第10号 令和6年3月13日(水曜日)
令和六年三月十三日(水曜日)午前九時開議
出席委員
委員長 津島 淳君
理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君
理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君
理事 稲富 修二君 理事 櫻井 周君
理事 伊東 信久君 理事 稲津 久君
石原 正敬君 英利アルフィヤ君
小田原 潔君 越智 隆雄君
大塚 拓君 大野敬太郎君
木原 誠二君 岸 信千世君
鈴木 隼人君 瀬戸 隆一君
中山 展宏君 西野 太亮君
藤丸 敏君 藤原 崇君
古川 禎久君 宮下 一郎君
宗清 皇一君 山田 美樹君
若林 健太君 階 猛君
末松 義規君 野田 佳彦君
馬場 雄基君 原口 一博君
沢田 良君 藤巻 健太君
掘井 健智君 中川 宏昌君
田村 貴昭君 吉田 豊史君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 鈴木 俊一君
財務副大臣 赤澤 亮正君
財務大臣政務官 瀬戸 隆一君
国土交通大臣政務官 尾崎 正直君
政府参考人
(公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長) 片桐 一幸君
政府参考人
(財務省関税局長) 江島 一彦君
政府参考人
(農林水産省大臣官房審議官) 関村 静雄君
政府参考人
(経済産業省大臣官房審議官) 浦田 秀行君
政府参考人
(国土交通省航空局航空ネットワーク部長) 蔵持 京治君
財務金融委員会専門員 二階堂 豊君
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委員の異動
三月十三日
辞任 補欠選任
英利アルフィヤ君 西野 太亮君
同日
辞任 補欠選任
西野 太亮君 英利アルフィヤ君
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本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)
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○津島委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
この際、お諮りいたします。
本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長片桐一幸君、財務省関税局長江島一彦君、農林水産省大臣官房審議官関村静雄君、経済産業省大臣官房審議官浦田秀行君、国土交通省航空局航空ネットワーク部長蔵持京治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。伊東信久君。
○伊東(信)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久です。
今回の本改正案について、特例申告納期限延長に関する担保の取扱緩和策が入っているんですけれども、まずは、本緩和策の意義、目的、効果について、財務大臣にお聞きいたします。
○鈴木国務大臣 今般の改正では、認定事業者である特例輸入者が特例申告の納期限延長を求める場合、現状必須とされております担保を、関税の保全のために必要があると認めるときのみ提供を求める取扱いに緩和することとしております。
この改正によりまして、特例輸入者には輸入手続に係るコスト削減効果が見込まれることから、新規の特例輸入者の増加につながるものと考えております。この結果、認定事業者制度の目的である国際物流におけるセキュリティー確保と貿易の円滑化の両立が一層図られるものと考えているところであります。
○伊東(信)委員 AEO制度という、貨物のセキュリティー管理と法令遵守の体制が整備された事業者に対して承認を与えているということですよね。それによってリスクの高いところに重点的にというところは、前回の委員会でも与野党とも御質問があったと思うんですけれども。
資料一を見ていただくと、現在のAEOの認定事業者数なんですけれども、そして、資料二が、それぞれの事業者、運送、通関、倉庫、輸入、輸出者ごとなんですけれども、これを見ると、一目瞭然、通関業者が増えているということなんですけれども。
それぞれの事業者についてお答えいただければありがたいんですけれども、今後、このAEO事業者というのはどのように増えて、この事業者ごとについての言及も、政府参考人で構いませんので、お答えいただければと思います。
○江島政府参考人 お答え申し上げます。
AEO制度は、貨物のセキュリティー管理と法令遵守の体制が整備された事業者を税関が承認、認定をして、税関手続の緩和、簡素……(発言する者あり)はい。
AEO制度は、貨物のセキュリティー管理と法令遵守の体制が整備された事業者を税関が承認、認定し、税関手続の緩和、簡素化策を提供する制度でございまして、国際物流におけるセキュリティーの確保と貿易の円滑化の両立を図ることを目的としております。財務省としては、AEO制度の利用拡大を図ることが重要であると考え、制度の改善に取り組んできているところでございます。
一方、AEOの承認、認定要件や事後監査等の事業者の負担に比べて同制度のメリットは少ないとの声があることも承知しております。こうした背景もございまして、特例輸入者などの事業者数が横ばいとなっている点が問題であるというふうに認識をしております。
この点、今般の改正については、これまでも業界団体等から要望が寄せられておりまして、輸入者のニーズが高い施策であると考えております。
また、今回の措置のほか、我が国のAEO事業者が外国の税関手続においても簡素化、迅速化等のメリットを受けることが可能となるAEO相互承認についても業界団体等から要望が寄せられておりまして、締約国の拡大に取り組んでいるところでございます。
財務省としては、事業者のニーズも踏まえつつ、引き続きAEO制度の更なる改善に取り組んでまいりたいと考えております。
○伊東(信)委員 ちょっと本当に声が小さくて、聞き逃したのかもしれないんですけれども、具体的に数字としてどのように増えていくかというお答えにはなっていなかったのじゃないかなとは思うんですけれども。
私の地元は関西国際空港がございまして、資料三が大阪の税関の承認分になっていますけれども、これもやはり年ごとに増えておりまして、通関業者がやはり令和に入ってから非常に伸びているように感じるんですけれども、可能であれば、この関空の数の推移の予想とか、AEO制度の利用拡大に関する課題、問題点、先ほどちょっとちらっとお話しいただいたんですけれども、もう一度お願いいたします。
○津島委員長 江島関税局長、答弁は明瞭に願います。
○江島政府参考人 お答えいたします。
委員御指摘のように、AEO制度を利用する人の数が順調に増えてきているエリアと伸び悩んできているエリアがございます。
今回は輸入者に的を絞った施策ということでございますけれども、輸入者に限らず、AEO制度が広く利用されることは税関当局としても望ましいことだと思っております。
これは関西であると全国だとにかかわらず、せっかくある制度ですので、事業者さんのニーズに応え、より使い勝手のよいものにして、より認定業者を伸ばしていきたいというふうに考えております。
○伊東(信)委員 なかなか数の予測という感じで計画はされていないのかなというイメージなんですけれども。
輸入者の話をされましたけれども、輸入許可数はやはり年々増加であります。二〇一八年は三千九百七十四万件の許可件数でしたけれども、二〇二二年は一億千二百八十九万件と増加しています。今後とも増えていくと考えているんですけれども。
関空の話をさせていただきましたけれども、やはり航空での伸びが非常に、格段に高くなっております。大阪は大阪港とか港もあるわけなんですけれども、やはり、かさの大きいもの、重量のあるものは船便かな、だけれども空路も増えていくというところで予想をされていてこういった措置があると思うんですけれども、その比率、推移も併せて、空便と船便と、それに対しての推移を、この輸入許可件数は飛行機と船と比べてどのように推移していくと、今後もやはり飛行機の方が、空路の方が伸びていくと考えておられますか。
可能であれば、五年後、十年後、どのような状況になるか、お答えください。
○江島政府参考人 お答えいたします。
越境電子商取引の拡大に伴いまして輸入許可件数は急増しておりまして、まず、航空貨物につきましては、平成三十年の約三千五百万件から令和五年の約一億三千万件に増加しております。他方、海上貨物につきましては、平成三十年の約四百万件から令和五年の一千万件に、それぞれ増加をしてきております。これが足下でございます。
今、五年後に、将来にというお尋ねがございましたけれども、ちょっと今の段階で予断を持って数字を申し上げることは差し控えさせていただきます。
○伊東(信)委員 予測自体というか、それがつかないというか、それが、例えば船便が増えたからといって特に問題があるというわけではないんですけれども。
関西国際空港が私の地元というか、今日も朝、関空から来させていただいたんですけれども、飛行機のちょっと整備が悪くて、飛行機が三十分遅れるということになりまして、皆さんに御迷惑をおかけしたんですけれども。
この関西国際空港も、見ていると、コロナ禍で激減していたのが、大分、もう八割ぐらい回復しているんじゃないかなと思います。二〇一九年は、国内線四万九千百三十八回、国際線十四万六千八百八十四回、計十九万六千二十二回。旅客者数も、国内線で六千七百五、千人単位ですね、国際線でも二万二千六十二、これも千人単位ですけれども、やはり増えております。
コロナ禍における落ち込みから、先ほど私、八割ぐらい戻っているんじゃないかといろいろ伝え聞いているんですけれども、実際に、国土交通省尾崎政務官にお越しいただいていますので、お答えいただきたいんですけれども、この数は、どうですかね、目標として、どれぐらいまで回復するか、具体的にどれぐらいの期間で戻るかとか、どれぐらいまで回復して、今後どれぐらいまでいけそうかというのをお答えいただければと思います。
○尾崎大臣政務官 お答えをいたします。
関西国際空港の年間発着回数の目標ということでありますが、こちらにつきましては、御案内のように、関西三空港懇談会におきまして、二〇三〇年代前半をめどにして、関西国際空港の年間発着回数を三十万回にする、このことの実現を目指すべく様々な御提言をいただいているところでございまして、これを一つの目標とさせていただきたいと考えております。
このために、飛行経路の見直しを検討するよう国に対して要請をいただきましたことを受けまして、昨年六月の関西三空港懇談会におきまして、有識者の意見もお伺いしながら作りました関西空域の飛行経路の見直し案も作成し、御提示もさせていただいたところでございます。
現在、その経路の妥当性等を検討していただいているところでありますけれども、引き続き、国土交通省といたしましては、関係者や御地元の皆様とともに関西国際空港の機能強化に向けてしっかりと取り組んでまいりたい、そのように考えているところであります。
○伊東(信)委員 尾崎政務官から、三十万回の目標ということをお話しいただきました。答弁の中になければ私の方からお話しするつもりやったんですけれども、お答えいただいて、それに対してということで。そのためには、空路の整備とかも必要となってきますので、もう答弁は先ほどのやつで結構ですので、また今後とも御協力よろしくお願いいたします。
それでは、ちょっと納税環境の整備のことを、もうあと五分ぐらいですので、お聞きします。
更正請求に係る重加算制度の見直しについても、今回の改正案の中にありました。これは、申告後に、仮装、隠蔽をしていました、自ら修正した場合は重加算税の対象ではありませんでしたとなると、所得税法改正の中でも同じ議論があったんですけれども、ちょっと改めて確認になりますけれども、そもそもの、重加算税制度の見直しについてのこの改正案の意義について、鈴木財務大臣からお話しいただきたいと思います。
○鈴木国務大臣 現行制度におきましては、仮装、隠蔽行為に基づき申告を行った場合には重加算税を課すとされている一方で、仮装、隠蔽行為に基づき更正の請求を行った場合には重加算税を課すことができないこととされております。
今般の改正におきましては、税額を確定させる申告と税の減額を求める更正の請求という手続の性質によって、仮装、隠蔽行為が行われる場合に課される加算税の水準が異なるという現行制度上の課題を踏まえて、仮装、隠蔽行為に基づき更正の請求を行った場合も重加算税を課すこととしております。
この改正によりまして、仮装、隠蔽行為に基づく更正の請求の未然の防止につながるものと考えております。
○伊東(信)委員 大臣の方から意義をお聞きしたんですけれども、それじゃ、実際に、申告後に仮装、隠蔽したところに基づき更正の請求を行った件数というのはこれまでに何件あったのでしょうか。
○鈴木国務大臣 仮装、隠蔽行為に基づく更正の請求の件数でありますが、現状におきましては必ずしも多いわけではありませんが、僅少ながら確認をされております。
近年、更正の請求の件数が増加しておりまして、仮装、隠蔽行為に基づく更正の請求が行われる蓋然性が高まっているところであります。今般の改正はそのような事案の防止につながるものと考えております。
○伊東(信)委員 本日の御質問、全体的にというか、最初からなかなか数字はおっしゃっていただけないようなんですけれども。
こういった更正の請求に従って賦課していくわけなんですけれども、金と政治の問題でもありましたように、やはりこれが故意なのかどうかというところが焦点になってくると思うんですけれども、故意で行われてきた申告後に仮装、隠蔽したところに基づき更正の請求というものの、それでは、具体的な数を言っていただければありがたいんですけれども、故意で行われてきたものの把握というのはあったのでしょうか。通告しましたよ。(発言する者あり)
○津島委員長 速記を止めてください。
〔速記中止〕
○津島委員長 速記を起こしてください。
江島関税局長。
○江島政府参考人 お答えいたします。
故意に基づく仮装、隠蔽が行われた申告についての加算税の賦課実績はございます。(伊東(信)委員「聞こえないです」と呼ぶ)たくさんございます、それは。
○伊東(信)委員 たくさんね。だから、数字をお答えいただければと、何%ぐらいかとか、そういったところをお答えいただければと思ったんですけれども。
そういった故意で行われたところの仮装、隠蔽を防ぐためにこの法律があるのであって、やはり、我々は立法府なので、法律を作る上で、そういったところをしっかりと把握して議論というのをやりたいと思っていますので、ちょっと答弁としてはいまいちやなという気がしますね。
では、今後、更正の請求件数は増えると思うんですけれども、法改正で重加算税の賦課の対象に加えることによって、大臣、これは故意を防ぐことをこの法律によって想定していますでしょうか。お答えください。
○鈴木国務大臣 先ほども答弁をさせていただきましたけれども、最近、近年ですが、更正の請求の件数が増加をしております。それに伴いまして、仮装、隠蔽行為に基づく更正の請求が行われる蓋然性が高まっている、そのように認識をしているところでありまして、今般の改正によって事案の防止につながるもの、そのように考えているところです。
○伊東(信)委員 すべからく税はやはり中立公正であるべきですので、そういった故意を未然に防ぐ法律の事前の検証も本当に大事ですけれども、事後の検証も大事ですので、その辺りは本当によろしくお願いいたします。
本当に、この改正内容や実施方法によって一部の産業や地域においてデメリットが生じる可能性もあったりとか、慎重な検討とバランスの取れた施策を今後とも求めていきたいということを最後に申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。
○津島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。
次に、掘井健智君。
○掘井委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の掘井健智でございます。
それでは、質問をさせていただきます。
国際物流のセキュリティー確保と貿易の円滑化についてお伺いをいたします。
特例申告の納期限延長に係る担保の取扱い緩和について、国際物流を取り巻く環境が今目まぐるしく変化しているその中で、AEO制度の利用拡大によって、国際物流のセキュリティーの確保と、そして一方で貿易の円滑化を両立させるということ、これが一層大事になってくると思っております。
今回の緩和措置、つまり必要担保から保全担保へ緩和ということは、税関の手続の緩和、簡素化策によって貿易の円滑化を実現するものと認識はもちろんしておりますけれども、ただ、今回の緩和措置に関連しまして、特例輸入者への関税検査がやはりきちんと機能していくのかということが気になります。そもそも気になっているんですけれども。
事前に財務省の担当官に伺ったところでは、AEOの特例輸入者と一般輸入者では輸入品の審査、検査手法に違いはないということで、特例輸入者であれば輸入通関において審査、検査の軽減を受けることができるということでありました。つまり、リスクに応じた審査、検査となるために、抜き打ち検査の頻度が少なくなったり、また、特例輸入者にとっては時間的コストや検査に対応する人的コストが軽減されていくんだということでありました。
抜き打ち検査の頻度が少なくなるといいますが、これはどれくらい少なくなるのかについては、セキュリティーのことでありますので明らかにできないということでありました。担当官の回答でありましたけれども。
税関における限られたリソースをリスクの高い貨物に対してこれまで以上に集中的に投下するというこの改正の目的、この目的からして、抜き打ち検査の頻度はかなり少なくなるのではないのかな、また、特例輸入者次第ではほとんどなくなっていくのではないのかな、こういう印象を抱いております。
どのようにセキュリティーを確保していくのか疑問にあるわけでありますが、この度の緩和の効果と、そのことを含めてお伺いしたいんですけれども、国際物流のセキュリティーの確保、そして貿易の円滑化、矛盾しないように、どのようにこれを両立させていくのか、大臣の所見を伺いたいと思います。
○鈴木国務大臣 認定事業者、いわゆるAEO事業者であります特例輸入者は、貨物のセキュリティー管理と法令遵守の体制が整備された事業者でありまして、特例申告貨物の輸入に関する業務を適正かつ確実に遂行することができること、税関手続を適正に履行するための法令遵守規則を定めていることなどが承認の要件とされております。
税関におきましては、承認時、これらのことを確認するわけでありますが、承認後におきましても、事後監査等を行いまして、特例事業者の管理を適切に行っているところであります。
引き続きまして、同制度を適切に運用することによりまして、貿易の円滑化と貨物のセキュリティー確保の両立を一層図ってまいりたいと考えております。
○掘井委員 関税とは違いますけれども、昔、元日産自動車の社長のカルロス・ゴーン氏が保釈中に国外に行かれたと。あれはちょっと意味合いが違うかも分かりませんけれども、日本が甘いということのないように取り組んでいただきたいということと、あと、やはり時間がたっていけば特例輸入者の方も関税当局の方も気持ちが緩みがちだと思うんですけれども、その辺をしっかり努めていただきたい、このように思います。
次の質問です。
今回の緩和措置による特例輸入者数の増加見込みについて伺いたいと思います。
今回の緩和措置には、特例輸入者の数を増加させたいという思惑があると推測しております。
AEO制度の認定事業者の数の推移を見てみますと、通関事業者数は増加しているんですけれども、肝腎の特例輸入者の数は百者程度にとどまっております。近年は輸入者、輸出者等の数は全体的に横ばいでありますけれども、こんなことであります。
また、AEO事業者へのアンケートによりますと、制度利用に係る事務手続が煩雑である上、利用するメリットを感じにくい、こういう感想も持たれております。
また、このAEO制度を導入する二国間で、それぞれのAEO制度や認定事業者を相互に認証する相互認証の利用がなかなか進んでいない、こういったことも課題とされております。
今回の緩和措置によってどれくらいの特例輸入者数の増加を見込んでいるのか、また、どのように特例輸入者を含めてAEO事業者を今後増やしていくのか、今紹介したアンケートの結果も踏まえて、回答を教えていただきたいと思います。
○江島政府参考人 お答えいたします。
事業者の方々からAEO制度のメリットを感じにくいとの声があることは承知をしておりまして、財務省としては、事業者のニーズを踏まえ、これまでもAEO制度の改善に取り組んできているところでございます。この点、今般の改正は、輸入手続に係るコストの低減が見込まれることから、特例輸入者にメリットを実感してもらいやすい施策であるというふうに考えております。
具体的に、どの程度特例輸入者が増加するかにつきましては、各輸入者の固有の事情や判断によるところが大きいため、一概に申し上げることは困難でございますけれども、事業者から本改正に期待する声をいただいておりまして、特例輸入者の増加につながるものと考えております。
今後とも、事業者のニーズも踏まえ、AEO制度の更なる改善に取り組んでまいりたいと考えております。
○掘井委員 よろしくお願いしますとしか言いようがないんですけれども、やってほしいと思います。よろしくお願いします。
次の質問であります。
今回の改正とは直接関係ないんですけれども、日本の農家が利用している飼料用トウモロコシは、関税定率法十三条一項に基づいて関税は免税とされております。この飼料用トウモロコシについて、関税と関係ありますので、質問していきたいと思います。
この飼料用トウモロコシが免税とされている理由は、国産トウモロコシの全国流通量が約九千トンに対して飼料用トウモロコシの輸入量が約一千九十万トンであって、飼料用トウモロコシの国内生産量が輸入の千分の一程度と、余りにも少ないということです。国内生産者と輸入が競合しない、だから、こういうことだと思うんですね。トウモロコシ、これは更に輸入に頼っていくということになります。
カロリーベースで食料自給率は、三八%のうち、食肉の部分は乳製品を含めて二割程度であると言われております。家畜の餌となるこの飼料用トウモロコシ、これは酪農を支えているんですね。
飼料は粗飼料と濃厚飼料とに区別されますが、濃厚飼料は、先ほども言いましたように、九割近く輸入に頼っております。関税も免税されていくということでありますから、国際市場に大きく左右されやすいんですね。
それで、配合飼料、トウモロコシを含めて、この二年間で一・五倍になっております。ウクライナ侵攻、こういうことで、円安も追い打ちをかけたんだろうと思いますけれども、非常に危ないというか、非常に、頼っておったら将来どうかなと思うところがたくさんあるんですね。もう日本の国力は今低下していると言われておりますけれども、国際競争の中、輸入穀物、これは将来買い負けていくんじゃないか、そんな不安があります。
ちょうど、農政の方でありますけれども基本法が変わって、食の安全保障が非常にスポットを浴びておりますけれども、そんなことも含めて、特に飼料用トウモロコシについて、今後、この安全保障を見据えたとき、国際市場で、例えばエタノールの市場がございます、競争が激化していくと思うんですけれども、これは買い負けの可能性があると思うんですけれども、農水省の見解をここでお伺いしたいと思います。
○関村政府参考人 お答えします。
我が国の耕地面積が限られることなどから、濃厚飼料自給率を大幅に引き上げることは現実的に困難であり、子実として利用する飼料用トウモロコシのほとんどを輸入に依存しております。飼料用トウモロコシの主な輸入国はアメリカ、ブラジル、アルゼンチンであり、これらの国々から安定的な輸入を確保するため、輸入先国の生産、輸出の能力の常時把握や、官民の意見交換等を通じ、平時から輸出国との連携強化を図っております。
なお、国内で生産できるものはできる限り国内で生産するとしつつも、安定的な輸入と備蓄とを適切に組み合わせて、輸入飼料穀物の備蓄による安定供給、配合飼料価格安定制度による価格変動への影響緩和などの仕組みの円滑な運営を図ってまいります。
○掘井委員 そんなトウモロコシでありますけれども、若干、国内で生産する目標数値も出ております。微増ですけれどもね。今回、関税のことで言いましたけれども、もう明らかに輸入に頼っていくということで、後は農水の方で質問していきますけれども、よろしくお願いいたします。
次の質問に移ります。
今回の改正法で暫定税率が撤廃されまして、関税がかかることになりましたポリ塩化ビニール製の使い捨て手袋、PVC手袋について質問をいたします。
このPVC手袋を使う業種は、油、薬品、洗剤、漂白剤など、非常に強く劣化しにくいということのために、業種は問わず幅広く使われているそうであります。新型コロナウイルス感染拡大に伴う調達価格高騰が起きまして、関税負担軽減の観点から令和三年度から暫定税率で無税としていたものを撤廃するということであります。
需給逼迫の解消及び調達価格の低下等を踏まえて撤廃とすることになりますけれども、通産省によれば、二〇二二年の材質別の国内販売の割合は、ポリエチレン製の手袋二四%、今のこのPVCの手袋は三七%、そのほかは三九%とのことでありました。このPVCの手袋は、国産はゼロなんです。中国製が約七割、ベトナムが約三割とのことでした。
新型コロナの流行をきっかけに、サプライチェーンや医療製品の中国依存は見直されたはずなんですけれども、このPVC手袋の中国依存は、経済安全保障上、今後大丈夫なんでしょうか。非常に疑問に思っております。
今回の改正で、このポリエチレン製の手袋、PVC製の手袋などの使い捨て手袋がほとんど輸入品が多いということでありますけれども、再びコロナ禍の、このようなパンデミックが発生した場合を考えて、安全保障上、使い捨て手袋、僅かでも国産でやった方がいいと思いますけれども、経産省の御見解を伺いたいと思います。
○浦田政府参考人 お答えいたします。
看護、介護や飲食店などの衛生用途など、多様な用途に用いられる使い捨て手袋につきましては、新型コロナウイルスの感染拡大の時期に需要が増加したことに伴いまして、一時的に需給が逼迫いたしました。
こうした状況を踏まえまして、国民が健康な生活を営む上で重要な製品等の生産拠点を整備するため、令和二年度補正予算で手当てをされましたサプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金を活用し、使い捨て手袋の生産設備増強等に対する支援措置を講じ、国内における生産体制を強化してきたところでございます。
引き続き、多様な用途に用いられる使い捨て手袋の安定供給が確保されるよう、注視してまいりたいと考えております。
○掘井委員 これから安全保障上のことがいろいろ問題になってくると思いますけれども、どうぞよろしくお願いをいたします。
これで質疑を終了いたします。ありがとうございました。
○津島委員長 これにて掘井君の質疑は終了いたしました。
次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
関税定率法の改正案について質問します。
最初に、関税、消費税の立替え問題について聞きます。
公正取引委員会は、二〇二二年五月と昨年六月に公表した荷主と物流事業者との取引に関する調査結果で、二年続けて関税や消費税の立替えが判明したとしています。公正取引委員会にお尋ねします。どのような事例があったのですか。
○片桐政府参考人 お答えいたします。
公正取引委員会は、荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用を効果的に規制する観点から、独占禁止法に基づき、特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法を指定し、その遵守状況及び荷主と物流事業者との取引状況を把握するため、荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた調査を継続的に行ってございます。
委員御指摘の関税や消費税の立替えにつきましては、荷主は物流事業者に対し、物流業務に附帯して輸入通関業務を委託するに際して、物流事業者に支払う手数料に比して極めて大きい額の関税及び消費税を立て替えさせたなどの事例があったところでございます。
○田村(貴)委員 荷主が物流事業者に関税や消費税の立替え払いを強いているということですよね。この調査結果では、令和四年度において、優越的地位の濫用につながるおそれがあるとして、十四件の注意を行ったというふうに記されています。これは独占禁止法のおそれがあるということでいいわけですね。
○片桐政府参考人 一般論で申し上げれば、取引上の地位が相手方に優越している荷主が、その取引先である物流事業者に対して、荷主が納めるべき関税及び消費税の支払いを立て替えさせることによって物流事業者の利益を不当に害する場合には、独占禁止法上問題となるおそれがございます。
○田村(貴)委員 大臣、これはやはり大きな問題だと思いますね。
昨年の東京通関業会が行ったアンケートでは、立替え払いをしているとの回答が九〇・六%にも上っています。立替え払いの理由の一位は、荷主から立替え払いの要請、これが九四・四%、圧倒的多数です。二位が他社も行っているため、これが二五・七%ですから、荷主の圧力によるものはもう間違いありません。
大臣、この事実を御存じですか。そして、独禁法違反の関税と消費税の立替えが蔓延しているわけですね。これを放置したままでいいのでしょうか。
○鈴木国務大臣 立替え払いの件について詳細を把握しているわけではございませんが、先ほど公正取引委員会の発言を聞きまして、法令違反のおそれがある、そういうことでございますので、この公正取引委員会の指摘に沿った形で是正されるということが必要であると思います。
○田村(貴)委員 しっかり対処していかなければいけないということです。
二〇〇三年の関税政策・税関行政を巡る対話第五回において、社団法人日本通関業連合会副会長は、業界で今、一番問題となっていますのは関税の立替えの問題であり、延べ一兆円近くのものを通関業者が立替え払いをしていると告発しているわけです。
また、二〇〇五年、参議院で質問主意書が出されました。一兆円近くの立替え払い問題に対して、政府答弁では、基本的に民間の契約の問題として、税法上問題はないと回答しているわけです。
今でも関税や消費税の立替え払いに問題はないとの認識でしょうか。財務省、いかがですか。
○江島政府参考人 お答え申し上げます。
輸入貨物に係る関税等につきましては、税法上は輸入者が納税することとされておりますが、通関業者が輸入者に代わって関税等の立替え払いを行い、輸入貨物の引渡し後にその費用を手数料と一括して輸入者に対し請求するという役務を提供する場合があると承知しております。
通関業者が輸入者に代わって関税等の立替え払いをすることは、輸入者を代理して行っているものでございまして、輸入者本人が納税したのと同じ効果を有しているため、税法上問題を生じないものと考えております。
○田村(貴)委員 局長、今、鈴木大臣の答弁を聞かれていましたか。何の問題意識もないんですか。駄目じゃないですか。独禁法違反のおそれがあるとして、注意文書を公取が発出しているじゃないですか。それについて、やはりこれは真剣に受け止めなきゃいけないですよ。対処しなければいけないマターが、問題はないと。二十年前の答弁に縛られているんですか。荷主の通関業者に対する優越的地位の濫用が問題なんですよ。
後で関税とか消費税を支払うことができる納期限延長制度を利用したらいいというふうに質問主意書でも答えているんですが、これは問題の大きなすれ違いですよね。正しく認識をして、そしてちゃんと対処して、立替え払い制度をなくしていく、そういう方向に向かわなければなりません。財務省の今の御答弁は問題だというふうに考えます。
その納期限延長制度も大変大きな問題があります。本法案の改正項目であるAEO、認定事業者制度の特例輸入者の手続の緩和について伺ってまいります。
現行の輸入制度では、輸入申告して、関税、内国消費税及び地方消費税がかかる場合には、貨物を引き取る前にこれらを納付しなければならないとされていますね。その際に、税額に相当する担保の提供を条件として納付を猶予できる制度が納期限延長制度であります。
お伺いします。なぜ担保の提供を求めるんですか。
○江島政府参考人 お答え申し上げます。
貨物を輸入しようとする者は、原則として関税を納付した後でなければ輸入の許可を受けることができないこととされており、これによって関税の徴収が確保されております。
関税の納期限延長制度では、関税の納付前に輸入の許可を受けることができるため、関税の徴収を確保する観点から、関税法令におきまして、納期限の延長を認める要件として担保の提供を求めることとしております。
○田村(貴)委員 お配りしている資料一を御覧いただきたいと思います。
現行では、この納期限延長制度において、特例輸入者は、翌月の特例申告書、いわゆる納付申告書の提出までは保全担保でよく、更に二か月延長する場合には必要担保を提供することとなっています。保全担保とは、税関長が必要と命じたときだけ担保の提供が求められる制度であります。
これまでに担保が必要と求められたケースは何件ありましたか。
○江島政府参考人 お答えいたします。
過去十年で一件でございます。
○田村(貴)委員 過去十年で僅か一件だけですよね。事実上、無担保ということじゃないですか。
今回の法案で、二か月延長する際に、特例輸入者の担保は必要担保から保全担保に緩和されます。財務省は、今度の制度によって輸入手続に関するコスト低減等の新たなメリットが生まれると説明しています。
伺いますけれども、幾らぐらいのコスト低減効果があるんでしょうか。その規模について説明してください。
○江島政府参考人 お答えいたします。
今般の改正では、特例輸入者は、特例申告納期限の延長に際して原則として担保の提供が不要となることから、輸入手続に関するコスト低減効果が見込まれます。
このコスト低減効果には、例えば、銀行等の保証人に支払う保証料の削減や担保の管理手続の事務負担などが含まれていると考えておりますが、保証料の削減に関しましては、民間企業間の契約にもよりますので、その規模を一概にお示しすることが困難であることは御理解いただきたいと思います。
いずれにせよ、今回の改正案につきましては、これまでも業界団体から要望が寄せられていること、また、いまだAEO事業者となっておられない事業者からも本改正に期待する声をいただいていることに鑑みれば、輸入者からのニーズは高い施策であるものと考えております。
○田村(貴)委員 びっくりしましたね。コスト低減の効果があるから導入すると言いながら、そのコストの低減について試算も出せない、規模感も出せない。これは目的の裏づけがないじゃないですか。こういうことをやっていいんですか。
現在登録している特例事業者数は百二者と伺っています。調べたところ、大企業やその子会社、グループ会社、若しくは海外企業の子会社など、九〇%以上が、少なくとも九〇%以上が大企業であります。
つまり、たった百者弱の大企業等のコスト低減、しかも、どれほどか分からないそのコスト低減のために導入をするんです。大企業のコスト削減のための法案ということになるのではありませんか。大臣、いかがですか。
○鈴木国務大臣 税関長が認定事業者の承認又は認定を行う際、事業者の規模、大企業とか中小企業とか、その規模はその要件としておりません。
認定事業者である特例輸入者には、大企業の割合が高いのは事実でありますけれども、中小事業者も一定数おり、今般の改正は、こうした中小事業者にもメリットを実感いただけるものであると考えております。
また、税関では、中小事業者も含め、認定事業者の取得を希望する事業者がいらっしゃる場合には、その取得に向けた手続を円滑に進められますように、事業者の状況に応じたきめ細かな相談対応を実施しているところでありまして、中小事業者にも御利用いただけるよう、適切に対応してまいりたいと思います。
○田村(貴)委員 中小事業者もいると、それはいるでしょう。でも、九〇%以上大企業ですよ。三井物産、住友商事などの大手商社、トヨタ自動車、日産、キヤノンなど、大企業や系列会社の名前がずらっと並んでいます。まさに大企業のコストカット法案であります。
そして、資料二を御覧いただきたいと思うんですけれども、下の棒グラフですね、この緑色のところが消費税なんです。ほとんど消費税なんですよね。多くの普通の企業は、納税を延長するためにちゃんと担保を提供しています。なぜAEO輸入者の大企業だけ優遇するんですか。
そもそも、AEOの認定の条件に財務の健全性が求められています。トヨタも大手商社も過去最高水準の利益を出しています。担保の資金など全く問題ないじゃないですか。なぜ、普通の事業所、会社と同じように、関税そして消費税を担保として払わせないんですか。おかしいじゃないですか。いかがですか。
○江島政府参考人 お答え申し上げます。
AEO事業者は貨物のセキュリティー管理と法令遵守の体制が整備された者でありまして、財務省としては、貿易の円滑化と貨物のセキュリティー確保の両立のためには、この制度の利用拡大が重要であると考えております。
そうした中、これまで、AEO事業者からは、負担に比べて制度のメリットが少ないとの声があったところですが、今般、幅広い輸入者から御要望があったことを踏まえ、AEO事業者である特例輸入者に新たなメリットを付与することとしたものであります。
このように、今般の改正には、特例輸入者に限らず、中小事業者も含めた幅広い輸入者から期待する声をいただいていることにも御理解いただければと思います。
○田村(貴)委員 あのね、要望があるからといって唯々諾々と、こんな不公平な、しかも力のある大企業だけ優遇しておもねる、こんなやり方はやはり間違いですよ。独禁法違反の疑いもあるわけですよ。ですから、事実上の無担保で無期限延長制度をできるようになる、独占禁止法の逃げ道を与えることになるんじゃないですか。
最後にお伺いしたいんですけれども、本制度改正の目的の一つに、特例輸入者への優遇措置の緩和で税務職員の負担を軽減し、ほかの部署に振り分けられるというふうにしています。これは、職員、違うところに持っていこうとするんですか。
関税の仕組みを緩和させて職員不足を解消するなどというのは、これは本末転倒ですよ。貨物の増加等に応じて必要な職員は増員を図っていく、これは当たり前のことですけれども、大臣に伺います。職員は減らしませんね。ちゃんと必要に応じて増やしますね。
○鈴木国務大臣 税関業務を取り巻く環境につきましては、越境電子商取引の拡大に伴います輸入申告件数の増加のほかに、水際措置の終了に伴います訪日外国人旅行者数の回復、不正薬物押収量の高止まりや密輸手口の巧妙化、経済安全保障上の脅威の高まりなど、多くの課題に直面しておりまして、それによって税関職員の負担も増加しているところです。
税関職員のこうした負担を軽減しながら多くの課題に適切に対応するためには、更なる人員確保など、必要な体制整備を図ることが重要と考えます。令和六年度予算におきましても、税関職員八十人の定員増を計上するなど、体制整備に取り組んでおります。
加えて、AI等の先端技術の活用や税関業務のDXの推進等によりまして、税関業務の一層の高度化、効率化にも取り組んでおります。
今後とも、税関業務の見直し、効率化等を最大限に進めるとともに、必要な体制整備、これに努めてまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 公正公平な税関業務、そして職員を確保すること、このことを要望して、質問を終わります。
○津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。
次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
午前九時五十三分散会