衆議院

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第5号 令和2年2月25日(火曜日)

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令和二年二月二十五日(火曜日)

    午前十時二分開議

 出席委員

   委員長 田中 良生君

   理事 あかま二郎君 理事 井林 辰憲君

   理事 うえの賢一郎君 理事 津島  淳君

   理事 藤丸  敏君 理事 末松 義規君

   理事 古本伸一郎君 理事 伊佐 進一君

      穴見 陽一君    井上 貴博君

      石崎  徹君    今枝宗一郎君

      勝俣 孝明君    門山 宏哲君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      國場幸之助君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    田畑 裕明君

      高木  啓君    武井 俊輔君

      辻  清人君    古川 禎久君

      本田 太郎君    牧島かれん君

      三谷 英弘君    宮澤 博行君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      山田 美樹君    海江田万里君

      岸本 周平君    櫻井  周君

      階   猛君    野田 佳彦君

      日吉 雄太君    森田 俊和君

      早稲田夕季君    太田 昌孝君

      清水 忠史君    青山 雅幸君

      串田 誠一君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       平  将明君

   内閣府副大臣       宮下 一郎君

   財務副大臣        遠山 清彦君

   財務大臣政務官      井上 貴博君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊吹 英明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  渡邉その子君

   政府参考人

   (人事院事務総局給与局給与第三課長)       植村 隆生君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  森田 宗男君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局総括審議官)          白川 俊介君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    栗田 照久君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    矢野 康治君

   政府参考人

   (国税庁次長)      田島 淳志君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房長) 土生 栄二君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房生活衛生・食品安全審議官)  浅沼 一成君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    橋本 泰宏君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           上田 洋二君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行理事)     前田 栄治君

   参考人

   (国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事長)  末松  誠君

   財務金融委員会専門員   齋藤 育子君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  武井 俊輔君     田畑 裕明君

  本田 太郎君     高木  啓君

  山田 美樹君     三谷 英弘君

  櫻井  周君     早稲田夕季君

  石井 啓一君     太田 昌孝君

同日

 辞任         補欠選任

  田畑 裕明君     武井 俊輔君

  高木  啓君     本田 太郎君

  三谷 英弘君     山田 美樹君

  早稲田夕季君     櫻井  周君

  太田 昌孝君     石井 啓一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第三号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、理事前田栄治君、金融機構局長高口博英君、国立研究開発法人日本医療研究開発機構理事長末松誠君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官伊吹英明君、内閣審議官渡邉その子君、人事院事務総局給与局給与第三課長植村隆生君、金融庁総合政策局長森田宗男君、総合政策局総括審議官白川俊介君、監督局長栗田照久君、財務省主税局長矢野康治君、国税庁次長田島淳志君、厚生労働省大臣官房長土生栄二君、大臣官房生活衛生・食品安全審議官浅沼一成君、社会・援護局障害保健福祉部長橋本泰宏君、経済産業省大臣官房審議官上田洋二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。海江田万里君。

海江田委員 おはようございます。立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの海江田万里です。

 まず、麻生大臣、これはリヤドから、先ほどお聞きしたら一泊四日ということでございますが、大変お疲れさまでございました。お疲れのところ恐縮でございますが、当委員会できょうはおつき合いを願いたいと思います。

 さて、私、四日前に質問の要旨を出しましたけれども、間に三日入ったということもこれあり、若干、要旨で通告しましたことと違えるところがございます。それは御容赦をいただきたいと思います。

 まず、きょうの東京株式市場、いっとき千円ぐらい値下がりした。今少し戻しているようでありますが。昨日のニューヨーク市場は、やはり千ドル株価が大きく下げたということで、当然、麻生大臣も、リヤドのG20で、新型コロナウイルスの世界経済に与える影響ということについて議論をなさったと思います。

 共同声明では、景気の減速に備え、各国が政策を総動員することを盛り込んだ中身になっている。あるいは、何か、記者会見で、麻生財務大臣は、さらなる行動をとる用意があるというような発言もあったやに聞いておりますが、さらなる行動というのは一体どういうことなのか、政策を総動員するということはどういうことなのかということをまずお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 この種の会合では、他国が具体的な発言というものには言及しないことになっておりますので、会議が終了後に発表されております共同コミュニケというものにおいて、会議で出された意見というものを総合的に判断して、それを反映させるというので出されておりますけれども。

 コロナウイルスの直近の流行を含む世界経済のリスクの強化を、監視するということなんですけれども、そういった点でメッセージを出されておるんですけれども、サウジアラビアは中国からの代表の入国を拒否しております。したがいまして、中国からいわゆる財務大臣とかその手合いは来ていませんから、かわりに来ていたのは中国の駐サウジアラビア大使ということになったので、みんな聞くので、こんなやつに聞いたって何の意味があるんだと。時間の無駄だからやめた方がいいって、知らないことを言っているんだから。現場にいたわけじゃないんだろう、この人は。こんなところでみんな、各国聞くのはやめた方がいい。時間の無駄。

 だから、少なくとも、さっさと、この人が言っている話を前提にしながらやる以外ほかに方法がないけれども、インフォメーションの絶対量が俺たちは足りない。

 ここに韓国が来ているけれども、韓国は、今までだって、全然人が、発表して、いないと言っていたじゃないか。それがいきなり、急にここのところになってわあっと六百人とか言われても、情報の信用性がないから、こういったものに対応して、我々が今すぐどうしますとかこうしますとか、これがどの程度でおさまるのか、どれくらい広まるのかって、もう全然わからぬ。わからぬけれども、少なくとも、今いろいろなところ、上海の港が混乱している話や、いろいろ上から写真撮ると出てきますから、そういった意味で我々は知っているだけで、そういった話を前提になっているので。

 少なくとも、いざというときにはちゃんと対応できるようなものを各国があらかじめ心しておかないと、いきなりゼロと、今に至るも北朝鮮からはゼロですから、何となく、我々、近いところにおりますので、そういった意味では、ある日どうなるかわからぬということに関しては、きちんとした心構えやら対応やら、何が必要なのか。ちょっと正直、今の段階で、そういう用意をしておくという、みんなで話をしましたものの、じゃ、具体的に今というのは、どうこう決まっているわけではございません。

海江田委員 冒頭御紹介しましたけれども、株式市場が下落をしている、それから実体経済も、中国からの輸入などが滞っている、あるいは日本の例えば自動車工業などは現地での生産が滞っておるということがありますので、これはもう全くうわさの類いとかいうことではなしに、大きな打撃を与えるということは確かでありますから、やはりそれに対してどういう準備をしているのか。準備というのは、やはり先回り先回りしなければいけませんから、それがどういうことをやっているのか。

 ちょうど今、国会が令和二年度の予算の審議の最中でありますが、まず当面使えるのは、予備費は使えますが、これは五千億ですね。まあ五千億、しかも予備費はこれだけに全部使うというわけにはいきませんから、何らかのやはり措置が必要なんじゃないだろうかということで、なかなか今、まさに令和二年度の当初予算の審議中ですから、なかなか言えることと言えないことがあろうかと思いますが、やはり万遺漏なきようにやるということと、それから、今、野党もこの問題について、やはり予算を組み替えの動議とか、こういうことも今検討しているところでありますから、やはりそういうところもきちっと胸の中に置いていただいて、そして、本当に万遺漏なきようお願いをしたいと思います。

 いかがでしょうか。

麻生国務大臣 今言われましたように、今回のこの緊急対応策というので予備費の百三億を措置しておりますけれども、各施策につきましては、今後、令和元年度の補正予算を着実に実行する中で実施されてまいりますので、その全体の所要額、今百五十三億円ということにいたしております。

 今言われましたように、これはもう規模ありきの話じゃありませんので、よくわからぬわけなんで、今回取りまとめた当面の緊急課題に措置する対応策について、必要な予算措置を確実に盛り込んで積み上げたものでありますので、一概に、多過ぎるんじゃないか少な過ぎるじゃないか、いろいろ御意見があるところだとは思いますけれども、今の段階で我々の考えているところであります。

 まずは、これらによって国民の健康と生命というものをきちんと対応させていただいて、さらなる国内感染等々を最小限に抑えるということをやっていかないかぬところだと思っておりますので、我々としては、国内の感染対策とか、また、観光業ですかね。主に直接影響が出てくるのは観光業。

 日産なんかもとまったもんね、先週。だから、ああいった意味じゃ、サプライチェーンなんか、自動車、三万点ある部品が一個でも欠けると車は完成車になりませんから、そういったものを中国だけに頼っていたところはとまっておるでしょうし。

 これから、野菜やら何やら、中国から輸入している野菜なんかは、これは、港がちょっと少々普通じゃない状態になっているそうですから、いろいろな問題が出てきていますし、バッタの話やイナゴの話も、えらい騒ぎになってきているという話が、この間、上から出ている写真が撮られていますので、そういったようなものがどれだけ出てくるか、ちょっといろいろなものを考えておかないかぬところだとは思っておりますけれども。

 ちょっと今の段階で、次から次へというところで起きておりますので、きちんとした対応をするように準備だけは、心構えはしておかないかぬとは思って、対応してまいりたい。柔軟に対応していかないかぬところだと思っております。

海江田委員 今年度の補正予算でも、それから令和二年度の当初予算でも、やはりそれを策定する段階ではまだこの新型コロナウイルスは出ていなかったわけですから、全般的な経済の下振れリスクでありますとかそういうものに対する対応は行ったと思いますが、新たなリスクでありますので、これはやはり新たな措置といいますか、これが必要だということは改めて、うなずいておられるから十分認識をされていると思いますが、私どもの野党の声もしっかり聞いていただいて、そして、本当に、先ほどもお話ししましたけれども、対策に万遺漏なきようお願いをしたいと思います。

 それでは、きょうは少し法人税のことについて考えてみたいと思います。

 今回、法人税の改正というのは余り大きな事項はございませんが、私はこの何年かずっと考えていまして、やはり最近、この法人税の税収が減ってきておりまして、そして、それによって大体十兆から十二兆。消費税はぐんと伸びた、それから、所得税もそこそこ伸びておりますけれども。

 やはり法人税というのは、もうこれは言うまでもありませんけれども、所得、法人、消費というのは本当に基幹税制でありますので、この法人税が余り少なくなっていきますと、税収全体の中で、政府は、最初は二〇二〇年度のPB、これを財政赤字の解消の達成ということを言っておりましたけれども、いつの間にか二〇二五年ということになりましたが、二〇二五年といいましても、もうこれはあと五年しかありませんから、やはり、これで本当にPBを黒字化するのであれば、法人税の税収減というのは大きな問題だなというふうに私は思っておるんですね。

 ですから、全体の税収を確保していく、そして二〇二五年のPBの黒字化に向けて、やはり、法人税の税収をどうやってふやしていくのかということについて御所見をお聞かせいただきたいと思います。

矢野政府参考人 お答えを申し上げます。

 法人税が足元で税収が減っているという御指摘を賜りましたけれども、税制改正におきましては、平成二十七年度、二十八年度におきまして、国際競争激化の折柄、税率、負担率を下げて、そして課税ベースを広げるという法人税改革、競争力強化のための改革を進めてまいったところでございます。

 そういった形で、赤字法人にも社会の会費としての負担をいただける税制改正、そして黒字法人にとっては、負担が、肩がすく税制改正、いずれもあわせて国際競争強化を眼目としておりました。課税ベースを広げましたので、ネット減税は行わなかったところでございます。

 税収が減っているという御指摘につきましては、安倍政権になりましてから七年ございますけれども、九・八兆円から十二・三兆円へと三割近く法人税収はふえてはございます。

 ただ、御指摘は恐らく足元のことかと存じますけれども、平成元年度の補正といたしましては、企業収益が引き続き高い水準にはあるものの、海外経済の減速などを背景にいたしまして、外需落ち込みの影響を受けた製造業を中心とする企業収益の下振れによって、減額補正をさせていただいたところでございます。

 今後、経済最優先の方針のもと、企業経営をしっかりと支えつつ、法人税収も確保していきたいと考えております。

海江田委員 今のお話で、この間やはり法人税の減税をやってきたわけであります。税率の引下げということをやってきたわけでありますけれども、その結果、本当に日本の競争力が強化されたかというと、これはやはりそういうことはないと私は思っております、これはいろいろなデータであらわれていますけれども。この改革をやらなければもっと競争力は落ちたかどうかというのは、これはわかりませんが、ただ、この改革をやることによって競争力が強化されたということには必ずしもつながらないのではないだろうかという点がまず一点。

 それから、確かに、法人税の改革の手法としましては、一つは課税ベースを広げるということでありまして、お配りをしてございます、これは衆議院の財務金融調査室がつくってくれた資料、ナンバーワンとナンバーツー、提出資料がございますが、一つは、これは法人税収のGDP比ですから、経済の規模の中で法人税収がどのくらいあるかということを比較した図でありますが、二〇一〇年を見ますと、課税ベースと法人所得と、これを見ていただければ一番、国際比較がありますが、日本は二〇一〇年の段階で、法人所得を分母にしまして課税ベースを分子にしますと、これが三一・六%ということで、アメリカ、イギリス、ドイツ、まあドイツはほぼ同じですが、フランスなどと比べてやはり低かったわけですね。だから、課税ベースが低いということが実はまず第一に大きな問題としてあったと。

 二枚目の資料の二を見ますと、やはり同じデータで、法人所得を分母にして課税ベースを分子にしますと、これが四九・一%という数字になっていますから、この六年間、課税ベースを広げるということについては一定の効果があったわけでありますね。課税ベースを広げて、それで税率も下げてきたということでありますので、今、対GDP比でいきますと、この二枚目の資料の一番左側でありますが、日本は三・七ということで、アメリカとほぼ同じ、イギリス、ドイツ、フランスと比べると少し高くなっているということがあります。

 ただ、私は、冒頭にも申し上げましたけれども、やはり、今の日本の財政の健全化ということから考えると、何らかの形で法人税の負担というものを上げていかなければいけないんじゃないだろうか。そのときに具体的にどんな手法があるのかということを少し考えてみたいと思うわけであります。

 それから、あと、課税ベースを広げるという努力は不断に行っていかなければいけない。まだまだやはりこの課税ベースというのは、二枚目の資料で、二〇一六年で四九・一%までいきましたけれども、これはアメリカ、イギリスなどと比べるとまだまだ課税ベースが狭いわけでありますから、だから、まずこの課税ベースを広げるということは、今後も更に努力をしていかなければいけないということであります。

 今度のこの令和二年度の税制改正の中で、5Gの問題が一つありますね。5Gについて一定程度の、租特で控除をやるわけでありますけれども、5Gを何らかの形で後押しをするということは私は構わないと思うわけでありますけれども、新聞報道なんかですと、最初は、税額控除ですからかなり額が多くなるので、それは与党の税調では九%だったのが、最後に安倍さんの鶴の一声で一五%になったというような新聞報道もあったわけでありますが、これは事実としてそういうことがあったのかどうなのかということをお教えいただきたいと思います。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 5G税制につきましては、今後の日本経済の帰趨を占うほどの大事な政策だということで、新しい規制的な法律の制定も今通常国会に企図しておりますけれども、それと、それから元年度補正予算での歳出と、そして今回の税制と、三つを組み合わせる形で牽引をしていこうということでございまして、御指摘のとおり、税額控除一五%という、ある意味法人税率の中では非常に高い、最高水準の税額控除ということを御提案させていただいております。

 検討の過程ではいろいろございました。そもそも、法人税制について、今委員から御指摘がありますとおり、内部留保がふえている折柄とか、あるいは財政が厳しい折柄、PB目標もある中とか、あるいは、更に言えば消費税率を上げている折柄という中で、新しい減税をすることに対するちゅうちょと言うとあれですけれども、御議論は、これは与党の税調なんかでもすごい議論がございました。

 そんな中で、いわゆる、ちょっと古い言葉ですけれどもスクラップ・アンド・ビルドで、しっかり法人税制の中でスクラップを立てて、ネット減税にはしないという前提などなどを講じながら、5Gをしっかりと守り立てていくという、新しい減税、ほかにもございますけれども、新しい法人減税についてはそういう考え方で取り組んだところでございます。

 九、一五という途中のプロセスの御指摘がございましたけれども、もろもろの御議論が政府・与党の中であった中で、これはとにかく国策として大事だということで一五%で着地したものでございます。

海江田委員 内部留保のことはこの後でやりますので、まだ触れておりませんのであれですが、確かに今年度の当初、そして補正、それから令和二年度という形でこの5G、注目をされていますが、ただ、正直言いますと、これは遅きに失した思いがありますね。

 私、昨年末、中国の北京に行ってきまして、ファーウェイですね、もちろんファーウェイの本社は広東省の広州ですが、そこまで時間がなかったので、北京から一時間ぐらいで、郊外に本当に大きな東京ドームぐらいの敷地があって、それが一種のファーウェイの展示室みたいになっているんですね。そこでいろいろ話をしてきましたけれども、ファーウェイというのは、あれ、漢字で書きますと、ファーウェイ、ファーウェイと言っていますけれども、ファーというよりはホアですね、中華の華に、ウェイ、為ですね。だから、あれはやはり中華のための会社なんですよ。中華民族の、中華民族に貢献するための会社なわけである、名は体をあらわすからいえば。

 だけれども、非常に先進的な技術を持っていて、そして、まさにこの5Gの世界では五年ぐらい先を行っているんじゃないですかね。

 世界でも、例えば韓国なんかはファーウェイのシステムをかなり導入をしていて、高速道路のところ、あれは余り電波が長く届かないらしいですから、ところどころにかなりたくさん中継の基地をつくらなきゃいけないらしいんですが、もう既に韓国なんかは高速道路の上にそういう中継局をざあっと立てているということであります。

 日本の場合は、これはやはり、経済安保と申しますか、これは特に甘利さんが非常に熱心で、一定のシステムを導入するに当たっては主務大臣の認証が要るということでありますから、そうなると、今なかなかファーウェイのはだめだということは言えないかもしれませんけれども、システムの認証を与えるに当たっては必ず主務大臣の承認、認証がなければ先へ進めませんよということになると、やはりかなり日本のこの制度を利用する事業者というものは限られてくるのではないだろうか。

 言ってみると、本当に限られた事業者に、先ほど局長からも答弁がありましたけれども、一五%を法人税から、しかも税額控除ですから、これはもう飛び切りの優遇をするわけですから、それが一種のかなり高額の補助金になりはしないだろうか、一部の事業者だけに高額の補助金を出すことになるんじゃないだろうかという批判もあるわけですが、これについてはどういうふうにお考えでしょうか。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 5Gはソサエティー五・〇の実現に不可欠な社会基盤でございまして、安全性、信頼性、供給安定性、オープン性が確保されたシステムが構築される必要があるという認識のもとに、我が国の経済社会や国民生活の根幹をなす5Gを早期に国民に普及させるという観点から、超高速大容量の通信を実現する全国基地局の前倒し整備を支援するとともに、地域活性化ですとかあるいは地域の課題解決を促進する観点から、地域の企業等がみずから構築するローカル5Gの整備を支援するということにいたしたものでございます。

 具体的には、5G設備に係る一定の設備投資に対しまして、期間を限定した上で税額控除又は特別償却を認めるという措置を設けることにいたしたものでございます。

 しっかりと的確に適用していきたいと考えております。

海江田委員 いずれにしましても、やはり、先ほどもお話ししましたけれども、課税ベースを広げていくということでは、やはり租税特別措置法の見直しというのは非常に大事でありますから、来年度の、令和二年度の予算の編成に当たっても租税特別措置の見直しというものは当然行われたと思いますが、今後、更に租税特別措置の見直しと、それから、見直しをするためには、その効果がどれほどあったのかということをやはりきちっと検証していかなければいけないと思います。

 この5Gの導入、そしてそれに対する租特による特別な税額控除という制度についても、これからどういうふうに、本当にそれがどういう事業体に、事業者に利用されて、本当にそれがどういう効果があったのかということを厳しくこれはチェックをしていく必要があろうかと思います。

 その課税ベースを広げるのと同時に、あともう一つやはり大きな問題、これは、日本の企業における利益剰余金の問題、これがかなりたまっているということで、この利益剰余金をどうするのかということについては、麻生大臣も何度も答弁もしておりますが、もちろん利益剰余金全体を、四百兆を超える剰余金がありますけれども、全体を課税の対象にするとかそういう話じゃありませんけれども、やはり本当に、現預金、現金、預金である利益剰余金というもの、これは大体半分ぐらいですから二百二、三十兆あるんですかね、やはりこれに対して何らかの措置を講ずる必要があるのではないだろうかというふうに思います。

 それから、私も今回これを調べる中で初めてこの歴史を知ったわけでありますけれども、やはりこの現預金の部分、これは世界でもこれをちゃんと課税の対象にしていたという例があるわけでありますから、その例を、留保利潤税というのがアメリカで行われたということがあるようですから、それをちょっと御紹介ください。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカにおきましては、フランクリン・ルーズベルト政権のもとで、一九三六年から一九三九年にかけまして、税引き後所得から配当などを差し引いた額に対しまして七%から二七%の累進税率で課税をする留保利潤税が導入されたと承知しております。

海江田委員 少し古くなるわけでありますが、やはり留保利潤税という形で、いわゆる日本でいう利益剰余金の現金、預金の部分に対する課税という例はあったわけでありまして、しかもそれが、七%から二七%という、かなり累進税率で高い税率が適用になっていたわけでありますね。

 このときの、比較的に短い期間でこれは終わってしまいましたけれども、それは失敗ということではなしに、むしろ当初の目的、この当初の目的は、やはり当時は配当性向といいますか、配当が非常に少なかったわけで、その配当に吐き出させようということでこの税制を導入して、それが非常に効果を上げたということで、この制度はもう必要ないだろうということになったというふうに私は知ったわけでありますが、それで間違いありませんか。

矢野政府参考人 基本的に、まさに課税対象から配当等を差し引いているというところも、政策意図がそのようなところにあったわけでございますけれども、そういう効果を発揮して、三年間の措置として終了したというふうに認識しております。

海江田委員 だから、麻生大臣、この利益剰余金、とりわけ現預金の部分に対する課税というのも、私は、これは限定でもいいわけですよ、一定程度たまったときに。

 それから、やはり今、私は、税の所得分配機能が低下しているということは非常に危惧をしておりまして、法人税でそういうことができないだろうかということでいろいろ考えた場合、やはりこの利益剰余金のとりわけ現預金に対する何らかの課税ですね。

 これは、今度は日本の場合は、配当を促進するということよりも、やはりそれをきちっと、人件費でありますとか、あるいは本当に社員の教育のための費用でありますとか、それから研究開発費でありますとか、まさに企業が本当の意味での国際競争力をつけるためと、それからやはり、そこで働いている人たちのスキルを向上させる、あるいは、賃金をしっかり払って、しっかりした分厚い中間層をつくっていく、やはりそういう政策目的のためにこれは考えてみてもいいのではないだろうかというふうに思うわけですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 先ほどまで矢野の方から答弁をさせていただいておりましたけれども、いわゆる内部留保というのは、現預金でも、これはしょせんは内部留保ですから、簡単に言えば。そういった意味では、いわゆる広範な二重課税に当たるという指摘もありますけれども、それは確かに言われるとおり、そういうことになるんですけれども。

 しかし、今言われましたように、一九三六年からの話を、フランクリン・ルーズベルトの話が今あっていましたけれども、終わったのは、あれは戦争ですからね。戦争が始まったんですよ、あのときから。だからこのときはごそっと変わったという地合いがありますので、少しその点もあろうとは思いますけれども。内部留保の利潤税というのが導入されたということはこれは事実で、ただ、それを取りやめた理由がどうかというのは、私、ちょっとそこまでよく知らないんですけれども、一番大きな理由は戦争だったという記憶が、私の方の記憶です。

 いずれにいたしましても、似たようなことは韓国でも二〇一八年から二〇年までやっていますけれども、ここのところも。これは時限措置として導入されたんだと思っております。

 いずれにいたしましても、企業が内部留保というのをいった場合に、少なくとも、二〇二四年、約三百兆ちょっとが、それが四百六十兆ですから、合計、合わせたら約百六十兆円ぐらいの内部留保がこの七年間で起きているわけですから、ちょっと、これはかなりな額ですよ。

 しかも、その中で、現預金の比率が百九十兆円から二百四十兆、ここがまた同じく五十兆円、現預金だけでというようなことはちょっと、少々異常じゃないのかということを三、四年ぐらい前からずっと私どもの方から指摘しているところなので、経営者の方は、この分は、内部留保というほど金をためても使う道がないんだったら、これは税金で、企業の法人税を下げても、下げろ下げろと言うから下げたら、内部留保がふえただけでは話にならぬでしょうが、こんなもの。税金があなたの中に、企業に入って、何も使わないで、しかも、金利も何もつかないでただ置いてあるだけ、こんな非効率な話はありませんから。

 そういった意味では、少し考えていただけませんですかねということを我々としてはずっと申し上げてきて、その分は、いわゆる設備投資、人件費等々ということに回ればということで、少なくとも、人件費は二%前後確実に、前に比べれば、マイナスですから。上がるようになってきたことは確かですけれども、これだけ出ているんだったらもうちょっと上がってもいいんじゃないのという話になりますし。

 前々回は、内部留保で四十兆、それで、現預金だけで十七、八兆ふえましたものね、おととしか。あのときなんかどう考えても異常ですから、それはといって、去年は大分減って、現預金の方は一兆弱ぐらいのものだったかな。それで、内部留保の方もたしか減って、二十兆を切って十七、八兆までになったと思いますけれども。

 そういったもので、もっと別の回すべきところに、もうけたら配当か設備投資か賃金でしょうから、そっちの方に回らなくて内部留保がたまってという話は、ちょっと、形としては、経営者が何をしていいかわからないとかいろいろな悩みはわからぬわけではありませんけれども、もう七年たっていますので。

 デフレのときは、金をため込んでおけば、金の値打ちが上がって物の値段が下がったんだから、そういう経営方針もあったとは思いますけれども、今は確実にデフレは終わっておりますから、そういった意味では、少し考えを変えていくというのに、どういうのがいいのか、ちょっと、これは真剣に考えないかぬ大事な視点だと思っております。

海江田委員 ですから、これまでも幾つか、内部留保を少なくさせるように努力といいますか誘導はしてきたわけですけれども、これまでの間接的な誘導ではなかなかききませんから。

 もうそろそろ直接的な、それは、内部留保の、とりわけ現金、預金のところに課税をするか、あるいは、そういうところは、今、せっかく法人税率を下げたわけでありますけれども、やはり超過税率みたいなものを一本つくっておいて、その中の条件に内部留保がどれだけふえたか、ここを一つの目安にしてやるということは、そこから税金を取るということも大事ですけれども、それだけじゃなくて、やはりそれを、今大臣がお話ししたように、設備投資なり、それから賃金なり、それから新たな研究開発でありますとか、やはりそういうところに、本当の意味で国際競争力を強化するために使ってもらわなければいけないので。

 もうそろそろ、やはり内部留保そのもののところに何らかの手を打つ時期に来ているのではないだろうかというのが私の見解でありますが、大臣、うなずいておられますので、そのとおりだ、頑張るということでおっしゃっていただければよろしいかと思います。

麻生国務大臣 こういうところでうかつに言うと後でろくなことにならぬというのはこの四十年間の経験なので、御意見として参考にさせていただきます。

海江田委員 こういうところで言っていただかなければいけないわけでありまして、まさに議論する場所ですからね。

 それから、じゃ、今度はNISAにかえますが、NISA、積立、少額投資の非課税でありますよね。

 まず、評判が悪いのが、一つはややこし過ぎるということで、ぱっと頭に入ってこないでしょう、こうでああで、一階、二階だとか。昔、マル優なんていうのは、大臣、よく御存じだろうと思いますが、とにかく、少額貯蓄非課税で、三百万円までは利子非課税だよと非常にわかりやすかったですね。まずわかりにくいということ。

 それから、麻生大臣は財務大臣であると同時に金融担当大臣でありますが、金融庁は一貫して、これはやはりパーマネントなもの、恒久化すべきだということを主張していたわけですね。ところが、今回も恒久化しませんで、一般NISAの方が五年、それから、つみたてNISAは二十年となっているわけですが、何で恒久化しないんですか。

 マル優なんかは恒久化でやっていたわけですよ。途中で状況が変われば、それは取りやめをする法律を出せばいいんだけれども、最初から二十年だよ、最初から五年だよというのは、私は、本当にどうしてもこれは腑に落ちない、あるいは納得できないんですが、どうしてでしょうか。

矢野政府参考人 お答えを申し上げます。

 NISA制度は、期限を区切って貯蓄から投資へという動きを後押しするために創設された制度でございまして、今回、つみたてNISAについて五年延長、一般NISAについても、現行制度終了後、新たな制度に、今複雑という御指摘をいただきましたけれども、制度にしつらえ直した上で五年間の投資を可能とするということにいたしております。こうした制度改正を通じまして、少額からの積立、分散投資を更に促進してまいりたいと考えております。

 ということで、つまるところ、期限を区切ることによって短期的に後押しをするという意味合いと、そもそも非課税ということが課税の公平からして特例でございますので、そういった意味で有限のものにしているということでございます。

海江田委員 先ほどもお話ししましたけれども、やはりマル優という制度、矢野さんはまだお若いから覚えていないかもしれませんが、私なんかはもう身についちゃっているんですね、マル優だとか特別マル優だとかありましたけれども、あれなんかは別に、あれでいえば課税の不公平だけれども、そんなこと全然問題なかったですよ。それから無期限でしたよ、ずっとそれは。だから、何でこれだけ。

 それから、貯蓄から投資へというのを何年言ってきたんですか。二十年以上言っているんですよ、これは。ねえ、麻生大臣、これは。橋本さんがビッグバンをやって、その後、あのときは三塚大蔵大臣でしたけれども、ずっと貯蓄から投資、貯蓄から投資と二十何年言ってきて、どれほど、では本当に貯蓄から投資へ進んだのかというのが、その後の四枚目の、ちょっと手書きでわかりにくいと思いますけれども、全く進んでいないわけですね。

 これは二〇〇二年の九月末と二〇一九年三月末。現金、預金、これが日本は、二〇〇〇年九月が五四・三%、二〇一九年三月末になっても現金、預金が五三・三%。

 株式が七・四%、それから二〇一九年三月末になって株式等で一〇%に若干ふえましたけれども、これは要するに株が少し上がればこのパーセンテージがふえるわけでありますけれども。

 それから投資信託、NISAは投資信託を購入することになるわけですけれども、二・四%から三・九%ということではありますが、ほとんど変わっていないわけであります。

 だから、これはやはり、ああでもないこうでもないということを言わずに、それから、それによって、恒久化したことによって税収が、何か不公平だというけれども、みんながそういう機会が与えられればいいわけでありますから、それからあと、毎年毎年の税収がそれによって違うわけでも、税収の落ちる分が違うわけでもないわけですから、本当に、何でこれを恒久化しないのかということを、不思議でならないんですね。もうちょっと納得のいくように説明してくれれば得心するんですが。

矢野政府参考人 恒久化しておらないことの御説明ですけれども、租税特別措置という特別の措置が幾つもございます。所得税、法人税等でございます。そのような中において有限でないものも確かにございますので、そうすればいいじゃないかという御指摘かと存じますけれども、やはり一方で、課税の垂直的公平というときに、よく一億円以上の年収を得ておられる方が、どんどん平均負担率が下がっていくということについての御批判がございますけれども、それは努めて有価証券投資、株式譲渡益収入が多い方がふえていくからそうなるわけですけれども、事業所得や給与所得の累進税率とは違って、株の場合は分離課税で一〇パーや二〇パーというところにとどまっているためにそういう現象が起こるわけですが、この制度は、二〇パーでもなく一〇パーでもなく、ゼロパーでございますので、やはりそういう領域が実はかなり広うございますし、それを恒久的に続けていくということについては若干疑問があるというのが、現行制度の根っこにあるところでございます。

海江田委員 これは麻生大臣は余り思い出したくないかもしれませんが、去年の六月、例の二千万円の話がありましたね。今の日本の金融資産というのは、五十代の上から、その上の人が大体八割以上持っているわけですよね。この人たちというのは、まさに所得が一億円を超えるとがあっと、この間、前回やりましたね、こういう急カーブの恩恵を受ける人たちで、残りの二〇%を持っているのが、そこから下の働き盛り、あるいは若い人たちなんですね。NISAというのは、これは若い人たちの、とりわけつみたてNISAなんというのは若い人たちのための制度なんですよ。

 一番問題なのは、やはり五十代から上で八割以上持っている、全金融資産の八割以上を持っている人に、この人たちに今さら投資をやれと言ったってこれは無理なんですよ、もう年をとっているから、時間がないから、そこで一回失敗しちゃったら取り返しがつかないから。だから、この人たちは、まさにふやすことよりも守ることの方に重点を置いているんですよ。だから、その人たちにやらせるのがNISAじゃないんですよ。NISAは、若い人たちに、まさに二十代だったり。ジュニアNISAをなくしたのは、私は何でなくしたのかなと思いますけれども。

 だけれども、やはり二十の人だったり三十の人だったり、こういう人がこれからしっかり積立てをやってということですから、それは、つみたてNISAは二十年だけれども、二十年なんというのはあっという間ですよ、はっきり言って。これからの二十年はどうなるかわかりませんけれども、若い人にとっての二十年というのはあっという間だから、何でそこで、これは恒久化しますよ、本当にあなたが年をとって、そのときもちゃんと非課税で受け取れますよということが言えないのかということ。

 それからもう一つ。実際に不都合が起きるんですよ。つみたて、これは投資信託ですから、元本保証じゃないですから、値下がりすることだってあるんですよ。一年間の限度額四十万円で積み立てたNISAを、二十年満期が来て解約しようと思ったら、三十万円になっていた。そうすると、この三十万円を次のところに移さなきゃ、一般口座に移さなきゃいけないわけですよ。そうしたら、一般口座に移したら、これは三十万円ですよ、購入価格は。これがまた少し、これはいつでも売り買いできますから、売って十万円上がった。だけれども、この人にとってみれば、何のことはない、四十万円かけて買った投資信託なのに、それが四十万円に戻ったということで、これは、本来からいえば、利益はないんですよ。

 だけれども、そこに、三十万円で預け入れをしたものが四十万円になったから、十万円利益が出て、そして二万円の、二〇%の源泉分離でいけば二万円の税金じゃないですか。こんなのおかしいと思わないですか。

 どうぞ、矢野局長。麻生さんでもいいですよ。

矢野政府参考人 NISAの仕組みは、期限が五年ごとに区切られますけれども、期限が来たときに、キャピタルゲインが得られている……(海江田委員「つみたてを言っているんだよ」と呼ぶ)はい。

 つみたての場合も、積み立てたものが確かに二十年で切れるというのは、今、ライフサイクルで、百年の人生の中で四十年あるいはそれ以上に働くという中では二十年というのは短いというのは御指摘があろうかと思いますけれども、一つだけ申し上げますと、一般型NISAの方につきましては、実際の利用実態も、高齢者が一括してぽんと預けてそのままというのが多うございますので、今回、複雑でという御指摘がありますのも、一般型NISAから積立型NISAにして、より人生百年に向けた積立プランに合うようにというのがリフォームの趣旨でございますので、そこのあたりを御理解をいただければと思います。

海江田委員 全く理解できないですね、こればかりは。幾ら矢野さんの言うことでも、これは理解できないということで、これは一日も早く、今からでも本当は直したっていいんですよ、恒久化するということを。遠山さんもうなずいておりますので。今からでもいいけれども、それができないのなら、ただ、これでこれからの五年を決めちゃうと、しかも、これから先の五年の話ですから、なかなか戻らない。

 そうすると、本当にこの制度が、まだまだ、イギリスのISAをまねをしてつくったわけですけれども、実際に全然違いますよ、利用率が。それは、やはり使い勝手が悪い。きょうは一々、もう時間がなくなりましたからお話しできませんが、私、いろいろ聞いてきたんですよ、実際に利用している人に。そうしたら、損益の通算ができないとか、やはり結構いろいろあるんですよ。それから、スイッチングといって、成績が悪いので持っているものを次のものへかえようと思うけれども、これもだめだとか。結構いろいろ、使い勝手がまだまだ悪いんですよ。

 だから、これは大いに、やはり本当の意味で、NISAの改革というのはことしの税制改正のかなりの目玉だったわけでありますが、見てみたら全然目玉でも何でもないですね、これははっきり言って。もっともっとこれは強力にやるようにしていただきたいということであります。

 それから、最後の時間になってしまいましたけれども、先日来ずっと出ております自然災害に遭ったときの損失の控除ですね。

 これは、雑損控除ではもうできない、対応し切れないということはもう何度もここで議論になりましたけれども、これは日本税理士会が、税理士法に基づいて、税理士法の第四十九条の十一、建議等という項目がありまして、この税理士法の改正というのは議員立法でありますから、政府に聞くより我々の方が経緯を知っているわけでありますが。やはり、本当に税制というのはなかなか難しいわけであります。だけれども、それを専門家の人たちが、そして、実際実務にも携わっている専門家の人たちが、ここはこう直した方がいいよということで、毎年毎年、それぞれの年度改正に際して建議をするわけです。

 この建議の中に、実は、令和二年度税制改正の建議書の中に、重要建議項目の三というところで、所得税、住民税における雑損控除から災害控除を独立させて、災害損失控除を創設すべきだということを言っているわけですよ。

 しかも、これはほかの控除と違って、控除の順番というのは結構大事で、この間も指摘がありましたけれども、先に基礎控除だとかいろいろな医療費控除だとかをずっと引いてきちゃうと、もう控除し切れなくなっちゃうわけでありますから、やはり一番最後にこの控除の枠を決めるということでいうと、最初に別の各種の控除をやって、残ったところで最後にこの控除をやりますから、そうすると、これもかなり金額が大きいから、十年ぐらいかかってこれを控除していくということで。

 被害額が大きいから一遍に出ていくと、一遍にそれだけ税金が取れないということではなしに、むしろ、控除期間を長くして、傷をだんだんだんだんやはり癒やしていくというような形にするから、非常にこれはいい制度だと思うので。

 こういうことは別に超党派で、公明党の方々もおっしゃっています、自民党の方々だってそういうふうな思いがあるわけですから、政府だけがかたくななわけでありますから、こういうことをぜひやっていただきたい。

 矢野さん、準備してきたんだったら、その税理士の建議をどれほどこれまでしっかり耳を傾けてきたかということをお話しください。それで、今後もぜひ傾けてください。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども税制当局といたしましては、御指摘のとおり、いろいろな団体がございますけれども、経済団体等々、業界団体等々ございますけれども、税理士団体、税理士会、最も身近な団体だと思っております。現場の声として、国税庁からももちろん話を聞きますけれども、税理士の先生方からの御所見というのを毎年書面で頂戴しております。

 法律の根拠があるということは御指摘のとおりです。それを受けて、秋口に御意見をいただく意見交換会を設けたり、あるいは、秋深まってから、かなり密にやっておりますので、これまでの実績としましても、平成二年の、今回の未婚の一人親の話もその中に載っていたものの一つです。言い出したもとのもとが税理士さんというわけではございませんけれども、載っていたという意味ではそうです。

 それから、平成二十九年の災害の話がございましたけれども、災害につきましても、その税理士からの提言の中にございまして、それを受けてというか、実は主税局内での発意によるんですけれども、災害が起きてから自分はどのものが適用されるかが、後から、もうどたばたの中でわからない、あるいは、そこから制度が広がるかもしれないということでは後手後手になるので、とにかくもう広げられる限り広げておいて、それをしっかり適用するという形をとろうという、常設化というふうに後から名前をつけましたけれども、そういう改正を行った。これも結果からすれば税理士会からの御要請の中にも載っていたものでございます。

 そういった形でしっかりと、キャッチボールといいますか、意見交換をしながら、よりよい税制にしていきたいと思っております。

海江田委員 これで終わりますが、矢野主税局長、税理士会の要望というか建議と、それから他の団体の要望というのは違うんですよ、これは。やはり、彼らはそれなりに納税者のことを思って専門家の立場から建議をしているわけでありまして、わざわざ建議という言葉を使っているわけですから、そこは十分御理解をいただいて、しっかり耳を傾けていただきたいと思います。

 以上です。ありがとうございました。

田中委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主・国民・社保・無所属フォーラムの櫻井周です。

 本日も、新型コロナウイルスの問題、冒頭、質問をさせていただきます。

 この問題、解決しないと今後の経済も財政も見通しが立たない。実際、昨日は、ニューヨーク株式市場でダウ平均株価が千ドル以上暴落するというようなことがございました。けさの東京株式市場でも、大幅に値を下げて始まっております。

 こうした経済と財政に対する大きな影響を踏まえて、今回も質問させていただきます。

 麻生副総理にちょっとお尋ねをしたいと思いますが、この週末、G20、御出張御苦労さまでございました。G20では、この新型コロナウイルスの問題、重要な議題の一つだというふうに思っておったんですが、中国からの大臣等がいらっしゃらなかったこともあって、なかなか議論が進まなかったというような話も先ほどの答弁の中でございました。

 そこで、ちょっとお伺いをしたいんですが、麻生副総理の発言としまして、コロナウイルスは四月から五月になったら落ちつくだろう、こういう発言が報道されておりますが、これは本当でございましょうか。

麻生国務大臣 これは、先ほどから申し上げているとおり、このコロナウイルスに関しましては、もう情報が、いわゆる絶対量が不足しているんだと思いますね、どれが本当かようわからぬでしょうが。二週間とか、その前は十日だったんじゃないですかね。それが、いつの間にか二十四日とかまた言い始めてみたり、何かもうよくわかりませんから。

 こういった話は、私どもとしては、正直申し上げて、各国いろいろなことを言っているんですけれども、各国もようわかっておらぬから、みんな中国に聞くわけですよ。本人はだってずっとチャイナにいないので、何ていうの、サウジアラビアにいる中国大使に聞いたって、そんなもの、言われたとおりにしか答えぬわけですから、絶対、実情を現場がわかっていないということになっていますから、誰もこのことについては詳しい人がおられないという状況にありますので。

 私どもとしては、そういった話がいろいろありますけれども、四月か五月になったらおさまる可能性もあるんじゃないのと言っただけであって、私が、四月か五月におさまる、私はそんな疫学の権威ではありませんので、全然その種のことはございません。

櫻井委員 今の政府の対応について、例えばこの対策本部でも大臣が、麻生大臣じゃない別の大臣ですけれども、欠席をされて、ほかの地元の会合に出席されたりというようなこともあったりして、本当に緊張感を持って全力をかけてやっているのかという疑念もちょっとあるわけでございます。

 こうした、四月、五月になったら落ちつくんじゃないのというような楽観論でもし政府で取り組んでおられるのだと、これはやはりちょっと問題ではないのかなというふうにも思いますので、ぜひとも全力を挙げて取り組んでいただきたいということを、ちょっと冒頭お願いをいたします。

 その上で、きょうは厚生労働省から審議官にも来ていただいているかと思います。

 以前も何度かお尋ねをいたしましたが、このダイヤモンド・プリンセス号、二月五日以降にも感染が広がっているのではないのか、このようにも思うところでございます。そうした疑いがあるのではないのかというふうに思うわけです。

 実際、先週金曜日にも私、この場で質問させていただきました。内閣官房の職員の方と、それから厚生労働省の職員の方、一名ずつ感染をされているという報道があって、しかも三人一組で活動されている。三人一組でお二人が感染ということであれば、もう一人の方も感染の可能性が非常に高いのではないのか、こういうふうに申し上げましたが、いや、その心配はございません、そういった御答弁でした。しかし、この三連休の間、調べてみたら、やはり感染をしていたというような報道もございます。

 こうしたことも踏まえれば、やはり船の中で、船内感染といいますか、完全に防ぎ切れたとは言えないのではないのかというふうにも思うわけですが、この点、いかがでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 ダイヤモンド・プリンセス号の乗員乗客の皆様には、感染拡大防止のために、アドバイザリーボードの承認を受けた船内での過ごし方の行動基準の注意事項を守っていただき、感染拡大の防止に御協力いただいてまいりました。加えまして、発熱等の症状のある方が確認された場合にはPCR検査を行い、陽性の方は医療機関に搬送し、船内での感染拡大のリスクを下げるための対策を講じてまいりました。

 このように、ダイヤモンド・プリンセス号からの下船につきましては、専門家の御意見も踏まえつつ、そのオペレーションを行ってきたところでございます。

 このような中で、二月十九日の専門家会議の議論を踏まえ、二月二十日から配付した健康カードにおきまして、二週間の間は不要不急の外出を控えていただくようにもお願いし、さらには、二月二十二日の夜に下船された方のうち一人が新型コロナウイルスに感染している事実が明らかになったことを受けまして、翌二十三日に厚生労働省より各都道府県等に事務連絡を発出し、保健所等からの健康フォローアップにつきましては毎日実施すること、無症状の場合であっても公共交通機関の利用は避けることを対象者にお願いすること、周囲と接触する場合は可能な限り長時間の接触は避けることを対象者にお願いしていることを都道府県等にお願いをしておるところでございます。

 厚生労働省といたしまして、引き続き感染拡大防止と重症化予防に全力を向けて取り組んでまいりたいと思います。

櫻井委員 ただ、そもそも、二月五日以降に船内に入られて勤務されているような方々についても、これは政府の職員の方でございますが、感染者が相次いでいて、既に六名の方が感染していたという報道も出ております。

 まず、この六名の感染者、これは本当、こういうことで、事実としてそのとおりでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、政府職員として四名、検疫官として二名、そして、全体を通しますと、御協力いただきましたDMATの方から一名ということで、政府関係は六人、プラスDMATの方が一人ということで、計七名というふうに承知しておるところでございます。

櫻井委員 こうした事実を踏まえると、やはり船内でも感染が拡大していたのではないのか、感染があったのではないのか、このように懸念をするところです。

 また、先ほど事務連絡で発出されたということでございますが、そもそも、帰宅をされるときには、公共交通機関を使っていいですよということで横浜駅まで送っていかれたということでもありますので、本当に対応が後手に回っているなと。横浜駅まで送っておいて、おうちに帰ってから、やはり不要不急の外出はやめてください、公共交通機関を利用するのをやめてくださいと。いや、そんなことを言われたって、もう使っちゃったよ、こういうことになってしまっていると思います。

 こうしたことも踏まえれば、政府の対応が後手後手に回ってしまっている、感染拡大防止としては、やはり現状を的確に把握していくことが重要ではないのか、このようにも考えるわけです。

 ですから、やはりこの新型コロナウイルスの検査について、もうこれは、例えばインフルエンザの検査のように、保険適用というようなことも検討するべきではないのか。そして、医師が必要だと、現場のクリニックのお医者様が必要だというふうに判断すれば検査できるような、こうした体制、仕組みづくりをつくっていく必要があるのではないのかと考えますが、これはいかがお考えでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 議員御指摘のPCR検査につきましては、感染のおそれがあるという判断があれば、いわゆる感染症法に基づく検査として実施はできますし、現在、このPCR検査の体制整備も着実に進めておるところでございます。

 このPCR検査、感染拡大防止を目的とした公衆衛生施策として行う場合は、先ほど申し上げたとおり費用は公費負担となります。ただ、今後、仮に、更に患者数が増加をし、検査の主たる目的がおのおのの患者様の診察、診療に移っていくという場合には、今御指摘のとおり、医療機関、民間検査会社におけるPCR検査を実施し、これについて保険適用を行うべきではないかという対応も今検討すべきではないかというふうな認識はしておるところでございます。

 現時点では、患者数の変化あるいは医療機関、民間検査会社の体制を踏まえると、直ちに保険適用を行うべき段階ではないと考えているところでございますけれども、今後、患者数の変化などを踏まえながら、必要な対応に臨機応変に判断をさせていただきたいと思っておるところでございます。

櫻井委員 これまでの政府の対応、後手後手に回ってきたというふうに言わざるを得ないと思うんですね。

 今回のこの検査のことについても、今申し上げた検査についても、結局のところ、今そういう、いわゆる報道されているような症状が出ているから、もしかしたらかかっちゃったのかな、でも、どこからかかったかわからないし、そういう状態でお医者さんに行っても、お医者さんが保健所に連絡しても検査してもらえない、何かそういう報道もあるわけです。

 実際、もっと手前で、私の友人なんかでも、どうもちょっと家族が感染しているかもしれない、でも、病院に行っても結局検査してもらえないし、検査してもらえなかったら的確な治療も受けられないし、だから、もうしようがないと家に閉じこもって、ちょっともうしんどいけれども家で安静にするしかないよな、こういう方も結構町中にはいるんじゃないのか、こういうふうにも思うわけですよ。ですから、もう既にその次の段階に移りつつあるのではないのか。ぜひとも、先手先手の対応をしていただくようにお願いいたします。

 この新型コロナウイルスの問題については、きょうは予算委員会の分科会も開かれておりまして、そこで同僚の議員が質問いたしますので、私の本件に関する質問はちょっと一旦ここで区切らせていただいて、経済、財政、税制についての質問に移らせていただきます。

 本日は、日本銀行からも理事に来ていただいておりますので、ちょっとお尋ねをいたします。

 先週金曜日に、麻生財務大臣に、通貨の問題についてお尋ねをいたしました。そのときには、先週は、この日本の為替相場でございますが、円・ドルの相場でちょっと円安に突然振れるようなことがございました。そうしたことを踏まえて、麻生大臣にお尋ねをしたんですが、麻生大臣は、通貨のこと、為替のことについてはうかつに答えられない、こういう御答弁でした。

 日本銀行にもちょっとお尋ねをしたいのは、こうした円安に振れたときに、この通貨防衛、これまで為替というと何か円高が進み過ぎるのを防止するというのが、最近のこの数十年の日本の通貨の課題であったわけですけれども、ここに来て、円安に振れたときにどう対応するのかということも一つ大きな課題になりつつあるのではないのか、こういうふうに思うわけです。

 利上げをすると、年間百五十兆円もの新規発行の国債がある中で、利払いの負担で財政を圧迫するのではないのか。また、日本銀行は日本国債をたくさん抱えているわけですが、そのバランスシートの反対側には、それに対応する当座預金をいっぱい抱えている。この当座預金の利払いの負担というのも大きくなってくる。

 こうした現状を踏まえると、日本銀行としても、利上げというのは、仮に、それこそ円安が進んで輸入物価インフレが起きて、そして、もう二%を達成しちゃいましたということ、達成した、こういう輸入物価インフレというので達成するというのは悪い形での達成の仕方だと思いますが、そうしたときに、では、日本銀行が、もう二%達成したからこれ以上こうした悪性のインフレが起きるのはまずいということで、金利を上げようと思っても上げられないんじゃないのか、こういうふうにも心配するんですが、日本銀行としての御所見をお願いいたします。

前田参考人 お答え申し上げます。

 日本銀行の金融政策運営につきましては、これまでも申し上げておりますように、為替相場そのものを目的とするものではございませんで、物価安定の目標を実現するために行っている、こういうものでございます。

 このため、円高であれ円安であれ為替相場の動向やその背後にある諸要因が、国内の金融市場や実体経済、ひいては長い目で見た物価にどのような影響を及ぼすか、こういうことを総合的に判断した上で、必要であれば適切な措置を講じていくということになろうかと思われます。

 いずれにしましても、日本銀行としては、為替相場を含め、今後の内外金融市場の動向を注意深く点検していく考えでございます。

櫻井委員 かつての日本であれば、為替相場が円安に振れるとなりますと、輸出産業がそれで今度、為替で利益を上積みする、上振れさせることができるということで、貿易の方で輸出が伸びて、それでバランスをとるというようなことはあったんだと思いますが、今やそうした貿易黒字というか輸出産業というような物づくりの部分については、もう海外に生産拠点が大分移ってしまって、なかなかそうした形での反発力というのも弱くなってしまっているのではないのか、こういうふうに思うわけです。

 ですから、通貨の問題については、きょうは本当は黒田総裁に来ていただきたいなと思ってお願いをしていたんですが、やはり出張帰りでまだちょっと準備が整わないということで、きょうは理事にいらっしゃっていただいたわけですけれども、また黒田総裁がいらっしゃったときにこうした金融政策、金融のことについてまたお尋ねしたいというふうに思います。

 続いて、GDPの予測について。先週金曜日の質問で資料だけお配りして、結局、ここまで到達できなかったわけですけれども、資料二の方で、名目GDP成長率の予測と実績という資料をお配りしております。

 先週、同僚の階議員がこれにちょっと、ちらっと言及いただきましたけれども、年度を前に予算を立てるときに、政府の経済見通しとして名目GDP成長率の予測を立てています。それが一年たって実績はどうだったのかというのを復習したところ、過去二十一年、一九九八年から二〇一八年度までの二十一年間で、上振れしたことが六回、下振れしたことが十五回ということで、六勝十五敗と大きく負け越しているということでございます。

 これはぴったり当たるというのはなかなか難しいので、普通に考えれば上に振れるか下に振れるか、二つに一つなわけですが、上振れと下振れ、五分五分であればなかなかいい予測ができているなということになるんですけれども、このように下振れの方が圧倒的に多いということになると、やはり多目に見積もっているのではないのか、高目の予想を出しておいて、後で、決算のときには、終わった後は知らぬ顔をしている、こういうことになっているのではないのか、そんなふうにも何か疑いたくなってしまうわけです。やはりフェアな予測をしっかりできるようにしていかないといけない、五分五分になるようにしていかなきゃいけないんじゃないのかというふうにも思うわけです。

 また、GDPが思うように上がっていかないということの原因の一つには、先週金曜日の質問でも少し言及をさせていただきましたが、資料一にありますとおり、実質賃金が上がらない、こういう状況が大きな原因の一つとしてあるんじゃないのかというふうに思うわけです。

 そこで、ちょっと大臣にお尋ねをしたいんですが、やはり、こうしたGDP予測、政府の経済見通しで出しているわけですけれども、過大の見積りということになると、結局、これに基づいて予算編成をしてしまいますと、税収見通しとかも違ってきたりということで、なかなか財政の方の見通しも立たなくなってくる。やはり、ちゃんとしたGDP予測に基づいて予算を編成していかないといけないというふうに考えるんですけれども、このような過大見積りに基づいて予算編成していて大丈夫なんでしょうか。

麻生国務大臣 見積りの方については、これは経企庁というか内閣府にちょっと聞いていただかぬと、私どもの所管ではありませんので、そちらの方は聞いていただくとして。

 消費税率の引上げ、例えば増収分等々いろいろ、今、私どもやらせていただく令和二年度の予算の税収見積りということになるんだと思いますけれども、少なくとも今の経済見通し、それに基づいてある程度やらせていただくんですが、税収について申し上げさせていただければ、これは、安倍政権が予算編成を行った平成二十五年、ですから二〇一三年以降、決算が当初予算における税収というものを上回ったのが五回です。

 だから、経済予想の方はそうでしたけれども、税収見積りの方はきちん合っておった。いかに俺たちが優秀なのかと言っているんじゃないですよ、間違えないでね、後で適当な話をつくられると困るから。そういうことを言っているんじゃない、事実を申し上げております。

 下回ったのは一回です。これは二十八年度のときにあったので、あのときは、御存じのように上海のあれやら何やらありましたので違いましたけれども、過度に楽観的な見積りというものを行っているのではないということだけは申し上げられると思っております。

宮下副大臣 先生御指摘の政府経済見通しについて御説明を申し上げたいと思います。

 御指摘のこの二十一年間につきまして、経済見通しと実質の関係、改めて比較しますと、名目GDP、お配りいただいたものでは二十一回中六回、実質GDPでは二十一回中八回政府見通しを上回る、こういうことが客観的なところであります。

 ただ、下回った場合の状況について背景を見てみましたところ、実績が政府見通しを比較的大きく下回った年としては、アジア通貨危機、これが一九九八年度、それから二〇〇一年度にはITバブルの崩壊がございました。それから、二〇〇八年から九年は世界金融危機がありました。また、二〇一一年は東日本大震災という予測困難な下方ショックが生じておったところであります。近年では、二〇一六年度に中国を始めとしますアジア新興国等の経済の減速がありましたし、また熊本地震等の自然災害もありました。二〇一八年には西日本を中心とした豪雨等の自然災害、また世界貿易の減速が景気を下押ししたという事実がございます。

 こうした特殊要因を除きますと、実質GDP成長率でいいますと、二十一のうちこれら六回を除いて試算してみますと、十五回中八回上回る、名目だと十五回中六回上回る、こういうことでありまして、必ずしも政府経済見通しが楽観的であるとは考えていないところであります。

櫻井委員 ちょっと別な角度から質問させていただきますけれども、こうしたこともあって、来年度当初予算では景気対策として七・六兆円を計上されております。GDPの押し上げ効果としておおむね一・四%、こういうふうにも政府の方で発表されております。大体GDPが五百六兆円ぐらいですから、これに一・四%の押し上げ効果ということになりますと、七・八兆円ぐらい、掛け算しますとそうなります。

 七・六兆円を使って、この政府支出の乗数効果を考えますと、七・八兆円ということではちょっと余りにも低いんじゃないのか、使った分しか市中で経済効果はないというんだったら、何か、ほとんど何もやっていないのも同じじゃないのか、このようにも思うんですけれども、もう少し乗数効果があるような、効果があるような費目、使い方をしなきゃいけないんじゃないかと考えるんですが、御見解をお願いします。

宮下副大臣 お答えいたします。

 本経済対策の効果につきましては、御指摘のように、国費七・六兆円の予算措置による直接的な需要押し上げ効果としては一・四%程度、金額に換算すると七兆円台半ばと試算してございます。

 ここで、公共事業等における乗数効果につきましては、これまでの経済対策もそうでしたけれども、一応、乗数効果一程度ということで試算をしております。

 この背景ですけれども、国費七・六兆円の中には、出資金でありますとか金融措置でありますとか、こうしたものが含まれておりまして、直接すぐに需要として出てこない、直接需要の押し上げに寄与しないという項目も含まれているということが一つあります。

 それからもう一つは、足元の景気対策の対応ということもありますけれども、新時代を開くための対応ということの両立も目指しておりまして、単に需要を追加するのではなくて、ワイズスペンディングという考え方のもとで、まず、中小企業、小規模事業者の皆様におけるIT、デジタル技術の実装や普及への支援をするとか、また、将来の競争力の核となるポスト5Gの情報通信システムや半導体技術の開発を支援するとか、また、量子、AIを含む新たなフロンティアにおけるイノベーションの促進を図る、また、新たな時代を担う人材投資に向けまして学校のICT化の促進を図る等々、ソサエティー五・〇の将来的な実現につながる、いわば未来への投資の促進策を重点的に盛り込んでおります。

 一方で、先ほど来先生御指摘のように、新型コロナウイルス感染症が経済に与える影響、これは十分注視しなければいけないと考えます。こうした海外発の下方リスクを確実に乗り越えるべく、本経済対策を迅速に、かつ着実に実行してまいりたいと考えているところであります。

櫻井委員 経済対策を考える上で、結局、我が国の経済でボトルネックはどこにあるのかということだと思うんですね。

 例えば、かつてのように、今も一部の地域で、私の地元の近くでもありますけれども、渋滞していてどうにもならない、渋滞していてトラックで運ぶのに四時間かかる。これが渋滞解消して二時間で運べるようになったというふうになると、それはそれで非常に大きな効果があるわけです。

 ただ、今の我が国の大きなボトルネックの一つは人手不足ということだと思うんですね。働く世代がどんどん減ってきつつあるというところの中で、例えば渋滞を解消することができれば、確かに運転手、今はもう運転手の分野でも人手不足だ、こういう話になっていますから、そこを何とか緩和することができるとか、あと、それより何より、例えば介護の分野、介護離職ということで毎年十万人程度、そういった、やむなく仕事をやめざるを得ない方がいらっしゃるのではないのかとか、また、働きに出たいという子育て世帯、子育て家庭の中で、しかし、待機児童になったから働きに出られなくなっちゃったと。

 こういうところを支援することによって、働きたい人が働き続けられる、また効率よく働けるようにするというところが経済対策として非常に効果があるんじゃないのかというふうにも考えるので、こうしたところにもちょっと目を向けて、従来の発想とは違う観点で取り組んでいただければというふうに思います。

 その上で、ちょっと次の質問に移らせていただきますが、ことしの安倍総理の施政方針演説の中で、妊娠、出産、子育てへの切れ目ない支援を行います、来春までに子育て世代包括支援センターを全ての市町村に設置します、所得の低い一人親世帯への支援を拡大し、子育てしやすい社会づくりを更に強化します、希望出生率一・八の実現を目指し、深刻さを増す少子化の問題に真正面から立ち向かってまいりますと。

 少子化の問題に真正面から立ち向かう、そうした予算の内容になっているのかということについてちょっと大臣にお尋ねしたいと思いますが、こうした、正面から立ち向かう、そういう内容になっていますでしょうか。

麻生国務大臣 この人口減少とか少子高齢化という話は、これは中長期的には日本にとって最大の国難と言えるほどの話なんだと、私どもは基本的にそう思っております。

 したがって、これは、正面から取り組むのは当然の話なので、しかもこの問題はかなり長いスパンがかかりますので、財政とか税制面とかいうような話だけじゃなくて、文化面とかいろいろな意味で総合的に取り組んでいく必要があるんだと、私どもはそう思っております。

 その上で、税の役割の果たし方に限ってのお尋ねですけれども、この点につきましては、税制優遇を与えるということには、それはそれだけに限られているわけではなくて、少子化対策の財源というものをしっかり確保するということも税が果たすべき重要な役割なんだと思っておりますので。

 実際に、御年配の方も若者も、全世代型社会保障制度の構築に向けて、安定財源を確保するための十分な対策というものを考えないかぬと思っておりますので、昨年の十月の消費税の税率一〇%もその一環としてやらせていただいております。

 これによって得た増収分というものを活用して、幼児教育とか保育の無償化とか、待機児童の解消とか、いろいろ受皿を整備させていただきましたし、よく言われております高等教育の教育費の無償化等々を実施するなど、これは少子化対策に取り組むこととしておりますので、そういった意味で言われれば、今の御質問に対しては、正面から取り組んでいるというものの一端を申し上げさせていただいたところです。

櫻井委員 ちょっと時間になりましたので、最後の質問にさせていただきます。

 資料三を見ていただきますと、所得再配分前と所得再配分後のジニ係数の比較をさせていただいているところです。高齢者の層についてはそれなりに所得再配分が行われているんだけれども、子育て世帯に相当するような年齢層については十分に行われていないのではないのか。

 また、資料四を見ていただきますと、子供の貧困率、所得再配分前と後を比べると、日本はほとんど改善していないというのにもあらわれているわけです。

 こうしたところは、まさに、税の機能としての所得再配分、これがまだまだ日本は弱いのではないのか。さらに、もっと申し上げると、昭和の時代にはそれなりにあったものが、平成の三十年間に随分と後退してしまったのではないのかというふうに思うわけですが、税の所得再配分機能の復活、強化が必要だと思いますが、大臣に最後、御見解をお願いいたします。

麻生国務大臣 この所得配分後のジニ係数の比較ですけれども、高齢世代に比べて、子育て世代を始めとする現役世代の低下幅が小さくなっている、これは事実であります。これはよく昔から言われているところですが。したがいまして、高齢世代に対するいわゆる公的年金、介護保険等の社会保障給付も影響していると考えられますので、これは単純には比較することは難しいんですが。

 その上で、今、我々は、御年配の方も若者も安心できる、いわゆる全世代型社会保障制度の構築というのをやらせていただいておりますが、今般の消費税の引上げによって、その増収分を活用して、先ほども申し上げましたけれども、幼児教育とか待機児童とか等々の受皿の再調整、いろいろやらせていただいております。と同時に、二〇二〇年の四月から、高等教育の無償化というものも、そういった支援が必要とされる御家庭のお子さんたちへ実施するなどといたしておりますので、これらの施策というものを今後着実に実施をしてまいりたいというように考えております。

櫻井委員 本日も、用意した資料五、六、七のところまでたどり着きませんでしたので、またの機会に、こうした問題についても質問させていただきます。

 本日はありがとうございました。

田中委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 共同会派立国社の野田佳彦でございます。

 きのう、大臣はG20から帰ったばかりでごらんになっていないかもしれませんけれども、テレビ東京で夜の九時から十一時半まで、吉田茂総理が日本の独立を獲得するために苦闘をする姿を描いた長時間ドラマがございました。準主役が、大臣のお母様で、吉田和子さん、麻生和子さん、時折太郎坊やも出てくるんですよ、そこで。幾つかせりふがあったんですけれども、おもしろかったのは、せりふのない場面で、ハットをかぶってあのおじいちゃんの葉巻をなめているところが出てきまして、これはだから、制作側のいたずらかもしれませんが、これが麻生太郎だぞと示しているところだと思いました。

 という、何か、坊やを見た直後にきょうは成熟した大臣と相まみえることになりましたけれども、よろしくお願いをしたいと思います。

 まずは国税庁にお尋ねしたいんですけれども、今、各省それぞれ、いわゆる国民が一番心配をしている新型コロナ対策、それぞれが御奮闘いただいていると思うんですが、今、確定申告の時期ですよね。所得税の確定申告は二月十七日から三月十六日まで。私も先週、先ほど海江田さんがおっしゃっていた、税理士会の皆さんが無料相談を今やっているんです、その現場へ行ったんです。ほぼ毎年行っているんですけれども、ことしはやはりそんなに数が多くなくて、みんな白いマスクをかぶっているという状況でした。

 恐らく今、全国の確定申告の会場は例年より少ないかもしれませんけれども、普通は例年だと四百万人ぐらいの方が来られるそうですよね。これだけ不特定多数が集まる場所ですから、相当にこの対策というものを講じていかなければいけないと思いますが、今どういう取組をされているか、まずお尋ねをしたいと思います。

田島政府参考人 お答えをいたします。

 確定申告会場における感染防止策につきましては、新型コロナウイルスに関する厚生労働省の公表資料、これに加えまして、新型インフルエンザ等の感染症が発生した場合の基本的な対応方針として作成いたしました国税庁の行動計画というのがございますが、こうしたものなどに定めた施策を徹底しているところでございます。

 具体的には、今先生おっしゃいましたけれども、職員に対する手洗い、うがいの徹底、マスクの着用の励行、また、アルコール消毒液の設置、来場者に対して手洗い、うがい、マスク着用のお願いを行っており、また、確定申告会場で発熱等の自覚症状が明らかになったという来場者につきましては後日の来場を促すなどの対応を行ってございます。さらに、発熱等の症状が税務職員に見られる場合には、休暇取得を促し、事務に従事させないという徹底をしているところでございます。

 今後とも、感染状況や政府の方針を踏まえ、適切な対応に努めてまいりたいと考えてございます。

 なお、国税庁におきましては、スマートフォン等によるe―Tax、これは確申会場に出向かなくても自宅から簡単に申告を行っていただけるということで、これは環境整備にも努めておりますので、ぜひ御利用いただきたいと考えてございます。

野田(佳)委員 改めてe―Taxの推進というのは大事だなというふうに思いますけれども、もう一つ、これは更問いになっちゃって申しわけないですけれども、思い浮かんできたやつで、税金の払い過ぎた還付の申請というのは、これは別に期間中じゃなくてもいいじゃないですか。あれは五年ぐらいさかのぼってできますよね。ということを考えると、必ずしも三月十六日までじゃなくて、新型コロナウイルスが終息を見るとかおさまってくるというところまでそういう人は来なくてもいいですよというような周知というのはできないんですかね。どうですか。

田島政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおり、還付申告に関しましては五年間の猶予がございますので、この間に申告をしていただく必要はございません。

 こうしたものの周知も含めて、また、e―Taxの推奨も含めまして、しっかり広報、周知をしてまいりたいと今考えているところでございます。

野田(佳)委員 済みません、更問いにもかかわらずお答えいただいて。

 何か、いつもどおりに真面目に来ていただいてというよりも、還付については、これは本当にもっと御案内した方がいいかなというふうに思いますので、あわせてお知らせをいただけるようにお願いをしたいというふうに思います。

 身近なところの新型コロナウイルス対策の話をお聞きしましたけれども、もう既にこれは海江田さんも櫻井さんもお聞きになった、G20でどういう議論があったかを、通告では出しているんですよね、だけれども、お二人の質問で大体、世界の皆さんも、危機感は共有していると思いますし、あらゆる政策総動員、そういう問題意識は共有できたというところまではよくわかりました。中国不在の中で議論の深めようがないこともよくわかりましたので、ちょっと視点を変えた質問をさせていただきたいと思います。

 通告に、なくなっちゃいますけれども、よろしいでしょうか。

 というのは、中国も物すごくこれは注目をされていたと思うんだけれども、私は、次いで今、日本も注目されていると思うんですよ。残念ながら、大型クルーズ船での対策というのは、海外のメディアでは随分ひどい批判を浴びています。それに伴って、日本人の入国禁止だとか、あるいは日本に向けての海外渡航を制限する国が残念ながらふえてきているんです。中国に次いで日本に対する見方というのも今厳しくなっているときですから、相当日本の説明というのも大事だったんじゃないかと思います。

 これは、インフォーマル、フォーマル含めて、多分いろいろな人とのやりとりの中で、日本はどうなっているんだという問合せが多かったんじゃないんですか。私も、たまたま東日本大震災のときの財務大臣で、そのとき、G20とかAPECとかに出ると、本業の財政とか何かの話じゃなくて、大震災に向けての日本の復旧復興はどうなっているとか、原発はどうなっている、そういう問いかけに答えることが多かったんです。

 今回もそういうことが多かったと思うので、逆に大臣がどういうお答えをしていたかということも大事だったと思うので、その辺のやりとりがあれば御披露いただければというふうに思います。

麻生国務大臣 この種の会議に出ると、今話題のトピックが財務とかそんなのに関係なくいろいろ出てくるのはいつもの話なんですけれども。

 今回も、出てきたことはもう間違いなく、いろいろなところから出ました。日本に関して、それほど、おまえのところは大丈夫かという質問は、これはほとんどなかったんですが。

 やはり、私らから見て、この種の対応というのは、なかなか、世界基準というのはどうなっているのかよくわかりませんけれども、この船、考えてみたら、野田先生、船籍はイギリスですよね。そして、キャプテン、船長もイギリス人。それで、イギリスは何一つ発言しませんものね。だって、これはもともと責任はおまえらじゃないのと、みんなおなかの中で言うんですけれども、イギリスは一言も、オフィシャルな、今言わないところが何となく、この世界の常識というのはこれなのかねと思いながら。

 今、日本はその対応に追われて、割を食ったのは日本じゃないかといろいろ思っている方もいっぱいいらっしゃるんだそうですし、横浜なんかは迷惑のきわみといっていろいろ言っている人もいられるのはよくわかるんですけれども。

 私どもとしては、この種の話がなれているわけではありませんけれども、少なくとも、日本としては、いろいろな対応として、中国の武漢に迎えに行ったチャーター便の中には、大量のマスクと大量の防護服を、支給して、積んで出しておるわけですね。あれを積んだから着陸させたかとかいろいろな話がないわけではありませんけれども、しかし、中国の新聞を読んでいれば、武漢が日本から救出されたなんて報告は一つもありませんから。日本から大量にマスクが来た、防護服が来たということは、今回は珍しく出しております、それは。それは事実、出していますから。今までだったらもらったものは絶対言わないところですけれども、それが今回は言っておる、これは事実です。

 だから、そういった意味で、こういったことを、いろいろ私どもとしては対応を考えないかぬところだとは思いますけれども、今の段階で、今やれている範囲をきちんと報告をしていますけれども、ほかの国に比べて、きちんとした対応をやる分だけ出てくる確率は高いので、ほかの国並みにすればもっと低くなったかもしれないじゃないかとか、いろいろな意見は、もういっぱい、我々素人を含めまして、いろいろな方がいろいろなことを言っておられるのは事実として存じ上げておりますけれども。

 いずれにしても、今、私どもとしては、きちんとした情報というものを伝えないと、何となくみんなわかっておるんじゃないかといったって、世の中はわかっていてもわからないふりをする人もいますし、そういった意味では、私どもとしては、もっと、いろいろな意味で積極的にこういった情報、今やっている事実をきちんと伝えていくというのは更にインターナショナルにやっていく必要がある、私も同じ意見です。

野田(佳)委員 この時期の財務大臣というのは、経験者しかわからないと思うけれども、大変ですよね。やはり、予算委員会があって、財金で議案を抱えて、しかも国際会議に行って、多分、今、一番、超ハードな状況だというふうに思いますので、本当に、体調管理されて頑張っていることには敬意を表したいというふうに思いますが。

 インターナショナルな場で説明をしなければいけない、ほかの閣僚もいっぱいいますよ、本当は。だけれども、残念だったのは、麻生大臣は違うんですが、関係閣僚会議に欠席する人が出てきたり、あったじゃないですか。小泉大臣ばかりが目立っていますけれども、出入国管理の法務大臣とか、今は学校の先生とか子供も感染してきているような中での文科大臣とか。これはやはり心配ですよ、こんな状況だと。

 やはり副総理として、そういうことのないように、インターナショナルな説明をするためにも、つかさつかさでそれぞれ全力で頑張っているということを国民に示すためにも、やはり副総理が先頭に立って、ほかの閣僚にもきちっと注意をしてほしい、これは質問じゃありません、要請をさせていただきたいというふうに思います。

 続いてでありますが、税制改正に入っていきたいと思うんですけれども、質問項目、何にしようかと思ったけれども、今回結構困りまして、困ったというのは、来年度のこの税制改正の項目というのは大玉がないじゃないですか、大玉が。これぞというテーマがなくて、近年になく小粒なんですよ、小粒。

 調べてみたら、二〇一三年度、これは国税、地方税合わせた増減収が五千八百七十三億の減収です。二〇一四年度が千七百九十六の減収、二〇一五年が千二百八十億の減収、二〇一六年度が五百六十五億の減収、二〇一七年度が四百二十一億の減収、二〇一八年度が二千七百十四億の増収、二〇一九年度が五百六十六億の減収なんですよね。そこまでずっと大体三桁、多いときは四桁です、億単位の。

 次年度、二〇二〇年度は、これは国、地方合わせて九十三億の増収。国税だけだと八十億、これだけ見ても、税制改正の中ではちょっとスケールの小さい感じですね、極めて。

 これはだから、第二次安倍内閣になって以来、最小規模の税制改正です。何でこうなっちゃったんですかね。

麻生国務大臣 意図的に最小にしてやろうと思って計画したわけではないんですが、結果としてそうなったということだと思いますが。

 私どもとしては、経済が持続的に成長していくための基盤というものをやらないかぬということで、先ほど話題になったオープンイノベーションというのをやらせていただいたんですけれども、やはり、かなり企業というのは、大きな企業というのは大体自前で何でもやりたがる、別にトヨタに限らないで、新日鉄でもどこでも皆そうです。自前で、ほかのところの技術をやろうとしない。

 しかし、現実問題として、結構、イノベーションをしている若い人たちその他、ベンチャーとしていっぱいおられますけれども、そういった人たちに対して金を出すいわゆるファンドができる、その技術が欲しいなと思っていても、それに一緒にというのをなかなかできないというのが、実際、企業文化として日本はありますので、そういったときの税制措置をやらせていただいたり、5Gというのがいろいろ話題になっておりますけれども、これもかなり、先ほどの御質問にあっておりましたけれども、国税として一五%というのをやらせていただくというのは、これはそれなりの度胸も要ったところなんですけれども、沖縄の特区とかいろいろな形で、これまで一五という例がないわけではありませんので、そういったことをやらせていただいたりして、それなりの新しい政策税制を創設させていただいたので、それでも、スクラップ・アンド・ビルドということをある程度考えてやらせていただきましたけれども。

 制度の創設以来となるようなものでいえば、連結納税制度というものの抜本的な見直しとか、一人親に対するいろいろな課税の方法とかいったものが、多額の増減収が生じるものではありませんけれども、いろいろな形をやらせていただいたと思っております。

 いろいろ、たばこに係る税金の話とか、子会社の配当課税の話とか、これは租税回避に向けた、いろいろな世界じゅうで話題になっている部分に関しましてもやらせていただいたんですけれども、これも今御指摘のありましたように、多額の増収、減収というのが起きたわけではありませんので、そういった意味では、私どもとしては改正内容の重要性というものが極めて大きな話だと思っておりますけれども。

 税収の絶対額で言われれば、御指摘があったように、いろいろなところに関して、今までに比べて税収の減増が大きくなかったではないかという御指摘は、そのとおりだと思っております。

野田(佳)委員 そういう比較的小ぶりの税制改正の中の中身についてもこの後ちょっと触れたいと思いますけれども、むしろ、まず最初にお聞きしたいのは、税制改正の項目に逆に入れられなかった問題、一つ取り上げたいんですね。それはやはり金融所得課税の強化についてであって、これは長年議論をされてきて、そろそろ時期に来ていると私は思うんですよ。

 そろそろというのは、いわゆる金融所得課税、二〇〇三年本則で二〇%となりながら、一〇%引いての軽減税率で暫定的にスタートしまして、累次にわたってその期間を延ばしてきましたですよね。

 この間の本会議で、安倍総理がいわゆる代表質問に対するお答えで、二〇一四年に我々は金融所得課税をやったじゃないかと、格差是正をしたのは自分たちの手柄のように言っていました。

 実施時期はおっしゃるとおりで、安倍総理、麻生財務大臣のときですけれども、いろいろあったけれども、本則に戻した、その政治判断をしたのは私のときというか、正確に言うと自見金融大臣と財務大臣であった私が覚書を交わして、期間延長を一年にするか二年にするかいろいろ議論があったんですけれども、二年延長して二〇一四年には上げましょうということをやりました。

 自見さんは、交渉のときに結構唾を飛ばす方なんですよ。興奮するとなお、口角泡を飛ばすというか、唾が飛ぶんですね。目に入ってもう大変で、それで二年延長で私は折れちゃったんですけれども、負けたんですけれども、それで決まったのが二〇一四年の一月なんですよ。

 何を言いたいかというと、そんなやりとりは、財務大臣と金融担当大臣がいるから覚書で交わしたりしていつまでやろうと言うんだけれども、財務大臣兼ねて金融担当大臣をやっていると、いつまでも決め切れないんじゃないですか。

 そろそろ、私は、もう二〇から二五ぐらい上げていくような時期だと思いますよ。と思いませんか。率直にお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 同じ選挙区というか同じ地方にいましたので、多大な被害に遭っていましたので、おっしゃる意味はよくわかります。

 今の、議事録から削除しておいて。済みません。

 この金融所得課税というのは、確かにおっしゃるように、二〇一四年に一〇から二〇ということになったんですけれども、一定の回復はあったけれども、簡単には、前はもともと二〇だったやつは、下げていた分を、一〇を二〇に戻しただけじゃないかという御意見は全くそのとおりだと私どももそう思っております。

 したがいまして、今のお答えになりますけれども、我々、傍ら先ほどちょっと海江田先生の御質問の中にもありましたNISAの話ですけれども、今、基本的に預貯金、個人金融資産一千八百七十兆円とかいわれるうち、高齢者の方々の持分がその約半分以上、六割以上になっていて、かつその中の現預金の比率は五五%という状況は、これはどう考えても、ちょっと、かなり偏っている。何でそれが株やらその他のところに回らないのかと、アメリカのがこうじゃないかと先ほど海江田先生の資料に出ていましたけれども、そのとおりなんだと思います。

 高齢者の方に聞きますと、株屋にだまされたという経験をみんな言うんですよ。だから、まただまされるようなことは絶対したくないと言ったり、野村のノのつくものは絶対要らないとか、それはもうはっきり言いますから、みんな。もう、私、こういうのは個別に歩かないと話を信用せぬ方ですから聞くんですけれども、したがって、難しいんです、なかなか。

 ですけれども、こういったもので少しずつ少しずつ若いときからやっておくということにしておかないと、ある程度年をとってから始めたって大体ろくなことにならぬともいう嫌いもありますので、私どもとしては、この点に関しては、十分に考えて、そちらのことをやらないかぬなと思っておりますのは、少々気が引けているところではありますけれども。

 令和二年度の税制改正の中におきまして、これは所得課税としては今回行っておりませんけれども、今度の政府・与党の税調の中で、この問題については検討するということを私どもとしても思っておりますので、御指摘のところ、言われるように、これは幾らにするかは別にいたしまして、この問題についてはさわらないかぬことになるだろうと思っております。

野田(佳)委員 全くそのとおりであって、給与所得と比べて金融所得の優遇というのが際立ってきちゃっています、もう。もう看過できないと思います。

 その所得、両所得のバランスをとるという意味からも、やはり、金融所得課税、所得税改革の中では、今一番の項目ではないかと思います。どんどんおくれないように、ぜひお願いをしたいというふうに思います。

 これは、質問にしようかどうか、さっきから内部留保の問題、出ていましたですよね、内部留保、現預金の話。これは海江田さんの質問にかぶってしまうので、では、意見だけというか、これは古本さんも先週の質問で言いましたかね、内部留保がいっぱいたまってきたと。

 それを取り崩すには、それはいろいろ政策誘導するためにいろいろ税制措置をこれまでとってきましたよ、いろいろと。我々の政権のときもいろいろやったし、特に、今、第二次安倍政権になってからこの伸び方がすごいですからね。だから、いろいろと、税制を通じて投資に誘導しようという動きは累次あったと思うんですが、残念ながら功を奏していないんですよね。だからいまだにふえているんじゃないんですか。四百数十兆、内部留保。現預金で二百三十兆ぐらいあるんでしょう。

 それを、じゃ、今回もある種、その内部留保に動いてほしい、回してほしいという思いから出てきているのが、いわゆるオープンイノベーション促進税制だと思うんですね。

 総括すると、なかなか税制ではものが動かないという状況の中で、オープンイノベーション、これは大事だと思いますよ、オープンイノベーションというのは、それを税制を通じて本当に促進できるのか。その意義と政策効果、今度は大丈夫だというような仕掛けになっているのかどうか、お尋ねをしたいというふうに思います。

麻生国務大臣 これは、野田先生、ちょっと結果がまだ出ていない段階で予測の話を超えないところではありますけれども、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、大企業とか、特に古い企業というのは、新しい技術やら何やらに関してはほとんど、特に自前主義の会社が多くて、新しいものを入れるとか、途中入社とか、他社のもので、子会社関係ないところからというのはなかなかやらないというところがあるんですが、そういった状況の中にある日本の企業文化の中で、この自前主義からの発想の転換として、事業革新とかみずからのあれを革新するために、このオープンイノベーションといったものに出資してとっていくということを結構やらないかぬところなんだと私は思っておるんですけれども、これをやる気にさせるのは、何となくある程度そっちの方がいいですよというのは税制でということで、今回はベンチャー企業とか言われる新しい新進の企業に対しての一定の出資に対して、所得控除というものを認める措置を設けることにさせていただいたんですが。この改正によって企業の前向きな投資が促されて、企業の生産性につながっていくのが最高の目的ですけれども。

 トヨタはやりますかね、あいつらと質問された。答え切れませんでしたね、私、正直なことを言って。しかし、あそこは結構おもしろいことをいろいろやっているのをちょっと知らないわけじゃありませんから、それは言いましたけれども。

 じゃ、日産は、どこどこの会社は。それは、みんな古い会社の名前を言われると、なかなかそういったことをやったことはほとんどない会社ですけれども、しかし、その会社は皆そこそこどでかい会社で、大きく、世界の中における影響力のでかい会社がありますので、それが、いろいろな新しい話を持っていった人の話を聞いたこともあるんですけれども、なかなか、入り口でもう全くというところが、こういったものが出てくると、ひとつおっという話を、上の方が技術屋にこういうのを検討しろ、安くなるぞ、税制でという話をしてもらうという、企業の一番上の人の姿勢というのがこれは決めるかなという感じがしないでもありませんけれども。

 とにかく、これは野田先生、どれぐらい効果があるというようなことをちょっと今の段階で申し上げる段階にはございません。

野田(佳)委員 5Gとかも含めていろいろお聞きしたかったんですが、ちょっと時間がなくなりましたので、どうも御答弁ありがとうございました。

田中委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平です。

 本日は、質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 今、確定申告が始まっております。同僚の議員の先生方も御地元でそうだと思うんですけれども、税理士会の皆さんが無料で確定申告の相談会をやっておられます。あるいは、納税協会と協力されて、JAなんか、農協なんかにも出張されて、確定申告の相談を受けておられます。歴史と伝統とはいえ、先生方も大変繁忙期の中にもかかわらず、ボランティア的に活動されることに対して敬意を表すとともに、感謝を申し上げたいと思います。

 私も毎年、応援はできないんですけれども、役に立ちませんが、激励に申告会場を回らせていただいております。その中でいろいろなことをお聞きするんですけれども、きょうは一つだけお願いを申し上げて、麻生大臣にお答えをいただけたらなというものが一つございます。医療費控除でございます。

 医療費控除は非常によくできた制度でありますし、納税者の皆さんも大変役に立っている、お世話になっているということでありますが、実際の現場に行きますと、非常に手間のかかる作業であります。場合によっては、領収書をいっぱい持ってきて、医療機関の領収書、交通機関の領収書、それが山ほどありまして、それを税理士の先生に、計算するところから始まったりするわけでございます。

 ところが、もう当然のことながら、健保組合、協会けんぽなどでは、医療の通知票というのがございます、医療費の通知。この書類を添付しますと、これだけで、明細書に添付しますと事足りるということになっていますので、その意味では業務が非常に簡素化されています。

 しかしながら、税は暦年であります。所得税は暦年であります。十二月の末に病院に行きまして、その医療費が確定するのは、当然のことですけれども、各組合で一月かかり二月かかるわけであります。そうしますと、当然ですけれども、この医療費の通知の紙には十月とか十一月とか十二月が入っていない。その分だけは結局領収書を計算しないといけないということで、せっかく通知があって一枚で済むにもかかわらず、いわゆる年の最後の一月、二月、三月の分が入ってこない。これはしようがないんです。医療費が確定するのに一定の時間がかかります。

 しかしながら、今我々はマイナンバー制度を持っています。マイナポータルという制度もあります。それで、デジタルで、仮に健保組合の方で、協会けんぽで、例えば一カ月で事務処理が終わるのであれば、三月十六日までに間に合うことは可能なはずなんですね。今はできません。今はなかなか難しいと思います。しかし、いや、本当にそのためにマイナンバーを入れて、マイナポータルで、デジタルで今納税もできるわけです、スマホで納税もできるわけですから。

 ぜひ厚生労働省と国税庁の方で御相談いただいて、将来の話だと思いますけれども、納税者の便宜のため、あるいは税務署あるいは税理士の皆さんの便宜のためにその方向で御検討いただけないか、財務大臣にお聞きをしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、岸本先生の話を聞いていてわかっている人はほとんどいられないと思うんですけれども。普通なかなか、ここの人、やったことないとわからないと思うんですけれども。

 これは、医療保険において、暦年ベースの医療費の話なんですけれども、医療費を記載した医療費のいわゆる通知を、翌年の確定申告ということになるんですかね、までに書面を発行するというのは、これはなかなか難しい、御存じのとおりなので、今言われた話が、ここが一番基本なんですけれども。

 そこで、今回の一般の令和二年度の税制改正をやらせていただくに当たって、書面による医療費通知にかえて、年中に支払った医療費をまとめて、翌年の確定申告するまでに発行が可能な、医療保険費を交付するQRコードの証明書、そして審査支払い機関の交付する書類やQRコードの証明書を添付することができるというように今度変わっておりますから、これによって、年中に支払った全ての医療費が記載された証明書というのがありますので、それを翌年の確定申告書に使うことが可能になりますので、今言われたような利便性ですな、利便性に関する問題はかなり向上につながるのではないかと思っておりますので。

 だんだんだんだん細かい話になってきますので、こういうカードを使えるならもうちょっと簡単なものにしてくれということをちょっと考えるようにするのは、今後、引き続き、改善されるのであれば、そういったところは注意を払ってまいりたいと考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 そういう意味で、少しでも、せっかくですから、このインターネットの、デジタルの社会の中で、我々がつくっている制度、フルに使っていただいているということですけれども、さらに、これは細かいので、全く周知されていません。全く現場の税理士の先生方も知らないので、ぜひその辺は御周知もよろしくお願いします。

 それでは本題に入りたいと思いますけれども、きょうは、せっかくG20から帰ったばかりの麻生大臣であられますので、国際課税の問題をお聞きしたいと思っております。具体的には遠山副大臣としっかりと議論させていただいた上で、ほとんど今国際課税の専門家になりつつある麻生大臣ともしっかりと議論をさせていただきたいと思います。

 これは皆さん御存じのことですけれども、GAFAと言われる、日本英語ですけれども、グーグルやアップル、フェイスブック、アマゾン、頭文字をとってGAFA、さらに、マイクロソフトを足してプラスMという言い方もしておりますけれども、ビッグテックと言われるアメリカのプラットフォーマーたちであります。彼らが新しいビジネスモデルをつくられた結果として、時価総額は、このGAFAプラスMで、何と昨年末で四兆七千億ドルであります。為替レートの問題はありますけれども、五百十三兆円、五百兆円を超えている、すごい、日本のGDPに匹敵するような時価総額であります。

 また、中国もプラットフォーマーが育っていまして、BATと言われまして、バイドゥ、アリババ、テンセント、これで約一兆ドル、百四兆円とか五兆円とか、為替レートの問題はありますけれども、すごい勢いで大きくなっています。

 日本ではプラットフォーマーはなかなか大きいのはありませんが、それでもまだゼロではありません。楽天さんとかヤフーさんとか、しっかりと今頑張っておられます。

 そうしますと、こういう巨大なプラットフォーマーたちと日本のプラットフォーマーが日本の国内で競争するときに、競争条件が違うと、これは大変不利なわけであります。本当に日本の企業は頑張っているわけですから、せめて競争条件を一緒にしてくださいというのが彼らの強い思いであります。その中に、この国際課税の問題というのが関連してくるんだろうと思います。

 それから、ある意味、税金の取り合いと言うと言葉は悪いんですけれども、各国の課税当局が税金の取り合いをしていく。恐らく、これから先、何が資産なのかというのが大きな課題になってきて、まあ無形資産ですよね、知的財産が、いつ、どの段階でこれが利益を生むのか、どこで課税するのかということで、これが大きな問題に既になりつつあります。アメリカの、米国の課税当局はそういう問題意識を持って去年から動かれています。

 つまり、例えば日本の企業がアメリカのマーケットでビジネスをする。そこでは当然ビッグデータを収集します。ビッグデータを収集して、それが価値を生みます、お金を生みます。その知的財産は、アメリカの消費者がいろいろなアクセスをしてデータを出しているんだから、そこで、アメリカで蓄積されている知的財産なんだから、その知的財産による利益はアメリカにもよこせというふうに考えてくるわけです。そのビッグデータがいつお金になるのか。ただ、これはビッグデータだけでは全く意味がないわけですよね、データだけでは。ある一定のアルゴリズムを通して初めて価値が出る。これが恐らくこれから課税当局の間では大きな問題になってくるんだろうと思います。

 ただ、その前に、一般的に、これまでBEPSを使っていろいろな議論が行われてまいりましたけれども、もともと、ベースとなる通常の国際課税でいろいろな論点があります。その点をちょっときょうは一つ一つ整理をしていきたいと思っております。

 まず、副大臣にお聞きしたいんですけれども、伝統的な国際課税や法人税のルールが機能しなくなってきている状況があると思います。

 一番簡単なのは、恒久的施設概念ですね。パーマネントエスタブリッシュメント、PEというのを、昔はそれを、パーマネントにエスタブリッシュされている恒久的な施設があるかどうかで、課税ができるかできないか、こういうようなことがあったわけですけれども、インターネットの社会になると、そういう恒久施設って、別に倉庫を使うわけじゃありませんし、一体それは何なんだと。そして、まさに価値が生まれる土地と納税する土地が乖離をしてくる。さらには、無形資産ですから、無形資産を移転することによって、タックスヘイブンとか税率の低い国に利益を帰属させる、こういうことが起きていくわけであります。

 このような状況に対して、これまでの日本の対応といいますか、どういう経緯があったか、副大臣の方からお答えいただけますでしょうか。

遠山副大臣 岸本委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 恐らく、岸本委員はもう専門家でございますので、今のお話の中にところどころ答えも含まれている大変すばらしい御質問でございましたので、私の方で、しかも、多分事前通告の問い一から問い三をまとめてお聞きになっているので、ちょっと要点だけ申し上げたいと思います、重ならない程度に。

 問題意識は岸本委員がおっしゃったとおりでございます。日本におきましては、委員御承知のとおり、二〇一五年、平成二十七年度の税制改正におきまして大きな変更を行いました。

 それは、一つは、消費税が課される国内事業者、楽天などとの間で競争上の不均衡が生じていること、また、国際的にも、サービスの提供を受ける者の所在地において消費税を課すべきとの方向で議論がなされていたことを踏まえまして、国外事業者、これは二十七年度前までは消費税は課されていなかったわけですね、国外事業者については。この国外事業者が行うデジタルコンテンツの配信等について、サービスの提供を受ける者の所在地が国内にある場合には消費税を課そうということで、改正を行いました。

 先生よく御存じだと思いますので一言ずつにしますが、国外事業者が日本に向けて行うサービスが事業者向けである場合には、この国内事業者を納税義務者としたリバースチャージ制度、消費者向けの場合には、国外の、アマゾンとかGAFAですね、国外事業者を納税義務者として、国内の納税管理人を必ず登録させて、その人を通じて申告、納税させる、これをまず平成二十七年度にさせていただきました。

 ただ、その後も、先ほど言及のありましたBEPS、これはベース・エロージョン・アンド・プロフィット・シフティングの略でBEPSといって、今百三十カ国以上が参加したプロジェクトになり、私も昨年、チリのAPECの財相会議に麻生大臣のかわりに行ったときにグリアさんが大分お話をされておりましたし、麻生大臣御本人が、昨年、G20の大阪サミット、その前の福岡の財相会議も含めて議論を深められたわけでございますけれども、今まさに、二〇二〇年末に向けて、この国際課税原則の見直しをしなければならない。

 その内容については、実はもう岸本委員の質問の中に含まれていたわけでありますが、伝統的な現在の国際課税制度では、外国企業の事業所得に課税するためには、自国内に物理的拠点、パーマネントエスタブリッシュメント、PEですね、この存在が必要であるとされてきたわけでありますが、物理的拠点が日本になくても、あるいは日本から見るとアメリカになくても、そこの市場国で事業を行っている外国企業に適切に課税するルールというものがまだ確立をしていない。そのために、それをこれから、これからというか今まで議論を積み重ねてきたわけでございますけれども、ことしの末までに解決策を最終合意をしたいというところに向けて、今国際的な努力が傾注されていると理解をしております。

岸本委員 ありがとうございます。

 まさに日本で活動されている楽天とかヤフーとかいう企業、これはもう法人税を払っているわけですよ、日本で。GAFAという人たちはなかなか日本では法人税を払っていなかった。こういうことですから、競争条件が非常に不平等であるということであります。

 そもそも税負担の公平性の問題もありますし、本来、日本国家が得べき税収であるとするならば、我が国家財政の問題にもなってまいりますし、それから、今言いました企業間の競争条件がフェアじゃないということでありますし、更に言うと、これは職業の選択の自由なんですけれども、世界じゅうの優秀な頭脳が節税するためにエネルギーを使うということですよね。もったいないわけですよね。物すごい優秀な頭脳がちょっとでも税金をまけてやろうということにエネルギーを使う。それだけのエネルギーはもっと人類の平和のために使ってもらいたいわけでありますけれども。

 そういう問題があるわけですから、少なくとも消費課税については、おっしゃるとおり二〇一五年に大きな進歩があったと思います。これはすばらしいことです。しかし、法人税の世界はまだまだだということで、BEPSのある意味第二弾という、二〇一五年にBEPSの最終報告が出ましたので、二〇一六年から今副大臣がお答えになった包括的な枠組みができてきたわけであります。

 これもある意味、政治的、国際政治でありますので。GAFAというのは、これはアメリカの会社であります。したがって、米国政府とすると、課税主体としての、課税当局としての米国政府という立場もある一方、アメリカの最大の産業であるGAFAを守るのが国益でありますから、GAFAを守りたいという意味の米国政府の立場もあって、これはなかなか難しいところもあろうかと思いますけれども、やや、今までのところは、GAFAを守る立場の御発言、言動が多かったというふうに理解をしております。

 一方で、欧州諸国は、実は完全にプラットフォーマー的なものが弱いものしかなくて、日本に比べても非常にお弱いわけですので、ここは徹底的にGAFAのようなプラットフォーマーからはしっかりと対峙をして税金を取っていきたいというスタンスをとってきておられます。

 したがいまして、例えば、EUというのはまさにヨーロッパの利益を代弁しているわけですけれども、EUは、一般的に法人税で本格的なデジタル課税をしましょうという案と、それから、それができないのであれば暫定的にデジタルサービスに対して間接税をかけてはどうか、売上税をかけてはどうかと。これが二〇一八年の三月ですけれども、欧州委員会の方で暫定案と課税案の案が出ています。

 この間接税の案は、デジタルサービスの提供に対して、世界での売上げが七・五億ユーロ以上でかつEU域内での売上げが五千万ユーロ以上のもの、そういう事業者を対象としますよ、オンライン広告の売上げやプラットフォーム提供の売上げ、ユーザーデータ譲渡の売上げなどを課税対象として、一応、例えば、いろいろなあれがありますけれども、三%の売上税を課してはどうかという提案をしています。

 これを受けまして、実は今、ヨーロッパの国を中心にデジタル課税の暫定的な動きが出ています。例えば、フランスでは、二〇一九年一月から域内売上げの三%、デジタル大企業課税というのが行われています。イタリアは、二〇二〇年の財政法で今言ったデジタルサービスの売上げの三%を課税するということで、ことしの一月から施行というふうになっております。あるいはイギリスも、ことしの四月からデジタルサービスの売上げの二%に課税をする、こういうような動きが出てきております。

 こういう問題と、BEPSのまさに今の動きとの関連、非常に微妙なところがあると思うんですけれども、ある意味政治ですから、アメリカに対して、ちゃんとやってくれないとこういうのもありますよということなんだろうと思いますし、そういう意味で、この一月に発表されました包括的なフレームワークの案、OECDが出された案の概要について、副大臣の方から簡単に御説明をいただいてよろしいでしょうか。

遠山副大臣 岸本委員にお答え申し上げます。

 ちょっと冒頭、先ほど私の答弁の中で、二〇二〇年末までに国際的な合意を目指しているというのは法人課税の問題であるということを言及し忘れておりましたので、ここでつけ加えさせていただきます。

 なお、市場国においての適切な法人課税がなされていないという問題と同時に、先ほど岸本委員から優秀なブレーンが節税ばかり考えているという御指摘がありましたが、まさに無形資産が国境を越えて取引をされ、その結果、いわゆる法人税の軽い国、軽課税国に利益の移転が容易になっている中で、今の議論が起こっているということも補完をさせていただきます。

 その上で、今の御質問へのお答えでございますが、岸本委員の質問のおかげで私も勉強させていただきました。

 実は、BEPSの合意を前にして、ヨーロッパそれから一部トルコなどの国が、デジタルサービスタックス、名称はほかの国で若干違いますけれども、ということで、大体昨年から、去年にかけて施行を次々とやろうとしておりまして、委員御指摘のとおり、フランスは三%、イタリアも三%ですが、例えばトルコは七・五%の課税でことしの三月から施行と言っておりますし、インドも六%、それから、イギリス二%は言及がありましたが、スペイン三%、チェコ七%、ニュージーランドは今ちょっと議論中ということですが、かなり広範に広がっております。

 ただ、これについての日本政府の考え方としては、各国がばらばらにこのような一方的な課税措置を講ずれば、企業のビジネス展開上の不確実性を増大させ、健全な企業活動に負の影響をもたらすのではないか、また、このような間接税の導入は、大手デジタル企業から対象サービスを利用する国内の消費者等へ税負担が転嫁されるのではないかという指摘もあるところでございまして、やはり、日本、米国、欧州、そして今お問いかけのOECDを中心として、各国が参加をしたBEPSの場においての二〇二〇年末までの解決策に合意すべく国際的な議論を進めるべきではないかというのが我々の基本的な考え方でございます。

 さて、OECDの会合で決定された、これはことしの一月末でございますが、新しい国際ルールの概要でございますけれども、これは、日本が議長国を務めました昨年六月のG20で承認された作業計画に沿って、多国籍デジタル企業などが物理的拠点、いわゆるPEなしに活動する市場国に対しても新たな課税権を配分する国際課税原則の見直し、いわゆるタックスヘイブンなどの軽課税国への利益移転に対し最低税率による課税を実質的に確保するルールの導入という二つの柱から成る解決策が検討をされております。

 特に、第一の柱につきましては、自動化されたデジタルサービス及び消費者向けビジネスを行っている大規模な多国籍企業が活動する市場国に対して、支店などの物理的拠点がない場合であっても新たな課税権を配分する方向で検討を進めることが本年一月末に合意をされております。

 この合意を踏まえ、更に議論が加速することを期待するとともに、日本としても引き続きこの議論に精力的に参加をしてまいりたい、こう思っております。

岸本委員 そういう意味では、一月末に発表されましたOECDの包括的なフレームワークの議論というのは一定の合理性があると思います。ただ、かなり大ざっぱなことしか決まっていないと思います。

 柱が二本あるとおっしゃいましたけれども、例えば、通常利益と超過利益を分けて、超過利益については、これは市場国に新たに課税権がもらえますよと言うんですけれども、じゃ、この通常の利益と超過利益というのはどこからどこまでなんやと。これはなかなか難しいですよね。やはり、GAFAからすると通常利益を大きく見たいし、EUあるいは日本からすると、できるだけ通常利益を小さく見積もって超過利益を大きく出したいというようなことで、ここを詰めていくということも大変だろうと思いますし、利益率の水準のほか、あと、デジタルサービスだけじゃなくて消費者ビジネス全体も対象にするのかしないのかという議論もあります。

 消費者ビジネスも入れましょうというのは、最初アメリカの提案だったように聞いていますけれども、これもいろいろな利害が絡んでくるわけでありまして、例えば日本国内でありますと、当然ですけれども、これは内外無差別になるわけでしょうから、デジタル関係でない企業である例えば経団連に多い参加企業は、やめてくれ、そんなデジタルサービスに課税するために消費者向けサービスを全部入れるのかよということになりますし、それから、アメリカはそう言いましたけれども、アメリカ国内でももめているようでありまして、マイクロソフトが入ってくるんですね、消費者サービスは。今までデジタルだとマイクロソフトは入ってこないんですけれども、今度、消費者にするとマイクロソフトが入ってくるので、マイクロソフトがロビー活動を始めたとかですね、政治そのものなのであります。

 さらに、最大の問題は、アメリカの提案ですけれども、セーフハーバー、選択制にしてくれと。つまり、新しく国際間で決まったルールか従来のルールか、どちらかを企業が選べるようにしてくれと。これは意味がないわけですよね。全く意味がない。GAFAは選ぶわけがないわけですから。これをアメリカがおっしゃっているけれども、ここでだめですよと言った瞬間にアメリカが抜けるので、これは困るということで、みんなでまあまあまあまあと言ってなだめている。まるで本会議の議場整理係のような感じでありまして、まあまあまあまあとやっているような感じでありますが。

 ただ、この議論も、まさにこの週末のG20でいろいろな議論があったと思いますが、そこに身を置かれた麻生大臣、本当にこの決着が、法人税に関するBEPSのOECDの枠組みがどこまでどうなるのだろうか、当事者としての御意見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 岸本先生、これはいわゆるGAFAに代表される多国籍企業、何もあれに限りません、ほかにもいっぱいあるんですけれども、これが、早い話が、ほとんど、ケイマンアイランドだ、マカオだ、何だかんだやっていて全然税金を払っていないじゃないかという話は、七年前にG7の会議がイギリスのバーミンガムシャーというところで開かれたときに、中央銀行・財務大臣会合で日本がばあんとこの話をした、こんなふざけた話があるかという話から持ち上げて、以来七年。最初、その会議の席上でアメリカは一言も発言しませんでした。身に降りかかってくると思ったんだと思いますが、一言も言わなかったんだ。これに積極的に乗ったのは日本とドイツぐらいだったんですけれども。

 四年前に日本で第一回会合をやったときは四十何カ国までこれに賛成することがふえて、今、百何十カ国までふえましたので、これはアメリカも逃げられなくなってきて、今言われたようなどっちでも選べるというような案を出してきてみたり、いろいろ代替案を出すところまでは来た。これは、七年間の間にしてはよくここまであいつらは来たなと思いますね、全く払う気がありませんでしたから。

 財務大臣もかわって、大統領もかわって、随分時代が変わったんだと思いますけれども、これに加えて電子化というやつが、デジタル化というやつがついてきましたものですから、もうイーファン、イーファンなんて言っちゃいかぬね、もう一つついたような、難しくなったような話になってきましたので。それでも、とにかくいつまでたっても答えが難しいなんて言っていても話にならぬと。

 だから、G20で出す結論に至る前に、とにかくG7で、とにかくまずはことしだといって去年やったんですけれども、残念ながらそこまでは行かずに、ことし、それでも、今回の中では、コミュニケの中にこれを書き込んで、アメリカもそれにサインしてというところまで追い込んでいったというところが、聞こえが悪いかもしれませんけれども。

 まあ、主要論点には今言われた点にちょっとまだ隔たりがあることは確かですけれども、その他の部分についてはとにかくかなり囲い込みができ上がってきて、今、最後、そこのところでもめるのは、これから先は、多分、イギリスじゃないな、フランスとアメリカが、多分両方、最後の詰めをやるところまで、ずっと積み上がってきているところまで来ておりますので。

 とにかく、我々としては、まずはとにかくきちんとしたものができ上がって、それで、細目は、ちょっとこれをやった結果、ああ、これは逃げられる点があるというんだったら翌年また変えるとかいうようなことは考えられると思いますので、私どもとしては、サウジアラビアなんておよそこの種のことに能力がほぼない国ですけれども、とにかく、ない国だからみんなで行ってこうやってまとめて書けという話を七カ国ではごちゃごちゃごちゃごちゃやって、何となく夜中まで今回もかかりましたけれども、ほぼ、大体、主要論点はかなり絞られるところまで来たので、七月までと思っていましたけれども、いや、三月までで結構なところまでは来たかなと思っておりますので。

 最後の最後で逃げられるなり、どこか漏れるといかぬので、この七月、もう一回ありますので、リヤドの次のまでにはこれをまとめていきたいなと思って、財務官レベルで結構詰めておりますが、各国、一昨年に比べて、去年日本がわんわんやってうわっと進めたものですから、これはやられると思ったので、各国、皆真剣になってきていますので、ことしもその方向でいけると思っておりますので、最後の最後まで、これは、岸本さん、最後の最後の詰めが勝負なので、ちょっと今の段階でうかつなことは申し上げられませんけれども、かなりないい方向まで動いてきたかなと思っております。

岸本委員 ありがとうございます。

 まさに、BEPSそのものが、日本政府のリーダーシップでずっと来ているすばらしいプロジェクトなんですね。これはもう財務省の後輩諸君が本当頑張ったし、大臣の御指導もあったと思います。ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 その上で、国際的なそういう交渉をしていただく一方で、国内の話に目を転じますと、要するに、租税回避はけしからぬわけであります。租税回避一般はけしからぬわけでありますけれども、いわゆるG7の諸国では、こういう、いわゆる法律の抜け穴を使う租税回避は法律の濫用だということで、一般否認規定というのがございます。ほとんどの国にございます。つまり、一般的に、法律を濫用して税金少なくしちゃだめですよという一般否認規定というのがあるわけであります。

 ただ、これも、各国それぞれやはり判例を積み重ねてきておりまして、ドイツなんかはもう一九一〇年代に一般否認規定がありました。そして、イギリスとかアメリカは、法律そのものは最近です、アメリカで二〇一〇年、イギリスで二〇一三年に確認的な一般否認規定を設けています。

 それぞれ判例が積み重なってきて、二通りぐらい流れがあるんですけれども、一つは、実質的な経済の原則から見て行き過ぎじゃないか、あるいは、もう端的に法律の濫用だと、濫用の法理というのがあって、今来ているわけですけれども、残念ながら、我が国には一般的な否認の規定はないんですよ。どの国にもあるんです、G7にはあるんですけれども、一般否認規定がない。

 もちろん、法人税法には、組織再編の場合、あるいは同族会社の場合、組織再編や同族会社の場合には、それを、税効果を否認するような規定はあるんです。実際これを使われた例があって、ヤフー事件。これは、ヤフーさんが組織再編を使って節税をされたんですけれども、これは、組織再編税制で、最高裁、平成二十八年で税効果は否認されています。ヤフーさんは敗訴しました。一方で、日本IBM事件というのがありまして、これもひどい話でして、詳細は省きますけれども、同族会社を使ったいわゆる租税回避ですけれども、これは最高裁で確定していますけれども、税効果が認められています。

 それぞれの、組織再編とか同族会社の否認規定はあるんですけれども、一般的な否認規定はありません。

 あえて言うと、少し古いんですけれども、最高裁の平成十七年の判例で、りそな銀行事件というのがあります。りそな銀行が外国税額控除制度を使って租税回避をしたんですけれども、これは判決を読むと、どうも一般的な税効果の否認という理屈で否認をしているということなんですけれども。

 何にしても、恐らく、今後いろんな判例が積み重なっていくことも必要なんだろうと思いますけれども、なぜ、G7の国々でそれぞれある一般否認規定を我が国は持たないのか、その点について、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

遠山副大臣 お答えいたします。

 ただいま岸本委員が御質問されている一般的租税回避否認規定、これは、英語ではゼネラル・アンタイ・アボイダンス・ルールということで、頭文字をとってGAARと呼ばれているものでございますが、これは私どもも承知しておりますが、G7諸国においては、日本以外の国々は法規定として持っているわけでございます。

 では、なぜ日本にはないのかというお問いかけでございますが、日本におきましては、委員御承知のとおり、同族会社や組織再編成の場合などに対象を限定した上で、税負担を不当に減少させる行為又は計算について、税務署長が否認できる旨の規定は設けられております。

 これに対し、多様な租税回避行為を抑止する観点からは、対象を限定しない一般的租税回避否認規定、GAARを設けた方が有効ではないかという議論があることは、私どもも承知をしております。

 一方で、そのように対象を限定しない否認規定については、租税法律主義、これは先生御承知のとおり、憲法八十四条に依拠しておりますけれども、租税法律主義や納税者の予見可能性の観点から、また、私も専門家の論文もちょっと読ませていただきましたが、やはり、このGAARを入れると法的安定性も害されるのではないかという疑問を呈される方も多いところであると認識をいたしております。

 このような状況の中で、日本では、一般的租税回避否認規定は設けられておりませんけれども、もちろん、不当な税負担の軽減に対しては、現行の法規定に基づいて適切に対応するとともに、租税回避を防止するための個別の法規定について見直しを行うなど、引き続き、適正な課税の確保に努めていきたいというふうに思っております。

岸本委員 それがこれまでの公式答弁なんですけれども、いや、ほかの国も租税法律主義なんです。G7の国では、租税法律主義じゃない国はありません。みんな租税法律主義なんです。その中でやっているんですよ。

 イギリスが一番新しいのであれですけれども、イギリスの場合は、事業活動に対してより公平な競争条件を提供する、それから、目的的解釈によって不確実性の問題が回避できる、租税法規の簡素化を図るべきだというような観点で入れられました。

 ただ、その際に、これは、あくまでも濫用だ、濫用はいけないというたてつけでやっています。その際に、立証責任は課税庁側に置いてあります。立証責任は課税庁側。それから、特別な委員会へ意見を求めるということも条件に入っていたり、あるいは、コミッショナーという幹部職員の承認を条件とするとか、いろいろと、まさに予見不確実性を少なくするような工夫もされています。

 これは課税当局からすれば、もちろん租税法律主義でありますし、予見確実性は必要ですけれども、そういうことを担保しながら、武器として、税務署は大変なんですから、さっきの確定申告じゃありませんけれども、定員が少ない中で課税件数はふえているんですから、課税当局がそういう武器を持っているぞということは、これは課税当局にとってプラスじゃないですか。マイナスじゃありませんよ。

 租税法律主義に決まっているんですから、憲法を守りながら、ぜひ工夫をしていただいて、課税当局、そこに国税庁の次長がおられますけれども、彼らを頑張らせるために、麻生大臣、一言、前向きな御答弁をいただければ幸いであります。

麻生国務大臣 なかなか大事なところですよ、これは。公平性を確保する観点という点から租税回避に対してはきちんと対応していかないかぬというのは重要なんですが、今のゼネラル・アンタイ・アボイダンス・ルール、GAARの話につきましては、これは今言われましたように、租税法律主義、憲法八十何条でしたか、租税法律主義との関係とか、法的な安定性とか、納税者の予見可能性の確保、そういった点から、やはりよくよくこれは慎重に検討しなきゃいかぬところなんだと思っていますけれども。

 いずれにしても、この話は重要な課題だと思っておりますので、租税法律主義の下でどのような方法をとることが有効かとか、今、大分世の中が変わってきておりますので、そういったことを考えながら、引き続きちょっと検討させていただきます。

岸本委員 大変前向きな御答弁をいただきました。ありがとうございました。

田中委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 国民民主党の古本伸一郎でございます。共同会派の枠の中で質疑をさせていただきます。

 先週に続いて国税法の質疑ということでありますけれども、前回、委員会が断続的にとまったわけでありますが、同僚委員におかれても大変待機を求めたわけでありまして、きょうの理事会の場で厚労省の方から、当委員会に答弁に入る厚労省の関係者は少なくとも濃厚接触していないという確認がとれたという再確認、及び、クルーズ船で昼夜を分かたず大変御奮闘されている厚労省の検疫官始め関係の皆様も、濃厚接触の定義のもとで、熱が出る前に接触した人はそもそも検査対象外だということもいかがかとは思いましたけれども、たとえそうであっても関係者はPCR検査をするという説明がありましたので、などなど、委員会が少しとまった分、ある意味で前進したのであればこれは多としたいということも同僚委員に御報告をするわけであります。要はハウスとしてのリスク管理であった、このように承知しております。

 コロナウイルス関連で少し、きょうは内閣官房に来ていただいていますけれども、今度の一日に予定している東京マラソンは、大変な内外のビッグイベントになっていますけれども、一般ランナーは不参加という中で、チケットの払戻しがないということが賛否の両論があるようでありますけれども、いよいよ本番のオリンピックの際のチケットの扱いを少し確認いたします。

 二〇二〇チケット利用規約の中に、三十八条、三十九条、セッション、つまり、恐らく試合が中止になった場合は払戻しを申請できるとだけあるんですけれども、予選ということでおっしゃったんだと思いますが、JOCの山下会長におかれては、過日、無観客試合もあり得ると。予選に関して、国内予選に関してということで言われたんだと思いますけれども、仮に、このチケットがどういう扱いになるかということが、大変多額の、そもそも当たらなかったんですが、当たった人はもう本当に一日千秋でオリンピックを楽しみにされていると思いますので、現状について少し説明を求めたいと思います。

伊吹政府参考人 お答え申し上げます。

 今御質問があった予選というのは多分テストイベントとかだと思うんですが、それらについては、各主催団体がどういうふうにするかを判断されていまして、その中で無観客でやるものがあるということだと思います。

 大会そのものについては、実は、二月の十三、十四にIOCプロジェクトレビューというのがありまして、これはIOCと組織委員会が準備状況を確認する会議なんですが、その中では、東京大会の中止とか無観客でやるとか、そういうことは議論は行われていないというふうに承知をしています。

 IOCからは、そのときに、新型コロナウイルス感染症に関する日本の対応について、適切に対応されているという、信頼感を抱いているということでコーツ委員長からコメントをいただいてございます。

 政府としては、IOCや組織委員会、東京都と緊密に連携をとりながら、アスリート、観客にとって安心、安全な大会をしっかり準備をしていきたいというふうに思います。

 今、チケット規約について御指摘がありましたけれども、委員から御指摘があったように、セッション、ある一定の、例えば、何月何日の何時から何時までの例えばバレーボールの試合というのは一つのセッションということなんですが、これの中止や払戻しについては規定がされています。

 一方で、大会そのものが中止になった場合のチケットの取扱いについては、現時点では特に何か方向性が出ているわけではないというふうに承知をしておりますけれども、その時点の状況に応じて、きちんと冷静かつ慎重に判断をしていくというものだというふうに承知をしてございます。

古本委員 まずは、本当にオリンピックが無事に開催できるように、政府におかれては挙げてさまざまな対応を求めたいと思いますし、私たちハウスとしても、場合によっては必要な立法が要るのであれば、さまざま立法努力もしてまいりたい、このように思うわけであります。

 きょうは国税庁にもお越しをいただいていますけれども、先ほど野田前総理から少し執行の話、岸本先生からもありましたけれども、確定申告の、例えば、当該クルーズ船の乗客で罹患された方、あるいはその御家族はもとより、先日来、大変御奮闘いただいているし、また公務中災害と言ってもいいでしょう、罹患された検疫官などなど、関係の皆様や、者や社の納税猶予というのは、当然、確定申告の事務として対応していただけると理解してよろしいでしょうか。

田島政府参考人 お答えをいたします。

 申告や納付の期限の延長ですとか猶予、これの一般的な制度を申し上げますと、地震等の自然災害ですとか火災等の人為的な災害、又は申告をする方の病気やけが、こういったものなど、災害その他やむを得ない理由により申告、納付等を期限までに行うことが困難な場合には、税務署はその期限を延長することができます。

 この期限の延長につきましては、税務署に申請をしていただく必要がございますけれども、当初の期限が経過した後でも、例えば申告、納付の際でも申告いただくことができます。

 それで、税務署では、こうした申告があった場合には、納税者の個々の事情をよく伺いながら判断することになりますけれども、納税者の方の置かれた状況、こういったものを十分配意しながら適切に対応してまいりたいと考えてございます。

 いずれにしても、疑問等ございましたら、最寄りの税務署に御相談をいただければと思っております。

古本委員 確定申告どころではないと言うと少しあれかもしれませんけれども、そういう状況に置かれている方に、ぜひ心配のない対応をお願いしたいなと思います。

 自衛隊や消防関係の皆様が日々、クルーズ船の船内に入る、あるいはその周りで大変な御尽力をいただいているんですが、実は、平成三十年三月の衆議院安全保障委員会で当時の小野寺防衛大臣に質問をしたことがあるんです。

 東日本大震災のときに、予備自衛官あるいは即応予備自衛官が、応諾率といいますか、お願いをして応えてくれた率を各方面隊で陸海空それぞれ調べ、だからというわけではないんでしょうけれども、この自衛官の皆様の、例えば、即応予備自衛官ですと、月額一万六千円のある意味待機費、掛ける年額ですから十九万、訓練招集手当ということで、年間三十日対応しなきゃいけませんから、恐らく平均で一万から一万四千掛ける三十日で三十万ぐらいですか。合計五十万円ぐらいの、ある意味これは雑所得といいますか一時所得になるわけであります。

 当時、じゃ、そういう、東日本大震災とか、今回のクルーズ船、新型コロナウイルスなど、臨時異例の緊急な対応に従事していただいている、ましてや、日ごろ別の仕事をされておられる予備自衛官やあるいは消防団、こういった皆様の手当、所得については、いわゆる雑所得の上限が、控除の上限が二十万円なんですね。会社を休んで上司の理解も得て、やっとの思いで消防団活動に従事する、あるいは、やっとの思いで、応招し、応諾し、即応予備自衛官として出動してくださった皆様から果たして所得税をお願いするのかという話の問題提起をしたんです。

 小野寺大臣は財務省とも少し相談するというようなことを言ったかどうか、ちょっと記憶が定かじゃありませんが、少なくとも、民生・児童委員とか消防団とか、本当にとうとい任務についていただいている方々から、本当に所得税、住民税をお願いするのかという、わずかばかりのこの雑所得のあれですね。この二十万を例えば三十万、四十万に引き上げるだけで、随分、社会全体としての感謝の気持ちを伝える制度になるんじゃないかという問題提起をしたんですけれども、その後の検討状況を。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員の御指摘の点も含めまして、即応予備自衛官に係る支援のあり方につきましてはまずは防衛省と、あるいは厚労省と、関係省庁において検討していくべきものと考えております。

 なお、委員が御指摘のような御要望を関係省庁からいただいてはいないところでございます。御要望だけではなくて、御相談もいただいておらないところでございます。

 つけ加えて申しますけれども、申告不要制度、これは今先生がおっしゃったような趣旨ではなくて、わずかばかりの他の所得があったために確定申告をしなければいけないのかという僅少性について設けられた基準でございますので、事情を配慮するというと、政策判断が別のものになると存じます。

古本委員 要求官庁がない税制を、ましてや、ある意味減税をわざわざやる歳入当局者はいない、こういうことを、主税局長はもう血も涙もない答弁を今なさったような気がするんですけれども。まあ、個人的にはお人柄をよく存じ上げていますので、お立場上と思いますけれども。

 間もなくマーケットが閉じるので、マーケットが閉じた以降に麻生大臣にぜひお尋ねしたいテーマに少し行きたいと思っていますので、もう少し。

 消費税の輸出還付、予算委員会でも若干質問をされている委員がおられたようですけれども、何やら企業が消費税をかすめ取っているんではないかという趣旨の発言がるるあるんですけれども、私はちょっと、正直に言って、税の基本原則からいってあり得ない議論が続いているなというふうに承知をしております。

 何となれば、国内外へ販売する、つまり、国内にも海外にも輸出するメーカーなり商社なり、どういう業種でもいいんですけれども、これは、実際、国内用はこれで海外用はこれでということで仕訳伝票を現実的につくれるのかという話もありますし、そもそも、仮に還付がないとすると、その分価格に転嫁しないと、最終消費者が国内にはおりませんので。

 単純に言って、例えば、燕三条かどこかの、一万円かなんかの高級はさみをシッピングして輸出するというときに、一万一千円ですけれども、この千円は、国内の消費者が買っていただければ最終担税者になりますけれども、輸出する場合は、これは、どこかの国のどなたかの消費者が負担するわけであって、還付がないとなると、少なくとも仕切り値を一万一千円にしないとメーカーは赤字を今度かぶるということになって、あり得ない議論があるような気がするんですけれども。

 せっかく財務金融委員会ですので、事実関係も含めて、仮に還付しないということがあり得るのかということも含めて、少し御説明いただきたいと思います。

矢野政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のように、時折、この輸出還付、輸出免税につきまして御批判あるいは見直し論というのが出てまいりますけれども、最後に委員がおっしゃられましたように、この制度を見直すということはあり得ないと私どもも考えております。

 もう繰り返しの答弁になりますけれども、これは付加価値税を導入している国全ての共通する国際的なルールでございますし、なぜそれを導入しているかは、これまた委員が今御指摘になられましたけれども、何がしかの恩典を付与するとか特典を与えているとかいうことではなくて、輸出競争を相互に、全くニュートラルに、それぞれの輸出国の付加価値税、日本でいえば消費税を全てそぎ落として、今一一〇という例でおっしゃられましたけれども、一〇〇にして輸出して、当該輸出先国の国内産業あるいは第三国からの輸出品と全て競争条件を一にする形にするために行われている作業でございます。

 これをどこかの国だけ、あるいは日本国だけが日本における仕入れ税額をそのままひっ提げて輸出するということになりますと、当然、輸出価格競争力において不利な立場に置かれますし、全くの机上の、頭の、白地で考えますと、それは課税の累積を生むか、あるいは輸出した先の国で日本国の付加価値税分を還付するという、これもあり得ないことですけれども、国際紛争になりますけれども、輸入国において輸入還付をするか、あるいは課税の累積をするか、どちらかになります。

 輸入国において還付するなどということはおよそ承諾されることがないでしょうから、委員が御指摘のように、価格が累積するということにつまるところなりますので、これは間違いなく日本国だけが輸出競争力をそぎ落とされる。その分が従業員のしわ寄せになるのか、経営収益のしわ寄せになるのか、株主に行くのか、いろいろございますけれども、何としてもそれは競争力をそぎ落とすことになるという結論は間違いないところでございますので、検討する余地はないと思っております。

古本委員 重ねて確認ですけれども、今局長もおっしゃいましたけれども、これは租税歳出ではありませんよね。政策減税をし、何か誘導するために、これだけ税金をある意味おまけしますからどうぞ頑張ってくださいという租税歳出、いわゆるタックスエクスペンディチャーならわかりますけれども、これは違いますよね。

 だから、先日質問した例えばローン減税ですと、たしか〇・八とか〇・九兆円の政策減税です。持家をしましょうという政策減税です。それに比べたら、これは似て非なる、確かに金額は大きいですが、租税歳出ではないので全く当たらないというところを再度確認をいただきたいと思います。

矢野政府参考人 全く委員御指摘のとおりでございまして、輸出免税につきましては、免税という国際ルールがあって、輸出業者が付加価値をつけた部分、当該付加価値部分に対する、日本でいえば消費税、ヨーロッパでいえば付加価値税が免除される、免税される、一方で仕入れ税額控除はそのまま適用されるということによる足し引きで還付が行われるものでございまして、その仕入れ税額控除は、文字どおり、仕入れにかかった税額を返しているだけでございますので、何がしか補助とか輸出競争力を付与するための恩典とかいうものでは全くございません。

古本委員 ありがとうございました。

 次に、そういう意味では租税歳出ということになるのかもしれませんが、例のサポートカーの問題があるんです。

 これは、今回の補正でサポートカー補助金ということを創設していただきました。七十五歳以上の免許が、いわゆる認知症試験が加わったことによって返納者も大変ふえているという状況で、大変痛ましい事故も後を絶たないという中で、いわゆる自動ブレーキとか、あるいはアクセルの誤作動を事前に抑止する装置がついている車を通称サポートカーと呼ぶわけでありますけれども、そういった車に買いかえる場合には補助金が出るということでありますけれども、正直言って、新車でお求めいただくということになりますと、それなりの金額がするわけでございまして、年金暮らしのシニア、つまり、これは対象が六十五歳以上という補助金と承知していますので。

 いわゆるエコカーには減税があります。国税たる重量税において、もうほぼ減免税をいただいている、これは大変ありがたい制度でありますけれども、性能とか機能に着目して少し新たに政策減税を加えるという意味で申しますと、実は、車体課税ということで、私も与党のときに随分頑張ったつもりでありますけれども、やはり車検のときに、自動車重量税はユーザーの皆様からお預かりしていますので、勢い、車検代が下がったんじゃないかと勘違いされている方もいらっしゃって、やはり、日々ある意味感じるという意味では、ガソリンを入れた際に、ガソリン税に消費税がかかっているという意味では、揮発油税なんというのはある意味わかりやすいんですけれども。

 揮発油税ということに限定しませんけれども、サポートカーに乗りかえていただいたシニアに限っては、地方税である自動車税、あるいは国税である重量税、そして油を入れた際の揮発油税等々ありますけれども、何らかの減免税があるよということを更に加えていけば、本当にあの痛ましい事故はもう抑止できる可能性が更に高まるんじゃないか。

 十万円の補助金というのは大変大きいですけれども、例えば、二百万円の車を年金暮らしの方がお買い上げになる、買いかえるという場合には、もちろんこの十万円はありがたいですけれども、イニシャルという意味ではありがたいですが、ランニングコストを下げるという意味では、少しサポートカーに対する減免税というのもあってもいいんじゃないかと思いますけれども、経産省の方で何か検討されていますか。

上田政府参考人 お答え申し上げます。

 昨今、高齢運転者の交通安全対策が喫緊の課題となる中、技術の進んだ新しい車への買いかえニーズが低い高齢運転者については、サポートカーの導入を特に加速するための措置が必要と考えております。

 このため、御指摘のあったとおり、令和元年度補正予算において、時限的かつ特例的な措置として、サポートカー補助金制度の実施をお認めをいただいたところでございます。

 サポートカーの普及に向けては、サポートカー補助金の執行状況でありますとかサポートカーの普及率、そして高齢運転者による交通事故の状況、さらには安全運転支援装置に係る制度的措置や技術動向等々を踏まえつつ、今後の政策のあり方を検討し、必要な措置を講じてまいりたいというぐあいに考えてございます。

古本委員 まずは、せっかく歳出での手当てをしていただいたわけでありますので、その政策効果を見きわめてということだと思いますけれども、やはり、年金暮らしのシニアの皆様がいろいろな社会的なインフラに頼る、ああいうe―Paletteとか自動的に動く送迎システムとか、ああいうのがあればもちろん最高ですけれども、なかなかそこまでまだ至らない、いわゆる交通過疎地に住んでおられる皆様には、依然として、お元気であればハンドルを握っていただいた方が、我々都会に出てきている者も、ふるさとにいる両親や祖父母に対して何らかの応援になるんじゃないかな、安心につながるんじゃないかなということも込めて、少し問題提起をさせていただきました。

 さて、先ほど野田前総理から、昨夜の、吉田茂元総理といいますか、もう我々、この世界に生きる者にとっての、何と言えばいいんでしょうか、もう大変言葉にするのもはばかるぐらい大きな方であったんだろうと思いますけれども、サブタイトルが、「アメリカに負けなかった男」というタイトルで、某民放でやっておられました。私も食い入るように拝見しました。

 まさか、その登場されておられる、多分大臣には事前にああいう番組の相談があったかどうか知りませんが、少なくとも幼少期として出演をされておられたわけなんですが。

 さっき野田さんが小粒だというお話をされていましたけれども、私は、今回の税改正は、いわば消費税疲れの税制だったんじゃないかなという気が若干いたしております。でも、疲れているいとまはなくて、私は、来る一五%に向けてこういうふうに計画的にやっていくぐらいは、自民党税調もあってしかるべき、公明党税調もあってしかるべきじゃないかなと思いましたけれども、少なくとも、景気が腰折れては元も子もないという高度な判断をなさったんだと思いますけれども。

 対する野党も、先日副総理にお尋ねしたとおり、五%に引下げの指にとまるのなら野党共闘しようよと言っていること自体、本当に、吉田茂元総理が御存命だったら何とおっしゃったんだろうなと。もう本当に貧して鈍しているぞとおっしゃったんじゃないかなという気がしておりまして。

 前回、そもそも、冒頭お尋ねしたような事柄は非常に重要な事柄ですけれども、私は、税制小委員会というものをつくり、大変詰めて、精緻にやるべきだと思っていますけれども、やはり大臣とは大きな方向を確認したいということを申し上げたところ、いつだったかの委員会で三つのことをおっしゃいました、麻生副総理は。少子化だと。もう一つは天皇制だとおっしゃいました。恐らく安定した皇位の継承ということでおっしゃったのかなというふうに仄聞しました。最後がグローバル化。つまり、日本の地位というのが格段に高くなっている。言いかえれば、日本の発言が非常に重要だし、責任も重い。そういうことで言われたんだと思うんですけれども。

 税に関して申し上げれば、消費税が当分は、確かに消費税疲れをしたというのが与党内にも蔓延しているとするならば、次にやるのは金融課税だということ、野田前総理からありましたけれども、私、やはり所得税は何らかの大きな判断があっていいと思うんですが、その代表格が、租税特別減税している配偶者控除ですよ。これは租税歳出ですよね。

 配偶者控除というのは大体、矢野さん、超大玉だと思いますけれども、減収、どのぐらい立っていますか。〇・四とか五とかじゃないですか。ちょっと私もはっきり覚えていません。

矢野政府参考人 〇・五兆円ほどでございます。

古本委員 この配偶者控除は、当時野田総理のもと、不肖、与党税調の藤井裕久先生会長のもとでお仕えし、かばん持ちをさせていただきましたけれども、私は配偶者控除を守るの大論戦を党内で張っていました。配偶者控除を倒せ倒せという多くの同志に、いや、これは大事なんだ大事なんだと言ってきたんですけれども、それは、戦後の混乱期に、家事労働という概念で、例えば八百屋さんの奥さんが店先でお手伝いをするというようなことをどう評価するんだ等々から、配偶者控除というので、家事労働に対する尊崇の念を持って一つの税制でお応えしているんだということも学び、これは藤井先生から伺い、そんな答弁をずっとしておりましたけれども。

 さあ、いよいよ幼稚園、保育園も無償化し、もう隔世の感のある大きな時代変化がある中で、逆に、この配偶者控除というのがあるために、きょう人事院に来てもらっていますけれども、例えば公務員の奥さんの、結婚された方の家族手当というのはちなみに出ていますか、出ていませんか。

植村政府参考人 お答え申し上げます。

 国家公務員におきましては、年額百三十万円以上の恒常的な所得があると見込まれる者につきまして、扶養手当の支給対象とはしておりませんが、百三十万円未満の所得があるという場合には、扶養手当が支給対象となっております。

古本委員 ちょっと確認ですけれども、配偶者という、つまり法的婚姻関係にある者に限定しているんですか、それとも、内縁の妻でも出るんですか。

植村政府参考人 お答え申し上げます。

 公務におけます扶養手当上の配偶者につきましては、一般職の職員の給与法におきまして、届出をしないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含むと定められておりまして、いわゆる内縁関係にある者も含むということでございます。

古本委員 大臣、これ、実は事前に聞いて、私、驚いたんですよ、すごい進んでいるなと。

 多くの民間企業は、私の理解では、入籍した配偶者じゃなければ奥さん手当は出なかったんですよ、家族手当と言っていましたけれども。これを今廃止して、子供手当に振っていっています、多くの企業が。つまり、結婚を前提としない手当制度を実はお国が持っているんだな、これはすごいなと思ったわけなんですね。

 その意味では、いつかここで大臣と議論させていただいたんですけれども、日本は結婚を前提としている限り、出生率は上がらないと思うんです。それは、我が自由民主党がそのかじを切ったとのそしりは受けたくないという趣旨の答弁がありました、大臣からは。多分、結婚を前提としている社会を描いておられると思うんですけれども、これまで長らく。伊吹さんのお父さんなんか、特にその権化だと思います。まあ、余計な話を言いましたけれども。その家族観というか、それがもう変わってきているんじゃないかなというふうに私も至ってきたんです。

 子供手当をつくりました、やれ高校をただにしました、何かにやっても出生率は上がらないんですから。それは、全ての社会保障税制が結婚を前提としているからなんですね。その象徴的な税制がマル配控除なんじゃないかなと思っておりまして。

 大臣、お待たせしました。きのうのドラマで、おじい様役の鶴瓶さんが発言するわけなんですけれども、単独講和を先にやろうという判断をする場面があります。複数の国と講和をするという意見の人もいたんですけれども、要するにアメリカとまずは講和を結ぼう、サンフラン講和のことだと思うんですけれども。あのとき、そばにいらっしゃったという描写であったので、あのときの物すごい判断に匹敵する、今、日本がやらなきゃいけない税の判断というのは何でしょうか。

 いや、それに比べたら、配偶者控除の廃止ですなんというのはある意味まだまだ軽量級だと思いますよ。あのときの、たとえ何と言われようとも、帰国した後、羽田空港で石を投げられようとも、単独でアメリカとの講和をすることが今最大の国益であるということを判断した、麻生さんのおじい様が判断されたあの国家観というか、感覚からいうと、今、日本の税制を預かっておられる、最高責任者である麻生太郎財務大臣に、この税制をやってみたいなと。もうマーケットは閉まっていますので、大丈夫だと思いますので。俺、フリーハンドならこの税制を思い切ってやってみたいというのがあったら、御所見を求めたいと思います。

麻生国務大臣 マーケットはあしたもあいていますので、また。

 一つだけ、訂正だけさせていただきますけれども、単独講和という言葉は、吉田茂は使ったことは一回もないんです、あれは多数講和が正しいんだ。単独講和という言葉をつくり上げたのは朝日新聞という、まだあの新聞社がありますけれども、それがつくったのであって、国連加盟国は四十七カ国中四十四カ国は賛成したんですから、ソ連、ポーランド、ハンガリーだけが反対したんですからね。だから四十四対三ですから、それを単独講和って、それはおかしいでしょう。これは多数講和が正しいと私はそう思って、全面講和か多数講和かというのがしかるべき、あのときの単語の使い方としてはそうだろうなと思っております。

 ところで、今の配偶者控除の話、話をされていましたけれども、この話は、今二・〇にいっている国は、多分先進国じゃフランスなんですよ。これはドゴールのときに始めたんだそうで、フランスの財務大臣に直接聞き出したんですけれども、ドゴールというのは一九四〇年代後半ですから、やはりフランス兵が大量に死んでいますというか戦争で亡くなっていますので、その意味では、子供がいなくなって大変だという長期的なことを見越して七十年後、今日ということになったんだと思いますが。

 今言われているのを裏づけするようなことを言わせていただければ、日本は結婚している年齢というもの、子供を産んでいる年齢というと、子供を産んでいる年齢の方が結婚より後なんですよ。ところが、調べてみなさい、ヨーロッパの国はほとんど結婚している方が後、子供を産んでいる方が先。日本とアメリカぐらいですよ、多分ちょっと違うのは。ほとんどのヨーロッパの国はこっちが先になっちゃっているという事態というのは、これは、意味するところは非常に大きいんだと思いますね。

 それが今、日本の風土、伝統に見合うかという話になりますので、古本先生、これはなかなかそんな簡単な、ちょっと私の意見でちょいと変わるような話でもないし、とてもじゃないけれども、そういった意味では、今の時代から見ますと、この問題は簡単な話ではないので、これは大きな議論を呼ぶところだろうとは思いますが。

 ただ、一コンマ何とかという話で、一コンマ四とかいいますけれども、私のような飯塚市は一コンマ七いっていますからね。多分九州の中で一番だと思いますよ。僕は、それがこの四十年間で一番、人に誇れるところはこれかと思っていますけれども、間違いなくうちは上がってきたんですよ、いろいろなことをしましたので。

 だから、そういった意味では、これはやり方というのは実はいろいろあるのだろうなという感じはしますけれども、これの重要性をみんなで気がつく上に、今言った子供手当なんかいろいろなことをやっていって、みんなでやらないとなかなかこれは難しいという問題は、正直な実感です。

古本委員 残りまだ少し時間がありますので、大臣、どうしてもやってみたい税制というのをもう少し。講和に匹敵するというのはちょっと比較しようがありませんけれども、何せ、きのうテレビに、ドラマ化して出ておられましたので、物すごくインパクトがありましたので、きょうは楽しみにしてまいりました。これをやってみたいというのをぜひお願いします。

麻生国務大臣 当面なら、インターナショナルに言えばBEPSなんだとは思いますけれどもね、これはでかいと思いますけれども。

 どなたか、前でしたか、あれはイギリス人の、私はまだ学生で、まだ向こうに住んでいるころの話ですけれども、あのころに、とにかく、所得税でも法人税でも何でもいい、全部一割にしろ、全部一割だ、そのかわり脱税は厳罰に処すというやり方をすればみんな一割払ってくれると。

 そのとき、私、今でも覚えていますけれども、私、生活保護世帯がやたら多い筑豊から行っていましたので、そういったところはどうするんだと言ったら、それも一割だと。そのかわり、一割多く政府が払え、そのかわり一割取り上げろ、全部納税者だという意識に変えることからすればといって当時、学生を終わって、それを覚えていましたので、当選をさせていただいて、大蔵委員会、当時、財務金融委員会なんてこんなのなくて、大蔵委員会というのがありまして、当時竹下大蔵大臣だったんですが、そのときの主税の偉い人に聞いたら、一律全員に払っていただいたら一〇%は要りません、七%で足りますからと言われた記憶があるんですけれども。

 それが今どういうぐあいになったかちょっと知りませんけれども、何となく、累進税は当時八八%ぐらいでしたから、所得税、比率が。だから、そういった意味では、私どもから見ますと、みんなでというのであれば、そういうのが一番基本です。

 そうすると、まず税理士なんて職業はなくなりますからね。このおかげで税理士から猛反対を食らって、えらい勢いで乗り込まれた記憶がありますので、これ以上ここで発言することはやめさせていただきます。

古本委員 大変興味深く聞かせていただきましたし、多分、大臣がおっしゃったのは、薄く広く確実にかけるということ、税の基本をおっしゃったんだと思います。かつ納得ですよね。最高税率八十何パーまでいったことから考えると、それはもう日本から出ていっちゃいますね、今の時代でいえば。大変興味深く聞かせていただきましたけれども。

 重ねて、そういう大きな方針を大臣がどんと決めた後は、これは超党派で、小委員会で詰めていくということができたら、当然、税の方の担当の方も、とはいえいろいろな問題があるとなれば、その小委員会で課長以下でやればいいと思いますね。これは、矢野さん、そういう方がいいと思いますけれども。

 きょう、少し時間を残しましたけれども、大臣から大変いい御示唆をいただいたので、また研究してまいりたいと思います。

 ありがとうございました。以上です。

田中委員長 次に、早稲田夕季君。

早稲田委員 立国社の早稲田夕季でございます。

 きょうは財務金融委員会で質問の時間をお与えいただきまして、理事の皆様に感謝申し上げます。

 それでは、質問をさせていただきます。

 私からは法人税率というものについて御質問したいわけですけれども、まず、二〇一九、十月から十二月期におきまして、GDPの実質で前期マイナス一・六%、そしてまた、年換算では六・三%のマイナスとなったことはもう皆様御承知のとおりでありまして、これは当初の予想よりもはるかに下回ったのではないかとも言われております。

 私は、これは、消費増税が間違いなく個人消費を冷え込ませ、落ち込ませた結果だろうということを思っております。そういう意味におきましても、消費税は一〇%にすべきではない、減税をすべきだというふうに私は思っておりますので、その立場からきょうは質問させていただきたいと思います。

 その中で、直接税、間接税があります。そしてこの比率ということで申し上げると、直間比率というのがございまして、消費税の導入時、一九八九年でありますが、このときにはおおむねこれが七対三であったのに対しまして、元年度、令和元年で申しますと六対四になっている。そうすると、直接税の所得税、法人税から、いわゆる逆進性が高い消費税等への間接税へのシフトがなされているということだろうと思います。

 また、直接税の内訳で見てみますと、所得税が、一九八九年で二十一・四兆円から二〇一九年度は十九・一兆円、法人税を見ますと十九兆円から十一・七兆円となっておりまして、大幅に法人税の方が減少となっております。

 これは私が申し上げるまでもなく、法人税の税率、また、一九八九年の四〇%から現行の二三・二%まで引き下げられております。特に第二次安倍内閣以降におきましては、成長志向の法人税改革として段階的な引下げをやっていらしたということを承知しておりますが、私はこの三十年間、消費税の導入、増税という国民に負担をかけているその一方で、どんなに利益を上げても法人企業に対してはこれを一律にしているということで、しかも減税をしているということについて、やはり、所得税それから消費税を払う立場の国民の立場からいえば、非常にアンバランスなのではないかと思っております。

 そして、この直間比率というものをもとに戻すような方向で、私は以前の割合に戻していくべきではないかと考えるわけですけれども、麻生財務大臣の御所見を伺います。

麻生国務大臣 まず、平成元年というか、最初にこの消費税ができました一九八九年の最高税率、先ほどの古本先生の話じゃありませんけれども、当時八八%です。法人税は四二%と思いますので、こういった税制に引き戻す、簡単にするとなると、これは甚だしく勤労低下というような問題やら、人材が流出するとか、立地競争力等々を考えて、いろいろなことが出てくるんだとまず思っております。

 その上で、一九八九年のこの導入したときの話は、全体として税負担の公平性につなげるということから、中所得層を始めとする個人所得課税の負担を軽減して、消費に広く薄く負担を求めて、資産に対する負担を適正化する、これが最初の導入のときの文句であります。

 それが、平成九年、一九九七年のときに、三から五へ引き上げるときですけれども、これは、活力ある福祉社会の実現を目指すという視点に立って、いわゆる引き続き低所得、中所得を始めとする個人所得の軽減負担と消費税の充実を柱とする税制改革の一環として行われたと思っております。

 さらに、その後、社会保障と税の一体改革のもとで、消費税につきましては、いろいろ社会保障の財源と位置づけて、二〇二六年、これは五から八に引き上げたときも同じく、昨年の十月から八から一〇に引き上げたときも同じであります。

 こうした税の構造変化の結果、先ほど言われましたように、国税と地方税の比率というのは八対二から六五対三五ぐらいかな、六・五対三・五ぐらいになっているんだと思いますが、それらの比率は、やはり時々の経済社会というものの変化を踏まえて改正を行ってきたのであって、これは単純に、昔に戻せばいいじゃないかというような単純な話じゃないのであって、引き続きこれは、所得税とか法人税とか消費税とかという基幹三税等々を組み合わせていろいろなものを考えていく必要があるのであって、もとに戻して、二対八にすればいいというような話ではないのではないかと思っております。

早稲田委員 今、所得税の税率のお話もありました。

 私が申し上げているのは、一遍に戻すということよりも、やはり法人税率について、これが下がっている、これは国際競争力とかいろいろあるでしょうけれども、それでも、その間、それでは所得の再配分は、企業に減税をすることによって内部留保はたくさんたまったけれども、本当に再配分がされたのかということを伺っているんですね。

 それですから、それを直間比率という言葉を使いましたけれども、この割合を戻すということよりも、法人の企業に対して、大企業の、一千億円以上もうけているところと何百分の一の企業とではやはり違うだろうと。所得に応じてもこうやって今七段階で取っているわけですから、個人だけに累進をかける必要があるのかということをお聞きしたいと思っています。

 特に所得の再配分ということを鑑みますれば、法人企業が四百六十三兆円以上の内部留保というのが二〇一八年度であるわけですけれども、実質賃金が下がっているという中で、個人そして国民が本当に恩恵の得られない。公平な税制でなければならないのではないかと私は思います。

 そのことに関して更に伺いますが、過去の、昭和五十二年の政府税制調査会の答申においては、主要諸外国にそもそも、法人税の累進課税、これについて例がなく、本来個人に適用されるべき累進課税率を法人課税に導入することは基本的に適当でないというものが出されておりますが、この基本的に適当ではないというのはどのような具体的な理由によるものなのでしょうか。お尋ねいたします。

矢野政府参考人 お答えを申し上げます。

 法人税につきましては、法人は、自然人である個人とは異なりまして、税負担を回避するために会社分割などを行う可能性があります。また、法人税制は、企業の規模や形態に対しまして中立的であることが望ましいということを考えますと、単一税率をとらざるを得ないといいますか、とらないとそういう租税回避がおのずと起こるということで、負担を公平に求めることがそもそもできないという制約がございます。

早稲田委員 今の御説明ではよくわからないわけなんですけれども。

 自然人じゃないというようなことをおっしゃっていましたが、株主の集合体ということも考えられるわけですね、企業の場合。ですから、この具体的な理由というのをもう少しきちんと踏み込んでお答えいただきたい。本当は財務大臣に伺いたいところでございますけれども。もう一度、じゃ、御答弁ください。わかりやすく、具体的に。

矢野政府参考人 専門的な言い方を避けて、ありていに申しますけれども、累進税率を法人に対して適用いたしますと、高い税率が適用される大規模な利益あるいは売上げをなし得た企業さんにとっては、その高い税率を避けるために、会社を分けて、会社分割ということは最近多いわけですけれども、そういうことをすれば、それぞれ売上げないし収益を分割して小さくすることができて、小さいところでより低い税率の適用をそれぞれが受けることができてしまいます。

 それはもう容易に行われてしまうことですので、自然人が分割ということはあり得ないわけですけれども、企業は分割ができてしまうので、回避ができる。したがって、これは、先進各国ともに累進税率ということがとれないというスタンスになっている、根っこはそこにございます。

早稲田委員 でも、ある程度この累進をかけた場合に、そうしたら、どんどん分割していくとおっしゃいますけれども、それは株主がうんと言えばの話ですし、例えば、それで所得再配分をしよう、賃金を上げようということにもなるかもしれないわけです。私たちは、そういうシステムの方がいいのではないかなと思っているから、累進も一つの視野に、小さいところではございません、大企業の本当に利益を多く上げているところについては、そういうことも検討に値するのではないかと思いますし、ぜひやっていただきたいと思います。

 世界各国とおっしゃいますけれども、それでも検討の余地はあると思いますので、最後に、この問題について、財務大臣に、法人税の累進課税について、私はやはり検討すべき、そして、個人の所得税と同じように、きちんと、大企業については累進をかけて、利益を上げているところにはお支払いをいただくということが、やはり国民の立場からしてはそれが妥当ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 局長の方から答弁したのと基本的には同じなんですけれども、元経営者から言わせていただくと、税負担を軽減するため、会社分割なんというのは簡単ですわな。すぐできますよ、やはり税が安くなるとなったら。だったら、会社を分割しちゃった方が早いもん。それは、なかなかこの話は成り立たないんじゃないかな、ちょっと、経営者をやめてもう四十年ほどそっちの方の頭を使っていないのであれですけれども。

 企業の規模とか形態に対して中立的であるということの方が私は望ましいんだと思いますので、累進税率ではなくて単一税率を採用しているというのは、多分そういう背景なんだと思っておりますので、ちょっと累進等々を企業に対してというのには問題があると思っております。

 他方、企業に関して、今言われましたように、内部留保が四百六十兆円を超えておりますというのは、このふえておりまする期間が、企業が利益が出始めたこの七年ぐらいの間に、年間二十五兆平均ぐらいでふえてきておりますので、そういった意味では、百四、五十兆はこの七、八年で稼ぎ出しているというんですから、問題は、この内部留保の金がどこに、というところの使い方が、基本的に、配当に回るか、賃金に回るか、設備投資に回るかといって、普通、企業経営者はその三つを考えるので、内部留保にためて、金利もつかないから、ためておいて、何をするんですかね。

 昔だったら、デフレですから、金の価値が上がって物の価値が下がりますから、じっと持っていたって値打ちはありますけれども、今はそういう状況にありませんから、そういった意味ではいかがなものかなと思って、経営者の方にはしょっちゅうしょっちゅうその話を申し上げて、連合のかわりに私らが団体交渉、賃上げ交渉は我々がしているぐらいの勢いでやっております。

早稲田委員 今、内部留保のお話をしていただきましたので、じゃ、逆に伺いますが、この内部留保を賃金の方に回していただくために、財務大臣としてはどのようなお考えがあるんでしょうか。

麻生国務大臣 御存じかと思いますが、ここは自由主義経済をやっておりますので、企業に対して幾ら払えなんて言う立場にはないんですよ、私どもは。そこのところをちょっと考えていただかないかぬところなんであって、どうすればそちらの方に行くのかということで、たんびたんび我々としては、今の状況としてはということを経団連の方やら同友会の方にお目にかかるたんびにそういう話をさせていただいておりますけれども。

 これは基本的には、自由主義経済の中で、企業の自由裁量権のところでやっていただく。しかし、問題は、本人の持っている経営者としてのいわゆるプライドの問題であってみたり矜持だったり、いろいろなものが大きな要素だとは思いますけれども。

早稲田委員 内部留保の問題も含めて、私も引き続きこのことについては考えてまいりたいと思いますし、引き続き、この大企業の法人税の累進課税ということについても研究をさせていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移ります。

 私も、この財務金融委員会でございますけれども、いろいろな予算の配分ということは、やはり透明性を持ってきちんとしたプロセスで決められなければなりません。それは、予算額の多寡にかかわらず、一部の官僚が恣意的に決めているようなことがあってはならないと思っております。

 そうした前提に立ちまして、医療分野の研究開発関連の調整費の不透明な決定過程と、また、この調整費に関しては、今喫緊の課題である新型コロナウイルス対策へこれを振りかえる、そういうことも必要なのではないかという質問をさせていただきたいと思います。

 二〇一九年度、この予算措置をAMED、日本医療研究開発機構の方にされておりますけれども、百七十五億円が予算措置をされております、大体毎年。そして、その中で、この調整費というのが、第二回調整費のトップダウン型経費、この八十八・四億円が執行がストップをしております。これは、いろいろ報道にあるとおりで、決定プロセスが不透明だし、有効性が十分に担保されていないというようなことでストップをしたままになっております。

 そして、この間、いろいろ、このことにかかわる問題も国会で議論がされてまいりました。特に、昨年の山中教授のiPSのストック事業の問題で、突然ゼロにするというようなことをお二人の官僚が、名前を挙げれば、和泉補佐官と大坪審議官がこれを通告に行かれたというような問題も絡んでおりますけれども、それにしても、同じようなことがまたこの調整費で行われていて、ゲノムの予算につけるということになりながら、これも不透明な形で行われたということでございます。

 きょうは、このAMED、日本医療研究開発機構の末松理事長にもお越しをいただいております。

 私は、このトップダウン型経費、これが不透明な決定過程ではないか、そして、科学研究予算の決定は不透明であってはならない、透明に、公正に決められなければならないと当然思っております。

 その場合、このトップダウン型というのは、戦略室の方で決めておりますけれども、この基準を厳格にして、そして、限定的で最小限の予算配分として、調整費の配分は原則として理事長裁量経費とするべきではないかと思いますが、末松理事長のお考えをお聞かせください。

末松参考人 お答え申し上げます。

 トップダウン型調整費に関しましては、政府がその方針をお決めになるということでありまして、私自身がお答えする立場にはないというふうに考えております。

 調整費のトップダウン型と理事長裁量経費、トータルで、御指摘のように百七十五億ございます。その割合についても政府がお決めになることでございますので、同様に、私はお答えする立場にないと考えております。

 以上です。

早稲田委員 一月九日のAMEDの審議会で、末松理事長は、研究者コミュニティーから見ると、研究費を応募した側と審査した側が同じになっている、利益相反状態です、この利益相反状態で恣意的な省益誘導が行われたというふうに言われても反論のしようがないと思いますと述べられております。

 このトップダウン型調整費の選定については、厚生労働審議官でかつ健康・医療戦略室大坪次長がナンバーツーとしてかかわっていらっしゃる、ほとんどお一人で決めていらっしゃるということでよろしいでしょうか。平副大臣に伺います。

平副大臣 このトップダウン型調整費の選定に厚生労働審議官の大坪次長がかかわっているかという質問でございますが、御承知のとおり、令和元年度第二回医療分野の研究開発関連の調整費の実行計画におけるトップダウン型経費の分配案の策定は健康・医療戦略室が事務局として担っておりますので、大坪次長もこの健康・医療戦略室次長の一人でありますので、かかわっております。

 ただ、一人で決めているということではないと思います。

早稲田委員 それでは、その健康・医療戦略室、これのトップはどなたでしょうか、そしてナンバーツーはどなたでしょうか。

 それから、もう一つ重ねて伺いますが、あ、どうぞそこまでお答えください。

平副大臣 健康・医療戦略室は、ヘッドは大臣になります、担当大臣。その下に我々副大臣、政務官がおりまして、室長に和泉室長であります。次長は複数名おりまして、内閣官房また経産省、文科省、厚労省などから、また民間などから次長としてその責務を果たしていただいております。合計七名、次長がいらっしゃいます。

早稲田委員 ただ、この調整費の今問題にしている部分におきましては、ゲノム解析というのは厚労省の方で大坪審議官が中心となってこの中期計画をつくられたものだと承知をしております。

 それでは厚労省に伺いますが、このゲノム解析の費用が調整費として八十億円決まったとき、昨年の十一月十四日でありますけれども、イルミナ社と大坪厚労審議官が会った事実があるでしょうか。面談をされた、その十一月十四日、あったでしょうか。

土生政府参考人 お答えいたします。

 御通告いただきまして確認したところでございますけれども、昨年十一月十四日、十四時半から十四時四十五分だったと聞いておりますけれども、大坪審議官ほか当省職員がイルミナ社と面会したということは御指摘のとおりでございます。先方の御挨拶あるいはイルミナ社の取組の紹介等がございました。そのようなことを確認いたしております。

早稲田委員 今、イルミナ社と大坪審議官がお会いになったということはわかりました。

 これは、医療戦略室の方でこのゲノム解析に調整費をつけた決定をした時間はその後ですか、前ですか。

渡邉政府参考人 お答えいたします。

 そのトップダウン経費の決定をいたしました本部会議は持ち回り開催というやり方で行われておりますので、時間につきまして、その前後という特定の時間を申し上げるというのはなかなか難しいのでございますが、その後ということになろうかと思いますが、済みません、正確な時間をいつの時点とするかによりますので、お答えしかねるものでございます。

早稲田委員 でも、持ち回りでも、決定したときは決定した時間ですよね。それははっきりとわかると思いますので、後で詳細をお調べいただいてお知らせいただきたいと思います。

 とにかく、その決定の日に大坪審議官がイルミナ社と会っておられるということがわかりました。

 そして、私はこのことについて、末松理事長にもお伺いをしたいわけですけれども、利益相反はよくない、これは省益を優先することではないかと御自身が、先ほど、審議会の方で語られておりますけれども、このトップダウン型経費が健康・医療戦略室本部で決定された当日に、ゲノム解析技術を保有し、ほぼ世界のマーケットを独占している企業と会っている、こういう官僚の行為について、末松理事長は、不透明なプロセスに加えて、不適切な行為であると思われるのかどうか、お尋ねいたします。まず不適切なプロセスであるかどうか、お答えください。

末松参考人 お答えいたします。

 十一月十四日の話は、私、初めて伺いましたので、大変驚いております。

 それから、先ほども申し上げましたように、トップダウン型経費の決定プロセスというのは、私どもは直接関与しておりません。しかしながら、私がAMEDの審議会で発言したのは、そのとおりでございます。

 私どもは、研究者、実際に研究開発を行う研究者の方々、あるいは協力してくださっている患者さんとかそういった方々のコミュニティーと、それからあと政府のちょうど境目にいます。

 利益相反というのは、利益相反状態があれば、我々はそれをできるだけ排除する。それから、ピアレビューというんですけれども、レビューを行って、課題を決定する。今回のような感染症の場合には、喫緊の対応が必要です。ですから、そのプロセスをできるだけ短くする、そういったところを研究者のコミュニティーは当たり前の文化としてやらなければいけないので、当然、私の発言は審議会の議事録のとおり、こういうことになっております。

 以上です。

早稲田委員 よくわかりました。

 ゲノムの企業と会っていたことは御存じなかったというお話でありますけれども、利益相反、これについては、研究者の決定をするときにはそういうことはないように、それこそレビューをして、みんなで点数をつけて、公正公平に選んでいくんだということもよくわかります。

 その上で、末松理事長にいろいろ不透明な部分があるというふうに指摘されたこのゲノム解析の事業でありますけれども、私は、質問主意書の方でも出させていただいております、二月十日に。これは、求めておるんですけれども、二回目の調整費、これの配分先の一部を執行しないままになっておりますので、目下の緊急課題である新型コロナウイルスに予算を振り向けるべきではないかと考えます。

 そして、特に八十八・四億円のうち、国内コホート対象者のゲノム解析約二十五億円というのがありますけれども、これについて、配分を組み替えて、今まさに予備費だけをかき集めてやっている状況でありますけれども、特にこれは緊急の課題として、この二十五億円の配分を、組み替えを考えるべきだと私は思います。国民の国益に、最優先でやるべき課題ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

平副大臣 まず、二回目の調整費の配分の一部を新型コロナウイルス対策に予算を振り向けるべきではないかという御質問でございますが、令和元年度の調整費の第二回の配分については、令和二年度を初年度とする次期健康・医療戦略におけるゲノムデータ基盤プロジェクトを早急に補完するため、令和元年度第二回医療分野の研究開発関連の調整費の実行計画において、ゲノム医療データ基盤の構築へ向けた取組等の各事業について配分を実施したものでございます。

 今、御指摘いただきましたが、政府といたしましては、二月十三日に、新型コロナウイルス感染症対策本部決定におきまして、新型コロナウイルス感染症に関する緊急対応策ということで、執行残などを充てて、AMEDを通してコロナウイルス対策をやるということを決定したところであります。

 あわせて、組み替えというお話だと思います。その中で、実は、自由民主党からも、調整費を、緊急の課題である新型コロナウイルス感染症対策の強化予算に転用するべきという内容の提言をいただいておりまして、竹本大臣からも事務方に対して、何ができるのか、どういうところに使えば効果的かというところを至急検討するように今指示を出しているところでございます。

早稲田委員 今指示を出しているとおっしゃいましたので、ぜひそこの二十五億円も考えていただけるように強く要望させていただきたいと思います。

 最後に、財務大臣がいらっしゃいますので、この間の、この官僚お二人のいろいろさまざま、この海外出張におきましては、今まで前例のない、中でつながっているコネクティングルームを利用して、そして本当に出席すべきかどうかわからないところにも同行している四回の海外出張というのがあります。この支出も百八十数万円だったと思いますけれども。

 こういうことが国民に疑念を持たれるような、こうしたことは、税金を払っていただいている国民に対しても非常に申しわけないことではないかと私は思いますし、無駄遣いではないかと思いますが、この点に関して、財務大臣、財政を預かる一番のトップとして、どのようにお考えでしょうか、どのような所感をお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 御指摘の出張の話については、これは事実関係を私は詳細に承知してはおりませんので、ちょっと御質問にはお答えいたしかねますけれども、予算の執行という話ですから、これは各省各庁のいわゆる長の責任において行う旨規定されておりますので、これは適切にきちんとやってもらわないかぬ、それだけです。

早稲田委員 きちんとやってもらわなきゃならないというところができているのかということで御質問させていただきました。この四度の出張の明細書も求めておりますけれども、いまだに出てきておりません。こうしたこともしっかりと財務大臣の方としても見ていただいて、そして、本当に適切な執行であるとは私はとても思えませんけれども、そこも調査をしていただけるように要望させていただきます。

 以上です。

田中委員長 次に、清水忠史君。

清水委員 日本共産党の清水忠史でございます。

 本日は、気候変動問題と、そして金融リスク等について質問をさせていただきたいと思います。

 ことし一月の世界経済フォーラム年次総会、ダボス会議というふうに言われておりますが、ここでは気候変動リスクが大きな議題になったと言われております。報道によりますと、黒田総裁は、日本は大型台風の影響もあって二〇一九年十月から十二月期にマイナス成長になったとの見方を示し、日本経済はもっと温暖化ガスを減らす必要があり、気候変動の緩和に貢献すべきだと訴えられました。

 この気候変動問題について、会議では各国の金融経済の関係者の中でどのようなことが話題になっていたのか、非常に興味があるわけでございます。また、黒田総裁はどのような発言をされたのか。その発言の中でも、とりわけ、今私が読み上げました、日本経済はもっと温暖化ガスを減らす必要がありと言われたことの真意を日本銀行黒田東彦総裁に説明していただきたいと思います。

黒田参考人 御指摘のダボス会議では、ゲオルギエバIMF専務理事、ラガルドECB総裁、ムニューシン米財務長官、ショルツ独財務大臣などと世界経済に関するパネルディスカッションが行われて、それに参加したわけでございます。

 このパネルディスカッションでは、世界経済の足元の経済動向も議論になりましたが、中長期的に世界経済に大きな影響を与える要因として気候変動が話題になりまして、意見交換をいたしました。

 各参加者からはそれぞれの国の気候変動に関する取組が紹介されまして、我が国における全体的な取組を紹介する趣旨として、日本は最もエネルギー効率が高い国ではありますけれども、引き続き温暖化ガス削減の取組を続ける必要があるということは申し上げました。

 また、それとともに、日本銀行は最近、NGFS、気候変動の金融機関に対するリスクを検討するというグループに参加いたしまして、その中で、気候変動リスクを金融安定のモニタリングに取り込むといった動きがございますので、そこにも私どもとしても参加したということを申し上げたわけでございます。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

清水委員 今総裁から御答弁ありましたように、中長期的なリスクとして気候変動の問題が各国から話題になった。今言われました気候リスク等に係る金融当局ネットワーク、NGFSですか、そこにも加盟をされたということですから、やはり日本経済が更に地球温暖化の問題についてしっかり取り組んでいくべきだという御認識だということがよくわかりました。

 配付資料の一枚目をごらんいただけますでしょうか。

 これは、パリ協定の後に公表された、IPCC、気候変動に関する政府間パネル一・五度特別報告書でございます。

 これはどのように報告しているかといいますと、人為的な活動により産業革命以前と比べて既に約一・〇度の地球温暖化をもたらしている、今のままでは二〇三〇年から二〇五二年の間に一・五度に達する可能性が高いとされる、このように報告しているわけであります。

 その上で、今対策をとれば、地球温暖化を一・五度に抑制することは不可能ではないともしているわけですね。

 私、思うに、この特別報告書のポイントは、一・五度上昇と二度上昇では影響予測に大きな違いが出ることだと思うんですね。

 その資料にもありますように、例えば、人が居住するほとんどの地域で極端な高温の増加、これが二度になれば発生する。海水面の上昇につきましても、一・五度の場合、二度よりも上昇が約〇・一メートル低く抑えることができるだとか、あるいは、サンゴへの影響でいいますと、二度Cだとほぼ全滅する。全滅ですね、二度で。ただ、一・五度に抑えても、七〇%から九〇%はサンゴは死滅する、このように書かれておりますので、極めて地球環境にもたらす影響は深刻だと言わなければなりません。

 ここにありますように、将来の平均気温上昇が一・五度を大きく超えないような排出経路、いわゆる出口ですね、これは二〇五〇年前後には世界の排出量が正味ゼロになっていること、こう書かれております。

 パリ協定に基づき各国が提出した目標による二〇三〇年の排出量では一・五度に抑制することはできないとされているんですが、黒田総裁、そのこと自身は承知されていますでしょうか。

黒田参考人 御指摘の点は承知しております。

 それは、私、二〇〇五年から二〇一三年まで八年間、アジア開発銀行の総裁を務めておりまして、アジア開発銀行においても、特に気候変動に対して、一方で、いわゆるアダプテーションというんでしょうか、気候変動の結果、高潮とか豪雨とか、あるいは干ばつとか、そういうものが起こることに対してきちっと適応して、頑健なインフラをつくるというようなことの支援もしておりましたし、他方で、ミティゲーションというんでしょうか、CO2排出を減らすべく、効率的な交通機関とかエネルギー発電所、あるいは、リニューアブルというか、再生可能エネルギーの開発を途上国において支援するということをしておりまして、このIPCCという国連の専門家会議が常に政治的な、最終的な各国間の交渉の背景にあって、常にこのIPCCが専門家として気候変動の現状、あるいは将来、そしてどういうふうに対応していくべきかということを専門家の立場から勧告しておられるということも存じております。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

清水委員 別にきょう黒田総裁の揚げ足をとろうという質疑ではありませんので、書いたものを読まれるのも結構なんですが、二〇〇五年から二〇一三年までアジア開発銀行の総裁もお務めになられていたということで、今お話がありましたように、高潮だとか干ばつだとか、そういうことへの警戒をどのようにしていくのか、あるいは再エネについても、途上国への支援についてもよく議論されてきたということですから、ここはやはり本音でお答えいただけたらというふうに思うんですね。

 続いて聞きますけれども、つまり、このIPCCの目標のためには、各国は少なくとも温暖化対策目標を大幅に前倒しをしないといけない。前倒しをしないといけない。当然、日本政府の目標である二〇三〇年に二六%削減、二〇五〇年に八〇%削減、この目標では到底達成できないわけです。そういう視点から恐らくダボス会議で黒田総裁は、日本経済はもっと温暖化ガスを減らす必要があると言われたんじゃありませんか。そこは、目標との関係でそういう認識をお持ちだからこそ発言されたと思うのですが、いかがでしょうか。

黒田参考人 確かにIPCCが指摘しているとおり、この一・五度以内におさめるということが非常に重要であり、そのためには、二〇五〇年前後に世界のネットの排出量が正味ゼロとなっていかないといけないということも非常に重大なポイントだと思います。つまり、森林とかなんかでCO2を吸収するのと、他方でCO2を排出するのとがバランスして、ネットでゼロにするということですから、物すごく大変な目標であることは事実ですけれども、そういうふうにしないと世界として困るということも、これもよく理解しております。

 ただ、他方で、委員の提出の資料にもありますとおり、現在、圧倒的にCO2を排出しているのは中国、米国、そしてEU、インドでありまして、そのうち中国と米国、インドが必ずしも十分な対応をとっておられないということからいいますと、もちろん日本が努力することは重要なんですけれども、日本が物すごく努力しても、こういった中国、米国、インドというところ、CO2大国が減らしてくれないと実は目標が達成できないということになりますので、その点は今後とも、こういった国がやはり努力していただくということも必要だし、また日本もきちっと努力していくことが必要だというふうに思います。

清水委員 まさしくそのとおりで、他国が努力しないからといって日本が目標を前倒ししなくていいという理由にはならないですし、今、黒田総裁は、日本も努力していくというふうに明言されたので、そういうことだというふうに思います。

 先ほども黒田総裁が言われましたNGFSのことについてであります。

 二〇一七年からヨーロッパ、欧州を中心に立ち上げられた気候変動リスク等に係る金融当局ネットワークですが、これは金融庁や日本銀行も参加をしているわけであります。

 配付資料の二をごらんいただけますでしょうか。

 これは、気候変動リスクに関して有志が世界じゅうから集まりまして提言などをまとめているものですが、このネットワークは一体何を目的に活動しているのか。何が議論されているのか。これは金融庁にお答えいただきたいんですけれども、気候変動問題について中央銀行や金融監督当局は何をどう取り組むべきだと考えているのか、わかりやすく説明していただけないでしょうか。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のNGFSにつきましては、金融セクターにおける気候関連リスクへの金融監督上の対応などを検討することを目的にして、有志の金融規制監督当局により二〇一七年十二月に設立されたものでございます。

 NGFSにおきましては、パリ協定を踏まえつつ、気候関連リスクの分析や、当該リスクが金融機関や金融システムの安定に与える影響について議論を行っているところでございます。

清水委員 よくわかりました。パリ協定に基づくものであり、金融監督上のネットワークであるということであります。

 欧州などNGFSの参加メンバーは、先ほど紹介したパリ協定及びIPCC一・五度特別報告書の目標実現に向けた取組を目指しているのではないかというふうに思うんですが、日本を含む、いわゆる日本銀行や金融庁を含むNGFS参加メンバー全体としてこの一・五度特別報告書の内容を共通の認識にしているのかというのがまず一点お尋ねしたいところ。

 それと、例えば、気候変動リスクによって金融リスクが高まる、そのための備え程度の位置づけなのか、皆さんが今このNGFSに参加をされているその位置づけですよ、備え程度のものなのか、それとも、将来起こるかもしれない金融リスクへの波及に備えつつも、気候変動のリスクを引き下げるため、積極的な金融の役割ということを念頭に置いて参加をされているのか。

 この二点について、これは金融庁で結構です、お答えいただけますでしょうか。

白川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の一・五度報告書につきましては、このNGFSでも議論を行う際に一つの想定されるケースとして参照している、こういう位置づけにあります。

 二つ目の御質問の、中央銀行や金融監督当局としてどう取り組むべきだと考えているのかという御質問ですが、これにつきましては、六つの提言というのを昨年四月にこのNGFSがレポートとして公表しているわけですが、その中で、特に金融監督当局に関連する項目といたしましては、金融監督モニタリングにおける気候変動リスクの組み込みですとか、中央銀行、金融監督当局、金融機関内部の知見の向上、それから気候関連財務情報の開示の促進、こうしたものに取り組むべきということで挙げられているところでございます。

清水委員 済みません、ちょっと聞き取りができなかったので、今の最初の六つの提言のうち、金融監督にかかわるところで、モニタリングのところ、もう一回そこだけ読んでいただけませんか。済みません。

白川政府参考人 早口で失礼いたしました。

 金融監督当局に関連する項目の一つ目としましては、金融監督モニタリングにおける気候変動リスクの組み込み、つまり、モニタリングの中身に気候変動リスクをどう組み込んでいくか、こういう点について議論していくことになっております。

清水委員 ヨーロッパの多くの国では、CO2を排出する石炭火力発電の全廃目標年を決めているんです。何年までにもう石炭火力発電はやめるというふうに欧州の多くの国では決めているということです。そして、実際に削減計画を実施しております。多くの欧米金融機関や投資家も温暖化問題を大変重視しておりまして、次々と石炭火力関連への投資を中止する方針を公表しています。

 配付資料の三番から五番をごらんいただきたいと思います。

 例えば、世界銀行グループ、WBGというところは、基本方針として、新規の石炭火力発電プロジェクトへの支援は原則行わない、このように表明しておりますし、欧州復興開発銀行、EBRDも、炭鉱開発への支援は行わないとか、新規、既存の石炭火力発電所への融資は行わない、このように取り決めているわけであります。

 また、運用資産が約八百兆円と世界最大のアメリカのブラックロック、御存じだと思うんですが、銘柄選定で企業の環境対策を重視するというふうに発表しています。いわゆる投資先企業に、温暖化対策などの情報公開を厳しく求めていくということだそうでございます。

 先月、国際決済銀行、BISは気候変動が次の金融危機を引き起こすと明言しました。そして、予測困難な大惨事を指す金融用語のブラックスワン、いわゆる黒鳥のことですね、あり得ないということを表現する金融用語でブラックスワンという言葉があるそうですが、それをもじってグリーンスワンと表現し、迫りくる気候変動に関する危機に、金融リスクに対し警鐘を鳴らしているわけであります。

 まだ一部かもしれませんけれども、どうして、海外の金融機関は投資方針を持続可能な開発へと今転換しているのか、もっと言えば、石炭火力発電の全廃目標年を決めた多くのヨーロッパの国々、あるいは世界的な金融機関が、新たな石炭火力発電所への新増設に対する融資はもうやらない、こういうふうにかじを切ったのか。この理由について、日本銀行黒田総裁に所見を伺いたいと思います。

黒田参考人 御指摘の、特に今、欧州の銀行その他の金融機関が、石炭火力発電に関する融資姿勢について、もちろん金融機関ごとに取組の内容は区々でありますけれども、御指摘のように、かなりの金融機関で経営方針として石炭火力発電への融資を抑制していくと。直ちにゼロにすると言っているわけではなくて、徐々にと言っているところもありますし、いろいろニュアンスは違いがありますけれども、そういうふうに言っている。

 それは、金融機関としてそのリスクを考えた場合に、恐らく、石油ガス、石油、そして石炭の順に、発電量に対してCO2の排出量がだんだん大きくなっているということで、石炭火力はそういう意味ではCO2排出について非効率だ、したがって、なるべく石炭よりも石油、石油よりも、特に石油ガスですね、そちらの方に融資も移していく、それは、金融機関として積極的にそっちを推進しようということよりも、むしろ、次第に石炭火力は減らされていく、それが次は石油で、石油ガス、こういうふうになるので、石炭火力あるいは石炭の採掘に融資しているものの融資のリスクが高まっていくというふうに考えて、そちらの方にシフトしていこうとしているんだと思います。

 それが結果的にもちろんCO2の削減に効果が出てくるとは思いますけれども、あくまでも金融機関としては自己のポートフォリオのリスクをコントロールしたい、そういうことが起きないようにしたい、また、御指摘のように、何か、あるときに突然そういうものが、大きくリスクが発現するということを避けたいということで、今から徐々にそういうふうにしていきたいということだと思います。

清水委員 とてもわかりやすく説明をしていただきました。私もそのとおりだというふうに思います。同時に、今やらないと、パリ協定やあるいはIPCCで示された目標を達成できないということも事実ですから、待ったなしの課題の一つであります。

 それから、金融機関によって、直ちに融資しないというところと、まだそうなっていないというところがあるというふうにおっしゃいましたけれども、世界最大規模のところでもうしないと決めたり、あるいは、資料にありますように、世界銀行等ももう一切やらないというふうに決めているということは、やはり世界の流れとしてはこれからそっちへ向いていくんだろうというふうに言わざるを得ないと思うんですね。

 続いて、金融庁に、今の議論を聞いていただいた上でお答えいただきたいんですけれども、日経新聞のことしの二月十八日付の「大機小機」では、先ほどの金融機関の動向を紹介した上で、こう結んでいるんですね。「温暖化は政府や企業、投資家に限らず、全ての人々が責任を共にし、日常生活の中で常に挑み、戦うべき問題だと心底から思われる。」と締めているわけなんですね。一方、日本はどうかといいますと、政策投資銀行やあるいは国際協力銀行などの政策金融や日本の民間金融機関は、今でも国内外の石炭火力発電所等への融資を進めようとしているんです。これが問題だと思うんですね。

 これは、今お話ししてきました、また黒田総裁からもるるいただきましたけれども、海外の金融機関の動きに真っ向から反していると言わなければなりません。日本の金融機関、特にメガバンクの最近の気候変動対策というものは、海外の金融機関と同水準の取組に果たしてなっているのか。特にメガバンクにおける、国内ですよ、邦銀の、メガバンクにおける気候変動対策について説明していただけますでしょうか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 メガバンクにおきましては、気候変動などに関しまして、例えば、環境、社会に多大な影響を与える可能性がある大規模プロジェクトの融資について、民間金融機関の環境社会配慮基準でありますところの赤道原則を採択しておりますほか、環境に悪影響を及ぼす可能性のある事業、例えば森林伐採事業などでございますが、それに対する融資を制限するなどの融資方針を公表し、環境に配慮した取組を進めているというふうに考えております。

 ただ、金融機関の個別の融資に関する方針につきましては、これは金融機関の経営判断に属するものでございますけれども、金融機関がこの気候変動に伴ういろいろなリスクをきちんと把握した上で経営判断をしていただきたいというふうに考えているところでございます。

清水委員 配付資料の最後の六枚目を見ていただきたいと思うんです。

 ごらんのとおり、メガバンクグループは、そうしたことに取り組んでいると言いつつ、石炭火力発電への投資をやめるつもりはありません。

 例えばMUFG、三菱東京ファイナンシャルグループは、新設の石炭火力発電所へのファイナンスは原則として実行しませんと。原則ですから例外があるわけで、例えば、その下にありますように、個別に検討した上でファイナンスを取り組む場合があります、こう書いていますし、それから、三井住友ファイナンシャルグループにつきましても、例外として慎重に対応を検討していくというようなことも書かれております。みずほファイナンシャルグループも、いわゆる世界最新鋭である超超臨界圧発電及びそれ以上の高効率の案件に限定して融資を行うということで、まだやめないわけなんです。

 それで、二〇五〇年前後にはいわゆる出口戦略としてCO2の世界の排出量を正味ゼロ、実質ゼロにするということを実現するのであるならば、石炭火力発電所というのは三十年間以上稼働するわけですから、そのことを考えれば、新規増設など到底理屈に合わないと言わなければなりません。この数年を見ると、日本政府の温暖化対策は化石賞が贈られるなど、海外のNGOなどから厳しく批判をされているわけであります。ダボス会議では、各国の参加者からも厳しい意見が突きつけられていたわけです。

 黒田総裁にお伺いしますが、日本の温暖化対策、とりわけ石炭火力発電所政策について、ダボス会議でどのような評価がなされていましたか。

黒田参考人 私が参加いたしました世界経済セッションは、先ほど申し上げたような方々が出席されて、それぞれの国、地域におけるCO2の削減努力というか、そういう点について説明をされ、議論をされましたけれども、日本の気候変動リスク対策というか温暖化対策、あるいは具体的な石炭火力発電所について、他の参加者から特別な発言はございませんでした。

 その他いろいろなパネルがありまして、恐らくそういうところで議論が出ていたかもしれませんが、私が参加いたしました世界経済パネルでは、日本の温暖化対策あるいは具体的に石炭火力に対する対応について、特別な御意見は伺えませんでした。

清水委員 今お話しされた世界の趨勢と、資料にもありますように、国内メガバンクの石炭火力に対する今後の融資の方針には、やはりそごがある、どうしても違和感があるというふうに思うんです。

 そこで、黒田総裁には、最後に、やはり多くの国民の皆さんが疑問を持っておられるわけですから、なぜ政府系金融機関やメガバンクは石炭火力関連の投資を中止できないのか、どうすれば中止できるというふうに考えておられるのか、言える範囲で率直に感想を述べていただきたいと思うんですが。

黒田参考人 これは私が具体的にメガバンクとか政府関係金融機関の石炭火力発電のファイナンスについて知っているわけではありませんが、いろいろな具体的なケースにおいて、例えば、かつて私がアジア開銀におりましたときに、フィリピンで石炭火力発電所を廃止して、韓国が新しい石炭火力発電所をつくったんですね。それは前にあった火力発電所よりもはるかに効率がよくて、CO2の排出量も大幅に減るというものをやったんですね。

 ですから、具体的な事情でどういうのがあるのかわかりませんが、最新の石炭火力で発電するということによって、CO2の排出量というのはむしろ減るという場合もあり得ると思いますので、具体的なケースは私存じませんので何とも申し上げられませんが、いきなり、特に途上国なども、石炭火力発電は一切やめろと言われても、恐らく中国とかインドとかはそう簡単にやめられないということがあろうと思います。

 政府関係金融機関にしても、メガバンクにしても、あくまでも、そういった事情、要請があったときにどこまで応えられるかという、趨勢として石炭火力発電所というのはだんだんフェーズアウトしていくということは確かだと思うんですけれども、個別具体的な例について、今の時点で何か私が具体的なことを申し上げるのはやや僣越かなというふうに思います。

清水委員 麻生大臣にも質問を用意していたんですが、時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、今、黒田総裁が言われましたように、効率のいいものにかえたとしても、LNG、天然ガスの二倍の温室効果ガスを発生するわけですから、これは理由にならないというふうに思うんですね。

 ぜひ、世界の趨勢について、日本の金融機関がそうした政策をしっかりと発信していただくことを強く求めて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

田中委員長 次に、青山雅幸君。

青山(雅)委員 日本維新の会・無所属の会、共同会派の青山雅幸でございます。

 本日は、まことに貴重な質問の機会を与えていただきまして、同僚議員の皆様に深く感謝申し上げます。

 早速ですけれども、所得税法の一部を改正する法律案に関しまして質問をさせていただきます。

 きょう、午前中の質疑でも海江田先生が御質問なさっておられましたけれども、私もNISAの改正について御質問をさせていただきたいと思っております。

 まず政府参考人にお伺いしたいんですけれども、このNISA制度、そもそも制度導入の目的、これはどういったものだったんでしょうか。

矢野政府参考人 お答えを申し上げます。

 NISA制度は、家計の安定的な資産形成の支援ですとか、マクロ的な成長資金の供給拡大を目的として、二〇一四年から導入されたものでございます。今回の改正におきましても同様の目的から見直しを行ったところでございます。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 このNISA制度の導入に私も賛成の立場から質問させていただくんですけれども、お手元に配付させていただきました資料一をごらんください。

 この十年で、アメリカは家計金融資産が二・七倍、イギリスが二・三倍と二倍以上にふえているのに対しまして、日本だけ一・四倍なんですね。この理由としては、もちろん、実質所得が伸びているかどうかというところも当然かかわってくるとは思うんですけれども、運用リターンによるもの、これがかなりの開きがある。特にアメリカと比べると、アメリカは運用リターンで二倍になっているのに、日本は一・二倍だけということになっております。

 これは、理由として資産運用の巧拙というのも当然あろうかとは思いますし、各株式市場等々の成長割合というのもあるとは思いますけれども、これもやはり、きょう午前中に海江田先生がお示しになっておりましたけれども、資料二をごらんください。そもそも、日本の場合は現金、預金が五三・三%という配分割合になっております。

 御承知のとおり、今の日本、預金をしておいてもほとんど金利はつかない。私も記憶しておりますけれども、バブルのころ、バブルの前でしょうか、ワリコーとかワリチョーとかありまして、定期にしておくだけでも金利が四%、五%ついてきた。こういう時代でしたら、ほっておいても十年たてば一・五とか二倍になってくるわけですけれども、今の場合ではそういうふうにはいかない。

 これはやはり、現預金の比率をそれなりに下げていって、きちんとした投資というか賢い投資を長期間やっていくというのが一番いいというふうに私は思っておるんですね。

 そこでお伺いするんですけれども、今回、このNISAの制度、二階建てあるいはつみたてNISAというようなことになったわけですけれども、こういう制度設計にした理由というのをお聞かせください。

矢野政府参考人 お答え申し上げます。

 新たなNISA制度では、原則として、いわゆる一階部分の積立投資を行っている場合に、別枠として二階建て部分での非課税投資を行えるという仕組みに見直すことといたしております。

 これは、積立、分散投資による安定的な資産形成がより多くの国民に普及することを狙ったものでございまして、今回の改正を通じて少額からの積立、分散投資を更に促進してまいりたいと考えております。

 先ほどもちょっと御答弁で申し上げましたけれども、いわゆる一般NISAというところは、かなり御高齢の方がぽんと預けて非課税で運用をしているというケースが非常に多うございまして、これは人生百年を見据えた積立て促進という理念には、どちらかといえば、相対的にはそぐわない。

 むしろ積立型NISAの方が、圧倒的にそれをこつこつと積み立てていく。しかも、貯蓄から投資へという流れをいざなうといいますか、という効果もあるということで、そちらに軸足を移そうとした。それがまた、やや過渡的な扱いになったものですから複雑というふうに言われておりますけれども、そういうものでございます。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 私も、こつこつと積み立てていくというのは非常にいいやり方だと思うんですね。

 投資の方法はいろいろありますけれども、ドル・コスト平均法というのがございまして、決められた額を毎月積み立てていく。そうすると、例えば、きょうのように非常にマーケットが下がっている、七百円以上落ちているとか、そういうときにたまたま買えれば量が多く買える。株式が非常に高いときにはこれは少なくしか買えない。平均していくと非常にいい運用ができるというやり方、それをドル・コスト平均法というわけですけれども、非常に合理的だなと思っております。

 ですから、長年かけて積み立てていくというのは日本人の資産形成にとって非常に重要だと思っているんですけれども、ただし、ここで問題なのは、積立てにどういう商品が用意されているかというところだと思います。これはどういうような観点で選ばれているのか、若干説明を含めてお願いしたいと思います。

森田政府参考人 お答え申し上げます。

 つみたてNISAの対象商品は、家計の安定的な資産形成を促進する観点から、長期、積立、分散投資に資するような良質な商品が低コストで提供されることが重要であるとの考え方に基づいて決められております。

 こうした考え方のもと、具体的には、信託契約期間が二十年以上又は無期限、毎月分配型でないことに加えまして、例えば、公募株式投資信託につきましては、販売手数料はゼロ%、年間の運用手数料である信託報酬も一定水準以下とするなどの要件を定めているところでございます。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 私、これも説明を受けたときにかなり驚いたんですけれども、買い付け手数料ゼロ%、これは一般的には三・六%くらいのものが多いかなと思うんですけれども、三・六%ということは、十年たてば三六%が手数料で消えるわけですね。これがゼロであるならば、投資したものがそのままリターンになって返ってくる可能性がある。

 これは本当に、非常に、私も若いころから、累積投資みたいな決められた額を買ったりしていたんですけれども、そういうときにこういったものがあれば、相当程度有利だったんだろうなと思います。これはぜひ広報していただいて、日本人の資産形成に資するように、ぜひお願いしたいと思っております。

 一方、ちょっときょう、資料三、多分ここにいらっしゃる皆さんは目にすることが一生ないようなお話だとは思うんですけれども、資本主義の世の中ですので、時には人は失敗することもあるわけですね。私は弁護士をしておりますので、そういった方が再生されるお手伝いということで、破産申立ての代理人ということもやらせていただいております。

 私、かねがね、これはおかしいんじゃないかと思っていたのが、破産には免責不許可事由というのがございまして、要は、浪費で破産をした場合に免責不許可になる場合がある。その中に、それを調べるために、これまでの生活状況に投資、投機というのがあって、そこに株式というものにチェックするものがある。株式投資が、これを見ると、あたかも悪いことであるかのように扱われているというのがあるんですね。

 これは非常に残念なことでして、確かに、日本人というのは、預金が一番いいんだよ、株式なんというのは余りやるものじゃないんだよというような今までの考え方があったと思うんですけれども、これはやはり改めていく必要がある。先ほどの欧米の考え方から見ても、もちろん株だけに貴重な財産全部というわけにはいかないんでしょうけれども、預金、株式あるいは不動産、分散投資していくのが、やはりこれからのやり方ではないかなと思っております。

 これは裁判所のおつくりになっているものですので、三権分立の中で、行政であるとか立法が口を出せることではありませんけれども、問題は、こういう考え方がまだまだ非常に日本の中で主流だというところだと思っています。

 さきに金融庁の例の二千万円問題があったと思うんですけれども、あれは私は非常に金融庁の姿勢を高く評価しておりまして、これからなかなか、本当に実質賃金が上がっていくかどうか先行きが不透明な中で、自分でできる中で一定の方向性を示したというところでは、私はああいう不利益なこともきちんと開示するのがこれからの政治のあり方だと思っております。

 そういう意味で、私は政策誘導としてNISAも充実していくべきだと思いますし、こういったことについて、政府も積極的にこれからも政策誘導していくべきだと思います、法人税だけではなくて、法人税のいろいろな控除だけではなくて。これについて、麻生大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、おっしゃるとおり、株式投資というのは、個人の資産形成というような話だけじゃなくて、成長資金の供給といった意味からも重要な社会的意義を有しているということは間違いないんじゃないですかね。

 ただ、今言われたように、青山さんは幾つか知らぬけれども、俺たちが餓鬼のときは、証券会社とか不動産会社というのは大体、株屋とか地面師といったら、ほとんど詐欺師に近いぐらいのイメージでしたな。あんなところだけは行くんじゃありませんよというようなことをよく親から言われた記憶がありますので、私らのときはそうだったんですよ。お年、八十なんて人はここにいないから、そうかもしれませんけれども、大体そういうものだったの。

 ところが、今は大分時代が変わっているんだと思いますので、違うんだと思いますけれども、金融商品の投資というものは、これはある程度リスクがあることは確かですから。そういった意味では、私どもとしては、こういったものが、基本的にはある程度メリットとかデメリットというのはよくあるということを理解した上で、長期の分散、積立投資といったような、リスクを抑制できる投資方法というものを促すことが必要なんだと思っているんですが、幸いにして、いろいろな形で大分時代も変わってきたと思っておりますので、若年層を含めました社会人に対して、つみたてNISAが例かもしれませんけれども、職場を通じていろいろな形で分散投資の普及を図るという取組を進めさせてもらっているんですけれども。

 少なくとも、一千八百六十兆かな、個人金融資産、そのうちの現預金の比率が九百八十というのはちょっと異常でしょう、これ。それぐらいやはり、今、一万円普通預金で金を稼ごうと思ったら、〇・〇〇一だったら、十億円やって一万円ですかな。分離課税がかかるんだから、十二億円貯金がなかったら、年間、普通預金で一万円の金利を稼げないんですよ。あなたのさっき言われた四%、五%、夢みたいな話ですから、今は。そういった意味で、ここに十億円持っている顔というのは余り見かけませんから、めったにいないんですよ、そんな人。それが今銀行の置かれている現状ですから。

 そういった意味では、こういったようなものというのをある程度やるということは、個人のいわゆる所得の話を先ほど何か女性の方がしておられましたけれども、やはりそういったようなものに投資ができていくものというのは、金融資産に差がついてくるというのはこういうところに出てきますので、私どもとしては、これは何らかの形で、安心して、積極的にというようなものをできればというのが、我々、このNISAというものをやらせていただいている背景です。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおりのところだと思います。ぜひ、こういったこと、いい面、悪い面、両方あります、両方ともきちんと明らかにした上で、進めるべきは進めていただきたいと思っております。

 続きまして、新型コロナウイルスの質疑をさせてください。

 予算委員会で当委員会の伊佐先生がお取上げになった日本版CDCのところで私もお聞きしたいと思っております。

 御承知のとおり、ダイヤモンド・プリンセス号、約三千七百人の乗員乗客、二週間隔離されて、感染者約七百人、一九%の方が感染されているわけです。これは、隔離が万全だったとはやはり言えないと思います。

 私は医療事故の事件に取り組む弁護士でもございまして、あしき結果には原因があるといつも考えております。どこがよくなかったのかは今後の検証を待つこととして、今ここで軽々に触れることはしませんけれども、ただし、やはり万全な隔離対策をとるには、あらかじめマニュアルや、それに対応できる人的資源、設備が必要だと考えております。

 そこで、お伺いします。感染症のエピデミック、アウトブレーク、パンデミック、こういう段階で進んでいくわけですけれども、こういう感染症対策の専門家から成る常設の専門機関というのは日本にあるんでしょうか。

浅沼政府参考人 お答えいたします。

 感染症対策に当たりましては、国の機関といたしまして国立感染症研究所、自治体の機関といたしましては地方衛生研究所や保健所を設置し、常時、例えば感染症のサーベイランス業務、これは流行状況の監視でございますが、そうした業務を実施しているところでございます。

 また、専門家の派遣などにつきましては、国立感染症研究所におきまして、感染症のアウトブレーク等が発生した際に速やかに派遣、対応が可能な実地疫学専門家を養成しておりますし、日本環境感染学会におきましては、認定感染制御医などの感染制御の専門家あるいは感染管理の認定看護師によって構成される災害時感染制御支援チーム、DICTと言っていますが、を組織し、災害発生時に速やかな派遣などを可能としているところでございます。

青山(雅)委員 ありがとうございます。

 国立感染症研究所等あるようですけれども、サーベイランスや研究がメーンであって、今回のような未知の感染症が起きたときに隔離対策等をきちんとやるというようなシステムにはどうもなっていないように思われます。

 そこで、お伺いするんですけれども、まず資料四をごらんください。ここのところ、SARS、それから新型インフルエンザ、これはメキシコで発生したものですけれども、それからMERS、恐らく三年から五年に一度くらいに大きな話題を呼ぶ感染症が起きております。それで、訪日外国人客数ですけれども、SARSの当時は五百万人にすぎなかったものが、今六倍、三千万人を超えているわけですね。

 こういったことを見ると、こういった新型感染症、いつ、更に致死率が高く、感染力も高いようなものが来るかもしれない。そうすると、まさにナショナルセキュリティーの問題になろうかと思います。

 CDC、有名なCDCですけれども、もとはといえば、マラリアの感染症対策として第二次大戦終了後くらいにできたもののようですけれども、それを、今現在、一万四千人の職員に七十七億ドルの予算、とてもこういうものを一気に立ち上げるというわけにはいかないと思いますけれども、その中にあるEOC、緊急作戦センターであるとか、エピデミック・インテリジェンス・サービス、EIS、これは、何か起こると疫学の専門家がすぐ飛んでいく、病気の探偵と言われているようなものらしいんですけれども、まずはこういった感染症の緊急事態に対応する常設の専門家から成るチーム、これはもう速攻でつくらないと、何か起きてからでは本当に遅くなる可能性があると思っています。

 来年度、予算はまだ成立しておりませんけれども、予備費であるとか、さらに、来々年度の予算、あるいは補正予算で、まずはやはりこういう緊急対策チームのようなものを、専門家から成るものを発足させないと、ナショナルセキュリティーの観点からも大変心配だと思っております。

 この点について、麻生財務大臣の御所見、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今言われたこのセンター・フォー・ディジーズ・コントロール・アンド・プリベンションだったかな、CDC、これはアメリカにある施設の話なんだと思いますけれども。

 今現在としては、新型コロナビールスの感染症対策本部というのを設置して、このもとに今いろいろ対応に当たらせていただいているところですが、今言われたような話の中に、例えば病院船をつくるとかいう話が出てきてみたり、いろいろな形で話が出てきているのは知っていますけれども、政府の対策本部のもとに今専門家会議も設置をされておりますので、いろいろ、今の当面のこの騒ぎが終わった後も引き続き、こういったことは今後とも起こり得るということをある程度考えておかないかぬということなんだろうと思いますので、こういった感染症拡大防止というより、そういったものが入ってくる前の水際の話とかいろいろなものを、関係省庁、これは財務省だけでできる話じゃありませんので、政府としていろいろ考えていかれることになるんだと思っております。

青山(雅)委員 もう二〇一〇年、二〇一三年のころから日医の横倉会長を始めとして識者の方、たびたび繰り返し提言されているところでございますので、本当に手おくれになる前にぜひよろしく御検討のほどお願いいたします。

 質疑の時間が終わりましたので、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十四分散会


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