第12号 令和6年3月27日(水曜日)
令和六年三月二十七日(水曜日)午後一時三十分開議
出席委員
委員長 津島 淳君
理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君
理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君
理事 稲富 修二君 理事 櫻井 周君
理事 伊東 信久君 理事 稲津 久君
石原 正敬君 英利アルフィヤ君
小田原 潔君 越智 隆雄君
大塚 拓君 大野敬太郎君
木原 誠二君 岸 信千世君
鈴木 隼人君 瀬戸 隆一君
中山 展宏君 西野 太亮君
藤丸 敏君 藤原 崇君
古川 禎久君 宮下 一郎君
宗清 皇一君 山田 美樹君
若林 健太君 江田 憲司君
階 猛君 末松 義規君
野田 佳彦君 馬場 雄基君
沢田 良君 藤巻 健太君
掘井 健智君 竹内 譲君
中川 宏昌君 田村 貴昭君
吉田 豊史君
…………………………………
財務大臣
国務大臣
(金融担当) 鈴木 俊一君
内閣府副大臣 井林 辰憲君
財務副大臣 赤澤 亮正君
厚生労働副大臣 宮崎 政久君
経済産業副大臣 岩田 和親君
防衛副大臣 鬼木 誠君
内閣府大臣政務官 古賀友一郎君
財務大臣政務官 瀬戸 隆一君
政府参考人
(内閣府大臣官房審議官) 畠山 貴晃君
政府参考人
(金融庁総合政策局長) 油布 志行君
政府参考人
(法務省大臣官房審議官) 吉田 雅之君
政府参考人
(国税庁次長) 星屋 和彦君
政府参考人
(文化庁審議官) 小林万里子君
政府参考人
(厚生労働省大臣官房審議官) 泉 潤一君
政府参考人
(資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官) 山田 仁君
参考人
(日本銀行総裁) 植田 和男君
参考人
(日本銀行政策委員会室長) 倉本 勝也君
財務金融委員会専門員 二階堂 豊君
―――――――――――――
委員の異動
三月二十七日
辞任 補欠選任
木原 誠二君 西野 太亮君
同日
辞任 補欠選任
西野 太亮君 木原 誠二君
―――――――――――――
三月二十六日
国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
同月二十一日
消費税率の引下げを求めることに関する請願(大石あきこ君紹介)(第五七八号)
同月二十七日
消費税率を五%に引き下げ、複数税率・インボイス制度の即時廃止を求めることに関する請願(塩川鉄也君紹介)(第七二四号)
消費税率五%への引下げに関する請願(宮本岳志君紹介)(第七二五号)
は本委員会に付託された。
―――――――――――――
本日の会議に付した案件
政府参考人出頭要求に関する件
参考人出頭要求に関する件
国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五号)
財政及び金融に関する件
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○津島委員長 これより会議を開きます。
財政及び金融に関する件について調査を進めます。
この際、お諮りいたします。
両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君、政策委員会室長倉本勝也君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官畠山貴晃君、金融庁総合政策局長油布志行君、法務省大臣官房審議官吉田雅之君、国税庁次長星屋和彦君、文化庁審議官小林万里子君、厚生労働省大臣官房審議官泉潤一君、資源エネルギー庁長官官房資源エネルギー政策統括調整官山田仁君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
―――――――――――――
○津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。小田原潔君。
○小田原委員 自由民主党の小田原潔でございます。
質問の機会をいただいて、ありがとうございます。
十五分なので早速質問に入りたいと思いますが、前回質問に立たせていただいたのは白川元総裁が答弁されたときでありました。そのときに、七年前に書かれた「中央銀行」という元総裁の著書をちょっとだけ触れました。
そこにはいろいろなことが書いてありますけれども、どんな政策も、総裁の孤独と申しますか、社会からの共感を得られなければ評価されないという精神がはっきりと書かれていました。
私の初めの質問は、ここのところ毎日テレビで報道されている円安、そして株高に関してなんですけれども、一問目は、金利のコントロールと為替、特に介入をする際の双方の打合せというか連携をどのように取っているのかというのが質問であります。
理由があります。
私は、実はこの仕事、子供の頃からしたくて、自民党の公募に五回手を挙げました。初めて手を挙げた十七年前だったでしょうか、公募の書類の中に大学の成績証明書を添付しろというのがあって、成績が悪かったので嫌だったんですけれども、その証明書を発行してくれた発行者が当時の経済学部長でいらっしゃった植田総裁でありました。
本当に成績が悪くて、一個しかない優は、当時恐らく総裁も師事されていた小宮隆太郎先生の演習でありました。きっとお情けだったと思います。昨年御逝去されましたが、きら星のような先輩方ばかりだったので、僕は卒業生として紹介もされない、それぐらいのぶざまな生徒でありました。
四年前にコロナの自粛期間があって、どうしても興味があった本を二冊熟読しました。それは、五年前に初めて出たMMTの初の導入本、ランダル・レイ、ビル・ミッチェルが書いたものですが、本当に通貨刷り放題、使い放題、心配するなと書いてあるのかどうか、正しく訳されているのかどうか、英文の原書をそれぞれ三回、箇所によっては四回熟読して、部分的には暗唱できるぐらい読み込みました。
確かに、国の名前を挙げて、G7の幾つかの国は、生産力がしっかりしている限りは自国通貨は破綻しないと書いてあります。しかし、どんどん刷れとは書いていない、どちらかというと左派の理論で、提唱者の一人、ステファニー・ケルトン女史は、サンダース大統領候補の経済顧問を二回務めた思いっ切り左派の人です。
なぜなら、主な政策は、国内の政治で一番いけないのは失業者をつくることだ、だから国は、財政支出をしてでも、失業者は国で雇って、労働者をプールして、食わせて、景気が上がったときは新しい給料のいいところに労働者を提供する、そういう役割をしなさいというのがMMTの本質でありました。
じゃんじゃん橋を架けて、道路を造って、新幹線を通して、通した方がいいと僕は思っていますけれども、という理論ではなくて、なぜか我が国では、左派ではなくて右派、どちらかというと愛国心の強い先生が信奉される理論になっていて、おかしいなと思っていたんですが、それでも、このMMTですら、金利と為替には気をつけろと書いてある。なぜならば、刷り放題でも、金利と為替だけは市場で決まるから。金利は、将来の自国通貨の値段を今評価しているものが金利であるし、今の自国通貨を外国人が評価して取引が成立したものが外国為替であります。
したがって、中央銀行が守るべき安定した経済環境、安定した金融環境を守るには、金利のコントロールと同時に、為替のコントロールが表裏一体でなければならないでしょう。
おとといの日経新聞には、ほっておくと百五十円になるから、財務省は介入しそうだというような記事が載っていました。
さて、もう一度、改めてお伺いをいたします。
本来であれば表裏一体である為替とそして金利のコントロールはどのように現場で連携されているのか、教えてください。
○植田参考人 お答えいたします。
為替相場の動きや水準については、具体的にコメントすることは差し控えさせていただきます。
その上で、金融政策は為替相場を直接コントロールの対象としておりません。為替政策は財務省の所管であるというふうに理解しております。
ただ、為替は経済、物価に重要な影響を及ぼす一つの要因でございます。日本銀行としては、政府と緊密に連携しつつ、引き続き、為替市場の動向やその経済、物価への影響を十分注視していきたいと考えております。
○鈴木国務大臣 金融政策と為替政策で、日銀と政府の連携についてというお話であったと思います。
金融政策の具体的な運営については日本銀行に委ねられている一方、為替政策につきましては、政府の権限、責任の下で行われるわけであります。
そして、金融政策、為替政策についてはこのような役割分担がなされているわけでありますけれども、同時に、極めて重要なことは、政府と日銀が密接に連携をし、国内外の経済金融市場の動向をしっかりと注視するとともに、必要な情報交換、意見交換を行うことであると思っております。
政府といたしましては、金融政策につきましては、日銀に対し、引き続き政府との連携の下、経済、物価、金融情勢を踏まえつつ、適切な金融政策運営が行われることを期待をいたしますとともに、為替政策につきましては、密に情報交換等をしつつ、市場動向をしっかり注視の上、外国為替の安定の確保のために万全の対応をしてまいりたいと考えております。
○小田原委員 与党の議員が言うのもあれですけれども、本心で答えていただいたのか、やや首をひねるところがございます。
白川先生の御著書ですら、数章に分けて国際通貨制度という章を設けて、各国の金利と為替がどれだけ影響を持つか、Nマイナス一議論みたいなものまで出して、それぞれの中央銀行の各国の総裁が丁寧に話し合うんだというような箇所がございます。
この頃、金利平価説を急に言い出すアナリストが出てきました。日米の金利差は開きっ放しの二十五年です。何で急に、日米の金利差があるから、数か月の間に、百十円だったものが百五十円になるかという理由にはなりません。ただ、少なくとも、株であろうが、タマネギであろうが、通貨であろうが、その値段というのは、例えば、割引配当モデルからしておかしいと言ってもせん方がない。それは取引が成立したという現実であります。
ただし、急激な為替レートの変化は国民の安定に決して資さない。輸入の仕入価格が分からなくなる。車を三万ドルで売ったものが、百五十円で四百五十万円の売上げで計上するのか、百十円で三百三十万円の売上げで計上するのか、それで株価まで変わってしまう。三つは極めて密接に、また複雑に連動しているものであるからであります。
次に、株高と言われている現状について、二十六日の日経一面では、株主還元が二年連続最多で二十五兆円、NISAなどを通じて個人にも恩恵という記事が出ています。配当のみで三兆円が今年家計に入るということになっております。
まず、今年に入って、海外からの日本株への資金流入はどれぐらいあるんでしょうか。
○油布政府参考人 お答え申し上げます。
日本取引所グループの公表データによりますと、昨年一年間、海外投資家による現物株式の取引は、売り買い差引きで三兆一千二百十五億円の買い越しでございました。今年に入りまして、三月十五日までの期間も同様に買い越しとなっておりまして、その額は三兆一千三百八億円になっております。
○小田原委員 ありがとうございます。
よく、株価が上がっても金持ちばかりがほくほく顔で、一般庶民には何の恩恵もないじゃないかと言う方がいらっしゃいます。一部否定はしませんけれども、私たちが頼っている年金、GPIF、私どもが初当選したときに新しいCIOが来て、多くの国会議員が、大事な国民の資産を株とか外国株とか、ばくちにつぎ込むなんて何事だと言った先生が随分いらっしゃいました。
あれから十二年、GPIFの資産状況、収益状況、どうなっているか教えてください。
○泉政府参考人 お答えいたします。
GPIFにおきます年金積立金の運用実績につきましては、二〇二三年度第一・四半期から第三・四半期までの運用実績は、国内外の株式の大幅な価格上昇等によりまして、収益額はプラス約二十四兆円、収益率はプラス一二%となっております。そのうち国内株式による運用収益につきましては、収益額はプラス約九・五兆円、収益率はプラス一九・六二%となっております。
また、委員お尋ねの期間、すなわち二〇一二年度第三・四半期から二〇二三年度第三・四半期までの累積では、収益額はプラス約百二十兆円となっております。
○小田原委員 この十二年間で資産は倍になったということでありましょう。自国の株価が上がるのを嘆くというのは、必ずしも正しくないということであろうと思います。むしろ、そういうことよりも、どうやって経済を発展させていくか。今月、政府の発表した月例経済報告からアベノミクス三本の矢に関する記述がなくなりました。それがどうのこうのというよりは、元々、二本の矢はうまく放てたという評価が多かった。三本目の成長戦略の矢がいつまでも飛ばない、私もそうだと思います。
なぜなら、私が言うのは不謹慎ですけれども、政治家や役人が成長戦略を考えたところで、大したものは出やしません。なぜなら、例えばシュンペーターのイノベーション五種類、どれも、どうやったら安く作れるか、どうやったら新しい商品が作れるか、どうやったら新しい市場に売れるか、三百六十五日二十四時間考えているビジネスマンや創業者はごまんといる。その人たちに、僕らの仕事は、一時間ごとに変わる議題を決めていくのが仕事です、思いつきでしゃべったことは大体既に検討されているし、既に努力もされているはずであります。だからこそ、成長戦略の本当の核心は、新しい起業家の邪魔をしないということであろうと思います。
いつまでたっても我が国からグーグルやフェイスブックが出ないという声がよく聞かれます。グーグルやフェイスブックは、アメリカ合衆国のお役人や大統領が考えたことではないと思います。みずみずしい起業家が今たくさん増えています。昔のように早くIPOして早く金持ちになりたいという人は少なくて、自分の考えついたアイデアを世に試したい。
皆さん御存じの宇宙ごみを回収する元お役人とか、我々の元同僚だった参議院議員で弁護士ドットコムを立ち上げた人とか、お二人は別の場所で同じことを言いました。こういう起業をするから今の組織やめますと言ったら、先輩方が、ばかを言うんじゃない、おまえのことを思って言うんだぞ、やめとけ、市場がないと言われた、そうしたら、その二人は、二人とも、ラッキー、市場がないということは競争相手がいないということだと思ったと、二人とも僕に言いました。
経営指南書にそう書くのは簡単です、市場がないと言われたら競争相手がないと思え。だけれども、そんなおっかないこと、ほとんどの人はできないし、飛び込んだとして、成功できるという可能性はありません。しかし、その起業家が成功して経営者になれば、その人は新しい価値を世の中に提供し、そして、雇用をつくり、日本人に夢と希望を与え、何よりも、ああなりたいという若い裾野を広げます。だから起業家は宝であります。
しかも、教育でできるんじゃない、生まれてくるんです。頭がよくて、前例にとらわれなくて、失敗にめげなくて、しかも運がいい、こういうのは、生まれてくる。だから大切にしなきゃいけない。
そこで、聞きます。
グーグル、フェイスブック、ストックオプション、役員や創業者は兆円単位でもらっていると思います。グーグルやフェイスブックを出したいと言っている我が国が、今、適格な、限度額が千二百万円、今検討されている法案でも三千六百万円。桁が二つか三つ違うんじゃないかと思うんですけれども、新しい起業家を育て、経済を刺激するという意味で、ストックオプションを拡大する意気込みを大臣から聞かせてください。
○津島委員長 鈴木財務大臣、申合せの時間が経過しておりますので、御配慮をお願いします。
○鈴木国務大臣 ストックオプション税制における年間権利行使価額の限度額につきましては、今般の改正法案におきまして、最大で現行の三倍の三千六百万円に引き上げることとしております。
これは、現行の限度額一千二百万円への引上げを実施いたしました二〇〇四年と現在を比較いたしますと、スタートアップの上場時の平均時価総額が当時の約四十億円から現在約百十億円へと約三倍に増加していることを踏まえたものでありまして、諸外国と比較しても高い水準であると考えております。
その上で、限度額の更なる引上げにつきましては、過度な裕福層優遇となる可能性にも留意し、税制の公平性の観点も踏まえた上で、まずは、今回の引上げの政策効果、これを見極めていく必要があると考えます。
政府としては、一昨年決定されましたスタートアップ育成五か年計画に基づき、今回の限度額の引上げや様々な施策を併せて、この期間にスタートアップを集中的に支援してまいりたいと考えております。
○小田原委員 終わります。ありがとうございました。
○津島委員長 これにて小田原君の質疑は終了いたしました。
次に、竹内譲君。
○竹内委員 公明党の竹内譲でございます。
財務金融委員会では十年ぶりに質問させていただくことになりまして、今日は大変うれしく思っているところでございます。
今回の日本銀行の政策変更を最も正確に理解している国会議員の一人だと私は自負をしているわけでございますけれども、一方で、これはやはり国民に分かりやすく説明する必要がありますし、そしてまた、急激な変化によって国民生活やあるいは企業経営に無用の混乱を招くことも避けるべきなんだろうというふうに思っているわけであります。
その意味で、改めて、今回の金融政策の枠組みの見直しに至る背景、それから、ネガティブ金利の解除の目的、そしてまた、解除によるプラス効果等につきまして、総裁から御説明をお願いしたいと思います。
○植田参考人 お答えいたします。
私ども、今回の決定会合では、最近の経済、物価、金融情勢、特に賃金と物価の動向をしっかりと点検いたしました。
その上で、春季労使交渉の現時点の結果も含め、最近のデータやヒアリング情報から、賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、先行き、私どもの展望レポートの見通し期間終盤である二〇二五年度にかけて、二%の物価安定の目標が持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断いたしました。
そうした経済、物価情勢に基づいて、大規模な金融緩和はその役割を果たしたと考え、見直しを決定したところです。
私どもとしましては、物価の安定を持続していくためには、短期金利の操作を主たる政策手段とする金融政策の枠組みに見直した上で、金融緩和を継続することが適切であると判断しました。
現時点の私どもが持っております経済、物価見通しを前提にいたしますと、当面、緩和的な金融環境が継続するというふうに考えておりまして、こうした緩和的な金融環境が経済、物価をしっかりと支える方向で作用すると見ております。
○竹内委員 次に、今回の金融政策の枠組みの見直しによるマイナスの効果というものもあるのではないかと懸念されております。一般論でありますけれども、一般には以下のような点が懸念されているわけです。
例えば、貸出金利が今後上昇した場合に、企業の収益を圧迫して、かえって設備投資や賃上げの流れを抑制するのではないかとか、あるいは、特に輸出企業の場合は、今後、金利が上昇した場合に円高基調になると思われますが、その場合の収益減が顕著になる、また株価にもマイナスに働くことが多いとか、あるいは、一般論でありますが、円高が進行した場合には、景気を悪化させ、GDPが低下する傾向があるとか、個人では、個人ローンの金利が上昇していくのではないかとか、さらにまた、国家財政から考えると、国債の金利上昇による国家財政の負担増加につながるのではないか等々、一般論としては言われているわけであります。
これらの想定されるマイナス効果、副作用につきまして、今後の見通しや対応方針についてお伺いしたいと思います。
○植田参考人 先ほど申し上げましたとおり、今回の私どもの政策の枠組みの見直しは、経済、物価情勢の改善を踏まえて行うものでございます。
その上で、今回の政策変更に伴う短期金利の上昇幅は〇・一%程度にとどまります。また、これまでと同程度の国債買入れを継続し、長期金利が急激に上昇する場合は、機動的に買入れオペの増額等を実施する方針でございます。
このため、今回の措置を受けて、住宅ローン金利を含む貸出金利が大幅に上昇するとは見ておりません。例えば、多くの変動金利型住宅ローンの基準金利となる短期プライムレートですが、現時点では不変であるというふうに認識しております。
また、繰り返しですが、先行きにつきましても、現時点の私どもの見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境は継続すると考えておりまして、こうしたことが経済、物価をしっかりと支えるという方向に作用すると考えております。
○竹内委員 そういうことで今回の解除に踏み切られたというふうに理解しているわけでありますが、そのほかに、賃金の上昇が物価の上昇を上回り、今後ともそれが持続的、安定的なものとなるかどうかの見極めは非常に重要だというふうに思うんですね。そしてまた、その場合に、賃金の上昇率は定昇込みではなくてベースアップに注目する必要があります。
そしてまた、今回、反対意見の中にもありましたが、中小企業の賃上げが持続的、安定的なものとなるかという点も、非常に今後よく注視しなければならない点だと思うわけでありますが、これらに対しましてどのように考え、対応される方針でしょうか。
○植田参考人 足下は、実質賃金は減少、低下しておりますけれども、先行きを見てみますと、名目賃金は、今年の春季労使交渉では、ベースアップも含め、昨年に続きしっかりとした賃上げが実現する可能性が高まっております。
また、私どもの本支店におけるヒアリング情報でも、ばらつきはありますが、全体としてみれば、地域の中小企業を含め、幅広い企業で賃上げの動きが続いていることがうかがわれます。
一方、物価面では、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰していくと見込まれます。
賃金と物価の好循環の強まりは確認されてきており、先行き、実質賃金の伸び率も次第にプラスに転化していくというふうに考えております。
その上で、やや長い目で見ますと、実質賃金の伸び率は労働生産性の伸びによって規定される部分が大きい、あるいは労働分配率の変動も受けたりいたします。
こうした点を含め、今後とも動向を丁寧に見てまいりたいと思っております。
○竹内委員 特に中小企業の方はこれからでありますので、是非よく見ていただきたいというふうに思っております。
それで、ちょっと質問の順番を変えまして、ちょっと追加で質問した点に移りたいと思いますが、今回はマイナス金利を解除した、イールドカーブコントロールの枠組みもやめましたということでありますけれども、今後の金利引上げの前提条件はどういうことになるか、どういう経済情勢を想定されているのか、そしてまた、そのタイミングについてどのようにお考えかお聞きしたいと思うわけであります。
大事なことは、私自身は、やはりコストプッシュインフレからデマンドプルインフレへ移行していくことだというふうに思っておりますし、その場合にインフレ率以上の賃上げを実現していくことがやはり非常にキーポイントになるんだろうというふうに思っております。
したがいまして、この経済の好循環に水を差すようなタイミングとか、そういうものはやはり避けるべきではないかなというふうに個人的には考えておりますが、総裁のお考えをお伺いしたいと思います。
○植田参考人 私どもでは、我が国の中長期的な予想物価上昇率、あるいは基調的なインフレ率、物価上昇率、これはまだ二%に向けて上昇していく過程にあるというふうに考えております。
したがいまして、当面緩和的な金融環境を継続することを通じて、経済、物価をしっかりと支えていくことが重要と考えております。
その上で申し上げますと、先行きの金融政策運営は、その時々の経済、物価、金融情勢次第でございます。短期金利の水準についても、毎回の金融政策決定会合で経済、物価の見通しやリスクを丁寧に点検した上で、二%の物価安定の目標の下で、その持続的、安定的な実現という観点から適切に設定してまいりたいと考えております。
○竹内委員 それでは次の質問に移りたいと思いますが、日本銀行の令和五年度の上半期財務諸表について一、二お伺いしたいと思います。
バランスシートを拝見しておりまして、やはり大きな含み益を抱えているETFですね、これをどうするかということだと、一つあると思うんですね。
ただし、早々に売れるわけはありませんし、今後長い期間をかけて考えていかなければならないとは思いますが、いろいろなことが仄聞されていますが、日銀の例えば財務基盤の強化に使ってはどうかとか、いろいろなことも言われていますけれども、私は本当に様々なアイデアを是非とも検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○植田参考人 委員御指摘のように、私どものETFの含み益の活用について様々な議論があることは承知いたしておりますが、個別の提案について今日具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。
その上で、これらETFの処分について、すぐに行うことは現在考えておりません。処分の可能性を含めて今後どう取り扱うかという点については、ある程度時間をかけて検討していく必要があるというふうに思っております。
○竹内委員 これで最後の質問にさせていただきたいと思いますが、同様に、やはり大変多く保有することになりました国債についての考え方でございますが、基本的には満期まで保有すれば元本保証されるわけでありますから、これを、その時々の時価が乱高下しているじゃないかということで、慌ててばたばたするのはよくないんだろうと思っております。また、清算主義に陥って慌てて売却したりして、金利の急騰とか国債の暴落を招くこともよくないだろうというふうに思っておりますけれども、この辺、改めて総裁のお考えをお聞きしておきたいと思います。
○植田参考人 長期国債でございますが、これは、当面これまでと同程度の金額で買入れを継続することを考えております。そういたしますと、私どもの国債保有残高は、当面おおむね横ばいで推移するというふうに見ています。
その上で、長期金利が仮に何らかの要因で急激に上昇することがあれば、市場における安定的な金利形成を促す観点から、機動的に、国債買入れの増額を行うほか、指し値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する考えでございます。
○竹内委員 以上で終わります。
ありがとうございました。
○津島委員長 これにて竹内君の質疑は終了いたしました。
次に、階猛君。
○階委員 立憲民主党の階猛です。
植田日銀総裁、もうすぐ就任して一年になるわけですね。この間、異次元金融緩和の弊害をよく理解されて、金融政策の軌道修正に御尽力されてきました。まずはそのことに敬意を表したいと思います。
振り返ってみますと、この一年間の日銀の歩みは、昨年の二月、今日パネルを用意しておりますが、私がネクスト金融大臣の立場で公表しましたこの新しい金融政策に沿うものだったというふうに考えております。
例えば、昨年七月には、長期金利の上限〇・五%をめどとし、一%を防衛ラインにしたということ、それから、昨年十月には、長期金利の上限のめどを一%に引き上げた上で防衛ラインをなくしたということなどは、この工程表の四番、YCCの一層の柔軟化に当てはまるというふうに言えると思います。
また、この工程表の五番、ここには政府、日銀の共同声明の見直しというふうにありますけれども、その具体的な内容としては、政府と日銀が実質賃金の上昇に向けて一体的に取り組むといったことなどを明記することを提言していました。
日銀は、共同声明の見直しには踏み込みませんでしたが、今日お配りしている資料の三ページ目にありますとおり、三ページ目の下段のところですけれども、この下段で、賃金の上昇を伴う形でという表現を加えました。それまでの物価一辺倒の目標を修正したわけです。
今回、いよいよこの工程表の六番、イールドカーブコントロールの撤廃というところまでいったわけであります。
こうしてみると、我々の新しい金融政策を日銀も参考にしてくれたのかなというふうに思うんですけれども、実際のところどうだったのでしょうか。通告しておりませんが、植田総裁に御見解をお願いします。
○植田参考人 大変申し訳ありません、今日、この改革工程表は初めて拝見いたしました。
ただ、今伺った限りでは、これまでの大規模な緩和の枠組みを修正していく際にどういう道筋をたどるのが望ましいかということに関して、標準的といいますか、素直なお考えが示されているなと思いまして、その結果、私どもが歩んできた道のりともかなり一致しているところがあるということかなと思いました。
○階委員 やはり、素直に考えればこうなるはずだと我々も思っていまして、そのとおりやっていただいてよかったなと思うんですが、去年の今頃までは、黒田日銀総裁は全く金融政策を変えようともしていなかったわけです。それがようやく変わったということなんですが。
ただし、日銀の今回の金融政策の変更後も、引き続き二%の物価安定目標の下で緩和的な金融環境を継続するということでありますので、日銀が目指していた、賃金の上昇を伴う形で二%の物価安定の目標を持続的、安定的に実現することというものは達成されていないというふうに理解しますが、それでいいですか。
○植田参考人 表現ぶりが難しいところでありますが、二%の物価安定目標の持続的、安定的な実現を達成する可能性、確度がだんだん高まってきて、ある程度以上のところに高まったという判断をいたしましたので、物価安定目標を持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったというふうに表明し、大規模緩和の修正に至ったところでございます。
○階委員 今おっしゃったこと、二ページ目に今回の決定文を挙げさせていただいておりますが、最初の方に、二%の物価安定の目標が持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況になったので今回変更したということなんですね。目標を達成されていなくても、見通せる状況になったので撤廃に踏み切ったということでいいですよね。うなずいていただいたので結構です。
そこで、お尋ねします。
我々の新しい金融政策でも、実質賃金の安定的な上昇が見込める段階になれば、イールドカーブコントロールの撤回に踏み切るべきだというふうに言っているわけです。
ただ、現在のところ、実質賃金は二年近くマイナスが続いていますし、雇用の七割を占める中小企業にも賃上げが波及するかどうか。これは正直言って、春闘の結果は関係ないですね、組合がないところが圧倒的に多いので。そこで、中小企業の収益環境であるとか内部留保の薄さなども考えれば、雇用の七割を占める中小企業に賃上げが波及するかどうか、非常に微妙だと思っています。
日銀総裁におかれては、今後、実質賃金のマイナスがプラスに転換し、中小企業に賃上げが波及するというふうに確信を持っているんでしょうか。お答えください。
○植田参考人 一〇〇%の確信というふうに問われますと、そこまではですが、私どもの中心的な見通しでは、マクロ、平均的な実質賃金は、近い将来プラスの伸び率に転じていく、それから、中小企業の賃金についても、昨年を上回るプラスの率で最終的に決められるというふうに見通してございます。
○階委員 今、確信は持っていないというお話でした。
我々も、ここは慎重に判断すべきだと思っていまして、マイナス金利の解除はいいと思うんですよ。預貯金の利息収入や地域金融機関の経営にとって非常に悪影響を及ぼしたので、これはやるべきだったと思いますけれども、マイナス金利の解除ということをやる場合に、イールドカーブコントロールの撤廃、これが必ずしも必要だったのだろうかということを考えるわけです。
というのは、どのみち金融緩和の状況は続けるわけですから、我々がこの工程表でも言っている四番のところ、イールドカーブコントロールの一層の柔軟化というこの項目の中で、短期金利をより柔軟化して、今まではマイナス金利だったけれども、これをちょっとゼロ%程度に引き上げるみたいな言い方で、イールドカーブコントロールを柔軟化して、それをどんどん形骸化させていって、最終的にイールドカーブの撤廃につなげるという漸進的なやり方というのも考えられたのではないかと思うんですが、このタイミングで一気にイールドカーブコントロール撤廃というのが必要だったんでしょうか。これ、お答えいただけますか。
○植田参考人 まず、このいただいた改革工程表の四番のところにもありますように、昨年の段階で、当時はYCCをもっと長い期間使えるようにという目的からではありますが、一層の柔軟化をまず二回にわたって実行したところでございます。その上で今回に至りまして、まず、短期金利をマイナス〇・一から、ゼロから〇・一というところまで引き上げるという決定を一方でいたしました。
長期金利の方を見てみますと、そこまでは、目標は、やや奇異に聞こえるかもしれませんが、依然としてゼロでありまして、ただし、上限のめどを一%というふうにするという枠組みになっておりました。
短期金利をプラスの水準に引き上げるに際しまして、いずれにせよ、長期金利の目標がゼロというところは修正せざるを得ないであろうと。経済、物価情勢全体からしますとかなりの改善を見せているという中で、これまでのような長期債市場への強い介入は必要ないのではないかという判断の下で、しかし、不連続な長期債市場の反応を最小限に食い止めるために、買いオペの金額はこれまでどおりとする、それから、大幅な長期金利の上昇の際には買いオペ金額等を増やすという手段を用いるということで対応しようというふうに考えた次第でございます。
○階委員 今答弁の中で、長期金利、本来のイールドカーブコントロールではゼロ%のはずだったのを、無理やり柔軟化で一%をめどにしてきたわけですよね。これはこれでちょっとどうかなというところもありますけれども、柔軟化という中でそれをやってきたわけだから、短期金利についても、柔軟化という話の中でマイナス金利を解除するという選択肢もあったのではないかと思うんですけれども、それはできないということでいいんですか。
○植田参考人 長期金利について一段の柔軟化を図った上で短期金利を引き上げるべきだったのではないかという御質問かなと思いますけれども、長期債市場につきましては、我々の様々なオペ等が市場機能をかなり引き下げてきたという問題もある中で、経済、物価情勢の改善に伴いまして、市場によって金利を形成させることを基本とする、ただし、何かあったら私どもが介入するという姿勢でいけないかなというふうに考えた次第でございます。
○階委員 今回、イールドカーブコントロールの撤廃に踏み切ったわけですけれども、さっき御紹介したように、日銀総裁、植田総裁になってから、大体、展望レポートの発表のときに動きがあったわけですね。さっき言ったような、物価目標に賃金の上昇を加えるとか、長期金利のコントロールを柔軟化する、都合三回やりましたけれども、いずれの決定も展望レポートの発表時だったわけですよ。
今回は三月。ひょっとすると、四月になるとまた別な、経済状況も変わってきて、物価の見通しとかも変わってくるかもしれない。ひょっとしたらまた下方修正になるかもしれないという中で、ちょっとここは、少しイールドカーブコントロールの撤廃までいったのは早過ぎたんじゃないかなというふうに思うんですけれども、ここは、四月の展望レポートがどうであれ、この撤廃というのはこのままいくということでいいですか。
○植田参考人 四月でなくてどうして三月だったのかという御質問だと思いますけれども、特に、賃金の春季労使交渉の第一回の結果を見まして、それ、あるいは物価動向、さらに三月に出ましたGDPの改定値と、これらを総合的に見ますと、三月と四月の間で得られる情報のかなりの部分はこの前の決定会合直前までに得られていたというふうに判断いたしまして、四月ではなくて三月に決定したということでございます。
○階委員 分かりました。
強い決意を感じましたので次に行きますけれども、今回、二ページ目の脚注一にあるとおり、「マネタリーベースの残高に関するオーバーシュート型コミットメントについては、その要件を充足したものと判断する。」ということでやめているわけですね。
その要件というのは何だったのかなということで、三ページ目を御覧になってください。これは、「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に二%を超える」というのが、マネタリーベースの拡大方針を終了するための条件だったと思うわけですよ。
さて、この除く生鮮食品の消費者物価指数、コアCPIともいいますけれども、このコアCPIの実績値、安定的に二%を超えたということでよろしいんでしょうか。
○植田参考人 このコアCPIの前年比の実績値を見ますと、二二年の春、四月に二%を超えまして、その後、二十二か月ですか、二%以上で推移しております。これを踏まえまして、オーバーシュート型コミットメントについては、要件を充足したものと判断いたしました。
○階委員 ここも、黒田総裁のときは、二%を超えて二年ぐらいたってもなかなか変えようとしなかったというのがありましたので、やはり植田総裁になってかなり考え方が変わったなというふうに思っています。
このいわゆる異次元金融緩和、異次元金融緩和を分かりやすく日本語で直すと長短金利操作付量的・質的金融緩和という枠組み、あるいはマイナス金利政策、これは役割を果たしたというふうに決定文にありました。
この役割を果たしたという表現なんですが、さっき確認したとおり、目標はまだ達成されていないわけですよね。その段階で終える以上、役割は果たしたのではなくて果たさなかった、これが素直な評価ではないですか。お答えください。
○植田参考人 私どもの理解ではと申し上げるのも変ですけれども、この約束は、二%の物価安定の目標が持続的、安定的に実現するまで続けるということではなくて、その実現が高い確率で見通せるところまで続けるというふうに理解して政策を実行してきましたし、そういうふうにも説明してまいったところでございます。
その上で、最初に申し上げましたように、見通せる、あるいは見通せるくらいにまで目標の実現の可能性が高まってきたので長短金利操作付量的・質的金融緩和の枠組みを見直したということで、役割は、そこまで可能性、経済、物価情勢を改善させてきたというところで十分果たしたというふうに考えたところでございます。
○階委員 では、役割を果たして終わった以上、将来の金融政策として、これまでの異次元金融緩和の枠組み、あるいはマイナス金利政策といったものは選択肢となり得るのかどうか、お答えいただけますか。
○植田参考人 これは一般論に今の時点ではならざるを得ないんですけれども、将来、経済、物価情勢が大きく悪化した場合に、必要があれば、これまで使ってきた手段を含めて、あらゆる手段の利用の可能性を排除しない考えでございます。
○階委員 あらゆる手段を排除しないと言いましたけれども、どういう局面になれば、また異次元の金融緩和に戻るんでしょうか、お答えいただけますか。
○植田参考人 あくまでも現時点では抽象的なことしか申し上げられませんが、経済、物価情勢が非常に悪化するという場合という答えにならざるを得ないかと思います。
○階委員 そういうような、また元に戻る危険性もあるわけですけれども、この間の金融政策決定会合後の記者会見で、総裁が、今後は普通の金融緩和を行うというような話をされていました。
四ページ目を御覧になっていただきたいんですが、これは日銀に作ってもらった資料ですが、バブル崩壊による金融危機の後、いわゆる非伝統的金融政策がどのように移り変わってきたかというものを時系列で整理しているものです。
色の濃い部分、これが非伝統的金融政策というふうに言われるものですけれども、総裁の言っている普通の金融緩和というのは非伝統的金融政策ではないような気がするんですけれども、それでは、普通の金融緩和とは具体的にいかなる内容なのでしょうか。また、それをすることによって、まだ達成されていない日銀の物価安定目標は達成できるというふうにお考えでしょうか、お答えください。
○植田参考人 この四ページの表で申し上げますと、黒く塗られていない白いところですが、短期金利の誘導目標というところ、これを、この表ではマイナス圏で推移と書いてありますが、現在はゼロから〇・一%というところに引き上げたわけですが、大まかには短期金利を政策の手段として政策を運営していくというのが現在のスタンスでありまして、これを私は記者会見で普通の金融政策というふうに呼んだところでございます。その理由は、諸外国もほぼ同じような金融政策運営をしているからでございます。
それから、御質問の後段にありました、そのやり方によって目標の実現は達成できるのかというところでございますが、現在のゼロから〇・一%という短期金利の水準が、十分低い緩和的な水準であるというふうに考えておりますので、若干の時間はかかるかとは思いますが、目標達成に至る可能性が高いというふうに考えております。
○階委員 普通の金融緩和で目標を達成できるというのであれば、さっきおっしゃったような、異次元の金融緩和に後戻りするようなこともあり得るなんということは言わない方が私はいいと思います。
その上で、普通の金融緩和になった後も、異次元の緩和の遺産は残り続けるということを記者会見のときにおっしゃっていました。異次元の緩和の遺産、これは、さっきも出ておりましたけれども、国債とかETFを大量に保有していることを多分おっしゃっているんだと思うんですが、これが日銀の今後の金融政策にどのような影響を及ぼすのかということをお答えいただけますか。
○植田参考人 私ども、御指摘のように、大量の国債を残高として保有しております。様々な分析によりますと、中央銀行が大量の国債を保有しているときに、これが長期金利を引き下げる方向で影響を及ぼすという緩和効果、ストック効果と呼んだりしますが、これが作用するというふうに様々な分析で指摘されているところであります。
このことを私どもは前提とした上で、それを考慮に入れた上で、先ほど申し上げました短期金利の操作を主たる政策手段として、経済、物価情勢に応じて適切な金融政策を実現していきたい、金融環境を実現していきたいと思っております。
○階委員 異次元の緩和の遺産には、今言ったストック効果のほかにも、負の遺産とも言える部分もあると思うんですが、その点についてはいかがでしょうか。
○植田参考人 例えば、国債を大量に保有しているということが、国債市場の流動性のような市場機能にある程度マイナスの影響を及ぼしているという分析もございます。
これは直ちには、残高の影響でございますから解消することは難しいと思いますけれども、いずれどこかで残高を減らす方向に資するように、国債の買入れを徐々に減額していくということも考えたいと思っております。
○階委員 今後、もし、金融政策を緩和のところから正常化していくというときに、利率を上げていきますよね。そのときに超低金利の国債を保有しているとすると、当座預金の利率と逆ざやになってしまって、日銀に多額の赤字が発生する、こういう負の遺産の効果、悪影響もあるんじゃないですか。そこも考えていただくと、やはり、日銀の金融政策に大きな足かせとなってしまった多額の国債みたいなものを異次元の金融緩和がもたらしたわけですよ。
さっき言ったように、目標を達成できないうちに、結局、普通の金融政策に戻すのが妥当だというふうに判断されたわけですよ。となると、結局、異次元の金融緩和というのは失敗ではなかったかというふうに総括できると思うんですけれども、失敗ではなかったのかということについて、どう考えますか。
○植田参考人 様々なプラスとマイナスの効果があったと思いますので、ネットでどうだったかというのは難しいかと思いますけれども、低金利、イールドカーブ全般にわたって、低い金利の環境を長い期間つくり出しまして、それによって経済を支え、過去十年間、雇用、企業収益等の改善をもたらしたというプラスの効果ははっきりあったかなというふうに思っております。
○階委員 この異次元の金融緩和は、植田総裁であればこんなに長くは続かなかったと思いますし、この負の遺産もなかったと思うんですね。
私が思っているのは、昨年の十一月ですか、この委員会で、日銀の物価見通し、誤りがあったかということについて、正直に、誤りがあったということを認められました。
それの関連で、お配りしている五ページ目、これは、今から約十年前ですか、最近公表されたものです。黒田総裁が異次元の金融緩和を始めて半年ほどたった辺りの金融政策決定会合の議事録なんですね。
当時の白井審議委員の発言、特に下線を引いている左側のところ。実は、今回の展望レポートを読んで感じた印象を申し上げると、政策意図を織り込んだ見通しと政策効果を示すことと、可能な限り客観的な分析を示すことのバランスの難しさを感じた、読者から、前者に傾き過ぎていると受け止められると、それが外部の見通しとのずれが大きい場合、日本銀行の分析に対する信頼の低下をもたらし、展望レポートが単なるスタンスの表明とみなされてしまうおそれがある、一方、客観的な分析と受け止められると、安心感と信頼性の向上につながる面もあると思うといったようなくだりがあります。
また、右側の方の下線部分ですけれども、いろいろな材料から見て明らかに下振れの方向を指しているのに、上下のリスクを書いている、流れを普通に読むと下振れのリスクの方が大きいと読めると思うので、そうであれば下振れリスクが大きいと言い、それでも二%の達成の道筋があるということであれば、世の中のいろいろな疑問に対して一つ一つ誠実に答えていく方がよいと思うというような意見を述べられていました。
まさに、私もこの委員会で度々指摘してきましたけれども、展望レポートは願望レポートになっているんじゃないかということを、この時点で既に白井さんがおっしゃっていたと思うんですね。
この意見を尊重せずに、白井さんの意見は却下されるような形で、その後の物価見通しは、期待に働きかけるということなのかもしれませんけれども、客観的な分析というよりは、政策意図を織り込んだ見通しと政策効果を示す、単なるスタンスの表明に陥っていたのではないかと思うんですが、この点について総裁の見解をお願いします。
○植田参考人 当時の白井委員がどういう御認識であったかは、なかなか私、知る由がありませんが、私どもの展望レポートで見通し作成の際には、そのときまでに決定した金融政策をまず前提としまして、その上で、先行きについては、マーケットの織り込み、政策についての織り込みを参考にし、経済、物価見通しをできる限り客観的に盛り込むという姿勢で作成してございます。
これで中心見通しが出てまいりますし、その上で更に客観的に、上下のリスクについてもバランスを示したりしてございます。こういう姿勢で過去も見通しが作成されてきたというふうに信じておりますし、今後もそういうつもりでございます。
○階委員 物価の見通しについても、正しい方向に向かいつつあるというふうに思っていますけれども、是非その点は徹底していただきたいと思います。
それと、日銀総裁に、最後、ETFのこと、先ほど竹内先生の質問でも出ていました。
ETFは、今、莫大な含み益、簿価三十七兆に対して含み益も三十兆以上あるというふうに言われていたり、あるいは、分配金も毎年一兆円以上あるわけですよね。この多額の財産、これは、そもそも、この異次元の金融緩和あるいはその前の金融緩和によって国民に本来入ってくるべき利息収入が大幅に減っていた、その犠牲の下でこのETFの利益が日銀に蓄えられてきたという面もあるわけですよ。
その具体的なやり方については今日はお尋ねしませんけれども、方向性として、これだけの利益を国民に還元するということは考えてもいいのではないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
○植田参考人 現在保有しておりますETF等の処分については、先ほども申し上げましたが、すぐに行うことは考えてございません。処分をするのか、処分をする場合にどういうふうに扱うのか、ある程度時間をかけて検討したいというふうに思っております。
○階委員 それは、先ほどの竹内先生の質問に対する答弁と同じです。大きな方向性を聞いています。国民への還元を考えるべきではないかということについてはいかがですか。
○植田参考人 あえて申し上げますが、数十兆円の残高のETFを所有しております。これから毎年一兆円強の配当が上がってきております。これは、ほかの日本銀行の収益との相対でいろいろ動きますが、基本的には国庫に納付されてございます。ですので、私どもが持っている株から上がる何かプラスのようなものが日本銀行にとどまっているというわけではなくて、そういう形で国庫に返っていくという仕組みになっております。
考えてみますと、例えば、数十兆円の評価の株を持っているということは、将来の配当の、予想配当ですが、割引現在価値がその数十兆円になるということでございます。したがいまして、ずっとそれを日本銀行は持ち続けて、その毎年の配当を政府に納付金でお返しするということを続けていれば、その現在価値は、やはりその数十兆円に等しいわけでございます。
ですから、いつそれを実現するかという問題はありますけれども、将来まで見れば、国民に少しずつお返ししていくという姿になっていることは間違いないかと思います。
○階委員 配当金は企業価値のなし崩し的実現という言葉もあるので、今そういうことを多分おっしゃったんだと思いますけれども、肝腎なことは、今これだけ国民の生活が厳しいという中で、将来的に分配金の形でどんどん還元されていくからいいんだ、あるいは国庫に納付するからいいんだということではなくて、もっとダイレクトに国民に還元する方法を考えなくてはいけない時期ではないかということを我々は考えております。
例えば、少子化対策の財源が足りない、そのときに支援金で新たな国民の負担を求めるようなことをするよりも、この分配金をそうした少子化の財源に充てるということも考えていいんじゃないかというふうに思っています。
是非この点については、日銀にもこの先、協力を求めるようなことがあれば協力をお願いしたいと思っておりますけれども、そういったことは全く荒唐無稽で検討にも値しないというような御趣旨なんでしょうか。お答えいただけますか。
○植田参考人 様々な御提案、全て真摯に伺いたいと思います。その上で、時間をかけて、どうすべきかは考えていきたいと思っております。
○階委員 日銀総裁、ありがとうございました。ここでお引き取りいただいて結構です。
○津島委員長 では、植田総裁、どうぞ御退室ください。
○階委員 それでは、残された時間、鈴木財務大臣に伺います。
私は、予算委員会の方でも、政策活動費の問題、これは国税庁の方から、一月二十九日の予算委員会で、政策活動費というのは政党から個人に入ってくるお金ですから、一年間で使い切れなかったものがあれば、これは雑所得として課税対象になるという答弁があったわけです。一方で、岸田総理のお話を聞いていると、調査をするまでもないみたいなことをおっしゃっていて、課税対象になるのに、全く調査もしないで放置しているのではないかというふうな印象を持ちました。
でも、これは、私も地元盛岡に帰るといろいろな人から言われますよ、課税対象になるんだったら、ちゃんと税金を取るべきだということを言われるんです。本当の話なんですけれども、日曜日、私があるお店で、大衆食堂でしたけれども、お昼を食べた後、お店を出ようとしたら、厨房にいた年配の女性の方が駆け出してきて、涙ながらに、自分たちは一円たりとも税金をまけてもらえることはないのに、何で政治家はこんないいかげんなことが許されるんですかと、本当に涙ながらに訴えられましたよ。
ですから、私は、岸田総理は、恐らく自民党総裁の立場として自民党の議員さんたちに調査することは難しいと言ったのかもしれませんけれども、やはり税務当局としては、税務行政の信頼確保という意味で、この政策活動費、課税対象になるものについてはしっかり課税をするということを言うべきだし、それに向けて努力すべきだと思うんですね。この点について、どのようにお考えになりますか。
○鈴木国務大臣 政策活動費だけに対する税務当局の努力になるわけでありますが、今やっていることを申し上げますと、まあ、それだけじゃやっていることにならないということになるのかもしれませんけれども、事実、ファクトを申し上げますと、政策活動費を含め、政治家個人に帰属する政治資金につきましては、申告納税制度の下、まずは政治家自身において収入や経費を計算し、所得が発生した場合には申告していただくこととなります。
他方で、政治家個人の課税関係について申し上げますと、政治家個人の課税関係は、歳費始め複数の所得区分が関係する可能性があるほか、調査研究広報滞在費のように非課税の収入があるなど、比較的複雑であることから、例年一月に、各国会議員に対しまして、政治資金の課税関係に係る確定申告における留意点等を解説したリーフレットを配付をさせていただいておりまして、適正な申告を促しているところでございます。
現在やっていることは、そういうところにとどまっているということであります。
○階委員 これは三月二日の予算委員会で私の隣にいる江田先生がおっしゃっていたことなんですけれども、ちゃんと税務相談に行くようにということを指示するべきではないかということを、総理に江田先生はおっしゃっていましたよ。
今、鈴木財務大臣のお話を聞いていても、複雑な事務手続だというようなことでした。これは、税務当局として税務相談窓口を設けて、紙一枚配るだけじゃなくて、相談窓口を設けて、今問題を抱えている全ての議員に相談に行っていただけるようにすべきではないですか。それぐらいの努力はしていただけないでしょうか。
○鈴木国務大臣 先ほど申し上げたのは、事務手続が複雑ということではなくて、課税関係が複雑であるということを申し上げたところでございます。
その上で、申告納税制度ということで、自分の収入、この場合は、先生の御指摘は政治活動費の分野でありましたけれども、それが、実態、幾ら与えられて、そしてそれをどう使ったのかというのは本人が知っていることでございますので、こうした申告納税制度の下で、政治家自身が、その収入それから経費を計算をして、所得が発生した場合には申告していただくということでございます。
これは、いわば政治家であろうと一般の納税者の方であろうと全く差別なくされなければいけないわけでございまして、政治家の立場の方であっても、このことについてはきちっとやっていただく、これが当然のことであると思います。
その上で、複雑な状況がありますので、リーフレットを配付させていただいて、対応を、例示等もさせていただいているところでございます。
○階委員 政策活動費と、もう一つ問題になっているのは、派閥からの還付金、キックバックに対する課税ですね。これは、政策活動費よりももっと難しい問題がありまして、そもそも個人が受け取ったのかどうかというのが判然としないところがあるわけです。
そこで、先日、私、BSフジのプライムニュースという番組があるんですけれども、ここに元東京地検特捜部の高井さんという弁護士さんが出ていて、こんなことを言っていたんですね。東京地検特捜部の捜査で政治団体に帰属すると認定されているのだから、これは所得税法の問題は生じないなんということを言っていたわけですよ。
そこで、今日、国税庁にも来ていただいていますけれども、政治資金収支報告書に記載しない前提で政治家側に渡された裏金について、検察が政治団体の収入と認定すれば、税務当局はそれに従わざるを得ないんでしょうか、お答えください。
○星屋政府参考人 お答え申し上げます。
個別にわたる事柄につきましてはお答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げますと、政治資金につきましては、その帰属のいかんにより課税関係が異なりますが、帰属を判断するに当たりましては、収支報告書の記載状況のほか、例えば、その資金が誰によって実質的に管理、使用されていたのかなど、様々な状況を総合的に精査することとなります。
いずれにいたしましても、政治資金を含め、課税関係につきましては、国税当局におきまして、個々の実態に応じ、法令等に基づき適正に取り扱うこととしております。
○階委員 すっきりとした答弁ではなかったんですけれども、必ずしも検察の判断だけで全てが決まるわけではないというふうに理解しました。
そこで、法務省にも来てもらっていますけれども、先ほどの高井弁護士のテレビでの発言、その後に続いて、仮に、政治団体にキックバックされたものを、私はこれは個人的に全部雑所得として申告しますなどということをやったら、検察にけんかを売るのかということになるということを言っていますけれども、これは法務省に聞きますけれども、けんかを売ったことになるんですかね。もし政治家が、やはりよく考えたら、これは検察は政治団体の収入と認定したけれども、やはり自分で判断して雑所得として申告するということも私はあっていいと思うんですが、こういうことは検察にけんかを売ったことになるんですか。
○吉田政府参考人 一般論として申し上げますと、検察当局は、個々の事案ごとに、法と証拠に基づいて適切に事件処理をしているものと承知しておりますけれども、個々の事案における関係者の方の行動については、法務当局としてコメントする立場にはないということを御理解いただきたいと思います。
○階委員 国税当局が検察と違う判断、あるいは政治家個々人が検察と違う判断、これは当然起こり得るということを今おっしゃったということでいいですか。最後に確認させてください。
○吉田政府参考人 個々の事案において関係者の方々がどのような行動を取るかは、それぞれの立場で御判断されるべきものと承知しておりまして、法務当局としてはそれらの行動についてコメントする立場にはないというふうに考えております。
○階委員 では、けんかを売っているなんということはまかり間違っても言うことはないというふうに理解して、質問を終わります。
ありがとうございました。
○津島委員長 これにて階君の質疑は終了いたしました。
次に、末松義規君。
○末松委員 立憲民主党の末松義規でございます。
私の方は、まず、今、階議員がおっしゃられたことと同じような問題意識で、日銀総裁に伺いたいと思います。
植田日銀総裁は、以前、私が主宰する勉強会に講師として出ていただきまして、この場をおかりして御礼を申し上げます。
同じ問題意識なんですけれども、日銀の収益の還元についてなんですけれども、今、日銀の方で、この資料の一にございますように、二十三・六兆円弱というのが昨年の、令和五年九月の月末ということで、それで間違いはないのかと。それと、あと配当収入が一兆円ぐらい毎年入ってくるということでございました。
これについて、私も今、実は選挙区を中心に、富裕なお年寄りと、本当にかなり低所得で苦しんでおられるお年寄りがたくさんおられて、その悲鳴も聞いているんですね。一般的に、受給する年金支給額が年々減ってきて、大変苦労しているという声が非常に強いんですね。そういった意味で、特に女性の高齢者は、御主人が亡くなって、年金額が半分近くになって、これまた大変な状況だということでございます。そのため、現状のように年金をカットしていくような年金支給の仕組みではなくて、年金額をできるだけ減少させずに、むしろ増やしていけるような仕組みをどうやれば考えられるのかというのが私の政治テーマでもございました。
私の方は、年金財源として、例えば、国が中心となって日本近海の海底資源開発を行って、その上がりの大半を年金財源にすればよいのではないかという考えを持っていたんですけれども、日銀のETFを見ると二十三・六兆円弱の莫大な収入があるので、これを活用できるのではないかと思っています。
この二十三・六兆円弱というETFの収益、この認識でいいのか、さらに、この収益の使途については、今、議論もされずに、決まっていないということを言われましたけれども、議論はいつ頃始めるんですか。日銀が議論を始めないと全然これが確定されないのか、特に、形式としては日銀の政策決定会合で決まるんでしょうけれども、そちらがしっかり検討していかないと、この使い道についても全く手がつけられないというのでは困るんですね。お願いします。
○植田参考人 まず、私どもの保有しておりますETFの含み益が昨年九月末で二十三・五兆円程度であるということは、委員のおっしゃるとおりでございます。
その上で、ETFを保有しているままかと申し上げますと、先ほどの質疑にもございましたけれども、ETFからの分配金収入を含め、日本銀行の収益は、いろいろな税等を控除した後、剰余金がある場合には国庫に納付するということになってございます。
○末松委員 二十三・六兆円弱、これは国庫に自動的に戻るんですか。そういうわけじゃないですよね。
○植田参考人 二十三・五兆円は含み益でございまして、国庫納付金になりますのは、保有しているETF全体から、まず、例えば配当がございまして、この配当収益が毎年ある分を毎年、様々な控除を取った後、国庫納付金になるということでございます。
○末松委員 だから、含み益を現実の利益として確定させる行為はどういう形で行われるんですか。
○植田参考人 これは二通りありまして、どなたかに売却してというのは一つかと思います。これについては、先ほど来申し上げておりますように、そういうことを考えるということについては、時間をかけて、どういうやり方があるか、それがよいやり方かどうかということを検討していきたいと思います。
もう一つは、含み益があるということは株が値上がりしているということでございまして、これはやはり、先ほどの質疑にもありましたが、普通はそれは、将来の企業の収益が上がる、あるいは配当が上がるということを意味しているわけですから、僅かずつではありますが、配当が上がって毎年の国庫納付金に少しずつ反映されてくるという道筋もあるかと思います。
○末松委員 思うんですけれども、今本当に財政難でいろいろなところが大変だということで、配当は別として、二十三・六兆円弱についても、やはりこの使途を明確にしていけるような環境をつくっていかなきゃいけないんじゃないですかね。日銀の判断を待っているというような余裕は私たちはないと思うんですね。
ですから、私は思うに、日銀も使途の留保要件として、市場に攪乱的な影響を及ぼさないとか、日銀の収益に大きな影響を及ぼさない、こういう留保条件があるのは聞いているんですけれども、例えば、毎年一兆円ずつ使って、年金支給額の改善のために年金財源として使用していくというようなことも私はいいんじゃないかと思っているんです。
これは質問の筋が多分植田総裁とはちょっと違うかもしれませんけれども、年金、こういったことに日銀の収益を使っていくということについて、個人的な感想あるいは個人的な見解があればおっしゃってください。
○植田参考人 もしも私どものETFの売却が何らかの形で可能になった場合、その売却ないし売却益をどういうふうに利用すべきかということについては、私個人の意見を申し上げるべきではないというふうに現在思っております。
○末松委員 まあ、予想した答弁だったんですけれどもね。
とにかく、早く検討してください。そうしないと、政府も多分そこで日銀に対して要請をするという位置づけになるかと思いますけれども、とにかく様々な、もう本当に財政が圧迫されている現状があるので、それについては早くとにかく検討していただいて、そして、政府の要請を含めて、我々野党も含めた要請を是非聞いていただきたいということを申し上げて、日銀総裁、お帰りいただいて結構です。
○津島委員長 植田総裁、どうぞ御退室ください。
○末松委員 あとはちょっと淡々と申し上げますけれども、資料の三を見ていただいて。これは、大臣もなじみが深まったPFAS問題についてなんですけれども。これが、この資料三に書いてあるように、ちょっと私読みますね、そうじゃないと何を言っているのか分からないと思いますので。
資料に書いてあるように、昨年十一月三日、北関東防衛局より、本日の沖縄タイムスの記事に横田基地のPFAS関連記事がありましたので情報提供いたしますとの連絡が東京都及び基地周辺自治体にあったわけですよ。これを受けて東京都は、横田基地に関する東京都と周辺市町連絡協議会を代表して、昨年十一月六日、国に対して、この件に関するPFOS等漏出の有無を直ちに明らかにし、東京都及び基地周辺自治体に速やかに情報提供することを要請した、この要請から二週間以上が経過したが、国からはPFOS等漏出の有無など事実関係が示されていない、PFOS等については、多くの都民が健康への影響などについて不安を抱いており、早急に払拭する必要があると書いてあります。
そこで、どんな情報を早く知らせてくれというのかというと、一番で、本件に関するPFOS等漏出の有無を直ちに明らかにするとともに、事実関係について詳細な情報を東京都及び基地周辺自治体に速やかに提供すること。二番目が、横田基地内でのPFOS等を含む泡消火薬剤の現在の保有量、保管場所、保管方法及び使用の実態について速やかに情報提供すること。三番目に、これまで情報提供があったものを除き、PFOS等の漏出があった場合には、その全てについて詳細な情報提供を迅速に行うこと。四番目に、昨年七月五日付で東京都などが要請した内容、これは過去の泡消火薬剤の漏出事案のことについてなんですが、国の対応状況を早急に説明すること。
この要請が横田基地に関する東京都と周辺市町連絡協議会の名前において昨年十一月二十二日になされて、宛先は木原防衛大臣と二又北関東防衛局長なんですね。
この十一月二十二日から結局四か月ぐらいたって、どうなったんだ、何の連絡もないと言われているんですけれども、そこは防衛省は東京都や自治体に対してどのような返答をいつ行ったんですか。
○鬼木副大臣 お答えします。
昨年十一月の横田飛行場における泡消火薬剤の漏出に係る報道を受け、防衛省は、米側に対し速やかに事実関係の照会を行いました。
その後、横田飛行場の関係自治体から、当該報道に関する詳細な情報提供や、横田飛行場内でのPFOS等を含む……(末松委員「この要請書に対してどうしたか言ってよ。余り周辺情報は要らない」と呼ぶ)はい。
この要請書に対してなんですが、改めて米側に照会を行いまして、昨年十二月に、本件は細部に至る報道内容であったため、米側からはその事実関係や状況について調査、確認作業を進めているとの説明を受けていること、また、PFOS等を含む泡消火薬剤の保管量、保管状況、使用実績について、現在、米側に確認を行っていること、また、米側に対し、日米合意に基づく通報対象であるか否かにかかわらず、基地内でのPFOS等を含む泡消火薬剤の漏出についての速やかな情報提供を要請し、過去の漏出も含め、米側に確認を行っていること、そして、地下水への影響について評価等を行うよう求める自治体からの要請を踏まえ、日米の関係者において、様々な場を活用して、米側と協議を進めてきていることについて、関係自治体の皆様に対し回答をしたところでございます。昨年十二月でございます。
○末松委員 この要請書に対して返答をまだ出していないという話だったんですよ。何か十二月に全部出したようなことを言っていますけれども、出していないはずですよ。
○鬼木副大臣 昨年の十二月に書面で回答をお出ししております。その内容は、今申し上げた四点についてであります。
ただ、それが、内容が十分な回答では恐らくなかったということだと思います。
○末松委員 恐らくなかったというのはどういうことだという話になるんですけれども、結局、これに対して大体一、二か月もすれば、大体その調査項目、今私が読み上げた調査項目であれば、回答されているはずなんですよ。でも、ちょっと私、防衛省の質問取りの方と話を聞いたときに、やっていないという話を確認しているんですけれどもね。防衛副大臣が急に何かそこを思い出されたんですかね。何かおかしいですよ、それって。
○鬼木副大臣 済みません、もしかしたら、いろいろなやり取りの行き違いがあっているかもしれませんが、十二月に書面で回答、十二月八日に……(末松委員「東京都に」と呼ぶ)東京都と周辺市町連絡協議会からの要請及び回答ということで、A4の一枚の資料で返しているということで、私も書面、ありますので、後ほどお持ちします。
○末松委員 後で書面を見ますけれども、結局、それはなかなか、細々、詳細にわたるから回答できないという、そういう回答じゃないですか。全部、質問項目に対してきちんと答えているんですか。今あなたがおっしゃったように、恐らく満足な回答でないかもしれないと言ったけれども、そこをちょっと、私は非常に問題視しているんですよ。
○鬼木副大臣 書面については後ほどお目通しいただきたいと思いますが、やはり米側からの回答がいまだない状況がありますので、こちらからは、働きかけています、そして、こういう状況については今調査をしております、安全については徹底を求めております、そういった内容になっております。後ほどお目通しください。
○末松委員 ここのポイントは、米側からどんな回答があったか、それを伝えるのがそちらの仕事ですよね。でも、米側からはまだないんですよ、正確な要請に対する回答は。それっておかしいだろうと。四か月もたって、何でそんなのは、いまだに米側から回答がないんですという話になるのかということなんです、私が問題視しているのは。そういう間に、私なんかは多摩に住んでいますから、多摩の住民の皆さんが本当に健康を害している、発がん性物質で肝臓や腎臓に悪い影響を与える、こういうことなんですよ。
是非そこを、防衛省も別にアメリカの防衛省じゃないんだから、日本の住民の健康をとにかく考えてくださいよ。それをプライオリティーにしてくださいよ。そうじゃないと、例えば横田基地そのものは、日本にとって、便益上、何らのメリットもなくて、しかも、騒音の問題とか、環境汚染とか、事故の恐怖とか、あるいはPFASの漏出問題とか、住民の健康を害するような、そういった横田基地はもう要らない、排除しろという話、あるいは閉鎖しろという声がまた高まってくるわけですよ。そうしたら、ますます米側との交渉は厳しくなるわけですよ。
だから、こういう問題については、丁寧に、早く、とにかく米側の回答をやってくださいよ。そうしないと、多摩の住民の健康はそっちのけですよ。
ちょっとそこの決意を言ってください。
○鬼木副大臣 本件報道が非常に細部にわたる報道内容であったために、米側からは、その事実関係や状況において、調査、確認作業を進めているという説明を受けているところであります。
しかしながら、委員のおっしゃるとおり、防衛省としても、PFOS問題について地域住民の皆様が不安や懸念を抱いておられるということを深く重く受け止めております。引き続き、関係省庁と連携しつつ、様々な場を活用してアメリカ側に対しても働きかけて、現在、働きかけてもおります。そして、担当部局にも私から強く指示をしているところであります。
○末松委員 とにかくその成果を出してくださいよ。いいんですよ、働きかけている、僕、努力していますと言うのはいいんだけれども、結果を出せよということを、早く。私も、多摩の住民の皆さんから背中からやりで突かれているわけですよ、何をやっているんだと。そういう状況も考えてもらわないと困るんですよ。更によろしく頼みますよ。
それから、次はこども家庭庁の方です。
実は、ある知人の医師が、神奈川県の厚木市の医師会で、五歳児健診について状況を知らせてきまして、本当に問題点が多数あって困っているんだと。
問題点は何かというと、市町村によってやり方が変わりますが、厚木市では、五歳児健診を集団健診でやれといっても、医師不足の現状で、担当する医師を配置するのはほぼ不可能、担当する現場の医師は日常診療もあり、通常、昼休み時間に臨時に出ていって健診するのですが、一歳児健診や三歳児健診のように一分以内で病状を検討するのは不可能ですと。
さらに、根本的な問題として、五歳児健診を発達障害の発見に焦点を当てるとなると、現場で的確な診断ができる医師を選任することは更に困難です、五歳児健診は発達障害の発見に有用として、以前から関係者の間では必要性を言われています、政府から補助金が出るというのはありがたい話ですが、現実には、その実施方法については、一律に集団健診とされると実施が困難なので、個別健診なり、その他の方法なり、実施主体の市町村にお任せいただけないか、いただかないとうまくいかないと思いますと。
こういうふうな切実な、せっぱ詰まった状況を伝えてきたんですけれども、このような状況に対して、こども家庭庁として、現場の困難の緩和を図るとか、あるいはベストプラクティスを紹介するとか、そういうことを是非おっしゃってください。ただ、簡潔にお願いします。そこをお願いします。
○古賀大臣政務官 お答え申し上げます。
五歳児健診でありますけれども、子供の社会性が発達する時期に発達障害を早期に発見をいたしまして、就学前に必要な支援につなげる、重要な健診と考えているわけでございますけれども、いまだ普及しているとは言えない状況でありますので、こども家庭庁におきましては、今年度の補正予算で、その実施費用を支援する市町村への補助制度を創設したところでございます。
委員御指摘のとおり、その実施体制の確保については課題があるということも認識しておりますけれども、既に五歳児健診を実施している市町村におきましては、例えば、都道府県や地域の医師会と連携をいたしまして医師を確保しているという自治体がありますし、あるいは、これは厚労省の事業ではありますけれども、地域のかかりつけ医が発達障害の可能性に気づいて専門医等につなげるようにするための、かかりつけ医等発達障害対応力向上研修を活用している自治体もある、こういうふうに承知をいたしております。
こども家庭庁といたしましては、医師等の確保については都道府県による広域的な支援が重要という観点から、母子保健に関する広域支援を行うための協議会を設置、開催する場合などの補助を行っておりまして、その中で本件についても取り組んでいただくことを期待しているというところがございます。
また、五歳児健診のための問診票、それから健康診査票を作成いたしまして、自治体を通じて小児科医等に周知しておりますほか、現在、こども家庭科学研究の研究班におきまして、五歳児健診の体制整備や医師の診察に活用できるマニュアルも作成中でございます。
こういった財政的、技術的支援を通じて五歳児健診を推進していきたい、こう考えております。
以上です。
○末松委員 そういった、地元の困惑が緩和されるように是非お願いしたいと思います。
鈴木大臣、お待たせいたしました。
資料の二なんですけれども、「本音のコラム」ということでやっていますけれども、これはちょっと複雑な事情でありまして、実は、アメリカで働いていた方が日本に帰ってくるということで、そこで、そのときに御主人が亡くなってしまって、それで、日本に帰ってきたら、相続税を支払えという形になったと。この女性の場合は、遺族年金が年間五百万円もらえる、遺族年金が五百万円だから、平均余命を踏まえると、あと二十年というのが計算されているから、一億円を相続財産に加えろと言ってきた、それで困っている、こういう状況。
これに類似する状況の報告が、米国から同じく帰国した人で、IMFに勤めていた夫が亡くなって、奥さんは四十代。IMFの遺族年金が年間一千万円あるが、余命年数が四十五年あるとして、四・五億円加算されて相続税を払えと。帰国したら何でこんなとんでもない仕打ちを受けなければならないのかということで、かなり、これが日本中で起きていて、この記事にもありますように、外国で働いてきた高齢夫婦たちは帰国できないでいる、こういう状況なんですね。
私、ちょっと、えっと思ったのは、厚労省に聞きますけれども、国民の年金支給については所得税も免除されているし、また、相続税も免除されているということだと思うんですけれども、いかがですか。そして、その考え方の趣旨を言ってください。
○宮崎副大臣 先生御指摘のとおり、遺族年金、日本の遺族年金は、相続税を含む租税その他公課の対象とはなっておらないわけでございます。
その考え方ですけれども、年金の給付は受給権者の生活の安定に充てられなければならなくて、仮にこれを課税対象としてしまうと、上げたものを取っちゃうという形になるわけでありますので、給付の意義が損なわれてしまうということであったり、あらかじめ発生することが予期できないリスクに対応した給付という面がございますので、国民年金法であり、厚生年金保険法に規定される形で、公課を課さないというような形になっているものでございます。
○末松委員 今のが年金のルールなんですね、税金はかけないと。
では、鈴木大臣にお伺いしますけれども、これが、外国政府からもらった年金、遺族年金については相続税をかけるという話になっているんですね。これって、同じ日本人でありながら、今の厚労省が説明した年金に税金をかけないという趣旨がかなりねじ曲げられているんじゃないですか。
○鈴木国務大臣 考え方について申し上げます。
相続税は、相続等により取得した財産を全て金銭的な価値に置き換えて評価した上で課税をするものであります。年金等を受給する権利につきましても、原則として遺族に対する財産移転とみなされ、相続時点での時価で評価し、相続税を課税することとなります。したがいまして、外国政府からの遺族年金についても、こうした制度の下で相続税が課税されております。
しかし、国民年金や厚生年金等に係る遺族年金の受給権についても、本来であれば相続税の課税の対象となり得るものでありますけれども、ただいま宮崎政務官から御答弁がありましたように、生活安定に必要な資金であるといった政策的な配慮の下、特に国民年金法等において相続税を含む租税公課を課すことを禁止する旨の規定が設けられており、例外的に相続税を課税しない扱いになっているというのが考え方であります。
○末松委員 宮崎副大臣ですから、お間違いのないように。(鈴木国務大臣「済みません、失礼しました」と呼ぶ)
ちょっと聞きたいのは、じゃ、同じ日本人でありながら、日本の政府の国民年金あるいは厚生年金の場合は課税されない、例外としてと言われましたよね。でも、外国政府から同じような遺族年金をもらったら、相続税がかかるわけですよ。これっておかしくありませんか。
元々、公課をしない、つまり税金をかけないということは、遺族者に対する生活、これをしっかりと守るんだというのが、今厚労省からいただいた趣旨なんですよ。それがために、例外として税はかけないと言われているんですよ。それはおかしくありませんか。矛盾していますよ。
○鈴木国務大臣 先ほど宮崎副大臣から答弁もございましたが、厚生年金等に係る遺族年金につきましては、生活安定に必要な資金であるといった政策的配慮から相続税を課していないこととなっており、したがいまして、日本のみならず海外においても一定期間勤務したことによって、外国政府の遺族年金についても受給権がある方につきましては、厚生年金部分の遺族年金については相続税は非課税となる一方で、海外のものについては課税となると整理されております。
他方で、外国政府による遺族年金について、とりわけ海外での勤務が長く、その部分の年金が相対的に大きい場合に、先生御指摘のとおり非課税にすべきとの議論もある、そのように考えておりますが、年金制度全体やその中での遺族年金の位置づけ、遺族年金の支給水準などが国によって様々であり、日本の厚生年金等に係る遺族年金と同一に扱うことは必ずしも適当ではないと考えているところであります。
○末松委員 だから、その整理がおかしいと言っているんですよ。
私、もうちょっと聞きますけれども、相続税というのは、基本的に確定した相続対象額が必要ですよね。また、さらに、あるいは取得した額というものに対して相続税はかかるわけですよね、基本的には。
今回の遺族年金の場合は、まだ相続もしていない、年々、例えば、平均余命みたいな、そういったものがあるから、例えば、六十何歳だったら二十年間とか、四十歳ぐらいだったら四十数年とか、これは勝手に数字をつくってやっているわけですよ。だから、まだもらってもないし、もし何千万か払ったとき、外国からの年金の、それが相続税の対象になるということで何千万か払ったときに、それは二十年、三十年、その奥様が支給されるという想定の下にやっている。これは想定ですよ、全く。これは、でっち上げの数字とも言っていい。
私は平均余命の数字だけを見たけれども、これは、そういうふうに、人というのは全然違うから、一年後に例えば奥様が亡くなるということがあるわけですよ。亡くなるというときに、いや、何千万払いましたというんだったら、これは全くの損じゃないですか。そのときは税金を返すんですか。
○鈴木国務大臣 先ほども申し上げましたが、相続税は相続等により取得した財産を全て金銭的な価値に置き換えて評価した上で課税するものであり、終身にわたって年金等を受給する権利については、相続時点における財産取得者の平均余命年数等を用いて評価することとされております。
その後、先生が今御指摘になりましたような場合、結果として財産取得者が相続時点における平均余命よりも前にお亡くなりになられた場合であっても、再評価して相続税を還付することは原則としてなされておりません。他方、結果的に平均余命を超えてお亡くなりになられた場合であっても、再評価して相続税を追加で課税することとしてはおらず、このような一律の評価方法は課税の公平性や納税者の便宜上の観点から合理性があるものと考えております。
○末松委員 その取得したという価額に対して相続税の対象となるわけですよね。まだ取得していないんですよ、二十年、三十年の間に遺族年金を払われるわけだから。
まだ取得していない財産に、何か数字で勝手に、いや、二十年生きるのが平均ですといって、そこで相続税をかけるというのはむちゃですよ。その数字だって全く人によって違うと言った、大臣も。それはすぐに亡くなる方もおられれば、多年にわたって生きておられる方もいるんだけれども、でも、それを、年金の元々の、相続税を含めて遺族年金には租税をかけないという、日本の場合、これの趣旨としては、相続される年金の遺族者が生活に困らないというような形をきちんと踏まえていかなければいけないんでしょうと。
それは、同じ日本人であって、日本政府からもらう年金と外国政府からもらう遺族年金、これはその個人にとっては全く同じ形態じゃないですか。それなのに、外国政府からもらう年金については相続税が、平均余命という勝手な概念をつくって、そしてかける、その時点で。それって本当に不合理ですよ、不条理だと思いますよ。
○鈴木国務大臣 先ほども申し上げていますように、相続税というものは、相続財産を全て金銭的な価値に置き換えて評価した上で課税するものでありまして、この受給する権利、いわば受給権、これも財産の一つでありまして、これを金銭的な価値に置き換えて課税をするわけであります。
ですから、課税されるということが原則でありまして、本来、国民年金であれ、厚生年金であれ、相続のときには課税されるというのが原則でありますけれども、特別に法律を作って、この禁止を、その課税をしないということを法律の中に書き込んでいるということであります。
○末松委員 だから、その法律に、外国政府から来る年金についても法律に書き込めばいいじゃないですか。
では、日本人が遺族年金をもらうときに相続は普通されるんだ、でも例外的にそれをしないんだということをやっているんだったら、逆に、日本人で日本政府からもらう遺族年金、これにしてもきちんとかけていくということが駄目だと、それをきちんと例外としてやっているんだったら、なぜ同じ日本人なのに外国政府からもらった遺族年金に対してきちんと法律に書き込まないんだと、同じように。
その趣旨は、遺族の方々が生活に困らないようにするということを言っているということを、きちんとさっき基本理念で厚労省が示したわけですよ。それなのに、何かいいかげんな平均余命という概念を持ち出して、あんたは何年生きるから、まずこの時点で、まだ取得する財産が確定していない、確定していない段階で相続税を取るというのは、本当にそこはインチキなやり方だと思いますよ。そう思いませんか。
○鈴木国務大臣 私が申し上げておりますのは、今の現状の考え方、法律の考え方がこうなっていますよということを申し上げているところでございます。
したがいまして、仮に外国政府による遺族年金についても日本の国民年金等に係る遺族年金と同一に扱うということ、そうする場合には、論点としては、外国政府による遺族年金については、年金制度全体や、その中での遺族年金の位置づけでありますとか、遺族年金の支給の水準とか、そういう論点はありますけれども、法律に規定すればそれは同じ扱いにすることができるわけであると考えます。
これは、厚生労働省において整理する必要があるのではないかと考えます。
○末松委員 厚生労働省、まずは財務省で整理する必要がありますよね。だから、そこは……(鈴木国務大臣「それは法律に書かなくちゃいけないから」と呼ぶ)そうそう、それはそうですね。年金法のね。分かりました。それはそれで、是非早急に検討していただいて、それは付加していただきたいと思います。
最後にちょっと聞きたいんですけれども、日本のような、こんな海外の遺族年金にその時点で相続税をかけるような海外の国の例はあるんですか。それをちょっと最後に質問したいと思います。
○鈴木国務大臣 諸外国の例でありますけれども、例えば相続税が存在するイギリスにおきましては、国外を源泉とする遺族年金を原則として相続税の対象とする相続財産に含めるものと承知をしております。また、イギリス以外の主要国につきましては、十分調べる時間がなくて申し訳なかったわけでありますけれども、アメリカ、ドイツ、フランスにおいて、国外を源泉とする遺族年金に係る相続税の扱いについて、法令上特段の規定が見当たらず、他の主要国における取扱いを一義的に申し上げることができないということであります。
○末松委員 調査にはいろいろと時間がかかるというのは分かるんですが、そこで、そんなに海外の例も、海外も自国の国民と同じような形で無税にしているということであれば、アメリカは無税にしていますけれども、それをきちんと、海外もきちんとやっているから、もうそれは政策を転換して、もっと公平にしようよということを心からお願い申し上げまして、私の質問を終わります。是非よろしくお願いします。
○津島委員長 これにて末松君の質疑は終了いたしました。
次に、伊東信久君。
○伊東(信)委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の伊東信久です。
本日は、植田日銀総裁にもお越しいただいていまして、今までもさんざんいろいろな方が質問されたんですけれども、まずは、長らく続けてきたマイナス金利政策やイールドカーブコントロールといった政策をなぜ三月のこの時期に解除したのか、教えてください。
○植田参考人 今回の決定会合では、最近の経済、物価、金融情勢、特に賃金と物価の動向をしっかりと点検いたしました。その上で、春季労使交渉の現時点の結果も含め、最近のデータやヒアリング情報から賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、先行き、私どもの経済物価見通しの見通し期間終盤にかけて、二%の物価安定の目標が持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断いたしまして、大規模な金融緩和の見直しを決定いたしました。
○伊東(信)委員 今までの総括も含めて、今後の見通しも含めて検討はされていたと思うんですけれども、本当にその必要性について、すとんとなかなか落ちるものではないとは思うんですね。
では、マイナス金利政策をやめたということで、それぞれの影響についてまずはお聞きしていきたいんですけれども、国民の皆さん、経営者でもなく、お勤めをやられていたり、若しくはお仕事をされていない一般の市民の皆さんというか国民の皆さんに、そういったところに与える影響について、これは財務大臣からお聞きしたいと思います。
○鈴木国務大臣 マイナス金利解除の家計や個人に対する影響ということでありますけれども、これは、将来の資金需給や経済情勢などのほか、今後の金融政策の内容について、関係者の多様な意見に沿って経済市場がどう変化し、人々がどのように行動するかにかかっていることから、一概に申し上げることは難しいと考えております。
その上で、個人や家計に影響を与えるものとして預金金利や住宅ローンなどの借入金利が挙げられますが、この点につきましては、植田日銀総裁は、当面緩和的な金融環境が継続すると述べられており、今回のマイナス金利解除を含む措置を受けて預金金利や借入金利が大幅に上昇するとは見ていないとも述べられていると承知をしております。
いずれにいたしましても、政府としては、今般の金融政策の変更を踏まえ、引き続き、今後の個人や家計の動向を注視していくとともに、デフレ脱却と持続的な経済成長に向け、経済財政運営に万全を期してまいります。
○伊東(信)委員 大臣、お水を飲んで、ちょっと落ち着いていただいたらいいと思います。
それぞれの国民の皆様というか、個人に関してはいろいろ状況もあるとは思いますし、住宅ローンの話もされていましたけれども、住宅ローンの話はちょっと後にまたお聞きしたいと思うんですけれども。
では、個人ではなくて、金融政策の転換が企業にどのような影響を与えるかというところで、特に、経済的に収益性が低く、財務基盤が脆弱な中小企業への影響をお聞きしたいと思うんですけれども、まず、日銀総裁、今回の金融政策の転換が中小企業にどのような影響を与えて、どのように対処していくか、お考えでしょうか。
○植田参考人 まず、中小企業の金融環境、中小企業の借入金利、金融機関から見れば中小企業への貸出金利でございますが、これは、金融機関側で今回の政策変更を受けて市場金利がどう動くかを踏まえて、金融機関の判断で設定されることになります。
ただ、先ほど申し上げましたが、今回の政策変更に伴う短期の金利の上昇は〇・一%程度にとどまりますし、また、長期金利についても、急激に上昇する場合は機動的にオペを打つという方針でございますので、今回の措置を受けまして、中小企業を含めて、貸出金利が大幅に上昇するとは今のところ見ておりません。
取りあえず。
○伊東(信)委員 植田総裁はそのように捉えているということなんですけれども、財務大臣はどのように捉えてはりますか。
○鈴木国務大臣 先ほども申し上げたところでありますけれども、金融緩和的な傾向は当面続くということでもございますので、急激な金利の上昇というのはないものと考えています。
○伊東(信)委員 お二人とも、急激な金利上昇はないということをお考えなんですけれども。
では、聞き方を変えますと、資料一を見ていただいてもお分かりだとは思うんですけれども、これは政策金利、各国のやつ、赤枠の中の右のところにも書いてありますけれども、やはり長い目で見ますと、リーマン・ショックのときもあるんですけれども、マイナス金利の前も実質金利はゼロ、ゼロ金利時代だったわけですね。そのゼロ金利時代にも貸出しは増えなかったわけでありまして、民間部門のやはり活力の弱さという根本的な問題もあったりもするわけなんですけれども、やはり一方で、低金利環境においても銀行がしっかりと企業を評価していたのかという、そういった疑問もあります。
資金需要が弱かったという原因だけではなく、与信審査が形式的になったりとか、収益性の高い資金需要を見逃している状況も、すなわち、銀行の目利きが発揮できなかったという事実もあると考えております。
改めて日銀総裁にお聞きしますけれども、マイナス金利のときでさえ、なぜ期待されたほど貸出しが増えなかったか、金利上昇時にこそ、銀行による貸出体制の変革、つまり、今からの変革が必要であると考えるんですけれども、この二点について総裁はどのように考えてはりますか。
○植田参考人 例えば、二〇一三年以降というような長期間で見ますと、その間の大規模な金融緩和によりまして日本銀行は大量の資金供給を行い、資金調達コストを低下させたり、金融資本市場の環境を改善するといった工夫をしてまいり、経済、物価に好影響を及ぼしてきたと考えております。
貸出残高でございますが、マクロ的に見ますと、二〇一三年以降、平均して前年比二%台のペースでは緩やかに増加してきております。さらに、足下、直近の二月ですと三・四%の増加になっていまして、ある程度資金需要の高まりに応える形で金融機関が貸出しを増やしている姿が見えるかなと思っております。
ただし、大分前の、例えば一九九〇年代あるいはそれ以前の民間の金融機関が貸出しを高い伸びで伸ばしていたというときに比較しますと、先ほどのような伸び率が低いことは事実でございます。これはマクロ的には、例えば人口減少などを背景に、日本経済の趨勢的な成長率が低下してきたということも反映しているかなと考えてございます。
○伊東(信)委員 どこと比較するかでお答えも変わってくると思いますし、九〇年代の、以前のバブルであったり、バブル崩壊であったり、リーマンであったりとか、コロナだったり、それぞれに、言い訳と言うたらあれかもしれないんですけれども、理由というのはあるとは思うんですけれども、金融緩和政策ですので、やはりそこはちょっと真摯に受け止めていただいたらと思うんですけれども。
大臣は、どのようにこの貸出しが伸びなかった理由についてお考えでしょうか。
○鈴木国務大臣 マイナス金利下で貸出しが増えなかったということでありますが、それなりに増えていたと理解をしております。
日本銀行の統計によりますと、超低金利環境下であった二〇一三年から二〇二三年までの十年間の金融機関の企業向け貸出しは三割以上増加しておりまして、こうした傾向は中小企業向け貸出しも同様であると承知をしております。
しかし、物価高騰、それから人手不足の影響等が見られる中で、コロナ禍で積み上がっていた既往債務の返済など、依然として厳しい状況に置かれている事業者も多いと認識をいたしております。
金融庁といたしましては、金融機関が事業者の置かれた状況や課題をしっかり把握をして、その実情に応じて、資金繰り支援にとどまらない経営改善、事業再生支援に取り組むよう促してまいりたいと思っております、今後の話でありますが。
○伊東(信)委員 そもそも貸出しがそんなに伸びなかったと認識されていなかったら、幾ら質問してもその理由はとはお答えにならないと思いますけれども、やはりちょっと、私自身もいろいろ、経営者でもありまして、医療法人といえどもやはり中小企業ですので、私の肌感としてはそういうことがあったと認識いただけたらと思うんですよね。
ちょっと総裁にもう一問御質問したいのは、このマイナス金利政策とイールドカーブコントロールとともにETFの購入についても終了されるということなんですけれども、これは二〇一〇年に始まりまして、二〇一三年に拡大したんですけれども、この開始と拡大の理由について、まず教えてください。
○植田参考人 開始と拡大の理由でございますね。
それは、私ども、常々申し上げてございますように、株式市場で時々、リスクテイク姿勢が極めて急激にしぼんでしまう、別の表現で言いますと、リスクプレミアムが急上昇するというような局面がしばしば見られました。これが、金融資本市場、あるいは、ひいては経済にマイナスの影響を及ぼすという効果を緩和するために、しばらく、あるいは足下まで、ETFをそういうときに購入するという制度を設けて時々実行してきたところでございます。
○伊東(信)委員 そうなんでしょうけれども、例えば、株価が下がったときに日銀がETFを買い入れてきたことは、投資家からすると、安くなったら株を買いたいという機会を奪っていたのではないかという指摘もあったりとか、今、含み益が出ている状態でしょうけれども、将来的に株価が下落すれば含み損が発生してしまうリスクというのもあると思いますし、今回終了しましたけれども、資料二にありますけれども、処分の指針を示してはおられないんですけれども、今後、日銀におけるETFの扱いについて、三点お聞きしていますけれども、まとめて総裁から、最後、お答えいただければと思います。
○植田参考人 現在保有しておりますETFの処分でございますが、これは、どういう方法が望ましいか、処分をするしないを含めまして、ある程度時間をかけて検討していきたいというふうに思っております。
なお、処分を行う場合には、これも時々申し上げておりますが、市場等の情勢を勘案して、まず、適正な対価によるものということが一つの大方針でございます。その上で、日本銀行の損失発生を極力回避すること、それから、市場等に攪乱的な影響を与えることも極力回避すること、これらを考慮して処分の指針を定めていきたいというふうに思っております。
○伊東(信)委員 今後考えていくというお答えで、今は決まってはいないというお答えだとは思うんですけれども、しっかりと、私が御指摘した投資家への影響とかそういったところも十分考慮していただいて、今後の処分の指針を決めていただいたらと思います。
総裁、ありがとうございます。これで退席していただいて結構ですので。
○津島委員長 どうぞ、総裁、御退室ください。
○伊東(信)委員 ありがとうございます。
では、財務大臣にお聞きしたいと思うんですけれども、住宅ローン金利についてもお話があったんですけれども、金利の上昇自体は、全体的には急激には行われないということですけれども、住宅ローンを借りられている方、この金利も変動金利と固定金利がありますけれども、七割以上の方が変動金利を選んではります。今まで変動がなかった金利の世界から、これから金利が変動する世界に移っていく可能性が十分あるということなんですね。
やはりライフステージの各段階において、住宅購入者というのは、長年にわたって、お務めの方も経営されている方も、住宅購入者が無理のない適切な選択をすることというのが、固定金利、変動金利もそうなんですけれども、今回のマイナス金利政策の解除が一般市民に与える影響、国民の皆さんにどのような影響を与えるかというのは先ほどの質問とかぶってしまうと思うんですけれども、国民の皆さんが無理のない適切な選択を可能とするための金融リテラシーというものそのもの自体を向上させる必要があると思うんですけれども、大臣、現状の認識と今後の施策実施の考えについてお聞かせください。
○鈴木国務大臣 住宅ローン金利を含め、金融経済環境が変化していく可能性がある中で、それぞれの方がライフプランに合わせて収支の見通しを立てたり、資産形成の手段を適切に選択できるようにするためには、伊東先生御指摘のとおり、金融経済教育、これを充実させることによりまして、国民の金融リテラシーを向上させることが重要であると考えております。
金融庁では四月に金融経済教育推進機構を設立することとしておりますが、この機構におきましては、社会人向けのイベント、セミナーの開催、中立的な立場に立った認定アドバイザーによる個別相談などを通じて、新NISAの話だけでなく、金利の動きが経済や家計の収支に及ぼす影響など、家計管理の在り方に係る知識も含め、幅広い分野の金融経済教育に取り組む予定であります。
機構を中心といたしまして、官民一体となってこうした取組を推進することで、国民が経済環境の変化に適切に対応できる金融リテラシーの向上を目指したいと思います。
○伊東(信)委員 社会人の話もされましたけれども、やはり学生の段階で、大学生と言わず、本当に高校生の段階でも、文部省管轄になると思いますけれども、そういったところもお願いしたいところであります。
大臣の中で、新NISAに限らずというところで、どうしても、NISAは一つのきっかけとしては、道具としてはいいとは思いますけれども、NISAに限らず、そういったところのリテラシーを上げるように重ねてお願いを申し上げます。
もう一問お聞きしたいところがありまして、私の地元というのは、大阪第十九区といいまして、関西国際空港があります。関空のお膝元なんですけれども、やはり、そこから降りられた外国人の観光客の方が結構な数です。
大阪府内、大阪市内、かなりの観光客で、先月二月には、関西国際空港の国際線の旅客数が百八十万人ということです。大阪における外国人の二月の観光客が百十万人ということで、これは過去最高らしく、コロナ以前も上回っているそうです。一番多いのが韓国の方、次に台湾の方、欧米の方のインバウンドが多くて、中国の方は春節でも鈍くて、逆に、吉村府知事もコメントしていますけれども、中国のインバウンドに頼らない、そういった変換ができるのではないかというところです。
ただ、逆に、そういったインバウンドの方、大阪においてはUSJに行かれる方が一番多いみたいで、その後、大阪城というところですけれども、大阪を拠点にして、京都や奈良の仏閣、神社、お寺に行かれる方も多いようです。
そこで、一つ指摘されているのが、オーバーツーリズムのリスクがありまして、いろいろ、やはり観光公害というところで。
やはり京都とか奈良とか、近畿圏なので行ったりしますと、すごい数の外国人の方が並んではるんですね。こういったところを解消するのに、一つのヒントは、韓国からの外国人観光客が増えているということで、昨年、日本維新の会の国会議員団で、韓国のIT化、DXの方の勉強で見学に、視察に行ったんですけれども、そこでやはりキャッシュレス社会の韓国の国を見ました。
ここで、そぐう、そぐわないの問題もあると思うんですけれども、そういった神社仏閣のキャッシュレス化を推進してはどうかという提案になるんですけれども、そもそも、文化庁として非営利活動による収入の把握というのはされているのでしょうか。
○津島委員長 文化庁小林審議官、申合せの時間が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。
○小林政府参考人 お答え申し上げます。
宗教法人につきましては、宗教法人法によりまして収支計算書の提出義務が原則として定められておりますが、お尋ねの非営利活動といいますか、いわゆるお布施やおさい銭のことについてだと思いますけれども、そういったものについて網羅的に、具体的な規模などについて、文化庁においては把握しておりません。
○伊東(信)委員 時間なので終わりますけれども、ちょっと分からなかったんですけれども、キャッシュレスになったからといって、今までお布施とかに課税されなかったものが課税されるわけではないという解釈でよろしいんでしょうか。
○津島委員長 国税庁星屋次長、時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。
○星屋政府参考人 お答え申し上げます。
宗教法人は、法人税法上、公益法人等に該当し、収益事業から生じる所得につきましては法人税を課することとされております。
キャッシュレス決済により金銭等を受領する場合におきましても、一般論として、それが物品販売等の収益事業に係るものであれば法人税の課税対象となりますが、おさい銭等の受領等の収益事業以外の事業に係るものであれば法人税の課税対象とはならないということで、決済手段がキャッシュレスか否かによって法人税の課税関係が変わるものではないということでございます。
○伊東(信)委員 確認できました。ありがとうございました。
終わります。
○津島委員長 これにて伊東君の質疑は終了いたしました。
次に、沢田良君。
○沢田委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の埼玉の沢田良です。
本日は、一般質疑ということで、ここまで議論でも何人かの委員が取り上げていらっしゃいますが、金融政策決定会合についての質疑をさせていただきます。
本日午前中には、参議院の予算委員会にて、我が党の東議員からも今回の政策決定について質問をさせていただいております。
先ほど伊東理事からも、マイナス金利政策の解除判断について、国民生活への影響なども含め議論がありましたが、私からは、特に金融政策決定会合における情報の管理の点についてお伺いをしたいというふうに思っております。
新NISAも始まって、国民の皆様に広く投資というものであり金融というものを呼びかけている、今だからこそ、情報管理というものが市場に与える影響、これは改めて私たちも責任と大きな力があるということを認識しなきゃいけないというふうに思っております。
そういった中で、国民の皆様が安心して投資ができる、そういう環境にしていくということが我が国にとってプラスになるというふうに思っております。
本日は、津島委員長を始め理事、委員の皆様、鈴木大臣始め金融庁の皆様、日本銀行植田総裁、委員部の皆様、本日もよろしくお願いいたします。
初めになんですけれども、報道が、本当に今回の、三月十九日の日銀政策決定会合について、リークがあったというようなことが当たり前だったというような感じで、かなり多くの報道がなされています。
基本的には報道ベースは、正常化ということにおいてよりも、今上がっている、株価が安定しているというようなことも含めると、かなり評価がいいということで、いいタイミングでやったということも含めて好意的に記事を書いているものが多いというふうに私は感じているんですけれども、やはり客観的に見たときにどのように感じるのかというところは、私たち扱う側にとっては常に細心の注意を払っていかなければいけないというふうに感じます。
例えば、ブラックアウト期間と呼ばれている期間中に多くの報道が出たこと、又は、日銀政策決定会合二日目の朝の二時、午前二時ですね、日経新聞からも報道が出たり、会合中にはNHKの報道が出たりと、いろいろと観測気球のように、いろいろな報道機関が今までの情報をもって上げているという見方もできるんですけれども、植田総裁になってから、前の黒田総裁が余りにも、黒田バズーカを含めてトリッキーでもあり、とにかく情報に対しては瞬発力を持った発信の仕方をされるということもあって、市場が大きく変動するということもあったことに比べると、どちらかというと丁寧に対話を続けられているという私は個人的なイメージを持っているんですけれども。
ただし、いろいろな報道は観測報道が明らかに多くなっているというふうに考えている方は多くて、市場参加者における会話でも、直前のリーク待ちというフレーズが当たり前のように使われている。それが植田流の政策運営という解釈が浸透している。
公開情報以外のリークと意図しない情報漏えいは私も問題があると思うんですけれども、私は、こういうふうに報道全体が、リークがあって当たり前、又は日銀の意思として、市場との対話の中で、先ほども言ったように、公開情報以外のリークであったり、意図しない情報漏えいというものが当たり前のように行われているというようなことを問題がないというような感じに、報道の中の各所に入っているんですね。
例えば朝日新聞の記事でも、日本銀行の幹部が銀行を回って、四月までには正常化の一部を動かしたいというようなことを言っているということを、あたかも事実のように報道しているという内容もあるんですね。そういうやり取りが日銀の方の幹部の方であったと。これはあくまで朝日新聞が言っていることですから、私もそこは全て正しいというふうには思いません。けれども、そういったことを自然に読み込めるような環境になってきてしまっているというふうになったことの、私が一番恐ろしいのは今後。
今のところ、総裁からの発言の中で強烈に、今ある状況に対して、情報をリークしているだとか、又はこういったことをリークする考えがあるとか、そういうことは全くないとか、そういうことであったり、又はそういうことがあった場合に処分をしていくというメッセージであったり、強い危機感のあるようなメッセージは出ていないというふうに思うんですね。
そうすると、市場参加者は、多くの方が今後もメディアが上げる観測気球に対して過剰に、要は正しいというふうに思って動き出すということが起こると、私は、今の日本が抱えている大規模金融緩和からの正常化という道のりの中で、相当に日本に期待されている、又は関心を持っているこの情報発信が、何度も何度も、日銀政策決定会合のたびに物すごく大きな不信感と大きな不安ということが起こってしまうということが起こってしまったら、やはり取り返しがつかなくなるのではないのかなというふうに思っているというのが私の問題意識として。なので、はっきりと、今日は総裁と議論をさせていただいて、リークがないということの旨を、確認できることを一つずつちょっと確認したいというふうに思っています。
まずは、今私が話した内容なんですけれども、総裁として、このようなふうに言われてしまっている現状であったり、総裁任期になってからこのような傾向があるということを、どちらかというと受け入れられてしまっている状況があるということに対しての認識、あったら教えてください。
○植田参考人 私ども、政策修正を市場に織り込ませるために、事前に特定の関係者にリークするというようなことは一切いたしておりません。
その上で、特に今回でございますけれども、もしも今回、まあ四月でも同じだったと思うんですが、政策変更があるとしますと、やや大きめの政策変更になるということが私どもの中では予想されました。それで、それを全てサプライズの形で市場に出すということになりますと、不測の影響を市場に及ぼすというリスクも感じられたわけでございます。
そこで、私どもは、政策の考え方、もしも政策変更があるのであれば、基本的にどういう考え方で行うのかという点について、事前に皆さんにとって平等な形で知らせることにはある程度のメリットがあるというふうに考えました。したがいまして、私ども、記者会見あるいは国会の答弁の場で、この基本的な考え方をできる限り分かりやすく説明してきたところでございます。
より具体的に申し上げますと、物価安定の目標の実現を見通せるか確認していく上で、今年の春季労使交渉の動向が一つの大きなポイントになること、それから、目標の実現を見通せる状況に至れば大規模緩和の修正を検討することになる、そして、政策を見直す際には、その前後で不連続な変化がなるべく生じないように配慮するということ、これらを申し上げてきたところでございます。
その上で、私どものこうした情報発信を基にして、さらに、直近では、最近の春季労使交渉の妥結、回答動向を踏まえた上で、報道各社がそれぞれの見方を示されたものというふうに、最近の報道については理解しております。
ただし、もちろん、引き続き厳格な情報管理の下で、日本銀行の考え方が適切に外部に伝わるよう努めてまいりたいと思っております。
○沢田委員 ありがとうございます。お口からリークではないということを聞けたので、まずここは安心をしたいなと。やはり、いろいろな市場との対話というのはあると思いますし、確かに黒田さんの頃に比べると、かなり丁寧に対話をなさっているなと。いろいろな情報発信をされている中で、それが全部手に入る方と、もちろん調べ切れない方もいらっしゃるとは思うんですけれども、それにしてもすごく丁寧にアナウンスをしていただいているというふうには感じます。
まずは、そこで思うと、ただし、では、今本当に日銀の情報管理はそれでも安心できるレベルにあるのか。何でこんなことを言うかと、例えば、私が前、同じような問題意識を持って十一月の十七日に質疑をさせていただいたときに一言申し添えたことが、競馬のジョッキーさんとかというのは、スマートフォンの利用禁止とか、要は、物すごい期間の間、いろいろなルールが物すごく厳しくあります。これは、競馬でいうと、昨年一番売上げがあったものが有馬記念で、売上げ五百二十一億円。それに比較すると、日経平均だけでいうと、平均売買代金は三・八兆円もあるわけですね。
すると、やはり私たちは、いわゆる情報の価値というもので考えたときには、桁違いの情報を持っている、預かっているというふうに考えたときに、一般的に私たちが知る、いわゆる例えばジョッキーさんのような、自分たちの情報を持っている人はこれだけ厳しい状況にいるのに、日本銀行はちゃんとそういう情報管理のためにどこまでやり切れているんだろうかということは、やはり一旦ここで確認をさせていただきたいんですね。
いろいろとちまたで言われていることも含めて、日本銀行の方で、このような件でよく言われるということも含めて、このような対応をしているという手段のことをちょっと簡単に御紹介いただければと思います。
○倉本参考人 お答えいたします。
日本銀行では、従前より、政策委員会の決定によりまして、各金融政策決定会合の二営業日前から会合終了当日の総裁記者会見終了時刻までの期間につきましては、国会において発言する場合などを除き、金融政策及び金融経済情勢に関し外部に対して発言しないこととしております。このため、当該期間中においては、御指摘のあったようなマスコミの取材は受けないということとしております。
これ以外の期間につきましても、マスコミや市場関係者と接触する場合には複数名で対応する、あるいは、接触の事実は記録するなどの措置を講じております。
また、金融政策決定会合中の情報管理といたしましては、会合を開催している会議室には携帯電話など通信機器を持ち込まないということにしておりますし、出席者に対して金属探知器による確認も行っております。
なお、やむを得ず外部と接触する場合には、通信ログを確認できる通信機器を使用している、そういう状況でございます。これに加えまして、会議室に不審者が近づいていないか監視カメラで確認するといった対応も行っております。
○沢田委員 ちょっと大事な部分が抜けていたので。要は、先ほどのジョッキーの話でいうと、今の日銀政策決定会合の会議中は携帯電話等が使えなくなっている、けれども、家に帰ったときは使えてしまう、会合が終わって帰るとですね。その間の履歴については管理ができているという話を、一度日銀の担当の方からお話を伺っているんですけれども。
それに付随してお伺いしたいのが、ブラックアウト期間、いわゆる、先ほど説明があったんですけれども、各金融政策決定会合の二営業日前から会合終了当日の総裁記者会見終了時刻までの期間をいうんですけれども、それにおいては、国会において発言する場合等を除き、金融政策及び金融経済情勢に関し外部に対して発言しないという期間なんですけれども、この期間中の履歴も全部確認できるとかということはやっているんですか。ちょっとそれも教えてください。
○倉本参考人 お答えいたします。
会合の出席者が持っています通信機器につきましては、必要な場合には確認できるという措置を講じております。
○沢田委員 済みません、ブラックアウト期間ですね。要は、日銀政策決定会合中については分かっているんですけれども、ブラックアウト期間も同じで大丈夫ですか。
○倉本参考人 お答えいたします。
今講じておりますルールは、基本的に会合中の情報管理をしっかりやるという観点でございます。
あと、先ほど御質問がありました一日目と二日目の会合の間がございますけれども、この間は会合期間中ということになりますので、この間に使われたログについては、必要に応じて確認できるということにしております。
○沢田委員 ありがとうございます。
ということは、ブラックアウト期間中の適用というのはないということになると思うんですけれども。私は、やはりこういった状況の中で一番大事なことは、リークをしない、していないという総裁の意見と、実際に、この現場での管理の体制、ここをしっかりした上で、もちろん、日本銀行としては出すつもりはないけれども、一部の人がこの情報を手に入れることでとてつもない利益を得られる、そういった状況であるのも事実なんですね。
よく、黒田砲なんという、黒田バズーカなんてありましたけれども、あれを見たときに、ツイッターで、破産した破産したというのと、大金持ちになったなんという意見がいっぱい載っていましたけれども、それと同様の、逆転をさせていく、いわゆる、これからの植田総裁の任期中には、もちろん経済が好循環していけば、これをどんどん逆回しにしていくとなると、それなりのパワーのある発言、情報というものがどんどん出ていくというふうに、全く逆の考え方で思っていかなければいけないというふうに思うんですね。
そうすると、当然、内部においても、情報の価値というものが、例えば日本銀行で処分されてでもやろうというような人が出てもおかしくないほど、大きな情報というものがどこかで出るということも私はあるというふうに思っています。
なので、このように、一般的な報道であったり、有識者の方であったり、多くの方が、今、リークされてしまっているんじゃないかということを当たり前のように受け入れてしまっている土壌の中で、私は、改めて、危機感を持って総裁の方で調査をするということをしていただくことが必要だというふうに思うんです。又は、調査はちょっと今の段階ではしようがないというのであれば、どのような理由で調査をしないのかというのも教えていただきたいというふうに思います。
○植田参考人 今回の決定会合の事前報道については、先ほど申し上げたように、私どもの情報発信を基に各社がそれぞれの見方を示されたものと理解しておりますので、現在、調査を行うことは考えておりません。
ただし、もちろん、引き続き、金融政策に関する情報の機密性に鑑み、情報管理に万全を期してまいりたいと思います。
○沢田委員 ありがとうございます。
一応、先ほどのお話なんですけれども、私が言ったブラックアウト期間の、あっ、大丈夫ですよ、続きを言いますか。どうぞ。
○倉本参考人 済みません、先ほど答弁いたしました内容をちょっと訂正させていただきます。
先ほど申し上げた会合中の通信ログの確認というのはもちろんやっておるんですけれども、加えまして、対外発言についての申合せ、ブラックアウトの遵守状況について確認する必要があるというふうに判断した場合には、通信ログの確認などを行うということをボードメンバーで同意しております。失礼いたしました。
○沢田委員 ありがとうございます。
是非、局長、そこについても、これから国民の皆様にも安心していただくという意味でも、私は、ブラックアウト期間中を含めて、一旦、いろいろな送信であったり、やり取りをしっかりと管理できるような体制をもう少し厳しくしていくべきだということは、総裁に是非お願いしたいなというふうに思っております。
そして、この情報は、やはり金融市場において物すごく大きな価値を持つものであり、そして、市場参加者にとっては、大変不安にもなれば、大変喜ばしい情報でもある、いろいろなパターンになると思うんです。これは、先ほどの日銀総裁の話も含めてなんですけれども、こういったリークがあるというようなことを世の中全体がうがってしまっている、そして、そういった中で、やはり公正な情報を管理していくというのがまさに金融庁の大きな役割だというふうに思うんですけれども。
現状として、金融担当大臣としては、このようなことがリークされているというふうに疑われてしまっている状況にあったり、また、そういったことに対する金融庁としてのどういった動きが必要なのかということに対して、御意見があったら教えてください。
○鈴木国務大臣 情報管理につきまして、先ほど来、日銀のお話を伺いまして、日銀ではかなりマニュアル的なものも作られて、情報管理を徹底してやっておられる、そういうことを感じました。
ただ、今回、様々な観測記事が事前に出たということは事実でありますけれども、新聞報道というのはもう競争でありまして、私もいろいろな経験がありますけれども、いろいろな情報を自分なりに組み立てて、それを臆測報道をされるということ、これは競争の中でやむを得ないことである、そういうふうに思っております。
ただ、仮定のお話として、そういうような情報が出ることによって、例えば、取引、株を始めですね、そういうのの公平性が損なわれることがあってはならないという御指摘であったと思いますが、それはそのとおりであると思います。
一般論として申し上げますと、金融商品取引法上、臆測記事を基に取引を行うこと自体、これは直ちに法令に違反するものではありませんけれども、仮に同法に規定する不正な手段等を用いて取引が行われた場合には、厳正に対処していくつもりでおります。
○沢田委員 ありがとうございます。
続きまして、日銀の展望レポートが四月に出るという話、先ほど階委員からもあって、四月ではなくなぜ三月なのかというところも分かったんですけれども。
やはり、三月において、私がちょっと気にしたいのが、今、植田総裁の方で、いわゆる大規模金融緩和、異次元の緩和についてのレビューを夏ぐらいをめどに出すというようなことが話になっているとは思うんですけれども、一体、あのことはどのように日銀の方で整理ができたのかということが分からない段階で、やはりそれを解除していくということがどういった効果を生むのかというのも、私たち、やはり皆さんよりかは知識不足な部分があるところで、思うんですね。
また、六月に中小企業の賃金の動向というのもかなり多く出る傾向にありまして、それもやはりしっかりと確認する必要があったんじゃないかなというふうに思うんです。
この二点においても、もし御意見あったら、総裁の方からいただきたいんですけれども。
○植田参考人 中小企業の賃金の方ですけれども、これは、厳密なことを申し上げますと、かなり後までデータを見ないと全体像は分からないということだと思います。
ただ、その中でも、中小企業、全体的にはある程度の収益が出ていること、それから人手不足という状況があるということ、それから、割と、特に大企業の賃金決定動向を参考にしつつ自分たちの賃金も決めていくという傾向があること、これらを総合しまして、三月の第一回の連合の回答のデータ及び過去のパターン等も見まして、中小でもある程度の賃上げが今年は進むのではないかというふうに判断した次第でございます。
それから、多角的レビューのことでございますけれども、これは、昨年四月以降、特定の政策運営の見直しを念頭に置いてやるのではなくて、時間をかけて過去二十五年間の金融政策運営を振り返り、将来の政策運営にとって有益な知見を得るということを目的として始めたもので、現在も進行中でございます。
各種の非伝統的金融政策手段の効果、副作用について、レビューの中で深い分析を行いたいというふうに考えてございます。
○沢田委員 時間となりましたので、最後の質問だけは外させていただくんですけれども、私は、今回、いろいろな判断をして日銀の方で動いていただいていることに対して、やはり敬意と、すばらしいなというふうに思っております。
植田総裁の方のこのレビューの件は、いろいろと専門家の方からは、形骸化するんじゃないか、余り先人たちのことは言えないんじゃないかという意見もあるんですけれども、是非今の日銀の総力を挙げて、私たちにとって次につながるようなレビューをいただければというふうに思っております。
今日はありがとうございました。
○津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。
次に、田村貴昭君。
○田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。
十九日、日銀は、大規模金融緩和策の一環として実施してきたマイナス金利政策の解除を決めました。アベノミクスの中心政策である異次元の金融政策は、円安と株高を招き、大企業や富裕層をより豊かにしましたが、一方で、労働分配率は低下し、実質賃金は、二〇一二年の四百五万円から二〇二三年の三百七十一万円に、三十四万円も落ち込みました。さらには、円安による物価高は、国民の生活や価格転嫁できない中小企業の経営に打撃を与えています。結局は、大臣に伺いますけれども、アベノミクス、格差拡大を招いただけではありませんか。
○鈴木国務大臣 一つの政策には光と影があるんだと思います。一九九〇年代のバブル崩壊以降、企業が賃金を抑制をし、消費者も将来不安などから消費を抑制し、結果として、需要が低迷してデフレが加速する悪循環が生じておりましたが、アベノミクスによる大胆な金融緩和は、機動的な財政政策と民間投資を喚起する成長戦略と併せて推進されたことによりまして、デフレでない状況をつくり、GDPを高め、雇用を拡大するなど、日本経済の成長に役割を果たしたと認識をしております。
その一方で、御指摘のとおり、格差が拡大したのではないか、大規模な金融緩和が開始されて以来、所得や資産の格差が拡大しているのではないか、そういう御指摘があるということは、これは承知をしております。こういうようなことに対しまして、税制や社会保障による再分配後の所得格差は、再分配前のものと比較して大きく抑制されておりまして、税制改正や予算編成を通じて、格差の問題は一定程度改善しているものと考えております。
また、株価などの資産価格の上昇が資産格差を招いているという御指摘もございますが、株価の上昇は経済活動の押し上げにもつながるものであり、幅広く国民に恩恵が及んでいるものと認識をしております。
政府といたしましては、経済成長の果実を適切に分配し、消費や投資を喚起することで次なる成長につなげるという成長と分配の好循環との観点から、格差の拡大や固定化の防止は重要な政策課題と認識しており、引き続き、格差の動向について注意深く見ていくとともに、必要な政策の推進に取り組んでいきたいと考えております。
○田村(貴)委員 超富裕層が史上空前の利益を享受したのは、これはもう事実であります。この問題は、また後に議論をしたいと思います。
インボイス、消費税について質問します。
十二月末時点で、免税事業者のうち、インボイス登録をするために課税事業者になった者が、法人では三十七万者、個人事業者では百六万者の計百四十三万者でありました。つまり、百四十三万者の免税業者が初めて消費税の確定申告を行うことになりました。
鈴木大臣は、この百四十三万者はどのように受け止めておられますか。想定の範囲内ですか。
○鈴木国務大臣 政府といたしましては、主に事業者向け取引を行っている百六十万者程度の免税事業者が、インボイス制度の導入に伴って課税転換する可能性があると想定をしてきたところであります。
昨年十二月末時点で、その九割弱に相当する、先生、百四十三万者と申し上げましたが、正確には百四十二だそうです、百四十二万者がインボイス発行事業者の登録を受けていることを踏まえますと、インボイス発行事業者の登録が必要な方には、順調に登録申請を行っていただいたものと考えております。
○田村(貴)委員 全体を見れば、副業やギグワークなどのフリーランスが拡大していて、一千万者以上の免税業者が影響を受けていると考えられます。現時点では、かなり免税業者が課税業者への転換を思いとどまっているのではないかと考えます。
二月十六日の本委員会で確認しましたが、新規課税事業者となった免税業者の消費税負担というのは、十一月末の登録者数百三十三万件で試算したところ、大体十三万円前後となります。多くは零細事業者であり、確定申告したものの、消費税を納税する資金がなくて、借金して納税したとの話も聞きました。
大臣、借金までして消費税を納税する、これはもう税の原則と言われる応能負担原則が機能していないのではありませんか。このことについて、大臣はいかが受け止めておられますか。
○鈴木国務大臣 インボイス制度の導入に伴って課税転換した方の税負担につきましては、納付すべき税額を売上税額の二割とすることができる三年間の特例を設け、激変緩和措置を講じているところであります。
その上で、国税当局におきましては、納税者から一括納付が困難との相談を受けた場合には、納税者の置かれた状況に配意をし、親切丁寧に対応するとともに、納付能力調査を中心として納税者の実情等を十分に把握した上で、法令等に基づき猶予制度を適切に適用することとしている、そのように承知をしているところでございます。
○田村(貴)委員 現実には、お金を借りて納税しなければならないという中小事業者、フリーランスのその苦悩に、やはり財務省は、財務大臣は心をはせるべきじゃありませんか。
特例措置があると言われました。しかし、僅か百五十万円の所得の人が、年金や健康保険料などを納付した上で、そしてまた消費税の納税ですよ。これがいかに重い負担であるか。このことについて更にお話を進めていきたいと思います。
私、二月の質疑で、去年十月、ストップ!インボイスが行ったアンケート調査を紹介しました。インボイスに殺されるという声を紹介しました。もう生きてはいけない、まさに死活問題に直面している事業者、フリーランスの方がたくさんおられました。相当深刻です。
そしてさらに、ストップ!インボイスが三月二十二日から始めた、インボイス制度開始後における価格転嫁と確定申告に関する実態調査を行いました。開始僅か四日間で四千件を超える回答が集まったというのであります。この数にも驚きですね。相当事業者は困っているということではないでしょうか。
そして、その調査結果は今集計中というふうに伺っていますが、直近、インボイス問題検討の超党派議員連盟に寄せられた情報では、今回の回答者の九割超の方が、改めて制度の見直しや中止を望んでいる。九割がインボイスをやめてくれと言っている。そして、登録した事業者の六割が、新たに発生した消費税や事務負担に対して、価格が転嫁できない、売上げや貯蓄を減らして対応しているということでありました。さらに重要なことは、借入れをして補填していると回答した人が百を超えているということであります。
大臣は、この国会においても、取引先から不当な扱いを受けているといった声も届いている、これは事実でありますと答弁されましたよね。だったら、確定申告で顕在化したこの深刻な実態を、まずは事業者から聞き取るべきではありませんか。
さらに、経理の負担も事務負担も増えている、借金までして納税している、免税業者は取引停止に遭っている、取引価格を下げられた、たくさんの問題が起こっていますよね。確定申告で見えてきた事実があります。そして客観的に、事業者が本当に耐えられないと訴えている事実があります。実態調査を行うべきではありませんか。聞き取りをして実態調査を行う、それぐらいしないといけないんじゃないですか。
○鈴木国務大臣 田村先生の今の御指摘の中で、経理の事務負担がかなり重いという御指摘もあったところであります。
この経理の事務負担につきましては、インボイス制度の導入に当たって、受領したインボイスの登録番号が有効かを会計ソフト上で自動的に確認するための仕組みを国税庁が提供しているほか、IT導入補助金の拡充等によりそうした会計ソフトの導入等を後押しするなど、業務の効率化に資する支援を行っております。また、税制におきましても、簡易課税、二割特例や少額特例によりまして、売手、買手の双方における事務負担に配慮をしているところであります。
先生から、実態調査をすべきである、こういうお話がございましたが、事務負担が想定以上に重いといった御指摘につきましては、民間のアンケート調査などを分析をしているほか、各省庁において事業者が実務上抱える課題等について把握に努めているところであります。
把握した課題に対しましては、ただいま申し上げた特例措置などの更なる周知を含め、引き続ききめ細かく、そして丁寧に対応してまいりたいと思っております。
○田村(貴)委員 大臣、その答弁は何度も聞いてきたんですけれども、やっている施策とか支援策が功を奏しているんだったらこれだけの悲鳴は上がってきませんよ。そして、本当に今困っておられる方にやはり耳を傾けないと、これからの支援策も決まっていかないじゃないですか。今のままでいいんですか。
私は、やはりここに財務省は組織を挙げて、そして国税庁は組織を挙げて事業者の声を聞く、そして寄り添う、更に支援策を強める、私たちはインボイスは反対だけれども、今困っている人たちをやはり救済するのが行政の仕事じゃないですか、そのことを強く要求したいと思います。
次に、FIT制度とインボイスの問題についてもお尋ねします。
昨年FIT制度で再エネ電力を購入した電力会社が仕入れ税額控除ができなくなる分について、FIT賦課金で補填することになりました。そして、五十八億円が電気料金に上乗せされました。すなわち、国民負担となったわけです。
経済産業省は、三月十九日、来年度のFIT賦課金の確定を公表しました。そのFIT賦課金には、昨年と同様、仕入れ税額控除ができなくなる分の電力業者の補填相当分は含まれているのですか。含まれているのならば幾ら上乗せになったか。これは総額で結構ですので、回答してください。
○山田政府参考人 お答え申し上げます。
FIT制度の御指摘でございますが、再エネ導入を促す観点から、法律上、電気事業者に対して再エネ電気の買取りを義務づけております。インボイス制度の開始後、仕入れ税額控除ができない場合には、再エネ電気を買い取る義務のある電気事業者に新たな消費税負担が生じることとなります。
こうしたインボイス制度の導入に伴う買取り義務者への影響を抑制するために、まずは、課税事業者であるFIT認定事業者に対してインボイス登録をしていただけるように周知に取り組んでいるところでございます。具体的には、全FIT認定事業者に対してメールやはがきを随時送付するとともに、検針票やウェブ明細等を通じて電力会社から再エネ発電事業者に対して連絡を行っているところでございます。
その上で、それでもなお、FIT制度に基づく再エネ電気の買取り業務を行う中で、仕入れ税額控除ができないことによってやむを得ず生じる負担分につきましては、法律に基づく再エネ電気の買取りが困難とならないよう、資源エネルギー庁の審議会での議論を踏まえて、二〇二三年度及び二〇二四年度については、FIT制度において再エネ賦課金から手当てすることとしております。
また、二〇二四年度の賦課金の算定におきまして、インボイス制度による追加的な負担の手当てに必要となる金額については、最新の実績データから通年分として約百六億円と見込んでいるところでございます。
○田村(貴)委員 鈴木大臣、先ほど、中小業者、フリーランスの方が死活問題、本当にインボイスで苦しめられているというお話をしましたね。しかも、意見聴取も行わない、そして実態調査もやらないというお話だったんですよ。そんな人たちに、この話を聞いたら、本当に激怒されますよ。
電力会社の消費税負担を電気料金で賦課することに多くの国民は納得していません。私、去年この問題を取り上げたら、おかしいじゃないかという声が本当にたくさん上がっています。それでなくても、実質賃金がマイナスを続ける中で、水光熱費の増加は家計を圧迫する。とりわけ低所得世帯の生活困窮の原因の一つになっています。
電力会社大手十社は、関電、中電の過去最高の当期利益が成り、各社の経営は完全に復調しています。仕入れ税額控除分の消費税を納税できないほど、経営は苦しい状況ではありません。インボイスによる負担を国民の電気料金に転嫁すべきではないと思いますが、経産省、いつまでこれをやるんですか。もうやめるべきじゃないですか。
○山田政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたけれども、インボイス制度開始当初となる二〇二三年度及び二〇二四年度におきましては、資源エネルギー庁の審議会での議論を踏まえて、インボイス制度の下でFIT制度に基づく再エネ電気の買取り業務に伴って生じる追加的な負担について、FIT制度において手当てすることとしております。
こうした中で、先ほども申し上げましたけれども、この追加的負担を最小化すべく、まずは買取り義務者の協力の下で、課税事業者のインボイス登録に関する周知に取り組んでいるところでございます。
二〇二五年度以降の方針につきましては、今後審議会での議論を踏まえて決定することとしておりまして、課税事業者のインボイス登録状況等も踏まえつつ判断してまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 インボイスのために課税業者にならざるを得なくなった多くの免税事業者には、もう本当に手当てがない。百五十万円程度の所得の人が十三万円も消費税を払わなくちゃいけない。その一方で、過去最高の利益を稼いでいる東電や九電、電力会社には百億円、百六億円ですか、補填してやる。これは逆立ち政治の極みですよ。支援する方向が違うんじゃないですか。
鈴木大臣、全てはインボイス制度がもたらしている問題です。こんなでたらめな仕組みを認めてはいけないと思います。大臣、いかがですか。
○鈴木国務大臣 インボイス導入に当たっての経過措置といたしまして、インボイス発行事業者でない者からの仕入れであっても、インボイス制度開始後も三年間は八割、その後三年間は五割の仕入れ税額控除が可能とされておりますので、電力事業者への影響も緩和されているところであります。
その上で、ただいま資源エネルギー庁から丁寧に御説明があったところでありますが、再生可能エネルギーの導入拡大に影響が生じてはならないという観点から、FIT制度において再生可能エネルギーによる発電分を買い取る際に仕入れ税額控除ができない分を補填するとの判断がなされたものと承知をしております。
このインボイス制度を踏まえたFIT制度における今後の対応につきましては、もう既に資源エネルギー庁から御説明があったところでございます。
○田村(貴)委員 強きを助け、弱きをくじく、こういう政治でいいんでしょうか。
出力制御についても質問します。
昨年、出力制御が大幅に増加して、太陽光パネル発電に投資してきた事業者は予定していた収入が得られず、大問題になっています。私、九州のあちこちで話を聞いてきましたけれども、事業資金のローンの返済ができない、倒産、廃業の危機に直面している、退職金で投資したものの、収支が赤字になって老後の生活が苦しくなってきた。自然エネルギーの普及に尽力をされてこられた方々ですよ。こうした事業者、個人を破綻させて、今後、再生可能エネルギーの拡大、これは阻害要因になります。カーボンニュートラル目標も遠のいてまいります。
経済産業省岩田副大臣にお伺いいたします。二〇二三年四月から十二月末までの再エネ出力制御電力量は幾らですか。出力制御日数は何日になりましたでしょうか。
○岩田副大臣 お答えをいたします。
二〇二三年の四月から十二月末までの再エネ出力制御の実績は、本年三月の集計時点におきまして、出力の制御量が北海道、東北、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄エリアの合計で十五億六千九百六十一万キロワットアワー、出力制御の日数は、北海道、東北、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄エリアの合計で二百二十九日となっております。
なお、この日数につきましては、同日に複数のエリアで出力制御があった場合には、それぞれの日数を一日と計上しているところです。
○田村(貴)委員 再エネを最大限増やすというのが政府の考え方ですよね。でも、出力制御で電力を大幅に捨てる、再エネのエネルギーを捨てるというのは、これは政府の方針と矛盾するじゃないですか。脱炭素政策に反しているじゃないですか。
岩田大臣も九州です。私も九州です。再エネを抑制して、出力制御をして電気を捨てている一方で、原発はフル稼働じゃないですか。しかも、出力制御は去年の真夏でもやったんです、八月でもやったんですよ。止めるべきは原発じゃないですか。
もうそれだけ需給バランスが崩れているんだったら、原発を止めても電気は足りている、そういう認識じゃないんですか。優先給電ルールをやはりこの際見直すべきではありませんか。そして、再エネの事業者に、今困っている、出力制御で売電収入が入らない、そうした事業者に対してちゃんと支援を行うべきじゃないですか。そのことについて、見解はいかがですか。
○津島委員長 岩田経済産業副大臣、時間が経過しておりますので、答弁は簡潔に願います。
○岩田副大臣 はい。
再エネの出力制御につきましては、電力の安定供給を維持しつつ、再エネの最大限の導入を進めるために必要な措置でありますが、このことで再エネの導入の妨げとなってはならない、このように考えております。
このため、経産省では、昨年末に、出力制御対策パッケージに基づいて包括的な対策を講じております。蓄電池の導入支援、デマンドレスポンス推進のための電気料金メニューの多様化、そして火力発電の最低出力の引下げ、また地域間の連系線の整備など、こういったところに取り組んでおるところでございます。
こういった出力制御のパッケージをしっかりと進めていくことで、この対策を徹底してまいりたいと考えております。
○田村(貴)委員 終わります。
○津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。
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○津島委員長 次に、内閣提出、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。
趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣鈴木俊一君。
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国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案
〔本号末尾に掲載〕
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○鈴木国務大臣 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。
国際通貨基金は、加盟国の出資を主な財源として、対外的な支払い困難に陥った加盟国に対して資金支援を実施することを主な業務とする国際機関であります。加盟国が直面する様々な危機への対応に一層貢献できるよう、同基金の融資能力を強化することを目的として、昨年十二月、同基金において、増資が合意されました。
政府としては、同基金が果たす役割や増資の重要性に鑑み、第二位の出資国として増資の早期実現に積極的に貢献していくため、本法律案を提出した次第であります。
本法律案の内容は、我が国から同基金への出資額の上限について、現行の三百八億二千五十万特別引き出し権に相当する金額を四百六十二億三千八十万特別引き出し権に相当する金額に改めるための措置等を講ずるものであります。
以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。
何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
○津島委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
次回は、来る四月三日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時四十分散会