衆議院

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第12号 令和4年3月25日(金曜日)

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令和四年三月二十五日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 稲富 修二君 理事 末松 義規君

   理事 吉田 豊史君 理事 角田 秀穂君

      畦元 将吾君    井上 貴博君

      石井  拓君    石原 正敬君

      加藤 竜祥君    門山 宏哲君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      塩崎 彰久君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    中川 貴元君

      藤原  崇君    三ッ林裕巳君

      八木 哲也君    山田 美樹君

      若林 健太君    鷲尾英一郎君

      江田 憲司君    櫻井  周君

      下条 みつ君    中川 正春君

      野田 佳彦君    伴野  豊君

      赤木 正幸君    沢田  良君

      藤巻 健太君    中川 宏昌君

      岸本 周平君    田村 貴昭君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       黄川田仁志君

   財務副大臣        岡本 三成君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  金子 正志君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 野村  裕君

   政府参考人

   (警察庁交通局長)    楠  芳伸君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局長)  松尾 元信君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  古澤 知之君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 池田 達雄君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   奥  達雄君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   坂本  基君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阿久澤 孝君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    角田  隆君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 奈尾 基弘君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房総括審議官)         天河 宏文君

   政府参考人

   (観光庁審議官)     池光  崇君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十五日

 辞任         補欠選任

  神田 潤一君     畦元 将吾君

  塩崎 彰久君     加藤 竜祥君

同日

 辞任         補欠選任

  畦元 将吾君     神田 潤一君

  加藤 竜祥君     塩崎 彰久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官金子正志君、内閣府大臣官房審議官野村裕君、警察庁交通局長楠芳伸君、金融庁総合政策局長松尾元信君、企画市場局長古澤知之君、総務省大臣官房審議官池田達雄君、財務省主計局次長奥達雄君、主計局次長坂本基君、主計局次長阿久澤孝君、主税局長住澤整君、理財局長角田隆君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官奈尾基弘君、国土交通省大臣官房総括審議官天河宏文君、観光庁審議官池光崇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。井林辰憲君。

井林委員 自民党の井林辰憲でございます。

 今日は、財務金融委員会について質問させていただく機会をいただきまして、委員長、理事始め同僚議員の皆様方に御礼を申し上げたいと思います。

 私ごとですが、私、社会人、政治家になる前に、国土交通省で働かせていただいていましたが、その最初の赴任地が岩手県宮古市ということで、鈴木大臣のまさに選挙区でございまして、大変勝手に親近感を持っておりまして、日頃から御指導いただいている鈴木大臣に、財務大臣として、質疑をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 初めに、通告をちょっとしていないんですけれども、昨夜、日本時間の昨夜ですが、G7首脳会合が開催されました。ウクライナ情勢への対応に当たって、G7の結束を強化することが確認されたと承知しておりますが、会合の成果、様々ございますが、総理大臣発言もございますが、財務大臣の受け止めを、まず冒頭、お伺いをしたいと思います。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 昨日、御指摘のように、G7首脳会合が開催をされまして、ウクライナ情勢への対応に当たって、G7の結束を強化することが改めて確認されたと聞いているところでございます。

 会合後に公表されましたG7首脳声明では、経済、金融措置の完全な実施等により、ロシアに厳しい結果をもたらすこと、必要に応じて追加的な措置を取る用意があり、そうする際には引き続き結束して行動すること、さらに、ウクライナ及び周辺諸国への支援を強化することなどが盛り込まれたものと承知をしているところでございます。

 出席をした岸田総理からは、日本の制裁措置や新たな支援策について説明をし、会合の後は、貿易に関する最恵国待遇の撤回に向けた法改正、デジタル資産を用いたロシアの制裁回避に対応し、金融面での制裁の実効性を更に強化するための法改正を今後迅速に進めるとの発言があったところでございます。

 財務省といたしましては、この総理の御発言を受けまして、関税、外為法関係において、今通常国会に法案を提出するよう、そのために必要な準備や調整を速やかに進めてまいります。

井林委員 ありがとうございます。

 事態が動いている中での対応でございますので、これは、万全を期した対応と、そして、法律の改正ということでございますので、速やかに国会でまた御審議をさせていただきたいというふうに思っております。

 それでは、通告に従って質問させていただきたいと思います。

 今日は、賃上げ税制ではなくて、賃上げを行った企業への発注の優遇措置について質問させていただきたいと思います。

 賃上げを行った企業を政府発注で優遇していくというのはすばらしい発想であり、是非実行に移していただきたいと思いますが、また、今回の件は少し確認をさせていただかなければいけないことがありますので、確認も含めて質問させていただきたいと思います。

 具体には、昨年の十二月十七日に、財務大臣から各省庁宛てに政府のルールが通知をされました。総合評価方式における賃上げ実施企業に対する加点措置というものでございます。

 このルールについては、令和四年に賃上げを行った企業を総合評価落札方式で優遇するという基本的な考えの下に様々な、受注している会社からですね、基本的な考えを尊重、理解をするんですが、この中身は単年度、昨年令和三年と令和四年の比較なので、これまでの努力、賃上げを一生懸命頑張ってきた企業とそうでない企業との差、これまでの努力が評価されないですとか、また、毎年賃上げが必要な制度でありいずれ限界が来てしまうのではないか、特に中小企業の皆さんが御心配をされていたりですね。

 当然、経済は生き物でございますので、会社の売上げは変動がありまして、そういうことを総合的に勘案して企業経営と従業員の処遇のバランスを取るものであって、これは、まずは賃上げを宣言してくれ、そして総合評価で優遇するという制度でございますので、将来のことを約束されても、それが実行できるかどうか分からない。

 また、今、高齢化も進んでおりますので、ベテランの勇退と若手の雇用の新陳代謝のタイミングでは総額として賃金が下がってしまう。また、今は原油価格や鋼材価格も非常に値上がりをしておりますので、個別の企業ではちょっとコントロールできないような事由で賃上げができなかった場合の救済措置など、様々な心配する声が出てきております。

 ただ、賃上げを実現をして成長の果実を分配するという理念に基づけば、多くの企業が安心をして参加をし、賃上げが実現するということが重要でございます。

 賃上げ税制については、賃金が上がった分に対しての税優遇でございますので、これは結果が出てから税を優遇するということでございますが、この総合評価の場合は、将来に向けて賃上げを約束、宣言した上で入札を行う、つまり将来への責任を持たせるということになります。このため、ちゅうちょする会社が出てくる可能性も高く、制度の趣旨を考えれば、やはり入札参加企業の幅広い参加が望まれるところでございます。

 その環境整備として、やはり、努力はしたが不可抗力の経済事情などで万が一賃上げが実現しなかった際の救済措置について、この通達では言及がされておりません。現在は想像さえできないようなことが、ウクライナの問題もそうですが、起きておりますし、業界ごとにも生じております。

 例示でもいいので救済の対象となるような事象を公表すべきではないか。少なくとも、石油に、ガソリンに補助金を出したり、トリガー条項が政治的な議論のテーマになっていたり、またレアアース、レアメタルなどの問題もこれから地政学的なリスクが排除できないという中で、将来の賃上げを約束するということを条件に入札で優遇するという極めて異例な条件になっております。

 今年の二月八日には各所に対して柔軟な運用は可能であるように通知したように、例示を是非交えていただけないかということでございますが、ここについての財務省の見解をお伺いしたいと思います。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 本制度につきましては、令和四年度中に開始する事業年度等において賃上げ表明を行った事業者に対して加点措置を行うものでございまして、実績において未達成の場合には減点措置を行うということを原則といたしておりますが、大規模災害による被災などやむを得ない事情により表明した賃上げを実行することができなかった場合におきましては、減点措置を講じないことといたしております。

 このように、大規模災害等の減点措置を講じないこととすべき事情が生じた場合にありましては、その都度、財務省から各省庁へ通知をいたしますが、事業者の方々に安心して賃上げに取り組んでいただけますよう、議員御指摘のように、事前に典型的な事例を例示しておくことも含めまして、適切な情報提供の在り方を検討してまいります。

井林委員 是非、多くの企業が安心して参加できるように、事前の情報提供をお願いしたいと思います。

 通告をしない質問がありましたので、ちょっと一問飛ばさせていただきまして、この総合評価による加点措置については、昨年十二月に、ちょっと唐突感のあるような形での通知がございまして、いろんな方に理解を促すにはちょっと時間が不十分であったんじゃないかなというふうに個人的にも考えられます。

 また、賃上げ税制は、二年というふうに期間が限定されて、延長の際に制度を現状に応じて見直すという税制特有の仕組みが内在されているんですが、この制度については、期限も、またフォローアップの仕組みも明示化されていないということでございますが、令和五年度以降も本制度が継続されるのであれば、課題を解消する必要があるため、まずは令和四年度のフォローアップを行った上で、必要な制度の改善が必要と考えられますが、財務省の見解をお伺いしたいと思います。

岡本副大臣 お答えいたします。

 賃上げ表明を行った事業者に対する加点措置は令和四年度から開始する制度でありまして、制度の適切な運用を図るため、毎年度、本制度の実施状況を確認することとしております。

 令和四年度につきましても、制度の運用状況についてしっかりとフォローアップを行っていきたいと考えています。また、その確認結果等を踏まえまして制度の改善等が必要な場合には、適切な時期にその方策をお示しできるように努めていきたいと考えています。

 こうした取組を通じまして、本制度が、できるだけ多くの事業者の皆様にとって賃上げ表明を行う契機となることを期待するとともに、実際の運用状況も見ながら、関係者の方々の御意見も伺いつつ、適切な制度運営に努めてまいりたいと考えております。

井林委員 ありがとうございます。

 是非、早め早めの情報提供も含めて、やはり制度はどんどんどんどん改善してよくしていくというのが一番でございますので、御検討のほどをよろしくお願い申し上げたいと思います。

 先ほど、私、政治の道に足を踏み出す前、国土交通省で働かせていただいたと申し上げましたが、そのときには土木系の技官として働かせていただきました。それは、私のふるさとにダムができて、その規模に圧倒されて、幼いながら、こんなすばらしい大きなものを是非私も自分の手で造ってみたいと子供ながらに思って、そうした希望を持って役所に入らせていただいたということでございます。

 また、同時に、ダムができると、地域で幹線道路も整備されまして、実家から最寄りの駅まで三十分ぐらい車でかかったんですが、十分ぐらいで行けるようになりまして、ソフトクリームが家で食べられるというのはこういうことかというふうに思った記憶もございますし、あれは多分公共事業の額がピークの頃だと思いますけれども、十三世帯しかない私の集落に橋が、二本目もかけていただいて、大変みんなで明るくなった。これはいいかどうかは別にして、やはり住民としては明るい雰囲気になった。これは財務委員会で言っていいのかどうか分かりませんが、大変明るい気持ちになったということでございます。

 そういう思いで国土交通省で働いているときに、私も今よくお話を伺っている上司から、建設現場では、希望しても高校や大学に様々な事情で進学できない人たちが多く汗水垂らして働いている、そういう人たちが真面目に働いたら、希望すれば、結婚して子供を産んで、そしてその子供に望む進学をさせてあげられて、そして、仕事を終えたときに、小さくても一軒の家は残り、質素でも十分な年金が残る、そういう業界をつくらなきゃいけないんだと伺ったことを思い出しております。

 もちろん結婚とか出産を強要するわけではございませんが、そういう社会をつくっていくべきだという意味でございます。この考え方に私は強く共鳴をしますし、今では、建設業界だけではなくて、様々な分野でそうした取組が必要だというふうに考えております。

 そうした点を考えますと、公共事業の現場は総合評価落札方式が非常に幅広くなっておりますので、賃上げ評価をすることはすばらしいことでありますし、また、近年、設計単価も上げていただいております。これは、国土交通省が行っていますが、財務省とも協議を行っているというものでございます。

 ただ、所得というのは単価と労働量の掛け算でございますので、単価を上げても、事業量のベースになる労働量が増えないと給与全体が上がってまいりません。

 それは、結局最後は、予算総額にも強い影響を受けるということになります。そう考えますと、令和三年と四年を比べますと、当初予算がほぼ同一額。しかし、現実的には、補正予算の額も見ると、令和二年度の三次補正予算と令和三年の補正予算を含めると、やはり令和三年の公共事業執行額に比べて令和四年度の公共事業予算執行額が減少するのではないかということが容易に想像できるところでございます。

 これでどうやって所得を増やしていくのか。しかも、資源価格の高騰で鋼材やアスファルトなどの資材単価も上昇しておりまして、人件費に回せるゆとりも減りつつあるという状況でございます。

 これは、役所に答弁を求めると、ICT施工とかで生産性向上なんということを言うかもしれませんが、現場では、本当に私たちが給料、所得を上げたいのは、ICT施工とかでさえ及ばないような小さな現場でございます。

 鈴木大臣には、この分野でも、党で、私もいろんな分野で御指導をいただいております。今回の制度をより現場で実のあるようなものにしようとすると、知恵を絞っている発注者の皆さん、そして期待して汗水垂らして現場で働いている方々に向けて、こうした予算の総額も含めた将来のビジョンを、是非、この分野に精通している鈴木大臣からメッセージをいただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

鈴木国務大臣 先ほど井林先生から質問のございました今般の賃上げ企業への加点措置については、これを民間企業の賃上げの機運醸成に是非ともつなげていただきたい、そのように考えております。

 その上で、公共事業の円滑な執行に当たりましては、賃上げ等を通じた働き手の確保に加えまして、施工時期の平準化でありますとか、施工上のリスクの事前把握による手戻り防止などによる事業実施の効率化も必要であると認識をいたしております。

 そして、御指摘の公共事業予算についてでありますが、厳しい財政状況というものがあるわけでございますが、当初予算は安定的に推移をしているところと思っておりますが、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策を始め、累次の補正予算においても機動的、弾力的な対応を行っているところでありまして、今後とも、現場の皆様方の御要望にお応えできるように、厳しい財政事情ではありますが、努めてまいりたいと思っております。

井林委員 ありがとうございました。

 是非、現場で頑張る方々の所得が上がるように、これからも御尽力をいただきたいと思います。

 時間が終わりましたので、終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 皆さん、おはようございます。立憲民主党の伴野豊でございます。

 本日は、大臣、改めましておはようございます、九時五十分ぐらいに本会議、参議院の方へ行かれるということでございまして、私も少し順番を変えて、余裕を持ってというわけではありませんが、慌てずに参議院の方へ行っていただけるように、順番をちょっと幾つか変えさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今朝も、NHKのニュースだったと思いますけれども、ウクライナの情勢、そうした中で、亡くなられた方の数、そしてとりわけ子供さんの数に心を痛めて、朝、宿舎を出てまいりました。この場にいらっしゃる皆様方の多くは同じお気持ちではないかと思いますが、また一方で、それに乗じて飛翔体を飛ばすとんでもない国もあるようでございますので、私は、今こそ、世界、人類に正義というものがあるとするならば、ここは正義の踏ん張りどころじゃないか、そんなふうに思っております。

 先般も、野田元総理が御質問の中で、プーチンさんの御性格といいますか、相手を会合に待たせるだけ待たせておいて、始まる前に、負のエネルギーといいますか、どちらかというと、多分、待っていらっしゃる方はいらいらして怒ってしまうというような状態になるんでしょうけれども、そうした精神状態に追い込むことによって、交渉を少しでも自分たちに有利なようにということをはなから企てる方という御指摘もあったと思っておりますけれども、そうした方を今はやはり止めなきゃいけないというところが今問われているのではないかと思います。

 そうした中で、一昨日、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の国会演説がございました。まずは、大臣の御感想からお聞かせいただければと思います。

鈴木国務大臣 まず最初に、今回のロシアのウクライナ侵攻によりまして亡くなられた方々に対してお悔やみを申し上げますとともに、避難をしなければならない方々、たくさんおいででございまして、こうした方々にお見舞いを申し上げたいと思っております。

 一昨日のゼレンスキー大統領の演説につきましては、私も財務省の執務室で拝聴をしたところでございます。そして、このゼレンスキー大統領の演説に先立ちまして、三月四日の日でございましたが、コルスンスキー駐日ウクライナ大使ともお会いをいたしました。大統領の演説、そして駐日大使のお話、いずれも現地での凄惨な状況を伺ったところでございまして、改めて胸が痛まる思いでございました。

 ゼレンスキー大統領からは、日本がウクライナに対する援助を迅速に決定したこと、日本がアジアで初めてロシアに対する制裁措置を実施したこと、また、国民の皆さんがウクライナにいろいろな形で心を寄せていることへの感謝の意も表明をいただきまして、日本政府そして日本国民の皆さんの対応がウクライナの人々の支えになっているんだということを感じ、意を強くしたところでございます。

 引き続きまして、日本として、ウクライナ国民に寄り添い、G7諸国と緊密に連携して、しっかりとウクライナを支えていかなければならないと改めて感じたところでございます。

伴野委員 大臣、ありがとうございます、率直な御感想を述べていただきまして。

 私も、拝聴させていただく前に、大統領がほかの国でも演説されていらっしゃるので、全文ではありませんけれども、ポイントといいますか演説の趣旨を、各国でどんなことをお話しされたかも拝見してから臨ませていただきました。

 我が国に対してどういう言葉をお使いになり、どういうストーリーといいますかお話をされるかなと思って聞いておりました。最終的に聞き終えて思いましたのは、各国に対して、その国の国民の方々が今のウクライナの状況に対して共感していただけるような、その国の歴史や経験やエピソードを使って分かりやすくお話をされ、そして、共感して今の状況に寄り添い、そしてできたら共働してほしい、同じように動いてほしい、同じ気持ちで、同じ方向性で動いてほしいという、これはまずロシアを止めるということなんだろうと思いつつ、伺っておりました。

 我が国においては、やはり東日本大震災のことに関して、我が国の国民が共感する言葉を相当ちりばめて使っていらっしゃったなと、あえてたしか津波という言葉も使っていらっしゃったような気がいたしますけれども。福島のいわゆる発電所のことを想起されることもありましたし、帰りたいところへも帰れない方の思いということもおっしゃっていたような気がいたします。

 それで、あえて、G7でも追加制裁のお話が出ておりますけれども、参議院の予算委員会でもいろいろこの辺り議論があったかと思いますし、予算も通過してしまっておりますので、やり方にはいろいろ工夫が必要なのかもしれませんが、率直に、やはり、今まだこの状態でロシアといろいろお金のやり取りがある、あるいは支援のやり取りがあるというのは、国民感情として、すとんとなかなか落ちないだろうと思います。

 まずはちょっとお聞きしたいんですが、これは多分、参議院の予算委員会でもお話しされたと思いますが、ロシア関係予算の総額、令和四年度分だけでも今幾ら計上されていたんでしょうか。お答えいただけますか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の令和四年度のロシア関係予算につきましては、八項目の経済プランに関連する予算といたしまして経済産業省が取りまとめているものでございますけれども、その額は二十一億円であると承知してございます。

伴野委員 二十一億円、額の多寡は別として、やはり二十一億円、あえて、ものお金がまだ、まだといいますか、令和四年度予算でも計上されている。

 そのほかにも、この何年かでずっと、パイプラインのお話やらエネルギーの関係で相当数、今もまだ全面的に中止されていない、進行形とまでは言いませんけれども、動きが完全に止まっていない支援があるかと思いますが、これらのものの累計、支援総額は幾らになりますでしょうか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げた経済プランのほかに、ロシア関連の民間プロジェクトに対して政府からの支援額は幾らかというお尋ねでございますが、私どもが承知しております限り、令和四年度予算において支出を予定しているものはないというふうに承知してございます。

伴野委員 そうすると、全て支出し切ったという解釈でよろしいんでしょうかね。そういうことですね。

 じゃ、今年はないにしろ、今まで、昨年度までの累計は幾らですか。

坂本政府参考人 お答え申し上げます。

 サハリン1につきましては、これまで旧石油公団時代に二百四十八億円の出資をしてございますが、令和四年度予算からの支出は予定されてございません。

 また、サハリン2につきましては、政府の出資実績はないということでございます。

 また、北極LNG2につきましては、これまでJOGMECとして累計一千二百六十億円の出資がございますが、令和四年度からの予算は現時点では予定していないという状況でございます。

伴野委員 経産省さん関係はそういうものだと思いますが、たしか参議院の予算委員会では他省庁の人道支援的なものも幾つかあったかと思います。そうしたものも、こうした事態ですから、私は、ある程度返り血を浴びる覚悟でも全面ストップさせるという思いがあっていいのではないかと思いますし、総理の御決断があってもいいのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 現下のウクライナの情勢を見まして、これまでどおり、何事もなかったのようにロシアとの関係をこれまでどおりしていくことは、これはもはやできない、このように考えてございます。

 また、予算委員会等でも総理からの答弁もあったわけでありますが、八項目の協力プランに関連する予算の中には我が国企業をサポートするための事業も含まれておりまして、いずれにいたしましても、八項目の協力プランに係る予算については、今後の事態の状況を踏まえつつ、国際的な議論も踏まえて対応していくものと聞いているところでございます。

伴野委員 私も、参議院の予算委員会、その辺りの質問に対して、総理の苦しい胸のうち、答弁も伺っていましたので、それは難しいところはあるかと思いますが、ここはひとつ、やはり世界への発信でございますので、よく工夫もしていただければと思います。

 そうした中で、ちょっと余談で恐縮ですけれども、先ほど、プーチンの性格といいますか、今回の蛮行といいますか、力で現状を変えていくこの蛮行に対して、私も、二月二十四日だったと思いますが、どういう言葉が一番適当かと、怒り心頭とか憤怒とか最大級の怒りとか、いろいろ調べてみたんですけれども。ただ、一方で、相手のとんでもない行動に対して怒りの感情だけでぶつかっていきますと、私の拙い個人的な人間関係の中で、大抵そういうときは後で反省することもあって、やはり極力冷静に、クールに結果を出していかなければいけないと思っております。

 大臣も、予算委員会あるいはこの財務委員会で、いろいろな質問の中でいらつかれた御経験もあるんじゃないかと思いますが、そうした中で、やはり、政府のアンガーコントロールにもつながる意味で、つなげていただく意味でも、大臣御自身のアンガーコントロールというんですか、どんなことをおやりになっていらっしゃるのか、もしあれば教えていただければと思います。

鈴木国務大臣 なかなか難しい御質問ですが、やはり、先生御指摘のとおり、いろいろ困難な課題とか重大な決断をするときとか、冷静さを失ってはいけないというのはそのとおりでありまして、そのことは、常に自分を戒めながらやっていくしかないんだ、そういうふうに思ってございます。

 先ほど申し上げましたが、私自身、コルスンスキー駐日ウクライナ大使や、それから、オンラインでありましたけれども、G7の場でマルチェンコ財務大臣から直接ウクライナの窮状を聞き、そういうときは非常に心が痛まり、そして、やはりロシアに対する、率直に、一人間として、大変大きな怒りを持つわけでありますが、そこは、先生御指摘のとおり、常に冷静さを失わないように心がけて、適切な対応が取れますように、今後も心がけていきたいと思います。

伴野委員 御自身の経験も御披瀝いただきまして、ありがとうございます。

 是非ここは、本当に冷静に、しかしながら徹底的に、先ほど私は、人類あるいは地球上に正義があるならばという言い方をしましたが、あるならば、ここはもう踏ん張りどころ、徹底的にやっていただきたいと思いますが。

 今、総理、G7でその話もされているのかもしれませんが、財務大臣がお知りになっていらっしゃる範囲で結構でございますので、今後、追加制裁というものがどういう形でなっていくのか、たしか今朝のニュースでも、最恵国待遇云々というお話もあったかと思いますが、これをするならば、やはり法律を通していただくということにもなってくるのかもしれませんが、今の時点でどんなことを御存じか、あるいはされるおつもりか、教えていただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 岸田総理は、三月十一日発出されましたG7首脳声明を踏まえまして、ロシアに対する制裁の更なる強化策として、ロシアに対する貿易優遇措置であります最恵国待遇の撤回、そして輸出入管理の更なる強化、IMF、世界銀行等からロシアが融資を受けることの防止、資産凍結の対象範囲の拡大、デジタル資産を用いたロシアによる制裁回避の対応の五つに取り組む旨を表明をされたところであります。

 このうち、最恵国待遇の撤回及びデジタル資産を用いたロシアの制裁回避への対応につきましては、速やかに法改正の準備を進めることとし、昨日ブリュッセルで開催されたG7首脳会合において、その旨を総理から表明があったところでございます。

 また、輸出入管理の強化と資産凍結の対象範囲の拡大につきましては、本日朝の閣議におきまして、更なる措置を取ることを確認をいたしたところであります。

 また、IMFや世界銀行等による具体的な対応については、各国際機関において検討、決定されるものと承知をしておりますけれども、日本としても、G7を始めとする国際社会と連携し、適切に対応をしてまいります。

 ロシア制裁に係る日本の迅速、果断な対応は、ウクライナを含む国際社会からも評価をされておりまして、引き続き、G7等と緊密に連携しつつ、適切に対応をしてまいりたいと考えております。

伴野委員 是非、そうした辺りを、正義を重んじる国々がクールに連携していただいて、私は、徹底的にこの際やっていただく。

 なぜならば、今を生きる大人の責任として、やはり今回の件は子供たちも注視しています。本当に関心を持っています、小学校、中学校。場合によっては、いつ我が国もということだって考えていらっしゃるお子さんだっているかもしれません。そうした中で、やはり正義が必ず勝つというところを私は今回はしっかりとクールに見せていただければと思いますし、今を生きる大人の責任として見せなければいけない正念場だと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 では、次なる課題に行かせていただきます。

 二つ目は、賃上げ税制の政策評価についてです。

 これをずっと、私、二月一日だったのでしょうか、本会議で、税制改正の改正案の本会議での登壇をさせていただきましてから、ずっとしつこくウォッチをさせていただいております。このウォッチをしていく中で、随分自分自身もアンガーコントロールしてきたつもりなんですけれども、まずは、大臣、失礼な言い方をするかもしれませんが、法人に係るいわゆる賃上げ促進税制が政策評価の対象になっていることは、大臣、御認識ですよね。

鈴木国務大臣 対象になっております。

伴野委員 本当に大前提のお話をさせていただいて恐縮ですけれども、この件について、ずっとこの委員会でも取り上げさせていただいて、私だけではなく諸先輩方も何度となく、同じような仕組みの、いわゆる政策評価について、この場でも何度となく質問もあり、与党の方々も、本当にどの程度の効果があるのかはっきりさせてくれというような御意見もあったと思いますし、あるときは限定的な効果あるいは一定量の効果という表現を使っていらっしゃったと思いますが、少なくとも、今大臣も確認させていただいたように、政策評価の対象で、総務省がおやりになっていらっしゃる対象になっているんですね。

 過去、この場でも私は何度か、どういう評価になっているのか披瀝していただきたいと。私自身も、言っている以上、ホームページで探しました。前にも申し上げたように、分かりにくい。なかなか、素人がと言うとあれですが、おまえも素人かと言われちゃうとちょっとつらいんですけれども、よっぽど、どこにどうあるというのをある程度予測しながら、名前も、随分、表現も変わっていますから、これがいわゆる賃上げ税制につながっていくフレームなんだろうというふうに見ていかないと、見られないところもあります。字も小さいです。ですけれども、私なりにもやっておかないとこれはきちっとした質問ができないということで、私なりにもやりました。

 それで、たしか委員長にも御配慮いただき、それぞれの党の理事さんにも御配慮いただいて、たしか理事会でも御協議いただいて、いわゆる政策評価が今まで出ているんだったら、ちゃんとそれを資料として取りまとめて出してくれ、委員会に出してくれというお話をいたしました。しかしながら、待てど暮らせど出てこない。参議院で全て通過する直前の三月十八日に、課長さんお二人で走っていらっしゃった。多分、きちっとこの話を伴野にしておけということでいらっしゃったんだと思います。

 ですから、足を運んでいただいたのは是といたしますけれども、持っていらっしゃったのが、正直言って、これは厚さにすると三、四ミリですかね、まさにホームページをばあっと打ち出してこられて、はい、これですと持ってこられた。さらには、経産省のホームページを見ると、今回の事前評価をやったやつがやっと出てきましたので、それをお持ちしましたと。まあ、プラスアルファを持ってきて、どうでしょうかというところだと思いますが。

 しかしながら、この程度と言うと恐縮ですが、打ち出してきていらっしゃるものだったら、多分、私が質問した翌日には届いていてもおかしくないでしょうし、本来、これとても、読んでもなかなか、いわゆる評価指標が各年度ばらばらになっている。まあ、そういう指摘も実際ありますので。

 私が期待していた資料はどんなものだろうかというところで、今日の資料を提出させていただきました。二枚物の、これが四年度分の政策評価、総務省がおやりになった政策評価を取りまとめたものです。

 こういうふうにまとめていただかないとなかなか理解できませんし、先ほど申し上げましたように、各年度、指標も違います。場合によっては、二十五年度は全く違うやり方をしてあるので、比較してもしようがない。こういうところまで出していただくのを本当は期待したんですが、出していただけなかったので、自分たちでやりました。

 中身をやり出すと、これは一時間ぐらいかかっちゃいますので。ただ、ばっと読んでいただいても、正直言って評価されていない。評価されていない、一言で言って。これじゃ、なかなか見せられなかったのかなという勘ぐりもしたくなる。つまりは、夏休みの宿題をやっていなくて叱られたお子さんがいるとして、それを慌ててやって学校へ持っていって、評価を先生からいただいた。その評価を見せろとお父さん、お母さんに言われても、なかなかもう怖くて見せられないという状態のペーパーがこれだったのかなという気がしてなりません。

 是非、各委員の方も見ていただいて、来年度、同じような質問とか質疑をしなくてもいいように、やはりばしっと物差しを示して比較していただいて、効果があるものは効果があっただろう、どうだということをやる時代じゃないかと思うんですね。一方で、それが御自身のおやりになっている仕事の質を高めていくことにもなる時代ではないかと思います。

 じゃ、具体的にどうするんだということですけれども、財務省にはいい研究所がありますよね。財務総合研究所、ここでおやりになっているレポートとか最近の研究なんかも見てみました。直接とおんと当たるものはありませんでしたが、多分、方向性としては同じ系統の、工夫をしていただければ、それにお詳しい方で研究していただければ、どういったものが説得力のある指標で、説明力がある目標値なり、あるいは効果測定になっていくのかというのをおやりになっていただけるんじゃないかと思うんですが。

 そうこう考えていたら、三月二十二日の日経新聞には、国がやっている事業のすべからく三割程度は成果が測れない状態の政策ばかりであった、事業終了時の目標もないのも散見されたというのが、日経新聞の三月二十二日の朝刊に、一面に出ています。

 つまりは、政策評価がなくてもこの国はやっていけるのかと。どうしても緩みますよね、絶対に。アメリカは一年ごとにやっているということで、たしか日本もそれを参考にしてやってきたかと思いますが、やはりレビューなりチェックなりがきちっとないと、何事も緩みます。

 こうしたことを含めて、大臣の今の御認識と将来に向けての意気込みを聞かせていただけませんか。

鈴木国務大臣 伴野先生から、賃上げ税制における政策評価について、分かりにくい、また、不十分ではないか、そういうような御指摘をいただいたところでございます。

 それで、賃上げ税制につきましては、これまで、要望省庁であります経産省によりまして政策評価が実施され、その政策評価に対して総務省による点検が実施されているという形になっているところでございます。

 こうした政策評価に対して、まだ分析や説明が不十分ではないか、そういう御指摘があることは認識をしておりまして、要望省庁において適切な評価が行われるよう、総務省ともしっかりと議論しつつ、より一層の説明責任を果たしていただくとともに、財務省としても、税制改正プロセスの中でよく議論をしてまいりたいと考えております。

 なお、令和四年度税制改正の法案審議の際には、措置がどのように貢献したかについて、効果を検証し、かつ公表することで政策効果を適切に把握できるように努めることという附帯決議もいただいたところでございます。

 財務省としても、引き続き、租税特別措置については、この賃上げ税制も含め、その必要性や政策効果をよく見極めた上で不断の見直しに努めていかなければならない、そのように思っております。

伴野委員 本当に評価というのは難しいということを分かった上で申し上げているわけでございますが、やはり査定官庁であるならば、その査定をする物差し、これを研ぎ澄ましていただかないとやはり国のためにならないと思いますし、我々は賃上げ自体は大いに大賛成で、もっともっとというぐらいの立場でございますけれども、税金を投入してそれを側面的であろうが支えるものであれば、最大限の効果になるようにしていただく。そのためにも、目標値をどう選択していくか、目標値とする指標をどうするか、そして結果をどういう指標でチェックしていくか、これはやはりしっかりやっていただかないと、税金を投入している以上、今の時代、通用しないんじゃないかと思いますので、来年の委員会でこうした議論が起きていないことを願いつつ、大臣に期待したいと思います。

 そろそろ、大臣、御準備していただいて結構でございますので。この後の質問は政府参考人の方に直接させていただければいいかと思いますので、どうぞ。

薗浦委員長 じゃ、大臣、御退席いただいて結構でございます。

伴野委員 ここからは、ちょっと時間がもうあと、限られておりますので、五十二分までいいんですかね、ですから、二分弱、三分ぐらいだと思いますので、時間の許す限り、今私の関心事である財政投融資のお話やら今後の経済見通しについて質問をさせていただければと思います。

 まず、財政投融資。こちらも最終的には査定基準というか物差しの話になってくるんですが、まずは、ここ三年間の実績値について、改めて確認も含めて教えていただけませんか。執行状況が分かっている令和元年度、それから二年度、三年度、それから四年度は計画額ですけれども、この計画額と実績額、それぞれ順番に教えてください。

角田政府参考人 お答え申し上げます。

 元年度からでよろしいでしょうか。

 元年度は、計画額が、ちょっとややこしいんですが、当初計画と、それから改定と、前年度からの繰越しを全部合わせますと……(伴野委員「最終の計画額でいいですよ」と呼ぶ)最終の計画額は十七・四兆円となっておりまして、年度内に運用したのが十二・五兆円ということでございまして、七一・七%。それから、二年度は、今の数字、六十八・八兆円に対しまして、年度内の運用額が二十六・二兆円、三八・一%でございます。三年度は、これはちょっと、終わっていないんですけれども、三〇%台の半ばあたりではないかというふうに見込んでおるところでございまして、四年度の当初は十八・八兆円ということで、かなり落としているということでございます。

伴野委員 いろいろ計画額が積み上がってくるんだろうと思いますが、予算のときは、シーリングとかキャップとか、いろいろなやり方で抑えていくなり、チェックをより厳しくしていくという仕組みが働くんであろうと思うんですけれども、財投の場合は、計画額というのはどのように最終的にお決めになっていくのか。あるいは、誰が決めるのかというところまで伺えるのかどうか。そして、査定はどのようにしていらっしゃるのか。共通の査定基準等々があるのかどうか。はっきり言って、いろいろな団体にまたがるものもありますよね。この辺り、教えてください。

角田政府参考人 お答え申し上げます。

 財政投融資計画につきましても、一般会計や特別会計の概算要求の際に、各対象機関の要求を取りまとめて、財務大臣の方に提出いただいております。

 定性的に申し上げれば、財投計画につきましては、政策的な必要性という観点、民業補完性という観点、それから償還確実性という観点などから審査を行っているところでございます。具体的には、要求官庁からヒアリングを行いまして、論点を整理して財政制度等審議会に資料を提出し、意見を聴取しておりまして、その際、必要十分な規模を計画として策定し、予算と併せて国会に提出させていただいているということでございます。

 規模の件につきましては、御指摘のとおり、ここ二年間は、コロナ対応もございましたので、十二分な額を確保するということに力点を置いておりまして、特に政策金融を中心に、計画に十分な余裕を持たせたものですから、結果的には御指摘のような事態になっているところでございます。財投審議会においても、さすがにそろそろ、もう少し実態に合った数字にした方がいいんじゃないかという御指摘もありまして、今回は精査をさせていただいて、四年度の計画を策定させていただいたというところでございます。

伴野委員 まだ続けたいところでございますが、時間が来ておりますので。

 局長も正直におっしゃっていただいて、コロナで、確かに、大きい服を作っておけばみんな着れるだろうという考え方も、それはコロナの時期ですから致し方なかったかと思いますが、収束していく中で、精査も含めて、それから、持ち越しになっていくのか、いわゆる計画額と実績値の差は今後どうしていくのかというようなこともまた当委員会でも教えていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

薗浦委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前九時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時二十四分開議

薗浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党の中川宏昌です。よろしくお願いを申し上げます。

 昨日、岸田首相はG7で、ロシアに対する追加制裁措置のほか、ウクライナと周辺国に一億ドルの追加人道支援を行い、今後とも断固とした対応を取っていくとの表明をされました。断固とした対応を是非取っていただきたいと思います。

 足下を見ますと、今、日本の金融機関からロシアに向けた与信残高は、一兆円規模と巨額になっております。ロシアの幾つかの銀行がSWIFTから除外となり、また、ロシアは外貨建ての債権返済をルーブルでよしとする奇策を打ち出すなど、混沌とした状況であります。

 三月十六日期限の国債の利払いが注目をされましたが、ロシアはドルで対応したため、この時点でのデフォルトは回避をされましたが、四月にはドル建ての国債の元利払いがあり、ロシアがデフォルトに陥る可能性は高い状況であります。

 そこで、まず、ロシアへの経済制裁により、現在の状況で懸念をされる日本でのインフレや景気減速のおそれについて御見解をお伺いいたします。

岡本副大臣 お答え申し上げます。

 ロシアによるウクライナの侵略、ロシアに対する経済制裁が日本経済に与える影響については、状況が刻々と変化しておりますので、確定的に申し上げることは困難でありますが、その上で、ロシアやウクライナは原油や天然ガス、小麦などの生産におきまして世界の市場におけるプレゼンスがとても大きく、ガソリンや電気代、食料品といった国民生活にとって身近な物品等の価格への影響、また製造業のサプライチェーンへ与える影響など、日本経済に与える影響を引き続きしっかりと注視していく必要があるというふうに考えております。

中川(宏)委員 また、もう一つの懸念としては、ロシアに対してリースで出している航空機をロシア側が没収するという情報もありまして、日本国内の企業や金融機関に影響が出ると思われます。

 政府として、各金融機関等と緊密に連携を取り、日本へのダメージが最小限となるよう万全な体制で現在臨んでいただいていると思いますけれども、この点につきましてもお伺いをいたします。

松尾政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の一部の金融機関の関連会社ではロシア向けに航空機リース事業を行っているものの、その規模はグループ全体で見れば必ずしも大きくないと承知しております。

 また、日本の金融機関は充実した資本基盤を備えていますので、ロシア向け航空機リース事業から発生する損失が日本の金融機関の健全性に与える直接的な影響は限定されていると考えております。

 しかしながら、今後のロシア・ウクライナ情勢がどのように推移していくのか確定的に申し上げることは困難でございますので、金融庁といたしましては、予断を持つことなく、日本の事業者に及ぼす様々な影響を含め内外の経済や金融市場を注視し、日本の金融システムの安定、また金融機関による金融仲介機能の発揮についてモニタリングしてまいります。

中川(宏)委員 今御答弁では、限定的とのこんな御答弁でございましたけれども、これからの展開次第では最大の危機に陥る、こういうこともあり得るとの認識で万全な体制を取っていただきますようお願いを申し上げます。

 次に、国の二〇五〇カーボンニュートラルの目標の下での環境対策への財政支援についてお伺いをいたします。

 政府は、二〇二〇年十月、二〇五〇年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという宣言をいたしました。地球温暖化の現状は極めて厳しい状況で、日本の気候変化は顕著なものがあります。

 ここで、私の地元の長野県で二〇一九年、二〇年に行ったCO2削減の実証実験を御紹介したいと思います。

 長野県南箕輪村の小学校の教室に後づけで内窓を取り付けまして二重窓とし、電力消費量の差を調べたところ、省エネ効果が、夏場で三八%、冬場で二七%の電力削減との結果が出ました。また、コストにおいては、十三年で回収ができ、設置後二十年で約八百万の導入効果があると試算をされました。

 政府では、来年度予算で、文科省を始めとして四省が連携してのエコスクール・プラスの事業が行われる予定ですが、地方公共団体がより積極的に、また各自治体ができることから対応していくことは、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に大きく資すると考えます。

 このような取組等に対し、政府が目指す二〇五〇年の目標に対して財務省としてもしっかりと取り組んでいただきたいと思いますが、御見解をお伺いいたします。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの支援策につきましては、例えば令和四年度予算におきましては、公立学校の施設整備に対する国庫補助に関し、省エネルギー化に大きく貢献するLED照明を標準仕様とするとともに、環境省の選定する脱炭素先行地域に立地する学校などにおきまして、一定の省エネ効果を達成する施設整備を行う場合の建築単価について八%を加算することといたしております。

 財務省といたしましても、引き続き関係省庁と連携をしてまいります。

中川(宏)委員 ありがとうございました。

 地方が温暖化を進めていくには、一定の財源も必要であります。地方の現状と内容をしっかりと精査していただいて進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、今月十六日の地震で、宮城県や福島県を中心に、広範囲にわたって甚大な被害が発生をいたしました。今、各自治体は、年度末の多忙と同時に、年度末がゆえに財政的に厳しい状況であります。早期復旧に向けましては、マンパワーの支援も含めて、特別交付税での別枠措置など、財政支援をしっかりと行っていただきたいと思いますが、御所見をお伺いしたいと思います。

岡本副大臣 まず、今回の地震で被災されました全ての皆様に心からお見舞いを申し上げます。

 現在、被災自治体や関係省庁におきまして、被災状況の確認に引き続き全力を尽くしておるところでございます。被災者の方々が一日も早く安心して生活できるように、財政当局といたしましても、関係省庁と緊密に連携をいたしまして、災害状況の確認や必要な支援の検討などを適切に対応してまいりたいと考えております。

中川(宏)委員 是非よろしくお願いを申し上げます。

 また、今回の地震で、宿泊のキャンセルが相次いでいるとお聞きをしております。復興の一助としての観光政策の推進がますます重要になってくるかと思っております。

 そこで、観光対策についてお伺いをしたいと思います。

 訪日外国人旅行者数は、二〇一三年に目標であった一千万人を突破をしまして、二〇一九年には三千百八十八万人まで増加をいたしました。コロナ後には、再び訪日が増え、観光が復活し、地域の経済社会活動が再スタートする、期待の声は大変大きいです。

 コロナ前でありますけれども、観光客の増加で喜ぶ一方で、観光客のマナー違反や違法民泊、また、迷惑施設などの設置など、マイナスの面も見受けられました。そういう点では、今後は、数というより質を追求していくことも求められます。例えば、地域の観光資源を生かした事消費への移行によりまして付加価値の高い観光の実現が図れることで、結果、数がついてきて、経済効果も上がると考えます。GoToトラベルも含めまして、観光立国の施策は新たなステージに引き上げることが重要であります。アフターコロナの見極めが厳しい状況ではありますけれども、時期を逃せば世界に遅れると思料をされます。

 政府として、しっかりと準備をし、日本経済の復興の鍵を握る観光対策を着実に行っていただきたいと思いますが、この点についてお伺いをいたします。

池光政府参考人 お答えいたします。

 観光は、成長戦略の柱、地方創生の切り札でございます。このため、現在、大変苦しい状況に置かれておられる観光地あるいは観光産業の皆様を国としてしっかりお支えしていく必要があるものと考えてございます。

 このため、観光庁としては、感染状況等を見極めつつ、GoToトラベルの再開など、国内旅行需要の喚起等に取り組むとともに、インバウンドの再開に向けて戦略的に準備をしておく必要があると考えてございます。その際、地域の住民の皆様とも連携して、住んでよし、訪れてよしという観光地域づくりを進めることが大変重要だと考えてございます。

 こうした、旅行者のいわゆるマナー違反などへの対応を含む持続可能な観光の推進でありますとか、また、地方部への誘客、消費額の増加などを進めていく観点で、地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりや観光コンテンツの魅力向上、受入れ環境の整備、こういった観点で様々取り組んでまいることとしております。

 また、我が国の観光の再生に向けまして、地域の観光関係者にとってストック効果が残る取組を進めていくことも重要でございます。具体的には、昨年十一月の経済対策におきまして、宿泊施設の改修等による地域一体となった観光地の再生、高付加価値化、これを進めるため、予算規模を一千億円に拡充した上で、先週三月十八日より公募を開始してございます。

 こういった取組を通じまして、引き続き、観光の再生と復活に向けてしっかり取り組んでまいります。

中川(宏)委員 今取り組むべき状況、そして次なる弾込めを今からしっかり行っていただいて、是非お願いしたいと思います。

 次に、将来のインフラ整備の予算についてお尋ねをいたします。

 令和三年度から七年度の五年間で、防災・減災、国土強靱化の加速化対策が現在実行をされております。現状認識といたしまして、五年間の加速化対策費のおおよそ十五兆円のうち現在の措置額がどれぐらいなのか、まずお尋ねをしたいと思います。

金子政府参考人 お答え申し上げます。

 防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策につきましては、これまでの累計額は、現時点で、おおむね十五兆円程度とされている事業規模のうち六兆八千億円、国費ベースでは、全体でおおむね七兆円台半ばといううち約三兆五千億円というふうになってございます。

中川(宏)委員 ありがとうございます。

 約七兆円ということでございますが、これは後半息切れする可能性もあると思いますが、地域が望む必要な措置を講じていただきたいと思っております。

 ここで一つ心配になりますのが、令和七年度で区切りを迎えた後のことであります。激甚化、頻発化している災害に向け、更なる防災・減災、国土強靱化など、インフラ整備を着実に進めていくことが重要であります。

 そういう意味におきましても、令和八年度以降もしっかりと取り組んでいくことが大事だと思いますが、財務省の認識をお聞かせいただければ幸いでございます。もちろん、これからのことであり、先のことでありますので、具体的なということではありませんでして、決意を是非ともお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。

岡本副大臣 防災・減災、国土強靱化の政策に関しましては、中川先生にも様々御指導いただきまして、心から感謝をいたしております。

 激甚化、頻発化します豪雨災害、切迫する大規模地震、いつ起こるか分からない火山災害等から国民の皆様の命と暮らしを守ることは、国の重大な責務であります。

 こうした災害からできる限り国民の生命、財産、暮らしを守っていくためには、防災・減災、国土強靱化のための五か年加速化対策の推進を含めて、中長期的かつ明確な見通しの下、防災・減災、国土強靱化にしっかりと取り組むことが重要であると認識をしております。

 引き続き、関係省庁と連携をいたしまして、防災・減災、国土強靱化の取組を推進してまいりたいというふうに考えております。

中川(宏)委員 この近年、日本においても各地で甚大な災害が発生をしております。これからも頻発化は間違いないという状況の中にありまして、予算をどう確保していくかということでありますけれども、やはり防災、減災を国家の柱としていく、これが非常に大事だと思いますので、そのような視点に立って、更なるお取組をお願いを申し上げまして、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 実は、私、十五年ぶりぐらいにこの財務金融委員会に帰ってきたんですけれども、改めて、マクロ経済、議論していく中で、日本が直面をしている非常に大きなリスクといいますか、あるいは、激動していく世界の中で日本が取り残されているような、そんな状況をどう克服していくかということ、そんな危機感というのも感じさせていただいています。

 実は、そんな中で、今日はこの質疑を楽しみにしておりました。日銀総裁の黒田さん、ありがとうございます、今日は。四十年近くの時を超えて、再びこうして日本の金融政策のトップとそれから議員という立場で、相対して質問できる機会を得ました。

 当時、私は三重県議会議員でありまして、黒田総裁は大蔵省から三重県に総務部長として出向をしていただいておった。私にとっては、国という大局的な見地から地方行政を学ぶことができる、本当に刺激的な仲間として尊敬をし、そして、日々楽しく語り合ったということを感謝を申し上げたいと思いますし、いろいろ思い出しております。

 黒田総裁には、特に、この十年間の軌跡を追って、じっくり日銀行政の総括的な質疑をさせてもらおうと思っております。大筋は、来月に予定されております、五日の日に予定されております日本銀行の報告に対する質疑の中にその機会を取っていただいて、やっていきたいというふうに思っています。

 今日は、特にその入口になっていくような、今の問題を中心にして、絞って質問に入っていきたいというふうに思います。

 この二年ほどコロナ、また、今年に入ってウクライナの事案というのが、世界の経済の大きな変化を誘発する一つのトリガーになってきたのではないかということで、危惧をしております。

 主な指標、物価であるとか、あるいは金利、あるいは為替、あるいは経常収支ということになるのかも分かりません、ここ数か月の間に通常でない動きが出てきています。これが、一時的なものではない、構造的な要因によるものであるとすれば、これまでの日本の財政金融政策も基本的な見直しが必要ではないかということ、こういう見地で今日は質問をしていきたいというふうに思います。

 まず、金利であります。

 さっき申し上げたように、コロナ対策のため世界が金融緩和を同時に行ってきているということ。それから、サプライチェーンが混乱をして、ウクライナ情勢も、これに起因をしてエネルギー物価を中心にした諸物価が高騰をしてきている。これに対して、米国を始め世界の高いインフレ率に対して、アメリカでは八%を超えてきているというようなそんな中で、FRBの政策転換が始まったというふうに言われています。

 金融引締め。量的な緩和、これが四兆ドルから九兆ドル、以前の緩和というのは四兆ドルから九兆ドルであったのが、今度は逆回りしまして九兆ドルから六兆ドル、これは二五年にはそうなるだろうという民間の予測でありますが、そういう形で逆転をし始めた。また、二二年に七回の利上げで、二三年には三%弱まで政策金利を引き上げていこうということ、こんなことも報道をされております。

 この政策転換を日本としてどのように受け止めていくのかということです。まず、これから質問に入っていきたいというふうに思います。

黒田参考人 御指摘のとおり、FRBは、今月のFOMCで〇・二五%の利上げを決定し、利上げのいわばサイクルを始めたということであります。

 米国経済は大変力強い景気拡大を続けておりまして、労働市場の引き締まりも明確になるという中で、消費者物価の上昇率が八%程度まで高まっている。そうした中で、FRBとしては、インフレ率の高止まりを回避し、これを目標の二%まで引き下げるためには利上げが必要だというふうに判断したものというふうに認識をいたしております。

中川(正)委員 次は為替でありますが、通常、有事の円、混乱したときには、ドルもそうですけれども、円にも資金が回ってくるということで、二〇〇八年のリーマン・ショックでは日本の円というのは百六円から八十七円の円高になっていったということ、あるいは東日本の大震災のときでさえ、また新型コロナのこの今の現状の中でも円が買われてきたという事実があったと思います。

 ところが、今回は逆に円が売られています、このウクライナで。円安方向に流れが変わっているということ、これはマーケットの円に対する信頼が崩れてきているのではないかという懸念があります。現状、百十五円が今百二十円台に乗ってきている。まだ下落をしていく可能性があるんだということをマーケットはしきりに言うわけですけれども、ドル高・円安への流れをどのように判断をしていくか、有事の円が崩れているということはこれはどういうことなのかということ、その見解をお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 これはマーケットのことですので、私から断定的に申し上げることはできませんけれども、御案内のとおり、ロシアによるウクライナ侵攻が始まった頃はまさに有事の円買い、有事のドル買いということで、円・ドルレートは比較的安定していましたけれども、円、ドルは欧州通貨とか新興国通貨に対してかなり上昇しまして、逆に言うと、欧州通貨や新興国通貨はかなり円やドルに対して下落したわけですね。

 その後、最近の状況については、市場ではエネルギー価格が非常に上昇しているために、エネルギーの輸入をする本邦輸入企業のドル買いが、これは一種の実需かもしれませんけれども、それが増えたということに加えて、これも市場で言われていることですけれども、堅調な米国経済とそれに伴う米国の金利上昇ということも背景にあったというふうに言われております。

 したがいまして、現時点で何か円に対する信頼が失われたとか、そういうことではないと思いますけれども、引き続き、為替相場というのは、やはり経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいわけですので、引き続き注視してまいりたいというふうに考えております。

中川(正)委員 さっきお話があったように、二つの要因があるというふうに言われております。第一には、世界のマネーがより高い利回りが見込めるドルに向かっているということですね。これはこれまでもそういう状況はあった。いわゆる危機的な状況が起こったときにはドルへ向いて回っていく、そういう背景はあったわけですね。

 それから、第二には、さっきお話のあったように、日本の貿易赤字が拡大している。これは、原油価格が上がる、あるいは輸入価格が上がる、そんな中で、それを賄うために決済資金の日本のドルが実は不足をしているというふうに指摘をしている経済の専門家がいますが、そこが原因になって、物価の高騰で一月、二月は連続の赤字であります、経常収支が。一兆一千八百八十七億円という額になるんですが、これが過去二番目の大きさになっているということですね。日本でも経常赤字が定着する可能性があるのではないかということが危惧され始めてきています。ここが一つ、私は大きな要因があるのではないかというふうに考えています。

 そして、この二つに更に加えて、今回の予算で見られるように、国政選挙を控えて、とんでもないばらまき的な政策というのが横行していて、財政構造に本気の改革を断行する意思が見られない、あるいはそういう枠組みの中で財政を経営をしていかなければならないんだという財務省自体の意思が完全に消えてしまっているということ、こんなことがマーケットに対しても、ひょっとして政府の財政改革に対する信頼が崩れてきているのではないかという危惧というものを私は持っています。

 経常収支の赤字と、それから財政政策のモラルハザード、これが円に対する信頼を崩し始めているんじゃないかということ、その兆しが出てきている、それが今回きっかけになっているんじゃないかということ、これが、こういう懸念が払拭できないんです。

 そこに対してどう説明するか、これは財務大臣も含めて、改めて答弁をいただきたいと思います。

 まず、総裁から。

黒田参考人 まず、経常収支につきましては、御指摘のとおり、昨年十二月、本年一月と、二か月連続で経常収支が赤字になっております。ただ、ここにはアジア地域における春節などの季節的な要因も影響している可能性がありまして、季調済みで見ますと、経常収支は赤字になっておりません。

 そういった意味で、いろいろな要因が重なっていると思いますけれども、御指摘の資源価格の上昇を受けた輸入金額の増加もかなり大きく影響しているというふうに思います。

 なお、経常収支のやや長い目で見たトレンドを見ますと、御案内のとおり、貿易収支はもう、かつては、非常に大幅な貿易収支の黒字が経常収支の黒字の原因でしたけれども、それはもうなくなっておりまして、貿易収支は大体とんとんか、少し赤字になったりするという中で、所得収支が非常に大きいために経常収支が大きな黒字になっているというのが続いておりまして、この状況は当面大きく変わることはないだろう、これは私の個人的な意見というよりも、IMF等国際機関が指摘しているところであります。

 それから、二番目の財政の問題につきましては、これはもうまさに政府、国会の責任で財政運営が行われるというふうに認識しておりますので、私どもとしては、現在のイールドカーブコントロールの下でゼロ%程度という長期金利の操作目標を実現するために、必要十分な額の国債買入れを行っておりますけれども、これはあくまでも二%の物価安定の目標を実現するという金融政策目的で実施しているものでありまして。また、その面からいいますと、御指摘のように、財政に対する信認が失われたりしますと、金利が高騰してしまって、日本銀行として行っている大幅な金融緩和が損なわれてしまうおそれもありますので、財政に対する信認を確保していただくということが金融政策の面からも重要だというふうに考えております。

鈴木国務大臣 現在、足下では、新型コロナへの対応によりまして財政が悪化をいたしております。これまでは、家計の金融資産や経常収支の黒字等を背景にいたしまして、大量の国債の大部分が国内で低金利かつ安定的に消化されてきたところであります。

 一方、中川先生御指摘のとおり、最近ではエネルギー価格の上昇等を背景にいたしまして経常収支が赤字となっているなど、今後もこれまでと同様の市場環境が継続するといった保証は全くない、このように思っております。

 このような経済情勢等を踏まえまして、長期的、中長期的な財政の持続可能性への信頼が失われることがあってはならないわけでありまして、財政再建の旗はしっかりと掲げてまいります。

 具体的には、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等を堅持をいたしまして、その達成に向けて歳出歳入両面の改革を推し進めていくなど、財政健全化に向けてはしっかりと取り組んでいかなければならない、そのように思っております。

中川(正)委員 ここ十年、あるいはもっとそれ以上だと思うんですが、さっき大臣が答弁されたプライマリーバランスを、それぞれ、黒字化をしていくという努力をしていきますということ、歴代の大臣、毎回毎回、我々がこうした質問をするたびに答えてこられた。ところが、その結果、どうなったかというと、現在のような形になっているわけであります。

 さっき、円がどうも信頼を失いつつあるんじゃないか、あるいはそれを象徴するような事象というのが今起こっているんじゃないかということ、円買いというのがこの危機に際してなくなった、逆に円安に振れているということ、ここをやはり真剣に受け止めなきゃいけないんだというふうに思うんです。

 大臣、どうですか。今の状況と、それから、これからのウクライナの危機、また、いわゆる世界のマーケットが恐らく中長期的に見るとブロック化をしていく可能性がある。そんな中で、様々な資源、原油だけではなくて様々な資源がいわゆる高止まりしていく、一時的な話じゃなくて高止まりしていくような、そういう構造になっていく可能性がある。それだけに、経常収支というのがこれからも揺らいでいく、いわゆる赤字という形で定着をしていく可能性というのは出てきているように私は思うんですが、大臣は、そこのところはどのように今見ておられますか。

鈴木国務大臣 為替のことにつきましては、私の不用意な発言が何か影響を与えてもいけませんので、直接は話はいたしませんが、やはり様々な要因によって市場において決まるものでありまして、今の状況、先行きについて一概に申し上げることは困難であると思いますが、先ほど黒田総裁からもお話がございましたが、やはり為替の安定ということ、これは重要でありまして、急速な変動は望ましくない、そのように考えてございます。

 引き続きまして、特に最近の円安の進行を含めまして、為替市場の動向、日本経済への影響をしっかりと緊張感を持って注視してまいりたいと思います。

 また、経常収支の先行きについても、いろいろ変化もあり得ることでありまして、予断を持って申し上げることはなかなか難しいんだろうと思っております。

中川(正)委員 一つだけ改めて聞きたいんですけれども、経常収支の赤字が一時的なものであるということであるとすれば、その根拠、これをもう少ししっかりと説明をしていただきたいということと、それから、財政赤字については、今回のコロナ禍での歳出を、例えば、東日本大震災のときに私たちがやったような形で、特別税などを創設して、将来こういう形で返していきますよというようなことを、今、マーケットに対しても、あるいは恐らく日本の国民に対してもだというふうに思うんですが、説明をした上で歳出を考えていくということ、これが大事なんだろうと思うんですよ。

 ほかの国の状況を見ていると、やはりそういう形で今回のコロナ禍をクリアしようとしている。例えばイギリスがそうであるように、あるいはヨーロッパ諸国がそうであるように、皆それぞれそういう形で、将来に対して責任というか、将来に対しての安心感というのを、同時に国民に対しての理解というのをやはり政府というのはつくって、そして歳出をしていくということなんですね。そこが今必要なんだと思うんですよ、こういう状況になってきたときに。

 ということも併せて、これからの財政運営、もう一度答えていただきたいと思います。

鈴木国務大臣 現在の経常収支の赤字につきまして、その要因は、為替の影響、円安の影響よりも、やはり、原材料、特に原油、燃料の国際的な価格の値上がりという方がより多く寄与しているんだ、こういうふうに思います。したがいまして、そこの部分が変化することによってこの先変わり得る状況にあるのではないか、そのように認識をいたしております。

 そして、今、中川先生から、コロナ対応で巨額の財政支出をしている状況でございますが、復興予算のときのようにしっかりと所得税増税などの負担とセットで行うべきであったのではないか、こういう御指摘もいただいたところでございます。

 我が国は、現在、新型コロナという危機のさなかにありまして、国民の命や暮らしを守るために、必要な財政支出はちゅうちょなく行わなければならないという、今そういう局面といいますか段階にあるんだ、そういうふうに思っております。

 今後は、まずは新型コロナの危機を乗り越えて経済を立て直し、財政健全化に向けて取り組んでいく、御指摘のコロナ対応の財源の確保については、こうした方針を踏まえて検討する必要があるのだと考えております。

 そこにおきましても、やはり財政への信頼というものはとても重要でありますので、二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化目標等を堅持いたしまして、その達成に向けて歳出歳入両面の改革をしっかりと進めていく、財政健全化の旗というものは、これは引き続きしっかりと掲げていかなければならないと思っております。

中川(正)委員 五千円のばらまきの話が出ていますけれども、そこで選挙をやるんじゃなくて、やはり責任政党として、この財政規律をどうつくっていくのか、そしてその負担を国民に対して今説明して、そして国民の理解の下にこれを乗り切っていこうという、その気概というのがやはり必要なんだと思うんですよ。

 だから、私の思いからしたら、参議院選挙の前に、もしやるということであれば、ちゃんとした説明をやってくださいよということをお願いしたいんですけれども、答えられますか。

鈴木国務大臣 先生が例に挙げられました、年金生活者に対して一律五千円を支給するという話でございますが、これは、事実関係を申し上げますと、今月十五日に、自民党、公明党の幹事長、政調会長から総理に対して、年金生活者等に対する支援策に関する申入れというものがなされたということは私も承知をしております。

 本申入れにつきましては、これまで総理が国会で答弁されているとおり、政府としては、今後どのように取り扱うかについて検討をしていくということでございます。

 そして、今日の閣議で予備費の使用を決定したわけでありますけれども、コロナ対応が主でございますが、その中には、何と言ったらいいんでしょうか、年金生活者に対する何らかの措置をするというもの、それは含まれておりません。

中川(正)委員 大事なところを答えてもらえなかったんですけれども、もう一度言います。これをどうファイナンスするかということは、今のタイミングでやはり出さなきゃいけないということですね。これを改めて指摘をしておきたいというふうに思います。

 さて、もう一つ、円安にこれは振っているわけですけれども、これまでの記者会見の中で黒田総裁、円安が経済、物価にプラスとなる構図というのは変わっていないということを何回も繰り返し強調されているように聞いているんですけれども、この見解の根拠になっている構造というのはどういうことなのか、もう少し詳しく説明をしていただきたいと思います。

黒田参考人 まずもって、為替相場については、経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが極めて重要であるという点を申し上げておきたいと思いますが、その上で、為替円安が全体として経済と物価を共に押し上げ、我が国経済にプラスに作用しているという基本的な構図は変わりないと思います。ただし、為替円安の影響が業種や企業規模、経済主体によって不均一であるということには十分な留意が必要であるというふうに思います。

 円安が経済に影響を与える経路をやや詳しく見てみますと、近年は、輸出数量の押し上げ効果は低下している一方、企業収益へのプラス効果やその設備投資等への波及効果は強まっているというふうに見られます。すなわち、円安は輸出単価も押し上げることで輸出採算を改善させております。さらに、円安は、海外子会社からの配当など、グローバル企業の円建てで見た海外事業収益を押し上げる効果もあります。実際、こうした要因もありまして、最近の企業収益は製造業を中心にしっかりと改善しておりまして、このことは、研究開発投資など、前向きな投資増加や賃金引上げの動きにもつながってきているというふうに考えております。

 一方、円安が輸入物価の上昇につながるという点では、家計の実質所得の減少あるいは輸入比率の高い企業の収益悪化を通じて、我が国経済の下押し要因ともなり得るわけでございます。もっとも、最近の輸入物価の上昇については、明らかに為替円安よりもドル建てで見た原油などの資源価格上昇の影響の方が相当大きくなっているというふうに見ております。

 いずれにいたしましても、為替レートの変動が我が国経済に及ぼす影響については、経済、貿易構造に応じて変化し得るものでありますので、今後ともきめ細かく見てまいりたいというふうに考えております。

中川(正)委員 御説明にもあったように、プラスとなっていく構図というのは、輸出が伸びて、単純に言えば、関連企業が業績を伸ばす、もうけにもなる、海外からその収益を送ってきたというようなことなんだろうと思うんですが。

 今言われているのは、しかし、原材料高あるいは燃料高、これが、サプライチェーンからの輸入物価が上がっていて輸入代金が急増しているにもかかわらず、もう一方の輸出については円安効果が十分に表れてきていないというか、そういう流れになってきた。これを説明するのに、よく財務省の皆さんも、我々に説明をこの間してくれたんですけれども、あるいは日銀の皆さんもそうなんですが、昔と違って、日本の企業というのは、海外へ向いて工場を持っていった、あるいは、子会社を海外に買収して、そのサプライチェーンというのが今あって、日本で作って輸出するというよりも、そのサプライチェーンを使って輸入しながら、あるいはそれを活用しながら日本の経済が成り立ち始めてきているということ。この構造が昔と違ってきましたねということ、ここは大きくあるんだろうというふうに思うんですよ。

 それが徐々に徐々に重なってきて、経常収支は、まだいわゆる資本収支としてあるけれども、これは膨れてきているけれども、大きくなってきているけれども、しかし、貿易赤字というのはさっきの構造の中でだんだんだんだん下がって、貿易部門ではだんだん下がってきて、赤字レベルというのが通常化してくる、いわゆる経常化してくるというふうな構造になってきているのではないか、このことが指摘をされているんだというふうに思うんです。

 そんな中でも円安というのを固執すべきなのかどうかということ、これは一つの判断としてあるんだと思うんです。総裁はまだ大丈夫だと言われているんだと思うんですが、一時的な赤字と見ればこれはまだ大丈夫なんだろうというふうに思うんですが、これを恒常的な赤字、構造的にそうして変わってきたから、日本の経済のいわゆるファンダメンタルズも変わってきているんだというふうに見ていくと、これは違うんだろうと思うんです。政策は変えていかなきゃいけないんだろうと思うんですが、その点についての認識というのはどのようにお持ちかということだと思います。

黒田参考人 日本銀行は、二%の物価安定の目標の実現を目指して大規模な金融緩和を行っておりますけれども、もちろん、単に物価が上昇すればよいという考えではありませんで、企業収益や雇用、賃金が増加する下で物価も緩やかに上昇していくという、いわゆる好循環の形成を目指しております。

 この点、賃金の上昇を伴わずに、原油などの資源価格の上昇が牽引する最近のコストプッシュ型の物価上昇は、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて景気に悪影響を及ぼすため、二%目標の持続的、安定的な実現にはつながらないというふうに考えております。

 したがいまして、日本銀行としては、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、経済活動をしっかりとサポートし、企業収益や雇用、賃金が増加する好循環の下で持続的、安定的な物価安定の目標の達成を目指してまいりたいというふうに考えております。

 なお、先ほど来申し上げておりますとおり、また委員も御指摘のとおり、日本の産業構造が変わってきておりまして、かつては円安が輸出数量を増やすという形で直接GDPを押し上げるという効果が大きかったわけですけれども、最近はそういう効果は小さくなっておりまして、むしろ、輸出価格の上昇を通じて輸出企業の採算を改善するとか、あるいは、最近の製造業の大企業は、もう大半、世界売上げの半分あるいはそれ以上を海外で生産して海外で売り上げるという形になっておりますので、そこの海外の収益の、本社と合算する場合の為替レートは、円安になることによって収益が拡大するということ。

 いずれにせよ、輸出数量を直接的に増加させてGDPを押し上げるというよりも、企業収益を拡大して、それが賃金の上昇とか設備投資の増加につながっていくという、確かに、やや間接的な形になっていることは事実ですけれども、それでも、現時点でそういったことが全体として経済、物価にプラスという構造自体は変わっていない。

 ただ、先ほど来申し上げているように、特にエネルギー価格の上昇という、日本はエネルギーをほとんど輸入していますので、それによる交易条件の悪化というのはプラス面がないわけですので、その動向については引き続き注視していく必要があるというふうに考えております。

中川(正)委員 二%の物価上昇にはこだわらない、もっと弾力的に考えていくというお話がありましたが、そこはひとつ、しっかり見ていっていただきたいというふうに思います。

 残念なことに時間が来てしまいまして、続きはまた五日の日にやらせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問の方に移らさせていただきます。

 本日は、新紙幣や新五百円玉に関しての質問をさせていただきます。

 二〇二四年上半期とされる新紙幣の発行まで二年ほどとなりました。また、それに先立ち、昨年十一月には新五百円玉が発行されました。現在、新五百円玉はどれだけ流通しているのでしょうか。また、それに伴い、日本全国津々浦々の自動販売機や飲食店での食券の券売機など、新五百円玉に対応したものへと切り替えなければいけないと思いますが、この民間の方の対応はどれだけ進んでいるのか、また、どれほどのコストがかかるのか把握されているのでしょうか、お答えください。

角田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、新五百円玉の流通状況でございます。

 昨年の十一月からでございますけれども、今年度中に二億枚の発行を予定しております。また、来年度、四年度につきましては、三・七億枚の発行を予定しております。ただ、日銀の方から市中にどれだけ出回っているかというふうにちょっと狭く考えますと、一億四百万枚が二月末時点で実際に出ている量だということでございます。

 それから、民間の対応状況ということでございますけれども、私どもの確認できている範囲で申し上げますと、いわゆるATMの類い、金融機器の類いですと既に改修が九割ぐらい、鉄道の券売機では会社によってばらつくんですけれども八割から九割ぐらい、食券とかの券売機は三割から四割ぐらい、それから、セルフレジなどの釣銭機が七五%から九割ぐらい、低いのが飲料などの自動販売機でございまして、これは二割程度というふうに見ておるところでございます。

 こちらにつきまして、それぞれでどういう改修をするかによりまして負担も違ってくるようでございまして、正確にはちょっと存じ上げないんでございますけれども、メンテナンスの関係で何年に一度とかの改修の機会があると思いますので、その際に御対応いただければなというふうに考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 民間の方、特に自動販売機などは余り進んでいないということなんですけれども、いずれにせよ、自動販売機、券売機等、新五百円玉にシステム的に対応したものに切り替える必要があると思います。

 この対応コスト、決して少なくない負担があるとは思うんですけれども、五百円玉を新しいものにしますので対応よろしくお願いいたします、二年後には千円、五千円、一万円も変えるからその際もよろしくと、この負担は民間に丸投げということになるのでしょうか。また、新五百円玉の発行と新紙幣の発行の日程をずらしたのはなぜでしょうか。日程がずれることによって対応が二度手間になってしまうと思うのですが。

鈴木国務大臣 まず初めに、新五百円玉が出ることによって、いろいろ券売機等の機器を民間で変えていかなくちゃいけない、そのコストについてどういうことができるのかということだと思いますが、新しい五百円貨幣の発行が開始された後も従来の五百円貨幣は引き続き使われるわけでありまして、直ちに全てが新貨に入れ替わるわけではないということが一つ。このため、金銭機器の改修については、新しい五百円貨幣の発行開始に合わせて行う必要はなくて、定期的なメンテナンスや老朽化した機械の更新等、事業者の都合に合わせたタイミングで行っていただくことが可能であるということでございまして、そうしたタイミングに合わせて機器が順次対応ができるというふうに考えてございます。

 それから、紙幣発行の時期、タイミングについては、ちょっと政府委員の方からお答えさせていただきたいと思います。

角田政府参考人 今、後ろの方に確認したんですけれども、要するに、紙幣と貨幣とでは実際のシステムが違うものだということで、ずらすことで、むしろ業者さんにとっては負担が軽減されるということがあるようでございます。

 ただ、一方で、例えばバスなんかの料金を支払うようなあれがありますけれども、やはり紙幣も使われるものですから、そのタイミングで改修をしたいというような御要望が業者さんの方にあるというふうなことも一方であるようでございまして、ちょっと、事情によっていろいろなんですけれども、一般的にはそのように、要するにタイミングが重ならない方がむしろ対応しやすいだろうというふうに考えたのと、実際、やらなきゃいけないことの中身が違っているので、ずらしたことによって追加負担はないだろう、こういうふうに考えているところでございます。

藤巻委員 ありがとうございます。

 例えば、自動販売機だけでも日本には四百万台超あるそうです。先ほど、定期メンテナンス等々で変えればいいという話はあったんですけれども、ただ、お客さんにとっては、何で新五百円玉が使えないんだということも言われたりすると、やはり早急に対応しなくちゃいけないというふうに業者さんが考えるのは自然なことで、四百万台あるということで、これをまず新五百円玉に対応させて、二年後に今度は新紙幣に対応させる。

 自動販売機を新五百円玉に対応させるには、ちょっと私が調べたところには、一台、最低でも五万円ほどかかるそうです。輸送費等々を考えたりすると、その程度かなというふうには思うんですけれども、一台五万円で、全国四百万台の自動販売機を変えると二千億円かかります。二年後に、また今度は新紙幣に対応させるのにまた同様の費用がかかるとすると、また二千億円かかります。向こう二年間でこういうことをしなくちゃいけないんですけれども、コロナ禍で立ち直るための大事な時期で、そういうときに企業に余計な負担をかけていいのでしょうか。

 そもそも、新五百円玉であったり新紙幣にする必要というのはあるのでしょうか。特に現在の硬貨や紙幣で困っているという話は聞きません。偽造防止の観点からというのは分かるんですけれども、今、本当に変える必要があるのでしょうか。日本中の自動販売機や券売機、駐車場のパーキングメーター、ATMに新紙幣や新硬貨を対応させるのに、その計算だと数千億かかります。これは偽造による被害額よりはるかに大きいんじゃないでしょうか。

 おおよそ二十年に一回刷新しているという話は聞くんですけれども、別に二十年に一回変えなくてはいけないということではないと思うんですけれども、今、このタイミングで変えるということについてのお考えをお聞かせください。

角田政府参考人 それは、やはり偽造の問題がございますので、長く使っているとどうしても。それで、それが非常に広まってしまってからですとなかなか対応のしようもなくなりますので、通貨の信頼を確保するためにも、ある程度進めていかなきゃいけないことだと思っています。

 それで、先ほど大臣からも御答弁申し上げましたけれども、例えば、五百円玉は今五十億枚、市中にありますけれども、二億から三億ぐらいずつ新しく供給していくと、入れ替わるのに二十年ぐらいかかるようなお話で、その間にずっと同じ自販機を使っているというわけではないと思いますので、タイミングを見て順次切り替えていただければというふうに考えているところでございます。

藤巻委員 まあ、そうですね。偽造防止の観点からの損害額と、それから、これだけ機械がかなり多くなっている中で、そこのコストの見合いだとは思うんですけれども。

 私も、先日、駐車場で駐車料金を払おうとしたんですけれども、手持ちが一万円と新五百円玉しかなくて、精算機が新五百円玉に対応していなかったから、百メートル先のコンビニまで行って、買いたくもない百五十円のお茶を一万円札で買って、千円を用意しました。ああいう駐車場の精算機、一万円が使えないところが多いですし、電子マネーも対応していませんでした。それで、駐車場に戻ってきて料金を払おうとすると、時間が経過していたため、駐車料金のメーターが回って、支払い料金が四百円から六百円に上がっていました。真冬の夜、雨の中、往復二百メートル歩かされて、買いたくもないお茶を買わされて、戻ってきたら駐車料金が上がっている。とても悲しい思いをしました。

 こういう事例、今、日本でいっぱい起きていると思うんですけれども、新五百円玉の周知、また、民間に円滑な対応を促して支援するように、財務省にはお願いしたいと思います。

 続きまして、関連して、道路脇の時間制限駐車区域のパーキングメーターについてお伺いいたします。一時間三百円で車を止められるものですね。

 あのパーキングメーター、現在、百円玉しか使えません。一万円札だけではなく、千円札、五百円玉も、電子マネーも使えません。使えるのは百円玉のみです。百円玉三枚持っていなければ利用できません。持っていないということ、意外にも多いです。余りにも不便です。

 なぜ千円札が使えないんでしょうか。なぜ百円玉しか使えないんでしょうか。今回の新紙幣や新五百円玉の発行を機に、千円札や五百円玉、電子マネーに対応するようにするお考えはないのでしょうか。

楠政府参考人 お答え申し上げます。

 都道府県公安委員会が時間制限駐車区間において設置、管理するパーキングメーターにつきましては、委員御指摘のとおり、現在、作動手数料の納付に百円硬貨のみ使用することができる仕様となっているものと承知いたしております。

 パーキングメーターの個別具体的な機器の仕様につきましては、各都道府県警察において定められているものであるため、紙幣が使用できない理由について一概にお答えすることは困難でございますが、歩道上に設置するものであることから機器の大きさにも制約があるほか、機器の調達コストも影響しているものというふうに考えております。

 警察庁といたしましては、設置場所の道路交通環境のほか、機器の調達や維持管理などに係るコストに配意しながら、利用者の利便性向上が図られるよう、都道府県警察に必要な助言をしてまいりたいと考えております。

藤巻委員 手元に百円玉がない場合、近くのコンビニに行って、千円札、飲みたくもないお茶を買って、百円玉を用意するような方法しかないかとは思うんですけれども、コンビニに両替に、お金を崩しに行っている間に駐車禁止というのは取られることはあるのでしょうか。百円玉がないからやむを得ずコンビニでお金を崩している間に、その間に駐車禁止を取られる、ちょっとひどいんじゃないでしょうか。

楠政府参考人 お答え申し上げます。

 パーキングメーターが設置された場所に駐車するときは、パーキングメーターに表示されている方法により直ちにこれを作動させなければ、道路交通法違反となります。このような駐車車両に対する取締りに限らず、交通違反の取締りにつきましては、交通死亡事故に直結する悪質性、危険性の高い違反や、国民からの取締り要望の多い迷惑性の高い違反に重点を置いて、個別具体の状況に応じて行っているところでございます。

藤巻委員 すぐに作動させないと駐車禁止になるということなんですけれども、でも、百円玉を持っていなければすぐに作動させることができないわけですよね。そう考えると、やはり千円札だったり電子マネーに対応させなければいけないと思うんですけれども。そこのギャップというか、やはり実際使ってみる立場からすると、百円玉を持っていなければ使えない、でも、すぐ作動させなければ駐車禁止になってしまう、ここの使い勝手というか、この辺はどうなっているんでしょうか。

楠政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮でございますが、パーキングメーターにつきましては、警察庁といたしましては、設置場所の道路交通環境のほか、機器の調達や維持管理等に係るコストに配意しながら、利用者の方の利便性向上が図られるよう、都道府県警察に必要な助言をしてまいりたい、そういうふうに考えております。

藤巻委員 千円札、電子マネー、使えないのは非常に不便ですし、また、百円玉三枚を持っていなくちゃいけないということで、かなり使い勝手が悪い、困っているという方も多いと思いますので、是非、千円札、電子マネー、使えるように、御検討の方、よろしくお願いいたします。

 続いてですけれども、新紙幣のデザインについてお伺いいたします。

 新紙幣のデザイン、余り評判がよくないのではないでしょうか。ダサいだとか、子供銀行のおもちゃの紙幣みたいだとか、そういうような声をよく聞くんですけれども、このデザイン、一体誰が、どのような過程で策定したのでしょうか。

 麻生前大臣はこれがいいと思ったんでしょうけれども、鈴木大臣としては、このデザイン、格好いいのか、ダサいのか、すばらしいのか、個人的にどうお感じになりますでしょうか。

鈴木国務大臣 私が就任したときには、もう既に決まっておりました。やはり、初めのうちは慣れないから、ちょっとこう違和感といいますか、そういうのはあると思いますが、使って慣れれば、またいい面も、いろいろ思う面もあると思いますが、国民生活の中にしっかり溶け込んでいくのではないかと思います。

藤巻委員 偽造防止の観点等から外部に委託できないというのはあるのかもしれないですけれども、電子マネー支払いが増えているとはいえ、みんなが毎日使うものです。例えば、何案か国民の皆様に提示して世論調査で選んでもらうとか、もう少し透明性だったり納得感のある選考過程にするというような選択肢はなかったのでしょうか。もうこれに決めたからよろしくねというふうに上の方から押しつけられているような、そんな感じがしてしまいます。

鈴木国務大臣 藤巻先生から、新紙幣のデザインの策定過程が不透明であって、透明性を高めるべきではないかという御質問でございましたが、新紙幣を含む日本銀行券の様式には肖像が用いられます。その理由でありますけれども、これは、人間が持つ、人の顔や表情の違いに対する優れた認識能力というのを人間は持っているわけでございまして、それを活用して偽造抵抗力の強化を図るということ、それから、認知度が高く親しみのある肖像を用いることで券種の識別性の向上を図ること、こういうことが目的として挙げられているところでございます。

 そのため、紙幣の顔として採用する肖像を決定する際は、先生から先ほど御指摘がございましたとおりに、まずは偽造防止の観点から専門的な検討を行う必要があります。どうすれば国民に広く親しみを感じていただけるデザインになるかについては、今後とも検討を続けてまいりたいと思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 皆様が使う大事なお金です。偽造防止の観点を重視しつつ、電子マネーの更なる普及も含めて、効率的かつ利便性の高い体制を構築していただければと思います。

 続いて、二千円札についてお伺いいたします。

 二〇〇〇年に発行された二千円札ですが、現在、流通量はどれだけでしょうか。分かりやすいように、一万円札の流通枚数も教えてください。また、なぜ今回二千円札のみ紙幣の刷新が見送られたのでしょうか。

角田政府参考人 お答えいたします。

 日本銀行券、流通枚数全体としては百七十九億枚ありまして、うち一万円券が一番多いんですけれども百十一億枚、二千円券は約一億枚ということに実際になっております。これは恐らく、ATMでの出金に対応していないこととか、飲料等の自販機ではそもそも二千円入金できなかったりするものですから、そういったことなんじゃないかと思います。

 こういう状況にありますので、偽造というのが余りないものですから、わざわざ改刷して、先ほどから御負担のお話をされていますけれども、そこまでは及ばないだろうということで今回見送らせていただいたところでございます。

藤巻委員 ほとんど流通していないというようなことだと思うんですけれども、そもそも二千円札、何で、どういうような目的で発行されたんでしょうか。

鈴木国務大臣 財務省としての見解といたしましては、二千円券につきましては、諸外国で二のつく単位の紙幣が発行されていることや、国民の利便性の向上などの観点から、二〇〇〇年に発行が開始され、これまで政府としても、日本銀行とともに、金融機関等に対し二千円券の流通促進について協力をお願いをしてきたところでございます。

 財務省としては、二千円券が発行された目的や、それから、これは実際、沖縄県において、紙幣のデザインも沖縄の首里城があったと思いますが、沖縄ではATMにおける支払い、払出しが多く行われているということもございまして、沖縄県を含めた流通の状況も踏まえつつ、引き続き日本銀行と連携して通貨の円滑な供給に努めてまいりたいと考えております。

藤巻委員 外国で二のつく紙幣が使われているからということなんですけれども、じゃ、我が国、何で二千円札、流通しなかったというのは、原因をどのように分析されているのでしょうか。また、その分析も踏まえて、二千円札の発行自体をどういうふうに総括されているでしょうか。大失敗だったのではないでしょうか。二〇〇〇年でめでたいから取りあえず二千円札を発行しておこう、こんな感じの勢いでやっちゃったんじゃないでしょうか。促進しているとはおっしゃっていましたけれども、今更促進しても非常に難しいんじゃないかなと。

 二千円札はちょっともう諦めた方がいいというか、今更コストと労力をかけて広めたところで、どのようなメリットがあるのでしょうか。最後、お答えください。

角田政府参考人 なぜ結局流通しなかったのかというのは、二十ドルとか二十ユーロというのは結構使われて、十ドルと一緒に使われたりしているようなんですけれども、だから、千円札と二千円札を組み合わせて使えるようなところまで爆発的に広がればよかったのかもしれませんけれども、ちょっと鶏と卵なのかなという気も残念ながらしております。

 それで、発行した紙幣について諦めるというのは、ちょっとそれはないだろうと思っておりまして、沖縄では結構使われてもおりますので、我々としては、日本銀行と協力しながら、できるだけ使っていただけるように努めていきたいと思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。二千円札の事例、しっかり受け止めて今後に生かしていってほしいと思いますので、よろしくお願いします。

 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日もよろしくお願いいたします。

 本日は、日本銀行の黒田総裁にもお越しいただきました。本日は、お忙しい中、ありがとうございます。

 闊達な議論をさせていただきますので、鈴木財務大臣ほか関係省庁の皆様、日本銀行の皆様、委員部の皆様、本日もよろしくお願いいたします。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 十八日の金融政策決定会合で、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり原油、小麦、貴金属といった国際商品価格が歴史的水準まで急騰するなど、資源高がもたらす影響が国内経済のリスク要因に明記され、国内の景気判断も下方修正となりました。そして、今、円安・ドル高が進み、一ドル百二十二円まで上がっております。

 少し前の話になりますが、二〇一五年六月十日の一ドル百二十五円まで円安が進行した点について問われたことへの返答として、黒田日銀総裁が、ここから更に実質実効為替レートが円安に振れるということは普通に考えればありそうにないと語ったことが百二十五円で口先介入に出てきたとの思惑につながり、黒田ラインという言葉が独り歩きして、一ドル百二十五円水準が円安の天井となってしまってから六年がたちました。

 そして、今現在は、再度百二十五円に向かって円安トレンドが動いております。国際決済銀行発表の最新の実質実効為替レートは六七・五五と一九七二年の六月以来の円安の水準となっており、いわゆる黒田ラインと呼ばれている、一ドル百二十五円を天井と思惑を持たれた二〇一五年六月の六七・六三を超えてきております。

 黒田総裁にお伺いいたします。

 当時は、アベノミクス、黒田バズーカ含めて政府や日銀の強いメッセージが過剰に円安を誘導してしまったことへのファンダメンタルズへの乖離を、普通に考えればありそうにないという言葉で御解説なさったと思いますが、今回は、そういった大きなメッセージがない状態で、世界の主要中央銀行が過熱感抑制やインフレ対策として金融引締めを始めていることは、コロナ、ウクライナ侵攻が与える影響や余波も当然受けていると考えますが、ファンダメンタルズ含めて現状の大変低い実質実効為替レートをどのように分析されますでしょうか。また、低い実質実効為替レートが日本に与える影響はどのようになると考えますか。

黒田参考人 為替相場の水準あるいは評価について具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが、いつも申し上げているとおり、為替相場は、経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが極めて重要であるというふうに考えております。

 その上で、最近の実質実効ベースで見た為替円安が進んでいることの背景には、内外の物価上昇率の格差、すなわち、我が国の物価上昇率が貿易相手国よりも低めに推移していることの影響が大きいと考えておりますが、いずれにいたしましても、為替の動向は経済、物価に影響を与えますので注視してまいりますし、何よりも経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが極めて重要であるという点は重ねて申し上げたいと思います。

沢田委員 ありがとうございます。

 やはり、はっきりと言えない部分はたくさんあると思うんですけれども、こういった部分もしっかりと、日銀の方で政策決定会合の方から発表していただけると大変分かりやすくなると思います。

 現状、高まるスタグフレーションへの警戒感、止まらない円安、このキーワードだけに反応して、GDPギャップが四・八%もあることや金融緩和の本質を理解しない一部メディアや国会議員からは、黒田日銀のやっていることは物価高や円安政策なのですぐに大規模金融緩和をやめるべきなどといった声が少なからず出ていることに私は大変な危機感を感じております。

 そんな中、政府が、日銀の同意人事でもある、現状の方向性を後押しするいわゆるリフレ派の委員から違った方向性の反リフレ派の方に変更し、昨日認められたことに、我々日本維新の会は反対を投じました。主要野党までが賛成していたのには正直驚きを隠せません。

 黒田総裁にお伺いします。

 こういった声が高まる中、日銀が忖度をして金融引締めに動くのではないかと不安がありますが、どうでしょう。また、先ほど中川委員への返答で、物価の上昇だけでなく、雇用の引上げ、賃金の上昇の必要性を言われておりましたが、改めて質問させていただきます。日銀は物価だけが伸びればよいとお考えなのでしょうか。

黒田参考人 まず、日本経済の現状を見ますと、GDPは感染症拡大前の水準を回復できておりませんし、需給ギャップも御指摘のとおり依然としてマイナスであります。消費者物価の前年比は足下プラス〇・六%ですが、今後、プラス幅をはっきりと拡大し、携帯電話通信料下落の影響が剥落する四月以降は二%程度になる可能性もありますが、物価上昇の主因はエネルギー価格の上昇であります。こうしたコストプッシュ型の物価上昇は、家計の実質所得の減少や企業収益の悪化を通じて我が国経済に下押しの影響を与えるおそれがあります。

 このような経済物価情勢を踏まえますと、日本銀行としては、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けることで、感染症からの回復途上にある経済活動をしっかりと支え、持続的、安定的な物価上昇を目指していくことが適当であるというふうに考えております。

 また、後段の御質問に関しまして、日本銀行は二%の物価安定の目標の実現を目指して大規模な金融緩和を行っておりますが、単に物価だけが上がればよい、物価だけが上昇すればよいと考えているわけではありません。企業収益や雇用、賃金が増加する下で物価も緩やかに上昇していく好循環の形成を目指しているわけであります。

沢田委員 黒田総裁、大変心強いお言葉をいただきまして本当にありがとうございます。

 我々日本維新の会は、まさにこの強烈な十年間、日銀が戦ってこられたことをしっかりと後押しできるように、これからも党として動いてまいりたいと思います。

 GDPギャップが四・八%ということは、それだけ総需要の不足があるということであり、私は、大規模金融緩和の継続、党としても私としても必要と考えております。また、物価の安定と雇用の最大化、そして名目経済成長率の持続的な上昇、これは、私は一体の概念とも考えております。というのも、アメリカの中央銀行でもありますFRBには、物価の安定以外に雇用の最大化と名目経済成長率の持続的な上昇は明記されております。

 ここで質問です。

 なぜ、日本の日銀法には、物価の安定だけがあり、雇用の最大化そして名目経済成長率の持続的な上昇は明記されていないのでしょうか。お願いします。

角田政府参考人 法律の規定ぶりについてのお尋ねなんですけれども、日銀法上、今議員がおっしゃったような意味の目的というのは、一条ではなくてむしろ二条の理念の方に当たりますけれども、そちらにございますように、「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。」とされておりまして、これは、広く、雇用ですとか経済の状況とか、広く読めるようなものになっているというふうに考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 ただ、その広くというのが実は危ないと私は考えておりまして、解釈を拡大すると誤ったメッセージになってしまうということを含めると、明確に、今おっしゃったことを言葉にしていただけるように、ちょっとお願いしたいと思います。

 仮に、今のようにGDPギャップがある中でスタグフレーションのような状況になった場合、相当に高度で緻密な対応が日銀と政府共に必要になってくると思います。先ほど黒田総裁も言葉にしてくださいましたが、金融政策は物価安定だけを求めているものではありません。

 雇用の最大化と名目経済成長率の持続的な上昇ということを明確に言葉として日銀法に追加したいというふうに思いますが、大臣はどのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 先ほど角田理財局長から答弁があったとおりでございまして、第二条におきまして幅広く、今先生御指摘のあったところは、読めるのではないか、そのように思っております。

沢田委員 済みません、大臣。じゃ、ちょっと確認になるんですが、先ほどの条文というものは、条文というか二条ですか、に書いてあるものについては、雇用の最大化と名目経済成長率の持続的な上昇というものが入っているという御認識で大丈夫でしょうか。確認です。

鈴木国務大臣 日銀法上、金融政策は、「国民経済の健全な発展に資すること」とされております。これが第二条であります。現行法においても、日本銀行は、金融政策の運営に当たりまして、経済成長や雇用に配慮することが求められている、そのように解されているところであります。

沢田委員 ありがとうございます。確認が取れました。

 日本維新の会は、日銀法の改正案として、先日、議員立法を提出させていただきました。その内容には、先ほど言った二点に加えて、さらに、日本銀行の自主性の尊重や役員の解任についても、提起させていただきましたことをお伝えいたします。

 続きまして、二十三日、岸田総理と公明党の山口代表との会談にて、物価の高騰などに対応するため、追加の経済対策を検討していくことで一致とありました。日本の現状に、まさに、自民党だけでなく、公明党も強く危機感を持っていると感じました。

 我々日本維新の会は、政府へ、ウクライナ危機等から国民生活を守るための緊急経済対策として、軽減税率を、現行の八%から五%へ、そして三%へ段階的に引き下げる、そういう提案をさせていただいております。

 鈴木財務大臣に質問です。原油価格、穀物価格等の高騰により、物価が落ち着くまでの間、軽減税率を、現行の八%から五%、そして三%へと段階的に引き下げていくようなことが低所得者対策として大変有用であると考えますが、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。

鈴木国務大臣 消費税につきましては、社会保障の費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合うという観点から、社会保障の財源として位置づけられておりまして、軽減税率が適用される飲食料品に係る分も含めまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源であることから、税率を引き下げることは考えておりません。

 また、消費税の税率変更は全ての事業者に関わるものでありまして、システムの改修、値段設定の見直し、値札の貼り替えなど、一定のコストや準備期間の確保が必要となることから、経済情勢の変化等に対して機動的に対応が難しいという問題がある点も御指摘をさせていただきたいと思います。

沢田委員 考えておりませんという答弁で、大変残念だなと思いながらも、やはり、この原油高というものだけがもう独り歩きをして、トリガー条項をどうするんだということばかりが最近メディアによく報道されています。

 ウクライナ危機が発生して物価高騰が拡大するのは、これは石油製品から食品にまで至ります。トリガーを議論する、こういったものはしっかりとやるというのであれば、その他大勢についても積極的に議論すべきであり、実行すべきです。その本丸になり得るのが軽減税率の深掘りと私は考えます。

 では、この軽減税率というものがなぜできたのかというと、消費税率を一〇%に引き上げる際に、低所得者対策の選択肢として、公明党が唯一、軽減税率の導入を訴えたからです。せめて食べ物の税率だけでも低くしてほしい、生活現場の切実な声を何としてでも実現したいとの強い思い、そして粘り強い交渉で、三党合意での軽減税率を実現させました。

 まさに物価の高騰で一番大変なのは低所得者です。まさにこのタイミングこそが、そもそもこの軽減税率をつくった出番と考えております。

 岡本副大臣に質問です。本日はもちろん副大臣として御列席なさっているのは重々承知ではありますが、軽減税率の有用性を誰よりも一番知る公明党の衆議院議員として、当然、物価高騰の中における軽減税率の深掘りなどは党内でも積極的に議論されているとは思いますが、是非今後、更に党内で前向きに動いていただけないでしょうか。

岡本副大臣 物価高騰に対する施策としての軽減税率の低減、税率低下につきましては、今大臣が御答弁申し上げたとおりで、大臣が申し上げたような理由で現在考えておりません。

 一方で、政府としては、現在の物価高の問題点、認識しておりますので、三月四日に原油価格高騰に対する緊急対策を取りまとめました。

 今、沢田委員の方から、原油以外にも食料等の様々な物価高が足下を襲ってきているというふうな現状の認識も共有いただきましたので、省内でもしっかりと議論をし、総理から御指示があれば、追加の様々な対策についても前向きに検討していきたいというふうに考えております。

沢田委員 副大臣、党内の方はどうでしょうか。済みません。

岡本副大臣 今、財務副大臣という立場で答弁させていただいておりますけれども、私の認識している限り、党内では軽減税率の引下げというような議論は行っているとは承知をしておりません。

 一方で、様々な、更なる景気対策については現在議論を進めているというふうに認識をしております。

沢田委員 ありがとうございます。

 我々日本維新の会は、さらに、低所得者の保険料の大幅減免、中小企業対策として、社会保険料の事業者負担分の大幅減免と、国税分の法人税を時限的に一律一五%へ大幅減税する提案もしております。まさに大変に複雑な経済状況に巻き込まれているからこそ、やらなければいけないことが多いと。

 そして、新型コロナが世界的に急拡大した二〇二〇年当時、自民党は、減収世帯に一世帯当たり三十万円を給付するという支援策を軸にいろいろと迷走されていたように、私、当時は一般人として見ておりました。そんな中、全ての人に一人当たり十万円を一律給付する特別定額給付金が必要だと公明党の山口代表が当時の安倍総理に直談判し、決断を促して実現につなげました。閣議決定された二〇二〇年の第一次補正予算案を組み替える異例の対応で、一律給付が実現したことは、当時、不安を持っていた一国民としても、政治は力で動くと痛感いたしました。

 そういった一例を考えても、まさに今回のこの軽減税率、公明党がなければ実現をしないというふうに考えております。是非、岡本副大臣には、国民生活を守れるお立場にあるということを前提で、この提案を党内議論を飛び越えて政府も巻き込み、実現につなげていただけるよう改めてお願い申し上げます。

 最後になりますが、今まさにこの日本が抱える問題、大変広がっております。複雑な状況の中で、経済対策も大変緻密で丁寧なやり取りが必要となっております。

 日銀にはしっかりとした目的を持ってもらい、政府、日銀が共にお互いの英知を結集し、この難局から国民生活を取り戻すとともに、完全雇用、賃金上昇、力強い経済の実現こそが、岸田総理がかねがねおっしゃっている成長から分配の好循環、これを生み出すための私は一つの考えだと思っております。

 現在の経済の分析を誤り、対応を間違えれば、大変に、この激動の中、我々のこれから十年、二十年といった国民の生活をまた暗い状況に差し戻してしまう、またデフレに戻してしまう、そういったことも十分に起こり得ます。

 是非、鈴木財務大臣ほか皆様には、この日本がデフレから若干脱却した中で、更にこのデフレを乗り越えて新しい経済成長へ持っていき、そしてその中で、国民の皆様にしっかりと成長から分配の好循環を生み出していただけるようにお願いをして、私の質問とさせていただきます。

 今日はどうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平です。

 今日も質問の機会を与えていただいて、ありがとうございます。

 今日は、財務大臣に、新しい資本主義ということについて御見解を伺っていきたいと思っております。

 岸田内閣が発足されまして、新しい資本主義ということを掲げておられます。よく中身はまだ分からないということでありますし、新しい資本主義とおっしゃるということは古い資本主義というのがあるという前提なんでしょうけれども、資本主義の定義も定かでありませんので、よく分かりません。

 もし、新自由主義的な傾向を強く帯びている株主資本主義のようなものが古い資本主義だ、こうお考えなのかもしれませんけれども、そんな単純なものではなくて、実は、アメリカで株主資本主義が強く出てきたのは一九八〇年代ぐらいのことでありまして、実は、第二次世界大戦前でも、今でもある会社は幾つかありますけれども、例えばジョンソン・アンド・ジョンソンというような会社は、社是として、実は株主が一位じゃないというようなことをおっしゃっていて、ステークホルダー、ほかにもありますよね、それはまず顧客である、そして従業員であると。実は、第二次世界大戦前のアメリカのブルーチップの大企業は、結構、従業員とか顧客を第一のステークホルダーだというふうに会社の中で定義をして、実は企業運営をされていました。それが本来のオーソドックスな資本主義だったんだろうと思います。

 それが、たまたま戦後のある時期から、アメリカの方で、新自由主義を前提とした株主資本主義、これは当時、新しい資本主義だったんですね。それが新しい資本主義だったんです。もう一回、古い資本主義に戻ると。

 ただ、お気持ちは分かります。株主資本主義の行き過ぎがいろいろ弊害が起きているということは分かりますので、私は決して反対ではありません。新しい、かぎ括弧つきの資本主義を目指されるということについては、一緒に考えていきたいと思っておりますが。

 そこで、今、政府の方では、会議も開かれて、新しい資本主義実現本部もできておられます。その資料等を拝見しておりますと、例えば、具体的な政策として、例えばという例示ですけれども、中長期的視点からのステークホルダーの利益への配慮、あるいは社会的価値の提供というものにフォーカスしておられます。これは賃金や所得の引上げということにつながりますし、人材や無形資産の投資、あるいはフリーランスや非正規等の処遇改善が大事だというような問題意識を、内閣官房が作られている資料を拝見しますと出ております。

 この辺について財務大臣はどのようにお考えなのか、御所見を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 岸本先生御指摘のとおりに、今、新しい資本主義実現会議において様々な観点から議論が行われているところでございますが、その中でも、賃上げへの投資の強化、これが岸田内閣においては新しい資本主義を実現する上において重要課題である、そのような位置づけがなされていると承知をいたしております。

 その上で、政府として、まず、その重要課題であります賃上げに向けましては、あらゆる施策を総動員することとしておりまして、賃上げ税制の充実でありますとか、公定、公的価格の引上げでありますとか、最低賃金の見直しなど、企業が賃上げをしようと思えるような雰囲気を醸成していかなければならないと思っております。

 また、人への投資の抜本的な強化を後押しするために、三年間で四千億円の施策パッケージを創設をいたしまして、非正規雇用の方を含めまして、職業訓練と再就職支援を組み合わせて労働移動やステップアップを支援していくほか、フリーランスの方々が安心して働ける環境の整備にも取り組むことといたしております。

 こうした取組を通じて、これだけで実現するということではないと思いますけれども、新しい資本主義を実現して、国民一人一人が能力を発揮できるよう、政府が環境整備に取り組むことが重要なのではないか、そのように認識をいたしております。

岸本委員 ありがとうございます。

 新しい資本主義実現会議の議論を拝見しておりますと、まだ始まったばかりですけれども、企業の財務分析等から始めておられます。

 これも、この委員会でも、ほかの委員の先生方からも御指摘があった数字でありますけれども、例えばこの二十年間、二〇〇〇年度から二〇二〇年度の二十年間で、大企業、これは資本金十億円以上ですけれども、経常利益は十八兆円ぐらい増えている、その内訳が凸凹するわけですけれども。例えば、現預金は四十二兆円増えています。配当は十七兆円増えました、これは五倍ぐらいになっているんですけれども。一方、人件費はほぼ横ばいであります。設備投資は、逆に、一兆円、五%程度の減少だということの中で、特に増えているのが内部留保、二十年間で大企業の内部留保は二倍近く増えていて、百五十兆円を超えるというような数字が会議の資料に出されたと承知しております。

 実は、中小企業についても同様の傾向がありまして、現預金が四十兆円、設備投資は横ばい、人件費はむしろ十三兆円の減少になっています。内部留保はといいますと、中小企業全体で七十三兆円、これは資本金一千万から一億円未満という定義ですけれども、こういう姿になっているわけであります。

 そうなりますと、結局、法人税減税がありましたけれども、人件費は増やさない、ひたすら配当を増やす。そして、特に株主が、大企業の場合、外国人株主が多いものですから、国富が外国に配当という形でどんどんどんどん流出をしている。さらに、設備投資もしない。ですから、産業競争力が著しく低下をしている。にもかかわらず、ひたすら現預金を含む内部留保が増えているということであります。

 これに対して、いろいろな議論がありますけれども、何とかこの内部留保にためているお金を流動化させて使ってもらったらどうか、これは企業経営者以外が言う話じゃないと私は思っていまして、企業経営者の判断としてやっていることにもかかわらず、内部留保を使わせようみたいな議論があるのは少し私は違和感を感じるんですが、それでも、識者によっては、この内部留保を流動化させるべきであると。

 一つの方法として、まさに内部留保課税、これは実際、韓国で実例がございます。韓国はやりました、内部留保課税。これは、結果、失敗しているんですけれども、実際うまくいかなかったんですね。配当なんかを増やすことを止めるということで、韓国では、三年間の時限措置でしたけれども、投資と賃金増加額と配当の合計額が税引き後当期利益の八割に達しない部分について、一割の追加課税をする。つまり、投資を増やしたり賃金を増やしたりすると課税は少なくなるんですけれども、ただ、問題は、配当を入れてしまっているものですから、ある程度理念的にしようがないんですけれども、結局、配当を増やすことで逃げられてしまっているというので、これは制度のつくり方かもしれません。

 いずれにしても、内部留保というのは、経営者の方もいらっしゃいますけれども、法人税を払った後のお金なんですね。法人税をきちんと納税した後の、企業経営者の判断として残している内部留保に課税をして流動化させようという意見もありますけれども、これについての財務大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

鈴木国務大臣 先生御指摘のとおり、ここのところ、高水準の企業収益を背景といたしまして、内部留保や配当が増加しているということでございます。

 内部留保が当面使う当てのない現預金として保有される場合に、経済の好循環につながりにくいということでございまして、経済成長を実現するためには、これを、ただため込むのではなくて、何とか、賃上げでありますとか設備投資に使っていただくということが大切なことではないかと思います。

 そして、その手法の一つといたしまして、この内部留保への課税について考えたらいいのではないかという御意見がいろいろあるということは承知をいたしているところでございますが、先ほど岸本先生から御紹介がございましたとおり、これは、一度払った税金のものにまた税金をかけるのではないか、いわゆる二重課税に当たるとの指摘があるわけでございまして、こうしたことからも慎重な検討が必要であると思います。

 先ほど申し上げましたけれども、企業が、内部留保をため込むだけため込んで、投資や賃金引上げ等に積極的に取り組まないということは問題であるわけでありますので、今般の税制改正におきましては、成長と分配の好循環の実現に向けまして、賃上げに係る税制措置を抜本的に強化するとともに、オープンイノベーション促進税制の拡充を行うというところにしたわけでございます。

 何とかこの内部留保がこうした人への投資、賃上げ、また新たな成長への投資につながるよう、様々な施策を考えていかなければならないと思っております。

岸本委員 ありがとうございます。内部留保については、私も同様に考えております。

 さらに、内部留保といいましても、これは実は、貸方と借方で常に使っているお金もたくさんあるわけでして、まさにMアンドAの投資とかに使っているものもありますけれども、問題は現預金ですよね。現預金が多過ぎるのではないか、ある一定の現預金に課税をしてはどうかという議論もあるんですけれども、確かに大企業の現預金は四十兆円近く増えていますが、これも実は、総資産に占める現預金の比率はずっと七%前後で推移していまして、特別、比率が増えているわけでもないという事実もあります。

 それから、中小企業も結構今現預金を持っていらっしゃるんですけれども、これも、経営者の側からすれば、キャッシュフローをある程度持っておかないと心配で経営もできませんよと。実際、個別名を出すわけにいきませんですけれども、ある程度今経営を維持している家電の会社と、海外の会社に買われたような会社は、やはりキャッシュフローの問題もあったんですね。ですから、経営者とすると、キャッシュフロー、内部留保として現預金を積んでおきたい。

 実際、中小企業と合わせた二百兆円ぐらいの現預金は、実は売上げの大体一・七か月分ぐらいなんですね。二か月切るぐらいです。これは、平均していくと、企業の運転資金として二か月分ぐらいのキャッシュフローを持つというのは、そんなにため込んでいるというわけでもないと思います。企業によって違います。これが五割のところもあるから問題なんですけれども、なかなか現預金に課税するというのも問題なんだろうと思います。

 一方で、これは海外でもいろいろな提案があるんですけれども、自社株買いというのが、これは物すごい金額になっています。自社株を買うことによって株価が上がる、株価が上がることによって経営陣の報酬も上がるということでありますし、株主はもちろん喜ぶわけですけれども、この自社株買いに対して、これのやり過ぎはどうなのかというような議論があります。

 実際、アメリカでは、上院の財政委員長のワイデン議員なんかが主張されていますし、上院の銀行委員長のブラウン議員も主張されています。例えば、企業の自社株買いに二%の税金を課す案、これがアメリカの上院では議論をされようとしているわけでありますけれども、この点、株主配当の還元の行き過ぎへの歯止めとか自社株買いの制限などについては、財務大臣はどのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 企業が成長の果実をどのように還元したり再投資していくかということにつきましては、これは、基本的には、各企業において、その置かれた状況に基づき経営判断をすべき事柄であると思います。

 御指摘の提案のような制限につきましては、企業の柔軟な対応の余地を狭めるとの指摘もあるということを承知をしているところでございます。

 その上で、企業の利益につきましては、株主への配当、配分だけではなくて、持続的な成長のために新事業等に再投資すること、長期的な視点で賃金など従業員等へ人材投資をしていくこと、これが重要なことではないかと考えております。

岸本委員 それで、今いろいろ税金を使った施策の議論をさせていただきましたけれども、税金というのは、当たり前ですけれども、罰金ではありません。罰金ではありません。何かよくないことを止めるために税金をかけるという発想は、これはおかしいんです、それなら罰金でやればいいので。税金は罰金ではありません。担税力、まあ、いろいろな定義がありますが、基本的には、担税力があるから、そこに税金を払っていただける能力があるからということなんですね。ただ、これも一度決めるとなかなか変わらないものですから。

 昔、戦後、自動車に乗る人は、これは個人で乗ろうとビジネスで乗ろうと、自動車を持っている人はゆとりがあるんですよね、だから、自動車関係から、担税力があるから税金をいただきますと。もちろん、それでガソリンとか軽油も使われますよね、これを使う以上、それが買える担税力がありますよねと。さらに、ガソリンや軽油で、道路で走られるので道路が傷みますよね、したがって、ガソリンや軽油の税金をいただいて、担税力があるところからいただいて、道路の整備に使いますと。こういうような発想で最初はいくんですけれども、自動車がぜいたく品ではなくなって、先生方の地元の地方へ行けば、私の和歌山でもそうです、一人に一台ですよ、軽自動車ですけれども。公共交通機関がないわけですから、誰もが使う。それでも制度を変えない。こちらの方が問題なんですね。

 もう一度言いますけれども、税金は罰金ではありません。むしろ、今財務大臣がおっしゃったように、賃上げをしていく、いろいろな投資を促していく。これは逆に、北風と太陽じゃありませんけれども、租税特別措置、これもまあ見直しが必要ですけれども、優遇して、そちらの方向に誘導するというのもあるかもしれません。ただ、これも、前回ここで言いましたように、実はそれほど政策誘導効果があるのかということについては、なかなか難しいところがあります。

 私、途中でトヨタ自動車で勤務しておりましたけれども、トヨタ自動車は、税制優遇措置があるからといって企業行動を変えたことは一度もないというのを聞いて、のけぞりました。私は何で主税局で働いていたんだろうかと。結果、たまたま、企業行動の後、減税措置がついてくるみたいな話でありましたけれども。

 そうではなくて、これは金融担当大臣としての鈴木大臣にお聞きしたいんですけれども、太陽というか政策誘導するのに、例えば、人的資本向上に向けての教育、生産性の向上に結びつく投資を奨励するために、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コード、さらにはESG投資等によるマーケットからのプレッシャーをかけながら、そちらの方に誘導していくというようなことを金融御当局としてお考えいただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 岸本先生が御指摘のとおり、企業が賃上げや設備投資を行いたくなるような環境を整備するということは大切なことなんだと思います。

 そして、御指摘のスチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードについてでございますが、近年においては、中長期的に企業価値を高める源泉といたしまして人材投資の重要性が増しており、また、企業のサステーナビリティーの観点からも、人的資本は企業経営の中心的な課題の一つになっている、そのように認識をいたしております。

 また、いわゆるESG投資というのもございますが、ここにおきましても、企業の持続的成長の観点から、企業が社員等とどのように向き合っているかといった点は重要な要素になると考えております。

 こうした動向を踏まえまして、金融庁といたしましても、スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードの改定を行いまして、投資家は企業と対話を行う際にサステーナビリティーを考慮すべきことや、企業は、人的資本への投資を含むサステーナビリティーに関する取組について基本的な方針を策定するとともに、具体的に情報開示すべきことなどの規定を盛り込んできました。

 御指摘のように、資本市場における投資家と企業の建設的な対話を通じて人的資本への投資を促していくことは、ますます重要になっていると思います。

 このように、引き続き、コーポレートガバナンスの改革の定着に努めまして、企業が賃上げや設備投資を行いやすい、行いたくなるような、そういう環境整備に努めてまいりたいと思います。

岸本委員 全くそのとおりだと思いますし、最後に、質問の時間がなくなりましたので、問題提起だけをして終わりたいと思いますが、まさに賃上げを通じた分配というのは、これをコストと見るのではない、企業のコストではないんだ、価値創造の基盤になる投資なんだというふうに考える。そのために、投資の価値、人材投資の価値を、企業開示の中で、これを非財務情報のものとして可視化し、見える化するということを是非進めていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 インボイスの導入について質問します。

 この間、鈴木財務大臣及び政府に対して、地方議会からのインボイスの中止、延期を求める意見書が増えています。私はこの間、この意見書の一覧について資料請求してきましたけれども、財務省の事務方がなかなか出さない。質問すると分かったら、出してきて、大臣が陳謝される。そして、その資料は、適格請求書等保存方式と表題にはあるんだけれども、インボイスという文字が入っていないからカウントしない、ひどいものでありました。

 改めて伺います。

 財務省が受領した地方自治体の意見書のうち、インボイスとの記載があるもののほか、適格請求書等保存方式及びシルバー人材センターと記載があるものの意見書は、どれだけ財務省に提出されていますか。これは数だけ簡潔にお答えください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、委員からの御指摘も踏まえまして、インボイスという記載のほか、適格請求書等保存方式あるいはシルバー人材センターという表題の記載があるものにつきまして検索をして確認をいたしましたところ、インボイスについての記載があるものが五十一件、この五十一件の中に入っているものを除きまして、適格請求書等保存方式との記載があるものが一件、それから、同じくインボイスとの記載があるものを除きまして、シルバー人材センターとの記載があるものが四十五件、合計いたしますと九十七件でございます。

田村(貴)委員 資料をお配りしています。私が二月十五日に聞いたときは五十件だったんですけれども、今、九十七件であります。この中で、県段階としては、北海道、福島県、それから兵庫県、和歌山県、徳島県、福岡県、六つの県も含めて九十七の意見書であります。今国会の質問以降、地方議員さんから私の事務所への問合せもあり、今、三月議会の中でも少なくない意見書が採択される見通しだと聞いております。

 鈴木大臣に伺います。

 この議会の意見書の背後にある事業者の声、国民の声をどのように受け止めておられますか。

鈴木国務大臣 今先生から御指摘がございますとおりの件数におきまして、地方議会からインボイス制度に関して意見書が提出されておるところでございます。

 そして、その背後にある声ということでございますが、意見書には、インボイス制度への移行に伴う事業者への事務負担や免税事業者等の取引に与える影響等を懸念し、制度の延期や中止を求めているものがある、そのようなふうに承知をいたしております。

 政府といたしましても、そうした意見書をしっかりと踏まえながら、例えば、IT導入補助金により、インボイス制度も見据えた中小・小規模事業者のデジタル化による事務負担の軽減、あるいは、持続化補助金により、免税事業者からインボイス発行事業者となる小規模事業者の販路開拓の支援などを実施をすることといたしております。

 さらに、優越的な地位を利用した一方的な価格引下げなどに対しましても、独禁法、下請法等の取扱いをQアンドA等により明確化をして、各事業者団体への法令遵守要請などを行っているところでございます。

 免税事業者を始めとした事業者の取引環境の整備に関係省庁とも連携して取り組んでまいりたい、議会の意見書等もしっかりと受け止めながら進めてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 インボイス導入による負担が増えることに対しての直接の対策じゃないんですよね。そして、意見書の背後にある国民、業者の声は、この負担が耐えられないから、これをなくしてほしいと言っているわけなんですよ。しっかり捉えていただきたいと思います。

 資料の二、これは福岡県那珂川市議会の意見書であります。少し紹介したいと思います。

 「人生百年時代を迎え、国をあげて生涯現役社会の実現が求められる中、報酬よりも社会参加・健康維持に重きをおいた「生きがい就業」をしているセンターの会員に対し、形式的に個人事業主であることをもって、インボイス制度をそのまま適用することは、地域社会に貢献しようと努力している高齢者のやる気、生きがいを削ぎ、ひいては地域社会の活力低下をもたらすものと懸念され、」としています。「少額の収入しかないセンターの会員の手取額がさらに減少することなく、」と訴えているわけであります。

 財務省にお伺いします。

 月数万円、この配分金のシルバー人材センターの会員に対して、消費税課税業者を申請させる、そしてインボイスの登録番号を取るように指導するんですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今の意見書にございますような、センターの安定的な事業運営が可能となる措置、こういったような御要望も踏まえながら、政府としては様々な対策を検討しているところでございます。

 まず、インボイス制度への移行に当たりましては、取引に与える影響等を緩和するために、経過措置を導入前四年間、導入後も六年間にわたって設けているところでございます。

 また、シルバー人材センターの会員である高齢者の方に負担がかからないよう、厚生労働省から地方自治体に対しまして、適正な価格設定等の要請も行われたものと承知をいたしております。

 また、インボイス制度への移行後もシルバー人材センターが安定的な事業運営を継続できるよう、令和四年度予算において、補助金の増額等、必要な支援も行うこととしております。

 さらに、厚生労働省におきまして、今後も、シルバー人材センター事業への影響や実務的な対応等の実情を把握し、どのような支援が可能か、関係省庁とも連携しながら検討していくこととされているものと承知をいたしております。

 こうした様々な支援策が講じられていることも踏まえますと、シルバー人材センターやその会員である高齢者の方々がどのような選択を取るのかということについて、あらかじめ予断を持って政府が申し上げることは適切ではないと考えておりますし、今御指摘のような指導を行う考えもございません。

 いずれにいたしましても、引き続き、関係省庁で連携をいたしながら、こうした支援策を含めた、制度の周知、広報を始めとして、取組を丁寧に進めてまいりたいと存じております。

田村(貴)委員 でもね、このインボイス制度を導入することは、高齢者である会員に課税業者の申請をさせるか、あるいはシルバー人材センターの消費税の新たな負担が増える、この二つに一つなんですよ。

 厚生労働省から対策が示されたと言われていますけれども、では、厚生労働省にお伺いをします。

 会員の高齢者の方が課税業者にならないまま制度を続けていくのであれば、これはシルバー人材センターの仕入れ税額控除ができなくなります。意見書にあるように、公益法人であるセンターの運営は収支相償が原則であり、新たな税負担の財源はなく、新たな税負担はまさに運営上の死活問題となる、このように書かれているわけです。

 資料三をお配りしています。

 これが厚生労働省から地方自治体に出された通知文書でありますけれども、厚生労働省は対策として、一月十四日のこの通知において、都道府県知事に契約等における適正な価格転嫁を要請したというふうになっています。

 この通知に書かれている、結果として、免税業者である会員の受け取る配分が最低賃金を下回ってしまえば、前述の民間事業者に配慮した料金設定というセンターの業務受注の基本的考え方を逸脱することになると書かれているんですけれども、これは一体どういうことでしょうか。適正な価格転嫁というのは何を意味しているのでしょうか。説明してください。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 シルバー人材センターにおいて業務を受注する場合には、同種の業務を行う民間事業者の利益を不当に害し、また、労働条件の低下を招くことがないよう、料金を、同種の業務を行う民間事業者の価格に配慮し、著しく低い水準とならないよう設定する必要がございます。

 このため、シルバー人材センター適正就業ガイドラインというものを出しておりまして、こちらにおいて、会員が就業の対価として受け取る配分金は最低賃金を下回らない水準になるように指導しているところでございます。

 このような中で、仮にインボイス制度の導入や最低賃金の改定の影響によりまして最低賃金額を下回ってしまえば、当該ガイドラインで示した、民間業者に配慮した料金設定の考え方を逸脱するということになります。

 また、適正な価格転嫁でございますけれども、このような状況を招かないために、シルバー人材センターが受注する全体の三割程度が地方自治体でございますけれども、地方自治体に対しまして、会員である高齢者に負担がかからないよう、インボイス制度導入を踏まえて、適正な価格の設定の要請を行ったものでございます。当該通知につきましては、契約担当部局のほか、インボイス関係の部局に幅広く周知を行っているところでございます。

 いずれにいたしましても、インボイス制度につきましては、円滑な移行を図る観点から、十年の経過措置を設けているところでございまして、これを踏まえて、今後も、シルバー人材センター事業への影響や実務的な対応等の実情を把握して、どのような支援が可能か、関係省庁とも連携しながら検討してまいりたいと考えてございます。

田村(貴)委員 つまり、こういうことですよね。シルバーの会員さんは免税業者であり続けていく、この前提の下で新たな税負担がセンターに起こるのであれば、シルバーの会員さんのこの対価、配分金を引き下げてしまう、それが最低賃金以下になってしまうということが想定されるということなんですね。そういう可能性があるということでしょう。だから、こうしないでくださいと地方自治体に対して支援を求めたということなんですよ。

 自治体の発注業務の契約金額を上げることで、シルバー人材センターに対して新たな税負担を補填する財源を給付するということですか。税金をもって給付するということですか、つまり、この通知は。どうですか。

奈尾政府参考人 シルバー人材センター会員につきましては、今後もその大多数が免税事業者であると見込まれるわけでございます。そういう中で、インボイス制度の導入によってシルバー人材センターにおいては仕入れ額控除ができなくなるということを踏まえて、消費税の納税額分について、会員である高齢者に負担がかからないように、発注者である地方自治体に適正な価格の設定を要請するという趣旨でございます。

田村(貴)委員 つまり、何を意味しているかというと、シルバー人材センターと会員に生じる新たな税負担を、消費税の負担を税金で補填するということなんですよ。しかも、地方自治体になすりつける形でやろうとしているわけなんです。

 これ、ここまでしてやるんですか。人心を惑わせ、地方自治体からこれはやめてくれと意見書が上がっている。地方に新たな財政負担を強いて、しかも税負担を求める。高齢者の年金は下がるこの時期にですよ。やめるべきじゃないですか。むしろ、インボイスをやるんだったら、消費税を引き下げる方がよっぽど国民のためじゃないですか。そう思いませんか、鈴木大臣。

 免税業者と取引があるのはシルバー人材センターだけではありません。免税業者の農家から農産品を買い取り、販売する産直センター、この間私も言いました。それから、一人親方と契約する建設業者の方々、ヤクルトなどのように多くの営業職員を雇う小売業者、雑誌、出版なども、同じように、仕入れ税額控除ができなくなると消費税の負担が増えて事業運営ができなくなるわけであります。

 財務省にお伺いします。

 シルバー人材センターに対しては厚生労働省からこうした対策という名の通知が出されているんですけれども、ほかにも、影響を受ける業者に対しては、こういうやり方はあるんですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度の導入に当たりましては、その円滑な移行に資する観点から、軽減税率制度の導入から四年間の移行期間を設けますとともに、制度導入後につきましても、当初三年間は、免税事業者からの仕入れについてもその八割の仕入れ税額控除を可能とする、その後三年間につきましては、免税事業者からの仕入れであってもその五割の仕入れ税額控除を可能とするといった経過措置を設けて、段階的に対応していくことが可能となるような制度にいたしております。

 また、取引先との関係で優越的地位の濫用等がこの機会に起こらないように、この優越的地位を利用した一方的な価格引下げなどにつきましても、独禁法、下請法等の取扱いをQアンドA等により明確化し、各事業者団体への法令遵守要請を行うなど取組を行ってございます。

田村(貴)委員 結局、私が聞いたことに何も答えていない。

 シルバー人材センター以外にも、ほかに影響を受ける業界に、政府としての対策、通知を出しているとか、そういうのはあるんですかと聞いているんです。もう一回答弁してください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 全ての業界についてそうした予算面での対応ですとか通知を出す等の対応を行っているわけではございませんけれども、今御説明申し上げましたような、経過措置を設けるでありますとか、独禁法、下請法等の面での対応を行っているということでございます。

田村(貴)委員 一般社団法人日本出版者協議会は、二月の三日に声明を出しました。出版社には著者を始め、ライター、編集者、校正者、デザイナー、カメラマン等々多くのフリーランスの方が関与しています。免税業者も多いです。このままでは出版社として新たに消費税を負担することは困難であり、免税業者のフリーランスにインボイスの発行をお願いするしかない。この結果、出版社と製作に携わる人との関係が悪化し、出版活動に支障を来すと声明の中では入っているわけです。インボイス制度の実施の中止を求めています。

 出版社についてはどういう対応をされるんですか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどと若干重複いたしますけれども、出版業界を含めた事業者全般についての対応ということでございますが、インボイス制度の導入に当たりましては、その円滑な移行を図る観点から、軽減税率制度の導入から四年間の移行期間を設けるとともに、制度導入後につきましても、先ほど申し上げたような、六年間、一定割合は免税事業者からの仕入れであっても控除が可能となるような経過措置を講ずることによりまして、段階的な移行が可能となるような措置を講じているところでございます。

 また、課税事業者と取引をされる免税事業者等の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、独禁法、下請法等の取扱いをQアンドA等により明確化する等の対応を行っているところでございます。

田村(貴)委員 だから、それでは根源的な解決にならないから、移行期間を設けたとしても困りますよということで、声が上がり続けているわけなんですよ。そこをしっかりと受け止める必要がありますよ。

 財務省の職員の方にもお伺いします。

 財務省の職員の方々も、雑誌などで執筆し、原稿料や印税などを得ることもあると思います。

 財務省の職員の方々は、消費税の課税業者になるのですか。現状で、主税局はどのような対応を考えておられるんですか。原稿料を受け取る、あるいは講演料を受け取る、こういう機会はあると思うんですけれども、対応されていますか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省主税局の場合で申し上げますが、勤務時間内に行う著作物の執筆等につきましては、これについては、税制に関する広報活動の一環として職務として行っているものでございまして、職員が原稿料等を受け取るといったようなことはございません。

 また、勤務時間外に行う著作物の執筆等につきましては、これは職務外のことでございますので、財務省主税局として、何らかの対応方針を職員に示す等の予定はございません。

田村(貴)委員 主税局長も原稿料を受け取ったりする機会はありますよね。どうなんですか。

住澤政府参考人 私は、主税局長に就任いたしましてから、職務の一環として、広報活動として、講演ですとか、あるいは執筆をするといったようなことはございましたけれども、こういった原稿料等を受け取っているということはございません。

田村(貴)委員 では、主税局長はそうですけれども、ほかの幹部職員の方は、印税、原稿料を受け取る、こういうことは、勤務時間外に、仕事においてありますよね。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 仕事においてとおっしゃられた趣旨がちょっと不明確でございますので、ちょっとお答えするのは難しいかと思います。

田村(貴)委員 インボイス制度の登録申請の受付を開始しており、国税庁は、十月一日からですね、去年の。インボイスを交付する事業者となるには事前の登録申請が必要ですと呼びかけているわけですよ。

 呼びかけていて、実際、登録業者となる必要があるという想定に対しても対応していない。結局、こういう状況ということですよね。様々な問題が生じていくわけですよ。国会議員においても同じことが言えると思います。

 こうした問題を、やはり生じさせてはいけないと思います。新たな税負担をなくすためにはインボイス制度を中止する、このことを強く求めて、質問を終わります。

薗浦委員長 次回は、来る四月五日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十八分散会


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