衆議院

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第13号 令和元年5月15日(水曜日)

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令和元年五月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 坂井  学君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 武部  新君 理事 寺田  稔君

   理事 藤丸  敏君 理事 川内 博史君

   理事 緑川 貴士君 理事 竹内  譲君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石崎  徹君    今枝宗一郎君

      大隈 和英君    神田 憲次君

      小泉 龍司君    國場幸之助君

      斎藤 洋明君    鈴木 隼人君

      武井 俊輔君    津島  淳君

      土井  亨君    中山 展宏君

      百武 公親君    本田 太郎君

      牧島かれん君    三ッ矢憲生君

      宗清 皇一君    山田 美樹君

      義家 弘介君    鷲尾英一郎君

      今井 雅人君    末松 義規君

      高木錬太郎君    佐藤 公治君

      古本伸一郎君    前原 誠司君

      伊佐 進一君    宮本  徹君

      串田 誠一君    野田 佳彦君

      青山 雅幸君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       田中 良生君

   財務副大臣       うえの賢一郎君

   文部科学副大臣      永岡 桂子君

   内閣府大臣政務官     長尾  敬君

   財務大臣政務官      伊佐 進一君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  井上 裕之君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 林  伴子君

   政府参考人

   (内閣府子ども・子育て本部審議官)        川又 竹男君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)    丸山 雅章君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  佐々木清隆君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局総括審議官)          中島 淳一君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  三井 秀範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    栗田 照久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 飯田 圭哉君

   政府参考人

   (財務省大臣官房公文書監理官)          上羅  豪君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阪田  渉君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    星野 次彦君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    中江 元哉君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    可部 哲生君

   政府参考人

   (国税庁次長)      並木  稔君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森  晃憲君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡辺由美子君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           度山  徹君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房商務・サービス審議官)    藤木 俊光君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            奈須野 太君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十四日

 辞任         補欠選任

  丸山 穂高君     森  夏枝君

同日

 辞任         補欠選任

  森  夏枝君     串田 誠一君

同月十五日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     大隈 和英君

  本田 太郎君     百武 公親君

同日

 辞任         補欠選任

  大隈 和英君     武井 俊輔君

  百武 公親君     本田 太郎君

    ―――――――――――――

令和元年五月十四日

 情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

平成三十一年四月二十六日

 消費税増税の中止に関する請願(畑野君枝君紹介)(第九六四号)

 二〇一九年十月からの消費税一〇%中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九六五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一〇一七号)

 同(西村智奈美君紹介)(第一〇三六号)

 消費税増税を中止して五%に戻し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(畑野君枝君紹介)(第九六六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇一八号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第一〇一六号)

 消費税一〇%への引き上げ、インボイス制度の導入中止に関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇一九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

坂井委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官井上裕之君、内閣府大臣官房審議官林伴子君、子ども・子育て本部審議官川又竹男君、経済社会総合研究所総括政策研究官丸山雅章君、金融庁総合政策局長佐々木清隆君、総合政策局総括審議官中島淳一君、企画市場局長三井秀範君、監督局長栗田照久君、外務省大臣官房審議官飯田圭哉君、財務省大臣官房公文書監理官上羅豪君、主計局次長阪田渉君、主税局長星野次彦君、関税局長中江元哉君、理財局長可部哲生君、国税庁次長並木稔君、文部科学省大臣官房審議官森晃憲君、厚生労働省大臣官房審議官渡辺由美子君、大臣官房審議官度山徹君、経済産業省大臣官房商務・サービス審議官藤木俊光君、中小企業庁経営支援部長奈須野太君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

坂井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

坂井委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。斎藤洋明君。

斎藤(洋)委員 おはようございます。自由民主党の斎藤洋明です。

 財政及び金融に関する件につきまして質問させていただきます。

 まず第一に、金融教育についてお尋ねをしたいと思います。

 雇用市場も変化しつつありますし、また、少子高齢化でありますとか人口減少、それから給付行政をめぐる環境も大きく変化をしております。それで、金融教育の重要性ということにつきましては、狭義の金融商品の扱いに限らず、年金ですとか生涯のキャリアプランをつくるという上でも、金融商品について理解をすると。みんながみんな金融商品を購入するということではなくても、知らないで金融商品に触れないのと、知っているけれども金融商品は購入しないという選択をするということの間には、やはり距離があると思っています。

 我が国では、家庭とか学校とか、あるいは学校を出た後も、金融教育に触れる環境という面では、他の先進国に比べておくれをとっている部分があると認識をしておりますが、この金融教育の充実の必要性とそれから重要性につきまして、今回は金融庁の認識をお尋ねしたいと思います。

中島政府参考人 お答えいたします。

 ただいま議員御指摘のとおり、経済環境が変化する中、国民一人一人が生涯にわたって豊かな人生を送るためには、老後や人生のさまざまなステージで必要となる資金を確保するため安定的な資産形成に取り組むことが重要であり、そのためには、みずからのライフプランを設計し、金融商品を適切に活用するための金融リテラシーの向上が不可欠と考えております。

 しかしながら、我が国の金融リテラシーは国際的に見ると低い水準にとどまっているとの指摘もあり、その向上は大きな課題と認識をいたしております。

 このため、金融庁では、金融経済教育を推進していく観点から、金融庁の職員みずからが学校に出向いて行う出張授業、職場における資産形成のためのセミナー、親子がともにお金について学ぶ参加型のワークショップの実施など、さまざまな取組を行っているところであります。

 金融庁としては、金融経済教育が重要であるとの認識のもと、引き続きその推進に取り組んでまいりたいと考えております。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 一つ、もちろん資産形成ということの観点からも非常に重要だと思っていますし、また、例えば地方創生ということに関しましても、地方に住むことのメリット、デメリットという話をする上では、生涯を通じた収支というものの適切な評価というのが避けられないと思っています。ですので、その意味でも、この金融経済に関する教育というのはぜひ充実をしていただきたいと思っています。

 私、機会をいただきまして、大学で一年間教えさせていただいたこともありますけれども、学生にキャリア教育をする、あるいは学生のキャリアプランについての意識を聞くということをする上でも、金融教育の部分が弱いと、例えば、公務員になって生涯所得は幾らというのはわかるんだけれども、起業したいとかそういう意識もなかなか持ちにくいということも感じましたので、ぜひ金融教育に力を入れて取り組んでいただきたいと思っています。

 今御答弁いただいた中で、出張授業をやっていただいているというお話がありましたが、ぜひ力を入れていただきたいと思っていまして、ちょっと、いろいろ統計資料を探したんですけれども、日本証券業協会さんがまとめている金融経済教育活動の実態について学校の先生にアンケートをとっていただいたデータを見ますと、授業時間が確保できないということのほかに、金融教育の実施が難しい理由を尋ねると、適切な講師がいないということも理由として挙げられていましたので、ぜひ、この出前授業につきましては力を入れていただきたいと思います。

 それから、もう一つ金融教育についてちょっと問題意識を持っていますのは、きょうは金融庁の認識をお尋ねしましたけれども、学校の教育ということになると文部科学省になりますし、金融商品ということになりますと金融庁ということになりまして、なかなか、すき間に落ちてしまって、どこかの役所が責任を持ってやるという体制になりにくいという、ちょっと問題があるなと思っていまして、ぜひとも、私もこの問題はしっかり取り組んでいきたいと思っておりますので、役所の方でも連携して取り組んでいただきたいと思います。

 二番目に、この秋に予定されております消費増税に関連しましてお尋ねをしたいと思います。

 消費増税に当たっては、軽減税率の関係で、適格請求書、インボイスの発行事業者の登録をすることとされています。そのために課税事業者には固有の番号が付与されることとなっておりますが、もう既に法人番号というのは法人向けにあります。そのほかに、個人番号というのも既にあります。その上に更にインボイスの発行事業者の登録のために番号を付与するということになりますと、番号の管理ということだけで大変な事務が発生するのではないかということを危惧しております。

 いずれにしても、徴税事務を円滑に遂行するためには、番号を付与して徴税対象となる事業者、個人の情報を管理するという事務は避けられないわけですが、こうした情報管理のあり方、私はなるべく簡素であるべきだと思っておりますが、政府の見解をお尋ねしたいと思います。

並木政府参考人 お答え申し上げます。

 個人事業者に関する番号について申し上げますと、今先生御指摘のございましたとおり、まずマイナンバーについてでございますけれども、こちらについては、社会保障、税、災害対策の分野で用いられておりまして、個人情報の保護の観点から高い秘匿性が求められているものでございます。

 国税庁では、厳格な安全対策を講じつつ、申告書や法定調書などに記載されたマイナンバーを用いまして、法定調書の名寄せですとか申告書との突合、これを効率的かつ正確に行うなどの納税者管理を行っているところでございます。

 他方、こちらも御指摘ございましたとおりでございますけれども、令和五年の十月に導入されます消費税の適格請求書等保存方式のもとでは、個人事業者も含む適格請求書発行事業者に登録番号が通知されるわけでございますけれども、この登録番号は取引先に交付する適格請求書に記載することとされておりまして、納税者が受け取った際、仕入れ税額控除の要件を満たす適格請求書であるかどうかを納税者自身が国税庁の公表するホームページで確認する際の番号として使用されることとなっております。

 ただいま申し上げましたとおり、マイナンバーと登録番号はその利用目的や活用方法あるいは秘匿性の程度などにおいて大きく異なっておりますことから、国税庁といたしましては、これらの番号の特性に応じてその適切な活用を図る、あるいは納税者が利用するための環境を的確に整備することが肝要であると考えております。

 そのため、まずは個人事業者にもこれらの番号の利用目的などの特性の違いをよく御理解いただき、その上で適切な記載と利用をしていただくことが大切であると考えておりまして、国税庁といたしましては、引き続き、関係省庁や関係民間団体などと連携、協調を図りながら、効果的かつ計画的な周知、広報に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

斎藤(洋)委員 御答弁ありがとうございました。

 この番号は余り多岐にわたると管理が大変だという現場からの声もありますし、また、マイナンバーのお話もちょっといただきましたけれども、極力こういったものは統合して、かつ給付行政も含めて一元的な管理が私は望ましいと思っています。ただし、そのためには国民的合意が必要になりますので、ぜひ、この点はまた継続して問題提起をしてまいりたいと思います。

 三番目に、今、徴税事務のことをお尋ねしましたが、それと関連しまして、税務署の現場の体制を強化する必要があるのではないかという観点からお尋ねをしたいと思います。

 e―Taxも導入されまして、将来的には極力効率化を目指していくんだという取組の方向性は理解をしております。

 その上でなんですけれども、税制は、もちろん制度の公平性も大事なんですけれども、それと同じぐらい、実態の公平性とそれから徴税される側の公平感というのもすごく大事だと思っておりますが、個人事業者も含めて個人の納税者については、税務署の職員の数が足りないことから、実際には、真摯に納税義務を果たしている方とそうでない方との間で、何というんでしょう、納税をしっかりしていなくても余り税務署の職員さんが来ないのではないかということが、納税をしている方々の間で言われています。私は地元でよくそういうことを言われます。

 実際回ってみれば、本来納税すべきだった額というのがそれなりに出てくるものでありまして、税務署の体制を、私はしっかり強化をしていただいて、本来徴収していただくべき税金をもっともっと納税していただくということは非常に重要なのではないかと思っておりますが、政府の見解をお尋ねしたいと思います。

並木政府参考人 お答えいたします。

 経済活動の国際化、ICT化に伴う調査、徴収事務の複雑化などによりまして、国税庁の担っております税務行政を取り巻く環境は、今先生の御指摘のありましたとおり、例えば実調率の低下などという形で大変厳しさを増している状況にございます。このような状況のもとで適正、公平な課税、徴収を引き続き実現していくためには、税務執行体制の強化を図っていくことが重要であると私どもとしても考えているところでございます。

 こうした中、令和元年度予算におきましては、民泊サービス、仮想通貨取引といった新たな経済活動等への対応、国際的な租税回避等への対応、税制改正等への対応などを図っていくための所要の体制整備を盛り込んだところでございまして、その結果として、国税庁全体の定員はプラス九名の純増となっているところでございます。

 引き続き、御指摘も踏まえまして、国民、納税者の関心の高い国際的な租税回避や富裕層への対応などを中心といたしまして、適正、公平な課税を実現すべく、業務の効率化を図りつつ、必要な定員を確保し、税務執行体制の強化を図ってまいりたいと考えております。

斎藤(洋)委員 ありがとうございます。

 ぜひ体制強化に努めていただきたいと思いますし、特に、もちろん本庁の企画立案部門も非常に大事だと思いますが、それと同じぐらい、これからまたさまざま税制の改正もありますので、税務署の現場の体制もぜひ強化に努めていただきたいと思います。

 最後に、体制強化ということに関連しまして、さまざまこの委員会でも指摘されていることでありますが、私からも、税関のCIQ体制の強化についてもお尋ねをしたいと思っております。

 時間がありませんので、簡潔に、CIQ体制の強化について政府の見解をお尋ねしたいと思います。

中江政府参考人 お答え申し上げます。

 観光が我が国の成長戦略の大きな柱という認識のもとで、訪日の外国人の旅行者が我が国への出入国を円滑かつ快適に行えるようにしていく必要があると考えております。他方、税関では、金地金ですとか不正薬物の密輸あるいはテロの脅威等の困難な課題にも対応する必要があるところでありまして、こういう状況のもとで、迅速な通関と厳格な水際取締りの両立を実現するための体制強化を図っていく必要があると考えておりまして、検査機器あるいは取締り機器の活用を図りながら、所要の人員を確保する必要があると考えております。

 これまでも、税関の定員については、御理解をいただきながら純増を確保してきましたが、令和元年度予算におきましても、二百九人の純増を確保しているところであります。

 今後とも、訪日外国人旅行者が三千万人を超えたところ、更に四千万人も視野に入っているという状況ですので、必要な税関定員を確保してまいりたいと考えております。

斎藤(洋)委員 ありがとうございました。

 インバウンドが増加をして、かつ日本国に来て満足して帰っていただければ、それは我が国の税収増にもつながりますし、また、国際犯罪も非常に多様化していますし、また、送り出し国の側におきましても、日本の税関の状況を調べて次々に手口を変えてきているような節も見受けられると伺っております。結局、さまざまな機器を導入しても、やはり、最後、日本国を水際で守るのは人でありますので、ぜひともこの体制の強化に努めていただきたいと思います。

 以上、お願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、山田美樹君。

山田(美)委員 自由民主党の山田美樹と申します。

 本日は、一般質疑のお時間をいただきまして、ありがとうございます。短い時間ですが、未来の税制について問題提起をさせていただければと思います。

 世の中の最近の動きは非常に速くて、一年一年のインクリメンタルな改正では追いつかないという気がしております。例えば、働き方の多様化とともに現行の複雑な所得税控除の仕組みは意味がなくなるのではないだろうか、人工知能や物のインターネットによって無人の事業体ができたらどのように法人税を課すのか、カーシェアが進むと車の保有に偏った車体課税制度では税収が確保できなくなるのではないか、自動運転が普及して路線価の概念が薄れると固定資産税は何を根拠に決まるのかなどなど、さまざまな論点が考えられます。

 十年後、二十年後の税制のあるべき姿を見据えた上で、そこからバックキャストして今ある税制を軌道修正していくべきだと思いますが、現在の税制改正の議論には、残念ながらそうした未来予測と中長期ビジョンが余り感じられないですし、そもそも、十年、二十年のスパンで税制を考える議論の場がないというのが私の問題意識でございます。

 既に顕在化しておりますのが、シェアリングサービスに物や労働力などを提供するネットワーカーの所得への課税の問題です。

 一昨年の暮れに政府税調で論点整理を行っていただいて、海外主要国における対応も整理いただきましたけれども、税務当局がプラットフォーマーに対して必要に応じて不特定の納税者の情報提供を要請する仕組みというのが今年度の税制改正で非常に限定的に導入をされましたが、所得把握のためというよりは、不正防止を目的とした措置だと思われます。そもそも、ネットワーカーの所得が事業所得なのか雑所得なのかというところについても、わかりやすいガイドラインを示す必要があるのではないかと思っております。

 そこで、きょうまず最初に主税局長にお伺いをしたいのは、財務省において政府税調の問題提起をどのように受けとめ、今後どのように施策を進めていくのか、あるいはもう既に進めているのかという問いでございます。

 近い将来には、国境を越えて所得の把握が大きな論点になることが予想されます。近年、デジタルノマドという言葉をよく耳にしますけれども、IT人材の遊牧民化という意味ですけれども、人工知能の普及などでさらなるデジタル化が進むと、ノートパソコンさえあれば世界のどこにいても同じ仕事ができるため、自分の好きな国を選んで働くことができる。そうすると、必然的に居住費や税金が安い場所に人材が集まることになります。そうすると、人と所得が国にひもづけられなくなって、国にとっては所得税を徴収できなくなるということも考えられます。逆に、外国人に仮想居住権を与えて国内での法人設立を優遇するエストニアのような国もあって、国境を越えた人材獲得競争が既に始まっているという認識です。

 こうした国境を越えたノマドワーカーと所得税の問題というのは、今まさにG20に向けても議論になっておりますデジタルプラットフォーマーに対する法人税課税と同じように、いずれ国際的な論議となることが予想されますけれども、海外当局との金融口座情報の交換など課税情報確保のための取組を進めない限り、個人所得税の機能を維持していくというのは難しくなろうかと思います。

 現在そういった国際租税をめぐる多数国間の議論の中で既に検討が始まっているのか、もしももう日本政府の中でお考えがあればお聞かせいただければと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 山田先生から今、今後の、将来に向けての税制の話も含めましていろいろと御指摘をいただきました。

 御指摘のとおり、経済社会のICT化が急速に進展しておりまして、例えば、シェアリングエコノミーといった消費者間、CツーCのオンライン取引が拡大しているといったようなことですとか、ブロックチェーン技術を活用した暗号資産取引などの普及ですとか、そういったいろいろな税制をめぐる環境が大きく変化しているということだと考えております。

 御指摘がございました平成二十九年の政府税制調査会中間報告、ここに提言されているのでございますけれども、こうした新たな動きについては、従来型の取引を前提としたさまざまな制度が十分に追いついていないといった面がございまして、市場の健全な発展のためにも適切な対応が求められていると考えております。

 このため、税制におきましては、まずは、納税者自身が自主的に簡便、正確な申告等を行うことができるよう、ICTの活用などによりまして納税環境の整備を図る。例えば、暗号資産交換業者が取引データを顧客、納税者に提供いたしまして、納税者は専用アプリですとか国税庁が提供する様式などを活用して簡便に電子申告をするといったような、こういった対応を三十年分の確定申告から開始するというようなことを進めております。

 さらに、もう一段の対応といたしまして、自主的な適正申告を担保し、税制に対する信頼を確保していくということが重要でございまして、高額、悪質な無申告者等につきましては、国税当局が的確に所得等の情報を把握する仕組みを整備する必要があると考えております。

 こうした観点から、先ほど御指摘がございましたとおり、今般の税制改正の中で対応を図っておりまして、例えば、過去の税務調査の実績から特定の取引に関する申告漏れの可能性が相当程度認められるなど、高額、悪質な無申告者等を特定するために特に必要な場合には、暗号資産交換業者等の事業者等に対しまして、必要な情報の照会ができる旨の規定を整備したところでございます。こういった制度を活用していくということをまず考えているところでございます。

 国税当局におきましては、事業者や業界団体などとも連携をして、納税者に適正申告の働きかけを行いながら、こうした新たに整備された枠組みも活用して情報収集に努めて、その上で、申告漏れが見込まれる納税者には適正な調査を実施するなど、新たな経済活動に対する適正課税に取り組むこととしているというふうに承知をしております。

 また、御指摘のございました労働人材の国際的な流動化、ノマドワーカーといったようなことにつきましても、そうした動きがあるということについては、こちらとしても問題意識を持っております。

 基本的な枠組みとしては、居住者、国内に住所を有する個人などには全世界所得に課税する一方で、非居住者には国内源泉所得のみに課税する、今そういった枠組みになってございますけれども、御指摘の、国際的に活動するIT人材のような例につきましてどこまで日本の課税権が及ぶかどうか、これ自体は個々の実態に即して判断する必要があると考えております。

 日本において課税上問題があると認められる場合には、国税当局におきまして、税務当局間の国際的な情報交換、この枠組みが近年整備されてきておりますので、そういった枠組みも含めまして、あらゆる機会を通じて、課税上有効な情報の把握を行って、適正、公平な課税を図ることが重要と考えております。

 委員からも御指摘がありましたようなそういったいろいろな動きに対して、やはり目線を高くして対応策をいろいろと考えていくというのは非常に重要だと考えております。

 いずれにせよ、取引の多様化ですとか国際化といった経済社会の変化を踏まえて、適正な課税を確保することが重要な課題でございまして、執行当局とも連携の上、引き続き適切に対応してまいりたいと考えております。

山田(美)委員 星野局長、ありがとうございます。

 非常に現実に即した、本当にきめ細やかな対応、施策を考えてくださっていることを感じました。税制改正というのは一年に一度ですけれども、ビジネスの動き、急速なスピードで進んでいきますので、ぜひとも迅速な制度整備をお願いしたいと思います。

 また、ここから先は質問ではなく問題提起なんですけれども、将来、技術の進歩によって、無人の事業体といいますか、匿名の事業体ができるのもそれほど荒唐無稽な話ではありません。ブロックチェーン技術を用いたスマートコントラクトというのは既に公的認証ですとかデータ管理、商品履歴追跡に活用されていますので、近い将来、こうした技術が物のインターネットを介してリアルビジネスと結びついて、分散自律型組織というそうですけれども、管理者のいない事業体が収益を上げるということが可能になると言われています。

 よく例え話に挙げられるのが、ウエブ上で著作物を募集して電子書籍に加工して有料で配信して収益を得るという話ですけれども、こうした場合、法人格がないので法人税では対応ができない。その所得が誰に帰属するのか、どうやって本人確認するのかという所得税の問題に行き着くかと思います。

 決してSFの話をしているわけではございませんで、近い将来やってくるそうした事態に備えて、税務当局においても論点を整理して、検討を始めていただければと思います。

 時間が迫っておりますので、最後の質問に移りたいと思います。

 そもそも私がこのような未来の税制に興味を持ったきっかけは、地元港区の麻布、青山、赤坂、六本木地区の中小企業の方々が集まる麻布法人会が企画された税制勉強会で、今の税制に未来はありますかというお題で討論会をさせていただいたのがきっかけでした。その際に、未来の税と社会保障のあり方として法人会の方々から御提案をいただいたのが、意外なことにベーシックインカムだったんですね。現行の税制は、たび重なる改正の結果、張りぼて化してしまっている、無償化ですとか控除といったものは利権の温床になってしまった、全員一律に給付をすることが最も公平なんじゃないかという法人会の方々の問題意識は、非常に率直なものだというふうに感じました。

 確かに、財源の問題ですとか過誤支給それから不正受給などの問題から給付つき税額控除を選択しなかったという政治的経緯を考えますと、ベーシックインカムの導入は現実的ではないということは既に累次の国会質疑の中で政府から御答弁をいただいていますので、繰り返していただく必要はございません。ただ、本質的な問題として、社会主義から新自由主義に至るまで幅広い人々がそれぞれ、同床異夢のマジックワードであるベーシックインカムにそこはかとない期待を寄せているという根底には、恐らく、今の制度に対して、複雑さ、わかりづらさゆえの不信感、不公平感があるのではないかなという気がしております。

 私は、理想的な税とはフェアでシンプルな税であろうかと思いますが、うえの副大臣はどのような税制が理想だとお考えでいらっしゃるでしょうか。そしてまた、その理想の税制に近づくために、十年、二十年という長期的な視野に立って未来の税制をどのように構築していくか、立法府にある私たちはどのような努力をしていくべきかなど、御示唆をいただければと思います。

うえの副大臣 ありがとうございます。

 税制のあり方を考えるに当たりましては、まず、公共サービスの資金を調達するという財源調達機能、あるいは、所得や資産の再分配を行うという所得の再分配機能といった租税の基本的な役割というのを踏まえる必要があると考えています。

 その上で、納税者の担税力に応じて負担を分かち合うという意味の公平性、また、税制ができるだけ個人や企業の経済活動における選択をゆがめることのないようにするという意味の中立性、また、税制の仕組みをできるだけ簡素なものとして納税者が理解しやすいものとするという意味の簡素性、こうしたことが税制の基本原則として挙げられることが多いものと承知をしています。

 こうした基本原則のもとで、少子高齢化であったりあるいはグローバル化の進展、そういった経済社会の構造変化や財政の状況などを踏まえて、個別の税制に加えて、税制全体のあり方というものをこれからも検討していくことが必要だろうと思いますし、その際には、やはり、現実的にどうかという議論もありましょうし、また、委員から御指摘のあったように、中期的あるいは長期的に社会経済状況がどのように変化をするか、そうしたものを踏まえた上で、税制が、先ほど申し上げましたようなさまざまな原則に沿った形で構成をされるということが望ましいと思いますので、そうしたことを十分我々も考えながら税制を構築していく必要があると思います。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 今月から令和の時代ということで、令和三十年ごろにはどのような時代になっているのかというところに思いをはせるわけでございますけれども、引き続き、先輩方から御指導いただきながら、しっかりと、この日本の税制をどうつくっていくかという議論に参画してまいりたいと思います。

 本日は、お時間をいただき、ありがとうございました。

坂井委員長 次に、高木錬太郎君。

高木(錬)委員 おはようございます。立憲民主党、高木錬太郎です。

 大臣、うえの副大臣、政府参考人の皆さん、どうぞよろしくお願いいたします。

 貴重な質問の機会でありますので、たくさん大臣には伺いまして、御認識を聞かせていただきたいことがあります。冒頭、三点ほど、大変恐縮ですが、通告をしていない点につきまして伺わせてください。

 一つ目ですが、先般の、当委員会でもたびたび御質問されてきておりました丸山穂高議員の北方領土を戦争で取り戻すという趣旨の御発言につきまして、大臣はどのように受けとめていらっしゃいますでしょうか。

麻生国務大臣 丸山穂高先生のお話というのを、話の前後をよくわかっておりませんし、詳細に、詳しく知りませんので、ちょっと答弁は差し控えさせていただきます。

高木(錬)委員 二点目です。

 昨夜、大臣が主宰する派閥のパーティーがあったと報じられております。その中で、大臣の御挨拶で、今の日本に政局にかまけているいとまはないという御発言、御挨拶があったと伺いました。このときの大臣の政局の意味は、どういうものを念頭に置いておっしゃっていらっしゃったのでしょうか。

麻生国務大臣 政局というのは、通常、内閣の、政府が、いわゆる政権がよたよたするとかいうときによく政局がという言葉を使われるんだと理解をしておりますので、私どもとしては、自由民主党、政権がよたよたするというような状況にはしたくない、そういうことであります。

高木(錬)委員 衆参ともに三分の二の議席を持っていらっしゃって、まさに横綱でありまして、今大臣から答弁がありましたように、よたよたしている場合じゃない、まさにそういうことなんだと思うんです。

 しかし、安倍首相が、昨夜のパーティーの御挨拶で、またもや、悪夢のような民主党政権という言葉を使われました。大臣、大横綱でいらっしゃる自民党さんですので、誰かのことを悪く言ってみずからの求心力を高めようとするとか、誰かのことを悪く言って人々の心をあおるとか、そういうことは理性や知性が全く感じられない。そろそろ、長年の御経験もあり、内閣総理大臣も御経験された麻生副総理から安倍首相をたしなめるということがあってもよいのではないでしょうか。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 総理の御発言でもありますので、今の話はそういった御意見もあろうかと思いますが、基本的に、高木先生、民主主義とか、議会制民主主義とか、内閣、政党とかいろいろな表現があろうかと思いますが、政治の世界の中で対立する相手に関してはいろいろ批判をするというのは、これはある程度避けて通れぬ話なのであって、そちらさんも我々のことをいろいろ言っておられたのと似たようなものですよ。

 だから、そういったようなことはよくありますので、表現がいかがなものかという御意見は御意見として伺っておきますけれども、ある程度対立軸というものがどうしても出てこないとなかなか、選挙ということをやりますときにはそういった言葉がどうしても出てきやすいということになりますので、参議院の選挙等々も近くなると何となくそういった対立的な言葉が出てくるのではないかというふうに御理解をしていかれたらいかがでしょうか。

高木(錬)委員 確かに、私みたいな一回生のよちよち歩きの人間、野党の議員でしたら、与党に対して攻撃的に対立軸を設けて発言するということがひょっとしたら政治の世界でも受け入れられるのかもしれません。しかし、悪夢のような民主党政権と繰り返しおっしゃっているのは内閣総理大臣であります。後世の国民がどのように評価されるかわかりませんが、六年以上も務められておる、大宰相と言われるかもしれない、そのような方が繰り返し誰かのことを、相手のことを悪く言って、みずからの地位を確保しよう、確かなものにしようとすることはいかがなものかと、こんな私でも感じるところであります。

 さて、通告したものに移りたいと思います。

 公文書の管理についてまず伺ってまいりますが、まず、公文書管理法の目的、第一条ですね、これを朗読していただけますでしょうか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 公文書管理法第一条では、「行政文書等の適正な管理、歴史公文書等の適切な保存及び利用等を図り、もって行政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有するその諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。」とされていると承知しております。

高木(錬)委員 ありがとうございました。

 さまざまな行政文書、公文書の管理は、この目的、理念に基づいて当局では行われているというふうに理解しておりますが、おとといも衆議院の決算行政監視委員会で大臣に対していろいろな議論があったと承知しておるところですが、その中で触れられなかった部分について改めてこの場でも聞いていきたいと思います。

 おとといの場面では、大臣の一日の日程を記した文書というのは行政文書である、そして即日に廃棄しているという答弁があった。では、即日廃棄になった、当該業務が終了したすぐ後に廃棄するようになったというのはいつからでありますか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 いつからかを明確に確認することはできないと考えておりますが、相当程度以前より一年未満の保存期間の行政文書として当該日程終了後廃棄されてきたものと考えております。

高木(錬)委員 確認することはできないとおっしゃいましたが、昨年の四月一日のガイドライン改定直前は即日廃棄でしたか、即日廃棄でなかったですか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 二十九年の十二月のガイドラインを受けまして、平成三十年四月に文書管理規則を改定しておりますけれども、それより前におきましても扱いは、大臣日程につきまして、当該日程終了後廃棄されてきたものと承知しております。

 以上でございます。

高木(錬)委員 済みません、私の認識が間違っていました。昨年の四月の一日、行政文書管理規則の改定直前はいかがだったですか。

上羅政府参考人 昨年の改定以前につきましても、即日廃棄されてきたものと考えられます。

高木(錬)委員 なぜ、考えられますという答弁になるんでしょうか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 公文書法の管理は平成二十三年四月から施行されております。その時期におきまして、財務省の行政文書管理規則がございましたけれども、それよりも前の時代はその前の財務省の行政文書管理規則でございますが、これは旧情報公開法に基づいて定められておりまして、平成十三年の一月から施行しております。その時点におきまして、保存期間を一年未満とする行政文書の類型として週間、月間予定表等が例示されておりまして、そのような扱いと考えております。

高木(錬)委員 では、大臣の一日の活動日程を記した文書というのは、省内でどの程度の範囲まで共有していることになっていますでしょうか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 共有範囲につきましては、セキュリティー上の理由等から、大臣室の担当者、秘書官、警護官等に限られていると承知しております。

高木(錬)委員 その共有化はどのような手法ですか。手渡しですか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 共有方法につきましては、担当者の方から紙で配付しているものと承知しております。

高木(錬)委員 即日廃棄するのは、全員が必ず行うということでありますか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 共有しているものにつきましては、業務終了後、即日廃棄されているものと承知しております。

高木(錬)委員 電子データでの保存や共有化はしていないということですか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 電子情報としての共有化は図っておりません。

高木(錬)委員 確かに、一日の行程を書いた日程表が、ひょっとしたら、その一日の業務が終わった後に廃棄するということは、公文書ですから、行政文書ですから残すべきだと思いますが、その一枚一枚を電子データ化して、過去にもさかのぼれるようにしているということはないのでしょうか。

上羅政府参考人 今委員の御指摘のような電子情報化等におけるような仕組みにつきましては、特段存在しないものと承知しております。

高木(錬)委員 日々の業務の中で、一カ月前、二カ月前あるいは一年前の五月十五日、大臣がどのような活動をしていたか、どのような日程だったかということを振り返ることは余りないんでしょうか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省では、御指摘のような点があるような場合、公文書管理法等に基づきまして、財務省の意思決定過程や財務省の事務事業の実績を検証できるように、予算、税制等の政策担当部局におきまして行政文書を作成、保存しておりまして、各政策担当部局における資料を確認することにより、財務省の意思決定過程や財務省の事務事業の実績を検証することができると考えているところでございます。

高木(錬)委員 では、一カ月先、二カ月先、いや、そんな先じゃなくてもいいです、来週、再来週の大臣の活動予定については、どのような管理をされているんでしょうか。

上羅政府参考人 お答え申し上げます。

 週間ないしは月間予定表につきましては、つくっていないものと承知しております。

高木(錬)委員 私は大変不自然に思っています。さかのぼることがないということまで言い切れないと思います。そして、今、触れましたように、未来のこと、先のことも、何かしらの管理を当然やっているものだと思うんですけれども。

 おとといの衆議院の決算行政監視委員会で、質問者の、麻生大臣の日程は行政文書であって、そして即日廃棄している、これは事業の跡づけの検証とか、歴史的な意義を私は持つと思いますし、麻生大臣、御自身の日程は事業の跡づけになるし、歴史の検証に必要だと大臣自身は思いませんかという質問に対して、私には大臣の答弁は論点をずらしているなと思うんですが、少なくとも、今、財務大臣を六年だかさせていただいていますけれども、私が財務大臣を務める中において、日程表の取扱いで困ったという経験はないと。

 確かに大臣御自身は困ったことはないんでしょうけれども、支えている秘書官の皆さん、行政の皆さん、職員の皆さん、さまざま、大臣の日程を確認する、過去をさかのぼる、先の日程を確認するという場面で、いろいろな困ったことが、今の答弁ですと一切ないということでございますので、非常に困ったことになるんじゃないかなと思います。

 そして、大臣はそのように答弁されましたが、昨年の行政文書の管理の在り方等に関する閣僚会議がまとめられた「公文書管理の適正の確保のための取組について」には、「公文書は国家公務員の所有物ではなく健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源であり、行政文書の作成・保存は決して付随的業務ではなく、国家公務員の本質的な業務そのものであることを肝に銘じて職務を遂行し、公務員文化として根付かせていくとの理念の下、コンプライアンス意識改革への取組や、信頼を損なう事態を発生させないための仕組みやルールについて検討を行ってきた。」と書かれております。

 そして、そういった考えのもと、財務省における、先ほども答弁でも触れられておりましたが、行政文書管理規則、ちょっと長くなりますが、大事なところだと思いますので、ちゃんと読ませていただきます。

 第十五条の四には、「保存期間の設定及び保存期間表においては、歴史公文書等に該当するとされた行政文書にあっては、一年以上の保存期間を定めるものとする。」とありますし、次の五も同様に、「行政が適正かつ効率的に運営され、国民に説明する責務が全うされるよう、意思決定過程や事務及び事業の実績の合理的な跡付けや検証に必要となる行政文書については、原則として一年以上の保存期間を定めるものとする。」とあります。さらに、七項には、「保存期間の設定においては、通常は一年未満の保存期間を設定する類型の行政文書であっても、重要又は異例な事項に関する情報を含む場合など、合理的な跡付けや検証に必要となる行政文書については、一年以上の保存期間を設定するものとする。」とあります。

 大臣の日程表は、私は、今申し上げた管理規則のそれぞれに当てはまると思います。ですので、書かれてあるとおり、一年以上にすべきだと思いますし、内閣総理大臣や官房長官は三年以上です。そうすべきだと思いますが、大臣、これは大臣が、今私が申し上げた管理規則にのっとって、そのような運用をしなさいと指示を出せば、すぐ変わることだと思います。指示を出すお考えはありませんか。いかがでしょうか。

麻生国務大臣 いろいろ御意見があるようですけれども、私どもとしては、財務省において、公文書管理法に基づいて、財務省の意思決定過程とか財務省の事務とか事業の実績等々を検証できるように、予算、税制等の財政担当部局において行政文書を作成、保存をいたしております。したがって、各政策担当部局における資料を確認することによって、財務省の意思決定過程とか財務省の事務事業の実績というものは十分に検証することができると考えておるというのが答えであります。

高木(錬)委員 とりわけ、財務省の決裁文書改ざんという大きな大きな歴史的な大問題が、大事件が起こって、公文書の管理をしっかりしていこうということだったと思います。とりわけ財務省が発端になった話です。ですから、他府省庁とは違って、一層の姿勢を見せなきゃいけない、襟を正さなければいけない。

 何度も大臣も当委員会やさまざまな機会で、財務省に対する不信を払拭できるように努めるというような趣旨の御発言も重ねてこられていると思います。そういう考えであるならば、財務省として、一年未満だったり一年以上でいいかもしれないけれども、三年保管するということに踏み込むべき、事の発端は財務省ですから、とりわけ財務省ですから、すべきだと思いますが、もう一度答弁をお願いします。

麻生国務大臣 答弁は先ほど申し上げたとおりでありますので、いろいろ御意見があるということは、高木先生の御意見として拝聴させていただきます。

高木(錬)委員 私が公文書、行政文書の管理についてこだわるのは、しつこく聞くのは、繰り返しになりますが、後世の国民の皆さんの検証のためにきちんと残さなきゃいけないということだと思うんです。今の私たちが国会の一つの役割である行政監視機能を果たすためにも必要ですが、後世の国民にとっても大変、公文書、行政文書は大事なもの、もう言うまでもありません。

 それが、明文化されているガイドラインや規則にのっとっているからということで廃棄も認められるということであれば、恣意的な運用、これは都合が悪いから捨ててもいいや、いろいろな理屈はつけられるということになりかねないから、昔から指摘されてきたように、いろいろな事件があって指摘されてきたように、公文書、行政文書というのはすべからく、基本、全部残すべきということだったと思うんです。

 例えば一九四五年、昭和二十年八月十五日前後、時の政府は公文書を焼却したという歴史的証言があります。我々が、あの当時何があったのか、政府の中で何があったのか、いつ誰がどこでどんな判断をしたのか、まさに今を生きる私たちがさきの大戦を振り返って検証するということがこの焼却によってできないわけであります。

 そういうことを、そういった公文書や行政文書を検証して、同じことを繰り返してはいかぬ、教訓とは何だということをいろいろ考えられる、そういうことなんだと思うんです。だから、重要な参考資料になるから、後世に生きる私たちや、我々から見たらこの後の国民にとって大事な大事な重要な資料となるから、基本、残さなきゃいけない、公文書、行政文書は残さなきゃいけないと思うわけです。

 今私が紹介しました一九四五年、昭和二十年八月十五日前後、時の政府が公文書を焼却したというこの事実に対して、大臣はどのように評価して、どのように教訓とされているのか、財務省のトップとしてどのように受けとめているのか、教えてください。

麻生国務大臣 さきの大戦におけます政府の文書の扱いというものに関しまして、私はそれを詳細に承知をしているわけではありません。高木先生がどれくらい理解をしているのか知りませんけれども、私もそれについて詳細に理解し、承知をしているわけではありませんが、少なくとも、歴史的な文書と言われるようなものに対しては、これは国民の財産でありますので、これを後世に残すというのは大変重要な使命なんだと思っております。

 公文書館というのは、何で日本にはそれだけきっちりしたものができていないのか。明治ごろから、大使館や図書館、いろいろありますが、何で公文書館は日本にはそれほど立派なものができなかったのか、不思議だと思われませんか。どうしてないんですかね。私は、この点も真剣に考えていただかないかぬところだと思って、今、公文書館というのはぜひつくるべきだということを申し上げてきているんですけれども。

 いずれにしても、現在の公文書管理法というのは、私が内閣総理大臣をしていたときの平成二十一年に提出して成立したんだというように理解をしておりますが、いずれにいたしましても、政府の保有する歴史的に重要な文書というものを管理、保存する制度的な礎になったものだと私自身は考えております。

高木(錬)委員 詳細に御存じないということでございましたが、当時、内務省の官僚で、後に国会議員となられ大臣まで務められた方が、二〇一五年八月十日に大手新聞にインタビューとして答えられている。詳細に私も知らないかもしれないけれども、それをもって質問したわけですが、詳細にはわからないということでありました。

 先ほど来申し上げているとおり、安倍政権、昨年の通常国会以降だけでもさまざまな行政不信を招くような不正、疑惑、不祥事が明るみになってきています。厚労省働き方改革データ捏造問題、先ほど来申し上げているように財務省の決裁文書改ざん問題、内閣府における国家戦略特区制度を悪用したのではないかと思われるような疑惑、自衛隊の日報隠蔽問題、文科省教育現場不当介入問題、財務事務次官が更迭されました報道機関関係者へのたび重なる性的嫌がらせ問題もありました。障害者雇用水増し問題もありました。昨年末には法務省の技能実習生不適切聞き取り調査問題、年を明ければ統計不正問題、そして実質賃金がまだ出てこないなどなど、昨年通常国会以降でもこれだけのものが思い出すだけでも明るみになっている中で、我が党は一貫して現在の経済状況下では消費税増税をすべきではないということを訴えてまいりましたが、今私が申し上げたように、これだけの行政の不正、不祥事、疑惑が次々と明るみになっている中で、それでも国民に対して負担を強いる、増税という形で負担を強いる。行政不信が高まっている中、増税だけは国民に対して強いる。

 本年十月の消費税率一〇%への引上げ、強行されるおつもりでしょうか。大臣、お願いします。

麻生国務大臣 財務省といたしましては、決裁文書の改ざんという問題行為等々が生じましたこと、これはもう真摯に反省をし、二度とこうしたことが起こらないように、一連の公文書をめぐる問題を受けた政府の方針や公文書管理法に基づいて適正な文書管理に努めてまいりたいと考えております。

 また、今言われました一部に障害者雇用の問題もありましたけれども、御指摘をいただきましたが、いずれの問題もこれは信頼を取り戻すことが何より重要と考えておりますので、再発防止に全力を尽くすことで政府の責任をしっかり果たしてまいりたいと考えております。

 他方、消費税の一〇%への引上げ、これは、全世代型社会保障というものの構築に向けて、少子化対策を含めました社会保障の充実とか社会保障に対する安定財源というものを確保して国民の安心を維持するためにも、どうしても必要なものだと考えております。

 したがって、消費税につきましては、リーマン・ショック級の出来事が起こらない限りということを申し上げておりますけれども、法律で定められておりますとおり、本年の十月に一〇%への引上げをさせていただきたいと考えております。

高木(錬)委員 本日、中心に取り上げました公文書の管理に関しては、ああ、財務省はやはり反省してそこまで厳しくやっているのかというぐらいの姿勢を見せなければ、見せてこそ初めて私は増税という話になるんだと思います。まだまだその道は半ば、まだまだ財務省は改まっていないということを確認させていただきました。

 質問を終わります。ありがとうございました。

坂井委員長 次に、今井雅人君。

今井委員 おはようございます。立憲民主党・無所属フォーラムの今井雅人でございます。

 まず、大臣にちょっとお伺いしたいんですけれども、私は今、米中の通商交渉を非常に深刻に捉えております。残念ながら交渉が今決裂しておりまして、五月十日にアメリカは二千億ドルの分の関税に対して一〇%から二五%ということで引上げをして、一方、中国は六百億ドルの対抗措置ということで、関税の引上げということで、もう貿易戦争さながらになってきたわけでありますけれども、この今の米中の貿易摩擦の経緯等につきまして今どういう御認識でおられるか、まずお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これはむしろ私よりは担当大臣に聞かれた方がしかるべき話なので、金融だけで話をしているわけではありませんので、米中摩擦は主に貿易の話ですから、少なくとも、ライトハイザーという人が相手、私の相手はスティーブン・ムニューシンという財務長官でもありますので、内容が少し違っているんだとは思いますけれども。

 したがいまして、私どもとしては、いかなる貿易上の措置というものも、基本的には、WTO、ワールド・トレード・オーガナイゼーションの協定というもの等、相互的であるべきだと考えておりますので、今の一連で行われた話は一部しかよく見えてきておりませんけれども、その内容を見ておりますと、なかなか難しい話が、核心的なところにぶつかり合っているように見えますので、そういった意味では、その推移は引き続き注意して見守っていきたいとしか今の段階では申し上げる段階にはないと思います。

今井委員 それでは、これは会見でもお話しされておりますので、この米中の貿易摩擦が日本経済に与える影響について今どういう御認識でいらっしゃいますか。

麻生国務大臣 貿易摩擦は、これは非常に大きな関心で、どれくらいの影響が出てくるかというところは、いわゆるサプライチェーンと称する言葉がよく使われますけれども、そういった意味でいきますと、日本の企業とかまた日本の経済への影響とかいうものを考えたときには、一概に申し上げるというのは難しいと思いますね。誰でも、言える人はいないと思いますけれども。

 そうした貿易制限措置の応酬というのは、これは基本的にはどの国の利益にもならぬ、何も日本に限った話じゃないので。いずれにしても、日本としては、米中両国のいわゆる建設的な問題解決を図るということを期待する以外にないんだと思いますけれども、経済財政に万全を期してまいるということに我々としては尽きるんだと思います。

 いずれにしても、我々としては、この話が、この五月、ワシントンでやった最後のところも三日のところが二日で終わっていますし、いろいろな形で極めて厳しい状況になっているんだという状況にはあろうと思いますが、この六月に米中を日本でやる可能性もあるわけで、そういったことを考えて、何らかの形で前向きなものが出てくるようなものになればということを期待しているという以外には、ちょっと今の段階で詳しく申し上げる段階にはありません。

今井委員 そうしますと、この米中の貿易の交渉の結果が日本の消費税の引上げの判断に影響する可能性はありますか。

麻生国務大臣 これがどのような形でどのような形に出てくるかというのは、それがリーマン・ショック級の大きなものになるかというようなことに関しては、ちょっと仮定の話のきわみであろうかと思いますので、お答えする段階にはないと存じます。

今井委員 ちょっと長くなりますけれども、二千億ドルへの追加関税がされてから、瞬間的には金融市場はかなり動揺しましたけれども、きのうあたりから落ちついています。これはなぜ落ちついているかというと、双方からいろいろコメントが出ていて、六月のG20のところで習近平主席とトランプ大統領が会って何らかの合意がされる可能性がまだあるということで、みんな注視をしている。

 今回の二千億ドルの問題ではなくて、実は、その次の三千二百五十億ドル、これに制裁がかけられるかどうかというところが一番大きいということで、金融関係者の皆さんときのうずっと話しましたけれども、そこの部分がはっきりするまでは、金融市場はとりあえず動きはとりようがないということで、今、様子を見ているという状態だということです。

 それで、トランプ大統領は、六月一日に追加の制裁をすると内容を発表されていました。十七日に多分、議会の公聴会をやります。それから七日間たってから制裁が発動できますから、最短で六月の二十四日に制裁が発動できるということだと思います。

 ちょうどその直後にG20がありますから、恐らく、その公聴会を終えて準備を整えた上で日本にやってくる、そして、そこの交渉結果で判断をする、こういう流れになっているということだと思います。それは皆さんも御案内だと思いますけれども。

 そこで、ちょっと私が申し上げたいのは、リーマン・ショックのときの話なんですが、リーマン・ショックのときは私はまだ民間で金融の世界にいました。二〇〇七年にサブプライムローンショックが起きてからニューヨークへ行きまして、ガイトナーにも会いましたし、サマーズにも会いましたし、ジョージ・ソロスさんにも会いましたし、ゴールドマンやメリルの会長とか、いろいろな方にお会いしてきて、お話を伺いましたら、かなりクレジットマーケットが崩れかけていて、これはひょっとしたら、一つ何かがぷちっときたら切れるねということを皆さんすごくおっしゃって、心配しておられました。

 特に、実は政府サイドにいる人たちはそうでもなかったんですけれども、マーケットにいる人たちは非常にそれを心配しておられて、きっかけになったのが、結局、アメリカがリーマンを助けなかったということ。アメリカ政府は、リーマン・ブラザーズがおかしくなったときに助けなかった。私はあれが大きな間違いだというふうに今でも思っていますけれども、あれで引き金を引いてしまったんです。

 問題は、あのときも、当時、麻生総理大臣、総理大臣だったと思いますが、リーマン・ショックのときに、日本の経済への影響というふうに言われたときに、日本は直接は大した影響はないだろうというふうにおっしゃられていました。私は外から聞いていましたけれども、政治家って何て鈍感なんだろうと、あのとき思ったんです。

 というのは、もうあの時期では、金融マーケットでは、クレジットマーケットがめちゃめちゃずれていまして、もうこれは、資金調達がみんなできなくなって、負の連鎖をどんどん起こすんじゃないかということで、我々は本当にそれをある意味予見をして、それでいろいろな対応をしているという段階に入っていました。

 しかし、ぜひここで私が言いたいことは、今の危機というのは、実は、今の世界経済というのは金融資本主義ですので、実体経済から起きるんじゃないんですよ。金融がまずおかしくなって、そこでお金が回らなくなって、回らなくなってくると結局実体経済に影響が出てくる。そして、全体が収縮するから、日本もあのとき成長率ががあんと一〇パーも落ちるということになったということなんですね。

 今回も、このアメリカの問題、米中の問題、これが本当に深刻化すると、金融市場が非常に、クレジットマーケットも含めておかしくなって、そこからまたリーマン・ショックのようなことが起きかねないということを私はとても今心配していまして、今の状況というのは本当に、先行きは、この一カ月、どっちに転んでもわからないという非常に危険な状態に入っているというふうに私は今感じているんですけれども、そのあたりの肌感覚というか、大臣の御認識をまずお伺いしたかったんです。

麻生国務大臣 少なくとも、金融という世界の中において、いわゆるストックでひっくり返る会社よりはフローでひっくり返る会社の方が多い、はっきりしていますわね、これは。

 だから、そういった意味では、リーマンのときも間違いなく、それまでの会社、いろいろ似たような会社で、大きなところでフレディーマックだとかいろいろなものが皆救えたわけですよね、あのときは。何でリーマンだけ救えなかったんですかね。明らかに、ソロモン・ブラザーズとは言わぬけれども、あのときの、ゴールドマン率いていた当時のアメリカ財務省の人たちが、リーマンと反目の人たちがやっておられたからじゃないかとか、いろいろな後づけの話が今よく、十年もたったらいろいろ出てきてはいますけれども、少なくともリーマンの影響があれだけ出るということを予想していなかったというのが現実だったんだと思うんですよね。

 何でそうなったかといえば、サブプライムローンなる怪しげなものを、御存じのように日本の銀行はほとんど買っていないんですよね。一番買っていたのは野村ぐらいで、あとはほとんど買っていなかったでしょう。したがって、影響は少ないということで、事実少なかった。大したことはないと言った財務大臣もおられましたけれども、私どもは、このリーマンの後にすぐ、これは金融収縮が起きると思いましたから、IMFを通じて、日本は十兆円のローンをIMFに対して出したぐらいですから、そういった意味では、対応はきちんとしたものをやっていかないかぬというので、あのときはさせていただきました。

 今の段階は、今言われたようないろいろな問題が、米中の問題からいろいろ起きてくるんだとは思いますけれども、少なくとも、金融市場においては、つい十年前、いろいろな問題が起きた人たちの、当時の当事者は第一線は引退しておりますけれども、当時の経験を十分に生かせる人たちがそれぞれの立場におられると思いますので、今回のようなことがどのような形で金融業界に及んでくるか、いろいろ、予測のなかなかしかねるところだとは思いますけれども、十分にそういったものを考えて、あのときの経験が生かされてくるんだとは思っております。私どもとしては、こういった状況を、我々はアメリカとはしょっちゅう、よく連絡をしますけれども、そういった中での連絡は密にして、対応を誤りなきようにしてまいりたいと考えております。

今井委員 そこで、ちょっと内閣府さんにいらっしゃっていただいているのでお伺いしたいんですけれども、今回の米中の問題についての影響をIMFやOECDは予想を出しているはずですけれども、民間のシンクタンクもその影響度についてはいろいろレポートを出しています。

 内閣府としては、政府として、この影響がどう出るかというのを今分析しておられますか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 米中間の通商問題が日本経済に与える影響につきましては、内閣府においてもさまざまな分析をしているところでございます。

 例えば、直近でございますと、ことしの一月二十五日に公表いたしました日本経済二〇一八―二〇一九、いわゆるミニ白書と呼ばれているものでございますが、そこでは、日本経済を含め、世界経済として三つの経路があるんじゃないかということで分析をしております。

 第一は、まさに追加関税措置が対象となっている財の貿易を下押しをして、米中両国の経済を減速させるという、そういう直接的な影響。そして、第二は、輸出財の生産が減少した場合に、それがサプライチェーンを通じて、日本を始め、その財の生産に必要な部品等を供給している国・地域にも影響を及ぼす可能性。そして、三つ目としては、通商問題の先行きの展開が不透明な中で、貿易や経済動向の先行きに関する不確実性が高まることによりまして、企業活動が慎重化したり、あるいは金融資本市場の変動が高まる可能性、こういった影響を分析しております。

 また、委員御指摘のありましたOECDやIMFなどの国際機関の経済モデルを用いた分析、試算も、私どももこうしたものを参考にしておりますが、やはりモデルによる試算は、仮定の置き方、それからモデルの構造、マクロモデルなのか、それとも一般均衡型のモデルなのかといったモデルの構造によって試算結果が変わり得ますので、そうした限界を認識しつつも、十分に参考にして影響を分析しているところでございます。

今井委員 ちょっと確認したいんですけれども、今、定性的な分析はされているというふうにおっしゃいましたが、定量的なものは、一応参考にはしているけれども、政府としてはそういうものは仮定がいろいろ置きにくいのでやっていないということですか。

林政府参考人 先ほど申し上げましたように、OECDやIMFでも分析を、モデルを用いて試算をしておりますが、それらの試算の前提になっている仮定の置き方、それからモデルのつくり方、マクロモデルもございますし、GTAPと言われる一般均衡モデルもございますし、いろいろなモデルがございますけれども、それぞれのモデルの特性が分析の結果に出ますので、モデルを用いた分析には一定の限界がございます。ですので、私どもといたしましては、現時点ではモデルを用いた定量的な分析はしておりません。

 ただ、国際機関の分析については十分参考にさせていただいております。

今井委員 ちょっと時間が少ないのでここはこれ以上詰めませんけれども、本当に影響が非常に大きく出る可能性がありますから、十分分析をしておいていただきたいということをお願いしておきたいと思います。

 外務省さんにきょういらっしゃっていただいていて、WTO上どうなのかというのをいろいろお伺いしたいんですけれども、ちょっと先の方をやりまして、後でやらせていただきたいと思います。

 次に、内閣府の方に最近の経済指標についてお伺いしたいと思いますが、直近に出ました四月の消費動向調査、それから今週の月曜日に出ました三月の景気動向指数、この内容について、両方、端的に御説明いただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、消費動向調査でございますけれども、本年四月の消費者態度指数、二人以上の世帯、季節調整値につきましては、三月の四〇・五から〇・一ポイント低下して四〇・四となりまして、七カ月連続で前月を下回る結果となっております。

 次に、景気動向指数でございますが、景気動向指数、CIは、生産や雇用など景気に関する経済指標を統合して指数化したものでございまして、その一致指数の基調判断につきましては、指数の動向をあらかじめ決められた表現に機械的に当てはめて公表しているところでございます。

 そして、本年三月の景気動向指数、CI一致指数の結果でございますが、CI一致指数の内訳となります鉱工業生産指数や投資財出荷指数などが低下しましたことにより、一致指数の前月差がマイナス、かつ一致指数の三カ月移動平均が三カ月以上連続して低下となりまして、これを先ほど申し上げた機械的な基調判断に当てはめますと、悪化という判断になったということでございます。

今井委員 それではもう一問お伺いしますけれども、今の三月の景気動向指数ですが、機械的に当てはめて、五段階ある改善、足踏み、局面変化、悪化、下げどまりということで、その悪化局面にしたということだと思いますけれども、この指標が始まってから、過去にたしか二回、悪化という判断がされたことがあると思うんですけれども、そのときは、その後、最終的な判断としてどういう判断がなされたかをまず説明いただきたいと思います。

丸山政府参考人 お答え申し上げます。

 まず最初に申し上げておきたいのですが、現行の方法による景気動向指数の基調判断を開始いたしましたのは二〇〇八年四月からでございまして、限られたサンプル、期間の事例となるということでございます。

 この現行の基調判断を開始して以降十一年間におきまして、景気動向指数、CIの一致指数の基調判断が悪化となりましたのは二回ございますが、二〇〇八年六月から二〇〇九年四月までの十一カ月間、そして二〇一二年十月から二〇一三年一月までの四カ月間の二回でございます。

 必ずしも事後的に認定された景気後退期と長さは一致するわけではございませんが、二回とも、この基調判断が悪化とされた期間の一部は景気後退期と事後的に認定された期間と重なっているのは事実ということでございます。

今井委員 そうなんですね。この指標が出た後、景気動向指数研究会というので分析をされて最終判断をするということですけれども、過去、悪化になったときは二回とも景気後退だったという判断がなされているということは、紛れのない事実であります。

 悪化になったのは今回が三度目です。前回二回をそのまま踏襲するとすれば、今回も景気後退になる可能性が非常に高いという状況になるということです。加えまして、先ほど申し上げた、御説明ありましたけれども、消費動向指数も七カ月連続でマイナスと、もう消費も非常に落ち込んでいる。

 まさに、日本の景気は非常に今悪化している。もうアベノミクスの限界が今露呈しているわけでありますけれども、こういう状況の中で、今月末に月例の経済報告が新たに判断が出ると思うんですけれども、この月例報告というのは、こういう経済指標を含めまして、どういった形で最終的には判断されていくんですか。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 月例経済報告の景気判断につきましては、個人消費や設備投資の動向、企業の生産活動、輸出入の動向等、さまざまの数多くの指標、さらにその動きの背景にある経済環境、また企業へのさまざまなヒアリングなどを総合的に勘案をいたしまして、総括判断を行っているところでございます。

今井委員 そうしますと、今御紹介いただいた二つの経済指標及び来週の月曜日に出ますGDPの速報値、こういうものも当然月例の経済報告の判断の材料の一つになるということでよろしいですね。

林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員今御指摘の指標も判断材料の一つではございますが、来週は例えば貿易統計ですとかほかにもたくさん統計が出ますので、それを一つ一つ細かく丁寧に見ていくのが私どもの仕事というふうに考えております。

今井委員 では、指標がいろいろ出てまいりましたら、また指標も見ながら議論をさせていただきたいと思います。

 その上で、今いろいろ指標はありますが、全ての指標ではありませんけれども、最近出てきている指標は、かなり日本経済が低迷しつつあるということを示している指標が次々と出ているわけであります。来週のGDPも、よくてゼロ近辺、下手をすればマイナスというのが大体のコンセンサスでありますけれども、この状況下は、今消費税を引き上げることにたえ得る経済状況であるか、その点について大臣はどういう御認識でいらっしゃいますか。

麻生国務大臣 この景気判断につきましては、今役所の方から答弁があっておりましたけれども、これは、月例経済報告等々いろいろな経済指標の動きを注視しながら、その中からいろいろなものを分析等々させていただいて判断をしているところなんだと思いますが、五月の月例経済報告も目下分析中なんだと思っております。

 いずれにしても、今、輸出の伸び等々、一部の業種の生産活動に弱さが見られてきている背景というのは、間違いなく中国経済の減速の影響があった、これはもうはっきりしているんじゃないでしょうかね。

 ただ、中国においても、財政政策を急遽また変更しておられますから、税金等々が二兆元マイナスにされる等々、いろいろ財政出動みたいなことをされておられますので、これが中国経済にとっていいかどうかわかりませんよ、長期的には、我々から見たら。ただ、目下のところの景気対策としては、そういった方策がとられたというのは、外に出てくる影響は決して悪いものには見えませんから、したがいまして、日本においては、そういったものの影響で、いわゆる急激になっているところが少し鈍化されるんだとは思います。

 いずれにしても、日本におきましては、雇用とか所得の環境とかいうものは改善しておりますし、企業の収益というのは、これはどう考えても、史上最高とか言われるような高水準で続いておりますので、内需を支えるファンダメンタルズというのは決して悪いというようには考えておりませんので。

 私どもとしては、アメリカの景気等々を見ましても、間違いなく、失業率史上最低とか、少なくとも賃金が上がったり、いろいろな形で、アメリカの経済は間違いなく景気がいいという方向に動いておりますので、そういった海外の動向、中国の動向、アメリカの動向等々を十分見ながらさらに判断をしていかねばならぬとは思いますが、今、景気が非常に上向いていいというように考えているわけではありませんけれども、かといって、極めて絶望的な状況にあるというように思っているわけでもありません。

今井委員 そうすると、端的にお伺いしますが、現在の日本経済の状況は、消費税の引上げにたえ得るだけの経済の底がたさがあるという御認識ですか。

麻生国務大臣 ただいまの状況、これはリーマンが起きるとか起きないとかいうような話は別にして、ただいまの状況においては十分にたえられるものだと思っております。

今井委員 中国経済の減速が日本経済に与えている影響というのは、私もそのとおりだと思います。ですからこそ、米中の貿易交渉の行方というのは非常に大きく見ておかなきゃいけないということなんですが。

 確かに二兆元の経済対策を打っています。今回は減税中心で、社会保険料ですとか企業の減税とか、どちらかというとそちらサイドですから、消費者サイドではないので、消費がどうなるのかなというのは私もちょっと実は心配なんですが、それだけでも十分かどうかということをよく見ておかなきゃいけませんので、繰り返しになりますけれども、やはり米中の行方をよく見ておいていただきたいということです。

 その上で、一つお伺いしたいんですが、これは先日、官房長官にもお伺いしましたけれども、政府の皆さんは、リーマン・ショック並みの状況が起きない限り消費税を引き上げるということを決まり文句のようにおっしゃっておられますが、このリーマン・ショック並みの状況が起きない限りということは、前回のときは、実は、そういう状況が起きてもいなかったにもかかわらず、起きそうだということで消費税の引上げを延期しましたが、今回は、起きそうなということは含まれていない、つまり、実際にリーマン・ショック級の、不況というか景気後退、そういうものが起きた場合に限り検討する、こういう認識でよろしいんですか。

麻生国務大臣 官房長官の答弁とほぼ同じことになると思いますけれども、これは、起こらない限りということを申し上げておりますので、これはもう法律で定められておりますので、十月に一〇%に引き上げる予定というように御理解いただいてよろしいかと存じますが。

今井委員 そこには、起きそうだということは含まれていないということですね。

麻生国務大臣 たらればの話をしているわけではありません。起きたらと申し上げております。

今井委員 わかりました。はっきり言っていただきました。起きたらということでございますので、起きそうだというのは含まれていないというふうに受けとめさせていただきました。

 ちょっと時間がありませんので、次に行きます。

 予算案が成立をいたしまして、今、それぞれ、予算に従って執行がいろいろ行われている、執行ないし準備が行われていると思いますけれども、消費税関連、消費税の引上げに伴う財源を伴う関連の予算についての今の状況をお伺いしたいんです。

 内閣府と経産省にお伺いしたいんですけれども、今、幼児教育の無償化の準備、ポイント還元、それから商品券、それぞれについて、もう既に、予算案が成立した後、予算を執行して、この準備が始まっているかどうか。そして、それぞれについて、いつごろまでに準備を完了する予定か。それぞれ、三つ、簡潔にお答えいただきたいと思います。

川又政府参考人 お答えいたします。

 幼児教育、保育の無償化を実現するための子ども・子育て支援法の一部を改正する法律、これが先週十日に成立をしたところでございます。

 無償化の実施に当たっては、昨年来、国と地方自治体とで実務に関する議論を行う機会を複数にわたって設け、一緒になって事務フローを検討するなど、既に準備を進めております。

 引き続き、本年十月からの円滑な実施に向けてさまざまな取組を通じて周知、説明に努めるなど、実務を担う地方自治体と連携して準備を進めてまいりたいと考えております。

藤木政府参考人 ポイント還元事業について御説明いたします。

 予算成立以来、決済事業者について公募を行いまして、今週、第一弾の本登録を実施しております。

 また、中小・小規模事業者の登録につきましては、先月半ばに登録要領を発表いたしまして、今週から各地での説明会を開催しております。

 十月からこのポイント還元事業がスタートできるようにしっかりと準備してまいりたいと考えております。

井上政府参考人 お答えいたします。

 商品券事業でございますけれども、この事業は各自治体が実施主体でございます。現在、専門部署の立ち上げなどの事業の実施体制の整備、取扱店舗の公募等の準備、それから、さまざまな事業者との契約に向けた準備等々が着実に進められていると承知しております。

 十月一日に対象者の方に着実に商品券を利用いただけるように、現在準備を鋭意進めている段階と承知しております。

今井委員 ありがとうございました。

 先ほどから、今後の経済情勢について私は非常に懸念を持っているということを申し上げているんですけれども、一方で、こうやって、もう既に予算が上がって消費税の引上げを前提とした政策を皆さんが進めておられるわけですね。各自治体も既にその準備を始めておられます。

 この状況下で、果たして本当に実務上、消費税の引上げを凍結するということができるんだろうか。いや、それは正直、もうやらないといって、みんなごめんと言ってしまえば、また予算を組み直せばいいわけですから、理論上はできると思いますけれども、実務的に、そんなことをやったら、いろいろな今準備をしている人に大混乱が起きてしまうんじゃないかというふうに、その部分は大変心配しているんですね。

 大臣、この消費税の引上げ、予定どおり、リーマン・ショックのようなことが起きない限りとおっしゃっていますけれども、そうはいってもどこかにやはり最終の期限がないと、これ以上は、ここ以降はもう無理だという時期はあると思うんですよ。それは九月三十日なんですかね。九月三十日まではその判断ができるということなんでしょうか。そういうデッドラインというのはないんでしょうかね。

麻生国務大臣 引上げの時期は、もうこれは法律で定められておりますとおりなので、お尋ねの最終判断なるものの趣旨がちょっとわかりかねますけれども、消費税につきましては、もうたびたび申し上げておりますように、リーマン・ショックのような出来事が起こらない限りということで、この法律で定められたとおり十月一日に一〇%に引上げを行う前提で進めてまいりたいと考えておるんですけれども。

 いずれにいたしましても、その判断というのは、まあ、たらればの話ばかりしても始まりませんので、どのような形というのになって、そういうときになったらどういうことになろうか、ちょっといろいろなことを想定をしていると、ずっとしていかないかぬことになりますので、今の段階で、私どもとしては、引上げが困難と判断される事態というものを予断を持って申し上げるということはいたしかねます。

今井委員 なかなか答えにくいと思いますけれども、そうはいってもやはり周辺は進んでいますので、ある一定段階まで来たらそれはもう撤回できないという時期に入ってくると思いますから、その点についてはまた、もし凍結を判断されるのであればすぐにでもされた方がいいんじゃないかなというふうには思います。

 先日、衆院の内閣委員会だったと思いますが、安倍総理がお答えになっていたことに関連してちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、幼児教育の無償化に関しては消費税の引上げに伴う税収を財源として行うものであるから、消費税を引き上げることが前提であるというお答えがあったんですが、仮にそこが欠落、財源が欠落した場合はどうされるんですかというときには、そこは答弁を少し濁しておられたように私は聞こえました。

 ちょっと大臣にお伺いしたいんですけれども、万が一消費税を引上げをするのを延期した場合に、幼児教育の無償化だけはやはり進めようということになって、財源がないから、では当面、赤字国債を発行してそれを財源に当てよう、こういうことはまさかまかり通るとは思わないんですけれども、それはないですね。

麻生国務大臣 これは典型的な仮定の質問ですから少々お答えしかねますけれども、そもそも消費税の引上げというものは、急速な高齢化というものの世の中を背景として社会保障給付というものが大きく伸びているという中にあって、全世代型の社会保障というものをきちんとやっていくための安定財源を確保するためにどうしても必要なものだ、私どもは基本的にそう理解しております。

 したがって、この話は、たびたび申し上げますように、リーマン・ショック級の話が起きない限り十月にやらせていただくということを申し上げておるところでありまして、消費税の引上げに向けて、それができるような、いわゆるいろいろな状況が厳しくなるかもしれませんけれども、経済財政運営できちんと対応できるようにしていくということが答えだと思っております。

今井委員 ちょっともう一度そこをはっきりお答えいただきたいんですけれども、基本的には、政策を行うに当たっては、財源が伴って政策が行える、これが大原則だと思うんですけれども、その財源部分がなくなれば、当然、その財源をもとにした政策はできなくなる。仮に、それをやろうと思って一時的に赤字国債を発行するというのは、私は邪道だと思いますので、こういうことは財務省としては受け入れられないということでよろしいですか。

麻生国務大臣 同じ質問を別の言い方をされているので、答えは同じであります。

今井委員 なかなかお答えいただけないんですけれども、まさかそんなことはないと思いますが、そういうやり方は財政の規律上本当に問題がありますので、絶対にやっていただきたくないということをお願い申し上げておきたいと思います。

 ちょっと時間が大分なくなってまいりましたので、全部はできないんですけれども、大臣にもう一点お伺いしたいんです。

 四月にワシントンで行われましたG20の財務相の会議の場で、終わった後の記者会見があったと思いますが、その記者会見の場で、大臣は、消費税の引上げに関して、日本経済の持続的成長に向けた意思と決意のあらわれとして十月に消費税の引上げを実施するということをその場で明確におっしゃっておられました。

 今度は六月の七から九ですかね、福岡でG20の財務相の会合が二十八、二十九の前段階ということで行われるというふうに承知をしておりますが、この六月のG20の場でも、消費税の引上げに関しては、やはり国際社会に対して、日本はどうするということをはっきり、四月のときと同様、意思表示をされるということでよろしいですか。

麻生国務大臣 四月のG20の場におきましては、これは日本の経済に対する質問等々いろいろあっておりましたので、その中の一環として、我々日本政府の意思として、きちんとした決意のあらわれの一環として消費税の引上げについて述べております。

 六月前半に福岡でG20の財務大臣・中央銀行総裁会議というのをやらせていただくことにしておりますけれども、今この話で述べるのも、いろいろほかにも議題がいっぱいありますので、私どもとしては、現時点で、何を述べるかということについて今お答えするという段階に、まだそこまできちんと全てが積み上がっているわけではございませんので、今の段階で、何を言うかということについてお答えさせていただくことは差し控えさせていただきます。

今井委員 しかし、四月のG20では、消費税のことについては明快に答えておられるわけです。その継続ということであれば、六月にも当然同じことをおっしゃらなきゃおかしいと思うんですが、何か環境が変わっているんですか。

麻生国務大臣 我々は議長国をやっていますので、議長は議会を全部取り仕切らないかぬという立場にありますので、そういった意味では、私どもとしては、今申し上げたような形で、四月に言ったから六月に言わないというのではなくて、もう四月に言ってあるから六月にあえてまた言う必要はないというように理解してもらっているかもしれませんから、別に、その場の雰囲気を考えて発言させていただければと思っております。

今井委員 済みません、時間が来ましたので、ちょっと外務省さん、済みませんでした、終わらせていただきますが、議長国だからこそ、財政規律という観点も恐らく議論になると思いますので、日本としては、それに対してどういう態度をとるということを明快に答えられるというのが私は正しい行為だと思いますので、この段階でそのことをおっしゃらないというのは、私は非常に不誠実だと思います。そのことを申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原です。

 まず、委員長と与党の筆頭の理事に申し上げておきたいと思いますが、かなり与党側の欠席が多いですし、定足数に満たなくなったら質疑をすぐやめますので、その点はしっかりと留意していただきたいというふうに思います。

 さて、まず、麻生大臣に、財政のことについて議論をする前提として少し定義を議論させていただきたいんですが、財政破綻、財政が破綻するというのは、どういうことをいうんでしょうか。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 財政破綻とは、一般に、財政状況が著しく悪化し、その運営が極めて困難となる状況をいうものと考えております。

 財政破綻に至る要因を具体的に申し上げるのは困難でございますが、何らかの理由で財政の持続可能性への信頼が損なわれた場合には、金利が急激に上昇し、経済、財政、国民生活に大きな影響が及ぶことになると考えております。

前原委員 今のことをまとめると、要は、政府が行った負債というものが返済できなくなると。運営ができなくなるとか金利の上昇ということを個別におっしゃいましたけれども、要は、政府が抱える負債の返済不能、若しくは利払いが不能になること、いわゆる債務不履行ということでいいんでしょうか。

阪田政府参考人 今ほど御答弁申し上げましたように、財政破綻そのものがこういう事象であると具体的に申し上げるのはちょっと困難なんでございますが、大きく言いますと、まず、財政の持続可能性への信頼が損なわれているということ、その結果、財政運営が極めて困難となる状況全般ということかと考えております。

前原委員 英語で言うと、デフォルトでいいですね。

阪田政府参考人 国債が返済できなくなることは、デフォルトということかと思います。

前原委員 それでは、今まで財政破綻、デフォルトを起こした国の例を幾つでもいいので挙げていただけますか。

 具体的にどの国かということを答えてくれと言っていたわけじゃないので、私の方から申し上げると、例えば、ドミニカとか、それからエクアドルとか、それからコートジボワール、ウクライナ、最近ですとギリシャ、こういったところが挙げられるのではないかというふうに思います。

 これらは、いずれも、外貨建ての国債や社債、あるいは外貨建ての銀行借入れなどを行っていて返済が滞った例なんですね。アジア通貨危機やメキシコ通貨危機もそうかもしれませんが。

 さて、これからは大臣にお答えいただきたいというふうに思いますけれども、通貨発行権がある限り自国通貨建ての負債の返済不能に陥ることはないとの主張がありますが、これはどのように考えられますでしょうか。

麻生国務大臣 最近、与党でもよく話題になっておるお話で、通称MMT、モダン・マネタリー・セオリー、現代通貨理論と訳すのかな、そういうようなものなんだと思っておりますが、いろいろな方がしゃべっておられるのは理解をしておりますが、これについて、今言われたように、自国通貨というものを持っている国では、貨幣を際限なく発行ができるから、早い話がデフォルトに陥ることはない、簡単にはそういうことを言っておられるんだと思いますが、政府債務残高というものがどれだけ増加しても問題はないという考え方として、最近、いろいろな方が言われているように思っております。

 今言われたような国々というのは、そうですね、ほかにも、私、まさにハイパーインフレーションの真っただ中のブラジルに、五十年ぐらい前に、あのころは伸び率が年率一八〇〇%だったかな、デルフィン・ネット率いるブラジルに一年住んでいましたので、そのときの朝のパンの値段と夕飯のパンの値段が違うという事態のところに住んでいましたので、そういうものだというのはわかっておるつもりなんですけれども、少なくとも、そういったような状況になり得るという現場にいると、これは、ハイパーインフレーションというのは恐ろしいものだというのはよくわかるんですが。

 少なくとも、このMMTというような話というのは、外貨の場合でありますけれども、日本の場合は外貨でいわゆる国債を売っておりませんから、外国人が買ってもらっている日本の国債というのは今は十何%はあろうかと思いますが、その中、それはいずれも全部円建てでありますから、少なくとも、いわゆる、今言われたような国々の状況のような、外貨でやっているわけではありませんから、それは全然状況は違っておるんだというのは確かにあります。

 しかし、現実問題として、この種の話はよく言われるところではありますけれども、日本の場合、GDPと言われるものの約二倍に達する累積の債務というものを抱えておりますので、今は、御存じのように、個人金融資産が一千八百六十兆とか巨大なものがありますので、預金等の潤沢なものが、国内の家計、金融資産の中に存続をしておりますから、そういった意味では、いわゆる、外から見た場合は、バランスシートの上でいけば債務超過になっているわけではないではないかとか、いろいろな表現があるんだと思いますので、結果として、極めて低い金利水準で事がずっと安定的に、自国通貨建てだけで国債というものが賄われているという極めて幸運な状態が続いているんだと思います。

 しかし、これは、いずれにしても、少子高齢化という避けがたい問題が目の前にありますし、経済とかその他の社会構造が変化してまいりますので、こういった状況がいつまでも続いていくとは限らぬというように覚悟しておかなきゃいかぬのであって、少なくとも、財政運営に対する信頼というものがなくなってくれば、これはマーケットがどう判断、反応するかというのは極めて大事なところなのであって、借換債の発行というようなものが困難になってくるとか、それには多額の金利が要るようになるとか、いろいろなことが考えられますので、財政の対応力ということが失われていくということも十分に考えておかねばなりませんので。

 このMMTの話というのは、よく最近、何とかというアメリカの下院議員がこれをえらく言って当選したというのも一つのネタになったんだという話をアメリカ人から聞いたことがありますが、そういった意味で、私どもとしては、今この種の話に乗っかって、これに対しては、コリン、サマーズとか、ミッチェルとか、みんなこれはいずれも、とんでもないと言って反論をしている著名な経済学者もいっぱいおられますので、私どもとしては、この種の新しい話に関して、日本は、この実験場にしてやってみようじゃないかという気は私は全くありません。

前原委員 質問は違うんですよ。つまり、MMTの話は、そこから、この前提を聞いた上で、その次にしようと思っていた話で、今、MMTの話はまだしていないんです。質問を一切していない。

 私が聞いているのは、要は、通貨発行権がある国が自国建て通貨で負債の返済不能に陥ることはないという主張があるわけですね、それについてはどうお考えなのかと聞いているわけです。つまりは、自国建て通貨で通貨発行権のある場合は返済不能になることはないと言う人はいるけれども、どう考えますかということを聞いて、その後の質問でMMTに行こうと思っているんです。だから、私の質問通告、大分先に答弁されているんですよ。

麻生国務大臣 御質問は、このMMTの紙を最初に頂戴していましたので、そちらの話かと思って伺っておりましたが。

 いわゆる、いろいろな状況下になりますけれども、今の御意見ですけれども、少なくとも、日本の場合、少子高齢化などいわゆる社会構造とかまた経済の情勢が変化していく中で、これがいつまでも続いていくというわけではないということを考えましたときには、財政運営というものに対する信頼というのが、これはずっと続きますかね、ずっと赤字発行のままで。バランスシートでいえば資産の方がないわけですから、そういった意味では、借換債の発行というのをやろうとしたときにはなかなか、おまえ、資産が何もないじゃないかという話になりますので、そういった意味では、今度は国債の償還というものにも支障を生じることになりますので、そういった意味では、財政の対応力というものが基本的に失われることになるんだろう。これははっきりしているんじゃないかと思いますので。したがって、経済財政とか国民生活に非常に大きな影響を与えるということになるおそれが非常に大きなことになるだろうというのは想像できます。

 それでよろしいですか。

前原委員 いやいや、端的にお答えいただきたいんです。

 通貨発行権がある限り自国通貨建ての負債の返済不能に陥ることはないということについては、いや、違うということを今おっしゃったんですね。違うということでよろしいですね。それをお答えください。

麻生国務大臣 それは違いますよ、なかなか返済できなくなりますから。

前原委員 私も同じ考えなんですね。ただ、こういう主張があって、それがMMTの基盤になっておりますので、今の御答弁は物すごく大事なんです。つまりは、今の議論をする前提として、自国通貨が発行できれば幾ら自国通貨建てで借金しても大丈夫なんだという議論は違いますよということをまず明確におっしゃったということ、それは共通認識で議論をスタートしたいと思うんですね。

 MMTの議論を始める前に、少し違う議論で使用しようと思っていた資料なんですが、七という資料をごらんいただけますか。これは、よく財務省が使われる資料なんですけれども、かなり昔から使われる資料で、戦前それから戦後の対名目GDP比の債務残高、比率をあらわすものでございまして、今は戦前よりもひどくなっていますねということによく使われるわけでありますが。

 今、麻生大臣から御答弁いただいたことで私が申し上げたいのは、日本は自国通貨建てだったんですね。だけれども、戦争に負けたという要因はあるにしろ、一九四五年のところでハイパーインフレーションが発生して、預金封鎖、新円切りかえ、財産税そして戦時特別補償税などなどの債務調整をやっているということで、自国通貨を発行しても、言ってみればデフォルトを起こしているわけですよ。つまりは、日本で起こしているわけですね。ということを、我々はまず認識しておかなきゃいけないということなんだろうというふうに思います。

 さてそこで、MMTの議論に入りたいと思いますし、主に黒田総裁にお話を伺いたいというふうに思うわけであります。

 まず、MMTの定義ということで、これはいろいろな方がおっしゃっていることで、まとめさせていただきました。最後の三行がポイントでございまして、独自の通貨を持つ国は、債務返済に充てる貨幣を無限に発行できるため、インフレ率が一定の水準に達するまでは財政支出をしても問題はないとする経済理論、こういうことなんですね。

 ポイントが、ずるいのは、インフレ率が一定の水準に達するまでということが逃げ口上で書かれているわけでございますが、これについては後々話をしていきたいというふうに思います。

 先日の五月九日の参議院の財務金融委員会で、黒田総裁がこうおっしゃっているんですね。

 MMTについては、必ずしも体系化された理論でなくて、全貌の把握が容易でないためにこれを評価するのは難しいが、その上で申し上げると、MMTの基本的な考え方は、自国通貨建て政府債務はデフォルトすることがないということで、財政政策は、財政赤字や債務残高などを考慮せずに、景気安定化に専念すべきであるということだと理解しております。こうした財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は極端な主張だと思いますし、実際、米国の学界でも非常に少数の意見にとどまっており、広く受け入れられた考え方ではないというふうに認識しております。

 こういうことを答弁されている。

 お配りした資料の二においては、一々見ませんが、先ほど麻生財務大臣もおっしゃったし、また黒田総裁もお答えをされているように、メジャーな方々はこのMMTに対しては極めて否定的だということであります。

 先ほど申し上げたように、この理論のポイントは、インフレにならない限りということなんですね。ということは、逆に言うと、この議論をしている人たちも、インフレになるとの懸念を持っているわけですよ。つまりは、この政策をやっているといつかはインフレになるということで、逆に言うと、インフレにならない限りというずるい逃げを設けているわけですね。

 そこで、黒田総裁にお伺いしたいんですが、黒田総裁は、同日の財金の委員会で、MMTの議論で言われているのは、いわば財政赤字とか債務残高を全然考慮しないで、いわば大量にというか無制限に国債発行して減税や公共事業に充てる、その国債を中央銀行に全部引き受けさせてやっていくという議論でして、そうなったら当然ハイパーインフレーションのおそれがあるということで、到底米国の学界でも受け入れられないわけであります、こう御答弁されていますね。

 そこで、お伺いします。

 当然ハイパーインフレーションのおそれがあると発言をされましたけれども、どのようなメカニズムでハイパーインフレーションになるとお考えでこの答弁をされたんでしょうか。

黒田参考人 まず、MMTの議論の前提が、委員も御指摘のとおり、自国通貨建て国債であれば償還資金を中央銀行による国債引受けで必ず調達できるのでデフォルトは起こらないということを前提にして、そういうもとで、したがって、財政赤字や債務残高を全く気にせずにどんどん財政の拡張をし、それを中央銀行で引き受けてもらっていたら大丈夫ですと。

 ただ、そういうことを一旦始めますと際限がなくなって結局インフレになる、あるいはハイパーインフレになるというのが、いわば我が国のみならず各国の経験でありまして、そういうことから、こうしたいわゆる財政ファイナンスというものは、結局大幅なインフレが生じて国民が多くの負担を負うということになるということの、いわば内外の歴史の教訓ということかと思いますけれども、我が国を含めて先進各国では、中央銀行による財政ファイナンスは認められていないということかと思います。

 したがいまして、委員御指摘のとおり、インフレにならないところで財政拡張をとめるのでというのはよくわかる、理屈としてはわかるんですけれども、過去の例を見ますと、一旦、国債の中央銀行引受けという形で財政ファイナンスを始めるとこういうことになってしまう例が非常に多いということは、日本を含めた各国の歴史の教訓ではないかというふうに思っております。

前原委員 黒田総裁、そのメカニズムを伺っているんです。同じ認識ですので、やゆするとかそういうことではなくて、では、どういうメカニズムでインフレ、そして取り返しのつかないハイパーインフレーションになるかというメカニズムを伺っているわけです。

 では、私がまず申し上げるので、それが同じ認識かどうかという御答弁をいただきたいと思います。

 この議論、理論に基づくと、国債発行しても中央銀行に引き受けさせるということなんですね、結局は。そうすると、当面、金利も抑えられるし、金利上昇になることはないということなんでしょうが、私は、そういうことをやっていれば、恐らく自国通貨に対する信認が失われると思うんですね。

 私は、やはり、一番初めに反応するのは為替じゃないかと思うんですね。金利は、中央銀行が国債を引き受けるので抑えられるとして、しかし、通貨に対する信認というものが失われた場合には、日本でいうと円安、通貨安、為替が安くなるということで、そこから始まってくるのではないか。そして、そうなると、日本のように、輸入、例えば資源なんかは輸入に頼っていますね、あるいは食料なんかも輸入に頼っているというところで、輸入物価が上がってくるということの中でインフレが始まってくるというのが、私はメカニズムの初めの取っかかりかと思うんですけれども、インフレ、ハイパーインフレになるということをおっしゃっているそのいわゆるメカニズム、私と同じ認識なのか、あるいは違う御認識なのか、お聞かせいただけますか。

黒田参考人 そこはなかなか、経済学でいうアイデンティフィケーションの難しいところでありまして。

 例えば、ほかの国の例を出すのもちょっと失礼かもしれませんが、アルゼンチンを見ますと、委員御指摘のとおり、まずアルゼンチンの通貨が大幅に下落して、それがインフレになる、それでまたインフレが通貨の下落を招くという悪循環になっているということで、為替安が先導したように見えるわけです。ただ、どうして為替安になったかと言われれば、それは、通貨の信認、つまり、将来インフレになると思ったので通貨を売っているわけですので、この両者がどういう因果関係でどういう順で起こるかというのはなかなか一概には言えない。ただ、為替が通貨安になるということがハイパーインフレの原因となり、結果となる大きな要素であることには間違いないと思います。

 ただ、そうした為替、通貨の影響が起こる一つのきっかけというのは、やはり、財政赤字とか債務残高を全く気にしないでどんどん財政を拡張する、それを中央銀行がどんどん引き受けてファイナンスするということになれば、明らかに実態を超えた需要超過になり得るわけですね。

 ですから、典型的なマクロ経済学の標準的なシナリオでいっても、需要超過でインフレになる、あるいはそれがまた通貨安を招くということもあり得るので、御指摘の、通貨の信認が失われ、為替が安くなってインフレ、ハイパーインフレになる、そういうメカニズムもあるし、それが重要な要素であることは事実なんですけれども、先ほど申し上げたように、為替安とインフレとの間には相互に原因となり結果となることもあるし、それから、そのもっと背景には、無制限の財政拡張が需要超過で国内物価を引き上げていくというメカニズムも働いている。

 だから、そのいわば三者が、通貨安、国内インフレ、それから需要超過、典型的なマクロ経済学の議論のとおりなんですが、確かに、非常なハイパーインフレというところを見ると、通貨安というのが非常に大きな要素になっているということは、最近のアルゼンチンの例などを見ましても、そのとおりだと思います。

前原委員 それに加えて、そのメカニズムを少し、もうちょっと進めていきたいというふうに思うんですが、インフレが発生をするということになったときに、日銀はどちらを優先させるんですかね。

 例えば、日銀はそんな政策はとりません、ですから日銀としてお答えするのはということであれば、一般論で結構ですよ。中央銀行として、一般論で結構なんですが、景気を刺激するために、例えば国債を買って、そして金利を抑えている、しかし、いわゆる需要と供給のバランスがとれた形で、いい形でのインフレではなくて、先ほど言われたような形での、私が申し上げた輸入物価の上昇も含めて、あるいは国内物価の上昇も含めて、悪いインフレが起きてきたということの中で、インフレを抑えなきゃいけないということになれば、当然ながら中央銀行は、今度はまた、それに伴って上昇するインフレを抑制するために金利を上げるというようなポジションもとらなきゃいけないと思うんです。

 スタグフレーションみたいな形になるわけですね。景気が悪くて、だけれどもインフレになりますということなんですが、こういう場合の金融政策、もちろん、ぱんと単純に言えるわけではないというふうに思いますけれども、ある方が、財務省の幹部の方ですけれども、糖尿病患者にどう対応するかと同じように難しい、複合的なことになるということでありますが、このようなスタグフレーションのような状況になったときは、中央銀行あるいは日本銀行の総裁としての黒田総裁のお考え方としては、景気を大事にされるのか、それよりは物価安定を大事にされるのか、どちらを大事にされるんですか。

    〔委員長退席、越智委員長代理着席〕

黒田参考人 中央銀行はどこでも、やはり物価の安定というのが最大の使命であるということを旨としておりますので、当然、日本銀行も物価の安定を第一に考えるということであります。

 なお、対外的な理由で、例えば、原油価格が大幅に上がった、第一次石油ショック、第二次石油ショックとありましたね。そういう場合の対応として、第一次石油ショックの教訓から、第二次石油ショックのときに日銀も含めて各国の中央銀行がわかったことは、石油価格の大幅な上昇というのは、外的な一種のサプライショックというか輸入コスト上昇、それを一切物価上昇に反映させないように徹底的に引き締めるということは適切でない。ただ、石油価格が上昇して、それによって一定の範囲で消費者物価が上がったことは認めるけれども、それが二次的に賃金とか将来のインフレ率に反映していくことは防圧するということが適切だったというのが第一次石油ショックの教訓で、第二次石油ショック、各国とも、その結果、第一次石油ショックのようなインフレにもならなかったし、また、第一次石油ショックのときのようなスタグフレーションの厳しいことにもならなかった。

 ですから、石油価格の暴騰のような全く外的な要因で輸入価格が上がり、それが国内の物価に反映していくときの対応策というのは、それが一切物価安定目標を超えていけないというふうにすることが適切だとは言えないと思うんです。

 それはそうだと思うんですが、ですから、一時的な、純粋に外的なショックに対しては、その内容、影響存続度、見通しを見きわめて適切な対応をとって、やはり物価安定目標を中長期的に実現するということが正しいと思うんですが、為替の場合は外的な要因で動くこともありますし、先ほども委員御指摘のように、一種の、財政とか通貨に対する信認が失われて、それが将来のインフレを予想させて為替が下落するというような場合には、これは国内的な要因で為替が下落しているわけですから、それによる輸入物価の上昇を受け入れる、認めるというわけにはいかないと思うんですね。

 ですから、物価はいろいろな状況、いろいろな要素によって影響されますので、中央銀行としては常に、その内容、影響の持続の度合いとか、そういうことを丁寧に見きわめて適切な対応をとる。ただ、あくまでも、中央銀行の使命というのは物価の安定であるということには全く変わりないと思います。

前原委員 よくわかりました。

 MMTの危険性というのは、ハイパーインフレーションを起こす可能性がある、自国通貨建て、自国通貨の通貨発行権があってもそれはデフォルトする可能性があるんだということの中で、そして、そういうものが起きれば中央銀行としては非常に難しい対応をしなくてはいけないということを、原則が物価の安定、内的な要因と外的な要因に分けて今御説明をいただいたわけでありますが。

 加えて、私が申し上げますと、このMMTの怖いところは、当然ながら、金融機関も、金利が上昇するということは国債価格が下落しますので売りますよね。そうすると、更に下落をする。金融機関の損が確定をしたりしますし、また、当然ながら、今まではほぼゼロ金利でお金を借りて経営をしていた企業が、今、日本の場合はほとんどですから、そういったところが、少しでも金利が上がったら、もうとてもじゃないけれども経営ができないということになる。そうなると、金融機関もあるいは企業も経営が行き詰まるという、言ってみれば連鎖的なシステミックリスクを起こす可能性が極めて高い、こういうことだと思いますし、日本の場合は外準がどれぐらいあるかというと、一兆ドルぐらいですか、今一兆ドルぐらいですから、これを抑えるにしても限界があるということでありまして、自民党の中でMMTを殊さら声高におっしゃっている方はおられますけれども、私は極めて、これについては日本を破綻に導く考え方だということは申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、この政策が出てきている背景は、日本がモデルだと言っているわけです。ここはちょっと黒田総裁とは違う立場で議論をさせていただきますが、今までの委員会等々で、いや、全然違うんだということをおっしゃっているわけでありますが、ただ、日本をモデルにしているという点では、それはいろいろな方々が、これだけ日本は、千百兆ですか、今、国の借金が。だけれども、金利も低いし、そして、円も為替も極めて安定的に推移をしている。しかも、日本は、債務残高は、名目対GDP比でいうと世界最悪の水準ですよね。それでも大丈夫じゃないかと。

 先ほど七で見ていただいたように、デフォルトを起こした日本が、終戦直後よりもひどい状況になっているのに大丈夫なんですね。そこは、先ほどまさに麻生大臣がお答えになったように、外国の保有割合が一〇%程度ですね、国債。約九割が国内で持たれている。そして、その半分が日銀ですよね。今、四四%ぐらいじゃないですか、四四%ぐらい持っている。

 確かに、これも何度も黒田総裁とは議論させていただいているように、イールドカーブコントロールに変更されて、そして、国債のネット増加率は鈍化をして、また、国債の保有残高も、ふえ方がこれも鈍化しているということで、これについて、私は、うまく切りかえられたということは従来から申し上げているとおりなんですけれども、しかし、裏返せば、今のままの金融政策を当面続けるとおっしゃっているわけですよ。続けるとおっしゃっているということは、言ってみれば、どこかで円に対する信認が失われる可能性がなきにしもあらずですよね。それは、そういうものを注意しながら運営するんだということをおっしゃいますけれども。

 ここにおられる同僚議員の方々の支持者の、例えば経営者や資産を持っている方々にお話を聞かれた方々も多いと思うんですけれども、少なくとも私の支持者の方々の中では、やはり将来を見据えて、資産を、例えば外貨建ての運用に変えたりとか、あるいは現物資産にかえている方々がおられますよ。これだけ借金していて日本は大丈夫かということの中で、そういう方々がいる。ということは、逆に言うと、一部でも、資産を持っている方々が、将来、日本の財政というのは持続可能ではないんじゃないかということの中で、今でもキャピタルフライトというものがある程度起きているわけですね。つまりは、外貨建てにする、円やあるいは自国内での資産運用はしない、こういうようなことですね。

 さてそこで、少し建設的な意見として議論させていただきたいんですが、うまく運用しますよということなんだろうと思いますけれども、日本はうまく安定的にちゃんとマネジメントしていきますよということの何らかの定性的あるいは定量的な、日銀として、ここをごらんください、ここをごらんいただければ大丈夫ですよ、こういうようなものが、日銀総裁、何かないですかね。

 つまりは、私は建設的な提案で申し上げております。このまま千百兆円の借金があって、そして、人口が減っていく、働きが減っていく。それは、AIとかロボットとかで生産性が急に上がればいい話ですよ。いい話ではありますけれども、生産年齢人口が減っていく。そして、二〇二五年問題、つまりは団塊の世代が全て七十五歳以上の後期高齢者になって医療や介護にかかわる費用が非常にふえていくということですよね。

 六ページをごらんいただきたいと思いますが、これは財務省からいただいた厚生労働省の資料でございますけれども、当然ながら人間というのは年をとるとどこか悪くなっていきますから、そういう意味では医療費あるいは介護にかかわる費用というのはふえていくし、やはり七十五歳以上になると急激にここは伸びていくわけですね。そして、当然ながら公費負担も大きくなっていくということになったときに、果たして日本の財政というものは持続可能なのか。

 それがまさに通貨の信認にもつながってくるということでありますが、何らかの定量的、定数的指標。これは黒田総裁で変えられましたけれども、日銀として前は銀行券ルールというのがありましたよね。何かそういうものですよ、イメージとしては。何かそういう定数的、定量的な指標の中で、これさえ守っていれば大丈夫なんです、だから皆様方、通貨の信認については安心してください、こういうものがあればお答えをいただきたいと思います。

    〔越智委員長代理退席、委員長着席〕

黒田参考人 これはなかなか難しい問題でありまして、一言で言えることはないと思うんですが、最もオーソドックスに申し上げれば、やはり、財政そのものの持続可能性を高めるということが最も重要であろう。

 政府も、そういった観点から、一方で経済に応じた適時適切な機動的な財政運営に努めるとともに、中長期的に財政の持続可能性を高める、いわゆる財政再建といいますか、そういうことを目標にされておられまして、過去六年の間に財政赤字も減ってきています。財政赤字が減るということは新規の国債発行額も減っているということですが、ただ、まだ新規の国債発行をしていますので国債発行残高はふえていますし、国債発行残高のGDP比も、伸びはだんだん落ちてきていますけれども、まだGDP比が下がるというところまで来ていないということであります。

 引き続き、そういった政府債務のGDP比を下げていく、あるいはその大前提としてプライマリーバランスを回復する、プライマリーバランスを黒字にするということを政府は目標にして取り組んでおられますけれども、これはぜひしっかりと達成していただきたい。それがやはり一番重要な点ではないかと思います。

 それとともに、日本銀行として、やはり、信認が失われることのないようにということが、何といっても、物価安定の目標に対するコミットメントを明確にし、決してハイパーインフレとかあるいはインフレの高進を許さないということが一番重要であり、最もキーになることであると思いまして。

 日本銀行法の法律自体も、昔は、御承知のように、日銀の当座預金に対する、こちら側の、資産側の内容についていろいろ、量とか質について条件があったんですね。そういうものはもう新日銀法でなくなっているわけです。それはもう各国の中央銀行ともそういうものは全くなくして、むしろ、物価安定の目標、今のグローバルスタンダードでいえば二%の物価安定の目標というものを掲げて、それを達成する、あるいは達成するというコミットメントを明確にするということによって物価の安定を達成し、委員の御懸念のような、例えば通貨の大幅な下落とか、あるいはハイパーインフレになるというようなことは防止するということでありますので。

 今の管理通貨制度のもとで、何かシンプルなルールでこちらを抑えるとか、あるいはこれとこれのバランスをとるとか、そういうもので物価の安定、通貨の信認を確保するということにはやはり各国ともなっていないわけでして、そこは新日銀法のもとでそうなって、それから、御指摘の日銀券ルールも、実は前の総裁時代に日銀券ルールとかあったんですけれども、それは今、こういう大幅な金融緩和を、強力な金融緩和をするという観点から停止しているわけですけれども、今の時点で何かシンプルなルールをつくって、これで通貨の信認、ハイパーインフレの防止ということに役立つようなそういうものというのはなかなか難しいというふうに思います。

前原委員 今までの金融政策を踏まえてのこれからの金融政策については引き続きこれからも議論をさせていただきたいと思うんですが、その中にあって、きょうも議論になっていますけれども、米中の経済摩擦というものの不透明さが出てきているということの中でどう考えるかということであります。

 これについては、前回あるいは前々回も議論をさせていただきました。日本は金融政策を続けてきた、FRBあるいはECBは、少し、いわゆるテーパリングのみならず利上げもFRBは行ってきた、ECBは国債の買入れというものの、いわゆる、ふえないという形にした、こういったこと。しかし、日銀はそうじゃなかったために、これからなかなか、日銀としてはその対比の中で厳しい状況になるのではないかという議論はしてまいりました。

 それも踏まえてですが、まず一つ、麻生大臣に事実関係としてお伺いしたいんですが、四月二十六日に、ムニューシン米財務長官とお会いされていますね。そのときに、為替条項を貿易協定に盛り込むようという話があった、しかし麻生大臣は、貿易の問題と切り離すべきだ、こういう主張をされたというふうに報道になっておりますが、確認です。貿易協定には為替条項は盛り込ませないが、為替に関する何らかの二国間の合意の可能性はあるということなんですか。それとも、それも含めて二国間で為替についての何らかの合意を与えるものはない、こういう御趣旨ですか。

麻生国務大臣 為替をいわゆる貿易の交渉の中に入れろというのは、これは、アメリカの議会を代表する形でUSTRがよく言うせりふであります。アメリカ財務省は、それに対して、特に、言われているのは知っているけれども、USTRほど激しく言ってはこない。

 なぜ言ってこないかといえば、それは、この数年間、いわゆる百二十円から七十九円まで、この十年間ぐらいで見ますと、円の差というのは、御党のときに七十九円まで円高で行き、一番安いときで百二十円ぐらい。これは、プラザ合意のときに二百四十円から百二十円まで行きました。あのときが最近では一番円安の比率なんですけれども。きょうで、百九円、百十円、そんなところですけれども。そのときに、円が急激に八十円から百十何円まで、まあ、ドルが暴落して円が上がったということにもなるのかもしれませんが、そういったときと日本の対米貿易額というものの利幅を見ますと、円が上がっても安くなっても貿易収支の差はほとんど変わっていないという数字があります。

 これは、アメリカ側に見せた資料で、これで反論があるなら言ってみろと言って、全くそれ以後反論はありませんけれども。

 それは、基本的に、八十円から百十何円まで円がどっと安く、円安になっていっていたときのこの六年間の間、間違いなく、輸出をやっております各社は、値段を据え置いてシェアをとらなかった、そして利益をとったという形になって。トヨタが一番いい例かもしれませんが、トヨタのシェアはほとんど、日本からの輸出車のシェアはふえておりません。しかし、トヨタは御存じのように膨大な利益を得ましたから、それは間違いないんだと思いますので、日本の産業界は極めて賢く立ち回ったというのが事実としてあります。これを政策的に、戦略性にやったかどうか、それほど頭が回ったかどうか知りません。そこは、私は、こちらは想像でしかありませんから。ただ、数字としてはそうなっておりますので。

 したがって、我々としては、いわゆる金利若しくは為替等々というものが貿易に直接影響していないという事実の数字を見せて、これは大統領にも直接見せましたし、ライトハイザーにももちろん、もちろんムニューシンにも全部この数字を見せておりますので、このところ、その種のことに関して、少なくとも、我々財務省に対して向こうの財務省から言われたということはほとんどありません。

 いろいろ対話しているときにも、もうあの数字を皆、向こうも知っていますから、この話を特に言うつもりはないけれども、我々も、民主党、アメリカの民主党からわんわんわんわん言われるから言うと。それは当然だろう、こっちだって同じようなものだ、どこだってそういうことになるんだ、現実問題はそうだという話はお互いに理解はできておるというけれども、立場があろうかと思いますので、だから、対話と記者にしゃべる話とはかなり差が出てくるというのは、日本でも似たような話はいっぱいありますから驚くことはないので、そういったものだと思っておりますが、いずれにいたしましても、現場は極めて現実的に事は動いておると思っております。

前原委員 御説明いただきまして、ありがとうございます。

 私がお聞きしたかったのは、今御答弁は全く外れてはいないんですが、要は、貿易にかかわる合意の中に為替は何らかの形では入れない、しかし、もっと言えば、プラザ合意みたいな違う形での為替の合意というのがあり得るのかということを私は聞いているわけです。

麻生国務大臣 これは、基本的に、今そのような激しい状況になってきているという状況に全くありませんので、今の状況でそういうことがあり得るかといえば、今の状況では考えられませんとお答え申し上げます。

前原委員 わかりました。

 その上で、黒田総裁に、今後の米中経済摩擦が世界経済、日本に与える影響の中で、さらなる緩和という議論も出てくるかもしれませんが、その前提として、いろいろな、今までの金融緩和に対する副作用というのがあるわけですね。それについて、きょうは地方銀行の状況について少し問題意識を共有できればというふうに思っています。

 まず、九ページ、九の図表をごらんいただけますか。これは、各地方銀行、第二地方銀行の、どこかわからないようにしていますけれども、これの公開資料を、少し四捨五入もしていますので、これは私の事務所が作成したということで御理解をいただきたいと思いますけれども、ただ、公開資料をもとにしておりますので、もちろんほぼ事実の数字でありますが。

 左を見ていただくと、やはりこの六年間で貸出金利はすごく低くなっているわけですね。これだけ低下をしているということであります。異次元の金融緩和で金利を抑えるということの中で、貸出金利がこれだけ低くなっています。

 その中で、右を見ていただくと、では、いわゆる金利が低くなったためにどれだけ利息収入が減ったかということについて書かれているわけであります。当然ながら、金利が低くなって、利ざやが少なくなっていて、この部分についてはほとんどの地方銀行がマイナスになっているということはおわかりいただけるんではないかと思います。

 次、十をごらんいただきたいんですね。

 ただし、地方銀行にとってはマイナスばかりではないわけですね、この黒田総裁がやられた異次元の金融緩和というのは。

 何かというと、まず金利を下げる、結果として円安になる、企業のいわゆる株価が上がるということの中で、六年間で株価が上昇するということの中で、真ん中が株式の含み益、そして右側が債券その他の含み益ということで、あくまでも含み益ですよ、真ん中と右側を足したものが一番左になっているわけでありますけれども、含み益としては、やはりどの金融機関も多くなっていますねということで、金利が下がって、利ざやが狭くなって、その点については厳しいけれども、しかし、持っている有価証券などそういった資産の価値はふえましたと。例えば、いい企業の株を持っている銀行であれば、その配当金というものは、当然ながら株高でふえているというプラスの面もありますということであります。

 問題は最後の十一なんですが、この十一というのは一体何なのかと申しますと、コア業務純益と言われるものでございまして、コア業務純益というのは何なんだということなんですけれども、これは、収益から国債の売却益、つまりは身を削っているわけですよ。身を切っているわけですよ。つまり、先ほど申し上げたように、本業で損しています、だけれども配当金なんかではプラスになっています、でも、それでも経営が苦しいからいわゆる資産を売っているわけですね。そういうことの中で、コア業務純益がどうなっているかということのものが十一なんです。

 プラスになっているところもあるじゃないというふうに見られるかもしれませんし、そうなんですが、実は、これは株の配当収入が含まれているんですよ。含まれている。含まれていてプラスになっていて、でも、それを入れてもマイナスになっているところがあるんです、これだけ。

 六年間で株価が上がりました。資産の含み、株も含めて含み益が上がりました。配当金もふえました。しかし、本業は大赤字です。そして、いわゆる資産の切り売りをしてもまだ大変なところがこれだけあるということなんですね。

 さて、これから米中の貿易摩擦、私は覇権争いだと思いますけれども、長く続く可能性があるということの中で、先ほどからお話をされているように、物価の安定、二%という物価の安定目標に向かってやられるということでありますけれども、今までのようなやり方、あるいはさらに、FRBやECBあるいはほかの中央銀行が今までとは違うやり方、FRBも完全に考え方は変わりましたよね、そういう中にあって、放置しておくと、まさにリーマン・ショックの後の日銀、私はあのときは、むしろ金融緩和をもっとすべきだと。白川さんは、それまでに金融緩和をしていたから及び腰だったわけですよ。だけれども、ほかの国が金融緩和をやったために、その差で、先ほど麻生大臣がおっしゃったように日本は急激に円高になったわけですよ。そういう苦い経験があるわけですね。

 ということになると、黒田総裁としては、やはり、FRB、ECB、あるいは他の国の中央銀行の動向を見ながら、必要以上の円高にならないような金融緩和というものは当然ながら視野に入れていかなきゃいけない。他方で、今までやってきた金融機関でこれだけ、地方銀行は特に傷ついている、体力が落ちているということの中で、どういった策を、こういうものを前提にしてとられますかということをお答えいただけますか。

黒田参考人 まず、御指摘のFRBあるいはECBの金融政策、昨年まではいわゆる正常化プロセスをたどっていたわけですが、ことしに入っていずれも、それを中断というか、世界経済の減速の状況、それからマーケットが若干混乱したということなどを踏まえて正常化プロセスをストップさせているわけですね。ただ、更にここで金融を緩和するということの時点ではありませんので、まあ将来ですから何が起こるかわかりませんが、リーマン・ショック後のような状況とはかなり違うとは思っております。

 ただ、その上で、いかなる事由であれ、米中の貿易摩擦が長期化するとか、その他いろいろなリスクが顕在化して日本経済にも影響が出てくるというようなことで二%の物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれるというようなことになれば、当然、追加緩和を検討していくということになります。

 緩和の手段としては、既にイールドカーブコントロールを導入したときにも明らかにしておりますように、短期政策金利の引下げ、長期金利操作目標の引下げ、資産買入れの拡大、マネタリーベースの拡大ペースの加速などさまざまな対応が考えられるわけですけれども、その際には、やはり、その効果とともに金融仲介機能や市場機能に及ぼす影響などもバランスよく考慮する必要があるというふうに思います。この点は委員の御指摘の点も十分理解できるわけであります。

 そうした上で、日本銀行としては、やはり、政策のベネフィットとコストを比較考量しながらさまざまな手段を組み合わせて対応することも含めて、その時々の状況に応じて適切な方法を検討していくという方針でありまして、まだ今の時点で何か、仮定の問題に対して、こういうことをしますとか、そういうふうに申し上げる状況にはありませんが、先ほど申し上げたようなオプションがあって、それらの組合せとかその他も含めて、モメンタムが損なわれたという状況が起これば当然、適切な追加緩和を行うということになろうと思います。

前原委員 それは、今まで何度もおっしゃっていることはよくわかっているんです。その上で聞いているわけです。

 つまりは、マクロとしての金融政策ということは、先ほど申し上げたとおり、私自身も、リーマン・ショックの後の日銀の対応については問題あり、それが急激な円高を生んだ、そして、輸出企業を含めて極めて大きな影響を与えたということを申し上げているわけです。したがって、マクロとしては、総裁もおっしゃったように、私も申し上げているように、追加の金融緩和ということについての可能性についてはわかるわけです。

 しかし、今までの六年間の金融緩和の中でこれだけ地方銀行が傷んでいます。それは認識されているわけですね。傷んでいるということは、今数字をもって申し上げたわけです。そしてさらに、先ほど個別の長短金利の話もされたし、さまざまなことをおっしゃいましたけれども、そういう追加緩和というものが金融仲介機能を、大事な地域の仲介機能を有するこういった地場の金融機関を更に傷めることになるんじゃないか。そうなると、マクロは理解できても、ミクロでは、まさに地域経済というものがおかしくなるという可能性というのが出てくるわけですね。ですから、今のお答えだと、地方の金融機関にとっては、何だ、更にまた金利を下げるのか、それが追加緩和かというふうなこと、そして、自分たちはまだまだこれから傷められるんだというふうにしか聞こえませんよ。

 つまりは、グローバル、マクロと、それから地場の金融機関の立場に立った。地場の金融機関を全て守れと言っているわけではないですよ。それは、経営改革もしてもらわなきゃいけない。コストカットもしていただかなければならない。だけれども、そういうものをあわせたやり方というのを今の答弁では感じられませんが、もう一度お答えいただけますか。

坂井委員長 黒田総裁、申合せの時間は過ぎておりますので、御協力をお願いします。

黒田参考人 二点ほど申し上げたいと思うんですけれども、日本銀行の金融システムレポートでも累次のレポートで指摘しておりますように、確かに、低金利環境の長期化、さらには、もっと構造的な要因としての地方における人口減、企業数の減、こういったものが業務純益に対して影響を与えている、しかも、それが五年、十年と長く続いた場合の影響というのも分析しているわけですね。

 現状、地方銀行は三%ぐらいの融資の増加をしていますし、仲介機能が損なわれているわけでもありませんし、十分な資本も流動性も持っているわけですけれども、仮にこういったトレンドがずっと続きますと、そういうことにも影響が出てくるおそれがあるということであります。

 ただ、それでも、何か、我々がやったところですと、例えば五年後にリーマン・ショック並みのショックが起こったという場合でも、かなりの銀行は十分な資本を持っているというようなストレステストもやっておりまして、現時点で非常に大きな問題があるということではないということは御理解いただきたいとともに、そういう将来のことも、五年、十年という長期的な展望も見据えて、金融庁とも十分連絡をとりながら、対応を考えていかなければならないと思っています。

 他方で、そういうことも十分考慮しながら金融政策の運営は当然やっていきますけれども、二〇二〇年、二一年度を見ましても、物価上昇の見込みというのは一%台半ばということでまだ二%に到達しませんので、やはり当面、強力な金融緩和を続ける必要があるということは御理解いただきたいと思いますし、それから、それに伴う副作用をできるだけ減らすための措置もこの間決定したところであります。

 委員の御指摘はよく理解できるわけですけれども、やはり、すぐに物価安定目標が達成されるという状況ではないので、もうしばらく強力な金融緩和を続けていくことになる。ただ、追加緩和の話は、先ほど申し上げたように、モメンタムが失われるような状況になったときの話でありまして、今すぐ追加緩和を検討しているということではありません。

前原委員 もう時間が来ました。終わりますけれども、この六年間でかなり地場の金融機関は弱っているという認識はお持ちだと思います。そういうことの中で、さらに米中のこういった経済摩擦の中で、そしてそういう可能性もあるということになると、トータルとしての理屈はわかるんですが、地域地域を本当に小まめに見ていただかないと、ストレステストをやっているから大丈夫だというよりは、かなり私は悲鳴に近いような声というものは届いているということを申し上げて、質問を終わります。

坂井委員長 次に、宮本徹君。

宮本委員 日本共産党の宮本徹です。

 先週、大学等修学支援法が成立いたしました。十日付の朝日新聞にこういう記事がありました。中間所得層への支援継続は不透明、母子家庭で育ち、現在は姉と二人で東京都内で暮らす東京大三年の岩崎さんは、新しい制度になっても支援を受け続けられるかと不安を感じている、一年生のときから年間約五十四万円の授業料を免除されているが、生活が一変しそうだ、アルバイトをかなりふやすことになると思う、疲れて勉強に差し支えが出ないか心配だ。

 今度の成立した法律は、授業料免除は、全額免除は非課税世帯、四人家族では年収二百七十万円までとなっているわけですね。ですけれども、今まで行ってきた各大学の授業料減免というのは、もっと多くまで全額免除あるいは半額免除をやっております。東京都内の国立大学の資料を文科省からいただいて見ましたけれども、四百万、五百万、六百万、七百万、このあたりまで全額免除の基準を設けている大学もあるわけですよね。

 この問題は法案審議の中でも随分議論されておりまして、私も議事録を見ました。ですが、今後どうなるかということについては、各大学の授業料減免制度については、政府案をベースに各大学で考えてくれと。今現に授業料減免を受けて、今度の制度の対象外になる人もいる、その人についてどういう手当てをするかは、これから大学と相談して調査をして、必要であったら手当てをしなきゃいけないので、財務省と折衝していく、これが法案審議の中であった話です。

 まず、大臣に確認したいんですが、二〇一七年の総選挙のときに、消費税増税を財源に低所得者の高等教育の無償化を行う、これが自民党の選挙公約でした。しかし、このときに、それと引きかえに現在ある大学の授業料減免制度を廃止するという選挙公約というのはあったでしょうか。

麻生国務大臣 文部科学行政にかかわる与党の公約に関する御質問ですかな、それは。ちょっとそれに対する具体的な答えは差し控えたいと思いますが、これは、各大学独自の基準で授業料の減免というのを現在行われているんだと思いますので、その公的支援の取扱いについては、これは、各大学が、いろいろ授業料減免の実態がどうやっておられるのか、ちょっと明らかではありませんので、現段階で政府として何らかの決定がされたというような話は聞いておりません。

宮本委員 いや、公約ですから、これは麻生さんも含めて、自民党の公約として掲げられていたわけですよね。

 きょう文科副大臣も来ていらっしゃっていますので、じゃ、麻生さんがお答えにならないからお伺いしますけれども、自民党の公約で、現在各大学でとられている授業料減免措置を廃止する、なくすという公約はなかったですよね。

永岡副大臣 御質問にお答えしたいと思います。

 公約で、今の宮本委員のお話のようなことはなかったかと存じております。

宮本委員 そうなんですよ。公約ではそんなこと言っていないんですよね。真に支援が必要な所得の低い家庭の子供たちに限って高等教育の無償化を図ります、このため、必要な生活費を賄う給付型奨学金や授業料減免措置を大幅にふやしますと。この授業料減免措置を大幅にふやしますという文言は、今あるのは前提で、ベースで、更に広げるということしか私は読み取れないと思うんですよね。

 ところが、専門学校や私立大学には一方で大きく広げますけれども、収入基準については切り下げるということが今度の法案の審議の中でも大変問題になったわけですね。

 先ほど大臣からはいろいろ答弁がありましたが、改めて確認しますけれども、今度のこの大学等修学支援法案の作成に当たって、現在の大学の授業料減免制度の扱いについては財務省と文科省との間で何らかの取決めはなかったという理解でいいわけですね。

麻生国務大臣 大学等のいわゆる修学支援法ですけれども、これは、骨太の二〇一八などの閣議決定を踏まえて関係省庁において具体的な内容を検討して、昨年の十二月に、幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針について関係大臣で合意したものだと理解しております。その中で、最終学歴によって平均賃金に差が出たり、低所得の家庭の子供たちは大学への進学率が低いという実態を踏まえて、真に支援が必要な低所得者に支援を重点化するとの方針が決定されたものだと理解しております。

 したがいまして、現在各大学で行っている授業料免除の取扱いは、新制度のもとで各大学が適切に判断するものであって、授業料減免に対する公的支援に関しても、政府として決まっているというようなものの具体的な方針はないと思っております。

宮本委員 各大学で自由にやってくださいみたいな感じなんですけれども、今は予算措置をとってやっているわけですよね。収入二百七十万を超える方でも、国立大学の授業料の全額免除を受けている方というのはたくさんいらっしゃいます。

 今、FREEといって、高等教育の無償化を求めている学生団体があるそうです。そこがたくさん学生の声を集めていて、私も見させていただきましたけれども、二百七十万を超える方でも、こんな声がありますよ。

 年収四百万から六百万、私立は不可なので国公立にとにかく行かなければならなかったという方、あるいは、年収二百七十万から四百万の方でも、奨学金とアルバイト代から学費、生活費を全て捻出しています、家計が厳しく、親から金銭的支援を受けられないため私立大学は到底行けないため、進学の際に選択肢から外さざるを得なかったということだとかですね。

 本当に、今、政府の方針というのは、全免は二百七十万円までですよ、一部支援は三百八十万円までですよという話になっているわけですけれども、それを超えた層でも今現に減免を受けている方がたくさんいて、そして、これが打ち切られたら修学に困難が生まれる方もたくさんいるわけですよね。それはもう事実だと思います。

 ですから、私は、今度の国の、法律をつくって政策変更したことによって、現に今授業料減免を受けている方が授業料減免を受けられなくなって、修学継続に困難が生まれるようなことは絶対にあってはならないと思いますが、その点の大臣の認識はいかがですか。

麻生国務大臣 この新しい制度のもとで、公費とかその他の財源でどのような学生を対象にして授業料免除を実施するかについては、各大学において判断されるものだと承知しているんですが、いずれにしても、御指摘のようなケースに関して、各大学におけます減免の理由とか家計基準の実態とか減免の考え方などについて、これは文部省において実態を把握されるものなんだと私どもとしては承知をいたしております。

宮本委員 文科省は、実態は把握した上で財務省と折衝していきたいというふうに法案審議の中では答弁をされているわけですね。恐らく文科省からは、今受けている学生については引き続きやはり継続して支援してほしい、そのための予算措置をとってほしいという声が出ると思いますよ。当然、調査すれば、大変な事態になるというのは明らかになりますので。

 ですから、それを受けて、大臣としてはどういう考えなのかというのをお伺いしているんですよ。修学継続に困難が生まれるような事態が今授業料減免を現に受けている方から生まれないようにしなきゃいけないと思うんですが、そこはいかがですか。

麻生国務大臣 まだその段階に来ておりませんのでお答えのしようがありませんし、実際にそのような答えが出ないかもしれませんから、今の段階では、私どもとしてはお答えのいたしようがありません。

宮本委員 私たちが聞いている声の範囲でも、このままでは大変だという声はたくさんあります。文科省が調べても同じことになると思いますので、そこは、現に受けている方が授業料減免を受けられなくなる、こういうことが絶対にないように考えていただきたいと強く求めておきたいと思います。

 それで、各大学それぞれで、授業料減免、どこまでやるかは各大学の判断だと大臣は繰り返しおっしゃるわけですけれども、しかし、この間、二〇一九年まで授業料減免の枠自体はずっと拡大をし続けてきたわけですよね。それは理由があって拡大をしてきたというふうに思うんですが、二〇一八年でいえば、国立大学は学生数の一二%、授業料減免の枠をとっております。二〇一九年は一二・二%。この間、ずっと毎年ふやしてきているわけですが、これはなぜ毎年、減免の対象者を拡大してきたんですか。大臣、お願いします。

永岡副大臣 宮本委員にお答えいたします。

 文部科学省におきましては、経済的な負担を軽減する観点を中心に、各国立、私立大学が各大学ごとの所得基準やまた成績要件など、それぞれの大学の考えを踏まえながら実施をしている授業料減免について、国立大学法人運営費交付金、また私立の大学ですと私立大学等経常費補助金におきまして支援を実施しております。

 対象者の拡大につきましては、文部科学省といたしましては、財政やまた進学率等その時々の状況を総合的に判断しながら、可能な予算措置を講じてきたところでございます。

宮本委員 ですから、なぜ減免対象者を拡大してきたのかという、この制度の意義について一言おっしゃっていただきたいと思いますけれども。

森政府参考人 今、副大臣から答弁を申し上げましたように、経済的な負担を軽減する観点、そういったものを中心に、各大学でそれぞれ、成績要件とかそういうのを考えながら実施をしていく、そういうものについて、国として必要な支援を、国立大学運営費交付金でありますとか私学経常費補助金等の仕組みにおいて支援をしてきた、そういうものでございます。

宮本委員 文科省にいただいた国立大学の授業料減免のペーパーを見ますと、意義、修学継続を容易にし教育を受ける機会を確保すると書いていますね。

 つまり、四百万、五百万、六百万、七百万まで、今、国立大学によりけりですけれども、授業料を全額免除しております。四百万、五百万、六百万、七百万でも、修学継続を容易にし教育を受ける機会を確保するためには必要だと、その対象をもっとふやさなきゃいけないということで、どんどんどんどん、この間、予算をふやしてきたということだと思うんですよね。

 ですから、修学継続を容易にするためには、あるいは教育を受ける機会を確保するためには、国立大学は四百万、五百万、六百万、七百万までやっている、そういうところまでの支援も必要だという認識だったんじゃないんですか。違いますか。

森政府参考人 経済的な負担を軽減する観点からやっているものでございますけれども、例えば国立大学運営費交付金の算定に当たりましては、学生数の一定割合ということで措置をしてきたものでございます。現状においては、今年度予算においては一二・二%ということでございます。

 実際に、収入等の基準について国の方で定めているわけではございませんで、これを踏まえて、各大学等におきまして、収入要件そして成績要件等決定をして実施をしている、そういうものでございます。

宮本委員 収入基準を国で決めていなくても、実態としてはそこまでやっているというのは、当然、文科省は知っておいて、そして財務省も知っていて、それでもこれを拡大をしてきた。ことしまで拡大してきているわけですよ。

 ということは、そこまで支援は必要だという認識を二〇一九年予算を通すためには持っていた、そういうことなんじゃないんですか。

森政府参考人 特に国立大学の運営費交付金の授業料減免の予算措置につきましては、経済的な理由、それから留学生、大学院生等を含めまして措置をしております。

 その中で、実際の、先ほど申し上げましたように繰り返しになりますけれども、どのような所得要件にするか、新制度においては住民税の課税標準額をベースにいたしますけれども、各大学においては年収基準をもとにしているところが多いわけでございますけれども、それについてはそれぞれの大学で決めてきた、そういうことでございます。

宮本委員 ですから、それぞれの大学で、今回の法律よりももっと大きな幅で減免をやってきたわけですよ。それを支援してきたわけですよ。そして、もっと対象を拡大しなきゃいけないということで、ずっと積み上げてきたわけじゃないですか。なぜその認識を捨てようとするのか。

 私、国の今度の施策によって、授業料減免の対象が縮小する大学が生まれるというのは、国連人権規約にあります高等教育の漸進的無償化に逆行すると思いますよ。その点の認識、文科副大臣、いかがですか。

永岡副大臣 お答えいたします。

 国際人権規約におきまして、無償教育の具体的な方法については特段の定めをしておりません。その範囲や方法を含めまして、具体的にどのような方法をとるかについては加盟国に委ねられております。

 文部科学省としては、財政や進学率等その時々の状況を総合的に判断しながら、具体的な、給付型の奨学金制度の創設を始め、奨学金制度を充実させるなど、教育費負担の軽減に努めているものでございます。

 新制度は、真に支援が必要な学生に対しまして確実に授業料等が減免されるよう、大学等を通じた支援を行うとともに、学生生活の費用をカバーするために十分な給付型の奨学金を支給するものでございます。全体としては、規模や金額が大幅に拡大することで支援が広がっていくものと考えております。

 このため、中長期的に見まして、無償教育という手段を徐々に、漸進的に導入する方向に沿って努力していく方針が維持され、そして実際の施策が中長期的に見ましてその方向性に沿ったものとなっていることから、無償教育の漸進的導入の趣旨に適しているものと認識をしている次第でございます。

宮本委員 私は、今度の法律について適しているかどうか聞いたわけじゃないんですね。法律は成立しました、法律が成立したもとで、今度、今まで続いてきた授業料の減免制度をどうするかということが問われているわけですよ。今までの授業料減免制度は法律に基づいてやっているわけじゃないですから。

 この減免制度を縮小していくということになったら、これは当然、漸進的無償化というのは前に進んでいくわけですから、その部分が対象が少なくなるというのは、明確に逆行するということを言わなければいけないと思います。

 私、本当に大変心配するのは、先ほど来、各大学で減免制度は考えてくれということを大臣はおっしゃるわけですよね。これは、今まで同様の財政措置がなくなったらどうなるかということなんですよね。

 各大学は、そうはいっても、やはり減免制度を続けたいと思いますよ。自主財源を確保しようという話になりますよ、もし財政措置がとられなければ。寄附金が集まればいいですけれども、寄附金が集まらなければどうなるのか。自主財源といったら、授業料を上げることになるんですよね。実際、ずっと据え置かれていた国立大の授業料ですけれども、ことし、東工大と芸大が値上げするということになりました。

 ですから、私が本当に言っておきたいのは、減免制度を各大学で維持する財源を学生や父母に求めるような、授業料値上げで賄うようなことは絶対あってはならない、そういう方向に誘導しては絶対ならないと思いますが、その点の文科副大臣の認識をお伺いしたいと思います。

永岡副大臣 大学の学費といいますのは、大学におけます充実した教育、研究環境を整える観点から、教職員や施設設備といった学校運営等に要します経費に充てられるものでございます。

 この学費の設定につきましては、基本的には各国公私立大学がそれぞれの教育、研究環境を勘案しながら適切に定めるべきものと認識をしております。

 文部科学省としては、今回の支援措置の趣旨の周知に努めてまいります。

宮本委員 授業料を値上げして減免制度の維持に使ってもいいのか悪いのか、その辺の判断は何もおっしゃらないんですけれども、その辺の判断は文科省としては何もないということですか。全部大学任せということですか。

坂井委員長 申合せの時間は過ぎておりますので、簡潔にお願いします。

森政府参考人 授業料につきましては、各大学が、それぞれが適切に定めるべきものというふうに認識をしておりまして、その旨、文部科学省としては周知に努めてまいりたいということでございます。

宮本委員 もう時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、大変、今の答弁では懸念されます。減免制度への財政的支援を国が打ち切り、各大学が減免制度を維持するために授業料値上げで財源を生み出していくということもこのままでは進みかねない。低所得者の負担軽減、これは当然必要ですよ。だけれども、その一方で授業料の引上げを進めていくようなことは絶対あってはならない、このことを強く申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、串田誠一君。

串田委員 日本維新の会の串田でございます。

 先ほどほかの委員の方からも米中の関税に関する質問がありましたが、報道によれば報復関税というような言葉も使われているわけでございまして、エスカレートしているような感じもします。また、これらの企業と関連をしている日本の企業の従業員もいらっしゃると思います。こういったようなことで自分たちの生活環境というのもどうなるのかということの大変心配な方もいらっしゃると思うんです。

 基本的な質問ですけれども、米中が今報復関税等を行っている、それぞれの国が一体何を相手に求めているのか、どういったようなことになると終息するといいますか、この争いは終わるのかということをやはり国民も注目をしていると思うので、それぞれが何を相手に求めているのかを説明をいただきたいと思います。

うえの副大臣 米中間の貿易問題につきましては、我が国は当事国ではございませんので、基本的にはコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げますと、米国は通商法第三百一条に基づきまして、中国による知的財産権侵害等、不公正な貿易慣行を是正する、そのことを目的といたしまして、昨年の七月以降に関税の引上げを実施をしているものであります。一方、中国につきましては、米国がそのような緊急的な状況を生み出していることに関しまして、自国の合法的な権益を守る等として対抗措置を実施をしてきたところでございます。

 いずれにいたしましても、GDP世界第一位と第二位の経済大国である米中両国が建設的な意思疎通を行いますことは世界全体にとっても重要だと考えています。

串田委員 今の説明によりますと、アメリカは中国に対して知的財産権というものをもう少し尊重しなければならないというような、不公平な取引を主張しているということに対して対抗手段を中国がとっているということは、それだけをもし取り上げるとすれば、中国が知的財産権を尊重するような姿勢を示すということが今回終了する一つの手がかりになるのかなというふうには思うんですけれども、そういった意味で、日本と中国との間でも、韓国との間でもそうなんですが、どこの国でも知的財産権というようなものが非常にそういう意味で争いになっているという点では、なかなか解決というのは難しいのかなというような気もいたしますので、日本が何かそれに対する終息の手段があるとすれば、そこら辺もひとつ協力をしていくということも必要かなとは思うんです。

 今回のような報復関税というような言い方というのは、余り聞きたくないというか、非常にそういう意味では、どうなっていくんだろうという不安をあおる感じもするんですけれども、このような大きな国同士の関税が報復の形で行われていくということは、かつて、今まであったんでしょうか。

うえの副大臣 関税が報復的に行われているというそうした御趣旨、必ずしも明らかではないというふうには考えておりますが、これまでの歴史を振り返りますと、まさに世界各国の保護主義的な高関税政策、ブロック経済化といったものが第二次世界大戦の一因となったところでございます。こうした経緯も踏まえまして、一九四七年にはガットが締結されたものと承知をしています。その後、一九九五年には、ガットを継承し、現在のWTOが設立をされまして、多角的な貿易体制の中核として位置づけられているところでもございます。

 他方、この間におきましても、例えば、日米間におきまして、一九五〇年代以降ですが、繊維製品、鉄鋼製品、カラーテレビ、牛肉、自動車等において貿易摩擦の問題が生じております。あるいは、米・EU間におきましても鳥肉をめぐる貿易紛争など、世界各国の間で、程度の差こそありますが、さまざまな貿易問題が発生、対処されてきたところでございます。

 こうした中、現在の米中間の議論の発端となっている米国の通商法第三百一条について見ても、これまでの発動状況を見れば、当事国同士の協議等を経まして一定の解決に至った例が多くございます。今回の米中間のように、貿易品目の大半に関税を互いに賦課し合うに至った事例というのは、近年では余り例を見ないものではないかと認識をしているところであります。

串田委員 今、歴史的にあったかどうかというのをお聞きをしたんですが、いろいろな貿易摩擦はあったということではありますけれども、今回のような大国同士の報復というような言葉を使った関税というのは余りなかったというような答えでございました。

 何でこんなことを聞いたかと申しますと、今、消費税、増税をすべきかどうかという中で、安倍総理が、リーマン・ショック級というようなことでございました。リーマン・ショック級というのは、そういう意味では、歴史的にはかなり大事件であるということからすると、今回の報復関税というものが、歴史的な意味で、同等なものが数多く行われている一つということであれば、リーマン・ショック級というものに該当するということは言えないのかなと。逆に言えば、歴史的にかなりまれなものであるとすると、リーマン・ショック級というような言い方に該当していく流れもあり得るのかなという、そういうようなことで質問させていただいたんです。

 ところで、このリーマン・ショック級というのは、いろいろな委員からの質問もあったんですけれども、一般的に、余りにも漠然としているわけです。一体、リーマン・ショック級という言い方をして該当するかどうかというのは、経済指標から見ると、何をもって、何の数字が変わるとリーマン・ショック級になるのか、もう少し数値的なところの説明をしていただきたいと思います。

うえの副大臣 リーマン・ショック級の事態につきましては、例えば世界的な経済危機やあるいは大震災などが考えられますが、いずれにせよ、引上げが困難と判断される事態でございますので、予断を持って申し上げることはできないと考えています。

串田委員 米中に関しては、通告で、日本に対する影響だとかそういったようなことも通告をさせていただいているんですが、ほかの委員からの質疑もありますので省くことにいたしまして、次に、別の質問をさせていただきたいと思うんです。

 二〇二四年に紙幣のデザインが変更されるという報道がありました。福沢諭吉さんから渋沢栄一さんに、樋口一葉さんから津田梅子さんに、そして野口英世さんから北里柴三郎さんにというようなことでございます。

 特に、千円の北里柴三郎さんの裏面は葛飾北斎の浮世絵ということでございまして、富嶽三十六景の、私の選挙区である神奈川県の沖、神奈川沖浪裏という、大変浮世絵では有名な、波がどっとかぶさっていくような、とてもすてきな浮世絵でございますし、傾くと、3Dで、最新の技術を駆使した、偽造ができないような紙幣になるということで、私も大変楽しみにしているんですが、この二〇二四年の紙幣のデザインによって、国内の経済状況というものに何らかの変化をもたらすというような予想をされているのかどうかを確認したいと思います。

可部政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員御指摘がございましたように、このたび、紙幣のデザインを一新するということを発表させていただいたところでございます。

 現在、日本銀行券は百五十六億枚が流通しておりまして、この改刷は、目的といたしましては、経済取引の安定の観点から、信頼性の高い通貨を供給するため、銀行券の偽造抵抗力を強化するということを目的として行うものでございます。したがって、国内の経済状況に変化をもたらすことを目的としたものでは必ずしもございません。

 他方で、現在、政府としてはキャッシュレス社会ということを推進しているわけでございますけれども、実は、キャッシュレス化が日本よりも進んでいる主要先進国におきましても、ほとんどの国々、北欧を除くほとんどの国々におきまして、銀行券の流通残高はふえており、随時改刷が行われているところでございます。

 したがいまして、キャッシュレス比率が増加しても直ちに日本銀行券がなくなるわけではなく、そのように利用されている以上は、利便性、信頼性の高いものでなければならないというふうに考え、改刷を実施することとしたところでございます。

串田委員 報道の一部では、たんす預金が引き出されていくんじゃないかというような話もあって、本当に、画像を見ますと大変きれいな紙幣に変わるので、そういう意味では、たんす預金にあるものを新しくかえたいというような気持ちも出てくるのかなという思いもありますので、私としても大変楽しみにしているんです。

 一方で、今、先ほどの回答もありましたけれども、キャッシュレス化が進んでいる。紙幣が新しく変わるという楽しみとともに、キャッシュレス化が進むという何か裏腹な部分があって、ただ、今の答弁によりますと、キャッシュレス化が進んでいる国も紙幣の増刷というのは進んでいるという、私もちょっとその点については意外だったんですけれども、キャッシュレス化が進むことによって日本の経済というものはどのような形で変化していくのかという予想はされているんでしょうか。

藤木政府参考人 お答え申し上げます。

 キャッシュレス化が進むことによる経済的な意義、効果ということでございます。

 一つは、消費者という立場からいたしますと、現金、小銭の管理でございますとか、ATMでお金を引き出すといったような時間と手間の節約ということもございますし、あるいは家計管理もデータでできるといったような利便が向上するという面があると思っております。

 それから、二つ目、事業者側にとっては、今、現金のハンドリングコスト、例えば、レジを打つ、レジを締める、現金を輸送する、釣銭を用意するといった、かなり現金に伴うコストというのがかかっております。こういったようなものが、直接、間接のコストを減らすということで生産性が高まるという効果が見込まれるというふうに考えております。

 それから、三つ目といたしまして、昨今急速にふえておりますインバウンドの方でございますけれども、これも、アンケートを外国人旅行客にとってみますと、約七割の方が、もう少しキャッシュレスであればお金を使っていたのにといったような回答をされているということもございまして、今後インバウンドが拡大していく中で、そういった方が国内での消費をふやすといったような効果も見込まれるというふうに思っております。

 更に申し上げれば、まさにビッグデータの時代という中にあって、こういった流通、消費データを活用した新しいビジネス、新しいサービスというのが創出されるというような効果も期待されるのではないかと考えているところでございます。

串田委員 銀行も随分昔と違って、昔でしたら銀行に入ると窓口がずらっと横に並んでいたのが、今やキャッシュディスペンサーみたいなものがずらっと並んで窓口がどんどんちっちゃくなっている、そんな印象を持つようになりました。

 更にキャッシュレス化が進むということになると、紙幣を取り出すというような作業がどんどんどんどんなくなっていくということになって、銀行形態というものにかなり変化をもたらすんじゃないかなと思うんですけれども、キャッシュレス化と金融機関とのかかわり合い、どんなようなことの変化がなされていくのかということの予想を説明をいただきたいと思います。

三井政府参考人 お答え申し上げます。

 キャッシュレス化が進展いたしますことによりまして、金融機関にとってみますと、現金の管理、輸送のコストが低下する、あるいはATMの設置時のコストが低下する、こういったメリットがある、こういうことが見てとれると思います。

 他方で、キャッシュレス化の進展が進みますと、フィンテック事業者などが新規に参入してきておりまして、各種の決済サービスを提供するようになってきてございます。これらのフィンテック決済サービス提供事業者は、こうしたサービスの提供を通じましてデータや情報の利活用も図っていく、こういった動きを見せております。

 こうした状況でございますので、既存の金融機関は、新たなプレーヤーと提携をする、あるいはみずからでの新規サービスの提供を通じて利便性の高い決済サービスを提供していく、こうしたことを通じてあるいはデータ、情報の利活用を図っていく、こうした動きが出てきているところでございます。

 金融庁としてみますと、こうしたフィンテック事業者あるいは既存の金融機関が相互に協調したりあるいは競争をするといったことを通じましてよりよいサービスが提供される、こういった創意工夫が進んでいくということが顧客にとっても利便があるというふうに思いますし、また、キャッシュレス化というのが社会やあるいは企業、お客様にとってメリットのある形になっていくというふうに考えております。

串田委員 キャッシュレス化によって社会ががらっと変わっていくんだと思うので、財金の委員会においてもきめ細かく対応していきたいと思います。

 ありがとうございました。

坂井委員長 次に、青山雅幸君。

青山(雅)委員 無所属の青山雅幸でございます。

 本日も同僚委員の皆様の御好意で大変貴重なお時間をいただきましたことを、まず心より御礼申し上げます。ありがとうございます。

 早速です。先ほど来の委員の方々の質問とかなり重複するところがございますけれども、それぞれの視点というものもあろうかと思いますので、私も消費税について質問をさせていただきます。

 きょうも、リーマン・ショック級の出来事が起きない限り予定どおり消費税率を引き上げると、麻生大臣は御答弁いただいております。しかしながら、時折、消費税率引上げ凍結の是非をめぐって国民の審判を受けるというようなことを理由に、衆参同時選挙の観測などというものが浮かんでは消えている、そういう状況ではあろうかと思います。

 しかしながら、わずか二年前に行われた二〇一七年の総選挙は、安倍総理大臣が、二〇一九年十月一日からの消費税率一〇%への引上げを前提に、この税率上げに伴う増収分、これの配分ルールを変更して、財政赤字の削減から幼児教育の無償等へ一部使途変更することについて国民の信を問うということで解散・総選挙を行われたものだと記憶しております。

 その結果に基づいて、既に本年度から幼児教育の無償化等がスタートするわけでございますけれども、この国の政策に、幼児を養育されている国民の方それから事業者などは、消費税率引上げに向けた、これを前提とした行動を既にとっておるところだと承知しております。

 例えば、三歳から五歳の子供を養育中の方々が、就労するか否か、特に短時間労働者、パートなどの方を中心に、その判断を行う上で、無償化を前提として金銭的な損得勘定というのは当然行われているものだと思います。例えば、私どもの法律事務所でも、少人数の従業員の中で、時短で復帰されて、三歳から五歳のお子さんを抱えていらっしゃる方が何と四名もおられるんですね。そういった方は、当然、十月からの保育所無償化というものを経済的にも考えて働いてくださっているわけです。これは、私どもの事務所に限らず、子育て中の方々やそういった方々に働いていただいている事業者にとっても大変切実な問題だと思っております。

 そういったことだけではなくて、小売店などを中心として、レジやポイント還元制度を受けるため新規にキャッシュレス決済関係の初期投資を行われている方や、コンピュータープログラムの変更への取組を既に行い始めている事業者もおられると思います。

 そして、住宅関係では、八%の税率が適用されるのは二〇一九年三月三十一日の契約までですので、既に、増税を前提として一生の決断をされた方も多かろうと思います。

 一方で、解散・総選挙あるいはそれに伴う政治的判断というのはまさに政治的都合という側面も多かろうと思っておりまして、昨日朝のNHKニュースなどでは、内閣支持率が四八%だったから解散するというちょっと信じがたいような観測気球を、NHKですけれども、上げておられます。

 私は、政治の都合で国民を振り回すということがあってはならないと思っていますので、今言ったようなことを前提にお伺いしたいのですが、リーマン・ショックというのは、言うまでもなくシステミックリスク、一九二九年の大恐慌に比肩されるものと言われていましたけれども、大恐慌のときには、銀行がアメリカで何と一万行も潰れたそうです。リーマンのときも、金融機関のドミノ倒しが起きそうになって、それをFRBが、住宅抵当証券の買取りや、住宅貸付抵当会社のファニーメイやフレディーマックを実質国有化するなどして必死に防いだわけですね。こういうことをしたのは、大恐慌の研究者として名高いベン・バーナンキさんだったわけですけれども、FRB議長の。こういうシステミックリスクこそが、私はリーマン・ショック級だということだと思うんです。つまり、百年に一度あるか二度あるか。

 先ほどから麻生大臣が御答弁されておりますけれども、景気というのは、皆さん御承知のとおり循環していますので、いいときもあれば悪いときもある。ですから、景気循環に伴って多少景気が悪くなったからといって当然リーマン・ショック級ということにならないと思いますし、麻生大臣も先ほどそのような御答弁をされていたと思いますけれども、改めて確認ですけれども、そういう御認識ということでよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 リーマン・ショック、何をもってリーマン・ショックかという話がいろいろ出てくるんだと思いますけれども、少なくとも、リーマン・ブラザーズという歴史のある投資銀行が一つ倒産した結果、この話が全部起きたというわけではありませんから。ここに至るまで、今名前が出ましたファニーメイやフレディーマック等々含めまして、その他のものもかなりアメリカは救って、FRBが、アメリカ政府が助けた形で、最後に残った形でリーマン・ブラザーズということになっておりますけれども。

 これが売っておりましたいわゆるサブプライムローンなる怪しげな投資商品というものが世界じゅうの銀行で買われていて、それにひっかかって紙くずになったということで、多くの銀行が倒産。極端なことに、アイルランドにありました銀行は全行倒産ということになったりして、それまで国債なんかほとんどなかったようなアイルランドがそのように銀行の保証のために破産というような状態というのは、これはちょっと普通の状態ではなかったと思いますし。

 結果として国際的な金融収縮が起きるというとこれはえらいことになりますので、日本の政府としては、IMF、国際金融機関に一千億ドル、当時のお金で約十兆円の金をローンして救済というものに手をつけざるを得ないほどの騒ぎだったというのをもってリーマン・ショックというように考えないと、何か、リーマンという一つの、リーマン・ブラザーズが破産したというだけでこの種の騒ぎになったというような簡単な話ではないという認識だけは忘れられないようにしておかないかぬところかなと思っております。

青山(雅)委員 麻生大臣の認識が非常に慎重なものであるということをお聞きして、安心しました。

 やはり、システミックなリスクこそがリーマン・ショック級というものであって、単なる景気動向に左右されていいようなものではないと思っていますし、そもそも、三党合意というところから始まって、日本の社会保障制度を安定させるために図られているのが今度の消費税率引上げ、その仕上げでございます。ここをきちんとしないと、何のための三党合意だったのか、そして、日本の社会保障が本当にこれから長い年月にわたって安定、安心していけるのかというところにつながろうかと思いますので、ぜひ、麻生大臣あるいは財務省の方、そこのところをポピュリズムに流されることなくきちんと仕上げていただきたいと思っております。

 今の問題、若干視点を変えてお聞きしたいんですけれども、先ほども申し上げたように、例えば、三歳から五歳のお子さんを抱えている方は、保育所無償化によって、働きに出て家計を支えておられます。あるいは、キャッシュレス投資、キャッシュレス決済向けの投資やシステム変更投資を行った国民もいます。こういった例は非常に具体的な話ですけれども、今の経済というのは予測可能性ということで成り立っている。投資から何からそうです。税率の変更というのは日本全体に大変な経済規模で影響を及ぼすわけですね。国がこういう予測可能性を損なうような留保条件、先ほどから言っているようなリーマン・ショック級というのをいつまでもつけ続けているというのは、国民にとって、あるいは経済にとってもマイナスだと思うんですね。

 そこで、私として麻生財務大臣に、安定した社会経済運営には予測可能性が重視されるところから、既定方針どおり粛々と税率引上げを行うべきと考えておりますけれども、それについてどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、青山先生おっしゃるとおりに、消費税の引上げにつきましては、これは何といっても、日本の中期的には大問題であります少子高齢化というのを背景にして、それに対する社会保障給付というものを安定させたものにしておかないと、これは大きく増加してまいりますので、それに対応するためには、いわゆる全世代型の社会保障というものの構築に向けて、少子化対策とか社会保障とかそういったものに対して安定財源を確保するためにどうやるかということを三党で合意されたというのが背景にあります。

 御指摘のありましたように、これまで政府から予測可能性としていろいろ出されておりますけれども、政府としては、リーマン・ショック並みのというものが起きない限りはということを申し上げておりますので、私どもとしては、十月に、法律で決められておりますとおり、予定どおり、我々としては、予想可能性を損なうというような留保条件をつけているわけではありませんので、私どもとしては、きちんとした対応をさせていただいて、十月一日に消費税というものの値上げというのを実行させていただきたいと考えております。

青山(雅)委員 短期的な損得だけではなくて、中長期的な国の行く末というものも見据えた上で、ぜひ、今おっしゃったようなきちんとした御判断あるいは立場を堅持していただきたいと心より思っております。

 まだ若干の時間がございます。中途半端なところになりそうですけれども、おいでいただいている方もおりますので、今大臣のお話にも出た社会保障について若干お聞きいたします。

 今、財政で、言うまでもなく最大の割合を占めるのは、アメリカのような防衛費ではなくて、社会保障費、三十四兆円、三三%。特別会計の方でも七十兆円ございまして、合わせて年間百四兆円の歳出となっております。これがふえ続けていくことが、先ほど別の委員の御質問にもありましたように、日本の財政を圧迫しているのは間違いないところです。

 そこでお伺いしますけれども、年齢階級別の医療費、また階級ごとの各医療保険の収支状況というのはどういうふうになっておりますでしょうか。

渡辺政府参考人 御指摘のございました、まず年齢階級別の収支ということでございますけれども、医療保険制度は医療費を国民全体で支え合うという考え方に成り立っておりまして、年齢階級別で収支均衡を図るというものではございませんので、収支という形での把握はしてございません。

 ただ、年齢階級別の医療費という形では把握しておりまして、平成二十八年度の数字で申し上げますと、ゼロから十四歳で総額二・五兆円、一人当たりにしますと十六万円、十五から四十四歳では五・三兆円、十二万円、四十五歳から六十四歳では九・二兆円、二十八万円、六十五歳から七十四歳では九・八兆円、五十五・三万円、七十五歳以上では十五・四兆円、九十一万円ということで、年齢階級が上がるに従って、一人当たり、総額、いずれもふえる傾向となっております。

青山(雅)委員 時間がありませんので、今のお話をまとめさせていただきますと、聞くからに、若ければ医療費はかからない、そして、年齢七十五歳以上になると、四十五歳―六十五歳のところが二十八万に比べて、約三倍の九十一万円にもなってしまう。当然、日本の人口ピラミッドというのはどんどんどんどん上に上っていきますので、これだけ聞いても大変な状況になるというふうなことを認識いたしております。

 きょうおいでいただいた方はおりますけれども、全部質問できなかったことはおわびするとともに、これは非常に大事な問題だと思っておりますので、また次の機会がございましたら、ぜひこの続きを聞かせていただきたいと思っております。

 本日はありがとうございました。

     ――――◇―――――

坂井委員長 次に、内閣提出、情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 近年の情報通信技術の進展に伴い、金融取引が多様化してきている中で、金融の機能に対する信頼向上及び利用者保護等を図ることが、喫緊の課題となっております。このような状況を踏まえ、本法案を提出した次第であります。

 以下、この法案の内容につきまして、御説明を申し上げます。

 第一に、仮想通貨の呼称を暗号資産に変更するとともに、暗号資産の流出リスクへの対応等、暗号資産交換業者に関する制度を整備することとしております。

 第二に、暗号資産を用いた証拠金取引やICOと呼ばれる資金調達等、新たな取引に関する制度を整備することといたしております。

 第三に、金融機関の業務に、顧客に関する情報をその同意を得て第三者に提供する業務等を追加することといたしております。

 第四に、店頭デリバティブ取引における証拠金の清算に関し、国際的な取引慣行に対応するための規定を整備することとしております。

 その他、関連する規定の整備等を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

坂井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十七日金曜日午後零時五十分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十九分散会


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