衆議院

メインへスキップ



第10号 平成31年4月10日(水曜日)

会議録本文へ
平成三十一年四月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂井  学君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 武部  新君 理事 寺田  稔君

   理事 藤丸  敏君 理事 川内 博史君

   理事 緑川 貴士君 理事 竹内  譲君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石崎  徹君    泉田 裕彦君

      今枝宗一郎君    上杉謙太郎君

      神田 憲次君    小泉 龍司君

      國場幸之助君    斎藤 洋明君

      鈴木 隼人君    武井 俊輔君

      津島  淳君    土井  亨君

      中山 展宏君    藤井比早之君

      本田 太郎君    牧島かれん君

      三ッ矢憲生君    宮路 拓馬君

      宗清 皇一君    山田 美樹君

      義家 弘介君    鷲尾英一郎君

      今井 雅人君    末松 義規君

      高木錬太郎君    堀越 啓仁君

      佐藤 公治君    古本伸一郎君

      前原 誠司君    伊佐 進一君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      野田 佳彦君    青山 雅幸君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       田中 良生君

   総務副大臣        鈴木 淳司君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   国土交通副大臣      大塚 高司君

   内閣府大臣政務官     長尾  敬君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   財務大臣政務官      宮島 喜文君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  石川 卓弥君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 黒田 岳士君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 林  伴子君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        川又 竹男君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)    丸山 雅章君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局総括審議官)          中島 淳一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 稲岡 伸哉君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阪田  渉君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   宇波 弘貴君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    可部 哲生君

   政府参考人

   (国税庁次長)      並木  稔君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           田中 誠二君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           小川 良介君

   政府参考人

   (中小企業庁次長)    前田 泰宏君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         和田 信貴君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           眞鍋  純君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           小林  靖君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 榊  真一君

   政府参考人

   (観光庁観光地域振興部長)            平岡 成哲君

   政府参考人

   (株式会社日本政策金融公庫代表取締役専務取締役) 市川 健太君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行理事)     衛藤 公洋君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     宮路 拓馬君

  石崎  徹君     藤井比早之君

  斎藤 洋明君     泉田 裕彦君

  高木錬太郎君     堀越 啓仁君

同日

 辞任         補欠選任

  泉田 裕彦君     上杉謙太郎君

  藤井比早之君     石崎  徹君

  宮路 拓馬君     穴見 陽一君

  堀越 啓仁君     高木錬太郎君

同日

 辞任         補欠選任

  上杉謙太郎君     斎藤 洋明君

    ―――――――――――――

四月九日

 金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)

三月二十六日

 二〇一九年十月からの消費税一〇%中止に関する請願(黒岩宇洋君紹介)(第三二〇号)

四月二日

 二〇一九年十月からの消費税一〇%中止に関する請願(近藤昭一君紹介)(第五八二号)

 同(本多平直君紹介)(第五八三号)

同月八日

 二〇一九年十月からの消費税一〇%中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六六六号)

 同(笠井亮君紹介)(第六六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六六八号)

 同(志位和夫君紹介)(第六六九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六七〇号)

 同(田村貴昭君紹介)(第六七一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六七二号)

 同(畑野君枝君紹介)(第六七三号)

 同(藤野保史君紹介)(第六七四号)

 同(宮本岳志君紹介)(第六七五号)

 同(宮本徹君紹介)(第六七六号)

 同(本村伸子君紹介)(第六七七号)

 同(柚木道義君紹介)(第六七八号)

 消費税増税の中止に関する請願(宮本岳志君紹介)(第七〇九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第七五二号)

 同(笠井亮君紹介)(第七五三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七五四号)

 同(志位和夫君紹介)(第七五五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七五六号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七五七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七五八号)

 同(畑野君枝君紹介)(第七五九号)

 同(藤野保史君紹介)(第七六〇号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七六一号)

 同(宮本徹君紹介)(第七六二号)

 同(本村伸子君紹介)(第七六三号)

 消費税増税を中止して五%に戻し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第七一〇号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第七一一号)

 同(笠井亮君紹介)(第七一二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第七一三号)

 同(志位和夫君紹介)(第七一四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七一五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第七一六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第七一七号)

 同(畑野君枝君紹介)(第七一八号)

 同(藤野保史君紹介)(第七一九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第七二〇号)

 同(宮本徹君紹介)(第七二一号)

 同(本村伸子君紹介)(第七二二号)

 煽動罪を即時廃止することに関する請願(宮本徹君紹介)(第七九五号)

 同(本村伸子君紹介)(第七九六号)

は本委員会に付託された。

四月九日

 消費税増税の中止に関する請願(第一〇六号)、同(第七〇九号)、同(第七六一号)、二〇一九年十月からの消費税一〇%中止に関する請願(第六七五号)及び消費税増税を中止して五%に戻し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(第七二〇号)は「宮本岳志君紹介」を「穀田恵二君紹介」にそれぞれ訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

坂井委員長 これより会議を開きます。

 この際、宮島財務大臣政務官から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣政務官宮島喜文君。

宮島大臣政務官 このたび、財務大臣政務官を拝命いたしました宮島喜文でございます。

 伊佐大臣政務官とともに、大臣を補佐しつつ、職務の遂行に全力を尽くしてまいる所存でございます。

 坂井委員長を始め、委員の皆様方の御指導、御鞭撻、よろしくお願い申し上げます。

     ――――◇―――――

坂井委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、副総裁雨宮正佳君、理事衛藤公洋君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官石川卓弥君、内閣府大臣官房審議官黒田岳士君、大臣官房審議官林伴子君、子ども・子育て本部審議官川又竹男君、経済社会総合研究所総括政策研究官丸山雅章君、金融庁総合政策局総括審議官中島淳一君、総務省大臣官房審議官稲岡伸哉君、財務省主計局次長阪田渉君、主計局次長宇波弘貴君、主税局長星野次彦君、理財局長可部哲生君、国税庁次長並木稔君、厚生労働省大臣官房審議官田中誠二君、農林水産省大臣官房審議官小川良介君、中小企業庁次長前田泰宏君、国土交通省大臣官房総括審議官和田信貴君、大臣官房審議官眞鍋純君、大臣官房審議官小林靖君、道路局次長榊真一君、観光庁観光地域振興部長平岡成哲君、株式会社日本政策金融公庫代表取締役専務取締役市川健太君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。末松義規君。

末松委員 おはようございます。立憲民主党の末松義規でございます。

 きょうは、一時間与えられておりますので、順次、関心のあるテーマについて話をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、時期的なもので恐縮なんですけれども、麻生大臣の方に、今、塚田一郎前国土交通省副大臣が下関北九州道路の関係でそんたく発言をやったということで世上を騒がせておられますけれども、大変迷惑な話だと大臣は捉えているのを私は感じるんですけれども、まず、麻生財務大臣の御感想あるいはコメントをいただければと思います。

麻生国務大臣 塚田国土交通副大臣の発言に対しましては、これは本人がもう撤回し、謝罪もしておる話で、その上で、行政の信頼を損ね、国政の停滞を招く事態になったということを理由に副大臣の職を辞職されたものだと承知をしております。

 あの第二関門、今、第二関門とは言わないんですね、下関北九州道路の整備につきましては、これは、この間も、災害のとき、水害のときにとまったりしておりましたので、いろいろな意味で、物流や災害時の代替路という意味で重要な役割を持っている可能性のある道路の位置づけだということで、これはもう大分前から第二関門という話で随分進んでいた話だと思いますけれども、これまでも関係自治体において調査が実施されていたものだと理解をいたしております。

末松委員 担当の副大臣がそんたくということを公言するということが非常に、森友、加計問題も含めて、やはり安倍政権はそういう内閣なのかと言われると、これは政権にとっても大きな打撃であろうと思いますので、我々はちょっと立場は違いますけれども、そこはそういうことがないようにしていただきたいということを改めて申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入りますけれども、今、消費税率の引上げについての対策で、私は、最低賃金を上げていく、さらに、サラリーマンの給料を上げていくということが、所得主導型の日本経済の成長を推し進めていくことに非常に価値があると思っている一人でございます。

 まず、ちょっと具体的な話から入りますけれども、消費税率の引上げの影響について今さまざまな研究が行われていますけれども、平成二十七年一月の内閣府の資料によれば、一般的に、その影響として駆け込み需要とその反動減というのは、ある一定の期間で見るとお互いに相殺されますので、一時的な変動であるということなんですけれども、消費税率が引き上げられたことによって物価の上昇が実質的な所得の減少をもたらすというネガティブな所得効果、これは個人消費というものを抑制する効果を持つと当然言われているわけでございます。

 また、同じ内閣府の資料によれば、駆け込み需要の反動減と所得マイナス効果などの影響を明確に切り分けるのは難しいとしながらも、八%への消費税率引上げに際しては、ネガティブな所得効果によって、平成二十六年の第二・四半期及び第三・四半期にかけて個人消費が合計で一兆円弱押し下げられたという試算がございます。

 今回、軽減税率とか、あるいは幼児教育無償化とか、あるいは臨時特別の措置などが緩和措置として行われることになっていますけれども、これらは基本的に駆け込み需要とその反動減を平準化することを目的としているものであって、ネガティブな所得効果の影響を抑えるものにはなり得ないのではないかと考えますけれども、政府の見解を伺いたいと思います。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 このたびの消費税の対応策につきましては、先ほど議員御指摘のような、駆け込み需要とその反動減対策として、プレミアム商品券とかポイント還元といった施策を講じるとともに、国土強靱化への緊急対応策についても、需要が下支えするということでございまして、そのトータル合わせて臨時特別の措置が、消費税の影響、今回のトータルの影響二兆円を上回る二・三兆円の措置をとっているということで、十分景気の下支えをするものとして措置を講じておるところでございます。

末松委員 今のはどちらかというと一時的な駆け込み需要、減に対する措置であって、私が問うているのは、実質所得が下がって、つまり二%上がるということで所得が、それに対して恒久的な形の措置というのは、これはないですか。

黒田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の消費税の引上げにつきましては、低所得者ほど収入に対する税負担の割合が高いことから、低所得者などに、真に支援を必要とする層にしっかりと支援の手が行き届くような、きめ細かな対応をとることとしております。

 まず、消費税率引上げの増収分の半分を教育無償化の財源や社会保障の充実に充てることとしており、また、所得の低い方々に対しては、この増収分を活用して、介護保険料の軽減の拡充、年金生活者支援給付金の支給、住民税非課税世帯を対象にしたゼロから二歳児の幼児教育の無償化、住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯に対する高等教育の無償化や、給付型奨学金の拡充等の措置を講ずることとしております。

 また、軽減税率制度は、ほぼ全ての人が毎日購入している飲食料品について消費税率を八%のまま据え置くものであり、低所得世帯ほど収入における飲食料品への支出割合が高く、よりこうした世帯に配慮した施策となっております。

 さらに、低所得者や、小さな乳幼児のいる子育て世帯に対しては、税率引上げ直後に生じる負担増などによる消費への影響を緩和するため、プレミアムつき商品券を発行、販売いたします。

 このように、政策全体として低所得者世帯に手厚いものも講じております。

末松委員 この対策がどれだけ効果があるかどうかというのは、これはまだいろいろ議論が分かれるところですけれども、一定のいろいろな措置をやったということは、私の方でもそこはそれなりに認識をしているところなんですね。

 私が申し上げたいのは、先ほど、サラリーマンの給料を上げるということの観点からいくと、やはり、消費税率によって引き上げられた物価上昇を上回るような賃金上昇というものが必要じゃないか。要は、それが日本に欠けているから力強い景気回復というのができないんじゃないかというのが私が考えているところでございます。

 賃金に関して言いますと、例えば、ちょっと悪名が高くなりましたけれども、厚生労働省発表の毎月勤労統計調査ですか、これによりますと、平成三十一年二月の実質賃金というのがマイナスの一・一%、一・一%減、そして平成二十七年六月以来の低水準であるということではございますし、名目賃金に当たる現金給与総額も、二十六万四千四百三十五円と前年同月比で〇・八%減となっておりまして、賃金が一向に上向く気配がないわけですね。

 そこで、ちょっと私、前から疑問に思っておりましたけれども、昨今、人手不足ということを言われながら一定期間がずっと経過したんですけれども、実質賃金を見ると、少なくとも上がっていない、低下傾向にある。伝統的な経済学の論理でいえば、人手不足が続けば、当然、実質賃金が上昇して、被雇用者の所得がふえるということになると思うんですけれども、なぜ、人手不足ということがこれだけ騒がれながら賃金が下がっているのか、ちょっと政府の見解を求めたいと思います。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員お尋ねの一人当たりの実質賃金につきましては、確かに伸び悩んでおります。これは、女性や高齢者などの労働参加が拡大いたしまして、労働時間が比較的短い働き手がふえたことが一つ、そして、デフレ脱却に向けた取組等により、物価の上昇によって、実質で見ると下押しがきいている、このような要因があるというふうに考えております。

末松委員 済みません、パートとか高齢者の、そういうのがふえたとあったんですけれども、その後の部分をちょっともう一回ゆっくり言っていただけますか。

林政府参考人 委員お尋ね、実質賃金というお話でございました。実質賃金につきまして伸び悩んでおりますのは、先ほど申しました、女性や高齢者などの労働参加が拡大したこと、そしてもう一つは、デフレ脱却に向けた取組等により物価が上昇したことがあったと考えております。

末松委員 そこで、今、人手不足についてはちょっと明確な答えがなかったんですけれども、今、人手不足ということをどういうふうな形で把握しているんでしたっけ。

林政府参考人 日本経済、全体といたしまして大きく改善しております中で、雇用環境も大幅に改善をいたしまして、直近の有効求人倍率は一・六三倍と、一九七〇年代前半以来の四十五年ぶりの高水準になっておりまして、人手不足感も高い水準にあるというふうに考えております。

 こうした中で、賃上げにつきましては、例えば連合の調査でも、今世紀に入って最も高い水準の賃上げが五年連続で実現しておりまして、ことしも賃上げの流れは続いているというふうに考えております。

 こうした中で、一人当たりの名目賃金につきましては、二〇一四年にプラスに転じて以降、五年連続で増加しているところでございます。

末松委員 そういった有効求人倍率、これはよく政府が使っている統計ですけれども、ここで、人一人に対して求人の応募がどれだけあるか、これが伸びてきた。これはいいことなんですね。ただ、それがうまくマッチングをしているか、実際に求職者との関係で。それがあるにしても、今あなたがおっしゃったように、有効求人倍率も上がって、そして、連合の調査でも、それは非常にいい結果になっていると。じゃ、それがなぜ、本当に、実質賃金が下がっている状況になっているのか。つまり、賃金そのものが、やはり、上がらないような社会慣行があるんじゃないかと私は疑わざるを得ないんですよね。

 そこは何か内閣府の方で、要するに、物価がちょっと上がった、いろいろなデフレ脱却の関係で上がった、でも、デフレ脱却の関係で上がったのにデフレはまだずっと続いている。日銀の黒田総裁もずっと、この前私もいろいろな形でお話しさせていっているときに、なかなか二%へ上がらない、道半ばということをいつも言っているわけですよね。それであるのに、賃金そのものが本当に上がらないというのは、やはりどこか大きな本質的な問題が日本社会にあるんじゃないか、そう考えざるを得ないんですけれども、そこについての何か研究とかそういうことはされていますか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の、なかなか賃金が上がりにくい状況があるのではないかという点につきまして、例えばでございますが、私ども、平成二十九年度の経済財政白書で分析をしておりまして、三つ挙げております。

 一つは、先ほど申しました、女性や高齢者など労働参加率が上がっておって、比較的労働時間の短いパートの方がふえていることが一つでございます。

 そのほかに二つございまして、例えば人手不足ということであれば、バブル期にも比する今、人手不足の状況でございますけれども、そのバブル期のころに比べて賃金の伸びが低いのは、労働生産性の伸びがバブル期のころに比べると低くなっているということが一つございます。その背景には、資本装備率が低下しているということが影響しているというふうに考えられます。

 そしてもう一つは、労使が、リスク回避的な姿勢がありまして、賃金の引上げについて慎重な姿勢を、例えばバブル期のころに比べるととっている、こうした要因があるというふうに分析をしているところでございます。

末松委員 ちょっと細かな議論にも入っていきますけれども、先ほど、連合の調査で、労使がかなり、どんどん五年以上上がっていったと。でも、上がっていったといっても、連合がやっておられる労使の合意が、ほかの三百五十万者以上ある中小企業とかそういうところには波及しているんですかね。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 連合が基本的に交渉して決めた賃金を参考にしていると思いますけれども、サプライチェーン上、例えば自動車産業なんかの場合でございますと、下請企業がいっぱいございますので、そこまで、例えば、メーカーがあって、一次、二次、三次、四次、五次、六次とありますけれども、全てにおいて均てんしているかどうか、これについては、全て均てんしているとは言い切れないのではないかと思います。どこかのタイミングで、やはり、ある程度企業規模の大きなところでそれがある程度反映はされているけれども、それ以降のところにつきましては、またちょっと違った状況が出てくるのではないかなというふうに感じているところでございます。

末松委員 今の御答弁で、確かに、一次、二次、三次、四次、五次、六次と、要するに、子請、孫請も含めて、そういう構造が日本社会の中小企業の一般的な構造だと思うんですけれども、そこに対して、そういう賃金がどこかでうまく上がらないような、コスト低下圧力というのかな、そういうのは中小企業庁で調べられたことはありますか。

前田政府参考人 私ども、取引条件を改善するためにいろいろな施策を打つ前提といたしまして、各種メーカーのヒアリングをしたり、それからGメンという専門の部隊がアンケートをしてその調査をしたりというようなことをやっているところでございます。

 データといたしましては、かなりきめ細かく、特に、原価低減要請というのがかなりあるものですから、そういうような原価低減要請がどういうふうになされているのか、そのことをもっていろいろな、下請企業のコストがどういうふうに転嫁されているのか、あるいはされにくいのかというふうな、生の声といいますか、そういうようなものを聴取しているところでございます。

 実際問題、聞いてまいりますと、無理なといいますか、かなり一方的に原価低減要請をされたとか、それも口頭で。それから、暗にほのめかされたというか、ちょっと言い方は難しいんですけれども、そういう形のものがやはり漏れ聞こえてきております。それも、業種によってかなり状況が違うようにも思っておりまして、そういうことについてつぶさに、我々のスタッフで分析をして、どのような対応をとったらいいのか、それに基づいてどのような下請振興基準を変えたらいいのかということを検討しているところでございます。

末松委員 極めて有効な調査が行われていると。その調査結果を私にもちょっとシェアをさせていただければと思いますので、そこはよろしくお願い申し上げます。

 今のが、かなり、日本社会の企業の実態をこれから解き明かしていく一番大きなポイントになっていくと思うんですね。

 そういった中で、ちょっと見方を変えて、最低賃金についてなんですけれども、今、日本の最低賃金、平均で八百七十四円なんですね。最低賃金の平均が八百七十四円ですから、それより下があるわけですね。鹿児島県が最低で、七百六十一円、これが最低賃金になっているわけですね。一方、欧米諸国を見ると、大体一千百円から一千三百円ぐらい、また、オーストラリアなんかは一千五百円、これが最低賃金でやっているわけですね。

 じゃ、何で日本がここまで低いのか。

 要は、企業関係者から聞くと、人件費はコストなので、国際競争力あるいは企業競争力が落ちるから、だから下げざるを得なかったんだと、何か発展途上国並みのコメントが返ってくるわけですね。でも、競争相手の欧米諸国は、千百円から千五百円とか、やっているわけですよ。だから、競争の条件としては理由にならないわけですね。どうしてそんなに低いんでしょうか。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員、各国の、諸外国の最低賃金と我が国の最低賃金の水準の比較ということで御指摘がございました。

 ただ、私どもとしては、各国の最低賃金の水準については、最低賃金制度の仕組みや、あるいはその置かれた経済環境などによって異なってくると考えておりまして、一概に金額のみを比較することはなかなか難しいというふうに考えております。

 ただ、私どもとしても、今の最低賃金をしっかりと引き上げていくということの必要性、これは認識をしております。働き方改革実行計画などにおいても、年率三%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく、これにより、全国加重平均が千円となることを目指すとされていることを踏まえまして、今後も引上げに向けた環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。

末松委員 私も、今、立憲民主党の中で最低賃金のチーム長としてやっているわけなんですけれども、ちょっと、今の言い方で少しひっかかるのは、各国比較で、最低賃金の額だけが問題じゃないんだという言い方をしましたよね。ほかにどんなものがあるんですか。

田中政府参考人 先ほど申し上げましたが、各国において、それぞれの社会環境、経済環境に応じて最低賃金制度を定めているというふうに承知しております。最低賃金制度の考え方、それからつくり方も、それぞれ各国ごとに異なっております。例えば適用除外の範囲などについても、いろいろと異なっているというふうに考えております。そういったことについて違いがありますので、金額だけの比較はできないというふうに申し上げました。

末松委員 各国制度が違うというのは当たり前なんですよ。適用除外も、私も子細に調べてみて、各国、違いは見てみたんです。だから、比較というのは、最低賃金の額しか共通項ではできないんですよ。それが私の結論ですよ。だから、あなたが言ったように、だから最低賃金の額だけで比較はできないんだと言ったら、何の比較もできないじゃないですか。そこはちょっと厳しく申し上げておきたいと思います。別にここで責めているわけじゃないんですけれども。

 ただ、最低賃金をその国々でやっている中で、みんな、各国とも努力しているわけですよ、最低賃金を引き上げようということで。今ようやく、安倍内閣になって三%という、それまでほとんど上げられなかったのが、御存じのように、生活保護との関係で十数円に引き上げられるようになって、さらに、安倍内閣の方で、三%という閣議決定があって、千円に近づけるというところがあった。これは、私は評価しているんですよ。でも、例えば、今、一人当たり最低賃金は二十五円とか二十六円ずつ上がっていますよね、ここ数年間。これでいくと、二〇二五、六年ぐらいにならないと千円にならないんですね。そんなことをやっていたら、本当に時代におくれちゃうと思うんですね。だから、もっと早く引き上げなきゃいけない。それが日本経済の、所得主導型の経済成長をやっていく大きな切りかえになると思っているんです。

 ちょっと話が戻りますけれども、先ほどどなたか政府委員の方から、日本では企業の生産性が低いという話がありました。労働生産性になるんだろうと思うんですけれども、これは、一人当たりGDPランキングが世界で二十九位とか、あるいは、労働生産性も非常に低い、三十位以下だったと思いますけれども、これはどうしてこんなに低いんですか。では、中小企業庁にお聞きしたいと思います。

前田政府参考人 大変失礼いたしました。

 では、中小企業の例で申し上げたいと思います。

 私は手元に今図表があるんですけれども、ひとつ比較してみますと、中小企業の生産性ですけれども、いわゆる中小企業の従業員一人当たりの機械設備、ITなどの資本ストック、これは大企業と比べるとかなり低いです。全産業ベースでも低いし、製造業と非製造業、いわゆるサービスを分けた場合、非製造の方がより低いという数字が出てきております。さらに、売上高に占める設備投資額の割合、これを見ましても、中小企業の労働生産性の伸び率は大企業に比べて低い。さらには、売上高に占めるソフトウエア投資額、このITの投資額を見ても低いというふうな結果が来ておりまして、こういうふうなところが結果として生産性の低さというものの原因になってきているんではないかなというふうに推測しております。

末松委員 とすると、今の言い方ですと、大企業は高い、中小企業は低いんだよねと。それはそうでしょう。でも、世界もみんな、大企業と中小企業があるわけですよ。世界の、OECDの方は大企業も中小企業も高いんですかという次の疑問が出てくるわけですよ。その辺はどうなんですか。

前田政府参考人 お答えいたします。

 申しわけございません、大企業の比較はちょっと今手元にないんですけれども、大企業と中小企業と比較した場合、中小企業の方がかなり低くなっているというのは事実ではなかろうかと思います。

末松委員 私も、きのうですか、ちょっと事務方の方と話をしたときに、正直言うと余りOECDのそういった企業間の比較というのは実はできていないんだという話をいただいたので、ここでこれ以上あなたに更に質問していくということは控えざるを得ないんですけれども、そこはちゃんと、中小企業庁なんだから、しっかりと、欧米の中小企業の現状とか、あるいはどういうふうな施策をやっているんだと。だから、日本の生産性が低いというんだったら、どこが一番問題か。多分、足を引っ張っているのは中小企業でしょう、あるいは零細企業でしょう。でも、欧米の方と比較して、どういうふうな形でやっていけばいいんだというのを、あなたの方でしっかりと把握すべきじゃないですか。それをやってくださいよ。ちょっとそこはあなたの言葉を聞きます。

前田政府参考人 業種ごとに、例えば製造業の場合であってもサービス業の場合にあっても、欧米比較の数字はございますので、その中で、大企業と、企業の規模に応じてどういう差があるのかというのはちゃんと研究したいと思います。

 その上で、我々の、業種ごと、あるいは中小企業の中で、どういう政策を打てばその生産性が向上していくのかということについてきめ細かく、全ての業種に対して同じ政策を打てばいいというものでもなかろうと思いますので、そういうことについてはきめ細かく、研究の成果を踏まえつつ政策を打ってまいりたいと思います。

末松委員 そこはぜひお願いしたいんですね。特に、生産性の中で、やはり、労働生産性の中で、賃金が低いというのはかなり大きな問題なんですね。だから、やはり、中小企業、零細企業の賃金を引き上げていくことが消費力をアップさせて、その消費力のアップの中で経済を立て直していく、私は重要なキーポイントだと思っているので、そこはぜひお願いをしたいと思います。

 同じく中小企業庁の方に聞きますけれども、ある著名な東京税理士会の税理士の方からヒアリングをしたときにコメントをいただいたんですけれども、大企業による下請中小零細企業への縛りというのがきついと言うんですね。それは、今、前田中小企業庁次長の方からも話がありましたけれども。

 これで、彼が言っていたのが、コストダウンの圧力が非常にきついと。もともと、コストダウンというのは、一時期、日本がすさまじい円高になって、それがために、輸出企業を始め、とにかく下請企業にコストダウンを頼む、三割だ、二割だ、どんどんコストダウンしていかないと立ち行かないんだということをやって、コストダウンしていて、中小零細企業はそれに一生懸命に応えて頑張ってきたと。ただ、円高がおさまってもそれが年中行事のように、一割だ、二割だ、削減しろ、削減しろと言っていると。そうすると、中小企業、零細企業の方として、それにまた一生懸命に努力して応えて、そしてコスト削減をやってくる、こういう慣行があるんだ、これが本当に賃金上昇をブロックしている大きな壁なんだということを言っていたんですね。

 ですから、ここのところを、中小企業庁としても、先ほどそういう形で実際ありましたけれども、繰り返しになるかもしれませんけれども、実際に、事実として、そういう事実認識を把握しているのかどうか、そこを簡単に答えてください。

前田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど御答弁申し上げましたけれども、私どもの方にも、例えば、大企業から、一方的で、下請企業の方から見たときには不合理な原価低減要請があるという話、それから、業績が悪いときにはわかるんだけれども、業績がよくなっても毎年のごとく原価を低減するというようなことがやや慣行になってきているのではないかという指摘、それから、仮に、原価低減の要請に応じないということを言いますと、暗に、取引先を変更するぞというようなことをにおわせたりするというような声はしっかりと届いてきております。これは問題だと思います。

 それで、二〇一六年には、「未来志向型の取引慣行に向けて」ということで、総合的に対策をとろうとしておりまして、自主行動計画を各業界につくってもらっておりますので、まずは、それをみずからフォローアップをしていただいて、それから、我々の、さっき申し上げましたGメンがきっちりとヒアリングをして、それも、業界とかメーカーによってもかなり違うようでございますので、そのあたりを実際見ながら対応していきたいというふうに思っておりまして、取引適正化のPDCAサイクルなんかも回しながら、じっくりと粘り強く取り組んでまいりたいというふうに考えております。

末松委員 そこは本当に一番大きな、日本経済のネックになっているところなので、ぜひそこは改めてお願いを申し上げたいと思います。

 それで、ちょっと資料を持ってくるのを忘れたんですけれども、OECDの資料で民間部門の時給の変動率という統計がありまして、本当は皆さんにちょっと資料でお配りしたかったんですけれども、ちょっと忘れまして。一九九七年から二〇一七年までの二十年間、欧米の民間部門の時給はどんどん上がっているんですよ。日本だけがマイナスで、下がっているんですね。こんなばかなことがあるのか。

 今、大企業と中小企業のそういった望ましくない慣行があって、どんどん下がっている状況が出てきていると思うんですね。そこをぜひ本当に変えないと、この国は本当にこれからも賃金が、途上国型の安く使って使い倒せばいいような、こういうのはやめないと成長できない、こういうふうに私も考えております。

 今、法則についてもお聞きしました。私、地元、住んでいるところは東京の小平というところなんですけれども、そこの企業で、中小企業、零細企業の方ですかね、ばねをやっているところがありまして、そこの社長さんは非常にできている方なのでよくお話をするんですけれども、日本国内でばねの需要が厳しくて、そのときに、海外のインターネット、ずっとネットで世界に発信をしたら、トルコの企業が食いついて、そこで事業がかなりいい形で展開をでき始めたという話がありますけれども。

 先ほど、コストダウンしなければおまえのところと取引やめるぞと。こういう弱い立場にある中小零細企業の方から、例えば、注文先の安全性というんですかね、多様化というんですか、そういうことで世界に向けてさまざまな、中小企業庁として、ネットの展開とか、ジェトロとかいろいろなところあるいは商社とか使ってそういうふうな注文のソースを多様化するような、こういう努力もやっていますか。

前田政府参考人 中小企業が海外に出るというのは、非常に大事だと思います。御指摘のとおり、ばねの例をおっしゃっていただきましたが、私ども先日行った墨田区は、ほかの部品で、世界で圧倒的なシェアを持つような部品があったりとか、日本の国内ではそんなに評価はされていないんだけれども、自社のいわゆるホームページで、ネットで公開するとすごく注文が来たという話は結構聞きます。

 そういう観点からいきますと、我が国のすぐれた技術やサービスを、国内は人口減少でマーケットが縮小するという傾向がありますけれども、グローバルにはやはり、市場の強い地域、もちろんございます。そういうところに向かって海外展開にチャレンジをしていくということは非常に大きな話でもあるし、そのことが、ひいては脱下請の流れをつくるのかなというふうな気もしております。

 そこで、海外展開する際には、幾つかの段階に応じてやるのが効果的だと思っております。

 例えば、海外を目指して情報収集を行う段階では、関連する施策についてはウエブサイト等で情報提供をまずして、それから、計画をしたいという話になりますと、計画の策定と新商品開発の支援をする。それから、実際に現地に行きたいんだということになってまいりますと、現地の代理店やバイヤーを紹介する。それから、展示会、展示会も、できたらば即売できた方がいいんだと思いますけれども、あるいは商談会、こういうようなところの機会を見つけて、そこに後押しをしていく。それから、事業が安定してくるといろいろなトラブルが起きても困りますので、法務の問題とか労務の問題、こういったことの課題解決の支援をしていく。

 こういうようなものを行うために、日本貿易振興協会、いわゆるジェトロ、それから中小企業基盤整備機構などの支援機関がばらばらではなくて結集をして新輸出大国コンソーシアムというのをつくっておりますけれども、中堅・中小企業に対して、計画策定から商談の成立までトータルでサポートをするという体制をつくっております。

 これからも、経済産業省といたしましては、中小企業の海外展開、強力に支援をしたいというふうに考えております。

末松委員 ぜひ、そこは中小企業庁にお願いをしたいと思います。

 ちょっと参考なんですけれども、小西美術工芸社の社長のデービッド・アトキンソンという方、有名な方でしょうけれども、こういうコメントをやっているんですね。

 日本の企業は欧米の企業に比べて、要するに労働力を安く、本当に使い過ぎだ、安過ぎるんだ、あれは改めないといけないというのと、もう一つが、生産性上昇のためにはいろいろな形で合併とか企業統合して、規模、スケールメリットをもうちょっと生かしていくような、こういう形の再編をやっていかないとまずいんじゃないか。

 これはちょっと、傾聴に値すると私は思ったので御紹介をしておきます。

 さて、日銀の黒田総裁にもお越しいただいているので、この流れの観点からお話を申し上げたいと思います。

 今、消費増税の中、物価の上昇というのが実質的な賃金を下げていくということで、需要を低めていく、あるいは消費力を低めていくという話でございましたけれども、日銀のインフレターゲット二%という設定、これは物価を引き上げようということなんですけれども、私、率直に思うんですけれども、私も、デフレ脱却、デフレ脱却ということで、二%、二%といかにもそれがそんなものなんだと思っていたんですけれども、はたと、いろいろと本を読んで気づいてみたら、要するに、国民の所得が上がらないのに物価だけ二%、一生懸命上げさせるというのは、生活が国民にとって苦しくなるじゃないか、これは何なんだということにちょっと行き当たったんですけれども、そこについて見解を求めたいと思います。

 ちょっと後でそこは答弁いただくようにして、この前、黒田総裁とお話ししたときは、私が、消費増税、二%上がったら、今度はどのくらい日銀の二%上昇に影響を与えるのかというふうに言ったときに、黒田総裁の方で、これはたしか日銀がつくっている展望レポート、経済、物価見通し、これを引用されて、二〇一九年度が大体一・一%、二〇二〇年度が一・五%、こういう結果を示しながら、二%消費増税で上がっても物価の上昇は少ないのである、ばあんとそういうことを言われたと思うんですね。私はそんなものかと一瞬思ったんですけれども、どういう計算で一・五%とか一・一%はやっているのか、そこはちょっと国民の皆さんも知らないとまずいなと思ったので、そこを手短にお願いします。

 そして、その後で、私が申し上げた、所得上昇がないのに二%というのは国民の生活を圧迫するじゃないか、この点についてお伺いします。

黒田参考人 まず、一月の展望レポートで示しました、二〇一九年度についてプラス一・一%、二〇二〇年度について一・五%という見通しは、委員御指摘のとおりであります。これは、消費税率引上げの影響と教育無償化の影響を両方織り込んだ見通しであります。

 このうち、消費税率引上げが直接消費者物価に及ぼす影響を機械的に計算いたしますと、二〇一九年度と二〇二〇年度において、それぞれプラス〇・五%ポイント物価を押し上げる効果があるというふうに見ております。

 また、教育無償化政策は、二〇一九年度と二〇二〇年度の消費者物価をそれぞれ、マイナス〇・三%、マイナス〇・四%ポイント押し下げるというふうに試算をいたしております。

 いわば両者がかなり打ち消し合って、結果的には、両者を含んだ見通しと含まない見通しと余り違わないという形になっております。

 ちなみに、このプラス一・一%、プラス一・五%というのは、そういった両者を含んだ見通しであります。

 そこで、二%はなぜかということでありますが、まずは、日本銀行では、統計上のバイアスあるいは政策対応力の確保ということを考慮して、小幅のプラスの物価上昇率を目指すことが重要と考えております。その上で、グローバルスタンダードである二%を物価安定の目標として設定して、その実現を目指していくことは、長い目で見た為替レートの安定にも資するというふうに考えております。

 もとより、委員御指摘のとおり、単に物価だけが上昇すればよいというふうに私どもも考えているわけではありませんで、あくまでも、企業収益や雇用、賃金の増加とともに物価上昇率が緩やかに高まっていく経済を目指しておりまして、こうした好循環をつくり出すことが、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現にとって重要であると考えております。

 足元、一%弱、先ほど申し上げたように一九年度、二〇年度と一%台の見通しになっておりますが、その背後には、やはり賃金が十分上がってきていないということがありまして、逆に言うと、賃金が上がってくるという状況のもとで、このように物価上昇率が徐々に上昇していくという見通しを持っております。

末松委員 アメリカのFRBなんかは、やはり雇用とかあるいは物価の関係で非常に、特に雇用あるいは労働者の動向ですけれども、今総裁から言われましたように、賃金の上昇ということも非常にそこは日銀としては気にしておられるんだということ、それはそれでよろしいですね。ちょっとお願いいたします。

黒田参考人 その点は私どもも十分留意しておりまして、雇用、賃金の動向というものは、毎回の金融政策決定会合においてもつぶさに検討して、それを金融政策の決定に役立てているということでございます。

末松委員 わかりました。

 ちょっとこの見通しについては、教育の無償化とか、これが本当にそんなに〇・三%も下がるんですか、いろんな解釈がありますよねという中で、ここではちょっともう時間がないので言いませんけれども、ぜひ、そういった賃金の上昇ということ、ここは、日銀として別に責任を持ってはいませんけれども、それが金融政策に大きな影響を与えるんだということを日銀の黒田総裁が言われたことは重要だと思っています。

 財務省は、同じようにお聞きしますけれども、麻生大臣なんか、政治家として肌感覚で、やはり、インフレターゲット二%というのが、庶民の暮らしどうなんだいと言われることもあるんだろうと思うんですけれども、その辺について財務省として、今度の二%の引上げ、あるいは日銀のインフレターゲット二%、これをどういうふうに肌感覚で感じておられますか。

麻生国務大臣 これは、末松先生、二%の物価目標というものに関しましては、これは単に物価が上がればいいというだけの話じゃありません、当然のことなので。やはり、企業収益が増加をし、そして設備投資とか賃金とかいうものも増加する中で、結果として雇用やら何やらがふえていった、結果として賃金もということで、それが結果的に消費につながっていくという循環がある程度でき上がらないと、国民生活がよくなっているということにはならないので。経済成長に見合う形で物価が上昇していく、賃金もそれに非常に付随するというか、賃金が押し上げるとかいろんな形であろうと思いますけれども。

 その中で、賃金の引上げというのが、今総裁の方から話がありましたように、これは国民の生活にとって非常に重要なものだと思っておりますので、そういった意味では、この賃金の引上げ等に、私どもも、いわゆる企業が賃金押し上げをしやすいような形で税制面から後押ししますとか、また、政労使会議なんというところで、経済財政諮問会議等々もそうでしたけれども、政府から経済界に対して賃上げを呼びかけて、もう何年になりますかね、五年、六年ぐらいやっていると思いますけれども。

 そういったことをやる傍ら、生産性を引き上げるという意味で、日本の生産性はこのところヨーロッパなんかに比べて上がってきていますけれども、そういった意味で、ITとかAIとかそういったものを活用していただくと、生産性の向上につながりますのは、賃金の上昇につなげやすいということにもなりますので、そういったことをやり、加えて、働き方改革というのをいろいろやらせていただいておりますけれども、こういったもので長時間の労働というものが是正されることによりまして生産性を上げるということにもつながりますし、いろいろ取組をさせていただいているんですが。

 結果として、この間出ていました、第三回目でしたか、連合のあれも、今回の賃上げのところは、二・一三から二・一五、〇・二ぐらい前回のあれより上がっていたと思いますけれども。

 いずれにいたしましても、引き続き、賃金の引上げに向けた取組というのをやらせていただいていく必要があろうかと思って、結果として、それが物価上昇にもつながっていく背景、これは、これだけよくなると全てがよくなるというようなものではありませんので、みんなが回っていくような形にせないかぬだろうと思っております。

末松委員 非常に意味のあるコメントをいただきまして、ありがとうございます。

 要するに、二%のインフレターゲットというと、何か結果だけが先走りして、今大臣が言われたように、本当に、賃金上昇とか生産性の上昇とか、これがあって初めて二%でしょうと。だから、そこをちょっと、国民の皆さんから、新聞だけ見ているとわからないんですね。そこをもうちょっと強調していただきたいということと、あと、最低賃金についても、きちんと引き上げていかないとまずいということを改めて申し上げたいと思います。

 時間がなくなりましたので、ちょっと次のトピックに行きます。

 消費税率の引上げ二%ということで、これはもう法的にはそういうふうになっているし、あとは、いろんな対策も打たれているから当然やるんでしょうねという予測はできるんですけれども、前回の引上げのとき、そのときには、平成二十五年十月一日に、安倍総理から、記者会見において、本日、私は、消費税率を、法律で定められたとおり、現行の五%から八%に三%引き上げる決断をいたしました、こういうことを言っておられるわけですね。そして、その半年後に引き上げられた。

 今回は、もう法的に決まっているから別に何もやらないんだという立場もあるかもしれませんけれども、今まで言ってきているのは、二%引き上げる予定ですということを言っているんですけれども、決断をするというような何かコメントが国民に示されるのか、あるいは示されないのか、そこの点はいかがですか、大臣。

麻生国務大臣 これは、今、今回の場合は法律できちんと決められておりますので、やめるということになれば今申し上げたような話が出てくるのかもしれませんけれども、そのまま予定どおり実行させていただくというつもりにしておりますので、この日をもって判断をするとかしないとかいうことを総理の口から記者会見をするとか、そういったことを予定しているわけではございません。

末松委員 わかりました。

 そして、この七兆円の防災・減災、国土強靱化のための三カ年緊急対策というのが、昨年の補正予算、ことし、来年、七兆円というから相当なものだし、これは借金で、つまり建設国債等を使って大体四、五兆円、借金でやるわけなんですけれども、これはちょっと私、違和感があるんですね。

 政府の資料を見ますと、何か、あたかも、これが駆け込み需要の需要減の対策という形で、その対応としてとられているんですけれども、これを見ると、これは消費増税の対応、緩和の対応ということでやっているのではないような気がするんですけれども、そこはいかがですか。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、三カ年のこの緊急対策、この対策そのものは、国民の生命財産を守るため、防災、減災あるいは国土強靱化の観点から、緊急に実施すべき対策を取りまとめたものでございます。

 ただ、こうした中で、この対策のうち、今年度とそれから来年度、二〇二〇年度に実施する事業につきましては、マクロの需要創出を図るということ、それから、三カ年の緊急対策を含む公共投資全体の適切な執行を通じて駆け込み需要、反動減といった経済変動を抑制するといった効果が見込まれることから、今般の消費税の引上げに伴う需要変動に対応する臨時特別の措置の一環として位置づけているものでございます。

末松委員 逆に言えば、ちょっと確認ですけれども、もしリーマン・ショック級のことが日本に起こって、これは消費増税できないなというふうに判断されるときであったら、この三カ年のやつというのはやるんですか、やらないんですか。消費増税との関連があるのかないのか、そこはちょっと言ってくれますか。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 この消費税率の引上げにつきましては、先ほども申し上げたとおり、リーマン・ショック級の出来事がない限り、法律で定められたとおり、本年十月に一〇%に引き上げる予定ということでございます。

 政府としては、この消費税率の引上げに向けて経済財政運営に万全を期すということに尽きるということでございます。

末松委員 コメントがなかったですけれども、大臣、いかがですか、今の点について。

麻生国務大臣 リーマン・ショックという話がよく出ますのですが、例えば世界的な経済危機とか大震災というのはよく言われるところですけれども、これは引上げが困難になったという事態で、ちょっと予測をもって申し上げるというのは、なかなか申し上げられないところなんだと思うんですが、いずれにいたしましても、その事態に応じて対応させていただくということになりますので、ちょっと今の段階で一概に申し上げる、これはなかなか難しいんだと思いますが。

末松委員 私の方で申し上げたかったのは、緊急の防災とかいうのは、この資料で、何か、あたかも、消費税率引上げに対応した新たな対策と書いてあるところに、防災、減災、国土強靱化と改めてはっきり書いてあるので、これはちょっとおかしいよなというのは、ちょっと私の方で違和感を感じたことを申し上げるために、今あえて申し上げたところでございます。

 それから、ちょっとまだ若干時間があるので話をしますけれども、財務省ですけれども、二%消費増税、上げたら、これは大体どのくらい税収の増加が見込めるんですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税率引上げによる増収額についてでございますけれども、平年ベースの増収額につきましては、国税、地方税合わせて約四・六兆円と見込んでいるところでございます。

末松委員 四・六兆円の見込みの中で、今回、消費税率引上げに対する対応というのは、国費で一・一兆円、税収の引下げで〇・三兆円のマイナスとか、あるいは、幼児教育の無償化、診療報酬等による補填とか、それで三・二兆円程度の受益増を伴うわけですね。これで四・六兆円程度の導入コストがかかっている。さらに、先ほど言った七兆円になる国土強靱化のため、これの借金が、四兆から五兆円なんという形で借金がふえるとなると、結局、消費税を二%上げるのに約九兆円以上の投資をしなきゃいけない。これはちょっとコストがかかり過ぎているんじゃないか、こういうふうに思うわけですね。

 ただ、先ほど申し上げたように、ちょっと、七兆円の国土強靱化というのは性質が違うなというところはありますけれども、ただ、政府の消費増税に対する需要減対応という話になるとそういう計算になるんですけれども、その辺はちょっとコストがかかり過ぎじゃないか。その辺についてはいかがですか。

宇波政府参考人 お答え申し上げます。

 今般の消費税率の引上げでございますけれども、これによる増収を使いまして、全世代型の社会保障の構築に向けて、少子化対策であるとか社会保障に対する安定財源を確保するということのために必要なものというふうに考えてございます。

 今御指摘のありました臨時特別の措置、この臨時特別の措置そのものは、予算計上額は二兆円程度、税制も含めて二・三兆円程度というふうに御説明申し上げているところでございますけれども、この措置につきましては、前回の消費税率引上げの際の経験も踏まえまして、消費税率の引上げに伴う需要の変動を平準化する観点から、臨時特別の措置として講じるものでございます。

 重点的かつきめ細かな対策を期間を区切って集中的に講じるということにしておりまして、これによって、消費税率引上げに伴う需要変動をしっかりと乗り越えて景気の回復軌道を確かなものにする。こういうことを通じて、引上げ前後で大きな需要変動が生じるわけでございますけれども、これを緩和し、景気の回復力が弱まることのないよう経済運営に万全を期していくということでございます。

末松委員 時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、立憲民主党として、消費税二%増税は改めて反対だということと、さらに、軽減税率等についても反対をするという立場を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも、財務金融委員会、一般質疑させていただきたいと思いますが、本日は、きのう発表されました紙幣、硬貨の刷新、この件について、るるお伺いをしていきたいというふうに思います。

 いろいろな御意見、いろいろなお話、ごらんになったときにお話が出ています。そもそも、記者会見でもお話しされていましたけれども、改めてこの委員会でもお伺いしたいんですけれども、今回の紙幣、硬貨、これらを刷新された意図について改めて大臣よりお伺いしたいですし、ちょっとデザインを見て、あれ、このデザインはといういろいろな御意見があると思うんですけれども、思うところがあって、大臣が最初にあの紙幣、三種類の紙幣、デザインをごらんになったとき、どんなふうに思われましたか。この辺も、率直な感想を含めて、改めてその意図と御感想をお伺いできますでしょうか。

麻生国務大臣 この日本銀行券についてですけれども、いわゆる偽造抵抗力というものの観点から、大体二十年ごとにこれまでも改刷してきたところなんですけれども、現在発行しております今の福沢諭吉等々のあの券も、二〇〇四年に発行して以来、約十四年が経過をいたしております。

 今、御存じのように、そんなににせ札がふえてきているわけではありませんけれども、印刷技術がえらい進歩してきておりますので、そういった意味では、世界最先端の偽造防止技術を搭載をさせていただいて、あらかじめそういうのを未然に防ぐ。また、額面の数字というものが、こちらが日本数字で一万円、上にアラビア数字で一万円と書いてあるんですけれども、それをひっくり返して、こちら側の方に大きな字にして、ユニバーサルデザインというようなことを考えて改刷を行うことにさせていただいております。

 改刷、防止という技術は、これをいたしますと、いわゆる自動販売機等々の機械の変更をやらねばならぬということになりますので、そういった意味ではかなり時間を要するであろうということで、私どもとしては、これを発行させていただくというと、約四年から五年、結果として約二十年でという形になるんだと思っております。

 それから、五百円の方につきましては、二〇〇〇年に発行を開始して十八年が経過をしておりますけれども、日本銀行券の改刷に合わせて今回改鋳をさせていただくということで、これも素材等々を、外側と中側と素材の質を変える等々で、偽造抵抗力というものを高めるということにさせていただいております。

 デザインになった率直な感想という話ですけれども、お札というのはいわゆる芸術作品をつくっているわけではありませんで、早い話が、基本的には、にせ札、偽造防止という点とかユニバーサルなデザインとかいう機能が極めて重要でありますので、そういった面では、今までのあれに比べて見やすいなと思いましたし、色が、基本的には紫と青と茶色というふうに分けてある今の形と色のデザインがほぼ同じで、間違えられるということも余り少ないんじゃないかなと思っております。

 肖像につきましても、渋沢栄一とか津田梅子とか北里柴三郎とか、いろいろな、よく学校の教科書で出てくる顔で、先生たちの世代だと、渋沢栄一なんていっても知らない人が多いのかもしれませんけれども、私は、あれの孫と学校が一緒だったので、あいつのおやじが渋沢栄一かなんて思って見ていた記憶があった。そのころは吉田茂の孫といってよくいじめられましたので。大体、偉いやつの息子というのはみんな迷惑していますので。そういった意味では、渋沢の顔はひょっと思い出したりしました。これは全然そういうところに関係ないところに行きましたけれども。

 津田梅子という人も、これは日本で初めてで、たしか岩倉具視と一緒に初めて留学して海外に行ったまま日本に帰ってこず、そのまま残ったのかなんかして、とにかく、学校をその後、教育やら何やらでえらい発展して、最初のキャリアウーマンじゃないかと思うぐらい、明治の維新で頑張られた最初の帰国子女であったんだろうと思いますし、北里先生はもうペスト菌やら何やら有名な方だと思いますので。

 裏のデザインもなかなか、東京駅というのは、渋沢栄一たちがたしか、あれをつくる最初の、みんなでつくった……(丸山委員「第一銀行です」と呼ぶ)第一銀行か、あれ。何かいろいろやった人ですけれども、東京駅のデザインになっていますが、あれも、渋沢栄一はそれに関与していますし、葛飾北斎のあの絵も、何となく、外国人なら皆知っている日本で一番有名な浮世絵の一つなのかもしれませんけれども、葛飾北斎の絵だと思いましたし。

 そういった意味では、何となく、格好としては、おお、いいなという、率直な実感です。

丸山委員 渋沢栄一さんのお孫さんと同級生というのはおもしろかったんですけれども。

 そういった意味で、まだまだ、有名な方なんですけれども、ほかの、例えば今までの、一万円札だと諭吉さん、福沢諭吉さんはやはりずっと使われていたので知名度があったというのがあるんですけれども、恐らく、令和六年、発行していけば、国民の皆さんもなれてくると思いますし、逆に、それで知名度が上がることもあると思うんですね。

 非常に、そういった意味で、人物、私はすばらしい方を選んでいるなと思うんですけれども、一方で、デザインに関しては、ぱっと見て、何でこんな数字が大きいんやろうというふうに思ったんですけれども、今の大臣の御説明で、ユニバーサルデザインというお話でございました。

 このデザイン、現実に言って紙幣のデザインをどういうふうに決めていくかというのは非常に国民の皆さんは関心があると思うんですけれども、事務方で構いませんが、これはどのように決めていくんですか。

可部政府参考人 お答えをいたします。

 ただいま委員の方から、デザインについてどのような考え方で決めていくのかというお尋ねがございました。

 まず、日本銀行券のデザインにつきましては、人の顔あるいは表情の違いに対しまして人間が特にすぐれた認識能力を有しているということを活用いたしまして、偽造抵抗力の強化を図るために肖像を用いるということをしております。

 また、よく知られている人物の肖像や風物を描くなど、お使いいただく皆様に親しまれるものとするということを重視をしております。

 さらに、搭載いたします偽造防止技術の配置、あるいは自動販売機等の金銭機器による券種間の識別性の向上、こういった専門的な観点も踏まえて設計をしているところでございます。

 ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、今回の改刷の大きな目的の一つといたしまして、ユニバーサルデザインの採用がございます。

 今委員御指摘ございましたように、新しい日本銀行券のデザインでは、洋数字、アラビア数字を大型化して記載をしております。これは、従来の漢字表記に比べまして画数が少なく、視力の弱い方々などの識別性の向上が図れる、また、漢字がお読みになれない外国の方々にもインバウンドでお使いをいただく際の識別性の向上ができるという趣旨でございます。

 また、今回のアラビア数字について、ゴシック体としているというのも特徴でございますけれども、これも、現在使っている字体よりも視認性を高める、例えば、一万という数字の一とゼロ、ゼロゼロという数字が並んでおりますが、これの間隔があくことによって視認性が高まるという趣旨でございます。

 さらに、すき入れの配置が真ん中であったり横であったりということをしているわけですが、これは、隣り合う券種、すなわち一万円と五千円、五千円と千円の間ですき入れの位置を変えることによりまして、さわったとき、あるいは見たときの券種間の識別性の向上を図る、そういう趣旨で場所を変えております。

 その結果といたしまして、一万円ですとか五千円といった数字の配置も異なるということになっているというところでございます。

丸山委員 ぱっと見、若いもんからしたらちょっとダサいなという感じの意見もあると思うんですけれども、多分なれていくんだと思いますし、何より、今おっしゃったような重要な、視認性を高める、ユニバーサルデザインだという意図があるということでございますね。

 この人物を選んだ選定基準というのが恐らくあって、そして、恐らくこの方々だけじゃなくて、いろいろな方が案で上がっているんでしょうけれども、どうしてこの方々になったのか、改めて、個別に聞こうと思ったんですけれども、時間もありますので、まとめて、どういう趣旨で選ばれたのかお伺いできますか。

可部政府参考人 お答えいたします。

 日本銀行券に採用いたします肖像につきましては、近年の改刷におきまして、まず、偽造防止の観点からなるべく精密な写真を入手できること、加えまして、肖像彫刻の観点から見て品格のあるお札にふさわしい肖像であること、さらに、肖像の人物が国民各層に広く知られており、その業績が広く認められていることといった観点を踏まえまして、明治以降の人物から採用いたしております。

 今回の新しい日本銀行券の肖像につきましても、その考え方を踏まえまして、先ほど大臣から御答弁もございましたように、新一万円券は日本の経済近代化の最大の功労者と言われる渋沢栄一、新五千円券は近代的な女子高等教育に尽力をされた津田梅子女史、新千円券は日本医学の発展に貢献した北里柴三郎博士としているところでございます。

丸山委員 なるほど。写真があって、品格があり、お札にふさわしいかと、あと国民に親しまれているかどうかということでございます。品格がありというのは非常に難しくて、私なんか絶対ないので、そもそも選ばれませんが、その選定からももちろんあれですけれども。

 そういった意味で、非常に厳密にいろいろな観点から見ていただいて選んでいるということでございますが、大事なのは、人物がどうこうも一つあるんですが、しかし、偽造防止というのは非常に国家において大事な大事な観点でございます。

 この間も、台湾から持ってきたという方が、日本のにせ札をというのがニュースになっていました。もとはどうやら大陸の方で、中国の方で製造したんじゃないかという話が出ていますので、そういった意味で、この偽造の対策、そして使われないように、機械はもちろんですけれども、手渡しでもぱっとわかる、これは偽造じゃないかとすぐわかるようなことができるようなこの偽造防止の措置というのは非常に大事なんですけれども、これはどのような最新技術が使われる予定なんですか。

可部政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣からも御答弁ございましたように、今回の改刷の最大の目的は偽造防止でございます。

 新たな偽造防止技術といたしまして、現行のすき入れよりも更に高精細なすき入れ模様を導入する。また、一万円券及び五千円券にはストライプタイプ、千円券にはパッチタイプのホログラムを新たに導入することといたしております。また、このホログラムにつきましては、肖像の3D画像が回転する最先端のホログラムでございまして、銀行券に搭載をいたしますのは世界で初めてでございます。

 五百円貨につきましても今回改鋳を予定しておりますけれども、偽造抵抗力の観点から素材等を変更することとしておりまして、素材に新規技術である二色三層構造のバイカラー・クラッド技術を導入いたしますとともに、新たに異形斜めぎざ及び微細文字を導入することといたしております。

 以上でございます。

    〔委員長退席、越智委員長代理着席〕

丸山委員 回転する3Dってすごいですね。ぜひ実物を見てみたいんですけれども。

 そういった意味で、非常に最新技術を使っていただいているということです。その中で、ぜひ、この偽造対策、しっかり前に進めていただきたいですし、摘発も含めてやっていかなきゃいけません。当分、恐らく旧紙幣も同時に併用があるので、逆に油断せずに、恐らく、相手の心理を考えれば、偽造する方は、使える間に使ってしまおうというのが当然考えられますし、その期間が非常に危ないと思いますので、ぜひ万端にやっていただきたいというふうに思います。

 今回、三種類の紙幣が出ておりますが、国民の皆さんが気になるのは、あれ、そういえば二千札ってなかったっけなという部分だと思います。今、もう二千札をつくっていないと聞いたんですけれども、ただ、流通はもちろんしているんですが、二千円札はもうつくらないんですかね。これは理由を含めてお伺いしたいんですけれども。

可部政府参考人 お答えいたします。

 二千円券は、二〇〇〇年に発行を開始して以来、二〇一九年三月現在で流通枚数は約一億枚となっておりまして、現在の紙幣全体、百四十九億枚の中では非常に少ないウエートとなっております。

 また、日本銀行にございます、備蓄されている保管高で対応できておるという現状がございますので、現時点では製造を行っていないということでございます。

 財務省としては、引き続き、通貨の流通状況などを注視いたしまして、日本銀行と連携して、二千円券を含め、通貨の円滑な供給に支障が生ずることのないよう取り組んでいきたいと考えております。

丸山委員 つまり、今のところ、また刷る必要はないということだと。うなずいていただいていますけれども。

 今、流通量については一億枚程度だと。非常に少ないなと、聞いて驚いたんですけれども、これはそもそも必要なのかという議論も一つあると思います。

 何か、聞いたところでは、沖縄では、二千円札、結構流通されていて、ATMとかでも普通に出てくるという話なので、なるほど、沖縄の方にとっては、表、守礼門等を含めて、非常に関心のある紙幣なんだと思いますけれども。

 一方で、政府としてこれを流通させたいか、させたくないかというのは非常に気になる、要は、印刷をとめているという段階から考えても気になるところなんですが、このあたりについて、政府としてはどうお考えなのか。

可部政府参考人 お答えいたします。

 二千円券につきましては、先ほど申し述べましたように、流通残高約一億枚ということで、近年はおおむね横ばいでございます。

 この二千円券につきましては、御案内のとおり、九州・沖縄サミットが開催されました二〇〇〇年以降、政府として、日本銀行と連携しつつ発行、流通の促進を図ってきたところでございます。

 具体的には、最近の二千円券の流通促進策としては、日本銀行と共同で二千円券をPRするリーフレット、パンフレットを作成いたしまして、金融機関やホテルで配布をしていただく、あるいは、金融機関などに対しまして、二千円券の積極的な払出しを要請するなどの取組を行ってまいりました。この結果、今委員から御指摘ございましたように、沖縄における流通枚数は足元で六百三十八万枚なんですけれども、これは対前年で八・五%の伸びということで、沖縄では流通枚数が増加しているという状況にございます。

 引き続き、国民の日本銀行券への需要動向を注視しながら、日本銀行とともに二千円券の流通促進に取り組んでまいりたいと考えております。

丸山委員 政府としては流通させたいということでございますね。

 ただ、とはいえ、これはもうそろそろ二十年たってしまうんじゃないかなと正直思うんですけれども、先ほど大臣のお答えでも、二十年ごとにこれをきっちり偽造対策から考えるという話ですが、二〇〇〇年に決まって、二〇〇四年ぐらいからですかね、流通というのは。とすると、もう十五年。そろそろこれだって新紙幣のデザインを考えなきゃいけないタイミングだと思うんですけれども、これを入れなかったのは何か理由があるんですか。

可部政府参考人 偽造防止を施して券面を刷新するというのは、一定のコストがかかります。ただいま申し述べましたように、二千円券につきましては、流通残高が少ないということに加えまして、まだ使用していない備蓄もございますので、新たなコストをかけるのは現時点では差し控えをしているということでございます。

    〔越智委員長代理退席、委員長着席〕

丸山委員 偽造防止の観点が第一だという割には、ちょっとそこは若干気になるところかなと思いますが、理由は今、政府の考えはわかりました。

 今少しお話しされましたけれども、在庫が大量に残っているという話、これは本当なんですか。どこに、国立印刷局でいいんですかね、そこに大量に残っているということなんですか。

衛藤参考人 お答えいたします。

 二千円札以外のお札も含めまして、日本銀行内に幾ら銀行券を保管しているかということにつきましては、セキュリティー上の問題もございますので、お答えは差し控えさせていただいております。

 ただ、委員の御質問にストレートにお答えにはなっていないかもしれませんけれども、これまで、二千円札は累計で八・八億枚印刷をしております。現在の流通が、先ほど御答弁でもありましたけれども、一億枚ということでありますので、その差分の部分が日銀に戻ってきているということではございますけれども、そのうち、汚れているものはもう廃棄をしているものもございますので、その差分がまた保管高ということになっております。そのストレートな数字はお答えは差し控えさせていただきますが、二千円の流通に十分な量のストックは日本銀行でも蓄えているということでございます。

丸山委員 今のお話だと、八・八億枚刷って、一億枚流通していて、廃棄とかもあるので、ただ、恐らく数億枚ぐらいは、言えないが、日銀は持っていると。同時に、廃棄とかもあるけれども、そこまでではないと思うので、やはりその数億枚が余っているからこそ新たに刷ることはないということなんです。

 流通促進だったら、これはもっと何かしら流通させることを考えるか、若しくは、偽造の観点から見たら、犯人にしろ、要は相手方からしたら二千円札の偽造だって十分あり得るわけですよね。千円があり得るように二千円もある、もちろん一万円が一番あるんでしょうけれども。そうした中で、流通させるならもう少し考えなきゃいけませんし、流通していないなら刷新を考えるというのは一つの手だと思うので、そこは率直に考えていただきたいですけれども。

 何か、インクも大量に余っているという話を聞いたんですけれども、これは、印刷局、そうなんですか。

可部政府参考人 お答えいたします。

 二千円券につきましては、発行当初におきまして、十分な枚数を製造できるよう必要なインキの購入などの準備を行い、その後、流通、需要動向を踏まえながら製造を行ってまいりました。

 足元ではその流通枚数が一億枚と少ない、また、日本銀行にございます備蓄で対応できるという見通しであることから、平成十六年度以降は製造を行っておりませんので、一定のインキは国立印刷局に残っております。

 仮に、流通促進策の結果として流通が促進をされ、二千円券の製造が再開された場合には、このインキを使用していくことになります。

丸山委員 かなりの枚数分、刷れる分が残っているということでよろしいですか。億単位で刷れる分が残っているんですか。

可部政府参考人 この具体的な計数は、セキュリティー上の観点からお答えは差し控えさせていただいているところでございます。

丸山委員 まあ、残っているということだと思いますが。

 ちょっとどっちつかずになっていると思いますので、偽造対策の関係から、やはり刷新すべきはしなきゃいけないと思うし、されないという判断であれば、流通させるという意思だと思いますので、この在庫も含めてやっていただきたいと思いますが、ちょっと中途半端になっているなというのは、伺って思いました。

 同時に、二千円はちょっと、間の紙幣ですけれども、高額紙幣を発行するかどうかというのはたびたび議論になっておりまして、国によっては、例えばシンガポールなんかも、非常に日本円換算でも高額な紙幣等を発行している国はるるありますけれども、これは大臣、一万円を上回る紙幣の発行について、政府としてどのように現時点で考えていらっしゃるか、お答えいただけますか。

麻生国務大臣 これはよく話題になるところなんですけれども、日本の場合は不思議と、二千円はちょっと例外にして、西暦二〇〇〇年とひっかけてああいうことになったんだと理解していますけれども、ほかの国は大体、二十ドルとか、ユーロでも二十ユーロ、イギリスでも二十ポンドというのが多いんです。日本はどういうわけだか知りませんけれども一の次は五になっていますので、一万円の次は五万円かという話なんだと思いますが、だったら二万円でもいいんじゃないのという感じがしないでもありませんけれども、少なくとも、今までそういったようなことの議論というのは、二という数字が出てくるというのは余り私の記憶ではないんですが。

 いずれにしても、高額になりますと、偽造が、その分だけ、もうかったときの率がでかくなりますので、高額紙幣はなかなか避けたいというので各国避けておられると思います。お札自体は、キャッシュレスだ何だかんだいいながらも、お札の発行枚数は間違いなく、デンマーク以外は全部伸びていると思いますね。ずっと、急激に伸びてきているところもありますけれども、間違いなく増加している傾向にありますが、今の段階で、一万円の次に五万とか二万とかいう高額紙幣を印刷するという予定はございません。

丸山委員 経済効果の点でも伺いたいんですけれども、紙幣を刷新することでの経済効果というのは政府として何かしら試算されているんでしょうか。同時に、前回切りかえたときの効果についてはどのような数字があるのか、お伺いできますか。

可部政府参考人 お答えいたします。

 改刷及び改鋳は、あくまで偽造抵抗力強化の観点から行うものでございまして、経済対策として行っているわけではないものですから、経済効果を、前回も今回も、特に政府として試算はいたしてございません。

 他方で、今回、改刷、改鋳を行うことに伴いまして、民間における需要喚起という観点からは、ATMあるいは自動販売機等の改修が発生することになります。これらはもともとの機械の更新時期と重なる場合も考えられますので、改刷、改鋳に対応する費用だけを取り出して正確に見込むことは難しゅうございますけれども、金銭機器関連の業界団体でございます一般社団法人日本自動販売システム機械工業会の試算によりますと、日本銀行券の改刷対応で約七千七百億円、五百円貨幣の改鋳対応で約四千九百億円の需要を見込んでいるというふうに伺っております。

丸山委員 政府としては趣旨と少しずれるので試算はしないけれども、民間のデータは妥当だろうということで今挙げられたということだと思いますが、今御自身でおっしゃった、一番大きいのは自販機、ATM、こうした部分を全て刷新しなきゃいけませんし、銀行のお金をカウントするやつとか、幾つか直接考えられるのはありますし、きのうも、発表した途端、関連の企業の株価が軒並み値上がりしていましたので、そういった意味では、これは厳密にいつ変えるかとかいう発表は守秘義務としてしっかり守っていただいて、発表時にというのは妥当な御判断だと思いますし、そういうことでそういう運営をされているんだと思うんです。

 一方で、非常にこれはコストという意味では負担もあるんじゃないかなと率直に思うところなんですけれども、こうしたところに対して、何かしら、前回とか、補助とかそういったものをなされたことがあるのか、若しくは、今回何かしらのそういった補助をするようなものがあるのか、企業なので余り、大企業が多いかなと思いますけれども、一方で、個人で自販機を持っていらっしゃる方も多数いらっしゃると思うんです。そういったものも踏まえて、どういうふうにそのあたりは整理されるのか、お答えいただけますか。

可部政府参考人 お答えいたします。

 改刷、改鋳は、日本銀行券などの偽造抵抗力を高めることにより、例えば、民間の事業者の方々あるいは国民の皆様が偽造通貨を受け取ることによって生ずる被害を未然に防ぐことなどを目的としており、通貨を御利用いただく利用者の方々にもメリットのある事柄だと考えております。

 また、ATMや自動販売機につきましては、常日ごろ新たな偽造防止対策を施される、あるいは老朽化対応のために改修、更新を行われるといったことも平素から行われているものと承知しております。このため、改刷、改鋳の実施に伴ってATMや自動販売機などの改修が必要となりますが、前回の改刷、改鋳時、あるいは今回、いずれも特段の措置は予定をしていないところでございます。

 他方、民間における開発、改修作業に短期間で大きな負荷が生じないようにということで、一つは新紙幣及び新五百円貨のサイズは今回変更しないことといたしております。また、発行予定時期までに十分な期間をとったタイミングで改刷、改鋳の実施を公表させていただくことにより、自動販売機等の更新に無理な負担がかからないようにという配慮をさせていただいているところでございます。

 今後も、日本銀行などとも連携しながら、金銭機器メーカーに対して前広に情報提供を行うことなどにより、民間における対応が円滑に進むよう努めてまいりたいと考えております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 時間が来ましたので、これで終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、国税徴収法に基づいて行われております地方税や国民健康保険税の滞納処分について質問をいたします。

 まず初めに、徴税当局の公権力についての認識を伺いたいと思います。

 一九五九年に現行の国税徴収法が制定された当時、租税徴収制度調査会の我妻栄会長は次のように述べております。

 私債権が他の債権に優先する効力を与えられる場合には、法律にその要件が極めて正確に定められている。また、その執行のために認められる強制力については極めて慎重な規定がある。それに反し、租税債権については、優先的効力の範囲にも、その用い得る強制力の程度にも、徴税当局の認定と裁量に任されている幅が相当に広い。これは、近代法治国家の公権力の作用としても異例に属する。こういうものだから、制度の運用に当たっては慎重の上にも慎重を期すことが当然の前提というふうに述べられております。

 これは現在でも通用することだと思いますが、国税庁の認識を伺いたいと思います。

並木政府参考人 お答えいたします。

 ただいま御紹介のございました国税徴収法精解におけます我妻栄会長の序文の内容については、私どもも承知しているところでございます。

 国税庁におきましても、事務処理手続等を定めました徴収事務提要におきまして、滞納処分の執行は滞納者の権利、利益に強い影響を及ぼすことから、滞納整理に当たっては、まずは自主的な納付を促して納付の意思を確認するとともに、滞納者の事業の概況、収支、財産の状況等、個々の実情を的確に把握した上で、これまでの滞納整理実績を踏まえて処理方針を決定すること、この処理方針のもと、納税に対する誠実な意思が認められない滞納者に対しては財産の差押え等の厳正な滞納処分により滞納国税を徴収する一方、納税の猶予等の法令の要件に該当する滞納者に対しては適切に納税緩和制度を適用するなど、納税者個々の実情に即して、法令等の規定に基づき適切に対応することを滞納整理の基本姿勢としておりまして、この姿勢によって滞納整理に取り組んでいるところでございます。

宮本委員 その考え方について、国税庁は、徴収事務提要で滞納整理など徴収事務の留意点を明記しておりますが、この滞納整理の基本姿勢について、税務職員にはどのように研修されているんでしょうか。

並木政府参考人 お答えいたします。

 国税庁といたしましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、滞納整理に当たっては、納税者個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切に対応することが基本であると考えておりまして、そうした考え方に基づき滞納整理を実施するよう、随時開催する各種会議における周知、御指摘の徴収事務の基本を定める徴収事務提要や、各事務年度において指示する特に留意すべき事項の通達の発出などを行うことによりまして、常に国税局、税務署及びその職員に対して指示を実施しているところでございます。

 今後とも、国税局、税務署に対してこうした趣旨が徹底されるよう指導を続けていく考えでございます。

宮本委員 総務省にお伺いしたいんですけれども、今、国税庁の方から、滞納整理の基本姿勢と研修の状況のお話がございました。

 収入や財産の状況等、個々の実情を的確に把握した上やっていくんだという話がありましたけれども、地方税や国民健康保険税などの徴収に当たって、同じ認識で研修というのは行われているんでしょうか。

稲岡政府参考人 お答え申し上げます。

 地方税に関しましても、滞納処分に当たっては、滞納者個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切に対応することが基本であると考えております。

 こうした点を踏まえつつ、地方団体の職員向けの研修としては、例えば、総務省自治大学校、全国地方税務協議会などの関係機関における徴収事務に関する研修の中で滞納整理についても取り上げるなどの取組が行われております。

 また、地方団体においても、徴収担当者に対して実務的な研修が行われているものと承知しております。

 これらの研修においては、滞納整理の基本姿勢と同様の認識に立って研修が行われているものと考えているところでございます。

宮本委員 ところが、そうじゃない例がいろいろあるわけですよね。地方税や国民健康保険税、あるいは国民健康保険料などの滞納整理で、本来のルールを逸脱しているとも言える事案が起こっております。

 一つ配っているのは、二〇一七年九月十五日、宮城県地方税滞納整理機構が、国民健康保険税などの滞納処分として、滞納者の女性、当時六十三歳のパート給与が振り込まれた銀行口座の預金を直後に差し押さえた。八万七千五百九十七円であります。三十代で離婚し、一人で四人の子供を育て、現在は引きこもりの長男と二人暮らし。月八万から十一万円のパート収入で食いつないで、十年ほど前までは歯を食いしばって納税してきたが、無理がきかなくなり、市民税や県民税、国保税などの滞納が重なったということでございます。

 記事の最後を見ると、この機構の職員は、生活実態を把握してからでないと差押えができないわけではないと述べたと記されているわけですよね。先ほど取り上げた徴収事務提要の内容、答弁もあった、収支や財産の状況等、個々の実情を的確に把握した上、これと全く正反対の言葉が報道では記されております。

 総務省にお伺いしますが、一般論として、地方税等の徴収に当たって、滞納者の生活実態を把握せずに差押えを実行してもよい、これは総務省の方針なんでしょうか。

稲岡政府参考人 お答え申し上げます。

 総務省といたしましては、個別具体の事実関係について承知する立場にはございませんが、地方税の滞納については、公平公正な徴収事務を行ってその解消に努めていく必要があります一方、地方税法においては、滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができるとされております。

 このため、一般論で申し上げれば、各地方団体においては、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、法令に基づいて適正な執行に努めることが重要であると考えております。

 このため、総務省としては、地方税関連事務の執行に当たっての留意事項等を示した通知において、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めるよう示しているところであり、各地方団体においては今後とも関係法令やこの通知に沿って適切に対応していただきたい、このように考えているところでございます。

宮本委員 通知が全然徹底されていないということなんだと思います。

 国税庁にお伺いしますが、そもそも、国税徴収法の第七十六条では、給与等の差押えの禁止を定めております。その理由を述べていただきたいと思います。あわせて、母六十歳代、子供三十歳代の二人の世帯の場合は幾らまでは差押禁止ということになるのかも紹介していただけますか。

並木政府参考人 お答えいたします。

 納税者が支給を受ける給与等につきましては、その納税者の最低生活の維持等に充てるため、国税徴収法第七十六条において、差押えをすることができない金額が定められております。

 具体的には、給与等から差し引かれる所得税、住民税、社会保険料などに相当する金額及び一月ごとに納税者本人につき十万円、また生計を一にする親族があるときはこれらの者一人につき四万五千円を加算する金額などの一定の金額については差押えが禁止されているところでございます。

 御質問の事例の給与等については、一般論で申し上げますと、少なくとも、母親本人についての十万円と生計を一にする子供一人についての四万五千円の合計十四万五千円については差押えが禁止されることになるものと考えております。

宮本委員 給与生活者の最低生活費程度に相当する金額については差押えは国税庁としては禁止をして、その基準の額も示されているわけですよね。ですから、この考え方からいったら、八万七千五百九十七円のパートの収入を差し押さえるというのは、これは絶対にやってはならないという事例だというふうに思います。

 現在の日本では、ほとんどのケースで給与収入は銀行口座に振り込まれているわけです。宮城県の機構のように、銀行口座に給与が入金されれば即差押えができるということになれば、この七十六条は死文化しているというようなものになってしまいます。

 総務省にお伺いしますけれども、七十六条で言われております給与の差押えの禁止を実現するためには、今回のケースなんかを見ても、滞納者は一体どうしたらいいのかということになってしまうわけですよ。会社からの現金による給与の支払いを要求するしかないということになってしまうんじゃないですか。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 給与が振り込まれた預金については、給与の差押えとの関係について言えば、法令等において差押えは禁止されていないものの、滞納処分に当たっては、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、法令に基づいて適正な執行に努めることが重要である、このように考えております。

宮本委員 国税庁にもお伺いしたいと思いますが、この宮城県の機構のように、給与が振り込まれた預金口座というのは、国税庁も差し押さえるんですかね。差押禁止財産である児童手当の振り込まれた預金口座が差し押さえられた事案では、鳥取地裁、広島高裁の判決で、差押えは無効との判決が出ております。

 国税徴収法第七十六条の給与の差押禁止を考慮すれば、銀行口座に振り込まれたからといって預金を差押えするべきではないというふうに考えますが、この点、国税庁の見解はどうですか。

並木政府参考人 お答え申し上げます。

 給与が振り込まれました銀行口座の預金と差押えとの関係について申し上げますと、法令等において差押えは禁止されてはいないものの、国税の滞納整理に当たっては、法令等を一律、形式的に適用するのではなく、滞納者個々の実情に即しつつ適切に判断することといたしております。

 したがいまして、国税当局といたしましては、例えば、残高のない銀行口座への給与の振り込みを待って、差押禁止額を含めていわば狙い撃ち的に差し押さえ、具体的に入金された差押金額が実際に使用できなくするような状況にすることは適切ではないというふうに考えておるところでございます。

宮本委員 ですから、今、ないとか、あるいはほとんどないも含めてですけれども、国税庁としては、もともと口座にほとんどお金がないような状況で、給与が振り込まれたのを待ってそれを差し押さえるのは適切ではないと考えていると明確におっしゃっているわけですよね。

 総務省は、国税庁と同じように、明確な答弁はできないんですか。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 総務省といたしましても、国税庁から先ほど御答弁があったのと同様、例えば、残高のない預金口座への給与の振り込みを待って、差押禁止額を含めて狙い撃ち的に差し押さえ、具体的に入金された差押禁止額が実際に使用できなくするような状況にすることは差し控えるべきであると考えているところでございます。

宮本委員 残高が少ない場合はどうですか。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、差押禁止額を含めて狙い撃ち的に差し押さえて、入金された差押禁止額が実際に使用できなくするような状況にすることは差し控えるべきであると考えているということでございます。

宮本委員 現実にはそれと違う事態が広がっているわけですよね。これは、やはり総務省として、研修をやっているとか何だとかというお話がありましたけれども、給与収入が振り込まれた銀行口座の預金は差し押さえるべきではないんだというのをはっきり指導すべきだということを申し上げておきたいと思います。

 これは宮城県だけの問題ではありません。低所得者世帯に負担の重い国民健康保険の制度のもとで、全国的に滞納問題は深刻になっております。その中で、全国で強権的な差押問題というのが起こっております。

 昨年、京都地方税機構が、国保の滞納処分として、日本政策金融公庫が行う国の教育ローンが振り込まれた銀行口座を差し押さえました。その子供の専門学校の学費が期限内に納付できないという事態が発生しました。

 これは、京都府大山崎町に住むAさん、建設関連の自営業者で、四人の子供のうち、長女が専門学校に通っております。不安定な収入の時期に国民健康保険税の滞納が続き、京都地方税機構から滞納整理の督促が続いておりました。納付相談の後、子育て費用を維持しながら納付できる範囲での分納の計画を立てて、約束した金額をずっとこの方は払っておりました。

 ところが、昨年の春に機構は財産調査を実施し、取り立てる財産がないことを確認したにもかかわらず、返済額の、分納額ですね、返済額の増額を要求し、ついに、昨年六月十一日に、国の教育ローンが振り込まれた預金口座残高五十万六千百二十六円全てを差し押さえました。この銀行口座は、国の教育ローンが振り込まれた後、日本政策金融公庫への利払いと学費納付以外には使われていない、そういう口座であります。

 八月末、最終学年後期分の授業料約五十万円を払うために、何度も差押解除を求めたが、解除されずに、納期内に学費を払うことができなかった。とんでもない例であります。

 総務省に確認しますが、日本政策金融公庫が行う国の教育ローンというのは差し押さえることができるんですか。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 教育ローンにより借り入れた資金については、法令上、差押えを禁止する規定はないことから、差押えをすることは可能であると考えております。

宮本委員 とんでもない答弁ですね。

 国税庁に確認しますが、換価の猶予の申請書や納税の猶予申請書を提出する際に添付する財産収支状況書の支出欄に生活費の項目があります。これは最低限の生活を保障するための項目だと思うんですが、生活の維持のために必要不可欠な支出に教育費の項目も含まれております。ここには子供の大学や専門学校の授業料も含まれますよね。

並木政府参考人 お答えいたします。

 納税者の負担を軽減し、早期かつ的確な納税義務の履行を確保するため、国税庁としては従来から、納税者個々の実情を十分に把握した上で、納税緩和制度を適切に運用しているところでございます。

 猶予制度の適用に当たりましては、納税者から、換価の猶予申請書や納税の猶予申請書とともに、今御指摘のございました財産収支状況書の提出も求めているところでございまして、その中で、税金の納付可能基準額を算出するために、三という欄で、今後の平均的な収入及び支出の見込金額(月額)を記載してもらいますが、その支出欄の生活費には、納税者及び納税者と生計を一にする配偶者その他の親族の年齢、所有資産、健康状態などの事情を勘案して、教育費や養育費など生活の維持のために必要不可欠な支出として、必要最低限の所要資金の額を加算することができることとしておりまして、その教育費には子供の大学や専門学校の授業料も含まれているところでございます。

宮本委員 含まれるわけですよね。

 そうすると、国税庁は、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金を差し押さえることはしないということでよろしいですね。

並木政府参考人 お答え申し上げます。

 授業料のために保管されている預金は差押禁止財産とされてはいないものの、国税の滞納整理に当たりましては、法令等を一律、形式的に適用するのではなく、滞納者個々の実情に即しつつ適切に判断することとしている点は、先ほどお答えしたものと同様でございます。

宮本委員 つまり、確認しますけれども、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金を差し押さえるということは、国税庁はやっていないわけですよね。

並木政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、法律、法令等を一律、形式的に適用するのではなく、滞納者個々の実情に即しつつ適切に判断しているというところが実態でございます。

宮本委員 いや、ですから、適切に判断するということになれば、先ほど国税庁は、納税の猶予や換価の猶予の際に授業料のこともちゃんと考慮するんだという話がありましたから、これは当然、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金は差し押さえていないんじゃないですか。これ、先ほどの説明と矛盾するんじゃないですか。差し押さえないということですよね。

並木政府参考人 お答え申し上げます。

 差押禁止財産とされていないわけですけれども、国税の滞納整理に当たっては、法律を一律、形式的に適用するのではなく、まさに滞納者個々の実情に即して適切に判断しておりまして、それに応じて差押えを行わない場合もあるし、もちろん、場合によってはその実情に応じて差押えをすることもあるということが、それがまさに実態でございます。

宮本委員 いやいや、今の話では、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金を差し押さえることもあるということですか、国税庁は。

並木政府参考人 お答え申し上げます。

 まさにその個々の実情に応じてということでございまして、その振り込まれた金額なりが授業料に充てられるということが事前にわかっておれば、当然、そうしたものを差し押さえることは行わないということでございます。

宮本委員 ありがとうございます。

 つまり、授業料に充てることがわかっていれば差し押さえないということなんですよね、国税庁は。

 ところが、先ほど総務省は、差し押さえることができると答弁をされているわけですけれども、これは国税庁と同じように、差し押さえるべきじゃないんじゃないですか、はっきりと子供の専門学校や大学の授業料のために使っている口座のお金だとわかっていたら。違いますか、総務省。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 先ほど国税庁から御答弁があったとおり、授業料のために保管されている預金は差押禁止財産とはされていないものの、地方税においても、滞納処分に当たっては、各地方団体において滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めていただくことが重要であると考えております。

宮本委員 総務省のおっしゃっていることは、今国税庁が最後に述べられたことと違うんですよね。

 国税庁は、授業料のために保管している銀行口座だとわかっていれば差し押さえないと言ったんですよ。何で同じ立場に立たないんですか、総務省は。おかしいじゃないですか。

 何が起こるのかというのが問題なんですね。国の教育ローンが振り込まれた預金口座を全て差し押さえると、学費は払えず退学になります。そして、国の教育ローンの特約条項によればどうなっているのか、これは財務省に確認したいと思いますが、教育ローンで授業料を払わずに退学になるということになったら、期限の利益は喪失され、一括返済が求められる、こういうことになるんじゃないですか。財務省、仕組みを説明してください。

市川政府参考人 お答え申し上げます。

 当公庫が実施いたします国の教育ローンは、主に学生生徒の保護者の方々向けに高校や大学等の入学資金や在学資金を融資するものでございまして、本資金につきましては、目的外流用を防ぐ観点から、契約書の中で、借入金を公庫が認めた資金使途以外に使ったとき又は借入れ後長期間使わなかったときには一括弁済を請求できるという特約条項を設けております。

 ただいま御指摘のございました退学につきまして、一般論として申し上げますと、仮に私どもが退学という事実を把握した場合においても、それで自動的に一括弁済を求めるということではなくて、資金の使用状況を確認いたしまして、目的外流用がなされていないか、また、どれだけの使い残しがあり、目的外流用のおそれがないかなどの点を踏まえまして、一括弁済を求めるか否かを検討することとしております。

 なお、一般に公庫が繰上げ返済を求める場合でも、常に硬直的に一括返済を求めるということではなく、確実な弁済確保の観点から、お客様から十分信頼できる申出があれば、お客様の個別事情や御要望をお伺いしながら丁寧に対応することといたしております。

 私どもとしては、こういう方針でやっておりますが、仮にそうでないというケースがあるという御指摘でございましたら、早急に調べさせていただきたいと存じます。

宮本委員 今回のケースで一括返済を求められたということを私は言っているわけじゃないんですよ。仕組みとしては、一括返済を求められるという特約条項になっているわけですよね。

 今回のこの方の場合は、ほかに、知り合いに借りてお金を賄って、分割して授業料を納めたんですよ。そうしないと、子供のために親も必死ですからそうなりますけれども。

 本来、国税庁が差し押さえないと言っている大学や専門学校の授業料のための口座を差し押さえる、国の教育ローンを差し押さえるなんて、絶対にあってはならないわけですよ。

 時間が少なくなってまいりましたから、麻生大臣とあと総務副大臣に今までのやりとりの感想をお聞きしたいと思いますが、給与あるいは教育ローンが振り込まれた銀行口座を差し押さえる地方税あるいは地方の国民健康保険税の滞納処分について、これはあってはならないということだと思いますが、まず麻生大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 これは地方税の話で、当局の対応についてのコメントは差し控えさせていただきます。

 また、国税庁が先ほど答弁しておりましたように、国税の滞納整理というのに当たりましては、これは滞納者のいわゆる個々の実情に即して、当然のこととして法令に基づいて適切に対応しているものと承知をいたしております。

 財産の差押えに当たりましても、これは滞納処分に関する法令を一律、形式的に適用するのではなく、いわゆる実情に応じて適切に判断する必要があるだろうと考えております。

宮本委員 総務副大臣にもお伺いしますが、国税庁は、教育ローンが振り込まれた口座、これは授業料に充てるというのがわかっている口座については差押えをやっていないという答弁がありました。しかし、総務省は、禁止財産、だからできるという答弁しかされないわけですね。

 基本的には、児童手当なんかと同じように、これは差し押さえるべきでない。子供の教育を受ける権利というのは、やはり憲法で保障されて、守らなきゃいけないものですから、これは総務大臣とも相談して、省内で、国税庁同様、授業料に充てる口座とわかっていたら差し押さえない、こういう通知は、やはり地方自治体への徹底は最低限やるべきだと思いますが、いかがですか。

鈴木(淳)副大臣 まず、滞納処分に関する個別事案でございますが、これは個別性、具体性が強い問題で、各地方団体の税務当局の判断と責任において対応されるべきものと考えております。

 事務方から答弁しておりますとおり、地方税の滞納につきましては、公平公正な徴収事務を行いその解消に努めていく必要がありますが、その一方で、地方税法におきましては、滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができるとされております。

 先ほど答弁したとおり、総務省としましては、地方税関連事務の執行に当たっての留意事項を示した通知を出しておりまして、納税者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めるよう示しているところでございまして、各地方団体におきまして、関係法令や通知に沿って適切に対応していただきたいと考えております。

 今後とも、機会を捉えてこの旨を地方団体に周知するとともに、地方団体の職員を対象とした徴収事務に関する研修を通じまして、徴収事務に従事する職員の資質向上に努めてまいりたいと思います。

宮本委員 ですから、国税庁はやっていないわけですよ。その点をぜひ総務省内でも検討してください、国税庁ではやっていないんだと。

 今、一般的な回答をされましたけれども、国税庁では、授業料のための口座だとわかっていたら、それは差し押さえない。実際にやっていないわけですから。だけれども、実際は、地方自治体ではやられているわけですよ。何で、国がこれはやっちゃいけないと思っていることが許されるのか。そこをちゃんと省内で検討すると、それだけ答弁ください。

坂井委員長 宮本君、申合せの時間が過ぎておりますので。では、一言だけ。

鈴木(淳)副大臣 先ほど来答弁の中にありますように、その趣旨を含んだ形で研修も行っておりますので、御理解賜りたいと思います。

宮本委員 終わります。

坂井委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。

 質疑のお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 末松委員からお話もございましたけれども、私からも、下関北九州道路について、そして、それをめぐる政府対応について幾つか確認をさせていただきます。

 下関北九州道路は、関門トンネル、そして関門橋に続く第三の道路として構想が描かれました。一九九八年に海峡横断プロジェクトとして閣議決定をされていますが、採算が見込めないという批判を受けて、国交省が二〇〇八年に事業の見送りを決めて、事実上、凍結をされておりました。

 このプロジェクトは、実は、全国で六ルート計画されていました。下北道路以外のほかの海峡横断プロジェクトの関係自治体も、やはり地元の大橋の実現に大変期待をしていたわけですけれども、それから二十年がたって、この下北道路が決まったわけです。下北、下関だけがほかの海峡道路とどう違うのかというほかの自治体からの声がとても強くなっています。

 麻生大臣の側近の大家敏志参議院議員も、大臣も出席した北九州市の会合で、必要な公共事業はきちんとやるのが安倍政権の目指す道だというふうに発言をされていますけれども、この説明だと、ほかの大橋は必要がないというふうになってしまいますが、こういう認識でよろしいんでしょうか、大臣。

麻生国務大臣 この大家先生の発言とか、今の話、いろいろありますけれども、少なくとも、この下北道路、私どもは第二関門というように記憶していたんですけれども、この第二関門の話につきましては、これは、いわゆるこの間の災害やら何やらも特に関係したんだと思いますが、とにかく、物流や災害時の代替路ということ、これはたびたび通行どめになったりしておりますけれども、重要な役割を持つ可能性のある道路という位置づけなんだと思っておりますので、これは関係自治体においていろいろ調査をされた結果、こういった形になったので、あの当該道路の整備の必要性については、これは調査内容を踏まえつつ関係省庁が調整をされていくんだというように理解しておりますが。

緑川委員 麻生大臣、重要な役割を果たすというふうなお話がありました。詳細な、ここが選ばれて、ほかの海峡大橋がなぜ選ばれなかったとかいう合理的な説明が求められる事案なわけです。

 きょうは、大塚国土副大臣もお見えですけれども、この点についての通告はないんですが、もしこの場でお答えをいただければと思っておりますが、BバイC、コスト・バイ・ベネフィットを含めた合理的な説明、なぜこの下北道路が選ばれたのか、この場でもし御説明をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

大塚副大臣 お答えをいたします。

 通告はなかったわけでございますが、率直に言いまして、いろいろな重要性、渋滞緩和、そういったことも踏まえまして、やはり最重点なところからまず我々は取り組んでいかねばならないという認識のもとに話が進んでいくというふうに、認識の中で考えておるところでございます。

緑川委員 最重点というお話がありましたけれども、結局、次が選ばれなかったとすれば必要がなかったというふうな結論にもなりますが、このあたりの御認識はいかがでしょうか。

大塚副大臣 我々も、長年にわたって調査し、いろいろな面で地元の方等の御意見も頂戴しながら、そして自治体とも協議しながら、話を進めていかねばならないという重要案件でございますので、そういった意味におきましても、やはり重要性という観点から話が進んでいくんではないかというふうな思いで考えておるところでございます。

緑川委員 先ほどお話ししたように、やはり、BバイCに基づく説明、この資料を、委員長、この委員会に御提出を願うものでありますが、ぜひお願いをしたいと思います。

坂井委員長 後日、理事会でかけてみます。

緑川委員 これに関連して、昨年の十二月の十九日に下北道路の陳情を吉田参議院議員から受けた際の財務省の対応についてお尋ねをしたいと思いますが、この陳情の際のやりとりを文書でなくてメモしているものがあるのかを、きのう財務省に問い合わせました。きのう文書で回答をいただいたのが一枚目の資料でございます。陳情を受けた際にメモはとっていない、財務大臣が予算に関する陳情を受ける際に通常はメモをとっていないという回答であります。

 これは大変驚きました。財務大臣への陳情ではメモをとらない、つまり記録をとっていない、話を聞いているだけで、陳情が終わった後、立ち会っていた事務方がまとめることをしていない。

 陪席する職員がいるのにあえてメモをとらない理由は、大臣、何でしょうか。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 陳情につきましては、先方からの要望をしっかりとお伺いすることが重要であり、その内容については、通常、先方から手交される要望書に結実されているものと考えております。このため、予算に関する多くの陳情を日々受ける中で、一般的には、面会の模様について逐一メモを作成するようなことは行っていないところでございます。

緑川委員 しっかり伺うと言いながら、麻生大臣にかけた言葉が何であったのか、そして、それを受けて麻生大臣がどういうお答えをされたのか、生の言葉というのは要望書には載りません。記録をとらないということは、吉田議員がどんな言葉、やはり生のやりとりが重要なわけです。陳情がとにかく多い、大臣であればなおさらであるというふうに思いますが、多いからこそ、むしろ、どんなやりとりがあったのか整理をしておかなければならないんじゃないでしょうか。大臣、このあたり、いかがでしょう。

麻生国務大臣 予算編成の時期というのは、どれぐらい財務大臣室に行かれたか知りませんけれども、まず、数はすごいですよ、正直申し上げて。そういった意味で、数多くの陳情をお受けしていますけれども、お話を伺う場なのであって、その場で私が結論を出すことはありませんから、そういった意味では、持参する方が要望書を出されておりますので、それがもう全て書かれておると思いますので、したがって、やりとりを記録で残すということはありません。

緑川委員 陳情は、やはり、全部、そうすると、大臣は、もちろん、聞くことが基本姿勢、シンプルな、こういう対応になると思いますけれども、やはり、かけた言葉というのは記録に残されるべきだというふうに思います。

 内容は、そうすると、大臣、事務方が何も書いていないということは、覚えていらっしゃるんですか、陳情内容は。あるいは、陳情があっても記憶にないというふうに先日もお話がありましたけれども、結局はそれは違っていたわけですね。そもそも、メモをとらないのであれば、せっかく、大事な陳情、財務大臣にお願いしても、その内容は担当の課に書面では伝えられない。伝言ゲームで、口頭で担当課に伝えるんでしょうか。大臣、どうなんでしょう。

麻生国務大臣 少なくともそういう種の陳情が来たときに、その関係の書類を持ってこられる方、議員さんとか地方から連れてこられた方というのが圧倒的に多いんだと思いますけれども、その話を聞いて、それを全部メモれというわけですか。(緑川委員「やりとり、せりふとか」と呼ぶ)そういうやりとりの話、私どもは伺っております。基本的にはそれだけですから。

 後の話を出ていなかった方がどう言われるかという話につきましては、私どもは基本的に、その方の話なのであって、私どもは、その言葉は、私がこう言ったとかああ言ったという話は、ほとんど基本的には陳情としては伺わせていただきます、それは基本でありますので。それに答えが出ることはありませんから。それを聞いて、前向きな答えをもらったと、それはみんな言われるんですよ。私どもはそう思っております。私どもは逆に陳情する立場の方に長いこといましたので、大臣が何と言われた、前向きに検討すると言ってもらえました、それはみんな言われますよ。

 実際、私どもとしては、答えが、伺っておきますというのが基本だということを、財務大臣室に行かれたらわかりますので、一回お見えになったらお答えを見せます。

緑川委員 じゃ、何ですか、全部聞いているだけという姿勢になってしまいますか。大事なお願いなんですよ。それは、地元の懸念を、別に、何かひいき目で見るということではないですよ。聞くということは、それに対して答えるということがあるはずなんです。

 例えば国交省は、そうした場合に、陳情に対する対応結果について、国交省内の関係者にメールで送って共有しているんですね、事務方内で。財務省では、相手方の陳情の内容については省内でどうやって情報共有しているんでしょうか。何も共有していない、そういう体制、そういう認識でよろしいんでしょうか。いかがですか。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 陳情は、大臣に陳情があったりとか、また事務方にあったりとか、それぞれのレベルで行われておりまして、もちろん、お話を伺うことが主眼でございますけれども、特段何か伝えなければいけないようなことがあれば共有することもあると思いますけれども、基本的には、それぞれ受けたレベルでお話を伺うにとどめる、そういうことが基本でございます。

緑川委員 そうすると、何ですか、重要性を事務方が判断をして、これは重要だと思ったから書くとか、重要じゃない、これはもう何も書かない、こういう判断を職員がしていいんでしょうか。それは、やはり、記憶にないということを理由づけする温床になってしまうと思いますよ。

 国の予算とか財産の管理を担う財務省が、どういう予算や税制の措置を求める声があるのか、これは、ひいきするわけではありませんし、でも、純粋に、知る上で重要なお願い、重要な機会であるはずですよ。陳情のやりとりの記録は何もないということが、やはりそれ自体信じられませんけれども、省内では公文書の改ざんがあって、文書の管理の仕方、記録の残し方に国民からかつてないほどに厳しい目が向けられているということを念頭に置いて、どうか取り組んでいただきたいというふうに思います。

 これだけをお尋ねするわけにはいきませんので、別の質疑に入ります。

 ことしの二月ですけれども、所得税法改正の質疑でもお話がありましたけれども、消費増税に当たって需要が減退しないような住宅購入政策をとる中で、やはり、新築の購入を手厚くしていくことによって家余りが今ますます加速している時代であります。中古住宅に係る税制の見直しを通じた活用策についてお尋ねをしたいと思います。

 まず、お配りした資料の二枚目、2ですけれども、全国の総住宅の数、空き家数、そして空き家率のデータ、これは野村総合研究所が出しています。

 ごらんいただくように、人口が増加していた時代につくられた住宅は、核家族化そして単身世帯の増加と相まって、まだまだふえ続けています。総住宅数は二〇三三年でもふえ続ける見込みですけれども、その住宅の数は、増加割合以上のペースで伸びていますが、それが空き家であります。

 二〇一三年の空き家の数は、実績の値で八百二十万戸、そして、一九九三年の四百四十八万戸から比較をすれば、二十年間で一・八倍です。二倍近くに増加しています。その後、二〇一八年では、民間の予測値でございますけれども、千七十八万戸、さらに、十五年後の二〇三三年には空き家の数が二千百七十万戸と倍増していく。空き家率が、急激に、また今後に向けてますます高まっていくことが見込まれています。

 このころになると、賃貸用あるいは売却用を含めた広い意味での空き家の割合が三割を超える、三〇・二%。そして、この数字があくまで平均ということで見れば、地方を中心に三割では済まない、高いところで四割、五割、相当数出てくるという推計になります。

 実際に、都道府県別のデータが次の資料の二枚目でございますが、全ての住宅のうち賃貸用そして売却用を除いた狭い意味での空き家、これがその他空き家、これが一般に言われる空き家であります。長期に不在であったり取壊し予定の住宅、その割合の全国平均は五・三%ですが、ごらんいただくと、鹿児島県、高知県、そして和歌山県などは、その他空き家の割合が一〇%を超えている。都心以外の地域で、やはり割合が一層高くなっているところであります。

 空き家がふえている要因ですけれども、やはり、高度経済成長期以降に進められてきた新築、持家重視の政策が維持をされて、新規物件の供給が変わらない勢いで続いていますけれども、一方で、中古住宅もふえ続けていますが、その市場が伸び悩んでいる。柱である住宅リフォーム市場の規模は伸び悩み、中古住宅の取引の数も、例えば二〇〇八年、およそ十六・七万戸です。五年後の二〇一三年も十六・九万戸。空き家の数自体がこの二十年でほぼ倍になっているのに、中古住宅の取引の数は変わっていかない。そもそも、空き家の数に比べれば、この十六万台、桁違いに取引の数が少ないわけです。

 新築中心の市場から、やはり中古住宅活用型の市場が今望まれているところであります。中古住宅市場の活性化を図るための税制あるいは予算上の措置、この取組について、大臣、御所感を伺います。

麻生国務大臣 いろいろな事情があるんだと思いますけれども、間違いなく人口は減っている。新しい住宅を建てる、中古住宅を建てるにしても、新しい世帯数の数は減っていっていますから、高齢者の世帯は別ですよ、そういったのが減っていますから、そういった意味では、基本的にはなかなかそういったものがふえてくる事情にないことは確かだと思いますね、まず、人口の絶対量からいったら。

 次に、各世帯というのが、子育て世帯とか高齢者世帯とか独居世帯とかいろいろあるんですけれども、より確保できるようにするために中古住宅の整備というのは間違いなく大切なものだと思っておりますので。

 税制においては、中古住宅の購入とかリフォームに向けて、住宅ローン減税というのは、これは御存じですわな。あるのは御存じですか。それから説明した方がいいですか。知っているなら説明するのは時間の無駄だから。しなくていいですね。じゃ、一定の耐震改修、リフォームの話も知っておられますね。そういったような形で現金を行った場合、費用の一部に相当する額というのは減税をする特例をもう既に設けてさせていただいておるんですが、中古住宅市場の活性化というのに関しまして、これは税制ではなくて予算上につきましては、長期優良住宅リフォームなどの支援を既に行わさせていただくということになっております。税制、予算、それぞれ、重要性を踏まえた対応をしているんですけれども。

 基本的に、中古住宅というものの値段は誰が決めるんですか。僕はこれがぜひ聞きたいんですよ。中古住宅というのは誰が値段を決めるんですというものがないでしょうが。どうしてないんですかね。私はこれは前から不思議なんですけれども、ないんですよ、日本というところは。持家と話して、両方で決めちゃうわけ。

 これは本当かよ、大丈夫かよというのをきちんとしてくれるという第三者機関、これはやられたらどうです、御興味がおありなら。前からこれは私は言っておるんです。財務大臣なんかやる前の立場からずっと、もう二十年ぐらいこの話をしているんですけれども、誰もやられませんから、この話は。そういう業界の人に言ってもやらない。何かあるんでしょうね。

 中古住宅を、幾らなのかというと、海外に行ったら、ちゃんと中古住宅だけのフォームがあって、それにきちんとした制度があって、それによって第三者機関が出てきて、これは幾らですと決めて査定してくれるんですよ。ところが、今の場合は、売り主と買い主だけの話、若しくは仲介が間に入る。だましているかもしれません。きちんとしたものが何でできないんです、この国では。僕はそれが不思議でしようがないんですけれども。

 もしやられたいんだったら、そういうのに興味がおありだったら、そういったことを一生懸命やられた方が実益にかなう、私自身はそう思いますけれども、今、現実はありませんから、今申し上げたような形になっているんだと思います。

緑川委員 大臣が先日もお答えいただきましたけれども、やはり古い住宅を大事にされている。築百五十年でいらっしゃいましたっけ、かなり、一世紀を超えるような築年数の中で、四世代で暮らしていらっしゃった。エレベーターも、今、手厚い住宅支援があるならばぜひつけたいというお話がありました。

 住宅ストックをさびつかせない、価値を維持していくという視点はとても重要でありますし、これから高齢化が進む中で、施設の入所、地域包括ケア、こういうものが重要になっていく中で、やはり家族が、これまで安心して、これからも最後まで安心して住み続けられる住宅の整備、この支援ということ、ストックを効率よく利用していくべき時代であるというふうに思います。

 国では、二〇一六年に、今後十年間の住宅政策の方向性について、住生活基本計画を定めております。空家等対策計画というものを策定した市町村の数を、二〇一四年ではゼロでありましたが、これを二〇二五年には全国の八割にふやすということを目標にしています。また、その他空き家の数を二〇二五年時点で四百万程度に抑える、そういう数字を初めて国としても掲げていますけれども、その他空き家の数は、既に、実は、二〇一三年時点で三百二十万戸です。先ほどの予測値のデータに照らしても、倍以上に空き家がふえていくわけですから、四百万戸に抑えるという目標は、私は相当厳しいというふうに思うんですね。

 計画の策定から三年余りがたつことになりますけれども、現状の御認識、そして取組の状況はいかがでしょうか。

大塚副大臣 お答えをいたします。

 我が国におきまして、本格的な少子高齢化、人口減少を迎える中、空き家対策については喫緊の課題だというふうに考えております。

 議員お尋ねの成果指標に関しましては、空家等対策計画を策定した市町村数については、平成三十年十月一日時点で、全市町村の約五割に当たる、策定が済んでおるところでございます。また、策定予定の市町村が約四割を超えることから、順調に策定が進んでいるものと考えております。

 また、その他空き家の戸数につきましては、平成三十年住宅・土地統計調査の集計が現在、総務省において進められているものと承知をしており、今後、集計結果を注視していく必要があると我々は考えております。

 いずれにいたしましても、空き家対策に当たっては、住生活基本計画に定められた成果指標の達成に向けて、地域の実情に応じて、活用できるものは活用し、除却すべきものは除却するということが重要であるというふうに考えております。

 このため、空き家を利活用するという取組といたしまして、インスペクションの活用や、消費者が安心して購入できる物件に対し標章付与を行う安心R住宅の制度、また、民間の空き家等を活用する住宅セーフティーネット政策、また、用途変更の円滑化による住宅以外の用途としての活用を促進しているところでございます。

 また、空き家等対策特別措置法等の活用によりまして、公共団体が行う空き家除却、活用等の取組に対する支援や、空き家の除却、市場への流通を図るための税制措置等を行っておるところでございます。

 さらに、今般、空き家対策の取組を強化するために、予算、また税制面で新たな取組を講じることとしております。

 こうした取組を通じまして、空き家対策に積極的に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

緑川委員 やはり、これまでの取組で効果が出ているところ、出ていなかったところ、さまざまな角度からサポート、支援を行ってきたわけですね、これまでも。その上で、空き家が倍増しているんです。そういうところの総括、そして今後の展望をあわせて改めて、今いろいろとお話しいただきましたけれども、これまででいかぬかったところ、余りよくなかったところと、これから力を入れていきたいところをちょっとかいつまんでお話しいただけますでしょうか。

大塚副大臣 お答えをいたします。

 昨年十月一日現在で、空き家等対策特別措置法に基づく措置の状況を見ますと、空家等対策計画が全市区町村の約五割に当たる八百四十八市区町村の策定でありまして、周辺に悪影響を及ぼす特定空き家等に対する助言、指導が一万三千八十四件、勧告が七百八件、命令が八十八件、代執行が百十八件というふうに執行されておるところでございます。

 また、平成三十一年におきましては、同法の活用を促し、空き家対策の取組を強化するために、例えば、地方公共団体が行う空き家の除却、活用等の取組を支援する空き家対策総合支援事業の要件の緩和、また、密集市街地のうち条例などにより防火規制が行われている地域におきまして、空き家の除却費を全額公費負担で行う措置の創設、さらに、空き家の除却や市場への流通を図るための税制措置に関しまして、適用期間の延長ほか、被相続人が相続開始直前に老人ホーム等に入所した場合などを含めまして、一定の要件のもとで適用対象に追加するなどの、予算、税制面で新たな取組を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、空き家の増加を抑制していく取組を積極的に取り組んでまいりたい、かように考えているところでございます。

緑川委員 確かに、市町村の計画策定が五割になり、そしてまた、二〇一四年に比べたら本当に明らかにふえましたけれども、策定中の自治体も含めて順調だというお答えでありました。しかし一方で、市町村に対するサポートはいろいろ御説明いただきましたけれども、空き家所有者の事情、そうしたもののサポートということがまだまだ欠けている部分があるんじゃないかというふうに私は思っているんですね。

 地域を回っていますと、実質、空き家が物置になっていたり、管理はされているけれども全く利用されていないという空き家がやはりふえている。理由としては、解体費用をかけたくないから。一坪当たり三万円から四万円、三十坪になれば百二十万円とかそれ以上高額になる場合がやはり多いということなんです。

 あるいは、取り壊すと固定資産税が高くなるからという理由もかなり多く聞かれます。固定資産税については、たとえそれが空き家であっても、住宅用地特例というものがあって、住宅用に使われている土地の税金を軽くする措置が適用されることで、固定資産税が更地の場合に比べると六分の一になります。一方で、建物を解体した場合には、特例が取り払われてしまいます。適用されなくなって課税額が六倍になってしまいます。解体しようということには、これではまずなりません。

 そもそも、解体をするかどうか、所有者が家屋を処分する意思決定をできないというケースがやはり多いです。例えば、世帯主が老人ホームで介護を受けている場合には、世帯主が亡くなっても、共同相続の複雑さが絡んで、処分をするというような意思形成がやはりしづらい。結果として放置されてしまうケースが多くなっています。

 ここで伺いたいんですけれども、やはり、法律の特例、権利関係の複雑さも空き家の増加を助長させている一因なんですね。そこで、二〇一五年に空き家対策特別措置法というものも制定されましたけれども、例えば、固定資産税情報の利用が可能になったり、また、立入調査が可能になったり、特定空き家となった場合には強制的に空き家を取り壊せる、また、税制優遇措置の除外対象になる可能性もあるわけですけれども、ことしで制定から四年がたつわけですから、ふえ続ける空き家の抑制に対しての総括、この取組の状況、どうなっているでしょうか。

眞鍋政府参考人 空き家特措法の進捗状況について御説明申し上げます。

 先ほど大塚副大臣の方からも御説明申し上げましたとおり、この法律に基づいて市区町村が空家等対策計画をつくることができるということがございますが、それについては全市区町村の五割にわたる市町村で既に策定済み、さらに、空き家特措法に基づいて、特定空き家等、これは周辺に悪影響を及ぼす空き家のことでございますが、それに対する助言、指導が一万三千八十四件、勧告が七百八件、命令が八十八件、代執行は百十八件と、かなりの進捗を見せているところでございます。

 このように、空き家特措法に基づいてさまざまな手段で市町村の空き家対策が現在進められているところということで認識してございます。

 また、私どもといたしましても、こうした市区町村の取組を支援する観点で、交付金や補助金による支援策を講じております。

 具体的に言いますと、空き家の活用、除却、あるいはそれに関連する事業に対しまして、補助金や交付金という形で支援しておりまして、そうしたことを通じて、空き家の利活用あるいは除却ということを進めているところでございます。

 これも先ほど副大臣からも答弁させていただきましたように、その要件の緩和、そうしたことについても取り組ませていただきまして、更に市町村を支援してまいりたいと考えてございます。

緑川委員 税法までも行きたいんですけれども、やはり、特措法の、まず追いかける形、もう今、空き家が本当に爆発的にふえているところでの対応が間に合っていない中でのこの意識を持ってもらって、省庁で横断的に議論を進めて、実効性のある政策を求めてまいりたいと思います。

 質問を終わります。

坂井委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 国民民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣、政府の皆様におかれましては、連日お疲れさまでございます。

 また、先般もそうでありましたが、科学技術特別委員長を拝命しておりまして、理事会で特別に御了解いただいてこの場に立たせていただいております。ありがとうございます。

 まず、冒頭、昨晩、三沢基地所属のF35が行方不明ということでありましたが、ニュースが飛び込んでまいりましたけれども、防衛大臣が墜落と認定したということでありまして、まことに心配でありますと同時に、搭乗員がいまだ行方不明ということでありますので、聞けば、秋田の救難隊が向かってくれておるということでありますけれども、本当に夜を徹しての救難活動であったかと思うわけでありまして、一刻も早い搭乗員の無事の収容、救出を祈るばかりでございます。

 さて、きょうは日銀に来ていただきましたので、通貨の話が、改刷の話が出てございますけれども、実は大事な観点があろうかと思っております。日本銀行の、例えば昨年度の収益、大体総体は幾らぐらい、そのうちの専らは何か、教えてください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 平成二十九年度、昨年度の日本銀行の収益全体でございますけれども、経常収益は約一・八兆円でございました。

 この内訳ということでございますけれども、この一・八兆円のうち、国債の利息収入が約一・二兆円、ETFの分配金が約〇・三兆円、株式の売却益等が約〇・三兆円となってございます。

古本委員 ありがとうございます。

 国債が、要は利払いが一・二兆ということでありますけれども、いわゆるシニョリッジの問題です。通貨発行益と言われるもの、これは、一万円を刷って、紙代、印刷代が仮に千円かかれば、差引き九千円がシニョリッジとは思いません。

 恐らく、負債の部に立てる一万円券を、日銀券を使って国債を買い支えて、そしてその国債の利払い費が入るというわけでありまして、紙幣の総量が、福沢諭吉翁の、今度でいえば渋沢栄一翁の発行する総量が、断面で捉えると、実は、八四年の聖徳太子から変わったときのころは学生時代でしたから一万円札を拝むことは余りありませんでしたが、総量をきちんと管理をなさるんでしょうけれども、ある断面で捉えたら、実は、今度の渋沢翁の新紙幣が、改刷によって総量が一瞬ふえると、ある時間、ある期間ふえると、国債の利払い費がふえて日銀がもうかるんじゃないかという考え方もあるかと思うんですが、その辺はいかがですか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 銀行券に対する需要は、基本的には、人々がふだんの買物等における決済でどのぐらい持っているか、それから、銀行券を持つということは利息運用できませんので、いわば手放す利息、金利がどのぐらいかといったこととの関係で決まってまいるというのが基本だろうというふうに思います。

 したがって、改刷された場合も、基本的には、少し時間をかけながら古いお札が新しいお札に順次入れかわっていくということでございますので、おっしゃるとおり、一時的に、多少、銀行が在庫を厚目に持つというようなことはあろうかと思いますけれども、基本的には、改刷が起きたから人々が財布にもっとたくさんお金を持つということは多分ないだろうと思いますので、銀行券需要には影響を与えないというふうに考えておりますし、前回の改刷、二〇〇四年、あのころは、例のペイオフの解禁等がありまして現金に対する需要が大分変動しましたので、ちょっと傾向が見にくいんですが、当時も、改刷があるがゆえに銀行券が残高がふえたということはなかったように記憶してございます。

古本委員 よくわかりました。

 円は、基軸通貨ではありませんけれども、自国通貨であります。これを、一般に、輪転機を回せば、国債を買い支え、その利払い費が日銀に入る。日銀の昨年度の一・八兆円の収益のうちの大半がシニョリッジであった、一・二兆円ですから。ということを今御説明いただいたと受けとめましたので、改刷によってそこで何かスプレッドが生まれるという話ではなくて、粛々と置きかえていくということと伺いました。恐らく、経済新聞をして、電子マネー化を目指す時代にあって、新札ということに対して、改刷に対して、若干ヘジテートする意見がありましたけれども、私はむしろシニョリッジのことで何か考えがあるのかなと思いましたので、確認した次第であります。

 マーケットがあいている時間ですので、どうぞ、日銀はこれで、委員長、お帰りいただいて大丈夫です。

坂井委員長 では、雨宮副総裁は御退出ください。

古本委員 ありがとうございます。

 続いて、先般、当委員会で、実は私、地元で豚コレラが発生し、大変心が痛んだし、その後も陸上自衛隊の皆さんが中心になって大変な活動に当たっていただいたことは、この場で紹介したわけでございます。

 その後、アフリカ豚コレラが更に発見されたということが今月の二日、報道がありましたけれども、何やら、本年一月に中部国際空港で二件発見されたということでありますけれども、これは、前に申し上げたビーグル犬が発見したんですか。誰が発見したんですか。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ございました二例でございますけれども、これは、検疫探知犬ではなく、税関検査、あるいは動物検疫所の職員の口頭質問により所持を確認いたしました。

 と申しますのは、この二件につきましては検疫探知犬の活動を行っておりませんでした。

古本委員 農水省も、ぜひ、麻生大臣が聞いておられるので遠慮なく言ってください。

 大臣、中部国際空港には何と三頭しかいなくて、もはや労働強化の状況になっておりまして、これはやはり何とかふやしていただきたいなと思うわけなんです。

 実は、私も、質問した以上、平野幹事長にも頼んで、私どもとして、党として羽田の動検に調査に行かせていただいて、実際、ここで紹介したバッキー号に会ってきました。本当に愛くるしくて、中国便が到着する、まあ、中国と断定するとよくありませんが、手数が足りませんので中国便を中心に探索されておられましたけれども、かわいいビーグル犬がとおっと歩いてきて、持っておられる人のスーツケースのところにぺこんと座り込んで、へたり込んで動かないんです。一切ほえませんで、それで、その人が思わずさわっているうちに連れていかれるという、実にいいシステムなんですね。ほえられたらどきっとしますし、本当にビーグル犬は、ハンドラーの皆さんに訓練されていて、すばらしいです。

 中部空港は三頭しかいなくて、中部の例で恐縮ですが、全国的に全く足りていないというのは申し上げておきます。

 アフリカ豚コレラは既に十九例発見されているそうですが、うち、ビーグル犬が摘発したのは何件ですか。

小川政府参考人 お答えします。

 中国、ベトナム等からの旅客が違法に我が国に持ち込んだ豚肉製品から、アフリカ豚コレラウイルスの遺伝子、これが確認された事例が、四月九日現在ですと、新たに六件追加されまして、現在までに合計二十五件が確認されております。これは動物検疫所のウエブサイトで公表しております。

 この二十五件のうち、検疫探知犬が活動していた便から発見されたものが十六件ございまして、そのうち十四件が検疫探知犬により発見されたものでございます。二十五件のうちの十四件になります。

古本委員 ですから、これは相当高い確率といいますか、優秀だということがわかるわけであります。

 きょうは、観光庁に来ていただいていますが、いよいよ例の国際観光旅客税、出国税の徴収が始まっておりますですよね、と承知しておりますが、本年度の予定税収額は幾らになりますか。

平岡政府参考人 お答えをいたします。

 平成三十一年度予算におきましては、国際観光旅客税による税収を五百億円と見込んでおります。

古本委員 実は、この五百億の使い道をお尋ねしたところ、いわゆる旅客の円滑な出入国であったり、あるいは観光資源の涵養であったり等々、もう既に法定化されています。何となれば、財務省がよくぞ認めたなと思いますけれども、特定財源化したからであります。この五百億というのは、見方によれば、それ以外は使えないように思う面もあるわけなんですけれども、きょうはちょっとそこを確認したいと思っております。

 出入国という意味では、税関の職員も実はこの豚コレラ発見に大変尽力をいただいておりまして、スーツケースをあけて確認をしたときには、税関の職員が面着しているケースも多々ございます。正直言って、旅人たちからしたら、スーツケースがあけられて、余りいい気持ちはしない。実は、見つかったやからであれば当然のことでありますけれども、何もないのにあけさせられた人からしたら、余りいい感じはしません。その意味では、円滑な旅行を涵養するという意味では、実は、ビーグル犬の導入などなど、極めてすぐれてテーマに合って、時宜を得た話じゃないかなと思うんです。

 今年度、ただでさえ農水省は予算がなくて、ハンドラーのトレーナー代も含めた一頭六百万円のビーグル犬が全国で三十頭少ししかいない。麻生さんの膝元の博多港には一頭もいない。豪華客船が入ったときには出張で来てもらっている。であるならば、国際観光旅客税を充てればいいと思うんですけれども、ビーグル犬、検査犬を買えますか、五百億で。

平岡政府参考人 お答えをいたします。

 国際観光旅客税の使途につきましては、国際観光振興法の規定及び使途の基本方針において、ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備など、同財源を充当する三つの分野とともに、既存施策の財源の単なる穴埋めをすべきではないこと、先進性が高く費用対効果が高い取組であることなどの基本的な考え方が定められているところであります。

 御指摘の検疫の関係でございますけれども、基本方針等に掲げる受益と負担の関係の明確化や、検疫における混雑状況などに鑑み、三十一年度の予算の国際観光旅客税充当事業には計上していないものと承知しております。

古本委員 ぜひ、見直しも含めて、使用の可能性を拡大していただきたいなと思うし、旅客の便益に資する話だと思います、ぜひ御検討いただきたいと思います。要望しておきたいと思います。

 もう一つが、テロ対策なわけであります。

 諸先生方も、新幹線で東京に上がってこられる先生方はよく感じると思うのですが、東京駅で日当たりの新幹線の乗降客は、恐らく十万人を超えていたかと思います。正しい数値は承知していませんが。そうすると、よく大きなスーツケースを通路とかデッキとかに置いているのを見ると、映画の見過ぎではありませんが、よもや爆発物が入っていなかろうかと思うことはないわけではございません。

 来るオリンピックなどなど考えますと、まあ、ユーロスターとかよく乗られた先生方はおわかりのとおり、海外に行けば、爆発物探知犬は、必ずユニホームを着た警察官あるいは軍隊が巡回しておりますよね。ユニホームの説得力ほど高いものはございません。と同時に、ユニホームの隊員が同伴している爆発物探知犬。伺えば、レトリバーが向いているそうですね。かわいらしいじゃないですか。シェパードも向いているそうですね。まあコメントは避けますけれども。

 だとすると、農水省、ちょうどいいじゃないですか、獣医さんですから。爆発物の探知は、ちゃんと訓練したら、スーツケース越しにくんくんとにおいを嗅げば、そのワンちゃんたちは能力としてできるかできないか。イエスかノーかだけ。

小川政府参考人 お答え申し上げます。

 申しわけありません、まず、私、獣医ではございません。

 それから、においによって探知できるものであれば、探知することはできると考えております。

古本委員 これは失礼しました。何かそんな風体であったので、失礼しました。きのうレクに来てくださった人は獣医でした。

 ぜひ、これも使途拡大。それは、大動脈の東海道新幹線、東北新幹線にちゃんと爆発物探知犬を連れたユニホームの隊員が巡回するだけで抑止になりますね。ぜひ検討していただきたいと思います。これは要望にとどめます。

 予算が硬直的ではないということだけ、せっかくですから、うえの副大臣、いかがですか。特定財源化したんですけれども、よもや硬直化することはないだろうなということだけ、財務省から一言お願いします。

うえの副大臣 お答えいたします。

 当然、予算については不断に見直しをするべきだというふうに考えておりますので、その使い道についても、その状況等を十分勘案しながら検討すべきものだ、一般的にはそう考えています。

古本委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続いて、少子化の話にぜひ触れたいと思います。

 御担当は内閣府ということでありますけれども、まず総務省に聞いていいですか。現在、自治体で、市町村、都道府県で、出産お祝い金の類いは支給している自治体があるかと承知していますけれども、結婚お祝い金というものの支給の事実があるかどうか、そのデータがあるかどうか、総務省。

稲岡政府参考人 私は税の担当できょう参っておりますので、いわゆる歳出面については、今ちょっとデータを持ち合わせておりませんので、御容赦をいただければと思います。

古本委員 これは失礼しました。きのう、通告の段階ではそういう話をしていたものですから。ユニバーサルな審議官かなと思われましたので。失礼いたしました。ないそうです。把握していないということでありました。

 内閣府、御担当、きょう来ていただいていますが、なぜ少子化になるかというと、婚外子率が依然二%台である我が国においては、ヨーロッパ諸国、フランスなんかだと六〇%を超えたように聞いていますけれども、PACS制度とか、法的なバックグラウンドが違うということは承知の上で確認ですけれども、恐らく、結婚をしないからなかなか子が持てない。結婚もしていないのに子をもうけると、職場で、あれっ、おまえ結婚していたかなんて会話が目に浮かびますよ。フランスでそんなことを言ったら大変なことになると思いますね。ということでは、結婚をどれだけ応援するかということが実は少子化の根本的な鍵を握っていると思うんです。

 今、聞けば、引っ越し補助金的な、新婚さんというか結婚された方に、新居の家賃とか敷金、礼金、あるいは引っ越し費用に充てることを限定して上限三十万円で国から補助、市町村と共同事業で、補助裏二分の一でやっておられるというふうに聞きましたけれども、予算規模と去年一年間で使われたカップル数を教えてください。

川又政府参考人 お答えいたします。

 お尋ねの内閣府におきます結婚新生活支援事業ということでございますけれども、新居の家賃あるいは引っ越し費用などの支援を補助するものでございます。

 平成三十一年度、今年度予算におきましては九・五億円を計上いたしております。

 なお、平成三十年度の実績につきましては、この事業を実施した市町村が二百六十市区町村でございますけれども、その具体的な世帯数については把握をしていないところでございます。

古本委員 この九・五億円の予算のうち、引っ越し補助金的に使っていいのは半分と聞いていますので、単純に逆算したらそう何万人もいる話じゃないですね。数千組なんです。

 副大臣、またちょっと振るかもしれないので、済みませんね。

 これは、聞けば、何と、世帯所得、つまり夫と妻の世帯所得が三百四十万未満という限定が入っているそうなんです。そうすると、奥さんが月十万円稼いで百二十万、旦那さんが仮に二十万の人で、新婚さんでそういう想定をしたら、優に三百四十万を超えちゃって引っ越し補助金がもらえないわけでございます。

 この世帯所得三百四十万というのは、どうも、財務省といろいろな査定のプロセスでキャップをかけられたというふうに内閣府は泣いていましたよ。これはもう少し上限を上げたらいかがでしょうか。

 それから、もう一つ問題提起します。

 何と、夫婦ともに婚姻日における年齢が三十四歳で区切っているんです。三十四歳までに駆け込んで婚姻届を出さないと、この新婚さん応援引っ越し新居補助金がもらえないんです。

 質問する以上ちょっとデータを調べましたら、何と、五歳階層別でグリッドを切ったもので見ますと、当然ですが、二十五歳から二十九歳が新婚さん率四八%で一番多いです。去年の新婚さんの半分が二十五歳から二十九歳です。次に多いのが二十歳から二十四歳、一八%です。いいですか。ところが、三十五歳から三十九歳は一三%で、なかなかいらっしゃるんです。三十四歳で切る合理性が私は見出せません。

 本当に、出生率が上がらない原因が、日本の文化、道徳、宗教、さまざまなことを考えて、税制もそうです、配偶者控除なんというものがある限り必ずそうですね、などなど考えますと、やはり婚姻が一番大きな壁だとするならば、よほど挙げて、結婚する御夫婦を歳出歳入両面で応援していくということが大事だと思うんですけれども、何ゆえに三十四歳で区切っているのと、世帯所得三百四十万で区切っているかというのが、合理性がわからないんです。

 問題意識は多分、今、何となく共有していただけたと思いますので、ちょっと、総務省に来ていただいているので、暫時お待ちください。

 例えば、総務省、自治税務局ですよね、よろしいですか、新婚であれば住民税を減免するとか。いや、偽装婚姻が発生するとか、またそういうかた苦しいことを言わないでくださいよ。少なくとも、婚姻をいかに応援するかというと、例えば新婚さんがマンションを買えば固定を半減するとか。これは自治体が独自でやればいいと多分おっしゃるんでしょうけれども、自治体は、交付税のいろいろなことを考えるとなかなか独自の減税というのは勇気が要りますね。

 きょう聞きたいのはたった一言だけ。総務省として、各自治体が、結婚奨励、結婚応援固定資産税軽減とか結婚応援住民税軽減を首長、議会が判断すれば総務省としては構いませんか、構うかだけ答えてください。

稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。

 地方税法においては、納税が困難であると認められるような担税力の薄弱な者等につき、その個別具体の実情に即して税負担の軽減、免除を行う減免措置が設けられております。

 例えば、具体的に個人住民税について申し上げれば、規定は、「天災その他特別の事情がある場合において市町村民税の減免を必要とすると認める者、貧困に因り生活のため公私の扶助を受ける者その他特別の事情がある者に限り、当該市町村の条例の定めるところにより、市町村民税を減免することができる。」こういった規定になっておりますので、この規定に該当するということで条例で定めれば減免ができるわけでございますが、先ほど委員御指摘のような減免措置については、なかなかこの規定上、対象になるということにはならないのではないかと考えておるところでございます。

古本委員 私もそういう色合いはあると思います。会費制原則という地方税の原則に照らせば、やはり、そこに住む、あるいはそこで便益を受ける以上、住民税、固定は、あるいは都計もそうだと思いますが、当然、法定額をという立場に多分なるんだと思います。

 残るは、もう歳出しかありませんですよね。ということは、まさにその歳出というその象徴が結婚お祝い金じゃないかなというふうに思いましたので、調べれば何と、挙げて取り組むということで、これは与野党に壁はないですよ、このテーマに。たった九・五億、しかも去年使ったカップルは恐らく数千組。ぜひ、この三百四十万のキャップをかけているのと三十四歳以下という、だって、初婚年齢はもう三十一歳を超えているんですから、男性は。ぜひ三十四歳のキャップというものを見直してはどうかなという問題提起をしておきたいと思います。この場でわかりましたと、言っていただけるなら、どうぞ、副大臣。

うえの副大臣 お答えいたします。

 結婚の支援につきましては、先ほど来議論になっております地域少子化対策の重点推進交付金等を通じまして、地方自治体が地域の実情に応じて実施をする新居の家賃や引っ越し費用の補助といった取組への支援を行っているところでございまして、私どもとしては、そうした地域のさまざまな実情を踏まえて地方自治体が実施をされる事業についてしっかりと応援をしていきたいというふうに思います。

 その上で、さまざまな要件設定等がなされているわけでございます。これはやはり、国として支援する場合には一定の基準というものを設けざるを得ないというふうに思いますし、その際には、さまざまな統計データ、希望する結婚年齢、何歳で結婚をしたいかとか、そうした状況も踏まえて十分検討させていただいているところでありますので、そうした点も踏まえ、御指摘は御指摘として十分承らせていただきたいと思います。

古本委員 住宅局もきょう来ていただいていますが、若年層ほどなかなか家を持てないという問題、つまりリースに入っているわけですね。この間、住宅促進を奨励してきたわけですけれども、ローン減税もまさにそうだと思うんですけれども、これはとても必要な政策だと思いますが、他方で、賃貸に入っている方も何らかの歳出歳入の応援があっていいんじゃないかという問題意識なんですけれども、今現在、住宅局が賃貸についても、都市部で、中央線に揺られて、埼京線に揺られて通勤している多くのサラリーマンの皆さん、結構な家賃を払っておられる方は多いと思うので、ちょっと時間が来てしまいましたので、住宅局、賃貸に対して何か応援するつもりがあるかどうか、歳出歳入の。要求官庁として主税局に求めていくつもりがあるかどうか、お願いします。

坂井委員長 手短に。

小林政府参考人 お答えをさせていただきます。

 まず、賃貸住宅につきましては、家賃につきましては、社会的な配慮、政策的な配慮から消費税を課税されていないということでございます。

 その上で、財政的な支援につきましては、セーフティーネット住宅に入居する低所得者の家賃低廉化支援、サービスつき高齢者向け賃貸住宅の整備に対する補助、住宅金融支援機構による子育て世帯向け省エネ賃貸住宅の整備に対する融資など、支援を行っているところでございます。

 住宅のニーズにつきましては、その時々の情勢によりさまざまでございますので、財政制約も勘案しながら、必要な支援のあり方について国土交通省として引き続き検討してまいりたいと考えております。

古本委員 ありがとうございます。

 賃貸の家賃を、例えば所得控除するという概念はあってもいいんじゃないかなと思いますよ。借金の返済が十五万円返している人も立派ですけれども、十万円の家賃を払いながら、夫婦で働いてそれを払っている人も、私は経済的にリスクをとっていると思いますよ。資産を買わないというリスクをとっていると思いますね。やはり、そういうものを住宅局は少し幅広に考えていただきたいなというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次に、青山雅幸君。

青山(雅)委員 無所属の青山雅幸でございます。

 まず、本日の一般質疑に際しまして、坂井委員長、理事各位の皆様、そして同僚議員の皆様の御配慮によって大変貴重な質問時間を頂戴できましたことを、ここに冒頭、心より御礼を申し上げます。また、特に、御配慮いただきました同僚議員の方々に重ねて御礼申し上げます。

 早速、質問させていただいてよろしいでしょうか。まず、国債の利回りについてお伺いをさせていただきます。

 ロイターの金利・国債のウエブサイトによれば、直近の新発債の利回りは二年債から十年債まで全てマイナスとなっております。例えば、ブルームバーグのウエブサイトで、三月二十九日時点の記載によれば、十年債の表面利率は〇・一%、これに対して価格は百一・八八円となっておりますので、利回りがマイナス〇・〇九%となっております。

 最近はこれよりも若干利回りは上昇しているようですけれども、便宜上、この価格でお尋ねいたします。

 これの意味するところは、仮に額面額が百万円であるとしたら、付利〇・一%で毎年支払われる金利は千円、十年で一万円、つまり、十年後に返還される元本とその間の毎年の利息の積算は百一万円になります。入札する方としましては、百一万円以下でなければ必ず損をすることになるわけですけれども、これが百一万八千八百円で落とされている。つまり、買い手は入札した瞬間に八千八百円損をすることが確定してしまうわけです。単利計算でこれを計算しますとマイナスの〇・〇八八%、刻みを〇・〇五ベースとすればマイナスの〇・〇九%。これがマイナス金利、マイナス〇・〇九%の意味するところということでよろしいでしょうか。

    〔委員長退席、越智委員長代理着席〕

可部政府参考人 お答えいたします。

 おっしゃるとおりでございまして、現在、国債には、今委員御指摘のとおり、〇・一%、プラスの表面利率が付されているところでございますけれども、他方で、国債の利回りと申しますときには、一年当たりの運用益をパーセント表示で示しているところでございます。償還まで保有した場合の利子収入と償還金額の合計、ただいま委員の御指摘ですと百一万円、これが購入金額を下回る場合には、今委員御指摘のとおり、マイナスの利回りとなるということでございます。

青山(雅)委員 日銀の長短金利操作、今の御説明を前提にお聞きいたします。

 いわゆるイールドカーブコントロール、これは二〇一六年九月二十一日に日銀が公表しているところによれば、十年物国債金利がおおむね現状程度、ゼロ%程度で推移するよう長期国債の買入れを行うとされています。

 現状では、さきのとおり、ゼロを超えて、これがマイナスにまで踏み込まれております。十年がマイナスであれば、それ以下も当然マイナスになる、それより短い年限の国債はマイナスになっております。

 政策目的による買入れとはいえ、ゼロどころかマイナスの利回り、すなわち、二次的にお買いになっているんでしょうけれども、日銀に損失を確定させるところまで踏み込んだオペレーションを行われておる。これは、やはり日銀に買った瞬間に損が出るだけでなく、買った瞬間損が出るわけですから、マイナス金利のものを一般の金融機関は買えるわけがないわけですから、一般金融機関は買いたくても買えない状況、十年国債まで買いたくても買えない状況が出ております。

 そこで、黒田日銀総裁にお伺いしたいのですが、ゼロを超えて、あえてマイナスまで踏み込んだオペレーションを行われている、これはどういう政策目的によるものなのでしょうか。

黒田参考人 御指摘のとおり、日本銀行は現在、長短金利操作つき量的・質的金融緩和、いわゆるイールドカーブコントロールという枠組みのもとで、物価安定目標の実現のために適切なイールドカーブをつくるということを促しております。具体的には、短期政策金利をマイナス〇・一%、長期金利をゼロ%程度とする金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが形成されるように、国債買入れを実施しております。

 その際、金利は、経済、物価情勢等に応じてプラスマイナス双方向にある程度変動し得ることとしております。これは、金利形成の柔軟性を高めることを通じて、強力な金融緩和による市場機能への影響を軽減して、現在の政策枠組みの持続性強化に資することを狙いといたしております。

 確かに、最近では、投資家のリスク回避姿勢の強まりなどから、主要先進国の長期金利が低下傾向にありまして、我が国の十年物金利も小幅のマイナスで推移しておりますが、こうした動きはイールドカーブコントロールの全体としての金融市場調節方針との関係では問題ないと思っております。

 いずれにいたしましても、イールドカーブコントロールを通じて物価安定目標の実現を目指しているということでございます。

青山(雅)委員 お答えありがとうございます。

 次に、国債の残高、そして、その国債買入れの副次的な目的があるのではないかというようなこともちょっと推察されるものですから、お伺いします。

 現在の国債残高は、財務省によれば、平成三十一年度三月末の見込み額で約八百九十七兆円、つまり約九百兆円に達しております。これにいわゆる財投債や国庫短期証券なども含めたもの、これは日銀の資金循環統計に出てくるものですけれども、二〇一八年十二月末残高では千十三兆円に上っております。

 国債に付与されている金利が高ければ、当然、将来の利払いが大変になります。その時々の国債残高の加重平均利率で毎年の一般会計に出てくる国債関係の利払い費は決まってくる、こう思われますけれども、本年度予算では八兆八千五百二億円。これから推定しますと、財務省の方の数字九百兆円をとった場合に、国債残高の利率の加重平均は約一%と推定されます。約九兆円なわけですから、九百兆円の一%が九兆円。

 一方で、日銀が今行われておられます長短金利操作で、長期国債、超長期国債に至るまでの利率を下げてイールドカーブをフラット化すれば、将来の国の予算、これにおける国債利払い費を圧縮する効果が、これは意図するかしないかは別として、当然生じてまいると思います。

 ところで、一方で、そのような超低金利の国債でも日銀が買い受けるとなれば、国債価格の暴落を心配することなく国債に依存した財政状況が続く懸念があると考えられます。つまりは、日銀の量的緩和政策やイールドカーブコントロール、長短金利操作が政府の財政規律を限りなく弛緩させたままにする可能性があると思いますが、いかがでしょうか。黒田総裁にお伺いします。

黒田参考人 財政運営そのものにつきましては、もちろん政府、国会の責任において行われるものと認識しておりまして、具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で、一般論として申し上げますと、確かに、我が国の政府債務残高が極めて高い水準となっている中、政府が中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかりと確保することは極めて重要であります。二〇一三年に政府、日本銀行が公表した共同声明においても、政府は持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進することとされております。

 日本銀行としては、物価の安定というみずからの使命を果たすため、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要であると考えておりますし、また一方、政府においても、先ほど申し上げたとおり、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進されることを期待しております。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 次に、単刀直入に、日本の国債、債務返済問題についてお伺いいたします。

 今現在、日本の政府が負っている債務のうち、国債だけに限って見ましても、さっきのとおり、全て含めると約一千兆円、財投債などを除いて約九百兆円に上っております。

 本年二月十九日の当委員会で、麻生大臣は、国債は政府の借金であり、国の借金ではない、こういうふうにお答えになっておられました。確かに、形式上見ると、債務者は政府でございますから、政府の借金です。しかしながら、その借金を返す原資というのは、個人個人から徴収する税、あるいは法人から徴収する税。法人も国民が形成していることが多いわけですから、国民が政府に納める税金で賄う、こういう関係になっていると思います。ですから、借金の実質的な返済者は、負担者は、やはり国民ということになろうかと存じます。

 この借金をふやさないために、先ほど黒田総裁のお答えにもありましたけれども、プライマリーバランスの黒字化、これを計画されております。しかし、残念ながら、二〇二〇年プライマリーバランス黒字化は先送りされて、二〇二五年になっているわけですけれども、これは非常に、当然のことですけれども、プライマリーバランスというのは基礎的財政収支ですから、国債関係費を除いたところでバランスさせるにすぎない。プライマリーバランスが黒字化されても、新規発行国債がなくなるわけではございません。利子分は必ずふえる、こういうことになろうかと思います。残高一千兆円あるいは九百兆円となれば、加重平均が一%でも、利払いだけで毎年十兆円あるいは九兆円ふえていくことになります。

 ここからは財務省の方の数字の九百兆円で進めますけれども、プライマリーバランスとんとんであっても残高は減らない。残高を減らしていくには、利払い費を上回るところまで行かないと一円も減っていかない。本年度予算の利払い費が八兆八千五百二億円です。ことしの税収が六十二兆円、税外収入が七兆円、計六十九兆円。これが八十七兆円にならないと国債残高が減るところには行かない。つまり、税収などが十八兆円も伸びないと一円も減っていかない、こういう関係になろうかと思います。

 また、基礎的財政収支を超えていわゆる財政均衡に達するには、三十二兆円伸びなければいけません。簡単に言うと、税収が今の一・五倍にならなければいけない。そうして初めて既発行の九百兆円残高分は、償還のいわゆる六十年ルール、毎年一・六%ずつ返すということで、ようやく完済できるということになろうかと思います。

 しかしながら、日本が今、人口減少、高齢化に伴い、人口オーナスの時代になっていることは周知のとおりでございまして、税収が三十二兆円伸びて、六十年ルールで完済するスタートに立てるとは到底思えない。

 そこで、麻生財務大臣にお伺いしたいのですが、プライマリーバランスが仮に達成された後、現在積み上がった国債をどうやってお返しになるつもりであるのか。逆に、これは返せないので、残高については返済を諦めて、現在のように国債を発行してジャンプを繰り返す、繰延べ払いを続けるのか。あるいは、第二次大戦の戦費によってGDPの二五〇%にまで膨らんだイギリス国債のように、非常に長い年月をかけて、いつかインフレが生じて通貨価値が落ちて国債の重みが減るまで、ずっと放置するのか。そういったこと、どういうふうにお考えなのか、率直なお考えをお聞かせいただきたい。

麻生国務大臣 これは御指摘がありましたように、公的債務残高が、いわゆる国民総所得の、GDPと言われるものの約二倍ということに累積するという、極めて厳しい状況にありますのは御存じのとおりで、こういった中で、私どもとしては、いわゆる経済の再生なくして財政健全化なしということで、これまで、過去最高水準のGDPというものも、これは人口が少子高齢化、減少していく中にあってGDPが伸びるはずがないという御指摘も随分ありましたけれども、少なくともGDPを過去最高まで伸ばすことをやらせていただきました。税収も、少なくとも、この七年間で、七十八が百七ですから二十八兆ぐらい増加させることになりましたし、また、歳出の改革というのもいろいろやらせていただいて、新規国債発行というものは、平成二十四年度四十四兆が、三十二兆ということで、約十二兆円減少させるということにもなりましたし、そういった意味では、財政健全化に一定の成果を上げてこられたんだということははっきり言えるんだと思っております。

 御指摘のとおり、GDP比で増加ペースというものもいわゆる鈍化させてきた、こうなってきたGDP比を、国債のGDP比ですね、鈍化させるということになってきたと思いますが、債務残高というものを今御指摘のように実額で減少させるという御指摘については、これはもう極めて重要なことなのであって、今の厳しい状況を続けていけば、これはGDP比を反転して減少を目指すという意味では、まずはプライマリーバランスの実現化ということが必要なんだと思っておりますが、それが達成された後も、これは引き続き、いわゆる今やっております新経済・財政再生計画のもとで、私どもとしては、更に歳入とか歳出とかいろいろな改革を続けていくことだろうと思います。

 二〇二五年度のプライマリーバランスを、債務残高を、達成した後でも、この姿勢を続けて、債務残高の安定的な引下げというものを目指していくという姿勢はきちんと持ち続けておかねばならぬところだと思って、これが簡単にできるか、それは簡単にできるはずがありませんので、長いことかけてこうなってきましたので、長いことかけてまたやっていかないかぬということが基本だろうと思っておりますが、簡単に、あれをやったらぱっとできるというような種類のものではない、それだけははっきりしていると思います。

    〔越智委員長代理退席、委員長着席〕

青山(雅)委員 麻生大臣、率直なお答え、ありがとうございます。

 先般、防衛費に関する特定調達措置法で、長期の分割払いが財政の硬直化を招くと批判されましたけれども、現状の国債依存はその比ではないわけですね。例えば、今年度予算でいきましても、二十三兆円、つまり財政の二三%が硬直化している。普通で考えると、これが少なくとも六十年以上は続くんだろうと思っております。

 私は、このことは、まだ選挙権もない若い世代に巨大な負担を負わせている、我々が一方的に負わせている、政治における最大のモラルハザードだと思っております。ぜひ、財務省、この点きちんと改善をしていく、よろしくお願いいたします。

 次に、景気の現況についてお伺いします。

 経済財政運営と改革の基本方針二〇一八年に織り込まれた新経済・財政再生計画では、二〇二五年度プライマリーバランス黒字化のためのプランが策定されていますけれども、これは全て経済成長頼み。名目GDPで三%、実質では一・五から二%程度の高い成長が前提となっております。それ以外のマイナスシーリングや歳出削減、そういったことは具体的には計画されておりません。

 つまり、Aプランが、AプランというのはGDPが上昇していくというプラン、それがうまくいかなかった場合のBプラン、全く計画されておりません。そうであるならば、予定どおりの経済成長見込みが達成されないときには、プライマリーバランス黒字化さえも達成できず、国債が積み重なっていくということが必然になります。

 二〇一三年から二〇一七年の実質GDPの伸び率を平均すれば一・二%前後、二〇一八年はこれよりも落ち込む見込みであります。御承知のとおり、世界経済も、中国の景気悪化及び米中経済戦争などの影響によって、十年続いた異例の好景気が落ち込んでおりますし、今後も落ち込むであろうことはほぼ一致したコンセンサスになってあろうかと思います。

 例えば、ニッセイ基礎研究所が三月八日に発表したレポートによれば、二〇一八年度の実質成長率は〇・五%、一九年度は〇・六%、二〇二〇年度は一・一と予測されております。

 政府の統計でも、内閣府発表のCI一致指数は、二〇一九年一月にはマイナス二・七ポイントの大幅低下で、景気動向指数の一月速報で、これまでの足踏みから、下方への局面変化に下方修正されており、二月速報でもこれが維持されております。

 そこで、内閣府にお伺いしますけれども、下方への局面変化の定義は何でしょうか。シンプルにお答えいただければ結構です。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府の景気動向指数、CIは、生産や雇用など景気に関する経済指標を統合して指数化したものでございまして、その基調判断につきましては、景気動向指数、CIの動向をあらかじめ決められた表現に機械的に当てはめて公表しております。

 本年一月分速報のCIにつきましては、前月差二・七ポイントの低下となりまして、この結果を機械的に当てはめましたところ、基調判断の表現は下方への局面変化となりました。

 また、二月分速報の景気動向指数につきましては、前月差〇・七ポイントの上昇となりましたが、この結果を機械的に当てはめましたところ、基調判断の表現は下方への局面変化に据え置くとなったところでございます。

 この下方への局面変化の定義につきましては、事後的に判定される景気の山がそれ以前の数カ月にあった可能性が高いことを暫定的に示すものということでございます。

 いずれにいたしましても、政府としての景気判断は、月例経済報告におきましてさまざまな経済指標を分析するとともに、指標の動きの背景にある経済環境や企業の景況感などを総合的に勘案して、景気の基調を判断することといたしております。

青山(雅)委員 結局のところ、定義によれば、事後的に判定される景気の山がそれ以前の数カ月にあった可能性が高い、つまり景気は落ち込んでいる傾向にある、こういうことになろうかと思います。

 そうしますと、先ほどの、プライマリーバランスの黒字化が達成されるというよりは、むしろ税収が悪化してPBの赤字幅が拡大するという方が確率的には高い、こういうことかと思います。当然、そうなると国債が積み増される。

 こうなると、国債という名の元金はふえる一方で、その一方で、財政を成り立たせようとすれば、物価の上昇傾向にかかわらず国債の利率は低利のまま据え置く、今の言葉として言えば、金融抑圧政策を将来的にも続けるしかないと思われます。そうしないと、今でさえ、ただでさえ利払い費は九兆円なんですから、これはどんどんどんどん膨らんでしまいます。

 一方で、低金利の国債の買い手がなければやはり国債は暴落するので、日銀が通貨を増発して新規発行国債を全額買い取る、事実上の財政ファイナンスを続けざるを得ないかと思います。そこを危惧しております。

 そうしますと、当然次にやってくるのは、円の信認が失われて、通貨安を招いて、政府が制御することが難しいコストプッシュインフレが危惧されるんですけれども、大臣、その辺、所感をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、金融政策の具体的な話を聞いておられるんですが、その点につきましては、これは日銀に委ねられるべきなんだと考えております。

 いわゆる日銀による国債買入れというものは、先ほど話題に出ておりますイールドカーブコントロールの話ですけれども、これは日銀が、みずからの判断で、いわゆる二%の物価安定目標というのを実現するために、金融政策の一環として実施しておられるものだと理解をしておりますので。

 先生御指摘の通貨に対する信認、これは、経済のファンダメンタルズの強さとか、物価の安定とか、財政の規律等々の維持など、総合的なものによって来るものだと考えておりますので、引き続き日銀が、経済、物価、金融情勢等々を踏まえつつ、物価安定目標というものの実現に向けて努力されていかれる。

 これらも期待すると同時に、政府といたしましても、これまで経済の再生とかまた財政健全化の取組というものを、今後ともきちんと維持しないと、税収が少々伸びてきたらぱっと緩めてみたりするような、放漫財政みたいなことになりますと、今御心配されておられましたように、通貨の信認というものの維持が極めて難しいということになり、極端な円安にまで振れてみたり、いろいろな形になりかねぬということをきちんと戒めた上でやっていかねばならぬところだと思っております。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 大変経済に精通しておられる麻生大臣のおっしゃることですので非常に重みがあると思っております。現に、対ドルレートを見てみれば、二〇一一年には七十五円だったものが、ここのところずっと、御承知のとおり百十一円、ほぼ三分の一程度、通貨価値が失われているという言い方もできるかと思います。

 極端な円安というのは、当然ですけれども国富の喪失であることは間違いないわけで、この点については財政の方でも十分に御留意いただいて運営していただきたいと心から願っております。

 同じことを、麻生大臣がおっしゃった、まさに日銀の話でもあるわけです。

 PBの黒字化がなければ日銀の事実上の財政ファイナンスが続いて、円の信認が失われて、コストプッシュインフレを招くおそれがあります。日銀法の一条一項、一条二項を引くまでもなく、日銀の役目というのは物価の安定を図ること、これが重要な役割ですけれども、異次元緩和というのは、財政再建、財政均衡について政府が協調行動をとることを前提に行われておりますし、それが、二〇一三年の共同声明、特にその中の三項後段に、「財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」という文言にあらわされていると思いますけれども、黒田総裁、いかがでしょうか。

黒田参考人 御指摘のとおり、我が国の政府債務残高が極めて高い水準となる中で、政府が中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかりと確保することは極めて重要でありまして、この点は、こうした国会質疑の場も含めまして、これまでも繰り返し申し上げてきているところであります。日本銀行としては、持続可能な財政構造を確立するための政府の取組が引き続き着実に進められることを期待いたしております。

 一方、日本銀行としては、物価の安定というみずからの使命を果たすために金融政策を運営しております。したがいまして、いわゆる出口の進め方も含めまして、先々の金融政策についても、やはり二%の物価安定の目標を実現して、それを安定的に持続するためにどのような措置が最も適切かという観点から毎回の金融政策決定会合において判断していくということになると思いますので、御指摘のような、通貨の信認が失われるようなことのないように、私どもとしても十分適切な金融政策を運営してまいりたいと考えております。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 通貨の信認失墜がありますと、当然ながら国民の生活に非常に大きな影響を与えることになります。必要なときには政府にぜひ共同声明の履行について改めて迫る、そういった覚悟で臨んでいただきたいと思っております。

 次に、私、心配しておりますのは、いわゆるインフレ目標、インフレターゲットが二%を達成した、あるいはこれを超えていったときでございます。

 先ほどから言っているように、今の国債残高から考えると、仮に二%達成後、あるいはこれが昔のように三%、四%、五%になっていったときに、通常であれば利上げということで対抗するのだと思いますけれども、そうしましたら、直ちに政府の利払い費もふえていくことになるし、既存発行の国債が暴落するおそれがある。

 つまり、日銀が本来的な日銀の存在理由であるインフレに対して立ち向かうときに、通常の金利上げという手段がとり得るかどうか、ここが非常に心配になるわけですけれども、この点、いかがでしょうか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますように、物価の安定というのは、日本銀行法にも定められております日本銀行の使命でありますので、それを果たすべく金融政策を運営しております。

 したがいまして、二%の物価安定の目標が実現され、それが安定的に持続するように金融政策を運営してまいるわけですので、物価の状況が二%を達成され、あるいはそれよりも上昇していくというようなときに、現在のような金融緩和を続けるということはあり得ないわけでして、当然、そうした場合には適切な金融の引締め策をとっていくということになると思いますが、まだ現時点では消費者物価の上昇率は一%未満でありまして、〇・七%とかそういった状況ですので、まだ二%への道のりは半ばというところでありますので、当面、現在の大幅な金融緩和政策を続けていくということは確かでありますが、将来において二%の目標が達成されるというような状況になったときには、当然、適切な金融政策の運営を行うということは日本銀行法でも定められておりますし、また、それに沿って金融政策を運営してまいるということでございます。

青山(雅)委員 インフレというのは、ある日突然やってくることがあろうかと思います。私も、五十七歳ですので、七〇年の狂乱インフレが突如始まったことをよく覚えております。ぜひ、今おっしゃっていただいたような適切な金融政策を機動的におとりになっていただくことを心から望んでおります。

 きょうは、大変貴重な時間をいただきまして、ありがとうございました。

 質問を終わらせていただきます。

坂井委員長 次に、川内博史君。

川内委員 麻生大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 塚田一郎前国土交通副大臣、麻生先生の派閥の先生であったということで、まず事実関係を幾つか確認をさせていただきたいんですけれども、この下関北九州道路というのは、かつて海峡横断プロジェクトと呼ばれて、東京湾、伊勢湾、紀淡、下関北九州、豊予、島原天草長島の六つのルートというものがあった。平成二十年の三月十二日の衆議院国土交通委員会で、当時の冬柴国土交通大臣が、海峡横断プロジェクトの調査は今後行わないという決断をした、将来、候補路線を格上げするようなことが起こった場合は国会に諮らなければならないというふうに御答弁をされていらっしゃいます。

 国交省にまず確認したいんですけれども、この国会に諮るという大臣答弁というのは、一体いかなる意味なのかということを教えてください。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 候補路線を整備段階に格上げする場合、すなわち事業に着手する場合には国会にお諮りをするという趣旨であったと理解をしております。

川内委員 整備段階に格上げするときに国会に諮るというのは、一体どういう意味なんですか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 事業に着手をするという場合であるというふうに理解をしてございます。

川内委員 いや、私が聞いているのは、国会に諮るという言葉の意味が、一体何をもって国会に諮るとおっしゃるのかということをお聞きしているんですけれども。

 当時の記者会見の資料では、整備段階に格上げを検討する場合であっても、国会の場で個別路線ごとに議論するような手続を経ることとする、こう記者配付資料に書いてあって、格上げをするかどうかについて、個別路線ごとに国会で議論するような手続をしますよというふうに国交省は記者会見で述べていらっしゃるわけですね。

 それは、事業化するかどうかを検討することを国会にどう諮るんですかということを聞いているんです。まだその辺について煮詰まっていないというんだったら、煮詰まっていないということでお答えいただいていいんですけれども。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十年三月の公表では、整備段階に格上げを検討する場合であっても、国会の場で個別路線ごとに議論するような手続を経ることとするとしておりまして、これは事業化に当たっての手続であると認識をしております。

 個別路線につきまして、仮に事業に着手することになった場合には、国会の場での手続について整理をしてまいりたいと考えております。

川内委員 それでは、続いて、こういうことで調査が凍結をされてきたわけですが、平成二十八年二月に、関門地域に関係する国会議員の先生方が安倍総理を囲んで懇談会を開いて、下関北九州道路の早期建設促進等を目指して、関門会というものを結成された。

 この関門会は、翌月の三月三十一日に、石井国土交通大臣に対して、下関北九州道路の早期実現に向けての要望書を提出をしていらっしゃいます。これはもう皆さん御案内のとおり、関門会の国会議員十四名の連名の要望書の中に、安倍晋三先生、現職の総理大臣の名前も入っているわけです。

 この要望書に、「安倍総理を囲み懇談会を開催させていただいたところ、その際、「第二関門橋」の早期建設促進の件が話題となり、「関門会」の総意として要請活動を行うこととなった。」と。要するに、みんなで話していて、要請しようと、安倍総理大臣もいる場でそうなったというふうにこの要請書に書いてあって、要請自体は平成二十八年の三月三十一日に行われているわけでございます。

 現職の総理大臣が議員として国土交通省の道路建設等の公共事業の促進の要望書に名前を連ねた事例が過去あるんでしょうかということについて教えてください。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 平成三十年度の一年間に国土交通本省及び地方整備局で受け取りました山口県の道路事業に関する要望書を確認いたしましたが、総理のお名前が入った要望書を確認することはできませんでした。

川内委員 いや、私が聞いているのは、安倍総理大臣だけではなく、過去の総理大臣が、公共事業の要望等で、議員としてその要望書に名前を連ねた事例があるんですかということを質問通告させていただいていたというふうに思うんですけれども。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 平成三十年度より前のものにつきましては確認できてございません、要望書自体を確認できておりません。

川内委員 済みません、調べて、次回までにまた教えてください。

 このときの、石井大臣への要望をされたこの平成二十八年の三月三十一日の大臣室での記録、面会の記録等は作成をされていますか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 平成二十八年三月三十一日に関門会が国土交通大臣へ要望に来られたことは確認できましたが、具体的に、お見えになった議員あるいは同席者、当日どんなやりとりがあったかにつきましては確認ができてございません。

川内委員 きょう、国交省の文書管理の御担当の方にも来ていただいていますが、この平成二十八年三月三十一日の要望、石井大臣への要望については文書作成をする必要はないですか。

和田政府参考人 お答えいたします。

 文書作成につきましては、それぞれの文書管理者、これは本省の各課長等々がなっております、こうした者が責任者として判断しておりまして、そういった観点から適切なことが行われているものと考えてございます。

川内委員 僕の大事な時間をそういう一般的な答弁でごまかさないでいただきたいんです。

 平成二十八年の三月三十一日のこの会合は文書を作成する必要のない会合かということを聞いているんですけれども。

和田政府参考人 お答えいたします。

 文書管理者の方でそのように判断したものと理解しておりますし、また、そうしたことで不適切と言えることはないかと思っております。

川内委員 それはなぜですか。

和田政府参考人 その点につきましては、まず、ここが二〇一六年の三月という時点でございます。それから三年以上、三年弱たっておりまして、そもそもその文書ということについてのものがいずれにしても存在しない時期になっているかと存じます。

川内委員 まさしく、先ほどの緑川議員の、財務省が要望事項については一々文書をつくらないよというふうに御答弁されて、それはなぜかというと、要望書自体が文書だからだという御答弁だったわけで、それを石井大臣は聞いたということになるわけですね。この関門会の要望書には安倍総理大臣の名前が個人として載っている、それを石井大臣は聞いたというのがこのときの記録になるということではないか。だから文書がつくられていないのかもしれない。

 そこで、ちょっと視点を変えて、麻生大臣に御答弁をいただきたいんですけれども、麻生大臣がこの第二関門橋が補助調査から直轄調査に格上げをされるよということをお知りになったのはいつでいらっしゃいますか。

麻生国務大臣 調査費が何回かついているんですよね、たしか。それが今度の北部の大豪雨の関係で、あれが通行どめ、何日間か、大分、かなり長いこと通行どめになっていた等々のあれで、これは直轄になるような事態で、何とか国土強靱化の一環としてこれをやりますというような話がわんわんわんわん、いろいろ出ていたのは知ってはいましたけれども、最終的にこれになったと聞いたのは、かなり、三月の二十七日に、調査費について、国土交通省は実施計画として四千万円を計上する予定というのを知るに至ったのは三月の二十七日ということになります。

川内委員 何となくそういう話は聞いていたけれども、最終的に聞いたのはことしの三月二十七日と。

 私、関門会の話をこの前にしたわけですが、平成二十八年の三月三十一日に石井国土交通大臣に要望をした。そして、その後、二十九年、三十年と調査補助がつくわけですね、二年間。今回、直轄になるわけですけれども、ちゃんと時系列が要望ごとにそうなっているなというふうに思うんです。

 それで、麻生大臣は、塚田副大臣が福岡県知事選の応援に行かれることを御存じでしたか。それとも、麻生大臣自身が、塚田君、行ってくれよ、頼むよというふうに御要請をされたのでございますか。

麻生国務大臣 塚田副大臣が北九州市のところの応援に入るということは後で知りましたし、当日は私おりませんでしたので、全然存じません。

川内委員 じゃ、ニュースで、麻生大臣、そんたく発言を聞いたときに、何を言っているんだ、こいつはと、何を言っているんですか、塚田君はと、どんな感想をお持ちになられましたですか。

麻生国務大臣 大臣が副大臣に陳情するなんということはありません。

川内委員 いや、指示をしたかじゃなくて、その発言を、塚田副大臣の発言をニュースで聞いたときに、知らなかったとおっしゃったわけですから、塚田副大臣の発言をニュースで聞いたときに、どのような感想をお持ちになられたかということを聞いております。

麻生国務大臣 事実と全く違いましたので、その場の雰囲気がいろいろ、選挙の最中ですから、いろいろ盛り上がって、わんわんわんわんなる話は時々、よくある話だとは思いますけれども、事実と違うことを言っているなという感じはしましたので。そういう感じですね。事実と違うなという感じが率直なところです。

川内委員 事実と違うなということをその発言を聞いたときにお感じになられたということでございますけれども、それでは、もう一度国交省にお聞きしたいんですけれども、下関北九州道路、いわゆる第二関門橋は、今年度予算において、これまでの道路調査費補助という目から地域連携道路事業調査という目に格上げをされたわけですけれども、この格上げを、引上げをいつ、どのような形で方針として御決定をされたのかということを教えてください。

榊政府参考人 お答えを申し上げます。

 関門海峡につきましては、関門トンネルと関門橋の二つの道路で連絡されておりますが、関門トンネルを含む国道二号及び三号につきましては慢性的な渋滞が発生してございます。

 下関北九州道路については、既につながっております関門トンネルや関門橋のバイパス機能の確保など、ほかの五つの海峡横断プロジェクトとの違いがあると認識をしております。

 平成二十八年十一月、衆議院国土交通委員会でございますが、当該道路は、他の海峡横断プロジェクトとの違いを踏まえると、整備手法を含め、地域で検討していただき、ゼロベースで必要性を再整理すべきである旨、大臣から答弁をさせていただいたところです。

 これを受けまして、平成二十九年より、下関北九州道路の早期実現に向けて、福岡県、山口県、北九州市などによって、道路のルートや構造、PFIの活用なども含めた整備手法について、国の支援によって調査が実施されております。

 また、平成三十年七月豪雨におきましては、関門橋から続く九州側の高速道路が四日間通行どめになり、本州と九州の間の広域的な交通に支障が生じるなど、防災上の課題が再認識されたところであります。

 こうした中、去る三月八日には、下関北九州道路調査検討会が開催され、調査検討結果の取りまとめがされたものと承知をされております。この調査結果を踏まえまして、海上部のさらなる調査に高度な技術力が必要であることから、地元の地方公共団体と協力しつつ、今年度から直轄調査に着手することとしたところでございます。

川内委員 今、なぜ直轄調査にするのかという理由を御説明になられた。私が聞いている質問は、国交省として、いつ、どのような場で直轄調査にしようねということを方針として御決定をされたのですかということを教えてくださいというふうに申し上げているんですけれども。

榊政府参考人 お答えを申し上げます。

 先般、三月八日の調査検討結果の取りまとめを受けまして、今回の下関北九州道路の直轄調査の予算につきましては、道路局で取りまとめ、副大臣を含む政務三役に説明し、関係機関と協議の上、国土交通省として決定をさせていただいたところであります。この三月でございます。

川内委員 この三月というのは、ことしの三月ということですか。去年の三月ということですか。

榊政府参考人 お答えいたします。

 ことしの三月でございます。

川内委員 国土交通省として、三月何日に決めたんですか、直轄にしようねということを。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 国土交通省といたしまして、三月二十九日に決定通知を行ってございます。

川内委員 いや、だから、なぜそうやってはぐらかすんですか。

 麻生大臣は三月二十七日に知ったと言っているんですよ、直轄になることを。三月二十九日にそれは決定した話であって、私が聞いているのは、国直轄にしようねという方針をいつ決定したんですかということを聞いているんですよ。方針をいつ決定したか。

 昨年の十二月二十日の塚田副大臣と吉田博美参議院議員らの会合の記録によれば、昨年の十二月段階ですよ、いつごろ対外的に言えるようになるのかという質問に対して、年度末になる、年度末にははっきり決定するからねと。だけれども、この時点で方針は定まっているわけですよ、直轄にしようねという方針。その方針を決めたのはいつなんですかということを、私、繰り返し繰り返し何度も聞いているじゃないですか。その方針を決めたのはいつなんですか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 直轄調査に係る経費につきましては、実施計画の承認を財務大臣からいただく必要がございます。三月八日の地元の調査結果の取りまとめを受けまして、国土交通省において方針を決め、財務省に実施計画協議を行い、三月二十九日に私どもの中で決定通知を行っているものでございます。

川内委員 いや、去年の十二月の二十日の時点で、塚田副大臣が、要望を受けて、財務大臣にも要望してもらってありがとうね、今後のことについては年度末になるからねというふうに、塚田副大臣が吉田参議院会長らに述べていらっしゃるわけですよ、会合の記録として。これは国土交通省の公文書ですからね。公文書ですから。公文書に書いてあることを聞いているのに全く違うことをお答えになられるというのは、それは私、ちょっと違うと思いますよ。

 だから、直轄にするよ、補助の調査から直轄の調査に格上げしようねということの方針は、いつ、どういう場で定まったことなのかということを聞いているわけで、要するに、塚田副大臣の十二月二十日時点の年度末になるという発言の根拠はどこにあるんですかということを聞いているわけです。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 道路調査に係る予算の決定でございますが、予算の成立を受けて実施計画の策定段階に詰めてまいる、そしてその決定が年度末になるということを申し上げたものであると考えております。

川内委員 いや、委員長、きちんと答弁していただけるように。

 塚田前副大臣は、そんたくしたと発言し、それを撤回し、混乱を招いて辞任をされたということで、なぜそんなことになったんでしょうということをお尋ねしているわけですね。

 そのことについて、去年の十二月二十日の時点で、国直轄の予算に格上げするよということを、塚田副大臣御自身が、要望に来た先生方にお答えになっていらっしゃる。ということは、その方針、直轄の予算として財務省と協議しようね、財務省さんにもお願いしようね、理解もらおうねということについては、もう既にこの時点では固まっているわけですよね。であるとするならば、その方針をいつ決めたんですかということを聞いているわけです。

 文書管理の国交省の責任者として、行政の事務事業を跡づけ、検証するために文書は作成しなければならないわけでございますけれども、補助調査から直轄調査に格上げをするに当たっての方針を決定する会議なり会合なりというのは、文書がつくられていなければいけないでしょう。この場合は文書作成義務があるでしょう。

和田政府参考人 お答えいたします。

 先ほど道路局次長の方が申し上げましたとおり、この十二月二十日の時点で、実施計画という手続があります、そこで決まっていくことですということを申し上げたものでありまして、この時点において方針云々ということが何かあったわけでもございませんし、また、その記録がないということでございます。

川内委員 実施計画にのせるためには、方針が決定していなければいけないんですよ。実施計画にのせるためには。直轄にするわけですから。目を変えるんですから。目を変えることについて方針はいつどこで決まったんですかということを聞いているわけで。

 ちょっと答弁になっていないですよね。委員長、そう思いませんか。全く。その方針はいつ決まったんですかということを聞いているわけです。十二月二十日より以前に決まっているわけですよね、昨年の。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど下関北九州道路の経緯について申し上げましたけれども、去る三月八日に下関北九州道路調査検討会が開催され、二年間かけて行われた調査検討結果の取りまとめがなされてございます。この調査結果を踏まえて、海上部のさらなる調査に高度な技術力が必要なため、地元地方公共団体と協力しつつ、今年度から直轄調査に着手することとしたところでございます。

川内委員 その去る三月八日というのは、いつの三月八日ですか。

榊政府参考人 お答えを申し上げます。

 ことしの三月八日でございます。

川内委員 その取りまとめの結果を受けて、直轄調査にしましょうねということを決めたと。じゃ、何で去年の十二月の時点で実施計画が云々かんぬんということが言えるんですか。ちょっと答弁がえらい矛盾しているじゃない。

 別に、悪いことをしているなんて、私、一言も言っていないですからね。私は、必要な道路はつくるべきだという立場ですから。どういう経緯でこれは直轄になっていったのかということをみんなが知ることは今後の勉強にもなるので、そういう流れを教えてよと言っているだけの話ですよ、今はまだね。安倍さんの名前はあったけれども。

 それを、何かごまかすような答弁をされるのは非常に心外ですよ。何かめちゃめちゃ屈辱的な思いを今しながらしゃべっていますけれどもね。

 いつ国直轄の調査にするという御方針をお決めになられたのか。方針を決めたですよ、実施計画にのせたのはいつとか聞いていないですから。もう昨年の十二月の時点では直轄にしようねということを塚田副大臣が言っているわけですから、それはいつ決めたんですかということを聞いているわけですから。何でそんな隠すんですか。

榊政府参考人 お答えを申し上げます。

 道路調査に係る予算の決定でございますけれども、予算成立後の実施計画の承認を待たなければいけないものですから、今後のことは年度末になるというのは、予算執行、毎年行っていることでございます。

 直轄調査に着手することといたしましたのは、ことしの三月八日、地元の調査検討結果の取りまとめを受けて、より高度な技術力なども必要となりますことから、直轄調査に着手することとしたものでございます。

川内委員 ちょっと今の答弁ではとても誠実な答弁とは私は思いませんね。

 道路局長や道路企画課長が同席している場で、直轄の調査に格上げするよ、言えるのは年度末だよということを言っているわけですよね。じゃ、そういう方針でいこうねということを道路局あるいは国交省として決められたのは、どういう場で決めたんですか、その場に塚田副大臣がいたんですかということを聞きたかったんですけれども、何か隠されているというのはちょっと怪しいなとこっちは思わざるを得なくなっちゃうんですね、逆にね。

 最後、もう一つ聞かせていただきますが、財務省に確認しておきたいんですけれども、山口県のホームページによると、ことし三月十九日に、山口県知事、福岡県知事など期成同盟会の皆さんが、石井大臣や……

坂井委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、手短にお願いいたします。

川内委員 はい。

 萩生田さんやら、いろいろなところを回って陳情されています。太田財務省主計局長にも面会して要望しています。

 山口県のホームページによると、主計局長は、国土交通省で計画をつくって取り組んでいくということであればきちんと対応していきたいというふうに答えていますが、このきちんと対応していくというのは、建設まで予算をつけるということですか。どういうことなんですか、きちんと対応していくというのは。

坂井委員長 阪田次長、手短にお願いいたします。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 発言について事実かどうか確認をしておりませんが、予算も成立しておらず、確たることを申し上げることができないので、一般的な受け答えをさせていただいたものではないかと考えております。

坂井委員長 時間が過ぎておりますので、よろしくお願いいたします。

川内委員 申合せの時間は過ぎていますけれども、委員長、私が聞いていることに全く答えず時間だけを使われるというのは、これは私、こういう国会が常態化すると本当によくないと思います。これは与野党で、与党の先生方も、役所の皆さんにこんな対応をされたら多分怒ると思いますよ。強く抗議をしておきたいというふうに思います。

 終わります。

     ――――◇―――――

坂井委員長 次に、内閣提出、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明させていただきます。

 預金保険機構の金融機能早期健全化勘定に属する剰余金につきましては、会計検査院の平成二十七年度決算検査報告におきまして、適時に国庫に納付したり、預金保険機構の財務の健全性を維持するために活用したりするため、必要な制度を整備するなど抜本的な方策を検討するよう、意見が表示をされております。

 また、これまでに、衆議院本会議及び参議院決算委員会それぞれにおきましても、同じ趣旨の議決等がなされております。

 本法案は、これらの議決等を踏まえ、預金保険機構の金融機能早期健全化勘定に属する剰余金を活用するため、金融機能早期健全化業務が終了する日より前にその剰余金を国庫に納付することができるようにするとともに、金融機能早期健全化勘定から金融再生勘定に繰入れをすることができることとするものであります。

 以上が、金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律の一部を改正する法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

坂井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十六日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.