衆議院

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第11号 平成31年4月16日(火曜日)

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平成三十一年四月十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂井  学君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 武部  新君 理事 寺田  稔君

   理事 藤丸  敏君 理事 川内 博史君

   理事 緑川 貴士君 理事 竹内  譲君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石崎  徹君    加藤 鮎子君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      木村 哲也君    小泉 龍司君

      佐々木 紀君    斎藤 洋明君

      杉田 水脈君    武井 俊輔君

      津島  淳君    土井  亨君

      中山 展宏君    西田 昭二君

      船橋 利実君    本田 太郎君

      牧島かれん君    三ッ矢憲生君

      宗清 皇一君    山田 美樹君

      義家 弘介君    鷲尾英一郎君

      末松 義規君    高木錬太郎君

      武内 則男君    青山 大人君

      佐藤 公治君    古本伸一郎君

      前原 誠司君    伊佐 進一君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      野田 佳彦君    青山 雅幸君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   防衛副大臣        原田 憲治君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   政府参考人

   (内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局内閣審議官)        徳永  崇君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 小田部耕治君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  三井 秀範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    栗田 照久君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阪田  渉君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    可部 哲生君

   政府参考人

   (国税庁次長)      並木  稔君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         和田 信貴君

   政府参考人

   (国土交通省道路局次長) 榊  真一君

   政府参考人

   (防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官)           小波  功君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   参考人

   (日本銀行理事)     衛藤 公洋君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十六日

 辞任         補欠選任

  今枝宗一郎君     佐々木 紀君

  國場幸之助君     西田 昭二君

  鈴木 隼人君     木村 哲也君

  武井 俊輔君     金子 俊平君

  今井 雅人君     武内 則男君

  前原 誠司君     青山 大人君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 俊平君     武井 俊輔君

  木村 哲也君     杉田 水脈君

  佐々木 紀君     船橋 利実君

  西田 昭二君     國場幸之助君

  武内 則男君     今井 雅人君

  青山 大人君     前原 誠司君

同日

 辞任         補欠選任

  杉田 水脈君     加藤 鮎子君

  船橋 利実君     今枝宗一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 鮎子君     鈴木 隼人君

    ―――――――――――――

四月十一日

 消費税一〇%の中止、減税に関する請願(田村貴昭君紹介)(第八七六号)

 消費税一〇%への引き上げ、インボイス制度の導入中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第八七七号)

 同(笠井亮君紹介)(第八七八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第八七九号)

 同(志位和夫君紹介)(第八八〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八八一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第八八二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第八八三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第八八四号)

 同(藤野保史君紹介)(第八八五号)

 同(宮本徹君紹介)(第八八六号)

 同(本村伸子君紹介)(第八八七号)

 消費税増税を中止して五%に戻し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第八八八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

坂井委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、副総裁雨宮正佳君、理事衛藤公洋君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房ギャンブル等依存症対策推進本部事務局内閣審議官徳永崇君、警察庁長官官房審議官小田部耕治君、金融庁企画市場局長三井秀範君、監督局長栗田照久君、財務省主計局次長阪田渉君、理財局長可部哲生君、国税庁次長並木稔君、国土交通省大臣官房総括審議官和田信貴君、道路局次長榊真一君、防衛省大臣官房サイバーセキュリティ・情報化審議官小波功君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。川内博史君。

川内委員 おはようございます。川内でございます。

 大臣、よろしくお願いを申し上げます。

 本日も、予算の箇所づけ、予算の使われ方という視点において、最近大変に話題になっております下関北九州道路について、事実関係を確認させていただきたいというふうに考えております。

 そんたくがあったのか、なかったのか。したんですと発言をした前塚田国交副大臣は、発言を撤回し、辞任をされたわけであります。本当はどうだったのかということについて、まあ、本日御出席の委員の先生方の御地元でもそうでしょうし、さまざまな地域でさまざまな人々が、この公共事業が必要なのだ、地元の発展のために大事なんだということを要望していらっしゃるわけでございまして、霞が関はそれを公平公正に判断をし、事業化し、箇所づけをしていかなければならないわけでありますが、この下関北九州道路、本件の場合、道路行政を国交省の中で担当する副大臣が、その発言は撤回をされたものの、一度は、総理、副総理にそんたくしたと発言をしていらっしゃるわけでございます。すなわち、道路行政を担当する政務が、行政をゆがめたというふうに一度はみずから告白を、発言をしているわけですね。

 違うというのであれば、政府として、違いますよ、きちんと公平公正にやられたんですよということを、説明責任を果たしていただかなければ、国民の皆様の疑念というものは晴れないのではないかというふうに考えるわけです。

 そこで、麻生大臣の過去の発言を幾つか確認をさせていただきたいというふうに思うんですけれども、平成三十年、去年の十一月二十二日に、自民党の大家議員の質問に対して、この下関北九州道路に関して、麻生大臣が、「そういった意味では経済波及効果が極めて大きいのははっきりしていますんで。」というふうに御答弁をされていらっしゃいます。経済波及効果は極めて大きいと御発言をされていらっしゃいます。

 この経済波及効果が極めて大きいと大臣として御答弁になられた根拠となる資料等があるのかないのか、客観的なですね。御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 下関と北九州の道路につきましては、これはもう三十年ぐらい前からの話だと記憶しますけれども、少なくとも、下関に行かれたと思いますので、門司まで上がっていくというのは、地理的にずっと上に上って、まあ、あそこが当時一番近かったからそういう方法だったんだと思いますけれども、現実問題、北九州の主力地域、八幡とか小倉とかそういうところが主力、主力という言い方をするとまた問題になるのかもしれませんが、昭和三十八年に五市合併して、あれは最初の一番大きな合併の例なんだと記憶しますけれども、そのときと違いまして、今、八幡、小倉あたりが主力、そこの方から真っすぐ上がっていった方がはるかに近い形になっておりますので、そういった意味では、直線的に結ぶということで、物流とかそういったものを考えたときに、あそこが近くなるというのははっきりしているんだということは、行っていただければわかるところだと思いますが。

 そういった意味で、今までありますもの、下関の関門道路、それからトンネル、それから関門海峡にかわってこういったようなものをというのは、前々からそういった話が出ておりましたが、それに関する細目の資料は、それは多分、運輸省に聞いていただいた方がよろしいんだと思います。

 私どもの理解、現地にいる者の理解としては、基本的に、下関と北九州を結ぶ道路というものが、より直線的なものができ上がった方が経済効果がでかい、これはもうはっきりしていると思っております。

川内委員 今大臣が、地元におります者としてはというふうに御答弁になられたわけでございますけれども、財務大臣としての御発言と地元選出の議員としての発言というものは峻別をしていただかなければならないのではないかというふうに、まず指摘をしておきたいというふうに思います。

 さらに、大家議員の同じ質問の答弁の最後の部分で、やはり財務大臣が、「今はこれがどれくらいのものかって、ちょっとよく、これは両県はもちろんでしょうけど、国交省やら何やらで、これ調査やら何やら今始めようとされるのかどうか知りませんけど、そこのところをちょっとやっていただいた上でないと何となく判断はできませんけれども、」というふうに御答弁になられています。「国交省やら何やらで、これ調査やら何やら今始めようとされるのかどうか」と。

 昨年の十一月二十二日の時点で、国交省が直轄調査に乗り出そうとしているのではないか、あるいは乗り出すのではないかという、財務大臣として御説明を聞かれていたのではないかということを思わせるような御答弁なんですけれども、事実関係を教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 昨年の十一月の段階では全く知る由もありませんけれども。

 平成三十一年度において直轄調査で四千万円を実施することになったというのは、今年の三月の二十七日だと記憶しますけれども。これはもともと市と県と国と三分割で調査をしておられたんだと思うんですが、そういったものが、昨年の水害等々によって、これは直轄でやらねばならぬということになっているという話をわんわんしておられるという話を正確に聞いたのは、この三月の話だと記憶しますけれども。

 少なくとも、その前の十一月の段階で、三つのところを一本の直轄でするかしないかというのを知っていたかという御質問であれば、その段階では知りませんでした。

川内委員 余り、大臣にどうこう申し上げる、まだ段階ではないかもしれないんですけれども、国交省やら何やらで調査やら何やら今後されるのであろうと、要するに、財務大臣としては直轄調査に進むんだろうという予想はしていたということですかということを聞いているんですけれども。

麻生国務大臣 その段階では全く、三分割でやっていた話が直轄になるということを予想していたわけではありません。

川内委員 それから、大臣、下関北九州道路整備促進期成同盟会の、大臣は顧問になっていらっしゃいます。

 先ほど、地元としてはという言葉も出ましたし、もちろん、地元の発展を願うのは、ここにいる議員全てが地元の発展を願うわけでございますね、自分の地元の。そういう意味では、この下関北九州道路というのは、地元にとってはとても大事なプロジェクトであるというのは、私は理解はいたしますが、財務大臣として、李下に冠を正さずという意味においても、期成同盟会の顧問として名前を連ねていらっしゃるのは、私は適切ではないのではないか、適当ではないのではないかというふうに考えます。

 したがって、今後、この期成同盟会からは、私は、この道路がみんなに、ああ、そうだねというふうに言われる道路になるとすれば、地元の大臣が、いやいや、そう簡単ではないよという発言をなさればこそ、この道路が公正な扱いをされているんだねということが国民に伝わるのではないかというふうに、逆の意味において考えるわけですね。したがって、期成同盟会の顧問から名前を外されることをお勧めしたいというふうに思いますが、大臣のお考えを聞きたいというふうに思います。

麻生国務大臣 これができ上がりましたのが平成三年、二十七年、二十八年前の話なんですけれども、そのとき以来、ここに国会議員でずらり名前が入っておりますけれども、山口県側もずらり、河村先生も入っていますけれども、そういった名前の一人として入っていない方がよほどおかしいんじゃないかと思うんですが。

 少なくとも、今財務大臣になったんだからやめろということを言っておられるんですか。(川内委員「そういうことです」と呼ぶ)考えておきます。

川内委員 今、最後、何ておっしゃったんですか。

麻生国務大臣 考えておきますと申し上げました。

川内委員 考えておきますじゃなくて、私が大臣だったら、そうだねと、財務大臣として、あらぬ疑いをかけられても、それは麻生としては嫌なんだ、俺としては嫌なんだ、そんなことじゃないんだ、名前を抜くよというふうにおっしゃっていただけるものというふうに思っておりましたけれども、考えていただいて御判断をいただきたいというふうに思います。

 そこで、先ほど大臣から御紹介もいただいたわけですけれども、きのう現地を見させていただきました。先ほどの大臣の御答弁の中で、下関まで上がっていかなきゃいけないんだよ、門司まで上がっていかなきゃいけないんだよ、道路をずっと高くして、つないでいるんだよということで、若干遠回りだという御説明がございました。

 この上に上がっていかなきゃ、山を登っていかなきゃいけないというのは、それには何か理由があるらしくて、関門海峡は大型船が通航するので、航行するので、橋の高さが六十三メートル必要であるというふうな御説明を昨日いただきました。したがって、この下関北九州道路の予定されている地元で調査をされたルートにおいても、高さが最低でも六十三メートル必要であるということでよろしいでしょうか。

榊政府参考人 お答えを申し上げます。

 下関北九州道路は、航路の影響を踏まえますと、六十三メートルの高さを確保することが必要になるというふうに考えてございます。

川内委員 そうすると、地元で調査をされて、このルートがいいね、このルートが望ましいねということで報告をされているルートに関して、北九州市側は特に、海抜ゼロメートルに近い、ほとんど海面の高さと道路の地盤の高さが一緒なので、六十三メートル、橋脚をどんと上げなきゃいけないということになるわけで、道路構造令で最大の勾配は五%ですから、五%勾配で六十三メートル上げるためには、取付け道路が約千三百メートル、千四百メートル必要になるのではないかというふうに単純に考えれば想定をされる。そうすると、両サイドで考えると、千三百、千三百、海峡が二キロですから、約五キロの富士山形の道路をつくっていかなければならないということになるのではないかというふうに考えるわけですが、大体の考え方としてはこの考え方でよろしいですか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 今年度実施いたします国の調査の中で、海上部の概略構造等につきましても検討してまいりたいというふうに考えております。

川内委員 いや、ですから、単純に考えると、六十三メートル、じゃ、まず、北九州市側の地盤の高さはほぼ海面と同じ高さであるというのはよろしいですね。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 下関北九州道路の概略ルートも含め、検討してまいりたいというふうに考えております。

川内委員 国交省は直轄で調査しますよということを予算に盛り込んだわけですから、それをなぜ直轄の調査にするのかということについて、国民に対して説明する責任があるんですよ。ごまかすことをしちゃいけないんです。

 北九州市側は海面とほぼ同じ高さなので、六十三メートル、その地点において高さを保持する、そうすると、五%勾配で、道路構造令で許される最大の勾配で考えた場合、取付け道路が千三百ぐらいは必要になる、これは単純な算数ですから、それをごまかすような御答弁をされるのは、私は、この下関北九州道路を切望する人々にとっても裏切りだと思いますよ。そこは、きちんとまず答えるということが必要だというふうに思います。いかがですか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 これまで二年間かけて、福岡県、山口県において行われました補助調査におきましては、概略ルートや構造、整備手法等につきまして、過去の事例、文献等に基づきまして考えられる比較案やそれらの特徴を整理するとともに、地域における道路利用者のニーズ調査の結果などを踏まえて、基礎的な比較検討を行っていただいていると認識をしております。

 今年度から実施する国の調査につきましては、そうした文献等による調査に加えまして、地質、気象、海象等の現地調査も実施した上で、高度な技術力をもって、ルートでありますとか海上部の概略構造等の検討を行いたいと考えております。

川内委員 じゃ、地元がこのルートがいいねというルートは全く関係ないということですか、今おっしゃったんですか。全く新しいルートで考えるんだ、地元の報告書は関係ないということをおっしゃったんですか、今。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 地元の調査結果も踏まえつつ、国として、ルート、概略構造等の検討を進めてまいりたいと考えております。

川内委員 いや、次長さん、ですから、地元が推奨するルートでいえば、取付け道路が、海峡部分で橋の高さを六十三メートル確保するためには、五%勾配で六十三メートルの高さを確保するには、千三百メートルぐらい、千二百から千三百メートルの取付け道路が直線距離で必要になりますよねということを私は機械的に申し上げているわけで、それをごまかすのは、私はちょっと、事務方、あるいは事務的なこと、技術的なことを説明される国土交通省の態度としてはいかがなものかというふうに思いますよ。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 今年度につきましては、海上部の構造検討は国におきまして、また、陸上部の構造検討を地元の地方公共団体において検討することとしておりますけれども、接続部に関する検討につきましては、地元の公共団体とこれから調整をしてまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、地元でもこの二年間調査をしておりますので、地元地方公共団体と協力しつつ調査を進めてまいります。

川内委員 いや、だから、国土交通省としての今後の御方針を説明してくださいということを聞いているわけじゃないんですよ。六十三メートルの橋の高さを確保するためには、道路構造令で計算をすると、直線で考えても千三百メートルぐらいの取付け道路、水平距離で千三百メートルぐらいの取付け道路が必要になりますねということを確認しているんですよ。

 これを否定するのか、いいや、そんなにかからないと言うのか、そうですね、そのくらいはかかりますね、だから地元で検討してもらいますよという話になるのか、どっちなんですかということを聞いているんです。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 下関北九州道路につきましては、下は航路になっておりますので、航路の影響もよく踏まえながら検討を進めてまいりたいと思います。

川内委員 どうして機械的なことをきちんとお答えにならないのか、私にはちょっと理解できないんですけれども。

 六十三メートルの高さを海峡部分で確保するためには、五%勾配でつけたら、千二百から千三百の、水平距離でいうと取付け道路が必要になりますよねと、これは道路構造令にのっとったことを聞いているわけですから、そうですね、そこはよく調査しますよという答弁にならなきゃおかしいんですよ。何でそう答えないんですか。よくわからないですよ。

榊政府参考人 委員が御指摘のように、橋の中央部において六十三メートルの高さを確保しようとする場合には、算術的にはおっしゃるようなお話になろうかと存じますが、詳細な構造等につきましては、これからの直轄調査の中でしっかりと検討してまいりたいと存じます。

川内委員 算術的にはじゃないです。道路構造令上そうなると言わなきゃおかしいですよ。何か、私が勝手にいいかげんなことを言っているかのようにおっしゃられるのは、私は心外ですよ。

 道路構造令にのっとれば、委員御指摘のとおり、取付け道路の長さはそのくらい必要になると思われるが、詳細についてはこれから検討すると。何で私が答弁をここで言わなきゃいけないんですか。そういうふうに答弁するのが、国土交通省の事務方としてのあるべき態度なんじゃないんですか。

榊政府参考人 新しい道路を建設する場合には、道路構造令の規定に適合してこれを整備する必要がございます。

 橋の取付け部の構造をどのようにするのかにつきましては、これから詳細な検討が必要であるというふうに考えておりますが、航路の高さを確保できますような、そういった構造についてしっかりと検討を進めてまいりたいと思います。

 仮に、委員が御指摘されておられますように、一直線で、六十三メートルの高さをゼロメートルから確保しようとする場合には、委員がおっしゃったような距離が必要になってくるのではないかと思いますが、それも含めて十分検討してまいります。

川内委員 ここまで来るのに十五分かかりました。一体どういうことなのか、よくわからぬけれども。

 それで、国直轄の調査、それから地元の調査もやるということなんですが、先日の私の質問に対して、今や私と大変な、もう友人のような、親友のような関係になった榊次長は、「直轄調査に係る経費につきましては、実施計画の承認を財務大臣からいただく必要がございます。三月八日の地元の調査結果の取りまとめを受けまして、国土交通省において方針を決め、財務省に実施計画協議を行い、三月二十九日に私どもの中で決定通知を行っているものでございます。」というふうに御答弁されていらっしゃいます。三月八日に地元の調査結果の取りまとめを受けたと。

 この地元の調査報告書を榊次長は読まれましたか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 調査報告書の概要につきましては目を通しておりますが、報告書そのものについては、済みません、見ておりません。

川内委員 報告書そのものは国土交通省本省にいつ来ましたか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 先週に入りましてから、御指摘の補助調査報告書の提供を山口県、福岡県に依頼し、地方整備局経由でいただいてございます。

川内委員 先週になりましてからと。

 もう来たんですか。まだ来ていないんですか。要請しているんですか。

榊政府参考人 地方整備局経由でいただき、受け取っております。

川内委員 いつ受け取られましたか。

榊政府参考人 先週に入ってから受け取ったと聞いておりますが、ちょっと、具体的な日にちまでは確認ができておりません。今ちょっと持ち合わせがありません。

川内委員 一体どういうことなんですか。調査報告書、国土交通省さんが今回、直轄調査の四千万をつけるに当たって政府として判断した理由にしている調査報告書がいつ国土交通省本省に来たのかということについて、その日にちはわからぬということは、ちょっと許されないと思いますよ。委員長、そう思わないですか。

坂井委員長 しかし、今わからないんですか。

榊政府参考人 調査結果の報告書については先ほど答弁したとおりでございますけれども、調査の検討結果の概要につきましてはもっと早い段階からいただいており、最終的には、三月八日の下関北九州道路調査検討会において調査検討結果が取りまとめられたとの報告を受けております。

川内委員 いや、ですから、調査結果の概要を聞いていたとか、三月八日に取りまとめられたという報告を聞いているとか、そんなことを答弁してくださいと私申し上げているわけではないわけですね。調査報告書そのものを、いつ国土交通省はお受け取りになられたのか。

 少なくとも、三月八日の時点では受け取っていないということは確かなんです。それはいいですね。まずそこだけ確認させてください。要するに、三月八日には受け取っていないと。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 三月八日の時点では、調査結果の報告書については受け取ってございません。

川内委員 だから、概要で判断をしたということになるわけですね。

 じゃ、正式な調査結果をいつ国土交通省が、本省が入手をしたのかということについて、後ろの担当の若い人たちも知らないんですか、いつ受け取ったのか。

榊政府参考人 お答えいたします。

 先週の後半ではなかったかということなんですけれども、具体的な日にちにつきましては確認をさせてください。

川内委員 いや、先週の後半ではなかったかと。きょう来ていらっしゃる方たちは御担当の方たちなんですから。

 じゃ、報告書本体そのものを誰も読んでいないということですか、国土交通省道路局は。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 地元からいただきました報告書の内容につきましては、現在、その内容を確認しているところです。

川内委員 いや、だから、現在確認しているところであると。そうすると、誰かが読んでいるわけですよね。今、読んで分析をしていらっしゃるところであると。そうすると、担当者がいつ受け取ったのか。先週の後半と。後半という言葉は、水曜日も入るのか入らないのかとか、木曜日なのか金曜日なのかとか、よくわからぬですけれども。日にちがわからないとは一体、次長、ちょっと僕には理解できないんです。多分、先生方も誰一人理解できぬと思いますよ。

 大事な報告書なんでしょう。それをいつ受け取ったのか、多分メールか何かで来ていると思うんですけれども、その日付を教えてくださいよ。そんなことぐらいすぐわかるじゃないですか。聞けばわかるでしょう。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 間違いがあってはいけませんので、しっかりと確認をしてお答えを申し上げたいと思います。

坂井委員長 当然、わかればお答えできるんですね。

 じゃ、川内君。

川内委員 それじゃ、まだ私の質疑時間が十一分ありますから、ちょっと後ろの若い人、本省に電話して、いつかというのを聞いて、あと十一分の間に次長に伝えて、答えてください。その間、別な質問をしていますから。

坂井委員長 そうしたら、聞いて確認をお願いします。

川内委員 きょう主計局の次長さんにも来ていただいているんですけれども、今やりとりを聞いていただいていて、報告の取りまとめを受けまして実施計画協議に入ったのだというふうに国土交通省さんは御答弁になられているわけで、財務省さんもそう認識していたというふうに思うんですけれども、結局、国交省本省でさえ、その報告書の本体は今読み始めたところである。どうも、財務省なんかには多分渡っていないと思うんですよね。概要だけ説明を聞いたということかもしれませんが。

 このように相当に費用のかかるであろう大きな大規模プロジェクトに関して、直轄調査に踏み出すというのは大変な判断だというふうに思うんですけれども、その地元で取りまとめられた報告書さえきちんとした分析がなされていない状況の中で、直轄の予算、四千万つけたということに関して、いや、別にそれでいいんだ、報告書は概要でいいんだもんというふうに御答弁になられるのかどうか、主計局としてのお考えを聞かせてください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、私どもは、国の直轄調査としての実施計画協議を受けてございまして、その背景として、そういう報告書が地方で取りまとめられた、そういうことは伺っておりますけれども、あくまでも、今回の我々の協議というのは、今度行われる調査がどういった内容であって、それが法令だったり予算にだったり違反していないかという、最終的な事業費の部分ではなくて、調査の部分についての実施計画の協議を受けて承認させていただいた、そういうことでございます。

川内委員 報告書の取りまとめを受けて実施計画協議をしたと国交省は言っているわけですが、その報告書なるものについて国交省は手元に入手をしておらなかった、それでも構わないというふうに主計局としてはおっしゃられるわけでございますけれども、私はどうも、国民に対する説明として、それで国民の皆さんが、はあ、そういうものなんですかね、偉い人同士が電話ででも連絡をとり合えばそれで済むんですかねというふうに、多分疑問に思われるというふうに思います。

 国交省にもう一点確認をさせていただきますが、二十八年の三月三十一日の、補助調査に踏み出すに当たって、安倍晋三先生の名前がある関門会の要望書を石井大臣が受け取られるわけでございますけれども、この二十八年三月三十一日、関門会の石井国交大臣への、安倍晋三先生の名前の入った要望書、この下関北九州道路の要望会合には、国交省の事務方はどなたが出席していたのか。石井大臣の秘書官は必ず出席していたでしょうから、その石井大臣の秘書官に当時の記憶を喚起していただいて、聞いていただいてお答えくださいというふうに申し上げてございますが、いかがだったでしょうか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 当時の大臣秘書官に確認をいたしましたが、通常、大臣要望時には同席しておりましたので、関門会の要望の席にも同席していたのではないかと思うけれども、よく覚えていないということでございました。

川内委員 それでは、この要望時に道路局長並びに道路局の企画課長が出席をしていたのかということについて、当時の御関係の方に聞いてくださいというふうに申し上げてありますけれども、いかがでしょうか。

榊政府参考人 お答えをいたします。

 要望というのは非常に数が多いものですから、当時の道路局長等に聞き取りをいたしましたけれども、この要望の席に立ち会っていたかどうか確認できませんでした。

川内委員 文書管理の担当の方にも来ていただいていますけれども、公文書管理法あるいは国土交通省文書管理規則並びに総理大臣が発出している文書管理に関するガイドラインでは、挨拶程度の軽微な事案を除いて、全て文書を作成せよというふうに規則上定められている。それは、どのような会合であれ、挨拶程度のもの以外は全て文書を作成せよと。なぜなら、行政の事務事業を跡づけ、検証するために必要だからだということになるわけですけれども。文書は作成されなければならないわけですね、そういう意味においては。その文書が後々必要になるか否かということについては、一年という期限を区切りとして、保存するものか廃棄するものかということを文書管理者が判断していくということになろうかというふうに思いますが。

 本件下関北九州道路については、今のところ、私どもに開示された文書というのは、昨年十二月二十日の塚田前副大臣出席の副大臣会合のメール以外、一切ないんですよ。このように、大規模なプロジェクトがどのような経緯で決まっていくのかということについて、全く跡づけ、検証できないわけですね。

 文書管理の御担当として、この十二月二十日のメール以外にない、それでいいんだというふうに国交省として強弁されるのかということをちょっと教えていただきたいと思います。

和田政府参考人 お答えいたします。

 一般的に、外部からの要望につきましては、地域の実情等を踏まえた事業のニーズや必要性をしっかり伺う場と心得ておりまして、何らかの方向性を決める場ということでは一般的にはないかと存じております。したがいまして、要望対応あるいはそういったようなやりとり、こういったものが業務に係る政策立案や事務及び事業の方針等に必ずしも影響を及ぼすものとまでは考えにくいと考えております。

 このため、それぞれの文書管理者において、今のようなことを考えられた上で、文書を作成し保存する、あるいは作成しないという判断を行ってきているところかと存じます。

川内委員 安倍晋三先生の名前の入った要望書を石井大臣に提出して、そのときの会合で石井大臣がどう御発言をされたのかとか、その会合に事務方が誰が出席していたのかとか、何にもわからないわけですよ。それを、別にそのときそのときでやっているからいいんじゃないですかみたいな御答弁というのは、私は、公務をつかさどる、そして文書管理をつかさどる方の御発言としては、これは看過しがたい発言であるというふうに思います。

 時間が来ましたので、最後、報告書をいつ受け取ったのかということを御答弁いただきたいと思います。

榊政府参考人 お答えいたします。

 ただいま確認をできましたけれども、道路局内の担当係長が先週四月八日にメールにて受け取っていることが確認できました。

 先ほどの発言については、訂正をさせていただきたいと思います。

坂井委員長 何を訂正するんですか。もう一度、はっきり言ってください。

榊政府参考人 先ほどの発言で、先週後半ではなかったかという発言をいたしましたけれども、四月の八日の月曜日であったことがわかりましたので、訂正をさせていただきたいと思います。

川内委員 委員会の答弁では、三月八日に報告書が取りまとまったことを受けて、実施計画協議で四千万つけたと御答弁になられているわけですが、その報告書本体は実際には四月八日に国交省に、一カ月おくれて、しかも、我々野党からの資料要求を受けて、九州地整にもらってみてねということを要求しているわけで、その報告書本体もない中で直轄の予算をつけましたというのは、私は下関北九州道路の検証という意味において甚だ不適切ではないかというふうに思いますし、今後、まだまだたくさん聞かなきゃいけないこと、きょう山ほどあったんですけれども、事実関係が、文書が全く残っていないということで、わかりません、わかりません、記憶にありませんと。この間、私ども、ほかの案件でも何回も聞かされてきたことと全く似ているなという、最後、私の感想を申し上げて、きょうは終わらせていただきます。

 ありがとうございます。

坂井委員長 次に、青山大人君。

青山(大)委員 国民民主党の青山大人でございます。

 麻生大臣に、四月九日に発表されました紙幣と五百円硬貨の刷新について幾つか質問をさせていただきます。

 四月九日に発表されましたけれども、すごく唐突な感じが私はいたしました。まるで新元号を祝う、新たな時代を祝う機運に便乗したかのような、そんな印象も受けました。

 特に私なんかは、物心ついたときから一万円札は福沢諭吉先生のものを使っており、慶応大学出身の自分としてはちょっと寂しい気もいたしますけれども、そういった新紙幣の肖像が渋沢栄一、津田梅子さん、そして北里柴三郎さんというふうになりましたけれども、この肖像画の決定権は財務大臣にあるということでございますけれども、どういったお考えでこの三人にされたのでしょうか。大臣に伺います。

麻生国務大臣 お札は、いわゆる偽造というものに対応するために大体二十年に一遍ぐらい改刷されるということにこれまでもなっております。

 したがいまして、まず最初に、新元号になるというのが決まったのは、ついこの間の話でありまして、御存じのように、いわゆる陛下が崩御される前にいかがなものかという議論がなされておりました、つい最近のことだと、御存じだと思いますが。

 日本銀行券の改刷に関しては二十年前から、大体これぐらいと思ってやっておりますので、これに別に合わせたというわけではなくて、大体、自動販売機等々に使わせるためには、少なくとも数年間、二年半の時間を要する等々を考え、偽造等々のきちんとしたものをつくり上げるために、まず、それのためのものができ上がるまでにというようなことを考えると、あと四年、五年かかるということで、これに合わせたということであって、それが、今ちょうど十四年たっておりますので、そういった形でやらせていただいたというように御理解いただければよろしいので、新しい元号に合わせてこれをつくったというわけではございません。

 それから、日本銀行券に係る肖像につきましては、これは偽造防止の観点からなるべく精密なものをつくるということで、聖徳太子というようなものでは写真があったわけではありませんし、そういった意味では、きちんと精密な写真ができること、それから肖像とか彫刻の観点から品格のある、お札にふさわしい肖像であること、また、肖像の人物が国民各層に広く知られていて、その業績が広く認められていることといった観点を踏まえて、明治以降の人物からこれまでも採用させてきていただいております。

 今回の新しい日本銀行券の肖像につきましても、その考え方を踏まえまして、一万円札には渋沢栄一、日本の資本主義の父とも言われた方でもありますので、経済近代化最大の功労者と言われております渋沢栄一を選ばさせていただいております。五千円券につきましては、これは女性という話が、前回の樋口一葉のときからの話だと思いますが、初の女子留学生であり、いわゆる女子高等教育に尽力をされた津田梅子というのを選ばさせていただき、千円券につきましては、これは、ペストの発見者とも言われる、日本の細菌学の父とも言われる北里柴三郎先生を選ばせていただいたということであります。

 それぞれ、産業の育成とか女性活躍とか科学技術の発展など、これは現代にも通じております諸課題に尽力をされておられる方々で、そういった方々を新しい日本券にふさわしい人物と考えたというように御理解いただければと存じます。

青山(大)委員 これは、そういった有識者の方とかで集まって決めたりされるんでしょうか。また、ほかに候補として挙がった人物などはいるのでしょうか。あわせてお伺いいたします。

麻生国務大臣 いろいろな方々の御意見を拝聴させていただいておりますし、その中で、学校の教科書にどれくらい数が載っているかとか、いろいろな御意見もありましたので、学校の教科書が何の関係があるのかと思ったけれども、知られている人物というのであると学校の教科書、なるほどなと思いましたけれども。そういったようなことも踏まえて選ばさせていただいたという経緯だと理解しております。

青山(大)委員 学校の教科書という御答弁をいただきましたけれども、私も大学受験の予備校で世界史の先生も今やっていまして、高校のを見ていましても、私は世界史なので日本史の方じゃないんですけれども、見ると、確かに大臣がおっしゃるように、日本史のBとか日本史のAを見ますと、渋沢栄一さんとか津田梅子さんとか、確かに多いんですけれども、同等の、同じ頻度で、犬養毅さんとか岩崎弥太郎さんとか、私なんかは大隈重信さんなんかもいいなと思っていますし、私の地元の茨城で関連しますと、岡倉天心さんという、まさに文化で非常に大きな功績を上げた方もおりますし。

 大臣、二十年のタームというふうにおっしゃいましたけれども、今後も紙幣を刷新するかどうかはわかりませんけれども、例えばイギリスなんかでは、公募して人物を選んだりするようなところもございますし、偽造という中から余り公募は適さないとかいう意見もあるかもしれませんけれども、日本の造幣技術というのは世界一のものであるというような私は認識を持っていますし、そういった、今後は公募なんかを見据えて選定していくのもありなのではないかというふうに思いますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

可部政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、一部の国では、一部の券種について、肖像を決定する過程でそうした会合を実施している事例もあるというふうに承知しておりますけれども、これは複数の候補者をリストアップするために実施されているものであって、最終決定はいずれも各国の財務大臣あるいは中央銀行総裁等によってなされているものと承知をしております。

 日本の偽造紙幣発見枚数が諸外国と比べて低位で推移しているということの要因の一つとして、先ほど大臣から御答弁がございましたように、精密な肖像を搭載しているということがあるのではないかというふうに考えておりまして、各国の肖像の選定プロセスについて一概に比較することは必ずしも適当ではないのではないかというふうに思っているところでございます。

青山(大)委員 公募については、私からの、次回もし仮にやる際の提案とさせていただきます。

 では次に、先ほども大臣の方から、いろいろな準備等があるので、二〇二四年に向けて早目に、前回の反省を踏まえて五年前に発表したということでございますけれども、五百円硬貨については二〇二一年度からというふうに伺っていますけれども、硬貨と紙幣で時期を使い分けたというのはどういった理由があるんでしょうか。

可部政府参考人 お答えいたします。

 先ほど大臣から御答弁ございましたように、紙幣の改刷並びに硬貨の改鋳には一定の準備期間が必要でございます。

 今回、紙幣につきましては五年後、硬貨につきましては二年後という発行を予定しておるわけでございますけれども、紙幣につきましては、印刷局の方で開発、製造を行うのに約二年半、その後、民間の自動販売機あるいはATM、こういったものの入れかえをなさるのに二年半、合わせて五年間の所要期間を見込んでいるところでございます。

 また、新五百円貨につきましては、造幣局の方で新しい硬貨を開発、製造するのに一年、民間の自動販売機、ATM等の入れかえをなさるのに一年、合わせて二年間の所要期間を見込んでいるところでございます。

青山(大)委員 単純に、別に分けなくて、どうせだったら同じ時期に刷新した方がいいと私は思うんですけれども、これもちょっと提案ということにさせていただきます。

 そもそも紙幣を刷新する必要があるのかどうかというのも、私は正直疑問に思っています。ちょうど本年度、予算で、キャッシュレスの政策を進めるということで数千億円の予算も計上されておりますし、たしか、いろいろなこれまでの予算委員会なんかの政府の答弁を聞いていましても、現金管理コストの削減のためにキャッシュレス化を進める、そういった答弁も幾つかございました。

 新しい紙幣なりを導入すると、当然、銀行のATMや、今おっしゃったように自動販売機の改修も必要ですし、例えば小売業、スーパーのレジでは、現在は紙幣や硬貨を識別して釣銭を出すレジシステムが普及しており、紙幣と五百円硬貨の変更で識別機の改修や入れかえが必要でございます。社会的に大きな費用、コストがかかるわけでございます。

 新紙幣を発行することはキャッシュレス化を推進する政府の政策と相矛盾しているんじゃないか、そういった印象も受けますが、大臣のお考えを伺います。

うえの副大臣 お答えいたします。

 政府といたしましては、二〇二七年の六月までにキャッシュレス決済比率を倍増させることなどを目標に、キャッシュレス社会を推進していくこととしておりますが、こうした中にありましても、日本銀行券は現在百四十九億枚、また、五百円貨幣は約四十七億枚が流通をし、引き続き国民の主要な決済手段の一つとして使われているところであります。

 通貨として供給をする以上は、その通貨は国民に信頼をされ、利便性の高いものでなければならないわけでありますので、今回の改刷はこうした観点から偽造抵抗力の強化等を目的に行うものであります。

 なお、キャッシュレス化が進んでおります主要な先進国におきましても、銀行券の流通残高はふえておりまして、偽造抵抗力強化等のために改刷が行われているところであります。

 諸外国と同様にキャッシュレス比率が増加をしても、すぐに日本銀行券がなくなるわけでは当然ありませんので、利用される以上は、国民に信頼をされ、利便性の高いものにしていかなければいけないと考えています。

青山(大)委員 別に、キャッシュレス化が進んでも、当然紙幣が必要なのは言うまでもありませんけれども、日本は技術は高いものを持っていますし、むしろ、現在にせ札の被害なんかもそんなに極端にふえているわけではありませんし、そういったことを踏まえて、本当に必要なのかと。また、二十年スパンで今後はどうなのかについても改めての検討が必要なんじゃないかというふうに思います。

 では、次の質問に行きます。

 領収書の印紙税の必要性について伺います。

 二〇一四年以前は、領収書に記載された受取金額が三万円以上のときに印紙を張る必要があった。二〇一四年からは非課税の範囲が五万円に拡大されたというわけで、その金額に絶対的な根拠はないのかなというふうに思います。

 また、最近は、電子契約書であれば当然印紙を張る必要がないなど、そもそも印紙を張る合理的根拠も、だんだん必要なくなるのではというふうに思っております。

 決済手段が多様化する中で、印紙を張る手間も考え、少なくとも、領収書に張る、係る印紙税は、廃止も含めて、今後その必要性について議論をする時期ではないかと私は考えますが、大臣の見解を伺います。

麻生国務大臣 これは青山先生御指摘のように、近ごろ売買代金の決済方法が多様化しているのは確かです。文書自体の電子化が進展をしておりまして、例えば電子記録債権なんというのも増加しつつあるのは確かですが、現状におきまして見ますと、ペーパー、いわゆる紙を使った手形の決済、交換高というのは二百六十兆円あります。また、電子記録債権は今のところ十八兆円ぐらいという程度にとどまっておりますので、依然として紙によります手形取引というものの量というものが圧倒的に大きいのは、二百八十対十八ということになりますので、十四、五倍違うんだと思っております。

 こうした状況において、引き続きこういったものの流れというのを注視していく必要があろうとは考えておりますけれども、今、この印紙税について、各種経済取引に伴って作成される文書の背後にあります経済的利益によります担税力を見出して負担を求める税でありますのは御存じのとおりでして、平成三十一年度の税収は約三千五百億円と見込まれておりますので、極めて重要な財源となっていることを踏まえますと、少なくとも、印紙税のピークは確かに八千五百億円ありましたものが今三千四百ということになってきており、三千四百九十、まあ三千五百億円ということになっておりますけれども、極めて重要な財源というように思われますので、廃止というのは適当ではないと考えております。

青山(大)委員 大臣、今後の時代の流れに伴って、ぜひ検討はしてほしいなというふうに思います。

 次の質問に行きます。

 二月に生命保険各社が販売自粛を始めた法人向け定期保険についてお伺いします。

 全ての保険商品は金融庁が個別に認可しているとの認識でございますが、今回、販売したというのはけしからぬというような感じで、現場でその商品を売っていた代理店の方とか、御購入された中小企業の方たちに混乱を与えてしまったような印象を持っております。

 そういった中で、ちょっと国税庁の方に質問をさせていただきます。

 今回、そういった中で、新たに、保険料の全額を税務上の損金にできる今の仕組みを見直すということで、現在、法人税基本通達の制定についてなどという名目で、五月十日までパブリックコメントを募集しているところだと思います。

 このパブリックコメントの締切り後、新しい通達までの今後のタイムスケジュールを改めて確認いたします。

 そして、パブリックコメントの募集の中に、新たな通達案の中には、過去にさかのぼって遡及しないと明記されています。すなわち、これまで保険契約をした方については、以前の、これまでの通達どおりで会計処理ができるというふうに書いていますけれども、改めて、これまでの契約者、既契約者の取扱い、遡及の有無についても確認をさせていただきます。

並木政府参考人 お答えいたします。

 いわゆる法人定期保険などにつきましては、法人税法上、前払い部分の保険料は資産計上するのが原則でございまして、特に、保険料に相当多額の前払い部分の保険料が含まれる場合には、課税所得の期間計算を適正なものとするため、その原則に沿った取扱いとすることが適当であると考えております。

 国税庁では、こうした観点から、本年二月十三日にこれらの保険料の取扱いの見直しを行う方針を生命保険各社に伝え、関係者の意見等を聞きながら検討を進めてきたところでございまして、先ほど先生から御指摘のありましたとおり、四月十一日に国税庁としての見直し案を意見公募手続に付したところでございます。

 今後、法令等の規定に沿って、公表した見直し案について公表日から三十日後の五月十日まで意見を公募し、寄せられた御意見等を十分に考慮した上で適時に通達を改正したいと考えております。

 具体的なタイミングにつきましては、現在行っている意見公募手続に寄せられる意見の数などにもよりまして、確たることは申し上げられませんけれども、過去の例からいたしますと、公募締切り後、通達発遣まではおよそ一カ月程度を要していることからしますと、六月には改正後の通達を発遣できるものと考えておりまして、そのように手続を進めるべく努めてまいりたいと考えております。

 また、お尋ねのございました既契約分の取扱いについてでございますけれども、意見公募手続に付した国税庁の見直し案では、改正後の通達は改正通達の発遣日以後の契約に係る保険の保険料について適用し、既に契約済みの保険の保険料は適用対象外とすることとしているところでございます。

青山(大)委員 具体的な答弁、ありがとうございました。

 最後に、日本銀行さんの方にお聞きします。

 三月十二日の参議院財政金融委員会やその後の閣議後の麻生大臣の記者会見で、麻生大臣は、余り物価目標二%にこだわる必要はないといった旨の発言がありましたけれども、日本銀行の見解をちょっとお伺いいたします。

 また、今回雨宮副総裁が御答弁ということで、ちょっと、先日、三月十二日の参議院財務金融委員会で雨宮副総裁が、日経平均株価が一万八千円を割り込むと日銀保有のETFの時価が簿価を下回るというような答弁もされましたけれども、この一万八千円という数字が何かひとり歩きしているような印象もあるんです。この数字は多分変動すると思うんですけれども、そういった余り数字の具体的なことは言及しない方がいいと思うんですけれども、どのようにお考えでしょうか。お伺いいたします。

坂井委員長 既に時間が過ぎておりますので、手短にお願いをいたします。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、二%の物価安定の目標でございますが、これは、物価指数の統計上のバイアスですとかデフレにならないような政策上の余地、それからグローバルスタンダード等を勘案して日本銀行が決定したものでございまして、物価の安定という日本銀行の使命を果たすためにはこれを実現していくことが必要であるというふうに考えておりますし、今後とも、経済、物価、金融情勢を総合的に勘案した上で、この物価安定の目標の実現を目指していく方針でございます。

 それから、御質問をいただきました私どものETFの試算値でございますけれども、私どもは、半期ごとに、決算期ごとに保有ETFの時価と簿価というものは計算しておりまして、公表しております。これはあくまで機械的な試算ということで申し上げましたし、私は日経平均でお答え申し上げましたが、かつて国会で総裁からTOPIXベースでお答えしたこともございまして、これにつきましては、こうした政策の透明性の確保という点も踏まえて、必要があればお答え申し上げるという扱いにしておりますし、マーケットに何か誤解が生じているということでもないというふうに理解してございます。

青山(大)委員 以上で質問を終了します。ありがとうございました。

坂井委員長 次に、緑川貴士君。

緑川委員 皆さん、お疲れさまでございます。国民民主党・無所属クラブの緑川貴士です。

 質疑のお時間をいただきました。そして、日本銀行からは黒田総裁にもお越しをいただきました。ありがとうございます。

 日銀が掲げている二%の物価安定目標に対する御認識についてお尋ねをいたします。

 二%に向けてこの物価上昇率を高めるためには、需給ギャップの改善によって実際の物価がまず上がっていく、それが企業や家計のインフレ期待、そして賃金にも波及をして、更に物価上昇の圧力が強まっていく、このメカニズムを日銀は想定をしているわけですけれども、黒田総裁も、マクロ的な需給ギャップがプラスの状況が続くもとで、引き続き二%に向けたモメンタムは維持されているというふうにおっしゃられます。そのモメンタム、勢いの推移を、ちょっと状況を見ていきたいというふうに思います。

 資料1をごらんいただきたいと思いますが、モメンタムを構成するのは、日銀の説明によれば、大きな要素となるものが、需給ギャップと予想物価上昇率、期待インフレ率の二つであります。左のこの需給ギャップの図で、需要が供給を上回ってプラスであれば物価が上がる要因となるインフレギャップであることを示している図でありますが、ここ数年のこのプラスの状況をもう少し細かく見ていきますと、書いてありませんが、二〇一六年の十月―十二月期にプラスに転化した需給ギャップが、昨年、二〇一八年は十月―十二月期でプラス二・二三%になっています。つまり、九四半期、二年四カ月プラスが続いているということになります。

 確かに、国内では人手不足が深刻化している。今のところ、需給ギャップが供給超過、つまりマイナスになるにはまだ距離があるところでございます。

 しかし、ここで資料の2、先月の日銀短観をごらんいただきたいんですが、一番上の項目、需給判断DIのこの供給超過の幅が拡大をしています。左側の黒い太枠で囲っているところのすぐ右の変化幅のところをごらんいただきたいんですが、特に大企業製造業では、その変化幅が五ポイントマイナスです。供給超過の方向に動いているわけですけれども、実に、二〇一四年の六月の調査以来、これは大幅なマイナスということになりました。

 物価のモメンタムが維持されるという根拠に、ここの資料を見る限り揺らぎが出ているとも見えますけれども、黒田総裁、どのような御所見でしょうか。

    〔委員長退席、越智委員長代理着席〕

黒田参考人 我が国の物価というものは、景気の拡大あるいは労働需給の引き締まりに比べまして弱目の動きが続いております。この背景には、長期にわたる低成長あるいはデフレの経験などから、賃金、物価が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く残るもとで、企業の慎重な賃金、価格設定スタンスや、値上げに対する家計の慎重な見方が明確に転換するに至っていないことが大きく影響しております。

 もっとも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けるもとで、最近では、人件費の上昇などを背景に、幅広い企業で販売価格引上げに向けた動きが見られております。また、先行きも、これまで物価上昇をおくらせてきた要因の多くは次第に解消していくと見ております。これによって実際に価格引上げの動きが広がっていけば、人々の中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まるものと考えております。

 このように、プラスの需給ギャップを起点とする物価安定の目標に向けたモメンタムは維持されており、我が国の消費者物価の前年比は二%に向けて徐々に上昇率を高めていくことが展望できると考えております。

 なお、御指摘の短観の動きでございますが、これは昨年の末以来、中国あるいは欧州の経済の減速を背景といたしまして、世界経済全体が少し減速をいたしております。その結果、我が国の輸出もやや弱目の動きが続いておりまして、それを反映して生産もやや弱目になっているということは事実でございます。

 ただ、そういったことを踏まえて行われたこの短観の最新の状況を見ますと、価格についてのDIは若干弱目になっておりますけれども、他方で、実体経済をあらわします設備投資の動きについてはかなり強いものを示しておりまして、外需がやや弱目の動きが続いている中で生産もやや弱目になっておりますけれども、内需の非常に重要な柱である設備投資はかなり堅調であるということ、それから、消費も、所得・雇用環境の改善を背景にかなりしっかりしておりまして、投資、消費という内需がしっかりしているということでございます。

 そうしたもとで、今回のG20などの会議でも話題になりましたが、多くの国がIMFの見通しを支持しておりまして、IMFの見通しは、昨年の後半以来、世界経済が若干減速して、ことしの前半もそういった状態が続きますけれども、後半からは世界経済は持ち直していって、来年は昨年同様の高い成長になるという見通しでございまして、そういったことから踏まえましても、日本経済全体として堅調な、緩やかな拡大が続くという見通しは維持できると思いますし、また、マクロ的な需給ギャップがプラスの状況も続くものというふうに考えております。

緑川委員 総裁のおっしゃるように、企業や家計のインフレ期待に働きかけていく、そのことを歯車の一つに好循環のメカニズムの循環を回していく、そのお考えの中で、やはり海外経済の不透明感というものが私は影を落としているんじゃないかなという立場なんですね、そういう認識で今おるんです。

 やはり、海外に目を向けますと、総裁おっしゃるような、足元では、確かに、中国での構造改革の影響、またアメリカとの貿易摩擦への懸念からブレーキがかかって、去年の成長率は六・六%、二十八年ぶりの低水準ということになりました。中国の最大の貿易の相手であるEU、これも打撃を受けて、ドイツがマイナス成長に転じ、そしてイギリスのEU離脱問題もあわせて追い打ちをかけている状況です。アメリカを含めて、中国、ヨーロッパ、海外経済の不透明感はことしじゅうには広がっていくんじゃないかという見方は、私は否めないところであります。

 これまでは、アメリカが好景気の中で金利を引き上げて、日本がマイナス金利政策をとってきた中で、日本とアメリカの金利差によって円安・ドル高が継続することで、輸出の伸び、そして企業の業績が支えられてきたわけですけれども、今後は、アメリカが景気の悪化を予見して、今度は利上げを緩やかにしたり、あるいは打ちどめにしたりということも考えられるわけです。そうなれば、円高が進む懸念も出てくることになります。

 円高ということになれば、生産や輸出の悪化が広がっていきますし、また、設備投資にも大きく影響すれば、それこそ、日銀が考えている先行きを見据えた循環メカニズムということが途絶えることになりかねないというふうに思います。そうなれば、需給ギャップの需要の超過幅が縮小していく、人々の期待インフレ率、つまり予想物価上昇率も下振れしますので、いずれ波及するとしていた物価上昇にもなかなか期待が持てなくなってしまうんじゃないかというふうに思います。

 国内の今後の展望を見ても、原油価格の安定、確かにこれは昨年の秋から下落をして下どまりしていますけれども、それによって電気料金、そして都市ガス料金の上昇が鈍くなっている。また、携帯電話の通信料の引下げの影響もあります。これは消費者物価が上がりにくい状況になっているわけで、日銀が掲げている物価二%目標の実現に不可欠なインフレ期待の高まりというのは、現段階ではなかなかうかがえないというふうに思います。

 これは資料に載せていませんけれども、ことし一月に公表している経済・物価情勢の展望においても、インフレ期待は、これは公表文のとおりなんですが、横ばい圏内というふうになっています。前回、二〇一四年の四月の増税時は、そのときには、一年前に異次元の緩和を行い、そして半年後には追加の緩和が行われました。それを考えると、ことしの十月に消費増税も控えております、金融緩和の効果がおくれて発現されていくということを考えると、やはりこの春が追加緩和のタイミングにもなり得る。

 いずれにしても、物価のモメンタムはまさに岐路に立っているというふうに私は認識をしておりますけれども、総裁はどのような御所見でしょうか。

黒田参考人 まず、海外経済の動向について申し上げますと、米国経済は昨年三%成長したわけですが、本年は恐らく二%台半ばの成長ではないかと言われておりまして、米国の潜在成長率が二%弱と言われている中で、堅調な成長を続けるだろうというふうに見られております。

 次に、中国でございますが、御指摘のとおり、昨年の後半以来かなり減速はしておりますけれども、既に中国政府は、昨年そしてことしと、かなり大幅な減税を発表し、また一部既に実施をしておりまして、そういうこともあり、年後半には成長率が回復していくというのが、中国政府のみならず、IMFを含めた国際社会全体の見通しでございます。

 欧州につきましては、御指摘のように、ドイツの経済がかなり大きな減速を示しておりますが、これは御承知のとおり、ディーゼルエンジンの排気ガス規制の影響で、ディーゼル車の多いドイツの自動車産業がかなり大きな影響を受けたということ、それから、気候が非常によくなかったということ、さらには、御指摘の、ドイツを中心とした中国に対する輸出が減速したということ、そういうことを含めて、ドイツを中心に欧州が減速していることは事実ですが、これも、それぞれの要因がほどけていくに従って、年後半にはかなり急速に回復するというのが、これは欧州の見方というよりも、IMFを含めて国際社会の見方であります。

 そういったことで、世界経済全体としては、IMFは、昨年三・六%の成長がことし三・三%になるという見込みですが、来年は三・六%というかなり高い成長に復帰するという見通しでございます。

 そういったことを踏まえますと、確かに足元、日本の輸出や生産が弱目の動きになっておりますけれども、全体として緩やかな拡大が続くという見通しはかなり確かなものではないかというふうに思っております。

 そうしたもとでプラスの需給ギャップは継続していき、それが実際の賃金、物価の上昇につながれば、それを踏まえて中長期的な予想物価上昇率も徐々に高まっていくのではないかと考えております。

 ただ、御指摘のとおり、二%の物価安定目標を達成するに要する時間が、従来考えられていたよりもかなり長くかかるということは私どもも認識しておりまして、そういった観点から、現在の大幅な金融緩和を粘り強く続けていくということが重要ではないかというふうに思っております。

    〔越智委員長代理退席、委員長着席〕

緑川委員 やはりタイムリミット、粘り強さということももちろん、結果を求められる部分がございますけれども、やはり時間が有限なわけであります。

 その中で、リミットを迎えているというのが地域経済だと思うんです。その心臓部を支えている地方銀行、この一層の疲弊が際立ってきているというふうに思います。

 少子高齢化で地域の人口が大きく減少している、お得意先も減っている、融資先の減少が続いている上に、世界経済の先行きの不透明感。確かにこれが地域経済にも影響しているところはございますけれども、マイナス金利を含む今の金融緩和による景気刺激策が長期化する中で、長期貸出しの平均金利については、特にこのところは〇・八%を割り込むような、こういった状況が続いているわけです。常態化しています。

 預かっているお金を顧客への貸出しに回して得るような利ざや、あるいは投資信託などの販売手数料収入、いわゆる本業の利益だけでは経費を賄うことができない、そういう地銀が、昨年の三月期は、百六行のうち半数以上になりました。五十四行です。二年前の二〇一六年三月期の本業赤字、何行であったかといえば、四十行。四十行から、二年後には五十四行。

 こういうことを踏まえれば、やはり地銀の経営が一段と厳しさを増している、こういう状況であります。

 この厳しい中でも、確かにこれまでは、株式や債券の売却益、また、倒産の減少で不良債権処理に係る費用も抑えられて最終黒字を保ってきたわけですけれども、例えば、二〇一六年三月末には二・六兆円の有価証券の含み益がありましたが、昨年はというと、昨年の三月末は一兆円です。二年前の四割以下にまで含み益が落ち込んでいる。この赤字を補っていたものがいよいよなくなってきたということになります。

 これは、人の体に例えれば、本業の利益という御飯が、超低利金利の政策で御飯が細ってきて、これまで、蓄えとしてあった脂肪を燃やしてきたわけですけれども、これをエネルギーに変えて体を守ってきました。しかし、この体についていた脂肪もいよいよなくなってしまって、底をついて体が衰弱する、地銀が衰弱する局面にあるというふうに思います。

 物価二%のモメンタムが損なわれれば当然追加緩和を検討すると黒田総裁は国会でも御答弁をいただきますけれども、地銀の局面を踏まえた御見解をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 いわゆる地域銀行の基礎的収益力というものは、人口や企業数の減少などに加えまして、低金利環境の長期化から、趨勢的に低下をしております。

 そうしたもとで、委員御指摘のとおり、有価証券の売却益であるとか、あるいは信用コストの低下ということによって、全体としての収益状況はかなりよい状況を維持してきたわけですが、御指摘のとおり、有価証券売却益が将来とも続けられるわけではありませんし、信用コストもかなり、もう最低水準まで下がっていますので、これ以上下がっていくことは考えにくいということであります。

 そうしたことで、御指摘のように、地域銀行の基礎的収益力が趨勢的に低下してきているということが、全体としての収益にも影響してくるおそれがあるということであります。

 ただ、そうした中でも、現状では、地域金融機関、地域銀行は十分な資本と流動性を備えておりまして、銀行貸出しなどの金融仲介活動も引き続き積極的に取り組んでおりまして、地域金融機関は、現状でも年間三%程度、貸出しを増加をいたしております。

 ただ、今後とも、地域の人口減少などの構造要因が地域銀行の収益力の押し下げ要因として継続的に働くというふうに見込まれます。

 したがいまして、これによって将来的に金融機関の資本基盤やリスクテーク能力が制約を受けて金融仲介機能に悪影響を及ぼすことがないか、しっかりと点検していくことが適当と考えておりますし、また一方、地域金融機関として基礎的収益力を培うためにさまざまな努力を既に払っておられますけれども、コストの削減であれ、あるいは提携の拡大であれ、さまざまな努力は引き続き行っていただく必要があろうというふうに思っております。

 金融政策の面では、物価安定の目標の実現になお時間を要すると見込まれますので、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが必要と考えておりますが、日本銀行としては、今後とも、金融政策運営の観点から重視すべきリスクの点検を行うとともに、経済、物価、さらには金融情勢を踏まえながら適切な政策運営に努めていく所存でございます。

緑川委員 やはり、今の地域の人口減、これによって中長期的にもますます人の減少が加速をしていく、つまり、地域銀行に預けている預金も更に減少が加速をしていく。都心への集中化ということにもこの前触れさせていただきましたけれども、やはりさまざまな二重苦、三重苦で今地銀が経営難に追われている。

 この認識をどうか持って、持続可能な収益モデル、収益構造というものも考え直す時期に来ているんじゃないかというふうに考えておりますので、金融庁に対しましても、そのことも含めて今後も質疑をしてまいりたいというふうに考えております。

 黒田総裁に対しては、ここまでの質問とさせていただきます。ありがとうございました。

 時間もなかなかちょっと足りなくなってきますけれども、原田防衛副大臣にお越しをいただきました。ありがとうございます。

 ここで、アメリカのイージス・アショア、FMSで調達予定のこのイージス・アショアについて、何問か、できる限りお尋ねをしたいというふうに思います。

 そもそも、価格や納期を、価格はアメリカの言い値で決まったり、納期はアメリカの自由に決めることができるこの武器輸出制度ですけれども、このFMS、やはり今計上されている予算以上に経費が膨らむおそれが指摘されているものがイージス・アショア、そして、それに係る、これに搭載する予定の最新鋭のレーダー、SSR。

 ロッキード・マーチン社のこのSSRが、直接これはアメリカのこの社から購入をするということになっておりますけれども、このレーダーの選定、ロッキード社のSSRなのかレイセオン社のSPY6か、どちらかを選ぶことになっていましたが、昨年の夏に防衛省がこれをSSRに決めております。

 選ばれた理由の一部が書かれたものが資料の3、防衛省の資料ですが、予算の計上が決まったレーダー、このSSR、そもそもこれは実物がありません。構想段階であり、今、開発するまさに途上にあるレーダーなんですが、資料3の一番下、赤線の部分ですけれども、3、FMSの契約締結後に、一基目の配備まで約六年間を要するとアメリカから提案をされているということが書かれています。

 これを踏まえれば、まずお伺いをしますが、レーダーができるのに六年かかるということを想定すれば、イージス・アショア本体を含めて、まず、二〇二五年以降の配備の可能性が高いという認識でよろしいでしょうか。

坂井委員長 申合せの時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いをいたします。

原田副大臣 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、昨年、二〇一八年七月のレーダー選定時に、納期について、契約から一基目の製造及び配備まで約六年を要するとの米側から提案がございました。

 現段階におきましては、本年度から約五年間でシステム本体を製造することとなりますけれども、その後の性能確認の試験や設置等の作業をできる限り速やかに行うべく、現在、米国政府等と調整中でございます。

緑川委員 済みません、答えになっていなくて、二〇二五年の配備の可能性が高いのかどうかだけお答えください。

小波政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘の点につきましては、副大臣からお答えいただいたとおりでございます。

 なお、二〇二三年の運用開始を目指していたとの御指摘については、一昨年、二〇一七年十二月の導入決定時に、当時の小野寺防衛大臣から、イージス艦の場合、イージスシステムの取得に約五年を要することから、こうした年限が目安であること、ただし、さまざまな情報を得て判断していくことになるので確定はしていないと説明したことはございますけれども、防衛省として二〇二三年の運用開始を目指すというふうに説明したことはないところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、副大臣から御答弁いたしましたとおり、本年度から五年間でシステム本体を製造することとなり、その後の性能確認試験や設置等の作業をできるだけ速やかに行うべく、現在、米国政府等と調整しておりますので、委員御指摘のお見込みでおおむね間違いがないものと考えております。

緑川委員 地元の理解が大前提というふうにおっしゃる防衛大臣ですから、これは引き続き、情報提供、そして地元への説明責任をしっかりと果たしていっていただきたいというふうにお願いをいたします。

 質問を終わります。

坂井委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 まず、景気認識と消費税増税についてお伺いしたいと思います。

 G20の財務相・中央銀行総裁会議がございました。麻生大臣、黒田総裁、お疲れさまでした。

 報道では、麻生大臣は記者会見で、主要国の景気減速がほかの国にも波及すれば、世界経済全体の成長率が悪化し得る、リスクは下方に偏っていると懸念を示したとありました。

 前回、消費税増税の延期を決めたときは、世界経済は不透明感を増しているということを理由にされたわけですが、G20でも議論になった世界経済の現状は、前回の消費税増税延期決定時より世界経済の下振れリスクは強まっている、こういうことでよろしいですね。

麻生国務大臣 二〇一六年、前回のときの、当時は、これは、アジアの新興国とか資源国の経済の減速などそういったものは、世界経済がいろいろなリスクに直面して内需が下振れしかねないという状況になっていたと記憶をいたします。

 先日のワシントンでのG20の会合では、足元の状況につきまして、世界経済にはさまざまな下方リスクが存在するものの、一月、ことしの一月ですけれども、アメリカが、いわゆるフェデラル・リザーブ・ボード、FRBが利上げペースの緩和を示したこと、また、ドイツの自動車排ガス規制導入に伴う自動車生産の弱含みといった一時的な要因が剥落することなどによって、本年後半から加速し、中期的に堅調に推移していくという認識は共有されたところであります。

 日本政府の立場としても、現在は、いわゆる通商問題、米中間等々の通商問題や、中国経済の先行き、また英国のEU離脱問題などの動向がありまして、そういったリスクに留意する必要はありますけれども、世界経済は、米国を中心に全体としては緩やかな回復を続けているという認識に変わりはありません。

 日本経済も、雇用・所得環境の改善というものを背景に、先ほど日銀総裁からもお話があっておりましたように、消費、設備投資などの内需を中心に緩やかな回復が続いていると認識をいたしておりますので、いろいろな意味で、消費税につきましても、私どもとしては本年十月に一〇%の引上げを予定できる、そういったような環境をきちんとやっていきたいと思っております。

宮本委員 総裁の認識もお伺いしたいと思います。

黒田参考人 世界経済の動向を見ますと、グローバルな生産、貿易活動に弱目の動きが見られますけれども、二〇一五年から一六年にかけて中国などの新興国の株式あるいは原油価格が大幅に下落して金融資本市場が大きく変動したというようなころに比べますと、世界の市場も総じて落ちついて推移しております。また、各国の内需や非製造業の業況も比較的しっかりしております。

 先行きの世界経済については、当面減速の動きが続くとしても、米国経済が拡大を維持するほか、中国の景気刺激策の効果が次第に顕在化してくると見込まれることなどから、総じて見れば緩やかに成長していくと見られます。

 IMFも、先日公表した見通しにおいて、世界経済は本年後半には再び成長率を高めていくとの見方を示しております。

 もちろん、こうした見方には、米中貿易摩擦の帰趨を含めてさまざまな不確実性が存在いたしますけれども、現時点では、世界経済が二〇一五年から一六年ころよりも悪化していく可能性は低いというふうに考えております。

宮本委員 二〇一五年、一六年のときも中国経済のこととかいろいろありましたけれども、こんなに中国経済、失速はしていなかったんじゃないですか、当時は。今の方が大失速をして、それが日本の生産や輸出にも影響を与えるという事態を引き起こしているというのが現実だと思いますよ。私は、今の方が世界経済の下振れリスクは強まっているというのは明々白々だというふうに思います。

 四月一日に日銀が発表しました短観を見ますと、大企業製造業の景況感は六年三カ月ぶりの悪化幅ということになりました。さらに、内閣府の景気ウオッチャー調査、先日発表したもの、現状判断指数は二年八カ月ぶりの低水準。そして、同じく発表されました内閣府消費動向調査、消費者態度指数も三年一カ月ぶりの低水準。

 景況感は、企業も国民も、大変これから悪くなっていく、今悪くなってきているということを感じているわけですけれども、大臣は、これ、原因は何だとお考えですか。

麻生国務大臣 宮本先生御指摘のこの指標ですけれども、日銀短観の大企業製造業の業況判断DI、ディフュージョンインデックスは、前回の調査から七ポイント低下をし、六年三カ月の下落幅、おっしゃるとおりになっております。景気ウオッチャー調査の現状判断のDIも、前月の二・七ポイント低下をしておりまして、四四・八と、二年八カ月ぶりの低水準。また、消費動向調査の消費者態度指数というものも、前月から一ポイント低下をいたしまして、四〇・五と、三年一カ月ぶりの低水準となっているものと承知をしています。

 これらの要因については、今御指摘のありましたように、中国経済の減速に加えまして、アメリカと中国の通商問題を始めとした海外におけます経済の不確実性などが影響したものだろうというのに、私も、そういうような感じがあるのは確かだと思います。

 こういった、景況感というんですかね、そういったマインドの低下につきましては、これは十分注意していく必要があろうとは思いますが。

 片や、日本の実体経済を見ますと、名目GDPまた企業収益等々は過去最高水準となる中で、これは有効求人倍率も二年にわたって全都道府県で一倍を超える。また、失業率も二十六年ぶりの低水準ということになっておりまして、連合の調査によれば、五年連続で二%程度の高い水準の賃金アップが実現して、ことしもその流れが続いているという状況にあります。雇用者数の増加を加味した総雇用者所得を見ましても、名目、実質ともにプラス傾向が続いているなどなど、こういった雇用とか所得環境の改善というものを背景に、経済のいわゆる基礎的なファンダメンタルズというものは確かなものになってきているというのが、私どもの基本的な考え方であります。

宮本委員 名目のお話をされますけれども、実質で見れば、賃金、消費、停滞しているというのは、この間、国会でもずっと議論になってきたことであります。

 内需が低迷しているもとで、アベノミクスのもとで、輸出は円安の中で好調だったわけですけれども、その輸出に陰りが見えてきているというのが今の状況だと思うんですね。こういうときに、内需を更に冷え込ませる消費税増税をやっていいのかということだと思います。

 日経新聞は、大企業製造業の景況感の悪化について、過去の経験則に照らすと景気後退入りの警戒領域に近づいた、こういうふうに警鐘を鳴らしております。こういう中で消費税増税を強行したら、前回の増税以上の深刻な影響が起きるのではないかと、大変懸念しております。

 日銀の生活意識調査、お配りしましたけれども、こちらでも同じような傾向が国民の景況感としてあらわれております。現在を一年前と比べるとよくなったか、悪くなったか。過去一年間でどう推移したのか。あるいは、一年後を現在と比べるとどう考えているのか。これをちょっと紹介してもらえますか。

衛藤参考人 お答えいたします。

 この調査では、年四回調査を実施しておりますけれども、一年前に行いました調査と、一番新しい、ことし三月の調査の数字を比べさせていただきますと、まず現在の景況感でございますが、よくなったと感じている人の比率は、一年前が九・六%、これが足元は四・八%に低下をいたしております。一方で、悪くなったと答えた方の比率は、一年前、二二・〇%ございましたが、今は二四・〇%に上昇ということでございます。

 同じように、一年後の景況感の見通しを聞いております。よくなるというふうに答えた方は、一年前の調査では九・三%でしたが、これが今回は八・七%に低下をしております。一方で、悪くなりそうだというふうに答えた方は、一年前は二四・五%でしたが、今回は三九・三%に増加をしているという状況でございます。

 こうした景況感の背景でございます。アンケートでもその背景について聞いておりますけれども、自分の収入とか、あるいは勤め先の業況といった生活実感などよりは、公表されている景気指標、それからメディアなどでの報道ぶりなどの寄与が大きいというふうに理解をいたしております。

宮本委員 国民全体が、本当にこのままでは景気が心配だという状況になってきているんだと思います。

 新聞報道を見ていますと、四月一日、日経で、ライフコーポレーション社長の岩崎氏は、商況はよくない、昨年十二月あたりから急速に悪くなっている、こう言われております。二〇一八年度第四・四半期は、既存店舗の売上高が前年同月比で〇・七%減、六年ぶりのマイナスになったと。三月以降もこの傾向は変わらないという予想でございます。最近の消費の変調で見方を変え、増税したらその後の買い控えは長引くのではないかというふうにおっしゃっておられます。

 資料で一枚目の下につけましたが、これは日銀のさくらレポートの添付資料です。

 百貨店、スーパーの販売額ですが、四半期ベースで見れば、二〇一七年第三・四半期から二〇一八年第四・四半期まで一年半の間、前年同月比で減少し続けた地域が九地域のうち三地域に上っております。直近の三四半期では、全国ベースでも三カ月連続で減少、九地域のうち六地域は連続減少。二〇一八年の第四・四半期で前年同月比で減少というのは、東海地域を除けば全てということになっています。もちろん、コンビニへお客が流れているというのもなくはないとは思いますけれども、それだけではないということが、これを見ても示されているというふうに思います。

 個人消費は大変低迷しているというのが、大臣、今の状況なんじゃないですか。

麻生国務大臣 消費の動向ですけれども、確かに、二〇一四年四月の消費増税、八%への値上げのときには、これは、大幅な駆け込み需要とか反動減というものが生じて景気の回復力が弱まることになったものというように、私どももそう思いますが、その後のアベノミクスの取組によって、GDPベースで見ますと、二〇一六年後半以降増加傾向で推移して、二〇一三年の水準を上回るなど、持ち直しをしているんだと理解をしております。

 いわゆる消費を取り巻く環境というものを見ますと、これは、間違いなく生産年齢というものは減少していっているという極めて厳しい状況の中で、雇用は大幅に増加をしております。雇用者数の増加も加味した総雇用者所得というものを見ますと、名目でも実質でもこれは増加が続いておりますので、雇用・所得環境というものは着実に改善をしておりまして、消費は引き続き持ち直していくことが期待されるところだと思っております。

 これまでも、政府としては、賃金の引上げに向けて、我々としては、賃金引上げに積極的な企業を税制面から後押しさせていただくとか、また、政労使会議や経済財政諮問会議などにおいて、政府から経済界に対しまして賃金引上げを呼びかけ続けてきたところでもあります。

 さらに、今、AIとかIoTとかいろんなものの活用を通じまして、生産性の向上の取組も支援をさせていただきながら、働き方改革により長時間労働を是正するということなどを通じて、生産性を向上させるなどの各種取組を行ってきたところでありまして、引き続き賃金引上げに向けた取組を進めてまいる、これによって消費というものの状況が生まれやすくなるということを期待をしているところでもあります。

宮本委員 消費は持ち直しているとおっしゃいますけれども、実質で見れば、二〇一三年度の水準を回復していないというのは明らかなわけですよね。どんと冷え込んだものから、少しは持ち直しているかもわからないですけれども、もとには戻っていない。そこにまた増税していいのかということだと思います。

 日銀のさくらレポート、私もずっと、聞き取った中身のものも読まさせていただきましたけれども、個人消費の低迷、節約志向が根強くあるというのがよくわかりました。

 例えばこういうことを書いています。食料品は、特売日などにおいて値引き幅を拡大させると売上げが大きく伸びる傾向が顕著であり、消費者の節約志向は根強い。これは函館のスーパーですね。三月に入り、飲料や菓子の仕入れ価格が上昇しているが、顧客離れが心配で販売価格に転嫁できていない。これは秋田のスーパーからの聞き取りですね。同じように、仕入れ価格がどんどん上がっているけれども、消費者の根強い節約志向や競合で、仕入れ価格を価格に転嫁することは難しい。これは大阪の方だとか。価格に転嫁することが大変な事態になっているという声が、できないという声がいっぱい出ております。

 あるいは、値上げしたところの話も出ていますね。宿泊料を試行的に値上げしたところ、客数が大幅に減少した、宿泊需要は堅調であるものの、当地では依然として競合が厳しく、他社に先駆けて値上げを行うことは難しいと実感した。これは高知の宿泊業の話であります。つまり、値上げすれば客離れを実感しているというのが多くの事業者。

 消費者の節約志向の中で、とても、今のメーカーのいろいろな値上げに対しても、実際はスーパーの段階では販売価格に転嫁できない、こういう声がいっぱい全国各地から日銀の聞き取り調査でも寄せられているという状況であります。こういう中で消費税を増税して、価格に本当に転嫁できるのかという状況があると思います。

 麻生大臣にもお伺いしたいと思いますが、私なんかも、地元の商店街を回っていますと、とても消費税を増税できるような環境じゃないよという声をたくさん聞きますが、大臣御自身はそういう声を周辺からよく聞かれるんじゃないですか。違いますか。

麻生国務大臣 急速な高齢化というものを背景に、これはもう御存じのように、私どもとしては、社会保障費の充実というものは間違いなく大事な視点でありまして、私どもは、中長期的に見まして、少子高齢化は国難とも言える最大の問題だと思っております。これが大前提に私どもはあります。

 したがいまして、いわゆる国民の安心というものを支えるという意味において、社会保障制度を、国民皆保険等々を次の世代に引き渡すということにおきましては、何といっても安定財源の確保というのは待ったなしの課題となっております。

 したがいまして、今、我々の今の景気に対する判断は先ほどの答弁で申し上げたとおりですが、私どもは、同時に、こういった問題で対応させていただく、いわゆる駆け込み需要、また反動減等々に対応するための対応はいろいろさせていただいております。

 もう一点、私どもは、この問題を考えるときに、安定財源の確保というものを今後行っていくのは、私どもにとりましては絶対の課題でありますので、そういったことを考えますと、引き続き今の置かれている状況というものをいろいろ考えた上で、本年の十月に一〇%に引き上げさせていただく予定であります。

宮本委員 増税できる環境にないという声は多分大臣のところにも届いているとは思うんですけれども、安定財源の確保がなぜ消費税なのか、私たち何度も議論させてもらっていますけれども、なぜ所得税じゃだめなのか、なぜ法人税じゃだめなのか、そこの定かな答えはいつもないわけですよね。景気を壊す消費税、低所得者ほど負担が重い消費税、これは社会保障の財源として全く私たちはふさわしくないと考えておりますので、他の手段で考えるべきだ。こういう、本当に景気がどんどん、景気への心配が国民の中で広がっているもとで、そしていろいろな指標も悪化しているもとで、世界経済も減速する中で消費税増税など絶対にやってはならないということを申し上げまして、次の質問に移ります。

 次に、日銀のETFの買入れについてお伺いしたいと思います。

 きのう、OECDの対日経済審査報告書が発表されました。日銀のETF買入れについて、市場の規律を損ないつつある、売却することの困難に直面することが予想されるなど指摘されておりますが、総裁はこの指摘をどう受けとめられているでしょうか。

黒田参考人 今回公表されたOECDの経済審査報告書において、日本銀行のETF買入れに対して、間接的な株式保有割合の高さや市場規律の低下といった副作用が懸念事項として指摘されていることは承知しております。もっとも、この報告書でも、これらの懸念があるものの、二%の物価安定目標を達成することは依然として日本銀行の優先課題であるという認識も示しております。

 日本銀行といたしましては、ETFの買入れは物価安定の目標を実現するための政策枠組みの一つの要素であるというふうに考えておりまして、これまでのところ大きな役割を果たしてきていると思っております。

 副作用に関しましても、ETFを通じた日本銀行の株式保有割合は株式市場全体の四%程度にとどまっておりますほか、コーポレートガバナンスの面でも、ETFを構成する株式については、スチュワードシップ・コードの受入れを表明した投資信託委託会社により、適切に議決権が行使される扱いとなっております。

 日本銀行としては、今後とも、政策のベネフィットとコストを比較考量しながら、その時々の状況に応じた適切な政策運営に努めてまいる所存でございます。

宮本委員 いや、OECDの報告書は、二%の物価目標については是としていますけれども、その手段としてETFの買入れを是とは書いてはいないですよね。

 私も含めて、野党も含めて、ETFの買入れは市場の価格形成機能をゆがめているじゃないか、あるいは出口で大変な困難があるんじゃないかということをこの委員会でも議論してまいりましたけれども、OECDも全く同じ指摘をする状況であります。私は、立ちどまって見直す必要があるところに来ていると思いますよ。

 白川前日銀総裁は、著書の「中央銀行」で、二〇一〇年十二月に日銀がETFの買入れ政策を開始したことについて次のように述べておられます。

 ETFやREITを買入れ対象としたことも、中央銀行の金融政策としては異例であった。日本では、バブル崩壊後、株価が大幅に下落する過程で、政府及び日本銀行に対して株価の下支えを目的として株式の買入れを求める議論が何度も高まった。日本銀行は二〇〇二年に金融機関の保有する株式の買入れに踏み切ったが、これは金融システムの安定維持を目的としたものであり、金融政策の一環として、株式市場において不特定多数の投資家から広く株式を購入したことはなかった。ETFは上場株式を組み込んだ投資信託であることから、従来行っていなかった不特定多数の投資家からの株式の購入と機能的には同等である。それにもかかわらずETFの買入れに踏み切ったのは、買入れにより株式投資に係るリスクプレミアムが引き下げられれば企業の資金調達コストの低下につながり得ると判断したからであると書いてありました。

 黒田総裁にお伺いしますが、黒田総裁が総裁就任後に、政府及び日本銀行に対して、株価の下支えを目的として株式の買入れを求める議論があったのかどうか、そして、ETFの買入れについては、白川前総裁と同様、中央銀行の金融政策としては異例、こういう認識を持っているのかどうか、お伺いしたいと思います。

黒田参考人 日本銀行は、物価の安定という使命を果たすために、その時々の経済、物価情勢などに応じて必要な施策を実施いたしております。その際には、あらかじめ特定の手段を排除することなく、ベネフィットとコストを比較考量した上で、最適な手段を選択してきております。

 株式に限らず、中央銀行の資産買入れをめぐっては、それが資産価格に影響を及ぼし得ることについてさまざまな意見があることは承知しております。その上で、ETFの買入れは、株価安定の目標を実現するために必要な措置の一つとして、みずからの判断で実施しているものであります。

宮本委員 異例かどうかというのは、そういう話もないわけですけれども、異例の金融政策であるETFの買入れが導入されてから九年過ぎております。出口の先行きは全く不透明で、日銀はまだ買い続けるということを言っているわけですよね。

 日銀は、ETFの買入れの目的について、この間、株式市場のリスクプレミアムに働きかけることを通じて経済、物価にプラスの影響を及ぼしていくというふうにおっしゃっているわけですけれども、経済、物価の面でどんな効果があったのかあるいはなかったのか、具体的に説明していただけるでしょうか。

黒田参考人 ETFの買入れというのは、物価安定の目標を実現するために必要な措置として行っておるものでございまして、株価の安定の目標ということではございません。先ほどちょっと発言の誤りがございましたので、訂正させていただきます。

 御指摘の、ETFの買入れが株式市場におけるリスクプレミアムに働きかけることを通じて経済、物価にプラスの影響を及ぼしていくということを従来から申し上げておりますが、具体的に申し上げますと、金融市場の不安定な動きなどが企業や家計のコンフィデンスの悪化につながることを防止することによって、それらの前向きな経済活動をサポートすることを目的といたしております。

 実際、量的・質的金融緩和の導入以降、我が国経済は大きく好転し、労働市場はほぼ完全雇用の状態にあります。物価面でも、既に、持続的に下落するという意味でのデフレではなくなってきております。

 もとより、ETF買入れの効果を単独ではかるということは難しいわけですが、本措置は量的・質的金融緩和の枠組みの一つの重要な要素として実施しておりまして、この間の経済、物価の改善に大きな役割を果たしてきているというふうに考えております。

宮本委員 単独で効果をはかることは難しいと言って、なぜ役割を果たしていると言うのかが全くわからないですよね。具体的に説明ができない。実際は、株価が下支えによって上がった、そういう話にすぎないんじゃないかというふうに思います。

 ちょっと時間がなくなってきましたので、資料をちょっと見ていただきたいと思うんですが、これは日経新聞に出た話であります。二ページ目ですね。

 二〇一八年度の株式市場において、株式の買い主体と売り主体を見れば、外国人投資家の売り越しを日銀が購入している構図がくっきりとあらわれております。

 海外投資家による二〇一八年度の売り越し額は五兆六千三百億円。一方、日銀のETF購入額は約五兆六千五百億円。ほぼ、この二つで見ると、売り買いが均衡している状態であります。

 ちなみに、日経新聞は、海外勢の売りを日銀が一手に受けとめるいびつな構図が鮮明になった、こう指摘しておりますが、総裁、この市場の動向自身は事実ですよね。

黒田参考人 御指摘の数字はいずれも事実でありますが、我が国の株式市場における二〇一八年度の売買代金の総額は、現物株だけでも七百兆円を大きく上回っております。投資家別に見ますと、海外投資家に加えて、国内の家計や投資家も活発に取引を行っており、日本銀行のETF買入れ額の売買代金の総額に占める比率は一%以下にすぎません。また、ETFを通じた日本銀行の株式保有額も、株式市場の時価総額の四%程度にとどまっております。

 ETF買入れの株式市場への影響を判断する際には、売り越し、買い越し額だけではなく、こうした売買代金の総額や各主体の保有残高も見る必要があるというふうに考えております。

宮本委員 昨年、私、この場で、TOPIXで、前場で値が下がれば日銀の買入れの確率が高くなる、ある一定以上下がった場合、一〇〇%買っているというお話もさせていただきましたけれども、結局、日銀が買い支えることで、海外投資家がリスクを負わずに安心して株式の売却益を出している、こういうことなんじゃないかというふうに思いますよ。

 時間になりましたから、これで質問を終わりますけれども、国内には利益は還元されず、海外投資家に利益を提供していく、こういう手段になっているETFの買入れ、株価の買い支えはやめるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 日本維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも三十分間、るるお伺いしていきたいんですが、最近、財務金融関係の記事、いろいろなものを見ていて気になったのがあったので、また、昨今パブリックコメントが終わりましたギャンブル依存症基本計画、これも、パブコメが終わりましたので、四月中に閣議決定だというふうに聞いております。この辺も含めてお伺いしていきたいんですが、何の記事だったかというと、銀行に対する役所からの指導で、多重債務の方、特にギャンブル依存症の多重債務の方に対する対応を指導云々ということだったんですけれども、現行、こうした部分、役所として、金融庁なのか、担当部局としてどのように銀行に対してこうした対応をとるように指導しているのか、お伺いできますか。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 ギャンブル等依存症患者が早期に必要な相談や治療が受けることができるようにということで、民間金融機関の団体の相談窓口というのがありますが、そこにおきまして、相談者、多重債務などの相談が来たという場合でございますが、この相談された方がギャンブル等依存症であるのではないか、こういう疑いがある、あるいは判明した、こういう場合には、精神保健福祉センターといったギャンブル依存症患者の適切な対応をするような相談拠点につなげる必要があるということでございまして、この両者、相談拠点と、精神保健福祉センター等の、この両者の連携をする。こういうことのために、実は、多重債務相談員向けの対応マニュアルというのをつくってございまして、ここに連携の具体的なやり方とか事例、連絡先などを記載した上で、こうしたマニュアルに沿って、こういうふうに連携してください、こういうふうな研修などもして、こういう連携が行われるようにしております。

 また、もう一つ、浪費の癖がある方から自主的に申告があった場合に新規の貸付けを制限する、これは貸付自粛制度というふうに申しておりますが、これを銀行業界において定めておりまして、これをことしの三月から始めている、こういったことでございます。

 こういったものがしっかりギャンブル等依存症の方々に対しても使われるようにということで、私たちも、各団体あるいは各金融機関にこのやり方を促して、浸透させていきたいというふうに考えております。

丸山委員 まずはしっかりやっていただきたいんですけれども、問題は、なかなかここじゃわからないんじゃないかなというのが正直なところですが、ちなみに、これはちょっと通告が漏れているので、わからなきゃいいんですけれども、このマニュアル等があって、それで何かしら解決につながったとか、連携がとれて通報があったというのはあるんですか。わかりますか。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 今直ちに、手持ちの数値は、ちょっと持ち合わせておりません。

丸山委員 しっかりこれは追っていただきたいと思いますし、恐らく結構厳しい、現場でも見つかるというのは非常に厳しいんじゃないかなと思いますので、しっかり数字を追って、PDCAサイクルを回していただきたいというふうに思います。

 同時に、こういうギャンブル依存症の方というのは、余り、銀行で借りるというよりは、どちらかというと、やはり消費者金融等々、いわゆる銀行業以外のところでお借りになることが多いんじゃないかなというふうに想像がつくんですが、こうした銀行業以外の消費者金融等に対して、この依存症対策について何かしら指導や協力要請されているかどうか。よろしくお願いします。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 貸金業界におきましても、今申し上げた銀行業界と同様の仕組みを構築してございます。

 例えば、浪費の癖のある者からの自主的な申告に基づく貸付自粛制度につきましては、日本貸金協会におきましては、銀行に先立つこと一年前、昨年の四月より、ギャンブル依存症にもこの対象を拡大しております。

 また、最初申しました相談窓口、多重債務者の相談窓口を、精神福祉医療センターなどと連携する、こういう取組も、貸金業界も銀行業界同様にするように、マニュアルなどを変えまして、また、この研修などもしておるという状況でございます。

丸山委員 これも通告はしていないので、数字はぜひ追っていただきたいですし、しばらくしたら、私、通告をして確認したいと思いますので、きっちりこのあたり、事実確認もしながら、一人でも少なくなっていくように、しっかり確認していただきたいと思います。

 今回、審議官、いろいろ対策をまとめていただいて、パブコメをかけて、閣議決定に向けて、今もう最後の調整をされているところだと思うんですけれども、この依存症対策、例えばパチンコの全遊連からは、実施済み若しくは進行中の案件がほとんどで、政府側から今回出されたやつですよ、盛り込まれることはあろうが、事前に対応してきたので、新たに特に取り組まなければならないものは余りないと思うというコメントをされているんですよね。

 とすると、余りなければ変わらないんじゃないんですかね。明らかに緩いんじゃないかという国民の皆さんから声が上がっても仕方ないと思うんですけれども、このあたりの声に対しては政府としてどう応えるのか。いかがですか。

徳永政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のように、現在策定中のギャンブル等依存症対策推進基本計画につきましては、本年三月七日から二十六日までの間、パブリックコメントを実施しているところでありまして、現在、そのパブリックコメントについては、いただいた御意見を精査しているところでございます。

 他方で、この基本計画案、現時点での中身におきましては、先ほど金融庁の方から答弁がございました取組のほか、公営競技やパチンコにおいても、関係事業者の取組として、例えば、広告宣伝に関する全国的な指針の策定でございますとか、あるいは、本人、家族申告によるアクセス制限について、個人認証システム等の活用に向けた研究を推進するということですとか、パチンコ業界においては、これまで本人の同意のない家族申告による入店制限は実施していなかったわけですけれども、これを導入するでありますとか、自助グループを始めとする民間団体等に対する経済的支援といった、これまで以上の強化策というのを新たに盛り込んでいるところでございます。

 いずれにいたしましても、基本計画につきましては、今のパブリックコメントのほか、ギャンブル等依存症対策基本法に基づいて、当事者や家族、有識者等から構成される関係者会議の意見を適切に聴取するなどして、充実したものとなるようしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

丸山委員 計画で具体的な数字というのはありますか。どれぐらい減らすか、これはどのように考えていらっしゃいますか。

徳永政府参考人 基本計画でギャンブル依存症の方の減少の数値目標を定めることにつきましては、これは、議員立法である基本法の昨年の国会審議におきましては、政府において平成二十九年九月に実態調査が行われたところであって、今後も継続的に実態把握することが求められていることでありますとか、ギャンブル依存症により問題が生じていることに本人や御家族の方はなかなか気がつきにくく、まずは国民にギャンブル等依存症の正しい知識というのを普及啓発していくことが必要であるということ、こういった現状を踏まえますと、現段階でギャンブル等依存症患者の減少の目標を設けることについては慎重な検討が必要である、こういった御議論があったと承知しているところでございます。

 その上で、基本法案の提案者の方からは、政府に対し、基本計画の策定を義務づけ、ギャンブル等依存症対策を抜本的に強化することがまずは目的であることでございますとか、三年ごとの実態調査とその結果を踏まえた基本計画の検討を義務づけることによって、PDCAサイクルが法律に基づく恒久的な制度として確立されることを期待する、こういった旨が御指摘されたものと承知しております。

 したがいまして、これらの国会議論等を踏まえまして、現在策定中の基本計画案では、まずは、関係事業者による取組、あるいは相談、治療、回復支援、予防教育、普及啓発等、基本法の基本的施策として求められているさまざまな取組を適切に盛り込むとともに、PDCAサイクルにより、計画的な不断の取組を推進していくことを目標としております。

丸山委員 もう話にならないですね。目標も決めずに計画を出すというのは本当に逃げだと思いますし、三年後にしっかり数字が出てきますから、よもやふえていることはないと思いますけれども、減り方に関しては国会でもしっかりとチェックをしていかなきゃいけないなというふうに思います。

 何を言っているか。打ち手としてこれは絶対やるべきだというのが、計画の中ではやはり検討になっちゃっているんですよね。

 例えば、今からお話を聞きたいATMの設置ですよ。

 パチンコ店にATMがあるなんて本当におかしな話で、まさしくマッチポンプみたいに、どんどんどんどん過熱している中で、ATMでお金をおろすような状況にある。一応、業界さんは、上限を決めて、ATMがパチンコ屋にあるのは厳しくしていると言うんですけれども、全然、そもそも論の話になっていない話で、これはしっかり、せめてこの部分は当たり前のように、今回の基本計画で外してやるというのが普通のことだと思うんですけれども、これに対しても業界団体はこう言っているんですよ。ホールにおけるATMは全日遊連が契約の当事者ではないことから、これが基本計画に盛り込まれた場合、撤去要請があったことを理事会等で伝えることはできても、強制することができないと言っているんですよ。結局、強制力がなかったら、ずっとこの状況は続きますよ。店が勝手に契約していることだと言って、できるわけで。

 そういった意味で、やはりこういうところにこそ行政の指導は非常に大事だと思うんです。

 かつては、ATMは、銀行の窓口として設置義務、設置が一応金融庁の方で、財務省の方で、大蔵省の方でしっかりチェックをできたので、置けなかったんですよね。ただ、規制緩和で、これが要らなくなったという過去の歴史的経緯がありますけれども、しかし、こんな、果たしてパチンコ店にまで、許可ではないですが、野方図のように放置しているこの現状こそ、こういった部分にはメスを入れていかなきゃいけないんじゃないかなと率直に私なんかは思いますし、若い世代として。

 今後、オリンピックがあって、万博があるわけですよ。海外からインバウンドでどんどんふやそうとしているのに、町じゅうにパチンコがある。ギャンブル場じゃないかと言われても仕方ないですよね。こんな現状を変えていく一つの、本当に小さな一歩ですけれども、これは大事な点だと思うんですが、金融の担当大臣として、ATMの設置のあり方、率直に、お聞きになってどう思われますか。大臣、大臣に通告していますのでお願いします。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 ギャンブル等依存症対策基本法第七条におきましては、関係事業者の責務として、関係事業者は、国及び地方公共団体が実施するギャンブル等依存症対策に協力するとともに、その事業活動を行うに当たって、ギャンブル等依存症の予防等に配慮するよう努めなければならないと規定しているところでございます。

 また、同法第十五条におきましては、国及び地方公共団体は、広告及び宣伝、入場の管理その他の関係事業者が行う事業の実施の方法について、関係事業者の自主的な取組を尊重しつつ、予防等が図られるものとなるようにするために必要な施策を講ずるものとするとされているところであります。

 こうした基本法の規定も踏まえ、パチンコ営業所内に設置されているATMについては、ギャンブル等依存症対策推進基本計画案に基づき、パチンコ業界における取組が講じられるものと承知しております。

 今後、基本計画が策定されれば、これに記載された取組については、その実施状況を適切に評価するなどして、PDCAサイクルに基づき、その実施を確保していくこととしております。

麻生国務大臣 今、警察庁の方から答弁があっておりましたが、パチンコ営業所に設置されたATMにつきましては、これまでも、ギャンブル、いわゆるキャッシング機能の停止等々につきまして取組が行われてきたんだとは承知しておりますが、パチンコの営業所に設置されたATMのあり方については、ギャンブル等依存症対策推進基本計画に基づいて、パチンコ業界における取組が講じられているものだと承知をしております。

 ギャンブル依存症の防止というのは、これは重要な課題なんでして、金融庁におきましても、今後、基本計画に基づいて、関係省庁と連携を深めながら、パチンコ営業所でのATMの設置を含めて、金融機関の対応の状況について引き続きモニタリングするなど、しっかりと取り組んでまいらねばならぬところだと考えております。

丸山委員 本当にやる気がなさそうな、大臣の久しぶりな御答弁ですけれども。いつも前向きな御答弁がある大臣にしては、すごく残念です。

 ATMの部分は、今回、検討条項ですが、一応文言は入っていますので、しっかりこれはさせてほしいですし、万が一、さっき申し上げたようなことを業界が言うようであれば、これを検討していかなきゃ、もっと本当に国会でがりがり言っていかなきゃいけないなというふうに考えているところですけれども、ほかの点でも幾つか、実質的にこうした部分を予防していく観点というのはあると思うんですよね。

 一番大事なのは、ATMもそうですが、もう一つ大事なのは、遊技機を新型の、今の玉が出るものから、サーバーで管理していく新たな次世代機ですけれども、管理遊技機とかメダルレス遊技機という形でいいますけれども、こうした部分の導入について早目にやっていかなきゃいけないと思うんですよね。パチンコ屋さんの話を聞いても、大体、いわゆる業界のベース三〇という、百玉打ったら三十返ってくるというのが基本ですが、それを明らかに下回っているような台があまたある。そういう状況が続いている中で、しっかり、そうしたことがないように。

 まずは管理が甘いんですよ、正直。誰が入ったかの管理も甘いが、同時に、どういう出玉の仕方をしているか、どういう営業でどういうふうに利益を上げているかも非常に管理が甘いのがまさしくこの業界だと思いますけれども、こうした点においてしっかりやっていかなきゃいけないんです。

 この点も、今回の件、ぬるっとしている感じがすごいするんですよね。カジノよりえらい甘いんじゃないですかね。これで本当に大丈夫なんですかね。こうした部分についてはどういうお考えですか。

    〔委員長退席、藤丸委員長代理着席〕

小田部政府参考人 お答えいたします。

 遊技機の出玉情報等が遊技機の基準に適合しているか容易に確認できる遊技機等を開発導入することを可能にすることは、パチンコへの依存防止対策の観点から、遊技機の射幸性が過度に高まることを防止することに資するものと承知しております。

 このため、平成二十九年の遊技機規則改正におきまして、遊技球数表示装置及び遊技メダル数表示装置に係る規格を追加したところでありますが、当該装置を備えた遊技機の設置を義務づけるものではございません。

 なお、当該遊技機につきましては、警察としては、パチンコへの依存防止対策に資すると考えているところでございますが、実際に当該遊技機を導入するかどうかについては、各パチンコ営業所において判断されるものと考えております。

丸山委員 今回の法案で、このギャンブル依存症とセットでIR法案なわけですよね。IR法案の方のカジノの方は非常に厳しいチェックをするわけですよ。それに比べて、現行のギャンブル依存症の方をあまた生み出している、ほとんどだという統計も出ているパチンコ、パチスロに対して、余りに甘いんじゃないかなというふうに思いますね。これはしっかり、ぜひ前に進めるように業界の後押しを警察等でもしていただきたいですし、オリンピックもあるわけですよ。

 現行で、今お話ししたような、現行ですよ、建前は、検査を通ったパチンコ台が、基本的にはそのままパチンコ屋さんに置かれていなきゃいけないのに、実質的にくぎをいじっているんじゃないかという話だっていっぱいあるわけですね。ベース値を見てみたら、過去、二〇〇五年とかも、業界で、警察からお話ししてチェックしたら、そのほとんどが、さっき言ったベース三〇と言われる、百玉打ったら三十は一応返ってくるというベース値を下回っているような台があまたあったという報告まであるわけですよね。明らかに違法行為ですよね。風営法二十条一項違反か若しくは九条一項かわかりませんが、明らかに、いじってはいけない、若しくは外れてはいけないラインの、外れている台があまた、いっぱい過去あって、今もある可能性が高いわけですよ。

 これをしっかり、この機会に、オリンピック前、万博前にチェックいただいて、業界を引き締めていただきたいんですよね。こんな野方図な状況で置いておいていいんですかね。

 このあたり、お伺いしたいのは、まず、くぎはいじってはいけないということでいいんですよね。現行法において、パチンコ店においては、くぎは一切いじっちゃいけないということでいいのか。そして、規制があるんですけれども、その規制法違反で年間どれぐらいの摘発を、去年も含めて、どうされているんですか。その辺をお伺いできますか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 パチンコ営業者は、遊技機の増設、交代その他の変更をしようとするときは、軽微な変更の場合を除き、都道府県公安委員会の承認を受けなければならないとされているところであります。

 お尋ねの遊技くぎの変更につきましては、軽微な変更に当たらないと解されていることから、パチンコ営業者が都道府県公安委員会の承認を受けずに遊技くぎの変更をした場合には、風営適正化法に違反することとなります。

 平成二十六年から平成三十年までの五年間で、遊技くぎに係る不正改造を行ったとして検挙した件数は、合計十二件となっております。

丸山委員 十二件なわけがないと思いますよ、業界の詳しい方の話、また、いろいろな話を聞いていたらね。

 これはちゃんとチェックしてくださいよ。明らかな違法行為を野方図に置いておいて、オリンピックで海外からお客さん、歓迎するんですか。万博で世界じゅうからお客さんが来るわけですよね。町じゅう、駅前にいっぱいあるわけですよ。現行でこんな状況でいいんですかね。しっかり確認していくということでいいんですか。

    〔藤丸委員長代理退席、委員長着席〕

小田部政府参考人 お答えいたします。

 遊技くぎに係る不正改造を行ったとして検挙した件数につきましては先ほど御答弁申し上げたとおりでございますけれども、遊技機の不正改造事犯全体につきましては、平成二十六年から平成三十年までの五年間で検挙件数が合計四十二件となっているところでございます。

 警察におきましては、営業所において遊技くぎを曲げる事案も含めて、遊技機の不正改造事犯に対しては、引き続き厳正な取締りを行ってまいりたいと考えております。

丸山委員 これは、チェックしていますので、警察の動き、しっかりやっていただきたいですし、それこそ駅ごとにあるような今の日本の状況ですから、そうした中で、こうした管理、明らかに違法行為ですからね。三店方式に関しては非常に巧妙に理論を積み立てられていますが、ここのくぎに関しては明らかな違法行為なわけですよね、今も答弁されたように。しっかりチェックしていただきたいですし、それがギャンブル依存症の方をなくしていくことにつながると思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 もう一つ、今回の基本計画で気になるのが、自己申告、家族申告プログラムですね。

 要は、自己申告されたり、家族で依存症の疑いがあるのでとめさせてくださいと言ったらとめられるような仕組みを、今、業界でも自主的にやっているんですと言うんですけれども、確認したら、本当にざるだと思います。

 というのは、どういうものかというと、申告したパチンコ屋さん一店舗にまず限られる。違う店に行ったらまず全然あれですし、そもそも法のたてつけにしてもあれですけれども、スタッフの人が、やめてくださいねというような促しで、要は退店させることができない。

 そして、そもそも、その方が来ているかどうか。本当はカメラで見ているはずなんですよ。カジノ並みに、パチンコ屋さんなんてカメラがいっぱいあるんですから。本当は、個人情報カードや、若しくは入店時に必ず個人情報を確認して、そこでまず年齢の未成年をはじく、そして、依存症の疑いのある方がお医者さんから言われたら絶対入れないようにする、当然できるんですけれども、そういう状況じゃなくて、その一店舗以外に行ったら、若しくは、カードを使わなきゃ、その人かどうか、カメラで撮っているのにわからない。非常に私、これはざるだと思うんですよね。

 本当にこの自己申告、家族申告プログラムが意図しているとおり動くのかというのは、非常に私は危ういというふうに思っているんですけれども、これは本当に効果があると政府として今お考えなのか。

 今どれぐらいの導入店舗が、これは自主的に業界でやっていると聞いているんですけれども、あって、どれぐらいの方が逆に、この申告プログラムを利用して助かった、若しくは申告プログラムを利用したという数、把握されていますか。いかがですか。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 パチンコ業界におきましては、利用者や利用者の同意を得た家族からの申告に基づいて入店制限等を行う自己申告プログラム、家族申告プログラムの普及に取り組んでいるところであります。

 両プログラムを必要とする利用者やその家族にとって利用しやすい環境を構築するため、ギャンブル等依存症対策推進基本計画案におきましては、業界において、両プログラムへの申告に当たり、ウエブサイトから申込書の様式を入手できるようにすることや、複数店舗に申告する際の書類作成等の手続に係る負担の軽減に資する取組を実施することとされており、警察としても、こうした取組が推進され、実効ある依存防止対策となるよう、引き続き指導してまいりたいと考えております。

 また、お尋ねの家族申告、自己申告プログラムを導入している店舗でございますけれども、平成三十年十二月末時点で二千百九十五店舗となっておりますが、実際に何名程度の方が加入されているかについては、ちょっと手元に数字がないので、答弁は差し控えさせていただきます。

丸山委員 差し控えるという話ですけれども、本当にこれは利用されているんですかね、今の現状で。

 容易に思いつくんですけれども、本当に依存症の方は苦しんでいらっしゃるわけですね。その方は、行きたくなるときは行きたくなるわけですよ。そのときに、今申し上げたようなざるのような状況で、果たして本当に機能するのか。もうちょっときちんと、ウエブがどうこうとかそういう話じゃなくて、本筋として、防いでいくような制度が要ると思うんですよ。

 その意味で、財務省が所管のたばこなんかは、タスポという形できちんと確認をしています。これもざると言われるかもしれません。コンビニでは、たばこを買うときに、必ず未成年は入れないようにするとか、チェックがありますよね。こうした、やはり、認証カード、個人番号カードとか、少なくとも、タスポのようなカードできちんと確認を入り口でしていくというのは、最低限要ると思うんですよ。それもないのに、今まで申し上げたように全部甘いので、非常に私は危険だというふうに、変わらないというふうに思っているんですけれども。

 逆に、たばこ、聞きたいんですけれども、これは業界が自主的にやる方向から進み始めたと聞いていますけれども、これによってたばこに関しては未成年者の購入は減ったと思われるかどうか、どうですか。数字があれば、若しくはなくてもお願いします。

可部政府参考人 お答えいたします。

 委員お尋ねがございました成人識別IDカード、タスポでございますけれども、この仕組みにつきましては、たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約におきまして、国内法により定める年齢未満の者に対するたばこの販売を禁止するため、たばこの自動販売機が未成年者によって利用されないことなどを確保するための措置の実施について規定がなされたということに対応いたしまして、この枠組み条約に対応する基本的な国内法である未成年者喫煙禁止法の実施の一環といたしまして、業界団体による自主的な取組として導入されたものでございまして、これにより、自動販売機で購入される場合には、IDカード、タスポがなければ購入できないという仕組みになっているものと承知しております。

丸山委員 実質、業界団体さんがたばこの方は動いたんですけれども、パチンコが動かないのなら、規制していかなきゃいけないと思うんですよね。

 カジノは、現に、入場のときにIDを見せさせられるわけですよ、パスポート等々を。当然だと思いますけれども、どうしてパチンコ店でこうしたものが前に進めないのか。免許証でもいいと思いますし、個人番号カードでもいいと思いますけれども、確認の義務化、これは一つの大きな分岐点、今後の未来を考えていく上で大事なラインだと思います。

 それは、未成年者を防ぐという意味でも、年齢の確認の意味もあるし、何より、依存症対策においてのそれぞれの個人の方の確認というのは非常に大事だと思うんですけれども、どうして、今回同時にできたIRのカジノのような厳しい規制がパチンコはできないんですか。カジノの方はやろうという方向に進んでいるのに、どうしてパチンコの方ができないのか。その方向性に進めようという意思はあるんでしょうか。そこも含めて、警察の見解を伺いたいです。

小田部政府参考人 お答えいたします。

 風営適正化法におきましては、十八歳未満の者をパチンコ営業所に客として立ち入らせることが禁止されており、現在でも、従業員の巡回、監視カメラの設置等を実施し、十八歳未満の者と思われる者を把握した場合は年齢確認を行うなど、必要な措置が講じられているものと承知しております。

 こうした取組を更に推進するため、ギャンブル等依存症対策推進基本計画案におきましては、十八歳未満の可能性があると認められる者に対して身分証明書による年齢確認を原則として実施する方法について業界において検討し、パチンコへの依存防止対策に係る実施規程に盛り込むこととされております。

 警察といたしましても、引き続き、こうした取組が推進されるよう指導するとともに、十八歳未満の者の立入りの状況を認知した場合には適切な取締りを行ってまいりたいと考えております。

丸山委員 これも、結局、検討し、なんですよね。業界団体は何と言っているかといったら、ほとんどもう実施済み若しくは進行中の案件だと言っているわけですよ。現にそんなチェックがなされているかといったら、ほとんどなされていないと皆さんおっしゃっていますよ。本当に未成年者のこうしたものを防いでいく、同時にギャンブル依存症を防いでいくときのために、やはりある程度こここそ行政が規制していかなきゃいけないところだと思いますし、そうしないと、本当の意味でのこの数を減らすというのはすごい難しいというふうに思います。

 国会でも、私だけじゃありません、声は厳しくなっていくと思いますので、何も今、責めているというわけじゃなくて、しっかりやっていただきたいからこそやっているのでありますから、ぜひ前向きに、業界はああだこうだ言うと思いますけれども、しっかりこれをグリップできるのは警察だと思いますので、しっかり警察の方で、このギャンブル依存症対策はきちんと国民から見て進んでいるなと思ってもらえるように、しっかり、もう検討じゃなくて、前に進めていただくことをお願い申し上げまして、時間がそろそろ来ましたので、私の質疑を終わります。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 社会保障を立て直す国民会議の野田佳彦でございます。

 私は、世界経済の減速感が深まってきている中、下振れリスクについていろいろ議論があったと思いますけれども、そういうリスクを直視して、いかに国際協調という枠組みの中でそういう危機を乗り越えていくか、大変、極めて重要な過渡期を迎えていると思います。その時期にG20の議長国を務めるということは、これは大役だと思います。ぜひこの大きな役割を果たしていただければ、しっかりとやり抜いてほしいという思いを込めてきょうはG20の議論をしたいと思いますけれども、まず、その前に、三月に麻生大臣が金融政策の根幹にかかわることについて重大な発言をされております。

 一つは、三月十二日の国会質疑で、二%の物価安定目標についてでありますけれども、少し考え方を柔軟にやってもおかしくないのではないかと発言されています。そして、三日後の三月十五日に、今度は閣議後の記者会見で、二%にこだわり過ぎるとおかしくなるということを考えないといけないとおっしゃられているんですね。

 多くの方が、多分、この御意見については、なるほどな、そうだよなと賛同すると思うんです。がしかし、安倍政権のナンバーツーで財務大臣を務めていらっしゃるというお立場からすると、極めてこれは重大な発言だと思います。

 この御発言の真意というものを、改めて、まず大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 まず、基本的に、これが決められた白川総裁のとき等々を考えてみますと、いわゆる油の値段というものが、一番高いときで、二〇一三年の九月だと思いますが、バレル百十ドルだったと記憶をします。その後、油が急激に下がっていって、二〇一六年だったかな、冬、二月ごろだったと思いますが、あのころは二十六ドルまで、四分の一まで油は下がっております。これはWTIです。今、WTIで、きょう六十二、三ドルだと思いますが、そういったような形になって、原油価格の大幅な下落というのが生じたのは事実でありますので、物価安定目標の達成に時間がかかっている最大の理由は、この石油の値段の暴落というのが大きかったんだと思っております。

 幸いにして、デフレではないという状況をつくり出すのに成功しておりますので、雇用とか所得環境の改善の背景に経済の好循環が着実に回り始めているとは思っておりますが、こうした中で、私の発言は、政府にとりましても、二%の物価安定目標を掲げるというのは重要だというのは当然の前提なんですが、これは、物価だけではなくて、企業収益とか賃金とか、そういったものが全体として上昇する中で目標を達成することが必要なんであって、仮に物価目標が一・九九%になったときに、二%じゃないからといってその点にだけこだわる必要があるのかについては、これは柔軟な考えを持っておいた方がいいのではないかという観点から申し上げたもので。

 いずれにしても、金融政策というものの具体的な手段、これは日本銀行に委ねられるべきものであると考えております。

 政府としては、当然のこととして、日銀が、経済とか物価とか金融とかそういった情勢を踏まえつつ、二%の物価安定目標というものを実現に向けて引き続き努力されていかれるということを期待しているということに変わりはございません。

野田(佳)委員 私は、二%というのはもともと懐疑的な立場ですし、恐らく私は、麻生大臣も本当は二%というのは懐疑的なんだろうと。だからこういう発言が出てくるのであって、二に限らず一・九八とか九九とかというレベルの話ではなくて、この二という数字にこだわり過ぎることによる副作用、現実に今起こってきていますから、それに対して非常に、メッセージを出そうとされておっしゃっているのではないかと受けとめておりました。

 だとすると、もっと柔軟にという気持ちを発言するならば、国会もいいですし、あるいは会見もいいんですけれども、金融政策決定会合という日銀の公式の場で財務省が発言する場があるじゃないですか。そこでどういうニュアンスで伝えるかということは大事だと思いますが、今の大臣のお考えがきちっとそういうことで伝わっているんでしょうか。

 副大臣が金融政策決定会合に出ていますよね。どういう御発言をされていますか。

うえの副大臣 お答えをいたします。

 日銀の金融政策決定会合につきましては、政府と日銀の十分な意思疎通のため、政府からの出席が認められているところでございます。

 決定会合の二日目には、財務省から原則として私が出席をさせていただいております。

 直近に公表されました本年一月の決定会合の議事要旨における私の物価安定目標に関する発言を紹介させていただくことで答弁とさせていただきたいと思いますが、日本銀行には、長短金利操作つき量的・質的金融緩和に沿って、引き続き、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、物価安定の目標の実現に向けて努力されることを期待する旨の発言を行っているところであります。

野田(佳)委員 要は、物価安定の目標の実現に向けて頑張ってくださいと言っているだけですよね。先ほどの大臣の、もっと柔軟な姿勢というものは、この言葉からは出てきません。

 今、一月の議事要旨の話でしたね。大臣が発言されている三月、ちょうどこのころに金融政策決定会合は行われていますけれども、このときも同じようなことをおっしゃっているんですか。議事要旨が明らかになるまでは言えないということですか。

うえの副大臣 その際の決定会合につきましては、国会等への出席がございましたので、官房長が出席をしております。

野田(佳)委員 私は、多くの方は、冒頭に申しましたけれども、あの大臣の御発言はそのとおりだと思っていると思うんですよ。そのとおりだと思っているわけですから、むしろ、二%という数字を置いてあります二〇一三年の一月の政府と日銀の「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」、見直した方がいいと私は思っているんですよ。

 これは後で聞きますが、今の一連のこれまでの会見や国会での質疑における大臣のお話について、黒田総裁はどうやって受けとめていらっしゃいますか。

黒田参考人 この二%の物価安定の目標というものは、日本銀行の政策委員会がみずから決定したものでありまして、物価の安定という日本銀行の使命を果たすためには、これを実現していくことが必要と考えております。

 もちろん、かねてから申し上げておりますとおり、物価が二%に上がりさえすればよいというわけではありません。日本銀行は、企業収益や雇用、賃金が増加し、投資や消費が活発化するもとで物価が緩やかに上昇していくという経済を目指しております。

 また、物価は、原油価格の動きを含めまして、さまざまな要因によって変動いたしますほか、長期にわたる低成長やデフレの経験などを踏まえますと、物価上昇率が高まるには相応の時間がかかる可能性があることも念頭に置く必要があるというふうに思っております。

 また、金融緩和が市場機能あるいは市場の金融仲介機能に与える影響なども考慮する必要があります。

 日本銀行としては、引き続き、こうした経済、物価、金融情勢を総合的に勘案した上で、物価安定の目標の実現を目指していく方針でございます。

野田(佳)委員 二%の、さっきの共同声明にちょっと触れましたけれども、そのときは白川総裁だったわけですけれども、当時、二という数字を入れたがっていたわけじゃないですよね、本来。そして、日銀みずからが決めたものとおっしゃいましたけれども、あのときの空気というか、その中で二%という数字を入れざるを得なくなったということだったんじゃないですか。多くの人は二なんて無理じゃないかと思っている中、あえて二と入れて、それは、日銀法改正とかをちらつかされながらの、その中で組まれた共同声明だったと思います。

 その縛りというものをうまく外していかなければいけなくて、二にこだわっている、例えば政策委員がいて、もっと突っ込めという議論までまだ出てくるわけですから、これをうまく軟着陸するには、政府と日銀がもう一回、共同声明を現実的なものに書き直していくということが、やはり私は必要だというふうに思うんです。

 そのためには、むしろ、やはり、一番そのことを本当によくわかっていてちらちら発言する麻生大臣あたりが、リーダーシップを振るってもらわなきゃいけないと私は思うんですね。

 ということで、この共同声明の見直しについて、大臣はどうお考えですか。

麻生国務大臣 昨年の四月でしたか、黒田総裁の再任をお願いするに当たりまして、政府、日銀間で、この共同声明というのを堅持するというのを改めて確認をさせていただいたところではあるんですが。

 あの当時というのは、諸外国の政策、物価目標というのは、アメリカの二%、それからイギリスも二%、それからEU諸国は二%以下、二%未満かつその近辺だったかな、何かそういう表現になっていたと思って、各国二%というのが大体当時のあれだったんですが。

 御存じのように、この具体的な手法等々につきましては、これは日銀に委ねられるべきものだと考えておりますけれども、この二%の物価目標について、黒田総裁は、消費者物価指数の特徴とか、金融政策の余地の確保とか、今申し上げたように諸外国の物価目標等々を踏まえて設定した目標であるという旨を説明しておられるのは承知しておりますので。

 いずれにいたしましても、政府としては、日銀が、経済とか物価とか金融とか、そういった情勢を踏まえながら物価目標の実現に向けて努力されることを期待しておるんですけれども、今委員御指摘のありましたように、いろいろな諸情勢を考えて、最終的に日本銀行で決められるものだと理解をいたしております。

野田(佳)委員 共同声明というのは四つの項目があるじゃないですか。その中で、金融政策にかかわるところはもちろん日銀の責任で対応しなきゃいけませんけれども、きょうはそのテーマじゃないんですが、例えば財政健全化に触れているところもありますけれども、プライマリーバランスの黒字化だって五年延ばしたわけで、事実上、政府としての取組もできていなかったし、そして、金融政策における目標も、これもちょっともう無理だろうとみんなが思っている。事実上、あの共同声明は空文化しているわけですので、私はやはり、ああいうことをもう残しておかないで、現実的に対応した方がいいと重ねて申し上げたいというふうに思います。

 加えて、一方で、その共同声明の当事者である日銀におかれては、この共同声明、見直すというお考えはないんですか。

 私は、心配しているんですよ。二はいつも消えないから。いつまでにというのは消えましたよね。二年から、それから何回か延ばして消えた。ただ、目標の二%は残り続けているんだけれども、誰もそれを今、実現することを期待していないし、二パーになったからといって、世の中バラ色になるかというと、そうでもないだろうと、わかりませんけれどもね。そういう状況の中で、二にこだわって、そのために突っ込んでいくという姿。そのために何となく、何か文章も、ごまかすかというような文章で何か日銀が出す、そうすると、もう展望レポートじゃなくて、願望レポートみたいな感じになってくるわけですよ。日銀の信頼性にかかわってくるので、私は見直しをした方がいいと思うんですが、総裁のお考えをお聞かせください。

黒田参考人 御指摘の、二〇一三年一月に公表した政府、日本銀行の共同声明というものは、デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のために、それぞれが果たすべき役割というものを定めたものでございます。

 この間、政府と日本銀行は共同声明に沿って必要な政策を実施してきておりまして、そのもとで我が国の経済情勢は大きく改善いたしました。物価につきましても、二%の物価安定の目標にはなお時間を要しておりますが、既に物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなってきております。

 委員御指摘のとおり、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入いたしました際には、二年程度を念頭に置いて、できるだけ早期に二%を実現するべく、大幅な金融緩和というのを導入したわけであります。しかし、その後、原油価格が二〇一四年の夏ごろから大きく下落して、最終的に二〇一六年の初めには三分の一か四分の一まで下落するという中で、物価上昇率も、これは日本だけでなくて欧米でもそうでしたけれども、ほとんどゼロ%程度になってしまった。そうしたもとで、我が国の場合は予想物価上昇率が実際の物価上昇率に引きずられるという傾向がありますので、石油価格、原油価格が半分ぐらい戻したもとで、米国は二%の物価安定目標をほぼ達成した、欧州は一・五%前後に来ている、我が国の場合は依然として一%弱ぐらいのところにしか戻っていないということであります。

 そういった意味で、委員御指摘のとおり、何か、非常に短い期間で一挙に二%の物価安定目標を達成しようということでやった二〇一三年四月の政策は、事実上、変更をやむなくされたことは事実であります。

 ただ、そのもとでもやはり二%の物価安定目標というものを掲げて、それに向けて経済が動いているかどうかというのを必ずチェックして、まさに二%の物価安定目標に向けたモメンタムが維持されているかどうかをチェックしつつ、それが仮に損なわれるというような状態になれば、やはり追加的な緩和も検討していく。しかし、そうでない限り、粘り強く大幅な金融緩和を続けることによって、先ほど申し上げたように、企業収益の水準、あるいは雇用、賃金等の水準、そういったものをよくチェックして、それらが上昇していく中で緩やかに物価も二%に向けて上昇していくという過程をあくまでも目標として金融政策を運営してまいりたいと思っておりまして、その意味では、二%の物価安定の目標というもの、あるいはそれを含む共同声明というものを現在変更するべきであるというふうには考えておりません。

野田(佳)委員 この問題ですと、何か、大臣は珍しく下を見て原稿を読まれますし、総裁も、かつてのような説得力のある、二に向けての前向きな行け行けの発言ではないし、何か、この議論をすること自体がタブーになってきているような気がしてしようがないんですよね。というのが感想でございます。残念な感想を申し上げて恐縮でございます。

 G20がきょうのメーンテーマでしたから、そちらに触れていきますけれども、G20の開催地で、ワシントンに到着された直後だと思うんですが、大臣が、米中協議の行方について、これまた意味深なというか、重要な発言をされているんですよ。米中協議、これはまさに世界じゅうが注目をしています。下方リスクの中でも最も心配されるリスクなんですけれども。

 米中協議について、この夏か秋までに一応のところまで格好をつけ、あとは選挙になると。これはアメリカ大統領選挙だと思いますが。その上で、多分トランプ氏が再選すると予想されて、これも大胆な予想だと思いますけれども、その後、米中交渉を本格的に仕切り直すことになるだろうということをおっしゃっています。知財の問題など含めて本質的な問題があるからだというふうにお話をされて、それくらい長期にかかるもの、そんな簡単にまとまるものではないという御発言なんですね。

 これは、各国とリスクについていろいろな御議論があったと思いますけれども、会議直前におっしゃられたこの米中協議の見通し、これは今も、大臣のお考えは変わらないんですか。これはなかなか大事なお話だと思いますけれども、よく教えていただきたいと思います。

麻生国務大臣 初日のぶら下がりでしたか、何かいろいろな話の御質問の中でそれにお答えを申し上げたんだと記憶しますけれども。

 一番肝心の、どれくらいかかるかという話ですけれども、野田先生、短期的には、選挙がありますので、そこそこの形でまとめたという成果を持って本選挙に来年臨んでいくというのが、これは常識的に、選挙のない国を相手に選挙のある国が交渉しているんですから、明らかにこっちの方が条件悪いですから、そういった意味では、アメリカとしては、そこそこの形でこの秋までにして、大体一年は選挙にかかるというのが、あそこの国の通常だと思っております。

 他方、これが完全に解決するかといえば、日本とアメリカとの間の貿易摩擦というのは、一番最初は多分、佐藤内閣のときのいわゆる日米繊維交渉、田中通産大臣、あれが最初だったと思いますが、あれから今日に至るまでずっと、どれくらい長くかかってきたかといえば、間違いなく六十年近くかかっているんですけれども。

 今、アメリカとの関係で、少なくとも、一九九〇年のいわゆる冷戦が崩壊したあの後、これまで約三十年かかっておりますが、この三十年間の間、日本とアメリカとの間は極めて厳しい貿易交渉、経済交渉をやり続けてきて今日まで来たんだと思いますが、結果として、日本は、自動車の輸出を、四百万台ぐらいあったものが、今、四百万台をアメリカ国内で製造して、残り百何十万台を日本から輸出しているというふうに、明らかに経済構造というものを大きく変えてのけたのは、これは間違いなく大きな成果であって、結果として、日米間の貿易赤字は、四八%ぐらいだったものがただの八%、九%まで下げるということに成功するまでには、実に三十年を要しておりますので。

 そういった意味では、中国が、五二%の対中貿易赤字をアメリカが解消するのに、お手並み拝見かねと僕はいつも中国人に言うんですけれども、俺たちみたいにやれるかと言うと、みんな嫌な顔をしますよ、はっきり言って。嫌な顔をすることは事実ですけれども、私どもとして、向こうで物をつくってそこでやってのけるなんということは今の中国にできますかねという話を、日本の自動車工業会と比べたら全然違うんじゃないですかという話を中国の人にはよく個別にはするんですけれども。

 そういった意味では、今回の米中摩擦というのは長く時間がかかるであろう、根本的に解決するには。

 おまけに、争っているところが特許権とか一番核なところなので、これは正直、中国側としてはなかなか譲る当てがないような話だ、これは長期にかかるであろうなという感じが率直な実感でありますので。

 それが、しかし、アメリカに、世界経済にどんな影響を与えるかということになりますと、そこそこのところは解決する部分も出てくるんだと思いますね、大豆を輸入するとかいろいろやっておりますから、そういった意味でそこそこのものは解決していくんだとは思いますけれども、根本的なところが解決するかと言われれば、これはなかなか、自由主義経済とは違う形の経済体制でもありますので、長期間かかるということはある程度覚悟しておかねばならぬものだと思っております。

野田(佳)委員 一部では、米中協議も大詰めに来ているんじゃないかというような、最終段階の局面だという指摘もある中で、ある意味では、大臣の分析というのは冷静な分析だと思うんですよね。選挙の前には一つの形をつくるけれども、それは本格的な解決になっていない。

 確かに、知財の問題なんというのは、あるいは中国の国営企業の補助金だとかいろいろありますけれども、中国の産業政策の根幹ですから、それを根本的に何か見直してという話は、そう簡単じゃないと思うんですよ。だけれども、そう簡単じゃないということがずっと続くということは、質問はかわりますけれども、その一方で、二〇一九年後半から穏やかな回復に向かうという認識で一致したと。

 米中の協議はまだまだ続くぞ、本格回復をしないと。米中の問題というのは、世界経済に及ぼす影響は大きいじゃないですか。と議長国が思っていて、多分、各国はどうかわかりませんけれども、その中で、二〇一九年後半から穏やかに回復に向かうというのは飛躍があると私は思うんですけれども、御説明をいただければと思います。

麻生国務大臣 これは、今回の中で、本年最初の会合だったんですけれども、少なくとも、いろいろな世界経済の現状認識とかいろいろな国際協調の重要性について、いろいろ話合いが行われておりますのですが。

 IMFから出された世界経済の成長は、昨年後半に貿易摩擦と増加する不確実性により減速はしたけれども、いわゆるフェデラル・リザーブ・ボード、連邦準備銀行の利上げのベースが、緩和もほとんどとまったみたいな形になりましたので、新興国の通貨が、アメリカにドルが戻っちゃうというような形のいわゆる経済状況ではなくなりましたし、また、米中交渉というのの見通しが、少なくとも、くしゃくしゃになるような予想ではなくなってきたというので、そういったものを考えると、本年後半には世界経済の勢いを取り戻すという見通しが出されたというので、私どもとしては、これは、今後の議論においては、いろいろ世界経済における、年当初に考えていたような下方リスクというものがかなり改善をされて、参加国内でもこうした認識が共通されたんだと思いますので。

 少なくとも、こういった世界経済というようなものが、やはり、協調とか自由経済とかいうものを維持していこう、維持していくべきだという点に関してのコンセンサスというのがかなり得られてきたところだと思っておりますので、そういった意味では、今申し上げたような、世界経済に対する懸念というものがIMF等々で改善をされてきたというので、私ども、そういった方向であろうという感じがいたしておりますので。

 国々、いろいろ事情が違っているとは思いますけれども、アメリカも、少なくとも、今のファンダメンタルズ、アメリカも少々土地が上がり過ぎているんじゃないかなと心配するぐらいいい面があるそうですけれども、地域によってこれも差があるという話もありますので、私どもとしては、各国、いろいろ事情はあるんだとは思いますけれども、大まか、少なくとも、みんなで協調していこうという意思が確認されているというのは大きな流れだと思っております。

野田(佳)委員 会議後の共同議長の記者会見の中で、黒田総裁は、各国がリスクを十分に認識して、必要ならば迅速に対応するということで、何かあったらば、それはあらゆる政策の総動員が必要だと思いますけれども、そういうお話をされています。

 でも、我が国の場合は、金融政策には限界があるんじゃないでしょうか。対応するといっても、金融政策の発動の余地というのは、まさかマイナス金利をもっと深掘りするわけにいかないでしょうし、どういうことができるとお考えになりますか。

黒田参考人 一連の会議、G20だけではなくて、IMFCもありましたけれども、そうした会議の中で、御指摘のとおり、主要国の金融政策については、極めて低い金利水準になっておりますし、これ以上金利を引き下げる余地というのはかなり限られているのではないかという議論はございました。

 それは、ある意味でそのとおりでありまして、政策金利がプラスの状況にありましたときには、もちろん、それを大幅に下げるという余地があったわけですが、各国の政策金利は極めて低い状況にあります。米国だけは一定のプラスになりましたけれども、その米国も、これ以上金利を引き上げるということは当面ないという状況になっておりますし、我が国、ヨーロッパの場合は、政策金利がゼロないしマイナスという状況にあることには変わりありません。

 そういう意味で、全般的に言って、従来よりも金融政策の余地が限られているということは事実でありますが、そうしたもとでも、各国は、いわゆる非伝統的な金融政策というものをリーマン・ショック後、開発してきておりますし、我が国においても、実は、長短金利操作つき量的・質的金融緩和の導入時に公表いたしましたとおり、緩和の手段としては、短期政策金利の引下げであるとか、長期金利操作目標の引下げであるとか、あるいは資産買入れの拡大、さらにはマネタリーベースの拡大ペースの加速など、いろいろな対応は考えられるわけですが、ただ、その際にも、確かに、その効果とともに、市場機能あるいは金融仲介機能に及ぼす影響などもバランスよく考慮する必要がありまして、日本銀行としては、政策のベネフィットとコストを比較考量しながらさまざまな手段を組み合わせて対応するということも含めて、その時々の状況に応じて適切な方法を検討していく方針であります。

 なお、米国は、短期政策金利の引上げを当面しないということで、さらには、拡大したバランスシートの削減も、ことしの九月ぐらいで停止するということにしておりますし、さらに、ECBは、緩和を更に続けるのみならず、いわゆる貸出政策について新たなものを検討するということもしておりますので、確かに、全般的に金融政策の発動余地が主要国において狭まっているということは事実でありますけれども、そのもとでも、さまざまな工夫をすることによって、必要があれば追加的な金融緩和というものは検討することができるというふうに考えております。

野田(佳)委員 もう時間が来ましたので終わりたいと思いますけれども、G20のこれからの、六月の大阪に向けては、経常収支の不均衡の問題と、それから、いわゆるデジタル課税の問題、これが極めて重要なテーマだと思うんです。きょうはちょっとデジタル課税について触れたかったんですけれども、時間がなくなってしまいましたので、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次回は、明十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


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