衆議院

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第14号 令和4年4月8日(金曜日)

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令和四年四月八日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 稲富 修二君 理事 末松 義規君

   理事 吉田 豊史君 理事 角田 秀穂君

      井野 俊郎君    井上 貴博君

      石井  拓君    石原 正敬君

      門山 宏哲君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      鈴木 隼人君    田野瀬太道君

      中川 貴元君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    八木 哲也君

      山田 美樹君    若林 健太君

      鷲尾英一郎君    江田 憲司君

      櫻井  周君    下条 みつ君

      中川 正春君    野田 佳彦君

      伴野  豊君    赤木 正幸君

      沢田  良君    藤巻 健太君

      竹内  譲君    中川 宏昌君

      岸本 周平君    田村 貴昭君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       黄川田仁志君

   財務副大臣        岡本 三成君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   政府参考人

   (金融庁企画市場局長)  古澤 知之君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      油布 志行君

   政府参考人

   (金融庁公認会計士・監査審査会事務局長)     田原 泰雅君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   犬童 周作君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 徳田 修一君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  藤原  崇君     井野 俊郎君

同日

 辞任         補欠選任

  井野 俊郎君     藤原  崇君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁企画市場局長古澤知之君、証券取引等監視委員会事務局長油布志行君、公認会計士・監査審査会事務局長田原泰雅君、デジタル庁審議官犬童周作君、外務省大臣官房審議官徳田修一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申出がありますので、順次これを許します。若林健太君。

若林委員 おはようございます。自由民主党、長野一区の若林健太でございます。

 本日は、公認会計士法改正案の質疑に当たりまして質問の機会をいただき、諸先輩の御配慮に感謝申し上げたいというふうに思います。

 私が公認会計士二次試験に合格したのは昭和六十二年、大学四年生のときでありました。以来、大手監査法人の代表社員、パートナーをやったり、個人の税理士事務所を長野市内、地元で開業し、営ませていただいたりしてまいりました。

 社会に出た頃はバブルの最盛期で、多様なステークホルダーに対するディスクロージャーとかアカウンタビリティーなんといっても耳をかしてもらえず、公認会計士なんて経済社会の盲腸みたいなものとやゆされるときもありました。しかし、その後、バブル崩壊からカネボウなど大型の粉飾事案などがありまして、公認会計士監査への社会的要請というのは非常に高まってきたというふうに思います。取り巻く環境は大きく変わり、そうした中でこの十五年ぶりの公認会計士法改正でありまして、変化する時代の要請を受けたものとして歓迎したいというふうに思っています。

 ただ、まだまだ公認会計士をめぐる課題はたくさんあって、変化の途上にありますので、そうした課題、これからもしっかりと制度の改正に取り組んでもらいたいものだというふうに思います。

 まず、サステーナビリティー情報などの非財務情報について伺います。

 非財務情報に関する公認会計士による保証業務は、中長期的な課題として、金融庁内での検討が進められているというふうに承知しています。一方、IFRS財団傘下のISSBでは、業種別に定量化した事例を示したところでもあります。現在の検討状況と非財務情報に関して求められる公認会計士の役割について伺いたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、サステーナビリティー情報の非財務情報について投資家から関心の高まりが見られるところでございまして、御指摘の国際サステーナビリティー基準審議会、ISSBでございますけれども、この三月三十一日に気候変動に関するサステーナビリティー開示基準の市中協議を開始するなど、国際的な開示基準の策定に向けた動きが進んでいるところでございます。

 同時に、サステーナビリティー情報を第三者が検証、保証することが有益だということで、従来、財務情報の保証を専門職として担ってこられた公認会計士にそうした役割を期待する声があるというふうに承知しているところでございます。

 足下では保証の前提となります開示基準の策定が進められているという段階でございますが、中長期的には、国際的な開示基準の開発や、それを踏まえた保証基準の開発の状況といったものも見極めながら、サステーナビリティー情報の保証の在り方、それに関する公認会計士の皆様の役割といった点についても議論する必要があるというふうに考えてございます。

若林委員 公認会計士の今の現状というのは、会計士全体の七七%、そして監査業務収入の八〇%が四つの大法人によって占められているという状況です。三千人を超える公認会計士を抱えている大法人、こういった大法人にあっても、例えば、監査法人の合併だとかあるいは社員の除名をしようというようなときには、全社員の同意がないと前へ進めない、こういう状況に今なっているわけであります。

 こうした三千名を超えるような会計士を抱える大法人には、その組織に合った制度の改正というのが求められるのではないかというふうに思いますけれども、当局の考え方を伺いたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、現行の公認会計士法では、監査法人の合併ということですとか、社員、いわゆるパートナーでございますが、脱退につきましては、監査法人の総社員の同意を要するということとされているところでございます。これは、元々、監査法人制度が、合名会社の制度をモデルに、社員、いわゆるパートナーがお互いにチェックする、それからいわば相互牽制を働かせるということを前提とした制度設計になっているためでございます。

 こうした制度設計につきましては、先生御指摘の監査法人の大規模化、場合によってはパートナーが五百人を超えるといった規模になってございますけれども、そういった監査法人もある中で、全ての社員から同意を取得することは容易じゃないという指摘もいただいているところでございます。

 今般の法改正につきましては、会計監査の信頼性確保、公認会計士の皆様の能力発揮、能力向上と、早急な対応が求められる課題に応えるものでございますけれども、御指摘の監査法人形態の在り方といった課題につきましても、引き続きしっかりと検討を進めていく必要があるというふうに考えてございます。

若林委員 登録上場会社等監査人に対して、業務管理体制を整備するために、部会報告では、登録を受けた全ての監査事務所に対してガバナンスコードの受入れを求めるというふうにされています。しかし、現状のコードは大手監査法人を前提としておりまして、コードを受け入れている中小監査法人は実は九法人しかないという実態になっております。

 上場会社等の監査を行う中小監査法人に対して求められる業務管理体制の考え方や、また、中小監査法人に対応するためのガバナンスコードの改定ということも検討していかなければならないと思いますが、この件について見解を伺いたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般新設する、上場会社監査を担う監査法人の登録制度でございますけれども、この登録制度におきましては、中小監査法人を含む上場会社監査を行う監査法人に対して適切な業務管理体制の整備を求めるということで、先生御指摘の、具体的には監査法人のガバナンスコードの受入れというものを想定しているところでございます。

 御指摘のとおり、現在、十八監査法人が受け入れていただいてございまして、そのうち九法人が中小法人という構成になっているわけでございます。

 元々、この現行のガバナンスコードは、大手監査法人における組織運営を念頭に策定されているということで、中小監査法人の運営に必ずしもなじまない事項があるんじゃないかという指摘があるというふうに承知してございます。

 今後、コードの内容につきましては、大手監査法人のみならず中小監査法人の上場会社監査の品質確保に資するという観点と、それから監査法人の規模に応じた実効性のある規律を求めるというふうに、改定すべき点を検討してまいりたいと考えてございます。

 各監査法人におきましては、コードの内容も踏まえながら、監査法人の規模、それから、その被監査会社の数、事業の規模、複雑性などに照らして、品質管理の一層の向上に向けた取組が進められるということを期待するところでございます。

若林委員 金融庁の金融審議会公認会計士制度部会の報告では、中長期的な課題に対する問題提起があって、これらについてできるだけ早期に検討を開始することが期待されるというふうに記載されています。

 会計監査を取り巻く環境が変化している中で、今回の公認会計士法改正が十五年ぶりとなっておりますが、先ほど来、大監査法人の問題、中小監査法人の問題、あるいは非財務情報の問題など、様々な課題があるところであり、なるべく早い段階で更なる制度改正についても取り組んでいく必要があると思いますが、この点についてお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 今般の公認会計士法改正案でございますが、これは、会計監査の信頼性確保や、公認会計士の一層の能力発揮、能力向上に向け、早急な対応が求められる課題に応えるものであります。

 会計監査や公認会計士制度に関しては、このほかにも、例えば、サステーナビリティー情報の重要性が高まる中で、それに対する保証や監査法人の役割をどう考えるのか、公認会計士が担っている役割の広がり等を踏まえ、公認会計士試験制度について見直すべき点はないのか、そして、先ほど先生からも御指摘がございましたけれども、監査法人の大規模化を踏まえまして、監査法人制度が実態に合ったものになっているのかといった中長期的な課題も指摘をされているところでございます。

 若林先生の御指摘も踏まえ、今後とも、会計監査をめぐる環境変化に適切に対応していくため、こうした課題につきましても引き続きしっかりと検討を進めていく必要があると考えております。

若林委員 ありがとうございます。

 今回、法律の改正で、金融庁長官から公認会計士・監査審査会へ権限委任について規定を整備するということになりました。金融審議会公認会計士制度部会では、協会の品質管理レビューと当局の検査を大手監査法人は毎年受けているということで、大変負担が重いという意見も出されました。一方、両者を一体化して官がモニタリングを取り仕切るというふうになりますと、無謬性を求める要素が強くなり、コンプライアンスを極端に重視した形式的な監査に陥るリスク、かえって大きな粉飾を見逃すおそれが指摘されています。

 今回、改正によって、協会が行う品質管理レビューを前提に公認会計士・監査審査会がモニタリング機能を発揮するという従来の取扱いについて、変化があるのかないか、変化が生じるおそれはないのか、伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 本法案によりまして、金融庁から公認会計士・監査審査会に委任されるモニタリング権限として、従来から、監査法人等の業務の運営の状況の検証のほか、虚偽証明等の検証が加わることとなります。これによりまして、審査会において、業務の運営の状況に関するモニタリングの際に虚偽証明等の検証を併せ行うことが可能となり、より効率的、効果的なモニタリングにつながることが期待されております。

 他方、審査会による業務の運営の状況に関するモニタリングは、これまで、日本公認会計士協会が自主規制として実施する品質管理レビューの実効性を高めるためのものとして運用されてまいりました。本法案により、審査会に委任される権限が拡大されますけれども、審査会によるモニタリングが品質管理レビューの実効性を高める観点から行われるものとの位置づけを変えるものではございません。

若林委員 ありがとうございました。

 今大臣から、品質管理レビューと監査審査会の行うモニタリング、従来からのそのスタンスが変わらないということの確認をさせていただいたところでありました。

 公認会計士をめぐる環境というのが目まぐるしく変わっていく中で、不断の制度の改正というのが必要であるというふうに思っております。その点についても先ほどコメントをいただきました。

 これからも、金融庁と公認会計士協会、経済社会の重要なインフラの一つだというふうに思っております。時代に合わせた改正がしっかりと行われていくことを期待申し上げたいと思います。

 時間となりました。今日は、公認会計士法の改正について、こうして質疑に立たせていただいたことに感謝申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速質問に入りたいと思いますが、法案の質問の前に、まず、長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加えまして、ロシアのウクライナ侵攻によって、原油価格であるとか食料品など物価高騰が続き、家計や中小企業、農漁業者など広く国民生活に影響が及んでおります。

 公明党では、国民生活を守るため、去る三月二十八日、岸田首相に対し、政府が近く策定する追加経済対策に向けた緊急提言を申し入れましたが、この中で、中小・小規模事業者の経営環境悪化に対応したセーフティーネット貸付けや原油価格高騰等の影響を受ける事業者に対する資金繰り支援など、中小企業活性化パッケージの更なる拡充を求めさせていただきました。

 不確実性の高まりに対応し、機動的な対応を是非していただきたいと思いますが、まず、国民生活を守るための今後の取組について御見解をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 新型コロナに加えまして、原油を始めとした資源価格の高騰等によりまして影響を受ける中小企業に対して、状況に応じて機動的に資金繰り支援を実施すること、これは大変重要なことであると認識をいたしております。

 こうした状況を踏まえ、政府としましては、官民金融機関に対し、事業者の資金繰り支援に支障が生じないよう、きめ細かな支援を引き続き徹底すること、これを関係大臣連名で要請をしたところでございます。

 加えまして、先月、三月七日でございますが、官民金融機関の代表の方々にお集まりをいただきまして、私から直接、厳しい経営環境にある事業者に支援をしっかりと取り組んでいただきたい、こういうお願いをしたところでございます。

 また、日本公庫等において、特別相談窓口を設置するとともに、セーフティーネット貸付けの要件緩和、金利引下げを実施し、原油価格高騰やウクライナ情勢等の影響を受けた事業者への支援を図っているところでございます。

 その上で、先月、三月二十九日、総理より策定指示のございました総合緊急対策において、原油価格、物価高騰等に苦しむ中小企業に対して資金繰り支援が万全となるよう、現在検討を進めているところです。

 引き続きまして、厳しい状況に置かれている事業者の皆様の実情に応じまして、スピード感を持ってしっかりと資金繰り支援に取り組んでまいりたいと考えております。

角田委員 状況の変化に対応した機動的な、総合的な対応を是非ともお願いしたいと思います。

 国際金融都市実現を目指す上で、日本の株式市場に上場する企業の質の向上というものは重要な課題であり、今回の法改正も、上場企業監査の質を確保するということで、企業情報の信頼性確保を図ることを目指しておりますが、質の確保のためには、監査の重要性は当然のこととして、それ以外にも、ガバナンスの強化であるとか取引所における品質確保のための取組の充実など、様々な面で対策の充実を講じていくことが必要であろうと考えますが、上場企業の質の確保に向けての課題をどのように認識をされているのか、その中で今回の法改正の意義についてはどのように捉えているのか、お伺いしたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘のとおり、上場会社の質の確保という課題に対しましては、監査の品質の向上に加えまして、上場会社自体のガバナンスの強化といった点が必要と考えてございます。

 この点に関しましては、従来、例えば、上場会社でございますけれども、コーポレートガバナンス改革というものを進めてまいりましたけれども、必ずしもその実効的なガバナンスが機能していない場合があるのではないかといった課題も指摘されているところでございます。

 また、お話のございました取引所の在り方でございますけれども、従前の東証の市場につきましては、それぞれの上場市場のコンセプトが曖昧で、多くの投資家にとって必ずしも利便性が高くなく、上場会社の持続的な企業価値の向上の動機づけに十分つながっていなかったんじゃないかといった課題も指摘されているというふうに承知してございます。

 こういった中で、例えば、この四月四日でございますけれども、東証の市場区分の見直し、それから、コーポレートガバナンス改革の企業の取組の検証と実効性向上に向けた取組ということを進めることを通じて、上場会社に関する環境整備を行ってまいるということを進めているところでございます。

 その上で、今回の法改正でございますけれども、上場会社の監査に関する課題としては、従来、日本公認会計士協会の自主規制として上場会社監査を行う監査事務所の登録を求めるという制度がございましたけれども、これにつきましては、規律としての実効性、それから運用としての厳格さという点について、必ずしも十分じゃなかったといった課題も指摘されたというふうに承知してございます。

 こうした中、今回の法改正におきまして、法的な枠組みといたしまして上場会社監査事務所の登録制度を導入するということで、規律の実効性を高め、上場会社の財務報告の信頼性の向上につなげたいというふうに考えておるところでございます。

角田委員 ただいま御答弁にありましたけれども、今回の法改正によって、上場会社の監査を行う監査事務所の登録制度、この導入が一つの柱となっているわけですけれども、この点に関しては、既に二〇〇七年から公認会計士協会の自主規制としての上場会社監査事務所登録制度が導入をされており、協会による品質管理レビューによって適格性の確認が行われている上、レビューの結果は公認会計士・監査審査会にも報告をされ、これに基づいて監査審査会は、報告の徴収、立入検査を実施をして、必要があれば金融庁に行政処分等を行うよう勧告する、これによって上場会社監査の信頼性確保が図られてきているわけですけれども、この登録制度を法律で規定する理由についてお伺いしたいと思います。

 法改正によって、従来の品質確保のための手続がどのように変わってくるのか、また、公認会計士協会と監査審査会が担ってきた役割、これがどのように変わるのか、お伺いしたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の法案によりまして、上場会社の監査事務所につきまして、法律に基づく登録制度を導入するわけでございますけれども、この中で適切な業務運営体制の整備を法令上義務づけるということにしてございます。具体的には、監査法人のガバナンスコードの受入れといった点ですとか、それから、その情報開示の充実といった、監査の品質確保に必要な対応を求めていくことを想定しているわけでございます。これによりまして、規律としての実効性とそれから資本市場からの信頼性を一層高めていくことができるというふうに考えているわけでございます。

 御指摘いただきました協会と審査会の役割でございますけれども、本法案で上場会社の監査につきまして登録制を導入しているわけでございますけれども、元々ございました、日本公認会計士協会による品質管理レビューによる調査で、その結果に基づきまして公認会計士・監査審査会がモニタリングを行い、必要に応じて勧告を行うという枠組み、その上で金融庁による行政処分といった、一連の監査業務の公正性、適切性を確保するという枠組みは今回でも変わることはないというふうに考えてございます。

 その点、日本公認会計士協会におかれましては、上場会社監査に係る登録制度を適切に運用していただくということが求められ、自主規制機能の発揮というものが一層重要になるというふうに考えてございます。職業専門家団体としての知見、専門性を十分に発揮し、これまで以上に自主規制機能を高めていただくということを期待しているところでございます。

 また、公認会計士・監査審査会におきましても、本法律案でモニタリング権限を見直すことで、より効果的、効率的なモニタリングにつなげられるものというふうに考えているところでございます。

角田委員 登録制度の導入は、一つには、近年、上場企業監査を手がける監査法人が四大監査法人から中堅、中小の監査法人に広がっていることが背景の一つとされております。

 帝国データバンクの調査では、二〇二一年に会計監査人の異動に関する適時開示を行った上場企業は二百十九社、前年より七十七社増加しており、このうち、大手法人から中小監査法人への異動が四二%、大手から準大手が一七%となっており、異動の理由としては、監査報酬の見直しが約六割を占めております。開示情報の拡大などで監査作業の負担増に伴って監査費用が増加していることに対して、監査費用を抑えたい企業側の意向により、大手から中小への移行が多く見られたとしております。

 こうした傾向に対応して、何よりも適正な監査報酬について企業の理解を得ることが必要であると思いますが、その上で、規模の大小を問わず、特に中小法人の監査の質を確保するための取組の必要性が高まっていると言えます。そのために、まず、監査を受嘱する企業の増大に対応した人材の確保ということになりますが、今回の法改正でも公認会計士名簿登録事項に勤務先を追加しようとしているように、公認会計士が事業会社あるいは行政機関に流れている現状から、簡単ではないと思われます。限られた人材で業務の効率化を進めるために、AI活用も含めたIT化の推進を図る必要がありますが、この面でも、大手法人に比較して中小法人のIT導入は遅れているのが現状であります。

 デジタル化への支援を含め、中小法人への支援を強化していく必要もあると考えますが、この点について御見解をお伺いします。

古澤政府参考人 御指摘のとおり、上場会社監査の担い手全体の監査品質の向上ということを図ってまいりますためには、今般導入する登録制度による規律づけというものと適切な育成支援というものを両輪で取り組んでいくことが有効だというふうに考えてございます。

 中小監査法人では、特に人材の確保ですとかデジタル対応といったところが課題と認識されており、金融庁で検討させていただきました会計監査の在り方に関する懇談会というところの議論におきましても、監査関連の書類の電子化といったデジタル化に対応するということが必要ではないか、それから人材確保、人材育成、それから経営相談、体制面、ノウハウ面からそういった支援を検討する必要があるというふうにされているところでございます。

 こういった問題意識につきましては、日本公認会計士協会とも共有させていただいてございまして、公認会計士協会の方では、中小監査法人が共通して利用できるITツールの提供、それから、大手監査法人退職者の人材紹介などの具体策の検討を進めておられるというふうに承知してございます。

 金融庁といたしましても、日本公認会計士協会と適切に連携し、中小監査法人の体制整備を後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。

角田委員 時間がなくなりましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、稲富修二君。

稲富委員 立憲民主党の稲富でございます。

 この法案質疑の前に、対ロシア経済制裁について数点確認をさせていただきたいと思います。

 これまで当委員会でも、経済制裁の一環として、金融制裁、資産凍結、SWIFTからの排除等々を我が国としても実行してまいりましたが、まず、その金融制裁の効果について大臣に見解を伺います。

鈴木国務大臣 これまでの金融制裁に当たりましては、G7各国が緊密に連携して広範な措置を科してきたことで、ロシア経済に深刻な打撃を与えているものと考えております。例えば、金融市場では株価の急激な下落、国債利回りの上昇が見られ、生活必需品も含めて消費者物価が急上昇するなど、様々な面でロシア経済に影響が出ている、そのように認識をいたしております。

 引き続きまして、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、制裁の実効性が上がりますように、適切に対応を続けていきたいと思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 外務省にも来ていただいておりますので、お伺いします。

 このロシアによるウクライナ侵略から一か月以上過ぎて、戦況にも大きく変化が出てまいりました。キーウ周辺からの撤退をして、東部に軍事リソースを集中をさせ、クリミア半島、ロシアとの地続き化を図っているともされております。やはり見過ごせないのは、撤退地域において、非人道的かつ国際法に違反する、民間人の殺害など数々が報道されているところでございます。昨日、総理からも、戦争犯罪という厳しい言葉もございました。

 改めて外務省に伺いますが、ウクライナでロシアによって行われたとする民間人殺害等について、戦争犯罪というふうに認定をしているのか、我が国としての基本的な認識をお伺いします。

徳田政府参考人 お答え申し上げます。

 ウクライナ政府の発表や各種報道により、ロシア軍が占拠していたキーウ近郊の地域において、無辜の民間人が多数殺害されるなど、残虐な行為が繰り広げられていたことが明らかになっているところでございます。こうした多数の無辜の民間人の殺害は、重大な国際人道法違反であり、戦争犯罪でございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 今御答弁があったように、かなりステージが変わったというふうに私は考えます。

 来週にも関税措置法の改正、外為法改正が審議をされる予定と伺っておりますが、これは戦争犯罪と我が国として認定する前に方法として考えていたということで、ステージが変わった以上、更なる追加制裁、対策が必要になろうかというふうに想像するわけですが、改めて、このロシアによる非人道的振る舞いを受けた上で、戦争犯罪と認定した上で、我が国としてどのような対応を考えているのか、大臣に伺います。

鈴木国務大臣 ただいま外務省からも答弁がございましたけれども、今般、ロシア軍の行為によりまして、ウクライナにおいて多くの無辜の市民が犠牲になっていること、これは極めて深刻に受け止め、まさに戦争犯罪に当たるものと考え、断じて許されず、厳しく非難をするものであります。

 こうした状況を受けまして、昨日七日でありますが、発表されましたG7首脳声明では、ロシアにとって侵略の代償を更に高めるため、G7で協調して、ロシア経済の主要分野への新規投資を禁止する、ロシアの銀行を引き続き国際金融システムから遮断する等の措置を取るとされております。

 そして、我が国の更なる制裁措置についてでございますが、今予断を持って申し上げることは控えますけれども、昨日のG7首脳声明も踏まえて、関係大臣と連携して迅速に対応すべく、調整をしっかりしてまいりたいと思っております。

稲富委員 ありがとうございます。

 ここはやはり一致結束して我が国としても当たっていくということを、是非、私自身としても後押しをしたいと思います。

 他方で、冒頭、効果についてお伺いしましたけれども、これは当然、我が国としての経済制裁をする以上、我が国にとってもその反作用が来るということは当然のことでございまして、国として、ある意味、ここに立ち向かっていく以上は、我が国としてどういう負の影響があるのかということも併せて、大臣におかれては、国民にやはり説明をいただきたいということを要請したいと思います。

 続きまして、法案審議に移ります。

 この公認会計士法及び金融商品取引法改正案についてでございますが、企業の不正ということはなかなか絶えないわけでございまして、私にとっては、二〇〇一年のアメリカのエンロン事件というのが非常に私も印象に残っております。その翌年の、ワールドコムも潰れ、当時のアーサー・アンダーセンも解散に追い込まれるということがあって、それが非常に印象的でございました。

 二〇〇七年に我が国の公認会計士法が改正をされて、監査法人の品質管理、ガバナンス、ディスクロージャーの強化が図られたところでございます。しかし、その後、名立たる企業が不正に手を染め、そして、監査法人におかれても、それに一種手をかすような事象もあったかと思います。

 そこで、なかなかこの不正と企業監査というのがなくならないわけでございますが、昨今の不適切会計、特に粉飾決算の発生状況について、基本的な大臣の認識をお伺いをいたします。

鈴木国務大臣 昨今の不適切会計、特に粉飾決算の発生状況でございますが、不適切会計を公表した上場企業数について、民間調査会社による調査によりますと、調査が開始された二〇〇八年以降、増加傾向で推移をしております。二〇一五年からは年間五十社から七十社で推移しているというふうに承知をしております。そして、この民間調査によりますと、二〇二一年の不適切会計のうち、これは五十一件でございましたけれども、そのうち、粉飾によるものは十五件となっていると承知をしているところでございます。

稲富委員 ありがとうございます。

 今のデータの中で、五十一件のうち、経理、会計処理ミスが二十四件、粉飾が十五件、着服、横領が十二件ということで、不適切会計の開示件数は七年連続で五十件を超えておる、名立たる企業もそこに入っているということでございます。

 今回の監査についてだけではなくて、企業のガバナンス改善など総合的に対応する必要があるかと思いますが、その点について大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 不適切会計の発生の原因、これは様々であると思います。企業における不適切会計を防ぐ仕組みである、例えばコーポレートガバナンスや財務報告に関する内部統制、これが十分機能していないこと、これが不適切会計の発生の一因となっていると認識をいたしております。

 そして、対策といたしましては、適切な情報開示を確保するため、コーポレートガバナンス・コードにおいては、これまでも、実効的なコーポレートガバナンスを実現する観点から、会社の財務情報や、リスクガバナンス等に関する非財務情報についての開示の充実を求めてきたところでございますが、さらに、昨年六月の改定では、適切な内部統制の構築、内部監査部門が取締役会や監査役会などに対しても直接報告を行う仕組みを構築するなどが盛り込まれたところでございます。

 また、公認会計士に対しましては、これまでも、日本公認会計士協会が主導をして、不適切会計に関する研修等に取り組んできているところでございます。

 さらに、実効性を高める観点から、金融庁の会計監査の在り方に関する懇談会の昨年十一月公表の論点整理では、今後検討すべき事項として、公認会計士の研修において不正のケーススタディーを学ぶことや、AIを含む新たなデジタル技術を用いた不正の発見等に資する方策などが盛り込まれているところでございます。

 金融庁として、引き続き、企業の不適切会計を防ぐ仕組みであるコーポレートガバナンスの充実等を推進するとともに、監査法人の監査の品質が確保されますよう、日本公認会計士協会などの関係各所と連携をして取り組んでまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 その品質管理についてでございますが、金融審議会公認会計士制度部会報告によれば、「監査法人・公認会計士が「資本市場のゲートキーパー」としての役割を適切に果たし、会計監査が資本市場を支えるインフラとして十分に機能することが求められている。」というふうにあります。

 ゲートキーパーの役割ということで、そこにもまた書いてありまして、不正を行う企業の資本市場への参加を防止するということが一つ、もう一つは、企業から資本市場への情報提供に介在し情報の信頼性を確保するという役割が期待をされているわけでございますが、不適切会計、特に粉飾決算が発生する原因として、やはり、企業側と監査法人側との力関係があるのではないかと思われます。また、長期間にわたる契約関係の中でのなれ合いの関係といいますか、そういったものもあるかと思います。

 これも、その品質を担保するために、監査法人は、クライアントである企業との力関係においてゲートキーパーの役割を果たすことができるのかということ、基本的な認識を大臣にお伺いします。

鈴木国務大臣 企業の財務情報に関する開示の信頼性を確保するためには、監査法人が公正不偏の態度を保持し、独立の立場で監査を行うこと、これが極めて重要であると考えております。

 この点、公認会計士法では、公認会計士の職責として、独立した立場において公正かつ誠実にその業務を行わなければならないこととされておりまして、また、監査基準や公認会計士協会の指針等でも、独立した立場で監査を行うことが求められております。

 稲富先生御指摘の、企業と監査法人との力関係につきましては、監査の現場に応じて様々と考えられますが、どのような場合であったとしても、監査法人は中立性を維持した公正妥当な監査がしっかり確保される必要があり、金融庁としても、公認会計士・監査審査会や日本公認会計士協会と連携をしながら、監査制度の的確な運営に努めてまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 次に、登録制について、今回の柱であります登録制の導入についてお伺いをいたします。

 登録制の導入の背景として、世界標準と合わせることと並んで、上場会社監査の担い手の裾野の拡大がうたわれております。

 金融庁の資料によれば、直近、二〇二一年六月期において、先ほど来御指摘ありましたけれども、大手監査法人の監査数は対前年度比マイナス百二十四社、準大手監査法人、中小規模の監査事務所合わせてがプラス百二十四社ということになっている。同じく、直近五年では、大手監査法人がマイナス三百六社、準大手、中小は毎年増加傾向ということでございます。金融庁の資料を見れば、監査人の異動理由の変遷も、なぜ異動したのかという理由も随分と変わってきているわけでございます。

 上場会社監査社数において、大手監査法人のシェアが低下をして、準大手、中小規模の監査事務所のシェアが拡大をしているという傾向でございますが、この理由について、また、この傾向についてどう評価しているか、伺います。

鈴木国務大臣 監査人の交代理由につきましては、企業側と監査法人側、それぞれに要因があり、個別事案ごとに様々であると考えております。

 中小監査法人にシフトする企業側の理由といたしましては、監査報酬の低さなどが挙げられております。一方、監査法人側においても、大企業の事業活動のグローバル化や複雑化、多様化に対応するため業務が増大する中におきまして、大手監査法人を中心に、監査メンバーの確保が追いつかないという声も伺っているところでございます。そうした大手監査法人の実情も一つの要因として、中小監査法人へのシフトが生じていると考えております。

 また、上場会社と一くくりで申し上げましても、グローバルな事業活動を行い、業務内容が複雑化した大規模な会社もあれば、海外拠点を有さず、業務内容も比較的単純な小規模の会社もございます。特に、こうした小規模の上場会社において中小監査法人の選任を検討することが多くなってきているのではないか、そのように考えております。

 こうした状況も踏まえまして、特に、中小監査法人を始めとして上場会社の監査の担い手全体の監査の品質向上、これが急務であり、その品質確保に向けた制度枠組みをこの法案で整備しておく必要があると考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 その傾向を受けて、先ほど大臣もありましたように、品質管理のために、今回、適格性についてお伺いをしたいと思います。

 今回、登録制導入に際し、その適格性は日本公認会計士協会がすると法定をされるということとなりました。上場会社等監査人名簿に登録済みの公認会計士及び監査人でなければ、金融商品取引所に上場される有価証券発行会社等の財務書類、内部統制報告書について、監査又は証明を行うことが法律上禁止をされる。

 今回の改正案は、平成十九年からの自主規制で行っているものを厳格化をし、品質向上を期するものと理解をしておりますが、一方で、公認会計士協会の権限は強化をされ、その中立性、厳格性がより問われることとなろうかと思います。権限を付与される公認会計士協会の中立性、厳格性、いかに担保するかについてお伺いをいたします。

鈴木国務大臣 上場会社監査に関する登録制度について、本法律案で日本公認会計士協会が登録の適格性の確認を実施することといたしましたのは、これまで自主規制として登録制度を運用してきた協会の知見、ノウハウを有効に活用することが有益であること、特に中小監査法人等については、協会において、登録制度に基づく規律づけと併せて、上場会社の監査の担い手として十分な能力、体制を整えられるよう育成支援策を講ずることが有効であるといった考えに基づくものであります。

 協会がこうした役割を果たすに当たりましては、職業専門家団体としての自律性とともに、十分な独立性及び透明性を確保することが求められます。こうした観点から、協会では、会員外の学識経験者を中心とした自主規制モニター会議を設置して、協会の運営状況をモニタリングしていると承知をしているところでございます。

 このような協会自らによる取組を前提としつつ、万一、協会の運営等に疑義が生じた場合には、当局において、必要に応じ、報告徴収や立入検査等を通じて、協会における適切な制度運用を確保してまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 続きまして、ガバナンスコードについてお伺いします。

 これも、先ほど来何度か質問が出ておりましたが、改正案第三十四条の三十四の十四では、上場会社の監査事務所に対して、適切な体制整備を規律づけております。

 具体的には、監査法人によるガバナンスコードの受入れや情報開示の充実を想定をしているということで、部会報告では、大手上場企業等の監査を担い、多くの構成員から成る大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定されていると指摘がされているということでございまして、中小監査法人は、令和三年十二月一日時点では、このコードを受け入れているのは九法人にすぎないということで、必要に応じて、改定すべき点がないか検討すべきだとされておりますが、この点、改定すべき点がないか検討すべきということでございますが、検討しているのか、また、その検討結果についてお伺いします。

鈴木国務大臣 稲富先生御指摘のとおりに、金融審議会の公認会計士制度部会の報告では、上場会社監査を行う監査法人への規律づけといたしまして、監査法人のガバナンスコードの受入れを求めることが考えられるとされております。

 その際、現行のコードでございますが、これは大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭にして策定されたものであることから、大手監査法人のみならず、中小監査法人による上場会社監査の品質確保にも資するものとして、監査法人の規模等に応じた実効性のある規律を求めるよう、改定すべき点を検討すべきだ、そのようにされているところでございます。

 コード改定の検討はこれからでありますけれども、こうした指摘も踏まえまして、監査法人の規模等に照らして実効性のある内容となりますように、今後検討をしてまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございます。

 今後検討ということなんですけれども、先ほど来もありますように、スピードが速くなり、今回も法改正が十五年ぶりということでございます。やはり、時代に応じて、早く検討、そしてその改定を望みたいというふうに思います。

 続きまして、公認会計士・監査審査会によるモニタリングについて伺います。

 この審査会は、金融庁長官から、公認会計士、監査法人のモニタリングを一部委任されております。監査法人等の業務運営についてのみ検証を委任されておりましたが、今回の改正によって、金融庁のみが検証権限を有していた虚偽証明等についても委任されることとなります。その分、業務、作業工程が、審査会、増加をするということと想定をされますが、このモニタリングの範囲拡大に伴う審査会業務の増加量をどう考えているのか、想定しているのか、伺います。

鈴木国務大臣 本法案によりまして、金融庁から公認会計士・監査審査会に委任されるモニタリング権限として、従来からの監査法人等の業務の運営の状況の検証のほか、虚偽証明等の検証が加わることになります。

 これに伴いまして、審査会業務の増加量をどう想定しているかというお尋ねでございますが、これは一概にお答えすることは困難でございますけれども、例えばここ五年間における虚偽証明事案は二件でありまして、業務の増加量は、今後の虚偽証明事案の数でありますとか内容によると考えているところでございます。

稲富委員 なるほど。五年に二件ですね。分かりました。であれば、今すぐ職員の体制整備を充実しなければいけない状況というわけではなく、状況を見ながら人員の充実、体制整備を行っていく、そういう認識でよろしいですかね。分かりました。ありがとうございます。

 続きまして、もう一つの今回の法改正の柱であります配偶関係に基づく業務制限見直しについてお伺いをいたします。

 国際的標準に準拠し、やや過剰な規制を見直す点に異論はございません。

 本改正案に至る背景として、共働き世帯の増加、女性活躍の進展が挙げられているものの、金融庁の資料によれば、二〇一六年から二〇二〇年の五年間で女性の公認会計士さんは僅か〇・八%の増加ということで、女性の比率は一四・五%にすぎないということでございます。

 女性の公認会計士の人数が少なく、割合も微増にとどまるという、何か構造的な原因があるのではないかと思いますが、それについての分析をお伺いをいたします。

鈴木国務大臣 日本の女性公認会計士の人数や割合でありますが、過去五年間に微増しているところでございます。このように、微増ではございますけれども増加が見られるものの、英米の会計士や日本の弁護士に比べますと、例えば女性割合は依然として低い、そのように認識をいたしております。

 日本の女性公認会計士の人数や割合が低い要因といたしましては、公認会計士に関心を持つ学生が比較的多いと考えられます社会科学専攻の女性学生比率が約三五・七%にとどまり、公認会計士試験の受験段階から女性割合が低いことのほか、例えば、出産、育児との両立の難しさ、労働環境に関する懸念などが指摘されている、そのように承知をいたしております。

稲富委員 そこで、やはり、公認会計士業務が企業の不正会計を防ぐ、あるいは社会の繁栄の一つであるとすれば、その構成は、やはり、女性の活躍を後押しするという意味でも、より参画をいただく方が望ましいのではないかと思います。急激な改善が望めないにしても、今おっしゃったような原因を改善をし、より参画をしやすい環境をつくることが必要じゃないかと思います。金融庁におかれても、公認会計士のダイバーシティーの進展が必要だということも書かれております。

 そこで、今おっしゃったような構造的原因を是正し、やはり女性の公認会計士さんが活躍できるような制度的な後押しが必要かというふうに考えるわけですが、この点の見解を伺います。

鈴木国務大臣 女性公認会計士の活躍の推進に向けまして、制度的対応として、本法案では、監査法人の社員の配偶者関係に基づく現行の業務制限を見直すことといたしております。これは、現行の業務制限によりまして女性社員の登用を見合わせた、そういう事例があることを踏まえたものであります。

 また、日本公認会計士協会では、二〇三〇年度までに公認会計士試験合格者の女性割合を現在の二一%から三〇%へ、また、二〇四八年度までの会員、準会員の女性割合を現在の一四%から三〇%へ、それぞれ上昇させるというKPIを設定をしております。その達成に向けて、女性公認会計士向けのキャリアプランに関する研修あるいは広報等の取組を進めていると承知をいたしております。

 さらに、公認会計士・監査審査会におきましても、公認会計士試験の女性受験者拡大のため、高校や大学での講演でありますとか、公認会計士試験パンフレットを通じて、公認会計士の魅力ややりがい、キャリアプランなどについて、女性の公認会計士からのメッセージを発信をしております。

 本法案における制度的対応の周知徹底を含めまして、協会と連携しつつ、監査業界における一層の女性活躍の推進を後押ししてまいりたいと考えております。

稲富委員 ありがとうございました。お取組をお願いいたします。

 以上、法案についての質問でございました。

 次に、ちょっと別の質問をさせていただきます。

 四月一日から、公的年金の受給を七十五歳まで後ろ倒しで受けられるというふうに制度が変わりまして、人生百年時代に備えて、働く期間が六十歳から六十五歳まで、そして年金を受け取れる開始年齢が後ろ倒しになっているということでございます。特に今日お伺いしたいのは、定年とそれに関わる税の問題でございます。

 高年齢者雇用安定法によって定年が六十歳から六十五歳に引き上げられ、二〇二五年から全ての企業において六十五歳が定年制、定年が義務化をされる。これに先んじて、全国では、私の地元でも、やはり中小企業が、六十五歳定年になるのであればということで、徐々に定年を後ろ倒しをしているという現状が、今まさにその移行期間にあるかと思います。

 そこで、一つだけ問題提起をさせていただきたいのは、退職年齢を六十五歳までするという企業がございまして、従業員のために準備していた退職金についてなんですけれども、この会社は、従業員の退職金の一部として、養老保険という生命保険を用いて準備をしてきた。本来は保険料全額は資産計上でございますが、一定基準を満たすと半額は損金扱いをすることが可能となっております。しかし、保険契約自体は六十歳ということになっておりましたので、全て、退職年齢と同じ六十歳に満期で契約を終える。

 退職年齢、しかし、この会社は社員のことを思い、六十五歳に定年を延ばしているということなんですけれども、この保険契約は六十歳で満期を迎え、六十五歳の退職の五年前の六十歳に満期の保険金が法人に支払われるということで、それが課税をされるということになるわけです。すなわち、本来であれば、六十歳で定年、六十歳で満期とそろえばいいんですけれども、六十五歳に世の中なる、法定もされている、社会も六十五歳にいくというんですけれども、課税関係は六十歳のままになっているという課題があります。

 これは、詳細はまた別途どこかで議論させていただければと思いますが、この問題、やはり解決しなきゃいけないんじゃないか。より心ある企業ほどそういう六十五歳定年延長をしているという現状がありますので、この点、一言だけ、大臣、御答弁いただければと思います。

鈴木国務大臣 私の所管事項から外れる部分もあると思いますが、その上で申し上げますと、元気で意欲のある高年齢者がその能力を十分に発揮をして、年齢に関わりなく活躍できる環境を整備すること、これは重要なことである、そういうふうに思います。

 このような観点から、企業に対しましては、法律、これは高年齢者雇用安定法でございますが、六十歳未満の定年設定を禁止するとともに、雇用確保措置として、六十五歳まで雇用を継続的に確保する義務を課している、そのように承知をしております。

 一方で、企業を取り巻く状況が様々であることや、高年齢者の特性やニーズも多様であることを踏まえまして、この雇用確保措置については、定年の引上げや廃止だけでなく、再雇用を含めた、希望者に対する継続雇用の導入も認められていると承知をいたしております。

 その上で、退職金の準備について、これは個々の企業の実情、様々であろうと思いますが、一般論で申し上げますと、例えば、例えばでありますが、六十歳定年制と六十五歳までの継続雇用を導入した上で、六十歳で定年を迎え、雇用契約が一旦終了する時点で退職金の支払いを行い、新たに六十五歳までの継続雇用契約を締結するという形で運用することも可能だと思ってございます。

 財務省といたしましては、各企業において、制度の趣旨を踏まえつつ、それぞれの企業が自らの実情に応じて高年齢者雇用に係る取組を行っていただくことが望ましい、そのように考えているところでございます。

稲富委員 どうもありがとうございました。

 終わります。

薗浦委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 今日は、法案審議ということでやらせていただきたいと思います。

 まず、法案審議の前に、二点、ちょっと私の方から質問させていただきます。

 今、原油高というところから、非常に、物価高という、あるいは円安というのも含めて、そういう物価高という対策が必要だということは皆さん周知のことなんですけれども、特にガソリン価格値下げという観点から、この前、立憲民主党が議員立法で提案したトリガー条項によるガソリン税、二十五・一円、この非課税について、今、自民党、公明党、国民民主党の間で検討するような報道がなされていますけれども、政府の検討状況というのはどんなものなんでしょうか。

鈴木国務大臣 まず、三党の協議につきまして申し上げますと、これは公党間の意見交換でございますので、政府として何か申し上げる立場にはないということでございます。

 そして、政府の検討状況はと、こういうことでございますが、三月二十九日に総理から指示がございました。それは今後更に原油価格が高騰し続けた場合への対応についてでありまして、その指示に基づいて、政府としてしっかりと検討してまいりたいと思っております。

末松委員 もう一点、インボイスを廃止するという法案を立憲民主党は最近衆議院の事務総長に提案したんですね、議員立法で。コロナで疲弊している中小零細企業に対して、現行の帳簿方式でも適正課税ができるのに、わざわざインボイスという新たな、この中小事業者に煩雑な事務負担を強制して、仕入価格の税額控除を適用させないことによって、免税事業者が取引から排除され、廃業するという危険性が高い、そういう不安をたくさん持っている方々、こういうインボイス制度というのは廃止すべきじゃないかということで議員立法を出したんですけれども、インボイス制度はこのまま政府の計画にのっとって強行される御予定でしょうか。それも伺います。

鈴木国務大臣 立憲民主党におかれましてインボイス制度廃止法案を提出されたということ、これは承知をいたしております。

 その上で、政府の立場を申し上げますと、インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を行うために必要なものである、そのように考えております。

 その上で、制度の円滑な移行を図る観点から、事業者の準備や取引に与える影響を緩和するための十年間の十分な経過措置を設けているところであり、令和三年度補正予算におきましても、インボイス制度への対応も見据えた中小企業のデジタル化やインボイス発行事業者となる免税事業者の方の販路開拓などを支援することといたしております。

 今後とも、制度の円滑な移行に向けて、関係省庁で連携しながら、これらの支援策や制度の周知、広報を始めとした取組を丁寧に進めなければならないと考えております。

末松委員 是非そこは私どもとしては廃止をしていただきたいということを改めて申し上げたいと思います。

 さて、じゃ、本法案についての審議をさせていただきますけれども、先ほどから我が党の稲富委員も本法案について様々な質問もされておられました。私の方は、この法案が十五年ぶりということでございます。ですから、この公認会計士制度そのものの、もっと本来的な在り方、こういうことを十五年もたって審議するわけですから、もっともっと国際環境とかそういったことの変化を踏まえた改正をすべきじゃないかと思っているわけです。

 例えば、サステーナビリティー、SDGsとかESGとかいろいろとありますけれども、こういった情報、これを企業開示する、これは投資家の投資態度が非常に変わってきている。ですから、そういった意味で、金融審議会の公認会計士制度部会報告ではSDGsなどのサステーナビリティー情報に関する保証業務に関して意見が紹介されていますし、今や、ESG情報に関する投資家の関心が非常に高まって、脱炭素化をも踏まえて、国際的にサステーナブルファイナンスに関する取組として欧州を中心に議論が急展開で進められています。この議論に、中央銀行会議なんかでも盛んにそのことが言われておりますし、欧州の中央銀行だけじゃなくて日銀も気候変動オペ制度の導入なんかもするに至っているわけですね。

 このような国際動向を踏まえて、これは中長期的じゃなくて、今すぐにでも、サステーナビリティー情報の企業開示の在り方について、日本も既に導入をしていなきゃいけない、あるいは、そういった、今ですら日本は遅れているんじゃないかなというぐらいに考えているわけですけれども、これに対して、金融担当大臣としてどういうふうに認識されておられますか。

鈴木国務大臣 末松先生お話しのとおりに、近年サステーナビリティー情報について投資家からの関心が高まっているということ、そのことについては承知をしているところでございます。

 そして、御指摘の開示情報の信頼性を担保する保証業務の検討を行うに当たっては、その前提となります開示基準、これが必要でございます。このことについて、国際的には、気候変動を含むサステーナビリティー開示基準が今年中に策定される予定であり、国内では、国際的な動向も踏まえつつ、金融審議会において、今春をめどに、この春をめどに報告書を取りまとめを目指し、サステーナビリティー開示の在り方を検討しているところでございます。

 サステーナビリティー情報の保証については、こうした開示基準の策定状況、それを踏まえた国際的な保証基準の策定状況も見極めなければならないと思ってございます。中長期とは申しませんが、中期的に検討をしていかなければならないと考えております。

末松委員 今ヨーロッパの方で議論されていて、私もいろいろな文献を読んでいますけれども、これから銀行の貸出しの利率について、実際に炭素をたくさん出している企業にはペナルティーとして利子を高めに設定するとか、あるいは、ロイズという再保険で一番有名な大きな会社がありますけれども、そういうところも中心に、火災保険とかそういったものを、CO2をよりたくさん出す会社に対しては上げる、あるいは、出さない会社はそのまま低い基準にすると。

 火災保険というのは、一見、何か余り大したことないよねという話でイメージされるかもしれませんけれども、工場とかいうのは一つ一つに対して火災保険を掛けていくから、べらぼうな額になるんですね。こういったものを更に上げられると、企業としても大変なやはり苦境に陥るわけですよ。そういう、何といいますかね、欧州は本腰を入れてこれをやっていこうということで、いわゆる我々から見たら、やや恐ろしい気もするような状況が今続きつつあるわけですよ。

 逆に、欧州は、私が更にすさまじいと思うのは、石油会社とか、ああいったCO2をたくさん出す会社は、ストランデッドアセットというかな、つまり、座礁資産だというような、そんな言い方をするまでに敵視をしているような感じまで行われているんですね。そうなると、さっき言われた中長期じゃないにしても中期だという見通しじゃ、困るんですよ。

 これは、今本当にここで努力して、企業の開示基準を日本も自ら検討して、そして国際的な基準が、年末までですか、開示されると言われましたっけ……(鈴木国務大臣「国際的には」と呼ぶ)国際的には。国際的にはそうなるということをもう少しちょっと詳しく教えていただきたいんですけれども。

 要するに、そういうのが実際にどんどんどんどん発動されていけば、これは物すごい企業の価値が変わってくると同時に、本当に、気候変動あるいはそういったCO2、脱炭素というところの努力を評価し、努力しないところはペナルティーを科すという、こういう恐ろしい動きが出てきていますので、これは、中期なんて言わないで、今の問題だということを是非認識をしていただきたいんですが、どうですか、大臣。

 特に、そして企業開示の基準、いつ、どこで、それまでにどのくらいのそういった会合が行われて、そのスケジューリングをちょっと教えていただきたいと思います。これは大臣以外には指定しませんでしたけれども、政府委員の答弁を許します。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の点につきましては、企業のサステーナビリティーに関する開示、企業が開示するという問題と、それから、企業の開示に対してどう保証するかという保証の問題と両面ございます。

 まず、前者の、企業の開示に関する基準ということでございますけれども、昨年の十一月三日でございます、いわゆるCOP26のファイナンスデーというときでございますけれども、IFRS財団がサステーナビリティーに関する国際的な開示基準策定に取り組むための、会計基準とは別に、国際サステーナビリティー基準審議会、ISSBと申してございますが、その設置をするということを公表してございます。

 そのISSBは、この三月三十一日でございますけれども、気候関連開示基準、それから全般的な要求事項といったものについての公開草案を公表いたしまして、市中協議を開始したところでございます。そこは、先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、二〇二二年内に最終化するという予定をしているというところでございます。

 米国も、同じようなタイミングでの基準の策定というものを進めているところでございます。

 その上で、国内というところでございますけれども、先ほど御答弁ありましたとおり、国際的な動向も踏まえつつ、金融審議会におきまして、この春を目途に報告書を取りまとめるということを、作業を進めているところでございます。

 その上で、今度はその保証の話になってまいりますと、大臣から御答弁申し上げましたとおり、こういった、まず、開示の基準の策定状況、それから国際的な保証の基準の策定状況というものもございまして、そういったものも見ながら検討してまいりたいというふうに考えてございます。

末松委員 この春って、もう春なんですよ。いつからなんですか。その予定は決まっていないんですか。だったら、春なんて言い方しないでくださいよ。ちょっとそれは、決まっているんだったら予定を示してください。

 それと、あと、二二年末というのは、十二月とか十一月とか、そういうふうに決まっているんですか。それは国際開示基準の方でその日程が今明らかなのか、明らかでないのか、それを二点目にやってください。

 三点目なんですけれども、そういった幾つかの、ISSBとかそういった国際的な会合、アメリカの会合がありますけれども、これは日本は参加しているんですか、していないんですか。あるいは、する場合は誰が派遣されるんですか。それについても答えてください。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、三点目のISSBに対する日本からの参画の件でございます。

 ISSBにつきましては、先ほどちょっとはしょって、答弁で、恐縮ですけれども、またIFRS財団というところが元々ございまして、その中にISSBというものができてございます。IFRS財団の運営を検討するところにつきましては評議員会というところがございまして、そこにつきましては我が国からも参加をさせていただいているところでございます。一方、その下にございますISSBにつきましては、今、議長と副議長が選任されておりまして、それ以外のメンバーは今検討中というところでございます。

 そういった中で、ISSBの活動につきましては、金融担当大臣から書簡を出しましたり、それから経団連からも提言をいたしまして、積極的に働きかけを行っているところでございます。そういった働きかけもございまして、実は東京でIFRS財団の拠点というものがございまして、そこをISSBでも活用するという方向で議論がされているところでございます。それがまず三点目の点でございます。

 それから、二点目の年内ということにつきまして具体的な日時が決まっているかという点でございますけれども、発表文を見ますと年内という書き方になってございまして、これはいつという日程が必ずしも今の段階では固まっているということではないというふうに承知してございます。

 失礼いたしました、この春ということでございますが、なるべく早く出せるように努めてまいりたいと考えてございます。

末松委員 じゃ、この春というのは日程は決まっていないんですね。早く決めて、始めてくださいよ。よろしいですか。

 それと、国際的な基準作りに日本も参加をしているということで、どのレベルのどういう方々が行くのかというのは特定はされませんでしたけれども、そこはしっかり情報を取って、シェアをしていただきたいと思います。

 もう一つは、今局長が言われた経済界、経団連でしたっけ、それについての意見も聞いていると言うんですけれども、経団連の方はこういうことに対して非常にネガティブな反応もあると思うんですね。経団連の反応というのはどんな感じですか。ちょっとそれも教えてください。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 経団連の国際サステーナビリティー基準審議会、このサステーナビリティー開示に関する働きかけでございます。

 もちろん、日本の実情に合った基準開発を進めていきたいということが基本にあった上で、もう一つございますのが、基準開発自体に経団連としても積極的に参加したいというところを表明しているところでございます。

 そういった点につきましては、先ほど申し上げました例えば東京の拠点というものがございますけれども、そういったものについての人的サポート、資金的サポートといった点も経団連から表明されているというふうに承知しております。

末松委員 そこは、具体的な反応については遠慮されて言われませんでしたけれども、日本型の基準というのは、確かにそこは欧米型だけに従うという必要はないと私も思ってはいるんです。ただ、欧米型がメインになってくると、その基準で企業の投資が選別される、あるいは利子率が決定されるとか、あるいは保険料が決定されるなんという話になったら、これは大変な状況になりますねということも踏まえて対応しておかないと、日本の企業の不利になるという点を懸念するわけですよ。

 是非、そこは国際的な基準とも適合しながら、しかも日本的な特殊事情を踏まえながらやっていくということを、是非基準作りをお願いしたいと思うんですが。

 何よりも、その基準作りを早くやってもらわないと、二年や三年なんという話になっちゃっていると、本当に、逆に、公認会計士の中で、どういう事項を監査するんですか、基準が分からないじゃないですかというふうに困るわけですよ。そこを何とか早くやってほしい、スピーディーな対応をとにかくやってほしいということを改めて私はお願いしたいんですが、大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 冒頭申し上げましたとおり、このサステーナビリティー情報について、投資家の方々が関心が高まっているということ、それは私も十分承知をしております。

 それに対応するためには、やはりある程度手順を踏まなければなりませんので、手順を踏んでしっかりとやっていく、こういうことだと思いますが、やはり、私が感じますに、そうしたルールがどんどんどんどんヨーロッパを中心に決められてしまう、そして、その決まったルールに我が国企業が対応しなくちゃいけないというところに余り不利が生じてはいけないということで、これからも、関わりを持って、しっかりと手順を踏みながらも着実に進めていくことが大切だなと思っているところでございます。

末松委員 この春といった、それは、大臣、もう日取りも決定していただいて、早急な審議を開始していただきたいということを改めてお願い申し上げます。

 次は、公認会計士で社員が今五名で監査法人をつくれるという形になっているんですけれども、いろいろとこの前の部会の報告を見ていると、この法案では、上場企業の監査証明業務に関わる登録制度が導入されて、公認会計士又は監査法人は、上場企業等の監査証明業務を行う者として適格性の確認を協会から受けることとされています。

 この適格性の一つに一定数の公認会計士である社員を有することが求められている。この制度導入は、当初は五人以上とされているんですが、制度導入後は、この協会における中小監査事務所の育成支援による体制整備として人数を拡大する見直しが行われる、こういう指摘も読んでいくと指摘されているわけですね。実情は社員が十人に満たない中小監査法人も多く存在しているんですね。そうすると、仮に人数基準が引き上げられた場合には、中小監査法人への影響というのは計り知れないものが出てくるわけですね。

 これは、五人だと、これを超えなきゃいけないという立法事実が私は分からないんですよ。どうしてそんなことをやらないといけないのか。

 何かこのやり方を見ていると、元々のこの法案の、上場企業を監査するための中小の監査法人に登録制で枠をはめたり、そういう、何か中小いじめというのかな、社員だって五名を超えなきゃいけないなんという、制度導入後ですよ、そういう話を示唆されると、要するに、何か、これから自由に参入をしようとする監査法人に枠をはめちゃって、自由に参入させなくしようとしているというふうな解釈もできるし、あるいは、今まで存続している、本当に頑張っている会社、これを存続できなくさせるとか、あるいは、報告書にも書かれていたように、一人でもやっている人がいるわけですよ、極めて優秀な人で、いろいろな使用人を使って、あるいは補助者を使って、一人で上場企業をどんどん見ている方も、それは例は多くないけれどもたくさんおられる。

 そうなってくると、結局、何というのかな、何かどうも中小を縛り上げて、締め上げて、何か参入させないようにしていっているのかなという、私はそういう気がしてならないんですけれども、その辺はどうなんでしょう、大臣。

鈴木国務大臣 上場会社の監査を担う監査法人に求める最低社員数については、多くの社員がいることは、監査担当者のローテーション体制を組みやすく、監査先への長期関与に起因するなれ合いを防ぐことにつながるということとともに、独立した審査担当者や品質管理部門を設けることで、監査業務の適切性を丁寧にチェックすることができるなどの面で、監査品質の確保に有益との意見がございます。

 その一方で、社員の数のみならず、経験や能力といった質を評価する必要があるといった指摘や、社員数を確保する数合わせのための合併を招き、かえって監査品質が低下する、そういう懸念があるとの御指摘もございます。

 こうした点を勘案いたしまして、登録制度の導入当初は、上場会社の監査を担う監査法人についても、監査法人一般と同じ最低社員数、これは五名でございますが、としつつ、登録制度を導入して、後におきましては、日本公認会計士協会による中小監査法人の育成支援状況を踏まえながら、どのような規律づけが適当か、改めて検討していきたい、そのように考えているところでございます。

末松委員 大臣、それは、報告書に書いてあることをかみ砕いて丁寧に言っているだけにすぎないんですよね。

 だから、私が大臣に問うたのは、実際に中小を締め上げようとしているのかどうか。私にはそういうふうに、感じもするんですけれども、そこについてはどうなんだということを大臣に問うたんです。

鈴木国務大臣 中小を、決して、締め上げようとか、そういうことは考えておりませんし、そういうことがあってはならないと思っております。

末松委員 私も、そういうことはあってはならないと思うんですね。自由な中小の設立とか存続、これはしっかり考えなきゃいけない、保護していかなきゃいけない、そこは、その態度は是非堅持をされていただきたいと思います。

 と同時に、さっき大臣が、二番目の理由で、要は、社員の能力とか、監査法人の能力とか、一人でもやっている、そういうベテラン、そういった人が、何で五人集めなきゃいけないんだという話にも当然なってくるわけで、だから、一般論で、何か、人数がたくさんいれば、これで業務が回るから、だからたくさん公認会計士を集めろというような一般論で切るんじゃなくて、本当に、個人の能力とか実績とかそういったのをしっかりやっていかないと、単に一般論だけでやると、私は失敗すると思うんですね。

 ですから、そういう点は中小の締め上げにつながると思うので、そこは是非、そういう態度じゃないんだということを証明する意味でも、本当に慎重に御審議をいただきたいと思います。

 改めて、ちょっと、その態度をお願いします。

鈴木国務大臣 先ほども申し上げたとおりでございますが、数より質を考えるべきだという御指摘も現にございます。そういうこともしっかりと、今後、実際に進める上で、考えていきたいと思います。

末松委員 最後の質問ですけれども、公認会計士・監査審査会が、ここのヘッドの方が年収二千万円とか、あと、常勤の方もおられて、実際、全部で十人ぐらいの組織ですけれども、これは同意人事のときも、ちょっと、私の方で党内でも申し上げたんですけれども、調べる件数が年間十件前後、十件ちょっとなんですね。たった十件かと。私の印象は、思うわけですよ、もうちょっと調べられるんじゃないかと。

 公認会計士協会が監査を、きちんと特別的な監査をするのが、大体、コロナの前は八十六件と聞いたり、あるいは百件ぐらいやっていたという話もあるんですけれども、公認会計士・監査審査会が年間十件程度でやっているというのは、本当にこの程度しかできないのかよというふうな不信を持たざるを得ないんですね。

 それは、丁寧にやっています、丁寧に丁寧にやっているから十件しかできないんだと。でも、基本的に下調べは、公認会計士協会なんかとも話しながらやっている話だし、そういうベテランがやっているところでしょうから、そこについて何で十件程度しかできないんだ、もうちょっとできるんじゃないかという疑問があるんですけれども、これにちょっと答えてください。

鈴木国務大臣 公認会計士・監査審査会において、監査法人への検査の頻度につきましては、大手監査法人、準大手監査法人、中小規模の監査法人、こう分けて申し上げますと、大手監査法人は毎年、そして準大手監査法人は三年に一度とし、そして中小規模の監査法人につきましては、日本公認会計士協会による品質管理レビューの結果を踏まえ、リスクの高い事務所を選定し、検査を実施するということにしております。

 そして、審査会においては、検査件数自体は年間十件程度というのは先生の御指摘のとおりでございますが、日本公認会計士協会とも適切に連携をいたしまして、上場企業の時価総額ベースで約九割の企業を監査する大手監査法人やリスクの高い監査法人への監査に注力することによりまして、引き続き検査の効果と効率性の最大化を図り、監査の信頼性確保に努めてまいりたいと考えております。

末松委員 大手について、四社ですよね、四社は、それは、監査を受けることは慣れている、これは毎年やっている。準大手が三年に一回、これもある程度慣れている。逆に、本当にきちんとした監査をしなきゃいけないのは、中小、そういったところをより幅広にやらなきゃいけないんですけれども、これが一番多いわけですよ、数として。それが、十件のうち、毎年というのと、それから三年に一度と合わせると五、六件に行っちゃうわけですよ。そうすると、本来、一番監査をするニーズの高いところが年間四、五件しか監査できないという話になってくると、これはやはりちょっともう少し数を増やせないのか、そういうふうに考えるわけですね。

 だから、そういったところをもっとしっかり監査するように大臣からもちょっと指導していただければと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 中小の監査法人につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、日本公認会計士協会による品質管理レビューの結果を踏まえまして、協会がいろいろとレビューをする中において、リスクがこの事務所は高いな、そういうものが出てくるわけでございまして、そこのリスクの高いところから監査を進めていく、こういうことになっているところでございます。

末松委員 ちょっと最後になりましたのですが、中小監査法人の基盤整備について最後に聞きたいと思います。

 先ほどの部会の報告書で、中小監査事務所におけるデジタル対応や人的基盤整備の支援といった取組など、日本公認会計士協会や当局等の関係者において制度面以外の取組が進められることの重要性に関しても多くの指摘があったと記載されているんですね。

 この場合、そういったデジタル対応とか人的基盤の支援とか、これは支援することは重要だと思うんですけれども、ただ、これは協会とか事務所でどういうふうな対応を取るのか。あるいは、政府の支援、予算を取ってそういった支援というものをやってくれるのか、そこについて最後にお伺いしたいと思います。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、有識者の懇談会におきましても、監査関連の電子化、人材確保、経営相談、体制面、ノウハウ面から支援を検討する必要があるというふうに指摘されたところでございます。

 こういった問題意識をまず日本公認会計士協会と共有させていただきまして、公認会計士協会の方では、中小監査法人が共通して利用できるITツールを提供といった点ですとか、大手監査法人退職者の人材紹介といった具体的な施策の検討を進めておられるというふうに承知してございます。

 御指摘の、金融庁として予算措置ということは考えてございませんけれども、日本公認会計士協会と適切に連携して、中小監査法人の体制整備をしっかりと後押ししてまいりたいというふうに考えてございます。

末松委員 終わりますが、そういった支援整備に全く予算ゼロというのも、何かちょっとうまくないなと。そういった意味で、できる限り政府も協力するようにお願い申し上げまして、私からの質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、赤木正幸君。

赤木委員 おはようございます。日本維新の会、赤木正幸です。

 本日もまた貴重な質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、本日は、不適切会計の原因追求、また、あと、AI監査の可能性みたいなものについての質問をさせていただきます。

 本日の質問は、こういった不適切会計の原因追求から始まって、日本の監査環境の問題点のようなものを追求する内容になっているんですが、少し、冒頭、一言フォローさせていただきますと、決して本日の質問は何か悪い部分をあげつらいたいわけではなくて、どうやればいい監査環境ができるかという、ある意味、愛情の裏返しとして現状認識をしたいなと考えていますので、そう受け止めていただけるとありがたいです。結局、日本の監査環境がよくなれば、ある意味、公認会計士を取り巻く環境がよくなれば、当然、質の高い監査ができて、さらに、日本のマーケットが、信頼性が高まって、そして資金調達がしやすくなって国力が上がるという、そういった認識を私はしておりますので、少し前提として説明させていただきました。

 それでは、最初の質問になりますが、不適切会計の状況についてお伺いいたします。

 不適切会計を開示した上場企業数の推移、若しくは不適切会計の内容とか、あと、市場別、産業別の発生状況等について、内閣府副大臣より御見解をいただければありがたいです。

黄川田副大臣 不適切会計を公表した上場企業数について、民間調査会社による調査によれば、調査が開始されました二〇〇八年以降、増加傾向で推移しております。直近の話では、二〇一九年に最多の七十社を記録した後、二年連続で減少し、二〇二一年は五十一社となっております。

 二〇二一年の不適切会計五十一件の内容は、経理や会計処理ミスなどの誤りが二十四件、子会社で不適切会計処理などの粉飾が十五件、着服、横領が十二件などとなっております。

 また、二〇二一年の不適切会計五十一件を市場別、産業別に見てみますと、市場別では、東証一部が二十七社、ジャスダック九社、東証二部では七社などとなっております。産業別では、製造業が十七社で最も多く、次いでサービス業が十六社となっております。

赤木委員 そうですね、決して、こなれていないという言い方が正しいかどうか分からないんですけれども、意外に子会社と関係会社が多い東証一部が多い傾向にあるということは、やはりちょっと構造的な課題があるのかもしれないなと私自身も考えております。

 そこで、次の質問になりますが、不適切会計の原因と対策について、先ほど既に質問が出ていた部分はありますが、原因をどのように分析されているか、また、それに対してどういった対策を取られているかについて、鈴木大臣より御見解をいただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 不適切会計の発生の原因でありますが、これは様々であると思います。

 企業における不適切会計を防ぐ仕組みである、例えばコーポレートガバナンスや財務報告に関する内部統制が十分に機能していないことが不適切会計の発生の一因になっていると認識をいたしております。

 一方で、監査法人におきましては、企業の不正を見抜く力の向上でありますとか、AIを含むデジタル技術を活用した監査の実施などによりまして、不適切会計の発見の数が増えた可能性がある、そのようにも分析をいたしております。

 対策としては、適切な情報開示を確保するため、コーポレートガバナンス・コードにおいては、これまでも、実効的なコーポレートガバナンスを実現する観点から、会社の財務情報やリスクガバナンス等に関する非財務情報についての開示の充実を求めてきたところでございますが、さらに、昨年六月の改定で、適切な内部統制の構築や、内部監査部門が取締役会や監査役会などに対しても直接報告を行う仕組みを構築するなどが盛り込まれたところでございます。

 また、公認会計士に対しましては、これまでも、日本公認会計士協会が主導して、不適切会計に関する研修等に取り組んできているところでございます。さらに、実効性を高める観点から、金融庁の会計監査の在り方に関する懇談会の昨年十一月公表の論点整理では、今後検討すべき事項として、公認会計士の研修において不正のケーススタディーを学ぶことや、AIを含む新たなデジタル技術を用いた不正の発見等に資する方策などが盛り込まれているところでございます。

 金融庁といたしまして、引き続き、企業の不適切会計を防ぐ仕組みであるコーポレートガバナンスの充実等を推進するとともに、監査法人の監査の品質が確保されますように、日本公認会計士協会などの関係各所と連携をしながら取り組んでまいりたいと考えております。

赤木委員 まさに、コーポレートサイド、監査サイドの両面において、原因分析に基づく対策を取られていることを理解させていただきました。

 それを踏まえた上で、少し細かい質問になるんですけれども、決算日から監査報告書の提出日までの日数について御質問させていただきます。

 これは、私の個人的な認識としては、やはり日本は諸外国に比べて、監査報告書、有価証券報告書等を含めて、提出日までの日数が相当短いというふうに考えているんですけれども、これについて、日本と諸外国の比較、また、あと、なぜ日本はここが短くなっているのかについて御見解をいただけますでしょうか。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 上場企業は、会社法に基づく監査というものと、有価証券報告書に関します金商法に基づく監査というものがございますけれども、経産省の報告書によりますと、先生御指摘の監査報告書提出までの平均日数については、会社法に基づく監査が四十三日というところでございます。金商法の方は、ちょっと長くて八十六日というふうになってございます。一方、諸外国におけます決算日から監査報告書の提出までの平均日数につきましては、米国が五十一日、カナダが四十五日、ドイツが五十三日、英国五十四日、フランス六十九日ということで、先ほどの日本の会社法に基づく監査報告の提出のタイミングよりも遅くなっているということと承知してございます。

 これは、多くの日本企業、例えば三月決算で六月の末に株主総会という日程でございますけれども、実務上、決算日を会社法上の株主の基準日というふうにいたしまして、六月に株主総会を開催する、その前に招集通知を出すということがございまして、その招集通知までに会社法の監査を終わらせているという事情があるというふうに承知しているところでございます。

赤木委員 やはり諸外国に比べて期間が短いようですので、期間が短いゆえに、公認会計士に相当な負担がかかったりとか、そこで不適切会計を見落とすリスクも大きくなっているのかな、かもしれないと懸念はしております。

 一方で、一日も早く監査結果をオープンにするという部分も非常に価値が高い部分ですので、スピードと精度とそして負荷ですかね、このバランスについては今後も追求し続けていただければと考えております。

 次は、監査報酬について御質問させていただきます。

 これも、私の認識としては、監査報酬は諸外国に比べて日本は相当安いのではないかなと考えているんですけれども、日本の監査報酬の平均額、若しくは外国との比較、日本の監査報酬が低い場合はなぜ低いのかといったことについて、御見解をいただけますでしょうか。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の監査報酬に関しましては、日本公認会計士協会が実施した委託調査というものがございます。その報告書によりますと、日本の監査法人が上場会社から受け取る監査報酬の平均額は、二〇一四年から二〇一八年の五年間で、約六千百万円から約六千七百万円に漸増したというふうにされているところでございます。

 一方で、ちょっと桁が違うんですけれども、米国における監査報酬の平均額は、二億二千九百万から二億八千五百万に増加したという調査結果になっているところでございます。

 もちろん、監査報酬の額というのは、被監査会社の業種、業態、規模、取引の複雑性、国内外の子会社に対する作業、工数の中身など、様々な要因により個別の契約において定められるものでございますので、単純に、上場会社の規模が異なっております日本と米国を比較することは困難ということでございます。

 いずれにせよ、重要なのは監査品質を確保するという点でございまして、こういった点が、適切な監査の実施という面で、監査報酬の面からも担保されているということが大切だというふうに考えてございます。

赤木委員 やはりというか、見方によっては日本の監査報酬は安いということですね。

 実は、私も会社勤めをしていたときに、反省しなきゃいけないんですけれども、帳簿を突き合わせしているだけなのにむちゃくちゃ監査報酬高いなと、今思えば誤った認識をしていたこともあります。

 これは、自分のことを棚に上げて言うのははばかられるんですけれども、やはり日本は監査に対する経営陣の価値認識が低いのかもしれないなと考えております。質の高い監査をしてもらえば、不正会計も防げて、結果として自分たちの資金調達コストも下がっていくという思考回路が必要ではないかと考えていますので、ある意味、会計教育というのは実は経営者に対してこそ必要なのかなというふうにも考えております。

 次に、監査法人のローテーション制度について御質問をさせてください。

 ローテーション制度についてどう考えられているか、また、同一監査法人への長期間の監査依頼の実態についてどのように捉えられているか、金融担当大臣よりお答えいただけますでしょうか。

鈴木国務大臣 企業がどの程度の期間にわたり同一の監査法人に監査を依頼しているかどうかという点につきましては、TOPIX一〇〇を構成する上場会社のうち半数近く、四七%でありますが、半数近くの会社が三十年以上の長期間となっております。

 継続監査期間の長期化は、監査法人における知識経験の蓄積による深度ある監査が期待される反面、監査法人の独立性への懸念も指摘されております。

 監査法人のローテーション制度は、そうした独立性の懸念への対応策の一つでありますが、一方で、監査法人を交代するにしても、大企業の監査を適切に行うことができる人的体制が整った監査法人の数は限られているという現実も踏まえる必要があると思います。

 我が国におきましては、二〇〇四年四月より、公認会計士法に基づきまして、監査法人内にある上場会社等の監査等に従事する社員、パートナーについて、一定期間、これは七年ということでございますが、これを超えて同じ監査対象先の監査を行うことを制限するパートナーローテーション制度が導入されております。

 加えて、二〇二〇年四月より、日本公認会計士協会の自主規制において、社員以外の監査チームのメンバーについてもローテーション制度が導入されております。

 今後のローテーション制度の在り方につきましては、こうした新たな取組の状況でありますとか、諸外国における監査をめぐる状況等も勘案しながら、監査人の独立性確保のために必要な対応を引き続き検討してまいりたいと思っております。

赤木委員 そうですね、私も、たしか三月の頭ぐらいに新聞で、五十年以上同じ監査法人が監査しているという企業が一割ぐらいあるというのを聞いて少し驚いた部分はあるんですけれども、そういう形でローテーション制度の整備をしていただければ、なれ合いの懸念も解消されるかなとは考えております。

 一方で、監査法人が替わるときというのは、結構、値下げの要求、若しくは値下げを一つの何かインセンティブにして替わるパターンもあるということを聞いておりますので、先ほどの日本の監査報酬が安いという部分とのちょっと兼ね合いについては、悩ましい問題かなと考えております。

 次の質問ですが、これは魅力的な就職先として監査法人がどう捉えられているかということについてになるんですが、ちょっと私が調べたところ、監査法人への就職希望に関して、去年、二〇二一年の世界ランキングでは、実はトップテンにビッグフォーが全部入っているみたいです。四位がデロイト、七位がEY、八位KPMG、十位PwCです。ちなみに、一位がグーグル、二位マイクロソフト、三位アップルですので、こういったそうそうたる企業に追随して監査法人が入っているというのは少しびっくりした部分はあります。

 一方、日本のランキングを見ると、実は、ランキングによっても違うんですけれども、百位にすら入っていないような状況です。入っていたとしても七十位とか八十位とか後ろの方なんですけれども、この違いとか原因について、できれば大臣より御見解をいただけるとありがたいです。

鈴木国務大臣 赤木先生が御指摘になられました調査でございますが、調査対象等が異なるために、この二つのランキングの違いの要因を述べることはなかなか困難でありますけれども、例えば、海外では、大学を卒業した後にビッグフォーへ就職をして、そして就職をしてから公認会計士の資格を取得するということが一般的であるのに対しまして、日本では大学卒業前後に公認会計士試験を合格した者がビッグフォーに就職することが多く、いわば、海外の方がビッグフォーへの就職の間口が広いとの事情があると承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、我が国の監査法人においては、優秀な人材を確保するため、就職先としての魅力向上に向けた取組を行っていく必要があると考えます。

 金融庁や日本公認会計士協会では、公認会計士試験受験者を増やすため、大学生や将来の受験候補者である高校生等を対象に会計監査の重要性についての講演を行うなど、広報活動を進めております。

 また、監査法人においても、職員に対しまして、数字の確認のような単純作業に終始させるのではなくて、不正の原因追求や経営者との対話など、監査の質を高め、職員が専門性の発揮を実感できるような業務にも携わることができるよう取り組んでいるとお聞きをしているところでございます。

 このような監査法人や公認会計士の魅力向上のための取組を通じまして、優秀な人材が確保され、公認会計士として活躍することで、公認会計士のやりがいが広く認知されていくような好循環、これをつくっていくことが重要ではないかと考えております。

赤木委員 まさに、公認会計士が魅力ある職業であり、日本市場を支える誇り高き職業であることのメッセージが伝わったと勝手ながら受け止めさせていただきました。

 時間も迫ってまいりますが、最後の質問となります。やはり人が大事と言いながら、最後の質問で少しあれなんですけれども、会計監査へのAIの活用可能性について御質問させていただきます。

 具体的なこういった活用事例があるのか、若しくはどういった部分にAIを活用していくべきと考えられているか、期待するべき、期待されているようなことについて、内閣府副大臣より御見解いただければと思います。

黄川田副大臣 近年、企業活動の複雑化が進展する中、監査の品質確保のためにAIを活用した新たな監査手法などが開発されております。

 例えば、不正リスクの識別をサポートするツールとして、過去に発生した不正事例を基に、企業の会計不正が発生するリスクを数値化する際のAI活用、また、会計データとそれを裏づける取引書類を突き合わせて確認する、いわゆる証憑突合などの監査手続のAIによる代替などが行われていると承知しております。

 こうした監査におけるAIの活用により、取引等をより網羅的にチェックし、不正の検知など問題をより効果的に抽出することが可能になったり、監査手続の効率化により、公認会計士が被監査会社との対話などに多くの時間を充て、より深度あるコミュニケーションを図ることが可能になるなど、監査品質の更なる向上が期待されております。

 監査におけるAIの開発導入は、現在、大手監査法人を中心に、国際的に連携する他国の監査法人とも足並みをそろえながら進められていると承知しております。AI技術は開発の途上にあるため、まずは実務に精通した民間のイニシアチブにより開発導入が進められるべきものだと考えておりますが、今後、こうした前向きな取組を支援する観点から、金融庁としても、制度面などでの課題が生じるようであれば、現場の御意見にも耳を傾けながら必要な対応を検討してまいりたいと考えております。

赤木委員 まさにITやAIによって人間に空いた時間で付加価値の高い監査ができるように、是非、制度面を含めて御支援いただければと、検討いただければと思います。

 以上、私の時間も参りましたので、本日の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 本日は、公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案について質疑をさせていただきます。大臣を始め、関係省庁の皆様、委員部の皆様、本日もよろしくお願いいたします。

 さて、今回、質疑をするに当たって、公認会計士制度はいつ頃からあるのだろうという疑問がふと思いました。

 日本における職業会計人制度は、昭和二年の計理士法に基づく計理士の誕生から始まったそうです。その後、終戦後に財閥解体などによる経済民主化が進められ、昭和二十三年に証券取引法が導入され、計理士法から公認会計士法に変わったということです。証券市場における財務諸表の信頼性確保のために必要な制度として、公認会計士制度が誕生したと言われております。現在では、公認会計士という制度は、弁護士、司法書士、社会保険労務士等と同様に、広く一般の方にも知れ渡っている制度ですが、このような歴史があるということを知り、今回の改正案についても更に興味深くなりました。

 本日は、デジタル化が進む中、公認会計士制度の現状、そして未来について議論をしていきたいと考えます。

 公認会計士法の前に、そもそも、公認会計士という資格自体の現状について確認をさせてください。

 平成二十二年には二万五千六百四十八人といた受験者数が、平成二十七年まで急激に下降を続けて、受験者数は一時、一万人をぎりぎり維持する一万百八十人まで減りました。

 質問です。

 現在は少しずつ受験者数が増加とありますが、なぜいっときそこまで受験者数が減ったとお考えでしょうか。また、先ほど大臣の御答弁にもありましたが、世界と日本の、こういう監査法人で働くという流れがちょっと違うということもありますので、学生の受験比率というのも併せて教えていただければと思います。

田原政府参考人 お答え申し上げます。

 一つ目の御質問で、一時期、受験者の数が非常に減ったということでございますけれども、これは当時、就職がやや厳しくて、待機合格者が大変増えてしまったという状況にございまして、そうしたことを背景に、一時的に受験者が減ってしまったということであるというふうに承知をいたしております。

 それから、二点目の御質問でございまして、直近の合格者に占める学生さんの割合といったことでございますけれども、令和三年試験の合格者につきましては、学生の方の割合が五九・四%、それから、専修学校、各種学校というカテゴリーもございまして、こちらが八・五%というふうになってございます。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 公認会計士制度の、私も個人的に何で減ってしまったのかなと調べていたところ、当時なんですけれども、マスコミの方で、公認会計士という職業がAIの普及によりなくなる可能性の業種の上位にあるということで、そういう報道がかなりされていた傾向があるというふうに思いました。

 私も最近、学生の子たちと少しお話をさせてもらう機会をいただいて、そのときにやはり聞いたのが、今、人間でしかやれないといった仕事が、ずっとAIに替わっていくのではないのかと。結構、学生の子たちは、就職活動するときにも、そういったことまで考えて、二十年後、自分が目指した仕事があるのかなということは大変気にしているというそぶりがあったので、大変、今の若い子たちにとって、これから就職をするということ自体が、未来をどこまで見越せるかということと、自分自身が何をやりたいのかというバランスを考える、すごく難しい状態になっているのではないのかなというふうにも考えております。

 ちょっと質問なんですけれども、ちなみに、このマスコミが言っていた部分と、私自身もAIの普及により変わってくるものは当然あると思うんですけれども、今、金融庁の方では、どのように、AIの普及などで職業として公認会計士がなくなるのではということについてどう考えているのか、教えていただいていいですか。

田原政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御指摘ございましたように、監査業務につきまして、AI、ITの活用によりまして、取引データの加工、集計等、定型作業の自動化が図られてきているということでございまして、こういった動きを背景に、将来、公認会計士の仕事が減るんじゃないかという御指摘があるというのは、そのとおりであろうかと承知しております。

 一方で、監査業務自体につきましても、専門家としてやはり判断が必要な、AIで判断できない部分ですとか、経営者の方々とのコミュニケーションといったものがございますので、なかなか、こうした業務をAIに全面的に代替されるというのにはまだまだ時間がかかるんじゃないかというふうに考えております。

 また、先ほど来の審議の中でも御指摘いただいておりますように、サステーナブルの領域といったように、監査業務以外でも、これも監査業務ということにいずれなるのかもしれませんけれども、専門家としての知識経験の活用を期待される業務というのは非常に増えているんじゃないかというような御指摘もあり、公認会計士の仕事は今後も増加していくんじゃないかという御指摘も多く見受けられるところでございます。

 こういった中で、足下では公認会計士試験の受験者数は大きく増加する傾向で推移しておりまして、こういった状況を踏まえますと、現時点で、当面、AIの普及が必ずしも、受験者数など、あるいは将来不安ということに大きな影響を与えるところまでは来ていないんじゃないかなというふうに考えているところでございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 是非、先ほどの赤木委員の質問じゃないんですけれども、世界的にやはり自慢にできるような、そういった業種に伸びていくというのがやはりこの日本としても大事なのかなと思うので、桁が一つ変わると、私もあれだけ高い金額が世界では取られているのを初めて知ったんですけれども、それぐらいのやはりインパクトのある監査法人がどんどん伸びてくるような形もあったらいいなと。そして、それがやはりマーケットの安心感、信用につながっていくのではないのかなというふうに思っております。

 上場会社監査に関する登録制の導入について、ちょっと話を移させていただきます。

 今までの日本の上場会社の監査事務所の登録制度というものは、自主規制機関である日本公認会計士協会に任されているという点は、国際的には大変珍しいことだと伺いました。

 日本は、二〇〇七年から登録制を導入し、日本公認会計士協会が、会則に基づく制度として、その運用を担ってきていたということになります。つまり、協会の自主規制というふうなことだと考えます。海外では自主規制のみに任せているところはないと認識していますので、今回の登録制は必要な対策と考えます。ただ、これはよく考えると、なぜ今まで自主規制で対応してきたのかなと不思議に思ってもしまいます。

 質問です。

 今回、上場会社監査に関する登録制の導入がありますが、どんな背景で、どのように制度を導入しようと思っているのか、教えてください。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御指摘のとおり、従来、上場会社の監査につきましては自主規制で対応していたところでございますけれども、大きな背景と申しますか変化といたしましては、上場会社の監査の担い手が広がっていて、大手監査法人から、中小規模の監査事務所、準大手の監査法人が増加しているというところがございます。従来は大手が中心でございますので、ある意味では自主規制が機能しやすかったというような背景があろうかと思います。

 そういった点につきまして、担い手が拡大していくということになりますと、やはり、先生も御指摘もございましたように、海外の動向も踏まえまして、海外の規制も踏まえまして、それと並ぶような規律の導入の必要性というのもございますし、あと、自主規制だけではなくて、やはり公的なバックストップという形での対応が求められるといったところが背景かというふうに考えてございます。

沢田委員 ちなみになんですけれども、準大手が増えているというのは、前にちょっとグラフも見せていただいたんですけれども、この背景自体というのは簡単に説明いただけますか。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の監査人の交代につきましては、そもそも企業の方で、取引所の規則で監査人の異動理由というものを発表することとされておりまして、これにつきましては公認会計士・監査審査会がレポートで取りまとめてございます。

 理由を見ますと、監査報酬という理由を挙げているところが三〇・六%、監査対応とそれから監査費用の相当性、監査と費用の相当性といったところを挙げた企業さんは二二・〇%、それから、先ほども御審議ございましたけれども、継続監査期間、これが長くなっているという背景かと思われますけれども、それが一九・六%といったところが挙げられているところでございます。

 上場会社監査の担い手が中小監査法人にシフトする背景といたしましても、こうした監査報酬の低さといったところが挙げられているものと承知してございます。

沢田委員 御丁寧にありがとうございました。

 やはり、そのコストの部分、コストパフォーマンスもありますけれども、そういう方に流れる方と、質をどう担保していくかというこのバランスが、まさに今ちょうど両極端に動き始めているのではないのかなというふうに思っております。

 一方で、この登録制の導入を法律で決めてしまうことに対して、あくまで私、個人的な意識なんですけれども、日本公認会計士協会の裁量や権限などに大きな変化があるのではないのかなとも考えてしまいます。

 質問です。

 日本公認会計士協会が適格性を確認とありますが、それは求められる基準を確認するだけなのか、判断する際に裁量や権限などが大きな役割を持つものなのか、具体的に教えてください。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今般導入いたします登録制度の登録要件につきましては、法律上、一定の登録拒否事由を定めまして、登録申請者が拒否事由に該当する場合には日本公認会計士協会はその登録を拒否し、拒否事由に該当しなければ登録しなければならないという枠組みとしているところでございます。

 ここで、具体的な登録拒否事由といたしましては、例えば、申請者が業務停止期間だという場合ですとか、公認会計士である社員の数が一定の数に満たないといったこと、それから、業務を公正かつ的確に遂行するための人的体制その他の体制の整備が行われていないといったところが要件として、ある意味、最低限の要件を定めるというものでございます。

 登録の適格性の確認は日本公認会計士協会において行うこととされるわけでございますけれども、その判断はあくまでこうした登録拒否事由に該当するかどうかといったところに基づくというふうに考えてございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 ただ、やはり、何とか等とかその他とか入ると、そこが裁量とか権限になってしまって、どうしても新規参入がしづらくなるというような動きというものは当然生まれてくると思います。

 というのも、監査現場では、IT技術を利用したシステム監査の導入等により、基礎的な監査手続を大幅に縮小させてきているという流れはあっても、内部統制監査、四半期レビュー制度、ここが導入されたあたりから、繁忙期と閑散期の区分がほとんどなくなり、恒常的に一定の業務の負荷が継続するようになり、繁忙期は特に過重労働の傾向が強く、ブラック企業化しているのではないのかという声も出ています。

 先ほど、赤木委員の質問の返答に対しても、世界的に見て監査報酬等が安いという指摘もありましたが、一時間当たりの監査報酬も徐々に下がってきているというような傾向もあるというふうに伺っています。

 そして、先ほど、これまた赤木委員の質問であったんですけれども、決算日から監査報告提出までの期間が急がされているといった面で考えても、公認会計士法以外にも、会社法、金融商品取引法、また証券取引所規則といった、法律やルールに大変縛られている業種だけに、変化する余地が元々結構厳しいのではないのかなというふうに思います。

 デジタル化が進む中、そもそも監査法人という在り方自体に、イノベーションの訴求、圧力というものは私は出ていると思います。それがまさに、先ほどお答えいただいた値段であったり、今やってくださっているものに対する対価、そういったものに行くのか、しっかりとした質の担保をして、マーケットの、市場の投資家に安心感を持ってもらうというような方向で行くのかということが振れ回っているというところに私は出ていると思います。

 ただ、反面、加計学園、以前ありましたね。これは注目されましたけれども、相次ぐ家畜伝染病に悩まされ、獣医師が足りないという畜産農家の切なる声を受けて、加計学園という、獣医学部の新設をしようという動きにすら、獣医師会は既存のステークホルダーの利益を優先して、新規参入を阻もうとしました。そこに、一部野党やメディアだけでなく、与党議員までが相乗りで動いていたのを、私は一般人として見ていた立場として、既得権益者の強烈な抵抗が新規参入やイノベーションの阻害要因になるという問題意識を持たずに、この話を未来に向けた提案として続けていくのは大変難しいというふうに考えております。

 私自身、中小企業の経営者をしていたときに、サービスに付加価値をつけて売るということ以外に、多くのコストを払わされているということが、大変憤りを感じていた一人です。

 会社をやはり監査するということは、小さい会社からすると税理士が担当するようなものになるんですけれども、やはり大企業であれば、それなりの規模や、経理や総務などの部署が維持できますが、小規模事業になると、最低限の維持コストの比率がその分上がってしまいます。

 労務、経理、こういったものは優秀なソフトが最近どんどん出ているんですね。そういう中で、法務局、ハローワーク、労働基準監督署、税務署、自治体、日本年金機構と、中小企業でも相手にしなきゃいけない行政というものが大変多くあって、そのつながりも連携も中途半端になっていたり、されていなかったりすることで、同じことを何度も何度もいろいろなところで書かなきゃいけない。こういったことの負担というものは、今も余り変わっていないんですね。

 そして、各種補助金や自治体で紹介している低金利、無利子の融資なども、調べようとしないと存在すら分からないといった部分が、公平公正という視点も全く感じておりませんでした。

 これは何が言いたいかというと、今言った全てのサービスを一体化すれば、起業しやすくなるだけでなく、時間、費用、共にコスト削減され、付加価値を上げることにより、力を割けるような環境ができる、補助金なども公正公平に知ることができるということが、今後、税理士さん、そして会計監査、こういったおつき合いの中にもどんどんどんどん組み込まれていく時代が来るんじゃないのかなというふうに私は考えております。

 そんな中、GビズIDという法人、個人事業主向けの共通認証システムにおいて、社会保険電子申請や各種補助金なども連携しているということを最近知りました。まさに、これからどういうサービスを実装していくのかによりますが、大変期待しております。

 それで質問なんですけれども、GビズIDについて、今どのような制度なのか、ちょっと簡単に説明をお願いします。

犬童政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のGビズIDでございますが、法人及び個人事業主が、一つのID、パスワードで様々な行政手続にログインできる認証サービスでございます。今年三月末時点で約七十万社がGビズIDを取得してございまして、補助金の申請、社会保険手続等の国の手続に加えまして、一部の自治体の手続にも利用可能となってございます。

沢田委員 ありがとうございます。七十万社ももう登録されているんですね。

 僕、一番最初の頃です、この委員会で賃上げ税制という話があったときに、賃金が上がらないところには効果がないと言ったように、補助金や、やはり政府の方向性たり得るところに向かっていくときに、どうしても、それを知らない会社、そして分からない会社、こういったところが不利益を生んでいるようでは、いい方向に導いていくというのは大変難しいなというふうに考えていたので、デジタル化が進む中で、このGビズIDがどんどんどんどんいろいろな実装を増やしてくれることに期待したいなと思うんですけれども。

 このGビズIDの今後の方針、どういうふうにしてこの利便性を上げるとか使い勝手をよくするとか、そういう考え方があったらちょっと教えてください。

犬童政府参考人 お答えいたします。

 GビズIDでございますけれども、当然、利用可能な手続が増えれば増えるほど利便性が高まるというものでございますので、現在、関係省庁とも連携をしながら、その対象の拡大を図っているところでございます。

 また、ID発行時にいろいろな本人確認をしなきゃいけないんですけれども、その本人確認についても、マイナンバーカードとの連携など、いろいろな様々な手続を簡素化できるような利便性向上策にも努めているところでございます。

 一方で、GビズID、本格運用からまだ二年程度のサービスでございますので、今後とも、しっかりと、安定運用も図りながら、関係省庁と連携しながら、サービスの拡大あるいはGビズIDの普及に努めてまいりたいというふうに考えています。

沢田委員 済みません、ちょっと技術的なことを聞きたいんですけれども、関係省庁、いろいろな省庁がナンバーを持っていたりとか、いろいろな番号があると思うんですけれども、そういう場合に、このGビズIDで何かを使ったりする場合に、元々のオーダー、スタートは省庁の方から来るものなんですか、それとも、デジタル庁の方から、逆に、こっちを使いたいんですけれどもという流れ、両方ともあるのか、ちょっとそれを教えてもらえますか。

犬童政府参考人 お答えいたします。

 両方存在します。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 どうしても、何かイメージで、縦割りというところでデジタルの方が進まないというのも本当にもったいないなと思いますので、是非、関係省庁の皆様も、国民の生活がやはり一番大事だなというところで御協力いただき、そして、デジタル庁の方も積極的に関係省庁に働きかけをお願いいたします。

 GビズIDは法人番号を軸に運用されていると思いますが、個人番号として有名なマイナンバーカードは、使用機会を限定しており、税と社会保障、災害対策としていることで、大変に使いづらいものです。ただ、法人番号はそういった縛りがないものになりますので、こちらも是非デジタル庁には、法人番号を軸に、より便利なサービスにつなげていただければと思います。

 時間となりましたので、終了させていただきます。どうもありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平です。よろしくお願いいたします。

 これまでの審議を聞いておりまして、少し、私、違和感を持ちましたのは、役所の方の答弁が特に、政府委員の答弁が特にそうだったんですけれども、大手は立派で能力が高い、大手の監査法人はちゃんとしている、だけれども、準大手とか中小の監査法人は、どうも、能力ももう一つだし、駄目なんじゃないかというようなことで今度の制度改正が行われるというような印象を持ちました。

 この後議論しますけれども、いろいろなデータを見ると、そういう部分がなきにしもあらずだとは思います。しかし、十五年間法律改正がなくて、大きな法律改正が今回行われます。もちろん、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限のように当然やるべきこと、その他、今回の改正の中身は、私は、本来やるべき、もっと早くやっておくべきだったものばかりだと思います。

 それで、賛成はするんですけれども、本当に、制度改正をするのに、大きいところがちゃんとしていて小さいところが駄目だからという理由で制度改正するというのは、余り、どうなんでしょうね。特に士業の場合、弁護士を考えていただくと、もちろん、大きなローファームはスペシャリストがたくさんいますから、そういうところは非常に間口が広くてパフォーマンスもいい、小さなローファームは、ブティックのようなものですから、それぞれのニーズに合わせてお客様、クライアントがつくんでしょうけれども。弁護士業界で、大きいから優秀で立派で、小さなローファームはどうも駄目で能力が低くてというようなことは余り聞いたことがありませんし、少なくとも、それを前提に制度が改正されたことは、私の仄聞する限りどうもないような気がするんですね。

 そういう意味で、皆さんに思い起こしていただきたいんですけれども、オリンパスの事件がありました、東芝の粉飾事件がありました。これは本当に大変な大きなショックを私たちは受けるわけです。しかも、それを許したのが、あるいは、場合によってはそれに積極的に関与したのが当時の大手の監査法人じゃありませんか。四大監査法人がオリンパスや東芝などの不祥事に関わっていたということで大変ショックでありましたけれども、その後、改善がなされたことについては評価したいと思いますけれども、金融御当局として、この大手の監査法人の不祥事に対してどのように対応して今日まで来られたのか、大臣の御所見を伺いたいと思います。

鈴木国務大臣 岸本先生が今御指摘になられましたように、過去、大手の監査法人が監査をした大手上場会社における不正会計事案というものがございましたが、特に東芝の事案を契機といたしまして、金融庁では、二〇一五年十月に、会計監査の在り方に関する懇談会を設置をいたしまして、会計監査の信頼性を確保するために必要な取組を議論いたしました。

 この懇談会の提言を踏まえまして、監査品質の確保に向け監査法人の組織運営の在り方を示した監査法人のガバナンスコードを策定するとともに、監査法人の独立性の確保に関し、監査法人のローテーション制度に関する調査報告を公表するなど、ローテーション制度について検討を進めており、また、会計監査に関する情報提供の充実に向け、監査報告書における監査上の主要な検討事項の記載を導入するなど、会計監査の信頼性確保に向けた取組を進めてきたところでございます。

 また、本法律案では、これらの取組以降の会計監査をめぐる環境変化を踏まえまして、上場会社監査に関する登録制を導入するなど、会計監査の一層の信頼性確保を図るための措置を講ずることとするものでございます。

 以上のような対応を行ってきたところでございます。

岸本委員 その対応の結果としてなんだろうとは思うんですけれども、近年の処分事例を拝見しておりますと、大手監査法人によるいわゆる著しく不当な業務運営というのはないように表面的には見えるわけですけれども、これは今のような対応が功を奏したということなんでしょうか、副大臣、お願いします。

黄川田副大臣 ただいま大臣からも答弁がありましたとおり、二〇一七年における監査法人のガバナンスコードの策定を始めとする取組などにより、監査法人の組織運営や品質管理体制、情報開示などの面において、監査品質の向上に向けた着実な進展があったものと考えております。

 また、大手監査法人では、監査手法の深化や複雑化に対応するため、教育訓練などの人材育成施策の充実や、AIを含むITを活用した効果的な監査等の取組も進められていると承知しております。

 ただし、著しく不当な業務運営には至らないものの、大手監査法人に対する当局の検査において業務管理体制の不備が確認されておりまして、モニタリングを通じて改善を求めているところでもございます。

 当局としては、引き続き、モニタリングを通じて、大手監査法人における業務管理体制の一層の充実を図りながら、監査品質の向上に向けた大手監査法人の取組を促してまいりたいと考えております。

岸本委員 それで、今度は、いわゆる中小監査法人の方に移りたいんですけれども、同じような処分事例を拝見しておりまして、過去五年間の、著しく不当な業務運営ということで処分された事例、これを金融庁からいただきましたけれども、これはほとんど全て中小監査法人ということになっています。これはどういうことなのか。

 そして、少し切り口は違いますけれども、今頃、法律改正の対象にもなっていますが、いわゆる継続的専門研修、この継続的専門研修の不適正受講という問題があります。

 これは公認会計士協会が処分されるわけですけれども、特にこの直近二年間で急増しております。特に厳しく見られているのかもしれませんけれども、これもほとんどが、本当に、一件、二件を除くとほとんどが中小監査法人において、この継続的専門研修の不適正受講による処分ということが起きているわけですけれども、あわせて、中小監査法人がこういう問題を起こしているということについて、要因を副大臣からお聞きしたいと思います。

黄川田副大臣 まず、著しく不当な業務運営についてでございますが、過去五年間において、著しく不当な業務運営等を理由に、中小監査法人に対して業務停止命令等を発出する状況が、議員御指摘のとおり、続いております。

 その要因は、中小監査法人ごとに様々ではございますが、例えば、法人トップの品質管理に対する意識が十分でない状況や、監査の基準が、求められる水準の理解が不足している状況などが確認されております。それぞれの中小監査法人の監査品質に差が生じているものと認識しております。

 そして、継続的専門研修の不適正受講についてでございますが、公認会計士による不適切受講に関する日本公認会計士協会の処分事例については、二〇一九年度がゼロ件であったのに対しまして、二〇二〇年度が九十九件、二〇二一年度が九十七件となっております。

 このように急増した理由については、オンライン研修動画の早送りなどの不正受講手口が発覚したことに伴い、中小監査法人を含めて同様の事案の調査が行われたためだと考えております。

 中小監査法人所属の公認会計士に対する処分事例が多い要因については、例えば、中小監査法人において十分な研修の監督がなされていなかったことなどが挙げられると考えております。

 金融庁としては、中小監査法人所属の公認会計士に対し、より一層実践的で有用な指導、支援が行われるよう、日本公認会計士協会とも連携して対応してまいりたいと考えております。

岸本委員 今副大臣からも少し触れていただいたんですけれども、じゃ、なぜ、大手の監査法人では今言ったような著しく不当な業務運営や専門研修の不適正受講がなくなっている、あるいは非常に少ない、しかし、中小監査法人においてはそれが多いということは、一体何が原因なのか。

 今少し触れられましたけれども、それは、大手であれば、これはよく聞きますけれども、非常に研修制度が充実している、しっかり研修しているということも指摘されています。あるいは、これは収入格差の問題で、大手と中小だと、これも平均ですのであれですけれども、一・五倍からそれ以上の差があるということになれば、これは収入格差によって人材が偏在をするのではないかという御指摘もあるわけですけれども、その辺について、もう少し詳しく要因分析を、副大臣、お願いしたいと思います。

黄川田副大臣 中小監査法人に対する行政処分の要因は様々でございますが、継続的専門研修の不適正受講の事例のように、中小監査法人において研修への取組が不十分な場合が確認されているほか、一般に、中小監査法人においては、公認会計士の採用に苦労しているとの指摘も聞かれております。

 金融庁としては、中小監査法人が監督の担い手として十分な能力、体制を整えられるよう、人材確保、人材育成を含めた体制面での支援を行っていることが重要と考えております。日本公認会計士協会と適切に連携して、対応してまいりたいと考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 そうなりますと、今後とも、業界全体として公認会計士の能力向上をしていただく、あるいは、職業倫理の観点、特に、最初に申し上げた東芝とかオリンパスは職業倫理の観点から問題があったわけですから、そういうことの確立をやっていただく。

 そのために、今回行われた法律改正、公認会計士協会の自主規制から法律に基づく登録制度、これが法制化することによって、公認会計士の能力向上や職業倫理の確立に、法律で位置づけることにどの程度の効果があるのか、意味があるのか、これは大臣にお聞きしたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘のように、今般の法案では、現行の公認会計士協会の自主規制による登録制度から法律に基づく登録制度にすることといたしておりますが、それに伴い、登録を受けた監査法人に対し、法的な義務といたしまして、監査法人のガバナンスコードの受入れ等を求めていきたいと考えております。

 監査法人のガバナンスコードでは、職業倫理に関連し、職員の職業的専門家としての能力を十分に保持、発揮させるための適切な動機づけを行うこと等を監査法人に対して求めております。このため、登録制度の法制化によりまして、監査法人のガバナンスコードの受入れを通じて、監査法人や公認会計士の職業倫理の一層の向上が図られるもの、そのように考えております。

岸本委員 ありがとうございます。

 恐らく、特にガバナンスコードが重要になってくるんだろうと思いますけれども、監査法人の側から見ますとこれまで以上にいろいろな業務が増えていくということになるわけですから、その辺のバランスも取っていただいて、金融庁の方で、公認会計士協会と連携を取られて、スムーズに、円滑にこの制度への移行が行われるように強く要請をしたいと思います。

 一方で、先ほど来の答弁をお聞きしていますと、公認会計士の採用が大変だ、ともかく人手が足りないんです、こういうお話がるる出てまいりました。

 今回、資格要件である実務経験の期間、従来の二年から三年に見直されるわけでありますけれども、この理由は、一般論的なものはお聞きしているわけですけれども、業界の方に聞きますと、やはり海外がどうのこうのというのは役所は言いますけれども、そうじゃなくて、現場の感覚からいうと、実は、いわゆる補助的な業務をやる人が足りないので二年より三年やってもらった方がありがたいみたいなことを本音でおっしゃる方もおられれば、いや、もっと違うんです、そんなことじゃないんです、資格を取ると転職されちゃうんですというようなことでおっしゃる方もいるんですけれども、その辺、この見直しについて、大臣にお伺いしたいと思います。資格要件の見直しです、期間ですね。

鈴木国務大臣 近年、企業活動のグローバル化、また業務内容の複雑化、専門化に伴いまして、監査の現場でこれに対応できる能力を養う観点から、実務経験を通じて学ぶ知見の重要性が高まっているもの、そのように考えております。

 また、公認会計士試験合格者に占める大学、短大在学中の方の割合が多く、若年の合格者が社会経験を積む上でも、実務経験の機会が重要な役割を果たすのではないか、そういう御指摘もございます。

 海外の話はということで御質問にもございましたが、御指摘もございましたが、加えて、公認会計士の国際的な教育基準を見ますと、三年の実務経験を求めることが例示されておりまして、実際、欧州の各国では三年以上の実務経験要件が設けられているところでございます。

 こうした状況を踏まえ、本法律案では、公認会計士の資格要件である実務経験の期間について、現行の二年以上を三年以上と見直すこととしております。このため、公認会計士の資格取得後に転職が多いことを要因とするものではございません。

岸本委員 いや、そのとおりで、そうしか答えられないと思いますが、恐縮です。

 もう一つ、人手不足と言われる、監査法人から見たときの人手不足ですけれども、公認会計士の資格を持っていらっしゃる方が、実は、監査事務所以外のいわゆる事業会社あるいはコンサルティングの会社に行かれる方が非常に増えている、このことを前提に今回法律改正も行われているわけですけれども、これは一体どういうことなんだろうかということです。

 これも、私の友人で公認会計士の方がたくさんいるんですけれども、特に大手なんかの場合は、内部でのガバナンスが利いているものですからいろいろなチェック項目が山ほどあって、実は、マニュアル的なチェック項目を潰していくだけでかなり立派な監査ができる仕組みになっているんだけれども、そのリストが物すごい膨大で大変なんですと、事務作業が。特に、今の質問がありましたが、繁忙期はもうブラック企業と言われるような勤務状態になっている。ところが、今、事業会社は違いますよね、働き方改革ですから。非常にゆとりのある働き方をして通常の業務ができているというようなこともある。

 あるいは、これは監査法人の宿命かもしれませんが、クライアントとの関係ですよね。もちろん、厳正な監査をすることがクライアントにとってよいことなんですけれども、そこはサービス業ですから、若い方で一生懸命なさっている方がクライアントに寄り添う、ベクトルが違うんですね。それが事業会社であったり、あるいはコンサルティングファームであれば、クライアントに寄り添った形で自分の公認会計士としての能力が発揮できる、そういうこともあるのではないかということを聞きますけれども、この辺、金融庁として、事業会社やコンサルティング会社に資格を持った方が行かれることの要因分析はどのようになさっていますか。

鈴木国務大臣 公認会計士登録者に占める監査法人所属者の割合、これは過去五年間、減少傾向が続いております。直近のデータでは、令和二年三月末で四三・六%の方にとどまってございます。

 その背景となる要因は様々なものと考えられますが、岸本先生の御指摘のように、職務内容の魅力でありますとか労働環境もその一つである、そのように考えます。

 例えば、会計監査の専門家としての資格を取得したにもかかわらず、数字の確認のような単純作業に終始し専門性を発揮できない、業務に追われ勤務時間が長い、過酷な労働環境になっているとの認識になれば、職場としての魅力や満足度が下がってしまうと考えます。

 こうした問題意識を踏まえまして、監査法人では、自ら専門性を十分に発揮しチャレンジングな仕事に携わることができる職場環境を整えるとともに、リモートでの勤務や柔軟な勤務形態の導入など、ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた働き方改革にも取り組んでいると承知をしているところでございます。

 監査品質の向上を図るとの観点からも、職場としての監査法人の魅力を高め、会計監査という専門職に関する使命感を基礎にした優秀な人材を確保することが重要と考えておりまして、監査法人による一層の取組を期待をしているところでございます。

岸本委員 時間が参りました。これで質問を終わります。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 公認会計士法改正案について質問します。

 本改正案のポイントの一つは、上場企業の監査を行う監査法人について、日本公認会計士協会による上場会社等監査人名簿への登録を法律で義務づけるものであります。大臣に、改めてその目的について説明をしていただけますか。

鈴木国務大臣 株主が限定されております非上場会社の監査と比べまして、一般投資家を含む多数の利害関係者を有しております上場会社の監査は、財務報告の信頼性を確保し、資本市場の機能を十分に発揮させる上で、その品質確保がより重要なものと考えております。

 上場会社の監査の動向を見ますと、大手監査法人から中小監査法人へと監査の担い手の裾野の広がりが見られております。また、上場会社の事業活動のグローバル化でありますとか、業務内容の複雑化、多様化に対応するため、高い水準の監査手続や品質管理体制が求められているところでございます。

 こうした中で、中小監査法人につきましては、法人ごとに監査の品質に差があり、過去五年を見ましても、著しく不当な業務運営を理由とする業務停止命令等の発出が続いております。

 このため、特に中小監査法人を始めとして、上場会社監査の担い手全体の監査の品質向上が急務でありまして、その品質確保に向けまして、上場会社等監査人名簿への登録の枠組みを整備しておく必要がある、そのように考えているところでございます。

田村(貴)委員 品質確保ということでありました。

 上場会社等監査人名簿の登録は、カネボウ、ライブドアなどの粉飾決算事件を受けて、二〇〇七年に自主規制の制度として公認会計士協会の下で導入されました。にもかかわらず、東芝による前代未聞の粉飾決算が起こり、金融庁は二〇一五年十二月二十二日に新日本有限責任監査法人及び七名の公認会計士に対して懲戒処分を下すまでの大事件に発展したわけです。そのほかにも、業務改善命令に至る事案は継続して発生しています。

 伺います。既存の登録制度を義務づけしただけでは、大手企業の粉飾決算などの不正を見抜くことはできないのではないですか。登録によって監査の質が保証されるのでしょうか。いかがでしょうか。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 新しく設けられるこの登録制度でございますけれども、登録制度の上では、登録を受けた監査法人に対して、業務を公正かつ的確に遂行するための業務管理体制を整備することというものを義務づけてございます。

 この業務管理体制の整備といたしましては、例えば、先ほど来御議論いただいてございます、監査法人のガバナンスコードの受入れといった点ですとか、情報開示の充実といったことを求めることを想定しているところでございます。

 いずれにいたしましても、こうした内容につきましては、関係者と十分連携しながら具体的な中身を固めてまいりたいと考えてございます。

田村(貴)委員 金融審議会公認会計士制度部会の報告書では、上場会社の監査の担い手として十分な能力、態勢を備えられるようとか、より高い規律づけを行う制度枠組みを検討すべきと書かれています。

 規律が整備され、登録の要件となっていくと思いますが、新たに設けられる規律というのはどのような内容になっていくのか、これについても説明をしてください。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになる点もございますけれども、まさに、業務管理体制の規律の中身といたしましては、監査法人のガバナンスコードの受入れ、情報開示の充実ということでございます。

 監査法人のガバナンスコードにつきましては、例えば、法人のトップがリーダーシップを発揮するといった点ですとか、それから、その構成員に対して職業倫理の発揮を求めるといった点ですとか、それから情報開示の充実といった点が中身になってくるというふうに考えてございます。

 いずれにせよ、中身につきましては、関係者と十分連携しながら具体的な内容を固めてまいりたいと考えてございます。

田村(貴)委員 答弁にあったガバナンスコードなんですけれども、このガバナンスコード、二〇一七年三月に策定された、その導入の背景と目的について簡単に説明していただけますか。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 監査法人のガバナンスコードでございますけれども、不正会計事案を契機といたしまして、二〇一五年十月に金融庁に設置されました会計監査の在り方に関する懇談会というところで、まずそのコードの策定が提言されたという経緯がございます。

 さらに、有識者検討会における議論を経まして、二〇一七年の三月に、会計監査の品質確保に向け、監査法人が組織全体にわたってマネジメントを有効に機能させる、これを促すということを目的として策定されたものでございます。

 現在、本コードにつきましては、全ての大手監査法人、準大手監査法人のほか、中小監査法人九法人が採用してございます。こういった方々におかれましては、本コードに基づいて実効的な組織運営の実現のための改革が進められているというふうに認識してございます。

田村(貴)委員 その有識者検討会の報告書には、ガバナンスコードは、大手上場企業等の監査を担い、多くの構成員から成る大手監査法人における組織的な運営の姿を念頭に策定されているが、それ以外の監査法人において自発的に適用されることも妨げるものではないと指摘されています。

 今回の改正案では義務づけられないけれども、普通の監査法人ならば、このガバナンスコードというのは拒否できるような内容ではないと思います。至極まともなことが書かれていると思います。

 これを登録した監査法人に義務づけることはできないんでしょうか。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 実は、先ほど申し上げました会計監査の在り方に関する懇談会、これが二〇一六年の三月に報告書を出してございますけれども、もう一つ、実は、今回の法改正に当たりまして、会計監査の在り方に関する懇談会の論点整理というものを昨年の十一月にまとめてございます。

 その中で、先生の御質問にございました、現在の監査法人のガバナンスコードというものは、大手の監査法人を念頭に置いているので、中小監査法人についてはどういうふうに適用するのかといったところが触れられているところでございます。この中では、監査法人のガバナンスコードにつきましては、相当程度受け入れられるところがあるんじゃないかといった御指摘があると同時に、一部、例えばコードの指針の三の一というところでございますけれども、監督・評価機関をつくらなきゃいけないといったような指摘もございまして、こういったところは例えば中小監査法人にはなじまないのではないかといったような部分も触れられているところでございます。

 こうした点を踏まえながら検討してまいりたいと考えてございます。

田村(貴)委員 ローテーション制度についても伺います。

 監査される大企業と監査法人のなれ合いを避けるための手段としてあるのが、監査法人自体を一定期間で交代させるローテーション制度であります。金融審議会公認会計士制度部会の報告書のたたき台となる会計監査の在り方に関する懇談会の論点整理には、「このルールが監査人の交代に与える影響も見極めながら、引き続き検討されるべきである。」と今回も先送りされました。

 審議会内での検討内容、また先送りを決めた理由について説明をしてください。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の監査法人のローテーション制度でございますけれども、我が国では導入されていないわけでございますけれども、元々、これにつきましては、先ほどございました二〇一五年からスタートいたしました会計監査の在り方に関する懇談会の提言の中でも触れられてございまして、それを受けまして、金融庁において二度にわたって調査を行ってございます。二〇一七年、二〇一九年と行いまして、報告書を公表してございます。

 その二回の報告書の中身をかいつまんで御紹介させていただきますと、監査法人のローテーション制度の導入という面では、一つは、我が国においては大規模監査法人の数が限られているという現実があるのではないか。他方、これは監査チームの構成になりますけれども、我が国ではパートナー以外の立場で長期間にわたって同一企業の監査に携わるなどの事例が見られて、監査チームの構成に関しては改善の必要があるんではないかといった論点が挙げられたところでございます。

 こういった御議論を踏まえまして、パートナーローテーション制度というものが強化されているというのが今回の経緯でございます。

 その上でということでございますけれども、先生御指摘のとおり、昨年十一月の懇談会の報告書では、ローテーション制度について引き続き検討されるべきというふうにされたところでございまして、我々といたしましても、諸外国における監査をめぐる状況も勘案しながら、引き続き検討してまいりたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 諸外国の在り方についてなんですけれども、欧州では二〇一六年六月から監査法人のローテーション制度が導入されています。継続監査期間の上限を十年とするものであります。先ほど三十年という数字も出てまいりました。二〇一九年四月の報告書によれば、比較的厳格に実施した加盟国においては四大監査法人の市場シェアが減少し、監査法人交代の増加が見られたということです。

 大監査法人による寡占状況を崩しつつあるという状況については御存じだと思いますけれども、これは参考になるんでしょうか。

古澤政府参考人 お答え申し上げます。

 欧州では、二〇〇八年の金融危機を受けまして、企業財務の健全性の正確さを保証する監査は金融の安定のために重要な貢献をするという考え方の下、欧州委員会において法定監査制度の改革が進められました。その一環といたしまして、二〇一〇年でございますけれども、欧州委員会から監査法人の強制ローテーション制度というものが提言されまして、欧州議会での審議を経まして、二〇一六年の六月から上場企業の会計監査につきまして監査法人のローテーション制度が導入されたというふうに承知してございます。

 他方、米国では、同じように議論はございましたけれども、実際には、二〇一三年の七月でございますけれども、強制ローテーション制度の導入を禁止するという法案が上院で審議されずに失効したということでございます。

 そういった状況も踏まえながら、我々としても検討してまいりたいというふうに考えてございます。

田村(貴)委員 上場企業のうち監査法人を十年替えていない企業が七割に上るという報道もあるわけですよね。私、アメリカのことは聞いていなくて、欧州の例で、これは参考になりますかと聞いているんですけれども、やはりローテーション制度を導入すべきだというふうに思いますよ。

 それから、先ほどの登録においても、ガバナンスコード、これはやはり適用していく。そうじゃないと、ずっと不祥事、そして不正、粉飾、続いているじゃないですか。改革をやはり法案に入れ込むのであれば、ここに踏み込んだ進展をしなければいけないと思います。

 続いて、SMBC日興の相場操縦事件についてもこの機会に質問しておきます。

 大企業の信頼性を揺るがしている事件がSMBC日興証券の相場操縦事件です。金融商品取引法違反で日興の副社長を含む幹部社員数名が逮捕されている。これまた前代未聞の事件となっています。証券会社自身が相場操縦に関与していたと、会社ぐるみの犯行として告発されています。特殊で悪質な犯罪だとの認識はありますか。証券会社自身が相場操縦に関わっていた告発されたケースというのは、これまでどれだけありますか。教えてください。

油布政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反、特にこの相場操縦の嫌疑で証券会社を告発いたしましたのは、今回のSMBC日興証券の件を除きまして、これまで二件でございます。

田村(貴)委員 たった二件しかない。ほとんどないということで、極めて特殊で悪質なケースであります。

 日興の近藤社長は、市場の公正性を維持する役割を担うべき証券会社が市場の信頼を著しく揺るがす重大な事件を引き起こしたと記者会見で謝罪しました。報道によれば、この事件は数年にわたって実施された可能性があります。

 金融庁は、近年、このSMBC日興証券の捜査に入っていますか。そのときに、相場操縦を繰り返しているような取引を見抜くことがなぜできなかったんですか。

油布政府参考人 証券検査を所掌しております証券取引等監視委員会からお答えを申し上げます。

 先ほど申し上げましたように、私どもは、SMBC日興証券に対しまして、相場操縦の疑いで告発を行いまして、現在も捜査が続けられているという状況でございます。これは御承知のとおりでございますが、他方、同社を含めまして、個別の金融商品取引業者に対する証券検査、これはいわゆる行政検査でございますが、こちらの実施の有無あるいは検査の履歴などについてはお答えを差し控えさせていただきたいと思います。

田村(貴)委員 SMBC日興証券をめぐる過去の不祥事であります。九七年には大口顧客への損失補填があった。二〇〇六年には不正会計問題が明るみに出た。二〇一二年には公表前の増資情報で顧客を勧誘し、元執行役員らがインサイダー取引をした。二〇一八年にも元社員がインサイダー情報を伝達している。そして、今回の相場操縦事件であります。

 鈴木大臣に伺います。

 金融担当大臣として、大臣、金融機関の不正行為というのは、金融市場をゆがめて、そして金融システムの信頼をおとしめるものであります。金融庁は、本件についても徹底解明と適切な処分、改善を図るべきだと思いますが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 SMBC日興証券及びその役員等が金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、また起訴されたことは極めて遺憾なことであると認識をいたしております。

 証券会社やその役職員は市場の公正な取引確保のために尽力すべき立場にあるところ、本件はむしろ自ら組織的に不正、不公正な取引を行ったことが疑われておりまして、市場の信頼を揺るがしかねない重大な事態であると考えております。

 金融庁として、捜査の動向等も踏まえ、必要に応じて厳正に対処してまいります。

田村(貴)委員 先ほど、証券会社自身が相場操縦に関わっていて告発されたケースは二件と答弁がありました。この二件については、いつ、どこのケースなのか。この際、教えてください。

油布政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれも十年以上前の事件ではございますが、一点目は、平成十五年七月でございます。私ども証券取引等監視委員会から、当時、日本電子証券を告発をしてございます。もう一点は、平成二十年になりますけれども、同じように、金融商品取引法、安定操作の嫌疑で、私どもの方から丸八証券を名古屋地検に告発してございます。

 以上でございます。

田村(貴)委員 時間が参りました。質問は以上です。終わります。

薗浦委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

薗浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

薗浦委員長 次回は、来る十二日火曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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