衆議院

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第16号 令和6年4月10日(水曜日)

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令和六年四月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 津島  淳君

   理事 井上 貴博君 理事 金子 俊平君

   理事 鈴木 馨祐君 理事 塚田 一郎君

   理事 稲富 修二君 理事 櫻井  周君

   理事 伊東 信久君 理事 稲津  久君

      石原 正敬君  英利アルフィヤ君

      小田原 潔君    大塚  拓君

      大野敬太郎君    加藤 竜祥君

      勝目  康君    木原 誠二君

      岸 信千世君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    高木  啓君

      藤丸  敏君    藤原  崇君

      古川 禎久君    本田 太郎君

      宮下 一郎君    宗清 皇一君

      山田 美樹君    若林 健太君

      階   猛君    末松 義規君

      野田 佳彦君    馬場 雄基君

      原口 一博君    沢田  良君

      藤巻 健太君    掘井 健智君

      竹内  譲君    中川 宏昌君

      田村 貴昭君    吉田 豊史君

    …………………………………

   内閣府副大臣       井林 辰憲君

   財務副大臣        赤澤 亮正君

   財務大臣政務官      瀬戸 隆一君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      井上 俊剛君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 吉田 雅之君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星屋 和彦君

   参考人

   (日本銀行総裁)     植田 和男君

   参考人

   (日本銀行理事)     高口 博英君

   参考人

   (日本銀行理事)     加藤  毅君

   参考人

   (日本銀行理事)     清水 誠一君

   財務金融委員会専門員   二階堂 豊君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  英利アルフィヤ君   勝目  康君

  越智 隆雄君     加藤 竜祥君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 竜祥君     本田 太郎君

  勝目  康君     英利アルフィヤ君

同日

 辞任         補欠選任

  本田 太郎君     高木  啓君

同日

 辞任         補欠選任

  高木  啓君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――

津島委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁植田和男君、理事高口博英君、理事加藤毅君、理事清水誠一君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁証券取引等監視委員会事務局長井上俊剛君、法務省大臣官房審議官吉田雅之君、国税庁次長星屋和彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

津島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

津島委員長 去る令和五年六月二十七日及び十二月十五日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁植田和男君。

植田参考人 日本銀行は、毎年六月と十二月に通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出しております。本日は、最近の経済金融情勢と日本銀行の金融政策運営について詳しく御説明申し上げる機会をいただき、厚く御礼申し上げます。

 まず、最近の経済金融情勢について御説明いたします。

 我が国の景気ですが、一部に弱めの動きも見られますが、緩やかに回復しています。輸出は横ばい圏内の動きとなっています。企業収益が改善する下で、設備投資は緩やかな増加傾向にあります。雇用・所得環境は緩やかに改善しています。本年の春季労使交渉では、昨年に続き、しっかりとした賃上げが実現する可能性が高まっています。個人消費は、物価上昇の影響に加え、一部メーカーの出荷停止による自動車販売の減少などが見られるものの、底堅く推移しています。先行きは、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けると見ています。

 物価面ですが、生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰しつつも残る下で、サービス価格の緩やかな上昇も受けて、足下は二%台後半となっています。先行きについては、今年度は二%を上回る水準で推移し、その後はプラス幅が縮小すると予想しています。この間、消費者物価の基調的な上昇率は、展望レポートの見通し期間終盤にかけて、二%の物価安定の目標に向けて徐々に高まっていくと考えています。

 先行きのリスク要因を見ますと、海外の経済、物価動向、資源価格の動向、企業の賃金、価格設定行動など、我が国経済、物価をめぐる不確実性は極めて高い状況です。その下で、金融為替市場の動向や、その我が国経済、物価への影響を十分注視する必要があると考えています。この間、我が国の金融システムは、全体として安定性を維持しています。先行き、内外の実体経済や国際金融市場が調整する状況を想定しても、我が国の金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどを踏まえますと、全体として相応の頑健性を有しています。より長期的な金融面のリスクとしては、金融機関収益への下押しが長期化いたしますと、金融仲介が停滞方向に向かうおそれがある一方、利回り追求行動などから、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあります。現時点ではこれらのリスクは大きくないと判断していますが、先行きの動向を注視する必要があります。

 次に、金融政策運営について御説明申し上げます。

 日本銀行は、先月の金融政策決定会合において、各種のデータやヒアリング情報から、賃金と物価の好循環の強まりが確認されてきており、先行き、見通し期間終盤にかけて、二%の物価安定の目標が持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断しました。その上で、これまでの長短金利操作付量的・質的金融緩和の枠組み及びマイナス金利政策は、その役割を果たしたと考え、金融政策の枠組みを見直しました。具体的には、政策金利を無担保コールレートオーバーナイト物とした上で、これをゼロから〇・一%程度で推移するよう促すことなどを決定いたしました。

 日本銀行は、引き続き二%の物価安定の目標の下で、その持続的、安定的な実現という観点から、短期金利の操作を主たる政策手段として、経済、物価、金融情勢に応じて適切に金融政策を運営してまいります。現時点の経済、物価見通しを前提にすれば、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えています。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

津島委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤丸敏君。

藤丸委員 本日は、久々に質問に立たせていただきまして、ありがとうございます。また、日銀の皆さんには、政策決定会合ではお世話になりました。ありがとうございました。

 本日は、二問お聞きいたします。

 経済分析ですが、難しい偏微分等を使う分析ではございませんので、経済原論のレベルの話でありますので、植田総裁、植田大先生にお答えいただくレベルではございませんので、日銀の理事さんの方でお願いいたします。

 まず、一ページ、これももう三、四年前に出したのと同じ、本当は更新したかったんですが、なかなか時間がなくて、できなくて。

 一問目は、普通に考えると、マネタリーベースを日銀が増やす、そうすれば次はマネーストックが増える、そうしたらばGDPが増えておかしくないわけであります。その目的でやっているわけであります。

 例えば、下の赤い折れ線グラフがマネタリーベース、太い線が日本、ドットの大きいのはアメリカ、点々々がEU、それから、オレンジがマネーストック、当然それが増えてくる、そして青い棒グラフがGDPということになります。

 これを見ると、アメリカのドットは、例えば二〇〇八、リーマンを見ると、ぴゅっと赤いマネタリーベースを増やす、そうしたらまたマネーストックも増えていっている。常態でずっと増えてはいっております、アメリカは。ヨーロッパは、いろいろ国が別にありますので、一概的に、いろいろな要素を含んでおりますので、簡単にはならないと。

 ですから、日本はなぜ、アメリカは順調にマネタリーベースを増やす、マネーストックが増える、GDPに影響するというふうになっているんですが、なぜこうなっていないかという見解をお聞きいたします。

清水参考人 お答え申し上げます。

 まず、前提となります、私どもの二〇一三年に導入いたしました量的・質的金融緩和、またその後導入いたしましたマイナス金利政策などを含みます大規模な金融緩和でございますけれども、これらは、主として、実質金利の低下を通じて経済、物価の押し上げ効果をしっかりと発揮したものというふうに評価してございます。

 もっとも、賃金、物価が上がりにくいことを前提とした慣行や考え方が根強く見られる下で、二〇一〇年代後半にかけては、経済活動が改善した割には物価上昇率の改善が小幅にとどまってきたということでございます。この点、米欧と比べまして、我が国の名目GDPが先生御指摘のとおり伸び悩んできたということになりますけれども、その背景としましては、そもそもの潜在成長率に差があることに加えまして、今申し上げましたとおり、我が国の物価の伸び率が小幅にとどまってきたということも影響しているかというふうに認識してございます。

藤丸委員 それで、次のページを。日本は、これは四つ書きましたが、普通は手書きで書いているんですが、それを出すのはみっともないといって事務所が作ってくれたんですけれども、Cだけを見てもらえばいいと思うんです。

 C、日本の現状ということで、日銀は、イールドカーブコントロール、ゼロ金利にできるだけ抑えるイールドカーブ、マイナス金利も導入しています。つまり、そのままだと当座預金にみんな預けちゃって、低いけれどもそれで稼ごう、そんなことをするなよということでマイナス金利、こっちへ持ってくるなよということでマイナス金利。プラスアルファ、マイナスのマイナス金利までやってくれていましたよね、マイナスのマイナス金利。何と言ったかな、要は、分野に、普通は当座預金はマイナスなんだけれども、そういうものに関してはちょっとプラスにしてやるよと、マイナスのマイナス、と僕は言っているんですけれどもね、金利まで導入しているにもかかわらず総需要が増えていかない。

 一体これは何なのかというふうに思っているんですが、これは一体何かというと、僕は企業の怠慢だと思うんですよ。実は、マイナス金利のときに、普通はそこで大きく借りて勝負しなきゃ、いつやるんだと。だから、企業の怠慢と言ったらちょっと言い過ぎですよ、短絡的に言えば。役員にやる気がないというのもちょっと言い過ぎだと思います。はたまた、アメリカと違って株主が優し過ぎるのか。もっと元気出してばんばんやれと。つまり、日本が成長するためには魅力ある企業をつくらなきゃならないわけです。

 今、金融庁もこの間、プライムとかスタンダードとかグロースとか、市場改革をやってくれています。東証も、ROEとかROAとかBPSとかいろいろな指標を使って市場を活性化させよう、余りぬるま湯じゃ駄目だよということを言ってくれておりますので。資本主義は魅力ある企業が生まれてくるということが前提でありますので、そういうふうに持っていかなければならないというふうに思っております。

 ただ、Dをちょっと見ると、まあイメージ図ですからね、これは。スティグリッツさんが言っていたのが、アメリカは、ここに書いてあるように、エネルギーとか流通コストとか人手不足のインフレなので、本来的な生産活動が旺盛で物価が上がっているわけじゃないわけなので、余り金利を上げるのはいかがなものかというふうなことを言っておりましたが、僕もそれはそういうふうに思っている。というのは、エネルギーとかそういうのが落ち着いてくると元に戻ってくるわけですから、余りそれに急に反応し過ぎるのはいかがなものかということをスティグリッツさんが言っているのを私は見たことがあります。

 次に、次のページですね。今までの話は、魅力ある企業を生み出さなきゃ駄目だということなんです。二つ目、三ページを見てもらいますと、これも前に一回、三、四年ぐらい前に出したやつなんですが、一応更新はしています、二二年まで。そうすると、アメリカのこの右肩上がりは、私の分析では、八〇年代は、下に赤い色で書いている四〇一k、DBからDCが始まりました。これはバランスシートに載せなくていいという利点がありますので、DBからDCに移ったことによって、この十年間で、これはひょっとしていいんじゃないかというふうにみんな思ったと思います、アメリカの人は。

 九〇年代には、九〇年になるとアメリカがコンピューター化します、市場が、市場というか取引所が。そうすると、最初、九〇年の頭の頃はマックの小さいのを買って、みんな直接株をやり始めたらしいんです、個人が、アメリカで。九五になると、ウィンドウズ95がはやってきてやりやすくなったということで、みんな株を買い始めた。これが、僕は右肩上がりになった一因だと思っております。しかしながら、ITバブルでちょっと落ちたというのがこの二〇〇〇年前の話であります。

 それから、デリバティブが盛んになってきます、アメリカは。前回、三、四年前にその証拠になるエビデンスを出したと思うんですが、デリバティブが毎月ぐっと増えてきます。それで米国はぐっとまた上がるんですが、そこでリーマン・ショックが起こってまた下がる。それから先進国は世界的な大金融緩和を行って、GAFAが登場してこういうふうなグラフになったというふうにいつも言っているんですが、大体、証券業協会でもそういう話をして、そうだと、おかしいという意見は出てこないんですが。

 日銀は、その見方をどういう分析をしているか、お聞かせ願います。

清水参考人 お答え申し上げます。

 米国の株価ということへの御質問かというふうに理解してございます。もちろん、日々の株価の動きについてのコメントは差し控えたいというふうに思ってございますけれども、やや長い目で見た場合に、米国の株価が非常に好調であったという背景には、投資家からの米国経済への成長期待、また、個々の企業収益への改善期待のようなものが強く働いていたというふうには認識してございます。

藤丸委員 つまり、アメリカがDBからDCになるときに、これも三、四年前のときに証拠をつけているんですが、大体八百万、八百万くらい口座が日本はあるんですけれども、七百何十万、八百何十万。しかし、DBからDCになるとバランスシートから取れますから、アメリカにとってはいいんですよ。その代わり、そこの負債分もつけて移動しなきゃいけないから、簡単にはできない、お金が要るという状況になっていました。アメリカは、右肩上がりの、株が強い、毎月、給料から市場にお金が入るという仕組みがここででき上がる。そうすると、もう九〇年代になると、コンピューターでみんな買うようになって、その動きが強くなっている。だから、例えばITバブルになったり、リーマン・ショックが起こったり、長くは続かないんですよ、買いが強いから。

 というように日本も持っていきたいと思って一生懸命頑張ったのがNISAです。皆さんの協力で賛同を受けたので、がんと、アメリカみたいな、四〇一kみたいにがんとはなっていませんが、ある程度、がんとなる。

 次に考えているのが、年金のDC、iDeCo。これを、次の税制で改革をして、少し拡大することによって、その流れを強めようという魂胆であります。

 四ページ。四ページは、去年の暮れまで、つみたてNISAがそのままできたときの話です。つみたてNISAは二〇一八年から始まっております。これを、毎月三万円、ずっと毎月投資をした場合、どういうふうになったかという話です。

 次のページは、一般NISA。一般NISAは、二〇一四年から始まって、最初の二年間は百万、百万が上限でした。次の三年間が百二十万、百二十万、百二十万、これで打ち止めです。だから、灰色のところは、もう積立額は上がっておりません。しかし、そのまま置いているから、ずっと運用益が上がってきて、こういうふうになったというわけでございます。

 ですから、二つ目、私が言いたいことは、もちろん一つ目の魅力ある企業ができるというのが前提ですけれども、二つ目としては、アメリカのように買いが強い、給料から毎月市場にお金が入る、買いの強い、右肩上がりの市場をつくるというのが目的で、そのためには年金のDC、iDeCo改革を次にやっていきたいというのが私の思いでございますので、皆さんの御賛同も何とぞよろしくお願いいたします。

 最後の六ページは、昔、七、八年前かな、作ったのをそのまままた持ってきたんですが、悪いばかりではないというのと、いろいろこれを見ると、低金利が、一番下の黄色が金利の話ですけれども、一九九五年から低金利が日本は始まっておりますので、最初の十年、十五年はその痛手を負ったんですから仕方ないとしても、それから本当は立ち上がって成長期に入るべきじゃなかったのかというふうな思いがしているところでございます。

 終わります。

津島委員長 これにて藤丸君の質疑は終了いたしました。

 次に、中川宏昌君。

中川(宏)委員 公明党の中川宏昌でございます。よろしくお願いいたします。

 今日は、日銀報告に対する質疑ということで、国民の皆様の生活に密着した部分を中心にお伺いをさせていただきます。

 今回の日本銀行の金融政策の変更は、様々なメディアや論評で、日本銀行が金利のある世界へ踏み出したとして、異次元の金融政策から大きく政策転換をし、いわゆる普通の金融政策に移行したと報道をされております。

 今回、日銀は、二%の物価安定の目標が持続的、安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったとして、マイナス金利政策を解除し、十七年ぶりに利上げに転じましたが、これから大事なのは、金融政策の正常化を円滑に進めるため、金融市場の動向を的確に見極めながら、もし変化があれば、迅速に効果的な対策を講じていくことであると思います。

 同じ質問がなされておりますが、この物価目標の達成が見通せる状況といっても、不確実性が高い状況であることを認めて、一方で、経済、物価情勢が依然として弱いので、当面、緩和的な金融環境が継続するとして、金融市場が短期金利の引上げなど追加の政策修正への観測を過度に強めないようにと言っております。

 この二%目標は変えず、緩和的環境も必要ということに対しては、一部の評論家などでは、日銀の説明が矛盾していると指摘もあるところでございます。しかし、私は、この論評は当たらないと思っております。

 そこで、これから金融政策の正常化を進めていくために、この点も含めてどのようにしていくのか、植田総裁に御見解をお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

植田参考人 私ども、三月の決定会合では大規模金融緩和政策の見直しを決定したわけでございますが、その背景としての考え方をもう一度確認させていただきますと、インフレ率、消費者物価の上昇率から一時的な変動による部分を除いたところを基調的な物価上昇率と呼んだりいたしますが、これが、現在ではまだちょっと二%を下回ると見ています。これは、別の表現をすれば、賃金と物価の好循環に根差した物価の動きのところということでございますが。しかし、その会合で、様々なデータを、さらにヒアリング情報等も吟味した結果、この部分が遠くない将来に二%に向けて着実に上昇していく可能性が高いという判断に至りまして、政策の変更に至ったところでございます。

 しかしながら、最初に申し上げましたように、現状ではまだちょっと二に届いていないということですので、二に向かって持続して上がっていく動きをサポートするために、当面、緩和的な金融環境が継続するというふうに考えているというふうに申し上げているところでございます。

 今後ということで申し上げますと、この基調的な物価上昇率が徐々に二に収束していくという見通しを持っているわけですが、それが本当に着実に実現していくかということを賃金、物価を含みます様々なデータから確認しつつ、今後の緩和的な金融環境の程度がどれくらいであるのが適切なのかということを見極めていきたいと思っております。

 最後につけ加えるといたしますと、一部には、恐らく、こうした基調的な物価上昇率が本当にきっちり二%になるまで待って、それから大規模金融緩和を解除した方がよかったのではないかという御意見もあるかとも思います。

 ただ、私どもがそういたしませんでした理由は、二%に達したところで動くということをいたしますと、そのときにモメンタムがついている可能性が高いわけですから、基調的物価上昇率を含めて、インフレ率がもっと上に行ってしまうリスクはかなり高くなる。そういたしますと、それを止めるためには、場合によっては非常に急激な金利の引上げをそこで決定しないといけない、進めていかないといけないということにもなりまして、その可能性も出てくる。そのコストも考えた上で、少し手前からという判断になったというところでございます。

中川(宏)委員 総裁には詳しく御説明をいただきました。

 今、日本経済はまさに正念場でありまして、現時点での経済、物価見通しを前提にすれば、当面は緩和的な金融環境の継続を維持していくことが重要だ、このように捉えさせていただきました。

 今総裁から御説明のありましたとおり、異次元の金融政策から大きく政策転換をしたわけでありますけれども、このことは連日多くのニュースで取り上げられております。

 日銀といたしまして、国民の理解と支持を得るために、金融政策の目的や効果などにつきまして、分かりやすく丁寧な説明を行うことが重要と考えます。報道などでニュースとして流れまして、私も何人かの方から問合せを受けましたけれども、やはり日銀といたしまして、直接国民の皆様に分かりやすく説明することが大変大事だと思っております。

 先日、植田日銀総裁は、インタビューの中で、常に論理的に説明するよう心がける、このようにお話をされております。

 日銀は、どのような方法で国民への説明責任を果たしていくのか、また、金融政策に関する情報発信につきましては、様々な媒体や手法もあると思いますけれども、どのように取組を強化していくのか。この点につきまして、参考人からお伺いをしたいと思います。

植田参考人 私ども、申し上げるまでもなく、政策効果が十分に発揮されるためには、情報発信をしっかりしていくということが重要だというふうに考えておりまして、先ほどの御質問に対する答えでも申し上げたところですが、経済、物価に関する基本的な見方、政策運営の基本的な考え方について、論理的に、しかし分かりやすく、しかも、ある種一貫した考え方、枠組みでもって説明を続けるということを心がけております。

 より具体的には、私の決定会合後の記者会見であったり、決定会合の議事の内容については、主な意見、議事要旨といった形で公表してまいってきております。

 また、本日のような国会での答弁、さらに、インタビュー等の情報発信もありますし、私を含めた政策委員が全国の各地を訪れまして、金融政策運営について御説明したり、地域の経営者、各界を代表する方々との意見交換等も行っております。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

中川(宏)委員 ありがとうございます。

 国民に対する説明責任を果たすという観点から、金融政策を始めとする政策、また業務全般につきまして、透明性を確保していくということが大事だと思います。そうした中で、広報また広聴活動の重要性は私は一段と増してきていると思いますので、一層のお取組をお願いしたいというふうに思っております。

 次に、今回のマイナス金利政策解除の中で、非常に国民の皆様に関心があるのは、密着している、例えば住宅ローンの金利ですとか事業性融資の金利だと思います。

 住宅ローン利用者の約七割が利用しているとされております変動金利型ですけれども、短期プライムレートと連動して動く傾向があります。大手銀行などでは、住宅ローンの変動金利の指標になる短期プライムレートは、マイナス金利解除の前後で変化はしておりません。短プラを据え置くと発表済みの銀行もございます。日銀はマイナス金利解除後も緩和的な金融環境を続けるとしており、今のところ、短期プライムレートが上昇する気配は見えておりません。

 大手銀行の中では、マイナス金利政策解除を受けても、短期プライムレートを据え置くことも決めたところもございます。このため、各行が定める変動型住宅ローンの金利は大きく変化しないと見られるとともに、短期プライムレートに連動する企業向けの貸出金利も大きく変動しないと思料されるところであります。

 二〇一六年に日本銀行がマイナス金利政策を導入した際には、短期プライムレートは据え置かれました。その際に、短期金利が引き下げられたにもかかわらず、短期プライムレートの引下げは送られたことから、今回、短期金利がそれ以前の水準まで引き上げられても、短期プライムレートの引上げは見送られたのではないかと考えます。

 一方、一部の金融機関は、住宅ローンの金利の指標にTIBORを採用しております。住宅金利をどう動かすかは、これは各行の戦略によるところが大きいところですけれども、TIBORの上昇の影響が広がる可能性もあるかと思っております。

 今回のマイナス金利決定における、今後の住宅ローンや企業向け貸出しの金利の推移をどのように見ていらっしゃるのか、この点につきましてお伺いをさせていただきます。

植田参考人 おおむね委員のおっしゃったとおりであると思います。

 住宅ローンを含みます貸出金利は、今回の政策変更を受けた市場金利の動向も踏まえて、各金融機関の判断において設定されることになります。ただ、今回の政策変更に伴う短期の金利の上昇は〇・一%程度でございますので、また、私ども、これまでと同程度の国債買入れを継続し、さらに、どこかで長期金利が急激に上昇する場合には機動的にオペを増額するという方針も示しておりますので、今回の措置を受けて、住宅ローン金利を含む貸出金利が大幅に上昇するとは見ておりません。

 また、これも委員御指摘になりましたが、変動金利型住宅ローンあるいは中小企業向け貸出しの基準金利として用いられております短期プライムレートが、現在までのところ、不変となっております。さらに、市場型の金利でありますTIBOR三か月物の上昇も、〇・一%弱にやはりとどまっています。固定金利の住宅ローンと企業向け貸出しの参照金利となります中長期の金利も、おおむね横ばいで推移しております。

 いずれにせよ、こうした金利の動きは注意深く見てまいりたいと思います。

中川(宏)委員 ありがとうございます。

 金利の決定につきましては、金融機関によるところが非常に多いことでありますけれども、今の国民の関心事でございまして、あえて今回お聞きをさせていただいた次第でございます。

 それから、最後になりますけれども、今回の金融政策の変更で、マイナス金利の脱却は、金利の正常化は収益性の向上や技術革新を促すとしておりますが、中小零細企業においては、これから金利が上昇していくことに対して大きな不安を抱えているのが実情ではないかと思っております。

 中小企業の債務の実態を見ますと、信用保証協会が貸倒れの際に金融機関に返済を肩代わりする債務の残高は、コロナ前は二十兆円だったのが、二一年五月には約四十三兆円まで膨れ上がりました。今年一月時点でも、三十七兆円という依然として高い状態であります。

 信用保証協会一〇〇%保証の割合が高い企業は、金融機関からの支援が後回しになる傾向が指摘をされているところであります。中小企業庁の幹部は、信用保証協会が実質的なメインバンクとなっている企業も多い、このようにも話されております。

 今回の金融政策の転換で、中小企業はもとより、金融機関、特に地方金融機関は、経営方針の変更、また運営体制の見直しなどの対応が必要になってまいります。こうした状態に対しまして、金融機関への相談体制、また支援体制が必要と考えますが、この点につきまして御見解をお伺いしたいと思います。

高口参考人 お答え申し上げます。

 今回の金融政策の枠組み見直しが金融機関の経営に及ぼす影響につきましては、預金金利を引き上げる動きは見られておりますものの、短期金利の上昇が〇・一%程度にとどまる下で、先ほど総裁からお答え申し上げましたとおり、総じて限定的と見ております。

 もっとも、足下の中小企業の動向を見ますと、引き続き厚めの手元流動性は確保されているところが多うございますが、長年にわたり業況が芳しくない先や、最近の人手不足によって業況が下押しされている企業も見られており、金融機関による実態に即した取引先支援の重要性は増していると見ております。実際に、地域金融機関では、こうした支援により一層力を入れる動きが広がっております。

 日本銀行といたしましても、考査、モニタリングあるいはセミナーの開催など、幅広い機会を通じまして、こうした金融機関の取組をしっかりと後押ししてまいりたいと考えております。

中川(宏)委員 済みません。時間が参りましたので、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて中川君の質疑は終了いたしました。

 次に、野田佳彦君。

野田(佳)委員 おはようございます。立憲民主党の野田佳彦でございます。

 今日は、植田総裁に、ちょっと幾つかというか、かなり質問がありまして、あと財務副大臣に一問だけ質問を予定しておりますので、よろしくお願いをいたします。

 今日は四月十日ですけれども、植田総裁が総裁に就任されたのが一年前の四月九日でしたので、今日から任期の二年目の初日ということでございます。ほぼ一年前を振り返ってみると、去年の二月に、候補者として、衆参で議運で意見聴取がございました。

 あの場面で一番覚えているのは、参議院の議運で、当時の自民党の参院幹事長の世耕さんから、アベノミクスをどう評価するかとか、継承するのかとか、滑舌よく矢継ぎ早の何か質問があった、それをさばいていらっしゃったあのお姿というのが思い出されるんですが、そういう政治的な圧力を場合によっては感じながらも、この一年間、学者からセントラルバンカーとなって、この一年間をどうやって振り返っておられるのか。

 そのときに、積年の課題であった物価安定の達成というミッションの総仕上げを行う五年間にしたい、そういう御発言も当時あったと思いますけれども、今どのようなお気持ちで二年目の初日を迎えていらっしゃるのかを、自己評価も含めて、お尋ねをしたいというふうに思います。

植田参考人 就任当初から、物価の目標を達成するという意味ではやむを得ないことであったわけですが、かなり技術的にも複雑になっていた金融緩和の枠組み、これを、経済、物価情勢が許せば、もう少し簡素で分かりやすいものにしたいなという気持ちはございました。幸い、過去一年間、幾つかの意味で、経済、物価情勢が好転してまいりましたので、そうした線に沿って若干の政策の枠組み変更ができたかなと思っております。

 ただし、先ほども申し上げましたように、物価安定目標二%の持続的、安定的な達成が、可能性が高まってきたという状況ではありますが、完全にそこに到達したということではまだまだありませんので、今後そういうことが実現いたしますように、一段と気を引き締めて努力してまいりたいと思っております。

野田(佳)委員 ありがとうございます。

 そこででありますけれども、今日の中心的な質問の中身というのは、三月の金融政策決定会合で異次元の緩和を終了させたという大きな方針転換をされたことについて御質問をしていきたいと思うんです。

 私は、トータルで見た場合、異次元の金融緩和が始まって、十一年間続いてきた。十一年も続けてしまったことについては極めて疑問に思っておりまして、海外の要因ではあったと言いながらも、物価上昇が始まったのは二〇二一年の九月から、ずっと消費者物価は上がり続けて、そして二〇二二年の四月からは二%を超えるようになり、先ほどの御報告にありましたとおり、足下は二%台後半、いっときは三%を超えたときもありました。という流れでずっと来ているわけです。そういうことを考えると、本来は、二期十年の黒田総裁の終盤に決断すべきであったと私は思います。

 少なくとも、あのマイナス金利の解除や、イールドカーブコントロールの撤廃や、あるいはETFも新規に買わないような、大きな三つの柱を全部変えるのではなくても、例えば野球でピッチャー交代するときに、先発したピッチャーが次のピッチャーのためにマウンドをならすじゃないですか。これが私は基本的なマナーだと思うんです。

 せめて、去年、植田総裁がチャレンジされた七月と十月のイールドカーブコントロールの微修正のようなことなどは、少なくとも黒田総裁のときに始めておくべきであったという意味では、十一年もかかったということは遅過ぎると思います。でも、技術的な問題であるとか、日銀という組織を把握しなければいけないなどなど、いろいろな情勢を分析をするという意味で、植田総裁の下で一年かけたということは、これは私は妥当だと思っているんですね。

 その中でも、いわゆる二%の物価上昇を見通せる可能性をどう見るかについては、三月もあったけれども、四月は、例えば四月一日に短観の発表があったし、四日には支店長会議があったし、より参考資料が整ってきたり、春闘の結果も、よりもっと分かってくるような時期だったと思うんです。あえて四月じゃなくて三月にしたのか。

 ここはちょっと微妙だと思うんですが、私の想像ですけれども、やはり円安の流れが出てきていることに心配があったから少し早めの判断をしたのではないかと思いますが、この点についていかがでしょうか。

植田参考人 私の考えておりました気持ちで申し上げますと、それまでずっと説明させてきていただいたような当面の金融政策に関する基本的な考え方からしますと、三月の時点で政策変更を決断する、ある種、機は熟したというふうに見たということでございます。

 これに関して、野田委員のおっしゃったこととの関連でもう少し具体的に申し上げますと、例えば、春闘の結果はまだまだ連続的に出てくるので、少し待ってそれを確認した方がよかったのではないかという御意見はもっともだと思います。

 ただ、これについても、過去のパターンをいろいろ分析してみますと、第一回目の集計結果からその後の集計結果にかけてだんだん弱くなっていくというパターンがあるんですけれども、それにもある程度安定した弱くなっていき方がある。したがって、第一回目を見ると、その後の動きがかなり予想できる。その上で、第一回目の結果が非常に思った以上に強かったということが、例えば典型的な事例でございます。

 それを含めまして、三月、四月、もうちょっとその先くらいのところで入ってくるデータ、情報との相対で見ますと、かなりの部分が三月の時点で得られたのではないかという心積もりで決断に至ったということでございます。

 もっと遅くまで待って全てを確認してからという判断もあり得たと思いますが、その場合には、先ほどの質疑でもございましたように、場合によっては基調的物価上昇率が本当に二%に大きく接近する、その場合に上方に乖離してしまうリスクを恐れて急いで利上げをするというところに追い込まれるという可能性もありますので、そちらはおいておくとしましても、四月あたりとの比較という観点でいたしますと、今申し上げたような考えが背景にございました。

野田(佳)委員 よく分かりました。

 私も、別に二%になってからやれという話ではなくて、見通しの中で判断するということは妥当だというふうに思っていますが、ちょっと今、さっき申し上げた円安の問題、利上げしたけれども、円高には振れないで円安の基調じゃないですか。そういう傾向に強さを感じていたから、なおさら四月じゃなくて三月という判断をしたのかなという、ちょっと自分なりの思い込みがあったのでお尋ねをしたということでございます。

 先ほど、公明の中川委員からのお話にも関わることでありましたけれども、マーケットとの対話、説明、情報発信、これは、私は前総裁とは随分と変わったなという印象を持っています。前総裁の場合は、どちらかというと、サプライズも多様だったと思います。多様過ぎて、むしろ市場の方は不意打ちのトラウマを持ってしまっていた。それを見事に、丁寧に説明をすることによって、今回のような大きな政策の転換も、ある種織り込み済みであるという空気をつくった、円滑に進めたということは、私は一つの手腕ではないかなと思います。

 せんだっての委員会で情報リークの話なんて出ていましたけれども、それがあったかどうかは分かりませんけれども、少なくとも、大きな転換の前に、イールドカーブについては昨年から微修正をしてきていたし、去年の十月には、金融政策決定会合でかなり出口をめぐる意見も出ていましたよね。これは、黒田総裁の頃には出口論も封印されていましたから、随分と隔世の感があるなと。

 今年に入ってからは、講演であるとかなどなどで、そろそろ大きな転換があるんじゃないかという、予想できる環境を皆さんがつくっていたということは、私は丁寧な対話をしてきたということは評価をしたいというふうに思いますが、この辺は、総裁はどのような心がけをされているかを改めてお伺いしたいと思います。

植田参考人 抽象的には、野田委員おっしゃいましたように、先ほどの質疑でも私お答えいたしましたように、金融政策の基本的な考え方を分かりやすく説明するということを心がけてきたということでございます。

 例を申し上げれば、金融政策の基本に物価ないし物価の見方があるわけですけれども、物価全般の動きが一つあり、それからもう一つ、そこから一時的な変動を除いた基調的な物価の動きというものが、分かりにくいかもしれないけれども一応あると考えている。これらを区別して説明し、それらがどう動いていきそうか、さらに、それらのうち基調的な物価の動きが金融政策の将来に影響を与えるんだというような考え方を繰り返し説明してきたところでございます。

 その上で、一月以降は、大規模緩和修正の可能性もあるということで、その前後で大きな不連続性が生じないように、こうした考え方をもう少しきめ細かく外に向かって公開の場で説明するということに努めてきたところでございます。

野田(佳)委員 これからまさに、金融政策の正常化に向けての、いわゆる出口の、どういう手順でやっていくのか、その都度また影響もきちっと説明していかなければいけないと思いますので、引き続き、より一層丁寧な御説明をお願いをしたいというふうに思います。

 それでは、十一年間の異次元の金融緩和を、これはまさに壮大な社会実験だったと思いますが、どのような総括をするかについてお尋ねをしたいと思います。詳細は、恐らく、二十五年間にわたる多角的レビューを今行っている最中ですので、その二十五年間のうちの十一年間、しっかりと検証していただけると思いますが、それを待つことなく、今日の段階で言えること。

 先般、どこかのインタビューで、ネットでプラスであるという評価をされていましたね。デフレではない状態まで持ってきたということなどを含めて、ネットではプラスという評価をされていましたけれども、私は、どちらかというとネットではマイナスなんですよ。

 最初は、二年で二%と言い出した頃は、私の頃はもう円高で苦しんでいましたから、円高基調を変えたということ、株価が上昇した、企業が収益を上げるようになった、明るいムードも随分つくったと思います。でも、目標である二%には近づかないというか、物価は動かなかったんですね、ずっと動かなかった。動かなかったから、二〇一六年に、焦ってマイナス金利を導入したり、イールドカーブコントロールを導入したりということになって、それからも相当年月がたっていて、私は、それ以降の副作用が物すごく大きいと思っているので、ネットマイナスなんです。

 改めて、総裁のこの十一年間の異次元の緩和の評価をお伺いしたいと思います。

植田参考人 しっかりとした分析は、御指摘のありました私どもの多角的レビューの中で改めてお示ししたいと思いますけれども、取りあえずの私の感想ということで申し上げれば、この十年強の緩和でございますけれども、まとめますと、一方で、マーケットの機能度や金融機関の収益等に負の影響を及ぼしてきた可能性はやはり否めないとは思います。

 ただ、それに関しては、随時それを緩和するような措置を日本銀行としてはいろいろ取ってきた。その一方で、様々な緩和政策が、主には実質金利を低下させるということを通じて、経済活動を支え、これも委員御指摘の、結果としてデフレでない状態をつくり出すというところに大きく貢献したという意味で、暫定的でありますが、ネットでプラスと評価しているというふうに申し上げているところでございます。

野田(佳)委員 先ほど藤丸委員がマネタリーベース、マネタリーストックのお話などをされていましたけれども、十一年間の教訓で分かったことは、異次元でマネーを供給しても、そう簡単には物価は上がらない。デフレは貨幣的な現象だと言っている人もいたけれども、そうではなくて、やはり金融政策一辺倒では物価や経済を動かすことはできないということは、私は大きな教訓だったのではないかと思いますが、その点についてはいかがですか。

植田参考人 ここは私も、特に名目の金利がゼロないしゼロ近辺、現実には少しマイナスまで行きましたが、そういう状態になってしまって長引いているようなところに至ってしまいますと、単純にマネーの量、ベースマネーの量を増やすという政策の効果は、一部の、教科書と言えないかもしれませんが、レポート等に書いてあるようなところにあるようなほど強くはないということは正しいのかなと思っております。

 したがいまして、過去十年の日本銀行の緩和政策の中でも、バランスシートの規模を拡大するという政策は実行し続けてきたわけでございますけれども、単純に量を拡大するということだけではなくて、むしろ、長期国債を買う中で長期国債の金利を下げ、その中で金利の低下が経済を刺激するという効果に強く期待してやってきた政策であるという面があるのかなというふうに思っております。

野田(佳)委員 マイナス金利が二〇一六年一月からでした。このときは、日本だけではなくて、ECBも、あるいはデンマーク、スウェーデン、スイス、ほかの国々でもマイナス金利を導入しているところはありましたですよね。あと、いわゆるイールドカーブコントロールは、これは日本だけのチャレンジでありますけれども。その後、世界の潮流はまさにインフレ退治に流れていく中で、マイナス金利を残す国はもうなくなっていました。日本独特の、いわゆるYCC、イールドカーブコントロール、まさに日本だけが、世界の潮流からすると、ガラパゴスのような孤島でしたよね。金融の世界なのに、日本の金融政策は孤島状況だったというふうに思います。

 金利がようやく上がった。十七年ぶりの利上げですよね。マイナス金利解除は八年かかったんですよね。これだけ金利のない世界、上がらない世界に長い間いたことが、これからどういう影響が出てくるのか、この十七年金利が上がってこなかったこと、八年間マイナス金利だったこと、これはどうやって総括をされるのか、まずお話をお伺いしたいと思います。

植田参考人 例えば、委員お触れになりましたように、ヨーロッパもマイナス金利を実行したけれども、そこからは日本よりも早く脱出した、こういうことと比べて、日本はマイナス金利が長く続いた、あるいは低金利が長く続いたというふうに見てみますと、恐らく幾つか大きな日本と例えばヨーロッパとの違いがあるかなと思っております。

 一つは、そういうところに至るまでの過程で、日本は既にデフレとか、ほぼゼロインフレ、こういう期間を非常に長く、相対的に長く経験しておりまして、経済主体、家計、企業の頭の中に、日本のインフレというものはその辺で中長期的に推移するものだという心理が刷り込まれてしまった、その度合いが諸外国よりも非常に強かった。

 逆に、経済を刺激してインフレ率を上げていくときには、この心理を解かしていかないといけないわけですから、それが難しいものになったという面があるかと思います。

 それから、もう一つつけ加えるとしますと、やはり、低金利の期間が、例えばマイナス金利に入る前に長期間継続したということが日本においてはありました。その期間がヨーロッパでは相対的に少し短かったために、マイナス金利に入った時点での金融機関の利ざや、貸出金利と、例えば預金金利、調達金利との差ですけれども、これはまだまだある程度の余裕があったのに対して、日本はかなり潰れた形で更にマイナス金利に入っていきましたので、マイナス金利の金融機関収益等への副作用も相対的に大きかったかなと思っております。

 ネットでは経済にプラスの影響を大規模緩和策が与えたというふうに見ていると先ほど申し上げましたけれども、そこの副作用はやはり日本の方が大きかった可能性もあるかなというようなことを今ちょっと考えました。

野田(佳)委員 ありがとうございます。

 異次元の緩和はやめるけれども、普通の緩和に入っていくということであって、金融緩和から金融引締めになるというわけではまだないと思うんですが、ただ、次の出口に向かっての正常化政策というと、やはり、具体的に言うと利上げがいつなのか、その幅は、いつ頃なのかということになってくるんだろうというふうに思います。

 これもさきのどこかの社のインタビューの中でおっしゃっていましたけれども、要は、より二%の物価上昇の確度が高まってきたときというときが判断の時期であるというようなお話をされていました。

 とすると、春闘の効果がより発現をしてくる夏から秋ぐらいなんだろうか、これは一つの時期としては目安なのかなというふうに思います。

 これが普通オーソドックスな判断だと思いますが、そのときのインタビューで私ちょっと気になったのが、三十四年ぶりの円安水準が続いていて、これは過度な円安進行が続いた場合には利上げの可能性もあるような言いぶりで、文章では、報道では見ました。これも一つの判断の基準になるんでしょうか、お尋ねをしたいというふうに思います。

植田参考人 今後の政策運営の進め方についての考え方でございますけれども、これは、野田委員おっしゃいましたように、私の、先ほどから、基調的な物価上昇率という表現を使いますと、これが今、二を下回っているけれども、二に上昇していくという見通しを持っているということでございます。

 それが本当に実現していくかどうか、それを、例えば賃金や物価、さらに、その他の経済指標を見ながら随時確認していく。見通しどおりに基調的物価上昇率が上がっていくのであれば、どの段階でということはなかなか具体的には申し上げられませんし、現在私どもも分かっているわけではありませんが、ところどころで金融緩和の度合いを縮小していくということが適切になるというふうに考えております。

 その上で、御質問の為替との関係でございますが、これは、為替が動いたから、直接的にそれへの対応として金融政策の変更を考えようということでは全くございません。

 振り返ってみますと、インフレ率全体を基調的物価上昇率とそれ以外と呼んだり、第二の力と第一の力というふうに呼んだり、第二の力が基調的物価上昇率でありますけれども、最初、今回のインフレは、第一の力が輸入物価の上昇ですごく強まるということで起こりました。これが、インフレ率が高まった後、賃金の上昇に波及し、更にまた物価上昇に波及するという中で、第二の力、基調的物価上昇率も上がってきたわけです。

 そうしますと、円安等で輸入物価が上昇するという動きが仮に大きくこれから発生した場合には、また再び第一の力のところがある程度上昇するという可能性もあるかもしれません。それにすぐ反応するということではなくて、その先更に第二の力、賃金、物価の循環のところにこれがまた跳ねていって、それが我々の見通している以上の賃金、物価の好循環の動き、あるいは基調的物価の上昇、あるいはさらに、二%を超えて基調的物価上昇率が上がっていってしまうリスクが上がる、こういうようなところに至れば、それは、その理由による金融政策の変更も考えないといけないというような意味でございます。

野田(佳)委員 ありがとうございます。

 異次元の緩和の私は最も大きな副作用というのは、まず第一に財政規律を緩めたことだと思います。大量の国債を買って、そして長期金利を操作する手法によって、先月末で日銀の保有する国債保有残高が五百八十九兆何千億か、もう五百九十兆近いということで、国債発行残高の過半を保有しているという状況はやはり異常な姿だと私は思いますし、事実上の財政ファイナンスをやってきたことと、極めて低い、超低金利で推移をしたことによって、利払いを気にしなくて政府はいいというぬるま湯をつくってしまったと思います。

 ぬるま湯にずっとつかっているから、井の中のカワズじゃなくて湯の中のカワズになって、ゆでガエルになる可能性が十分あるという状況、まさに規律が緩んだと思うんですね。この財政規律については、中央銀行としてはなかなか余りコメントはされないと思いますが、それについてのメッセージがあれば御見解をお伺いしたいと思いますが。

 それ以上に、もう一つ。やはり、国債市場のマーケットメカニズムを壊してしまった、経済の体温計を壊してしまったということも、これも大きな私は副作用だと思います。国債市場では、もう圧倒的なマンモスのような存在ですよね。

 それで、これから普通の金融政策というけれども、普通の金融政策というのは、短期の金利は中央銀行が操作をするとしても、長期金利はマーケットに委ねるということじゃありませんか。でも、まだ緩和的な手法を取っていって、月額六兆円弱は国債を購入していこうということをやらざるを得ないわけで、なかなか普通の金融政策に戻るということは大変じゃないかと思いますが、この点についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

植田参考人 委員がおっしゃいましたように、私どもの大量の買いオペ、結果として、発行されている国債のかなりの部分を日本銀行が保有しているという状態が、国債市場の機能に負の影響を与えてきたという点は事実であるというふうに認識しております。

 これも委員おっしゃいましたように、現在、普通の金融政策に戻った、あるいは戻りつつある中で、金融政策運営の中心は短期の政策金利の操作になっていく。一方で、長期の金利については、これは、これまでありました長期金利に関する、十年国債金利に関する目標を今回廃止いたしましたので、基本的に金融市場において形成されるということになるというふうにはもちろん考えてございます。

 ただし、取りあえず、今のところ、当面は、長期国債の買入れについてはこれまでと同じ額、六兆円で維持するという決定も同時にいたしました。

 これはやや乱暴な表現になるかとは思いますが、これまで非常に大規模な介入をしていた長期債の市場ですが、これを基本的には市場によって金利が決まるという通常の姿に戻したいというふうに思っておるわけですが、大規模な介入から急激にゼロの介入というところにいたしますと、どういうことが起こるか分からないということを心配いたしまして、取りあえずは、買いオペの額としてはこれまでと同じ額をしばらく続けよう、それで、その中で大規模金融緩和の終了というような金融政策の大きな変更をマーケットがどういうふうに消化するかということを少し観察してみよう、そういう時期を経て、しばらく先に、長期債市場に対する緩和の程度を縮小させていく、具体的には長期国債の買入れを縮小するという局面に移行できたらなというふうに考えているということでございます。

野田(佳)委員 いきなりゼロというのは幾ら何でもドラスチック過ぎて無理だと思いますけれども、月額六兆円規模というと、年間で大体七十兆じゃないですか。ということは、ようやくコロナ禍の前の二〇一九年ぐらいの水準に戻るということですので、普通と言うにはまだまだだと思いますので、より一層の取組をお願いをしたいというふうに思います。

 財政規律の緩みについて、これはどうしても財務省にも聞かなきゃいけないと思って、財務副大臣に来ていただきました。

 異次元の緩和の終了によって金利と向き合っていかなければならないということの中で、一番向き合わなければいけないのはやはり政府だというふうに思います。緩和終了に伴ってどのように財政健全化を果たしていこうとされているのか、お尋ねをしたいというふうに思います。

赤澤副大臣 野田委員御案内のとおり、日本の財政状況は、債務残高対GDP比が世界最悪水準ということであり、これまでの新型コロナへの対応や累次の補正予算の編成などにより、より一層厳しさを増している状況でございます。

 その上で、日銀の政策変更による長期金利などへの影響について一概に申し上げることは困難ですが、財政への影響についてあくまで一般論として申し上げれば、金利が上昇し、利払い費が増加すれば、我が国の高い債務残高対GDP比を踏まえると、政策的経費が圧迫されるおそれがあると考えております。

 財政は国の信頼の礎であり、財政の持続可能性への信頼、信認を確保するためにも、引き続き、経済あっての財政という方針の下、まずは、国、地方のプライマリーバランスを二〇二五年度に黒字化すること、そして、これにより債務残高対GDP比を安定的に引き下げるという政府の目標の達成に向けて、引き続き、歳出歳入両面の改革を着実に推進してまいりたいと考えております。

野田(佳)委員 プライマリーバランスの黒字化のお話をされましたけれども、本来は、超低金利の間に実現しておくべきことだったと思うんですね。まだ宿題として残っているということは、やはり残念ながら規律が緩んでいたというふうに思いますし、ここ最近だけではなくて、財務省の歴史、大蔵省の後に財務省になってから特に、歳出拡大圧力に私は負け続けてきた歴史だと思いまして、財務の財と敗戦の敗はよく似ていますけれども、敗務省じゃないかと思うんですよね。

 敗務副大臣じゃなくて、まさに財務副大臣として、本気で財政健全化、特にプライマリーバランスの黒字化というのは、利払いと向き合うとするならば、債務の本体を削減をする話をやらないと、利払いの問題というのは大変大きな問題だと思うので、そういうことを含めて、骨太の方針というのが多分六月か七月にまとめられるんでしょう。そのときに、しっかりと財政健全化を位置づけていただきたいというふうに思います。

 規律が緩んだままの財務省ですと、結局、日銀が長期金利を低位に、低く抑えつけるためにまさに国債を買っていかなければいけないという、その悪循環を断ち切ることができないんですよね。ということも含めて、財務省には、敗務省からの脱却を強く要請をしたいと思います。

 ということで、大臣にお伝えをいただきますようにお願いして、お時間が多分ないでしょうから、ここで出られて結構でございます。

津島委員長 赤澤副大臣、御退室ください。

野田(佳)委員 今、国債の話をしましたけれども、ETFも、今回、新規の購入はやめるということでございますけれども、もう既に、令和五年度末までに、保有額が簿価で三十七兆、そして時価では七十二、三兆になりますよね。それぐらいの額に膨らんできていると思います。これもまた、マーケットにゆがみを大きく生じさせているのではないかと思うんです。

 例えば、ここ数年は、前回の財務金融委員会、前回といいますか去年の秋の財務委員会で私、二%ルールを取り上げさせていただきましたけれども、午前中、TOPIXで二%以上の下落があれば、七百一億円でETFを買うということをやってきました。植田総裁の下では一回しかやっていないと思いますけれども、こういうこともあって、時価で七十数兆円にもなってしまったということです。

 明らかにこれは株式市場にゆがみを生じさせていると思いますが、御認識をお伺いしたいと思います。

植田参考人 私どものETF買入れでございますが、考え方といたしましては、いつも申し上げていることですが、市場でのリスクプレミアムが異常に高まったようなときに、そこを引き下げるというような効果を狙って、それでもって経済、物価の改善を促してくるという考えで実行してきたものでございます。

 そういうETFの買入れが株式市場の機能度への影響があるのではないかという指摘があることは、もちろん承知しております。

 現状、ETFを通じた日本銀行の株式保有割合は、株式市場全体の七%台程度にとどまっております。これを大きい、高いと見るか、それほどでないと見るか、なかなか難しいところでありますが、その上で、個別銘柄の株価に偏った影響が出ない、なるべく生じないように、私どもの保有するETFの多くは、指数の構成銘柄が非常に、あるいは最も高いTOPIX連動のETFとなっております。

 したがいまして、株式市場に私どもの購入が大きなゆがみをもたらしているということはないというふうに認識しております。

野田(佳)委員 二%ルールというのは買うときのルールでしたけれども、これも去年の十一月の財金で聞きましたけれども、売るときの原則も必要じゃないかという質問をしたときに、そのときに総裁からは、日銀の損失発生を極力回避すること、それから市場等の攪乱的な影響を与えることを極力回避するという、ある種抽象的な原則についてお示しをいただきましたけれども、もうちょっと具体的に、どのようにETFを売却していくのかについて教えていただければと思うんです。

 例えば、日銀は、二〇〇二年から二〇〇四年、そして二〇〇九年から二〇一〇年、銀行の株を買っていますよね。銀行の株は総計で三兆円になっていました。三兆円の株を、二〇一六年の四月から二〇二六年の三月まで十年計画で年間三千億ずつ売っていくという方針の下で、粛々と今計画が進んできていると思うんですね。

 三兆円と、ETFの簿価で三十数兆円、これはちょっと規模が違うので、十年計画といってもなかなかそう簡単ではないと思いますが、例えばそんなような計画立てで売却をしていくのか。もうちょっと何か具体的なお話を、まだ固まっていないかもしれません、イメージだけでも教えていただきたいと思います。

植田参考人 この処分を行う場合の抽象的な原則については、今、野田委員から御説明いただいたとおりのものを私ども考えております。

 その上で、より具体的に、あるいはもう少しより具体的に何か考え方を示すことができないのかという御質問だと思いますが、これも御指摘のように、銀行から過去に買いました株式については、二〇一六年以降ですかね、もう少し前だったかもしれませんが、そこから粛々と、少しずつ売却するという方針でやってきております。

 しかし、これも御指摘があったように、今回は非常に持っている額が桁違いに大きいということもありまして、なかなか難しい対応になりますので、恐縮でございますが、もう少しお時間をいただいて、検討させていただければなというふうに思っております。

野田(佳)委員 ETF一つ取っても、すぐ、どうしたらいいかということがお答えできにくいというぐらいの規模ですよね、まして国債もある。これを、せんだっての記者会見で総裁は、過去の異次元緩和の遺産のようなものと表現をされました。これは、でも、すごい遺産ですよね。ETF、簿価だけで三十兆円、そして国債に至っては五百九十兆円。

 この膨らんだバランスシートを圧縮していくというのが、残り四年間の任期の中でどれぐらいできるか、道筋をつけられるかというのが、私は、これからのお仕事の中でも大きな比重を占めると思いますので、よく練った上で、着々と進めていただければと思いますが、このまさに遺産を、遺産というか、負の遺産と御認識をされているのかどうかをお尋ねしたいと思います。

植田参考人 今議論させていただきましたように、国債やETF、大量のものを処分していくというプロセスは、非常に難しいプロセスでございます。

 ただ一方で、三月にこれまでの大規模緩和を解除することができたという背景には、当然、物価情勢の改善があったわけです。そのまた前提として、黒田総裁時代の大規模緩和が、一応、二%には達しなかったけれども、デフレでない状態をつくり出し、今日につながってきたというプラスの効果もあったというふうにも認識してございます。

野田(佳)委員 負の遺産かどうか余り明確にされませんでしたけれども、前総裁は、去年の三月に私が委員会で質問したときに、このETFとか国債、何の反省もないし、負の遺産でもないと言い放ったんですよね。いや、私は、間違いなく負の遺産で、大変だと思います。

 時間がなくなってきましたので、ちょっとはしょりながら質問したいと思いますけれども、そもそも、二%という物価上昇、物価安定の目標というのは妥当な数字だったのかどうか。

 二〇一二年の十月に日銀とアコードを我々の政権が結んだとき、一%だったんです。その後、安倍政権になって、三か月たったら、すぐ二%で結んだんですよね。本当に大丈夫かなと思ったんです、本当に大丈夫かなと。本当に大丈夫かなと思ったのは麻生前財務大臣も思っていたらしくて、本気でできるとは思っていなかったと以前おっしゃったことがありました。

 やはり、二%というのはそもそも妥当だったのかどうか、日本の経済の体力とかを考えて。あるいは、そもそもインフレターゲットみたいな数値目標を置くことが妥当だったのかどうか。是非、私、レビューの中でもよく検討してほしいと思うんですけれども、お考えをお聞かせいただきたいと思います。

津島委員長 植田日本銀行総裁、申合せの時間が来ておりますので、簡潔にお願いいたします。

植田参考人 はい。

 二%の物価安定目標自体は、端的には、いろいろな理由を考慮した上でのグローバルなスタンダードであるという点で適切であったと考えておりますし、金融政策運営を分かりやすく透明に実行していくという上で、インフレターゲットは正しい考え方であるというふうに思っております。

 もちろん、二%にぴったり張りつくような物価の動きを目指すというような厳格なインフレターゲットを目指しているわけではございません。

野田(佳)委員 ありがとうございました。

 二という数字が残っていて、私、気になっているんですけれども、私は、金融政策というのはより柔軟で機動的であるべきだと思いますので、その意味からも、やはり共同宣言は見直した方がいいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて野田君の質疑は終了いたしました。

 次に、原口一博君。

原口委員 おはようございます。立憲民主党の原口一博でございます。

 質疑に入る前に、幾つかちょっと政府にお願いがあります。お手元の資料の一ページを御覧ください。政府並びに各議員にですね。

 これが、いわゆる指揮権密約と言われるものです。トップシークレットと書いてありますが、一九五二年のジュライ、二十六日に、マッカーサーの次に来たクラークさんが本国に打電したものです。これに何が書いてあるか。中身を見たら、日本国民に対してジャップという、まさに我が国民を、何というかな、とんでもない言葉ですね、ジャップなんという言葉を使って、ジャップを自分らの、有事になったら指揮権に入れるという話なんですね。

 この密約はまだ生きている。だから、今、与党の皆さんにもお話をしたいのは、憲法改正とか言っているけれども、こういう状況の中で憲法を変えたらどうなると思いますか。皆さん、アメリカ大統領が米軍の基地から入ってきても抗議しない、あるいは、メルケルさんが盗聴をするなと言ったときに、皆さん、何と言いましたか、僕らの先輩は、盗聴に気をつけてくださいと。こんな状況で憲法を変えたら。

 僕も、二〇〇二年には民主党の憲法改正案を作りました。自分たちの国の憲法を自分たちの言葉で変えるというのは大事だと思う。しかし、この状況だということはちゃんと踏まえてやらないと。

 まず、こういうのを消してから憲法改正だということを申し上げて、もう一つ財務大臣にお願いしたいのは、ワクチンですね。四千六百億円も破棄して、そして、国会議員の中にももう健康不安を相談する方がおられます。今、全部破棄しようとしているじゃないですか。それをやめさせてください。中に何が入っているかというのが分からないといけないし。

 それから、NTT法もそうでしたけれども、日本の資産を売り渡そうということをいっぱいやっている。グリップしてください。総務だけで決めていい話じゃないでしょう、財務や防衛もやらなきゃいけないでしょう。NTTの回線は防衛省の約七割強を占めているわけです。それを外資に取られたらどうなりますか。

 そのことをお願いして、今日、SECに来てもらっています。インサイダー規定について、SECはどういうことで調査をしているのか。これは株式会社に適用されるものですね。証券取引法の中のインサイダー規定がなぜ入ったか、教えてください。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の金融商品取引法におけるインサイダー取引規制は、証券市場の公正性及び健全性を図り、証券市場に対する投資家の信頼を確保する観点から設けられた規則でございます。

 上場会社等の会社関係者が、当該上場会社等の運営、業務又は財産に関する未公表の重要事実を知りながら、その事実が公表される前に当該上場会社等の株式等の売買等を行う行為を禁止しております。

原口委員 私は、このSECの人員、ずっと当選以来、増やして、事後的な検証をやるべきだ、マーケットの公正性をちゃんと担保すべきだと独禁法の改正も作りましたし、このSECのところは日銀にまで及ぶようにすべきだ、そう考えています。

 日銀法の二十九条、六十三条、これは何ですか、財務省。

赤澤副大臣 二十九条と六十三条については、日銀の業務の関係で守秘義務を課しており、あわせて、それも罰則つきで担保をしているという内容でございます。

原口委員 そのとおりですね。

 日銀法二十九条「日本銀行の役員及び職員は、その職務上知ることができた秘密を漏らし、又は盗用してはならない。」。今赤澤副大臣がおっしゃったように、六十三条には懲役刑まであるわけですね。そして第二十五条、これは内閣又は財務大臣が、上記に該当した場合どうしなきゃいけないかを書いてあるんですが、第二十五条はどうなっていますか、財務省。

赤澤副大臣 二十五条の二項の規定について申し上げれば、これは、日銀の役員が秘密保持義務違反を含めて日銀法の規定により処罰されたときには、財務省として役員を解任しなければならないといったようなことが規定されているところであります。

原口委員 ありがとうございます。

 今日は、法務省刑事局にも来ていただいています。この第二十九条をこれまで適用した事案はあるのか。何でこんなことを言うかというと、日銀の情報管理って一体どうなっているんだろうかと。三月十九日に大きな金融の政策変更が発表されたわけですが、その二日前とか、もうウェブから消しているんですけれども、同じような文章が残っている。こんなことがどうやってできるのか。

 ちょうど、日銀総裁、ETFを日銀が買い入れるというときに、当時の金融担当大臣は何をやったかというと、閣僚懇で、皆さん、ETFを買った方がいいですよと言ったんですよ。僕はこれを予算委員会で追及しました。ETFを買い入れる、ぼろもうけじゃないですか。当時はそれだけひどかったんですよ。今回はその逆ですね。ETFもJ―REITももうやめると。これが事前に知れたらどうなるか、どれだけのことができるか。

 刑事局、今までそういう事例があるかどうか。そして、今回の事案について、私は極めてゆゆしき事案だと思うので、しっかりとした捜査が必要だということを思うんですが、個別の捜査については言えないと思うから、これまでの事案について答えてください。

吉田政府参考人 お尋ねの日本銀行法については、法務省において所管しているものではなく、また、法務省としてお尋ねのような観点から統計は取っておらず、網羅的に把握していないことから、お答えすることは困難であることを御理解いただければと思います。

原口委員 異なことを言いますね。

 そうすると、これはどこが取り締まるんですか、法務省刑事局じゃなくて。では、SECですか。では、取り締まるところはないんですか。政府の統一見解を求めます。

 委員長、政府がどこで取り締まっているか。だって、法律に罰則まであるんですよ、懲役刑まで。今、法務省は自分は関係ないと言った。では、どこが関係あるんだ。統一見解を出すようにお求めください。

津島委員長 理事会にて協議をいたします。

原口委員 日銀総裁、私は今回の件はそんなに軽いものじゃないと思っています。市場との対話とか言いながら、こういうことを許してしまえば何でもありなんですよ。しかも、今の法務省のこういう答弁ですね。

 さて、日銀総裁と議論を続けていきたいと思うんですが、日銀総裁、民のかまどから煙は上がっていますか。コストプッシュ型のインフレというのは、デフレ要因じゃないですか。バイデン政権で、アメリカのインフレは一七%上がったんですよ。よく、日本のえせ学者の人たちは、アメリカがこうだから日本もこうやるべきだと。一九九〇年代、デフレの日本にインフレの政策を入れて、そして今があるんじゃないですか。コストプッシュ型インフレというのは、デフレ、つまり経済のパイを減らすことになるんじゃないんですか。

 民のかまどから煙が上がっているか、そして、前の政策が成功したのか、成功しているんだったら続ければいいじゃないですか。お答えください。

植田参考人 インフレ率全体を見ますと、既に委員御指摘のようなコストプッシュ、海外でのインフレが波及してきてのコストプッシュの力も受けて、二年以上二%を超えております。

 ただし、私どもは、こうしたインフレの姿ではなくて、賃金、物価の好循環に基づく基調的な物価の上昇率が二%になるということを目指して運営してまいりました。それが、まだ二%をちょっと下回るというところで緩和政策を続けてきたわけですが、二%にようやく収束していくという見通しが立ちつつあるので、三月には大規模金融緩和を解除したところでございます。

原口委員 いや、質問に答えてください。

 民のかまどから煙が上がっていますかと聞いているんです。

 これが、この間も出しましたけれども、実質賃金、二十三か月連続マイナスですよ。そして、中小零細企業、どれだけ潰れていますか。九千社潰れているんですよ。皆さんは上級国民でいらっしゃるから、自分たちの周りのところだけ御覧になっているんじゃないか、そんな厳しい国民からの声もあるんですよ。

 継続したらいいじゃないですか。失敗したんですか、黒田政策というのは。

植田参考人 今、先ほど申し上げましたように、既往の輸入物価の上昇を起点としました国内の価格への転嫁が進みまして、消費者物価が二年間にわたりまして二%を超えた上昇を示し、名目賃金が緩やかに上昇する中でも、実質賃金が低下を続けてきたというところでございます。それはよく認識しております。

 しかし、この度の春闘の結果その他を見まして、今後、一段と名目賃金が一方で上昇していくという見通しが持てるというところに至ったこと、それから、全体の物価の上昇率につきましては、コストプッシュ、輸入物価の上昇を起点とするものの動きが減衰してきておりますので、インフレ率全体は下がっていくという中で、実質賃金の伸びは次第にプラスに転化していくというふうに予想しているところでございます。

原口委員 日銀というのは国内だけ見ているんですかね。ロシアが原油の対外禁輸を決めた、そしてホルムズ海峡がどうなるか分からぬ、こういう時期にこういう判断をするんですね。

 皆さんがやっておられるのは、ちょうど一九九七年、あの頃、当選してすぐでしたけれども、橋本総理と議論しました、アジアの通貨危機が起きているから消費税を上げちゃいけないと。そのとおりになってしまって、橋本総理は反省をなさったんですね。

 皆さんのお手元の資料の十八ページを御覧になってください。これが、今パネルに出しているのが実質賃金と名目賃金の乖離ですけれども、これは現金給与額の推移、マネネ、森永康平先生からいただいた資料で、元は厚生労働省の毎月勤労統計調査、そして季節調整値。

 見てみてください、これを。ずっと下がり続けている、しかもこれだけ、二十三か月もやっているというのは異常なんですよ。どこが賃金と物価の好循環ですか。どこが賃金と物価の好循環ですか。好循環の中で何で九千社も潰れるんですか。パン屋さんも潰れている、何も潰れている。皆さんが御覧になっているのは別世界のことなんじゃないですか。

 この現金給与総額の推移を見て、春闘と言っていますが、それは労働組合のあるところでしょう、僕らは国民を見ているんですよ、労働組合のある会社だけ見ているんじゃないんですけれども、反論があったら教えてください。

植田参考人 昨年を見ましても、委員御指摘のように、春闘でそこそこの賃上げ率が表明された後、二三年を通して見ますと、例えば、毎月勤労統計に表れますような、もう少し広い意味での、あるいは経済全体の賃金の上昇率が思ったほど上がらなかったということは事実というふうに私どもも見ております。

 そういう要素を割り引いたといたしましても、今回の高い春闘の結果から、かなりの賃金の経済全体での上昇が見込まれるという、今年度、見方に私ども至ったというところでございます。

原口委員 やはり見ている世界が違うということが分かりました。

 では、アコードについて聞きます。

 皆さんの資料の四ページ目です。これが二〇一三年に当時の安倍内閣と黒田日銀の間で交わされたアコードです。

 二のところに、日本銀行はという言葉が三つ出てきます。日銀総裁、このアコードは今も生きていますか。

植田参考人 共同声明は今でも生きているというふうに認識しております。

原口委員 共同声明は今も生きているけれども、今までとは全く違うことをなさった。いわゆるイールドカーブコントロールも、それからマイナス金利もやめた。

 さっきの野田委員の、同僚議員の質問にも関連するんですけれども、結局これは余計なことだったということでしょう。どうですか。黒田日銀がやった、やり過ぎなんだ、こういう総括でよろしいでしょうか。

植田参考人 共同声明の下で、デフレ脱却と持続的な経済成長に向けて、政府と日本銀行は必要な政策を実施してまいりました。

 こうした観点から、私どもは、大規模な金融緩和を、二%の物価安定目標が安定的に持続されるというふうに見極められる時点、あるいは持続するために必要な時点まで継続するという方針を二〇一三年四月の決定会合の時点で導入いたし、前回の決定会合時点まで一貫して示してきたところでございます。

 そうした中、繰り返しでございますが、目標の持続的、安定的な実現が見通せる状況に至ったと判断し、三月の決定会合で枠組みの見直しを決定したところでございます。

原口委員 いや、不思議なことをおっしゃいますね。アコードが同じで、政策が違うと。いや、心の中では、あんなことまでやる必要なかったと。

 このアコードの下の方を見てください。

 「日本銀行は、」「金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、」どう点検されましたか。そして、「経済の持続的な成長を確保する観点から、問題が生じていないかどうかを確認していく。」と、ここまで書いているんです。これまで、蓄積を含めたリスク要因というのは、これはなんですか。

植田参考人 委員御指摘のように、私ども、見通しを示します展望レポートで、金融面の不均衡を含めた様々なリスク要因を第二の柱として記述し、点検してございます。

 具体的に申し上げますと、一月のレポートでは、金融面のリスクとしまして、資産市場や金融機関の与信活動の過熱感、金融システムの安定性、低金利や人口減少などによる金融機関収益への下押しの長期化、あるいは、更にそれが金融仲介を停滞させてしまうリスク、また、利回り追求行動などに起因して金融システム面の脆弱性が高まる可能性などを点検しております。

 その上で、現時点では、資産市場や金融機関の与信活動に過熱感は見られず、金融システムは全体として安定性を維持しているというふうに評価いたしました。また、金融仲介が停滞方向に向かったり、金融システム面の脆弱性が高まるリスクは大きくないと判断しております。

 こうしたリスクにつきましては、今後ともしっかりと点検してまいるつもりです。

原口委員 ということは、この十一年間、問題も生じていない、リスクは顕在化していない、こういう認識でよろしいですか。

植田参考人 現時点では重大な不均衡がないというふうに認識しているということです。

原口委員 ちょっと聞き方を変えますね。

 これは、各国中央銀行のバランスシートの推移です。ECB、FRB、そして日本銀行ですね、お手元の資料にございます。この中央銀行のバランスシート、日銀は急激に拡大させました。これと、日銀の財務の健全性、昨日、参議院の財務金融委員会で、日銀はもう厳しいんじゃないか、銀行に五千億の付利をして、そして国債も大量に持っている、日銀の財務の健全性というのは金利が上がっていけば損なわれるんじゃないかということですけれども、このバランスシートと日銀の財務の健全性についてお答えください。

植田参考人 バランスシートの規模と財務の健全性の問題は、直結はしないと思っております。

 私ども、大きなバランスシートの中で、資産サイドで一番大きいものは国債でございますけれども、これは全て満期がある国債を保有しておりまして、必要に応じて、その満期で償還されたところで新たな国債を買わない、あるいは新たな国債の購入の規模を減らすということで、バランスシートのサイズは縮小していくことができますし、保有している国債に何らかの理由で発生した金利の上昇で評価損が発生するということになったといたしましても、これは満期まで持てば元本で返ってくるという性格のものでございます。

原口委員 財務の健全性に問題はないというお答えでしたので、七ページを御覧になってください。

 これが今、日銀総裁がおっしゃった日本国債の所有者別内訳です。国債というと、借金を持っているんだというと大間違いで、利付の円を持っているわけですね。利付の円を日銀は政府から買って、そしてまた国庫に納付している、こういう状況ですから、簡単にあれが起きるわけがない。

 さっき藤丸議員がいい質問をしてくださいました。マネタリーベースですね。マネタリーベースとインフレ率、これの関係について六ページに資料を出しています。出典は日本銀行と統計局です。

 マネタリーベースとインフレ率の関係について、日銀総裁、お述べください。

植田参考人 これは、過去のデータを見ましても、理論的な文献を見ましても、はっきりとした相関があるということでは必ずしもないというふうに考えております。

原口委員 そうですね。お手元の、この六ページ目を見ると、マネタリーベースを上げたから、こんなに急激に増やしたからといって、インフレ率が上がってはいないんです。さっき、藤丸議員は、企業の経営者の気合が足りないんだと言っていましたが、面白い分析もあるものだと思って……(発言する者あり)藤丸さんですよね、藤丸さんと言ったでしょう。藤丸さんはよく知っているんですよ、隣の選挙区だから。大事にしている議員ですから。名前は間違っていないよね。済みませんね。

 ここで聞きたいのは、この間、江田議員がとても大事な質問をしました。日本の個人の金融資産、二千百四十一兆円、国と企業の資産、約一京、九千七百四兆円、対外純資産、四百十八兆円、外貨準備、百八十九兆円、後で外為特会は聞きます、それから経常収支、二十兆円。巨大な国なんです。世界の中でも希有な国なんです。これだけ希有な国であるにもかかわらず、さっきの、マネタリーベースを増やしてもGDPが増えなかった。これは、日銀から出たお金が日銀に戻ってくるスピード、マネタリーベースは六倍にしたんだけれども、スピードが六分の一になってしまった、それが原因なんじゃないですか。

 日銀総裁、GDPが今のような惨たんたる状況、アコードには競争力だ何だって書いていますけれども、大学レベルでいうと、もう日本は世界の中で九位に落ちている。それから、世銀のアウトルック、二〇三〇年のアウトルックを見てみると、世界銀行は、日本は何とGDPベースで世界の六位に、ロシアにも負けると見ている。何でですか。

植田参考人 複数の御質問があったと思いますが、マネタリーベースが増えているけれどもなぜインフレ率は上がってこないか、あるいはマネタリーベースのGDP比が高いままなのはなぜかというような観点からお答えいたしますと、これは一部先ほども質疑がございましたけれども、一つには、分母であります名目GDPの構成要素である実質GDPは、長期的には潜在成長率で伸びていくものでございます。これについて、低い人口成長率等のために日本の潜在成長率が低かった、低く推移してきたということは一つあるかと思います。

 それを置いておきまして、名目の方、インフレ率の動きが鈍いというところでございますけれども、マネーが出ているのに鈍いというところでございますが、これは、一つには、先ほども少しお答えいたしましたが、既に長い間名目の金利がゼロに張りついていまして、そこから大きく引き下げるということが難しい状態、普通は、マネーを出しまして金利を下げて経済を刺激するということを行って、インフレ率を高めるという順序になります。大まかにゼロ金利状態にある中で、それはなかなか難しかったということ。

 それから、マネーを出す中で期待インフレ率が上がるというようなルートも考えられ得るわけですけれども、長い間のデフレあるいはゼロインフレが続いてきた後でこういうことを始めたという面もあったために、なかなか人々の期待が上方に動くということがなかった、難しかったということも大きかったかなと思っております。

原口委員 私は、そうやって日本国民のせいにすべきじゃないと思っているんです。政府が間違ったんです。ブレーキとアクセルを同時に踏んで、そして、皆さん、この資料を御覧になってください、資料の八、日本政府の長期債務残高とインフレ率・長期金利、これはどうなっているかというと、日本政府の債務残高は、二〇一五年時点では、名目の金額でも一八七二年の三千七百四十万倍になっています。実質でも一八八五年の五百四十六倍になっているわけです。にもかかわらず、資料八を御覧いただくと、もうお分かりのとおり、長期金利もインフレ率も上がっていません。これはどういう理由ですか。

植田参考人 足下はどちらも少し上がっているということではあると思いますが、その前までの時期についてお話ししますと、長期金利が低いのは、特に二〇一六年以降でございますと、私どものイールドカーブコントロールの下で長期金利が低く抑えられてきたこと、インフレ率が低いのは、先ほど来申し上げてきましたとおり、インフレ率を上げようという金融政策を実行してきたわけでございますが、その効果が、この前後を見ますと、必ずしも十分には出ていなかったためというふうに見ております。

原口委員 いやいや、日銀総裁、資料の八を御覧ください。八、ないのかな。これはそんな二〇一六年以降の話をしているんじゃないです。この百年、百五十年の話をしているわけです。これだけ長期債務残高が伸びているんだけれども、むしろ、逆に長期金利は減っているわけですね。

 さっきお話しいただいたように、確かにお金を失業させたんですよ、一九九〇年代の半ばに。バブルに踊った人たち、土地転がしに踊った人たちの処理に、僕らもそのとき金融再生法というのを作って、バッドとグッドを分けるというのを超党派で、自民党の方々と僕ら民主党とでやったんですね。その後、お金をずっと失業させたまんまだから、なかなかこうやって上がってこないというのはそのとおりだと思います。

 私は、今回、コストプッシュ型インフレ、しかも、これは御覧いただくと、皆さんのお手元の資料にもありますが、今年はどういう年かというと、G7のGDPをBRICSのGDPが抜いた年なんですね。ロシアに経済制裁していますけれども、逆制裁されているぐらいの話で、ロシアはもう七・七%で成長しているけれども、日本はどんどんどんどん落ちている。僕らがやらなきゃいけないのは、TLのバランスシートを均衡させることではなくて、この衰退した日本を次の世代の人たちに渡さないということが大事だということを申し上げておきたいと思います。

 世の中が変わってきているんですよ。ペトロマネーにしろ何にしろ、ドル離れが進んでいる。しかし、このときに皆さんは何をやっているかというと、何でドル建て債、ドル建ての国債をやるんですか。日本国債の間はデフォルトすることはありませんよ。何でこんなことをやるんですか。お答えください、財務省。

赤澤副大臣 ちょっと御質問の趣旨を正しく捉えているかはあれですけれども、外貨建ての国債については、現在、あえてこれを発行しなくても国債の安定消化が図られているという認識を持っておりまして、政府として発行に向けた検討は行っていないところでございます。

原口委員 外為特会、資料の十ページを御覧ください。やっとこれ、外貨資産の内訳、そのうちの七四・九%が国債というふうになっています。ドルの、アメリカ国債だと思われますが、GPIF並みに開示をしてほしい。これは今日は希望で止めておきます。

 それから、この間、鈴木財務大臣と議論をしたら、消費税というのは間接税だ、しかも、最終は消費者が払うんだから、転嫁されるんだから、別に担税力の弱い企業、強い企業、関係ないんだ、そういう答弁でした。だったら、輸出還付金はやめたらどうですか。輸出企業は、最後は外国の消費者に転換できるわけでしょう。そのことについて指摘だけしておきます、ちょっと今日は時間がないので。

 リクエストが多かった、岸田処分について御質問をいたします。最後は政治と金の問題ですね。

 政治と金の問題で、岸田首相が大変大事な答弁を三月六日、参議院の予算委員会でなさっております。皆さんのお手元の十一ページです。

 ここで再三再四、私、総理大臣がこういうことをおっしゃるかなと。これは、清和研のこの収支報告書の不記載については、検察は所要の捜査、これを尽くしたと認識をしています、法と証拠に基づいて、処理すべきものは厳正に処理したものであると認識をしておりますと。

 何と、今回処分を受けた三十九名の自民党の議員の皆さんのうち、三十一名が不服だとおっしゃっている。この間、鈴木財務大臣は、どんな処分が出ようがそれを受け止めるのが党のガバナンスだという意味の答弁をなさいましたけれども、僕は違うと思いますよ。最も責任が重いのは岸田首相だと思っています。

 というのは、政治資金を所管する大臣でしたけれども、この捜査は個人のパーティーについては何もやっていない。しかも、ここで言っているように、派閥が個人の政治団体に渡したものだということでやっているわけです。

 そこで、今日は法務省刑事局にも来てもらいましたけれども、総理がおっしゃっているように、この検察の捜査を尽くした上で、処理、処罰されるもの、処理されるものは、これは全て処理されているものと認識していますか。法務省刑事局に聞きます。

吉田政府参考人 お尋ねは個別事件における検察当局の事件処理の内容に関わる事柄でありますので、お答えは差し控えさせていただきますが、御指摘の事案に関して、検察当局は、法と証拠に基づき適正に処分を決したこと、現時点で処理すべきものは処理したことなどを表明しているものと承知しております。

原口委員 今答えましたね、現時点でということですね。

 法務省からもらったペーパーが十二ページからの資料です。「自民党会派の政治資金パーティーに係る政治資金規正法違反事件の処理について」、ここに大野泰正さん、谷川弥一さん。それから次、資料の十四ですね、そこには池田佳隆さん、「衆議院議員池田佳隆らに係る政治資金規正法違反事件の処理について」ということと、東京地検の次席検事の会見。

 ここに書いてある以上のことはない、これ以上、そしてこれ以下ではないということでよいかということがまず第一点。

 それから第二点、総理の答弁に戻ってください。総理はこうはっきりおっしゃっているんですね、委員御指摘のように、もし個人でこれを受けたということであるならば、これは法律違反でありますと。

 これは何かというと、政治資金規正法二十一条、二十一条は、政治家個人に対する寄附は全部駄目だ、だけれども、できるものが一個だけある、それは政党なんだ、派閥は駄目なんだと。

 派閥が個人に寄附をしたということであれば、これは立件されるべきものであると総理大臣はお答えになっているが、二点、法務省刑事局に聞きます。

吉田政府参考人 まず、御指摘がありましたように、東京地検の次席検事が表明をしているということは承知しております。

 その上で、お尋ねは捜査機関の活動内容に関わる事柄でございますので、お答えは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げれば、検察当局においては、法と証拠に基づいて、刑事事件として取り上げるべきものがあれば適切に対処するものと承知しております。

原口委員 いや、あなたの内閣の総理大臣がおっしゃっているから、そのとおりかと言っているんですよ。個別の捜査について聞いているんじゃないんです。法律の解釈について聞いているわけです。答えぬということですね。

 これは何かというと、丸川珠代議員、それからここにある橋本聖子議員は、派閥から、これは政策活動費だ、だから載せなくてよいと、そして丸川珠代議員については、個人の口座で管理をしていた、そういうことをおっしゃっているわけです。まさに個人のお金じゃないですか。

 個人のお金であるということは、総理の答弁からいうと違法であると。だが、現時点では、派閥からのいわゆる不記載についてやっているんだけれども、それ以外のことはまだ白紙のはずですね。

 そこで伺いますが、国税庁、個人のこういう、総理が言うところの、個別の案件じゃなくていいですよ、総理がおっしゃるような、御指摘の点、つまり、個人に対して違法な献金が派閥からされた場合、これを受けたということであるならば、これは法律違反であります、当然立件されるべきものであります。立件されるべきであるということは、個人の所得であるということは、課税が生ずると思いますが、どうですか。

星屋政府参考人 お答え申し上げます。

 個人が受領した金銭が所得税の課税上どのような取扱いとなるかにつきましては、個々の事実関係に基づき判断することとなります。

 その上で、一般論として申し上げますと、所得税法上は、収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わず、現実に収入を得ている場合には、これにより生ずる所得が課税の対象とされているということでございます。

原口委員 課税の対象であるということが分かったわけであります。

 私は、こんなに、総理大臣が、自分の政党がその捜査の対象である、その総理大臣がここまで言うというのは、三権分立に反していると思います。とんでもない答弁です。その人に処分をされる皆さんが気の毒だと思います。前も言いました、ここで鈴木財務大臣に、総理に、第三者調査をしてください、それを進言してくださいと。これは自民党さんだけの問題なんじゃないんですよ。政治全体に対する信頼の問題です。

 政治資金規正法というのは、何かを規制するというんじゃないんですよ。よい方向に持っていくということなんです。ところが、それを阻んでいるのが岸田総理大臣だと言わざるを得ないと思うんです。

津島委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

原口委員 なぜならば、第三者調査もせず、そして自ら検察は全てを捜査したとうそぶいている。策士策に溺れるということを申し上げて、これは政治改革委員会が立ち上がっていきますので、厳しく追及をして、処分をされている議員さんにも納得のいくような、あるいは国民が納得いくような、そういう結論を得ていきたいということを申し上げて、質問を終えます。

 ありがとうございました。

津島委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。

 次に、田村貴昭君。

田村(貴)委員 日本共産党の田村貴昭です。

 植田総裁と日本銀行に、財政ファイナンスについて質問します。

 多くのエコノミストが、黒田総裁が進めてきた日銀の金融政策は事実上の財政ファイナンスであると指摘をしています。例えば、日本総合研究所の河村小百合氏は、日銀がデフレ脱却を旗印に開始したQQEの結果、日銀が保有するに至った国債規模の大きさを鑑みれば、黒田総裁の下で日銀が行ってきた金融政策運営はまさに事実上の財政ファイナンスに相当すると述べています。

 植田総裁は、現在の日銀が発行済みの国債の約五〇%を保有していたとしても、現行金融政策は国債を引き受けていない、財政ファイナンスではないと答弁されています。なぜ財政ファイナンスでないと言われるのでしょうか。どのような状態であれば財政ファイナンスと言えるのか、その判断基準について聞かせてください。

植田参考人 一般に、財政ファイナンスとは、財政資金の調達支援のために、中央銀行が政府に対して資金の供与を継続的に行うということだと思います。

 この点、私どもの大規模金融緩和の下での国債買入れは、あくまで二%の物価安定の目標を実現するという金融政策運営上の必要から実施してきたものですので、財政ファイナンスではないと考えております。

田村(貴)委員 その判断基準についてはなかなか分からない答弁でありました。

 日本銀行のホームページ、「教えて!にちぎん」では、財政ファイナンスの状態になると悪性のインフレーションを引き起こすおそれがあるというふうに説明されています。そうなるメカニズムについて説明をしていただけますか。

清水参考人 お答え申し上げます。

 各国の歴史等を振り返りますと、中央銀行が政府による財政資金の調達支援を目的として国債の引受けによる政府への資金供与を始めますと、その国の政府の財政節度を失わせ、財政の膨張と通貨の増発に歯止めが利かなくなるおそれがあるということが示されております。

 その結果、悪性のインフレーションが起こりますと、通貨や経済運営そのものに対する国内外からの信頼が失われ、インフレに歯止めがかからなくなるということも指摘されているところでございます。

田村(貴)委員 日銀や政府が現在の金融政策を財政ファイナンスでないと幾ら否定しても、今後、市場で財政ファイナンスであるとの認識が広がると、これは悪性インフレなど問題が生じる可能性が出てくるのではないでしょうか。

清水参考人 日本銀行といたしましては、今後とも、物価安定の目標の持続的、安定的な実現という観点から、経済、物価、金融情勢を踏まえ、金融政策を適切に運営していく方針でございます。こうした点について市場の信認をしっかりと確保していくということは、悪性インフレを回避する上でも極めて重要であるというふうに認識してございます。

田村(貴)委員 「教えて!にちぎん」には、中央銀行が国債の引受けを禁止しているのは、長い歴史から得られた貴重な経験というふうに書かれています。

 歴史的に財政ファイナンスが起こったケースというのは、政府が財政規律を失って日銀に国債引受けを強制することが多いのか、それとも、日銀が国債の大量買取りをするから政府が財政規律を失っていくのか。日銀は、これをどのように捉えていますでしょうか。

植田参考人 財政運営について、私から具体的にコメントすることは差し控えたいと思います。

 ただ、一般論として申し上げれば、政府が中長期的な財政健全化について市場の信認をしっかりと確保することは重要であると考えております。その上で、金融政策は、あくまでも金融政策運営上の必要から例えば私どもの国債買入れであれば実施しているものでして、これは政府による、繰り返しになって恐縮ですが、財政資金の調達支援が目的の財政ファイナンスには当たらないと考えております。

田村(貴)委員 ちょっとよく分からなかったんですけれども。

 ちょっと歴史を振り返っていきたいというふうに思います。

 岩田規久男前日銀副総裁は、二〇一三年十月二十七日、シンポジウムの挨拶で次のように述べています。高橋財政は、公定歩合引下げと国債の日銀引受けによる金融緩和政策を推進、当初、過度な円高が是正されるとともに、物価水準の方向が下落から上昇に転じ、景気回復とデフレからの脱却に成功、こういう旨の発言を挨拶で述べておられます。

 高橋是清は、一九三五年に、これ以上日銀による国債引受けを続けるとハイパーインフレになると考え、日銀の国債引受けも止めようとしたが、軍事支出の増加を要求する軍部の反感を買い、青年将校によって暗殺されました。

 岩田氏は、高橋暗殺後に、日銀の国債引受けが悪用され、ハイパーインフレを引き起こしたと話しています。つまり、ハイパーインフレを起こしたのは高橋財政でなく、その後の国債引受けにあったということであります。

 質問です。

 植田総裁、一旦中央銀行が国債引受けを始めると、これを止めるのは困難である、戦前の教訓はここにあると思いますけれども、総裁の御認識をお伺いします。

植田参考人 いわゆる高橋財政への評価については、様々な見解があるところでして、コメントは差し控えさせていただければと思います。

 一方で、財政との関係では、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、政府サイドの方で中長期的な財政健全化についてしっかりと枠組みを確保し、市場の信認を得ていただくことが重要であるというふうに考えております。

田村(貴)委員 高橋財政は歴史ですからね。そして、この発言をしたのは日銀の前副総裁ですよね。これは下関の日銀のシンポジウム、日銀の企画の中で、元副総裁が歴史をひもといて、こういう発言をされた。それについて、総裁はコメントをされない、認識がおありでないということなんでしょうか。

 白川元日銀総裁は、東日本大震災、その直後の講演で、復興の財源について、日本銀行が国債を引き受ければよいという議論がなされている、このように述べています。

 植田総裁は、日銀の総裁に就任されて以降、政府や与党から国債引受けの圧力を受けたと感じることはありますか。

植田参考人 ございません。

田村(貴)委員 しかし、植田総裁は、今から約十年前、二〇一三年十二月十二日付の日本経済新聞の「経済教室」にて、次のように述べておられます。「中央銀行は一般に考えられているよりずっと弱い存在である。政治からの強い財政ファイナンス(赤字の穴埋め)圧力にはっきり抵抗できたケースはまれだし、大きなバブル崩壊後は、金融緩和効果の浸透に苦労する。」というふうに当時述べておられます。

 当時、中央銀行は弱い存在だと総裁は認識されていました。今、総裁になって、いかがなんですか。

 もう一度お伺いします。国債引受けの圧力や要請が政府・与党からあっているんですか。

 もう一つ、政府が財政規律を失って、政府や政治家から有形無形の圧力が今後あった場合に、日本銀行と総裁は圧力に屈することはないというふうに断言できるのでしょうか。

植田参考人 これまでに国債引受け等の圧力を政府から受けたか、あるいは受けたと感じたことがあるかという点につきましては、先ほどお答えしましたように、ございませんということでございます。

 それから、今後についてでございますが、これはもちろん、私どもの使命が、物価安定の目標を達成し、達成できればそれを継続するということでありますので、それと反するような政策運営については実行しないという気持ちでおります。

田村(貴)委員 二〇一三年の日経新聞の「経済教室」で植田総裁が当時述べられたところなんですが、中央銀行は一般に考えられているよりずっと弱い存在であるということと、政治からの強い財政ファイナンス圧力にはっきり抵抗できたケースはまれだと学者として認識されていたことなんですけれども、その御認識は今も変わっていないんでしょうか。その、まれであったというのはどういうことなんでしょうか。教えていただけますか。

植田参考人 当時、何を私が考えていたのか、必ずしも正確に思い出せませんけれども、過去に、そういう政府からの圧力で物価安定の目標を犠牲にした中央銀行があったということは歴史的に言える、歴史的な事実としてあるということだとは思います。

 ただ、私どもとしては、繰り返しになりますが、現在そういう圧力は受けていないということと、今後についても、物価安定の目標を尊重して政策運営をしていくということでございます。

田村(貴)委員 過去に圧力があったから、そういう御認識であったということなんですね、はい。

 昨年の防衛財源確保法、軍拡財源確保法では、決算剰余金を軍事拡大の財源として、そして、その軍拡資金をプールできるように防衛力強化資金を創設しました。これはもう、戦前の臨時軍事特別会計を想起させる仕組みが導入されました。つまり、大量の国債発行を当てにした軍事費の倍増計画が今進んでいます。

 さらに、岸田政権は、財源確保を先送りにして、GX経済移行費やこども特例債を乱発するなど、既に財政規律を失っています。

 日銀の金融政策、ゼロ近傍の金利を維持することによってこのような事態を生んでいると思いますけれども、総裁の御認識を伺います。

植田参考人 財政運営については、いつも申し上げておりますが、政府、国会の責任において行われるものと認識しておりまして、具体的にコメントすることは差し控えさせていただければと思います。

田村(貴)委員 今、岸田政権の下で、軍事費、GDP比二%です。そして、五年間の軍事予算を四十三兆円に大幅に引き上げるということがもう決まっています。このこと自体、本当に異常であります。そして、防衛省はさらに、有識者会議の議論で、為替変動、物価高、人件費の上昇が装備品調達へ与える影響等も考えていくべきと、一層の防衛予算の拡大を促しています。

 国債で引き受けて一旦規律を失っていくと、どんどん圧力が高まっていく。戦前のような事態がもう既に起こっているのではありませんか。この状況について、日銀はどう考えていますか。

植田参考人 繰り返しでございますが、財政運営について具体的にコメントすることは差し控えさせていただければと思います。

田村(貴)委員 でも、これは大事な問題なんですよね。結局、大量の国債引受けをして、それが決算剰余金になっていく、それがもう軍事費オンリーに使われるプールとなって、そういう資金ができ上がっていく、そして大軍拡につながっている。これは事実なんですよ。これは日銀と関係ない話じゃないんですよ。だから私は聞いているんです。

 財政審、四月四日に提出された資料の中で、財務省がこのように試算しています。

 二〇二五年度以降金利が一%上昇した場合の利払い費の増額は、二〇三三年度には八兆七千億円増額、二〇二四年度当初予算で利払い費は九兆七千億円であったので、倍近い利払い費に拡大するということ。さらに、仮に金利が二%上昇した場合、増額は二倍強であり、利払い費は三倍になるというふうに推測されています。

 利払い費がこれほど上昇すれば、とても一般会計予算が組めなくなってまいります。政府から日銀への圧力が今後一層高まっていくのではないかと私は考えますが、見解はいかがでしょうか。

植田参考人 繰り返しでございますが、利払い費を含めました財政運営については、政府、国会の責任で判断されることでございまして、具体的にコメントを私どもの方からすることは差し控えさせていただければと思います。

 私どもとしましては、あくまで、これも先ほど来申し上げておりますが、物価安定を実現するという金融政策上の目的のために政策運営を行っておりまして、利払い費負担への配慮からこうした物価安定政策の遂行が妨げられるということはないと考えております。

田村(貴)委員 政府が財政破綻を引き起こし、そして中央銀行が国債の大量引受けを行うことによって、またこの国がいつか来た道に踏み込むことはあってはならないと思います。その兆候が既に出ているということを指摘して、次の質問に移りたいと思います。

 気候変動問題と中央銀行の役割についてお尋ねします。

 グテーレス国連事務総長は、昨年七月に次のような発言をされました。

 地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来したのです。呼吸ができないほどの空気。耐え難い高温。化石燃料から得る利益と気候変動に対する不作為のレベルを受け入れることは、到底できません。指導者たちは先導しなければなりません。もはやちゅうちょは要りません。言い訳も不要です。誰かが先に動くのを待つのは、もうやめましょう。そんな時間は、もうありません。

 このグテーレス事務総長について、植田総裁、気候変動問題について御認識があったら、お聞かせください。

植田参考人 申し上げるまでもなく、気候変動問題は、日本だけでなく、グローバルに、そして将来にわたって社会経済に広範な影響を及ぼし得る極めて深刻な問題、課題と認識しております。

 その上でですが、これへの政策的対応という面では、例えば炭素税とか、様々な環境関連の投資に対する補助金、あるいは排出権取引等いろいろあるわけですが、これは私どもではなく政府において行われる政策であるというふうに認識しております。

 その上で、中央銀行としましては、やはり目標が物価の安定と金融システムの安定ということでございますので、これに沿って気候変動に関する取組を行い得ると思いますし、進めてきているということでございます。

 より具体的には、金融政策、金融システム、それから調査研究、国際金融等の幅広い分野から成る包括的な取組方針を決定し、私ども日本銀行でございますが、その下で各分野での対応を行っているところでございます。

 気候変動の経済への影響は極めて不確実性が高く、今後、影響の度合いが大きく変化する可能性がございます。そうした点について不断に検討を重ね、しっかり対応してまいりたいと考えています。

田村(貴)委員 この続きは、次回また聞かせていただきたいというふうに思います。

 今日はここで質問を終わります。

津島委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。

 次に、掘井健智君。

掘井委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の会派の掘井健智でございます。

 それでは、質問します。

 マイナス金利政策解除のこの判断と、デフレへの後戻りリスクについての日銀総裁の認識について伺います。

 この度の大規模な金融緩和の終了は、現時点の見通しに基づいた判断にすぎず、既に目標を達成したがゆえの判断でないと理解をしております。就任当初は、植田総裁は、むしろ拙速な引締めのリスクを強調しておりました。例えば、二〇二三年四月の決定会合後の会見では、引締めが遅れて二%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引締めで二%を実現できなくなるリスクの方が大きく、基調的なインフレ率の上昇を待つことのコストは大きくないというふうに判断しておりますと発言してきました。

 日銀は、過去にもゼロ金利の解除の際に拙速な政策判断をしたことがあるが、そのときに反対されたのが、当時審議委員でありました植田総裁でありました。

 このように、デフレへの後戻りリスクを重視し、理論面だけではなくて実際のデータを慎重に判断しながら大規模な金融緩和を続けてきた植田総裁でありますが、今回このタイミングで大規模緩和を終了させたことに、非常に理解に苦しんでおります。判断の根拠となった数字が明示されていないために、やはり国民としても理解が難しくなっております。

 植田総裁の過去の発言も踏まえて、今回の判断につきまして、いま一度分かりやすく説明していただきたいということと、見通しでありますから、下振れリスク、これはどう分析して判断したのか、このことについてお伺いします。

植田参考人 お答えいたします。

 私ども、先ほど来申し上げておりますように、基調的な物価の上昇率、現在ちょっと二より下でございますが、これが二%へ向けて上昇していくという見通しを持ち、その見通しが実現する可能性が高まったということで、大規模金融緩和の解除に踏み切ったところでございます。

 見通しが強まった、可能性が高まったということの根拠としましては、これも先ほど来何度か申し上げていることと若干重なりますけれども、特に、経済情勢、それから物価の動きに加えまして、今年の春季労使交渉の初期の結果が極めて強かったということ、したがって、今年度、これからしっかりとした賃上げが実現する可能性が高まっていること、それが賃金と物価の更なる好循環につながる可能性も高いということが大きな判断基準であったということでございます。

 その上で、私どものリスクに関する認識についての御質問もあったと思います。

 委員御指摘のように、数か月前といいますか、たしか去年のある国会での質疑では、将来を見渡した場合に、物価に対してアップサイドリスクとダウンサイドリスクがあるけれども、まだダウンサイドリスクの方を心配しているので現状の緩和を続けるという趣旨の答弁をさせていただいたところでございます。

 その関連で申し上げれば、その後の経済、物価情勢の推移、そして、直前、今申し上げたようなデータ等の点検の結果、ダウンサイドリスクの方が低くなり、そして、中心見通しである基調的な物価上昇率が二に収束していくということの可能性が高まった、こういう判断の下に政策の変更を行ったということでございます。

 残念ながら、それぞれのリスクについて何%と考えているかというようなところまで定量的な分析、開示ができていないところは申し訳ございませんが、定性的にはそういうことでございます。

掘井委員 大きな政策転換になりますから、いろいろ考えた結果、下振れのリスクはないと判断されたと思うんですね。

 下振れリスクをどう分析したのかということが本当に大事でありますのですけれども、ちょっと質問したいんですけれども、これはマイナス金利が解除された後でありますけれども、四月八日の発表の毎月勤労統計調査では、一人当たりの、前年同月から一・三%減少、また、東京商工リサーチの発表では、二三年度の全国の倒産件数が前年度比の三七%増、そして二四年度は一万件を超えるだろう、こう見ておるんですね。

 こういうことを見て、聞いて、総裁はどう思われますか。

植田参考人 下振れリスクはゼロになったというふうに考えているわけではございませんで、以前見ていた姿よりも下振れリスクの度合いが低くなったというふうに考えているということでございます。

 その上で、これは繰り返しになりますが、様々な賃金、物価のデータを見る中で、賃金と物価の好循環の、あるいは下振れリスクが低くなったということの言い換えではありますが、好循環の兆しが出てきているというところに着目したということでございます。

掘井委員 あくまでそういう見通しが立ったということでありますけれども。

 では、質問したいんですけれども、そもそもこのマイナス金利解除ということは、金利が上がることでありますから、金融引締めであると思っております。金融引締めで何を期待するかということでありますのですけれども、一般的に、例えば金利を上げて企業の設備投資を減らす、冷ます。また、住宅ローンの金利が上がるので、住宅購買意欲をそぐ、抑える。また、賃上げで家計の可処分所得が増加しても、利払いの増加で相殺され、消費の伸びを阻害させる。一般的に金融引締めというのはこういう効果があるんですけれども、こういう効果を期待して解除したんですか。

植田参考人 むしろ、金融緩和を継続して、現状二%をちょっと下回っている基調的物価上昇率が二%まで上がっていくプロセスをサポートしたいというのが、現状の金融政策のスタンスでございます。

 もちろん、大規模な金融緩和は廃止したわけでございますけれども、新しい短期政策金利でありますオーバーナイトコールレートはゼロから〇・一%という水準でございまして、これは経済活動に対しては緩和的な効果をもたらす水準であるというふうに考えております。

掘井委員 今、緩和的な措置もするということでありましたけれども、物価を安定させるのが日銀の仕事でありますから、普通は、景気が沸騰したら冷ます、また、景気が冷めたら温めて、どっちでもないときは見ておく、こういうことだと思うんですね。

 見通しで金融政策を行うことは、デフレ中に金融引締めを行ったり、逆にインフレ中に金融緩和を行ってしまうことにならないか、こういった微妙なオペレーションで物価の安定がうまくコントロールできるのか、本当に疑問なんですよね。

 質問したいんですけれども、総裁、今も発言されましたけれども、緩和的な環境を維持することが大事としておりますし、実際、長期金利のコントロールが終わったのに、国債を宣言どおり買い支えしております。これは何を目指しているのかよく分からないんですけれども、金利を上げているのに緩和的な環境を維持する理由、これを教えてください。

植田参考人 これは、ちょっと繰り返しになるかもしれませんが、まだ、賃金、物価の好循環を強めていくために、ある程度の金融政策面からのサポートが必要である状態であるというふうに考えております。したがって、短期の政策金利を低い水準に据え置いて、それを実現していくという所存でございます。

 もちろん、見通しに沿って賃金、物価の好循環が高まる、あるいは基調的物価上昇率が上がっていけば、現在の金融緩和の程度を適宜縮小していくという事態にはなっていくことになります。

    〔委員長退席、塚田委員長代理着席〕

掘井委員 はっきりと、金利を上げるんだ、こう述べても、人のマインドというのはなかなか動くまで時間がかかるわけであります。だから、非常に、中途半端なという言い方は失礼なんですけれども、絶妙なコントロールがうまくいくのかなと思っております。

 次の質問でありますけれども、日銀の国債買入れが公約どおり続いております。総裁も発言されておりますように、現状の金額をしばらく維持しておりますけれども、大規模緩和終了後には、バランスシートの縮小を視野に入れる、こうおっしゃられております。

 今、確かに国債を買っておりますけれども、急に減らすと混乱するとか、また、償還借入れで条件をよくしていく、こういうこともあってしばらく国債を買うんだろうと思いますけれども、今後、買入れ額をやはり減らしていくんだろうと感じております。

 総裁、これは確認でありますけれども、今回のマイナス金利の解除は、バランスシートの縮小のためにやっておるということはないでしょうか。また、マイナス金利、この政策から取りあえず逃れる、こういうためにやっているということはないでしょうか。確認です。

植田参考人 マイナス金利の解除、そしてその後のゼロから〇・一%という金利水準の設定は、先ほど来申し上げておりますように、我々の金融政策の目標であります二%のインフレ率の持続的、安定的な達成、このための金融政策の調節でございます。

掘井委員 そうでないと、物価の安定ですから、おかしいわけですよね。今の私が言った二点、これが目的やったら非常におかしいわけでありますから。

 次の質問であります。

 マイナス金利政策解除と日本の経済の構造に対するノルムについての日銀総裁の認識をお伺いしたいと思います。

 非常に長期の大規模緩和にかかわらず物価安定目標が達成できなかった理由として、根強いノルム、考え方や慣行でありますけれども、こういったことがあったことを日銀も挙げておりまして、私も、国民が相当好景気であることを肌身でもって感じない限り、そう簡単に行動が変わるとは思えないんです。

 日銀は、この日本経済の構造、また人々の、国民のマインド、あるいはこのノルムが変わったと今判断しているのでしょうか。もしそうであれば、実際に私自身が現場で、地域で、地方で見聞きしている状況とは異なると感じておるのでありますけれども、どう判断しておられますか。

    〔塚田委員長代理退席、委員長着席〕

植田参考人 ノルムという表現で申し上げれば、ノルムは少しずつ変わりつつある、あるいはかなり変わり始めているということかなと思っております。

 より具体的には、これまでのノルムは、例えば、企業が賃金や価格を設定する際に、自分は場合によっては上げたいんだけれども、同業他社が上げない、ついてこない中で自分だけやると、自分は損してしまうから、上げるという行動をしないというところに典型的に表れていたのかというふうに思います。

 これに対して現状では、例えば、賃金の動き、決まり方についてのコメントを読んだりいたしますと、世間相場をすごく意識して、私どもも賃金を上げますというようなコメントも多く聞かれるようになってきています。

 これなどは、まさに、ほかが上げないから自分も上げないというのが大きく変わりつつあるという証拠の一つだと思いますし、また、価格面では、例えば、私どもの短観で、企業に対して自分の業界の他社の価格設定行動についてどういう予想、期待を持っているかというサーベイをしたりしております。そこに表れた物価上昇の程度、将来にかけてのですね、これもここ一、二年、急激に高まっているということがございます。

 これなども、他社が上げないから自分は上げないのではなくて、他社も上げる中で自分も上げる余地が出てきているというような意味で、ノルムの変化であるというふうに思っております。

掘井委員 大手企業は、今円安で非常に景気がいいわけでありますけれども、さあ、現状の、地方のよくある会社、中小企業はどうでしょうかということですね。

 総裁はやはりマクロ的な視点で見ておるわけでありますからそう判断するんでしょうけれども、やはり、日本は世界の先進国の中でも特異な存在として、なかなか一般的な理論、経済モデルが当てはまりにくい状況であると思っているんですね。

 やはり、三十年間、好景気を経験しておりません。景気がよくなるなんて一個も信じられない、設備投資なんかできるのかな、消費意欲が全然出てきていない、こういう現状が、地方はほとんどそうやと思いますよ。こういうことなんですね。やはり、ノルムが十分でなかったら、現状は逆戻りするのと違うかな、そんな不安を思っております。

 そう述べながら次の質問をいたします。

 次の質問、今後、経済、物価情勢が悪化した場合についての迅速な日銀の対応について聞きたいと思います。

 今回の日銀の判断が間違っていたかどうかという話は別といたしまして、今後何らかの要因で二%の物価安定目標が達成される可能性が著しく低下する、こういう見通しとなった際には、必要があれば出し惜しみなくマイナス金利政策を含めた政策を総動員して、速やかに対応することが約束できるのか。

 金融政策の効果が表れるには、通常一年半、二年ぐらい必要とされると思うんですけれども、この見通しの判断をするに当たって速やかに本当に対応することができるのか、その点について確認したいと思います。

植田参考人 まさに、委員御指摘のように、政策を変更してから効果が表れるまでに時間がかかりますので、政策変更はその時間がかかるということを考慮に入れた上で行うべきものであります。難しいですが、そういうふうに考えて実行しております。

 その上で、それをちゃんとやっていくために、現時点の経済がどうなっているのかということを見るだけではなくて、一年先、二年先の経済の姿を予想して、これを見通しと呼んでおりますが、それに頼る形で現在の金融政策を決めていくというのが普通のやり方でございます。

 そして、その上で、そういう見通しが下の方に大きく振れた場合にどうするのかという御質問だったと思いますけれども、それはもちろん、大きく下振れするという場合でしたらば、これはいろいろな対応があると思いますが、取りあえずは、その下振れの程度によると思いますが、仮にそれの直前の段階において金融緩和の程度を縮小するというパスを思い描いていた場合においては、それを停止しまして、強い金融緩和の程度をそのまま維持するという対応もあるでしょうし、更にダウンサイドリスクが深刻だという場合には、新たに金融緩和を追加する、金融緩和の程度を強めるという選択も当然あり得るかなと思います。

 そのとき具体的にどういう手段を取るかという点につきましては、これまで、直前はマイナス金利政策あるいはイールドカーブコントロール等を用いていたわけですが、必ずそのどれかに戻るということを現時点で申し上げるわけにはいかないかと思います。これまで使ってきた政策の効果等ももう一度そういう事態に至るまでに点検しつつ、更に適切な政策があるかということも考えた上で具体的な対応措置を決めるということになるかと思います。

掘井委員 私は、政策を間違えたら直ちに変更していただきたいんですよね。その勇気が日銀にあるかないかなんですよ。

 例えば、イールドカーブコントロールにもう一回戻しますとか、マイナス金利に戻します、そういうことになったときに、これは日銀の信用はがた落ちですけれども、こういう状況であったとしても、勇気を持ってちゃんと戻せるか、知らぬふりしてそのまま過ごすんじゃないのかな、私はそんな心配をしているんです。質問じゃないんですけれども。

 次の質問です。

 地方の実情と政策判断についての日銀総裁の認識についてお伺いしたいと思います。

 私が地元で見聞きする状況と、日銀の見方は大きく異なっておると感じております。日銀は、日銀法にありますように、国民経済というマクロ経済を重視しておるようでありまして、ミクロや地方の実情の優先順位はその次になってしまって、チェックはしても最重要視していないのではないか、そういう懸念があります。

 中小企業の動向でありますけれども、大企業の賃金が上がりましたからといって、中小企業の賃金が上がるかは、これは不確実なんですね。上がらなあかんという社会の空気は感じているけれども、ない袖は振れないということであります。コロナ禍の余波はまだ大きくて、資金繰りに苦労しているところも多いんです。インボイスも導入されました。その上、金利が上昇することになれば、たとえ僅かであっても苦しい事業者は少なくないと思うんですね。賃上げどころではなくなる懸念があります。

 地方の声、中小企業の現場を見聞きしている私からいたしますと、今回のこの政策変更はやはり拙速であるとしか思えないんですね。本当に、今説明していただきましたけれども、ちょっとやはり分かりにくい、理解に苦しみます。

 これは、ミクロの集合体がマクロであることを理解してもらって、もっと丁寧にミクロや地方の実情を見て政策判断をしてもらった方がよかったと思いますけれども、いま一度認識をお伺いいたします。

植田参考人 例えば、労働者の大部分が中小企業で雇用されていることに始まりまして、中小企業の動向が極めてマクロを見る際にも重要であるということは、私ども、よく認識しております。

 その上で、十分な情報を得るのはなかなか、公式のデータも限られておりますので、難しい中で、様々なルートを通じて中小企業周りの情報を吸い上げるように、ふだんから努めているところであります。

 例えば、本支店のネットワークを利用してややフォーマルなヒアリングをかけたり、私ども政策委員が直接地方に出向いて地方の方々と会話をするというようなことも、努めて実行するようにいたしております。

 その上で、さらに、これまでの中小企業の動向を示すデータがマクロ全体あるいは大企業の動きとどういうふうに相関してきたかというような、より定量的な分析も強化するようにしてきてございます。

 いずれにせよ、ここはどこまでやれば十分ということはないと思っておりますので、引き続き努力をしてまいりたいというふうに思っております。

掘井委員 時間が来ましたので終了いたしますけれども、植田総裁のある意味マニアックなこのオペレーションが功を奏することを期待しております。

 以上で質問を終わります。

津島委員長 これにて掘井君の質疑は終了いたしました。

 次に、沢田良君。

沢田委員 日本維新の会・教育無償化を実現する会の埼玉の沢田良です。

 本日は、昨年日本銀行が国会に提出しております報告書を基に、最近の日本銀行の判断などに対して、幾つか質疑をさせていただこうと思っております。

 以前の質疑でも申し上げましたが、国民の多くの皆様が今、広く投資に手を入れていこう、参加していこうというようなタイミングに入っているというふうに思っております。そして、そんなタイミングだからこそ、日本銀行の考え方、議論の仕方、発信の仕方などが、今まで以上に注目を浴びている。そしてまた、それに対して報道も、ある種過熱感というか、盛り上げ方というか、そういう部分ではあるのではないかなというところを思っております。

 そういったところも含めて、今、いろいろな意見を私なりに勘案して、不安や懸念点を払拭できればというふうに思っております。

 本日も、津島委員長を始め理事、委員の皆様、植田総裁を始め日本銀行の皆様、委員部の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず最初に、経済産業省が二十九日、四月末を期限としていたガソリン価格の高騰を抑えるための激変緩和措置を延長すると発表をしました。これは延長七回目で、累計六・二兆円という大変大きな規模になっているということでおりまして、この期間を見ても、激変緩和措置といいながら、日本は二年以上となっているんですね。

 ちなみに、他国も同じような状況で、やはり激変緩和措置を行っており、ドイツは三か月でやめています。イタリアは十か月、フランス九か月、アメリカ九か月ということで。

 今回は、さらに、期限を設けず一定期間というふうに延長となっており、これは他国では本当の意味での激変緩和措置をしていて、日本はもう常態化しつつあるということを、私は客観的に見て不安を持っております。

 当然、担当の経産大臣も総理も脱炭素、カーボンをどうするのかということをまさに議論をしている中で、化石燃料に頼らない動き方ということを考えるためにも、どんどんどんどん、これが長引けば長引くほど日本の構造を変えてしまう、そういうことだというふうに私は思っております。

 特に、やはり政治が政権交代のタイミングだったり支持率が低いときに、こういった、どちらかというと賢くない選択をずるずるずるずると引き延ばして、実際に起こり得る結果とは違った結果が国民の皆様全体に影響を与えている。

 当然、今このガソリンのことで多くの方が困っている、そういう現状がある地域、これはあるというふうには思っております。けれども、この六・二兆円規模、そしてこれだけの期間ずっとやると考えると、消費税でいえば、もう四%以上のお金が使われていってしまっている。これは、私は、本当に国民生活だけじゃなくて、本来我が国がどこへ向かうかという経済構造にまで悪い副作用を生んでしまうのではないかなというふうに感じております。

 これで、私は、こういったことが政治の中でしばしば起こるということを、ほかにもいろいろな政策を政府は今までも打ってきていると思います。こういったものが物価情勢に及ぼす影響について、総裁としてはどういうふうに考えられているでしょうか。

植田参考人 政府の総合経済対策、その一部にエネルギー関係の負担緩和策がございますが、まず、実体経済面ではエネルギー価格抑制策、さらには、所得税、住民税減税策、これらが家計や企業の負担を軽減する。そして、経済対策の実行を呼び水として、投資や雇用、賃金を拡大していく効果を発揮するということを目的としたものと承知しております。

 物価に与える影響そのものについて見ますと、ガソリン、電気、都市ガス代の負担緩和策ですが、明らかなことですが、これが実行されている間は、消費者物価を直接的に押し下げる効果を持ちます。他方、経済対策に伴って需給ギャップや労働需給が改善しますと、これが物価や賃金の上昇に間接的につながっていくという効果があるというふうに考えております。

沢田委員 ちなみに、これは総裁、お答えできたらで構わないんですけれども、こういった政権が大きく動いていくようなタイミングに、やはり今、まさに今、総裁はこうやって緩和を少しずつ正常化していこうという、すごくタイミング的には難しい時期に入ってきています。こういうときに、頭を悩ますというか、いろいろな提案が出てくることが、総裁的にはどのように感じるのか。漠然とした質問になっちゃうんですけれども、もし答えられたら教えていただけたら。

植田参考人 一般論としてお答えしますが、政府の経済政策が動くということがある、あるいは動くことが予想されるという事態になる場合には、必ず私どもの経済、物価見通しをそれに応じて調整するということをいたします。そして、調整後の見通しに対して適切な金融政策は何かというふうに判断していくことが普通でございます。

沢田委員 済みません、追加でありがとうございました。

 しっかりと日本銀行の方ではそのように丁寧に向き合っていただければと思うと同時に、やはり政治は、世論がどのように動いていくのかも含めて、私は本当に激動のタイミングに入ってきているというふうに思っています。ここからの政局のかじ取りいかんによっては、本当に思ってもみないような政治的な発信が出ることも私は予想されると思っておりますので、是非、日本銀行としても揺るぎない信念を持って動いていただければというふうに思っております。

 続きまして、今年の二月に、コンサルティング会社アクセンチュアによる新たな分析の結論が報道されました。銀行業界はほかのどの業界よりもAIの恩恵を受ける潜在的な可能性があり、行員が現在費やす勤務時間のうち、AIの影響を受けにくい業務の時間はたったの二七%しかないというようなものが出ています。

 また、一秒の価値というものが、これは十年以上前ですけれども、F1が一番高いと言われていた時期があるんですね。F1は一秒を争うということで、そこに投資をするお金が一番集まる。でも、今では、金融業界がまさに一秒を争う、そういったトレードのスピードを競うようなことが始まっています。

 そして、今、AIが特定の発言により投資行動を行って、それが積み上がることでフラッシュクラッシュなんて呼ばれることが投資の中でも起こってしまうということも考えると、最近、チャットGPTというものが出てきて、私も、今四十四歳なんですけれども、やはり、当然、報道が出るまで全然知らなかったです。そして、それに対して、最近になってやっと少しずつ、ちょっと手を入れているという感じになるんですけれども。

 やはり金融業界は、私は、特にテクノロジーの恩恵であったり、そういったものの取り込みがとてつもなく早い業界の一つだというふうに感じるんですね。

 政策委員会の方では、取り扱われている先進的なデジタル技術に対する議案とか、また、そういった話があったという事例があったら、ちょっと御紹介いただければというふうに思います。

加藤参考人 お答え申し上げます。

 政策委員会では、金融政策だけではなくて、金融システムや、あと決済システム、それから、そのほかの日本銀行の業務運営、組織運営について、幅広い事案についていろいろ議論、審議、検討しているところでございますけれども、その中で、今委員の御質問ありましたデジタルないしは環境変化という観点でいいますと、これまでもテーマとして挙げていますけれども、例えば中央銀行のデジタル通貨、いわゆるCBDC関係とか、それからあと、私どもの業務、組織運営でも、やはり、デジタル技術を導入して、これを高度化させていく、例えばいわゆるDXの推進的な、委員のおっしゃったようなチャットGPT的な、そういうものをどうしていくか、そういうようなこともいろいろ審議、検討しているところではございます。

 また、気候変動問題への中央銀行としての対応などもいろいろ考えているところでございますので、こうしたところを、それぞれの審議委員始め政策委員会のメンバーが、自らの知見それからそれまでの経験を基に、多様な意見をいろいろ闘わせながら、いろいろ考えていっているところでございます。

沢田委員 まさに、私は、暗号資産、ビットコインなんというものがこんなに値段が上がるというふうに全く思っていなかった一人なんですね。今では円ベースでいうと一千万を超えて、一ビットコイン、まさに世界全体でも信認が得られてしまっているという状況ではありますけれども、まさに私たちが思ってもみないことが信用創造で生まれてしまって、それが実際に機能してしまうというぐらいまで、こういう状況になっています。

 私は、これは大変失礼な言い方にはなってしまうんですけれども、今、審議委員の方は平均年齢六十五歳ということで、ちょっと年齢がお高い方が多いというところも、この最先端の議論にどこまで追いついていけるのかななんてことを、心配もちょっとあるんですけれども。

 ちなみに、総裁は、金融業界における先進的なデジタル技術の活用についてどのようにお考えなのか、また、苦手だとか得意だとかいう点も教えていただければと思います。

植田参考人 私、七十歳を超えているところで、答えさせていただくのもなかなか申し訳ありませんが、委員御指摘のように、金融機関において、経営業務を効率化し、新しいサービスの提供を通じて収益機会を拡大していくために、デジタル技術の活用が明らかに重要な経営課題になってきていると思います。

 幾つか例を挙げてみますと、金融機関ごとに様々ではありますけれども、クラウドの活用を含む業務プロセスの効率化、それから、モバイルアプリやオンラインバンキングなど個人向け決済サービスの提供などの取組、さらには、一部大手行では、AI、それから分散型台帳技術等の先進的な取組の実用化に取り組む先も見られているというふうに思います。

 他方で、システム障害やサイバーアタック等に対する対応も極めて重要になってきているというふうに見ております。

 いずれにしましても、金融機関のデジタル技術に関する取組やリスク管理の状況について、引き続き丁寧に見てまいりたいと思っております。

沢田委員 総裁、ありがとうございます。私は、やはり、七十三になったときに私もこれぐらいしゃべれるように頑張りたいなというふうには思うんですけれども。

 是非、サイバーも含めて、本当に何か、私たち若い世代又はもっと小さい世代も全く見えないものが、先ほど、私たちの暮らしにどう影響するのかというところが、どこまで広がるのかと。まさによく分からない状態、こういったものが悶々と広がっていく、すごくテクノロジーが複雑化している時代ですので、是非そういった御意見も入っていただければ。

 私、希望としては、審議委員にも、できれば三十代とか四十代の、そういったいわゆる先端技術のテクノロジーを入れるような人間も積極的に、どんどんどんどん、内閣府の方で少しずつ推薦があったりすると、またいろいろな空気感が変わってくるのかなというふうには思っております。

 続きまして、二%のインフレ目標についての質問をさせていただきます。

 この前の政策決定会合の結果を受けてなんですけれども、今現状、政策委員の見通し、消費者物価指数なんですけれども、生鮮食品を除くものは、今、二〇二五年が大体一・六%から一・九%、生鮮食品、エネルギーを除くものについては一・八%から二・〇%、こういうふうに目標としておると見ております。

 これを考えると、やはり、目標を二%にするといったときに、ぎりぎりを狙っていこう、どちらかというとちょっと下を狙っているというふうに客観的には見えてしまうところは、今回の正常化も含めて、インフレターゲット二%が形骸化してしまったのではないのか。また、二%目標ではなく、二%めど、ちょっと下がってしまったんじゃないかというようなことを個人的にはちょっと感じました。一部には、二%のインフレ目標自体も放棄すべきだ、こういう報道であったり、いわゆる有識者の方がいらっしゃることも知っております。

 改めてなんですけれども、これまでの発言から、植田総裁は、いわゆる二%の物価目標、これを続けていく、堅持されるという考え方にお変わりないか、確認をさせてください。

植田参考人 二%の物価安定目標を持続的、安定的に実現するという観点から私どもの政策運営を適切に調節していくという基本的な姿勢には、全く変わりはございません。

沢田委員 ありがとうございます。是非堅持していただければと思います。

 本当に私、政策決定会合の結果を受けて、植田総裁に対する、いろいろなメディアであったり、いろいろな方々の御意見を見ていると、やはり、これは安倍政権の頃から言われていたのかもしれないですけれども、過去の日銀のいろいろな決定が大きく日本の経済を冷やしてしまった過去があるのではないのか。そこら辺については、総裁もレビューを出されるということなので、それをまた確認させてもらいたいなというふうには思うんですけれども、そういったところに対して恐怖というか、まだ不安を持っている。

 私自身は、二〇〇〇年の頃から、植田総裁の発言であったり、今までの経緯においての総裁の発言というのはずっと見させてもらっていて、どちらかというと安心感を持って見させてもらっていることの方が多いんですけれども、いや、そんなことはない、日銀は何かするぞというような疑惑の目で見ている方もまだまだいらっしゃるということなので、ちょっと、そういった確認をさせていただければと思います。

 今回の政策変更で、黒田さんが継続した緩和をやめると表明されたというようなことが、大きな方向性として感じている方は多くいらっしゃると思います。ただ、まだまだ残っている課題というか、残っている緩和されているものが、複雑かつデリケートな仕組みだというふうに感じております。

 追加利上げの予想やそれに対する懸念というものが、報道ベースでも過熱感を持って報道がされて、三月十九日の総裁の記者会見でも、マイナス金利解除後も、金利については早期に引き上げることはしないといったことを明確に発言をされているんですけれども、であったらば、金融市場調整方針に関する公表文に、その趣旨を明記すればよいのではないかというふうに私自身感じております。

 より丁寧にやるという観点からも、諸外国でも、非伝統的金融政策の終了局面で公表している、政策金利の見通しを予告するようなフォワードガイダンスや、今後の見通しといった措置を取ることがあります。同様の措置を取るべきと私は考えているんですけれども、総裁、どう感じますでしょうか。

植田参考人 大変難しい御質問ですが、基本的な私どもの姿勢としまして、先ほど来申し上げていることですが、基調的な物価上昇率はちょっとまだ二より下にある、しかし、近い将来二に向かって収束していくという姿を描いている。そういう見通しを持っている中で、今後の金融政策は、今後入ってくるデータ、情報が、描いている物価、基本的には物価ですね、インフレ率の見通しどおりに出てくるかどうかということを点検しつつ、決めていきたいということでございます。

 それで、御質問は、その経路に沿った金利の経路を出してみたらどうかということだと思うんですけれども、これがなかなか難しい一つの理由を申し上げますと、こういった先がどうなるのかということも見つつ、途中の経路を示さないといけないわけですけれども、インフレ率については二%が到達点であるということでございます。

 しかし、では、金利については到達点は何かということになりますと、私ども、あるいは中央銀行の業界では、よく中立金利というようなことを言ったりいたします。これは、長期的に金融政策が緩和でも引締めでもないような金利の水準ということでございます。その中立金利も、名目と実質と区別がありますが、インフレ率が何%で実質の中立金利が何%かという両方の要素から構成されております。

 インフレ率の方は長期的には二に収束していくわけですけれども、実質の中立金利が何%かというところについて、私どももほかの中央銀行でも様々な推計はしておりますが、非常に大きな幅があって、なかなかこれをお見せするのは、特に私どものような段階ではちゅうちょされるということに更に加えまして、長期的なインフレ率は二%になるわけでございますけれども、そこに行く過程では、実質金利を計算あるいは金融緩和の程度を計算する際に、そのとき人々の持っている予想物価上昇率がどれくらいかということがキーポイントになってまいります。

 これも、現状では二よりちょっと下にあるというふうに、基調的物価上昇率と非常に近い概念ですが、あると見ています。これは人々の心理、人々が受ける情報その他で変化していく、上がっていくと見ていますが、そのペースについても非常に不確実性が高いと思っております。

 というような様々な不確定性がありますので、現状、何か金利のパスをお示しすることがかえって混乱を引き起こしてしまうのではないかというおそれもあって、お示ししていないという状況ではあります。

沢田委員 丁寧に御答弁ありがとうございます。

 ただ、やはり今回の植田総裁になってからの、僕は、リークしたんじゃないのかなんという質問も過去にしてきた流れで、リーク自体がないということを総裁からもいただいているんですけれども、今、ある種、市場との対話であったり、いろいろな発信を丁寧に、すごく総裁はやられている。そしてまた、今の日銀の体制も丁寧に言葉を積み上げていっていただいているというところが、私が感じているすごくいいところだなというふうに感じております。

 この姿勢をやはり考えたときに、どこまでの幅を予告していくのかということは、またちょっと議論はあると思うんですけれども、是非、一歩踏み出した、今までの日銀の体制よりももっと植田総裁の方が踏み込んで、そういったものを文章化していくということは御検討いただければというふうに思っております。

 続きまして、植田総裁のバランスシート縮小に関する言及についてなんですね。

 これは先ほどもちょっとお伝えしたんですけれども、日本銀行が何かするんじゃないのかというような不安を抱えている方はいらっしゃって、二〇〇六年の量的緩和解除の際にかなり急テンポのバランスシートの縮小をやったということを、実際、過去として残っているんですけれども、こういったレベルのスピード感も想定内に入るのか。又は、総裁的に、具体的にではなく、これはある程度、どの程度なのかという期間みたいなものがあるのであれば、ちょっと教えていただければというふうに思っております。

植田参考人 二〇〇六年、七年の際のバランスシート縮小への言及をされたんだと今思いますが、当時は、バランスシートの資産サイドに日本銀行が持っていました資産が割と満期が短いものが多かったわけです。したがいまして、余り無理をしないでも、それはどんどんどんどん満期になって、バランスシートが急速に縮小していったという面があります。

 現在は、持っている長期国債の満期の平均がたしか六・五、六年ですので、かなり長い。したがって、急激にバランスシートを縮小するということにはやや無理があるということでございます。

 ただ、中長期的には、日本銀行がここまで大量の国債を持っているという姿は望ましくないと考えておりますので、段階を踏んで、バランスシートの縮小、すなわち長期国債の買入れを減額するという局面に移っていきたいと思いますけれども、一つは、今回の政策変更をマーケット等がどう消化するかということをまずきちんと確認したいということですし、また、すぐ先であっても、縮小の過程であっても、急激に長期金利が上昇するというようなことがある際には、機動的なオペを打ってそれは抑えるという姿勢はしばらく継続していきたいというふうに考えております。

沢田委員 済みません、最後の質問をさせていただきます。

 改めてなんですけれども、デフレ脱却ということをまだまだ政府の方は言い続けているんですけれども、私は、今の総裁の発言を含めて、やはり、もうこういった状況から次の段階に入っているという認識を持っております。

 ただし、やはりデフレ傾向に戻った場合の金融緩和対応について、改めて総裁の強い意思をいただければと思います。

津島委員長 植田日本銀行総裁、申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

植田参考人 はい。

 強い緩和方向での金融政策が必要になるという状況になりましたならば、それは、いろいろな手段、特にこれは絶対しないというような考えを持たずに、柔軟に対応してまいりたいと思います。

沢田委員 時間になりました。

 どうもありがとうございました。

津島委員長 これにて沢田君の質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十二分散会


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