衆議院

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第2号 令和4年2月4日(金曜日)

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令和四年二月四日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 末松 義規君 理事 吉田 豊史君

   理事 角田 秀穂君

      井上 貴博君    石井  拓君

      石原 正敬君    門山 宏哲君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      塩崎 彰久君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    中川 貴元君

      藤原  崇君    三ッ林裕巳君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      若林 健太君    鷲尾英一郎君

      江田 憲司君    櫻井  周君

      下条 みつ君    中川 正春君

      野田 佳彦君    伴野  豊君

      赤木 正幸君    沢田  良君

      藤巻 健太君    中川 宏昌君

      岸本 周平君    田村 貴昭君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       黄川田仁志君

   財務副大臣        岡本 三成君

   経済産業副大臣      細田 健一君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣人事局人事政策統括官)       横田 信孝君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 黒瀬 敏文君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 茨木 秀行君

   政府参考人

   (内閣府地方創生推進事務局審議官)        北浦 修敏君

   政府参考人

   (内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官)            覺道 崇文君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  松尾 元信君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局政策立案総括審議官)      井藤 英樹君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  古澤 知之君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    栗田 照久君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           小野平八郎君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   奥  達雄君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阿久澤 孝君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (国税庁次長)      重藤 哲郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           蓮井 智哉君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            飯田 健太君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           大澤 一夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣人事局人事政策統括官横田信孝君、内閣府大臣官房審議官黒瀬敏文君、大臣官房審議官茨木秀行君、地方創生推進事務局審議官北浦修敏君、科学技術・イノベーション推進事務局審議官覺道崇文君、金融庁総合政策局長松尾元信君、総合政策局政策立案総括審議官井藤英樹君、企画市場局長古澤知之君、監督局長栗田照久君、財務省大臣官房総括審議官小野平八郎君、主計局次長奥達雄君、主計局次長阿久澤孝君、主税局長住澤整君、国税庁次長重藤哲郎君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君、経済産業省大臣官房審議官蓮井智哉君、中小企業庁事業環境部長飯田健太君、国土交通省大臣官房審議官大澤一夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中西健治君。

中西委員 おはようございます。自由民主党の中西健治です。

 これまで参議院の財金では何度も質問に立ってまいりましたけれども、衆議院では初めての質問ということになります。どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は、十五分という限られた時間ではありますが、コロナ禍の経済と財政の対応、税への影響などについて議論させていただきたいと思います。

 まずは、コロナ禍のこの二年間の日本経済の状況についての認識をお伺いしたいと思います。

 経済対策ですとか税制改正を考えるに当たっては、何といっても経済の状況について正しい認識を持つということが出発点となります。大臣、所信で簡潔に触れられておりましたけれども、そこのところ、日本経済のこの二年間、コロナ禍での二年間の状況についての認識をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 日本経済でありますけれども、足下ではオミクロン株が拡大をしているという中で、国民生活、それから経済への影響は依然として続いていると思います。

 そして、その中で、この二年間の経済状況につきましても、例えば企業業績は、好調な輸出やデジタル化等を背景に、製造業を中心に全体として改善をしている一方におきまして、対面型サービス業等の一部の業種は厳しい状況にある。コロナの影響というものは業種によって異なる影響を及ぼしている、そのように認識をしております。

中西委員 大臣がおっしゃられたように、業種によって大きなばらつきがある、このことは、最近よく耳にしますK字形回復という言葉によく表されていると思います。アルファベットのK、すなわち、下の方に行く辺、下の方に行く線の上にある業種は、大変大きな影響を受けている、苦しんでいる。そうした対面型サービスですとか運輸ですとか、あと、そこに働く人々及びフリーランスの方々は、大変苦しい。これは、Kの下の方は大変苦しいという一方で、巣ごもり需要を取り込んで、ITですとかゲームですとか電機ですとか、業績が非常に上がって、収益が上がっている、そうした業種、そこに働く人々、そういう方々がいる。こういうKということをしっかり認識しなければいけないんだろうというふうに思います。

 以前であれば、V字形とかL字形とかU字形とか、こういうことが言われていましたけれども、それは、よきにつけあしきにつけ、みんなが一緒の船に乗っているということですけれども、K字は、大きく影響が異なっているんだということを示しているだろうというふうに思います。

 これが如実に表れているのが税収というところなんじゃないかと思います。

 皆さんも、このニュース、昨年の夏に接して驚いたんじゃないかと思います。私も大変驚きました。それは何かというと、昨年度、令和二年度はマイナス成長でした。マイナスの三・九%という成長であったにもかかわらず、国の税収が最高だったということです。マイナス成長で、国の税収が最高、これは本当に、ちょっと肌感覚に合わないというところじゃないかと思います。

 それは何なんだということなんですが、一昨年の十二月に、政府は、令和二年度第三次補正予算を作りました。そのときに、景気が悪いので、税収の見込みというのも下げました。これは当然そうだと思うんですが、前年の令和元年の税収が五十八・四兆円だったのに対して、二年の十二月の時点で、五十五・一兆円の減額補正というのを、税収、行っております。

 ところが、蓋を開けてみたら、丸めて言うと、五十八が五十五に下がるのではなくて、六十・八兆円、六十一兆円に増えたということなんですね。三兆円減るんじゃなくて三兆円増えた。

 これはどうしてなのかということなんですが、これを子細に見てみますと、減額補正をしたときの予想と実際の税収で一番異なった、金額が上振れたのは、税の項目では法人税ということであります。八兆円まで下げました。その前の年は十兆円強だったんですが、八兆円まで十二月の時点で下げて、そして、蓋を開けてみたら十一・二兆円。三・二兆円も多かったということです。割合にして四割ということであります。

 これが何なんだということなんですが、これは主税局長からお答えいただきたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 令和二年度補正後予算におきましては、法人税収を八兆円と見込んでいたわけでございますが、決算におきまして、十一・二兆円と、御指摘のとおり、三・二兆円の上振れとなったわけでございます。

 この要因といたしましては、令和二年度につきましては、補正後の税収を見込んだ時点におきましては、新型コロナの影響で企業業績が悪化すると見込まれていたことから、それを踏まえた見積りを行ったものではございますが、実際には、一部の業種は大変厳しい状況にあるという一方で、輸出が好調であった製造業、あるいは、デジタル化の動きや巣ごもり需要などを背景といたしまして、情報通信業なども含めまして、全体として企業業績が下支えされたことなどが要因としては考えられるところでございます。

中西委員 まさにK字形ということなんじゃないかと思います。

 法人税の場合には、赤字企業の赤字が増えても、元々法人税を払っていませんから、K字形の下の方の赤字が増えたとしても、若しくはとんとんだったところが赤字になったとしても、税収には影響を与えない。一方で、もうかった企業が増えるとか、これまで黒字だった企業の黒字幅が増えるだとか、それが税収をそのまま底上げしていくということになります。

 ですので、このK字形がゆえに法人税が増えたということなんじゃないかと思いますけれども、局長、いかがでしょうか。

住澤政府参考人 おおよそ、委員御指摘のとおりかと存じます。

中西委員 K字形ということはしっかり前提とした上で、経済対策などを考えていきたいと思うんですが、もう一つ、税収の見込みが二番目に外れていたというか、差が大きかったのが、何と消費税なんです。

 消費税収が、元々、十九・三兆円と補正予算では組みました。ところが、蓋を開けてみたら、二十一兆円。一・七兆円も消費税収が予想より上がっていたということなんです。これはどうしてなのか。これもお願いいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税につきましては、令和二年度の補正後予算におきまして、御指摘のとおり、十九・三兆円と見込んでいたところ、決算におきまして、二十一兆円、一・七兆円の上振れとなってございます。

 この要因につきまして、詳細な分析はなかなか困難な面もございますけれども、主な要因の一部といたしましては、令和二年度について、新型コロナの影響による納期限の延長といったような対応もいたしておりますので、こういった要因によって令和元年度の申告分の一部が令和二年度にずれ込んで収納されたことなども考えられるのかなというふうには存じております。

中西委員 今、局長は、納付期限の猶予、延長があったのでこれも一因ではないか、要因の一つではないかというふうにお答えになっていらっしゃいましたけれども、ほかにもきっと要因があるんではないかというふうに思います。一・七兆円も予想より多かったということですから、納付期限の延長ということもそれなりには織り込んでいたはずですので、どうしてなのかということを考えていくと、私なりに三つ仮説を持っております。

 それは、経済のソフト化という中で、消費のソフト化というのもありまして、消費の実態をGDPの統計がきっちり捉えられていないのではないかというのが一つ目の仮説であります。

 そして、二つ目の仮説として、対面サービスは落ち込んでいました。一方で、物は売れていました。サービスから物へ消費がシフトしている中で、物への消費税の捕捉というのはできている、それに対してサービスに対しては元々曖昧なところがあるということから、物の消費に、サービスから物に消費がシフトしたことによって消費税収が上がったのではないか、これが二つ目の仮説であります。

 あと、三つ目の仮説なんですが、これもKに関わることだと思いますけれども、皆さん、新聞なんかでよく読む、見ると思うんですが、高額商品が大変売行きがいい。一本百万円以上もする時計ですとか、あとは宝飾品ですとか、こうしたものが大変売れているということをよく耳にするかと思います。

 そんな中で、免税点制度を利用している中小の小売、サービスのところから、消費が、免税点制度を利用していないところにシフトしている、百万円以上の物を買うわけですから。ということになっているということじゃないかというのが三つ目の仮説です。そうすると、益税の部分、消費税を払わなくていい、免税事業者の方々の益税と呼ばれる部分が図らずも出てきてしまっているのではないかということがあり得るのではないかというふうに思っております。

 こうした三つ目の仮説が正しいとすると、今後、インボイス制度、猶予期間も経て、益税というのがなくなってくるとすると、これが消費税収に与える影響がここで見て取れるのではないかというふうにも思いますが、こうした私の三つの仮説を持っていますけれども、局長、いかがでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の点、全てについて、私どもとして、税収に与えた影響について分析するだけの根拠となるデータを持ち合わせておりませんので、全てにお答えするのはなかなか難しいというのは御理解いただければと思いますが、例えばで申しますと、高額な消費が伸びているという御指摘、この点については、確かに、例えば、海外旅行に行っておられた方々が、海外旅行には行けないということで、国内で高額商品を購入されるといった動きがあったこともこれまた事実でございまして、そういったものが税収に与えた影響、これは考えられなくはないというふうに思っております。

 御指摘の点、いずれも御示唆に富んだ御指摘と思いますので、今後、税収に与える影響を考える上で大変参考になる御指摘かというふうに存じております。

中西委員 昨年度だけではなくて、今年度、来年度、税収、分析していただいて、そして、この経済、構造変化が起こっているのであればそれに対応していかなきゃいけないというふうに思いますし、それをしていただきたいと思います。法人税にしても、消費税にしても、コロナ禍におけるK字形経済ということを色濃く映し出しているのではないかというふうに私は考えています。

 そんな中で、経済対策ですとか税制改正を策定するに当たっては、やはり二極分化、K字形二極分化が起きているということを認識した上で中身を決めていくべきだと思いますが、こうした経済状況の変化を踏まえた上で、望ましい経済対策、税制について、大臣のお考えを伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 中西委員御指摘のとおりに、コロナからの回復の中で、企業業績の回復にばらつきが出ているわけでございまして、そのために、この状況をしっかりと踏まえて適切な政策対応をしていくこと、これが重要であると思っております。

 昨年十一月でありますが、岸田総理からも、業績がコロナ前の水準に回復した企業については三%を超える賃上げを期待する、民間企業の賃上げを支援するための環境の整備に全力で取り組むとの発言がありました。

 こうした考え方なども踏まえまして、今般の税制改正におきましては、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げを促す観点から、賃上げ税制を抜本的に拡充をすることとしたほか、公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、様々な施策を取り、総動員していくこととしております。

 また、支援が必要な方に対しましては、様々な課題に応じたきめ細かな施策を講じていくことが重要でありまして、昨年決定した経済対策において、住民税非課税世帯に対する一世帯当たり十万円の現金給付や、厳しい状況にあります学生の学びを継続するための緊急給付金の給付など、それぞれの状況に応じた支援を行っております。

 財務省として、企業や国民が置かれている状況を適切に踏まえまして、成長と分配の好循環に向け、予算、税制を通じた取組を進めてまいりたいと考えております。

中西委員 ありがとうございます。

 K字形の下の線で苦しんでいらっしゃる方々には支援の手を差し伸べるのが政治の役割である一方、K字形の上の線にまで恩恵が被るような政策は税金の無駄遣いになってしまうということ、また、もうかっている企業には、予想より多く国庫に税金を払っていただくのはありがたいですけれども、できれば従業員にちゃんと還元する、そうした仕組みづくりを行うことが大切だというふうに考えております。

 今日の質疑、どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党、北陸信越ブロックから初当選をさせていただきました中川宏昌でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 今、日本は三つの構造変化に直面していると言われております。一つ目は、人口減少、少子高齢化。二つ目は、AI、IoT、ロボット、デジタル社会の急進展。三つ目は、激甚化する風水害や、首都直下、南海トラフの大地震等、迫る大災害であります。

 この直面する構造変化に対応すべく、SDGsの目標が二〇三〇年、また、二〇五〇年にカーボンニュートラルの実現のために目指す地球環境、エネルギー問題も、二〇三〇年までにどこまでやり抜くことができるかが勝負になると思います。まさにこの十年が勝負であり、感染が急拡大しているコロナ対策とともに、二〇三〇年に向けてそのスタートを切るのが今年との強い決意で諸課題に向かっていかなくてはなりません。

 まず、コロナ禍における予算措置についてお伺いをします。

 新型コロナウイルス感染症が国内で初めて感染されてから三年目に入り、今は第六波がすさまじい勢いで拡大をしており、大臣の所信でも、「新型コロナウイルス感染症対策に万全を期してまいります。」と表明をされました。今拡大しているオミクロン株は重症化が少ないと言われておりますが、今後強毒化していく可能性もありますし、このまま感染症が収まっていくかもしれません。

 そこで、コロナ対策として今回も予算措置をしていただいているところでありますが、今後更に厳しい状況になる前に、又は、出口が見えてきて、ポストコロナもしっかりと備えておく、この両方をにらみ、機動的な予算措置をしていくことが大事だと考えますが、大臣の御見解をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 まず、令和三年度補正予算におきましては、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、病床の確保や医療人材の確保に要する緊急包括支援交付金、承認された経口治療薬等の買上げ費用、飲食店向けの時短要請協力金などを措置しているほか、ウィズコロナ下での社会経済活動の再開等の観点から、GoToキャンペーン事業、予約不要の無料検査の拡大などを措置しておりまして、総額二十兆円規模の予算を確保しているところでございます。

 そして、あわせて、十六か月予算の考え方の下に編成をいたしました令和四年度予算におきましても、新型コロナ予備費五兆円を措置いたしまして、予期せぬ状況変化に備えております。

 このように、感染拡大防止、経済活動再開のための予算をしっかりと措置したところであり、各省庁におかれましては、令和三年度補正予算の早期執行に努めていただくとともに、令和四年度予算の早期成立を図り、盛り込まれた諸施策を着実に実行に移していくことが重要であると考えております。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 現下の状況を的確に捉えて、機動的な対応ができるよう、是非ともお願いしたいと思います。

 次に、インフレリスクについてお伺いをします。

 現在、世界経済はコロナ禍からの回復の兆しが見えている状況から、世界各国の中央銀行が、大規模な金融緩和から、量的緩和の縮小や利上げなど金利引締めへかじを切り始めております。欧米ではインフレが進んできており、日本においても長らく低迷していた物価が足下では上昇をしてきておりますが、急なインフレリスクへの対応が必要と考えます。

 この点についてどのようにお考えか、また、どのような対策を取られているのか、お伺いをいたします。

岡本副大臣 中川議員御指摘のとおり、インフレのリスクの分析、その対策は最も重要だと考えております。

 現在の物価上昇のその背景には、原油を始めといたしました世界的な原材料の上昇があるというふうに認識しています。感染症の動向に加えまして、この原材料価格の動向につきまして、景気の下振れリスク、これにつきましてしっかりと注意を払っていくことが重要だと考えています。

 政府としては、ガソリンや灯油などの急激な値上がりを抑制するための激変緩和措置を講じております。

 加えまして、企業による積極的な賃上げを促すために、賃上げに関わる税制措置や経済対策や価格転嫁円滑化のための政策パッケージに盛り込まれた取組、これらのことを通じまして賃上げの環境を進めていきたいというふうに考えています。

 これによりまして、物価だけが上がる状況ではなくて、企業収益の拡大や賃金の上昇が雇用の拡大にもつながり、消費の拡大や投資の増加を通じて、更なる企業業績の拡大に結びつくという好循環を実現していきたいと考えております。

中川(宏)委員 岡本副大臣、ありがとうございました。

 今、様々なリスクについて対応をしているということでございますけれども、迅速な対応ができるよう、今後もしっかり注視してお願いしたいと思います。

 次に、方向性を変えて、地方の課題について、二点お伺いしたいと思います。

 一つは、地域金融機関の支援についてであります。

 大臣の所信の中でも触れていただきまして、私自身、元地方の銀行員、地方議員出身の私としては、大変ありがたい、本当にありがたいと思っております。

 全国的な人口減少に加えまして、地方は特に過疎化が進んでおります。この要素とともに、長引く低金利など、地域金融機関は今ビジネスモデルの変革が大きな課題となっております。

 そのような中、地域金融機関も経営環境の変化に知恵を絞りながら懸命に頑張っております。例えば、報道によりますと、長崎県では、地域金融機関が、電気自動車の普及、再生可能エネルギーの普及、災害時の支援を柱に、行政、地域企業と連携をしながら、金融面での下支えや企業マッチングを行いまして、地域課題の解決に積極的に取り組んでいる事例などがあります。

 地域金融機関は、これまで、地域経済の発展のための下支えをしてきておりまして、地域のことを一番知っているのが地域金融機関であります。地方創生、地域活性化においても欠かせない存在が地域金融機関と言えます。

 そこで、地方創生を積極的に進めていくためには、地域の金融機関を様々な面から御支援いただきたいと思いますが、どのようなお取組をお考えか、御答弁を願います。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 地域金融機関につきましては、今委員御指摘のとおり、低金利環境、人口減少などにより厳しい経営環境が続く中で、自ら経営改革を進め、金融機能を強化することで地域経済の回復、成長に一層貢献していくことが重要であると考えております。

 こうした地域金融機関の取組を支援する観点から、これまで金融庁におきましては、銀行法を改正し、金融機関がデジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に貢献できるよう、業務範囲規制や出資規制を緩和するとともに、合併、経営統合などの経営基盤の強化の取組を行うのであれば、それを支援するため資金交付を行うという制度を創設するなど、様々な環境整備を行ってきたところでございます。

 引き続き、地域金融機関と丁寧に対話を行いながら、各行がこれらの施策も活用しながら地域経済に一層貢献するよう促してまいりたいというふうに考えてございます。

中川(宏)委員 今るるお話があったところでございますけれども、地域の金融機関は、地方創生に取り組むことによって十分なメリットを確保できるにもかかわらず、まだ十分な取組ができていないのが現状ではないかと思い、これはもったいないと思っております。その支援等サポートを強力にしていただいて、一つは、地域金融機関が、目利き力を備えた人材の育成ですとか積極的な企業ニーズの発掘、そして地域の特性に応じたコンサルティングができる、そんな地域金融機関の支援に向けて、一層財務省としても御尽力いただきたいと御要望を申し上げておきます。

 そしてもう一つ、現在の地方の課題といたしましては、豪雪の対応があります。直近十年で、全国で雪害による死者数が自然災害による死者の何と四割以上となっており、これは大きな課題であります。

 雪害対策といたしまして、昭和三十七年に豪雪地帯対策特別措置法が議員立法で制定をされました。時限立法で、今年の三月に期限を迎えるために、今国会で延長しなければならないと思っております。

 また、昨年の十二月には、除雪時の死傷事故を防ぐ強化対策として、二〇二一年度補正予算で新たな支援策といたしまして、自治体や地域の将来を見据えた除雪体制づくりを国が支援する豪雪地帯安全確保緊急対策交付金、これが創設をされました。私ども公明党といたしましても、プロジェクトチームをつくりまして、地域の声を丁寧に聞きながら創設に向けて努力し、実現をいたしました。

 これらによりまして、ソフト、ハード両面から雪害対策が進んできているところでございますけれども、中長期的な対策の拡充に向けまして、今回創設された交付金をしっかりと位置づけるとともに、今後、豪雪地帯を支える安定的な予算確保を願うところでありますが、御見解をお伺いいたします。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 豪雪地帯におきましては、過疎化、高齢化の進展などによりまして、高齢者を中心として、屋根の雪下ろし作業中の死傷事故が多発するなど、対策が急務であるというふうに認識をいたしております。

 このため、令和三年度の補正予算では、国土交通省の各地方整備局を通じまして、生活道路の除雪への支援を行うとともに、除排雪作業中の死傷事故防止に向けた新たな交付金を創設したところでございます。

 本交付金は、除排雪作業中の死傷事故を防止するため、将来を見据えた戦略的な方針の策定と、持続的な除排雪体制の整備などに取り組む自治体を支援するものでございまして、現在、国会で御審議いただいております令和四年度予算案にも盛り込んでいるものでございます。

 豪雪地帯への支援に関しましては、今後とも引き続き国土交通省等と密接に連携を図ってまいります。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 昨年、今年と豪雪が続いている中で、今後、異常気象の中で、更にこの豪雪への対策というのが急務になってくると思います。その点につきまして、しっかり現状を捉えながら、是非、この豪雪地帯の支援に向けてお願いしたいというふうに思っております。

 それでは、最後の質問になろうかと思いますけれども、経済安全保障についてお伺いいたします。

 この経済安全保障についてですが、数年前から議論が本格化をしまして、昨年六月に、経済財政運営と改革の基本方針二〇二一において、様々な取組を強化するとともに、基幹的な産業を強靱化するために、今後、その具体化と施策の実施を進めるとあります。昨年十一月には第一回経済安全保障推進会議が行われまして、総理から、法案について専門的な見地から検討を進めるよう指示があったところであります。

 今、人材育成や技術開発に対しまして強力な支援をしていかなければいけないと思いますが、この経済安全保障の観点から、ワクチンや治療薬、そして創薬とかも含めまして、国内における研究開発などをしっかりと支援していくことがこの経済安全保障につながってくると考えます。

 財務省の御見解をお伺いいたします。

岡本副大臣 私どもも中川委員と全く同じ問題意識を持っておりまして、安全保障と経済を横断する領域で様々な課題が顕在化してくる中で、経済安全保障の取組を強化していく必要があるというふうに認識しています。

 このため、これまで十六か月予算の考え方に基づきまして、経済安全保障重要技術育成プログラム二千五百億円や、国産ワクチンの開発、デュアルユースでの製造等への支援、これは五千億円規模でございますが、既に措置をしております。

 また、経済安全保障を推進するための法案につきましても、現在政府で検討が進められております。

 今後とも、各関係省庁と連携をいたしまして、経済安全保障の確保に向けた取組をしっかりと進めていきたいと決意をしております。

中川(宏)委員 ありがとうございました。強力にまた進めていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、以上で終わります。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 鈴木大臣とは当委員会で質問をさせていただくのは初めてでございますので、またよろしくお願いを申し上げます。

 まず、大臣の方に、大きな視点からお話をさせていただきます。

 私、この委員会の筆頭理事を三年間、三年目になるんですけれども、その中で、どうもこの委員会で、最近、アベノミクス以来、ずっと国民の格差が開いてまいりました。そういった中で、お金持ちは大金持ちになり、中間層は何か没落して、所得の低い層の方々はずっとなかなかデフレのもろの影響を受けて大変な状況に陥っている。そういった中で、コロナ禍が生じまして、これまた国費の出費を、膨大な出費を余儀なくされているわけでございます。

 そうすると、日本の金庫番として、財務省が税収を増やしていく、あるいは格差是正の税制改革をしっかり行っていかなければいけないと、これは誰もが思っていると思うんですけれども、そこの中で、この三年間、そういった格差是正の抜本税改革とか、あるいは超富裕層への増税とか、あるいは超巨大企業の増税とか、そういったことをしっかりこの委員会で議論をしたことがないといいますか、議論したことがないというよりも、財務省からそういった抜本的な税改革の提案がないんですね。そこは、やはりきちんとやらなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。特に、財務省というのは日本の金庫番ですから、そこでこのまましっかりとした対応を取らないと、日本そのものがまずくなってくるんじゃないかという懸念を持っているわけです。

 私の方は積極財政論者なので増税ということについて余り言及したことはこの委員会ではないんですけれども、この辺について、どうでしょう、もっと担税力のある人たちに増税をして税を担ってもらう、そういうお考えはございませんか。

 特に、私、財務省の中でいろいろと、例えば矢野事務次官が、この前、昨年の文芸春秋の十一月号に寄稿した論文で、「財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」」、こういう論文が永田町とか霞が関、丸の内に衝撃を与えたわけですけれども、大臣、いかがですか。ちょっと大臣の存念をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 税制についてのお尋ねであったとお聞きをしてまいりました。

 税制につきましては、これまでも、時々の経済社会の変化を踏まえながら、累次の改正を行ってきております。

 具体的に申し上げますと、所得税につきましては、再分配機能の回復を図る観点から、平成二十五年度改正におきまして、最高税率の引上げ、それまでの四〇%から四五%へ引き上げるということを行っております。

 また、相続税につきましても、格差の固定化を防ぐという観点から、同じく平成二十五年度の税制改正におきまして、基礎控除の引下げ、最高税率の引上げ等の見直しを行ってきたところであります。

 また、法人税については、稼ぐ力の高い企業の税負担を軽減し、積極的な投資や賃上げが可能な体質への転換を促す観点から法人税率の引下げをしましたけれども、税収中立の考え方の下、課税ベースの拡大等を併せて実施してきたところでございます。

 今後の税制の在り方についてでございますが、これまでの税制改正の趣旨や経緯のほか、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続き検討を続けてまいりたいと思っています。

末松委員 我が党といいますか立憲民主党の方は、ここにおられる江田委員が中心となって、経済対策あるいは税制対策ということで、例えば、法人税は、必要な政策減税は残した上で、所得税と同様に累進税率を導入するという大胆な政策を我々はつくっておりますし、また、所得税の最高税率も引き上げること、そして、現在分離課税となっている金融所得について、将来、総合課税化を見据えて国際水準まで強化する。かなり大胆な形で、本当に税金が取れる、今、税収を拡大していくというのが一つの大きなニーズになっていますから、是非そこを大臣にも、これは、果敢にやっていかれる、財務省内のいろいろな意見もしっかりとまとめていかれる必要があると思うんですね。

 鈴木財務大臣が所信のところで示しておられました、二〇二五年のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出歳入両面の改革をしっかり進めていくと言っておられますから、そこは是非、大臣としても具体的にもうちょっと大胆な税制なり政策を取っていく必要が私はあると思うんです。そういった意味で、是非そういうことを、今、日本にとって必要なことかなと。

 もちろんいろいろな配慮はしなきゃいけませんけれども、例えば、企業の内部留保についても、五百兆円近く大企業の内部留保があるということなんかも踏まえて、やはり時代時代に合わせた税制をしっかりやっていかなきゃいけない、特に格差是正の観点から、私はそこはお願いしたいと思うんです。

 ちなみに、ちょっと、先ほど矢野康治事務次官の論文を引用しましたので、大臣、これについてどういうふうに考えておられますか。

鈴木国務大臣 矢野次官の投稿したものにつきましては、私も読ませていただきましたし、次官からも直接、事前に内容についてのお話もあったところでございます。

 今回の寄稿は、財政健全化に向けた一般的な政策論について、寄稿にあるとおり、矢野次官個人の意見を述べられたものと承知をしております。私も、先ほど申し上げましたとおり、読んだところでございますが、内容につきましては、今までの政府の方針に基本の部分において反するようなものではない、そのように受け止めているところでございます。

末松委員 そういった矢野次官のような勇気ある発言、まあ、これは永田町でもたたかれたとかいう、そんなうわさも出ておりますけれども、是非そこは国の金庫番としての役割を本当に発揮していただきたい、そういうふうに思うわけでございます。

 時間がないので次に進めますけれども、次は、税収拡大というのが、もう当然、ここまで借金が進んでいきますと、これはなかなかいろいろな細かなところからも税収を得ていかなきゃいけない。そういう観点から、ちょっと、体制強化という意味から三点申し上げます。

 後で大臣の感想というか、そこの思いをお聞かせいただきたいと思いますし、これは、こういった定員の増加ということなので、今日は内閣官房の人事局も呼んでいますから、その方にも是非そこはコメントをしていただきたいと思うんですね。

 まず、金融庁の職員を増大させるべきだと考えております。

 これは、世界がずっとデジタルの状況で、いろいろな金融システムを、SWIFTシステムから変わっていろいろな形になってきているとか、今大きな激動の時代が国際金融にも起こっているわけですね。だから、我々としてもルールメイキングをしながらやっていかないと、また取り残されてしまうということでございます。

 ちょっと、私の方で金融庁にも伺いながら、聞いたんですけれども、主要国の金融機関の検査監督体制というか、そういった金融庁の体制のあるところを見たんですけれども、ドイツは、欧州中央銀行とかも含んでいますけれども、金融監督から始まって、いろいろな職員の数ですけれども、一万七千八百六十三人いる。アメリカは、同様の形で見ると七千九百四十二人いる。少ない英国でも、二千八百二十三人の職員を抱えている。対する日本は、金融庁全体でも千六百十七人という形になっております。

 これをもっと、幅広い専門家をリクルートして、そして、専門性の高い人たちを、そういった人材を確保していかなきゃいけない、そういった意味で、少ない日本の金融庁の仕組みも、更に定員を重点的に確保しなきゃいけない、そういうふうに思っているのが一点。

 それから、税関職員の方々も増大する必要があると思うんですね。

 税関職員については、令和四年度の定員で百三人の増員があったことから悲願の一万人体制というのができた、これは喜ばしいと思っているわけでございます。また、税関職員について、コロナの状況で一番彼らが危険に面してきたわけですけれども、海外からの脅威に対して。これを、いち早く必要な備品とか装備をそろえてもらったということに対しては、非常に税関の職員の皆さんも喜んでおります。

 ちょっとそこで小耳に挟んだのは、今ちょっと一つ非常に問題だと考えているのが、この手袋なんですね、これはよくファミレスなんかでも見かけますけれども。この手袋、十五分から三十分これをかけていると、手が蒸れて、もう全然気持ち悪くて、なかなかこれは職務を継続的に遂行し得ない、もっと蒸れないような形の手袋を是非お願いしますということを、ちょっと私もその言葉を預かってきたんですけれども、是非これも改善をお願いしたいと思います。

 ちょっと話はそれたんですけれども、巣ごもり需要で、税関の関係の航空貨物の輸入許可件数が、二〇一九年では四千二百万件あったものが、二〇二〇年には六千五百五十万件という形で、一・五倍増えているんですね。それでいくと、そういった職務の内容も一・五倍増えているということなんですけれども、ただ、この一年間で一・五倍増えても、税関の職員が一・五倍増えているわけではない。

 そういった中で、是非これは、できる限り、人数の定員にも制限があるかもしれませんけれども、令和四年に四百五人要望して百三人ついたわけですけれども、今後の税関職員の定数を、差し引いて三百人程度、これを是非そこはお願いしたいと思います。

 これは、いいのは、税関職員、私、当委員会でも申し上げましたけれども、どんどん調査をしていくと、いろいろな不正とかいろいろな間違いがあって、そうすると税関職員から来る税収が上がってくる、こういうのが数字で出ておりますので、それは職員を抱えれば抱えるほど逆にそれの数倍以上の税収が得られるということになりますので、そういった観点からも是非検討していただきたいと思います。

 あともう一つ、国民の皆さんから厳しいまなざしにさらされている国税の職員の方、これについても非常に大幅な増員の必要性があると思うんです。

 例えば、外国の税務当局から、CRSという、国際共通報告基準というのが今度出てきて、膨大な金融口座情報が提供されるようになったんですね。昨年で大体二百四十七万件の膨大なデータが入手されているんですね。だから、これを分析等をするのに、やはり国際税務専門家、これは優先的に増員はされていますけれども、まだまだ足りない。

 さらに、昨年十月にOECDでいわゆるデジタル課税というのが導入されまして、導入されると、どうもこれはOECD見込みで千二百五十億ドルもの課税権が発生して、そしていろいろな国がこれを裨益をするという話になるわけですけれども、日本の場合、ある計算によると、八千億円規模の新たな課税所得が発生すると言われております。これに対しても、やはり国際課税専門家というのが日本でも必要になる。

 さらに、もう一つ申し上げれば、消費税の不正還付という、この消費税額、追徴ですけれども、これが二百十九億円上がっているんですけれども、これは人数が足りないためにこの程度なんですけれども、人数をもっと増やせば更に消費税の不正還付というのがどんどんどんどん額が上がっていくんですね。そういうのも踏まえて、是非そこは大臣に御配慮いただきたいと思います。

 国税につきましては、国際課税専門家七十八人、消費税関係専門家四十四人、合わせて百二十二人の増員を、私もいろいろな関係筋から必要だと聞いておりますので、どうかそこは御配慮いただきたいと思います。

 この三点について、大臣の方からコメントをいただきたいのと、大臣の次に内閣人事局の方からこの点についてコメントをいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 今、末松先生から、具体的に、金融庁、税関、それから国税庁につきまして、定員をもっと増やすべきであるという、具体的な説明もつけてお話をいただいたところでございます。

 これらの点につきましては、先生の御指摘のとおり、デジタル化でありますとか、経済の国際化でありますとか、税財政や金融を取り巻く環境というのが変化しているということもございまして、そういうものを踏まえて考えなければいけないと思っております。

 令和四年度予算案におきましては、そのようなことから、必要な体制整備を図るための定員を計上しているところでございます。先生からも御指摘がございましたけれども、具体的には、金融庁は十二人の純増、税関は百三人、そして国税庁は三十五人、こういう定員増を計上しているところであります。

 今後とも、財務省や金融庁の定員につきましては、現場の状況もよく見極めながら、執行部門を含め、必要な体制整備を図るためにしっかりと定員を確保してまいりたいと考えております。

横田政府参考人 御指摘の金融庁、税関、国税の定員につきましては、金融庁及び財務省から所要の要求をいただきまして、増員による効果等を精査しつつ、いずれも近年着実に増員を行ってきておりますところでございます。

 令和四年度の具体的な定員については今大臣から御答弁ございましたけれども、これらの点については、国税、税関、金融庁それぞれの課題に対応するものというふうになっておるところでございます。

 今後とも、引き続き、財務省、金融庁から現場の実情等も含めまして政策課題を丁寧に聞きながら、効率的な業務運営の観点も踏まえつつ、定員審査を我々としても行っていきたいというふうに考えておるところでございます。

末松委員 よろしくお願いしますね。そこはめり張りをつけながらお願いします。

 それから、最近、原油価格が高騰しています。レギュラーガソリンがリッター当たり百七十円を超えたというのは約十三年四か月ぶりだということを聞いて、地方の方のガソリン代とかも含めて、これは大変な状況になっているなと思うわけです。

 私も、昨年の十二月七日に、私とか山井議員が中心となって、三か月連続でリッター当たり百六十円をガソリン価格が上回った場合に二十五・一円の税金を一時的に停止するという、いわゆるトリガー条項、これを議員立法で衆議院に提出したんですけれども、この場合、発動されると、価格は二十五・一円下がるということになるんです。

 これはかなり緩和されるということになるんですけれども、これに対して、今政府がやっている対応策は、石油元売会社に対して、リッター当たり、たったの五円、最大五円ですね、これを事後精算で支給するという、びほう策なんですね。これだと国民生活が非常に混乱するし、また、タクシーを含めたいろいろな燃油関係で働いておられる方々が大変な状況にまた陥っているわけです。

 ですから、政府のやっている対応策は、どうも焼け石に水で、国民生活を救済するということができない、そういうことなんですけれども、ちょっと危機感が足りないんじゃないかと思うわけです。是非そこは経産省の方で適切な対応をもっとやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

細田副大臣 御質問いただきまして、ありがとうございました。

 今御指摘がありました原油価格高騰対策でございますけれども、とにかくスピード感を持って対応できることをやるということが重要であるというふうに考えておりまして、先週から発動しているところでございます。

 効果を御紹介させていただきますと、レギュラーガソリンの全国平均の小売価格については、原油価格の上昇によって前週の百七十・二円から百七十三・四円になると予測されておりましたが、この措置の発動によって二・五円抑制されて、百七十・九円となったという報告を受けております。また、軽油、灯油についても同様に、二・六円の価格抑制の効果が確認されたという報告を受けております。

 今回の燃料の価格高騰に対しては、この激変緩和事業に加えて、農業や漁業等に対する業種別の対策を適切に実施していくこと、また、灯油購入費の助成など地方公共団体が行う原油価格高騰対策に要する経費に対して、総務省の方で特別交付税措置を講ずる予定であるというふうに承っております。

 この事業については、トリガー条項では対象とならない灯油や重油も支援対象となっていることなどを踏まえれば、今回の事業の方が適切であるというふうに考えております。まずは年度末まで本事業を適切に実施し、足下の小売価格の高騰を抑制していきたいというふうに考えております。

 なお、現時点では政府としてトリガー条項の凍結解除は考えておりません。しかしながら、原油価格の高騰がどの程度長期化するかも見極めながら、あらゆる選択肢を排除することなく、国民生活や経済活動への影響を最小化するという観点から、何が効果的な対策か、不断の検討を行ってまいりたいと考えております。

末松委員 ちょっと役人答弁風の答弁、きちんと読まれていますけれども、国民生活にとって百七十円というのは高いんですよ。百三十円ぐらいに何とかできるだけ近づけるようにしてくださいよ。そうじゃないと説得力がないんですよ。そこはもう、ちょっと時間がないのでこれ以上言いませんけれども、是非よろしくお願いしますね。

 それから、ちょっと時間がないので、スルガ銀行の不正融資問題についてお話をします。

 二〇一八年にシェアハウス問題から顕在化したスルガ銀行の不正融資問題、これはもう有名ですから余り説明はしませんけれども、とにかくこの問題、スルガ銀行の融資に当たって、当時、日吉雄太議員が指摘されたんですけれども、預金通帳の改ざんとか、源泉徴収票の改ざんとか、家賃の改ざんとか、極めて悪質な操作が行われて、多数に上る被害者が出たんですね。

 これは、金融庁も立ち入って検査して、業務停止命令及び改善命令を出したんですね。それはスルガ銀行も認めて、シェアハウス問題については定型的な不法行為ということを認めて、被害の回復が図られたんです。そこは金融庁は適切に対応したと思っています。

 ただ、同じ手口のアパート、マンション案件の融資については、ほとんど解決が進んでいない。手口は同じなんですよ。非常に、今のシェアハウスと同じ手口をやっているんですけれども、その同じ手口でやっているものに対して、これだけ、何というか、差別というのかな、全くそこで被害者の救済がなされていない。これは我々も、我が党の方で財務金融部会を開いてヒアリングをしたんですけれども、弁護団も呼んだり被害者も呼んだりして、我々も聞いて、金融庁も呼んだりしましたけれども、これは本当に憤りを持ちながら、我々は強い憤りを感じているわけなんです。

 その後、金融庁としてしっかり監視をしていくということもその場でも得たんですけれども、本当にこれは適切な行政指導みたいなものをやるべきだと思うんですが、そこを金融庁の方から対応について言ってください。

鈴木国務大臣 スルガ銀行の一連の不適切な融資のことでございますが、金融庁では、スルガ銀行に対しまして、業務改善命令を発出した上で、これまでも個々の債務者への適切な対応を行うよう求めてきておりまして、御指摘のシェアハウス関連融資に係る問題の解決に向けた取組が順次進められている、そのように承知をしております。

 そしてまた、御指摘のありましたシェアハウス以外の投資用不動産に関連した融資、アパマン関連融資も含まれると思いますが、これにつきましても、多くの債務者にとって可能な限り早期に問題解決が図れるよう、金融庁として引き続きスルガ銀行に対し適切な対応を求めてまいります。

 金融庁は、スルガ銀行に対して、多くの債務者にとって可能な限り早期に問題解決が図れるよう、債務者弁護団との協議等に真摯かつ適切に対応することを経営陣に直接求めているところでございます。

末松委員 大臣、答弁ありがとうございました。

 真摯かつ適切にということで、本当に早く、そこを大臣の口で言われたということで、これは、この物事が本当に早期に進展することを、我々もしっかりと見ておりますので、その金融庁の対応、是非、大臣も引き続きそこは御指示を賜りたいと思います。よろしくお願いしますね。

 あと、最後の問題ですけれども、これは日本税理士会連合会の方々からもずっと言われ続けているところなんですけれども、災害損失控除の創設というのを、私も極めて大きな関心を持っていまして、是非そこは改善をしていただきたいということでございます。

 近年、激化する台風とか大震災の被害、さらには東海、東南海とか、そういったことが、どうも明日なのか、あるいは近々なのかというふうな形になってきて、こういった大きな大災害等の被害と、雑損控除で言う、例えば物取りに遭って被害に遭ったとか、それが同一のレベルで語られている仕組みに今なっているんですよ。これを、そういった大災害というのは、また違った形で。災害に遭うと、復旧、復活が大変な状況になり、失業もして、家は流され、大変な状況になる。激甚指定になると、本当にそういったことは生きるか死ぬかの問題まで当然出てくるわけですから、これは別に扱って、災害損失控除という分類をつくっていくということ。

 それから、あと、ちょっとこれは細かいように見えますけれども結構大変な状況になるのが、損失額を最大限控除できるようにするため、今、現行でやっているのが人的控除ですね、例えば基礎控除とか扶養控除とか、あるいは社会保険料とか、こういったものが後回しに計算されて、最初に損失控除の方を優先して、そこを計算した後で人的控除というのを計算する仕組みになっているんです。

 これをやりますと、非常に問題が大きいといいますか、つまりどういうことかというと、具体的計算でいきますと、私もなかなか分かりにくいので具体的に計算してみたんですけれども、例えば、個人事業主で年収五百万の人がいるとしましょう。大震災で一千万円損失を被って、職を失った。そうすると、その次の日から、五百万が、家も流され大変だというような話になったときには、二百万しか、アルバイトなんかでしか得られない状況が数年続いていく、こういう設定が一般的な設定ですけれども、これをやるんですね。

 やった場合に、今の計算方式で、人的控除を通常の八十万円、さっき言ったように、人的控除というのは基礎控除、扶養控除、社会保険料とか、これを仮定しますと、人的控除を先に計算して、そして繰越控除額というものを計算した場合には、大体六年目で繰越控除額がゼロになる。それまでずっと控除が続くわけですよ。で、六年目でゼロになる。でも、最初に損失控除というものを計算して、そしてそれにつけ足しで人的控除というものを計算すると、これはたった四年目で控除がゼロになるんです。これは、実際に、税理士さんとかそういった計算をやっている方以外はなかなか実感できないかもしれませんけれども、そこまで控除額が減るんですね。

 問題は、人的控除というのは、その方の基本的な生活があるがゆえにつく控除なんです。そこから物損とかなんとかの損失控除をつけ加えるんですけれども、こういったらどんどん人的控除が、これであればいいんですけれども、これが反対になっちゃうと、人的控除が後回しになっちゃうと、結局、人的控除そのものが毎年カウントされなくなる、そういうことになるとまずいということで今例を出したんですけれども、ここを是非、是正していただきたい。

 そして、三点目に申し上げたいのが、大体三年が控除額の限度になっているんですけれども、東日本大震災で五年まで控除が認められました。これを更に十年やっていかないとなかなか立ち直れない状況になっていくので、是非そこを十年やっていただきたい。

 そこを財務省の方に御答弁してもらいたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 多岐にわたる御質問ですので、ちょっとポイントだけ申し上げます。

 まず、災害と税制の関わりにつきましては、今御指摘のありました災害損失控除の創設という御要望を日税連からここ数年いただいておりますが、それ以前に、平成二十九年度の税制改正におきまして、これまた日税連の建議なども踏まえまして、災害関連税制の常設化ということを行っておりまして、一定の配慮を行っておりますのと、今御指摘のありました雑損控除との選択におきまして、災害減免法という特別法によりまして、所得税の免除なり軽減というのを図る、そういった体制が取られているところでございまして、雑損控除とは別の配慮がこれまでも行われてきているということはまず申し上げておきたいと思います。

 その上で、雑損控除と人的控除の差し引く順番についての御質問がございました。

 これは、所得税の基本的な構造に関わる御質問で、大変そういう意味では深い御質問をいただいたんだと思っておりますけれども、所得税と申しますのは、その年々に生じた所得に対して一年ごとに負担を求めるということでございますので、その計算方法といたしましては、例えば、事業所得につきましては事業収入から必要経費を引く、あるいは、給与所得であれば給与収入から給与所得控除を引くといった格好で、収入を稼得するために必要な経費をまず差し引きまして、所得金額を計算していくというのがまず先に来るわけでございます。

 その上で、今御指摘のあった人的控除、具体的に申しますと、基礎控除でありますとか、配偶者控除でありますとか、扶養している方がいる場合の扶養控除など、こういったものを人的控除と呼んでおりますが、こういったもので、それぞれの世帯構成、どういった家族構成になっているかということに応じた、いわゆる担税力の調整といったようなことを行う、こういう手順になっているわけでございます。

 雑損控除に行く前に、例えば、御商売をやっておられる方が、店舗が災害で損失を被った、例えば全壊したという場合にどうなるかと申しますと、この事業用の資産に生じた、店舗などに生じた損失につきましては、必要経費の一部として売上げから差し引くという、所得計算上でそういった差引き方をした上で、人的控除は後から引く、こういう流れになってございます。

 御指摘の雑損控除でございますが、これは、生活の基盤となる住宅ですとか、家財などの資産について、災害などで損害が生じた場合に差し引くというものでございますけれども、世帯構成、家族がどういう構成かということにかかわらず損失が生ずるという意味では、今の事業用資産に生じた損失と基本的には同じような性質を持っておりますので、どちらかというと必要経費に類似した性質を有するということで、人的控除よりも先に差し引くということになっているわけでございます。例えばの例でいいますと、店舗兼住宅という格好で御商売をしていらっしゃる方については、店舗部分についた損失も住居部分についた損失も同じ順番で引く、こういう格好になっているわけでございます。

 それから、御指摘のあった繰越期間の延長についてでございます。

 先ほど申しましたように、所得税は一年ごとの所得に対して負担を求めるというのが基本的な性格でございますので、繰越控除が認められているのは、今申し上げた事業上の損失の場合と雑損控除の場合など、かなり限定的な場合に限られてございます。

 そういった中で、この事業上の損失につきましては、青色申告が要件になっておりまして、記帳で、きちんと帳簿につけられているということを前提として控除しているのに対しまして、雑損控除の場合は、被災者の方であるといったようなこともございますので、非常に簡便な方式で控除が認められておりまして、例えば、災害損失の額を証明する書類の添付、こういったものも求めていないというような状況にございますので、控除期間を延長する場合には、適正な執行をどうやって担保するかといったような課題もあろうかと存じております。

末松委員 ちょっと、余り詳し過ぎた形で、煙に巻くような感じになっているんですけれども、とにかく、東日本大震災で五年以上、まだ立ち直れなくて、大変控除がなくて苦しんでいる人というのは、税理士会の方々からも聞いているんですけれども、それは調べているんですか。

住澤政府参考人 具体的に、東日本大震災の後に五年間の控除が認められているわけですけれども、その結果、引き切れない方がどのぐらいいるかといったようなデータは把握はしてございません。

末松委員 だから、そういう調査をしなくて、十年についても、もう何か考える余地なしみたいな形に言われると、それは実態を踏まえていませんよ。東海、東南海なんか起こったら、それこそ大変な状況になるわけですよ。東日本大震災の規模の何倍もという話もあるわけですから、そこはきちんと調べてくださいよ。そして、調べた上で、ああ、そうだ、五年以上やはりかかるんだねということを、納得するような形で言ってもらわないと、これは制度の欠陥と言わざるを得ませんよ。

 それから、先ほど局長言われましたけれども、物損というのと、その前に、その人が生きていくためのいろいろな、家族構成を含めた扶養控除とか基礎控除とか、それが最初にあって、その後で物損というのがやはり常識になるんじゃないですか。要は、私もいろいろな国会答弁も見ましたけれども、なかなか納得できる説明じゃないような気がするんですね。

 だから、基礎控除というのは本当にその人の生活の基になるものですから、まずそこを引いた上で、その後に、物的な損害とかあればそれにつけ加える、そういう話じゃないとおかしいと思うんですね。

 私が例を挙げたのも、結局、計算の後先で、六年で繰越控除がゼロになるのか、四年で繰越控除がゼロになるのか、この差というのは、普通の一般の国民の皆さんから見たら、大きい差ですよ。

 そこをしっかりと考えていただくということで、最後に、ちょっと大臣から、そこは検討していただくということを一言言っていただきたいと思うんです。それで質問を終わります。

鈴木国務大臣 物的控除、それから人的控除の順番ということにつきましては、これは極めて実務的なことでありまして、主税局長から御説明があったとおりでございます。

 私は、災害損失控除を創設すべきではないか、そういうことについてちょっとお答えすることになりますけれども、最近、自然災害が大変頻発をしておりますので、対応をしっかりやらなきゃいけないということは大変大きな課題でありまして、税制においても、災害への対応というのは重要であると思っております。

 ただ、災害損失控除の創設という御提案につきましては、いろいろな論点があると説明を私も受けております。例えば、損失額を確認するための仕組みをどうするのか。家が流された場合に、家そのものの価値というのはそれなりに分かるのかもしれませんが、例えば、その家の中に極めて高価な美術品があったとかなかったとか、そういうことも含めまして、損失額を確認するための仕組みをどうするか等の様々な論点があるということを踏まえますと、やはりこの創設ということについては慎重に検討していく必要があるのではないか、そのように考えております。

末松委員 質問を終わります。

薗浦委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・無所属の櫻井周です。

 本日、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。昨年十月の衆議院選挙以来、初めての質問の機会でございます。気合も十分みなぎっておりますので、大臣、是非よろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問に入らせていただきます。

 まず、ちょっと私の方からは、少し個別の小さなテーマから入って、だんだん大きなテーマに移っていくという順番で質問させていただきます。ちょっと、たくさん質問を用意しておりまして、最後までいけるかどうか分からない、途中、もしかしたら飛ばす場面があるかもしれませんが、その点、御容赦いただければと思います。

 まず、先ほど末松議員からの質問の中で、スルガ銀行の融資の問題もございました。また、大臣の所信の中には、サイバー犯罪、こういうことについても言及いただいております。

 デジタル技術の高度化、それから金融商品の複雑化の裏側で、大事にためてきた資産を失うような結果になってしまった方々が少なからずいらっしゃいます。こうした金融分野における消費者被害、これはやはりなくしていかなきゃいけないと私も強く思っております。

 大臣、これは是非取組を進めていただきたいというふうに思っておるんですが、大臣の取組に対する思い、お話しいただけませんでしょうか。

鈴木国務大臣 今、具体的にお話がございましたフィッシング詐欺などのサイバー犯罪について、業界団体や関係省庁とも協力をして、利用者に対して広く注意喚起をするとともに、金融機関にセキュリティー対策の強化を求めております。

 先生が御指摘のように、利用者が安心して金融サービスを利用できる環境を整備すること、これは極めて重要な課題と認識しておりますので、しっかりと引き続き取り組ませていただきたいと思います。

櫻井委員 大臣、是非よろしくお願いいたします。

 続きまして、二点目のテーマでございます経済安全保障法制についてでございますが、まず、これは大臣所信の中では、経済安全保障の観点から研究開発等を推進する、このように述べていらっしゃいます。

 私は、研究開発の推進、これはもちろん大変重要でございます。ただ、これの目的は、あくまで国民生活の向上の観点、これがメインであって、経済安全保障の観点というのは、国民生活向上、安心、安全を図るというその一部ではないのかなと。何かこの大臣所信の中では、無理やりキーワードをつなげようとして、ちょっとおかしな流れになってしまっているのではないのかというふうにも懸念するところです。

 それから、財務省としての取組は、二〇一九年の外国為替及び外国貿易法、外為法の改正ということで一定図っている部分があろうかと思います。この二〇一九年の法改正のときには、この財務金融委員会、十一月十三日に私も質問させていただいておるところです。ですが、ちょっとここも突っ込み始めるといろいろ話が長くなりますので、済みません、ここは飛ばさせていただいて、次のテーマに移らせていただきます。

 新しい資本主義についてです。

 この新しい資本主義の定義、何だろうかなというふうにもいろいろ思ったところなんですが、既にいろいろな議員が、本会議で岸田総理、予算委員会でも岸田総理に質問しております。

 ただ、新しい資本主義の実現のためということで、大臣は、科学技術立国、それからイノベーションを促進、こういうことも言われておりますが、こういったことは半世紀前から言われていたことではないのかなというふうにも思います。デジタルについても、これは、ちょうど二〇〇〇年頃、世紀が替わる頃に、デジタル革命とか、インターネットがわあっと広まったときにいろいろ言われました。二十年前から言われていることで、今更、新しいと言われてもという気はいたします。また、研究開発等の推進についても、これももちろん、半世紀以上前から言われていることですし、人への投資ということについては、これはもう明治時代から言われていることでして、別に新しくも何もないんじゃないのかな、こういうふうにも思うわけです。また、市場の失敗ということについて、これを手当てしていかなければいけないというような御趣旨のことを岸田総理はおっしゃられておりますけれども、このことについても百年前から経済学で議論されていることですので、そして、我が国においてもこれまでも取り組んできたところでございますので、今更、新しいと言われてもというふうにも思うわけです。

 これは、結局、新しいかどうかということについて議論しても余り意味がないなというふうに思いまして、国民にとって幸せになれるかどうかということの方が問題ではなかろうかというふうに思います。

 そこで、ちょっと済みません、質問を一つぐらい飛ばしまして、重要なのは、来年度予算でどうなのかということだと思います。新しい資本主義について、来年度予算、どこに反映されているのか。新しい資本主義によって今年度の予算と比べてどこがどのように変わったのかというふうなことが重要だと思うんですが、この点について、大臣、御説明いただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 岸田内閣におきまして、経済再生の要を新しい資本主義の実現であるといたしまして、その実現のため、成長と分配の好循環を生み出してまいりたいと考えております。このことは、本会議や予算委員会などで総理から発言があったところでございます。

 そして、令和四年度予算におきましては、成長戦略として、科学技術立国の観点から、過去最高の科学技術振興費を確保したほか、デジタル田園都市国家構想や経済安全保障に関連する予算を手当てし、岸田内閣の成長戦略に寄与するものとするとしております。その上で、分配戦略を成長戦略と並列に位置づけまして、看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の処遇改善のための措置を盛り込むなど、分配戦略にも重点を置いた予算になっている。これが令和四年度予算のポイントの一つであると思っております。

櫻井委員 先ほど来私が申し上げている、岸田総理が言うところの新しい資本主義というのは、いわゆる、岸田総理は新自由主義との対比の中で言われていらっしゃいますので、その観点からすると、競争が行き過ぎた場合で、その副作用の部分についてもう少し手当てをしていかなければいけないんじゃないのか、こういう観点だというふうに説明されているようにも思うんですが、ただ、予算との話でいうと余りかみ合っているわけではないんじゃないか、一番大事なところが抜けているんじゃないのか、こういうふうにも思うわけですので、次のテーマに移らせていただきます。

 黒田総裁にも本日は来ていただいております。黒田総裁には予算委員会にも御出席いただいて、本当にありがとうございます。その予算委員会での議論を踏まえて、質問をさせていただきます。

 経済の状況を見たときに、物価の状況、物価目標二%について、これまでも国会でも議論されてきました。そもそもは、二〇一三年に黒田総裁が就任されたときに、二年で二%達成するんだというふうに言っておられたわけです。私は、日本銀行の役割も一定あるかもしれないけれども、物価というのは金融政策だけで決まるものではないから、そんなこと言って大丈夫なのかなというふうにも心配をしたものでございます。

 実際どうだったのかということでございます。資料一を御覧いただければというふうに思います。これはこの財務金融委員会でも度々登場させていただいている表でございまして、元々は階議員がこれをよく使われてということなんですが、私もちょっとそれをまねさせていただいて、使わせていただいております。

 この表の見方を改めて御紹介いたしますと、三か月に一回、日本銀行は、展望レポートということで、物価の見通しを、政策委員のCPIのインフレ率の見通しということで提示されています。大体三年ぐらい先のものまで見通しを示しているわけですが。そして、この表の縦軸は、いつの展望レポートか、いつ発行された展望レポートかということです。横軸には、その時々のそれぞれの年度の見通し、インフレ率の見通しについて書いているということです。

 例えば二〇一四年の四月でいいますと、二〇一四年四月の段階で、二〇一三年度の見通しから二〇一四年度、二〇一五年度、二〇一六年度ということで、三年先までの見通しが示されているわけです。二〇一三年の見通しというのは、実質、見通しというか実績値なわけでございますが、このときにはほぼ実績値として〇・八%というものだったのが、二〇一四年度には一・三%、二〇一五年度には一・九%、二〇一六年度には二・一%、順調に上がっていきますよというのが二〇一四年の四月の段階での展望レポートが示していたことでございます。

 ところが、この二〇一六年度の見通しについて、これを今度下に見ていきますと、最初の頃は二・一%ということで、二%を達成しますよと高らかに宣言していたにもかかわらず、例えば二〇一六年頃になってくると見通しがだんだん下がってきて〇・八%ということになり、さらに、二〇一七年四月の展望レポート、これはほぼ実績値ということになりますけれども、このときにはマイナス〇・三%。当初は二・一%と高らかに宣言していたものが、結果的には実績値〇・二%というふうになっているわけです。

 これがこの二〇一六年度の見通しについてのみ言えるようなことなのかといいますと、そうではなくて、二〇一七年度の見通しについても、当初は一・九%と高らかに宣言していたのが、見通していたのが、結果は〇・七%ということで、全て尻すぼみになってしまっている。こういう状況が続いているわけでございます。

 物価目標二%、今年度も達成できない見通しということで、これはもう九年たつわけでございますが、結局、物価上昇二%、達成できなかったということです。

 これは日本経済だけじゃなくて世界的な経済の環境もありますから、日本だけ幾ら頑張ってもどうにもならないということもあろうかと思いますが、ただ、今、直近の状況としましては、世界的には資源価格の高騰による物価上昇、そして、実際、アメリカではもう石油ショック以来の物価上昇率、こういう状況にもございます。利上げもしようか、そういう話になっているわけですが、ところが、我が国においては、黒田総裁、二%の物価上昇を達成できないというのは、これはどうしてなんでしょうか。

黒田参考人 御指摘のように、欧米の消費者物価の上昇率は米国で七%程度、ユーロ圏で五%程度と高まっておりまして、これに対して、我が国の消費者物価の前年比は足下でプラス〇・五%と、かなり低い伸びにとどまっております。これには、携帯電話通信料引下げの影響もありますけれども、そういった一時的な要因を除いたベースで見ても、欧米対比、低い状況に変わりありません。

 これは、この足下の状況からいいますと、まず第一には、我が国の経済の需要の回復が米欧よりやや遅れている。実質GDPの水準で見ましても、米国や欧州は既にコロナ前の水準を回復したわけですけれども、我が国はまだコロナ前を下回っているということがあると思います。

 第二に、我が国企業は、コロナの感染拡大時にも雇用の維持を重視して労働力を保蔵してきましたので、結果、足下でももちろん需要は少しずつ伸びているわけですけれども、その際に、我が国企業は、価格や賃金を据え置いたまま速やかに供給を増やす余地が残っているということであります。

 第三に、これが一番大きいかもしれませんが、我が国企業の慎重な価格設定スタンスの影響が大きいようでありまして、個人消費がなお力強さに欠けるという中で、我が国企業はコストの上昇分の多くをマージンの圧縮で吸収する傾向が強いということで、こうした物価が上がりにくいことを前提とした人々の考え方や慣行が予想以上に根強く残っているということが、日本の物価が欧米と比べてなかなか上昇しないことの基本的な背景ともなっていると思います。

 その中には、当然のことながら、やはり名目賃金がなかなか上がっていかない。やはり賃金、物価が共に上がっていくという形にならないと、物価上昇が持続し二%に達するということはなかなか難しいということが言えようかと思います。

櫻井委員 最後に、賃金の重要性ということを黒田総裁に御指摘いただきました。

 予算委員会の中では、黒田総裁が九年前に二年で達成すると言っていて、まだ、その期限、二〇一五年に達成すると言ってもう既に七年たっているので、いつになったら達成するんですかというような話もございましたが、私自身は、物価の目標を日本銀行が立てる、もちろんここは貢献はしなきゃいけないですけれども、日本銀行だけの責任ではないです、日本銀行がやるべきことはもうやり尽くしていて、あとは政府のいろんな部門でやっていくべきことではないのかなというふうにも思っております。

 資料二をちょっと御覧いただきたいと思います。

 こちらは、一九九七年を一〇〇とした場合、そこから実質賃金の上昇率について各国比較をしたものです。

 韓国は当時、中進国から先進国に変わるというようなそういった時期でございましたので、その後、急激に伸びているわけですが、ほかのG7の国々もそれなりに成長している。ところが、日本はほかの国々に比べても低い状態になっております。結局、一九九七年から実質賃金ではむしろ下がってしまっている、こういう状況がございます。何でこんなことになってしまっているのかということが、やはり一つ大きな課題だと思っております。

 続きまして、資料三、御覧いただきたいと思いますが、これもあちこちで、国会内で使われているグラフでございますが、これは一九九七年を一〇〇とした場合に、その後の日本の企業、大企業になりますけれども、のお金の配分ですね。売上高はどうなっているか、経常利益がどうか、内部留保がどうか、配当金がどうかということを見ていきますと、利益は三倍に膨らんでいる、その中で配当金は六倍に増えている、内部留保も三倍増えている、ところが、従業員の給料はむしろ下がってしまっている、こういう状況がございます。

 これは財務省の出している資料ですので、間違いないというふうに思いますけれども、こういう状況があるからこそ賃金は上がらない。結局、企業は収益が上がっても給料に回さない、こういう状況にある。

 日本銀行が一生懸命金利を下げて、異次元の金融緩和をやって、投資をどんどんしてください、資本コストは安いですよ、ないですよという状況をつくって、投資してくださいというふうに一生懸命盛り上げても、それで企業がもうかっても、結局給料に回らないわけですよね。これだったら、日本銀行が幾ら頑張ったってどうにもならないじゃないかというふうにも考えるところです。

 ですから、ちょっと黒田総裁に改めてお伺いしますけれども、賃金上昇のために日本銀行がやれることはもうやり尽くしている、だから、そこは、うちはもう全部やりました、こういうことで、これ以上何かむちゃなことをするのは、無理をするのはやめた方がいいんじゃないかと考えるんですが、どうでしょうか。

黒田参考人 確かに、日本銀行が二〇一三年に量的・質的金融緩和を導入して以来、大規模な金融緩和を粘り強く続けてまいりまして、その中で、プラス面では、我が国の労働需給は着実に引き締まっておりまして、名目賃金も、やや長い目で見れば、マイナスではなくて上昇基調は維持しております。さらに、感染症という大きなショックに見舞われる中であっても、日銀や政府の資金繰り支援が、民間金融機関の取組と相まちまして、倒産や解雇の動きを抑制して、欧米対比で見た失業率の低さにもつながってきたというふうに思います。

 ただ、そうした中でも、賃金がなかなか上がってこなかった。その中で、企業収益が増えても賃金がそれほど上がっていないということは、労働分配率がずっと傾向的に下がっているということでありまして、この辺りは確かに日本銀行が何かできることではないとは思いますけれども、他方で、やはり、強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、コロナ禍からの景気回復をしっかりとサポートして、賃金と物価が持続的に上昇していく好循環の形成を後押しをするということはやはり必要ではないかというふうに思っております。

櫻井委員 黒田総裁、強力に金融緩和を続けていくことが必要、貢献しているんだとおっしゃるんですけれども、これは程度の問題がございまして、強力過ぎるとやはりいろいろなところに副作用が出てくるのではなかろうかというふうにも思うわけです。

 予算委員会の中では、この異次元の金融緩和が長らく続いたことで、地方の銀行が非常に収益面で苦しむことになり、合併を余儀なくされ、そして地域に根差していたはずの店舗がどんどん減ったり、こういった副作用も予算委員会の中で指摘をされてまいりました。

 また、ETFの購入など、本来中央銀行がやるべきことではないだろう、世界でも例を見ないようなことをずっとアベノミクスと言われる間中やってきた。ただ、これも昨年については随分減らしてきて、私もこの委員会で、ETFはやり過ぎでしょうということを申し上げて、それを聞いてくださったからかどうなのかは分かりませんが、昨年については一兆円を下回るレベルということで、減ってきた。

 これで、外に向けてなかなか宣言はしにくいかもしれないけれども、方針を改めていただいたのかな、金融界からも、さすがにこれはやり過ぎだ、マーケットをゆがめているんじゃないか、こういう懸念もあって考えを変えてくれたのかなというふうに思っていたら、今年に入ってからまたETFの購入がちょっと増えて、ペースが上がったりというようなことで、やはりこういうむちゃなことというか、この後、これだけいっぱい買い込んじゃって、今は含み益がたくさんあるからいいやという話かもしれませんけれども、将来どうするのかと。こんなに中央銀行がずっと抱えたまま、それこそ国家資本主義になってしまうのか、どうなのか。私は、そういう道はよろしくないと思いますので、これ、処理しようがないようなものをこれ以上抱えるのは是非やめていただきたいというふうに思うわけです。

 ですから、強力過ぎる金融緩和は副作用が大きいというふうに考えるので、是非、この辺については、なかなか外に向かって発信すると委員会で答弁するというのは難しいと思いますが、ETFの購入、もうやめませんか。いかがでしょうか。

黒田参考人 ETFの購入につきましては、かなり詳細な分析をしまして、資本市場で非常にリスクが高まっているときには、大規模な買入れを行うことによってリスクを低下させるという効果が実証されたわけですが、そうでない場合には、むしろめり張りをつけて、そういったときには大規模にやるけれども、そうでないときには基本的にはETFの購入はしないというような、めり張りをつけた購入に変えていますので、御指摘のような問題点に対する完全な回答ではないかもしれませんが、一定の対応はさせていただいているということであります。

 なお、ETFにせよ、株に関する資産を購入している先進国の中央銀行は現在ありません。もちろん資産運用として購入している中央銀行はたくさんあるんですけれども、金融政策として株ないしETFのようなものを購入しているところは現時点でありませんので、かなり異例の金融政策であるということは承知していますけれども、やはり、資本市場が非常にリスク回避的になり過ぎているときに一定の効果を持ったことも事実ですので、そういったことも踏まえながら、御指摘のような問題点も踏まえながら、行っていきたいというふうに考えております。

櫻井委員 本来、この賃上げ、賃金を上げていくという政策については、財務省の仕事でもないかもしれませんが、政府の仕事ではあるわけです。もちろん民間企業が一義的にやるものですけれども、ただ、例えばこの間、この二〇〇〇年以降、岸田総理が新自由主義というふうに言われる政策の中では、非正規労働がどんどん増えていったりということで、ある種、賃金が下の方に、上がりにくいような構造をつくってしまったりとか、外国人労働者の方々について、それこそ技能実習生に対しては、実質的には労働基準法が守られていないような、最低賃金も守られていないような事例が、この間、国会での審議の中でも明らかになったりというようなこともございましたし、また、サービス残業の取締りが不十分であったりというようなこともありますし、また、最低賃金、これ、順次引き上がっておりますけれども、しかし諸外国に比べると引上げの幅が小さいですとか、さらには、賃上げをしようとしてもなかなか社会保険料の負担が重くて上げにくいとか、いろんな課題があるわけでございます。

 それから、先ほど申し上げたように、企業が株主の方の利益を優先してしまって、従業員の給与にはなかなか回さないというようなこともあったりします。これも会社法の改正というのが原因の一つではなかろうかというふうに私は考えますので、こういったところを改善していくことによって、賃金を上げていきやすい環境を政府としてつくっていく。また、賃金を、ある種、ちょっと最低賃金の引上げなんかは強引な政策ですけれども、こういったことこそ必要なので、日本銀行が、それを政府が十分にやらないのに日本銀行ばかりが、賃金が上がらない、そして物価上昇、上がらないというところで抱え込んでしまうというのは、やはり健全な政策の姿ではないというふうに思いますので、大臣も是非この点を御考慮いただければというふうに思います。

 日本銀行総裁、黒田総裁、ありがとうございました。

薗浦委員長 黒田総裁は御退席いただいて結構でございます。

櫻井委員 続きまして、大臣にも御質問いたします。

 これまで、安倍内閣、それから菅内閣の頃には、このデフレという言葉がずっと出ておりました。ただ、今回の総理所信にも、それから財務大臣の所信の中にもデフレという言葉は出てこない。一方で、今、さんざんお話しさせていただいたとおり、日本銀行が掲げる物価目標二%、これは達成できる見通しが立っておりません。

 そこで、大臣にお尋ねしますが、デフレ脱却、これはもう諦めちゃった、こういうことなんでしょうか。

鈴木国務大臣 決して諦めているわけではございません。

 昨年十月でありますけれども、所信表明演説が行われまして、その中で岸田総理は、岸田政権のマクロ経済運営において、デフレからの脱却が最大の目標であるという旨を述べているところでございます。

 二〇一二年の十二月以降、デフレ脱却に向けまして、金融政策、財政政策、成長戦略を一体として進めてきた結果、もはやデフレではないという状況には達したんだと思います。

 政府としては、今後とも、日本銀行と緊密に連携をしながら、あらゆる政策を総動員いたしまして、デフレ脱却、そして成長と分配の好循環を実現をして、持続可能な経済成長を目指してまいりたいと考えております。

櫻井委員 結局のところ、国民の生活に、どれだけ暮らしを底上げできるかということだと思います。

 先ほど末松議員からも、立憲民主党としては経済格差を是正していく、格差を是正する中で暮らしを底上げしていく、こういった税制も提案しているんですということを申し上げてまいりました。その点について、少し深掘りして質問させていただきます。

 資源分配機能というのが財政にあるわけですが、人への投資というのもこれは重要です。が、ちょっと時間が押してきましたので、この点は割愛をさせていただいて、予算委員会でも既に一回議論に上がっていますので、ちょっと飛ばしていただいて、次、所得再配分機能について、重点的に質問させていただきます。

 資料四、これも財務省の資料でございますが、これは、平成の初め、昭和の終わりから今に至るまでの税収の増減、それから、その中身、主要三税ですね、所得税、法人税、消費税の動向を示しているものです。

 平成の初めに消費税が導入されて、それからずっと税率も上がってきていると。今や二十兆円というようなことになってきております。他方で、平成の初めには所得税と法人税が主力だったわけですが、これがずっと下がってきているわけでございます。今や所得税も、消費税より下回っている、こんな状況になっております。

 当時、消費税を導入するときには、直間比率の是正、こういうことを当時の大蔵省は言っていたわけですが、これは、所得税、法人税を減税し、そして消費税で増税するというようなことを言ってきたわけです。ただ、その結果がこれで、こうした姿が本当によかったのかどうかというと、私は違うと思いますので、後ほど申し上げさせていただきます。

 それから、資料五の方、これもよく出てきているグラフでございます。

 岸田総理も、昨年の九月の自民党総裁選挙のときには、所得がどんどん増えていったら、それに合わせて本来であれば負担率が上がっていくはずなのに、なぜか一億円を超えたところから負担率が下がっていく、こういうことを一億円の壁なんて言われたりもしますけれども、これはおかしいと岸田総理自身が言われていた。

 この背景としては、金融所得に対する課税がフラットで、特に一億円を超えるような多額の所得を得ている人、この方は、金融所得の場合が多くて、だから負担率がむしろ下がっていくというようなことになっている、こういうことでございます。やはり、こうした問題もある。

 それからさらに、資料六、これは国民負担率の、OECD加盟三十五か国の国際比較でございますが、日本は、じゃ、税金が高いのかというと、必ずしも高いわけではないんですが、ただ、社会保障の負担率、社会保険料は高いというのがございます。

 社会保険料というのは、応益負担の部分というのもあって、これは、私、消費税以上に逆進性が強い、そういった内容の実質税金ですね、強制徴収ですから実質税金だと言えると思うんですけれども、こういったものがある。こういうことが、なかなか格差を是正することができないことの原因になってしまっているのではなかろうかというふうに思います。

 特にこの二十年、三十年、グローバリゼーションがどんどん進展しまして、例えば工場労働でも、日本国内の工場労働者と海外の工場労働者、これはある種、競争をさせられている状態になった。海外の、アジアの安い賃金と競争しなきゃいけないということで、どうしても賃金の押し下げ圧力がかかってしまうわけです。だからといって、グローバリゼーションをやめろというわけではなくて、やはりそうした状況がある。グローバリゼーションとして世界平和が実現できる一方で、他方で、やはり、そうした中間層、先進国における中間層の没落みたいな副作用も起きてしまっているということがあります。

 それから、イノベーションによって省力化がどんどん進んでいくということになりますと、中間層にとっては、人手が要らなくなって、賃金の押し下げ圧力になりかねない、こういう状況もあります。

 ですから、だからこそ、いろいろな社会の制度で、こうした中間層が細ってしまうような社会の流れ、時代の流れがある中で、それを何とか支えていくための税制にしていかなければいけないと考えるところです。

 ですから、平成の間にどんどん進んでいった、いわゆる大蔵省が言うところの直間比率の是正、これは、まさに今こそ、令和の時代においては、直接税の比率を上げて、間接税の比率を下げていく、こういう方向でやるべきだということを御提案申し上げるんですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 直間比率の見直しのお話でございますが、これまで税制の見直しの結果、いわゆる直間比率でございますが、平成二年度に七九対二一だったものが、足下、令和四年度見込みでは六六対三四となっております。

 この直間比率につきましては、消費税の創設前におきましては、所得税、住民税を合わせた最高税率は八八%でありました。法人税率は国税だけでも四二%であったところでありまして、先生もいろいろなお話の中でお触れになったと思いますが、直接税に軸足を置くとなりますと、そのような税制に戻すことになれば、勤労意欲の低下とか人材の流出、立地競争力や雇用への影響など、様々な問題が生じるおそれがあると考えております。

 こうした所得税、法人税、消費税、これを適切に組み合わせながら、必要な税収を確保していくことが重要であると考えているところであります。

櫻井委員 所得税が上がったら勤労意欲は減退するかというと、私はそうでもないんじゃないかというふうに思いますし、むしろ今だって賃金は全然上がっていないわけですから、実質賃金はむしろ下がっているわけですから、ここは上げていきましょうよ。それはまた別な方策で、先ほど申し上げた最低賃金であるとか、いろいろなところの制度でもって底上げはしていくことができると思うんです。その上で、最低賃金なり賃金を底上げしておいて、財務省的な発想からいえば、そこで上げておいて、所得税も税率を上げれば税収ががばっと増えて、財務省的にもなかなかいい方向になるんじゃないでしょうか。

 ですから、もう少し、そうおっしゃらずに、私も国家の財政のことを心配して申し上げているので、是非、そういう観点からもお願いいたします。

 あと、岸田総理、一億円の壁について、所得税が、所得が一億円超えたところからむしろ負担率が下がっていくという課題について、総裁選挙のときにはやる気満々のように見えたんですけれども、この問題、この壁を崩すということについては、何か総理大臣になったら後退してしまったのかなというふうに感じて、非常に残念です。ですが、ちょっと時間が足りないので、この点はちょっと飛ばさせていただいて。

 次、いろいろな税目がございますが、一つ一つ、個別な話に入らせていただきます。

 ふるさと納税制度について、高額の所得者の方は高額な返礼品を受け取ることができる。控除されない二千円の分は負担することになりますけれども、二千円で何か一万円分とか、場合によっては三万円分ぐらいの何かお米とか牛肉とか、そういったものを受け取る、返礼品で受け取る。でも、低所得の方についてはこういったメリットはないわけです。高額所得者を優遇するような制度になってしまっている。

 本来、ふるさとを応援するとかというのであれば返礼品なんか要らないはずなのに、返礼品競争になっちゃって、テレビのコマーシャルまでやっちゃっている状態なんです。

 かつ、地方財政にとってそれでもプラスになればいいんですけれども、返礼品で使われている経費の部分、この部分については、本来、行政経費として行政サービスに充てられるはずのお金が、ある種、返礼品に化けちゃっている状態なわけです。

 ですから、こういうことは地方財政の観点からも私はやめるべきだと思いますし、やはり、格差是正ということではなくて、格差がむしろ拡大してしまう方向に行ってしまう制度でございますから、そろそろやめにしたらどうかなというふうに考えるんですけれども、これは総務大臣の所掌だから財務大臣は知りませんというわけにはいかないと思うんですね。これは国家の財政全体のことを考えたときに、マイナスサムのような仕組みというのは、やはりやめていくべきだと思うんです。

 これは元々、菅総理が総務大臣のときに言い出したことなので、菅官房長官がいたり菅総理大臣がいたときにはなかなか変えづらかったかもしれませんけれども、もう総理もお辞めになったわけですから、このふるさと納税制度もやめる時期に来ているというふうに考えるんですが、大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 ふるさと納税制度でございますが、大変申し訳ない答弁になるわけでございますが、先生からも御指摘がございましたとおり、ふるさと納税制度、これは総務省の所管でございまして、所管と責任ということを考えますと、この制度の見直しについて私が答えるわけにはまいらないということで、御理解いただきたいと思います。

櫻井委員 ほかにも、いろいろな税目を見ていくと、むしろ高所得者の方がメリットを受ける、低所得者の人には関係ないというようないろいろな支出項目がございます。やはりこうしたことも、歳入面での格差是正というのも大事ですけれども、歳出面でも、本当にそういう支出が必要なのかどうなのかということを是非丁寧に見ていただきたい、このようにお願い申し上げます。

 本当は国際局のお仕事についても質問をさせていただきたかったところではございます。大臣所信を拝見しますと、国際局の仕事について全然触れられていないんですよね。でも、財務官を筆頭に、財務省の中でも結構重要な仕事だと思いますし、特に今年はIDAの増資の話もございますから、こういったところについても是非目くばせをしていただきたいということを最後に申し上げて、質問時間が来ましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 立憲民主党の中川正春です。

 久しぶりにこの財金の委員会に帰ってきたんですけれども、改めてよろしくお願いを申し上げます。

 今日は初日でもありますので、本来の財務大臣の所掌といいますか、いわゆる財政ということについて、健全財政あるいは財政均衡へ向けての施策あるいは思いというのを中心に、質問をしていきたいというふうに思います。

 最初、これは確認なんですけれども、アベノミクスを支えてきたというのは、総理の周りにおられるリフレ派、あるいは、それを超えて、ひょっとしたらMMTを唱道する与党のグループというのもあるのかもしれませんけれども、そういう人たちが主にこの政策を先導してきたと言われています。

 大臣、改めて、まず基本的なことをお聞きしていきたいんですけれども、大臣は、このリフレ派の物の考え方というのをどのように捉えておられるかということ。そして、私は、財務省の使命としては、財政均衡ということを達成をした上での国の施策ということなんだと思うんですけれども、そこを大臣もしっかりと踏まえた上で、これからの政策をやっていこうとしておられるのか。まず、この入口のところを改めて確認をしていきたいと思うんです。

鈴木国務大臣 今、中川先生が御指摘になられたような立場で、しっかりと頑張ってまいりたいと思っております。

 先生がリフレ派、MMTについて言及をされたわけでありますが、財政については様々な議論がございます。

 御指摘がありましたMMTは、自国通貨建ての国債を発行する国の政府は、過度なインフレが起きない限り、幾らでも国債を発行して支出することができるという考え方だと承知をしておりますが、政府としては、そのような考え方に基づく政策を取ることは全く考えておりません。

 また、いわゆるリフレ派につきましては、その定義が必ずしも明らかでないためにコメントするのもちょっと難しいのでありますが、重要なことは、経済成長か財政健全化という二項対立ではなくて、経済成長と財政健全化を併せてしっかりと進めていくことである、そのような考えでおります。

 政府として財政健全化の目標として掲げております、骨太の方針二〇二一における二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化等を、これをしっかりとこれからも掲げてまいりたいと思っているところでございます。

中川(正)委員 今コロナで、その対策がまず優先だということで、いわゆる財政バランスというのも議論がちょっと低調になっていますけれども、基本的には、ポストコロナを考えても、ここの安定感と、いわゆるリスクがここまで高まってきている中で、それをどう解決していくかということ、この議論を本当は今しておかなければならないんだというふうに思うんですよ。

 コロナに対して、まだ支出は続きますが、それがあるだけに、本当は政府は、政府の責任として、それを将来どういうふうにバランスを取った形に戻していくかというこの道筋は、やはり国民に説明をする必要があるんだというふうに思うんです。それができていないというのは、これはやはり無責任であるし、あるいは、そうした意味では、日本のリスクというものに対してしっかり対応できない、そこのところが国際的にも問われてくる大きな課題なのではないかというふうに思います。

 そのことを前提にして、少し突っ込んだ形で聞かせていただきたいんですが、過去に遡ると、二〇一三年の一月に、先ほど櫻井さんからもお話が出ましたけれども、政府と日本銀行の政策連携というのが共同声明で発表された、ここから始まっているんだと思うんです。

 政府は経済構造の改革を目指して、その間、日銀は二%のインフレターゲットを目標としていくということで、九年前に異次元の量的緩和が始まって、ゼロ金利を維持しながら現在に至っている。金利がこれで固定されてしまったという状況、これは非常に異常な状況だと思うんですね。それが続いてきているということ。結果、実質為替レートが下がり続けて、なるほど、輸出企業やインバウンド観光関連企業など、これは収益を伸ばして、内部留保が進んで積み上がって、株価は上昇してきている。

 一方で、実質賃金は上がらずに、経済成長率が低迷して、地方と東京、あるいは大企業と中小企業、非正規と正規労働など、格差が拡大をしてきた。同時に、経済活動の結果が国民の豊かさにはつながっていないという国民の焦燥感というものが今あるということ、こんな状況をつくってきたのではないかというふうに思うんです。

 その上で、さっきの財政的な債務の膨張というのがとてつもない形で今進んできているんですけれども、財政をこの先均衡させるためには、さっきのような政策の背景を踏まえて、大臣としては、これからどのような手を打っていったらいいか。様々にこれまでお題目はあったんだと思うんですよ。お題目はあっても、それが現実のものにならなかったということ、このことを踏まえて、この先どのような政策手段でこれを克服していくというふうに考えられているか。まず、そこから聞かせていただきたいと思います。

鈴木国務大臣 まず、基本姿勢として、政府としては、骨太の方針二〇二一において、二〇二五年度のプライマリーバランスを黒字化をするという目標、これをしっかり踏まえてまいりたいと思います。

 そして、令和四年度予算におきまして、骨太二〇二一に示された考え方、これに基づきまして、社会保障関係費については実質的な伸びを高齢化による増加分の範囲内に収める、それから、非社会保障関係費について、これまでの歳出改革の取組を継続をする、そして骨太の方針におけます目安を達成する、そういう予算となっているところであります。

 財政は国の信頼の礎であり、今後の予算編成に当たりましては、こうした取組を継続するとともに、社会保障制度を持続可能なものとするため、受益と負担のアンバランスという構造的課題に取り組んでいくことなど、引き続き、歳出と歳入、両面の改革を着実に進めていくことが重要である、そういうふうに思います。

 また、金利上昇に伴い、国債費が増加するリスクもあります。そうした事態を防ぐため、中長期的な財政の持続可能性への信認が失われないよう、責任ある経済財政運営を進めてまいりたいと思っております。

中川(正)委員 従来からそういう答弁で来られたんだというふうに思うんですよね、財務省としては。

 これは、二つの領域に、さっきの御答弁では分けられると思うんです。一つは、入るを量って出るを制するというか、予算の中身で歳入と歳出でのバランスを取っていくということ、これが一つあるんだと思うんです。それからもう一つは、一番最初に説明されたプライマリーバランスの黒字化に向けて、いわゆるスケジュール的なガイドラインをつくりながら、それに向かって整合性を取った政策を進めていくということ。実は、これ、ずっと昔からというか、さっきの、特に九年前からこの話をずっと繰り返してやってきて今があるということであります。

 実は、それにプラスもう一つ、私は政策として使っていけるものがあるんだと思うんですよ。それは、いわゆる金融市場の金利上昇を見極めて、国債や通貨に対する信認を崩さないということを前提に、国債発行の限度を設定をしていく。だから、マーケットが、いわゆる国債マーケットが健全なものであれば、それは自動的にこの限度というのをつくり上げていくということがあったんだと思うんですよ。このマーケット機能を生かして、そしてコントロールをしていく、いわゆる、国債の発行額がもうそこで限度だという、そこをつくっていくということ、これがもう一つの領域としてあったんだというふうに思うんです。

 まず、第一の入るを量って出るを制するの話なんですが、これは、政治的な思惑の中で十分な増税というのに踏み切れなかった、あるいは、成長戦略による税収増を訴えたけれども成長に失敗をした。歳出については、景気対策と緊急対策を名目に、たがが外れて、補正予算をどんどん組んで、その中で選挙対策も同時にやったということであったんだと私は見ていきたいと思うんです。

 次のプライマリーバランスの方なんですが、二についてなんですけれども、これは、プライマリーバランスの日程を先送りし続けてきたわけであります。今の、現在のプライマリーバランスについても、三%の成長というのが、これは前提にしているわけでありますが、これまでここに達成された日本の経済の構造というのは、これは構造的に変えていかなければこの三%の達成というのは可能ではなかった、達成されなかったということ、これはもうはっきりしています。

 もう一つ、三番目の、さっきつけ加えたマーケット、いわゆる国債マーケットの話については、日銀の国債買入れで量的緩和によるゼロ金利政策が続いて、国債市場の機能が完全に喪失をしている。国債がどれだけ発行されても、日銀が買い取って、金利はゼロに固定された中で、当面のリスクは回避をされている。これは当面なんですよ。これが将来続くか、続けていいのかということ、これが大きなリスクとして今問われているということであります。

 いわば国の借金を日銀が肩代わりしている状態、これを正常な形だと誰も見ていないということ、そのことを前提にしていた、いかに異常な形に今日本の情勢がなっているかということ、これをもう一回私たちは思い起こしていかなければならないんだというふうに思うんです。

 これを踏まえて、この九年間の現実を、これに対してもっと具体的に、大臣、手を打つとすれば、どのような方法が必要であるか。これまで同じことを言ってきて、なかなか実現できなかったわけですから、政策手段としてはさっきの三つぐらいのところがあるんだろうと思うんですけれども、これを前提にして、この先具体的に何をしていったら、何をしていく必要があるかということ、こんな意識というのは持たれたことはありませんか。あるいは、持つ必要があるんじゃないでしょうか。

鈴木国務大臣 財政の均衡についてずっと、るる先生から御指摘をいただいたわけでございます。

 これまでの取組がうまくいかなかったということについて今後どういうことが必要かというようなお話だったと思いますが、これまで政府として数々の財政健全化目標を掲げてきたものの、目標年度の先送りが行われてきたことは、これは御指摘のとおりでございます。

 その要因は、東日本大震災の発生でありますとか世界的金融危機の発生でありますとか、様々な要因が考えられるところでございます。そして、足下では、新型コロナの影響等によりまして財政状況が大幅に悪化しているということは、これは事実であります。これは、新型コロナという危機を受け、感染拡大防止に全力を挙げるとともに、緊急事態宣言等の影響を受ける事業者の方々や生活に困窮される方々に対し、きめ細やかな支援を行ったためでございます。

 その上で、財政は国の信頼の礎でありまして、引き続き、歳出と歳入の両面にわたりまして改革を着実に進めていくことが重要である、そういうふうに思っております。

 令和四年度予算では、様々な工夫によりまして、骨太の方針二〇二一の目安を達成しましたが、今後とも、こうした不断の改革、取組を進め、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標達成に向けて、その実現のためにしっかりと前に進めてまいりたいと思っております。

中川(正)委員 さっきのお話にも出てきましたけれども、プライマリーバランスですよね。これは、目標が達成できなかったというのは、災害があったり、あるいは世界の経済情勢が崩れたりということがあったからと説明されましたけれども、私は、基本的には、そこもあったけれども、元の大前提、前提になっていることが違っているんだというふうに思うんです。

 いわゆる成長ということを前提にして、三%、今回もそうですが、三%の成長はつじつま合わせとして数字が合ってきますよ、そういうプライマリーバランスの計画を立ててきたということ、これはまた今回も、今回の新しい資本主義の基本も、この成長路線を前提にしながら様々な計画を立てています。

 何回もこれは同じことを繰り返しているんですよ。この成長という前提もやはりそうなんですよね。それだけに、私は、財務大臣としては、もっと違った角度でやはりたがを打っていくということ、この政策マインドというのが必要なんだというふうに思うんです。成長だけに乗っていったら駄目なんだ、財務省はという、この財務省の矜持をやはり取り戻すべきだというふうに思っています。

 そんな中で、ちょっと具体的に提案もしていきたいんですが、ここまでの覚悟をしていただきたいという思いも込めて提案をしていきたいんです。

 まず最初の、いわゆる予算の中身で、予算立てするときにバランスを取っていく努力をするということと、それから、もう一つのプライマリーバランスの黒字化。この二つ、併せてこれを実効あらしめるには、一つの方法として、債務の限界、あるいはまた財政バランスへのスケジュールを法制化をしていく。政府の中で、ただガイドラインをつくって、このようにやっていきますよと言っていくだけじゃなくて、法律の中に、例えばアメリカや欧米諸国でやっているように、借金の限界はここまでだということを法制化をしていく。その法制化した中で、皆に理解をしてもらいながら財務省の立場としてバランスを取っていきますよ、そういうスタンスをつくっていくということ、これが一つあるんじゃないかというふうに思うんです、日本もね。

 それから、もう一つ、三番目の日銀との関係なんですが、これはやはり国債マーケットを正常化をさせていくということ。ここをやっていかないと、さっきも櫻井さんから出ていましたけれども、いつまでも今のような状況が続いていくと、いい結果をつくれればそれでいいけれども、それがない中では、やはりそれの副作用、反作用というのが余りにも大きくなっていく、そのうちの一つが財政の放漫化というか弛緩化というか、そういう形なんだと思うんです。

 日銀の異次元の量的緩和があったから、金利に固定されて、国債の市場で、そのマーケットの機能が失われて、時間をかけて国債市場、マーケットをいかに取り戻すかというところへ向いてかじを切っていく、金利上昇によってその発行額に制限を加えるメカニズムを取り戻していく、その政策にかじを切るということ、これが大事なんだと思うんです。これは極端なかじの切り方はできない、当然そういうことです。しかし、方向性として、元に戻していきますよというような、そういう形で、政策をもう一回、いわゆる基本的なスタンスをつくり直すということが必要なんだと思うんです。

 大臣は、財政均衡に持っていくことが財務省の使命だと受け取っておられるとすれば、この二つの課題、法制化というものと、日銀との政策連携をもう一回正常な形にするということ、この二つの課題について私は是非踏み込んでいただきたいと思うんですが、どのようにお考えですか。

鈴木国務大臣 財政健全化への旗は、これはもう降ろすわけにはいかないわけでありまして、政府としては、今は二〇二五年度のPBの黒字化ということが大きな一つの、現在固まっている目標でございます。

 法制化のお話を先生からございましたが、これにつきましては、様々な観点からの検討というものがあると思うわけでありまして、繰り返しになりますが、政府としての今の目標は、PB黒字化、二〇二五年ということでございます。

中川(正)委員 ひとつ頑張ってください。ずっとお題目だけでここまで来たということ、そんな中で、やはりリスクの方が高まってきているという危機感、これを共有をしていただいて、財務省でやはり頑張ってもらうということ、ここだと思うので、期待をしていますので、よろしくお願いをしたいというふうに思います。

 同時に、そうした政府の政策次元だけの話じゃなくて、今指摘されていることは、もう一つ、企業活動の中でこの構造が、副作用というか、根本的に企業の活力というのを抑え込んでしまっているんじゃないかという指摘があります。

 日本企業がこれまで高収益で推移してきたにもかかわらず、成長に向かうイノベーションの投資を怠って企業活動の生産性を高めることができなかった、同時に、賃金上昇につながらない状況を生み出してしまって、経済成長基調に乗せることができなかった。多くの識者は、日本の金融、財政のマクロ政策の結果、経済環境のぬるま湯環境をつくり出してしまったんじゃないかということを指摘をし始めています。

 十年以上続く日銀のゼロ金利政策と、それから国債買入れによる過剰なマネーサプライ、実質為替レートの下落、リスクマネーの欠如と金融分野での目利きの不在、その環境の中で、日本の経済界というのは、日銀と財務省がつくり出した経済環境、さっき申し上げたようなぬるま湯の世界に安住してしまって、そこから生産性を上げて競争力をつけていくという、その活力を見失ってしまったということなのではないかということですね。

 日本企業の抱える課題を見てみると、九年前に交わした日銀と政府の共同声明の中身が、本来、前向きの成長エンジンを担うはずであったものが、九年たった今では、逆に日本経済を弱体化させている、マイナスのエンジンに成り下がっているのではないかということ、こんな指摘が出てきています。

 将来のアベノミクスの大転換ということがここで私ももう一回問われてくるんだという、そこのところを今の危機感というのは意味しているんだと思うんですが、大臣、このアベノミクスを含めて、政策の転換ということについてはどのように考えられていますか。

鈴木国務大臣 金融緩和がずっと進む中において、ぬるま湯的になって、企業が、成長への努力といいますか、そういうものがなくなってきているのではないか、活力がなくなってきているのではないかという御指摘であったとお聞きをいたしました。

 それで、我が国では、バブル崩壊以降、企業は投資や賃金を抑制をして、消費者も将来への不安などから消費を減らしてきた、そういう結果で需要が低迷をいたしましてデフレが加速するという悪循環が生じてしまいまして、低成長が続いてきた、そういうふうに認識をしているところでございます。

 平成二十四年十二月以降、日銀による金融緩和を含めたアベノミクスによってデフレではない状況をつくり出し、GDPや雇用が拡大するとともに、企業収益も大きく増加したところでございます。

 日銀には、引き続き、経済、物価、金融情勢を踏まえて、適切な金融政策運営が行われることを期待をしているところでございます。

中川(正)委員 また日銀に対しては別の機会にそうした観点から質疑をしていきたいと思うんですが、今日は、時間の関係もあって、次に、税で一つ二つ、基本的なところを聞いていきます。

 先ほども、分配ということ、いわゆる税での再分配機能というのは非常に薄れてきているというか、小さなものになってきていると指摘がありましたけれども、具体的に聞きます。

 いわゆる金融等資産課税の段階的な累進課税化、これを検討する余地はないかということ。それからもう一つは、金融資産所得と個人、法人所得の総合課税化、これを検討していく方向性を持っていくべきだというふうに思うんですが、具体的に、改めて、この再分配機能を高めていこうとすれば。このことについては、大臣はどう考えられますか。

鈴木国務大臣 まず、金融所得課税について御指摘がございました。

 金融所得に対する課税の在り方につきましては、令和四年度の与党税制改正大綱におきまして、「高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。その際、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う。」とされているところでございます。

 今後、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと考えております。財務省といたしましても、その議論に基づいて対応してまいりたいと思っております。

中川(正)委員 それから、もう一つ、租税特別措置法なんですが、今回も、オープンイノベーションの促進税制だとか、あるいは賃上げの促進税制が出ていますが、これの評価、どれだけ効果があるんだということを財務省の方から説明をしてください、資料を提出してくださいと言ったんですけれども、これがどれだけ使われたかというその金額については出るんですけれども、この税制が、この租特があるから、例えば研究開発をやっていこう、もっと促進させていこうとか、あるいは賃金を上げていこうとか、この税制がきっかけになって、動機づけになってそれが動くということがどこまでなされているかということに対しての評価が出ていないんですよ。

 なべて、租特というのは、公平性というか、もうかっているところしか効果はないわけでもありますし、本来の政策誘導をしていく機能というのは、そういう意味ではないに等しいんじゃないか。どっちかというと、各省庁がやったふりをつくっていくために、税でもってこうした形で減免していこうというふうに持ってきているのが、これが租特ではないかということ、これが私の先入観なんですよ。

 それは、やはり財務省としても、税制の中立で、そういう形では使うなということをはっきり言わなきゃいけないところだと思うんですが、ここも、各省庁に対して、財務省の存在感というか、財務省のよって立つ基本というのをしっかり示せていないというところだと思うんです。そのことも指摘をしておきたいというふうに思います。

 是非、効果をもう一回検証はするべきだというふうに思うので、進めていただきたいというふうに思います。

 答えていただくなら答えていただいて、ここで時間が来ていますが。

鈴木国務大臣 先生から、租特についてお話がございました。

 この租税特別措置につきましては、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法になり得る一方で、税負担のゆがみを生じさせる面もあることから、その必要性や政策効果をよく見極めることが重要だと考えております。

 こうした問題意識の下で、中川先生も参画されました租税透明化法では、財務大臣は、毎年度、減収効果のある法人税関係の租税特別措置について、適用件数、適用金額、適用の偏りなど調査の上、報告書を作成することとなっておりまして、そうしたことに基づいてしっかりとやってまいりたいと思います。

中川(正)委員 ありがとうございました。時間が来ました。

薗浦委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 立憲民主党の伴野豊でございます。

 鈴木大臣には初めて質問をさせていただく機会を、委員長さん始め皆さん方の御配慮をいただきまして、ありがとうございます。

 前任の義理のお兄様には何度となく質問をさせていただきまして、御案内のようにと私が申し上げるまでもなく、いろんな意味で存在感のある方でございましたので、個人的には非常に敬愛をしておりました。また、質問をするたびに有意義な議論ができましたので、こう質問するとこの方はどう打ち返していらっしゃるかなということを考えながらいつもやらせていただいたことを覚えております。

 ですから、通常、私の場合、質問を初めての方にする場合は、総理、大臣のその人となりをしっかり学んできてから、その方が議論が深まるという意味でそうさせていただいております。今回も、失礼ながら大臣のプロフィールやあるいはホームページもしっかり見させていただきまして、最近書かれた文章なんかもちょっと読ませていただきながらやってまいりました。

 その中で、いろいろ感ずるところがあったんですけれども、失礼を省みず申し上げれば、なかなかの、相当の、筋金入りの愛煙家だな、そんなふうにお見受けさせていただきました。書いてあるものを読みますと、何か、大臣就任時にJT株の関連株がぐっと上がったとか、あるいはお勧め銘柄になったとかという話も聞きました。

 まあ、真実かどうかは別としまして、この辺りも、実は個人的にも大臣に親しみを持っているところがありまして。といいますのは、私自身は、ちょっと気管支も強くないものですから、全くたばこはのめません。しかしながら、父が、おやじが、これがもうすごいヘビースモーカーでございまして、あるときは、職業柄だったのかもしれませんが、中指が黄色くなるぐらい吸っていた時期もありましてね。ですから、たばこのにおいを嗅ぐとおやじを思い出すというようなところもありまして、そんな親しみを持っているわけでございますが。

 是非、大臣におかれましては、今日も五時間おやりになっていただいて、いや、まだこれからですね、午後もありますから。私とは三十分ですが、おつき合いいただきまして、できましたら、うそのない、正直な、本音の答弁を是非していただければありがたいと思います。中条きよしに言わせますと、折れたたばこの吸い殻でうそが分かるということでございますので、是非、この点もお含みおきいただきまして、真摯な御回答を、直球勝負でまいりますので、今日は余り細部の深追いをいたしません。ですから、本音の、日頃お感じになっていらっしゃることをそのまま述べていただければありがたいかな、そんなふうに思うところでございます。

 では、質問に入らせていただきたいと思いますけれども、まずは、二月一日の日に私も本会議で立たせていただきまして、総理にいろいろ質問をさせていただきました。

 その中で、本会議の答弁において、あっ、ここはちょっとかわされたなとか、もうちょっと踏み込んで御回答いただきたかったなと思ったところが幾つかあったわけでございますが、まずはその辺りから、フォローアップを含めて質問をさせていただきたいと思います。中でも、かわされつつあるなと思った中でも、検討を進めているという現実的な答弁をいただいたところがありましたので、まずそこから入らせていただきたいと思います。

 賃上げ税制において、先ほども中川先生から、その効果の話もいろいろあったところでございますが、それはそれとして、今回、マルチステークホルダーの配慮に関する要件ということで挙げていらっしゃいます。そのときに、総理は、更に実効性を高める方策についても、制度設計の中で検討を進めるということを明言されました。この時点において総理がここまで明言されているんですから、今もしっかり検討されているんじゃないかと思いますので、今日は、しっかり今検討されて頭がちんちんであろう方に来ていただいておりますが、実際のところ、今どうなっているのかを教えていただけますでしょうか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のマルチステークホルダー方針に関する要件でございますが、株主のみならず、従業員や取引先を含めたマルチステークホルダーに配慮した経営の実現を通じた企業価値の向上を促す観点から、重要な位置づけだということでございます。

 具体的には、資本金が十億円以上、従業員数が一千人以上の企業を対象に、賃上げや人材投資を行うこと、取引先と適切な関係を構築することなどの方針の公表を求めるという形でございます。こうした方針の公表を税制の適用要件とすることは、本税制が初めての試みとなっております。

 その上で、実効性、御指摘でございますが、従業員や取引先のみならず、方針の内容を広く公表させることにより、企業がそれに反する行動を取ってはならないという社会的責任も生ずるものと考えております。委員御指摘のとおり、制度の実効性をいかに高めるかということは極めて重要だと認識をしてございますので、どういった内容をどのような形で公表を求めるかなどの制度設計の詳細は、引き続き真剣に検討してまいりたいと考えております。

伴野委員 今のところ、真剣にということを強調されましたが、当然のこと、真剣によろしくお願いいたします。

 こうしたところが始める前にしっかりしていかないと、最終的には、先ほど中川先生から御指摘いただいた、いわゆる実効性のところに最後に利いてきて、政治は結果責任ですから、やはり結果が出た後、物差しを当てたときにきっちり出てくるかどうかというのはポイントでありますので。社会全体で実効性を持つという非常にいい言葉ですが、非常にこれは難しいことは多分やっていらっしゃって御認識だと思いますが、それをできるだけ分かりやすい物差しになって、まさに実効性の利く形でやっていただいて、今回、新たな試みとおっしゃっていましたが、マルチステークホルダーへの配慮を要件につけたことによってこれだけ効果が上がったということが後々出てくるように、是非御検討いただきたい、そんなふうに思います。

 フォローアップのお話はそれぐらいにさせていただいて、二つ目は、先ほど来、末松先生や中川先生がずっとおっしゃっていらっしゃる、我が党においても相当これは議論があるところでございますけれども、いわゆる、今回、コロナで相当いろいろなところが傷んでおります。そうした中で、命に関わることであるから金に糸目をつけないというこの思いは理解できないわけでもありません。命に代えられるものはないと思いますので、金でできることなら何でもという気持ちも理解をいたします。

 しかしながら、では将来的にどうするんだ、短期的には分かりますが、将来的にどうするかというところをきっちりしないと、これは持続可能性がなくなってまいりますし、未来の責任を果たすということにはならない、これは申すまでもないと思います。

 大臣も先ほどおっしゃっていましたが、「財政は国の信頼の礎であり、その旗は降ろしてはなりません。」ということを年頭所感の「ファイナンス」でも語っていらっしゃいます。ある面、これは当然のことでございまして、財務省のまさにレーゾンデートル、存在価値が問われるわけでございますので、絶対に旗は降ろさず、きっちりとこの辺りも、もう既に議論を始めていただいているんじゃないかと、ある面、野党でありながらも考えております。

 財源確保策について、総理も以前は少し踏み込んで、先ほど来出ている一億円の壁のお話や、いわゆる格差是正につながる今の中間層が二分化していくお話なんかもしつつ、踏み込んでいらっしゃいましたが、残念ながら、ここへ来て、余りお触れにもなっていませんし、今回の国会にもなかなかその議論が進んでいるというところが見えてまいりません。

 ここも、大臣のお立場で結構でございますので、財源確保策について、具体的、積極的な発言を大臣こそがされるべきかと思いますけれども、ここの辺りは大臣の自らのお言葉で語っていただければと思います。よろしくお願いいたします。

鈴木国務大臣 伴野先生には親しみを持っていただいて大変うれしく思いますが、私、実はたばこを吸わないわけでありますし、また、金融担当大臣でありますので、特定の銘柄を推奨するような発言はいたしておりませんので、そこはしっかり申し述べたいと思います。

 その上で、まず、政府として、コロナ対策に万全を期してまいりますが、財政は国の信頼の礎でありまして、財政健全化の旗、これはしっかりと掲げて、歳出と歳入、両面の取組を進めていくことが重要だと思っております。

 そして、財政健全化に向けて、歳出歳入両面でどのような取組が更に必要になるか、先生の御指摘もあったわけでありますが、これにつきましては、今後の経済動向や財政状況等を踏まえて対応していく必要がある、そのように考えてございます。

 今後とも、経済あっての財政との考え方の下、デフレ脱却、経済再生に取り組むとともに、財政健全化にも併せてしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

伴野委員 ただいま最初に大臣がおっしゃったことは私の誤解でございまして、失礼いたしました。

 財政健全化については、御案内だと思いますが、アメリカやイギリスでももう議論が始まっているところでございますので、そうした世界各国の動きなんかも見まして、富裕層だけというとまたいろいろあるのかもしれませんが、バランスよく今後の租税措置の在り方を、是非とも大臣の今のこの期間で早めに打ち出していただけるとありがたいかなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 その中で、これも先ほど来、末松先生からもあった金融所得課税についての考え方でございます。

 先ほど申し上げましたように、所得が一億円を超えると所得税の負担率が逆に下がっていく、いわゆる一億円の壁の話はずっと議論されているところだと思いますし、我々はずっとこの辺りは御指摘もしてまいりました。

 先ほどもどなたかが指摘されていましたが、金融所得税について、将来的な総合課税化を見据えて、当面は分離課税のまま超過累進税率を導入すること、あるいは資産形成を支援するためNISAの拡充をすること、これも私も本会議でも御提案をさせていただきました。残念ながら、総理のお耳に入っていたか入っていないか分かりませんけれども、ここはスルーされてしまいましたので、こういう金融所得課税についての、将来的な総合課税化を見据えた、分離課税のまま超過累進課税を導入することやあるいは資産形成を支援するためにNISAを拡充することについて、大臣御本人は今どうお考えか、お聞かせください。

鈴木国務大臣 金融所得課税についてでありますけれども、令和四年度の与党税制改正大綱におきまして、「高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。その際、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う。」とされているところであります。

 今後、与党の税制調査会等の場で議論されていくと考えておりまして、財務省としても、その議論に基づきまして対応させていただきたい、このように思っております。

伴野委員 是非、積極的に御検討していただいて、発信していただければ、ありがたいかと思います。

 時間もだんだん参りますので、次に行かせていただきたいと思います。

 新しい資本主義ですか、先ほども櫻井議員始め、予算委員会でも話題になっているところでございます。私も、総理の論文といいますか文芸春秋さんの記事は読ませていただきました。財務大臣も、年頭所感の中で六回お使いになっています。

 浅学非才の私でございますのでお許しいただきたいんですが、読めば読むほど、どう具体的にされるのかなと思ってしまいます。大変失礼なことで恐縮ですが、省みず申し上げさせていただきますと、大臣所信の、年頭所感の中で六回、全部、検討中という形容詞をつけてもいいのかもしれませんし、場合によっては全部消しても読めないこともないかな。

 さらに、先ほど、中身や意味がいま一つよく分からないと申し上げた上で、先ほども気がついたんですが、新しい資本主義の言葉の後に、の実現を目指しますと書いてあるんですね。つまり、えっ、ひょっとしたら、新しい資本主義を目的としてやるのという。やはり、これは手段だろうと。言ってみれば、国民が幸せになるための手段として新しい資本主義というものを定義づけて、そして具体的に実行していくということなのではないかなとも思うわけでございまして、新しい資本主義が目的なのか手段なのか、この辺りもそろそろはっきりしていただきたいなと。

 総理の文芸春秋の記事を見る限りでは、この夏ぐらいまでにということが書いてあります。全て御検討ということなのかもしれませんが、もうそろそろちょっと実行ベースに移してきていただけないといけないのではないかと危惧もしております。

 いろいろ課題解決あるいは問題解決のことをおっしゃっているので、地球環境のお話やらおっしゃっているので、あえて自分なりに解釈すると、以前、二〇〇七年ぐらいだったですかね、小宮山当時東大総長が「課題先進国」という本を書かれて発表されています。つまりは、問題解決が新しい社会システムを創造していくというのに資する資本主義ということであるならば、それは理解もしないわけではないんですが、そういうことであれば、たとえ明日世界が滅亡しようとも、今日私はリンゴの木を植えるというルターの言葉があるように、遅くはないと思いますので、どこまでいっても私は追求していくべきだと思いますので、この総理の新しい資本主義という言葉がどういう言葉の意味を持っていて、大臣自らはどう理解をされているか、大臣のお言葉で教えていただけませんでしょうか。

鈴木国務大臣 新しい資本主義につきましては、基本的に、成長と分配の好循環やコロナ後の新しい社会の開拓を基本理念とする、岸田内閣の目指す経済社会像を指しているもの、そのように承知をいたしております。

 具体的に、その具体化ということにつきましては、今回編成した令和四年度予算におきましては、いわゆる十六か月予算の考え方の下で、令和三年度補正予算と一体として編成をし、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期しつつ、成長と分配の好循環による新しい資本主義の実現を図るための予算といたしております。

 具体的に申し上げますと、新しい資本主義の実現のため、成長戦略として、科学技術立国、デジタル田園都市国家構想、経済安全保障といった分野に重点的に予算措置を行っております。また、分配戦略として、看護、介護、保育、幼児教育等の現場で働く方々の処遇改善や、人への投資を推進する施策等に取り組むこととしております。

 新しい資本主義の実現に向けて、本予算の迅速な成立に向けて尽力をしたいと思っております。

伴野委員 先ほど、中川先生だったか櫻井先生だったか、ちょっと記憶があれですが、総理の文章の中にも昔よく使われていた言葉がたくさんちりばめられておりまして、この中でも、かつて民主党があったときによく使っていた言葉だな、そんなふうにもお見受けしたわけでございますし、最終的に目標が人類共通の課題に立ち向かっていくことで、立ち向かって解決していくことが日本国の科学技術の発展になり、そしてまたそれが飯の種になるということであれば、私自身は大いに賛同するところが大でございます。

 いいことをやるのに与党も野党もないと思いますので、この辺り、早く具体的に御提案をいただいて、我々も是々非々で臨まさせていただければと思いますので、是非とも具体案をおつくりいただいてお示しいただければありがたいかな、そんなふうに思います。

 あと五分弱になってまいりました。

 先ほど来からも、昨今の経済の状況について、それは楽観論で話せば話せないこともないんですが、普通、政治家というのは、最大のリスクを考えて動くべきだと思っておりますし、それこそが政治家のやることだと思っております。リスク管理、リスクヘッジ、今どう考えていらっしゃるのか、お聞かせいただきたいんですけれども。

 先ほどもトリガー条項のお話があり、日本が置かれている今の状況からすると、内外金利差のお話もあるでしょう。そうすると、ひょっとしたら、ガソリン価格が引き金になって様々な物価高が急速に起こる可能性も否定できない。とりわけ、輸入物価ががんがん上がってくると、御案内のように、現在の暮らしの中でどれだけ輸入物価が影響しているかということや中小の方々がどれだけ傷まれるか、これは申し上げるまでもないと思います。

 さらに、FRBが、量的緩和の終了と同時に、事実上のゼロ金利政策を解除する見方が強まっております。そうすれば、更に日米金利差が広がって、円安がじわじわと進む、輸入物価を押し上げていく可能性も否定できないと思われます。アメリカの金利が上昇傾向なので、日米金利差を拡大して更なる円安が進んで、先ほど申し上げたように、輸入物価上昇が個人だけでなく中小企業を大打撃することになる。

 先ほども地域の金融のお話が出ておりましたが、御案内のように、中小企業さんはいずこも、もう目いっぱいお借りになって、本当にこれ以上ないという状況になっているところが多いと認識をしております。さらには、四月には携帯電話料金引下げ効果が切れて、日銀の物価上昇目標を知らないうちに達成してしまう可能性が出てくる。そうなったときに大臣はどうするお考えか、大臣のお考えをお聞かせいただけませんか。

鈴木国務大臣 物価上昇のお話であったと思います。

 原油を始めといたします世界的な原材料価格の上昇等を背景にいたしまして、足下では物価が上昇しており、先行きにつきましては、月例経済報告によれば、政策等による特殊要因を除くベースで、当面底堅い動きとなると見込まれているとされております。

 政府といたしましては、ガソリンや灯油などの急激な値上がりを抑制するための激変緩和措置を講じているほか、企業による積極的な賃上げを促すための賃上げに係る税制措置や、経済対策や価格転嫁円滑化のための政策パッケージに盛り込まれた取組などによりまして、賃上げの環境整備を進めていきたいと思っております。

 これによりまして、物価だけが上がる状況ではなく、企業収益の拡大が賃金の上昇や雇用の拡大につながり、消費の拡大や投資の増加を通じて、更なる企業収益の拡大に結びつくという好循環を実現したいと考えているところでございます。

伴野委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきますが、いずれにしましても、コントロール不能なインフレになるようなことがないように、逆に、インフレによって国の借金を返していくというようなことにはならないように、是非とも……(発言する者あり)あと五分ありますか。じゃ、五分あるということで、大臣、いいですか、おつき合いいただいて。

 じゃ、最後に、関連で一つ。

 やはり、中国リスクも相当高まってきていると思うんですね。本当は、格差是正の話はじっくりしたかったんですが、またの機会にさせていただくとして、じゃ、中国リスクだけちょっと、御見解を聞かせていただきたいと思います。

 国産志向、国産化運動というのがもう始まっているというか、習近平さんの号令の下で、再選を目指しておやりになっているということでございますので、さらには、二〇二二年の人口減というようなことからすると、中国の影響はまさに避けられなくなってくるだろう。足下では、地方都市の不動産なんというのは投売り状態になってきているというようなことも聞くところでございます。

 こうした中国リスクについてどうお考えになっていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 伴野先生の御指摘のとおり、中国経済のリスクといたしましては、不動産大手の経営問題に端を発した不動産市場の低迷、それから、そのほかにも、出生数の減少や高齢化などの人口問題、厳しい感染封じ込め策による行動制限の影響等が指摘をされると承知をいたしております。

 こうしたリスクを含めまして、今後の中国経済の動向が世界経済や日本経済にどのような影響を与えるか、引き続き注視をしていかなければならないと思っております。

 なお、日本といたしまして、経済安全保障会議等において、特定国への依存の程度等も踏まえまして、例えばサプライチェーンの強靱化等、リスクに対する体制を強化するため、引き続き検討を進めているところでございます。

伴野委員 時間が参りましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

薗浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。赤木正幸君。

赤木委員 日本維新の会、兵庫四区選出の赤木正幸です。

 本日は、質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。私、こういった政治の世界、実は初めてで、こういった場で質問するのも本当に初めてのことですので、何とぞよろしくお願いいたします。

 早速、質疑に入らせていただきます。

 ポストコロナにおける日本の成長、これはもう言うまでもなく重要かつ喫緊の課題であり、少子高齢化の構造的な課題を解決する方法の一つと私も考えております。そして、鈴木大臣の所信表明の中にも何回もこの成長という言葉が登場していますし、日本維新の会の日本大改革プランにおいても成長を特に重視しております。

 また、私のバックグラウンドが、ビジネス、特に不動産とか投資、またスタートアップの経営の経験なんかもありますので、経営者とか投資家との接点が多いです。その中で、やはり彼らは日本の成長に対する期待、一方で不安といったものを持たれていまして、そういった言葉を受け止めることが非常に多いです。さらに、日本の成長こそが子供たちによりよい活躍の場を残すこと、そしてサステーナブルな地球を残していくということにつながると私自身も考えております。

 このような観点から、本日の質問は、成長とか投資といった未来に向けた質問をさせていただきたいと考えております。

 まず、一つ目の質問に早速入りますが、新しい資本主義の実現における成長戦略に関して二つ御質問があります。

 まず、科学技術関係予算についてお伺いいたします。

 かなり幅広い予算というふうな認識も私も持っておりますが、科学技術立国の観点から、この科学技術関係予算の、例えば注力ポイントとか、今後の期待する成果、そして中長期的な方針等について、内閣府としてどのようにお考えか、お聞かせお願いいたします。

覺道政府参考人 お答え申し上げます。

 諸外国におきまして科学技術イノベーションへの投資が大きく伸びている中、熾烈な国家間競争を勝ち抜くため、人工知能、量子、バイオ、グリーンなど、先端科学技術の研究開発への大胆な投資を行っていくことは極めて重要でございます。

 このため、政府では、今年度から五年間の研究開発投資につきまして、政府全体で約三十兆円、官民合わせた総額は約百二十兆円という目標を定めたほか、十兆円規模の大学ファンドや二兆円のグリーンイノベーション基金など、大胆な政策を進めてまいります。

 今後とも、先見性を持って、基礎研究や人材育成への投資を始め、必要な予算を確保するとともに、研究開発税制などにより民間投資を誘発し、官民が連携協力して国家的重要課題に対応することで、科学技術立国の実現に取り組んでまいりたいと考えてございます。

赤木委員 ありがとうございます。

 まさにこの科学技術関係予算は、相当に幅も広いですし、金額も大きい、なおかつ世の中のスピードが非常に速い、さらに関係省庁も多い予算と承知しています。是非とも、この関係省庁とも調整の上、日本の国力を高めるためにも、いわゆるPDCAですね、プラン・ドゥー・チェック・アクション、回しつつ運営を行っていただきたいと思いますし、私自身もこのプランチェックに是非参加させていただきたいと考えております。

 では次に、この新しい資本主義の実現における成長戦略に関連して、今度は地方創生推進交付金についてお伺いいたします。

 地方創生推進交付金は、たしか平成二十八年に開始されたと承知していますが、デジタル田園都市国家構想という観点から何か変更点があるのか、もしあるとすればどのような変更点か、さらに、今後のこの交付金についてどのような方針で臨むか、改めて内閣府の御見解をお伺いいたします。

北浦政府参考人 デジタル田園都市国家構想は、高齢化や過疎化などの社会課題に直面する地方にこそ新たなデジタル技術を活用するニーズがあることに鑑み、その活用によって地域の個性を生かしながら地方を活性化し、持続可能な社会を実現するものであります。そのために、地域が抱える人口減少、高齢化、産業空洞化などの課題をデジタルの力を活用することによって解決し、地方から全国へとボトムアップの成長を実現することとしております。

 この構想を推進する観点から、地方創生推進交付金等の地方創生関係交付金につき、令和三年度補正予算及び令和四年度当初予算案において、新規事業を対象としてデジタル技術の活用等の取組を事業内容に含めることを原則とすることなどの変更を行ったところであります。

 地方創生関係交付金につきましては、地方創生の推進に向けた地方公共団体の自主的、主体的で先導的な事業への支援を図るための交付金であることから、同交付金を活用した地方公共団体の事業内容は幅広く、デジタル技術の活用やその普及等の取組としても創意工夫ある多様なものが期待されるところ、これまで採用した事業等を踏まえますと、現時点では、例えば地域通貨の導入など、デジタル技術を活用した観光周遊の促進を図る取組、ECサイトの活用等により地元農産物の販路拡大を図る取組、栽培技術体系の開発実証を行うICTを活用した次世代ハウスの整備などを想定しております。

 デジタル田園都市国家構想の実現に向け、本交付金の活用を通じ、地域の課題解決のためのデジタル実装が進むよう努めてまいります。

赤木委員 ありがとうございます。

 まさに今おっしゃられたとおり、地方公共団体の状況は様々ですね。

 デジタルといっても、ハイレベルなITだけが全てじゃないと私も考えております。例えば御年配の方がスマートフォンでネットショップで買物が自然にできるようになるだけでもたくさんの課題解決につながると考えておりますので、地方公共団体の実情に合った、自主性や主体性を支援する交付金として運営を行っていただきたいと考えております。

 では次に、成長の基盤構築にもつながる企業の資金調達について二つ質問させていただきます。

 企業の資金調達といった場合に、現時点では、特にコロナ対策としての資金調達支援、そしてその先の成長戦略としての資金調達支援の二つに考え方を整理することが可能かと考えておりますが、企業の資金調達支援についてどういった方針で臨まれているか、これは経済産業省さんですね、御見解をお伺いできればと考えております。

飯田政府参考人 お答えいたします。

 ただいま、コロナ対策と成長支援、それぞれについての資金調達支援についてお尋ねでございます。順にお答え申し上げたいと思います。

 まず、コロナ対策の方でございますけれども、新型コロナによる影響によりまして苦しんでいる中小企業の方々に向けて、これまで実質無利子無担保融資を実施してきてございます。足下で申請期限三月ということになってございます。これに加えまして、経済産業大臣あるいは財務大臣から官民の金融機関に対しまして、最大限、事業者の実情に応じた柔軟な対応を行うように、累次にわたって要請を行っております。新型コロナという危機に対処できるように、各種の資金繰り支援策をしっかり実施してまいりたいと思っております。

 続きまして、成長でございます。

 成長の関係では、様々な企業の成長のステージに応じていろんなメニューがございます。ここでは、今日は一部、中小企業庁の関連の施策について御紹介させていただきます。

 まず、融資の関係でございますけれども、委員も先ほど御指摘ありました創業の関係でございますけれども、創業を考えている方、あるいは創業して間もない事業者の方々向けに、例えば、高い成長性が見込まれる新事業を行う企業向けには新事業育成資金というものを用意してございます。あるいは、女性、若者、それから高齢者の方々の新規開業を支援するメニューといたしまして、女性、若者・シニア起業家支援資金といった、いずれも日本政策金融公庫による融資メニューでございますけれども、用意してございます。

 また、そのほかにも、設備投資の関係、海外展開の関係など、多様な融資メニューを御用意してございます。

 一方、資本調達、融資ではなく資本の方でございますけれども、こちらにつきましては、中小企業基盤整備機構の中小企業成長支援ファンドというのがございまして、これを通じた出資を行っております。これまで約千五百件ぐらい実施をしてございます。

 また、令和二年度からは、新型コロナの影響により経営が悪化した中小企業の経営力強化と成長を支援するために、新たに経営力強化支援ファンドを通じた支援も実施してございます。

 こうした政府による支援に加えまして、中小企業投資育成株式会社がございますけれども、こちらで、中小企業の自己資本の充実と健全な成長発展を図るために、これまで約五千六百社以上の中小企業への投資なども行ってございます。

 そのほかにも、ものづくり補助金でございますとか、様々、補助金のメニューもございます。

 事業者の事業フェーズに応じて様々な支援メニューをこれからも展開してまいりたいと思っております。

赤木委員 ありがとうございました。もうまさに、企業の資金調達支援、かなりたくさんの関係官庁が関係していると思われますが、折を見てもうちょっと深いところも含めて御教示いただければと考えております。

 では次に、この企業の資金調達に関連して、今度はスタートアップの育成に関する質問となります。

 私自身もこのスタートアップ企業の経営を経験したことがありますが、事業そのものの大変さ以上に、実はこの資金調達の大変さがあります。よい事業をすれば資金はついてくるというのはまさしく正論なんですけれども、そうはいっても思いどおりには事業は進まないというのは、これまた事実というか現実です。こういったときにこの資金調達支援があれば、これまで以上に新たなチャレンジを行う起業家が増え、そして日本の成長の確固たる基盤につながると考えています。

 このスタートアップの資金調達支援について、貸し手、出し手ですね、への支援、若しくは受け手への支援のような形で整理することも可能かと考えています。このスタートアップの資金調達支援について経済産業省としてどのようなお考えであり、どのような方針で臨まれていますでしょうか。

蓮井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、我が国のスタートアップの資金調達についてでございますけれども、近年はかなり、一時期に比べますと増加しているわけでございますが、欧州や中国、とりわけ米国でございますけれども、これと比べますと大きな差があるということでございまして、今後の成長の源である我が国のスタートアップの成長、このためには更なる資金調達の円滑化が重要だというのは先生御指摘のとおりでございます。

 経済産業省といたしましては、スタートアップへのリスクマネーの供給を強化するために、官民ファンドである産業革新投資機構や、先ほども話でありましたが、中小企業基盤整備機構、こういったところによりスタートアップへの資金供給を行っているところでございます。

 また、今回の税制改正におきまして、大企業などによるスタートアップへの出資に対して所得控除を措置するというオープンイノベーション促進税制、これも延長、拡充しているところでございます。

 さらに、スタートアップが行う大型資金調達を支援するため、民間金融機関からの融資に対する債務保証制度も設けております。

 こうした資金調達支援を通じまして、我が国のスタートアップの成長を強力に後押ししてまいりたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございます。まさに貸し手、そして借り手側、まあ調達の側ですね、両方のいろいろな支援のメニューが増えてきたということは非常に私も心強く思っております。

 一方で、条件のよいスタートアップ環境を求めて起業家人材が海外に流出している事案も実際にやはり目にしていますので、日本生まれのスタートアップが世界を動かす日が来るように、是非、このスタートアップ育成を積極的に進めていただきたいと考えております。

 次に、成長の一つの方向性でもある、サステーナブルな環境の実現に資する投資としてのESG投資ですね、こちらの質問をさせていただきます。

 まず、このESG投資の現状把握をするために、日本におけるESG投資の現状認識、例えば時系列推移とか国家間比較等を用いて、金融庁の御見解をお願いいたします。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 日本におきますESG投資の残高につきましては、近年、非常に大きく伸びてございます。ESG投資を推進する団体の国際組織であるGSIA、グローバル・サステーナブル・インベストメント・アライアンスというところの報告書によりますと、二〇一六年時点で〇・五兆ドル、二〇二〇年時点で二・九兆ドルというふうになってございまして、この間、五・八倍に拡大してございます。

 また、同報告書によりますと、世界のESG投資残高につきましては、二〇一六年時点で二十二・八兆ドル、二〇二〇年時点で三十五・三兆ドルでございまして、一・五倍に拡大してございます。

 これから世界のESG投資残高に占める日本の割合を算出いたしますと、二〇一六年には二%、これが二〇二〇年には八%になってございまして、足下では非常に増加傾向にあるというふうに承知してございます。

赤木委員 ありがとうございます。

 確かに増加はしているとは思うんですけれども、まだまだ個人的には増加の余地があると理解しております。

 このESG投資の現状を踏まえて、今後の具体的な支援策等がもしあれば、金融庁の方針についてお伺いできますでしょうか。

井藤政府参考人 お答え申し上げます。

 気候変動等の様々な課題が生じている中で、持続可能な経済社会を金融面から支えるという観点から、ESG投資の重要性は高まってございます。

 金融庁といたしましては、このための環境整備を進めていくために、大きく三点。

 一点目につきましては、まず、企業開示の充実を図るという観点から、国際基準を策定いたします国際サステーナビリティー基準審議会に意見発信を行いつつ、金融審議会において、企業のサステーナビリティーに関する適切な開示の在り方について議論を進めているところでございます。

 二点目といたしまして、市場機能の発揮を促すという観点から、まず、日本取引所グループと連携いたしまして、グリーンボンド等のESG関連債などの情報を一元的に集約する情報プラットフォームを整備していく、こうしたこととともに、企業のESGの取組等を評価するESG評価機関に関しまして、金融庁に専門の分科会を設置し、評価手法の透明性の確保等について議論を進めていくこととしてございます。

 三点目といたしまして、金融機関による投資先支援やリスク管理も重要な課題でございます。そのため、金融機関向けのガイダンスを策定すべく、検討を進めているところでございます。

 サステナファイナンス市場の拡充のためには、こうした様々な施策を総合的に推進し、投資等がしやすい環境整備が重要だと考えてございます。引き続きしっかりと取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

赤木委員 ありがとうございます。

 ESGに関しては、特に日本においては、投資家サイドとエンドユーザーである消費者との価値判断にちょっとギャップがあるのではないかと仮説を持っています。具体的には、例えば、環境に優しいサービスが必ずしも経済的に優位に立てるわけではないということが起きているのではないかということなんですが、特に、投資の世界に支援策を用いるかどうかは、多分に政治的な判断も必要かと考えられますので、継続して議論させていただきたいと思います。

 では、最後に、特に成長の実態とか見通しの一つのバロメーターにもなる不動産売買価格の変化について御質問させていただきます。

 不動産ビジネスに関わる方々から、とにかく不動産売買価格が高騰しているんじゃないか、こういった声を非常にたくさんいただいております。

 まず、現状把握をするために、日本の不動産売買価格の現状について、これまた時系列比較、若しくは国家間比較のようなものを用いて、現状認識に関する国土交通省の御見解をお願いいたします。

大澤政府参考人 お答えいたします。

 日本におきます足下の不動産市場の動向につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響もございまして、飲食店が集積する地域で下落が見られる一方、住宅などの需要が堅調である中、上昇が継続しているところもあるという状況でございます。

 また、御質問の中長期の不動産価格の時系列推移につきましては、国交省では調査によりまして取引価格に基づいて作成、公表している不動産価格指数というのがございます。この直近データで見ますと、二〇二一年の十月の指数は、住宅、商業用不動産共に、二〇一〇年比較、この約十年間におきまして約二割の上昇を示してございます。

 また、国際比較についてでございますけれども、今申し上げました不動産価格指数、実は、国際機関の指針に基づいて、住宅については作成されてございますので、国際比較が可能でございます。例えば米国と比較いたしますと、二〇一〇年から二〇二一年、約十年間の上昇率、先ほど日本では約二割というふうに申し上げましたが、米国では約八割の上昇となってございます。

赤木委員 ありがとうございます。

 そうですね、実際に現場の方たちもやはり二、三割ぐらい高騰しているという実感値をお持ちですので、日本ですね、やはり高騰しているということ、理解させていただきました。

 この不動産売買価格の変化、高騰について、原因分析若しくは評価について、こちらは金融庁の御見解をお願いいただけますでしょうか。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 不動産価格につきましては、内外の金融環境に加えて、不動産物件の期待収益や企業や消費者の不動産に関する選好など、需給に関する様々な要因に基づいて形成されるものと考えております。

 したがって、その要因や水準についての評価を金融庁として一概に申し上げることは困難でございますが、金融庁といたしましては、御指摘の不動産市場の動向を含めて内外の経済市場動向を注視するとともに、将来にわたり金融システムの健全性が維持され、金融仲介機能が発揮されるよう適切に対応を行ってまいりたいと考えております。

赤木委員 ありがとうございました。

 確かに、不動産の価格というのは一つの要因だけで動いているわけではなくて、実需に即した高騰もあるというような認識を私の方でも今いたしました。

 本来であれば、この不動産価格と金融引締めの可能性についても、本当はお聞きしたい部分もあるんですが、この金融引締めの話というのが不動産価格のみが判断材料でないこと、そして、ちょっと私の持ち時間の制約もあることも踏まえて、本日は質問には組み込みませんでしたが、この状況を注視しながら、継続的に意見交換をさせていただけれは幸いです。

 私の持ち時間も参りましたので、私の質問を終わらせていただきたいと思います。本日は質問の機会をいただきましてありがとうございました。

薗浦委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太と申します。

 三十八歳の新人議員、若輩者ではございますが、今後、皆様に御指導、御鞭撻のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。頑張ってまいります。

 それでは、早速、質問の方に移らせていただきます。金融システム障害への対応についてお尋ねいたします。

 みずほ銀行は、この一年間で十回ほどのシステム障害を起こしております。

 昨年九月そして十一月には金融庁が業務改善命令を出し、金融庁はみずほのことを、自浄作用が機能しているとは認められない、言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢。まあ、こんなふうに言われると、私自身が叱られているような、そんな気がしてしまいますが、このような厳しい表現でみずほ銀行のことを、企業体質に苦言を呈しております。

 第三者委員会が報告書で指摘しているように、みずほに、危機に対応する組織力やITシステムの統制力の弱さ、こうしたことが容易に改善されない企業風土があり、みずほにシステム障害の主因があることは間違いありません。

 しかし、この問題、みずほ銀行の問題、一企業の問題と断罪してしまっていいのでしょうか。

 現在の金融システムは、巨大なITネットワークにより構築されております。金融システム障害、いつでもどこでも起き得ます。みずほの一連のシステムトラブルをはるかに超えるような大規模金融システム障害が起きたら、金融庁としてはどう御対応されるのでしょうか。もし万が一、当該企業が手に負えなくなってしまったときに、リカバリーする能力そして人材は金融庁に十分にあるのでしょうか。それとも、あくまで当該企業に復旧を一任する以外にはないのでしょうか。また、そのような事態を未然に防ぐために何か手だてを講じているのでしょうか。お聞かせください。

鈴木国務大臣 金融機関が安定したシステム稼働を確保すること、これは、円滑な金融サービスの提供及び利用者保護の観点から大変に重要なことであると思います。

 そして、藤巻先生、みずほ銀行のこの大規模システム障害を例に挙げましたが、先生の御指摘のとおり、同じようなシステム障害がほかのところでも起こり得るということでございます。

 金融庁では、大規模なシステム障害の発生を未然に防止するために、合併を伴うシステム統合など難度の高いプロジェクトに取り組んでいる金融機関、またシステムリスク管理体制に問題があると考えられる金融機関に対しては、検査などで重点的に検証を行っております。そして、金融機関で発生したシステム障害を分析をいたしまして、その傾向、事例をまとめたレポートを金融機関全体に共有することなどを通じまして、金融業界全体のシステムリスク管理体制の強化を促しております。

 仮に大規模なシステム障害が発生した場合の金融庁の対応といたしましては、金融機関に対し、金融機関があらかじめ定めている緊急時の対応計画に従いまして、顧客への影響を最小限にとどめるため、適切な対応を行うこと、それから、可及的速やかに原因究明、復旧に取り組むよう、求めることといたしております。

 金融分野においてデジタル化が進展する中、金融機関のシステムリスク管理体制の強化はますます重要な課題となっていくと考えておりますので、今後も力を入れて取り組んでまいりたいと思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 金融システムは、一企業のネットワークだけではなく、もはや社会インフラの一部でございます。リーマン・ショックが市場に大きな影響を与えたように、金融システム障害が社会に及ぼす影響は甚大でございます。適切な対応を今後とも金融庁にはお願いしたいと存じます。

 また、みずほ銀行、私の出身母体でもあります。在籍した五年弱、多くを学びました。社会人としての礎を築いた場所でもあります。感謝の念を抱いております。日本を代表するメガバンクとして、みずほが生まれ変わり、再び輝くことを心から願っております。

 次の質問に移らせていただきます。

 確定申告制度に関してお尋ねいたします。

 現在、確定申告の準備の真っただ中で、毎年変わる複雑な制度に四苦八苦しているという方も多いかと存じます。

 令和二年度所得税の確定申告期限は、十分な申告を確保して、確定申告会場の混雑回避、三密回避の徹底を図る観点から、三月十五日から四月十五日まで期限が延長されました。

 蔓延防止等重点措置が多くの地域で発出され、新型コロナウイルス新規感染者数が連日過去最高を更新する現在、今年は、四月十五日まで延長されるのでしょうか。

重藤政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナウイルス感染症の拡大を踏まえまして、国税庁では、令和三年分確定申告に向けて、従来以上にe―Taxを推進する、あるいは入場整理券等によって来場者の分散を図るなど、納税者が安心して申告相談できるよう、感染症対策を徹底しているところでございます。

 一方、足下、オミクロン株による感染の急激な拡大に伴い、確定申告期間にかけて、感染者や自宅待機者のほか、通常の業務体制が維持できないといった事情によって、申告が困難となる納税者が増加することが想定されるところでございます。

 そこで、令和三年分の確定申告期間は、申告所得税であれば二月十六日から三月十五日までの間となっておりますが、ただいま申し上げましたような状況を踏まえ、新型コロナウイルス感染症の影響によって申告等が困難な方には、令和四年四月十五日までの間、簡易な方法によって申告、納付期限の延長ができることとし、その旨を昨日公表したところでございます。

藤巻委員 コロナ禍でその対応に忙殺されている方も多いかと思います。今年も一律四月十五日にするのも選択肢かと思いますので、そちらの方の御検討もよろしくお願いいたします。

 続きまして、関連して、確定申告の所得税の基礎控除について御質問させていただきます。

 二〇二〇年一月に、基礎控除は、一律三十八万円だったものから、段階的に減らしていくという制度に変わりました。しかし、この制度、控除額の減額の境の部分に関しては、一円でも超すと十六万円も控除額が減るというものであり、不公平感が大きいのではないでしょうか。

 いわゆる百三万円の壁や百三十万円の壁にも同じことが言えますが、ある一定のラインを超えると突如控除額が大幅に減ったりなくなったりする、場合によっては損をしてしまう、このような制度は、大きな不公平感、ひいては労働意欲の低下を招いてしまいます。制度上、これ以上働くと損をする、だから働くのをやめておこう、こういう状況です。

 労働意欲を減退させかねない現在の制度をどうお考えでしょうか。また、あるいは、基礎控除は一律のままでは駄目だったんでしょうか。お答えください。

岡本副大臣 お答えいたします。

 委員言及をされました所得税の基礎控除におきましては、平成三十年度の税制改正におきまして、所得再分配機能の回復を図る観点から、納税者の所得が二千四百万円を超えると控除額が段階的に減少、消失する仕組みとなりました。

 この基礎控除が段階的に減少、消失する仕組みにおきまして、委員が御指摘されているように、限られた場合におきまして、手取りが若干減少することが考えられます。例えば、二千四百万円を超えますと、最大八万円程度手取りが減少する現象が起こり得ますが、その金額を考えますと、非常に軽微であることから、労働意欲に大きな影響を及ぼすほどの逆転現象とはならないというふうに考えております。

藤巻委員 百三万円の壁あるいは百三十万円の壁の方はどうですか。これはかなり大きな、もうこれ以上働くと減ってしまうみたいな話は非常によく聞くと思うんですけれども。

岡本副大臣 百三万円の配偶者控除等につきましては、平成二十九年度改正におきまして、配偶者の収入の制限を百三万円から百五十万円に引き上げるなどの見直しをしております。また、配偶者の所得の大きさに応じまして控除額を段階的に減少させる配偶者特別控除の仕組みがありますために、配偶者の収入が百五十万円を超えた場合でも、税負担の増が世帯全体としての収入の増を上回ることがない仕組みとなっております。

 一方、百三十万円の壁は、財務省ではありません、厚労省の所管となっておりますので、お答えする立場にございません。

藤巻委員 ありがとうございます。

 引き続き、平等感、納得感のある税制、策定の方をよろしくお願いいたします。

 それでは、次の質問の方に移らせていただきます。

 金融庁の金融行政の方針に、国際金融センターとしての地位確立を目指し、海外金融事業者に対する登録手続の迅速化や英語対応の強化を求める、積極的なプロモーションを進めるとありますが、このような事務的かつ広報的なもので外資系金融機関の誘致が可能なのでしょうか。

 香港の法人税率は一六・五%、対して日本は二三・二%。従業員の観点から見ても、香港の所得税の最高税率は一七%、日本は四五%。香港の金融所得課税はゼロ、日本は現在で、現時点では一五%。これらの税金に、日本の場合、更に地方税がかかる、そんなような状況です。

 ここまで税率に差があると、登録手続をどんなに早くしようが、大手海外金融機関は日本ではなく香港やシンガポールにその拠点を築く、これは自明の理ではないでしょうか。取引所の時価総額とGDP比率は、日本を一〇〇とすると香港は九八七、資産運用業者数は、日本が三百七十一に対して香港は千六百四十三です。国際金融市場の拠点としての日本は、香港やシンガポールに遠く及んでおりません。

 国際金融センターとしての地位を確立するために、今後、金融庁はどのような施策を考えているのでしょうか。先ほど話した税率の引下げは最も有用な手だての一つであるとも考えます。それについて御検討いただくことは可能でしょうか。

黄川田副大臣 国際金融センターを確立するということで私たちも一生懸命取り組んでおりますが、そのためには、日本がビジネスを行う場としてより魅力的な国家となっていく必要があるというふうに考えております。

 したがいまして、これまでにビジネス環境や生活面の課題の改善に取り組んできたところでございます。一例を挙げますと、英語によるワンストップでの支援窓口の創設を昨年一月にしておりますし、在留資格の特例の創設も昨年の七月に行っているところでございます。

 御指摘の税制については、昨年、法人税、相続税、所得税について抜本的な措置を講じております。その一例ですと、相続税については、外国人について、十年を超える居住の場合にでも国外財産を相続税の課税対象外とするということなども行っております。

 今後、行政の英語対応など更なる充実を図っていくと同時に、これまでの取組の積極的なプロモーション活動を行ってまいります。

 こうした活動の一環として、先日、二月二日ですが、私も国際金融センターに関するフォーラムで講演を行ってまいりました。引き続き、国内外の金融関係者の声を聞きながら、新たな課題を把握、解消していくことで、海外の金融機関や高度金融人材の呼び込みをして、世界に開かれた国際金融センターとしての地位を確立してまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 おっしゃるとおり、確かにそういう施策も必要だと思うんですけれども、事務的なことだったり生活面を便利にしたりということももちろん大事だとは思うんですけれども、やはり、税金が、例えば日本の半分以下の国に行くというのは企業の活動としては当然のことだと思いますので、もっと抜本的な税制改正というのは、私個人としては望んでおりますので、御検討の方をよろしくお願いいたします。

 資源に恵まれているわけでもなくて少子高齢化が進む我が国としては、やはり金融立国として国富を得ていかなければならない、そう考えております。そのための施策、是非よろしくお願いいたします。

 続いての質問に移らさせていただきたいと思います。金融育成庁としての役割について伺います。

 現下の新型コロナウイルスとの戦いに勝利するための正念場を迎える中、この困難に打ちかち、健全な生活、経済活動を取り戻すべく、政府は緊急対策を実施しております。特に、コロナ禍で経営に苦しむ中小・小規模事業者や個人事業主にとっては、資金繰り支援は死活問題であります。この民間金融機関による、低下傾向にある金利と融資競争が激化する中、地域の金融機関の体力は落ちております。このままでは、地域経済を下支えする中小零細企業のために今後のリスクを取れないということも考えられます。

 昨年八月に公表されました金融行政方針では、金融行政の進化をうたっており、金融育成庁としての経済社会貢献の意気込みが書かれております。疲弊した地域の経済の再生には、これら金融機関の役割は非常に大きなものであると考えます。

 地域金融機関の体質改善、再構築も含めた、これらのあるべき姿、ビジネスモデルなどをどのようにお考えか、お聞かせください。

宗清大臣政務官 お答えさせていただきます。

 地域金融機関には、地域経済を支える要として、金融機能を強化し、地域経済の価値向上等を図ることにより、地域経済の回復、成長に一層貢献していくことが期待されているわけでございます。

 そのためには、地域金融機関は、低金利環境や人口減少など、厳しい経営環境が続く中であったとしても、地域の実情に応じて、将来を見据えた経営改革を着実に進めて経営基盤の強化に取り組むことが重要であるというように考えています。

 こうした地域金融機関の取組を支援する観点から、一定の要件を満たす合併等につきましては、独占禁止法を適用しないこととする独占禁止法特例法の制定、合併や経営統合を含む経営基盤の強化の取組を支援するための資金交付制度の創設、また、デジタル化や地方創生など、持続可能な社会の構築に幅広く貢献できるようにするための業務範囲規制や出資規制の抜本的な見直しなど、様々な環境整備を行ってきたところでございます。

 地域金融機関には、これらの環境整備も活用しつつ経営基盤の強化に向けた取組を進めていただきたいと考えておりまして、金融庁としてもしっかり後押しをしていきたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 続いての質問に移らさせていただきます。

 続いて、労働市場の流動化についてお尋ねいたします。

 今回、政府は、賃上げ促進税制として、継続雇用者の給与総額を一定の割合以上増加させた企業に対して、対前年度増加額の最大三〇%を税額控除できる制度を定めようとしています。

 もちろん、このような税制変更に相応の効果はあると思いますが、果たして、根本的かつ持続的な賃上げがこれで実現されるのでしょうか。労働市場を流動化し、労働力を生産効率の高い分野や大きな経済成長をもたらす分野に移動させることこそが、日本全体の賃上げにつながると考えております。

 財務大臣にお尋ねいたします。

 雇用の流動化を促進すべく、抜本的な税制改正などに対し、どのようなお考えでしょうか。財務省として、雇用の流動化に対して前向きなのか、それとも後ろ向きなのか、どうお考えでしょうか、お答えください。

鈴木国務大臣 我が国の雇用慣行の在り方につきましては、厚生労働省の所管でありますので直接お答えする立場にはございませんが、今、デジタル化が進むなどで、成長分野への労働移動の円滑化については、自律的な経済成長を実現していく上で重要な課題であると考えております。

 岸田政権におきましては、分配戦略の一つの柱として、人への投資の抜本強化に取り組むこととしておりまして、その中で、三年間で四千億円規模の施策パッケージを創設いたしまして、デジタルなどの成長分野への労働移動の円滑化を推進するなどの取組を進めております。

 財務省としても、こうした意味での労働移動の円滑化に向けまして、引き続き関係省庁と連携をしてまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 労働市場の固定化、終身雇用、年功序列を打破できない現状は、健全な競争による生産性を低下させ、再チャレンジを拒み、ブラック企業を生み出します。労働市場が流動化されていれば、よりよい環境の企業へ、自分の働き方に合った企業へ転職することができます。ブラック企業があれば、その企業は被雇用者から見捨てられます。

 また、業界によっては、急速に進むデジタル化やリモート化により、従前の人材では足らず、外部人材の活用を多く求めています。

 経済の潜在的成長率を引き上げるためには、雇用の流動化を図り、労働生産性を向上させていくことが必要不可欠だと考えます。それこそが、抜本的かつ持続的な賃上げ、ひいては日本経済の成長につながると考えます。

 労働市場の流動化に向けて財務省の前向きな取組をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 本日はありがとうございました。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良と申します。

 現在、オミクロン株が大変に強い感染力で拡大しております。一日当たりの新規感染者は、おととい、昨日と、連日で過去最高を記録し、昨日は一日十万四千四百六十四人と初の十万人を超えました。直近十四日間で百万人を超える陽性者が出ております。デルタ株までの対応とは全く異なった対応が求められている中、今までの感染症法二類相当適用のメリットよりもデメリットが現場に大混乱を生んでおります。

 本来医療を受けることができる方々が受けられなくなっている状況を一日でも早く解決できるよう、日本維新の会として、二類相当から五類又は五類相当へ変えていけるよう、総力をもって、総理また大臣への提起を行ってまいります。

 この場をおかりいたしまして、多くの国民の皆様の御理解と我慢によって今の日本は支えられておりますことに感謝を申し上げますと同時に、引き続きの御理解と御協力をよろしくお願いいたします。

 本日は、初めて財務金融委員会にて質疑をさせていただきます。鈴木財務大臣を始め、日々日本のために動いてくださっている関係省庁の皆様、委員会、委員部の皆様、本日はよろしくお願いいたします。

 さて、本日より北京オリンピックが始まりました。来月には北京パラリンピックも開催されます。以前、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣を務められていた鈴木財務大臣におかれましては、東京大会と同様にメダルラッシュを期待していると思われますが、私は、今日、鈴木大臣の金メダル級の御答弁を期待して質問させていただきます。よろしくお願いいたします。

 鈴木大臣の所信表明のスタートが経済から始まったように、経済あっての財政であり、コロナを乗り越えて、長期的に停滞する経済状況を大きく成長につなげていくためにも、強い覚悟と大きなインパクトある政策が必要と考えます。

 インパクトといえば、二〇一二年の第二次安倍政権の際より、デフレ脱却を旗印に、アベノミクスとして三本の矢、大規模金融緩和、財政出動、そして成長戦略として、構造改革、規制緩和が打ち出されました。また、インフレターゲット二%を二年程度で目指すと。日本銀行の異次元緩和というものが二〇一三年スタートと考えると、あれから約十年がたちました。

 安倍政権、菅政権、そして岸田政権と替わっても、デフレ脱却は最大の目標と岸田総理がおっしゃったように、政府としても、日銀としても、大きな経済政策への転換は訴えられていないように感じますが、まずは現状の認識からさせていただきます。

 足下のデフレという状況は、少なからず脱しております。また、昨日の日銀の若田部副総裁の記者会見における、二%の物価目標について、原材料価格の上昇が波及するいわゆるコストプッシュだけで達成ができるのかというと、かなり難しいだろうと消極的な発言をされております。

 質問です。

 最新の消費者物価指数においてどの程度インフレとなっているのか、教えてください。

茨木政府参考人 お答え申し上げます。

 物価の状況につきましてですけれども、二〇二〇年からの消費者物価指数の動向につきまして、総合指数で見ますと、二〇二〇年平均では前年比〇・〇%でございました。それが、二〇二一年につきましては、年平均では、携帯電話通信料の下落もありまして、マイナス〇・二%となっておりますけれども、月次の動向を見ますと、直近の十二月の前年同月比、これで見ますと、ガソリン価格の上昇ですとか食料品価格等の上昇によりまして、〇・八%の上昇ということになっておりまして、四か月連続で前年同月を上回っているというような状況でございます。

 こうした物価の動向につきましては、引き続き注視してまいりたいと考えております。

    〔委員長退席、藤丸委員長代理着席〕

沢田委員 御丁寧な答弁、ありがとうございました。

 ただ、二%というものを実際に達成をしていかなければいけないというところを考えると、かなりまだまだ遠いものだということを感じますし、また、ここの結果から論ずるのは簡単と思いますが、十年近くの時間をかけても実現できていないことには、政策の失敗があったと断じざるを得ません。

 アベノミクスとは、即効性のある大規模金融緩和、財政出動が利いているうちに、成長戦略として構造改革、規制緩和を進めていく、即効性と遅効性の交ざった経済対策となります。一貫した経済成長への意思があれば、二〇一六年後半から始まった世界経済の好転の後押しに乗り、大きな成長へとつながっていた可能性もあっただけに、なぜ二〇一四年に消費税八%への増税という判断を選んだのか。結果、消費の腰を折り、経済成長から生まれる大きな果実を捨てることになりました。

 しかも、第三の矢と言っていた構造改革、規制緩和についてはほとんど前進をしていないこと、物価が上昇している中で、恩恵を受けられない、株を持っていない方、大企業で働いていない方への分配のメッセージも全く足りていませんでした。中長期的な視野で経済政策への強い覚悟を持つことや分配による好循環を生み出すという視点では、大きく欠けるものがあったと言わざるを得ません。

 世界を見てください。アメリカの中央銀行、イギリスの中央銀行、そしてヨーロッパの中央銀行も、早期利上げ観測となるほどの経済の好循環が生まれており、実体経済の過熱感やインフレ率の急上昇に対応し、金融引締めへのかじ取りが進み始めている中、日本はいまだ出口の見えない状況であります。

 ちなみに、アメリカの二〇二一年十二月の消費者物価指数は前年同期比上昇率七・〇%の中、日本は〇・八%となります。

 金融の引締めとは、何かあったときに緩めるという手段を確保するとの同義であり、世界の中央銀行が数年に一度起こる危機に備える準備をしている中、日本だけが準備どころか更に疲弊を続けているイメージを持つと、本当に恐ろしいと感じます。

 また、世界の中央銀行の利上げの方向と日本銀行の金利抑制といった方向性の違いは、為替のトレンドにも少なからず影響が出ると考えます。昨年九月に一ドル百十円から、現在百十四円八十七銭と円安のトレンドになっておりますが、相場は行き過ぎることが多々あります。輸入に頼る部分の多い我が国として、急激な変動や過度な偏りにも警戒が必要と考えます。

 また、先ほどの日銀総裁の発言にもありましたように、金融政策としてETFを通して株式を購入し続けている国などほかに例はなく、長期にわたれば市場の流動性を著しく毀損するだけでなく、日銀保有比率の高過ぎる状況は健全な市場とは言えませんことを考えますと、この政策は、継続は余り長くしてはいけないと思います。

 そういったことに追加して、さらに、コロナ対策に万全を期していくという大臣所信表明を考えればこそ、今やらなければいけないことは明らかです。

 大臣に質問です。

 経済あっての財政です。そして、余り時間はありません。二〇二五年のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成などは撤回をして、日銀のインフレターゲット二%への強い覚悟を本気で実現させるために、経済成長でこの困難を乗り切るという明確な姿勢を示していただけないでしょうか。

    〔藤丸委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木国務大臣 現下の新型コロナの危機を乗り越えて経済を立て直し、そして財政健全化に向けて取り組んでいくことによりまして、次の世代に未来をつないでいこうというのが我々の責任であると考えております。

 経済再生と財政再建は二者択一ではなく、経済再生と財政健全化に向けた取組をしっかりと進めていく必要があると考えております。このため、新型コロナ対策に万全を期しつつ、成長戦略といたしまして、科学技術立国、デジタル田園都市国家構想、経済安全保障といった分野にしっかりと予算措置を行いまして、経済成長を実現をしてまいりたいと考えております。

 また、財政は国の信頼の礎でありまして、財政健全化の旗を降ろすことなく、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等の達成に向けて、歳出と歳入、両面の改革にしっかりと取り組んでまいります。

 いずれにいたしましても、経済再生、これは大変重要なことでありますので、経済再生と財政健全化、しっかりと進めていきたいと思います。

沢田委員 思ったとおりの答弁というか、大変残念です。そこまでプライマリーバランスの黒字化にこだわられるということです。

 では、質問です。

 大臣がそこまでこだわられるのならば、二〇二五年までと大変短い時間の中でも実現を目指せる歳出歳入両面の改革があるのだと思います。改革の中身について具体的に教えてください。

阿久澤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、プライマリーバランスの黒字化目標、こちらにつきましては、先日の経済財政諮問会議におきまして、現時点で目標年度、これは二〇二五年度でございますが、その変更が求められる状況にはないということが確認されたところでございます。

 この目標の達成に向けましては、成長と分配の好循環の実現などに向けた取組を強化をし、力強い成長を実現すること、それに加えまして、社会保障制度を持続可能なものとするため、受益と負担のアンバランスという構造的な課題に取り組むなど、歳出歳入両面の改革をきちんと継続していくことが前提となります。具体的には、各分野におきまして改革工程表などに沿って改革を進め、各年度の予算編成に反映させていくこととしております。

 令和四年度予算につきましては、例えばでございますが、後期高齢者医療の患者負担割合の見直しや被用者保険の適用拡大などの改革の着実な実施や、診療報酬のめり張りある改定などによりまして、社会保障関係費の実質的な伸び、これを高齢化による増加分に収めるなど、様々な経費の合理化、効率化に努め、財政健全化に取り組んでいるところでございます。

 こうした不断の改革、取組を進め、財務省としても経済再生と財政健全化の両立にしっかりと取り組み、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標達成を実現していきたい、このように考えております。

沢田委員 ここまでこだわられているにもかかわらず、具体性も実現の可能性も私には感じられません。大変長きにわたり財政の健全化は叫ばれておりますが、至ってここにたどり着くことはできませんでした。それほどに大きな具体性と覚悟の必要な財政健全化が、今のような答弁で簡単にできると私は思っていません。

 我々日本維新の会は、財政均衡が原則の地方議会からスタートした政党であり、財政健全化の実績をまさに大阪という地域で実現し、新しい投資を生み出したからこそ、大阪でこれだけの支持をいただいております。そんな我々ですら、財政健全化より優先して消費税五%への減税を求めているタイミングであるということも是非つけ加えさせていただきます。

 釈迦に説法とは思いますが、財政健全化とは手段であり、目的ではありません。経済は常に動いており、世界ともつながっています。アベノミクスが消費増税で腰折れてしまったように、政策判断を誤れば大きな損失を被り、財政再建など更に遠のいてしまいます。今だからこそ、経済成長へ徹底的な取組をするんだ、国民の皆様を必ず守っていくんだという強い意思で動いていってくださるようお願い申し上げます。

 続きまして、新しい資本主義における成長戦略について紹介がありました。

 人への投資など、個々に魅力的な御提案と感じました。ただ、個別に予算をつけて支援をすることと、規制緩和などで新しい産業の参入や競争環境を整えていくという視点は違うものと考えます。アベノミクスで掲げた成長戦略でもある構造改革の中に国家戦略特区構想というものがありましたが、今はほとんどその言葉を聞きません。

 大臣に質問です。

 財務省、金融庁所管の産業について、国家戦略特区を積極的に活用していきたいというお考えはありませんでしょうか。

鈴木国務大臣 岸田政権では、アベノミクスなどの成果の上に、市場、競争に全てを任せるのではなくて、官と民が協働して成長と分配の好循環を生み出していきたいと思っております。

 成長戦略においては、デジタル化、気候変動など、我が国が克服しなければならない課題をむしろこれからの成長のエンジンへと転換していく必要があると考えております。その際、予算や税による支援も重要でありますけれども、民間投資を促す観点からは、規制、制度の見直し、こうしたものも重要なツールであると考えております。

 岸田政権においては、デジタル臨時行政調査会におきまして、デジタル関連の規制、手続見直しによる経済成長の実現を議論するなど、委員御指摘の規制改革も活用いたしまして経済成長を実現しようとしておりまして、財務省としてもしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

沢田委員 大臣、ありがとうございました。

 モリカケ問題で国家戦略特区の扱いが非常に悪くなりまして、私は大変可能性のある取組と考えておりますので、是非、政府全体で積極的に国家戦略特区の活用を推進していただけるようお願いいたします。

 続きまして、一月二十五日の日経新聞の記事に、メガバンクなど大手銀行の窓口業務の縮小が加速、業界を挙げてデジタルを使った支払い手段を普及させる方向とありました。日銀の政策により低金利が続く中で、コストのかかる身近なサービスを縮小しており、法人向けMアンドAや個人向け投資信託など新しい収益構造に向けて動いており、メガバンク五グループの二〇二一年四から十二月決算の純利益は前年同期比五一%増の二兆四千四百二十二億円と、七年ぶりの高水準となりました。

 ただ、地域金融機関の事情は異なります。資本規模の違いからメガバンクと同じことができない、また、メガバンクが縮小する業務などを背負う中、低金利は長期化しており、既存の収益構造では大変厳しいというネガティブな条件がそろっております。

 個人的な話になりますが、私の担当する地域には埼玉県の戸田市という地域があり、印刷業界が大変に活況がある地域となります。ただ、随分前よりペーパーレス化ということが言われるよう、業界としても縮小傾向が既定路線という状況でした。コロナの中で、その動きは更に加速しております。

 ただ、埼玉県印刷工業組合さんの会に御挨拶に伺わせていただきましたら、悲観するどころか、デジタルトランスフォーメーションなどを積極的に取り入れ、新しい収益構造をつくり出そうと、三十代から七十代までの印刷関係の社長さんたちが力強い声を上げられておりました。本当にすばらしいと感じました。ストレスはイノベーションの種であるという言葉がありますが、まさに地域金融機関にも積極的に動いていっていただきたいと考えます。

 質問です。

 そんな中、地域金融機関等が地域経済の回復、成長に貢献できる持続可能なビジネスモデルの構築に向けた取組を促すとありますが、一体どんな取組になるのでしょうか。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 地域金融機関は、今委員御指摘のとおり、低金利環境あるいは人口減少など厳しい経営環境が続く中でも、地域の実情に応じ、将来を見据えた経営改革を着実に進めて経営基盤の強化に取り組んでいくことが重要になっております。

 こうした金融機関の取組を支援する観点から、これまで、一定の要件を満たす合併等については独占禁止法を適用しないこととする独占禁止法特例法の制定、あるいは、合併、経営統合などの経営基盤の強化の取組を行うということであれば、これを支援するための資金交付を行う制度の創設、また、デジタル化や地方創生など持続可能な社会の構築に幅広く貢献できるようにするための業務範囲規制ですとか事業再生会社への出資などの出資規制の抜本的な見直しなどの環境整備を行ってまいりました。

 今後とも、地域金融機関との丁寧な対話を行い、これらの施策も活用しながら、地域経済に一層貢献していただくよう促してまいりたいというふうに考えております。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 昨年の十月にフェイスブックという会社がメタという名前に改名する報道があったように、メタバースという言葉が世間で取り上げられることが増えてきております。コンピューターやコンピューターネットワークの中に構築された、現実世界とは異なる三次元の仮想空間やサービスを指すと言われると、何を言っているかよく分からないと思いますが、任天堂から出ている「あつまれ どうぶつの森」もメタバースの一つと言われれば、何となく分かっていただける方は多いと思います。

 ゲームの中での話ならば特に問題ないのですが、最近の技術革新で、メタバースという仮想空間の中で、空間内での独自の通貨とNFTなどのデジタル商品の取引などができるようになり、暗号資産を経由して、現金化又は決済可能な手段になるようになりました。

 質問です。

 今、財務省では、どのようなタイミングで徴税の対象になるかなどは想定をされているのでしょうか。もし可能でしたら、分かりやすく例などで教えていただけたらありがたいと思います。

重藤政府参考人 お答えいたします。

 今委員からお話がありましたメタバース、いわゆる仮想空間と承知しております。また、このメタバースでは様々な取引が行われていると承知いたしておりますが、今委員がおっしゃられましたように、そのメタバース内で流通する通貨、あるいは、それと、デジタル資産のオリジナル性を証明するツールでありますNFTが交換されるような場合もあると思います。

 そうした取引があった場合の課税関係につきましては、メタバース内で得た利益が暗号資産など現実世界で流通する資産と交換できる場合には、経済的利益を得たと認められて所得税の対象となる。したがいまして、そういったNFTとメタバース内での流通する通貨、その譲渡が行われた時点で所得が発生したというふうに考えられるケースが一般的ではないかと思います。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 まさに、日々日々新しいテクノロジーと新しい世界観が出てきて、私も、今四十二歳になるんですが、全く分からない時代がこれから五年、十年で生まれてくるという中で、こうやって財務省を含めて、徴税の在り方というものを真剣にいつも考えていただけることに感謝を申し上げます。

 最後になりますが、この財務金融委員会の可能性は私は大変に大きなものと考えております。

 特に、コロナの中、経済を力強く後押ししていくために、まずは二年間の消費税五%への減税が必要と考えます。また、税の三原則と言われる、簡素、公平、中立という原点に返るためにも、新たにそこに活力という概念を追加して、累進性のある所得税から、一〇%と三〇%の二段階式の簡素なフラットタックスというものの導入、フロー課税からストック課税への重点シフトが必要と考えます。

 そして、税制だけにとどまらず、社会保障、労働市場、三位一体の改革をして、何度でも挑戦できる社会へつなげ、止まっている成長を取り戻していく。社会保障として毎月六万円から十万円を全ての方に支給するベーシックインカム、そして教育の無償化、それを支える収入と資産を捕捉できるマイナンバーの徹底活用、労働市場として解雇規制の緩和で雇用の流動化へつなげていきます。これらは、私たち日本維新の会がさきの衆議院選挙の公約として掲げさせていただきました。

 私は四十二歳、十歳と七歳の子供がいます。私自身の子供たちが未来につながるためにも、この今の日本の経済政策、かなり大きな可能性を秘めております。是非、鈴木大臣始め関係各省の皆様と本気で日本の未来を盛り上げていけるよう全力で動いてまいりますので、これからの質疑にて議論させていただければと思います。

 また、この動画をオンラインで見られている方もいらっしゃいます。御視聴いただきました皆様にとって、私たちの場は、決して質問の場ではなく、政策、また、そういったものの比較に使っていただける場にもなっていただけると思います。是非、今回の質疑においての政府の提案、そして、私、沢田良、日本維新の会からの提案も比較して御判断いただければと思います。

 本日は、鈴木財務大臣、委員長ほか関係各省の皆様、御準備、また御対応、本当にありがとうございました。

 以上で、日本維新の会、埼玉の沢田良からの質疑とさせていただきます。どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平です。

 本日は、質問の機会を与えていただいて、ありがとうございます。

 今日は、政策の効果の検証について幾つか質問をしたいと思って参りました。

 一つは、二〇二〇年に実施いたしました特別定額給付金ですね、国民一人当たり十万円の給付をした、これが緊急避難的にやむを得ないものであったかどうかという議論はありますけれども、この政策効果について議論をしたいと思っております。

 その意味で、今朝一番に、同僚議員の中西健治先生から大変すばらしい質疑があったと思います。それは、午前中参加していただいた同僚議員の皆さんは御記憶だと思いますけれども、補正予算で出した法人税収の見積り、あるいは消費税収の見積りが大変大きくぶれていたということについて主税局としてどう考えているのかという、大変真っ当な御指摘でありました。それに対して、大変残念なことでありましたけれども、主税局長の答弁は、大変無責任かつ他人事のような答弁であり、大変私はショックを受けました。

 といいますのは、大蔵省主税局にとりまして、税収の見積りというのは本当に大事なものなんです。だって、税収の見積りを間違ったら国庫が大変なことになるんですよ。当初予算を組むときに、税収見積りによって国債の発行高が変わってくるんです。

 これは、担当は主税局総務課長なんです。私は、主税局で勤務しておりましたときに、税収見積りを出すときの主税局総務課長さんの緊張感を横で肌で感じてまいりました。本当に緊張します。だって、その総務課長の判断で国債の発行高が変わってくるんですから。そして、もし過大に見積もっていたら、補正予算で国債を余計に出さなきゃいけないんですよ。上振れしちゃいいというものでもないんですよね。

 ところが、三兆円も二兆円近くもそれぞれ法人税、消費税が上振れをした、それに対して主税局として検証もしていない、中西委員の質問に答えられないということでしたよね。大変残念であります。

 ちょうど、私、主税局で三年勤務しておりましたけれども、当時、長野厖士さんという方が直接の上司でした。課長としてお仕えしておりました。この長野厖士さんの思い出話をしてもいけないんですけれども、とてもすばらしい、我々若手官僚のかがみのような方で、私が初めてお仕えしたときに言われた言葉を今でも思い出します。岸本君、僕の前で前例にありませんとは言うなよ、前例をつくるのが我々公務員の誇りなんだ、こういうふうに教わりました。そういう時代もあったんです、大蔵省、財務省には。その方が主税局総務課長だったとき、まさにこの税収見積りをされていたとき、本当に辞表を胸にせんばかりのことでありました。

 済みません。中西健治委員の質問に戻りますけれども、財務大臣、できれば、この後趣旨説明もございますけれども、所得税法等の一部改正法案の採決までには、この中西委員が御質問された税収見積りのどこがどう間違ったのかの検証をこの財務金融委員会に御報告いただくことをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 重要な点のお話だったと思いますが、何ができるかどうかも含めて検討させていただきたいと思います。

岸本委員 今財務大臣から前向きな答弁がありましたので、理事会におきましても、財務省からただいまの検証についての結果報告を求めるようにお諮りしたいと思いますが、いかがでしょうか、委員長。

薗浦委員長 後刻理事会で協議をさせていただきます。

岸本委員 ありがとうございます。

 それでは、私の質問、特別定額給付金の政策効果の検証について御質問をいたします。

 まず、政策効果を検証する前には、政策目的が何だったのかということを正確に確定しなければいけません。二〇二〇年の一人当たり十万円給付、特別定額給付金の政策目的は一体何だったのでしょうかという問いであります。

 こういう場合、恐らく政策目的は三つに分けられるはずであります。一つは、収入減、収入が減った、収入が減ったということで家計が大変だ、家計の生計を維持するための支援をするというのが一つの政策目的になり得ます。二つ目は、コロナの初期のことを思い出していただければ、今でもそうですけれども、事業存続のため、企業でありますとか個人事業主を支援する、これも目的となり得ます。そして、三つ目は、コロナによって経済が非常にシュリンクしていますから、日本経済全体について需要を喚起する、こういう政策目的もあり得ると思います。

 しかし、このときに余り詰めた議論はされなかったように記憶しています。政府は何と言ったか。人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという困難を克服するためということを掲げました。しかし、これは政策目的ではありません。気持ちです。気持ちを言っているだけです。なぜならば、人々が連帯して、一致団結し、見えざる敵との闘いという困難を克服するためという政策目的は、検証できませんから、数字で検証できませんから、これは政策目的ではありません。これは間違ってはいませんよ。当時の政府の気持ち、あるいは我々与野党を超えた国会議員の気持ち。しかし、これは政策目的ではありません。

 財務大臣、お聞きします。二〇二〇年の特別定額給付金の政策目的は何だったのでしょうか。

鈴木国務大臣 私も当時の国会における答弁等を振り返って拝見したところでございますが、そこには、ただいま岸本先生がお話しになりましたとおり、緊急事態宣言が全国に拡大されて、全ての国民が外出自粛を始め様々な活動を制約される中で、国民の皆さんとともに連帯してコロナ禍という難局を乗り越えていくため、家計への支援として、全国全ての国民を対象に一律に一人当たり十万円の給付を行うことになった、そのような趣旨の国会での答弁が当時あったところでございます。

岸本委員 ただいまの財務大臣の御答弁からしますと、家計の支援が主な目的であったというふうに感じました、今の御答弁であれば。いろいろ形容詞はついていましたけれども、家計の支援ということなんでしょうか。

 最初は、皆さん御記憶でしょう、原案は違いましたよね。原案は、コロナによって収入が激減した世帯に限って一世帯三十万円の支給をしましょうという原案でありました。それが途中で変わったわけであります。

 このときに、原案がなぜ駄目かという議論がありました。一つは、対象が世帯主だけですから、配偶者収入の減が反映されないじゃないか。普通、みんな共稼ぎですよ、そういうところは反映されませんね。あと、実際、収入が激減といったって、定義の問題もありますから、絞り込むのが大変です、事務作業が大変ですという議論もありました。もう一つは、世帯ですから、世帯人員が一人と八人とでは随分違いますよね、不公平じゃありませんか、こういうことだったわけで、結果として十万円を全員に配る。早く配れるというのもありました。結局、早く配れなかったんですけれども、デジタル化が遅れていて。

 そういう、私たちが思っていた以上に日本のデジタル化も遅れ、日本の社会保障のいろいろな問題点があぶり出されました。それをきちんと検証すべきだと思うんですね。

 つまり、本当に困っている、例えば、フリーランスの人たちというのが、二〇二〇年、いろいろあぶり出されましたよね。実は、フリーランスの方々というのは日本の社会保障体系の枠の中に位置づけられていないんですね。欧米ではフリーランスの人たちもちゃんと位置づけられているんです。つまり、社会保障体系の中に位置づけられているからこそプッシュ型で給付もできたということなんですけれども、日本ではその人たちの把握はできていない、社会保障の枠の中に入っていない。だから、ともかく一人十万円配ることによってフリーランスの方にも非正規の方にもそれぞれ届きますよねという議論もありましたので、私は、一概にあの段階で何が何でもよくないという気持ちはありません。

 そこでです。本当に、しかし、困っている人たちにもっと手厚い支援ができなかったのか。

 緊急支援が必要だった人はどういう人か。まず、失業した人ですよね。職を失った、コロナで。二〇二〇年の四月に就業者は百四万人減っています。就業者数の百四万人が減った、この人たち。それから、休業した人がたくさん、多かった。休業者が四百十八万人。そして、いわゆるシフト、非正規でシフトが減った、週当たりの就業時間が十四時間未満になっちゃった。もうほとんどこれは生活できるような所得は無理ですよね。この週当たりの就業時間が十四時間未満に減った人が百二十一万人。合わせて六百四十三万人の方々なんです。本当は、この六百四十三万人の方々を対象に百万円でも二百万でも手厚い手当てができていれば、何も一人十万円、めくらめっぽう配る必要はなかったのかもしれません。

 そして、一方で、事業存続のためには雇用調整助成金という制度があって、これはワークしたと思います。大変よくワークしました。今、そのお金が枯渇をしてきていて、一般会計で繰り入れなければいけないような状況になってきているわけですけれども、効果はあった。

 そしてもう一つ、需要喚起の効果があったのか、景気対策の効果があったのかということであります。

 これは、実際にいろいろなシンクタンクが推計をしております。あるいは、家計調査が、実態が出ていますので、家計調査の結果を見て、既に、どれだけ使われたかということがほぼ確定しています。

 実は、この制度をつくるときの内閣府の推計では、事業費十二・八兆円のうち、五五%が消費に回るということを内閣府は言っています。これはしようがない、四月ですから。推計ですからそういうふうに置いたんでしょう、いろいろ仮定を置いて。

 その後、三菱総研が八月、二〇年の八月ですけれども、アンケート調査から推計をすると、どうも消費は三兆円弱、三・二兆円しかない、同じく八月、第一生命経済研は、家計調査からの推計で、二・四兆から三兆しか消費に回らなかったのではないかと言っています。これもまだ推計の段階ですが、日本総研、二〇年の十二月八日、既に出た家計調査の実績を基に、消費は三兆円しかなかったと発表しています。二割です。事業費の二割しか使われなかった。どうもこれが真実のようであります。野村証券が同年十二月に、九割が貯蓄に回ったという報告書も出しています。

 内閣府が二〇二〇年四月の推計で十二・八兆円の給付額の六割近くが消費に回るということでしたが、実際は二割、ほとんどが使われない。だって、生活に困っていない人は使う必要ないですから。このことについての政策効果、財務省としてどう考えていらっしゃるのか、お聞きしたいと思います。

鈴木国務大臣 特別定額給付金につきましては、先ほど岸本先生が御指摘のとおり、当時、簡素な仕組みで迅速かつ的確に家計への支援を行うということで行われたわけでありまして、低所得者や新型コロナの影響の大きかった世帯について、その所得、消費を下支えしたと考えております。

 一方、家計の消費と貯蓄の状況を経済全体で見てみますと、二〇二〇年度は、給付金等の政策対応の結果、可処分所得が増加した一方で、外出自粛等の影響で消費が抑制されていることもありまして、結果的に貯蓄が増加したということであると考えております。

 こうしたことは、統計におきましても、可処分所得が二〇二〇年度は前年度と比べ十二・四兆円増加、消費は十八・四兆円の減少、貯蓄は三十・七兆円の増加となっていることにも反映をされていると考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 そういう冷静な分析を政府、財務省はされているわけです。一人当たり十万円使った結果がこういうことだと今おっしゃった。だとすれば、なぜ今回、子育て世帯への臨時特別給付金、十八歳以下十万円給付や住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金の政策にそれがどのように生かされているのか。

 実は、住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金というのは、正しい選択だったと思われます。これは、ちょっと細かい数字は申し上げませんけれども、例えば日本総研の推計でも、所得二百万円以下の層は十万円使っているんです。二百万円以下の層は、相当高い消費性向ですので、使っている。

 そういう意味では、今回、住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金というのは、政策効果を検証すれば私はそれなりの説得力があると思いますけれども、所得制限は今回つけられましたけれども、およそ、ほぼ九割の国民を対象に十八歳以下に十万円配るということは、先ほど財務大臣がお答えになったことからすると、これは一体何のためにするのだろうか、目的は何なのだろうか。およそ子供の支援、子育ての支援。それは一回制じゃ駄目ですよね。子育ての支援は永続性がなければ、一回だけ十万円配ったって子育て支援にはなりません。永続的にしなきゃいけない。それは教育の無償化であったり、維新の皆さんが言うように、永続的なものでなければいけない。じゃ、家計の支援なんですか。家計に支援しても、九割が貯金に回ります。

 そういう政策効果の検証を是非今後、政府の中でも、そして、まさにこの財務金融委員会で、皆さん、一緒にやろうじゃありませんか、私たちで。政府に資料を出してもらって、政府に答弁させなくて、議員間討議で、この場でいろいろな政策の効果を検証していければと思います。

 と申しますのは、実は、さっき、補正予算と決算の関係で、法人税収と消費税収が上振れたという話をさせていただいた中西先生の御質問の話ですけれども、これ、よく考えてくださいね、皆さん。補正予算を打つときは、景気対策をどんとやらなきゃいけなかったんです、あのとき。コロナで大変です、日本経済は大変です、だから史上最大の補正予算をやりましょうと言っているときに、足下で財務省主税局が、いやいや、税収はうはうは出てくるんですわ、消費税収はたくさん出ます、法人税収は出てくるんですって言えますか。言いにくいでしょう。片っ方では、景気が悪いから景気対策をやります。いや、でも、見積りすると、法人税収も消費税収も増えるんですよ。言いにくいじゃありませんか。

 だとすると、そこに政治的な何らかのプレッシャーがあって、正直に計算することを妨げる力がひょっとしたら働いているかもしれません。そうでしょう。本当に皆さん、考えてください、与野党関係なく。景気が悪いから巨額な景気対策しなきゃいけないときに、同じタイミングで、税収はこんなに増えるんですって、言えないですよ。

 そこに政治的なバイアスがかかっていくとするならば、それはこの財務金融委員会で、立法府で私たちが検証すべきなんだと思いますよ。そのために我々国会議員がいるんじゃないですか。与党も野党もありませんよ。議院内閣制の下ですから、与党の皆さんはそれはお立場があるかもしれないけれども、立法府と行政府、立法府は行政監視機能があるんです。

 その意味で、二つのことを申し上げて大変ですけれども、主税局としての検証と私たち国会議員同士のやはり検証も必要だということを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。

 先ほど中川委員からも、財政再建、財政の健全性についての非常に真っ当な議論をいただいたところでありますけれども、このコロナの対策、これは全てがワイズスペンディングだったとなかなか言えませんので、これはみんなで検証するべきだと思います。政府も検証していただきたい。まさに、三・一一の検証がこの国会の中で行われたような委員会を少し落ち着いたら開いてもいいのかもしれません。

 その上で、三・一一と申し上げましたが、東日本大震災のとき、まだ議員になっていらっしゃらない方もいらっしゃったかもしれませんが、そのときの国会は、所得税、法人税、住民税を、それぞれ、復興財源ですよ、復興財源をそれぞれの税目から付加的に徴収することで財源を捻出するということを決めたんです、歯を食いしばって。大変大きな復興予算でした。

 復興特別法人税は途中で止めたりしましたけれども、結局、二年間の事業に対して、三年間で一〇%、税額の一〇%を追加で徴収しています、法人税については。

 所得税については、税額に二・一%上乗せする、二十五年間。まさにワンジェネレーション、二十五年間、一つの世代で返しましょう。今でも、ですから、私たちは、所得税に二・一%、税額に乗せて払っています。

 住民税は、二〇一四年から十年間、ですから、まだ今でもそうです。千円、これも一人千円です。一人千円、住民税に上乗せしているんです。

 つまり、三・一一のときの国会は、私たちの世代で、だって、次から次へと何が起きるか分からないじゃないですか。また震災も来る。まさかそのとき、パンデミックは想定していなかったかもしれませんが、そのために、孫や子供にツケは回さない、震災復興のための財源は、私たちの世代で何とか歯を食いしばって、苦しいけれども賄いましょうという形で頑張ったわけであります。

 今回、コロナのための、真に国民の命と暮らしを守るための歳出増加は、私はやむを得ないと思います。しっかりと支出をすべきであります。しかし、そのための債務は特別に管理をし、将来は、落ち着いたらでいいです、みんなで議論しましょうよ、震災復興特別税のような仕組みで、孫や子供に負担を残さないようにすべきであると思います。

 実際、イギリスでは、ドイツでは、フランスでは、そのようになっています。アメリカでも、今、議会でそういう議論が行われ、法人税の増税が主ですけれども、増税によってコロナの対策費は賄おうというのが欧米のスタンダードでありますので、財務大臣の御所見を伺いたいと存じます。

岡本副大臣 現在、我が国は、新型コロナという危機のさなかにありまして、国民の命や暮らしを守るために必要な財政出動はちゅうちょなく行わなければならないという段階にあります。

 そのため、これまでにない巨額の補正予算等により新型コロナに対応してきたところでありますけれども、それにより、足下、財政状況が一層厳しさを増しているということは事実であります。この点、総理も、そして財務大臣も発言させていただきましたが、財政は国の信頼の礎でありまして、財政健全化の旗はしっかりと掲げ続けなければなりません。

 御指摘のコロナ関連予算の財源の在り方につきましては、今後、まずは新型コロナの危機を乗り越え、そして、経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいく中で検討する必要があるというふうに考えております。

岸本委員 そういう答弁をずっと、岸田総理、財務大臣も続けておられますけれども、財務省の想定問答を書かれた官僚の皆さんには、やはりもうちょっと省内で議論をしていただいて、岡本さんもお若いでしょう、もうちょっと前向きの答弁をしたいと思っていらっしゃるでしょう、分かります、もう目を見たら分かります、おっしゃらなくてもいい。ですから、もう少し前向きに是非議論していただくことをお願いして、次の質問に移りたいと思います。

 中川委員もおっしゃっていましたし、財政規律というのが本当にぐちゃぐちゃになってしまっています。何が何でも増税すればいいとか歳出カットしようと言うつもりは全くありませんし、国ですから、ある一定の幅の借金をしながらゴーイングコンサーンで転がしていくのは当たり前なんですけれども、やはり財政規律というのは大事だと思います。

 その意味で、今、建設国債と赤字国債の区別をしていますよね。何か、若い方は建設国債と赤字国債があるのが当たり前だと思っておられると思いますけれども、この建設国債と赤字国債の分類が財政規律をどうもゆがめるのではないかという危惧を私は持っています。

 実は、戦後はずっと国債を発行せずに来たんです。あるときに、どうしても国債を発行しなきゃいけなくなった。そのときに大蔵省が考えたのは、野方図に借金をしてもらったら困るから、財政規律を保つにはどうすればいいかということを考えたんだろうと思います。そこで、建設国債という概念をでっち上げたわけですね。世界で建設国債と赤字国債を分けている国なんかありません。全て借金、ザッツイットであります。それはそうです、借金なんだから。何に使おうと借金なんです。建設国債なんという概念をつくっているのは日本だけです。

 じゃ、何で建設国債という枠をつくったかというと、政治家というのは、どんどんどんどん借金して、それで予算が組めるんだったらそっちに走るに決まっていますと、今の私たちのようですね、それは当時、大蔵省の官僚は分かっていたんでしょう。建設投資をすれば、道路とか橋だったらば、何年も使うので、将来の孫や子供も利益を受けるから、借金でつないでもおかしくないですよね、実際受益するわけですからということで、建設投資だけは借金でしてもいいですよねという理屈をつくって、それ以外の、社会保障とか公務員の給料とかは絶対駄目ですよと言いたいためにつくったんです。

 だけれども、これもすごくいいかげんでして、当時、国債は十年返済です。十年で返すんです。でも、十年ではとてもじゃないけれども一遍に返し切れないと思って、国債は六十年償還なんですよ、最初の考え方、六十年で返すんです。十年たったら六分の一返して、六分の五は借り換えるんです。そして、また十年たったら六分の一返して、六分の四は借り換えるんです。そうやって、十年ずつで、六十年たつと全部返すんです。十年国債を転がしていくというふうに考えたわけです。

 じゃ、五十年から六十年の子孫の人たちもその国債を返すために税金を払わないかぬですね。大丈夫です。あなた方が使っている道路や橋は、五十年前にその国債で造ったものですから、あなたたちも使っているでしょう、だから税金を払って返してくださいということになっているんです。

 したがって、日本の公共的な資産の耐用年数に合わせただけなんです。日本の公共的な資産の耐用年数は、六十年なんです。きれいに六十年で償還できるでしょう。これ、変だと思いませんか。都合よ過ぎると思いませんか。きれい過ぎませんか。

 なぜ、日本の公共資産の耐用年数は六十年なんでしょうか。土地の耐用年数をいじっているんです。土地は耐用年数はありません。もちろん、隕石が来て地球が爆発したら耐用年数は来ますけれども、土地は耐用年数はありませんが、便宜土地の耐用年数は鉛筆をなめて百年にしたんです。百年にすると、当時の比率で橋や道路や公共資産の耐用年数をぺたぺたぺたっと加重平均して計算すると六十年になるために、土地を百年にしたんです。これ、百二十年にしたって、八十年にしたってよかったわけです。その程度のものなんです。それが建設国債。だけれども、これは歯止めになりましたよ。

 しかし、今、どうでしょう。投資的な経費であれば国債を出してもいいじゃないかという議論にすり替えられようとしていませんか。投資的経費だから借金でしてもいいというのは、これは歯止めのためにやっていたんです。借金を増やすために使っていただくのは、これはいかがなものかと思います。

 もちろん、地球環境も大事です。教育も大事です。しかし、投資的経費だから国債を出してもいいという理論じゃなくて、むしろ、本当に必要だったら、借金しても出すべきだと言うべきじゃないですか。そして、みんなで議論をする。昔々つくったそういう言い訳のようなものに僕らの頭が、私たちの頭がとらわれ過ぎている。もっと肩の力を抜いて、何というんですかね、本当の意味の財政規律のある議論をしたいと思うんですけれども。

 どうですか、大臣、もうこういう古い考え方はやめて、新しい財政規律の何か物差しを考える時期に来ているんじゃないでしょうか。財政法の改正も含めて、是非お考えをお述べいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 岸本先生に申し上げるのは釈迦に説法以前の問題で、本当に恐縮でございますが、財政法におきましては、国の歳出は租税をもって賄うという原則を取る一方で、公共事業費などの財源となる場合に限って建設公債を発行することができると規定をしております。一方、特例公債につきましては、特定年度の歳入欠陥を補うため、財政法の特例として特例公債法を国会に提出をして、国会の御了解をいただいて行っているものであります。

 国債の発行は、こうした基本的枠組みに基づいて行っているところでありまして、現在の公債の区分をなくすこと、これは適当でないと考えております。

 その上で、財政健全化、これはしっかりやっていかなければならないわけでありまして、引き続き、骨太の方針二〇二一に従いまして、経済再生と財政健全化の両立に取り組んでまいりたいと思っております。

岸本委員 今御答弁されたようなことを続けてきた結果、国の借金が一千兆を超えているということを指摘して、私の質問を終わります。

 御清聴ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に確定申告について質問します。

 昨日、国税庁は、二月十六日から始まる確定申告の期限について、コロナ感染の影響により申告等が困難な方については、四月十五日までの間、申告納税期間の延長を可能にすることを発表いたしました。

 しかし、現在の新型コロナウイルスの感染拡大の、大拡大の状況を考えれば、昨年や一昨年のように、全体の期限が延期すべきというふうに考えますが、いかがでしょうか。

 あわせて、今回の延長というのは、蔓延防止措置が取られていない都道府県の納税者も当然対象者となりますよね。その確認です。

 もう一つ、申請の際の簡易な方法というのはどういうことでしょうか。納税者本人が感染していなくても、新型コロナの影響で申告が遅れると本人が判断したならば尊重されるということでしょうか。お答えいただきたいと思います。

重藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、一律の期限延長にしなかったということに関してですが、過去二年の経験も踏まえますと、一律に期限を延長してしまうと、申告相談を早めに済ませることが可能な方も含めて、全体として申告が後ろ倒しになるということが予想されるところでございます。

 したがいまして、今回は延長の対象を新型コロナの影響を受けた方とすることで、そのような方々により丁寧に対応したいというふうに考えて、今回のような措置にしたものでございます。

 それから、蔓延防止等の措置が出ている都道府県だけなのかということですが、そこは違います。出ていない地域も含めて、全国でということでございます。

 それから、簡易な手続に関しまして、どのようなやり方なのかといった御質問がございましたが、まず、手続的には、期限後に申告が可能となった時点で、申告書の余白等に新型コロナによる延長申請と記載していただくということで、それ以上、詳細な理由の記載を求めることはしない、そういう手続にしようと思ってございます。

 それから、その場合には、御本人が例えば感染したとか、自宅待機をしているといったことのほかに、例えば、通常の業務体制が維持できないといったような理由で期限内での申告が困難な場合といった方も延長が可能というふうに考えております。

田村(貴)委員 感染急拡大で、この先まだ増える、そして重症者も増える傾向にあり、税務署の職員や相談窓口に協力していただいている税理士さんなども感染リスクが発生していくというので、これからの運用は是非柔軟にやっていただきたいというふうに要望しておきます。

 次に、格差と貧困の拡大対策について質問します。

 岸田総理は、新自由主義的な考えで生じた弊害として、格差や貧困の拡大を挙げました。これをどう是正するのかということについて質問します。

 岸田総理は、私の本会議質問に対して、市場に依存し過ぎたことで公平な分配が行われず、中間層の所得が減少し、格差や貧困が拡大するなどの弊害も明らかになったというふうに答弁をされました。

 鈴木大臣も同じ御認識でしょうか。新しい資本主義は、格差や貧困の拡大も是正すべき課題として認識されているのかどうか、お答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 岸田総理と同じ認識でございます。

 岸田総理もおっしゃっているように、市場に任せれば全てがうまくいくというような新自由主義的な考え方が、格差や貧困の拡大など様々な弊害を生んだと認識をいたしております。

 このような認識の下で、岸田政権においては、成長と分配の好循環を生み出す新しい資本主義を実現をして、田村先生の御指摘の格差や貧困の拡大を含めた社会課題を解決しながら、持続可能な経済社会を実現してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 それでは、その格差拡大の問題について伺います。

 鈴木大臣も今答弁ありましたように、格差の拡大は様々な指標で表れています。

 配付資料一の図一を御覧いただきたいと思います。

 国税庁の資料を基に、私の事務所で作成したものでありますが、申告納税者のトップの一%の所得が所得全体に占める割合を示しています。第二次安倍政権以降は割合が高まる傾向が続いていることが読み取れます。

 この時期、どのような要因があって超富裕層に所得が集中し始めたのか、財務省の見解をお伺いします。

岡本副大臣 トップ一%の納税者の方の所得が納税者全体の所得に占める割合は、申告所得税標本調査によりますと、二〇一五年分は一九・二%、二〇一九年分は二一・八%となっています。

 この増加の背景といたしましては、様々な要因がありますけれども、経済の改善を背景に、金融所得等が増えたことも要因の一つと考えております。

田村(貴)委員 明らかに、株価の高騰による金融所得が超富裕層に集中したからなんですよね。

 所得税には超過累進課税があるにもかかわらず、実質負担は、所得一億円を超えると、ピークにして下がってまいります。率が下がってまいります。一億、いわゆる一億円の壁というのが存在しています。

 資料の一、図二を御覧いただきたいと思います。

 このままでは、超富裕層の金融所得の割合が高まっていけば、また超富裕層の所得税負担割合は更に低くなっていくのではないでしょうか。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 金融所得課税の在り方についての御質問であったと思います。

 このことにつきましては、令和四年度の与党税制改正大綱におきまして、「高所得者層において、所得に占める金融所得等の割合が高いことにより、所得税負担率が低下する状況がみられるため、これを是正し、税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。その際、一般投資家が投資しやすい環境を損なわないよう十分に配慮しつつ、諸外国の制度や市場への影響も踏まえ、総合的な検討を行う。」とされているところであります。

 今後、与党の税制調査会等の場で議論が行われていくものと考えております。財務省としても、その議論に基づいて対応してまいりたいと思います。

田村(貴)委員 このまま推移していけば、このカーブは一層広がっていくわけなんですよね。

 岸田総理は、金融所得課税を強化すると自民党総裁選挙のときに打ち上げたわけです。しかし、本年度、来年度税制改正には盛り込まれませんでした。

 鈴木大臣自身は、どうお考えでしょうか。一億円の壁を是正するために、金融所得課税を強化する必要があるかどうか。どうお考えですか。大臣自身の判断です。また、大臣も、今は見送りは仕方がないと考えておられるのか。じゃ、いつやるとお考えなのか。お答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 岸田総理の下、岸田内閣での財務大臣という立場でありますから、総理の方針に従うわけでございます。

 総理が国会で答弁をされておりましたのは、金融所得課税の見直しについては、成長と分配の好循環を実現するための様々な分配政策の選択肢の一つとして挙げたものであって、分配政策については、様々な政策の順番が大切であり、令和四年度税制改正においては、賃上げに向けた税制の抜本的強化に取り組むこととしたという発言がございます。

 そしてまた、来年度改正ではこの金融所得課税の強化を行うのかという御質問でございますが、繰り返しになりますが、令和四年度の与党税制大綱を踏まえまして、今後、与党の税制調査会の場で議論が行われていくものと考えておりまして、現段階でいつ結論を得るかを申し上げることは適当でないと考えております。

田村(貴)委員 総理が初めにおっしゃったから、これは前に進むのかなと私も考えたんですよ。だけれども、結果的に、来年度もどうするか分からないと。総合的に検討すると言われながら、与党の税調で検討していくと。それはちょっとよくないですよ。

 総合的に検討するというのであれば、これは、公開されていない与党税調じゃなくて、政府税調としてちゃんと諮問すればいいんじゃないですか。政府税調で、改善できるかどうか、それを検討して結論を出していく、それが私はやり方だと思うんですけれども、なぜ与党税調にこだわるんですか、大臣。

鈴木国務大臣 現在の税制改正のプロセスにおきまして、与党の税調の議論を経て作成される大綱に基づいて行うというのが現在の決定プロセスになっておりますので、実態としてそういうことを申し上げているところであります。

田村(貴)委員 金融資産課税の強化をちゃんと行わないと、この格差と貧困の拡大は解消できない。速やかに進めていただくことを要望しておきます。

 社会保障と税制には、所得再分配機能が期待されています。

 二〇一五年、OECDは、日本カントリーノートで、日本の所得再分配のレベルは、大半のOECD諸国と比べて低いと指摘しました。とりわけ税による改善度は低くて、平成二十九年度所得再分配調査報告書、これは厚労省の報告書ですけれども、社会保障の改善度が三一%で、税による改善度はたった四・八%しかなかったわけです。OECD諸国の中でも最低の改善率です。

 本会議で私は質問をして、総理は、最高税率の引上げなどに改善しているというふうにおっしゃいました。今でも早急に是正すべき水準なんですよ。

 大臣の見解を求めます。いかがですか。

鈴木国務大臣 再分配機能につきましては、税、それから社会保障の両者が相まって発揮されることが重要であると考えております。税は一義的に財政調達機能を、そして社会保障は生活の安定向上機能を持つなど、それぞれ異なる制度趣旨や役割を持っております。税と社会保障の再分配機能の比較のみに着目して税制の在り方を論じることは困難であると考えております。

 その上で、税制については、これまでも経済社会の変化を踏まえながら累次の改正を行ってきております。例えば、所得税については、再分配機能の回復を図る観点から、平成二十五年度改正において最高税率の引上げ、それまでの四〇%を四五%に引き上げております。また、相続税につきましては、資産再分配機能を回復する観点から、平成二十五年度税制改正において基礎控除の引下げや最高税率の引上げ等の見直しを行っております。

 今後の再分配機能の在り方につきましては、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続き総合的に検討してまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 OECD諸国の中でやはり最低となっている所得再分配機能、この税による改善度も四・八%しかないというところを今も指摘しているんですけれども、何か余り危機感がないというふうな感じです。

 岸田総理は、代表質問の答弁の中で、所得の再分配は、まずしっかり成長を実現し、その果実を分配することで実現していくことが基本ですというふうに答弁されたわけなんですけれども、税制の欠陥を改善する、是正することなく成長と言っていたら、これはアベノミクスの二の舞じゃないですか。格差は拡大するだけじゃないですか。絶対そうなりますよ。

 税制の欠陥をしっかり是正していく、その立場に立っていただきたい。要求します。

 続いて、新自由主義の弊害である貧困の拡大について伺っていきます。

 自公政権下の新自由主義的な政策で、格差の拡大とともに貧困が深刻化しています。

 昨年十二月二十四日に、内閣府から子供の生活状況調査の分析報告書が公表されています。これは、子供の貧困問題について、政府による初めての全国調査とされています。

 この調査報告書によれば、等価世帯収入の水準が中央値の二分の一未満に該当する貧困世帯は全体の一二・九%、一人親世帯に限れば五〇・二%が貧困ライン以下にあります。

 そして、貧困ラインを超える子育て世代を含めて、全体の二五・三%、つまり四世帯に一世帯が、現在の暮らしの状況について、苦しい、大変苦しいと回答しているわけであります。

 貧困世帯に限ってみれば、三七%が食料を買えなかった経験があり、一割近くは食料が度々買えない状況にあります。公共料金の未払いの経験は二〇%、五人に一人は支払いができない経験をしています。

 さらに、コロナ禍で、所得が低い世帯や一人親世帯など、影響を強く受けていることも分かりました。

 この調査は、世帯全体の収入の変化や生活に必要な支出の変化、食料や衣服を買えない経験についても調査結果が記述されています。そのことについて紹介していただけますか。内閣府、来ておられますか。お願いします。

黒瀬政府参考人 お答えいたします。

 まず、調査の目的でございますけれども、令和二年に、自治体が同様の調査を実施する場合の共通調査項目というのをまとめております。今回はそれを試行的に用いて全国での調査を実施したものでございまして、子供の貧困に関する全国での実態を把握するとともに、各自治体が同様の調査を実施する場合のモデルを示すことを目的として実施したものでございます。

 この報告書では、例えば、コロナ禍前と比較して世帯全体の収入が減ったと回答した割合は、全体で三二・五%であったのに対して、収入水準が低い世帯では四七・四%、一人親世帯では三四・九%となってございます。

 また同様に、生活に必要な支出の変化ですとか、お金が足りなくて必要な食料や衣服を買えないことについても、全体と比較して、収入水準が低い世帯や一人親世帯では、コロナ禍前よりも増えたと回答した割合が多い結果となってございます。

田村(貴)委員 この報告書を読んでやはり感じるのは、貧困世帯が今もってしても救済されていない。政府の側は様々な対策をしているけれども、実際は、貧困世帯や一人親世帯の生活は救済されていないということがリアルに証明されたというふうに私は受け止めていますけれども、調査の目的もそこに問題意識があったんじゃないですか、このリアルな実態は、そういうことですよね。

黒瀬政府参考人 お答えいたします。

 調査の目的といたしましては、先ほども申し上げたとおり、共通調査項目というのをまとめて、自治体でこの調査を実施していただく、そのモデルを示すという意味と、あと、全国での実態を把握するといったようなことにあったということでございます。

 いずれにしましても、今回の調査では、先ほど御紹介した項目を含めて、収入水準が低い世帯や一人親世帯が多くの困難に直面していること、コロナ禍を受けて生活の状況等が更に厳しくなっていること、なっている可能性があることを改めて示しているものと考えております。

田村(貴)委員 大変苦しい実態があって、それが行政によって救済されていない現実があるわけです。

 この調査でもう一つ重要な点は、公的な支援制度が貧困層で活用されていないということが分かりました。

 貧困層における支援制度の活用状況を見ると、就学援助で五八%、児童扶養手当で四六%と約半数が活用しています。生活保護に至っては六%、母子世帯でも八%、生活困窮者の自立支援相談窓口や母子家庭自立支援センターの利用は一%にすぎません。余りにも少ない状況です。貧困層の収入基準は生活保護基準と均衡しているにもかかわらず、貧困層の約九割の人が利用していないと回答しています。これは私もショックでした。

 つまり、支援の必要があるにもかかわらず、低所得者世帯で生活保護等を利用していない可能性があるということでよろしいんですね。

黒瀬政府参考人 お答えいたします。

 生活保護を受給できる貧困世帯においても利用されていない可能性を示しているのではないかという御質問でございますが、この点に関しまして、調査では、収入水準が低い世帯に生活保護を利用したことがない理由も尋ねてございます。それによりますと、利用はできるが特に利用したいと思わなかったから、利用したいが今までこの支援制度を知らなかったから、利用したいが手続が分からなかったり利用しにくいからの三つを合わせて約五%という状況となっております。その一方、約八割の方が、制度の対象外、収入等の条件を満たさないと思うからと答えているところでございます。

 ただ、制度の対象外だと思うからと回答した方を含め、正しく制度が理解をされて、支援を必要とする人が支援を受けられるようにすることが大切でございますので、引き続き制度の周知を図ることが必要と考えてございます。

 なお、子供や家庭が置かれている状況は地域によっても様々と考えられますので、各地方公共団体においても、本調査の調査項目や分析結果を参考に調査を行っていただくことを想定してございまして、そこでの結果も踏まえ、地域の実情を踏まえた取組を進めていただくことも重要と考えております。

田村(貴)委員 私が聞きたいのは、こういう聞き取り調査をして、政府としてどういうふうに捉えているのかということをさっきから聞いているわけです。先ほども言いましたけれども、貧困層の収入基準は生活保護基準と均衡しているにもかかわらず、貧困層の約九割の人が利用していない。生活保護基準、要保護基準、それに近い人が利用していない、この現実がある。どう受け止めているんですか、救済されていないじゃないですか、そこを聞いているんですよ。回答の、アンサーのパーセンテージを私は聞いているわけじゃないんです。

 しっかり、こういういい調査をしたんだったら、初めて内閣府として貧困の調査をしたんだったら、この結果から導き出される問題点は何なのか、どこを正していかなければならないのか、そういう視点に立っていただきたいと思います。

 支援の必要性がある低所得世帯でも、生活保護の壁は大変厚いということであります。

 配付資料の二の図三を御覧いただきたいと思います。

 生活保護について、一九九六年度の受給世帯の月平均は六十万世帯ほどが、二〇一四年度には百六十万世帯に達しています。その後は横ばいの状況です。

 一方、母子家庭は、二〇一〇年前半にピークを迎えて、減少傾向にあります。コロナ禍でも、二〇二〇年一月は八万八百三十世帯だったのが、二〇二一年十月には七万一千世帯と、約一万、一割以上減っています。コロナ禍の中で非正規雇用の女性の雇い止めが激増するなど、困窮しているシングルマザーのお母さんは非常に多いはずなのに、なぜ母子世帯の生活保護受給件数は減っているのでしょうか。

本多政府参考人 生活保護受給世帯のうち母子世帯の数につきましては、御指摘のとおり、近年、減少傾向で推移をしておりまして、令和三年十一月は対前年同月比で五・六%減少の七万一千世帯となっております。

 この母子世帯の生活保護受給世帯数の動向に影響を与える要因につきましては、大変様々なものがあると考えられますけれども、私どもの把握しておりますことといたしましては、要因の一つとして、国内の母子世帯全体が減少していることの影響もあると考えられます。

 具体的には、国勢調査によりますと、子の年齢が二十歳未満である母子世帯の数は、平成二十七年から令和二年の五年間で一四・三%減少しているところでございます。

田村(貴)委員 いやいや、ちゃんと数字を見ていったら出てくるんだけれども、母子世帯総数に占める生活保護受給世帯の割合も減少しているんですよ。ピーク時の二〇一二年は一六・二%、二〇二〇年度は一一・七%、割合で減少しているのは事実なんですよ。

 それで、お伺いしたいんですけれども、立教大学の湯沢直美教授は、二〇二〇年七月一日から一年間、一千八百十六名のシングルマザーにコロナの影響による就労・生活調査を行いました。生活保護の受給経験がない人は九割。過去に役所の職員に、生保に頼るのは甘いときつく言われた、差別される、病気でも働けと言われた、残り六万円を切ったら相談に来てくださいと言われた声があり、申請すべき状況でも、窓口の経験がトラウマになり申請を諦めている可能性があると。

 先ほど内閣府の答弁の中で、保護基準の収入に及ばないのじゃないかみたいな話があったんですけれども、現実はもっと厳しいんですよ。私は、かつて北九州で市会議員をやっていて、相談の大半は困窮者、生活保護の申請でありました。この対応というのは痛いほどよく分かります。これを改善しなければなりません。

 就労率の極めて高いシングルマザーは非正規雇用が多くて、そして、コロナや解雇、休職、契約更新の打切りをされても、支援サービスは受けずに、求職活動に邁進して日々頑張っていることを是非厚労省は受け止めていただきたいと思います。

 中でも、生保の申請で最大の障壁と言われているのは、この間、我が党もずっと指摘していますけれども、扶養照会であります。

 コロナ禍で厚労省はたくさんの緩和をする通知を出してきましたけれども、二〇二一年三月三十一日付の事務連絡、扶養照会を要保護者が拒んでいる場合は、扶養照会をしなくてもよい場合に当たらないか、特に丁寧に聞き取りを行うべきとしています。

 しかし、現実はそうなっていません。例えば、私の北九州市なんですけれども、扶養照会の際に、親族の個人情報や収入、負債などの詳細な報告を文書で求めます。源泉徴収票や給与明細書、住宅ローンの負債内容とローン返済予定まで添付するように求めています。

 そこで、市民の方が、本人の承諾なしに扶養照会をしないでほしい、同意書から扶養の状況項目を削除してほしいと議会に陳情しましたけれども、市としては、厚労省の、この同意書の国のひな形に従っているというふうにしているわけであります。

 質問します。

 国のこの同意書のひな形、配付資料三に示しているんですけれども、ここに書いてある「扶養義務者の扶養の状況」というのは、扶養照会の事務を意味しているんでしょうか。扶養照会の同意を取るものではないのかどうか、その点について、しかと答えていただきたいと思います。

本多政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のありました同意書につきましては、こちらは厚生労働省が様式を定めているものでございます。

 この同意書におきましては、保護を申請した方本人と、あと、その世帯員の収入及び資産の状況等に係る調査を行うことについての同意を求めているものでございまして、扶養照会を行うことの同意を求めているものではございません。

 扶養照会を行うに当たっての手続といたしましては、まず、要保護者等からの聞き取りによりまして扶養の可能性を確認することとしておりまして、この結果、扶養義務の履行が期待できないと判断される場合には、扶養照会を行わなくてよい取扱いとしているところでございます。

 また、その要保護者が扶養照会を拒んでいる場合におきましては、その理由について特に丁寧に聞き取りを行い、照会の対象となる扶養義務者が扶養義務履行が期待できない者に該当するかどうかという観点から検討を行うことを求めておりまして、こうした対応について改めて周知徹底してまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 今の答弁を、是非、全国の福祉事務所、そして自治体に徹底していただきたいというふうに思います。

 まずは相談ですよね。そこでやはり親身になって状況を聞く。そして、金融資産の調査の同意書は、これはちゃんと説明する。だけれども、扶養の照会については、このことをもって家族関係が壊れてしまう。そこでハードルがあるわけなんですよ、特に今の時代は。そこに留意して、ちゃんと、この趣旨、この同意書の扶養義務のところは、これは私どもは削除したらいいと思うんです。削除してください。そのように検討してください。

 最後に、大臣、子供の生活状況の調査分析報告書がまとめられて、政府として子育て世帯の貧困を解決する重要なエビデンス、内閣府から示されました。格差と貧困の拡大の是正に是非とも活用すべきだと思います。財務大臣の御認識、感想を述べていただきたいと思います。

鈴木国務大臣 市場に任せれば全てがうまくいくという新自由主義的な考え方が、様々な弊害を生んだと認識をいたしております。

 今後、新しい資本主義を実現する中で、御指摘の子育て世帯の貧困問題を含めた社会課題を解決しながら、持続可能な経済社会を実現していきたいと考えております。

田村(貴)委員 格差と貧困の拡大を止めて、そして、この是正に向けて省庁を挙げて取り組んでいただくことを強く要望して、今日の質問を終わります。

薗浦委員長 以上で、大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

薗浦委員長 次に、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣鈴木俊一君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木国務大臣 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府は、成長と分配の好循環の実現に向けた積極的な賃上げ等の促進、カーボンニュートラルの実現等の観点から、国税に関し、所要の改正を一体として行うため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして、御説明申し上げます。

 第一に、多様なステークホルダーに配慮した経営と積極的な賃上げ等を促す観点からの賃上げに係る税制措置の拡充等及びオープンイノベーション促進税制の拡充等を行うこととしております。

 第二に、カーボンニュートラルを実現する等の観点から、住宅ローン控除制度の見直しを行うこととしております。

 このほか、住宅用家屋の所有権の保存登記等に対する登録免許税の特例等について、その適用期限の延長や整理合理化等を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

薗浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十三分散会


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