衆議院

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第19号 令和4年5月17日(火曜日)

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令和四年五月十七日(火曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 薗浦健太郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 藤丸  敏君

   理事 稲富 修二君 理事 末松 義規君

   理事 吉田 豊史君 理事 角田 秀穂君

      井上 貴博君    石井  拓君

      石原 正敬君    門山 宏哲君

      神田 憲次君    神田 潤一君

      小泉 龍司君    高村 正大君

      塩崎 彰久君    鈴木 隼人君

      田野瀬太道君    高見 康裕君

      中川 貴元君    藤原  崇君

      三ッ林裕巳君    八木 哲也君

      保岡 宏武君    柳本  顕君

      山田 美樹君    若林 健太君

      鷲尾英一郎君    櫻井  周君

      下条 みつ君    中川 正春君

      野田 佳彦君    伴野  豊君

      福田 昭夫君    赤木 正幸君

      沢田  良君    藤巻 健太君

      中川 宏昌君    平林  晃君

      岸本 周平君    田村 貴昭君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   財務副大臣        岡本 三成君

   経済産業副大臣      石井 正弘君

   内閣府大臣政務官     宗清 皇一君

   財務大臣政務官      高村 正大君

   財務大臣政務官      藤原  崇君

   文部科学大臣政務官    鰐淵 洋子君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 松多 秀一君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    栗田 照久君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           小野平八郎君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   奥  達雄君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   阿久澤 孝君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    三村  淳君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           森田 正信君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官) 奈尾 基弘君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡崎  毅君

   政府参考人

   (中小企業庁経営支援部長)            佐々木啓介君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    雨宮 正佳君

   財務金融委員会専門員   鈴木 祥一君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十七日

 辞任         補欠選任

  石原 正敬君     保岡 宏武君

  田野瀬太道君     高見 康裕君

  江田 憲司君     福田 昭夫君

  竹内  譲君     平林  晃君

同日

 辞任         補欠選任

  高見 康裕君     柳本  顕君

  保岡 宏武君     石原 正敬君

  福田 昭夫君     江田 憲司君

  平林  晃君     竹内  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  柳本  顕君     田野瀬太道君

    ―――――――――――――

五月十六日

 消費税率の引下げと適格請求書等保存方式導入中止に関する請願(中谷一馬君紹介)(第一〇一四号)

 同(仁木博文君紹介)(第一〇三六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇七六号)

 同(早稲田ゆき君紹介)(第一〇七七号)

 同(阿部知子君紹介)(第一一四七号)

 消費税率五%への引下げに関する請願(宮本徹君紹介)(第一〇六二号)

 消費税率を五%に引き下げ、複数税率・インボイス制度の即時廃止を求めることに関する請願(阿部知子君紹介)(第一一四六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出第四七号)

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

薗浦委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本案に対する質疑は、去る十三日に終局いたしております。

 これより討論に入るのでありますが、その申出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 安定的かつ効率的な資金決済制度の構築を図るための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

薗浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

薗浦委員長 次に、金融に関する件について調査を進めます。

 去る令和三年六月十八日及び十二月十七日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣鈴木俊一君。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 令和三年六月十八日及び十二月十七日に、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出いたしました。

 報告対象期間は、通算して、令和二年十月一日以降令和三年九月三十日までとなっております。

 御審議に先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。

 まず、今回の報告対象期間中に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は行われておりません。

 次に、預金保険機構による資金援助のうち、救済金融機関等に対する金銭の贈与は、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で十九兆三百十九億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関等からの資産の買取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆五千百九十二億円となっております。

 なお、預金保険機構の政府保証付借入れ等の残高は、令和三年九月三十日現在、各勘定合計で一兆九千二百三十億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところであります。

 金融庁といたしましては、今後とも、各金融機関の健全性にも配慮しつつ、金融システムの安定確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

薗浦委員長 これにて概要の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

薗浦委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁雨宮正佳君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官松多秀一君、金融庁監督局長栗田照久君、財務省大臣官房総括審議官小野平八郎君、主計局次長奥達雄君、主計局次長阿久澤孝君、主税局長住澤整君、国際局長三村淳君、文部科学省大臣官房審議官森田正信君、厚生労働省大臣官房高齢・障害者雇用開発審議官奈尾基弘君、大臣官房審議官岡崎毅君、中小企業庁経営支援部長佐々木啓介君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

薗浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

薗浦委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。山田美樹君。

山田(美)委員 自由民主党の山田美樹です。

 質問の機会をいただき、ありがとうございます。

 ロシアのウクライナ侵攻を契機に我が国においても防衛力の強化を求める声が高まっています。本日は、防衛費と財政規律との関係について質問します。

 昨年十二月に政府の財政制度等審議会が取りまとめた令和四年度予算の編成等に関する建議の中に、次のような記述があります。

 我が国の防衛関係費を対税収比で比較すると、NATO加盟のヨーロッパ諸国と決して遜色のない水準にある、その背景の一つに、我が国の国民負担率が諸外国と比べて低いことがある。

 この論理ですと、大幅な増税をしない限り、防衛費を拡充しないということになります。

 また、このような記述もあります。

 防衛予算に加えて防災など広義の国家の安全保障に資する公共投資や科学技術に対する予算を含めて、一般政府ベースで比較すると、対GDP比で五%程度であり、英国、ドイツを上回り、フランスに匹敵しているとのこと。

 防災は広義の安全保障であるとは、平時の理論だと考えます。有事の国防に直結する議論をすべきではないでしょうか。

 欧州では、昨年の秋以降、少なくとも十七か国が国防費の増強を表明しました。ドイツは、国防費をGDP比一・五三%から二%に引き上げる目標を発表して歴史的な方針転換を図り、福祉国家のスウェーデンも、GDP比二%目標を表明しました。米国も、三月末に発表した来年度の予算教書で、国防費を前年度から四%拡充する旨を表明しています。

 先ほどの財政審の建議はロシアによるウクライナの侵攻よりも前に出されたものですが、その後の国際情勢の変化を踏まえて、現時点においてこの建議をどのように評価するか、お伺いします。

岡本副大臣 お答えいたします。

 昨年十二月に財政制度等審議会が取りまとめた建議におきまして、実効的な防衛力の整備には、その裏づけとなる健全かつ持続可能な財政運営が必要であり、各国においては、広義の安全確保に資する防災などの公共投資や科学技術などとのバランスを踏まえた上で防衛費の水準を定めているといった指摘がなされたと承知しています。

 現在、政府といたしまして、新たな国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の策定に取り組んでいるところですけれども、その中で、財政制度等審議会から御指摘をいただいた点を含めまして、国民的な議論を丁寧に積み重ねることが重要だというふうに考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。まさに、国民的な議論が今必要とされていると思います。

 昨年秋の衆議院選挙の折には、自民党の政権公約として、NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(二%以上)も念頭に、防衛関係費の増額を目指すとの公約が盛り込まれました。ロシアのウクライナ侵攻以降、地元の一般の方々からも防衛予算の拡充を求める声を多く聞くようになりました。

 先月末の自民党の防衛三文書改定に向けた提言の中では、五年以内に必要な予算水準の達成を目指すとしています。

 一般論として、予算策定はボトムアップ、積み上げであるべきですが、防衛費については、予算の大枠がなければ現実的な議論にならないのも事実です。防衛費の目標を明確にし、国家としての防衛の意思を示すことが抑止力につながることは言うまでもありません。

 防衛予算の対GDP比目標の必要性について財務当局としてどのように考えるか、見解を伺います。

岡本副大臣 防衛費につきましては、安全保障戦略や防衛大綱で中長期的な防衛力の在り方や防衛力の水準を定めて、中期防において五年間の経費の総額を示した上で、毎年度必要な経費を計上しております。

 現在政府として取り組んでおります新たな中期防等の策定に関しまして、防衛費については、緊迫する安全保障環境を踏まえて、規模ありきではなく、まず何が現実的に必要かつ効果的か戦略的に検討した上で、その裏づけとなる予算を確保することが重要だというふうに考えています。

山田(美)委員 ありがとうございます。

 御指摘のとおり、規模ありきではないというところ、それからまた、何が現実的に必要なのかというところ、これをまさに両面から議論をしていく、これが大切なのではないかと感じております。

 日本の防衛予算は、これまで、必ずしも財政健全化のために削減されてきたわけではなく、逆に優遇され、増え続けてきたという主張もございます。確かに、公共事業費ですとか文教及び科学振興費と比較しますと防衛費は増えており、やはり、財務当局においても、防衛予算は特に重要だという価値判断があったのではないかと推察をいたします。

 将来、仮に防衛関係費をNATO基準で対GDP比二%を目指すとした場合、二〇二二年度予算をベースに試算をしますと追加で四・五兆円が必要になりますが、これは、少子化対策費の四・四兆円、それから、生活扶助等社会福祉費の四・八兆円に匹敵する金額です。防衛関係費も他の予算も同じ財政の制約の下にあるとするならば、ほかの予算を削減しない限り防衛関係費を増やすことはできないという理屈になります。

 防衛費は、人の命を守る予算だという点では社会保障費と同じです。社会保障費と同様に、防衛費もシーリングの枠外とすべきだと考えますが、財務大臣の御見解をお伺いします。

鈴木国務大臣 我が国の安全保障環境、これが一段と厳しくなっている中におきまして、現下の情勢を踏まえた真に実効的な防衛体制を着実に構築していくこと、これが急務である、そういうふうに考えております。

 その上で、昨今のウクライナ情勢も踏まえれば、安全保障の観点から、経済、金融、財政の脆弱性を高めるようなマクロ経済運営はすべきでないと考えております。

 令和五年度予算の概算要求基準につきましては今後検討していくことになりますが、例えば、昨年の概算要求基準については、概算要求段階において各省庁が自らの施策の優先順位を洗い直し、無駄を徹底して排除しつつ、重要課題について前年度を上回る要求、要望をできるようにすることで、予算の中身を大胆に重点化することを促すものでございました。

 防衛費につきましては、これまでも手厚く増額を確保してきたところでございますが、現下の安全保障環境を踏まえまして、真に必要な装備品等を見極めて、最大限効率化していただくことが重要であると考えているところでございます。

山田(美)委員 御丁寧な御答弁、ありがとうございます。

 まさにこのマクロ経済運営全体というところも重要な視点でございますし、その中で、真に必要な防衛費、これについても議論をしていくべきだと思います。

 そしてまた、来年度の予算要求ということですと、もう近くそのプロセスが迫っているわけですけれども、この防衛予算というのは多年度にわたる予算でもあります。

 先ほど副大臣からのお話にもありましたとおり、政府は年内に防衛三文書の改定を予定しており、向こう五か年の防衛費の見通しを示した、新たな中期防衛力整備計画も策定をされる予定であります。

 次期中期防の対象期間となる二〇二三年から二〇二七年は、プライマリーバランス黒字化目標を達成する年限の二〇二五年と重なります。現状では、コロナの収束が見通せないことや、燃料価格や原材料費の高騰、円安などを考えますと、経済の劇的な回復は期待できませんし、大幅な増税は現実的ではありません。この場合、防衛費の拡充は財政健全化目標の枠内でしか行えないと考えるのでしょうか。

 私は、財政運営に規律は必要ですが、財政規律を最優先にしてしまうと様々な弊害が生じると思っています。国防は、国の存続、日本人の命に関わる問題です。国家あっての財政であり、財政あっての国家ではありません。財務当局の方々も、この国を守りたいという使命感は私たちと同じでしょうし、国破れて財務省ありなどとやゆされるのは本意ではないはずです。

 ちなみに、EUでは、公的債務をGDPの六〇%以内にするという財政健全化ルールの凍結措置を延長する方向だと聞いています。我が国においては、プライマリーバランス黒字化目標と次期中期防との整合性をどのように考えるべきか、財務大臣にお伺いします。

鈴木国務大臣 我が国の安全保障を確保することの重要性、それは私も強く認識をしているところでございます。実効的な防衛体制の強化、これが急務であるとも考えますが、その一方におきまして、経済、金融、財政の脆弱性を高めるようなマクロ経済運営はすべきでないと考えます。

 財政面については、実効的な防衛体制の強化を裏づける予算を確保するのみならず、有事に十分耐えられる財政基盤を備えることも不可欠でございます。

 こうした観点から、健全な財政運営は防衛力の強化と同様に重要でありまして、プライマリーバランスの黒字化目標も堅持すべきである、そのように考えております。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。まさにこれからそうした議論が進んでいくのだろうと承知をしております。

 最後の質問です。

 防衛関係費の中で深刻化していますのが、増え続ける後年度負担の問題です。予算全体の約四割を後年度負担が占める一方で、弾薬などの備蓄、防衛施設の抗堪性の強化や、自衛官の宿舎の建て替えなど、後方面での充実が滞っていると伺っています。

 後年度負担は、国庫債務負担行為として、予算の単年度主義の例外であり、二年目以降は、歳出化経費として、毎年国会の議決を経ることで適切に管理されるわけですが、そもそも、活動経費である一般物件費や人件糧食費とは規模も性質も異なり、単年度の経費と長期契約の分割払いを同じ予算枠の下で管理する現行の仕組みは、もはや限界に来ているようにも感じます。

 後年度負担が活動経費等を圧迫しないよう別建てで予算管理ができれば、予算の硬直化を防ぎ、FMS調達等の透明性も確保できると考えますが、実務上、可能でしょうか。事務方に伺います。

奥政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねの防衛関係費に係る後年度負担の歳出化経費あるいは維持費等につきましてでございますけれども、これは、現在の実務上の取扱いということで申し上げますと、現在もそれぞれ区分をした上で予算を計上し、執行しているということになってございます。

 ただし、防衛関係費というものは、新規装備品の導入に伴いまして、後年度にわたり御指摘のように歳出化経費が発生いたします。また、装備品から年々の維持費というものも生じてまいります。こういった、毎年度そうした経費が発生をしていくという防衛費の性質も踏まえまして、現行の中期防、中期防衛力整備計画におきましては、五か年にわたる新規契約の総額、そして歳出化経費、維持費等、これらを全体として効率的、総合的な観点から管理する、こういった重要な役割をこの中期防に担わせているものというふうに認識をしているところでございます。

山田(美)委員 御答弁ありがとうございます。

 時間となりました。

 五つの質問を通じて、防衛費に対する財務当局の考え方が非常によく分かりました。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、角田秀穂君。

角田委員 公明党の角田秀穂でございます。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 今日は、中小企業、特に、規模の小さい企業に対する支援について幾つか質問させていただきたいと考えております。

 長引くコロナ禍に加えて、ロシアによるウクライナ侵略による影響が国内の至る所に及んでおります。日本経済を根底から支えている中小企業に対しては、この間、特にコロナ禍で深刻な影響を受けている飲食、宿泊、運輸など幅広い業種に対して、協力金や支援金、無利子無担保融資など資金繰り支援、雇用を守るための雇用調整助成金など、様々な施策を動員してきました。

 コロナ禍、ウクライナ情勢とも先行きが極めて不透明な状況が続く中にあって、引き続き、支援金や資金繰り支援、雇用を守るための対策に万全を期していくことは当然のこととして、これと並行して、売上げや利益が落ち、債務が膨らんでいる中小企業の収益力を改善し、再生を支援していく取組もこれから強化していく必要があると考えております。

 特に、コロナで影響を受けた業種は非常に幅が広く、全国に満遍なく多数存在をしており、特に飲食や宿泊などを中心に、比較的生産性の低い企業が多いという特徴があります。問題の先送りだけでは傷を広げることにつながることから、可能な限り、短期間に集中的な取組が求められます。

 このような状況を背景に、中小企業支援のために、経産省、金融庁、財務省がまとめた中小企業活性化パッケージ、まず、これについて質問したいと思います。

 このパッケージは、ゼロゼロ融資の継続や特別保証などによる資金繰り支援と、中小企業の収益力改善、事業再生、再チャレンジの三つのフェーズごとの支援施策から構成をされておりますが、収益力改善から再チャレンジまでの支援策は、軽い症状から重い症状までのそれぞれの対処方針とも言えるかと思います。重症化する前に、軽症のうちに回復を図るという意味から、第一段階の収益力改善フェーズでの支援が極めて重要になってきます。

 この際、収益力の改善が求められる業種が幅広く全国的に多数存在することから、限られた人的資源を効果的に活用するためのネットワークの強化、軽症の段階で早期に支援につなげる取組を一層強化する必要があると考えます。このためには、各種の支援機関の役割、機能を明確化する、各種支援機関の間の連携を強化していく、その上で足らざるところを手当てするという順番で強化を図っていくべきかと考えます。

 まず、早期発見、早期支援に結びつける役割を担うのはどこかと考えた場合、いつでも御相談くださいと待っているだけでは、早期に効果的な支援に結びつけることも難しい。症状が軽いうちにといっても、人は、いつかは何とかなると考えがちでありまして、特に自分の懐具合については、なかなか他人に話したがらないものでもあります。

 経営者がそうした中でまず相談するのは、融資を受けている金融機関や顧問税理士等になるかと思われます。中小企業活性化協議会等の支援拠点側から金融機関等に対して周知を図るなどの取組も行われておりますが、こうした連携強化の取組を更に積極的に進めていくことも必要と考えます。

 金融機関や市町村、商工会議所などの支援機関の補完的支援を役割としているよろず支援拠点では、フォローアップを徹底しようと、相談申込時に紹介元、担当者名の入力をお願いする取組を最近始めたというところもあります。相談の入口となる金融機関等にも、支援が必要と思われる企業については、秘密は守られますから一度御相談してはいかがですかなど、積極的につなげていくよう働きかけるなど、更なる連携強化を進めていただきたいと思いますが、この点について、まず見解を伺いたいと思います。

栗田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、新型コロナ等により影響を受けている事業者の経営課題を早期に発見して収益力の改善を着実に図っていくことは、ポストコロナにおける事業者の力強い回復を後押しする上で非常に重要であるというふうに考えてございます。

 こうした観点から、官民金融機関、税理士、各種支援機関が密に連携しつつ、事業者の改善計画の策定から実行、フォローアップに至るまで寄り添って経営改善支援等を進めていくことが必要であるというふうに考えております。

 このため、金融庁といたしましては、官民金融機関、支援機関が密に連携し、経営改善支援などの取組を積極的に促進することを関係大臣連名で要請しておりますほか、財務局と経済産業局が連携いたしまして、金融機関や各種支援機関を含む関係者と協議の上、地域に応じた事業者支援の課題とその対応策を共有する事業者支援態勢構築プロジェクトを推進しているところでございます。

 引き続き、事業者支援に向けた各種関係者の連携体制の構築、強化に取り組んでまいりたいというふうに考えてございます。

角田委員 ありがとうございます。

 連携強化をこの分野で図っていく上で、一つ、守秘義務が大きな壁になっているという面もあろうかと思います。この辺についても整理が必要と考えておりますので、こうしたことについても検討を進めていただければと思っております。

 支援に携わる方々が異口同音に言うことは、関係者が皆、再生支援の目線で考えてくれれば、踏み込んだ支援というものができると言っております。そのためにも、金融庁としましても、メガバンクを含めた金融機関との対話というものもしっかり進めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、支援に携わる人材の確保について。

 相談に対するアドバイスや計画策定などの支援を行うために、税理士、会計士や弁護士、中小企業診断士などの経営コンサルタント、また、金融機関OB、ITの専門家など幅広い分野の人材が求められますが、特に、これから支援が必要となるであろう企業が全国的に多数存在していることから考えて、地方における人材確保が一つの課題と言えます。

 最近では、債務整理など、弁護士に関わってもらう案件も増えているとのことですが、大都市圏に比して専門家の確保が比較的難しい地方における人材確保についてはどのように考えているのか。

 また、カーボンニュートラル実現に向けて、中小企業に対する脱炭素化推進の視点からアドバイスできる専門家の確保も今後必要になってくると考えますが、併せて見解を伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 新型コロナへの対応に加えまして、デジタル化やグリーン化など、中小企業を取り巻く事業環境が短期間に大きく変化をする時代が訪れているものと認識をしてございます。そのような中で中小企業の経営を支えるためには、専門性を持ち、企業に寄り添った相談を受けることができる体制を整備していくことが重要というふうに考えてございます。

 特に、相対的に専門家の数が少ない地方におきまして、中小企業の経営相談に対応できる体制をしっかりと整備することは重要な課題であるというふうに考えてございます。

 中小企業庁では、中小・小規模事業者の皆様方が抱える様々な経営課題に対するワンストップ相談窓口として、先ほど御指摘いただきましたよろず支援拠点を四十七都道府県に一か所ずつ整備をしてございます。また、よろず拠点の全国本部を設置いたしまして、拠点の能力向上や活動支援、拠点間の連携等を図りまして、各拠点においても地域の支援機関と連携をしているところでございます。

 こうした取組のほか、主に町村部に設立されている商工会では、地域の事業者が業種に関わりなく会員となり、事業の発展や地域の発展のために活動をしてございます。加えまして、商工会議所では、市の区域を単位に構成される地区の商工業の総合的な改善発達を図ること等を目的といたしまして、政策提言、経営支援、地域振興等の活動を実施しているところでございます。

 新型コロナの影響によりまして、こうした支援機関に対する各種給付金や補助金の申請、資金繰り支援等に関する相談件数が増加してございます。このため、令和二年度補正予算、令和三年度補正予算におきまして、よろず支援拠点や商工会、商工会議所等の相談員を増員するなどの支援体制を強化しているところでございます。

 さらに、中小企業や小規模事業者が、経営相談など更に専門的な支援を受ける必要がある場合には、オンライン相談も含めまして、大都市圏にいる専門家の相談支援を受けられるよう、専門家派遣事業などを実施しているところでございます。特にカーボンニュートラルに関する相談につきましては、昨年十月に中小企業基盤整備機構に専門の相談窓口を設置いたしまして、支援施策の紹介や専門家によるアドバイスを行っているところでございます。

 今後とも、こうした取組を着実に進めてまいりたいと存じます。

角田委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間もないので、一つ飛ばして、次の質問をさせていただきたいと思います。

 中小企業の経営改善を後押しするための様々な施策というものがありますけれども、そのうちの補助制度について一つ伺いたいと思います。

 事業再構築補助金やものづくり補助金など、各種の補助制度が用意をされておりますが、この申請に当たっては、例えば事業再構築補助金では、金融機関や税理士、公認会計士などの認定支援機関に計画策定を手伝ってもらうことが必要となります。専門的な知識を必要とするなど、かなりハードルの高い作業であるため、場合によっては、全面的にこの計画作りを頼るということもあります。

 税金を投入する以上、事業目的や事業効果も含めて精緻な計画を求め審査するのは、その必要性は理解ができますが、その一方で、人に作ってもらった計画に経営者の思いというものがどれだけ反映されているのだろうかと思うところもあります。

 補助メニューの一つに小規模事業者持続化補助金がありますが、この申請に必要な計画は、再構築補助金やものづくり補助金などと比べて、手間がかからず作成できる、経営者自身が考えながら策定をできるようになっております。顧客ニーズの把握や競合の有無であるとか、自社の強みはどこにあるのか、こうした、計画を作る過程で整理することができ、自分が考えることで新たなアイデア、発見につながる契機にもなると考えます。

 ただし、この補助制度は上限が基本五十万円となっているため、採択実績を見ても、商業、サービスに偏っているというところがあり、製造業や建設業などは少ないという結果になっております。補助金の額が大きいものづくり補助金の方になりますと、これがまた一気にレベルが上がってしまう。

 経営者と計画書を通して対話できるような、こうした補助制度を、補助額の見直しなど、小規模事業者がより広く活用できるよう考えていただきたいと思いますが、御見解を伺いたいと思います。

佐々木政府参考人 お答え申し上げます。

 事業規模が小さい小規模事業者は、財務基盤が脆弱でございまして、設備投資や人材への投資など生産性を高める取組を進めることが大企業と比較いたしまして難しい場合があると認識をしてございます。このような背景もございまして、特に小規模事業者の生産性向上を支援する観点から、小規模事業者向けに持続化補助金を措置し、手厚く支援を行ってきたところでございます。

 御指摘いただきましたとおり、持続化補助金の一般的な補助上限額は五十万円でございますけれども、例えば、令和三年度補正予算では、賃金の引上げやインボイス導入など小規模事業者が事業環境の変化に対応する場合には上限額を百万円ないし二百万円に引き上げるなど、更に手厚い支援措置を講じているところでございます。

 大切なことは、このような施策を必要とする小規模事業者の皆様方にきちんとこの施策をお届けするということでございまして、小規模事業者の皆様方にとって身近な支援機関でございます商工会、商工会議所等による伴走支援を推進することで、相談への対応、申請サポートなど支援体制を充実させているところでございます。

 引き続き、こういった取組をしっかり進めてまいりたいと存じます。

角田委員 ありがとうございました。

 時間が来ましたので、以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党の櫻井周です。

 本日も、財務金融委員会におきまして貴重な質問の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 それでは、持ち時間も少ないものですから、早速質問に入らせていただきます。

 先ほど金融担当大臣から、FRCの報告をいただきました。これに関して、報告には関連するんですが、報告の中では明確にいただいていなかった点、二点質問させていただきます。

 まず一点目は、預金保険機構が保有する株式の売却の方針についてです。

 金融再生勘定で保有する株式は、国民負担の最小化と市場への影響の最小化を原則として、二〇〇六年八月から売却を進めておりました。しかし、二〇〇八年十月に、麻生総理大臣、当時の指示で、政府等が保有する株式売却について、市中売却の一時凍結というふうになりました。この時点で金融再生勘定には約一兆五千億円、これが凍結されたということになります。

 二〇一九年の四月の衆議院本会議において、私、櫻井周は、前任の麻生金融担当大臣に質問させていただきました。麻生総理の時代に保有株式の売却を凍結したんだから、自らの手でちゃんと後始末をつけてはどうですかということを提案申し上げました。麻生金融担当大臣は、多額の株式というものを一挙に処分しますと更に市場が混乱する、金融市場の動向を踏まえつつ処分を開始というふうに答弁されております。

 その後の状況について、この金融再生勘定で保有する株式の処分状況について御説明をお願いいたします。

鈴木国務大臣 預金保険機構は、旧長銀、旧日債銀から買い取った上場株式について、平成十八年八月から、国民負担の最小化及び市場への影響の極小化の原則の下に、おおむね十年をめどに処分を開始したところでございます。

 その後、リーマン・ショック後の急激な株価の下落等を受けまして、先生御指摘のように、平成二十年十月から、処分を当分の間見合わせることといたしましたが、発行会社の申出による公開買い付けや発行会社の自己株取得に対応する処分等は、市場への影響が少ないため実施しております。

 こうした中、令和三年度におきまして、国民負担の最小化等の原則を踏まえつつ、預金保険機構は簿価で約五千四百億円の処分を行っております。

 今後とも、上場株式の処分につきましては、その含み損益の状況に加え、市場に不測の影響を与えることがないなど、金融資本市場の動向も踏まえながら適切に判断をしていきたいと考えております。

櫻井委員 約一兆五千億円保有していたもの、五千億円超処分が済んだということで、残るは一兆円弱、九千億円ちょいということになろうかと思います。

 ただ、自社株買いをやってくれるというような会社ということは、それなりに業績もよくて元気のいい会社ということになるんでしょうが、そうでないところが残っているということで、これからが非常に難しいところだと思いますので。ただ、国がずっと持ち続けるというのはかなり不健全な状態ですので、早急に進めるとこれもまた市場に悪影響を与えますから、ちょっとずつということになるでしょうから、ちょっとずつ進めるのであれば、長い時間かかります。長い時間かかるということは早く始めないといけないというふうにも申し上げて、この点、取組をよろしくお願いします。

 それから、もう一つ、金融機能強化法に基づく地方銀行への公的資金の注入についてお尋ねをいたします。

 マスコミの報道によりますと、ある地方銀行が金融機能強化法に基づく公的資金の申請を検討しているという報道がございました。新型コロナウイルス感染症の蔓延で苦境に陥った融資先を支えるために、その支えている地方銀行の資本強化が必要、支える側を支えるということが必要ということであるなら、この立法目的の金融機能の強化を通じて地域における経済の活性化ということに合致すると思います。

 一方で、これも報道によりますと、資金の貸出しということではなくて、例えば、運用した結果、特に外国債券での運用で損失が発生をして、それで自己資本が細っているというようなことに対する穴埋めであるなら、これは立法目的にそぐわないというふうにも考えます。

 そこで、金融担当大臣としてお尋ねをいたしますが、コロナ特例の申請について、公的資金の注入が必要になった理由が、コロナ禍で苦境に陥った融資先の支援なのか、それとも資金運用の失敗なのか、こういう点についてもしっかりと審査をされるということでよろしいでしょうか。

鈴木国務大臣 櫻井先生御指摘のとおりの視点で、しっかりと審査をしたいと思っております。

 先般、きらやか銀行におきましては、コロナの影響を受けた企業に対し、更なる資金繰り支援やポストコロナに向けた設備資金等の融資に加えまして、抜本的な事業再生支援に積極的に取り組んでいくためには資本増強が必要と判断し、国による資本参加の申請に向けた検討を開始する旨を公表したものと承知をいたしております。このため、御指摘の、報道にあるような、有価証券の含み損の拡大が申請を検討する理由ではない、そのように受け止めております。

 国に資本参加を申請する金融機関は、地域経済の再生、活性化に資する方策等を記載した経営強化計画を提出することとされております。金融庁といたしましては、資本参加の申請がなされた場合には、制度趣旨を踏まえ、金融機関がコロナの影響を受けた中小企業等をしっかりと支えるものとなりますように、経営強化計画の内容を適切に審査してまいりたいと考えております。

櫻井委員 コロナ禍、感染症が収まっても経済に対する悪影響というのは引き続き残るというふうにも思いますので、そうした対応、是非、地域を支えていく、その金融機関もしっかりと支えていくということでお願いいたします。

 続きまして、次、全く話を変えまして、最近の物価高について質問をさせていただきます。

 本日は、日本銀行からも雨宮副総裁に来ていただいておりますし、内閣府からも政府参考人の方に来ていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、最近の物価の動向でございますが、長らく我が国、デフレ、それから物価が余り上がらないということを言われておりましたが、ここに来て物価が上がってきているというところです。

 日本銀行におかれましては、政策目標、物価二%、これは生鮮食品を除いた消費者物価指数をある種ターゲットにされているというふうに承知をしております。これは日本銀行に質問させていただきますが、生鮮食品を除いた消費者物価指数を政策目標としているのはなぜでしょうか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず初めに、私ども日本銀行の物価安定の目標は、あくまで、家計が消費する物やサービスを包括的にカバーしている総合でもって二%というのが目標でございます。これは各国の中央銀行とも共通でございます。

 ただし、総合で見た物価安定をできるだけ持続的、安定的に達成するためには、物価のトレンドというものを評価する必要があるわけでございます。そうしたトレンドを評価するために、短期的に変動しやすい要因をできるだけ取り除いて、それによって基調的な動きを見極めるよう努力しているということでございます。

 このためには、各国とも、どういうものを取り除くかというのはいろいろなやり方がございます。例えばアメリカでは、しばしば、食料、エネルギーを除いて変動を見極めるというふうなことをやっております。我が国の場合には、野菜や果物や水産物といった生鮮食品の価格が天候要因を主因に一時的に大きな変動を示すという傾向がございますので、この生鮮食品を除いたベースの方がトレンドを予測しやすいということで使っているということでございますので、是非御理解いただきたいのは、我々の物価安定の目標は、何かを取り除いて安定しますということではなくて総合である、ただし、その基調を見極めるための手段として、生鮮を除くとか、あるいは、場合によっては、今回の展望レポートからエネルギーを除いた数字も公表しておりますし、このほか、刈り込み平均といいまして、その時々に大きな変動をしたものを除いてみるといった指数もございまして、そうした指数を総合的に見て基調を判断している、こう御理解をいただければと存じます。

櫻井委員 基調判断ということで、生鮮食品、さらにはエネルギーを除く場合もあるということで、確かに、展望レポートの八ページを見ますと、この表には「除く生鮮食品」、さらに、その右側に参考として「除く生鮮食品・エネルギー」というのが挙がっております。

 ただ、今、今日お持ちしました表一のこの資料、これを見ていただきますと、一番、多く上がっているのが食料、特に生鮮食品が上がっているということと、光熱、水道のところが大きく上がっているということでございます。これは基調とは関係ないのか、それとも、まさにこれが基調となっているのかというのは、大きく見方が分かれるところではないかと思います。

 生鮮食品の場合は、天候不順とかそういったところ、ないしは、天気が非常によかったりすると豊作になったり不作になったりというのがあって、それで値段が上下するというのはありますけれども、確かにそれは経済の全体の動向とは関係ないというところでしょうが、今回のこの生鮮食品が上がっているのは、まさにエネルギーの値段が上がって、例えば、輸送費であるとか、温室でボイラーをたいたりとか、温室で暖房したりとか、さらには、漁師さんが漁に、魚を捕りに行くのに燃料代がかさむからといって遠くに行かないとか、漁に出て行く回数を減らすとか、そういったところで影響している可能性も十分あるわけですから、さらには、肉類の値段ですと、飼料代がかさむとかいろいろなところ。これは、そうした経済の動向をまさに反映して、それで、ある種、日本経済のこうした影響を非常に受けやすいところが上がっているというふうにも思われますので、やはりここもしっかりと勘案した上で判断いただきたいというふうに思います。先ほど副総裁からも、そのような、全体を見て判断するということでしたので、是非そのようにお願いしたいというふうに思います。

 一方で、黒田総裁、今日来ていただいておらず、今日御出張ということで来れないということで雨宮副総裁に来ていただいているわけでございますが、いつも黒田総裁に来ていただいていて、黒田総裁、とはいえ、長らく総裁を務めておられたといっても残り任期も一年弱ということになりますから、やはり、これからの、その先の日本銀行、さらには金融政策をしっかり担っていただくべき、黒田総裁よりも少なくとも一回り程度お若い方の話もたまには聞かせていただくということで、今回は非常に貴重な機会だというふうに思っております。

 黒田総裁は、物価上昇、これは持続しないということを五月二日の記者会見でおっしゃられております。でも、本当にそうなのか。この持続というのがどの程度という話はございますが、少なくとも今の傾向、一年間この水準で続くとなると、一年間はこうした物価上昇が続くのではないのかというふうにも考えるんですが、この持続しませんと断言されている根拠、又はこの持続の期間、どの程度見込まれているのか、この点について御説明をお願いいたします。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、今御指摘のありました足下の物価上昇でございますが、これはやはり、まずは最近の国際的な資源価格の高騰を受けたガソリン、電気代のエネルギー価格の上昇を反映している部分が大きいというふうに考えて、捉えております。

 先行きでございますが、これは、なかなか原油等の資源価格の先行きを見通すのは大変難しゅうございますが、現段階では、多くの海外中銀や国際機関も、資源価格が、我々の見通し期間、これは今三年でございますけれども、この間を通じて、例えば一バレル百、百五十、二百とどんどん上がっていくという想定はしておらないように思われますし、マーケットも、先物価格というのがございますが、先物価格は、これは少しずつむしろ下がっていくという見通しをしてございます。

 それを前提としますと、前年比の上昇率については、だんだんだんだん寄与が小さくなりますので、その意味で、エネルギーや資源価格の上昇の寄与がこの後もどんどん大きくなるということは見込みにくいだろうという観点で申し上げているということでございます。

 ただし、これはもう何度も申し上げますが、資源価格の動向は地政学的状況等にも大きな影響を受けますので見通し難いということもございますし、今先生御指摘のとおり、そうはいっても、この資源価格の上昇の影響がある程度続くと、人々の物価観、今までは、これは企業も家計ももう物価は上がらないということを前提にいろいろ行動してきた、そういう物価観が変わっていく。これは我々、むしろ、本当のデフレを退治するためにはある程度変わってほしいと思っておるわけですけれども、それが変わっていく可能性もございますので、その点も含めて慎重に点検していく必要があろうかというふうに思っております。

櫻井委員 資料、表の二もつけさせていただいております。次、めくっていただいた表二の方で、これは企業物価指数でございます。

 昨日、日本銀行が発表された数値でございまして、もう既に報道で出ておりますので御存じかとは思いますが、国内企業の物価指数、こちらは一〇%ということで、二桁に乗った、オイルショック以来という話もございます。そして、輸入の物価指数、円ベースで見ると四四・六%、前年比ということになって、非常に上がっている。

 企業の物価指数がこれだけ上がっているということ、しかし一方で、消費者物価指数はそこまでは上がっていないということを考えると、企業の側で一旦吸収している部分が多分にあるのではなかろうか、しかし、それがずっと続くかというとそうではなくて、価格転嫁についてもどんどん進んでいるという報道もございますので、そういった意味で、この消費者物価というのは、これから上がっていく可能性は十分あるのではなかろうかということも併せて指摘をさせていただきます。

 その上で、為替の要素、エネルギーの上昇の部分だけじゃなくて、今回の物価上昇については為替の影響も非常にあるだろうということだと思っております。

 財務大臣として、鈴木大臣は経済財政諮問会議に出席をされております。三月二十三日水曜日の会議の中では、以下のような議論があったと承知をしております。議事概要にこういうふうに載っていたんですね。

 足下で円安が進んでいるのは明らかであり、インフレ圧力は強まっている。四月から携帯電話料金引下げの効果が剥落することを踏まえれば、物価上昇は二%前後まで上がってくる、若しくはもう実態としてそうなっているのではないかと思う。諸外国が金融政策の正常化に踏み切る中で、日本だけが大規模金融緩和を維持しており、更に大幅な円安になるということも十分あり得るのではないかと思う。その中で、インフレが想定を超えて、とりわけ日本銀行が言っているようなレベルを超えてくる場合、十分な賃金の上昇がなくてはならない。しかし、ない場合には経済運営が大変難しくなる、具体的には、消費活動がより減退して、スタグフレーションに入ってしまう、こういうリスクがないとは言い切れないので、本当に悪いインフレの対策を事前に準備しておく必要がある。このような発言もございました。

 議事概要において、為替を所掌する鈴木大臣、この問題提起に対する発言、掲載はございませんでしたので、ちょっとここで改めてお尋ねをしたいんですが、本当に悪いインフレの対策を事前準備しておく必要がある、この民間議員からの指摘について、私もそうだというふうに思います。

 そこで、財務大臣としての御見解はどうかということと、また、必要があると考えるのであればどのような事前準備を進めるのか。特に為替について、この民間委員、指摘をされているわけですけれども、金融政策についてもっと柔軟性を持たせるべきだという声、これもあちこちで有識者の方から上がってきております。その趣旨をやはり金融政策に反映させようと思えば、政府と日本銀行との間で結んでいるアコード、これはもう見直すべきではないかというふうに私は考えるんですが、この点についても大臣から御答弁をお願いいたします。

鈴木国務大臣 スタグフレーションでございますが、一般に、経済活動の停滞や景気後退と著しい物価上昇が同時に生じている状況を指すことが多いと思われます。

 政府といたしましては、そうした状況に陥ることがないようにしなければならない。特に、コロナ禍におけるウクライナ情勢等による原油価格、物価の高騰等への対応を緊急かつ機動的に行うため、先月二十六日に総合緊急対策を取りまとめ、これを迅速に実行することとしております。

 また、櫻井先生御指摘のとおり、賃金の引上げ、これは重要な課題であると思っておりまして、岸田内閣の最重要課題といたしております。

 賃上げにつきましては、賃上げ税制の拡充に加えまして、看護、介護、保育等の公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員するような形で、引き続き、持続的な賃上げに向けてしっかりと取り組んでまいります。

 今後とも、スタグフレーションに陥ることがないようにしなければならない、そのために、しっかりと経済情勢を注視いたしまして、適切に経済財政運営を行っていく必要があると考えております。

櫻井委員 もう一点、先ほどの質問の中で、日本銀行と政府とのアコード見直し、もうやるべきじゃないかということを御提案申し上げたんですが、この点についても御答弁をお願いいたします。

鈴木国務大臣 日本銀行との関係でございますが、岸田内閣におきまして、平成二十五年の政府、日銀の共同声明、これを再確認したところでございます。デフレ脱却と持続的な経済成長に向けて、今後とも緊密に連携して取り組んでいくことといたしております。

 金融政策の具体的手法につきましては、これはもう日銀に委ねられるべきと考えておりますけれども、日銀におかれては、共同声明の考え方に沿って、引き続き、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて努力されること、このことを期待をしているところでございます。

櫻井委員 今の御答弁ですと、再確認をしたというところで、アコードを見直すつもりはない、こういう御答弁だと承知をいたしました。

 ただ、やはり世の中では、これは日本銀行に向けられている声ではあろうかと思いますけれども、金融政策、当初、何か、〇・一%の幅でと言っていたのが、〇・二五%という幅に、ちょっと柔軟性を持たせたわけですけれども、もう少し、もっと、もうちょっと柔軟性を持たせた方がいいんじゃないのかという声もあちこちで言われているわけですし、まさにそうした声が、四月の金融政策決定会合、日本銀行の会議の中で決まるんじゃないか、そんな期待が市場の中にあったのに、それを頭ごなしに否定するかのように、連続指し値オペという回答だったものだから、一気に円が三円も安くなったりというようなことでマーケットが反発をしているということだというふうに思います。

 そういった意味で、もっと、日本銀行におかれては市場と対話をするべきだと私は思いますし、大臣ももう少し柔軟性を持たせたらどうか。今までの、黒田総裁就任のときに二年でデフレ脱却と言っていて、九年たってどうなのか。今、想定していた形とは違う形でデフレ脱却が進んでいるということについて、やはり見直すべきときに来ているのではないかということを重ねて提案申し上げます。

 その上で、ちょっとまた日本銀行に御質問させていただきます。

 四月の金融政策決定会合の方向を見ますと、これまでの政策を堅持というか、絶対変えないぞという強い意思を見るわけなんですけれども、このイールドカーブコントロール、これは、このグラフ三に示したとおり、どんどん下げていっているわけですよね。

 金利をどんどん安くしていっているという状況の中で、これだけ下げてくると、今度、日本銀行自体の資産の利回り、日本銀行はたくさん資産も今抱えているわけなんですけれども、グラフ四を見ましたとおり、ほかの中央銀行に比べても格段に資産規模が大きい。名目GDP比に比べて非常に大きな資産を持っている。表五において、アメリカの中央銀行に当たるフェデラル・リザーブ・バンクと日本銀行を比較させていただいておりますけれども、やはり非常に大きい状態になっております。

 そうした中で、国債が資産の中で大きなものを占めているわけですが、その反対側に負債として当座預金があるということで、これは、左側の資産の部分の運用が下がってくると、大体もう〇・二%を切っている状況だ、そういう有識者の分析もございますが、そうすると、右側の当座預金の金利は、それ以上上げちゃうと逆ざやになっちゃって、日本銀行は赤字になってしまう、そういう心配が出てくるわけです。

 だから、実は、日本銀行の財務を考えると、金利を上げようにも、ないしは、金融政策に柔軟性を持たせようにも持たせられなくなってしまっているのではないのか、そんな心配もするんですが、これは、日本銀行、大丈夫でしょうか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、将来、金融政策を正常化する場合、利ざやの逆転あるいは財務状況がどうなるかという点についてまずお答え申し上げますと、確かに、一般的に言われる出口という局面では、日銀当座預金に対する付利金利は引き上げるということによって正常化を進めていくということは考えられます。

 その際、恐らく、そういった局面では、経済、物価情勢もしっかりしているはずでございますので、長期金利も健全な格好で上昇していると考えるのが自然だと思います。そうなりますと、日本銀行の保有国債が、これは全部一遍ではありませんけれども、徐々に償還を迎えていく中で、高い利回りの国債に入れ替わっていくということで受取金利が上昇していくという可能性もあるわけでございますので、これは、そのときの経済、物価情勢次第で、我々の運用利回りと支払い利回りの関係がどうなるかというのは現段階では一概には言えない、そのときの物価、経済情勢に依存する、そういうことになろうかと思います。

 その上で、是非御理解いただきたいのは、私ども、金融政策運営はもちろん、日本銀行の財務という観点にも十分留意しつつではありますけれども、あくまで、経済活動をサポートし、物価安定目標の持続的な、安定的な実現を目指すということのために行っているわけでありまして、こうした財務状況の懸念を理由に金融政策運営を行うということはないということは是非御理解いただきたいというふうに存じます。

櫻井委員 日銀の財務を考えて金融政策を決定しているわけではないという御答弁でした。

 それは当然のことだと思いますが、本当にそのようにしていただきたいと思う反面、とはいえ、先ほど私が指摘したように、そこが足かせになってしまうような状況が生まれつつあるのではないのか。市中金利が上がっていけば、債券の金利が上がっていけば、別に、左側の資産の部分の運用利回りも上がっていくんだからと言うんですけれども、ただ、それは入れ替わるのに時間がかかるわけですね。十年物とかをいっぱい持っていると、それだけ、入れ替わるのに十年かかるわけですから。その間、移行する間に巨額の損失が発生するのではないのか、こういう心配もしているわけですので、その点もリスクとして指摘をさせていただきます。

 また一方で、国債の金利が上がると、日本の政府の債務残高、政府部門全体では千三百兆円とも千四百兆円とも言われるような赤字がある中で、やはり、金利が上がっちゃうとたちまち利払いで日本の財政が回らなくなってしまう、こういう問題もあろうかと思います。この点も足かせになって金融政策が思うように対応できなくなってしまっているのではないのか、こういう心配もするものですから、併せて指摘をさせていただきます。

 ちょっと時間もなくなってまいりましたので、次の質問に移らせていただきます。

 お配りした資料の中で、グラフ十から十二の部分でございます。

 この部分について、これは実は、三月三日の経済財政諮問会議の資料四の一として配付されたものです。このときに、内閣府からこの資料について説明がありましたので、改めて、ちょっとこの場でもこの資料について説明をお願いします。

松多政府参考人 お答え申し上げます。

 本年の三月三日の経済財政諮問会議において、内閣府から、一九九四年と二〇一九年の所得、就業構造についての分析を御説明いたしました。委員からグラフ十から十二まで配付いただいたとおりでございます。

 グラフ十の上でございますけれども、こちらは、全体として、高齢者世帯や単身世帯の増加に伴い低所得階級の割合が上昇しているといったことを示しております。それから、グラフ十の下にありますように、働き盛りの世帯の所得が百万円以上減少していること、それから、次のページのグラフ十一の下の方にございますけれども、非正規雇用の若年単身世帯の割合が大きく上昇していることなどを御説明させていただきました。

櫻井委員 先ほど鈴木大臣から、賃金上昇が伴わないとこれは問題だということで政府としてもいろいろな取組をやっているんだというお話でございました。

 内閣府が経済財政諮問会議で提出した資料によりますと、やはり大きな要因として、非正規雇用が増えているというところも影響しているんじゃないでしょうかね。これだけ、二十五年前と比べて非正規雇用が増えた、そして、働く世代の所得分布を見ても、ぐっとこのグラフが左側に寄っている、それぞれ、かなり、百万円ぐらいずつ所得が減っているのではなかろうか、こんなふうにも見受けられるわけです。

 やはり、こうした非正規雇用、低賃金、不安定な雇用が増えたことが、日本全体を貧しくしてしまっていることの原因だというふうに考えるんですが、また一方で、この間、企業はそれなりに利益を上げているんですけれども、上げた分は、人件費に回すんじゃなくて、株主配当とかそっちに回しちゃっている、こういうことが日本全体を貧しくしてしまっているのではないのか。

 また、目先の経済成長にとらわれてしまって、目先の収益にとらわれてしまう。人件費を下げれば、その分、そのときは安く、利益は上がりますけれども、長い目で見たら、やはり、人への投資を怠った分、将来の成長余力、成長力がなくなってしまうということになってしまっているのではないのか、こんなふうにも考えるんですが、やはり、非正規雇用の問題、そして、ちゃんと人へ投資するような社会の仕組みに変えていく、ここは一番重要だと思うんですが、大臣の御見解をお願いいたします。

鈴木国務大臣 櫻井先生からも御指摘がございましたけれども、賃金が伸びていないということでございますが、我が国では、一九九〇年代のバブルが崩壊して以降、低い経済成長と長引くデフレによりまして、企業は投資や賃金を抑制をして、消費者も将来不安などから消費を減らさざるを得ず、結果として、需要が低迷、デフレが加速し、企業が積極的に賃上げを行う環境でなかった、そういうような悪いスパイラルにあったんだと思います。

 政府といたしましては、成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現していく必要があると考えておりまして、このため、政府としては、様々な施策を動員をいたしまして、所得の向上につながる賃上げ、これに取り組むこととしております。

 具体的には、もう先生既に御存じのとおりでございますが、賃上げ税制の拡充、補助金による中小企業の生産性向上のための支援、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備などの施策につきまして、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

櫻井委員 一方で、ちょっと最後の質問、財政についても質問させていただきます。

 この資料でお配りしたグラフの十三でございますが、これは名目の国債の利回りと政府債務残高の関係を示しております。

 本来、リスクが高ければ金利も高くなるという、これは正比例の関係になるはずのものですけれども、全般的に見るとそのような傾向があるのかなと見えるんですけれども、唯一そこから外れているのが日本です。政府債務残高が最も高いにもかかわらず、金利は最も低い状態になっている。これは何でなのか。経済の市場原理からすると、おかしなことが起きているわけなんです。

 このことについて、実は、慶応義塾大学の桜川昌哉教授が、この「バブルの経済理論」という本の中でもいろいろ説明をされているわけなんですけれども、その中で書いていることとして、金利が安いのはなぜかという問い立て自体が間違っていて、因果関係が逆で、市場を骨抜きにして利回りを潰したから債務残高が増えたというふうに考えると分かりやすいというような指摘もしています。

 これは何でそんなことになっているかというと、日本の金融機関の知識と熟練、プロの投資家ではない、今朝の日経新聞にも、大手銀行、外債含み損一・七兆円、そういう報道もございましたけれども、そういったことがあるのではないかという指摘もされております。

 最後の質問になりますけれども、大臣、財務大臣として、やはり、債券市場が機能しなくなっているということにあぐらをかいて財政赤字を安易に発行しているのではないかという指摘、これは重要なポイントだと思います。あと、金融担当大臣としては、資産運用について、知識と熟練を備えたプロの投資家の育成を怠ってきたのではないのか、これも重要な指摘だと思います。この指摘について大臣としてどのように取り組むのか、御答弁をお願いいたします。

鈴木国務大臣 国債金利につきましては、経済財政の状況でありますとか海外市場の動向でありますとか、様々な要因を背景に市場において決まるものでありまして、一概に申し上げることは困難であると考えております。

 その上で申し上げますと、日本の財政については、足下では新型コロナへの対応によりまして厳しい状況にありますけれども、今までのところ、潤沢な家計金融資産でありますとか経常収支の黒字等を背景にいたしまして、低い金利水準で国債が国内で安定的に消化されるという状況が続いている、それがこの要因であると思っております。

 しかし、こうした状況がいつまでも続くという保証はないわけでありますので、引き続き、歳出歳入両面の取組を進め、財政に対する信認を維持しながら、債務残高対GDP比の安定的引下げを行っていく必要があると思います。

 それから、やはりこれからは貯蓄から投資へという流れでございます。高校生から、今、金融教育も始まっておりますが、国民全体に対する金融リテラシー、こうしたものもしっかり進めていく必要がある、そのように考えております。

櫻井委員 もう時間になりましたのでこれで終わらせていただきますが、やはり、こうした矛盾があると、ある日突然債務不履行に陥る、そういったことになるのではないのかというのが桜川教授の御指摘でございます。そうならないように是非大臣として取組を進めていただくようお願い申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 ただいまは櫻井周君から専門的な視点からの質問がありました。私は、庶民の考え、視点から、政府の、あるいは日銀の経済、財政、金融政策についてお伺いをしてまいりたいと思います。鈴木大臣また雨宮日銀副総裁を中心にお聞きしてまいりますので、分かりやすく、簡潔にお答えいただければと思います。

 最初に、どんな円安状態かというのをちょっと参考までに具体例を申し上げます。

 この五月の連休中にヨーロッパなどへ旅行に行った人がいるかと思いますが、イタリアへ行った若い人の話です。レストランでパスタとサラダの軽食セット、これを食べたら、何と、びっくりする値段だったそうです。円ベースで、円で、何と五千円だったそうです。いいですか、パスタとサラダのセットが、日本円に換算して五千円もしたそうです。円が安くなりましたね。これが今の実態ですよ。それを前提に、これからお聞きしてまいりたいと思います。

 まず、現下の急激な円安・ドル高、物価高への対応についてであります。

 一つ目は、日銀は、四月の政策決定会合で、金融緩和の維持を決めて、円安是正より金融緩和を優先し、金利を抑え込む先ほどの指し値オペを毎営業日実施するといたしましたが、その影響をどのように考えているのか、教えていただきたいと思っています。

 指し値オペを発表した途端、円は売られて、一時一ドル百三十一円まで下落をして、現在は、少し、ちょっと上がっている状況でありますが、それでも百二十八円かそこらの、二十九円前後ですが、教えていただきたいと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 まず、御理解いただきたい点でございますけれども、我が国経済でございますけれども、いまだ感染症による落ち込みからの回復途上にあるということと、先ほど来当委員会でも議論になっておりますような資源価格上昇、これは海外への所得の流出でありますので、日本経済に対しては非常に大きな下押し圧力になっているわけでございます。

 こうした、まだ回復途上であるということと、下押し圧力がまた加わっているということを考えますと、やはり、私ども日本銀行としては、現在の強力な金融緩和を続けることで、人々、家計や企業の経済活動をしっかりサポートしていくということが重要と考えております。

 このために、金利変動幅の上限をしっかり抑えるという観点から、従来から、市場動向に応じて、先生御指摘の指し値オペをある日やったり止めたりしていたんですけれども、一部マーケットでは、この指し値オペの実施の有無によって日本銀行の政策のスタンスを推し量ろうとする動きがございましたので、これを基本的に毎営業日実施するということにして、市場の安定確保を図ろうとしているところでありまして、この結果、五月入り後も長期金利は安定しておりますし、これを通じて企業の資金調達環境を緩和的な状態に維持することで、しっかりとサポートをしてまいりたいと考えているということでございます。

福田(昭)委員 難しい話じゃなくて、実際にどうなっていくかというのが一番大事だと思っているんですよ、これは。経済は景気と言われておりますから、まさに、理屈を並べてどうのこうのというよりは、実際に円安がちゃんと止まっていくのか、こういうことが私は大事だと思っているんですよ。

 二つ目ですけれども、財務大臣は急激の変動は好ましくないと言っておりますけれども、なぜ好ましくないのか、簡潔にお答えください。

鈴木国務大臣 先ほどの福田先生の冒頭のお話でありますが、私もG7とG20の会合でワシントンに行きましたときに、アメリカは、インフレも進んでいるということもあると思いますが、朝御飯が大変高いのでびっくりしたことがございました。

 御指摘の点でございますが、急激な変動は好ましくないと言ってございますが、一般論として申し上げますと、為替相場における急激な変動、これは、企業活動における先行きの不確実性を高めることなどを通じまして経済に悪影響を与え得ることから望ましくない、そのように申し上げているところでございます。

福田(昭)委員 財務大臣も御存じだと思いますが、四月の二十八日、日本商工会議所が中小企業の景気調査の結果を発表いたしました。それによりますと、円安はデメリットの方が大きいと答えた人が五三・四%。その具体的な影響ですけれども、一つは、原材料、部品などへの仕入価格の上昇に伴う負担が増えたというのが八六・七%。二つ目、燃料、エネルギー物価の上昇に伴う負担増、七三・六%。仕入れコスト上昇分を販売、受注価格へ転嫁できず収益が悪化しているというのが四八・五%。

 その後、五月の十二日に、三村日商会頭が、また会見で、足下の円安基調が続けば中小企業にとって大きな経営上の問題になる、そのように心配をした発言をいたしております。

 こんなことを考えますと、やはり円安は一日も早くやめる必要があるんじゃないかと思っております。

 そこで、三つ目でありますけれども、国際通貨基金の高官が、最近の円安は基礎的条件主導であり、経済政策を変更する理由にはならない、今の相場は日本の分相応だ、こう言っておりますが、鈴木大臣も日銀もそう思うのか、お答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 福田先生御指摘のIMF高官の発言、それは承知をいたしておりますけれども、IMF高官の個別の発言に直接コメントすることは控えたいと思います。

 また、足下の為替について具体的に評価することは控えさせていただきたいと思いますが、その上で、為替相場につきましては、経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移すること、これが重要であると考えておりまして、最近のような急速な変動、これは望ましくないと考えるものであります。

 政府といたしましては、為替市場の動向、日本経済への影響、それらを緊張感を持って注視をしてまいりたいと考えております。

雨宮参考人 ただいま大臣から御説明申し上げたとおりでございますが、私どもとしても、為替相場の水準やその評価、あるいはIMF高官の発言について具体的にコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、やはり為替相場は、経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することは極めて重要であります。

 最近見られたような為替市場における短期間での過度な変動は、先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定等を難しくするため、望ましくないと考えております。

福田(昭)委員 ちなみに、二〇二一年度の貿易・サービス収支は、何と六兆四千四百六十八億円の赤字でありました。大変大きな赤字になってまいりました。

 四つ目ですけれども、四つ目は、先ほど櫻井君の資料にもありましたけれども、実質実効為替レートは一九七〇年代の水準に逆戻りだ、ですから、五十年も前に戻っちゃったわけですから、もう円が安くなったという話なんですね。この今の円安が資源価格の高騰を加速しているということでありますが、そうした認識は、鈴木大臣、あるいは日銀にも、そういう認識はございますか。

鈴木国務大臣 最近の物価価格の上昇でございますが、もちろん、為替による影響、これもあるわけでございますが、主に原油を始めとする世界的な原材料価格の高騰を背景としたものと認識をしているところでございます。

 したがいまして、為替市場の動向や物価を始めとした日本経済への影響、これを緊張感を持って注視してまいりたいと思っております。

雨宮参考人 ただいまの大臣の御答弁に若干補足させていただきますと、最近の、先ほども話題になりましたけれども、四月の輸入物価の上昇率というのが前年比で四四・六%ございました。この中身を見ますと、契約通貨ベースといって、元々の資源価格が、国際商品市況が上昇した部分、これが約三〇%、為替による分が一五%ということでございますので、三分の一が為替、三分の二の大半は資源価格上昇そのものということの影響でございますが、いずれにせよ、こうした資源価格の上昇は日本から見ますと海外への所得の流出ということでございますので、その影響については十分注意して見てまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 そういう理屈は成り立つのかもしれませんが、しかし、現実には、一九九九年だから平成十一年二月からはゼロ金利政策をやってきた、まさに円安政策をずっと進めてきたベースの上に立っての今回の資源高ということでありますから、もうそろそろそうした円安政策を改めていく必要があるんじゃないでしょうか。

 それでは次、五つ目でありますが、黒田日銀総裁の任期が来年の四月まででありますが、任期中、金融政策を改める考えは本人の姿勢からはなさそうですが、部下として仕えていて、雨宮副総裁からは、どんな考え、感じをしていますか。簡潔にお答えください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 これは、部下としてということではなく、日本銀行法の定めということで申し上げますと、やはり金融政策運営は日本銀行総裁の任期との関係で論じられるべきではなく、あくまでも法律で規定された物価安定の目標ということを実現するために、政策委員会の議論に基づいて、どのような政策が必要かという観点から議論し、決定すべきものというふうに考えております。

福田(昭)委員 私は、実は、雨宮副総裁も御存じだと思いますが、平成三十年の三月二日の衆議院議運、運営委員会で、黒田総裁本人に対して直接、あなた、お辞めなさいと実は進言をしたものであります。

 それは、物価安定目標二%は約束の二年たっても全然達成することができずに、しかも、そのとき申し上げたのは、アメリカの大投資家の一人、ジム・ロジャーズですね、彼が、このアベノミクスの異次元の金融緩和、過度な円安政策は間違いだ、今はいいが、やがてツケが回ってくる、自分の国の通貨をこんなにおとしめて、安くして繁栄した国はない、安倍総理はやがて日本を破壊した男としてその名を歴史に刻まれるだろう、こうジム・ロジャーズが言っていますよと。だから、安倍総理にも、方針変換したらどうですか、こう言われてしまわないように方針転換したらどうですかと。黒田総裁には、お辞めになったらどうですか、それがあなたのためだし、あるいは国民のためだし、国のためですよ、そういうお勧めをしたものですから、申し上げた次第でございます。本人がいなくて残念ですけれども。

 その後の質問に行きます。

 六つ目ですけれども、黒田総裁が全体として円安がプラスという評価を変えていないとすると、政府の物価対策、今度は補正予算、本当は、財務大臣、今まで、去年の十二月の補正予算と、そして今年の新年度予算、十六か月予算でコロナ対策も物価高騰対策も十分だと言っていたのに、ここへ来て急に、補正予算を組むんだ、こうなってきましたけれども、何だか、黒田総裁の話と、物価対策をやるんだ、矛盾しているような気もするんですが、大臣はどんなお考えか、お聞かせください。

鈴木国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、最近の物価上昇につきましては、為替による影響、これも見られるものの、主に原油を始めとする世界的な原材料価格の高騰等を背景にしたもの、そのように認識をいたしております。

 その中で、政府といたしましては、先月二十六日に総合緊急対策を策定いたしましたが、これは、ウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰等による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応することで、足下の経済を支え、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものにするためのものであります。

 また、金融政策について、黒田総裁は、二%の物価安定目標の実現に向けて、経済を下支えしていく観点から、現在の強力な金融緩和を粘り強く続けていくことが適切と述べられておりまして、足下の経済を支えるという政府の対策とも決して矛盾はしていない、そのように理解をいたしております。

福田(昭)委員 何か報道によりますと、間もなく物価も二%を超えるんじゃないかというような報道もあったりします。

 黒田総裁が、円安は結果的に日本に有利になるんだということでありますが、それがもしかして、円安で輸出企業が外国でもうけたお金が、日本に持ち帰ったら水膨れして膨れちゃう、利益が膨れちゃっている、こういうことを言っているんだとしたらとんでもない話じゃないかなと思っています。一時的にはいいかもしれません。

 しかし、今や一人当たりのGDPはどうやら世界三十番目、韓国にも抜かれているかもしれない、あるいは、総合のGDPも、今年はドイツに抜かれるかもしれない、世界四番目になっちゃうかもしれない、実はこういう見通しなども言われております。そんなことを考えると、やはり円安はやり過ぎだというふうに私は思っております。

 七つ目でありますけれども、鈴木大臣は四月二十一日、米国のイエレン財務長官と為替安定へ意思疎通、確認をしてきたということでありますが、どんな話をしてきたのか、教えてください。

鈴木国務大臣 米国のイエレン財務長官とは、四月二十一日にワシントンで面会し、金融市場の動向、特に最近のドル・円相場の動きについても議論を行ったところでございます。

 お尋ねの為替につきましては、これまでのG7やG20における為替に関する合意を維持していくことや、為替の問題に関し日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認をしたところでございます。

 具体的なやり取りにつきましては、これはお互いに申し上げないということでございますので概要をお話しした次第です。

福田(昭)委員 しゃべれないかと思いますけれども。

 そこで、八つ目の質問に入りますけれども、私は、もしかすると、外貨準備金の現在高と活用方法についてであります。外貨準備金は、二〇二二年四月末現在、一兆三千二百二十一億九千三百万ドル、日本円にして約百七十二兆円あるそうであります。外貨準備金は、固定為替制度の時代には必要なものだ、こう言われておりましたけれども、現在の変動為替相場では外貨準備金は必要ないんだ、こう言われているようでありますが、これを利用して、アメリカと相談しながら今回の急激な円安をストップするということができるかどうかという検討をしてはどうかと思うんですが、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 外貨準備金のお話でございますが、先生からもう既に御指摘ございましたが、我が国の外貨準備高、これは本年四月末時点で一兆三千二百二十二億ドルとなってございます。この外貨準備は、本邦通貨の外国為替相場の安定を目的として、将来の為替介入等に備えて保有をしているものでございます。

 その上で、具体的なことにつきましてはコメントを控えますけれども、いずれにいたしましても、これまでG7等で合意された、為替レートは市場において決定される、為替市場における行動に関して緊密に協議する、過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与え得るといった考え方に基づきまして、米国等の通貨当局と密接に、緊密な意思疎通を図りながら、政府として対応をしてまいりたいと思っております。

福田(昭)委員 それで、九つ目に行きますけれども、大臣からは、それこそ、急な為替の変動って、今こそその時期じゃないかと思いますけれども、米国FRBの計画では今後の更なる利上げも考えているようであります。そうなると、円安・ドル高、物価高がますます大きくなるんじゃないかと思っております。

 そこで、私からの提案は、やはりここは黒田総裁に辞めていただくことが一番の円安政策になると思いますよ。人が替われば政策は変わります。これは確実です。黒田総裁が、安倍総理が辞めたときに辞めたいと言っているという報道が一部あったんですけれども、これが本当かどうか分かりませんけれども、私の考えからすれば、指名した人が辞めれば、指名された人は辞めるのがその人の人格です。黒田総裁が、安倍総理が辞めたときに辞めなかったのは、黒田総裁の人格が疑われます。私はそれを指摘して、是非、鈴木大臣、岸田総理とよく相談してみてください。あと残すところ任期一年ありませんけれども、ここで辞めるのが、黒田総裁がそれこそ本当の人間になる、私はそういうことだと思います。

 次に行きます。

 次に、二つ目ですけれども、二つ目は、新型コロナ、原油高、原材料高を踏まえた財政健全化計画の策定についてであります。

 一つ目は、二〇二二年三月末の国債及び借入金現在高は千二百四十一兆三千七十四億円、過去最大を更新したということでありますが、政府はこの借金を返す考えがあるのかどうか、財務大臣にお伺いいたします。

鈴木国務大臣 福田先生の御指摘のとおり、本年三月末時点における国債及び借入金の残高、これは千二百四十兆円超でありまして、過去最大の水準になっております。

 政府といたしましては、財政は国の信頼の礎であり、中長期的な財政健全化のためには、プライマリーバランスの黒字化、同時に債務残高の対GDP比の安定的な引下げ、これを目指していくことを政府の方針として閣議決定しているところでございます。

 そこで、累積した債務への対応につきましては、この方針に沿って適切に対応し、市場や国際社会における中長期的な財政の持続可能性への信認、これが失われることがないよう、責任ある経済財政運営に努めてまいりたいと考えております。

福田(昭)委員 後でも申し上げますけれども、財務大臣、私は、きちっとした計画を立てないと財政健全化できないと思っています。後でちょっと申し上げますけれどもね。

 二つ目の、安倍元総理の発言、これは財務大臣も否定しているようですから聞きませんけれども、日銀は政府の子会社だ、こんな考えで日銀にいっぱい国債を引き受けさせたんですかね。とんでもない話だと思います。

 三つ目ですけれども、過去最大の借入金、千二百四十兆円を超えるこの借金は、私は、政府の発表の仕方は、これは何というんですかね、国民だまし、国民脅しだと思っています。借金は政府の借金であって国民の借金ではないと考えておりますが、お答えをいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 先生御指摘のとおり、国債は、債務者という面を見れば政府の借金でありまして、国民の借金ではない、そのように考えております。

福田(昭)委員 そうすると、これはきっと、大臣じゃなくて財務省の役人の皆さんに申し上げたいけれども、マスコミに対して、借金がこれだけあるよというときに、国民一人当たり一千万円を超えたなんということを書かせないようにしてください、これは。国民はびっくりしちゃいますよ、私はいつそんなに借金したかなと。これは財務省の皆さんですよ。幾ら増税したいと思ったって、こういう国民脅しはやめましょう。それだけは言っておきたいと思います。

 四つ目は、財政健全化の目標、プライマリーは、これはまた後で申し上げます。

 五つ目の、政府の借金が増えた大きな原因は何かということでありますが、次の三つの図表を見てお考えを聞かせていただきたいと思っていますが、簡潔に説明申し上げます。

 図表の一を御覧ください。これは財務省が作っているものでございます。よく財務省が、一般会計の歳出と一般会計の税収のどんどんどんどん格差が広がった、ワニの口が大きく広がったというような資料でございます。私が縦線を入れてありますが、これはちょうど、消費税を創設をした平成元年、五%にした九年、そして八%にした平成二十六年、それから一〇と八にした令和元年、あえて、消費税がとんでもない税金だということで、縦線を入れております。よく見てください。消費税を創設をして、法人三税を減税して、所得税と住民税も減税して、その結果、どんどんどんどん借金が増えてきた、ワニの口が広がってきたという図であります。

 そして、次の図表の二でありますが、平成元年に消費税をつくってからは、まさに日本の不幸な失われた三十年が行われました。これによって増えたのは、まさに国の借金ですよ。そうした中で、日本の名目GDPもほとんど伸びずに、一般会計の税収も伸びませんでした。やはり、名目GDPが伸びて初めて税収が増えるんですよね。ところが、残念ながら、ずっと大したこと伸びないで来た。

 そういう中で、一方、大変な大きな得をしてきた人たち、これが、法人企業の内部留保資金が、何と、これは二〇一九年でありましたが、四百七十五兆円ですね、約四倍になっている。それから、個人の家計の金融資産も何と約二倍になっている。最近の報道では、何と、昨年の十二月末、個人の金融資産二千二十三兆円、そのうち、現金が一千兆円を超えている、年金保険料も五百兆円を超えているというのが国民の金融資産の実態であります。ですから、政府が一生懸命借金をしてきて、その結果として、いっぱい蓄えることができたのは法人企業それから大金持ちの方々ですよ。それがこの失われた三十年を実はつくってきたということであります。

 資料の図表の三でありますが、図表の三は、何でこんなことになったかということでありますが、まさに、財政悪化と格差拡大を招いた法人税率、所得税率、住民税率の引下げの実態であります。消費税をつくる前、創設後、現在どうなっているかということを、普通法人税、それから所得税、住民税を資料として挙げさせていただきました。

 こうした三つの図表を財務大臣には、先週既に事務方を通してお渡しをしたんですが、この三つの図表を見て、政府の借金が増えた原因をどう考えているのか、是非お聞かせいただければありがたいと思います。

鈴木国務大臣 先生からお示しいただきました三つの図表に関連しながらお答えをさせていただきたいと思います。

 最初に、図表一に関連をいたしまして、政府の借金が増えたという御指摘でございます。平成二年度には特例公債の発行から脱却することができましたけれども、それ以降は、歳出面では、主に高齢化の進行に伴う社会保障関係費の増加、歳入面では、景気の悪化等による税収の落ち込みなどの要因によりまして、特例公債の発行が続いている状況となっております。

 そして、過去三十年を振り返った図表二で申し上げますと、我が国の経済について見てみますと、一九九〇年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレがありましたが、政権交代以降、経済最優先で取り組んだ結果、デフレではない状況をつくり出し、消費税を導入した平成元年度と比較してGDPや税収は増加していると認識をいたしております。

 そして、これまでの税制改革を振り返って、その趣旨を申し上げますと、昭和六十三年以降、所得税や法人税の税率の引下げ等が行われました。これは、所得税については、税率の高い累進構造が勤労意欲や事業意欲等を阻害するといった弊害を生ずることが懸念されたこと、法人税につきましては、当時の我が国の法人税の負担水準が高く、経済社会の国際化の進展を踏まえ、税率の引下げが適当であったことなどから行われたものであると認識をいたしております。また、消費税につきましては、社会保障と税の一体改革の中で、その増収分は社会保障の充実、安定化に充てることとしておりまして、その受益は低所得者ほど大きく、所得の再分配につながる面もあることから、そうした受益の面と併せて評価をすべきものである、そのように考えているところでございます。

福田(昭)委員 ありがとうございます。

 法人税が高いということはない。安くし過ぎましたよね。とにかく、まあいいでしょう。

 それで、その次の六つ目ですけれども、二〇二一年度の税収が水膨れで過去最高のペースで推移している、こういう報道もありますけれども、基幹三税の法人税、所得税、消費税の弾性値を、景気がよくなったら伸びる税金の弾性値、これはどんなふうに財務省は把握しているのか、教えてください。その数字だけ簡潔に教えてください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 消費税、法人税、所得税のいわゆる税収弾性値でございますが、理論的な値について申し上げますと、消費税や法人税は、基本的に比例税率でございますので、かつ、その課税ベースである消費や法人所得が経済成長におおむね連動することから、基本的には弾性値は一というふうに考えられます。ただし、法人税については、景気回復局面において、前年度に納税していなかった企業が納税を開始することがあることなどから、一時的に弾性値が高くなる場合もございます。

 他方、所得税については、累進課税が行われておりますので、弾性値は一を若干超える程度というふうに理論的には考えられるところでございます。

福田(昭)委員 財務省はこんなでたらめを考えているんじゃ駄目ですよ。消費税と法人税が弾性値一なの。そんなことはないでしょう。過去の実績をちゃんと計算してみれば、こんなことはあり得ないですよ。本当に、こういうでたらめをやっているから財政再建できないんですよ。景気がよくなったら、御案内のとおり、釈迦に説法になるけれども、景気に山あり谷ありじゃないですか。景気が山になったときに伸びる税収、これが一番伸びるのは法人税ですよ。だって、赤字法人は税金を納めないんだから。黒字法人がいっぱいもうかったときに、ちゃんと税金をお願いする。その次に所得税。消費税は、税率を上げたときだけですよ、増えるのは、ほとんど。ですから、消費税に頼ったのでは絶対財政再建できないということです。

 ですから、前にも紹介しましたけれども、野口悠紀雄先生、皆さんの大蔵省の先輩ですよ、財務省の。これは、二〇一一年に三党合意で消費税を一〇%に上げた年に出した本、「消費増税では財政再建できない」。五%引上げの改善効果は僅か二年で失われる、こう言っている。今度、この三月に出した本、「日本が先進国から脱落する日 “円安という麻薬”が日本を貧しくした!!」で、ここに書いてあります、消費税を一五%に上げても焼け石に水と書いてありますよ。それは、ここに、野口先生も、消費税は税率を上げたときだけ一定の増収をもたらす税金だ、こう言っていますよ。ですから、消費税に頼っていたのでは絶対再建できません。

 ですから、是非私が提案したいのは、七つ目になりますけれども、本当に財政健全化計画を作る考えがあるのかどうか分かりませんけれども、東日本大震災のとき、特別会計をつくりました。あのとき、実は、所得税は二・一%の上乗せ、二十五年間、今でもかかっています。住民税が千円、これが十年間ですかね。法人税は、あっという間に安倍さんがなくしちゃった。こういうでたらめなことをやっていては駄目だし、しかも財務省で、今日は残念ながら主計局長をお呼びしていませんが、主計局長がその頃つくってくれた東日本大震災の特別会計、まさに今挙げたような税財源で、特別会計で、実は、東日本大震災でつくった歳出についての財源をこういうふうに確保したんですが、あのとき、実は、国債整理基金特会には十三兆円の埋蔵金がありました。ですから、その費用が十兆円だというんだったら、この十兆円を取り崩せば増税は必要なかったんです、これ。それで、私が指摘したら、いつの間にか、その翌年あたりに七兆円繰上償還しちゃった、国債整理基金特会の埋蔵金。ですから、こういうでたらめなことをやっているから財政再建ができないんです、これ。

 ですから、しっかり、時間が来ましたのでやめますけれども、くれぐれも、ポストコロナの特別会計をつくって、その財源として消費税率を引き上げて充てるなどというような暴論、愚策はやめるように提言をして、私の質問を終わります。

 以上です。

薗浦委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 本日は、金融教育をテーマに議論させていただければと思っております。

 私、持論として、今後の日本にとって、金融教育の充実が極めて重要なテーマであると考えております。資源が豊かではなく食料自給率も低い、少子高齢化、人口減少が続く我が国は、今後、真の意味で金融立国として成り立っていかなければならないと考えております。

 そのためには、金融教育を充実させ、多くの人が金融経済の知識を幅広く得ることが必要不可欠だと考えております。多くの人が相応の金融経済の知識を得て適切な経済行動を取れば、社会全体としての利益を最大化し、グローバル金融社会の中でも国益を確保できます。いわゆるアダム・スミスの神の見えざる手というものですね。金融政策も議論が深まり、強く正しい金融経済政策を掲げる政党が与党になります。もちろん、個人の観点から見ても、人生百年時代と言われる現代、自らの資産を運用し、しっかりと守っていくことは極めて重要です。

 では、多くの人に金融経済の知識を一定程度持ってもらうためにはどうしたらいいのか。金融庁の方でそのためのすばらしい資料を作ってホームページに載せても、正直、なかなか難しいと思います。ほとんどの人は読んでくれないのではないでしょうか。

 私は、時間がかかってしまいますが、次の世代、次の次の世代の話になってしまいますが、教育しかないと思います。中高生年代において、体系立った金融教育で金融経済をしっかりと学んでもらう、それしかないかと考えております。

 鈴木大臣としては、金融教育の重要性、どうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 働き方改革を含めまして、ライフスタイルが多様化している中、個々人が生涯にわたって豊かな人生を送るためには、若いうちから自らのライフプランを検討するとともに、人生の様々なステージで必要となる資金の確保に向けて安定的な資産形成に取り組んでいくこと、これは重要なことであると考えております。

 そのためには、個々人が自らのライフプランやニーズに合う金融サービスを適切に選択できるようにすることが重要であると思います。金融経済教育、これは、こうした選択を行うための金融に関する知識や判断力の向上のために必要不可欠なものと考えます。

 こうした中、本年四月に改訂された新しい高等学校学習指導要領で金融に関する内容の充実が図られたことを受けまして、金融庁では、新学習指導要領に対応した授業を行うための高校向け指導教材や動画教材の作成、高校における出張授業の実施など、様々な取組を行っているところであります。

 今後は、家庭科の教員向けの研修を行っていくなど、引き続きまして学校現場での金融経済教育の円滑な実施を支援する、そうした取組も進めていきたいと考えております。

藤巻委員 ありがとうございます。必要不可欠ということで。

 ただ、ここまでは予定どおりというか、私が金融教育は大事ですよねと言うと、皆様、そうだよ、大事だよねと言ってくれるんですけれども、ただ、ここでいつも終わってしまいます。そこから先、じゃ、より具体的に、どうしたら高校生、中学生、金融経済をしっかりと勉強するようになるのか、今日はそこから先の話をしたいと思います。

 金融教育が大事というのは多くの人が考えるところではあると思いますけれども、文科省の取組などにより少しずつ増えてはいるようですが、現実として、高校生は、英語、数学、国語などの主要科目に比べ、金融経済の勉強はほとんどやっておりません。一つの理由としては、なぜならば、大学受験に占めるウェートがかなり小さいからです。私自身もそうでした。受験に必要ない科目の勉強はほとんどしておりませんでした。学校の授業も全然聞いていませんでした。世界史は何度も零点を取ったと記憶しております。私の場合、ちょっと極端だった気もしますけれども、多かれ少なかれそうなんだと思います。金融の知識の重要性を認識し、学びを進めてほしいなんというのはある意味で理想論で、現実問題として、高校生は基本的に受験に関係ない勉強はほとんどしません。理想や理念は別だと思うんですけれども、現実としてはそうなっていると考えております。

 文科省として、大学受験制度の改革に取り組み、金融経済に関する問題のウェートを増やし、金融教育の推進につなげるお考えはありますでしょうか。

鰐淵大臣政務官 お答えいたします。

 金融教育の重要性につきまして、委員からも御指摘いただいております。

 児童生徒がその発達段階に応じまして金融に関する基本的な仕組みや考え方を身につけられるようにすることは、大変に重要であると認識をしております。また、社会を生き抜くためにも必要な力となると思っております。このため、小中高等学校それぞれにおきまして、学習指導要領に基づき、金融に関する内容を指導しております。

 具体的には、まず、中学校におきまして、例えば、社会科におきましては、金融などの仕組みや働きを理解すること、個人や企業の経済活動における役割と責任について多面的、多角的に考察し、表現すること、そのほか、技術・家庭科におきましては、購入方法や支払い方法の特徴が分かり、計画的な金銭管理の必要性について理解すること、そのほか、売買契約の仕組み、消費者被害の背景とその対応について理解し、物資・サービスの選択に必要な情報の収集、整理が適切にできることなどについて指導することとしております。

 また、高等学校におきましては、例えば、公民科におきまして、政治・経済で、金融の働きと仕組みについて、現実社会の諸事象を通して理解を深めること、また、金融を通した経済活動の活性化について多面的、多角的に考察、構想し、表現すること。また、同じく公民科の新しい科目であります公共におきましては、金融の働きなどに関わる現実社会の事柄や課題を基に、公正かつ自由な経済活動を行うことを通して資源の効率的な配分が図られることなどについて理解すること。また、そのほか、家庭科におきましては、家計の構造や生活における経済と社会の関わり、家計管理について理解すること、そのほか、生涯を見通した生活における経済の管理や計画の重要性について、ライフステージや社会保障制度などと関連づけて考察することなどについて指導することとしております。

 その上で、どのようにすれば高校生が金融教育に取り組むかということで、委員の方から、大学入試、これが影響しているのではないかということで御質問いただいたかと思います。

 大学入試センターが実施する大学入学共通テストにつきましては、必履修科目を中心に、高等学校における基礎的な学習の達成の過程を幅広く問うことができるよう、現代社会や政治・経済においても出題をしておりまして、実際に金融に関する内容も出題をされております。

 実際にどの科目を課すかは、各大学の入学者受入れ方針、アドミッションポリシー等に基づき、各大学において判断されるものでございまして、現代社会や政治・経済が課されるかどうかは、大学や受験者の選択によることとなりますが、入試科目に課されるか否かにかかわらず、中学、高等学校で金融に関する教育は必ず行う内容でございまして、その指導の充実を図ることは重要であると考えております。

藤巻委員 私は、大学受験のとき、英語が苦手だったもので、得意の数学で得点を稼ごうと数学ばかり勉強しておりました。浪人時代は、家で一人で、朝から晩までサイン、コサインをやっておりました。貴重な十代の大事な日々をサイン、コサインにささげておりました。受験の翌日以降、この二十年ほど、サイン、コサインは一度も使っておりません。あの日々は一体何だったのか、いまだに考えます。

 サイン、コサインは、測量や航空機の姿勢制御、あるいは、地球といろいろな星の距離を測ることなどに使われるそうです。これは一部の職業の人が使う専門知識の範疇なのではないでしょうか。日本全国の高校生にがっつりと教え込む必要があるのでしょうか。その分野に進む人たちが専門知識として学ぶというようなことではないのでしょうか。別に三角関数を否定しているわけではありません。三角関数は、人類の英知の一つで、我々の生活の基盤を支えている重要なものです。ただ、知識として、多くの人にとって、三角関数よりも金融の知識の方が、人生を生きていく上で大いに必要ではないかということです。そういったものを教えることこそが教育ではないかと私は考えております。

 文科省としては、全国の高校生が学ぶ知識として、三角関数と金融経済、どちらが優先度が高いとお考えなのでしょうか。お聞かせください。

森田政府参考人 お答え申し上げます。

 今、大学入試の出題科目、数学を課す大学がある一方で、現代社会や政治・経済を必ず必須にしているわけではないということについてどうなのかというお尋ねでございました。

 大学入試で課す出題科目につきましては、各大学がその入学者受入れ方針でありますとか、各大学、学部等の目的、特色、分野等の特性に応じて、各大学が定めることになっているところでございます。

 今御指摘のありました数学につきまして、例えば今年一月の大学入学共通テストで申し上げれば、数学1を課す大学、受験した受験生三十五万人、数学2、三十二万人、そういう数字になっております。それに対して、金融に関する出題がなされております現代社会や政治・経済を含む科目を受験している受験生の合計は約十五万人でございます。

 これは、先ほど申し上げました、各大学が、それぞれの入学者受入れ方針や、それぞれの学部・学科、分野の特性等を踏まえて課す科目を決めている、それでそういう受験者数になっているということでございまして、文科省としてどちらが優先ということを決めているということではなくて、各大学で必要な科目を判断して課しているという実態でございます。

藤巻委員 大学入試においてはそうなのかもしれないですけれども、文科省が掲げる学習指導要領の標準修得単位数でも、数学が大きなウェートを占めている一方、経済を学ぶ政治・経済という科目は修得単位数が非常に少なくなっていますし、選択制という形になって、たしか勉強しなくてもいいという形になっていると思うんですけれども。

 そういった意味において、なぜ、数学がこれだけ高校のカリキュラムにおいて大きなウェートを占めている一方、政治・経済というのは非常に小さな扱いになってしまっているのでしょうか。

森田政府参考人 お答え申し上げます。

 高等学校の学習指導要領におきまして、金融について学ぶ科目であります教科、公民の中の公共、これは二単位で必修科目、必履修科目でございます。さらに、選択科目として政治・経済二単位がございます。数学の方は、必履修科目、数学1、これが三単位でございます。選択科目として、数学2、数学3、あるいは数学A、数学B、数学Cといった選択科目が設定されていて、こちらは必履修ではないわけですけれども、それぞれの高校の教育課程の編成において、それぞれの生徒の将来の進路を考えて必要な科目を開設しているという実態でございます。

 教科、科目の標準単位数につきましては、中央教育審議会における専門的な検討を経て、高校生が高校生の段階で身につけるべき教科、科目のバランスを全体的に勘案しながら、全国的な基準として、三年間で七十四単位以上の科目を取ります。そこで十教科、必履修科目を取ることになっております。高校生としてその段階で身につけるべき必要な科目のバランスを中央教育審議会でそれぞれの分野の専門家の先生方に御審議いただいて、基準として設定し、必履修科目と選択科目を決め、それを各高校で教育課程を編成しているという実態になっているところでございます。

藤巻委員 必要なバランス、だから、まさにそのバランスのことを言っているんですけれども、最後にもう一度聞きますけれども、端的に言うと、私は三角関数よりも金融経済の方が大事だと思います。どう思いますか。

森田政府参考人 お答え申し上げます。

 学習指導要領で指導する内容の個別の事項について、文部科学省としてどれがどれより優先するというようなことを定めているものではございません。

 ただ、金融に関する内容は必履修科目である公共の中に入っておりますけれども、三角関数は、必履修科目ではなくて、数学の中の選択科目の中に設定されている内容であります。金融に関する内容は、高校生は必ず取る科目の中で必ず学ぶことになっている内容でございます。

藤巻委員 金融教育の在り方、私も非常に思いは強いですので、また次の機会に改めて議論をさせてください。

 質問を終わります。本日はありがとうございました。

薗浦委員長 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会、埼玉の沢田良です。

 最近、ちまたにあふれる悪い円安というワード、そして、その悪い円安と大規模金融緩和を、意図してか、雑につなげて報道しているメディアが多いと感じております。

 今まさに、政府から目標としてインフレターゲット二%を与えられ、全力で達成に向けて動いてくださっている日本銀行の総裁、副総裁を含め、皆様の名誉にも関わりますし、来年に控えています日銀総裁、副総裁人事への間違った世論形成につながったら、私は、とんでもない間違いを犯す方向性につながりかねないと危機感を持っております。

 本日の質問を通して、財務省、日本銀行の認識をより正確に国民の皆様にお伝えしたいと考えております。鈴木財務大臣、関係省庁の皆様、委員部の皆様、そして雨宮日銀副総裁、本日はよろしくお願いいたします。

 本日も、各皆様から円安についていろいろ質問が入っておりましたので、かぶる部分もあると思うんですが、一定の流れをもって再度聞くこともあると思いますが、是非丁寧によろしくお願いいたします。

 初めに、財務省の認識の確認からさせていただきます。

 私は、そもそも、円高、円安に、悪い、よいというのがおかしいと感じております。例えば、輸出に関わる企業からすれば円安になった方がよりいいことであり、商品が安く海外に出せるということは販売に影響する、また、輸入に頼る企業からすれば円安は悪いという視点は分かります。ただ、日本という国全体で見たときに、いい、悪いというのは、当然、現状の産業構成や今後の方針、こういった複合的な視点から判断すべきと考えております。

 当然、鈴木財務大臣も、メディアの切取り等もございますし、いろいろな角度で御説明なさっている部分はあると思うんですけれども、改めて確認で聞かせていただきます。鈴木財務大臣が悪い円安とおっしゃった、その悪いという発言における政府の視点について、御認識を教えてください。

鈴木国務大臣 為替を見る際に最も重要な視点というものでございますが、これは、為替相場は経済のファンダメンタルズを反映して安定的に推移するということが重要ということ、これに尽きるんだ、そういうふうに思っております。最近のような急速な変動、これは望ましくないと考えているところでございます。

 政府といたしましては、為替市場の動向、日本経済への影響、そういうものを緊張感を持って注視してまいりたいと思っております。

沢田委員 財務大臣、ありがとうございます。

 私も、この急激な変動というものは、確かに、社会がその状況に慣れていく前に少しずつその負担をいろいろなところに課してしまうというところでは悪いというふうに感じてしまいます。一方的にそういうふうに振れるところをどういうふうにして考えていくのかというところを考えれば、確かに悪いというところは分かるんですけれども、ただ、円安や円高自体に、いいということ、悪いということ、そういうことは私は概念としてないとも考えております。

 ただ、今おっしゃったように、急激な変動、安定的に推移するという前提の中で、悪いという表現を使うほどに今の変動は注意をするレベルに達していると鈴木財務大臣が御認識されているとすれば、為替への介入ということも想定に入ってくると考えます。

 為替は、もちろん相手があり、影響ある発言は、口先介入なのではという思惑で動いてしまうことも当然あります。今は超えてしまいましたが、黒田ラインと呼ばれる一ドル百二十五円の壁が七年にわたり機能したことを踏まえれば、具体的な数値についての質問はお答えできないと思いますし、私も聞くつもりはありません。ただ、お気持ちの確認だけさせてください。

 鈴木財務大臣に質問です。

 現在の悪い円安といった急激な変動が続いた場合に、断固として動かれる、そういった御覚悟があるのか、教えてください。

鈴木国務大臣 大事な点でありますので、あえて申し上げますが、為替政策について具体的なコメントをすることは控えさせていただきたいと思います。

 その上で、これまでのG7等で合意されました、為替レートは市場において決定される、為替市場における行動に関して緊密に協議する、過度の変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響を与え得るといった考え方に基づきまして、米国等の通貨当局と緊密な意思疎通を図りつつ、政府として適切に対応してまいりたいと思っています。

沢田委員 ありがとうございます。

 では、ここで一つお願いなんですが、やはり大臣が悪い円安という判断をしてしまったことが、以前の、黒田総裁が、ファンダメンタルズを反映していないのではないかという発言と同様に、やはりもう独り歩きを始めているという御認識を持っていただきたいんです。やはり、変動の幅が大きいということがどのように影響するにしても、今の答弁のように、是非、丁寧なマーケットとの対話と、言わないということにあるのであれば、その部分ですね、悪いということもできるだけ使っていただきたくないなというふうに私はちょっと考えますので、そこは是非お願いしたいというふうに思っております。

 以前ですけれども、黒田日銀総裁も、コメントとして、日本銀行としては、為替相場は経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと考えており、為替相場が短期的に過度に変動しますと、先行きの不確実性を高め、企業の事業計画の策定等が難しくなる面もあります、日本銀行としては、為替相場の変動が経済、物価に与える影響には十分注意して見ていきたいと思っていますとおっしゃられていますので、為替相場が短期的に過度に変動することについては、鈴木財務大臣と同様に、日本銀行の黒田総裁も共に同じ意識であるということは私は伝えておきます。

 改めて確認なんですが、為替政策については、所管というものは日本銀行ではなく財務省が担当ということで大丈夫でしょうか。

三村政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございまして、為替政策は財務省が所管をしてございます。具体的に申し上げますと、外国為替及び外国貿易法、この法律におきまして、財務大臣は、本邦通貨の外国為替相場の安定に努めるものとする、このような規定がございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 よく、今の金融政策は為替政策なんじゃないかというような御指摘をされる議員さんもいらっしゃるので、これは改めて確認をさせていただきました。

 今、日銀がやっていることは、政府から出たインフレターゲット二%という大きな目標を達成するために、手段の独立性を保って行動していただいているということであり、為替政策については財務省の担当であるということを改めて確認させていただきます。

 続きまして、ロシア、ウクライナの問題が始まり、高まっていた原油価格が更に上がり始めたこと、アメリカやヨーロッパなど世界の主要国においてインフレ傾向が強く出る中、輸入品の価格上昇に、更に円安が一方向に進んだことで個別価格が上がることへの不安が高まっております。

 質問です。

 複雑な要因で今の状況が生まれていると考えますが、財務省では、エネルギーを含む輸入品の価格に相対的に円安がどの程度影響を与えるのか、御見解を教えてください。

小野政府参考人 お答えいたします。

 本年四月の輸入物価指数の数字を見ますと、前年同月比で四四・六%の上昇ということになっております。そのうち、いわゆる契約通貨ベースという、外貨建ての数字ということ、これが実質的な原油価格等の高騰の影響が出ているということだと思いますけれども、これが二二・二%でございます。

 したがいまして、四四・六と二二・二の差分、これが為替要因ということになろうかと思いますけれども、これが一四・九%ということで、約三分の一ということになろうかと思います。

沢田委員 ありがとうございます。今の指標で考えると、一四・九%ぐらいと。

 今、市場の、いわゆる世の中の全体の方は、下手をすると、円安がほとんど影響を与えているんじゃないのか、どんどんどんどんこれからまた上がるのではないのかという、大変センシティブというか混乱しているというか、そういう部分は報道ベースで見ると私はちょっと感じております。

 また、ほかにも企業物価指数というものもありまして、こういったものは、ロシア、ウクライナの問題が発生する前から、消費者物価指数が例えば一%を切っている中でも七%近くに上がっていたということを記憶しており、日本の問題として価格の転嫁が進んでいないということは、賃上げ税制の議論の際にも、日銀又は財務省の方からの答弁でも何度かいただいたことがありました。そういった問題が、最近の日銀短観では、販売価格に転嫁しようとする動きも出ているということが出ていたことは、私は唯一、正常化に向かって少し世の中が動いているのかなというふうに感じるところもあります。

 続きまして、質問です。

 そういったことも含めて、昨今の一部価格上昇は、家計だけでなく、企業への負担も当然出てきていると考えられます。それは、ひいては景気の下押しの効果も出てしまうのではないかと感じますが、政府の対応はどのように考えているのでしょうか。

小野政府参考人 お答えいたします。

 委員おっしゃりますように、最近の物価上昇については、主に原油を始めとする世界的な原材料価格の高騰等を背景としたものであり、為替による影響というものも見られるというふうに認識しております。

 こうした中、食料品価格や原材料価格の高騰がマインドの悪化や実質購買力低下を通じて民間消費や企業活動を下押しするなど、実体経済への影響が顕在化する可能性があると考えております。

 政府といたしましては、ウクライナ情勢に伴う原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応するため、先月二十六日、総合緊急対策を策定したところでございます。

 具体的には、燃料油価格の激変緩和事業の拡充など原油価格高騰対策、エネルギー、原材料、食料等の安定供給対策、適切な価格転嫁や賃上げの推進などの新たな価格体系への円滑化に向けた中小企業対策、低所得の子育て世帯への給付金など物価高騰等に直面する生活困窮者等への支援強化などの施策を盛り込んでおります。

 本対策の迅速な実行に加えまして、これまでに成立した予算を着実に執行し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしてまいりたいと考えております。

沢田委員 ありがとうございます。

 しっかり動いていただいている部分は野党として見ても心強いなと思う反面、更に付加していただきたいところも当面ございますので、よろしくお願いいたします。

 諸外国は金融引締めに動いている中、アメリカは利上げも進み、金利も伸びています。諸外国と日本の金利差が拡大しているということは事実ではありますが、最終的に為替にどう跳ねていくかは様々な要因があると考えます。

 鈴木財務大臣に質問です。

 悪い円安と日銀の大規模金融緩和とのつながり、これは報道されていることがよくあるんですが、直接的なつながりはないというイメージで大丈夫でしょうか。

鈴木国務大臣 まず、岸田内閣といたしまして、平成二十五年の政府、日銀の共同声明、これを再確認しているところであります。デフレ脱却と持続的な経済成長の実現に向け、政府、日銀は、今後とも緊密に連携をして取り組んでいくこととしております。

 この共同声明の考え方に沿って、日銀の金融政策は二%の物価安定目標の実現のため行われておりまして、為替を誘導するために行われているものではない、そのように承知をいたしております。

 金融政策の具体的な手法につきましては、もうこれは日銀に委ねられるべきものと考えておりますが、日銀におかれては、引き続き、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて努力されること、そのことを期待をしているところでございます。

沢田委員 大臣、丁寧にありがとうございました。

 続きまして、日本銀行の認識の確認をさせていただきます。

 本日、雨宮副総裁にお忙しい中来ていただきまして、ありがとうございます。

 日銀が行っている大規模金融緩和は悪い円安に大きく影響を与えているといった報道を見るのですが、大規模金融緩和と円安の関係について、日本銀行の御見解を教えてください。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 日本銀行は、物価の安定という使命を果たすために金融政策を運営しております。現在の強力な金融緩和も、この二%の物価安定目標の持続的、安定的な実現を目指して行っているものでありまして、為替相場のコントロール、誘導を目的としたものではございません。

沢田委員 ありがとうございます。

 最近、これはまたちょっと違う話になるんですけれども、安倍元総理が日銀は政府の子会社といった発言をしても、全てつながってしまうのかなと。最近のメディアのストーリーというものがありまして、それは、やはり日銀が悪いんじゃないのかというような報道が少し軸になってきているように見えてしまうところがあるんですね。

 日銀の存在は、あくまで手段の独立性を持っているというものであり、目標は政府が策定する。だから、総裁や委員は国会での同意人事が必要になってくる。はっきり言うと、子会社化ということは言葉遊びにすぎないというふうに思っておりますし、日銀が勝手なことをしているわけではなく、今の政府の承認を得てインフレターゲット二%を達成するということで動いているというのは、先ほど鈴木財務大臣からも御答弁いただきました。それなのに、日銀のやっていることが悪いというニュアンスに捉えられるには、私は正直大いに疑問に感じております。

 我々日本維新の会は、日銀法の改正案として、雇用の最大化や名目成長率の持続的な上昇等を提案しております。三月二十五日の財務金融委員会で、私の、雇用の最大化や名目成長率の持続的な上昇を明確に日銀法に追加したいという質問に対して、鈴木財務大臣は、現行の日銀法でも経済成長や雇用に配慮することが求められていると解されていると答弁をいただきました。日銀の政策理念を規定した日銀法二条について、条文に明記されていない雇用の最大化や名目成長率の持続的な上昇も含め、幅広く読めるとも答弁しております。

 雇用の最大化は意識しているが、目的として入っているわけではないので、確認をさせていただきます。

 雨宮副総裁に質問です。

 日銀が手段を考える際に、雇用の指標等も重要なファクトの一つになっているのでしょうか。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 先ほど来御説明申し上げているとおり、あるいは委員からも御指摘ございますとおり、私どもは、物価安定の目標二%の実現を目指して大規模な金融緩和を行っておりますけれども、単に物価だけが上がればいいということではございません。企業収益や雇用、賃金が増加する下で物価も緩やかに上昇していく、そういう企業収益、雇用、賃金、物価の好循環の形成を目指しているわけでございますので、そうしたプロセスでは、当然のことながら、雇用・所得環境にも十分目配りをして点検しながら、経済、物価情勢を判断するよう努めているところでございます。

沢田委員 ありがとうございます。

 バランスよく見ていただいているということなんですけれども、私は、一つ不安に思っていることが、インフレターゲット二%というその物の見方が、国民世論形成の中で、これはもう徐々に達成をしつつあるというふうに外形的に見えてしまう、今のコストプッシュインフレの状態、為替の状況を含めて、なってしまったときに、円安というものだけが悪いという状況で残ってしまった場合に、政府としてもそこに乗ってしまうのではないのか。

 要は、インフレターゲットは達成している、二%達成している、なのに円安が過度に進むのは今の日銀の政策のせいではないのかというような間違った世論形成に今の政府が乗ってしまった場合に、来年の総裁、副総裁の人事にも影響を及ぼしていく。

 元々、今の岸田総理の人事案についても、我々日本維新の会は、前回、委員の人事についても反対をしました。理由としては、今GDPギャップがあるという中で、しっかりと雇用を守っていくためにも、今の大規模金融緩和を継続していくべきだと。そして、その姿勢を、現状、今としては示していくべきなのではないのか。

 来年の日銀の総裁や副総裁の改選時期には、当然、その時代時代によって状況は変わってくると思います。けれども、現時点において、先ほど鈴木財務大臣も御答弁いただきましたが、今、コロナからの脱却も遅れているということも含めて、やはり我々日本の国としては、しっかりと経済を守っていく、雇用を守っていく、そしてそのためにも大規模金融緩和が必要だということに対して後押しをしていくような姿勢が私は必要だというふうに考えておりますので、今回、雇用の話をさせていただいたのは、やはり、この物価安定目標、インフレターゲット二%だけではなく、是非、この雇用というところも国民の皆様に一度しっかりと見ていただいて、大規模金融緩和が金利を引き下げることで企業の中で使えるお金が増えていく、又は動けるものが増えていく、そしてそれが完全雇用につながっていくことです。そこから賃金が上がっていく、いい循環が生まれていくということがありますので、是非、今日こうやって動画を見ていただいている方もいらっしゃいます、報道で見ていただける方もいらっしゃいますので、そういった部分も考えていただければと思います。

 そこで、追加で質問なんですけれども、今、報道ベースで議論になっているのは、悪い円安と日銀の大規模金融緩和、これをつなげたような報道が続いているんですけれども、逆の報道をされていません。要は、何かといいますと、じゃ、今のこの状況で大規模金融緩和を止めた場合に想定されるリスクというものについては全く報道はしておりません。是非、それについては、今の日銀が当然その状況を踏まえているからこそ、この手段の独立性の中で行動していただいているというふうに思いますので、雨宮副総裁の方で、大規模金融緩和を今の現状でやめた場合のリスクということをちょっと簡単に説明していただければと思います。

雨宮参考人 お答え申し上げます。

 今の現状という先生の御指摘から御説明申し上げますと、日本経済の現状は、感染症による落ち込みからのまだ回復途上であるということであり、先ほど御指摘もございましたけれども、需給ギャップもマイナスでございます。その上、資源価格上昇により、海外への所得流出という大きな下押し圧力も受けている状況でございます。

 こうした中では、やはり、金融緩和で経済活動をしっかりサポートすることが重要でございまして、仮に、現在のような状況において金融緩和を縮小すると、経済活動に一段と下押し圧力がかかり、結局、先ほど申し上げたような収益や雇用、賃金、そして物価の好循環が阻害されてしまう。結果的に、物価安定目標の持続的、安定的な実現から遠ざかってしまうというリスクがあるというふうに認識しております。

沢田委員 どうもありがとうございます。

 まさに今、副総裁がいただいたようなイメージを、私も全く同じものを持っています。

 大事なことは、今の日本が抱える問題を解決する手段がどんどんどんどん少なくなっている中で、経済が私たちの暮らしに与える影響は大変大きなものです。是非、政府一体となって、今の世論の報道を含めて、雑に報道しているのか、正確に報道しているのか、そして正確に説明をするのか、そして正確なメッセージを伝えていくのか、こういったところには、是非、お力添え、又は皆さんお気をつけていただければというふうに思います。

 私は、今日の質問において、財務省そして日本銀行、ここの姿勢、そして認識というものを確認させてもらった上で感じることは、やはり今の報道は、何となく、認識を持っている方と、あとは感じている方、知っている方と、あと、何も知らない方ということがすごくごちゃごちゃになっているというのは否めないなというふうに思って今日は質問させていただきましたが、私の中でまた再整理させていただきましたので、しっかりと、日銀も政府も同じ目線の中でまだ目指していただいているということが確認できましたので、このまま前に進めていっていただければというふうに思っております。

 最後になりますが、岸田総理が五日に、新しい資本主義の具体策として、日本の個人金融資産約二千兆円を貯蓄から投資へと誘導する資産所得倍増プランというものを表明したと報道されました。インベスト・イン・キシダ、岸田に投資をと言われるものです。

 私なんかが思い出すのは、バイ・マイ・アベノミクスと同じで、すごく本音で言うと期待をしています。やはり、こういったところで世界から注目をされる日本であり、日本の今の社会構造の問題を解決するために新しい動きをしていくということは、私は是非前に進んでいっていただきたいなというところを感じているんですが、その具体策の一つとして資産所得倍増プランに取り組むとして、少額投資非課税制度のNISAの拡充や、預貯金を資産運用に誘導する仕組みの創設などを通じて、投資による資産所得倍増を実現するというふうに表明されております。

 私は、日本の個人金融資産の半分以上が現預金で保有されている現状には、日本の税体系にも問題があるのではと今までもずっと考えておりました。いわゆるストックに対する課税、そしてフローへの課税、このバランスに問題があるのではないかと推測をしています。日本維新の会としても、この税制の大きなバランスを変えることでも、岸田総理が言う問題意識でもあり、現預金が貯金にたまってしまう、これを投資に向かわせるという動きの効果があるのではないかなというふうに考えるんですけれども、鈴木財務大臣に質問です。

 こういった今の日本の税体系は、貯蓄をしてしまう税体系であり、フローへの課税が高くストックへの課税が弱いというところで、今後、そういったところを内閣として話し合っていただくということはないでしょうか。

鈴木国務大臣 税制につきましては、これまでも、時々の経済社会の変化を踏まえながら、資産課税の見直しを含めて累次の改正を行ってきておるところでございます。例えば相続税につきまして、格差の固定化防止等の観点から、平成二十五年度税制改正におきまして、基礎控除の引下げや最高税率の引上げ等の見直しを行っております。

 いずれにいたしましても、今後の税制の在り方につきましては、これまでの税制改正の趣旨や経緯のほか、経済社会の構造変化も踏まえながら、引き続き検討してまいりたいと思っております。

沢田委員 ありがとうございました。

 最後に、問題意識が共有できていることがたくさん出てきましたので、我々日本維新の会としても、私、沢田良としても、全力で、この財務委員会で議論した提案を前に進められるよう後押ししていきたいと思いますので、是非、財務大臣、そして日銀の雨宮副総裁含めて、財務省の皆様、そして関係省庁の皆様、そして委員部の皆様、お力添えをよろしくお願いいたします。

 今日はありがとうございました。

薗浦委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 国民民主党の岸本周平でございます。質問の機会をいただいて、ありがとうございます。

 これまでもるる御質問がありましたけれども、例えば、企業物価指数が、直近、二桁、一〇%を超えるという大変な上昇を示している、あるいは、輸入物価指数も四〇%を超える直近の上昇ということですので、今日は、資源価格上昇に対してこの物価問題をトータルでどう考えるのかという観点で、経済産業副大臣に今日はおいでをいただきましたので、議論をしてまいりたいと思います。

 それで、実は、ロシアがウクライナに侵攻いたしました二月ですけれども、その後三月に入りまして、IEA、国際エネルギー機関がレポートを出しています。これは非常にタイムリーなレポートでして、EUがロシアの天然ガスへの依存が非常に高いわけですけれども、エネルギー機関IEAとして、EUがロシアの天然ガスへの依存をどう減らしたらいいのかということについて、十のポイントというタイトルのレポートを発表しています。これは大変示唆に富んだレポートですので、私ども、今、日本も、ロシアからの天然ガスの依存はそんなにEUほど高くないですし、石油、原油はもう輸入しないということを岸田内閣として決めていますけれども、非常に参考になると思います。

 簡単に私の方で要約させていただきますと、考え方ですけれども、まず、今回、ウクライナ侵攻によった世界的なエネルギー関係の資源の、これは需給逼迫そのものですので、価格が上昇するのは避けられないという前提をまず置きまして、そうなりますと、まずは供給を確保する、ロシアからの天然ガスに代わる供給の確保と、当然ですけれども、需要を抑制する、使う側の需要を抑制するということで価格の高騰を止めるということが大事なのではないか。さらに、当然、そうなりますと、経済全体に不可避のコストが出てまいります。このコストは、社会全体で適正に配分すべきである、こういうことがうたわれています。企業は、企業としては経費削減もできますし、あるいは他の収益確保、いろいろな工夫ができます。一方で、消費者は、これは受け身ですのでなかなか対応ができない、特に所得の低い脆弱な消費者には代替手段がありませんので、そこは所得政策、直接の所得政策が重要であると。最後に、大事なのは、市場の価格メカニズムを使うことだと。市場の価格メカニズムを政策決定やあるいは政策運用のシグナルとして重視すべきであって、それが経済的にも効率的で、効果的であるし、そのことが公平性も担保できる。市場の価格メカニズムを最大限尊重すべきだというトーンであります。

 これは、大変、私ども日本が今置かれている状態で、参考にすべきだと思うのですが、このレポートについて、経済産業省としては、どのように受け止めておられるか、お願いいたします。

石井副大臣 今年三月に発表されました、御質問の、IEAの本レポート、これは、ロシアからの天然ガス輸入に大きく依存をするEUに対しまして、ロシア産ガスへの依存度を下げていくために今後数か月間に取り得る対応策といたしまして、IEAが提言したものと承知をいたしております。

 この中には、ロシア以外の代替供給源の確保、あるいはガスの貯蔵義務、これに加えまして、太陽光、風力、バイオ、原子力等の低炭素電源の利用拡大、省エネルギーの一層の推進等、幅広い政策が盛り込まれているものと承知をいたしております。

 すぐに使える資源に乏しく、自然エネルギーを活用する条件も諸外国とは異なる我が国といたしましては、ロシアへの依存度の低減を進めつつ、石油や天然ガスを始めとするエネルギー安定供給の確保は重要な課題であると認識をいたしております。

 引き続き、資源外交を通じました供給源の多角化、あるいは再エネ、原子力も含めましたエネルギー源の多様化に全力で取り組むことを通じまして、エネルギー安全保障の更なる強化に取り組んでまいりたいと存じます。

岸本委員 ありがとうございます。

 今の副大臣の御答弁のとおりで、非常に、私ども、日本政府として参考にすべきエッセンスが含まれていると思います。

 それで、今、レポートの中で、需要をどうやって抑制するのかということについても提案がありまして、例えばですけれども、建物のエネルギー効率をよくするということ、あるいは、当然ですけれども産業のエネルギー効率を改善する、それから、これは、消費者も、家庭もそうですし、あるいは企業、会社もそうなんでしょうけれども、これはIEAの用語ですと、サーモスタットのコントロールという言い方をしています。つまり、設定温度ですね。例えば、冬であれば設定温度を一度下げる、日本でも、夏、冬、そういうターゲットを置いていますけれども、それを更に今よりも、冬であれば設定温度を下げる、恐らく夏であれば設定温度を上げる。これで、実はEU全体だと相当な節約ができるというレポートになっております。

 そこで、今、私たち、日本の状態をどう考えるかなんですね。

 これは、この前も、私、第一次オイルショックと第二次オイルショックのときの日本政府の当時の政策について、こちらで議論もさせていただきましたが、当時は、鈴木大臣は御記憶だと思いますけれども、銀座のネオンを消しましたよね、オイルショックのときは。テレビの深夜放送を全部止めましたよね。そして、国民に対して、節電を徹底的にお願いしました。まさに、こういうIEAが提案している需要抑制策を徹底的にお願いしたんです。

 今回、私たちは何をやっていますかね。銀座のネオンは、こうこうとついていますね。サーモスタットの話はしていませんね。

 どうですか。需要抑制策について、実は、私たち、余り今回していないような気がするんですけれども、副大臣、今回のエネルギー価格高騰に対して、日本政府としてどのような需要政策をお考えになっているのか、お聞かせ願いたいと思います。

石井副大臣 ロシアのウクライナ侵略などによりまして、足下で高騰が継続をしております原油価格の動向や、日本企業への影響も含めまして、引き続き、重大な懸念を持って注視をいたしているところであります。

 こうした状況を踏まえまして、政府といたしましては、三月四日に取りまとめました原油価格高騰に対する緊急対策におきまして、エネルギー需給構造の転換というものを後押しする、この目的で、工場等における省エネルギー設備への投資の支援、あるいは住宅、ビルのネット・ゼロ・エネルギー化の支援、さらには電動車の購入補助等の需要対策を盛り込んだところであります。

 また、足下では、火力発電の休廃止が増加しておりまして、我が国の電力需給は厳しい状況が続いております。平時より、需要の低減に向けましては、省エネ法によります規制と補助金等の支援を行いますとともに、例えば、御質問にもございましたが、冬季には暖房の設定温度、これを我が国では二十度に設定をするということを奨励をするなど、国民の皆様への省エネの呼びかけを通じまして、省エネ対策を推進をいたしております。

 二〇二〇年度の電力需給は極めて厳しい状況にあるため、例年以上にデマンドレスポンスの活用等、需要面での対策を更に推し進めてまいりたいと存じます。

岸本委員 具体的な省エネ対策等は理解できるんですけれども、実は、国民に対して需要抑制のお願いは余り今回していないですよね。だから、危機感が違うんだと思うんですね。

 今、二十度とおっしゃいました。あるいは、夏だと二十五度でしたかね。IEAの提言は、それを一度下げましょうと。冬は、二十度だったら十九度にしませんか、夏は、二十八度ですかね、二十八度を二十九度にしませんか、こういう提案をIEAはしろと言っているわけですよ、サーモスタットの。そこは全くお願いしない。

 実は、これは与党も野党も、我々政治家が反省すべきですが、国民に対する負担をお願いすることに大変私たちはちゅうちょをする、臆病になっている。それは、第一次オイルショック、第二次オイルショックと比べてということでありますけれども。数十年前の私たちの先輩に比べると、私たちは政治家として、国民への、皆さんにも、ここはひとつ、資源エネルギー価格が高騰しているのだから需要抑制に協力してくださいということをお願いすべきなのではないかと思っております。

 一方で、このIEAのレポートの肝は、市場の価格メカニズムが大変大事だということであります。市場の価格メカニズムを大事にするから需要が抑制されるんですけれども、その代わりに、消費者は本当に困るわけですから、特に所得の低い消費者には直接所得補償をするんだと。つまり、電気代とかガス代というのは、まさに所得の低い人ほど負担率が高くなるわけでありますよね。そういう意味でいうと、そこの価格メカニズムを働かせた上で、弱い人には手当てをする、中小企業対策というのがありましたけれども、そういう所得政策を行うということなんじゃないかと思うんですね。

 一方で、今、日本政府は、非常に短期的なことでではしようがないと思うんですけれども、補助金で燃料価格を維持する若しくは下げるという行動を取っています。これは、目先のことであればしようがないということも言えるかもしれませんが、価格メカニズムを殺しているということですよね。私、和歌山ですけれども、和歌山で今ガソリンがリッター百六十六円ですよ。百六十六円だったら節約しませんよ、それは。

 つまり、価格メカニズムによって省エネや脱炭素型の経済構造を目指すということと真逆のことを今私たちはしているわけですけれども、その点について、経済産業省の御見解を伺いたいと思います。

石井副大臣 御答弁申し上げますが、その前に、先ほど答弁で、二〇二〇年度と申し上げました。二〇二二年度、今年度のということで、訂正させていただきたいと思います。

 御答弁申し上げます。

 激変緩和事業についてでございます。これは、燃料油価格が高止まりをしている中、国民生活やあるいは日本経済を守るために、当分の間の時限的、緊急避難的な措置といたしまして実施をしているものでありまして、中長期的に市場メカニズムをゆがめるようなものではないと承知をしております。

 その上で、脱炭素化を進めるため、徹底した省エネ、再エネの最大限の導入、安全最優先の原発再稼働を進めていきますとともに、成長に資するカーボンプライシングの活用など、あらゆる政策を総動員してまいりたいと存じます。

岸本委員 本当に、三か月とかそういうことであれば、目先、激変緩和ということなんでしょうけれども、副大臣、今、当分の間とおっしゃいました。当分の間というのはどれぐらいですか。

石井副大臣 本事業を、時限的、緊急避難的な措置であるということを踏まえつつ、今年度上半期中実施をしていく、このような方針にしております。

岸本委員 しかし、今のウクライナ情勢は、短期的にすぐ解決されるとは誰も思っていません。そうだとすると、資源価格、エネルギーは今年の上半期だけで終わるはずないじゃないですか。そのときはどうされるんですか。

石井副大臣 現時点で決まっておりますことは、先ほど申し上げました、今年度上半期中に実施をして、事業終了時に大幅な価格変動が生じることがないように、一定期間経過後、基準価格の見直しを検討する、そこまで決定しているところでございます。

岸本委員 行政のたてつけとしてはそういうことだと思いますけれども、恐らくこれは、鈴木財務大臣、続くんですよ、ある程度。

 今回、補正予算がありますけれども、現在行われているエネルギー価格低減のための補助金、物価対策の補助金が仮に今後一年続いたとして、これ、幾らかかりますか、教えてください。

鈴木国務大臣 今回の措置でございますが、四月二十八日に、五月分の事業実施に必要な額として二千七百七十四億円の予備費使用を決定したところでございます。この事業の実施に必要な額は原油価格の動向に左右されるものであり、また、この事業を一年間続けることは想定しておりませんが、所要額の見込みについて申し上げるならば、先般の予備費使用額のとおり、一か月当たり三千億円弱を見込むとともに、九月までの五か月間の所要額として、一・五兆円程度を見込んでいるところでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 上半期で一・五兆円なんです。一年続いたら三兆円なんです。三兆円で市場価格メカニズムをゆがめようと私たちはしています。もしこの三兆円を脱炭素の補助金に使ったら、三〇年の四六%の減少に相当貢献するのではないかと思います。お金の使い方が本当にいいのか、三兆円を使って本当に脱炭素から真逆のことをしていいのか。本当に困る人は、恐らく一割の三千億円、低所得者に所得補償をすれば賄えるはずです。そして二兆七千億円を脱炭素の技術革新の補助金に充てるという考え方もあるのではないかと思います。

 本当に私たちは今賢明なお金の使い方をしているのか。それはしかも借金です。今回の補正も赤字国債です。借金で三兆円で価格メカニズムを壊すのが今私たちがやっていることなんです。本当にそれが後世から見たときに歴史の審判に堪えられるのか、私は危惧をしております。

 最後に、一つだけ御質問いたします。

 今言いました所得政策を、IEAのレポートでは財源を提案しています。その財源は、資源価格上昇によって、例えば電力会社とか資源の会社には超過利潤が出ています。この超過利潤に課税をして、その分で低所得者への所得政策をするという提案がなされており、既にイタリアやルーマニアでは実施されています、既に。

 何でもかんでも赤字国債、今はしようがないですよ。何でもかんでも赤字国債で三兆円も四兆円も使って、しかも、その財源を将来どう手当てするかの議論もまだ始まっていません、すべきだと思います。東日本大震災の特別税のようなスキームは必ずすべきだと思いますけれども、少なくともIEAが提案している所得政策に対して、超過利潤にきちんと課税をして財源を手当てするという、そうしたことを実施している国もあるということについて、財務大臣、どのようにお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 IAEAが公表したレポートの中で、エネルギー価格高騰による電力事業者の想定外利益に対する課税措置が提案されていること、このことにつきましては、私も事務方からレクチャーを受けまして承知をしたところでございます。

 様々な政策を講じていく中で、財源をどのように確保すべきかを検討する、これはもう重要なことであると考えております。ただ、本レポートはEU向けの提言でありまして、電力事業者を取り巻く環境も日本とEUが必ずしも同じではないのではないか、そういうことを思いますと、これをそのまま我が国に当てはめることができるかどうかについては慎重に考えるべきではないかという認識も持ってございます。

 いずれにいたしましても、政府として、先般策定いたしました緊急対策も踏まえて、原油価格高騰等に対する対応をしっかりやってまいりたいと思います。

岸本委員 時間が来ましたので、最後に申し上げたいのは、今の物価対策予算についても赤字国債でやります。そして、これまでのコロナ対応の予算も赤字国債でやってきました。それはしようがないと思います。目先、今は増税なんか出来ませんから、状況的に。

 しかし、再三申し上げていますように、東日本大震災の特別税のような形のものを、いずれ、将来の世代に負担を残さないために、我々の世代でどのように財源を担保するのかということの議論は、是非、議論は進めていかなければならないのではないかと思いますし、実際、これも御存じのとおり、イギリスでは、既にコロナ対策のための予算の財源として、配当所得税率の引上げ、国民保険料率の引上げ、あるいは、ニュージーランドや韓国、スペインなんかは所得税の最高税率の引上げで既に財源を確保することをしています、既に。

 日本は今やるべきではないと思いますけれども、アメリカでも今法人税増税の議論が進んでいます。これは与野党が真っ二つなのでできるかどうか分かりませんけれども、議論としてはアメリカも法人税増税の議論をしているんです。

 したがいまして、お答えはもう結構ですので、私の方からお願いしたいのは、是非、大臣、先でいいですけれども、どこかでコロナ対応、物価対応の財源を我々の世代で負担するための枠組みを議論することを強くお願いいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

薗浦委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 インボイスの問題について質問します。

 まず、大臣に伺います。

 消費税のインボイス制度やシルバー人材センターに関する地方議会からの意見書は、昨年、二〇二一年は九十七件でありました。その後、ぐんと増えました。二〇二二年、今年一月から直近までに鈴木大臣に提出された意見書は何件に到達しているのか教えてください。

 そして、鈴木大臣は、三月十一日の私の本委員会での質問に対する答弁で、直接シルバー人材センターの関係者から詳しい事情は聞いていないというふうに答弁されましたけれども、その後、当事者からお話を聞くことはあったんでしょうか、どんな話を聞かれたんでしょうか、説明していただけないでしょうか。

鈴木国務大臣 まず、最初の御質問にお答えを申し上げます。

 確認できた範囲で申し上げますと、財務省として令和四年一月から三月末までに収受したインボイス制度に関する地方議会の意見書は、インボイスという掲載のほか、シルバー人材センターと適格請求書等保存方式との記載を合わせますと、百四十五件でございます。

 また、三月十一日の当委員会で田村先生の御質問に御答弁申し上げましたが、まだ関係者の皆さんと対面でお話を伺ったことはございません。けれども、シルバー人材センターの方からの声につきましては、こうした地方自治体から受領した意見書や国会での御質問を通じた事務方からの説明等の機会を通じて承知をしているところでございます。

田村(貴)委員 昨年が九十七件、そして今年は今までで約百四十五件、合計二百四十二件です。

 私が最初に数字を聞いたときには五十件程度と言いましたから、相当増えていますよね。非常に重大な問題になっています。

 ある県のシルバー人材センターの連合会の見積りでは、単純に計算して県全体で消費税の負担が約二千万円から二億円に増えるということであります。つまり、一億八千万円、県全体でのシルバーの負担が増えるということです。

 厚生労働省に伺います。

 会員の高齢者が免税業者を選択するとすれば、シルバー人材センターは仕入れ税額控除ができなくなります。そして、多額の消費税負担が発生します。全国のシルバー人材センターで増える消費税額の総額は幾らになると試算されていますか。これは推計でいいので、説明してください。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 令和二年度のシルバー人材センター事業の統計年報によりますと、請負と委任の契約金額のうちで、配分金の額が合計で約二千二百十億となってございます。

 したがって、当該配分金について、全て課税対象及び一律一〇%の消費税率であると仮定してあらあらな計算をした場合、経過措置期間が終了する令和十一年十月以降ベースで、控除できなくなる消費税相当額は約二百億円程度の数字となるわけでございます。

 ただし、インボイス制度の導入に伴って、各センターがどのような価格設定をするかなどの影響を受けることと、また、経過措置の六年間において各センターがどのような対応や対策を行っていくかによって消費税額は左右されるということで、具体的な数字をお示しすることは困難であるとの前提の数字でございます。

田村(貴)委員 これは全国のシルバー人材センターで、単純に計算すると、一事業所当たり一千万円以上の負担が生じることになります。会員の高齢者に負担を求めずに、どうやってこれを捻出していこうとするんでしょうか。各地のシルバー人材センターから何か聞き取りとかされていますか。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、シルバー人材センターからの聞き取りでございますけれども、シルバー人材センターの会員の多くは免税事業者でございまして、令和五年十月からのインボイス制度導入による影響に関して、全国シルバー人材センター事業協会から要望を受けてございます。また、全国シルバー人材センター事業協会とは随時意見交換を私ども行っているところでございます。

 その中で、シルバー人材センターから支払われている配分金は、原則、仕入れ税額控除の対象にならないため、新たな消費税の納税が生じるなどの懸念の声があることは承知してございます。

 厚生労働省といたしましては、シルバー人材センターがインボイス制度の段階的施行を含む様々な環境変化に柔軟に対応しながら、受注量の増加や運営の効率化などを通じて、安定的な事業運営を継続し、地域における役割を一層発揮していただけるよう、経営基盤の強化を図るための必要な支援を引き続き講じていきたいと考えてございます。

 インボイス制度の円滑な施行を図る観点から、十年の経過措置が設けられていることを踏まえて、今後も、シルバー人材センター事業への影響や実務的な対応等の実情を把握して、どのような支援が可能か、関係省庁とも連携しながら検討してまいりたいと考えてございます。

田村(貴)委員 シルバー人材センターの経営基盤の強化というふうにおっしゃいました。

 お話を伺いましたけれども、今年度、厚生労働省は、五億六千万円計上して、シルバー人材センターにおける、介護施設への食事の配膳とか、あるいは入所利用者の話し相手などをする会員さんの仕事、そうした仕事をつくるための介護プランナーの配置にお金を出す、そして、その仕事の配分金相当の奨励金を一か月に限って出すというような対策を示されているということであります。

 ただ、先ほど、二百億円相当の負担増になるというんですね。こうした厚生労働省の対策でこれは全てカバーはできませんよね。いかがですか。

奈尾政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のありましたシルバー人材センターを活用した高齢者の介護就業促進に係る地域活性化、約五・六億円の予算でございますけれども、こちらは、シルバー人材センターに介護プランナーを置くこと等によって新たな就業機会の拡大に努めていきたいという趣旨でございます。そのことによってシルバー人材センターが地域における役割を一層発揮していただけるように、経営基盤の強化を図るための支援ということで考えてございます。

 このような予算でございますけれども、介護分野での就業機会の拡大といったことは今後かなり需要が伸びる分野じゃないかと思ってございまして、経営基盤の強化を図るという観点でこういう措置を行ったものでございますが、もちろん、この措置のみによってインボイス制度の導入に伴うシルバー人材センターに生ずる影響に対応するという趣旨ではございません。

 いずれにいたしましても、インボイス制度の円滑な施行を図る観点で、移行を図る観点で、経過措置が設けられることを踏まえながら、今後も、シルバー人材センターへの影響を見ながら、どのような支援が可能か、関係省庁とも連携しながら検討してまいりたいと考えてございます。

田村(貴)委員 大臣、お聞きになったでしょうか。シルバー人材センターに矛盾が出ているんですね。そこで、唯一、政府、省庁としてやっている厚生労働省の今年度の対策、それから地方自治体から発注増、こうしたところをもってしても、負担増はカバーできないということなんです。

 そもそも、国や自治体が財政支援をしないとシルバー人材センターの経営が成り立たないと、インボイスの根本問題を認めたものではないでしょうか。

 財務省にお伺いします。

 他の省庁においても経営強化等の対策はやっているんでしょうか。これはイエスかノーかでお答えください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 他の省庁におきましても、中小企業庁を始め、インボイスの導入に伴いまして、経理事務の電子化等に資するようなIT補助金等の支援策は講じているものと承知しております。

田村(貴)委員 実際、お金を出してやっているのはここだけでしょう。

 現場は、公益法人は収支相償のための原則のために、センター自体に負担能力はなくて、事業はやめるしかない、こういう声が出ているんです。このままインボイス制度が適用されればシルバー人材センターは一年ももたない、センターにとってインボイス制度の導入に伴う新たな負担増はまさに運営上の死活問題であると、もう公にされているセンターもあるんです。

 大臣に伺います。

 末端のシルバー人材センターが、インボイス導入、この影響を回避することができずに、どれだけ困窮していることか。二百四十二件もの意見書の背後にあるのは、増税は勘弁してほしい、事業が継続できずに、これはやめてほしいと切実な声であります。事態の内容や重大性を認識されておられるでしょうか。増税、複数税率がもたらす根本の矛盾と問題は、財務省が解決せずに誰がやるというんですか。大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 田村先生がかねてから御指摘の内容につきましては、先ほども答弁いたしましたとおり、地方自治体から受領いたしました意見書の内容や国会での質疑等を通じまして承知をいたしているところでございます。

 その上で、シルバー人材センターのインボイス制度への対応に当たりましては、先ほど厚生労働省から答弁がありましたとおり、インボイス制度への移行に伴う経過措置を設けるとともに、厚生労働省より、受注の三割程度を占める地方自治体への適正な価格設定の要請が行われているものと承知をいたしております。また、インボイス制度への移行後も、厚生労働省において、シルバー人材センターが安定的な事業運営を継続できるよう、令和四年度予算における補助金の増額等、必要な支援も行っております。

 今後に向けましても、厚生労働省においてシルバー人材センターとも協議を行いながら対応を検討していくと承知をしておりまして、シルバー人材センターが安定的な事業運営を継続できるよう、引き続き、厚生労働省と連携しながら取り組んでまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 大臣、今の答弁をもってしても、カバーできないということが明らかになっているわけであります。ちゃんと対応策を講じていかなければなりませんし、中止するのが一番の対応だと思います。

 問題が生じるのはシルバーだけではありません。インボイス制度が実施されれば、一般的に、課税事業者は、自らの消費税負担が増えることを避けるために、免税事業者との取引について慎重にならざるを得ません。

 伺います。

 簡易課税でない売上げ五千万円以上の消費税課税業者は、全ての取引を仕入れ税額控除するためには、取引の相手がインボイス登録業者であることを確認しなければなりません。これはどうやって確認することができるんでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度への移行後におきまして、個々の事業者が取引の相手方がインボイス登録事業者かどうかを確認する必要がある場合につきましては、例えば、取引価格や納期といった取引条件を取引の開始前に確認をされる際に口頭や書面で相手方の登録番号やその有無を確認することが考えられるというふうに考えられます。また、登録番号が有効かどうかという点については、必要に応じ、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトを通じて確認ができる仕組みになってございます。

田村(貴)委員 ちょっと具体例で教えていただきたいんですけれども、例えば、仕入れ税額控除が必要な課税業者の中小企業の社長さんが出張に出たとします。その出張先でタクシーを利用しなければならない。ところが、駅前にタクシーが止まっていたんだけれども個人タクシーである。どの個人タクシーがインボイス登録業者かを確認する必要があるんですけれども、こうしたときに、先ほどの方法でやると、国税庁の適格請求書発行事業者公開サイトで検索することができるということでしょうか。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生も先ほどお触れになられましたとおり、課税事業者の四割弱の事業者が簡易課税制度の適用を受けてございますので、こういった中小企業の方々にとってはインボイスの保存がなくとも仕入れ税額控除ができるということは、御指摘もあったとおりでございます。

 他方で、個々の課税事業者で本則課税を選択されている方がタクシーを利用される場合に乗車時においてどういうふうに確認をするかという点については、現在、免税事業者の方が多い個人タクシーの業界におきまして、利用者にとって分かりやすい表示などの対応も検討されているというふうに承知をいたしております。

 こういった事業者側の対応ですとか、インボイスに移行した後も免税事業者からの仕入れについて六年間は一定割合の仕入れ税額控除が可能となっている経過措置の存在なども踏まえまして、個々の事業者においては対応を検討されていくものと考えておりますが、他方で、御指摘のような出張旅費の場合につきましては、役員の方であったり従業員の方が出張に行かれて一旦そのタクシー代を立て替えられるというケースが実務上は多うございます。こういった場合、従業員や役員の方に会社が支給する通常必要と認められるような出張旅費等につきましては帳簿のみの保存で仕入れ税額控除が可能となってございますので、御指摘のタクシーへの支払いがこれに該当するような場合には、インボイスの交付を受けずとも仕入れ税額控除が可能になるということでございます。

田村(貴)委員 その瞬間瞬間で確かめていかなければいけないときがあるでしょう。そのときに、例でいうと、駅前に個人タクシーしか止まっていなかった、そして表示されているものもなかった。確認するときには、国税庁の登録業者の検索サイトだ。これを見たら、Tから始まる登録番号ですよ、これは十三桁数字を入力する必要があるんですよ。事前に聞いた番号の聞き違いもあるし、入力ミスも往々にしてあり得るわけですよ。これは事業者名では検索できないでしょう。大変な混乱と問題が起こってまいりますよ。

 個人タクシーを使って、インボイス番号のある請求書をもらって帰ってきたけれども、登録業者でないことが分かった。仕入れ税額控除はできるんですか、できないんですか。しっかりお答えいただきたいと思います。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになって恐縮ですが、課税事業者の四割弱が適用を受けております簡易課税制度の適用事業者の場合には、インボイスの保存は必要ございません。

 また、先ほども申し上げましたとおり、出張旅費の実務に関しましては、役員や従業員の方が出張に行かれてタクシー代を一旦立て替えるという実務も広範に行われておりますが、こういった場合については、インボイスの保存がなくとも、帳簿の保存だけで仕入れ控除が適用可能な規定が設けられてございます。

 仮に会社が直接にそのタクシー会社に支払いを行うといったような場合には確認が必要になるということでございますが、そのときの表示の在り方等については、タクシー業界において様々検討がなされているということでございます。

田村(貴)委員 局長、確かめますけれども、免税業者である個人タクシーを利用して、そのレシートをもらって、仕入れ税額控除はできますかと聞いているんです。

住澤政府参考人 現行の規定について御説明申し上げますと、消費税法におきましては、請求書等の交付を受けることが困難な場合については帳簿等の保存のみで控除を認めるという規定がございまして、これに基づきまして、政省令におきまして、出張旅費等の扱いについて先ほどのような特例を設けているということでございますので、役員や従業員の方がタクシー代をそこで立替え払いをされて、後で会社がそれについて精算をするといったようなケースでございますれば、それが通常その出張旅費として認められる範囲内の金額であれば、請求書あるいはそのインボイスの保存がなくても控除が可能になるということでございます。

田村(貴)委員 聞かれたことに答えていただきたいんですけれども。時間がないんですよ。

 物品・サービスを突然購入せざるを得ないときに、免税業者しか仕入れない場合には、仕入れ税額控除を諦めて取引せざるを得ないんですよ。まさに天に運を任すような状況が生まれてくるとも限らないわけです。現行では、どのケースでも仕入れ税額控除ができるんですよね。多くの中小業者は、企業は、千円、一万円の利益を出すのに必死になっている。しかし、仕入れ税額控除ができなくなったら、これは重大な経営問題に発展してまいります。こうした認識を、鈴木大臣、お持ちでないんですか。

 ちなみに、財務省は職員に対して、業務でタクシーを使う場合に、インボイス番号の登録番号を使うように指示するんでしょうか。

鈴木国務大臣 済みません、タクシーの件はちょっと把握をしておりませんので、お答えできません。

田村(貴)委員 そうですよね。これ、一般会計、役所の方においては、課税業者じゃないからこの話は関係ないんですよ。しかし、民間に至っては、一つ一つの取引、それから領収書、ここで問われてくる課題なんですね。

 インボイスの制度の導入で、民間事業者は課税業者との間に取引の確認をしなければいけない。様々な問題が起こってくる。この大混乱、そして不利益強制、ここに対してちゃんと対応策を打たないと駄目ですよ。

 そうじゃないと、どうですか、これだけ意見や要望がどんどん上がってきている。矛盾が噴き出している。全国青年税理士連盟は、来年度の税制改正に向けて、複数税率制度が事業者に過重な事務負担を強いていると指摘しています。そして、インボイスの中止を強く求めているところであります。こうした声がどんどん上がってきた。

 シルバー人材センター、建設業の一人親方、個人タクシー、フリーランス、様々な免税業者にとってみたら、不公平極まりありません。この負担を回避するためにはインボイス制度の廃止しかないということを再度重ねて指摘して、今日の質問を終わります。

薗浦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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