衆議院

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第2号 令和4年11月2日(水曜日)

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令和四年十一月二日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    石井  拓君

      石原 正敬君    小田原 潔君

      大塚  拓君    大野敬太郎君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      鈴木 隼人君    中山 展宏君

      藤原  崇君    古川 直季君

      本田 太郎君    宮澤 博行君

      務台 俊介君    八木 哲也君

      山口  晋君    若林 健太君

      階   猛君    野田 佳彦君

      原口 一博君    福田 昭夫君

      藤岡 隆雄君    道下 大樹君

      藤巻 健太君    岬  麻紀君

      伊藤  渉君    輿水 恵一君

      前原 誠司君    田村 貴昭君

      吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   財務副大臣        秋野 公造君

   内閣府大臣政務官     鈴木 英敬君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 吉岡 秀弥君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    住澤  整君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    齋藤 通雄君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    三村  淳君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           本多 則惠君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二日

 辞任         補欠選任

  石井  拓君     山口  晋君

  塩崎 彰久君     古川 直季君

  若林 健太君     務台 俊介君

  山崎 正恭君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  古川 直季君     塩崎 彰久君

  務台 俊介君     宮澤 博行君

  山口  晋君     石井  拓君

  輿水 恵一君     山崎 正恭君

同日

 辞任         補欠選任

  宮澤 博行君     若林 健太君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官吉岡秀弥君、金融庁総合政策局審議官堀本善雄君、財務省主税局長住澤整君、理財局長齋藤通雄君、国際局長三村淳君、国税庁次長星屋和彦君、厚生労働省大臣官房審議官本多則惠君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宗清皇一君。

宗清委員 おはようございます。自由民主党の宗清皇一でございます。質問の機会をいただきまして、感謝申し上げます。

 早速質問に移ります。

 政府は、納税者の皆様からお預かりしている税金を、知恵を出して、福祉、教育、防衛、経済成長を始めとする、国民の皆様方が豊かになるような結果に結びつけていかなければなりませんし、また、政府はどのようにお金を使ったのか、結果はどうであったのか、国民の皆さんに説明する義務を負っていると思います。

 また、各国は経済成長と財政規律をいかに両立をさせるかという難しい課題に取り組んでいるわけでありますが、同時に、中長期的な財政運営や通貨政策など、市場への説明責任を果たしているわけであります。

 鈴木大臣は所信で、国が直面する内外の重要な課題への取組を本格化させる、同時に、このような重要課題に対応していく基盤として健全な財政が不可欠である、財政は国の信頼の礎であると述べられていました。私も、そのとおりであるというように考えます。

 私は、財政の肝は、持続可能かどうか、将来にわたって我が国の財政が国際社会や市場から信認を得ている状態を保つことができるかどうかであるというように思います。一方で、財政問題を議論するだけで緊縮財政派だのレッテルを貼られることがありますけれども、私は、財政健全化を目指すこと、持続可能な財政状況をつくることと緊縮財政は決して同じではないと思いますし、積極財政とか緊縮財政、そんな単純な問題ではないというように思います。そして、どのような理屈を並べても、私たち政治家は財政の信認を得るための議論から逃げることはできないというように考えています。

 また、昨今のロシアによるウクライナ侵略、感染症への対応、大規模災害など、何が起こるか分からない、この不透明な時代にあっても、政府の責任というのは国民の皆さんの生命と財産を守ることであります。また、今も有事のときでありますけれども、こういった有事が同時多発的に起こった場合においてでもちゅうちょなく財政出動ができる環境というのを常につくっておく必要があると思います。

 私は、こうした必要な対応を取ること、経済成長を目指すこと、財政健全化に取り組むことというのは全く矛盾しないというように思いますし、また、我が国の通貨、円の信用を将来にわたって確保する意味でも、経済成長と財政健全化を共に実現させることが政治の責任であるというように考えています。

 そこで、通貨、円の信認についてお尋ねしたいと思いますが、現在、ドル高・円安の状況が進んでおりますので、物価への影響というのも深刻さを増しているわけであります。

 昨今、円安が進行する前は、円は安全通貨とか逃避通貨と言われておりました。何か市場で起こりますと円買いということが行われてきたわけでありますけれども、円が買われていたメカニズムというのは、我が国のファンダメンタルズが維持をされているからだというふうに言われていました。ここで言うファンダメンタルズとは、経済成長率や物価上昇率、財政収支、政府の資産や負債など財務状況が挙げられますけれども、通貨においては、規制や管理、売り買いの自由度や流動性、マーケットの規模等も重要な要因になっていると思います。安全通貨としての信認が高ければ高いほど、円買いへの投機が起こって一層の円買いが起こり得るというメカニズムが起こっていたわけであります。

 反面、心配いたしますのは、我が国の経済のファンダメンタルズ、これが悪化すれば投機が崩壊して円の暴落の可能性があるということも常に私たちは考えておく必要があるというように思います。我が国のこれからの社会保障関係費の伸び、今後の財政の健全性やまた人口減少など、また、ここ数年、特に貿易収支も大変厳しい状態が続いていると思います。そういったことを考えますと、円が将来にわたって信用される通貨としての価値を維持できるのかどうか、心配だなと思うときがあります。

 そこで、鈴木大臣にお尋ねをしたいと思いますが、現在の円安の原因、また円の信認について、どのような見解を持っておられるのか。また、将来にわたって円の信認を得ていくために我が国が今後どのような取組をしなければならないのか、お尋ねをいたしたいと思います。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 為替相場でありますけれども、これは、様々な要因によりまして市場において決定されるということでありまして、変動の要因を一概に申し上げることはなかなか難しい、こう思います。

 そこで、一般論になりますけれども、為替相場の変動要因といたしましては、国際的な競争力、国際収支、内外の金利差などの金融政策に係る要因、市場参加者のセンチメントや投機的な動き、物価動向等々の多数の要因、そういうものがあるということが指摘をされているところであります。

 そして、円の信認については、経済成長とともに、御指摘のように、財政健全化を併せてしっかりと進めていくこと、これが基本であり、重要であると考えております。

 中長期的な財政の持続可能性への信認が失われないように、二〇二五年度のプライマリーバランス黒字化目標の達成に向けまして、歳出そして歳入両面の改革を進めていかなければならない、そのように考えているところでございます。

宗清委員 ありがとうございます。

 先ほど、大臣の御答弁の中でも、プライマリーバランスのお話もありました。

 続いて、財務省にもお尋ねを、確認をしたいと思うんですけれども、先日、経済対策の補正予算約三十兆円、これが決定されたわけでありますけれども、この大きな支出も踏まえまして、二〇二五年のプライマリーバランス黒字化の目標というのは達成できるのかどうか、見解をお伺いしたいと思いますし、また、骨太の方針では、財政健全化に向けての状況に応じて必要な検証を行うということになっていたと思いますけれども、これは検証するのかどうか、この検証はいつ、どのように行うのか、お尋ねをしたいと思います。

井上副大臣 御質問ありがとうございます。

 まず、従来からの、経済あっての財政という方針には変わりはないということでして、新型コロナや物価高騰を乗り越えて、経済をしっかり立て直す、そして財政健全化に取り組んでいきたいというふうに思っています。

 そのためにも、まずは、今般の総合経済対策、足下の物価高騰への対応、日本経済の再生に全力で当たらせていただいて、持続的な経済成長の実現を図ってまいりたいというふうに思っています。

 その上で、引き続き、二〇二五年のPB黒字化目標達成に向けた歳出歳入の両面の改革をしっかりと取り組んで、新型コロナ等からの平時への移行を図ってまいりたいというふうに思っています。

 なお、お話がありました骨太の方針において、これまでの財政健全化の目標に取り組む上で、状況に応じて必要な検証を行っていくこととしておりまして、引き続き、感染症、物価高の影響を始め、内外の経済情勢を注視しつつ、いつということはお答えできませんが、必要となった場合には柔軟に対応していきたいというふうに思っています。

宗清委員 御答弁ありがとうございました。

 しっかり検証を行った上で市場への説明責任を果たしていく、それで、我が国の財政に対して、また円に対してしっかり信認を得ていく努力を政府を挙げてお願いを申し上げたいというふうに思います。

 次、金融庁に質問させていただきたいと思います。

 鈴木大臣は、所信で、国民の安定的な資産形成に向けて、NISAの抜本的拡充について検討を進めるということを申されていました。

 我が国は現在、インフレ、物価高でありますし、現預金を金融機関に預けていても、今利息がつかない状態でございますので、このままでは現預金の価値が下がる一方でございます。そういう意味では、今こそ貯蓄から投資へ誘導するいい機会であるというように考えます。

 現下の経済状況を考えれば、当分の間、金利というのは上げにくい状態が続くであろうというように思いますけれども、例えば、今後、毎年二%物価が上昇していくと仮定をいたしますと、現在、例えばゼロの金利で一千万円現預金を預けていくと、二十年後には六百七十二万円ぐらいの価値しかなくなる、これは三割以上も資産の目減りがしてしまうということになるわけであります。

 新しい資本主義実現会議の下にございます資産所得倍増分科会においても、現在、貯蓄から投資へということの様々な議論が進んでいるというように思いますが、NISAの拡充や恒久化にとどまらず、もっと一層踏み込んだ対策が要るのではないかというように思います。

 日本の家計金融資産の約二千兆、そのうち約一千百兆円が現預金であると言われておりまして、その金融資産の六割強が六十歳以上の方々が持っているというように言われています。対して、米国は現預金の割合は一三・二%、英国で二七・二%でございますので、我が国の現預金の割合が突出して多いということが分かるわけであります。

 最近、私の周りでも、若い方々が少しずつ投資をしているという話を聞いています。増えてきているなという実感がありますが、これから平均寿命はまだまだ延びていくだろうというように思いますし、高齢者の方がたくさんの資産を持っておられる、そういう状況も考えたら、高齢者の方々にもっと投資をしやすい環境をつくるべきだというように考えますが、金融庁の取組、決意を聞かせていただきたいと思います。

鈴木大臣政務官 前任の政務官の宗清委員には、答弁の機会を賜りまして、御配慮いただき、ありがとうございます。

 お答え申し上げます。

 議員御指摘のとおり、家計の金融資産は六十代以上の方が六割以上を保有しておりますし、つみたてNISAでは若い世代を中心に利用者が増加をし、投資に関心を持つ若い方が増えていると認識をしております。他方で、年代別の金融資産の内訳を見てみますと、預貯金での保有比率が最も高いという状況は世代を問わず共通しております。そこで、高齢者を含め、幅広い年代の方々に資産形成を行っていただき、貯蓄から投資へのシフトを進めることで、持続的な企業価値向上の恩恵が家計に及ぶ好循環を形成することが重要であると考えております。

 こうした考えの下、金融庁におきましては、安定的な資産形成を支援するため、例えば、NISA制度を設けるなどの環境整備のほか、金融リテラシーやNISA制度の普及活動に取り組んでまいりました。

 今般閣議決定された総合経済対策におきましても、NISAの抜本的拡充、恒久化の検討や金融教育等の充実に向けて、国全体としての推進体制を整備することなどが盛り込まれており、これらを通じて、高齢者の方々を含め、また、議員は、しっかり広報しろと御指摘をいただいておりますので、しっかり広報し、今がチャンスと捉えて、幅広い国民の皆さんが資産形成を行えるよう、環境整備に取り組んでまいりたいと思います。

宗清委員 御答弁ありがとうございました。

 是非、金融庁の皆様方の一層のお取組をお願いしたいというように思います。

 今後、必ず起こる、先ほども申し上げました大きなリスクに備えていくためにも、財政の持続可能性を高めていく議論、これは必要だというように思いますし、大きなリスクに直面すればするほど、そのときに国民の皆さんに新たな負担を求めることはできないというように思います。財政問題は平時にしっかり備えておくということが必要だと思います。

 長期的な債務といいますのは、国家の安全保障に対しても最大の脅威になると思います。そして、莫大な債務というのは、強力な防衛力、必要な防衛力、また外交手段の選択肢を狭めてしまう可能性もあります。また、経済成長にとって重要な投資、また国際社会でのリーダー的な役割、これを弱めてしまう可能性もあるわけですから、これからもしっかり財政議論を深めていきたいというように思います。

 財政の話をすると、すぐに緊縮か積極かという話になりますが、私たちが、政治家が責任を持って、中長期的な展望を捉えて財政議論をしていきたい、このように思いますので、財務省の皆様方、そして金融資産については金融庁の皆様方に、これから一層のお取組をしていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久です。

 通告に従いまして順次質問してまいりますが、私からは大要を二つ、NISA、それから金融経済教育についてお伺いしたいと思います。

 時間もありませんので、早速質問させてもらいます。

 まず、NISA制度の恒久化についてお伺いさせていただきたいと思います。

 岸田総理は、今年の五月に資産所得倍増プランの策定を打ち出しをいたしました。私は、NISAの改革はその柱になるというように思っております。日本で二千兆円を超える家計の金融資産、先ほど宗清委員からも御質問ありましたけれども、やはり株式等の割合は欧米に比べて非常に低いということで、このNISA制度を更に拡充していくべきだと思っていますが、NISA制度につきましても、年々、口座数ですとか、それから買い付けの額や残高も伸びているということで、大変喜ばしいことかなと思っております。

 資産形成を考えた場合、やはり投資の重要性というのが極めて必要なことだと思っていますし、私は、分散投資とか、長期投資とか、それから積立投資、こうしたことが非常に大事だと思っております。分散投資、それから長期に積み立てて運用するということ、これがより安定した資産形成につながっていくんだろう、このように認識しています。

 そうした点でお伺いしたいと思っておりますが、こうした長期、分散、積立投資といった観点から、現行のNISA制度をどのように見直すべきなのか。今、来年度の税制改正に向けて政府・与党共に議論の始まったところでありますけれども、何点か確認しておきたいと思います。

 まず、一番大事になると思うのが、制度の恒久化。現行のNISA制度はやはり時限措置であるということで、結果的に、先ほど申しました長期、それから分散、積立投資、こうしたものをある意味では妨げるような結果になるのではないかという認識です。

 NISA制度を恒久化し、始めるタイミングそれから世代に左右されない、安定で継続的な制度にするべきではないか、このように考えますが、大臣の見解をお伺いします。

鈴木国務大臣 NISAにつきましては、金融庁といたしまして、国民にとって簡素で分かりやすい、そして使い勝手のよい制度にする、そういう観点から、制度の抜本的拡充、それから、稲津先生から御指摘がありました恒久化というものを来年度の税制改正要望として提出をしているところでございます。

 また、先般閣議決定されました総合経済対策においても、個人金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるべく、NISAの抜本的拡充、恒久化を検討することとされております。

 いずれにいたしましても、NISAの抜本的拡充や恒久化につきましては、今後、与党の税制調査会等の場で検討が進められるものと承知をしておりまして、その検討を踏まえまして、政府としても適切に対応してまいりたい、そのように思っております。

稲津委員 ありがとうございました。

 続いて、NISA制度の年間投資枠と非課税限度額の拡大についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 やはり、制度を簡素化する、そして拡大するということが大事だと思っておりますが、現行のNISA制度、これは一般NISAとつみたてNISAから構成されていますが、同一の年の間はどちらか一方しか利用することができない。それがまた多様な投資の妨げになっているのではないかという認識です。それぞれ、拠出限度額、買い付け方法、対象商品等、この異なる点が複雑だ、こんな意見も聞かれます。そこで、できるだけシンプルなものにして、国民にとって分かりやすい制度にすべきではないか。

 現行のNISA制度の年間投資枠について触れておきたいと思いますけれども、つみたてNISA四十万、一般NISA百二十万ということで、これは英国の、議論されたことがあると思いますけれども、ISAでは、円換算だと大体年間三百二十万程度、それに相当するということで、これに比べると規模が非常に小さいという指摘もあります。

 それから、つみたてNISAの年間投資枠が四十万ということで、十二か月で割り切れない、こんな話もありまして、こうしたことも検討すべきなのかなというふうに思っております。

 貯蓄から投資へのシフトを大胆かつ抜本的に推し進め、投資による資産所得倍増を実現する観点からも、英国のISA並みにこのNISAの年間投資枠を、また非課税の限度額も、更に拡大すべき、このように考えております。これに対しての見解をお伺いしたいと思います。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、NISAについては、国民にとって簡素で分かりやすい、使い勝手のよい制度にするというふうな考え方から、先ほどありました制度の恒久化、これに加えまして、非課税保有期間の無期限化、それから、つみたてNISAを基本としつつも、一般NISAの機能を引き継ぐ成長投資枠の導入、それからそれを併用可能とするというふうなことについて要望させていただいております。

 他方で、年間の投資枠、非課税限度額については、やはり、それぞれのライフプランに応じて弾力的に積立てが可能となるということが重要でございまして、こうした観点から、先ほど申しましたつみたてNISA、それから成長投資枠、それぞれについて拡大を要望させていただいております。

 いずれにいたしましても、今後、与党における検討を踏まえ、政府として適切に対応してまいりたいというふうに考えております。

稲津委員 ありがとうございました。

 与党協議を踏まえて検討していただくという御答弁でありますが、私は、このほかにも、非課税の保有期間の無期限化とか大幅延長とか、それから、若者の資産形成、これをサポートする意味での年齢の要件の緩和あるいは撤廃など、課題があると思っています。

 是非、使い勝手のいい、また、長期運用を前提にするのであれば、この制度の、短期間に変えるということではなくて、長い目で資産形成に資するような、そうした安定した制度へと改革をお願いをさせていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 金融経済教育の必要性についてということで、これも委員会の中で議論がこれまでもあったかもしれませんが、確認の意味も含めて質問させていただきます。

 学校現場における金融経済教育についてですけれども、やはり、資産形成の促進を国民的に図っていくことになれば、金融リテラシーの向上も欠かせませんし、それから、本年四月から、成年の年齢が十八歳に引き下げられました。若者層向けの取組が求められる中で、高等学校の学習指導要領が改訂されまして、資産形成も含めて内容の充実が図られています。

 この改訂された学習指導要領には、「生涯を見通した生活における経済の管理や計画、リスク管理の考え方について理解を深め、情報の収集・整理が適切にできること。」とありますが、学校現場において具体的にどのような教育が必要であると考えるのか、またそのために国としてどのような支援を行っていくのか、見解をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 御指摘のございました、改訂された新しい中学校学習指導要領そして高等学校学習指導要領におきまして金融に関する内容の充実が図られたことも踏まえまして、金融庁や財務局では、中学校及び高校における出張授業の実施、新学習指導要領に対応した授業を行うための高校向け指導教材や動画教材の作成、教員向け研修会の実施など、様々な取組を行っております。

 また、今般閣議決定されました総合経済対策におきましても、金融教育等の充実に向けて、国全体として推進体制を整備していくことが盛り込まれているところでございます。

 これらの取組を通じまして、資産形成を含めた金融経済教育のより一層の推進に努めてまいりたいと考えております。

稲津委員 それで、次は、金融コンピテンシー力の向上についてということでお伺いをさせていただきたいと思います。

 NISAの利用、これも皆様御存じのとおり、その稼働率は二〇二〇年の九月時点で六割程度ということで、半数近い人が口座は持っているけれども利用していないという状況になっているのが現実であります。この口座の非稼働の要因の一つとして、金融に対する自信だとか意欲だとか、いわゆる金融コンピテンシーの非認知能力というんですか、これが重要ではないか、こんな指摘もございます。

 近年、教育学で注目されている人間の非認知能力とは、学力テストや偏差値などの点数や指標で明確にできるものではないが、将来や人生を豊かにできる一連の肯定的な能力、社会情動的スキルというんですか、そのように言われるということで、OECDの学校における金融教育ガイドラインには、金融リテラシーにはこのコンピテンシーも含んでいる、こうした記述もございます。

 今後の金融経済教育の中にこの金融コンピテンシー力向上に向けた取組をどのように取り入れていこうと考えているのか、この点についてお示しをいただきたいと思います。

堀本政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおり、金融経済教育においては、金融知識そのものだけではなくて、金融知識に関する自信や判断力、そういった点が重要な要素であるというふうに考えております。

 これまでの金融庁の取組においても、適切な収支管理を行う、これを習慣化するというようなことや、あるいは、継続して貯蓄、運用に取り組む姿勢といった態度、行動に関する要素、そういったものを、身につけてほしい金融リテラシーの一つとして位置づけていまして、その上で、金融経済教育の推進に取り組んできてまいります。

 他方、今般閣議決定されました総合経済対策において、金融教育の充実に向けて、国全体として体制整備を図っていきたいというふうに盛り込まれております。

 こうした施策を実施するに当たって、御指摘の金融コンピテンシーを含めまして、金融リテラシーの一層の向上に取り組んでまいりたいというふうに考えております。

 ありがとうございます。

稲津委員 ありがとうございました。

 金融経済の教育、それから金融リテラシーの向上、このことについて別な視点から言わせていただきますと、特に若い世代に広がっている、SNSによる個人間の融資、それからファクタリング、それから中古商品の先払いの買取りの現金化、こうした社会問題が実はございます。私もこれまで、この点についてもいろいろと質疑を通してお伺いしてきた経緯もありますけれども、新手の闇金融の問題もありまして、大変深刻さを増してきているというふうに認識しています。

 そのような意味からも、こうした金融リテラシーとか金融経済の教育、それから今お話しさせていただいた金融コンピテンシー力の向上とか、こうしたことを若い世代のときからしっかり身につけておく必要があるのではないか、私はこのように思っています。

 是非、今後、こうした点にも着目して委員会でも質疑をさせていただきたいと思っておりますので、どうかまたよろしくお願いをさせていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、階猛君。

階委員 立憲民主党の階猛です。

 今国会から、立憲民主党のネクスト財務金融大臣を務めることになりました。

 第二次安倍政権以来のいわゆるアベノミクスにより、我が国の財政運営と金融政策は全く節度とけじめがなくなり、勤勉な中間層を細らせ、未来世代に負の遺産を積み重ねてきました。現在の急激な円安は、我が国の将来に対する警鐘だと受け止めるべきです。

 まさに国難ともいうべき状況を打開するため、私たちは、客観的な事実と論理に基づいて、追及すべき責任を追及し、提言すべき政策を提言してまいります。鈴木財務・金融大臣を始め、政府、日銀関係の皆様、そして各党各会派の委員の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 早速質問に移ります。

 委員のお手元にある資料、一ページ目を御覧になってください。先日のテレビ入りの私の質疑で、私は、黒田日銀総裁の二%の物価安定目標の達成時期が、当初二年だったにもかかわらず、見通しがことごとく外れ、今に至っているということ、それから約十年たって、今ようやく物価が二%を超えてくると、今度は賃金の上昇が足りないと言って、相変わらず異次元金融緩和を継続しているところ、黒田総裁は、就任当初は、物価だけ上がって賃金が上がらないということはないと言っていたことを指摘しました。

 ところが、黒田総裁は、私の指摘とは全く関係ない話を始め、挙げ句の果てに、御指摘のような、量的・質的金融緩和が全く失敗したというのは事実に反するという答弁をしました。

 意図的に論点をずらして時間を稼いだのであれば、私の質問権の侵害です。意図的でなければ、撤回して謝罪すべきです。黒田総裁、いかがですか。

黒田参考人 御指摘の委員会では、委員から、量的・質的金融緩和導入以降、物価が日本銀行の見通しどおりには上昇してこなかったのではないかという御指摘をいただいたものと承知しております。

 私としては、これが、量的・質的金融緩和が所期の効果を発揮していないのではないかという御指摘と受け止めまして、量的・質的金融緩和が全く失敗したというのは事実に反するという答弁を申し上げました。

 確かに、量的・質的金融緩和を導入して以来、デフレという状況ではなくなり、ベアも復活し、成長も戻り、雇用も拡大したことは事実ですけれども、二%の物価安定目標を達成していないということは御指摘のとおりであります。

階委員 全く私の話を曲解して、私は、見通しが外れてきた、そして大幅に外れたことが続いて、最後のところでは、今度は、物価が上がってきたんだけれども、賃金が上がらないから更に金融緩和を続ける、目標を達成していないというお話だったんですが、これは当初の黒田総裁の話とは違うんじゃないかということを言いました。

 なぜなら、四ページの右隅に書いていますとおり、黒田総裁は就任当初、恐らくどのような経済モデルで計算しても、物価だけ上がって賃金が上がらないということにはならないというふうにおっしゃっていたからです。

 こういうことを踏まえて、黒田総裁、さすがに、自分の言ったことがことごとく外れ、過去に言ったことを翻すような無責任なやり方では、日銀総裁にふさわしくないのではないかというふうに申し上げたわけです。

 今のようなお話を聞いていると、聞く力もないですし、意味のない話をやはり延々としていく、そうした力の強さだけは感じられるということで、そうした姿勢が今の我が国の状況をもたらしたんだというふうに思いました。やはり、これから金融政策を正常化したり柔軟化したりする上で、黒田総裁には辞めていただくしかないと思っています。

 黒田総裁、前回もお尋ねしましたけれども、今も辞任しないという考えに変わりはないですか。お答えください。

黒田参考人 変わりはありません。

階委員 極めて残念なことです。

 そこで、最初に申し上げましたとおり、黒田総裁は、私の指摘に対してこんなことを言われたわけですね。量的・質的金融緩和が全く失敗したというのは事実に反するということを言っていました。全く失敗したと私も言っていませんけれども、黒田総裁は図らずも、全く失敗したというのは事実に反するというふうにおっしゃっていますから、何らかの失敗はあったという立場なんだと思います。

 そのような失敗の中で最たるものが何かといえば、日銀が、超低金利と、これを維持するために国債を無制限に買い入れるオペレーションを続けてきたことによる財政規律の喪失だと私は考えています。

 これに関して、皆様の資料、二ページ目を御覧になってください。これは平成以降の補正予算の推移を見たものです。御覧になっていただければ分かるとおり、令和になって急増しているわけです。急増した三本の棒グラフ、最初の一本目、これは、コロナ対応で、ある意味やむを得なかったと思いますけれども、その後も三十兆円以上、年度を通してですけれども三十兆円以上、今年度はまだこれから審議ですけれども、これが通れば三十兆円以上ということになるわけです。

 振り返ってみますと、平成の時代、目立つのは、一九九八年から九九年度にかけて、小渕内閣で、金融危機への対応で補正予算を積み増した、それから二〇〇九年度の麻生内閣では、リーマン・ショックへの対応のために補正予算を積み増した、それから我々の政権のとき、二〇一一年度の東日本大震災の復旧復興のために補正予算を積み増した、それから二〇一二年度、これは第二次安倍政権発足直後ですけれども、アベノミクス第二の矢である積極財政実行のために補正予算を積んだ、こういったところが目立つわけですけれども、ただ、そんな頻繁に多額の補正予算は積んでいませんし、また、積んだといっても、今のやり方に比べればかなり小さいものなんです。

 こうした今の異常な、巨額に上る補正予算、そもそも、財政法二十九条で、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費について認められるのが補正予算であります。この補正予算、昨年度は多額の使い残しが生じていて、私は財政法違反の疑いもあると考えています。このような補正予算が膨張してきた背景には、政府が超低金利で際限なく国債発行ができる環境を日銀が長きにわたってつくってきた、これがあると思っております。財務大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 階先生から補正予算が膨張を続ける理由について問われたわけでございますが、補正予算でございますけれども、国民の命や暮らしを守るために、危機に必要な財政出動、これをちゅうちょなく行わなければならないという立場から補正予算を組ませていただいているところでございます。

 新型コロナや足下の物価高騰に対しまして、これまでにない規模の補正予算により対応してきたところでありますが、それによりまして、近年の補正予算の規模が増大して、財政状況がより一層厳しさを増しているということは事実でございます。

 必要なものに財政出動をしなければならない、それによって国民の命や暮らしを守るということは、これは必要なことでございますけれども、やはり、一方において、財政は国の信頼の礎でありますので、財政健全化の旗、これはしっかりと掲げ続けなければならないと思っております。

 まずは足下の物価高への対応をする、そして日本経済の再生に全力で当たる、それとともに財政健全化に向けて取り組んでいく、こういう基本的な立場にあるということを申し上げたいと思います。

階委員 もう一度伺います。私は、補正予算膨張の大きな理由として日銀の金融政策があると思っていますが、その点について、財務大臣はいかがお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 日銀の金融政策、これは日銀の独自性に任されるものでありますが、それによって財政が、財源がと申しますか、そうしたものが得やすくなるからということではない。何かそれによって財政規律が緩んで、ゆるゆるの中で額が増している、そういうことではなくて、やはり、その時々の補正予算といいますものは、先ほど先生からも御指摘がございましたとおり、当初の予算で予測できなかったようなもの、特に緊要なものについて措置をするということでありまして、いずれの場合も、必要なものの施策を積み上げた中でこのような形として額になってきたんだ、そのように判断しております。

階委員 先ほども言いました、コロナ対応の初年度はやむを得ないにしても、その後どうですか。こんな、三十兆円を上回るような補正予算が常態化しつつあるわけですよ。平成の時代とは様変わりですよね。もし日銀の今の異常な金融緩和がなければ、こんなやり方じゃ財政は破綻しています。

 仮にですけれども、今後、今の欧米のように物価高を抑制するような局面で金融引締めを日本で行った場合、国家財政は存続できますか。大臣の見解を伺います。

鈴木国務大臣 仮定の話でありますけれども、金融引締めによって金利が上がってくるということになりますと、国債の利払い等がこれによって大変巨大なものになって、財政的には非常に厳しいものになっていく、そういうふうに判断いたします。

階委員 真っ当な御見解だと思います。だからこそ、私は、日銀の金融政策、黒田総裁の保身のためにだらだらいつまでも続けている、そんな悠長なことをやっている場合ではないということを申し上げております。

 さて、黒田総裁の保身のためだと今申し上げましたけれども、それを示すようなデータをこれから皆様に改めて御紹介したいと思います。

 三ページを御覧ください。これは、さきの予算委員会で私が使用したパネル資料です。これに少し加筆しました。先週発表された日銀の新しい物価見通しを加えたわけです。

 予算委員会の方では、この表の1から3のとおり、黒田総裁就任時から金融緩和の手段をどんどん拡充し、その都度、展望レポートにおいては、二年後には二%の物価目標は達成するかのような見通しを示されていました。そして、この見通しは、先ほども申し上げました、ことごとく外れてきた、こういう客観的事実があるわけです。

 そして、最後、四番目の、今年の七月時点の物価見通しでは、逆に物価高は一時的で、二年後には二%の物価目標から遠ざかるような見通しを示していましたが、私は信用ならないと思っていました。そうすると、案の定、たった三か月しかたっていないのに、先週発表の展望レポートでは、足下の二〇二二年度の見通しが二・三から二・九へ六ポイントも上方修正されました。しかも、足下の見通しがこれほど修正されたのに、二〇二三年度と二〇二四年度は微修正にとどまり、あくまで物価上昇は一時的だというシナリオが変わっていません。

 私には、責任追及を恐れて金融政策を変えたくない黒田総裁、あるいは、低金利で大量に国債を発行してばらまき予算をつくりたい一部政治家の意向を忖度し、都合のいいように展望レポートの物価見通しはつくられているのではないか、そんな懸念を抱かざるを得ません。もしそうでないというのであれば、日銀総裁、前回の見通しと今回の見通しがいずれも合理的であることを示す客観的データをこの委員会に提出していただきたいと思います。いかがでしょうか。

黒田参考人 展望レポートでは、その時点で入手可能な情報に基づいて作成しておりまして、中心的な見通しに加えて、上下双方向のリスク要因についても説明をしております。見通しの前提となる様々な要因が変化することなどにより、その後の見通しの実績が上振れしたり下振れするということはあり得るわけですけれども、金融政策の議論をする前提として、物価の動向がどうなるかということは極めて重要ですので、引き続き、こういった展望レポートといった形で物価の見通しをお示しするということは重要であるというふうに考えております。

 なお、今回の物価見通しについて申し上げますと、今年度は二・九%ということになっておりますけれども、来年度以降は一%台半ばとなるというふうに予想しております。これは、来年度以降、物価見通しが低下していくというのは、従来から申し上げておりますとおり、輸入物価の上昇を起点とした価格転嫁の広がりといったコストプッシュ要因の押し上げ要因が徐々に減衰するというふうに考えているためでございます。したがいましてこういった見通しになっておりますけれども、ちなみに、このような見通しは、IMFを含めた国際機関や民間の見通しでもおおむね同程度となっております。

 先ほど来申し上げているとおり、二二年度を中心に物価の見通しを上方修正しております。このところの輸入物価の上昇を起点とした価格転嫁の広がりが挙げられているわけですけれども、年明け以降はそういった影響が減衰するということで、上昇率は低下しておりますけれども、確かに、従来の見通しが、来年度以降、一・四%程度と見ていたのが、一・六%程度というふうに少し上方に修正をしておりますが、これは、輸入物価を起点とする押し上げ要因は減衰していくわけですけれども、今後、賃金の上昇を伴う形で少しずつ物価の上昇率が高まっていくという見通しに立っているわけでございます。

階委員 相変わらず質問に関係ないことを長々しゃべられても困るんですけれども、客観的データを示してください。七月の物価見通し、そして十月の物価見通し、根拠となった客観的データを示して、この委員会に提出してください。約束していただけませんか。

黒田参考人 この展望レポートの見通しは、九人の委員の方々がそれぞれ見通しを出されて、それを集約したものとして中央値あるいはその幅を示して、さらにはそのリスク要因も示すという形でやっておりますが、あくまでも九人の方々のそれぞれの経済の見方というものを反映した見通しを集約したというものでございます。

階委員 つまり、九人の方の主観的な見通しをまとめたものであって、客観的データの裏づけはないというふうに理解してよろしいですか。出せるものはないということでいいですか。

黒田参考人 常に様々なデータは公表しておりますけれども、それぞれの委員の方が、展望レポートを審議する際の金融政策決定会合でいろいろな意見を述べられて見通しを提示されるということでありますので、それぞれの委員の方がどのような考え方でされたかというのはそれぞれの委員の方の御意見だというふうに私は見ております。したがって、当然のことながら、様々な客観的なデータというものを頭に入れながら、それを評価して見通しをそれぞれ作成されているということだと思います。

階委員 いや、ちゃんと説明してほしいんですよ。見通しがことごとく外れているんですよ。全く信用できないから、これが信用に値するのかどうか、これを国会としても検証する必要があるんですね。でなければ、金融政策の議論なんかできないじゃないですか。

 こんないいかげんな展望レポート、これじゃ、展望レポートではなく、願望レポートあるいは陰謀レポートですよ。何を言っているんですか。裏づけとなる客観的データは頭に入っているんだったら、その頭に入っているものを全部出せばいいじゃないですか。教えてください、出してください。

黒田参考人 展望レポートの作り方については先ほど来申し上げたとおりでありまして、様々な客観的データというものはもちろん公表もされておりますし、示されているわけですけれども、それらを踏まえて、それぞれの委員の方々が判断されて見通しを提出されているということであります。それは、どのような国際機関とか民間の方々の見通しも同様でありまして、様々なデータを踏まえながら、それぞれの見通しを出しておられる方の評価、判断を示しておられるということだと思います。

階委員 そのような説明では全く納得いかないわけです。

 皆さんのお手元には五ページ目、これは私が一月の段階で日銀総裁に質問したときの議事録の抜粋ですけれども、もう一月の段階から私は、金利格差によって円安が加速して輸入物価が上昇して、国内で悪い物価上昇が進むんじゃないかという懸念を申し上げて、今の異次元の金融緩和を継続すればこれが止まるのか、阻止できるのかというふうに申し上げた、聞いたわけです。それに対して、全くその先のことはお答えにならず、今の状況についてだらだらだらだらお話をされて、そして、先々のことは全く答えないで今に至っている。

 やはり日銀は先を見通す能力がないというふうに言わざるを得ないと思うんですね。そういうふうに理解してよろしいですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げているとおり、様々な客観的データを踏まえて、それぞれの委員の方々が評価をして今後の見通しをつくっておられるということであります。したがいまして、これは、先ほど来申し上げているとおり、国際機関や民間の見通しも同様でありまして、それぞれの客観的データを踏まえて、あくまでも、評価をして見通しをつくっておられる、そういう見通しの意見であるというふうに思います。政策委員の方々もそういう形でつくっておられる。それは、その時点の情報を最大限活用しつつ、それぞれの方の判断を示しておられるということだと思います。

階委員 本当にブラックボックスなんですよね。それで、その見通しを前提にして金融政策を続けるということは全く説得力がないわけです。

 その根本にある二%の物価目標なんですけれども、もはやこれを掲げ続ける意味はなくなってきているんじゃないかということで、私どもとしては、六ページ目に掲げておりますとおり、物価目標に代えて、実質賃金の引上げを政府と日銀の共同目標にすべきではないかということを申し上げました。

 そして、長短の超低金利、イールドカーブコントロールと言われていますけれども、これを維持し続けるのも、いわば円安を止めるために政府の方では為替介入なども行って努力している中で、日銀の方は、金融緩和で金利格差を拡大して円安をむしろ加速させているということで、アクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなものだ。

 この傾向を止めるためには、一気に金利を上げろとは言いませんけれども、今の、短期はマイナス〇・一、長期はプラスマイナス〇・二五、極めて超低金利、これは柔軟化して、イールドカーブコントロールは見直す余地があるのではないか、少し上方修正して金利水準を上げていく。例えば短期の金利はマイナス〇・一をゼロにするとか、あるいは、長期の十年の金利はプラスマイナス〇・二五をプラスマイナス〇・五にするとか、そんなふうな柔軟化をしていく、それはありだと私は考えていますが、これをするとなぜ問題なのか、なぜ今の超低金利にこだわるのか。ここを、それこそ客観的データに基づいて説明していただけますか。

黒田参考人 御案内のとおり、イールドカーブコントロールというものは、その波及経路として、低い実質金利を起点に、資金調達コストの低下、金融資本市場の改善といった緩和的な金融環境を実現することで、経済、物価に好影響を及ぼすことを想定をしております。

 現在の経済、物価情勢を踏まえますと、金融緩和を継続することで我が国経済をしっかりと支えていくことが適当であると考えておりまして、現時点では、イールドカーブコントロールの下で短期金利をマイナス〇・一%、十年金利をゼロ%程度に維持するということで、イールドカーブ全体を低位に安定させることが最も適当だというふうに考えております。

 もちろん、将来、二%の物価安定目標の実現が見通せるような状況になったときに、その前段階でイールドカーブコントロールを御指摘のような形で柔軟化していくとかいうことは一つのオプションとしてあり得ると思いますけれども、現時点では、あくまでも、経済をしっかりと支えて、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的、安定的に実現するためには必要な政策であるというふうに考えております。

階委員 今申し上げた柔軟化の方で、どれだけ設備投資に影響が及ぶのか、私は客観的なデータを示すべきだと思います。

 それから、もう時間が来たので終わりますけれども、最後に申し上げたいのは、今、貯蓄から投資へということが言われていますけれども、家計の金融資産二千兆円のうち、半分以上は円貨の現預金です。この円貨の現預金、貯蓄から投資へで、もし国外に流れていったら、これは大変なことだと思いますよ。円安がますます加速するし、また、国内の金融機関に預けていたお金というのは国債の購入にも充てられているわけです。その原資もなくなりますよ。為替は円安、金利は上昇、大変なことになると思います。

 そのことは、財務大臣、理解はされていますでしょうか。

鈴木国務大臣 それぞれのシミュレーションといいますか、状況を当てはめていって、やはりそういう危機感というものは常に持っていく必要がある、そういうふうに思って、しっかりとその点を考えながら財政運営していきたいと思っております。

階委員 終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、末松義規君。

末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。

 私の方は、この財務金融委員会の筆頭理事を四年目ということでベテランの部類に入りましたけれども、初心を忘れずに頑張っていきたいと思います。

 さて、前から言っていましたけれども、統一教会と政治の関係ということで、大臣を始め財務省内とか内閣府の副大臣、政務官に対して、旧統一教会から推薦確認書、あるいは政策協定と言われていますけれども、を旧統一教会から提示されたことはあるか。二点目が、そこに署名をしたか。三点目が、選挙支援を受けたことはあるか。これは全委員会で聞いていますので、簡潔にお答えください。

鈴木国務大臣 一点、二点、三点、いずれもありません。

井上副大臣 旧統一教会との関係は全くありません。旧統一教会との間で推薦確認書の提示を受けたこと、署名を行ったこと、選挙の支援を受けたことは一切ございません。

秋野副大臣 旧統一教会との関係はございません。旧統一教会との間で推薦確認書の提示を受けたこともございません。署名を行ったこともございません。さらには、選挙支援を受けたこともございません。

藤丸副大臣 推薦書、政策協定、旧統一教会との関係はなく、提示を受けたことや署名を行ったことはございませんし、私も含め、秘書や選挙関係者が選挙応援を依頼したり、組織的支援等を受け入れたことはございません。

 元秘書の市議が熱心に選挙応援をしてくれておりましたが、その中にそういう関係者がいたかどうかも分かりません。

金子大臣政務官 統一教会との関係、推薦確認書、また政策協定の提示を受けたことはございません。署名をさせていただいたこともございません。さらに、選挙支援を含めて、私の知る限り、それ以外の関係に関しても、着任時のインタビューでお答えしたとおり、ございません。

鈴木大臣政務官 お答え申し上げます。

 御質問いただきました三点、推薦確認書の提示、署名、選挙支援、いずれもありません。

末松委員 今、関係はないということが、みんなそう言ったわけですけれども、これは、後で違った事実が出てきたり、おかしなことになった、あるいは何かそこで問題になったりしたら、当然、責任は取ってもらうということを改めて私はここで申し上げたいと思います。

 二点目に進みますが、統一教会、旧統一教会の資金、これが北朝鮮に流れていたというのは、大体、一説によると五千億円から七千億円ぐらいあるんじゃないか、こういう情報がございまして、これがもし事実であるならば、北朝鮮が核開発に使っていた可能性も当然推測されるわけです。そうなると、日本人が汗して働いたお金が結局北朝鮮の核開発によって日本に向けられるような、そんな自分の首を絞めるというようなことになれば、それこそ全く間抜けな話で、笑い話じゃ済まないことになるわけですけれども、こういったことについて質問させていただきます。

 まず、財務省にもお聞きしますが、財務大臣にお聞きしますけれども、韓国に旧統一教会の送金がなされたことというのは把握しておられるか、そしてそれは公表しておられるかということについてお尋ねします。

鈴木国務大臣 外為法は財務省が所管をしておりますが、外為法は、国際収支の均衡を図るなどの観点から、内外の資金の流れを把握するために、三千万円相当額超の海外送金を行った場合に事後的に報告を義務づけているところでございます。こういう制度の中で把握を進める、こういうことだと思います。

末松委員 今実際に私が聞いたのは、韓国に旧統一教会から送られたお金を把握しているのかということと、それを発表しているのかということなんですね。

鈴木国務大臣 把握しているかどうかということでございますが、旧統一教会のものですね。

 個別の法人、団体に関する送金の状況につきましては、情報公開法第五条にあるとおり、公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な権利を害するおそれがあるものとして不開示情報に当たる、そういうおそれがあるということでありまして、慎重な判断が必要であると考えております。

末松委員 事務方の方から把握はされているという話は聞いたんですけれども、今、害のある関係で公開はやめるとかいう話をされましたけれども、これこそ日本人に直接被害が及ぶというところにもあるので、特に北朝鮮の話ですけれども、北朝鮮について、財務省として、何かそういった資金的な流れについて把握しておられることはございますか。

鈴木国務大臣 北朝鮮に対しても同様でございます。

 今、制裁ということで、北朝鮮に対する送金というものは、これは一定の制限がかけられておりますけれども、いずれにいたしましても、こうしたことにつきましては、情報公開法との関係をよく整理しなくてはならない、こういうふうに思っています。

末松委員 大臣、もうちょっと真剣に考えていただきたいんですよ。

 要は、北朝鮮へのお金が、日本人のお金が流れるということ自体がとんでもない話ですよね。それなのに、何か、情報公開法、おっしゃるのはそれなりに理由はありますけれども、やはりそこは、国民の皆さんがどうなっているんだということに対してきちんと政治が答える必要があると思うんですよね。それをせずに、何か他人事のようになっちゃうと、我々としては政治の責任を果たしているとは言えないんですよ。

 例えば、いろいろな東南アジアの国々経由とか中国経由でいろいろと北朝鮮に渡っている、そういうことを、うちの方は余り諜報機関的なものは持っていない、限界がありますけれども、一生懸命そこをフォローしてやっていくということを是非そこはお願いしたい。強く申し入れさせていただきます。よろしくお願いしますね。

 二点目は、円安対策ですね。

 今、問題は、円が安くて、国民の生活が困っている、しかも給料は増えない、こういうことで、この円安をとにかく止めなきゃいけない。でも、私が感じるには、どうも政府は、この円安を円高に持っていくような、そんな努力が感じられないんですよ。何かもう、仕方がないよねと。特に日銀が今、さっき話に出ましたイールドカーブコントロールとか、こういったものがほとんどゼロ%だから内外金利差も埋められないよねと、非常に諦めのような感じを持っていて、そこは私は非常に怒りとも思えるものを持っているわけです。

 例えばロシア、あれは二月二十四日、ロシアのウクライナ侵攻をやった後、一気にロシアのルーブルが下がったわけですよ。今年の一月に一ルーブル一・五一円だったのが、三月にはこれが一・一四円と下がってきて、ただ、それが八月になると二・二四円に上がっているんですね。これはなぜ上がったかというと、ロシアが様々な対策を打ったからですよ。

 例えば、ちょっとむちゃな話もあって、政策金利を二〇%にするとか、銀行の引き出し規制をするとか、金を購入するとか、私がまた注目しているのは、ルーブルで、ロシア産の天然ガス、これをルーブル建てにしたんですね、義務づけたわけですよ。あと、石油についてトルコとのルーブル建ての話合いが行われたとか、そういう、一生懸命このルーブル高を何とかやっていこうということで来ているわけですよ。

 日本政府にとっては、そういうものが、ほとんど努力が感じられない。もっともっと真剣に努力をしないと、これは財務省にとっても、物価を安定させるために、様々な補助金、膨大な補助金、数兆円から数十兆の金が出ていくわけですよ、生活を安定するために。でも、それがずっと続いていくとなれば、この日本財政の危機になるわけですよね。

 だから、そこをもっともっと、それを見れば、今、ある財務省の方も言っていましたけれども、進むも地獄だし、戻るも地獄なんだ、もうとんでもない今わなにはまっているんだという話がありましたけれども、私もそうだと思うんです。それだったら、もっと原因を小さくしていく、つまり円高に持っていくような知恵を出さないと駄目じゃないか。

 財務大臣にお聞きしたいんですけれども、例えば、さっき言った、ロシアがルーブル建てで天然ガスを輸出を義務づけた、こういうことで、これは大臣に対して細かいことを聞く気はありませんけれども、例えば、円建てでできるもので何かないかというふうに探すような、そういうものの一環として、円高対策についてもっと真剣にやっていただくことを、この御決意を是非言っていただきたいと思います。

鈴木国務大臣 ロシアでは、G7各国によります金融制裁に伴うルーブルの大幅な下落に対しまして、今、末松先生がお話しになられましたように、天然ガスのルーブル建てでありますとか、そのほかにも、ロシアの輸出企業に対する外貨売却の義務づけ、そして、国民に対するルーブルの外貨への両替停止、御指摘のございました、中央銀行による政策金利の大幅な引上げなどの措置を実施しているということを承知をしております。

 末松先生から、日本もこうした施策について何かできないかというような御示唆もあった、こういうふうに理解をいたしましたけれども、こうした措置は、企業等の自由で円滑な経済活動を困難にし、国民生活にも様々な影響を及ぼし得るものであると考えます。やはり、ロシアと日本の国柄の違いということもこれはあると思いますけれども、必ずしも、今の日本にとってそうしたものが活用できるかというか、手本となるということになるかどうかということになりますと、それはなかなか難しいのではないか、そういうふうに思っております。

 しかし、円安の対応、これはしっかりやらなければなりません。

 政府といたしましては、投機による過度な変動、これは容認できないという立場であります。引き続きまして、為替市場の動向を高い緊張感を持って注視するとともに、過度な変動に対しましては適切な対応を取っていきたいと考えております。

末松委員 大臣、今やっていらっしゃるのは、為替で口先介入のような感じのことはやっているのは分かるけれども、もっと円安対策というのを政府全体でまとめてくださいよ。そうしないと、財務省の関係の本当に税金がどんどんどんどん流出していくだけなんですよ。まず元を閉めましょうよ。是非そこをお願いをしておきます。そういった対策をまとめるのを心から期待しています。

 あと、日銀の総裁についてですけれども、先ほど言った、イールドカーブコントロールで大体ゼロ程度に持っていくというのは、日銀のずっと、従来からの方向なんですけれども、こういうふうな、金融政策の幅がなくなって、ちょっと金利を上げれば、米国との金利の内外価格差がとんでもなく開いて、また更にドル高になるよとみんな言われているわけですね。だったら、そこで、こういうふうな金利についても、ほとんど金融政策がもう幅がなくなって何も手がない、そういうふうなことをしたのは、アベノミクスの、本当にそこは負の遺産だと思うんですね。

 先ほどから階委員もおっしゃられていますけれども、とにかく、日銀がそういう金融政策の幅をなくしたという責任をどう感じておられますか。

黒田参考人 最近の円安の進行が急速かつ一方的なもので、望ましくないと考えていることは申し上げております。日本銀行としても、政府とも緊密に連携しつつ、金融為替市場の動向や、その我が国経済、物価への影響を十分注視していく方針でございます。

 ただ、金融政策は、こうした為替相場の影響を含めた全体としての経済、物価情勢の評価に基づいて行うものでありまして、我が国経済はコロナ禍からの回復途上にある上、海外の経済、物価動向、ウクライナ情勢、内外の感染症の影響など、我が国経済をめぐる不確実性は極めて大きい状況にあります。

 また、消費者物価の先行きについては、来年度以降は、二%を下回る水準まで低下していくというふうに考えております。

 こうした状況を踏まえますと、現在は、経済をしっかりと支え、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を持続的、安定的に実現するために、金融緩和を継続することが適当であるというふうに考えております。

 イールドカーブコントロールは、あくまでも、金融緩和の方法というか、手段というか、そういうものでありますので、従来からイールドカーブコントロールについては必要な調整も加えてまいりましたけれども、現時点で、イールドカーブコントロールの下の、低位に安定しているイールドカーブを引き上げていくというのは適切でないというふうに考えております。

末松委員 私が問うたのは、そういった一般的な説明、能書きだけではなくて、こういうふうに、今上げることが適当でない、私もそう思うんですよ。でも、そういう形にならせたのは日銀の責任、政府の責任もありますよ、でも、日銀の責任じゃないですか。こういった膨大なマネーサプライをしてやってきた、その結果がそうなんでしょう。そういうことについて責任を問うたのに、それについては答えない。それはちょっと無責任というんじゃないですか。私は、あえてそう言わせてもらいますよ。

 時間がないので次に行きますけれども、今、先ほどあったルーブル建ての経済圏、あと中国の元建ての経済圏というのが拡大していると私は見ていまして、例えば、先ほどのロシア産の天然ガスのルーブル建ての取引とか、あるいは、サウジが今度、中国の元で、元建てで支払うというような構想が言われたり、例えば今年の二月に、インドが、ベラルーシの肥料のカリなんですけれども、これをインド・ルピー建てで百万トン購入するとか、いろいろな、ドル決済の支配構造が崩れてきているというのが私の認識なんですね。

 特に上海協力機構、中ロが推進をしてきて、さらに、それが例えば、クアッドのメンバーのインドとか、あるいは、パキスタンとかイランとかモンゴル、さらに、サウジ、カタール、エジプト、こういったものがどんどんパートナー化していって、メンバー化の方向に向かっている。そうなると、これは本当に、サウジなんかやったら、ちょっと私も驚いたんですけれども、これはバイデン米政権の失敗もあるとは思うんですが、こういうことがどんどん、ドル通貨建ての経済圏が縮小していけばいくほど、西側にとって非常に厳しいよねという話にはなるわけです。

 どれだけ厳しかったかというと、イラクのサダム・フセインが何の理由もなく攻撃されて、国が滅ぼされた。あれも、主因は、イラクの石油をユーロ決済でやろうとした、ドル決済から離れた、これが米国の勢力から敵視されたということもあるぐらいですから、そこはしのぎ合いになるんですけれども。

 そういった、中国とロシアがだんだんだんだん固まってきて、ユーラシアにおけるそういったドル経済圏じゃない経済圏が出てくるのは私は非常に懸念もしているんですけれども、その点について、もしコメントがあればおっしゃってください。なければ、私は次の質問に行きます。

鈴木国務大臣 上海協力機構のことについてお話しになられたと思いますが、これは率直に言いまして、政府としてもそうした動きを注視をしております。

 九月十六日、上海協力機構で首脳会合を開いて、中国やロシアを含めた加盟国間の貿易で自国通貨の使用を増やすことで合意した、こういう情報にも接しているところでございます。

 いずれ、こうした動きを注視しながらも、貿易決済の状況について、日頃より情報収集、これからもしっかりやってまいりたいと思います。

末松委員 とにかく、そこは注視するだけでなく、ちょっと戦略を日本として考えていただきたい、それを申し上げたいと思います。

 あと、それから、ちょっと話題を変えて、金融庁で、ユーチューブなんですけれども、若者に対する金融知識の普及ということで、有名なユーチューバーの西村博之さんを含めて様々なインフルエンサーが使われていると承知しています。

 例えば、西村博之さんについては、私も様々なユーチューブを見て、非常に彼は知的で優秀で鋭い人だなという感想を持っていますが、最近、沖縄の基地の問題で批判を浴びた人でもあります。

 私自身も、その情報をずっと、つぶさに見ました。これらの情報を見て、確かにそれぞれの言い分があるなというのは認識をしていますけれども、過去は過去として重く受け止めて、金融庁としても、今後は国民感情を踏まえて広報に努めてもらいたいと思いますが、そこを大臣の方から一言お願いします。

鈴木国務大臣 今回の対談の動画については、安定的な資産形成や金融リテラシーの必要性について広く一般の方に関心を持っていただくため、知名度が高くて、そして若年層を中心に人気のあるひろゆき氏に出演をしていただいたもの、そういう報告を受けました。

 そして、末松先生お話しのとおり、これに対してはいろいろな各方面からお話がございました。その中には、ひろゆき氏との対談動画を掲載しているということは、同氏の発言や活動を金融庁が支持することになっているのではないか、こういうような御指摘もございますが、もちろんそういうことは全くないわけでございます。

 金融庁の広報活動については、その効果だけでなくて、様々な御意見があるわけでございますので、そういうものを真摯に受け止めながら、改善すべき点は改善をしていくことが重要だと思っております。

 今後とも、こういうようなことを胸に置きながら、よりよい広報ができますように、不断の見直し等も行っていきたい、そういうふうに考えます。

末松委員 今、大臣のお言葉の中で、それを、一言で言えば、重く受け止めてこれからやっていきたいというお話がありましたので、そこはそのとおり、またよろしくお願いします。

 それと、最後の問題になるかと思いますけれども、インボイス問題なんですね。

 このインボイス問題については、コロナのこの不況下で、免税事業者に対して過度な事務負担を強いるということ、さらには、消費税負担の関係で取引から免税事業者が排除をされる危険性が高いという観点から、私もこの委員会で様々な質問を行ってきました。

 そして、立憲民主党として、インボイス廃止法案を三月に提出したところです。また、他の野党とも連携しながら、インボイス廃止、又は中止、又は延期の要請を政府に対して繰り返してきました。しかし、これらの要請を政府は無視してきています。

 最近では、福島県に見られるんですけれども、公的機関のビジネス上、インボイス未登録者を排除しようとした例が私は深刻だと思ったんですね。これに対しては財務省の方で是正はしてもらったんですけれども、私が要請したいのは、公的契約において、インボイス未登録者を差別したり、排除したり、こういったことをやることは許されないと思うので、そこは、大臣、しっかり御決意をお願いしたいと思います。

 さらに、公的な契約だけじゃなくて、民民の契約についても、いろいろな形のそういった差別とか、あるいは、何かビジネスをさせないような、そういう動きに対しては、しっかりチェックしてもらって、それをタイムリーに、そこはそういった注意喚起をしていただきたい、そのことを強く申し上げていますが、大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 先ほど、末松先生から福島の例が挙げられましたけれども、国、自治体の調達について、単に免税事業者であることのみをもって国、自治体が発注する入札に参加させないとするようなことは、これは全く適切でないと考えております。財務省、総務省から、その趣旨を各省庁や自治体に向けて周知をしているところでございます。

 引き続き、制度の円滑な移行に向けまして、関係省庁で連携しながら、きめ細かく対応してまいりたいと思っております。

末松委員 済みません、民民についてちょっと答えていませんけれども。

鈴木国務大臣 民間の取引につきましては、インボイス制度への移行によりまして、免税事業者がBトゥーB取引において不当に扱われるような事態を回避しなければなりません。

 免税事業者との取引について発注者側が独占禁止法、下請法等で留意すべき点をQアンドA形式で明らかにして、関係省庁から各事業者団体へ送付し法令遵守要請を行うなど、環境取引の整備に取り組んでいきたいと考えております。

末松委員 よろしくお願いします。

 質問を終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 立憲民主党の野田佳彦でございます。

 今日は大臣と総裁に質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 まずは、総合経済対策について簡単に御質問させていただきたいと思います。

 十月二十八日の臨時閣議で、三十九兆円規模の経済対策がまとめられました。それを受けて、約二十九兆円の補正予算の編成作業に今、財務省は取り組まれているというふうに思います。

 中身は出てからよく精査をしていきたいと思いますが、今日の段階で申し上げたいことは、先ほど同僚の階さんが、補正予算の規模がどんどん膨らんできていることに対して警鐘を鳴らしましたよね。私は大事な警鐘だと思うんですが、その中で、私は、まず予備費に絞ってお尋ねをしたいと思います。

 予備費は、憲法八十七条に定められた、予見し難い支出がある場合に、あらかじめ予算として計上することができるようになっています。でも、これがどんどんどんどんと今膨らみ続けてきている。膨らんでいるだけではなくて、補正があるたびに予備費を積み増したり、新規につくったりする。私は、これは濫用、多用だと思うんですね。

 これは、与党、野党関係なく、立法府にいる議員として、そこには危機を持たなければいけないと思います。政府のつかみ金じゃないですか、予備費というのは。政府に税金の使い方を白紙委任する額が増えていく、しかも、補正があるたびに積み増す。私は、これは財政民主主義に反すると思います。

 財政民主主義に反するだけではなくて、今回も、新型コロナ、物価高対策予備費を増やす、さらに、ウクライナ情勢対応予備費、それが突然一兆円出てきたんですね、最終盤に。これは、財政民主主義に反するだけではなく、規模を膨らますために使っているとしか思えないんです。たちが悪いですよ、これは。

 私は、その悪い癖を早く正さなければいけないと思いますが、大臣の御所見をお伺いいたします。

鈴木国務大臣 今般措置をしようといたしております予備費でございますが、これは、新型コロナの再拡大や物価の更なる高騰、さらに、ウクライナ情勢等に伴い発生し得る経済危機など、直面する難局に機動的、弾力的に対応するため、万全の備えとして講じるものでございます。

 その上で、野田先生から、予備費が濫用されるべきではないということの御指摘を受けましたが、その問題意識はまさに御指摘のとおりであると思います。

 ですから、その使用に当たりましては、必要性や緊急性等についてよく所管省庁との間で議論、検討を行った上で、憲法や財政法の規定に従って適切に使用を判断していくことが必要である、そういうふうに考えております。

 あわせて、予備費の使用につきましては、国会や国民に対して説明責任を果たしていかなければならないと思います。丁寧な説明に努めていくこと、これが重要でございます。これまでのコロナ、物価予備費では、決算委員会で報告をするとともに、予算委員会の理事懇で報告をさせていただいております。

 こうした点を踏まえながら、必要に応じて今般措置する予備費を適切に活用することで、国民生活と事業活動、これを守るために万全の備えを講じていきたいと考えております。

野田(佳)委員 多分、与党との交渉の中でそういう知恵を使わざるを得なくなったのかもしれないなと思いますけれども、先ほど申し上げたとおり、財政民主主義に反するとともに、規模を膨らますことに安易に使ってはいけないと思います。そこは、もっと財務省は、蛇蝎のように嫌われてもしっかりと矜持を持って働かなければいけないと私は思います。そのことを指摘をしておきたいと思います。

 こうして財政の規律がどんどん緩んでいく、財政の信認が失われたときにどうなるか。私は、今般のイギリスの状況をよく学ばなきゃいけないと思いますね。放漫財政に陥ったら、まさに金融市場が強烈な拒否反応を示すということがあるということが示されました。

 あのリズ・トラスさんが首相に就任したのが九月六日、僅か一か月半で退陣ですね。トラスが売りとしていたのは、トラスノミクス、低い税金で高い成長をということでした。それを具体的に減税として、大規模な財政出動をして具体化していこうとしたときに財源が不透明だった、それに対するまさにマーケットの強烈な拒否反応じゃありませんか。そのことを我々は他山の石としなければいけないと思いますが、大臣の御感想をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 まさに野田先生がおっしゃるとおりに、一たび経済財政運営に対する信認が損なわれますと市場が鋭く反応しかねないということ、これは、今回のトラス首相の退陣から得る一つの大きな教訓だ、そういうふうに思っております。

 日本の財政状況、これは英国よりも悪い、残念ながら悪いわけでありまして、このような状況を踏まえまして、日本の財政に対する市場からの信認が失われることがないように、財政規律をしっかり意識しながら責任ある経済財政運営を進めていくことが重要であると思います。そのためにも、歳出歳入両面の改革、これを進めまして、経済再生と財政健全化の両立、これを図っていくことが必要であると考えております。

野田(佳)委員 イギリスの場合は、マーケットが厳しいチェックをしたということですね。日本のマーケットメカニズムでそれができるのかなと私は心配しています。

 国債市場では日銀がモンスターのような存在になってしまっている。株式市場を見ても、ETFの購入で有力企業の筆頭株主が日銀などなど、マーケットメカニズムが利かない可能性があるとするならば、財政当局や国会がきちっと英国の状況を他山の石としてしっかりと踏まえていかなければいけないのではないかということを強く申し上げたいというふうに思います。

 その上で、とても今心配な円安について質問を移っていきたいと思いますけれども、九月二十二日に久しぶりに為替の介入を行いました。そして、十月も覆面介入をずっとやっていたということでございますが、私も介入をした経験があるので、多分、大臣の胃の痛くなるような気持ちはよく分かるつもりです。

 あの大臣の執務室にボードがあって、モニターがありますよね。為替の動向、株価の動向、金や石油、見ているときに、やはり、一本投入、二本投入、数字ががっと変わっていく。最初はいいんだけれども、途中からだんだん重くなってくる。投機筋が気づいて必死の抵抗をする、それを突き破れるか破れないか、胃の痛むような思いをしているというふうに思います。

 ある程度その問題意識は共有できるんですけれども、やはり単独介入には限界がありますよね。覆面はやったことがないので私は分かりません、どんなことなのか。でも、単独介入と協調介入だったら明らかに効果が違います。東日本大震災、発災した後の三月十八日に協調介入をやりました。そのときは、国際社会との連帯をマーケットに示すことができた。やはり、一定の効果がありました。

 今回、そうではない介入をする。しかも、円安というのは、ある意味、日米の金利差からすると必然じゃないですか。必然の状況だけれども介入をするという、何かちぐはぐ感ですね。

 改めて、今回の為替介入の意義と効果を是非御説明をいただきたいというふうに思います。

鈴木国務大臣 そもそも、為替相場は市場において決定されるというのが原則であります。そして、それが安定的に推移するというのが望ましい姿である、そういうふうに思っております。

 しかし、様々な要因で動く為替の相場でありますが、その一つとして投機が行われて、それによって過度な変動が起こる。それは、家計やあるいは企業のこれからの計画等についても大変悪影響が及ぶわけでございますので、そうした急激な変動、投機によるもの、これはもう容認することができないと考えています。

 先般の為替介入、九月二十二日と十月にも行ったわけでございますが、これは、こうした考え方の下、投機的な動きも背景に急速で一方的な動きが見られる中で実施したものであります。投機による過度な変動に対し適切に対応するという観点から、一定の効果があった。今でも市場では介入に対する警戒感というものが常にあるのではないか、そのようなものも一つの効果ではないかと考えております。

野田(佳)委員 先ほど東日本大震災直後の介入のお話をしました。あのとき協調介入できたのは、特にアメリカがよく理解をしてくれて、ほかの各国の財務大臣、中央銀行総裁にも電話もして根回しをしてくれたりしました。本当にありがたかったんですね。

 やはり単独では限界があるし、しかも、先ほど、御説明の中に、過度の変動に対する対応ですね。もちろんこれは、ある種、国際社会のルールです。過度な変動があるか、無秩序な動きがあるかどうか。一定の相場を狙ったやり方ではなくて、過度な変動に対する動きという位置づけですけれども、今の円安というのは、過度な変動だから問題ではなくて、私は安定的に円安になっていくことも問題だと思っているんです。

 安定的に円安に動いていくことを大臣はどういうふうに認識をされていますか。

鈴木国務大臣 今、一番円安で日本経済に影響を与えているのはやはり物価高の問題である、こう思います。現状の物価高、ロシアのウクライナ侵略によって国際的なエネルギー、食料価格等が高騰しているということに加えて、やはりこの円安が大きな影響を与えていると思います。春先には、よく物価高騰の、何といいましょうか、背景を、三分の一が円安で三分の二は国際価格の上昇によるもの、こう説明しておりましたが、今は大体、半分半分になっているんだと思います。

 そういうことを考えますと、やはり、今気をつけて見なければいけないのは、円安によります輸入物価の高騰、これが国内のインフレを高める要因になるということでございますので、そういう意味におきましては、安定的といいますか、ゆるゆるとした円安に進むということも、これは大変懸念をするところでございます。

野田(佳)委員 重大な御指摘だと思います。過度な変動だけではなくて、安定的に円が安い方に流れていくことにも懸念を持つということです。私、これは黒田総裁と全然違うと思いますよ。

 黒田総裁は、春先まで、円安は日本経済にとってプラスという言葉を言い続けて、構造的に円安になっている上に、円安に向けての私は口先介入をしてきたと思っています。今も、恐らく、過度な変動は駄目だとおっしゃっていますけれども、円安が安定的に推移していくということについては否定はされていないというお立場だと私は思います。

 ここは大臣と総裁の違いがあるんじゃないかと思いますけれども、これはちょっと通告していませんでしたけれども、大臣からそういうお言葉があったので、総裁のお考えをお聞かせください。

黒田参考人 これは、G7での合意、あるいはG20でもそれが裏打ちされておりますけれども、基本的に為替相場は経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましい、そうでないような場合に単独あるいは協調で介入するという考え方であります。

 その場合の、ファンダメンタルズを離れて急激に変動するというのは、ファンダメンタルズは普通急激に変動しませんので、急激に変動すること自体がファンダメンタルズに反している、投機が含まれているのではないかということで、介入が当然視されるわけですけれども。

 ファンダメンタルズを反映しているかどうかという点は、これはなかなか難しい点でありまして、御指摘のように、急激かつ一方的な変動は恐らく投機によるものですから、それに対応、対抗して介入するというのはG7、G20でも当然視されているわけですから、ファンダメンタルズを反映しないで、しかし緩やかに変動していくという場合にどうするかというのはなかなか難しいところであります。

 急激な変動の場合には、当然介入が正当化されるんですけれども、緩やかに変わっていくときには、これがファンダメンタルズと反しているかどうかというのはなかなか言い難いというところで、御指摘のように、なかなか難しい問題だと思います。

 ただ、一方で、最近の、特にロシアのウクライナ侵攻後の為替の動向を見ますと、いわばドルの独歩高になっていまして、ドルは、実は、ユーロに対しても、ポンドに対しても、人民元に対しても、ほとんどあらゆる主要通貨に対して大幅に強くなっております。

 したがいまして、二国間の名目金利差だけでなく、かなりの点が、米国経済が極めて強く回復しているということとか、米国の株式とか不動産の資産価格が高位にとどまっているとか、さらには、一部の人は、地政学的な米国の優位性というものが考えられてドル独歩高になっているとか、いろいろな説がありますので、そういう面からいうと、それ自体いつまでも続くと思えませんから、一時的なものかもしれませんが、今のところは、全ての通貨がこの半年ぐらいで相当弱くなっているということを、一時的なというか、急激だというふうに見ていいかどうかというのは議論のあるところだと思います。

 議論のあるところだと思いますが、私自身は、ウクライナ侵攻後の現象として、やはり、ファンダメンタルズを反映したというふうに言えない面もあるというふうに思います。これは、委員御指摘のとおり、なかなか難しい問題だというふうに思います。

野田(佳)委員 難しい問題じゃなくて、緩やかでも円安の方に流れていくことがいいかどうかの価値判断の話をしていまして、私は、大臣の御認識の方が正しいと思いますよ。ファンダメンタルズの関係だけで今おっしゃっていますけれども、だんだんだんだん円が弱くなっていくということは、間違いなく国力の低下であるという危機感を持たなければいけないんです。それがちょっと足りないですよ、総裁は。

 ということも含めて、私は大臣の御認識は正しいと思うので、その認識の下でこれからも是非、政策遂行していただきたいと思いますが。

 今、総裁からドルの独歩高の話がありました。独歩高になったやはり大きな要因は、あのジャクソンホールの会議。あのときのパウエル議長の、本当は講演時間三十分だったのに、八分でやったでしょう。景気が悪くなってもインフレ退治の方が大事だ、やり切るまでやり抜くという端的なあのメッセージ。これは相当な覚悟を持ってアメリカはやってきていると思いますね。

 その前は若干、日本の円の独歩安の感があったんだけれども、あれからまさにドルの独歩高であって、おっしゃったように、あらゆる通貨が今、困っています。その困っていることをG7やG20でも議論があったと思いますし、G7ではコミュニケも作っていますね、共同声明。もっと国際社会のこと、各国の状況をよく考えてくれよというメッセージだったと思うんですが、残念ながら、例えば、バイデン大統領は、ドル高を懸念していない、問題は他国の経済成長や健全な政策が欠如していることだとまで言い放っているんですよ、言い放っている。

 私は、国のトップが余り為替に言及すべきではないと思います。アメリカなら、財務長官イエレンさんでとどめるべき。イエレンさんと鈴木大臣がコミュニケーションを取っていくべき。トップがドル高容認論をこんなきっぱり言っちゃったら、せっかく国際社会が心配して、G7で共同声明をやったでしょう、壊れちゃいますよ。

 やはりそこは、イエレンさんを通じてしっかり鈴木大臣から、大統領の物の言い方、気をつけろと言った方がいいんじゃないですか。どうでしょう。

鈴木国務大臣 先ほど協調介入の話がございまして、やはり、G7のみならず、多くの国々の理解の中で、でき得れば同じ行動を取っていただくということが大事、その少し手前に、理解をしていただくということがあるんだ、そういうふうに思います。

 今のアメリカの急激な金融引締め、これについては、もう各国が様々な面でいろいろな影響を受けております。例えば、中進国等から資金が流出をする、これはもう通貨危機にもつながるおそれがありますし、また、ドル建てで行っております債務、これも借金が増えていく、そして、日本も直面しているわけでありますけれども、円安にも影響を与える、こういうようなことでありまして、こういうような急激な金融引締め等に対する国際的な波及効果につきましては、先般開催されましたG7あるいはG20でも議論になったところでございます。

 私からは、為替の変動が急激に高まり、極めて憂慮していること、G7等で合意されたとおり、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得るもので、インフレ、資本フロー、債務問題等への影響を注視し、適切に対応する必要があることなどを説明したところでございます。

 それを受けていただきまして、G7声明やG20議長総括では、多くの通貨がボラティリティーの増加に伴って大幅に変化していることを認識しつつ、これまでの為替相場のコミットメントを再確認する、それから、中央銀行は各国間の波及効果の抑制にも配慮しつつ、金融政策の引締めペースを適切に調整するということを確認することができたわけであります。

 しかし、G7あるいはG20でこういうことが確認されても、それが実際に動き出して意味があるんだと思います。そういう意味におきまして、野田先生が御指摘の、ある意味、日頃の連携は取っておりますけれども、外交的なことによって、実際に書かれたことが動くようなことに持っていくということ、その重要性は、私も共通して持っております。

野田(佳)委員 時間が足りなくなってきました。

 アメリカの大統領発言だけじゃなくて、我が国で一番心配しなきゃいけないのは黒田総裁の御発言でございまして、発言があるたびに円安に振れていくということが大事な局面で続いておりますので、今日はあえてお尋ねしますが、お答えの中ではよく言葉遣いに気をつけていただかないと、この国会での答弁でまた円安が進むというのも私は望んでいませんので、よく注意してほしいと思っているんですが。

 まず、九月二十二日の記者会見、当面金利を引き上げることはないと発言した途端に円安が進んだんですね。しかも、その当面というのは、後の方の質問で、金融政策の変更は、数か月じゃなくて二、三年だという言い方をされていました。

 私は、黒田さんが二年、三年と言っても余り信用できないんですよ。物価二%目標を二年と言っていたのが、十年かかって未達でしょう。更に二年、三年と軽くおっしゃっているけれども、もう御自身の任期が終わった後じゃないですか。御自身の任期が終わってまで言及されるというのは、幾ら何でも越権だと思いますよ。

 ということを含めて、まず、二十二日の発言を私は反省してほしいと思いますが、いかがですか。

黒田参考人 御指摘のこの記者会見では、その時点で二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現する見通しとはなっていないということから、当面金融緩和を継続することになるという日本銀行の金融政策運営の考え方を申し上げたわけでありまして、任期を超えた期間の政策運営に対して何らかの影響を及ぼす意図で発言したものではございません。

 もとより、毎回の金融政策決定会合において、その時々のデータを集約して、先行きの経済、物価見通しとリスク要因を点検して、適切な政策判断を行っていくということに変わりはありません。

野田(佳)委員 もう一つ、これも大事な節目で、政府が物価高対策を含んだ総合経済対策を発表した日の総裁の記者会見ですが、一番、会見の終了間際に、為替の水準についてとやかく申し上げるつもりはないが、むしろ円高で非常に困ってきた歴史は日本は持っていると。とやかく言っちゃっているんですよ、とやかく。このときも円安に振れましたね。要は、円安容認論のように受け止められたんです。発言は本当に注意してもらわなきゃいけないと思いますよ。

 市場との対話というのは、私は、猛省をし、情報発信の在り方というものを再考すべきではないかと思いますが、いかがでしょう。

黒田参考人 御指摘の記者会見では、同日公表された展望レポートにおいて、二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現する見通しとはなっていないことから、当面金融緩和を継続することになるという趣旨で申し上げたわけですが、もちろん、為替政策は財務大臣の所管でありまして、私の立場で為替相場に影響を及ぼす意図は全くございません。その意味で、野田委員の言われる、発言に十分注意すべきだという点はよく理解いたしました。

野田(佳)委員 御理解いただいてありがとうございます。

 質問を終わります。

塚田委員長 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。立憲民主党の原口一博です。

 この財務金融委員会、当選以来ずっと委員であったんですけれども、しばらく離れていました。ホームに帰ってきました。

 大臣にまず、皆さんに報告をしたい。タイから帰ってきたんですよ。APPF、これは中曽根総理がおつくりになったアジア太平洋の枠組みで、今年三十回なんですが、その中で、やっと二回目、拉致の文言が入りました、共同コミュニケに。党は違いますけれども、山口壯さん、松川るいさん、新妻秀規さん、そして中曽根康隆さん、心から誇りに思います。何と、ニュージーランドやカナダ、あるいは、オーストラリアはもちろん、韓国も中国も応援してくれたんですよ。そして、入ったんです。

 冒頭、ちょっと大臣に、さっき末松議員が質問したことで、関連してお願いがあるんです。北朝鮮のGDPというのは日本の小さな県ぐらいしかないんですよ。それが、なぜ、こんなにミサイルも核も開発し、我が国の大切な人たちを拉致できるか。お金がどこから行っているかということを私はずっと調べてきました。朝銀に、一兆四千億、公的資金を入れたんですよ。だけれども、朝銀で関連で捕まった人はたった五人ですよ。どれだけ返ってきましたか。この委員会でも何回も追及したけれども、どうも追い切れない。さっき、旧統一教会の話がありましたが、調べてほしいんですよ。調べてほしい。日本人の働いたお金がその原資になっているなんというのはあり得ないということをまず申し上げたいと思います。

 さて、今日は、各議員が言っているように、財政規律、それから、私はそれにもうちょっと踏み込んで、財政運営の規律について言ってみたいと思います。

 財務省、大丈夫ですか。財務省、何かもう変わっちゃったんじゃないかと思うんですよ。元々、総理の所信をやって予算委員会が開かれなかったことはないですよ。おかしいでしょう。G20、鈴木大臣、私も昔からずっと御一緒でしたから言いにくいんだけれども、本来行くはずなかったでしょう。すぐ予算委員会のはずですよ。なぜ行かれました。クロノ・コントロール、財務省はちゃんとやっていますか。恐らく、ボラティリティーがここまで広がれば、介入していいじゃないですか、財務省設置法の中に書いてあるわけだから、通貨の信認をしっかりと守るということを。しかし、それで何かあったんでしょう。だから鈴木大臣は行かざるを得なかった。財務省、大丈夫ですか。もう、何というかな、緩みまくっているんじゃないか。

 その典型が、皆さんのお手元の資料一を御覧になってください。さっき野田さんが言った、一般会計予備費の推移です。補正予算の立て方もそうなんだけれども、この予備費の立て方がもうでたらめになってきている。新型コロナウイルス感染症予備費、このとき私も国対でしたから、安住君とそれから太田君の間で、次官の間で、鉛筆で書きながらミシン目を入れていたのを知っていますよ。だけれども、それをいいことに、今度は一般予備費の積み増し。そして、二ページを御覧になってください、こんな形で焼け太っているわけです。

 ところが、私、この間まで決算行政監視委員長だったから、とんでもなく許せぬと思っていたのが、十一ページ。御覧になってください。

 これは、一般会計の不用額、繰越額、それから当初予算、補正予算。さっき階さんが言いましたよね。これ、当初予算を予算編成している意味がなくなっているじゃないですか。補正で後でどんと積んで、そしてその中身を積み増して予備費でやって、そして、その予備費はどうなっているかというと、繰越し、不用ですよ。そして、使っているのが分からぬと。

 これは反省すべきだというので主意書を出したんですけれども、大臣、締めませんか、これ、財務省を。こんなことをやっていたら、財政運営の規律がなくなってしまうんです。御答弁をお願いします。

鈴木国務大臣 財務省の職員の皆さん、次官以下、大変に頑張っていただいている、そういうふうに思っております。

 今、原口先生から、財務省、最近の予算編成の在り方とか予備費の問題、あるいは繰越し、不用が出ている問題等で、大変に厳しい御指摘もございました。そういうような御指摘はしっかりと受け止めていかなければいけないと思っております。

 私どもとして、やはり、国の信頼、その礎は財政にあると思っております。財政を預かる財務省の大臣という立場でございますので、これからも、そうした緩みがあるとか、そういったところを御指摘を受けないように、まずはしっかりと財政再建、財政規律の旗を降ろさずに頑張っていきたい。

 御激励をいただいた、お叱りをいただいた、そういう思いで、今お話を伺ったところでございます。

原口委員 私は、財政規律の前に財政運営規律を言ったんですよ。運営の規律なんです。

 財務大臣は、この一連の政府の対応は適切であったと認識されているか。これは、自民党や公明党の皆さんも、昔の委員だったら多分許さないですよ、こんなことは。だから、どなただったかな、伊吹議長でしたか、警鐘を鳴らされていませんでしたか。

 ちょっと、その中の幾つかを聞きますが、政府が三・五兆円の予備費の使用を決定する一か月前に私たちが国会召集要求書を提出して物価高等の対策の必要性を指摘しているのだから、憲法が定める予備費の要件である予見し難い予算の不足に充てるためとは言えず、補正予算を編成する時間も十分あった。しかし、予備費でやっているんですね。また、臨時国会召集要求書が提出され、放置しておきながら、多額の予備費を使用決定した直後に臨時国会を召集する。これはまさに国会軽視と言わざるを得ないです。

 今回、ちょっと一つだけ聞きますよ。先週決定された、さっき野田さんが指摘したところですね、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費、仮称を創設するとしているけれども、五月の補正予算で使途を拡大した新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費と、これはどこが違うんですか。どこが違うんですか、教えてください。

 何かウクライナは寒いから援助が必要だと。日本の国民はどうなっていますか。子供食堂に列を成していますよ。これはどう違うのか、教えてください。事務方でもいいですよ。

鈴木国務大臣 コロナ、物価予備費と、それからウクライナ情勢経済緊急対策予備費、これは仮称でありますが、これのどこが違うのかという御質問であったと思います。

 まず、コロナ、物価予備費につきましては、今般の経済対策におきまして、今後への備えとして、新型コロナの感染拡大や物価高騰に引き続き万全を期すべく金額を増額することとしたものであります。そして、仮称ウクライナ情勢経済緊急対応予備費は、これは、世界的な景気後退懸念が高まる中で、ウクライナ情勢その他の国際情勢の変化、これはなかなか、この先、ロシアの侵攻がどうなっていくのか見通しがつかない、予断を持って何か定めるということができないというような状況の中におきまして、コロナ、物価予備費とは別の観点から機動的、弾力的に対応するために創設をすることとしたものであります。

 これらの予備費をそれぞれの予備費の趣旨に照らして適切に活用することで、国民生活、そして事業活動、これを守り抜くために万全の備えを講じてまいりたいと考えているところでございます。

原口委員 いや、それがいかぬと言っているんですよ。予測できないことというのは世界でいっぱい起きますよ。

 ウクライナについて言うと、昨日も日・EU議員会議で議論しましたけれども、あれだけの予算、レンドリースで兵器をやっていたら、アフガニスタンはどうなりましたか。後で何を私たちは困りましたか。刀狩りでしょう。装備品、武器が本当の正規の軍隊にだけ渡るとは限らないんですよ。横流しされるんですよ。そして、何年も何十年もつらい思いをするわけです。

 今回はまさかそういうものではないんだけれども、しかし、こういうやり方をやる一方で、今度、基金。基金もやたらとつくっているわけです。私たちからすると、安倍内閣や菅内閣の方が懐かしい。彼らの方がまだ財政運営規律があった。基金というのをつくって、今度外出しして、そこでもってまた自分たちのポケットをつくっているわけですよ。このやり方を、大臣、あなたがやめろと言わなきゃいけないんですよ。私が財務大臣だったら絶対許さない。どうぞお答えになってください。

鈴木国務大臣 もちろん、基金が必要性がないものにもかかわらず次々につくられるということ、これはもうあってはならないことであると思います。常に、今ある基金の必要性、それがどのように政策効果を上げているのかどうか、そういうこともしっかり検証をしながら、不要なものはもちろん不要として処理しなければならない、そういうふうに考えます。

原口委員 本当に不要なものが出ているか。

 私たちは、それこそ階さんがやってくれたんですけれども、例えば情報通信関係費だけで、私たちが政権のときですよ、四千五百億あったんです。その中にはレガシーと言われるものがいっぱいあって、何と、どこの省とは言わぬけれども、PCの何とか98とかを使っていたんですよ。もう信じられないようなことがいっぱいあって、半分に減らしたんですよ。

 ペイ・アズ・ユー・ゴーをやったらどうですか。財源がない、財源がないと、さっきイギリスより大臣は日本の財政が悪いとおっしゃいました。

 これは事務方で結構ですから、日本のグロスの債務とそれからネットの債務は幾らですか、教えてください。通告していますよ。

塚田委員長 速記を止めてください。

    〔速記中止〕

塚田委員長 速記を起こしてください。

 鈴木財務大臣。

鈴木国務大臣 債務残高の国際比較でございますが、まず、日本は、グロスでいいますと二三五・四%、ネットでいいますと一五〇・八%という数字が手元にございます。

原口委員 今のは比率をおっしゃったので。額ですね。多分、対GDPの比率をおっしゃったんだと思うけれども。

 実際に日本は、グロスの債務とネットの債務、それから、七ページを御覧になってください。私たちは、財政を健全化しなきゃいけない、財政のサステーナビリティーを多くの国民や世界のマーケットにも知ってもらわなきゃいけない。そのときに、この七ページ、これは財務省の資料ですよ、財務省の財務書類。つまり、財務省、私たちが扱うのは大きく分けて三つですね。一般会計。特別会計、母屋でおかゆをすすっているのに離れですき焼きと言ったあの特別会計ですよ。それから、政府関連予算。そして、世界に対して、我が国は、日本は世界最大の債権国、貸し込んでいるわけですよ。その貸し込んでいる資産と、それから、年間のまさにこの貸借対照表ですね、それを見なきゃいけないんですよ。

 ところが、一般会計という、簿記の世界でいうとPL、それだけを見て、そのフローだけを見て財政が悪いと言っている、それが間違いなんです。だから、私、今日、久々に戻ってきたので皆さんにお願いをしたいのは、一部でもってひっくり返るのはやめてほしい。

 我が国が今こういう状況になっていますね。これは、皆さんのお手元の資料の三ページ目、ドル換算のGDP増加率です。一九九五年は、これは特殊な年なので、ドル換算でやるとちょっとアンフェアだという批判が来るので、四ページと五ページ、これが自国通貨建ての一人実質GDPと、それから自国通貨建ての実質GDPの増加率です。御覧になってください、日本。一九九五年には、日本の世界のGDP比率は一七・五%ありました。今、五を切っていますよ。中国のGDPは日本の四倍、アメリカは五倍、どんどん広がっているんです。なぜこんなふうになったか。

 ちょうどこの頃、私は、鈴木大臣と自民党の宏池会で議論をしていましたね。急に引き揚げちゃ駄目だ、お金を引き揚げちゃ駄目だ、我が国はイギリスやアメリカと違うんだ、イギリスやアメリカのようなインフレの国と違うんだから急にブレーキをかけちゃ駄目なんだ、市場から不良債権処理で二百兆も三百兆も一気に引き揚げちゃ駄目なんだ、インフレの国の政策をデフレの入口にいるかも分からない日本でやっちゃ駄目だというのを、大臣、一緒に御議論したのを覚えておられませんか。横に総理がおられましたよ。

 私は、その後、自民党を出て、もう一つの政権政党をつくるということでやってきたけれども、志は同じでしょう。この三十年、こんなことで次の子供たちに日本を引き渡せないじゃないですか。

 これはなぜこうなったか、まず原因を教えてください。

鈴木国務大臣 過去三十年、日本のマクロ経済が衰退をしてしまっているということについての御指摘でございましたが、その認識につきましては、バブル崩壊以降、我が国では、生産年齢人口が減少する中で、企業は投資や賃金を抑制をして、そして、消費者も将来への不安などから消費を減らさざるを得ず、その結果として、需要が低迷をしデフレが加速をするという悪循環、これが生じたことで日本経済は低成長が続いてきたんだ、そういうふうに承知をいたしております。

 こうした状況に対しまして、アベノミクスなど大胆な経済政策を強力に推進することによりまして、デフレではないという状況をつくり出し、GDPや企業収益、さらに雇用環境も改善をされてきたものと考えております。

 今後の対応と申しますか、今後ですが、岸田内閣におきましても、こうしたアベノミクスの成果の上に、新しい資本主義の下、官と民が協働して成長と分配の好循環を生み出してまいりたいと考えております。

 今般の経済対策におきましても新しい資本主義を加速する施策を盛り込んだところでありますが、財務省としても、引き続き、関係省庁と連携をして、予算、税制、規制改革といったあらゆる方面の政策を動員して取り組んでいきたいと考えているところでございます。

原口委員 よく、最初おっしゃったように、少子化、それを言う人がいるからこのグラフを出しているんですよ。この一番左の方を御覧になってください、皆さん。左の方のこのバルト三国、これは全部少子化の国ですよ。リトアニア、ラトビア、エストニア。私も、旧ソ連が崩壊したときに、この国々に、今日、今ちょうど佐賀ではバルーンフェスタをやっているんですけれども、パイロットが来られていて、そして、食料も買えないような状況だったから米を送ったんです。そこからのつき合いですね。三十年、四十年のつき合いです。ここ、少子化なんです。だから、少子化を理由にしちゃいけないんです。

 今、アベノミクスとおっしゃったけれども、十ページを御覧になってください。結局何をやったかというと、付加価値に増税をしてしまうから、そのたびに、御覧になってください、この労働者の実質賃金、実質賃金が、二〇一三年にはマイナス四・七、二〇二一年にはマイナス八・六です。あのけしからぬ論文を書いた矢野君ともずっと話していたけれども、間接税を一%以上、二パーも三パーも一気に上げる国はないんですよ。よその国の間接税、これは付加価値税じゃないですよ、付加価値税じゃないにもかかわらず、中央値は一なんですよ。物すごいインパクトをやっている。

 投資が来ないと言っているけれども、来ないはずですよ。だって、緊縮で増税をやる、そして消費に直撃する、じゃ、そこに投資するかと。昨日経団連の皆さんと話しましたけれども、それは、伸びる経済にしか投資せぬでしょう。皆さん、ここに投資しますか。こっちでしょう。だから、企業のせいにしちゃいけないんですよ。財政運営を変えぬといかぬ。

 そして、もう一個。さっきイギリスより悪いとおっしゃった。もう、数字、出たでしょう。グロスの債務とネットの債務を今待っているのよ。

 じゃ、各国のCDS、日本のCDSは幾らですか。

齋藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 我が国のCDSのスプレッドの水準でございますけれども、直近ですと、およそ三〇ベーシスポイント程度ということでございます。この水準は、他の主要先進国、具体的にはアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスといった国々の水準と同程度となっていると承知をしております。

原口委員 あなたが有名なミスター日本国債とかいう人ですか。そうですね。十五年前はここでミスター円と議論していたので、今度は日本国債と議論するとは思いませんでした。

 じゃ、ミスター日本国債、日本は、さっき、財政、極めて厳しいと財務大臣はおっしゃったけれども、国債の信認は揺らいでいますか。

齋藤政府参考人 お答えを申し上げます。

 今先生から御指摘いただいたCDSスプレッドという観点から見れば、日本の国債あるいは我が国財政に対する信認というものは欧米主要国と同程度というふうに言えると思いますが、これは、プライマリーバランスの黒字化という財政健全化目標の堅持を含めた、財政政策の基本的なスタンスというものに対する評価も反映したものというふうに考えております。

 私どもとしては、今後とも、日本国債また我が国財政に対する信認が確保されるよう努めてまいりたいと存じます。

原口委員 あなた、本当にミスター日本国債ですか。プライマリーバランス、黒字化していないでしょう。二〇二五年でしょう。今は二〇二二年じゃないですか。

 さっきから何回も言っているけれども、PLだけ見るなと言っているんですよ。私もずっと、最初の十五年ぐらいは、財政をいかに健全化するか、ペイ・アズ・ユー・ゴーで、増えた分は全部削らなきゃいけないとずっと思っていたんですよ。でも、何と日本の財政は均衡しているか。日本という国は、例えて言うと、時速千キロで走るような、飛ぶような、そういう飛行機だったんです。しかし、そこに急なブレーキをかけ、そして、レーガン改革かサッチャー改革か分からぬけれども、よその国のものを、舶来のものをこの国に入れ、そして構造改革という訳の分からぬことをやり、強いところをますます弱くし、それが今じゃないですか。何で世界の一七%もあった国が、こんな衰退の一途をたどるんですか。それは、我が国の力を見誤ったからじゃないんですか。我が国が本来持っている力をもっと出せばよかったんじゃないんですか。

 じゃ、この労働者の実質賃金がなぜこんなに下がっているか。さっきからずっと、大臣、お答えになっていますね。賃金が上がるような、そういう好循環をやって、それが岸田内閣の経済政策だと。だったら、この実質賃金がなぜ落ちたかということが分からなければ、答え、できないでしょう。だって、これは十年も二十年も三十年も前の話じゃなくて、この間のことだし、今も起きていることですから。

 この実質賃金がなぜ低下したか、教えてください。

鈴木国務大臣 最近伸びていないのは、やはり物価上昇があるというふうに考えておりますけれども、過去三十年を振り返ってみますと、先ほどの答弁のままになってしまいますけれども、バブル崩壊以降、我が国では、先生は人口減少のことは触れるなというお話でございましたけれども、生産年齢人口が減少する中で、企業は投資や賃金を抑制をして、消費者も将来への不安などから消費を減らさざるを得ずに、その結果、需要が低迷してデフレが加速をするという悪循環が生じたことで、日本の経済は成長が低まり、その中で賃金が上がらなかったもの、そのように考えております。

原口委員 いや、だったら、今からも同じことじゃないですか。

 アベノミクス、安倍総理ともずっと議論してきましたけれども、ブレーキとアクセルをずっと踏み続けたんです。さっき階さんが言ったように、中央銀行のバランスシートをどんどんどんどん広げて、そして中央銀行のバランスシートがECBやFRBに比べても過大になったんだけれども、しかし、使えるお金が外に出ていかなかったんですよ。そのことが問題なんじゃないんですか。

 それから、六ページを御覧になってください。これは、財務省の、よく出てくるワニの口ですね。「借金で穴埋め」って、こういう不正確な書き方はやめた方がいいですよ。

 私は、ちょうど当選二回のときに、宮沢財務大臣にお願いして、財政の後年度負担試算というのを作っていただきました。そのときは、財務省の皆さんがえらい協力してくれましたよ。だって、経済成長がどれぐらいで、後年度の負担がどれぐらいか分からなければ、私たちは政策の判断材料がない、だから、それをやったんです。そうしたら、宮沢総理の、当時財務大臣の答え、財務大臣、何だったと思いますか、私に。そういうものを作っても、そこだけ見ても意味がありません、原口一博さんはお勉強がお好きだから、お好きであればお作りしますがというお答えだったんです。何を言っているんだ、財務大臣がと思ったんですよ。

 でも、今となれば、よく分かりました。そこだけ見るなということなんです。そこだけ見るな。つまり、さっき申し上げた、一般会計のフローだけ見て、PBの黒字とかそういったところだけやると、全体が分からない。この七ページ、つまり、我が国が持っている資産、我が国が持っている力、世界に対して預けている債権、ストックとフローを全部見てからやりなさいという話だったんですね。

 もう時間が来ましたから、これで結びにしますが、私たちは財政再建をしなきゃいけない、そして財政規律も取り戻さなきゃいけない。そのためにも、鈴木大臣、財務省を締め直していただきますようにお願いをし、質問に代えたいと思います。

 御清聴、ありがとうございました。

塚田委員長 次に、福田昭夫君。

福田(昭)委員 立憲民主党の福田昭夫でございます。

 今国会から財務金融委員会で仕事をさせていただくことになりましたので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今年は、太平洋戦争で無条件降伏してから七十七年目だそうであります。今、我が国は、私は戦後最大の危機にあると思っております。解決すべき課題はたくさんありますけれども、喫緊に対応しなければならない課題は二つだと言われております。一つは、外国人労働者の待遇改善も含めて少子化対策だと思います。もう一つは、財政危機です。

 今、私どもの委員が、階先生を始め、皆さん四人とも、その指摘をされておりましたけれども、財政立て直しをしなければ、私は、日本は世界の五流国になってしまう、そういう心配をいたしております。

 そこで、その点を踏まえて、鈴木財務大臣と黒田日銀総裁にお伺いをいたします。是非簡潔にお答えいただきたいと思っています。

 まず、日本経済の現状についての鈴木大臣の認識をお伺いしますが、その前に、是非、資料の一と二を御覧ください。

 資料の一は、まさに少子化がいかに、どう進んできたかというのをお示しをしました。平成元年、消費税をつくった年が一・五七ショックと言われました。そして、昨年が何と一・三〇ショックと、どんどんどんどん人口は、生まれる数が減って、また働き手もいなくなっている、そういう状況であります。

 資料の二を御覧ください。資料の二は、今、原口委員からも出ました、財務省が作った、まさにワニの口であります。平成元年が消費税三%をつくった年であります。九年が五%、そして二十六年が八%、そして令和元年が一〇%と八%にした年であります。

 これを見ていただければ分かりますように、消費税をつくってから、どんどんどんどんワニの口はだんだんだんだん大きくなってきたということであります。これをしっかりどうやって直すかというのが大きなポイントになるかと思っております。

 そこで、大臣の所信を読んでみますと、足下という言葉は入っておりますけれども、何か、外的な要因で、今それが一番日本経済の大きなリスクだというように書いてありますけれども、そうじゃないんじゃないかと私は思っております。そうじゃなくて、内部の要因で、国内の要因で大変なリスクに陥っている、危機に陥っている、こう思っておりますが、大臣の御所見をお伺いします。

鈴木国務大臣 福田先生から、今の危機につきまして、少子高齢化とか、あるいは財政危機というものがあるんだということを指摘をされたわけでございますが、私も、先生の御指摘のとおり、生産年齢人口の割合の減少とか高齢者人口の割合の拡大といった少子高齢化に伴う人口構成の変化、これは日本の経済が抱える大きな課題である、そのように認識をいたします。

 また、日本の財政状況につきましては、これまた御指摘のとおり、歳出が歳入を上回る状況が続いておりまして、債務残高が累増いたしております。

 その要因の一つとして、日本の社会保障制度におけます受益と負担のバランスが不均衡な状態にあることが挙げられ、今後も、支え手の減少による財源の縮小と高齢化による社会保障給付費の増加、こういうものが見込まれるところでございます。

 こうしたことを踏まえますれば、現下の人口構成の変化に対応いたしました社会保障制度への改革などを通じた財政健全化と経済再生の両立、これを実現し、次の世代につないでいくこと、これは我々の責任だ、そのように考えているところでございます。

福田(昭)委員 大臣、申し訳ありませんが、もう少し短く答えてください。

 二つ目は、私は、大きなリスクはやはりアベノミクスの三本の矢だと思っています。これが今まで積み重ねてきた負の遺産が大変重いおもしになってきていると思っています。

 私は、元経済再生担当大臣であった甘利大臣と、アベノミクスが始まった頃、内閣委員会で一時間、議論しました、アベノミクスがとんちんかんだという話をですよ。一本目の矢の金融政策と二本目の矢の財政策は全くあべこべだ、大胆にやるのが実はあの当時、財政政策で、金融政策は、民間企業、お金余りでしたから、三本目の矢の民間主導の成長戦略をやるんだったら、民間の経済活動が活発になって、お金が足りないといったら金融緩和をするんじゃないですか、こういう指摘をしましたが、甘利さんからは返事がありませんでした。

 そして今、まさに民間主導の成長戦略も、よくよく考えてみますと、私は、政府の手厚い保護政策、これが余りにも行き過ぎて、民間企業の実は付加価値を高めて労働生産性を上げる力が低下していたのではないかという指摘がありますが、そういうふうな思いでおります。それは、具体的には、円安政策だったり、あるいは優遇税制であったり、あるいは非正規社員への置き換え、こうした手厚い企業に対する保護政策、これが本当に企業が頑張るという力を弱めてきたのではないか、こう思っております。

 そんな中で、アベノミクスは失敗だと言う学者やエコノミストがだんだん増えてきております。

 今から七年半前、いち早く指摘したのは、米国の大投資家の一人、ジム・ロジャーズでした。過度な円安政策は間違いだ、今はいいが、やがてツケが回ってくる、自国の国の通貨をこんなにおとしめて繁栄した国はない、安倍総理はやがて日本を破壊した男として歴史に名前を刻まれるだろうと指摘をしておりました。

 安倍総理もお亡くなりになったので、失敗を口にする人がだんだん増えてきたのかな、こう思っておりますが、是非、そういった意味では、政府は、一日も早い政策の転換をお勧めしたいと思っておりますが、大臣、いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 一九九〇年代のバブル崩壊以降、生産年齢人口が減少する中で、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制し、結果として、需要が低迷してデフレが加速をするという悪循環が生じたこと、これで日本経済は低成長が続いてきたということは、先ほど来申し述べているとおりでございます。

 アベノミクスは失敗で、転換をすべきであるということでありますが、こうした状況があった中で、アベノミクスは、デフレではない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大したなど、我が国の経済の成長に大きな役割を果たしたと私は認識をいたしております。

 そうした意味において、岸田内閣は、今、転換ということではなくて、これらの成果の上に立って、新しい資本主義の下、官と民が協働して成長と分配の好循環を生み出してまいりたい、そのための施策をまさに展開をしているところでございます。

福田(昭)委員 アベノミクスは失敗だという前提に立たないと、これから日本の経済の再生はできないと思います。

 そこで、次に、財政政策等の基本的な考え方についてであります。

 一つ目は、今ほど話がありました新しい資本主義の定義についてであります。

 いまだにはっきりしませんけれども、岸田政権が誕生して一年を過ぎました。鈴木財務大臣は、岸田総理が言う新しい資本主義の定義をどのように認識しているか、お伺いいたします。

鈴木国務大臣 新しい資本主義、これは、日本経済を再び成長させるための包括的なパッケージである、そのように考えております。従来はコストとして考えられてきました人やGX等への投資、これを未来への投資と再定義をいたしまして、気候変動などの社会課題の解決を通じて新たに市場をつくることで、成長と持続可能性の二兎の実現を図るものでございます。

 このため、本年六月の実行計画で掲げました人への投資、科学技術・イノベーションへの投資、スタートアップへの投資、GX、DXへの投資の重点分野に投資を集中をいたしまして、社会課題の解決を成長のエンジンとすることとしております。また、その成長の果実を分配をするということで更なる成長へつなげてまいりたいと思います。

 大ざっぱでありますが、新しい資本主義のアウトラインはこういうことであると思っております。

福田(昭)委員 新しい資本主義の定義について、今年の五月二十六日、衆議院予算委員会で、岸田総理が自民党の議員の方にお答えした文書をいただきました。これを読んだら、こんなふうに書いてあります。

 新しい資本主義、一言で言うならば、資本主義のバージョンアップであると思いますと。バージョンアップだというんですね。それでびっくりいたしました。そのときに、二つの課題があって、今、鈴木大臣が言われたようなことをやる、そういうふうに書いてあるんですね。

 こうした考え方は、日本のみならず、アメリカあるいはヨーロッパにおいても、同じ発想で新しい経済モデルが模索されています、是非、世界がこうした同じ意識の下に、認識の下に新しい経済モデルをつくっていこうと努力していることが資本主義全体のバージョンアップに向けて大変重要な取組ではないかと考え、日本においても、こういった発想で経済モデルの構築に努めていきたいと考えている、このように答えているんですが、これは実は、ヨーロッパを、ダボス会議で検討されたステークホルダー資本主義のことを言っているのかなと思っております。

 会社は株主のものだけではない、消費者を含めてあらゆる利害関係者のものだから、利益を上げたら、その利益は立場に応じて公平に分ける必要がある、こんなステークホルダー資本主義という考え方をダボス会議で検討したということでありますが、これを何とか採用しようとしたのが新しい資本主義かなと思っておりますが、しかし、それでは、新自由主義のどこをどのように直そうとしているのか、そこを、大臣の御所見をお伺いします。

鈴木国務大臣 新自由主義でございますが、これは、世界経済の成長の原動力となった一方で、市場に過度に依存し過ぎたことによりまして、格差それから貧困が拡大するなどの弊害も生んだ、そのように理解をいたします。

 岸田内閣においては、市場や競争任せにすることなく、経済成長の果実を適切に分配することを通じまして分厚い中間層を形成し、成長と分配の好循環につなげていくこと、これが重要だと考えます。

 その中でも、持続的な賃上げ、これを図っていくことが重要な課題でありまして、今回の経済対策においては、中小企業等への生産性向上の支援、価格転嫁の推進を含め、賃上げの促進に全力を挙げるとともに、構造的な賃上げの実現のため、成長分野における大胆な投資を促進するとともに、賃上げ、労働移動の円滑化、人への投資という三つの課題、これの一体的な改革を進めていこうとしているところでございます。

福田(昭)委員 私に言わせれば、ほとんどが、世界の経済社会が大きく変わる中で、どうしても日本がやらなくちゃならないもの、それを新しい事業として取り組んでいるわけで、それは別に、新しい資本主義でも何でもないと思います。例えばグリーンにしてもデジタル化にしても、全く新しい資本主義でも何でもない。

 もし、新自由主義の、やはり、株主第一主義、市場万能主義による株主・金融資本主義、これを是正して、格差の拡大や貧困を改めて、社会の二極化、分断化を止めて、多様性に富む共生社会をつくる、それが新しい資本主義というんじゃないでしょうか。是非参考にしていただければと思います。

 それから三つ目は、政府が意図的、計画的に造成した法人企業の内部留保資金、家計の金融資産を改める考えはあるかないかであります。

 法人企業や個人の頑張りがあったことは確かでありますけれども、政府が法人企業や富裕層への大規模な優遇税制をつくらなければ、巨大な内部留保資金、令和三年度末、銀行、保険業を含めて何と五百八十五兆円、家計の金融資産、令和三年十二月末、二千二十三兆円、うち現金預金千九十三兆円、これは数字が少し動いておりますけれども、こうした多額の貯金はたまらなかったんじゃないでしょうか。これを改めなければ、やはり私は、新しい資本主義はつくれないんじゃないかなと思っていますが、大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 多くの日本企業におきまして、長期にわたる低成長それからデフレの経験などから、企業収益や配当は増加したものの、賃上げでありますとか国内投資に結びつかず、現預金や内部留保が増加してきた、そのように考えております。

 また、家計の金融資産については、雇用者報酬等が増加したことや、株価、主に最近ではこちらの方だと思いますが、株価等が高値で推移してきたことなどの理由で増加してきた、そのように思います。

 政府としては、こうした内部留保でありますとか金融資産が賃上げや社会課題の解決に向けた投資にうまく活用されるよう促していくことで、成長と分配の好循環を図ってまいりたいと考えております。そして、このような取組を通じまして、経済成長を実現し、財政健全化にもしっかりと取り組まなければならない、そのように考えているところでございます。

福田(昭)委員 そういう考えでは賃上げにもつながらないし、財政再建もできないと思いますよ。

 そこで、四つ目、令和五年度予算についてでありますが、第一点は、政府の言う健全な財政というのはどういう状態を指すのか。例えば、先ほどから、プライマリーバランスの黒字化を二〇二五年度に達成するのを目標にするんだ、こう言っておりますが、これが健全な財政なんですか。いかがですか。井上副大臣にお伺いします。

井上副大臣 御質問ありがとうございます。

 五月の十七日の衆議院の財務金融委員会で、大臣の答弁でも、福田先生が御質問いただいて答弁させていただいておりますが、先生の御指摘の問題意識は一緒でありまして、累積する債務残高を中長期的に減少させていくことが重要であり、債務残高のGDP比の安定的な引下げと、債務残高対GDP比のコントロールをするための指標であるプライマリーバランスを二〇二五年に黒字化することを政府の方針として閣議決定はいたしております。

 この方針に従って、市場や国際社会における中長期的な財政の自律可能性への信認が失われないように、責任ある経済財政運営に努めていきたいというふうに考えております。

福田(昭)委員 時間がなくなってきましたので、それ以下は、しばらく私の方から指摘をしておきたいと思います。

 今の政府が作っている歳出歳入一体改革では、私は無理だと思っています。中長期的な財政の健全計画を作る必要があります。

 平成元年に消費税をつくり、法人三税、所得税、住民税、金融所得課税を大幅に引き下げてから、ワニの口がどんどん大きくなってきました。ですから、そういうことを考えると、三十年かけて財政健全化計画を作ってやっていかないと元には戻らないと思っておりますが、ただし、これから私が指摘するような税制改革をやれば、実現できれば、十年で財政再建ができる可能性はあります。

 そして、財政破綻の心配であります。

 かつて予算の分科会で、私が元麻生財務大臣と議論をしたときに、日本の国は多額の国債を抱えているが、経常収支が黒字で、発行している国債が全て自国の通貨建て、円で発行しているので、今すぐ財政破綻はないと思うがいかがと聞いたら、歴史上、そうした国で財政破綻した国はない、こういうふうに答えましたけれども、しかし、今、財政破綻の心配が出てきておりますのは、資源高と円安で、今年の上半期の四月から九月の貿易収支の赤字が、何と十一兆七十五億円の大幅な赤字となりました。もし下半期も同じような赤字となれば、所得収支の黒字を上回り、経常収支が赤字となる可能性が出てまいりました。

 そうなったら私は大変だと思っております。経常収支が赤字になれば、国債がちゃんと発行できるかどうか分からなくなったり、あるいは暴落したりするおそれも出てくると思っています。したがって、財政破綻を心配して、やはり、円安政策も改めたり、アベノミクスをしっかり改めていく必要があると思っています。

 そして、さらに、太平洋戦争後の財政破綻状態をどのように乗り越えたかであります。

 当時の政府は、預貯金の封鎖をしました。それで、新円への切替え、デノミをやりました。三つ目、財産税をつくりました。昭和二十一年から二十五年、財産税をつくって大金持ちから税金をいただいて、それで財政を立て直して今があるわけであります。

 ですから、そういった意味では、やはり、せっかく政府が手厚い保護をしてため込ませた企業の内部留保資金五百八十五兆円、家計の金融資産二千二十三兆円を紙くずにしてしまうのは、いかにも惜しいと私は思っておりますので、ですから、ここはしっかりアベノミクスを見直していくことが必要だ、そういうことを指摘しておきたいと思います。

 そして、括弧五番、税体系全般の見直しについてであります。ここも、あと五分ですから、私の方で指摘しておきたいと思います。

 一つ目は、税体系全般の見直し、財務大臣はどんな考えで見直すのですかという質問でありますが、かつて、政府税調の会長を長い間務めておりました加藤寛先生、故加藤寛先生は、消費税は三%以上上げては駄目だという遺言を残されたそうであります。

 私も、消費税は天下の悪税、封建時代、ギロチン時代の人頭税と同じだと思っています。所得にかかわらず、赤ちゃんから寝たきりのお年寄りまで一〇%と八%、強制的に徴収するものですから、こんなひどい税金はありません。いまだに階級社会が残っていると言われているヨーロッパだから、付加価値税、日本で言う消費税がつくられたものと想像しておりますが、これは是非確認をしたいと思っております。

 二つ目。国の基幹三税、消費税、法人税、所得税、金融所得税を含む、の大改革が必要だと思っております。

 平成元年に消費税を創設してから三十数年、経済も財政も賃金も、いずれもよくなりませんでした。消費税が全世代社会保障制度に欠かせない税金などという虚偽宣伝はやめて、税の大原則、担税能力のある法人、富裕層に、応能負担の原則に基づいて納めてもらうことが、新しい資本主義の実現になると思います。法人企業も富裕層も海外に逃げるのではなく、日本が危機だと思うならば、今、国に恩返しをするときだと私は考えております。

 そして、三つ目。この基幹三税を改めるときに、大改革をするときに、直接税で、弾性値の高い税目に変えることが必要だということを指摘しておきたいと思います。

 例えばでありますが、令和三年度の基幹三税、当初予算と決算を調べてみますと、一番伸びたのは何だと思いますか。財務大臣のところには報告が行っているかどうか分かりませんが、法人税が一番伸びて、何と当初予算に比べると一五一・六%、次に所得税一一四・五%、三番目が、何と、残念ながら消費税一〇七・九%であります。税率を一〇%に上げてもですよ。

 ですから、景気がよくなったら伸びるのは直接税、しかも、累進税率があるのが伸びるんです。消費税は一律、比例税率ですから、弾性値一しかありません。法人税も一しかありませんが、景気がよくなると、赤字企業が黒字になるから伸びるそうであります。もしここに累進税率を入れたら、もっと伸びていると思います。韓国は四段階入れています。アメリカも、トランプ以前は四段階入れていました。

 ですから、ここは、財政健全化するんだったら、まさにこの基幹三税、大改革をしなければ、私は今の財政危機は乗り越えられないと思っております。是非参考にしていただきたいと思います。

 そろそろ時間がやってきましたので、最後の質問ですね。次に、アベノミクスの過度な円安政策の見直しについてであります。

 一つ目。円安が日本を滅ぼすという指摘についてであります。

 私が尊敬する元大蔵官僚で一橋大学の名誉教授の野口先生が、「円安が日本を滅ぼす」という本を書いております。この中で、先ほど我が党の委員さんからもそれぞれ指摘がありましたけれども、実質為替レートは、一九七〇年代、五十年前に逆戻りしている、円安政策こそが日本経済衰退の基本原因だ、亡国の円安の悪循環から脱却せよ、こう主張されておりますが、黒田総裁はどう反論されますか。お伺いします。

黒田参考人 野口教授の指摘については承知しておりませんので、具体的なコメントは差し控えたいと思いますが、為替相場については、従来から申し上げているとおり、経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが極めて重要であると思います。

 最近の円安の進行は急速かつ一方的なものでありまして、こうした円安の進行は、企業の事業計画策定を困難にするなど、先行きの不確実性を高め、我が国経済にとってマイナスであり、望ましくないというふうに考えております。

福田(昭)委員 私はやはり、階委員始め話をされましたけれども、鈴木財務大臣、現在考えられる円安を見直す一番いい方法について、やはり黒田総裁に四月八日を待たずに辞めていただくことだと思っています。人が替われば、必ず政策が変わります。そこが人事のすばらしいところです。是非、岸田総理に、安倍総理と黒田総裁と同じように日本を破滅した男として歴史にその名を刻まれないように、岸田総理に是非お勧めください。

 終わります。

塚田委員長 次に、住吉寛紀君。

住吉委員 兵庫県姫路市よりやってまいりました、日本維新の会の住吉寛紀でございます。

 財務金融委員会で初質問でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず初めに、物価高騰対策について質問いたします。

 ウクライナ危機や円安により、エネルギーや食料の価格が上昇し、様々なものの値段が上昇しております。しかし、先ほど来よりありますが、賃金は余り上昇せず、国民の生活は相対的に苦しくなっているというのは周知の事実でございます。

 最近、企業の決算発表も出てきて、上方修正している企業もあれば、なかなか厳しい企業もございますが、そういったいい決算発表の企業は賃金アップに期待をしたいところでもございます。

 今年に入っても、政府の方では、物価高騰対策として様々な経済対策を実施してまいりました。しかし、九月時点の帝国データバンクによりますと、約七割の企業が効果を感じていないと回答しております。

 我々日本維新の会は、十月二十一日に、物価高騰等にかかる総合経済対策を政府に提出したところでもございます。この基本コンセプトとしては四つございまして、経済原理に基づく持続可能な生活者・事業支援、また、中長期的な成長軌道に乗るための経済構造転換、さらには既得権打破、そして一気集中投入、これを基本方針としております。特徴としては、これまでの政府の給付するというよりも、集めないということに重きを置いております。

 これまで、莫大な額である新型コロナ対策の予算でも未執行というのが非常にニュースに、報道にもございました。十月の二十八日に政府の方で総合経済対策案が発表されましたが、まず、これまでの経済対策に対する効果をどのように評価しておりますのか、また、執行率も分かれば併せて御教示ください。

吉岡政府参考人 お答えいたします。

 本年四月に取りまとめました原油価格・物価高騰等総合緊急対策につきましては、本年七月にフォローアップを実施をいたしております。各事業の予算の執行状況ですとか支給決定件数、事業の効果などの定量的な情報を収集、把握し、公表いたしておるところでございます。

 その後、経済、物価状況を踏まえまして、七月―九月に、予備費を活用いたしました物価対策を切れ目なく講じたところでございます。このうち、九月の追加策で措置をいたしました住民税非課税世帯の給付金を例といたしますと、十一月には七割の自治体で支給が始められる見込みとなっておるところでございます。

 さらに、間を空けることなく、今般、物価高、円安への対応、それから構造的な賃上げ、成長のための投資と改革を重点分野といたします総合的な経済対策を取りまとめたところでございます。

 これらの一連の施策につきましても、今後、しっかりとフォローアップを行いまして、その結果を踏まえ、適切に対応してまいりたいと考えております。

住吉委員 ありがとうございます。また執行率とかが分かれば、出てくれば、教えていただけたらと思っております。

 また、次に、今回発表された総合経済対策についてお伺いいたします。

 案として発表された内容を拝見させていただきました。少し厳しい言い方になってしまいますが、感想として、総花的で、果たして効果があるのかと疑問に思ってしまうのが第一印象でございます。

 例えば、私は前回まで農林水産委員会に所属しておりましたが、項目として、農林水産業の担い手確保とか、あと鳥獣被害防止総合対策交付金、またスマート農業技術の開発、実証、実装プロジェクトなど、もちろんこれらは必要な施策であることには変わりないと思っております。しかし、緊急的に措置をする対策とは少しかけ離れる印象を持ちます。むしろ、こういった事業はしっかりと本予算で措置すべき内容であると感じております。

 今回は、この個別の施策についての効果については議論するつもりはございません。

 報道によると、今回の一般会計歳出規模は約三十兆円程度、二十九・一兆円と報道がございますが、国の一般会計に財政投融資や地方自治体の負担分などを加えた財政支出は三十九兆円程度とのことで、財源の大半は赤字国債になる見通しでございます。経済全体の需要不足をはるかに超える額でございます。

 また、先ほどもございましたが、イギリスのトラス前首相は、財源の当てのない景気刺激策を行い、マーケットから猛反発を受けたということは記憶に新しいところでございます。

 額ありきで事業を積み上げたとしか思えない今回の経済対策、これがマーケットに与える影響についてどのようにお考えか、御所見をお伺いいたします。

井上副大臣 御質問ありがとうございます。

 国債金利を含めてマーケットの動向についてですけれども、様々な要因がありまして市場において決まるものと考えており、影響につきましては一概に申し上げることは困難だというふうに、まず冒頭に言っておきたいというふうに思います。

 その上で申し上げれば、今般の経済対策は、世界経済の減速リスクを十分に視野に入れつつ、足下の物価高騰など経済情勢の変化に切れ目なく対応し、新しい資本主義の加速により、日本経済の再生を図るために必要な施策を積み上げてきたものであり、規模ありきで決めているものではありません。

 他方で、日本の財政に対する市場からの信認が失われないよう、財政規律をしっかりと認識しながら責任ある財政運営を進めていくことは、御指摘のとおり、重要だというふうに思っております。そのためにも、歳出歳入両面の改革を進め、経済再生と財政健全化の両立を図っていくことが必要だと考えています。

住吉委員 続いて、やはり重要なものは中身であると思います。先ほど申し上げたように、感想ですが、施策を並べて積み上げたような印象を持ちますが、例えば構造的な賃上げなど、本当に効果があるのか、非常に疑問を感じるところでもございます。この辺りの御答弁をお願いいたします。

吉岡政府参考人 お答えいたします。

 今回の総合経済対策におきましては、物価高対策といたしまして、エネルギーを中心に対策を講じております。特に、来年春以降の急激な電気料金の上昇によって影響を受ける家計ですとか企業の負担を直接的に軽減すべく、前例のない思い切った措置を講じるとともに、ガス料金、ガソリン価格についても激変緩和措置を講じ、物価高から国民生活や事業活動を守り抜くということといたしております。

 また、目下の物価上昇に対する最大の処方箋は、物価上昇を十分にカバーする継続的な賃上げであるというふうに考えております。このため、中堅・中小企業等の賃上げへの支援の拡充ですとか、公正取引委員会の体制強化など価格転嫁対策の強化等により、賃上げの促進に全力を挙げることといたしております。

 さらに、リスキリングへの支援など、人への投資の施策パッケージを五年間で一兆円拡充するとともに、労働移動の円滑化を推進し、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げを生むという、構造的な賃上げの実現を目指すことといたしております。

 加えまして、今回の総合経済対策では、足下の物価高の克服とともに、日本経済を一段と高い成長経路に乗せていくため、科学技術・イノベーション、スタートアップの起業加速、GX、DXの四分野に重点を置いて、官の投資を加速し、それを呼び水として民間投資を大胆に喚起するということといたしております。

 今回の対策は、こうした観点で必要な施策を積み上げたものでございまして、これらを実行することによって日本経済の再生を実現してまいりたいと考えております。

住吉委員 ありがとうございます。

 もちろん、必要な施策だと今の御答弁を聞いて感じましたが、リスキリングとかいろいろございましたが、本来であれば、しっかりと長期的なビジョンで、本予算で措置していくようなものが、非常に総花的にあるのかなというような印象を受けました。

 そこで、我々日本維新の会が提案した経済対策、これについてどのように評価しているのか、確認させていただきたいと思います。

 内容は、日本維新の会、時限措置として、家計支援として、消費税五%への減税、低所得者層に対する社会保険料の半減、また、事業者支援として、中小企業の社会保険料の事業者負担を半減、中小企業の法人税の国税分を一律一五%であったり、先ほど答弁でもありましたが、価格上昇の激変緩和として、ガソリン税の当面の間税率廃止と燃料油への最小限の補助継続、また、再エネ賦課金徴収の一時停止による電気料金の値下げ、こういったものを提案しております。

 これまでの経済対策の中で、例えばガソリン価格の抑制に向けて石油元売に配る補助金事業では、販売価格に補助金の全額が反映されずに経営の赤字補填などに用いられた、こういった報道もございます。

 我々は、既得権打破として減税、減免で、ばらまくのではなく、そもそも集めないということを基本とし、最終消費者の可処分所得、これを増やすということを念頭に置いております。

 また、補助金という性質上、知らなかったとか、いろいろ、情報格差であったり申請の手間、また、給付の際に手数料が多く生じる、無駄が生じる可能性もございます。

 執行率も低く、最終消費者への反映も低くなるやり方より、そもそも集めないという発想で合理的な方法を提案している。我々の提案の方が、シンプルで、最終消費者への恩恵も受けやすい、効果が出やすい、よりベターな案であると自負しておりますが、大臣の見解、御所見をお願いいたします。

鈴木国務大臣 日本維新の会が物価高騰対策といたしまして消費税減税や社会保障料減免等を提言されていること、それは承知をいたしております。給付ではなくて、そもそも取らないという一つのコンセプトに基づいた施策であるとお聞きをいたしたところでございます。

 それに対する私どもの見解でございますが、消費税につきましては、急速な高齢化等に伴い社会保障給付費が大きく増加する中で、これをあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点から、社会保障の財源として位置づけられておりまして、全世代型社会保障制度を支える重要な財源であるために、減税は考えていないところでございます。

 また、社会保険料の減免といった方策につきましては、一つは消費税と同様に社会保障制度を支える重要な財源であるということに加えまして、社会保険料につきましては、低所得の方々等々に対してもう保険料の減免というものをかなり進めておりますので、元々負担の少ない方への効果、こういうものは小さいものになる、こういう問題があると考えております。

 私ども政府といたしましては、物価高騰に対して特に影響の大きな低所得者への対策に重点化するなど、めり張りを利かせた対応を行っていくことが重要である、そのように考えているところでございます。

住吉委員 ありがとうございます。

 消費税、重要な財源であるということは承知しております。一方で、先ほども申したとおり、この新しい総合経済対策、これの財源が大部分が国債で賄うということなので、ほとんど効果としては一緒だと思うので、一緒というのは、取らないのか多く給付するのかというところだと思います。消費税がもちろん社会保障の大切な財源であるんですけれども、やはり、その大部分も借金で賄っておりますので、結局一緒であるというふうに考えております。

 給付していくというよりかは、我々が考えている、取らないという方向の方がよりシンプルでいいのかということで述べさせていただきました。少しちょっとかみ合わないところもございましたが、ちょっとその財源のところで、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 日本の財政、特に増大するのが社会保障費についてでございます。言うまでもないですが、社会保障というのは、年金、医療、介護、子ども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約三分の一を占める最大の支出項目となっております。

 社会保障制度の基本は保険料による支え合いですが、保険料のみでは負担が現役世代に集中してしまうため、税金や借金も充てております。この借金というのは、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしている状況です。社会保障費の軽減やバランス、これを図っていかなければ、この国の未来はございません。

 まずは、今後増大する社会保障費について、財源確保や縮減、こういったことをどのように図っていくのか、御所見をお伺いいたします。

井上副大臣 御質問ありがとうございます。

 社会保障関係費に関しましては、今後三年間で団塊の世代が後期高齢者となる中、高齢化が更に進みます。今後も急増することが見込まれております。

 そういう中で、社会保障制度の持続性を確保する観点から、受益と負担のアンバランスという構造的な課題に取り組んでいく、また、歳入歳出の両面の改革をきちんと継続していくことが重要だというふうに思っています。

 これまでも、後期高齢者医療窓口負担割合の見直しや、被用者保険の適用拡大といった改革の着実な実施に取り組んできております。

 現在、全世代型社会保障構築会議において、超高齢化、人口減少下における医療・介護提供体制の在り方を含めて、医療、介護の制度の改革を前に進めるべく検討が進められているとお聞きしております。

 財務省においても、各省庁と連携しながら、誰もが安心できる持続可能な全世代型社会保障の構築に向けて取り組んでいきたいというふうに思っております。

 以上です。

住吉委員 その中で、少し細かい話になりますが、生活保護についてお伺いしたいと思います。

 生活保護の不正受給、特に医療扶助についてお伺いいたします。

 この医療扶助、細かいとはいえ、令和二年度生活保護費の内訳において、約一兆七千五百三十六億円、これを占めております。

 先に申しておきますが、生活保護は、憲法で定められた最低限度の生活を送るために必要な制度であると認識はしております。

 一方で、毎年のように不正受給に関する報道を見ます。特に、医療費が全額公費負担となっております。そのため、受給者が同じ病気で必要以上に受診するコンビニ受診であったり、過剰に薬を処方される重複処方の問題が挙げられ、その一部が薬の転売につながっているともされております。

 大阪で発生した事件では、約十か月で病院を延べ約三百八十回受診して、抗うつ剤や睡眠薬といった向精神薬を含む薬剤計五万三千錠を窓口負担なしで入手し、転売の疑いで逮捕されるという報道もございました。

 ちなみに、十月から、皆さん御存じですが、後期高齢者の医療費自己負担が一割から二割に上がっている方もおります。多くの方に、社会保障、この制度を維持していくのに様々なところで負担を求めている中で、生活保護の医療扶助、モラルハザードが起こりやすい制度に対して、不平等感を感じるというのは必至でございます。

 受益者負担の観点や、制度のモラルハザードを防ぐ観点からも、この生活保護受給者に対して同様の負担を求める制度変更、こういったことも検討していかなければならないのではないでしょうか。

 今後増大する社会保障費に対して、このようなところにもメスを入れていかなければならない、そういう時期でございます。この生活保護の不正受給の防止策、また制度の改善についての御所見をお伺いいたします。

本多政府参考人 お答えいたします。

 医療扶助の適正な運営の観点から、制度の信頼性を揺るがす不正受給の未然防止は重要な課題であると認識しております。

 また、医療扶助につきましては、約三・七兆円の生活保護費の約半分を占めており、制度の信頼性の維持向上を図るためにもその適正化は重要であり、例えば、自治体では、頻回受診と認められた者を対象として、訪問指導、医療機関受診への保健師の同行といった取組を実施しております。

 こうした各自治体における頻回受診対策等の各取組の効果も踏まえながら、医療扶助制度の適正な運営に向けた更なる効果的な取組方策を講じてまいりたいと考えております。

 一方、御指摘のありました、医療扶助制度に一部自己負担を導入することにつきましては、医療扶助は、最低生活の保障の観点から、自己負担なしで必要な医療が受けられることとしていること、また、被保護者の必要な受診を抑制するおそれがあることなどの課題がありまして、慎重な検討が必要と考えております。

住吉委員 ありがとうございました。

 また、納税者が納得するお金の使い方の検討をお願いいたします。

 ちょっと一問残しておりますが、時間が来ましたので、これで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

塚田委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

塚田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。

 通常国会に引き続き、この臨時国会でも財務金融委員会に所属させていただくことになりました。皆様、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 私ごとではございますが、先月誕生日を迎え、三十九歳になりました。不惑の年と言われる四十歳まで一年となりましたが、迷ってばかりいる日々を過ごしております。当委員会の中でも三十代の方は少ないかと思いますが、若い世代の視点からもしっかりと意見を述べていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速質問の方を始めさせていただければと思っております。

 今大きく動いている為替についてお伺いいたします。

 為替動向に関しては、今最も重要なテーマであり、今後の日本経済、そして国民生活にとっても最重要事項の一つでもありますので、様々な角度から議論していくことに意味があると考えております。

 まず、為替介入についてお伺いいたします。

 投機等によって過度な変動があった場合には断固たる措置を取ると大臣は以前からおっしゃられています。そのお考えから九月二十二日、十月二十一、二十四に為替介入を行ったのだと思料いたしますが、この一、二か月の為替相場の動きが投機的なものによると考える根拠は何なのでしょうか。日米金利差や貿易収支、日本のQE、あるいは米国のQTなど、ファンダメンタルズそのものによる動きであるというのも、その考えが大半を占めるとは思うんですけれども、大臣のお考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 先生からお話ございましたとおりに、一般的に為替相場というのは、これは市場においてファンダメンタルズを反映するということを基本に決められるものでありますけれども、そこに投機というものが入って急激に変動するということは、これは家計や企業のいろいろな活動に影響を与えますので、断じて容認することができないということで、そういうときには必要な対応を取るということをかねてから言ってまいりました。そういう意味において為替介入も行ったところでございます。

 そして、どういうときがそれに当たるのかというのは、まさにこれは手のうちをさらすようなものになると思います。それは私どもの判断で、そういうことだということになれば瞬時に対応する、こういうことであります。

藤巻委員 大幅な変動、過度な変動は容認できないと今もおっしゃっていたと思うんですけれども、一方で、為替介入こそが最も過度な変動を引き起こしていると言うことができるとも思います。数時間で七円以上円高になった後、次の数時間で四円以上円安に戻す、これはまさに過度な変動そのものなのではないでしょうか。

 過度な変動を抑えるために行った為替介入こそが最も過度な変動を引き起こしているというふうにも、そんな矛盾もあるとは思うんですけれども、大臣はそこについてはどうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 それは、その為替の動きからいえば確かにそういうことだと思いますが、為替介入には目的があってやっているわけであります。

 その目的は先ほど申し上げたとおりであります。家計あるいは日本の企業の企業活動、そういうものに悪影響を与えない、そういうために行うということで、しっかりとした目的があって行っているということを理解していただきたいと思います。

藤巻委員 ありがとうございます。

 米国との連携の部分についてもちょっとお尋ねしたいんですけれども、九月二十二日の単独介入後の記者会見で、大臣は、この介入が米国との協調介入であったのか、単独介入であったのか、意図的に明言を避けました。しかし、その数時間後には、米財務省が協調介入を否定しました。この流れを見るに、米国側との連携は余り取れていないように感じてしまいます。

 今年六月十日に米財務省が公表した為替政策報告書では、日本は為替操作監視対象のリストに入れられています。また、その報告書には、為替介入は適切な事前協議を伴う非常に例外的な状況に限定されるべきとの記述があります。

 そのような中で財務省は大規模な為替介入を繰り返していますが、為替相場や為替介入に関して、米国側との意思疎通、米国側の理解はしっかり得られているのでしょうか。お答えください。

鈴木国務大臣 九月に介入を最初に行いました。そのときにもアメリカの通貨当局から日本の今回の為替介入は理解をしているという旨の発言があって、それは報道をされているところでございます。

 アメリカとの間には、常日頃事務レベルで緊密に連絡を取り合っていることに加えまして、大臣レベルにおきましても、バイ会談でありますとか、G7、G20会合等の国際会議の機会を捉まえまして、率直な意見交換をしているということでございます。

藤巻委員 九月の為替介入の際にはアメリカ側からそういう発言があったことは私も承知しているんですけれども、一方で、十月の二十一の深夜に実施されたであろう為替介入について、イエレン米財務長官は、米政府は、アメリカ政府はそのような動きについて、東京から何の通知も受け取っていない、知らないと発言されました。為替介入という大事を米国側が聞いていないということになると思うんですけれども、先ほど緊密に連携しているというお話があったんですけれども、十月の為替介入についてはどうなっているんでしょうか。

鈴木国務大臣 イエレン財務長官が知らないという発言があったということは報道で知っておりますけれども、個別の発言についてはコメントはいたしません。

 しかし、関係通貨当局とは、先ほど申し上げましたとおり、緊密に意思疎通を図ること、これが重要であり、現にそのように緊密に連携をしているところでありまして、相手のあることですから申し上げませんけれども、しっかりと日本のそうしたことは伝わっているということであります。

藤巻委員 緊密に連携を取られて、しっかり伝わっていると大臣は今おっしゃったんですけれども、一方で、やはり、イエレン長官は知らないとこれはもう明言されているわけで、そうするとちょっと矛盾が生じているというか、日本は為替介入の際にしっかりと通知しているという答弁に対してアメリカの方は知らないと言っているわけで、これは恐らく通知ができていないのか、あるいは、イエレン財務長官が、明言していないとか言葉を濁すとかだったら分かるんですけれども、イエレン長官はもう明確に否定をしているわけです。

 そうすると、ちょっとつじつまが合わない、整合性が合わない部分が、イエレン長官がもしかしたら日本のためにうそをついているのか、うそをついてくれているのか、ちょっとそこの部分、御見解をお聞かせください。

鈴木国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、イエレン長官の発言については、報道としてはそういう報道があるということは知っていますが、私が長官の発言そのものにコメントすることはいたしません。

 十月に為替介入を行ったことは、もうこれは発表されたところでございますが、当時は私も、知らない、記者から聞かれても、為替介入したかしないかは分からない、一切言わない、こういうことを言っておりました。

藤巻委員 為替介入、非常にセンシティブな話題ではあると思うんですけれども、引き続いて、為替介入、口先介入の方についてお伺いしたいんですけれども、大臣、連日、必要に応じて対応を取るだとか、ならす営みが必要、断固たる措置を取る、過度な変動を容認できず、頻度を上げてチェック、財務官と頻繁に連絡をしている、絶対に容認できない、投機筋と厳しく対峙、あらゆる強い言葉で円安に向かう市場を牽制しておりますが、ここまで連日、口先介入を続けてしまうと、逆にその効果は薄れてしまうのではないでしょうか。

 むしろ、それこそ投機筋に、介入のために日本政府が保有する米国債売却を連想させ、米債の価格下落、米金利上昇、結果として円安を誘導するおそれすらないでしょうか。

鈴木国務大臣 口先介入というものが何を意味するのか必ずしも承知をいたしませんけれども、政府として、投機による過度な変動は容認できない、そして、為替市場の動向を高い緊張感を持って注視するとともに、過度な変動に対しては適切な対応を取りたい、こういうふうに考えておりまして、私としては、通貨当局としての為替政策に係る考え方を述べているということに尽きるんだ、そういうふうに思っています。

藤巻委員 ありがとうございます。

 続きまして、黒田日銀総裁にお伺いいたします。

 先ほどの野田委員の質問とちょっとかぶってしまう部分はあるんですけれども、黒田総裁は、今年の四月の衆議院決算行政監視委員会で、日銀の計量モデルの試算を踏まえて、円安が全体的に日本経済にプラスとの評価は変えていない、基本的には円安は全体としてプラスとおっしゃっています。一方で、先月十九日の参議院予算委員会などでは、最近の円安進行は、急速的かつ一方的で、経済にマイナスの影響で、望ましくないともおっしゃっています。

 これらの発言を総合的に勘案すると、黒田総裁は、急速な円安は望ましくないが、緩やかで安定的な円安は日本経済に好影響というふうに解釈できてしまうんですけれども、改めてお考えをお聞かせください。

黒田参考人 従来から申し上げているとおり、為替相場については、経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが極めて重要であるということは何度も申し上げております。

 その意味で、最近の円安の進行は、急速かつ一方的なものでありまして、こうした円安の進行は、先行きの不確実性を高め、企業の事業計画策定を困難にするなど、我が国経済にとってマイナスであり、望ましくないということを申し上げてきたわけでございます。

藤巻委員 ちょっと改めて鈴木大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほどの答弁からすると、大臣は、急激な変動はよろしくない、そして、円安も望ましいことではないとすると、やはり、じゃ、そう考えると、安定的な円高こそが日本経済に望ましい、総合的に好影響であるというふうなお考えでよろしいのでしょうか。

鈴木国務大臣 先生も御承知のとおり、円安局面にあるとしても、それはプラス面とそれからマイナス面と両方あるんだと思います。一方的にマイナスだけがあってプラスはないということはない。プラス面もあるわけであります。

 例えば、輸出とか、あるいは海外に事業展開している、そういうような企業、大企業に限らず中小企業においても円安はプラスに働く、こういうことですから、一概に今の状況といいますか、円安基調の環境を捉まえて、いいとか悪いとか、それは言えない。両面あるんだと思います。

 ただし、今、政策の一つの大きな問題となっているのは物価高でございます。物価高でございますから、そういう観点から見ると、円安が輸入物の価格を押し上げていっていること、これは間違いないことでございますので、そういう点は留意をしなければいけないと思っています。

藤巻委員 為替については明確なコメントができないのは存じ上げておるんですけれども、ちょっと質問の順番を前後させていただきますけれども、黒田総裁に改めてお伺いいたします。

 十月二十八日の会見で、岸田総理は、来年にかけて消費者物価を一・二%以上引き下げると表明いたしました。これは、消費者物価指数の前年比上昇率を安定的に二%を超えるようにするという日銀の目標と完全に逆ということになります。政府と日銀の政策目標が完全に真逆です。政府の方針とは真逆でも、引き続き、金融緩和を続けるということでよろしいんでしょうか。

黒田参考人 日本銀行の金融政策につきましては、従来から申し上げているとおり、現在、コロナ禍からの回復過程にある日本経済にとって、依然として様々な不確実性がございます。そうした中で、この日本経済の回復をしっかりと支え、賃金上昇を伴う形で物価が安定的、持続的に二%の目標に向かっていくということが好ましいわけでして、その観点から金融緩和を続けているということでございます。

 他方、政府が今回公表されました対策を拝見いたしますと、あくまでもエネルギーや食品などの価格が非常に大きく上昇することが家計にとってマイナスである、それを防止する、あるいは企業にとってもいろいろな問題を含むということで、そうしたものに対する対応を取る。さらには、低所得階級、階層に対する所得補償を行うといったことで、経済をしっかりと下支えして経済の回復を助けるというものでありますので、日本銀行が行っている政策と政府の政策とは相互に補完するものであって、矛盾するものではないというふうに考えております。

 なお、今回の政府の政策によって物価を引き下げる要因があることは、そのとおりであります。他方で、経済、景気を支えて成長率を引き上げるという要因も含んでおりまして、総体として、経済、そして物価にどのような影響があるかというのは、十分私どもとして分析し、次回の展望レポートで委員方の見方を明らかにしたいというふうに思っております。

藤巻委員 やはり、そうはいっても、方向性、ベクトルが真逆の方向に進んでしまっているのではないか。イギリスの例もありますし、そういった中央銀行と政府の政策の方向性というのは、ある程度しっかり、ある程度同じ方向を向いていかなければならないのかなというふうにも思っておりまして、そこの方は、引き続き、しっかりと注視させていただきたいと思います。

 為替介入の方の話にちょっと一旦戻らせていただきまして、先月の二十日の夜、神田財務官が、記者団の取材に応じて、介入の原資は無限にあるとの御発言をなさいました。介入の原資が無限にあるというのは本当なのでしょうか。確かに、円売り・ドル買い介入であるならば、輪転機を円の紙幣で刷り続ければ無限にあるとも言えなくはないんですけれども、ドル売り・円買い介入の場合は、外貨準備残高は限られているので、無限ではなく有限なのではないでしょうか。通貨スワップにしても、金額に上限はあり、無限とは言えないはずです。

 もし仮に、無限という話であれば、毎日二十兆ぐらいの介入をしちゃって、為替レート、例えば百十円とか百二十円ぐらいに収めることも可能だとは思うんですけれども、何でそんなことをやらないのかというか、本当に為替介入の原資は有限ではなく無限なのでしょうか。

鈴木国務大臣 神田財務官のお話でございまして、私が代わって答えるのも変なわけでございますけれども、私が理解するに当たりまして、御指摘の神田財務官の発言は、介入原資に制約があるとは特段意識しておらず、今後とも過度の変動に対し必要な対応を取り続けることができるという趣旨の発言であった、そのように聞いております。

 私が聞いておるのはそういうことでございます。

藤巻委員 意識をしていないという言葉と無限であるというのはかなり大きく違うとは思うので、これは、マーケットに与えるインパクトを考えると、やはり、表現というか言葉の細部までしっかりと気をつけていないと、マーケット参加者にとってはあの発言、かなりインパクトのあるものでしたので、そういった、細部を正確にマーケット、国民の皆様に伝えることも非常に大事だと思いますので、そこはしっかりと注意していただければと思っています。かなりニュアンスが違うというような印象を受けました。

 ちょっと時間が近づいていますので、最後の質問。ちょっとこれも先ほどの質問とかぶってしまうんですけれども、黒田総裁、先日、当面金利は引き上げることはない、さらに、当面は数か月ではなく二、三年の話とおっしゃられました。これも、現在の円安基調に、根幹に関わるようなかなり踏み込んだ発言だったと思うんですけれども、ここまで踏み込んだ発言をする必要があったのでしょうか。

 そもそも、仮にですけれども、総裁が任期満了をもって退任するのであれば、それ以降の金融政策の決定権限は日銀の新しい政策委員会にあるはずなのですが、来年の四月以降も数年にわたって金融緩和を続ける、金融政策を続ける、変更しないというのは、何か内々の決定でもあるのか、改めて発言の真意をお聞かせ願えればと思います。

黒田参考人 御指摘の記者会見では、その時点で二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現する見通しとはなっていないということから、当面金融緩和を継続することになるという日本銀行の金融政策運営の考え方を申し上げたわけでして、任期を超えた期間の政策運営に対して何らかの影響を及ぼす意図で発言したものではございません。

 もとより、金融政策運営につきましては、毎回の決定会合において、その時々に得られる様々なデータ、情報に基づいて、先行きの経済、物価見通しとリスク要因を点検して、適切な政策判断を行っていくということになるわけでございます。

藤巻委員 時間が参りましたので、私の質問は終わらせていただきます。

 本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございました。

塚田委員長 次に、岬麻紀君。

岬委員 皆様、お疲れさまでございます。日本維新の会、岬麻紀でございます。

 財務委員会での質問は初めてでございます。委員の皆様から様々な角度から質問をされておりまして、重複する部分もあるかと思いますが、どうぞ改めてよろしくお願い申し上げます。

 さて、十一月一日からも食品などの値上がりがございまして、国民生活や家計を圧迫しております。このように、物価上昇が止まらない中、消費を支えるには賃上げが欠かせないのではないかと考えております。

 ただ、物価が反映した実質賃金は、厚生労働省の毎月勤労統計調査を見ますと、今年の四月以降、五か月連続で下落がされております。賃上げが物価高の勢いに追いついていないということでございます。差は開くばかりでございますが、賃金は上がらず、物価だけが上がり、結果、家計はますます苦しくなります。多くの国民はそう感じているのではないでしょうか。

 また、中小企業では、高くなった仕入価格を転嫁するのに精いっぱいです。賃上げする余力はありません。こう考えている企業が大半ではないでしょうか。

 本日は、こうした問題意識の下で、賃上げに着目をして質問をしたいと考えております。

 まず、この賃上げをめぐる状況から確認をしたいと思います。

 過去三十年間にわたりまして、我が国の一人当たりの賃金はおおむね横ばいでございます。一人当たり名目賃金の推移及び一人当たり実質賃金の推移を見ても、いずれも三十年前と比べてほとんど変わりはございません。

 十月三十日の日経新聞の記事によりますと、二〇二一年度に税引き前利益は二〇〇〇年度の三・八倍に増えています。また、内部留保に当たります利益余剰金は、四百八十兆円と二・五倍に膨らんでいます。この間、人件費はといいますと、一%しか増えていないのが現状であり、公表もされております。

 また、二〇二二年十月三日、岸田総理の所信表明演説において、新しい資本主義の旗印の下で、物価高、円安への対応、構造的な賃上げ、成長のための投資と改革、この三つを重点分野として取り組んでいく、物価高が進み、賃上げが喫緊の課題となっている今こそ、正面から果断に、そして積年の大問題に挑み、構造的な賃上げの実現を目指すと発言をされました。

 この点、十月十八日、衆議院予算委員会におきまして、私ども日本維新の会の藤田文武議員の、構造的な賃上げにおける構造的な問題は何であるかという問いがございました。これに対して、バブル崩壊以降、長引くデフレで、他国と比べて低い経済成長が続いてきた、そうした中で、企業は賃金を抑制し、消費者も将来不安などから消費を抑制した結果、需要が低迷した、こうしたことがデフレを継続的に、悪循環になったことで、結果的に、企業も賃上げをする余力ができてこない、また、余力を生み出す、そうした企業もなかなかつくり出してこなかったと答弁がございました。

 企業の所得については、十月三十一日に国税庁において、二〇二一年度に決算期を迎えた法人の申告所得総額が前年度比一三・三%増え、また、これは約七十九兆五千億円に当たります。過去最高だったと発表がされました。

 新型コロナの影響で二〇一九年度の申告所得総額は大きく減少はしたものの、ここ二年は増加をしております。先ほども日経新聞の記事を紹介いたしましたが、企業の利益は上がっているにもかかわらず、賃金は増えていません。

 そこで、質問です。

 まず冒頭に、なぜ賃金が上がらないのか、そして、なぜ賃上げがなかなか進まないのか、その理由について財務大臣のお考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 既に先生の御質問の中でこれから私が答弁しようとしていることも触れていただいたわけでございますけれども、我が国では、一九九〇年代のバブル崩壊以降、低い経済成長と長引くデフレによりまして、企業は投資や賃金を抑制をする、そして、消費者も将来不安などから消費を減らさざるを得なく、その結果としまして、需要が低迷、デフレが加速し、企業が積極的に賃上げを行う環境ではなかった、そのように考えているところでございます。

 そうした中、アベノミクスによってデフレではない状況をつくり出して二%程度の賃上げを実現したものの、相対的に賃金水準の低いパートで働く方々の比率が上昇する中、雇用者全体の一人当たりの賃金は伸び悩んでいる状況にある、そのように考えております。

 このような中で持続的な賃金の上昇を実現していくためには、賃上げが高いスキルの人材を引きつけ、企業の生産性を向上させ、更なる賃上げを生むという好循環が機能する状況をつくっていく必要があると考えております。

 政府としては、こうした認識の下、今般の経済対策でも、構造的な賃上げの実現に向けた取組を進めようとしているところでございます。

岬委員 ありがとうございます。私ども、また国民の多くの皆様との意識が一致しているということが確認できました。まず、賃上げが進まない理由として御答弁をいただきましたが、ここからは、税制の面から賃上げを促進する賃上げ促進税制について質問を進めてまいります。

 十月二十六日に、当委員会の、鈴木財務大臣が、令和五年度予算については、経済財政運営と改革基本方針二〇二二や新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画等を踏まえ、我が国の直面する内外の重要課題への取組を本格化させてまいりますと発言がございました。

 この経済財政運営と改革の基本方針二〇二二について、賃上げ促進税制の部分を確認しました。そうしますと、「抜本的に拡充した賃上げ促進税制の活用促進、」とあります。また、先週十月二十八日に出されました物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策においても、「今年度から抜本的に拡充した賃上げ促進税制の活用促進、」とございます。

 この賃上げ税制適用の実績を見てみます。そうしますと、創設以降、平成二十九年度頃までは適用額、件数共に増加を続けておりました。しかしながら、近年では適用額、適用件数共に減少傾向が確認できます。令和元年度、二〇一九年度に賃上げ税制の適用を受けた企業数の企業数全体に占める割合は、大企業で九・二%、中小企業においては四・七%にとどまっています。

 この税制の効果に対するこれまでの答弁も確認をしてみました。

 これは令和四年二月九日、衆議院財務金融委員会におきまして、賃上げ税制の適用件数やまた減税規模については、平成二十五年度から令和二年度までの八年間において、延べ約七十六万件の企業が税制措置の適用を受けており、その減税規模の累計は約二兆円となっている。

 また、鈴木大臣も、一定の効果はあったのではないかと思っている、賃上げは、税制のみならず、企業の収益や雇用情勢等の影響を受けるものであり、税制の効果だけで、それを取り出して経営者の賃上げ判断への影響を測ることや、この税制の導入による賃上げの効果を定量的に示すことは難しいと考えると御発言をされています。

 そこで、質問です。

 このような過去の答弁がございますが、これまでの賃上げ促進税制について、効果はどのようにあるとお考えでしょうか。お願いいたします。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 今御紹介いただきましたように、賃上げ税制につきましては、平成二十五年度から令和二年度までの八年間で、延べ約七十六万件の企業が税制措置の適用を受け、その減税の規模の累計は約二兆円となっております。

 また、これだけをもってこの税制の効果を推し量ることはできないというふうに御答弁申し上げているのも御指摘のとおりでございます。

 一方、企業に対する各種のアンケート調査等によりますと、この賃上げ税制が賃金の引上げを後押ししたと回答した企業の割合も相当程度多くあったということなどを踏まえますと、企業の賃上げに対して一定の効果があったのではないかということを従来から申し上げているところでございます。

 政府といたしましては、引き続き、この賃上げ税制の適用実績、またその効果について注視をしてまいりたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。一定の効果があった、また引き続き進めていくということでよろしいでしょうか。

 ここで、二百八回国会の所得税法等の一部を改正する法律案の附帯決議を見てみました。第一項に、賃上げ及びオープンイノベーションの促進に係る税制の拡充や住宅ローン控除制度の見直し等の措置がどのように貢献したのかについて、効果を検証し、かつ公表することで政策効果を適切に把握できるよう努めることとございます。このように、賃上げ税制の効果を検証するとわざわざ附帯決議にございました。平成二十五年度の導入からこれまで、このような文言は見られなかったと思います。

 令和四年度の税制改正による制度の適用は今年の四月からであり、現在その制度がどの程度活用されているかというのは明確には分からないかと思いますが、では、ここで、この効果の検証について、現状どのような方法で効果を検証しようと考えていらっしゃるのでしょうか。

 過去には、平成二十九年の五月に内閣府が公表したアベノミクスにおける賃金・所得関連施策の効果の試算、また、平成二十九年には、経済産業省が実施した委託調査事業の結果報告、平成二十九年度所得拡大促進税制の効果測定等に関する調査報告というものがございます。

 この試算や報告書はありますが、具体的にどのような方法で効果を検証していくのか、また、検討状況はどのような状況になっているのか、伺います。お願いいたします。

住澤政府参考人 先般の通常国会におけます附帯決議におきまして、租税特別措置の効果検証を適切に実施すべきという御指摘をいただいておりまして、政府としても、この附帯決議の御趣旨を踏まえた効果検証を行ってまいりたいというふうに考えております。

 令和四年度税制改正において行いました拡充が適用された申告書は、通常ですと、来年の五月以降に順次提出されていくこととなります。今後、要望省庁である経済産業省においても効果検証に取り組まれるものと考えておりますけれども、財務省といたしましても、経産省や総務省行政評価局ともよく相談をいたしまして、この附帯決議を踏まえた適切な効果検証の在り方について検討を行ってまいりたいというふうに考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 効果を検証して、公表して、またいい方向になるようにと施策を続けていただければと思います。

 それでは、続いて、賃上げ促進税制における中身も見ていきたいと思います。

 教育訓練費、人材投資について伺います。

 これは、教育訓練費の、前年度比で増加させると税制控除率が上乗せするというものだと認識をしております。この教育訓練費の上乗せ要件、令和四年二月九日の衆議院財務金融委員会におきまして、持続的な賃上げを促すという観点で、平成三十年度から設けている、今般の改正、令和四年度税制改正においても、同様の目的から本要件を維持して、引き続き企業の人材投資を後押ししていくとございます。

 この人材投資につきましては、十月二十八日、物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策にて、構造的な賃上げに向けて、賃上げと労働移動の円滑化、そして人への投資、三つの課題を一体的改革で実現させるため、来年六月までに労働移動の円滑化に向けた指針を取りまとめるとともに、人への投資の施策パッケージを五年間で一兆円に拡充するとございます。

 そこでですが、質問をさせていただきます。

 構造的な賃上げに向けて、人への投資やリスキリングなど力を入れる岸田政権でございますが、そうであるならば、この教育訓練費の適用状況も検証していく必要があると考えます。平成三十年度に創設されてから、この教育訓練費の上乗せ措置を適用した企業、大企業、中小企業、それぞれどのくらいございますでしょうか。お答えください。

住澤政府参考人 お答え申し上げます。

 租税特別措置の透明化に関する法律に基づいて、適用実態調査というものを毎年行っておりますけれども、これにおきましては、賃上げ税制全体の適用額の方の申告を求めているところでございまして、上乗せ要件である教育訓練費の状況に着目した調査は、現時点では行われていないところでございます。

 もちろん、この教育訓練費は賃上げ税制の上乗せ要件に関係しておりますので、上乗せされた控除率の適用を受ける法人につきましては、申告書の上ではこの計数が記載されているわけでございますが、現時点におきましては、国税庁においてその数字を抜き出した集計は行っていないということでございまして、上乗せを受けている企業の数ですとか適用額について、現時点においては把握はしていないというのが現状でございます。

岬委員 ありがとうございます。

 つまり、調査されていないということですと、どうやって効果を検証していくのかなという疑問が出るわけです。是非ともやっていただきたいなと思いますが。

 企業の年間教育訓練費支出額について、財務省が出しております、こちらにありますような令和四年度税制改正というパンフレットがございます。日本の人的投資に関しまして、企業の年間教育訓練費の支出額を見ますと、近年は減少傾向にございます。オフJTといったような、育成を全く行っていないという企業も一定数存在するとあります。

 こうした背景があるからこそ、企業の人材投資を後押しするために上乗せ要件を設けたのではなかったのでしょうか。この点でも甘さが感じられるわけですが、この税制によってどれだけ後押しの効果があったのか。この上乗せ要件を満たした、税制を適用した企業、どれくらいあるのかということを調べる必要は、このことからも強くお願いしたいと考えます。

 また、適用した企業数を把握すれば、企業がどれだけ人への投資をしているか、若しくは人への投資を重視しているかといった点も分かるのではないでしょうか。

 また、仮に適用した企業が少ないとするならば、従業員への投資のニーズがないということなのか、それとも、ニーズはあるが資金的な余裕がないからできないということなのか、そのような分析をした上に施策を検討していく必要があるのではないでしょうか。

 この上乗せ要件を満たして税制を適用した企業の把握の必要性、及び、今後の効果検証の際に是非このような観点からも検証を行っていただきたいと私は考えておりますが、いかがでしょうか。財務大臣、お考えをお聞かせください。

鈴木国務大臣 賃上げ税制の上乗せ要件としての教育訓練費につきましては、上乗せされた控除率の適用を受ける法人の申告書に教育訓練費の金額が記載されることになりますけれども、現時点では、その数字を抜き出した集計は行っていないところでございます。

 令和四年度税制改正を踏まえた申告書は、通常、来年の五月以降、順次提出されることとなりますけれども、今後、関係省庁とも相談をしつつ、附帯決議を踏まえた適切な効果検証の在り方について検討していく中で、御指摘の教育訓練費の活用状況の把握についても検討してまいりたい、そのように考えております。

岬委員 ありがとうございます。

 是非とも、来年五月以降の発表を私も注視していきたいと考えております。

 また、ほかの委員の皆様方からも御発言ありましたように、このような施策、制度というものは、やはり持続的な、継続的なものが必要かと思います。持続的な賃上げの実現のためにどうしていくのか、これがまさに肝となってくるのではないでしょうか。

 そもそも、物価高でコスト増に苦しむ中小企業の賃上げをするということが現実的に可能なんでしょうか。そこも私は疑問を持っております。基本給を引き上げてしまうと、再度引き下げるというのは大変難しくなります。また、年金や保険料の会社の負担も押し上げて、中長期的な固定費の増加につながる可能性がございます。それは、経済環境次第では企業の利益を大きく圧迫しかねません。中小企業は赤字になってしまうかもしれない、また、若しくは既に赤字である、こういった不安が先行しまして、固定費を増やす賃上げに踏み切れないのではないでしょうか。

 そこで、私ども日本維新の会は、十月二十一日に、物価高騰等にかかる総合経済対策といったものを出しております。

 この提案、中小企業の社会保険料の事業者負担を半減することという提案が六ページ目にございます。また、より賃上げ効果を高めることを考えるならば、赤字企業においても、負担する社会保険料の負担軽減というほか、効果的になるのではないか、このような指摘やアドバイスもございます。

 労働者の約七割を占める中小企業での賃上げを、いかに、どのようにして実現していくのかということは、大変重要な課題ではないでしょうか。

 また、この賃上げに関しまして、鈴木財務大臣は、成長の果実が賃金の上昇や雇用の拡大につながり、それが消費の拡大を通じて更に次の成長に結びつくという好循環が実現することが重要である、財務省としても、関係省庁と連携をして、持続的な賃上げの実現を目指してしっかりと取り組んでまいりますとお答えいただいております。

 また、日銀の黒田総裁においても、賃金上昇を伴う形で二%の物価安定目標を達成するよう最大限の努力を払うと発表されました。

 最後になりますが、約三十年間のデフレ経済を脱却し、暮らしを守りつつ、賃金の持続的に上昇する国であるかどうかが問われています。

 中小企業の賃上げの実現を含めた持続的な賃上げの実現についてどのようにお考えになるか、決意を込めて、財務大臣、お願いいたします。

鈴木国務大臣 賃上げでありますけれども、これは成長と分配の好循環により持続的な経済成長を実現するために不可欠な取組であります。特に、労働者の約七割を占める中小企業に賃上げの流れを波及させていくこと、これは重要と考えております。

 このため、今般の経済対策において、まずは来春の賃金交渉において物価上昇率をカバーする賃上げを目標にして、中小企業、小規模事業者の生産性向上等の支援や価格転嫁の強力な推進を含め賃上げの促進に取り組んでいくとともに、構造的な賃上げの実現を図るため、成長分野における大胆な投資の促進により生産性と賃金の高い産業、企業を創出し、こうした成長分野への円滑な労働移動を人への投資の強化と一体的に進めていくことといたしております。

岬委員 ありがとうございます。

 是非、国民の生活を守り、そして賃上げを実現し、検証をしっかり行っていただきまして、国力を高めていきたいと考えております。どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。

 質問の機会をいただきまして、ありがとうございました。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 まず、順序を逆にしまして、財源につきまして鈴木財務大臣にお伺いしたいと思います。

 年末に向けて、防衛三文書、国家安全保障戦略、それから防衛大綱、中期防、こういったものがまとめられることになっております。我が党も今議論をしておりますけれども、防衛費の大幅増額というのは、現下の戦略環境などを考えると必要であると我々も考えております。

 ただ、一つ不思議なのは、防衛費の増額に向けた部分だけ政府・与党で財源論が行われていること、これは非常に不思議なんですね。

 例えば、岸田総理は子供の教育予算を倍増するということをおっしゃっておりますし、そしてまた、社会保障の自然増というのは、抑えたとしても毎年数千億円ずつ上がっていっている。そしてまた、一千兆以上の今積み重なった借金があって、その元利返済だけで一般会計予算の二〇%を超えている状況で、更にまた借金をして自転車操業でこの国の財政運営がされているということを考えると、何で防衛費の増額部分だけの財源論だけ議論をしているのかということについて非常に私は不思議な思いをするんですが、財務大臣、いかがですか。

鈴木国務大臣 厳しい財政事情の中で、来年度の予算編成を考えてみますと、先生が今御指摘になられました、防衛費を十分なものにしていく、それから、四月一日にこども家庭庁ができますので子供政策に対する対応、それから、岸田内閣では社会的課題を成長のエンジンにすると言っておりますのでGX、DX、こうしたものが来年度予算の編成に当たっていずれも大変大きな財政需要を伴うものでありまして、その財源手当てをどうするかということ、これは重要な問題であると思います。

 決して防衛費の問題だけではなく、こうした大玉の課題につきましても、予算編成過程におきまして、どの程度のものが必要なのか、それによって予算はどれぐらいなものが必要か、そしてその財源をどうやって考えていくのか、こういったものをこれから考えていきたい、こういうふうに思っております。

前原委員 考えるだけじゃなくて、財務大臣は、その歳入の手当てをしっかりと責任を持ってやられることも財務大臣の大きな仕事ですので、そこは、防衛費に限らずということは今おっしゃいましたけれども、具体的なやはり成果というものを出していただきたいと思います。

 この三十年間の国家予算を見ますと、六十六兆円から今百七兆円まで増えているわけですけれども、大きく増えているというのは二つしかないんですよ。つまりは、高齢化に伴う社会保障費と、それから国債費だけなんです。そのことによって、例えば、教育の予算というのは三十年間ほとんど変わっていないですし、防衛費もほとんど変わっていない、つまり、こういったところのしわ寄せが今の国力の低下につながっているということを考えれば、我々も含めてですけれども、この財源論からは逃げちゃいけないということだと思いますので、しっかりそこは取り組んでいただきたいと思います。

 我々も一つ、少し建設的な提案をさせていただきたいというふうに思います、財源論について。

 玉木代表が、外国為替特別会計の活用で、含み益の話をされましたけれども、これについては、言ってみれば、含み益について、それを財源に使うことはないという御答弁でありました。

 じゃ、第二弾として、基金として、つまりはこれを運用したらどうだ、私はそう思っております。

 皆さん、お配りしている資料の四ページを御覧いただきたいと思います。じゃ、外為特会というのはどのぐらいあるんだということを見ますと、かなりあるんですね。この折れ線グラフの一番右端、二〇二一年ですけれども、一兆三千五百六十一億ドルですよ、ドル。ですから、今一ドルが百四十七円ちょっとですか、今日の為替で。二百兆ぐらいあるんです、二百兆。これは二百兆ぐらいあるわけですね。

 それで、五ページを御覧いただくと、じゃ、ほかの国の外貨準備高というのはどれぐらいなのかというと、中国は日本よりも三倍程度でありますけれども、アメリカなんかは、基軸通貨国ですから、そんな為替介入に対するものを持たなくていいということで、この程度なんですね。

 ただ、これから為替変動が大きく起きる可能性がある、そして、先ほどから議論になっておりますように、為替介入をして急激な為替の変化というものをとどめるためには、一定程度の外貨準備高を持っておくということは大事なことだと思いますけれども、やはり二百兆円というのは余りにも大きいなという感じがいたします。

 四ページに戻っていただいて、じゃ、過去でどれぐらいの為替介入が一番多かったのかというと、これは円売り介入の方です。今年やっているのはドル売り介入ですけれども、逆ですけれども。三十二・九兆円なんです、これは左側ですから。一年でこの程度のレベルであります。これを何年か続けるということもあるかもしれませんけれども、だったら、少なくとも半分ぐらいはこれは運用したらどうなのか、私はこういう提案をさせていただきたいというふうに思いますが、まず、その運用について御意見を聞かせてください。

鈴木国務大臣 まず、現在の外貨準備高の規模についてでございますけれども、外為特会が保有する外貨資産につきましては、その適正な規模に関しての国際的に統一された見方があるわけではないと承知をしておりますが、一般論として申し上げれば、市場に急激かつ過度な変動が生じた場合に自国通貨を買い支えるために十分な額の外貨資産を保有しておくことは重要でありまして、現在の外為特会の規模が過大であるとは政府として考えていないところでございます。

 そして、ただいま前原先生からお話がございました、財源確保のために外為特会の外貨準備の一部を別個に管理してはどうかということでございますが、仮に、別個に管理した外貨資産からの債券利息等の運用収入等を財源とすることであれば、現行の外為特会におきましても、運用収入等から生じる決算剰余金について、外為特会の財務の健全性や一般会計の財政状況を勘案しながら、毎年度、予算編成の中で一般会計に繰り入れているところでございます。

 また、仮に、別個に管理した外貨資産を適宜売却することで財源とすることであれば、外貨を円貨に替えるのは、実質的にドル売り、円安の為替介入そのものになると思います。為替介入は、G7等での国際的な合意において、過度な変動や無秩序な動きへの対応のために行われることとされておりまして、この面から見ても、外為特会の一部を財源に充てるために取り崩して別個に管理すること、これには様々課題があると思っているところでございます。

前原委員 教科書的な御答弁をされて、そんなようなバックグラウンドというのは、恐らく財務金融委員会のメンバーだったらみんな知っていると思います。一般繰入れを行っていると。

 つまりは、米国債を中心に運用して、そして、その見合いとして、短期の政府証券を発行して、今、利息が全然違いますが、米国債、四パーぐらいあるんじゃないですか。日本の国債、短期国債も低いですから、その利ざやの中で剰余金が生じている。それについて、繰入れが一部、七掛けぐらいですか、七掛けぐらい行われている。それはもう分かった上で言っているわけです。そんな規模の話をしているんじゃないんです。

 例えば百兆円の話でいうと、例えばリスクがあるというお答えなら、GPIFがやっているじゃないかと応えようと思ったわけですよ。GPIFというのは、これは二〇〇一年からずっと運用していますけれども、ポートフォリオは、三・五六、平均収益率ですよ。二〇〇六年以降は独法で、これは三・八一、そしてまた、ポートフォリオを組み替えてからはもうちょっと収益率が高くなっていますね。

 それから、例えばハーバード、これは基金五百三十二億ドルあるんですけれども、一九七四年の創設以来、収益率、どのぐらいだと思われますか。一一%ですよ、一一%。それから、イエール大学、これは過去三十年間で一三・六%、こういう運用をしているわけですね。

 つまり、今お答えになられたことで申し上げると、ポートフォリオを変えていくということをやるわけですよ、しっかりと、その中で。つまりは、駄目なことを言い出したら何にもできないんです。物事を変えるということはチャレンジするということで、どういう駄目な条件をなくしていくかということの中で、私は、今、具体的な提案をさせてもらっているんです。百兆円が、例えば一〇パーだとすると十兆円になるわけですよ。一〇パーまで行かなくても、七パーで運用できる。今の海外であったら金利が高いですから、そうすると七兆円になるわけですよ。繰入れどころの話じゃないんです。しかも、半分は、外国為替特別会計としてちゃんと介入資金は持っておけばいい。先ほど見ていただいたように、半分でも大きいんですよ、ほかの国から見ると。

 だから、そういう意味で、しっかりと検討してもらえませんかということですから、駄目なことばかり言うのではなくて、財源論として、これはたまり金ですから、国民が使うべきお金の一つですから、前向きに検討してあげるということをちょっと考えてみるとおっしゃっていただけませんか。財務省の役人のネガティブな答弁だけじゃなくて、自分で考えてみると。

鈴木国務大臣 その前に、先ほど私、外貨を円貨に替えるのは実質的にドル売り・円買いの為替介入そのものと言うべきところを、ドル売り、円安、こう言ってしまいましたので、そこは訂正をさせていただきたいと思います。

 それで、前原先生の今のアイデアについては、率直に言って、私、初めて耳にするところでありまして、今、にわかにここで、何かそれに賛同するとか否定するとか、そういうことはできないということは御了解をいただきたいと思います。

 ただ、決してネガティブな話をするわけではありませんけれども、今、外為特会においては、先ほど申し上げたとおり、私どもとしては、決してその規模が過大であるとは思っていないわけでありまして、こうした外貨の急動な変動に対する為替介入に備えるための資金として、これは重要なものであるという認識を持っております。

 そのことを申し上げた上で、先生の今の、私にとって初めて聞くアイデアでございますので、私自身として、よく精査をさせていただきたいと思います。

前原委員 心優しい鈴木大臣らしい御答弁で、否定もしなければ賛成もしないというお答えでありまして。

 今、政府は資産所得倍増をおっしゃっていますね。政府が率先したらいかがですか。つまりは、自らが資産所得を倍増させる。たまり金の多くのところはこの特会、外為特会にあるんだということで、是非御検討いただければと思います。

 じゃ、黒田総裁、お越しをいただけておりますので、黒田総裁にお伺いをいたします。

 週末は地元に戻っていろいろな方々のお話を伺っておりますけれども、よく聞くのは、人手不足、これは企業もそうですけれども、特に医療、介護系の人手不足というのは本当にすさまじいものがあります。どこに行っても人手が足りないということです。

 かなり前から、外国人労働者を、本当に、人間関係、国との関係をつくって、ある理事長は、フィリピンと十年以上前から関係をつくって、今、三十人ぐらいの看護師資格を持った介護士というものを雇っておられたんですけれども、二人辞め、三人辞めの状況が始まっていると。なぜかというと、円安なんですね。もちろん、公定価格でなかなか賃金が上がらない、需要、供給の関係で賃金が上がらないということがありますけれども、円安なんです。その人はどこに行ったかというと、カナダで介護をやっていると。そうしたら、円ベースでいうと、今の円安の中で三倍になっている、つまり収入が。

 こういうことを分かり始めたら、みんな、外国人労働者はいなくなるし、もう日本は選ばないですよ、これだけ円高になってくれば。そうすると、更にこの人手不足……(発言する者あり)円安になれば。円安になれば選ばないです。どんどんどんどん、来ている人が帰っていく。そして、来ようと思った人は日本を選ばない。より人手不足は深刻化するし、今、日本人がワーキングホリデーで海外に行って、同じ仕事をして二倍、三倍のお金をもらっているという報道をよく見ますよね。

 これは、例えば、貿易の面でいうと、大体、前年度から四八%ぐらい価格が上がっているんですけれども、二七%が円安要因なんですよ。資源高の要因は二一%なんです。今、円安要因の方が大きいんですね。

 そして、先ほどの資産倍増の話ですけれども、これはよくお分かりだと思いますけれども、新生銀行、外貨定期預金残高が半年で六割超増えた。ソニー銀行、一か月間の新たな預け入れ額が半年前から八割増えた。なぜなら、ソニー銀行のドル預金金利は半年で十倍超になっている、こういうことなんですね。

 人も金も出ていきますよ、このまま本当に円安が続くと。

 黒田総裁、この間ずっとやり取りを聞いていましたけれども、お配りをしている資料の二ページを御覧いただけませんか。

 「ドル円の購買力平価と実勢レート」ということで、この図をもってすれば、急激に実勢レートが乖離しているわけですね。これを見ると、やはりかなり投機的な動きによって円が売られているということは、私はもう一目瞭然だと思うんですね。

 それは、どこにあるかというと、アメリカのインフレが収まらない、そしてFEDがかなりハードな路線を取り続けているということと、あと、黒田総裁がハードな路線、ハードというのは、絶対に金融緩和は変えないんだということを言われているから、こういうことになっちゃっている。だから、投機筋からすると、こんなにもうけやすい相場はないんですね。

 だから、そこら辺をどういうふうに考えて、過度な、行き過ぎた円安だと思われないのか、この乖離を見て。そして、投機筋に対して負け戦を続けているのであれば、どういう対応を取るべきなのか。その二点についてお答えいただけますか。

黒田参考人 繰り返し申し上げているとおり、為替相場については、経済、金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが極めて重要であると考えております。御指摘のグラフで見ても、最近の円安の一方的、急速な動きというのは、こういったものと反しているということであることは事実だと思います。

 そういう意味では、最近の円安の進行というのは、企業の事業計画策定を困難にするなど、先行きの不確実性を高め、我が国経済にとってマイナスであって、好ましくないということは、繰り返し申し上げているとおりであります。

 そういうことを踏まえた上で、金融政策としてどういう政策が適切かということは、為替の動きももちろん十分注視しつつ、経済、物価がどのように動くかということを踏まえて、現時点で最適な政策がどういうことかということでやっているわけですが、今の時点で何か金利を上げるとかイールドカーブコントロールを変更するという必要があるとは考えておりませんが、当然、二%の物価安定目標に向けて、賃金の上昇を伴って物価が上がっていくということが見通せる段階になれば、当然、金融政策の見直しというのも必要になってくるというふうには考えておりますが、現時点で今の金融政策を変える必要があるとは考えておりませんが、常に為替も含めた経済、物価情勢は丹念に点検して、それぞれの時点で適切な金融政策を取っていく必要があるというふうには考えております。

前原委員 黒田総裁、一枚目の資料を見ていただけますか。

 これは、今お答えの中に言及されたイールドカーブでありますけれども、青い点線が今年の初めのときのイールドカーブ、直近がこの赤の実線でありますけれども、イールドカーブは上がっているんですね。つまりは、当然ながら、物価上昇につれて金利が上がっている、それを全体抑えているし、この十年のところだけやはりきゅっと下がっているのは、プラスマイナス〇・二五というところで、言ってみれば、十年物の国債を買われている。

 例えば六月とか九月は、十年物の国債の比率は、ほかのときは三〇%前後なのに、六八%とか六二%とか、かなりのを買われて抑えているわけですけれども、何が言いたいかというと、ちゃんと物価は上がっているんです。物価は上がっていて、抑えておられるわけですね。

 つまりは、異次元の金融緩和というものは変わっていないということなんだけれども、イールドカーブ自身はこういうふうに上がっている。つまりは、ある程度の柔軟性を持ってイールドカーブコントロールプラス国債の引受けということをやっておられるということなんですよ。

 だから、その辺の柔軟性というものの中で、私は、投機筋とのやはりせめぎ合いをやられていかれなきゃいけないと思うんですけれども、今で、恐らく実勢的な十年物の国債の金利は〇・八%ぐらいだと言われていますけれども、例えば、この十年物の国債のゼロ金利、そしてプラスマイナス〇・二五というものを少し緩めるという形の中で、柔軟性はこちらは持っているよ、異次元の金融緩和は変えないけれども、持っているよということを示すことが、私は、為替について、ネガティブな発言をされている方もおられるけれども、投機的な動きは為替でかなり止まっていると思いますよ。

 そういう意味では、いや、こちらも柔軟ですよ、あなたたちが負けない試合だと思っていたら大間違いですよということを示す意味で、この〇・二五%を動かす、広げる可能性もあるということをおっしゃったらいかがですか。

黒田参考人 繰り返しになりますけれども、イールドカーブコントロール自体は、あくまでも二%の物価安定目標を賃金の上昇を伴う形で持続的、安定的に達成できるというために必要なものとして行っているわけでして、確かに、御指摘のように、このところの海外の金利の上昇その他を反映して、イールドカーブ全体が少し上がっていることは事実なんです。

 ただ、現時点ではやはり、短期の政策金利をマイナス〇・一%、そして十年物国債の金利をゼロ%程度、プラスマイナス二五ベーシスポイントぐらいというところで、全体のイールドカーブをできる限り金融緩和に役立つような形で維持するということが必要だというふうに考えております。

 ただ、御指摘の点は十分考慮したいと思いますが、何か、基本的に、今のイールドカーブコントロールを変えなくちゃいけないというふうに全く考えておりません。これは、あくまでも二%の物価安定目標が持続的、安定的に達成されることが見通せるようになったときに、当然、金融政策は修正、変更されるべきだというふうに思っております。

前原委員 イールドカーブコントロールを今すぐ変えるということについては、それはこの間議論があったところですし、そんなすぐはできないと思いますけれども、しかし、今、少し含みを持たされたと思いますけれども、やはり〇・二五プラスマイナスというところは、物価の上昇の度合いを見ながら、やはり柔軟に考える。つまりは、かたくなにこちらが変えませんと言って、FEDがどんどんどんどん利上げしたら、もっと円安になりますよ、幾ら介入したって。

 だから、そういう意味においては柔軟性を持つべきだということを申し上げたわけでして、是非、元々頭は柔軟な方だと思いますので、柔軟な御対応をいただいて、投機筋との戦いに何とかしのいでいただきたいということをお願い申し上げて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 午前中の末松議員の質疑、統一協会との関わりについて、大臣、副大臣、政務官からそれぞれ御回答がありました。推薦確認書は受けてもいないし署名もしていない、関わりはなかったということでありました。

 今日は、藤丸副大臣に確認の意味で質問をします。

 実は、統一協会側の方は、藤丸候補、藤丸議員を去年の総選挙で応援したというふうに言って、これは地元のテレビでも相当報道されて、私も見て、いや、もうびっくりしました。

 統一協会、福岡県久留米市にある世界平和統一家庭連合の施設で、二〇二一年十一月に撮影された動画です。これは報道もされています。この久留米の家庭教会の渉外部長が、この南福岡教区で関わってきた選挙区の報告ですとして、選挙結果を報告されています。福岡七区は藤丸敏さんが九万二千二百三十三票で、少し立憲が追い上げてきましたけれども、勝ちました、ありがとうございました。ここで信者さんは大きな拍手をします。そして、副大臣の元秘書で大牟田市議会議員の名前を出して、何とか藤丸さんを教会に連れていきますと約束をしていただいております、こういうふうに教会信者の方に語っていたということであります。

 改めてお伺いします。

 統一協会との関わりはなかった、今もない、そして推薦確認書も受けていないし署名もしていないと。いかがでしょうか。

藤丸副大臣 お答えします。

 私も、インターネットで見ました。「ミヤネ屋」の、市議が話しているところは見ていないんですけれども、話題になったということは知っております。

 今話がありましたように、推薦確認書の提示を受けたことや署名を行ったことはありませんし、その市議にも、勝手にやっていないよなという、直接、その市議にも、勝手にそういうのをやっていないよなということの確認はいたしました、問われましたので。

 そして、選挙関係の、選挙応援の依頼もしていませんし、そして組織的支援も受け入れていません。

 そして、その市議は元秘書でありますので、昔から、もう長年の、二十年ぐらいつき合っている人間でありますので、一生懸命、私の選挙はいつも、四回目ですけれども、四回とも一生懸命、選挙をしてきておりました。

 大体そういうところでございます。

田村(貴)委員 関係はないということで確認をしておきます。

 鈴木大臣、質問の重複は避けます。岸田首相は、自民党として今後一切関わりを絶つというふうに言われています。では、統一協会の一体何が問題なのか。私たちは、反社会的カルト集団だ、そういったところと政治、行政が結びつくこと自体はこれはまかりならぬと言っていますけれども、統一協会が何で悪いのか、お答えいただけますか。

鈴木国務大臣 やはり、過去におきまして、統一教会そのもの、そしてまた関連団体が、いわゆる霊感商法などのようなものを行った、あるいは、統一教会そのものが、いろいろな精神的な、マインドコントロールと言ったら信者さんに怒られるかもしれませんけれども、多額の寄附を納めさせたという、そういうことが全体として反社会的な行為であって、そういうところに政治家が関わりを示すことによって、そうした反社会的な行動をしている宗教団体あるいは関連団体に、何か権威というか、お墨つきを与えてしまったことになるのではないか。そういうところが基本的な問題である、私自身はそういうふうに思っています。

田村(貴)委員 この問題は、必要に応じてまた取り上げていきたいと思います。

 それでは、消費税インボイス問題について質問します。

 七月四日に公開された国会議員の所得等報告書によれば、岸田総理は、テレビ出演料や原稿料などの雑所得が年間六百九十五万円あるとのことであります。

 テレビ出演料や原稿料には消費税が課税されます。これは鈴木大臣とて、大臣そして国会議員、皆一様に、発注者が、その仕事の依頼において、やはり仕入れ税額控除という問題が出てまいります。相手を問わず、これが必要になってまいります。そうすると、消費税をめぐる不利益という問題が生じてまいります。

 岸田首相はインボイスの登録申請はお済みになったと聞いていますか。鈴木大臣自身は登録はどうなんでしょうか。

鈴木国務大臣 岸田総理がインボイスの登録申請をされたかどうかは、聞いたことがございません。分かりません。

 そして、私自身は、インボイスの登録申請は行っておりません。

田村(貴)委員 おかしいですよね。こうやって仕入れ税額控除の中に私たちも入ってくるんですよ、テレビ出演料とか原稿料が、受け取るときに。そして、財務省や国税庁は、事業者やフリーランスの人たちに対して、インボイス番号の登録を早くするようにと、せかしているじゃないですか。この制度を何が何でもやると言っている大臣は、そういうことは関知していないと。非常に奇異に映ります。

 鈴木大臣が雑所得を得たところで、そこにかかってくる消費税について、それは痛くもかゆくもないかも分かりません。ところが、ここにかかってくる消費税がまさに死活問題になる方がたくさんおられるわけなんです。普通の自営業者の方、フリーランスの営業の方、そして副業、兼業している方々にとってみたら、大変重たい重税になります。

 今、インターネットなどで何人もの大学教員の方が、インボイスに登録していない場合、来年十月からの消費税分の原稿料は払えないという通知が出版社から来たことをSNSに投稿しています。

 ある教員の方はSNSでこのように投稿しています。そのまま読み上げます。つまり一割弱減るということなんだろう、今後、あらゆる取引先からこの通知が来るのだろうか、会社の側も余計な業務が増えるはずで、これ以上、誰得という言葉がぴったりくるばか制度もないと、インボイスによる増税を突然知って、驚愕し、そして憤慨されているわけです。こうした投稿は今、たくさんあります。

 ここで、出版社から原稿料を受け取っている大学教員の例でお伺いします。

 この大学教員にとって、インボイスが実施されるとどうなるか。一つ目は、課税業者になって消費税を払う。二つ目は、免税業者のままで消費税分の原稿料引下げに応じる、応じざるを得ない。三番目、原稿そのものを書くのをやめる。これはどの選択肢を取っても収入が減るんじゃないですか。これは収入を減らすという選択肢以外考えられないと思いますけれども、いかがですか。

鈴木国務大臣 まず、先ほど私がインボイス登録申請を行っていないという話を申し上げましたが、先ほど田村先生がおっしゃった岸田総理の一年間の収入、出演料とか講演料に比べますと、私はその百分の一もございませんので、その必要性がないという、そういうことで、そういう登録申請は行っていない、こういうことでございます。

 その上で、今の御質問でございますけれども、インボイス制度の実施後、免税事業者が課税事業者になって消費税を払うか、免税事業者のままで消費税分の原稿料引下げに応じるか、原稿を書くのをやめるかの三つの選択が示されたわけでございますが、そうしたことに対して、私どもとしても、いろいろな不安とかそういうことをお聞き取りをしているわけでございまして、それに対応する措置を今までもしてきているところでございます。

 インボイス制度への移行による取引への影響について申し上げれば、まず、免税事業者が課税事業者になった場合は、消費税分を取引価格に転嫁することや仕入れ税額控除をすることによって、必ずしも収入が減るというわけではないと思います。

 また、免税事業者のままであっても、取引の相手方が消費者であったり、課税事業者であっても簡易課税を適用している事業者であったりする場合は、インボイス制度の導入による取引への影響はありません。さらに、免税事業者の取引相手の事業者が条件を変えずに取引を継続する意思がある場合は、こうした事業者と取引を行っている免税事業者にも影響はありません。

 一方で、取引の相手方の事業者が取引価格を変更できないか検討している免税事業者については、取引に影響が及ぶ可能性があると思います。そのときに不当な取扱いを受けないよう、独占禁止法や下請法等の関係法令に基づいて対処することといたしております。

 具体的には、免税事業者との取引について、発注者側が関係法令上で留意すべき点をQアンドA形式で明らかにし、各事業者団体へ送付し、法令遵守要請を行う、下請かけこみ寺や駆け込みホットラインでの相談対応を行う、下請Gメンや書面調査による状況把握や発注者側への牽制を行うといった取組をしているところでございます。

 今後も引き続き、関係省庁と連携をしながら、免税事業者が不当な取扱いを受けないよう、事業者間の取引環境の整備、これにはより一層努めてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 今、本当にいろいろいろいろおっしゃいました。しかし、必ずしも負担が増えるわけではないと。完全に負担が増えるわけじゃないんでしょう。増える人は出てくるわけですよ。

 それから、大臣、これだけ登録業者になれ、なれと言っていながら、自分だってなる可能性があるのに、財務大臣として、そういう態度というのは、本当に私は信じられません。免税事業者にとって、インボイス制度の実施は、所得が減る、増税でしかありません。

 フリーランスで働くアニメ業界のアンケート調査によれば、フリーランスの半数が年収三百万円未満で、インボイス制度の導入で、四人に一人、廃業の危機と答えています。

 それから、声優さんたちが立ち上げたVOICTIONの収入実態調査及びインボイスに関するアンケート調査、これによれば、七二%は声優としての年収が三百万円以下にあることが分かりました。二十代、三十代の若者の年収はとりわけ低くて、約半数が百万円以下と回答しています。インボイス導入で、約二割の声優さんが廃業を検討しています。

 これは政府全体に言わせていただきたいんですけれども、クールジャパン戦略を推進していますよね。日本の海外から人気ある文化の輸出コンテンツの目玉は、アニメじゃないんですか。このアニメ業界に携わる未来を担う若者が、インボイス制度によって仕事とその夢を失わざるを得ない。こういう事態だから、今、全国各地で、声なき声も含めて大きな見直しを求める声になっているんです。

 鈴木大臣も、最近のテレビの報道、新聞の報道、読まれたでしょう。収入が減って課税業者に取引先から圧力、こうした報道があっているわけです、問題点を検証していく。

 大臣、私、いろいろな人の声を聞いてきました。でも、声優さんたち、アニメの世界で頑張っている制作者の方たち、本当に収入が少なくて、だけれども、希望を持って頑張っておられる。この方たちが、税金、税制の問題でもうこの仕事が続けていけない、廃業せざるを得ない、こういう事態をつくってはいけないんじゃないんですか。若い人たちの芽を摘んではいけないと思いますけれども、そこに思いをはせたことはありますか。

鈴木国務大臣 来年十月からインボイス制度に移行するということで、ちょうど一年ということで、最近、新聞等にインボイスについての記事がございまして、そういう中で、フリーランスの方の声等を私も記事として拝見をしているところでございます。

 そして、インボイス制度の移行によりまして、免税事業者のままでいた場合に取引から排除されるのではないか、そういう不安、また、課税事業者になったとしても、価格転嫁ができない、又は新たな事務負担が生じるのではないかといった、そういう不安、こういった中小・小規模事業者の方々、フリーランスの方も含めて、その御心配は承知をいたしております。しっかりと対応していく必要がある、先生のお話にもありました、そういうお話を伺いながら、そう考えております。

 具体的には、まず、免税事業者のままでいた場合の御心配につきましては、直ちに取引から排除されることがないよう、制度移行後も六年間は、免税事業者からの仕入れであっても一定の割合を控除できるようにするなど十分な経過措置が設けられておりまして、こうした仕組みについて今周知をしているところです。

 次に、課税事業者となる場合の御心配については、免税事業者を始めとした事業者の取引について、独禁法、下請法等の取扱いをQアンドAにより明確化し、各事業者団体への法令遵守要請を行うなど、取引環境の整備に取り組んでいます。また、今般の総合経済対策においても、様々な補助金によって支援を行っているところでございます。

 引き続き、制度の円滑な移行に向けて、各省庁連携をして、事業者の準備の状況等を丁寧に把握をして、きめ細かい対応をしてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 大臣、心配は承知しているとおっしゃるのであれば、対応していくとおっしゃるのであれば、インボイス中止しかないじゃないですか。

 三百万円の売上げでは十三万六千円の消費税の負担が増えるという試算を資料にしてお配りしています。これは、フリーターとして働くアニメーターや声優の方が、一年間の売上げ三百万円として、インボイス制度のために消費税の課税業者となり簡易課税を選択した場合の消費税の納税額を表したものでありますけれども、この消費税の額は幾らになりますか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 フリーランスで働くアニメーターや声優が簡易課税制度により申告する場合のみなし仕入れ率は、五〇%が適用されます。これを前提といたしまして、年間売上げが税込み三百万円であるアニメーターや声優の消費税及び地方消費税を合わせた納税額を機械的に算出いたしますと、約十三万六千円でございます。

田村(貴)委員 大臣、増えるじゃないですか。収入三百万円の方で年間十三万六千円の新たな消費税負担になると。

 この三百万円の人のケースで見ると、経費をみなし仕入れ率の五〇%として、所得は百五十万円、年金、保険料が四十万円、所得税三・一万円、住民税六・四万円、そこに消費税の負担十三万六千円が乗りかかってくるわけですよ。そうすると、もう手元に残るお金は八十六万九千円なんですよ。これは余りにも厳し過ぎますよ。あんまりじゃないですか。

 もう時間がなくなってきましたけれども、大臣、一つ、そんな不安の声を聞いているとおっしゃるのであれば、今、様々な人たちが声を上げています。自営業者、一人親方、アニメーター、声優、それから食品の移動販売のフランチャイズに参加している業者さん、フリーランスの方、映画監督、カメラマン、そして、芸人、プロ野球選手、個人タクシー、ウーバーイーツ、シルバー人材センター及びそこの会員さん、ありとあらゆる人がインボイスの制度を知った途端に声を上げているんです、こんなひどいことは困りますと。この人たちに実際会って、直接お話を聞く、どんな窮状と、どんな未来が待ち構えているのか、ちゃんと聞くべきじゃないですか。財務大臣としては私はそれは当然のことだと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 先ほども御答弁申し上げましたけれども、いろいろな方々から、各方面からそういうお話を、直接ではありませんけれども、聞いているところでございます。

 免税事業者を始めとした中小・小規模事業者の方々の声につきましては、地方自治体から受領しました意見書、国会での御質問等を通じた事務方からの説明などなどの機会を通じて承知をしているつもりでおります。

 その上で、財務省としては、これまでも、関係省庁を通じて事業者団体等への丁寧な周知を行うとともに、現場の声をお伺いしながら、個別の業界におけるインボイス制度への対応方法についてきめ細やかに相談に応じてきたところでございます。

 引き続き、こうした取組を進めながら、現場の声、そうしたものにしっかりと対応をしていきたい、そういうふうに思っております。

田村(貴)委員 これは、幾ら相談を聞いても、解決できないんですね。

 それで、今、地方議会からの意見というふうにも聞かれました。

 財務省にお伺いします。

 財務省に上がってきている今年度の地方議会からの意見書は、今どのぐらいになっていますか。

鈴木国務大臣 確認できた範囲で申し上げますと、財務省として令和四年一月から九月末までに収受いたしましたインボイス制度に関する地方議会の意見書は、インボイスという記載のほか、シルバー人材センターと適格請求書等保存方式との記載を合算をいたしますと、五百四十三件であります。

田村(貴)委員 最後ですけれども、五百四十三件というのは、これは自治体数に置き直してみますと、十四の道府県を含めて二百八十九自治体です。昨年度は九十三自治体です。それが九月末までで二百八十九自治体に増えている。

 地方自治体からのこれだけの見直しを求める声が上がっている、中止を求める声が上がっている、そのことも指摘して、インボイスは中止することを主張して、終わります。

塚田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時三十五分散会


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