしいんです。

 まず最初に、今回の改正で一番大きな点は、API、これはアプリケーション・プログラミング・インターフェース。これは銀行のシステムにフィンテックベンチャー企業がアクセスして、それを利用できる。こういうAPIというのが非常に大きなキーワードになっていまして、これを銀行が開放してくれるのかどうか、これがフィンテックが進むかどうかの最大の鍵だと言われております。これがどの程度進むのかというのが大変重要なことなわけであります。

 まず、これはぜひ大臣にお聞きをしたいと思うんですが、銀行にAPIを開放するということを私は義務づけるべきだ、しかも、やはり、一部の特定のフィンテック事業者は優遇して一方は拒絶するというような、そういう差別的な取り扱いがあってはいけない、これは一律に公平にやる、そして開放を義務づける、これをぜひ法律に書き込むべきだと考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 フィンテックと言われるファイナンシャルテクノロジーというものに関しての動きというのは、これは世界的な規模で推進していまして、取り締まっておられるおたくの総務省にしても、それから銀行にしても、この点に関してはもう追いつかなくなってきているので、フィンテック業界とそれから銀行屋を両方集めて同じ場所で会議すると。行きましたよ、私の場合は。総務大臣は来てないな、おかしいなと思いましたけれども。言っておいたら、そっちの方から。元総務省にいたんだったら。

 行きましたよ。片っ方はジーパン、Tシャツ、スニーカーという人に対して、片っ方は銀行の背広を着たのが、どうやって日本語が成り立つのかなと思ってすごく興味があって見ていたんですけれども、一時間ぐらい。結構進んだ人もいましたし、全然ピントがついていっていない人もいたし、ああ、これはなるほど、やむを得ぬなと思って見ていましたけれども。

 少なくとも、こういったようなものをやっていく中で、これは何といったって、今APIと言われましたけれども、今はオープンAPIですよね、簡単に言えば。オープンAPIでやった場合に、そのときに出てくる、Tシャツ、ジーパンの人たちがリライアブルか、信用できるかというところが一番の問題になるんだと思うんですね。

 そういった意味では、これは利用者保護というのの確保というのがすごく大事になりますので、金融機関といわゆるフィンテックの間のオープンイノベーションというものに関して進めていくことが重要なんだと思っています。

 したがいまして、こういう点を踏まえて、金融制度審議会の方で、フィンテックに関する制度整備についてはもう議論をしてもらっております。それで、顧客の安全を確保しつつ、幅広いフィンテック企業が金融機関のシステムに接続できるようなオープンAPIの法体制を進めること、フィンテック企業との接続に係る基準を策定、公表すること等が提言されておりまして、これを踏まえて、現在、私どもは法案を今国会に提出する準備をしておりますと、おたくの仲間にそうお伝えください。

高井委員 大臣かはともかく、私も総務省出身者として、総務省はもっとやらなきゃだめだということは総務委員会でかなり言っています。これはもう金融業界だけの話じゃなくて、ICT全体の、フィンテックというのは本当に社会を変革する話だと思っていますので、総務省がもっとやらなきゃいけないと私は思っています。

 ただ、ちょっと、今大臣のお話を伺っていると、どうしても、大臣は金融担当大臣なのでしようがないのかもしれませんけれども、やはり少し銀行側の立場にいらっしゃるのかなと。確かにジーパン、Tシャツで来るフィンテックベンチャー多いんですけれども、しかし、彼らの立場に立ってぜひ銀行法改正をやっていただきたいなと。

 そういう意味では、冒頭申しましたように、銀行法を改正することは大変評価しておりますが、その中身、どこまでいいものができるかというのをやはり今から、法律が出てくる前から、検討中の段階からぜひディスカッションさせていただきたいということで、以下質問をさせていただきます。

 次から少し細かい話なので、もう大臣じゃなくて結構ですが、まず、AISPとPISPという二つのカテゴリーがある。これは何かというと、AISPというのは、金融機関の口座情報を取得するだけのフィンテック事業者。PISPというのは、金融機関に送金の指図まで行うようなフィンテック事業者。こういったAISP、PISPを、今回の金融制度ワーキング・グループの報告書で恐らく、はっきり書いていないけれども、登録制にするんだろうなというふうに推測されます。

 しかし、いずれも金融取引そのものを扱っているわけではありません。ですから、ほかの金融事業者とは、登録制といってもやはり規制の重さは変えるべきだと思いますし、特にAISPというのは、口座情報を取得するだけの事業者ですから、そもそも規制が要るのかな、登録制も要るのかなというふうな疑念があります。

 また、何で二つ言ったかというと、AISPとPISPをそれぞれ一緒くたにするのでは困るな、やはりそれぞれ条文として書き分けて位置づけてほしいというのが業界の皆さんの、フィンテック事業者のベンチャーの声なんですけれども、この辺、どういうふうな法改正をする考えか。決まっていないのはわかりますけれども、どういう方向性なのか、お聞かせください。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問がありましたように、EUの改正決済サービス指令、PSD2と申しておりますけれども、そこにおきましては、御指摘がありましたように、顧客に口座情報を提供するAISP、それから決済指図を金融機関等に伝達するPISPというものがあるということは私どもも承知をしております。

 この点につきまして、日本におきましては、これらに相当する電子決済等代行業者について登録制を導入し、例えば、利用者保護のための体制整備ですとか、情報の安全管理義務等を求めるべきではないかといった提言が金融審議会の報告で示されているところでございます。

 御指摘がありましたように、具体的な法制度の内容については、こうした審議会の報告書を踏まえて、現在、今国会に法案を提出すべく作業を進めさせていただいているところで、なお確定的なことを申し上げる段階にはございませんけれども、いずれにしましても、今御指摘があったように、これらのAISP、PISPいずれも資金そのものを扱う者ではない、そういう機能に着眼して、それに相応のルール整備を行うことが適当であるというふうに考えているところでございます。

高井委員 池田局長は、大変フィンテックにも理解があるというか、銀行寄りだけではない局長だということで、フィンテック協会からも大変期待されていますので、この法案のまさに責任者でしょうから、局長が決めればかなり決まるわけですよ。ですから、きょう言えないのかもしれませんが、しかし、局長としての方向性みたいなものもぜひ答えていただきたいなと思いますし、また、きょう申し上げたことはぜひ重く受けとめていただきたいと思います。

 それではもう一つ、これも局長で結構ですが、というのは、ちょっと通告を必ずしもしてなかったかもしれないので、ぜひ局長のお考えを聞きたいんですけれども。今回、この規制対象がそもそもどうなるのか。これは、広げ過ぎると本当に過剰規制になりかねない。

 例えば、銀行口座から単に引き落としを利用して決済が行われる、こういう事業者は今もあるわけです。しかし、こういった事業者まで今回新たに規制が入って登録制になってしまうのか、こういった例を初めとして、どういう事業者が登録対象外になるのかということは、これは非常にみんな業界は心配しているんですね。

 ですから、ぜひ、こういう事業者から広くヒアリングなどをして、この法案の検討対象というのは慎重にやはり検討していただくべきだと考えますけれども、ちょっと通告していないので、はっきり答えられなければしようがないですけれども、局長、見解をお聞かせください。

池田政府参考人 御指摘の、例えば家賃ですとか公共料金など、そうした口座振替の代行を定期的に行う業者などについては、一般に、口座振替契約に基づいて定期的に特定の口座のみに振りかえを行っているということで、いわゆる電子決済等代行業者一般とはかなり状況が違うということは私どもも認識をしておりまして、そうした取引の内容からして情報セキュリティー上のリスクが相対的に少ないと見込まれる者については、先ほども申しました登録制の対象としないというような整理ができるような、そのための要件について現在検討をしておるという段階でございます。

高井委員 局長、もう一回ちょっと御答弁いただきたいんですけれども、いろいろこういった心配があるので、事業者と意見交換というか、そういったヒアリングの場とかを設けていただけますか。

池田政府参考人 先ほど協会の名前なども出ましたが、今申し上げたような検討をする過程では、日々に、私どもの担当者含めてお話を伺いながら、取引の実態を把握しながら検討しているというふうに御理解いただきたいというふうに考えています。

高井委員 別に、公式な場とかオープンな場とかじゃなくてもいいですけれども、個別に行ってもいいので、ぜひこういう声は真摯に聞いていただきたいと思います。

 それでは、これは大臣に通告させていただいておりましたので、ぜひお答えいただきたい大事なテーマなんですが、サンドボックス、金融サンドボックスということで、これは何かというと、イギリスで去年からやって、なかなかいい成果を上げているんですけれども、現行の法規制を一時的に停止して試しにやってみるという規制緩和策なんですね。

 このお試し、期間限定でいいと思うんですけれども、やはりフィンテックのような新しい業界だと、例えば、銀行代理業というのに位置づけられることになる者を一時的に適用除外にして、そして銀行との連携施策をやってみるような、こういうサンドボックス、レギュラトリーサンドボックスとか言っていますが、こういう取り組みをぜひ我が国でもやるべきではないかと考えますけれども、大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 先週の諮問会議だったと思いますけれども、これは正確な記憶ではありませんけれども、この話は既に諮問会議で出ておりますので、その種の情報がそっちに伝えていないとすると、やはり総務省の連絡が悪いのかね。

 これは、みんな知っていると思いますけれども、サンドボックスという、簡単に言えば砂場ですわな、砂場の中だったら何でもできるという制度をイギリスがやった例、何とかサンドボックスという名前をつくって、日本語に直さずそのまま使っているんだと思いますけれども。

 このサンドボックスというのは、これは、一番肝心なことは、そのときにも出たんですけれども、金融サービスというのは、日本の場合は利用者側が金融業者に対してのいわゆる信頼が物すごく高いんですよ。ほとんど、端数も全く間違えずぴしゃっと出てくるという、数少ない、世界の中でも最も信頼性と確かな世界なものですから。

 そういった意味で、ぜひ、こういったものを、フィンテックというものを実際に使っていくのであれば、これは、新しい情報通信技術といわゆる利用者保護というのを両立させぬと意味がないということになろうと思いますので、通信技術をわあっと使ったはいいけれども、利用者の方が信頼が全然なかったのでは全然話になりませんから。

 そういった意味で、大丈夫ですよということで、今既に金融庁の方ではサポートデスクというのを置いていまして、そして、今、フィンテック企業の相談先に、あちこちあると大変だから一元的に、簡単に言えばシングルウインドーでやろうとしていまして、質問が来ると四営業日で全て回答は出していると思いますけれども、一週間はかかっていないと思います。大体、今既にそういうようになっておるという実態は知っていましたか。では、いいじゃないか。やっているんだよ、間違いなく。

 だから、そういった意味では、我々としては、銀行などがフィンテック企業への出資が今まではできませんでしたから、それを銀行法も改正をして、フィンテック企業に銀行が出資ができるようにという法改正ももう既に終わっていますから、そういった意味では、今国会において、先ほど言いましたフィンテック企業とのオープンないわゆるイノベーションというものを推進するための法案提出というのを、先ほど申し上げましたように、今国会中に出したいと思っています。

 これはスピード感を持ってやらぬと、何となく、五年してできたって意味がありませんから、きちんとした、さっさとやっていくというスピード感を持ってやっていかないかぬと言っております。

高井委員 ちょっと諮問会議はフォローしてなかったんですけれども、未来投資会議でこの議題が出て、金融庁は、いや、もう今十分やっていますと、今大臣おっしゃったような答弁だったのかもしれませんが、やはりこれではちょっと弱いのじゃないかというのが業界の声なので、やっていただいているのはありがたい、サポートデスクなんかはありがたいとは皆さん思っていますけれども、より一歩踏み込んで、ぜひこのサンドボックスを検討いただけたらと思います。

 それでは、きょうは日銀総裁にお忙しい中来ていただきました。私は初めて総裁に質問させていただくのと、あと実は、日銀に聞いたら、フィンテックに関して国会で総裁が答弁されるのは初めてだということなので、ぜひ、日銀はフィンテックに対してもいろいろな取り組みをやっていただいていて、おおむね業界は評価をされているようでありますけれども、まず、初めて国会でということなので、日銀総裁のフィンテックに対する認識というか、どういったふうにフィンテックを考えておられるのか、あるいは日銀としてどういう応援をしていこうと考えておられるのか、お聞かせください。

黒田参考人 情報技術と金融が結びついたフィンテックというものは、恐らく、決済あるいは金融サービス、さらには実体経済に非常に大きな影響を及ぼし得るというふうに考えております。

 そういうことも踏まえまして、日本銀行は、昨年の四月に、行内にフィンテックセンターというものを設立いたしました。さらに、このフィンテックセンターを事務局として、行内の関係部局が幅広く参加するフィンテックネットワークを形成いたしまして、情報共有あるいは知見の活用を図っております。

 さらに、民間の情報技術あるいは金融その他フィンテック関係に関心のある方にお集まりいただきまして、昨年、二度にわたってフィンテックフォーラムというものを開催しまして、活発な議論が行われました。私どもとしても、大変参考になる意見が出たというふうに思います。また、来る二月二十八日に第三回目のフィンテックフォーラムを開催する予定であります。

 日本銀行としては、このフィンテックの健全な発展を支援するとともに、これが、何といっても金融サービスの利便性の向上、あるいは決済システムの高度化、経済活動の活性化に結びついていくように、中央銀行の立場からなし得る最大限の貢献をしてまいりたいというふうに思っております。

 また、そういう観点から、いろいろな形で、他の中央銀行とも協力、協調をいたしております。同時に、日本銀行が将来的にみずからの業務にフィンテック技術を活用する可能性も含めて、行内で調査研究を深めていきたいというふうに思っております。

高井委員 それでは、もう一つお聞きしたいんですが、フィンテックの中には、ビットコインのような仮想通貨がだんだんこれから大きくなってくると思われます。ヨーロッパでも既にキャッシュレス化というのはかなり進んでいて、スウェーデンなんかではもう現金を扱わない銀行なんというのもある。あるいは、インドでは高額紙幣の廃止をしたり、カナダは少額コインの廃止とか。

 現金からだんだんデジタル通貨というようなものにシフトしているのが世界の趨勢であって、また、決済のデータ化というのは新しい産業を生み、これは成長戦略にもなるし、あるいはグローバル競争を戦っていくということにおいても大変重要だと思うんですが、日銀として、中央銀行がこのデジタル通貨というのを、将来の話ですけれども、発行するという可能性があるのか。

 今のままの、現金、日本は現金が非常に安定しているというのはよくわかりますが、しかし、そういう将来的なグローバルな視点から見て、そういう現金比率を下げていくというようなお考えはあるかどうか、お聞かせください。

黒田参考人 これも委員御案内のことかと思いますけれども、各国の中央銀行の中には、既にデジタル通貨を発行する構想があるということを対外的に明らかにしている、例えば中国人民銀行などもあります。そういう意味で、中央銀行がデジタル通貨を発行する可能性については、日本銀行のほか、海外のさまざまな中央銀行やあるいはBISなどの国際機関で調査研究が進んでおります。

 ただ、現段階では、解決すべき課題が非常に多いとか、あるいは、今後技術的にどのような進展が見られていくかについてもなかなか見きわめがたい段階にまだあるというふうに考えております。

 例えば、先ほどもちょっと指摘しましたBISですが、BISの決済・市場インフラ委員会というものが報告書を出しておりますけれども、その報告書の中で、中央銀行自身がデジタル通貨を発行することを選択肢の一つというふうにしながら、決済システムへの影響、金融システムの安定性への影響、あるいは金融政策の波及経路など、検討されるべきさまざまな論点を提示しているところであります。

 いずれにいたしましても、委員の御指摘のように、デジタル通貨を含めたフィンテックあるいはブロックチェーン技術等、技術進歩というのは非常に速いわけですし、私どもとしても、海外の中央銀行あるいは国際機関の調査研究、動向をよくフォローする、あるいは他の中央銀行などとも協力しながら、この点について調査研究を進めてまいりたいというふうに思っております。

高井委員 もう時間がなくなってまいりました。

 本当はもう一問、ビットコインが、仮想通貨がふえると金融政策に影響があるんじゃないかと聞こうと思ったんですけれども、恐らくこれも研究中だという答えだと思いますので、ちょっと省略させていただいて。

 最後に、経済産業省にもきょうは来ていただいていますので、経済産業省もこのフィンテックに大変力を入れていただいて、私は評価をしております。このフィンテック、経済産業省としてもいろいろな応援をやっていただいておりますが、それについて御紹介いただきたいのと、あわせて、もう時間がありませんので、もう一問通告していましたけれども、電子決済、クレジットカード、デビットカードあるいは電子マネー、こういったものの明細のデータを活用するということを経産省として推進する考えがあるか。これは、小売事業者に使い道を任せますよというだけでは、なかなかデータを囲い込んじゃって、世の中うまく使えないと思うんですね。

 では、その二問を最後にお聞きして、終わりたいと思います。

中石政府参考人 お答えします。

 フィンテックは、個人の資産形成や消費活動に大きなインパクトを与える、特に、中小企業等の生産性向上ですとか資金調達の円滑化に大きく寄与するというふうに考えております。経理の合理化ですとか自動化、資金繰りがリアルタイムで見えるサービスなんかも既にできまして、世の中動いております。このようなフィンテックサービスが全国の中小企業で活用されて、経営の高度化や生産性向上、資金調達の円滑化につながるような状況をつくっていきたいと私ども思っています。

 経済産業省としましても、フィンテックは金融に閉じず、広がりを持って対応しなきゃいけないというふうに考えておりまして、私ども、フィンテックに知見を有する経営者、専門家の方を集めまして、また関係省庁とも協力しながら、フィンテック検討会合を開催しております。

 その中では、今後の方策、例えば中小企業によるフィンテックの活用を後押しする施策や、あるいはフィンテックが普及するための前提条件を整えるため、いろいろな施策というのを検討しているところでございます。

 引き続き、金融庁を初めとしまして、関係省庁と連携して、フィンテック時代に対応するための具体的な政策を進めてまいりたいと思っております。

小瀬政府参考人 データの活用につきましてお答えいたします。

 経済産業省におきましては、クレジットカード業界におけるビッグデータの利活用に向けた課題と対応策につきまして、検討会を一昨年の九月から開催しまして、昨年二月に報告書を取りまとめたところでございます。

 その報告書におきましては、クレジットカードのビッグデータを、例えば、内閣府が提供します地域経済分析システム、RESASに取り込むことにより、訪日外国人客の消費動向について精緻な分析を行ったり、あるいは、ウエブ閲覧履歴とかけ合わせることにより個々人の消費パターンを分析するなど、広範に利活用できる可能性が確認されたところでございます。

 一方で、こうしたビッグデータの中に、カード会社ごとにフォーマットがふぞろいなために活用されにくい項目がございます。このため、昨年七月から、カード業界に集まっていただきましてワーキンググループを開催しまして、昨年の十二月に、加盟店所在地情報として郵便番号を使うことの合意を得たほか、カード会社ごとにばらつきのある加盟店の業種分類についてガイドラインを取りまとめたところでございます。

 これらの取り組みを第一歩にしまして、クレジットカードのビッグデータ利活用を後押ししていきたいというふうに考えております。

高井委員 時間なので終わりますが、いい銀行法改正案をぜひ出していただきたいと思います。

 あと、日銀総裁、どうもありがとうございました。

 終わります。

御法川委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きのうの続きで、まず国際課税について質問をさせていただきます。

 きのう、国際的な税逃れを牽制していくためには、こういう税逃れはだめだという事例集を積極的に示した方がいいんじゃないかというお話をしましたら、国税庁から、国際戦略トータルプランの後ろの方についていますという答弁がありました。

 改めてホームページを見て、その事例も拝見させていただきましたけれども、八つ事例が出ていまして、なかなか頑張っていろいろな海外の税逃れを摘発しているというのが非常によくわかるものになっているわけですね。

 ただ、問題は、こういうものが出ているというのを、ぱっとホームページを見ても誰もわからないですよね。結局、この国際戦略トータルプランというものに関心を持って、これを何回かクリックして、さらにこの二十何ページ目からですからね、この事例集は。そうしないと、どういう税逃れの事例があるのかというのはわからないようになっているわけですね。

 ですから、私は本当にこういうものを公表して税逃れを牽制していくということを考えたら、ホームページの、例えばバナーだとかをつくって、やはり入り口をちゃんと設けて、こういう税逃れは許しませんよというアピールをしていくべきだと思うんですが、国税庁、どうでしょうか。

飯塚政府参考人 お答えいたします。

 昨年の十月に御指摘の国際戦略トータルプランを公表いたしましたけれども、公表いたしました際には、記者の方に集まっていただいて、その内容を詳しく御説明し、また、そのときにはかなり報道もしていただいたところでございます。

 今後とも、いろいろな周知広報に努めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 ホームページの改善も含めて広報していただけますか。

飯塚政府参考人 その点も含めて検討させていただきます。

宮本(徹)委員 よろしくお願いいたします。

 それで、きのうは、アップルを例にして税逃れについて質問している最中に時間になってしまいました。きのう、アップルは、アイルランドを使って、そこに利益を集めるいろいろな仕組みがあるんだというお話もしました。

 それで、今の税制で、このアップルのような税逃れに対応できているのか、特に移転価格税制で対応できているのか、この点についてお伺いしたいというふうに思います。

 移転価格税制は、仮に独立企業同士の市場取引ならどんな価格になるのか、これを算定して、子会社が得るべき適正な利益を割り出すという仕掛けになっているわけですね。

 しかし、例えばこのアップルのアイフォンでいえば、どの子会社にも同じ価格でアップルは売っているわけですね。非常に高い価格で売っている。しかも、このアイルランドの子会社からアップルの製品を買う子会社というのは、アップルの会社しかないわけですよね。それ以外に独立した市場があるわけではないわけですよね。ですから、適正な価格が何ぼなのかと参照できるようなものはないわけですよね。

 そうすると、今の異常な低いアップルの税負担率というのは、現在ある移転価格税制だけでは対応し切れていない、こういうことの裏返しなのではないかというふうに思います。

 ですから、租税回避を許さないということをやっていくためには、現実に即して、子会社が独立している、そういう架空の前提は取り除いて、多国籍企業のグループ、これについては単一の企業としてみなす、こういう扱いに切りかえる。そして、グループ全体の所得を合算して、そこで売り上げだとか資産だとか雇用者数、この一定の基準に応じて各国に税源を配分していく。定式配分方式と言われますが、こうした方向も国際会議の場で真剣に検討していく必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生が御指摘になられました定式配分法でございますけれども、独立企業間価格に着目した移転価格税制の代替案として、これは長期にわたって議論されてきたものと認識をしております。

 国際会議などで検討するべきではないかということでございますけれども、これは概算的な形式基準によりまして国家間の税収分配に大きな影響を与えるものでありまして、売り上げ、従業員数、資本金等、数ある指標の中でどれを基準として採用するのか、また採用した複数の基準のウエートづけをどうするのかといったさまざまな点につきまして、各国の重視する基準がまちまちでありまして、なかなか、多国間で合意することは現実的には極めて困難であるという問題がございます。

 定式配分法については、合意できなければ二重課税、二重非課税を生むことが確実であるので、国際的な取り組みでございますBEPSプロジェクトにおきまして実行可能性が否定されているところでございます。

 なお、知的財産等の無形資産の移転に伴う租税回避に対応するべく、BEPSプロジェクトでは、移転時において評価が困難な無形資産につきまして、予測便益と実際の利益とが一定以上乖離し、納税者が予測の合理性を示せない場合に、実際の利益に基づき移転時の独立企業間価格を事後的に再計算する所得相応性基準等のアプローチが勧告されているところでございます。

宮本(徹)委員 なかなか国際的に、現実的に一致するのは困難というお話ですけれども、移転価格税制は、先ほどのようなやり方で改善しようとしても、やはりなかなか、実際には参照すべきものが存在しないわけですから、難しいんじゃないですか。そういう限界、弱点というのはあるんじゃないですか。いかがでしょうか。

星野政府参考人 おっしゃるとおり、なかなか困難がございます。したがいまして、BEPSプロジェクトなどでも相当議論が積み重なってきているわけで、今御紹介申し上げました所得相応性基準というのは、ある意味、事後的に適正に再計算できるような一つの考え方でございまして、そういった方法などがBEPSプロジェクトで議論されているということでございます。

宮本(徹)委員 なかなか移転価格税制だけで対応するというのは私は大変な困難が伴うと思いますので、やはり国際社会で、本当に税逃れを許さない課税方式はどうあるべきかというのをさらに議論していかなければならないのではないかというふうに思います。

 それで、アメリカの上院報告書によりますと、アップルは税逃れする上で、アイルランドにそういう子会社をつくることをやっているわけですが、これはアメリカのチェック・ザ・ボックス規制というのも悪用しているということも指摘されております。アップルはこういうアメリカの税制、そして国際的ないろいろな税制、さまざまな措置を組み合わせて租税回避を行ってきたわけでありますが、実際にどれだけ税逃れがやられているのかということを各国で見ようと思ったら、やはり各国の子会社の利益や納税額がしっかりつかまれるということが大事だと思います。

 そして、税の公正のためには、多国籍企業の子会社の情報の公開が欠かせないというふうに思います。BEPS対策の一環として、子会社情報を記載した国別報告書を税務当局に提出するという措置は決まっていますが、これは一般には公開されないということになっています。

 私は、この国別報告書も含めて、公開されてこそ、社会の目にさらされることで税逃れの根絶につながるというふうに思いますが、大臣、その点はどうでしょうか。

麻生国務大臣 最初に、まず、ちょっと宮本先生、今言われているのが仮に正しいとしても、これは一カ国でも抜けたら全然まとまらないんですよ。やっと秘匿性にするというところでここまで来ましたので、これがオープンに最初からするなんて言ったら、もう最初から入ってこないところがいっぱい出ますので、そういった意味では、まずは最初のステップから、ちょっと共産主義みたいにばさっといきませんから、うちの方は。

 そういった意味では、みんなでやりますので、百何十カ国を集めてこれをやるという話ですから、ちょっと少々、最初から簡単にいかないんだと思いますが、今言っておられる意味はよくわかりますけれども、最初からそこで言っちゃうと多分出さない。OECDがそれをやろうとしてアメリカに反対されて、はなからだめになっちゃったという例もありますので、そういった意味では、まずはクローズでスタートするぐらいがいいところかなとは思っております。

宮本(徹)委員 確かに、各国の税務当局の間で子会社の情報を含めて国別報告書を共有する、これは大きな前進だと思います。まずそこからスタートするのは当然だと思いますけれども、その先に進んでいってこそ、やはり社会の目にさらされることで、これはまた牽制になっていくわけですよね。税務当局をもしだませたとしても、社会全体はだませないわけですね、そこの会社で働いている人だとかいろいろな人の内部告発なんかもありますから。

 そういう点でいえば、これは公開に向かっていく方向でぜひ日本の財務大臣としては働きかけをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 それをやれるときまで私が財務大臣をやっている保証がありませんので、最初にスタートしたときに、これは私が四年前の五月にこの話を持ち出して、BEPSで去年の十一月にやっとここまで来られましたので。ぜひ、そういった意味では、まずスタートして、今言われたような話で、そこまでも行っておりませんので、各国出すというところで、まずはというところから、今担当の財務官がOECDにきょうから行っていますけれども、この種の話でもう一回また行っているんですけれども。

 いずれにしても、こういったものは時間をかけてやっていかないかぬと思いますので、最初から完璧とはいきませんが、だんだんだんだんそういったオープンにして世間の目にというような、方向としてはそっちの方向が正しいんだと私もそう思います。

宮本(徹)委員 オープンにしていく方向が正しいというふうに大臣もおっしゃいましたので、まあ、大臣がいつまで大臣をやられるかというのは私も全くわかりませんけれども、もしかわられても次の大臣にその考え方をぜひ伝えていただいて、オープンに向かう方向で努力をお願いしたいというふうに思います。

 国際課税については以上です。

 続きまして、本日の質問に入る、本日の質問というのは変な言い方ですけれども。先ほどまではきのうの通告分で、きょうの通告分に入ります。

 きのう、私は税収中立での改正というのはおかしいんじゃないかというところから議論を始めましたけれども、やはり暮らしを支えるための財源の確保というのは真剣に検討しなきゃいけないというふうに思います。これは、私たち重ね重ね言っていますけれども、消費税増税ではなくて、ないところから搾り取るのではなくて、あるところに負担をお願いする、これが必要だというふうに思います。

 まず、富裕層の資産の把握についてお伺いしたいと思います。

 この間、例えば野村総研がレポートを発表して、富裕層の金融資産についてどれぐらいなのかという試算を出しております。野村総研の場合は、純金融資産の保有額五千万円以上から五億円までを富裕層、五億円以上を超富裕層、こういうふうに独自に定義をしてやっているわけですけれども、この野村総研のレポート二〇一四年分と二〇一六年分を比較しますと、たった二年間で富裕層以上の世帯というのが百一万世帯から百二十二万世帯へふえ、純金融資産は二百四十一兆円から二百七十二兆円へ拡大しております。中でも超富裕層、五億円以上の金融資産を持つ層ですけれども、これは過去最大にふえ、この四年間で見ますと、この層が持っている金融資産は、四十四兆円だったものが七十五兆円へと、倍まではいかないですけれども、物すごい勢いでこの四年間でふえているということになっております。

 富裕層をどう定義するのかというのはいろいろな議論があると思いますが、政府として、いわゆる超富裕層の皆さんの金融資産の推移についてどう把握しているのか。あるいは、富裕層の金融資産と不動産、こういうものをリンクして把握する統計というのは今とっておられるんでしょうか。

千野政府参考人 お答えいたします。

 総務省におきましては、全国及び地域別の世帯の家計収支や貯蓄、負債などの実態を明らかにすることを目的といたしまして、五年に一度、全国消費実態調査を実施しております。

 この調査では、世帯が保有いたします貯蓄から負債を差し引いた金融資産、それから、不動産につきましては住宅宅地資産を把握しておりまして、これらの結果につきましては貯蓄現在高階級別で公表しております。

 ただし、この貯蓄現在高階級につきましては、この調査が約五万六千世帯を対象とした標本調査でありますので、一定の統計精度を確保できるように、四千万円以上を一括した階級としているところでございます。

宮本(徹)委員 つまり、四千万円以上ということで、例えば超富裕層というのを把握するという統計はないというお話でありました。

 例えば、日本のシンクタンクだけではなくて、クレディ・スイスも世界の富裕層の動向をまとめたレポートというのを出しております。グローバル・ウエルス・レポート二〇一六というのがありますけれども、これを見ましても、日本の富裕層の数の試算というのをやっています。日本の百万ドル以上の資産を持つ富裕層の数は、二〇一五年の二百八万八千人から、二〇一六年には二百八十二万六千人と、七十三万八千人増加したというふうに書かれております。

 そして、このレポートの一昨年版、二〇一五年版では、日本の富裕層は二〇二〇年には三百五十九万人に達する見込みであるというふうにしております。この場合の富裕層は一億円以上、日本でいえば約一億円ですが、百万ドル以上ということで出しておりますが、こういう形で、世界のシンクタンクも富裕層の動向というのはつかんでいるわけですよね。

 これは国税庁にお伺いしますが、野村総研だとかクレディ・スイスが富裕層の資産と世帯数の傾向について出しているわけですけれども、これは国税庁のさまざまな統計から裏づけることというのは可能なんでしょうか。

飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。

 御指摘の二つのシンクタンクによる調査につきまして、私どもその詳細を承知しているものではございません。国税庁のデータから、これらを導き出すことは困難でございます。

宮本(徹)委員 富裕層がふえている傾向だとかというのは、国税庁の納税の調査だとかいうものでは全然出てこないということですか。例えば金融資産がふえている、その辺はどうですか。

飯塚政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる富裕層につきまして明確な定義はないわけでございますけれども、例えば申告所得税の所得金額が一億円を超えるという者について見ますと、平成二十二年分の調査におきましては一万一千八百四十三人でございましたが、これがその五年後の二十七年分調査では一万九千二百三十四人となっておりまして、五年間で七千三百九十一人、約一・六倍に増加しているところでございます。

 また、ストックに着目をいたしまして、相続税の課税価額が一億円を超える被相続人について見ますと、同じく二十一年分調査においては三万五千六百八十八人でございましたが、二十六年分調査では四万一千三百九十三人ということで、失礼しました、さっき同じくと申し上げましたけれども、二十一年分でございましたけれども、二十一年から二十六年にかけて、五年間で五千七百五人、約一・二倍に増加しているところでございます。

宮本(徹)委員 国税庁の納税の統計を見ても、所得税で見ても、それから相続税で見ても、一定、裏づけはできるという傾向だというふうに思います。富裕層は日本でも大きくふえているということだと思います。

 私は、やはり社会政策をいろいろ考えていく上でも、日本の富裕層の実態を統計資料でしっかり明らかにしていくことというのは必要だというふうに思います。純金融資産と不動産、あるいはフローとストックの統計を組み合わせるなどして、立体的な解明というのを今後やっていく必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、どうでしょうか。

麻生国務大臣 今の一億という話は、フローの話ですよ、あれはたしか、ストックの話じゃないんだと思うので。

 所得や資産に関する統計としては、今、消費実態調査というので、家計の収入などのフローと金融資産、住宅、宅地資産などのストックと収入階級別の金融資産とか住宅、宅地資産などのフローとストックを組み合わせ等々の集計、公表しているんだということでしたけれども、ただ、この調査は標本調査だと今、総務省の人が言っておられましたけれども、高所得者層の収入、資産などの詳細な実態把握は困難であるというような指摘もしておられたので。

 一方、今、国税庁の方から答弁があっていましたけれども、国税庁の統計年報というのでいけば、高所得者層を含む申告状況等を集計して公表しているということなんでしょうけれども、財務省としては、まず、そうした既存の統計というのを最大限に利用しながら、今後も高所得者層を含む所得とか資産状況とかいうものの把握に努めて、今後の税制等々に当たっての企画立案等々を行うのに資したいというように思います。

宮本(徹)委員 いろいろな統計を工夫しながら、調べることもそうですけれども、新しい統計のとり方もないかということも含めて、これだけ富裕層がふえてきているわけですから、それをつかむ方法の研究をぜひお願いしたいというふうに思います。

 先ほど国税庁からお話がありましたけれども、先ほどのお話でもはっきりしていると思いますが、今、日本でも超富裕層の皆さんの担税力が、この間、ぐっと増してきている、こういう認識は大臣も同じだということでよろしいですね。

麻生国務大臣 今、国税庁の統計上、平成二十二年と二十七年で申告所得の伸びを見ますと、一万九千人と一万一千人だから七千人ぐらいふえておられるという計算になるんだと思いますが、統計上、多額の所得とか資産を有する方々が、近年、この二、三年間で増加しているという見方ができることは事実だと思いますね。

 他方、いわゆる富裕層に対する課税を強化するべきとの御趣旨なんだと思いますが、現行の所得税とか相続税は累進税率なので、もう既に所得や遺産等に応じて負担をお願いする仕組みとなっておりますので、こういった点も踏まえて、丁寧な検討が我々としては必要なんだと思っております。

 ことしも、四〇を四五に上げたり、分離課税を一〇から二〇%に上げたり、いろいろいたしておりますので、そういった面も含めて、我々はそういったものにそれなりの対応は今の段階でいたしつつあるということだという点も御理解いただければと存じます。

宮本(徹)委員 所得税を四〇から四五に上げたというお話がありましたけれども、かつては五〇、さらにはもっと高いときもあったわけであります。

 やはり貧富の格差を固定化させない、所得の再分配をしっかり進めていくという点でいえば、私は現在の所得税、相続税だけでは不十分だというふうに思いますが、今の所得税、相続税で十分か不十分か。どうでしょうか、大臣。

麻生国務大臣 所得格差を固定化しないとかさせないとかいう社会を構築していくというのは極めて重要なことだと思っています。

 この点は、政府の場合は税制調査会において、所得税につきましては、昭和六十年代以降、税率構造につきまして大幅な累進構造というものの緩和を行っておりますし、資産税につきましても、いわゆる一九八〇年代後半のバブル期の地価の上昇に対応した基礎控除の引き上げや税率構造の緩和が、地価の下落に伴い、これは見直されておりません。その結果、これらの再分配機能が低下したというのはいろいろ指摘がされているところであります。

 こうした中で、税の再分配機能を適切に確保するという観点から、今申し上げましたように、所得税とか相続税の最高税率について、二十七年から引き上げて、相続税が五〇から五五とか、所得税が四〇から四五とかいうので行ってきたところなんですが、こうした見直しの影響をまず見きわめる必要があるというように基本的には考えております。

宮本(徹)委員 今までやってきたものの影響を見きわめるというお話がありましたけれども、大臣が言われたとおり、格差を固定化してはいけないということでいえば、今は相当な、一方における富の集中、一方における貧困の蓄積が起きているというふうに思います。

 日本銀行の金融広報中央委員会の二〇一六年の調査では、金融資産を保有していない世帯は三〇・九%。一方では、超富裕層が生まれる一方、金融資産を持っていない世帯が三割にも上るということになっているわけですよね。これを正していかなきゃいけないというふうに思います。

 どう正していくのかということですけれども、例えば富裕税を導入している国もあります。フランス、ノルウェー、スイスなどですね。いろいろな資産に課税していく。

 例えば、五億円以上持っている金融資産に課税する。さっきの野村総研の話でいえば、それだけで七十五兆円あるという話ですから、例えば〇・二%掛けるだけでも、今回の予算で社会保障抑制分の一千数百億円分は出てくるという話になるわけですよね。こういう富裕税の検討というのもあるんじゃないかと思います。

 あと、これは私たち、再三言ってまいりましたけれども、株式の譲渡益や配当に係る税制の見直しですよね。一億円以上の株式譲渡益の個人所得課税の税率は、日本が二〇%なのに対して、ドイツは二六・三七五%、イギリスは二八%、ニューヨークは三〇・七二六%、フランスは六〇・五%。これを二五%や三〇%に引き上げるだけでも、相当な財源は出てくるということになります。

 ですから、富裕層の皆さんへの、フロー、ストック、どちらでやっていくのか、いろいろあるとは思うんですが、新たな税負担を求めるということをさらに検討していく必要があるんじゃないかと思いますが、もう一度大臣にお伺いします。

麻生国務大臣 今お尋ねにあっておりました、いわゆる富裕税を含みます富裕層への課税については、先ほど申し上げましたとおり、所得税とかまた資産税等々については、近年、累次、税制改正を既に行ってきたところであります、去年行ったばかりでもありますので。

 その中で、上場株式などの配当及び譲渡益についても、平成二十六年から、一〇%の軽減税率というものを廃止いたしまして、二〇%の本則の税率といたしておりますが、こういったことによって、高所得者ほど所得税の負担率が上昇するということになっておりますので、所得再分配機能の回復に一定の効果があったのではないか、そう思っております。

 加えて、今、富裕層への課税をさらに強化すべきとの御意見でありますが、これは、これまでの改正の効果は引き続き見きわめなきゃいかぬところだと思っていますが、景気の情勢とか市場の動向とか、また税制や社会保障等に関する所得再分配の状況などを勘案しておきませんと、こういった人たちの金がまた海外にいなくなるとか、また、こういったようなお金がきちんと国内で使われないとかいうようないろいろなことを考えにゃならぬことになりますので、私どもとしては、いろいろな案を勘案しつつやってまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 私がこういう質問をしますと、海外にいなくなるというお話を大臣はよくされるんですけれども、この間、海外に出ていけない仕組みをいろいろつくってきたわけですよね。出国税を設けるということもやりました。そして、今度の税制改正案、私もちょうど一年前に提案させてもらいましたけれども、相続税や贈与税がない国にどんどん多くの人が出ていっている、それを追っかける期間が五年というのは短いんじゃないかということを問題提起させていただきまして、政府の今度の改正案には、それを十年に延ばすということで、さらに追っかけていくんだという体制も強化しようとしているわけですよね。

 ですから、もう簡単に海外にお金を持って、税逃れしていくというのを許さない仕組みはどんどんできてきているわけですから、ここはやはり担税力のある方々にしっかり求めていくというのが大事だと思います。

 大臣は先ほどから改正の効果を見きわめるということをおっしゃいますけれども、この間、例えば金融所得課税の税率を本則の二〇%に戻したことによってプラスの効果はあった、所得再配分の機能を高めるという点ではプラスの効果はあったというふうに大臣はおっしゃったんですけれども、負の効果というのは私はなかったと思うんですが、負の効果というのはあったんですか。

麻生国務大臣 負の方の効果を数字で捕捉することは極めて難しいと思いますけれどもね。

宮本(徹)委員 数字で言えるような効果は私はなかったということなんだというふうに思います。

 いずれにしても、やはり富裕層はこれだけ担税力を増しているわけですから、しっかり検討していただきたいというふうに思います。

 ちなみに、きのう午前の予算委員会の中央公聴会に出ていました。公述人として東京大学の小林雅之教授がいらっしゃって、給付制奨学金のことなどについてお話をされていました。その中で、日本の大学の教育費の家族負担は重い、税金などで公的負担をふやすべきだというお話をされる中で、その財源として、例えばということで、やはり相続税をしっかり強化すべきじゃないかというお話もされていました。

 例えば、孫への教育資金の贈与のための減税というのはこの間できたわけですよね。そういうお話があったので、私もきのう改めて調べましたら、二〇一三年に始まった教育資金贈与信託の受託状況、去年の九月段階で一兆一千六百三十五億円と相当な額になっているわけですよね。

 贈与ができる資産を持っている余裕のある方はこういう制度を使えますけれども、庶民は使えない制度になっているわけですよね。このことによって失われている税源というのも、かなりのものに上るんじゃないかというふうに思います。ですから、いろいろな点で、やはり格差を固定化させない税制というのはさらに検討していく必要があるんじゃないかというふうに思います。

 あと、残り時間が短くなりましたので、配偶者控除の見直しについて質問をさせていただきます。

 配偶者控除が受けられる年収基準が百三万円になったのは一九九五年です。そのときに比べて、最低賃金の水準は今一・五倍ぐらいになっています。ですから、今回、配偶者控除が受けられる年収基準を百三万円から百五十万円に引き上げるという点については、これは最低賃金の上がり方からすれば合理性があるのかなというふうにも思います。

 しかし、なぜ見直す控除が配偶者控除だけなのかというのは大変疑問なんですよね。これは、配偶者で、パートの方が受けられるということになると思うんですけれども、厚生労働省のパート労働者総合実態調査を見ますと、パート労働者一千八十七万人の中で、主な収入源が配偶者と答えた方は約半数の五百三十八万人。一方で、親や子供と答えた方が百六十九万人います。今度の税制改正案で恩恵を受ける年収百万から二百万円が収入という層を見ても、同じ傾向であります。

 同じ少ない収入であっても、配偶者だったら控除が受けられ、配偶者でなければ控除が受けられない。これは、私は不公平なんじゃないかと。なぜ、扶養控除だとかそういうものを一緒にやらなかったのか。この点はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘の配偶者控除とか扶養控除というのは、これは一定の収入以下の扶養親族がいる方の税負担能力に配慮する仕組みというのが基本というのはもうよく御存じのとおりだと思いますが、今回の見直しは、こうした税負担能力に配慮するという事情に着目したものではなくて、あくまでも、就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するというのが主たる目的と再三申し上げているとおりです。

 就業調整問題が生じるというのは、これは家計において稼ぎ手になることが多い配偶者と考えられるために、我々としては、就業調整問題に対応して設けられた配偶者特別控除、配偶者控除じゃありませんよ、配偶者特別控除の方における配偶者の収入制限を引き上げたところであります。

 したがって、配偶者控除における配偶者の収入制限を引き上げたものではありませんで、扶養控除を見直す必要はないのではないかと考えております。

宮本(徹)委員 ですから、やはり控除というのはそもそも何なのか。やはり、税負担能力に応じてというのが控除の考え方の原則だというふうに私は思います。

 支援が必要な若者で見ると、やはりこの不公平は私は一層際立つと思うんですね。厚生労働省の若年雇用実態調査を見ますと、三十五歳未満の労働者は一千三百五十五万人いらっしゃいます。うち四百八十九万人が非正規労働者。月収別に見ますと、月十万から十五万円の層、年収でいえば百二十万から百八十万円の層が百九十八万人いらっしゃいます。

 この百九十八万人の方の主な収入源、家族の中で誰が収入を持っているのかを見ますと、配偶者というは二十八万人ですよ。親兄弟というのが八十一万人。三十五歳未満の非正規労働者、月収十万から十五万の層で見れば、配偶者よりも親や兄弟に支えられている方の方がたくさんいらっしゃるわけですね。

 大学を出て、なかなかたくさん収入が得られなくて、奨学金を一生懸命苦労しながら返済して、親元で生活している、こういう家族の場合は対象にならないわけですよね。これは、私は、大変税のあり方として公平性に反するのではないかということを指摘しまして、質問時間が来ましたので、終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

御法川委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、税務行政等についても質問いたしますが、やはりまず、昨日来の森友学園問題について聞きたいと思います。

 昨日の質疑で、私は、森友学園の籠池理事長がTBSラジオの単独インタビューに応じ、運動場の下は取り出さなくていいんですから、さわってないんだから、そこにお金がかかることはありませんとはっきりと語ったことを紹介いたしました。

 こうも言っておられます。お国の方が、今おっしゃった、八億とか九億とかおっしゃったけれども、それは土地の運動場のところの生活ごみも全て除いたらというような算出をされたのではないかと思いますが、私はその辺のところは専門家ではないのでわかりません、こう述べておられますが、きのう質疑で明らかになったように、学校をつくるのに全てを取り除く必要はない、別にそういう規定、義務はないということであります。

 そこで、昨日ちょっと質問しても明確な答弁は出なかったんですが、森友学園の理事長の言葉どおり、建物の下しか埋設物を処理せず、その他の土地はさわっていないとしたら、森友学園に国有地を売却した際に控除した八億一千九百万円の地下埋設物撤去処分費用の算定方法に基づけば、どれだけ安くなりますか、大阪航空局。

平垣内政府参考人 お答えさせていただきます。

 近畿財務局からの御依頼を受けまして大阪航空局において見積もりを行った本件土地の地下埋設物の撤去処分費用約八億二千万円のうち、建物が建設されてない部分の金額を申しますれば、約三億六千万ということになります。

宮本(岳)委員 今、約三億六千万という額が出てまいりました。これは、三億六千万円分、見積もったよりも安く上がっているということはほぼ確実であります。

 そもそも、八億二千万円分の工事をしたかどうかを確認もしていない。これは財務局もそうですし、大阪航空局も確認してないわけですから、御当人がやってないとおっしゃっているわけですから、三億六千万、これは安くなっているわけですね。

 ですから、先ほども、こういうことになっていて、本当に国有地の売却としてこれでいいのかということが議論になりましたけれども、これは問題ないんですか、理財局。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 今、国交省の方からごみの撤去費の内訳について答弁をしたところでございますが、撤去費用そのものにつきましては、まさに国土交通省大阪航空局、財務省近畿財務局で両方で協議をいたしまして、売却後は本件土地に小学校が建設されるということを前提にいたしまして、新たに地下埋設物が判明したわけでございますので、今後、その地点でさらに深い部分でどんな埋設物が出てくるかわからない中で、本件土地の売買契約におきまして、隠れた瑕疵も含め、一切の瑕疵につきまして売り主であります国の責任を免除するという特約を付すことも勘案しながら、必要となる埋設物の撤去費用を見積もるという考え方で積算をしたものでございまして、こうした方向性に基づきまして、大阪航空局におきまして工事算定基準に基づき適正に算定したものというふうに考えてございます。

    〔委員長退席、藤丸委員長代理着席〕

宮本(岳)委員 まだ適正に算定したと言っているんですね。

 昨日、大阪府の松井知事は、ごみ撤去費用を誰がどう見積もったのかを明らかにするべきだ、ここが一番問題と述べ、近畿財務局などの説明が不十分との認識を示したと報じられております。

 理財局長、これをどう受けとめるんですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 大変恐縮ですが、大阪の知事がどういうコメントをされたか私は詳細に存じておりませんが、ごみの撤去費用ということでございますれば、今申し上げたとおり、適正に見積もったということでございます。

宮本(岳)委員 ニュースぐらいは見ていただきたいと思うんですね。きのうから十分このニュースは流れております。

 実は、大阪府では、本日、臨時の私学審議会が開催されております。これは、この森友学園について進捗状況を報告するとともに、事務局からは一連の報道を踏まえた説明を行うと聞いております。

 大臣、大臣は昨日、私に、この間の経緯について国有財産近畿地方審議会に報告はさせたい、こういう御答弁をいただきました。

 私は、やはり急ぐ必要があると思うんですね。大阪府もこうやって臨時私学審を開いて報告して、御意見をお伺いしているということでありますから、もはや、法的に何の問題もなかったと言っておれる状況ではない。臨時にでも近畿地方審議会を急いで開いて御報告申し上げる必要があると私は思いますけれども、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 昨日御答弁を申し上げたと記憶しますけれども、私どもとしてこの一連の手続のことに関して瑕疵はありませんので、その意味において、私ども正式な手続を踏まえてこれを完了しておりますので、ただ、その内容等々についていろいろ御不信等々あるのであれば、その内容について、地方審議会、そこについて報告ということを申し上げたところです。

宮本(岳)委員 いやいや、大阪府の私学審議会も、瑕疵があったから臨時で開くと言っているんじゃないですよ、これも。だから、瑕疵があろうがなかろうが、やはり、この一連の流れについて報告をして御意見をお伺いするのは当たり前のことだということを申し上げているわけであって、理財局長、別に手を挙げていただく必要はありません、聞いていませんので。今、大臣の答弁どおり、しっかりと進めていただきたいと思うんですね。

 昨日の質疑では、もともとこの土地は、二〇一〇年に豊中市が公園用地として隣の土地を買い取った際、この土地も一括して防災公園とすることを望んでいたことが紹介をされました。私もその経緯に間違いがないことを地元から聞いております。

 資料二を見ていただきたい。昨日と同じ、その当時の豊中市の野田地区の土地利用計画であります。左右一括して近隣公園として整備する計画が示されております。

 この計画は、今回の森友学園への貸し付けや売却とは違い、二〇一〇年二月二十二日の第百十六回近畿地方審議会でも絶賛する委員の声が出されております。

 配付資料三を見ていただきたい。下線部、豊中市に売却して公園になるのは最高にうまくいっているケースだと思う、時価売り払いということですから安くすることはできないのかもしれないが、地方公共団体に売却して公園整備をどんどん進めるべきだという意見が出されております。

 近畿財務局の当時の和田管財部長は、地元住民の立場からは、豊中市が買おうとする国有地の隣のもの、つまり今回の土地ですけれども、これもあわせて買ってほしいという要望があったように聞いているとも述べております。両方一括ならば、その面積だけで避難地として認められる規模の面積になるんですけれども、財政事情から、今回の土地は断念し、隣接する小中学校などの公共施設と合わせてやっと面積基準をクリアしたという経緯についても説明されております。

 さらに管財部長は、地方公共団体が公園として使用する場合には無償で貸し付けできるという国有財産法第二十二条の規定まで紹介しているにもかかわらず、そうはなりませんでした。

 理財局長、なぜですか。

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、豊中市の要望の今お話がございましたが、本件につきまして、豊中市としましてこの土地を活用したいという意向を持っていたことについては当時承知しておりましたが、豊中市から具体的な取得との要望は受けておりませんでした。その後も、本土地につきまして、平成二十五年六月に、大阪航空局からの処分依頼を受けまして、取得要望の有無について豊中市に書面で照会を行いましたが、同年七月、豊中市から取得要望はない旨の回答があったというのが一点でございます。

 それから二点目でございますが、なぜ無償貸し付けをしなかったかということでございますが、今おっしゃいました本件の隣地につきましては、国土交通省大阪航空局より豊中市に対して時価で売り払いをしてほしいという事務委任を受けまして、近畿財務局におきまして時価で売却したものでございます。

宮本(岳)委員 このときの管財部長の説明、社会資本整備特別会計空港整備勘定における歳入となり、一方で、平成二十一年度約五千三百億円の事業規模の空港整備のための歳出予算となるという歳出歳入のバランス関係にある、このため時価売り払いを原則とするということで、国有財産法上の一般的な取り扱いは取り得なかった、こう述べているんですね。

 今おっしゃった、森友が応募したときの、募集をかけたが返事がなかった、希望がなかったというけれども、このときは当然、これは一括で売却するという話でいっていますから、こういう無償貸し付けであるとか、期限を切った貸し付けという話ではないわけなんです。

 今回の、では、森友への貸し付けや売却というのは、今お話しになったような歳出歳入のバランスを十分考えたものになっているか。全然なってないんですよ、全然、結果としては。この森友学園への貸し付けや売却によって、国はただの一円の収益にもなっていないばかりか、結果としてはマイナス、損になっていると私は言わなければなりません。

 大体、二〇一五年五月二十九日の貸し付け合意によって、確かに年二千七百三十万円の貸付料で貸し付けたわけでありますけれども、貸付合意書第六条の規定によって、国は土壌汚染除去等費用一億三千二百万円を、有益費として、昨年四月六日、森友学園に支払ったわけであります。しかし、貸付料は、一年で売却されたわけですから、わずか一年分、二千七百三十万円が入ったのみですよ。差し引き一億円以上のマイナスであります。

 それでも、昨年六月二十日の売却によって、格安の値段ではあるけれども一億三千四百万円が入ってくるではないかと言うかもしれませんが、この一億三千四百万円もまだ全額は受け取っておりませんね。十年分割払い、受け取ったのは頭金の二千七百八十七万円とせいぜい初年度分の千百万円だから、合わせても四千万円に欠けております。

 理財局長、この森友学園への貸し付け及び売却に関して、現時点で、国からのお金の出入りだけを見れば、間違いなく差し引きマイナスになっていますね。

    〔藤丸委員長代理退席、委員長着席〕

佐川政府参考人 お答え申し上げます。

 有益費として支払ったお話でございますが、それはまさに民法上、有益費ということでお払いしておるもので、先方がまさに肩がわりしたものを国がお払いしたということでございます。

 別途、その売却の話は、不動産鑑定に基づいた金額から撤去費用を正当に見積もってそれを差し引いたものでございまして、法令に基づきまして分割払いを認めているということでございまして、売却価格は一億三千四百万だというふうに認識してございます。

宮本(岳)委員 答えてくださいよ。

 現時点で、結果として、プラスマイナス、国のお金の出入りはマイナスになっていますね。

佐川政府参考人 そういう計算ではないんだろうと思っておりまして、売却価格一億三千四百万を、法令に基づいて、十年間にわたって私ども回収するということでございます。

宮本(岳)委員 受け取ってないんじゃないですか。一億三千四百万受け取りましたか。

佐川政府参考人 貸付料としての適正な部分を今受け取っているということでございます。

宮本(岳)委員 もう一度。

佐川政府参考人 申しわけございません。訂正いたします。

 売却代金の分割払いについて今受け取っているということでございます。

宮本(岳)委員 いや、だから、受け取っているのは全額じゃないでしょう。

佐川政府参考人 法令に基づいて、分割払いの分だけ受け取っているということでございます。

宮本(岳)委員 ちょっと質問できませんね。

 だから、先ほど私が計算したとおり、国のお金の出入りは、一億三千万を有益費として渡した後、一億三千四百万で売ったと言うけれども、その全額は受け取っていない、せいぜい頭金と千百万円ですから、出入りでいうとマイナスになっているでしょうと聞いているんです。

佐川政府参考人 マイナスという意味ですと、国が損をしているかのような印象を与えますので、そういうことではなくて、法令に合わせていただいて、収支でいきますと、きちんと分割で今後売却費用が入ってくるということを先ほどから申し上げているわけでございます。

宮本(岳)委員 いやいや、分割で払ってもらうんだけれども、今までは、一年目においたら、先に渡した有益費も戻ってないでしょう。

佐川政府参考人 今の、ちょっとわからなかったんですが、有益費の話は、まさに民法上、借り手が借りている土地で所要の支出を行った場合について、先方がまさに払ったものを後で国が払ってあげる、支払う、精算するというのが有益費でございまして、それはその話。

 売却の話は、まさに分割払いで、鑑定価格から撤去費用を差し引いたものについて分割で払うということで、今先生おっしゃいましたように、分割で払っている分だけ今いただいている、こういうことでございました。

宮本(岳)委員 では、現金収支がプラスかマイナスか。どうぞ。

佐川政府参考人 ただいま現在の現金という意味においては、分割分だけが入っているということでございます。

宮本(岳)委員 プラスかマイナスか。端的に。

佐川政府参考人 一億三千四百万の売却代金が、契約上十回、十年で分割されるということでございますので、プラスかマイナスかというのは十年間で見ていただくということだと私ども思っております。

宮本(岳)委員 これは、十年目には一億三千四百万になるということでしょう。今の時点での現金収支はプラスかマイナスか。どうぞ。

佐川政府参考人 今先生がおっしゃいます、その現金収支の意味がちょっとよくわからないんですけれども、やはり一億三千四百万というのがきちんと契約上入ってくるということだと思います。

宮本(岳)委員 だめですよ、そんなの。ちゃんと答弁させてください。答弁になってないです。

御法川委員長 佐川局長、もう一回丁寧に説明していただけますか。

佐川政府参考人 申しわけございません。ゆっくりとやらせていただきます。

 鑑定価格九億五千六百万、撤去費用約八億二千万で、売却価格が約一億三千万ということでございまして、それにつきまして、法令に基づいて分割払いということになっていまして、私ども、先方の学校法人に対して、一億三千二百万のきちんとした債権を保有しているということでございます。

宮本(岳)委員 だめですよ、本当に。そういう態度をとればとるほど、きょうはテレビカメラも来ていますけれども、いかにもおかしいなと。誰が考えたってわかる価格じゃありませんか。一億三千四百万は目の前で受け取っていないわけですから、まだ。十年後にそうなるように分割払いを今やっているということでしょう。そして、その前に、有益費として一億三千万余りを森友学園に渡したと。ただ、それは森友学園がやったことについての実費払いをしたということだけれども、森友学園が何をしたかどうかは別として、国の財布から、国から出た金の出入りは、つまり収支を見ればマイナスになったまま、十年間は結局マイナスになったまま今推移しているということになるわけですよ。誰が考えても明らかなことじゃないですか。

 私は、この豊中市が無償で自治体に貸与してほしいといったときに、当然そうすべきだったというふうに思うんですね、こんなマイナスになるぐらいだったら。無償であったってゼロですからね。マイナスじゃないですからね。

 豊中市はそれだけの財力、それだけの余裕、この可能性はあったかなかったかといいますと、私はその後調べて、なるほどと思いました。

 きょうは資料の四に、二〇一〇年、公園用地を豊中市が十四億二千三百万円で買い取った後の豊中市議会の十月十二日、建設水道常任委員会の議事録をつけておきました。

 豊中市当局は、議員の質問に答えて、確かに十四億二千三百万円で買った。買ったけれども、半額の七億千百九十三万円は、住宅市街地総合整備事業の国庫補助金が出た。残りの半分については、そのほとんどがカバーされるとは思ってなかったんだけれども、幸い国の地域活性化・公共投資臨時交付金が六億九千万円ほど出たと。当時は、不足分の一億八千万円の起債を覚悟していたんだが、わずか二千万円ほどで済んだので、起債はせずに一般財源で払えた。

 こう言っておりますけれども、きょうは国土交通省、内閣府に来ていただいていますが、これはそれぞれの額に間違いないですね。

石田政府参考人 お答えさせていただきます。

 まず、豊中市の方では、密集市街地の改善を図るために、先生御指摘ありました、住宅市街地総合整備事業を行っておりまして、当該事業において、平成二十一年度に、野田中央公園の用地費十四億二千三百八十六万円の二分の一、七億一千百九十三万円を補助させていただいております。

青柳政府参考人 お答えいたします。

 平成二十一年度に措置された地域活性化・公共投資臨時交付金におきまして、大阪府豊中市に対して、野田中央公園を整備するための用地購入費用として六億九千六十九万円を措置したのは事実でございます。

宮本(岳)委員 当初は一億八千万円の起債を覚悟していたが、二千万円で済んだ、起債せずに済んだ、こう言っているわけですね。

 森友学園に貸したり売ったりして収支がマイナスになるぐらいなら、はるかによいではありませんか。豊中市がこのとき覚悟していた起債を改めてやってもらえば、今回の例えば一億三千四百万円なんというのは、十年ローンでなくて即金で受け取ることもできたんですね。

 私は、今回のこの売却劇ほど不可解なものはないというふうに言わなければなりません。この問題は徹底して当委員会でも追及していくということを申し上げて、残った時間は、所得税法等改正案に関連して質問をさせていただきたいと思っております。

 さて、次のテーマですけれども、申告納税制度をとっている我が国では、任意の課税調査に関する規定が国税通則法に定められております。一方、国税犯則取締法では、強制的権限を持って犯罪捜査に準ずる強制調査の権限などが規定されております。

 国税通則法と国税犯則取締法のそれぞれについて、国税の調査に関する目的や捜査手法や税務署員に付与される権限など、それぞれ簡単に御説明いただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 国税の調査権限には、犯則調査の権限と、いわゆる課税調査の権限、質問検査権がございます。

 犯則調査とは、脱税事件として検察官に告発して刑事訴追を求めることを主たる目的として実施するものでございまして、現行の国税犯則取締法に規定されている強制調査や任意調査の権限に基づいて行われるものでございます。なお、強制調査としては臨検、捜索、差し押さえが、任意調査としては質問、検査、領置等が法令上規定されております。

 他方、いわゆる課税調査でございますけれども、これは適正な課税を行うことを目的として実施するものでございまして、国税通則法に規定されている質問検査権に基づきまして、納税義務者等への質問、帳簿書類その他の物件について検査を行うものでございます。

宮本(岳)委員 国税通則法の任意の課税調査は、納税者の同意を基本としておりまして、本来、国税犯則取締法の強制捜査、いわゆる査察制度とは全く違うものであります。戦後、国税通則法が制定される際にも、国税犯則取締法とはあえて別物として法律を制定したという経過がございます。

 今回、その性格が全く違う国税犯則取締法を国税通則法に一本化するわけでありますけれども、現在、別々の法律で運用していることに何か問題が生じているのでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生からお尋ねのありましたとおり、現状の運用上、特段の問題が生じているというわけではございませんけれども、今般の改正で国税犯則取締法を廃止いたしまして、国税犯則調査に係る規定を国税通則法に編入することとしております。

 これは、国税犯則調査も国税通則法に定める課税調査と同様、国税の公平、確実な賦課徴収を図るために、納税義務の有無等に関する事実について確認を行う手続でありまして、国税に関する共通的な手続を定める国税通則法の規定になじむものであるということ、また、課税調査と犯則調査を同一の法律に規定することによって一覧性が高まり、納税者にとってもわかりやすい法体系となると考えられることから行うものでございます。

 ちなみに、犯則調査手続を定めております関税法、金融商品取引法、独占禁止法におきましても、それぞれ、犯則調査手続は行政調査とあわせて一つの法律において規定されているところでございます。

宮本(岳)委員 いや、一本化する理由は説明になっていないと思うんですね。

 聞きますけれども、税務当局は、法案を、先ほど一丸化と言いましたか、一丸性を持ってと言いましたか、あるいは一本化することで、国税犯則取締法の強制捜査のため、つまり脱税の証拠集めとしてやっている任意の課税調査を位置づけよう、こういうふうに考えているわけですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般、国税犯則調査に係る規定を国税通則法に編入するということでございますけれども、今御指摘がありましたように、課税調査を犯則調査の証拠集めの手段として位置づけようとするものではありません。この点につきましては、法律案におきまして、国税犯則調査手続の規定を一つの独立した章に規定いたしまして、相互に関連する規定とはなっていないことなどからも明らかであると考えております。

宮本(岳)委員 国税通則法の第七十四条八の規定は、「当該職員の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」こういう趣旨、そういうふうにされております。その趣旨は守られるんですね。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 国税通則法第七十四条の八でございますけれども、今御指摘ございましたとおり、質問検査権につきまして、「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」と規定してございます。

 この規定の趣旨は、税の賦課徴収という行政目的を逸脱し、犯罪捜査目的で質問検査権を利用することを禁止するものでございます。

 なお、税務調査におきまして犯則事件が探知された場合に、これが端緒となって犯則事件の調査に移行することは許されると判断されているところでございます。

宮本(岳)委員 国税通則法には、今御答弁あったように、任意調査は犯罪捜査のためではないとちゃんと書かれてあるわけですね。にもかかわらず、犯罪捜査まがいの強権的な税務調査が横行しているとの告発が私の事務所に多数届いております。

 例えば、税務調査の事前通告について聞くわけですけれども、国税通則法の改正により、税務調査に際しては、原則、事前通知をするということとなりました。これは任意調査ですから、当然、納税者にとって都合の悪い日時であれば変更することができると思いますが、法律ではどのような規定になっておりますか。

飯塚政府参考人 お答えをいたします。

 税務調査の実施に当たりましては、国税通則法上は、原則として事前通知を行い、調査日時、場所、調査の目的等を通知することとされておりまして、国税当局といたしましては、事前通知に先立って、納税者等の御都合を伺った上で、調査日時等の調整を行っているところでございます。

 また、法律上、納税者等から合理的な理由を付して調査日時等について変更するよう求めがあった場合でございますけれども、国税当局は、当該事項について協議するよう努めることとされております。

 したがいまして、国税当局としては、例えば納税者等の業務上やむを得ない事情がある場合など、納税者等からの求めに合理的な理由がある場合には、調査の適正かつ円滑な実施に支障を及ぼさない限り、調査日時等の変更を協議するよう努めているところでございます。

宮本(岳)委員 通知をしない場合においても、あくまでも任意の調査なんですから、合理的な理由があれば税務署は日程の変更にも応じる、協議に応じる、こういうことでありました。

 ところが、私の事務所には、このような税務調査に関する相談があったんです。鳥取で飲食店など二店舗を営むAさんという方ですけれども、二〇一六年三月十六日、鳥取税務署の六人の署員が事前通知もなしに突然自宅と二つの店舗に尋ねてまいりました。Aさんは初めてのことで動転をし、署員から予告なしの調査なので日程変更はできないと言われ、従うしかなかったと話しておられます。二つの店では従業員が対応いたしました。従業員が席を外したすきに、署員が棚のファイルの資料を持ち出して無断でコピーをとっていたということ、さらに、第三者である取引先がいるところで守秘義務違反の調査を進めていたということが後から判明をいたしました。

 聞くんですけれども、予告なしの調査なので日程変更はできないと税務署員が言ったそうでありますけれども、これは犯罪捜査ではありません。あくまでも任意の調査なのに、突然やってきて、無予告調査は日程変更できないと言う、このやり方は正しいのか。税理士だって都合がつかないかもしれない。にもかかわらず、一切日程変更には応じるなというのが国税庁の対応ですか。

飯塚政府参考人 お答えをいたします。

 事前通知を要しない税務調査の場合にあっても、先ほど申し上げたことと同様でございまして、国税当局としては、納税者等からの求めに合理的な理由がある場合には、調査の適正かつ円滑な実施に支障を及ぼさない限り、調査日時等の変更を協議するよう努めているところでございますし、また、今後ともそういう方針で国税局、税務署を指導してまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 さらに、その署員が、調査を終えた後ですよ、自宅そばで一時間にわたってAさんを監視していたことが近所の人たちから知らされた。近所では、Aさんが警察のようなところから見張られ、犯罪捜査か何かの対象になっているといううわさが広がって、Aさんはまともに挨拶ができない状況になったと言っておられます。これはレストランの経営者の方でありますけれども、風評被害が起こったということです。

 そのAさんの税務調査の結果は、結局のところ、少額修正で終わったそうで、悪質でも何でもなく、きちんとした帳簿に基づく申告であったことが改めて確認できた、こういうことなんですね。そのAさんに対して、無予告調査を突然行い、犯罪捜査まがいの税務調査を行っていたということでありますけれども、こういう事例について、国税庁は、当然これは問題だ、こういう御認識ですか。

飯塚政府参考人 お答えいたします。

 個別の事例に関するお答えは差し控えさせていただきたいと考えておりますけれども、いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、法令にのっとって適正な調査を行うように今後とも指導してまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 今回は、Aさんの抗議で、税務署は一応謝罪をいたしました。

 ほかにも、昨年、愛知県の豊田市の居酒屋さんへの無予告調査で、本人が制止しているにもかかわらず、強引にレジをあけさせ、自宅では下着が入った引き出しまであけて調べるという強引な調査が行われました。妻は、どう対応したのかはっきりと思い出せないほど恐怖を感じたとおっしゃっております。御本人たちが抗議をした後に、豊田税務署は御本人に謝られたそうであります。

 こんな事例が、今の答弁とは裏腹に、全国で起こっているわけですよ。今後このような事例が起こったらきちんと対応する、そう答弁していただけますか。

飯塚政府参考人 同じお答えになって恐縮でございますけれども、今後とも、法令にのっとって適正な調査を行うように指導してまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 そういう事例が起こっているから申し上げているわけであって、しっかりと教育しなければ、全国で枚挙にいとまがないということを申し上げているわけであります。

 こういう税務調査が各地で行われているから、法律が一本化されたら、一般の調査と犯罪捜査の境目が曖昧になり、さらに強権的な税務調査が横行するんじゃないのか、こういう不安の声が税理士さんや中小業者の皆さんから起こっているわけですね。

 確認いたしますけれども、今回の改正後でも国税犯則取締法の犯罪調査と国税通則法の任意調査は別のもので、法律上これまでと何も変わらないということでよろしいですね。

飯塚政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどの主税局長の答弁にもございましたけれども、いわゆる査察調査でございますが、脱税事件として検察官に告発し、刑事訴追を求めることを目的として実施するものでございまして、現行の国犯法に規定されている権限に基づいて実施しているものでございます。

 他方、いわゆる課税調査でございますけれども、適正な課税を行うことを目的として実施するものでございまして、国税通則法に規定されている質問検査権に基づき、任意調査として、納税者の理解と協力を得て実施しているものでございます。

 このように、査察調査と課税調査とではその目的や権限が異なるものでございまして、今般の改正により犯則調査手続が国税通則法に編入されましても、今申し上げましたような査察調査と課税調査の位置づけ、関係が変わるものではないと考えております。

宮本(岳)委員 現在の税務調査では、法律を逸脱した調査が横行して、先ほど申し上げたような、調査で風評被害が起こったり、反面調査で取引先の信用を失うなど、人権を否定されるようなことが間々ございます。だから、納税者を守るための法律や規定が必要となっていると思うんですね。

 かつて、納税者権利保護の規定を持った納税者権利憲章の創設が盛り込まれた法律が国会に提出されましたが、これは修正をされて、削除されました。これはなぜ削除されたんですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の納税者権利憲章の策定につきましては、民主党政権下において国会に提出をした平成二十三年度税制改正法案に盛り込まれていた話だと思います。

 これにつきましては、法案が出された後、その後の審議の過程で行われました三党協議におきまして議論をされ、その結果として、法案から削除する修正が行われたものと承知をしております。

 なお、この際の改正では、納税者が税の減額を求める更正の請求の期間の延長など、いわば納税者の利益につながる具体的な改正事項については三党間で成案を得ており、納税環境整備について進展しているものと理解をしております。

宮本(岳)委員 今、世界では、納税者の権利保護を強めようという流れが大きく広がっております。既にある各国の納税者権利憲章は、拡充される方向で検討がなされております。例えば、納税者の権利保護に関する国際会議の開催や、国際的税務専門家三団体によるモデル納税者権利憲章の最終報告書の公表、IFA総会でも議論をされておりますし、EUでは欧州納税者権利憲章の制定を視野に入れた議論が既に始まっております。

 米国でも、二〇一四年六月十日、内国歳入庁は、納税者の基本的な権利を含む新たな納税者権利憲章を公表いたしました。第一条で知らされる権利が定められており、今回のような無予告調査などはできないことにアメリカではなっております。

 二〇一五年の十月に最終報告が公表されたOECD租税委員会におけるBEPSプロジェクトの行動計画の中でも、税務当局と納税者が協働する協力的コンプライアンスの推進が方針とされ、それに基づく申告前合意やADR、和解などの手続整備が進められております。

 これは大臣にお伺いするんですけれども、政府も、今後の政府税調で、国際的な納税者の権利保護の規定の流れについてさらに研究、検討するべきだと私は思いますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 この納税者の権利憲章については、OECDの加盟国において、今制定している国がふえてきているというものは理解をいたしております。

 他方、政府としては、納税者権利憲章を制定するかどうかというよりも、実際に納税者の利益の保護の観点も踏まえた措置を手当てしていくということの方が重要だというように考えております。

 したがいまして、こうした観点から、二十三年度の税制改正におきまして、いわゆる更正の請求ができる期間を従来の一年から五年に延長、また、更正決定に原則理由付記を行うこととするなどの改正を行ったところでありまして、今後とも納税環境の整備というものに向けて、引き続き検討を進めてまいりたいと考えております。

宮本(岳)委員 権利というのは、利益とは違うんですよね。私がきょう述べてきたのは権利の問題なんですよ。やはり世界でもそのことが問題になっているわけですから、私は、研究、検討、これぐらいは当然すべきであるということを重ねて申し上げておきたいと思うんですね。

 時間がもうあと十分になりましたから、予定していた質問が最後まで行くかどうかわからないんですが、かといって、ここで終わるわけにいきませんので、途中までであれば、また次回続きをやるとして、次の質問に移らせていただきます。

 日米経済対話について、まず大臣に冒頭にお伺いしたいんですね。

 先日の首脳会談で日米経済対話の創設を約束してこられた、こう報じられております。共同声明などを見ますと、総理が話す内容は、事経済問題では、日本企業が米国経済や雇用に貢献しているという話ばかりであります。

 創設される経済対話の目的は一体何なのか、また、経済対話を通して日本側は何を得たいと大臣は考えておられるのか、これは副総理としての麻生大臣にお伺いしたい。

麻生国務大臣 今般の日米の首脳会談において、いわゆる両首脳間において、自由で公正な貿易のルールに基づいて、日米両国間及び地域において経済関係をより強化するとともにということを引き続き完全にコミットしているということをまず確認しております。

 こうした共通認識のもとで、今後、日米経済関係をさらに大きく飛躍させて、日米両国及びアジア太平洋地域において、ひいては世界に力強い経済成長をリードしていくために、今般、ペンス副大統領と私のもとでいわゆる経済対話を立ち上げるとしたところであります。

 この経済対話を通じまして、日米間の貿易・投資関係を深めていくとともに、いわゆるアジア太平洋地域に、自由でかつルールに基づいた公正なマーケットというものを、日米両国のリーダーシップのもとでつくり上げていきたいものだと考えております。

宮本(岳)委員 ワーキングランチでは、経済政策、そしてインフラ投資やエネルギー分野での協力、貿易・投資ルールの三つを経済対話の柱とすることで一致した、これは公表されております。

 このインフラ投資やエネルギー分野というのは、具体的にはどんな内容が含まれるのか。米国内における原発建設も含まれますか、副総理。

麻生国務大臣 昼飯に同席しておりましたけれども、いわゆる経済政策、インフラ投資、エネルギー分野での協力、貿易・投資ルール等々について議論していくことになるということで、両方でいろいろ話をされた上でなっておりますけれども、内容につきましては、現段階で決まっているものは何一つありません。

宮本(岳)委員 では、具体的に聞くんですが、現在、東芝は、米国内で二基の原発を建設中です。この原発建設事業の内容を説明していただきたい。

 同時に、東芝は、原発事業での五千億円とも七千億円とも言われる巨額損失が明らかになり、原発事業の行く末も不透明となっております。こんな状況で、この米国の原発建設は今後も継続できる見通しがあるのかどうか、経済産業省にお答えをいただきたい。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、サウス・テキサス・プロジェクトについてのお尋ねがございました。

 東芝は、二〇〇八年から、米国におけるABWR型と呼ばれます炉の原発建設の事業実施会社に出資を行いまして、テキサス州での原発建設計画に参画をしているところでございます。この当該事業実施会社は、二〇一六年に米国規制当局より建設運転一括許可を取得しているところであります。

 ただし、テキサス州におきましては電力価格が低迷しているところから、東芝といたしましては、出資をするパートナー企業を募集しながら、建設開始の判断をすべく関係者と協議をしている状況にあるというふうに承知をしているところでございます。

 さらに、重ねて、東芝の巨額損失を踏まえて、原発建設は継続できるのかというお尋ねもございました。

 東芝が原発事業をどのように進めていくかということにつきましては、事業者の経営判断に属する事業でありまして、政府としてはコメントは差し控えたいと思いますが、委員も御案内のとおりかもしれませんが、東芝の今月十四日の発表によれば、原子力事業の今後の方向性について、国内事業については、再稼働、廃炉、メンテナンスを中心に社会的責任を継続して果たしていく。海外事業については、ビジネスモデル、収益性の異なる部門別に対応、戦略的選択肢を検討していく。そのうち、新設プラントについては、今後は、土木建築部分のリスクは負担せず、機器供給やエンジニアリングなどに特化するといった発表がなされているところでございます。

宮本(岳)委員 計画はとまっているわけですね。

 三菱重工も、原発建設に関して米国で問題を抱えております。米国のサンオノフレ原子力発電所に関して、三菱重工は事故訴訟のさなかにございます。この内容を説明していただきたい、経産省。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 三菱重工は、二〇一〇年から二〇一一年にかけまして、サンオノフレ原発二号機及び三号機に取りかえ用の蒸気発生器を納入したところでございますが、二〇一二年、蒸気発生器の冷却水が漏えいしたことから、同原発の運転は停止をいたしました。三菱重工は原因究明作業を進めていたところではございますが、二〇一三年に、現地電力事業者はこの原発についての廃炉を決定したところでございます。

 この事案に関する損害賠償額をめぐりましては、二〇一三年から、三菱重工とこの現地電力事業者の間で仲裁が進められているところでございます。仲裁においては、三菱重工は契約上の上限額である一億三千七百万ドルを、現地電力事業者側は六十六億六千七百万ドルをそれぞれ主張しているところと承知しているところでございます。

宮本(岳)委員 どちらの原発建設も、原発輸出をトップセールスで進めてきた安倍政権としては期待の高い事業だったと思います。建設コストの増大で資金が集まらなかったり、事故訴訟で巨額損失の懸念を抱えるなど、東芝も三菱重工も順調よく事業拡大できているといった状況ではありません。

 経済対話で、これから原発建設について、それも協議の対象になってくるのかもしれませんけれども、米国における原発建設事業はこれ以上拡大すべきではないと私は考えますけれども、副総裁、これは常識的な判断ではありませんか。

麻生国務大臣 繰り返しになって恐縮ですけれども、先ほど申し上げた内容が、昼飯のとき、またその前の会議等々で交わされておりますので、具体的な内容については今後調整をすることになりますので、現段階で決まっているものがないということをまず最初に申し上げておきます。

 その上で、一般論として、原子力にかかわる国際協議の方針について申し上げるとするならば、日本としては、核不拡散の枠組みを堅持しつつ、相手国の事情や意向を踏まえて安全性の高い原子力技術を提供していくことといたしております。

 その上で、具体的に米国を含む海外における原発事業を行うか否か、これは原子力をめぐります事業環境とか、各社の経営の事情もあろうと思いますので、各事業者において適切に判断されるべきものだと考えております。

宮本(岳)委員 政府は、この二つの米国の原発建設プロジェクトに対して、国際協力銀行の融資や出資、貿易保険などの国からの支援をしていないのか、これをお答えいただきたい。財務省と経済産業省。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 JBICはこれまで、お尋ねの事業に関し支援した実績はないと承知してございます。

小林政府参考人 アメリカの原子力案件につきまして貿易保険の支援があるかどうかというお尋ねについてでございますが、個別の支援案件につきましては、事業者の利益を害するおそれがあるため、支援したか否かを含め、回答は差し控えたいというふうに考えております。

宮本(岳)委員 三菱重工のサンオノフレ原発訴訟の複雑さは、請求額の大きさだけではなく、米国という契約社会においても、当初の契約がほごにされて大きな訴訟になってしまったという実例だ、こう思うんですね。

 こうしたことが常態化してしまうと、先進国への輸出は契約が明確であり、賠償の範囲もきちんと決められているから安全、こういう前提がもはや崩れたと言わなければなりません。

 経済産業省、先進国への原発輸出など、リスクが高くてもうとてもできないんじゃないですか。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 サンオノフレの案件につきましては、民間契約に基づく事業者間の紛争でありまして、評価に関するコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で、海外のそれぞれの計画においてどのような契約や実施体制で行うか、これについては個別の民間企業の経営判断でございます。

 その上で、さらに原発輸出全般についての認識のお尋ねがございました。

 世界におきましては、エネルギー安全保障、経済性、環境適合性といった観点から原発建設の計画を進めている国はいまだ数多くあるところでございまして、福島第一原発事故後においても、我が国原子力技術に対する期待の声が各国から寄せられているところでございます。

 相手国の意向や地理的状況も踏まえながら、安全性や信頼性にすぐれた我が国の技術やノウハウを提供していくことは我が国の責務であり、世界での期待でもあるというふうに考えているところでございます。

宮本(岳)委員 時間が迫ってきましたので、一つだけ事実確認だけ。

 現在、日立と東芝が英国で原発建設を計画しております。昨年十二月の二十二日に、英国と日本の経済産業相との間で、日本国経済産業相と英国ビジネス・エネルギー・産業戦略相との協力覚書の調印がなされました。

 そのときの報道では、一兆円もの政府支援を行うと書かれております。そのような計画があるんですか。

平井政府参考人 お答え申し上げます。

 英国との協力覚書は、廃炉等の分野で協力関係が深化していることから、原子力に係る活動全般における両国の協力を確認したものでございます。

 この中において、日立、東芝の原発建設計画につきましては、両国が両事業者の提案の進展に係る議論を継続する機会を歓迎したものにすぎません。

 いずれにいたしましても、両計画とも、二〇二〇年代半ばの運転開始を目指しているものでございまして、今後、両事業者において事業計画等の検討が進められるものだと認識しております。

 日本政府として何らかの支援を行うことを決定しているものではございません。

宮本(岳)委員 先行する英国内の別のサイトでの原発建設では、二基の建設で二兆円を超える予算が現時点でも見込まれていると言われております。日立や東芝のサイトが一兆円の建設費というのもあながち外れた話ではないと思うんですね。

 報道では、国際協力銀行が融資を行うと言われておりますけれども、国際協力銀行の業務範囲において、先進国で建設する原発事業に対し、融資はできるようになっているのか、それとも、できないことになっているのか、可能か不可能かだけ御答弁いただけますか。

武内政府参考人 お答え申し上げます。

 株式会社国際協力銀行法上の規定に基づき、可能でございます。

宮本(岳)委員 可能という答弁であります。

 時間が来ましたから終わりますけれども、福島第一原発の事故以来、世界の原発建設は、安全基準を高めたために莫大な建設費用が必要となったと言われております。事故や廃炉、核のごみも含めたこういう責任が建設者にかかってくる、そういう一括契約が主流になってくれば、長期間リスクを抱える事業、これは本当にもう進めるべきではないという状況になってきていると思います。

 二国間交渉のテーマは何ら決まっていないという御答弁でありますが、排除されていないわけでありますから、こういう方向に断じて進むべきじゃないということを申し上げて、きょうの私の質問を終わりたいと思います。

御法川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 きのうの五十五分に引き続き、きょうは一時間ということでございまして、あと一時間でございますので、大臣、きょうもおつき合いをよろしくお願い申し上げます。

 きょうは、二月二十二日ということで、何の日かといえば、竹島の日でございます。式典もやっているということで、やはり国民の皆さんの中に、竹島がこの国の領土なんだということをしっかり認識していただく上でこの日はすごく重要だと思うんですが、マスコミの論調を見ていると、二月二十二日で、ニャンニャンニャンで猫の日だみたいな報道の方が何か目立ちつつありそうな、非常に危機感を抱いておりますので、しっかり報道いただきたいんです。

 きのうの電子たばこの議論、大臣と、また財務省の皆さんとこれは非常に有意義な議論をさせていただいたと思っているんですけれども、報道といえば、電子たばこのいろいろな重要な答弁をお聞きしているんですけれども、それも報道は一切されていないんですけれども、大臣が、肺がんというのはたばこと関係があるのかみたいな話だけ、ちらっと新聞で出ていたんですね。

 もうマスコミの報道の仕方に対しては非常に疑問を私は持っていますけれども、しかし、報道の自由もありますし、そして、報道されないからではなくて、しっかりと必要な議論をしていくということが非常に我々議員に課せられた使命だと思いますので、きょうも、報道される、されないといえば、されにくい内容ですけれども、しっかりやっていきたいというふうに考えます。

 その意味で、きょうは、以前の質疑で伺ったパチンコの話について、失礼しました、パチンコはさっき別の委員会で、済みません、私は、きょうも三委員会をかけ持ちで、先ほど第一分科会で三十分、第五分科会で三十分、きょう一時間、きのうも一時間なので、合計三時間をやっていまして、ちょっと混乱しております。さっきは別の委員会で、警察と厚労と、パチンコがなぜ違法なのかとか、あと、生活保護でパチンコに通うのはどうなんだ、外国の人の生活保護の支給はどうなんだみたいな議論をしていたので、混乱してしまいました、済みません。

 きのうやったのは、大臣とは、受動喫煙防止法に基づいてのたばこの議論です。特に電子たばこの議論をしたんですけれども、それで、最後にちょっと聞き残しがあったので、このたばこの関係を聞いていきたいんです。

 厚労省から、ことし、この受動喫煙防止法の改正が出てきます。それに伴って、恐らく、吸う部分を規制がされるがゆえに、これはたばこを買う人の数が減るんじゃないかなというふうに考えるんです。そうすると、自動的にこの財務委員会の所属の議員として思うのは、たばこ税の税収についてどういうふうに考えていくかというのは非常に大事な観点かなというふうに思うんですけれども、財務省として、これを今どういうふうに考えているのか、それについて、まず役人の方、お伺いできますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生御指摘になられました受動喫煙防止法の改正の法案でございます。具体的な内容、また施行時期が固まっているわけでは現時点ではございませんので、例えば、たばこ税収に与える影響について試算を行うとか、そういうことはまだできない状況でございまして、試算等は行っておりません。

丸山委員 役所のお答えだと、大体、把握しておりません、あと、試算がございませんで、答えに窮していらっしゃるのをいつも私は見ているんですけれども、何とかしてほしいんですが。しかし、今のところ予想はできないということなんですが、ごめんなさい、簡単に言うと、わからないという認識でいらっしゃるんですか。変わらないというわけでもないし、変わるとも言えない、わからないというのが役所の認識ということでいいんですよね。

星野政府参考人 そういう意味では、どのように変わるかがわからないので、わからないということでございますけれども、ただ、特定の公共の場における喫煙の規制が仮に強化されたとして、それがたばこの販売数量を減少させることになるのかどうかといったようなことについても、一概に申し上げることもできないかなとは思っております。

丸山委員 大臣にもお伺いしたいんですけれども、きのうの御答弁で、たばこの喫煙者が減っているのに税収というのはそんなに変わっていないという御答弁もあったと思うんですけれども、今回の防止法の影響について、財務大臣としてどういうふうにお考えなのか、お答えいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 たしか、丸山先生の件、ちょっときのうのきょうなんですが、私が当選したときに、三千億本売れていたんだと思うんですね。そのときの喫煙者が成人男子の七八%、今、三〇%を切りましたという割には余り税収が減っていない。

 それは、一つは、たばこの本数は三千億本から二千億本台まで減っていますけれども、税金を上げていますので。当時、ピース一個五十円という時代ですからね。東大の学費は月千円だったんですから、あのころは。今とえらい違いでしょう。だから、そういった時代ですから、額としては大分違いますよ。だけれども、今、総額として、地方税と国税を足して二兆一千四、五百億いっていると思いますから。

 大阪のあの辺はちょっとようわからぬけれども、私らのところでも、小さな町でも、たばこ税というのは、どれくらい入っていますか、数億円、黙って入ってくる。だから、地方にとっては大きな税収になっていると思いますけれども。この人のところはかなりもう、楽に入っている、大きな額なんだと思いますので。この税収がどうなるかというのは結構な関心事であるというのは、地方の首長さんなら全員関心がおありだと存じます。

    〔委員長退席、藤丸委員長代理着席〕

丸山委員 本当におっしゃるとおりで、地方の自治体は、たばこ税は大きいんですよね。

 そういった意味で、万が一これが下がっていくというようなことであれば、各自治体の財政状況に悪影響を与えていくということなんですけれども、一方で、下がりそうか、下がらないかというのは、今の大臣のお答えだと、いや、数は減っても税収はふえている、理由は単価を上げているからだというお考えなんです。

 もし、これが万が一、まだ見えません、見えないのできちんと見ていくけれども、今回の喫煙防止法でやはり需要が減ってきたとあれば、これは、税収増をもってきちんとある程度一定の維持を財政上していくことが、基本的には私、地方自治体の財政の状況を考えると、急激なショックを与えるわけにはいかないので、必要だと思うんですけれども、同様の認識だということでよろしいですか。

麻生国務大臣 これも商品ですから、値段を上げるとたばこをやめるという人が出るんですね。たばこは、値上げすると大体買いだめをして、上がる寸前にばっとたばこが売れて、買いだめをされるのかどうか知りませんけれども、二カ月ぐらいたばこの購入量が減るんですけれども、また自然と少しずつ伸びていくというのが、これまで、たばこを値上げした、この前のときもそうでした、あれは二〇〇一年だか二年だかにやったときも、そういう記憶がするんです。

 いずれにしても、そのときにどれだけ上げるかという話は、これはちょっと、正直なかなか、消費税の話と同じで、それでたばこの消費量が減るという面も考えないけませんので、いきなりぼんと、一本につきあと十円上げます、五円上げますなんという話になった途端に、やはりたばこの税収に与える影響は結構大きなものがあると思いますので、どのみちまた買うさと言っていて、戻ってくるかどうかよくわからぬというところもあろうかと思いますので、ちょっと一概には言えません。

 それこそ、JTの方のいわゆる営業とかそういった方々の企画とかいうのに負うところが大きいんだとは思いますけれども、慎重にやらぬと、これは、税収としては地方税、国税を含めまして極めて大きな影響を与えるものだと思って、慎重な対応が必要だと思っております。

    〔藤丸委員長代理退席、委員長着席〕

丸山委員 上げることにも慎重にしていただきたいし、税収が減ることに対する自治体へのショックに対しても、影響を和らげる、どうやっていくのかというのも慎重に、両方考えていただきたいというふうに思います。

 仮定の話でしたので、ここからは、仮定でなく法律で決まっているものの確認をしたいんですけれども、消費税が、これは確実に上げるという法案が出ております。確認ですけれども、予定どおり二〇一九年の十月より引き上げるということでいいんでしょうか。

 我々は、これは先にやるべきことをやってから上げてくださいねというのが我々維新の会の考え方です。我々国会議員の給料にしても、予算の使い方にしても、まだまだできることがあるんじゃないかという認識ではいるんです。

 しかし、既に法律が通っておりますし、財務大臣のお考えがあると思いますので、ぜひその決意をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 消費税率一〇%への引き上げというのは、もともとは自公民三党で、与野党含めて三党合意がなされてこの種の法律をやったという意味においては、ほかの民主主義先進国と言われる民主主義国でこういった与野党合意でこういったことをやった例がない、私はそう思っていますので、これは日本における民主主義の成熟度合いとしては世界に冠たるものなんだ、私は基本的にそう思っております。

 その上で、ではなぜこれをやるかということになったときに、やはり社会保険制度とか保障制度というものをきちんと次の世代に引き渡していく責任を果たすというのがあのときの一番目に挙げられたことで、次に、市場とかいわゆる国際社会というところから、やはり日本というのはちゃんと税制は、それこそ最近のシムズさんの話、クリストファー・シムズの理論じゃありませんけれども、とにかくじゃんじゃん刷って、適当なインフレになったらどうのこうのというあの種の乱暴な話ではなくて、日本としては、きちっとこういったものをやって、財政をきちんとしようという意思があるということを明確にすることは不可欠ということで、財政健全化目標を堅持するということを申し上げておりますように、達成を損なわないタイミングというのをしっかり行う必要があるんだと思いますので、二〇一九年の十月にあるということに関しましては、これはきちんとやっていくということが我々に与えられている大きな責任だと思っております。

丸山委員 非常に明確な答弁だったとは思います。

 ただ、先ほど申し上げたように、我々の考え方は少し違って、例えば、先ほどの議員の給料の話も、ちょうど八%に上がったタイミングで戻っているんですよ。それは、八%のお願いを国民の皆さんにするのであれば、我々のを上げている場合じゃないんじゃないかという話だとか、さっきも厚労省と話をしていたのは、生活保護が外国の方にも今支給されているんですけれども、生活保護費は、実は、国民というふうに生活保護法では区切っているのに、厚労省の通達で、これを外国人にもやるようにというような通達を出していて、自治体はそれに倣って外国の方にもやっているんです。

 一方でそんなプラスのことをやっておきながら、一方で例えば難病支援のための医療の研究費のお金がないとか、いろいろなところで厚労省は、予算の関係上、制約上できないということはいっぱい言っているわけで、ちょっと私は、その辺の理屈がしっかりできていないものは国民の皆さんの理解も難しいんじゃないかなというふうに思うんです。

 消費税は、非常に国民の生活に影響の大きい税です。そういった意味で、今大臣が明確に御答弁された、一九年十月に上げるということですから、不公平感のないように、ぜひ、この税収で生まれた財源の使い道の方もしっかり、財務大臣、監督省庁の大臣としてやっていただきたいというふうに重ねてお願い申し上げたいと思います。

 その意味で、中長期の経済財政の見通しというのは、非常に衆目の集まる、つまり注目されるところだと思うんですよ。

 しかし、現状の数字を見ていますと、今政府が出されている基礎的財政収支、プライマリーバランスの黒字化、二〇二〇年、この目標が大分遠のいているんじゃないかなというのが、正直、この委員会でも、ことしに入っても何人か御質問されていましたけれども、私も同じように感じます。

 現に、政府が出してきた試算が、去年の年末に出たものが、その前に出たものよりさらに悪化しているんですよ。これで大丈夫なのかなと思うんですけれども、正直、総理の予算委での答弁を聞いていても、非常に強気、やるとおっしゃるんですけれども、そのやり方を含めて何の説明もないので、それをやる、やると言われても、やるやる詐欺とまでは言いませんけれども、不安が募るのは間違いないと思うんですね。

 その辺の、どういうふうにやっていくのかも含めてやはりちゃんと説明をしていかないと、さっきの国民の納得感というのは得られないと思うんですけれども、大臣、そのあたり、どのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 中長期の試算というものの中で、将来の歳出という部分があるんですけれども、それはもう、物価水準等で増加していくことを前提としておりますと書いてありますので、内閣府の出している試算は。あの中は、例えば社会保障関係では一兆円で組んでありまして、こっちは今五千億でこの三年来ましたので、そういったものをあれは織り込んでありませんので、そこでまず五千億違うとか、いろいろなもの、まだまだあるんだと思いますけれども、少なくとも、これまでと同じ程度の歳出を続けていけば、これまで続けていけばというのは、この三年、四年間やってきた、一兆五千まで下げてきたこういう努力を続けていけばさらなる収支改善は見込める、まずそういったところがあります。

 それから、この間のときに出したのよりまたちょっと下がったじゃないかというのは、あれは、円が百二十円だったものが百四円まで上がったところによる部分が、十月までそうなっておりましたが、御存じのように、十一月、トランプさんが出てきて、いきなり、きょうが百十三円ですか、百十三円か四円まで円が安くなってきておりまして、その分で下期の税収が多分そこでまた変わる、ふえる方に変わると思いますけれども、そういったものもありますし、いろいろなものがあるんだとは思っております。

 いずれにしても、私どもは、この八とか五とかいう数字のギャップ、到達するまでの間にまだ五兆あるとか八兆あるとか、いろいろな差の分がそんな楽々達成できると思っているわけでは全くありませんので、引き続き、これは歳出改革もやらないけませんでしょうし、さらなる売り上げ増も目指さないけませんでしょうし、一番大きな、三十兆も歳出しております社会保障のところでいえば、例の、薬をジェネリックに、比率をふやしていく。今、ジェネリック、四〇%までいきましたかね。あれはアメリカなんかでも八〇も九〇もいっておりますので、そういうものをふやしますとまた随分変わってくるというようなこともありますので、いろいろなものを考えて、私ども、さらに努力をしていかねばならぬと思っております。

 細目、こういったものというのは、まずこの二年間だけは、前年度の伸び率が五千三百億以内でおさめるというのもこの二年間きちんとやれてきております。これは二〇一八年のときにどれだけいけたかという中間の目安を出すことにしていますので、その段階でもう一回、さらに足りていないというところを一層やっていかないかぬということになる、私どもはそう思っております。

 今この段階で、これをやりますから大丈夫ですという具体的な案を今お示しできるような段階ではございません。

丸山委員 財務省、絞る分に関してはすごく力を発揮する官庁だと思います。私も役所にいましたので、財務省にかりかりと予算を削られる現場を見てきましたけれども、でもこのPBの黒字化という意味では、非常に財務省、果たすべき役割の大きい部分、特に今、麻生大臣が大臣であるときこそチャンスだと私は思っています。財務大臣もいろいろいらっしゃって、そのときの政治的なパワーの違いもあると思うんですけれども、びしっと言える大臣のお一人だというふうに思いますので、しっかりこれは財務省が音頭をとって、この目標達成、ほら見ろ、できただろうと言っていただける、そうした方向性に持っていっていただきたいと思います。これは引き続き、財務委員会、注視していきたいというふうに思います。

 次に、配偶者控除の税制に関連して、ちょっと大きい枠から聞いていきたいんですけれども、さきの本会議で少し所得税の控除について、今の少子化対策の抜本的な解決策になっていないですと。そのためには、配偶者控除という形じゃなくて、夫婦控除、もちろん結婚できるような税制が望ましいと思いますので、夫婦であればあるほど税金が安いというのは、それは一つよい方法だと思います。ただ、私も独身の一人なので、少しそういった意味では、そういう税制があれば結婚したいなという人がふえるだろうなというふうに容易に思えるんですけれども、済みません、要らないことを言ったら余計なあれですね。委員長、失礼いたしました。委員長も笑ってくださっていますけれども。

 一方で、夫婦控除だけじゃなくて、子供さんがふえていくということが実は本質的には、御夫婦になっていただきたい次の、国家としては大事な話に。もちろん、今、家制度を日本がとっていて、御夫婦になっていただくというのは非常に大事なんでしょうけれども、しかし、それより先の、子供さんがどれぐらいふえていくかということが実はこの国の未来にとって本質であって、そして、そのための税制にするためには、子供さんがふえればふえるほど税額が控除される、もしくは給付つきの税額控除という形の税制が望ましいんじゃないかという議論をさせていただいたんです。

 実はフランスはN分のN乗方式というのをとっているんですが、それについては本会議で聞けていなかったんですね。若干、前半述べた、私が言った給付つき税額控除も含めた部分には、総理は慎重な検討が必要という御表現、どちらかというと後ろ向きだなというふうにがっかりしたんですけれども、このN分のN乗方式に関してはどうお考えなのか。

 というのは、与党が検討を始めるみたいな形の報道が出始めているので、これはいい方向じゃないかと。我々維新の会はずっと言ってきているので、逆に、やっていただけるならありがたくて、一緒に議論していきたいなというふうに考えているんですけれども、財務大臣、これについてどのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 いわゆるN分のN乗方式、日本の所得税が採用しておりますのは御存じのように個人単位の課税なんですけれども、N分のN乗の例でよく使われるのは多分フランスなんだと思いますけれども、フランスの場合は、これは世帯単位の課税ということになっておりますので、家族の構成に応じていわゆる税負担が調整されるという仕組みになっておりますので、子供を産んだ方がということになってくるんです。

 この辺につきましては、政府税制調査会のレポートだったと記憶しますけれども、世帯の所得に応じて適用される累進税率ということになるんですが、それが平均化されるために、共働き世帯に比べて片働き世帯が有利になる、それから高所得者に税制上大きな利益を与える結果になるということなどに問題点があるので、個人単位課税を基本とすべきだということの意見が指摘されてきたんだというのが、たしか政府の税調のときのあれだったと思うんです。

 さまざまな課題がN分のN乗という方式にあることは確かなんですけれども、政府や与党の税制調査会においても、これは若い世代とか子育て世代というのに光を当てていくことがより重要なんじゃないのか、高齢者というのは、もうおまえ、やり過ぎなんじゃないのか、比率からいったらといって、この間も例が、あれは古川さんが出された例でしたっけ、何か民主党から出された棒グラフの例が出ていましたけれども、あれは間違いなくそういう例になっておりますから、そういった意味では、こうした議論も踏まえて、引き続き、個人所得税の改革というものについては検討を進めていかねばならぬと思っております。

丸山委員 抜本的な改革については、課題を今挙げられたので、それを克服していかなきゃいけないというのは事実だと思います。

 ただ、今私の申し上げているのは、その抜本的な部分をやっていかないとどうしても難しいんじゃないかなと。今の配偶者控除、百三万円を百五十にという話ですけれども、これで抜本的に子供がふえるかというと、そこの対策にはならないなというふうに思いますので、そういった意味で、しっかり今後も議論を続けていきたいと思いますので、前向きに、与党が前向きにという報道が出ていますから、政府も前向きに議論いただきたいというふうに思います。

 そうした意味で、逆に考えると、今、日本は結婚する自由もあれば結婚しない自由もあるということで、先ほど私も独身と申し上げましたけれども、独身の人がふえてきているわけですね。

 一方で、独身の方の御意見をいろいろ聞くと、こういう方もいます。それは、いや、独身でいる自由もあるじゃないか、それをこうした税制でどうして阻害するんだという御意見もないわけじゃないです。私は、それは違いますよ、政府として、未来に向かってこの国をどうしていくかというときに、子供さんをふやしていきたいがためにというのを御説明するんですが、そもそも論として、政府にまず配偶者控除の話を聞いていく上で聞いておきたいんですけれども、この制度の目的について財務省としてはどうお答えになるのか、お答えいただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 配偶者控除の制度目的という御質問でございますけれども、配偶者控除は、合計所得金額が一定金額以下の配偶者を有する場合に、当該納税者本人の税負担能力の減殺を調整する趣旨から設けられたものと考えております。

丸山委員 税負担の軽減を図るということですか。

 となると、趣旨としては、結婚を促進するというような政策の目的があるわけでは直接ないということですね。

星野政府参考人 配偶者は、扶養義務が民法上かかります。この場合の配偶者というのは当然法律婚でございますので、法律婚で婚姻をし配偶者ができれば、今申し上げた扶養義務を果たすために担税力がその分減るので、そこを制度的に見ていくという意味でございます。

 したがって、結婚というか、法律婚がそのメルクマールになっていることは事実でございます。

丸山委員 メルクマールになっているんだが、それを目的としてというふうにはカテゴライズされていないということです。

 そうした中で詳しく聞いていきたいんですが、この控除、上限がありますね。特に上部の上限で、一千万超の居住者について適用されないと思うんですけれども、まずこの上限について、なぜあるのか、お聞かせいただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の改正で配偶者控除の見直しをいたしまして、高所得者にまで担税力の減殺を調整する必要が乏しいと考えられること、また、所得再分配機能を回復する必要があることを踏まえまして、一定金額以上、今先生おっしゃったとおり、課税所得で一千万円、給与でいうと千二百二十万円を超えた場合に配偶者控除を適用しないということにしたということでございます。

丸山委員 同じ人的控除でいえば、基礎控除とか扶養控除、これは納税者本人の所得制限が設けられていないと思うんですけれども、それとの違い。逆に言えば、なぜ基礎控除や扶養控除はこれが設けられていないんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の人的控除は、現在、所得控除方式を採用しております。この所得控除は高所得者ほど税負担の軽減額が大きくて、所得再分配機能の回復の観点から、この控除方式の見直しを検討していくということが一つの検討課題になっております。

 今回、配偶者控除を見直しするということで、これ自体は就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するということで行うわけですけれども、こうした機会を捉まえまして、先ほど申し上げた、所得控除方式を維持しながら、一定金額以上の所得を有する者に対して控除を逓減、消失させるということを配偶者控除については行ったわけでございますけれども、今御指摘のありました基礎控除や扶養控除などの人的控除につきましても、所得控除方式をどうするかということが課題になっておりまして、昨年末の、例えば与党の税制改正大綱におきましても、今後、所得控除方式のあり方について検討を進める旨が示されているところでございまして、こういった御議論も踏まえながら、控除全体の見直しに関する議論を丁寧に進めていきたい、こう考えております。

丸山委員 これは、何を言っているかというと、論理的にちょっとひずみがあるんじゃないかなと思っていて、今、配偶者控除に関しては、基本的に経済的に負担を軽減させるという目的をおっしゃったんですけれども、同じ意味でいえば、扶養控除だって必要だと思うんですね。

 一方で、一千万を超えた高額の所得の方に関しては、逆に基礎控除ほど控除する必要はないんじゃないですか。むしろ、扶養者がいらっしゃったとか配偶者がいらっしゃる場合の控除は逆に上限を設けず、基礎控除だけ設けるというのは逆にわかるんですけれども、同じような人的控除の中、さらに役割が近い配偶者控除と扶養控除の中で配偶者控除だけというのは、どう考えてもロジカルじゃないと思うんですけれども、そのあたり、どうお答えになりますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生まさに御指摘になられましたとおり、配偶者控除と扶養控除の関係は、もともと一緒になっていた時期もございまして、非常に似たものであるということにはなろうかと思います。

 今回、配偶者控除を残しつつも、就業調整の関係もありまして、御提案しているような制度改正を行うということにしたわけですけれども、そういう中で、配偶者控除については一応今回のような整理をして御提案をしているということでございますけれども、その提案との関係で、扶養控除についてやはり考えていく必要があるのではないかと言われれば、そこは非常に関連性はあると思いますし、制度論としてどう考えるかということは当然課題としてあるというふうに認識をしております。

丸山委員 星野局長、非常に厳しい御答弁だなと思ったんですけれども、やるならやはり一緒にやるのが筋だなというのは思うんです。しかし、今検討中なので勘弁してくださいというのが今の御答弁の趣旨だと思うんですけれども、ぜひ検討をもっと早目に前に進めていただいて、ずれがないようにしていただくことが税額控除の趣旨に即するものだと思いますので、来年度以降の税制改正の議論だと思いますけれども、しっかり、この辺の矛盾をなくしていくようによろしくお願いしたいというふうに思います。

 そういう意味で、今回、百三万円から百五十万円に配偶者控除を見直されましたけれども、この効果をどういうふうに考えてこの税制に変えようとされているのか、財務省、お伺いできますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の配偶者控除の見直しの過程でいろいろな御議論があったわけでございますけれども、就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するために百三万円を百五十万円に引き上げたということでございますが、この就業調整の問題につきましては、税制や社会保障制度のみならず、企業の配偶者手当の支給基準ですとか、また女性の働く環境など、さまざま複合的な要因を一つ一つ丁寧に解きほぐしていくことが重要だと考えております。

 例えば企業の配偶者手当につきましては、先日、一月二十五日の経済財政諮問会議におきまして総理と麻生大臣から見直しをお願いし、経団連の榊原会長も、今回の税制改正を好機として、見直しに向けた検討を早期に広げていきたい旨の御発言があったところでございまして、こうした民間企業の配偶者手当についても見直しが配偶者控除の見直しを契機に検討され始めているということでございまして、今回の配偶者控除の見直しには一定の効果があるものと考えております。

丸山委員 一定の効果があるというのは私も否定するものじゃないなというふうに思います。

 ただ、本当に、では、真の意味で財務省が目指すところ、政府が目指すところに対しての効果があるかというと、非常に薄いんだというふうに私は思うんですね。

 例えば、先ほど来お話をしているような、子供の数で控除をしていくとなると、明確にわかりやすくて、子供が多ければ多いほど税額が安くなる。わかりやすい話ですね。子供が多ければ多いほど逆に給付つきになるというのも逆にわかりやすいですね。

 でも、百三万円で今まで控除がなくなっていく状態だった、百五十万円になって、それでわかりやすかったらいいんですけれども、問題は、これまでほかの委員も御指摘されていたように、社会保障の壁があるわけですよ、百三十だとか。現場の方々、特にやはりそもそも働いていらっしゃる方は、余計、どういうこっちゃと。しかも、そこに所得制限があるんですね、旦那さんの。奥さんがパートされている場合、旦那さんの方の所得制限があるんですよ。もうごっちゃごちゃでわけがわからぬ、どういうことやねんと言われても仕方ないような制度だというふうに思うんです。

 そもそも、大臣、後で聞きたいんですけれども、政府は今、賃上げどうしよう、やってくれよと企業に言っているわけじゃないですか。麻生大臣も、ことしの春闘でしっかりやってほしいというのをこの財務委員会でも種々御答弁されています。賃上げを目指している政府方針を考えたときに、そもそもこんな壁が、百三万か、百三十か、今から百五十に上がりますけれども、この壁があること自体が、今政府が目指している賃上げ、賃金をどうにかして上げていこうということの阻害要因になるんじゃないかというふうにすごく思うんですよ。

 それを事前に財務省の役人の方と議論していたら、その財務省の方は、時間当たりの時給を上げていけば、ある意味、それによって賃上げという意味でもあるというふうにおっしゃるんですけれども、いやいや、時間当たりの給料が上がっても、総額がふえなきゃそれは消費につながらなくて、なぜ賃金を上げたいかといったら、物価を上げたいわけで、需要を生み出したいわけなんですよね。

 総額の方を考えないと根本からして取り違えてしまいますよという議論なんですけれども、この総額の部分に関して、やはり上げていこうというときに、この壁というのは阻害要因になるんじゃないでしょうかというのをお聞きしたいんですか、大臣、後でお聞きしたいので、先に役所の見解、どうなっていますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生が御指摘になられた賃金の引き上げと壁との関係について申し上げますと、配偶者控除をめぐって就業調整が行われている、百三万の壁というのは、税制自体は壁ではないけれども、いわゆる心理的な壁になっているとか、企業が出している手当と結びついて実際には意識されている、そういった壁が意識されている中で賃金が引き上げられると、就業時間を減らす、どうしてもそういう作用が強くなる。こういった就業調整がさらにひどくなるということに対応するという意味も含めまして、今回、百三万を百五十万に引き上げるといったことをしているということでございます。

丸山委員 根本的な解決になっていないというのは、今のお話を聞いても全然納得感がないんですけれども。

 では、もう一つお聞きしておきたいのは、今お話をした社会保障の負担が百三十万円で生じるわけですね。ここに関して、これがあるがゆえに、百五十に上げても効果が限定的じゃないですかという素朴な疑問に対して、これはどうお答えになりますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 百三十万、社会保険料負担の話でございますけれども、先ほど申し上げましたとおり、就業調整の問題につきましては、税だけではなくて、社会保障制度の関係も含めまして、複合的な要因を一つ一つ解きほぐす必要があると考えておりますけれども、今御指摘のありました百三十万円の壁、あるいは昨年の十月から百六万円の壁などもできたということでございますが、こうした被用者保険の問題につきましては、厚生労働省が行ったヒアリングによりますと、短時間労働者のおおむね三割程度は、適用拡大を機に、御指摘の壁を越えて、より長く働きたいという意向を持っておられる、また、多くの企業が、より多くの方にできるだけ長く働いていただき、労働力を確保したいと考えていたというふうに承知をしております。

 また、厚生労働省におきましては、キャリアアップ助成金の拡充を図りまして、本人の希望を踏まえて、働く時間を延ばすことで人材確保を進める事業主を支援するとともに、働く方に対しては、リーフレット等を活用して、将来の年金額がふえて、医療保険の給付も充実するという被用者保険への加入のメリットを周知、広報しているということで、そういったことも含めまして、百三十万、百六万の壁を乗り越えるような環境を整えていくということが重要であろうと考えております。

丸山委員 非常に、簡素な税からほど遠い税制だなと、お聞きして思いました。

 やはり現場は混乱しますね。旦那さんのお給料と自分の給料を見たときに、では、それがどこのラインが一番節税になるんだというのをかなり頭に汗をかいて考えなきゃいけないわけで、やはり税に対してある程度簡素さ、わかりやすさ、公平性みたいな部分を求めていかなきゃいけない中で、非常に複雑過ぎるんじゃないかというのは全然疑問が解けないんです。しかし、現状に比べて少しでも何か改善できるものがないかという意味で御苦労されているのは今の御答弁を聞いて思ったので、それに対しては敬意を表したいとは思うんです。全部だめだというわけじゃないんです。

 しかし、いつまでもある意味ちまちまとやっていても、根本の部分の、政府がやりたい賃上げの話、そして何より少子化対策の話というのは一向に前に進まないんじゃないかなというのが正直なところで、ただ、これはやはり財務省だけでは限界があって、多分政治家サイドの方でこの議論を、特に与党中心に根本の議論をやっていただきたいというふうに思います。きょうもいっぱい与党の先生方が来られていますので、ぜひ前に進めていただきたいし、我々も我々の党の方でしっかり考えていって議論できるようにしていきたいというふうに考えますので、よろしくお願い申し上げます。

 この壁の話、大臣、今お聞きになってどう思われますでしょうか。非常に複雑過ぎて、私はこれはもういかぬなと率直に思ったんですけれども、大臣はどう思われますか。

麻生国務大臣 もう四年間ずっとこれをやっていますのでね。今、面倒くさいのは、まず、百三万円の壁というのは、配偶者の控除じゃなくて配偶者特別控除の方で、税制上、百三万円の壁というのは基本的にはもう解消していますというのをまずほとんど理解されていないところからスタートしなくちゃいかぬ、その部分が一個あって、次に、百三万円を仮に上げたとすると、保険料の話がある。保険料を取られると、いきなりその保険の払う分がふえて、何だ、手取りは全然ふえないじゃないかという話になるんですよ。

 そこで、今度は、二分の一、使用者側が払うというもののあれをちょっと、十分の五じゃなくて十分の六にしてくれぬかとかいろいろな話をして、それをさわってもらうとまた少し変わるとか、いろいろな話をちょっと、保険の部分でいくと、使用者の方の払いを少し、内部留保をそれだけため込んでいるんだったらそっちに回せや、簡単にはそういう話ですよ。そういったようなことはできませんかねというような話やら何やらというのをサイドで話をしているんですけれども。

 今、目先、一番問題になったのは、何といっても人手が足りないんですよ、これは地方においても。とにかく、高知新聞に求人広告が出るというのは、過去、敗戦後七十年たって初めて高知新聞で求人広告が載ったというのがニュースになるぐらいなんですから、それは大変な事態が高知でも起きているので、大阪では前からなのかもしれぬけれども、あの辺に行ったらもう求人広告が出るんですから、それはもう大変なことになっておるという時代になっているので、まずは目先、とにかくこの問題を何とかしないと、いわゆる十一月、十二月になると人がいなくなっちゃうというあの問題を何とか片づけないかぬというのが我々にとって一番喫緊の課題だったのが一つ。

 さらに、それが、今言われましたように、時給が八百円、九百円、千円を超えてくるというような話になりつつありますので、そうなってくると、いわゆる百五十万円に引き上げるという見直しをとりあえず行うことになったんですが、では、百五十万円という数字は何だ、この水準はといえば、これは、安倍内閣で言っておりますいわゆる最低賃金というのは、全国の加重平均は千円だということになりますと、時給で千円で一日六時間ということで計算して、週五日勤務した場合の年収を上回るというのが百五十なんです。それが今回の、一応整合的にと言えば整合的な水準になっていると考えているんです。

 もう一個の、百三十万円の壁があるという社会保険料の話について、これは、配偶者控除の見直し効果は限定的なものじゃないかという御指摘は全く正しいんだと思うんですが、これは税制のみで改正できるものではないことはもうはっきりしています。

 したがって、これは、社会保障制度とか、民間企業のいわゆる労務担当、勤労部の人たちとも何人もしゃべったんですけれども、いわゆる配偶者手当というのを勤労部、労働部で持っていますものですから、その人たちと話をして一つ一つ丁寧にやっていかないかぬので、企業に、ではこれは一律でやってくださいなんということも言える話でもありませんので、一つ一つやっていっているんです。

 いずれにしても、こういったようなことは厚生労働省においてやってもらわないかぬ話なので、ちょっとこちらの、財務省でやる話じゃないんですけれども、そういったものを含めて働きやすい環境を進めていくときに、もう少しわかりやすいものにせいやというので、頭のいい人たちにさせておくとこれはどんどんどんどん話が難しくなっていくんだよね。だから、余り頭のいい人が物を教えちゃだめなので、やはり余り頭のよくない人が勉強を教えた方が生徒はみんな勉強ができるようになると昔からよく言われるんですけれども。

 そういうようなもので、この種の話ももう少し、子供三人目を産んだらそこから金をやるとか、そっちの方がよっぽど話がわかりやすいでしょうが。それをすると、そんなことを言おうものなら、とてもじゃないけれども跳び上がったようなことになりますので、もうちょっとゆっくりやらないかぬのかなと思っていますけれども、本当に、病院に来なかったら金をやると言ったら高齢者は行かなくなります。だって、そんなもの、病院なんか来るな、その辺で薬を買って飲めばいいじゃない、そうしたら月々幾ら出るとか、そっちの方がよっぽどコストが下がるじゃないかとか、いろいろな、私みたいに民間から来たやつはそういうぐあいに事を考えるんですけれども、なかなか一足飛びにはちょっと行きにくいので、もうちょっと時間をかけてやっていかないかぬのかなと思います。

 とにかく根本的なことをやらないと、少なくとも、三人目からというような話をしない限りは、子供がそんな急激に、一・八なんというのはなかなか出てこないだろうと思っていますし、これは国力という意味において、やはり一億人を維持するというのは絶対的だというのであればこれは非常に大きな要素だと思っていますので、ちょっとまたいろいろ、こういうのはこういうところじゃなかなか出ないので、ちょっと一杯飲みながらやっていかぬとなかなかアイデアが出ませんので、こんなところで七時間も座っていたら全然頭が回りませんので、またゆっくり考えます。

丸山委員 ぜひ大臣、そうした時間を設けていただきたいと思います。シガーバーでも構いませんので、葉巻を吸いながらやりたいと思います。

 大臣がおっしゃったときに我が意を得たりと思ったのは、さっき具体的におっしゃった、三人目が生まれればそれは全部国が持つんだと。非常にわかりやすいメッセージですよね。シンプルですし、なおかつ、子供さんをもう一人欲しいなと思っていらっしゃる方は恐らくそういう話になっていくと思うんですよ。私だって、独身ですけれども、結婚しようかなと今聞いて思いました。でも、まあ相手から探さなきゃいけないので。委員長、笑わないでくださいね。

 そういった意味で、しっかりそういったわかりやすい、インパクトのある政策を打っていくというのは、今のお話にあったように、財務省の仕事というよりは政治の仕事だと思います。四年財務大臣をされている方というのはほとんどいないと思うんですよ、歴史上を見ても。非常に希有な、まれなる麻生大臣にしかできないことだと思うので、これは今の安倍内閣の間にしっかりと前進させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 この話の続きは、またシガーバーか、一杯、お食事でもしながらよろしくお願いします。

 今大臣がお話しになったように、確かに、配偶者控除、配偶者特別控除ということで、実は百三万円から下がっていくんです。一方で、実は配偶者の控除、給与控除もあって、それは六十五万円から実はふえていくんですね。百三万円で満額になってというのがあるんですよ。

 実は、そういった意味でいうと、六十五万円から百四十一万円の間は二重控除の問題が生じているんじゃないかというお話の指摘もありますけれども、この点、今回の改正ではこれは改善されないと思うんですが、財務省、どのように考えていますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生がおっしゃった二重の控除の問題を御指摘される方がいらっしゃいますけれども、パート世帯において、配偶者、奥さんが基礎控除を受けつつ、納税者本人、旦那さんも配偶者控除を受けているため、例えば専業主婦世帯やフルタイムの共働き世帯よりも控除の合計額が多くなっているというようなことを指して、この二重の控除の指摘をされる方がいらっしゃいます。

 この点は、納税者本人と配偶者がそれぞれ別に課税される現在の個人単位課税のもとにおきましては、配偶者の基礎控除はあくまでも配偶者自身の負担を調整する仕組みであるということ、一方で、納税者本人の配偶者控除は、一定の収入以下の配偶者がいる旦那さん方の税負担能力に配慮する仕組み、冒頭御説明したとおりでありますけれども、そういう仕組みであって、それぞれ別の目的を有しているものでございますので、これらが併存していること自体は何ら問題がないですし、合理性があるものと考えております。

丸山委員 これなんですよね、星野局長に聞くと。この複雑な制度は変える必要がないという御答弁だと思うんですけれども。

 でも、今あったように、指摘があるのは認められましたし、そういった意味で議論が進んでいるところだと思いますので、麻生大臣のリーダーシップに期待しつつ、それをしっかりと後ろでサポートする星野局長の力で、これはしっかり効果のあるように前に進めてください。配偶者控除、非常に大事な税の一つだと思いますので、よろしくお願い申し上げたいというふうに思います。

 後半、残りの時間なんですけれども、時間がなくなってまいりましたので、酒税の話を伺いたいんですが、これはまず、今回大きく変えられていると思うんですけれども、この改正案の趣旨についてお伺いできますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 酒税につきましては、類似する酒類間で税率に格差があって、それが商品開発や販売数量に影響を与えてきたということでございます。今回の改革は、こうした状況を改めて、税負担の公平性を回復するなどの観点から行うものでございます。

 主な内容を申し上げますと、まず、ビール系飲料に対する酒税の税率格差を三段階で解消いたしまして、平成三十八年十月には三百五十ミリリットル当たり五十四・二五円に一本化するということにいたします。あわせて、ビールの定義の拡大等を行います。また、ビール系飲料以外の発泡性酒類、例えば酎ハイ系でございますけれども、それに対する酒類の税率についても見直しを行います。さらに、醸造酒類、清酒、果実酒などでございますけれども、これに対する税率格差を二段階で解消いたしまして、平成三十五年十月に一キロリットル当たり十万円に一本化するということでございます。

 この改革を通じまして、特にビールの値段が下がるとともに、消費者にとって魅力ある商品の開発が進むことで、安くておいしい自分好みのビールを飲むメリットが広がると考えておりますし、また、地域の特色も生かした商品の開発が進んで、地方創生の牽引役となることが期待されます。さらに、国際的に見ても、国際的に評価される商品が開発されていけば、日本産酒類全体のブランド価値の向上や日本メーカーの国際競争力の強化にもつながるものと考えております。

丸山委員 趣旨は今わかりました。

 一方で、これも非常に複雑な税制になっているなというふうに思うんです。もっと単純に、例えばアルコールの度数で課税していくというようなシンプルな課税も考えられると思うんですけれども、それについてはどう思われますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 酒税は、単にアルコール分のみを基準とするのではなくて、各酒類の性質や消費動向等を踏まえて税負担を求めているものでございまして、主要諸外国におきましても、全ての酒類についてアルコール分一度当たりの税率が同じとなるような課税を行っている国は見受けられません。

 例えば、国際的に見ますと、薄めて飲む場合が多い蒸留酒、例えばウイスキーやブランデー等でございますけれども、こういったお酒についてはアルコール分に応じた課税とすることが一般的であるのに対しまして、基本的にそのまま飲む醸造酒は、必ずしもアルコール度数課税になっているわけではありません。

 さらに申しますと、フランスやドイツのように、未成年飲酒への対策として、低いアルコール飲料に対しまして相対的に高い税率を課している国もございます。

 日本におきましては、蒸留酒類はアルコール度数課税を基本とする一方で、発泡性酒類や醸造酒類はそれぞれの性質を踏まえて税率を定めております。

 今回の改革は、そうした基本構造を維持した上で、発泡性酒類のうちビール系飲料の税率を一本化するとともに、醸造酒類の税率も一本化をするというものでございまして、各酒類の性質を踏まえながら、酒税の税率構造を大幅に簡素化いたしまして、税負担の公平性を高める改革だと考えております。

丸山委員 他国の例を挙げられて、他国との並びも考えてという趣旨だと思うんです。

 一方で、今回の課税の変更で大きく影響を受ける酒の種類があると思うんですよ。それはいわゆる第三のビールです。この酒税の改正によって、恐らく第三のビールというのは苦境に立たされるんじゃないかという論調が多いと思います。というのは、ビールの方が下がって第三のビールは上がるわけなので、なるんですけれども、これは実は、ほかの国には余りこの第三のビールというカテゴリーはない、日本独自のあれだと思うんです。

 なぜ、これが今、こうした第三のビールというのがこんなにいっぱい市場に出ているかというと、まさに税制が今までこの業界に対して影響を与えてきた大きな結果だというふうに思います。やはり税率の低いものを業界はしっかりそれをつくっていくという研究に、そこに注視したゆえに、この第三のビールというのが大きく出てきたんですけれども、ここに来てこれを変えるということで、第三のビール開発でしのぎを削っていた事業者の事業計画、業績、そういったものに非常に影響を与えるんじゃないかなという懸念の声も上がっております。

 その中で、この事業者の開発研究意欲を低下させるような状態になりかねない可能性もあるなと私も率直にそれは思うんですけれども、そのあたりについて、財務省はどういう見解でいらっしゃいますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の酒税改革、税制に起因いたしましてビールの種類が諸外国にないような種類のものが出てきて、それを解消するということが長年の課題になってきて、それに対して、ある意味一つの答えを出しているわけでございますけれども、御指摘のとおり、ビール各社にしてみれば、経営環境、商品環境が変わりますので、そういった環境変化にも配慮いたしまして、ある意味激変緩和に対応できる期間として、十年間をかけて段階的に見直しを行っていくこととしております。

 我が国で新ジャンル等が幅広く飲まれている今の状況というのは、ある意味ビール各社の開発努力のたまものだと考えておりますけれども、他方で、ビール各社の新ジャンルの主力商品は販売開始から既に十年前後経過しておりまして、そういう意味では、開発努力に対するリターンは相当程度得られていると考えております。

 最近では、各社とも、商品開発の軸足を新ジャンル等からビールにシフトさせる動きも見られておりまして、こうしたことを受けまして、今回の税制改正において税率一本化に向けた改革の全体像をあらかじめ法律で確定することによって、各社にとっても将来の事業環境の予見可能性が高まり、消費者にとって真に魅力のある商品開発に経営資源を一層シフト、重点化できるようになると考えております。

 さらに言いますと、新ジャンルの税率が上がるといっても、例えば、既にブランドとして確立している商品ですとか、プリン体ゼロとか糖質ゼロといった機能性の高い商品については、引き続き値ごろ感のある商品として市場を支えていくということも考えられますので、そういう意味でも、ビール各社のこれまでの開発努力が無駄になるということではないというふうに考えております。

丸山委員 なるほど、今、財務省の見解をおもしろく聞いていたんですけれども、業界に対する影響が過度にならないように、しっかり年数を置くことでそのショックをやわらげていく。

 そして、重ねて、一方で、今ある第三のビールにおいても、いろいろなカテゴライズがされて、既にブランド化しているものもある、プリン体ゼロとかですね。確かに、プリン体ゼロとか糖質ゼロとか、うちの父もすごくそういうのが好きらしくて、健康志向で、最近、これは健康にええねんみたいな感じでアピールされるんですけれども、そういうふうな志向がやはり今ふえているんだと思いますので、それに対するブランド力がもうできているということでは大きく影響がないんじゃないかという考え方もできるというのが財務省の見解で、非常に興味深く聞いたんですけれども。

 一方で、懸念も私はわかるなというふうに思いますので、これは注視していくという言葉がありましたけれども、これは大事な点だと思うんですが、消費動向の変化とか消費者の影響というのは現時点ではどういうふうに考えていらっしゃるんでしょうか。お答えいただけるでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の酒税改革、事業者に対する影響と、もう一方では、消費者、消費動向に対する影響を考える必要があると当然考えております。

 この改革を通じまして、ビールの値段が下がるとともに、消費者にとって魅力ある商品開発が進むことで、幅広い消費者にとって安くておいしい自分好みのビールを飲めるというメリットが生じるものと考えておりますが、他方で、これまで新ジャンルを楽しんでおられる消費者にとってみれば、税率が引き上がるということから、消費者には一定の影響が生じ得ると考えております。

 また、嗜好品だということもありますので、今回の改革では、消費者の負担が急激にふえることにならないように、税率の見直しのスタートが四年後の平成三十二年十月に着手をし、それから十年間かけて段階的に見直しを行うということにしているわけでございます。

 さらに、各段階の税率の見直しにつきましては、消費者への影響等をよく確認しながら進めていく観点から、今回の法律の中にも、税率の見直しの都度、経済状況を踏まえ、酒税の負担の変動が家計に与える影響等を勘案して検討を加え、必要があれば所要の措置を講ずる旨を明記しておりまして、この検討規定に沿って適切に対応してまいりたいと考えております。

丸山委員 大事な答弁だと思いますので、読んでいただいて正解なんですが、これは大分期間があるわけで、その中で見ていく中で、もし何かしら問題が生じた場合には、その都度適宜検討されて、必要であれば変更していくということでよろしいんですか。

星野政府参考人 おっしゃるとおり、そういう趣旨で規定を置いております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいというふうに思います。

 これは今、酒税の収入の五〇%程度近くがビールだというふうに聞いているんですけれども、今回ビールは税率が下がるわけで、普通に考えたら、これは税収が低下するんじゃないかなというふうには懸念するところもあるんです。このあたり、改正によって、今消費者動向の変化とか消費者への影響を伺いましたが、税収への影響について、財務省としてはどのように現時点で考えているのか、お伺いをいたします。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の酒税改革ですけれども、厳しい財政状況や財政物資としての酒類の位置づけを踏まえまして、基本的に税収中立で行うこととしております。

 今御指摘ありました酒税の収入について見てみますと、二十七年度の実績、酒税収入全体で一兆三千三百七十八億円ですけれども、この中でビール系飲料が六五・四%、あとビールだけで見ますと四五・四%ということで、五〇%程度がビールだという御指摘は、そのとおりでございます。

 今回の改正で、ビールの税率を引き下げる一方で、新ジャンルや発泡酒の税率を引き上げまして、全体として税収中立の改革にしておりますので、そういう意味では税収は減らないというふうに見込んでいるところでございます。

丸山委員 予想どおりになるのかどうかというのも含めて注視が必要だということなので、しっかりやっていただきたいというふうに思います。

 もう時間が来てしまったので本日はここで終わりたいと思いますが、配偶者控除の話も酒税の話も、やはり国民の皆さんに一番身近なものである、それが税だと思いますので、しっかりと国民の皆さんに寄り添った税制のあり方を検討していただきますようにお願い申し上げまして、私、丸山穂高の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

御法川委員長 次回は、来る二十四日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時四分散会


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