衆議院

メインへスキップ



第4号 令和4年12月6日(火曜日)

会議録本文へ
令和四年十二月六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 塚田 一郎君

   理事 井林 辰憲君 理事 越智 隆雄君

   理事 中西 健治君 理事 宗清 皇一君

   理事 櫻井  周君 理事 末松 義規君

   理事 住吉 寛紀君 理事 稲津  久君

      青山 周平君    東  国幹君

      石井  拓君    石原 正敬君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    加藤 竜祥君

      金子 俊平君    神田 憲次君

      神田 潤一君    小泉 龍司君

      高村 正大君    塩崎 彰久君

      鈴木 隼人君    土田  慎君

      中山 展宏君    藤原  崇君

      本田 太郎君    八木 哲也君

      若林 健太君    階   猛君

      野田 佳彦君    原口 一博君

      福田 昭夫君    藤岡 隆雄君

      道下 大樹君    米山 隆一君

      足立 康史君    藤巻 健太君

      岬  麻紀君    伊藤  渉君

      山崎 正恭君    前原 誠司君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       鈴木 俊一君

   内閣府副大臣       藤丸  敏君

   財務副大臣        井上 貴博君

   文部科学副大臣      井出 庸生君

   財務大臣政務官      金子 俊平君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 茂呂 賢吾君

   政府参考人

   (金融庁総合政策局審議官)            堀本 善雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    伊藤  豊君

   政府参考人

   (デジタル庁審議官)   阿部 知明君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    諏訪園健司君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    齋藤 通雄君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    三村  淳君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   政府参考人

   (スポーツ庁審議官)   星野 芳隆君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行決済機構局長) 神山 一成君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月六日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     加藤 竜祥君

  塩崎 彰久君     土田  慎君

  若林 健太君     東  国幹君

  藤岡 隆雄君     米山 隆一君

  岬  麻紀君     足立 康史君

同日

 辞任         補欠選任

  東  国幹君     若林 健太君

  加藤 竜祥君     小田原 潔君

  土田  慎君     塩崎 彰久君

  米山 隆一君     藤岡 隆雄君

  足立 康史君     岬  麻紀君

    ―――――――――――――

十二月五日

 消費税インボイス制度の実施中止に関する請願(石川香織君紹介)(第一一五号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一三二号)

 同(白石洋一君紹介)(第一三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二五号)

 同(本村伸子君紹介)(第三一七号)

 同(源馬謙太郎君紹介)(第四四五号)

 消費税率を五%に引き下げ、複数税率・インボイス制度の即時廃止を求めることに関する請願(松木けんこう君紹介)(第一一六号)

 同(白石洋一君紹介)(第一四〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二七号)

 同(源馬謙太郎君紹介)(第四四六号)

 消費税率五%への引下げに関する請願(田村貴昭君紹介)(第一三三号)

 同(宮本徹君紹介)(第二〇二号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二六号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二三七号)

 同(笠井亮君紹介)(第二三八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二四〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二四一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第二四二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二四三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二四四号)

 同(宮本徹君紹介)(第二四五号)

 同(本村伸子君紹介)(第二四六号)

 同(本村伸子君紹介)(第四〇五号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一五九号)

 同(笠井亮君紹介)(第一六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一六一号)

 同(志位和夫君紹介)(第一六二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一六三号)

 同(田村貴昭君紹介)(第一六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一六五号)

 同(宮本岳志君紹介)(第一六六号)

 同(宮本徹君紹介)(第一六七号)

 同(本村伸子君紹介)(第一六八号)

 消費税率の引下げとインボイス制度導入中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第二二四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

塚田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、決済機構局長神山一成君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官茂呂賢吾君、金融庁総合政策局審議官堀本善雄君、監督局長伊藤豊君、デジタル庁審議官阿部知明君、財務省関税局長諏訪園健司君、理財局長齋藤通雄君、国際局長三村淳君、国税庁次長星屋和彦君、スポーツ庁審議官星野芳隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

塚田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

塚田委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。中山展宏君。

中山委員 おはようございます。自由民主党の中山展宏でございます。よろしくお願いいたします。

 ワールドカップの感動も余韻が残った状況でありますけれども、私は神奈川県の川崎市が選挙区でして、北部が選挙区でして、今回の日本代表の三笘選手、それから田中碧選手、そして久保選手の小学校、中学校、通われた、そういった地域ですので、なおさら彼らのすばらしいプレーに感動したところでありますが、最後まで、PK戦まで見たものですから、しっかり今日は質疑させていただきたいと思います。

 大臣はワールドカップを御覧になられましたか。はい。しっかり大臣のお務めをされていらっしゃるんだと思います。

 それでは、今日は、物価に関わる、価格転嫁と賃上げの循環について、これも大臣が再三言及していただいておりますけれども、物価高騰対策を盛り込んだ補正予算が成立をした中で、改めてお伺いをしたいと思います。

 我が国独特のというか、特異な価格形成、価格の設定構造、とりわけ企業の価格設定行動、それから賃上げの、賃金の価格設定、賃金の設定行動、諸外国に比べて少し特異なところが、変わったところがあるんだと思っています。価格転嫁ができない日本というようなことも最近は言われております。素材、原料や中間財、それから最終財の物価に対しての感応度も大分我が国は緩やかというか、感応度が低い状況だと思いますし、企業の物価指数、それから消費者物価指数との乖離を見ても、なかなか転嫁がされない状況が続いていると思います。

 先般、十一月の末に、FRBのベージュブック、十二の地区連銀が経済報告を出しておりますが、その中で、米国は、コロナの後のディマンドプルというか需要がやや落ち着いてきた、それによって価格、物価の上昇ペースがやや鈍化しているということも言われています。さらには、サプライチェーンとか物流の滞りも改善をされて、その中で大分物価の動向が落ち着いてきた。逆に懸念するのは、いわゆる人手不足、米国においても人手不足で、人手、人材のコストが物価に反映をされる、そういったことが報告をされています。

 我が国の物価の高騰の要因は、もう皆様と共有をしておりますが、やはり素材、原料の高騰であったり、また為替の影響だったと思いますが、ここに来て、素材、原料に関しては、例えばエネルギー価格でいうと、WTIの先物が今八十ドルを切った状況にまでなってまいりました。一時百四十ドルを超える、そういった水準から、そこまで落ち着いてきた。さらには、為替の方も、今日も百三十円台半ばになってまいりました。一時百五十円を超える、そういった状況でしたけれども、ドル・円の方は落ち着いてきた中で、我が国において、やはり、物価に合わせた賃上げをということをよく言われますが、物価に合わせた賃上げではなくて、賃上げに合わせた物価をつくっていく、価格転嫁していくことが大事なんだろうと思います。

 そこで大臣に、補正予算が成立した後の、この賃上げと価格転嫁に向けた、その好循環に向けた抱負と展望をお伺いしたいと思います。

鈴木国務大臣 おはようございます。

 賃上げ、これは成長と分配の好循環によりまして持続的な経済成長を実現するために不可欠である、そういうふうに思っております。

 中山先生御指摘のとおりに、賃上げを促進するためにはその原資の確保の観点から適切な価格転嫁が重要であり、今回の経済対策におきましてもそのための環境整備を図っていくこととしております。具体的に申し上げますと、公正取引委員会等における独禁法、下請法に基づく執行体制の強化、これは計五十一人増員をいたします。また、下請中小企業への訪問、ヒアリング調査を行う下請Gメンの体制強化、これは計五十二名増員をいたします。

 このような緊急増員措置を行い、中小企業への不当なしわ寄せの防止や取引の適正化を図ることで、適切な価格転嫁を徹底して、中小企業等の賃上げが可能となる環境を整備していきたいと考えております。

 政府といたしましても、賃上げに向けてあらゆる施策を総動員することとしておりまして、引き続きしっかりと取組を進めてまいりたいと考えております。

中山委員 是非、中小企業の皆さん、下請事業者の皆さんのしわ寄せの解消に向けても目配りをしていただきたいと思いますし、景気は、よく気持ちから、気からということを言われますが、賃上げの方は、企業の気、気持ちに委ねるのではなくて、これは政策的にしっかり刺激をしていただいて底上げをしていくことが大事だと思います。

 さらに、企業においては、最近、いい物は安くということよりも、しっかり、いい物は高いんだよということをおっしゃっていただけるような環境、さらには、これは消費者の立場としても、物価が賃上げを伴って上がっていくことに対しての受容性というか、社会的受容性も大事なんだと思います。消費者の皆さんは今、例えばエシカル消費とか、倫理的な消費も進んでいますし、さらには、人権や環境や、さらに、経済安全保障を鑑みた中でのサプライチェーンを構築した中でしっかり物価が形成されること、こういった、正しいというか社会のためになる消費ということを志向していただく方も多くなってきたと思いますので、是非賃上げにつなげていただきたいと思います。

 さらには、名目の世界で物価も金利も、さらには経済成長もプラスにしていくことが大事なんだと思います。大臣として、プラスの世界観をしっかりつくり出していくように、これからも御指示をいただきたいと思います。

 それでは、中央銀行デジタル通貨についてお伺いをしたいと思います。

 我が国においても、欧州中銀を始め七中銀と共同研究を進めたり、さらには、これから民間銀行とも実証実験をしていくというようなお話を伺っておりますが、今日はとりわけ、このデジタル通貨の匿名性についてお伺いをしたいと思います。

 御存じのとおり、中国はデジタル通貨の実装が進んでいます。今、二十三都市プラス四省で実証実験の地域を広げている状況だと伺っておりますが、その中で中国がやはり懸念するのが、ステーブルコインとか暗号資産の台頭と言われています。やはり、中国の政府としては、しっかりデジタル通貨で制御したい、通貨の制御をしたいというところが暗号資産やステーブルコインによって抜け道にならないということが大事なんだと考えられていますし、さらには、国際決済をどのようにしていくかというところが中国のデジタル・ユアンの非常に課題だと言われています。

 他方、米国においては、やはりプライバシーの保護というのが重要視をされる中で、あとは安全保障上のリスクをどのようにデジタル通貨で担保していくかということを考えているんだと思います。

 そこで、我が国においては、デジタル通貨の設計においてこの匿名性の部分をどのように検討しておられるか、まずは、これは財務省の方、是非お願いいたします。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。

 中央銀行デジタル通貨、いわゆるCBDCにつきましては、欧州や米国など世界各国で調査、検討が進められており、我が国といたしましても、社会経済のデジタル化の流れの中で当然検討を進めていくべきものと考えております。

 その上で、CBDCの在り方につきましては、制度面や法律面で多岐にわたる論点の検討が必要と考えております。先生御指摘のプライバシーの保護ですとか、あるいは匿名性の確保といったところは、今後の制度設計におけます重要な論点の一つと考えているところでございます。

 一方で、マネーロンダリング対策ですとか、あるいはテロ資金、反社、反社会的勢力ですね、の資金に使われることの抑止といったような観点からの検討も必要というふうに考えております。

 この辺りをどのようにバランスを取っていくのかといったところについて、財務省といたしましては、国際的な動向なども踏まえつつ、実証実験を行っております日本銀行あるいは金融庁等と緊密に連携をし、検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

中山委員 同じく、日本銀行さん、お願いいたします。

神山参考人 お答え申し上げます。

 日本銀行といたしましても、CBDCにおいては、プライバシー保護の面で利用者が安心して利用できるような設計、運営が期待されていると認識しております。

 プライバシーとマネーロンダリング対策、テロ資金供与対策といった要請をどのようにバランスさせていくかにつきまして、現在は、制度面、技術面の双方から、米欧の中央銀行を含めまして、幅広い関係者とともに議論を進めているところでございます。

中山委員 まだ検討が進んでいる最中だと思います。

 中国人民銀行のデジタル通貨研究所のトップが、デジタル人民元は現金のように匿名であってはならないと言っていると報道されています。中国はしっかり、悪い言葉かもしれませんけれども、このお金の流れを監視をしていくという部分でもデジタル通貨を実装させようとしているんだと思います。私たちの価値観とやはりそこは異なるんだと思いますので、いわゆる決済のファイナリティーの部分で、この匿名性の有用性というか、しっかりそこは踏まえて検討していただきたいと思います。

 時間が少ないのですが、最近、中国の富裕層の方々が日本の不動産を買っている。ゼロコロナ対策から、中国のゼロコロナ政策から逃避をするため逃げてくるという、それを忌避して日本の不動産を買うということも伝えられています。

 そこで出てくるのが、いわゆる地下銀行の話が出てきます。地下銀行といっても実際に中国から日本に送金をしているわけではなくて、疑似銀行というか疑似送金という形になっているんだと思いますけれども。

 私の問題意識としては、これだけ中国からすると海外送金が規制になっている環境の中で、数億、場合によっては数十億の物件、マンションであったりとか土地が買われるという状況にあります。日本各地で起きておりますけれども、土地自体の取引はなかなか規制するのは難しいのかもしれません。ただ、いわゆる地下銀行と言われるようなそのお金の流れ方に関して、どのような、今実態を把握していらっしゃるかどうか、お伺いしたいと思います。

伊藤政府参考人 お答えをいたします。

 地下銀行、定義が難しゅうございますので、なかなか全ての実態を把握するということも難しゅうございますけれども、先生御承知のとおり、為替取引につきましては、銀行法若しくは資金決済法で、免許若しくは登録が必要ということでございまして、これをなくしてこの為替取引を行った場合には刑事罰がかかるということでございますので、私ども若しくはその捜査当局とも協力しながら必要な対応を取っていく必要があるだろうというふうに考えているところでございます。

中山委員 ありがとうございました。

 以上です。質問を終わります。

塚田委員長 次に、稲津久君。

稲津委員 おはようございます。公明党の稲津久です。

 通告に従いまして、順次質問をしてまいります。

 まず、我が国の財政状況に関する認識についてということでお伺いしますけれども、これは財務大臣に伺います。

 十一月二十九日に財政制度等審議会から出された令和五年度予算の編成等に関する建議について何点か伺っておきたいと思います。

 まず、建議では冒頭に、総論として、歴史的転換点となる世界的な環境変化は加速しているということで、特に、ロシアによるウクライナ侵略、また、世界的なインフレ進行、持続可能性を考慮せずに拡張的な財政運営を採用しようとしたことに対する、市場が鋭く反応して、政治が混乱、内閣交代に至ったイギリスの事例なども挙げているところでございます。

 具体的には、本年九月から十月に、イギリスにおいて財政運営に対する信認低下が金利上昇や通貨の下落につながった、こうした例を出しまして、日本とは当然金融政策のスタンスとかインフレ率などが異なる状況にありますけれども、決して、対岸の火事だ、そのようなことではいけないと思っておりまして、国債発行額の縮減や債務残高抑制に不断に取り組むべきとしています。

 他方、一部の識者より、負債だけではなくて資産も考慮すれば日本の財政状況はそれほど悪くない、こういった主張がなされたり、巨額の財政支出を求める提言が議員連盟から出されていたりもしております。

 こうした状況の中で、我が国の財政状況に対する基本認識を改めてお伺いしておきたいと思います。

鈴木国務大臣 日本の財政状況でありますけれども、諸外国に比べて債務残高対GDP比が高いなど、極めて厳しい状況にあると認識をいたしております。さらに、これまで新型コロナ対応や累次の補正予算の編成等によりまして、より一層厳しさを増している状況であります。

 国民の命や暮らしを守るため、危機に必要な財政出動、これはもうちゅうちょなく行わなければならないわけでありますが、同時に、日本の財政に対する市場からの信認を維持すること、これも重要であり、財政規律をしっかりと意識しながら、責任ある経済財政運営を進めていくことが重要と考えます。

 この点、稲津先生御指摘の財政制度等審議会の建議では、イギリスの混乱を他山の石とし、財政に対する市場の信認を維持することや、将来世代の利益に思いを致し、責任ある財政運営を取り戻すことといったポイントが強調をされておりまして、大変重要な御指摘であると重く受け止めております。

 財政は国の信頼の礎でありまして、建議の内容も踏まえつつ、新型コロナへの対応といった例外から脱却をして、平時への移行を図りながら、歳出歳入両面の改革の取組を続け、経済再生と財政健全化の両立に取り組んでいかなければならない、そのように考えております。

稲津委員 大臣からも、債務残高やGDP等を見ても大変厳しい状況にあるというお話もありました。

 積極的財政出動という御意見もあり、私もそうした会議にも参加をしているんですけれども、一部の見方としてはそれも当たっている面もあると思っています。ただ、問題は、財政の責任論ということを常にやはり意識しておかないと議論としてかみ合わなくなってくるんだろう、こう思っておりまして、是非、今お話しいただきましたけれども、そうした視点を踏まえて、お願いしたいと思います。

 今度、令和五年度の予算の概算要求において、岸田政権が掲げる新しい資本主義の実現のための特別枠、これは四・三兆円要求されて、また、過去二番目の大きさとなる総額百十兆円が要求をされております。

 また、防衛省を中心に多数の事項要求も出ているということでございまして、この点について建議では、特に、予算編成過程での検討事項とされた主要課題として、防衛力の強化、また、少子化、子供政策、GX、DX投資、いずれも、日本の将来を左右する重要な課題であると思っておりますし、成果を上げるために真に効果のある支出を積み上げていくということもこれは当然求められるとしつつ、安易に国債発行に依存せず、安定的な財源を確保していくべきだ、このように提言がされているところでございます。

 そこで伺いますけれども、こうしたことを踏まえて、令和五年度予算編成についての政府の基本的な方針についてお伺いしておきます。

鈴木国務大臣 令和五年度予算におきましては、新型コロナや物価高騰といった足下の喫緊の課題に引き続き機動的に対応しつつ、骨太方針二〇二二などを踏まえまして、我が国が直面する内外の重要課題への取組を本格化させる予算を大胆に重点化してまいりたいと考えております。

 具体的に申し上げますと、人への投資、科学技術・イノベーション、スタートアップ、GX、DXへの重点投資の推進とともに、子供政策の充実を図り、全世代型社会保障を構築してまいります。さらに、安全保障環境が一層厳しさを増していく中で、防衛力を抜本的に強化していくこと、これも重要なことであります。

 同時に、我が国が直面している様々な課題に対応していく基盤として健全な財政が不可欠でありまして、財政は国の信頼の礎であり、日本の財政が依然として厳しい状況にある中で、引き続き責任ある経済財政運営を進めていくことが重要と考えております。

 こうした考え方の下、来年度の予算編成に向けて、稲津委員からも御指摘のあった財政審の建議の内容も踏まえながら、経済・財政一体改革を着実に推進をして、歳出の中身を精査するとともに、必要な財源も確保するなど、各省と十分議論をして質の高い予算作りを進めてまいりたいと思っております。

稲津委員 予算編成に関して、関連して、建設国債の対象経費についてもお伺いしておきたいと思いますけれども、建設国債発行の対象となる経費、これはもうこれまでも何回も議論していると思いますけれども、公共事業費として建設的や投資的な経費であるということで、いわゆる資産となって将来まで残るものである、このように承知をしております。

 そこで、今大臣からもお話ありました防衛力の抜本的強化、この方針から考えていったとき、例えば防衛費と関連する自衛隊関連予算はどう見ていくのかということが一つ、今日はお伺いしておきたいと思うんです。

 すなわち、具体的に言いますと、例えば自衛隊の宿舎等については国債発行の対象になるかどうかについて見解を伺っておきたい。

 過去、これは、昭和四十一年の予算委員会での大蔵大臣答弁で、防衛費ということ自体が消耗的な性格を持つことから、これを一般的な公共事業費等に準ずることは適切ではない、こういう明確な答弁がありました。その上で、消費的な支出として、建設国債発行の対象経費となっていないわけでありますが、ただ、例えば、自衛隊の艦船、警備艇の製造費は対象となっておりませんが、他方で、海上保安庁の船舶の製造費はその対象となる。これは結構ポピュラーな話でございますけれども。

 防衛省の施設について、建設国債発行の対象となる経費と考えるのも、これは一案というふうに思われる。その上で、建設国債発行の対象経費の見直しの可能性について、この点についての所見をお伺いしておきたいと思います。

鈴木国務大臣 稲津委員の御意見、これは一つの問題意識として受け止めました。

 防衛費に係る財源につきましては、昨日、総理から、防衛大臣と私に対しまして、調整中の次期五年間の中期防の規模については、抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかり確保するため、与党とも協議しつつ、約四十三兆円を上限として必要な積み上げをすること、それから、令和九年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源及び五から九年度の中期防を賄う財源の確保について、歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出歳入両面の具体的措置について、年末に一体的に決定すべく調整を進めることとの指示がありまして、これに沿って調整を進めたいと考えております。

 今の、隊舎など具体的な御指摘もあったわけでありますが、今まさに昨日の指示を含めて調整を進めるところでございまして、現時点で具体的な方向性が決まっているわけではございません。

 今後、総理指示に沿って、先般の有識者会議の報告書も踏まえつつ、与党とも十分に相談をしながら、年末に一体的に決定することができるよう調整を進めてまいりたいと考えております。

稲津委員 今まさにこの防衛費について様々な報道がなされている。そして、もう言わずもがなですけれども、私も、防衛費の拡大ということについて、やはり、必要な予算とか財源、これについてあらゆる角度から議論していく必要があるんだろう、そのように思っております。

 ただ、その前提として、安定財源確保を当然図るわけだけれども、しかし、予算の確保に向けた歳出削減、こうしたこともきっちりやらないと、やはり国民的な理解は得づらいんだと思います。だから、そこのところをしっかりまずやっていただかなければいけない、その上で幅広い議論をしていきたい、このように思っています。

 時間がほとんど参ったんですけれども、もう一点だけ、資産の所得倍増プランのことに関連してお伺いします。

 政府の新しい資本主義実現会議から十一月二十八日に出された資産所得倍増プランでございますけれども、このプランの冒頭では、人、スタートアップ、GX、DX、こういった重要分野への投資、それから、家計に眠る現預金を投資につなげ、家計の勤労所得に加えて金融資産所得も増やしていくと。

 それから、このプランでは、金融経済教育推進機構、これは仮称ですけれども、設立や、中立的なアドバイザー資格の創設などが盛り込まれているわけでございまして、そして、このことに関連して、NISA制度と組み合わせながら、資産運用収入倍増につなげていくと。

 そういう意味では、これも議論を何回かしていますけれども、やはりこの金融経済教育という考え方、取組、非常に重要で、私は、社会人や高齢者に向けた教育も重要になってくるというふうに思っております。特に、資産の取崩し段階にある高齢者に対してどのような金融経済教育を図っていくのか、その方針。

 それから、成長戦略によって企業の成長力を高めて、分配が増えるという期待を国民が持てないと、やはり絵に描いた餅になるだろうということで、この成長戦略の重要性について、政府の認識をお伺いしておきます。

鈴木国務大臣 日本の家計金融資産については、六十代以上の方が六割以上を保有している現状を踏まえますと、貯蓄から投資へを進めていく上で、高齢者への働きかけも重要な要素であると認識をいたします。

 資産所得倍増プランにおいても、貯蓄から投資を実現するためには、預貯金の過半を保有する高齢者の投資を促し、高齢者にとって望ましい資産ポートフォリオ、資産配分を実現することの重要性が指摘されているところであります。

 御指摘の金融経済教育につきましては、これまでも高齢者を対象としたセミナーの開催等に取り組んできておりますが、担い手について、金融事業者や業界団体が中心であり、受け手に抵抗感が存在しているとの指摘もなされているところであります。

 このため、資産所得倍増プランにおきましては、中立的なアドバイザーの認定や、官民一体となった金融経済教育を戦略的に実施するための中立的な組織として、金融経済教育推進機構、これを令和六年中に設立することなどが盛り込まれております。こうした取組は、若い世代のみならず、高齢者層における資産形成の促進にも資するものと考えております。

 金融庁といたしましては、これらを含めまして、資産所得倍増プランに盛り込まれた施策を強力に推進していくことによりまして、成長と資産所得の好循環の実現に貢献していきたいと考えております。

稲津委員 終わります。

塚田委員長 次に、道下大樹君。

道下委員 立憲民主党の道下大樹です。

 今日は、日銀から黒田総裁にもお越しいただいています。お忙しいところ、ありがとうございます。

 まずもって、黒田総裁に伺いたいというふうに思っております。

 金融緩和政策の点検と検証について伺いたいと思います。

 第二次安倍政権時に日銀が始めたいわゆる異次元の金融緩和政策について、黒田総裁は、物価上昇率二%を二年間で達成すると宣言され、それを緩和の目標にしてきました。しかし、二年間では達成できませんでした。

 二年たったときに、この金融緩和政策について一度立ち止まって点検、検証を行ったのか、行った上で、これまで金融緩和政策の継続を決定してきたのかについて伺いたいと思います。

黒田参考人 二〇一三年四月のいわゆる量的・質的金融緩和導入以降、消費者物価の上昇率は、翌年四月にはプラス一・五%まで回復いたしましたが、二年経過後の二〇一五年四月にはゼロ%程度となっております。その背景については、当時の金融政策決定会合において検討を行いまして、原油価格の大幅下落などが影響したとの結論を得ております。

 他方で、当時、需給ギャップがゼロ%程度まで改善しているほか、中長期の予想物価上昇率も、原油価格の下落にもかかわらず、やや長い目で見れば全体として上昇していることを踏まえて、物価の基調は着実に改善していると判断いたしました。こうした点を踏まえ、量的・質的金融緩和は所期の効果を発揮していると判断し、金融緩和を継続することが適当であるというふうに判断いたしました。

 今申し上げたような点は、当時の金融政策決定会合後の記者会見や議事要旨などで明らかにしているところでございます。

道下委員 その当時はそのような判断をされたのかもしれませんが、岸田政権になって日銀の審査委員に任命された方々からいろいろと新たな意見が出ております。

 日銀の田村直樹審議委員が、十二月二日付の朝日新聞のインタビューで、日銀が続けている大規模な金融緩和政策について、しかるべきタイミングで金融政策の枠組みや物価目標の在り方を含めて点検、検証を行うことが適当だと述べたということで、記事では、日銀の政策委員会委員であり、金融政策決定会合のメンバーである現職の審議委員が物価目標の検証を求めるのは極めて異例だとしております。

 黒田総裁は、金融政策の枠組みや物価目標の在り方を含めて点検、検証を行うことは必要と考えておられるのか、必要であると考えるならばそれはどのタイミングとお考えなのか、伺いたいと思います。

黒田参考人 審議委員の方の個別の発言についてコメントすることは差し控えたいと思いますが、日本銀行としては、賃金の上昇を伴う形で二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現することを目指しております。現状では、その実現までになお時間を要する見通しでありまして、金融政策の枠組み等について具体的に論じるのは時期尚早ではないかと思います。

 ただ、物価安定の目標の実現が近づいてくれば、当然、出口に向けた戦略や方針などについて、金融政策決定会合で議論し、適切に情報発信していくことになるというふうに考えております。

道下委員 田村審議委員は、これまでの金融緩和政策について評価しつつも、金融機関の収益を圧迫して金融仲介機能に悪影響を与えている可能性や、国債市場の機能度の低下があるという副作用も指摘して、長期にわたる金融緩和が、発揮されるべき市場原理の効果を抑えてしまっている面は否めないともこのインタビューでは話しているわけであります。

 このような認識を黒田総裁はお持ちでしょうか。

黒田参考人 二〇一六年に実施いたしました総括的検証、あるいは昨年三月の点検でも指摘したとおり、長期にわたる金融緩和の副作用の主なものとしては、金融機関収益を圧迫し金融仲介機能に悪影響を与える可能性や、国債市場の機能度の低下が挙げられております。

 この点、現在、我が国では、金融機関は充実した資本基盤を備えており、金融仲介機能は円滑に発揮されているというふうに判断をしております。また、国債市場の機能度に配慮する観点からは、国債補完供給の要件緩和など、様々な手段も講じております。

 いずれにいたしましても、政策運営に当たっては、常に効果と副作用を比較考量しながら、最も適切と考えられる政策を実施していく必要があります。現時点では、政策の効果が副作用を上回っているというふうに考えております。

道下委員 今、黒田総裁が、政策の効果が副作用を上回っているというふうにお話しされました。私は、本当にそうだろうかというふうに疑わざるを得ません。

 長期に続くマイナス金利政策によって、地域の金融機関は、大手もそうですけれども、非常に今疲弊しています。それで、プラスの効果があるということで、様々な、金融機関の提携だとか合併だとかホールディングス化とかをやったり、進めてはいますけれども、それはやはり、それぞれの独自の力ではやっていけないから、やむを得ず地域の幾つかの金融機関で一緒に合併せざるを得ないということではないでしょうか。

 さらには、今まで二%目標に固執してきたことが、今は様々な物価が外的要因等で上がっていますけれども、それまでは達成できなかった。余りにも二%という目標にこだわり過ぎていたからこそ、このような異次元の金融緩和が九年間も続いてしまっているのではないかと思います。

 なぜ二%にこだわったのか。先ほど、一・五%に一時的に上がったけれどもゼロ%に戻ったということも話がありました。二%ではなく、その都度、二年や、ある程度の期間を置いて、私は、一・八%とか一・五%とかそういう物価目標を掲げるなどするべきではなかったかというふうに思いますし、もう一つは、最近になって、物価上昇と賃上げということを車の両輪というふうに話をされ始めたと思います。私は、当初、二〇一三年のときには、賃上げのことについては日銀は触れていなかったのではないかと思っています。

 様々なその後の異次元の金融緩和政策の効果が当初の目標に達成できなかったから、様々な、原油高の高騰だ何だかんだということの理由をつけて、そしてこの異次元の金融緩和政策をだらだら続けてしまっているというふうに私は思っているんですが、黒田総裁、どのようにお考えでしょうか。

黒田参考人 二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入いたしまして、その後、最近に至るまでの経済動向を見ますと、一九九八年から二〇一二年まで続いたデフレ、これはデフレでない状況になりましたし、そのデフレ期間は成長もなくベアもなかったわけですけれども、量的・質的金融緩和の下で、デフレでなくなり、経済成長も戻り、ベアも九年連続で行われたということであります。

 ただし、従来から申し上げておりますとおり、物価、賃金が上がらないという一種のノルムというか、そういう考え方というのが十五年間のデフレの間にかなり定着したというか、そういう考え方が企業に定着しているということから、経済状況が改善し、企業収益も最近でも史上空前のレベルに達しているわけですが、賃金、物価がなかなか上がらない状況が続いていたわけでございます。

 御指摘のとおり、今足下で上がっておりますのは、あくまでも、我々が目標としております、賃金が上昇し、安定的に物価が二%程度上昇するという状況ではありません。輸入物価の高騰によって、それが消費者物価に転嫁されて、足下で三・六%の上昇になっている。現在の見通しでは、来年度にはやはりまた二%を割る状況になるということを見通しておりまして、そうした意味で、現在の量的・質的金融緩和というものを継続することによって企業が賃金を上げやすくなる状況をつくっていくということで、二%の物価安定目標を達成することができるというふうに考えております。

 ちなみに、二%の物価安定目標というのは、これは今や一種のグローバルスタンダードになっていますけれども、その理由は、消費者物価指数というものが実際の物価動向よりも高めに出てくる、これは五年ごとにウェートを変えますけれども、そういう傾向があるということと、それから、一定の金利引下げの余地を残しておく必要があるということから、ほとんど全ての先進国の中央銀行が二%の物価安定目標を掲げて金融政策を運営しておるわけでございます。

 そういう意味で、適切な金融政策の目標であるというふうに考えておりますし、先ほど来申し上げているとおり、いろいろな状況があったわけですけれども、ここに来て、経済の動向が改善し、デフレギャップも縮小し、解消に向かっているということでありますので、足下の三・六%の物価上昇はあくまでも輸入物価の上昇によるものですので、その影響は減衰して剥がれていきますけれども、一方で、需給ギャップが解消しプラスに転化し、労働市場が更にタイトになって賃金が上昇し、物価が安定的に上昇する状況がつくり出されていくというふうに考えております。

道下委員 非常に丁寧な説明というか、ちょっと長い説明がありました。これが今までの異次元の金融緩和政策を長く続けてしまった、長く続けざるを得ないというか、様々理由をつけて、そのときできなかった、だから続ける、目標を達成していない、また続ける、目標を達成していない、いや、もう少し、今度は賃金の値上げだとか、いろいろと理由をつけて続けてきた。でも、効果は上がっていないわけです。

 ただ、これは日銀の責任だけではありません。この間、長く政権を担っている自民党政権との問題ではないでしょうか。しっかりと、まず、経済とか、富める者がますます富み、貧しき者がますます貧しくなるようなことを続けてきた自民党政権の政策が悪かったと私は思います。

 私は、賃上げがまず先だと、ずっとこれまでも野党は言ってきました。こうしたことをやってこなかったことによって、異次元の金融緩和政策で、日本の経済は残念ながら地域からぼろぼろに崩れてきてしまっているというふうに私は思います。

 これで、黒田総裁、どうもありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。

塚田委員長 黒田総裁、御退席いただいて結構です。

道下委員 次に、物価高対策と補正予算について伺いたいと思います。

 去る十月二十八日に閣議決定した物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策に基づいて編成された令和四年度第二次補正予算が、先日、十二月二日に成立しました。この補正予算について改めて質問いたします。

 私ども立憲民主党は、令和四年度当初予算を審議している段階から物価高騰対策の必要を訴えるとともに、四月及び十月に緊急経済対策を取りまとめ、本格的な補正予算の編成を求めてきました。各種支援策が国民に届くまでには数か月程度の時間を必要としますが、当初予算の時点で組替えをしていれば、あるいは、我々が緊急経済対策を提案した四月の時点で本格的な補正予算を編成していれば、今頃、国民の皆様には支援が行き届いていたはずであります。まずもって、政府の対応の遅さを厳しく批判したいと思います。

 さて、政府は、今回の補正予算による経済対策により消費者物価指数を一・二%押し下げると説明してきましたが、具体的なエビデンスの説明を、ここは内閣府政府参考人に端的に答弁を求めたいと思います。

茂呂政府参考人 お答え申し上げます。

 内閣府の試算におきましては、今回の経済対策における電気・ガス料金、ガソリン・灯油価格の抑制、負担軽減策につきまして、それの直接的な効果としまして、消費者物価上昇率を一・二%ポイント程度抑制する、そういう効果があると試算をしたところでございます。

道下委員 今回の補正予算における一般会計歳出は二十八・九兆円でございます。巨額の財政出動はインフレを促進するというのが経済学的な常識であります。

 政府は、経済対策により、先ほど説明したように、消費者物価指数を一・二%押し下げる効果があると説明をされてきましたけれども、補正予算成立前の国会審議でも、そして今も内閣府の方からも御説明がありましたけれども、これはガソリンや電気料金の引下げによる効果でしかなく、それ以外の様々な、この補正予算による消費者物価指数の引下げについてのエビデンスはこれまでも示されてきませんでした。実際には更なる物価高騰を招く可能性があるにもかかわらず、都合のよい数字だけを取り出して説明するのは、私は欺瞞であると思いますし、国民に対して余りにも不誠実であると言わざるを得ません。

 次に、今回の補正予算を機に新たに創設された各種基金による制度は物価高対策になり得るのか、なり得る基金の総額についても伺いたいと思います。これは財務大臣にお願いします。

鈴木国務大臣 今回の補正予算に計上いたしました基金事業につきましては、物価高騰への取組も含めまして、経済対策に掲げられた柱に基づく施策を迅速かつ効率的に実施する上で必要であるとそれぞれ判断したものを措置をしたところでございます。

 その上で、今回の補正予算における物価高騰への取組につきましては、新規に造成された基金により直接対応するものはありませんけれども、既存基金への予算措置によりまして燃料油の激変緩和措置や漁業者向けの燃油価格高騰対策などを講じているところでございます。

 また、基金という形ではありませんけれども、電気料金の激変緩和措置、都市ガス料金の激変緩和措置なども併せて措置しておりまして、足下の物価高騰の影響緩和に万全を期しているところであります。

 このように、新規の基金か、既存の基金か、基金であるか否かにかかわらず、必要な物価高対策を講じることが重要であると考えております。これらの施策を通じまして、足下の物価高騰から国民生活や事業活動を守り、日本経済の再生に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

道下委員 今の御答弁は、本予算であればそういう答弁もあるかもしれませんが、これは補正予算です。補正予算で、後で話しますけれども、新規であろうと既存であろうとではなくて、やはり緊要性というものが求められるわけであって、しかも、今回は物価高対策というのが大きな柱の一つであります。

 そうした中で、新規で創設された基金で物価高対策のものはないという話でありまして、これは余りにも補正予算という目的から逸脱した新設された基金が多いということだと私は思います。

 今回の補正予算では、新型コロナ、原油価格・物価高騰対策予備費のほかに、ロシアによるウクライナ侵略に伴う経済危機に機動的に対応するため、新たにウクライナ情勢経済緊急対応予備費というものを創設しましたが、それは元々の予備費に含まれていたのに、なぜ新たに創設したんでしょうか。財務大臣、お答えいただきたいと思います。

鈴木国務大臣 今般の補正予算で創設をいたしましたウクライナ情勢経済緊急対応予備費につきましては、世界的な景気後退懸念が高まる中、ウクライナ情勢その他の国際情勢の変化や、災害に伴い発生し得る、事前に予測することが困難な経済危機に対応するための予備費であります。

 そして、これまで対応してきた、コロナ対策や物価高騰対応のためのコロナ、物価予備費、これはもう目的がそこに限定されているわけでございますので、それとは別に、先ほど申し上げた観点から創設をすることとしたものであります。

 ウクライナ情勢は依然として緊迫しておりまして、世界的な景気後退懸念が高まっているなど、日本経済を取り巻く環境には厳しさが増している状況でありまして、こうした状況への対応として特定目的予備費を設けることは、予備費が予見し難い予算の不足に充てるものであるという制度趣旨に照らして適切なものであると考えているところでございます。

道下委員 おかしいですね。もう既に、元々あった新型コロナ、原油価格・物価高騰対策予備費の中には、今目的化していたウクライナ侵略に伴う経済危機のものは含まれているんですよ。今年四月二十六日の関係閣僚会議で、ウクライナ情勢に伴う物価高騰を受けた緊急対策を実行するための費用などとして、今年度の予備費から、つまり、この前の、今までの既存の予備費から一兆五千百億円余りを支出することを決めたんですよ。

 予備費の支出を決めたことについて、財務大臣、これは鈴木財務大臣ですよ、閣議の後の記者会見で、ウクライナ情勢などに伴う原油価格や物価の高騰による国民生活や経済活動への影響に緊急かつ機動的に対応し、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとしていくためというふうに述べたではありませんか。

 今回の補正予算は、八・九兆円の基金と約四・七兆円の予備費に象徴されるように、補正予算に求められる緊要性の要件を欠き、年度内支出が困難な予算が大部分を占めております。このような見せかけ予算では国民の暮らしを守ることはできないと、私は厳しく指摘させていただきたいというふうに思っております。

 次に、ちょっと時間も差し迫ってきました。ちょっとNISAについて、今話題になっていますので、伺いたいと思います。

 政府は、NISAの拡充等を内容とする資産所得倍増プランを正式決定しました。また、今月公表される予定の与党の税制改正大綱に盛り込まれる見込みとも聞いております。

 NISAの拡充を歓迎する意見もある一方で、富裕層に有利に働き、メリットを受けるのが高所得層に偏れば批判が出るといった意見もあります。それについて、まず政府の認識を伺いたいと思います。

 また、一方で、このNISAの拡充によって富裕層に有利に働くという指摘、そして、高額金融所得に対する税負担の不公平性、いわゆる一億円の壁について、岸田総理は、昨年の自民党総裁選において一億円の壁の打破を打ち出し、金融所得課税の見直しを訴えましたけれども、株式市場に悪影響を与えるという指摘を受けて、今ではトーンダウンしてしまっています。

 高額金融所得に対する税負担の不公平の認識と、金融所得課税における高額所得者への課税強化について、これは鈴木財務大臣・金融担当大臣、それぞれの大臣に併せて御答弁いただきたいと思います。

鈴木国務大臣 まず、資産所得倍増プランでございますが、金持ち優遇でありますとか高所得者にメリットが偏るのではないかという御指摘がございました。

 我が国の家計金融資産の半分以上、これが現預金であること、これに鑑みますと、この現預金を投資へシフトさせることによりまして、家計の金融資産を大きく拡大させる、そういう可能性があると考えます。そして、そうした貯蓄から投資へのシフトを中間層に広げることが重要であると考えております。

 NISAの拡充についても、中間層を中心とする層が少額からでも長期継続的に投資を行うことができる環境を整備をして、家計の資産形成を促進しようとするものであります。

 NISAの拡充に関する具体的な金額の水準につきましては、国民一人一人が、様々なライフサイクルやニーズに応じ、長期、積立て、分散を基本としつつ、弾力的な投資を行うのに適したものであること、他方、金持ち優遇とならないようにとの御意見もあることなどを踏まえまして、与党の税制調査会等の場において議論が進められていると承知をいたしております。

 いずれにしても、NISA拡充につきましては、金額の水準を含め、与党における検討を踏まえ、政府としても適切に対応したいと考えます。

 それと、金融所得課税強化についてのお尋ねがございました。

 金融所得課税を強化すべきとの御指摘につきましては、いわゆる一億円の壁の問題があることを承知をいたしております。この点につきましては、税負担の公平性を確保する観点から、社会保険料も加味をいたしますと、かなりの高所得者層の負担率の方が低所得者層よりも低いという状況にありまして、所得税の負担構造として問題があるといった趣旨の御意見などが政府の税制調査会においてもございました。

 この問題につきましては、令和四年度与党税制改正大綱におきましても、税負担の公平性を確保する観点から、市場への影響ということももちろん踏まえまして総合的な検討を行うこととされております。

 今後、与党税制調査会において幅広い観点から御議論をいただくものと承知をしておりまして、政府としても、そうした議論を踏まえて対応してまいりたいと考えております。

道下委員 一億円の壁については、岸田総理がやると言っているのにやっていない。本当に遅過ぎるというふうに思いますので、至急、早急に取り組んでいただきたい。

 NISAについては、最後に指摘させていただきますけれども、政府が決定したNISAの拡充案は、老後資金等の課題がある中、NISAの非課税枠を利用して資産を着実に増やすという選択肢を支援するものでありますが、ただ、老後資金について、国民に対し、NISAがあるからということで過度に自己責任を要求する流れにならないよう、とりわけ、公的年金制度がおろそかになる事態を招かないよう、政府には強く求めておきます。

 しかも、わざわざなぜNISAでやらなきゃいけないのか。マイナス金利等でなければ、もっと貯金で我々はためてきたはずなんです。そうしたことをないがしろにしてNISAで資産を増やせというのは余りにも政府としては責任逃れではないかというふうに思いますし、先ほどの補正予算についてでありますけれども、鈴木大臣はその前の質問に対して、財政への信認を取り戻すとか、安易な国債発行に依存しないでと言っていますが、それに反する補正予算ではなかったかというふうに私は思います。

 それについて指摘をさせていただきまして、質問を終わります。ありがとうございました。

塚田委員長 次に、櫻井周君。

櫻井委員 立憲民主党・無所属の櫻井周です。

 本日も質問機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

 質問に入る前に、ちょっと一点、大臣に要望をさせていただきます。

 十一月十八日、前回の財務金融委員会におきまして、藤岡委員から、FTXの破綻の問題について藤丸副大臣に御質問させていただいております。この中で、投資家保護の観点から、対応の整理又は状況によっては法律の見直し等をお願いしますということを要望させていただいております。

 これは、その後まだ大きな動きにはなっていないようですけれども、当局においても適切に対応いただいておるとは思いますが、そういうことで、大臣、よろしくお願い申し上げます。

 続きまして、質問に入らせていただきます。

 今日は、金子政務官にも来ていただいております。ありがとうございます。

 前回、十一月九日、内閣委員会で、FATF勧告対応法案で私質問に立つということで、通告させていただいて、来ていただいていたんですけれども、済みません、時間が足りずに質問できずに終わってしまいました。ちょっと、この場をかりておわび申し上げるとともに、その積み残しの質問を今回改めてさせていただきたいというふうに思います。

 まず、このとき質問させていただこうと思っていたのは、金の地金の密輸問題でございます。

 資料一にも載せておりますけれども、この金の地金の密輸、これは何でこんなことが起きているかといいますと、密輸をしたものを今度は正規な形で輸出をする、輸出をしたときには消費税の還付金がもらえるということで、この消費税の還付金をだまし取ることが目的ではないのか、こんなふうにも言われております。

 資料一、御覧いただきたいんですけれども、この下の方の、輸出入の量の推移でございます。日本は金を大量に産出する国ではないにもかかわらず、この下の線が輸入でございます、輸入は少なくて、輸出がこんなに多いんですよね。百トンとか二百トンとか、こんなに輸出しちゃっているんですよ。日本の国からどんどん金がなくなってしまうんじゃないのか、こんなふうにも心配するんですが、特に顕著なのが、平成二十六年から平成二十九年にかけて、これはどんどん増えていっております。輸出が増えているんですね。この裏側には、平成二十六年に消費税率が五%から八%に上がった。先ほどの輸出還付金の詐取を目的としているならば、うまみが増したということで、それで密輸入が増えて、そしてその分、輸出も増えているのではないのか、こんな推測も成り立つかと思います。

 そこで、政務官にお尋ねをしたいんですけれども、平成二十九年から三十年にかけて、これは逆に、二百十五トンだったのが百五十六トンということで、約六十トン大幅減少している。これは何ででしょうかというのが、ちょっとまとめて質問させていただきます、一つ目の質問です。

 これは、私が思うに、平成二十九年十一月に、ストップ金密輸ということで密輸入の取締りを強化したということで、そうすると、密輸入が減れば、元の金がないわけですから、輸出して還付金をもらおうにももらえなくなる、こういうことが起きていたのではないのか。

 逆に言うと、この減った六十トンの分、平成二十九年には、還付金の詐取が起きていたとするならば、六十トン掛ける、今、グラム八千円ちょっとですから、掛ける八千円というと、四千八百億円が輸出をされていて、そのうち八%が還付されていたということになると、三百八十四億円が還付金として詐取されていたのではないのか、そんな心配もするわけです。

 摘発、押収されていない分が相当数ありますので、これは相当の税金が還付金として詐取されていた可能性があるのではないのかというふうに考えるんですが、政務官のお考えをお聞かせください。

 それから、そもそも、日本の金は菱刈鉱山で年間七トンぐらい生産されているというのが日本の現状です。日本の国内でも、装飾品とか工芸品、あとエレクトロニクス関連、機械製品などで金の消費はされているはずです。それなのに、輸出量が輸入量を大幅に上回っている。これは何でなんでしょうか。この差は一体どこから来ているのかということですね。

 それから、統計上、金の輸出が輸入を大きく上回っているのは、結局、輸入が密輸で統計に現れなくて、輸出は消費税の還付金を申請するために、これは統計に載ります。この差がこんなふうになっちゃっているのではないのかというふうにも、全部ではないにしても、相当数そういうのがあるんじゃないのか、こういうふうにも考えるんですが、政務官のお考えをお聞かせください。

 以上、四点、よろしくお願いします。

金子大臣政務官 ありがとうございます。

 複数御質問をいただきましたので、それぞれお答えをまとめてさせていただきたいと思います。

 まず、委員の御指摘のとおり、平成二十九年から三十年に関しまして、約六十トン減少をしている。全ての理由をここで申し上げることはできないんですけれども、間違いなく、相当の強化、罰則強化をさせていただきましたので、ストップ金密輸緊急対策の効果は間違いなくあったんだろうというふうに思っております。

 また、資料一で御説明をいただきました、令和三年、下の方の表ですけれども、百六十七という数字がありますけれども、令和三年の貿易統計、十一月十一日の確定値は百三十八トンでございます。ただ、どちらにしろ、百三十三トンの、五トンの輸出超過になっております。

 輸出超過の要因としては、考えられるのは、国内で産出された輸出される金があること、そしてもう一点は、過去に国内で蓄積された金、一九七九年から二〇二一年までは、四十二年間で九百二十七トンの金流入が超過になっておりましたので、その分が逆に輸出をされているのではないんだろうかというふうに考えております。

 どちらにしろ、足下で国際的な人の往来も活発化しておりますので、委員のいただきました御指摘は非常に大きいと思っておりますけれども、消費税の不正還付にまつわるリスクも踏まえて、非常に厳しい人員状況でありますけれども、税関の職員の適正な配置に加え、情報の取締り、検査機械の活用、関係機関との連携を図りながら、今後とも、金密輸の防止のため、万全の体制を整えてまいりたいというふうに思います。

櫻井委員 ちょっと大臣にもこれはお聞きをしたいと思います。資料二と資料三、用意させていただいております。

 資料二は、金のマテリアルフローというもので、これは独立行政法人エネルギー・金属資源機構が発行しているものでございます。鉱物資源の種類によってこのマテリアルフローというのを出していて、金については、毎年出しているわけではないようで、直近のものが二〇一八年ですので、ちょっと古い資料にはなっております。

 これを見ますと、いろいろなところからフローがあって、先ほど輸出がすごく多いというふうに申し上げましたけれども、そのうちの一部はスクラップとして海外からどうも輸入をしているようで、それを国内で回収をしているというのが五十四・六トンある、これでその分は説明できるのかなというふうにも思いますが、ただ、国内流通というのが二百四十七・九トンあります。

 これについて、資料三を見ますと、国内流通のところ、これはどんどん増えているんですよね。二〇一四年は四十八・一トンだったのが、二〇一五年は九十トン、二〇一六年には二百二トンというふうに急速に増えております。

 ここがまさに、ちょっと怪しいのではないのかと私は思っております。つまり、密輸したものを、何か、たんすの中にあったんですというふりをしてお店に持っていって、リサイクルショップで売る、そのリサイクルショップから転々として、今度は輸出に回っていく、こういうことが起きているのではないのかと。

 ここは業者がぐるになっていれば、これで輸出還付金を詐取することができてしまうわけなんですけれども、そういったことも考えますと、ここのところ、もしかすると、最大で数百億円規模で消費税の還付金の詐取というのがあるかもしれないということで、大臣にお願いしたいのは、これまでも税関での金の密輸入の取締り、強化してきてはおりますけれども、まだまだそういったものがあるのかもしれないということで、やはり取締りの強化を是非お願いしたい。

 先ほど政務官からは、人員が厳しいというふうにおっしゃられましたけれども、これは数百億円ですから、百人、二百人増やしたところで、十分ペイするといいますか、元を取れる話でございますので、是非これは人員を増やすということも含めて取締りの強化をお願いしたいというのと、それから、金の輸出の消費税還付金の申請について、やはり、これは厳しく審査をしていくということも併せて提案をさせていただきます。

 大臣、御見解いかがでしょうか。

金子大臣政務官 大臣答弁の前に、大変失礼しました。

 先ほど、令和三年のところで、数字、輸出量百三十八トン、私、五トンの輸出超過と申し上げてしまったそうなんですが、輸入量が五トンでありますので、その差、百三十三トンの輸出超過に訂正させていただきます。大変失礼いたしました。

鈴木国務大臣 金地金の密輸入の問題につきまして、櫻井先生からいろいろ御指摘をいただいたところでございます。

 このことにつきましては、先ほど来お話も出ております、ストップ金密輸緊急対策、平成二十九年に策定をしたわけでありますが、それを受けて平成三十年に罰則を強化して以降、摘発件数自体は減少しておりますけれども、しかし、近年は密輸形態の多様化、巧妙化などが見られるところであります。

 引き続きまして、情報収集や分析の充実、取締り検査機器を活用した検査の強化、所要の人員配置などに努め、税関におけます厳格な密輸取締りを行っていくことが重要であると私も考えます。

 また、消費税の不正還付問題につきましては、国税庁におきまして、従来から重点課題と位置づけて取り組んでおりまして、御指摘のように、厳格な審査や調査などを通じて、厳正に対処していきたいと考えております。

 その上で、こうした税関、国税庁の体制につきましては、これまでも強化に努めてきたところでありますけれども、今後とも、必要な定員の確保を含めまして、しっかりとした対応をしてまいりたいと考えております。

櫻井委員 今、人員体制の拡充も含めてとおっしゃっていただきましたので、是非しっかりとした対応をよろしくお願いいたします。

 続きまして、次の質問に移らせていただきます。

 本日は、黒田総裁、先ほどの道下議員に続いての質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

 今回、異次元の金融緩和の結果について、改めて質問させていただきます。

 これは既に予算委員会、そして財務金融委員会でも何度も質問のあったところではございますが、やはり、今のこの物価高で国民の暮らしがどんどん厳しくなっている。補正予算で、補助金で物価を抑え込もうとしておりますが、しかし、補助金の財源は赤字国債、財政悪化が懸念されるところです。財政が悪化すれば、通貨の不信認、つまり、円安につながって、ますます物価が上がってしまう、そんな悪循環に陥りかねないわけでございます。

 一方で、日本銀行においては、金融緩和を継続して、円安に誘導している、輸入物価インフレを引き起こしているということで、日本政府と日本銀行、円安対策と円安促進と、何か真逆の政策を同時に実施してしまっているというような状況ではないのか、このことは国会で繰り返し指摘のされてきたところでございます。

 ただ一方で、日本銀行が金融緩和をやめるということになれば、金利が上昇し、日本銀行の財務はたちまち悪化をしてしまう。政府の債務に係る利払い費、これも増加してしまうということで、財政がますます悪化してしまうということで、出口のない迷路に入ってしまっているということも言えるかと思います。

 これはこの十年間に及ぶアベノミクスと、それから異次元の金融緩和の結果です。

 当時、安倍総理は、この道しかないというふうに発言しておりましたけれども、我々は、その道の先は崖になっているから行っちゃ駄目だ、こういうことを再三警告、警鐘を鳴らしてきたわけでございます。

 そのことを踏まえて、改めて質問させていただきます。

 まず、日本銀行の保有の国債の含み損についてです。

 日本銀行は、十一月二十八日に、今年度上半期の決算を発表しました。そこで、九月末時点での日本国債の時価は五百四十四兆円ということになっておりまして、簿価が五百四十五兆円ということで、引き算すると、八千七百四十九億円の含み損ということになっております。三月末の時点では、つまり、前年度の期末の評価、時価評価とそれから簿価評価を比較しますと、四兆三千七百三十四億円の含み益でしたので、この半年で五兆二千四百八十三億円吹っ飛んでしまったということになります。

 日本銀行が保有する国債について、これだけ大きな含み損が発生した理由について、総裁、御説明をお願いいたします。

黒田参考人 二〇二二年九月末における保有国債の含み損は八千七百四十九億円となっておりますが、これは国債の市場金利が上昇し、その時価が下落したことによるものであります。

櫻井委員 時価が下がったということではあるんですけれども、時価で下がって含み損が発生しても、日本銀行の場合は、国債保有、満期保有ということを前提とした会計処理、すなわち、簿価評価をするということになっていて、時価評価はしない、だから、時価で上がっても下がっても会計処理上は関係ないということは承知をしておりますが、ただ、これは実質的には財務状況の悪化であるということは見る人が見れば分かるわけでございまして、ホームページにも載っている話でございます。

 そうなってくると、やはり、日本銀行の財務状況、不安を感じれば、金利や為替などにも悪い影響が及んでしまう、そんなリスクがあるというふうに考えますが、総裁のお考えをお示しください。

黒田参考人 御指摘のとおり、金利が上昇して保有国債の評価損が拡大するということはそのとおりでありますが、他方で、これも御指摘のとおり、保有国債の評価法として償却原価法を採用しているために、評価損の発生あるいは拡大は決算上の期間損益には影響いたしません。

 また、管理通貨制度の下では、通貨及び中央銀行の信認は、適切な金融政策運営により物価の安定を図ることを通じて確保されるものであるというふうに考えておりまして、そういう意味では、日本銀行としては、財務の健全性にも留意しつつ、やはり適切な金融政策の運営に努めてまいりたいというふうに考えております。

櫻井委員 これは、やはり、日本銀行の財務状況が悪くなっていくということになると、逆に、今の総裁の答弁、裏返して読めば、財務が悪くなれば適切な金融政策ができなくなってしまう、そんなリスクがあるという御発言です。

 今、イールドカーブコントロールを変えていなくても、変えていないポイント以外のところで長期の金利が上がったりというようなことで、それだけでこれだけ日銀の財務に影響を与えているということですから、今後、出口をもし検討するということになれば、更なる財務悪化というのが懸念されるわけでございまして、本当に難しい政策というか、ところに入ってしまったというふうに懸念をしているところでございます。

 次に、物価の見通しについてもお尋ねをいたします。

 先ほど道下委員からの質問の中にも、二年で二%の物価目標を達成するというのは、二〇一三年の就任時におっしゃられていたというところでございます。

 ただ、この九年間は二%を実現できませんでした。そして、今年ようやく実現できそうだということなんですが、これはあくまで輸入物価インフレ、コストプッシュ型のインフレで、来年以降は継続しない、二〇二三年、二〇二四年、二%を実現しない見通しということは、展望レポート十ページ、本日は資料四としてお配りしておりますけれども、これを見ますと、二〇二三年度はプラス一・六%、二〇二四年度もプラス一・六%ということで、二%を達成しないということになってしまいます。

 これは、二年あれば、適切な金融政策をやれば二%を実現できる、そういうことで当初言われていたんだろうと思うわけなんですが、そんなことでよいのかどうか。もしそうであるんだったら、結局十二年間やって実現しないということになるわけですので、これは政策がやはり間違っているというふうに考えるのが普通だと思うんですが、総裁の御見解をお願いいたします。

黒田参考人 日本銀行が二〇一三年に量的・質的金融緩和を導入して以降、政府の様々な施策とも相まって、経済状況は大きく改善いたしました。また、物価が持続的に下落するという意味でのデフレではない状況が実現しております。

 ただ、御指摘のとおり、物価安定目標の持続的、安定的な実現にはなお至っていないということは事実でございます。その主な理由としては、やはり我が国では、長きにわたるデフレの経験によって定着した、物価や賃金が上がりにくいことを前提とした考え方や慣行が根強く、その転換に時間を要しているということが挙げられると思います。

 もっとも、先行き、我が国経済は、感染症や供給制約の影響が和らぐ下で、緩和的な金融環境などにも支えられて、回復していくと見ております。その下で、労働供給が引き締まり、賃金と物価が共に緩やかに上昇する好循環が実現していくものというふうに考えております。

 このように、日本銀行としては、引き続き金融緩和を実施していくことで、時間はかかるかもしれませんが、賃金の上昇を伴う形で物価安定の目標を実現することは可能であるというふうに考えております。

櫻井委員 ちょっと今いろいろ御答弁いただきましたけれども、まず、先ほど大臣は、一番最初の中山議員の質問に対して、政府は価格転嫁が進むように支援していく、補正予算でやっていくんだということを答弁されていました。ということは、物価はこれから上がっていくということですよね。

 資料五に示したとおり、企業物価の推移、これは日本銀行が公表しているものです。それから、消費者物価、これは総務省が発表しているものですけれども、これを見ると大きく開いているわけですよ。大体、これまでの過去の例なり諸外国の例を見ても、企業物価なり生産者物価というのが先行して上がって、それに追随して消費者物価が上がっていく。つまり、価格転嫁が、すぐには行われないけれども、徐々に行われるというのが傾向としてあります。そうすると、大幅な積み残しがあるわけですから、どんどんこれから上がっていくんじゃないのか。

 さらに、今、補正予算で、ガソリンなどエネルギーへの補助金、これは一・二%の押し下げ効果があると先ほど政府委員からも御答弁がありました。これはいつまで続けるのかということなんです。ずっと続ければ財政悪化がどんどん進んでしまって大変なことになりますし、やめれば一・二%分剥落するわけですから、やはり物価は上がるわけですよね。

 そうすると、日本銀行は来年はコストプッシュ型のインフレは収まるという見通しなのかもしれませんが、そうはならないんじゃないのかなというふうにも心配するわけです。

 ちょっと、時間が残り五分になりましたので、次の質問に移らせていただきますが、賃金の見通しについても併せて質問させていただきます。

 賃金についてですが、資料六を御覧いただきたいと思います。有効求人倍率を示させていただいております。これは、今はちょっと求人倍率は下がっておりますけれども、コロナ前はそれなりに高い水準で推移をしておりました。次に、資料七を御覧いただきますと、実質賃金と労働生産性のグラフですけれども、実質賃金、全然上がっていないんですよね。

 つまり、先ほど黒田総裁は、労働需給、労働市場が引き締まってくれば賃金が上昇するというお話をされて、御答弁されていました。しかし、このコロナ前の数年を見ますと、労働市場が引き締まっていても実質賃金は上がっていなかったわけですよ。何でなんでしょうか。

 それから、加えて申し上げれば、十一月十八日の財務金融委員会での御答弁の中で、藤岡委員からの質問に対する答弁で、労働生産性の上昇にも賃金の上昇率は左右されますということで、労働生産性が上がれば賃金も上がる、こういう話もされております。ところが、資料七に示しましたとおり、労働生産性が上がっても実質賃金は上がっていないんですよ。これは何でこんなことになっているのか。

 そうすると、十一月十八日の本委員会、財務金融委員会、そして今日の御発言も、黒田総裁の発言と、それから日本経済の実態、異なっているのではないのか。発言は修正されるべきだというふうに考えますが、いかがでしょうか。

黒田参考人 御指摘のとおり、日本銀行が二〇一三年に量的・質的金融緩和を導入して以降、経済状況は大きく改善したわけですが、その下でも、労働需給はタイト化したものの、名目賃金の増加率は小幅にとどまったということであります。

 その背景としては、やはり、長きにわたるデフレの経験から、物価や賃金が上がらないことを前提とした考え方や慣行が根強く残っていたことが影響しているというふうに見ております。また、過去、二〇一〇年代におきまして、労働需給のタイト化が賃金水準の低いパート労働者を中心に生じたことも、名目賃金の上昇が小幅にとどまったことの一因であります。

 もっとも、先行き、感染症の影響が和らぎ、経済活動全体が回復していく下で、労働需給が全般的に引き締まると予想されることに加えまして、来年春の労使間の賃金交渉では、中長期的な予想物価上昇率が高まる下で、これまでの物価上昇も相応に賃金に反映されるというふうに考えております。

 労働生産性の上昇、これは、やや長い目で見ますと、基本的には実質賃金の押し上げ要因として作用するというふうに考えております。もっとも、実質賃金は、労働生産性以外にも、例えば労働分配率の変動などの影響も受けて変動する場合もございます。実際、二〇一〇年代に労働分配率が低下してきたことが実質賃金を押し下げる要因として働いてきたものというふうに考えております。

 先行き、労働需給が全般的に引き締まっていけば、賃金上昇につながっていくというふうに考えております。また、内閣府の統計を見ましても、ごく最近では時間当たりの実質賃金は上昇しておりまして、いずれにいたしましても、労働生産性の上昇率は理論的にも実質賃金を押し上げる方向に作用すると思いますので、答弁を修正する必要があるとは考えておりません。

櫻井委員 先ほど、私の質問ですね、労働生産性が上がっても実質賃金が上がらないのはなぜか、それから、有効求人倍率が高くても賃金が上がらないのはなぜかという質問に対して、総裁、二点お答えいただいていると思います。労使間の賃金交渉ということ、それから労働分配率の低下。これは結局、金融政策ではないということですよね。だから、異次元の金融緩和をこうやってずっと続けたところで、利かないのも当たり前ではないですか。だから、別の、厚生労働大臣の仕事かもしれませんけれども、そういったところを修正していく。

 労使間の賃金交渉で、この間、労働組合側、組織率はどんどん下がった。これは、非正規雇用がどんどん増えていったから、交渉力がなくなっているわけですよね。交渉力はどんどん下がっちゃっているわけですよ。こういうところをちゃんと直していかないと、賃金はいつまでたっても上がらないんじゃないですか。

 労働分配率だって、労働組合の交渉力が低ければ全然上がらない。むしろ、派遣労働とか、最近では請負契約、ギグワーカーとか、そういったもので労働法制がどんどんどんどんないがしろにされている、骨抜きにされてしまっている、こういうところが問題なんじゃないですか。

 ですから、金融政策で幾ら頑張ったって、どうにもならないんですよ。だから、日本銀行はもうやることはやりました、後は政府の仕事ですと、しっかりと切り分けをした方が金融緩和による副作用を収めることができるというふうに考えますので、そのことを申し上げて、本日の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

塚田委員長 次に、米山隆一君。

米山委員 それでは、立憲民主党・無所属会派を代表いたしまして質問させていただきます。

 まずは、防衛費の増額についてお尋ねさせていただきます。

 先ほど鈴木大臣もおっしゃられましたけれども、総理が二〇二三年から五年間の防衛費を四十三兆円とするように指示して、二〇二七年度に現在の水準でGDP比約二%の約十一兆を目指すとされたというふうに報道されております。

 また一方、同時にということですけれども、財源確保については、木原誠二官房副長官が、二〇二七年以降、安定財源を確保すると言ったと、これは報道というか、言っております。

 さらに、鈴木大臣も先ほど言いましたけれども、年末に向けて、いろいろ、何とか、どうするのか決めるんですとおっしゃられたんですけれども、もう十二月、一週間たっていますので、年末まではあと三週間しかないわけです。しかも、木原大臣は、二〇二七年以降は安定財源を確保すると言っていましたけれども、それまでは何にも言っていないわけです。

 そうしますと、普通に考えて、たった三週間で何か決まるわけはないので、要は二〇二七年までは国債で発行して賄う、そう思っていらっしゃるのかなと考えるのが普通だと思うんですけれども、鈴木大臣にその御見解を伺います。

鈴木国務大臣 いろいろ報道ベースで話が出ているわけでありますが、先ほど申し上げましたとおり、昨日、防衛大臣と私に対しまして総理から指示があったわけであります。その内容は先ほど申し上げましたので繰り返しを申し上げませんけれども、財源の確保につきましては、歳出改革、それから剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出歳入両面の具体的な措置について、年末に一体的に決定すべく調整を進めるという指示でございました。

 昨日指示をいただいておりまして、調整をまさに進めているところでございます。与党との関係もございますので、まだこれから決まっていくということで、現時点では具体的な方向性が決まっているというわけではございません。

米山委員 でも、具体的に決まっていない、具体的に決まっていないと言うんですけれども、確かに、補正予算とかで二十九兆とか積んじゃうから、五・五兆円、五兆五千億円というのが非常に小さく見えるのかもしれないんですけれども、五・五兆円といいますと、消費税なら大体二・五パー程度ですから、今の一〇%から比べれば二五%の増税になります。所得税、これは現在二十兆円しかありませんので、所得税で賄うんでしたら二八%増税しなきゃいけません。法人税は、これは現在十三・三兆円の税収ですので、巷間言われている法人税で賄うということは、四一%増税しなきゃいけないんですよ。それをあと三週間で決めるんですか。一人当たりにしますと四万円、四人家族で十六万円になるわけです。

 また、歳出削減、歳出削減と簡単に言いますけれども、これも、社会保障費は今三十六・二兆円ですから、社会保障費で削減するなら一五%削減です。公共事業費、これは六兆円ですから、公共事業費で削減するなら公共事業費九二%削減です。文教予算なら五・四兆円ですから、何と文教予算一〇〇%削減です。地方交付税なら十五・八兆円ですから、三五%削減です。

 五・五兆円というのはそれだけの金額なんですよね。逆に言うなら、もし何かの財源を見つけてこの五・五兆円があるんでしたら、たった今言ったことをそのまま増やせるんですよ。社会保障費だったら一五%増やせますし、文教予算なら倍増できます。子供予算倍増とおっしゃられているんですけれどもね。できるんです。

 こういった増税であり、歳出削減であり、例えば消費税でございますけれども、これは御承知のように、大臣御承知だと思いますけれども、三%から五%、五%から八%、八%から一〇%と順次上げまして、そのたびに非常に大きな政治問題になってきました。二〇一二年の三党合意から二〇一九年の安倍内閣による消費税一〇%まで七年間を要しております。増税は物すごく大変なんです。社会保障の削減だって物すごく大変なんです。それをあと三週間でできますというのは、ちょっとあり得ないと思うんですよ。

 さすがにこれだけの予算をどうにかするんですから、目算があるなら目算をちゃんと示してください、概算でいいですから。少なくとも、じゃ、消費税を何%上げて法人税を何%上げて、それは確定値でなくていいですよ、若しくは、文教予算を何%削るんです、それで五・五兆円やるんですと、概算でいいので示してください。示せないなら、全く示せません、我々は何にも具体的な案はありませんとはっきり言ってください。どちらですか。

鈴木国務大臣 もちろん、全く何も検討していないということではなくて、様々なシミュレーションをそれぞれの立場立場でしているということは事実であります。相当一生懸命やっております。その上で、これから決定するプロセスとして、先ほど申し上げましたようなプロセスで年末に向けて一体的に決めていくということであります。

 これからまさに与党との調整等もございますので、今ここでそうしたことをつまびらかに、検討の中身をですよ、まだ決まっていないわけですから、どういうふうに決まっていくか、決着するか分からない、それをここで申し上げるということはできないということ、これは御理解をいただきたいと思います。

米山委員 そうしますと、いや、それは決まっていないから言えません、しっかり検討しているんです、それはいいのかもしれないんですけれども、財政の言葉で、入るを量りて出るを量るでよかったと思うんですけれども、ありますよね。そうしたら、財源が全く決まっていない、そうなんですよね、増税にするのか、歳出削減にするのか、それとも国債で発行するのか、まるで決まっていない。だったら、財務大臣、歳出の責任者なんですから、防衛費の増も決まっていないということでいいんですね。どちらなんですか。防衛費増は決まっているんですか。防衛費増だけは決まっていて歳出は全く決まっていない、それが自民党の在り方ですか。

鈴木国務大臣 防衛費の総額については、これは実効性、実現性等を踏まえまして必要なものを積み上げていくという作業をいたしまして、それによって日本の国の独立と主権を守る、国民の生命を守るということで積み上げていった数字の中で、昨日総理から御指示をいただいたのが四十三兆円という数字でございます。そこは様々な積み上げの中で決まってまいりました。

 そして、今後のその財源につきましては、先ほど申し上げましたとおりに、総理の指示に従って年末に向けて一体的に決めていく、こういうことであります。

米山委員 そうしましたら、じゃ、大臣の御発言を信じまして、年末までに、一体どの程度増税するのか、一体どの程度、どの項目を削減するのか、一体どの程度国債として後世に、次世代の負担にするのか、それを示してくださるということでいいんですね。この場でお約束いただけますね。

鈴木国務大臣 年末に向けては一つの結論が出ますので、それをもってお示しするということになるんだと思います。

米山委員 そうしますと、じゃ、それをお待ちしてということでございますけれども、それをお待ちさせていただきたいと思います。

 そうしましたら、次、黒田総裁に、先ほど来ずっと質問になっている二%の安定的物価目標ということについてお伺いしたいと思います。

 これは、聞くたびに黒田総裁は、効果があった、効果があったみたいな話をされるんですけれども、ちょっとそこは最初に言っておきたいんですが、別に、全体として少し効果があったとかデフレマインドが払拭されたとか、そういうことを聞きたいわけではありません。二%という具体的な数字を、しかも当初二年という年限を切って設定していた、その是非について問わせていただきたいと思いますので、その是非について御回答をいただければと思います。ほかの、ちょっと効果はありましたみたいな話は、特に御返答いただく必要はありません。

 まず最初になんですけれども、総裁、二〇一三年一月二十二日、政府と、「デフレ脱却と持続的な経済成長の実現のための政府・日本銀行の政策連携について」とする共同声明、いわゆるアコードを結び、この中で、日本銀行は、今後、日本経済の競争力と成長力の強化に向けた幅広い主体の取組の進展に伴い持続可能な物価の安定と整合的な物価上昇率が高まっていくと認識している、この認識に立って、日本銀行は、物価安定の目標を消費者物価の前年比上昇率で二%とする、日本銀行は、上記の物価安定の目標のため、金融緩和を推進し、これをできるだけ早期に実現することを目指す、そのようにおっしゃられているんですが、このアコードはそのまま維持されているということでよろしいですか。

黒田参考人 この共同声明につきましては、現時点においても有効であるというふうに認識しております。

米山委員 まあ、そうなんでしょうね。

 ちなみに、その後の記者会見におきまして、黒田総裁はこのようにおっしゃられています。日本銀行は、消費者物価の前年比上昇率二%の物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現する、このため、マネタリーベース及び長期国債、ETFの保有額を二年間で二倍に拡大し、長期国債買入れの平均残存期間を二倍以上に延長するなど、量、質共に次元の違う金融緩和を行うと打ち出されました。

 これが異次元の金融緩和と呼ばれるものなんですけれども、このとき、二年という年限を区切ってこれをすればできると思われたわけですよね。その根拠を教えていただきたいんです、そのときの根拠を。というのは、私、ちょっとだけですけれども経済学を勉強したんですが、期間を区切って物価上昇率を実現できるという理論を聞いたことないんですよ。なぜこのときに二年間で実現できると思われたのか、その根拠を教えてください。

黒田参考人 二年程度を目途にできるだけ早期に実現するということを申し上げたのは、二つ意味がありまして、一つは、これは、欧米を含めて、金融政策の効果には一定のタイムラグがあるということで、二年程度はその効果が発現するためには時間がかかるというふうに言われておりますので、それを踏まえて申し上げたということ。もう一つは、この政府との共同声明でできるだけ早期に実現するというふうにコミットしたわけですが、それを踏まえて、具体的に二%をできるだけ早期に実現するためにどの程度のことをやる必要があるかということを部内で議論した上で、政策委員会で、二%をできるだけ早期に実現するという際に、二年程度の期間を念頭に置いて実現するような大規模な金融緩和政策を執り行うということを決めたわけであります。

 そうしたことを踏まえて、一種のコミットメントとして申し上げたということでございます。

米山委員 まさにおっしゃられていただいたところでおっしゃられたんですけれども、つまり、今、黒田総裁がおっしゃられたことは、効果が上がるのには二年かかるかもしれない、二年かかるだろう、つまり、二年かかったら効果は上がるかもしれない、でも、二年で効果が上がる確証はどこにもなかった、早期にしろと言われて、二年たったら効果が出るかもしれないから二年と言っただけであって、二年で効果が出る、そんな理論的なバックボーンもなければ確証もなかったとお答えしたんですけれども、それでよろしいですね。

黒田参考人 そういうふうに申し上げたわけではなくて、タイムラグがあるので二年程度は必要になるということと、それから、二年程度を目途に二%の物価安定目標を実現するためにどの程度の金融緩和をする必要があるかということを議論いたしまして、先ほど委員も指摘されたような量的・質的金融緩和というものを決定し、二%の物価安定目標の実現にコミットしたということでございます。

米山委員 じゃ、つまり、今度は答弁が変わったんですけれども、日銀のモデルで、これだけの緩和をすれば二年程度で実現できるという勝算があった、確信があったということですね。それをちょっと、かいつまんでで結構ですので教えていただけますか。どんな勝算があったんですか。

黒田参考人 これは、様々な議論を行いまして、議論された内容については金融政策決定会合の議事要旨等で明らかにされておりますけれども、もちろん諸外国の例とか我が国の過去の金融政策の例とかそういうものも参考にしましたし、様々なシミュレーションを行って、この程度の金融緩和の規模というのが必要であろうということで量的・質的金融緩和の内容を決定し、お示ししたわけでございます。

 さらに、先ほど申し上げたように、そういうことで実現可能であるということを考えて、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということについてコミットメントをしたということであります。

米山委員 先ほど、実は櫻井周委員からも御指摘があったんですけれども、私も通告しているところなんですけれども、黒田総裁は二〇二二年の十月二十八日の記者会見で、来年度の物価見通しは一・六%だとおっしゃっているんです。十月三十一日に公表された日本銀行の経済・物価情勢の展望において、二〇二三年の政策委員の消費者物価指数の予想中央値は一・六%、二年たった二〇二四年でも一・六%なんですよ。

 あの二〇一三年のときに、きちんとした理論や議論の下に、二年で実現できる方法があったんですよね。何で今、二〇二二年にはその方法がないんですか。何で、二〇二二年で、二年後にちゃんと二%にできますと言えないんですか。おかしくないですか。そこの説明をしていただけますか。

黒田参考人 それは、先ほど来申し上げていますように、足下で物価上昇率は三・六%になっているわけですが、これはほとんど全て輸入物価の上昇が消費者物価に転嫁されているわけでございまして、その物価押し上げ効果というものは来年度から低下していく、来年から来年度の半ばにかけて物価上昇率はずっと低下していって、二〇二三年度全体としては一・六%程度になる。

 ただ、その下でも、労働需給が引き締まって賃金が上昇する、あるいはGDPのデフレギャップがマイナスからプラスになっていくという形で、賃金、物価は少しずつ上昇していくという形になっているわけですけれども、三・六%というのはほとんど輸入物価の上昇によって起こっていますので、その部分が落ちていく、他方で賃金、物価は緩やかに上昇していくという両者の影響によって、二〇二三年度は一・六%、二〇二四年度は一・六%という見通しになっています。

 ただ、賃金については、現在見ている以上に上昇する可能性、つまり、物価については上方のリスク、上方バイアスがあるということは認めております。

 他方で、成長率については、世界経済、特に先進国を中心とした成長率の低下とか何かによって、マイナスの、下方のリスクがあるということも認めております。

米山委員 総裁、ちょっと話が矛盾しているといいますか、論理的でないんですよ。

 総裁、記者会見におきましての話、九月二十二日の日銀政策決定会合の記者会見におきまして、金融政策の先行き指針、フォワードガイダンスを変更することも必要ないと強調されて、フォワードガイダンスの変更は二、三年はないと踏み込まれましたよね。つまり、長短金利操作つきの量的・質的緩和は二、三年継続するということを織り込んで、物価上昇の推測を、推定をしなきゃいけないんですよ。そうでしょう。

 もしかして、じゃ、あれなんですか、総裁の下で皆さんいらっしゃるけれども、政策委員の方は、総裁終わったら長短金利付量的・質的緩和は終わるから二%物価上昇はしないんだなと思って、一・六%ってつけたんですか。

 だって、総裁、先ほどちゃんと論理的に、理論的に、経済学的に二年間で二%実現できると思われて、それは根拠があったと言ったわけです。それが続いているんだったら、ちゃんと二年後に二%上がるはずじゃないですか。それを皆さん織り込んで、そう言うわけでしょう。

 百歩譲って、それは政策委員が言っているだけだ、俺はそう思わぬ、俺は絶対に二%上がると思うんだったら、せめて総裁はそれを言わなきゃいけないでしょう、私は二%って。じゃ、思われているんですか。総裁は、一体二年後に、この長短金利操作付量的・質的緩和を続けていったら、二年後、二%上がると思われているんですか。それとも、展望に書いてあるように、一・六%だと思っているんですか。どっちかを言ってください。

黒田参考人 展望レポートにおける見通しは、九人の政策委員……(米山委員「いや、総裁の意見ですよ」と呼ぶ)私も含めてですね、九人の政策委員が出した見通しを集約したものとしてお示ししておりまして、それぞれの方がそれぞれの見通しをいわば一種の公式のものとして発表するということはしておりません。あくまでも、政策委員会としてどういう見通しを、いわば中央値としてどういう見通しを取って、そういうものも踏まえて金融政策を議論しているということであります。

 なお、先ほど来申し上げておりますとおり、現在の日本経済、世界経済をめぐる不確実性は高いということも同時に政策委員会の公表文でも申し上げておりまして、そういう意味では、上下双方向のリスクというものも十分勘案して、毎回の金融政策決定会合において適切な金融政策を決めていくということでございます。

米山委員 質問に答えていただきたいんですけれども、黒田日銀総裁にお伺いいたします。ほかの方の御意見は聞いておりません。展望も聞きません。黒田日銀総裁として、二年後の物価上昇率は何%だと予想されますか。実現しなくていいです。何%と予想されますか。一・六%か二%か、どちらなんですか。教えてください。

黒田参考人 何回も申し上げているとおり……(米山委員「いや、申し上げていないですよ」と呼ぶ)申し上げているとおり、私の物価見通しというものを申し上げるということは、何回も申し上げますけれども、あくまでも政策委員会としての物価見通しを四半期に一回提出しておりまして、それ以外のものを私が何か公式のものとして申し上げるのは適切でないと思います。したがって、御要望ではありますけれども、具体的に申し上げるつもりはございません。

 ただ、何回も申し上げますが、一・六%という来年度、再来年度の見通しというのは一定のリスク、幅があるということも、政策委員会でみんなでまとめたところでありまして、そこのところは私もそのとおりであるというふうに申し上げます。

米山委員 つまり、二年間で二%なんということは誰も予想していない上に、たった今、日銀の政策委員すら信じていない、それが現実だと思うんです。二%を、短期間、一定の期間を区切って物価目標を実現できるなんていうことは、そもそも最初からなかったんですよ。だから、十年間も失敗し続けたんです。十年間失敗し続けて、今ここに来て、既にもう、あなたの部下である政策委員すらあなたの言っていることを信じていないから、一・六%、書いているんでしょう。その状況にあってなお続けるということは、本当に問題があります。

 ちょっと、更にお聞きしたいんですけれども、ちなみに、二年後、物価上昇率一・六%、予想されているんですが、これで、先ほど総裁は、賃金は需給の引締めや労働生産性や春闘で上がるとおっしゃられたわけなんですけれども、じゃ、物価上昇率が一・六%のままで、春闘等々で賃金が三%上がったら、この量的・質的金融緩和はどうされるんですか。物価上昇率二%になっていないから続けるんですか。それとも、賃金が上がったからやめるんですか。どちらですか。お答えください。

黒田参考人 もちろん、物価が二%を達成すれば、それも安定的、持続的に達成されれば、現在の金融緩和を、この出口を検討するということになります。

 ただ、そのために、賃金が上がることは、安定的な二%の達成にプラスの効果があるということは事実であります。

米山委員 だから、そういう質問をしていないので、質問を聞いて質問に答えてください。

 物価が上昇しなくて、物価上昇率が、皆さんが御予想されたとおり、展望のとおり一・六%だけれども、二%以下ですよ、にもかかわらず賃金が、だって、春闘や労働生産性や労働需給の、市場の引き締まりで賃金が三%上がりました、実質賃金が一・四%上がりました。このとき、量的・質的緩和は続けるんですか、続けないんですかという質問です。この質問に答えてください。

黒田参考人 先ほども申し上げたとおり、物価の二%の達成されない場合に賃金が三%上がっても当然、現在の金融緩和を続けるのは当然であります。

米山委員 労働需給が引き締まって、労働生産性が上がって、賃金が三%上がっても、物価が一・六%上がると、実質賃金は一・四%なんですよ、上昇率は。このとき、ほとんどの労働者も、ほとんどの国民も、別に物価は上昇してほしいと思わないと思いますよ。そうでしょう。だって、物価が上昇率ゼロ%になってくれれば、実質賃金は三%上がるんですよ。日銀がわざわざそうやって、賃金がちゃんと上がっているのに、金融、二%の目標を続けるから、実質賃金の上昇率は一・四%、下がっちゃうんです。

 にもかかわらず、黒田総裁は、二%の安定的物価目標という達成できもしなかった目標に固執して、なおそれを、量的・質的緩和は続けると今おっしゃられたんですが、それでいいんですね。

黒田参考人 何回も申し上げますけれども、日本銀行は物価安定がその責務でありまして、その具体化として二%の物価安定目標を掲げて金融政策を運営しております。したがいまして、それは、二%が達成されないときに金融緩和をやめて、二%が達成されないようになってしまうということは適切でないと思いますので、当然、二%の物価安定目標に向けて緩和を続けていくということであります。

 それは、何回も申し上げますが、実質賃金の長期的な傾向については、労働生産性の動向によって決まる部分が大変多いわけでありますので、その点について、実質賃金が上がっているからやめるとか、実質賃金が上がらないから金融緩和をするとか、そういうことではなくて、あくまでも物価安定ということを金融政策の目標として運営していく。これは日本銀行だけでなく、世界中の先進国の中央銀行がやっていることであります。

米山委員 今もう時間が過ぎましたから一言で終わりますけれども、もはや、黒田総裁は、国民を無視した、単なる物価二%に固執しているだけです。むしろ、国民生活が物価上昇で苦しんでも構わない、そうおっしゃられています。是非政策を改め、改められないのであれば、即刻お辞めになることを求めさせていただいて、私の質問とさせていただきます。

 大変ありがとうございました。

塚田委員長 次に、藤巻健太君。

藤巻委員 日本維新の会の藤巻健太でございます。本日も、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回のワールドカップ、全力で戦った選手たちに心からの敬意を表したいと思います。誇りを胸に各々のクラブに帰っていっていただければと考えております。

 これだけ大きくサッカーが盛り上がったので、今日は、まず、今後の日本サッカーの在り方、経済的にも日本サッカーをどう盛り上げていくかをテーマに、少しお話しさせていただければと思っております。

 私は一九八三年生まれ。九三年のJリーグ創設時は小学校四年生で、その頃、Jリーグブームに背中を押されてサッカーを始めました。九八年のワールドカップ初出場は中学三年生のとき。そこで活躍した中田英寿選手が、二〇〇一年にローマでスクデットを獲得した姿を今も鮮明に覚えております。日本人が世界の中でここまで輝けるのか、当時高校生だった私には、その姿が本当にまぶしく見えました。

 私の世代は、まさに日本サッカーの成長とともにありました。今の子供たちも、世界を相手に堂々と戦う日本代表の姿を見て人生を歩んでいく力にしてほしい、そう願ってやみません。

 今回のワールドカップ、本当に盛り上がりました。その経済的な効果も相当なものであると考えられます。

 しかしですけれども、ワールドカップは四年に一度しかありません。四年に三試合か四試合しかありません。

 次回のワールドカップからはアジア出場枠が大幅に拡大されることから、日本の予選突破の可能性はかなり高いものになる一方、予選は、ある意味で楽過ぎて、盛り上がりに欠けることも懸念されます。

 そういった意味において、日本におけるサッカー人気の根底を支えて、興行的にも盛り上げていくべきは、Jリーグであるというふうに考えております。

 まずお伺いいたします。

 Jリーグに関わる経済的な効果や税収はどのようなものがあり、どの程度なのか、分かる範囲でお答えいただければと思っております。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国のプロサッカーリーグであるJリーグは、全国四十都道府県に全五十八クラブのチームが所属しており、年間一千試合以上がそれぞれのクラブチームが所属する地域で開催され、一試合当たりの平均入場者数は、J1リーグでは約一万四千人となっております。

 具体的な地域の経済効果は、地域ごとに複数要因が関係してくるため、数字でお示しすることは困難でありますが、毎週末に数万人が試合を観戦することで、チケット収入や選手のユニホームなどの物販収入だけでなく、スタジアム周辺の宿泊施設、あるいは商店街など、地域経済に大きな波及効果を生み出すものと考えております。

 また、Jリーグでは、地域密着の理念に基づき、各クラブが、住民や自治体、企業等と連携し、社会課題の解決や町づくりなどの活動を活発に行っており、これらについても地域に少なくない経済効果をもたらしているものと考えております。

藤巻委員 おっしゃられたように、経済的な効果、これもやはり、今回のワールドカップを契機の一つにして、大きくしていくことが大事かなと考えております。

 Jリーグを盛り上げて、多くの人に見て楽しんでもらう、それによって、放送権料だったり入場料、それから商品売上げを増やして、税収増につなげていく、あるいは、おっしゃられたように、地域の雇用、それから活性化につなげていく、こういう好循環を生み出すことは非常に大事かなというふうに考えておりまして、ワールドカップで本当にこれだけ盛り上がった今こそが、本当に非常に重要な時期だと考えております。

 今後の日本サッカー、Jリーグをどう盛り上げていくか、方針を改めてお聞かせください。

星野政府参考人 現在開催されておりますFIFAワールドカップ・カタール大会では、日本代表選手のすばらしい活躍を通じ、多くの国民が、サッカー、そしてスポーツのすばらしさを感じていると思っているところでございます。委員御指摘のとおり、今般のワールドカップで生まれた機運を今後に向けてしっかり生かしていくことが重要だと考えております。

 Jリーグにおいて、まずは、そのリーグ運営等といったことについてはしっかり考えていくべきものと思われますけれども、スポーツ庁といたしましても、Jリーグと連携し、地域のにぎわいの核となるスタジアムの整備支援等を通じて、我が国のサッカーが更に盛り上がるよう取り組んでまいります。

藤巻委員 近年では、イニエスタ選手を始め、ルーカス・ポドルスキ選手だったり、ダビド・ビジャ選手、フェルナンド・トーレス選手、本当にかつて世界のトップ中のトップで活躍した選手がJリーグに在籍しておりました。あのイニエスタが日本で見れると私も胸を躍らせましたけれども、一方で、Jリーグを年金リーグにしてはいけないんじゃないかという思いも強く持っております。

 長期的なビジョンで考えると、Jリーグはエールディビジのような若手育成型のリーグを目指すべきかなと個人的には考えておりまして、チャンピオンズリーグに参入権のないJリーグに二十八歳のイニエスタが在籍するというのはちょっと現実的には難しいのかもしれないんですけれども、十八歳のイニエスタがいる姿というのは想像できるんじゃないでしょうか。

 三十八歳のイニエスタ選手ではなくて、十八歳のイニエスタが躍動するような、Jリーグで活躍すれば世界に羽ばたけるような、そんなリーグを目指すべきだと個人的には考えておりますが、お考えをお聞かせください。

星野政府参考人 Jリーグにおきましては、所属する各クラブチームにおきまして、高校生以下の年代を対象としたアカデミーチームを組成し、若手選手の育成を行っており、日常的な練習だけでなく、Jリーグが主催する大会への参加などを通じて競技力の向上が図られております。

 加えて、Jリーグでは、日本サッカー協会と連携し、大学生や高校生のトップ選手が学校のチームに所属したままJリーグの試合に出場できる制度を活用した選手育成も行われていると承知しております。

 スポーツ庁といたしましても、Jリーグや各クラブチームと連携しながら、リーグの更なる活性化、若手選手の育成に向けた取組を支援してまいります。

藤巻委員 久保選手なんかは十八歳でレアル・マドリードに移籍しました。十六歳や十七歳でJリーグで活躍して、十八歳で海外の強豪クラブに移籍するというのは、これは一つのモデルケースかなというふうに考えられるんですけれども、今ちょっとあったんですけれども、十六歳、十七歳の選手がJリーグでプレーすることを望んでいるときに、それを十分に支援する体制というのは取れているのでしょうか。総合的な若手育成の方針等々を聞かせていただければと思います。

    〔委員長退席、中西委員長代理着席〕

星野政府参考人 日本サッカー協会では、福島、大阪、愛媛、熊本の全国四地域にアカデミー校を開校しており、選手は寄宿舎のある地域の学校に通学しながら専門的なトレーニングを受けることができる長期的なエリート育成制度が実施されております。

 また、Jリーグにおきましては、クラブチームが地元の学校法人と連携し、選手が地元の高校に通いながらチームの練習に参加できるよう、競技だけでなく、学習面への支援にも取り組む動きが広がりつつあるものと承知しております。

 こうした取組が今後更に充実するよう、スポーツ庁といたしましても、関係団体と連携して取り組んでまいりたいと思っております。

藤巻委員 ありがとうございます。

 繰り返しになるんですけれども、本当に、ワールドカップで盛り上がった今こそが重要な時期でございます。日本サッカーは代表人気依存型からJリーグ主体へ抜本的に構造改革するべきだというふうに考えております。サッカーを、四年に一回見るスポーツではなく、毎週末楽しむものにしてほしい、そう考えております。Jリーグを盛り上げて、多くの人に見て楽しんでもらい、経済的にも活性化させて、税収増にもつなげていく、そのための取組をどうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして、目線を変えて、次は為替相場についてお伺いいたします。

 為替相場が非常に大きく動いております。私が一か月前に質疑をさせていただいた際は急激に円安が進んでいるという話でしたが、今度は逆に、今は急激に円高が進んでいるということでございます。

 どの程度の為替水準が国益に最もかなうのか、それは判断が難しいところではあると思いますし、この場ではお答えいただけないのは分かっております。適切な為替水準についての議論というのはこの場では避けさせていただきますけれども、輸出入企業のリスクや負担等も考えると、やはり、円安であれ円高であれ、急激な変動は望ましくないというふうに考えられます。

 為替相場の現在の急激な変化に関して、大臣はどうお考えでしょうか。

鈴木国務大臣 藤巻先生と全く同じ認識でございます。

 日々の為替の相場の動きについては、私の不用意な発言が影響を与えてもいけませんのでコメントはしないということにいたしておりますが、重要なのは安定的に推移をするということ、しかも、為替相場においてファンダメンタルズを反映して安定的に推移をするということが重要なことである、先生と同じ認識を持っているところでありまして、政府といたしまして、引き続き、為替市場の動向を緊張感を持って注視をしていきたいと思っております。

藤巻委員 安定的な動きが大事であったり、あるいは、大臣は以前から過度な変動は絶対に容認できないと強い言葉で常々おっしゃっておると思うんですけれども、そのお考えから、九月、十月にかけてドル売り・円買い介入を繰り返していたのだと考えます。

 では、最近の円高相場というところはどうなんでしょうか。これは一か月半で十五円以上円高になっております。大臣が過度な変動は絶対に容認しないと言い、繰り返し介入に踏み切った数か月前の円安相場以上の変動です、あくまで変動という意味では。まさに過度な変動そのものでございます。そういった観点から、この過度な変動を受けて今度はドル買い・円売り介入をする可能性、あくまで可能性はあるんでしょうか。お答えください。

    〔中西委員長代理退席、委員長着席〕

鈴木国務大臣 為替政策につきましては、為替レートは市場において決定される、それから、為替レートの過度な変動や無秩序な動きは経済及び金融の安定に対して悪影響を与え得るといった、今までG7等で確認されている考え方に沿って適切に実施すること、これが重要であると考えております。

 今後とも、市場の動向はしっかり注視をして、必要がある場合には適切に対応していくという考えには全く変わりはありません。

藤巻委員 そのロジックからすると、九月、十月に過度な変動に対して為替介入を繰り返していた、この一か月半の過度な円高というところにも対応しないとおかしな話になっちゃう。

 だから、要するに、過度な変動を許さないという言葉を使ってしまうと、逆に言うと、過度な変動があるたびに為替介入をしないと筋が通らないということになってしまう側面もありますので、私自身は市場の健全性を守るという観点から為替介入には極めて慎重であるべきだという考えを持っておりますが、九月、十月の為替介入の連発というのは大局的にはどうだったのか、しっかりと総括していただければと思っております。

 続いて、日銀黒田総裁にお伺いいたします。

 先ほどの櫻井委員の質問とちょっとかぶってしまう部分もあるんですけれども、日銀は先月二十八日に、保有する国債の九月末の時価評価が帳簿上の価格を下回り、八千七百四十九億円の含み損が出ていることを発表いたしました。また、雨宮副総裁は二日の予算委員会で、金利が一%上昇すると、つまり、イールドカーブが上方向に一%パラレルシフトすると含み損は二十八兆六千億、五%シフトすると百八兆一千億と答弁されました。

 参考までに、十年債の史上最高利回りは一一%です。

 今後、金利が五%ほど上昇するということは十二分にあり得ます。金利が五%上昇したら百兆円以上の含み損。日本の一般会計税収は六十五兆とかそのぐらいなんですけれども、金利が五%上昇すると百兆円以上の含み損、国家税収の二倍近くの含み損、こんなとてつもない含み損を抱える可能性のある銀行の信用、本当に大丈夫でしょうか。日銀の財務健全性というのは崖っ縁にあるのではないでしょうか。

黒田参考人 御指摘のように、金利が上昇しますと保有国債の評価損は拡大することになりますけれども、日本銀行では保有国債の評価方法として償却原価法を採用しているため、評価損の発生、拡大は決算上の期間損益には影響いたしません。

 その上で、管理通貨制度の下では、やはり通貨及び中央銀行の信認は、適切な金融政策運営により物価の安定を図ることを通じて確保されるものであると考えておりまして、日本銀行としては、財務の健全性にも留意しつつ、適切な政策運営に努めてまいりたいというふうに考えております。

藤巻委員 常々総裁は、償却原価法を使っているから大丈夫、あるいは国債は満期保有するから大丈夫というロジックを使っているんですけれども、ちょっとこのロジックはいささか無理があるのではないでしょうか。

 例えば、保有している株や不動産の価値が暴落してしまい大幅な債務超過状態に陥っている企業が、うちは時価評価していないから、簿価評価だから大丈夫、財務状況に問題は全くないと幾ら叫んでも、それは通用しません。取引銀行は資金を引き揚げて、株価が暴落して、その企業は倒産すると思います。日銀も同様です。日銀の財務内容を評価するのは市場参加者や格付機関であって、日銀の自分自身の自己評価は余り関係ないのではないでしょうか。自分で自分の通信簿をつけて、オール五だ、すばらしいと叫んでいるみたいなもので、外から見たら、もしかしたらオール一のような状態なのかもしれません。

 自分たちは時価会計しないから大丈夫だ、簿価会計だから財務状況に問題はない、こういうロジックは果たして本当に通用するのか、お考えをお聞かせください。

黒田参考人 欧米の中央銀行も時価会計をしておりませんけれども、これは、当然、中央銀行の制度というものから見て、仮に時価評価した場合に含み損が出てくるとか、そういうことが中央銀行としての政策に影響するということはない、また、市場の評価というものは、あくまでも適切な金融政策によってインフレでもデフレでもない状況、適切な物価安定をもたらす、そういう政策を行うということがやはり信認の基礎でありますので、時価評価した場合に評価損が大きくなるということが、そういった意味で、中央銀行の信認、金融政策の効果に影響があるということはないというふうに考えております。これは、私が申し上げているというわけではなくて、各国の中央銀行が全く同じ考えでございます。

藤巻委員 外国、他国の中央銀行は、日銀ほど財務健全性が毀損されていないというか、そこに大きなポイントがあるわけで、各国の中央銀行と日銀は大分財務状況が違うわけでございます。それで、他国の中央銀行が時価評価していなくて実際大丈夫だから日銀も大丈夫という評価は、私はいささか疑問を持っております。やはり、日銀の財務状況が毀損されると、それはやはり日銀の金融政策にも大きく影響を及ぼしてしまうところではないのでしょうか。私はそう思っております。

 確かに、日銀というのは通貨発行することができます。そういった意味においては、支払い能力に毀損が生じることもないですし、経済取引ができなくなるということはないというふうには認識しており、いわゆる資金繰り倒産みたいなものはないわけでございます。

 しかし、私が申し上げたいのはそこではなくて、資金繰り倒産をしないということと財務健全性、これは全く別の話でございます。先ほどおっしゃられたんですけれども、日銀の内部組織でもある日本銀行金融研究所が発行している「日本銀行の機能と業務」という本の中にも、「日本銀行への信認が失われると、日本銀行による政策や業務の運営が困難となるとともに、中央銀行通貨への信認低下によって、わが国経済全体にも支障が及ぶ。」こういう記述がございます。

 私が心配しているのは、日銀の信用が毀損され、財務状況の健全性が失われ、発行通貨である円の信用が毀損され、大幅な円安が進んでしまうことです。金利が上昇して含み損が膨らみ、日銀の財務健全性が失われ、円の信認が毀損されてしまう、このような事態というのは想定されておりますでしょうか。

黒田参考人 そのような状態は想定しておりません。

 なお、資産について時価評価している中央銀行が私の知る限りは一つありまして、オーストラリアの準備銀行がそうです。実は、評価損が非常に大きくなって、足下では資産超過になっております。ただ、それが、オーストラリア準備銀行の信認を毀損したとか、金融政策を難しくしているということは、全く起こっておりません。

藤巻委員 そうですね、資産超過だったらいいと思っておりまして……(黒田参考人「債務超過です」と呼ぶ)債務超過ですね。債務超過。

 ただ、ちょっと、私は、済みません、オーストラリア銀行の財務内容を確認してはいないんですけれども、先ほども申し上げたように、金利が五%上昇するだけで百兆円以上の含み損、これは、やはり世界的に見ても、ここまで大きな含み損を抱える、世界的に金利上昇圧力が大きくかかっている中で、これだけ国債を多く保有しており、大きな含み損を抱えている中央銀行というのは数少ないかなというふうに考えているんですけれども、世界各国の中央銀行の財務内容と日銀の比較というのはどうお考えになっているんでしょうか。

黒田参考人 主要な中央銀行の財務内容はもちろん公表されておりますけれども、国債の保有金額がという面では、例えばFEDの方がもちろん大きいわけですけれども、GDPとの比較とか、そういうものでいった場合、あるいは国債発行総額との関係でいった場合、日本銀行の国債保有が大きいものであるということは事実であります。

塚田委員長 日銀総裁、先ほどの答弁の訂正があればお願いいたします。

黒田参考人 オーストラリア準備銀行は、最近の金利上昇によって、保有国債の評価損が拡大して、全体として債務超過に陥っているということであります。資産超過というのは間違いです。失礼しました。

藤巻委員 先ほどおっしゃられたように、やはり日銀が保有している国債というのはかなり膨大なものでありまして、世界的な金利上昇圧力がかかっている中、日銀というのは大きな債務超過を抱えてしまう、含み損を抱えてしまう可能性が非常に高いというふうに考えております。本当に、非常に重大な、重要な局面を迎えつつあると思いますので、そういったことも含めて今後の運営をしっかりとやっていっていただければと思っております。

 本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。これで私の質問を終わらせていただきます。

塚田委員長 次に、足立康史君。

足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。

 財金委はもう五年ぶりぐらいでございまして、またいろいろ御指導を賜りたい、こう思います。

 今、藤巻委員から、日銀の財務の健全性という話がありました。ちょっと、党のポジションとちゃうよね。

 かつて、日本維新の会は、マニフェストにそういうことを書いていたときがありました。何か、時価会計を導入して、日銀財務の健全性を明らかにするみたいなことが書いてあった、実は、私が政調会長になる前は書いてあったんですが、私が政調会長になりまして、削除しましたので、そういうことが必要であるとは今党としては考えていないというのが公式見解、ですよね、藤巻さん。だと思います。まあ、異論があったらまた、済みません。

 今日は、マクロ経済とインボイス。ちょっと遠い話のように聞こえますが、財政政策、大変重要な局面を迎えています。

 まず、私は基本的に、最近の金融、財政、高く評価をしています。先ほどから野党第一党の一部の議員さんが何か上から目線で、日銀総裁、けしからぬとか言っていますけれども、すばらしいハンドリングをされておられるし、さきの補正予算についても、大変大きな歳出圧力がある中でバランスを取って、うちの党は反対しましたけれども。私は、その刺激を、物価高ですから、コストプッシュインフレ下ですから、刺激を余りし過ぎるのも問題がありますが、他方、景気をしっかりと下支えしていく必要もあるということで、大変難しいマクロ経済運営をしていただいているということで、基本、評価をしているということです。

 ただ、インボイスが始まりますね、来年の十月。これは、来年の十月というのはマクロ経済運営上出てきたタイミングではありません、そうですね。インボイス制度が始まる、これは別にマクロ経済運営の観点から配慮されたタイミングではない。でも、そのタイミングで、来年十月から消費税収が増えます。これは私は増税だと言っているんですが、大臣、これは増税ということでよろしいですね。

鈴木国務大臣 インボイス制度でありますけれども、経過措置期間後は免税事業者からの課税仕入れが仕入れ税額控除できなくなる仕組みであることや、そうした仕組みを前提にいたしまして、課税事業者となることを選択してインボイス発行事業者になる方々がいるといった点を踏まえれば、足立先生御指摘のとおりに一定程度の増収をもたらすものと考えられます。

 したがって、インボイスの導入により結果として増収となるものの、税率の引上げのような増税を目的としたものではなくて、あくまで複数税率の下で適正な課税を確保するための制度であるということを御理解をいただければと思ってございます。

足立委員 まさにインボイス制度は増税のためにやっている制度ではない、これはもう御答弁のとおりですが、他方、自然増収ではないですね。自然増収じゃありません。

 制度を見直すことによって消費税収が増える、これは増税を伴う制度見直しというか、増税を伴う制度が来年十月から導入される。ここで増税という二文字を言わないというのは、私はこれは評価できない。だって、制度が見直されて増税になるんだから、それは消費増税なんです。それを赤旗に書かれたくないからといって言わないというのは、これは私は極めて強く政府の姿勢を批判せざるを得ないので、大臣、もうこれは、赤旗だけだと寂しいので、五大紙に書いていただけるように、しっかり、来年十月から消費増税だとおっしゃってください。

鈴木国務大臣 普通、増税といいますと、消費税率を引き上げるということだと思います。先ほどの私が申し上げましたのは、インボイスによって増収になるということでございまして、そういう意味におきましては、いわゆる増税とは違う、こういう判断でございます。

足立委員 自然増収ではない消費税収増があるということですね。自然増収じゃないのに増税でもない、何なんですか、これは。

鈴木国務大臣 適正な課税を進める、複数税率の下でですね、そういう中で、先ほど申し上げたような中において増収が発生し得る、こういうことであります。

足立委員 これはちょっと、今日は通告がいっぱいあるんですが、一問で終わりそうですね、時間。ちょっと引くに引けないです、これは。

 だって、自然増収じゃないんだから。制度が変わるんですから。来年十月から、消費税制、消費税の制度が変わる、消費税収が増える。それはまさに、意図して、本来、主目的ではないけれども、付随的に消費増税が制度改変によって行われる、これを認めないというのは私はもう政府としてあり得ないと思いますよ。大臣、ここはもう諦めていただいて。

 ただ、私はインボイス制度は賛成ですから。大賛成なんですよ。だから、大臣、ここは私に一言下さい。だって、これから私はマイクを握って財務大臣の応援をするんですよ、ずっと。インボイスはやるんだと。(発言する者あり)いや、賛成でしょう。住吉部会長は賛成と言っています。

 ちょっと大臣、ここは、私は、やはりインボイスに係る間違った批判が多いんですよ。だから、これから来年十月に向けてしっかりと国民と対話をしていく上で、ここは議論の入口として、これをあやふやに、曖昧にするから出口も曖昧になるんです。制度改変によって消費増税が付随的ではあるが行われる、これを認めないことはあり得ないと思うんですが、いかがですか。

鈴木国務大臣 同じお答えになって大変恐縮なんですけれども、複数税率を導入いたしました。その中で、適正な課税を確保するという観点から、このインボイス制度が導入されるわけであります。

 その中において、足立先生が御指摘のように、増収となる部分がございます。しかし、私ども、消費税率の増税というのは、五%から八%、八%から一〇%、そういうことを指していっておりますので、この点については増収となるということでございまして、その点は御理解を賜れればと思っております。

足立委員 ちょっと認められませんが、ちょっと時間の関係があるので次に行きます。

 そうした消費税収の増が見込まれているわけですが、先ほど私が御指摘を申し上げたように、来年の十月というのは、意図して、要はマクロ経済運営の観点からの配慮はないですよね。

 私は、今の、先ほど冒頭、高く評価すると申し上げた金融政策、財政政策のハンドリングの中で、来年十月に本当に自然増収ではない消費税増収をやっていいかどうかは、マクロ経済運営の観点から改めて評価をし、私は回避すべきだと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 インボイス制度は複数税率の下で適正な課税を確保するために必要なものでございまして、私どもとしては、今の時点で、回避をするということではなくて、何とかこれを円滑な移行を図ろう、こういうのが今の政府の立場でございます。

 そして、この円滑な移行を図るという観点からは、制度移行後も六年間は免税事業者からの仕入れであっても一定の仕入れ税額控除を認めるなどの経過措置を設けているほか、今般の補正予算では、持続化補助金やIT導入補助金など、新たなインボイス発行事業者への支援策の充実を盛り込んだところであります。

 また、税制上の対応につきましても、与党税制調査会の場におきまして、激変緩和や事務負担の軽減の観点から御議論をいただいているものでありまして、政府としては、こうした御議論も踏まえ、事業者の負担軽減について適切に対応してまいりたいと考えております。

足立委員 今、様々な経過措置や激変緩和、激変緩和は今議論されているということですが、与党の方で。これは、私が申し上げた消費増税、私の言葉で言うとこれは消費増税ですよ、消費増税を相殺するぐらいの措置が行われる、これは相殺されるということでいいですか。

鈴木国務大臣 先ほど、インボイス制度の円滑な移行についての政府の取っている、また取ろうとしていることについてお話をさせていただきました。

 軽減税率制度の実施から四年間の準備期間を設けるとともに、制度移行後も六年間は免税事業者からの仕入れであっても一定の仕入れ税額控除を認めるといった、負担を緩和するための十分な経過措置を設けているところであります。そして、持続化補助金、IT導入補助金、これは令和四年度の補正予算において措置したということも先ほど申し上げたところでございます。

 また、税制上の対応も、先ほど、今、与党の税制調査会で議論をしているということも申し上げたところでございます。

 以上申し上げた支援策を通じて、事業者の負担を軽減して経済への影響を最小化したい、そしてそれによってインボイス制度の円滑な導入を図ってまいりたいと考えております。

足立委員 私は、先ほど、維新以外の野党は、インボイス制度が導入されると、まさに今日議論したように消費増税になる、今、経済状況の中で消費増税はよくないからインボイス反対だという人が多いんですよ。本当にレベルが低い。切り離したらいいんですよ。

 確かに、消費税法、税法の本則の世界では、そういう財務省側の議論のようになるのは、理屈上そういうふうになってしまう。もちろん、消費税を導入したときのボタンのかけ方が悪かったから今こうなっちゃっているわけだけれども。

 ただ、あえて、今、これからどうしますかということを考えると、私は、租特でもいいから、租税特別措置でもいいから、しっかりと、インボイス制度は来年十月から導入するが、自然増収ではない消費増税の部分については、マクロ経済運営というか財政運営の観点から、経済運営の観点から、租特でここは、消費増税をどうするかは別途、別の理屈で考える。だって、インボイス制度を来年十月に入れるって、別に経済運営のことは考えていないんだから。しっかり経済運営のことを考えてタイミングを、要は切り離して議論すべきだと思いますが、いかがですか。

鈴木国務大臣 一つは、この制度の円滑な導入ということが一つの論点だと思います。

 そして、先生の言うマクロ経済、来年の十月の時点の日本経済の動向に対してこのインボイス制度がどういうふうな影響を与えるかというような、そういう御指摘である、そういうふうには思います。

 そういうことについては今後ともよく注視をしていきたい、こう思いますが、私どもといたしましては、法律で決められている来年の十月の導入、これに向けて、円滑な導入を図ることができるようしっかりとした対応をしていきたいと思っております。

足立委員 時間が来ましたので終わりますが、本来意図していない来年十月というタイミングで消費増税が行われる、自然増収ではない消費税増税が行われることについては、本当に今、日本経済の先行きを左右する大変重要なタイミングですので、しっかりとそこはよく思案をいただいて御対応いただくようお願いして、質問を終わります。

 ありがとうございます。

塚田委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 国民民主党の前原でございます。

 まず、財源の問題について、鈴木財務大臣にお伺いをいたします。

 今日も何度か取り上げられましたけれども、岸田総理から昨日、五年間で約四十三兆円の防衛力整備ということで、来年度からですね。そして、財源については、歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出歳入両面の具体的な措置については、年末に一体的に決定すべく調整を進める、こういったことであります。

 委員会でいうと前々回なんですけれども、大臣とは前回の委員会で、私、一つの提案をさせていただきました。外国為替資金特別会計、これが今一・二兆ドルぐらいありますけれども、これについて一部基金化をして、そして運用をしたらどうか、そして、今の剰余金よりも更に多くのお金を一般会計に繰り入れたらどうかといったことを御提案をして、検討するとおっしゃっていただきましたけれども、お答えを聞かせてください。

鈴木国務大臣 前回の財金委員会のときに前原先生からそうした御提案がございましたが、あのときに私、十分に理解することができませんで、大変失礼をいたしました。

 それで、その後、よく自分なりにも頭を巡らせたところでございますが、まず、外貨準備の額から申し上げますと、外貨準備の適正な規模に関しましては国際的に統一された見方があるわけではないわけでありますが、やはり重要なのは、市場に急激かつ過度な変動が生じた場合に自国通貨を買い支えるために十分な額の外貨資産を保有しておくこと、これがもう何といっても重要であると考えております。近年の円の取引高で捉えた為替市場の規模の増加傾向や各国の状況等に鑑みまして、現在の我が国の外貨準備の額が過大であるとは考えていないところでございます。

 その上で、前原先生御指摘の基金構想、これは、一般会計の各種歳出の財源を捻出するために外貨準備の一部を積極的に運用する趣旨だ、そのように理解をいたしました。

 これにつきましては、外為特会が保有する外貨資産の運用に当たってやはり考えなくてはいけないこと、これは、為替介入等に備え十分な流動性を確保しなければならない、このことを目的として、安全性それから流動性に最大限留意をした運用を行い、この制約の範囲内で可能な限り収益性を追求することとしておりまして、こうした制約を超えて収益性を追求することだとするならば外貨準備の運用の目的に照らしては適切ではないのではないか、そのように思っているところでございます。

 今でも、外貨準備が米国債などで運用されて、これは流動性がありますので、そういうことで運用され、そして、それの運用益みたいなものは、おおむね、通常でありますと七割は一般会計に繰り入れているということで活用しておりますが、更にこれを積極的に運用するということについては、やはり流動性、安全性の問題から、しっかりと考えなければいけないのではないかと思っています。

前原委員 大臣が御答弁される前に財務省からも説明を受けました。その財務省が持ってこられた資料が二ページの右側であります。左側は前回使った資料でございまして、為替介入されましたので若干減ってはおりますけれども、為替市場の規模が言ってみれば大きくなっている、これは先ほど大臣が御答弁された中にも含まれておりましたけれども、それだけ一日の取引量が多くなっているということの中で、急激な変動のためにはある程度の規模が必要なんだといったことは、それは一つの理解として分かります。

 そして、三ページを御覧いただきたいんですけれども、米国債中心に、言ってみれば外貨準備を保有しているわけでありまして、その二〇〇九年度から二〇二一年度の運用資産利回り、平均でいうと二・一四、こういうことであって、それを先ほど大臣が、一般会計に七割ぐらいは剰余金として繰り入れている、こういうことでございました。

 先ほどの答弁、基金化ということについて、一つの私の提案でありますけれども、先ほど少し歩み寄りが得られたのかなと思うのは、流動性、安全性を確保しつつ、収益性を追求するということについては否定をされなかったという理解でよろしいんですか。そこの語尾がちょっと分からなかったんですけれども、安全性、流動性の確保というのは分かりましたけれども、収益性の追求ということについては、肯定的におっしゃったのか否定的におっしゃったのか、答弁ください。

鈴木国務大臣 これはもちろん、運用でマイナス、差損が出たらいけないわけでありますから、やはりそれも一つの観点であると思っております。流動性、それから安全性と並ぶ一つの観点であると思っております。

前原委員 それはどういう意味で収益性とおっしゃったんですか。

 つまり、ちょっと御自身で理解された上で、収益性というものは必要なのか、あるいは、収益性というのは度外視していいんだと。収益性というものは、安全性、流動性と並んで、度外視をしていいんだ、そういう意味ですか。

鈴木国務大臣 その点については、まずは安全性、流動性、これを最大限に留意して運用するということが重要であって、これが最大の留意点であると思います。この制約の範囲内で可能な限り収益性を追求をするということが先生の御指摘であった、こういうふうに思います。しかし、安全性、流動性というその制約を超えて収益性を追求するということについては慎重に考えなければいけない、こういうことであります。

前原委員 逆に言うと、安全性、流動性というものをある程度一定担保しながら、だってこれだけのたまり金ですから、そういったもので、例えば、例えばですよ、安全性ということで、流動性ということをちょっと横に、逆に置いた場合において、基金というものについて、三ページを御覧いただきましたら、これは前回もお示しをしましたけれども、年金の運用でいうと、二〇〇一年以降で、毎年の収益率は三・四七です。シンガポールのソブリン・ウェルス・ファンドは四・二%です。ハーバード大学やイエール大学に至っては一〇%を超えているわけですね。

 したがって、これは今、与党でもいろいろ議論になっていますよね。外為特会については、これは活用すべきだという方々は結構おられますよ。私は、やはり安定財源というものに資するためには、非常に大きな、一・二兆ドルという大きなお金があって、そして、これも財務省には伺いました、日銀にも伺いましたけれども、言ってみれば通貨スワップ協定ってあるじゃないですか、ある程度の急激な変更が起きた場合においてはそういったもので対応するということもあり得るし、そういう意味では、何も自分のところだけで目いっぱいということだけではなくて、しかも、それにプラスして、だんだんだんだん通貨状況というものが不安定になってきたなということになったら、短期政府国債、短期の政府債を発行して、そして積み上げを増やしていくということもあり得るわけですから。

 財務省が持ってこられた資料をもう一つお示しをしますと、四ページなんですね。

 これは、中国が元が下がったときにこれだけ外貨準備を使いましたというものを持ってこられました。だから外貨準備はたくさん持っていなきゃいけないんだ、こういうことの説明でもあったわけでありますけれども、三年ぐらいかかっているわけですね、三年ぐらいかけてやっているわけでありまして。その意味においては、もちろん中国の規模と円の規模、そして、一番私が申し上げたかったのは、この規模の問題もさることながら、財政の信認というものをしっかりやっていない限り円の急落があり得るというようなことをやはりしっかりとやらないと。

 だって、円の信認がどんどんどんどん、こんな放漫財政をやっていって、日銀が実質的な財政ファイナンスをやって、半分以上も国債を引き受けて、そして、どんどんどんどん、言ってみればひずみがたまっていく状況を放置しておく方がむしろ問題であって、そういう問題を解決しながら、このたまり金というものをしっかりと、先ほどの流動性、安全性というものを確保した前提で、収益性というものをもっと高めるということは、それぐらいは追求しても、追求するとおっしゃってもいいんじゃないですか。

鈴木国務大臣 繰り返しになりますが、流動性、安全性、これが基本であります。そして、その枠を超えて、利益の方ですね、いくということがあることについては慎重でなければならない、こういうふうに思っておりますが、一つの先生の考え方として受け止めさせていただきます。

前原委員 これから、防衛費について、与党でも協議されますよね。そのときに、今の答弁の整合性が取れるような形をちゃんと取ってくださいね。国会で答弁したことと、与党に言われてなし崩しになったということがないように、それだけはしていただきたいと思いますし、私は改めて、このたまり金についてはしっかりと前向きな議論をするということをもう一度提案をしておきたいと思いますし、何度もこれは取り上げさせていただきたいというふうに思います。

 日銀総裁にお伺いしますけれども、任期があと四か月程度になってこられたわけでありますが、置き土産っていろいろあるんですけれども、私は余り評価していない置き土産が幾つかあって、その一つがETFです。

 これについて、国債は、先ほど日銀保有が五〇%を超えているということを申し上げました。これも実質的には財政ファイナンスだということで、私は評価をしていませんが、ETFについては、これは償還期限がないので、減らないんですね。

 これは、自分の任期の中で何らかの方向性を示すべきだと私は思いますけれども、いかがですか。

黒田参考人 日銀が保有するETFについては、様々な意見が、議論があることは承知しております。もっとも、この二%の物価安定の目標の安定的な実現までになお時間を要する現在の状況において、具体的なETFに関する出口戦略について論じるのはやはり時期尚早ではないかというふうに思っております。

 物価安定の目標の実現が近づいてきますと、このETFの買入れというものも金融緩和政策の一環として行っているわけですから、当然、出口に向けた戦略、方針について金融政策決定会合で議論して、適切に情報発信していくということになると思います。

 仮に、将来、保有するETFの処分を行うという場合には、ETFの市場等の状況を勘案して適正な対価によって行うという方針を示しておりまして、その場合にも、日銀の損失発生を極力回避すること、市場等に攪乱的な影響を与えることを極力回避することを考慮して、処分の方針を定めることになっております。

 ただ、現時点では、具体的なオプションを示すことは時期尚早であるというふうに考えております。

前原委員 これは本当に、負の遺産を次の総裁にバトンタッチすることになりますよ。だって、ETFをこれだけ巨大に買うほかの中央銀行ってありますか。そして、官製相場に一部していて、底上げをして、底上げというか、上げ底にしているわけですよね、株価を。そして、それで、結果よくなっていたらいいですよ。結局、賃金も上がっていないし、実質賃金は下がり続けているし、株主への配当と内部留保にだけ回っているじゃないですか。そういうようなことの後押しをして、それが果たして本当にいいのかということであります。

 ちょっと質問の時間が来ましたので、六ページを御覧いただきたいんですけれども、含み益があるわけですね。これを買ったことについては私は反対ですよ。反対だけれども、含み益がある。この含み益についてやはりちゃんと活用するということを、これは政府とともに一体で考えなきゃいけないということで、今日はちょっと答弁していただく時間がなくなりましたけれども、井出文科大臣に来ていただいたのは、大学の十兆円ファンド、これについてはかなり、十兆円でフルに活用したら三%で三千億円で、そして六校程度と言われていますよね。もう数十校が考えていますよね。

 私は、こういったところに、やはり成長分野、本当の日本の成長分野にこういった、政策としては邪道だけれども、含み益をこれだけ持ったものを活用するということがあってもいいのではないかということを質問しようとしましたけれども、時間が来まして、井出副大臣にわざわざ来ていただいたのに御答弁の機会がなくて申し訳なかったわけでありますが、また改めて伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 終わります。

塚田委員長 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 最初に防衛費について質問します。

 岸田総理は、先月二十八日、浜田防衛大臣と鈴木財務大臣に対して、二〇二七年度に防衛費と関連する経費と合わせてGDP二%に達する予算措置を講じるよう指示しました。二%とは、今の二倍、約十一兆円です。さらに、総理は昨日、二〇二三年度から五年間の防衛費の総額を四十三兆円とするよう両大臣に指示しました。

 有識者会議の報告書では、国民全体での負担視野、幅広い税目による負担の必要と、防衛費倍増の調達に増税を示唆しています。一方、政府は四日、国民の増税反対の声が上がる中で、防衛費増額の増税を当面見送りする方向で調整に入ったと報道されています。歳出改革による財源捻出を優先するとのことでありますが、それはすなわち、国民生活が犠牲になるということではないでしょうか。

 資料一を御覧ください。十一月二十九日の財政審議会、予算編成に関する建議の資料です。

 財務省は、防衛関係予算について、ここにありますように赤字で強調し、中期防衛計画に基づき予算を編成し、一貫して増加、ほかの経費を削減、効率化することで、手厚い増額を確保とされています。まさに防衛費は聖域じゃないですか。ほかの経費を削減しています。これで倍増になるならば、更に国民生活に関わる予算が削減されてしまうのではないでしょうか。

 大臣にお伺いします。

 五年後には倍増とする、そうであるならば、社会保障関係予算などに大なたが振るわれてしまうんじゃないか、そういうことをお考えになっているんですか。

鈴木国務大臣 防衛費に係る財源につきましては、昨日、総理から防衛大臣と私に対しまして、一つとして、調整中の次期五年間の中期防の規模については、抜本的強化を進めるための必要な内容をしっかり確保するため、与党とも協議しつつ、約四十三兆円を上限として必要な積み上げをすること、二つとして、令和九年度以降、防衛力を安定的に維持するための財源及び五から九年度の中期防を賄う財源の確保について、歳出改革、剰余金や税外収入の活用、税制措置など、歳出歳入両面の具体的措置について、年末に一体的に決定すべく調整を進めることとの指示があったところでありまして、これに沿って調整を進めてまいりたいと思っております。

 これから決定プロセスに入るわけでございますので、現時点で具体的な方向性が決まっているわけではありません。今後、この総理指示に沿って、先般の有識者会議の報告書も踏まえつつ、与党とも十分相談しながら、年末に一体的に決定すべく調整を進めてまいりたいと考えております。

 その上で、先生が指摘をされましたことでありますが、国民の命と暮らしを守るために必要な予算、これにつきましては、今後ともしっかりと措置をしてまいりたいと思っております。

田村(貴)委員 既に、国民生活に大切な財源を削る、そういう動きが出ています。

 例えば、気象庁の緊急速報メールです。

 火山の噴火警報や大雨特別警報などの第一報メール、この気象庁の第一報メールを今月末で廃止するというんですよ。これは、火山のある自治体からは廃止反対の声が上がっているにもかかわらずやるんです。

 この第一報メールに、維持にかかる費用というのは僅か一千二百万円なんですよ。大臣、災害から国民の命を守るための予算を削減してまで軍事関連費を増やしていく、本末転倒ではありませんか。こういうのが財務省の方針なんでしょうか。

鈴木国務大臣 今先生がお出しになった事業につきましては、これは、防衛費拡充のもの、充実のものと関係なく、その事業そのものを様々精査した中で決まった措置である、そのように認識をいたしております。

田村(貴)委員 六月八日の本委員会で、私は、財政審議会の提出資料、「第二次世界大戦に関する財政状況について」というのを紹介しました。戦時中の臨時軍事費特別会計の公債発行額、借入金額の合計が千四百九十八億円に達し、歯止めなき公債発行は国民の資産を毀損したと財務省が認識しています。

 鈴木大臣は、私の質問に対して、防衛費をめぐって国民の関心が高まっている中、過去のこうした事実があったことも忘れることなく、国民的な議論をしっかり積み重ねることが重要だと答弁されました。覚えておられますか。

 まさか、鈴木大臣も財務省も、戦前の、痛苦な反省、この教訓を忘れてしまったわけではありませんよね。建設国債やつなぎ国債で防衛予算を賄う意見や主張や議論が今まかり通っていますけれども、財務省はこうした禁じ手を使ってでも防衛予算を増やすつもりですか。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 防衛費の財源について、いろいろと先生から、特に建設国債やつなぎ国債という例を挙げて御指摘がございましたが、繰り返しになりますけれども、防衛費の財源につきましては、昨日の総理指示に沿って、歳出歳入両面の具体的措置について、年末に一体的に決定すべく、与党とも丁寧に相談しながら調整を進めていくということでございます。

 これから決定プロセスに入るわけでございまして、今のところ何か方向性が定まっているというものではございません。

田村(貴)委員 結局、何を聞いても、年末に向けて議論をしていくということなんです。

 しかし、国民は、軍事費倍増でしょう、歳出削減でしょう、増税でしょう、それから借金、こうした流れに多くの人が不安や、あるいは不信、そして不満を抱いているんですよ。しかも、国会がもうすぐ閉じようとする、その後でこんな大事なことを官邸と役所だけで決めてもらったら本当に困りますよ。

 大軍拡路線というのは、この物価高と実質賃金低下に苦しむ国民に大きくのしかかってくるものであります。そうした路線は直ちにやめることを強く申し上げておきたいと思います。

 続いて、インボイスについて質問します。事務的な質問ですので、端的にお答えいただきたいと思います。

 事業者へのインボイス発行事業者を呼びかける国税庁のチラシがあります。資料二としてお配りしています。ここで、「原則、令和五年三月三十一日までに登録申請が必要です!」と書かれていますが、原則とはどういうことでしょうか。来年九月末ぎりぎりになって申請したとしても、十月一日からインボイスを発行することはできるのでしょうか。これはもうイエスかノーかで端的にお答えください。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度が開始される令和五年十月一日から登録を受けようとする事業者は、原則として、令和五年三月三十一日までに登録申請書を提出する必要がございます。

 ただし、登録申請書を令和五年三月三十一日までに提出できなかったことにつきまして困難な事情がある場合には、登録申請書にその事情を記載して施行日の前日である令和五年九月三十日までに提出すれば令和五年十月一日に登録を受けたものとみなすという経過措置が設けられているところでございます。

田村(貴)委員 政令附則第十五条では、三月三十一日までに登録申請書を提出できなかった場合、困難な事情を記載して提出するということになっていますが、困難な事情とはどういうことでしょうか。具体的に証明しなければならないのでしょうか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 困難な事情とは、例えば、インボイス制度を自身の事業に落とし込んで検討するのに時間がかかり、期限までに申請ができなかった、こういったことなどが考えられるところでございます。

 なお、この困難な事情につきましては、その困難の度合いは問わないこととされております。また、その事情を証明するための書類等を添付することまでは求めてございません。

田村(貴)委員 納税者の判断で、程度は問われない、困難な事情を記載さえすれば、来年の九月末までに登録申請をすれば、二〇二三年十月一日に登録を受けたとみなされるということですよね。

 もう一問。免税事業者に困難な事情があって、来年九月末ぎりぎりに登録申請をした場合、簡易課税制度の適用はいつからできますか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 免税事業者が登録を受ける日からインボイス発行事業者となることによりまして課税事業者となるという経過措置の適用を受ける場合には、その登録を受ける日の属する課税期間中に消費税簡易課税制度選択届出書を提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用することができるとされております。

田村(貴)委員 今の答弁で分かりましたけれども、国税庁は、こうしたチラシで来年三月三十一日まで登録するよう事業者をせかすのはやめたらどうですか。事業者自らの判断を尊重したらどうですか。だから登録が進まないんですよ。見直しを求めたいと思います。

 日本商工会議所は、九月十五日に来年度の税制改正に関する意見書を公表しました。その中で、インボイス制度は、全ての事業者に事務コストやコスト負担を負わせるだけでなく、消費税制度自体を理解していない免税事業者が多いことなどを挙げて、制度導入後に大混乱が生じることは避けられないと述べています。さらに、中小企業への影響など十分な検証を行い、制度導入後の混乱が避けられない場合は、制度の導入時期を延期すべきというふうに日商は提言しています。

 先月二十八日の予算委員会で、財務大臣にも、総理にも私は質問しました。多くの業界で混乱が生じています、二割の事業者が廃業する、業界そのものの存在が危うくなるといった生の声を紹介してまいりました。本委員会でも何度も取り上げてまいりました。

 影響を受ける事業者や税理士など、ほとんどの方が、このまま実施すると混乱が避けられないというふうに言っています。

 大臣に質問です。

 少なくとも事業者への取引の影響の可能性を検証すべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

鈴木国務大臣 インボイス制度への移行による取引への影響につきましては、免税事業者の行う取引のうち約六割についてはBトゥーC取引であること、それから、取引の相手方が課税事業者であっても約四割弱は簡易課税を適用している事業者であることが分かっておりまして、このような取引はインボイス制度の導入による影響がない点を改めて資料にして公表をしております。

 また、免税事業者と見られる事業者と取引のある事業者にアンケート調査を実施して検証を行いまして、昨年十一月にその結果を公表しておりまして、その中で、インボイス制度移行後に免税事業者との取引価格の変更を検討したり、課税事業者になることを提案したりする事業者も見られるということは確かであります。

 その結果に基づきまして、免税事業者を始めとした事業者の取引について、独禁法、下請法等の取扱いをQアンドAにより明確化し、各事業者団体への法令遵守要請を行うなど、取引環境の整備に関係省庁で連携しながら取り組んでいるところでございます。

 今後も、引き続きまして、様々な意見を踏まえながら、制度の円滑な移行に向けまして、事業者の準備状況を丁寧に把握をして、きめ細かく対応をしてまいりたいと考えております。

田村(貴)委員 個別の検証が行われた百二十五万社が参加する日本商工会議所であっても、制度の導入時期を延期すべきだ、中小企業への十分な検証を行うべきだと言っているじゃないですか。その個々の検証の積み上げ、そうした資料は私たちに示されていないんですよ。そうしたことを示してくださいよ。

 時間が来たので、最後、大臣、今、政府・与党内でインボイス制度のいろいろな措置を検討されていると私たちも聞いていますけれども、小規模事業者に対する負担軽減として納税額を売上税額の二割に軽減する、あるいは、事務負担軽減措置として、一万円未満の課税仕入れについて、インボイスがなくても仕入れ税額控除ができる、こんなのをやるんだったら、インボイスそのものを中止したらどうですか。どちらも時限措置でしょう。かつ、免税事業者が課税業者を選択せざるを得ない。先ほどの議論ですけれども、インボイス制度というのは免税業者が課税事業者として強いられるわけですから、これは完全に増税なんですよ。そもそも問題が解決しない。

 これは、このまま実施したら混乱は避けられないと思いますけれども、大臣、一歩やはり足を踏みとどまる、そういうときではないですか。いかがですか。

塚田委員長 鈴木財務大臣、持ち時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いいたします。

鈴木国務大臣 度々田村先生から、様々なインボイスについて課題でありますとか問題点と思われる点、御指摘をいただいているところでございますが、インボイス制度は、複数税率の下で公平な課税を実現するという意味におきまして、これは必要な制度であると思っております。これを取りやめるということではなくて、円滑に移行していくというのが政府の立場でございまして、そのための措置をいろいろとさせていただいているところでございます。

田村(貴)委員 時間が来ました。終わります。

塚田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.