衆議院

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第8号 令和4年3月8日(火曜日)

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令和四年三月八日(火曜日)

    午後三時二十分開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 稲富 修二君 理事 末松 義規君

   理事 吉田 豊史君 理事 角田 秀穂君

      井上 貴博君    石井  拓君

      石原 正敬君    門山 宏哲君

      川崎ひでと君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      杉田 水脈君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    中川 貴元君

      平沼正二郎君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    八木 哲也君

      山口  晋君    山田 美樹君

      山本 左近君    若林 健太君

      鷲尾英一郎君    荒井  優君

      江田 憲司君    坂本祐之輔君

      櫻井  周君    下条 みつ君

      野田 佳彦君    伴野  豊君

      藤岡 隆雄君    赤木 正幸君

      沢田  良君    藤巻 健太君

      中川 宏昌君    吉田久美子君

      岸本 周平君    田村 貴昭君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   外務副大臣        小田原 潔君

   財務副大臣        岡本 三成君

   経済産業副大臣      細田 健一君

   防衛副大臣        鬼木  誠君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   経済産業大臣政務官    岩田 和親君

   会計検査院事務総局第二局長            山口  亨君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   原  宏彰君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    阪田  渉君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    三村  淳君

   政府参考人

   (農林水産省農産局農産政策部長)         松本  平君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           矢作 友良君

   政府参考人

   (特許庁総務部長)    小見山康二君

   政府参考人

   (株式会社国際協力銀行代表取締役総裁)      前田 匡史君

   参考人

   (独立行政法人国際協力機構理事)         山中 晋一君

   参考人

   (株式会社海外交通・都市開発事業支援機構代表取締役社長)         武貞 達彦君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月八日

 辞任         補欠選任

  塩崎 彰久君     川崎ひでと君

  八木 哲也君     山本 左近君

  山田 美樹君     杉田 水脈君

  鷲尾英一郎君     平沼正二郎君

  江田 憲司君     坂本祐之輔君

  櫻井  周君     藤岡 隆雄君

  中川 正春君     荒井  優君

  竹内  譲君     吉田久美子君

同日

 辞任         補欠選任

  川崎ひでと君     山口  晋君

  杉田 水脈君     山田 美樹君

  平沼正二郎君     鷲尾英一郎君

  山本 左近君     八木 哲也君

  荒井  優君     中川 正春君

  坂本祐之輔君     江田 憲司君

  藤岡 隆雄君     櫻井  周君

  吉田久美子君     竹内  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  山口  晋君     塩崎 彰久君

    ―――――――――――――

三月八日

 国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として独立行政法人国際協力機構理事山中晋一君、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構代表取締役社長武貞達彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府政策統括官原宏彰君、財務省関税局長阪田渉君、国際局長三村淳君、農林水産省農産局農産政策部長松本平君、経済産業省大臣官房審議官矢作友良君、特許庁総務部長小見山康二君、株式会社国際協力銀行代表取締役総裁前田匡史君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、会計検査院事務総局第二局長山口亨君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。石井拓君。

石井(拓)委員 自由民主党の石井拓です。

 今回、関税定率法等の一部を改正する法律案についての審議ということですけれども、我が国の関税制度は私たちの暮らしに大きな関わりがあるものと思います。私からは、このうちの税関制度についてお尋ねいたします。

 特に、物の輸入という観点、水際対策を実行する税関の役割というのは大変重要なものであります。最近では、インターネットなどの普及や新型コロナウイルス感染症の流行により、海外とインターネットを通じて取引する越境電子商取引が非常に増えていると聞きます。海外からのお取り寄せということでございますが、こうした越境電子商取引の拡大に伴い、航空貨物の輸入が急増しているとのことです。

 今回の改正法案の趣旨でも、税関における水際取締りの強化とうたってありますが、税関としてどのような対応をしていくのか、お尋ねいたします。お願いいたします。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 航空貨物につきましては、越境電子商取引の拡大や輸入貨物の小口化の進展に伴い、令和二年には六千五百六十万件、令和三年には八千七百二十九万件と、急速に輸入許可件数が増加しているところでございます。

 これに対しまして、税関においては、不正薬物の密輸入防止などの厳格な水際取締りと円滑な通関の両立を図るという観点から、必要な事前情報を入手し、貨物の審査、検査において事前情報を活用すること、それから、貨物の審査、検査を行う職員を増員すること、さらに、検査場における貨物の検査工程をオートメーション化するなど検査機器を配備すること、そして、航空貨物を取り扱う通関業者などの事業者と連携を図ることなど、効果的、効率的な取締りに取り組んでいるところでございます。

 また、深夜、早朝などの通関検査については、職員にとって過度な負担とならないよう、応援職員の派遣、メンタルヘルス対策、仮眠時間や連続した休日を確保できるシフト勤務の設定など、職員の健康管理に留意しつつ、必要な体制整備を行っているところでございます。

 今後も、税関業務を取り巻く環境の変化に応じて必要な対応を講じていくとともに、適正な人員配置に努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

石井(拓)委員 税関業務、大変いろいろな工程があって大変な業務だと思っておりますし、水際対策であります。一つも漏れのないようにやっていかなきゃならないというのが大原則でございます。

 そして、税関に関しても、今回の法改正の中で、いろいろな形で、現状に合わせた形になってきていると私は把握させていただいておるつもりです。

 越境電子商取引の増加という対応については、昨年成立した改正商標法がありますが、これを受けた今回の改正案の中で、模倣品の水際取締りの強化は重要な改正だと思っております。

 一方で、新たに、海外の事業者が郵送などでいわゆる個人宛てに送ってきた模倣品が水際取締りの対象になることについて、消費者への周知が相当重要になるかと思います。例えば、模倣品であることを知らずに海外の事業者から輸入した場合であっても、認定手続において侵害物であるとそれが認定されれば、税関において当該物品を没収されることとなります。こうしたことについてはしっかりと周知しておく必要があると考えます。

 そこで、お聞きします。

 今回の関税定率法等改正法案のベースとなる昨年改正された商標法などの内容やそもそもの趣旨などについて改めて確認したいと思いますが、いかがでしょうか。加えまして、消費者に対してどのような広報活動をしていくのか、対象者が個人であることが多いと思いますが、これについても教えてください。お願いします。

小見山政府参考人 お答えいたします。

 昨年五月に公布した改正商標法でございますが、近年の越境電子商取引の発達を受けて、海外事業者が模倣品を郵便などにより日本国内に持ち込む行為について商標法などの侵害行為と位置づけ、このような場合には、国内の消費者が個人利用目的で輸入する場合であっても税関において没収できるというように、模倣品の輸入規制を強化したものでございます。

 その上で、御指摘の改正商標法の概要についてでございますが、まず、関係事業者などに対して改正法の説明会を開催したり、説明会の動画、改正法の解説を特許庁のホームページに掲載したりしております。また、解説書の出版などもいたして、周知しているところでございます。改正法の施行までに、特許庁といたしましても、財務省さんとともに、ツイッターなどの媒体を活用しつつ、消費者に対する効果的な注意喚起に努めてまいりたいと考えております。

 また、御指摘の、模倣品を輸入した善意の消費者が不測の損失を被らないようにするためどうするかということでございますが、これも、事業者に対して、まず消費者への本制度の内容の周知、また、模倣品対策の徹底及び善意の消費者に対する補償制度の充実などを促していきたい、このように考えております。

石井(拓)委員 たくさんの取組内容を説明いただきましたけれども、一つ一つ確実に行っていただきたいと思います。国民生活が混乱しないように、事前の広報活動をしっかりと行っていただきたい。そして、先ほど答弁にもございましたが、善意の購入者がだまされない仕組みづくりについても積極的に取り組んでいただきたいようにお願いいたします。

 さて、水際での取締りという意味では、覚醒剤などの不正薬物の取締りについても税関の大きな役割だと思っております。私も、地元のライオンズクラブのメンバーとして、不正薬物の乱用禁止を中学校へ訪問して生徒の前で説明をしたり、注意喚起をしたことがあります。大麻や覚醒剤など禁止薬物は海外から輸入によりもたらされます。

 そこで、お聞きいたします。

 不正薬物に関する摘発実績や押収量などの状況について教えてください。また、税関としてどのような対策を行っているのか教えてください。お願いいたします。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 不正薬物についてのお尋ねでございました。

 令和三年の税関による不正薬物全体の押収量は千百三十八キログラムと、六年連続で一トンを超えており、このうち、覚醒剤にあっては九百十二キログラムと一トンに迫るなど、依然として日本への不正薬物の流入は極めて深刻な状況となっております。

 こうした状況に対応するため、税関では、所要の人員確保に加え、情報や取締り検査機器の活用、関係機関との連携が重要だと考えております。

 具体的に申し上げますと、まず情報でございますが、国内外の関係機関との情報交換や乗客予約記録、これはPNR、パッセンジャー・ネーム・レコードと申しますが、などの情報を活用していくこと。その次に機器でございますが、エックス線検査装置、不正薬物・爆発物探知装置、これはTDSと私ども呼んでおりますけれども、トレース・ディテクション・システム、こうした最新の取締り検査機器の活用。最後に連携でございますが、警察や海上保安庁などの関係機関との合同取締りなどの対策を講じてございます。

 今後とも、不正薬物などの密輸防止のため、水際対策に万全を期してまいりたいと思います。

石井(拓)委員 ありがとうございます。

 しっかりと取締りしていただきたいと思います。日本の安全、安心のため、引き続きしっかりと取り組んでいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 あわせて、とりわけ昨年においては、東京オリンピック・パラリンピック競技大会が無事に終了しました。水際でのテロ対策という観点からも、税関の貢献は大きかったものと考えております。改めて感謝を申し上げたいと思います。

 先ほど、インターネットなどの普及や新型コロナウイルス感染症の流行により、海外との、インターネットを通じて取引する越境電子商取引が非常に増えていると申し上げましたが、だからこそ税関職員数をもっと増やして体制強化を図っていく必要があると思っております。

 例えば、輸入貨物の許可件数としては、二〇一八年三千九百七十四万件、二〇一九年四千六百四十万件で前年比一七%増、それが、二〇二〇年も、二〇二〇年六千九百六十六万件となり、前年比五〇%増となっております。今年度も同じか更に増加しているかどうかは調べていません、分かりませんが、相当数伸びている、伸び続けていると思っております。

 一方、新型コロナウイルス感染症の流行によって、訪日客数は、二〇一九年の三千百八十八万人から、二〇二〇年四百十二万人、二〇二一年二十五万人と激減しているので、職員さんたちは輸入貨物の増加に合わせて異動して対応しているとも聞いております。

 しかし、新型コロナウイルス感染症が落ち着き、訪日客数が回復し、再び増加傾向に転じた場合、明らかに税関職員の業務量は増加し、人員不足となることは明らかではないでしょうか。今年度末における税関職員数は約一万人と聞いておりますが、相当数、人員を増やさないと、不正輸入、犯罪、テロ、あらゆる水際対策に対応できないのではないかと考えます。

 そこで、大臣にお聞きしますが、税関の体制強化について見解をお聞きします。いかがでしょうか。お願いいたします。

鈴木国務大臣 税関業務を取り巻く環境につきましては、電子商取引の拡大に伴う輸入貨物の急増、不正薬物押収量の六年連続一トン超え、国際的なテロの脅威の継続など、多くの課題に直面をしているところでございます。

 こうした課題に対応するため、税関においては、より一層効率的、効果的に業務運営を進めていくこと、人員の適正配置を行いつつ、更なる人員確保を図ることの両面が必要であると考えております。

 人員確保の観点としましては、税関の定員については、令和四年度予算において八年連続で三桁の純増となる百三人の純増を計上し、初めて一万人を超えたところでございます。

 今後とも、業務運営の一層の効率化を図りつつ、必要な税関の体制整備に最大限努力をしてまいりたいと思っております。

石井(拓)委員 先ほど大臣から、最大限の対応、努力をされるという答弁もいただきました。税関の業務においては、専門知識や技術、そういったものも伴わなければならないと思います。十分な教育訓練期間が必要になることも予測されますが、是非早めの対応をお願いしたいと思います。

 そのようなお願いをして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、石原正敬君。

石原(正)委員 お疲れさまでございます。自由民主党の石原正敬です。

 本日は、財務金融委員会での質問の機会をいただきまして、関係各位に御礼を申し上げます。

 質問に入る前に、ロシアによるウクライナへの侵略に際し、お亡くなりになった皆さん方の御冥福と、様々な困難に遭われている方々にお見舞いを申し上げます。私自身も、日本政府が国際社会と連携して、一日も早くウクライナからロシアが撤退をすることを望むものであります。

 さて、本日は、関税定率法等の一部を改正する法律案に対する質疑ということですが、中でも、先ほど我が自民党の石井拓委員も質問されました、関税法に関わる質問をさせていただきます。

 その前に、質問とは少しかけ離れるかも分かりませんが、税関は今年、百五十周年の節目を迎えるということでございまして、様々な記念事業を展開されています。先ほどの石井委員からの質問にもありましたが、この際ですので、税関の業務や取組について、国民に対して大いにPRを、アピールをしていただければと思います。

 また、こういった質問というのは大変緊張するものなんですけれども、今日はまた違った意味で私は緊張をしております。といいますのも、傍聴席に我が地元三重県から、三重県議会自民党県議団の団長である中森博文先生、三重県議会議長である青木謙順先生、そして前々三重県議会議長である中嶋年規先生、お三方がお見えになっておりまして、実は、このお三方とは私、県議会初当選同期組でございまして、そういった方々に見守られてやる質問というのは大変緊張するものでございますが、しっかりと質問してまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。

 今回の関税法の改正は、昨年改正された商標法及び意匠法を受けてのことだと認識しております。特に、これまでは国内の輸入者だけに着眼していた措置を、新たに輸出者にも取締りの対象を広げたことが特筆すべき点だということです。

 ここ最近の法改正については後ほど詳しくお尋ねしますけれども、その前に、そもそも、知的財産の保護に関する税関の役割について、歴史的な経緯とかこれまでの取組等々についてお尋ねします。よろしくお願いします。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 お答えに入ります前に、まず、百五十周年にしっかりPRとのこと、どうもありがとうございます。しっかりPRしてまいりたいと思います。

 さて、知的財産に関する取締りの歴史的経緯についてのお尋ねをいただきました。

 税関における知的財産侵害物品の水際取締りは、明治三十年、一八九七年でございますが、に制定された旧関税定率法において、輸入禁制品として特許権等に関する法律に違反した物品が規定され、明治三十二年、一八九九年に同法が施行されたところから始まったものでございます。

 制度導入以降、税関は長期にわたり、事業者によって輸入される模倣品などの水際取締りを通して、知的財産の保護に貢献してまいりました。また、取締り対象とする知的財産権を拡大するなど、知的財産侵害物品の水際取締りに係る制度も拡充してきたものでございます。

 足下の令和三年、二〇二一年でございますが、税関における知的財産侵害物品の輸入差止め件数が二万八千二百七十件となり、差止め実績の公表を開始した昭和六十二年、一九八七年以降で五番目に多くなってございます。また、差し止めた物品が正規品であった場合の推計価額は約百六十四億円となります。

 引き続き、税関としても、水際での知的財産侵害物品の取締りを通じて、知的財産の保護に貢献してまいりたいと考えております。よろしくお願いします。

石原(正)委員 大変歴史があるんだというふうにして感じました。そしてまた、ここ最近、件数も徐々に増加傾向にあるということでございます。

 そういったことを踏まえまして、今回の法改正がなされたということであろうかと思いますが、先ほど御答弁にもありましたように、知的財産侵害物品の輸入差止め状況について触れますと、令和三年、昨年二万八千七百二十件、点数でいいますと八十一万九千四百十一点、これは、一日平均でいいますと、七十七件、そしてまた二千二百四十四点を差し止めているということになります。また、輸入形態で申し上げますと、点数ベースでありますけれども、一般貨物で五六・九%、そして郵便物で四三・一%という差止め件数の状況でございます。

 この状況下で、具体的には、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為に対する必要な措置を定めようということでございます。

 この模倣品の輸入に関しましては、これまでは、持込みや郵送などにかかわらず、輸入者のみが取締りの対象になっており、しかも、この輸入者の事業性、個人か事業者かという、つまり事業性が問われていました。今回、新たに輸出者までに取締りの対象を拡大した背景と、これに伴う税関の職務執行に関して予想される課題などについての認識をお聞かせください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 越境電子商取引の進展に伴い、今まさに先生からも御指摘がありましたが、海外の事業者が国際郵便などを利用して、国内の個人に直接模倣品を送付するという事例が増えてございます。

 このような取引形態によって個人使用目的として輸入される模倣品は、現行法においては税関での取締りの対象となっておらず、結果として、越境電子商取引の進展に伴って、国内に流入する模倣品が増えているということになります。こうした中、模倣品流入に対する規制を強化するため、昨年五月に商標法及び意匠法が改正されたという背景がございます。

 今般の関税法改正は、改正商標法及び意匠法を受けて、個人使用目的として輸入される模倣品であっても、海外の事業者から送付されたものであれば、税関による取締りの対象とするために行うものでございます。

 取締り対象が追加されることに伴い、税関においては、模倣品を送付した海外の者に事業性があるか否かについて適正に判断すること、また、取締り件数の増加が見込まれることから、適切な執行体制を構築すること、この二つが特に必要な課題になってくると認識しております。よろしくお願いします。

石原(正)委員 まさしく今おっしゃった二点のところをしっかりと強調して、これから組織体制を構築していただければというふうにして思っております。

 さて、次なんですけれども、これまでも、輸入者の事業性の有無によって模倣品の没収や輸入者への罰則があったわけですが、先ほどの質問にも取り上げたこの事業性の有無、ここが非常に大きなポイントになる。といいますのも、やはり、こういった判定において厳格かつ公正な対応が求められるというふうにして私が考えているわけでございます。

 今回の法改正、海外にいる輸出者の事業性を認定しなければならないということで、大変難しい作業あるいは認定作業があるのではないかなと想像するわけなんですけれども、具体的に、例えば、輸出者の事業性の有無の該当リストなどを作成するのか、あるいは個人を含めた事業者の行動履歴などを追跡するのか、具体的にどういった手法をもってこの事業性の有無の確認作業をするのか、お聞かせください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 商標権又は意匠権を侵害する物品に該当するか否かを認定するための手続を行う際に、税関が貨物の仕出し人に事業性があるか否かを判断するために必要な書類の提出を輸入者に対して求めることができる規定、これを設けることとさせていただいております。

 この規定に基づいて、個々の輸入者に対して、例えば、貨物を入手した経緯や目的を示す書類、例えて言えば貨物の仕出し人とやり取りしたメールや手紙など、それから、貨物の仕出し人の氏名又は名称、住所及び職業又は事業が確認できる書類、そして、その他参考となる書類の提出を求めることを今検討してございます。

 議員御指摘のありました、例えば輸入者のリストを作ったり、あるいは行動履歴を追跡したり等々、具体的な調査方法については、取締りの手法論とも関係してまいりますので、ちょっとお答えは差し控えさせていただきますけれども、先ほど申し上げた輸入者から提出された書類の内容とともに、税関の調査により把握した事実などを総合的に勘案して、仕出し人の事業性の有無について個々に判断することとしております。

 税関において、今般の改正の実効性を確保し、知的財産侵害物品の適切な取締りを実施するために万全を期してまいりたいと思います。

石原(正)委員 大変複雑な、そしてまた、何といいますか、新たに業務が増えるわけですので、適正に執行していくためにはやはり体制の充実ということは重要だというふうにして思います。

 この件、ここ最近、国境を越えた人、物、情報の往来が大きく拡大してきたということが最大の原因だというふうにして思います。もちろん、冒頭申し上げましたように、今回、百五十年を迎える税関は、当時から日々社会の情勢に応じて、国際情勢に応じて自分たちの対応を変えてきたわけでございますが、現在の税関の定員は九千九百七十一名、一万名弱、先ほど大臣からもお答えいただきましたが、令和四年は一万名を超えてくるということで、増強がなされたというふうにしては見えるわけですけれども、ただ、業務量の増え方に対しては、まだまだ人の手当てというのはしていかなくちゃならぬだろうというふうにしても思うところでございます。

 令和二年六月にはスマート税関構想二〇二〇ということを発表されまして、諸般の国際情勢に応じて、税関のこれからの在り方、例えば、税関手続のデジタル化、あるいは越境電子商取引への対応、あるいは密輸などに対することへの対応など、本当に多岐にわたる対応をやっていただいておりますが、やはりそこには、人の問題あるいは先端機器の導入の問題など、税関組織体制や装備体制の強化が必要だと思われます。どのような認識をお持ちか、お聞かせください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、税関業務を取り巻く環境については、輸入貨物の急増、不正薬物押収量、引き続き高止まりしていること等々、多くの課題に直面しているところでございます。そのため、まさに御指摘いただいたように、一層の、必要な予算の確保あるいは人員の確保ということも大事になってまいります。

 議員御指摘いただいたスマート税関構想でございますが、これは、そういう観点も踏まえて、税関業務の一層の高度化、効率化というのを図るために、一昨年六月に取りまとめ、取組を進めたところでございます。

 その中でも、例えば進捗状況を御紹介申し上げますと、例えば、ビッグデータを活用したAIモデルを開発し、輸入事後調査における立入り先の選定に活用し、これに選定業務の一層の効率化を期待しているところでございますとか、あるいは国際郵便物の内容物、これを識別できるようなAIを作成し、この四月から活用する予定にしている、その結果、一層の効率化、作業負担の軽減が期待される。こうした取組もスマート税関構想に基づいて進めております。

 新型コロナウイルス感染症を契機に世界全体の経済構造が大きく変化していること、これは関税・外国為替等審議会からも指摘されておりまして、こうした税関を取り巻く環境の変化に伴い、一層多様化、複雑化する税関業務に対応するため、様々な業界との意見交換などを活発に行いつつも、今後とも求められる必要な対応について検討を進めてまいりたいと思います。今後とも、業務の一層の高度化、効率化に向けてしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

石原(正)委員 この改正法案につきましては私は了とするところでございますけれども、なお一層、更に税関業務、適宜適切に対応していただきますようお願い申し上げ、質問を終結いたします。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・無所属の櫻井周です。

 本日は三月八日、国際女性デーということで、ミモザの花をちょっと胸に挿して質問をさせていただきます。

 本日は、まず、関税定率法等の改正ということで質問させていただきます。

 先ほど石原委員からも質問がございましたが、関税法の六十九条の十一について改正が今回された。商標法の改正が昨年度行われておりますが、これに合わせる形での改正というふうに承知をしております。

 こちらですと、ただ、元々九号に、商標権の侵害物品は輸入しちゃいけませんということが書いてあったわけですが、わざわざ九号の二を設けて、新たな号を追加するということなんですが、これは、後ろの百九条の罰則のところで、九号をそのままに置いておくと罰則がかかる、だから、罰則を外すためにこうした改正が行われているということも承知をしております。

 ただ、そうすると、先ほど石原委員からも質問がありましたとおり、なかなかこれは取締りをするのが大変なんではなかろうか。個人輸入の、個人で購入したものをチェックをしていく。小さいものがたくさんあるということで、現場は大変だろう。しかも、立証責任を負うのは、結局のところ、税関の側が立証責任を負うということになるんだというふうにも理解をさせていただいておるところでございますが、取締りの実効性を確保していくということ、これはどうやって取り組んでいかれるでしょうか。大臣、ちょっとお答えいただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 今般の関税法改正によりまして、従来は税関による取締り対象となっていなかった個人使用目的で輸入される模倣品であっても、当該模倣品を送付した者が海外の事業者である場合には、税関による取締りの対象となります。

 税関におきましては、実効性を確保する観点から、輸入貨物が商標権又は意匠権を侵害する物品に該当するか否かを認定するための手続を行う際に、税関が輸入者に対して、海外から貨物を送付した者が事業者であるか否かを判断するために必要な書類の提出を求めることができる規定を設けることとしております。

 その上で、税関におきまして、輸入者や権利者から提出された書類の内容、税関の調査により把握した事実、これらを総合的に勘案して、侵害の有無を認定することとしております。

 税関においてこうした取締りを効果的、効率的に実施をして、今般の改正の実効性を確保するために万全を期してまいりたいと思っております。

櫻井委員 大臣、御答弁いただいた中で、必要書類を、輸入する人、国内にいる輸入者、輸入者というのは購入者に書類の提出を求めていくということではありますけれども、ただ、これは先ほど私申し上げたとおり、罰則が外れている状態ですから、知らぬ顔をされてしまうと、それ以上追いかけようがないという部分もあるのではないのか。結局、関税の現場の職員の方々にいろいろ手段が与えられていない中で、業務負担が増えていくのではないのか。

 一方で、実効性が上がらなければ不公平感というのも出てくるということで、今回、こういう法改正でやるということ、このことについて反対するものではございませんが、しかし、今後やっていって、やはりなかなかうまくいかないというようなことがあれば、更なる法改正もお願いしていきたいというふうに思いますし、何よりも、現場で働いていらっしゃる方々がしっかりと仕事できるように、こうした配慮もお願いしたいというふうに思います。

 続いて、こうしたことも含めまして、税関職員の執行体制の拡充はやはり必要だろうというふうにも思います。

 先ほど石井委員からも同様の質問がございましたけれども、グローバル化の進展に伴い、物流が増大している。貨物も増大している。商標法改正に伴う新たな業務も今般追加をされているというところです。

 他方で、違法薬物も増大している。三年ぐらい前が一回ピークになって、そこからちょっと下がってきているところはございますが、しかし、違法薬物の取締りとして、国内に流入した後では、国内でいろいろな捜査をしても、一件当たりの押収量というのはそんなに多くない。グラム単位で押収するようなケースが多いわけです。ところが、税関で取り締まると、それこそ、キログラム単位で押収する場合もある。桁が全く違うわけですよね。やはり、税関での取締りというのが極めて重要だというふうにも認識をしております。

 また、密輸も増加をしている。それこそ、金の延べ棒を輸入したりというようなこともあったりする。

 行政というのは、必ずしも費用対効果で測るべきものではございませんが、ただ、現状、行財政改革に努めているということを考えますと、少しぐらいはそういったことも考えていかなければいけないというふうに思っております。

 こうした観点で税関の職員のことについて考えたときに、税関職員を増員すれば人件費はその分かかるわけではございますが、しかし、それをはるかに上回る取締り効果というのもあろうかと思います。実際に押収すれば、その分も入ってくるわけですから。そうしたことを考えたときに、やはり税関職員については、増やしていくということは別に行財政改革に逆行するわけでは決してないというふうにも言えると思います。

 さらに、新型コロナウイルス感染症、現状、蔓延がまだ収まっていない中で、本当に現場では苦労しながら、感染症対策を講じながら、もう一手間、二手間かけながら、職務を遂行されている、こういった現状もあろうかと思います。

 以上、るる申し上げましたが、こうしたことを踏まえて、税関の職員の定数、定員の拡充、確保、処遇改善、安全確保、これを是非、財務大臣に取り組んでいただきたいというふうに思いますが、大臣の意気込みをお聞かせください。

鈴木国務大臣 税関業務を取り巻く環境につきましては、先ほど申し上げましたとおり、輸入貨物の急増でありますとか、不正薬物の押収量が六年連続で一トンを超えるとか、国際的なテロの脅威の継続など、多くの課題に直面しているところでございます。

 私も、十一月の二十四日でありますが、東京税関を視察をいたしまして、実際に大変な業務を、また一方においては、新しいいろいろなツールを使いながら、機械等を使いながら、一生懸命職員の皆さんが頑張っておられる姿を実際に見てまいりました。

 そういうことを経験をする中において、今後ともより一層、効率的、効果的に業務運営を進めていくことが大切でありまして、人員の適正配置を行いつつ、更なる人員確保を図ること、こういうことを進めることがあるということを痛感したところでございます。

 そして、先ほど申し上げましたとおり、人員確保としましては、税関の定員について、令和四年度予算において八年連続で三桁の純増となる百三人の純増を計上し、初めて一万人を超えました。

 そして、先生が今御指摘になりましたような処遇のこと、適正な処遇の確保、これも大切であると思いますし、また、安全な職場環境を保持すること、そのためのマニュアル作成や安全管理体制の整備なども行っているところでございます。

 今後とも、業務運営の一層の効率化を図りつつ、必要な税関の体制整備や職員の処遇改善、安全確保、こういうことに努めてまいりたいと思っております。

櫻井委員 しっかりと努めていただけるという御答弁をいただきました。ありがとうございます。是非よろしくお願いいたします。

 続きまして、ちょっと二つ目の項目の質問に移らせていただきます。せっかくの財務金融委員会での質問の機会ですので、少しロシアに対する経済制裁について質問をさせていただきます。

 ロシアによるウクライナ侵略、これは絶対に許せない、許してはならない、ロシアは即時に撤退すべきであるし、させなければいけない、このように強く思っております。このことは、さきの衆議院の本会議でも決議をしたところでございますし、また、本日の衆議院本会議におきましても、そうした趣旨の発言を我が会派の伊藤俊輔議員からもさせていただき、また同様のことを林外務大臣からも御答弁いただいているところでございます。

 やはり、戦後秩序を守っていく、プーチン大統領にウクライナからの撤退を決断させるために、この経済制裁、非常に重要でございます。ロシアの金融機関をSWIFTから遮断する、これは必要な政策だということで、私もこの決定に賛成をいたします。

 ただ、このSWIFTからの遮断というのは、ある種、肉を切らせて骨を断つというような、剣術の極意でこういう言い方もあるそうでございますが、やはり、相手にも相当なダメージはあるけれども、我が方においてもそれなりの悪影響を覚悟しなければいけない、そうした性質のものだというふうに思っております。

 ただ、こうした決定をする、それでも一生懸命各国合意をしたというところでございますが、二月二十六日の時点で合意をしたこの発表の時点では、EU、ヨーロッパ連合、それからフランス、ドイツ、イタリア、イギリス、カナダ、アメリカが合意をした、こういうふうなことで発表されております。我が国は、その後から一日ぐらい遅れてそれに追随をするというようなことがあったというふうに承知をしております。

 そこで、ちょっと大臣にお尋ねをしたいと思っているんですが、SWIFTからのロシアの金融機関を遮断する、極めて重要な決定ですが、日本はこの協議に加わっていなかったのかどうなのか。これはやはりちゃんとこうした議論に加わるべきだと思うんですが、ただこの質問は、ちょっと事前のレクで聞いたところ、この答弁の御担当は財務省じゃなくて外務省だと言われちゃったんですね。私は、これは金融の話ですから財務省なのかなと思っていたんですが、ともかく、どちらでもよいので、外務副大臣に今日来ていただいていますので、どちらでもよろしいので、御答弁をよろしくお願いいたします。

小田原副大臣 櫻井委員にお答え申し上げます。

 我が国は、これまでもG7を始めとする国際社会と連携しながら対応しておりました。そうした立場に変わりはございません。

 御指摘の二月二十六日の声明は、G7の枠組みではなく、欧州と米州の間で調整し、大西洋協力の枠組みで発出されたものであります。欧米諸国からこの声明への参加の要請があり、我が国もこの取組に加わったものであります。他のG7諸国からはこれを強く歓迎する意向が示されたものであります。

櫻井委員 続きまして、これは今度こそ大臣にお答えいただきたいんですけれども、ロシアのプーチン大統領は、SWIFT遮断など強烈な経済制裁にもかかわらず、ウクライナ侵略の方針は変えていないように見受けられます。SWIFT遮断はロシアの中の七つの銀行を対象にしているのみで、場合によっては今後更なる経済制裁が必要になるのではないかというふうに私は考えるところですが、今後の取組については、日本は他の諸国、当初六か国プラスEUで決議をされているようですが、こうしたところの中に、協議にしっかりと加わっていくということで、大臣、よろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 日本といたしましては、G7を始めとする国際社会と協調しながら、かなり強力な経済的な制裁を今日まで行っている、そういうふうに認識をいたしております。

 そして、今後の対応につきましては、今ロシアの侵攻状況が刻一刻と変わる中で、断定的に申し上げることは難しいのでありますけれども、今後の状況の推移や制裁の効果、今までの効果がどの程度上がっているのか、そういうことを勘案しつつ、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携をして、更なる追加の制裁が必要なのかどうかも含めてしっかりと対応を適切に取り組んでいきたいと思っております。

櫻井委員 ロシアに対する経済制裁、これは大変重要なことでして、欧州もロシアというのは隣国ですけれども、我が国もロシアの隣の国でございますから、しかも、エネルギー、天然ガスを大量に輸入しているという現実もあるわけですから、我が国もしっかりと意思決定に加わっていくということで是非お願いしたいと思います。

 なぜこんなことを申し上げるかというと、こうした、ちょっとある種、耳の痛い話をさせていただくかといいますと、先月G20の会合があった。そのときに、財務大臣・中央銀行総裁の会議があって、我が会派からは口をそろえて、是非大臣、出席したらどうですか、国会は待ちますよと。確かに予算審議も重要ですけれども、やはりちゃんとこうした会議には行けるときには行って、そして、ちゃんと顔を合わせてやっておくことがいろいろな今後の協議にもつながっていくのではなかろうかという思いから、こうしたことを提案させていただきました。

 ところが、G20の会合については、昨年十月、衆議院選挙と重なったということもあって、二回連続で欠席をしてしまっている。また、ロシアとの関係については、二〇一四年にロシアがクリミア半島、ウクライナの領有している地域を併合したということに対して各国で強い経済制裁をしているにもかかわらず、日本はその取組が不十分だったというようなこともあり、日本だけが尻抜けしちゃっているんじゃないのか、腰が引けているんじゃないのかというような不信感ももしかしたら欧米各国の中にあったのかもしれない。だから、日本を間に入れると何か後ろ向きのことをされちゃうかもしれないという経過があったのではなかろうか。そんなふうに思われるのは本当にまずいと思うんですね。

 さらに、このロシアとの関係においては、経済分野の協力プランを二〇一六年にロシアと合意しちゃっている、クリミア半島の問題は一切解決していないにもかかわらずこうしたことをやっているということで、ロシアに対してむしろ間違ったメッセージを日本は送り続けていたのではないのか。こんなふうにも懸念をするところです。

 今日はJBICの前田総裁にも来ていただいておりますので、ちょっと質問をさせていただきます。

 国際協力銀行、JBICの前田代表取締役総裁は、先日、記者会見もされていまして、そこで、ロシアへのいろいろな融資の事業を持っているという中で、今後、石油、天然ガス開発事業などロシアとの共同事業について、同じようにつき合いを続けることはあり得ないというふうに述べたというふうにも聞いております。

 このJBICは、これまで、ロシアで石油、天然ガス関連事業でサハリン1、サハリン2というような事業、これは文字どおり超がつくような大型の事業でございました。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、イギリスの大手石油会社のシェルがサハリン2の撤退を表明し、参画する三井物産、三菱商事の対応が注目をされているところです。

 また、日本の経済産業省としてもこれは深く関わっているわけで、このことについては、本日の参議院の経済産業委員会で我が党の森ゆうこ議員が質問しているところでございまして、それに対して大臣は検討中というような趣旨の答弁をされていました。

 JBICは、このサハリン1、サハリン2についての融資は完了している、残高はないというふうには承知をしておりますが、しかし、先ほど申し上げた協力プランに基づいて、これは、それこそ安倍総理とプーチン大統領の合意に基づくものですが、関連事業は既に実施をされているというふうにも承知をしております。

 三月三日の記者会見でいろいろお話もされているようでございますが、改めてこの場で、ロシアでの事業に対する投融資について、JBICの今後の方針を改めて御説明いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

前田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、三月三日に定例の記者会見を行いまして、質問がございましたので、ロシア向けの取組についてお話をさせていただきました。

 まず、新規の話についてでありますが、委員も御指摘のとおり、国連の安保理事会の常任理事国という世界の平和と安定をまさに確保するような責任があるロシア連邦が隣国を力でじゅうりんしているという状況でございますので、これは全く通常モードではないというふうに申し上げまして、したがって、これまでと同様にビジネスを進めていくこと、これはできないというお話をさせていただきました。これは新規の案件でございます。

 もちろん、これは今後長い時間がかかると思いますので、政府の立場はG7を含む国際社会と連携していく立場でございますので、政府の方針を踏まえながら適切に対処していきたい、このように考えております。

 次に、現在の既往の案件ということについてお話を申し上げたいと思いますが、委員御指摘の石油、ガスのセクター、これはサハリン1、2等ございますけれども、大きく分けて、一つは輸出信用、日本の機器の輸出をサポートするための輸出信用、このために、ロシアの二つの銀行に融資枠、クレジットラインというのを設けております。一つは、VEB、もう一つはズベルバンクというものでございます。

 VEBについては、これは円建てでありまして、これは残高ございますけれども、御案内のとおり、これはSWIFTから除外されるということになっておりますので、いずれにしても、新規のものに取り組むことは意味がないわけでございますので、既往のものについてもこれは期限前弁済を求めていくというつもりでございます。ズベルバンクについては、これも円建てでありますけれども、こちらについては残高はございませんので、そのまま多分失効するだろうというふうに考えております。

 二つ目の石油、ガスセクターでございますが、委員も御指摘のとおり、サハリン1、サハリン2、いずれも既に完全に弁済は終わっておりまして、私ども、債権を保有しておりません。ということで、本件については、今、サハリン2の方のスポンサーは、委員御指摘の三菱商事、三井物産でありますが、この両者がどうするかということについては、私は今のところ把握をしておりません。

 それから、ほかに、現在の案件で、アークティック2、これもLNGの案件でございますが、サハリン1の場合はロスネフチ、サハリン2の場合はガスプロムという国営の企業が入っておりますが、こちらの方は民間企業、ノバテックという企業がやっておりまして、今の段階では、このノバテックは制裁対象には該当しておりません。

 ただ、今般、西側の、国際社会の制裁に対してロシア側が制裁に対する対応、対抗措置を取ってまいりまして、プーチン大統領が三本の大統領令に署名し、発布しております。そういう段階でございますので、これによりますと、弁済、つまり、ロシアの居住者に対する海外への送金を禁止するという大統領令でございますので、これは、そうだとすれば、これはイベント・オブ・デフォルトに該当いたします。

 したがって、現在これをまだ確認中でございまして、これが既往案件にも含まれるのか、ロシアにとって新規のことだけなのかを今確認中でございますので、今暫時貸出しは停止しておる、こういう状況でございます。

櫻井委員 これは、今お答えいただいた案件というのは、いずれも当時の安倍総理とそれからプーチン大統領が合意をした八項目の協力プランに基づいたものというふうに承知をしております。これは、そもそも総理大臣と大統領が合意をして進めている、ある種、内閣の方針として、政府の方針としてやってきたものです。

 大臣にちょっと確認をさせていただきますが、こうしたロシア向けの投融資政策、これは担当大臣として今後どういうふうに処理をしていくべきというふうにお考えなのか、お聞かせください。

鈴木国務大臣 現在のウクライナやロシアの制裁をめぐる動きは極めて流動的でございます。JBICによるロシア関係業務に関する対応についても、その状況を注視していく必要がある、そのように考えてございます。

 ただいま、前田JBIC総裁からいろいろお話がございましたが、JBICにおきましても、ロシアをめぐる国際社会の動きやロシア国内の状況を踏まえつつ適切に対応されることを期待をしておりますし、いずれにせよ、ロシアをめぐる国際社会の動きやロシア国内の状況を踏まえつつ、G7を始めとする国際社会と連携をしながら、適切に対応してまいりたいと思っております。

櫻井委員 ロシアの問題、これは、ウクライナ侵攻、もう絶対にやめさせなければいけないということで、強い、厳しい言葉で非難はしておりますけれども、言葉だけじゃなくて、政策面でも、実施面でもよろしくお願いいたします。

 続いて、ミャンマーに対する経済協力の在り方についても併せて質問させていただきます。

 こちらは、昨年二月に軍事クーデターがあって、もうこれから一年が経過してしまっております。事態は全く改善をしておりません。日本政府としてミャンマー向けの経済協力をどうするのか、これは外務省の担当になるかと思いますので、副大臣から御答弁をお願いいたします。

小田原副大臣 櫻井委員にお答え申し上げます。

 昨年二月一日のクーデター以降のミャンマー情勢について、日本政府としても深く懸念をしています。状況次第では、円借款事業を含むODAを見直さざるを得ない、あるいは、民間企業が投資したくても投資できなくなるという可能性があります。そのような点をミャンマー側に伝達し、事態の改善に向けた働きかけを行っているところであります。

 円借款を含む我が国の対ミャンマー経済協力の今後の対応については、働きかけの状況を踏まえつつ、我が国が要求している暴力の即時停止、被拘束者の解放そして民主的な政体の早期回復の三点や、ASEANの五つのコンセンサスというものがどういうふうに実現していくかといった諸要素を勘案しながら、どのような対応が効果的か、総合的に検討してまいります。

 また、クーデターの後、ミャンマー国軍が主導する体制との間で新たに決定したODA案件はございません。

櫻井委員 続きまして、今日はJOINに、海外交通・都市開発事業支援機構の武貞社長にも来ていただいております。

 これは、ミャンマーのヤンゴンで不動産開発事業をやっている、通称Yコンプレックスですが、もう軍事クーデターから一年経過をいたしました。これは今後どのように取り扱うのかということについて、ちょっと御説明をお願いしたいと思います。

 ちなみに、事業主体の一つである東京建物は、このYコンプレックス事業についてもう既に六十八億円の損失計上をしているというふうにも承知をしております。そうしたことを踏まえて、この事業を今後どうするのか、御説明をお願いできますでしょうか。

武貞参考人 お答え申し上げます。

 ヤンゴン博物館跡地開発事業につきましては、ヤンゴンにおいて、ホテル、オフィス等から成る複合施設を建設、運営するものであり、弊社は本邦企業等とともに出資の支援を行ってきたところでございます。

 本事業ですが、現在、工事は完全に中断しておるところでございます。一部最低限の管理はしておりますが、工事は完全に中断しておるところでございます。また、昨年二月のクーデター発生以降は、一切のリース料の支払い等を事業会社から行っていないという完全に凍結した状態にはなっております。

 今後の対応につきましては、引き続き、出資パートナーである民間の日本企業さんたち、それから国交省、現地大使館等を含む関係省庁とも連携し、関連情報を収集しつつ、必要な対策を引き続き検討してまいりたいと考えております。

櫻井委員 これは不動産の事業で、文字どおり動かすことができない、日本に持って帰ろうにも持って帰れないし、かといって、そのまま残してミャンマー軍に接収されるというようなことでも、これもまたおかしな使われ方になってしまうリスクがありますから、本当に難しい問題ではあろうかと思いますが、しかし、適切に対応をお願いしたいというふうに思います。

 続きまして、円借款の実施状況についても確認をさせていただきます。

 これは、工事を進められる状況にはないというふうには承知をしておりますが、工事は止まっているのかどうか。工事が止まっているなら貸付実行も止まっているのかどうか。それから、過去の貸付けについても、大量に借款の残高は残っているかと思いますが、四千億円以上の残高があるというふうには承知をしておりますが、これの返済というのは順調に行われているのかどうなのか、今日はJICAの山中理事にも来ていただいておりますので、御答弁をよろしくお願いいたします。

山中参考人 お答え申し上げます。

 ミャンマーにおける、実施中の円借款事業でございますけれども、日本政府の対ミャンマー向け経済協力の方針に従い対応しておりますけれども、貸付実行につきましては、実施済みの役務に対する対価の支払いとして、所要の確認を行った上で順次実施しているところでございます。

 また、日本政府の対ミャンマー経済協力の今後の対応につきましては、先ほど外務副大臣の方から御答弁がありましたとおり、様々な要素を勘案しながら、総合的に検討されるものというふうに理解をしておりまして、JICAといたしましても、こうした日本政府の方針に従い、実施中の円借款事業について対応していく考えでございます。

 また、貸付実行につきましても、日本政府と御相談の上、実施済みの役務に対する対価の支払いとして、所要の確認を行った上で実施する考えでございます。

 また、ミャンマーからの返済でございますけれども、特に問題なく行われているところでございます。

 以上でございます。

櫻井委員 時間が参りましたので、質問をこれで終わらせていただきますが、ロシアについてもミャンマーについても、やはり人権、それから国際秩序、こうしたものは非常に大事だということで、毅然とした態度で我が国の政府、方針を取っていただきたいということをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松でございます。

 今日は、幾つか関税法の問題のほかにも質問をさせていただきたいと思います。

 まず、関税定率法の関係ですけれども、これは見ていて、私の方も全面的に賛成だということで、そこの法律的には問題はないね、それよりも、しっかりと実行する体制を強化していった方がいいなということで、その観点から質問をさせていただきます。

 私の方で、二月四日に、大臣の所信質疑のところで、税関職員が、本当に、例えば防護具とかフィジカルプロテクション、さらには最先端の機器とか、あるいは検知装置とか、そういったことについてもしっかりとそこは予算を取って頑張ってほしいということで、それについては、今、財務省の方でもしっかり検討されていることと思います。

 この手袋、これはなかなか、この前も、これは二回目なんですけれども、ぺらぺらの、よくファミレスであるようなこのビニールの手袋、これをやると三十分ぐらいで何か蒸れてしまって、なかなか使いにくいという話をさせていただきました。

 これを改善を要望したんですけれども、これについてどんな改善の状況になっているのか、それをちょっと関税局長さんからお願いを申し上げます。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から税関職員のために貴重な御意見をいただきましたこと、まず感謝を申し上げます。

 税関現場からいただいた声については真摯に耳を傾け、積極的に改善につなげていきたいと日頃から考えて職務に当たっているところでございます。

 御指摘の手袋でございますが、実は、関税局当局としても、職員から要望を受けてございまして、昨年十二月より段階的にでございますが、従来のビニール製手袋に加え、仮に蒸れたとしても使いやすい、耐久度の高いゴム製手袋の十分な配備を進めているところでございます。

 今後とも、税関現場からの声によく耳を傾け、職員が安心して職務を全うできるよう努めてまいりたいと思います。

末松委員 今の御答弁で、本当に現場からの声をより重視していただくということで、これを引き続きお願いをしたいと思います。

 それから、今までの各質問者の方々それぞれから、全ての質問者から、税関職員の体制強化あるいは新たな人員確保について、強い御要望がございました。

 私からは繰り返しませんけれども、大臣、与野党通じてみんなから、税関職員の体制整備、これを強化をお願いしておりますので、私からもそれはお願いさせていただいて、そして、しかるべく御答弁をいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、私、昨年の十一月二十四日に東京税関、視察をさせていただきました。現場で、大変職員の皆さんが使命感に燃えて一生懸命働いている姿を拝見をいたしまして、心強くも思い、また、是非頑張っていただきたい、こう思っております。

 いろいろお話を伺いますと、業務量も増えているというようなこと、特に巣ごもり需要でいろいろ、韓国あたりに電子商取引で細かいパッケージの、小さいパッケージのいろいろな、着るものとかそういうものが増えているというような、そういうような状況もあるんだということもお聞きをいたしました。

 いずれにいたしましても、今後とも、効率的、効果的に業務運営を進めることができますように、必要な税関の体制整備に最大限努めていきたいと思っております。

末松委員 最大限努めていかれるということで、是非そこは本当に、この委員会から、質問者ほとんどみんなから強い要望が出ていますので、その声も受け止めて、最大限お願いしたいと思います。

 ちょっと時期的なところで、ロシアについてもお話をさせていただきます。

 先ほどから櫻井議員も言われていましたけれども、ロシアのウクライナ侵略、これは決して認められない、許されないということは、当然私もそれはシェアしております。

 それで、このロシアに対して、ロシアの銀行をSWIFTから除外する、非常にこれは厳しい経済的な措置が続いているんですけれども、この中で、ちょっと私がおやっと思ったのが、ロシアの最も大きな銀行であるズベル銀行に対しては、適用を除外していると聞いております。このズベル銀行というのは、ロシアの預金量の四割ぐらいを占める最大の銀行だと聞いているんですけれども、これを適用除外しているということなんですが、ここはどうしてなのかなというのと、私から見れば、多分、パイプラインの決済なんかも含めて、いろいろと複雑な中で除外をしていると思うんですね。要は寸止めという感じなんですね。

 これをこれから、寸止めということを外して、実際にしっかりとパンチを食らわすみたいな、そういうことになるのかというのは、状況を見ながらやっていかれるんだと思いますけれども、その辺、ちょっと大臣にお伺いをしたいと思います。

鈴木国務大臣 SWIFTからの排除の対象、その範囲につきましては、国際社会への影響を見極めつつ、ロシアに対して最大のコストを課すべく、G7を始めとする国際社会が緊密に連携した結果として、最終的には、SWIFTの所在地であります欧州の当局において決定したものでございます。

 今後の対応についてどうするのかというお話でございますが、事態が刻一刻と変わる中、断定的なことを申し上げることは難しいのでありますが、今後の状況の推移でありますとか、実際に制裁の効果がどの程度上がっているのか、そういうことを勘案をしながら、引き続きまして、G7を始めとする国際社会と連携して、適切に取り組んでいきたいと思っております。

末松委員 一般論的にはそれで結構なんですけれども、これは大臣というよりも、むしろ専門家の、財務省の方からの答弁もいただきたいんですけれども、さっき言ったズベル銀行を外しているその経緯と、そういうことについてもう少し専門的なことをおっしゃっていただければ、大臣というよりも、要するに事務方に聞きたいと思いますが、そこを是非お願いします。

三村政府参考人 お答え申し上げます。

 SWIFTからの銀行の排除でございますけれども、先ほどの質疑にもございましたけれども、まずは大西洋の枠組みの中で、欧米がやるという中で、日本もこれに参加するということは表明をいたしまして、それ以降、G7、日本も交えまして各国間で、どこを対象にするかということも含めまして緊密な調整をしてきたというところでございます。

 個別に、どの銀行が外れたのがなぜか、入ったのがなぜかというところは、先ほどの大臣の御答弁にございましたように、そこはちょっと差し控えたいと思いますけれども、いずれにいたしましても、G7を始めとしました国際社会の中での調整の結果として、SWIFTはベルギーにある団体でございますので、EUの規制枠組みに服するということでございますから、最終的には、SWIFTの所在地である欧州から、三月の二日でございますけれども、七行を外すということで決定がなされた、公表された、こういう経緯でございます。

末松委員 ということであれば、ヨーロッパの関係者が決めたということについて、日本はそれに対してディシジョンテイカーとして粛々と従っていきますよ、そういう立場ということを類推するわけなんですけれども、そこは状況を見ながら、さらに、七銀行でしたっけ、これについての、どこまで締め上げるかというのは、これから状況を見ていくということは明らかにしていただきましたけれども、やはり、このズベル銀行というのはロシア最大の銀行ということで、そこについては更なる考慮が必要なんだろうなと私も感じはしますけれども、是非そこは本当に適切な対応を取っていただきたいと思っております。

 一方、このロシアに対する厳しい、こういったSWIFT排除とか、こういう経済制裁に日本が参加したというのは、ロシアのプーチン大統領が言っているように、こういう経済制裁そのものはロシアに対する敵対行為だと言っているわけですよね。そして、それはロシアの敵国だという位置づけを日本ももう負っちゃったということなんですね。これはそれなりにやはり返り血を浴びるという覚悟も必要なんですね。ですから、それはもう一線を越えたということですから、そういった意味で、我々も用心をしなきゃいけないということなんですね。

 だから、ロシアから逆にカウンター制裁というものも当然出てくる、これが予想できるわけなんですけれども、現状において、日本に対してどういうふうなカウンター制裁、ロシアからの、そういうことが想定されているのか、様々な想定をしていると思いますけれども、その一端をちょっと国民にも開示していただけますか。

三村政府参考人 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、私ども制裁を講じました、特に二月の二十八日以降、様々な動き、ロシア側から出てございます。

 例えばでございますけれども、例えば三月一日には、ロシアに対しまして非友好的な行動を行う国とか関係者との間での貸付契約を許可制にする、こういったものが表明をされてございますし、三月五日には、同じく非友好国における外貨建ての債権を保有しているその保有者に対しまして、外貨建債権でございますから本来外貨で当然返済するべきなのでございますが、ルーブル建てでの返済を認めるんだ、こういう措置も出てございます。

 そして、この非友好国がどこかということにつきましては、昨日七日付と承知しておりますけれども、ロシア政府がこれもリストを発表いたしまして、この中には、日本を含みますG7でございますとか、EU加盟国、あるいはその他の国が入っている、こういう状況だと認識をしております。

末松委員 そういうことで、先ほど質問にもありましたけれども、そういった、外貨建てじゃなくてルーブル建てしか払わないよとか、あるいは非友好国という形で日本も位置づけられているということですけれども、こういったこのデメリットというのかな、その対抗措置、ロシア側からの、これに対して日本がどの程度のマイナスを強いられて、そういった計算というのは今やっておられますか。

三村政府参考人 お答え申し上げます。

 まさしく今、このロシアの様々な発表も受けまして、私どもとしましても、内容の詳細、精査をしているところでございます。

 例えば定量的に何かどれぐらいの具体的な影響ということは、まだ現時点で確たることは申し上げられませんけれども、いずれにいたしましても、私どもとしましても、先ほど申し上げましたようなロシアの様々な対応、こういったものを見ながら、そして一方で、この私どもの制裁がどういう効果を上げているのか、こういったことも見極めながら、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携しながら、今後の対応をしっかりと考えてまいりたいと考えてございます。

末松委員 もうちょっとこだわるんですけれども、例えばバナジウムってあるじゃないですか、これはちょっと事前に質問項目には含まれていませんでしたけれども、これはロシアが七割ぐらい生産しているということで、かなり独占的な話で。ちょっとニュースを見ていたら、バナジウムって何かこう、歯医者さんの措置にも使われるということで、そういったところで、歯医者さんはそれをやりたいんだけれども、余りにも原価が高くなり過ぎちゃってできないんだ、こういうこともあるわけなんですけれども。

 そういった、金融的なものだけじゃなくて、経済的なことに対してもどんな影響があるんだということ、これについても子細に、やはり、政府としては、各省、何といいますか、幅広く検討を行ってやっていかないと、我が国の経済が回らなくなってきては困るよねと。当然、返り血を浴びるんだから、そこは、それなりのことをしっかりと政府の方で、各省呼んで、そして、影響会議というようなもの、これは何かつくられているんですか、全くつくられていないんですか。

三村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおりでございまして、もちろん、足下、エネルギー価格への影響等々、いろいろな話題になってございますけれども、御指摘ございましたように、パラジウムですとか、あるいは穀物ですとか、いろいろなところで、ロシアあるいはウクライナ、かなり世界的にもシェアを占めているようなものもございます。

 したがいまして、私ども、エネルギーはもとよりでございますけれども、金融市場を通じての影響、さらには、もろもろのサプライチェーンを通じた影響、こういったものを様々考えなければいけないわけでございますので、これは当然、関係省庁も私ども緊密に連携をして議論もしてございますし、あるいは、G7等々国際社会の中でも、当然そういったことも念頭に置きながら、我々としてどういう対応をしていくのかといったことを調整させていただいているところでございます。

末松委員 ちょっと、私が聞きたいのは具体的なんですけれども。要は、今非常に優等生的な回答があったわけなんですけれども、そういった、何というか、政府でそれを、どのくらいの影響があるんだということをやるような仕組み、あるいは内閣府、内閣官房が主催しているのかどうか知りませんけれども、あるいは財務官が統括しているのか知りませんけれども、各省が集うような、そういった議論の場というのは、何か一か所に設けられているんですか。あるいは、設けられていなくて、各省が個別にそんなことをずっと申入れをしながら、そこで、何というか、議論として何か統括できるような仕組みがなされているのか、それをちょっと聞きたいんですね。

 ただ単に欧米が、西洋が決めたことにこっちが従っていくということは、それは当然、大筋では是とするんですけれども、そういった中で、日本がどこまで困って、どういう形でやっていくというのは、欧米各国も、全体的な方向性は示しながらも、彼らも彼らなりに全部計算をして、お互いに、ここはやはりまずいかなとか、この辺はもうちょっといっていいんじゃないかとか、そういうふうな議論をしていると思われるんですね。

 だから、国内でどういうふうな体制なのか。あるいは、海外でそういう、こちらも多分、財務官などを中心にいろいろな、折り入った、本当に中に入った議論をされておられると思いますけれども、まずはちょっと、国内でどういう、そういうふうな何か、この辺はまずいんだとか、これはちょっと致命的だとか、そういった議論をまとめる場があるのかどうか。そこを明らかにしていただけませんか。

三村政府参考人 お答え申し上げます。

 例えば原油価格等につきましては、もう委員御存じのとおりでございまして、関係の閣僚等々もお集まりをなさいましていろいろな議論をしておられるわけでございますけれども、このウクライナあるいはロシアの対応につきまして、何か正式な形での関係省庁会議でございますとか関係閣僚会議というものが現時点で立ち上がっているというふうには、私自身、承知をしておりませんけれども。

 一方で、実際に、この制裁の措置を議論するに当たりましては、当然、これは外務省でございますとか、経済産業省でございますとか、もろもろ、関係省庁、これはもう文字どおり、あらゆるレベルで日々集まりながら議論してございますし、その上で、日本として、ここはできる、ここは影響があるというような話も、これはもちろん各国間のやり取りでございますので、一定の、余り、詳細は御容赦願いたいと思いますが、当然これはこれで、例えば財務トラックで申し上げているものもあれば、それぞれの省庁から言っていただいているものもある、こういう状況ということでございます。

末松委員 今の、関係省庁会議はないという話だったんですけれども、だったら、つくって早急にやってくださいよ。そういう形でやらないと、例えば財務官がいろんな形で調整をするにしても、彼に対する情報がなければ日本が物を言えないという話になるわけだから、しっかりと国際局長で、要は、ヨーロッパはこういうのを決めました、じゃ、従ってくださいと言うだけじゃなくて、こっちもどんどんいろんなところを、逆に制裁の中で厳しいところを提案していくということも含めてやらないと。

 要するに、例えば財務省、経産省、それはメインでいいんですけれども、例えば農水省とか、食料の問題とか、いろんなのが課題で全省庁的にあるはずなんですよ。それを吸い上げていかないと、何か財務省だけがぽんと浮かび上がっているような形で、何かリエゾンで、こういうふうに決めましたからよろしくという話になっちゃうと、日本経済としてこれはちょっと立ち行かなくなる。非常にそこの考慮が薄くなるというのはまずいと思うので、是非そこはそういう形でやっていただきたいということを、今の議論を聞いて、ちょっと大臣にも、感想で結構ですからおっしゃっていただければと思います。

鈴木国務大臣 今、国際局長から答弁がありましたけれども、日々、必要に応じて、関係省庁と連携を取りながら、それぞれの立場で、ここはできるけれどもここはちょっと考えなくちゃいけないということをやっている、こういうことでございます。

 今、何もやっていないんじゃなくて、もうやっているわけでございますので、その上で、更に何が必要なのかどうなのかということ、これはちょっと考えてみたいと思います。

末松委員 そこの取りまとめが内閣官房になるのか、あるいは財務省という形になるのか、そこは当然それなりの領分があってやっていくことだと思うので、本当に、トータル・ジャパンとしてそこを常にフォローしてその次の事態に備えていくということは、かなり議論としてもいろんなものが出てきますから、それをまとめていくというのが一番重要な政府としてのポイントになりますから、是非そこを考慮していただきたいと思います。これ以上、私も言いませんけれども。

 それから、ちょっとロシアについて三点目に聞きたいのは、要は、我が国を非友好国だと認めたということと、国際法的には、経済制裁を行われたということ自体で、これは敵対国と認めれば、それは別に経済的措置の対抗措置だけじゃなくて、要するに、昔の戦争の論理からいけば、戦争をやっている。敵国視しているとプーチンも言っているわけですから、そこはできるわけですよ。別に、ロシアが例えば何か武力行使を日本にやったとしても、日本は国際法的には文句を言えない。そういうことに位置づけられているということを我々はここで知らなければいけない。新しい着地点に今いるんだ、その緊張感と、それから、その重要性、深刻さを持ってやっていかなきゃいけないと思うんです。

 だから、例えば、経済的措置をやったから、ロシアは経済的措置で返していく、経済制裁で返していくというのは勝手な論理であって、向こうは武力を使ったって、それは別にこっちも文句を言えないという話になっているわけですから。

 例えば、ロシアから、ちょっと最近サイバー攻撃がある企業に対してやられたとかいう話もありますけれども、いろんな省庁に対してサイバー攻撃をやられたとしても、これは全く日本としては文句は言えない。そういうふうな備えというんですか、そういうことをやっていかなきゃいけないし、また、武力行使というようなところが何か限定的な形であるということも考えられなくもないんですね、そういう段階に来たわけですから。

 それに対して、ちょっと私は、これはロシアだけじゃなくて、こういうアメリカが二正面作戦をやらざるを得ないようなことに追い込む形で、例えば中国が、じゃ、尖閣とか、あるいは台湾に対してちょっかいをかけてくるということも十分に考えられるし、考えておかなきゃいけないと思うんですね。その辺、防衛省としてはどういうふうな形で警戒体制というのをやっているのか、教えていただけますか。

鬼木副大臣 お答えします。

 御指摘のようなプーチン大統領の厳しい発言は承知しておりますが、そもそもロシアにより開始された不法な侵略に対応するために国際社会が行っている制裁措置に対しそのような発言を行っているとすれば、極めて問題であり、全く受け入れることはできないということであります。

 その上で、防衛省・自衛隊の能力を明らかにするおそれがあることから詳細については差し控えますが、防衛省としては、今般のウクライナ侵略を含め、またサイバー空間における動向を含め、ロシアの動向について重大な懸念を持って情報収集、警戒監視を行っております。

 この点、例えば、ロシア海軍は二月以降、ウクライナ周辺におけるロシア軍の動きと呼応する形で、ロシア軍が東西で活動し得る能力を誇示するため、オホーツク海等において大規模な海上演習を行っております。また、二月には、戦略核及び非核戦力による戦略抑止力演習を実施し、様々なミサイルを発射した旨を発表しました。また、このうち、ICBM等については極東のカムチャツカ半島に着弾させたとしております。

 このように、現下の情勢下において、我が国周辺海空域においてもロシアの活動が活発化していることは懸念すべきものであり、防衛省としては、引き続き緊張感を持ってロシア軍の動向について情報収集、警戒監視を行ってまいります。

 また、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、政府として、いかなる事態に対しても対応できるよう、引き続き万全を期してまいります。

 以上です。

末松委員 万全を期すということは当たり前の話なんですけれども、本当に、この時期だからこそ緊張感を持ってやらないと、何が起こるか分からない。今ロシアがそういう、何というか、こちらに敵対的な、けしからぬ態度を取るのは本当に遺憾で、とんでもないと言われましたけれども、でも、もう国際法的には戦争状態として、そういう位置に立っているという認識に立っていただかないとまずいと私は思うので、そこはよろしくお願い申し上げます。これ以上は言いませんけれどもね。

 あと、それから、国民生活の観点から、石油価格、これが今、最近、WTIが百三十ドルを超えた、百四十ドル近くにもなったとか、そういう話なものですから、今ロシア原油の取引禁止なんというのが話題になって、これまた、決定されるとまた更に、今そういう形で相場が上がっているんですけれども、更なるいろいろな追加措置が取られれば、ここは大変だと思うんですね。これは結構長期的に百七十円を超えて、百八十円近くいくとか、あるいはいったとか、そんな状況にもなっていて、長期的に例えば二百円なんといったら、国民生活が本当に崩壊しちゃうじゃないかというぐらいの大変な状況になるんですね。

 そういった意味で、ちょっと私は思うんですけれども、国際協調行動ということで各国で石油備蓄を放出するというのを今やられているので、それはそれで歩調を合わせる必要はあると思うんですけれども、日本でも、余り値段が上がり過ぎたら、これはやはり備蓄も石油価格を下げるためにはやっていかなきゃいけない時期にそろそろ来るのかな、来ているのかなと思うわけなんですね。

 もちろん、石油備蓄の放出というのは供給の途絶又はそのおそれがある場合に限られるという法律的な縛りはあるのは分かるんだけれども、でも、余り石油価格が上がって、じゃ、国民生活、そのまま何もしないんですかと言われると、本当にそこは何か、政府は無策じゃないかと。私なんかが一応提案した中にトリガー価格、二十五・一円、これを下げろという提案もしてきましたけれども、まだ政府の方で具体的な、五円ぐらい下げる以外のことが具体的に決まっていないような気がするんですけれども、そこは、備蓄放出ということについてちょっと聞きたいんですけれども、そこはどうですか。

細田副大臣 ありがとうございます。

 今御指摘ございましたけれども、石油備蓄は、石油の備蓄の確保等に関する法律という法令に基づいて行っております。これは、我が国への石油の供給が不足する場合における石油の安定的な供給の確保を目的として、国及び民間事業者に対して石油の備蓄を求めているものでございまして、原油価格の高騰への対応を目的とした仕組みではございません。

 一方で、先生から今御指摘ございました原油市場の安定化は重要であり、その観点から、昨年十一月以来、米国や関係国と歩調を合わせて、油種入替えに伴う国家備蓄石油の売却を前倒しして実施しており、また、先日開催されたIEA臨時閣僚会合における合意を踏まえて、総量六千万バレルの備蓄放出のうち、我が国は米国に次ぐ七百五十万バレルを民間備蓄から放出する予定としております。

 いずれにいたしましても、産油国に対する原油増産の働きかけを継続するとともに、原油価格高騰対策としては、燃料油の急激な価格高騰を抑えるために、ガソリン、軽油、灯油、重油を対象とする激変緩和事業について、当面の間の緊急避難的措置として、急激な価格上昇を抑制するように、元売事業者に対する支給額の上限を五円から二十五円に大幅に引き上げて、国民生活への不測の影響を緩和するということとしております。

 是非、この政府の対応について御理解をいただければというふうに思います。

末松委員 だから、そこは、二十五円で限界ですよという話で、ずっとそれが通ればいいですよ。ただ、これ以上どんどんどんどん石油が高騰してきたら、それは更にちょっと、そっちの更なる対応も、とにかくいろいろなシミュレーションをして考えてもらわないと困るんですよ、本当に。国民生活が崩壊しますから。そこを強くお願いします。

 最後になりますけれども、イージス・アショアの事業の成果物の、要するに、これは無駄遣いだ、イージス・アショアから今度は海上のイージスになって、イージス・アショアにかけた費用が無駄になっただろうということ、これを予算委員会の分科会でも防衛大臣に言って、更にこの委員会でも総理に言って、そこで、実は、今資料としてこちらをお配りをさせていただいていますけれども、ここで、防衛省の方で、これは実は無駄にならないようにこれから頑張っていくんだ、無駄は一切ないんだというようなことを強弁されているので、ちょっとそこは、やはり無駄が全くないことはないだろうと。陸上をやろうとしてやめた、そして海上にやる、だったら陸上にかけた分があるだろうということを、それで、この資料の中で黒い四角になっているところが、これは陸上でやったということなんですね。

 そこで、一番目のイージスシステムに関する情報を収集という、イージス搭載艦に検討できる、これは二十七億円あるんですけれども、これはそうだなと。二のイージス・アショア設置に係る調査、検討を行ったもの、これは例えば、この四角で囲った部分というのは、イージス・アショアを秋田県とか山口県とか、それを実際に設置するために具体的に現地で調査や検討を行ったものなんですよ。

 そこの、三つ書いていますけれども、標準設計、これは実際に陸上のイージスをやるためにレーダー施設の標準的な図面を作成した、これに〇・七億円かかっているんですよね。さらに、二番目の基本設計では、これは実際に具体的な検討をしたということで、三・六億円かかっているんですよ、費用は書いていませんけれども。三点目の、地質測量調査、ボーリング等を実施したと書いていますけれども、これに一・五億円かけられているんですよ。これは合わせて五・八億円もあるわけですよ。

 こういったことはしっかりと、何かそこを、全く無駄になっていないんだと言われると、これはちょっと国民感情としてもおかしいだろうと。それは無駄なら無駄ってことを言えよという気になるわけですね。

 実際に当委員会で、実際にボーリングとか現地調査を行ったことに対して、岸田総理が、「ボーリング調査の費用等においては、そのまま活用するのは困難なのかもしれませんが、」と発言をしているんです。これがある意味では政治家としての通常の感覚だと思うんですよ。

 これを防衛省の方で、実際、全く具体的計画がないにもかかわらず、もしそれの具体的計画があったらそれに関わる形で将来的に活用できるかもしれませんという答弁をされると、それじゃ、国民に負担をかけたことに対して申し訳ないくらい言ってもらわないと、私としては政治家としておかしいと思うんですけれども、そこは防衛省、答えてください。

鬼木副大臣 イージス・アショアの配備を急ぐ必要があると考えていたため、米側との協議やそれを踏まえた安全措置の検討と地元説明を並行して実施することとなり、結果的に、地元に対して約束していたことが実現できなくなり、慎重さ、誠実さを欠いた対応となりました。

 こうした状況となった背景として、防衛省内の体制、地元への説明、技術面での制約の三点が挙げられます。

 その中でも、特に体制については、当初から十分な体制とすべきであったと考えているところであり、今後は、省内の意思疎通や情報共有の在り方を含め、仕事の進め方に係る課題を改善するため、風通しのよい業務環境を整備していく必要があると考えているところです。

 令和元年度までにイージス・アショアのために契約した約一千七百八十四億円の事業のうち、イージスシステム搭載艦に係る事業として契約を履行することとなった事業を除いたものについて、これまでに支払った金額は約三十六億円です。これらの既に支払った約三十六億円の契約によって得られた成果物については、イージスシステム搭載艦や今後の防衛省における事業の参考として活用できる可能性があると考えております。

 この三十六億円について、無駄とはしないように、これらの契約によって得られた情報等を活用できるよう、引き続き検討していきたいと考えております。

末松委員 ちょっと答弁が長過ぎるので、もう質問時間が終わったので、ちょっと呼んでいるので、会計検査院、これについても調べてくださいよ。一言だけお願いします。

山口会計検査院当局者 申し上げます。

 会計検査院は、会計検査院法第二十条に基づきまして、防衛省の会計経理について、合規性、経済性、効率性、有効性等の多角的な観点から検査を実施しているところでございます。

 お尋ねのございました、陸上配備に向けて測量調査等に費やされた費用を含む防衛省の会計経理につきましては、国会での御議論等を踏まえまして、引き続き適切に検査を実施してまいりたいと考えているところでございます。

末松委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

薗浦委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 先ほどから、皆様の質問とちょっとかぶってしまう部分も多々あるんですけれども、申し訳ないんですけれども、ウクライナ危機の影響、そして税関の体制について御質問させていただきます。

 まず冒頭に、今般のロシアによるウクライナ侵攻に際し、ウクライナ、ロシア両国で戦火に見舞われている皆様の御安全と、一刻も早く平和が戻ることをお祈り申し上げます。

 関税定率法等の一部を改正する法律案の質問に先立ち、緊迫するウクライナ情勢が、世界そして日本経済に与える影響に関して御質問いたします。

 ロシアの力による一方的な現状変更は、断じて認められません。国際社会の秩序を根幹から揺るがしかねない深刻な事態で、SWIFTからロシアの主要銀行の排除を始めとした各国による強力な経済制裁は、当然に是認されることであると考えます。

 ただ、一方で、それに伴うグローバルマーケットそして日本経済へのマイナスの影響を予想し、分析し、準備、対応することは必要不可欠であると考えます。

 金融核兵器と呼ばれるように、先ほど櫻井委員や末松委員からもございましたが、SWIFTからの排除、これは双方の経済に深刻な打撃を与えます。

 今はまだSWIFTから排除されたロシアの金融機関は一部ではございますが、もし仮に、今後事態が更に深刻化し、ロシアの全ての金融機関をSWIFTから排除するとなったら、その影響は甚大なものとなります。一金融機関のリーマン・ブラザーズの破綻ですら、決済ネットワークに綻びが生じ、あそこまで大きな影響があったわけですから、天然ガスの生産量が世界二位、石油は世界三位のエネルギー大国であるロシアの金融機関をSWIFTから排除となれば、その影響はリーマン・ショックを大きく上回ることも予想されます。

 また、このウクライナ危機により、貿易が制限され、滞り、資源価格や生活必需品の価格の高騰が起き、世界的なスタグフレーションに見舞われることも想定されます。昨日は原油先物が急騰し、十三年半ぶりの高値となりました。日経平均も、終わり値で前日比七百五十円以上下落し、去年からの最安値を更新いたしました。本日も四百円以上下がっております。

 財務省として、このウクライナ危機が、今後、世界そして日本経済に及ぼす影響、どのようなものとなり、どの程度の規模となるのか、どう考えられているのか、お答えください。また、その対策、どのように考えておられるのでしょうか。可能な限り具体的にお答えいただければと思っております。

鈴木国務大臣 ロシアによるウクライナ侵略、ロシアへの経済制裁が世界経済や日本経済に与える影響についてどう考えるか、そういう御質問でございました。

 今、ロシアのウクライナへの侵略、刻一刻と状況が変化する中で、断定的に、予断を持ってお答えすることはなかなか難しいわけでございますが、その上で申し上げれば、ロシア、ウクライナは、原油や天然ガス、小麦などの生産において世界市場におけるプレゼンスが大きく、国際商品市況の変動を通じて米欧で加速するインフレや内外の金融市場に与える影響、また、ガソリンや電気代、食料品といった国民にとって身近な物品等の価格への影響、製造業のサプライチェーンへ与える影響など、幅広く注視していく必要がある、そういうふうに思っております。

 そして、これにどう対応するかということでありますが、エネルギー価格につきましては、高騰のリスクがあることは以前から指摘されておりまして、国民生活等への不測の影響を緩和するため、三月四日に、原油価格高騰に対する緊急対策を取りまとめました。

 また、ウクライナ情勢や原油価格高騰等の影響を受けた中小企業に対しましては、この対策におきまして、資金繰りに支障が生じないようきめ細かな支援を引き続き徹底することを金融機関等に重ねて要請をするとともに、日本公庫等の低利融資により支援していくこととしております。

 国際的には、ロシアに対する経済制裁によりまして、G7始め、国際社会と緊密に連携をいたしまして、ロシアに対し最大のコストを課すよう適切に対応してまいりたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 先日、ロシア食品専門店の看板が壊されるというニュースがありました。

 例えば、ロシアとの貿易が制限されるような事態になれば、取引の多くをロシアと行っているような企業は、今後立ち行かなくなってしまうような可能性も極めて高くなっていきます。レアメタルの調達が滞ると、自動車などの製造業に大きな影響があります。半導体不足が更に加速するということも考えられます。また、資源価格が高騰し、日用品、ガソリン価格などの生活への影響も当然に甚大でございます。

 ちょっと先ほどの質問と少しかぶってしまう部分があるとは思うんですけれども、こういった大きな影響を受ける企業そして人々への生活の支援策というのは、先ほど申し上げたものに加えてどのようなものがあるのか。こちらも可能な限り具体的にお答えいただければと思っております。

岩田大臣政務官 お答えをいたします。

 経済産業省といたしましては、今回の事態による日本企業への影響が最小限にとどまるよう万全を期していく考えです。

 まず、喫緊の対策として、経済制裁や原油価格高騰の影響を受ける日本企業をしっかりと支えていくことが重要です。

 このため、日本貿易振興機構、ジェトロに相談窓口を設置するほか、政府系金融機関、中小企業団体等に、ウクライナ情勢・原油価格上昇等に関する特別相談窓口を全国約千か所設置するとともに、日本公庫によるセーフティーネット貸付けの金利を引き下げるなど、中小企業の資金繰り支援に万全を期しております。

 また、燃料油の急激な価格高騰を抑えるため、ガソリン、軽油、灯油、重油を対象とした激変緩和事業につきまして、当面の間の緊急避難的措置として、急激な価格からの上昇を抑制するよう、元売事業者に対する支給額の上限を五円から二十五円に大幅に引き上げ、国民生活等への不測の影響を緩和するようにしております。

 経済産業省としましては、引き続き、今後の事態の推移を見極めながら、事業者の皆様にしっかりと寄り添う形で対応してまいります。

藤巻委員 ありがとうございます。

 今回のウクライナ危機は、戦後、日本が経験したことのない大きな事態でして、地政学的リスクとなる可能性があると考えております。経済的に、あらゆる事態を想定して、迅速に適切な対応の方をよろしくお願いいたします。

 続きまして、関税法案に関して質問に移らせてまいります。

 税関における水際対策の強化についてお伺いいたします。

 近年は、新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響による巣ごもり需要の拡大やネットショッピングの機能高度化により、国境を越えた電子商取引が拡大され、海外の事業者と我が国の個人顧客との直接取引による海賊版などの模倣品や粗悪品の流入が激増しました。

 これを阻止する体制、必要だったと理解しておりますが、改正による取締り体制と、それによって期待される効果などをお教えください。

鈴木国務大臣 今般の関税法改正においては、昨年五月の商標法等の改正を受けまして、海外の事業者が郵送等により日本国内に持ち込む模倣品について、関税法の輸入してはならない貨物として規定する等の措置を講ずることとしております。

 これによりまして、従来は税関による取締りの対象となっていなかった個人使用目的で輸入される模倣品であっても、海外の事業者から送付されたものであれば税関による取締りの対象となり、模倣品の日本国内への流入防止対応が強化されることとなります。

 こうした税関による模倣品の取締りは、国民経済の健全な発展や、消費者の健康や、薬物等もありますので、健康や安全の確保に資するものと考えております。

 今後とも、税関におきましては、適切な執行体制を確保して、模倣品の取締りに万全を期してまいりたいと考えております。

藤巻委員 ただ、日本国内で取締り、確かに、強化することは大事なんですけれども、それだけではまだまだ十分ではないと考えております。今、目にする模倣品などは、今後も網の目をかいくぐって更に増加するおそれもあると思います。模倣品、海賊版をしっかりと取り締まるためには、各国と連携していくことも非常に大事かと考えております。

 そこで、知的財産権、特に商標権や意匠権の保護のための、アメリカやイギリス、フランスなどの先進諸国や中国の取組はどうなっているのでしょうか。また、税関など水際対策における各国との連携体制はどうなっているのでしょうか。お答えください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、EUとアメリカ、米国においては、今回の改正後の我が国と同様、個人使用目的で輸入される模倣品を税関における取締りの対象としていると承知してございます。

 また、我が国は、中国でございますが、中国、韓国との間で、税関当局間で知的財産侵害物品の取締りに関する協力関係を構築してございます。具体的には、三か国の税関当局間での知的財産侵害物品に係る情報交換、それから三か国共同の消費者への啓発活動、これらを行っているところでございます。

 引き続きまして、関係各国や関係する国際機関とも協力し、知的財産侵害物品の水際での取締りに万全を期してまいりたいと思います。

藤巻委員 ありがとうございます。

 引き続いて、ちょっと皆様もさんざん質問されて再々々度の質問のような形になってしまうんですけれども、人員体制の件についてお伺いさせていただきます。

 ここ数年の海上、航空の輸入許可件数は急増して、二〇一六年には二千九百万件超であったものが二〇二〇年には六千五百万件超となり、五年足らずで貨物の量は倍増以上となっております。さらに、本改正を踏まえると、これまでの業務量に加えて、著作権や意匠権など知財権の監視も更に増加すること、コロナの鎮静化後、海外渡航者の増加を考慮しますと、職員個々の負担は今後更に重くなっていくことが予想されます。また、当然に、テロ、治安維持への対策もますます必要となってくるでしょう。

 こうした中、我が国の水際を守る税関職員は、近年増加はしているものの、一万人程度の職員が年間僅か百名程度増えるだけ、そのような形にとどまっており、五年未満で倍増した貨物の件数に見合っているとは考えられません。

 不正薬物や模造品は水際で取り締まることが最も効果的、効率的であると考えます。実際に、全体の九割以上が税関での摘発であると伺っておりますが、それでもこの押収量は実際の密輸の氷山の一角であると考えられます。

 そういったことも鑑みると、現状の水準を維持するだけでも人員体制は十分ではないと考えられます。知財分野への対応強化、業務量増大に対して人員体制の強化、教育訓練についてどう取り組むのか。今後の渡航者や貨物量の増加も鑑みて、対応をどのように考えているのか。改めてになってしまうのですけれども、お伺いいたします。

岡本副大臣 人員を強化すべきとの御提案、ありがとうございます。

 私も、鈴木大臣と同様に、昨年十二月十六日に東京税関の現場を視察をいたしまして、職員の皆さんの献身的な業務に接しまして、人員の強化の必要性を再認識をいたしました。

 この税関業務を取り巻く環境につきましては、輸入貨物の急増、不正薬物押収量の高止まり、国際的なテロの脅威の継続など多くの課題に直面をしておりまして、強化する必要が、必要だというふうに思っています。

 人員確保といたしましては、税関の定員につきまして、令和四年度予算において八年連続で三桁の純増となります百三人の純増を計上いたしまして、初めて一万人を超えました。それでもまだまだ今後も強化をする必要があるというふうに考えまして、今後の体制につきましても最大限努力をしてまいる決意でございます。

藤巻委員 前向きな回答、非常にありがとうございます。

 貿易の健全な発展と安全な社会、そして豊かな未来を実現するために、世界最先端の税関を目指したスマート税関構想二〇二〇年を策定されました。税関業務を効率的に運営する一つの手段かとは思いますが、この構想に関する取組、現時点での進捗状況について御説明ください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 スマート税関構想、委員から今御紹介いただきましたように、一昨年六月に取りまとめて、今、取組を進めているところでございます。スマート税関構想では、増加する業務に対応できるよう、業務の高度化、効率化に向けた取組を積極的に進めているところでございます。

 少し御紹介させていただきます。例えば、ビッグデータを活用したAIモデルを開発することで、輸入事後調査における立入り先の選定に活用しております。これによって選定業務の一層の効率化が期待されるといったものでございます。

 それから、二つ目の例でございます。エックス線検査画像がございますが、国際郵便物のエックス線検査画像から内容物を識別するAIを作成しまして、この四月から活用する予定でございます。こうしますことで、国際郵便物の検査業務の一層の効率化、作業負担の軽減が期待されるということでございます。

 三つ目の例としまして、監視取締りにおけるドローンの活用というのも御紹介させていただきます。実証実験でございますが、ドローンを活用することで海岸線や離島の取締りにおいて上空から俯瞰的に確認することが可能となるなど、効率的、効果的な取締りにつながるものと期待しております。

 委員御指摘のとおり、税関を取り巻く環境は激変しております。一層多様化、複雑化する税関業務に対応するため、有識者や業界との意見交換も活発にしながら、必要な対応について検討を進め、一層の高度化、効率化に向けて取り組んでまいりたいと思います。

藤巻委員 ありがとうございます。

 今後ますます複雑多様化し、業務量の増加が見込まれる税関業務です。日本の玄関口を守る税関の皆様の重責に敬意を表しつつ、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、財務金融委員会、関税定率法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。

 鈴木財務大臣を始め関係省庁の皆様、委員部の皆様、本日もよろしくお願いいたします。

 さて、関税は、歴史的には、古代都市国家における手数料に始まって、国境関税などに変化をしてきましたが、今日では一般的に、輸入品に課される税として定義されています。

 我が国日本は、エネルギーや食料品など多くの品を輸入に頼っている現状もあり、関税についてはしっかりと理解をして、多角度から議論を深めていくことが必要だと考えております。

 まず最初に、今回の改正する法律案の中に、タマネギの現行の暫定税率を基本税率として規定し、暫定税率を廃止するというものがありました。理由は、タマネギについて輸入の大半を占める中国との間で、RCEP協定上、現行の税率を維持することになったということが挙げられます。

 RCEPとは、日本、中国、オーストラリア、韓国、ニュージーランドとASEAN加盟十か国の間で結ばれた、関税の撤廃、削減だけでなく、知的財産の保護や投資ルールの整備などを含めた経済連携協定のことをいいます。よく聞くTPPは、日本を議長国に、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、チリ、マレーシア、メキシコ、ペルー、ブルネイ、ベトナムの計十一か国で構成される、RCEPよりも大変厳しいルールと最高水準の市場アクセスを持つ経済連携協定の一つともなります。少し話が飛んでしまいまして、申し訳ありません。

 日本のタマネギの全輸入量のうち九〇%が中国であり、自給率に対しては現在一三%となり、強い依存があるとは思えませんが、RCEP協定を本年から動かす中で、当然、全体的な輸入量は増加することが見込まれます。

 ちなみに、日本の貿易における中国の構成比は、新型コロナウイルスの影響が少なかった二〇二〇年の財務省貿易統計によりますと、輸出が前年比三%上昇の二二・一%、輸入は二・三%上昇の二五・八%となり、貿易総額に占める中国の構成比は、前年比二・六%上昇の二三・九%となりました。中国の構成比は、貿易総額、輸出額、いずれも過去最高、輸入額では過去最高の二〇一六年の二五・八%に並んだとのことです。まさに四分の一を中国に頼る日本になってきております。

 そこで、質問です。

 日本の輸入総額に占める中国からの輸入品についての割合の高い品目を割合と品目で教えてください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 中国から輸入される割合が高い品目を御紹介せよとの御質問でございます。

 五つほど、上位から、金額の大きいものから順に選んでみました。

 まず、携帯電話などの通信機器、これでございますが、中国が全世界からの輸入に占める割合、七三・一%でございます。次に、パソコンなどの事務用機器ですと七五・一%となります。衣類等という分類でございますと五五・九%。それから、カメラなどの音響映像機器は五八・三%。そして、金属製建築部材等の金属製品というカテゴリーがございますが、これですと五五・六%の中国依存度となっております。

沢田委員 ありがとうございます。

 まさに、中国の大きな経済圏というものは大変大きくなっており、これは最近のウクライナ情勢を考えると、輸入の依存度は、反転すれば大変厳しい対応が求められると痛感しております。原油価格は先週末から二〇%も急上昇しており、ロシア、ウクライナの小麦の生産量が大変に大きいことから、市場不安は高まっています。

 岸田総理も経済安全保障という言葉を多く使われますが、経済連携協定と安全保障はつながっているとも感じられます。イギリスがTPPの申請手続を進め、今、台湾と中国がTPPへの参加表明をしました。

 質問です。

 以上のことを踏まえて、TPPは、本来、内閣官房が担当と思いますが、中国と台湾申請の中で、外務省はどのような役割を担われているのでしょうか。

小田原副大臣 沢田委員にお答え申し上げます。

 中国による加入申請に関しまして、我が国としては、中国がTPP11の高いレベルを完全に満たす用意ができているかどうかについて、まずは厳格に見極める必要があると考えています。

 また、中国との間では、様々な懸案も存在しています。我が国としては、こうした点も含め、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら対応してまいります。

 外務省としても、このような外交的、戦略的重要性を十分に認識の上、本件の対応について、関係国とも緊密に意思疎通をしつつ、責任を持って役割を果たしていく考えであります。

沢田委員 ありがとうございます。

 私も、最近、地域を回ると、本当にこの問題、多くの方から聞きます。内閣官房が担当で、外務省がどこまで入ってくれているのかということに対して不安があるという、大体、高齢者の男性の方が特に多いんですけれども。やはりそういったメッセージが国民の側にまだ届いていないということで、本日、御質問に答えていただきまして、本当に、こういった声をできるだけ外務省の方から発信していただけることはやはり心強いと思いますので、どうもありがとうございます。

 続いて、このままで引き続き外務省に質問なんですけれども、経済連携協定、これはまさに経済安全保障という名前の経済に私は当てはまる部分だと思うんですけれども、これを外交上の意義として、外務省としてはどのように考えられているのか、教えてください。

小田原副大臣 沢田委員にお答え申し上げます。

 世界で保護主義や内向き志向が強まる中、我が国は、TPP11以来、日・EU・EPA、日米貿易協定、日英EPA、RCEP協定など、自由貿易の旗振り役としてリーダーシップを発揮してまいりました。

 こうした取組は、相手国・地域との間で、貿易・投資の更なる促進という経済的意義のみならず、共通のルールの設定や経済関係の深化によって相手国との二国間関係の強化や、ルールに基づく自由で開かれた秩序の構築及びそれに基づく地域や世界の平和と繁栄の確保にも資するという外交的、戦略的意義も有すると考えています。

 外務省としては、経済連携協定の推進に当たって、引き続き、こうした外交的、戦略的意義を踏まえつつ、責任を持って役割を果たしていく考えであります。

沢田委員 どうもありがとうございます。力強いお言葉をいただきました。やはり、日本の中で安心して国民の皆様ができる環境を是非つくっていただければと思います。

 やはり、中国、台湾の加盟交渉に関しては、一つの中国という言葉をめぐる高度かつ複雑な外交が展開されることは予想されています。ただ、TPP委員会がイギリスの加盟手続開始で確認したように、高度なルールを保つTPPが損なわれてはいけません。今のTPPにアメリカが不在という中で、中国の要求に沿って国際秩序を形成することはあってはならず、開かれた状況の中で、加盟希望国・地域がTPPの全ルールを遵守する手段を明確にし、最高水準の市場アクセスを約束する必要があり、それを是非議長国である日本がリードしていっていただきたいというふうに考えております。

 内閣官房がルールの維持をし続け、外務省が、どこまで水面下で……(発言する者あり)失礼いたしました、議長国、今はシンガポールですね。昨年まで日本だったという認識で、申し訳ありません。

 内閣官房がルールの維持をし続け、外務省が、どこまで水面下で、多くの圧力から透明性ある交渉を守れるかに懸かっていると思います。是非、このTPPについて、外務省としての意気込みをちょっといただけないでしょうか。

小田原副大臣 沢田委員にお答えいたします。

 TPP11は、ハイスタンダードでバランスの取れた二十一世紀型の新たな共通ルールを世界に広めていくことで、自由で公正なルールに基づく経済秩序の構築に資する枠組みというふうに考えています。

 また、先ほど中国の加入申請に関することに触れられました。加入申請をした国や地域の扱いについては、TPP11の加入手続に従って、参加国ともよく相談していくことになります。

 我が国としては、TPP11の高いレベルを完全に満たす用意ができているかどうかについて、まずは厳格に見極めるとともに、戦略的な観点や国民の理解も踏まえながら対応していく考えであります。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、沖縄に関わる関税制度上の特例措置の延長として、特定免税店制度及び選択課税制度について適用期限をそれぞれ二年及び三年延長したい旨の提案がありました件について質問をさせていただきます。

 この特例措置は、元々、沖縄振興特別措置法に関わるものでありますので、特別措置法の予算総額と今回の特例措置における予算額を教えてください。

原政府参考人 お答え申し上げます。

 沖縄振興予算について、令和三年度当初予算におきましては総額で三千十億円が計上されてございます。また、関税については、令和二年において約一・五億円の免税措置が講じられているところでございます。

 以上でございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 この沖縄振興特別措置法は、昭和四十七年、沖縄の本土復帰時に制定された、沖縄振興開発特別措置法を起源とする地域振興法です。沖縄振興特別措置法の中にある、目的が第一条にあります。「第一条 この法律は、沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑み、沖縄振興基本方針を策定し、及びこれに基づき策定された沖縄振興計画に基づく事業を推進する等特別の措置を講ずることにより、沖縄の自主性を尊重しつつその総合的かつ計画的な振興を図り、もって沖縄の自立的発展に資するとともに、沖縄の豊かな住民生活の実現に寄与することを目的とする。」こう書いてあります。まさに、計画的な振興、自立的発展、住民生活の実現に寄与すること、これが大きな目的とあります。

 昭和四十七年からもう半世紀がたっても制度を維持し続けているということは、これは目的実現ができていないという証拠なんでしょうか。

 質問です。

 毎年三千十億円もの国民の税金をかけて実現できていない制度は、目的達成のための手段として間違っているのではないかと考えますが、どうでしょうか。

宗清大臣政務官 御質問にお答えをさせていただきます。

 今、沢田先生から、沖縄に対する特例措置の御質問がございました。

 沖縄振興特別措置法におきまして、歴史的な事情、地理的事情、社会的事情といった沖縄の置かれた特殊な諸事情に鑑みまして、公共事業における高補助率や内閣府への一括計上、沖縄独自の一括交付金、特区、地域などの税制上の特例措置など、沖縄振興のための措置を講じてきたところでございます。

 今国会に政府から提案をさせていただいております沖縄振興特別措置法等の一部を改正する法律案におきましても、これらの特殊事情に起因する課題が引き続き存在をしておりますので、沖縄振興の一層の推進を図るために法の期限の延長等を行うこととしております。

 政府といたしましては、法の期限内に法が目的とする沖縄の自立的発展と豊かな住民生活が実現されるよう、各種の沖縄振興のための措置を最大限に活用してしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

沢田委員 やはり、沖縄が抱える過去の歴史や基地問題など、国を、取り上げてですね、向き合わなければいけない大変にデリケートな点を踏まえれば、積極的な議論を避けて既存の仕組みを思考停止した状態で延長することは、楽な選択肢であっても賢明な判断であるとは私は言えないと思っております。

 毎年三千十億円という国民の貴重な税金が使われております。責任を改めて政府・与党は思い直していただき、沖縄と本気で向き合うこと、そして目的に沿うよう、まさに計画的な振興、自立的発展、住民生活の実現にしっかりとコミットできるような提案を、また、パッケージでしっかり考えていただくことをお願いいたします。

 続きまして、海外の事業者を仕出し人とする模倣品の水際取締りの強化についての提案についての質問です。

 税関における知的財産権の侵害物品の差止め状況について、上位国、輸入差止め件数、構成比などを教えてください。

阪田政府参考人 お答え申し上げます。

 令和三年の税関における知的財産侵害物品の輸入差止め件数は二万八千二百七十件でございまして、実績公表を開始した昭和六十二年以降で五番目に多くなってございます。

 仕出し国別、輸出してくる側の国で見れば、中国を仕出しとするものが二万一千八百八十五件と最も多く、全体の七七・四%を占めております。

沢田委員 ありがとうございます。

 一つの国にこれだけ偏っているのは少し問題があるなと思いますが、先ほど一番最初に私からも話させていただいたように、中国への依存度が大変高くなっているということは気をつけていかなければいけないというふうにも感じております。

 最後となりますが、模倣品の水際の取締りにおける海外の事業者への対応、対策について、具体的に教えてください。

阪田政府参考人 税関におきましては、効果的、効率的な知財侵害物品の水際取締りのため、外国税関当局との協力関係の構築、それから、関係省庁との連携、事前情報を活用した貨物の審査、検査などを行っております。

 外国税関当局との協力関係の構築としては、中国及び韓国の税関当局と、知的財産侵害物品に係る情報交換、そして三か国共同の消費者への啓発活動を行うなど、関係強化に努めております。

 また、特許庁と連携し、中国系の主なECサイト運営業者と意見交換を行う機会を設けており、日本の制度改正に係る情報共有や周知についての協力依頼等を行っております。

 今後とも、税関当局同士の協力関係を強化するなど、知的財産侵害物品の水際での取締りに万全を期してまいりたいと思います。

沢田委員 どうもありがとうございました。

 今回の件を触れるに当たり、ちょっといろいろな資料を見させてもらったのですが、税関の日本における役割、大変大きなものだと感じております。是非、税関の職員の皆様は、まだまだ人員措置が足りていないという声も私個人でいただきましたが、そういったところも含めて、しっかりと日々の活動に向き合っていただければと思います。いつもありがとうございます。

 最後になりますが、激動の世界情勢の中、日本経済もいまだ厳しく、外交における優位性を力で実現するのは大変に難しいと考えます。そんな中、TPPといった高度なルールそして最高水準の市場アクセスを持った経済連携協定を日本が引っ張ることで、国際的な立ち位置の強化を図ることは必要と考えます。是非、内閣官房とそして外務省で強力に連携し動いていただくことをお願いして、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平でございます。

 本日も質問の機会を与えていただいてありがとうございます。

 まず、財務省の出先機関というのがあります。三つ大きな出先機関があります。いわゆる財務局、財務事務所。これは割と行政的な仕事であります。その次は、国税局、税務署。これも、今確定申告の時期ですけれども、主には行政的な仕事ですけれども、これが調査になったり査察、さらには、一番大変なのが徴収なんです、徴収部門。だんだんだんだん、物理的なリスクもありますし、結構危険にさらされることもある業務になっています。三つ目が、今日議題になっていますけれども、税関の皆さん。これはもう限りなく警察権の執行に近い部分ですので、本当に大変な現場であるかと思います。

 これは、皆さん是非、現場を見学をしていただいて、今副大臣も視察されたとおっしゃっていましたけれども、是非、財務金融委員会で、コロナが収まれば、税関の現場を見せていただければと思っております。

 しかも、税関の場合は、今日も質疑の中でありましたが、国民の安全や安心を確保するための取締りの機能、これは、いろいろな不正なものが輸入されたり、偽ブランド、あるいはさらには、国民の命に関わる、覚醒剤ですとか麻薬の水際でのストップをしなきゃいけないという取締りの部分。一方では、しかし、これも今日の審議でありましたけれども、非常に今、輸入の航空貨物が増えていたり、あるいはビジネスでもそうです、通関の時間をどれだけ短くするか。これはもう事業者にとっては大変大事なことですから。相反するんですね。しっかりと時間をかけて取締りをするということが期待される反面、いやいや、もう、できるだけ円滑に、二十四時間、スムーズにやってほしいと。こういう相反する任務を現場で支えておられる職員の皆様には、本当に敬意を表したいと思います。

 そこで、特に貿易の円滑化という観点から、大変深夜、早朝の業務もあると思いますけれども、現在、税関当局の方ではどのような御対応をされているのか、御質問したいと思います。

鈴木国務大臣 航空貨物、この越境電子商取引の拡大や輸入貨物の小口化がすごく進展をいたしております。数字を申し上げますと、令和二年、二〇二〇年に六千五百六十万件であったものが、二〇二一年には八千七百二十九万件と、急速に輸入許可件数が増加をしている、そういう状況であります。

 これに対しまして、税関におきましては、不正薬物の密輸入防止などの厳格な水際取締りと円滑な通関との両立を図る観点から、貨物の審査、検査において事前情報を活用すること、貨物の審査、検査を行う職員を増員すること、貨物の検査工程をオートメーション化するなど検査機器を配備すること、そして航空貨物を取り扱う通関業者など事業者と連携を図ることなど、効果的、効率的な取組に取り組んでいるところでございます。

 また、深夜、早朝など、通関検査については、職員にとって過度な負担とならないよう、仮眠時間や連続した休日を確保できるシフト勤務の設定など、職員の健康管理に留意しつつ、必要な体制整備を行っているところでございます。

 今後も、税関業務を取り巻く環境の変化に応じて必要な対応を講じていくとともに、適正な人員配置にも努めてまいります。

岸本委員 ありがとうございます。業務の高度化に加えて、やはり深夜、早朝の作業の多い税関職員の人事配置や勤務の条件について、是非温かい御配慮をいただきたいと思います。

 一方で、取締りの方に議論を移したいと思います。

 不正薬物全体の摘発件数は、二〇二一年も前年比で一割以上増えています。覚醒剤の押収量も一割以上増えています。あるいは大麻密輸入の件でも、押収量が二割ぐらい増えています。大変なことになっているわけですけれども。

 今日ちょっとお持ちいたしましたのは、これはメープルシロップです。メープルシロップの瓶で、メープルですから茶色の液体です。実は、大麻のリキッドは全くこれと同じ色なんです。このようにして、これは、済みません、本当のメープルシロップです、御安心ください、これはメープルシロップです。後でなめてもいいんですけれども。このような形で、これが大麻リキッドとして動いている。これが、末端に行くと、電子たばこのカートリッジなんかに入って、こうやって流通しているんだそうです。これを見つけていかなきゃいけないんですね。

 大体こういうものは税関で九割以上が摘発されるんですけれども、そこから先まで実は税関の職員は追いかけているんですね。これはちなみに三百三十グラムなんですけれども、これで末端価格が三百三十万円です、大麻リキッド。これで三百三十万円です。ですから、本当にイタチごっこみたいになるわけですけれども、こういうものを税関の職員さんが税関から出て追いかけているんです。つまり、警察と一緒に捜査されているんですね。

 私も、税関のあそこで二十四時間一生懸命働いて大変だなというふうには思っていたんですが、いろいろ聞いてみると、実は警察と一緒になってこういうものを追っかけていらっしゃる。あるいは、いろいろな倉庫へ行ったり、あるいは、薬の錠剤だったら数を数えたり、あるいは、いろいろなものに埋め込まれたら機械で壊したり、それを現場で、外へ出ていってやっていらっしゃるということを伺って、これは大変だなと思いました。張り込みも三日も四日もされるんだそうです。まさにテレビドラマの世界ですね。三日も四日も犯人を捕まえるために警察と一緒に張り込みをしている。これが税関の職員の皆さんの勤務の状況でもあるということを聞きました。これは本当に大変だなと思います。

 ですから、この職員の勤務状況、大変心配になりますので、先ほどの、貿易の円滑化に向けて、いろいろな、人員配置から、現場、税関の中での御苦労もあれば、犯罪摘発のための現地での御苦労もあるということですので、現在、人員も少しずつ増やしていただいているというふうにはお聞きしましたけれども、大臣、どうですか、こういう本当に現場で頑張っていらっしゃる職員の皆さんへの御対応、人員配置、いろいろお願いしたいんですけれども、いかがでございましょうか。

鈴木国務大臣 私も、昨年の十一月二十四日、東京税関、見学をいたしました。そのときのイメージでは、やはり建物の中で仕事をしているという感じでしたけれども、先生のように、外に出て、御指摘のように張り込みまでして頑張っておられるということを聞きまして、また認識を新たにしたところであります。

 先ほど、様々な面において、いろいろ、処遇改善、また職場での環境改善、取り組んでいるわけでございますが、これからもしっかりとやっていきたいと思います。

 また、人員も今増やして、初めて一万人台に乗ったところでございますし、これからスマート税関構想というものもございますので、こういうものもやりながらしっかり対応したいと思います。

岸本委員 ありがとうございます。

 是非、本当に現場で苦労されている職員の皆さんの処遇あるいは職場環境の改善、心からお願いしたいと同時に、今おっしゃいましたスマート税関構想二〇二〇、やはり、AIも含めていろいろな最先端の技術も使いながら、職員の負担を減らすということを強くお願いしますとともに、最後はやはり人の力も大事ですので、今日質問された皆様と一緒ですけれども、是非、定員の増加について、我々も応援いたしますので、しっかりと御要求をいただくことをお願いいたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 関税定率改正法案の加糖調製品の調整金徴収制度について今日は質問をします。

 大臣、私、昨年末に鹿児島県の与論島に調査に行って、サトウキビの生産に当たっている青年からお話を聞いてまいりました。

 サトウキビを収穫する機械、ハーベスターが不足していて、九つのグループで十二、三台で回しているんですけれども、常に困っている。ハーベスターは一台で千八百万円もする。補助金があったとしても、何百万円もの借金をしなければならない。一方で、サトウキビの代金は、交付金も入れてトン当たり一万六千円でずっと変わらず。肥料や農薬の代金も支払って、農業機械などのローンの返済もすれば、農家自身の手元に残るのは僅かである。サトウキビ農家はずっと生かさず殺さずだというふうに訴えを聞いたところであります。

 大臣は、日本の砂糖作りの原料となるこうしたサトウキビ作りの苦労話などはお聞きになったことがありますでしょうか。

鈴木国務大臣 農業者の方のいろいろな御要請を受けることがございますが、どうしても地元の方から受けることになりまして、岩手県にはサトウキビもビートもないものですから、そうした砂糖に関わる農家の皆さんのお声は直接聞いたことはございません。

田村(貴)委員 生産農家の現状はかなり厳しいということであります。

 加糖調製品の調整金徴収制度は、TPP11の協定の締結の際に導入されました。その導入の背景と目的について、農林水産省、説明をしていただけますか。

松本政府参考人 糖価調整制度につきましての御質問でございます。

 砂糖につきましては、糖価調整法に基づきまして、海外から輸入される安価な原料糖から調整金を徴収し、これを財源として、サトウキビやてん菜生産者、製造事業者に対して交付金を交付することで内外価格差を調整するという糖価調整制度によりまして、国内での砂糖の安定生産の確保をしてきているところでございます。

 一方、砂糖にココアの粉、あと、粉乳などを混合しました加糖調製品につきましては、TPP11発効前までは、この糖価調整制度の対象外であったため、調整金が課されないという状況にあったところでございます。

 このような中、TPP11協定におきましては、糖価調整制度は現行どおり維持できたものの、この加糖調製品について、無税又は低い関税で輸入することができる関税割当てを新たに設定することになりました。これによりまして、砂糖と競合いたします加糖調製品の輸入が増大し、輸入原料糖の輸入量が減少することで調整金収入の減収をもたらし、生産者に対する支援に影響が生じることが懸念されたところでございます。

 このため、サトウキビ、てん菜の生産者が将来にわたりまして安心して甘味資源作物の生産に取り組めますよう、砂糖と競合します加糖調製品につきましても新たに調整金の対象とし、これを国産砂糖の支援財源に充当するなどの、国産砂糖の競争力を強化し、糖価調整制度を安定的なものとする糖価調整法の改正を行ったところでございます。

田村(貴)委員 糖価の調整制度というのは非常に大事だという話なんですけれども。

 鹿児島、沖縄、この離島におけるサトウキビ作りは、台風に強い、そして代替の利かない基幹的作物であります。北海道のてん菜は、輪作体系を構成する重要な作物であります。そして、国内産の砂糖原料とする。これを支える仕組みとして調整金を徴収する、また、国費を充てる。糖価の調整制度というのは重要な役割を果たしているということです。今の説明にもありました。

 しかし、一部に、余り消費者に利益にならないことをいつまで続けていくことに意味があるのかとの批判の声もあります。

 鈴木大臣は、かつて、JAいわてTPP交渉参加反対緊急集会で、このように述べておられます。農林水産業への破滅的打撃を防ぎ、日本の食を守り、一定水準の食料自給率確保を強く求めていかなければなりませんと。

 そこで、大臣にお伺いします。

 自由貿易協定で、安い外国産農産品の輸入が増えて国内農産品が減少し、自給率が下がったとしても、消費者にとって利益になるとの考え方に賛同されますか。それとも、関税や調整金等で日本の農林水産業を守ることは必要な仕組みであると考えるか。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 TPPの議論が盛んなときに、私の地元の岩手県でも集会があって、このような発言をしたと思っております。まさに、TPPに加入してもしっかりとした対応をしなくちゃいけないという思いで述べたものでございます。

 まず、関税について申し上げますと、一般的に、現在の日本を含めた先進国の関税は、財政収入の確保というよりも、国内産業を保護する手段としての性格の方が強い、そのように考えられており、国内の農林水産業を保護する重要な機能がある、そのように思っております。

 また一方、加糖調製品については、先ほど農林水産省から説明がございましたが、TPP11協定の発効を契機に調整金徴収制度の対象となりました。徴収された調整金は、国内のサトウキビ農家などに対する支援に充てられており、国産の砂糖の競争力強化等を通じて、国内での砂糖の安定生産の確保に重要な役割を果たしていると考えているところでございます。

 今般の暫定税率の引下げは、国内のサトウキビ農家などへの支援に充当する調整金を拡大することとなりまして、国産の砂糖の競争力強化を後押しする意義があると考えております。

田村(貴)委員 その糖価調整制度に、今度、加糖調製品が加わって、調整金を徴収するというんですけれども、これは、暫定税率制度の性格上、毎年度の関税定率法等の改正により定められるために、生産者にとってみたら、先を見据えた経営が難しいということになります。

 それで、TPP11協定による影響から生産者を守るために導入された趣旨を踏まえますと、加糖調整金、加糖調製の六品目、この関税率が段階的に引き下げられる十二年間、この十二年間は原則本制度の枠組みが維持されるものと私は考えますけれども、財務大臣、見解はいかがでしょうか。

鈴木国務大臣 加糖調製品につきましては、TPP11交渉で関税率の段階的な引下げが決まったことを受けまして、政府の方針として、総合的なTPP等関連政策大綱に基づきまして、国内のサトウキビ農家などへの支援に充てる調整金徴収制度の対象として調整金を徴収することを決定をいたしました。

 加糖調製品に係る調整金徴収制度自体につきましては、農林水産省の所管法令に基づく制度でありまして、先生今御指摘になられました、この制度を維持すべきかどうかにつきましては、まずは農林水産省の方でしっかりと御検討いただくべきであると承知しております。

 その上で、財務省としてもしっかりと議論をさせていただきたいと思っているところでございます。

田村(貴)委員 農水省、今の私の質問、農水省としては、これはやはり維持していくべきだと当然お考えですよね。

松本政府参考人 お答えいたします。

 甘味資源作物につきましては、沖縄、鹿児島、北海道といいました地域経済、これを支える重要な品目、この認識の下、糖価調整制度を維持したところでございます。

 今後とも、毎年度、暫定税率の引下げの効果を検証しつつ、必要な対応を行ってまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 ですから、最低、やはり段階的に引き下げられる十二年間はこの制度の枠組みは維持されるように、財務省としてもしっかりと枠組みの継続に力を尽くしていただきたいと思います。

 大臣、砂糖の消費が年々減少しています。そして、調製品はどんどん増えています。生産者の高齢化に伴う離農などの問題を抱えている中で、やはり本制度の維持は大変重要であります。大臣が先ほどTPPに関連して発言されたように、農林水産業の打撃を防いで、日本の食を守って、一定水準の食料自給率確保のために、財務省としても力を尽くしていただきたい、そのことを要望しまして、今日の質問を終わります。

薗浦委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 関税定率法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

薗浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、井林辰憲君外五名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び日本共産党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。稲富修二君。

稲富委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国民経済的な視点から国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和のとれた対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向上に寄与するよう努めること。

 二 最近におけるグローバル化の進展や地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の発効等に伴い、税関業務が増大し、複雑化する中で、適正かつ迅速な税関業務の実現を図り、また、覚醒剤等の不正薬物、銃器、金地金等の密輸を阻止し、水際において国民の安全・安心等を確保するため、高度な専門性を要する職務に従事する税関職員の定員の確保、処遇改善、機構の充実及び職場環境の整備等に特段の努力を払うこと。

 三 新型コロナウイルス感染症の蔓延防止の観点からも、水際における業務遂行やテロ・治安維持対策の遂行に当たっては、税関における定員の確保及び取締検査機器等を含む業務処理体制の整備並びに安全管理の徹底、また職員への感染症対策に万全を期すこと。

 四 海外事業者から国内の事業性のない者に宛てて郵送等で持ち込まれた商標権等侵害物品の水際取締りが強化されるよう職員の配置及び職場環境の整備等に特段の努力を払うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

薗浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

薗浦委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣鈴木俊一君。

鈴木国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

薗浦委員長 次回は、明九日水曜日午前八時二十分理事会、午前八時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十七分散会


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